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500字くらいでプレレンすうヌレ^p^

76^p^:2010/11/03(水) 13:42:15
今夜もたっきは遅くまで机に向かっていた。
意外にも、彼は地道な修練が好きだ。
努力をしている自分は美しいし、その結果として実力を身につけた自分はもっと美しいからだ。
そんな彼の背後に、ふいにのっそりと影が差した。
「…なんだアホハチロー、こんな時間まで穴掘りか」
満足そうな無表情で仁王立ちしている泥だらけのきはたんを振り返り、たっきは顎をしゃくった。
「拭いてやるからそこに座れ。そんな格好で動き回られたら部屋が汚れる」
この時間ではもう風呂は使えないだろう。
たっきはいそいそと手拭いだの櫛だのを取り出し、きはたんの上着を脱がせにかかった。
「まったく、戦輪にかけては学園一、学業の成績は学年一のこの私にこんなことをさせる身の程知らずはお前くらいのものだぞ」
「僕は頼んでない。たっきが勝手にやってるんだろ」
きはたんの手足を手拭いでごしごしと擦りながらたっきが浴びせる小言も、きはたんにとっては耳の横を通り抜ける心地よい風程度のものらしい。
涼しい顔で目を閉じている。
「お前は私ほどではないにしろ元々の見目は悪くないのに、整えることに関してはとんと無頓着だからいけない」
泥で固まってしまった前髪の束をかき分けると、気ままな猫の目と視線がかち合う。
「たっき」
「なんだ」
きはたんが話し相手をきちんと両目の真ん中に映すのは珍しい。
さすが私だ、とたっきは内心自画自賛した。
「僕はいイケてるの?」
「まあな。私には到底及ばないが」
「たっきは僕の見た目は好きかい?」
「嫌いではない。一番好きなのは私だが」
「だったら」
きはたんはたっきの手をとり、自分の頬に押し当てた。
「僕はこれからも身なりを整える気はないよ。汚れていようがだらしなかろうが、たっきが気に入っててくれるならそれでいい。たっきが我慢ならなかったら、こうやって勝手に手入れしてくれるんだろう?」
今日掘った土の中に、何か変わったものでも混じっていたのだろうか。
きはたんの泥まみれの顔が、やけにきらきらして見える。
自分以外の人間の顔がそんなふうに見えるのは初めてのことで、たっきはひどく戸惑った。


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