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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

1リリカル名無しA's:2010/03/29(月) 23:42:31 ID:lCNO3scI0
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。

注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。

・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/

詳しいルールなどは>>2-5

315散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:41:48 ID:.DfmzCYc0
「………」
 それでも。
 だとしても、泣くことはしなかった。
 静かに身体を起き上がらせ、視線を左側へと逸らす。
 始の死体の向こう側にいたのは、焼け焦げた大地の中心で倒れ伏す、元の小さな姿のヴィヴィオだ。
 すぐ近くに突き刺さっていたナイフは、始を殺したことで手にしたボーナス支給品だろうか。
 無言で立ち上がり、歩み寄る。未だ真新しいナイフを回収し、気絶した少女の身体を抱き上げる。
 ひゅーひゅーと響く呼吸音は驚くほど小さく、心臓の鼓動はあまりにもか細い。
 誰の目にも明らかな、満身創痍の有り様だった。
「……あたし、泣きませんから」
 ぼそり、と。
 消え入るような声で、呟いた。
 そうだ。こんな所で泣いている暇はない。
 こうして立ち止まっているうちにも、目の前の命はどんどん蝕まれていく。
 今ここで涙し膝をつけば、せっかくレリックの呪縛から解き放たれたヴィヴィオの命が消えてしまう。
「ヴィヴィオを死なせないためにも、前を向いて歩きますから」
 振り返ることはしなかった。
 それきり始の死体を見ることはなかった。
 ジェットエッジのローラーを回転させ、北へ北へと進んでいく。
 今は涙を流せない。
 始の死を悲しんでやることも、弔ってやることさえもできない。
 今目の前で死にかけているヴィヴィオを、スカリエッティのアジトへと運び、その命を救うこと――それがスバルの使命なのだから。
「だから、もう行きます」
 白のバリアジャケットがはためく。緑の瞳が光り輝く。
 胸にこみ上げる悲しみよりも、なおも大きな決意を抱いて、満月の下を進んでいく。
「ありがとうございました――始さん」
 それが相川始との、最期の別れの言葉だった。


【1日目 真夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ跡】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ヴィヴィオを連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
 2.六課のメンバーとの合流。つかさとかがみの事はこなたに任せる。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 4.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 5.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 6.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

316散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:42:18 ID:.DfmzCYc0
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大)、肉体内部にダメージ(極大)、血塗れ
【装備】フェルの衣装
【道具】なし
【思考】
 基本:?????
 1.ママ……
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。
※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。

317散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:43:13 ID:.DfmzCYc0
 

 時は僅かにさかのぼる。
 これはヴィヴィオの魔力が暴発した、その瞬間の出来事である。

 悪い予感は的中した。
 否、正直予感以上だった。
 これほどの規模の大爆発は、これまでのバトルファイトを振りかえっても一度も目撃したことがない。
 腕に抱き止めたギンガの妹は、あまりの音と光に気絶してしまった。
 人間の開発したスタングレネートやらを、遥かに凌駕する音と光だ――正直自分自身さえも、未だ意識を保っているのが不思議だった。
 爆発が背後にまで迫る。
 目と鼻の先にまで光がにじり寄る。
 このまま飲み込まれてしまえば、それで何もかも終わりだ。
 身体はあっという間に蒸発し、骨まで残さず消え果てるだろう。
 自分はどうなろうと構わない。だが、それ以上に死なせたくないのはスバルだ。
 昏倒した少女を背後へと放ると、迫り来るカラミティへと正対する。
『REFLECT』
 カリスアローにラウズしたのは、ハートの8番目のカード――リフレクトモス。
 ギラファアンデッドの攻撃にも耐えられなかった防壁が、どこまで有効かは分からない。
 それでも手にしたラウズカードの中で、最もましな防御力を持っていたのがこれだ。
 すぐさま光の壁が出現し、カリスの盾となって立ちふさがる。
 爆発と正面から衝突したのは、ちょうどそれから2秒後だ。
 すぐさま、強烈な反発が襲いかかった。
 ばちばちと耳触りなスパークが響き渡り、衝撃が大気越しに身体を震わす。
 ハートのマスクの下の眉間を、苦悶を宿した皺に歪めた。
 見ればリフレクトの障壁には、既に亀裂が走っている。恐らくはあと数秒と保たずに、この壁は消滅するだろう。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」
 それでも、諦めてなるものか。
 膝をついてなるものか。
 全身から暗黒色の飛沫を放ち、本来の姿たるジョーカーへと変幻。
 黒と赤の鎧が消失し、黒と緑の甲殻が姿を現す。
 リフレクトがばりんと音を立て砕け散ったのは、ちょうどこの瞬間だった。
「くっ、お、おおおおおお……っ!」
 轟――と身を襲うのは、耐えがたいほどの灼熱と圧力。
 カリスの姿なら即死していたであろう殺人的破壊力に、無敵のジョーカーの体躯すら、じりじりと焦がされていく。
 命が遠ざかっていくのを感じた。
 不死身であるはずのこの命が、驚くほど静かに消えていくのを感じた。
 このままでは遠からず自分は死ぬだろう。
 たとえスバルの盾となり、彼女を守り通したとしても、その未来に自分の命はないのだろう。
 ふ――と。
 不思議と、笑みが込み上げた。
 まったくもって、不思議なこともあるものだ。
 殺戮のために生まれたジョーカーの最期の仕事が、命を守ることだとは。
 魔力の炎に焼き尽くされながら、しかし不思議と穏やかな気分で、自分の奇妙な運命を見据える。
 少し前まではこんなこと、考えたことすらもなかった。
 そんな自分を変えたのは、愛すべき人間達の心だ。
 スバルが懸命に説得してくれたからこそ、人の想いの強さを知ることができた。
 ギンガに命を救われたからこそ、人の想いに触れることができた。
 そして、最初に人の心を教えてくれたのは、あの栗原遥香と天音の親子だ。
 すいません、遥香さん。ごめん、天音ちゃん。
 俺はどうやらここまでらしい。ここから生きて帰ることはできないようだ。
 そして、それでも。
 だとしても、これでよかったと思える自分がいる。
 自分の命の捨て方としては、十分に満足できる死に様だと思っている自分がいる。
 人を殺す運命にあった自分が、人を守って死ねるのだ。こんなに上等な死に方はなかった。
 これで、いいんだよな。
 今は亡き少女が最期に見せた、穏やかな笑顔へと問いかける。
 俺はしっかり生き抜いたよな。
 お前が言ってくれた通り、人間の心に従って、真っ当に死ぬことができたんだよな。
 そうだよな……ギンガ――――――



【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード 死亡確認】


.

318散る――― ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:43:57 ID:.DfmzCYc0
【全体の備考】
※F-8にて大規模な火災と魔力爆発が発生し、以下の被害が生じました。
 ・F-8が壊滅状態となりました
 ・ホテル・アグスタがほとんど全壊状態となりました。
 ・装甲車@アンリミテッド・エンドラインが大破しました。
 ・ヴィヴィオの支給品一式が消滅しました。
 また、火災は魔力爆発によって鎮火しています。


【バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜】
金居に支給されたボーナス支給品。
未確認生命体第45号ことゴ・バベル・ダの使用する大金槌。
高い殺傷能力を有しており、バベルの怪力と相まって、紫のクウガの鎧に傷をつけるほどの威力を発揮した。

【黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK】
ヴィヴィオに支給されたボーナス支給品
「組織」に所属する契約者・黒(ヘイ)が使用するナイフ。

319 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 00:45:32 ID:.DfmzCYc0
ふぅ、何とか宣言の範疇の時間に投下できた……というわけで投下は以上です。
誤字・矛盾などありましたらご意見ください。

320リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 01:56:43 ID:qsn2Ooe.O
投下乙です
ヴィヴィオとエネルのバトルはまさに圧巻。規模で言えば殺生丸とナイブズをも越えるんじゃなかろうか
で、美味しい所を持って行くのはやはり金居。アレックス同様漁夫の利で殺害数を稼ぐか。
そして始。最期まで誰かを守る為に戦い抜いた姿に感銘を受けた。お前は偽物なんかじゃない本物の仮面ライダーだ!

そして指摘が二つ程。
ヴィヴィオはフォワード4人は呼び捨ての筈なので、スバルさんではなくスバルと呼んだ方が自然かと。
もうひとつは、このロワでは死亡=ラウズカード化だった筈なので、カード化の描写も入れた方がいいのではないかと思いました。

321 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 02:10:21 ID:.DfmzCYc0
了解しました。前者はそのようにいたします。
で、後者の方なんですけど……ジョーカーってラウズカード化するんでしょうか? そこが分からなかったので、こういった扱いにしたのですが

322リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 03:07:36 ID:nMQrsHmw0
映画でカードになってるよ

323リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 03:53:02 ID:iis7eLVQ0
投下乙です。
相変わらず熱い! ヴィヴィオとエネルの戦いも勿論の事始の散り際も熱かった!
ヴィヴィオはもう魔法を使えなくなってしまったけど、ロワ的にはそっちの方がいいのかも。
もう聖王になる事もないし、只の子供になってしまうけれど、そっちの方がかえって安全かもしれないし。
一つ心配なのはヴィヴィオが元の精神状態に戻れるかだが……一緒に居るのがスバルなら大丈夫か?
そして今回一番かっこよかった始。始の心を動かした晋やギンガと同じく、始もまた誰かを守る為に散った。
正体が化け物とか人間とかそんな問題でなく、最期の最期で本当の意味で仮面ライダーになれたんだと思うな。
ルルーシュや始、ギンガ達……死んでいった者達の命を背負ったスバルの今後に期待です。

ジョーカーのラウズカード化に関してですが、既に言われている通りジョーカーもまたカード化します。
53枚中、どんなラウズカードの代わりにも使える、言わば全ての能力を持ったカードがジョーカーのカード。
劇場版でも登場していますが、外見さえ知って居れば問題なく書けるレベルかと思います。

自分も一つ気になったのですが、アンデッドには死亡や破壊・消滅と言う概念が無く、その為にカードに封印されます。
まぁ封印されれば死んだも同然なのですが、一応破壊する事も消滅させることも不可能なのがラウズカードなので、
始の死後、始が所持していたハートのラウズカード10枚の行方も描写しておいた方がいいかな?と思いました。
(実際ギャレンが死んだ(と思われた)時も、持っていたラウズカードが全部戦闘後の海岸に散らばっていたし)

324名無し:2010/07/20(火) 04:10:36 ID:TFRDfDvE0
遂にマスカレードからも死者が・・・まあ、4人も参加して第3回放送まで誰も死ななかったのも十分すごいけど。

325リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 10:37:46 ID:KhF25q020
投下乙です。
ホテル戦完全決着!!
始vs金居、ヴィヴィオvsエネルという引きでどんな激闘になると思ったらスバル達によるヴィヴィオ救出戦になるとは。
スバルの攻撃が通じなかった時はどうなるかと思ったけどまさか暴走とは……
大暴れしたエネルは遂に此処で退場(でも、皮肉な事だけどエネルがいなければヴィヴィオを助けられなかったんだよなぁ……)
下手人の金居は最低限のダメージで最大限の戦果……コイツが一番の勝ち組じゃねーの……
ヴィヴィオは何とか元に戻ったけど肉体的なダメージも酷いし精神的にもボロボロ……大丈夫か?

そして始……退場したとはいえスバルを守りきった上での退場……それが結果としてヴィヴィオも救った……
登場当初は無差別マーダーでダークローチ大量発生とかトップクラスの危険人物だったのに最後の最後で仮面ライダーになれたか……
ギンガ達の願いが届いたんだなぁ……
始に救われたスバルはヴィヴィオ達を守れるのか、急げスバル、今度はアジトが危険だー!!

ここからは指摘と質問です。
ヴィヴィオの支給品が消えたのはわかるんですが、始とエネルの支給品も消えたんですか? 始はともかく描写的にエネルの支給品は無事で金居が回収しそうな気が……
始にしても他の人も指摘していますが、他の支給品はともかくラウズカードは消失しない筈なのでその辺の描写は必要だと思いますが(勿論、始自身のカードも含めて)。

……そうか、パーフェクトゼクターもクラールヴィントもヴィヴィオのぬいぐるみも消失したんだな……(遠い目)

326リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 14:17:44 ID:UQCnfIKQ0
投下乙です

ホテル戦はみんな完全燃焼したなあwww
ヴィヴィオがスバルらを皆殺しと思ってたら最後で引っくり返った。これぞロワ!
エネルは結果的にヴィヴィオを助けることになった、奴がいなければ確かにこうはならなかったなぁ
金居は美味しく漁夫の利を得て邪魔ものも消えてうはうはだな

最後に始……最後はスバルを守り心穏やかに逝くことができたのか…
本当にギンガらの想いが通じたよ…
だがロワはまだ終わらない。スバルよ、アジトに急いでくれ! そちらもピンチだ!

327リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 15:39:26 ID:qsn2Ooe.O
そうか始はパーフェクトゼクターも持ってたのか
アレは消失するのか?一応隕石同士の衝突による衝撃で大気圏突入しても無傷な装甲を更に練磨した素材とかだった筈だが…

328リリカル名無しA's:2010/07/20(火) 18:52:20 ID:k3uNdhe60
投下乙です
たとえジョーカーだろうと今のお前は間違いなく仮面ライダーだ!始えええええ!!!
あのマーダーから始まった始がまさかここまで熱い最期を迎えるとは感慨深いなあ
そしてその脇でひっそりと死んだエネル…なんだろう、なんとなく哀れに感じる…

既に指摘されている荷物の件について
エネルの荷物に関してはこのままでいいと思います
金居の様子と状態表から次の話で拾って立ち去ったとしても、そのまま放置しても、どっちでも不自然ではないですから
始の方はいくつか消滅しないものがありますが、その辺りは描写する以外にも後続の書き手に一任しても構わないと思います
どちらにせよVj6e1anjAc氏がしたいようにしたらいいと思います

329 ◆Vj6e1anjAc:2010/07/20(火) 23:38:42 ID:.DfmzCYc0
支給品の件ですが、エネルのものは完全に書き忘れです。
で、始のものは最初消滅扱いにしようと思ったのですけど、色々思うところがありまして、やっぱり残すことにします。
いずれにせよ、近日中に修正案を用意しますので。

330リリカル名無しA's:2010/07/25(日) 21:44:39 ID:tSQTY5js0
スケィスも消えちゃった……。

スケェェェェェェェェェィスっっっっっ!!!!!!!(泣)

331 ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 19:55:30 ID:TIW0LW2g0
スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ分投下します。

332A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 19:57:00 ID:TIW0LW2g0
「IS……発動」

 その声と共にスバル・ナカジマの手にあったある『モノ』が粉砕された。そして近くに降ろしていたヴィヴィオを再び背負い走り出した。
 ヴィヴィオは衰弱している為急がなければならない。では、何故スバルは急がなければならないにもかかわらず足を止めある『モノ』を砕いたのだろうか――?















   ★   ☆   ★   ☆   ★





 暗い闇の中にヴィヴィオはいた。
 身体中が悲鳴をあげているかの様に痛くそして苦しい。
 助けを求めようとも周囲には誰もいない。





 それでも闇の中を歩き――見つけた。





「ザッフィー……シャマル……」

 シャマルとザフィーラが立ちつくしていた。ヴィヴィオは重い身体を引きずって近付こうとするが――
 見てしまったのだ。2人が自分を蔑む様な視線を向けるのを、それは明らかな拒絶の意志――
 それだけではない、シャマルの手には破損が著しいクラールヴィントがあった。
 何故、クラールヴィントは破損していたのか? ああそうだ、それは先程の戦いで――自分が壊したんだ――

 ザフィーラは悲しんでいる所を励ましてくれたのに自分はそれを裏切った。
 シャマルにとってクラールヴィントは相棒だったのに自分はそれを破壊した。
 2人が自分を蔑んでも当然だ。





 気が付くと2人は消えていた。再びヴィヴィオは周囲を見回し、

333A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 19:58:40 ID:TIW0LW2g0





「シャーリーお姉さん……」

 浴衣を着たシャーリー・フェネットを見つけた。ヴィヴィオは駆け寄ろうとするが――

「来ないで……」

 シャーリーはそう言い放つ。またしても明らかな拒絶だ。

「どうしてスバルを殺そうとしたの……言ったよね、スバルは友達だって……」

 そうだ、自分はあの時スバルを……

「ひどいよ……」





 そういって、シャーリーの姿が消えた。そして入れ代わる様に漆黒の服に身を包んだ少年が現れた。





「俺を治療してくれた事には感謝している。だが……」
「ルルお兄さん……」

 その少年ルルーシュ・ランペルージは自身を治療した事について礼を述べたが、

「何故スバルを殺そうとした? シャーリーからも聞いていたんだろう、スバルは俺やシャーリーの友人だという事を」
「それは……」

 ママである高町なのはを助けようともせず漆黒の怪物と戯れていたから、つまりママを裏切ったからだと正直に言おうとしたが、

「高町なのはを助けずに怪物と戯れ彼女を裏切ったからか? まさか本気でスバルが裏切ったと思っているのか?」

 ルルーシュはその理由を既に看破していた。

「違うな、間違っているぞ。スバルの性格を考えてみろ、俺の様な悪人やあの場にいた得体の知れない怪物であっても説得する事ぐらいわからないか?」
「うぅ……」
「それに高町なのはの事なら俺も少しは聞いている。彼女も同じではないのか? あの場に彼女がいたならば恐らく同じ事をしていたと思うが?」

 その通りだ、何故彼がそれを知っているのかはともかく恐らくなのはママも同じ事をしていたのはヴィヴィオにもわかる。

「つまりだ……裏切ったのはスバルではない、ヴィヴィオ! お前だ!! お前がなのはやスバルを裏切ったんだ!!」

 その眼には明らかな憎悪と憤怒が込められていた。彼にとってスバルは自分にとってのママ達同様大切な存在だったのだろう。それを自分は――





 気が付けばルルーシュの姿も消えていた。そんな中背後から、

334A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:00:40 ID:TIW0LW2g0





「えriおくnを……かeせ……」

 振り向くとそこには人らしき『モノ』がいた。皮膚が破れ肉が露出し所々骨や内蔵が飛び出し身体中血塗れで至る所に欠損が見られる。そして頭部から僅かに見られる桃色の髪からそれが誰か理解した。

「キャ……ロ……」

 それはキャロ・ル・ルシエだった『モノ』だ。そうだ、あの時自分が彼女を完膚無きまでに破壊し尽くした。その残骸が集まり再び人の形を成したのだろう。

「えりokuんを……こんnaにしte……」

 その手らしき所にはボロボロになった鎌が握られていた。アレは自分がキャロから奪った鎌、恐らくは先の戦いでクラールヴィント同様……

「yuるさなi……!」

 そしてキャロは全身でヴィヴィオに飛びついた。肉の塊だったそれはヴィヴィオにぶつかると同時に砕け散りその血肉はヴィヴィオの身体中に染みこんでいく。

「あぁぁ……」

 放たれる死臭が気持ち悪い。それはまさしくヴィヴィオ自身の罪の象徴なのだろう。それでもヴィヴィオは助けを求めるかの様に彷徨う――





 そして――





「なのは……ママ……」

 フェイト・T・ハラオウン同様幼くなってはいたが、なのはを見つけた。しかしなのはは駆け寄ろうとするヴィヴィオに有無を言わさず魔力弾を直撃させた。

「え……」

 戸惑うヴィヴィオに対し、

「おかしいなぁ……どうしちゃったのかな……誰がみんなを殺してくれって言ったの……私がそんな事言うと思っているの……ねぇ、私の言っている事……そんなに間違ってる……?」

「ママ……」
「少し……頭冷やそうか……」

 そして再び魔力弾をヴィヴィオに当てた。ルルーシュの言う通りだった。なのはが皆殺しを望むわけがない、自分は彼女の事を全然理解していなかったのだ。





 再び立ち上がろうとするが、目の前にはゆりかごで見た時と同様に幼いフェイトがいた。




「フェイト……ママ……」

 何とか彼女に助けを求めるが、

「なんでなのはを……みんなを裏切ったんだ……」

 彼女の眼には明らかな怒りが込められていた。

「お前にこんな事をさせる為に助けたんじゃない……なのは達を裏切らせる為に助けたんじゃない……お前なんか……」

 ダメだ、その先の言葉を言うな、ヴィヴィオはそう口にしようとしたが、

「お前なんか……嫌いだ……!」

 そう言ってフェイトは消えた。

335A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:01:20 ID:TIW0LW2g0





「うぅぅ……」

 ママ達からも拒絶されヴィヴィオの眼には涙が溢れていた。そんな中、視線の先には、





「あ……浅倉お兄さ……」

 自身のぬいぐるみを手に持っている蛇皮の服を着た男性浅倉威がいた。その手にあるぬいぐるみは所々が破れ中身が飛び出している。
 ヴィヴィオは僅かな力を振り絞り浅倉に駆け寄るが、

「がっ……」

 浅倉によって蹴り飛ばされた。

「五月蠅い餓鬼が……イライラするぜ……」

 そう言って、ぬいぐるみを持ったままヴィヴィオの前から消えていった。ぬいぐるみの視線も自分を蔑んでいるかの様に見えた。そうだ、ぬいぐるみもあの戦いで――





 人だけではなく、デバイスやぬいぐるみからも拒絶されヴィヴィオは本当に独りぼっちになっていた。

「ぐばぁ……はぁはぁ……」

 蹴られた衝撃からか口からは大量の血が吐き出される。身体の奥が痛くて苦しく感じる。だが、ヴィヴィオを助けてくれる者はだれもいない。
 どうして誰も助けてくれないのか? ああ、その理由は自分が理解している、皆を裏切り皆殺しにしようとしたのだ、皆が自分から離れていって当然だ。

 いっそ殺して欲しいとすら思う。しかし死神すらも自分には見えない。死が近いとしても簡単には死なせてくれないらしい。
 死の瞬間まで苦しめと――いや、死んだとしてもずっと独りなのだから苦しみは決して終わらないのだろう。





 それはヴィヴィオに対する罪なのだろうか?





「だれか……ヴィヴィオを……たすけてよ……」





 その声に応える者は誰もいない。誰か現れても蔑むだけで決して助けてはくれない。





 悪夢は終わらない――仮に、ここでヴィヴィオが死んだとしても――





   ☆   ★   ☆   ★   ☆

336A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:02:00 ID:TIW0LW2g0













「始さんに別れを告げた後、あたしはヴィヴィオを背負いアジトへ向かった。アジトに先行しているこなた達や八神部隊長達と合流し、衰弱しているヴィヴィオを助ける為に。
 その途中、1枚のカードを見つけた。多分始さんが持っていたカードがあの時の衝撃と風でここまで吹き飛んだと思う。
 余裕なんて無かったけどあたしはそのカードがどうしても気になりそれを拾った。何故かはわからないけど始さんにとって大事な物だと思ったから――」





 ジェットエッジの調子は良好、このペースならばスカリエッティのアジトまでそう時間はかからない。
 とはいえこの時間を無駄には使えない。周囲の警戒を怠らず、先の戦いやこれからの事を考える。

 放送を冷静に思い返す。放送時点での残り人数は19人、その内ホテルに集結した参加者は自分を含めた9人。
 その内、泉こなた、八神はやて、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、柊かがみ、カテゴリーキングと呼ばれた男が先に離脱、相川始と雷の男が死亡し自分とヴィヴィオが最後にホテルを離れた。
 勿論、なのは達を含めた残り10人の動向も気になるがそれについてはひとまず置いておく。大丈夫という保証も無いが考えてもきりがないからだ。

 真っ先に気になるのはヴィヴィオの状態だ。
 あの惨事の中心部にいたとは言えヴィヴィオは何とか生きていた。もしかしたら彼女が持っていたクラールヴィントが自らを犠牲にしてでもヴィヴィオのダメージを最小限に抑えようとしていたのかも知れない。
 しかしそれは最悪の事態を避ける事が出来ただけだ。現在進行形で衰弱している事に変わりはない。
 一体、ヴィヴィオに何が起こったのだろうか? いや起こった事自体はわかっている。体内に埋め込まれたレリックが暴走して大爆発を起こしたのだ。
 問題は何故彼女の体内にレリックが埋め込まれJS事件の時の様な洗脳状態に陥ったのかという事だ。
 少なくてもこなたやリインといた時にはそれが無かったらしい。となると連れ去られた後から約6時間の間に何かがあった事になる。
(確か、キャロかルーテシアのどちらかがゆりかごに連れ去った可能性が高いから……)
 連れ去った者が聖王のゆりかごでレリックを埋め込み洗脳した。そう考えれば一応筋は通る、しかし幾つか腑に落ちない点がある。
 まず、レリックは何処にあったのか? 勿論既に埋め込まれていた可能性もあるし、都合良く持っていた可能性もあるがそうそう上手く事が運ぶわけもない。
 また、連れ去った可能性が高いキャロとルーテシア・アルピーノの両名は共に放送前に死亡している点も引っかかる。洗脳しておいて殺されるのはお粗末な話だろう。
(……待って、もしかしたら)
 が、逆にこの事がある仮説を導き出した。ルーテシアがヴィヴィオをゆりかごまで連れて行ったが、そこで何者かにルーテシアが殺され彼女の体内のレリックをヴィヴィオに埋め込んだ可能性だ。
 これならば十分に筋は通る。暴走が起こった事に関してもルーテシアのレリックが適合しなかったとすれば問題はない。その影響でヴィヴィオが苦しんでいるのだろう。
 勿論、これは仮説に仮説を重ねたものでしかない為確証はない。しかし、可能性は十分にあり得るだろう。
 それ以上に気になるのは彼女に染み着いた夥しい血肉の臭い。確かにあの状態ならば誰かを殺しても不思議はない。しかし、普通に返り血を浴びたとしてもここまで酷くなるとは思えない。
 考えられるのは殺した死体を完膚無きまでに破壊した際に飛び散った血肉が染み着いた可能性だ。幾ら洗脳状態とは言え正直やりすぎではなかろうか?

337A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:03:00 ID:TIW0LW2g0

 勿論、ヴィヴィオの行動自体は洗脳状態だった為、スバルとしてはそれを責めるつもりはない。
 しかし、ヴィヴィオが正気に戻った時に彼女がその時の事を覚えていたらどうだろうか?
 ヴィヴィオは罪の重責で苦しむのではないだろうか? なのは達から拒絶される可能性を考えるのではなかろうか?
 スバル自身は別段気にしないしそれについてはなのは達も同じだろう。だが、ヴィヴィオ自身が納得出来るかは全くの別問題だ。
 このままでは仮に命が助かってもヴィヴィオの心が壊れてしまう可能性が高い。
(何とかしてヴィヴィオを助けないと……出来れば早くなのはさんと会わせたいけど……)
 とりあえずホテルでの戦いではヴィヴィオは誰も殺さなかったと説明しておこう。幸いあの惨状を見たのは自分だけだから誤魔化しはきく。
 ボーナスでナイフを得た事を知っているのも自分だけだからそれで知る事も……
(待って、それじゃあの男は誰が?)
 ホテル跡には始の他に雷の男の死体もあった。ヴィヴィオ優先だった為詳しくは調べていないがあの戦いで死んだ事は間違いない。
 危険人物ではあったが彼がヴィヴィオを抑えてくれなければヴィヴィオに一撃をたたき込めなかった事は確実、つまり彼の存在のお陰でヴィヴィオを助ける事が出来たという事になる。ある意味皮肉な話だ。
 普通に考えれば彼が死んだ理由は暴走に巻き込まれたからだろうがそれならヴィヴィオが得るボーナスは2つでなければならない。
 また、何よりあの男の遺体は始と比較して損傷はそれ程酷く無く、頭部に撃たれた痕跡があった。
 つまり、雷の男を殺したのは別の者という事だ。では一体誰が?
(いた、それが出来る人が……)
 それはカテゴリーキングだ。エネルとヴィヴィオが乱入した時点で危険を悟り早々に離脱したのだろうが、後から戻ってきて危険人物である雷の男にトドメを刺した可能性は否定出来ない。
 自分達を助ける為……とは思えなかった。本当に自分達を助けるつもりならばヴィヴィオや自分を放置する筈がない。つまり、あの男は自分だけの為に雷の男を仕留めたのだろう。
 自分達を放置した理由は不明、あの男にとっては自分達は排除する必要すらない取るに取らない存在なのだろうか?
 始との対立云々を別にしても、その立ち回りと思考から警戒すべき人物なのは確かだろう。もしかしたらメールにあった『キング』と何か関係があるかもしれない。後でもう少し整理した方が良いだろう。
(あれ、何か引っかかるんだけど……)
 ここまで考えて引っかかりを感じたものの深く考える余裕は無い。他にも考える事はある。

(かがみさん……無事にこなたの説得が通じれば良いけど……)
 それは殺し合いに乗ったかがみの存在だ。アジトに到着すれば友達であるこなたが説得してくれる筈だ。
 しかし、それは希望論でしかない。一番説得出来そうなのはこなたではあったが絶対という保証はない。
 それ以前にこなた達がアジトに無事に到着しているという確証も無いし、はやて達が途中で何者かに襲われている可能性もある。
 また、場合によっては彼女の持つリングに宿るバクラが何かする可能性も否定出来ない。
(いや、バクラに関しては一応ヴァッシュさんに注意しておいたから多分大丈夫だと思うけど……)
 そう思いながらも不安は拭えない。また、前に会った時と比べてかがみが荒んでいるのも見て取れた。
(ホテルで再会するまで6時間弱、何があったんだろう……そうだ)
 と、スバルはデイパックからレヴァンティンを出した。レヴァンティンは元々スバルが持っていたがデュエルアカデミアでの戦いでかがみに奪われ先の戦いで取り戻すまでずっとかがみが所持していたものだ。
 つまり、レヴァンティンがその間に何があったか把握している筈だという事だ。
「……というわけで、かがみさんに何があったかわかる範囲で良いから教えて」
 事情を説明しレヴァンティンに問う。

338A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:05:40 ID:TIW0LW2g0

 そしてレヴァンティンはそれまでに起こった話を語り出す。
 かがみの様子を見る限り、度々誰かと会話している様な様子が見られた。しかし相手の人物の声が聞こえなかった為詳しい事はわからない。
(バクラね)
 スバルとの戦いを終えた後、かがみはレヴァンティン以外のデバイスの力を利用してバリアジャケットを展開しようとした。
「え!? かがみさん何かデバイス持っていたの? ……あれ、もしかしたらあの時隠し持っていたかも知れないってこと……まぁ、かがみさん魔力無いだろうからあんまり問題は……部隊長もいるだろうし」
 そして、煙の見えるレストランに向かい集まった参加者を一網打尽にしようとしていた。
 ちなみに仮面ライダーには変身出来ないらしく持っていた機関銃で撃ち殺そうとしていた。
 そして機関銃の準備をしている所で始と遭遇、始は人間を助ける気は無いとは言いながらもかがみを止める事は無かった。その一方逆に襲う事も無かったらしい。
 その後、かがみがレストラン跡にいた浅倉と始を襲った。もっともその試みは失敗しかがみの持つ仮面ライダーに変身する為のカードデッキは浅倉に奪われ逆に返り討ちにあった。
「え、ということはかがみさん仮面ライダーに変身出来なくなったの?」
 その後は浅倉と始が戦いが始まったらしいがその場面を直接見ていない為具体的な事は不明ではある。
 一方、気が付けばかがみの腹部に何かベルトが装着されそのままかがみは別の仮面ライダーに変身しその場を離脱した。恐らくホテルでの姿はそれだろう。
「どういう事? アカデミアで戦った時と違うのは気になったけど、ベルトが手に入った理由がわからないんだけど……」
 そう問うスバルだったがレヴァンティン自身もわからないし何よりかがみ自身すらもわかっていなかったらしい。
 そしてホテルに戻ったが、そこでいきなり何かに引きずり込まれたらしい。引きずり込まれた先で待っていたのは浅倉によるかがみの妹柊つかさの惨殺。
「そんな……」
 これによりかがみの精神は破綻、そして浅倉と戦いになったらしいが気が付けば元のホテルに戻ってきていた。
 それからヴァッシュと遭遇し、スバルとの再会後離脱し何かの車で始を轢き殺そうとしたが失敗し始と戦いになりあの場に戻ったのだ。
 勿論、ここまでの話はデイパックの中から会話や音を聞いた事による判断なのでレヴァンティン自身詳しい状況まではわからない。それでも何があったのかは概ね理解出来た。

「つまり、かがみさんがああいう風になったのは目の前でつかささんを殺されたから……」
 かがみが壊れた原因はつかさの死という事は理解出来た。これ自体は不幸な事だが逆を言えば説得の糸口になる。
 異なる世界の別人と決めつけながらも実の妹が殺されてショックを受けたのだ。例え口では別人と言っても割り切れないのだろう、説得の可能性が僅かに見えたと言える。
「それにしてもバクラが思ったよりも役に立っていないのが気になるんだけど……」
 一方でバクラの動向も気になった。バクラが自分に都合の良い風にかがみを誘導している割には思ったよりも戦果があがっていないのだ。かがみの口ぶりからバクラは一度彼女を見捨てようとしたらしい。
 一応、身体を使う等の話も出ていたが別段そんな様子は無かった。基本的にはかがみ任せにしていた事は間違いない。
 もしかするとバクラ自身にも強い制限がかけられている可能性があるのかも知れない。制限故にかがみを誘導していたのだろう。
 かがみのあまりの不甲斐なさに一度見捨てようとした事もその現れかもしれない。
 とはいえ、バクラの存在がかがみを追い込んだ事に変わりはない為、それを許すつもりは全く無い。

339A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:07:50 ID:TIW0LW2g0

 と、スバルは何かに気付き足を止めヴィヴィオを一端降ろし、デイパックからベルトを出して試しに身に着けてみた。しかし、別に反応する事はなかった。
「あたしじゃこのベルトは使えない……けど、かがみさんには使える……だったら!」
 ベルトを外して手に持ち
「IS……発動」
 そう言ってベルトを粉砕し再び走り出した。
 何故ベルトを粉砕したのか? それは再びかがみに利用されるのを防ぐ為だ。
 何故ベルトがかがみに装着されていたのだろうか? 何故かがみがベルトを使う事が出来、自分は使う事が出来なかったのか?
 その理由はかがみにはその資格があり自分には資格が無いからではなかろうか?
 資格が何かはわからない。だが資格があったからこそベルトは勝手にかがみに装着され彼女に力を与えたのだろう。
 もしここでのこのこかがみに近付いたらどうなるだろうか? 恐らく先程同様ベルトがかがみに装着される可能性が高い。そうなれば折角取り上げた意味が無くなってしまう。
 あの仮面ライダーの力は絶大、あの時は上手くいったが次も上手く行くとは限らない。故に二度と使われる事が無いようにベルトを破壊したのだ。
 勿論、かがみの説得が上手くいった場合、その力を奪った事は一見デメリットに思える。
 だが、かがみに力を与えるという事はかがみを戦わせる事を意味する。スバルはこなたやかがみ達といった戦いと無縁の人々を戦わせるつもりは全く無い。
 かがみ以外が扱えず、そのかがみにも使わせるつもりが無いならばその道具に意味など無い。だからこそ破壊したのである。

(とりあえず、これでもうかがみさんに戦う術はない……後は説得だけど……大丈夫、こなたならきっと助けられるし何かあってもヴァッシュさんや八神部隊ちょ……)
 ここまで考えてスバルは違和感を覚えた。
(ちょっと待って……部隊長はあの男と行動をしていた……どうして部隊長はあの男と?)
 カテゴリーキングはジョーカーだけが目的だと言っていた。確かにそれはある程度は信用出来る、だが殺し合いを止めようと言う風には感じなかった。
 何故はやては彼と行動を共にしていたのだろうか。勿論この状況下だ、例え敵でも組まなければならない時があるのはわかる。しかし何かが引っかかるのだ。

『あいつらは俺の手に負える奴らじゃないんでね』
 それは雷の男がやって来た時にあの男が言った言葉だ。あいつ“ら”――複数いた、つまりヴィヴィオがいたことも知っていたという事だ。
 そして恐らくははやても知っていた可能性が高い。それを知って待避したという事は――
(部隊長はヴィヴィオを見捨てた……)
 友人の娘を見捨てたという事実、それはスバルにとっては信じがたい話であった。
 だが、感情的な面を抜きにして考えれば有り得ない話ではない。ヴィヴィオの力が驚異的だったのはスバル自身も理解している。場を切り抜けるならば撤退という選択を選ぶ可能性が無いとは言えない。
 同時にリインの話も思い出した。リインの世界の彼女は家族を取り戻す為に非人道的な作戦の指揮をとっている話だ。彼女の世界のはやてならばその選択を選んでもおかしくはない。
 当然その世界のはやてである保証はないが、似たような状況に置かれた世界の彼女の可能性は十分にある。その可能性を頭から否定する事は愚行以外の何物でもない。

340A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:08:30 ID:TIW0LW2g0

 選択自体は認めたくはないが間違っているわけではない。だが、もしもはやての人格がスバルの推測通りだとしたらスバルにとって避けるべき事態が起こる可能性がある。
(かがみさんが危ない……)
 ここで以下の3人について客観的に考えてみて欲しい。

 力を暴走させてはいたものの、それ以外では友好的な姿勢を見せ、戦いにおいても誰であろうとも殺さずに無力化しようとしたヴァッシュ、
 口では殺すとか戦うとは言っておきながら撤退を促し、最終的には誰も殺さず此方を助けてくれた始、
 此方が説得したにも拘わらず、聞く耳を一切持たずに自分達を騙し陥れ仲間達を皆殺しにしようとしたかがみ、

 3人の行動を見て誰が信用出来るか? それぞれ意見はあるだろうが殆どの者は一番信用出来ない危険人物がかがみなのは理解出来るだろう。
 しかし、スバルは一般論とは外れた行動を取っているのはこれまでの行動からも明らかだ。他の2人とは戦ってはいたが、かがみに対しては戦うという選択ではなく助けるという選択肢しか選んでいない。
 この理由はかがみが何の力を持たないか弱き少女であり、こなたの友人であり、同情出来る部分が多かったからというものだろう。
 しかし逆を言えばその理由が無ければ話が通じないかがみこそが一番の危険人物ではなかろうか?
 バクラが元凶だ、かがみは何も悪くない? そんな理屈は通用しない、現在進行形で放置出来ない危険人物である事に違いはない。理由はどうあれチンクを殺し自分達をも殺そうとした事実は決して変わらないのだ。
 話が通じないならばどうするかなど考えるまでもない。排除するしか無くなる、殺し合いを打破する為ならばその選択が間違っているとは言えない。

 つまり、はやてが障害となるかがみを排除する可能性が高いという事だ。
 自分の世界のはやてならばその可能性は無いと断言出来るが、リインの話やヴィヴィオへの対応を考えれば危険人物を排除する可能性は否定出来ない。
 その考え方自体はわからなくはないからそれも致し方ない。だが、殺し合いとは無縁だった彼女を殺させる事を容認出来るわけがない。
 勿論、はやてが行動を起こしてもヴァッシュが止めてくれる可能性はある。だがそれでは遅いのだ、事が起こればその時点でかがみは裏切られたと考え更に説得を難しくする。なんとしてでも止めなければならない。
(お願いです……早まらないで下さい、八神部隊長……)
 杞憂であれば良い、しかしその可能性がある以上無視する事は出来ない。急がなければならない、故にジェットエッジを更に走らせようと――

341A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:09:40 ID:TIW0LW2g0





 ――バランスを崩し転倒しそうになった。何とか転倒こそしなかったがスバルは一端足を止めた。





 足場の良くない夜の森林であった事に加え考えていた以上に自身の受けたダメージや疲労は大きかったのだろう。
 それ以前に焦りと急ぐのに夢中で周辺の警戒を怠ってはいなかっただろうか? このタイミングで奇襲に遭えばアニメイトの二の舞だ。
 こんな調子では守れるものも守れず、救えるものも救えない。
 スバルは深く深呼吸する。長々と休むつもりは無いが心を落ち着ける事は必要だ。

 ふとデイパックから2枚のカードを出した。それは始が変化したカードと先程拾った彼が持っていたらしいカードだ。
 1枚はハートの2『SPIRIT』、中にはヒトとハートが描かれている。1枚はジョーカー『JOKER』、中には始の本来の姿の頭部が描かれていて、見ようによっては緑のハートに見えなくも無い。
(始さんから何も聞けなかったな……)
 カードを見て始の事を思い返す。結局の所、始は一体何者でスバルの姉であるギンガ・ナカジマと何があったのだろうか?
 少なくても彼自身が語った通り彼が人間とは違う異質な怪物という事は間違いないだろう。遺体がカードとなっていることからもそれは明らかだ。
 その一方、カテゴリーキングと始の会話からみるに、始が死神にして非常な殺戮者だったのはほぼ間違いないだろう。彼が殺し合いに乗っていた事についてはそれでほぼ説明出来る。
 更にスバルは2枚のカードと前にルルーシュが持っていたクラブのKのカードが同じものであると共に、それらがある物に似ている事に気付いた。それはトランプだ。
 となれば、『始=ジョーカー』が死神と呼ばれるというのも的を射た表現だ。トランプにおいてジョーカーは他の52枚とは異質な存在で時には忌み嫌われる事もあるからだ。
 つまり、始は最初から他者とは違う全く異質な存在という事だ。

 では、その始と解り合う事は不可能なのか? 答えはNoだ。
 そもそもの話、最初から異質な存在という意味ではスバル達も同じなのだ。
 スバルやギンガ達戦闘機人は「ヒトをあらかじめ機械を受け入れる素体として生み出す」という手段で生み出されたものであり、その目的はその名前通り高い戦闘力を持つ人型兵器を生み出す事だ。
 つまり、スバル達も最初から兵器として生み出されており人間達とは違う全く異質な存在なのだ。
 だが、現実ではスバル達はクイント・ナカジマに保護された後、ナカジマ家で人間として育った。また、ナンバーズにしてもその大半は更正プログラムを受けた後、ナカジマ家の養子になる等人間として暮らす事になった。
 始にもスバル達と同じ事が言える筈なのだ。自分達の声が届く筈がない、スバルはそう思っている。

 始とギンガの間に何があったのだろうか?
 始によるとギンガは殺し合いに乗った自分を助けて命を落としたらしい。だが、始の口ぶりではギンガとの遭遇はその時1度だけだとは思えなかった。
 ギンガは何度も始を説得しようとしていたのでは無いだろうか? ギンガは始と解り合えると思っていたのではないだろうか? 故に何度も説得を試み――その途中で敵の攻撃から始を守って死んだのだろう。
 始はそれを馬鹿な行為だと言った、しかしスバルはそれを否定する。ギンガが無駄な命を救う訳がなかったし何より始の言動そのものがそれを証明している。
 始は自分の為にギンガが死んだ事に強い悲しみを感じていた。本当にギンガの行動を馬鹿だと思うならそう感じるわけがない。
 そして何より、始はギンガの言葉の影響を強く受けていたのが先の戦いでもわかった。ギンガの声は始に届いていたのだろう。

 正直な話、少なくても始の行動を見る限り能動的に殺し合いに乗っていたとは思えなかった。
 ホテルでの戦いでは自分に去る様に言ったり、自身のとどめを刺すように促したりしていた。
 また、レストランでの戦いでも始はかがみを襲おうとはしなかった。
 本当に能動的に殺し合いに乗っているのならばそんな行動をとりはしないだろう。

342A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:11:30 ID:TIW0LW2g0

 もしかすると、そもそも始は誰かが言ったような『死神』として殺し合いに乗っていたのではなく、別の理由で殺し合いに乗っていたのでは無いだろうか? 例えば、待っている人達の元に帰る為といったものだ。
 勿論、何の確証も無い想像でしかないしそれを確かめる術もない。しかし、本当に只の『死神』ならギンガの説得は何も届かず逆に彼女を殺していた可能性が高い。
 始自身が気付いていたかはわからないが、きっと始自身誰かを守る為に戦っていたのかもしれない。誰かを守ろうとしたからこそギンガの説得が届いたのだろう。

 確かにジョーカーは『死神』等に代表される嫌悪される存在の意味を持っている。しかし、ジョーカーが持つ意味はそれだけではない。1つは他を凌駕する絶大な力、もう1つは他のあらゆる存在の代替になれる事だ。
 つまり、ジョーカーこと始はその絶大な力で皆を救える存在にもなれるという事だ。そして確かに彼は自らの力でスバルとヴィヴィオを救う存在となった。

『誰かの為にとか、守る為にとか、そんな事言ってる奴から死んで行くのよ』

 かがみが言った言葉、確かにそれは事実だ。
 ディエチもチンクもルルーシュもギンガも誰かを守ろうとして死んでいった。
 真面目な話、スバル自身あの時死んだと思っていたし、実際に自分とヴィヴィオを助ける為に始が死んだ事は確かだから否定出来るわけがない。
 それでもだ、死んでいった者達は仲間達に何かを届けてくれた。彼等の死は無駄ではなく同時に決して無駄にしてはいけない、それだけは断言出来る。
 彼等が遺した物はこの血塗られた運命を破る切り札となるかも知れない。しかし切る者がいなければ切り札に意味はない、故に生き残った者達は決して諦めてはならないのだ。

 カードが煌めいた気がした。スバル達を励ますかの様に――





 スバルは再び走り出した。調子はさっきよりも良い、これならば躓く事なくアジトまで行けるだろう。
 ヴィヴィオの容態は悪く、かがみの説得が上手く行く保証もない。はやての動向等気になる事は多く不安は尽きない。
 それでもスバルは決して諦めたりはしない。諦める事は簡単だ、だが諦めるという事は自分達を守る為に死んでいった者達の想いや意志を裏切る事になる。
 彼等の行動を無駄にしない為にも必ず皆を守り殺し合いを止めるのだ。





「ルルーシュ、ディエチ、チンク、ギン姉……みんなの想いと願い、決して無駄にしない……
 そして始さん……貴方の『心』と『魂』は私が受け継ぎます……
 必ずなのはさん達と力を合わせてヴィヴィオ達を助けてこの殺し合いを止めます――」

343A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:12:00 ID:TIW0LW2g0





【1日目 真夜中】
【現在地 E-9】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット、魔力消費(中)、全身ダメージ中、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(カートリッジ0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、
     クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具③】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ヴィヴィオを連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
 2.六課のメンバーとの合流。かがみの事はこなたに任せる。はやてに早まった真似をさせない。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 4.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 5.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 6.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード、金居(共に名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大)、肉体内部にダメージ(極大)、血塗れ
【装備】フェルの衣装
【道具】なし
【思考】
 基本:?????
 1.ママ……
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
※暴走の影響により、体内の全魔力がリンカーコアごと消失しました。自力のみで魔法を使うことは二度とできません。
※レリックの消滅に伴い、コンシデレーションコンソールの効果も消滅しました。

344 ◆7pf62HiyTE:2010/08/01(日) 20:15:30 ID:TIW0LW2g0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは8月7日から上映される『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』からです。……まだ上映前なんだけどなぁ……良いのかな?
今回容量は29KBなので分割無しで収録可能……ですよね?
……分割無しで収めたのって『命の理由』以来だなぁ……もしストラーダスバルが回収してあったんだったら分割になっていたかもわからんな(ストラーダから聞き出すシーンが入るので)

345 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 03:57:50 ID:arCjFvuI0
投下乙です。
ヴィヴィオは本当にどうなるんだろう……起きてからが怖いなぁ。
早くなのはさんと合流して貰いたいところ。逆にはやてとはあんまり合流させたくないな。
あのはやてと今のヴィヴィオじゃ合流してもヴィヴィオの精神面的に碌な事にならなさそうだからなぁ……。
始の意思を受け継ぐ事を決意したスバルもかっこいい。
ジョーカーのカード、何処かで役に立ってくれるといいなぁ。


それでは連続になりますが、自分も
アンジール、キング、なのは、天道、かがみ分を投下しようと思います。

346Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:02:03 ID:arCjFvuI0
 私は悪くない。
 悪いのは全部私をここまで追い込んだ奴らだ。
 ここで出会った奴……皆して私を裏切った。
 だから私は、こんな所まで来てしまったのだ。
 嗚呼……どこで間違えてしまったんだろう。
 どうしてこんな、最期の最期まで苦しい思いをしなくてはいけないのだろう。
 体中から流れる大量の血液が、柊かがみの意識を急速に奪っていく……そんな感覚。
 四肢から流れ出た血液が周囲に赤の血だまりを作り、腹部から流れる血液が下腹部を濡らす。
 人間は通常、身体の三分の一から二分の一の血液が無くなった時点で、死に至ると言われている。
 もうそろそろ流れ出る血液は三分の一に達する頃だろうか。
 「死」が、もうすぐそこまで迫っているのだ。
 それはかがみ自身も、直感的に感じていた。

(ああ……私、死ぬんだ。嫌だ……死にたくないな……)

 次第に薄くなって行く意識の中で、かがみは思った。
 つい先ほどまでは、他の皆を殺して自分も死ぬつもりだった。
 だけど、一瞬で死ねるならまだしも、こんな苦しい思いをして死ぬなんてのは、予想外だ。
 だからかがみは、急速に接近する「死」を、受け入れられずにいた。
 成程確かに、八神はやてに言われた通りだ。自分は本当に都合がいい考えをしていた。
 そもそもの話、他を皆殺しにして自分が死ねばそれで全て終わるなんて、虫が良すぎたのだ。
 それでいていざ「死」が迫ると、自分はそれを受け入れられずにいる。

(死にたくない……死にたくないよ……)

 止めどなく溢れ出る涙。高鳴る心臓の鼓動。
 感覚が鈍って行く。目眩と涙とで、視界が歪む。
 死にたくないんだ。私は今、生きたいと願っているんだ。
 だけど、ここで生き延びたってする事なんて何もない。
 だってもう、柊かがみは全てを失ってしまったのだから。

 人間が最も簡単にPTSD(トラウマ)に陥る理由は、大きく分けて二つ。
 一つは、明確な殺意を持った者によって、「殺される」という恐怖を与えられる事。
 一つは、不可抗力にせよ何にせよ、誰かほかの人間を「殺してしまう」こと。
 エリオを殺してしまった。シグナムを殺してしまった。だからはやてに殺されてしまう。
 この一日でそれらの条件を尽く満たしてしまったかがみに、冷静な判断など出来る訳が無い。
 心に大きな傷を負ったかがみが、この先に希望を見いだせる訳が無いのだ。
 つまり今のかがみは、死にたくも無いが、生きたくもない……ただ絶望に打ちひしがれるのみ。
 第一、エリオやシグナムを殺してしまった自分に、この先も平然と生きていけるとは思えなかった。

(エリオ……シグナム……そうだ……私が、殺したんだ……)

 先程の少女――はやての表情を思い出す。
 瞳を見れば解った。あのはやてという少女、最初から自分を殺すつもりだったのだ。
 自分は彼女の大切な家族を――シグナムを奪ったのだ。この手で……。
 他の世界だろうが何だろうが、そんな事は関係ない。
 家族を殺された。だからはやては私を殺す。至って単純な事だ。
 憎しみによって繋がる負の連鎖。何処かで断ち切らねば永遠に続く悪循環。
 それが巡り巡って、明確な殺意となってかがみへと返って来た。
 殺された者の無念。遺族の愛憎。行き場の無い憎悪。
 それら全てを、殺意と言う形でぶつけられたのだ。
 それは浅倉につかさを殺された時、はやてにこなたを殺されたと言われた時、自分自身も感じた筈だ。
 結局のところ、八神はやては先程までの自分自身と同じ。

(どうして……私は……)

 どうして、こんな簡単な事に気付かなかったのだろう。
 本当に大切な者は失ってから初めて気付くとか、自分が経験して初めて気付くとか。
 そういう事は良く言うけど、こうして一人でじっと考える機会が訪れて、ようやく気付いた。
 自分は、人を殺した。周囲が悪かったから……という理由も多分にあるが、それだけでは言い逃れられない。
 人を殺せば、その人の人生も、未来も失われる。そうすれば、その人の遺族にも憎まれる。
 考えればすぐに解った筈なのに……自分の事でそんな事にも気付けなかった。
 そしてかがみを襲ったのは、家族を殺された者からの、愛憎による殺意。
 今更反省したところで遅いし、そんな虫の良い事をする気にもなれない。
 自分は本当に、どうにも取り返しのつかない事をしてしまったのだ。

347Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:03:04 ID:arCjFvuI0
 
(こなた……こんな私じゃ、もう友達だなんて言ってくれないかな……)

 また、瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
 本当に信頼出来る、数少ない友達を胸に思い描く。
 出来る事なら、最期にもう一度その顔を見たかった。
 死を前にして初めて解った。結局自分は、こなたを求めているのだ。
 どうせ別の世界だから……なんてのは、はやての言った通り自分を誤魔化す為の言い訳に過ぎない。
 だから自分は、つかさが死んだ時だってあんなに取り乱してしまったのだ。
 だけど、それに気付くのも……何もかもが、遅すぎた。





 炎上するスーパーの前に佇む、三人の男女。
 一人は赤の装甲に身を包んだ仮面ライダー――天道総司。
 一人は時代を感じさせる着物に身を包んだ少女――高町なのは。
 そして最後の一人は、全身黒ずくめの仮面――魔王ゼロだ。
 両手を高らかに掲げて前進する魔王ゼロの姿は、見る者に異様な迫力を与えるようだった。

「聞け、力を持つ参加者よ! 刮目せよ! 私はゼロ……魔王ゼロだ!
 私は悲しい。繰り返される無秩序な殺戮、略奪! ルール無用の殺し合い!
 私はこの野蛮なバトル・ロワイヤルを善しとしない!」

 漆黒の仮面の奥から響く声は、低く、重たく、周囲へと響き渡った。
 言っている事はつまり、この殺し合いには乗って居ないという事だろうが……
 それは最早、天道となのはにとってはナメくさっているとしか思えない言い分であった。
 C.C.やペンウッドを誘拐し、今し方自分達を砲撃したこいつの何処が殺し合いに乗って居ないと言うのだ。

「だから私は、ここに新たなゲームを提案する! それに当たって、参加者の戦力は平等でなければならない!
 故に私は、ゲーム進行の妨げと為り得る乱入者達を、今し方このゲームから排除した!」
「ゲーム、だと……?」

 カブトの仮面の下、その表情の更に下側に明確な“怒り”を隠して、天道が問うた。
 こいつのふざけたゲームの為にC.C.とペンウッドは犠牲となり、今現れたもう一人の少女は死んだ。
 恐らくは奴がアンジールの妹なのだろうと言う事は、アンジールの反応を見れば解る。
 アンジールは、目の前で妹を無惨にも爆殺されたのだ。
 それを思えば、天道も冷静ではいられなかった。

「そうだ。ゲームという物は本来、決められたルールの下で楽しむべきもの!
 それ故に、私はこのゲームに新たなルールを設けた上で、諸君らに参加して貰いたく思う!」
「ふざけるな! そんな事の為に、貴様は何人もの命を……!」
「少し黙って貰おうか、仮面ライダー。貴様に拒否権は無いんだよ。」

 それ以上、言葉は必要なかった。
 カブトクナイガンが閃き、カブトの赤き装甲が踊る。
 卓越した戦闘センスで一瞬のうちにゼロとの距離を詰めたカブトが、短刀を振るった。
 きんっ! と、鳴り響く金属音。現れたのは、カブトの攻撃を遮る様に浮かぶ、黄金にも近い色の盾。
 構うものかと、続けて放つはハイキック。されど、それも先程と同じくして現れた盾によって阻まれる。

「私はゲームマスター、言わばプレイヤーだ。そして君たちは、プレイヤーによって盤上で動かされる駒。
 盤上で踊るべきキャラクターがプレイヤーに反逆する事は不可能! よって、君の攻撃は通らないよ!」

 言うが早いか、ゼロが掌を突き出した。
 巻き起こる突風。突風はカブトの身体を浮かばせ、そのまま後方へと吹き飛ばす。
 同時にカブトが肩から担いでいたデイバッグがカブトの身体から引き剥がされ、宙へ浮かぶ。
 浮かんだデイバッグは、カブトの身体とは反対方向――即ち、ゼロの方向へ向かって飛行。
 カブトが雑居ビルの壁に身体を打ち付ける頃には、デイバッグはゼロの手に握られていた。

348Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:03:45 ID:arCjFvuI0
 
「ゲーム開始時に初期装備が充実し過ぎていては、ゲームバランスが崩れかねないだろう?
 さぁ、仮面ライダーカブトよ……貴様の初期装備品はそのカブトゼクターのみだ!」
「貴様……ッ!」
「次はお前だ、高町なのはよ!」
「え……っ!?」

 カブトにはもう用無しだと言わんばかりの変わり身の早さで、なのはへと向き直る。
 驚く隙すら与えずに、ゼロが巻き起こしたのは先程と同じ突風。
 強力な念動力によって起こされた突風を回避する事は難しい。
 回避も防御も出来ずに、なのはの身体からデイバッグが引き剥がされた。
 それらもすぐにゼロの元へと飛行し、そのままゼロの手中へと収まった。

「これで君のアイテムは無くなった……だが、それではフェアじゃあない……。
 そこで特例として、君に初期装備アイテムを支給しようと思う。受け取りたまえ!」
「わっ、とと……え、これって確か……デルタギア!?」

 ゼロのデイバッグから取り出されたのは、銀色のアタッシェケース。
 放り投げられたアタッシェケースを何とか両腕でキャッチ。
 それは、なのはにとって確かな見覚えのあるベルトであった。
 そう。それは本来自分に支給された筈のベルト――デルタギア。
 それを手に取り、なのははゼロを見据える。

「これで準備は整った。君達にこのゲームのルールを説明する!
 カブト、デルタ……君達仮面ライダー二人には、タイムリミットまでに何人の参加者を殺せるかを競って貰う!」
「冗談じゃない……誰がそんなゲームに――きゃっ!?」
「まだ説明は終わって居ないよ、高町なのは……いや、デルタよ」

 カブトのすぐ傍らのコンクリの壁に、なのはの身体が叩き付けられた。
 念動力による突風だ。それに吹き飛ばされ、なのはの身体も飛ばされたのだ。

「君たちは私の駒だ。私の思い通りに動くしかない。さもなくば……残念だが、私はこいつを殺すしかなくなる」

 デイバッグの中へと突っ込まれたゼロの腕が掴んだのは、細い首だった。
 白く、美しい毛並みの小さな竜。仮にもなのはと組んだ相棒――フリードリヒだ。
 苦しそうに足掻くフリードなど意に介さず、力強く握り締めたその腕を、天高く振りかざした。
 月明かりの元、いつでも殺せる状況へと追い込まれたフリードが、じたばたと暴れていた。

「フリード!」
「ドラゴンと言えど命は命。それを尊く思うなら、私には逆らわない事だ。さて、それでは説明に戻らせて貰おう。
 ゲームは至って単純だ。次に私と出会うまでに何人殺せるか、いくつの首輪とボーナスアイテムを得られるかで競って貰う。
 そうだな……首輪のノルマは、一人につき二つ。それを満たせなかった場合は、この龍を殺す。
 君達が勝った場合は、次に出会ったとき、首輪四つとボーナスアイテム四つをこの龍と交換してやろう」

 これが、ゼロが持ちかけたゲームのルール。
 このデスゲームに新たな縛りを追加したものだ。
 次にゼロと出会うまでに、天道となのはは合計で四人の参加者を殺さねばならない。
 そして得た首輪と、ボーナスアイテム全てをフリードと交換しなければならないのだ。

「一応言っておくが、これまでの放送で名前を呼ばれた者の首輪を持ってきても数にはカウントしない。
 君達が仕入れた、新しい首輪とボーナスアイテムを持って来なかった場合は、無条件にこの龍を殺す」
「そのゲームに乗る必要はない。何故ならキング……お前は今、ここで俺に倒されるからだ」
「……キング? はて、何の事かな」
「とぼけても無駄だ。今さっき貴様が出した盾、俺には見覚えがある」

 掲げられたカブトの指先が、ゼロへと向けられた。
 天道は一度、コーカサスアンデッドへと変身したキングの姿をその眼で見ているのだ。
 その際に、キングが腕に装備していたソリッドシールド。それはまさしく、先程カブトの攻撃を防いだ盾だ。
 もう言い逃れは出来ないと言わんばかりに、カブトは真っ直ぐにゼロを指差していた。
 天道の思惑を察したゼロも、これ以上の演技に意味は無い事を悟ったのだろう。

「……あーあ、つまんないなぁ。まぁ、気付かれたからって僕の要求は変わんないけどさ」

 さもつまらなさげに呟きながら、その漆黒の仮面を外した。
 ゼロの正体は、案の定今となっては明確な敵となったキングであった。
 仮面を外した途端に声が変わった事を考えると、あの仮面には変声機でも付いているのだろう。

349Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:04:15 ID:arCjFvuI0
 
「ま、僕もそろそろゼロには限界感じてたからいいんだけどさ」
「キング……殺し合いには乗って無いっていうのは、やっぱり嘘だったの?」
「嘘じゃないさ。僕にとっちゃ人間同士の殺し合いなんて微塵も興味無い。それはホント。
 ただ、こうした方が面白いだろ? 正義の味方が人を殺すなんて、最高の見世物じゃんか!」
「そんな下らない理由の為に……!」
「やめろ高町……最早こいつには何を言っても無駄だ」

 カブトの、天道の冷静な声に宥められるなのは。
 ――否。カブトの声色にも、確かな怒りと最大限の侮蔑が込められていた。
 やはり人として感じる憤りはなのはも天道も変わらない。
 こいつは、キングは最悪だ。図らずも二人の意見は一致していた。

「貴様はここで俺が倒す。それで何の問題も無い」
「ちょっとちょっと、ゲームのルール聞いてなかったの? 僕は別に戦う気は無いんだってば! 第一僕、戦い嫌いだし」
「貴様こそ俺の話を聞いてなかったのか。俺は貴様を、ここで倒すと言ってるんだ」
「ああもう……わっかんない奴だなぁ! 戦ったとしても、お前レベルじゃ僕は倒せないって言ってんの。
 折角生き残るチャンス与えてやってんのに、何で無駄死にしようとすんのさ? 馬鹿なの? 死ぬの?」

 君の頭を疑うよとでも言いたげに、キングが両手を広げた。
 この自信、ハッタリ等では無い。それは天道自身にも良く解る。
 アンジールとの戦いで疲弊した今、果たして万全の状態のキングに勝てるだろうか。
 ……いや、勝てるかどうかではないのだ。倒さなければならないから、倒す。
 だから天道は、天の道を貫く為、キングに戦いを挑まなければならない。

 ――きぃんっ!!――

 刹那、何かの金属音が響いた。
 聞き覚えがある。キングの盾と、刃物が激突する音。
 カブトから見て、キングの後方にソリッドシールドが形成されていた。
 そして、ソリッドシールドと一緒に見えた影は――純白の、片翼。

「アンジールか……!」
「あぁそっか……最後の妹、死んじゃったんだ。だから他の参加者を手当たり次第に殺す事にした?」
「黙れッ!!!」

 激昂したアンジールが、反逆の名を冠した剣を横一閃に振った。
 されど、それはキングの身体に届く事は無く、直前でソリッドシールドによって阻まれる。
 キングの言う事は正しい。事実、アンジールはクアットロを失った事で、夢も誇りも失った。
 もう、先程までのアンジールは死んだ。今ここにいるのは、ただ殺す為だけに戦う堕天使。
 事実、盾に防がれていなければ、アンジールの剣の軌道はどれも確実にキングを死に追いやる太刀筋であった。

「アンジール……それがお前の選んだ道か」

 ぽつりと吐き出された天道の言葉は、何処か言い様のない寂しさを帯びていた。
 だけど、アンジールが全ての参加者を殺す事に決めたのなら、それも理解出来る。
 もしも自分が、掛け替えのない妹――樹花やひよりを殺されたら、その時は自分だってどう行動するか解らない。
 妹の為だけに戦うアンジールは、言わば天道とは鏡映しと言って良い。限りなく似て非なる存在なのだ。
 だからアンジールの行動を責める事は出来ないし、アンジールの判断を間違いとも思わない。
 なれば、今の自分には何が出来るだろう。これ以上アンジールの誇りを汚さない為には……。

350Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:04:56 ID:arCjFvuI0
 
「やはり、倒すしかないか」

 ぽつりと呟かれたカブトの言葉など、まるで意に介さない様子だった。
 アンジールの身体が、片翼による羽ばたきで、刹那の内に上空へと掻き消えたのだ。
 キングに只の斬撃は通用しない事を学んだのだろう。アンジールが次に狙った相手は――

「――ひっ!?」
「どこを狙っている……アンジール?」

 きぃん、と響く金属音。
 なのはの首筋を狙い、一直線に振り払われた剣を、カブトクナイガンが受け止めた。
 咄嗟の判断でカブトがなのはの眼前へと躍り出なければ、ここでなのはは死んでいた。
 もう、この男に誇りという物は無い。殺せるならば、女子供に関わらず手当たり次第に殺す。
 ならば天道は、その刃に脅かされる命を守り、アンジールを倒さなければならない。
 カブトクナイガンを翻し、リベリオンを払いのける。
 勢いそのまま、アンジールへと躍り掛かろうとするが――

「ダメダメ! ゲームの邪魔はルール違反だよ!」

 カブトの刃がアンジールと再び接触する前に、アンジールの身体が吹っ飛んだ。
 同時にアンジールの身体からデイバッグが引き離され、キングの元へと飛んで行く。
 それを片手でキャッチし、自分のデイバッグの中へと放り込み、言い放った。

「ようこそアンジール、君は三人目のゲームプレイヤーだ! ライダーチーム対堕天使アンジールってね!」

 漆黒のマントをばさりと広げ、高らかに言い放った。
 だが、天道は最早キングの言葉になど耳を貸していない。
 カブトがその視界に捉えたのは、開きっ放しになったキングのデイバッグのみ。
 そして、考える。先程の戦いで疲弊した今、キングとアンジールを同時に相手にするのは確かに骨が折れる。
 だが、今のアンジールは目に映る者全てを殺すマーダー。そしてキングは、揺るぎなき明確な「悪」だ。
 ならば……戦う以外にも、こいつらを潰し合わせる事は出来る。

「高町!」
「え……!?」

 ――CLOCK UP――

 自分の背後に控えたなのはの腰を掴んだ。
 そのままなのはの意思などお構いなしに、腰のスイッチを叩く。
 同時に響いたのは、クロックアップの開始を告げる電子音。
 天道は元々の体力が人並み外れているとはいえ、今はアンジールとの戦闘直後。
 その上なのはをも抱えている事を考えれば、クロックアップ出来る時間はそう長くない。
 だから、勝負は一瞬だ。一瞬で“それ”をこなし、戦闘から離脱せなばならない。
 残り僅かな加速を使い、カブトはキングに掴み掛った。

351Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:05:27 ID:arCjFvuI0
 




 一瞬で、カブトの姿が掻き消えた。
 なのはの姿も一緒に掻き消えて、残されたのは二人きり。
 炎上するスーパーの炎に照らされながら、キングは再び漆黒の仮面で顔を隠した。

「やれやれ……逃げるなんて、仮面ライダーとしてはどうかと思うんだけど、なぁ?」

 全てを言い終えるまでもなく、キングの眼前にソリッドシールドが形成された。
 言うまでもなく、ソリッドシールドを出す要因となったのは、アンジールの剣だ。
 有無を言わさずに、アンジールはキングへと斬り掛かって来たのだ。

「あぁ、そういう事。アンジールと僕をぶつけようって? 甘い甘い! それじゃ甘いよカブト!」
「何をごちゃごちゃと……!」

 今度は、真っ赤な火球だ。
 だけど、それもキングの元へと届く前に現れた盾によって掻き消された。
 アンジールもそろそろ気付く頃だろう。自分の攻撃はキングには通用しない、と。
 それを理解できるまで、キングは防戦一方というスタンスを貫く。
 そして、幾度かアンジールの攻撃を防いだ後で、キングが口を開いた。

「今のアンジールを、ザックスが見たらどう思うかな」
「何ぃ……!?」

 キングは知っている。
 アンジールに、愛弟子が居る事を。
 夢と誇りの全てを託した者が居る事を。

「バスターソードはどうした? 父の形見では無かったのか?」
「黙れ……黙れ! 何故貴様がそれを知っている……!?」

 解りやすい程に動揺している。
 相手を騙す上での基本。まずは、相手を信用させる為の地盤を築く。
 自分は他の参加者では知り得ない、アンジールの全てを知っているのだと思い込ませるのだ。

「クアットロに、チンク、ディエチ。戦闘機人、ナンバー4、5、10……お前の大切な妹達だな?」

 マスクのお陰で、キングの声は低く響くような声へと変声される。
 それがアンジールに異様な迫力を与え……時を待たずして、その動きが止まった。
 これはチャンスだ。ここで畳み掛ければ、単純なコイツはすぐに落ちる。

352Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:06:07 ID:arCjFvuI0
 
「他の者は知り得ない情報を何故私が知っていると思う? 何故私に攻撃が通用しないと思う?」

 あの携帯サイトを見れば全ての参加者の情報を得る事なんて容易い。
 攻撃が通用しない……これに至っては、キングの元々の能力だ。
 だけど、こうやって考えさせる事には確かな意味がある。

「単刀直入に言おう。私は主催側の手の者だ……故に、私を殺す事は不可能!」
「なん……だと……!?」
「そして、私と手を組むと言うのであれば、貴様の妹達を特別に生き返らせてやる事も出来るが」
「何……!? それは本当か……!?」

 まだ疑ってはいるようだが、ここまで来れば成功したも同然だ。
 あとはそれらしい理由を並べてこいつを自分の駒にすればいい。
 カブトは自分達を潰し合わせる腹積もりだったのだろうが、そうは問屋が降ろさない。
 カブトが考えた想像よりも、遥かに楽しい展開に持ち込んでやろう。

「未だに殺し合いに乗ろうとしない輩が多い事は想像に難くないだろう。
 私はそう言った参加者達を扇動する為にプレシアによって遣わされた者」
「どうすれば、妹達を生き返らせてくれる……?」
「私はこれから市街地へ向かい、他の参加者達に追加条件でゲームを持ちかける。
 君には逆らう者を黙らせる為の、私の兵隊になって貰いたく思うのだが」
「兵隊……だと?」
「ああ、勿論……私の申し出を聞かずに他の参加者を皆殺しにして、自力で妹達を生き返らせるのも結構。
 ただし、たった一人で戦って皆殺しにするか、主催側の私と繋がりを持った上で他の参加者を皆殺しにするか……
 妹達を生き返らせると言う一つの目的の上で行動するなら、どちらの方がより確率が高いかは考えるまでもなかろう」
「……俺、は……」

 嗚呼もう完璧だ。ニヤけが止まらない。
 このソルジャー、完全に自分の事を信じているらしい。
 ゼロのマスクが無ければ、仮面の下で笑っていた事が一発でバレていただろう。
 声だって多少笑いが込められて居ても、それはこの変声機のお陰で誤魔化せる。
 逆に嘲笑とも取れるし、余裕を見せつける上ではかえってプラスかも知れない。

(さあ、どうするアンジール?)

 従わないなら従わないで、ここで殺してしまえばいい。
 この男程度のレベルならば、変身すれば問題無く倒せるだろう。
 だけどそれでは面白くない。何よりもカブトの思い通りになるのが気に入らない。
 キングはただ、全て自分の思い通りなのだと言う事を知らしめてやりたいのだ。
 そしてもう一つ。高町なのはに渡した仮面ライダーデルタのベルトについてだ。
 デルタギア、恐らく自分ならば問題無く使いこなせるだろう。だが、それではつまらない。
 だから高町なのはに渡した。アレを使えば、如何になのはと言えど暴走は免れないだろうから。
 別にゲームに乗ってくれなくたって構わないし、その時はその時でフリードを殺せばいい話だ。
 そう……キングが何よりも楽しみにして居たのは、ゲームなどでは無い。
 なのはにデルタを使わせる事自体が、キングの楽しみだったのだ。

 ――されど一つだけ、キングも気付いていない事がある。
 それは、開け放たれたままのキングのデイバッグの中身についてだ。
 カブトが離脱する瞬間、クロックアップ空間の中でキングとカブトは一度だけ接触した。
 キングが知覚するよりも早く、ソリッドシールドが形成されるよりも早く。
 そう。カブトは一瞬よりもさらに短い刹那の内に、キングのデイバッグに掴み掛った。
 そして、無造作に掴んだデイバッグが二つ――ごっそりと、キングのデイバッグの中から消えていた。
 しかし、キングがそれに気付くのは、まだもう少し先のお話なのであった。

353Mの姿/鏡 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:07:12 ID:arCjFvuI0
 


【1日目 真夜中】
【現在地 D-2 スーパー前】

【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具⑤】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
 1.まずはアンジールを駒にする。
 2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
 3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
 4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
 5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。

【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】無し
【思考】
 基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
 1.本当に妹達を生き返らせる事が出来るのか……?
 2.参加者の殲滅。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。
※キングが対主催側の人間だと思っています。

354Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:07:48 ID:arCjFvuI0
 
 ――CLOCK OVER――

 鳴り響いた電子音は、超加速の終了を告げる合図。
 誰も居ない平野まで駆け抜けて、ライダーシステムが限界を感じた。
 距離にすれば、1キロ走ったかどうか。普段の天道ならば、大した距離では無い。
 されど、今は状況が特別だ。クロックアップの時間制限と、なのはという名の足かせ。
 それらを抱えて走り抜けた天道には、既に戦える程の体力は残されて居ない。
 立ち止まると同時に、天道の身体から赤の装甲と抱えていたなのはが離れた。

「あれ……ここは? 今さっきまでキングが……」
「クロックアップで離脱した。お前を守りながらあの二人と同時に戦うのは無理だ」
「離脱……? 天道さんが……?」

 らしくない。普段の天道ならば、逃げたりはしない筈だ。
 例え状況が不利であっても、カブトという力がある限り、天道は戦う。
 そういう人間だと思っていただけに、意外な撤退には正直面食らった。
 ……否、先程の天道の動揺を考えれば、それも無理は無いのかもしれない。
 本人は表には出していないつもりだろうが、アンジールが妹を殺されたと聞いた時――
 天道は確かに動揺していた。カブトの仮面の下で、きっと想像も出来ない様な表情をしていた。
 それが一体何故なのかなど、なのはには解る訳も無いのだが……。

「今のアンジールとキングは、まず間違いなく潰し合う。どちらが勝ったとしても、俺が倒せばいいだけの話だ」
「天道さん……」

 強がってはいるが、やはりいつもの天道では無かった。
 何と言うか、らしくない。どういう訳か、不自然さを抱かせる。
 逃げるしか無かった自分が許せないから? 戦っても勝ち目が無かったと自分自身で気付いているから?
 そういった罪悪感と、アンジールの一件。それらが、天道に確かな動揺を与えているようだった。
 されど、二人に立ち止まって居る時間などは与えられなかった。

「――待て、何か聞こえるぞ!」
「え……あ、これは……泣き声……?」

 言われてみれば、微かに聞こえる。
 女の子が、すすり泣いているような声だ。
 ここからそう遠くない。このままでは危険だ。
 この場で泣き声を響かせると言うのは、自分の居場所を教えているようなもの。
 最悪の事態になる前に駆け付けて、泣き声の主を保護しなければならない。
 何故泣いているのか、話を聞くのは保護してからでも遅くは無い。
 そして、そう考えているのは天道も同じらしい。
 二人はすぐに、声の元へと駆け出した。

355Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:09:26 ID:arCjFvuI0
 

 それから間もなく、二人は声の主を発見した。
 一目見た時、あまりの惨たらしさに口を塞いでしまった。
 紫の髪の少女が、全裸で四肢を縛り付けられていたのだ。
 それも、四肢からは止めどなく血液が溢れ出して、腹部に至っては貫通されている。
 相当なショックだったのだろう。失禁した形跡すら見られる。
 最早少女は、なのは達が目の前に来ても何の反応も見せなかった。
 ただただ、何事かを呟きながら涙を流し続けるだけ。
 口に下着を詰め込まれて居るせいで、何を呟いているのかは解らなかったが……。
 もうこの子は壊れている。身体だけでなく、心も。
 なのはにそう思わせるには十分だった。

「この子……あの時の……」

 この少女には、見覚えがある。
 あの時――このデスゲームが始まってすぐに出会った少女だ。
 自分があの時この子の話をきちんと聞いて居れば、きっとこの子はここまで追い込まれなかった。
 この子がこうなってしまった原因の一つは自分でもある。出来る事なら、何とかして助けたい。
 だけど……今自分に出来るのは、ケリュケイオンによるヒーリングだけだ。
 あの時キングは、なのはのグローブ――ケリュケイオンを見落していた。
 だから、このデバイスだけはキングに奪われずに済んだのだ。
 口に詰め込まれた下着を引き抜いて、掌を腹部に翳す。
 そうして初めて、少女の呟きが聞きとれるものとなった。

「エリオ……シグナム……私が……殺したから、殺される……家族、殺された、から……
 私……悪かった、の……かな……もう、誰も居ない……一人ぼっち……わた、し……」
「一人ぼっちじゃない……私が居る! 貴女には私が、私達がついてるから……!」

 この子が何らかの理由でエリオを殺してしまった事は、もう知っている。
 その上でシグナムも殺してしまったのならば、それは確かに許されざる罪だ。
 だけど、今ここで死んでいい命なんてある訳が無いし、これ以上誰にも死んで欲しくは無い。
 この子は自分が犯した罪と向き合って、きちんと罪を償わなければならない。
 だから、まだここで殺す訳には行かないのだ。

「なんで……どうして……こんな事に……もう、死ねば……いいのに、私なんて……」
「死ぬなんて言っちゃ駄目だよ! 私はまだ貴女の名前も聞いてない……ねぇ、名前は?
 名前を教えて? 私の名前は高町なのは……誰も居ないなら、私が貴女の友達になるから……」

 ようやく、少女がぴくりと反応した。
 ぱちりと瞬きをして、一際大粒の涙がその瞳から零れ落ちた。
 それからすぐに、少女が再び口を開いた。

356Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:10:56 ID:arCjFvuI0
 
「わたし……私は、柊……かがみ……お願い、なのは……私を、殺して……もう、嫌なの……」
「かがみ……かがみだね? 悪いけど、そのお願いは聞けないよ。嫌って言われても、私はかがみを助ける」
「エリオ……シグナム……それから、眼帯の女の子……私が、殺した……だから、私は……もう……」
「その話なら後で聞くから……だから、生きることを諦めないで。辛い事があったなら、一人で背負い込まないで……」

 どんなにヒーリングを続けても、そんな物はその場凌ぎにしかならなかった。
 腹部から、手足から、止めどなく溢れ続ける血液を止めるには、回復量が少なすぎる。
 この少女、既に完全に諦めきっている。完全に絶望してしまっている。
 だけど高町なのはという人間は、まだ諦めてはいない。
 そんな時だった。

「そいつを助ける手段、無い訳じゃ無い」

 背後から、天道が声を発した。
 二つのデイバッグをその場に降ろし、その中から見なれない機械を取り出した。
 どうやら腕に装着するディスクらしく、緑のカードが一枚セットされていた。
 リリカル遊戯王GXの世界に登場する、デュエルディスクと呼ばれる機械だ。
 片手に持った説明書を読みながら、天道が言葉を続ける。

「だが、そいつに使ってやる義理は無いな」
「そんな……!」
「そいつは三人も人を殺してる。そんな奴を仲間に入れてどうするんだ」
「それは……罪は償う事は出来ます……この子だって――」
「そいつには無理だ。生きる気が無い人間を助けた所で、また同じ事を繰り返すだけだからな」

 確かに、天道の言う事は正しい。
 死にたがっているかがみを無理に生き返らせても、逆に今度は世界を憎むかも知れない。
 何故自分を殺してくれなかった。何故こんな辛い世界で、自分を生き長らえさせた、と。
 事実、かがみはこれまでも周囲を呪い続けて、その結果として三人も殺してしまったのだろう。
 そんな状態のかがみを助ける事は、確かに得策とは思えない。
 だけど……

「それでも、私はこの子を助けたい……! 後の事は、私が責任を取るから――」
「お前では話にならん」
「な……天道さん!?」

 なのはの言葉を遮って、天道が進み出た。
 全裸のかがみの前に立って、真っ直ぐにその顔を見下ろす。
 鋭い視線で射抜くように見据えて、言葉を続けた。

「おい、お前……“かがみ”とか言ったな。死ねば赦されるとでも思ってるのか?」
「死なないと……あの子、私……許さない……だって、私も……浅倉、許せないから……
 つかさ……殺された、から……だから、シグ……ナム、殺した私……死なないと……」
「あの子ってまさか……はやてちゃ――」
「甘えるのもいい加減にしろ! お前がそいつに殺されたとして、お前が殺した三人はどうなる……!?
 例えお前を殺しても、そいつはお前を絶対に赦さない。死んだ者は還って来ないんだ。心が晴れる訳が無い。
 だが、そいつが仇を取る為にお前を殺せば、死んだ三人はどう思う!? 絶対に喜びはしない筈だ……!」

 なのはの言葉を遮ったのは、怒号であった。
 天道総司という人間が怒鳴る姿を、なのはは初めて見た。
 いつだって冷静に的確な判断を下していた筈の天道だからこそ、怒鳴るなどとは思って居なかった。
 そういったイメージも手伝って、天道の迫力に拍車が掛っているように見えた。
 だけど、きっとそれは錯覚などでは無いのだろう。

357Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:11:58 ID:arCjFvuI0
 
「生きた、って……皆、私を裏切る……だって、皆……別の世界の……人、だから……なのはも……」
「私は裏切らない……! もう、かがみを離さないから……だから、私を信じて? お願い!」
「でも……万丈、目……だって……バクラだって、私……裏切られたから……」
「だからって何だ。そいつらが裏切ったからって、高町までお前を裏切ると誰が決めた?」

 おかしいな、となのはは思う。
 先程まではかがみを助けるつもりは無いなんて言っていたのに、今の天道の言葉はまるで真逆に聞こえる。
 まるでかがみを改心させて、助けようとしているような。助ける為に、かがみに罪と向かい合わせる為に。
 もしかすると、天道は最初からそうするつもりだったのではなかろうかとすら思ってしまう程であった。

「……と、言った所で生きる気力の無いお前には何を言っても無駄だな。お前がどうしても死にたいと言うなら、俺は止めはしない。
 だが……お前がここで死んでしまえば、お前の言いたい事や、伝えたい事……誰にも何も、永遠に伝える事は出来なくなってしまう」
「伝えたい……こと……そんなの……もう、私には……」
「かがみ、良く考えて……? 友達の事、家族の事……元の世界で待ってる皆や、ここで戦ってるお友達の事……本当にそれでいいの?」

 恐らく、先の放送で呼ばれた「柊つかさ」というのは、かがみの家族だろう。
 それはかがみの言葉を聞いて居れば想像がつくし、だからこそここまで壊れてしまったのも納得が行く。
 誰だって家族が死んでしまって、平然としていられる訳が無いのだ。
 それもかがみの様に元が完全な一般人なら、尚の事。
 だけど、それでも生き残った人の事……死んでしまった家族の想いを、考えて欲しい。

「伝え、たい事……ほん、とは……沢山ある……こなただって、生きてる……戦ってる、って……
 でも……でも……人を、殺した……こんな、私が……今更……こなたと……出来る訳ない……出来る、訳……」
「かがみ……事情があったにしろ、人を殺した事は赦されないし……多分、私だって貴女を赦す事は出来ないと思う……
 だけど、それでも……貴女を想ってくれるお友達の事や、死んでしまった大切な人の想い、忘れないで欲しいんだ。
 私の友達だって、何度もいがみ合って、ぶつかり合って……それでも、罪を背負ってでも、最後は解りあえたから……」

 フェイトの事。はやて達ヴォルケンリッターの事。
 彼女らはかがみとは状況も、罪の重さも全く違う。それくらいはなのはにだって解る。
 なのははきっと、エリオやシグナム、チンクを殺された事……きっとかがみを赦す事は出来ない。
 だけど、それでもかがみにはその罪を背負って、前を向いて生きて欲しいと思う。
 だからなのはは、こんなにもかがみを殺したくないと必死になれるのだ。
 死んだ三人の想い、ここでかがみが死んで報われるものでもないのだから。
 だけど、ヒーリングを続けているとは言え、かがみが現在進行形で衰弱しているのもまた事実。
 このまま話が長引けば、本当に死んでしまうかもしれない。それだけは避けたいのだが……。
 そう考え始めた矢先、天道も状況を察したのか、顔色を変えて話始めた。

「良く聞けかがみ。お前にまだ生きたいと願う意思があるなら……罪を償いたいと思う心があるなら……
 例え他の誰が裏切ろうと、俺と高町なのはだけは絶対にお前を裏切らない。離れていても、俺達がずっとそばに居てやる」
「えっ……う、あ……あぁ……そんな、都合良い……話……今更……うぐ……う、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」

 とっくに崩壊していた涙腺から、濁流の様な涙が零れ落ちた。
 まるで子供の様に、その口から呻き声を漏らして……泣き崩れた。
 今までずっと辛い思いをしてきたかがみに、初めてかけられた優しい言葉。
 本心から、救いたいと願ってくれる者の言葉。
 だけど、後戻りは出来ないと言う事実……重圧。
 それらがかがみに、最後の壁を作って抵抗させる。
 今なら解る。かがみは、本当に死にたいなんて言っていた訳ではない。
 本当はこの子だって、戻りたいのだ。昨日までの、平和だった頃の自分に。
 友達たちと笑いあって居たであろう頃に――。

 不意に、天道が右手の人差し指をそっと掲げた。
 空を軽く見上げながら、言葉を続ける。

358Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:12:49 ID:arCjFvuI0
 
「おばあちゃんが言っていた。……嘆くなら抗え。悔やむなら進め。不幸だと嘆くだけなら誰でも出来る……ってな。
 いいかかがみ。世界はお前の敵じゃない……困難は多いだろうが、お前にはその困難に立ち向かう義務がある。
 そしてそれを背負って生きて行く限り、お前には何処の世界でだって生きて行く権利がある」
「う、ぁ……だって……私……わた、しぃ……三人も……ひっく……ぐすっ……」
「その三人の事を、絶対に忘れるな。そして、その三人の分まで生きて、戦い抜け。それがお前に出来る償いだ」

 ただ生きて行くだけではない。
 嘆くくらいなら、抗え。悔やむくらいなら、前に進め。
 殺してしまった三人の呪縛に捉われてがんじがらめにされるのではなく。
 未来を生きたいと願う希望の光と、背負った三人の命、罪という名の闇。
 自分の中の光と闇と……その両方を背負って、走り続けなければならない。
 それこそがこれからかがみがしなければならない、終わる事の無い戦い。
 自分自身を見失わない様に、自分の心と戦い続けなければならないのだ。

 ――それきりかがみは喋らなくなった。
 ただ聞こえるのは、声にならない嗚咽と、すすり泣く声だけだ。
 一人で何を考えているのかは、なのは達の知る所では無い。
 だけど、生きたいと願うのであれば……何事かを告げる筈。
 逆に、自分達の説得でも駄目だったなら……かがみは何も言わないだろう。
 果たして、その答えは――





 嗚呼、私にはまだ、こんなにも想ってくれる人間が居たんだ。
 なのはには、あんな酷い事をしたのに……裏切られたと思って、裏切っていたのは私の方だったのに。
 それでも目の前の二人は、自分を信じてくれると言っている。裏切らないと言ってくれている。
 その言葉は、今でも完全に信じる事は出来ないし……心の何処かでは、未だに疑っている。
 だけど同時に、信じたいと願う自分も居る。

(わたし……生きていても、いいのかな……ここに居ても、いいのかな)

 もうバクラは居ない。
 つかさだって居ないし、こなただってどうか解らない。
 だけど、自分にも生きる事が赦されるなら……生きていたいと思う。

 そして、ここで生きていていいのなら。ここに居てもいいのなら。
 犯してしまった罪はきっと、永遠に消えないのだろうけど……それでも。
 誰かと一緒に、誰かの為に、死んでしまった三人の分まで戦いたい。
 自分自身と戦って、生き抜きたい……きっと皆、都合が良いって言うと思うけど……。
 あの関西弁の少女に会うのも、殺してしまった人の関係者に会うのも、迷惑を掛けてしまった皆に会うのも、正直に言えば怖い。
 また殺されるんじゃないだろうか。自分なんて信じて貰えないんじゃないだろうか。
 きっとこれまで関わった皆から、都合が良いって罵られる筈だ。
 正直言って怖い。怖くて怖くて、また心がどうにかなってしまいそうだ。
 だけど、それでも逃げる訳には行かない。自分はそれに立ち向かわなくちゃならないから。
 罪を背負うって言うのはきっと……そういう事でもあるのだと思うから。
 だから、私は――。

「なの、は……ありが、とう……私、最後に……あんたに、会えて……良かった」
「かがみ……最後だなんて言わないで!? これからも、一緒に戦おう……一緒にゲームから脱出しよう!?」
「わか……るから……私、も……駄目、だって……だから、私の分、まで……なのは……生き、て……」
「かがみ……かがみ!? そんなの駄目だよ……かがみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 悲しいかな、手遅れだ。
 もう何をしても、間に合わない。自分でも解る。
 体中からこれだけ血液を流したのだから、当然だ。
 生きる気力はあっても、考え方を変える事が出来ても、現実には敵わない。
 だけど最後の最後で本当の自分を取り戻す事が出来た。
 そして、最後になのはにお礼を言えただけで、もう満足した。
 嗚呼、今の自分は、ちゃんと笑う事が出来てるだろうか。
 最後くらいは、笑顔でいたいから……
 だから――

「――ありがとう」

 それだけ言って、かがみは意識を手放した。
 と言うよりも、意識を保って居られなくなったのだ。
 喋り続けた所為か、意識の混濁が余計に早まっているように思える。
 だけど、意識が途切れる寸前に、男の声が聞こえた気がした。

「合格だ、かがみ」

 何が合格なのか……今となっては何も解らない。
 もう何も考える事など出来ないのだから……。

359Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:17:31 ID:arCjFvuI0
 




 柊かがみが意識を手放してから、既に数十分が経過していた。
 天道総司も、高町なのはも、今はその場に腰掛けて、休憩をとって居た。
 二人の表情に、先程までの緊迫感は無い。どちらも今はただ身体を休める事に集中しているようだった。
 本来ならば、かがみの事でそう簡単には立ち直れないのだろうが……。

「天道さん、最初からかがみを助けるつもりだったんでしょう?」
「勘違いするな。俺は生きる意志を持つものしか助けるつもりは無い」
「でも、最初からかがみを見捨てようとはしなかった……
 それは、かがみが本当は優しい子だって気付いてたからじゃないですか?」

 なのはが問うが、天道はそれ以上何も答えなかった。
 無駄話をしている暇があるなら、体力を回復させろ、と。まるでそう言っているようだった。
 今の天道は、ただ目を瞑り腕を組んで、瞑想でもしているかのように俯いているのみ。
 もしかしたら何事かを考えているのかも知れないが……それは天道にしか解らない。
 二人が無言になれば、すやすやと聞こえてくるのは安らかな寝息。
 紫髪の少女が身体になのはの上着の着物をかけられて、ぐっすりと眠っていた。

「デュエルディスク……カードさえあれば、何度でも使える支給品。正直、こんな便利な物があったなんて……」
「と言っても、かがみの場合はあと何度か使わないと完全には回復しないだろうがな」
「その……かがみの傷、やっぱりはやてちゃんがやったんでしょうか」
「それに関しては、起きてから直接かがみに話を聞くしかないな」

 犯人はほぼはやてで間違い無いのだが……天道はそうだとは言わない。
 それも当然だろう。天道だって、はやてがなのはの友達だと言う事は理解している。
 絶対にはやてがやったのだと言う確信があるのなら話は別だが、そうでないなら想像だけで迂闊な事は言えない。
 かがみが気を失う瞬間に、天道が咄嗟にデュエルディスクを装着させ、カードの効果を使ったから助かったものの……。
 下手をすれば、そんな事をする機会すらないまま、一方的に殺されていた可能性だってあるのだ。
 そんな事を、あの八神はやてがした。悪い冗談だと信じたい、と……そう思っているのは二人ともだ。

「何にせよ、今は考えても無駄だ。放送まであと僅かだ。それを聞いたら、俺はこのまま西へ向かう」
「西……? でも、地図を見る限りじゃ、ここより先は……」
「俺の予想が正しければ……エリアの端と端は繋がっているかも知れない」
「え……それはどうしてですか?」
「かがみを拘束するのに使われていた服、見たところホテルの従業員の制服だ。
 なのは、お前が最初にかがみと出会った時、確か制服を着てたって言ってたよな?」
「つまり、かがみは一度ホテルに行ってから、この平野まで戻って来た……?」
「ああ。そしてここにかがみを襲った犯人は居ない。何も無い平野だ、この周囲に隠れている訳でもあるまい」

 天道の言っているのはつまり、こういう事だ。
 かがみはなのはと出会ってから、どういう訳か一度ホテルへ向かった。
 そこでホテルの従業員の制服を手にし、それを着て移動を開始した。
 だが、移動途中に何者かに襲撃され、この場に置き去りにされてしまった。
 とするならば、その犯人は何処へ逃げた? この周囲に隠れる場所は無い。
 かがみの傷を見たところ、恐らくやられたのはそんなに前という訳でもないだろう。
 そう考えれば、考えられるのは、このエリアの向こう側はそのまま東側に繋がっているという可能性。
 プレシアの事だ。エリアの外に出たからって首輪爆発なんてつまらない事はしないだろうし、十分にあり得る。

「それに、ゆりかごに向かうなら東側から行った方が圧倒的に近い」
「……それだけじゃない。もしも犯人がはやてちゃんなら、どうしてこんな酷い事をしたのか……
 もしそこで出会えたら、きちんと本人から話を聞く事も出来るかもしれない」

 これで話はまとまった。
 まずは放送を聞き、それからかがみから事情を聞く。
 そしてすぐに西へ向かい、エリアが繋がっているのかどうかを確認。
 それからゆりかごへ向かい、ヴィヴィオを救出する。
 これが当面の彼らの行動方針であった。

360Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:18:31 ID:arCjFvuI0
 

 キングから奪い取ったデイバッグをその手に抱え、二人は星空を見上げていた。
 各々の思考を巡らせながら、この無情なデスゲームに憤りを募らせる。
 こんなゲームは絶対に終わらせなければならない。
 その為にも、自分達は戦わなければならないのだ。
 放送まであと僅かだ。それを聞いたら、すぐにでも動きださなければならない。

 そして、そう考える高町なのはのデイバッグの中には――
 彼女にとっての、最高の切り札が今も眠っているのであった。



【1日目 真夜中】
【現在地 D-1 平野】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デルタギア一式・デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
 1.放送を聞いた後で、かがみから話を聞く。
 2.西へ向かい、エリアの端と端が繋がっている事を確かめる。
 3.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
 4.出来れば銀色の鬼(メビウス)と片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
 5.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
 6.フェイトちゃんもはやてちゃんも……本当にゲームに乗ったの?
【備考】
※金居とキングを警戒しています。キングは最悪の相手だと判断しています。
※はやて(StS)に疑念を抱いています。きちんとお話して確認したいと考えています。

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労(中)
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.放送を聞いた後で、かがみから話を聞く。
 2.西へ向かい、エリアの端と端が繋がっている事を確かめる。
 3.なのはと共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを救出、何としても親子二人を再会させる。
 4.一応あとで赤と銀の戦士(メビウス)の思惑を確かめる。
 5.キング及びアンジールは倒さなければならない敵。
 6.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】全裸、両手首の腱及び両アキレス腱切断(回復中)、腹部に深い刺し傷(回復中)、疲労(極大)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー
【装備】デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【道具】ホテル従業員の制服
【思考】
 基本:出来るなら、生きて行きたい。
 0.ありがとう、なのは……。
 1.……(気絶中)。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。

361Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:19:35 ID:arCjFvuI0
 

【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
 基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
 1.まずは現状確認。
 2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
 3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
 4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 友好的:なのは、(もう一人のなのは)、(フェイト)、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、(シャマル)、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、(キャロ)、(ギンガ)、ヴィヴィオ、(ペンウッド)、天道、(弁慶)、(ゼスト)、(インテグラル)、(C.C.)、(ルルーシュ)、(カレン)、(シャーリー)
 敵対的:アーカード、(アンデルセン)、(浅倉)、相川始、エネル、キング、アンジール
 要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)
 それ以外:(チンク)・(ディエチ)・(ルーテシア)、柊かがみ、(ギルモン・アグモン)

362 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/02(月) 04:36:23 ID:arCjFvuI0
これで投下終了です。
最後のなのはの状態表のフリードはミスです。
wiki収録時に削除して修正しておこうと思います。

さて、今回のMは「Mirror(鏡)」の意。柊かがみの鏡。
また、かがみとはやて、天道とアンジール、それぞれ自分自身を映し出した鏡。
で、後半の「M」はマイナスのMの意味もあります。毎度ながらこじつけです。
他の書き手さんの作品も合わせて、ロワ完結までにAからZまで全部出せたらなぁとか思ってます。

ここからは「あとがき」と言う名の「言い訳」です。
エリオに次いで、多分最初にかがみが壊れてしまうきっかけを作った自分が言うのもなんですが、かがみは本当は優しい女の子だと思うんですよね。
色んな事があって、全部を周囲の所為にして、挙句やさぐれてしまったのは明らかにかがみの非だと思うけれど。
だけどはやてに殺されかけて、多分今までここの読者達がずっとかがみに言いたいと思ってた事をはやてが直接ぶつけてくれて、
自分はようやく、かがみにもバクラとかの割り込み無しに自分の行動を振り返り、考え直す時が来たんだ、と思いました。
実際、自分ははやてとのやりとりが無ければかがみでこんな話を書こうと思う事も無かったと思いますし……。
そんな訳で、“本当”のかがみらしく、弱くても変わろうとする姿、立ち向かおうとする姿を描写したつもりです。
またこんな都合の良い話を書きやがって、と思う方も大勢いるとは思いますが……。
長々と失礼しました。それでは、指摘などあればよろしくお願いします。

363 ◆7pf62HiyTE:2010/08/02(月) 10:38:02 ID:0MIgizXE0
自分の作品の感想書かない時点でバレバレなのでトリ付きで失礼。

gF氏、投下乙です。
とりあえずかがみはようやく反省したか……手足の機能(腱を切られている)まで回復出来るかは微妙だからまさしくマイナスからのリスタートだが……まぁはやてとアギト以外は許すだろうけど……
それにしてもはやてにとっては涙目だなぁ、なのはと天道にまで自分の悪行知られるわけだし。
一方のキングは相変わらずやりたい放題、3人からフリードとか道具奪って(まぁ一部天道がGetしたけど)マスター気取りかよ。アンジールはもう……うん、道化やね。
ようやくなのはがレイハー奪還成功(無事使えるかどうかわからんけど)かやっと主役になれるか?……(なのはの状態表にキングに奪われた筈のフリードがあるけどこれは削除ミスだよな)
なんか前の話が8時過ぎぐらいだと思ったらもう放送直前か……天なのこの6時間アンジールとキングに翻弄されただけな気がする。

>ロワ完結までにAからZまで全部出せたらなぁとか
……今まで出てきたのがT、K、R、L、A、I、H、Y、Mの9つ……後17もあるのか……
拙作『A to J』は流石にノーカンだからなぁ……

ここから書き忘れた拙作の言い訳を、『A to J』はA〜KそしてJOKERを含めた全てのラウズカードという意味(Wのガイアメモリが剣のラウズカードになったと考えてもらえば)ですが。
当初は『Jの継承(仮)』で前後編でのプロットだったけど、短く纏めたかったというのも理由もあり、またラウズカード絡みの話は今回が最後になりそうでなおかつ劇場版のタイトルがしっくり来るという判断だったんですよね。
正直、他に『A to Z』使いたかった人には少し申し訳無かったと思いましたが(勿論自分は使っても構わない)。

364 ◆7pf62HiyTE:2010/08/02(月) 12:11:02 ID:vvEhH9wA0
……って、フリードのミスは既に氏自身語っていたか……

365リリカル名無しA's:2010/08/02(月) 20:58:52 ID:GrGdaw.A0
投下乙です

ヴィヴィオはヤバい。物凄くヤバいわ…
なのはらと合流できたら、スバルが上手く納得できたら或いは…
スバルは懸命に考察してるな。原作では単純みたいなイメージあったけどここのスバルは必死に答えを出そうとしてるな
このままこなたらと合流するとしてもはやてがなぁ

かがみん、正直に言うとこのロワで本性が出たって感じてたんだよな
前からかがみんの悪い部分が目に付いてたがこのロワではそれがよく出てたと感じてたよ
頑固で嫌いな物には容赦が無くて気が短いなぁとも思ってました。自分がツンデレが好きでないのもありますが
ただそれでも優しくていい子だと思うのは同意なんですよ。いい所もあるんですよw
なるほど。前作のはやての影響ですか。こういう展開もあるのかと感心
天道となのははとりあえず一息付けたか。支給品は奪われたがレイハが帰ってきたぞw
キングはもうね…やりたい放題し放題でロワ充してるなw ゼロの仮面も気にいってるみたいだしw
アンジールは…道化以外の何物でもないわ。可哀そうだが無残な最期しか思い浮かばん

さて、次ははやてが涙目になるのかそれとも…

366リリカル名無しA's:2010/08/04(水) 11:51:01 ID:KZrJDX0QO
投下乙です
あれほど悪行を重ねたかがみに救済か、虫唾が走るな(褒め言葉)
でもたまにはこういう救いもありか、読み終えてほっとした
そういや一気に時間進んだ気がしたけど、回復とか考えたらそんなもんか

ちょっと気になったところ
なのはやアンジールがここまでの流れから見て些か違和感を覚えます
アンジールは前回で覚悟完了しているにもかかわらず即行でフラフラしているし
なのはもいくら不意をつかれたからと言って「―――ひっ!?」とか悲鳴を上げるほどやわではないと思います
その辺り描写が不足しているのか意図的に情けなくしているのか
どうもキャラのブレがちょっと見過ごすには致命的な気がしました

367リリカル名無しA's:2010/08/04(水) 13:45:15 ID:04sh.6CU0
二人とも投下乙です

>A to J/運命のラウズカード ◆7pf62HiyTE
ヴィヴィオ地味にヤバいな、もう見ていられない…
ほんの数時間前まではほとんど無力な子供だったのに…なんだこの急転直下振りは…
そしてスバルはみんなの想いを継いで頑張るとか諸に王道だな

>Mの姿/鏡 Mの姿/マイナスからのリスタート ◆gFOqjEuBs6
ただの一般人がいきなり殺し合いに巻き込まれたらそりゃあ最悪な手段に転ぶのは仕方ない
でもいざ自分がした事をまざまざと見せつけられて向き合えるのは大きな一歩だよな
それにしてもこのキング相変わらずノリノリである

>>366
アンジールに関してはそこまで懸念するほどではないかと
いきなり主催側?の人物が現れて妹を生き返らせてやろうと言われたら覚悟完了のアンジールでも揺らいでも不思議ではありません
それにはっきりと形として見えるのは状態表だけですから
(状態表は所詮付属的な位置だからある程度無視しても構わないでしょう)
でもなのはは少しエースオブエースとしては情けない気がしないでもない
Sts作中そうは見えなくてもある程度の修羅場は潜っているはずだから……違和感を覚えるという意見は否定できないかも
だけど今回のは書き手の匙加減の域を出ない気もしないではない
フォローなり加筆なりあった方が良い気がするけど、そこまで強くは言えないかな

368リリカル名無しA's:2010/08/04(水) 17:14:57 ID:dw29.bocO
なのはは確かに可愛すぎるな。「ひっ!?」をなんか別の台詞に変えるだけでも変わると思う。
アンジールに関しては俺もとくに違和感は感じないかな。元々振り回されてばかりの道化だったし。

369リリカル名無しA's:2010/08/04(水) 21:00:35 ID:Ye24Xxeo0
キングを主催一派と勘違いして妹たち復活云々でブレるのは分るが、バスターソードの事やザックスの事を追及されただけで取り乱すってのはなんとなくポクない気が。
セフィロスから聞いたとか、元世界が同じでザックスから伝聞したたとか、一応理由は色々と考えられると思いますし。
まあこのへんは、矛盾というより作者の解釈の範疇だから、修正しなくても問題ないけど。

取り敢えずなのはについては修正に賛成。
一応なのはも、十年以上一線に立ち続けた歴戦の魔導師な訳だし、流石に違和感が強すぎかと。
セリフを変えるだけで充分だと思いますし。

370リリカル名無しA's:2010/08/04(水) 21:43:29 ID:DF1UbKNA0
今の話題とは別ですが気になった点

>>356で天道がデュエルディスクの説明をする場面で説明書を読むシーンがありますが、件の説明書はないはずです
と言うのもそのデュエルディスクは106話「Road to Reunion」にてセフィロスが放置して143話「キングの狂宴/狙われた天道」にてキングが回収したものです
だから説明書はセフィロスが持ったままで回収されたのはディスクのみとなります
しかも天道となのははここまでDMの知識が皆無のままこの場面になるのでいきなり使い方が分かるのは無理があると思います

さらに今まで二人が遭遇したカード類は龍騎に代表されるようにカードを引き抜いて使用するものでした
だから自然な流れで行けばディスクからカードを引き抜いて使用するのが普通だと思われます
しかしそれではカードは1回しか使えずかがみが命を取り止めるには届かなくなってしまうと思います

だからこのままだと最悪かがみ死亡という展開になってしまう可能性が・・・

371 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/04(水) 22:10:53 ID:r6da80560
ご指摘ありがとうございます。
なのはに関しては今となっては自分でもなんでそんな事を言わせたのか……いや、自分が恥ずかしいです。
理由としては多分、自分の中でのなのはのイメージは9歳時代の方が圧倒的に強い(自分が書いてるクロス作品も全て子供時代)事、
それからもう一つは単純に指摘のあった部分をあまり考えずに流れで書いてしまったから、というものだと思います。
「今のアンジールに説得は無駄だ」という事を理解させる為の手段としてその描写を入れたんですが、
目的を優先し過ぎた所為で、手段がおざなりになってしまったというのは自分でも思います。
ですので、なのはの台詞に関してはwiki収録時に適当な台詞に変換しておこうと思います。

次にアンジールに関して。
これに関して、自分はアンジールの最終目的は「優勝」では無く、「妹たちの蘇生」であると判断しています。
前回優勝を目指す方向で覚悟完了したのも、そもそもは妹を蘇らせる為。
なので、最終目的である「妹」をネタに揺さぶりを掛けられれば、ブレても可笑しくないと思っています。
しかし、そうなると確かにザックスやバスターソード程度のネタでブレるのはどうかと思いました。
後日、その部分の描写を加筆修正した上で、修正スレの方に投下しようと思います。
また、アンジールの状態表にも意味の解らないミスを発見しましたので、それも合わせて修正しておきます。

最後になりますが、言い訳です。見苦しいので読まなくても大丈夫な話です。
今回の修正で、アンジールの扱いがああなったのは、自分の好きなキングを立たせる為だ……と思う方も居るかも知れません。
ですが、それは違います。正直言って自分はキングが嫌いです。度々描写する機会がありますが、その度に心底鬱陶しいと思っています。
その一方で、キングとは逆にアンジールというキャラクターは自分としてはFFの中でも割と好きな方だったりします。
では何故あんな風になったのかですが……キングに関して毎回気を配るのは、自分の中で考えられる最大限の鬱陶しさ。
自分が第三者なら、何が一番キングに腹立たしさを覚えるか、という所だったりします。
それを考えた上で書いた結果がアレです。我ながらキングマジうぜぇ、と思ってます。
ただ実際、そういう考え方の方がキングというキャラを書く上では逆に有利になると思うのです。
いや、何が言いたいかと言うと、自分は別に好きなキャラを贔屓したつもりで書いた訳ではない……という事なんですけど、
なんかもう完全に言い訳にしか聞こえないし他の方からしたら「だから何だ」って話だろうと思いますので、この辺にしておきます。
それでは、他に何か指摘などあればよろしくお願いします。

372 ◆gFOqjEuBs6:2010/08/04(水) 22:14:17 ID:r6da80560
おっと……更新して無かった。
>>370に関して、了解しました。
デュエルディスクの使用に関しても、納得出来る形に修正して投下しようと思います。

373リリカル名無しA's:2010/08/05(木) 00:13:28 ID:e0Gnu4UkO
了解です、修正お待ちしています

374 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:24:54 ID:B6FwF9Dw0
これより、ユーノ・スクライアと泉こなたの分の本投下をします

375こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:25:48 ID:B6FwF9Dw0
辺りは闇に包まれ、真冬のように風が冷たくなっていた。
殺し合いという、異様な現実を象徴するかのように。
その中で、デイバッグを肩に掲げる一人の少年が、足を進めていた。
ランタンで闇を照らしながら、ユーノ・スクライアは地図を見ている。

「えっと、今はD−8……だね」
『それで合っていると思われます』

ユーノの呟きを、無機質な電子音声が返答する。
それは、今は亡きフェイト・T・ハラオウンの相棒と呼べるインテリジェントデバイス、バルディッシュ・アサルトの声だった。
彼らは今、D−8地点にいる。
何かが封印されていると思われる車庫の前で、今後の行動方針について考えた後に、移動を開始したのだ。
その目的地は、C−9地点に存在するスカリエッティのアジト。
理由は、自分達の命を握っている首輪を解析するため。
あれから考えた末に、まずはこの問題の解決に専念することにした。
首輪がある以上、参加者全員の行動が制限される。
特にあと数時間経つと、四回目の放送が行われる時間だ。
そうなっては、禁止エリアが増えて命の危険が増す。
それらの問題を解決するために、まずは首輪の解析を急がなければならないと、ユーノは判断した。
これから行く施設はバルディッシュが言うには、ミッドチルダを震撼させたJS事件の首謀者である科学者、ジェイル・スカリエッティの拠点らしい。
そのような場所ならば、首輪を解析するための設備も、ある程度は整っている可能性はある。

(でも、あまり楽観的には考えられないな……)

ユーノは、心の中で呟いた。
この施設が、完全な物とは考えられない。
地図には『スカリエッティのアジト』という名前が書かれていたが、実際の内部はどうなっているか。
元の世界に存在する設備が、全て揃っているのか。
いや、その可能性はあまり期待できない。
主催者であるプレシア・テスタロッサが、参加者に脱出のヒントを与えるような真似をするだろうか。
そうなると、施設の名前を借りただけの全くの別物、という可能性も充分にある。
外装だけを真似て、実際の建物に設置されていた設備は全く存在しない。
もし存在していたとしても、起動しない可能性だってある。
万が一、全ての施設が揃っていたとして、使用できたとしてもだ。
安心は全く出来ない。

(この施設の存在が、罠かもしれないし……)

376こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:28:35 ID:B6FwF9Dw0
理由は、工場やアジトと言った設備の整っている施設が、他の場所以上に厳重な監視が敷かれている可能性があるからだ。
これらの施設には、参加者には見つけることの出来ない大量の監視カメラが置かれていて、主催側に情報が送られる。
その結果、首輪を外した者はすぐさま命を奪われるに違いない。
そうでなければ、ゲームを続けることは不可能だ。
だからこそ、プレシアはアリサ・バニンクスを見せしめに殺したのだろう。
参加者に恐怖を植え付けるために。
それだけではない。最悪のケースとしては、殺し合いの続行が困難と判断した主催側が、会場を破棄することも考えられる。
無論参加者は、ゲームの証拠を残さないために、一人残らず皆殺しだ。
考案の結果、首輪の解除とゲームオーバーは、隣り合わせにある。
故に、これからスカリエッティのアジトへ向かい、首輪の解析をすることは、大きなリスクを伴う行為だ。
こちらが勝てる可能性が全く期待できない、危険極まりないギャンブル。
仮に解除に成功したとしても、制限から解放されるとはとは限らない。
それでも、長きに渡る友人である高町なのはや八神はやてを初めとした、殺し合いに巻き込まれた人間を救うために、やるべきだ。
この会場に連れてこられてから、逆転に繋がるような行動はほとんど行ってなかった。
これ以上、時間を無駄に消費するわけにはいかない。
それに、危険を犯す覚悟はとうに決めている。
自分を守るために死んだ、ブレンヒルト・シルトにもそう言ったのだから、今更引き下がるわけにはいかない。
ユーノは自分にそう言い聞かせて、ランタンで道を照らしながら漆黒の中を進む。
彼の周りを覆うそれは、この世の中に存在する物ではなく、まるで冥府の闇のようだった。
参加者を、死後の世界に引きずり込むような。



余談だが、彼の考案はとてもよく似ていた。
今はもうこの世にいない、戦闘機人No.4・クアットロの考えと。
これは、偶然に過ぎない。
それを彼が気付くことはないし、何より気付いたところでどうなるわけでもないだろう。
そんなユーノは、バルディッシュと共に先の見えない闇の中を進み続けた――








鬱蒼と生い茂った森林の中に、洞窟があった。
その中は、微かな明かりだけに照らされていて、薄暗い。
歩く者の気分を害するような環境だが、二人は周囲を警戒しながら歩いている。

377こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:29:25 ID:B6FwF9Dw0
視界の先がはっきりしない道の中を、泉こなたは進んでいた。
彼女の脇では、ユニゾンデバイスのリインフォースIIが宙を漂っている。
あれから、入り口の前で待っていても何も始まらないとこなたが提案して、リインは悩みながらもそれを受け入れた。
自分達を縛り付けている、首輪を解除するための手がかりを見つけるために。
このような施設ならば、そういった機材が存在する可能性がある。
今、別行動を取っているスバル・ナカジマの為に、それを見つける必要があった。
幸いにも、この施設には自分達以外の参加者や、罠のような物は見られない。

「う〜ん、ここにある部屋ってもうみんな調べたんだよね?」
「そうですよ、さっきの部屋で最後になりますね」

こなたの疑問に、リインは答えた。
突如、戦いの始まったホテルを離れてから、既に数時間が経つ。
スバルの足を引っ張らないように、目的地であるこのアジトに来た。
ここでは、自分の見たことが無い電子機器を見つける。
特撮作品に出てきそうな、実験用と思われる巨大なテーブル。
怪しげな黄色い液体が入った、巨大な試験管。
様々なデータが入っていると思われる、複数のパソコン。
どれも、怪しげな実験場という雰囲気を醸し出す物だった。
だが、それを見つけたところでこなたにはどうすることも出来ない。
多くのネットゲームをしてきたので、ここに置かれているパソコンの操作自体は可能だろう。
だからといって、それを使って複雑な機械の解析など、出来るはずがなかった。
ましてや、この首輪にはこなたの知らない、魔法という技術によって作られている可能性もある。
そうなっては、手の出しようがない。
やがて彼女は体を休めるために、備え付けられた椅子に目を向けた。
念のために、外から持ち出した木の棒でそれを突く。
何も起こらないことを知り、それが普通の椅子であると判断した。

「ちょっと、この辺で休もうか」
「そうですね」

溜息を吐きながら、こなたは呟く。
彼女は、休憩を取りたかった。
殺し合いと言う場において、泉こなたという存在は、何の力を持たない女子高生に過ぎない。
故に、そのような異常な場所にいては、精神が不安定となりつつある。
今は何も起こっていないが、油断は出来ない。
平穏な毎日を過ごしていたはずの彼女が、突然殺し合いの場に放り込まれた。
それから、様々な異常事態が起こり、何度も命の危機に脅かされる。
ついには、毎日を共に過ごしていた親友までもが、死んだと告げられた。

378こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:31:51 ID:B6FwF9Dw0
(つかさ……何で死んじゃったの……?)

三度目の放送でその名が呼ばれてしまった、柊つかさ。
柊かがみの妹であり、調理師を夢見ていた彼女。
本当なら、今日も彼女たちや高良みゆきと一緒に、何気ない毎日を過ごすはずだったのに。
それがどうして、こんなことになってしまったのか。
思い出されるのは、四人で過ごしていた毎日。
春、新しい気持ちを胸に、一つ上の学年に上がった。
夏、コミケや夏祭りと言ったイベントに心を躍らせながら、みんなで旅行にも行った。
秋、食欲が増す季節となって、おいしい物をたくさん食べた。
冬、一年の終わりと新年の始まりを感じて、みんなで初詣に行った。
どれも楽しかった思い出の日々。
そんな毎日が、これからもずっと続くと信じていたが、もう二度と戻ることはない。
だって、つかさはもういないのだから。

(つかさがいなくなったら、かがみんやみゆきさんが悲しむよ……? みさきちや峰岸さんだって、みんな悲しむよ……?)

こなたは、再びその目から涙を流しそうになる。
もしも、ここで全てを忘れることが出来るのならどれだけ楽になれるか。
アニメや漫画や特撮の登場人物のように、記憶喪失になれたら。
だが、弱音を吐くようなことはしない。
もしもここで逃げ出したりしたら、自分のために頑張ってるスバルやリインの足を引っ張ることになる。
ここで悲しみに溺れることは、二人に対する侮辱に他ならない。
そう思い、こなたは今の現実に耐えた。
少なくともスバルやリインには、今の気持ちを知られてはならない。
だからこそ、このアジトに向かう途中に森を歩いていたとき、わざとふざけた言動をして悲しみを紛らわせたのだ。
死人が出ているのに、このような行為をするのは不謹慎と分かっている。

「ス、スクライア司書長!?」

悲しみに耽っていたこなたの耳に、リインの声が響いた。
その瞬間、意識が覚醒する。
そのまま彼女は、驚いたような表情を浮かべながら振り向いた。
その先には、見知らぬ一人の青年が立っている。

「君はもしかして……リイン!?」







ユーノ・スクライアがこの施設に現れてから、一同はある一室に集まっていた。
そこは複数の電子機器が起動している影響か、外に比べて室温が高く感じる。
三人は、互いに情報を交換した。
その際に、ユーノは提案する。

379こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:33:58 ID:B6FwF9Dw0
この話し合いの内容が、プレシアに聞かれないように文章で対話をするのが望ましいと。

(そういや、ルルーシュの時にもこういうのあったな……)

突如、ルルーシュ・ランペルージとシャーリー・フェネットの姿が、こなたの脳裏に蘇る。
亡くなった二人のことを思い出し、胸の奥から悲しみが沸き上がりそうになるが、それを堪えた。
今やるべき事は、別にある。
そして、白紙の紙とペンを三人は手に取った。



この会場に連れてこられたから起こった、様々な出来事。
この殺し合いの参加者は、それぞれ別々の世界から連れてこられた可能性。
リインのいた、ゴジラという怪物が暴れている世界。
ユーノのいた、管理外世界よりLという名の名探偵が現れた世界。
別行動を取っている、首輪を所持しているスバル・ナカジマについて。
脱出の手がかりとなる可能性のある機械、ハイパーゼクター。
残り人数が一五人を切ったとき、開くとされる謎の車庫。
首輪だけでなく、この会場には結界が張られていて、それも制限となっている説。
殺し合いの促進のため、参加者の感情に異常を与える装置。
そして、ユーノとリインがデスゲームに関して立てた仮説。



奇しくも、互いの考案には酷似する内容が多数あった。
情報交換を終えた彼らは、黒いテーブルの上に置かれている銀色の輪っかと睨めっこをしている。
それは殺し合いを強制させる道具とも言える、首輪。
隕石によって、海が枯れ果ててしまった地球に存在する組織に所属する男、矢車想に巻かれていた首輪。
これの解析を今から進めようとしている。
無論、ユーノはそれによって生じる危険性を二人に説明した。
解除した瞬間が、自分達の最後になるかもしれないことを。
その事実を聞かされたこなたとリインは、ほんの一瞬だけ戸惑った。
ようやく生まれてきた希望が、死という最悪の絶望と繋がっている可能性を知って。
それでも、先を進むために二人は提案を受け入れた。









時計の針は、ただ進み続けている。
ユーノとリインは、この施設で見つけたドライバーなどの工具を持ち、首輪の解析を進めていた。

380こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:35:08 ID:B6FwF9Dw0
だが、その場にこなたはいない。
解除の途中で、首輪が爆発する可能性も充分にある。
それに巻き込まれないため、彼女は部屋の前で待っていることになった。
何か異常事態が起こったら、大声で叫ぶという条件を持って。

(かがみんやスバル……大丈夫かな)

薄暗い廊下の中で、こなたは溜息を吐く。
二人は無事なのだろうか。
未だに名前を呼ばれていないとはいえ、特にかがみの方が心配だった。
しっかり者の彼女とはいえ、妹を失ってはどうなるか分からない。
ただ、出来ることならプレシア・テスタロッサの言うまま、これ以上殺し合いに乗って欲しくなかった。
こんな綺麗事が言える立場ではないのは分かっている。
自分はかがみと違い、スバルやリインやユーノに頼ってばかりだ。
しかも、何も出来ない。
スバルは自分のために、戦っている。
リインやユーノは、首輪の解析を頑張っている。
なのに、自分は何だ。
何の力も持たない、ただの人間。
分かっている。
でも、それは何もしていない事への免罪符にならない。

(何やってんだろ……あたし)

部屋の中にいる二人に聞こえないように、溜息を吐いた。
それと同時に、部屋の扉が音を立てて開く。
中からは、ユーノとリインの二人が姿を現した。
ユーノは無言で、手招きをしている。
その導きのまま、こなたは再び部屋に入った。









三人のいる薄暗い部屋は、未だに沈黙が広がっている。
彼らが集まっているテーブルの上には、複雑な金属回路や部品がいくつも散らばっていた。
それを見て、二人は首輪の解析に成功したとこなたは察する。
しかし、彼女の表情は晴れていない。
その手には、一枚の書類が握られている。
そこには、ユーノとリインの物と思われる綺麗な文字が書かれていた。

381こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:38:11 ID:B6FwF9Dw0

この首輪のことで分かったことがいくつかある。

まず一つ目、この首輪の構成はいくつかの部品で構成されている。

参加者を殺害するための起爆装置
参加者の情報を伝えるための盗聴装置
この二つの動力源と思われる装置
それらを守る枠の部分

外装自体は、工具さえ使えば表面だけは外せる。
でも、その下には金属回路が張り巡らされていて、その先には動力源と見られる装置があった。
この部分は、魔力を流し込めば無効化することだけは出来る。
そこから、パズルを分解するような要領で、慎重に魔力を流し込めば、解除することだけは可能。

ただし、これは対象が『既に死んだ参加者の首輪』だから、成立する可能性がある。
説明したように、首輪の解除とゲームオーバーは隣り合わせの危険性が高い。
ここにいる自分達が殺されない理由は、まだ『生きている参加者の首輪』に手を付けていないから。
故に、首輪の構図と解除の方法を知っただけでは、まだ主催者に殺させるわけではない。
その段階に入る基準は、恐らく『生きている参加者の首輪』を解除したとき。
だから、自分達の首輪は現段階では解除するべきではない。
脱出の手段、仲間達全員の首輪を解除できる状況になったとき、メンバーの集合。
この三つの条件が整うまでは、これ以上動くことは出来ない。
そして、ここに書かれた内容は信頼できる人物以外には、決して見せてはいけない。



「うん、だいたい分かったよ……ユーノ君」

それら全てを読み終えたこなたは、二人の方に顔を向けた。
黙然とした部屋にようやく声が響くと、ユーノもまた口を開く。

「とにかく、今は一旦外に出てスバルを待つしかないよ。それから、情報をまた集めて……まとめ直す。まずはそこからだよ」

その提案に、二人は頷いた。
今はまだ、行動に移すときではない。
信頼する仲間を待ち、そこからプランを立てる。
こなたは書類を返した。
それを受け取ったユーノは、解体の終えた首輪と書類をデイバッグに入れる。
自分達の役割を察した三人は、部屋から出て行った。

382こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:39:37 ID:B6FwF9Dw0
【1日目 真夜中】
【現在地 C-9 スカリエッティのアジト前】

【共通認識】

※アジトの内部は、全て捜索しました。
※三人の間で情報交換(自分達のいた世界、仲間達、これまで起こった出来事、このデスゲームに関する仮説、車庫の存在)をしました
※首輪の内部構造、及び解除方法を把握しました
※それに関して、二つの仮説を立てています
※首輪の解除自体は魔法を用いれば、解除は可能
※ただし、これは死んだ参加者の首輪だから成立することで、生きている参加者の首輪を解除するとゲームオーバーの危険が高い
※現状では、スバルと合流してから再び行動しようと考えています。


【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】全身に擦り傷、腹に刺し傷(ほぼ完治)、決意
【装備】バルディッシュ・アサルト(待機状態/カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、
    双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車)、首輪について考えた書類
【思考】
 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。プレシアを止める。
 1.こなたやリインと共に、スバルを待つ。
 2.なのは、はやて、ヴィータ、スバル、クアットロ等、共に戦う仲間を集める。
 3.ヴィヴィオの保護
 4.ジュエルシード、夜天の書、レリックの探索。
 5.首輪の解除は、状況が整うまで待つ
 6.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】
※バルディッシュからJS事件の概要及び関係者の事を聞き、それについておおむね把握しました。
※プレシアの存在に少し疑問を持っています。
※平行世界について知りました(ただしなのは×終わクロの世界の事はほとんど知りません)。
※会場のループについて知りました。
※E-7・駅の車庫前にあった立て札に書かれた内容を把握しました。
※明日香によって夜天の書が改変されている可能性に気付きました。但し、それによりデスゲームが瓦解する可能性は低いと考えています。
※このデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
 ・この会場はプレシア(もしくは黒幕)の魔法によって構築され周囲は強い結界で覆われている。制限やループもこれによるもの。
 ・その魔法は大量のジュエルシードと夜天の書、もしくはそれに相当するロストロギアで維持されている。
 ・その為、ジュエルシード1,2個程度のエネルギーで結界を破る事は不可能。
 ・また、管理局がそれを察知する可能性はあるが、その場所に駆けつけるまで2,3日はかかる。
 ・それがこのデスゲームのタイムリミットで会場が維持される時間も約2日(48時間)、それを過ぎれば会場がどうなるかは不明、無事で済む保証は無い。
 ・今回失敗に終わっても、プレシア(もしくは黒幕)自身は同じ事を行うだろうが。準備等のリスクが高まる可能性が高い為、今回で成功させる可能性が非常に高い。
 ・同時に次行う際、対策はより強固になっている為、プレシア(もしくは黒幕)を止められるのは恐らく今回だけ。
 ・主催陣にはスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別の平行世界の彼等である。
 ・プレシアが本物かどうかは不明、但し偽物だとしてもプレシアの存在を利用している事は確か。
 ・大抵の手段は対策済み。ジュエルシード、夜天の書、ゆりかご等には細工が施されそのままでは脱出には使えない。

383こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:40:26 ID:B6FwF9Dw0
【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、悲しみ
【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、救急箱
【思考】
 基本:かがみん達と『明日』を迎える為、自分の出来る事をする。
 0.ユーノと共に、スバルの到着を待つ。
 1.スバルやリイン達の足を引っ張らない。
 2.かがみんが心配、これ以上間違いを起こさないで欲しい。
 3.おばさん(プレシア)……アリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくてアリシアちゃんがいた頃に戻りたいんじゃないの?
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました。また、下手に思い出せば首輪を爆破される可能性があると考えています。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※PT事件の概要をリインから聞きました。
※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、キングを警戒しています。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
※リインと話し合いこのデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
 ・通常ではまずわからない程度に殺し合いに都合の良い思考や感情になりやすくする装置が仕掛けられている。
 ・フィールドは幾つかのロストロギアを使い人為的に作られたもの。
 ・ループ、制限、殺し合いに都合の良い思考や感情の誘導はフィールドに仕掛けられた装置によるもの。
 ・タイムリミットは約2日(48時間)、管理局の救出が間に合う可能性は非常に低い。
 ・主催側にスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別世界の可能性が高い。仮にフィールドを突破してもその後は彼等との戦いが待っている。
 ・現状使える手段ではこのフィールドを瓦解する事はまず不可能。だが、本当に方法は無いのだろうか?
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています。

【リインフォースⅡ:思考】
 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
 1.ユーノやこなたと共に、スバルの到着を待つ
 2.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。
 3.はやて(StS)やアギト、他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています

384こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:41:00 ID:B6FwF9Dw0
空調の整っていたアジトの外から出た三人は、冷たい空気を浴びていた。
不意に、こなたの中で疑問が生まれる。

「ねえ、そういえばユーノ君。聞きたいことがあるんだけど」
「ん? どうしたの、こなた」
「ユーノ君って、本当に男の子だよね」

あまりにも突拍子もない発言に、ユーノとリインは怪訝な表情を浮かべた。

「……こなた、あなたは一体何を言ってるんですか」
「え? だってそうじゃん」

そこから数秒の間が空いた後、こなたは口を開く。

「こんな可愛い顔をした人が、男の子のはずないじゃん。やっぱり、ユーノ君って男の娘?」

ユーノとリインは盛大にすっ転んだ。

385 ◆LuuKRM2PEg:2010/09/05(日) 10:44:54 ID:B6FwF9Dw0
これにて、本投下終了です
タイトルの元ネタは、本日より放送が始まった
仮面ライダーオーズ第一話の「メダルとパンツと謎の腕」です。

自分の実力では、どこまで行けるか分かりませんが
今後とも、よろしくお願いします

386リリカル名無しA's:2010/09/05(日) 13:27:15 ID:g7l3TcQM0
投下乙です。
ようやく首輪関連の話が進んだか。
こなたもユーノと合流出来て、一先ずは安心?
はやて組と合流するかスバルと合流するか……今後の展開が気になるなぁ。
そしてこなた……ついに本人に言ってしまったかw
今まで誰も直接本人に男の娘とまでは言わなかったのにw

387リリカル名無しA's:2010/09/05(日) 15:39:57 ID:kz8N3G8Y0
投下乙です。 初投下お疲れ様でした。今後とも宜しくお願いします。
真面目な話、こなたかユーノのどっちか退場するのではと思ったが別にそんな事は無かったぜ。
ともかくようやく本当にようやく首輪解除の糸口が見えたか……つか、解除そのものは思ったよりも簡単な感じか……まぁ、今更複雑すぎたら本当に手の打ちようないしなぁ。
とりあえず幾つか不安要素が無いではないけど何とかなり……きっと後々『そう思っていた時期がおれにもありました』と言うんだろうなぁ。

……そしてこなたよ……誰もが考えたとはいえユーノ君に男の娘発言をマジでするとは……
というかここの書き手は皆してユーノ君をネタキャラにし過ぎな気がするんだが……
ルーテシアの全裸鑑賞、チンクの下半身鑑賞、ブレンとアーッ、サービスシーン、そして男の娘……何処へ行くんだこのフェレットは……


そういえば冷静に考えると参加者の大半がアジトに向かいそうな感じなんだよなぁ。

こなた&ユーノ……アジトで待機
はやて&ヴァッシュ……こなたを襲おうとするかがみを止める為(はやての大嘘)アジトへ急行
スバル&ヴィヴィオ……アジトへ急行
なのは&天道&かがみ……放送後ループ越え、位置関係から考えアジトへ向かう可能性高し。

はやて組とスバル組、どちらが先にこなたと合流出来るだろうか……まぁその直後に悲劇という可能性もあるけどね。

実に12人中9人……つか対主催側全員がアジト行く可能性高い。
もっともかがみの扱いの問題(はやては殺すつもりでそれに伴う対立)、やヴィヴィオの問題(精神肉体共にボロボロ、またはやてが見捨てた的な事も問題)、はやての問題(前述の理由から絶対対立する)と不安要素しかねぇ。
しかもこれだけ戦力集まっても残りのマーダーに一掃される予感しかしねぇのも……どないせいっちゅうねん。

388リリカル名無しA's:2010/09/05(日) 15:46:01 ID:kz8N3G8Y0
書き忘れ

そういや早速オーズタイトルが来たか……どうやら『○○○と○○○と○○○』というタイトルパターンになりそうだからな……今後オーズ風タイトルが大量に出現するんだろうか? それともW風タイトルが今後も席巻するか?

389リリカル名無しA's:2010/09/05(日) 22:03:23 ID:3rH0d6CY0
投下乙です
死者のものとはいええらくあっさり首輪バラせたな
でもあっさりすぎるから逆に後が怖いガクガクブルブル
道中のおとぼけはやっぱりわざとか、いつもみたいでいつもと違う心境なんだな
そして終始シリアスだったのに最後の1レスwwwww

390 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 10:54:53 ID:GRCPS2WwO
金居、プレシア・テスタロッサで投下します

391 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 10:56:30 ID:GRCPS2WwO
このデスゲームの会場にはいくつもの建造物があるが、中には奇妙なものもある。
E-7北西部にある駅もその一つ。
普通なら移動に便利だからと考えて人が集まりそうなものだが、あいにく駅から走る線路の行き着く先は会場外。
当然ながらこれでは集客など覚束ない。
そんな奇妙な駅の近くには奇妙な建造物に相応しく、中身が不明の曰くありげの車庫があった。
そして車庫の唯一の扉の前には、今では破壊されてしまったが、ある立札が掲げられていた。
そこには次のような警告が記されていた。

『残り15人になるまでこの扉は決して開かない。もし無理に開けようとすればそれ相応の罰を与えようではないか』

そのためここへ立ち寄った者は皆こぞって車庫の中身を気にしつつも無理に開けなかった。
早く中身を手に入れたいが、さすがにリスクを冒してまで手に入れようとは思わなかったからだ。
それに時期が来れば自然と扉を開く事ができるのだ。
ここへ来た者は皆同じような結論に至って、そして去って行った。


しかし現在開かずの車庫の中には照明が灯っていて、中に収められている物の前には誰かがいた。


「へー、なるほどね」

それがデスゲーム開始してから初めて車庫に中に入った参加者――ギラファアンデッド、金居の第一声だった。

392 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 10:58:55 ID:GRCPS2WwO
 ◆

時間を遡ること1時間前。
金居はエネル殺害後、USBメモリの中身を確認するべく市街地に向かっていた。
途中で離脱したので戦闘の疲労もそれほどではなく、何の問題もなくガソリンスタンドを横目にF-8まで足を進めていた。
そんな時だった。
このデスゲームを開いた張本人、プレシア・テスタロッサからコンタクトがあったのは。

――ここまでの活躍見ていたわ。ところで行ってほしい場所があるの。

突然首輪から発せられたプレシアの要件は次のようなものだった。
現在生き残っている参加者の大半が北東C-9にあるスカリエッティのアジトを目指している。
しかもほぼ全員がデスゲームを打ち砕こうとする者ばかり。
だからそこへ行ってどんな方法でもいいから大集団ができないようにしろという事だった。
無論集まった参加者を殺害してくれる方がデスゲーム的には歓迎すると。

これを聞かされた時、最初金居はプレシアの要件を聞き入れる事を渋った。
いくらカテゴリーキングの金居と言えども、何の用意もなくノコノコとそんな場所に飛び込んでいけば返り討ちに遭う可能性が高い。
無力な一般人なら何人集まろうが金居の敵ではないが、アジトにいるのはここまで生き残ってきた参加者だ。
そんな簡単に殺されてくれるほど柔な連中とは思えなかった。
この制限下ではまだ3人までならなんとかなるが、それ以上になるとさすがに成功は覚束ない。

だが建前上プレシアに協力したいと申し出ている以上ここは素直に受け入れた方が得策。
直接的でなくて間接的であれば、例えばある程度時間をかけて不和の種を仕込んで瓦解させる方向なら不可能ではないはず。
それに使いどころが難しいが、いざとなれば先程手に入れた支給品を使えばある程度の結果は残せるだろう。

結局金居は若干渋りつつもプレシアの提案を受け入れたのだった。
すると金居の逡巡を知ってか知らずか、最後にプレシアは意味ありげな言葉を残していった。

――そうだわ、大変そうだから耳寄りな『情報』教えてあげる。荷物調べてみなさい、何か役に立つ『情報』あるかもしれないわよ。

プレシアが何を言いたかったのか、それはすぐに分かった。
敢えて荷物を調べるように促して、しかも『情報』という言葉を強調していった。


現在金居の所持品はかなりの量であったが、この状況でそれに該当するようなものは一つ――これから調べようと思っていたUSBメモリに他ならない。


幸いにも目と鼻の先にあったガソリンスタンドには作業用のパソコンが事務室にあった。
さっそく件のUSBメモリを指し込んでデータを読み込み始めたが、ここで予想外の事態が起きた。


突然金居を中心に転移魔法陣が発動したのだ。


そして金居は何が起こったのか理解する間もなく車庫の中へと強制的に転移させられて――今に至る。

「へー、なるほどね」

最初こそ突然の事態に困惑していた金居だが、目の前に広がる光景を見てある程度理解は出来た。
生物と機械の中間のような独特なメタリックなフォルム。
青と銀を基調とした多脚式ボディーとV字型の金色のモノアイ。
その手足には鋭い鎌が備えられており、しかも完全ステルス機能まで搭載している。
それら寸分違わず同一な5体の兵器が新たな主を待っていた。

393 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 11:00:48 ID:GRCPS2WwO
それが金居の目の前で機動を待つ機械兵器――ガジェットドローンIV型だった。


車庫内側に備え付けられたパソコンに記されたスペックを見る限り、これらはかなり使えそうだった。
全部で5体と向こうと比べて頭数は足りないが、完全ステルス機能を有効に使えばその差を埋める事は可能だ。
しかも素のスペックも中々侮りがたいものであり、その点も十分満足できるものだった。

「これは報酬の前払いみたいなものか? それならそれに見合った働きはしないといけないな」

若干オーバーにプレシアへの感謝を示しつつ、金居は起動の準備に取りかかった。
もちろん実際にそこまで思っている訳ではない。
一応建前上何か行動する気でいるが、あまり無理をするつもりはない。
一歩間違えればその場の全員と戦うはめになる可能性もあるため、ここは出来るだけ機を窺いたいところだった。

「しかし操作が割と単純で助かった。俺はキングほど詳しくないからな」

確かにこのガジェットの操作方法は然程コンピュータに詳しくない金居でも理解できるものになっていた。
自身の嵌めている首輪を認証させて、それによってガジェットはその者を所有者として認識する。
ちなみに命令は頭で思い浮かべるだけで実行してくれるらしい。
ただしあまり複雑なものは実行できないようなので、その点は気をつけないといけない。

「さて、行くか」

それほど時間をかけずに無事にガジェットを機動させた金居は4体のガジェットをデイバックに収納していた。
そして残った1体のガジェットを飛行形態にさせると、低空飛行でスカリエッティのアジトを目指して移動を開始した。
金居が手の内を見せるかのようにガジェットを移動に使用したのには理由があった。

まずは体力の温存。
出発前に砂糖と拾ったデイパックの中にあった食糧を拝借して体力はほぼ回復したが、温存できるならそれに越した事はない。
ちなみにそのデイパックは荷物を少し整理した際に要らないと判断して、車庫の中に置いてきた。

そして何よりこうする事で相手に油断が生まれると踏んだからだ。
まさかあちらも同じ機体があと4機もあるとは思わないはず。
そういった先入観は隙を作りだし、後々仕事がやりやすくなる。

(さて、去り際に仕掛けた爆弾に引っ掛かるのは誰になるかな)

実は金居は車庫から出る際に扉の内側にエネルの支給品であったクレイモア地雷を2個仕掛けてきたのだ。
どちらも扉が開くと爆発するようにワイヤーを調節しておいた。
別に深い意味はない。
ただ使い道が限られて無用の長物化しそうだった支給品で誰か引っ掛かれば儲けものというぐらいの理由だった。

金居が去って再び人気が無くなると、車庫はまるで何事もなかったかのように見える。
だが実際はその内で哀れな獲物を喰い殺そうと牙が研がれているとは誰が予想出来ようか。


奇妙な駅の曰くありげの車庫はこうして再び不気味な沈黙を守るのだった。

394 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 11:03:18 ID:GRCPS2WwO
【1日目 真夜中】
【現在地 D-7平野部】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒、ガジェトドローンⅣ型に搭乗中
【装備】ガジェトドローンⅣ型@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×6、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック、ガジェットドローンⅣ型×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。

395 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 11:05:31 ID:GRCPS2WwO
 ◆

「どうやら今のところは私に従うみたいね」

アジトに向かって移動を開始した金居をモニター越しに見ながらプレシアは笑みを浮かべていた。
確かに車庫に入る事ができるのは生存者が15人以下になってからだが、実は別の方法でも入る方法はあった。

それが今回金居の使用したUSBメモリを利用する方法だ。

元々あのメモリは情報端末に接続させると『第3回放送後に3人以上の参加者を殺している者はこのメモリを接続すれば力を手に入れる事ができるだろう』というメッセージが表示されるようになっていた。
もちろんそのメッセージは真実であり、その条件を満たせば一度だけ対象者を車庫へ転移させて、そこで車庫の中身を手に入れられる仕組みになっていた。
ちなみに一度発動すればメモリは某スパイ組織のように自動的に消滅されるようにしてある。
実のところプレシアとしてはそのメッセージをきっかけに殺し合いが促進してくれる事を期待していた。
しかし意外な事に今回金居が使用するまで誰もUSBメモリを活用しなかったので、結局プレシアの意図は外れる結果となった。

一方でその車庫の中身であるガジェトドローンⅣ型にもいくつか仕掛けが施されている。
まず元々ゆりかごの防衛機能の一つであるというプログラムを改竄して、最初の所有者の命令を聞くようにセットし直した。
そうしなければ万が一聖王であるヴィヴィオと出会った時、不都合が生じかねなかったからだ。
一応所有者の死後は流用されないように所有者が死亡した場合は機能停止するようにしてある。
それから使い勝手がいいように思念通話を応用して命令手段に組み込ませた。
これは本来魔力を持たない者がデバイスを起動させたりできるようにした仕組みを応用させた。
これ以外にもいくつか改造点はあるが、なのはとヴィータを襲撃した性能は折り紙付きだ。
これらは全てここまでの戦いで力を失ってもまださらに殺し合いに参加できるようにという思惑での改造だった。

(でも最後の一言ですぐに理解するなんて、さすがね)

そう思いつつもプレシアは金居なら十中八九こちらの意図を汲んでくれると確信していた。
それはミラーワールドでの巧妙なやり取りでも薄々実感していた。
だからと言って金居を全面的に信頼するつもりはないのだが。

(さてデスゲームもそろそろ終わりが近づいて来たようね……今回こそは成功させてみるわ……。そのためにも――)

【全体備考】
※F-8のガソリンスタンドが火事になりました(火元は事務室のパソコン)。
※車庫の扉を開くとクレイモア地雷が爆発するようにセットされています。
※車庫内にアレックスのデイパック(支給品一式※食料なし)が放置されています。

【ガジェトドローンⅣ型@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
全5体。多脚生物のような動きを見せるガジェットドローン。
光学迷彩に近いステルス機能と騎士服を易々と貫く攻撃力を有しており、主に奇襲などを得意としている。
ガジェットドローンと呼称されているが、実際はゆりかご内部に備えられた装備であり、スカリエッティの作品ではない。
元々はゆりかごの防衛機構の一つとして装備されているものである。
今回は作中でも触れているようにプレシアによって所有者に従うようにプログラミングされている。

396 ◆WwbWwZAI1c:2010/09/23(木) 11:06:54 ID:GRCPS2WwO
投下終了です
タイトルは「Ooze Garden(軟泥の庭)」でお願いします

397リリカル名無しA's:2010/09/23(木) 11:48:16 ID:fBJcY/aM0
投下乙です
とうとう車庫の中身が判明したか、今の参加者にステルスは怖いな
これで金居もアジト行きで役者が揃ってきたな
もういっそのことキング・アンジールもアジトへ向かって全員集合でw

398リリカル名無しA's:2010/09/23(木) 12:14:47 ID:srqetTkA0
投下乙です。

車庫とUSBの中身が遂に判明し金居もアジトへ向かうか。
参加者の大半がアジト方向に向かいそうだからいよいよ最終決戦の雰囲気が……
で、車庫には罠が……誰か引っかかりそうな勢いだなぁ。

399リリカル名無しA's:2010/09/26(日) 20:25:12 ID:ktihWKs20
投下乙です

とうとう車庫とUSBの中身が遂に判明したか
確かに今の参加者にステルスは怖い。終盤近くまでステルスが生き残るのは珍しいかも
さて、アジトで何が起こるか…

400 ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:22:36 ID:6aYOplck0
それでは、自分の放送案が通りましたので、こちらに本投下をさせていただきます

401第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:25:33 ID:6aYOplck0
 ――おはよう、みんな。0時の放送の時間よ。
 仮眠も取ったことだし、ここからは今まで通り、私が放送を行うわ。
 まぁもっとも、この放送もあと何度続くことになるか、分かったものじゃないのだけど……
 ……フフ、ではまず、禁止エリアを発表させてもらうわね。
 メモの準備はいい? こんなところまで来ておいて、自滅なんてされたら困ってしまうわ。
 ……では、読み上げるわよ。

 1時よりH−2
 3時よりG−8
 5時よりB−7

 以上の3か所よ。

 では続いて、これまでの死者を発表するわ。

 アーカード
 相川始
 アレックス
 ヴィータ
 エネル
 クアットロ
 ヒビノ・ミライ

 以上、7名。
 この24時間を生き抜いたのは、合計12名よ。
 ……まぁ、きっかり10名にならなかったのは、キリの悪い数字だと思ったけれど。
 ペースとしては上々。さすがに1日で終わるなんてことはなかったようだけど、
 これなら順調に終わってくれるかしら? 貴方達には、本当に感心させられるわね。

 ……今回はここまででいいわ。
 私が用意してあげたご褒美も、十分機能しているようだし。
 じゃあ、せいぜい最後まで頑張ってちょうだいね。
 貴方達の願い、そして私の目指すもの……どちらも成就するまであと一歩。
 フフ……期待させてもらうわよ。

402第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:26:13 ID:6aYOplck0


 かくして4度目の放送は流れた。
 最悪の1日は終わりを告げ、最悪の2日目が始まった。
 24時間目の時報を耳にしたのは、合計12人の生存者。
 僅か24時間のうちに、60人の参加者達は、実にその8割を喪っていた。

 誰もが耳を傾ける。
 誰もが放送を耳にする。
 安堵、悲嘆、希望、絶望。
 それぞれの思惑を胸に宿し、それぞれの感想を胸に抱く。



 しかし此度の放送は、それまでに繰り返されたものとは、ある1点において違っていた。



 ある者は全く気付かなかった。
 ある者は気付いていたのかもしれない。
 この放送に隠されたものに。
 この放送が意味するものに。

 そこに時計を持つ者がいて、その者が時計を見ていたのなら、容易に気付くことができたであろう。





 現在時刻、0:10。





 今回の放送は、これまでの放送とは異なり、予定より10分遅れて流れていた。





 ――――――異変は、この時既に始まっていた。

403第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:27:05 ID:6aYOplck0


「もう間もなく放送の時間か……」
 ぽつり、と呟いた女の声が、狭い一室に木霊する。
 巨大なモニターとコンソールを前に、1人座っていた者は、プレシア・テスタロッサの使い魔・リニス。
 青く澄んだ猫の瞳は、しかし今この瞬間は、失意の陰りに満ちていた。
 第3回目の放送から、色々と試してみたものの、その結果は芳しくない。
 彼女の有する権限の大多数は、主君によって凍結されていた。
 部屋から出て問い詰めに向かおうにも、ドアにまでロックがかけられている。
 とどのつまりは、完全なる手詰まり。
 何もできず、どこへも行けず。
 籠の中のカナリアのごとく。
 プレシアの下した制裁は、リニスからこの殺し合いに介入する、あらゆる術を奪っていた。
(何が希望だ)
 歯を軋ませる。
 苦虫を噛み潰したような表情で、己自身を嘲笑う。
 所詮自分の力などこんなものか。
 こんなにもあっさりと、何もできなくなってしまうものなのか。
 その程度の力しかない私に、一体どんな希望が与えられるものか。
 何もできない。
 何も変えられない。
 こんな矮小な私などには、殺し合いを止めることも、参加者を救うこともできはしない。
 広がりゆくのは心の暗黒。
 自分の弱さと情けなさが、自身の心を苛んでいく。
 罪を償うこともできないという事実が、自らの罪を思い起こさせ、良心の重荷を思い出させる。
 何ができる。
 何をすればいい。
 私にできることがあるなら、今すぐにでも示してほしい。
 籠の中のカナリアごときに、何かが変えられるというのなら――



 ――がこん。



 その、時だ。
「……?」
 リニスの座るすぐ背後で、何かの音が鳴った気がしたのは。
 聞き間違いでなかったとするなら、金具が落ちたような音だったはずだ。
 否、自分に限って聞き違いはあるまい。猫の聴力は人間よりも高い。
 ほとんど確信を持ちながら、ゆっくりとその身を振り返らせる。
 分かっているのに振り返ったのは、音の主を知らないから。
 音の質こそ分かっていたものの、その音が何によって奏でられたのかを知らなかったから。
 故にそれを確かめるために、視線を音の方へと向け、
「よう」
 その女と、対峙した。
 そこに立っていた者は、燃えるようなオレンジの女。
 橙色の長髪をたなびかせ、青い瞳を光らせる者。
 そのコスチュームの露出度は高く、すらりと伸びた四肢の皮下には、くっきりと筋肉が浮かび上がる。
 顔に浮かべるは不敵な笑み。左手に持つのは通気孔の金網。
 そしてその頭には――リニスと同じ、獣の耳が生えていた。
「貴方は……アルフ!?」
 は、としたような顔になり。
 ほとんど反射的に椅子を蹴る。
 額にじわりと冷や汗を浮かべ、後ずさるようにして立ち上がる。
 どういうことだ。何故アルフがここにいるのだ。
 フェイト・テスタロッサ諸共、自分達が殺してしまったはずの犬の使い魔が、何故こんなところに現れるのだ。

404第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:27:56 ID:6aYOplck0
「何故貴方が――」
 そこまで言いかけた瞬間。
「……っ!?」
 身に感じたのは、物理的衝撃。
 ぐわん、と視界が落下する。
 膝が強制的に曲げられ、身体が勢いよく倒れる。
 強引に押さえつけられた五体が、床に叩きつけられる硬質な感触。
 巻き添えを食らった足元の椅子が、空中に放り出されたのを見た。
 がたん、と椅子が落ちるのと同時に。
 己の視界に差す影を認知し。
 己を押さえこんだ者の正体を、目にした。
 それはかの使い魔ではない。そこに眩しいオレンジ色はない。
 そこに現れた者は――漆黒。
 全身を黒ずくめの騎士甲冑で固めた女が、リニスの身体に馬乗りになって、首筋と右肩を押さえていた。
 背中に生えていたものは、烏を彷彿とさせる艶やかな羽。
 色素の抜け落ちたかのような銀髪と、血濡れのごとき深紅の瞳。
「リイン……フォース……!?」
 やはり自らの手で殺したはずの、夜天の魔導書の管制プログラムが、目の前に姿を現していた。



 時は数分前にさかのぼる。
 その時彼女らはその場所にいた。
 リインフォースとアルフの2名は、相変わらず四つん這いの態勢で、時の庭園の屋根裏を移動していた。
《ホント、地図でも手に入ればよかったんだけどねぇ……》
 溜息混じりに、アルフが念話でぼやく。
 先ほどリインフォースがハッキングを行った時に閲覧できたデータは、爆発物の制御装置と謎の名簿。
 地図などの有用なものが得られなかったばかりか、得たものも得たもので意味不明の代物。
 そしてそのまま再び降りることもできず、こうしてただひたすらに、薄暗い屋根裏を徘徊している。
《もう一度降りられるといいのだが、これでは無理だな》
《そもそも2回目は向こうも警戒を強めてるだろうし……やっぱり別の方法を探るしかなさそうだね》
 金網から眼下を覗くリインフォースに、アルフが言う。
 彼女らがハッキングを途中で切り上げたのは、今まさに廊下を巡回しているものが原因だ。
 元いた世界の海鳴市を滅ぼした、プレシアの軍勢に加わっていた卵型の機動兵器――ガジェットドローン。
 あれさえいなければ下に降りることも可能なのだが、
 いなくなるどころか、どうにも先ほどから少し数が増えたようにも見える。
 とてもじゃないが、監視の目を盗んで端末にアクセスを……などと言っていられる状況ではなかった。
《一度どこかの部屋に入ってみるか? 何か使えるものがあるかもしれん》
 そう提案したのはリインフォースだ。
《あー、それもいいかもね。そこならあの機械もいないかもしれないし》
 言いながら、アルフの視界が眼下を探る。
 近くに確認できる廊下の扉は、隣り合うようにして配置された2つ。
 ひとまずは近い方の金網を目指すことにして、両者は移動を再開した。
 そして数歩のうちに目的地へとたどり着き、2人のうちアルフが様子を窺う。
 仮に中にガジェットや人がいた場合、降りた途端に見つかって、増援を呼ばれてしまう可能性があるからだ。
 実際、そこには人が1人いたのだが、
《っ!? そんな……あれは、リニス……!?》
 それがいるはずのない知り合いであったということは、さすがに予想だにしていなかった。
《知った顔か?》
《フェイトを教育してた、プレシアの使い魔だよ。でも何でだ? リニスは死んだはずじゃ……》
 忘れがちだが、本来ならばリニスは故人である。
 彼女はプレシアとの短い契約期間を満了し、元の屍へと戻ったはずなのだ。
 にもかかわらず、彼女はここにいた。
 生前と一切変わらぬ姿で、時の庭園の中に存在していた。
 これは大いなる矛盾だ。まさかリーゼ姉妹のように、双子がいたというわけではあるまい。
《……リインフォース。情報を手に入れる方法が、もう1つあるよ》
《何だ?》
 故にアルフはこう提案した。
《尋問》
 リニスと向き合い、問い詰めることを。
 彼女の生存とプレシアの意図、どちらも纏めて聞き出さねばならない、と。

405第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:28:29 ID:6aYOplck0


 かくして時間は現在へと戻る。
「久しぶりだね、リニス。こんな形で再会することになるとは思わなかったけど」
 床に仰向けに押さえつけられた猫の使い魔へと、犬の使い魔が切り出した。
 本当に、こんなはずではなかったことばかりだ。
 死んだとばかり思っていたリニスと、こうして再会することになったことも。
 その美しくも優しい教育係と、敵として対峙しなければならなくなったことも。
「あんた、何で生きてるんだ? 契約を完了した使い魔は、そのまま死ぬ宿命だったはずだ」
「私はリニス本人ではありません。
 プロジェクトFの技術を応用して作られた、同じ容姿と記憶を持ったクローンに過ぎません」
「……そうかい」
 寂しげに目を伏せ、それだけを呟く。
 もしかしたら、とは思っていたが、どうやらそうも都合のいい話は存在しないらしい。
 プロジェクトF――フェイトが生まれるきっかけともなった、記憶転写クローン技術。
 その末に生まれたのがこのリニスだというのならば、
 オリジナルのリニスは、やはりこの世にはいないということになる。
「いくつか聞かせてもらいたいことがある」
 複雑な心境にあるであろう、アルフへの配慮だったのだろうか。
 ちら、とアルフに目配せした後、リインフォースが問いかける。
 そこからの尋問の主導権は、リインフォースが引き継ぐこととなった。
「まずは貴方の主人――プレシアについてのことだ。彼女はここで何かを行っているようだが……一体何を企んでいる?」
 第一に確認すべきは、そこだ。
 アルハザードへの到達を目的としていたプレシア・テスタロッサは、恐らくその悲願を達成した。
 だとしたら、己の都合以外に一切の執着を持たないはずの彼女が、今更海鳴に攻撃を仕掛けるはずもない。
 しかし現実として海鳴は滅び、高町なのはとのその関係者は、今ここにいる2名を除いて全滅した。
 ならば、まだ何かある。
 プレシアが何かしらの目的を持って、未だに暗躍していることになる。
 最初に問いただすべきは、それであった。
「………」
 返ってきたのは、沈黙。
 微かな逡巡を湛えた表情と共に訪れる、静寂。
 数瞬の間、その状態が続き、
《……私に話を合わせてください。この部屋もプレシアに監視されているでしょうから》
 返ってきたのは、言葉ではなく念話だった。
《話を合わせる、ってのは、どういうことだい?》
 不可解な言い回しに、アルフが問いかける。
 監視されている可能性がある、という言葉には、さほど驚きは感じなかった。
 ここが敵の本拠地であるのなら、ある程度は仕方がないと割り切れるからだ。
 故にそれ以上に不可解なのは、リニスの持ちかけてきた提案。
 話を合わせろということは、演技をしろということだ。
 プレシアに従う身であるはずの彼女が、何故そのプレシアに本音を隠そうとするのか。
《私にはこれ以上、この件に干渉することはできません……ですから、貴方達に託そうと思います》
 答えが返ってくるまでには、さほど時間はかからなかった。
《お願いです――彼女を、プレシアを止めてください》

406第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:29:15 ID:6aYOplck0


 そして真実は語られた。
 伏せられていた情報の全ては、今ここに白日のもとに晒された。
 プレシアがたどり着いたこの場所は、間違いなくアルハザードであったということ。
 そこにたどり着いたにもかかわらず、未だアリシアは蘇っていないということ。
 そのアリシアの復活のために、プレシアが今動いているということ。
 そしてその手段として夜天の書を奪い、そのためにあの海鳴市を滅ぼしたということ。
「そんな……」
 そして。
「アリシアを復活させるために、大勢の人間が殺し合わされているだって……!?」
 それらの犠牲を払った末に、今まさに実行されていることさえも。
「何でだよ……どういうことなんだよ! そんな残酷なことが、死んだ人間の復活に繋がるのかよ!?」
 しばし呆然としていたアルフが、一転し、激昂の様相を見せた。
 今にも掴みかからんばかりの勢いで、リニスに向かって問いかける。
 敵を尋問しているように見せるための演技――ではない。この怒りは彼女の真意だ。
 まっとうな蘇生実験のために、フェイト達が犠牲になったというのなら、この際まだマシな方と言っていい。
 だがその犠牲が、そんな無駄な殺し合いのために払われたというのなら話は別だ。
 何故だ。
 何故そんなことのために、フェイト達が殺されなければならなかった。
 そんな無軌道な殺戮のために、何故愛しい主と仲間達の命が――
「それが、繋がるんです。彼女が行っているのは、そういう儀式ですから」
「儀式?」
 リニスの返事に反応を返したのは、やはりアルフではなくリインフォースだった。
 基本的に、この場で一番平静を保っているように見えるのは常に彼女だ。
 もっともその彼女自身もまた、プレシアの暴挙を許したわけではないのだが。
「今あの結界の中で行われている殺し合いこそが、アルハザードで確立されていた、死者を復活させるための儀式なのです。
 60人の人間を戦わせ、敗れた59人分の生命エネルギーを利用することで……勝ち残った1人の肉体に魂を降ろす。
 同時に肉体が生前のそれへと再構成されることで、完全なる死者蘇生は実現される」
「蟲毒だな、まるで」
 古代中国の呪術の名を例に挙げ、言った。
 もっともそちらの方は、虫や小動物を食い合わせて怨念を集め、猛毒を持った生物兵器を生み出すための呪法なのだが。
「そんなむちゃくちゃな……ここは仮にも、魔法の聖地なんて言われた場所なんだろう!?」
 それでもなお納得できないといった様子で、アルフが反論する。
 否、その感情の様相は、先ほどとはまた異なるものとなっていた。
 プレシアの暴挙に対して抱いたものが怒りなら、今この瞬間抱くものは困惑の二文字。
 優れた魔法技術を有したアルハザードの様式にしては、その方法はあまりにも野蛮で、あまりにも前時代的だ。
 魔法のまの字すら見えないこの儀式が、アルハザードの正統な技術であるなどと、一体誰が信じられるものか。
「だからこそ、なのです。
 リインフォース……蟲毒などという術を知っているのならば、地球に存在する生け贄の儀式のことも、聞いたことがあるのでしょう?」
「ああ。アステカ、インカ、中国……日本でも行われていた時期があったようだな」
「地球の場合、多くは神への貢物として行われていたようですが……
 あの世界を含む、リンカーコアを制御する術を持たない世界のうちのいくつかでは、超常の力を発揮するために、
 生け贄という形で肉体を損壊することで、強引に生命エネルギーを流出させる手段を取っていたのです」
「成る程……言わばあれらの風習もまた、超原始的な魔法だったということか」
 アステカの生け贄が、神を動かす力となったように。
 蟲毒の生き残りが、怨念を猛毒へと昇華させたように。
「にしたって60人って数は……あまりにも、多すぎる」
「完全な死者蘇生のためには、それほどの途方もない力が必要だったということか」
 そもそも死者を復活させるということは、あの世から死者の魂を連れ戻すということだ。
 そしていかに科学や魔術が発展した世界であっても、少なくともアルフ達管理世界の住民が知る限りでは、
 現世から冥界へと至る術を発見した世界は、未だない。
 彼岸と此岸の境界とは、それほどに強固なものなのだ。
 途方もないほどに強固な壁を越えるには、途方もないほどの代償を払わければならないということだ。

407第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:30:25 ID:6aYOplck0
《……事情は分かったよ。理解したくないけど、理解しなけりゃいけないってことが分かった》
 眉間に皺を寄せながら、毛髪の奥の頭皮を掻く。
 不機嫌そうな表情のまま、アルフがリニスへと念話を送る。
《では……》
《もちろん、最初からそのつもりさ。プレシアはあたし達が止めてくる》
 全て納得したと言えば、嘘になるだろう。
 正直な話、未だに唐突感はぬぐい去れない。あまりにも荒唐無稽すぎる話には、未だ理解が追いつかない。
 それでも、自分達はここに理解をしに来たのではないのだ。
 自分達がここに来たのは、プレシアの真意を問いただし、ろくでもないことを企んでいるのなら、それを止めるためなのだ。
 そして今まさに行われていたことが、そのろくでもないことであることは理解できる。
 ならば、この際細かいことはどうだっていい。
 今すぐプレシアの所へ殴り込み、このふざけた儀式とやらを止めるしかない。
 既に何人もの人間が犠牲になっているというのなら、なおさらのことだ。
《使い魔リニス。この施設の見取り図があったら、見せていただけないだろうか》
「この施設の見取り図がほしい。今すぐそのモニターに映せ」
 念話による本音では、穏便に。
 肉声による演技では、威圧的に。
 2つの言語を同時に駆使して、リインフォースが要求した。
「分かりました」
 その両方に、いっぺんに応じる。
 銀髪の融合騎の要求に、山猫の使い魔が応答を返す。
《窮屈だろうが、我慢してくれ》
 念話で前置きをしながら、リインフォースがリニスを強引に立たせる。
 首元に添えた手はそのままだ。建前上は脅迫している身なのだから、拘束を解くわけにはいかない。
 かくして彼女らはモニターへと向かう。
 倒れた椅子はそのままに、立った状態でコンソールを叩いた。
 かちかち、とキーボードを弾く音が響いた後、モニターに映し出されたのは時の庭園の見取り図。
 リインフォース達にとっては、実に6時間もの長きに渡って待ち望んだ代物だ。
「確認した」
 言うと同時に、リインフォースの手が伸びる。
 細く滑らかな指先が、コンソールの端子へと触れる。
 一瞬、ぴか、とその肌が光った。
 魔力光が瞬くと同時に、モニターに新たなウィンドウが開く。
 コピー完了――魔法術式タイプのコンピューターの特性を利用し、自らの内にデータを取り込んだ結果だった。
 もちろん、それだけではアルフが地図を使えない。
 故に適当な棚から、リニスに携帯端末を取り出させデータを出力し、それをアルフに投げて渡す。
「あとは……そうだな。参加者を拘束している首輪の制御装置はどこにある?」
 残された問題は、例の爆発物管理プログラムの正体――参加者に架せられた爆弾首輪だ。
 先ほどのハッキングではプログラムの存在こそ確認できたものの、それをどうこうすることは不可能だった。
 そしてあれをどうにかしない限りは、参加者をフィールドから逃がすことなど、不可能と言っていい。
 地図にそれらしきもののある部屋の名前が確認できなかった以上、その所在を問いただす必要があった。
「首輪はプレシア自身が管理しています。制御システムも、彼女の部屋に――」



 ――その、刹那。


.

408第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:32:08 ID:6aYOplck0
「ッ!?」
 世界の様相は一変した。
 視界は赤一色に満たされ、静寂は爆音に塗り潰された。
 ちかちかと点滅する非常灯。
 けたたましく鳴り響くサイレンの音。
 話声以外の音もなかった一室が、一瞬にして音と光の嵐へとぶち込まれた。
「これは……!?」
 誰が口にしたのかも分からぬ、戸惑いの声が上がるのも束の間。
「!」
 ぷしゅっ、と短く鳴る音と共に、部屋の自動ドアが開く。
 中から開いたのではない。扉はプレシアによってロックされている。
 であれば、答えは簡単だ。
 外から強制的に開けさせられたのだ。
「こいつら……!」
 扉の向こうに並ぶのは、見渡すばかりの鉄、鉄、鉄。
 卵を彷彿とさせる楕円形に、触手のごとく伸びた赤いケーブル。中央に光る黄金の瞳は、瞬きするかのように明滅する。
 ガジェットドローンの大軍だ。
 巡回を行っていた機動兵器達が、一斉にこの部屋へと押しかけてきたのだ。
「――バルディッシュ!」
 刹那、咆哮。
 凛とした雄叫びが上がると共に、黄金の光が赤を切り裂く。
 稲妻を宿した魔力光が、一瞬非常ライトを上から塗り潰した。
 声の主――使い魔リニスの手に握られていたのは、漆黒の煌めきを放つ長柄の斧。
 アルフの主人が生前用いていたものと、寸分違わぬ姿を持った、閃光の戦斧・バルディッシュ。
「はぁっ!」
 声を上げている暇などなかった。
 姿を知覚した瞬間には、既に動作に移っていた。
 跳躍。疾駆。接近。斬撃。
 カモシカのごとく両足をしならせ、敵に飛びかかりデバイスを振るう。
「リニス!?」
 アルフが声を上げた時には、既に1機のガジェットが破壊されていた。
 返す刃で次なる標的を切り裂き、改めてバルディッシュを構え直す。
 黒光りする切っ先越しに、山猫の双眸が機械兵を睨む。
「ここは私が引き受けます! 貴方達は隣の部屋に!」
「えっ……!?」
「この兵器達の放つフィールドには、魔力結合を阻害する効力があります。
 遠距離攻撃は不利です。隣の武器庫から、リインフォースの武器を調達して行ってください!」
 もはや演技をしている余裕はなかった。
 否、リニスの安否を無視して兵力を送った以上、大方プレシアにはばれていたのだろう。
 取り繕っていた体裁をかなぐり捨て、リニスがリインフォースらに向かって叫ぶ。
 そしてその言葉を聞いて、彼女らは一瞬忘れかけていた、敵の特性をようやく思い出した。
 あの金眼の兵器には、魔法を無力化させる能力が備わっていた。
 どういうからくりなのかが今までずっと気がかりだったが、なるほどそういうことだったのか。
「でも、1人で大丈夫なのかい? バルディッシュが近接戦タイプだからって……」
「見くびらないでくださいよ。これでも、フェイトの先生だったんですから」
 不安げなアルフを笑い飛ばすように。
 無粋なことを、と言いたげに、リニスが強気な笑みを浮かべる。
 それでも、未だ不安は消えない。
 いくら敵がガジェットだけでなかったからとはいえ、そのフェイトの敗北を目の当たりにしたからには、安心できるはずもない。
 確かにこのロボットそのものの耐久力はそう高くない。自分で殴り壊したからこそ分かることだ。
 だがそれでも、いくら何でもこれほどの数を前に、1人で戦えるものなのだろうか。
「やむを得ないか……ここは頼む。行くぞ、アルフ」
「……ああ」
 それでも、今は行くしかない。
 でなければせっかく足止めを買って出てくれた、リニスの意志が無駄になる。
 ここでまごついているうちにも、更なる犠牲者が出てしまうかもしれないのだ。
 無理やりに自分を納得させ、アルフはリインフォースの後に続いた。

409第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:33:20 ID:6aYOplck0
 部屋を出て、すぐ隣にあったドアを開く。
 先ほどちらと見た地図によれば、この部屋は殺し合いを行う際に必要となる、支給品とやらの転送室らしい。
 転送する武器の選別は、現在はランダムかつオートとなっているらしく、人の影は見当たらない。
 障害がないことを幸いとし、室内に並べられた武器を物色。
「……これがよさそうだな」
 そう言ってリインフォースが手にしたのは、一振りの日本刀だった。
 剣を選んだのは、ヴォルケンリッターの烈火の将・シグナムが剣の使い手だったからだ。
 彼女の魔法・紫電一閃は、純粋魔力ではなく、魔力変換によって生じた火力を纏うものである。
 魔力結合を阻害するガジェット相手には、ただの斬撃よりも有効と言えるだろう。
 故にシグナムの技を再現すべく、数ある武器の中からそれを選んだというわけだ。
 ただの刀が紫電一閃の火力に耐えられるのか、とも思ったが、どうやらこの刀、見た目以上に頑丈らしい。
 元々の持主たる異界の戦国武将・片倉小十郎が、この刀に雷を纏わせて戦っていたのだから、当然と言えば当然なのだが。
「よし、行くぞ」
「分かってる。……リニス! あたしらが戻るまで持ちこたえてくれよ!」
 部屋を出たアルフが最初に口にしたのは、ガジェットの大軍と戦うリニスへの呼びかけだった。
 そしてそれに対して返されたのは、彼女の無言の頷きだった。
 今はそれで納得するしかない。
 リインフォースらは彼女に背を向けると、すぐさま戦線を離脱する。
 硬質な廊下の床を蹴り、傍らの見取り図を見やりながら、時の庭園内部を走っていく。
 目標は2つ。
 今回の事件の首謀者であり、首輪の制御装置を保有しているプレシアの部屋。
 奪われた夜天の書が利用されているという、殺し合いのフィールドを生成する動力室。
 それぞれ最上階と最下層――PT事件を体験したアルフにとっては、一種懐かしささえ思わせる状況だった。
「リインフォース。ここは二手に分かれよう」
 そしてそのアルフが切り出したのは、またしても当時を想起させる提案だった。
「二手に……?」
「今は一分一秒が惜しい。あんたが地下の動力室を目指して、あたしがプレシアの部屋に向かうってのでどうだ」
「正気か? プレシア・テスタロッサの実力は、あの機械の比ではないのだろう……?」
 不可解な進言に、リインフォースが眉をひそめる。
 本業は科学者であるとはいえ、プレシアはSランクの魔力を有した大魔導師だ。
 まさかガジェット同様のフィールドを張るなんてことはないだろうが、それ以上に地力の差が桁違いである。
 事実として、アルフは以前プレシアに反旗を翻した際に、完膚なきまでに叩きのめされていた。
 理論上はその方が手っ取り早いとはいえ、どう考えても自殺行為としか思えない判断だ。
「夜天の書を取り返すことができれば、あんたもいくらか本調子を取り戻せるんだろ?
 心配なら、早く夜天の書を取り戻してきて、あたしを助けに来ておくれよ」
 返ってきたのは、不敵な笑み。
 にっと笑った表情は、先ほどのリニスのそれとも似通っていた。
 なるほど確かに、言われてみれば、リインフォースは夜天の書を奪われたことで、未だ本力を発揮できずにいる。
 その調子で2人がかり挑んだとしても、確実に勝利できるとは言い難いだろう。
 とはいえ2人で夜天の書の奪還に向かえば、その隙に参加者達を殺されてしまう。
 ならばここはアルフが注意を引きつけることで、本命のリインフォースに繋ぐのが最も確実だ。
「分かった……お前も、それまで死なないでいてくれよ」
「おうともさ」
 それが最後のやりとりとなった。
 階段にさしかかったところで、両者はそれぞれの道へと別れる。
 犬の使い魔は上を目指し。
 銀の融合騎は下を目指す。
 互いの目的を達成し、再び共に戦うために。
 あの忌まわしき魔女を打倒し、最期の悲願を果たすために。

410第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:33:52 ID:6aYOplck0


 身体強化術式を行使。
 速度強化と、腕力強化を最優先。
 AMFによる強化阻害の影響は、無視できるほど小さくはない。
 普段より数段重く遅い身体を、それでも懸命に力を込め、振るう。
『Scythe Form.』
 排気音と機械音を伴い、デバイスを近接攻撃形態へと移行。
 どうせ魔力弾は通用しないのだ。ならばこそ、接近戦に特化したフォームを選択するのは必然。
 振るう。振るう。薙ぎ払う。
 斬る。斬る。斬り刻む。
 迫る攻撃は全てかわした。
 普段より労力がかかる分、防御のタイミングはよりシビアだ。なればバリアになど頼っていられない。
 360度全方位に視線を配り、一心不乱に立ちまわる。
「はああぁぁっ!」
 柄にもなく気合の叫びを上げながら、リニスはひたすらに戦斧を振るった。
 我ながら大した出来だ――自らの手に握りしめた得物に、そんな感想を抱き、笑みを浮かべる。
 このバルディッシュは完璧だ。
 攻撃力も、魔力効率も、演算速度も申し分ない。さすがにフェイトのために、大枚をはたいて作っただけはある。
 フェイトはこの力作を気に行ってくれただろうか。
 オリジナルの私が最期に残したものを、喜んでくれていたのだろうか。それだけが気がかりだった。
(今の私にはこうすることしかできない……でも、彼女達にはできることがある)
 今のリニスを突き動かすのは、その一心だ。
 自分には何もできなかった。
 面と向かって立ち向かうこともできず、陰でこそこそと動くことしかできず、
 結局できたことといえば、参加者への可能性の丸投げだけだ。
 やがてプレシアに手足をもがれ、それすらも不可能となっていた。
 そして訪れた結末は、侵入者ごと抹殺対象となるという有り様。
 まったくもって不甲斐ない。大魔導師の使い魔とまで言われておきながら、情けないことこの上なかった。
「たぁっ!」
 しかし、彼女達は違う。
 彼女達はあの戦いを生き延びた。
 自分達を追うことに命を懸け、遂にはこのアルハザードにまでたどり着いた。
 何かを変えられるのは自分ではない――あの娘達だ。彼女達にこそ、希望があるのだ。
 ならば自分は捨て石ともなろう。
 こうして囮役を引き受けることで、希望を繋ぐことができるなら、喜んでここに屍をさらそう。
 犯してしまった罪を償う術が、こうする他にないのなら――
『――まったく、困った使い魔ね』
 その、瞬間。
 ぶんっ、と空気を揺らす音。
 不意に目の前に表れたのは、通信端末の空間モニター。
 画面越しに語りかけるのは、ウェーブのかかった黒髪と、冷たく射抜くような紫の視線。
『見え見えなのよ、あんな臭い芝居は。命を惜しむような柄でもないでしょう、貴方は』
「プレシア……」
 プレシア・テスタロッサ。
 全ての元凶たる大魔導師にして、山猫の使い魔リニスの主君。
 実子アリシアを蘇らせるために、大勢の命を犠牲にし、フェイトさえも手にかけた魔女。
 これまで沈黙を続けていた彼女が、遂にこうして回線を開き、再び姿を現していた。
 そしてそれに呼応するようにして、これまで戦っていたガジェット達もまた、一斉にその動作を止めた。
『本当に困った使い魔だわ……お仕置きされて反省するどころか、敵と結託するだなんて』
 ふぅ、とため息をつきながら、呆れた様子でプレシアが言う。
 自らが犯した大罪も、目の前で起きている反乱すらも、まるでに歯牙にもかけぬように。
「……私は間違っていました……
 貴方を止めたいというのなら、こそこそ隠れるのではなく、こうして戦うべきだった」
 何が悪かったというのなら、最初から何もかもが悪かった。
 本当に主の暴挙を制するのなら。
 本当に己が罪を償いたいのなら。
 黙ってその命に従って、この手を汚すべきではなかった。
 可能性だけを参加者に与え、解決を委ねるべきではなかった。
 たとえ相手が主君であろうと、あの2人の娘達のように、真っ向から立ち向かうべきだった。
 自分はそれに気付くのが、途方もないほどに遅すぎたのだ。

411第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:34:38 ID:6aYOplck0
『どっちにしても間違いよ』
 ぎろり、と。
 刹那、冷たく輝く紫の双眸。
 纏う気配は絶対零度。肌を切り裂き臓腑を射抜き、血肉を凍てつかせる氷雪の殺意。
 気だるげな様相が一転し、威圧的な形相へと姿を変える。
 やはり、そうか。
 プレシアは己の意に背く者は、誰であっても許しはしない。
 利用価値のない者ならばなおさらだ。間違いなく自分はここで殺されるだろう。
『馬鹿げたことをしてくれたわね……それとも何? まだフェイトを切り捨てたことを根に持っているの?』
 ぴくん、と。
 帽子の下の耳が、一瞬揺れた。
『貴方があの子をどう思おうと、あんなのは所詮アリシアの出来そこないなのよ。私にとっては――』
 ああ、そうか。
 やはり、そうなのか。
 どれほどの経験を重ねても、結局貴方はそうなのか。
 あの子にどれだけ尽くされようとも、貴方にはまるで届かないのか。
 あの子をどれだけ傷つけようとも、貴方にはまるで響かないのか。
 貴方にとってのあの子とは、そんなものでしかないのか――!
「――黙れ」
 自分でも驚くほどに、冷たく低い声音だった。
 これほどに冷酷な声が出せるのかと、一瞬自分で自分が信じられなかった。
 画面の奥のプレシアも、さすがにこれには驚いたらしい。
 氷の刃のごとき視線が、一瞬丸くなったのがその証拠だ。
「私は貴方達家族のことは、ほとんど何も覚えていない……
 貴方とアリシアがどんな親子だったのかは、私には知る由もない……それでも、これだけははっきりと言える……!」
 肩がわなわなと震える。
 バルディッシュがかたかたと鳴く。
 使い魔となる前の記憶は、ほとんど頭の中に残されていない。
 自分がアリシアに懐いていたことも、アリシアが自分を拾ってくれたことも、主体として実感することはできない。
 故に、プレシアとアリシアの関係について、とやかく言うつもりはない。
 それでも。
 だとしても。

「私にとってのフェイトは本物だ!
 紛い物でも出来そこないでもない……あの子を否定することは、私が許さないっ!!」

 遂に私は絶叫した。
 己の胸にこみ上げる怒りを、ありのままにぶちまけた。
 プレシアのアリシアへの愛が、本物だというのなら。
 私のフェイトへの愛もまた、本物であるのは間違いないのだ。
 彼女と出会って、魔法を教えて、笑い合う日々を幸せだと思った。
 彼女がいかなる生まれの人間だったかなど、自分には何の関係もなかった。
 フェイトと積み重ねた想い出も。
 フェイトからもらった信頼も。
 フェイトへと向ける愛情も。
 それら全てが本物だから。紛い物でもなんでもない、確かなものであると言い切れるから。
 だからこそ、私はプレシアを許さない。
 誰かの勝手な悲しみに、誰かを巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない。
 自分のエゴで作ったフェイトを、自分のエゴで殺す愚を、私は決して許さない。
『……もういいわ。お前はもう死になさい』
 一拍の間を置いて、一言。
 それを最後通告として、プレシアの顔は目の前から消えた。
 通信の終了と同時に、静まり返っていたガジェット達が、再び駆動音の唸りを上げる。
 これが終わりの始まりなのだろう。
 ここからが、本当の最期の戦いなのだろう。
 随分と魔力を無駄遣いしてしまった。まだまだ半分くらいは残っているが、それではこの数相手には心もとない。
 それでも、自分は決して絶望しない。最後の最後まで抗うことをやめない。
 囮としての戦いは終わった。十分に時間は稼げたはずだ。
 だからこれから始めるのは、自分の個人的な戦い。
 プレシアに叩きつけたこの想いを、最期の瞬間まで示し続けるためだけの、自分勝手なプライドを懸けた戦いだ。

412第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:35:20 ID:6aYOplck0
「バルディッシュ」
 右手のデバイスへと語りかける。
「こんな身勝手に付き合わせてごめんなさい」
 結局は自分も、プレシアと何ら変わらないのかもしれない。
 自分で複製したこのバルディッシュを、本来担うべきだった目的すら果たさせずに、
 自分の勝手なエゴに巻き込んで、ここで果てさせてしまおうとしている。
 己の欲望の果てにフェイトを死なせた彼女と、変わらないことをしようとしているのかもしれない。
「それでも……貴方が私を、まだマスターだと認めてくれるなら……最後の力を、貸してください」
 祈りのような言葉だった。
 それがリニスの口にした、最後の言葉と呼べる言葉だった。
 両の手で長柄を強く握る。
 サイズフォームの光刃を輝かせ、眼前のターゲットを見据える。
 意識は怖ろしいほどにクリアーだ。
 もう何も怖くはない。死でさえも自分を怖れさせはしない。
 ただ、刃を振るうのみ。
 最期に事切れる瞬間まで、前に進み続けるのみだ。
「……うおおおおぉぉぉぉぉーっ!!」
 咆哮と共に、山猫は駆ける。
 黄金と漆黒のデスサイズを携え、大魔導師の使い魔は疾駆する。
 間合いを取ると共に、切り裂き。
 間合いを詰めると共に、薙ぎ払った。
 AMFの壁に阻まれようとも、ひたすらに刃を叩き込んだ。
 全身をレーザーに焼き焦がされ、五体を触手に貫かれようとも、一心不乱に斧を振るった。
《アルフ》
 心残りがないと言えば、嘘になる。
 しかしそれらを叶える機会は、当に自身の手で投げ捨ててしまった。
 それでも、最後の1つだけは、どうにか叶えることができた。
 故に最後の力を振り絞り、猫の使い魔は言葉を紡ぐ。
 声ではなく思念通話を通して、願いの先へと想いを伝える。
《大きく……なりましたね》
 フェイトと共に面倒を見てきた、小さな狼の娘・アルフ。
 フェイトに会うことはできなくとも。
 フェイトの成長した姿は見れなくとも。
 その愛らしい使い魔は、大きく勇敢に育ってくれた。
 その姿を見られただけでも、彼女は十分に幸せだった。
 記憶を引き継いだクローンとして、蘇った意味はあったのだと。
 最期の瞬間に、そう実感することができた。

413第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:36:21 ID:6aYOplck0


 上へ、ただに上へ。
 延々と続く階段を、上り続ける女がいる。
 漆黒のマントとオレンジの髪を、走る勢いにたなびかせ、ひたすらに駆け抜ける者がいる。
 ひく、と獣の耳が揺れた。
 ぴく、とマントの肩が揺れた。
「……ばかやろうっ……」
 瞳を光らせる獣の女が、震えた声で呟いていた。










【リニス@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】












「まったく……使い魔風情が偉そうなことを」
 はぁ、とため息をつきながら。
 リニスの死亡を確認した主君――大魔導師プレシア・テスタロッサは、うんざりとした様子でそう呟いた。
 腰掛ける椅子に右肘をつき、己の頬を手のひらに預ける。
 これで彼女は独りきりだ。
 たった1人の協力者を、自らの手で切り捨てたプレシアは、本当に独りになってしまった。
 もはや周りにいる者は、得体の知れないあの男から借りてきた、いかがわしい機械人形達だけしかいない。
 それでもプレシアは、それで別に構わないとさえ思っていた。
 どうせもうすぐ片はつく。あとたった11人の人間が死ぬだけだ。
 そうなれば儀式は完遂し、冥府の扉を開くための59人の生け贄が揃う。
 最後の1人の身体に魂が宿り、アリシア・テスタロッサの完全な復活は完了される。
 自分には、ただアリシアさえいればいい。
 そしてその時は、もう目前にまで迫ってきている。

414第四回放送/あるいは終焉の幕開け ◆Vj6e1anjAc:2010/10/04(月) 23:37:15 ID:6aYOplck0
「ミズ・プレシア。動力炉への兵員の配備、完了しました」
 その時。
 かつ、かつ、かつ、と靴音を立て。
 機械人形のうちの1人――ボーイッシュなナンバーⅧ・オットーが姿を現した。
「ああ、そう」
 まったくもって面白味のない奴だ。
 せっかくいい気分に浸っていたのに、余計な水を差すなんて。
 無粋な来訪者の報告に、興味なさげな発音で返す。
 裏切り者のリニスを排除した今、残された問題はあと2つ。
 夜天の融合騎・リインフォースと、犬の使い魔・アルフの2名である。
 そのうちアルフに対しては、ほとんど無視に近い対応を取っている。
 どの道あの使い魔程度の実力では、この部屋に入ることなど不可能だと分かりきっているからだ。
 となると、残る問題はリインフォース。
 こちらへまっすぐ向かってくるならまだしも、夜天の魔導書を狙われるのはまずい。
 さすがにこちらは無視できないということで、オットーに兵力の派遣を指示しておいたのだ。
 ナンバーⅦ・セッテと、ナンバーⅩⅡ・ディード――最後発組2名が相手とあれば、
 欠陥を抱えた融合騎など、ひとたまりもなく消し飛ぶだろう。
 そうなれば、全てはチェックメイト。
 このプレシア・テスタロッサを邪魔できる者は、広大な次元世界の海に、誰1人として存在しなくなる。
 今度こそ誰にも邪魔されることなく、アリシアと再会することができるのだ。
 込み上げる笑いをこらえきれず、我知らぬままに口元がにやけた。
「……あら?」
 そして、その時。
 ふと、ほんの僅かな違和感を覚えた。
「貴方、さっきまで羽織っていたジャケットはどこにやったの?」
 それはオットーの身なりへの違和感。
 中性的な容姿をした彼女は、その胸元を隠すように、グレーの上着を羽織っていた。
 しかし今、彼女の身体にそれは確認できない。
 ナンバーズスーツの上には長ズボンだけ。慎ましやかな胸の隆起が、スーツ越しに見受けられるようになっている。
「それはですね……」
 そして。
 プレシアがその返答を聞くよりも早く。




 ――ぐさり。




「ッ……!?」
 腹部へと激痛が襲いかかった。




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