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【予備スレ】異能都市予備用スレッド
100
:
てんさい
:2012/06/14(木) 23:38:35 ID:ElM9U72Y0
>>95
共に反対。意識の改善でフォローできると思うので必要ないと思います。
101
:
名も無き異能都市住民
:2012/06/14(木) 23:48:05 ID:1BBSxSE20
>>95
共に反対、で。
ルールにまでしなくてもマナーとして意識しとけばいいんじゃないかなーと思います。
ローカルルールが長すぎると堅っ苦しく見えますし。
102
:
じ
:2012/06/14(木) 23:48:41 ID:1BBSxSE20
アアン記名わすれ
>>101
はじの人です。
103
:
さゆーりん
:2012/06/15(金) 00:00:48 ID:SSMHlh/20
2のみ賛成です。
104
:
狗
:2012/06/15(金) 00:01:05 ID:1sJsd2CgO
>>95
2のみに投票
105
:
ほーたい
◆My6NsjkSfM
:2012/06/15(金) 01:46:13 ID:trmDr2BE0
>>95
2に賛成しておりまする
106
:
アイリス
:2012/06/19(火) 22:27:21 ID:do5XJmGE0
age
107
:
月夜
:2012/06/20(水) 22:34:43 ID:dL8H4NjE0
>>95
2のみ賛成します
108
:
光速
:2012/06/22(金) 01:13:39 ID:NntjvIzM0
期限を過ぎたので、投票を締め切り集計を発表します。
投票者:十名
1の賛成票:二名
2の賛成票:八名
以上の結果により、
・同じスレで一週間以上ロールの進展が見られない場合は、新しくロールを始めることを奨励します。
の一文を「イベントスレ」のルールに追加します。
日常スレには加えませんのでご注意ください。
次回よりスレを立てる方は上記の文を貼り付けて頂けると幸いです。
当レスをもって予備スレは通常運行となります。
皆様、長らくのご協力大変有難うございました!
109
:
アイリス
:2012/07/01(日) 23:22:05 ID:do5XJmGE0
以前簡単にアンケートを取った際、タッグ戦の人気があったため再確認をしたいです。
7月末エントリー開始、8月初頭開催予定の闘祭(トーナメント戦)の形式の投票をお願いします。
一人一票、有効票は名前欄に名前を記入の上A案、B案、C案、どれか一方のみの投票でお願いします。
これでトーナメント方法確定します。
C案に一つでも票があれば、今年の闘祭から手を引く。
ついでにマイクパフォーマンスとか手伝ってくれるって人はその旨をレスに入れてくれると助かる
有効期限:2012/7/1 23:00〜2012/7/4 23:00
A案:本戦は一対一のみ。本戦後エキシビジョンでタッグマッチの開催
B案:シングル戦とタッグ戦を同時開催、同時進行。
C案:お前が主催するな。闘祭しなくても良い。
110
:
光速
:2012/07/01(日) 23:38:55 ID:NntjvIzM0
>>109
B案:シングル戦とタッグ戦を同時開催、同時進行。
に一票
111
:
じお
:2012/07/01(日) 23:47:18 ID:IrsgDsYs0
>>109
同じくB案に。
マイクパフォーマンスは、(経験無いので)三戦以降なら。
112
:
さゆーりん
:2012/07/01(日) 23:54:27 ID:SSMHlh/20
>>109
A案同時進行は負担が大きく、
参加者も混乱してしまうのではないかと思う。
113
:
とーざい
◆NSEW/xeQlk
:2012/07/02(月) 21:22:54 ID:7gFzKdaU0
>>109
Aに投票させてもらいます
たどたどしくていいなら自分は手伝いますよー
114
:
アイリス
:2012/07/02(月) 21:51:25 ID:do5XJmGE0
age
115
:
じ
:2012/07/02(月) 23:01:09 ID:1BBSxSE20
>>109
前回大会は中の人が来れなくなって不戦勝が多かったですし、同時進行になるとさらにややこしいことになるかも
なのでA案に投票します
116
:
さゆーりん
:2012/07/02(月) 23:03:30 ID:SSMHlh/20
>>112
のレスだとなんかくっついて分かりにくいのでもう一度。
A案に投票という事でお願いします。
117
:
アイリス
:2012/07/03(火) 23:07:47 ID:do5XJmGE0
ag
118
:
ツェペリン
◆5s2/gBPZGA
:2012/07/04(水) 21:20:22 ID:639CVF9Q0
>>112
A案で
119
:
アイリス
:2012/07/05(木) 21:35:09 ID:do5XJmGE0
投票の結果、闘祭は以下のようになりました。
A案:本戦は一対一のみ。本戦後エキシビジョンでタッグマッチの開催
今後の予定として、
七月半ばから末にエントリー期間
八月初頭開催予定
とーざいさんとあともう一人くらい、マイクパフォーマンスとか手伝ってくれる人募集中。
>>111
については、三回戦か、第三試合からか判別が出来ない。
120
:
さゆーりん
:2012/07/05(木) 23:38:20 ID:SSMHlh/20
手伝えることは手伝いたいお!
マイクパフォーマンスとかうまくできるかわからんけど。
121
:
ほーたい
◆My6NsjkSfM
:2012/07/09(月) 21:38:20 ID:trmDr2BE0
>>109
A案が面白そうなので一票します。
122
:
さゆーりん
:2012/07/31(火) 23:46:24 ID:SSMHlh/20
闘祭第一試合――黒沢小百合対萌葱アテナ。
この戦いは、年に一度の祭典の第一試合と言う非常に注目度の高い
試合であるとともに、黒沢小百合にとっても特別な試合であった。
――『イデアの箱庭・コロッセオフィールド』
古代の円形闘技場を模した会場には、観客席に観客こそいない物の
その実、異能都市のあらゆるメディアで中継されており正確な観戦者の人数は計測できない。
そうした舞台で――。
――「『黒沢小百合』さんがログインしました。」
機械的なアナウンス。0と1のデータが、
一人の女の体を科学的に、魔術的に、極めて正確に電脳空間へと投影する。
「……ああ、今日はなんと言う吉日か。
これほどの舞台で、あの小娘を叩き潰せるのだから。」
その顔に張り付いた愉悦と恍惚の笑み。
観客は、一人残らず今日の試合が『荒れる』事を予想しただろう。
123
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/07/31(火) 23:58:16 ID:7gFzKdaU0
>>122
「〝萌葱アテナ〟さんがログインしました。」
アラートが響くと同時に、闘技場にもう一つの人影が生じる。
小柄だ、そして細い。
月夜、篝火がその人影を照らしだす。
髪の色は、赤。
フリルのついた純白のリボンで、赤毛をポニーテールにしている。
眼の色は、黒。
篝火の照り返しを受けて、強い光を周囲に返す。
服の色は、白。
白いドレス染みた衣装は、要所を絞られており華美ではあるが挙動に問題の生じないもの。
ホットパンツからすらりと伸びる足はニーソックスで覆われ、足元は白いカンフーシューズ。
拳を覆うのは、金属装甲に包まれた使い込まれたグローブだ。
その存在感は、苛烈。
静かに息を吸い、吐き。
黒黒とした瞳を見開けば、只の少女ではない事は見るものが見ればきっと分かる。
――――萌葱アテナが入場した。
「……まさか、最初の相手が黒沢さんだとは思いませんでしたけど。
闘う以上は、全力で行かせて頂きます。コレでも、一人の武人ですから」
拳を包み、深々と抱拳礼をするアテナ。
顔を上げれば、その瞳には静かな闘志が宿るのみ。
相手が何を思っていようと、今日すべき事は既に決まっている。
だからこそ、相手の悪意の入り交じる、どろりとした感情にも、怯えなどは感じない。
必要なのは自分が自分である事を貫き切る事、それだけ。
かたや、千夜の防衛を担う一部の層には有名人であろう黒沢小百合。
かたや、何処から紛れ込んだかファンシーな格好をした小学生ファイター。
124
:
実況
:2012/07/31(火) 23:58:54 ID:do5XJmGE0
「さあ、始まりました!! 闘祭本戦!
それでは出場選手の紹介です!!」
アナウンサーはマイクを片手に握り、立ち上がる
その時、台に膝をぶつけたのか、小さく「ハウッ」と声が入る
「まずは選手の紹介です――――」
マイクパフォーマンスも兼ねているのか、実況は大きく息を吸い、気持ちを落ち着かせる。
「まさかこの人が来てくれるとは―――!
十字軍、黒軍、大陸軍、なんでもおまかせあれーー!!!
我が軍は最強! 我が軍故に最強! 我が軍に死角なし! 我が軍こそ至高の極みよ――!
破れるのなら破って見せろ! 千夜の切り込み隊長! 黒沢の厚き壁 軍の熱き血潮!
鉄の掟を敷き、それを統べるはたった一人の女性!! 理論は経験を保証し、経験は理論を保証する――!
千夜グループ都市警備部門主任! 女帝! 女教皇!
この歓声が聞こえているか―――黒沢ぁー! 小百合だァーーーーーーーーーー!!」
うぉぉぉぉと巨大な歓声が湧く。
それは優勝候補の一角が一番最初に姿を表したからだ!
『くっろさわ! くっろさわ! くっろさわ! くっろさわ!!』
観客席もノッてきた。中には「ぶっころせー!!」などと顰蹙を買いそうな罵倒も混じってはいる。
だが、普段から治安維持に貢献する小百合を応援する声は大きい。
「対するは…………
魔界帰りは生きていた!! 蝶のように舞い、蜂のように刺す!
ドラゴン相手に更なる研鑽を積んだハードパンチャーが帰ってきた!!
岩をも粉砕するその一撃に恐怖せよ!! 畏怖せよ! 受けてみよ!! 私の拳はいつもまっすぐ! その歪んだ性根も叩きなおしてあげるわ!!
AGカフェの看板娘!! 黒沢選手の前につき露骨なアッピルは禁止だァ! 萌葱ぃぃーー! アテナぁーーーーー!!」
『アッテナー!アッテナー!』
『猛虎や! 飢えた猛虎や! 猛虎魂見せたらんかい!』
「手元の資料によりますとー、何やら因縁があるお二人!!
こまけぇこたぁいい!今は存分にやりやがれってんだぁーー!!!!
観客の皆様の歓声を聞く限り、分は黒沢選手が優勢!だがしかし、だがしかし、萌葱選手も負けてはおりません!
萌葱選手も負けてはいない!! 自慢の料理の腕で飼い慣らされた、味方にするには頼りないけど敵にすると面倒な大きなお友達がしっかりと応援しております!!」
『あってな!あってな!』
『蹴ってくれー!踏んでくれーー!』
「おーっとここで支援の声援だァーー!
さぁお前ら瞬きするなよ! これが、これが、龍虎の闘いだァー!!」
実況はノリノリで観客を煽りつつ、対戦者同士も煽る。
その舌でのリにノッた観客の連中は選手入場の際、より大きな声援と罵声を浴びるだろう。
125
:
さゆーりん
:2012/08/01(水) 00:28:19 ID:SSMHlh/20
>>123
「何が武人か。貴様のような小娘が知った口を聞く。
思い上がりも甚だしい餓鬼に灸をすえてやらねば、なあ。」
――異質。
この試合の空気は、異質すぎる。
普通、試合ともなれば闘志や殺気、敵意が辺りを支配するはずだが……。
今、この空間を支配するのはまるで陽光当たらぬ地下の底に滞留した、
一種の生理的な生々しささえ感じる悪意と妄執であった。
「貴様の×××を刳り貫き、引きずり出し、歩兵の槍の穂先に掲げてやる……。
そして、生きたまま炎の中に投げ込み、死に絶える様を貴様の部下に見せ付けてやるぞ……。」
極度の興奮からか神経質に右の指を痙攣させる小百合の口の端からは
まるで杯から溢れる水のように、つぎつぎと憎悪の言葉が零れ落ちる。
レギオン
「――さあ、私のために往け『ローマ軍団』、
奴の咎首をあげた者には、主席百人隊長の地位と60万セステルティウスを与えるッ!」
号令の元、二人を遮るように現れるはローマ帝国の栄光を支えた精鋭の歩兵軍団。
大盾と剣で武装した軍団は規律よく整列し、闘技場を満たすように人の壁となってアテナへと
迫っていく。
126
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/08/01(水) 00:44:18 ID:7gFzKdaU0
>>125
「じゃあ、据えてみてくださいよ。丈夫ですからあぶられたくらいじゃそうそう死にません。
私だって、聖人君子じゃないんです。いっつも突っかかられて、手加減できるほど大人な子供じゃないんですから」
相手の執念、妄執、悪意。
泥のような、その圧力に対して、自然体。
だが、その戦意は多少以上に、濃いのは間違いない。
静かに軽く腰を落として、息を整える。
相手の号令が終わる前に、アテナは既に動き出していた。
「このくらいなら、慣れてるッ!」
ローマ軍団が出現する時点で、その集団の真ん中に既にアテナは居た。
発動時点で陣形が整えられている事は予想済み、出現までに僅かな間が有るのも予想済み。
だからこそ、発動の数瞬前に身体能力を強化し、敵陣のどまんなか、整った中心に移動してみせたのだ。
陣の形は、前に出る形をしているだろう。
前からくる人間を狩る為に召喚されたのだから。
だが、狩るべき人間は中心にいる、その事実が陣形と予測を崩す、そういう目論見だ。
「っがァアアアアアアアアアアアッ――――――――!!」
唐突、陣の中心で成されるのは、雄叫び。
魔力と気を込めた、原始的な魔法――――咆哮だ。
物理的な衝撃を含むそれを周囲にまき散らしながら、戦線に穴を開けるために前方へと全力の正拳を振りぬく。
目の前の歩兵にぶつかれば、十数mに渡って周囲を巻き込みながら吹き飛んでいくことだろう。
この数を超える為に選んだ手は、全てを倒すのではなく、如何に最速で小百合までたどり着くかどうか。
四肢を縦横無尽に振りぬき、咆哮で周囲に衝撃を放ちながらアテナは陣の中を真正面から打ち破ろうとしてくることだろう。
127
:
黒沢小百合
:2012/08/01(水) 01:05:30 ID:SSMHlh/20
>>126
アテナに有利なことは2つあった。
それはまず、最初に敵陣内へ一挙に飛び込んだこと。
レギオン
ローマ軍団が活躍した時代では、敵と味方の軍団が陣形を崩し乱戦を行なう事は
殆ど無くまた、組織的軍事行動を行なわず、個々の兵がばらばらに襲い掛かってくるような
敵に対してはそもそも、陣形を崩される事が無かった。
次から次へと襲い掛かるものの、
陣形を組んでいる時ほど効果的にアテナに対して攻撃する事ができない。
そしてもう一つは――。
「チィッ、中々に素早い……!
しかし、貴様は自分から包囲網に飛び込んだも同じ。
押し包んで、圧殺するのだッ!」
小百合は未だ気づいていないが、このアリーナはそれほど広くなく逃げ場がない。
敵に対して近づかれないよう、兵が戦っている間に距離をとり、消耗を誘う事が常である
小百合の得意の戦法が効果を発揮しないのだ。
こうした、二つの利点がアテナに味方していたが……。
しかし、さすがは最強を誇ったローマ軍団である。
なぎ払われ、陣形を崩されつつも徐々に包囲網を形成。
小百合が逐次具現化する増援と合わせ、再び戦列を構成しつつある。
この古豪の兵らの壁を突破することさえできれば。
128
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/08/02(木) 11:57:53 ID:7gFzKdaU0
>>127
目の前に雲霞と広がる敵の山。
だが、場の有利と状況の有利をアテナは既に理解している。
そして、必要なのは殲滅戦ではなく、大賞首を刈り取る事のみだとも。
突き出される、剣、槍。
それらがアテナの衣装に食い込み、鮮血をまき散らすかと思われたその瞬間だ。
アテナは転身、衣装の飾り布が花が開くのと同じくに展開され、剣、槍をなぎ払う。
それでも衣装に食い込む切っ先が衣装を引き裂くが、只では終わらない。
「炸裂[バースト]ッ」
衣装の表面に罅が入っていき、炸裂し周囲に飛び散ったのだ。
アテナの衣服は極薄に加工された金属板が無数に仕込まれている。
それらを自壊させてエネルギーを消費させる事でダメージを高い効率で軽減するのだが。
自壊させる瞬間に魔力を叩きこめば勢い良く炸裂させ周囲に花びらのように金属板を射出、斬撃を撒き散らす事が可能となるのだ。
それによってある程度の隙を作ることができたのであれば、アテナは足を強く踏み込み、小百合の方を見据え。
大地を陥没させながら、真正面へと背中を叩きつけるようなタックルを叩きこむことだろう。
現在のアテナは、乗り込み闘う相棒であったAegisのシステムを分解し、自分の肉体に組み込んでいる。
言わば、子供の肉体に機動兵器の出力を搭載しているも同然の状況である。
その状態で力を練り込んだ、背でのタックルの威力は、想像に難くない被害を齎すかもしれない。
「爆靠撃ッ!」
技の名は靠撃。
祖父直伝の技であり、体幹を操り、全体重、全速度をエネルギーとして前方に叩きこむ技。
普通のそれと違う点は、単に威力と速度、それに尽きる。
十数mに渡って敵陣をなぎ払い、吹き飛ばしながらアテナは直進していくことだろう。
129
:
黒沢小百合
:2012/08/03(金) 23:34:17 ID:SSMHlh/20
>>128
小百合には部隊の展開状況・被害・兵士の視界といった情報が
リアルタイムに流れ込んでくる。そうした情報を処理し、冷静に指令を下す
小百合の脳は、アテナがこのまま吶喊してくるであろう可能性を理解していた。
(――部隊は問題なく機能しているが、
この状況は防御面で脆さがあることを否めない。
退くのが良いか――いや、あの娘相手にか?)
アテナは近距離格闘戦に長け、特に瞬発力・爆発力と言った点では目を見張る物がある。
距離をとりつつ、兵の連携と高火力によって敵を殲滅する小百合にとって、この状況では
どうにか退いて距離をとり、アテナをいなしつつダメージを与えていくのが最良であると思えた。
しかし、小百合はそういった手法をとらなかった。
「小娘相手に退いたとあれば物笑いの種になる。
退却は許可しないし、私もしない。あの娘が至近に寄ろうとするなら、
私はソレを全力で阻止してみせる。」
小百合は、『意地』のためにこの場から動かなかった。
大衆の目の前で小娘相手に一歩と退いたとなれば小百合のプライド、
そして、女としての意地。その二つは音を立てて崩壊する。
「――『当然のように勝つ』。
それこそ、この私に求められている事。『勝利』をッ!」
渇望を含んだ叫びと共に、小百合は袖口に仕込んだ己の武器を引き抜く。
その刹那、ごう、という唸りと共に虚空から鉄の雨――。
――『メタルストーム』が飛び出す。
同名を冠すオーストラリアの兵器開発企業が生み出したこの
次世代兵器はこのためだけに開発された無数の新技術によって一分間に『100万発』の銃弾を
その箱型の胴体から吐き出す恐るべき兵器。
一発一発が身を削り取り、装甲を吹き飛ばす鋼鉄の雨だ。
130
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/08/04(土) 00:07:43 ID:7gFzKdaU0
>>129
「――しィッせェ!」
爆発音を響かせながら、兵士たちを吹き飛ばしていくアテナ。
その速度は徐々に加速していっており、傷を負う量も少なくなっていく。
それでも、目の前に幾重にも重なる兵士の数は、やはり脅威以外の何物でもない。
だが、何があろうとアテナはただ全力を叩きこむだけ。
己の矜持を、己の意思を貫くため、それだけで。
まっすぐと、渇望の混じる相手の言葉を聞き、視線を向け、声を発する。
「私は私であることを貫くだけです、それ以外には――無い」
叫ぶこと無く、心を深く鎮め、目の前の戦況を意識していく。
冷静さ、それは熱血さと相反するものではなく、熱い意思を通すための鋭さをアテナに与えていた。
何かを仕掛けてくる、その事実に気がつく事ができたのは、きっと成長していたからだ。
空気を引き裂き、肉を飲み込み、何もかもを砂塵と化す鋼の驟雨。
恐ろしいという言葉では表せない、少なくとも――人に撃つような兵器ではない。
だが、アテナに対してはむしろこのくらいが必要なのだろう、そう判断しなければもう少し火力を選ぶはずだ。
バトルドレス、タテナシの装甲が砕けていく。
幾ら再生能力とダメージ軽減があろうと、物量にはどうしようもなく耐え切れない。
周囲に無数の白い花びらが舞い散り、アテナの姿が見えなくなっていくことだろう。
土埃、砂埃にまみれて。
アテナの姿は、もうもうとした煙の中に消えてしまう。
131
:
黒沢小百合
:2012/08/04(土) 00:22:51 ID:SSMHlh/20
>>130
もうもうとあがる砂塵と爆煙の中へ、兵士たちが殺到する。
誰も彼もが、まるで自ら死を望むように銃弾の降り注ぐ中へ、
アテナの首をとるために走りこんでゆく。
――狂奔。
この戦いに渦巻く悪意――。
小百合の意思が、兵士たちをそういった行動に
ここの意思とは関係なく強制的に駆り立てているのだ。
しかし、小百合は徹底的で、執拗で、容赦がなかった。
「まだまだァッ!!貴様の趣味の悪い戦衣を死に装束に変えてやるぞッ!」
未だ降り注ぐ横殴りの鉄の雨。
しかし、それでもまだ嵐の予兆とでも言うべきであったのか。
コロシアム上空、夏の入道雲のように空を埋め尽くす
『SBD ドーントレス』爆撃機が、ただ一点に向けてダイブ。
腹に抱えた、爆弾の雨を降り注がせる。
132
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/08/04(土) 00:37:26 ID:7gFzKdaU0
>>131
無音。
殺到していく兵士たちは、煙の中に消えていくが、その後物音を立てることは無い。
不気味すぎる静寂になる筈だが、打ち込まれる鋼によってその無音はかき消され、異常に気づくことは難しいだろう。
降り注ぐ横殴りの鉄嵐、さらにダメ押しとばかりに降下し、爆撃する爆撃機。
爆音、轟音。
飛び散る何かの音、引きちぎれる何か、呻き、叫び。
大地は巻き上げられ、音も視界も何も頼りにならないようなそんな状況。
「――――抜剣・アスカロン」
直後、鉄の雨が切断された。
爆撃に空白地帯が唐突に生まれた。
小百合の足元まで一直線に駆け抜ける鋭い裂傷が大地に刻まれた。
そして――――――
そして、萌葱アテナが、駆け抜けていた。
「ッ、オ゛オ゛オオ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛ッ!!」
服装は、ホットパンツに上半身は晒しだけ。
髪留めは吹き飛び、頭部からは血を流し、身体の随所に穴を開けている。
走る度に鮮血が吹き出すものの、異常な魔力量による身体能力の強化がその事実をねじ伏せ強制的に肉体を駆動させる。
全身にびっしりと青白く光るトライバルパターンのタトゥーが浮かび、表面をバチバチと魔力が循環し続ける。
「正拳<破城槌>」
振りかぶった拳に唐突に光輝がまとわりつく。
高密度の魔力が、周囲の空間を歪め光を屈折させていた。
そして――アテナはその拳を前方へと振りぬきながら、尚加速。
城塞を粉砕する威力を以て、鋼の嵐を打ち砕き真正面から小百合の土手っ腹に拳を叩きこもうとしていた。
133
:
黒沢小百合
:2012/08/06(月) 23:30:40 ID:SSMHlh/20
>>132
「――――!」
新たな局面に小百合の頭脳が回転を始める。
爆炎に焼かれ倒れる兵士の視点、上空からダイブする爆撃機の視点、
アテナの死角に置いていた観測所の視点、広域管制機からの情報。
その全てを用いて、小百合は次の手を捜した。
(――止めなければ。)
いつもの『コンスタンティノープルの城塞』や『万里の長城』で防御に転ずるか。
否、あの勢いでは石壁の一つや二つなど用意に崩されてしまう。
(――止めなければ。)
全面攻勢によって、アテナを叩き潰してしまうか。
否、速度が速すぎて爆撃・砲撃では捕らえきれない。
(――止め)
「……ぁギぅッ!!!」
ミチ、という嫌な音と共に小百合の思考は途切れた。
アテナの拳が、腹部に潜り込み肉を引き裂いていくのが分かる。
小百合の意識を、砕いていくのが分かる。
「……ぁ゛、が……ぁ……ぅ……。」
鮮血がアテナの体を濡らす。
圧倒的速度で打ち込まれた拳はまさに鉄槌。
その威力は小百合の体を一瞬にして串刺しにし、致命傷を与えるに十分。
「こ……ん……な…………いや……。」
以前の戦いのように、小百合は力なくその体をアテナへと預ける。
134
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/08/06(月) 23:41:09 ID:7gFzKdaU0
>>133
「――――ッ、ご……ァ――ッ!」
術式の負担で、口から鮮血がこぼれ出す。
だが、それでも、アテナは思う。
己に対して真っ直ぐな敵意を、悪意を向けてくるのならば。
それに対して自分が出来ることは、真っ直ぐにそれを受け止めることだけだと。
器用なタチではない、むしろ不器用な部類。
故に、直進。
故に、正拳。
食い込み、突き刺さり。
懐かしい、血と肉に触れる感覚。
暴力以外の何物でもなく、使い方を間違えれば災いにしかならない物。
異能も武術も兵器も魔術も、全て同じだ。
そう、黒沢のその能力も、この時点では凶悪にアテナを追い詰める凶弾だが、都市防衛の要でもある。
同じく、アテナもだ。人に振るえば容易く命を奪えうる武力を持つ。
どう振るうかが、大切だ。改めてアテナはそう思う。
腕を引き抜き、倒れこむ小百合を受け止める。
アテナは静かに小百合を地面に横たえて、腰を落として息を深く吐き出した。
「……残、心」
異常な負担を抑えこむために、肉体からゆっくりと魔力を抜いていく工程だ。
この際は、隙ではあるが漏れていく魔力がある程度の防御力を約束するだろう。
135
:
黒沢小百合
:2012/08/06(月) 23:53:56 ID:SSMHlh/20
>>134
小百合は、混濁した意識の中で
アテナをゆっくりと見据えた。
「――えいゆう……め。」
無意識のうちに漏れた言葉か、
それとも、意識のあるうちに述べた言葉かは分からないが、
小百合は最期に擦れた声で、なにやら呟くとそのまま、ゆっくりと動かなくなった。
――闘祭第一回戦勝者『萌葱アテナ』
136
:
萌葱 アテナ
◆NSEW/xeQlk
:2012/08/06(月) 23:59:00 ID:7gFzKdaU0
>>135
「――英雄ですとも」
英雄という言葉は、輝かしいものではないことは知っている。
黒沢が向ける感情も、きっとそこにあるのだろうとも知っていた。
薄れ、崩れていく意識の中で。
萌葱アテナは静かに拳を握りしめた。
萌葱アテナ、勝利。
137
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/27(月) 23:35:01 ID:vljhfSlg0
【箱庭内。草原ステージにて】
「さて、どうしましょうか」
【風呂敷の中からいろんな物をあさり、確認している】
「…まあ、来てくれますよね」
【そう言って頷いた】
138
:
飼い主
:2012/08/27(月) 23:36:37 ID:ry7wfIlo0
>>137
「草原か。」
(つくづく運がいい)
【赤いマントを着た長身の男が降り立った。】
139
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/27(月) 23:38:47 ID:vljhfSlg0
>>138
「来たようですね。」
【そう言って振り向く制服の少女】
「鼻をあかすなんてつもりはありませんが…
ひとまず私の力を見せてあげますよ」
【そう言って両手におもちゃの鉄砲を構える】
「それじゃあ行きますよ…!」
【そう言って両手の鉄砲に力を貯めこみ始めた】
140
:
飼い主
:2012/08/27(月) 23:43:15 ID:ry7wfIlo0
>>139
(力を溜める・・・か。)
【彼は身じろぎもせず防人を見ている。】
見下す神の目
(まぁ、『 サーチアイ 』も必要ないか。)
サーチアイ─彼のホムンクルスの目をつかい、俯瞰視点でフィ
ールドを見渡す魔術である。戦術を練り戦う彼にとっては
右腕も同然、それを使わないというのは遊びとしか思われて
いない、ということだ。
141
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/27(月) 23:52:12 ID:vljhfSlg0
>>140
「さて…行きますよ!」
【そう言って鶫は軽く横へ飛び出した】
【両手に構えた鉄砲を男に向けて】
ガァン!ガァン!
【威力がかなり強化された弾丸を4発発射する。どうやら連射することも出来るようだ】
142
:
羊の人
:2012/08/27(月) 23:56:19 ID:ry7wfIlo0
>>141
「ふぅん、銃か。」
【彼はそう言った。普通の人が見れば弾丸はすさまじい速さだが
ホムンクルスの目を持つ彼から見れば、そこまで速くは無かった。】
「集え風よ、我を守れ」
【突然、彼の前方に風の盾が出来た、弾丸は風に流され別の方向に
飛んだ】
「どうした?それだけか?」
【彼は挑発するように言った。】
143
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/27(月) 23:59:15 ID:vljhfSlg0
>>142
「まあそう簡単に行くとは思いませんよ。
風の力を使うとは…」
【少し残念そうに答える】
「ならば突き破るまでです!」
【鶫がさらに鉄砲に力を込めていく】
【エネルギーは金色の光となって収束していく】
「仕掛けますよ…!」
【そう言って男に向けてかけ出していく。】
144
:
羊の人
:2012/08/28(火) 00:18:02 ID:ry7wfIlo0
>>143
「それが本業じゃないけどね。」
【彼の周囲に魔力が集まる】
「トリプルキャスト(三段詠唱)」
【彼の周囲に集まった魔力が渦巻く】
「エンチャント(付加)・クアッドマルチタスク(並列思考)、ツインキャ
スト(二口詠唱)レビテーション(浮遊)」
【集まった魔力が彼にまとわりつく。補助呪文だろうか】
145
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 00:21:03 ID:vljhfSlg0
>>144
「何か力がまとわりつくような…
一体どんな攻撃なんでしょう?」
【魔力がまとわりついていくのを見て鶫はすこし驚く】
「なら、攻撃を仕掛けるまで!」
【それでも構わずに前進していく。どうやら足の方も強化しているようでかなり足が速い】
「でやっ!」
【一気に近づきながら銃口を彼に向ける。どうやらすぐ近くで撃つつもりのようだ】
146
:
羊の人
:2012/08/28(火) 00:30:50 ID:ry7wfIlo0
>>145
「近くで撃つか?せっかくの特性を無駄にしているとしか
思えない。」
【彼はそう言った途端、彼の体は浮遊した。】
マルチタスク─複数に思考を分割する魔法、単純に言えば
脳が増えて、複数の事に使える
「地よ、我に従い敵を刺せアーススパイク」「ファイアーボルト」
【まるでふたり同時に言ったかのように呪文を唱える。】
彼は防人が前身していくところを予測しつつ、脳をフルに使った
極限の集中力でふたつの呪文を唱えて、呪文を完全に制御しつつ
予測した場所に魔法を撃った。
防人の視界を地面から離すように上空から炎の矢が数本、防人の視
界の死角に地の杭が出てきた!
防人の前身
147
:
羊の人
:2012/08/28(火) 00:47:43 ID:ry7wfIlo0
//防人の前身とか下にありますけど間違えただけで、
続けてもらって大丈夫です
148
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 00:55:05 ID:vljhfSlg0
>>146
「バリアを破るためですっての!」
【と、そこまで来たところで急に浮遊したのを見て】
「…どうやら攻撃してきたようですね
でも」
【そう言って上空から撃たれた炎の矢を見て】
「それくらいなぎ払って見せますよ!」
【そう言って男との斜線軸を合わせ弾丸を発射した!】
【だが、その瞬間】
ドゴォッ
【地面から生え出した杭が鶫の死角となった背中を鋭く突き刺した】
「あ……ぁっ!?」
【苦しげな悲鳴を上げ、鶫の体が弓反りに反り返り、杭に体を持ち上げられた】
【その硬直は男にとっては大きな隙になっているだろう】
149
:
飼い主
:2012/08/28(火) 01:15:19 ID:ry7wfIlo0
>>148
「まぁ、やるからには容赦はしない、僕はサディストなんていう
悪趣味はもっていないからね。」
【彼はそう言った後】
「炎よ輪となり敵を詰めろ、フレイムサークル」「風よ我に
従いて集え、ギャザーウィンド」「キャストリロード(再詠唱)」
防人の10メートル周りに炎が囲む。そしてその上空には風が
集まる。草原は炎によって燃えさかり、防人の上空に集まる
風は、草原に移った炎を防人の方向に燃えさせた。まるで
炎の牢獄といってもいいだろう。
【再び彼の魔力が集まる。】
「ディバイドエア」
【集まり出した風は酸素と窒素に分解され、炎をさらに激しく
させた】
150
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 01:22:12 ID:vljhfSlg0
>>149
「がふっ…
げほっ…」
【石の杭からずり落ち、鶫の体は地に落ちる】
「…炎は…
苦手ですから…」
【鶫はそう言って次に取り出したのは携帯消火器】
「その炎は…!」
【そう言って鶫は先程よりも強烈な力を消火器に込めていき】
「消す・・・!」
【凄まじい勢いで消火器を噴射した。】
【炎の勢いは先程よりも弱まっていく】
【更に周囲に消火器から噴射された薬剤が漂って姿が見えなくなってしまった】
【鶫はまた力を貯めているのだろうか】
151
:
飼い主
:2012/08/28(火) 01:29:50 ID:ry7wfIlo0
>>150
「消化器─」
(これは以外だ。)
「アナライズ」
【彼はそういうと消化器の成分を調べた。】
(なるほど、どれも水素が含まれているな。)
「ディバイド(分解)・ハイドロゲン(水素)」
【漂っていた薬剤はだんだん消えて、その直後、分解した水素
とディバイドエアで分解した酸素が化合、さらに火に化合し、
凄まじい爆発音とともに爆発した!】
152
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 01:37:29 ID:vljhfSlg0
>>151
「ぅぁあっ…!」
【一瞬悲鳴が聞こえたが、その瞬間には】
【爆風に吹き飛ばされ、鶫の体は激しく宙に舞った】
【体のあちこちが爆風に焼かれ、衝撃によって纏っていた制服も凄まじい勢いで一部が吹き飛んでいく】
ドシャッ…
【そのままかなり遠くまで吹き飛び、地面に叩きつけられ体が激しく回転した】
【倒れこんだ姿からはどうなっているかは確認しづらい…恐らくは相当なダメージであろうが】
【しかし、まだその手に握られている銃は力を保っているようだ】
153
:
飼い主
:2012/08/28(火) 01:58:34 ID:ry7wfIlo0
>>152
「そう僕に薬剤を振りまかないことだ、本業は錬金術師なんだから」
【彼は余裕そうに、防人を上から見下ろした。】
(弄ぶ・・・か)
【彼は声を出さずに口を歪ませ笑った。】
恐らく、彼女は相当なダメージを受けているだろう。しかし、
彼はあの戦闘員との戦いを見ていた事で、彼女の能力を大体
分かっていた。
(この状態だと受けた衝撃を吸収している。その力を叩き込んで
銃を撃ってくるか、それとも決死の特攻か。)
「アースグレイヴ」「ストロングエンチャント(強付加)、マグネ(磁力)」
「キャストリロード」「ストロングエンチャント、マグネ」
【彼が呪文を唱えると彼の左右にとても強い磁力を帯びた巨大な土
の杭がふたつ出現した。】
彼の目的は土の杭を作り出すのではなく、土を地面から減らす
事、そう、この巨大な土の杭は彼の目の前の地面で作られている。
しかし、一見は普通だが、中身は空洞、つまり一種の落とし穴だ。
(これで特攻をすれば落とし穴に嵌り、銃を撃てば土の杭に
の磁力によって別の場所にそれる。)
154
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 02:08:09 ID:vljhfSlg0
>>153
「…う、うぅ…」
【体を痙攣させ、鶫は悲鳴を上げながら立ち上がる】
「……強い相手は…厄介…です…」
【そう言って鶫は鉄砲を構える】
「…でも、貴方の戦い方はわるくない…」
【先ほどの表情よりもおだやかになっていた】
「狙いは…そこ!」
【そう言って鶫は片方の拳銃を男に向けて発射した】
【しかしその弾は磁力によって逸らされてしまう】
「……なら」
【そう言って鶫はもう片方の鉄砲を下に向けた】
【更に力を送り込んでいるようだが…】
155
:
飼い主
:2012/08/28(火) 02:19:45 ID:ry7wfIlo0
>>154
「まさか・・・ね」
(力を溜め込んで下に撃って何をする気か。地震でも起こす
気か。地震・・?なるほど。これを壊してその後撃つのか。)
「レビテーション」
【来る攻撃に備え、彼は少し浮遊をした。が、場所は変わっていない。】
(これを壊しにくるなら、その破片を利用するまでだ。)
「ウィンドウォール」「ウィンドウォール」「キャストリロード」
【彼は二重に風の障壁を展開した。】
「エンチャントプラス・ツインマルチタスク」
【さらに間も開けず、砕けた岩を操作するために並列思考数を
増やした】
156
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 02:29:13 ID:vljhfSlg0
>>155
「その罠はなんとなくキケンな予感がしますから…」
【そう言って鶫は銃口を地面に向けた。だがそれだけではなかった】
「…私も」
【軽くジャンプをし、片足で鉄砲の上に立ち】
「飛ぶまで!!」
【その瞬間に引き金を引く】
ドガァン!!
【地面に向けて発射した衝撃で鶫の体は空へと飛び上がる】
「でやぁぁぁ!!」
【鶫は大きく拳を振るって、男に力を込めた拳を撃ちこみに行く】
157
:
飼い主
:2012/08/28(火) 02:39:35 ID:ry7wfIlo0
>>156
「なるほど、傷ついた割にはアクティブだ。」
【彼はそういうと並列思考のうちふたつを使って拳の位置を予測、
風の障壁を圧縮し、拳を防ぐ。】
「エンチャント・ディスペル」
【彼はそう呪文を唱えた後、防人の頭に向かってマントを投げつけた。
普通は風によって吹き飛ばされるがマントは吹き飛ばされなかった、
マントは防人の頭に向かう。】
【そのまま彼は拳に魔力を集中、超高温の熱線─ライトセーバー
を作り上げる】
158
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 02:54:14 ID:vljhfSlg0
「近づいてもダメ…か!」
【拳の攻撃が防がれて、歯がゆい表情を浮かべる鶫】
「むぐっ?!」
【突然マントが自分の顔を覆い隠してしまったのに驚き、戸惑うが】
「むっ…そこか!?」
【声を頼りに狙いを定めて銃を打ち込んでいく】
159
:
飼い主
:2012/08/28(火) 03:06:47 ID:ry7wfIlo0
>>158
ドシュ!ドシュ!
放たれた弾丸が彼の体にいくつか当たった。弾丸があたるごとに
血飛沫が舞う。・・・が
(僕には痛覚がないんだよ。ホムンクルスだからね。)
マントも無く風の障壁がない今、攻撃を喰らえばダメージは
受けるが、痛みさえなければどうということはない。
「ストレングス」
【彼は自身に身体強化魔法をかけた後】
【マントで視界が塞がれている防人の目の前に素早く踏み込み、人間
とは思えぬ速度でライトセーバーを振った。】
160
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 03:11:09 ID:vljhfSlg0
>>159
「あっ…はああっ…」
【鶫の体はライトセーバーにあっけなく貫かれる…】
「う、ぐふっ…」
【ライトセーバーにぶら下がるようにその体は崩れ落ちていく】
「…せ、めて…!」
【鶫は最後のあがきとばかりに、拳銃を男へ向け】
【引き金を引いた。先程よりもさらに力を増した一撃を】
161
:
飼い主
:2012/08/28(火) 03:19:38 ID:ry7wfIlo0
>>160
「む」
【彼は声をもらし、体を仰け反らせた。】
「銃にここまでパワーをもたせるとはね。」
【しかし、彼はなにごともないように立った。】
「視界塞がれてるから分からなかったと思うけど僕、痛覚がない
んだよね。」
【彼はさっき銃弾で貫かれた部分を見せる。見事な穴が明いていた】
162
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 03:24:40 ID:vljhfSlg0
>>161
「な…る…ほど…
どう…り…で…つ…よ」
【鶫はその姿を見て、弱々しく答えたが】
「ぐふッ・・・うッ・・・」
【もはや限界なのだろう、苦しい声を上げて突き刺された剣を支えにその場にぶら下がった】
【そのしぶとさは力を手にした故なのだろうか…】
163
:
飼い主
:2012/08/28(火) 03:34:22 ID:ry7wfIlo0
>>162
「どうりで強い、か。」
(元々、始めて喫茶店で僕を殴った時に気づいたと思うけどね。痛
みがなきゃあんな反応はできない)
【彼は防人に投げた赤いマントを回収し、再び羽織った】
(しかしまぁ、しぶとかった。消火器を使ったのと銃を使っての上
空からの攻撃─。どれも意表をついていた。皮肉な事に消火器が
仇となったけどね。)
(そういえば、僕を騙したクローンも彼女くらいに意表をついてい
たな。まぁ、過ぎた話だ。)
【彼はしばらく思案すると、】
「あれ?箱庭ってどうにでるんだ?」
【彼はひどく困った。】
164
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2012/08/28(火) 03:40:35 ID:vljhfSlg0
>>163
『防人鶫:生命反応の停止を確認…
転送を行います…』
【鶫の体は電子情報となって消え、後には何も残らなかった】
【ちなみに近くに転送用の端末があるので、辺りを探せばすぐにでも出られるだろう】
//長々とおつかれさまでした〜。
165
:
飼い主
:2012/08/28(火) 03:48:49 ID:ry7wfIlo0
>>164
「端末を探すのか」
【そういうと、彼は端末を探した。】
「おお、これか」
【飼い主の体は電子情報となり、消えた。】
//いや、こちらこそおつかれさまでした、tueeしすぎてましたよね・・・
166
:
?
:2013/06/02(日) 22:52:09 ID:dL8H4NjE0
「……」
夜の大通りを、少女はベンチに座りながらぼんやりと眺める。
老若男女人間人外を問わず、様々な姿が少女の前を談笑しながら通っていく。
夜を感じさせない活気には、異脳都市独特の雰囲気があった。
「……」
そんな風景を、少女は無表情、いや、どこか悲しげな雰囲気を漂わせ、やはりぼんやりと眺めるばかり。
いつものおどけた笑みと陽気さはどこへいったのか、活気の中で少女は一人物憂げにため息をつく。
167
:
?
:2013/06/02(日) 22:52:47 ID:dL8H4NjE0
//age忘れ
168
:
柊宇都 綾
:2013/06/02(日) 23:02:54 ID:3Z2n9vI20
街中を闊歩する機械馬。
夜空の暗い雰囲気の否めない街中に蒼紅の光が差した。
人々はその光や、自転車や自動車を避ける様なごく自然な流れで道を開ける。
しかし、何よりも闊歩の原因をなっていたのはその異質さだろう。
機械馬の闇色のボディは街灯の光に漆の様な輝きを返す。宛ら闇から浮かび上がった使いのような。
それよりも。馬の中で最も異質と言えたのはその双頭だろう。右から紅、左から蒼の光を灯らせ、街を歩んでいた。
「……」
その背に跨る少女もまた、闇の眷族とばかりに黒く。
闇色の髪は腰ほどまであり、馬の歩に合わせて揺れる様は妖しくも美しく。
同じく闇色の衣装から除く素肌は日陰での生活を強いられている事を想像しそうな程白いのだ。
人の海に溝が出来る。それは宛ら悪魔の凱旋だった。
169
:
?
:2013/06/02(日) 23:23:31 ID:dL8H4NjE0
>>168
「……」
機械馬が視界に入った途端、少女の表情が変化する。
なんだこいつとでも言いたそうな訝しげなものに、だが。
「……まあこの街だし、これくらいの変人なら普通なのかな」
まるで自分はごく普通の一般人ですとでも言うような少女の台詞。
それ以前に、本人が自分の前にいるのに変人呼ばわりはどうなのだろうか。
「……あー……」
興味を持つ元気さえないのか、ぐったりと背もたれに倒れ込もうとして、
「――あ?」
直後、ベンチごと少女の体が後ろに倒れ込む。
辺り一帯に異音を撒き散らしながら、少女は地面に激突した頭を押さえながら呻き声をあげる。
170
:
柊宇都 綾
:2013/06/02(日) 23:27:58 ID:3Z2n9vI20
>>169
周囲一斉の視線が倒れた少女に向けられる。
それ程、起こした音が大きかったのだろう。
そして、以外にも駆け寄ってきたのは異形の馬を従えた少女だった。
近くまで馬を移動させると、降りて歩み寄り。
「大丈夫?」
小さく、ぼそりとした声でそう尋ねる。
全体の色みと言い、暗い雰囲気通りといえばそうである。しかし、綾のバストは豊満であった。
171
:
?
:2013/06/02(日) 23:40:24 ID:dL8H4NjE0
>>170
「うおおおぉぉぉ……」
後頭部を押さえながら地面をのたうちまわる少女。
周囲の視線などお構い無しなあたり、相当痛かったのだろう。
「大……丈…夫」
とりあえず声をかけられたので死にかけの声音で反射的に返答する。
やがて痛みがだんだん治まってきて、声のした方向を見てみると、
「あー、さっきの。悪いねなんか」
意外にも先程の機械馬に乗っていた少女が目の前にいた。
照れ笑いをその顔に浮かべながら少女は話す。
全体的に明るい雰囲気に、人懐っこそうな陽気な笑みは、どこか綾と対照的である。
……胸も例外ではないようだが。
172
:
柊宇都 綾
:2013/06/02(日) 23:46:41 ID:3Z2n9vI20
>>171
しかし、今の手持ちには如何にか出来そうなものは殆ど無い。
と言うか、大したものを持ち歩いていない。
なので、右目は只管に少女を眺め、時折パチリと瞬きをするだけ。
「別に……」
そして、殆どの例外であるのがこのミネラルウォーター。
外出しようと思ったら妹に持っておけと言われた奴。
非常に冷たいのである。それを少女の後頭部に押しあてた。力が強い。
173
:
?
:2013/06/02(日) 23:58:25 ID:dL8H4NjE0
>>172
「つめたっ!?」
突然のそれにビクッと体を震わせて驚く。
ただ触れるだけならまだしも、押し当てられるとまだ少し痛む。
しかし好意を無下にするわけにもいかないので、押し当てられたままじっとする。
「……それにしても、あの馬って一体何」
このまま無言というのも性に合わないので、先程から気になっていたことを口にする
174
:
柊宇都 綾
:2013/06/03(月) 00:16:29 ID:I1U4nNWQ0
>>173
―――――!
闇夜から生まれ出たかのような邪悪さを醸す異形の馬。
紅と蒼の、二色の光を灯す異形は、同じく二色の光を身体に纏っていた。
その光は時折、機械の身体をバチリと言う音と共に駆け巡る―――電撃だった。
ただ黒く、電撃を這わすだけなら都市の何処かに居そうなものである。
そんな少女の従者を異形めいて見せていたのは、他ならぬ双頭であった。
つるりとした曲線を描く頭部に、口や耳は無い。
ただ、瞳代わりの左右それぞれ二行六列、の電灯が、ぼんやりと灯っているのだった。
「……ロウリッド」
少女の口から出たのは聞き慣れぬ単語。固有名詞と判断するのがよさそうだ。
175
:
?
:2013/06/03(月) 00:28:01 ID:dL8H4NjE0
>>174
「ロウリッドねえ……」
目の前の馬が纏う光をみながら、少女の言葉を反芻するように呟く。
少女の知る機械のイメージからあまりにもかけ離れているそれは、ただの機械以上の何かを感じ取らずにはいられない。
それの持つ異様な様相がそうさせているのだろうか。
「……ん、もう大丈夫かな」
後頭部を指差して少女は綾に話しかける。
完全に腫れが引いているわけではないが、だいぶ小さくなっていた。
176
:
柊宇都 綾
:2013/06/03(月) 00:47:08 ID:I1U4nNWQ0
>>175
「ん……そう」
もう大丈夫。と聞いてヒエタミネラルオォーターを少女の頭から離す。
そして、正面に戻ってくると手の中の水を差し出した。
「あげる」
感じる視線は一つ。理由は直ぐに解るだろう。
顔の左半分が闇色の髪に覆われているのだ。
「……どうどう」
バチリと身体を瞬かせた馬に歩み寄り、頭部に手を翳しながらあやす様な言葉を掛けた。
すると僅かに首をもたげ……落ち着いたきがした。綾を従者と認めているのだろう。
177
:
?
:2013/06/03(月) 00:55:08 ID:dL8H4NjE0
>>176
「ん、どーも」
素直にミネラルウォーターを受けとる。
キャップを捻り口をつけると、しっかり冷えている水が喉を通りすぎていく。
「機会があれば今度何かおごってあげるよ、それじゃあね」
ミネラルウォーターを左手に持ち、空いた右手で綾に手を振る。
そのまま名前を聞くこともせず少女は立ち去ってしまった。
//時間が時間なのでここらへんで。絡みありがとうございました&お疲れさまでした
178
:
柊宇都 綾
:2013/06/03(月) 01:00:24 ID:I1U4nNWQ0
>>177
「じゃあ……また」
去っていく少女を見送る綾。
十分に距離が離れたのを確認すると、黒の異形に乗り込んだ。
そして、少女とは逆方向。始め通って来た方向を進んでいくのだった。今日はもう帰るらしい。
//お疲れ様でした!
//回線不調で迷惑を掛けてしまって申し訳ないです……。
179
:
名も無き異能都市住民
:2013/06/08(土) 22:12:05 ID:CNzpbvmk0
―――――住宅街の大穴
「まってたよ」
桃色の少女は振りかえり、そちらに視線を向けると微笑んだ。
そして再び身体を回転させると、穴を覗き込む。
「んー。たぶん、きょう。なにかがでてくるはずなんだよ」
少女も何が現れるかは解らない。そもそも、現れるかも確定的では無い。
危機感を感じさせない、のんびりとした口調でそう告げた―――――次の瞬間。
ごう。
大穴に充満した深い闇が競り上がって来たような錯覚。
「きゃっ!?」
勢いよく飛び出してきた『巨大な何かの塊』に弾き飛ばされる少女。
「で、でてきた……」
身体を起こし、見上げる少女。
視線の先には縦5mは超えるだろう巨大な闇の塊。
大穴の直径ギリギリのサイズの身体を纏う霧を晴らし、その姿をあらわにする……。
『そうか、おまえたちか……』
闇に紛れた頂点付近から、見下ろす様な紅の眼光。
深い闇の底から響く様な、皺だらけになった老人の声。
深い深い悲哀と絶望と憎しみ。そして怒りを孕んだ声を、投げかけた。
霧が晴れる。
穴の底から伸びる柱の様な尾の先には巨大な節足動物の様な胴体。
左右から伸びる百足の様に無数に伸びた黄金の爪。
そしてその中央。魔獣の頭に埋め込まれたしわがれた老人。
『おまえたちよ。
戦の駒を拒むなら今直ぐ去るがよかろう。でなければ』
一つ一つが、巨大かつ鋭利で黄金色の輝きを放つ爪の先端に闇が集まる。
身体全体を闇が覆うまで広がると、無数の弾丸となって襲いかかる。
『我が知識、ぞ』
180
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/08(土) 22:27:36 ID:Ocpg9kUQ0
>>179
「あぶないの!」
【少女の背後から伸びる無数の包帯。それは無数の弾丸を弾き落とす壁へと変わる】
「だいじょぶなの?
ここはだいじょぶ…だとおもうなの!」
【後ろから現れたのは包帯を全身に巻いた少女。どうやら彼女が壁を作り上げたようだ】
181
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/08(土) 22:39:38 ID:CCYdHRjM0
力強い蹄の音が聞こえる
音の正体は他の馬とは全く異質の雰囲気を白い馬だった
白馬の背に跨がるのは翡翠をそのまま溶かし流したかの様な美しい髪の毛をもつ少女
白銀のガントレッドに白銀のグリーブを身に付けた姿は女騎士を彷彿とさせる
「お父様に言われて来てみたら・・・なんか凄いのが出てきましたわね」
吹き飛ばされたユリウスを目にし、表情を変える
「あらあら、醜いだけでなく自分勝手でわがままで、レディの扱いも下手ときましたわね・・・お父様を見習ってほしいものですわね」
無数の弾丸を避ける様に白馬が天に舞い、アウテリートは敵を見下ろす
182
:
名も無き異能都市住民
:2013/06/08(土) 22:52:04 ID:CNzpbvmk0
>>180
「ありがとう……っとと」
身体を起こすと両手に桃色の魔力を集め。
大きく腕を振って魔力を地面に叩きつけると、花が咲き。
「だれかよんでくるね!」
と、花に跳び込むと花はつぼみに戻り、地面の中へと潜って行った。
大穴から闇の柱が立ち上がる。
爪の一振りでそれらは一斉にディスへと飛びかかっていく。
その過程で闇は龍へと変化して、牙を向いて襲いかかる。
>>181
『おまえは……』
漆黒の弾丸を舞う様に避けるアウテリートを、老人が一瞥し、否定した。
細められた紅の眼光は、少女の白色を焼きつけて――――。
『いや、違うな』
黄金の軌跡を描き空間を斬り裂く爪の一つ。
アウテリートを頭上からたたき落とさんと、振り下ろされる。
さらに、ディスに向かったと思われていた数匹の龍が進路を変え、背後からも襲ってくる。
183
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/08(土) 23:08:25 ID:Ocpg9kUQ0
>>181
「『あうてりーと』もきてたの〜?
だいじょぶかなの…?
【かるくアウテリートを見ながら少し心配そうに答えた】
>>182
「ありがとうなの!
たのむねなの!」
【そう言って少女に向けて大きく手を振って見送っていく】
「わるいけどさきにいかせたくないかなの!」
【ディスは更に包帯を竜に向けて勢い良く伸ばす】
【噛み付こうとすれば鋭く表面を尖らせて竜を貫くつもりのようだ】
184
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/08(土) 23:13:45 ID:CCYdHRjM0
>>182
「ん?何かしら、貴方の様な方にも私の美しさが理解できるのかしら?」
挑発するような視線を向けていたが、違うと意味深な言葉を放たれ
「な、何が違うんですの!?行きなさい!ジョナサン!」
むっとした表情を浮かべながら、白馬に指示を出し
白馬は光を纏って振り下ろされる爪を止める為に突進する
「レディに後ろからなんて!失礼ですわよ!!」
白馬から飛び、自身のフトモモから足先を手で撫で付ける
すると、蒼い光が脚を包み込み
そのまま蹴りを放てば、蒼光の弾が龍へと向かう
185
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/08(土) 23:25:31 ID:CNzpbvmk0
>>183
喉元から一直線に、串刺しにされて霧散した龍。
しかし、本質は闇。煙からもう一度身体を作り変え、今度は虎の爪を差し向けてくる。
ディスの攻撃で闇を砕く事は出来ても消滅には至らず。
虎から雉、次には弾丸、弓と形を何パターンにも変化させて襲ってくるだろう。
『先、とは何か』
それも一つでは無い。
今確認できるだけでも、一つの虎と四つの龍が狙っている。
>>184
『紛いには興味無い』
老人の意味ありげ、でも意味のわからない言葉には、隠されもしない、悲しみ。
黄金の爪は白馬に組みつかれ、動きを止める。背後の龍は光と相殺し、砕かれていく。
百足の胸辺りに赤黒い瘴気が集まると、そこからはじき出される漆黒の槍。
それ自体は闇によるものでは無く本物の槍だ。先程までの様に、光では留められない。
そして、更には白馬は爪によって抑えられている。防御にしても、速度と重量のある攻撃ではダメージを避けられないだろう。
186
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/08(土) 23:38:33 ID:Ocpg9kUQ0
>>185
「んー、おいかけるかとおもったけど
ちがったのかなの」
【少し不思議そうにディスは答え】
「ちょっとかずがおおいなの…
とりあえずこれで!」
【そう言って銀色に輝く刀を背中の鞘から抜いて】
「えいやなの!」
【勢い良く横に薙ぐと同時に包帯で雲散する闇を包み込もうとする】
187
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/08(土) 23:41:56 ID:CCYdHRjM0
>>185
「紛い?私はいつだって本物ですわよ!ジョナサン!」
白馬を呼び戻そうとするが、白馬は動けない
苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ、考えを巡らせる
あの槍をどうやって防ぐか・・・
それに先程から伝わる悲しみ・・・
「謎が多い敵ですわね・・・とにかく、今は・・・防げないなら逃げるしかありませんわね」
脚に水色の光を纏わせ、ふわりと地面に着地
そのまま白馬に逃げるように指示を投げ、自身も猛スピードで走り出す
防げないならば、アウテリートには逃げるしかない
188
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 00:04:01 ID:CNzpbvmk0
//最後に全体攻撃ありです。
>>186
銀の輝きを放つ刀に寸断された闇は砕けていく。
どうやら、闇だけに光を放つ物に弱いらしい。
闇が霧散して夜空に溶ける。今度こそ倒しきった、次の瞬間。
『早計、ぞ』
霧散した闇を斬り裂いて迫る黄金の爪。
闇を砕かれる事を見通して、霧を視界の邪魔ものにして爪を当てる計算だ。寸での所まで迫っている!
>>187
『否、我の、そして我が娘の言葉に偽り無し』
腕を組んで、巨大百足の身体に背を預ける老人。
百足に埋まりこんだ胴まで伸びた白髭をさすりながら、口にする。
アウテリートに向かった爪は、目標を逃し空中を切り裂くも、動きを止めず。
再び切っ先をアウテリートに向け狙いを定めたかと思うと黄金の爪が発射された!
ムカデの身体から赤黒い液を滴らせながら肉体をちぎって射出された爪は、筋の様な管で身体と繋がっているようだ。
白馬の拘束は解かれている。
しかし、合流を防ぐのが狙いか、白馬にも爪が遅いかかる。
―――――バチッ!
虚空に光る蒼い電光。
それと共に現れたのは蒼髪の少女レラ。
「チッ……やっと出やがったか」
重々しい機械靴は火を噴き少女を虚空に停滞させる。
少女はおぞましい虫の巨体と、その頂点に据える老人を瞥見し、舌打ちを一つ。
そして左腕に装着された重圧で無骨な鉄の柱を構え、老人へと向けた。
柱が展開していくと、左腕に装着された底の部分と、傘の様な細い柱と放射状に広がった10本の端に分かれた。
右手を頭に充て、睨みを強めると末端から蒼い光が現れて、次第に力強くなっていく光に合わせバチ、バチ。という音が響きだす。
『死にたきゃ死ね―――――
末端に集まった光が眩い物となり、轟雷を想像させる音が響き渡る。
すると末端の光は少女の左手に繋がった基底部分へと集約されていく。
細い柱を伝わって先端部分まで行くと、光と電撃が拡散、奔流、炸裂する!!
――――生きたきゃ避けろ!!!』
無論、それは老人に据えて放たれたものではある。
が、有り余るパワーは周囲にまで影響を及ぼし、木々や地面を砕いていき、更には二人へも迫る!!
189
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/09(日) 00:26:12 ID:CCYdHRjM0
>>188
「娘?子持ちなんですね?って娘も私を偽者扱いなんて許せませんわ!」
精一杯走りながら、アウテリートは老人に視線を見やる
しかしその時、爪が飛んで来るではないか、しかもその光景は中々ショッキングで・・・
「うわぁぁ!?気持ち悪いですわぁぁ!?偽者って言われたり、悲しくなったり・・・災難ですわぁぁ!!」
合成した爆薬を逃げながらばらまき、半ベソで爪を攻撃する
それに重なり、レラの出現、強大な攻撃が始まった為アウテリートは避難を優先する
190
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/09(日) 00:28:48 ID:Ocpg9kUQ0
>>188
「ん…わりといけるみたいなの」
【たやすく闇を切り裂いていくその刀にディスは思わず微笑む】
「…あう?」
【ようやくいけたかとおもいきや、目の前のところにまで迫っている爪にディスは驚いて】
「あぶな、いなの!」
【できるかぎり素早く横へと飛ぶが、爪に頬を軽く切り裂かれる】
「あぶなかったの…ん?」
【ほっと一息ついたところに突然聞こえた声。レラであることを確認するが】
「あうー!いきなりあぶないなの〜!」
【ディスは慌てて凄まじい勢いで放たれた光を全身の包帯で防御しつつかわすことを優先した】
191
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 00:44:44 ID:CNzpbvmk0
>>189
>>190
『我が娘こそ――――う、ぐおおおぉぉ!!!』
電撃の奔流に遮られ、言葉を中断させる。
昆虫の身体全体にまで電撃が痺れ渡ったのか、百足の身体は痙攣し大きく揺らぐ。
強大な刺激と、強大な想いが募りあった次の瞬間、百足の中央から真紅の光が浮かび上がった。
この叫びはレラの攻撃によるものだけでは無いらしい。
大きく百足の身体を揺らし、老人は皺の寄った染みまみれの頭を押さえ蹲る。
赤い光は、次第に広がっていく。
胸から上。胸から下。光を中心にして放射状に、百足の身体が真紅に染められていくのだ。
叫びの原因はそれなのだろう。真紅の侵食が、彼を苦しめているのだ。
やがて、全てが真紅に染まる。
百足の身体も、老人の身体も、そして彼の蓄えた知憶でさえも。
『思い出した! お前も娘の言葉の一つか!』
静かなもの言いとは打って変わって声を荒げる老人。
『そしてお前も……我が知識の一片に――――おおおおおぉぉぉ!!!』
苦しみの声を上げながら、身体をのけぞらせ天を仰ぐ老人。
ディスに、アウテリートに、白馬に向けられた三つの爪を除き彼の身体に付随する27の真紅に染まった爪も同じく開かれ空を見る。
頭上に、赤黒い雲。
闇夜を照らすほどの紅い閃光を放つ雲が、彼の視線の先、爪の先に浮かんでいく。
『う、ごごご、ごおおおぉ!!! 間に、合わ。
―――万物の、浄化! 浄化!! 我が知憶の結晶を!! ≪屍王≫に!!!』
赤黒い雲は天を覆う程に巨大化し、真夜中の住宅街を血の如き光で覆いかぶさった。
そこから放たれるのは、浄化の光。
赤い光に照らされるだけで心がざわつく、不安に駆られる……彼の悲しみが聞こえてくる!
「アレを止める、今しかない!!!」
192
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 00:48:20 ID:CNzpbvmk0
「叩け!!」
そう唱えたのはレラだった。
左手の機械を取り外し、手首に取り付けたデバイスから伸びる淡い緑光の剣を振りかぶり老人へと斬り込んでいた。
今しかない。少女の判断は恐らく正しい。
紅い光に次第に全てが、飲みこまれていくのだ。
紅く染まるのは視界だけでない。みれば、彼女の持つ剣までもが、光に侵食され真紅の色を持っていた。
視界の全てが、紅い光に照らされて紅く光っているのではない。全てが、侵食されているのだ!
193
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/09(日) 01:00:07 ID:Ocpg9kUQ0
>>191-192
「『れらー』むりしないでねなのー!」
【凄まじい攻撃を防ぎながら出来る限り大声で答える】
「うう、なにがおこってるなの?」
【突然紅くなっていくのを見てディスはひどく驚いた。なにが起こっているのかがまずわからないのだ】
「あう、とりあえず、いまこうげきすればいいんだねなの…
うー、わかったの!」
【ディスは赤い光を前にして刀を構えた】
「とめにいけばいいのかなの!」
【そう言って凄まじい速さで走っていく。そのまま切り込んでいくつもりのようだ】
194
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/09(日) 01:14:03 ID:CCYdHRjM0
>>191
>>192
「ええい!次から次へと!一体何が起こってますの!?」
突如として広がる光、悲しみ
それらを感じると身体がゾワゾワと落ち着かない
必死に走りながらようやく白馬と合流するも、真っ赤な光は広がる
「くっ!謎が多すぎますわ!解こうにもそんな暇は・・・」
老人の言葉の真意を理解する前に、レラからの指示がくだる
白馬に跨がり爪を振り切る為に猛スピードで、再び天に舞うアウテリート
フトモモから足先までを撫で付け、今度は虹色の光を脚に纏わせ
「思い切り行きますわよご老人!食らいなさい!!虹彩鳴動!プリズムキャリバー!! 」
アウテリートのフトモモの短剣が光を放つ
蹴撃を放てば、様々な色鮮やかに輝く閃光が放たれる
195
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 01:30:18 ID:CNzpbvmk0
>>193
>>194
切りこんだレラの紅を孕んだ緑色の一閃。
それに続くディスの銀の斬撃。
そして、アウテリートの放つ七色の蹴撃が百足の身体を持った老人へと向かう。
二度の斬撃と七色の閃光を受けた老人は、以外にもあっけなく、その巨体を倒す。
力なく揺らいだ根元がぐわりと傾き、仰向けに地面へと身体を付けたのだ。
決着はついた。
未だ戦いの意思は消えていなかったのだろう真紅に染まった巨大な爪はもがいていた。
しかし、頂点に据えられた老人は敗北を悟ったのだろう怒りと苦痛に埋もれた表情を取り去り、安らかな顔をしていた。
その脳裏で移されるのは、過去の記憶。
―――――
「ゼオラ」
一冊の本を読み終え、書架のあるべき場所に返却した老人は別の本に目を通す少女に声を掛けた。
老人の声に少女も本を閉じると、目を合わせてくる。
紫色の髪に包まれた柔かそうな白肌に埋め込まれた黄色の瞳は、純粋な輝きに帯びていた。
相変わらず表情は無い。一人の親として見れば、もう少し彩りを持ってほしいと感じる。
「なに?」
「最近、何かあったのか」
呟きの様な唐突な問いかけに、少女は硬直したように見える。
だが、老人には少女の微かな変化を感じ取る。未だに疑問符を浮かべていた。
それを会話のGOサインと受け取った老人は、百足の身体を動かし身体を降ろしていく。
「いい顔をするようになった」
そう告げると、少女は本から片手を離し自らの頬へと移した。
柔かそうな印象を与える少女の白い肌が、同じく白く柔かそうな細い指で僅かに沈められる。
少女の頭上には、相も変わらず疑問符。それも、依り色濃くなっているのか目が細められた。
「最近、何かあったのか?」
そこでもう一度彼のご疑問を投げかけると、二つの言葉が少女の脳内で繋がったらしく疑問符と共に表情が消える。
「べつに」
「友達でもできたか」
否定を押しのけて口にした推測が、どうやら正解だったらしく。
言葉こそ無い物の、少女は「どうして」と言いたげだった。頬を膨らます様子は、何処か不満げにも見えた。
「何年、世話をしていると思うんだ。
本以外の家族。ゼオラは娘の様な物だから、それくらい解る」
「ちがう」
「ん……?」
表情を読み違えた筈は無かったのだが。と髭を撫でる。
今の少女は誰でも解るくらいに、嘘を見抜かれて不満気な表情を浮かべている。詰り当たっているはず。
「かぞく」
思考を不意に妨げた言葉に、今度は老人が疑問符を浮かべる。
その様子を見た少女は、続けて言葉を口にした。
「ような。じゃなくて、ほんとうの」
「……そうか」
僅かな語弊を訂正する少女に、老人は笑みを浮かべた。
「それは悪かったな。
もしよければ、聞いてもいいかな。ゼオラの友人の話を」
問いかけに、瞬きを一つしてから、手に合った本を書架に直す。
老人はそれを了承の合図とみて少女を待っていた。緩やかな笑みを浮かべたまま。
―――――
「終わったか……」
何かを発見した少女レラが、二人の元へと降り立ちながらそう口にした。
そして、横たわる巨大昆虫の身体を指さした。
老体の紅が引いていく。末端から百足の身体の中心へと。
全ての紅が引いたとき、彼の身体の中央で光が迸り、浮かび上がる、それは石の様な物。
196
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/09(日) 01:41:32 ID:CCYdHRjM0
>>195
「・・・先程は醜いなど言って失礼しましたわ、おじいさま」
空中で、白馬に拾われたアウテリートは老人の安らかな表情を見ていた
よくわからずに攻撃を加えたが、本当に良かったのか?
娘が誰かはわからないが、自分は誰かの家族を攻撃したのだから・・・
そんなことを考えていると、光とともに浮かぶ石が視界に入る
「あれは・・・?」
197
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/09(日) 01:49:16 ID:Ocpg9kUQ0
>>195
「あうー…やっつけた…のかなの?」
【おどろくほどあっさりとした手応えに驚いたディス。きょとんとしている】
「もうおわったのかなの?
…このひとは、どんなひとだったのかなの…
わからないことだらけなの」
【不思議そうな顔でレラの顔を見つめる】
「あう?それはいったいなんなの?」
【じっと石を見つめながら答える。軽く匂いを嗅いだりしているようだ】
198
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 01:58:02 ID:CNzpbvmk0
>>196
「謝るのは私の方だ。歳のせいか、すっかり忘れていたよ」
年相応と言った言葉が似合うまでに、衰えてしまった老人の声。
「お前も、私の記憶にある」
>>197
「さぁな……僕にも理解できん」
老人を豹変させた原因だろう真紅の石。
安全なものとは思っていないようで、警戒を表にしつつ視線を注いでいた。
>>196
>>197
「しかし、よかった。
お前達になら、娘に伝言を頼める」
安らかな表情に笑みを含ませ、老人はアウテリートとレラを見た。
「娘に伝えておいてくれ。『私は後悔していない』と」
そう言うと、胸に浮かんだ宝石を掴み。
「最後の仕事だ。これを娘に届けてくるよ――――」
ずるり。
ムカデの身体が大穴の底から引っ張られていく。
紅い輝きを携えて、微笑みを浮かべたまま、闇の底へと巨体は消えて行くのだった……。
199
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/09(日) 02:09:49 ID:CCYdHRjM0
>>198
「そ、それなら仕方ありませんわ!お互い許し合うことにしましょう?」
老人は先程の無礼を許してくれたようだ、だったら自分も言われたことは許そう
「伝言、間違いなく承りましたわ!おじいさま、次は忘れないでくださいませ!私はアウテリート!錬金術士アウテリートですわ!」
闇へと消えていく老人に大きな声で了解の声と、自らの名前を伝える
200
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/09(日) 02:10:06 ID:Ocpg9kUQ0
>>198
「うーん、わからないなの…?
それはしょうがないなの」
【ディスも納得するしか無いというふうに頷いた】
「…おじーさん、いいひとだったのかなの?
…むすめさんって、どんなひとなのかなの」
【二人の会話を横で聞きながら不思議そうにつぶやいた】
201
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 02:15:42 ID:CNzpbvmk0
>>199
>>200
//これにてイベントは終了ですよ! お疲れ様でした!!
「……」
腕組をしたまま、落ちていく老人を見つめる少女。
彼女の家に残されていたと言う日記。その日付が記されていた日に、何かが起こったのだ。
恐らく、彼が『塔の支配者』なのだろう。となると、次は。
「城、か……?」
彷徨える思考と呟きは、虚空の夜空に投げ出された。
202
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/09(日) 02:22:37 ID:CCYdHRjM0
>>201
老人が見えなくなったからしばらくその場で立ち尽くしていたアウテリートだったが、不意に頭を振り、気を取り直し振り返る
そこには白馬が帰る準備万端で待機していて
「帰りますわよ、無性にお父様に逢いたい気分ですの」
そう言って歩きだし、その場から離れた
203
:
≪深淵を取りこみし者≫
:2013/06/09(日) 02:32:49 ID:CNzpbvmk0
>>202
「そうだな……帰るか」
ジェットブーツを使い浮遊して、アウテリートを追いかける。
因みに服装はTシャツに戻っている。やっぱり気になってるらしかった。
204
:
名も無き異能都市住民
:2013/06/22(土) 21:53:40 ID:X2MlVtd60
――――住宅街の大穴
桃色の髪を揺らし急ぎ足で大穴の元へと急ぐ少女。
普段計測を開始する時間より、少々の遅れが発生していた。
「おくれちゃっ、た……きゃん!?」
少女が大穴の元までたどり着き安堵のため息を付いたその瞬間、背後に現れた影に捉えられた。
『クク……久し振りだな、ユリウス?』
紅い、ボンデージとビサールのデザインの融合した光沢感のある衣服に身を包んだ女。
彼女が、ユリウスの髪を引っ張り上げて手頃な高さまで持ち上げると、首を掴み高く掲げた。
必死にもがくユリウスに舌打ちを一つ。頭を掴んで無理矢理視線を交錯させる。
『忘れたとは言わせないぜ?』
「え……?」
瞳を合わせ、何かに気付いたであろう少女。
彼女はユリウスの思考を察したうえで――――少女を地面に叩きつけた。
一仕事終えた。とでも言いたげに両手叩き、地面に這うユリウスからも視線を離し。
『まぁ、どうでもいい……手始めにお前の友達を殺してからだ……!』
怒りに声を震わせると、漆黒の炎が舞いあがる―――。
205
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/22(土) 22:08:54 ID:Cj56oKQw0
>>204
「なんかへんなおとが…したの…」
【大穴の方へとひとりの少女が駆け寄っていく】
「あうー…あぶないなの!」
【よくわからないままディスは、少女を守るように包帯を伸ばして近づいていった】
//入ってみる!
206
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/22(土) 22:26:00 ID:X2MlVtd60
>>205
伸ばされた包帯が少女に届く前に、掴み取られてしまう。
捻り上げながら、眼前に持っていきじっとながめてから、持ち主のディスに目を向けた。
「何のつもりだ、ディス?」
不思議な事に、ディスの名前を知っている様だ。
しかし、二人は初対面の筈だが……?
207
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/22(土) 22:29:51 ID:Cj56oKQw0
>>206
「…あう?いったいだれなの?
なんでなまえしってるの?」
【ディスは驚いた顔でその女性の顔を見る】
「えっと…よくわかんないけどあぶないとおもったからなの…
そんなことしちゃだめだよなの!」
【ディスはそう答えると再び包帯を無数に伸ばして少女を避難させようとする】
208
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/22(土) 22:36:00 ID:IRZRROfE0
>>205
「喧嘩だ喧嘩だーい!!」
能天気な声と、ドタドタというせわしない足音。
その主はオレンジ色の鮮やかな頭髪が印象的な女性――。
――いや、頭から突き出た1対の山羊を思わせる角と、
背中から生えた蝙蝠の羽が人間である可能性を否定している。
その姿はまさに、悪魔そのもの。
「戦いだねえ!戦いだねえ!
わたしもまぜろおー。」
その妙にのんびりとした口調はこの場にまったくそぐわない。
この奇妙な闖入者をどうするべきだろうか。
209
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/22(土) 22:47:33 ID:X2MlVtd60
>>207
「如何だっていいだろ……」
無数に伸ばされた包帯。
やはりそれらは少女を捉える事は叶わず。
紅の衣装に身を包んだ女の一振りによる攻撃……炎の飛沫によって防がれてしまう。
救出に向かった包帯は燃やされ、包帯を伝ってディスにまで黒い炎が迫ろうとしている。
そして。手に残った一本の包帯。
「どうせ、お前は此処で灰になる」
それを強く引き、ディスの身体を手繰り寄せる。
パワーならディスも劣らないだろうが、体格的に体勢を立て直すのは難しいが……?
>>208
「何だ、部外者か……?」
一瞥した女性は、それだけで済まそうと考えた。
新たに姿を見せたシャーロットを無視しようとした。しかし、頭部に生えた角が視線を留まらせた。
背後にも伸びる。蝙蝠の面影を見せる翼を目にし、楽しげな瞳を見せる。
「殺戮の前借と行こうじゃねぇか……良いぜ、この俺が遊んでやる」
真紅の衣装の背中から伸びる―――純白の、鉄の棒にも似た人体の一部。骨だ。
シャーロットと同じく彼女も翼を有していた。骨組みだけの大きな翼を。
それを大きく広げ羽ばたかせると、向き直り右手に真紅の炎を滾らせながらそう返す。
210
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/22(土) 22:54:16 ID:Cj56oKQw0
>>209
「あぶないの…!
…ん?」
【ディスは慌てて包帯を体から切り離してから、気づく】
「なんかまえにもこのほのおをみたことがあるようなきがするの…
かんちがいかもしれないけどなの…」
【悩む顔を見せながらもじっとその女性を見つめる】
「でもやられるのはいやかなの」
【包帯が効かないとなると…そう思いながらディスはポーチの中から特殊な色の包帯を取り出してみせる】
>>208
「あうー?だれなの?
えっと・・・だいじょうぶかなの?」
【心配そうに鮮やかな色合いの髪の女性を見る】
211
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/22(土) 23:01:01 ID:IRZRROfE0
>>209
炎をその掌に宿し、人骨の翼と錫を持つ王牙は
まさに冥府の王といった風の威厳をかもし出していたが――。
「くらえっ。」
シャーロットはそんなことはお構いなしとばかりに、
駆け込んだ勢いそのまま、楽しげな笑みを浮かべながら
軽く跳躍して右拳を繰り出した。
何の変哲も無い、右腕の打ち下ろし。
しかしながら見た目からは想像できないほどのウェイトと
人ならざる者特有のパワーを持つ彼女の一撃は、脅威の一言につきる。
212
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/22(土) 23:20:36 ID:X2MlVtd60
//レス番前後しますー!
>>211
「ふむ。そうだな――――」
身体を後ろに倒す……そして地面に身体が付くと言った間際。
ばさぁっ。と骨の翼を羽ばたかせ、後方に飛びののいた!
空高く舞い上がるまでに胸の前で両掌を合わせ、周囲を黒い炎で満たし。
「断る」
言葉を向けると同時にシャーロットに向けて腕を払う。
黒い炎が何本にも別たれて放たれていき……形を変えて龍めいた物に。
大口を開けて喰らいつこうと飛びかかってくる。
更に厄介な事に、避ければ炎は翻り、再び襲いかかるだろう。
その間に真紅の衣の人間はディスの方へと飛び立つ。
>>210
「ッんな暇があるのか!?」
ディスが悠長にポーチを漁る間に、翼を広げ接近を果たす。
飛び掛りの動作から身体を空中で翻し、真紅のブーツに包まれた脚による踵落とし。
振り上げと言う動作を含まない攻撃は高速。そして速度を伴ったパワー。ディスは押さえられるか。
213
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/22(土) 23:24:15 ID:Cj56oKQw0
>>212
「たぶん、ある!」
【そう言うと勢いよく包帯はそのかかと落としを防ぐように壁へと変わっていく】
【先ほどの包帯とは強度が違うしろものであった。さらにそれは炎を通さない耐火性を持っているようだ】
「そんなのさせないなの!」
【さらに包帯の表面は鋭い針へと変わって女性に反撃を仕掛ける】
214
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/22(土) 23:30:31 ID:IRZRROfE0
>>212
「こっちも断るさあ!」
何を断るというのか。発言の意味は不明だが、
シャーロットは空振りと同時に、既に追撃の体勢に入っていた。
相手が逃げるならば、追いすがり食らいつくのみ。
着地と同時に、ズドンと大砲のような音を響かせながら地面を蹴り、
バックステップで飛びのく王牙にぴたりとついていき――。
そのまま、防御体勢をとることなく。
むしろ、再び大きく右腕を引き絞ったまま、炎へと飛び込んだ!
己のタフネスまかせの特攻戦術。一見無謀にも見えるが、インファイトが身上である
彼女は少々のダメージよりも距離が離れることを嫌ったのだ。
「ッッだらァ!!」
炎に巻かれながらも、再び弧をかくような撃ち下ろしを放つ。
215
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/22(土) 23:41:32 ID:X2MlVtd60
>>213
攻撃を防ぐように張り巡らされた包帯。
踵落としに対し強力な壁となる上に、炎への体勢も持つ。
加えて、攻撃的に形状変化させることで攻防一体をも為した技、完璧にも思えたが問題も抱えてしまうだろう。
壁状に覆ってしまった事に依り、相手の姿が見えないのだ。
そして、ディスには相手が壁を叩く感触も、炎で攻撃を仕掛けた気配も、針が相手を貫いた音も無い。
「無ェんだよんなモン!」
そして、背後から唐突に迫る強烈な怒号と蹴り。
意識を前に集中させていれば、不意をつかれた事になり防ぐのは困難だろう。
そして蹴りを受けてしまえば、近距離から漆黒の炎による追撃も受ける事になる。
>>213
>>214
向かった先はディスの元。
そしてディスは強固な壁状の包帯を構えて待っている。
踵落としを仕掛けようとする背後を取る形となり、シャーロットの撃ち下ろしが当るかに思われた――――が、
フッ。と、何の前触れもなく女の姿が漆黒の闇の中に紛れてしまい……消え失せた。
現れた先はディスの背後だったのだが、これもやはり壁状の包帯が邪魔になり姿を捉える事が出来ない。
そして待ちうけるのはディスの用意した防壁。鋭い針を用意して待ちかまえている事だろう。
216
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/22(土) 23:54:15 ID:Cj56oKQw0
>>215
「ん?なかなかこなっ―――」
【ディスが疑問に思う、まもなく】
ドゴォンっ!
【強烈な蹴りを後ろから食らってディスの体は勢いよく前へと吹き飛んでいった】
【そのままの勢いで壁に激突してしまう】
「いきなりで…びっくりしたの…」
【だがディスは平気そうな顔で立ち上がる】
「うー…えっと…いまのはきゅうにかわされたのかなの…
それとも…」
【そう言いながら背中から銀色の刀を抜き取った】
「よくわかんないからもうちょっとみておこうかなの…!」
【そう言って先ほどの包帯を引き戻しつつ走っていった】
217
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/22(土) 23:59:36 ID:IRZRROfE0
>>215
「っとととーーーっ!!?」
今の今まで食らい付いていたはずの敵がいきなり消え去ってしまった。
そして、目の前には例の防壁があり、このままではスパイクの生えたそれを
殴ってしまうところであったが、ディスが吹き飛ばされてしまったために事なきを得た。
(むむっ、移動能力かあ……。
厄介な相手、みたいだねぇ……。)
唇に人差し指を当てて、んー。と声を出し。
一見すきだらけに見えるものの、魔力を放出してレーダーの要領で
周囲を探索する。
218
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/23(日) 00:15:01 ID:X2MlVtd60
>>216
走り寄るディスの眼前に迫る漆黒の炎。
刀を抜く段階で既に発生していたそれは、前に進むのであれば加速度的に迫ってくる事になる。
>>216
>>217
どうやら、まだ壁は存在しているようだ。
壁を境にシャーロット。ディスと紅衣の女に分かれてしまったようだが、その距離は近く魔力の反応もあり探知は容易だろう。
だが、この女の魔力は少々異質であった。
感じるだけで身体に若干の痛みや痺れが生じてくるだろう。
黒く、禍々しい質の魔力。死後の世界の物が持ちうる独特な質の魔力は、毒の様な味。
「ウザってぇ……!」
そして、シャーロットにはもう一つ魔力の発生を告げるだろう。
壁の真下に魔力点が現れて、その力は急速に噴き上がっていく。
次の瞬間には漆黒の炎が渦巻き燃え上がる。死の竜巻が発生した!
耐熱性の壁を取り囲んでしまう程の巨大さで、その威力は測り知れず、尚且つ時間と共に巨大化し威力も苛烈さを増している!
219
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/23(日) 00:22:45 ID:Cj56oKQw0
>>218
「なんの…これしきなの!」
【ディスは勢いよく刀を振り回し、炎を割いてみせたが】
「ん!?
んー!なんだかあぶないかもしれないの…」
【ディスは慌てて後方に下がり、突然感じた魔力に驚く】
「…なんだろう、すごくほのおが…
まいてるなの!」
【どうすれば止められるかを考えるが、自分の力では難しそうだと思っている…
魔力的なものな上に相手が炎なのだ。相性は最悪といってもいい】
220
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/23(日) 00:30:11 ID:IRZRROfE0
>>218
「んー、イヤーな感じ……。
でもまあ、『食べ物』だものねぇ……。
残しちゃあバチがあたるってものだし!」
鮮血が滴る右拳を気にするそぶりも無く、
長い足をほぐすかのように、屈伸運で曲げ伸ばしした後……。
「よっ、と……。」
その右拳をゆっくりと地面に押し付ける。
血が地面へとにじみ、赤黒くあたりが変色し――。
そのまま、今度は映像を巻き戻すかのように土の色が普通に戻っていく。
――血が吸収された?いや、『魔力のあるもの』がすべて吸収されていっているのだ。
ぞざざざざざざざ。
大気中に漂う魔素やマナ、エレメントといった異なる体系のものまですべて。
拳を押し付けた場所めがけて、まるでこの場に目に見えない大渦が発生したかのように
全てが一緒くたに混ぜられ、砕かれて、引き裂かれて吸い寄せられ、シャーロットへと吸収されていく。
――『暴食』。
それが彼女の能力。
悪食という一言で片付けるには、少々厄介な『全てを貪欲に食らう力』だ。
221
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/23(日) 00:57:41 ID:X2MlVtd60
>>219
>>220
発生した大竜巻が食されていく。
時間と共に巨大化していくと思われた竜巻は、次第になりを潜めていく。
竜巻は時間に依る成長を止め、吸い上げられる力に依る減衰のみが起き始めたのだ。
「フン、面白ぇ。
だけど面倒だな……殺してやる」
シャーロットが魔力を貪る間に翻る。
空中で力の限り腕を天に伸ばし、そして振り払った。
「もう、すぐに、正気じゃあ居られなくなる。
だがこの力を使わせたお前達が悪いんだ……!
お前達が、お前達が、悪いのは、お前だ、ゼオラ、お前が―――――!!」
彼女の胸を中心に真紅の光が広がっていく。
ディスには見覚えのある光景だろう、そしてこの末路も目にしたはずだ。
身にまとった衣服だけでなく、黄色い瞳、薄く紫付いた髪、白い骨までもが紅く染まる。
闇夜に響いた咆哮は人の物にも近く、しかし獣の物にも近しい物になっていた。
ぴちゃり。
背から生えた骨の翼の、先端からしたる血液が地面に跳ねて音を立てる。
肉体に、精神に、負担を与えるのだろう、今の行為は。
全身を真紅へと塗り替えた身体は幾つもの傷、そして彼女自身による血液によって汚れていた。
腕を振るだけで強大な魔力が発生し衝撃の波となって襲いかかる。
狂乱する彼女を中心に何度も、何度も波が起こり、地面を砕き進んでくる。
そのスピードは音速にも近い。そしてそれが断続的に襲いかかる。
魔力の質は力を解放した事に依る物か攻撃性が上がっている。
この魔力を喰ってしまえば、何十倍、何百倍にも跳ね上がった毒性も取りこんでしまう。
そもそも、喰ってしまう事も難しい量でもあるのだ。
222
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/23(日) 01:08:23 ID:Cj56oKQw0
>>220-221
「うわー…なんかすわれてってるみたいなの…
すごいなの」
【ただ感嘆するばかりだったディス】
【だが、しばらくして雰囲気が変わったのをディスは確認する】
「…まさか、これってあのおじーさんのときとおんなじ?」
【思い出すのはその時の光景。同じことが起こってしまうと思ったディスは】
「それはきけんなのっ…うー!」
【しかし走って以降にも激しい衝撃に押し戻されてしまう】
「それなら、これで!」
【ディスは足の包帯を勢いよく地面に叩きつけ】
「とうっ!」
【一直線に刀を構えて飛んでいく。そのまま剣を振り下ろそうとしているようだ】
223
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/23(日) 01:21:41 ID:IRZRROfE0
>>221
シャーロットの司る能力は『暴食』である。
暴食ゆえに、例え、一滴で大海の生物全てを殺す毒が盛られている物すら、平らげる。
例え、山脈の如き巨大さにもなろう量の食物を漁り尽くしても、その飢えが満たされることは無く。
量と質、その点についてはなんら問題ない、が――。
『喰らうスピード』というものがある。われわれ人間の口に放り込める
食物の量に限界があるように、シャーロットが一度に吸収できる量というのも限りがある。
「つっ、ぃ――!!」
王牙の放出した衝撃波はさしものシャーロットでも吸収しきれず
先ほどまでのどこか気だるげな表情が歪んで、苦痛の音が口から漏れ出す。
(ちょっと、マズい……かな。
せっかく人が楽しく食事してんのにさー……。)
しかしながら、取り込んだ魔力量は既に十分。
「……そろそろ――。」
取り込んだ魔力を『消化』し『吸収』。転じて自分の魔力と化す。
今まで取り込んだ莫大な魔力量が変換され、シャーロットの体内を奔流となって巡る。
「いいかなぁッ……!!」
その、莫大な魔力の奔流を、気合とともに突き出した拳の先から一挙に放つ。
王牙のものが幾重にも押し寄せる波であるとすれば、シャーロットのそれは極限まで
圧縮されたウォーターメスのようなもの。波の一転など、たやすく打ち抜く。
撃ちだされたそれはまるで薄布を裂くように、王牙へと迫るだろう。
224
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/23(日) 01:49:38 ID:X2MlVtd60
>>222
矢張りあの時と同じ。
唯の狂乱で済んでいた先程までとは違い、強烈な痛みを伴いだした様だ。
両手の爪が肌に食い込むほどに顔を、頭を押さえ叫ぶ。
空中で一人もがき暴れる。その度に骨の翼がはためいて死の風を起こす。
防ぐだけでも難しかった風は次第に真紅の色を帯びる様になり、依り強まった衝撃波がディスを迎撃に出る。
>>223
何重にもなった衝撃波撃ち抜き接近してくる一筋の魔力。
真紅の軌跡を残す眼光がそれを捉え、吠えた。
「ウアァァッッ!!」
咆哮と共に発生した真紅の輝きを放つ魔力の防壁。
シャーロットの放った魔力はそれを穿ち本体へと迫り、撃ち抜いた。
ダメージを与えた者のそれ程大きな物には成らなかったらしい。
暴食の力よりも、真紅に染め上げる呪縛の方が魔力上昇は著しいらしく。
ただ、その変わり代償は凄まじい様で最早理性は消滅しかけ。と言ったところ。
「お前らを、殺し……!!
ゼオラ、見ていろ……!!」
絞り出すかのような声。しかしそれは叫び。
ばん。と大きく何かが破裂したような音が響く。
そしてその瞬間、景色はの全てが紅に塗りつぶされてしまう。
目に入る物全てが、真紅に染め上げられるのだ。彼女から放たれる強大な魔力に依って。
お前が、お前が。と呻く姿から感じられる魔力は跳ねあがる。彼女が破裂してしまいかねない程に
「喰らえええエエエエエエエ!!!」
身体の奥から発したのだろう叫びに合わせて、魔力の全噴出。
唐突に彼女から感じられる魔力はゼロになり、存在が無くなってしまったかのよう。
恐らく、彼女は死んだ。またはそれに等しい状態。尋常でない魔力を溜めこみ、解放。爆発と呼ぶにふさわしいだろう。
後に残るのは置き土産。発散された、呪縛に依って跳ねあげられた死の魔力。
しかし、それは何処からも感じられなかった。
一秒、十秒と待てどその様な気配はなく、叫びは夜に反響し、彼女は宙に浮いたまま。
――――。
それは唐突。
捻出された強大な魔力をディスとシャーロットとで二分しただけの魔力が、二人へと『直接』注ぎ込まれた。
殺戮のレゾナンス。周囲の物を一瞬で屍・土塊・屑に変えてしまうという彼女の奥義。
解放した魔力で相手の位置を見抜き、直接打ち込むと言うという手法の前には、全てが死を見ると言うが――――。
225
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/23(日) 21:42:26 ID:Cj56oKQw0
>>224
「これはあぶない…の!」
【ディスは即座に包帯の壁を作り出して魔力を防ぎにかかるが】
「なんなの?いまのおと、なにがあって…
あうーー!?」
【強烈な魔力は包帯の壁を崩しながらディスの体を吹き飛ばしていった】
「―――――━━━━!!」
【ディスの体は凄まじい勢いで上空へと投げ飛ばされていった】
226
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/23(日) 22:02:53 ID:IRZRROfE0
>>224
魔力をも食らうシャーロットであるからこそ――。
王牙のやろうとしていることの危険さが理解できた。
(不味い不味い不味い不味い、ああもう……!!
間に合うか――。)
その狙いが理解できているからこそ、対策もできる。
シャーロットは今放出している、取り込んだ魔力を今度は防御に利用しようとした。
先ほど、シャーロットの体内を循環する魔力を奔流と例えたが、王牙の放った
魔力の爆発はいわば荒れ狂う濁流。
触れるものすべてを押し流し、力任せに粉砕、破壊してしまう濁流である。
――ではその濁流をどうするかといえば流れを緩め、御してやればよい。
王牙が魔力を放った瞬間であった。
シャーロットも、自身の中の魔力をそれに合わせて開放する。
直接そそぎこまれる、といってもシャーロットと王牙の肉体的な接触が無い限り
放たれた魔力はどこか空間を通るはず。
放たれる瞬間のもっとも魔力の所在がわかりやすい瞬間に、
シャーロットは己の魔力を解き放って、王牙から発せられた魔力が通る『道』を
作成し、注ぎ込む先を逸らした。
もちろん、小さな堤では濁流に押し流されてしまうように
小手先の魔力量ではこんな芸当はできない。悪魔としての魔力と、
先ほど十二分に溜め込んだそれがあってこそできる芸当だ。
227
:
≪煉獄の王牙≫
:2013/06/23(日) 22:44:30 ID:X2MlVtd60
>>225
>>226
彼女からの追撃が二人が襲う事は無かった。
残る魔力の量は皆無。最早生きているだけで精いっぱいと言うところだろうか。
翼を使い空に浮かぶのが限界なようだった。
彼女を染め上げた真紅が、ゆっくりと退いていく。
衣服から頭髪の末端までを染め上げた真紅が、本来の色へと戻っていく。
白い骨の翼に黄色い瞳、紫色の髪に黒い服。
両拳から燻ぶる煙も、赤みを帯びた物から漆黒の色へと戻る。
真紅の侵食の中心となっていた胸へと、ゆっくりと全てが収まった時、胸の中心点が一層輝いた。
彼女に埋め込まれていたのか、真紅の意思が埋めこまれていく。以前と同じ光景だ。
ディスが見た限りで言えば、それ石の持ち主が死の寸前である事を示す。
自らの胸から浮かび上がった石を、震える腕で掴み取り、身体に寄せて。
「ゼオラ、どうして、俺と……」
ぐらり。
身体が大きく揺らめく。限界が来たのだろう。
骨の翼は浮力を失い、本来の色を取り戻した彼女はあっけなくも穴の中へと落ちて行った。
桃色の衣服に身を包んだ少女が身体を起こす。
穴の中へと消えていく姿を惜しみながら、涙にかすれる声で別れを告げる。
「ツェツィーリエおねえちゃん……」
//以上で終わりになります。お疲れ様でしたー。
228
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/23(日) 23:08:42 ID:Cj56oKQw0
>>227
ドスン!
【痛そうな音を響かせながら地面に落下したディス】
「うーん…いったい、なにがあったのかなの…
いまのひとは…」
【ディスの体の包帯はほとんど消えてしまったが、ディスのダメージは一見重くなさそうに見える…】
「あう…あのひとは…いったいだれだったのかなの?」
【不思議そうな顔をしながらディスはゆっくり駆け寄っていった。実は体の中の方のダメージはあまり小さくなさそうだ】
229
:
暴食獣のシャーロット
:2013/06/23(日) 23:23:45 ID:IRZRROfE0
>>228
大穴へと堕ちていく王牙を見て、
ようやく魔力の放出を止めたシャーロット。
「――むがー!」
そのまま、後ろにこてんと倒れてぷしゅー。
「おなか、へったなあ……。」
魔力の出しすぎでシャーロットはおなかがすいてしまった。
これでは満足できない。ごろごろずりずりとそのままどこかへ
食事を求めて去っていくのであった。
230
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/29(土) 22:20:18 ID:CyKBWxbg0
―――――住宅街の大穴
闇夜。
漆黒の空気に包まれてしまったかのような空間。
全てが黒に染まると思われた景色に点在する二つの血液にも似た色が踊る。
「速さも、パワーも! 全ッ然足んねェ!!」
片側の紅が闇を迅雷の如く栗崎、もう片方の赤へと迫る。
振り抜いた宝珠の鏤められた黄金の大剣は赤の少女を叩き、
跳ね飛ばされた少女に踏み込んで追いつき、防御の間も与えないままに追撃の殴りを加えた。
「きゃあぁっ!?」
「――――アリス、大丈夫かい?」
地面に投げ出され転がる赤の少女の元に白の少年が現れる。
少女の傍にしゃがみ込み、手から発された光で包みこんでいる。
「僕達だけじゃ……少し、厳しいね」
「だったら、退くの?」
「そう言う訳じゃないけど……」
早くも膝を立てて立ち上がろうとする少女を抑える少年。
同時に紅との境に光に輝くシールドを張り出して壁とした。
宝珠に輝く大剣を地面に振り下ろし差しこんだ紅はフン。と鼻で笑う。
「どう頑張っても足りねェよ、お前らじゃ。
……まだ本気でも何でもないの、解んだろ?」
フッ、と笑う紅い女の腰には、紅に埋もれた衣服の中でも一際目立つ真紅の宝珠。
全部で四つ。彼女の纏う海賊風のコートの装飾として輝いていた。
「あのジジィが持ち逃げして、後はお前と竜騎士被れが一つずつ。
そんな足りてねェのにお前は戦えてねェの。解ったら―――――」
「――――サッサと失せろや!!」
怒号の瞬間に周囲がざわめく。
宝珠の剣を引き抜くと地面に入った傷が紅く染まり地面の割れ目を伝わって広がっていく。
そして、剣をもう一度地面に叩きつければ、紅い奔流が溢れ地面を走り、光の壁を容易く打ち砕き二人を覆う。
「さっさと出て来いよ。
コイツじゃ全ッ然……足りねェ」
海賊風のキャプテンハットを翻し、月を、その遠くを眺めてそう口にする、真紅の悪意。
231
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/29(土) 22:24:22 ID:Cj56oKQw0
>>230
「ここはまたあぶないばしょなの…」
【包帯を巻いた少女はその戦いの様子を見て、たまらず穴の方へ走りだした】
「もういいかげんみんなをいじめないでなの!
そんなことこれいじょうさせないからなの!」
【全身に包帯を巻いた少女が彼らへ向けて包帯を伸ばしながら迫る】
232
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/29(土) 22:34:53 ID:dshOyozs0
>>230
黒の空間に一筋の白い光が走る
月の白に交わるように消えるその光の後には、月明かりに照らされる一つの影
白いロングコートに身を包むまるで宝石をそのまま溶かし、流し込んだような美しい翡翠色の髪の少女の姿
父親が着ていた白いロングコートを身に纏う以外にいつもと違うのは髪の先端が白く、まるで焔の様に揺らめいている事
母親譲りの虹色の瞳がより強く輝きを放っている事である
その少女の隣には白馬が付き従っていた
233
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/29(土) 22:46:00 ID:CyKBWxbg0
>>231
>>232
「楽な商売だなオイィ。
釣り上げるだけ釣り上げれば別が捌くんだからなァ」
現れた二つの影に悪態を吐く。
だが、同時に漏れた息は笑みの物。
「ウッセェ……よッ!!」
三つ指を突き出し腕を振りかぶる。
その瞬間、指の間に挟まる輝く宝玉を――――振り投げた!
二つの珠は其々ディスとアウテリートに正確な目標を付けて飛びかかっていく!
234
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/29(土) 23:01:01 ID:dshOyozs0
>>223
「・・・・・・」
眼を閉じた少女は右手を軽く上げる
それを確認した白馬は頭を深く下げてからさらに空高く飛び上がる
白馬が飛び上がると少女は懐に手を忍ばせ、美しい硝子珠を取り出す
「あら奇遇ですわね、私のお父様も同じ事出来ましてよ?」
眼を開き、そう言いながらうっすらと笑みを浮かべ硝子珠を放り投げる
投げられた硝子珠は一つから二つ、二つから四つ、四つから八つと、どんどんと様々な色と数になっていく
一つ一つに強い魔力が込められおり、宝玉を迎え撃つ
235
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/29(土) 23:02:16 ID:dshOyozs0
//
>>233
ね
236
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/29(土) 23:02:47 ID:Cj56oKQw0
>>233
「あうー、あぶないの!」
【飛んできた宝玉を伸ばした包帯で受け止めて動きを止めにかかる】
「よくわからないけど・‥
なんでそのひとたちをこーげきするの!」
【更に宝玉をグルグルに縛ってからまるでフレイルのように彼らに向けて振り下ろした】
237
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/29(土) 23:33:00 ID:CyKBWxbg0
//ラストに全体攻撃です!
>>234
放たれた宝珠はアウテリートの放つ硝子珠とぶつかり合う。
一つ、二つは何なく破壊。
三つ四つも事無く砕き全てを持ってしても止める事は叶わず。
「スロット1!」
コートから引き剥がした真紅の宝珠を黄金の大剣に填める。
横に振り払った軌跡は真紅を描き、闇夜に光る。
その光が独りでに滑り出し動きだし、アウテリートの元へと向かって来る!
>>236
「だったらお前は何故だよ!」
ディスの問いをあざ笑うかのように、手を向ける。
フン。と力を込めるだけで真紅に輝く防御壁が宝珠のフレイルを阻み砕いてしまった。
「解らねェなら――――死にな!!」
黄金の大剣を一度地面に打ち込んでから天へと掲げる。
地面から真紅の輝きが何本も溢れだし剣先に溜まる。
渦を巻きやがて真紅の球状となれば、空高く浮かび上がる。
それは新たな太陽かと見まがうほど。闇夜を真紅の光が照らす。
「――――≪反骨のレプリマンド≫!!」
次の瞬間、太陽が弾け無数の真紅が射出される。
灼熱の陽光の様に牙を向き、襲いかかるのだ。
238
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/29(土) 23:36:40 ID:Cj56oKQw0
>>237
「えっと…おともだちだからなの!!」
【ディスは大声で返答に対して返した。が…】
「あう?すごくあつそうなの…
あぶないなのー!!」
【無数にはじけ飛んだ太陽の輝きをディスは軽く飛んでかわしていくが、所々身体に命中してしまう】
「うー…なんだかあいてがわるいひとがおおいなの…」
【泣き言を漏らしながら再びポーチから耐火包帯を取り出して大きく振るい始める】
239
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/29(土) 23:54:41 ID:dshOyozs0
>>237
「あらあら、お父様の硝子珠が・・・でもこれならどうかしら?」
白いロングコートを翻すとふともものホルダーに収まった短剣がうっすらと光る
「錬金術の技術の粋を集めて産み出されたこのアゾット剣・・・これならば・・・」
次の瞬間、少女の周囲に様々な色の剣が無数に現れる
「イグザスノシス・・・アクシオーマ・・・デイテロン・・・」
少女が小さく呟くと、無数の剣は爆発するように増え続け、全体に弾ける様に解き放たれる
その内一本が少女の足に添えられる様に近づき
少女が足を振ると、七色の軌跡となって大剣の赤い軌跡にぶつかる
240
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/30(日) 00:14:47 ID:CyKBWxbg0
//最後に全体攻撃・・…っぽいものが入ります!
>>238
「守る物がねェ訳じゃねぇんだぞ!」
剣を降ろし、代わりに右手を掲げれば真紅の太陽がより輝く。
再び体積を増して輝きを帯びた真紅から放たれる閃光も多く。
なんと、防御に構えたディスの包帯を貫通した!
真紅の閃光は魔法的な側面が強く、物理的な壁では全てを防ぎきれないようだ。
更に熱の属性を持っている訳ではない為、そっちの防御も期待できなさそうだ。
しかし、それ以上に、何処か防御効果が低い気がする……?
「スロット2―――」
一方真紅の海賊女はと言えば余裕の表情で次の一手に手を伸ばす。
>>239
無数の虹の剣が真紅の閃光と合い討って行く。
お互い数は無尽蔵。
広がりを見せて攻めてくる閃光とそれを迎撃する虹の輝き。
辺り一面に光の爆発が起き、刹那の瞬間でも美しく思える光景が広がっていた。
――――が、その光が次々と近づいてくる。拮抗していた威力が段々と押され始めているようだ。
なんと、爆散する眩い光の中から真紅の閃光が一本抜け出してきた!
「≪光明のクワイタス≫
深淵の眼差しが、お前達を腐らせる……」
新たな真紅の宝珠を大剣にセットし、次は天空へと投げ上げた。
剣先から真紅の波動が広がったかと思えば、空の明るみが消え失せた。
それと同時に力に違和感を感じるだろう。力を吸い取る暗黒の空に包まれた事で衰え始めているのだ。
ディスの防御能力も、アウテリートの光も弱まってしまった事で、相対的に真紅の閃光が苛烈さを増す!
241
:
山原竜斗
:2013/06/30(日) 00:24:17 ID:SfIiK6rIO
なんか騒がしいな
【なにやら大柄な男が歩いて来た】
242
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 00:28:23 ID:Cj56oKQw0
>>240
「ん?!あう!?」
【包帯を貫通してディスの身体に光が浴びせかけられる。ディスの身体にはダメージが蓄積されているようだ】
「うー…なんでこーげきが…
とおってるんだろなの…ひかりだからかなの…」
【悩むような口調で仕方なく光を素早く横に走ることで交わした】
「んー…なんかへんなのがでてる…かなの…
あれをこわしたらいいのかなの…!」
【空へ投げあげた剣を見あげ、それに向けて包帯を伸ばそうとしているようだ】
243
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 00:29:53 ID:dshOyozs0
>>240
「うーん、お父様みたいにいかないですわね・・・」
困ったように笑いながら飛び出した閃光を眺める
ふともものホルダーから短剣・・・アゾット剣を引き抜き、足にセットする
「だったら直接いきますわよ!」
そういうと短剣から光の線が放たれ、大きな剣が形作られる
少女は足を振り、その内刃で直接赤い閃光を蹴り飛ばす
マナと人間のハーフであるアウテリートの魔力は人間とは比べられないほど豊富である、さらにある事情も手伝ってか、アウテリート自身の体に全く異変はない
244
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/30(日) 00:52:18 ID:CyKBWxbg0
//またまた最後に全体攻撃!
>>241
「ンだよまた増えたかァ?」
迷い込んでしまった竜斗に掛る、女の声。
方向を振り向けば真紅の豪華さを極める裾長のコートに海賊風のキャテンハットを被った女が迎え入れるだろう。
その傍らには黄金の大剣。衣服と大剣のどちらにも色豊かで巨大な宝珠が埋め込まれていた。
それはまるで太古の財宝を彷彿とさせる輝きを放っていた。
相手は竜斗と会話をする気も、情けを掛ける気も起きないのだろう。
彼女の頭上に広がる真紅の太陽にも似た閃光の集合体が光の針を幾本も飛ばしてくる!
>>242
「そんな余裕が、あんのかよ!!」
ディスが包帯を伸ばす間、真紅の女はそれに気付き。
再び三つ指を伸ばし振りかぶり、宝珠をディスへと投げ飛ばした。
一つの珠は前と同じ直線起動の剛速球。
そしてもう一つは地を這い豪快に攻め立ててくる!
>>242
「だったら、来て見ろよォ!!」
声を張る少女に対し怒号で返す。
真紅と虹の相対による光の壁に、新たに打ちこまれた一撃により穴が開く。
しかし壁を潜りぬけても女との距離は10m以上はある。
その間にも空から降り注ぐ陽光の如き真紅の弾丸はアウテリートを串刺しにすべく飛びかかる。
さらに、女はコートから第3の宝珠を取り出していて―――――
「スロット3!
――――≪殺戮のレゾナンス≫」
245
:
山原竜斗
:2013/06/30(日) 00:53:53 ID:SfIiK6rIO
あ…(用事を思い出した・・・)
【なんか去っていった】
246
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/30(日) 00:55:11 ID:CyKBWxbg0
そう唱えた瞬間。正に瞬間だった。
斬撃の予兆も太刀筋すらも見えず、只管に一瞬。
竜斗、ディス、アウテリートのそれぞれを真紅の斬撃が、襲う。
ディスにはこの技に覚えがあるだろう。
相手の位置に斬撃を発生させる以前現れた者が使用した必殺技だ。
予備動作など皆無で行われる無慈悲な一撃。回避は不可能とは言い切れないが、相当困難だろう。
247
:
山原竜斗
:2013/06/30(日) 00:57:46 ID:SfIiK6rIO
>>244
いきなりかよ!おっと、あぶねっ
【横に飛んで避ける】
248
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 01:00:13 ID:Cj56oKQw0
>>244
「んに゛ゃっ!!」
【豪速球となった宝珠がディスの身体を勢い良く吹き飛ばしてしまった】
「あう…いまのはびっくりしたの…ん!?」
【一瞬見えた真紅の斬撃。ディスは剣を抜こうとするが間に合わない】
「あぶないっ…!」
【ディスは包帯で防ごうとしたが】
バシュッ!!
【ディスの身体に立てに刻まれる斬撃の後。強烈な一撃にディスの身体が再び舞った】
「うー…やっぱりよめない…
なんでなんだ…ろなの…」
【ディスは平気そうな顔で斬撃を受けた傷跡を眺めて、包帯で覆い隠す】
「でも…これがあれば…」
【そう言ってディスは改めて刀を抜いて構えてみせる…でも消耗しているように見えるが…】
249
:
山原竜斗
:2013/06/30(日) 01:00:38 ID:SfIiK6rIO
>>246
っと
【恐るべき本能もしくは直感で回避】
250
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 01:12:15 ID:dshOyozs0
>>244
「そこまで言うのなら・・・行ってあげましてよ!」
赤い少女に答えるように、白い少女は声を上げ、次の瞬間にその白いロングコートの裾が焔の様に揺らめき、少女の魔力を高めていく
少女の能力は様々な自然の精霊『マナ』と一時的に同化し、力を得る能力
マナと人間のハーフであるアウテリートだから可能な奥義
「全員!圧倒的なまでに攻め立てなさい!」
少女が叫びながら体から無数の光の粒子が放たれる
その粒子一つ一つが次第に姿を変え、あるべき姿を形作る
気付けば少女の周りには精霊『マナ』の軍勢が姿を現していた
そう、少女の能力はマナと同化し力を得るもの
一人のマナでも強力なその力を、あろうことか・・・
自分の屋敷に仕える大勢のマナと一体化し、その全ての力を得ていたのだ
マナたちは各々の得意とする魔法、力を解放し、赤き閃光を迎え撃つ
先程の無数の剣の非ではない魔力が解き放たれる
「さぁ!行きますわよ!」
天から舞い降りる白馬に乗り、物凄い速度で赤き少女に突っ込んでいく
251
:
山原竜斗
:2013/06/30(日) 01:24:17 ID:SfIiK6rIO
そっちがその気なら・・・
【全身の筋肉が若干盛り上がる】
252
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/30(日) 01:40:54 ID:CyKBWxbg0
//最後にアナウンスありですー
>>247
>>249
たったの一つを避ける事に成功しても、襲いかかる閃光は無数。
一つ避けて居る間に二つと言わず、瞬く間に閃光が襲う。
もし、避けるだけを続けていても消耗されるのは竜斗の体力ばかりこのままでは埒が明かないばかりか穴があいてしまう。
>>248
「ハッ、1ストライクだ!」
気前よく声を張り余裕のある表情を見せる。
ディスに対してこちらは表情通りの余裕そのものだ。
>>250
「魔力の壺か何かかよお前……羨ましくなっちゃうぜ?」
空を埋め立て降りてきた宝珠の大剣を掴む。
フン。と力を込めると女の身体から真紅のオーラが立ち込める。
言葉とは裏腹に、この女の持つ魔力量も多大な物であった。
そして、それは真紅の宝珠を扱うごとに増大していくように感じられるのだ。
三つを使った時点でも魔力の塊とも呼べるアウテリートに匹敵する量を持ち、
たった今、この解放によって―――――大凡二倍。想像を絶するまでに跳ねあがった。
「このヘルガ様を舐めちゃいけねぇよォ?」
剣を高く掲げる。
少年少女を葬り去った奔流の一撃を放つ構え―――――
『やらせないわ!』
―――――を打ち砕いたのは赤いガラスのボール。
宝珠の大剣に衝突させ、構えをぐらつかせたのだ。
『アリス、今だよ』
『わかってるわよ! アンタも手つだうのよ!?』
『解ってるさ』
ボールの方向から現れたのは始め光を受けた筈の少年少女、アリスとシノン。
そしてその二人と共に存在するのは全身を白で覆ったアルビノの人間だった。
少年シノンが後方に飛ぶと同時に頭上のシルクハットを外し上下を逆さまにする。
手にしたステッキで縁を叩けば中から淡い光を放つボールが生み出される。
『おねがい、ふたりとも!』
ボールの進む先で待ち構えていた少女アリスとアルビノの人間。
すると、アリスの身体が揺らめいたかと思うと形を変え、アリビノの人間そっくりに出来あがってしまった。
衣服のデザインも々にして、違いはその赤と白のみ。
白の人間がボールを蹴りあげると、二人して飛びあがり追いつき。
鏡の様に左右を対にした動きでボールを蹴りつける。
『『――――――≪カオスプリズムW≫!!』』
純白と極赤の二対の光の入り混じる、光が混濁としボールに込められる。
そして力を込めて打ち出されると、海賊服の女の張っていた障壁を破り直撃させた!
「調子に乗るな、よ―――――!!!」
海賊服の女は白と赤の光に包まれ身動きが出来ない様だ。
今なら接近し、最大威力の攻撃を放つ事が出来るか……??
253
:
山原竜斗
:2013/06/30(日) 01:41:26 ID:SfIiK6rIO
付き合ってられるか!
【去っていった】
//寝ますー
254
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 01:43:43 ID:Cj56oKQw0
>>252
「すとらいくなんて…へいきだからなの!!」
【ディスは大きな傷を物ともしないかのようにまっすぐに刀を構えて走っていく】
「これならひかりを…!」
【刀を前に構え、その透き通った刀身で光を反射させながら進もうとしているようだ】
「どうだっ!!」
【勢いよく袈裟に構えて女に向けて振り下ろしにかかった】
255
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 01:54:46 ID:dshOyozs0
>>252
敵に大きな隙を作り出した一連の出来事を白馬の上から見ていた少女は見逃さない
マナの軍勢が一気に少女の体に戻っていくと、アゾット剣が強く輝き出す
「お父様から授かったこの力を受けなさいな!その名も必殺!・・・必殺・・・」
アウテリートの体が強く輝き、自らのふとももを撫で付けると足に装着したアゾットに魔力が集まる
「技名は考えてませんでしたわ!ええい!『お父様好き好きアタァァァックッ!!』」
即興で考えたひどい名前の技だが、その威力は絶大
大量のマナの魔力を身に付けたロングコートとガントレットと足鎧が混ぜ合わせ
足に付けたアゾット剣が集約し、放つ
アウテリートの叫びと蹴りが引き金となり、魔力は一本の剣を生み出し、その剣は物凄い速度で赤い少女に飛んでいく
256
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/30(日) 02:09:52 ID:CyKBWxbg0
>>253
//おやすみなさいですー。
>>254
>>255
『こんッの……バーカ!!』
再び少女の身体へと姿を変貌させるアリスが満足げに口にする。
彼女等の放った純白のと極赤の交差する光が女を拘束する。
解放されて尋常な物で無くなった魔力量も今は抑えられている様で、近付くのに問題もなさそうだ。
「縊り殺してやるッ!!
コイツらを葬った後! じっくりとなァ!!」
『マズイ……!』
海賊服の女の怒号を感じ取った少年が声を上げる。
感情の高ぶりが拘束すらも押しのけようとしているのか、光が揺らぐ。
そもそも、魔力量では三人束ねても到底届きそうにないのだ。
一時的に拘束し、ダメージを与え隙を作るだけでも十分だったのだろう。
だが、少々予定外。
「ヘルガ様を、舐めるなアアアアアァァァ!!!!」
大地を揺るがすほどの鋭く鈍重な咆哮。
大気の震えを感じ取った瞬間、赤白の拘束を跳ね飛ばしてしまった!
コートに掛った最後の宝珠を手に取り大剣に叩きつける様にはめ込む。
「スロット4……全部消し炭にしてやる!
――――――≪スカー・レッド・オーバーロード≫!!!」
直前に迫るディスとアウテリートの前でカウンター気味に放たれた最大の奥義。
その動作はただ緩く、風を撫でるかのように剣を振るゆったりとした物――――――そう見えるだけ。
実際は無数の斬撃をその一瞬に重ねているのだ。
一撃一撃に乗せられた真紅の軌跡が重なり合って、限りない輝きを放つ真紅が現れ。
最後の一撃で真紅の軌跡に魔力を込めて解放。真紅のとめどない奔流が放たれる。
これを越え彼女を叩く事が出来れば――――――!!
257
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 02:15:44 ID:Cj56oKQw0
>>256
「うー…それくらいうけとめて…」
【ディスは斬撃へ向けて剣を振り下ろすが】
ガキンっ!
「ううー!びっくり…なの…」
【剣はあっという間に弾かれる。それでもディスは剣を包帯で掴んでキャッチする】
「……でも、まだまだなの…!」
【そう言って包帯を激しく動かしながらその斬撃に向けて刀を何度も何度も振り下ろしていく】
「ぜんぜんへっちゃら…じゃないけど…ぜんぶやってみせる…!」
【弾かれては振り下ろし、弾かれてはまた振り下ろしを繰り返して斬撃の奔流を受け止め続けながら前へと進んでいく】
「あんなこと…ゆるさないんだからなの…!!!」
【所々を切り裂かれながらもなおも迫っていく。近づければ刀を当てられるだろうが…】
258
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 02:35:45 ID:dshOyozs0
>>256
「!?避けなさいな!」
アウテリートが白馬に指示すると、白馬はすぐさま羽を広げて旋回する
だが、間に合わない
「く!折角お父様に頂いたのに!」
悔しそうに歯を噛み締めるとアウテリートは白いロングコートを広げる
するとコートは光に包まれながら大きく拡がり、強力な結界となって周囲を護る
259
:
≪真紅のネメシス≫
:2013/06/30(日) 02:47:19 ID:CyKBWxbg0
>>257
>>255
「オオォォラッ! 喰らえよォッッ!!」
放つだけで地を震わせるほどの魔力を含んだ攻撃。
真紅の奔流は刃の軌跡を形どって全てを消し炭にする勢いで突き抜けた。
―――――ガキンッ!!
ディスの斬撃と相対し、少女ごと薙ぎ払いながら突き進む。
しかし、
幾度となく打ちあっても消して倒れない。
剣が幾ら弾かれようと心は手放さず只管に打ち込むディスが、活路を開く。
海賊服の女が振りかざした斬撃を一つ、そして二つと打ち消していく。
その数は無限に近しいだろうが消してそうでない。
三つ、四つと打ち消していくうちに、ほんの僅か、極僅かではあるが威力が抑えられているのである。
集約された剣撃はディスと相対し何千何万も切り刻んでいく。しかしその度に徐々に威力を落としていたのだ。
――――――そして切り抜けるマナの剣。
ディスの後ろから迫りよる魔力の剣が威力の減衰した真紅の斬撃を打ち払ったのだ。
既に消耗していた斬撃と打ち消し合っても、威力の差から落ちることなく女の元へと突き進む。
真紅の奔流が晴れたと思えば飛来する多大なる魔力の剣に為す術無く貫かれ――――――消滅した。
その場を覆う強い光。
屍の王、ヘルガ=エンツェンベルガーは新たな再生のサイクルへと導かれていった。
死後の世界における強大な力を示す真紅の宝珠―――――それが填め込まれた黄金の大剣を遺して。
//お疲れ様でした!
//よければもう少しだけ付きあってくださいな!
260
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 02:51:31 ID:Cj56oKQw0
>>259
「…あううう…
うう…おわったのかなの…」
【ディスは目の前で起こった出来事をため息をつきながら見守っていた】
「あのけんは…いったいなんなのかなの…
なんだかつかれ…たの…」
【ディスは闘いの疲労がたまりに溜まっていたようで…】
「うう…ねむ…い…」
【その場にごろりと寝転がってしまった…このままだとぐっすり寝てしまうだろう】
//お疲れ様ですー。もうちょっとだけ行きますよー
261
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 02:53:44 ID:dshOyozs0
>>259
ヘルガが消えてしばらく、アウテリートはコートを元に戻しながら辺りを見回す
「終わりましたの?・・・あぁ、お父様のコートがボロボロに・・・」
262
:
≪真紅のネメシス≫その後
:2013/06/30(日) 03:02:48 ID:CyKBWxbg0
>>260
>>260
漆黒を覆う空も、真紅の太陽も、彼女と共に消えていく。
ただ唯一、彼女の物で残されたのは真紅の宝珠と黄金の大剣。
金色の本体に、所せましと埋め込まれた豪華絢爛と言うほかなく輝く大剣。
その中でも、妖しく輝きを放つのは専用だろう穴に填め込まれていた四つの真紅だった。
『ふーっ、やっと終わったわ!
あのバカをぶっ飛ばせていい気分よ!』
方や疲弊、方や落胆する戦士たち。
その脇を目一杯の笑顔で抜けて行くのは赤い少女――アリスだった。
よく見れば、頭上の王冠に乗せられた無骨な宝玉は、ヘルガの所持していた宝珠と同じ物に見える。
小さい歩幅をぱたぱたと動かして大剣へと走り寄り手を伸ばした――――次の瞬間。
『きゃんっ!?』
突如視界外から現れた漆黒の影に跳ね飛ばされた。
263
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 03:09:19 ID:dshOyozs0
>>262
「はぁ、全く疲れましたわ・・・あとはあの方達が・・・」
他の人がなんとかしてくれるだろうと言おうとしたが、黒い影が現れたのを見て、また何かあるのかと眼を細める
264
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 03:14:01 ID:Cj56oKQw0
>>262
「んぁ…?ありす…
いがいにもだれかいるなの…?」
【顔をぐっと上げてぼーっとした目でその誰かを見つめる…】
265
:
≪真紅のネメシス≫その後
:2013/06/30(日) 03:18:06 ID:CyKBWxbg0
>>263
>>264
『ちょっと、何するのよ!
それは持ちかえって――――って!』
身体を起こした少女は跳ね飛ばした人物に詰め寄ろうとした。
しかし、顔を上げて跳ね飛ばした人物を見た瞬間、驚愕に目を見開いた。
漆黒の影は剣を引き抜こうとして……重くて出来なくて。
仕方が無いから影を巨大な腕に変えて引き抜いて貰い、傍らに寄せた。
「……もーらった」
そして静かにそう宣言する。
闇の中輝く光の如く白く眩しい肌に風に靡き柔かく揺れる紫色の長い髪。
宝珠の鏤められた大剣の黄金の輝きにも引けを取らない少女こそ、ゼオラ=アドヴァルドであった。
266
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 03:20:35 ID:Cj56oKQw0
>>265
「んー…あう!?
もしかして『ぜおら』なの…?」
【あまりの驚きに起き上がろうとする…が…疲労で起き上がることが出来ない】
「そのけんは…
たぶんだいじな…ものなんだよなの…
かえして…あげないと…」
【睡たげな意識をどうにか起こしながら必死になって答える】
267
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 03:24:12 ID:dshOyozs0
>>265
眼を細め、連中のやり取りを見ていたアウテリートである
ゼオラの姿を確認すると、フッと静かに笑う
「あらあら全く、次は何をしでかすのかしらね」
自分で止めをさしたにも関わらず、帰ってくるだろうとどこかで信じていたアウテリートは驚きもせず、やり取りを笑って眺めていた
268
:
ゼオラ=アドヴァルド
:2013/06/30(日) 03:30:37 ID:CyKBWxbg0
>>266
「そ……」
ディスの問いかけに対し小さく返す。
呟きにも等しく抑揚に乏しい声……懐かしい響きだろう。
「もらった」
漆黒の腕を動かし月の光に透かし、その輝きを眺めている。
少女にしては珍しく満足げな感情を見せた。
>>267
「ただいま」
アウテリートの胸中を知ってのことか、こんな言葉を口にする。
黄金の大剣から真紅の宝珠を外してこれも月に透かす。
『ゼオラ! それは私の物よ!』
「やだ」
詰め寄るアリスにそっぽを向けて流そうとする。
269
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 03:32:21 ID:Cj56oKQw0
>>268
「んー…ひさしぶり…っていいたいんだけど…
かってにもってったら…こまるひとがいる…の」
【そう言ってアリスに目を向ける】
「だからかえしてあげたほうが…」
270
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 03:34:05 ID:dshOyozs0
>>278
「・・・・・・」
にこやかに笑い、頷きながら何も言わずに手を振る
とりあえず、気になる二人のやり取りを楽しむつもりのようだ
271
:
ゼオラ=アドヴァルド
:2013/06/30(日) 03:40:37 ID:CyKBWxbg0
>>269
「……べつに」
ディスの警告を別に何とも思ってない様だ。
『言ったじゃない! アナタの取り分はその宝珠だけなの!』
「……」
無言で頬を膨らませる。
>>270
少女の反応は声が帰る訳でも、反応が在る訳でも無く。
ただ眼を合わせてぱち、ぱち。と瞬きがあるのみ。
『……解ったわよ! その剣も上げるわよ!』
「わーい」
何とも感情のこもってない生返事。
アリスの許しを得ると影の中に落してしまう。
『でもこれで、王国は私の物ね!』
誇らしげに無い胸張る紅い少女。
……何処となく、二人の顔が似てる気がするのは、偶然だろうか。
272
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 03:41:50 ID:Cj56oKQw0
>>271
「むー…やくそくまもらないとなの…」
【のんきな顔で答えるディス】
「あう、でも『ありす』がいいっていうなら…
いいのかなの」
【アリスが上げるのを許可したのを見てしょうがないという感じに答えた】
273
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 03:46:21 ID:dshOyozs0
>>271
一体何の話をしているのか
父親に行ってきてと言われたからここにいるわけだが、ゼオラとアリスでその剣と王国を取り合っていただけなのか
「全く、いつもいつも突拍子も無いことしてますわね」
呆れ気味にため息を吐くと白馬に股がる
そろそろ帰る支度を始めたようだ
274
:
ゼオラ=アドヴァルド
:2013/06/30(日) 03:53:31 ID:CyKBWxbg0
『でも解ってる? これで調停は終わりよね?
アナタは私のライバルなんだから覚悟しておくことね?』
そう言うとクルリと踵を返し穴へと向かう。
ぴょいんと小さくジャンプすれば次に地面に着く頃には真っ赤な猫に。
『じゃあ、また会いましょう』
そう言うと大穴の中へと飛びこんでいく。
アリスの後を付ける少年も、少女に一言。
『ゼオラ、またね』
声を掛けて穴の中へ。
残ったアルビノは少女に小さく手を振って。
「またキミの家に寄らせて貰うよ……それじゃ」
そう言うと機械の大鷹に飛び乗って去って行った。
>>272
「……ねる?」
じーっと、ディスを眺めながら。
>>273
すーっ、と身体を前に倒すと少女の身体が地面と平行に動く。
魔力で身体を浮かばせて、ホバー移動しているようだ。
「かえる」
白馬の隣。
アウテリートの目線まで浮き上がって。
275
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 03:55:59 ID:Cj56oKQw0
>>274
「あうー・・・むずかしいことはわからないけど…
なかよくしてねなの・・・」
【心配そうに2人を見つめながら見送っていった】
「あうー…もううごけないの…
ねるのはがまんしてたけどなの…このままだとここでねちゃうかもなの…」
【疲労が限界にまで来ているようである。ほんとにここで寝てしまいそうな勢いだ】
276
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 04:03:06 ID:dshOyozs0
>>274
>>275
「この馬結構足早いですわよ?大きい馬だし、乗る?
あぁ、ディスもこんな所で寝てはいけませんわよ?」
今にも寝そうなディスを白馬に乗せながら、アウテリートはムフフと笑う
「この用事を終わらせたら私のお願いをなんでも聞いてくれるってお父様が言ってましたわ・・・うふふふふ!さぁ!速く帰りますわよ!送ってほしい場所を言いなさいな!
私はさっさと帰ってお父様と一緒に寝るんですわよ!」
欲望丸出しの瞳、白馬を全速力で走らせる気満々であった
277
:
ゼオラ=アドヴァルド
:2013/06/30(日) 04:10:32 ID:CyKBWxbg0
>>275
「そ……おやすみ」
路上で眠ろうとするディスを、忠告しようとしているのか手を伸ばす。
いや、違う。少女の手からは漆黒の魔力を感じ、それは次第にディスを包み――――
――――――???
ぼすっ。
落下点は柔かく、全身を包む様なぬくもり。
柔かな羽毛の感覚。そこがベッドだと知るだろう。
「……うおっ!?」
そして、同居人の存在も知るだろう。
突如現れた友人に三日ぶりの睡眠を邪魔されて―――然し怒りよりも驚愕の方が濃い―――跳び起きたレラ。
そう、ここはレラの家のリビングに無造作に置かれたゼオラのベッド。
天蓋付きの、少女二人が寝てもスペースには全く困らなく広い、黒いベッド。
レラは突如現れたディスに不可解な表情を示すが、相手がディスだからなのか。
「三日ぶりは流石に眠いな……」
等と呑気に欠伸をするとふたたびベッドに横になった。
>>276
「……」
馬との並走が面倒に感じたのかアウテリートの背後へと移り馬に座る。
少女の返答は無いが、それもいつもの事。
白馬の背中に腰かけて、いつの間にか、帰宅する頃には勝手に居なくなっていた。
//これにておわりです! おつかれさまでした!
278
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 04:14:38 ID:Cj56oKQw0
>>276
「んうー…ありがとうなの…
えっと『ろざりあ』のおうち…あ…
ふつうにはいれないところにあったの…」
【ダラダラと白馬の上で寝転がりながら答える。ロザリアの家は普通の手段でははいれないのである】
「うーん…
じゃあ『あうてりーと』のおうちでいいかなの…」
【扉を探しに行くのも面倒に思ったのか、ディスはそのまま彼女の自宅に行かせてもらうことに決めたようだ】
が…
>>275
「あう…ありがと…なの…」
【ディスはどうやらゼオラによって転送されていったようである】
「んー…ごめんなさいなの…
ちょっと…ねていいか…」
【レラに対して言い終わる前に】
「…すー…すー・・・」
【あっという間に眠りについてしまった。多分怪我はすぐに塞がってしまうだろう】
//こんな形になりましたが、お疲れ様ですー
279
:
ディス
◆My6NsjkSfM
:2013/06/30(日) 04:15:17 ID:Cj56oKQw0
//
>>275
じゃなくて
>>277
だった…
//改めて申し訳ありませんでした
280
:
アウテリート
◆6xc12amlNk
:2013/06/30(日) 04:21:02 ID:dshOyozs0
>>277
>>278
「さぁ!飛ばしますわよ!すぐにお家に送ってあげますわよ!」
二人を馬に乗せ、送り届けるべく馬を走らせるが・・・
「っていつの間にか二人ともいない!?もう!それならそうと言ってくださいな!速く帰ってお父様と添い寝ですわぁ!」
夜の道をアウテリートは騒ぎながら馬を駆る
アウテリートの嬉しそうに興奮した声が夜に響き渡ったのだった・・・
余談だが、アウテリートは添い寝を果たした、しかし他のマナ達も一緒に寝たがったので二人きりは無理だったとさ
281
:
エミー
:2013/07/13(土) 22:17:46 ID:4P53iGSY0
――海 砂浜
夏といえば海、ということで、そろそろ海水浴をする人々でごった返していてもおかしくはない時期だが――。
不思議なことで、この砂浜では人は少なく、かなり遠くの方まで見渡せる有様だった。
のんびり過ごすには良さそうな塩梅だが――どうやら行き倒れが一人いた。
「――」
それもまだ若い少女だ。
どこかの学生なのだろうか、ブレザーにチェックスカートという格好でいた。
意識があるのかないのか外目では少し分かりづらいが、どうにも体が動いているようには見えない。
282
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/13(土) 22:30:18 ID:IRZRROfE0
>>281
――ゆさ、ゆさ。
「おーい、おーい。大丈夫ー……?」
シャーロットが倒れているエミーを見つけたのは、いましがたの事だった。
今回、この場所に来たのは日課の水泳で
いつもは行かない場所に行ってみようと気まぐれを起こしたからであり、
少女が倒れているところにでくわしたのは、偶然にほかならず。
「大丈夫ー?おーい、おいー。
おぼれたのかなぁ……?」
そんな偶然に驚きながらも、
とりあえず駆け寄り、ゆさゆさと揺さぶってはみたものの、
こういう場合の処置だとか、手当だとかは皆目見当がつかず。
この周辺は道があまり整えられていないこともあり、
人の出入りが少ないため人を呼ぶ事も現実的ではないだろう。
「と、とりあえず……。」
状況から、おぼれて打ち上げられたのではないかと判断して
胸部圧迫を試みるが……。
283
:
エミー
:2013/07/13(土) 22:35:05 ID:4P53iGSY0
>>282
誰かが呼んでいる――。
ぼんやりとした意識の中、自分が揺さぶられているのに気がついた。
起きなければ――と思う一方、無視してもう少し寝ていたい気もした。
何だかここは風の通りが良くて気持ちよくて――磯の匂いがして。
――磯の匂い?
「折れるっ!?」
突然の心臓マッサージで彼女は目を見開いて意識を覚醒させた。
目を見開いたところで他人からは前髪のせいで見えるわけもないのだが。
「ろっこつぅぅ……」
げふん、げふんと激しく咳き込む。
284
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/13(土) 22:50:18 ID:IRZRROfE0
>>283
「えい!」
何を隠そう、シャーロットは怪物ベヒーモスの化身である。
彼女はその女性的で肉感的な体からは想像できない程の
パワーを持ちあわせており、今回のそのマッサージもご多分に漏れず。
ボゴォ!と効果音が付きそうなほどの強烈な一押しが、エミーを襲った!
「あ、息を吹き返した!!
見様見真似でもなんとかなるもんだねぇ。」
当の本人はうふふ、と穏やかにわらっているが
やられたほうは冗談ではない。
285
:
エミー
:2013/07/13(土) 22:56:56 ID:4P53iGSY0
>>284
「し、死んでしまうかと……」
やれやれと身体を起こす。
それと同時、色々と記憶も戻ってきたようだ。シャーロットの言っていることがわかる。よし、翻訳術式は問題なく機能済。
まさか転移先が完全にランダムな魔術だったとは予想外だったが、どうも人里に近いことは確からしい。
「こほん……あの、その。此処は何所でしょう?」
とりあえず、いきなり人とコンタクト出来るのは重畳であった。
ちょいと力強いのが不安だが(本当に肋骨が折れてないかと身体を魔術でスキャンしつつ)話を聞きだすことにしよう。
286
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/13(土) 23:11:17 ID:IRZRROfE0
>>285
人里に近いことは、湾を挟んで反対側に造船工廠やコンビナート等が
立ち並ぶ巨大な港湾部が見られることからも明らか。むしろ、大きな町の中の、
ポケット的な人のいない場所に転移したと考えるのが妥当か。
「んー?」
ここはどこか、というエミーの問いに
人差し指を唇に当てて、へんだなあ、とでも言わんばかりに首をかしげて。
「ええとねぇ、ここはー……エリュシオンとか、
異能都市とかいろんな名前で呼ばれる大きい町だよん。
みんなは都市とか縮めてよんでるけどねぇ。」
当たり前のことをなんで聞くんだろう、という風に。
287
:
エミー
:2013/07/13(土) 23:18:53 ID:4P53iGSY0
>>286
「――いけません。想定より文化レベルが大きく乖離してます」
あちゃー、と頭を抱える。
できるだけ近い世界に飛ぶつもりだったが、やはり無茶があったか……。
自分がこれまで暮らしていた世界よりもこの世界は進んでいることは遠くに見える建物を見ても明らかだ。
塔のように大きな石組の建物が建っているとは異質の一言。
「エリュシオン……? 死後の世界――というわけでもないみたい」
「変に思うかもしれませんけど、私、遠くから流れ着いてきて行き倒れていたんです」
異世界から飛んできた、よりは自然な言い訳が出来たと考えている。
288
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/13(土) 23:31:16 ID:IRZRROfE0
>>287
頭を抱えるエミーの様子に、
どうしたのん?あたまいたいの?などと
どこかズレた言葉をかけるシャーロットであったが、
遠くから流れ着いたという言葉に、合点がいったようにぽんと手を打って。
「あ、あれだねえ!わかったよ!
異世界から来た人でしょう。」
と、エミーの言い訳はものの数秒で意味をなくしてしまった。
「ええと、この都市はなんだろう、
『全ての場所の隣にあって、すべての場所の隣じゃない場所』にあるの。
だから、いろんな世界から人がやってくるんだってねぇ。」
……彼女の口ぶりからすると、この場所では、
エミーのようにほかの世界からやってくる人間は珍しくないらしい。
となれば、似たような文化レベルの世界の人間も探せばいるはずだ。
目の前の女性は、どのような文化レベルに属する者なのかはとんと見当がつかない。
口ぶりからして、この街に住んでそれなりの時間は立っているようだが。
289
:
エミー
:2013/07/13(土) 23:35:34 ID:4P53iGSY0
>>288
「はぁっ!?」
しまった、ともう一度頭を抱えるはめになる。
思ったより滅茶苦茶な世界であるらしい。様々な別世界への門が開かれている世界とは聞いたことも無い。
存在するとすれば、それはそう、エリュシオン――浄土である其処だけだ。
「やっぱり私は死んだんでしょうか……」
「……そういうことなら、私のような無一文をどうにかしてくれる場所に心当たりはありませんか?」
とにかく、先立つものが必要であった。
つまるところお仕事と、若干の借金。
先立つものがないというのは辛いことだ。自分の修めた魔術の数々がこの世界において価値があるかは不明瞭でもある。
290
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/13(土) 23:43:56 ID:IRZRROfE0
>>289
「死んでなんかないじゃない?
よくわからないことをいうのねえ。」
無一文、と聞いてとりあえず考える。
普段あまり使わない脳みそを使って、シャーロットは頭が痛くなってくる
感覚を覚えたが……。
「とりあえず、おしごとだよねぇ。
あ、あと住むところも……。」
とりあえず、衣食住を確保することが先決。
となれば……。
「冒険者の宿、とかを探してみたらどうかな?
とりあえずそこで働かせてもらったらいいんだよぅ。
宿ならきっと、寝る場所とかも用意してくれるよ!」
291
:
エミー
:2013/07/13(土) 23:48:52 ID:4P53iGSY0
>>290
「案内をしてもらう……わけにはいかないですか?」
「何分地理がさっぱりわからないし、心細いんですよ……」
自分の外見がか弱く見えるのも折角なので利用させてもらう。
右も左もわからないのに一人でほっつき歩きたくは無い。
もっとバンピーな人を捕まえてチャームしてから案内させるという強引な方法がないわけでもないが……。
それは最終手段として取っておこう。魔術は倫理の絡む学問だ。
「冒険者……この世界にも存在するんですね。役職としては」
ひとつ自分の知っている文化が存在して安心。
292
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/13(土) 23:57:35 ID:IRZRROfE0
>>291
「うん、いいよ!」
二つ返事で快諾するシャーロット。
「冒険者ギルドとか、魔術師ギルドとかもあるよー。
なんか、この町は変なんだよねぇ。機械とか、
魔術とかぐちゃぐちゃに混ざってるの。」
じゃあ、行こうかと立ち上がり。
その際に、シャーロットの体からふっと、紫色の光が漏れたかと思えば……。
先ほどまでの見かけない繊維でできた、下着のような衣服――。
彼女の体や頭髪が濡れていたことから、泳ぐためのものと推測されるそれから、
これまた、見たことのない繊維の青いズボンと胸部を覆う獣皮ににや材質の衣服、
という装いに一瞬にして変わる。
「ええとねぇ、冒険者の宿がいっぱいある区画は
ここからはちょっと遠いんだ。わたしにちゃあんと、ついてきてねぇ。」
どうやら彼女も、魔術が使えるらしい。
293
:
エミー
:2013/07/14(日) 00:01:45 ID:4P53iGSY0
>>292
「ギルドも!?」
大収穫。
勝った。何かに勝った。魔術師ギルドの存在は非常に大きい。
魔術の世界においては、例えどうなっていようとも自分の領域は有用であるはず。
自分達の異なる魔術体系をそのまま土産にしてしまおう。
「え、ええ、大丈夫です! 私、歩くのは好きなんです!」
ちょっと興奮。
これで一文無しでも、ギルドで力を見せれば加入させてくれるはずだろう。
294
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/14(日) 00:16:47 ID:IRZRROfE0
>>293
移動中、町の端々で目にするのは奇妙な光景ばかりであった。
もはや日は落ちているというのに、炎のマナや元素にたよらずに明かりを
灯す硝子の球、馬なしで走る鋼鉄の馬車のような発達した『機械』が数多く存在する
区画に出くわしたかと思えば――。
とたん、大都市が木々に飲み込まれたような、という表現がしっくりくる区画に
入り込み、そこでは人間を嫌うエルフなどが彼らの様式で暮らし。
あるいは、人間の子供たち相手に駄菓子を売る小鬼の商人や、
全身が機械仕掛けの人型のなにかと、談笑する悪魔らしき影。
元の世界では、逆立ちしても見られない者がエミーの目に飛び込んでくる。
「あ゛ーつかれたよぅうう……。」
そして、そうした奇妙なものの際たるものに『空間の歪み』があった。
この都市では、時折空間のゆがみが発生して別の場所に飛ばされたり
はたまた今まで存在していなかった区画が現れたり、消えたりするのだという。
ギルドなどがある区画を目指す折、一度それにまきこまれてしまって
結局3時間も移動に費やすことになったが……。
「とりあえず、この辺は冒険者とか魔術師とか、
そんな人ばっかりがいるよぅ。ええと、フェアリーとかワーウルフとか、
そんなんがいっぱいな通りは、ここから2ブロック位離れたところの……。」
この通りは、エミーの見知った世界に近い光景が飛び込んでくるだろう。
剣を腰にぶら下げた冒険者や、紫のローブに身を包んだ魔術師。
露店では魔術に使用する薬草などが売られ、そこかしこにある冒険者の宿では
店の主人が呼び込みを行っている……。
295
:
エミー
:2013/07/14(日) 00:21:47 ID:4P53iGSY0
>>294
「……後日書店にも立ち寄りませんと」
見るもの触れるもの、どれもはじめての者が多かった。
ついで、揺らぎに巻き込まれてさすがにくたびれるほど歩きとおし――。
どうにか見知ったエリアにへと到着。
「協力ありがとうございました! ここまでで結構です」
「後は、どうにかさせてもらいますね」
とりあえずはおじさんに休ませてもらえるよう交渉するとしよう。
どうしても無理なら止むを得ずチャームさせてもらうとする。
宿と仕事、ひとまずは目処がついた……かな。
//では0時も過ぎましたのでこんな感じで終わらさせてください〜絡みありでしたー!
296
:
シャーロット@べヒモスの化身
:2013/07/14(日) 22:43:17 ID:IRZRROfE0
>>295
「おうー。がんばってねぇ〜。」
とりあえず、これでひとまずは安心だろう。
シャーロットは手をひらひらと振って、そのまま帰路につく。
297
:
アイリス
:2013/09/28(土) 00:10:59 ID:S03JofHA0
【一夜城】
ふぅ、と溜息をつき、久方ぶりに城の主が戻ってきた。
テーブルに掛けられたクロスを指でなぞり、指先を眺めても繊維すら残っていない。
魔道で作られた人型のメイドが城内の手入れを万全にしており、城内はアイリスが出て行く前と何ら遜色は無かった。
「変わらずか……まさか、ね。ああ、そうだ。ワインの用意をしてくれ。」
このような行動をするのは、自身がこの城を“帰る処”と認識しているのかもしれない。
地理的な利点は無いに等しい。街から離れた人が立ち寄らぬ郊外にポツンと存在する場所なのだから。
機能面ではややお節介が過ぎるメイドもおり、寝泊まりするには困ることはない。
暮らしの面では多くのジャンルを浅く広く抑える蔵書を備え、魔術の研究も可能だ。
警備の衛兵もそれなりの品質のガーゴイルを用意し、警備に当たらせている。そもそもが純正の人には視えぬ場所。立地条件も含め過度な警備も必要ない。
テーブルに冷やされたワインが置かれ、メイドがビンの水滴を拭き取り、コルクを引き抜いた。
トクトクと注がれる赤いワイン。その色は赤い血液を連想させるのは容易であった。
首に巻かれたネクタイを外し、テーブルへ放り出す。ボタンを3つ開けば、日焼けを知らぬ肌が露出される。
――籠の中……
ふと、この城を表す言葉が頭に浮かんだ。
「……さて、彼等に断らずに突然出て行ってしまったが、どのように言い訳しようかな。
それも含め、情報を改めて収集していかないとね。」
もちろん彼等が無茶をしていないかというのも確認作業が必要である。
それから関係各所の最近の動向も調べなければならない。
やらなければならないことは山のようにある。
全てを並行して進められるはずも無く、それぞれ優先順位を決めて当たっているのだがアイリス一人の手では流石にどうにもならない。
その中には便利屋を雇う事案も発生するだろう。だがアイリスにはそういったコネは少ない。
そういったコネも含め、自ら作るために適度に街に出ることに決める。放っておいてもトラブル等、向こうから寄ってくるのがこの都市だ。
意外とコネは労せずとも出来るかもしれない、とアイリスには思える。
「(――キルリス。暴れるのも程々にしておくように。それから情報収集を開始する。君も集めてきてくれ。)」
陣を組み契約したの使い魔の黒猫に形ばかりの釘と行動方針を示し、両開きの窓を開け放つ。
指笛を吹けば、十を超えるコウモリたちが集まり始めた。その行動を何度も繰り返し、ある程度の数が集まったのをきっかけに、アイリスは自らの指の腹を切る。
ぷっくりと膨れ始める赤い玉。
それ目指しコウモリたちはアイリスの指に集まり、血を飲んだものは僅かに灰色に変わり、街に向かって飛んで行く。
アイリスの指にコウモリが群がる様子は非常に奇妙なものであり、アイリスに中身が入ったグラスを差し出したメイドも、グラスを渡せば別室に向かっていった。
自らの血を舐め街に飛んで行くコウモリを視界に収めながら、何時終わるかの算段をしていた。
――今は兎に角休みたい。
今のアイリスの偽りなき本音であった。
そうしてアイリスが休むには数時間伸びることとなる。
298
:
名も無き異能都市住民
:2013/10/14(月) 23:30:42 ID:wJzdskjw0
異能都市には中世ファンタジーの世界よろしく、
様々な業種の『ギルド』が存在する。
今回、ナナがエルザの紹介によって入会の試験を受けることになった
ギルド『S3』は、ギルドというよりもPMCそのもの、という風の組織で、
中世ファンタジーのイメージに髪の毛一本ほどもかすらない、
近代的で設備の整った本社ビルが今回の試験の会場だった。
ごく簡単な体力テストやペーパーテストをこなし、
ついに最終試験である、戦闘テストを残すのみとなったナナ。
待機用の待合室には、他にも20名近くの傭兵がおり皆雑談したり、
武器の手入れを行ったり、あるいは神経質に辺りを見回したりと
自分の名を呼ばれるまで、おもいおもいに時間をつぶしている。
――『番号12番、ナナ・アウレスさん。VRルームまでお越しください。』
……どうやら、ナナの番がきたようだ。
299
:
ナナ・アウレス
:2013/10/14(月) 23:43:34 ID:sc0wgZlk0
>>298
アナウンスを聞いて、ボーッとしていたナナは持っていた紙コップをくずかごに投げ入れると、
ベンチから「よっこいしょ」というかけ声と共に立ち上がった。
黒のロングコート姿は普段と変わらない出で立ちだが、今日はその腰の辺りに変化があった。
先日、エルザに届けてもらった鉄の獣、巨大拳銃セプテントリオンがそこには提げられていた。
「うーっし、じゃ、ちょっくら行ってくるかな」
すぐそこのコンビニにでも行くような気軽さで、ナナは待合室を後にした。
試験会場、VRルームに向かいながら、ナナはふと、エルザの事を思い出していた。
(そういや、私の試験が今日だって、彼女知ってるのかな?
私用でギルドに連絡するのもアレだったし、電話とかあれ以来してないけど……)
300
:
名も無き異能都市住民
:2013/10/14(月) 23:59:43 ID:wJzdskjw0
>>299
ナナがエルザの事を考えている間に、
待合室から10mほどしか離れていない、目的の『VRルーム』につく。
『VRルーム』に入るや否や、
周囲の景色が暗転し、0と1、荒いドット、そしてノイズがざあと走ったかと思うと……。
目の前に朽ちたレンガ壁と木箱やドラム缶の散乱した、
おそらく戦地を模しているであろう、路地の光景が現れた。
――『仮想現実』だろうか。
硝煙や土煙の匂いすらリアルに感じられるほど精巧な路地は
転移魔術で実際の戦場に転送されたのか、と錯覚してしまいそうなほどだが、
ナナの視界の正面に、ゲームのメッセージウィンドウのように
『最終試験、試験官を倒してください』と空中に投影された文字ウィンドウが、
おそらく、転移魔術ではなく仮想現実であろうと推測するヒントとなるはずだ。
「よく来たね、ナナ。」
背後から、見知った声がかけられた……。
301
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 00:12:21 ID:sc0wgZlk0
>>300
「うわっ、な、なんだこりゃ」
景色の変わり様のめまぐるしさに、ナナは思わずそんな声をあげてしまう。
そうして、最終的に落着した景色は、ナナにとっては馴染みやすいそれであった。
「これは……中東っぽいレイアウトだなぁ。懐かしいや。RPG担いで屋根の上跳び回ったっけ。
……まーそれはそれとして、これはアレなのかな、例の箱庭ってヤツの親戚か何かなのかな」
そう言いながら、近くに倒れていたドラム缶に触れようとする。
しかし、その動きは聞き覚えのある声で阻止された。
「エルザ?」
確認を取るような声に遅れること一拍、ナナが振り向いた先には……。
302
:
名も無き異能都市住民
:2013/10/15(火) 00:24:21 ID:wJzdskjw0
>>301
「査定のほうをこっそり見せてもらったが……。
君は素晴らしいな。体力、ペーパー、技能、すべてにおいて今回、
トップの成績を収めているよ。」
たしかに、そこにいたのはエルザだった。
以前の黒いバイクスーツではなく、都市部用のグレーを基調とした迷彩服を身にまとい、
頭にはベレー帽という、いかにも軍人然とした出達ではあるが。
「……聡い君なら、私のこの服を見てどういうことか
理解してくれると思うが、ね……。」
エルザはふっ、と力を抜くように息を吐き出してしゃがみ、
軍用ブーツのひもをもう一度、ぎゅうときつくしめた。
303
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 00:33:13 ID:sc0wgZlk0
>>302
「いやそれは何というか、今までやってきたことの復習みたいなもんだったからねえ……。
ああ、でもそうか、そういうことになってたんだね」
懐から愛銃、P210カスタムを取り出したナナは、スライドを引き、薬室に弾を送り込んだ。
目の前にあるのは簡単な図式だ。「用意されたバトルフィールド」「試験官を倒せ」「軍服姿のエルザ」……足し算するまでもなく、
答えは明白だ。
「一応確認しておきたいんだけど、倒せ、っていうのはアレなの?
ペイント弾か何かで赤く塗りつぶすのか、それともガチの鉛弾撃ち込んでそうするのか、どっち?」
304
:
狼のエルザ
:2013/10/15(火) 00:53:21 ID:wJzdskjw0
>>303
「わざわざウチご自慢の仮想現実システムを引っ張ってきてるんだ。
ペイント弾、じゃあ少し生ぬるいと思わないか。なぁ、ナナ。」
それが彼女のクセなのか……もう一度ほふ、と軽く息を吐き立ち上がるエルザ。
今まで、うつむき気味で見えなかったが……口角は挑発的にうきあがり、狼そのものの
犬歯が露出している。
「さて、これから私は……君を『嬲り殺し』にするが……。
安心しろ、もう査定は十分だ。私に敗北しても……問題なく、
トップクラスの待遇を受けられる……。」
開かれた口の端から、ぼとり、と粘性の濃い唾液が垂れ、
乾いた砂に溶けていった。
305
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 01:08:58 ID:sc0wgZlk0
>>304
「……マジ?」
エルザの……と言うよりは、その口元のあまりの変貌ぶりに、ナナは言葉を失った。
狂犬病か?とも思ったが……しかし、すぐに思い出す。そうだ、ここは非常識の場所だった、と。
「耳が「それ」だし、口も「それ」、予想はまあ、大方当たってるとは思うけど……まいったなあ、銀の銃弾なんか持ってないよ。
んー、でもなあ、エルザぁ」
目を閉じ、肩をすくめて見せたナナは、一瞬だけ項垂れると、すぐに顔を正面に戻した。
そうして戻った顔には……エルザに対抗するような表情が張り付いていた。
「嬲り殺しっていうのは、ちょーっと気にくわないなぁ。
おいで、エルザ。吠え面かかせてあげる……文字通りに、ね」
ナナの顔にあったのは……人の裡に眠る獣性のしみ出たような、凶暴な笑み。
それを浮かべながら、ナナは銃を持っていない方の手で、エルザに手招きし、徴発した。
306
:
狼のエルザ
:2013/10/15(火) 01:17:32 ID:wJzdskjw0
>>305
戦端を開いたのは、エルザだった。
「グガゥウウウゥウッッ!!!!」
以前、ナナが討伐作戦に参加したミュータントにも似た、
野太い咆哮と共にエルザが地面を蹴る。榴弾が着弾したかのように砂塵が舞い上がり、
銀色の弾丸のよう、と形容するに足るスピードでまさに縦横無尽に。
地を蹴り、壁を蹴り、ピンボールのようにジグザクにナナへと迫る。
(あのデカブツ、あれは私でも脅威だ。
当たれば、ただではすまない……。だから……!)
一見、無駄にも見える蛇行はすべて、セプテントリオンを警戒してのもの。
3次元の高速機動はすべて、狙いを定めさせず懐に飛び込む隙を狙うため、
という一つの最終目的を果たさんがためのものだ。
307
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 01:29:43 ID:sc0wgZlk0
>>306
常人ではあり得ない、まさに非常識ならではの動きに、さしものナナも照準の付けようがない。
「……いや、つける必要がないって感じ、かな」
ナナは左手でコートの内側をごそごそと探り、すぐに目当てのモノを探り当てた。
エルザの動きは確かに驚異的で、追うのは難しい……が、地を蹴る前のエルザの手元を見ればその狙いは明白だった。
ナナの見ていた限り、エルザは何も持たないまま跳んだ。
あるいは、跳んでいる間にどこからか武器を取り出すのかも知れないが、弾が飛んでこないところを見ると、銃器の類を使う気は、すくなくとも無い。
となれば、あの身体能力任せの格闘しか、選択肢が無い。
「近づいてくる相手にはこれが一番、ってね」
そう言ってエルザが足下に落とし、足のつま先で軽く、こつん、と蹴り出してやったのは、細長い円筒形の物体。
ピンの抜かれたそれは、閃光音響手榴弾と呼ばれるモノだった。
一気に距離を詰めてくるエルザ、その前にソレは転がり、次の瞬間には凄まじい閃光と破裂音を立てた。
308
:
狼のエルザ
:2013/10/15(火) 01:46:42 ID:wJzdskjw0
>>307
今回、エルザは完全に接近戦で決着をつけるつもりでいた。
銃器で決着をつける気ならば最初から廃墟に潜伏し、狙撃を行っていただろう。
全ては、例のセプテントリオンを警戒したがため。
(……! 閃光弾……か!)
一挙に近づいて、音響閃光手りゅう弾を切り裂く……不可能だ。距離が遠すぎる。
ならば、一旦のバックステップで距離をとればよいか?いや、スピードが付きすぎて
いる……!
「ギャウウウゥウッ!!!」
(く、そ……!)
エルザは、正面からまともにその暴力的な音と、光の嵐に呑まれたが……。
それだけでは終わらなかった。何とエルザは手りゅう弾をくらいながらも
肉弾と化して、ナナへと突っ込んできたのだ。
(組み伏せ、られれば……!)
309
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 21:51:48 ID:sc0wgZlk0
>>308
辺りを暴力的な光と音が支配したが、ナナの視覚と聴覚はシステムによる保護でダメージは無かった。
そうでなければ、こんな至近距離でスタングレネードなど炸裂させない。
今の光と音でエルザが怯み、そこに9mm弾を全弾撃ち込む。
それが今し方ナナの描いた勝利の式であったが……それはエルザの予想外の行動で阻止されてしまった。
(突っ込んで来るの……!?)
片方失っている眼はともかく、あの耳にスタングレネードの爆音はかなりのダメージになるはずだが、
それでも勢いを殺さずに突っ込んでくるあたり、エルザの接近戦への執念を感じる。
回避して横合いから撃ち込む、というのがおそらく最善の手であったが、意表を突かれた事による一瞬の、そして絶対的なその隙が、それを不可能にした。
その選択肢が無くなった以上、ナナにはエルザを正面から受け止める他ない。
咄嗟に銃を手放し、突っ込んでくるエルザを両手で受け止める。勢いと質量を受けて、踏ん張るナナの足が少し後じさり、少量の土煙が立った。
「力比べがそんなにしたいの!?」
310
:
狼のエルザ
:2013/10/15(火) 22:22:13 ID:wJzdskjw0
>>309
「グアオオオオオッッ!!!」
まるで抱き合うような態勢になった両者だが……。
エルザはまるで大型重機のような圧倒的パワーで、ナナの胴を締め上げる。
……しかし妙だ。
そう、目はともかく、耳。人間よりもはるかに鋭敏であろうそれに、
至近距離で大音響をさく裂させたのだから、三半規管にかなりのダメージがあるはず。
鍛え上げられているとはいえ、平衡感覚を失い確実に立てなくなるはずだ。
そのはずだが……。
「グアアアッ!ガアアァッ!!
引き゛ちぎって゛……やル……!!!」
エルザは、しっかりと大地を踏みしめ、
胴を絞めつけたまま、首筋へとその凶悪な犬歯をつきたてようと……。
311
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 22:49:45 ID:sc0wgZlk0
>>310
「……っ!」
エルザの怪力に対するナナも、トン単位の物体を持ち上げられるパワーでもって、エルザの拘束に対抗する。
これは完全に予想外だ。
照準を付けるのも難しい俊敏さに加えて、サイボーグであるナナのパワーにも対抗できる怪力。
エルザも機械化されているのか、とも考えたが、各センシングシステムがエルザが生身であることを示唆し、その考えをすぐに打ち消しにかかる。
(やれやれ……非常識ここに極まれりって感じだぁね…………)
そんなことを考えていると、エルザのぎらりと揃った牙が、こちらの首を引き千切りにかかった。
さしものナナの身体でも、首の辺りまではそのパワーで防御はできない。
進退窮まったナナは、一時だけ逡巡し…………しかしすぐに決意した。
(元々そのつもりだったじゃん……何躊躇ってるんだか)
決意してからは、早かった。
<サブ・ブレイン停止。メイン・ブレイン開放。フィードバック・アブソーバー、稼働開始>
それは、久々の感覚だった。
重い布団を蹴り捨てるかのような、凍っていたものが溶けるかのような、痺れすら感じる覚醒。
血の通わぬ身体がその血圧を上げ、体温を沸騰させるかのような感覚。
動いて良い。自由にして良い。全ては思うがままに。
……そうして、『ナナ』は目覚めを迎えた。
「ねえ――エルザ。暑苦しいから、離れてくんない?」
その一言を合図に、ナナの身体から、紫色に淡く色づいた強烈な斥力が生まれ、
ナナの、サイボーグとしての力など足下にも及ばぬ不可視の力が、ナナを抱くエルザの腕、身体、全てにそれらが襲いかかった。
312
:
狼のエルザ
:2013/10/15(火) 23:22:58 ID:wJzdskjw0
>>311
エルザの牙が、ナナの首筋に突き立とうという、
正にその時だった。
「グ、ガ……!」
(これは……サイキック!?
いや、なんだ……これ……は……!)
紫のヴェールを思わせるエネルギー。
斥力に体を覆われたエルザは、一瞬。ほんの一瞬だが……。
『ひるんだ。』
一瞬の気おくれともいってもいいほどの隙。
達人であろうとも打撃を打ち込むことなど到底かなわないその一瞬のゆるみに、
ナナの生み出した斥力は容赦なく滑り込んで、エルザを吹き飛ばす。
「ぐうぁあぁっ……!!!」
砂地を滑り、ブロック塀に背を預けるようにして倒れるエルザ。
咄嗟に、爪を立てることができたなら。ひるまずに、首筋に牙を突き立てることが
できたなら。結果はもう少し違ったかもしれない。
313
:
ナナ・アウレス
:2013/10/15(火) 23:46:44 ID:sc0wgZlk0
>>312
生み出した斥力によってエルザを追い払ったナナは、その力を使って足下に落としていた愛銃を拾い上げ、
手でぱたぱたと砂を落としてから懐のホルスターに仕舞い込んだ。
そうしてから腹を抱え込むように身体をくの字に折り、その身を震わせ、
「く、くくっ…………ふふふ、は、ははははははははははははははは!!!」
バネが戻るように上体を天に向け、高らかに哄笑した。
狂気……いや、狂喜を感じさせるその笑い声は、少し前のナナとは雰囲気がまるで違っていた。
ひとしきり笑ったナナは、前髪をかきあげて、
「気持ちいい……最っ!高に! 気持ちいいっっ!!
フフフ……エルザ、私ね、この時を、『私』を開放できるこの時を、ずっと、ずっと、ずーっっっっと、待っていたんだ!
前の職場がやらかして数ヶ月、目覚めさせることができないまま、溜まりに溜まっていてね……。
辛かった……ひどく、辛かったんだよ、エルザ。わかる? いや、どっちでもいいけど。ストレスはため込むもんじゃないねえ。
でもアレかな? その辛抱があったから、今こんなに気持ちが良いのかも?」
周囲に淡い紫色の光を纏ったナナは、右半身を前に出し、右手を太ももの辺りにやった。
そこにあるのは――――黒く塗装された巨銃。セプテントリオンの片割れだ。
「B」と刻印されたそれを抜いたナナは、倒れ込むエルザに照準を合わせ、
「……ふふ、ねえ、エルザ。聞いてるの? 寝てるの? このままだと的になっちゃうよ?」
次の瞬間、おおよそ拳銃とは思えないような、ズドン、としか形容の出来ない、重い射撃音が響いた。
大きなマズル・フラッシュに見送られて、黒いセプテントリオンの銃口から発射されたのは、煉瓦壁など濡れた紙に等しい貫通力を持つ15mm短銃弾。
それに続いて、2,3度、再び黒い銃口が吠えた。それはまさに、獣の咆哮であった。
314
:
狼のエルザ
:2013/10/16(水) 00:12:20 ID:wJzdskjw0
>>313
(やはり……バケモノじゃないか……。)
おそらく、叩きつけられた際に間髪入れず追撃を喰らえば
そこで戦いは終わっていただろう。
しかしながら、ナナは興奮からか普段よりも幾分か饒舌になり、
追撃よりも、力を存分に振るう解放感に酔いしれているようで。
その時間はエルザに十分すぎるほどの立て直しの時間を与えた。
多少のダメージこそあるが、
この程度で戦闘不能になるようなヤワな体は持っていない。
ナナのセプテントリオンを構える動作に合わせ、ふっと息を吐いて。
――バシュッ!!!
まるで、弾丸が飛び出したかのように再びエルザは猛進を開始した。
遅れて、エルザのいた場所の煉瓦が爆ぜる。
(……やっかいだな、やはりアレは!
使い手も、武器も化け物……おまけに接近戦ではあの斥力、か……!
ヘビィな状況じゃないか……!いつ以来だ、こんな状況は……。)
とはいえ、今突っ込んでも価値の目が薄いと判断したエルザは瓦礫の間を
ぬうように走りつつ、さらに狭い迷宮のように入り組んだ路地へと移動していく。
(嬉しいね……よい獲物だ。)
この時、エルザ自身、気づいてはいなかったがナナと同じく、エルザも笑っていた。
ただ静かに、声もたてず口の端が吊り上がるだけだが、確かに笑みを形作った。
ナナと、エルザは似た者同士であるのかもしれない。
同じカテゴリの中で、向いている方向が違うだけなのだ。
315
:
ナナ・アウレス
:2013/10/16(水) 00:35:52 ID:sc0wgZlk0
>>314
飛び出すエルザを追って射撃するも、あの瞬発力にはやはりついて行けず、弾丸はその通り道にあった瓦礫を粉々にし尽くすだけで終わった。
射撃を終了し、長く細い煙を銃口から吐くセプテントリオンを下ろしたナナは、先ほどの哄笑の余韻そのままの笑みを顔に貼り付けていて、
「相撲の次はかくれんぼ? 好きだねー。
……んー、エルザ、聞いてるかわかんないけど聞いてよ。
前にさ、「私を見せてやる」って、言ったよね。そうだよ、これが私。ナナ・アウレスと名付けられた、何処の誰ともわからない、私なの。
私はね、エルザ、生まれつきこの力を持ってた。私の元々持ってたそれなんかより、ずっと力強くて、ずっと長い、第三の手。
いわゆるところの、サイコキネシス、ってヤツだね。ユリ・ゲラーなんか目じゃないんだよ、ふふん、すごいっしょ?」
トリガーガードに指を引っかけて、セプテントリオンをくるくる回しながら語るナナ。
その周囲に漂っていた紫の光が、波紋を広げるそれのように周囲に拡散し、やがて消えていく。
「でもねー、この力にも欠点はあったんだ。身体への負担がハンパ無かったんだよ。
サイコキネシスを使った次の日、腕とか足が動かなくなるなんてザラでさ。酷いときには昏睡なんかもしたんだ。
明らかに、二十も生きてない小娘の身体にとっちゃ、この力はオーバースペックだったってワケ。
私の身体能力が高いのにもそこに理由があんの。今の私は、脳みそ残して他はぜーんぶ機械。全てはそのサイコキネシスに耐えられる身体を作るため。
サイボーグっつーか、殆どアンドロイドだよね、これじゃ」
そう言って、ナナはフフッ、と自嘲気味に笑った。
316
:
狼のエルザ
:2013/10/16(水) 00:52:11 ID:wJzdskjw0
>>314
(やれやれ……向こうはこちらが聞こえるのを知ってて、
ああ、言ってるんだろうな。まったく……。)
エルザは物陰に身を潜めつつ、ナナの言葉を拾った。
既に耳の機能は回復している。獣人だから、で済まされない回復の速度だが
これはエルザが耳、目、そして左足にサイバネティック手術を施しているからであり
先ほどの手りゅう弾炸裂の際も、咄嗟に耳の集音機能をOFFにしたからこそ
すぐさま攻撃へと転じることができたのだ。
(奇襲、しかないな。あのサイコキネシスは厄介きわまる。
おまけに怪力。怪力だけなら接近戦で遅れをとるつもりはないが、
サイコキネシスにもう一度まともに捕まれば……。)
確実に自分の体でも、耐えきれないだろう。
幸い、エルザのアドバンテージもいくつかある。
たとえば、この市街地フィールドはギルドでの訓練でよく使われるフィールドであり、
既にその構造はエルザの頭に入っている。
その利を生かしての奇襲が最も勝算のある方法だろう。
(やって、みるさ……。)
エルザは一つ、決心をして再び路地裏へと駆け出す。
決してナナと鉢合わせしないように、細心の注意を払いながら。
317
:
ナナ・アウレス
:2013/10/16(水) 01:02:59 ID:sc0wgZlk0
>>316
「まあでも、こんなんなって、良いこともあったんだよ。私の育ての親に恩返しできたし、仲間を助けてあげられたりもしたし。
何より楽しかったんだ。私の力を好きなだけ振るえるっていうのは、すごく素敵なことだった」
そこまで言って、ナナはセプテントリオンを弄ぶ手を止め、しっかりとグリップを握った。
顔には相変わらず笑みが張り付いていたが……瞳に油断の色はない。
「……そろそろ出てきな、エルザ。もう終わりにしよう」
始めの場所に立ったまま、ナナは周囲に視線を巡らせた。
318
:
狼のエルザ
:2013/10/16(水) 01:16:11 ID:wJzdskjw0
>>317
――タタタタタッ!!!
ナナの言葉から間もなく……。
4,50mほど離れた廃ビルの2階から銃声が上がった。
ごくごく一般的なアサルトライフル。おそらくはAK47か。
先ほどエルザが携行している様子はなかったが、
紛争地を模したこのフィールドの事、どこかに武器庫でも
再現されているのかもしれないし、もしくは最初接近戦でカタを
付けるつもりだったエルザがデッドウェイトとして捨てたものを
拾いなおしたといったところだろうか。
接近戦闘で勝てないなら距離をとる。
その考え方は理解できるが、防御手段たるサイコキネシスと
巨銃セプテントリオンをもつナナに対して勝利を得るには、少々力不足と
言わざるを得ない。
319
:
ナナ・アウレス
:2013/10/16(水) 01:34:14 ID:sc0wgZlk0
>>318
「!」
発砲された銃弾に気付き、それを回避してのける……ナナの言うところの「非常識」を、彼女はしてみせた。
AKの方向を見ないまま、くるり、と身体を回転させつつ横に移動して回避。その横を、AKの弾丸が土煙を上げて着弾していく。
「………………」
間髪入れず、ナナは反撃に転じた。
セプテントリオンを構え、今し方AKが発砲した場所に向かって連続で弾を撃ち込む。
特に分厚い壁でなければ、15mm弾はその貫通力を遺憾なく発揮し、敵に風穴を開けることだろう。
320
:
狼のエルザ
:2013/10/16(水) 21:29:21 ID:wJzdskjw0
>>319
朽ちたレンガなどセプテントリオンの前には
無意味にも等しく、破砕された壁が土煙を巻き上げ、
ビル内の資材が激しく破壊される音が響き――。
銃声が、止んだ……。
321
:
ナナ・アウレス
:2013/10/20(日) 22:55:33 ID:VWmNnW660
>>320
15mm弾の嵐は建物のなれの果てを残骸に変え、倒壊に伴う土煙が辺りを漂った。
AKが射撃された場所は破壊されたが……これで手応えなど感じようはずもない。何より、試験終了のアナウンスが入らない。
つまりエルザはまだ、生きている。
(相手は機動でこっちを撹乱するつもり、か。
まいったなー、こっちは足がほとんど役に立たないっていうのに)
先程エルザに語った、サイボーグ化の理由。
脳が生み出すサイコキネシスの余剰エネルギーの影響を回避するためのもの、ということであるのはナナが語った通りなのだが、
実は全身を機械化してもなお、その凄まじい余剰エネルギーの影響を全て排除し切れていない、というのが現状である。
フィードバック・アブソーバー――原理はよくわからないが、ナナの身体を設計した技術者の話を信用するならば、
余剰エネルギーを吸収、拡散放出させる装置である――と呼ばれる装置のおかげで、
ナナは今のように存分にサイコキネシスを振るうことができるようになったが、このアブソーバーの稼働にはかなりのエネルギーソースを割かねばならず、
これを稼働している間、ナナはそのサイボーグとしての力の、三割程度の力しか発揮できないのである。
特に足、機動力の低下が顕著であり、アブソーバー稼働中のナナの走力は、平均的な成人男性より少し良い、という程度にまで落ちてしまっているのだ。
技術者は「これでも第五世代型」と言っていたので、まだ良心的な下がり方……なのだろうが、
高速で駆け回れる通常時のスピードを密かに気に入っていたナナにとっては、その言葉だけでの承伏は難しかった。
「さあて、何処だ、エルザァ!!?」
言葉を激したナナは、サイコキネシスを振るい、近くにあった乗用車の残骸を持ち上げた。
支えもなく中空に浮く、赤さびの浮いた鉄の塊。ナナはそれにむかって手をかざすと、ゆっくりと手の中の物を握りつぶすかのように、開いた手を閉じ始めた。
すると、それに連動して車の残骸が鉄の悲鳴を上げながら細長く圧縮されていき、続いてネジのような先細った螺旋の形を成していく。
そうして出来上がったのは、精巧とはとても呼べない、ひどく粗雑でかつ大きなドリルブレード。
「かくれんぼって気分じゃ、ないんだよねぇ、今ぁ!!」
ドリルブレードが高速で回転を始め、ナナの投げ槍のようなモーションを合図として、まるで砲弾のような速度で射出された。
それはナナを中心とした円軌道を描きながらそこかしこの建物に突っ込んでいき、ことごとくを残骸に変えていく。
ドリルの円軌道はその半径を少しずつ長くしていっている。どうやらこのドリルによってエルザの隠れられそうな建物を全て壊そうという腹のようだ。
322
:
狼のエルザ
:2013/10/20(日) 23:10:40 ID:wJzdskjw0
>>321
例のAKは引き金にワイヤーを引っかけて固定、
即座に離脱しただけのごく簡素な仕組みのトラップ。
ナナがそれに肉弾で突っ込んでこれれば御の字だったのだが……。
「ッ……クソ、なんてやつだ……!」
自身の頭上をブレードが通過した時、
エルザは歯噛みし意を決して建物から飛び出した。
隠れているだけでは、確実にこちらがやられる。
「――ッシャァ!!」
破砕され、落ちてきたコンクリート片を一蹴り。
ナナへと半ばけん制のように吹き飛ばすと、先ほどAKを設置しておいた
建物へと一直線に走る。
(これは賭けだな……もし、例のサイコキネシスの範囲内に捕まれば終わりだ。
もしかすると、もうすでに入っているかもしれないが、その時は……。)
323
:
ナナ・アウレス
:2013/10/20(日) 23:28:56 ID:VWmNnW660
>>322
周囲を更地にしていくドリルブレード。
そのブレードが通過し、倒壊を始める建物の一つから、コンクリート片がナナに向かって飛んできた。
エルザの怪力で高速を得たコンクリート片は、そのまま一直線にナナを横から――
「ああ?」
一瞥。
それだけで、コンクリート片は速度を失って落ち、周囲に散乱する残骸のうちのひとつに格下げとなった。
それはいい。問題はその後方。倒壊の土煙に紛れて……グレーの迷彩服が飛び出したのが、見えた。
「…………見ぃつけた!!」
それはかくれんぼをしている子供のそれと同じ、純粋な歓喜の声だった。
無差別な破壊活動を行っていたドリルが一時停止し、急速回頭、再び一瞬で速度を得てエルザへと飛翔した。
まるでドリルミサイル……古いロボット作品に出てくるような、冗談のような産物が、歪な刃を回転させながら猛然とエルザを追尾し始める。
324
:
狼のエルザ
:2013/10/20(日) 23:40:35 ID:wJzdskjw0
>>323
(ヤツ自身は追ってこないか……!
クソッ、いよいよもって、敗色濃厚だが……。)
325
:
狼のエルザ
:2013/10/20(日) 23:41:06 ID:wJzdskjw0
// 途中送信!もうちょっとまってね。
326
:
ナナ・アウレス
:2013/10/20(日) 23:43:52 ID:VWmNnW660
//はーい
327
:
狼のエルザ
:2013/10/21(月) 00:03:46 ID:wJzdskjw0
>>323
(ヤツ自身は追ってこないか……!
クソッ、いよいよもって、敗色濃厚だが……。)
自身が姿を現しても、ナナ自身は追ってこない事を確認するや、
エルザはまるでVの字を書くようにして、急速反転。
「グウッ……!!」
そのまま、大地を蹴って加速。
突っ込んでくる巨大なドリルとまるですれ違うかのように、
紙一重のタイミングでそれを回避しつつも、横腹を蹴ってナナからは
見えない路地へとダイブするように突入して姿を消す。
「悪あがきだが、ね……!
やらないよりは……!」
ここは、エルザの当初の『作戦』において、
意図的に作った安全地帯ともいえる場所であり、
どうしてもまずこの場所に逃げ込む必要があった。
そしてエルザは、虎の子である『仕掛け』のスイッチを作動させる!
――ズドドドドッ!!!ドゴァッ!!ゴウッ!!
ナナの眼前のストリートの各所で爆発が起きた。
爆発そのものの数、規模はそれほどでもないが、もろい建物の要所で起きた
それは、建物を容易に崩壊させ、ストリートを雪崩のように飲み込んでいく。
これが、エルザの最初に思い描いていたプランだった。
具体的に葉、例のAKで敵を誘い込み、この一帯の要所に仕掛けた爆薬を起動、
建物を崩落させてナナを生き埋め、あるいはその隙をついて背後から
接近し畳みかける、という作戦だったが……。
(少しでも、少しでも勝機を……!)
エルザはナナの性格を読み違えていたのかもしれない。
もしくは、ナナの気まぐれが危機を偶然回避したのか。
とかく、それでもエルザは爆薬を起動させた。
爆発、崩落した建物が巻き上げる乾いた土、粉塵を煙幕としよう、
という破れかぶれの作。実際に、あたりはもうもうとした煙に覆われ、
多少なりの効果は見込めそうだったが……。
センサー類やサイコキネシスによる探知にひっかかれば終わりだ。
しかしエルザは……。
「ふ……ッ!!」
静かに息を吹き出し、臭いを頼りにナナへと向けて猛進を開始した!
328
:
ナナ・アウレス
:2013/10/21(月) 00:40:32 ID:VWmNnW660
>>327
ドリルは後一歩、というところでエルザの急な運動に対応しきれず、エルザをロストしてしまった。
「ちえっ、逃がしたか」
舌打ちしたナナはドリルを自身のそばに戻す。
エルザはまた隠れてしまった。仕方がない、再度の「掃討作業」に移ろう――――ナナがそう考えた矢先だった。
突如として、目の前のストリートで連続した爆発が起き、それを受けた建物群が崩落を起こしていった。
前方が土煙でたちこめ、ゆっくりとした動きでそれはナナの周囲の空気を茶色で染め上げようとしてくる。が、
「しゃらくさいんだぁ!!」
弱い斥力を受けて風で押し戻された地吹雪のように反転し、土煙は吹き飛ばされていく。
エルザが何のためにこの爆破を用意していたかは知らない。だが、このタイミングで使った意味は、容易に想像できる。
隠れればドリルによる「掃討作業」が始まり、やがてこの辺りは本当に更地になってしまう。
そうなれば、機動による奇襲を狙うエルザにとって、この試験場は限りなく不利なフィールドになる。
であるからこそ、その前に、建物を利用しようとしたのだ。倒壊に伴う土煙という、煙幕を形成するために。
そして、この場合の煙幕は一方向的。ナナの周囲は更地になりかけ。狙撃銃などの長距離射撃武器を用意している気配もない。
「なら答えは明白だよねえ、エルザ!?」
土煙が吹き飛ばされ、その中から凄まじい速度でこちらに接近するエルザの姿を、ナナは認めた。
銃で捉えきれないあの速度で、エルザはこっちに突っ込んできている。驚異的な速さだ。
しかし……。
「悪いね、エルザ。「私」に見つかったら、その時点で終わりなんだ」
猛進するエルザの全身を紫の淡い光が包み、全方位からの強烈な斥力が拘束しにかかった。
肩、腕、足……ありとあらゆる関節の動きを止めにかかるそれは、光の磔刑台と呼ぶべきモノであった。
329
:
狼のエルザ
:2013/10/21(月) 00:53:47 ID:wJzdskjw0
>>328
終わりは唐突だった。
煙幕それ自体を切り裂くような速度でナナに
迫るエルザの体が、空中に打ち付けられたかのように止まる……。
――メシャッ!
「う、あ、ぁぁぁあぁ……!!!!」
エルザの悲鳴。
当然だ。あれだけのスピードで移動しているさなかに、
無理やり力によって停止させられたのだから――。
もはや、拘束する斥力がなくとも
関節は砕け、骨は折れ、内臓はつぶれてもはや動くこともままならない。
(おわ、り……か……。
あぁ……かて、な……か……た……。)
まるで死を待つばかりの、殉死者のような姿と化したエルザは、
虚ろな目を動かし己に止めを刺しにくるであろう化け物の姿を静かに待った。
330
:
ナナ・アウレス
:2013/10/21(月) 01:14:00 ID:VWmNnW660
>>329
サイコキネシスによって拘束されたエルザは、死ぬ寸前の老人のようにぐったりしている。
斥力という壁に激突し、速度が身体をぐちゃぐちゃにしたらしい。
十字架の形をしていない磔刑台に打ちつけられたエルザに向け、ナナは手をかざした――。
「これが「私」だよ、エルザ。人として生を受けながら、人としての肉を離れねばならなかった「人でなし」の女。十分、わかったよね。
…………さて、ここにいるキミはバーチャルなのかな、それとも本物なのかな。まあどちらにしても、これからやることは変わらないけど」
開放時の高揚は何処へ行ったのやら。
今のナナは、酒場で見せたあの「納まったナイフ」の顔になっていた。
歓喜も無く、悲哀も無く、ただ淡々と作業を進める、死刑執行人のそれ。
熱のない、それだった。
「アナウンスが無いから、そういうことなんだよね。
ありがとう、エルザ。久々にスッキリしたよ。
――――いま、楽にしてあげる」
エルザに向けてかざした手のひら。それをナナは、ぐっと、一気に握りしめた。
ドリルを作ったときのそれとは違う勢いで、プレス機の如き圧力がエルザを肉塊に変えるべく全ての方位から殺到した。
331
:
狼のエルザ
:2013/10/21(月) 01:26:44 ID:wJzdskjw0
>>330
「ハァ……ハァ……ぐ……ぎ……。
ば……け……グ、ブ……もの……。」
エルザが血を吐き出しながら呟いた瞬間、
無慈悲な圧力がエルザの体を襲った。原形を失い、小さくなっていく彼女の体。
――同時にそれは0と1。無数の数字の羅列へと変わり消えていく。
『VRプログラム終了。ログオフ処理を開始します。
処理完了後、控室へとお戻りください。』
と、機械的なアナウンスが響き……。
入室時と同じく、景色が歪む。
数秒の後には、ナナは無機質な真っ白い部屋の中に立ち尽くしていた。
「試験のほうは終了いたしました。
先ほどの控室にお戻りください。」
今度は人間の声によるアナウンスが響き、
控室に戻るよう促される。
332
:
ナナ・アウレス
:2013/10/21(月) 22:29:21 ID:VWmNnW660
>>331
「化け物だなんて……言うのが10分くらい遅くない?」
物言わぬ肉塊になり果て、バイナリデータになって消えていくエルザに返答する。
そうしてからわずかに嘆息を漏らしたナナは、セプテントリオンをホルスターに戻した。
と、そこで終了のアナウンスが入り、周囲の景色が元の白一色のものに変わる。
「終わりなんだ。エルザがちらっともう試験通ってるみたいな話してたけど、
どうだったかなあ……よく聞いてなかったし……」
ぽりぽりと頭をかきながら、ナナはアナウンスに従って控え室の方に戻っていった。
333
:
狼のエルザ
:2013/10/21(月) 22:42:23 ID:wJzdskjw0
>>332
その後しばらくして、そこらの病院で受けられるような、
簡単な健康検査を改めて受けさせられてから、結果は後日通知するとの
旨を伝えられ、ナナは解放された。
その帰り道……。
「……やぁ、おめでとうナナ。
あれからもう一度査定を見たよ。評価ランクA++。
最高位だ。私の二つ上。」
人気のない路地で、見知った声を聴いた。エルザだ。
334
:
ナナ・アウレス
:2013/10/21(月) 23:06:14 ID:VWmNnW660
>>333
「んん?」
あいつにこの辺りに来るように頼もうかな……などと考えながら帰路についていたナナを呼び止める者がいた。
首だけをそちらに向けると、先刻彼女が戦った相手、エルザの姿を認める。
「ああ、エルザ……って、その話ホントなの? あんな戦いで? ううーん……」
どうやらナナは先刻の戦いに少し不満が残っているらしい。
が、それをエルザに言ったところでどうしようもない。
「ま、いいや。じゃ、もう、「先輩」って呼ばなきゃいけないのかな?
それとも「隊長」? 「大尉どの」? そこんところ、どうなってんの?」
335
:
狼のエルザ
:2013/10/21(月) 23:25:20 ID:wJzdskjw0
>>334
「ああ。卑下するなよ、その『あんな戦い』で、
私を打ち負かしたんだから。そんなじゃ私は自信を失ってしまう、な。」
くく、と笑みを漏らすエルザはどこかさっぱりとしていた。
「いや、いいよ。そういう界隈じゃない。
軍隊崩れは山ほどいるが、結局は根なし草の集まりだ。
ウチのギルドは実力査定による待遇の違いこそあれど、
基本的には階級だとかはないよ。あくまで待遇、と……ある程度優先的に、
優良な依頼をまわしてもらいやすくなるってだけで。自らの査定をかさに着て、
低い者に横暴にふるまう者もいないでもないが。」
ふっ、と肺にたまった熱気を抜くように息を吐き、
銀貨を親指で跳ね上げ、掴む。
「ま、なんだ。ようこそナナ。
この後、一杯やらないか、と思ってね。
私からの、祝いと……なんだろ、償い、謝罪……?
そんなところだ。」
336
:
ナナ・アウレス
:2013/10/21(月) 23:46:44 ID:VWmNnW660
>>335
「いや、「あんな」っていうのは別の意味でね……まあ、それはいいや。
でも階級が無いって言うのは良いことを聞いたよ。
横暴な先達にイヤミな先輩面されることも無いってことだからね」
肉の身体を持たぬとはいえ女の身であるナナにとって、査定で上下関係が決まるというのは朗報であった。
せっかく見つけた働き口を、無用なトラブルで失う可能性が低くなったということだからだ。
例えばセクハラとか。セクハラとか。娼館を利用する者が利用するのは、事前の調査で判明済みであったから。
「そんなわけで、よろしく、先輩どの。
謝罪は別に必要有りませんが、お代はそちら持ちと考えてよろしいのでありますか?」
笑んでいるエルザに応えるように、ナナも茶化すような敬礼をしてみせる。
337
:
狼のエルザ
:2013/10/22(火) 00:06:42 ID:wJzdskjw0
>>336
「ああ、端からそのつもりだよ。
さ、立ち話もなんだ。早速行こう。この近くにいい店がある。
そこはグレイビーソースが格別でな――。」
(こう、話しているだけなら普通の少女と変わらない……。
そうだ、これでいいんだ。これで……。)
エルザはとめどなく話しながら、考えた。
もはや、ナナは正道に戻ることは不可能だろう。
殺しに慣れ過ぎている。人には過ぎた力も持っている。
恨みも、憎悪も買っているはずだ。
――なら、私が少しでもナナが少女でいる時間を作ってやろう。
ただ、ギルドを紹介しただけの仲かもしれないが、
短い付き合いの中でエルザは様々な角度から興味を持った。
はじめは自分と同じ戦わざるを得なかった存在として、
次に狩り応えのある獲物として、そして恐るべき化け物として。
(押し付け、かもしれんが……。)
おせっかい、かもしれない。いいや、おそらくそうだろう。
ただ、エルザは……彼女自身は、ナナを切れなくなってしまっていた。
338
:
ナナ・アウレス
:2013/10/22(火) 00:23:23 ID:VWmNnW660
>>337
「わあ! 先輩どの、太っ腹でありますなあ!」
エルザが自分のことを考えているなど知らないナナは、思わぬ僥倖にきゃらきゃらと笑って見せた。
生みの親に捨てられ、戦争屋に育てられ、肉の身体を捨ててもはや人間とも呼べぬ存在になってしまったナナ。
彼女の幸せは、銃火の日常にしか無い。それしか知らないし、それ以外を知る気も無かった。必要がないから。
仮に、エルザの思いをナナが知ったところで、今はこういう答えしか返ってこないだろう。
「それは私の日常じゃないよ、エルザ」
もし、運命の織機がほんの少し、違った動きをしていたら、ぬいぐるみを抱き、温かい布団で眠る、
ライトグリーンの髪の幸せな少女が居たかも知れない。
だがそんな光景の可能性はもう、この世界からは消滅してしまっていた。
ここに居るのは、ライトグリーンの髪の戦争機械が一機、居るだけだ。
339
:
狼のエルザ
:2013/10/22(火) 00:37:20 ID:wJzdskjw0
>>338
ナナに押しつけの善意を送るエルザと、
そんな気も知らず無邪気に笑うナナ。二人はかみ合わせの悪い
歯車なのかもしれない。
かみ合わせの悪いまま、回り続けるのか……。
それともどこかで、破たんが訪れるのか今はまだわからない。
しかし、今夜は……。
エルザは後輩を、ナナは寝床と先輩を手に入れたという、
良い締めくくりで物語は一端の幕を下ろした。
// こんなところかな?〆。
340
:
黒沢小百合
:2013/10/29(火) 22:06:15 ID:wJzdskjw0
すり鉢状にくぼんだ野外劇場にまばらな拍手が響く。
「ふっ……さすがにこの時期の夜は寒くなってきましたね。
コーヒーが恋しい……。」
ギリシア悲劇の傑作『メディア』を演じ終えた役者に
拍手を送る十数人の中に小百合の姿があった。
ここ、異能都市港湾部にあるとある公園では
時折、小規模ながらも演劇が催されており小百合はたまに、
足を運んではそれを楽しむことがある。
都会の中のエアポケットとでもいうような、
落ち着いた空間を小百合は好むようだ。
341
:
名も無き異能都市住民
:2013/10/31(木) 23:04:51 ID:VWmNnW660
>>340
その劇場の側を、数人の青年が慌ただしく通りがかった。
「その話マジなのかよ!?」
「ああ、先輩の話だとどうやらマジらしい!
今、港にすげえ戦艦が入港したって、ホレ、証拠の写メ!」
「でけー! 何だコレ!」
何やら興奮した様子で話し込みながら通り過ぎていく。
港に戦艦が入港したと言っていたが……。
342
:
黒沢小百合
:2013/10/31(木) 23:22:44 ID:wJzdskjw0
>>341
「ん。」
青年たちの言葉を聞きつけた小百合の目つきが変わる。
(戦艦?どこの所属だ。聞いていないが……。)
都市の治安維持の根幹部にその身を置く小百合は、
自身も知りえぬその報にやや不愉快そうに顔をゆがめた。
しかしながら、その全貌すら明らかならぬ都市において、
全てを把握するなどできかねることであり、こうした予想外の
報がもたらされることはそう珍しくもない。
「やれやれ、行ってみますか……。」
気分を仕事へと切り替えた小百合は、
千夜本社へと連絡を取って戦艦の所在を確かめ、
その場所へ向かう。
343
:
名も無き異能都市住民
:2013/10/31(木) 23:49:09 ID:VWmNnW660
>>342
本社からの情報によると、千夜の関知しない民間の港湾施設に、つい先程件の戦艦は入港したらしい。
関係者の話によると、その戦艦の関係者が2,3日前に現れ、一週間ほど260m級の船が入れる場所を貸して欲しいと、
多額のキャッシュを伴う申し入れがあったとのことであった。
港湾管理者は戦艦の入港ということで、一応千夜の治安維持部門に連絡しようと思ったらしいが、
関係者の話を聞くに、どこかの海軍に属している訳ではなく、奇妙なことに、どうやら「個人所有」の戦艦であるらしく、
都市への入港もその砲打撃力を行使するためのものではないということで、連絡はしないことにしたという。
そんな報告を受けながら歩けば、倉庫街の陰になっていた港が見え、そこに停泊する一隻の威容を、小百合は見ることだろう。
夜なのであまり細かくは見えないだろうが、第二次大戦期に主流であった塔型艦橋とそれに追随する大型の煙突と後部艦橋、
そこを防備する高角砲と機銃座の山、そして何より、前部二基、後部一基の、巨大な主砲塔が目を引くはずだ。
少し軍艦の知識が有るものであれば、それは紛れもなく――――旧大日本帝国海軍に属していた世界最大最強の戦艦、
大和型戦艦であることに気がつくだろう。
344
:
黒沢小百合
:2013/11/01(金) 00:05:03 ID:wJzdskjw0
>>343
(戦艦の個人所有とは酔狂な……。
趣味だとか企業宣伝の範疇では説明しづらい。
個人……と建前上そうなっているだけでどこぞの組織の所有かもしれません。)
小百合は既に集まった野次馬や観光客の間を縫いながら、
自身もそういった類を装いながら、それとなく戦艦を観察して回った。
手持ったPDAには大和型戦艦の資料が映し出され、例えば近代的な設備が
増設されていないかだとか、兵装の変更がなされていないかというところを
照らし合わせてチェックする。
(さすがにこんなものを許可なく停泊されては……。)
同時に、許可申請のようなものがなされていないか、
都市の治安組織が利用する共有のデータベースへとアクセスする。
もし、無許可なようであれば小百合はこの管理者にたいし
警告を行うべく、船内に乗り込むだろう。
345
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/01(金) 00:18:37 ID:VWmNnW660
>>344
現存する資料と照らし合わせても、港に停泊している「大和」とかつて存在していた大和との間に、形状、武装の差異は認められない。
しいて違うところを挙げるとすれば、艦尾にある水偵射出機の前にティルトローター機が停まっていることくらいである。
また、許可についてであるが、これについては都市の港湾局の許可が出ているらしい。
だが、先程の港湾施設借用の経緯を見るに、何か「特別な交渉」があったような匂いはしている。
346
:
黒沢小百合
:2013/11/01(金) 00:27:45 ID:wJzdskjw0
>>345
(チッ、港湾局め……港湾警備隊の武装強化の件、
少々考える必要があるな。まあいい……今は……。)
認可が下りているならば小百合には手出しができない。
こうした都市の複雑怪奇な行政機構が原因の情報不伝達はよくある話だ。
……とりあえず小百合はもう少し情報を集めようと、
乗員がどのような装備であるかだとかを重点的にチェックし始める。
周辺に、船員が入りそうな酒場だとかマーケットを見つければ
そこでも情報収集にあたるだろう。
(兎角、なにか妙だ……。)
347
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/01(金) 00:50:41 ID:VWmNnW660
>>346
艦に近づけば近づくほど、「大和」の停泊している港湾施設の倉庫や管理棟、積み上がったコンテナなどが邪魔をして、
艦の様子が見づらくなっていく。
それでも収穫はあった。艦の接舷部からタラップが架けられており、そこを渡る三人の人物の姿を認めることができた。
うち二人は水兵の格好をした人物で、おそらく艦の乗組員であろう。
そして、その二人に挟まれながら上陸したもう一人は、艦の威容に似つかわしくない格好の人物。
白いパーカーに赤いチェックのミニスカートを着た、腰辺りまで伸びた長い黒髪が印象的な女性だ。
前後二人と比べるとひどく小柄で、ひょっとしたらまだ十代かそこらなのか、とも思えるような人物であった。
その女性は自分を挟んでいた水兵二人に二言三言何かを話すと、接舷地点から離れていった。その後ろでは、水兵二人が敬礼をして見送っている。
やがて程なくして、艦から降りてきた女性が港湾施設の門をくぐり、外に出てきた。話しかけるとすれば、今がチャンスだろう。
348
:
黒沢小百合
:2013/11/01(金) 01:04:39 ID:wJzdskjw0
>>347
見て回るだけで収集できる情報はあらかた出尽くした。
周囲の野次馬の会話に耳を傾けたところでも、どれもこれも噂話・推測、
根も葉もない嘘の類を出ずこれといった情報が集まりそうにもない。
(さて……。)
やはり例の女性に話を聞く事が最も手早そうだ。
そう考えた小百合は、袖口に仕込んだ紙片を握りこんで能力を発動。
自身の周囲にSPを数人配置すると、いかにも戦艦に用があるという風に
体裁を整えて、女性へと近づく。
「千夜グループ、都市警備部門の者です。
この艦は、あなたの所有物に間違いありませんか?」
自身よりもまだ一回り若そうな相手だが、この都市では年齢は当てにならない。
水兵の仕草から女性がこの艦において何らかの特権を持つ階級である事を
推測しての行動だ。
349
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/01(金) 21:35:24 ID:VWmNnW660
>>348
パーカーのポケットに手を入れながら歩いていた女性は、小百合に話しかけられるとその足を止め、
そちらに振り向いた。
銀縁の眼鏡が街灯の光を反射していて、視線を窺い知ることはできなかったが、
顔立ちは幼さを残している。女性、と言うよりは少女、と言った方が正しいだろう。
「ええ、そうですよ。私があの「大和」の艦長です。それが何か?」
良く通る涼やかな声で、少女はあっさりとその事実を認めた。
まあ、否定したところで、艦から降りてくるところを目撃されていたわけであるが……。
350
:
黒沢小百合
:2013/11/01(金) 22:03:58 ID:wJzdskjw0
>>349
「近隣の住民から不安を訴える内容の苦情が多数。
お呼びに、都市消防法等への抵触の懸念があります。」
苦情などは未だに寄せられていない。
放っておいても多少は集まるだろうが大多数は
小百合がこれから『作る』のだ。
「中を改めさせていただきたいが……。」
値踏みするように、少女に視線を向ける。
半ば威圧を兼ねたそれはある意味ではこの少女を試す意味もあった。
351
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/01(金) 22:26:24 ID:VWmNnW660
>>350
「それは御免被りますね。そんなに気にせずとも、一週間もすればここを去りますよ。
それに、能力者犯罪の絶えないこの都市で、戦艦一隻ごときに怯える住人というのも、少々きな臭い。
あっても少数でしょう」
「何より――」と前置きしながら、少女は眼鏡を外した。
外す際に閉じられた瞼が開かれ、その瞳が小百合を見据える。
血のように真っ赤な瞳だ。周囲が薄暗いからだろうか、少し、光っているようにも見えた。
その赤い視線は小百合に少しの間合わせられていたが、すぐに小百合の側を警護するSPを指し示す指に追従させる。
「そんな人でないモノを侍らせている人間を、中に入れるわけにはいきませんね。
どういう能力かは知りませんが……その人たち、生きた人間ではないでしょう?」
352
:
黒沢小百合
:2013/11/01(金) 22:55:53 ID:wJzdskjw0
>>351
「ええ、私の能力で作り上げた物ですが……それが何か?
この街が何と呼ばれているか知っているのか。お前は。
『異能都市』。異能だとか魔術だとかがあふれるこの場所で何を言うのか。」
くつくつと喉を鳴らし、いやらしい笑みを浮かべる小百合。
「そしてだ、お前は私の査察を受け入れざるを得んのだ小娘。
私はこの街の法の顕現としてここにある。一切合財を私に見せろ。
この私に対して、お前が犯罪者ではない、と証明をして見せろ。」
353
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/01(金) 23:10:58 ID:VWmNnW660
>>352
「それが本性なのね……」
外した眼鏡を、パーカーのポケットに入っていたケースに入れた少女は、呆れたようなため息をついた。
「法の顕現ですって? 最後まで仮面も被れないような人が何を言っているのかしら。
ますます御免被りたくなったわ。こんな調子じゃ、艦に入れたが最後、見覚えのない変な粉袋が見つかって、麻薬輸送船だってレッテルを貼られかねないもの。
私の「大和」を、そんなチンケなものに格下げされたくないわ。信用できないの、貴女」
354
:
黒沢小百合
:2013/11/01(金) 23:28:04 ID:wJzdskjw0
>>353
「その昔、ソビエトの指導者スターリンは言った。
『敵が武器を捨てないならば我々が武器を捨てさせてやるまでだ。』、と。
どうやらお前は、抵抗する気のようだが……。」
口角を吊り上げた攻撃的な笑みへと小百合の表情が変わる。
まるで舌なめずりをするように、人差し指を舐め、続いて調子を確かめるように
全ての指を動かした。
まがいもの
「もう一度だけ言うぞ。『我々をお前のその時代錯誤の骨董品』に上げろ。
そうすれば……慈悲深くもこの思慮に欠けた対応を忘れてやるが……?」
小百合はあからさまに少女を挑発している。
ここでどう対応するかによって、今後の動向が変わるだろう。
355
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/01(金) 23:52:01 ID:VWmNnW660
>>354
「常識的に考えなさいな。
不可解な武器を持った、忍耐力のない人間が、「私は正義だ」なんて言って家に入り込もうとするのを、止めない馬鹿が居るかしら?
貴女、横暴を通り越して狂ってるわ」
小百合の徴発に対し、少女は頭の近くで指をくるくる回すことを返答とした。頭がおかしい、というジェスチャーだ。
「第一、貴女信頼されようという努力もしないじゃないの。
抵抗も何も、当然の反応よ。これ以上、何か言うことはあるかしら?」
356
:
黒沢小百合
:2013/11/02(土) 00:11:25 ID:wJzdskjw0
>>355
「そうか。貴様は……『反社会的』であると……みなした……!」
その言葉を皮切りにして、
SPたちがぞろぞろと少女と小百合の間に展開した。
皆、屈強な男たちばかりでメリケンサックやナイフ、或は警棒といった
武器を取り出し無表情に距離を詰めていく。
「泣き叫ぶ用意をしろ。貴様はこれから初めてを奪われる処女のように、
泣きわめくのだからなぁ……!」
その後ろから響く、挑発的な声。
既に男たちの陰に隠れ姿は見えないがあの白い顔は
醜悪な笑みが張り付いている事だろう。
357
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/02(土) 00:34:57 ID:VWmNnW660
>>356
「そう、そんなに喧嘩がしたいのね。……思っていたより、救いようがないわ、この街」
強面の男達がそれぞれに武器を持って少女に迫る。
それだけで人によっては泣き叫ぶには十分な迫力だが……生憎と、少女はそんなやわい肝の持ち主ではなかった。
「壱号、聞こえてるわね?
……一番副砲よ。良く狙って」
パーカーの襟元に付いている、砲弾を模した形のバッジに、少女はそう囁いた。
すると、停泊している「大和」の艦首側、第一、第二主砲塔に続く三つ目の砲塔、第一副砲が動き、男達と小百合に照準した。
少女と小百合らの距離がそれほど離れていないに関わらず、だ。
そして……。
「一番、撃て」
15.5㎝三連装砲が火を噴き、撃ち出された砲弾が男達の居る場所を中心として着弾、炸裂し、周囲に爆風と破片を撒き散らした。
それらは少女の場所にまで影響を及ぼしたが、爆風で少女が打ち倒れることはなく、いくつかの破片が少女の衣服とその下の柔肌を切り裂いても、
少女の表情に動きはなかった。
358
:
黒沢小百合
:2013/11/02(土) 01:01:07 ID:wJzdskjw0
>>357
砲撃によって砕けたのは
港のコンクリートそしてあの狂った女の血肉……ではなかった。
一体いつ、そこに現れたのか――。
巨大な石壁が少女の目の前に出現し、砲弾を受け止めていたのだ。
「フン……『いつでも射撃できる態勢』にあったのか。
重大な危険事項だ。やはりお前はッ……!」
女の声が聞こえる。敵にダメージはないようだ!
そして、砲撃によって崩れた石壁が少女に向かって崩れ落ちてくる!
359
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/02(土) 01:22:09 ID:VWmNnW660
>>358
「難癖で攻撃される街だって噂があったからね。どうやら正解だったみたい」
巨石が崩れ落ちてくるにもかかわらず、変わらない涼しげな声でそう返答する。
そして崩れてきた巨石の破片をすっと見据え、
「プライマリ、よろしく」
少女の足下、複数の街灯によって照らされて複数あった影がそれぞれに肥大化し、隣り合った影と融合する。
そうして出来上がった円形の巨大な影……そこから真鍮色の歯車と配管とフレームで構成された巨腕が出現し、
乗用車ほどもある大きさの手のひらで巨石の破片を薙ぎ払い、すぐ横の海中へと投棄せしめた。
「壱号、遠慮は要らないそうよ。どんどん撃ちなさい」
その言葉に応えるように、第一副砲が小百合に向けて再照準、再び榴弾を射撃した。
360
:
黒沢小百合
:2013/11/02(土) 01:39:42 ID:wJzdskjw0
>>359
副砲の第2射。
それを受け止めたのはまたしても分厚い城壁であった。
――小百合の能力。
書物に書かれた自称を具現化するその力は、
その内容に多少の制限はあるものの、小百合本人が戦闘不能にならない限り
行使をし続けることができる程、罫線能力に優れている。
特に……どうしても攻撃にラグが出がちな遠距離攻撃、射撃に対しては
非常に高い防御力を誇る。今回の石壁も一撃目で崩れた物を瞬時に再展開。
真新しい物で受けてみせた。
「ええ、遠慮はいりません。すべて受け止めたうえで力の差を思い知らせてさしあげる。
ああ、この能力を見て降伏を考えるなら受け入れなくもないですが、ねぇ。」
同時に、小百合は城壁外へと兵士を展開。
少女を拘束にかかる。少女に完全に肉薄してしまえば、
まさか少女ごとの砲撃はできまいという考えだが……。
361
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/02(土) 02:23:10 ID:VWmNnW660
>>360
二度も顕現した城壁に少女は目を丸くしたが、続いて出てきた兵士の群れで、相手の能力をおぼろげながら悟る。
流石に無限では無いだろうが……これは厄介だ。
しかし、
「悪いけれど、降伏は趣味じゃないの」
それでも少女は降伏を選ばなかった。それは矜持か、それともまだ他に方策があるのか。
その答えは、少女の次の行動にあった。
「壱号、第二主砲塔照準。テルミット38L型装填。一門だけでいいわ。目標同じ」
次の射撃指示が少女から飛んだ。副砲では効果が薄いと判断した少女は、何と主砲塔を動かせと命令した。
大和型戦艦の主砲……46㎝45口径三連装主砲、かつて最強の艦砲と呼ばれたそれを。
見た目の重厚さとは裏腹に、軽快に首を振ってその巨大な砲門を小百合、もとい、彼女を防備する城壁の方向に向ける。
その重厚長大なる主砲で城壁を破壊しようというのか?
「照準、目標上空。信管は近接。
………………撃て」
静かな号令を受けて、「大和」の第二主砲塔、その三つある砲門のうちの一つが火を噴いた。
ただ爆音、と呼ぶにはまるで足りない、聞くもの全てを振るわせる重い砲撃音が響き渡り、
火炎放射と見間違えるような巨大な発射炎の中から、凄まじい勢いで砲弾が射出された。
砲弾は城壁に直接飛ばず、その上を横切るかのような軌跡で飛来し、小百合を守る城壁、その上空で炸裂。
炸裂した砲弾は周囲数百メートル四方に蒸発した状態の液体燃料を高速散布し、
一秒の間もおかずに散布された蒸気へ着火した。
気化した状態の液体燃料は瞬く間に燃焼し、その炎の傘の下を、爆風と高熱で焼いた。
それら二つは人間には耐え難いものだが、小百合の城壁が上空をカバーできるのならば、まだ対応は可能。
しかし、それらを防いだとしても次は広域燃焼に伴う、広大な一酸化炭素のフィールドが待っている。
熱でダメージを受けるか、それとも一酸化炭素中毒によるダメージを受けるのか。どちらにしても尋常ではない苦しみが待っている。
362
:
黒沢小百合
:2013/11/02(土) 03:02:56 ID:wJzdskjw0
>>361
小百合がもし、無策で砲撃によるナパーム爆撃にも似たこの攻撃を受ければ
なすすべなく死亡していたであろう。
しかしながら、策というよりも小百合の戦闘メソッドが彼女の命を救った。
とはいえそのメソッドとはごくごく単純なものであり、手早くいってしまえば
城壁、歩兵といった前線を形作りその間に本体たる小百合は安全圏に避難する、
というもの。
「な、なんて事を……。ためらいなく広範囲を焼き払うとは……。
やはりあれは危険だ。この場所で始末するッ!」
間一髪、城壁の陰で装甲車を具現化し手早く距離をとっていた小百合は
炎のカーテンの範囲内から逃れた。戦闘の始まりに怯え、蜘蛛の子を散らすように逃げる
野次馬を尻目に、小百合は次の攻撃手段を展開する。
「航空戦力で押しつぶしてやるッ!!!
そのデカブツを鉄くずに変えてくれるぞッ!」
次に小百合が具現化したのは、無数のSBDドーントレス爆撃機。
おそらく、航空戦力を持たないであろう敵に対し一方的な猛爆を加えるつもりだ。
少女の指揮する戦艦の攻撃力に危機感を覚えた小百合は一挙にラッシュを
しかけてきた!
363
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/07(木) 21:44:23 ID:VWmNnW660
>>362
数え切れない数で飛来する爆撃機に対し、「大和」は砲を動かすことなく沈黙している。
このままでは無数の航空爆弾の爆発にさらされてしまうだろう。
……ところで、先程の砲撃による広域燃焼の範囲内に居たであろう少女はどうなってしまったのか?
「大和」の焼夷砲弾が着弾した地点は、数百メートルほどの範囲が高熱に焼かれ、黒い煙を悲鳴のように上げているが、
そこに少女の姿はない。当然と言えば当然なのだが。
と、少しの間をおいて「大和」が動き始めた。
錨を上げるや否や、艦はその機関を始動、白いさざ波をたてて全長263mの巨体がその大きさにそぐわぬ軽快な加速力を見せて、ぐんぐんとその速度を上げる。
それと同時に、後部の第三主砲塔と前部三基の砲塔のうちの真ん中、第二主砲塔がその首を振り、向かってくる爆撃機の編隊に照準。
巨大な砲口火炎と爆音を立てて、両砲塔が斉射された。
撃ち出された砲弾は緩やかな弧を描きながら爆撃機の編隊に向かって飛び、近接信管によって炸裂する事だろう。
弾種は先程と同じ焼夷砲弾。しかし今回装填されたのは、H型と呼称される、先程の弾のおよそ二倍の焼却フィールドを形成する代物。
2砲塔とも3門の砲門をそれぞれ5度ずつ角度をずらしており、その弾幕の層は厚い。さて、小百合はどう出るか。
364
:
黒沢小百合
:2013/11/07(木) 22:23:35 ID:wJzdskjw0
>>363
「チッ……ヤツめ……!
このままでは区画ごと焼ける……さすがにマズいな……。」
再度の砲撃に小百合は歯噛みする。
先ほどの一撃ですら周辺施設に甚大な被害が生じたうえに、
これ以上の被害を出されては小百合の立場上、非常にまずいからだ。
都市を守る立場にあろう人間が『敵を倒したはいいが被害も大きくなりました』では
すまないのだ。
小百合はあえて編隊を密にし、その砲弾をなるだけ上空で受ける。
壁となった爆撃隊は凄まじい爆発、炎、カーテンのように垂れ下がる炎の幕に焼かれ
一撃のもとに壊滅した。
しかしながら、小百合は涼やかであった。
至極冷静に、離れたところから戦況を観察。
もう一度、例の爆撃機編隊を具現化するため紙片に手を伸ばす。
「だが……お前はこの私を少々舐めすぎているぞ。
この私に対して力で挑んだのだ。いから巨大とはいえ……『個』が。
『群』に対してな……。」
――空が震えた、とまごうばかりの轟音。
まさしく雲霞の如き爆撃機の群れが、突如大和の『直上』に出現。
逆落としに鉄火の雨を降り注がせる!
小百合の能力の強力な点は本体が無傷な限りいくらでも
具現化しなおせるという事と……もう一つ。
かなり自由に、その具現化物の出現地点を決められるのだ。
故に、距離をとるだとか近づかれる前に撃破する、ということが困難。
365
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/07(木) 22:57:56 ID:VWmNnW660
>>364
「ふむむ……」
「大和」艦橋部。
ホログラムのモニターの光のみを光源とする薄暗いそこで、電波探信儀の索敵範囲内、
しかも直上にいきなり現れた編隊の姿をモニターで認め、唸る人影がひとつ。
白い海軍服を着、白く長いあごひげをたくわえている……が、その身体は何と木で出来ていた。
人形特有の関節を備えた指は忙しなくあごひげを撫でつけ、
眼窩にあたる部分には青白い光が宿り、それが困惑を示す唸りを補強するかのように瞬いている。
「…………状況は、壱号」
その木人の後方、今まで何も居なかった薄暗い空間から、まるで溶け出るように人が一人、現れた。
今度は肉の身体を持った人間のようだったが、その人物は何と、あの炎のフィールドで焼かれたはずの、「艦長」を名乗った少女だった。
振り返った木人……壱号は、少女に向かって首を振った。
「良くありませんな。どうやらお相手は、数限りなく神出鬼没のようでして」
「それが彼女の能力なんでしょう。上のはとりあえず、障壁で防いでおいて。
装甲で防いでも構いはしないのだけど、こないだ新調したばっかりのティルトは装甲されていないから」
「了解しました」
壱号が目の前のコンソールに何事かを打ち込むと、「大和」の周辺の空気がわずかに歪み始めた。だが、目立った変化はそれだけだ。
「彼女の位置の見当は?」
「L型が着弾する前、場を離れた車両がひとつ、ありました。電探が捉えています。
現在、衛星による探査で、詳しい位置の特定を急いでおります」
「別にこのまま街ごと焼いても良いのだけれど、それだと余計な面倒を抱えるハメになるからね……面倒くさいったら」
「トラブルは困りますぞ、艦長」
「わかってるわよ。でも、今回の事情は理解してくれるわよね?」
「まあ、そうですな。一度ああいうのを受け入れて、酷い目に遭ったことがありましたからなあ」
「大和」は湾を脱しつつあるが、その砲は沈黙を守ったままだ。
366
:
黒沢小百合
:2013/11/07(木) 23:13:16 ID:wJzdskjw0
>>365
猛攻の一言を体現したかのような小百合の攻撃。
もはや通常の艦ならば裁断された鉄くずと成り果てようほどの
爆弾が、湾内に投下され……ながらも悠々と航行を続ける大和の姿。
「なんだ……どうなっている……?
あれほどの攻撃を受けて沈まぬ艦などあるはずがない。
一体何なのだ……なにを仕掛けている……?」
障壁の事を知らぬ小百合は訝しんだが、
撃てる手と言えば、とにかく手を休めずに爆撃を慣行する事のみ。
「クソ、クソ、クソ、あの××のガキッ……。
この私を散々愚弄したあげく逃げるつもりなのか……!」
激昂する小百合と、光景の派手さと裏腹に
不気味なほど情勢は変動していない。
367
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/07(木) 23:28:13 ID:VWmNnW660
>>366
まるでスコールのように降り注ぐ航空爆弾の雨は、確かに爆発して夜の海を照らしているのだが……よく見ると、
「大和」には直撃していないのがわかるだろう。
爆弾が着弾し、炸裂しているのは艦の手前、中空であり、着弾の瞬間に空間にわずかながら、淡く光る波紋が走っている。
どうやらその不可視の障壁が、弾体と爆風をシャットアウトしているようだ。
小百合はどうやら爆撃の波状攻撃で艦を沈めるつもりのようであるが、そんな彼女に衛星からの探査が迫っている。
368
:
黒沢小百合
:2013/11/08(金) 00:04:57 ID:wJzdskjw0
>>367
「畜生、殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……!!」
しかし、激昂した小百合はそのことに気づかず、
燃え盛る憎悪の念をたたきつけるように、愚直な爆撃を続行するのみ。
当然、衛星からの探査など気づけるべくもなく……。
彼女の運命は果たしていかに……。
369
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/08(金) 00:44:49 ID:VWmNnW660
>>368
「…………居ました。反対側の湾。貨物集積所付近」
とうとう衛星が小百合の姿を捉えた。
壱号の報告を聞いた少女はパチン、と指を鳴らし、
「取り舵20、右舷を向けて」
「了解」
「大和」がその進路を変え、小百合に向かってその右腹を晒す。
多く、戦艦は前部と後部それぞれに主砲塔を持つ構造をしているため、その火力を最大限活かすためには、
全ての主砲塔の射界に合致する舷側を敵に向ける必要がある。
その分、敵火砲に対しては被弾面積が大きくなるのだが……この場合は関係のない話だ。
「通常榴弾装填。全主砲照準。目標、敵周囲のコンテナ群。退路を塞ぎなさい」
「榴弾で、周りのコンテナを? 直接撃たぬので?」
「あの女は治安維持組織の人間と言ったわ。その情報……この街に留まるのなら利用できるでしょう?」
「成程、その手がありましたな。では主砲、照準します」
主砲塔がそれぞれに狙いを付け、それぞれに砲撃した。
見た目は旧式ながらも新技術でブラッシュアップされた砲撃は、ややばらつきがありながらもほぼ照準どおりの場所に着弾した。
狙いは小百合……ではなく、その周囲にあるコンテナの山。
左右と後方、その三つの山は46㎝砲弾の直撃を受け、榴弾の炸裂に吹き飛ばされて、まるで子供に壊された積み木の山のように、
道路に重苦しい金属音を立てながら転がった。
これで小百合が進めるのは空か、「大和」の前の海だけだ。
ヘリかなにかを具現化して空に逃げるのが一番手っ取り早く思える状況だが、
「高角砲、威嚇射撃」
艦橋と煙突の横に並んだ12.7㎝連装高角砲の砲列が火を噴き、小百合の上空を射撃。
時限信管の作動による小さな爆発が、空を一時、覆った。ヘリで逃げようとしても無駄だ、という警告だ。
「じゃあ行ってくるわ」
「ご武運を」
高角砲の威嚇射撃を見届けた少女が、ふたたび薄暗がりに溶けていった。
370
:
黒沢小百合
:2013/11/08(金) 22:43:09 ID:wJzdskjw0
>>369
「うあ……!!!!」
攻撃に傾注するあまり、小百合は砲弾をも先ほどのように
航空機を密集させる、或は何らかの防御壁を出現させるなどして
防ぐことすらできず……。周囲に着弾した砲弾の巻き起こした爆風によって
無様に地面を転がる。
ここで小百合ははじめて敵の狙いに気づいたようで、
やられた、という表情を浮かべた後再び歯噛みした。
ご丁寧に四方をふさがれ、挙句の果てに空には威嚇するような砲火。
――あれほどの猛攻を加えてやったのに、敵はこの私を殺すどころか
しのぎ切ったうえで、さらには余力を見せつけている。
(……くそ、くそ、くそ、なんてやつ、私などいつでも殺せる、と?
力を誇示しているのか?だが……!!)
「これでこの私の逃げ場をふさいだとでも……思っているのか。」
忌々しいがあれほどの攻撃をしのぐ相手を突破できる方策は現状なく。
小百合は一度、逃げの一手を打った。小百合の足もとに地下へと通ずる穴が出現し
その中へと小百合は身を躍らせる。
地下都市カッパドキア。
小百合はそれを具現化し、地下へのがれた。
371
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/10(日) 22:56:37 ID:VWmNnW660
>>370
デタラメに崩れて折り重なったコンテナ達。
その小高い一角に、突如空から軽やかな着地音を立てて、人が降りてきた。「大和」の艦橋に居たはずの少女だ。
着地体勢からゆっくりと立ち上がった少女は、辺りを見回してお目当てのもの……脱出出来ずに足掻く小百合の姿……を探したが、
「ちょっと壱号、どこにも居ないんだけど」
『そんなはずはありません。つい先程までは確かにそこに……』
「でも居ないわよ。今ので吹っ飛ばしちゃっ…………って、何アレ」
『いかがなさいました?』
「変な階段があるのよ。アレで逃げたのかしら」
地面に降り立った少女は、訝しげな表情のまま、その地下へと続く階段に近づいていく……。
372
:
黒沢小百合
:2013/11/10(日) 23:16:17 ID:wJzdskjw0
>>371
地下階段内はところどころ掘られた横穴に
火の灯された燭台が置かれており、やや薄暗いながらも
進めないということはない。
しかしながら……。
細く、くねった通路は見通しが悪く
いつ攻撃を受けてもおかしくない。
373
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/10(日) 23:28:37 ID:VWmNnW660
>>372
「ふーむ…………」
中を覗きながら、少女は顎を撫でつけて唸った。
このまま方策を考える時間に入るかと思われたが、少女は「よし」と軽やかなかけ声と共に前屈みの姿勢を直し、階段をすたすたと降りていった。
『艦長? 何処へ行かれるのですか?』
「ちょっと秘密基地の探検にね。対空監視よろしく」
ひらひらと艦に向かって手を振ったのを最後に、少女の姿は地上から見えなくなった。
階段を降りていく少女。視線をあちこちに彷徨わせてはいるが、パーカーのポケットに手を入れて歩く様は、どう見ても警戒しているとは思えない。
374
:
黒沢小百合
:2013/11/10(日) 23:39:12 ID:wJzdskjw0
>>373
――パンッ!!パンッ!!
少女がいくつめかの曲がり角を曲がろうかとした時であった。
不意に数度の発砲音が響き、乳白色の岩壁が飛びちった。
「……勝ち誇り、随伴員もなくここまで降りてきたか小娘。」
通路の向こう……おおよそ7〜8m先。
遮蔽物のない通路の向こうの曲がり角から声。
小百合のものだ。
「いいや、お前は……もう小娘でもなんでもない。
テロリストだ。港湾区域をああまでして。もはや、世論もお前たちに
黙ってはいないぞ。殺す。必ずだ。」
激昂した様子で、まくしたてるあの様子から見て
今の状況で冷静に話をするのは難しいかもしれない。
375
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/11(月) 00:20:05 ID:VWmNnW660
>>374
弾丸が跳ねる音に反応して、少女の足が止まった。
特に驚いた表情もなく、淡々と作業のように小百合の方を見る少女。
初めて対峙した時と比べて燭台に照らされているここは明るかったが、少女の赤く爛々とした瞳は、ここでも不気味に光っていた。
「……世論。
そうね。いつでも撃てる46㎝砲が近くにあったら枕を高くして眠れない……私だってそう思うわ。
でも黙っていない、というのはどうかしらね?
暴力に飼い殺されるのに慣れているここの住人が、今更「私達ごとき」に対して声を上げると?
そっちの方が不自然に思えるのは私だけかしら。まあでも、わからないわ、実際。
だってそうじゃない? 「貴女みたいなの」が治安維持組織に居座れるんですもの。さぞかし意識の高い人たちが居るのでしょうね」
口の端を上げた、嫌らしい笑み。妖言を吐く魔女のそれ。
376
:
黒沢小百合
:2013/11/11(月) 00:40:02 ID:wJzdskjw0
>>375
「……そう、あるだけならばなぁ。
さして、問題にはならなかっただろう……。
あるだけならば。しかし、お前はそれを行使したのだ。
挙句の果てに、この区域は大きな被害を受けた……。」
確かにこの街は武器携帯に非常識ともいえる程寛容である。
刀剣類、銃器類を担いだ傭兵、戦士等が中心区の繁華街を歩いても
皆、日常の事とこなれているし他の場所では駆除対象にあたるような
使い魔や魔獣すら街の中を自由に行き交う始末なのだから。
しかしながら、それはそれらの持つ力が行使されないから許されているのであり、
実際にその『力』をふるってしまった以上、批判の声が出るのは避けられないだろう。
「お前はこの都市の敵になったのだ。分かるか、女……。
もう少し、考えて力をふるうべきだったなぁ……?」
くつくつと笑みを返す小百合。
歪な姿勢で銃を少女に向け、狙いを定め――。
――パンッ!!
その顔面めがけ、弾丸を放った。
377
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/21(木) 22:44:12 ID:VWmNnW660
>>376
飛来した弾丸を、少女は首を横に動かす最小限の動作だけで回避した。
遅れて広がった黒髪の中を割り、弾丸が少女の背後の壁に着弾、乾いた音を立てる。
「あら、この悪名高い現代のソドムの敵になるだなんてね。人生はわからないものだわ」
どこか楽しそうに小気味よくそう言ってのけ、少女はくるり、と踊るように一回転して見せた。
「おまけに都市の代表面した暴力小役人さんにそれを言われる始末。
私はただ、郷に入りては郷に従え、を徹底しただけなのにね。それは貴女が教えてくれたのよ、小役人さん。
自分の言葉が聞けないのなら、暴力でもって従わせる。それを貴女は、何のためらいもなく行ったわ。
これを見るに、これは貴女の日常におけるひとつのルーティンワークなのでしょう? ひいては、この都市の。
だから私はそれに応えたまでよ。同じように」
少女は少し結論を急ぎすぎた感はある。
「大和」による砲撃も早期の決着を目論んだものであり、その後の攻撃の応酬などは完全に予測していなかった。
それが解っていたら、少女は止まったか? 答えは否、である。
何を知っていようと、あの場面で小百合の言葉に従えるような性格をこの少女は持っていないし、
右の頬をぶたれたら、相手が再起不能になるまで殴り返すのが信条のこの少女に対し、
敵意と害意を孕んだ小百合の行動が起きた時点で、小百合はその殴り返す対象となるからだ。
それに付随する行為で批判があったとて、そんなものは何処吹く風……この少女はそういう存在であった。
378
:
黒沢小百合
:2013/11/21(木) 23:13:48 ID:wJzdskjw0
>>377
「くくくっ、分かったなら話は早い。」
――ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!!
つかつかと少女に歩み寄りながら、
小百合は愛銃である軍用モデルのFNファイブセブンの引き金を引く。
銃の腕前は並程度だが、この距離だ。いずれ躱しきれなくなる。
「おまえはこれから地獄を知ることになるぞ……。
お前をとらえ……生きながら体のあちこちを切開してやる……。
それとも溶けた銀をその眼窩に流し込んでやろうか……。」
この近距離で貫通力に優れた専用弾を
使用するファイブセブンの弾丸を浴びてはマズい。
379
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/21(木) 23:34:22 ID:VWmNnW660
>>378
「あら?」
最初の一発は左肩に当たった。
その衝撃で左半身を引く形となり、続く二発目、三発目をそれぞれ右腕と右脇腹に食らう。
少女の鮮血が壁に飛び散り、周囲を赤く染めた。が、当の少女はそれをじっと見ているだけ。
そうしてから少しして、小百合の方をゆっくりと見やると、微かに微笑み、舞台俳優のように小百合に向かって手をさしのべて、
「おお、正義の引き金よ! 汝のなんと軽いことか!」
芝居がかった口調でそう言った。
言った、だけだ。
380
:
黒沢小百合
:2013/11/21(木) 23:56:54 ID:wJzdskjw0
>>379
「あはぁッ!!」
特殊弾が少女の肉を削ぎ、鮮血を壁にぶちまける。
蝋燭の揺らめきを受けてぬらりと光るそれをみて、小百合は喜色に富んだ
嬌声をあげた。
――ぞくり。
小百合の体が震え……。
自らの体を掻き抱くようにして、前傾姿勢をとる。
「ああぁ、たまらなぃいいぃ……。」
(くくくくくっ……くく、くひひひひ……ひひ、ひ……。)
小百合の本性――知識人きどりの仮面の下の獣性の発露。
人の殺傷に快楽を覚えるシリアルキラーの本性が完全に曝け出される。
しかしながら……。
同時に、その獣性に残骸のように絡みつく小百合の虚栄的気質が、
少女の芝居がかった口調で刺激された。
「執行されるべくして振り下ろされた刀剣を誰が簒奪の刃というのか?
この状況はまさに!まさにまさにまさにィ……罪人が頭を垂れ、
首を差し出しているのと同じではないか?誰がその首を刈り取るのに、
誹りをむけよう?」
少女を見据えていながら、虚空を見つめるトリップ状態小百合は。
それに応えるようなセリフを返しながら――。
――タンッ!!
最後の引き金を引いた。
381
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/22(金) 00:09:15 ID:VWmNnW660
>>380
歓喜に打ち震える小百合の姿を見ても、少女の微笑みは崩れない。
むしろ……欲しかった答案を提出した生徒を見る教師のような、そんな空気さえ感じさせる笑みに変わっていた。
「然り! 汝を誹る者など居ない!
汝の通った道は無人の野、無音の街道、垂れる頭の無い赤絨毯!
しかし引き金よ、忘れたか。
誹る者の無いのは、汝がそ奴らの素っ首を刎ねてまわったからだ!
喉のない声などあり得ぬのだ!」
言って、バッと手を広げ、天を仰いだ瞬間、少女の眉間に新たな穴が穿たれ、
新たな赤色が壁を彩り、少女はその大の字のまま、自らの血だまりの中に倒れた。
382
:
黒沢小百合
:2013/11/22(金) 00:24:20 ID:wJzdskjw0
>>381
「ふーっ……ふーっ……!!」
もはや、小百合に言葉はなかった。
既に舞台上には自分一人しかいなくなったのだから……。
もはや役を演じる必要はなく。
彼女はもう、ただの獣だった。
「ひ、ひひっ……!」
大の字に倒れた少女の体を踏みにじり……。
そのまま、その上に跨るように腰を下ろすと
口の中へ銃身を容赦なく突っ込んだ。
じゅう、と未だ熱を持った銃口が口内の粘膜を焼く音が聞こえる。
「あは、ははははははは……!!!」
――――タンッ!タンッ!!タンッ!!!
小百合は……その音を合図に狂ったように笑いながら、
弾丸が尽きるまで、引き金を引いた……。
383
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/27(水) 22:23:29 ID:VWmNnW660
>>382
銃弾が撃ち込まれる度に少女の頭が跳ね、周囲の血だまりはその面積を広げてゆく。
額に銃創が出来、もう死んでいるにも関わらず、小百合はその喉に銃弾を撃ち込み続けている。
その嗜虐的な行為が終わるまで、少女の亡骸には平穏は訪れない……はずだった。
「釣れたわ」
ごぽり、と泡だった血だまりからそんな声が発せられた瞬間、物言わぬ死体となり果てたはずの少女の腕が、
口に銃を突っ込んでいる小百合の腕をガッと掴んだ。
その細腕にはそぐわない、格闘家のそれのような強い膂力。それでもって小百合の腕ごと拳銃を口から出す。
と、同時に、周囲に広がっていた血が無数の人間の腕の形を成して一斉に小百合に襲いかかり、数に物を言わせて小百合を壁に押しつけに掛かった。
384
:
黒沢小百合
:2013/11/27(水) 22:56:37 ID:wJzdskjw0
「――っ!?」
小百合の恍惚の表情は一瞬にして、
強張り……混乱と恐怖の混じりに目を見開く。
ここで、とっさに腕を振りほどこうとするなり、なんらかの攻撃を叩き込むなり
すれば結果も違ったかもしれないが……。もはや死んだものと決めつけた少女に
腕をつかまれるなどという事態は小百合の想定外であった。
――ドッ!!
「ぁっ……がぅっ!!?」
乳白色のでこぼことした岩の壁に背を強く押し付けられ、
苦痛の声を漏らす小百合。直前、とっさに己の能力の媒介である『紙片』を
手に握りこもうと袖口に指をすべり込ませようとしたが、何もかも遅すぎた。
かさ、かさと音を立てて、折りたたまれた数枚のメモ書きや
羊皮紙に切れ端が地面に落ちる。
385
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/27(水) 23:10:58 ID:VWmNnW660
>>384
小百合を壁に押しつけた腕達はその力を保ったまま液体状の姿に戻り、彼女の身体を拘束する面積を増やした。
さながら磔刑となった小百合の前で、仰向けに倒れていた少女が「ふー」と息を吐きながら、何事もなかったかのように起き上がる。
額に手をやり、銃創を指でほじくり返して中に埋まっていた弾丸を引き抜き、それをぽとりと床に落とす。
そして口に手を当てて数回けほけほと咳き込んだ後、口腔に撃ち込まれて肉体に残った弾丸を吐き出すと、それも同じように落とした。
「死体で遊ぶだなんて良い趣味してるのね。まあ、それは結果的に私にとっては都合が良かったのだけれど。
小役人さん、貴女、アンデッドと戦うのは初めて?」
横目もくれずに言いながら、少女は床に落ちた紙片類に気付き、そのうちの一枚を手に取った。
折りたたまれていたそれを開いて、一通り無いように目を通す。
「ふうん、なるほど。これがチンピラやら城壁やらドーントレスの種、というわけね。
面白い力。こういうのを見たかったのよ」
くすくす、と、玩具で遊ぶような笑みを浮かべる。
386
:
黒沢小百合
:2013/11/27(水) 23:30:18 ID:wJzdskjw0
>>385
(……あれほどまでに攻撃を加えたのに……。
私では届かないのか……そんな……そんな……。)
動揺露わに揺れる小百合の瞳。
小百合はアンデッドとの戦闘経験がないわけでも、
アンデッドに対しての知識がないわけでもなかった。
全ては、相手を『なめてかかった』故の末路。
地下通路に護衛もなく入り込んできた時点で相手が個人単位でもなんらかの
能力を持つことを予想すべきであったのに、
自身の慢心、油断がその判断を曇らせたのだ。
小百合はこの状況でどうにか、『生還』の糸口を探るが……。
「は……大和の名を関するというのに、その実は
幽霊船……フライングダッチマンですか……。
どっちつかずの根なし草には、ふさわしい名前ですね。」
現状、その糸口は見つからない。
小百合は顔面を蒼白にしながら時間を稼ぐために
必死に口を動かした。
387
:
黒沢小百合
:2013/11/27(水) 23:33:55 ID:wJzdskjw0
// 途中送信!
>>386
(……あれほどまでに攻撃を加えたのに……。
私では届かないのか…………。)
動揺露わに揺れる小百合の瞳。
小百合はアンデッドとの戦闘経験がないわけでも、
アンデッドに対しての知識がないわけでもなかった。
全ては、相手を『なめてかかった』故の末路。
地下通路に護衛もなく入り込んできた時点で相手が個人単位でもなんらかの
能力を持つことを予想すべきであったのに、少女が慢心故、不用意に
この地下迷宮に足を踏み入れたと断じた『小百合自身』の慢心、油断が
この結果を招いたのだ。
(こんなところで……こんなわけのわからない小石に躓いて……。
死ぬわけにはいかない……なにか、なにか方策を……。)
小百合はこの状況でどうにか、『生還』の糸口を探るが……。
「は……大和の名を関するというのに、その実は
幽霊船……フライングダッチマンですか……。
どっちつかずの根なし草には、ふさわしい名前ですね。」
(く……く……そんな……!
なにか……なにか無いの……手段は……!)
現状、その糸口は見つからなかった。
小百合は顔面を蒼白にしながら時間を稼ぐために
必死に口を動かした。
388
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/27(水) 23:56:38 ID:VWmNnW660
>>387
「あら、その論法で行くと私の艦は沈んでる大和の残骸を使ってなければいけないと思うのだけど、残念ながらそうじゃないわ。
あの艦は新造した物よ。そうね……大体十年くらいかかったかしら。そして今の状態に持って行くまで三年。
自分の趣味に十何年かけるっていうのも、アンデッドならではの贅沢よね。成って一番良かったと思える事よ」
子供のような笑みを崩さずに、少女は言う。
その途中で顔を小百合の方に向けたが……その額にはもう銃創は残っていなかった。
「私ね、武器とか兵器とかが大好きなの。その中でも大きい大砲が特に。
いつか究極の大砲を作るのが私の夢なのだけれど、その為には色々な「力」のサンプリングが必要なの。
そのために来たのよ、この都市に。異能の坩堝たるここに。
――――貴女は、そのサンプル、第一号になるの」
小百合の顔に向けて手をさしのべる少女。
そのアップになった手の向こうに、妖しく光り始めた少女の赤い瞳。
人を捕食する際に不死者がかける、呪いの力がその光には宿っている。
霊的な保護が無ければ、意志に関係なく四肢から力が抜けてしまうことだろう。
389
:
黒沢小百合
:2013/11/28(木) 00:26:26 ID:wJzdskjw0
>>388
小百合はもはや、時間稼ぎの挑発をする余裕もなく、
拘束から脱しようと体をよじり、恐怖と、今や混乱に代わり首をもたげた
憎しみの入り混じった瞳を少女へと向ける。
「……サンプル……何を、言って――。」
しかし、ふと少女の言葉に交じった語句に小百合は意識を向けた。
この少女は何かが違う……。自分を殺そうとするでもなく、サンプルにすると言い放った。
今思えば、少女の指揮するあの艦も自分ではなく周囲の建物を狙い砲撃したりと
不可解な行動があった。
(まさか……。)
「やめて――。」
小百合がおそらく少女の考えているであろう答えにたどり着いたとき……。
赤い瞳の呪縛が、その体を包み込んだ。
小百合の黒い瞳に赤い光が反射し綺麗な薄赤に妖しく輝く……。
390
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/28(木) 00:57:16 ID:VWmNnW660
>>389
「フフ、安心して? 別にホルマリン漬けだとか、文字通りに取って食おうってわけじゃないの」
呪縛が完了し、手を下ろした少女は、呪いにかかって抵抗らしい抵抗も出来なくなっている小百合に近づく。
そうして彼女のすぐ側まで来ると、おもむろに小百合の襟に手を伸ばし、首元の着衣を緩めた。
小百合の白い喉元が露わになり、少女は笑みを強める。
「私はね、血を媒介として己の存在を世に繋ぎ止めるモノなの。
生命としては終わっているけれど、その終わった肉体を魂の容れ物とし、血液という命の欠片を燃料として動き続けるモノ……。
この都市に居る貴女なら、もう察しがつくわよね?
ええ、そうよ。私は――――ヴァンパイア、吸血鬼よ」
「まあ、成り立ちは外法の類でしょうけど」と言って、少女は笑う。
笑ってから、小百合の耳元に口を寄せて、
「そんなわけだから、今から貴女には私に喰われてもらうわ。
貴女の「力」の情報……ああ、それからこの街の案内もしてもらおうかしら。
それを今から、貴女の命に教えてもらうことにする。そうしたら、もう貴女に用事は無いから。
…………ああ、それとも噛まれて自分もアンデッドに成ることを心配してるの?
大丈夫よ、私のような裏口入学は、それなりの呪言を囁かないとそうならないようだから。
言い換えれば、私のその気一つで、貴女を私の永遠の眷属にすることも出来るってことよ。
理解したなら……じっとしていなさいね。それだけしていれば、気持ちいいだけだから…………」
そう囁くと、静かに口を開いた。
鋭く、長い犬歯が露わになり、少女の熱い吐息が小百合の首をくすぐる。
そして、その時はすぐに訪れた。
ヴァンパイアの牙が白い喉を赤く貫く。
その瞬間だけは鋭い痛みが走るだろうが……後に続くのは吸血に伴う、麻薬のそれにも似た快感だ。
391
:
黒沢小百合
:2013/11/28(木) 01:32:42 ID:wJzdskjw0
>>390
四肢の力を奪われた小百合は、もはや少女のなすがまま。
声を発することさえでき無いというのに、思考だけは奇妙に透き通っていて……。
それが、小百合にとっては地獄だった。
<<ええ、そうよ。私は――――ヴァンパイア、吸血鬼よ>>
(……あ、ああ……あぁ……。)
まるで、木霊のように脳内に目の前の少女の言葉が響く。
絶望的なまでの無力感と、これから行われるであろう行為への恐怖。
せめて、思考が鈍らされていたならどれほど楽だったか。
(嫌……嫌……嫌……。
どうして……どこで、間違えたの……。)
目の前の吸血鬼は言う。
アンデッドになる心配はない、と。
しかしながら、相手がその気になればいつでも自身を
アンデッドとすることができる、と。
それは即ち、小百合と少女の間に覆しようのない決定的な差を生じさせる、という事。
(血を吸われてはいけない、だれか、だれか――。やと――。)
「あ……。」
ふいに、小百合の思考にノイズが走る。
もう、何も考えなくともよいと、この心地よさに身を任せればよい、と。
甘く、脳髄までも蕩けてしまいそうなほど甘く、ささやくようなノイズが。
「あ、ぃ……ぁああぁ……あぁ……!」
もはや、小百合に抵抗は不可能だった。
命が零れ落ちていくような感覚に、力なく声をあげる小百合の目から
力が失われていく……。
同時に、少女へと様々な情報が流れ込んだ。
街の情報から小百合の個人的な交友関係。
都市の諸勢力についての情報に
千夜財閥関連企業の株式情報から経営機密、そして
小百合自身の様々な悪行の記憶や隠ぺいしたスキャンダルなど……。
都市の根幹部にかかわる小百合の持つ情報は、有益な物ばかり。
特に裏社会、アンダーグラウンドに関する情報の有益さは筆舌に尽くしがたい。
392
:
名も無き異能都市住民
:2013/11/29(金) 23:43:08 ID:VWmNnW660
>>391
「こう」なって以来、少女はこの瞬間が好きな時間のひとつとなっていた。
自分という「巨大な群体」に新たな命が混じり合い、影響し合い、そして、完全なる支配の裡に溶けていくこの感覚。
その新しい個に、少女は命じた。お前の全てを晒し出せ、と。
個は、支配の言葉を受けて語り始める。
どうやらこの「小役人」だと思っていた女は、千夜グループ治安維持部隊のトップだったらしい。名を黒沢小百合。
だが彼女の仕事はこの肩書きの範囲に留まらず、実質的には副社長と呼んでも差し支えが無さそうである。
全て、と命じてしまったがために、無論、後ろ暗いことも淡々と明かされてしまう。
企業の上層は清廉潔白であるべき、などという理屈を少女は振り回したりはしないが、流石にこれは黒みがかり過ぎである。
(この街にして……ってところね。思ってた、より上かも)
死なない程度に血を吸い上げた少女は、血塗られた牙を小百合の首から抜いた。
口の中に残る血の余韻を密かに舐め取り、満足そうな吐息を漏らす。
「……ふう。予想以上の収穫ね、これは。
貴女に絡まれて、来て早々運がないと思っていたけれど、これから考えたらまるでちっぽけなリスクだった、と言えるでしょうね。
ねえ、黒沢小百合さん? フフ、執念深い貴女がこれから何を考えるのかは、貴女の自由だけれど、ひとつだけ言っておくことがあるわ。
もし貴女が私への復習を考えて、「次」が起きるとしたら…………今回程度のものでは収まらない、収めてなんかやらないわ。
来るなら、貴女方の領地の地図を変える覚悟をしていらっしゃいな」
少女がパチン、と指を鳴らすと、小百合を拘束していた血の塊が霧散し、少女に流れ込んで消えた。
「ではごきげんよう、黒沢さん。
力が抜けているのはわかるけど、今はせいぜい気張りなさいな。
ここが貴女の能力で形成されていることを忘れないようにね」
くすくすと笑った少女は小百合に一礼すると、くるりと一回転、霧となってその場から消えた。
……それから少しして、湾を脱して沖に出た「大和」の汽笛が、地下都市の入り口から奥へと抜けていった。
393
:
黒沢小百合
:2013/11/30(土) 00:52:04 ID:wJzdskjw0
>>392
「あぁ……はぁ…………。
……ぁっ……く――――!!」
(ああ……きもち、いい……もう、このまま――。)
脳漿に断続的に送り込まれる麻薬的な刺激は
もはや抵抗するという思考すらできないほどに思考を完全に包み込む。
なすがまま、血を少女に吸い取られる小百合は虚ろな瞳をろうそくの明かりを
柔らかく反射する乳白色の岩の天井を見上げるばかりで……。
「――あ、ぐっ……!!」
が、あらかたの情報を引き出し終えた少女が小百合の首筋から
牙を引き抜いた途端、その心地よいヴェールは乱暴に剥ぎ取られ
停滞した思考、感情が、まるで滂沱のごとく彼女の思考を流れ込んでいく。
「……あ……あっ?」
――自然と、涙がこぼれた。
大切なものを失った現実味のない喪失感、
自身の足場がガラガラと崩れていくような、どこか上滑りしたような虚無感。
そして……恐怖。ただ純粋な恐怖。自身の終焉の恐怖。
「……え、私……なんで……。」
それらがない交ぜになった感情の濁流。
くすくす、と笑みを浮かべて去っていく少女が誰なのかすら、
小百合はその時思い出せなかった。
脳が感情を処理しきれず、現実の理解を拒否し、敗北を拒否したのだ。
しかし……そんな状況は、いつまでも続かない。
少女が立ち去ってからおおよそ、半時間ほどの後だろうか。
港湾地区、倉庫街のあった焼野原にぽっかりと空いた地下道に、
絶望に彩られた悲鳴が木霊したのは……。
394
:
レラ=バニッシュ
:2014/03/09(日) 22:45:45 ID:962vggZc0
「……さて、コイツはどうするか」
夜の公園、人通りはほぼ無く閑散としていた。
むしろ、こんな時間でも疎らとはいえ人の姿が見えるのは異能都市らしいと言えるのだろう。
そのある種相応しい人間の一人、蒼髪の少女はベンチに腰かけていた。
彼女の視界には他の誰かは映って居ない。背もたれの緩やかなベンチに存分に背を預ける形は正面は捉えておらず。
代わりにある物と言えば封書とそれを持つ彼女の手。
それらを訝しげに眺め何やら考える仕草をそていたのである。
395
:
白月 月夜
:2014/03/09(日) 23:02:15 ID:dL8H4NjE0
>>394
『試しに第三者に見せてみる、というのはどうでしょう』
左からかけられる電子音声。そちら見たならば、封書を興味深そうに見つめる黒髪の少女が視界に入るだろう。
「こんばんは」
月夜はにこりと笑ってレラに近づく。
左手には携帯端末が握られている。先程の音声の元はこれだ。
「お久しぶりです……覚えてます?」
396
:
レラ=バニッシュ
:2014/03/09(日) 23:20:30 ID:962vggZc0
>>395
聞こえてきた声に振り向き、声の主……では無くその所有者を目にする。
が、だからと言って好意的なリアクションは無く表情は変化を見せない。薄情な人間である。
「別に見られて困る物でもない。見たいと言うなら見るがいい」
そうして差し出した一通の封書は少々物珍しいものだった。
既にレラによってその封は意味を為さなくなっているが、留める役割を担っていたのは封蝋だ。
全てにおいて……当然物流においても発達しうる異能都市において封蝋を扱うのは物好きのみだろうというぐらいに使うメリットは薄い。
そもそも、その封蝋以外に封書の外側には何も手が加えられていない。宛名や差出人の名前すらもだ。
「中には一枚のトランプとデータメモリ。随分と時代が交錯しているな」
封蝋とトランプといい時代を感じさせる者と共に同封されていたというデータメモリを差し出す。
一般普通に市販されたデータメモリで端の方には小さく「32GB」とプリントされていた。
397
:
白月 月夜
:2014/03/09(日) 23:30:35 ID:dL8H4NjE0
>>396
「……不気味ですね」
中身を見た月夜は眉を潜めてそう一言呟いた。
てっきり手紙でも入っているものだと思っていたら、渡されたのは一本のデータメモリ。
時代錯誤な手紙の中に同封されていると、果たしてどちらが異質なのかわからなくなってくる。
「データの中身は確認しましたか?」
ガサゴソとポーチの中を探り、携帯端末用の外部端子を取り出す。
答えの是非に関わらず、中身を覗く気満々である。もちろん静止があれば止めるだろうが……
398
:
レラ=バニッシュ
:2014/03/09(日) 23:51:00 ID:962vggZc0
>>397
中を覗くのを止めはしない。
レラの第一声にはデータメモリについても含まれていたのだろう。
相変わらず少女は脚を組みふんぞり返るようにしてベンチに腰かけていたが、横にずれて月夜が座れるだけのスペースを開ける。
「中身も含めてその一言に尽きる」
データメモリの中に含まれていたファイルは唯の一つ。
複数ページを纏める事が出来るフォーマットデータのみだったが、データ容量の限界近くを占めていた。
中身を見てみれば、機械にある程度知識を持つ月夜ならば中身を察することが出来るだろう、設計図だった。
所々に奇妙な図形や略語らしき言葉が見られるものの、それが人が乗り込めるほどの大型な物の、攻撃手段の用意された機械。所謂兵器の物であるとは解るだろう。
399
:
白月 月夜
:2014/03/10(月) 00:10:17 ID:dL8H4NjE0
>>398
レラの隣に座り、メモリと端末を接続する。
まず限界ギリギリまで詰め込まれたデータ量に驚き、データの中身にまた驚く。
『設計図……有人の兵器ですか、それもかなり大掛かりな』
「ますます訳がわかりませんね、封を見る限り企業だとかの商業的なものでもないでしょうし」
そもそも設計図だけをレラという個人に送ってくるというのが奇妙な話だ。
兵器を完成させたいならば、設計図がある以上あとはその材料を用意するだけでいい。
非合法なものでも金さえ貰えば何でも作るような奴らだってごまんといるだろう。
「……心辺りとかは?」
一旦画面から目を離し、目についた一枚のトランプを手で弄りながら問いかける。
400
:
レラ=バニッシュ
:2014/03/10(月) 00:33:13 ID:962vggZc0
>>399
「無いな、だからこそだ」
心当たりがあるなら既にコンタクトを取っている、あるいはアプローチを掛けたりするだろう。
他人の都合を考えないだろうレラならあたりが付いた途端に即座に。といった具合に。
それがヒント含め皆無だからこそ、少女はこうやって身を投げ出して居たのだ。
トランプというあからさまに容易されたヒントがあるにもかかわらず。
ハートのエース。紙面に大きくハート一つが描かれたトランプ。
「……そいつをどう思う」
そいつ。とはトランプでは無くデータに描かれた兵器の事を差すのだろう。
武器が付いているから兵器。とは言ったものの、これも随分と奇妙な物であった。
人が乗れる浮遊するコックピットに尾にも似たパーツが取り付けられただけの簡素な本体。
それに付随する機銃は取り外し可能で手に持つ事も可能。完成図を想像すれば恐らくそれだけの代物。兵器ではあるが兵器と呼ぶのは幅かられるそんな物だ。
然し、そんなシンプルな完成図とは別の、内部構造……とくに制御機構に対する記述が膨大。
要求されるスペックは並の人間ではもちろん、企業にいくらの金を積んでも実現できそうにない高さだ。
コンパクトさとそのスペックを両立できるのは個人で高い技術力を持つレラに当たるのは確かに妥当だと言えるのだろうか。
401
:
白月 月夜
:2014/03/10(月) 01:00:56 ID:dL8H4NjE0
>>400
「正直に言って、意味不明です。明らかにデータの釣り合いが取れてない。
詳しく見ればまた違うかもしれませんが、パッと見だとこの膨大な記述が一体なぜ必要なのかさえさっぱりです」
お手上げだとでも言うように月夜は首を横に振る。
こんなことならPCの方も持ち歩いておけばよかったと若干後悔する。
「今のところ考えられるのはこれを使って何か別のものを制御するとかそんな感じでしょうか。
それの作成は他の所へ依頼して、後でこれと繋げる、とか」
とりあえず思い付いたことを口に出す。
当てずっぽうでしかないのでアテにはならないだろうがとりあえず、といった感じだ。
「なんにせよ、ロクな物じゃなさそうな気がしますね。当たり前ですけど
向こうの何もかもがわからない以上、見なかったことにしてしまうのが最適だと思います」
端子からメモリを引き抜いてレラに返す。
「まあ、いずれにせよ何か協力できることがあれば何でも言ってください。それでは」
月夜は端末を仕舞って立ち上がり、レラに一礼するとその場を立ち去った。
//時間的にここら辺で〆でお願いします
//絡みありがとうございました!
402
:
レラ=バニッシュ
:2014/03/10(月) 01:16:17 ID:962vggZc0
>>401
メモリを受け取ると去っていく月夜にその手を軽く振って。
「フン、お前がよく僕に物を言う気になったものだ」
忠告を聞く気がまるでない。
かと言って設計図を実現させるのに乗り気では無さそうだが捨てる気は無いらしい。
「お前の話も忘れていないぞ」
そう、背中に声をかけると視線は再びデータメモリの方へ。
暫くしてからぽつりと一人で。
「むしろそれじゃ無かったのか……唯の通りすがりか」
//お疲れ様でした!
403
:
アイリス
:2014/04/01(火) 00:32:38 ID:trACuJLY0
【路地裏】
―――ドクン…
その時心臓が高鳴った。
繁華街から路地裏といっても、繁華街から近い場所へとルートを変えた。
ギリギリと万力で頭を締め付けられているかのような、頭痛がする。
――-頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。
何も考えられないほど、頭が痛い。魔眼が制御できない。
その原因は魔眼にあるのだが、何故こうなったといった思考は今のアイリスには持てない。
視界に広がる線線線。どこもかしこも絶対に視界に入ってくる線。
その線は全ての物の脆弱性を示すかのように無数に走る。
それらは線と云う名の自身の欠落を晒す。それらは無数にあり、それらが更にアイリスの頭痛を酷くする。
「くっ―――はぁっ………」
肩で息をしながら、古いコンクリート製のボロボロのマンションの壁を背凭れとし自身の手で目を隠す。
指の隙間、水溜まりから見た自身は、双眸が爛々と輝きを増していた。
そうしてわかったのは、自身の魔眼が開きっぱなしであると言う点。
――頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。
――頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。
相変わらず痛みでギリギリと頭を締め付ける痛み。それに呼応するかのように魔眼が輝きを増す。
線は視界に溢れる。更に増えていく。夜という要因もあるかもしれないが、アイリスは気づかない。
先日の来訪者より貰った血液が自身を活性化させてしまった可能性にアイリスは気づかない。
アイリスにとって暴走とも思える制御不可の魔眼は痛みをアイリスに返し、思考を許さない。
痛みによるストレスで何かに当たれば、それは壊れる。
ヒト・モノ関係なく壊れる。それらはアイリスが通過した道で起きていた。
発せられる異様な雰囲気に誰もアイリスに近づかない。
居場所を変えるために移動しようとしてマンションの壁に手を当てれば、音も無くズレた。
崩れ崩落することは無かったものの、それでも致命的なダメージを与えていた。
幸いにも人が住むほどのマンションでは無く、近々取り壊しが決まっていたもので問題はないが……
魔眼が齎す痛みは
――頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。
――頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。頭が痛い。
確実にアイリスを蝕んでいた。
フラリとした足取りながらも、アイリスは路地裏へとゆっくり進んでいく。
404
:
山守 順 >>641ここであってますか?
:2014/04/06(日) 00:36:26 ID:1xEj7iOw0
>>640
(楽園とか……嘘じゃん)
軽い絶望の顔。
この状況ではなく、こんな状況を生み出す街に軽い恐怖すら感じていた。
警棒、ナイフ、改造拳銃をもう一度見渡すと、自分の身に危険が迫っていることを実感。
そして、
「た、大変だ!あっちから火星人が攻めてきた!僕なんかに構ってないで、早く逃げないと殺されるぞ!」
滅茶苦茶な嘘をつく。
嘘だとわかりきってしまうような嘘だが、今は絶対にばれないだろう、彼は“狼少年”の能力を使っていた。
405
:
黒沢小百合
:2014/04/06(日) 01:01:38 ID:wJzdskjw0
>>404
「な!?」
「ヤベェぞ、どこからくるんだ!?」
「クソ!隠れろォ!!」
まるで、コメディのような状況だった。
チンピラのたちは近くのゴミ箱や電柱の陰に転がる様に隠れ
空を見上げながら、必死にいもしないか星人の姿を探している。
狼少年の能力によって彼らは山守の嘘を信じたのだ。
個の隙に乗じて逃げるなり、攻撃するなりいかようにも手は打てるだろう。
406
:
山守 順
:2014/04/06(日) 01:09:41 ID:1xEj7iOw0
>>405
嘘は嘘のままで。
大爆笑など、してはいけない。
僅かに震える口元を隠すように、帽子を目深に被り直すとその場を去って行く。
しばらくすると、能力の効果は切れ、嘘であると分かるだろう。
彼等は騙されたと憤慨するのか、それともありえない大嘘に呆然とするのか。
「まあ、そんなことどうでもいいけどさ」
恐らく、一度きりの縁だろう。
「何処へ行こうかな…もっと安全で、面白そうな方向に行こうかな、ここは広いし。」
適当に歩いているが、偶然にも街の中心部へと近づいていた。
407
:
名も無き異能都市住民
:2014/04/06(日) 01:24:05 ID:wJzdskjw0
>>406
その後、山守は問題なく中心地へとたどり着くことができた。
この近辺には都市を訪れた人向けのインフォメーションセンターや
各種手続きを行える行政機関、大企業もオフィスビル、大型ショッピングモールなどが
立ち並び、治安も先ほどの場所とは比べるべくもない。
ここをうろついていれば、どこかしらの宿屋や
ホステルを紹介してもらえる人やサービスに出会えるだろう。
……もう、関係ないことかもしれないが。
後日、あのチンピラに絡まれたストリート一帯に『手配書』がまかれた。
手配書と言っても公的機関の発行する者ではなく、その一帯のストリートギャングが
作った、敵対しているギャングなどを仕留めた物にいくらかの金を出す、といったふうな
ものだが……。
その手配書に『黒い帽子の人物』が追加されていたのだった。
// 時間も遅くなってきたのでこれにて〆。
408
:
山守 順
:2014/04/06(日) 01:30:00 ID:1xEj7iOw0
>>407
「ここかな?なんだかたくさんあって、面白そうな所だなあ…」
大きく伸びをしながら喜びの声をあげる不審者に、街の人々は奇異の眼を向ける。
「腹減ったなあ…何か食べにいこうっと」
呑気に街をうろつく青年。
手配書が撒かれることになるなど、考えもしていなかった……
/絡んでくださってありがとうございました。それではまた
409
:
山守 順
:2014/04/06(日) 21:51:57 ID:1xEj7iOw0
ここはかなり広い街らしい。
そして、楽園かどうかはともかく、少し妙な街らしい。
「……仕事、探さなきゃなあ」
自分は流れ者。持ち金だっていつか尽きるし、一日二回の食い逃げではやっていけないだろう。
「どうするか………」
などと思案しつつ、適当に歩く。
「まずは様相を整えるか…それとも……」
410
:
名も無き異能都市住民
:2014/04/06(日) 22:39:39 ID:wJzdskjw0
>>409
――がたがた。
木の車輪と、アスファルトの擦れる古めかしい音。
腹を空かせた狼から数m前の路地から、ロバに引かれた荷車がのんびりと顔を出した。
荷台には傘や鍋、ランプのような雑貨、原色をした飴やガムなどの駄菓子が、
乱雑に並べられている。
……そのロバの手綱を繰るのはできものだらけの赤褐色の肌に長い耳、
大きな鷲鼻のゴブリン。様々な世界から人々がやってくるこの都市では、人間だけでなく、
こうしていくつもの種族がともに生活をしているのだ。
小腹を満たす程度の駄菓子なら山守の手持ちでも問題なく買えるし、
耳聡い商人の事、それとなく都市の事を聞きだせれば仕事の口やこの都市で
生活するうえでのヒントをつかむことができるかもしれない。
411
:
山守 順
:2014/04/06(日) 22:47:54 ID:1xEj7iOw0
>>410
「ん……?」
がたがた、と音の鳴る方へ目を向けると、そこにはロバに引かれた荷台と商品達。
そして、それらを従えるゴブリン。
「ゴブリン…そっか、ここでは珍しいわけじゃないもんな」
狼はフラフラと商品へと引き寄せられ…
「あの、これ、ください」
………負け犬らしく、丁寧に品を頼んだ。
「あの…この都市の、どちらからいらっしゃったんで?」
412
:
欠け耳のボロッブ
:2014/04/06(日) 23:15:53 ID:wJzdskjw0
>>411
「おんや、はいはいそりゃあ銅貨1枚さね。
共通貨幣なら2でいいよ。」
ゴブリンは山守の声に馬車を止めると、気さくな声で返す。
その返答にも、この都市の文化の多様さが見て取れた。どうやら、
この都市では一つではなく、いくつかの貨幣が流通しているようだ。
「あん?おいらかね?おいらは……ファンタジー区画って呼ばれてるとこさよ。
中央区画近くの――ってえとこだ。そんなこと聞くっちゅうことは、あんたこの街に
まだなれてねえなあ。」
413
:
山守
:2014/04/06(日) 23:24:05 ID:1xEj7iOw0
>>412
「ほい、銅貨一枚」
「共通貨幣?そんなものが……そういえばあったなあ、この前ゴミ溜めから拾った」
ほい、とポケットから自慢げにボロボロの共通貨幣を一枚取り出す。惨めだ。
「ファンタジー区画?面白そうな場所、今度行ってみるか……」
というと、そちらの方向に目を向け、またすぐにゴブリン、そして商品達へと目を移す。
特徴があるわけでもない。ただ、何と無く印象に残る…夢にでもでてきそうな顔、目。黒い帽子がなければ、或いはもっと鮮烈な印象を与えていたのではないか。
「そうそう、当たりですよゴブリンさん、僕は新参者」
「そんな僕に…何かオススメの、面白そうなものあります?」
414
:
欠け耳のボロッブ
:2014/04/06(日) 23:37:19 ID:wJzdskjw0
>>413
「そうさなあ、観光にしろ移り住んできたにしろ、
まあ、これかねえ。ほい。お代は銅貨10枚いんや……8枚でええよ。」
そういってゴブリンの商人――ボロッブが雑貨の山から取り出したのは、
一枚の地図だった。砂やらススで汚れてはいるが、どうやらこの都市の中心部の
地図であるらしい。
「……この都市の中心部当たりの地図でよぉ。
魔法仕掛けで、定期的に地図が最新のに書き換わるんさね。
『歪み』の場所とかもばっちりよ。」
415
:
山守 順
:2014/04/06(日) 23:46:37 ID:1xEj7iOw0
>>414
「んまあ…色々ありましてね」
銅貨8枚を取り出すと地図を受け取る。
成る程、なかなかに面倒な街である。地図は必須だろう。
「ありがとう、感謝しますゴブリンさん」
「これがあったらなあ…もう、あんな変なやくざに絡まれることはない……のかな?」
ふと、さらっと言われた妙なワードをとらえる。
「歪み?……それって、もしかして街の中の位置が入れ替わってたりするやつ……?魔法仕掛けで看破できんの……?」
本当に、知らないらしい。
416
:
欠け耳のボロッブ
:2014/04/06(日) 23:59:42 ID:wJzdskjw0
>>415
「そそ、大抵は通行人が別の場所に飛ばされるくれえだが、
ひでえ時には区画ごと場所が入れ替わっちまう。厄介なモンだよ。」
代金を受け取ったのち、なんで分かるのか詳しい理屈はようわからん、
と付け加えてからそれを山守に手渡す。
「ま、これでスラムやら人気のねえ路地裏やらにはいらにゃあ、
よっぽどのことがなけりゃあフツーにくらせるよォ。そいつにゃあ、
区役所とか換金所とかいくらかの便利施設の場所も乗ってるから参考にしなぁ。」
417
:
山守 順
:2014/04/07(月) 00:07:51 ID:1xEj7iOw0
>>416
「あれ歪みっていうのか…」
区画ごと場所が入れ替わる時もある。まあ、笑える災害、といったところか。
ようわからん、という返答に、成る程やはり商人だと納得。
「ふふん…フツーにくらせる、か…」
普通に暮らす。素晴らしいことではあるのだが…面白くは、ないだろう。
「便利施設もいいけど………ゴブリンさん、スラムってどんなとこかな?」
行ってみたいんだよね、と言わんばかりの語調。
この男、未だに懲りていないようだ。
418
:
欠け耳のボロッブ
:2014/04/07(月) 00:16:57 ID:wJzdskjw0
>>417
「命が要らんならいきゃあええよ。
迷い込んだっきり……なんてなあ訳ある話さね。
警察やら、大手の傭兵派遣会社やらが大きなスラムを定期的に『掃除』しちゃあ
いるがあ、あんまり効果があるたあ思えんなあ。」
この都市は治安のよい場所、悪い場所の差があまりにも大きい。
分別をわきまえ、都市に点在するスラムに近づかなければそれなりに平和な生活が
おくれるが、一歩裏通りに入ればこの前のチンピラたちのように、どこから
弱者を食い物にしようとする者たちの魔手が襲い掛かるか分からないのだ。
「この辺だとクニナシ地区とか……B4号スラムって呼ばれる場所にゃあ、
入らんこったね。無事に出てこられても、なんかやばいやつらとつるんでると
おもわれちゃあたまらんでよオ。」
419
:
山守 順
:2014/04/07(月) 00:25:57 ID:1xEj7iOw0
>>418
「そ、掃除て…」
おぞましい響きに息をのむ。悪党を、まるでゴミのように言い捨てている。
そして、そんなことを顔色を変えずに言ってしまうゴブリンにも。
「クニナシ地区……ふむふむ、そこには入らなきゃいいんだな」
流石に、危なすぎる所には入りたくない。ちょっと危険で、普通ではない所を探そう。そんな甘えた考えが、このビビりの出した結論であった。
“やばい奴らとつるんでいる”、このワードを聞いた途端に目の前のゴブリンを見かえす。
種族か、容姿か、職業か。
まあ、偏見であることは間違いない。
「あ!警備会社で思い出した!仕事探さなきゃ!」
420
:
欠け耳のボロッブ
:2014/04/07(月) 00:44:23 ID:wJzdskjw0
>>419
おそらく、山守も遠からずして慣れるだろう。
この都市では銃声やらは日常茶飯事。1〜2ブロック先で銃声が聞こえたくらいでは
驚かずに日常生活を続ける住人がいる程なのだ。
「ほんとにあんた、この都市にきたばっかりなんだなあ。
とりあえずそういうのも、その地図に多少は書いて有るでよ。
冒険者とか魔術師とかの働き口なら、ギルドとかにいってみるとええだね。」
かくいうボロッブも商人ギルド所属のれっきとした商人。
この都市では中世ヨーロッパのように、ギルドなども存在しているらしい。
「っとと、申し訳ねえがお客さん。おいらはそろそろ次の取引があるでな。
ここいらでちょっくら失礼させてもらうよ。しごと、見つかるとええだね。」
――がたごと。
ボロッブはそういうと、手綱でロバに合図を送り再び馬車を走らせ始め。
去り際に、帽子をとってあいさつするとそのままいずこかへと消えていった。
// 〆
421
:
山守 順
:2014/04/07(月) 00:49:30 ID:1xEj7iOw0
>>420
「へいへい、本当にきたばっかなんですよー……と」
「ギルドか、ふむふむ…」
地図を見返し、数点見つける。
次はここへ行ってみよう。随分と奇妙な都市じゃないか。
去り行く商人に、一礼。
/ありがとうございました、こちらもしめます。
422
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/08(日) 22:35:12 ID:iJFVkjX.0
「……えーとエール酒と木炭それぞれ5箱、
ほいよっと、これで全部かねえ。」
今回ボロッブが商品を届けにやってきたのは都市からやや離れた場所。
山岳地帯の膝元に広がる森の中の小さな集落だった。
小さいとはいえ、都市の林業関係者の宿場として使われるこの集落には
宿屋があり、そこで使われる消耗品などをおろしにやってきたのだ。
「んぬぬっ!」
全ての商品を宿屋の物置にしまい、腰を抑えながら伸びをする。
この辺りは土地がこえており、薬草などもよく取れると聞く。都市に戻る前に一つ、
それらを採集するべく、ボロッブは山へと入っていく。
423
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/10(火) 23:07:37 ID:iJFVkjX.0
……山に分け入ったボロッブは、その日魔術触媒となるいくつかの香草や
傷薬の原料といった様々な野草山菜の類を収穫したのだが、予想以上に興が入り、
夜を迎えてしまったため、ボロッブは猟師などが利用する山小屋に一泊する羽目になった。
「ほふほふ、こんなところかねえ。
ちょいと手間がかかったが。」
山小屋に備蓄してあった薪で火をおこし、適当に料理をこしらえる。
適当と言っても、食べられる山菜の類と手持ちの固形スープの素での汁と、
ついでにしかけておいた罠にひっかかった野兎をさばいて、丸ごと焼いたものとかなり
豪勢である。
424
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/10(火) 23:28:35 ID:42w/T/CE0
>>423
「こ、こんばんはー」
数度のノックの後、開かれる山小屋の扉。
気弱げな挨拶を投げたのは、橙と青の二色の目立つ衣装の少女だった。
扉に手を掛けていた方の腕にはカゴが掛けられて、逆の手には奇妙な杖。
狩りや、登山では無さそうだ。そもそも、こういう場所に縁がなく見える。
「だれかいるのかな……あれ?
……くんくんくん。おいしそうなにおいがするよ」
山小屋に充満する食事の匂いに気が付いたのか、鼻を鳴らして訴えていた。
425
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/10(火) 23:32:47 ID:iJFVkjX.0
>>424
「おやおやこんばんは、どうしたんだい。
見るところ、山菜取りという感じではなさそうだが。」
山小屋の中では大きなリュックサックを背負った小鬼。
おとぎ話にでてくる悪役のそれとは違い、なんとも人の良さそうな笑みを浮かべており、
火掻き棒がわりの木の枝で、真っ赤に焼けた炭をつっつき火の様子を見ている。
小鬼は少女の風体を見て、山菜取りではないと判断したようだ。
迷子だろうか……。
426
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/10(火) 23:56:00 ID:42w/T/CE0
>>425
「こんばん……わぁっ!」
匂いのする方に顔を向けた頃、丁度声を掛けられる。
突然上がった大きな声は、小鬼に向けられる興味の瞳を見れば、そういった種族に経験が薄いための反応だとわかるだろう。
ぽかりと開いた口に、手のひらで蓋をしてじっと眺めていたが、はっ、と我に返って近寄って行った。
小鬼の近くに酔って行くと腰を下ろし、持っていたカゴを向ける。
中には薬草を始めとした植物や、鉱石などが詰まっていた。
「やまに『そざい』をとりにきたんですよ」
快活に語る少女のカゴの中には、『素材』以外に『アイテム』も入っていた。
行商を営むボロッブなら『錬金術』についての知識もあるだろうか。少女が持っていたのはそれだ。
カゴの中には、デザインに少女らしいアレンジが反映されていたが、基本の攻撃アイテムである火属性の爆弾『フラム』が数本入っていた。
427
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/11(水) 00:05:35 ID:iJFVkjX.0
>>426
「おやあ、お嬢さんもかね。
じつはあっしもでねえ。どうだい、目当てのモンはとれなさったかね。」
ボロッブはポケットからはみ出さんばかりに詰め込まれた薬草をオーレリアに見せて。
このあたりは土地がこえており、様々な薬草や山菜をとることができるため、種類も多種多様だ。
「ほうほう、こりゃあよう採ったなあ。
おんや、こいつはマジックアイテムかね。」
フラムをひょいと摘み上げてしげしげ。
恐らく自作であろうそれだが、ボロッブの眼から見てもなかなかに完成度が良い。
428
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/11(水) 00:46:08 ID:42w/T/CE0
>>427
「はい!
これだけあれば、しばらくはだいじょうぶそうです」
カゴから溢れんばかりの素材。
植物一つにとっても、ただの草から良質な薬草、果実まで様々な種類を採っていた。
「えっと、そうです。
それは『フラム』っていって、『れんきんじゅつ』のきそになるアイテムなんです―――」
導火線らしい物がてっぺんから伸びた筒状のシルエット。
ダイナマイトにも似た『フラム』は、やはり爆弾らしく、お手製の物と思われる爆弾のイラストが描かれていた。
そこまで口にして、少女は「あっ」と小さく口にした。
傍らに置いていた物珍しい形の杖―――先端に星のようなオブジェのついた物―――を手にすると、
纏う、魔法少女ライクな、腰の大きなリボンが特徴的な愛らしい衣装と一緒に見せつけた。
「わたし、『れんきんじゅつし』なんです!」
429
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/11(水) 22:01:03 ID:iJFVkjX.0
>>428
少女がフラムと呼ぶそれは、ボロッブにとって初めて見た物だった。
ボロッブも自身でマジックアイテムを扱う関係上、そうした心得は身に着けているのだが、
無数の世界から技術が流れ込んでくるこの都市では、それこそ技術体系も星の数ほど
存在するため、こうしたケースは珍しくない。
「ほうほう、錬金術師なあ。お嬢ちゃんはどこかのギルドかなにかに入っているのかえ。」
ボロッブは自身が商人ギルドの一員ということもあり、
少女もそうした一員なのかと気になったのだ。
「ああ、それとだなあ。
これをひとつもらってもええかい。ちょいとはじめてみるもんだから、詳しく調べてみてえでよ。」
430
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/11(水) 22:36:25 ID:42w/T/CE0
>>429
「ぎるど……?」
ボロッブの見たてどおり、自立した錬金術師はギルドに入る事も多い。
しかし、少女自身は正しく言えば錬金術師見習い。まだ学校に通う身である。
ギルドに馴染みはまだないが、授業家庭の中で聞いたことが在る言葉だった。
「あっ、いまはまだ、がっこうにかよっているんです! そつぎょうしてからは、よくかんがえてないですけど……」
ギルドに入って仕事をこなす錬金術師も多いが、アトリエを構え生計を立てる者もいる。
一口に錬金術師と言っても、道具を作り売る商人のような者や、冒険者として活躍している者もいる。
「いいですよ! いっぱありますし……ほら!」
そう言ってカゴとは別のポーチからも、フラムが数本。
爆薬を大量に持ち歩くのはアレだが、これも山菜取りの備えの内なのだろうか……。
431
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/11(水) 23:01:49 ID:iJFVkjX.0
>>430
「おおよ、同業者の集まりさね。
錬金術師ギルドは『金の穂ギルド』、『豊穣の女神』、『黒鉄斧団』とか、
メジャーどころは多いから一回行ってみるのもてだねえ。」
ボロッブは取引の中で知った、都市の大きな錬金術師ギルドの名前をいくつか挙げた。
学校に通っているとはいえ、錬金術師の端くれであればどれかの名前は聞いたことがあるだろう。
「おうおう、すまんねえ。代わりといっちゃあなんだが、
もし腹が減ってるんならば、この飯をたんとくってけなあ。」
手の上でフラムをころがし、ポケットに入れる。
この周辺は猛獣の類は出ないが、それでも治安の悪いこの都市の事
備えは怠れるものではない。
432
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/11(水) 23:39:23 ID:42w/T/CE0
>>431
「わたしなんかがいってもいいのかなぁ」
有名ギルドともなれば、学校で話しも出る程の知名度になる。
そう言う場所に見習いが足を運んでも良いのだろうか。と首を傾げている。
「いいんですか?
あるきまわったせいかおなかペコペコで……」
少女の荷物はカゴと杖、それとポーチだけで随分と軽装だったが、カゴに溢れるほどの材料を集めるには時間と労力を掛けた筈だ。
それに加え少女は身体の線が細く、山菜とりは重荷にだっただろう。
改めてボロッブと料理に一歩近づいて腰を下ろすと、ポーチからラップに包まれたパンを取り出した。
食パン一斤ほどの大きなパンの、半分千切るとボロッブに差し出す。
「しゃあ、これ、たべてください! わたしがれんきんじゅつでつくったパンです!」
433
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/11(水) 23:52:59 ID:iJFVkjX.0
>>432
「大手のとこはだいたいいいんでないかな。ギルドは相互扶助組織の役目ももっとるからなあ。
登録すりゃあ、簡単な依頼くらいなら回してくれるかもしれねえぞ。」
最も代表的な例が冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドでは冒険者たちに依頼を斡旋するほか、常宿となる宿の紹介や
遺跡等で手に入れたアイテムの鑑定人仲介などさまざまなサービスを行っている。
大手の錬金術師ギルドともなれば、そのあたりのサービスも充実しているだろうし、
見学の類をすることも可能だろう。
「おうおう、こりゃあええでな。ビスケットよかパンが好きでなあ。」
ボロッブは例の山菜汁に保存食の固焼きビスケットを浸して柔らかくして食べていたのだが、
どうにも味がなくしょんぼりしていたのだった。同様に、パンをスープに浸して食べる……。
434
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/12(木) 00:13:02 ID:42w/T/CE0
>>433
「な、なるほどです……。
こんどけんがくだけでもいってこようかな?」
ボロッブの言葉に前向きな検討を示す。
後日、見学に行くが人の多さにくたくたになって帰ってくるのはまた別のお話。
「はふはふ。おりょうりもおいしいです〜」
山菜汁を啜ると、頬に手を当てて一層の笑みを浮かべる。
続けてふわふわのパンを口に頬張れば、ほのかな甘みが口に広がる。
435
:
欠け耳のボロッブ
:2014/06/12(木) 00:26:20 ID:iJFVkjX.0
>>434
「採れたてのものを捌いたからなあ。
そういうのは何を食ってもうまいものよ!」
焼けた野兎の肉をサメの歯を加工して作ったナイフで削ぎ、差し出す。
味付けは塩だけだが、下処理は行っており野性味のある味が楽しめるだろう。
「こっちのパンもうめえなあ。錬金術で作ったといってたか。
そういあ、わけえ頃にどこだったか……いったくににゃあ、材料を入れるだけで
料理ができる魔法の釜のおとぎばなしがあったかな。」
それももしかすると、錬金術か何かが形を変えておとぎ話になったのだろうか、
とボロッブは思案を巡らせる。そんなこんなで、山の夜はゆっくりと過ぎていくのだった。
// こんなかんじで〆でいいかな?
436
:
オーレリア=グラムハイト
:2014/06/12(木) 00:35:39 ID:42w/T/CE0
>>435
//OKです! ありがとうございました!
437
:
黒沢小百合
:2014/07/28(月) 22:44:01 ID:iJFVkjX.0
【AGカフェ】
軽快なジャズの旋律が響くカフェのカウンター。
その定位置に腰かけた小百合の表情は、BGMとはうって変わってふつふつと
煮えたぎるような怒りの感情に満ちていた。
「――っ……。」
少し離れた場所の角砂糖入れに手を伸ばした瞬間、
顔をしかめ反射的にわき腹に手をやる。
――実は、小百合は数日前に不覚をとりわき腹を軽く負傷していたのだ。
もちろん、実行犯は小百合の反撃によって文字通り『ミンチ以下』になったが、
それでも小百合の怒りは完全に収まっていないのだ。
彼女は気分転換を兼ね、カフェに顔を出したのだが爆発寸前のダイナマイトに近づきたがる
人間はいない。他の客は小百合の怒りのはけ口にされるのを恐れ皆逃げてしまった。
438
:
黒沢小百合
:2014/12/26(金) 22:56:27 ID:9nrcReK60
地下暗黒街、闘技場――。
興奮、狂気、喜悦、絶望、殺意、恐怖、混沌……。
観客、そして闘士の様々な感情のサラダボウルを見下ろす位置に特設のVIPルームがあることは、
この暗黒街を利用するものたちに広く知られている。
そこには、通常の観客席のように下品なヤジや過激な声援を飛ばす者などおらず、
天井から下界を見下ろす神の様に窓から見下ろすか、あるいは見やすいよう工夫された
ホログラフィック投影の闘技場全体図を眺め、時折話のネタにしながらの密談や会食が行われており、
いわば、裏社会の社交場的な空間となっていた。
大物マフィアのドンや非合法取引に手を染める商人、怪しげな富豪から
未だ年若いというのに上等な衣服に身を包み両手に女を侍らせる異能者らしき男、
そんな裏社会の住人の中に千夜グループの若き才女、黒沢小百合の姿も当然のごとくあった。
「まったく、最近はこの闘技場のレベルも落ちているな。
この私の部下に反抗的な者が幾人かいる。それらをここに投げ込んでみるのも面白いか。」
小百合はちょうど、何かの取引が終わった後らしくグルジア産のワインを楽しみながら
『下』の様子を見て暇をつぶしているようだった。取引がうまく行ったのか期限はそれなりに良いようで、
時折、含み笑いのような笑みがこぼれるのが分かる。
439
:
リイス
:2014/12/26(金) 23:26:18 ID:AuHxtwKM0
>>438
「そうですね、本人達は必死なのでしょうけど、見ていて何も得られないような試合ばかり、少し退屈を覚えますよね」
「……っと、突然失礼しました、黒沢小百合さん、私の事は記憶に……有りますかね?」
独り言のつもりだっただろう言葉に返される同意の言葉、それは、この場に似つかわしくないような、それでいて酷く親和しているような、奇妙な少女の声色で。
もしかしたら、小百合の記憶にはこの声が記憶に残っているかもしれない、だとしたら、恐らくそれはシュルツ商会との取引の時にだろう。
その少女は、こんな場所でありながら護衛の一つもなく、まるで住宅街の小綺麗な公園で一休みするように、端の方の席に小さく腰掛けていた。
が、小百合なら―――場数を踏んだ戦士なら気付けるだろう、その様子は見せ掛けだけのものだ、と。
440
:
黒沢小百合
:2014/12/26(金) 23:51:07 ID:9nrcReK60
>>439
「ん……おや、これはシュルツ商会の御令嬢……、
リィスさんでしたか。お父上とはいくつかの共同事業をさせていただいていますし、
幾度か、取引の際にあなたともお会いしていますね?」
小百合は穏やかな笑みを浮かべて、どうぞという風に自身の前の席を掌で示して。
「ちょうど取引が終わり、次の予定も今日はありませんから少し退屈していたのですよ。
之も何かの縁ですし、よければ少し話し相手をしていただけませんか?貴方のような優れた
戦闘者と話をするのはいろいろと糧になりますから。」
その所作の端々からリィスの実力を見抜いた小百合は、
話をしてみよう、という気になったのかうわさに聞く冷血さとは裏腹の微笑で答えて見せる。
もっとも、その微笑は大衆にふりまくための宣伝用のそれと変わりはなかったが。
441
:
リイス
:2014/12/27(土) 00:11:58 ID:rbO41kJA0
>>440
「ええ、リイス=シュルツです、数度逢ったとはいえ、会話をしたのも数える程度、忘れられていても仕方無い、と思いましたが、覚えていて貰えて幸いです」
「それなりに鍛練を重ねましたが、戦闘者とはまだ言い難いのですけれど……それでも良ければ喜んで」
そう言いながら、少女も“いつも通りに”微笑んで、ゆっくりと席を立ち、会話に丁度良い位置まで移動するだろう。
442
:
黒沢小百合
:2014/12/27(土) 21:40:10 ID:9nrcReK60
>>441
「ふふ、貴方のお父上とは付き合いも長く、良いビジネスをさせてもらっていますから。
それに、以前から貴方の所作の端々や歩き方などから、高い『能力』を持っている事は分かっていました。
結構、会談の際にも貴方に注目していたのですよ?私。」
この娘がシュルツの子女であると知った時は驚いたものだ。
父親は『ビジネスパートナー』以上の印象は抱けなかったが、何度も言う通りこの娘……リィスの所作の端々から
感じられる実力は、半端なものではない。
「同性として、一度こうして杯を交わして、話をしてみたいとかねがね思っていたのです。
あぁ、えぇと……あなたは……未成年でしたでしょうかねぇ……。」
小百合は近くで控えていたウェイターにリィスの分のワインを注ぐよう手で指示したが、
リィスの年齢を聞いていなかったか、と聞いてウェイターを静止した。
443
:
リイス
:2014/12/28(日) 23:48:20 ID:AuHxtwKM0
>>442
「それなら良かったです、実は内心不安な所も多かったんですよ、父は必要以上のリスクを避けて利益を拾う……いえ、商人と正しい判断なのは承知していますがね」
「ただ、あと一歩踏み込めばリスク以上の成果を得られる場合でも躊躇しますから、説得に苦労なさっているのでは、なんて思っていたんですよ」
それは決して悪いことではないだろう、軌道に乗っている商売を台無しにするリスクを考えれば当然とも言える。
だが、それ以上の結果を望みたい場合、取引相手としては、少し動きにくさを感じていたのではないか、と懸念していたのだ。
「謙遜は美徳と言いますが、そう評価されたのを否定するのでは失礼ですよね、ありがとうございます」
「今言うと社交辞令のようで嫌なのですが、私としても一度貴女とは話してみたかったんですよ、貴女以上に成果の証を背負っている人を私は知りませんから」
成果の証は街に流れる彼女の評判の事、悪評が間違いなく多い筈だろうが……この少女はそんな事を気にしていない。
裏取引の噂がもし真実なら、それは彼女にそれだけの取引を行える力が有る事の証拠だろう、そう少女は捉えている。
だからこそだろう、今までは演技か本音か解らないような穏やかな声色だった声に、まだ若い身でありながら、数多の評価を得た“有能な人物”への素直な敬意が混じったのは。
「最近漸く許可される年齢になりました、だから、恥ずかしながらまだ全然銘柄には詳しくないのですが……」
どれが良いか、とか、お勧めは、とか聞かれても困るしか出来ないが、注がれたワインを飲むくらいは問題は無いだろう。
444
:
黒沢小百合
:2014/12/29(月) 00:10:54 ID:9nrcReK60
>>443
少女の瞳に交じる素直な感情は小百合を上機嫌にさせた。
嘘をついていないことは分かる。感情の機微を読む能力に長けていなければ
海千山千の怪物が跋扈する異能都市の裏社会で生き抜いていくことなどできないのだから。
「ふふ、私もアルコールの類はどちらかと言えば門外漢でして、
いつもいつも、この、同じものばかりを頼んでしまいます。しかしさほど高い酒というわけではないのですが、
中々……荒削りと言っていいほど野趣あふれるにも拘わらず飲みやすいのです。」
小百合は上品に笑みを湛えながら、グラスを廻す。
そのグラスには青白くホロ・グラフィックの映像が映りこんでおり、今まさに一つの試合が終わり
勝者が勝ち誇って自身の得物を掲げているところだった。
「フン……まったく、あの程度の相手を倒して何が誇らしい物か。」
小百合は窓からその光景に侮蔑的な言葉を発して。
445
:
リイス
:2014/12/29(月) 00:52:20 ID:AuHxtwKM0
>>444
こちらの気持ちに嘘がないことを解って貰えたのは素直に嬉しい、理解された事も当然だが、彼女に此方の真意を、感情の機微を正確に察する力が有ってくれた事もだ。
もし無かったら、此方の目が節穴だという良い証拠になっていた。
「手頃な値段でそれなら素晴らしいと思いますよ、値段そのものも稀少性やらを計る良い材料ですけれど……」
今この場で求められているのはこのワインが美味しいかどうかだけ、これだけ高いワインを買える、なんて見栄は不要、なら、安くて美味しいものが最良だろう。
問題は、このその時に必要な物だけ、要点だけを求める結果主義な少女の意見が小百合と合うか、だが。
「まあまあ、本人の実力を考えたら昂るのは仕方無いですよ、同格の相手を打ち倒せたんですから」
「問題は、その格が低い事ですよね、提供側にも多いに問題は有りますが……」
そこで視線を横に逸らす、その先には、今の勝負で満たされたのだろう、感想を熱く語り合う数人の客が居て。
「……まあ、この様子だと改善は難しいかもしれませんね、楽しても満足して貰えるなら、努力はしなくなるのが人ですし」
446
:
黒沢小百合
:2014/12/29(月) 01:13:40 ID:9nrcReK60
>>445
「以前は少しは見どころのある者がいましたけれど、これではあまりにも退屈ですからね。
幾人かここに放り込んでみるのも面白いかもしれません。心当たりもありますし。」
ここにあの忌々しいすかした何でも屋を送り込み、
十全の備えをもって公開処刑を行えればどれだけ良いか。
そう考える小百合の指は、無意識に人の首を絞めるかのようにぎゅうと握られていた。
「聞けば、あなたの会社も不穏分子の処理に苦悩しているとか。
ここに放り込んでみるのも面白いかもしれませんよ?」
小百合は冗談めかすそぶりもなく、言い放ってみせる。
実際、古代ローマの闘技場よろしく都市の権力者にとって都合の悪い物を丸腰同然で
闘技場に放ち、クリーチャーや血に飢えた闘士に殺させる『残虐ショー』なる悪趣味極まる出し物も、
時折開催されているのだ。
こんな事を言うのは、ここを利用するのが皆『裏社会の人間』であるのを理解しているからであり、
当の小百合も『可愛い顔をして何人を始末してきたのだろうか』などとリィスを図っている部分もある。
447
:
リイス
:2014/12/29(月) 01:43:26 ID:AuHxtwKM0
>>446
「羨ましい話なのか、悩ましい話なのか、少し判断に困ってしまいますね……面白い見世物が増えるのは歓迎ですけれど」
簡単に切り捨てれるだけの余裕やツテが有るのか、多少切り捨てても足りないくらいの心当たりが有るのか。
解らないし、不用意に謎に突撃したいとも思えない。
「……そうですね、場合によっては良い見せしめになるかもしれません、一考に値しますが、今はまだ、ですかね」
「彼等は生きてるうちは不穏分子ですが、死ねば愛すべき社員ですから、余所に挑む大義名分にしたり色々と使えます」
「猛獣の餌にするにはまだ少し勿体無いかな、と言うのが今の本音ですね、生きてて役に立たないなら、死んでからくらい一仕事して貰わないと割に合いませんよ」
少女の解答は、まだ此処は利用しないとの事、けれどそれは少女が情けを掛けた訳ではなく、寧ろ逆。
“死んで終わり”にはさせない、と、相応の報いは与えると、平然とそう言って。
448
:
黒沢小百合
:2014/12/29(月) 01:59:57 ID:9nrcReK60
>>447
「他所……となると、目下――社やその子飼い連中でしょうか。
ヤツら、最近はロウアー・キャバリー周辺の便利屋や冒険者の囲い込みにご執心だとか。
おそらくあのあたりへの影響力を高めたいのでしょうけど。」
小百合は取引相手を取り巻く環境の把握も怠らない。
当然、シュルツ商会のライバル企業や敵対者、協力者等も知っており
――社は小百合にとっても目下、かなり目障りな存在である企業だ。
「潰してしまいたいところですが、本丸を切り取っていくには未だ時期尚早ですねえ。
材料が足りない。」
449
:
リイス
:2014/12/29(月) 02:19:39 ID:AuHxtwKM0
>>448
「冒険者と便利屋の囲い込みは面倒では有りますね、一部のチンピラ紛いは兎も角、経験を積んでいる人達は拾った情報の真偽の選別が上手ですから」
「少し無理の有る言い掛かりだと、此方を警戒させてしまいようです、ですから、此処は相手方に“本当にやらかして貰う”のが良いんですけどね」
場を整えるのにも一手間掛かる、だが、出来るだけ早く事を片付けてしまいたい。
困難な道、では有るのだが。
「……うん、そうですね、此処は役員にでも冒険者か便利屋への料金踏み倒しでもやって貰いましょうか」
「事が進めば、後は、彼等の優れた情報収集能力でどうにでもなるでしょうし」
450
:
黒沢小百合
:2014/12/29(月) 23:19:19 ID:9nrcReK60
>>449
「ふふ、お父上があなたを経営に参加させるのも分かる。
技量に加え、冷徹なまでの状況判断力。私、貴方が気にりました。」
くつくつ、と愉快気に笑う小百合。
『可愛い顔をして何人を始末してきたのだろうか』という考えは甘かった。
正しくは『何十人、何百人を始末してきたのだろうか』と言い換えるべきだろう。
「……もしよければ、千夜グループの……そうですね、私の元に来ませんか?
ポストはすぐにでも用意できます。ああ、無論シュルツ商会にも配慮はしますよ。」
小百合は人材を見つけると自身の手元に置きたがる癖がある。
千夜の資本が入った千夜学園の視察を欠かさないのも優秀な人材に早くから
当たりをつけておくためであるのだ。
451
:
リイス
:2015/01/16(金) 23:51:51 ID:AuHxtwKM0
>>450
「ふふ、そう言って貰えるのは嬉しいですけど、まだまだ私は未熟ですよ、本当に優れた人間なら、こうなる前に手を打てていたのでしょうからね」
謙遜―――ではなく、本気の言葉だ。
経営においても戦闘においても、手札の多さで誤魔化しているだけ、実力はまだまだ足りていないと自覚している。
故に油断はせずに、高みを求め続ける、だから此処にも足を運んでいるのだ。
「……光栄な誘いですけれど、今は断らせて貰いますね、二つ返事で了承しても良いような案件では有りますが、今の私には二足の草鞋を履きつつ、両方を万全にこなす力は無いです」
「どちらかを立てればどちらか、或いは両方に支障が出るでしょう、良い話ではありますが、今は互いの利になる事は無さそうなので、辞退させて下さい……申し訳ありません」
小百合の言葉を聞いて少し悩む様子を見せたが、僅かな思考の後に出した回答は、提案を断るもの。
実力と求められているであろう事を比べ、今の自分には難しいとの回答を出したのだろう。
452
:
黒沢小百合
:2015/01/17(土) 00:34:01 ID:2/kX7DtU0
>>451
「ふむ、それは残念ですねぇ……。 あなたなら私の良い副官になれるでしょうに。
それでは……そうですね、代わりと言っては何ですけれど、私個人のプライベートな
連絡先を教えておきましょう。」
小百合は、むうと拗ねた子供のような声を出したが
すぐに、ふ、と自嘲するように微笑を浮かべると一枚の名刺を差し出した。
既にリィスが受け取っているであろう、取引先向けの物とは違って私的な付き合いの者に
しか渡さない、プライベートなものだ。
「何か困ったことがあればいつでもここに連絡してください。
私も忙しい身ですからすぐに、とはいかないかもしれませんができる限りの事は協力しましょう。
ああ、それとこうしてお茶でも飲みたくなった時に誘っていただいてもいいですしね。」
453
:
リイス
:2015/01/25(日) 22:38:11 ID:AuHxtwKM0
>>452
「感情でも損得でも手を貸したい気持ちは有るんですけれど、無責任な真似はしたくなくて、ごめんなさい」
「それと、その連絡先はありがたく頂いておきますね、私の連絡先は……ええと」
手帳を取り出し、さらさらと番号を記入すると、そのページを切り取り小百合に手渡す。
身内や友人専用の私的な連絡先、他人に教えるつもりが最初から無かった故に、名刺なんて用意していなかった。
だが、それで良いと少女は思っている、これで準備が悪いと自分を嘲ったり、こんな紙切れでは失礼だと憤るような相手には、まず教えることは無いのだから。
「それはこちらこそ、ですよ、公私どちらでも何か有ったなら連絡を貰えると嬉しいです、直ぐに応対出来ないときも有るかもしれませんが……」
454
:
黒沢小百合
:2015/01/25(日) 23:50:52 ID:2/kX7DtU0
>>453
「ふふ、お互いに忙しい身ですからね。」
リィスも、そして小百合も日々の仕事に追われる身。
偶然予定があうことは少ないかもしれないが、それでもこうしたコネクションは大事だ。
『つながり』とは、どれほど希薄なものでも簡単に得られるように思えてなかなか構築する事は
難しいのだから。
「さて、今日はなかなか楽しかったですけれど
そろそろ私も明日の会合の準備のために戻らなければなりません。
誘っておいてなんですけれど……今度はもう少し長くお話しできると良いですね。」
時計に目をやれば、もうなかなかに良い時間。
明日の準備があるとなれば、席を立つのも当然の頃合いか。
「では、また別の機会に。」
// 〆!
455
:
リイス
:2015/02/24(火) 23:17:48 ID:ibXW5OY.0
>>454
「私の方はまだそちらよりマシでしょうけれど……ここ最近は確かに忙しいです、本当に損な立場ですよ」
「……まあ、誰に強要された訳でもなく、自分の意志でやっているんですから文句は無いんですけれどね」
少なくとも自分は、レラ家にお世話になっているおかげで以前より大分楽をしている。
それでも“自分にしか出来ない”仕事がそれなりに回ってくる為、完全に気を抜けないのだが。
「そうですね、今度はもっとゆっくりと話したい所です、今日はありがとうございますね、お蔭で退屈しなかった処か、本当に楽しかったです」
「では、また今度お会いしましょうね、その時までに、今回の件を収束させる方向で話は進めておきますから」
ぺこり、と頭を下げて一礼。
リイスは小百合の姿を見送るだろう。
そして、何かを考えるような様子を見せた後、何処かに電話を掛け始める。
「……さて、と、そろそろ彼処も潰し時ですねー、いい加減邪魔ですし、新しい友人へのプレゼントも必要ですから、ね」
456
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/10(火) 22:28:28 ID:2/kX7DtU0
「男は殺せ。女はできるだけ傷つけるなよ。高く売れるからなァ!
金品も洗いざらいだ。急げよ!」
都市の富豪向けリゾート住宅地の一角で粗野な声が響く。
この、数kmの敷地を持つ邸宅は都市で財を成したとある人物が、
休暇を楽しむための別荘であり、プールやゴルフ場といったアクティビティ施設がつくられた
争いとは無縁の場所のはずだった。しかし今、邸宅は乱入した数人の男の乱行によって
見る影もなく荒らされようとしている。
既に、家主である男は寝室で殺され拳銃で武装した私服ガードマン数人も全滅。
数少ない使用人たちも首謀者らしき男の宣言通り運命は風前の灯火となっている……。
火などがかけられておらず、また他の屋敷へも距離があるためこの乱行を止める者はいないかと思われたが……。
457
:
リイス
:2015/03/10(火) 23:18:13 ID:ibXW5OY.0
>>756
「……あ、はは、本当に、我ながら最悪のタイミングで此処を訪れましたねー」
自分の運の無さに最早笑いが込み上げてくる、難航していた取引に漸く僅かな希望が見えたのが一ヵ月前、どうにか会談の機会を得られたのが一週間前、そして、今日この瞬間、今までの努力が刹那で徒労に変わったのだ。
本当に最悪のタイミング、せめて自分が契約を纏めた後に襲撃してくれれば良かったのに、そんな不満が胸の内側から込み上げてくる。
「……所詮は仕事だけの関係ですからね、死んでても敵討ちなんて微塵も考えはしませんが―――私の努力を無駄にした連中が幸せになるのは、うん、有り得ないですね」
近隣の住宅から良い感じに離れた位置、きっと周囲の住人はこの事件に気が付いていないし“犯人も気付かれていないと思っている”だろう。
だから、まず此処は―――チャイムを冷静に押すことから始めるべきだ。
自慢する気は無いが、自分は幸いそこそこ可愛らしく生まれてきているし、良い具合の天然物の金髪のお陰で“お嬢様っぽい”雰囲気も持ち合わせている。
折角の機会だ、絶好のカモが飛び込んだふりをして、彼等に一時の希望を与えて、それから制裁を加えてやろう。
―――やられたからには、やりかえす。
458
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/10(火) 23:38:09 ID:2/kX7DtU0
>>457
「誰だァ……?」
「サツかよ!?早すぎるだろッ……。
兄貴の見立てじゃ、20分はかかるんじゃなかったのか?」
もし、リィスが常人以上の聴力を持っていれば
チャイムに驚いた中の男たちの様子を聞き取ることができるだろう。
敵は手早く事を行い、その場を去る典型的な押し入り強盗を行うつもりだったようだ。
「アホ、サツが律儀にチャイム鳴らすかよ。見てみろよ、これ。
監視カメラのモニタだ。ガキだぜ……。」
「ヘヘッ、なんだあ。事前の調べじゃ娘はいなかったはずだが、
親戚かなにかですかね。庭で遊んでたんだろうかねェ。」
しかし完全に典型的とは言えないのが護衛を全滅させている点だ。
中から聞こえる声は3人程度。休暇という事で多少数は減らしていようとも、
腕利きを配備しているはず。それをたった3人で壊滅させているという事は能力者の可能性が高い。
「はぁい……いまあけまぁす。」
男の一人が、家の使用人を装おうとしているのか
野太い声を必死に上品に見せかけて、ドアを開けようとする……。
459
:
リィス
:2015/03/10(火) 23:57:42 ID:ibXW5OY.0
>>458
残念ながら、肉体に掛ける系統の魔術は一通り解除してしまっていた、もし相手が魔力を見れるレベルの実力者だった場合、騙す処か逆にこちらが地獄を見るだろうから。
尤も、それだけの力量があるならこんな強盗などせずとも満足に暮らせるだろうし、この心配はきっと杞憂なのだろうが。
(この事件が表沙汰になったら、きっと都市の警備体制がどうこう騒がれるんでしょうね、被害者お金持ちですし)
(小百合さん、そろそろストレスで胃に穴が空くんじゃないかなあ……)
取り敢えず、犯人の誰かが応対してくれたので、出て来るまではゆっくりと待たせて貰う事にする。
それから先は、相手が動いてから考えても遅くはないだろう。
460
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/11(水) 00:16:28 ID:2/kX7DtU0
>>459
ドアを開けて現れたのは、
巨漢というにふさわしい2mを超す大男だった。筋骨隆々だが、いかにも
あたまの回らなそうな面構え。片手に持っていた生の玉ねぎを無造作に頬張ると、
げへへ、と涎と食べかすをこぼして微笑んだ。
「お嬢ちゃん、わりいがいっしょに来てもらうぜ。
ざんねんだったなあ。」
丸太のような手をリィスに伸ばす。
警戒は皆無。この男は相手の力量を見通せるようなタマではない。
461
:
リイス
:2015/03/11(水) 00:33:45 ID:ibXW5OY.0
>>460
「いえ、一人でも行けますから大丈夫ですよ、お構い無く」
自分より一回り以上大きな相手、だが、微塵も怖くない、実力の無い慢心した相手に恐怖を感じろというのは無理な話だろう。
どちらか一つでも持ち合わせていたのなら、それを感じることも出来たのかもしれないが……そんなifに興味は無い。
伸ばされた腕が少女を捕らえる一瞬前に、少女は一歩前に歩みだし、自分の右手を男の左胸に軽く当てようとする。
(……えーと、この身長と大体の体重、あと、魔術の防護を考えると……これで丁度良い感じですかねー)
その手が触れたならば、その瞬間に少女の手の甲には魔方陣が浮かび上がり、男の心臓に電流が走ることになる筈だ。
それは決して強力な魔術ではないが、人間の心臓を停止させるには十分な筈の威力を持っている。
462
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/11(水) 22:52:59 ID:2/kX7DtU0
>>461
電撃は人間の動きを留めるには非常に有効な手段の一つである。
筋肉があろうがなかろうが、電気信号という手段で脳と体の各部がやり取りをしている以上、
少し電流が流れただけでその流れが乱され、正常な動作ができなくなるのだから。
「うご――。」
どう、と男の巨体がゆらぎ倒れる。
「へェ……。」
その巨体でふさがれていた視界が開ければ、混乱で開いた口が塞がらないという風の小男と、
昇り階段に腰かけ、意外そうな表情をリィスへと向ける革のライダースーツじみた装束に身を包んだ男の姿があった。
ライダースーツ姿の男は東南アジア風の刀剣を背負っており、意外という風に声をだして。
「意外と早かったが、そんなナリのが来るとは驚いた。
こういうやつを連想してたんだがな。」
「あ、兄貴……一体?」
混乱した様子の小男を無視するように、ライダースーツの男はすっくとたちあがると
階段の中腹で死んでいる護衛の一人らしき大男の死体を足で小突く。
463
:
リイス
:2015/03/12(木) 02:16:12 ID:ibXW5OY.0
>>462
少し威力が足りなかったかもしれない。
出来れば言葉を残させずに始末したかったのだけれども、まあ、初回ではこんなものだろう。
鍛練や模擬戦は重ねてきたが、人を殺す機会はそう多くなかったし、その機会には練習なんて悠長な事は出来なかった。
自分の実力を考えれば、悔しいが妥当な結果だろう。
(……まあ、良いでしょう、運が良ければあと二回は試せますし)
「そんなに意外でしたか、千夜の警備隊長さんだって綺麗な女性ですし、傭兵をやっている方や軍人でも女性は目にします」
「私に言わせれば、この彼やそこの死骸のような筋肉達磨の方が、逆に珍しく見えるのですけれど……」
言葉を紡ぎながら、電撃を浴び倒れた巨漢の頭に足を乗せて、首を捻るように、あってはならない方向に曲げるように体重を掛ける。
邪魔が入らないのなら、巨漢は数瞬後に完全な止めをさされ、目覚める可能性は無くなるのだろう。
華奢な女性でも異能や魔術で、大柄な男性との筋力の差を埋める……どころか、それ以上の力を発揮するような人物がしばしば見られるこの街で、そんな常識は無意味だろう。
まあ、そういう気持ちも解らなくはないだけに、そこまで強く指摘するつもりは無いのだが。
「ところでお兄さん、投降の意思は有りますか、貴方は冷静そうですし、腕も立つみたいです、正直に言うと、こんな事で終わらせるには惜しいんですよね」
「……ああ、そっちの少し可哀想なくらい混乱してる小さい人は“要りません”から、返事はしないでも良いですよ」
464
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/12(木) 22:55:10 ID:2/kX7DtU0
>>463
戦闘能力のありそうな、ライダースーツの男は肩をすくめただけ。
小男のほうはというと、ホルスターから拳銃を抜こうとしているがホルスターに引っかかり
手間取っている姿を見る限り、戦闘の経験はほとんどないのだろう。
そうしている間に、大男の首から微かに音が響いた。
「あれまァ、思ったより慈悲ってもんがないねェ。と……。」
――ズバッ
大男の首が折れた直後、小男もようやく銃を構えたが……。
ぼろり、と小男の首も地面に落ちる。
「俺も人の事は言えないねェ。もう強盗はここで仕舞いにするぜ。」
首魁らしき男が、山刀で首をはねたのだ。
その刀身には一切の血液が付着しておらず、それほどの速度で振り抜かれたことを示している。
「……こちとら、名をあげるのが目当てでね。
強盗はまァ、ついでだ。目的はこっちよ。」
ひゅん、ひゅんと手中で柄を回し切っ先をリィスに向け、構える。
465
:
リイス
:2015/03/12(木) 23:59:56 ID:ibXW5OY.0
>>464
「ここで止めを刺さないのは、慈悲じゃなくて慢心ってものでしょう?」
万が一、この男との戦闘中に動かれて足を捕まれたりしたら堪ったものじゃない。
素直に足を取られずとも、結局回避は必要になるだろうし、その隙はあの男にとって十分過ぎるものだろうから。
「売名が目的なら、成る程、確かに悪くはない考えですね、この人数の使用人や警備を始末出来る腕なら需要は有るでしょう」
「それは、私が保証してあげますよ――と」
首をはねられた小男には悪いが、まあこうなるだろうとは薄々思っていた。
彼等と男には実力に差が有りすぎた、二人の存在意義は囮、雑用、肉盾、そんなものだろう。
(しかし、本当に良い腕ですね、真っ向から斬り結んだら、私はまず勝てないでしょう)
(私の異能は"何でも出来る事"で、その対価は"何も極められない事"ですからね……悲しいですが、当然です)
少女の袖の下、腕に嵌められた多数の腕輪―――幾つもの術式が保存された魔術行使用デバイスの一つが光と魔力を放つ。
放たれた魔力は少女の手に集い、凝固し、無から有を造り出す、その手中に現れるのは、複雑な紋様が刀身に刻まれた、儀式用の短剣だ。
それの切っ先を少女は男に向け構えて――だがそれ以上は動かずに、小声でそのまま呪言を紡ぎ始めるだろう。
466
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/13(金) 22:11:18 ID:2/kX7DtU0
>>465
「よし、ならさらに万全の保証と……金を手に入れるとしようか。
そのそっ首、なかなかの値になりそうだ。」
――かひゅ、という風切音と共に男が掻き消える。
「お前、魔術師か。いや、魔導戦士というところかな……?」
ひゅいん、と背後でもう一度。剣が、襲い掛かる!
467
:
リイス
:2015/03/23(月) 23:15:42 ID:ibXW5OY.0
>>466
「出来るものなら是非どうぞ、ですが、虎児を獲るために虎穴に入った以上、相応の覚悟はして貰いますよ?」
相手の男は此方の行動を阻害するべく攻撃を仕掛けてくる、そこまでは予想の範疇――いや、此方の理想の展開だ。
初めからあんな状況で呪文を唱えることを許してくれるとは思っていない、ただ、実力で劣る自分が、階段の上という地の利を得ている相手に寄ることは出来なかったから、降りてきて貰いたかっただけだ。
その為に選んだのが、近接武器として利用出来、尚且つ"それっぽい"外見を持つあの短刀だったのだ。
(……ですが、誤算が一つ、思ってた以上に速いです、この人――!)
背後に気配を感じた瞬間、首を跳ねられる自分の姿を幻視出来た、それほどに接近している"死"を目前に、少女は"脱力"する事を選ぶ。
身体から余計な力の一切を抜き、剣撃から逃れるように体勢を崩すのだ。
当然、相手が縦に剣を振っていたり、袈裟斬りにしてきていたのなら大惨事は免れないだろう――保険は有るが、それでも間違いなく酷いことになる。
だが、それでもこんな行動に移れたのは、相手の実力を信頼しているから。
"彼なら私の首を容易に刈れるから"
そう確信しているから、その行動を起こす可能性に全てを掛けられる。
468
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/23(月) 23:30:21 ID:2/kX7DtU0
後ろからくるはずの斬撃。
しかし、一瞬のきらめきがリィスの眼前で瞬いた!
音は後ろからであったのに、前からリィスの正中線を
正確に狙った袈裟斬りが振り下ろされたではないか。
「やっぱりな、場数踏んでるから耳に頼るんだ。」
単純なトリックだ。あの男は、なんらかの異能か魔術で背後で音を起し、
それに気を引かせておいて自身は悠々と前方から切りかかった。一旦、視界外に逃れたのだから
攻撃は最もとおりやすいであろう死角から、という考えをもつく攻撃だ。
469
:
リイス
:2015/03/23(月) 23:47:47 ID:ibXW5OY.0
>>468
「……成る程、冷静に考えれば後ろに回り込む暇があるなら、その間に斬り捨てられますよね」
もし、横から斬り込まれていたら死んでいたかもしれないが、正面なら話は別だ。
脱力した身体に力を込める、但し必要以上の力は込めずに――そうすればまだ動ける、元々攻撃を避けたならそうして動き、反撃するつもりだったのだから動けない訳がない。
死への刹那に、少女は腕に―――腕の骨に魔力を通し眼前に翳す。
結果、その刃は、少女の皮膚、血管、筋肉を切り裂いて骨に衝突し、ごきりという鈍い音を立てて止まるのだろう。
―――だが、それだけでは終わらない、少女の空いた左腕は、その指先は、その間虚空に印を刻んでいて。
470
:
名も無き異能都市住民
:2015/03/24(火) 00:36:33 ID:2/kX7DtU0
>>469
骨まで達した刃はそのまま、肉を削ぐように横っ滑りして筋線維を分断していく。
当然、こんな芸当は腕力だけでできる物ではなく体全身を横に回転させることで
生み出された力だった。
「しゃらァッ!!」
その回転の勢いのまま、ソバットのような形で蹴りを繰り出す男。
ダメージを狙ったものというより、牽制の色が強いこの攻撃は明らかに印を刻むのを
妨害するために放たれた攻撃だった。
471
:
リイス
:2015/04/08(水) 23:09:45 ID:ibXW5OY.0
>>470
何か策が有るのか、焦ったのか、相手の事情など解らないが、それは迂闊過ぎる行動だろう――少女は内心でそう思う。
腕に食い込んだ刃が向きを変えたのが自分に解らない筈がない、痛みに目を瞑れるなら対処は簡単だ。
刃が滑り出す前に、腕の角度を変えつつ、刃の方向に力を入れて、それが出来ないように抑えてしまうだけ、それだけだ。
これは、少女にとって嬉しい誤算だった、おかげで平行してもう一つの対処も行えるのだから。
構築中の術式を破棄、常駐させている肉体強化の術式に魔力を注ぎ込む、無茶な魔力の運用の弊害として、逆流する魔力が腕を焼くが――今は気にしないでいい。
今気にするのは男の蹴りだけ、それを捕らえる事に専念せねば命は無い。
"全身"を使った渾身の蹴り、逆に言えば、放ったが最後、起動を変えることはほぼ不可能な一撃だ。
先に男を雷撃で昏倒させたのを見ている以上、止めない選択肢は無かったのだろうが――少し残念だ。
伸びる足に合わせ一呼吸、体から一切の余計な力を抜き、全身を脱力させ、蹴られる一瞬前に弛緩した筋肉に力を込める――否、筋肉を張らせると言うべきだろう。
武術に通じていれば解るかも知れない、これは俗に言う"勁"というものだと。
静から動に、弛緩から緊張に、その両極の間を移行する過程で生まれた力を利用する技術だと。
(まずはその膝、壊させて貰いますよー?)
―――一見やけくそに、蹴りを防ごうと伸ばしたように見える拳、だが、それは術式で強化した拳が相応の技術で放たれた、人を十二分に殺せる力を秘めたもの。
多少魔力で防御した程度では、片足を潰される事は避けられない筈だ。
472
:
名も無き異能都市住民
:2015/04/10(金) 21:57:33 ID:2/kX7DtU0
「――!」
剄かッ!男は思考をそのまま反射的に叫んだ。
やはり、これほどの身のこなしを持つあたり武術には通じているらしく。
――ピシャァッ!!
男の蹴りと拳がぶつかり合った瞬間、奇妙な音と共に男が背後に吹き飛ぶ。
空中で一回転、そして多少たたらを踏んだものの膝が壊されている様子はなく。
「おめえ、そんなもんまで使えるとはなぁ。ますます高名な仕事屋とみたぜ。」
片鼻を押さえて息を詰まらせ、鼻血を排出しつつ男は口を開く。
どういうことだろうか。たしかに拳が当たったのに膝を破壊するどころか、無関係と思われる
鼻を、殴られたかのように軽く出血している。
473
:
リイス
:2015/04/11(土) 04:12:04 ID:P/XiE3.60
>>472
(ふむ……膝を壊せなかったのは、私の実力が至らなかったとしても、足を殴ったのに鼻血ですか、解せないですね)
(光学系の術式で位置をずらした……だったら顔で受けたってことになりますね、流石にそんな受け方を出来る程、弱くはない一撃の筈ですから違うでしょう)
(衝撃を拡散させる系統の式、とでも今は思っておきましょうか、後々確かめないといけないですが)
刹那に思考を巡らすが解答には至らず、けれど、それを顔に出しもせず、平然とした表情を取り繕いながら、相手の言葉に返事を送る。
言葉を交わす余裕もない、なんて思われたくはなかったし、時間は少し欲しい。
「残念ですが外れです、私は“雇う側”の人間ですよ……ああ、自己紹介がまだでしたね、申し訳有りません」
「シュルツ商会の、リイス=シュルツと申します、今後が存在するなら、その際には宜しくお願いしますね?」
流石に頭を下げてやる事は出来ないが、それでもしっかりと、形式に乗っ取った挨拶はしておく。
恐らく無いだろうが、相手が会話に食い付いてくれれば好都合、駄目ならそれはそれで良し、だ。
(常駐させた術式で治癒して、右腕の出血だけは止められれば良いですが……まあ、出来ても本当に"止めただけ"が限度でしょうねー、まあ、いいですけど)
474
:
名も無き異能都市住民
:2015/04/11(土) 17:01:48 ID:2/kX7DtU0
>>473
「ほぅ……シュルツか。相当汚くやってるそうだから、おめえさんを殺せば
それだけで引く手あまた……ギルドをあさりゃあ、いくらかの賞金もあるだろう。ついてる。」
くっくっ、と男はわらい、余裕をもって山刀をぐるんとふりまわしてから。
――カヒュッ!!
掻き消える!そして!
「ウラァッ!!」
右だ!
475
:
リイス
:2015/04/14(火) 23:00:42 ID:ibXW5OY.0
>>474
「本当にそうですかね、もう手は粗方見せて貰いましたし、これ以上挑むのは愚策かもしれませんよ?」
挑発するようにその意見を否定して、両掌の術式を再度起動させる、術式の効果は――語るまでもないだろう。
ばちり、と音を立て、迸る蒼い火花が何よりも雄弁にそれを語っている、大男を昏倒させたあの雷撃を再度使うつもりなのだろう。
「……それは、もう見ましたよ?」
呆れるように溜め息を一つ吐き、少女は音のした方向に一歩踏み込む。
対処できる確かな自信があるのだろう、その一歩に躊躇いや戸惑いは微塵も無くて。
476
:
名も無き異能都市住民
:2015/04/15(水) 22:49:33 ID:2/kX7DtU0
――カヒュッ!!
ほんのわずかな一歩。しかし確かな一歩。
音のした方向の逆から繰り出された一撃は空を切った。
「ハンッ、二度はさすがに通じねえかね!」
回避。そして攻撃後の隙をさらした所に一撃。戦闘のセオリーだが、
男は隙をさらしてはいなかった。片腕で例の山刀を薙ぎそのまま先ほどと同じように
体を回転させての蹴り!
477
:
リイス
:2015/05/10(日) 23:45:02 ID:tyu/R0QM0
>>476
「当たり前です、初見なら兎も角、二度は無いですよ」
振り向きつつ姿勢を低く、横から迫る山刀を上方に殴るように弾き、逸らす。
それから僅かに遅れ、強烈な蹴りが迫る、のだが。
「二度目、ですからねー」
その間隔を見逃すほどこの少女は甘くない、その僅かな一拍の隙間に躊躇なく飛び込む。
先までの武術――勁を扱った動きとは全く異なる仕草でだ、それは、一言で言うなら、プロボクサーのそれだ。
柔と静を重視した動きから、剛と動を重視した動きへの変容、これへの対処が少しでも遅れるか、一瞬のうちに対処方を見出だせなかったなら、無防備な懐に、帯電したうえに、魔力で強化され砲弾のようになった拳が突き刺さるだろう。
478
:
名も無き異能都市住民
:2015/05/10(日) 23:54:52 ID:2/kX7DtU0
>>477
――ボグッ!!
一瞬のステップイン。そして拳打。
近代スポーツ科学的合理性に裏打ちされたような一撃が、蹴りよりも先に男の腹をえぐった。
「ごがっ!!!」
体をくの字にまげて吹き飛ぶ、男。
そのまま近くの壁にたたきつけられ、ずるりとくずおれた。
479
:
リイス
:2015/06/04(木) 00:56:33 ID:tyu/R0QM0
>>478
「今の一打は手応え有りですが……ねえ、お兄さん、まさかこれだけでは無いでしょう」
「まだ私は、貴方の技術をあれだけしか見せて貰っていないんですよ、これじゃあ潰れた商談の埋め合わせにもならないです」
かつり、かつり、足音が崩れ落ちた男にゆっくりと近寄っていく。
足音の主の少女は、殺気も敵意も感じさせないごく自然な様子で、まるで男を助け起こしにでも行こうとするかのようにしているが。
男には、きっと解るだろう。
この少女は男に興味を失いかけている、そして、完全にそれが無くなった時は―――躊躇いなく“捨てる”だろう、と。
480
:
名も無き異能都市住民
:2015/06/07(日) 13:10:23 ID:nV.8tvHI0
>>479
男はごぼごぼと嫌な音を発しながら、
口から血混じりの吐しゃ物を吐きだし痙攣していた。
どうやら意識はないようだ。肉体系の異能者、能力者は全体的に筋力が発達し
驚異的なパワー・タフネスを発揮する者と、動体視力や瞬発力に優れる者に2分されるが
この男は後者だったらしい。
481
:
リイス
:2015/06/07(日) 13:19:01 ID:dOQzZ8/w0
>>480
「……ああ、これは流石に駄目っぽいですね、内臓を潰したかもしれないです」
「息の根を止めてあげても良いんですが、犯人を捕縛出来た方がきっと聞こえは良いでしょうし……」
携帯端末を取り出して、千夜の警備部門に連絡を取って、強盗に襲われたと連絡をしてみる事にする。
殺された人物はそれなりの地位の人間だし、きっと急いで駆け付けてくれるだろう。
482
:
名も無き異能都市住民
:2015/06/07(日) 21:11:43 ID:nV.8tvHI0
>>481
その後、駆け付けた警備部門の人間に男は拘束され、
そのまま病院へと搬送された。男はどうやら一旗揚げにやってきたばかりの異能者で、
最近は裏表の区別なく手あたり次第、ある程度の名の知れた賞金首などをおそっていたようである。
遅かれ早かれ、命を失うタイプの人間だが今回死ななかったことで
彼がどういう道をたどるかは定かではない……。
483
:
黒沢小百合
:2015/06/10(水) 22:52:18 ID:nV.8tvHI0
馬のいななきと鉄と鉄のぶつかり合う、轟音、歓声。
都市の有力商人が自商会の宣伝として催した古風な馬上槍試合のイベントは、
中世レベルの文明からやってきた人々だけでなく、物珍しさ目当てに集まった人々や
歴史ファンなどでごった返していた。
「ほう、なかなかに見ごたえがある。
それになんと勇壮なこと。やはり誇りをかけて戦うというだけのことはありますねぇ。
ああ……えーと、ミスター・アーダベルト。今度の取引ではあなたのご提案通りの条件で
お受けしましょう。なに、これほど贅を尽くした趣向には堪えなければなりませんからねぇ。」
そのイベントを最もよく見渡せる特等席では、商人たちと小百合の商談が進んでいた。
双方、それなりに満足できる結果の様で笑顔が見える。
「さて、私は少しイベントの会場を歩いてきますよ。
市井の喧騒の中を歩くのも嫌いではないので。」
ある程度商談がまとまると、小百合はイベントの会場内へとおりた。
さながら、祭りといった賑わいで出店や大道芸人の姿も見える。
484
:
アイリス
:2015/10/19(月) 23:13:26 ID:12/d.fmU0
【一夜城】
人外のための城。一夜城。
天井から吊るされるシャンデリアに明るく照らされる室内。
足音すらも吸い込む毛足の長いカーペット。白いテーブルに濃茶の椅子。
ホテルのような室内に独り、カップを傾けるのはアイリスだった。
色白の顔に閉じられた瞳。
アイリスの懸念事項はいくつかあるが、なるべく早く引き継いでおきたい。
「『重ね炎』のグレゴリウス、慰安の碑、それから僕の死、か。
中々片付けられそうに無い問題ばかりか。」
個人の問題に限るなら、アイリスの死と次代の存在。
闇祓騎士団の残党。
リンネ。
アリス。
そして、響子。
挙げればキリが無い。
ふうと、溜息を付けば、窓際に近づき月を眺めるのだった。
485
:
黒沢小百合
:2015/10/31(土) 20:47:37 ID:z7AfUdeQ0
「はい、おかしですよ。こらこら、取り合わない。
いっぱいあるから、大丈夫です。」
異能都市のとある孤児院。
小百合は、そこを訪れ孤児たちにお菓子を配っていた。
自身のイメージアップのため、日ごろから炊き出しなどを行っている小百合であったが、
子供をそうしたダシに使うというのはどうにもはばかられ、お忍びでいくつかの孤児院を回って
菓子を配っていたのだった。
486
:
アイリス
:2015/11/10(火) 01:09:18 ID:12/d.fmU0
【一夜城】
ふぅと溜息をつけば、アイリスは羽ペンを台座に置く。
その日の書類を仕上げたのか、書類を纏める。
少しずつだが、近づいている。
だが、アイリスは心配事が耐えない。
「―――-嗚呼、そうか。あの手があったか…。」
アイリスの頭には一つの方法が浮かんだ。
それが可能かどうか、確認するために立ち上がり、足をすすめる。
もし一株でも持ち込むことが出来るのなら、あの子を見守ってやれる。
そんな淡い期待を胸にアイリスは城の隠し部屋から転移していった
487
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/16(月) 21:09:33 ID:p1won6CY0
「こんな暗い夜空は〜♪人が死ににくい日だろうか〜♪」
白髪の、少年のような姿の男が。
手すりに座って鼻歌を歌っている。
退屈そうにしているが、まるで何かが来るのを知っているように。
笑っている。
「この前はちょっと残念だったな。
犬が役に立たない人っていうのは…ちょっと衝撃」
天の星を掴むように、手を伸ばす。
488
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/16(月) 21:35:53 ID:F7bwbboU0
>>487
「………ふう…」
近くを歩いていた鶫は、自分の力を確認する。
元々の力…エネルギーをチャージする能力である。
「やっぱり…全然力が出ない…
これっぽっちが限界ですか…」
力を抜き取られた影響は強く出ている。
今の状況ではこの力を頼っていくのは難しい。
(だとしたらやはり…)
自分の胸のうちに宿った新たな力を思い浮かべる。
(その時には、これでやるしかない……)
と、近くを通りかかるのであった。
489
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/16(月) 21:45:20 ID:p1won6CY0
>>488
「ねえ、君。
そんな暗い顔してどうしたの?」
少年はふと顔を見て話しかける。
貼り付けたような自然な、然しどこか歪な笑いを浮かべて。
まるで見透かされているような気分になる、黒い眼。
声は心に響くような、通る声をしている。
しかし、聞いていると、まるで飲み込まれそうな。
そんな不安が迫る。
490
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/16(月) 21:58:14 ID:F7bwbboU0
>>489
「……はっ…」
ふと顔を上げて、その少年の顔を見る。
その目は、自分を射抜くかのように見つめていて
そしてその声は、聞き入ってしまいそうな気分になる…
「どうした…ですか?
いえ…その…」
ちょっと心配そうな顔をしながら答える。
「まぁ…なんと言えばいいんでしょうねー。
なかなか、厄介なことに巻き込まれ中でして……」
491
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/16(月) 22:03:21 ID:p1won6CY0
>>490
少年は物語に登場する妖精のような顔を変えず。
防人の話を聞き入っていた。
愉快――のようにも見えるが、余りにも自然で、
然し歪なほほ笑みは心を読みづらくしていた。
「そうか、それって君が昔から持っていたものかい?」
492
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/16(月) 22:23:09 ID:F7bwbboU0
>>491
「それ……?」
唐突に言われたような気がして、首を傾げる
「それとは…一体どういうことでしょうか?
私は…」
ふと、自分の手のひらを見る。
僅かに光が見える。
「…これはまぁ、この街では珍しくはないです…
能力…とでも言うんでしょうかね…
元々持っていた………と思いますが」
493
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/16(月) 22:40:48 ID:p1won6CY0
>>492
「そっか、それは大変だね」
少年の手にはいつの間にかパンが握らていた。
それをひと齧りして。
「でも元々持っていたとしても――。
それが当たり前だなんて、思い込みだったりしたんじゃない?」
494
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/16(月) 23:01:25 ID:F7bwbboU0
>>493
「…それはそうなんですけどね……」
彼の言葉はどこか引き込まれそうなものを感じる。
「…それが当たり前になってると…
いざなくなった時に……ん?」
ふと、首をかしげる。
「何だか…こちらの事情を知ってるかのようじゃないですか」
495
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/16(月) 23:10:02 ID:p1won6CY0
>>494
「うん、知っているよ。
ボクの能力だからね。人の深淵、心や記憶にちょっとお邪魔する力かな。
ちょっと制御があんまり効かなくてね、気を悪くしたらごめんよ」
表情をまったく変えず、少年は言う。
嘘を言っているのか、真実なのか。
しかし、その顔から感じる雰囲気だけは、
警鐘を鳴らすように不安を煽る。
「自分の手に負えない力っていうのは不便だね。
ボクは能力を好きにはなれないよ」
496
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/16(月) 23:17:28 ID:F7bwbboU0
>>495
「そうなんですか…
ちょっと厄介な…能力ですね。」
なんとも雰囲気は怪しいが…
しかしそれでも彼の言葉通り以外には考えられない。
少なくとも今は。
「制御出来ない能力は
とても危険だとも聞いています…
周囲に危害を加えかねない能力などは特に…
制御する方法は一応…あるみたいですけどね…」
ここは能力者の受け入れは積極的だ。
制御するための場所もある、のだろう。
497
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/16(月) 23:23:33 ID:p1won6CY0
>>496
「うん。なんか、ボクは制御しようとすると逆に爆発するみたいでね。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……やろうとして周りが不幸になっちゃった。
だから今はボク自身がそれを記憶するか、それともしないのか。それを考えながら生きているよ」
頭を指で小突きながら、少年は言う。
何度も――そういう話す少年だが、
爆発する危険……それと闘いながら制御を受けるのは、
並大抵の恐怖心では、無かったはずだ。
それが、言葉通りであるならば、だが。
498
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/16(月) 23:40:20 ID:F7bwbboU0
>>497
「……何があったのか…
はわからないですが、
大変なことがあったんですね」
一応彼女は言葉通りに受け取っている。
それでも彼を警戒していないわけではない。
「抑えこむのも難しい
しかし、爆発させる危険がある…ですか?
…とてもつらいことだと思います…」
499
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/18(水) 19:50:52 ID:p1won6CY0
>>498
「慣れるとそうでもないよ。
それに、今のボクには目的がある。
絶対に果たす、ボクが目指す彼方が」
少年は初めて、野心に満ち溢れた、
純粋に彼方を見据えるように星を見上げる。
「どれだけ辛いことがあったとしても、
何を犠牲にしようと、罵られようと――ボクはあの天頂の星を我が物にする」
500
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/18(水) 20:29:14 ID:F7bwbboU0
>>499
「目的……?」
彼の言葉を聞き、不思議そうな顔で彼の表情を見る。
「星を…得る……
それは…頂点に…?」
彼の言葉に不思議そうな様子を見せる。
何かの意味を持つのか、それとも…?
「夢があることはいいことです…が…
その力を制御する方法が……あるのでしょうか?」
501
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/18(水) 21:13:49 ID:p1won6CY0
>>500
「制御する方法はなかった。
でも目的に近づく手段はあったよ。
ある意味ボクのみが持ちえる方法が、ね」
手すりから飛び降りて、向き直る。
その顔は何時だったか感じた、冷酷で恐怖を感じる、
あの、『ペルソナ抜き』の魔手と同じ――。
「紹介がまだだったね、防人鶫さん。
ボクの名前はエイジ――『ペルソナ抜き』を起こした、犯人だよ」
その背に青白い炎の様に燃る、骸骨のように白い手。
それは、紛れも無いあの『魔手』であった。
502
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/18(水) 21:43:36 ID:F7bwbboU0
>>501
「…目的…っ!?」
そこまで言ったところで、ふと、怖気のようなものが
体中を突き抜けた。
この感覚はまるであの時…
何者かによってその身をえぐられて
まるで、氷を全身に打ち込まれたかのような途方も無い寒さ…
そして…どこかで見たことのある…
白い手
「…あなたが…っ!!」
鶫は両手に力を込めようとするが
「…くっ……!このっ…早くっ…!」
以前よりもその光は力強さを失っている。
ペルソナ抜きは、自信の持っていた能力の大半を削ってしまっている。
あまりに弱々しい物になっていた。
503
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/18(水) 22:19:06 ID:p1won6CY0
>>502
「無理はしないほうがいいよ?
ボクは君のリソースを殆ど持って行ったからね。
今の君はそう、それこそ能力を目覚め始めた程度しかない」
値踏みするように、嘲笑するように言う。
見れば少年の右手には眩く輝いている。
まるで共鳴するように。
「そうか、君がこれの持ち主だったかな。
手を広げると、それが誰のものなのかわからなくなるね。
まあいいよ、もしそうなのなら――」
これを使う度に君は取り戻していくだろうしね――。
そう言って、彼は静かに構える。
八極家の様に、腰を落とした力強い構え。
彼があの魔手無くとも十分な脅威であることが気配で感じられる。
504
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/18(水) 22:40:15 ID:F7bwbboU0
>>503
「…奪っていった力が、そこにあった…わけですか。
消えたわけじゃないことは……嬉しいこと…ですが…」
彼の放つ光は、自分が発せられる力を上回っているように見える。
今の状態で勝てるのだろうか……
「ぜひとも……お返し願いたいところですが…
穏便には行かなそう……ですね。」
そう言って自分も、構える。
(……あの力を使うには……
まだ、慣れてないっていうのに…!)
打開することが出来るのはそれしか無いが…
「…!」
彼女は、いつも持ちある多いている鉄砲を構えようとする。
抜くことは出来ても…発射する弾丸の威力は心もとないものとなるだろうが
505
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/18(水) 22:44:42 ID:p1won6CY0
>>504
抜き放たれた銃を見ながら。
少年はゆっくりと近づいてくる。
その右の手をさらに輝かせながら。
「ボクの能力、その一つ。
相手の心を読み取って、思考、記憶を知る力。
『精神潜行(ダイブトゥディープ)』――」
少年は向けられた銃に脅威すら感じていない。
寧ろ、何かが起こることを確信しているようでもある。
より強く、より高い『彼女の能力の真の力』を――。
506
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/18(水) 22:58:42 ID:F7bwbboU0
>>505
(心を読まれている…?
どうすれば…!
ペルソナさえ……使えたら……!)
彼女の思考は先程からずっと考えていることだった。
どうやったら自分の「もう一つの」力を使えるのか…
そして、それさえあれば戦えるだろう…という思考だ。
「……くっ…
この力でどこまでやれるか……!」
彼女はどうにかして、うちに秘めた力を引き出そうとする。
それでもなかなかうまく行かないようだが…
「これでっ…!」
放たれた弾丸は、大した威力にならない。
しかし、少しその弾丸には何かの力が宿っているようにも見える。
…これはまだ完全な力の発動にはなっていないということだ。
507
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/18(水) 23:41:15 ID:p1won6CY0
>>506
ふと――防人の思考に声が思い出される。
クエスチョンと名乗る男が言った、あの言葉。
『――苦痛を伴おうとも、世界を見つめ目を背けない意志を持つ。
失った何かと正しく向き合うことは、それの本質を見極める上で重要となるだろう。』
失った何かと、その本質。
そして――。
『忘れるな、旅とは歩み続けるものだ。今よりも明日へ――』
旅とは歩むこと、歩む事とは自身を次の舞台へと上げる事――。
自分が失い、そしてそれが本当に今までの認識が正しかったのか?
それともなにか、自分は自分に、そしてその能力に大きな誤認をしていたのではないか――。
そして少年は言った。
『能力(これ)を使う度に君は取り戻していくだろうしね』
奪われたはずの力、それが、彼が使う度に取り戻していく。
言葉が真実であるならば――。
――――――――――――――――
「この程度ではボクは止められないよ。
だからほら、君の力しか使っていないボクでも――」
輝く右手をまるで銃弾が当たる位置がわかっているように。
その掌に受け止める――。
「こんな風に止められる。
でもこれは君だって本当は出来る『筈』の事だ。
力の使い方は違うし、ボクはもう『半分は』人間じゃあないけれどね」
少年はそして息を吐き出すとともに、
弾丸のような踏み込みから鉄球のような一撃を防人に放つ――!!
508
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/18(水) 23:59:16 ID:x.XzXueA0
>>507
『――苦痛を伴おうとも、世界を見つめ目を背けない意志を持つ。
失った何かと正しく向き合うことは、それの本質を見極める上で重要となるだろう。』
(私の力…)
ふと、過るクエスチョンの言葉…
自分の暗示する力、刑死者のアルカナ。
それは世界を見据え、己と向き合うための力…
(私が力を欲しがったのは…
この街を…お姉ちゃんが目覚めた時に…
たとえ自分がいくら傷ついてもと…)
『忘れるな、旅とは歩み続けるものだ。今よりも明日へ――』
…失ったものを思い続けていた鶫は、続けて思い出す。
果たして…
(私の力…それは元々…
守るための力……!)
ぐっと両手を握って自分の力に立ち向かう。
(…どうか…!
自分と向き合う力を…今こそ…!!)
そして、内なる力に問いかける。
自分自身の力を受け止める、心の力を
509
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/19(木) 00:11:41 ID:p1won6CY0
>>508
放たれる一撃、長い一瞬――。
しかしそれは――。
『我が名はプロメテウス!
汝が求めに従い我が力明日を導かん!』
爆炎、そして輝く光とともに切り裂かれた。
少年は一瞬にして数メートル吹き飛び転がっていく。
受け身を取り素早く立ち上がるその顔は若干の驚愕と、歓喜を見せた。
「そうかこれが――アルカナの覚醒…!
ボクのダイブトゥディープの侵入を拒む壁か!」
防人の背後に紅き巨人は立つ。
共に歩むように隣にたち、共に戦うように剣を振るう。
今――防人鶫は真の意味でクエスチョンの言う『旅立ち』を迎えたのだ。
510
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/19(木) 00:25:51 ID:x.XzXueA0
>>509
「…これが私の力……」
511
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/19(木) 00:41:57 ID:x.XzXueA0
>>510
の続き
鶫は、内から溢れだした自分のもう一つの力に目を向ける。
「…たしかにあなたの能力は厄介そうですが…
この力は…苦手としていそうですね…!」
そしてペルソナ…プロメテウスに炎の刃を振るわせる。
「改めて…いざ、勝負です!!」
そう言うと同時に、彼に向けて
ペルソナの一撃を振り下ろし、喰らわせに行く
512
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/21(土) 20:41:53 ID:p1won6CY0
>>511
「これでようやく…同じ土俵だね!」
輝きは失せ、彼はもう防人の力を行使できないでいる。
しかしそれを意にも解さない。
体勢を一瞬にして直した彼は。
「だが残念――!」
背後の青白き骸の腕がペルソナの一撃を逸らす。
バク宙とともに、彼の手には雷が宿る。
誰かの能力かはわからないが――。
「悪いけど、時間がないんだ――」
それを骸の腕に乗せ、雷槌を放つ!
513
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/21(土) 20:49:27 ID:o4zyXKns0
>>512
「まぁ…
ペルソナだの何だのと言っていたから
ちょっと予想はできましたが……!」
自らのペルソナを前に出し、
敵の動きに警戒する様子を見せる。
「だったらさっさと…
私が倒してみせます…ぬっ!」
だが、少年が放った雷をまとう一撃に守りの姿勢を取る。
バシィッ!!
「つっ……!
これは…!」
防御の態勢は取ったものの、
体には若干のしびれが生じ、動きが鈍ってしまっている。
514
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/21(土) 21:12:52 ID:p1won6CY0
>>513
「雷電伝導――!」
指を鳴らすとともに電撃が空気を走り、
防人へと襲いかかる!
それは能力というよりも、周辺の電気を使うものから放たれているように見える。
515
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/21(土) 21:38:22 ID:o4zyXKns0
>>514
「…まるでこの辺りから…
使われてるみたいですが…!」
鶫は少し冷静にあたりを見回す。
どうやら周囲の力がここに集まっているらしいようだ。
「…だとしても…
私は…!」
彼女はプロメテウスに指示を出す。
「…炎を…!」
はげしい炎をまとわせ、
敵に向けて放ちに行く。
電気の威力は更に増しており
「ぐっ…あっ…!」
激しい痛みを伴うほどに上がっているが、
それでも倒れまいとしている
516
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/22(日) 20:06:34 ID:p1won6CY0
>>515
「どうしたんだい?
その程度じゃあ敵にはならない」
右手を払い能力の光を消失させる。
再び八極の構えを取る。
手加減か、それともインターバルか。
後ろの腕は変らず揺れている。
517
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/22(日) 20:40:01 ID:09Yv9ZsQ0
>>516
「ふっ…この程度じゃありません…
よっ…!」
きっと少年を睨みつけて彼女は吠える。
「その力に負けるほど私は…
弱いつもりじゃないですし……」
プロメテウスは再び魔法を発動させる。
「…取り返すのも諦めてませんから!」
はげしい炎が再び少年に向けて迫る。
518
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/23(月) 21:26:38 ID:p1won6CY0
>>517
「その勘違い、流石に鈍い――ね!」
ドン、と踏み込むと共に炎の中を駆け抜けてくる!
肌は焼け、青白き腕は赤く染まる。
血のように染まる腕はまるで死んでいるようにも見える。
「これくらいでは、ボクは死なないんだ」
懐に踏み込んでこようとしている!
519
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/23(月) 21:59:14 ID:09Yv9ZsQ0
>>518
「くっ……
本当にそうらしいですね……」
彼の腕は人ならざるもののように血に染まる。
これほどの相手は、流石に鶫も恐ろしく感じる…
「とはいえ、私も…
能力を取られっぱなしとは行かないですから…!」
踏み込んできた少年に対して、鶫は精一杯の力を込めて。
「これで……!」
手袋に込めた力と、プロメテウスの刃を同時に打ち込んで見せる!
520
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/25(水) 20:37:00 ID:p1won6CY0
>>519
「ごっ――!?」
打撃と火炎、そしてその痛みが彼を襲う。
吹き飛ばされるが、素早く空転し体制を立て直す。
――まだまだ使い方が粗い、彼奴等よりも弱い、ね。
だが油断できる相手ではない、能力の3割を破壊された上、
若干だが乱れている。
何よりも、使いこなしていないのにこれならば。
「そう遠くない内にボクの脅威になる、か」
立ち上がると、赤く染まった背後の骸の腕が刃のように変形する。
その様は溶けた鉄が精錬されていくように。
彼はまた構えをとるが、その纏う空気は先ほどと違う明確な――敵意を持っていた。
521
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/25(水) 23:46:18 ID:9yNWPWJQ0
>>520
「結構全力のつもりだったんですが……
やっぱり恐ろしい相手……です…!」
そう言って手のひらをぐっと握る。
まだ使いこなせぬおのれの力。
ペルソナと自身の能力の合わせ技でも
一撃とは行かない。
「…ここは…
どうにか…気絶させるくらいは…!」
と、自分の手のひらにペルソナの炎を宿す。
「たとえ私自身の力が弱くとも…!」
同時に自身の能力で強化させる。
「これの威力なら…!」
そう言って一気に目の前に突き出す。
「行けェッ!!」
炎の弾丸が、先程よりも高まった熱量を持って
青白く燃えながら相手へと迫っていく
522
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/27(金) 21:08:56 ID:p1won6CY0
>>521
「ボクが目的を果たすために手に入れたのは精神潜行だけじゃない。
この腕――ボクが戦うために勝ち取った力」
にわかに増す彼の『何か』。
背後の腕が大きく震え、ギロチンのような刃が現出する。
青黒い闇のように燃える刃を。
「そう、能力を奪い使用し、時に進化させる。
奪取進化(キャプチャードエヴォリュード)――!」
切り裂くようにその刃を解き放つ!
ギリギリと空気を震わせる音と共に弾丸を切り裂こうとしている。
しかし、その最中――防人の背後右斜から同じギロチンのような刃が飛来する!
523
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/27(金) 23:33:31 ID:X1hSvh4U0
>>522
「…ううぅ、それも奪った力ですか…」
強烈な刃が迫る中で、彼女も守りの姿勢に入る。
「でもこの程度…
私の力と、この力を…」
ペルソナを前に出して防御の姿勢を取る…
だからなのか、
後ろにせまる刃のことなど知る由もなく…
確認する暇もないだろう。
ズバシュッ!!
「っあ……!?」
背後の刃が背中を切り裂き、
その衝撃で前方のガードも甘くなった。
ザシュッ!
「あああっ!!!」
背中と胴体。両側に
肩口から脇腹に向けての深い刃が刻まれる。
「あっ…ぐっ……」
体が崩れ落ちるように膝をついて地面に落ちる。
「……っ…かっ…はっ…」
あふれだす血を止めることが出来ない。
体も動きそうにない。
立たなければ、という思いだけはあるのだが、
それでも動けないでいる。
524
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/29(日) 13:29:19 ID:p1won6CY0
>>523
「前だけしか見ないのは馬鹿だったと思うことだね。
眼の前のヤツが正面勝負なんてしてくれるようなお人好しだと思ったのかい?」
見れば、少年の周囲には同じような刃が回転しながら浮遊している。
いかなる方法で隠していたのか。
或いはこれも進化というものなのか。
「だけどこれで終わりだ、君さえ排除すればボクはペルソナすらも完全に抜き取れる――」
少年の足音が聞こえる。
早く迫っているはずがとてもゆっくりに、一瞬が10秒に変わっていく感覚。
その中でペルソナは語りかける。
『主よ、此処で終わりか?』
ペルソナは背後から前に立ちふさがり。
その炎を熱くたぎらせていた。
525
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/29(日) 14:36:11 ID:brJ2zyI.0
>>524
「あっ……ぐっ…
そ…ん……なっ…」
反論の言葉も出すことが出来ない。
地面に両手をついて、かろうじて倒れないで済んでいるが、
それでも状況は変わらない。体が動かない。
…彼の言葉がひどくゆっくりに聞こえた。
「あ…ぐっ……」
(ここで終わり……?
くっ……まさか……ね…)
目が霞みそうになる状況でも
自分のペルソナの声ははっきりと響いてくる。
(…冗談じゃない…
こんな程度で終わってたら…
今まで…無事で……いられるわけ無い…)
立ち上がろうと足に力を入れる。
「うっ…!がはっ…!!」
口から大量の血液がこぼれ落ちる。
全身から抜け落ちそうな力を震わせて、どうにか顔を上げる。
(あなたの力が…
この身に襲う苦しみに耐える力なら…
…まだ、私は…!)
心のなかの炎だけは、自分を奮いたたせる家のように燃え上がっている。
(私に……力を…
プロメテウス……!!)
526
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/05/30(月) 21:42:11 ID:p1won6CY0
>>525
『主よ、一つ勘違いをしている。
我は主の力であり、主の戦う意志。
戦うのは我ではなく、主なのだ。立ち上がるのは主なのだ!』
燃え盛る炎を宿すペルソナの言葉。
続ける言葉は炎とともに、敵を止めていく。。
『旅とは歩むこと、誰の助けもなく。
旅とは進むこと、自らの足で大地を踏みしめて!
旅とは今よりも前へ!眼の前の現実と闘う事也!
そして――――戦うのは防人鶫!汝なのだ!
我は汝!汝は我也!我々は別個の個体ではない!
我々は既に一心同体なのだ!!』
立上がることを促すように、炎は燃る。
527
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/05/30(月) 22:16:39 ID:brJ2zyI.0
>>526
「……………」
視界が霞みながらも、
己の内に住まう言葉ははっきりと届いていた。
(…悪いわね…
主の私が頑張らなきゃいけないのに…
助けを求めるなんてちょっと…みっともなかったわ…)
それでもしっかりと両の足は地につけたまま、
ゆっくりと立ち上がる。
体が熱い。これは自分の体の激しい痛みによるものではないようだ
(まだ旅路の1合目にも来てないってのに…
私がこんな調子じゃあ…
ダメダメよ…ね…!)
自分の能力が昂ぶり、
衣服も、両手も激しく輝く。
「……ぁ……ぁぁぁあああああああ!!!」
プロメテウスの炎が全身を包み、
其の力を高めていくのを感じた。
「……あああああああ!!」
ただそこにいる敵にむけて
「あ゛あ゛あああああ!!!」
炎と、力を込めた
全身全霊の一撃を放つ。
プロメテウスと自分が、ひとつになったように感じる程の
熱い拳の一撃。
528
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/06/01(水) 22:53:56 ID:p1won6CY0
>>527
「チぃ――!」
油断してしまっていたか、少年は吹き飛ばされる。
その油断は先までの力の差故か。
立ち上がり憎々しげに見つめる。
「油断していたのが悪いが…!」
右手と背後の腕が一つの火球を生成する。
それは大きく、まるで太陽のように燃え盛り――。
今まさに解き放たれようとしていた。
529
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/06/01(水) 23:07:48 ID:brJ2zyI.0
>>528
「…この光は…」
まるで太陽―――
そう彼女は考えた。
体の内に燃え上がる炎は
目の前の熱い力に飲み込まれそうに思えた。
だが、それでも彼女は
「…負けて……たま…るか……!!」
太陽さえも飲み込んで見せる…
そう考えながら、消え入りそうな意識の中でそれへと手を伸ばした。
「焼き……尽くせ……!!
プロメテウス!!」
自身のペルソナにも、渾身の刃を振り下ろさせる。
恐らくこれが持ちうる最後の一撃になる。
意識がこのまま消え去りそうだ…
530
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/06/02(木) 00:02:27 ID:p1won6CY0
>>529
渾身の刃を手加減すらしない一撃が打ち砕かんと迫る。
しかし、その僅かな時――。
「セト!全力で吹きとばせ!」
青年が放った突風で吹き飛ばされた。
少年は青年を憎しげに見つめ。
「公安局か…ちっ、ここまでだね――」
追撃の攻撃を回避しながら夜の闇に消えた。
青年は防人を覗き込むと。
「君、無事かい?」
そう語りかける。額には汗が滲み僅かな間に、
大きく消耗したように見える。
531
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/06/02(木) 00:11:55 ID:brJ2zyI.0
>>530
一撃が決まったのかもわからないまま、
彼女は全力の一撃を打ち込んだ。
「……っ!ぐっ……」
力を使い果たしたのか、
彼女の蕎麦に居たプロメテウスは少しずつ消えていく…
近くの壁にもたれかかり、
荒く、行きを吐き出しながら鶫は視線を青年の方へ向ける。
意識ももうろうとしていて、はっきりとは見えない。
「…ん……だ……れ……?
がはっ……!」
声を絞り出そうとすると、再び吐血する。
背中と胴体。両側に刻まれた刃傷は決して浅いものではない。
周囲を見れば、彼女のものと思われる血だまりがあちこちにできているだろう。
532
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/06/02(木) 23:10:35 ID:p1won6CY0
>>531
「…傷が深いな。
弓形!守谷に連絡して車を呼んでくれ。
僕はこの子の応急処置をしておく」
「…解った」
銀色の紙をした女性が静かに返答すると、
携帯を使い連絡を始める。
そして青年は防人の状態を見極め始めた。
「浅くはないが…運がいいな、
出血多量死以外はしなさそうだ…」
青い炎のようなオーラとともに、青年の背後に、
黒い太陽のような炎を持つ人型が現れる。
「サトゥルヌス、彼女の傷を塞いでくれ。
できるだけ静かにな」
533
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/06/02(木) 23:25:13 ID:ZXuMNbaM0
>>532
「ん……う……」
僅かに開けた目は、ペルソナの姿を視認する。
「……それ……は…」
黒い太陽のような姿
それは、意識がもうろうとしている中でも気になるのか、
声をかける。
…ひとまず、治療を行えばなんとかなりそうだ。
534
:
3:嗤う愚者が人を侵す
:2016/06/05(日) 20:18:40 ID:p1won6CY0
>>533
サトゥルヌスはその炎を使い、
防人の体の傷を的確に塞いでいく。
傷口はまるで時間を早めたように塞がれ、出血を止めていく。
「弓形、車は?」
「後数分。その子は持ちそう?」
「血が多いが致命傷じゃない。
傷は塞いだ、本部でちゃんとした治療を受ければ、
明日にでも復活する。…というより、してもらわなければ困る」
「重要参考人?」
「ああ…天沢に繋がる、ね」
二人が話している内容は聞こえているかはわからないが、
遠くから聞こえる車のエンジン音が、防人の耳に響いてきた――――
(了)
//ありがとうございました…
535
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/06/05(日) 20:52:50 ID:/Z9X1Y120
>>534
「……はぁ……」
彼女の体を包み込んだ炎は
とても暖かく、優しく傷を塞いでいった。
痛みが和らいだのを感じた鶫は
(終わった……の……ね)
急激に襲いかかる疲労によって
意識を手放していった。
……遠くから聞こえるエンジン音を耳に聞きながら。
//こちらこそ、ありがとうございました。
536
:
4:終に向かう足音
:2016/07/08(金) 22:22:45 ID:p1won6CY0
異能都市公安局二課第5係――。
特定の政府機関に因る統治を受けないとされる、
特殊自治区と呼ばれる異能都市の治安を裏から維持する組織の一つ。
対異能者を前提とし、その面々は少数ながら精鋭揃いであるという。
ここはその5係の本部にある医務室――。
「彼女は?」
「回復はもう、面会されますか?」
「頼む、中の会話は遮断を」
「了解しました」
白衣の男性は敬礼すると、扉のロックを解除する。
この先にいるのは『ペルソナ抜き』の重要参考人、
天沢裕太と伊達紫苑の二名に繋がる証人。
何よりも、犯人と直接あった可能性がある少女がいる。
医療ベッドの横に座り、彼女を見る。
537
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/08(金) 23:11:48 ID:bw69zf.s0
>>536
「…………」
その少女……防人鶫は疲れきった顔で眠りについていた。
眠っていたのはどの程度かわからない
「………ん……」
ふと…目を覚ましてあたりを見回した。
真っ白な天井がやけに眩しく感じる。
「……病院…かな…?」
薬液の匂い、清潔そうな部屋
病院なのだと感じるが…
「…あ…あなたは…」
と、隣りにいた人物の顔を見て首を傾げた
「えっと……こんにちは…それとも…
いえ、まずはありがとう…ございます…でしょうか?」
軽く頭を掻きながら応える。
身体に刻まれていた傷も、医療技術のおかげなのか
あるいは魔術的なものなのか…とにかく治っていた。
538
:
4:終に向かう足音
:2016/07/08(金) 23:18:46 ID:p1won6CY0
>>537
「落ち着いてくれ、ここは公安局。
君は怪我して倒れていたところを僕が保護した、
今は倒れてから22時間たっている。ここまでは解るかい?」
聴きやすいようにゆっくり話しながら、
彼女の眼を見て会話をしようとする。
「礼はいらない、仕事だ。
僕は清水秋雪、君は防人鶫だね?」
539
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/08(金) 23:22:28 ID:bw69zf.s0
>>538
「公安……あ…病院では…
無いんですね…」
妙に身体が重たいように感じる。
それは拾うだけではなく、ペルソナを使いすぎたせいもあるのだろうか。
「…一日近くも…
私は寝ていたんですか…
あの時…」
そう言って少し顔をしかめた。
「…無事だったのは…幸運だったかもですね…」
どうやら、あの時のことはよく覚えているようだ。
…後半は意識も朦朧であったが。
「…秋雪さん…ですね?
えっと…はい…それが私の名前…です。」
うなずいて返事を返す。
口調はまだゆっくりだが、一応会話はできそうだ
540
:
4:終に向かう足音
:2016/07/09(土) 08:13:23 ID:p1won6CY0
>>539
「さて、まず最初に言っておこう。
君はペルソナ抜き事件の重要参考人の一人だ。
幾つかの質問をする。答えなくても構わない」
極めて事務的に、簡潔に事を伝える。
正気ではあるということは記憶操作などの異能を受けた形跡はないだろう。
もっとも、本当かどうかは弓形に頼るしか無いが。
「一応、黙秘権はあるが、答えてくれるとありがたい。
一つ、君はあの場で何があった?
二つ、天沢裕太と伊達紫苑の居場所を知っているか?
三つ、君は抜き取られていないようだが、何故だ?」
まずは3つ、質問する。
541
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/09(土) 09:00:55 ID:bw69zf.s0
>>540
「…質問……ですか…
いいですよ…
出来る限りのことに答えます…」
そう言ってから軽く呼吸を整える。
どこまで覚えているか、それを考えていた。
「…まず最初の質問ですが…
ペルソナ抜きの犯人…を名乗る少年…
確か、エイジと名乗っていましたか…
その人と話をしていて…
攻撃を受けた…という感じでした…」
少し前まで、ちょっと親しげに話していたことを思い返した。
そして軽く首を回し、次の質問に答える。
「天沢さんの居場所…ですか?
……私も知りたいくらいです…
伊達…紫苑…?…その人は…
誰、でしたっけ…?」
命の恩人である彼は
普段どこにいるのか。
それは彼女もよくわからない。
たまに姿を見せたりするものの、どこに居るかというのは思いつかないものだ。
「3つ目は…
抜き取られてない…ですか。
いえ、私は抜き取られましたよ…
私自身の能力を…大半が」
そう言って自分の手のひらを確認する。
「…その後、良くわからないのですが…
新しい力を「誰か」から受け取ったんです…
その御蔭で私は…多少ではありますが…
無事でいられました。」
奪われた能力のことを思い返す。
やはり、そのことを考えると少しつらい気分になるようだ。
542
:
4:終に向かう足音
:2016/07/09(土) 20:35:04 ID:p1won6CY0
>>541
「そうか……」
エイジ――能力は確か『汎超能力』だったか。
発火、千里眼、思考の読み取り、念動力を始めとした、
汎ゆる超能力を使い、そしてそれら全てを完全制御する人間。
だが……。
「エイジ…彼は5年前に死んだはずだ、
蘇ったか、それとも騙っているのか…。
そして能力の受け取りか…成程、道理がいった。
相変わらずか、あいつ」
変わらぬ友人の行ないを想いつつ。
彼女に再び質問する。
「能力を奪われたといったが、今は?
取り戻しているか?
エイジとあった時、何か覚えていることは?」
543
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/09(土) 20:56:53 ID:3w7hCPSo0
>>542
「死んでいる…?
…よくわからないですが…
とにかくやばそうですね…」
死んだ人間の名を騙っていると考えるのが自然だが…
死者をよみがえらせる能力。そういうのがあっても不思議には感じない。
「能力…ですか…
今は…」
そう言って自分の手のひらを見つめる。
「今は少し衰弱してますけど…
だいたい半分以上……でしょうかね…
奪われた力はそのくらいでしたから…
…そしてあの人は…
簡単に死ぬような人じゃなさそう…ということはわかります…
…使うたびに取り戻していく…とも言ってましたけど…」
544
:
4:終に向かう足音
:2016/07/09(土) 21:05:00 ID:p1won6CY0
>>543
「エイジは汎超能力者と呼ばれる能力者だ。
発火や念動力、思考の読み取り…多種多様な能力を完全に使いこなすと言われている。
自分の命くらいなら、自由に出来るかも、しれない」
首から下げた弾丸の首飾りを握る。
「使う度に取り戻す…?
どういうことだ……」
能力が取り戻されるということか…?
奪った能力は完全に我が物にはできていないと…?
そう考えているところに扉がノックされる。
545
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/09(土) 21:12:40 ID:3w7hCPSo0
>>544
「多種多様な能力ですか…
やれやれ、反則ですね…」
頭を掻きながら、少し不安そうな顔で応える。
無事だったのが不思議なくらいだった。
「さあ…
私の能力も、以前よりも戻ってるみたいですし…
そこに弱点があるのか…」
と、彼に言葉を返したところで、
扉をノックする音が聞こえた。
「おや、面会の人でしょうか?」
546
:
4:終に向かう足音
:2016/07/10(日) 22:01:00 ID:p1won6CY0
>>545
「ああ、だがそれゆえに非常に情緒不安定で、
おまけに記憶というものがほとんど残すことが出来なかったらしいが、な」
…死んだのも脳の過負荷に因る脳死と書かれている。
…まさか脳死状態から覚醒したのか?5年間も死んだ状態で?
何より何故5年も遺体が残っている…?彼は天涯孤独だったはずだ。
「かもしれないね。
まあ、何れにしても君もまだ精密検査がいるからな…。
ん…いや、面会ではないだろう」
「弓形だけど、入っていい」
「ああ、待っていた。
入ってくれ」
扉が開くと、銀のサイドテールが明かりに照らされて、
まるでキラキラ輝いてるように見える。
外見は秋雪よりも年下…18くらいだろうか。
黒いシックな服装は髪色とあいまって落ち着いた雰囲気を醸し出している。
だがその表情は感情が読み取りにくい、無機質さが感じられる。
「初めまして、私小野弓形。
秋雪と同じく、公安局の2課5係の捜査員。宜しく」
547
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/10(日) 22:48:15 ID:j7S1737Y0
>>546
「…全く…
そう簡単に人が生き返るなら…
そう苦労はしませんよね…
多分…以前より好戦的…なのかも…」
と言って溜息をつく。
「ふう、検査は受けます。
…能力の状態も気になりますし…
おや…?」
と首を傾げて、入ってきた女性を見る。
「あ、初めまして…私は……防人鶫です…
て…もう知ってますかね?」
と、少し恥ずかしそうに答えた。
548
:
4:終に向かう足音
:2016/07/10(日) 23:00:43 ID:p1won6CY0
>>547
「解った、手続きは済ませておく」
「知ってる。
貴女が天沢裕太と一緒にいたことも、
エイジと戦闘したことも知ってる。
ついでに言うなら、アナタの能力が今どういう状態かも」
淡々と、弓形は防人に話す。
まるでわかりきっているような口ぶりだ。
「不躾だったわ。
私、そういう能力者なの。
能力の残滓や能力者が誰かとか、そういうのが解るの。
絞るための情報はいるけど」
549
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/10(日) 23:18:01 ID:j7S1737Y0
>>548
「助かります…
元気になった後は…色々と考えないといけませんし…」
「…ふむ、事情を話す必要はなさそうですねー。」
助かったという感じで彼女の顔を見る。
能力を探る能力…捜査に向いていそうな能力だ。
「いえ、気にしないでください。
こちらとしても手間が省けます…
で…それならちょっとお聞きしたいんですが」
そう言って彼女の顔を見る。
「今の私の…ペルソナじゃない
【能力】の状態は…?」
550
:
4:終に向かう足音
:2016/07/10(日) 23:24:01 ID:p1won6CY0
>>549
いつの間にか秋雪は退席していた。
どうやら手続きを済ませに行ったようだ。
「率直に言えば多分元に戻っているわ。
パズルのピースに欠けた部分はないもの。
ただ今までどう使っていたかはわからないけれど、
パズルのピースが上手くはまっていないと思うわ、その部分を別の何かが埋めている。
そういう感じよ」
弓形は淡々といいながら、
少し名残惜しそうに秋雪が出た後のドアをちらと見ていた。
551
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/10(日) 23:45:51 ID:j7S1737Y0
>>550
「あ、さようならー……」
軽く手を振りながら見送っていった。
「…元に戻っている?
衰弱してるだけかと思いましたけど…
…じゃあその何かとは…」
と思って少し考える
「…ペルソナ…だったりしますか?」
552
:
4:終に向かう足音
:2016/07/13(水) 03:08:25 ID:p1won6CY0
>>551
「それだけではないと思うわ。
もっと何か…意志に近いものがあるもの」
曖昧な表現しかできないのだろう、
彼女の言葉の意味を捉えるのは少々困難だ。
「自分をもっと知ることが第一歩なのかもしれないわね」
553
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/13(水) 19:18:13 ID:Uqxv2Lh20
>>552
「意思……私の意思でしょうか…
あるいは…?」
何の意思なのか…
自分が拒絶しているのか?
ふと、自分の手のひらを見ながら考える。
「自分を知る…ですか。
…わかったつもりだったんですけどねー…
まだまだなんでしょうかねー。」
554
:
4:終に向かう足音
:2016/07/14(木) 21:37:20 ID:p1won6CY0
>>553
「自分なんて、一生わからないよ。
だってそこにないものなんて理解できるはずがないもの」
自分知ろうと、言った口で。
自分なんてどこにもないという。
矛盾をはらんだその言葉の真意は何か。
「…そろそろ私も仕事の時間かな。
そういえば聞き忘れたわ、貴女、歳幾つ?」
555
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/14(木) 22:05:04 ID:7hbzzQxk0
>>554
「自分が…ない?
…自分はここにいるような…気がしますけど…
…何かのたとえ…でしょうかね…」
難しい顔をしながら、彼女の意味深な言葉に応える。
「…私の年齢ですか?
えっと…今は16ですが…」
突然年齢を聞かれて、少し不思議そうな顔になったが
とりあえず応えることにした
556
:
4:終に向かう足音
:2016/07/14(木) 22:22:46 ID:p1won6CY0
>>555
「自分って自分じゃ見えないでしょう?
それって、ないものと同じだと思うわ、私。
そう、私と1つくらいしか違わないのね。
……ん、来たみたい、じゃ、私はこれで。お大事に」
スッ、と立ち上がると。
銀の髪を揺らして、ドアの方へ歩いて行く。
557
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/14(木) 23:14:27 ID:7hbzzQxk0
>>556
「…確かに、鏡でも見なければダメでしょうね…
そういう意味では、本当の自分の姿は
見ることができていないのかもしれません…」
彼女の言葉にどうやら納得しているらしい。
彼女の言うとおり、自分の姿は何かを通してしか見られないのだ…
「…つまりあなたは…17歳…ですか?
私と近いんですねー…あ、じゃあまた。」
そう言って彼女に手を振り見送った。
若干親近感が湧いたように感じた。
「…そういえば、誰が来るんでしょうね。
さっきの人でしょうか…」
558
:
4:終に向かう足音
:2016/07/16(土) 19:00:08 ID:p1won6CY0
>>557
やや喧しいノックの音が静かな部屋に響く。
勢いよく扉を開けて出てきたのは栗色のショートボブと、
眩しい笑顔が特徴的なスーツを着た女性だった。
「どうもー、眼を覚ましたって聞いたから様子を見に来たよ。
私、片平優奈!宜しくね〜」
歩きとは思えないスピードで近づき、
手を握るとやや大きく振りながら自己紹介をする。
しっかりとスーツを着た印象からは想像もつかないくらい、
明るくフレンドリーなしゃべりや雰囲気をした人物だ。
559
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/16(土) 19:06:20 ID:7hbzzQxk0
>>558
「ん…はっ…あ?」
突然元気な様子の彼女を見て
不思議そうな顔をする。
「え、えっと……どうも…
防人鶫…です。」
と、首を傾げている。
会ったことが会っただろうか?…と思い返した。
「えーっと…
どこで会いましたっけ……?」
560
:
4:終に向かう足音
:2016/07/16(土) 20:43:27 ID:p1won6CY0
>>559
「あーあーごめんごめん。
初対面だったね。あははー、私ったらあわてんぼう」
椅子にかけて、さてと息を吐いて。
改めてといった雰囲気で彼女は口を開く。
「改めて初めまして。
私、片平優奈。さっきお話してた弓形ちゃんと秋雪君と同じ、
公安局2課5係のメンバーなの。
貴女のことは秋雪君が運んできた時に身元をちょっとね」
ちょっと、という彼女は若干バツの悪そうな顔を浮かべていた。
もしかしたら知られたくないことも知られているのかもしれない。
「さて、いきなり馴れ馴れしくてごめんなさい。
でも貴女見た目は中々重傷で心配だったから。治ったって聞いたら嬉しくてついつい」
あははー、と笑う彼女は朗らかな笑みを浮かべている。
本当に心配していたようだ。
561
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/16(土) 21:00:13 ID:7hbzzQxk0
>>560
「…はぁ…
さっきの方と同じですか…
どうもよろしくお願いします…」
と言って少し微笑み返した。
(やっぱり生徒手帳とか確認されてるよね―…)
「まぁその…
そこまで気にしないでください。」
ちょっと困った顔で返す。
確かにちょっと苦労はしているが、気にされるのも好きではないのだ。
「それはどうも…
ありがとうございます。
私も…無事だったのは嬉しいですよ。自分が…」
と言って少し顔を下げた。
「なんというか…
無茶をしすぎてしまったような気がします…」
562
:
4:終に向かう足音
:2016/07/16(土) 21:47:42 ID:p1won6CY0
>>561
「そうだねー、一人で首謀者にあって、
反撃したのはいいけど、逃げなかったのは失策かもね」
まあ、多分逃げられる相手じゃないけど。
そう彼女は付け加える。
彼女は何か、フィルターのような物体をくるくると回しながら。
「でもふっ飛ばされたりしてよく無事だったよね。
見た目と違って結構丈夫なんだなあ、お姉さんびっくりだよ」
563
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/16(土) 22:24:18 ID:7hbzzQxk0
>>562
「あぁー…
まぁ…私も
ちょっと意地になってたような…気がしますねー…
…逃げる余裕もなさそう…ではありましたけど…」
その顔はちょっと申し訳無さそうだ。
能力を取り戻したいという気持ちもおそらくは
逃げないでいた理由なのかもしれない。
「ああその…
こういう経験は結構…
少なくないもので…」
ちょっと申し訳無さそうに応える。
思えば、戦いの場に来るたびに
そういうふうな目にあっているように感じた。
「慣れた…とはちょっと違いますが、
思ったより頑丈なのかもしれないですね。」
そう言って、彼女が持っているフィルターに軽く視線を向けた。
564
:
4:終に向かう足音
:2016/07/19(火) 22:10:16 ID:iCQU7WVA0
>>563
「ふふ、そっか。
負けず嫌いなのねー…あ、これ?
これはねー、私の仕事道具なの」
フィルターのような物体を彼女は腕に貼り付ける。
すると中空にホログラムで画面が表示されていく。
超小型のパソコンのようなものだろうか。
565
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/19(火) 23:35:49 ID:f7KX0fJw0
>>564
「…そんな便利アイテムがあるなんて
知りませんでしたね〜…
スマホよりも携帯しやすそうです」
興味津々でその機会を確認する。
今はネットサーフィンをしているのかな?と思いつつ
ホログラフに浮かぶものを確認してみる
566
:
4:終に向かう足音
:2016/07/21(木) 22:19:35 ID:p1won6CY0
>>565
「私の能力だからねー。
電脳空間とかネットワークとかをちょちょいっと弄るの。
だからこれがないと手間がかかっちゃうの」
ホログラムに手を触れて操作していると…。
なんと、防人の詳細な個人情報があれよあれよと表示されていく。
「……とまあ、君の情報を探ったのは私。
あははは……仕事とはいえ容疑もない人の情報を漁るのはちょっと罪悪感があったよ。
ごめんね、知られたくないこととかいろいろあったと思うから……」
ホログラムを閉じると、フィルターを剥がし小さくたたんでいく。
567
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/21(木) 22:27:50 ID:f7KX0fJw0
>>566
「これは…ちょっと便利そうですね…
あ、これってもしかして…」
と、自分の情報が写っている箇所が目に止まった。
其の情報の中には
優勝の経験の情報、いろんな外敵と戦ってきたこと
姉の情報も含めて色々と出てきたのだった。
「……いえ、大丈夫です。
いろいろと知っておくのは…
大事ですからね…」
そう言って少し深呼吸した。
いろんなことを知られているのだと思うと
流石にちょっと驚きを隠せない。
「…止めなければいけないですからね…
あの男の子…のことを……」
568
:
4:終に向かう足音
:2016/07/21(木) 22:42:30 ID:p1won6CY0
>>567
「止められるなら止めたらいいと思うよ。
でも、正直被害状況に対して妙に秋雪君余裕なのよね……。
未だに目が覚めてない人たちだっているのになー」
不思議そうに、同時にやや不満を混じった声色で。
秋雪――さっき出て行った男のことを話す。
「……うーん……本当にあのエイジって人だけなのかな。
なんか重要な情報を見落としてるようなー……」
569
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/21(木) 22:52:31 ID:f7KX0fJw0
>>568
「…うーむ、
できればこれ以上の被害は危ないですよね…
私だって一度は……」
そう言ってあの時の体の冷たさを思い出す。
「やれやれ、ああいうことには二度となりたくないですね。」
と言ってからまた顔を上げる。
「重要な情報ですか…?
余裕があるってことは…
なにか追い込む作戦でもあったりとか…?」
570
:
4:終に向かう足音
:2016/07/21(木) 23:11:48 ID:p1won6CY0
>>569
「そんなことはないかな―。
班長は空振りしまくり、秋雪くんも神出鬼没に困り顔。
追い込むどころか、居場所がわかんないもん」
でも妙に余裕が有るんだよねえ…と続ける。
それは秋雪が天沢を信用しているからなのかもしれない。
二人は知らないが、秋雪と天沢は同級生――、
西神原学園でも同期なのだ。
「もしかしたら私達に隠してるのかな…。
と、うん。考えたら気になってきた、
私、そろそろ戻るね…休憩時間も終わっちゃうし」
571
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/21(木) 23:15:27 ID:f7KX0fJw0
>>570
「失敗しまくり…ですか?
だとしたら…元からそういう人とか…」
身も蓋もない理由を考えてみる。
それはそれであんまりな話になってしまうだろう。
「…あなたの言うとおり、
もしかしたらそれは何らかの作戦かも…
内緒にしてるのは外部に漏れないように…みたいな?」
そう言ってなんとかフォローを試みた。
と、そろそろ戻るということを聞き
「あ、どうもお疲れ様です・・・
おしごとがんばってくださいねー」
そう言って手を振り見送ることにする
572
:
4:終に向かう足音
:2016/07/25(月) 23:38:59 ID:p1won6CY0
>>571
次に扉が開いた時、現れたのは。
まるでおとぎ話の王子様のような端正な顔立ちをした青年だった。
日本人離れした股下と、日本人のようでそうでない顔つきと輝く金色の髪の毛。
美青年という言葉がぴったりだ。
「防人鶫さん、ですね。
検査の準備が整いましたが、身体は大丈夫ですか?」
爽やかな風のような涼しい声が発せられる。
表情は柔和で、優しそうな顔付きだ。
だが何故か、何処か氷のような冷たさをまとっていた。
573
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/26(火) 00:14:27 ID:x9LztZKM0
>>572
「ん…あ、これはどうも…」
次に現れた青年の姿を見て、少しドキッとした。
(うわー、結構かっこいい…
感じがする…)
初対面でいきなりドキッとしてしまうくらい
その青年はいい顔立ちをしているのである。
「あ、えっと…体調…ですか?
うーん…今のところは…
体に異常はない……と思いますけど」
ひとまず冷静になって言葉を返す。
正直今の状態はどうなのかわからない。
元気、とは言い難いが悪いというわけでもない。
…とりあえずは
「検査の方は、しっかり受けさせていただきます。
よろしく…お願いします。」
574
:
4:終に向かう足音
:2016/07/26(火) 22:54:53 ID:p1won6CY0
>>573
「ではゆっくりと立ちましょうか…。
おっと、自己紹介が遅れました。
富野茂之、一応2課5係の捜査副長を務めています。宜しく」
柔和な笑顔を崩すこと無く、穏やかに話す。
彼は防人の手を優しく引くと、ゆっくり立上がるように誘導する。
それはまるで王子様が手を引くような。
浮世離れした彼の雰囲気もあって現実感が薄くなりそうになる。
575
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/27(水) 14:12:30 ID:x9LztZKM0
>>574
「…は、はい…
よろしくお願いします…」
彼の目を少し見てから、軽く目をそらす。
(危ない危ない…)
何だか妙な気分になってしまった。
鶫は、これは気の迷いだと思って落ち着かんとしている。
「あっ…とっと…」
立ち上がった瞬間、足の力の弱さでつまづきそうになる。
長い間眠っていたところなので、急に立ち上がるのは難しい。
「す、すいません…」
頭を下げて謝りながら、ゆっくりと彼と足並みをそろえようとしている。
576
:
4:終に向かう足音
:2016/07/27(水) 20:31:55 ID:p1won6CY0
>>575
「お気になさらず。
これでも貴女のような人の手を引くのは一度ではありませんから。
さ、ゆっくり行きましょうか。本当はいろいろ聞きたいことも、あるのでは?」
きっと善意なのだろう、支えるように腰に手を添えて。
ゆっくり一歩ずつ歩き始める。
廊下に出ると、富野達が着ているスーツとは違う、
少し高級そうなスーツに身を包んだ人々が、書類を片手に、
或いは映像資料をいっぱいに持って駆けずり回っていた。
彼らは時折、面倒そうな表情を富野に向けながらも、
こちらを丁寧に避けて通り、態々道まで作っていた。
「すみません、騒がしくて。
1系の人達は何時も忙しくて。悪い人たちではありませんよ」
言って、笑顔で、周囲の気を遣ったのか。
僅かに周りを見て少し頭を下げていた。
577
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/27(水) 21:41:52 ID:x9LztZKM0
>>576
「あ、そうですか…
いえ、その…まぁ大丈夫です…」
と言って彼に手を取られてついていく
(多分…私だけじゃないんだろうなー…
この気分って)
そう思ってどうにか落ち着くことを考えた。
通り過ぎる人の姿を見て、鶫は彼らに頭を下げて挨拶を返す。
「まぁ…忙しそうですよね…
多分あの事件の事があって
この辺りもより一層大変なんでしょうね…」
そう言ってあたりを見回した。
自分の言葉次第で捜査内容も変わるのだろうかと考える…
「も、もうそろそろですかね」
578
:
4:終に向かう足音
:2016/07/31(日) 22:31:51 ID:p1won6CY0
>>577
「それもありますが、彼らはそういう立場でもありますから。
さて、着きましたよ」
眼の前の扉には『第3能力検査室』と書かれたアクリルの札が留まっている。
病院の扉のような雰囲気をしていた。
彼が扉をノックすると、若い男の声でどうぞ、と聞こえてくる。
「こんばんは、先生」
「ああ、その子が例の子だな。
初めまして…杉山、だ。宜しく」
男性は短く名乗ると、富野に下がってくれというように目配せするが。
富野は困ったように両手を広げると、一歩下がっていった。
579
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/07/31(日) 23:16:21 ID:HGNcrGmI0
>>578
「いつも忙しいんでしょうか…
ゆっくり休む時間…欲しいですね。」
と呑気に答えながら、
ひとまず目的地に到着したらしい
(第3能力検査室…能力の検査…どんな感じなんだろう)
検査を受けるということはあまりなかったかもしれない。
そう思いながらとりあえず扉をくぐる。
「あ、どうも…私は防人鶫…と申します。
えっと…杉山先生ですね?」
軽く頭を下げた後、目の前の医師のような男性に軽く近寄る。
「どうもよろしくお願いします…
能力の検査…をするんですよね?」
ちょっと不安げな顔をしながら返す。
580
:
4:終に向かう足音
:2016/08/01(月) 22:05:41 ID:p1won6CY0
>>579
「ああ、一応専門の医者をやってるよ。
もっとも、あくまでも脳科学の延長としてだがね」
やや若く見えるが白い髭と顔の皺が初老の雰囲気を醸して出している。
同時に中年特有の、疲れた気配がした。
「さて、まずエイジに能力を奪われたそうだが、
その時脳に痛みを感じなかったか?半身の違和感は?」
581
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/01(月) 22:11:13 ID:pwZspmEE0
>>580
「そうですか…
脳科学と…能力には関係が…
あ、いえ、よろしくです。」
と言ってとりあえず、近くの椅子に座ってみる。
「能力を奪われた時ですか…
あの時は確か…」
そう言って思い返す。
「たしか…
とてつもない寒さが…
それととてつもない虚脱感…そういったものを感じましたが…
脳への痛みですか…」
そう言って首を傾げる。
「うーん…感じていたか…
よくわからないですけど…
それと…半身の違和感ですと…」
そう言って体を軽く動かしてみる。
「…問題ない…ように感じますけど…」
582
:
4:終に向かう足音
:2016/08/03(水) 22:47:03 ID:p1won6CY0
>>581
「そうか……では、機械検査に移ろう。
問診では、余り成果は得られそうにない」
立ち上がるとついてくるように示す。
そうして歩いて行った先には、人一人が入れそうな、
大きなカプセルと、部屋全体の壁に三角錐をモザイクにしたような突起がある部屋に連れて行かれた。
583
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/03(水) 23:03:02 ID:LLWT9C3Q0
>>582
「むう……思ったより成果が得られなかったのでは…
もうちょっと私がわかっていれば…」
どこか悩み顔をしながら、
彼の様子をうかがう。
何だか申し訳無さそう。
「…まぁ、やっぱりこっちの検査のほうが…
わかりやすそうですね」
と言って、安心したふうな顔で頷いた。
(…しかし…
痛かったりしないでしょうかね…)
うーむ、と悩みながら、その検査室らしき場所を見回した。
目の前の大きなカプセルに入るのだろう。と感じる。
584
:
4:終に向かう足音
:2016/08/05(金) 20:55:16 ID:p1won6CY0
>>583
ゆっくりとカプセルの蓋が開く。
中は狭く、人一人が入れる程度だ。
「さて、そこに座ってくれれば後はこちらで測定を行う。
とはいっても、超能力用だから、何が解るかはわからんがね」
そう言うと、カプセルの近くのコンソールの前に座る。
585
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/05(金) 21:14:57 ID:UDmw2dg.0
>>584
「わかりましたー…
まぁ、運が良ければ…
いろいろと分かりますね。」
と言いつつも、彼女はカプセルの中に入り込んでいく。
「うーむ…
このままコールドスリープでも
されてしまいそうな…
デザインですねー。」
何だかドキドキとし始める。
ちょっと楽しそうだ。
586
:
4:終に向かう足音
:2016/08/11(木) 08:22:15 ID:p1won6CY0
>>585
カチリ、と音を立てたお思った時には。
本人の感覚では十秒もないくらいで目が覚める。
目が冷めてカプセルが開く頃には、先ほどの医者は姿を消していた。
「すみません。どうやら興味深いものが見つかったようで…。
すぐに出て行かれてしまいました、起きあげれますか?」
手を差し出し、立ち上がれるか心配そうに聞く。
然しその時――警報が鳴り響いた。
587
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/11(木) 17:20:44 ID:UDmw2dg.0
>>586
「……んー…?」
思ったよりも速く終わった。
鶫はそう思って辺りを見回した。
「興味深いもの?
それは一体…」
と、聞き返そうとしたところで警報がなった。
「えっ…?今度は一体何ですか?
まさか敵襲なんて…!?」
慌てて機械から出ようかとするが…
588
:
4:終に向かう足音
:2016/08/12(金) 22:36:14 ID:p1won6CY0
>>587
しかし、それを狙って入り口から何か、
弾丸のような物体が飛来するが、それは――。
「Absolute――」
富野の身体を抜ける前に氷のような何かに包まれ、
落下した――。
「まさかここに侵入してくるとは…。
成程、余程貴女に執心しているようですね。
大丈夫ですか?残念ですが、戦闘になりそうです」
589
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/12(金) 23:20:36 ID:UDmw2dg.0
>>588
「ん…まずっ…!?」
出合い頭を狙われる…かと思われたが
その弾丸は自分の体には到達せず、氷に包まれて動きを止める。
「あ、はい…大丈夫…ですけど…」
そう言って軽くへたり込みそうになる。
安心かとおもいきや、突然ここが戦場に変わった。
そのことは彼女を混乱させるには充分なことである。
「…狙ってきたのは要するに…
やはりあの子…ですか?
…どうしましょうか…」
今の自分は目覚めてからまださほど立っていない。
更に武器もない状態…
この状況で闘うのは難しいか…と考える。
「あ、あの、他の人は大丈夫なんでしょうか?
というよりも…ここも危ないかも…」
弾丸が飛来するほど近くに敵がいる…
となればここから出たほうがいいのだろうか…
590
:
4:終に向かう足音
:2016/08/15(月) 20:49:51 ID:p1won6CY0
>>589
「近いか、もしくは貴女ではなく、
私達を狙ってきたのかの二択でしょうね。敵は数えきれませんから」
次いで飛び出してきた犬のような生き物を、
地面を氷結させ足を取られたところを容赦なく氷槍が貫く。
死んではいないが、多量の出血と地面に縫い付けられたように動きを止められた。
防人の方に向き直った彼は、先程の柔和な笑顔とはまるで違う氷のように凛と冷たい表情だった。
「鶫、一先ず此処を離れ、
貴女の持ち物を回収しに行きます。
其れまでは決して私の傍を離れないように――死にたくなければですが」
掌を開くと氷の剣が生成され、彼の手に握られる。
そして、剣を持たない手をエスコートするように防人の方に差し出した。
591
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/15(月) 21:09:34 ID:UDmw2dg.0
>>590
「やれやれ……ですよ……
本当に休む時間がほしいです…!」
ひとまず、入っていた装置の中から辺りを覗く。
目の前に居た彼の顔は、とてつもなく冷たい。
思わず鶫も背筋をゾッとさせるが
「…分かりました。
ここは私の武器…その他色々を持ってくるしかなさそうですね。
私も、長生きしたいですし、
それに…ここの構造をよく知る人に、従うべきですね。」
こちらも真剣な眼差しで返す。
ある程度歩けるようにはなったが、それでも誰かと一緒でないと
ふらつきかねない。
危ない橋を渡らないようにするには、それが懸命だ
592
:
4:終に向かう足音
:2016/08/15(月) 21:23:12 ID:p1won6CY0
>>591
――悪くない目です、この先スカウトも良いかもしれませんね。
防人の眼を見て、心中でそう呟く。
この先は恐らく考えるより壮絶な状態だろう。
今いるメンツはデスクワークメインの1課と優奈に弓形と秋雪。
あの三人はいくらでも自衛できるだろうが、1課の援護は期待できまい。
「では、行きますよ。
もしふらつきそうな時は言ってください。考えがありますので」
防人の手を握る、彼の手は冷たく――まるで死人のようであった。
顔や雰囲気には生気が宿っているというのに体の熱がまるで無くなっている。
彼は扉の奥へやや早歩きで進んでいく。
やがて廊下へと到達すると。
「……これは……」
そこには先程の犬のような生き物や、猿のような生き物が、
スーツを着た1課の人間と壮絶な乱戦を繰り広げていた。
1課の人間は主にナイフや銃を主としているが、連携に因って敵を撃退している。
だが防衛は万全だが攻め入る力がないのだろう、こちらの援護は出来なさそうだった。
593
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/15(月) 21:46:43 ID:UDmw2dg.0
>>592
「ふう…ありがとうございます。」
この先に何があるか、それを考えると
不安がないわけではない。
とはいえ、今の状況をどうにかするには、ここを突破する他ないだろう。
「…冷たっ…いえ…すいません…
その…」
思わず差し伸べた手に感じた冷たさに
またしても背筋を震わせた。
一瞬ぞっとしたのだが、それでも付いていこうと考える。
少し足取りを追うのに置いて行かれそうになる。
だが、それでもなんとか躓かずに先へ進んでいくと
「…あそこにも居るんですか…」
廊下の辺りで戦いが繰り広げられている。
抑えているのならば助けに行きたいとも考えるが…
(今の私では……足手まといになるだけかもしれない…)
そう思って、少し不安になりながらも彼らを見つめ続ける。
今は自分の装備が必要なのではないだろうか…そう考えながら
594
:
4:終に向かう足音
:2016/08/15(月) 21:59:55 ID:p1won6CY0
>>593
「ああ、失礼。
昔からの体質でして、体温が低いんです。
能力を使っている時はもっと下がってしまうようで」
眼の前から目線を変えず、彼はそう話す。
そう言っていると道を見つけたのか。
「二つ目の十字路の左、確かあそこに荷物はあったはずです。
…この激戦区をまっすぐ通るしか無いとは、中々」
不可能とは口にしない、言いながら既に彼は、
歩幅を防人の方に合わせながら進んでいた。
そこに数匹襲い掛かってくるが、片手の剣戟と足を取る戦法で、
匠に防人に近づかせない。
万全の状態ならば彼一人で圧倒してしまうのではないか――。
掌の温度はさっきよりも冷たくなっているが、錯覚させられそうになる。
595
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/15(月) 22:11:38 ID:UDmw2dg.0
>>594
「い、いえ気にしないでください。
夏は暑いですからね。これくらいがちょうどいいですよー!」
気にしてるかもしれない。と思ったのか
何だか励ますように言葉を送る。
「仕方ないです…
ひとまずここは突破しましょう…
あの人達もなかなか頼りになりますし…」
彼のちからを少し掌から感じ、
彼の力があればなんとかなるか…とも思えてくる。
「…あの人達は…大丈夫でしょうか。」
時々襲ってくる的に軽く身を震わせながら
周囲の人達に心配そうな表情を向ける。
596
:
4:終に向かう足音
:2016/08/15(月) 22:45:37 ID:p1won6CY0
>>595
「おい、セキュリティなんで動かないんだ!」
「セキュリティルームから侵入してきたんだ、乗っ取られたんだよ!」
「喋ってないで交代してくれ!」
見ると、最低三人のチームで攻撃と補給を入れ替わりで行っている。
不意に飛び込んでくる相手も、バックに控えた複数人が素早く迎撃している。
どうやら弱点は脳天のようで、そこを正確に攻撃している。
制圧射撃と迎撃、弾の準備……それぞれが完璧な役割だ。
それが1課の武器なのだろう。
「彼らなら心配いりませんよ、
此処に配属されている以上、そういう経験がないわけではないですからね
……まあ、デスクワークメインですから、実戦は私達よりは浅いですが」
氷剣も徐々に血で赤く染まっている。
彼の表情は変わっていないが、時間とともに冷たくなる手は、
嫌でもよくない想像をかきたてていく。
やがて狙いを絞ってきたのか、数匹の敵がこちらを取り囲んだ。
猿や犬とは違う、猫背だが爪のような武器をつけた…人間のように見える。
「……成程、鶫。
狙いはたしかに貴女のようですが…エイジでは無いようですよ」
597
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/15(月) 23:44:32 ID:UDmw2dg.0
>>596
「……セキュリティルームから…?
なんだってそんなところから…」
時折聞こえてくる会話から、侵入ルートを考える。
セキュリティを止めた上で仕掛ける…という行動ならば
間違いなく計画的な行動だ。
「そうですか…
…なんとか戦えているなら…
私は急いだほうが良さそうですね。」
と、冷たい掌に嫌な想像を考えていく。
まるで死人に触れるかのような冷たさを感じてしまっているようだ。
「…囲まれた?!」
防衛線を一部突破されたのだろうか。
そして、自分に目線を向けられてるのを見て
間違いなく自分が狙いだとわかる。
「…あの子ではない?
他の人間にも何か心あたりがあるんですか?」
598
:
4:終に向かう足音
:2016/08/16(火) 00:06:17 ID:p1won6CY0
>>597
「ええ、おかげで一つ線がつながりました。
何故エイジが私達の捜査網をたやすく抜けつづけられたのか、
ここまで大それた行動を取れたのか……それは裏に繋がっている一つの組織があったからです
犯罪組織アンサング――既に壊滅したと思っていましたがまだ生き残っていたとは」
一瞬、取り囲む相手が怯んだように見えるが。
直ぐにこちらに襲いかかってきた!
「―っ!鶫、伏せてください!」
鶫を押し倒すように地面に倒し。
直ぐに氷の壁を創りだすが、間に合いそうにない!
599
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/16(火) 00:19:54 ID:UDmw2dg.0
>>598
「犯罪組織…?
そのアンサング…という組織がそんなことを…!?」
と、驚きの顔を見せた。
犯罪組織というものは居るかとは思っていたが…
「でもなんでそんな組織が
私一人のために…!?」
と、凄まじい勢いでバケモノが襲いかかってきた!
「あうっ…!
まずいですよ…!」
氷の壁を作り出す前にこちらが狙われる!
鶫は、なんとか出来ないかと考える
「くっ…プロメテウス…!!
来てっ…!!」
はたして、今の容態で出てくるだろうか。
そうは思ってもやってみるしかない!
600
:
4:終に向かう足音
:2016/08/16(火) 00:28:46 ID:p1won6CY0
>>599
「ダメです鶫さん!今の貴女の容体では――」
氷の壁が間に合わず、身を挺して守ろうとしている。
然しその時、大きく姿を揺らめかせているが、
炎の巨人は現れた、一瞬、相手がそちらに目が行く。
次の瞬間――一発の銃声とともに呻き声を上げて周りを囲んだ人間らしき生き物が倒れていく。
「鶫さん!収めてください!
その力は――使うほど貴女の命を削っているんですよ!?」
夢中で彼は叫ぶ。
601
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/16(火) 01:36:31 ID:UDmw2dg.0
>>600
「はぁっ…なんとか…!」
急に重い感覚が自分にのしかかったように感じる。
だが、なんとか周囲の敵を払うことが出来たらしい。
(これは…いったい…?
でもこれなら…!)
体に感じる異様な重みを気にしながらも
なお力を振るおうとした所で、
彼から驚くべき言葉を聞かされる。
「い、命を…
命を削っている……?」
その言葉を聞いて、彼女は目を丸くする。
炎の巨人の動きを止まらせ、驚愕した表情を浮かべた。
「それは…つまり…うっ…!」
直後、巨人の姿が乱れ、霧のように掻き消えた。
鶫の顔から汗が吹き出す感覚を覚える。
602
:
4:終に向かう足音
:2016/08/17(水) 22:21:54 ID:p1won6CY0
>>601
「いいですか、貴方は――」
「本来ならペルソナは自らに由り、
そして自分の力で開いていく力……僕のようにね。
だが今の君はどういう訳かその能力の源泉が君に負担をかけている。
それは自身を直視しない愚かさか、或いはその力そのものが借り物であるか」
見慣れない、白い銃を持った秋雪――最初にあった男は言う。
そばには弓形も一緒だった、どうやら共に行動しているようだ。
しかし、彼の発言を事実とするならば、
防人に負担をかけているのはどちらなのだろうか――?
「…一先ず此処はもう大丈夫だ、一分後に東雲さんが来る。
君の荷物を撮りに行こう、防人鶫」
603
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/17(水) 22:38:44 ID:u4c9BrJU0
>>602
「…あなたたちは…」
先ほどであった人達の姿を見て、
「……むう…
一体どんな問題なんでしょう…
いずれにせよ…使ったら危ない…ということですか…」
自身を直視しないこと…借り物の力ゆえ…
一体自分の妨げとなっているのは何なのか。
…だが、今はじっくり考える時間もなさそうだ。
「わかりました…
やはり今のままでは……
足手まといっぽいですね…」
促されるまま、彼女は
案内される方向へと歩いて行く。
先程よりも足取りがややふらついている。
負担が大きかったのかもしれない。
604
:
4:終に向かう足音
:2016/08/24(水) 20:36:24 ID:p1won6CY0
>>603
――先ほど秋雪や富野が防人に言ったことは半分は本当だ。
ペルソナは使用者の精神を糧として何らかの力を呼び出す力だ。
呼び出すものが強大であるだけ、負担は大きい。
ましてや覚えたての状態でここまで使っていれば、なおさらだろう。
秋雪は防人を扉の奥に入れる。
中には彼女の荷物が丁寧にまとめられていた。
…着替えもあるかと思い、秋雪は弓形を残し廊下へ出て行った。
「……一応私、監視役。
後、足手まとい、ではないと思うわ。
富野も、さっきは助けられたと思っていると思うわよ」
弓形はそう言うと、壁に身体を預けている。
――いつの間にか廊下は静かになっている、鎮圧、されたのだろうか。
605
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/08/25(木) 22:06:23 ID:u4c9BrJU0
>>604
「ふう…こ、こっちですね」
扉の奥に入ると、そこには鶫にとって馴染みのある装備が揃っている。
着替えはあるのだろうか…
制服も探してみることにするが…
「監視…まぁ、無茶をしたら危ないですからね…
…足手まといではない…ですか。
ありがとうございます。あの時は…無我夢中だったので…」
そう言ってちょっと微笑んだ。
今は病院着のままであるが、制服があるならそっちに着替えておく。
馴染み深い服のほうが、なんとなく能力を行使しやすいと思ったのが理由だ。
「…収まったみたいですが…
どっちが勝ったんでしょう…?」
静かになった廊下の方を期待半分、不安半分で見る。
扉を開けるべきかと思いながらも、ひとまず弓形に聞いてみることにした。
606
:
4:終に向かう足音
:2016/09/01(木) 20:56:19 ID:p1won6CY0
>>605
近くの棚にかなり綺麗に畳まれた制服が置かれている。
…というより、損傷があったりしている部分などがまるごと修繕されている。
そのさまは新品と見まごうほどで、プロの手が入っているとひと目で分かるだろう。
……着れば、色んな所に隠しポケットが増えてるのがわかるが。
「この一件が終わったらスカウトが来るかも、ウチの次官から。
…人ではほしいし、貴方はそれを抜きにしてもいい才があるもの」
感謝もあるのか、優しい微笑みをみせる。
無表情さからは想像できないほどの綺麗な微笑みだった。
「……時間通りなら、多分ウチの仲間が間に合ったと思うわ。
多分、序に情報も持ってきてると思う」
607
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/09/04(日) 12:19:20 ID:P.sjRvN.0
>>606
「やっと、馴染みの制服になれます……」
と言って制服を手に取る。
その手触りはまるで新しく買ってきたかのように
素晴らしい仕上がりになっていた。
戦いによって損傷した箇所も修繕され、
しかし
「…ですけど、フィット感も上がってるような気がします。」
実際に着込んでみると、彼女にちょうどいい馴染み具合だ。
そして、いろんな場所を触ってみると
「これは…」
色んな物を仕込めそうなポケットが隠されている。
自分の戦い方に合いそうな気がしてきた。
「見事な仕事です。ありがとうございます!
…スカウトですかー。
もしそうなったら私も嬉しいですよ。
その、街を守れる仕事って感じがしますし…」
と言ってから、一通り着替え終える。
学生服の状態を一通り確認した後で
「ふむ、
しばらく待ってたら大丈夫…でしょうかね?」
と言いつつ、外の様子を軽く見てみる。
608
:
4:終に向かう足音
:2016/09/06(火) 21:19:10 ID:p1won6CY0
>>607
「やったのは私じゃないわ、優奈よ。
できたら本人に言ってあげて、喜ぶわ(一寸ウザいくらいね…)」
何時だったか、彼女の能力をほめた時は凄まじかった。
撫で回し、抱きつき、声が大きい。
……まあ、最近は当人も自重はしているけれど。
「街を守ると言うより、色んな人の裏を見るほうが多いわ。
疑心暗鬼に陥りたくなかったら、あんまり勧めることは出来ない…」
外を見ている防人を見ながら、それになれた自分に少しため息が出た。
いいこともあったけど、其れより人間の汚さは、気分が良くはならない。
外をちらりと見ると、そこには――。
「オラァッ!好き勝手やってくれやがってこの犬公!」
「東雲さん、流石に死体殴りはちょっと感心できませんよ」
「……こっちは片付いたぞ」
オールバックの、粗暴そうな男が先ほどの犬のような生き物を殴って飛ばしていた。
その手を覆う手袋は血に濡れており、拳が武器なのだろう。
そのそばには先程の富野と、痩せ気味の頭にチョーカーを巻いた変わった雰囲気の男が立っている。
男の手には大きなライフルが握られている。
――ここからでは僅かだが、さっき防衛に徹していたスーツの男達が書類の片付けや、
電話などを行っていた。
609
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/09/07(水) 22:02:23 ID:NGsdvApE0
>>608
「そうですかー…
わかりました。感謝の言葉を後で伝えておきます。」
どんな人なのだろうと思いながら
自分の服をジロジロ見つめる。
「えーっと…
あー、なるほど…
裏の仕事ですか。
私は…なかなか難しそうですねー、
その手の仕事は…」
彼女の言う言葉を聞いて
少し考えを改める。
いろんな人の裏を見る、
それは自分にはどれだけ辛いだろうとも思う。
そして、ちょっと外を見てみると。
「………うわー、もう終わってますねー。
…何だかちょっとやり過ぎな人もいますけど…
皆さん強いみたいですね。」
安心した様子で外に出ていく。
元気そうな様子で安心したようだ
610
:
4:終に向かう足音
:2016/09/13(火) 22:16:35 ID:p1won6CY0
>>609
「おい富野、例の子は?」
「無事目を覚ましました、ドクターが興味深い反応を見つけたと。
なんでも、脳細胞が増加している痕跡が見られる、と」
「……それは奇っ怪、だ」
チョーカーの男は首を傾げ、本当か疑っている。
一方粗暴そうな男は少し訝しげな顔をすると、立ち上がって。
首をコキリと鳴らして。
「……まあ、富野がきっちり聴いたなら、俺から言うことはない。
だが今回、裏にいるのがアンサングなら面倒だぞ、事は大きくなる」
「解っていますよ、彼らには気取られ無いように、でしょう?
ジェネオンの皆さんも、もう今は一般人ですからね」
聞いていると、側にいる弓形は。
青い鳥を腕に留まらせていた。体躯は大きい。
611
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/09/15(木) 22:17:22 ID:WiQuCITk0
>>610
「……えーっと、例の子…ですか?」
と、自分を指差して、何気なく聞いてみる。
脳細胞が増加、と聞いて少し考えたのである。
「…あ、どうもこんばんはー…
ひとまず本日は、お疲れ様…
でいいんでしょうかね?」
そう言って彼らに対して声をかけた。
「どうやら敵は退いたみたい…ですかね。」
612
:
4:終に向かう足音
:2016/09/17(土) 18:17:56 ID:p1won6CY0
>>611
「ん…ああ、お前か。
例の怪我して倒れてたってのは、傷はもう良いみたいだな。
自己紹介しておく、東雲 結城だ。
異能都市公安局2課五系の主任…こいつらの上司だ、先の協力に感謝する」
「緒方守谷……捜査官だ」
粗暴そうな男が東雲と名乗り、傍のチョーカーの男は守谷と名乗った。
「今回は退いたが、それで終らないだろうな。
おい優奈!奴の居場所は!」
『もうちょっと時間をくださ〜い!』
東雲が大声で呼ぶと、先程話したフレンドリーな声が聞こえる。
どうやら先の敵の居場所を探っているらしい。
「…一先ず、お前の話をしよう。
さっき、富野からその能力のリスクを聞いたか?」
613
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/09/18(日) 11:29:06 ID:MDJbiWNQ0
>>612
「東雲さん、ですね。
まぁ…今日起きたばかりなのですが
怪我の調子は大丈夫そうです。
…えっと、緒方さんもよろしくお願いします。
こちらこそ、助かりました。」
二人に視線を向け、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ふう、また仕掛けて来る可能性があるんでしょうか。
だとしたら油断できませんね、これは。」
まだ敵が来る可能性があるのだ。
しかも直接的に仕掛けてきた。
このままだと危ないと感じる。
「…能力のリスク…
ペルソナ…でしたっけ?」
そう言って少し首を傾げて
「使ったら…命を削ると聞きましたが…
何らかの負担をかけている、というふうなことを…」
614
:
4:終に向かう足音
:2016/09/24(土) 21:58:49 ID:p1won6CY0
>>613
「ペルソナ――降霊術の一種だが、
それには人や才覚によって異なるものがあることがわかっている。
ウチの秋雪なら精神負担、フラッシュバックなどが現れてる。
だが、お前のそれは秋雪とは違う。その能力はお前の脳髄を明らかに拡張している」
東雲は表情を変えずに言い放った。
能力がお前を使いやすく改造しているのだ、と。
615
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/09/24(土) 22:10:11 ID:0KYg72rs0
>>614
「脳髄を拡張…
つまり…」
脳改造?という恐ろしい発想を一瞬思いつく。
少し頭をくらつかせてから答えた。
「能力を操るはずが、
逆に能力に飲み込まれかねないという…
そんな感じなんでしょうか?」
その表情はどこか不安げだ
616
:
4:終に向かう足音
:2016/09/29(木) 21:02:09 ID:p1won6CY0
>>615
「能力がお前の中に住み着こうとしている、と言ったほうが良い。
使い魔が契約者の精神を間借りするように、お前の脳髄の中に自らのスペースを作りかけている。
使い続ければ五感から影響を及ぼしていくだろうな、見ている景色に違和感を感じたりな」
東雲は事実のみを告げるように言い放つ。
まるで見たことがあるように。
617
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/09/29(木) 21:13:53 ID:T6CeeFeI0
>>616
「…恐ろしい話です…
まさかそのまま…」
ゾッとする気分だ。
何かが住み着いていき、そのまま自分の感覚を変えていくということらしい。
「…今、影響が出てたりするんでしょうか?」
不安に思ってあたりを見回す。
なにか違和感を感じるものがあるのだろうか?
618
:
4:終に向かう足音
:2016/10/04(火) 23:28:13 ID:p1won6CY0
>>617
「今はないだろう、ドクターは影響をおよぼすのは、
老化が始まってから……10年20年先だそうだ」
東雲はそう言いながら立ち上がり、歩き去っていく。
彼も何かやることがあるのだろう。
心配そうな様子の防人を見かねてか、富野が近づいてきていた。
619
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/10/06(木) 20:55:06 ID:RpO8Xi4A0
>>618
「うーむ…
もしそうだとしても…
いずれ起こるみたいな話なんですね…」
どうしよう、そんな顔をしながら
東雲の背中を見送る。
「………ん、あ…
どうも…」
ちょっと気の抜けた返事を、富野に向けて返す。
あまりに唐突な話だったので、まだ驚いているのだろうか
620
:
4:終に向かう足音
:2016/10/09(日) 18:23:48 ID:p1won6CY0
>>619
「どうか気を落とさずに…と言いたいですがそうもいきませんね。
秋雪のように上手く付き合っていく方法があれば良いのですが…」
考え込む表情は重く、彼にもどうにもならないのだろう。
その時、高揚した女性の声が響いた。
『緊急緊急――!町外れの港の方で能力反応!
こりゃ凄いぞ、ただの異能者じゃないよ、とんでもない強さだ!』
「……1人はエイジだとして、戦ってるのは誰でしょう…?」
疑問を浮かべる富野に、5系の部屋から出てきた秋雪が口を開く。
「多分僕の知り合いだ、良く知ってる。
急がないとエイジが殺されるかもしれない、富野。バイク借りるよ」
秋雪は手袋をつけていて、すぐにでも動けるような状態だ。
このまま任せてよいのだろうか。
621
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/10/09(日) 21:33:07 ID:G10kQbM60
>>620
「はぁー…うまく付き合っていく方法ですか…
どうやったら見つけられるんでしょうねそれ……」
はぁ、とため息を付いた。
仕方ない状況だったとは言え、新しい力を手に入れたことに
少なからず後悔を感じているが…
「ん、この声は?」
どうやら能力者が現れたということらしい。
二人が戦っているという話だが…
(…?戦う理由…
いや、それはいいか…)
自分が戦ったら危ないのかもしれないと思うものの、
それでも気になってしょうがなかった。
「あ、あの…
その知り合いの人って…
もしかして私の知り合いかもしれない…ですか?」
質問がよくわからないことになっているが、どうやら戦っている相手のことが気になるようだ。
「ちょっと様子を見に行きたいのですが…」
戦ったら危ないのかもしれないと思いながらも、様子を見たいと考えた。
622
:
4:終に向かう足音
:2016/10/20(木) 21:43:18 ID:p1won6CY0
>>621
「弓形、いいか?」
「別に、安定してるし、大丈夫だと思うわ」
「よし、サイドカーあるバイク貸してくれ」
「はい、これを」
富野からキーを投げ渡され、素早く受け取り同行を促す。
恐らく秋雪にはそこにいるのが誰なのか確信があるのだろう。
秋雪は落ち着いた様子のまま、歩き始める。
「早まるなよ――」
623
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/10/20(木) 22:19:01 ID:XgqqmDTU0
>>622
「ありがとうございます…
一応…無茶はしないつもりです。」
誰なのかはなんとなく想像がついているようだ。
鶫も二人の様子を見て理解する。
「…大丈夫です…」
と口では言うものの、
やはり実際に出会うときのことが心配だ。
どんなことになっているのかと思いながら、
自分の乗る場所を探す。
624
:
4:終に向かう足音
:2016/10/26(水) 20:06:58 ID:p1won6CY0
>>623
「そこ、サイドカー座ってヘルメット付けて。
かなり飛ばすからしっかり捕まっていてくれよ」
ヘルメットを付けながら防人に席に座るよう促す。
バイクはスポーツタイプのモノで、黒と金色のカラーリングが施されている。
黒を基調としながら金を少ない線で強調した色使いは富野の趣味なのだろうか。
「準備はできたか?」
エンジンに火を入れる準備をしながら問いかける。
625
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/10/27(木) 22:57:36 ID:0YGwBtJE0
>>624
「すいません、
ありがとうございます…
しっかりと掴まっておきますよ」
と言ってうなずき、ヘルメットをかぶった。
そしてサイドカーに座り、バイクを軽く見てみる。
「かっこいいデザインですねー…
これは…カスタマイズされたものなんですか?」
と言ってまたじっと見つめる。
「えっと、あはい…
準備はいつでも…」
そう言って頷いた。
「どれくらいのスピードが出るかはわかりませんけど…
飛ばしても問題ないですよ!」
そう言いつつも、ちょっと心配そうにサイドカーにしがみついた。
626
:
4:終に向かう足音
:2016/11/02(水) 00:58:55 ID:p1won6CY0
>>625
「富野の趣味じゃないかな…経費使ってやってたら不味いけど。
これ、一応備品扱いなんだけど」
手袋をギュッと締めて、ハンドルを握りしめる。
重く低いエンジン音が響き、原動機が唸りを上げる。
「――行くぞ」
アクセルをかけると、縄を解かれた猛獣のように。
勢い良くバイクは走り出した。
果たしてそこで何が起こっているのか、
終わりの時は、近い――――。
(了)
//さんざ時間かかってすいませんでした、ありがとうです
627
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/11/05(土) 22:22:03 ID:T9cYhHcs0
>>626
「まぁ、それなら
問題ないんじゃないですか?
頑丈そう…ですし」
そう言ってバイクをほほえみながら見つめる。
その言葉の端々には緊張の色が見え隠れしていた。
「…了解です。」
この先にあるであろう戦いに
どこか不安を感じながら
鶫は向かっていく…
…その場所には一体何が待っているのだろうか…
//いえいえ、ありがとうございました
629
:
終章:真意
:2017/02/09(木) 21:26:50 ID:p1won6CY0
バイクが到着したのは古い倉庫の並ぶ港だ。
再開発が計画されているが、遅々として進んでいない。
普段は若者たちのたまり場になっているこの場所は、今は。
人の気配のない冷たい空気が漂っていた。
バイクから降りると、それを待っていたように。
2人――裕太と香音が待っていた。
「凄いな、ホントに来るとは思ってなかったよ」
「言ったろ、公安局は絶対に来るって……」
「……天沢、それと…今は照井、か」
冷たい眼光で、秋雪は睨みつけていた。
彼らを敵と認識しているように。
630
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2017/02/09(木) 23:25:37 ID:c7f2kc.s0
>>629
「…到着しましたねっと…」
サイドカーには以前であった少女の姿もある
「久しぶりなんでしょうかねー…
あの、今の状況は…どうなってます?」
少し警戒をしながら二人の姿を見る
ひとまずは、現状がどれだけ危ないか
そういうことが知りたかった
631
:
終章:真意
:2017/02/13(月) 20:54:35 ID:p1won6CY0
>>630
「アイツならこの先にいるぜ、待ってるさ。
アイツの能力が復活するまで4時間ってところか、復活したら手がつけられなくなるぜ
行くなら速くした方がいいだろうな」
「だが……お前たちを行かせる訳にはいかない」
「……やっぱりか、構えろ防人。
……彼らは此処を通してくれないよ」
腰の銃に手をかけて、防人へ向かっていった。
理由を意図的に隠すように秋雪は防人を急がせている。
632
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2017/02/13(月) 23:34:50 ID:/H75gO4o0
>>631
「ふう…それならとおして…
はくれないみたいですね……」
ため息を付いて彼らの姿を見る。
「そういうわけにも行かないんですよ…
私がもともと持ってた能力の半分…
それを返してもらわないと行けないんで」
そう言ってぐっと拳を握る
「貰い物の能力だとどうにも落ち着かないんです。
やっぱり一番は自分自身がもともと持っていた力です。
…そういうわけで、ちょっと通させてもらいますよ」
両足に自身の能力を込める。
スキあらば飛び出して先へと進むことができる状態だ。
二人が攻撃を仕掛けてくるか…
それを用心深く確認している
633
:
終章:真意
:2017/02/16(木) 20:51:36 ID:p1won6CY0
>>632
構えるとともに、小さく秋雪は防人に言った。
「――防人、君は先にいけ。
彼らは僕一人でやる」
そう言うとともに、青白い炎が吹き上がっていく。
目の前の二人も同じだった、香音は短刀を。
裕太は徒手空拳のまま構えを取っている。
「秋雪、荷物抱えてオレに勝てると思うのか?」
「心配に感謝するよ香音、だが昔と同じと思うなよ」
「お前もだ、防人。
今の俺は――一切手加減はしないぞ」
裕太の冷たい戦意が、防人へと突き刺さる。
634
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2017/02/16(木) 21:31:47 ID:kp7Bdw7Y0
>>633
「……了解ですよ。
ひとりじゃちょっと不安ですがね…」
そう言って二人の様子を交互に見る。
「心配せずとも大丈夫です…
色々と考えましたけど…」
と言って、肌で感じる戦意に少し体を震わせる
「ケリを付けたいのはきっと自分も一緒なんです…
だから、」
そこで一気に足の力を爆発させる
「あなたとの勝負はやっぱりやめときます!」
一気に最短距離を突っ走りに向かう。
635
:
終章:真意
:2017/02/20(月) 21:50:11 ID:p1won6CY0
>>634
「行かせるって――」
「仕掛けろ!オンギョウキ!」
その通路を塞ごうとする香音の動きを、
背後から双刃刀を持った鬼が斬りかかる!
しかし、それを二刀流の鎧武者が受け止めた!
その僅かな隙間を縫うように防人が駆け抜ける!
防人の背後で剣戟と銃撃の音がこだまする。
追ってくる様子がない以上、足止めできているのだろう。
「どうした、僕一人くらいわけないんじゃないのか!?」
「っ…おい!」
「香音、諦めろ。後ろを見せたら容赦しないぞ、こいつ」
636
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2017/02/20(月) 23:03:09 ID:q/XdrU4s0
>>635
「どうもありがとうございます…
じゃあとりあえず…
お先に失礼!」
そう言って一気に走り出す。
「戦う相手は…
この先なんでしょう!
なるべく早く……それが終わってると…良いんですけど!」
一人で行くのは心配でもある。
軽口を言うかのようなその声はやや震えていた
(…いやいや…
ここは…私だけでもどれだけ…
できるか頑張らないと…)
ぐっと顔を挙げて先へと進んでいく。
そこに何があるのかと考えながら
637
:
終章:真意
:2017/02/26(日) 22:23:50 ID:p1won6CY0
>>636
向かった先、戦いの音すら遠くなったような場所。
倉庫の扉を背にして、彼はそこに居た。
以前よりも肥大化した三本目の腕、病的に白い肌。
目を閉じ、何かを待つように彼は佇んでいる。
「――」
目を開け、エイジは防人を見た。
その眼は獲物を見る目ではなく、明確な敵意を宿している。
肌を焼かんばかりの殺意を込めえ、彼は睨みつけた。
「やはり――君が最初か」
638
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2017/02/26(日) 23:09:39 ID:q/XdrU4s0
>>637
どこか強い気配のようなものは感じていた。
しかし近くにまで来たら流石に息苦しさをも感じ始めていた。
「…どうもこんばんは。
何日ぶりでしょうね…
何でだか懐かしく感じるような気がします…」
そう言ってぐっと拳を握る。
「…ものは相談ですが…
やっぱり能力を取られた状況は落ち着かないみたいです。
返していただけませんでしょうか…?
あの時に手に入れた力は自分には…合わなそうなんですよ…」
そう言いつつも鶫は両手に力を込める。
「……そっちの事情を知る時間くらいはあってもいいですが…」
639
:
終章:真意
:2017/03/03(金) 21:12:59 ID:p1won6CY0
>>638
「それは出来ない相談だ。
そして僕にも時間は無い――それに、事情はあの時話したことがほとんどだよ」
そう言って彼は構えた、徒手空拳。
武器はないが、その背から伸びる今やがしゃ髑髏の片腕の様なモノは異様な雰囲気を発している。
触れられるだけで何かが削られていきそうな――。
「ことここに至っては語る言葉はないさ、そうだろう?」
公安とあの二人が何を思ってるかは知らないがね、そう付け加え。
彼は敵意を向ける!
640
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2017/03/04(土) 01:45:03 ID:q/XdrU4s0
>>639
「時間がないですか……
そっちの事情は知らないですけどねー…
こっちの事情も考えてほしいところですね…全く…」
説得に応じるとは思っていなかった。
戦うのは避けられない……
そう思って彼女はぐっと拳を握った。
「そういえば……
その腕でしたっけ…私の能力を盗られたのは…」
彼女は武器を取り出して答える。
「まぁ…そうですね。
お願いじゃなくて、無理やり取り返すほうが良さそうです。」
相手の出方を伺うように彼女が取り出したのは拳銃。
どうやらおもちゃではなく本物のようだ。
(やれやれ…念のためにと持っておいたものが役に立ちそうです。)
彼女はそれに力を込め始める。
能力は下がっているものの、だからこそ威力の高い武器にも
馴染むようになっているようだ。反動が大きくなりすぎないように…
641
:
終章:真意
:2017/03/20(月) 19:32:19 ID:p1won6CY0
>>640
「――さぁ、最後の心残りを果たすとしよう」
銃を構えられる前に、彼は弾丸のように迫っていく!
防人の正面向けて掛けた彼は、どういう手品か次の瞬間背後から掌底を放とうと迫る!
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