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真贋バトルロワイヤル part4

1 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/14(月) 20:12:55 ID:ZiSDf18U0
その絆、本物?贋物?



※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1731857795/

2 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/14(月) 20:13:29 ID:ZiSDf18U0
前スレがそろそろ970に届いたので早めに立てさせてもらいました。

3 ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:26:45 ID:C9nx7xck0
投下します

4空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:28:13 ID:C9nx7xck0
 アビドス高校に現れた宇蟲王ギラを中心とした乱戦。
 アビドスを悪と定めたダークマイトの進軍と標的となった少女たちの戦闘。
 その舞台となるアビドスの気候はお世辞にも快適とはいいがたい。
 砂一面の環境の気温は日中では40度を超えることも珍しくないというが、体感してみると熱気以上に乾燥と日差しが厳しい。暑いというより痛いのだ。
 ゲームエリアに造ったキヴォトスの贋作なんだから気温くらいもう少しましにならないのかと、アビドスにある民家の屋根の上で真人は思う。
 2つの戦いを一望できる立地ではあるが贋りの陽光を遮るものはない。 キレた漏瑚の近くに居る時よりはマシとはいえ呪霊の彼でも暑いものは暑い。
 同意を求めるように隣に佇む少女に真人は尋ねる。真人と逆方向から向かっていたその女は柊真昼と名乗った。
 
「アンタは暑くないの?探せば日傘くらいあると思うけど。」
「お気遣いどうも、暑いけれどこのくらい問題ないわ。」
「別に気遣ったつもりじゃないんだけど。」
「なら口説いているのかしら?
 汗で下着が透けちゃってる女の子をじろじろ見るなんて、えっち。」
 その額には汗が浮かび一張羅のセーラー服がところどころ張り付いていた。
 真昼は悪戯っぽい笑みを浮かべ身をくねらせたが、言葉とは裏腹に恥じらう様子はまるでない。
 その様子に真人はどこか馬鹿にするように目を丸くした。

「……驚いた、半分呪霊みたいなアンタでもそんな冗談言うんだね。」 
 その言葉に真昼の目つきが変わる。
 真人は他人の魂を感じ取れる。柊真昼の中身が人間のそれとは違うことを感覚的に理解していた。
 
「……私の世界では鬼っていうのよ。
 意外と紳士なのねツギハギ君、私のことを半分も人間として扱ってくれるなんて。そう言えば名前は?」
「名簿には先生って載ってる。アンタは柊真昼だっけ?
 俺の知ってる奴らとは違うけど、呪術師ってことでいいんだよね?」
「陰陽師ってほうが通りがいいけど、まあそういうことになるわね。」

 柊真昼は既に出奔した身とは言え、呪術の名家柊家に属し肩書としては呪術師である。
 偶然か、真人と敵対する連中と同じ名前だ。刀使だの仮面ライダーだのよりよほど親近感がある。
 一方の真昼は真人の格好を物珍し気に眺めていた。
 青白く継ぎ接いだ肌もそうだが、真人はバックパックを背負わず代わりに巨大なバズーカを背中にしょい込んでいたのだ。
 
「同業者……じゃないわよね。というか人間じゃないでしょ。呪霊っていうのかしら?
 バズーカを背負ってるのは呪霊なりのファッション?」
「んなわけないでしょ。
 ちょっと好戦的な参加者に襲われてさ、俺のバックパック焼けちゃったんだよ。
 ロボットをけしかけて襲い掛かってきたアンタくらいのガキどもだよ。イザークだかキャルだかくるみだか言ったかな?」
 真人がバックパックを失うきっかけとなったイザークらとの戦いは、襲い掛かったのも真人ならその原因として黒鋼スパナを殺し花村陽介の恨みを買ったのも真人である。
 悪びれもせずイザークら数名の特徴と悪評を吹聴した真人だったが、ふと真昼の顔を見るとまるで信じていないと言わんばかりに冷たい視線を浮かべていた。
 
「随分目つきが悪いけど何か癪に障ったかい?それともコンタクトに砂でも入った?」
「いいえ。私の知っている悪霊の類とは違うみたいだと思っただけよ。
 人間みたいに口が回るのね。自分で思考して嘘をつくなんて。」

 魂がへし折れた花村陽介のような嗤えるものでは到底ない、殺気の籠った警戒心。
 にこりと目を細めた真昼とは対照的に、真人はやりづらそうに肩をすくめた。
 
「マジ?もうばれたの?沙耶香は騙せたんだけどなぁ。
 嘘を見抜いたり心を読む術式……ってわけじゃないよね。」
「育ちが悪いからね。
 隠す気のない嘘を見抜けないようじゃ、私はとっくに死んでいるわ。」
「そこまでバレるのね。
 ちょっと甘く見てたよ。陽介とかいう式神使いや沙耶香みたいな平和ボケした連中だけだと思っていたけど。」

 花村陽介や糸見沙耶香とは比にならないほどに策謀渦巻く環境で育った真昼には真人の嘘を看破するのは難しくない。
 家族同士で当然に殺し合い、通信機器は全て盗聴され、敵も味方も疑う以外の関りが出来ない世界が真昼のいた場所である。
 「呪術師はクソ」とは真人が戦った一級術師七海の言葉であるが、柊真昼の世界でもその実情は例外ではない。
 警戒し臨戦態勢に入りながらもピクニックしているように穏やかな揺らぎを魅せる柊真昼の魂が、真人には酷く気持ち悪い。
 この程度の害意は、彼女にとって日常のそれと変わらないのだろう。

5空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:30:05 ID:C9nx7xck0
「アンタみたいなバケモノもいるんだね。
 ……この殺し合い、ロクでもない参加者がいるもんだ。困っちゃうよ。」

 真人は真昼から視界をそらし、アビドスの大地で起きた戦いを見下ろした。
 アビドス高校では赤い青年が剣を振るい、その向かいでは秀吉といった巨漢が建物でも粉々に出来そうな拳を軽々振るう。
 住宅地のど真ん中では趣味の悪い金髪の男が派手な演説と共に少女たちに襲い掛かる。
 言ってることはアホらしくて聞く気にもならないが、実力で言えば柊真昼や豊臣秀吉と大差ないように見え、すなわち真人との実力にも大きな差はないだろう。
 その何れも普通の人間とは一線を引く実力者であり。わずかに感じる魂の揺らぎに恐怖や怯懦は見られない。
 戦闘に慣れており、殺し合いに適応している。柊真昼がそうであるし、アビドスで暴れている連中も間違いなくそのような側だ。
 そんな連中は真人が思っていたより多いのだろう。それもカタログスペックでは真人と遜色ない連中が。
 はぁと真人は深いため息をついた。そんなバケモノを相手どるのはイザークや陽介のような甘ちゃんを相手するより遥かに厄介だ。
 
 「そっちのアンタもそう思わない?
 バケモノみたいな参加者呼びすぎでしょ。」
 視線を真昼から反らし、隣の建物を見下ろし真人は投げかけた。
 誰もいない場所に声をかける奇行に柊真昼は何も言わない。
 そこに誰かがいることは、ずっと前から真人も真昼も気づいていた。
 建物の影に隠れる何者かは姿を見せず、気取ったような声だけを返した。

「何時から気づいてた?」
「最初からだけど。隠れるの下手すぎ。
 柊真昼以上に魂が人間のものじゃないの、めちゃくちゃ目立つよ。」
 「そっかぁ〜。
 高性能高密度に帝具(おもちゃ)を詰め込んだアタシの体。この魔獣装甲のエケラレンキスに隠れてコソコソなんて柄じゃアないってことか♪」
 悪びれもせず、異質な気配をその帝具(けんのう)で隠そうともせず。
 鼻歌交じりの声と共に金色の髪に青い瞳をした少女が姿を見せ、ひらひらと手を振りながら2人のいる屋根に飛び乗った。
 その腕には参加者の証である令呪もレジスターも存在しない。
 魔獣装甲のエケラレンキス。最強のNPCの一騎にして神殺しに対するジョーカー。
 その少女の服装に柊真昼は見覚えがあった、益子薫の制服と同じ長船女学園のものだ。

「その恰好、薫ちゃんのお友達?
 まさかNPCにいるなんて思わなかったわね。
 それとも……運営側ってことかしら?」
「その2つに大きな違いは無いし、アナタは前提を間違えている。
 私は冥黒の五道化が一騎、魔獣装甲のエケラレンキス。
 益子薫のオトモダチな古波蔵エレンじゃあないの♪ アナタならその違いが分かるでしょう。鬼に食われた元人間。」
「……ただのNPCじゃないみたいね。随分詳しいじゃない。」
 柊真昼の中身も過去も知っていなければ出てこない挑発に、薄ら笑いを浮かべエケラレンキスを睨む。
 その様子が面白かったのかにたりと笑う姿は、人と言うより呪いのように真人は見えた。
 
「こっちとしては特級呪霊に柊の鬼子が仲良く観戦なんて意外〜。
 自分より強そうな相手を前に怖気づいた?」
「喧嘩なら買わないよ。
 アビドス高校の赤い男や街中で暴れてる金髪ゴリラのことを言ってるんだろうけど、俺たちが介入して得なんかないでしょ。」
 今度は挑発が効かなかったからか、エケラレンキスはむすっと頬を膨らませた。
 
「あの男たちと戦ってるのは、見えているだけでそれぞれざっと5,6人はいる。1人2人ならまだしも介入して引っ掻き回すには数が多すぎ。」
「そのうち半分以上は殺し合いに乗り気じゃない参加者でしょうね。
 私や彼のような殺し合い上等の参加者が多人数側に加勢したとして、苦労するのは戦いが終わった後。
 下手に動けば次に全員を敵に回すのは私達になるわ。」
「デカい方についたとしても、恩や協力ができるツラには見えないしね。
 どっちについても俺たちには損しかないの。」
「……成程。
 貴方達クラスの参加者となればスペックに胡坐をかいて無策に場を荒らしまわると思っていたけど、意外としっかり考えているのね。」
「ま、ここまで来るのに色々あったからね。」
 むき出しのバズーカを背負う背中に真人は視線を向け、納得したようにエケラレンキスは目を細めた。
 リュックを失うほど手痛い損害からの言葉には、嫌に説得力がある。

6空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:31:51 ID:C9nx7xck0
「まあいっか。私がアビドスに戻る前に確認したかっただけだしね♪
 貴方達が見に回るってのなのは正直期待外れで退屈だけど、楽にはなるし結果オーライかな。」
 エケラレンキスとしても真人や真昼ほどの危険人物がアビドスの戦いに本格的にかかわるかどうかは立ち回りが変わってくる。
 2人が動かないことを確認したエケラレンキスはくるりと背を向け歩き出したが、思い出したように真昼に尋ねた。

「そういえば柊の鬼子。貴女益子薫ちゃんとと遭遇したの?」
「ええ、別れた方向から考えてこのあたりにいないのならアビドス高校にでも隠れているんじゃない?」
「へぇ。それは都合がいいね♪」
 益子薫。エケラレンキスの肉体を構成する古波蔵エレンの相棒。
 一度会ってみたいとは思っていたが、まさかこうも早く会える機会があるとは思わなかった。
 
「今からアビドスに行くの?あの赤い人が居る以上下手な潜入はおススメしないけど。」
「下手じゃないならいいんでしょ?
 あてがあるから黙って見てなさい。」
 言い終わるや否やエケラレンキスは屋根から飛び降りる。着地の心配は真人も真昼もしなかった。
 初めから誰もいなかったように舞い上がる砂埃を前に、真人は深々とため息をついた。

「運営の手駒があのレベルか。
 厄介な参加者は思ったより多そうだなぁ。」
 先ほどまでよりわずかに険しい目つきで零す真人。
 その言葉は嘘じゃなかった。真昼にしては珍しく疑う気さえしなかった。

「まったくもって、嫌になるわね。」
 彼女も全く同じ気持ちだった。
 
 ◆

「このレベルが闊歩しているのか……この会場は……。」
 アビドス高校に向かう道中、電柱の影に潜みながらアヤネは苦々し気に呟いた。
 屋根の上でかわされた柊真昼と真人の談合を前に、参加者の中でも上位の悪意を宿す2人にマルガムの姿でも震えが走った。
 何より途中から参加したレジスターを持たぬ少女。
 グリオン様の作品ならば自分が知らないはずがない。だがただのNPCにしては行動が理性的なうえにその存在感は真昼や真人と比べても遜色がない。
(となると生み出したのはギギストなるもう一人の冥黒王か?
 或いは類似の能力を持つ別の参加者……。)
 グリオンと同等の参加者がいることは分かる。ノノミの出会った鬼龍院羅暁やもう一人の冥黒王であるギギストのように、屋根の上にいる薄紫の髪をした女学生とツギハギの青年もその類だろう。
 だが参加者でないとなると話が変わる。その正体を考えることにアヤネは集中し、周囲への警戒がわずかに薄れた。

「『劣化複製:煉獄招致(ルビカンテ)』」
 頭上から声が響き、次の瞬間影の中にあったアヤネの――ムーンマルガムの姿はアビドスの砂交じりの空気に引きずり出される。
 頭上には影の行き場を無くすようにごうごうと炎が燃え盛り、先ほどまで潜んでいた電柱もどろどろに崩れ去っていた。
 煉獄招致ルビカンテ。業火を射出する帝具の力がムーンマルガムの潜む影を生み出す物体ごと消し去っていた。
 炎を左腕から吐き出していたエケラレンキスは、炎を止めると同時に右腕を勢いアヤネに伸ばした。

「『劣化複製:超力噴出(バルザック)』」
 宙に浮きバランスを崩したムーンマルガムの首を、エケラレンキスはその細腕で掴み上げる。
 潜在能力を十全に引き出されたエケラレンキスにとって、116.9kgのムーンマルガムは純粋な力で組み伏せられる存在でしかない。
 
「炎で影を消し、影を生み出す物体も消すとは。
 随分強引な手を使うんだな。剣士人形。」
「借り物のケミーの力でコソコソやってる錬金術師の泥人形ちゃんと一緒にしないでほしいな。」
「そういうお前の力はケミーではないようだ。
 てっきりギギストの作品かと思っていたがだとしたら妙だな。どういうことだ?」
「アタシは冥黒の五道化が一騎、魔獣装甲のエケラレンキス。
 最強のNPCが一騎にして、神殺し殺し。貴方のような造り物とは格が違うの♪」
 さらりともたらされた恐るべき情報に、アヤネはわずかな動揺を見せる。人間ならば冷や汗の1つもたらしていただろう。

7空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:33:11 ID:C9nx7xck0
「……成程、運営側か。
 実力からもその情報を疑う余地はないな。」
 エケラレンキスは神殺しこと仮面ライダークロスギーツを討伐するための手駒である。
 金マルガムとはいえそう簡単に勝てる相手ではない。
 一参加者が生み出した怪物としては規格外だが、運営側の存在と言うのであればむしろこの程度の力は必要だろうとアヤネには思えた。
 
「それで、何の用だ。
 殺す気ならとっくにやっているだろう。私に何をさせるつもりだ。」
「頭のいい子は好きよ。話が速くて助かる。
 貴方、アビドス高校に行くつもりでしょ。
 その影に入っての潜入に、ヒッチハイクさせてほしいの♪」
「……そんなことのために私に接触したのか?」
 エケラレンキスの提案にアヤネは首を傾げた。
 理屈は分かるが自分に声をかける理由が分からないのだ。

「お前の能力は恐らくどこかの世界の兵器か異能を再現するもの。
 私が運営なら転移や転送の類の力は真っ先に生み出す。お前が使えないとは思えんが。」
「使えるけど、転送先の情報は分からないの。
 跳んだ先が宇蟲王の射程圏内とかなったらシャレにならないし、かといって深層に飛んだら絶対エルちゃんに小言言われてめんどくさいし〜。」
 姉に怒られた妹のような悪態をつきながら、ムーンマルガムを握る首がギリギリと音を立てる。
 武器から生まれた人形であるアヤネに窒息は無いし痛みも薄いが並の人間ならとうに気管を潰されているだろう握力だ。
 そんな状況にもかかわらず、エケラレンキスは心から愉しそうな笑顔を浮かべ続けた。
 
「奥に入りすぎたら、薫ちゃんにこのツラ見せられるかわかんないしね♡」
「そっちが本音だな。ノノミと同じタイプか。
 薫ちゃんとやらも不運なことだ。」
「それで、この話乗ってくれる?
 賢い賢い金メッキの脳味噌で考える時間が欲しい?」
「首根っこを掴む提案を交渉とは言わんだろう。」
「まいどありぃ〜♪」
 諦めたようなアヤネの言葉を了承と捉え、エケラレンキスは凶悪に笑う。

「……まったく、あの性悪みたいなやつが他にもいるとはままならんな。」
 本物の古波蔵エレンなら絶対にしない笑顔は、ノノミを思い出すようで腹立たしかった。
 
 ◆◇◆◇◆
 
「へっくち!
 ……今誰か私の話しませんでした?」
「ダークマイトが私達を追ってるんでしょ。
 ……それにしてもあんたもクシャミなんてするのね。グリオンの作った怪物のアンタも。」
「グリオン様は全能です。
 その創造物である私は当然クシャミも出来ます。」
「ああ、そう。」
 ダークマイトから距離をとるために、ノノミとシノンはアビドスの街中を駆ける。
 ノノミがみせた気の抜けるような可愛らしいクシャミについ質問をしてしまったが、恍惚とした表情でグリオン賛美を始めたノノミにシノンは数秒前の質問に後悔していた。
 くしゃみは単なる生理現象だ。そこに善意も悪意もない。
 その一瞬だけ。シノンにはこの女が悪意ある人造人間ではない普通の少女のように見えた。
   ・・・・
 そう錯覚したことに、後悔していた。

「本物の十六夜ノノミが出来ることで。私に出来ないことはないと言っていいでしょう。」
 プテラノドンマルガムは異形の姿のまま、少女の声色で蕩けるように断言する。
 はぁと呆けたように漏れた息には妙に色気があり、そのことがシノンには酷く気持ちが悪い。
 本物の十六夜ノノミであれば間違いなくこんな気色悪い声色は出さないだろう。カリスの装甲の下で猫妖精族(ケットシー)のアバターの肌がわずかに粟立った。

「私はノノミを知らないけどさ。
 アンタみたいな偽物にいい顔されて、本物のノノミはたまったもんじゃないでしょうね。」
「それは、黒見セリカや十六夜ノノミへの同情からの言葉ですかぁ?」
 同情はしていた。この殺し合いには黒見セリカの先輩がいて、恩師がいて、職場があって、学園がある。その上学友の偽物が悪逆な人造人間として我が物顔で動いている。
 過去の裏切りと今の友たちを想うシノンに、その友情を踏みにじるグリオンの凶行を許せないのは間違いない。
 では、ノノミに対する不快と嫌悪が同情からくるものだけなのか。
 30分前のシノンならそうだったのだろう。
 
「それとも、キリトの凶行を偽者の行いだと断じる貴女自身の言葉ですかぁ?」
 ぐるりと首を曲げたノノミの嘲笑に満ちた濁った眼がシノンを捉える。
 反射的にシノンは足を止めカリスアローを思いっきり切り上げた。カリスの仮面の奥でアバターの目が血走っていた。

「どっちもよ!」
 力強くシノンは叫ぶ。これまでの人生で何度もない腹の底から出た言葉だった。
 言語化できなかった感情が形となってに頭がすっと軽くなる。胸の内に渦巻く感情をシノンははっきりと自覚した。

8空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:34:11 ID:C9nx7xck0
 黒見セリカにとっての十六夜ノノミは大好きな先輩だが、シノンのように偽者しか知らない者にとっては(亀井美嘉のように協力関係である者であっても)悪の錬金術師に心酔する外道の名前だ。
 同じようにキリトはシノンにとっては友であり恩人であるが、夜島学郎と亀井美嘉にとってキリトは悪辣な殺人鬼である。
 藤乃代葉を嘲笑と共に殺した。本物のキリトを知るシノンにとって考慮にさえ値しない話でも、キリトを知らない人たちには”キリトは平気で人を殺す悪意ある男”だと知れ渡る。
 キリトが何者かに操られているのか、あるいはキリトの偽物がそのような凶行に及んでいるのか分からない。
 確かなことは、藤乃代葉を殺した偽キリトが行動している限りキリトと言う男の尊厳は踏みにじられる。
 目の前でカリスアローを躱しケラケラと嗤う女がいる限り、十六夜ノノミの尊厳が踏みにじられるように。
 そんな理不尽を飲み込めるほどシノンは大人ではなかった。
 他人に対する同情ではなく、それは既にシノン自身の感情になっていた。
 
 「セリカには耐えてなんてカッコつけて言っちゃったけど。
 今なら分かる。これは無理ね。耐えられない。
 私は、アンタたちを認められない。
 アンタも、グリオンも。キリトの姿をした人殺しも。」
「……まあ、頑張ってくださいね。応援してますよ。」
「心にもないことをよくもまあすらすら言えるわね。」
「本心ですよ。貴方は下手な言葉よりもつらいつら〜い現実に直面したほうがいい表情を見れそうですから。」
 鬼気迫る様子のシノンに対し、ノノミは薄ら笑いを崩さない。
 背後にワープゲートをつくりだし、自分たちがさっきまでいた一点をノノミは指さした。
 
「1つアドバイスをするのなら。
 そういうセリフはダークマイトを倒してから言うべきですよね。」
「分かってるわよ!!」
 ノノミが指さす先がキラリと光ったと思えば、巨大な拳状の黄金の塊がミサイルのように轟音と共に2人を襲った。
 ノノミはワープゲートで転移し、シノンは思いっきり両足を蹴り上げ飛び上がる。
 黄金の塊の正体はダークマイトの個性”錬金”によって変質したコインだ。支給品ではあるが何ら変哲のない金貨。
 それが質量を持ったレーザーとでもいうべき威力で家三軒を粉々に粉砕していた。
 苦虫を嚙み潰したような表情のシノンの前に、砂埃をの中から筋骨隆々とした男が姿を見せた。
 
 「なかなか逃げ足が速いじゃないか。
 こうもはっきり避けられるとおじさんちょっと悲しいなぁ。」
 ちっとも悲しくなさそうな薄ら笑いを浮かべ、肩についた砂を鬱陶しそうに払いのけた。
 その姿がシノンにはどこか造り物のように見える。よく見るとこの炎天下に汗1つかいていなかった。
 
「聞きたいんだけどさ。
 その姿、アンタもアバターか何か?」
「オールマイトを知らないとはモグリだね。
 まあ、りんねのように別世界の人間と言うのなら仕方のない話か。見たところ個性も使えないらしい。」
「オールマイト……。」
「俺の世界では平和の象徴と呼ばれた最強の男だ。
 最強のヒーロー。その力に弱者は憧れ悪は恐れた。その力は希望となり平和を生んだ。
 だが彼は今や力を失った……。その象徴を継ぐべき男こそこの俺、ダークマイトというわけだ!」
 
 筋肉を見せつけるように大きくねじりダークマイトは拳を構える。
 シノンとの距離は数mはある。拳の射程には大きく外れていたが、銃口を向けられた時のような寒気がシノンの両足を動かしダークマイトとの距離を広げた。
 
「勘がいい。
 だが象徴の力の前には、遅すぎる!」
 ダークマイトがしたり顔で振りぬいた拳。無論ただのパンチではなく”錬金”の個性による増強が加わる。
 その指先で金色の指輪がキラリと光ると、指輪を触媒に金色の巨大な拳が形作られ殴りつけるようにシノンめがけて射出された。

「速い!」
『トルネード』
 とっさにラウズカードをスキャンし、カリスアローから風のエレメントを纏った矢が放たれる。
 だが一発の射撃で拳の威力は殺しきれない。
 シノンの体ほどはある巨大な拳はシノンを巻き込みミサイルのようにねじ込まれ、電柱をへし折り家1つを粉々に粉砕した。
 
 その様子をダークマイトは満足げに眺めていたが、次第にその顔が怪訝なものに変わる。
 黄金の拳が叩き壊した瓦礫の中に、仮面ライダーカリスの姿は無かった。
 一撃で殺したのか?仮にも仮面ライダーだ。死体さえ残らないということは無いだろう。
 仮にも欧州最大マフィアのボスである彼の眼は節穴ではない。

9空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:37:25 ID:C9nx7xck0
「こっちよ!!」
 『フロート』『ドリル』『トルネード』
「やはり生きていたか!!」
 だから背後から聞こえたシノンの声に反応しダークマイトは振り向きざまに殴りかかる。その拳は黄金のように輝き肥大化していく。
 シノンもまた3枚のカードをスキャンし、回転しながらドロップキックを叩きこんだ。
 
『スピニングダンス』
「BOLOGNA SMASH!!!」
 正面からぶつかり合った技の威力は互角。金色に光るダークマイトの拳と風を纏ったシノンの足が互いに火花を散らす。
 互角だ。
 ノノミのワープのおかげで攻撃を躱せたはいいものの、今のシノンではダークマイト相手に決定打が欠けていた。
                                        ・・・・・・
 仮面ライダーに変身して、さらにアバターによる参加者というアドバンテージがあってようやく互角という事実にシノンは歯がゆい気持ちになる。
 運営に茅場晶彦がいることに今だけは感謝していた。そうでなければこの攻防で押し負け死んでいたかもしれない。

「なぜわざわざ声を上げたんだい?
 君は私に倒されるヴィランなんだ。不意打ちで蹴りかかればよかっただろう。」
「こいつ……!!」
 やんちゃな子供を諭すような声でダークマイトは尋ねた。
 こちらの最も嫌な部分を探るようなノノミの声とはまた違う。
 こちらのことをモブキャラとしか思ってないような無関心さ。ダークマイトはそんな不誠実な態度を隠そうともしていない。
 実際に興味もないのだろう。個性社会の無法者であり己の実力を誇示するきらいのあるダークマイトだ。元の世界で仮面ライダー級の相手との戦闘経験だって少なくない。
 シノンにとっては命がけで戦わねばならない相手でも、ダークマイトにとってのシノンは数ある強者の1人に過ぎなかった。
 
「悪いが君程度の相手なら何度も戦っている。
 仮面ライダー。個性に寄らずプロヒーロー並の力を得られる技術は確かに素晴らしい。
 だがこの象徴たるダークマイトの力には劣る!
 オールマイトがそうであるように、並み居るヒーローを上回り蔓延るヴィランをねじ伏せてこその象徴だ!」
「さっきからヒーローだとかヴィランだとか言ってるけど!!
 アンタみたいな暴力装置のどこがヒーローなのよ!!」
 シノンは、オールマイトを知らない。
 8割の人間が”個性”と言う名の超能力を宿す超常社会も、そんな無法が蔓延る社会で平和の象徴として懸命に戦った英雄のことも知らない。
 ただ、こいつは違うと思った。オールマイトなどと言う英雄とは似ても似つかないだろうという確証があった。
 ノノミを前にした時と、亀井美嘉の話を聞いたときと同じ嫌悪感が胸の内で渦巻いていた。
 
「もううんざりなのよ!!ノノミも、グリオンも、キリトを語る誰かも、アンタも!!!
 アンタらみたいな奴が、他人の正しさも苦しみもこれっぽちも気にしない連中が!
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 誰かの名前を語るんじゃないわよ!!」
「オールマイトを知らぬものにオールマイトを継ぐ偉大さなど伝わらんか。残念だよ。」
 
 鬼気迫る叫びをダークマイトは鼻で笑った。
 馬鹿にするようにではない。馬鹿にしていた。そう断言できるほど、この男の態度には正しさなんて欠片もなかった。
 
 こいつはノノミと同じだ。キリトの名を語り藤乃代葉を殺した誰かと同じだ。
 こいつは、オールマイトじゃない。平和の象徴などと言われる男ではない。
 オールマイトがどんな人間なのか想像することしかできないが、勝手に他人をヴィランと罵り平然と暴力を振るう人間が、『平和の象徴』なんて大層な異名を授かるわけがない。
 この男の存在そのものが、『平和の象徴』への侮辱に他ならない。

 シノンが視線を落とすと、ダークマイトの背後にある何もない空間に赤黒いゲートが前触れなく開いた。
 ダークマイトは気づいていない。シノンが囮であることに。
 その先から飛び出た誰かがぎゅっと拳を握り締め、ダークマイトへと殴りかかる。

「あんたもそう思うでしょ――」
 飛び出た誰かに投げかけた。彼女もシノンと同じ……あるいはそれ以上にこの現状が許せない。そう確信していたからだ。
 グリオン配下のノノミの存在が、十六夜ノノミへの悪趣味な嘲笑であるように。
 藤乃代葉を殺した何者かがいることが、キリトの正義を踏みにじる悪意であるように。
 ――羂索が梔子ユメの姿をしていることが、アビドスと梔子ユメに対するこれ以上ない侮辱であるように。
 
「ユメ!」
「そうだよシノンちゃん!
 この人さっきからずっとずっと……何言ってるのか全然分かんないよ!!」

10空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:38:08 ID:C9nx7xck0
 振り返るダークマイト、その視界にはアメンの姿になった梔子ユメがすぐそこまで迫っていた。
 防御すべきか回避すべきか、そんな考えが筋肉に届くよりも早く、アメンの拳はダークマイトの脇腹を殴り飛ばした。
 
「貴方がヒーローなら!オールマイトって人を継いでいるのなら!!
 なんでみんなを助けようしないのよ!!」
 それは梔子ユメの本心からの問いだった。
 己を鼓舞するように声を張り上げ、思いっきり殴り飛ばす。
 爆ぜたような音と共にダークマイトの体が浮きあがり、地面に叩きつけられた巨体が音を立ててアスファルトを削った。
 
「成程、猫耳娘は陽動か。
 最初の攻撃をかわしたのも今の奇襲も、要はプテラノドンのヴィランが使うワープだね。
 しかしやるじゃないか。流石は羂索というべきかな?俺の顔に傷をつけるとはね。」
 状況を確認するダークマイトが数度瞬きをした後ゆっくりと起き上がる。
 砕き削れた地面と比較してあり得ないくらい男の傷は浅く、数か所の擦り傷と額からわずかに血を流しているだけだ。

「だが令呪もなく変身以外に支給品も使っていない。遊びはここまでといったところだろう。」
 鬱陶しそうに砂を払い額の血を拭う。
 そこでシノンとユメは信じられないものを見た。
 むき出しになった額の擦り傷が、急速に塞がっていったのだ。
 ユメが殴り飛ばしたダメージもアスファルトによってできた擦り傷も、初めから傷などついていなかったように男は邪悪な笑みを浮かべた。
 
「は……?」
「再生……したの??」
 思わず後ずさる。
 怯えたように見開いた目がカリスとアメンの仮面に隠れて見えなかったことは、少女たちにとって間違いなく幸運だった。
 ダークマイトの体は本来の肉体ではない。やせ細った特徴のない姿の上に”個性”で形を変えた装甲を纏っている。
 今の再生も装甲を直しているだけではあるが、オールマイトを知らない2人がその事実に気づくことはできない。
 
「これが象徴の力だよ羂索。」
 悠然とダークマイトは言ってのける。
 それだけの力がこの男にあるのも、また事実だった。
 
「なんでみんなを助けようとしないのか。そう言ったね?
 助けるとも!
 この力で悪しきアビドスを駆逐し、君が巻き込んだ全ての人間の代弁者として君をねじ伏せよう!」 
「あのりんねって子も、それを望んだの?」
「彼女は私のヒロインだ。ヒーローには必要だろう?
 彼女の意思は、私の意思だ。ともに羂索どもの企みを打ち砕くことも彼女も望んでいる。
 まあ、多少強情ではあったから少々強引な手を使わせてもらったが。」
「最ッ低……。」
 ”強引な手”がなんであるか2人は考えることを止めた。なんであれ九堂りんねと言う少女の尊厳は粉みじんに砕かれているだろう。
 九堂りんねがダークマイトに従う理由は命れいじゅうによる強制的な隷属だが、そこまでのことは分からない。
 確かなことはダークマイトは九堂りんねを――仮面ライダーマジェードを従えている。おそらくは暴力的な手法で。
 仮面ライダーの1人や2人この男ならただの暴力でねじ伏せられると、九堂りんねの存在が証明していた。
 
 だからこそシノンとユメはノノミと共に奇襲のような攻撃を実行した。
 結果分かったことは、純粋な戦闘力では二人を上回るうえに再生能力を持つバケモノだという絶望的な実態だった。
 
 ダークマイトは特記戦力相当たる緑谷出久を含む雄英高校1-Aトップ3が揃ってようやく倒せた相手である。
 錬金の個性を用いた遠距離攻撃では、数枚のコインや拳だけでミサイルのごとき破壊を生み出せる。
 純粋な白兵戦闘では神秘やアバターというアドバンテージのある肉体が変身てようやく互角となるレベルだ。
 おまけに傷は再生する。実際は外部装甲だとしても”再生する外部装甲”の時点でそれはもう起動キーの上位互換だ。厄介極まりないことには変わらない。
 
「美嘉やセリカ、マジアベーゼがりんねって子をなんとかしてくれるまで、耐えるしかないわね。
 ……そういえばノノミは?」
「りんね側に加勢するってさ。時間稼ぎお願いしますって頼まれたよ。
 ダークマイトに有効打がない以上、今は時間稼いで。なんとか九堂りんねを無力化して全員で叩くしかないだろうって。」
「姿が見えないと思ったらそんなことしてたの。」
 姿を見せない胡散臭い女に肩をすくめたが、最善の手段だろうとは2人も思う。
 ノノミを含めた3人だけで勝つ場合の勝率は0に近いが、今この時において彼女たちには仲間がいた。
 亀井美嘉、黒見セリカ、マジアベーゼ。別働として九堂りんねを相手どっている彼女たちが九堂りんねを無力化し、合流できるまで耐える事ならできるだろう。
 シノンとユメの勝利条件はそれしかない。
 だがそれも、このまま大人しく戦ってくれればの話である。

11空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:39:34 ID:C9nx7xck0

「……ふむ。このまま戦ってもいいが。他にもヴィランは何人もいる。無駄に消耗するわけにはいかない。
 確実に羂索を打ち倒すために、りんねの力は必要だな。」
 一方のダークマイトは勝利条件など気にしてはいなかった。
 そもそも、オールマイトの後継を吹聴するこの男は負ける可能性など微塵も考えていない。
    ・・・・・・・
 ただ、もっと楽に勝つためだけに、男はポケットから何かを取り出した。
 エメラルドのような色合いの宝石がダークマイトの掌で淡く光る。
 アメンと同じ世界でイドラ・アーヴォルンが研究していたその宝石の名をマナメタルと言った。
 
「来い!りんね!!」
 一瞬、ギラリとマナメタルが閃光を放つ。
 光が収まると同時に純白のサークルを潜って、太陽と一角獣の錬金術師――仮面ライダーマジェードの姿が虚空から出現し、2人のプランが音を立てて瓦解した。

「ノノミちゃんと同じ、ワープ……こんなことまで。」
「はっはっは。あんな悍ましい錬金術と一緒にしないでくれ!
 これは俺と言う象徴とヒロインたるりんねの絆の力と言う奴だ!」
 妄言のようなダークマイトの言葉はあながち間違いではない。
 緊急キズナワープ。という機能がある。
 キズナレッドらが持つキズナブレスの機能であり、強い絆を持つ仲間の場所に転移するというものだ。
 支給品であるマナメタルが起こした現象はそれと同一のものだ。マナメタルもまたキズナブレスと同様絆エネルギーに反応する性質がある。
 ダークマイトはこっそりと九堂りんねのアルケミスドライバーにマナメタルの破片を仕込んでいた。そのためダークマイトの要請に応じて緊急キズナワープが作動し九堂りんねにが姿を見せたのだ。
 
 「どの口でそんな台詞がはけるのよ!」
 絆の力 などという戯言に何度目か分からない憤慨がシノンの全身を駆け巡った。
 ダークマイトだけは本心からそう思っているのだろう。九堂りんねをヒロインだとするダークマイト伝説に心酔している彼に疑うという思考は存在しない。
                ・・・・・
 ダークマイトと九堂りんねの間に絆などないという誰が見ても明らかな事実さえ、彼の望む真実と異なれば理解しないだろう。
 緊急キズナワープが作動したことにも当然カラクリが存在するが、その真相は九堂りんね含め誰もまだ気づいていなかった。
 
「それにしても……。」
 突如現れた仮面ライダーマジェードを前に怪訝な顔を浮かべる。
 胸元が大きく破損し右足を引きずっていた。骨が折れているかもしれないし少なくとも数時間は休ませる必要があるだろう。
 その傷も妙だ。引きずっている右足の外相は少ない、内側から衝撃を与えられたような痛め方だ。
 それ以上に胸元の傷は深刻だ。橙色のボディパーツが砕け大槌でも食らったかのようにへこんでいた。
 もし彼女が仮面ライダーマジェードになっていなければ、死んでいたであろう深手にみえた。

 考え込むシノンの隣で前触れなく空間が赤黒く捻じ曲がる。
 わぁ。などと可愛らしい声を上げて尻餅をついたユメの目の前でワープゲートをくぐる者がいる。
 仮面ライダーバルカン――黒見セリカ。エンジェルマルガム――亀井美嘉。
 少し遅れてマジアベーゼ――柊うてな。
 その全員が、怒りに震えていた。
 
 「何が――」
 「ふっざけんな!!!!」
 尋ねる前に黒見セリカは我慢ならないといった様子でダークマイトを指さした。
 その隣で美嘉はわなわなと震えて拳を握りしめ、唯一表情を読み取れるマジアベーゼは親の仇を前にしたかのような嫌悪の形相を浮かべていた。

12空と虚① プルス・ケイオス ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:40:55 ID:C9nx7xck0

「あんた……あんた、あのりんねって子に何をしたの!!」
「たいしたことはしていない。
 少々強情だったからね、俺のヒロインとして従順になるよう教育してやっただけだ。」
「教育?洗脳の間違いでしょ!
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 何をしたら自分で自分の胸を抉るような真似をするのよ!!」
「なっ。」
 思わず絶句する。ユメに至っては今にも泣きそうな悲痛な声を上げていた。
 言葉を失った2人にマジアベーゼが視線を向ける。

「2つ、連絡します。
 九堂りんねを足止めすることは出来ません。
 戦闘不能に追い込まなければ、彼女はダークマイトのために戦いつづけるでしょう。」
「どういうことよ。」
「彼女は、ダークマイトに操られています。おそらく支給品によるものでしょう。
 ルルーシュのギアスと同質のものだと私たちは見ています。彼女の意思を無視して、ダークマイトの望む行動しかとれない状態です。」
「そういうことか……。」
 ルルーシュ・ランペルージの絶対遵守のギアスの威力はこの場の全員が知っている。
 ダークマイトが用いたひみつ道具”命れいじゅう”も効果だけをみればほとんど同じと言っていい。
 ただでしたがっているとは思っていなかったが、九堂りんねの立ち位置はシノンが想像していたよりずっと悲惨だったということだ。
 
「もう1つ連絡があるのよね。
 これ以上悪いニュースは聞きたくないんだけど。」
「ダークマイト本人が凄まじく強いことはノノミに聞きました。
 ですが安心してください、こっちは良いニュースです。」
「そういえばノノミは?」
「知りませんよ。
 ここに居ないにしても、引き戻す方法が私達にはありません。」
 それもそうだと諦めたようにシノンは息を吐く。
 ダークマイトの強さ、九堂りんねの現状。そんな面倒ごとを前に敵対しないだろう女のことを気にする余裕は残っていなかった。
 辟易するような声にマジアベーゼは少しだけにこやかに返した。
 
「ここからは私にやらせてください。
 ダークマイトの倒し方が、分かりました。」

13空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:41:37 ID:C9nx7xck0


 時はわずかに遡る。
 ダークマイトとの戦いにおいて最も避けなければならないことは、アビドス高校を巻き添えとすることである。黒見セリカや梔子ユメが望むまでもなく、その認識で全員が一致した。
 ダークマイトの標的は梔子ユメを含むアビドス生であり、アビドスだ。
 故にまずすべきことは分断。シノンとノノミを中心にダークマイトを誘導し主戦場を少しでもアビドス高校から遠ざける。
 結論から言えばこの方法は成功し、この選択は大正解だと言える。
 アビドス高校には宇蟲王ギラが襲来し混沌を極めていた。その場にダークマイトと言う厄ネタが混ざりこめば被害はさらに甚大だっただろう。
 既にダークマイトはシノンとノノミ、後の奇襲のため別の場所に待機しているユメを追いアビドス高校から離れている。
 残る九堂りんねを相手にするのは、亀井美嘉、黒見セリカ、マジアベーゼという形である。

「はぁ……はぁ……」
 仮面ライダーマジェードの攻撃を必死で躱しながら、美嘉はどうにか息を整えた。
 ダークマイトをアビドス高校から引きはがしたものの、残った九堂りんねも十二分に強い相手だ。
 悪霊を宿しマルガムになったとはいえ亀井美嘉がの戦闘経験は皆無、マジェードの正規変身者である九堂りんねの経験値には遠く及ばない。
 一切の容赦が感じられない攻撃を前に、回避に専念することしかできない。

「マルガム……!!しかも金のマルガムってことはグリオンの関係者!そうよね!!」
「そういうことに……なりますね。
 マルガムに金以外の色があるというのは初耳ですが。」
 否定はしない。事実として今の美嘉はグリオンの陣営だ。
 九堂りんねたちを苦しめ続け、九堂りんねを殺したグリオン配下だ。断片的な関係性は美嘉も聞き及んでいた。
 大きく足を蹴り上げマジェードの蹴りがエンジェルマルガムの首元を狙う。
 殺意の籠った回し蹴りを羽のような意匠の薙刀「フォールンハルバード」で防ぐが間に合わない。攻撃の軌跡は弧を描きマルガム化して生えた翼を掠めた。
 
「ぐっ……」
「どういう経緯でグリオンと手を組んでるのかは知らないけど、ケミーを悪用する以上倒すしかない!
          ・・・・・・・・・・
 それに……今の私は自分でも止められないの!!」
 苦悶の声をあげながら美嘉は3歩さがるが、りんねは両足が地面につくと同時に体をひねり美嘉にとびかかる。
 このままアルケミスドライバーにハイアルケミストリングをスキャンすれば、エンジェルマルガムを撃破できるだろう。
 申し訳なさげに指を動かすりんねの視界に、青い影が見えた。
 マジェードとは異なる世界。プログライズキーを用いた仮面ライダーがそこにいた。

「くらいなさい!!」
『バレット!』
 美嘉の背後から4匹の青い狼のようなエネルギー弾が揺らめき、りんねに向けて襲いかかる。
 仮面ライダーバルカンへと姿を変えた黒見セリカは銃撃戦が日常のキヴォトス育ちだ。
 引き金を引くことにためらいはない。相手も仮面ライダーならなおのこと躊躇いなくマジェードめがけて引き金を引いた。
 この行動を機にりんねの中で何かがずれる。
 セリカを視界に捉えた瞬間、りんねの両足はセリカに向けて駆けだしていた。

『アルケミスリンク!』
「ダメ……ダメ!!!」
 九堂りんねにはマルガムである美嘉はまだしも、黒見セリカを倒す理由は1つもない。
 むしろダークマイトに強引な悪人認定を押し付けられ同情の念すら浮かべていた。
 そんな感情とは裏腹に、りんねの体はエンジェルマルガムを討ち滅ぼすための必殺技をバルカンに向け予備動作を開始している。
 狼がりんねの四肢を封たタイミングはりんねの体が必殺技の準備を終えるのと同時だった。
 
『サンユニコーン!ノヴァ!』
『バレットシューティングブラスト!』
 電子音とともにセリカは引き金を引く。
 エイムズショットライザーより放たれた蒼穹を前に、狼のエネルギーに拘束された四肢を強引に振りほどき水平姿勢で飛び上がる。
 セリカの放った弾丸はそれわずかにマジェードの肩を掠めた。装甲が破損し肩が痺れる。
 それでもマジェードの必殺技は止まらない。

「避けて!!!」
 泣き叫ぶりんねとは裏腹にセリカに向けて放たれる両足蹴りは落下と同時にぐんぐんと加速していく。
 その行動に躊躇いがあるようには見えない、エンジェルマルガムを前にした時と同様に殺意を込めた一撃だった。

14空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:43:05 ID:C9nx7xck0

「何よ……まるでやりたくもないのに戦わされてるみたいじゃない。」
 セリカが呟く。言葉と行動が一致していないその様子は明らかに異常だった。
 すぐそばに立つ美嘉も、背後に佇んでいたマジアベーゼも全く同じ気持ちだった。
 
「マジアベーゼ!!」
「分かってます……よ!!」
 美嘉の声に応じて、マジアベーゼは地面に支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)を叩きつけた。
 マジアベーゼの魔力を受けた地面……アビドスの砂が波のようにうねり、セリカの前に分厚い壁を作り出した。
 壁に突き刺さったりんねの両足がりんねの意思とは無関係に連続蹴りを叩きこむ。10度も蹴ったころには砂の壁の魔物は耐久力の限界に至り爆発して消え去った。
 ちりとなり消える魔物の壁の奥に仮面ライダーバルカンの姿は無い。
 ほっと安堵する間もなくバルカンの姿を捉えたりんねの体は、次なる標的を見つけて意思に反して駆けだした。
 握りこんだ拳を大きく引き構える、視線の先には攻撃を防いだマジアベーゼの姿があった。

「次は私ですか。忙しい方ですね。」
「また体が勝手に!!」
 マジアベーゼが鞭を構え、美嘉も急いでりんねに向かって駆けだした。
 セリカが4度引き金を引くのは、彼女たちよりも速かった。
 カンカンと甲高い響きと共に空中に飛び上がったマジェードの体が銃弾に弾き飛ばされ、砂に塗れて地面を転がった。
 純白の装甲が煤けた姿を前にセリカは再びエイムズショットライザーの引き金を引いた。
 断続的に弾丸がマジェードを弾き飛ばす、飛ばされるたびにマジェードはセリカに殴りかかろうとし続ける。
 出来の悪いロボットでも見ているようだと美嘉は思った。今のりんねはセリカを攻撃する以外の行動をとろうとしていない。

「私だって……!!
 私だってこんなことしたくない!
 マルガムならともかく……貴方達と戦いたくなんてない!!
 錬金術を悪用するあんな男に、力なんて貸したくない!!」
「どういうこと……じゃあなんで何度何度も立ち上がって襲ってくるのよ!!」
 キヴォトス人は弾丸程度で死ぬことはない。
 それでも、撃たれ続けてもなお立ち上がる人間をみるのはセリカにとって初めての経験だ。
 もしそれが勇気なら、セリカは感心しただろう。
 しかしりんねの口から出る言葉は、戦いへの拒絶とダークマイトへの嫌悪だけだ。
 全員の表情が曇る。最初に可能性に行き着いたのは美嘉だった。
 
「……まさか、彼女の行動は自分の意思じゃないってこと?
 ルルーシュのギアスのような何かで、ダークマイトに操られているんじゃ。」
「成程……だとしたら彼女の奇行にもつじつまが合います。
 マルガムである美嘉さんと同じように私たちを襲ったのも、ダークマイトの敵と判断したのなら納得です。」
 九堂りんねの行動は、ダークマイトが用いた秘密道具『命れいじゅう』による支配が原因だ。
 バシンという音を響かせマジアベーゼが再びアビドスの砂を叩く。
 先ほどはセリカの前に壁を作り出した魔物創造だったが、今度は寄り集まった砂がりんねの足元で全身を包むように渦を巻いた。
 意思で止まらない以上、強引に動きを封じる以外に選択肢はない。
 このままだとセリカがりんねを殺してしまうかもしれない。

「趣味ではありませんが致し方ありません。
 ノワルの技の模倣といきましょうか。」
 不本意そうに両手を掲げると、りんねの足元の砂が一枚の布のように全身に纏わりついていく。
 両腕で何度も砂を払うが真化に至っているマジアベーゼの魔力の方が今のりんねより上だ。
 次第に全身が砂で覆われ、仮面ライダーマジェードの体は人間大の砂像のように固められた。
 唖然とする美嘉とセリカの前でりんねが動きを止め、マジアベーゼはつまらなそうにため息をついた。

「”闇檻劣化再現:砂檻”とでも名付けますか。
 こういった完全拘束はやはり面白くないですね。仮面ライダーなどという全身鎧なのがなおさらいけない。
 表情も抵抗も見られないというのは。味気ないものです。」
「密閉しているように見えるけど……大丈夫ですか?」
「逆ですよ。
 今の彼女はこうでもしないと止まりません。
 私自身がそうでした。己の理性でも欲望でもないナニカに動かされてしまった人を止めるのは、強引な力しかありえない。」
 一目すると呼吸さえままならない砂像だったが、マジアベーゼは確信をもって答えた。
 暴走状態になりマジアマゼンタを汚染するに至った過去の自分を止めたのは、魔法少女イミタシオが復讐と憎悪を乗せた巨大な一撃によるものだった。

15空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:45:00 ID:C9nx7xck0

「貴方も覚えがあるのではないのですか。美嘉さん。」
「どういう意味?」
「貴方の中にある『殺意』……それは貴方のものではないでしょう。」
 水色の人形のようなエンジェルマルガムの顔の奥で、亀井美嘉の目は黒い星を宿すマジアベーゼの目とあった。
 見た目は自分より幼いのにその言葉には貫禄や風格とでもいうべきものがあり、確かな確信を持った言葉だった。
 
 亀井美嘉の殺意は亀井美嘉のものではない。そもそも亀井美嘉がこれまでの人生で殺意を抱いた経験があるかさえ怪しい。
 美嘉に支給され紆余曲折あり取り込んだ悪霊、月蝕尽絶黒阿修羅の宿す底の無い殺意。美嘉がキリトに向ける殺意の根幹はそれだ。
 理性でも欲望でもナニカ。そう言われたら確かにその通りかもしれない。言い得て妙だと美嘉は微かに笑う。

「貴方がその殺意をどう使うかは自由です。
 キリトを殺すという目的を止めるつもりは私にはありません。
 ですが、己の理性でも欲望でもないものに身を委ねるには覚悟が必要です。吞み込まれて彼女のようにはなりたくないでしょう?」
「……忠告、感謝します。」
 全く同じタイミングで九堂りんねを封じた砂像を2人は見上げた。
 命れいじゅうが原因であることを2人は知らないが、己の意思とは関係のないまま動いた者は、強引に抑え込むしかない。
 今の九堂りんねの姿は未来の亀井美嘉かもしれない。
 冷たい空気が流れる中、バルカンの変身を解かないままセリカが不安げに尋ねる。

「マジアベーゼ。これで問題ないのよね?もう彼女は戦わなくていいのよね?」 
「概念的な拘束ではないとはいえノワルの技です。
 アビドスの砂を補助に用いている。仮面ライダーであろうとそう簡単に破れはしないはずですが。」
 九堂りんねの変身が解けるまで拘束し、ドライバーや支給品を奪い無力化する。もう数分もすれば酸欠で失神するだろう。
 普通の人間相手ならそれで足りる。マジアベーゼの拘束は十分有効のはずだった。
 それでもマジアベーゼの声に、安堵や余裕は欠片もない。
 嫌な予感はあった、おそらく全員に。
 誰一人変身を解いていないことが、その何よりりの証拠だった。
 
 『アルケミスリンク!』
 不安が現実になる音が、砂像の中から響いた。
 雪のような白い光が砂像の右足に集まっていき、そこだけ太陽でも燃えているようにぐんぐん赤熱していく。
 
 マジアベーゼの拘束に落ち度はない。
 ただ彼女は、1つ勘違いをしていた
 九堂りんねが受けた命令は【ダークマイトの敵を倒せ】ではない。
【全てを捧げてダークマイトに従い尽くす】だ。
 
『サンユニコーン!ノヴァ!』
 電子音と同時に砂像の右足が爆ぜた。
 マルガムを倒せるほどの、それも本来は両足で何度もぶつけるエネルギーをため込んだことでマジェードの右足から黒い煙が上がっている。
 体内でダイナマイトを点火させたようなものだ。足がへし折れていたっておかしくないだろう。
 
『アルケミスリンク!』
「二発目!!うそでしょ!?」
 誰かが叫んだ。マジアベーゼは操った砂を集めセリカは引き金を引いたが、間に合わない。
 
 『サンユニコーン!ノヴァ!』
 自由になった右足を大きく反らす。美しく光り輝く足が叩き込まれたのは仮面ライダーマジェードの胸だった。
 足を180度近くに曲げた酷く歪な一撃に胸を中心に体を抑える砂が弾け、無茶苦茶な動きに膝の骨がゴキリと嫌な音を立てた。

 全てを捧げてダークマイトに従いつくす。
 ・・・・・・・・・・・
 自分の体を破壊してでも、従いつくす。
 そう命令された以上、九堂りんねに逆らう選択は残っていなかった。
「くっ……」
 硬い何かがぶつけ合うような嫌な音が再びマジェードの膝から聞こえた。
 自分を蹴るために強引に外した膝を強引にはめ込んでいた。当然骨や筋肉はズタズタだろうがそれでもりんねは歩き出す。
 そう命令されているから。そこに勇気など存在しなかった。

「はぁ……はぁ……」
「何を……何をやっているのよ!!」
 仮面ライダーマジェード。太陽のごとき情熱と一角獣のような清廉さを宿す錬金術師。
 今の彼女にその美しさは見る影もない。右足を引きずり胸元は大きくえぐれている。
 糾弾するようにセリカが叫んだ。痛々しくて見ていられない姿にセリカの声もわずかに潤んでいる。

16空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:45:26 ID:C9nx7xck0

「ごめんなさい……ごめんなさい。」 
 涙で滲んだ声だった。それが今の九堂りんねに許された精一杯の抵抗だった。
 足が痛い、胸が痛い。それ以上に心が痛い。
                 ・・・・・・・
 マジアベーゼの拘束は九堂りんねを殺さないための手段だった。命れいじゅうによる支配はその慈悲を踏みにじった。
 立ちすくむ3人は動けない。緊急キズナワープにより九堂りんねが光に包まれたのは、ちょうどそんなタイミングだった。
 光に包まれる原因は仕込まれたマナメタルによるものだが、りんねにもその存在は知られていない。
 困惑をよそに九堂りんねの体が勝手に何かを取り出し地面に投げた。

 「何で……私は……」
 諦めたような言葉を最後に九堂りんねの姿は消え、入れ替わるようにりんねがいた場所の地面が虹色に光った。
 よく見るとその中心には、コインが2枚落ちていた。
 ダークマイトの”個性”が宿るそのコインはむくむくと土気色の怪物の姿に変わる。
 鉄仮面をつけタキシードを着た怪物は細身の体なのに手足だけが異様に太い。
 錬金兵。そう呼ばれる怪物だ。
 覆いかぶさる錬金兵を、エンジェルマルガムと仮面ライダーバルカンがそれぞれ抑え込む。
 単純なパワーだけで言えば2人と大きな差はない。錬金兵を生み出すコインは”数”の制約は与えられても”質”は本来の性能据え置きだった。

「何よこいつ!」
「りんねさんの錬金術?それともこれもダークマイトの能力?」
 置き土産というにはあまりにも厄介な相手だ、変身できていなければ美嘉どころかセリカだって無事か怪しい。
 こいつらを残した動きもダークマイトの支配によるもので、九堂りんねの意思ではないのだろう。
 そう考えると無性にむかっ腹が立つ。セリカも美嘉も同じ思いだ。

「……流石にこれは、笑えませんねダークマイト。」
 殊更キレていたのはマジアベーゼだ。
 マジアベーゼは本来ダークマイトに微塵も興味を抱いていない。
 平和の象徴だのなんだのと誇大妄想を並べる相手の評価はかつてのロードエノルメにも劣る。
 そもそも、レッド相手の対応がイドラ・アーヴォルンや横山千佳と比べて遥かに雑であったようにマジアベーゼはそもそもとして男に興味がない。
 ダークマイト側ではなく九堂りんね側で戦っていたのも、仮面ライダーとはいえ美少女相手ならまだわずかにモチベーションがあったからだ。
 そんなマジアベーゼが不俱戴天の仇のようにダークマイトの名を呼んだ。彼の九堂りんねに対する仕打ちはマジアベーゼの矜持と真っ向から反発していた。
 
 彼女が見たいのは魔法少女が苦難を前にしても諦めず、正義を為す輝きだ。
 ノワルのように抵抗の意思さえ剥奪し輝きをくすませる支配でさえ生理的に受け付けられなかった。
 ダークマイトはそれより悪い。意思を奪い正義を奪い、輝きそのものを潰す支配。
 可能性を奪うどころか、可能性さえ与えない支配。
 それを正義と呼ぶのは、『正義』そのものへの――正義のヒロインたる魔法少女たちへの侮辱に他ならない。

「ですが、コインから兵士を生み出したのは失敗でしたね。
 おそらく九堂りんねではなくダークマイトの力でしょうが。」
 二度、支配の鞭で錬金兵を叩く。
 エンジェルマルガムとバルカンを抑え込んでいた2匹の腕が急速に力を失い、アビドスの大地に倒れこんで砂に溶けた。
 支配の鞭は触れたものを魔物に変え、操る。そこに意志の有無は関係ない。
 人間さえ操れるとまでは言わないが、コインを錬成した兵士を生み出すことなどマジアベーゼには造作もない。

「この程度の怪物、操ることは造作もありません。」
「一瞬で終わっちゃった。」
 マジアベーゼの動きは、速い。
 真化へと至った魔法少女。ただでさえキヴォトスの生徒や仮面ライダーに劣らぬ戦闘経験は、ノワルという極大の相手との接触もあって研ぎ澄まされている。
 何よりも目を引いたのは、マジアベーゼの固有能力だ。
 魔物にして支配する。その力はダークマイトの影響下だろうと問題なく行使できた。
 
「魔物を生み出す力。
 もしかしてこの力は……」
「そうですね。憶測の域を出ませんが。
       ・・・・・・・・・
 私は恐らく、ダークマイトの天敵です。」
 
 内容とは裏腹にちっとも嬉しくなさそうに宣言する。
 空間に赤黒い穴が開き、中からプテラノドンマルガムがその姿を見せたのはちょうどこの時だった。
 彼女たちがダークマイトの前に現れる、1分前の話だった。

17空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:46:33 ID:C9nx7xck0
 ◆◇◆◇◆

「俺を倒す方法だって、そんなものが本当にあると思うのかい!?」
 
 ダークマイトの倒し方が分かった。
 突然現れた小娘には確かに異様な覇気があるがそうあっさりと豪語されてはダークマイトのプライドの立つ瀬がない。
 りんねに指示を出すよりも早く、ダークマイト自身が叩き潰さんと飛び掛かる。
 その右手は黄金色に輝き、マジアベーゼという敵(ヴィラン)を象徴の名のもとに叩き潰すための動きだ。
 自分が主人公だと言わんばかりに高笑いを上げる男を、マジアベーゼは泥を見るような冷たい目つきで睨んでいた。

「TORINO SMASH!!」
「真化(ラ・ヴェリタ)」
 黒い星が瞬き、少女は飛翔する。
 夜蜘蛛の帳。魔法少女の敵としての真髄。
 全力を出した悪の総帥の周囲には、漆黒の蜘蛛糸が縦横無尽に張り巡らされている。
 マリスネストという技である。糸に阻まれダークマイトの拳はマジアベーゼにかすりもしない。
 黄金の腕にまとわりつく蜘蛛糸をダークマイトは払いのけるが、マジアベーゼが腕を振るうと払いのけた倍の糸がダークマイトを縛り上げる。
 
「ノワルに比べれば貴方程度雑魚もいいところですよ。
 もっとも、あの女も私同様あなたに興味などないでしょうけど。」
「随分言ってくれるじゃないか!
 防御力は大したものだがそれだけではこの俺には勝てないよ!」
「勝つ?何を言っているんですか?」

 軽蔑を込めた視線と共に、蜘蛛糸で絡めとった右腕に真化によって変化した支配の鞭を叩きつけた。
 金属がぶつかり合うような鈍い音が響く。やはり生身の体ではなく錬金で作り出された装甲だった。
 仮面ライダーカリスの攻撃を相殺しアメンの拳に耐え、ダークマイトの”個性”により常時修復可能なオールマイトボディ。
 破壊するにはそれこそ全力の緑谷出久レベルの攻撃力が要求されるが。
 マジアベーゼを相手にした今回に限れば、装甲であった時点でダークマイトは負けていた。
 
「もう勝負はつきました。」
 マジアベーゼの魔力を浴びたオールマイトの腕を形作る金うねうねと動き、スライムのような形状の魔物となって地面に音を立て溶け落ちた。
 見るものに畏怖を与える力強い腕。すっかりどろどろのゼリー状になった腕が開き細身の男の無骨の腕が露になった。

 「お、俺の体がァ!!!」
 男の顔から余裕な笑みは消え、野良犬に吠えられたかのようなみじめな顔でマジアベーゼから飛び離れた。
 マリスネストに縛られたダークマイトの体がかさぶたのように剥がれ落ち、オールマイトの皮を被った特徴のない男の顔が露になった。
 
 その隙を逃すほど、この場の戦士たちは甘くはない。

「隙を見せたわね。ダークマイト!!」
「アンタの顔はもう見たくない!!」
「貴様らぁ!!!」
 シノンと黒見セリカ。あるいは仮面ライダーカリスと仮面ライダーバルカン。
 マジアベーゼが生み出した魔物たちを足場に空中を駆けあがり、生身を曝したダークマイトに武器を向ける。
 言葉こそ強気だがオールマイトのコスチュームは肉体の変形と共にびりびりに破け、へばりついたようなオールマイトの顔や筋肉の中で男は尻餅をついていた。
 そこにはもはや平和の象徴を名乗る余裕もなければ威厳もなかった。

 (倒さなきゃいけない、この男はここで倒さなきゃいけない。
 たとえこの男が――ただの人間だったとしても!!)
 言葉にならない声で喚く。ダークマイトの中身はヘイローもなければALOのアバターでもない。ただの人間だ。
 シノンとセリカはその姿から精いっぱい目をそらした。
 生理的な嫌悪感からではない。2人は知っている。人間は簡単に死ぬという事実を知っている。
 シャーレの先生のようにヘイローを持たない人間は、銃弾で容易く命の危機を迎えることを。
 人が生み出した武器を本気で振るえば、幼いシノン――朝田詩乃でさえ人を殺せるということを。
 武器を振るえと脳の裏側でアラートが鳴る。グリオンがそうであるようにダークマイトも人の形をした怪物だと叫び続ける。
 同時に2人の中の良心が訴える。仮面ライダーがその武器を全力で人に向けて振るえばどうなるか。部屋な銃弾よりも余程惨くこの男は死ぬということなど子どもにも分かる。

(躊躇っちゃダメ!マジアベーゼが作ったチャンスを無駄には出来ない!
 この男を倒さないことには九堂りんねだって支配されたままだ!倒すしかない!!)
 ・・・・・・・・・
 己の良心に殺される前に仮面ライダーたちはカリスアローを振り下ろしエイムズショットライザーの引き金を引いた。

18空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:48:10 ID:C9nx7xck0
良心の抵抗故かそれともそんな判断をする余裕が2人にはなかったのか。両方の理由でラウズカードもプログライズキーも装填されていない武器に必殺の威力はない。
 それでも仮面ライダーの一撃は”個性”を有する異能者だろうと斃しうる。殺しうる。
 だがその攻撃は――

『ハイアルケミスリンク!』
『サンユニコーン!ビッグバンノヴァ!』
 ――仮面ライダーの相手をするには不足だった。
 躍り出たマジェードが太陽のような火球を蹴り飛ばし、2人のライダーは焦げるような痛みを両腕に受け墜落していく。
 命れいじゅうの効果は継続中だ。九堂りんねがダークマイトを守るのは必然だが、それに比べても九堂りんねの放つ熱量は常軌を逸していた。
 
「何よこいつ!さっきよりもずっと強いじゃない!!」
 バルカンの姿でも息が苦しい。
 酸素が急速に燃え口の中肌がちりちりと音を立て乾いていた。
 その理由に気づいたのは九堂りんねの赤く光る右腕を見た梔子ユメだった。
          ・・・・・・・
「りんねちゃんは……令呪を使ってる!!」
「なんですって!!」
 
『ジャカジャカジャッカル!!』
 アメンバッグルに装填されたジャッカルレリーフ。艶のある電子音と共にユメは駆けだした。

「ダークマイトの支配は、令呪を使用させることまでできるっていうの!?」
 反応が最も遅かったのは美嘉だ。この場において戦闘経験が群を抜いて少ないことがここで響く。
 エンジェルマルガムとして両腕を上げると、周囲の残骸がオレンジ色の怪物に姿を変えた。
 
「行って!!!」
「「「ガイ・ガイ・チュー‼」」」
 エンジェルマルガムの能力は死者の蘇生。といっても土塊から仮初の命を与える力だ。
 殺し合いにおいて反則としか言いようが、その意思を操ることはエンジェルマルガム本人にもできない。
 その怪物たちが何なのか美嘉にも分からなかったが、必死だった彼女に考える余裕は無い。
 美嘉が自分たちの主人だと理解したオレンジ色の怪物はユメに続いてマジェードへと駆けだした。
 彼女たちは知る由もないが、アビドス高校において宇蟲王ギラが呼び出しミームアスランが意味不明な言葉と共に叩きのめしたサナギムの群れだ。
 
 加速するアメンとサナギム軍団の前にマジェードは降り立つ。
 胸がえぐれ体は砂と熱気に焼かれている。それでもその姿にはどこか気品のようなものさえあった。
 優雅にさえ見える挙動で仮面ライダーマジェードは……九堂りんねはダークマイトへと振り向き口を開いた。

「ダークマイト……様。」
 
 先ほどまでの熱気が嘘のように、少女達の背中に怖気が走った。信じられない言葉に全員の足が止まる。
 九堂りんねは肉体こそダークマイトに支配されていたが、その心までは操られてはいないはずだ。
 その心が――既に壊れ始めていた。
 
 涙を流すダースドラゴンを「バグ」と断じるほど冷徹な男に生殺与奪を握られ。
 マルガムでさえない少女を殺すために攻撃することを強いられる。
 とどめとなったのは緊急キズナワープだ。
 肉体を再構成させ転移するその技術を動かすには強い絆が必要だが、九堂りんねとダークマイトに絆などない。
 だが【全てを捧げてダークマイトに従い尽くす】と言う命令が、ダークマイトの「来い」という言葉に従うことが可能な唯一の現象――マナメタルによる緊急キズナワープを引き起こした。
 
「貴方に……貴方のために彼女たちを討ち果たします!!」
 吊り橋効果という言葉がある。
 高所のつり橋に立つと恐怖で鼓動が速くなりそれを恋慕による興奮だと脳が錯覚する、錯誤帰属とも呼ばれる心理現象。
 九堂りんねに起きた現象は、いわばその究極系。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 緊急キズナワープができたということは、ダークマイトと九堂りんねは深い絆で結ばれている。
 九堂りんねの脳はそう認識した。
 九堂りんねの心はその矛盾に耐え切れず、壊れた。
 陶酔したかのような叫びに尻餅をついたままのダークマイトだけが笑顔を浮かべる。マジアベーゼの力で失われた顔はオールマイトの表情に戻りつつあった。

 加速して飛び掛かるジャッカルレリーフのアメンを前に令呪で本領を取り戻した――否、狂気によりリミッターが外れてしまった九堂りんねは顎にめがけて殴りかかる。
 パンチ力7.9tを誇るマジェードの拳が風を切る。亀井美嘉や黒見セリカを前にした時よりも遥かにキレが増していた。

19空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:49:45 ID:C9nx7xck0

「危なっ!!」
 紙一重で躱す。ユメが見切れたわけではなく幸運としか言いようがない攻防だった。
 だが回避のために大きく姿勢を崩したユメは、がら空きになった脇腹への攻撃に対応できない。
 ミシミシと響いた音が、ユメの脇腹から響いたのかりんねの右足から出たのかはもはや知る由もない。
 内臓まで響く衝撃と共にユメの体はボールのように蹴り上げられた。
 
「がっ……!!」
 横隔膜を揺らす衝撃にユメの肺が全ての息を吐きだした。キヴォトス人の頑健な肉体だろうとアメンの装甲がなければ呼吸さえままならなかっただろうと嫌な想像を浮かべてしまう。
 落下地点にサナギムがいなければユメは戦闘不能だっただろう。代わりに2匹のサナギムはぐじゃりと嫌な音を立てて土塊に還った。
 残るサナギムたちは顔を見合わせたが、こいつらは元々宇蟲王ギラの配下だったサナギムだ。逃亡と言う選択肢はない。
 
「「「ガイ・ガイ・チュー‼」」」
「あははははははははは!!!!!」
 仲間の仇だとサナギムたちは果敢に攻めるも、高笑いとともに振り下ろされるマジェードの拳に一匹また一匹と土に還る。
 その姿に戦いを拒むような様子は残っていなかった。
 ダークマイトに『命れい』され、絆を結び、隷属する。
 ダークマイトがそうであるように、九堂りんねは殺し合いに乗った。
 その姿がどういう意味をもつか、ダークマイトを除いて唯一その罪の重さを知るシノンが。最初に気づいてしまった。

「駄目……駄目よ!その一線を越えてしまったら。
 自分を壊してでも戦おうとする今の貴女が、心から殺し合いを望んでしまったら!
     ・・・・・・・・・・・
 貴方を、殺さなきゃ止められないじゃないの!」
「止める必要なんてない。
 ダークマイト様の作る平和のため、死ぬのは貴方達敵(ヴィラン)!」
 九堂りんねなら死んでも言わないだろう台詞だ。
 姿は同じ仮面ライダーマジェードのはずなのに、そこには一ノ瀬宝太郎らが知る太陽のような輝きも一角獣のような純白さも残っていなかった。
 ダークマイトは満足げにその様子を眺めていたが、りんねの足がシノンに向かう様子に怒鳴り声をあげた。
 ダークマイトにとってシノンや他の人間は脅威ではない。『敵(ヴィラン)』ならぬ彼の『敵』はこの場に一人しかいない。

「違うりんね!そんなやつらはどうでもいい!
 あの蜘蛛女だ!あいつを殺すんだ!!!」
「はい、ダークマイト様。」
「もはや平和の象徴とのたまうメッキさえ剥がれましたか!
 その程度の心づもりで正義の使者を名乗ろうなどと!
 本当に……本当に心底頭に来ますね!!!ダークマイト!!!」
 シノンに向いていた姿勢をぐるりと不気味にねじり仮面ライダーマジェードが動く。一歩進むたびに焼け焦げ
 ダークマイトを完全に無力化させるために空中を猛スピードで突っ切っていたマジアベーゼだったが、狂気に呑まれ全力を超えた今の仮面ライダーマジェードのほうが速かった。
 
「マリスネスト!」
 夜蜘蛛の帳は継続中だ。
 真化状態の魔法少女さえ封じられる蜘蛛の糸。
 ダークマイトの攻撃だって防いで見せた糸で九堂りんね動きを縛ろうとしたが。

 『アルケミスリンク!』
 「ウィザードマルガムの魔法みたいなものよね。
 私にそんなものは、効かない!」
 りんねがドライバーを動かすと絡みつく糸が力なくほどけて、黒い粒子となって消え去った。

 この九堂りんねは一ノ瀬宝太郎や黒鋼スパナと同じ世界の住人ではない。
 オロチマルガムの出現時にガッチャ―ドデイブレイクが現れず破滅した世界線の九堂りんね。
 だが、浮世英寿たちと出会いウィザードマルガムと戦ったのは分岐点より前のことだ。
 
 だから九堂りんねは知っていた。
 ザ・サンには無尽蔵のエネルギーが。
 ユニコンには浄化の力がそれぞれ宿る。
 両者が混ぜ合わされば――ウィザードマルガムの悪夢の魔法さえ浄化できる。
 ――マジアベーゼの魔法だって浄化できても不思議ではない。

 マジアベーゼは、ダークマイトの天敵である。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そして仮面ライダーマジェードは、マジアベーゼの天敵だった。
 
 蜘蛛糸による盾を失ったマジアベーゼの首が締め上げられる。
 マジェードの握力に潰された気管が必死に酸素を取り込もうと足掻くが、マジアベーゼの体は急速に力を失っていく。
 真化が維持できない。通常形態に戻ったマジアベーゼの体が更なる苦痛で潰れたカエルのように泡を吹き、必死に意識を保たせようと足掻く。
 マジアベーゼ耳に高笑いが響く。耳障りな声を上げるような人物はここには一人しかいない。

20空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:50:45 ID:C9nx7xck0

 「よくやったぞりんね!流石私のヒロインだ!!
 そしてマジアベーゼ!象徴たる私に対する狼藉を償う方法は1つしかない!」
 既にオールマイトの肉体は再構築されていた。
 これ見よがしに立ち上がったダークマイトの顔はこれまでと同じ余裕を浮かべた薄ら笑いだが、その眼だけは一切笑っていない。
 薄汚れた本性を映したかのように真っ黒に淀んだ瞳をマジアベーゼに向けて、ダークマイトは親指を立てて下に向けた。
 その手は赤く光っていた。

「死だ。」
 ダークマイトも令呪を起動する。赤い光に呼応するようにオールマイトの太さにまで膨らんでいた指輪の1つが不気味に赤く光る。
 その指輪はダークマイトが元々持っていた錬金の触媒ではない。
 ダークマイトとも九堂りんねとも異なる、エンヴィーの世界において用いられる錬金の秘術。
 コーネロという男が用いた賢者の石――のまがいものだ。
 だがその効果は3流以下のコーネロが1流の錬金術師たるエドワード・エルリックを相手どれる程度には、錬金術を増幅できる。
 アンナ・シェルヴィーノの個性には及ばないにせよ、ダークマイトという一流の錬金使いにとっては十分な切り札だった。
 
 ぐじゃりという音がマジアベーゼの内側から響いた。
 アルケミスドライバーから金色の刃が伸びてマジアベーゼの胸を貫いている。
 ドライバーの中で小さく何かが光る。ダークマイトがドライバーに仕込んでいたコインの欠片だった。
 賢者の石と令呪の増幅を受けた今のダークマイトなら遠距離だろうと操作できる。
 万が一りんねが自分に反旗を翻した際に”おしおき”として用意していたものだったが、思わぬところで役に立ったと満足げに顎を撫でた。
 
 「りんねに首をへし折ってもらえると思ったかい?お前のような醜悪なヴィランは最後の最後まで苦しんで死ぬべきだ!」
 「いつか……誰かが……私を倒す。そんなことは分かっていました。」
 ダークマイトの言葉には耳を貸さず。マジアベーゼは口を開く。
 喉が潰され肺に穴が開いている。酸素を無駄遣いしているかもしれないが喋らないと意識が消えて二度と目覚めなくなる。確信があった。
 これほどの致命傷でもマジアベーゼの変身は解けていない、あと何秒持つのかはマジアベーゼ自身にも分からない。
 それでも今の彼女は気弱でちょっとエッチな中学生柊うてなではなく、エノルミータ総帥マジアベーゼだ。

 「でもそれは……今じゃないし……お前にじゃない……。
 お前が倒した程度で……私は終わらない。」
 命の灯火が尽きるこの時だろうと、マジアベーゼの矜持は変わらない。
 口から血を垂らしながらニヤリと笑う。
 未成熟な少女とは思えない存在感を前に、ダークマイトの背筋がぞわりと冷えた。
 
(なんだ今のは……恐怖?
 この象徴が!死にかけのヴィラン、それもあんな小娘に……恐怖したのか!?)
「ありえない!オールマイトならお前のようなヴィランの減らず口に足を止めたりしない!
 もう目障りだ!りんね!殺せ!!」
「遅いですよダークマイト!
 令呪を使えるのは……なにも貴方達だけじゃない。」
 
 腕を掲げる。マジアベーゼの令呪が眩く光り、マジアベーゼのを貫く黄金の刃がグネグネと形を変え無数の針のように尖った。
 りんねの腕に、足に、肩に突き刺さりる針に苦悶の声を上げる。
 思わず手を離したりんねの眼前で、飛翔できないほどに弱ったマジアベーゼがアルケミスドライバーから引きはがされた黄金の塊を引き連れ力なく落下した。
 マジェードの浄化能力に魔物としての性質はすぐさま失われるも、マリスネストと違いダークマイトの金貨が媒体となったものだ。
 スライムのように散らばった黄金がりんねの体にへばりつき動きを止める。
 重力に従い離れていくマジアベーゼに手を伸ばすも、誰かに背中から引き留められるようにりんねの腕は前に進まない。

「しまっ……」
「ベーゼ!!」
 落下するマジアベーゼに向けてセリカが駆けだす。
 仮面ライダーバルカン シューティングウルフ。走力 100mを2.9秒。
 制限でその走力はフルに出せているとはいいがたい。それでも今のセリカの速度はその上限に肉薄していた。
 地面に激突する寸前にスライディングのように姿勢を傾け受け止める。マジアベーゼの魔力を受けた黄金の塊がクッションのように指に馴染み取りこぼすことはなかった。

21空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:51:20 ID:C9nx7xck0

「あぶ……」
 一息つこうと言いかけた口が受け止めた少女の姿を前に閉じた。
 わずかなニプレスだけで隠された胸元には深々と金色の刃が刺さったままだ。
 マジアベーゼの魔力を受けたからか、刃は分厚いゴムのように曲がりマジアベーゼの傷を塞いでいた。
 とはいえ重症なことは明らかで隙間から赤い液体が滴り落ちている、消えかけた炎のように弱弱しい姿からは鉄の匂いがした。
 その状態でもマジアベーゼが”マジアベーゼ”でいられるのは令呪の恩恵だろうか。
 
「こんな姿で……アンタ、どうして……」
 答えられないことなど分かっていても、セリカには問わずにはいられなかった。
 セリカやユメにはアビドスを守るという理由がある。ダークマイトとの共存はもはや彼女たちには不可能だ。
 だがマジアベーゼが――柊うてなが戦う理由は何なのだろうか。
 ユメへの同情だけでここまで戦ってくれるのか。尽きるような命で恨み言一つ言わないのか?
 
「なにがアンタをそうさせるの……」
 マジアベーゼは答えない。
 ただ変わらず薄い息を吐き、取り込めない酸素を取り込もうと静かに足掻いている。

「返してもらおうか!!
 その女は万死に値する!!」
 もはやオールマイトの演技さえ崩れ去っていた。それほどまでにマジアベーゼはダークマイトの絶対性を揺るがす存在だった。
 令呪は未だ継続している。ダークマイトがコインを投げるとわらわらと錬金兵が生み出され、本来の性能を発揮した土気色の怪物が餌に群がる蟻のように寄り集まった。
 
「そのまま走って!!」
 ユメが叫び、アメンバッグルを動かす。
『スカスカ!スカラベ!!』
『スカスカ!スカーレット・ランペイジ!』
 丸みを帯びた装甲となったユメが作り出した火球が落ち、錬金兵が炎に包まれる。
 その光景にダークマイトは忌々し気に顔を歪めた。冷汗が垂れていたが彼が気づく前にアメンの熱気で焼き消えていた。
 
「逃がすものか!!」
「逃がしてみせる!!」 
 『ROD・SYNBOL!!』『ファルファル ファルコン!!』『メジェメジェ メジェド!!』
 
 巨大なシーツを被った奇怪な姿に変身したユメ。同時に空には無数の目玉がダークマイトと錬金兵を見下ろしていた。
 アメンの専用武器 アンクシンボライザー。
 装填されたファルコンメダルが錬金兵の居場所を捉え、神の名を冠するフォームとなったアメンがその全てを焼き払う。

『メジェメジェ メナス・ジ・エンド!!』
 目玉から降り注ぐ光。既に炎でダメージを受けていた錬金兵が耐えられる道理はない。
 1つ1つと音を立てて崩れ去る、錬金兵が消え去るたびにダークマイトへ向けられた光線へと光が束ねられる。
 本来は特権魔法を持つ元上級騎士だろうと倒せる威力だが、支給品となった以上威力は制限されている。
 全ての光を集約しても今のダークマイトは倒せないだろう。

「それでも、令呪が切れるまでは抑え込んでみせる……。」
 稲妻が何度も落ちるような轟音の中でもその言葉ははっきりと聞こえた。
 泣き言でも夢想でもない。何があっても抑え込んでやるという覇気に満ちた姿は、セリカの知る小鳥遊ホシノによく似ていた。
 ともあれこれで数秒は時間を稼げる、セリカはふとシノン(あとついでに美嘉)のことを思い出した。彼女たちの気配がなぜだか消えていたことにようやく気付いた。

「シノン!あんたたちも……」
 振り向きざまに声をかけるも、そこにシノンと美嘉の姿は無い。
     ・・・・・・
 代わりに赤黒いゲートがぽつんと浮いている。誰によるものかは明白だ。
 何の合図もなくいなくなったことに複雑な思いもなくはないが、手の中で消えそうになるマジアベーゼの呼吸に思考は一瞬にして切り替わる。
 セリカは走った。
 時間がなかった。マジアベーゼがマジアベーゼでいられる内でないと仮面ライダーバルカンの全力疾走には耐えられないことは、仮面ライダーにも魔法少女にも疎いセリカにも分かる。

「許さん……許さんぞ羂索!マジアベーゼ!!」
 轟音が遠ざかっていく。梔子ユメの雄姿も見えない。
 それでもダークマイトの言葉が耳にこびりついて離れなかった。

22空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:53:21 ID:C9nx7xck0


 
 「逃げ足の速い奴らだ。だがそう遠くには行っていないはず。
 急いで追いかけないとなぁ。」
 令呪の効果が切れた。それはダークマイトのものでもあり、マジアベーゼのものでもある。
 逃げる時間を稼ぎ切った梔子ユメはすぐさま両腕を翼に変えて飛び立った。追うのは容易いだろうが体勢を立て直されると面倒だ。
 頭をぼりぼりとかくダークマイトの隣に、黄金に動きを防がれていたりんねが駆け寄る。
 マジアベーゼほどではないにせよ装甲の傷は深い。既に仮面ライダーマジェードの姿を保てず錬金アカデミーの制服姿だ。
 その眼には恋人を前にするような狂気的な光が瞬いていた。
 
「申し訳ありません。マジアベーゼを取り逃がしてしまい……」
「……。」
 ダークマイトは寛大な男だ。少なくとも自分ではそう思っている。
 失敗した部下だって一度はチャンスを与える。この場のダークマイトは経験していないことだが、配下のパウロが被検体に出し抜かれた時も一度は許した。
 オールマイトの顔で、象徴としての余裕たっぷりに許した。

「そうだねりんね。君は失敗した。」
 調教を受けた獣が鞭を持った人間に反応するように、りんねの体がびくりと震えた。
 凪いだ水面のように穏やかな目が下水のように淀んでいた。
 
「ダークマイト……さま?」
「安心したまえ、俺は紳士だ。ヒロインに手をあげたりはしない。
 だが、今の君ではだめだ。俺のヒロイン足りえない。
 ……なあ、りんね。世界を前に進めるためには何が必要だと思う?」
「……秩序と規則でしょうか?」
「破壊だよ。
 新たなるステージに進むためには大いなる破壊が必要なんだ!
 君がヒロインとして新たなステージに立つために、断腸の思いで俺は獅子の子を千尋の谷へ突き落とすとも!」
 どこまでが本心なのかダークマイトにさえ分からない。頭の中に浮かんだ言葉をただ立て続けに吐き出していた。
 分かることは、ダークマイトはりんねを許す気など全くないということ。
 そしてこれからりんねが酷い目に合うということだけだった。
 ダークマイトはりんねに向けて手を掲げ、唱える。
 
「こうだったねりんね。君の知る錬金術を聞いていて正解だった。
   ・・・・・・
 ……金色に染まれ!!」
「えっ……えっ……あ。」

 言葉の意味を理解した時には手遅れだった。
 ダークマイトの”個性”。『錬金』は触媒を用いて物質を想像する能力だ。
 アンナ・シェルビーノの個性を受けた時のように、賢者の石を持つ今のダークマイトなら如何なる物質だって取り込める。
 マルガムの触媒は、ケミーと人の悪意。りんねからその存在を知った今のダークマイトなら、作れてもおかしくはない。
 
 ケミーならいる。仮面ライダーマジェードとしての相棒、ザ・サンとユニコンのカードがある。
 悪意もある。ダークマイトと言う悪に文字通り絆された。あの瞬間確かにりんねは悪となった。
 平気で人を傷つける、踏みにじる。ダークマイトと同じ類の悪に落ちた。
 触媒はここに全て揃っている。錬金術師だろうとマルガムに堕ちる例は黒鋼スパナを初めいくらでもあるのだ。

23空と虚② 柊うてなという敵(おんな) ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:54:17 ID:C9nx7xck0

「しまっ……いや……いや……」
 何度も見てきた光景だ。グリオンがマルガムを生み出す時と同じ言葉だった。
 何度も聞いた悲劇だ。グリオンとの戦いの中で仲間は次々と死んでいった。
 ベルトの中からザ・サンとユニコンのカードが排出される。りんねの体から無数に伸びた黄金の触手が彼らを取り込み混ざり合う。
 心をミキサーでかき混ぜられるような苦痛の中、九堂りんねは正気を取り戻す。
 自分の行動を悔いる暇もないままに、心に入り込むケミーの悲鳴がりんねの精神を砕いた。
 ザ・サンが哭いていた。ユニコンが哭いていた。
 りんねも哭いた。
 
「いやあああああああああああああ!!!!」
「残念だよりんね。だがこれも試練だ!
 おとぎ話のプリンセスが怪物となった王子を愛し人に戻したように!君なら怪物の姿を乗り越えて真のヒロインとなれるはずだ!」
 
 黄金の渦が卵のようにりんねを閉じ込め。砕けて怪物を生んだ。
 左腕は一角獣の頭のように剣と一体化し、右腕は焼け焦げたように黒ずんでいた。
 全身の装甲はぐずぐずに溶けた銀を思わせる。胸から突き破ったマルガムの腕が仮面ライダーマジェードの仮面を握りつぶしていた。
 その姿の正式な名はサンマルガムユニコーンミクスタス。
 だがこの場においては別の名前が与えられた。
 
 「さあ行くがいいりんね――いや、マジェードマルガムと名付けよう!
 その醜き試練を乗り越え、真のヒロインとなるために!」
「うああ。」
 角の折れた馬のようなマルガムの顔は拷問でもされているかのように右目と口がふさがってる。
 馬は人の言葉を喋らない。ダークマイトの曲解したヒロイン像を形にしたような顔だった。
 
 泣いた少女のような嘶きをダークマイトはイエスだと解釈し、ある一点を指さす。
 赤黒いワープゲートがぽっかり浮かんでいた場所へと、ダークマイトの指示通り唸り声と共にマジェードマルガムは歩き出した。

24空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:56:09 ID:C9nx7xck0
 ◆

 何かがはじけたような音に黒見セリカは足を止める。彼女が抱きかかえる少女はもはや悪の総帥などではなかった。
 息も絶え絶えな柊うてなを前にとっさに物陰に隠れたが、ダークマイトから逃げきれたとはお世辞にも言えないし、その前に彼女の命が尽きるだろうことは明らかだった。

「どうして、私を運んできたんですか。
 貴女だけならダークマイトから逃げられたはずです。」
 掠れた声でうてなが尋ねる。胸の黄金はマジアベーゼの制御を失い溶け始めて、溢れた血がセリカの手を赤く染めた。
 いつの間にか仮面ライダーバルカンの変身が解け、ぼたりという音と共にセリカが零した涙がうてなの顔に滴り落ちた。
 
「じゃああのままむざむざアンタが殺されるところを見てろっていうの!?」
「……いい人ですね。貴女。」
 潤んだ赤い瞳がルビーのように煌めく。
 綺麗な目をしていた。映り込んだうてなの青白い顔だけが邪魔だと思った。
 死の間際にこんなことを思うとは随分余裕だと柊うてなは自嘲気味に笑う。漏れた声には血が混じっていた。
 
 「セリカさん。貴女」
 「喋らないで!貴女はもう……」
 声を発するたびに胸から赤い泡が零れていた。
 止めようとするセリカに、うてなは首を振ってはっきりと否定した。
 
 「喋らせてください。
 そうでないと意識が保てないんです。
 ……続けます。貴女は、ダークマイトを倒したいですか?」
 「……倒したいに決まってるじゃない!!!
 九堂りんねって人やアンタを酷い目に合わせて、あいつはへらへらと笑ってんのよ!それに……」
 「それに?」
 「あいつはアビドスを”悪”ってバカにして潰そうとしてる!
 他の連中からしたら羂索のこともあってロクでもない場所かもしれないけどさ!私たちにとっては大事な学園なのよ!!」
 ただでさえアビドスを悪だとして駆逐すると堂々宣言した男。その上九堂りんねに対する隷属ともいうべき所業を行ったことで堪忍袋の緒はとっくに切れていた。
 セリカの心からの叫びを前に、それを待っていたと言いたげにうてなは嬉しそうに微笑んだ。
 
「ユメさんと同じことを言ってますね。」
 血に濡れたポケットをごそごそと漁り、セリカの胸元に押し付けるようにうてなが何かを手渡した。
 トランスアイテム。そう名付けられた道具にはわずかに血がついていた。
 
「これって……アンタが変身するために使ってたやつじゃない!」
「そのアイテムは私の所有物ですが、支給品です。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 支給品ならば私以外にも使えるはず。
 私の力は奴とよく似ている。上手く使えば特効として働くはずです。」
「そんな……そんな大事なもの、貰えるわけ!」
「要らないなら捨ててくれても結構ですよ。
 万が一にもダークマイトに回収されるくらいなら、貴女に使ってほしいだけです。」

 ――御刀や仮面ライダーへの変身アイテムのように本来なら一定の資格が必要な武具もある程度敷居を下げて配り。
 羂索が言っていたことだ。事実AIとの適合を果たしていないセリカだって仮面ライダーバルカンに変身できる。
 そうでなくてもイミタシオやパンタノペスカのように、他者のトランスアイテムを自分のものにして変身したケースは存在するのだ。
 逆に言えばそれはダークマイトの手に渡れば――流石にダークマイトが変身できるとは思えないが――九堂りんねやその他の少女が望まぬ形で変身させられ使役される可能性だってあるということだ。
 そう言われるとセリカも断るに断れない。
 トランスアイテムを握りしめ、セリカはうてなの顔を見下ろした。

「なんで、アンタはそこまで……」
「ダークマイトの行動が私の矜持に反するから……ということにしておいてください。
 元より私は正義のヒロインではないんです。
 ダークマイトの言葉に則るなら、貴方達の中で私だけは敵(ヴィラン)。動く理由は自分のためです。」
 黄金色の瞳は固い決意を秘めたように光る。
 トランスアイテムで変身する姿、そこから垣間見える彼女の本質。それは誰に与えられるでもない彼女自身のものだ。
 どこまでいっても柊うてなはマジアベーゼだ。悪の敵になることはあれ正義ではない。
 ノワルに通じるところもある加虐的な性癖を除けばダークマイトなどよりもはるかに正当な生き方を選びながらも、彼女はそれを正義とは呼ばない。
 
「でも、貴女は違うでしょう?
 ユメさんもですが……貴方達はアビドスのために動いている。
 自分たちの居場所を守りたい。その『好き』が貴方達の源(オリジン)。そうですよね。」
 己を正義と呼ばないからこそ。他人の正義を尊べる。
 柊うてなという人間の本質を綺麗な言葉で形容するなら、そのようなものだ。
 そんな少女の目が輝かしいものを見るようにまっすぐに見開かれていた。

25空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/20(日) 23:57:33 ID:C9nx7xck0

 「……そうね。
 そこだけは、誰にも譲れない。」
 それがセリカにはむず痒く思えたし、同時に誇らしかった。
 掠れた目を向けるうてなを建物にもたれ掛からせながら、黒見セリカは考える。
 黒見セリカは正義の味方ではない。世界を破滅させる悪でもない。
 どこにでもいる普通の学生だ。学校が天文学的な借金を抱えていたり銀行強盗の経験があったりするだけの、キヴォトス基準ではありふれた生徒である。
 
 小鳥遊ホシノのような喪失もない。鬼方カヨコのような悪(アウトロー)としての自己もない。聖園ミカのような罰と後悔を背負うわけでもない。
 緑谷出久や切島鋭児郎のような献身も、トレスマジアのような輝きも、キリトやアスナのような闘争も、仮面ライダーのような悲哀もない。
 彼らに比べれば自分の悲劇など大したことないのだろう、彼らに比べれば自分の正義などちっぽけなものだろう。
 それでも、大切なものを守るために闘うことは、彼女にもできるはずだ。
 
 大通りから爆発するような音が響く。
 ガラガラと何かが崩れ、乾いた空気に埃が舞い上がる。
 ダークマイトが逃げていたユメに追いついたのだとすぐにわかった。ダークマイトにしてみれば最優先すべきは天敵たるマジアベーゼの確実な死の確認だからだ。

「逃がしはしないぞ羂索!マジアベーゼともどもダークマイト伝説の礎となるがいい!!」
「まだ……まだ戦える!!」
 セリカが振り向いた先で満身創痍のアメンが気丈に立ち上がる。
 セリカがどこかで聞いた人物像に比べて随分勇敢な人だ。彼女の――梔子ユメの戦う理由もきっと自分と同じだろう。

 セリカの足は自然と戦場に向かっていた。
 その右手にはエイムズショットライザーを構え。
 左手には、血が出そうなほど強くトランスアイテムを握りしめて。
 英雄と呼ぶにはちっぽけな正義を胸に大通りに姿を見せたセリカを前に、ダークマイトの陰湿な笑みが映る。

「セリカちゃん……」
「おやおやおやおや、君1人……ということはマジアベーゼは死んだか?
 いや……路地裏に姿が見えるな。だがもはや寿命も秒読みといったところだろう!」
 陰湿な笑みは目ざとく少女の姿を捉える。
 黒見セリカと共にいる負傷者と言う時点でマジアベーゼであることは明白だ、認識阻害もその体を為していなかった。
 
「今一度言ってやろう!あの無様な姿が象徴に歯向かった末路だ!
 そしてあれは君たちの未来の姿!平和の象徴たるこの俺にたてつくということは己が敵(ヴィラン)であるという証明!
 正義の前に貴様らは潰されるべきなんだ!」
「象徴?平和?正義?敵(ヴィラン)?
 そんなもの……知ったこっちゃないのよ!!」
「……なに?」
 何度も何度も繰り返し言われたダークマイトの在り方。
 その全てを一蹴するような言葉にこめかみがピクリと動く。
 そしてそれはセリカも同じだった。

「アンタはアビドスの敵!私の敵!
 私の大切な場所を、先輩を、仲間を傷つけた、馬鹿にした!
 闘う理由なんてそれで十分なのよ!」
 左手に握りしめたトランスアイテムを構え、黒見セリカは叫ぶ。
 なりたい、変わりたい、自分の好きを守るために闘える。そんな自分になるための言葉を。
 
「トランスマジア!!」
 
 太陽が輝く。ルビーのような瞳に黒い星が煌めいた。
 借り物の力かもしれない。彼女自身の強さではないかもしれない。
 それでもその姿は、その思いは。紛れもなく黒見セリカ自身のものだ。
 
 マジアベーゼとはまるで違う姿は、黒見セリカの正義が投影したものだったのだろう。
 アビドス校章の刻まれた黒いマントを羽織った少女の姿は肩と臍を大きく出した黒いパンキッシュなものだ、トリニティの謝肉祭で着たアイドル衣装に近かった。
 黒い長手袋で包まれた右腕に握られていたエイムズショットライザーが光り、彼女の愛銃シンシアリティに酷似した青いラインの通った黒いアサルトライフルに変わる。
 生まれ変わったような心地でセリカはダークマイトを睨みつけた、その両目にはマジアベーゼから受け継いだ力である証明のように黒い星が刻まれていた。

26空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:00:27 ID:3ZzeB0BY0

 どこかダーティな雰囲気を醸し出しながらも新たな魔法少女の誕生にうてなの鼓動が跳ね上がる。
 自分の力から彼女が生まれたことに感無量だった。
 
 「――最後の最後で、いいものが見れました。」

 未練はある。後悔もある。恐怖もある。
 死にたくはなかった。どうして自分がとも思うし。正義のヒロインではなく悪に落ちた存在に殺されるのは受け入れがたい。
 それでも柊うてなが最後に思ったことは、怨恨でも憎悪でもない。
 
「次は、貴女です。」
 
 新たな魔法少女を指さし、満足げな表情のまま柊うてなは目を閉じた。
 
 柊うてなは死んだ。
 しかしマジアベーゼの星は、今もなお輝きを失ってはいない。
 アビドスの若き太陽が輝く。
 新たなヒロインの背中がそこにあった。
 
【柊うてな@魔法少女にあこがれて 死亡】

「まさか……まさか……そうなのか?
 失念していた!そうだお前たちの変身は”個性”じゃない!!
 支給品だからか!譲渡ができる!」
 
 満足げな柊うてなとはうってかわって、ダークマイトは悍ましいものを見たと言いたげに顔を引きつらせた。
 マジアベーゼのことがすっかりトラウマになったのだろう。
 それ以上に彼女が最後に呟いた言葉が、ダークマイトの逆鱗に触れていた。

「こんな、こんなくだらない手で足掻くというのか、マジアベーゼ!!どこまでも薄汚いヴィラン風情が!!
 しかも言うに事を欠いて「次は貴女です」だと!!!
 オールマイトが俺に託した言葉をお前ごときが!穢すんじゃない!!」
「だからそんなもん知ったこっちゃないのよ。」
 セリカはオールマイトを知らない。
 仮に知っていたとしても、オールマイトが託した相手はダークマイトでないことなど誰の目にも明らかだろう。
 こんな男の八つ当たりを真に受けるつもりは、もはやセリカにはない。
 
 血管が千切れそうなくらい顔を歪めるダークマイトを意に返さず、セリカは青い何かを宙に投げ右腕のアサルトライフルで撃ちぬいた。
 シューティングウルフプログライズキー。仮面ライダーバルカンの変身に用いられたアビリティデータは弾丸を受けその姿を変える。
 青い狼だ。空色のマフラーを思わせる煙が首元から出ている以外は、仮面ライダーバルカンをそのまま四足獣にしたようなどこか機械的な獣だった。
 
「この力は……」
 攻撃そのものは外れだが、ダークマイトの声がわずかに震えた。
 物体の姿を変えるその能力、それはまさしくマジアベーゼが用いダークマイトに辛酸を舐めさせた力だからだ。
 同じ支給品を使った変身である以上覚悟はしていたが、黒見セリカの持つ力はマジアベーゼのそれと類似している。
 青い狼は一瞬ダークマイトを見ていたが、すぐに眼をそらしどこかに走り去っていく。
 ユメには分からないが、セリカには何か狙いがあるのだろう。狼の姿が視界から消えたころに息を整えたダークマイトが口を開いた。
 慇懃無礼な余裕を取り繕ってはいたが、言葉には敵意と害意が隠しきれてない。平和の象徴などという御大層なお題目を騙る男には、とてもじゃないが見えなかった。
 
「名を聞いておこう。新たな敵(ヴィラン)。
 名無しの雑魚を潰すだけでは、この俺の気が収まらんからな!」
「……そうね。」
 考え込むように首をひねるも、浮かぶ名前は1つだけだった。
 誇らしげに眼を見開いたセリカの頭上で太陽が少女を照らす中、少女は名乗った。
 
 「マジアアビドス。」

27空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:01:08 ID:3ZzeB0BY0

 ◆◇◆◇◆

 冥黒ノノミの行動理念は『グリオンをこのゲームの勝者とする』ことである。これはアヤネも既に倒れたホシノも同様だ。
 そのためならば彼女たち自身が誰かを殺す必要もないし、最善の選択であるなら逃げることも厭わない。
 ダークマイトが九堂りんねを呼び寄せた後合流した少女たちに加わらなかったのも、彼女一人戦闘に加わってもリターンよりもリスクの方が大きいという理由だけだ。
 同じように冷徹に打算的に、ノノミは美嘉を戦場から連れ戻した。

 ワープゲートを潜り抜けると同時に美嘉は腕を掴んでいたプテラノドンマルガムの手を振りほどく。気が付いたときには美嘉もノノミも変身を解いていた。
 美嘉はノノミほど冷静にはいられなかった。
 マジアベーゼは致命傷を負った矢先に強引にワープゲートに引きずり込まれた、ダークマイトを倒すどころか九堂りんねが完全にダークマイトに堕ちた。
 事態が悪化の一途を辿っていることなど美嘉にも分かる。ノノミが分からないはずはないのだ。
  
「なんで、なんで逃げたの!」
「マジアベーゼが敗北した時点で私がここに残る理由は無くなりました。
 残るあなた方ではダークマイトに勝つのは難しい。九堂りんねが健在である今なら不可能と言っても過言ではないでしょう。」
 不合格になった試験結果を突き付けるような無常さが言葉に含まれていた。
 勝てなくなったから逃げた、本当にそれだけなのだろう。
 ここからの逆転の可能性などノノミは微塵も信じていない。
 なにせグリオンがそうした反逆や奇跡を信じていない。グリオンが信じていないことをノノミが信じることなど不可能だ。

「それでも逃げる必要は無いはずよ。
 ダークマイトはノノミさんだって倒したいハズでしょ!
 見えていない支給品や能力だってあったかもしれない。みんなで力を合わせれば……」
「貴女がそれを言いますか?この戦いで何一つ役に立ってない貴方が?
 そういうセリフはまず全力を出してからいうべきものですよ。」
「それは……。」
「正直失望していますよ。シノンと手を組んだことは私にとってもプラスだったのでいいとして、まだしもこの期に及んで貴方は本気になっていない。
 黒見セリカがそうだったようにダークマイトの九堂りんねに対する仕打ちに怒っていたのではないのですか?
 なぜあなたはまだダークマイトを”キリト”として殺そうとしていないんですか?」
「でもそんなことをしたら、あの場にいる全員が……」
「死んだでしょうね。でもそれがどうしたというんですか?
 殺さなきゃ殺されるのは貴方です。ここはそういう場所だと鬼龍院羅暁や藤乃代葉を見て学んだはずでしょう?
 百歩譲ってあなたの言い分が正しいとしても、エンジェルマルガムの力なら雑魚だけでなく死者なら何でも蘇らせられます。
 どれだけ時間が経ってると思うのですか。藤乃代葉を除いても死者は何人もいるはず。
 有用な使い道はいくらでもあったでしょう。」
 だんだんと嘲りが籠る言葉に、亀井美嘉は俯くしかない。
 内容は酷く血生臭いものだったが、自分がノノミの期待に応えられなかったということだけは否が応でも理解させられた。
 
 月蝕尽絶黒阿修羅を解放するにせよ、エンジェルマルガムの力をより強く使うにせよ、亀井美嘉が取れる手段はもっとあったはずなのだ。
 黒崎一護。衛藤可奈美。ステイン。浅倉威。ザギ。勇者アレフ。
 十分な戦闘力を持ち、既に死んだ参加者は少なくない。そのうち一人でも蘇生させれば戦況をかき乱すことだってできたはずなのだ。
 そうでなくても藤乃代葉を蘇生するだけで戦力としては及第点だっただろう。
 それをしなかったのは死者を冒涜することへの忌避か、戦場に立つには覚悟が不足していたか。
 どちらにせよ美嘉はその力さえ十全には使いこなせない。
 前線で身を削ったのは仮面ライダーやアメンに変身した少女達であり、ダークマイトを追い詰めたのはマジアベーゼだ。
 
 ノノミが奸計を持って生み出した冥黒の魔女は殺傷力だけで言えばダークマイトさえ上回る。
 同時に亀井美嘉と言う少女ははこの場で最も戦闘能力に乏しく、この場で最も戦闘に適さない精神を持っていた。
 歌えません踊れませんでアイドルが務まらないように、亀井美嘉はノノミが求める役割を何1つ果たしていなかった。
 亀井美嘉の精神が戦いに向いていないとはいえ、ノノミからしても予想をはるかに下回る結果である。

28空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:01:58 ID:3ZzeB0BY0

 「何に揺らいでいるのですか?
 ひょっとしてですが梔子ユメの言葉がそんなに気になりますか?」
 「……そうかもしれません。」
 
 ――貴女はどうして、ずっとそんな泣きそうな顔をしているの?
 梔子ユメは美嘉を見てそのように言っていた。
 自分がどんな顔をしていたのか、美嘉は思い出せない。
 キリトを殺したいと今でも思っている。そんな思考が自分の中にあることが怖くないことが怖かった。

 ――己の理性でも欲望でもないものに身を委ねるには覚悟が必要です。
 マジアベーゼの言葉も美嘉は思い出していた。
 理性でも欲望でもないナニカに身を委ねるということは、自分の体の主導権を放棄するということだ。
 その結果マジアベーゼは暴走し、九堂りんねは悲劇の只中にいる。美嘉もそうなってしまうのだろうか。
 
 どこか茫然とした顔の美嘉をノノミはわずかな怒りと共にじっとりと睨む。
 絆されているのか、今になって怯えているのか。どちらにせよ美嘉の思考はノノミには知りようがない。
 魔王グリオンの生み出した人形に共感も怯懦も存在しない。分からないものは分からないし美嘉に残る人間らしさに反吐が出そうだ。
 
「まあいいです。
 貴女が無様でも成果が無いわけではない。」
「成果?そんなもの私は……」
 目を見開いた美嘉にノノミははぁと深々とため息をついた。
 
「貴女の頑張りなど無関係です。余計なことなど考えなくていい。
 グリオン様にとって有用な結果さえあればいい、今回ならそれは――」
「マジアベーゼ……よね?
 貴女の目的はグリオンの敵を消すこと。
 ダークマイトは当然としても、マジアベーゼだってあなたは死んでほしかった。彼女が致命傷を負った時点で貴女にとっては得。
 ダークマイト相手がそうだったように、マジアベーゼはグリオンの天敵になりうる参加者だったから……そうでしょ?」
 
 背後から投げかけられた言葉にノノミは勢いよく振り向いた。
 未だ空中に残るワープゲートから姿を見せたシノンはダークマイトとの戦いとワープゲートをくぐったことで随分痛んでいたが、ノノミを見つめる鋭い目つきに揺らぎはない。
 まだまだ戦う気なのだと、彼女はまだまだ戦えるのだと。その折れない闘志が美嘉にはとても眩しい。
 
「変身も解けているのに無茶をしますね。シノンさん。
 可愛げがない女はモテませんよ。」
「私はセリカの味方になるって決めた。
 セリカの先輩の体で好き勝手する連中を逃がすわけにはいかない。」
「ダークマイトから尻尾巻いて逃げただけのくせに強気ですねぇ。」
「何とでも言いなさい。
 それより、はぐらかすってことは私の考えはあながち間違っていないって事でいいのよね。」
「……ゲーム脳の小娘が。」
 ニタニタと笑みを浮かべるノノミだが、その眼は笑っていなかった。
 シノンの推論は正しい。ノノミにとってグリオンの脅威になりうる参加者はダークマイトとマジアベーゼだ。
 ノノミの目的は両者がこの場で脱落すること。
 痛み分けになった場合は美嘉を”起動”し周囲の有象無象ごと皆殺しにする、そのチャンスをずっと伺っていたが問題が発生した。
 マジアベーゼと仮面ライダーマジェードは相性が悪すぎた。マジェードの妨害もあってダークマイトの消耗は中程度のダメージと令呪1画。
 せめてもう一画程度は令呪を削りたかったというのがノノミの本音だ。

「ゲーム脳はどっちよ。
 私も、セリカも、ユメも、うてなも、美嘉も。全部使い潰す気だったくせに。」
「あら、バレてました?」
 シノンは自分の中にあった違和感の正体にようやく気付く。
 ノノミは参加者たちのことを駒としか見ていない。
 運営側でもないというのに、まるでシミュレーションゲームのように世界を見ている。
 一度はそれで成功した。鬼龍院羅暁やセレブロを出し抜き亀井美嘉を怪物にして手勢に加えた。
 二度はそれで失敗した。仮面ライダーマジェードというユニットの性能を誤解して痛み分けにすべきところを一方的な消耗で終わらせた。
 そして彼女は、次どうすればいいか考えている。
 攻略サイトを確認するようにどのユニットをどう使いどう潰しどう勝つかを。考えている。
 
 シノンはあえて強烈な言葉を選んだ。自分の中で言葉を明確化したかったこともあったし、そうでもしないと亀井美嘉には伝わらないと思ったからだ。
 ちらりと美嘉の顔を見た。慌てたり怯えたりしているだろうと思っていた美嘉の顔は、哀し気にノノミを見つめていた。

29空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:04:19 ID:3ZzeB0BY0

「私はグリオン様と言うプレイヤーを勝たせるための存在。あの方が勝つためなら外法も策略もなんでもしますよ。
 ホシノはともかく私もアヤネもその一点は譲れません。」
 ――そう、なんでもね。
 ノノミの言葉と同時にぶうんという音とともにワープゲートに影が映りこむ。
 美嘉とノノミが逃げ、シノンが潜ったワープゲートは未だに残っている。
 なぜか、ノノミが消していないからだ。
 なぜか、その女が出てくる可能性を、のノノミがずっと待っていたからだ。

 出てきた者は仮面ライダーマジェードに似ているようでまるで別物だ。
 馬のような頭に異形の腕。黄金色の包帯のようなものが集まったマルガムの素体の上に、仮面ライダーマジェードの姿をなぞるように溶けた銀色の鎧が構成されていた。
 マルガムに変身できる美嘉から見てもなお歪だ。このような存在に変身する者の心当たりは1つしかない。
 
「ウァァァ!!」
 怪物が馬の嘶きのように雄たけびを上げた。女の声だった。
 
「これは……」
「まさか九堂りんね!?」
「……ダークマイトめ、マルガム化する技術まで持っているとは。
 ですがこれでいい……ダークマイトの性格ならやつはマジアベーゼの方に向かうハズ。
 賭けではありましたが順調です、これで『ザ・サン』と『ユニコン』のケミーカードも私達が回収できる。
 あとはシノンを殺せば……」
 あっけにとられる女たちを前に、ノノミはぶつぶつと呟き美嘉に向けて手をかざす。
 シノンはノノミが思ったより頭がいい、既に彼女の中にシノンを生かす選択肢は消えていた。
 美嘉を暴走させることが出来るかは不明だが、ノノミの錬金術なら中に宿った力を強引に引き出すことが出来る。
 美嘉の意思などどうでもいい。すべてはグリオンのためだ。ノノミは唱えた。
 
「暗黒に染ま……」
「させない。」
 ノノミが言い切る前に、乾いた銃声が砂漠に響いた。
 全員がそちらを見た。美嘉もシノンもりんねもノノミも、誰も引き金など引いていない。
 犬のような耳を生やした学生服の少女が白い銃を構えてこちらに走りこんでいる。砂漠だというのにマフラーをつけていた。
 人間ではないことが一目でわかる。
 少女の体は機械が混ざったかのように白と青のラインが走っている。レジスターも存在せず参加者ではないようだ。

「なんで……なんであなたがここにいるんですか。」
 心当たりのない少女たちの中で、唯一その顔をしるノノミの顔が青ざめた。
 アビドス高校の記憶を持つ冥黒ノノミは、アビドス高校に所属しながらもこの場で一度も語られなかった少女の名を知っている。

 ・・・・・
「砂狼シロコ!!」
「正確には違う。分かるでしょ貴女なら。」
 シロコと呼ばれた少女がノノミと肉薄する。姿勢をかがめて走る姿は四足の獣のようだ。
 本来のシロコと変わらぬ速さでノノミの懐にもぐりこみ、パンパンパンと3度乾いた音を響かせた。
 2度は九堂りんねに向けてだ。正気を失い動き出そうとした怪物は足元に気を取られ姿勢を崩した。
 残る一発を引く前にシロコはくるりと状態を動かし、ノノミの脳にめがけて引き金を引いた。

「信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)」
 ぱぁんと頭に華が咲く。ノノミの額から黒い何かがぽたぽたと零れだし、ノノミは意識を失い倒れこんだ。
 
「ノノミ!!」
「ん、これでよし。」
 慌てて駆け寄る美嘉をシロコは静止し、米俵でも担ぐように右手でノノミを担ぐ。
 困惑する美嘉の目の前でノノミの額の傷が急速に塞がっていく。
「え?え?」と状況の呑み込めない美嘉の前で、シロコはマジェードマルガムを指さした。起き上がろうともがいている。

「彼女は貴女たちに任せる。」
「任せるって……貴女は誰よ?」
「なんて名乗ればいいのかな。
 砂狼シロコでも仮面ライダーバルカンでも好きに呼んで。」
 仮面ライダーバルカンと言う名前は知っている。黒見セリカが変身していたライダーだ。
 仮面ライダーではないだろうと言いたかったが、青と白の色合いは確かにバルカンによく似ていた。

30空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:05:08 ID:3ZzeB0BY0

「貴女、参加者じゃないのよね。
 造ったのはマジアベーゼ?それともダークマイト?
 グリオンさん……じゃないわよね。」
「全部違う。私をつくったのは黒見セリカ。
 マジアベーゼと同じ力で造ったものだと思っていい。」
 マジアベーゼは魔物を作り出せる。
 この場にいる砂狼シロコはそういう存在だった、媒体はシューティングウルフプログライズキーだ。
 どういう経緯か黒見セリカが作り出した存在がグリオンと同じアビドス高校対策委員会の贋作とは、何とも因果だ。
 
「セリカが……。」
「マジアベーゼと同じ力……。
 ということは」
「ん、九堂りんねとは相性最悪。
 居ても足を引っ張るだけだし、すぐにセリカのところに戻りたい。」
 戦況を分析しシロコは答えた。そういう話ではないと美嘉は首を振る。
 
「そういう意味じゃない、セリカちゃんがマジアベーゼの力を受け継いだということは」
「……そこから先は分かるでしょう。
 マジアベーゼは死んだか、そうでなくても戦闘不能です。
 そもそもあの重症、次の放送まで10分もありませんが生きて迎えることはないでしょう。」
 口を開いたのはシロコに担がれたノノミだった。その様子に美嘉とシノンは顔を見合わせた。
 ノノミが目覚めたことも驚きだが、その雰囲気がまるっきり違う。
 しおらし気な言葉からは普段の悪意と嘲笑は感じられない。心からマジアベーゼの喪失を悲しんでいるように見えた。
 まるで顔はそのままに中身が別物に造り替わったような違和感だったが、不快感はまるでない。
 むしろあるべき場所に収まったような感覚さえあった。
 
 ノノミの顔をした誰かが手を掲げると、ワープゲートが音を立てて開く。
 マルガムにもなっていないのになぜそんな真似ができるのかという疑問は、もはやわかなかった。
 ノノミを担いだままシロコはゲートをくぐる。ノノミはマジェードマルガムを一瞥したのち、シノンと美嘉の顔を見た。
 どこか悲し気に、それでいて力強い眼が綺麗だと思った。
 
「3分……いえ、150秒だけ、耐えてください。
 そうすれば、彼女を救えるチャンスがやってきますから。」
 どういうことだと尋ねるより早くゲートが閉じ、砂漠の乾いた空だけが残る。
 視線の先でマジェードマルガムが立ち上がり、唸り声をあげて美嘉とシノンを睨んだ。戦闘は避けられない。

「何だったのでしょう……。」
「そうね、終わった後にセリカに聞くしかないでしょうね。」
 砂狼シロコの乱入、ノノミの変質。
 分からないことがあまりに多い。それは美嘉もシノンも同じだった。
 どんな疑問も思考も、九堂りんねのなれ果てを超えければ答えには届かない。
 
「での1つだけ分かることがあるわ。
 あれは多分、十六夜ノノミよ。」
 カリスラウザーを装着しながら、シノンは確信を持ったように言った。
 変質したノノミ、否、本来の姿を取り戻したノノミの姿をシノンは見たことがあった。
 セリカから聞いた話と、そして一瞬だけ見えた錯覚と、その雰囲気は確かに一致していた。

「なら、150秒耐えるという話は信用できますか?」
「……彼女を助ける方法なら、私にも1つあてがあるわ。
 でもたぶん、そのままやっても成功率は低いと思う。
 ノノミには何か考えがあるという事なら、試す価値はある。」
 ならやりましょう。美嘉は頷いた。
 痛々しい唸り声をあげるマジェードマルガムを救う手立てがあるのなら、殺さず住む手立てがあるのなら。手を伸ばしたいと2人とも思っていた。
 


31空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:06:02 ID:3ZzeB0BY0

(何が起きたんでしょうか。)
 底の見えないような暗い精神の中、冥黒ノノミの意識は明瞭だった。
 砂狼シロコの姿をした何者かに銃弾を撃ち込まれたと思えば、ノノミの意識は強引に奥底に引きずり込まれた。
 しかし誰かがしゃべっている。自分の中で自分ではない何かが喋っている。

(推測は出来ますがね。全く面倒な置き土産を残してくれて。)
 マジアベーゼと同じ力を得た黒見セリカが生み出した砂狼シロコ。その銃弾を受けてから異変が起きたのだ。
 ということはマジアベーゼと同じ力がノノミに作用していると見るべきか。素体となったのはノノミ――ではない。

(グリオン様が私を生み出した時の十六夜ノノミのガトリング――リトルマシンガンⅤ。加えてワープテラのケミーカード。
 そこから生まれた魔物であれば、人格としては十六夜ノノミに近しくなる。マルガム化せずとも転移だって使える。
 つまり黒見セリカの狙いは、私をベースにした十六夜ノノミの再構築!あの雑魚の小娘にしてはよく考えましたね。)
 マジアベーゼの支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)の効果は広い。
 タコのような意志ある生き物だって操れる。マジアアズールのフィギュアのように人間的なものとして生みだせばそいつは喋る。
 黒見セリカ――マジアアビドスに同じことが出来ない理屈は存在しない。
 ノノミの武器から生まれた冥黒ノノミであれば、ノノミの武器ベースにした魔物と言う形で彼女たちの味方にできるだろう。
 だが、それがどうした。

(他の有象無象ならともかく、私を生み出したのはグリオン様です!
 魔物化による再構築で支配の上書き?ダークマイトやマジアベーゼなら可能かもしれませんね。
 ですが貴女には不可能です!黒見セリカ!錬金術も魔法も使えぬズブの素人にそんな大それた真似ができますか!
 最悪のタイミングでダークマイトともども皆殺しにしてあげますよ!)
 勝利を確信しほくそ笑むノノミ。
 心の中でくすぶっている中、砂狼シロコがワープゲートを潜り抜け視界が開ける。
 ダークマイトとアメンが対峙する砂漠都市。少し背後には黒い軍服ともパンクファッションとも取れる衣装に身を包んだ魔法少女の姿がある。
 それが黒見セリカだと理解するのに数秒の逡巡が要した。魔法少女特有の認識阻害が原因だ。
 
「増援かな。見ない顔だが、その太陽のようなシンボルをつけているということはアビドスの子かな?」
「もしかして、さっきの青い狼の子?」
 空中に姿を見せたシロコとノノミを怪訝そうに眺める。アビドスの校章をつけている時点でダークマイトの味方ではない。
 ユメが口にした通り、シューティングウルフプログライズキーを撃ったことで生まれた狼が、ヘイローもレジスターも持たぬ砂狼シロコの正体だ。
 その帰還を待っていたセリカが叫ぶ。
  
「シロコ先輩!ノノミ先輩は……」
「回収はした。
 ・・・・
 でもダメ。数分したらグリオンのものに戻る。」
「……そう。」
 (……気づいていたか。)
 冥黒ノノミが舌打ちをする先で、一瞬だけ落胆したようにセリカの瞳が曇る。
 ダークマイトはその隙を見逃さない。
 コインを三枚取り出し弾いた。巨大な黄金の円盤状に変形したコインが丸鋸のように弧を描いてセリカに向かう。

「増援かと思って焦ったが、要はマジアベーゼのように配下を生み出している能力!
 つまり君を叩き潰せば青白猫も翼竜のヴィランも消えるということだ!」
「させない!!」
『ファラファラ ファラオ!!』
 レリーフグリフバッジを付け替え、王の棺を思わせる荘厳な姿へとアメンは変わる。
 壁や電柱を足場とし宙を飛び交い、ファラオレリーフの拳で円盤を一枚叩き砕く。返す刀でセリカの右側から迫る円盤を踵落としの要領で蹴り砕いた。
 それでもまだ1つ円盤は残っている。発光し高速で回転しながらもセリカの右側から命を奪おうと迫ってきた。

32空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:07:17 ID:3ZzeB0BY0

(あっけないですね。)
 ノノミの胸の奥でグリオンに悪意人形は退屈そうに勝敗を見届けていた。
 梔子ユメでは届かない。黒見セリカでは避けられない。砂狼シロコでは間に合わない。
 ダークマイトの言う通り黒見セリカが死ねば砂狼シロコもプログライズキーに戻るし、ノノミの体を操る支配も溶ける。
 どう転んでも冥黒ノノミには益がある結果だ。

『そう思ってるんでしょう?ノノミ。』
(え?)
 余裕ぶった笑みを浮かべていたノノミの脳内に言葉が響いた。
 それが表に出ているリトルマシンガンⅤをベースにした仮想人格の言葉と気づいたときには。
 ――ノノミの腹に、ダークマイトが撃ちだした円盤が刺さっていた。
 ごぼりと音を立て口からタールのような黒い何かが零れる。致命的な損傷に冥黒ノノミの視界がちかちかと揺れた。

「君が庇うか。だがどちらでもいい!これで一体!」
(庇う?ダークマイトは何を言っている??)
 状況を飲み込む間もなく、ダークマイトが指を鳴らすと円盤が巨大な掌に変形しノノミを握りつぶす。
 土が崩れるような音と共にノノミの全身からさらに黒いものが零れる。
 ホシノがデクにやられた時と同じく、全身がズタズタだ。
 
(何が何が何が何が何が何が何が!!)
 理解せねば。理解せねば。理解せねば!
 バグを起こした機械のように砂嵐に包まれた思考をノノミは引きずりだす。
 十六夜ノノミの視界が映る。振り返ると目の前には黒見セリカの姿があった。
 黒見セリカは泣いていた。黒い星を宿した赤い瞳からぼろぼろと無様に涙を流して。
 ノノミ好みの悲痛な顔なのになぜだか嗤う気も嘲る気も起きなかった。代わりに理解したのは状況だ。

(そうかこいつ……ワープゲートで黒見セリカを庇ったのか!)
 梔子ユメでは届かない。黒見セリカでは避けられない。砂狼シロコでは間に合わない。
 十六夜ノノミなら、間に合う、届く。
 だがどうしてだ、避けられたはずだ。
 ワープゲートが間に合ったのなら自分で転移する必要などない、ダークマイトの攻撃だけをどこかで飛ばせばいいのだ。

(そんなことさえ考えられないほど十六夜ノノミとは馬鹿な女なのか?)
『そんなわけないでしょう。
 私も貴方も、ここで死ぬべきです。』
 再び脳内に言葉が響く。今度ははっきりと聞こえた。
 十六夜ノノミの声だった。

(何を言っている……?)
『ものの数分。そうでなくともセリカちゃんが変身を解けばあなたはグリオンの配下に逆戻りです。
 この場にはセリカちゃんもユメ先輩も、本物のホシノ先輩もいる!二度とお前に彼女たちの邪魔はさせません。
 ホシノが死んだように、貴女だって死ねば終わりでしょ!』
(お前……そのためにわざわざ……)
 朗らかなはずの少女の死刑宣告のような言葉に、冥黒ノノミは青ざめた。
 冥黒ノノミが内側で錯乱しそうになりながらも、表に出ているノノミの意識はそっと黒見セリカの頬を撫でた。
 
「セリカちゃん。ごめんなさい。
 後輩に嫌な役を押し付けちゃいますが。」
「ノノミ……先輩!」
「グリオンが生み出したノノミは、セリカちゃんの目的を自分の支配だと思っていますが。違うんでしょう?
 セリカちゃんは取り返したかった。グリオンが生み出した素体――十六夜ノノミが使った武器を。」
「そうよ……。そうじゃなきゃ、またノノミ先輩が悪いことに使われる!」
(当たり前だ!お前たちはグリオン様に使われるべき存在だ!!!
  十六夜ノノミ    奥空アヤネ    黒見セリカ
 リトルマシンガンⅤも!コモンセンスも!シンシアリティも!あの方が利用してこそ意味が…………)
 
 悲鳴のような冥黒ノノミの叫びは誰にも届かない。
 グリオンに歪まされた悪意の入る余地のないのだと、ノノミはいつも通りににっこりと微笑んだ。
 偽者なことは分かっている。
 グリオンの支配下にないにせよノノミの武器から生まれた人造人間だ。仮に人格があったとしてもそれは黒見セリカの知る十六夜ノノミではない。
 それでもその笑顔は、対策委員会の部室でセリカが見てきたものとおんなじだった。
 
 「私はここで死にます。そうすればグリオンの手駒は一つ減る。
  わ た し
 リトルマシンガンⅤもワープテラもそれを望んでます。きっと十六夜ノノミだって。
 だから――泣かないでください。」
「うん……うん!」
 ぐしゃぐしゃになった顔を必死に拭い、黒見セリカは――マジアアビドスは前を向く。
 泣くべきはきっと、今じゃないから。

33空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:08:21 ID:3ZzeB0BY0

「頑張ってくださいね。セリカちゃんも、ユメ先輩も。」
 (嫌だ!いやだ!!こんな終わりは嫌だ!
 グリオン様の期待に応えられていない!悪意を振りまくことだってできていない!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 誰かを守って死ぬなんて。そんな終わりは嫌だ!)
 
 ノノミの顔は駄々をこねる子供のように歪み、それでも誰にも届かない。
 自分の理性でも欲望でもない者が動かした体の末路は、破滅しかない。
 暴走したマジアベーゼのように。
 尊厳を失った九堂りんねのように。
 ただし、元から破綻していた悪意人形の場合は、その破滅が正しき誰かを救うかもしれない。
 
「貴方達なら、勝てますよ。」
(グリオンさまああああああああああああああああああああああああああああ!!!!)
 
 贋りのまま、真実(ほんとう)の言葉を告げ。
 その言葉を最後に巨大な腕がノノミの体を握りつぶした。
 デクに倒されたホシノ同様ノノミの体は砂のように崩れ、ひしゃげて使い物にならなくなったリトルマシンガンⅤがガラクタのように音を立てて落ちた。
 セリカはリトルマシンガンVとひらひら落ちてきたワープテラのカードを拾い上げる。さっきまで誰かがそこにいたかのようにあたたかかった。
 
「ごめんなさい……。ノノミ先輩。」
 偽物とわかっていても。辛いものは辛い。
 泣きたかった。怒りたかった。
 グリオンが生み出した偽物だろうと敬愛する先輩が目の前で潰されたのだ。
 平時ならば一昼夜泣きじゃくっていたかもしれないが、ダークマイトの目の前という死地では一秒だってそんな余裕は無いのだ。

「ようやく一体か!手こずらせてくれる。
 だがあの厄介なワープは消えた!君たちに逃げることは出来ないよ!!」
「……逃げる?」
 再びコインを手に取る、今度は黄金の拳のような形状が5つ。
 いずれも必殺の威力を誇るだろうが、今のセリカには意味がない。

「逃げるわけないでしょうが!!2人とも!」
「はぁあ!!!」
「ん、いける!」
 拳の1つは梔子ユメが、拳の1つは砂狼シロコがそれぞれ正面からはたき落とす。
 青白いラインのシンシアリティを構える。エイムズショットライザーが変化した銃口が青白く光る。
 
 「信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)」
 マジアベーゼの支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)と同じ法則で名付けた銃弾が3発、正面から弧を描きぶつかった。
 威力でいえばダークマイトの足元にも及ばない弾丸を受け拳が光ると、勢いを失い地面に落ちた。
 落下したコインがむずむずと動き出したかと思うと、黄金色の瞳をした3人の少女の姿に変わる。
 うち一人は先ほど殺したノノミと言う少女にそっくりだ。残り2人もアビドス高校の校章をつけていた。
 アビドス高校の人間がモデルだと、他者に興味のないダークマイトでも辿り着く。
 
「そうか、お前の力はマジアベーゼのような魔物化じゃない。人間だ!
 物体を人間に作り替える力か!」
「正確には少し違う。そんなグリオンみたいな真似できないしやる気もないわ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 アビドスのみんなに力を貸してもらう能力よ。」
「……くだらない力だ!個の強さこそ象徴の証!!
 仲間だの友達だの居場所だのくだらないものを崇めるヴィランに相応しいちっぽけな”個性”――いや、個性ですらない借り物の能力か!」
「何とでも言いなさい!
 吠え面かかせてやるわよ!ダークマイト!!」
 
 背の低い少女、眼鏡をかけた少女、そしてノノミと呼ばれた豊満な少女。
 何の合図も無しに3人が同時に銃口を向け引き金を引いた。
 この銃も魔物化――擬人化と同時に生成された者。
 キヴォトス人にとって銃は当たり前に存在する、眼鏡や服装と同じように自然と思い描くものだ。
 擬人化すれば銃だって出来上がる。
 
「「「信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)」」」

 黄金から生まれた三人の少女が同時に宣言し、弾幕を撃ちだす。
 威力は見た目通りの銃弾だ、錬金でできたオールマイトボディを持つダークマイトにとって避けるまでもない攻撃だが。
 銃弾が撃たれるたびにダークマイトにとって奇妙な感覚が走る。
 とっさに足を後ろに下げて気づいた、体が軽い。

「なんだ……体が軽く?」
「後輩が頑張ってるってのに、私だけじっとはしてられないでしょ!」
 ダークマイトの思考が定まるより速くm梔子ユメの足が顔面を蹴り飛ばした。
 顔まで錬金ボディのダークマイトならさしたるダメージも無いはずだが、ファラオレリーフの蹴りによる衝撃が波となってダークマイトの全身を伝わった。
 悶絶し道路を転がるダークマイトをあっけにとられた顔でユメは見ていた。

34空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:10:06 ID:3ZzeB0BY0

「ああああああ!!!なぜだ!なぜだ!」
「え?効いてる?
 ひょっとしてセリカちゃんのおかげ?」
 
 マジアアビドスの能力『信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)』は大本としてはマジアベーゼと同質の能力だ。
 物体や生物を魔物に変え、コントロールする。シンプルかつ強力な力。
 ただし、黒見セリカの魔法少女の素質は柊うてなより劣る。そのためマジアベーゼのような万能性はなく欠点がある。
 黒見セリカが強く思い描く存在にしか変化できない。今ではアビドス高校対策委員会の偽者しか造れないのだ。
 その戦闘力や知能も素体の質によって変わり、ただのコインからうまれた3人はプログライズキーから生まれた砂狼シロコに劣ってしまうし、そのシロコだってトレスマジアを相手どれるベーゼの魔物に比べればはるかに弱い。基本的には下位互換といって差し支えない。

 ただし、1つだけ明確な優位性が存在する。
 物体を変質させコントロールする能力は――マジアアビドスの生み出した対策委員たちにも付与される。
 魔物は作れずとも制御下から引きはがす程度のことは、今の彼女たちでも可能だ。
 砂狼シロコの銃弾が冥黒ノノミを十六夜ノノミに変えた時と同じことが、ダークマイトに起きていた。

「そうか……あれは元はマジアベーゼの力。
 弾丸を喰らうだけでまずかったのだ!令呪を……」
「させない!」
 弾幕を避けようと動く脛をユメは思いっきり蹴り飛ばす。
 バランスを崩して倒れるダークマイトに馬乗りにまたがり強引に抑えかかる。黄金色の弾幕は未だダークマイトを撃ち続けていたが、跳弾で何発かがユメにあたる。
 アメンへと変身しているユメにも信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)は影響はあるはずだが、アメンの装甲が弱まろうとユメは身じろぎ1つしない。
 
「なぜだ、何故邪魔をする羂索!」
「かわいい後輩がかっこいいところ見せてるってのに、先輩が不甲斐なくていいわけがないから!」
 梔子ユメは――令呪を使っていた。
 アメンの力、ユメ自身の力。その全てが十全に使われる。
 ダークマイトが令呪を使ったとして、ユメの令呪が効果を発揮する時間は大したアドバンテージを生まないだろう。
 くだらない献身だ。くだらない信頼だ。くだらない仲間だ。
 ダークマイトにとって最も価値がなく、オールマイトにとって最も価値あるものが、着実にダークマイトを追い詰めていた。
 
「まったくアビドスの敵(ヴィラン)というものは、どいつもこいつも!!!!
 友達だの後輩だの、そんな矮小な思考で象徴に歯向かうなど。許されるわけがない!!!」
「許してもらう必要なんかない!!
 私たちは私たちの学園を守る!それが私たちの決めたことだから!!」
「その通りよユメ先輩!」

 マジアアビドス――黒見セリカが愛銃を構える。
 青く光るシンシアリティを前に、砂狼シロコはこれが役目だと言いたげに飛び上がり、その体を光らせる。
 信頼の銃弾の効果が切れてきた。シューティングウルフプログライズキーへと姿を戻しながらシロコは肉食獣のように強気な笑みを浮かべた。

「セリカ!ぶちかまして!!」
「分かった!」
 シューティングウルフプログライズキーへと戻ったシロコは、自分の意思があるようにシンシアリティの弾倉にすっぽりと収まった。
 変身の影響で姿かたちは変わっているが、元はエイムズショットライザーだ。当然プログライズキーはジャストで収まる。
 いつでも引き金が引けると言わんばかりにアップテンポな電子音が流れ出し、マジアアビドスはその銃を両腕で構えた。
 弾幕を生み出していた黄金の対策委員会たちもすでに消えている。全神経全魔力をセリカはこの一撃に込めていた。

35空と虚③ ガールズリミックス:ライジング ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:13:13 ID:3ZzeB0BY0
 
「はああああ!!!」
 弾幕が途切れたことが合図となる。
 ファラオレリーフのユメはフィジカルと言う意味でアメン屈指だ。胸倉をつかみそのままダークマイトを持ち上げ投げ飛ばす。
 
 「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 支配権を失った黄金がかさぶたのように剥がれ、バルド・ゴリーニのやせ細った特徴のない顔が再び外気を浴びた。
 情けなく叫ぶ男の声が空しく響く。答える者は誰もいない。
 先は九堂りんねに助けられたが、既にこの場には九堂りんねはいない。
 もしかしたら、バルド・ゴリーニの敗因だったのかもしれない。

『バレットシューティングブラスト!』
「じゃあね!象徴!二度とその面見せないで!」
「ふざけるな。ふざけるな!象徴たるこの俺がぁ!!!」
 
 青い光線がバルド・ゴリーニに直撃し、悲鳴とともに大きく弧を描いて砂漠のど真ん中に爆発するような音を立てて叩きつけられる。
 ひょとして殺したりしてないかと不安になった二人だが、視界の端で男がのそのそとはいつくばって逃げていた。
 わずかに残ったオールマイトの肉体も消しとび、誰が見ても今の彼をダークマイトだとは思わないだろう。

 追いかけるという選択肢もある。ダークマイトは重傷だが未だ健在だ。
 どうしようか。セリカは隣の先輩に尋ねた。
 初めて会った先輩を前に、後輩らしいことをしたかったのかもしれない。

「どうするユメ先輩?」
「・・・シノンちゃんや美嘉ちゃんが心配だし、そっちに行こうよ。」
 ユメの答えにシノンは「そうよねぇ。」と平然と返す。
 とどめを刺すつもりには2人ともなく。そこにはただ勝者と敗者がいるだけだった。

36空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:14:01 ID:3ZzeB0BY0
◆◇◆◇◆

 マジェードマルガム左腕と一体化した一角獣の角のような武器、美嘉とシノンは初め剣だと思った。
 唸り声をあげ突き上げてくる武器をフォールンハルバードで防ぎながら、美嘉はその勘違いに気づく。
 ザ・サンのエネルギーを放出するように赤熱する角は高速で回転していた、ギリギリと火花を上げては抑え込むのもやっとだ。
 ドリルのように思えるその武器は、まかり間違っても人に向ける者ではないだろう。
 
「はっ!!」
 シノンの射撃で体制を崩したところでどうにか美嘉は距離を取った。それでも安心できないのが正直なところだ。
 どうすべきか悩む美嘉を、仮面ライダーカリスとなったシノンは不思議そうに見つめる。
 
「どうしたの?」
「……なんでわざわざマルガムに変身したの?」
 亀井美嘉の姿はエンジェルマルガムのものである。
 マルガムと化した九堂りんねを相手にするには必要な変身ではあるのだろうが、今回の2人は事情が異なる。

「あんな怪物の姿でも九堂りんねは九堂りんねでしょ?マルガムへの恨みはあるはず。
 現に貴女を優先的に狙ってきてる。150秒耐えるだけなら私一人でも問題ないはずなのに……」
 ――150秒だけ、耐えてください。
 ノノミが確かにそういった、言葉の理由は分からないにせよまずは絶えることが肝要だ。
 宇蟲王ギラ級のあいてならともかく、マジェードマルガム相手の時間稼ぎならシノンで充分のはずなのだ。
 美嘉が足を引っ張っているとは言わないが、マルガムは明らかに美嘉を優先して狙ってきている。

 エンジェルマルガムの顔は割れたデッサン人形のようで、表情などまるで読めない。
 それでもシノンの質問に美嘉が本気で考えこんでいることは伝わってきた。
 
「大したことじゃないんです。
 りんねさんなら同じ仮面ライダーよりマルガムの方が戦いやすいかなって思っただけで。」
「……はぁ?」
 あっけにとられるシノンを前に、マジェードマルガムは再び剣をいからせ突撃してくる。
 やはり狙いはエンジェルマルガムだ。今度は角のある手先ではなく手首を狙って防いだが、高速で回転する手先の角が白い羽根を貫いた。
 
「美嘉!」
『バイオ』
 その隙をついてバイオのラウズカードをシノンは読み込む。カリスアローの先からツタのような物が伸びマジェードマルガムを縛り付けた。
 美嘉はそのまま距離を取らず、馬乗りの形でマジェードマルガムの両腕を抑え込んだ。

「じゃあ貴女、この期におよんで九堂りんねのことを気にしてるって事?
 とっくにバケモノになっちゃって、どうするにせよ倒すしかないのに?」
「貴女のおかげなんですよ。シノンさん。」
 振り返らずに伝えらる言葉に首をかしげる。
 シノンの視点では、自分からなにか影響に与えるようなことをした覚えがない。
 美嘉はつづけた。
  
「キリトへの殺意だけは膨れ上がっているのに、キリトのことを何も知らない。
 貴女に会うまではそんなことさえ気づかずにキリトをただの人殺しとしか見てませんでした。
 それはなんだか、嫌だなあって。
 ――戦う人のことを何も知らないで戦うのは、違うんじゃないかって。
 私の好きな人ならそんなこと思わないだろうって、思ったんです。
 だからりんねさんとの戦いも、少しでも戦いやすいマルガムをの姿の方がりんねさんの気が楽になると思うんです。」
「そこまで気を使えるのなら殺すとかいうのやめてほしいんだけど。」
「すいません、そればっかりは確証が持てません。
 私の中ではそれでもキリトは代葉さんを殺した相手です。
 それに――私の殺意は私のものではありませんし。」
 声色はおおよそ戦場に似つかわしくない、申し訳なさげな声色だった。
 美嘉の敵意は本物だとしても、美嘉の殺意は美嘉の中に宿った悪霊 月蝕尽絶黒阿修羅のものだ。
 美嘉本人を容易くマルガムに変えるほどの負の感情は並大抵のものではない。
 その正体を若干しか知らないシノンにしても、亀井美嘉と言う人間の中に収めるには歪な存在だと思う。

37空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:15:06 ID:3ZzeB0BY0

「その自分じゃない感情に支配された果てが、そこの九堂りんねでしょ?
 貴女も同じようになるかもしれない。それでいいの?」
「ベーゼさんにも同じこと言われました、ずっと考えていたんです。
 危険な力なことは分かっていますし、例えばりんねさんのライダーならば私の中から”この子”を浄化できるかもしれません。」
「そういう言い方するってことは、消す気はないって事?」
 じたばたと暴れるマジェードマルガムを抑え込みながら、美嘉はこくりと頷いた。
 
「身勝手ですが、代葉さんの力を受け継いだ証明だと思ってます。
 私の中の悪霊だって好きで怨念を宿したわけじゃない。支給品になったこの子だって、他の参加者からしたらただの暴力装置でしょう。
 この二人のことを人として覚えておきたい、そう考えるのは我儘でしょうか。」
「いいえ。その感情そのものは否定しないわ。
 ただその結果がキリトへの復讐と言うのなら、私は貴方を認められない。
 こればっかりはずっと言ってる通りね。この戦いが終わったら、私たちは敵よ。」
「そうですね。」
 どこか物悲し気な背中だった。
 こんな形でなければ、シノンと美嘉は案外話が出来たかもしれない。2人ともそう思っていた。
 
 「忠告してあげる。
 ……貴女に人殺しは向いてないわよ。」
「私もそう思います。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 殺さずに済むならそれが一番いい。」
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「貴女みたいな人は殺すなんて選択肢を浮かべた時点で毒されてんのよ。」
 数秒、沈黙があった。
 殺さないという選択は”殺すという選択があるからこそ成り立つ”ものだ。
 ここに来る前の美嘉なら”戦わない”時点で選択をしていたはずだろう。
 自分で自分のことは分からない者だなと自嘲気味に笑う。
 ノノミの言う150秒経ったのはちょうどそんなタイミングだった。

 美嘉の指がわずかに熱を帯びる。
 手を広げ確認したその隙にマジェードマルガムは美嘉を突き飛ばし、縛っていたつたを引きちぎる。
 美嘉はその様子を気にすることなく、手のひらを見つめていた。
 掌に刻まれた、星を見ていた。
 
 ソードスキル。星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)。
 本来の使用者のものから改変されたその力は、死んだ仲間の力を受け継ぐもの。
 藤乃代葉の死を受けて1つだけ宿っていたその星が、今は2つになっていた。
 ――そのタイミングは、ダークマイトの手で冥黒ノノミが死んだ時刻と同刻だった。
 
           ・・・・・・・・・・・・・・・・
「あんな目にあっても、私は彼女を仲間だと思っていたんだ。」

 ぽつりとこぼす。美嘉が仲間だと思っていなければ、ベンジャミンバトンの効果はない。
 冥黒ノノミは黒見セリカにとっては偽物だった。シノンにとっては敵だった。
 グリオンにとっても単なる手駒でしかなかったのだろう。
 それでも美嘉にとっては仲間だった。
 人として覚えておきたい存在が、3つになった。

 美嘉は手をかざし唱える。その姿にマジェードマルガムは危機感を感じたのか、勢いよく左手の角を突き出し飛び掛かってきた。
 それはまさしくマルガムを生み出す時の構えだ。九堂りんねにとってはトラウマものだろう。

「暗黒に……」 
 冥黒ノノミは死んだ。それはソードスキルの起動条件を満たしている。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 彼女の持つ冥黒錬金術を会得するという条件を満たしている。
 人の悪意を増幅させ錬成させる言葉を美嘉は唱えた。そしてその腕を
 
「盈たして。」
 ――自分に向けた。
 月蝕尽絶黒阿修羅を起動する、言霊だ。
 エンジェルマルガムさえも取り込んだ、全身を黒い腕で巻き付けた異形の女。
 S級怨霊月蝕尽絶黒阿修羅そのものの姿となった亀井美嘉を、冥黒ノノミは便宜上『冥黒の魔女』と呼んでいた。

 エンジェルマルガム全身が墨に染めたように黒く染まり、その全身から真っ黒の腕が無数に伸びていく。
 飛び掛かった角を黒い腕で抑え込み左腕に絡みつける。マジェードマルガムが腕を振り払うも1つ振り払うごとにその倍の腕が掴みにかかった。
 シュルシュルと音を立てマジェードマルガムにつかみかかる腕はどんどん太く、強く、速くなる。
 ザ・サンのエネルギーで焼き殺すか。マジェードマルガムが考えるよりも早く増えた腕がマルガムの右腕さえもふさぎ込んだ。
 思考だけなら九堂りんねの方が速かったはずだが、亀井美嘉には思考の時間がない。故に早い。
 なぜならここからの行動は既に決まったことだからだ。

38空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:16:36 ID:3ZzeB0BY0

 「がっ……ああああああ!!」
 痛々しい悲鳴を噛み殺し、美嘉は目の前の敵に向き直る。
 どこか怯えた様子のマジェードマルガムの姿がはっきり見えた。
 ――キリトには見えない。
 まだ自分は正気を保たもっているが、それが一体何秒持つのかわからない。
 正気の内にけりをつけなければ、九堂りんねは救えない。

 伸びきった腕を収縮させマジェードマルガムの目前にまで迫る。
 わずかに身を振るわせたマルガムの四肢に伸ばした腕を巻き付け抑え込む。
 マジェードマルガムだって無抵抗ではない、ザ・サンのエネルギーでぐんぐんと温度が上昇させ、冥黒の魔女の黒い腕から煙が噴き出した。
 熱い、痛い。それがどうした。
 そういいたげに歯を食いしばり、美嘉は本来の両腕をマジェードマルガムの胸に突き刺した。
 今の美嘉は錬金術を扱える。
 それはすなわち、錬金術に干渉できるということだ。
 
「ああああああああああ!」
 痛々しい悲鳴を上げるマジェードマルガムを6本にまで増えた黒い腕で抑え込み、胸元をこじ開けた。
「今です!!」
「了解!」
 シノンはこじ開けられた隙間に照準を定め、ラウズカードを2枚取り出す。
 
『トルネード』
 風のエレメントがカリスアローの先端に渦を巻き、射出の威力を底上げする。
 そしてもう一枚、シノンが切り札として見込んだカードを読み込んだ。
 
『スピリット』
 ♥2。人間の祖となるアンデッドを封じたカードだ。
 本来のバトルファイトの世界ではジョーカーアンデッドを人間に変身させるカードだが、シノンが使うのはリ・イマジネーション世界のラウズカード。
 仮面ライダーカリスだって正史と異なり人間が変身している。
 ではその世界の♥2の効果は何であろうか。
 その効果は――不明だ。
 だが他のカテゴリー2のラウズカードは何かを”強化する”効果を持つ。
 ♠2 スラッシュ 斬撃の強化。
 ♦2 バレット 銃撃の強化
 ♣2 スタッブ 貫通力の強化

 では♥2 スピリットを他者に撃ち込めばどうなるだろうか。
 ――人間としての精神力を強化できるのではないか。仮説としてはありえなくもないだろう。
 シノンの言う「あて」とはこのカードのことだった。

「お願い……効いて!」
 祈りを込めて弓を引き絞る。
 人間の祖を封じた力を持つ矢は、マジェードマルガムのこじ開けた心臓部に命中した。
 しばし馬の嘶きのような悲鳴をあげ、膝からマジェードマルガムは倒れこむ。
 
「ああああああ……わた……しは……」
 砂に向けて倒れこむマルガムの姿は、九堂りんねに戻っていた。
 美嘉とシノンは合わせて変身をとき、達成の噛み締めるように膝をついた。
 
「はぁ……はぁ……」
「やっ……た」
 息を切らせながらも立ち上がる。美嘉は自然とりんねを肩に担いでいたし、シノンもその手助けをしようと足を進めていた。
 1歩、砂を踏みしめる感触が初めて心地よく思えた。
 2歩、遠くから「おーい」とバイクの音が聞こえた。ユメとセリカだ。
 3歩、初めて亀井美嘉の顔を真正面から見たかもしれない。アバターでもないのにくりくりした目の美人だが、どこか愁いを帯びて妙な色気があった。
 4歩、これでシノンは他の皆と合流し……
 
 「ご苦労。」
 
 4歩目をシノンが進むことはなかった。
 シノンの足が大地を踏みしめるより早く、肉を抉る音が砂漠に響き。美嘉の目の前で赤い花が咲いた。
 勝利の余韻は掻き消すような男の声に合わせ、シノンの胸から日本刀が突き出ていて。

 「上出来だ。美嘉。」
 その後ろで、グリオンが満足げに眼を細めた。

39空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:17:54 ID:3ZzeB0BY0
 ◆◇◆◇◆
 
「これは……夢だ……。
 象徴に敗北など……あってはならない……!」
 黒見セリカと梔子ユメはダークマイトにとどめを刺さなかった。
 放置され命からがら逃げだした彼の額には汗が滝のように流れ、黄金で膨らんだオールマイトの姿ももはや残っていない。
 足に力が入らず立ち上がれない、砂漠の道を這いつくばって逃げるなんと無様な姿か。
 脚が折れているのだろうか、折れているに違いない。なんたってアビドスは羂索のいる敵(ヴィラン)の巣窟。
 あああの羂索とアビドスの少女たちのなんと惨く邪悪なことか、今度こそ倒さねばならない、象徴として。
 オールマイトを継ぐ者として!

 「だが大丈夫だ。象徴は不滅!一度挫けようと決して諦めない!
 そうもう大丈夫!俺が」
 「いや、アンタさっきは『絶対の勝利をもたらす力こそ象徴!』とか言ってなかった?
 何敗けてんのに続けようとしてんのさ。」
 
 薄ら笑いの混じった男の声が背後から聞こえてきた。
 振り向いた先には青白い継はいだ顔の男が、にやりと凶悪に笑っている。
 その顔は何度も見たことがあったし、自分でもしたことがある。
 というよりさっきしたばかりだ。マジアベーゼが死ぬ前に。
 ――弱い誰かが狩られる前の、獣じみた優越感を浮かべた笑みを。

 「はい、おしまい。」
 ぽん。と肩を叩く音が響く。ダークマイトの――バルド・ゴリーニの耳がその機能を行使できた最後の機会だった。
 何かが縮んでいく。膨らんだ風船を強引に萎ませるように何かがつぶれてちぢんでなくなってくずれてきえて
 たすけてたすけていやだいやだしにたくない……
 
「しにたぎゅ……」
 
 ぐ に ぃ


 
 断末魔を魂ごと圧縮されたダークマイトは既に人としての生を失い、真人の改造人間となった。
 真人に使い潰されるたった一度の機会が来る、残りの人生はそれを待つだけの無を過ごすのみだ。
 寿命が燃え尽きるその瞬間まで、男に出来ることはもはや何一つない。

 象徴を騙る男は、こうしてただの薄汚い塊となって終わりを迎えた。
 
【ダークマイト@僕のヒーローアカデミア 死亡】

 「ちょっと見てよこれ。」
 圧縮されたダークマイトを指先でクルクルと回しながら、真人は柊真昼を手招きした。
 ひなびた粘土細工のように縮んだ一か所を真人は指さす。もとは右腕だっただろうその場所にはすっぱりと切り取られたように何もなかった。

          ・・・・・・
 「よく見てよここ、腕が切れてる
 魂弄ればなんとでもなるけどさ。俺が触った時には腕があったはずなんだよ。
 アンタ盗った?」
「いらないよそんな汚いもの。
 誰かが持って行ったんでしょ。」
 盗ってないとはあえて言わなかった。実際に柊真昼が盗ったわけでもないので探られて痛い腹ではない。
 柊真昼は見ていたのだ。真人が術式を使う瞬間真人の足元の影から鎌のような物が浮かび上がり、ダークマイトの腕を切り飛ばした瞬間を。
 その影はそそくさと姿を消していた。もはや探すことも難しい。
 
「残ったリュックと支給品なら興味はあるけど……見当たらないね。」
「手ぐせの悪い奴がいるなぁ。」
 きょろきょろと周囲を見わたしてもリュックらしきものは見当たらない。
 リュックのない真人はかなり本気で落ち込んでいたが、こればっかりは仕方がない。
 真人は立ち上がってコキコキと腰を鳴らす、既にこの場の戦いは決し彼の興味は削がれていた。
 ダークマイトだった改造人間を飲み込むと、アビドス高校とは別方向に歩き出した。

「知り合いらしい知り合いはいないって言ってなかったっけ?
 あてはあるの?」
「いや別に?
 ただ適当にランドマーク見て回って、やりたいようにやるだけだよ。」
 飄々と言い切った真人からは強がりや嘘は無いように見えた。
 呪霊である彼は人間よりもよほど本能的に生きている。
 ダークマイトのような誇大な目的も柊真昼はのような純粋な野望もいらない。
 そういう手合いが真昼には一番厄介だ。動く指針が見えなければ憶測も対応も後手になる。
 ダークマイトの改造人間を手に入れてホクホク顔の内に別れたほうがいいだろうと。真昼は大きく手を振った。

40空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:18:43 ID:3ZzeB0BY0

「それじゃあ、次会ったら殺し合いかしらね?」
「そうじゃない?俺は出来ればアンタと戦いたくないけどさ。」
 これもまた本心だった。真人にしてみても柊真昼は関わりたくない相手だ。
 人間性という訳ではない相性が最悪だ。
 マジアベーゼとダークマイト、あるいはマジアベーゼと仮面ライダーマジェードのように覆しがたい相性差というものは存在する。
 
 (柊真昼は体内に鬼を宿している。それも生まれつきだ。
              ・・・・・・・・             ・・・・・・・・・・・
 虎杖 悠仁がそうであるように魂を知覚しているどころか下手に術式を使えば鬼とやらに反撃を喰らうだろ。
 つまり奴は武器に精通した虎杖 悠仁といっても過言じゃない。)
「嘘だろ羂索、俺の天敵にもほどがあるよ。」
 縫い目のある顔なじみに愚痴りながらも、真人はぶらぶらと歩きだす。
 どこを目指すのか、それはその時の真人が決めることだろう。
 
「私はどうするかなぁ……。」
 一人残された真昼も行くべき場所を決めねばならない。
 さっきの影のこともあるし、益子薫のことも気になる。
 柊真昼はしばし考え、一先ず暑いので適当な民家で放送を待つことにした。

 【エリアD-9/アビドス自治区/9月2日午前11時10分】

 【真人@呪術廻戦】
状態:五体満足、呪力消費(大)、タギツヒメへの警戒と呆れ、反省(小)エケラレンキス・柊真昼への警戒
服装:いつもの
装備:改造人間@呪術廻戦、Lの聖文字@BLEACH
  改造人間(ダークマイト)@呪術廻戦(オリジナル)
   ザビーのバズーカ×@戦国BASARA
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:いつも通りにする。呪いらしく、人間らしく狡猾に。
00:不慣れな奴ほど奇を衒う、じゃないけど今回はらしくない遊びが過ぎたかな?
01:もっともっと人らしく、呪いらしく狡猾に行こう。
02:イザーク・ジュールたちは次会った時に身も魂も殺してやる。
03:沙耶香の知り合いに会ったら、適当な改造人間沙耶香ってことにしても面白いかも。
04:タギツヒメ、それは呪いの在り方じゃないでしょ。
05:ロロに関しては頭にとどめておく程度。
   もしルルーシュと遊ぶ機会が有ったら、ってところかな?
06:流石にちょっと休憩。
07:次に行くならアビドス高校かな?
08:柊真昼……どう考えても俺と相性最悪でしょ。どうしよっか
09:個性持ちの改造人間。どう使おうかな。
10:エケラレンキス……運営側であのレベルかよ。
参戦時期:少なくとも渋谷事変よりも前
備考
※魂の輪郭を知覚していればダメージはより通りますが、
 魂の輪郭を知覚してなくてもダメージは通るようになってます。
※改造人間が没収されてない代わりに支給品が1枠減ってます。
※沙耶香から『刀使の巫女』、ロロから聞かされてる限りの『コードギアス』に関する知識を得ました。
※レプリケミーも呪霊同様術式対象に出来るようです。
※リュックを失いました。

41空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:19:19 ID:3ZzeB0BY0

【柊真昼@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、柊家への怒り(再燃)、益子薫への微かな期待
服装:普段の学生服
装備:ドゥームズドライバーバックル&オムニフォースワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー、ノ夜@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
令呪:残り二画
道具:精神に作用する呪符×10@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅(残り8枚)、ホットライン、どこだかドア@ドラえもん(午前7時に使用、午後1時まで使用不能)、クリスマスケーキに付属していたフォーク@仮面ライダーエグゼイド、ギガント@劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4(残弾数不明、1発消費)、フエルミラー@ドラえもん(午前9時55分に使用、午後3時55分まで使用不能)、ジャコーダー@仮面ライダーキバ
思考
基本:優勝して好きな人(グレン)と妹(シノア)と一緒に、普通の人間として生きれる世界を願う。
01:今はとりあえず他参加者を探してみよう。
02:令呪三画…侮れないわね。
03:薫ちゃん、あなたはその憧憬を貫けるかしら?ついでに名簿で薫ちゃんや舞衣ちゃんの近くにいる知り合いっぽい子達に会ったら、2人が人殺しになっちゃった事を伝えてみる。
04:主催者達が柊家絡みの線は薄くなったけど…今は情報が足りないわね。
05:基本皆殺しだけど、レジスターの解析やバグスターウイルスの対処が出来る人なら話は別かな。
06:こんな状況じゃなかったら、ルルーシュとは1回話してみたかったな。
07:羂索に一ノ瀬宝太郎くんにラウ・ル・クルーゼ…『ガッチャ』に何の意味があるのかしら??
08:ダメ元でも使ってみるものね。
09:ジンガには…出来れば出くわしたくないわね。
10:真人……ああいう何考えているかわかんないタイプは扱いにくいのよね。
参戦時期:第一渋谷高校襲撃事件にて離反後、吸血鬼となる前の何処かから。
少なくとも漫画版7巻のInterlude〜生きる意味〜(第27話と第28話の間)よりは後。
備考
※詳細な位置は後続にお任せします。
※ソロモンによる洗脳能力は一度に2体までかつ一度解除しないと新たな洗脳は不能、ライダー以外に使用可能か現状不明、相手の精神状態次第では無効、一度使うとインターバルが必要、真昼当人は変身前でも使える事を未把握となっています。詳細なインターバルは後続にお任せします。
※令呪行使時に使用可能な巨大カラドボルグをキングオブソロモンへと変形させ行使する能力や、巨大なる終末の書の投影はどちらもサイズ及び有効範囲が落ちています。
 
 ◆◇◆◇◆

42空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:22:49 ID:3ZzeB0BY0

 結論から言えば、シノンの賭けは成功していた。
 スピリットのラウズカードで精神を呼び覚まさせられた九堂りんねの回復は、通常時に比べて遥かに速い。
 より正確に言えば、倒されてから意識を戻すまで数秒とかからなかった。
 
「……え?」
 そんな呆けた声が、目を覚ました九堂りんねが最初に聞いた言葉だった。
 その声が誰のものだったのかは、後々思い返しても分からない。
 少なくともシノンではないだろう。喉から吐き出した赤い泡が噴き出ている。
 シノンの体はALOのアバターだ。それは運営――おそらく茅場 晶彦―が用意した電脳世界の戦士たちへのアドバンテージ。
 だがそれでも致命傷を受ければ死に至る。
 微睡から冷めたりんねの前で、事態は進行を続けていた。

「こい……つ」
「変身を解くのは失策だったな。君たちはまだちっとも安全ではない。」

 勢いよく胸に指した刀――心刀・無垢をグリオンが引き抜く。
 アバターの骨と血管がぐじゃぐじゃと音を立ててかき混ぜられ、噴き出た血が九堂りんねと亀井美嘉の顔に飛び散った。
 バイクに乗っていた(アメン ラクダレリーフで呼び出されたものだ。)梔子ユメと黒見セリカもまた追いついた。
 血にまみれた砂漠、倒れるシノン。嗤うグリオン。
 何が起きたかは考えるまでもなく明確だ。

「盈たして 月蝕尽絶黒阿修羅!!」
「トランスマジア!!」
「戴天身!!」

 激昂した少女達が同時に姿を変えた。
 ユメはシノンに駆け寄ろうと走り出しセリカは引き金を引き美嘉は殴りかかる。
 だがその全てがグリオンには届かない。

 「そんなものか。」
 グリオンが黄金色のルービックキューブを弄ると、錬金術によるものだろう。
 地面の砂複数の布のようにより集まり、セリカの銃弾を防ぎ美嘉を縛り上げる。
 そのまま手をかざすと、砂の塊がユメとセリカまでぐるぐると縛り上げる。
 ノワルのように嗜虐的な緊縛ではない。無力感を教え込むための力強い縛りだ。
 強引に締め上げながら少女達を地面に叩き伏せる。何かしゃべろうとする前にグリオンの錬金術が彼女たちの口をふさいだ。
 苦悶の声を上げる少女達をまえに、九堂りんねは何もできなかった。
 
「グリオン!!!!」
「久しいな九堂りんね。元気そうでなによりだ。
 ところで見たまえ、君のせいで起きた惨状を。」
「……え?」
 君のせいと言う言葉に固まるりんねに、グリオンはにたりと嗤う。
 人の醜悪な感情だけで塗り固めたような、そんな顔だ。

「君のせいだろう?君がいなければマジアベーゼが戦った時点で彼女たちは勝っていた。
 そもそも君がダークマイトなどという小物に敗けさえしなければ、アビドスが戦場になることもなかったかもしれない。
 こうも疲弊してあっさり負けるような無様は晒さなかっただろう。」
「あ・・・あ・・・」
「いい顔だ。
 私の大好物なんだ。後悔と絶望に塗れ未来を失った者の表情が!!!」
 けたたましい笑いが響く。ダークマイトのような己を誇示するための笑いではない。
 真に恐怖心に響く底冷えするような笑いだった。


(まずいわね……このままだと全員殺される。)

 絶望的な状況を前に血液を失いつつあるシノンの脳が、指を動かすように命じた。
 九堂りんねは動けない。
 梔子ユメも、黒見セリカも、亀井美嘉も動けない。
 
 それでもここで何もしなければグリオンの掌の上だ、それだけは何としても阻止しなければ。
 マジアベーゼだって致命傷から一矢報いた。
 アバターの自分ができないなどと、誰にも言わせたくはない。言わせない。

43空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:24:03 ID:3ZzeB0BY0

『チェンジ』
 どうにか取り出したラウズカードで変身できる。アバターの体は失血死するまで何秒かかるのか分からないが、そうなる前に動くしかない。
 感覚を失いつつある指でシノンは次々とカードをスキャンする。
 
『フロート』『トルネード』『リフレクト』
 カリスアローの電子音に気づいたグリオンが、怪訝な顔でシノンを見下ろす。
 既にその足は、シノンにとどめを刺そうと振り上げられていた。

「何をする気だ?」
 答えを待つ気がない問いを投げかけた。
「ざまあみなさい。グリオン。」
 仮面の中で舌を出して、シノンは弓を引いた。
 グリオンがシノンの首を踏み潰すより、シノンのほうが速かった。
 
 カードの効果を受けた4発の弓は、寸分たがわず少女たちに命中し。その体を舞い上がらせどこかに吹き飛ばす。
 フロートのカードで舞い上がった少女たちの体が、トルネードの効果で弾き飛ばされる。
 どこに行くのかはシノン自身分からないしバラバラになるかもしれないが、ここに居るより生存確率はずっと高い。

「シノン!!!」
 上空に打ち上げられた中セリカが叫ぶ。
 その声はシノンには届かず、振動が砂漠に伝わる頃にはシノンの首はへし折られていた。
 
 少女たちがどこに行ったのかは、誰にも知らない。
 リフレクトのカードがあるから死ぬことは無いだろうと、祈るようにシノンの意識は闇に溶けた。

【シノン@SAOシリーズ 死亡】

44空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:24:59 ID:3ZzeB0BY0

「見事だ。
 あの状況で4人を逃がしきるとは、そうできることではない。」
 グリオンにしては珍しい。賞賛の言葉を骸に投げかける。
 シノンがいなければあの場の死体が4つ増えていただろう。グリオンから見てもシノンの足掻きはファインプレーだった。
 
 どこか楽し気に空を眺めるグリオンに、背後の影から声がした。
 最後に残った冥黒のアビドス生。アヤネことムーンマルガムだ。
 
「亀井美嘉を捨ててよかったのですか?」
「思ったよりも揺らいでいたし、どのみち私に従順とは言い難かった。
 ワープテラとエンジェリードの回収に失敗したこと以外は、さしたる問題でもない。」
「そうですか。」
 グリオンは冷徹である。アヤネもそんなことは知っている。
 一度は配下に加えた女を平然と捨て(シノンがいなければ殺していただろう)、ノノミの死は話題にすら上げない。
 魔王と名簿に書かれるだけのことはある、この男はダークマイトなどよりよほど人間ではない。

「ところでわざわざ砂漠のど真ん中まで来たということは、いい報告があるんだろう?」
「そうですね、いくつかお伝えしたい情報がありますが……まずはこれを。」

 そう言ってムーンマルガムは影の中から人間を2つとりだした。
 胸に深々と穴が開いた少女と、鋭利な刃物で袈裟切りにされた軍服の青年だった。
 柊うてなの死体と、アビドス高校の戦いで亡くなったディアッカ・エルスマンの死体だった。
 宇蟲王の配下が守っていたが、彼らとて影の中までは守備範囲外だ。ムーンマルガムであれば簒奪することは難しくない。
 
「1人は恐らくマジアベーゼか。もう1人は軍人かな?」
「ディアッカと呼ばれていました。キラ・ヤマトの語った名前と一致します。
 何故だかNPCモンスターたちに守られていましたが。どうにか回収には成功いたしました。」
「コーディネーターというわけか。見た目は人間と変わらないが高い性能を持つのだったね。
 シノンも合わせて回収品は3つと。まずまずだな。
 後に支給品の精査をして、本格的にギギスト退治といこうじゃないか。」
「支給品でしたら、マジアベーゼ、ディアッカ及びダークマイトのものは回収しております。」
「ほう。」
 続けて影から取り出した3つのリュックに、グリオンは感心したように顎をなぞる。
 リュックとは別に取り出された男の腕のような物体を持ち上げ、グリオンは問うた。

「これは?」
「ダークマイトの腕です。
 ”個性”と言う口ぶりから、ダークマイトの能力は生来の肉体に備わっているものの可能性が高い。
 残念ながら骸を回収とは生きませんでしたが……」
「……成程。これはひょっとすれば使えるかもしれないな。」
「またご報告ですが、アビドス高校に向かうにあたり運営側の存在と接触を果たしました。」
「成程、その報告も合わせて聞かせてもらうぞ。」
 報告を終え恭しく礼をしたムーンマルガムは、回収した全てを影に戻しグリオンの足元に隠れる。
 グリオンの向かう先が、アヤネの行くべき場所だ。
 
 グリオンはくつくつと笑う。期待以上の成果だ。
 グリオンの消耗は手下一体とケミーカード2枚。離反した配下1名。
 たったそれだけで彼は莫大な戦果を得た。宇蟲王ギラを初めとした脅威は健在ながら大勝利といっていい。
 
 この場の戦いで少女たちは全てを失った。
 嘆きだけが残るアビドス砂漠で、魔王がただ一人笑っていた。

45空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:25:29 ID:3ZzeB0BY0
【エリアC-9/アビドス自治区/9月2日午前11時10分】

 【魔王グリオン@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、冥黒のアビドス対策委員会を率いる
服装:いつもの服装
装備:金色のルービックキューブ@仮面ライダーガッチャード 心刀・無垢@SHY-シャイ- ドロップ品2つ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、テラー世界線のシンシアリティ@ブルーアーカイブ、ガッチャードローホルダー@仮面ライダーガッチャード、ライドケミーカード(ヨアケルベロス)、双眼鏡@現実
ストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED 錬金アカデミーの制服(黒)@仮面ライダーガッチャード、簡易救急キット@オリジナル
 バトルホッパー@仮面ライダーBLACK カリスラウザー@仮面ライダーディケイド ラウズカード一式(♡A〜10)@仮面ライダーディケイド
 マナメタルの結晶@戦隊レッド 異世界で冒険者になる コーネロの指輪@鋼の錬金術師 金の指輪と金貨@僕のヒーローアカデミア オールマイトのシルバーエイジ時代のコス@僕のヒーローアカデミア
 柊うてなのランダムアイテム×0〜1 九堂りんねのドロップアイテム×0〜1
 シノン@SAOシリーズの死体  柊うてな@魔法少女にあこがれての死体 ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEEDの死体 ダークマイト@僕のヒーローアカデミアの右腕
基本:このゲームを利用して目的を達成する。
01:まずは悪意を振りまき、抗う者たちを蹂躙する。
02:アビドス高校か。別の歴史の一ノ瀬宝太郎共々絶望を見せてやろう。
03:いずれホシノを仕留めた連中もじわじわと嬲り殺す。
04:キラ・ヤマト…惜しかったが、絶望と悪意を振り撒いてくれるだろうと期待。
05:ギギストの賢者の石を手に入れ、さらなる力を手に収めたいところだ。
06:ノノミが死んだか。まあホシノよりはよくやった。
07:亀井美嘉は思いのほか揺らいでいたな。エンジェリードを回収できなかったことだけが失策か。
08:思いのほか収穫があった。さてここからどうすべきか
参戦時期:少なくとも本編時間軸にドレットルーパー軍式を送り込み始めた後
備考
※■■■の意■に肉体を■■■られています。
※アヤネ(デスマスク)をムーンマルガムに変身させたうえでセリカたちを追わせました。
※ホシノ(デスマスク)を処分しました。
※ノノミ(デスマスク)をプテラノドンマルガムに変身させました

【冥黒アヤネ(非参加者)@ブルーアーカイブ+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大)
服装:アビドス高校の制服
装備:
道具:ネミネムーンケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド 
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:黒見セリカと水色の女を見逃した失態は必ず挽回する
02:ノノミめ、大口をはたいてこうもあっさり消えるとは
03:エケラレンキス……奴は危険かもしれない。
04:首尾は上場、さてここからだな
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です

46空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:26:21 ID:3ZzeB0BY0
【エリア??/?????/9月2日午前11時10分】

 【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)魔王グリオンへの怒り(極大)
服装:アビドス高校の制服(リンチにあったため汚れ 大)
装備:エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
 トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
 ワープテラケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
思考
基本:こんな殺し合いにはのってやらない
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……この人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:マジアベーゼ……アンタの力、貰うわよ。
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
※トランスアイテムで魔法少女に変身できるようになりました。
 その姿をマジアアビドスと命名しています

 【梔子ユメ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)疲労(大) 黒見セリカへの興味(大)魔王グリオンへの怒り(大)
服装:アビドス高校の制服
装備:アメンバッグル&レリーフグリフバッジ(10種)@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
令呪:残り二画
道具:お助けカード@Fate/Grand Order 
 ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索の目的を知る
01:私の姿をした。羂索……
02:ジークと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
03:ホシノちゃんもいるんだ……
04:アビドス高校に向かう、可能ならホシノと合流する
05:ノワルとアルジュナ・オルタは要警戒。
06:セリカちゃんアビドスの後輩なんだ!嬉しいな!
参戦時期:行方不明になった後
備考 ※ゲームに参加する前後の記憶が朧気です。 少なくとも自分が死んだような記憶はないです
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています
※お助けカードは残り2枚です

 【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:疲労(大) キリトに対する殺意(中)左目損傷(眼帯装着) 自分の中の感情に対する困惑(小)魔王グリオンへの怒り(大) ダメージ(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅(契約状態)@ダークギャザリング
 ソードスキル:星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)@HUNTER×HUNTER
 (継承スキル):幻妖と契約して力を得る能力@鵺の陰陽師
(継承スキル):冥黒錬金術@仮面ライダーガッチャ―ド
 未来の宝太郎の眼帯@仮面ライダーガッチャ―ド
 エンジェリードケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
令呪:残り二画
道具:香水@ダークギャザリング 、ホットライン
思考
基本:生きて帰る。キリトをどうするかはもう一度出会ってから考える
01:黒い剣士がどんな人なのか、知ってから考える
02:殺意は消さない。私が背負わなきゃ忘れられちゃう人が居るから
03:ゆうちゃん・・・・
04:シノン……。マジアベーゼ……。貴女のこと、忘れない。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
 ※究極メカ丸 絶対形態は破壊されました
 ※月蝕尽絶黒阿修羅の呪いを体内に宿しています。普段は通常通りの思考・会話が可能ですが、キリトの姿を見たり激昂すると暴走し、気を抜くと他者が全てがキリトに見える状態です。
 ※左眼を開くことが出来ません。失明したのか時間経過で回復すのかなど具体的な状態については後述の書き手様にお任せします。
 ※代葉を殺したキリトが贋者である可能性に行き着きました、方針としてはもう一度キリトと出会ってから決定する予定です。

 【九堂りんね@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:動揺(極大)魔王グリオンへの怒り(大) 魔王グリオンへの恐怖(極大) ダメージ(極大)疲労(大)
服装:錬金アカデミーの制服(ボロボロ)
装備:ケミーカード(ザ・サン、ユニコン)@仮面ラ二イダーガッチャード 、ハイアルケミストリング@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り二画
道具:マナメタルの結晶@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
思考
基本:……
01:私のせい……?
参戦時期:冥黒王に殺害された後、意識をザ・サンへ移す直前
備考
※ラウ・ル・クルーゼの放送と同時にNPCモンスターに襲われたため、名簿などチェックはできておりません。
※ルルーシュの通信演説も同様に耳にしていません。

47空と虚④ ナラティブ ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:26:53 ID:3ZzeB0BY0
 
 ◆◇◆◇◆

「『劣化複製:五視万能(スペクテッド)』
 まさかあの偽りの象徴がここで脱落かぁ。
 魔法少女の敵も私としては災害の魔女とのリベンジを期待してたんだけど……。ま、終わったもんは仕方ないかぁ。」

 アビドス高校の一画に佇み、エケラレンキスは全てを眺める。
 アビドスで起きた2つの戦い。多くのものを失い多くのものを得た。
 勢力図が変わりそうな事態も起こり、ここから殺し合いも関係性も激化するだろう。
 
「ゲームはまだまだこれから。もっと盛り上げて頂戴ね、駒(プレイヤー)諸君!」
 期待を込めた言葉を誰知らず投げかける。
 刀使ならざる神殺し殺し。
 彼女もまた、この盤上では健在である。
 
 【エリアC-9/アビドス自治区/9月2日午前11時10分】

 【魔獣装甲のエケラレンキス】
状態:疲労(極小)
肉体:古波蔵エレン@刀使ノ巫女
装備:魔獣装甲エケラレンキス
   小烏丸@刀使ノ巫女
   ???の魔戒剣@牙狼<GARO>シリーズ
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:なし
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:思うままに楽しむ。
02:エルちゃんの連れてった二人もあの辺に居るだろうし遊んであげよっかな
03:さーて、アタシが戻るまでに何人集まるかな?
04:ママっ子先生とお医者さん人形は生きてたら相手をしてあげる。
05:エルちゃんったら、真面目が過ぎるから騙されるんだよ♪
06:特級呪霊に柊の鬼子……あのクラスの参加者はもっとガンガン暴れてほしんだけどなぁ
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※刀使としての能力を概ね高い水準で発揮できます。
※肉体が女性ですが両腕に魔戒騎士の遺骨を埋め込まれているので魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器は使えます。
※魔獣装甲は魔戒の鎧を召喚出来ない彼女の為の固有武装です。
 冴島鋼牙シリーズに登場した魔獣装甲コダマ同様自由に脱着できます。
※帝具@アカメが斬る!の能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

【支給品解説】

 マナメタルの結晶@戦隊レッド 異世界で冒険者になる 
 ……浅垣灯悟(バッドエンド)に支給
 絆エネルギーに反応し様々な現象を引き起こす媒体となる。2対の宝石
 現時点では高い絆を持つ者同士が所有していると緊急キズナワープを発生できる。
 コーネロの指輪@鋼の錬金術師
 ……九堂りんねに支給
 レト教の教主がつけていた賢者の石の嵌められた指輪。
 なお賢者の石は贋作であり、使いすぎると破損したりリバウンドを引き起こし使用者の肉体を変質させてしまう。

48 ◆kLJfcedqlU:2025/04/21(月) 00:27:19 ID:3ZzeB0BY0
投下終了します
更新時間を過ぎてしまい申し訳ございません

49◆mAd.sCEKiM:2025/04/21(月) 22:12:04 ID:???0
何度もすみません。
予約を延長させていただきます。

50歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/21(月) 23:59:27 ID:vNGrPiBw0
いつも投下開始がギリギリですみません。投下します。

51歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/21(月) 23:59:46 ID:vNGrPiBw0
私はただ、歌がすきなだけ 美空ひばり

「「「……」」」

H10ケヤキモール。本来は高度育成高等学校の敷地内にある大型ショッピングセンターだが、今は殺し合いの舞台のランドマークの一つ。
1Fにはレンタルショップ。期間限定だが5Fには占いがあるなど学生が息抜きする娯楽施設が多くある。もっともここにあるケヤキモールは、真か贋どちらであるかは定かではないが。
そんなショッピングセンターの2F、カフェに3人はいる。
勿論、優雅に朝のひと時を過ごしているわけではない。その証拠に3人は別々のテーブル席にいる。そして、3人はそれぞれ真剣なまなざしで店内に設置されていた白紙と向き合っている。

☆彡 ☆彡 ☆彡

52歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:00:12 ID:TlNUSJbc0
――カフェに立ち寄った直後――

「東にラクス。ここで休憩も兼ねて作詞をしませんか?」
「え?」 「……」

始めは当初の予定通り、ここのカフェで休憩をするはずだった。
だが、ディーヴァは休憩すると同時に作詞の提案をした。

「私達はこれからコロシアムで歌と想いを届けにいく……なら既存の曲では駄目だと思うんです」

そう、3人は殺し合うのではなく、歌う。
少しでもこの殺し合いを抑制させるため。
しかし、言うは易く行うは難し 歌で殺し合いが終わるのなら世界で戦争など起こらない。
だが、3人は真剣にこの殺し合いを抑制しようと考えている。歌の力で。
”歌”が彼女たちの武器なのだから。
しかし、3人が歌える、知っている曲はどれもこの殺し合いに向けた曲ではない。
それでは、アドリブで歌うのか。
否。準備不足でしたと言わんばかりな歌詞では、殺し合いに乗った参加者どころか他の参加者にも到底響くことはない。
故にディーヴァは提案する。

この殺し合いに向けた歌。すなわち自分たちで作詞した曲を歌うことを。

「……ええ。実はわたくしもディーヴァさんと同じことを考えていました」

そう応えるのはラクス。

「わたくしたちは、歌が持つ可能性を力を信じています。ですが、ただ歌うのではない。どう歌うのかが大切なのです。……想いだけでは、力だけでは駄目なのです」
「うん。そうだね。私もそう思う」

3人は意見が一致すると、行動に移る。
心を込めて歌うために

☆彡 ☆彡 ☆彡

53歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:00:44 ID:TlNUSJbc0
東ゆう Aパート

「さっきはああいったけど、作詞……か」

作詞。ディーヴァさんから”それ”を提案されたとき、胸の奥がチクリとした。
私にとって作詞とは、永遠に終わらない宿題だからだ。
計画が実りアイドルとしてデビューした東西南北(仮)。
その次の曲は自分たちで作詞したいと私は事務所の社長に直談判して勝ち取った。
だが、東西南北(仮)は次の曲を発売する前に崩壊した。
(仮)から(真)になることもなく。

「……想いを届ける」

ゆうが頭に想いうかべるのはやはり東西南北の三人だ。

南さん…本名は華鳥蘭子。
聖南テネリタス女学院に在籍する南の星。縦ロールの女。
テネリタスはラテン語で”優しさ”というらしいが、彼女はその名に恥じない優しさある少女であった。
なにせ、友達を作りに来たという私の胡散臭い話を”おかしいわ”といいながらも友達になってくれたのだから。
北を手に入れたその日は、英検準一級に合格した時以上の充実感で帰宅したのを今でも忘れていない。なにせ彼女が友達になってくれたことで、私の馬鹿で称賛の無いプロジェクトが始まったのだから。

…うん。生きて帰ったらベルばら調で彫刻された銘板に謝ろう。
蹴りをお見舞いしてごめんなさいと。

くるみちゃん…西の星。萌え袖の女。
西テクノ工業高等専門学校のロボット研究会に籍を置くその界隈ではちょっとした有名人。
通称「高専のプリンセス」
彼女だけは最初からメンバーの候補となっていた。その知名度は計画に絶対必要であったから。
あせらず長い刻を重ねて関係性を深めた。そのかいあって彼女たちのチームはロボコンで準優勝を果たし、結果として西を手に入れることができた。
だけど、西の星は耐えられなかった。アイドルという職業に。
そういえば、私に支給されたデスティニーと呼ばれる起動鍵。
ラクスさんの話を聞く限り、モビルスーツ?いわゆるロボットの姿になれるらしい。
ロボットマニアなら涙を流して喜びそうだが、私は流さないだろう。
だけど、そんな凄そうな鍵をくるみちゃんではなく”私”に支給するとは……
これは西を手に入れるために「初心者用ロボット組み立てキット」を買ったエピソードが関連しているのだろうか?

そう思うと、組み立てキットには感謝し直さないと。
おかげで、くるみちゃんだけでなくラクス・クラインさんという美女と接点を持てたのだから。
6万円の出費は必要経費。

54歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:01:01 ID:TlNUSJbc0
美嘉ちゃん…南の星。善を為す女。
くるみちゃんと違って南の星は”この人”と決まってはいなかった。
たまたま本屋で出会った彼女は、有力候補であった城州北高校の生徒ではあったが、その”男好き”って感じが即断即決できなかった。
だが結局、休みの日にはカラオケやボウリングに男を交えて訪れていそうな、ぱっと見派手な外見をした彼女が、ボランティア活動に汗水を流して行っているという化学変化を起こしていることに魅力を感じて北の美少女を受け入れた。
ちなみに整形していることは問題なかった。昔と比べ整形に世間が抵抗を示すのが低くなっているし。
だけど、私の予想通り美嘉ちゃんには彼氏がいた。

最悪……ちっ!
聞いてない。彼氏がいるんだったら友達にならなきゃよかった……サイって――

……うん。我ながら酷いことを言ってしまった。

だけど、そんなに男の子と付き合うのっていいのかな?
う〜〜ん。アイドルを目指す身としては”なし”一択なのだが。

私を救ってくれたかっこいい東ちゃんは、もういない…昔の東ちゃんはどこにいったの?

彼女はそういったが、正直全然記憶にない。
そういえば……彼女との思い出は今も遡ろうとしても思い出せない。
彼女がいうには私は彼女にとってヒーローだったらしいが。
ミッツ―に聞いても思い出せなかった。
……うん。再会したら聞いてみよう。小学生時代の私を。

南さん。くるみちゃん。美嘉ちゃん。
3人にきちんと謝りたい。
東西南北の方位磁針は壊れてしまったが、たわいのない会話をする友人関係には戻れたらと思う。

最後…東の星、私こと東ゆう。
自分で星を名乗るなって?うっさい。
東西南北だからではないが、文字通り東奔西走、南船北馬と動いた。
全ては叶えるために。
あの日見たアイドルのように”光りたい”と。

アイドル文化が日本に生まれてからもう随分と経っている。
数年に一回ブームが波をうちに来るが、今は引いている時代のように感じた。
私にはどうでもいいことだった。

だから、私はここで死なない。
東西南北(仮)がダメとなったのならまた別の手段で叶える。
生きて帰ったら履歴書を事務所に送らないと。

【絶対にアイドルになる】

その強い信念はこの殺し合いでも折れない。

東ゆう:オリジン

☆彡 ☆彡 ☆彡

55歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:01:20 ID:TlNUSJbc0
ラクス・クライン Bパート

「さて、わたくしも取り掛かりましょう」

「キラ……」

想起するは最愛の人。
優しい……いや、優しすぎる人。とても。

C.E.(コズミック・イラ)
ラクスのいる世界は二つの人類が共存している。
遺伝子を調整し、生まれながらにして優れた身体能力や頭脳を持つ人類(コーディナイター)と自然のままに生まれた人類(ナチュラル)に。
それぞれが手を取り合っていければなんと素敵なことだろう。
だが、現実は非情。
実際は己の存在をかけた思想が衝突し、武力を用いた戦争が起きた。
その最中、デュランダル議長から「ディスティニープラン」が提唱されたが、戦いの中、拒絶された。
そして、多くの犠牲を払い戦争は終結を迎えたが、二つの人類の対立と憎しみは今もなお、各地にくすぶり続けている。

兵の心情を慮れば、ヤマト隊長の行動は無慈悲に過ぎる!

違うのです。キラは再び戦争の泥沼が来ないよう奔走しているのです。

戦いに病んで疲れ凝っているキラと、彼を助けたいのに何もできない自分……。

「……っ!」

パンと両頬を叩く。

しっかりしなさい。
わたくしが迷っていたらキラはどうなるのです。
だからわたくしは決めたのです。あなたと共に戦うことを。

そして、【ラクス・クライン】の座を空席にしてはならない。
二度とミーアのような人を生み出さないためにも……

名簿にキラと自分。そしてアスランにアスラン隊の面々がいるのはあきらかに”彼”の意思だろう。
ラウ・ル・クルーゼがこの殺し合いの主催の一人なら自分とキラがいるのは理解できる。流石に愛する名と友人が二つ記載されていたのには困惑したが。
しかし、どうしてキラとアスラン。同じ名前が記載されているのか今はまだ分からない。
もう一人のアスランは?と記載されているから、もしかしたら、ミーアのように顔を変えさせられ、名を名乗らされている参加者なのかもしれない。
どちらにせよ、わたくしたちは彼のガッチャにはならない。

「ラウ・ル・クルーゼ。過去の亡霊が今を生きる人々に干渉し、弄ぶことはあってはなりません」

そして彼を自由にさせてあげたい……

優しさで壊れてしまう前に……

ラクス・クライン:オリジン

☆彡 ☆彡 ☆彡

56歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:01:35 ID:TlNUSJbc0
ディーヴァ Cパート

「……さて、言い出した私ができていませんでは、格好悪いですね」

指をパチンパチンと鳴らしながら不敵に笑みを浮かべると、作詞に向き合う。

「マツモト……」

デーヴァが想起するのは100年の旅。
100年と聞くと人間にとってはとても長い年月だろうが、私達AIにとってはちょっとした時間経過でしかない。
だが、あの100年はとても長いコンサートのような時間だった。
私はひょんなことからAIと人類の戦争を防ぐため、相棒のマツモトと共に壮大なシンギュラリティ計画を完遂させた。

――ご清聴ありがとうございました――

そこで私の使命は終わったはずだった。
だが、目を覚ませば今度は箱庭の中での殺し合い。

状況から鑑みると、いくつかの世界で生きる者達が一堂に集められていると私は結論づけた。
仮面ライダーといった装甲やひみつ道具と呼ばれる物などディーヴァの世界にはなかったのが、その証拠。
名簿を確認すると、参加者の関係者のばらつきが気にはなる。
依然、彼らの目的は今は分からないが、おそらく”彼らにとってのガッチャ”のためだろう。

今の人類は生き残るべきでしょうか?

「……」

東とラクスの話を聞く限り、二人の世界でもAIと人間の戦争こそないが、人間同士での戦争や紛争はあるらしい。
ラクスの世界では、AIとは違うが、コーディネイターとナチュラルといった遺伝子で種類別された人類の戦争があったらしい。今は大規模な戦争は起きてはいないが、思想同士の紛争は継続していると憂いていた。
東の世界では、大きな規模の戦争が二度あったらしい。東の国も二度目の戦争では、国が荒廃と化していたそうだが、見事復興を果たして比較的平和らしい。が、今も大国による一方的な侵略戦争や信ずる神の土地を巡った民族同士の紛争が継続しているらしい。

どこの世界でも”戦争”はあるのか。
そう聞くと、”戦争”というものは人という生命の業ではないかと感じてしまう。
だが……

今の人類は生き残るべきでしょうか?

それはアーカイヴからの問い。

「私の答えは決まっています」

そう、1年後、10年後、100年後に尋ねられても変わることはない。

【使命】

AIと人間が共に発展する未来を紡ぐために。
ディーヴァの使命は”歌で皆えを幸せにすること”
それは今も昔も変わらないたった一つの使命。

「行きましょう」

ただのディーヴァとなった今も心を込めて歌う。
それだけ。それがディーヴァの真。

ディーヴァ:オリジン

☆彡 ☆彡 ☆彡

57歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:02:16 ID:TlNUSJbc0
時間が流れ……

「二人とも、予定していた時間がたちました。良いのができましたか?」

「はい」
「ええ」

ディーヴァの問いかけに二人は自信満々に答える。その目からもうかがえるほど。
その瞳にディーヴァはうんうんとグッとサインを示す。

「良い返事です。私もできました。それじゃあ、歌詞に込めた想いを一人ずつ語りましょう」

かくかくしかじか

こうして、それぞれの担当パートの想いを伝えた後、3人はサビを話し合った。

「……よし!完成です」

3人は歌いだす。
ムード盛り上げ楽団のBGMつきで。

☆彡 ☆彡 ☆彡

58歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:02:47 ID:TlNUSJbc0
東西南北〜手を取り合って100年の旅〜

作詞 東ゆう、ラクス・クライン、ディーヴァ(s5tC4j7VZY+生成AI)

Aパート

東の星に願いを乗せて 南の星が包み込む 西の星が勝利を求め 南の星が与える
それぞれの場所で 生きている 巡り巡るこの地球で

Bパート

殺し合いの影が広がる空に 涙の雨が降り注ぐ でも心の奥に眠る光 それが希望の種になる
愛の灯火を掲げよう 暗闇を照らすその光で 手を取り合い 共に進もう  怒りの炎を消せるから

サビ

東西南北 すべての人へ 愛と勇気が届く世界へ この歌が平和の種となり 偽りのガッチャが消える時 真実の声が響き渡る

Cパート

殺し合いでは得られないもの それは 運命と自由 この歌が 心と記憶で真実の灯火となる
100年の旅を照らす道標となれ カーテンホールから響く音色で 愛と勇気を繋ぐこの歌が 真実のガッチャで未来を作る

☆彡 ☆彡 ☆彡

59歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:03:03 ID:TlNUSJbc0
「……よし。録音も無事にできた。それじゃあ行こうか」

ディーヴァの言葉に二人は頷く。
もしものときのことを考え、ディーヴァの支給品であるipodに曲を録音し終えると、3人は目的地であるコロシアムへ足を向ける。

3人の想いが込められ産まれた曲。
殺し合いの楔となる真の曲となるか。
それとも胸響かずに終わる贋となるか。

歌姫たちは戦いへ望む。

【エリアH-10/ケヤキモール2Fカフェ/9月2日午前9時】

【東ゆう@トラペジウム】
状態:精神的疲労(小)、覚悟(大)
服装:制服(城州東高校)
装備:デスティニーの起動鍵@ 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ムード盛り上げ楽団@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:元の世界へと帰る
01:ラクスさんとディーヴァさん、この人たちと協力したい。
02:結果が全てじゃない。だから、このゲームに乗ってアイドルになっても意味がないんだ!
03:みんなに会ってごめんと謝れる自分に
04:今度こそ、人を笑顔にできるアイドルに!
05:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:東西南北崩壊後
備考
東ゆう、ラクス・クラインの世界の簡単な知識を得ました。

ムード盛り上げ楽団@ドラえもん
東ゆうに支給されたひみつ道具。
その場の状況・付けている人の気分に合わせた音楽を演奏し、場のムードを盛り上げる。
効力は「音楽の力」 ムードもりあげ楽団の効果の強さは、対象者がどれだけ雰囲気に乗せられやすいかに比例する 。アイドルになって輝きたい女であるゆうにぴったりなひみつ道具である。
こんな素敵な職業ないよ!by東ゆう

60歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:03:22 ID:TlNUSJbc0
【ラクス・クライン@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:通常
服装:和服?(戦艦乗艦時のあれ)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:遠写鏡@ドラえもん、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ…亡霊が今生きる人に干渉してはなりません!
02:キラとアスランが二人ずつ……?ミーアのように同じ顔にさせられているのでしょうか?
03:歌で皆を止めるためにコロシアムに向かう。
04:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
東ゆう、ディーヴァの世界について簡単な知識を得ました。
【ディーヴァ@Vivy -Fluorite Eye's Song-】
状態:システムは正常に作動中
服装:軍服
装備:エイムズショットライザー&サーバルタイガーゼツメライズキー@ゼロワンOthers 仮面ライダーバルカン&バルキリー
令呪:残り三画
道具:iPod@現実、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:もうシンギュラリティ計画は終わった。だから、今の私はただのディーヴァ。
02:マツモトはいないみたい……
03:歌で皆を幸せにするために戦いを止める。
04:そのためにコロシアムへ向かう。
05:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:アーカイブからの課題をクリアした直後
備考:プロローグのショート髪の方ではないです。ロングの方のヴィヴィです。
支給品のipadに曲を録音しました。
東ゆう、ラクス・クラインの世界の簡単な知識を得ました。

61歌姫たちのオリジン ◆s5tC4j7VZY:2025/04/22(火) 00:05:08 ID:TlNUSJbc0
投下終了します。投下終了が日をまたぎ申し訳ありません。
またいつもwiki編集してくださっている方ありがとうございます。
キャラクター名簿の説明など豊富な項目いつも楽しく読ませてもらっています。

62 ◆NYzTZnBoCI:2025/04/22(火) 00:06:03 ID:ml/KX4Kc0
やみのせんし、キリト、緑谷出久、イドラ・アーヴォルン、レッドで予約します

63 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:30:56 ID:YbD70zEs0
ゲリラ投下します。

64 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:32:00 ID:YbD70zEs0
時刻は午前10時を少し過ぎた頃。
空蝉丸とカルデアの主従はエリアF-6に居た。
アビドスに向かうディアッカホシノコンビと病院前で別れた後、空蝉丸の宿敵にして多くのプレイヤーにとって最大クラスの脅威であるドゴルドを討ち取るべく南下を続けていたからだ。

「空蝉丸、ストップ!」

空蝉丸がマシュを背に乗せ運転するサクラハリケーンを停車させる。
並走していた藤丸も止まった。
その姿はいかにもメカメカしい巨人、といった風貌で一見しただけでは藤丸と気付けないだろう姿になっていた。
大海銃特殊空挺機甲4号機ウルトロイドゼロ。
防衛軍が既存の特空機たちで培ってきた技術やゼット、ジード、ゼロ、エースといった地球に来訪したウルトラマンたちの戦闘データを用いて開発した最強の特空機がパワードスーツに落とし込まれた物である。
人理保障機関の最後のマスターが回り回って人類の敵となった兵器の力を与えられるとはなんたる皮肉だろう。
そんなウルトロイドゼロのカメラアイは空蝉丸たちよりも早くホラー映画のミイラ怪人のような異形を発見していた。
そいつらはプレイヤーの1人(に偶発的になった)アンクの良く知る屑ヤミーに酷似している。

「あれは、確かヤミー」

「知ってるんですか?」

「以前ビーストたち仮面ライダーと共に倒したスペースショッカーの配下にあのような連中が居た覚えがあるでござる」

「羂索の記憶から再現したって話が本当なら、あいつら空蝉丸のうろ覚えの記憶から再現されたってこと?」

「かもしれぬ。
だが、結局羂索たちの手先である以上倒すが吉でござろう。
立香殿のウルトロイドゼロもそろそろ肩慣らししておいた方が良い」

「分かった。
マシュ、空蝉丸。援護を頼める?」

「はい!」

「承知!では行くでござるよ!」

ブースターを吹かせながら飛び出したウルトロイドゼロにマシュ、空蝉丸が続く。
装甲を持った藤丸が前に出て残る生身を晒してもいる二人が守られているようにも見えるが、その実藤丸の背中を残る二人が守る格好だ。
マシュは英霊をその身に宿すことを前提にコーディネイトされた人造人間で空蝉丸は命の軽い戦国の世を生き抜きいた侍にして生身で獣電竜と対等に戦える強き竜の者。
直接戦闘経験という一点においてはルルーシュの言う所の特記戦力と同等と言っても過言ではない。

「はぁあああーーーっ!」

肘のブースターで加速をつけた拳を穴が開いたような顔面に叩きこむ。
緩慢な動きで伸ばされる腕を掴み捻り上げて腹部に反対の拳を叩きこむ。
取っ組み合いをしている仲間を無視して群がって来る連中には額部のビームランプからマグネリュームメーザーを放ち遠ざける。
背後では殴打音と斬撃音が聞こえてくる。
やっぱりだめだ。
今の自分に戦いながら周囲を気を配れるほどの余裕はない。
ナラバ一刻も早く目の前の敵を倒し負担を減らすしかない。

「あれはパワードスーツか。ロボットでないのが残念だ」

どこか機械音を思わせる声と共に光の斬撃が頭上から降り注ぐ。
とっさにマシュと空蝉丸の腕を掴んでブースターを全開にして飛びのく。

「助かりました先輩!」

「奴らは……」

斬撃が飛んで来た場所からいくつかの人影が降り立つ。
どうやら中央に立つセミだかカブトムシだかのような頭部を持つロボットがリーダー格であるらしい。

「膝をつき首を垂れなさい。
この方こそメカトピア星の地球侵攻軍が総司令官様です」

セミ頭こと総司令官の右側に立つジャッカルの仮面をかぶり鎌を装備した女怪人……ロボ子が実装したファイティングジャッカルレイダーが言った。
確かに言われてみると彼(ロボに性別があるか知らないが声は男性的だと藤丸は思った)の持つ杖は指揮杖にも見えるし、マントなど高い立場を示すかのような装飾もある。

「ロボ子、話は私がする」

ロボ子にシャチとパンダが混じったような不気味な怪人を始めとした配下たちを一歩下がらせ、総司令官が告げる。

「我々は羂索たちこの催しの主催者共に対抗するための勢力を集めている。
観た所、お前たちはそれなり以上に戦えるようだ。
お前たちも我らとともに来ないか?」

藤丸とマシュは一瞬だけ空蝉丸と視線を交わした。
空蝉丸は首を横に振る。
総司令官の言動は最終的には味方だったはずの物すら代用品の居る存在だと斬り捨てたデーボス軍の最高幹部、百面神官カオスにも似たそれだと感じたからだ。
3人は改めて武器を構え直す。

「断る」

「お断りします」

「それは出来ない」

「キズナレッドと言い、地球の人間はなぜこうも強情なのだ?
いずれ対立すると分かっていても、今は戦力を集約させるのが得策であろう?
それでも意地を張る等、貴様らも英雄を気取るつもりか?」

65 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:33:05 ID:YbD70zEs0
「まさか。
本当の英雄なんかに及ばないのは重々承知だよ」

真正面からそう答えられるとは思っていなかったのか、総司令官が表情筋などないながらも驚いたように視線を向ける。
藤丸立香は凡人だ。
何処まで行ってもその能力はレイシフト適性と準応力などの一部の能力を除き凡人の域を出ない。
それはさっきまでのウルトロイドゼロの肩慣らしでも改めて証明された。

「でも、生きたいんだ。
この願いは、お前たちの支配の中じゃ叶えられない気がする。
だから断る」

世界の破壊も神殺しも、凡そ日常に戻ることそのものが異常になるようなことを一般人だったはずなのに重ねて来た。
だが、それでもあの日奴に、ゲーティアに告げた願いは今も変わらない。
失意の庭で一度砕けたからこそ、藤丸立香はもう折れない。

「総司令官様、どうやらまた『教育』が必要な物の様です」

(今の流れだと立香殿に怒るのが自然な流れのように思えるでござるが、なぜマシュ殿に殺意を?)

(なんでしょうか……なぜかずっと私ばかりを警戒どころか排除対象としていたような)

マシュへの(というか、総司令官を奪いかねない女性という存在全てへの)殺意を宿し一歩前にでたファイティングジャッカルレイダーに対して藤丸と空蝉丸が前に出る。
このまま戦端が開かれるかに見えた。

「総司令官!
まさかこうも早くまた会うとは思ってなかったぜ!」

屋根の上から声がした。
そこには空蝉丸にとって見覚えがあるようでない赤い装甲に身を纏った少女と仮面ライダーを歪に歪めたような怪人が居た。

「貴様……確か、地球語ではこういうのを腐れ縁と呼ぶんだったか?キズナレッドよ。
あの足手まといの姿はないが……どうやら処分した訳でもなさそうだな」

マコが死んでいること自体は全く意外に思っていない様子で総司令官は淡々と告げた。
仮面の下で灯悟は歯噛みするが、すぐに切り替える。

「もうマコのような悲劇を繰り返さない為にも……お前みたいな命も心もなんとも思っていない連中を野放しにはしておけないぜ!」

『灯悟、分かっているとは思うがお前はまだ万全じゃない。
こちらも最大限サポートするが、十分気を付けて戦ってくれ』

「ああ、分かってるぜ!」

マシュたちの側に降り立った灯悟は変わらぬ決意を示す様に、或いは張り付けた強がりを張り直す様に高らかに名乗った。

「燃え盛る!熱き友情の戦士!キズナレッド!」

─────

名乗りを合図に三つの戦いが始まった。
まずファイティングジャッカルレイダーが真っ先にマシュを狙ったとあって必然的にマシュ、そしてマスターの藤丸が相手に、総司令官とシャチパンダヤミーが因縁あるキズナレッドとアナザーオーズ。
そして残った空蝉丸が他のNPCモンスターたちを相手にすることとなった。
アビスラッシャー、マンティスロード、デーボドロンボスと風前にもどこか鉄人兵団のロボットたちと似た姿や同じ様な意匠を持つ連中ばかりだ。

(ドロンボス……確かイアン殿が倒したはずのデーボモンスターであったか。
無敵マントがないのならいくらでもやりようはあるでござる!)

だがそんなことを全く知らない空蝉丸にとって気になるのはドロンボスぐらいで、それも他の五人が苦労した無敵マントの無いドロンボスなど伊達で10年戦隊を続けている訳ではない空蝉丸からすれば脅威ですらない。

「道外流牙殿、貴殿の愛刀しばしお借りする!」

ザンダーサンダーと牙狼剣を二刀構えた空蝉丸は三体の怪人たちと生身のまま切り結ぶ。
キョウリュウジャーへの変身資格は生身のまま獣電竜と戦い(流石に武器はキョウリュウジャーの武器を使わせてくれる)認められること。
生身の時点で改造されていない恐竜ぐらいなら殺せるぐらいに強いのだ。
意志無き再現体など空蝉丸の敵ではない。

「はぁっ!ふっ!」

「くっ!やあ!」

そして少し意外なのが藤丸&マシュVSロボ子である。
数の差を考慮しても藤丸たち側が優勢である。
だが、よく考えてみれば当然のことである。
元々戦闘用ではないこともあって実装したジャッカルレイダーのスペック頼りな上に嫉妬と独占欲からどうあがいてもマシュへの攻撃を優先するロボ子に対して、才能無いながらも人理を救わんと比喩でも何でもなく古今東西を奔走し、一度は本当に人理を再編した彼はその過程で出会った万夫不当の英霊たちから護身術の指南を受けてロボ子なんぞよりかは戦闘の心得がある藤丸。

66 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:33:36 ID:YbD70zEs0
そこに英霊たちと共に戦闘の前線に立ってきた藤丸の盾、マシュの、炎上汚染都市に始まり、時に神殺しすら成し遂げ、メッキだらけの妖精郷すらも切除した大冒険を共にしてきた相棒の援護が入る。
翼条件を整理し考えれば考える程、刷り込みの愛情に縋って何も残さないままごと遊びを続ける未来のブリキ人形などに負ける軟な汎人類史ではないのだ。

「この!この!」

「ふっ!はっ!」

大鎌を腕部近接装備のマグネリュームブレードで絡め取って打ち上げる。
その隙にバンカーボルトを装填したオルテナウスが突貫し腹部に思い一撃を叩きこむ。
カウンターにはそのままマシュが盾を構えて壁となり、その隙に飛び上がったウルトロイドゼロが頭部スラッガーユニットからマグネリュームスラッシャーを放ち追撃も忘れない。

「流石は歴戦の主人(マスター)と従者(サーヴァント)。
拙者も負けてはおられん!」

一気に勝負を決めるべく、遂に空蝉丸は一度ザンダーサンダーと牙狼剣を納刀し、6番の獣電池を取り出した。

「ブレイブイン!」

左腕のガントレット型変身アイテム、ガブリチェンジャーにブレイブインした獣電池を装填。
弓の様にトリガーを引き絞り、すでにそれなり以上にダメージを与えたNPCモンスターたちをいなしながら舞い踊る。
イドラ・アーヴォルンがいたなら何あのへんてこな踊り!?と突っ込んだことだろう。

「いざ尋常に、キョウリュウチェンジ!ファイヤー!」

ガブリチェンジャーからプテラゴードンの頭部を模したエネルギーが放たれ、空蝉丸に背後からかみつく。
金色のエネルギーが晴れると陣羽織を思わせる肩かた背中上半分にかけてのユニットと翼竜を模したヘルメットが目を引くキズナレッドにも似た戦士が居た。

「カッコいい!」

「あれが、獣電竜の力!」

「おお!あの侍も戦隊だったのか!」

「悪い奴は許さない」

「ほう?」

「雷鳴の勇者、キョウリュウゴールド!見参!」

ザンダーサンダーを再度装備し、地面に突き立てる。
金色の稲妻が駆け、NPCモンスターたちを拘束、その隙にキョウリュウゴールドは背部ウイングユニットを広げて急接近。

「秘剣・雷電残光!」

獣電池の数の都合上ブレイブフィニッシュには出来なかったが、それでもあのキョウリュウレッドすら特訓の末にようやく破る事の出来た必殺技だ。
アブスラッシャーとドロンボスは断末魔の叫びをあげて爆散し、残ったマンティスロードも少なくないダメージを負っている。

(あの電撃攻撃はまずい!
何よりも優先して排除しなくては!)

焦燥からロボ子の意識がキョウリュウゴールドに裂かれる。
当然それを見逃す藤丸とマシュではない。

「行かせません!」

「お前もここで倒す!」

マシュの打撃こそ回避したがウルトロイドゼロのマグネリュームガトリングは躱せず腹部に直撃、後退させられたところにもう一発バンカーボルト、続けてマグネリュームナックルの連打と続く。

「この!いい加減に!」

最大火力で雑に薙ぎ払おうとしたロボ子はレイドライザーに手を伸ばすが、その瞬間バキッ……と、嫌な音がした。

「ッ!これは……」

見るとプログライズキーとレイドライザーに大きな亀裂が出来ており、バチバチと青白い火花がスパークしていた。

「変身ベルト狙いはちょっと反則かもだけど!」

「これでトドメです!」

マグネリュームガトリングの弾幕を目くらましに接近したマシュの横蹴りがレイドライザーを圧壊する。
逆『く』の字に曲がって吹き飛びながらロボ子の実装が解除された。

「そんな、そんなあぁああああああああ!
総司令官様からっ!総司令官様から頂いた装備がァアアアアア!!!」

変形して装填されたキーを抜くことも叶わなくなったレイドライザーを両手に悲痛な叫びをあげるロボ子。
だがすぐさま顔を上げてカルデアの主従を睨みつける。

「こんの……よくも、よくも総司令官様より賜った装備を!
ただでさえそのその品の無い身体と恰好で隣の男だけでは飽き足らず総司令官様をも篭絡しようとするがめつく卑しい綺麗なのは顔だけの淫売のくせして!
絶対にっ!絶対にキズナレッド共々二度と女として人前に出れないようにしてから殺してやる!
総司令官様をたぶらかす女なんて根絶やしにしてやるぅううう!」

はるか未来の技術と素材で人と寸分変わらなく見える顔と声で口汚くののしるロボ子に藤丸は一瞬、ほんの一瞬だけだが本気で令呪を使って目の前の木口からはみ出た敗戦がスパークしているガイノイドを廃品屋送りにしようか真剣に考えた。

「ロボ子、貴様今何と言った?」

だが藤丸がそれを本格的に実行することはなかった。

67 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:33:53 ID:YbD70zEs0
ロボ子の罵倒を一字一句聞き逃さなかった総司令官が以前のように伏兵として隠していたパーシヴァルを呼び出しシャチパンダヤミーと共にその場を任せると藤丸たちの方に跳ぶ。

「そ、総司令官様!申し訳ありません!
貴方よりいただいた装備を……」

「そんなことは今となってはどうでもいい。
先ほどの発言、まるで女は繁殖用すら残さず殺そうと考えている様に聞こえたが?」

いくら人間を下に見ている総司令官ですら生命体が繁殖するには雄と雌が必要、などの人間を支配するに際して最低限必要な知識はラーニングしてある。
永続的に人間をロボットの奴隷にするには定期的に減る分増えてもらわなければならないことなど地球製ロボットのロボ子ならなおのこと理解していなければならないはずなのだ。
なのに、このロボ子は女は皆殺すといった。

「そ、それは……」

「お前は欠陥機だった訳か」

「違──」

何か言いかけたロボ子だったが、それより早く総司令官の杖に側頭部を殴りつけられた。
続けてアナザーオーズの手を振りほどいたシャチパンダヤミーがロボ子の元に走る。

「こいつを好きにするが良い」

「お、お待ちください総司令官様!
ぱ、パンダちゃんまって!私じゃない私じゃなくてその女を!」

それがロボ子の最期の言葉だった。
いや、厳密には意味不明な悲鳴とも機械音ともわからない断末魔を上げていたが、意味のある言葉を言えたのはそれが最後だった。
メリメリと骨格と内部の機械を墓石すら簡単に砕ける腕力で締め上げられ鯖折りの要領で身体を曲げられ機能停止してしまった。

「なんと」

「えげつなっ……」

つい数秒前まで味方だったはずのロボ子に対するあまりの仕打ちに殺意を向けられていたマシュすら絶句し、仲間の命を狙われた藤丸と空蝉丸も思わず声が出る。
そしてキズナレッドは

「総司令官!お前ぇええええええ!」

怒った。
冷徹なんて言葉では表せない。
まるで絆をゴミのように軽んじるその姿に何度目か分からない灯悟にとってライン越えの所業に激怒した。

「ゼツエンダーや魔王族にすら仲間や家族としての絆があった!
他の絆を傷付ける物だったけど、あいつらはあいつらなりに互いを想い合ってた!
だというのにお前には、お前には『それ』さえないってのか!」

「配下に紛れていた欠陥機を処分しただけのこと!
メカトピアに尽くせぬロボットなんぞ労働ロボットにすら劣るガラクタだ!」

「許さない!ロボ子の想いを踏みにじったお前を絶対に!」

ボルテージが上がる。
今回の共闘で灯悟は空蝉丸、藤丸、マシュと新たに絆を結んだ。
先の戦いでは天与の暴君ぐらいとしかまともに共闘出来ていなかった都合上龍園翔や十条姫和とは絆を結び切れたと言い難いが、今回は違う。
新たに三人分。
これだけ集まり束ねることが出来れば総司令官にも届くだろう。

<ファイナルペっTURN‼>


本来ならば。

「バーニング・キズナパンチ!」

炎と黒い煙が吹き抜き荒れ、一瞬その場の全員の視界が防がれる。
再び景色が元に戻ると、そこにはダメージを負いながらも健在の総司令官と、信じられないことが起こったとでも言いたげに自分の拳と総司令官を交互に見るキズナレッドの姿があった。

「どうしてだ!?
威力が……キズナエネルギーは十分なはずなのに!」

「まさか……」

何かに気付いたキョウリュウゴールドは虫の息ながら突っかかって来るマンティスロードを斬り捨てると、レッドと総司令官の間に割って入りながら告げた。

「キズナレッド殿、残酷な事実でござろうが聞いて欲しいでござる」

「ゴールド?」

ザンダーサンダーの切っ先を総司令官に向けたまま空蝉丸は続けた。

「うぬの力の源、キズナエネルギーが拙者たちと獣電竜の関係のような物だというなら、キズナレッド殿がオーズと呼ぶ異形からはもたらされていないでござる。
そ奴は恐らくヤミー。
かつて宇宙の支配を目論んだ悪の秘密結社、スペースショッカーの手先の再現体!
恐らく、拙者かソウジ殿、或いは仮面ライダーたちの誰かの記憶から再現されたのでござろう。
ただひたすらに宿主の欲を歪めて叶えることしかしないこ奴らに善意など芥子粒ほども有りはしない!」

事実として、今回の攻撃は灯悟の想定程の出力にはちょうど一人分キズナエネルギーが足りない。
戦隊の空蝉丸、そして灯悟から見ても見事な連帯と絆の力でジャッカルレイダーを下した藤丸とマシュに絆がないなどありえない。
そう考えると、誰がその一人分の穴かおのずと答えは見えている。

「気付いたか。
そいつも戦士としては十分優秀だと思っていたが、貴様はそれ以上のようだな、キョウリュウゴールド。
やはり我が配下となれ」

68 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:34:19 ID:YbD70zEs0
もはや灯悟に興味をなくしたように総司令官が言う。
だが空蝉丸は毅然と言い返した。

「悪に与しろと?それは出来ぬ」

「一応、理由を聞いておこう」

理由など最初から決まっている。
彼が、誰よりも眩しい空蝉丸たちのレッド、桐生ダイゴが何度でも言っていることだ。

「拙者たちは、戦隊にて候」

「下らん。が、曲がらんという言うなら仕方ない」

そう言うと総司令官はシャチパンダヤミーと共にパーシヴァルに掴まると、置き土産と言わんばかりにミサイルシールドからミサイルの雨を降らしアナザーオーズ、より正確にはその変身者であるバッタヤミーを撃破して去って行った。
爆発共に無数のセルメダルとライダーの力以外で破壊できないアナザーライドウォッチが転がる。
そこにもう偽りの歴史の継承者の姿も、歪んだ正義の執行者の姿もなかった。



【F-6/ 9月2日午前10時20分】

【総司令官@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜】
状態:正常(爆風により、ボディに若干の傷あり)
服装:ロボットなので服は着ない
装備:総司令官の杖@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜
令呪:残り三画
道具:パーシヴァルの起動キー、サイコントローラー@ドラえもん のび太と鉄人兵団、桃太郎印のきびだんご〔50個入り〕(残り45個)@ドラえもん、純生石油十億年物@ドラえもん のび太とブリキの迷宮、ホットライン×2、セルメダル約50枚(シャチパンダヤミーの身体から出た物)@仮面ライダーオーズ/OOO、P90@現実、渋井丸拓男の遺体@DEATH NOTE(上半身と下半身に分かれている物をゴミ袋に包んでいる。)
思考
基本:元の世界に戻り、地球人の奴隷化計画を進める。
00:戦力を集め、羂索を打倒する。
01:使える者を探す。他の参加者に配下に加わらないか交渉する。また人間なら奴隷として使役する。
02:交渉が決裂、もしくは出来ない場合、きびだんごを食べさせ、洗脳する。NPCモンスターでも使えそうならきびだんごを食べさせる。
03:“バグスターウィルス”を調べる為、市街地にて回収した遺体(渋井丸拓男)の解剖及び腕のレジスターが外れないか確かめる。
出来れば、専門の医師・技術者を探したい。
04:地球のロボット(ドラえもん)の腕を買っている。
  出来れば仲間にしたい。
  大爆発の中でも生きていると信じたい。
05:ロボ子め……欠陥品だったとは。
06:キズナレッドは残念だったがキョウリュウゴールドとその協力者は“戦士”として使えると判断。
参戦時期:鉄人兵団の援軍が来て、ジュド(ザンダクロス)やドラえもん達を圧倒していた所から。〔消滅前〕
備考
※将来、鉄人兵団が消滅する事は知りません。
※様々な世界から参加者を集めたとは知らず、ナイトメアフレームの事を元々のドラえもん世界の物だと思っています。
※ドラえもんの名前を知りません。
※シャチパンダヤミーの特性を知りました。
また、羂索が作ったものと勘違いしています。
※羂索の事を寄生生物と思っています。
※浅垣灯悟の事を元から女性だったと思っています。
※参加者に戦力差があるので、主催は“優勝者”を出すつもりはなく、殺し合いで何らかの“得るもの”(データ収集)を目的としているのではと考察しています。

〈シャチパンダヤミー(洗脳されたNPCモンスター)@仮面ライダーオーズ/OOO〉
状態:軽度の負傷、きびだんごによる洗脳(洗脳解除まで、残り8時間40分)
服装:裸
思考(自我はなく、欲望で動く。)
基本:女性を抱き締める。総司令官に従う。
00:あー
01:あ〜
02:あぁ―
備考
※「あ〜」しか喋れません。
※欲望を満たす(〔殺すまでいかなくとも〕女性を抱く)と、身体を構成するセルメダルが増え、怪我の修復や、技の強化に繋がります。




「嘘だ……うそだ……こんな、こんなこんなこんなこんな!」

恐らく、今の彼には何も聞こえていないだろう。
うわごとのように信じられないといった趣旨の言葉をつぶやき続け、かつてキズナシルバーを喪った時のように、それが遺体かのようにセルメダルの山の上に残ったアナザーオーズウォッチに縋りつく灯悟。
どんな経緯があれ、実態がどうであれ仲間の喪失には違いない。
そう思ってその行動を止めなかったのは、結果的に三人の痛恨の失態であったと言えよう。

 オーズ
<OOO……ッ!>

「いかん!キズナレッド殿!」

バッタヤミーの残骸全てごと灯悟を包むように黒紫色のエネルギーが展開され、それが消えるとそこには決して癒えぬ傷にいつまでも代用品を詰めては傷口を広げる痛ましい怪人が居た。

「嘘だろ」

「なんてこと……」

69 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:34:40 ID:YbD70zEs0
「フサガナキャフサガナキャフサガナキャ!
アタラシイキズナでフサガナキャアアアアアアア!!!」

見た目は瞳が紫色になっている以外はバッタヤミーが変身したアナザーオーズと変わらない。
だが一年間ゼツエンダーと戦い、異世界に飛ばされてからも冒険者として強敵との戦いを続けてきた灯悟/キズナレッドをベースにオーズ、バッタヤミー、そして鮮血を取り込んだ形となるこのアナザーオーズ(パープルアイ)は今までのどのアナザーオーズより強力なアナザーオーズとなっている。

「くっ!立香殿、マシュ殿!ここは撤退するでござる!」

「本気ですか空蝉丸さん!?」

「とてもこのまま放っておいていい様には見えないのですが……」

「それはそうなのでござるが、あの変身に使う丸いカラクリはバッタのモンスターが倒された時に破壊出来なかったでござる!
恐らく、なにか特殊な手順を踏まねば破壊は叶わぬ!
ならばここでいたずらに消耗するよりも何か手を探すが得策!」

「分かった!『ガンド』!」

藤丸はウルトロイドゼロを纏ったまま礼装のスキルを起動。
発射された呪いで一瞬だけアナザーオーズ(パープルアイ)が動きを止めるとマシュが最後の支給品を取り出す。

「ごめんなさいキズナレッドさん、必ず助けに戻ります!」

そう言ってマシュが放り投げたのはルーンの刻まれた石……カルデアにて藤丸が契約しているサーヴァントの1人、アイルランドの光の御子、クーフーリンの切札の一つである結界である。
宝具の浸食すら凌ぐこの結界ならば支給品化に伴うデチューンを加味しても11時15分の放送までぐらいまでは持ちこたえてくれることだろう。

「各々方、拙者の側に」

空蝉丸は背中のユニットを展開し飛翔。
何が出てくるか分からないアナザーオーズ(パープルアイ)から全力で離脱する。

「フサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャフサガナキャアアアア!!!!
ああああああうあああああああああああーーーッッッ!!!」

1人の悲しい怪物を残して。



【F-6/ 9月2日午前10時20分】

【浅垣灯悟@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:女体化、疲労(大)、心身のダメージ(極大)、右乳首欠損(処置済み)、若干の火傷(処置済み)、バッタヤミーのセルメダルと鮮血を吸収、アナザーオーズ(パープルアイ)に変貌
服装:鮮血@キルラキル
装備:キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる、片太刀バサミ@キルラキル、アナザーオーズウォッチ@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ころころダンジョくん@Toloveるダークネス、ライドベンダー@仮面ライダーオーズ/OOO、なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)@ドラえもん、セルメダル数枚@仮面ライダーオーズ/OOO、ホットライン
思考
基本:フサガナキャフサガナキャフサガナキャ
00:……
01:─────助けて
参戦時期:少なくともキズナレッド・バースとの交戦前
備考
※女体化した後の外見はキズナレッド・バースの一人である浅垣灯子と酷似しています。
※元着ていた服はドラゴンに燃やされました。
※女体化している時のみ、鮮血を装備できます。
※情報交換し、キルラキル世界の事を多少知りました。
※纏流子を味方で、鬼龍院羅暁を危険人物と認識しています。
※総司令官を危険人物と認識し警戒しています。
※総司令官の語る“英雄”は、ずる賢いタヌキで『子供を駒にする危険人物』と思っています。

[鮮血(意志持ち支給品)@キルラキル]
状態:アナザーオーズ(パープルアイ)により吸収
思考
基本:仲間と共に殺し合いの打破。
01:灯、悟……。
※総司令官を危険人物と認識し、警戒。
※総司令官の語る“英雄”の『危険人物』と言う話を疑問視しています。

70 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:35:18 ID:YbD70zEs0
─────

「ここまで来ればひとまずは大丈夫であろう」

租界エリアすら抜け出し、島と島の境目の河すら見える位置まで飛んだ3人はようやく地面との再会を果たした。

「マシュ、けがはない?」

「はい。しかし、キズナレッドさんが」

「あのヤミー……否、オーズの力にとらわれてしまったのであろう」

「どうにかしないと」

「しかしマスター、現状無数の世界の無数の技術が150名近い参加者の手にバラバラにわたっています。
その中からアレと同系統の物を見つけ出すとなると……」

確かに、キズナレッドを助けるのは至難の業かもしれない。
だが、だからと言って諦めてはそれは欠陥品は処分するしかないと断じた総司令官と同じだ。
それにここに一人、最初から救うつもりの侍がいる。

「確かに救出の算段を建てる事すら難解至極なのやも知れぬ、
しかしキズナレッド殿を追うあてならあるでござる」

そう言って空蝉丸は五本の獣電池を見せる。

「あれ?
空蝉丸、6番の獣電池6本持ってるって言ってなかったっけ?」

「一本はキズナレッド殿が怪人に変貌する前に服に引っ掛けるように投げこんでおいたでござる。
これで獣電池を目印に探せるでござる」

「獣電池ってそんな使い方も出来たんですね」

「令呪を使って我が相棒プテラゴードンを呼び出さねばならないでござるが、同じ戦隊を救う為なら惜しくは無いでござる」

「よし、そうと決まればドゴルドを探しながらキズナレッドが変身しちゃった怪人の情報を集めよう」

「はい!」

「承知!」

藤丸の声にそれぞれ頷き一行はドゴルドや総司令官を倒し、キズナレッドも救うハッピーエンドを目指して歩み出した。

71 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:35:36 ID:YbD70zEs0
【G-6/ 9月2日午前10時30分】

【空蝉丸@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:決意と罪の意識(大)、ドゴルドを察知 
服装:いつもの服装
装備:牙狼剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
   ガブリチェンジャー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   ザンダーサンダー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   6番の獣電池×5(一本消費)@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:獣電ブレイブボックス@獣電戦隊キョウリュウジャー、2、3、5、11〜25の獣電池(15、20は使用済み)@獣電戦隊キョウリュウジャー、サクラハリケーン@仮面ライダー鎧武、ホットライン、簡易救急キット@オリジナル
思考
基本:このバトルロワイヤルを止めるでござる
00:この気配、ドゴルドの!
01:ドゴルドの居る南側に向かいながらキズナレッド殿を助けるべくあの怪人(アナザーライダー)の情報を集める。
02:大分獣電池に余裕が出来たし、脚も手に入ったでござる。
  マシュ殿、ディアッカ殿、かたじけない!
03:ディアッカ殿とホシノ殿は喧嘩するほど仲が良いでござるな
04:キズナレッド殿を救出する算段が整ったらプテラゴードンに頼んでキズナレッド殿を追う。
05:ソウジ殿もギラ殿も無事だと良いが……
06:宇蟲王ギラはやはり拙者のせいで?
07:流牙殿にこの剣を届けるでござる。
08:左虎殿……かなりの手練れでござる。
  まさか既にドゴルドと戦闘した者がおるとは
09:黒い火花に未知の能力、ドゴルドの装着者も不明となれば、拙者1人で挑むわけにもいかぬか。
  マシュ殿、立香殿、感謝いたす。
参戦時期:宇蟲王イーヴィルキングを倒した後
備考
※このバトルロワイヤルがまた自分が引き起こしたタイムパラドックスのせいなのでは?と思っています。
※400年間ドゴルドに封じられていた影響でドゴルドの気配を感知できます。
少なくとも大雑把な方角ぐらいは分かります。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています。
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています。
※6番の獣電池@獣電戦隊キョウリュウジャーのうち一本を意図的に浅垣灯悟に吸収させました。
獣電竜プテラゴードンの力を借りれば吸収させた獣電池をビーコンんに追跡できます。

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
状態:正常
服装:いつもの服装
装備:霊基外骨骼オルテナウス改修型@Fate/Grand Order
令呪:マスター持ちサーヴァントの為なし
道具:ホットライン、簡易救急キット@オリジナル
思考
基本:羂索の企みを阻止する。
01:先輩たちとドゴルドを探して南側に向かいながらキズナレッドさんを助ける為に彼が変貌した姿(アナザーライダー)の情報を集める。
02:C.Eにキヴォトス……特異点や異聞帯、先輩がレムレムしている様子やぐだぐだな感じはしませんね。
03:羂索たちの用意した令呪は預託令呪に近いようですね。
04:ディアッカさんからすれば私のような存在は珍しくないのでしょうか?
05:ホシノさん……ひとまずは安心なのでしょうか?
06:アルジュナ・オルタやドゴルドには要警戒。
07:総司令官……アルジュナ・オルタとは別ベクトルの脅威です。
参戦時期:少なくとも二部第六章終了後。
備考
※ディアッカ、ホシノと情報交換しました。
※少しだけディアッカとホシノの令呪を調べカルデアの物とは違い預託令呪に近い物であると考えています。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています

【藤丸立香(男)@Fate/Grand Order】
状態:正常
服装:カルデア戦闘服@Fate/Grand Order
装備:カルデア戦闘服@Fate/Grand Order
   ウルトロイドゼロの起動キー@ウルトラマンZ
令呪:残り三画(マシュ、ブラックバレル以外に使用不可)
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、簡易救急キット@オリジナル
思考
基本:羂索の企みを阻止する。
01:マシュたちとドゴルドを探しに南に向かいながらキズナレッドを助ける為にあの怪人(アナザーライダー)の情報を集める。
02:マシュ以外のサーヴァントと繋がってない……。
  いつも通りと言えばいつもも通りだけど
03:ホシノ……ひとまず大丈夫かな?
04:かっこよかったなぁ、ガンダム。
05:ドゴルドの中で誰が囚われているんだろう?
06:総司令官は、倒さないといけない。
参戦時期:少なくとも二部第六章終了後
備考
※ディアッカ、ホシノ、空蝉丸と情報交換しました。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています。

72 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:35:53 ID:YbD70zEs0
【支給品解説】
・クーフーリンの結界@Fate/Grand Order
…マシュ・キリエライト@Fate/Grand Orderに支給。
手持ちのルーン全てを使って展開する結界。
持ち主曰く『宝具でさえ凌ぐルーンの守り』。
主催者による制限でそこまで万能ではなくなっているが、しばらく生命繊維と仮面ライダーとキズナエネルギーによる三種合成の暴走怪人を閉じ込めておけるぐらいの性能はある。

【NPCモンスター解説】
・アビスラッシャー@仮面ライダー龍騎
…ミラーモンスターの一種。
鮫の特性を持ち、アビスセイバーの二刀流に高圧水流を武器に戦う。

・マンティスロード@仮面ライダーアギト
…両手の鎌による斬撃を得意とする水のエルの用心棒。
血に飢えた残忍な性格の持ち主。

・デーボドロンボス@獣電戦隊キョウリュウジャー
…大切な物を奪われた人間は哀しむという考えから生み出されたデーボモンスター。
赤いくちばしのカラスが鳥の巣のような形のシルクハットをかぶったような見た目をしており、胸部の金庫はどんな物も吸収して盗むことのできるビックバンクになっている。

73 ◆Drj5wz7hS2:2025/04/26(土) 23:36:09 ID:YbD70zEs0
投下終了です。
タイトルは アナザーオーズ です

74 ◆NYzTZnBoCI:2025/04/28(月) 02:20:01 ID:HZvu4MaU0
予約を延長します。

75 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:05:13 ID:4sXAQcxM0
皆様、投下お疲れ様です。
投下します。

76散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:09:03 ID:4sXAQcxM0
 小兵衛から命じられた課題を終えたアスナは、タイガーボーイに戻った小兵衛と共に束の間の休息に入っていた。

「お待たせしました、先生」
「むぅ……これが未来の料亭。時の流れだのう」

 アスナはタイガーボーイの厨房を任されているNPCから注文した料理を受け取り、小兵衛の座る席へと持ってくる。

「これは……蕎麦か?独特な色合いだ。それに対してこれは……茶、なのか?月のような菓子が浮かんでおる……」
「スパゲティとクリームソーダですよ」
「すぱげてぃ?くりいむそうだ?」

 小兵衛はどれでもいいと言ってくれたので、とりあえずメニューにあったスパゲティとクリームソーダを注文しておいた。
 しかし、やはり小兵衛にはそれがどういうものか分からなかったようで、興味津々といった様子でアスナに聞き返してくる。

「えっと、これはイタリアの料理で小麦粉から麺が作られているんです。そこに具材や味付けを加えたものです」
「なんと!麦からこのうまい料理ができるのかえ!?蕎麦とはまた違うよき味じゃ」

 スパゲティを箸で頬張りながら、目を丸くする小兵衛。
 アスナの言う通り、蕎麦はそば粉から作られており、小麦を原料とするスパゲティとはまったく別物の料理だ。
 それにしてもこうした料理も本当に知らない様子を見ると、小兵衛は本当に江戸時代から来た人間なのだな、とアスナは実感する。

「この水は舌が焼かれたと思えば甘味が口に広がるのう。それにどこか清々しい気分になる」
「炭酸飲料です。私の時代ではよく飲まれているんですよ」
「この冷えた菓子も気になる。なんという名じゃ?」
「アイスクリームです。その炭酸飲料と合わせてクリームソーダって名前がついています」
「ほう……何とも興味深い。持ち帰れるのならおはるや大治郎への土産にしたいものじゃ」
「むむむ……」

 西洋の料理に小兵衛が舌鼓を売っているのをよそに、その肩の上で、小兵衛と契約した幻妖――烏天狗は難しい顔をしながらアスナをまじまじと見ていた。

「烏天狗ちゃん……よね?私がどうかした?」
「勿体ない……いやはや、実に勿体ない」
「何がじゃ?」
「なぜ……アスナ様はこのタイガーボーイなる店の制服をお召しにならないので?」

 さも重要な話をしているかのように烏天狗は語り出す。

「ここには何故だか存じ上げませぬが、店員用の制服がございます。私めから見てもただでさえめっちゃ可愛なアスナ殿がウェイトレス姿となれば、その姿はさぞ映えることでしょう」
「確かに制服はあったけど……今はその格好をする必要はないかなって」

 苦笑いを顔を浮かべながらアスナは言う。
 確かに、タイガーボーイにはここにアルバイトで働いていたと思われる女のウェイトレスの服装も置かれていた。
 が、剣士として気を緩めるわけには行かなかったので、アスナはそのままの服装で小兵衛に料理を運んでいた。

「いえいえ必要不可欠でございます!アスナ殿のお美しい御姿を目の保養にすれば私めの能力の感度も冴え渡るのでございます!秋山殿もそうでしょう!?」
「ちょ、ちょっと烏天狗ちゃん……」
「うぇいとれすなる姿がどんなものか、確かにわしも気にならないと言えば嘘になるわえ」
「先生まで……!」

 烏天狗の話に乗ってきた小兵衛にアスナは頬を赤らめる。

「とはいえ、その心意気はよきものじゃ。精進せい」
「……ありがとうございます」
「そうでした、アスナ殿は秋山殿に師事しておりましたね。ではその着痩せする『おむねのふとん』も賜ることも――」
「せっかくじゃ。アスナよ、この烏天狗がお前の服に忍び入ろうとしたら眼窩を突いてみい。今度は不意打ちに対応するのじゃ」
「わかりました」
「はっはっはアスナ殿に秋山殿ご冗談を」

 烏天狗に剣を抜こうとする仕草をわざとらしく見せてから、アスナは小兵衛の対面の席につく。

77散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:09:43 ID:4sXAQcxM0

「アスナも食べるがよい。腹が減っては剣を振るう腕も鈍る」
「……はい」

 目の前に広がるのは、小兵衛と同じくNPCに注文したスパゲティだ。

(……そういえば、ミトとこんな食事してたっけ)

 思い出すのは、SAOの世界に囚われて間もない頃のこと。
 不安と恐怖で押しつぶされそうだったけれども、ミトが一緒にいたから前に進むことができたし、笑い合えた。
 だが、脳裏に映し出されるミトとの思い出の終着点にあるのは、あのメッセージウィンドウだった。

――mitoがパーティを離脱しました。

 肩の力を抜き、秋山小兵衛という頼れる師がすぐそこにいることである程度冷静になれた。
 だからこそ、アスナは今度こそ理解する。

(見捨てられたんだね、私――)

「どうかしたのか、アスナ?」
「顔色が優れないご様子」

 小兵衛と烏天狗が顔を覗き込んでくる。
 スパゲティを前にして、相当浮かない顔をしていたらしい。

「――先生、実は」

 沈み切った面持ちで、アスナは切り出す。
 言いかけたところで、ちら、と烏天狗の方に目を映す。

「……ふむ。烏天狗よ、この店を中心に回って、ここ一帯の索敵を頼んでもいいかえ?そろそろ他の連中も動き出している頃じゃ」
「……承知しました」

 察した小兵衛は、烏天狗をタイガーボーイの外へと送り出す。
 烏天狗は一瞬腑に落ちなさそうな顔をするも、契約者の意に反するわけにはいかないため、目にもとまらぬ動きでタイガーボーイの外へと出ていった。
 そこには、アスナと小兵衛が残される。

「さて、お前の話を聞く奴はわし以外にはおらん。話すがよい」
「ありがとうございます。実は……」

 アスナは、小兵衛に自分がここに至るまでのことを語った。
 たとえ怪物に負けて死んでも、このゲーム、この世界には負けたくない。
 そう思うに至った理由を。

「ふむ……そんなことが」
「私にはもう、この道しかないんです」

 ぽつぽつと語っていくにつれ、まるでそれまでの経験を追体験しているように思えて、アスナの声は重くなっていった。
 しかし、すべて語り終えた時には何かが軽くなった気がした。すべてを吐き出せて、少しは楽になったのかもしれない。

「一つ、聞きたいことがある」
「何ですか?」
「アスナよ、お前は自分を見捨てた友のことをどう思っておる?」
「それは……勿論悲しいです。現実でも友達だったのに。それに、最悪の可能性も考えてしまうんです。私よりもレアアイテムを優先したんじゃないかって……」

 アスナは慎重に言葉を紡いで小兵衛からの問いに答えた。
 なお、SAOのことは現代技術に疎い小兵衛にも分かりやすいよう、ある程度嚙み砕いて伝えている。

78散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:10:20 ID:4sXAQcxM0

「……わしにも、そのミトとやらの考えは分からぬ。しかし……敵は大勢、友は斬られて自分も手負い――そんな中で友を優先できるのは、ごくごく一握りの人間だけじゃ。剣客でもそのような者はなかなかおらぬ」
「……私も、逆の立場だったら自分を優先しないとは言い切れないです」
「ミトを……その友のことは今でも大事か?」
「それは……はい。このゲームに巻き込まれていないのは、気になりますが」
「では……ミトが己のことをどう思っているか、気になるか?」
「気になります……けど。私には――」
「アスナ」

 言葉を遮られ、アスナはハッとして小兵衛を見る。
 そこには真剣な眼差しで自身を見る小兵衛がおり、その鋭さに射貫かれたような感覚がする。
 先ほどの気ままな老人の姿はどこにもなく、老練の剣客の姿がそこにあった。

「わしはごく僅かじゃがお前に剣の稽古をつけた。しかし――死に急ぐための剣を鍛えた覚えはないぞ」

 アスナが言わんとしていることは、小兵衛にはすぐに分かった。

――ここで死ぬ覚悟はもうできています。

 この娘は、この殺し合いで死に方を選ぶために剣を振るっているのだ。
 無論、旧知の中の嶋岡礼蔵のような年を召して剣客の"うらみ"を買った者であればまだ理解はできよう。
 しかし、アスナのような齢十と半ばのような若き剣客が抱えてよいものではない。

「次なる課題じゃ。せめてミトに会うまで生きてみせなさい」
「……」
「会って、話をするのじゃ。思いを確かめるのにそれ以上の方法はないじゃろう」
「先生……」
「生きたいか、死にたいか。それがわかるまで、とにかく生きてみることじゃ」

 小兵衛の言葉を、アスナは静かに聞き入っていた。

「……わしが若い頃。確かわしが三十二かそこらの歳の頃じゃった。わしから見ても太刀筋、態度、礼儀正しさ、すべてが真の剣士と言うに相応しい男がおった。わしとて本気でかかっても勝てるかどうか分からんかった」
「若い頃の先生でも、ですか?」

 小兵衛は頷く。
 小兵衛が語ったのは、約三十年前に御前試合で小兵衛を打ち震わせた男、波切八郎のことだ。
 波切八郎は小兵衛に真剣勝負を申し込んだが、勝負の場に終ぞ現れることはなかった。
 その後に何度か八郎の姿を見ることがあったが、恐らく何かがあったに違いない。
 しかし、結局は人を斬ろうとしていた八郎の腕を逆に叩き斬って以降、腹を割って話し合う機会は訪れなかった。
 剣客として"白"の道を行く小兵衛は、八郎の何がその色を"黒"に変えたかを知ることはできなかったのだ。

「剣客の生涯、とても剣によっての黒白のみで定まるものではない。この広い世の中、何かが間違って混ざった色の方に染まっていくことも十分あり得る。
 おそらくお前を見捨てた時……ミトとやらに何か別の"色"が混ざったに違いない。その色からミトを引き戻してやれるのは、お前だけじゃ」
「……ミトを想うなら、そのためにも生きてミトに再び会え、と」

 アスナの言葉に、小兵衛は無言の肯定で返す。
 確かに、たとえ怪物に負けて死んでも――と思っていたが、ミトと攻略を進めていた時はどうだったか。
 あの時は、SAOから現実に帰還するために、生きるために前に進んでいたはずだ。
 自分は何のために剣を振るうのだろう。生きるためか、死ぬためか。今になって、それが分からなくなった。

「私は――」

 アスナが腰に携えたレイピアに触れようとした時、タイガーボーイの中に烏天狗が転がり込んできた。

「む、烏天狗か。どうした?」
「秋山殿、アスナ殿。今すぐお逃げくださいませ」

 小兵衛の肩に乗って早速、烏天狗は告げる。

「凄まじい令力を持つ幻妖――いえ"魔女"が迫っております」

 淡々と告げる烏天狗だが、その内心は相当焦っていることが見て取れた。

§

79散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:11:05 ID:4sXAQcxM0

「なかなかに大漁ね♪あなた達がかわいい女の子でよかったわ。男だったり見た目がかわいくなかったら消えてもらうところだけど、あなた達は特別待遇♪」

 気分を良くしながらノワルは言った。
 その眼前には、服を脱がされた少女達が大勢喘いでいた。
 レジスターはされていない。全員がNPCだ。
 元々は婦警のような制服を着た盾と銃を携えた少女――ヴァルキューレ警察学校の生徒だった。

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」

 ノワルの前に並べられたヴァルキューレの生徒達の状況は悲惨の一言だった。
 一糸まとわぬ姿になった生徒達が、背後の壁のように分厚い金属の板に、鋼鉄の枷で首から四肢に至るまで完全に固定されている。
 露出した小ぶりな乳房には、そこを覆うようにカップ型の搾乳機が取り付けられ、そこに繋がる管を通って僅かながら無理矢理抽出された母乳が溜まっている。

「む゛う゛う゛う゛う゛!!」

 口にはチューブに繋がっている口枷が顔の下半分を覆う形で嵌められており、そこからは媚薬混じりの栄養が流し込まれ生命を維持できるようになっている。

「うぐううう!!」

 繋がれたものはそれだけに留まらず、肛門にまでそれは及んでいた。
 肛門に繋がる管からは一定周期で強力な媚薬が流し込まれる仕組みになっており、それとは別にスイッチで強制的に注入することもできる。
 直腸から媚薬を吸収したことにより生徒達の感度は何十倍にも引き上げられ、今もまるで狂ったような嬌声を口枷の奥で発している。

「むがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 何よりも、目を引くのはその股間――いや、詳しくはそこにある"穴"に挿し込まれたバイブだろう。
 穴に入ったバイブは無機質に小刻みに震えながらじゅこじゅこと音を立てて穴に出入りしており、固定された生徒達の刺激して快感を発生させる。
 先述の媚薬もあって、生徒達は為す術もなく絶頂に至り、そこまでの快楽で股から垂れ流した愛液は真下に置かれた瓶の中へと流れ込む。

「魔力サーバーになった気分はどうかしら?無謀にも私に挑んできた生徒さん?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 もはやノワルの言葉を聞く余裕すらなかった。
 これこそが、ノワルの言う魔力サーバーという"装置"だ。
 装置に繋がれた女を快楽で刺激し、魔力を含んだ体液を排出させるために徹底的に効率化された悪趣味な装置。
 ノワルが捕らえた女は、それがノワルの欲望を満たすにしろ魔力を満たすにしろ、こうして完全に"モノ"として扱われるのだ。
 哀れ魔力サーバーに繋がれたヴァルキューレの生徒達は、その末路の一端。

「でもこういうの、本当はメラフェルの仕事なんだけどねえ」

 面倒そうにノワルは言う。
 彼女の言った通り、捕らえた女を魔力サーバーに"加工"するのは闇檻六天使の一人、メラフェルに任せていた。
 使い魔が制限された今は、仕方なく闇檻を応用した魔法でノワルが加工している。
 メラフェルも元はノワルの使い魔だ。魔力サーバーへの加工も、使い魔にできて主にできないことではない。

「まあでも、四の五の言ってられないわよね」

 そう言いながら、ノワルは懐から漆黒に輝く宝珠を取り出すと、その宝珠に魔力サーバーに加工されたヴァルキューレの生徒を一人一人放り込んでいく。
 宝珠に投げ捨てられた生徒達は、まるでブラックホールに吸い込まれるように宝珠の中へと姿を消していった。

「自分から動かないといけないなら、"魔力の水筒"はちゃんと持っておかないと」

 ノワルが宝珠の中に手を入れると、その中から紫黒の珠を取り出す。
 その珠の外観は、イドラとマジアマゼンタの愛液を凝縮した時にできた珠と同じ外見をしていた。
 ノワルはそれを口の中へと運び込む。と同時に、ノワルの失われていた魔力が一定量回復していく感覚がした。
 魔力が回復した分、自身に回復魔法をかけて傷を癒していく。

80散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:12:48 ID:4sXAQcxM0

「NPCとはいえ悪くない魔力の味ね」

 ノワルは、NPCの垂れ流した愛液から得る魔力の味の感想をなんとはなしに呟いた。
 ノワルをも超える強敵、アルジュナオルタに吹き飛ばされた先で、ノワルは行く先で襲い来るNPCを軽くあしらっていた。
 NPCを倒して分かったことだが、個体にもよるがNPCにも魔力が含まれているのだ。
 そしてNPCの中には、ノワル好みの女の子がそれなりにいた。
 それに気づいたノワルが見逃すはずもなく、ノワルは今や多数の女子NPCを魔力サーバーに加工して、闇檻の魔力で生み出した異次元空間を内包する黒い宝珠――「ポケット闇檻」に収納していたのだった。
 ノワルがポケット闇檻から取り出した魔力の塊は、その中に囚われたNPC達が絶えず排出した愛液の結晶に他ならないのだ。

「でもやっぱり物足りないわあ。味だけ本物に近づけた模造食品みたいな味なのよねえ」

 ノワルの目論見通り、NPCを魔力サーバーの素体にすることでかなりの魔力を回復することはできた。
 しかし、味にはやはり満足できていないのだった。
 その魔力はカニに対する「ほぼカニ」のように、本物に限りなく近づけた偽物の味でしかない。

「そろそろ魔力サーバーにできる参加者に会いたいところだけど――」

 そう言いながら魔力の感知網に神経を研ぎ澄ませると同時に、ノワルの口角が吊り上げられる。

「……いた♡」

 何かを感じたノワルは、すぐにその方向へと向かうのだった。

§

「敵の魔女か……わしとアスナが同時にかかっても勝てぬ相手かえ?」
「はい。御二人だけで戦うのはあまりにも現実的ではございません」

 小兵衛の問いに烏天狗は答える。即答だった。
 アスナは小兵衛以上の実力を持つ相手を見たことがなかったため、烏天狗の言葉が信じられなかった。

「先生が本気でかかっても勝てない相手なの?」
「ええ。秋山殿ですらあれの相手は手も足も出ないでしょう。そもそも刀や剣一本でどうにかなる相手ではございません。相性の良い味方がいなければ、このゲームの参加者全員が束になっても勝てる相手ではないでしょう」
「それほどまでの相手か」

 冷や汗を浮かべながら小兵衛は考える。
 老いたとはいえ老練の剣客でもある小兵衛としては、強者と剣を交えることはむしろ願ってもない話だ。
 だが、その相手が"剣"で対抗できるレベルではない、文字通りこの世の理に"自分の理"を押し付けて道行く人を蹂躙するような、災害の類であれば話は変わってくる。

「秋山殿も御覧になられますか」
「うむ。見せてくれ」

 小兵衛の脳裏には嫌な予感が過る。
 それは小兵衛がこれまで鍛えてきた剣客のそれとはまた違う、人間が動物として持っている第六感に近い生存欲求が警鐘を鳴らしている。
 そして烏天狗の能力により感覚を共有して小兵衛は襲撃者を感知した時、小兵衛はその感覚が正しいことを理解する。

「ッ!!……はぁっ、はぁっ……!!」
「先生!?どうしたんですか!?先生!!」

 小兵衛は胸を抑え、嫌な汗をびしょびしょに掻いて呼吸を整える。
 烏天狗の視点を通して見える光景には、異国の服装をした美しい風貌の金髪の女が歩いていた。
 それが見えたまではよかった。だが、小兵衛が彼女を見た瞬間――その女は小兵衛の方を向いて、ニタリと笑ったのだ。
 そこには誰もいないはずなのに。それと同時に、女は一気に駆け出した。その方向には、小兵衛とアスナのいるタイガーボーイがあった。

「いや何……蛇に睨まれた蛙の心持ちを体験したまでよ。アスナ、今すぐここを出るのじゃ」
「は、はい!」

 小兵衛はアスナと共にすぐに支度を済ませてタイガーボーイを出る。
 あの時感じたものは剣客としての昂ぶりではない。弱肉強食の中で圧倒的な強者に蹂躙される側の、弱者による恐怖、そして絶望。
 小兵衛は卓越した剣技を持っているものの、例えば幻妖のような魑魅魍魎の存在しない人の世の出身だ。
 烏天狗の言った、刀や剣一本ではどうにもならない相手――そのような相手に出会ったことはないが、それが真実であると肌で分かる。
 分かるからこそ、さしもの小兵衛とて動転を隠せなかったのだ。

81散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:14:13 ID:4sXAQcxM0

(世界を異にする強者と剣を交えられぬは惜しいが――かくなる上は)
「烏天狗」
「はい」

 タイガーボーイの外に出た小兵衛は肩に乗る烏天狗に命じる。

「ここからはわしとアスナは別行動じゃ。お前はアスナについていっておやり。わしの姿が見えなくなった時を持ってアスナを契約者としなさい」
「……承知いたしました」
「ちょっと待ってください、先生!」

 小兵衛が言ったことの裏に含む意味を、アスナはすぐに理解した。

「ごく僅かしか鍛えられぬわしの不出来を恨んでくれ。じゃが、最低限の心得は叩き込んだつもりじゃ。後はお前次第だえ」
「嫌です!それだけは私の道に反します!私にミトと同じことをしろって言うんですか!」

 小兵衛はきっと、ここで殿を務めてアスナを逃がすつもりだろう。
 しかし、アスナは小兵衛を残して行くようなことはできなかった。
 あの時――ミトにパーティを抜けられた時の光景がフラッシュバックするからだ。

「その通りだ!」

 しかし、小兵衛は敢えてそう答える。

「わしが見た相手は烏天狗が言ったように剣でどうにかなる相手ではない!故にお前が戦っても剣客として何一つ成長しない!身を危険に晒すだけだわえ!」
「でも――」
「――わしが出した課題を忘れてくれるなよ。お前がそれを果たすためにも、お前は生きねばならん」

「話してるとこ悪いけど安心して?女の子は殺さないわよ、女の子は」

 その背後から、今までで一番聞きたくなかった、肌を突き刺すような冷たい女の声が聞こえた。

「ッ!!」

 小兵衛は一歩前に出てすぐさま刀を抜き、遅れてアスナもレイピアを抜く。
 漆黒の修道服風のドレスに身を包んだ女性――"闇檻"ノワル。
 主催陣営からも危険視されている災害指定の魔女が、来てしまった。

「あら、なんて可愛い子。一緒にいる支給品のちっちゃい使い魔も含めて食べちゃいたくなるわ♪」
「……」

 ノワルはアスナと烏天狗に視線を交互に移しながら、小兵衛を一切無視して話す。
 アスナは、その舐め回すような視線とその漆黒の瞳の奥に隠された『今すぐ自分のものにしたい』と言わんばかりのドス黒い欲望に気づき、不快で仕方なかった。
 それは間違いなく、アスナが忌み嫌っている、ウンベールや須郷伸之が持つような所有欲。
 しかしその欲望の強さは、前二人の比ではない。女性であるのにここまで自分に対して欲望を向けられるのかと、不快を通り越して恐れ入るほどだ。

 それに対して烏天狗は、小兵衛の肩の上に留まりながらガタガタと震えていた。
 ノワルの秘める魔力に恐怖しているのか、ノワルの欲望に恐怖しているのか――それは烏天狗のみが知ることだろう。

「あなたはそれなりに魔力を持ってるみたいね。参加者を素体にした魔力サーバーがなかったからちょうどよかったわ」

 アスナを品定めするように見つめてノワルは言う。
 魔力サーバーなるものがどんなものか、小兵衛にも、アスナにも、烏天狗にも分からない。
 しかし、それがどうしようもなく悪趣味なものであることはなんとなく分かる。

「それじゃあ早速――」
「はああああああっ――!!」

 ノワルが何かをしようとする前に、アスナはソードスキル"リニア―"の構えを取り、ノワルへと突っ込んでいった。
 こんな気味の悪い情欲を隠しもしない女を野放しにしておく訳にはいかない。
 先手必勝。狙うは、小兵衛に教えられた通りノワルの眼窩。

「ま、待てアスナ!!」

 慌てて止めにかかる小兵衛だが、もう遅い。
 アスナは致命的な間違いを犯していた。まず、そもそもノワルは仮面ライダーではないということ。
 ノワルは恐るべき相手だが仮面ライダーではないということは、眼窩が弱点であるとは限らない。
 もう一つは、ソードスキル"リニアー"と闇檻の相性が致命的に悪いこと。リニアーは一度構えを取ってしまえば軌道の修正がつかず、攻撃中の咄嗟の回避を取れない。それゆえに見える相手には軌道を読みやすく、カウンター技を持つ相手の格好の的となる。
 そして最後の一つは、小兵衛と烏天狗が告げていたように剣でどうにかなる相手ではない、という言葉を本当の意味で理解していなかったことだ。
 "闇檻"ノワル。世界に自分の我儘を押し付ける権能を持つ災害の魔女に挑むとどうなるか、アスナは分かっていなかった。

82散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:15:42 ID:4sXAQcxM0

「え――?」

 そして、知ることになる。

――ガチガチガチガチッ!!


「あら、自分から私の元に来てくれるだなんて物分かりのいい子ね♪」
「む……ぅぐ……ッ!?」

 アスナの視界を黒い霧が覆い尽くしたと思うと、瞬く間にアスナの全身は闇の檻のごとき拘束具に包まれ、一瞬のうちに微動だにできなくなってしまった。

「ふぐっ……!!」

 リニアーの構えだったアスナは強制的に棒立ちにされ、リニアーの勢いに任せたまま直進して力なく墜落、地面をごろごろと転がり、ノワルの背後で制止した。
 アスナに遅れて、彼女が手に持っていたレイピアがカランカランと音を立てながらアスナの目の前で制止する。

(何……何何何なにがおきたの……!?)

 起き上がろうとするも起き上がれない。指の一本も動かせず、口には何かが詰まっていて吐き出せず、喋ることもできない。
 そのまま自分の身体を見下ろして、アスナは愕然とした。

「むううううううううっ!?」
(いやああああああっ!!何、何なのよこれええっ!!)

 かつてのイドラやマジアマゼンタのように、闇檻に囚われて口元から足先までの全身を拘束されたアスナの姿がそこにあった。

「な……何が起こったのじゃ……!?」
「……秋山殿、あれはもはや我々の手には負えませぬ」

 流石の小兵衛も目を疑った。
 ノワルが発生させた霧――闇檻を通過した瞬間に、アスナは真っ黒な拘束具に覆われて血に伏していた。
 感覚を最大限にまで研ぎ澄ました小兵衛ですら見極めることができなかった。

「早く退避をぐっ!?」
「烏天狗!」

 小兵衛の肩に乗っていた烏天狗にもついでとばかりに黒い霧が立ち込めると共に、烏天狗までもがあの拘束具に覆われる。

「むう〜っ!」

 拘束する対象のサイズに合わせられるようで、烏天狗は両手に持てるサイズのままぎっちりと闇檻に締め付けられて小兵衛の肩から力なくぽとりと落ちる。
 小兵衛の足元で絶えず芋虫のように身じろぎしているが、こうもガチガチに固められては烏天狗の素早さを発揮することもできず、しばらくしてお手上げとばかりに抵抗をやめて動かなくなってしまった。

「はい、出来上がり。これからもこういう相手ばっかりだとやりやすいんだけれど」
「わしを無視されては困るな、女」

 小兵衛は満足げなノワルに対して声をかける。
 それに対して、小兵衛の声を聞いたノワルの声は見るからに不快そうなそぶりを隠しもしなくなる。

「……男、しかもよりによって爺だなんて。同じ空気を吸うのも嫌なんだけど」

 ノワルは加齢臭を厭うかのように鼻を覆い隠す。
 小兵衛のことを殆ど汚物のような何かとしか思ってないような態度が見える。

「つれないことを言ってくれるな。お前のような"災害"を見過ごす訳にはいかん」
「"見過ごす訳にはいかない"ですって?歳を取っておきながら自分の力量も分からないくらい愚かなのかしら?」
「はて、そうかもしれんな。何せこの歳じゃからな」

 わざとらしく笑って見せる小兵衛だったが、その目は笑っていなかった。
 小兵衛は確信する。この女は、"災害"。自分勝手な法則を世に押し付ける身勝手の極致。
 そこには人の情も、尊厳も、剣客の矜持も、うらみすらも残らず、ただ等しく人を踏み付け、思うがままに人から奪う。
 そんなことが許されていいのだろうか、いや許されていいわけがない。
 しかし、許されてしまっている。この目の前の女がその証左だ。

「それにそこの女子――アスナはわしの弟子でな。返してもらうぞ」
「ふうん。あなたも私の邪魔をするのね。……死ぬわよ?」

 小兵衛に告げられるのは、魔女による残酷な死刑宣告。
 しかし小兵衛は刀を構え、堂々とした佇まいで一歩も引かなかった。

「あいにくじゃが……たとえ怪物に負けて死んでも、このげえむ、この世界には負けたくないのでな」
「何それ?意味わかんない」

 力不足なのは既に分かっている。
 しかしだからこそ、剣客として己の持てる全力を籠めて目の前の災害を、倒しにかかる。
 小兵衛の腕から、令呪が三画、一気に消費される。
 これが老剣客、秋山小兵衛最後の戦いであることを物語っていた。

83散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:16:32 ID:4sXAQcxM0

「円ッ!!!!!」

 消費した令呪分、制限を突破して全盛期を超える力が秋山小兵衛の全身にみなぎってくる。
 限界を超えた小兵衛の実力は支給された「円」の効果範囲をも増大させ、間合いの離れたノワルすらの射程内に収めることに成功する。
 後は、極限まで軽くなった身体を駆って肉薄し、"闇檻"の魔女を叩き切るだけ。
 それが小兵衛の命を賭けた全力で、あるはずだった。
 しかし、何かを削り取られるような音がしたと同時に、それは発揮されることなくあっけなく終わってしまった。

「がッ……」
「はい、おしまい」

 小兵衛は何が起きたか、一瞬理解できなかった。
 肉薄しようとしたその一瞬、災害の魔女が指をつんと差す。
 たったそれだけの所作だったはずなのに。
 直後、小兵衛の胴体の大部分に球体の風穴が空いていたのだ。

「ごふっ……」

 小兵衛の口から、滝のような血が流れ出てくる。
 力が抜けていき、握りしめていた陽竜刀を手放してしまう。
 そして悟る。彼我の間には、令呪三画だけでは到底覆し得ない力の差があった。自分は、負けたのだと。

「あっけない」

 事実、同じ災害指定の魔法使いソールと渡り合ったノワルに対抗するには、スタートラインにすら立てていなかったと言っていい。
 加えて、既にノワルは令呪の魔力が闇檻に対抗し得ること、そして自分に対抗し得る者が殺し合いにいることを知ってしまっている。
 ならばノワルはどうするかと言うと、油断抜きで確実に殺しにかかった。
 ノワルは、ごく小規模の"闇檻 ラストレクイエム"を小兵衛の体内を起点に展開、小型のブラックホールと化したそれによって"肉体の一部だけ"を、本体から削り取る形で拘束した。
 残された小兵衛の本体は、生命の維持に必要な臓器の殆どを奪われて虫の息。勝負は一瞬にして決していた。

「命を無駄にしたわね。男の存在自体が私にとっては無駄なんだけど」

 ノワルが女を指一本で無力化できるように、指一本で男を殺せるのだ。
 では、何故先ほどの小兵衛やト部のことは一瞬で葬らず、わざわざ鉄棺に閉じ込めて圧殺しようとしたのか。
 答えは単純で、男相手にはただの指一本すら振るうことが億劫だったのだ。

(これほどの奴がいるとは……世界とは本当に広いのう)

 意識が消えゆく中、小兵衛は膝をつく。
 これまでの小兵衛の人生が走馬灯のように脳裏に浮かんでは消えていく。
 しかし、不思議と未練はなかった。これまで、小兵衛は剣士の名に恥じぬ人生を送ってきた。
 すべては、この時のためだったのかもしれない。
 息子の大治郎は大丈夫だろう。妻に三冬、倅に小太郎をもうけて、剣士としてどこに出しても恥ずかしくない男に成長してくれた。
 妻のおはるは……心配ではないといえば嘘になるが、どうにか周りの人が支えてくれるだろう。
 
(思い残すことは……)

 思い残すことは……いや、ある。
 もはや力の入らぬ首を、震わせながらなんとか持ち上げる。
 その視線の先には、血の如き涙を流しながら地に伏したアスナの姿があった。
 彼女は、この災害の魔女に辱められるだろう。
 この殺し合いに巻き込まれてできた弟子を、守れなかった。
 小兵衛の完敗とも言っていい、惨憺たる結果だ。
 悔しさとノワルへの憎悪の混じった表情を向けてくるアスナに、小兵衛は黙ってかぶりを振る。
 そして、最期に剣客としての意地を見せるため、小兵衛は力を振り絞ってノワルを見上げる。

「覚えておくがいい…………剣客のうらみは……深いぞ……」

 そして、小兵衛の身体は崩れ落ち、ただの肉塊と化す。
 剣客・秋山小兵衛は、60年余りの人生をここに終えた。


【秋山小兵衛@剣客商売 死亡】


§

84散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:21:24 ID:4sXAQcxM0

§

「うらみってどんなうらみよ……最後までよく分からない爺だったわね……」

 小兵衛の言葉の裏に含まれる意味に、ノワルは毛ほどの興味も抱かなかった。
 ノワルからすればただ汚い障害物が邪魔をしてきたから跳ねのけた程度の感覚だ。

「これで2つ目……」

 小兵衛の骸については、レジスターと彼が持っていたリュックを闇檻で取り除いた後打ち捨てた。
 正直言って視界に入れるのすら躊躇われたが、支給品の入ったリュックとレジスターだけは今後のためにも確保しておきたい。
 自分を縛るバグスターウィルスとやらとその抗体を体内に流し続けているレジスター。
 それから逃れるのも、当面の目標の一つだ。

「にしても令呪、ねぇ……私も使い時は考えないと」

 ノワルは自身の腕に刻まれている三画の令呪を見下ろす。
 当面の脅威である"神"に対抗するには必須となるだろう。
 しかし、効果の持続時間が99秒間限定なのが気に入らない。
 そして、そこから溢れ出す魔力が闇檻を相殺してしまうという事実も。
 これも、研究する余地はあるか。
 全参加者において"当たり前"であるはずのルールに自分だけのルールを押し付けることも――ノワルであれば不可能ではない。
 
「さ・て・と……♪加工の時間といきましょうか」
「ぅぅぅぅぅぅううううう……!!」

 用事を済ませたノワルは、くつくつと笑いながらアスナへと向き直る。
 アスナからは、小兵衛を無残にも殺された怒りからか、これ以上ないほどの憎悪がその目線から感じられる。
 しかし、全身を拘束されたアスナはノワルを睨むことしかできない。

「いい目ね……あの砂糖菓子のような女の子のような目……そんな目で見られたらお姉さんもっと虐めたくなっちゃう♪」

 そしてその視線は、ノワルの嗜虐心を刺激する結果にしかならなかった。

「あの支給品の女の子と一緒に、私の玩具兼魔力サーバーの末席に加えてあげるわ――あら?」

 そうして見回してみると、ふと気づく。
 アスナと同じように拘束していたはずの、烏天狗の姿がないのだ。
 
(まさか、あの円とかいう奇妙な波動で闇檻を相殺された……?あの爺が令呪を三画使っていたならその余波で闇檻の魔力をかき消されてもおかしくないかもしれないわね)

 ここで、ノワルは初めて自身の誤算に気づく。
 獲物を一匹、取り逃したことに。

(……まぁ、いいわ)

 しかしそれは、ノワルにとって些末な誤算でしかなかった。
 元々本命はアスナの身柄だ。あの支給品は確かに意思を持っているが、本人は無力に等しい。
 このことを他の参加者に伝えて自分の元にかわいい女の子を連れて来てくれるのなら、その誤算は嬉しいものに変わる。

「さあ、情けなく魔力を垂れ流す魔力サーバーになりなさい」

 瞳を妖しく輝かせながら、ノワルはアスナに手を伸ばす。
 されどアスナはずっとノワルを睨んだまま、怯むことはなかった。

§

85散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:22:00 ID:4sXAQcxM0

 ノワルから一人逃れて、烏天狗はトップスピードで殺し合いの会場を飛翔していた。

(急がねばなりませぬ……秋山殿の遺志を無駄にしないためにも)

 ノワルが推測した通り、烏天狗は小兵衛の円を展開した際に漏れ出した令呪由来の濃密な魔力によって闇檻から解放されていた。
 解放されたと同時に契約者である小兵衛から送られてきた意思によって、烏天狗自身の気配を消していた。
 そして、余命いくばくかという状態の小兵衛から、烏天狗は指示を受け取っていたのだ。

 殺し合いを打倒しようとしている参加者を探すこと。
 協力してくれる参加者を新たな主をすること。
 見つけた参加者に「アスナが闇檻の魔女に囚われた」ことを伝えること。
 
 秋山小兵衛の今わの際に受けた命令。彼に仕えていた以上、必ず果たさねばならぬ。

(しかし……事態は私めの想定を遥かに超えています)

 烏天狗の脳裏には、小兵衛の身体に風穴を開けたノワルの姿が今もこびりついている。
 レベル3の幻妖を一刀の元に切り伏せた小兵衛が、令呪三画すべて消費して大幅に力を増したにも関わらず、指の一本を振るうだけで斃されてしまったのだ。

(あればレベル4が束になっても勝てない……いえ、全盛期の鵺様でさえも勝てるかどうかわかりませぬ)

 その圧倒的な魔力と反則的な能力は、烏天狗個人としても危険視している。
 もし殺し合いがあの女の勝利で幕を閉じれば最後、その魔の手はあらゆる世界にも及ぶだろう。
 無論、烏天狗のいた世界にも。
 それだけは、何としても避けねばならない。

(学郎様……あるいは秋山殿とアスナ殿が気に掛けていたキリトなる者を始めとする"プレイヤー"なる者達と接触できればよいのですが)

 これから出会う参加者が協力的であることを祈りながら、烏天狗は殺し合いの会場を奔走していた。


[烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師]
状態:令力消費(中)、独立移動、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:烏天狗の服装
装備:なし
道具:なし
思考
基本:親しい者に危機が及ばない限り契約者の意向に従う
00:小兵衛の最後の指示を遂行するため、他の参加者を探す。
備考
※秋山小兵衛より、以下の指示を受けています。
 殺し合いを打倒しようとしている参加者を探すこと。
 協力してくれる参加者を新たな主をすること。
 見つけた参加者に「アスナが闇檻の魔女に囚われた」ことを伝えること。



§

86散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:23:21 ID:4sXAQcxM0



 右も、左も、上も、下も、すべてが闇だった。
 ここはポケット闇檻の内部。
 四方八方から、快楽に堕ちた女性の声が幾重にも響き渡る。

「いい格好になったじゃない。さっきよりも何倍も素敵よ、あなた」

 最高の作品を作り上げた芸術家のように恍惚とした表情で、ノワルはそれを見た。

「でも、この傷が邪魔ねえ。本当にあの爺、余計なことをしてくれちゃって。消しちゃお」

 回復魔法によって、その乳房の上にあった傷を跡形もなく消した。

――じゅこ。じゅこ。じゅこ。じゅこ。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 そこには、大勢の囚われたNPCの中に加えられた、魔力サーバーに改造されたアスナの姿があった。
 全身を装置に繋がれ、女の肢体をとことん利用されたその姿は悲惨の一言に尽きる。
 剣は取られ衣服はすべて脱がされ、年齢の割に発達していた乳房には搾乳機が取り付けられ、それはアスナの乳が出るのを今か今かと待っている。
 栄養を流すチューブは口枷の役割も兼ねており、憎まれ口を叩くことも許されない。

「う゛う゛う゛う゛!!」

――じゅこ。じゅこ。じゅこ。じゅこ。

 肛門からは媚薬が絶えず流し込まれ、アスナの望まぬ快感を無理やり引き出す。
 その状態で股間に取り付けられたバイブで弱点を突かれ、そのたびにアスナは獣のごとき嬌声の咆哮を上げる。

「けど意外だわ。あなた程度なら加工されてちょっとすればすぐにイキ狂ってよがるようになると思ってたんだけれど」

 快楽から逃れようと何度も首を振ったことで乱れてしまったアスナの髪を、ノワルは一房摘んでペロリと舐める。

「そんな目を維持できるなんて。嬉しいわ。予想よりあなたはずっと長く遊べそう」

 しかし、アスナの目は死んではいなかった。
 快楽で悶えながらも、自分を見失わずにノワルをキッと睨むことだけはやめなかった。

「それじゃあ少し味見を……」

 それを尻目に、ノワルはアスナの大事な部分から噴き出た愛液を指に取り、味見する。
 そこに含まれた魔力は、NPCでは物足りなかったノワルにとっては格別の味だった。

「やっぱり、NPCなんかより"生"の参加者の魔力の方が美味ね♡」
「ッ……ッ……!!!」
「そんなに私が憎いならその快感に耐えてみなさい。私の理想郷ができたら、あなたを私の玩具一号として特別待遇にしてあげるから」

 舌なめずりしながら満足げにノワルは呟き、ポケット闇檻を出ていった。
 そこには、NPCと共に装置に繋がれたアスナだけが残された。

(先生……ごめんなさい……)

 秋山小兵衛が、死んだ。
 自分が無策に突っ込んでいったせいで。
 何もできずに捕えられた自分が情けなく、どうしようもなく悔しい。

(私は……私は……ッ!!)

 秋山小兵衛が最期に見せた表情と最期の言葉。
 そのメッセージを、わずかながら剣客として修業を受けたアスナはしっかりと受け取っていた。

(私は……負けない……ッ!このゲームにも……あの女にも……!!)

 剣客の"うらみ"は、深い。
 ならばアスナが、小兵衛のうらみを継ぐ。
 今頃は烏天狗が参加者を探し回っている頃だろう。
 今は武器も何もかもを取られて無力化されているが、いつか反旗を翻す時がきっと来る。
 その時が来るまで、何度も快楽に身を委ねそうになりながらも、アスナは耐え続ける。
 自分と小兵衛のうらみを、あの女に返すその時まで。
 生きて見せる。そしてミトにもいつか再会して――。

(私は負け――)
――プシュッ。
「おごおおおおおっ!!!」
(負アアけえええなアァァァいいいいいイイイイイイイッッッ!!!♡♡♡)

 闘志を燃やしながら、快楽で瞳をチカチカと明滅させながら、アスナは何度も絶頂を迎えていた。

87散華 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:24:35 ID:4sXAQcxM0


【エリアB-3/タイガーボーイ周辺/9月2日午前9時30分】

【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)(回復中)
服装:ノワルのドレス
装備:賢者の石@鋼の錬金術師、万里ノ鎖@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3(ローラ姫のもの)、青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG、ホットライン、レジスター(ローラ姫)、ランダムアイテム×0〜2(アスナのもの)、ランダムアイテム×0〜1、 ラランダムアイテム×0〜1(ウンベールのもの)、アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ、ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)、ポケット闇檻、魔力サーバー(NPC)×いっぱい、魔力サーバー(アスナ)
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:アイツら(マジアベーゼ、マジアマゼンタ、イドラ、千佳、アルカイザー)にはいずれ報いを受けさせる
01:この殺し合いを乗っ取って、自分好みに改造してあらゆる世界から集めた女の子を愛でる
02:黒い男(アルジュナ)を強く警戒。気を引き締めないとねぇ
03:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃん、アスナちゃんの魔力はおいしかったわね。
04:まだ見ぬ異世界のかわいい女の子に会うのが楽しみ。今度は殺される前に会いたいわ
05:ルルーシュって奴の能力も対策を考えておく
06:令呪とレジスターに関しても細工の余地がありそうね……
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
※ノワルに課された制限は以下の通りです。
闇檻 無限監獄の封印
魔力解放形態の封印
結界による陣地の作成不可
召喚できる使い魔は天使α、天使β、天使γ程度
闇檻 ラストレクイエムで呑み込める範囲を1/10未満に
※闇檻の応用によりポケット闇檻を作り出しました。
 「人間やNPCを入れられるリュック」のような性能をしており、中身に魔力サーバーに加工したNPCおよびアスナを収納しています。
※数多くの女性NPCとアスナを魔力サーバーに改造してポケット闇檻内部に収納しています。内部から魔力を抽出可能です。


【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)】
状態:全裸、魔力サーバー、疲労(特大)、絶頂、ノワルへのうらみ(極大)
服装:魔力サーバーの装置と拘束具
装備:搾乳機、チューブ、バイブ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:"その時"が来るまで生きる
01:先生(小兵衛)の教えを肝に銘じる
02:生きて、先生(小兵衛)と私のうらみをあの女(ノワル)に返す
03:生きてミトに再会する……?
04:茅場って……あの茅場よね?
05:どういうこと?これはSAOとはどう関係しているの?
06:キリト……同じSAOのプレーヤー?
参戦時期:ミトにパーティを解消され、ジャイアントアンスロソーに殺される寸前
備考
※キリトに助けられる前ですのでキリトとの面識はありません。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
※小兵衛との会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※名簿の並びからキリト〜ユージオまでをSAOのプレーヤーではないかと推測しています
※胸の傷はノワルにより治療されました


【NPC紹介】
【ヴァルキューレの生徒@ブルーアーカイブ】
キヴォトスにおける警察組織の役割を果たす学園の生徒。
残念ながらノワルに挑んだ生徒は全員魔力サーバーにされてしまった。

[エリア備考]
B-3のタイガーボーイ周辺には小兵衛の死体が陽竜刀とともに転がっています。

88 ◆mAd.sCEKiM:2025/04/28(月) 08:24:51 ID:4sXAQcxM0
以上で投下を終了します

89 ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:44:46 ID:CiVh4nnE0
投下します。

90不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:45:35 ID:CiVh4nnE0


 灰色の空。燻る煙。
 天高く聳える無機質な塔。
 発電所から立ち上る実体の持たないそれを目印に、歩を進めてゆく漆黒の影。

 その男に名前は無い。
 決別のために、過去も栄光も切り捨てた元勇者。
 ギギストとの停戦協定を終え、拠点を探すため橋を渡った彼の足取りは当初の目的から外れていた。
 西へ進むうちに何者かの戦闘の跡、魔力の残滓を辿る内にやけに背の高い施設が目に付いたのだ。

「ハッ、丁度いい」

 この数時間、彼は幾つもの力を手にした。
 新たなる特技に呪文、デザストの変身道具、ギギストに与えられた力。
 エトウカナミやNPCとの戦闘によってある程度は使いこなせるようにはなったが、まだ完全にモノには出来ていない。

 ──己の力を試したい。
 ──強者との戦闘がしたい。
 ──血湧き肉躍る死闘がしたい。

 いつからか、胸奥から迸る熱き闘争心。
 人を救うという決意のもとで動いていた勇者の頃とは、まるで違う。
 浮き足立つような感覚、先の斬り合いを思い出して四肢が落ち着かない。
 
 その男に名前は無い。
 けれど平和を切り開く者を勇者とするのならば、彼はその逆。
 争いを渇望し、自由気ままに戦をもたらすその厄災に名を付けるのならば。


 ────やみのせんし。



◾︎

91不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:46:34 ID:CiVh4nnE0


 
「…………くそっ」

 発電所内部、とある一区画。
 簡素なベッドが用意されている職員専用の休憩室にて、やるせない悪態が尾を引く。
 それに続いて壁を叩くキリトの視線の先には、目を逸らしたくなる現実があった。
 
「キリト、気持ちはわかるけど…………」
「わかってるさ、けど」

 血に濡れたベッドに寝かされ、顔に布を掛けられた遺体。
 物言わぬ屍となった成見亜里紗を前にして、キリトは凄まじい悔恨に見舞われた。
 幾度目にもわからない彼の自責をイドラは気遣うが、気休めにもならない。

「理屈じゃないんだよ」

 物憂げに、心底後悔した面持ちで呟くキリト。
 その姿を見てイドラは言葉を失い、重い沈黙が場を制した。


 
 リボンズとの戦闘後、レッドとイドラは気絶したキリトたちを背負い発電所の内部へ移動した。
 その最中だ、アリサの遺体を発見したのは。
 最初、それが彼女だと気がつくのに時間を要した。
 脳天を破壊され、原型を留めない顔面はもはや個人を特定できるものではなかったのだ。
 辛うじて服装から成見亜里紗の遺体だと判別出来たが、それが逆に彼女の死を揺るがぬものに変えた。

 この場では満足に弔う事も出来ず、二人は休憩室のベッドに安置させることを選択した。
 それから暫くして目が覚めたキリトに、事情を説明するかどうか迷った。
 リボンズという強敵を命懸けで打ち倒した直後に、こんな残酷な事実を突きつける勇気が無かったのだ。

 けれど、レッドはそうではなかった。
 沈痛な面持ちで亜里紗の死を告げるレッドにより、現状を把握したキリトは今に至る。
 ゲーム開始から行動を共にしてきた仲間の死は、到底容易に受け入れられるものではない。
 リボンズへの勝利の余韻に浸ることも許されず、力なく壁へと背を預けた。

「…………レッドはまだ戻らないのか?」
「ええ、見回りに行ってくるって言ってたけど……多分、彼もショックだったんでしょうね。もう少し待ってあげましょう」

 キリトへの説明を終えたあと、レッドは見回りを買って出た。
 確かに今の疲弊した彼らではまたリボンズのような強敵を相手にするのは無謀といえる。
 撤退するにしても応戦するにしても迅速さが求められる状態、見回りという役目は必要不可欠。

 けれど、部屋を出たレッドの横顔は。
 今にも押し潰されそうなほどの悲哀と自責に満ちていた。

「…………デクにも、伝えなきゃいけないんだよな」

 苦々しく己へ釘を刺すキリト。次いでイドラも眉を下げて俯く。
 休憩室のベッドを占領しているのは亜里紗だけではない。
 OFAの反動を一身に受けて以降、意識を取り戻さない緑谷出久もまた苦境の理由である。

 命を懸けてリボンズを退けた彼へ、また一人喪ったことを伝える。
 言葉にするよりも遥かに残酷な事実を、これから突きつけなければならない。

 キリトとイドラの間に沈黙が流れる。
 死を悼む時間など殺し合いにおいては無意味に他ならないが、二人はそこまで非情になりきれなかった。

「私から伝え──」
「待て、イドラ」

 静寂を打ち破るイドラの言葉を、キリトが制する。

「この足音、聞こえるか?」
「え……」

 耳を澄ます。
 発電所が発する機械音に紛れて、床を踏む音が鳴り響いていることに気がついた。
 しかもそれは段々と近付いてきている。
 焦りを含んでいるのか、早足気味のそれは誰が聞いても穏やかなものではない。

92不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:47:07 ID:CiVh4nnE0

 念には念を、と剣に手をかけるキリト。
 イドラはベッドで横たわるデクを守るかのように彼の前へ移動し、魔力を練り上げる。

 扉が開く。
 同時に、彼らの心配は杞憂に終わった。

「レッド!」

 見慣れた仲間の顔。
 安堵の息を吐く二人に対して、レッドの顔色は優れない。
 ちらりと目線を配ったかと思えば、鬼気迫る目つきのまま告げた。

「一人ヤバそうなやつが来てる。……このままじゃ、ここも見つかるかもしれねぇ」
「…………だろうと思ったよ」

 正直、足音から予感はしていた。
 レッドがそれを告げに来たということは、少なくとも彼一人でどうにかなる手合いではないと判断したのだろう。
 イドラに緊張が走る。せめて放送の時間はここで迎えたかったが、レッドの表情からしてそれは現実的ではないようだ。

「どうする、撤退すんのか?」
「…………」

 この場での指揮はキリトに任されている。
 撤退か応戦か、ここで選択肢を間違える訳にはいかない。

「敵はこっちに気付いてたのか?」
「多分な、迷いない足取りでこっちに来てたぜ」
「なら、このままデクを背負って撤退するのは危険だな……」

 大人数での撤退、それも負傷した人間を抱えてとなると機動力は格段に落ちる。
 初めから立ち向かうつもりで体勢を整えるよりも、逃走から慌てて応戦に転じる方が圧倒的に不利だ。

「一人で向かってきてるってことは、それ相応の自信がある奴だ。……さっきのアイツみたいにな」

 そんなキリトの思考を見抜くかのように、レッドが鋭い指摘を放つ。
 ゲーム開始から既に六時間以上経過している今、よほどのことが無い限り単独行動を選ぶ理由はない。
 それこそ先程邂逅したリボンズのように、他者を殺して回っている以外では────

「わかってるさ」

 けれど、退けない。
 目の届く範囲に危機があるのならば、それを抹消しなければまた亜里紗のような犠牲者が出てしまう。
 それだけは、避けなくてはならないから。

「だから、なにかあったら逃げてくれ」

 司令塔の強い宣告。
 デクが目を覚ましたら、きっと同じことを言うだろう。
 指示役を任されている以上、その責務はあると自負している。

「それは俺のセリフだぜ、キリト」

 けれどその役目は、ヒーローが背負うべきだ。
 少なくとも発言の主──小此木烈人はそう考えていた。

「レッド……」
「そんな顔すんなよ、勝てばいい話だろ!」

 キリトもデクも、レッドよりも歳下であるにも関わらずその精神性は並の大人を凌いでいる。
 同時に、危うさのようなものを感じた。
 自らの命を顧みず、他者の為に全力を振り絞る姿は生き急いでいると言っても過言ではない。
 自己犠牲も行き過ぎれば悲しみを振りまく存在となることを、レッドはこの殺し合いで深く思い知った。
 
「はは、そうだな……勝てばいい」
「そうよ! どんな敵が来ても、あのノワルよりはマシでしょ!」

 気休めの鼓舞は力へと変わる。
 無論、だからといって恐怖が拭えたわけではない。
 特にノワルによって絶望的なまでの恐怖を与えられたレッドとイドラは、覚悟など決まるはずもない。
 見せかけの虚勢に鎖を繋いで、精一杯繋ぎ止めている状態。

 けれどそれを笑う者は一人とていない。
 未だ意識を取り戻さないヒーローにちらりと一瞥をくれて、三つの光は休憩室を後にした。


◾︎

93不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:47:38 ID:CiVh4nnE0


 ────発電所前、入口付近。

 無機質なアスファルトの上で、光と闇が相対する。
 迎え撃つかのような三人を前に、紫と赤を基調とした闇がくぐもった声を上げた。

「ありがたいね、歓迎してくれるなんてよ」
「ああ、一人じゃ寂しいだろうと思ってね」

 応えるキリト。
 デュエルガンダムで武装しておいて正解だった。敵の武装──仮面ライダーデザストから漂う敵意は尋常ではない。
 濃密で、混じり気のない漆黒の意志。
 かつてキリトが出会ったヒーロー殺し、ステインのそれを彷彿とさせた。

「なぁ……お前、乗ってんのか? いきなり襲いかかって来たりしない辺り、話は出来ると思ってんだけどよ」

 隣立つアルカイザーもまた、仮面越しの声を響かせる。
 二人の少し後方に経つイドラも心中で同意した。
 彼女たちが出会ったノワルやリボンズといった強敵は有無を言わさず攻撃を加えてきた。
 対して、今目の前にいる闇の戦士はまるでこちらの選択を待つかのように構えている。

 話し合いの余地があるのではないか。
 そんなレッドの希望は、他ならぬ漆黒の戦士によって否定される。

「少し前にアンタに出会ってりゃ、その話にも乗ってやったかもな」

 けどな、と続けて破壊の剣を向ける。
 黒曜石じみた切っ先が陽光に照らされて、レッドの背筋に寒気が伝った。

「俺はもう、そっちに行く気はねぇんだ」

 ぶおん、と大振りな剣戟が空を断つ。
 対象を定めないただの素振り。刃など届くはずもない位置なのだから、警戒をする必要など皆無。
 しかし、その剣が描いた軌跡はゆらりと空間を揺らがせた。

 はかいのつるぎ。
 その名の通り、万物を破壊に至らしめることから名付けられた業物。
 それを手にしている者がよりにもよって、その剣が存在する世界の最上位に位置する猛者ともなれば。
 そして、その猛者が仮面ライダーという便利な〝鎧〟を身につけ、ギギストによる強化を賜ったともなれば。


 ────その一撃は、空間すら断つ。


「かかって来いよ、正義の味方」

 戦慄を抱く間もない。
 後方支援をイドラに任せ、キリトとアルカイザーが疾走する。
 大魔導士の肉体強化魔法を受けた二人は加速度を味方につけて、漆黒の剣士へ肉薄する。

「アルカイザー! 合わせろ!」
「ああッ! スパークリングロールッ!!」

 キリトは二刀による横薙を、アルカイザーは両拳によるコンビネーションを叩き込む。
 確かな手応えと共に、鋭い火花が散った。
 しかし、仮面に隠れた二人の顔は苦悶に歪む。

「なるほどな」

 それもそのはず。
 計四つの挟撃を受けても尚、闇の戦士は微動だにしていないのだから。

94不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:48:09 ID:CiVh4nnE0

「なっ…………!?」
「アンタらの戦い方はある程度分かった」

 だいぼうぎょ。
 ターンを犠牲に、如何なるダメージであろうと露ほどにまで抑える特技。
 タイミングを外せば産廃と化すこの技を、やみのせんしはたった二度目の使用でモノにした。

(こいつ、物理攻撃じゃ効果が薄いのか……!?)

 この絶対的な防御力を初見で味わった二人の心境は、言うまでもない。
 本来の防御力を知らぬキリトとアルカイザーは、一瞬の動揺と次の一手への迷いが生じる。
 ゆえに、比較的離れた場所で冷静さを維持していたイドラだけが魔力の奔流を捉えた。

「ダメ! 二人とも離れ────」
「レミーラ」

 輝きが世界を喰らう。
 体勢を整える暇もなく、至近距離でその絶光を浴びたキリトたちは呻きを上げて仰け反る。
 辛うじてそれから逃れたイドラは、彼らへの追撃を妨害すべく口早に詠唱を始めた。

「凍て刺せ、氷精の────」

 疾風が吹く。
 冷たい感触がイドラの腹部を貫く。
 詠唱が中断され、息継ぎすら上手くいかない。
 視線を下げてみれば、破壊の剣が華奢な腹を突き破っていた。

「ぇ、…………ぁ、え?」
「悪いな、最初に狙うのはアンタって決めてたんだ」

 冷徹な死刑宣告と共に、剣が引き抜かれる。
 血液を塞き止めるものがなくなり、とめどなく溢れる命の雫がイドラの意識を白濁に染めあげてゆく。
 無防備なキリトとアルカイザーへ追撃が向けられる、と。
 そう思い込んだ一瞬が、イドラに致命の隙を与えた。

 しっぷうづき──それは、必ず先手を奪う因果逆転の剣。
 速度と引き換えに威力を犠牲にしたその技も、数多の強化を受けた彼が放てば、生身の〝大魔導士〟に致命傷を与える程度造作もない。
 一番厄介な支援役を先に潰す。彼の世界においての鉄則だった。
 
 声を上げる間もなく倒れ伏すイドラに目も向けず、警戒の意識は先程自身がいた位置へ。
 すなわち、彼の視線はキリトとアルカイザーへと向けられた。

95不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:48:50 ID:CiVh4nnE0

「てっ、んめぇぇぇぇええええええええッ!!」
「っ……待て! アルカイザー!」

 ようやく光に慣れた目が捉えたのは、血溜まりに沈むイドラの身体。
 激昂するアルカイザーはキリトの制止を振り払い、単独でやみのせんしを討たんと飛躍する。
 連携など取れるはずもない無謀な突撃。
 焦燥に駆られるキリトは咄嗟に併走するも、翼を生やしたアルカイザーには追いつけない。

「真──アル・フェニックスッ!!!!」

 黄金の輝きを纏い、弾道ミサイルの如く迫る不死鳥。
 令呪を消費し、ノワルへと放ったものと同等の必殺技。
 直撃すればだいぼうぎょでも耐えれるか危ういそれを前に、やみのせんしは即座に片手を向けて。

「ラリホー」

 一言、呪文を放つ。
 たったそれだけで、アルカイザーの意識は途絶えた。

 キリトは驚愕する。
 たった三手、時間にして十数秒。
 この男は、的確な選択肢によって人数差を覆してみせた。
 
 圧倒的な火力に物を言わせるリボンズのような戦い方とは違う。
 己の手札と戦略を駆使して優位を取るこの男は、ある種もっとも強敵と言える。

「あいにく、三人相手に馬鹿正直に付き合ってやれるほどお人好しじゃないんでな」

 やみのせんしの技は所詮は初見殺し。
 しかし、キリトはその初見殺しが〝いくつ〟あるのか分からない。
 接近すれば目眩し、大技を繰り出せば催眠。
 肉弾戦を仕掛ければ勝てるかと問われればキリトはそいつを指差しで笑うだろう。

「一対一なら敵じゃないっていうのか!?」

 しかし、退く理由にはならない。
 デュエルガンダムの機動力をフルに活かし、ミサイルポッドの牽制を挟みながら肉薄。
 掌から迸る電熱、ギラがその尽くを撃ち落とし爆煙が両者の間を覆う。
 邪魔な目隠しを同時に切り払い、四つの剣が交差した。

 破壊の剣、黒嵐剣漆黒。
 シャドーセイバー、ビームサーベル。

 質として劣るものは一つも存在しない。
 しかし、競り負けたやみのせんしの胸甲に二筋の火花が散った。

「へぇ」

 ぽつりと声を漏らし、キリトへの認識を改める。
 やみのせんしは彼の事を二刀流の使い手と分析していたが、大きな間違いだった。
 使い手、どころではなく熟練の戦士。
 二刀流の技量に関してキリトは、〝まだ〟雲の上の存在と言っていい。

「このまま、押し切る……っ!」
「ハッ、やってみな!」

 ならば当然、同じ土俵で戦うなど愚の骨頂。
 即座に聖剣を鞘に収め、破壊の剣を両手に握る。
 手数で攻めるキリトに対し、やみのせんしは一撃に力を注ぐ。
 機動力で勝るキリトが優位に見えるが、その実追い詰められているのは二刀の担い手であった。

(くそ、長期戦は不利だ……!)

 戦いを長引かせればイドラの命が危うい。
 加えて疲弊とダメージの度合いはキリトが上、先にスタミナが尽きるのはどちらか言うまでもない。
 早く決めなければという焦燥がキリトの腕を鈍らせ、卓越した攻撃を直情的に劣らせる。

 右のシャドーセイバーを唐竹に振り下ろし、漆の刀身に防がれる。
 しかしそちらはブラフ。痺れの残る右手から長剣を手放し、左手のビームサーベルを両手に持ち替える。
 そのまま全身をバネのようにしならせ、軸足に摩擦が走るほどの勢いで胴への回転斬り。
 だいぼうぎょをさせる暇もない一撃がデザストの装甲に突き刺さる寸前、ドスの効いた声を聞いた。

96不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:49:21 ID:CiVh4nnE0

「お疲れのところ悪ィが」
「…………は、……」

 ガギリ、と歪な音が鳴る。
 見ればキリトが放った渾身の刃は、金属じみた右肘と右膝によって挟み取られていた。
 冷や汗が伝う。左手に持ち替えられていた破壊の剣が、牙の如くキリトの首筋へと迫る。

「パワーが足んねぇよ」

 衛藤可奈美と比べれば、疲弊したキリトの剣は比べるまでもない。
 シビトとなった衛藤可奈美と対峙したことが、この勝敗を決めたと言っても過言ではないだろう。
 迫る死神の鎌に首を捻って抵抗を試みるが、とても逃れられず────

「────シャイニングキック!!!!」

 と、赤紫の鎧を黄金の蹴りが射抜いた。
 吹き飛びながら受け身を取るやみのせんしへ、目覚めたアルカイザーが追撃を仕掛ける。
 礼を告げるよりも早く構え直したキリトもまたそれに続こうとするも、灼熱の大蛇が彼の進行を止めた。

「ベギラマ」
「ちぃ……っ!」

 砲撃じみたアルカイザーの徒手空拳を剣身で受け止め、左手でキリトへ呪文を。
 回避に専念する二刀の剣士は援護すら出来ず、アルカイザーとやみのせんしの一対一の状況が作られる。
 空手と長剣ではリーチの差があまりにも大きい。
 後退したアルカイザーは光の剣、レイブレードを生成して一刀同士の鍔迫り合いを挑んだ。

「カイザースマッシュ!!」
「はやぶさぎり!」

 残光描く必殺の一撃を、双竜の爪が迎え撃つ。
 初撃は拮抗、威力の殺されたレイブレードへ間髪入れず二発目が叩き込まれる。
 剣だけは離すまいと指に力を込めていた分、得物ごと大きく体勢を崩された。
 来るべき衝撃へ備えるアルカイザーだが、予想に反してやみのせんしは追撃を中断して片手を掲げる。

「バイキルト」

 橙色の粒子が戦士の体を包み込む。
 その意図を汲むよりも早く、アルカイザーは再度闇を切り払う一撃を放とうと右足に重心を移した。

97不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:50:22 ID:CiVh4nnE0

「カイザースマッシュ!!」
「ッ、らぁっ!!」

 必殺技の連撃に身体が悲鳴を上げる。
 痛みと疲弊を無視して振るわれたそれは、先にみせた光景の焼き直しのように。
 けれど違う点があるとすれば、やみのせんしから振るわれた斬撃は〝一つ〟だということ。

「な、」

 けれど、

「んだ、……と…………」

 そのたった一振りは、

「が、…………っ、は……!」

 光の剣を叩き折り、アルカイザーの装甲をぶち破った。

「アルカイザぁぁぁああッ!!」

 よろりと崩れ落ちる不死鳥。
 ベギラマの追走を振り払い、ようやく支援に駆け付けたキリトはブーストを駆使して疾走。
 かつてであれば対処が追い付いていなかったであろう閃光じみた早業。
 レベルアップを遂げたやみのせんしの肉体は、それを容易に受け止める。
 かち合う剣戟が周囲の瓦礫を浮遊させ、礫が発電所の壁にめり込んだ。

「ぐ、ぅ…………ッ!」

 二刀を以てしても競り合える時間は一秒ほど。
 余力の全てを振り絞るつもりで、キリトは機体纏う四肢に無理を言わせる。
 千切れんばかりの激痛に歯を食いしばりながら、刀身を滑らせる形で捌き必殺の構えを取る。

「スターバースト──」
「いなずま──」

 対するやみのせんしもまた、閃熱の魔法剣で応える。
 ベギラマを宿した黒剣はただでさえ恐慌に値する破壊力に、暗澹たる絶望をもたらした。

「────ストリームッ!」
「────斬りッ!」

 稲妻の斬撃へ三連撃を叩き込み、ベクトルを僅かに逸らす。
 体勢を崩したデザストの胸へ二連撃。
 対称的な線を走らせよろける彼へ、右の長剣を逆手に持ち替えて左脇を狙う。
 金属の反響音、破壊の剣の柄がそれを受け止める。
 ならばと左手のビームサーベルを右肩へと振るい守りを崩さんとするが、弧を描くような防御で弾かれる。

「はあぁぁぁぁッッ!!」

 続く蒼光の八連撃──息をつく暇もない超速攻、スターバーストストリーム。
 ターンを無視した計十六発の一方的な斬嵐を、雷を纏う一本の剣が凌ぐ。
 その技は、彼の相対した衛藤可奈美が使用した鉄壁の剣技────〝凪〟の模倣。
 しかし所詮は真似事、捌き切れない斬撃がデザストの鎧に細かな傷を与えてゆく。
 蒼い剣と橙の剣が色鮮やかなコントラストを生み出し、ある種幻想的な命のやり取りを繰り広げる両者。

 フィニッシュの十六発目を叩き込む寸前、異変が訪れる。
 エネルギーを切らしたビームサーベルが出力を落とし、破壊の剣によって弾き飛ばされた。
 残されたシャドーセイバーに力を込めるも、一刀の領域でこの男に敵うなど絵空事。

「っ、あ゛……!?」
「ありがとよ、二刀流の剣士」

 文字通り、稲妻の如き斬り上げがキリトの剣を弾き飛ばす。
 続く天からの落雷を思わせる一太刀が、デュエルガンダムの装甲を深く抉り取った。

98不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:50:51 ID:CiVh4nnE0


「おかげで俺は、まだまだ強くなれそうだ」


 断末魔を上げる間もなく、限界を迎えたキリトは変身解除へと追い詰められる。
 度重なる疲労とダメージにより意識を刈り取られ、力なく膝から崩れ落ちた。
 やみのせんしもまた大きく息を吐き、回復呪文(ベホイミ)を己に掛ける。

「……さすがに、ちょいと疲れたな」

 消耗していたとはいえ三対一の多人数戦。
 この戦士は、終始人数差を活かさせなかった。
 彼が元の世界において一対一を繰り広げてきたのは、なにも魔物がご丁寧に決闘を挑んできてくれたからではない。
 多数で掛かってくる魔物を、その技量をもって一対一へ持ち込んでいるのだ。

 今回の戦いもそう。
 三対一ではなく、一対一を三回繰り返しただけ。
 素の戦闘能力では個人を大きく上回るやみのせんしが勝利を収めたのは、決して奇跡や偶然ではない。

 倒れ伏すキリトへトドメを刺さんと剣を振り上げる。
 瞬間、デザストの複眼がゆらりと揺れ動くなにかを捉えた。
 
「…………あ?」

 汚れた魔女帽子をそのままに、立ち上がる大魔導士── イドラ・アーヴォルン。
 虚ろな瞳はしかし死人のそれではなく、強き決意を以てしてやみのせんしを射抜く。

「ご苦労なこった、寝てた方がずっと楽だってのによ」

 しかし勇ましい睥睨とは裏腹に、イドラの身体は今にも倒れそうなほど危うい。
 臓器をやられているのか、詠唱どころか呼吸をすることさえままならない。
 ゆえにやみのせんしは〝それ〟を脅威とは認めず、意識は再び眼下のキリトへと向けた。

 それはすなわち。
 やみのせんしが与えた、一ターンの猶予。
 与えられた微かな時間は、イドラにとっては途方もなく永く感じた。


◾︎

99不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:51:14 ID:CiVh4nnE0


 ああ、と思う。
 苦しい、と思う。

 地獄のような熱と痛みが腹部を蝕む。
 死が刻一刻と近づいてきているのを、ありありと感じる。
 霞む視界が辛うじて捉えたのは、黒衣の剣士に剣を振りかざす悪魔の姿。

 その光景がひどく他人事のように見えた。
 なぜ立ち上がってしまったのかは、自分でも分からない。
 今の私が出来ることなどなにもないはずなのに、靭帯が切れるような激痛に耐えてでも起き上がってしまった。

 唱えられる魔法はたったの一度。
 それも、迫り上がる血の塊が邪魔するせいで普段の詠唱よりもずっと拙いだろう。

 この残された一手。
 どの魔法を唱えるべきか、考える。

 ────回復魔法。
 これを自分に唱えれば、命だけは助かるかもしらない。
 あいつの意識がキリトへと向いている今、私は単独では脅威とすら見られていないのだろう。
 奴がキリトやアルカイザーに意識を向けている間、場を離れることも可能なはずだ。
 そうすれば少なくとも、私だけは助かる。

 そうだ。
 死んでしまっては、意味がない。

 アリサの死体を見た。
 ああはなりたくないと、心から思った。
 どんなに綺麗事を抜かしたって、自分の命が惜しいのが人間だ。

 異世界人の思考は分からない。
 他人のために命を投げ打って、満足気に散っていく。
 私は、遺された者の気持ちを考えないその蛮行が嫌いだった。

 だから、私は自分だけでも生き残る。
 キリトやアルカイザーには悪いけど、私が何をしたところで勝てないから。
 だったら、一人でも多く生き残ろうとするのが賢い生き方でしょう?

 回復魔法を唱えようと精霊を宿す。
 そんな私の脳裏を、赤髪の男が掠めた。


 ────ああ、そうね。

 
 確かに、私の選択は間違ってない。
 殺し合いにおいて生き残ろうとする意思は、賢いといえるはずだ。
 他人のために死に急ぐなんて、それこそルールも理解していないような馬鹿のやること。

 けれど、私はそんな〝馬鹿〟に惚れた。
 理屈や採算じゃなく他人の為に全力を尽くす姿を、かっこいいと思った。

 だったら、私も。
 そんな〝馬鹿〟になっても、いいのかもしれない。


◾︎

100不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:51:35 ID:CiVh4nnE0


「曇天、……こが…………す……」

 びたり、と。
 執行人の鎌が動きを止める。
 視線は罪人(キリト)から傍聴人(イドラ)へ。
 身を灼くような魔力の奔流を感じ取り、やみのせんしは大魔導士へと向き合う。

「えんせ、い……の…………てっ、け……ん…………」

 酷く無防備で、酷く緩慢な詠唱。
 その気になれば一足飛びで詰められる距離。
 しかしやみのせんしは剣を下ろし、黙ってそれを見届ける。
 今は、イドラの〝ターン〟だから。


「────イフリート・ブロウ!!」

 
 炎熱の巨拳が飛来する。
 最期の輝きか、大魔導士の生涯最大の魔法。
 迫り来る眩光を前に、堕ちた勇者は回避でもだいぼうぎょでもなく。
 無抵抗で、それを受け入れた。

 膨大な熱がデザストを包み込む。
 爆発が彼を呑みこみ、影さえも喰らう。
 やがて爆煙が晴れた頃、所々に焼け跡を残した戦士の姿が顕となった。

「そうかい」

 黒煙を上げる戦士。
 そのダメージは、決して無視できるものでない。
 赤い複眼がイドラを捉える。
 発せられる殺気はもはや、死人に向けられるそれではなかった。

「俺はアンタを〝敵〟と認める」

 黒い風が吹く。
 断頭の役目を与えられたギロチンが首を断つ寸前、イドラはどこかやり切ったような微笑みを浮かべていた。


◾︎

101不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:52:15 ID:CiVh4nnE0


「…………は、ぁ……」

 イドラの遺体を前に、やみのせんしは深く息を吐く。
 彼女が放った〝意地〟は、強靭なデザストの鎧を貫通し想定以上のダメージをもたらした。
 その炎熱の凄まじさたるや、己のベギラマをも凌ぐであろう。

 今まで、ベギラマ以上の呪文など必要としなかった。
 彼の放つ中級呪文は、波の魔法使いが生涯をかけて習得する上級呪文を凌駕していたから。
 けれどイドラが見せた魔法は、それをも過去のものだと知らしめた。
 対抗するには、中級呪文(ベギラマ)では足りない。
 更なる強敵と戦うには、それ以上の呪文を────


 やみのせんしが慄くのも当然と言える。
 イドラの放った一撃は、令呪を上乗せしたものなのだから。
 アーヴォルン家の才覚と魔力を限界以上に引き出し、元勇者をも脅かす大魔法へ進化させた。
 これが如何に偉大なることなのか、イドラはきっと知らぬであろう。

 偉業だとか功績だとか、そんな些末なこと今となっては意味を成さない。
 イドラという大魔道士は他者の為に命を尽くした────たったこれだけのシンプルな理由なのだから。

「名前、聞きそびれちまったな」

 そんなイドラの遺志を汲んだのか。
 やみのせんしは気絶するキリトへ凶手を加えず、背を向け立ち去らんとする。

 と、その足は張り付いたように停止。
 返り血に濡れた仮面は、息も絶え絶えの不死鳥を映し出した。

「…………アンタも、か」

 ────英雄(ヒーロー)、アルカイザー。
 
 黄金の輝き纏いて、希望を翳す篝火。
 不滅の焔を背に生やし、命の尊さを説く善性の象徴。
 真っ直ぐに立ち上がり、闇と対峙するヒーローは静かに口を開いた。

「イドラ、は…………どうした」
「…………そうか、あの魔女はイドラって名前なのか」

 強敵だった、と。
 返した言葉はそれだけ。
 ただそれだけの短いやり取りで、アルカイザーは怒りの炎を燃やす。

「ゆる、さねぇ…………!!」
「はッ、ならどうするってんだ」
 
 ああ、けれど。
 無情にも身体は付いてきてくれない。
 前身することさえ、両足に纏わりつく鉛の如き枷が許さない。
 拳を振るうことも、剣を抜くことも。
 巨悪を前にして叶わぬなど、ヒーローと呼べるものか。

「────……俺、は…………」

 この正義の心はなんのためにある。
 アルカイザーの力を与えられたあの日、心に決めたはずだ。

 自己犠牲について、よく考えた。
 誰かに命を託すというのは、呪いに近い。
 遺された者は先立った者の意志を果たさんと、生涯に傷跡を残すこととなる。

 そんな生き方は望んでいない。
 けれど、死んで欲しくなんかないから。
 深い迷路のようなジレンマの中で、レッドは答えを出せなかった。

102不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:52:44 ID:CiVh4nnE0

「悪いな…………キリト、デク…………」

 そうして答えを出せぬまま、ここまで来た。
 なにが正しいのかとか、どうすれば誰も悲しまずに済むのかとか。
 そんな思考を幾ら重ねても、根底の考えは覆らない。

「やっぱりさ……俺には、これしか思い浮かばねぇや」

 ────ヒーローとは、人を救う者。

 アルカイザーの基底を織り成す心模様。
 小此木烈人というただの青年が、人々を導くヒーローへと成った導火線。
 これを否定することは、どうしても出来なかった。

「…………なにをするつもりだ?」

 やみのせんしの問いは空を切る。
 砕けた手甲の隙間から覗く赤い紋様が、渇きを満たすかのように赫々と煌めく。
 アルカイザーは残り一画の令呪を用いて、文字通りの不死鳥と化した。

 天高く昇る黄金の鳥。
 生命の源たる蛍火が、消滅を始めるアルカイザーへと引き寄せられる。
 戦場ということさえ忘れ、見入るほど美しく、力強い〝神秘〟がそこにあった。




「────ファイナルクルセイド」




 瞬間、輝きが爆ぜる。
 暴力的な爆発ではなく、花火のような華々しさを伴う光の清流。
 透き通るような白光の粒が霧雨のように発電所に降り注いだ。

「なん、だ……こりゃ…………」

 それを闇の戦士が触れようとしても。
 まるで拒むかのように踊り避け、彼だけが不死鳥の恩恵を受け入れられない。

 ならばこの光はなんのために。
 ちらりと視線を後方へとやれば、その謎が解けた。

103不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:53:13 ID:CiVh4nnE0

 満身創痍であったキリトの肉体は健康的な血色を取り戻し、夥しいほどの傷は時間を戻したかのように消え失せて。
 イドラの遺体も腹部に空いた風穴が塞がり、まるで死化粧を施したかのように綺麗な身体を取り戻した。
 傍へ添えられた首が繋がることはなかったが、せめてもの供養としては十二分だろう。

「…………なるほどな。アンタもイドラも、ヒーローの器だったってわけだ」

 無数の粒子となり消滅するアルカイザーの姿を見て、ようやく理解した。
 彼が命を賭して放った最期の輝きは、相手を討つためのものではない。
 他者を、仲間を救うための優しい技だったのだ。


 ────殺し合い。


 頭の中で、羂索の言葉が反響する。
 生き残るためには他者の命を奪う、というルールが参加者に与えられた道筋。
 その道理を、アルカイザーとイドラは真っ向から背いてみせた。

 本当の自由とは。
 本当の意志とは。
 本当の自我とは。

 ────彼らのようなことを言うのではないか。

「なんて、な」

 一瞬抱いたそれを、剣と共に振り払う。

「てめぇが今更、そんな道歩くんじゃねぇよ」

 自ら手放した勇者(ヒーロー)の矜恃。
 今更になってそれに焦がれるなど、外道も外道。
 殺戮を尽くした末に主催をも殺し、本当の自由を手に入れる。
 他ならぬ、確立された自分自身の意思で。
 それこそが、堕ちた勇者の生きる道。

 経験は積んだ、学びは大きい。
 特にベギラマ以上の魔法がある事と、連携を潰す戦略を得た事実は変え難い。

 万全なキリトは直に目を覚ますだろう。
 トドメを刺すことは容易だが、どうしてもそれをする気にはなれなかった。
 無抵抗の人間を斃したところで経験値にならないだとか、どうせ生き残れやしないだとか。
 理由をつけて彼を見逃そうとする自分を、見て見ぬふりをする。

 そうして発電所を後にしようと踏み出して。


「────ワン・フォー・オール、100%……」


 大地が震える。
 空気が泣き叫び、本能が危機を訴える。
 浮き立つ瓦礫の数々が、尋常ならざる気配の訪れを予感させる。

 咄嗟にだいぼうぎょを展開。
 如何なる衝撃が来ようと、ノーダメージへ抑え込む絶対の防御。
 同時に、緑色の残像が目にも止まらぬ速度で〝闇〟の元へと飛び込んだ。

104不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:53:45 ID:CiVh4nnE0




「────デトロイトスマァァァァァァッシュ!!!!」




 雲をも穿つ拳が、デザストの胸へ突き刺さる。
 核弾頭じみた爆撃はだいぼうぎょの鉄壁を持ってしても殺し切れず、数メートル後ずさらせた。
 風圧が大地を捲りあげ、破壊の痕跡をより凄惨なものへと作り替える。
 崩れた地面にギリギリと二条の溝を残し、ようやく止まった漆黒の闇。

 デザストの赤い瞳が翠風の正体を映す。
 ヒーロースーツを身に纏い、ファイティングポーズを取る希望の後継者。

 緑谷出久が、そこにいた。

「お前、は…………」

 デクは未だ、激痛に苛まれ意識を失っていた。
 しかし突如、柔らかな光が身体を包み込んだかと思えば────彼の肉体から痛みを取り去ったのだ。
 それこそが不死鳥の遺した輝き。
 ファイナルクルセイドの対象は、アルカイザーが味方と判別した者。
 それは当然、戦線から離脱していた緑谷出久も含まれる。
 
「答えろ……!」

 強く、強く。
 握られた拳に呼応し、絞り出された低声。
 辺りに広がる惨状がデクへと現実を突きつける。
 首を失ったイドラの遺体と、支給品を遺し消滅したアルカイザー。
 そして力なく倒れ伏すキリトを見て、デクの心に怒りの火が注がれた。


「みんなに、なにをした……っ!!」


 身を叩くような凄まじい威圧感。
 はち切れんばかりの哀しみと憤りが彼に潜む〝鬼〟を顕現させる。
 悪を許さぬ断罪の拳が、目の前の敵を討てと轟き震える。

105不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:54:16 ID:CiVh4nnE0

「殺してやったよ」

 その一言が、デクを駆動させる。
 発勁を駆使し、スポーツカー顔負けの速度で肉薄。
 肉体への負担など顧みず、延髄へと回し蹴りを放つもそれは破壊の剣で受け止められる。
 制限下、エナジーアイテムの強化が無いという条件を鑑みてもデクの蹴りを凌ぐ身体能力と反射神経は驚異の一言。
 もう片方の足で追撃を加えんとするデクを一振りで引き剥がし、四歩分の距離を取る。

「次は俺の質問に答えろ。……お前、デクだろ?」
「どうして僕の名前を……いや、そんなことはどうでもいい…………!」
 
 もはや些末な動揺は彼を止めるに至らない。
 ギギストとの情報交換で得たデクの特徴と一致したことから言い当てたやみのせんし。
 戦闘続行の兆しは、彼の次なる一言に遮られる。

「ステインは俺が殺した」
「っ…………!?」
 
 やみのせんし自身、それを告げたのは半ば無意識下によるものだった。
 けれど目の前の〝敵〟には、それを知らせなければならないと思ったから。
 オールマイトを除き、ステインが唯一認めた〝本物〟を前にして。
 ヒーロー殺しを殺したものとして、対峙しなければならないと確信したから。

「お前は、一体……っ!」

 対峙する正義の味方は。
 かつて己を苦しめ、この地においても脅威となるであろうステインを斃した無名の敵(ヴィラン)へ。
 言葉では救えぬと理解しながらも、喉を枯らす。

「一体、何者なんだッ!」

 それを聞いて、悪の権化は。
 たしかに、と思う。
 自分が何者かと問われて、初めてそれを考える。

 アレフという名は、勇者だけが名乗ることを許される。
 勇ましき父が、心優しき母が。民を救える者になりますようにと付けてくれた名だから。
 それを担うのは、もう一人の自分だけでいい。

 勇者でもなく、英雄でもなく。
 過去をリセットした、一介の戦士。
 光を拒み拒まれ、闇を歩む無名の素姓(オリジン)。

 それに、名を付けるのであれば。


「────やみのせんし、ってとこかな」


 さぁ、始めよう。
 矜恃と自我の衝突を。
 互いの正しさのぶつけ合いを。
 正義だ悪だなんて綺麗な言葉で着飾って、やることは結局相手を下す戦い。

 それでいい。
 酷くありふれた活劇でいい。
 鼻で嘲笑ってしまうようなヒーローショーは、下手な語らいの万倍も意味を持つのだから。


 時刻は午前11時10分。
 放送まで残りわずか。

 遺された者が行き着く先は、果たして。
 
 

 
 

【イドラ・アーヴォルン@戦隊レッド 異世界で冒険者になる 死亡】
【レッド@SaGa Frontier(サガフロンティア) 消滅】

106不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:54:38 ID:CiVh4nnE0



 
 

【エリアE-8/発電所/9月2日午前11時10分】
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、MP消費(大)、『忍者』『刀使』に興味(小)、決意、デザストに変身中
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー、ジョーカーのラウズカード@仮面ライダー剣
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。
0:デクに勝つ。
1:二度と迷わない。方針は変わらない。だが使えるものは使い、ギギストの云うエターナルや魔王グリオン、ルルーシュのような、俺の掲げた『自由』を奪う力を持つ連中相手なら──
2:過去との決別を証明するため、アスラン・ザラは次会った時に殺す。そしていずれはギギストも。
3:蛇喰病院を目指し、拠点に構える。
4:もう一人の俺(アレフ)についてはどうするか。
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
6:エトウカナミ……だったか。次にあのシビトやクロガネスパナ、ついでにあのドラゴン(ジゴワット)、それにキラ・ヤマトとやらを見つけたらその時は終わらせてやる。
7:俺自身の自由の為に、願いを叶えた後主催者共も殺す。特にケンジャクは。
8:ライダーの力については過信しない。不覚を取るのはゴメンだ。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。
※冥黒王ギギストにより力を付与され更に全ステータスが向上しています。
※シビトと化した衛藤可奈美の剣術を一通り視ました。再現可能かは後続にお任せします。
※数々の戦闘を経て以下の特技、呪文を習得しました。
・しっぷうづき、はやぶさ斬り、いなずま斬り、だいぼうぎょ
・バイキルト

【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト】
状態:健康、決意
服装:デクのヒーロースーツ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト
装備:同上
令呪:残り三画
道具:デクのランダムアイテム×1〜2、ホットライン、将来の為のヒーロー分析ノート(現地調達)、筆記用具(現地調達)、軽井沢恵のランダム支給品×1、失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ゼロワン、電王)、裁断済みのゼインカード(ストロンガー、アバドン)
思考
基本:羂索らこのゲームを仕掛けた一味を逮捕する。
0:闇の戦士を倒す。
1:成見さん、イドラさん、アルカイザー……。
2:キリトと行動する。切島君やキリトやイドラさんの仲間との合流を目指す。
3:イドラさんたちから得られた情報も元に考察を進めたい。
4:ギギストやステイン、ダークマイト、グリオンに翼竜のヴィラン(冥黒ノノミ)、そしてノワル達は要警戒
参戦時期:映画終了直後
備考
※“ワン・フォー・オール”は制限されているがエナジーアイテムや“発頸”を活用すれば瞬間最大威力でなら100%を発揮できるようです。
ただ500%ともなると相応の『反動』を受けてしまいます。

【キリト@ソードアート・オンライン】
状態:気絶、ALOアバター、疲労(大)
服装:いつもの服装
装備:シャドーセイバー(長)@仮面ライダーBKACK RX、デュエルガンダム(核動力型)の起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ホットライン、シャドーセイバー(短)@仮面ライダーBKACK RX
思考
基本:このゲームを攻略する。
0:────。
1:態々俺に一対の剣を支給するってことは、間違いなく羂索の言ってた茅場は茅場晶彦だろう。今回で完全に決着をつけてやる。
2:デクたちと共にクルーゼや羂索、仮面ライダーを知る者たちを探す。
3:アスナたちやデクたちの仲間、ガッチャードなどの協力できそうな者を探す。
4:PoHやギギストにダークマイトだけでも厄介なのにグリオンにノワルにアルジュナ・オルタ……休む暇なしかもな。
5:ごめん、間に合わなかった……。
6:この短剣、もう投げるのはやめとこう。
  なんか毎回敵に拾われる。
参戦時期:少なくともマザーズロザリオ編終了後
備考
※アバターはALOの物です。

107不死鳥のフランメ ◆NYzTZnBoCI:2025/04/29(火) 19:54:49 ID:CiVh4nnE0
投下終了です。

108 ◆8eumUP9W6s:2025/05/02(金) 00:08:52 ID:zJJEVmfo0
ユージオ、マーヤ・ディゼル、井ノ上たきな、星野瑠美衣、望月穂波、レジィ・スター、リーファ、キラ・ヤマト(SEED)、鬼龍院羅暁、キラ・ヤマト准将、一之瀬帆波で予約&延長をします。

109 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/10(土) 12:03:29 ID:BNh9hYI60
投下します。
予約は前スレでしていました。

110 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/10(土) 12:04:51 ID:BNh9hYI60
「よーい、アクション!」

視界がセピア色に上塗りされ、端にはカメラフィルムのようなエフェクトがちらつく。
かれこれ少なくとも二時間近くこの『茶番』に付き合わされてくるといい加減うんざりしてくる。

「あれ、戻った?
って……すごい格好ね」

マーシャに言われて自分の姿を見ると、ゼロことシャーリーの服装はゼロのマスクをそのままに首から下はマーシャと同じ制服になっている。

「その仮面の下が見れないのがいろいろな意味で残念だね」

そう本心とも冗談ともつかないことを言うマクギリスの服装はいかにも現代日本の教師と言った感じの青いジャージ姿になっている。

「さあ、謎の仮面転校生ゼロとイケメン教師マクギリスに生徒会のマドンナ、九条マーシャの三角ラブコメのはじまりだ!」

「その割には不良の数が多すぎるだろう……」

C-2を出発して過多一時間たったころ、つまり二時間前から自分たちを作品に閉じ込め、そのロールを強制させるデーボモンスター、デーボ・カントックの術中にはまってしまった3人はこうして無為に時間を消費していた。

「最初は戦争物、次は宮廷物ときて今度は学園物か……」

「ごめんなさい、多分私だわ。
こんなことやってる暇ない、元居た場所に帰らなきゃいけないって思ったから、そこからの連想で……」

「仕方のない感情だ。
映画と聞いて脊髄反射で戦争物や宮廷物を思い浮かべてしまった我々などに比べれば非などあるはずもない」

完全に余談だが前者はゼロとマクギリスが歩兵、マーシャが看護兵の格好、後者はゼロとマクギリスはそのままでマーシャだけ桜色のマーメイドドレスになっていた。

「では出席を取る」

マクギリスは教卓に着き、出席簿を開く。
三度目ともなれば下手に流れに逆らうと戦闘にすらこぎつけないことは理解できている。

「二代目ゼロさん」

「……はい」

「九条マーシャさん」

「は〜い」

「グレイスリッター君」

「……」

「グロースター君」

「……」

女子高生二人に続いて申し訳程度に頭にリーゼントのような装飾の追加されたMSやKMFに学ランを羽織ったゾーリ魔や質の名前を呼んでいく。

「では、授業を」

「やい先公!」

言葉をしゃべれるNPCモンスターの内一体がテーブルに足をのせて怒鳴る。
次の瞬間、そのNPCモンスターの頭はスラッシュハーケンで吹き飛ばされた。

「え?」

「貴様は今この教室の秩序を乱した……よって『教育的指導』だよ!
今からこれは体罰教師が無双するノンストップバイオレンス映画『教師の体罰』に変更だ!」

「なるほど、相手の土俵に付き合うのではなく物語その物を書き換えてしまう訳か」

「感心している場合じゃないわよ!
速く逃げないと!」

マーシャに手を引かれてゼロは外に連れ出される。
次の瞬間教室から機体を粉砕する音と、骨格割れる音が響く。
脇目も振らず逃げた先は体育館裏の自販機コーナーだった。

「……ここまでくれば大丈夫かしら?」

「迷いなく来た様に見えたが、君の通う学園なのか?」

「……ええ。見て」

マーシャが指差す先には美しい銀髪を伸ばした少女が整った顔立ちの少年と親しげに話している。

「私の強いイメージなんだと思う。
妹のアーリャちゃんと、久世政近くん」

「……確か、妹の方は呼ばれているんだったな」

「うん……無事に会えたら、紹介するわね!」

そう言って明るく笑うマーシャだが、画面越しにも影が見てとれた。

「あれ、服が……」

マーシャの声に視線を自分の首から下に向けると、確かに服が元に戻っている。

「どうやらマクギリスがやってくれたようだな」

偽りの学園校舎も光になって解け、元の不浄なる殺し合いの会場が姿を現した。
少し見渡せば残骸の上に立つ紅蓮聖天八極式が見つけられた。

111 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/10(土) 12:05:29 ID:BNh9hYI60
「とんだロスタイム……とも言えない様だね。
どうやら我々は映画に巻き込まれながらも前身は出来ていたようだ」

パワードスーツを解除したマクギリスがホットラインの画面を指さす。
ゼロたちの一はレストランタイガーボーイがあるエリアであると示していた。

「あのへんな映画の世界の中って、ちゃんと移動出来てたのね」

「ある意味、奴ら以外の相手をせずに済んだ訳か」

時刻は午前9時30分。
変身は出来るとはいえ、戦闘はズブの素人のマーシャを前にするわけにはいかないのでマクギリス、マーシャ、ゼロの順番で進んでいく。
それから20分ほど歩くとタイガーボーイに辿り着いた。

「遅かったのかしら?」

三人を迎えたのは美味そうな料理の香などではなく血の臭いだった。
つい先程闇檻の魔女に殺された老剣客、秋山小兵衛から放たれる臭いだ。

「ここは私が」

「いいえ、私もやるわ。
きっとこの先、向き合わなければいけないことだから」

一歩前に出るマーシャ。
3回ほど深呼吸をしてから血溜まりに沈む侍に触れる。
まだ体温は残っているが、鼓動も呼吸も止まった死体だ。
放っておけば萎み、腐り、朽ちていくことだろう。

「……ッ」

「無理はしないで良い」

ゼロに肩を掴まれて下がったマーシャ。
代わって裏から店に入り、バックヤードからテーブルクロスを何枚か持って来たマクギリスが紅蓮を装着してから秋山の肉体を包む。

「まて」

「どうした二代目?
何か用なら流石にそろそろマーシャがきつそうだから彼を弔った後にしたいのだが……」

「その死体、何かがおかしい」

ゼロはマーシャに入口の見張りも兼ねて休んで入りうように伝えると、マクギリスが抱え上げた死体を検める。

「やはりおかしい……」

「何がかな?
私にはどうみても致命傷を負っている老人の死体にしか見えないが」

「傷口と服がきれいすぎる。
何か高熱で焼き切ったなら炭化していたり服が焦げていたりするはずだ。
強引に物理的な力だけで貫いたならもっと血が派手に飛び散って服にももっと皴が出来ていなければおかしい」

「言われてみるとそうだな……ルルーシュの洗脳能力のようになにか特殊な能力によるものか?」

「かも知れない。
詳しく調べたいがこの遺体だけでは何とも言えないな」

今まで変なNPCモンスターに絡まれたあけだったが、どうやら不可解な力を行使するプレイヤーにも十分な警戒が必要であると感じる二人だった。

「後は輻射波動で穴を掘れる私がやろう。
君たちも外で待っていてくれ」

マクギリスが気を利かせて店から遠ざかる。
ゼロはマーシャと共に血だまりを避けて店の中に向かった。

112 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/10(土) 12:05:50 ID:BNh9hYI60
【エリアB-3/レストランタイガーボーイ/9月2日午前10時】

【ゼロ(シャーリー)@ コードギアスGenesic Re;CODE】
状態:通常
服装:ゼロの服
装備:パトリオット@メタルギアソリッドシリーズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いを止める
01:マーシャを休ませる。
02:強者による弱者の蹂躙は……私が、ゼロが裁く!
03:ルル……でも、あなたは違う。
  だから……私は私のやり方を選ぶわ
04:マクギリスさん、アナタは味方……でもあなたの理想の世界はどんな世界?
05:物理現象ってことはこの人(秋山)を殺すのに使われた力はギアスじゃない……警戒しないと。
参戦時期:「そして、話し合いのテーブルへ」後から参戦
備考
※情報交換をしました(ロシデレ、鉄血)
※この会場に居るルルーシュは自分の知る彼とは別人だと理解しました。

【マリヤ・ミハイロヴナ・九条@ 時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん】
状態:通常、動揺(中)
服装:制服
装備:ハロ(桃色):SEED@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ  
クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:生き残る
01:しばらく休む。
02:ゼロと出会えたことは幸運だったわ
03:色々な世界があるのね
04:異能力持ちが普通に居るのは脅威ね
05:アーリャちゃん……お願い、アーリャちゃんを見守ってさーくん
06:やっぱり、実際目にするときついわ……
参戦時期:7巻体育祭後
備考
※情報交換をしました(ギアス、鉄血)
※ゼロが女性であることを知りましたが、自分から他の参加者に話す気はありません。

【マクギリス・ファリド@ 機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ】
状態:通常
服装:ギャラルホルンの制服
装備:紅蓮聖天八極式の起動鍵@ コードギアス 反逆のルルーシュR2
   ブレッシング@ブルーアーカイブ
   陽竜刀@ソードアートオンラインシリーズ
   秋山の死体(テーブルクロスにくるまれている)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:自身の正義を成す
01:蘇ったのだ、これは私に今度こそ成すべきを成せという世界の意思だろう
02:私をわざわざ参加させたのだ、このゲームにはバエルが用意されているだろう。ならば、手に入れなければ
03:借り物の力など不要だ。私の自由は、バエルと純粋な力によってのみ成立する……
  それが正しいはずだ
04:彼女らとはこのまま協力していきたい
05:未知の力か。警戒はすべきだな
06:適当な場所ですまないが、この老人を弔う。
参戦時期:死亡後から参戦
備考
※情報交換をしました(ギアス、ロシデレ)
※ゼロが女性だと気付きました。

113 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/10(土) 12:06:14 ID:BNh9hYI60
投下終了です。
タイトルは へぼ監督のやっつけ映画 です

114 ◆TruULbUYro:2025/05/14(水) 00:00:29 ID:zdRCbm9A0
メラ、バルバトス・ゲーティア予約させていただきます

115 ◆kLJfcedqlU:2025/05/14(水) 00:04:25 ID:QmMetxRc0
マイ=ラッセルハート、覇世川左虎、アスナ、ノワル、烏天狗(意思持ち支給品)、死告邪眼のザラサリキエル 
以上で予約し同時に延長させていただきます

116 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/14(水) 21:34:47 ID:ptpz3USA0
ゲリラ投下します。

117 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/14(水) 21:38:42 ID:ptpz3USA0
グラファイトにとってNPCモンスターとの戦闘など退屈でしかなかった。
遊城十代と別れて一時間と三十分。
移動しながら戦い続けても己の渇きを満たす相手には出会えない。
バルバトスのように強いだけで手段を選ばない輩は駄目だ。
一対一でなくとも良いないが、グラファイトに敵として対峙し、クリアするという確固たる意志を持つ者でなくてはならない。
動機などなんでも構わない。
過去を清算するためでも、未来に進むためでもなんでもいい。
グラファイトにとってはいつだって目の前の、今この瞬間の神聖なる戦いこそが生きる意味であり誇りである。
回りくどい謀略や卑怯な手段など無粋の極み。

『戦士として最高の戦いをすること』

それこそがグラファイトの源(オリジン)なのだ。
そんな彼だから、歌を届けることを戦いとするラクス・クラインたちにあまり良い感情は抱かなかった。

(いくら人間のセーブデータを持っていても、分からんものは分からんな)

自分の元になったのは仮面ライダーブレイブの恋人だった女性の筈なのに不思議なものだ。
と、柄にもないことを考えながらケヤキモールから遠ざかるグラファイト。
交戦の意志がないと分かっていたからか、それともそもそも気付いていなかったのか完璧に気付いている様子の無かった学生服の女(東ゆう)以外は分からないが戦う気がないなら、グラファイトを敵としてみていないのならば出会う必要すら感じず去ることにしたのだ。
一瞬だけ殺して関係者と因縁をつくるか?
という考えも無くはなかったが、先に出会った十代のように全員が全員本領を発揮するための装備を渡されている訳でもなさそうだ。
それに怒りで我を忘れた上に成れない武装で突っ込んでくる愚を犯す連中と無駄に争う羽目になるかもしれないと考え辞めた。

(あまり順調とは言い難いスタートだが、全く分からないことだらけということもない)

幾度かNPCモンスターと交戦して気付いたことだが、やつらには少しばかりバグスター怪人に似ているということだ。
ヒューマンタイプを始めとした生物型は斬れば血が出るし、KMFやMSといった機械型は倒せば部品をバラまき沈黙する。
が、どの個体も確かにバグスターウイルスを持っているのだ。

(俺やパラドにも枷として通用する状態である以上、完全態か人間の要素を持つバグスターにも感染するものであるのは間違いない。
それをピンポイントで抑制しているのか、ゲームバランス調整の為に俺たちの力ごと抑制する形で使っているのか知らないがレジスターに鎮静剤が入っていて問題ないのも理解できる)

ここまではグラファイトも納得できる。
同時に彼自身は知らないことだが、エグゼイドたちCRの仮面ライダーたちはジョニー・マキシマという男が仮面ライダー風魔を操り起こした事件にてバグスターであるポッピーピポパポにも感染する新型ウイルスが使われているので技術的にも矛盾はない。
だが分離したバグスター怪人がゲームではなく宿主の記憶を基にした姿と行動を取るようになるバグスターウイルスなどありえるのだろうか?
それではまるで……

(仮面ライダークロノス……より正確に言えば仮面ライダークロニクルのGM権限による消滅した人間の復活。
まさかとは思っていたか、このバトルロワイヤルは仮面ライダークロニクルをベースにしているのか?)

118 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/14(水) 21:44:07 ID:ptpz3USA0
「気づいちゃった?」

その声に顔を上げたグラファイトの目に飛び込んで来たのは元居た場所ではなく、地下の納骨塔を思わせる様なほの暗い地下空間だった。

「ようこそ、『機士の聖域』へ」

その真ん中にたたずむパワードスーツ……ガンダム・シュバルゼッテからぺら紙一枚よりも軽薄に聞こえて仕方ない男の声が聞こえる。

「ステージセレクトを応用した空間転移か……貴様、運営側の上級NPCだな?」

「ご明察!
俺は最強のNPCモンスター、冥黒の五道化が一騎、凶星病理のコルファウスメット。
よろしくね、龍戦士殿」

「……」

「怖いなー、睨むなよ。
これでも誰よりも早く真相の一端に辿り着いたアンタを称えてるつもりなんだけど?」

と、やる気のない拍手を起こるコルファウスメット。
ガンダムフェイスのせいで表情は見えないが、きっとエケラレンキスとは種類の違う嫌な笑顔が張り付いていることだろう。

「ただ称えるだけなら別に画面越しでも構わなかっただろう。口封じか?」

「アンタの性格上、エグゼイドの出がらしぐらいにしか喋らなそうだし、ここで確約してくれたらすぐに返してあげるよ」

「そうか」

グラファイトはバグヴァイザーのスイッチを押す。

「あれ?なんでやる気?」

「貴様がパラドやエグゼイドを語るな……培養!」

「良いねそうこなくちゃ!」

多目的攻防プラットフォームガーディアンとグレングラファイトファングがぶつかり合う。
基礎攻撃能力は総合で互角と言ったところだろう。

「激怒竜牙!」

最初期形態であるグラファイトバグスターの頃から使える赤刃の斬撃の構えを取るグラファイト。
小手調べのつもりなら真正面から粉砕してやろうとコルファウスメットは迷わず劣化複製権能を使う。

「魔進戦隊(キラメイジン)……キラメイダイナミック!」

ガーディアンの刀身が宝石のような輝きを帯びる。
放たれた山をも断ち割る斬撃を真正面から受けるのは不可能ととっさに判断したグラファイトは武器で攻撃を受け流そうとする。
しかしそれでも勢いは止まらず武器に執着しては負けると判断して手放した。
壁に当たるより早く斬撃波が霧散し、キラキラと中空で粒子が舞った。

「流石はGM肝入りの強ボス……制限付きでこの性能とはな」

「当然だろう?俺は宇蟲王を殺す為に錬金された五道化。
獣電戦隊と王様戦隊に敗れたアイツを確殺するべく全てのユニバースロボの力を……地球の平和と世界中の笑顔を守り続けて来た力全てを与えられている!」

「宇蟲王相手以外にはフルスペックを出せないようだがな」

さっきの斬撃が途中で消えたのは周りを傷付けない為ではなく持続時間が切れたからなのではないか?
もしもと思って鎌をかけてみると、コルファウスメットだるそうに肩を落とす。

「ちぇっ……せいかーい。
クルーゼ様からお前ちょっと突いとけって言われたから遊んだけど、やっぱゲムデウスに適合した龍戦士殿は慧眼だね。
で、結局どうするの?
俺のこと含めて色々誰かに喋っちゃったりするわけ?」

「ゲームの攻略法は自分で考える物だ。
勝者への報酬にすることはあっても、ぺらぺら喋ったりはしない」

「是非そのスタンスを貫いてよね。
ま、リキエルにしてもレンキスにしても多少手の内バレた程度で倒せる軟な五道化じゃないけどね。
あの鎧は知らないけど」

「人に釘をさす割に自分の口は緩いな」

「言っただろ?多少手の内バレた程度で倒せるほど軟じゃないんだよ」

そう言った彼に満身の類は見られない。
純然たる事実として告げている。

「精々、本気の勝負を楽しみにさせてもらう」

シュバルゼッテが器用にフィンガースナップをするとグラファイトはステージのどこかに飛ばされた。
残ったコルファウスメットはこきっと首を鳴らすとパワードスーツを解除する。

「さて、次の出番はいつかな?」

そう言って子供のような笑みを浮かべた。

119 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/14(水) 21:44:21 ID:ptpz3USA0
【エリアD-7/テレビ局地下 『機士の聖域』/9月2日午前9時15分】

【凶星病理のコルファウスメット】
状態:疲労(極小)
■■:???@???
装備:黒いローブ、ガンダム・シュバルゼッテの起動鍵@機動戦士ガンダム水星の魔女
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:???
基本:この場所(テレビ局地下 『機士の聖域』)を守護する。
01:グラファイトに釘は刺したけど、実際どうなるかな
02:さーて、次の出番はいつだろう?
03:リキエルとレンキスは何してんのかな
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※データストームの完全耐性を得ておりGUND-ARMのフルスペックを遺憾なく発揮できます。
※歴代ユニバースロボ@スーパー戦隊シリーズの能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。
ただし宇蟲王ギラ以外を相手に使うと技の持続時間や射程が短くなってしまうようです。



【エリア?-?/???/9月2日午前9時15分】

【グラファイト@仮面ライダーエグゼイド】
状態:正常、アリサと十代への期待(中)、伏黒甚爾への期待(大)
怪人態(レベルオーバー)、バルバトスへの怒り(特大)
運営、及びその傀儡への警戒(大)、疲労(小)
服装:いつもの服装(人間態時)
装備:ガシャコンバグヴァイザー@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
   八神のリュック(ランダム×0〜2)
思考
基本:敵キャラとして戦う。
00:神聖なる戦場に立つ資格のない者たちは排除する。
01:この俺に敵キャラを全うさせてくれる戦士を探す。
02:女(アリサ)、遊城十代、お前たちの眼は戦士の眼だ。
   次に会う時は敵として立ちはだかってくれること期待する。
03:伏黒、そして十代とは次会う時に決着をつける。
04:奴(バルバトス)は今度会ったら必ず倒す。
05:GM肝入りの強ボス……冥黒の五道化か。
06:答え合わせの出来た事実を報酬にして誰かと戦うのもいいかもしれない。
参戦時期:ゲムデウスウイルスに適合した後
備考
※リュックの中に別のリュックを収納することも可能なようです。



【全体備考】
※NPCモンスターは一部例外を除きこのバトルロワイヤルの為に
※テレビ局地下に『機士の聖域』があります。
 破壊されそうになると運営からの介入があるかもしれません。

120 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/14(水) 21:44:49 ID:ptpz3USA0
投下終了です。
タイトルは『最後 の 五道化』です

121 ◆s5tC4j7VZY:2025/05/15(木) 05:43:19 ID:QAyGyIvE0
皆さま、投下お疲れ様です!
東ゆう、ラクス・クライン、ディーヴァ、遊城十代で予約します。

122 ◆TruULbUYro:2025/05/21(水) 19:53:50 ID:nUoVjSrs0
延長させていただきます

123 ◆s5tC4j7VZY:2025/05/22(木) 06:52:05 ID:6VMqMpHc0
すみません。延長いたします。

124 ◆8eumUP9W6s:2025/05/22(木) 23:59:19 ID:q3dp15jo0
投下します。

125 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:05:05 ID:r72Fawog0
『何が違う!何故違う!?
この憎しみの目と心と!引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界で、何を信じる!何故信じる!』

『私を止めても、憎悪の根は絶えない。
私が倒れても、憎しみは世界に残り続ける… プラントにも…地球にも…。
そしてそれは、新たな戦いを呼ぶ…貴様に、そしてラクス・クラインに、覚悟はあるのか?
そう遠くないうちに、第二、第三の私が生まれる。
その時、貴様達は次も、その次も、同じことを繰り返すのか?』

……浮かぶはかつてこの手で殺した人達の声と言葉。
ナチュラルとコーディネイター、2つの種の絶滅戦争を止めて…それでもなお、憎悪の連鎖は消えなかった。何度だって止めると決めていたけど……何度倒しても、殺して…しまっても、終わりは何処にも見えない。
そしてこの殺し合いでも……憎しみに突き動かされた偽物のアスランも、彼女の事も…止めきれなかった。

……わかっていたことではあったけど、それでも…今となってはなんて、虚しいんだろう。
そう思ってしまったのと同時に、何かが凍り付いた音がして──五感全てが機能しなくなったと同時に、僕は僕じゃないナニカの中に閉じ込められた。

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今回の舞台はエリアG-12、時は午前7時45分。ゼロツーに変身を果たしているユージオとギーツに変身したたきなは、望月穂波が変身するファムへ対応していた。

戦いたくないという想いと死にたくないという恐怖の狭間で迷った果て、穂波の胸中で勝るは死への恐怖。
しかもそれだけでなく、迂闊にレジィに声をかけた際彼女は少女(リーファ)が診療所に居る事も話し助けを求めてしまった。故に言う通りに動かねば自分だけでなく彼女の命も危ないだろうという思考が決め手である。実質的にリーファは望月穂波を縛る人質として機能していた。
…仮に自分がこの場で助かったとしてリーファがレジィにより始末されてしまえば、逃がしてくれた学郎にどう顔向けすればいいのか。それもあって、無力感と自責の念を抱きながらも振り払えず…だからといって殺したくない為手を抜き戦おうとした…のだが。
がむしゃらにレイピアを振るうファムだったが、ロクに当てる事も出来ずにいた。

126 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:07:48 ID:r72Fawog0
ギーツは的確に回避しつつマグナムバックル由来の装備マグナムシューター40Xでファムを銃撃。ゼロツーはケミーライザーとパイレッツのケミーカードにより造り出した海賊刀を用いレイピアを何度も切り払ってみせる。
ソードベントを使い薙刀・ウイングスラッシャーを取り出しそちらを振るってはみるものの、リーチの違いもあり振り回すには慣れれずにいた。
…端的に言って、現在の戦況は穂波にとって不利もいい所である。
しかも仮に殺す気でやったとして、それでも彼女と2人には越えられない差が存在していた。

仮面ライダーへの変身・戦闘経験か?否。変身した上での戦闘が初なのはユージオやたきなとて同じ。
その上で差を分けるは…生身での戦闘経験に生きるか死ぬかの修羅場をくぐり抜けてきた回数。
そんな経験など皆無な現代世界で生きてきた穂波に対し、優秀なリコリスとして数々の任務につき修羅場にも慣れているたきなに、キリトと共に2人で元老院や最高司祭、それに従う整合騎士達に歯向かったユージオでは素のスペックも心構えも数段以上の差があった。

(…このまま負けて、全部話して助けを…でもそれじゃ、あの子が殺されてしまう…!)

自分ひとりなら選べた選択肢は、人質により塞がれている。
故に出来るのは、助けれる可能性にかけて戦闘を続行する事のみ。
ガードベントのカードを使い、ファムは視界を撹乱しにかかった。

(あの仮面ライダー、襲っては来たけど…殺意を感じられない…)
(『止むを得ず、戦いを強いられている可能性もありえます』)
(…だとしたら人質を取られてる、辺りかな。急いだ方がいいかもしれない)

(…私もそこまで詳しい訳じゃないけれど、ユージオと比べると剣の振り方が…明らかに素人のそれに見える。
…単なる悪人と言う訳でも…なさそうですが)

127 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:10:53 ID:r72Fawog0
一方、対峙した2人はかたや殺意の無さから、かたや素人くさい動きから目前の相手に事情があるのだと悟りつつ対処を続ける。
ガードベントにより撒き散らされた羽根を払いのけ、攻撃も避けて行く……そんな最中だった。

花火が打ち上がり、少し遅れてホイッスルの音が鳴り響いたのは。

----

(2人とも、初めての変身…なんだよね?なのに使いこなせてるように見える…やっぱり出来るようになった方がいいよね、殺陣(タテ)も)
「…2人に比べるとあの相手は…どこか慣れてない、って感じがするような」
「嫌々やってるように見えるね。何処かに隠れて、こっちの様子を窺っててもおかしくはないけど……っ、瑠美衣、花火を…NPCが来た!」

そう内心思考しつつマーヤと話し周囲を警戒していた瑠美衣だったが、言われて咄嗟に使用する。
そして起動鍵を展開(フレイヤ弾頭付きなのは伏せてコンクエスターの起動鍵があったと開示している)し目前に迫った矢を避けた。
マーヤもまた、ランスロット・アルビオンの起動鍵を用いスーパーヴァリスを構える。

「マーヤ、あのロボット…でいいのかな、見覚えある?」
「あんな物、見たことは無いけど…とりあえずKMFじゃない事はわかる」

2人の目前に現れたNPCは別の形態へ変形を遂げる。…もしここにキズナレッドやブラックが居れば反応していたかもしれない、彼ら2人はこの機体に…神話型アクエリオンにかつて一度助けられているのだから。

128 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:15:22 ID:r72Fawog0
----

「素人の割には…いや、相手が手を抜いてるせいだね」
(性能の底上げにはなるようだが…仮面ライダーはその中身に左右される点も多いといった感じか。
あの2人…俺が見るにどちらも伏黒恵のように、必要なら殺せるタイプだ)

双眼鏡を用い戦況を視る呪術師レジィ・スター。
思考を進めながらも、ここでラッパラッターを使いファラクトの起動鍵を行使。
NPCを含む他者がこちらに接近した場合と戦況が不利に…例えば穂波が敗北した場合等に暗殺・奇襲をさせる為配置しておく。

(「本命」は切ったが、手駒には困ってない以上、残りの2人にも仕向けるべきか…?)

リュックにある3つの起動鍵を一瞥し考えたものの、確認と人質への対応の為また1つ切る事になるのを考慮し取り止めるレジィ。ドローンを再び再契象で具現化しようかとも考えたが、先のように破壊される可能性も考えこの局面ではこれまた取り止めた。
そしてそう距離が離れてないのもあって、予め把握していた抜け道を用いて穂波が言っていた診療所へと向かい…寝かされている金髪の少女を見つける。
支給品の確認と、改めて人質として運用する為に手駒を配置するためだ。

「…2つだけしか無いのか。察するにこの傷を負った戦いで落とした…辺りだろうね」
(…手駒は置くとはいえ、人質なのにあっさりと殺されたら全部がパーだ。かたやデメリット持ちの武器……もう片方も、くすねるのはやめておくか)

129 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:17:20 ID:r72Fawog0
確認した上で、リュックの中にあった妖刀・ザンバットソードともうひとつの支給品をそのままにしておくとしたレジィ。推測通り陰鉄は鬼龍院羅暁への抵抗の中で何処かへと吹っ飛ばされてしまっていたがそれを知ることは無く。
その上で起きられると面倒だと少し離れた後、残りの3つの手駒の内どれを手元に置くべきかと思案していた…その時だった。

(…危ないな。銀色の動く金属…呪霊以外の、NPCって所かな?)

自らめがけて突進して来たNPC、ELSを躱すレジィ。しかし相手は彼の目前で姿を変えていく。

「コイツも、ファラクトやコイツと同じMSって奴か?
…あのお嬢ちゃんが殺されても困る以上は…切るしかねえか、この場じゃ」

その姿はリボーンズガンダム…この殺し合いに巻き込まれているリボンズ・アルマークの愛機へと変わり、次の瞬間手に形成したGNバスターライフルを放った。
躱しつつも、ここで再びラッパラッターを用い…起動鍵を装填。召喚しつつも穂波への合図としてホイッスルを吹き鳴らしておく。
…傀儡として現れたのは…同じガンダムの名を冠する、しかし違う世界のMS…マイティストライクフリーダムガンダムの姿だった。
リボーンズがフィンファングを使うと同時に、愛無き傀儡は雷を放ち射撃ビームを無力化。
こうして…ここでも戦端は切られた。

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花火に反応を見せたユージオとたきなに、ホイッスルに反応した穂波。

130 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:20:28 ID:r72Fawog0
(奇襲を受けた!?…罠だったのか…?)
(『第三者が介入した可能性もあり得ます』)
(ホイッスルの音に…?)

仲間の安否が気がかりとなるユージオと冷静に可能性を提示するゼア、穂波が反応したホイッスルの音が気がかりとなったたきな。一方穂波は考える。
ホイッスルがまたもや鳴ったということは、レジィ側に想定外の事態が起きたという事。

(あの子の方に行ってるのなら、人質として考えてる以上守ろうとする筈…伝えるならきっと、今しかない。
…でも、打ち上がった花火からして…2人にも多分なにかが……)

別行動していた仲間が襲撃を受けたんじゃ?と思考が浮かび…即座に助けを求める事は出来ず躊躇ってしまう。
仮にそうなら敵意が無い事を示すには、協力を申し出るのが一番いい。だが下手をすれば造反とみなされリーファが殺される…しかし間違いなくチャンスでもあるのだ。

131 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:21:37 ID:r72Fawog0
(…わたしは……わたしは、あの子を助けたい。死にたくはないけど…死なせたくもない……事情、だけでも……!)
「…あの……ッ!?」
「危ないっ!」

迷いの末、勇気を振り絞り伝えようとしたその時……赤いレーザーが突如空中から放たれる。避けられない。そう悟った穂波だったが……間一髪、ユージオが間に合った。そのままではデッキを破壊され当人も重傷を負っていただろう。

先の殺意の無さとそれによる推測と、それまで何も言う素振りを見せなかったにも関わらず、何かを伝えようとした点から…ユージオは相手を助け     る事を選んだ。
先に彼が動いた為、たきなは攻撃して来た方へと目を向ける。

(空飛ぶ戦艦…ですか!?…羂索達は何を考えてこんな物を…!)

空中へ浮かび砲弾とレーザーを放ってきたのは、ネウロイ化した戦艦赤城。
弾幕を回避しつつ、マグナムシューターの照準をたきなは向けた。

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NPCの介入により、戦場は完全に混沌と化す。
瑠美衣とマーヤは事前に決めていた通り逃げようと試みるも、ソーラーアクエリオンとなったアクエリオンは拳を伸ばし追尾させる。

『必殺!無限拳!!』

等と音声を響かせながら、何処までも届く腕と言わんばかりに伸びるそれをどうにか避け迎撃する2人。
射程距離の広さから、逃げるのは第三者の介入が無ければ不可能と判断し止むを得ずここで迎撃する事となった。

一方未だ目覚めぬリーファを尻目に、レジィはELSリボーンズの相手をマイティストライクフリーダムに任せながら湧いてきた有象無象のNPCに対処。

(羂索だけじゃなく、クルーゼや茅場とやらも馬鹿なのか?)

などと内心呆れる彼は再契象により具現化した包丁を射出するかのように動かしつつ、残り2つの「切り札」たり得る手駒を切るかどうか頭を働かせた。

(っ…援護は今は、期待できそうにありませんね…反動が激しいとはいえ…ここは使うべき、でしょうか?)

132 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:23:46 ID:r72Fawog0
そしてユージオは穂波から事情を聞き出そうと試み…るも、狙撃を仕掛けてきたファラクトに対応せざるを得ず、たきなは引き続きネウロイ化赤城を迎撃。消耗等が激しい為にならずにいたブーストマークⅡを解禁すべきかと思考を回す。
そう遠く離れてるわけではないこの3箇所の、膠着状態になりつつある戦場に……2人の乱入者が現れた。
吹き飛ばされ軌道の先にあった建物を倒壊させながらも剣を振るは鬼龍院羅暁。原初の生命戦維と同化した、「龍」の名を冠する自らの意思を以て人を捨てたモノ。
対し手刀を以て受け止め、そのまま勢い任せに更に吹っ飛ばそうとするはキラ・ヤマト、絶暴の氷「竜」へと変えられてしまった、否応なしに人を捨てざるを得なかったモノ。

「…虚しい抵抗だね」
「美嘉といいセレブロといい貴様といい、つくづくこの殺し合いにはまともな参加者が居ないようだな…!」

端的に切り捨てるかのように呟く氷竜相手に、羅暁は吐き捨てるかのように言い放った。
2体の人外の参入により、混沌は止まらず更に加速する。

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魔王グリオンが創り出した冥黒の対策委員会達は、オリジナルのそれと変わらない姿をしながらも中身の人格はかけ離れた下衆であった。
そのグリオンがキラ・ヤマトの洗脳を試み、ギギストの力の譲渡も併さった結果…意図しない形で冥黒化…冥黒の魔女となった亀井美嘉に似た人外となり、制御不能の暴走状態へとなったという形。
そしてそもそも暴走の原因のひとつはキラ自身の不安定極まった精神状態なのもあって…グリオンの意図通りかは不明だが冥黒の対策委員会達程はかけ離れず、しかしキラ当人とは明確に異なる人格が…たしかに彼自身が感じていた・抱いていた諦観と絶望、虚無感から生じていた。

133 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:24:22 ID:r72Fawog0
生じた人格は邪魔になる元のキラ・ヤマトを凍結。その上で自らの諦観と絶望故に全てを一度凍らせ終わらせてしまおうと考えるようになった。
端的に言ってしまえば、元の人格を封じられた上でマーダーと化したというわけだ。
そんな彼は氷の柱と化した風都タワーの頂上から飛び去り宛もなく、かつNPCと出くわす度に凍らせて殺し・壊していく中羅暁と遭遇、戦闘の果てに今に至る。

一方羅暁はというと、夜島学郎に代わる手駒を探す中徐々に左腕が治って来ていた所に、氷竜と出くわしてしまい応戦する事に。
消耗もあり一時的に逃走する事も視野には入れていたが…よりにもよって最後の支給品、それも特定条件下で自動発動する類の物を奪われてしまった上に、氷竜が形成した氷のドラグーンの存在もあり応戦を続けていた。

「どれだけ頑張っても憎しみは消えない、連鎖は止まらない。なら全部凍らせて…綺麗さっぱり砕けて終わるべきなんだ」
「憎しみ合いを止めたいと願うなら私に、生命戦維に従属を誓えと言っているだろう…!…人の話は聞くものだぞ?」

心の底から冷え切った声に、苛立ちを込めながら両者は周りを顧みず戦う。
形成したドラグーンによる氷のビームを、掌のエネルギー波で迎え撃ち、お返しと言わんばかりの天穿剣からのレーザーを、盾代わりにした氷で防ぎ切る。
…戦いが長引いているのは羅暁側の疲労やダメージも大きいが、青薔薇の剣による記憶解放術や武装完全支配術は氷属性。氷竜たる今のキラ・ヤマトにはダメージを期待出来ず(実際効かなかった)メインウェポンの内ひとつがただの剣に成り下がってしまっているのも理由だった。
兎も角、余波があちこちに飛び、近接戦闘でも建物を破壊しながら行われるその様は…周囲の戦況に大きく影響する。

134 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:26:46 ID:r72Fawog0
たきなはブーストマークⅡになるのを断念し回避に動かざるを得なくなり、レジィはあわやNPC毎巻き込まれる所だった。根城とする予定だったビルは崩壊が迫る始末である。
そして…お構い無しなファラクトから穂波を守る為、時に飛んでくる流れ弾をその身で受けながら…ユージオはゼロツーとして戦っていた。

「…どうして…わたしを…」
「どうしてかって?僕の親友なら、キリトなら…きっと、君を助けてたし。僕自身も…君を助けたいって思ったから。
…やりたくもない戦いを、君がやらされていたのは、やらなきゃいけなくなってたのは…なんとなくだけどわかったからね。
…人質を取られてるのなら…手を出される前に、僕が、僕達が…助けてみせるよ!」

ぽつりと呟いた穂波の問いに、ライフルのビームを海賊刀で切り払いながらユージオはそう毅然として答える。

「…でもっ、わたしは…!」
「間違えてしまう事は誰にでもあるよ。僕だって…道を間違えて、友達に剣を向けてしまった事もあった」
『道を間違え、それでも戻って来れた者の事には私も覚えがあります』

躊躇うかのように話した穂波に、かつて最高司祭アドミニストレータに誑かされてしまった苦い思い出を浮かべつつ、諭すようにユージオは言った。
そしてゼアも、一度道を踏み外し復讐者となってしまったものの、戻って来ることが出来た飛電インテリジェンスの社長飛電或人の事を指しそう話す。
ユージオの身体から突如別の声が聞こえてきたように映った事への困惑を心の片隅に抱きながらも…穂波の心は決まった。

135 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:28:54 ID:r72Fawog0
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…あの人にはああ言ってもらえたけれど、今でも怖い。
わたしが間違えたら、あの子が死んでしまうかもしれなくて…学郎くんがあの虹色の女の人を引き受けてくれた意味もなくなってしまうから。勿論、それでわたし自身が死んでしまうのも怖くて……嫌だった。
……けれど、同じくらい…あの人を、あの人達を信じた上で…できることをやりたいって思ってるわたしも居る。

…あのMS、でいいのかな。それはあの人への攻撃で手一杯みたいで……──そしてわたしは、カードを引いた。

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『FINAL VENT』

136 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:29:20 ID:r72Fawog0
その場に鳴り響くは機械音声。間髪入れず、白鳥に似た姿のモンスターが現れ…ゼロツー相手に手一杯なファラクトを起こした風で吹き飛ばす。

「…これ以上、迷わないように…自分を、信じて…!!」

そう覚悟を決めるかのように、吹き飛んでくるファラクトめがけ…望月穂波は薙刀を振るう。
本来のパイロットでなくともパーメットスコアを上げれば避けれたかもしれないが、軽減されると考えているとはいえ、それで自らにデータストームによるダメージが及ぶリスクを考えたレジィが使わないように指示をしていた以上…もしもの話でしかないだろう。

…ユージオが削っていたのもあり、ファラクトは爆散。跡には起動鍵が落ちた。
起動鍵を拾った後、穂波は名前を名乗り事情を説明。
対しユージオとゼアも名乗った上で人質の少女をどうにかしようと、その為にも今たきなが対応しているネウロイ化赤城相手に加勢する方向で話が纏まろうとしていた最中…NPCがまた襲いかかってきた。
対応しようとする穂波とユージオだったものの…空中からNPC目掛けて斬撃波が飛び沈黙させる。
視線が向かう先には金髪で羽根の生えた、スタイルのいい少女が居た。

「…あなたは…!?…人質に、取られてた筈…それに傷も…大丈夫なの!?」
「…君が、穂波の言っていた…」
「これくらいの痛みなら、全然大丈夫。
…気絶しちゃって、そこから起きた途端こんなだからあんまりよくわかってないけど…あたしはリーファ、殺し合いには乗ってないわ。
もしかして、穂波さんとそっちの人があたしをあそこに?助けてくれたのなら…でも、最後に聞いた声と違うような…」
「それについては後で話すよ、リーファ。乗ってないのなら…今は僕達と一緒に戦ってほしい」

137 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:29:52 ID:r72Fawog0
戦闘の最中目覚めた彼女、リーファは混乱しつつも、ALOアバターならとダメ元で隠行魔法を使用。レジィがNPC達への対応に追われまたマイティストライクフリーダムがELSリボーンズに応戦していたのもあり見事に隙を縫う形で抜け出せ、止むを得ずザンバットソードを振るう形で加勢した形となる。
リーファにとって魔法はあくまで補助、本領を発揮できるのは剣による戦闘スタイルであった。

兎も角それを受け入れた彼女を連れ、ユージオ達は持ち堪えていたたきなの元へと合流。

「遅いですよユージオ!!とはいえ、味方につけた上で連れて来てくれたのは有り難いですが…!」

などと言われながらも、4人で砲弾とレーザーを放ち続ける赤城に攻撃。
アドベントでプランウイングを穂波が呼び出し、飛べるリーファが前線に立ち、ゼロツーの高い演算能力を生かしユージオもアタッカーを担い中・遠距離からたきなが銃撃する。
即席ながらも連携を生かし、ネウロイ化していた赤城を撃沈させる事に4人は成功した。
後は相も変わらず付近で戦闘を繰り広げている
氷竜と生命戦維の代行者と、マーヤや瑠美衣の救援のみ……ひとまず救援に向かう4人であったが…。

138 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:32:31 ID:r72Fawog0
『わあああああっ!』『必殺、月面パンチ…!』

そこにあったのは唐突に意味不明な叫び声を響かせながらパンチを見舞う機械天使に、人面のような月に拳で叩きつけられるランスロット・コンクエスター…瑠美衣の姿と、禍々しいオーラを纏った見知らぬレジスターの無いライダーを目前として、起動鍵の変身を解除されてしまっているマーヤの姿だった。

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氷竜と羅暁の激突による流れ弾を回避しながらも、NPCたるアクエリオンへ食い下がっていた2人だったが……新たに登場したNPC、2体のライダーが攻撃に加わったせいで均衡は崩れた。
鬼のライダーの斬撃波と、カブトムシのライダーの強力なビームまでが飛んできた結果戦闘に不慣れな瑠美衣のフォローの為マーヤがかかり切りになり…カブトムシのライダーの高速移動からのキックの一撃で起動鍵を解除させられてしまった。
脳裏には支給品の起動鍵を併用するという考えも浮かんではいたが、アルビオンのメインウェポンが軒並み使用不能になる都合使うという判断が出来なかったのだ。

139 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:33:05 ID:r72Fawog0
そして瑠美衣は捕捉され、奮闘虚しくファイヤーフィストからの、伸縮自在なパンチの一撃をもらいそのまま召喚されたどこか人間の顔めいている月にたたきつけられてしまった。
墜落しマーヤ同様起動鍵を解除されてしまう瑠美衣。救援のためゼロツーの高速化能力を用い向かおうとするユージオだったが…折り悪く業を煮やした羅暁に氷竜の相手を押し付けられかけてしまう。

「その剣は元は僕の物だっ、返してもらう…!」
「ほう、貴様がユージオ…元の持ち主か。私に隷属を誓うというのなら今すぐにでも返してやらんでもないが」
「断るっ、殺し合いに乗った相手に…従うつもりは無い!」

リーファと穂波にとっては対峙した事のある相手、かつユージオにとっては自分の剣を殺し合いに勝つ為に振るう相手な以上…介入されたからには倒す以外には無く。
更に戦況はフライングアタッカーを装備したライオトルーパーの参戦もあり混沌を極めていく中……氷竜は動く。
氷のドラグーンを追加生成した上で、それら全てからレーザーを一斉に掃射。
広範囲の物量に任せた絨毯爆撃は、演算による未来予知めいた超高速行動を可能とするゼロツーには相性が悪く持ち前の速度を生かせない状況に追い込む。

140 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:33:54 ID:r72Fawog0
「ここは使うしか、なさそうですね…!」

対しほぼ同時に手を打ったのはたきな。温存していたブーストマークⅡバックルをここで行使しフォームチェンジを遂げた上で速度を生かしゼロツーのフォローへ回る。
マグナムバックル所持によりマグナムシューターx40を取り出せる仕様なおかげで、本来不足する遠距離攻撃手段を保ったまま持ち前の技量で銃撃をNPCや羅暁、氷竜やドラグーンへと見舞うたきな。
これによりユージオも動きやすくなり戦況は彼等有利へと傾く……かと思われた。

「あー、やっぱり裏切ってたか。…どいつもこいつも好き勝手やってくれやがって…!」

だがここで…槍めいた投擲道具が放たれる。放った主は悪態を吐きながら身を潜めるレジィ・スター。彼がラッパラッターを用いて実体化させた魔城ラダンの仕業だった。

141 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:35:05 ID:r72Fawog0
ELSリボーンズとマイティストライクフリーダムも同時に現れ、戦闘を継続する。
GNフィンファングと氷のドラグーンがぶつかり合いビームと銃撃が飛び交う最中…衝撃で意識を失っていた瑠美衣の目前に迫るは氷竜のドラグーンに、フライングアタッカー装備のライオトルーパー。
ライオトルーパーは寸前で生身ながらももうひとつの起動鍵…ゼウスシルエットの行使を選んだマーヤにより撃ち抜かれ、アタッカーを残して爆散。
しかしドラグーンは瑠美衣目掛けて迫りくる。
ユージオとたきなは氷竜本体に羅暁、リボーンズにマイティストライクフリーダム相手で手一杯。
リーファとすぐさまゼウスシルエットを解除しアルビオンをまた纏ったマーヤは、太陽剣を取り出したアクエリオンやラダン、ライダー2体を突破出来ない。

(…星に願いをを…あ、ダメだ。間に合わない……フレイヤも、起動鍵を使う前に……!!)

「……ママ…」

頭を必死に回すも、どうしようもない状況だと悟り、瑠美衣に浮かんだ表情は諦めのそれだった。
思わず、今は亡き最愛で推しの母の事を呟いてしまう。

142 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:35:34 ID:r72Fawog0
そしてドラグーンの刺突で生命を奪われんとしたその時……貫かれたのは瑠美衣では無く、ミラーワールドを通して現れその身を挺した穂波、その腹部だった。デッキも破損している。

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お腹の痛みと、今にも意識がそのまま消えちゃいそうな感覚から…きっとわたしは、助からないだろう。…死にたくないって気持ちは、今でもある。そう簡単に消えてはくれない。
…けれど、動けたのがわたししか居ないこの状況で、今動かなかったせいで…彼女が死んでしまったら。この殺し合いを生き延びれてもきっと…一生後悔を抱え続けてたと思う、から。

「…できる、ことを…わたしに……!」

令呪を切って、さっき手に入れた起動鍵をわたしはつかう。
そして…浮かんでる相手の武器を、撃ち落とせるだけ撃ち落として……からだがくずれおちた。
…ぼうぜんとしてどうしていいかわからないってようすのあのこ、ルビーちゃん…だっけ……つたえなきゃ…。

「…わたし…だめ、みたいだから……学郎くん、と…朝比奈先輩…のこと──…」

…うしろからなにかがきたきがして、とっさにつきとばしたしゅんかん…かはんしんのかんかくがきえた。
めをむけたら、こおりのりゅうとあって──Leo/needのみんな、ごめん。
……でも、まえのわたしには ふみだすゆうきをもてなかったときのわたしには もどれなかったから

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ゴシャリと、音がした。
最期まで言葉を言い終えることも無く、上半身と下半身を既に手刀で両断されていた望月穂波は…形成された氷の竜に頭を砕かれ、星野瑠美衣の目前で物言わぬ肉塊となり果てた。

【望月穂波@プロジェクトセカイ 死亡】

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…その時、私の脳裏に浮かんだのは……ママが殺された時の事。
変わり果ててしまった、兄と呼びたくもない他人(アクア)があの時…私を扉越しに防いで、その場にこさせなかったのは…こんな気持ちにさせたくなかったからかも、かなって…他人事みたいに浮かぶ。
…優勝のチャンスを残してくれたこの人に、感謝しなくちゃ…立ち上がらなくちゃってそう思ってるのに、なのに……星に願いをを使えば、この人は死なずに済んだかもって考えがきえてくれない。
からだがいうことを聞いてくれない。動かなきゃ…次は私がこうなる番なのに、なのにっ……!!

「……虚しいね。命を賭して助けられたのに…それも今無意味に終わる」

143 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:36:05 ID:r72Fawog0
ドラゴンが口を開く。 ひどく冷たい声だった。同時に光線が放たれようとして……ドラゴンがよろめく。

「…君は、君は一体なんなんだ…クソっ!」

その声は酷く、目の前のドラゴンに似ていた。

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少し時を遡る。NPC相手に何度も戦闘を行なわざるを得ない状況にいたキラ・ヤマト准将と一之瀬帆波はドロップアイテムも手に入れつつ、今度こそテレビ局へと向かおうとした途端NPCのティガレックスに捕捉されてしまう。
撒こうとしたものの出来ないまま、周囲を破壊する衝撃波のような咆哮や突進に回転攻撃、爪による一撃や噛みつき攻撃、前脚で行う薙ぎ払いや尻尾での振り回し、遠距離の相手様の三方向に飛ばす岩等の多種多様な攻撃パターンに対応する羽目になっていた。
しかも体力を減らす事で怒りにより攻撃力と速度が上昇したせいもあり、クアンタのGNソードビットや、支給されていたガンバレルストライカーの起動鍵を准将が主に使用、帆波はバエルソードを用いつつレールガンでの攻撃を行う形となり、本来彼等を狩るハンターよりも有利な状況にも関わらずなお、時間をかけさせられる羽目になってしまっていた。

それもありキラ・ヤマト准将は…化け物に成り果てた過去の自らの殺戮を止める事は叶わなかった。

「…ひどい…」

頭部を失い上半身と下半身が泣き別れして血溜まりに沈んでいる、望月穂波『だった』肉を見た帆波は端的に呟きながら、起動鍵を装着したままだったのもありバエルソードを氷竜へと向ける。
一方准将は、空間認識能力特有の共振めいた現象もあり目前の怪物が自分と悟った上で……GNソードⅤのライフルモードのトリガーを躊躇無く引く。

「…自分同士の争いなんて、虚しいと思わないのか」
「…そうだね。君が本当に過去の僕そのものなら…こんな事はしない。でも…だからこそ、僕の手で君を止める!」

ドラグーンとGNソードビットが激突し、穂波を助けれなかった事への後悔を各々抱きながらも戦いを続ける最中、クリスタルがエリア周辺を囲む。
現れたのは金色の魔法使いソーサラーに、オルフェノクの王の護り手たるカイザ。

(単調な動きの代わりに…威力は…当たらないよう気をつけないと…!)

144 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:36:55 ID:r72Fawog0
ゴルドスマッシュを放つカイザに、エクスプロージョンを放つソーサラー…バエルを纏っている帆波は咄嗟に避けるも、掠っただけでそれなりのダメージを受け、そう認識を改める。

そんな中、既に現れていたマルチランチャーパックのウィンダムが戦場目掛けて核弾頭ミサイルを放とうとしていた……しかし、クリスタルゲージが破壊されたと同時に、赤黒い閃光がウィンダムを飲み込む。

同時に──黒い斬撃波を纏った刀がその場を風圧で薙ぎ払った。

「…こうなったら最後の「切り札」も切るしかねえか…!」

佇むオレンジ色の髪をした化け物…黒崎一護の遺体を取り込んだELSの無法っぷりを見たレジィは、ラダンの実体化を解除。温存させていたマイティストライクフリーダムのディスラプターを発射させると同時に、最後の起動鍵たるシコウテイザーを実体化させ迎撃に回す。

「…埒外の化け物め…!」

見えない鎖を用い天鎖斬月を振り回し月牙天衝を連発。虚閃(セロ)も放つ度着弾点にクレーターを作り出し、攻撃を試みようとすると瞬歩の加速や響転(ソニード)による転移で背後に回り込み手順を渡さないと言わんばかりの斬撃を放つ様には…いくら羅暁とはいえ消耗もあり悪態を吐きながら対応せざるを得なかった。

145 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:37:59 ID:r72Fawog0
「…お前が生き残っても、何の意味も為さない…虚しさしか残らないのに」

消耗が殆どなかった氷竜は対応出来ていたものの…やがて一護が何度目かの虚閃を放とうとした際に、氷のドラグーンとソードスキルによる突風、ビームを同時に斉射。さながら氷竜版ハイマット・フルバーストめいた事をしぶつかり合う。

(…綾小路くんの所に向かう時用に温存してたかったけど…少しでも抑えないと、最悪みんなが…なら!)

そこにディスラプターやシコウテイザーの皇帝ビーム、更にマキシマムハイパーサイクロンも放たれる中……ここで一之瀬帆波は、支給されていたサウザンドジャッカーにヘルライズプログライズキーを装填。
サウザンドブレイクを行い、世界を滅亡させる為の一撃を……威力は落ちているとはいえ、相殺し守る為に放った。

「ホナミさん!君はテレビ局に行ってくれ…!」
「ヤマト准将、あなたは…!」
「僕はっ、あの竜を止めなきゃいけない…!これ以上、彼女みたいに殺させちゃダメだ…!」

各々の一撃がぶつかり合う最中、そう会話を交わした帆波とキラ。
そして爆風が起き……この戦いは終局を迎えた。

146 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:39:10 ID:r72Fawog0
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壊滅状態となったエリアに一人佇むはELSに同化された黒崎一護。
生きた物は誰も居ないのを視認で確認した彼は……響転によってその場から消え去る。
後には大規模な戦闘の跡と、望月穂波の残骸とレジスターが残るのみだった。

【エリア全体の備考】
※エリアG-12は壊滅状態です。また望月穂波のレジスターが放置されています。
※ドロップアイテムであるカイザギア、ソーサラーのベルト&ソーサラーウィザードリング、フライングアタッカーが会場内の何処かに落ちました。
※支給品の内、陰鉄、ガンダム・ファラクトの起動鍵、ゼウスシルエットの起動鍵は会場内の何処かに落ちました。
※NPCの内シャドウフィルムライダー:カブト ハイパーフォームがどうなったかは後続にお任せします。

【エリアG-12/9月2日午前10時05分】
【ELS一護(黒崎一護。に擬態したELS・非参加者)@本ロワオリジナル(BLEACH+劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-)】
状態:健康、完全虚化
服装:完全虚化の黒崎一護のそれと同じ
装備:天鎖斬月@BLEACH
道具:なし
思考
基本:NPCとして他者を襲う。
備考
※王虚の閃光(グランレイ・セロ)を使用可能かどうかは後続にお任せします。
※何処へ向かったかは後続にお任せします。

147 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:47:32 ID:r72Fawog0
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「…手駒を増やせただけ、良しとするべきだろうな」

しれっと精神仮縫いを用いて、その場に居たNPCであったアクエリオン、装甲響鬼、ELSリボーンズを手駒としたものの消耗が激しい羅暁。
左手の件もあり放送までは休むか、それとも…と選択を迫られていた。

【エリア???/9月2日午前10時05分】
【鬼龍院羅暁@キルラキル】
状態:疲労(大)ダメージ(大) 左腕切断(治療中)
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む
01:学郎は消えたか。少々惜しいがまあ構わんな
02:流子がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
03:ここにまともな参加者はいないのか????参加者以外もまともな物がいないんじゃないのか??
04:あの怪獣娘(セレブロ)は不快だ。あまりにも思考が合わん。
05:美嘉とノノミ、あの氷竜(キラ・ヤマト)とユージオを警戒
06:手駒はとりあえず増やせたが…
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています
※火属性に弱い可能性があります
※左腕が破壊されましたが見た目だけはほぼ直っています。精度は劣化しており本来の半分程度だと羅暁は考えています。
 時間経過でどの程度改善されるかなどは後述の書き手様にお任せします。
※精神仮縫いによってNPCである神話型アクエリオン、シャドウフィルムライダー:装甲響鬼、ELSリボーンズガンダムを支配下に置いています。

148 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:48:24 ID:r72Fawog0
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「…羂索もクルーゼも茅場も…大怪獣バトルでもしたかったのか?あの馬鹿共は」

吐き捨て主に精神が疲れた様子でぼやきながら、レジィは今後の身の振り方について考えさせられる羽目となった。

【エリア???/9月2日午前10時05分】
【レジィ・スター@呪術廻戦】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(大)
服装:レジィの蓑@呪術廻戦
装備:レジィの蓑@呪術廻戦 ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー
令呪:残り三画
道具:マイティストライクフリーダムガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、伝説の魔城ラダンの起動鍵@牙狼<GARO> -GOLD STORM- 翔、護国機神シコウテイザーの起動鍵@アカメが斬る!スーパー手ぶくろ@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:殺し合いを楽しむ あわよくば生き返る
01:あの人形(月蝕尽絶黒阿修羅)は流石にヤバい。特級相当だろ。素人に配るとか羂索は馬鹿か?
02:あの氷竜や虹色女(羅暁)みたいな参加者も、そうじゃない連中もやりたい放題すぎるだろ。
参戦時期:死亡後
備考

149 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:49:37 ID:r72Fawog0
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「…ヤマト准将…大丈夫かな…」

かつての自分が変じた竜を止めに行くと、そう告げ去った同行者の事を心配する帆波。

「…とりあえず助けたけど、起きたらどうするつもりかとか、聞いてみないと」

その視線の先には、ブーストマークⅡの反動により気絶してしまっている井ノ上たきなの姿があった。

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【エリア???/9月2日午前10時05分】
【井ノ上たきな@リコリス・リコイル】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、気絶
服装:リコリスの制服
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ブーストマークⅡレイズバックル@仮面ライダーギーツ、マグナムレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ロケット花火@ペルソナ4、ホットライン
思考
基本:このゲームに抗う
01:知り合いが誰も呼ばれてないのは……まあ、良かったです。
02:マーヤ、瑠美衣、ゼア(ユージオ)と共にテレビ局に向かう…予定だったんですが…
03:並行世界にギアス……このベルトを手にしたときから薄々感じてましたが、本当にいよいよファンタジーですね
04:…千束なら、もしかしたら彼女の…穂波のことも……。
参戦時期:アニメ最終話から

150 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:50:20 ID:r72Fawog0
【一之瀬帆波@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(中)、綾小路清隆への……(大)、キラ・ヤマト准将を心配
服装:高度育成高校の制服(女子)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ガンダム・バエルの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、サウザンドジャッカー&ヘルライズプログライズキー@劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME、ランダムアイテム×1〜2、ホットライン、ビスマルクのリュック
思考
基本:このゲームから生還する。
00:私は……また失敗した。
01:綾小路くん……人が苦しんでる間に楽しそうだね?
  一言いいに行くから待っててよ?
02:とりあえず荷物を検めてからアビドス砂漠、そしてテレビ局を目指す…予定だったけど。
03:ラウ・ル・クルーゼ。あなたも裏切られたの?
04:立場も違い過ぎるし、彼女持ちに親しくし過ぎるのも問題だし、ヤマト准将呼びってことで。
05:ラクスさん、ちょっと苦労してそうかも
06:この子が起きたら話を聞いて、それから決めよう。
参戦時期:2年生編12巻終了後から
備考
※キラ准将と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されていました。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。

151 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:51:05 ID:r72Fawog0
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「…何もかもがただ虚しい」

呟き、氷竜は空を駆ける。
全てを凍らせそこで終わりにする為に。

(…本当は、ホナミさんと一緒にいくべきなんだろうけど…でも、これ以上殺させるわけには行かない…!!)

変わり果てた過去の自らを、青年は追う。

【エリア???/9月2日午前10時05分】
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED】
状態:内に秘めた悲しみ(大)、氷竜化、暴走状態
服装:SEEDでの連合の軍服
装備:王印@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸(発動状態にある)
令呪:残り一画
道具:ホットライン、預託令呪@Fateシリーズ、ドロップアイテム×1
思考
基本:凍結
01:虚しい。
参戦時期:SEEDの本編及びRecollection終了後、AFTER-PHASE「星のはざまで」及びDESTINY以降よりは前。
備考
※篝との会話で隠世についてや可奈美達の話についてある程度は聞きました。
※篝やミカとの会話で刀使ノ巫女世界についてやブルーアーカイブ世界についてある程度把握しました。
※支給されていたソードスキル:疾風(シュトゥルム)@ストライクウィッチーズシリーズを習得しました。
※ギギストの力に適合し本来より更に強くなっています。
※現在暴走状態にあります。キラ当人の人格は凍結されています。
※氷でドラグーンを生成する事が可能です。
※ドロップアイテムの中身は後続にお任せします。

152 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:51:40 ID:r72Fawog0
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(大)、決意(大)
服装:コンパスの制服
装備:ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
令呪:残り三画
道具:ガンバレルストライカーの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED MSV、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ……分かった。
  今度も示すよ。僕の守りたい世界を。
02:ホナミさんとアビドス砂漠を経由してテレビ局を目指す。
03:ビスマルク・ヴァルトシュタイン……中々の強敵だった
04:ラクス、アスラン……イザークにディアッカに、ニコル?
05:どうして僕やアスランの名前が二つも?
  多分僕が准将の方だろうけど……
06:あの僕を止めないと……!
07:…ごめん…助けられなかった…!
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-には英文が刻まれています。
帆波は『世界はこんなにも簡単だと示してください』と訳しました。
※帆波と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。
 アヤネの追跡に気づいていたかどうかは後続の書き手様にお任せいたします。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。

153 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:54:01 ID:r72Fawog0
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「…瑠美衣」
「……わかってる。大丈夫…だから」
(…あれだけの強さの参加者が居るなら…もっと、考え…ないと…)

半ば自失状態だった瑠美衣をどうにかマーヤが引っ張る形で退避には成功。
しかし自分でも今どういう感情を抱いてるかわからなくなっている有様な瑠美衣をどうするかと思案していたマーヤだったが…ここでガシャットを瑠美衣が拾う。
そのガシャットの名はマイティノベル。真鍋志保の最後の支給品がふっとばされたものであった。

【エリア???/9月2日午前10時05分】
【マーヤ・ガーフィールド@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(小)
服装:制服(アッシュフォード)
装備:ランスロット・アルビオンの起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ロケット花火@ペルソナ4、ホットライン
思考
基本:ブリタニア(概念)を叩き潰す
01:ルルーシュの真意を確かめるためにたきなたちとテレビ局に向かう。
02:色々な世界があるってことは、あのルルーシュが私を知るルルーシュとは限らないか。
03:ロロも卜部さんも死んだはずなのに名前がある。
  死ななかった世界の2人って事かな?
04:二代目ゼロに……ロロ・ヴィ・ブリタニア?
05:星野瑠美衣は民間人だから、ちゃんと守らないと
06:…多分、彼女(望月穂波)も民間人…だったのかな
参戦時期:2部13章から

154 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 00:55:38 ID:r72Fawog0
【星野瑠美衣@推しの子】
状態:狂気、ダメージ(中)、精神的ダメージ(???)、疲労(大)
服装:【Be red】ルビーのアイドル衣装@アイドルマスター シャイニーカラーズ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランスロット・コンクエスター(フレイヤ搭載)の起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2、星に願いを@オーバーロード、マイティノベルガシャット@小説 仮面ライダーエグゼイド 〜マイティノベルX〜、ホットライン
思考
基本:願いを叶える
00:しばらくはマーヤたちを隠れ蓑に穏健な参加者のふりをする。
01:ユージオを、ゼアを排除することでマーヤたちとルルーシュに決定的な亀裂を創り殺し合わせようと…思ってたけど…
02:知り合いは誰も居ないか。ま、都合がいいね。
03:私は絶対に……。
04:ユージオやゼアの排除は……
05:……私は
06:…穂波さんの、言ったことを……?
参戦時期:連載106話から
備考
※フレイヤを使用するには令呪二角が必要です。
※星に願いをは一回のみ使用可能な使い切りです。
※キリトの事でユージオを励ましたのは、雨宮吾郎が例え並行同位体だろうと、自分からアイを奪った者と同類のなにかであってほしくないと言う感情からです。
また、そのことにまったく無自覚です。

155 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:08:32 ID:r72Fawog0
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「──……おに、いちゃん…嘘、だよね……?」
「…これは…」

逸れてしまったものの、逃走に成功したユージオとリーファ、しかし彼等の目前にあるのは……惨殺されたキリト?の亡骸だった。
ただでさえ穂波の死により傷を負っている中、こんな物を見つけてしまった事により…呆然と青ざめ座り込んでしまうリーファ。
ユージオも絶句し、動揺を隠せずにいた。
……最愛の兄と無二の親友の遺体を見つけてしまった以上、彼らが接近していたELSに気付けないのも致し方無いことだろう。
それは遺体と変身の指輪、レジスターを取り込み……他のELSとは異なりキリトを取り巻く状況故なのか2人を襲わず、その場から立ち去ろうとする。

『…遺体を取り込んだようです。追わなければ』
「わかってる、行こうリーファ…!」

こうして2人は、ELSとなったキリトを追う。
……それがキリトではない事にまだ気付かないままに。

156 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:09:17 ID:r72Fawog0
【エリアE-12/9月2日午前10時05分】
【ユージオ@SAOシリーズ】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、精神的疲労(大)ゼアを許容
服装:いつもの服装
装備:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード
   ライドケミーカード(パイレッツ、バンバンブー、マックラーケン)@仮面ライダーガッチャード
   飛電ゼロツードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ
   ゼロツープログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:ロケット花火×2@ペルソナ4、ホットライン
思考
基本:この狂った儀式を止める(ユージオ)
   下した結論に基づきこのゲームをクリアする。(ゼア)
00:…キリト??とりあえずリーファと一緒に追う
01:可能ならばキリトと合流したい。
02:前提を確定させるために羂索、クルーゼ、茅場に関する情報を集める。
また、アークの思考を読み解くためにルルーシュに関しても情報をもっと集める。
03:ルルーシュの元に向かう。
04:ウンベールは一応警戒。
  キリトやその知り合いと思しきプレイヤーたちに関しては並行世界の別人という線も視野に入れておく。
05:穂波……
参戦時期:死亡直後(ユージオ)
     アークと同じ結論に至った後(ゼア)
備考
※ユージオがゼアを許容した為、ドライバーを装着している間はゼアが肉体の主動権を握れます。
ドライバーかキーが近くにあれば、遠隔でも可能なようです。

157 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:10:35 ID:r72Fawog0
【リーファ@ソードアート・オンライン】
状態:ALOアバター、疲労(中)、精神的疲労(極大)全身に切り傷(大)、火傷(中)、右太腿に貫通痕
服装:いつもの服装
装備:ザンバットソード@仮面ライダーキバ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない
01:――おにい、ちゃん??
02:…穂波さん……
参戦時期:アリシゼーション後
備考
※アバターはALOのものとなっています。魔法も使用可能です。

【ELSPoH(キリトに変身したPohに擬態したELS・非参加者)@本ロワオリジナル(ソードアート・オンライン+劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-)】
状態:健康
服装:キリトのそれと同じ
装備:マクアフィテル@SAOシリーズ(再現したもの)
道具:なし
思考
基本:???
備考
※参戦時期的にはまだなれないアリシゼーションでのアバター姿(暗黒騎士)になれるかや、心意を使用可能になってるかは後続にお任せします。
※何処へ向かったかは後続にお任せします。

158 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:11:18 ID:r72Fawog0
【NPC紹介】
・ELS一護@本ロワオリジナル
…黒崎一護の遺体をELSが取り込み再現した個体。切り落とされた右腕は再現されたがレジスターは付いていない。
死亡間際に完全虚化しかけていたせいか、完全虚化状態で暴れ回るようになっている。
本来の完全虚化と違う点は、ELSとしての特性もあってか、角を折っても元の姿に戻るのは一瞬のみで即座に元通りになってしまう所。
またELSとしての特性があるからか超速再生は再現されていないが、それ以外は完全虚化状態のそれと変わらない。

なお人格・性格面の再現は一切されず喋る事も無い。仮に再現された所で完全虚化状態の彼との対話は不可能だが。
千年血戦篇にて使用した王虚の閃光(グランレイ・セロ)を使用可能かどうかは後続にお任せします。

・ELSリボーンズガンダム@ロストヒーローズ2
…ELSに乗っ取られたリボーンズガンダム。
使ってくる武器などはオリジナルと変わった様子は無い。
劇場版00本編には出てこないにも関わらず捏造された理由としては、メタ的には本編でのELSに取り込まれたリボンズと同型のイノベイドであるスカイ・エクリプスが迫る展開を、擬似的に出典元のゲーム内で再現する為作られたからだと思われる。
ゲーム作中では使わないリボーンズキャノンへの変形やトランザムも出来るかは後続にお任せします。

159 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:12:20 ID:r72Fawog0
・ネウロイ化赤城@ストライクウィッチーズ
…暴走したウォーロックが撃沈された赤城の残骸と融合し再浮上・再構築された存在。
本来のサイズは赤城のそれと同じだがこのロワでは10mほどのサイズとなっている。
武装は艦砲による実弾射撃以外にもネウロイ化したからかレーザーも放てるようになっている。

160 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:12:53 ID:r72Fawog0
・神話型アクエリオン@ネットミーム(カオスパロボシリーズ)&戦隊レッド 異世界で冒険者になる(アニメ版)
…制作会社繋がりか、アニメ版異世界レッドにてゲスト出演を果たしたアイツ。大元の出典は創聖のアクエリオン。
カオスパロボ出典も合わさり、ソーラーアクエリオン以外のアクエリオンマーズ、アクエリオンルナにも変形可能。ちなみに本来よりもサイズは縮んでおり3〜4m程度の大きさとなっている。
技の仕様はNPCなのもありカオスパロボ順序(乗ってるパイロット無関係に全て使える)だが、スパロボZや二次Zで使える技以外は使用不能となっている。
無限拳については、エリア外判定になるギリギリの所に月を一時的に召喚、そこに叩きつける技となる。

実は禪院扇同様、冥黒の五道化の成り損ないを再利用した物。それ故か複数出現はせずこれ1体しか出て来ない。
NPCな為アポロらパイロットは不在だが、技を使う等のアクションを行うと元のパイロット
(カオスパロボ順序なので変化先のパイロットやレベルアップ音等の効果音、「  」(ヴェスパー!)等の没になった台詞なども含まれる)
の台詞を脈絡無く言い出す事がある。

また行動すると稀に大なり小なりエリアに影響を引き起こしたりする
(該当エリアの背景が突如宇宙空間になったり、この場合変化したのはあくまで背景だけなので、こうなった瞬間エリア内の他の参加者が窒息死するような事態にはならない)
事もあるが、これらについての頻度や持続時間は後続の書き手にお任せします。
なお起動鍵や参加者の外見に影響は及びません。

161 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:14:42 ID:r72Fawog0
・シャドウフィルムライダー:装甲響鬼@仮面ライダー バトライド・ウォーⅡ
・シャドウフィルムライダー:カブトハイパーフォーム@仮面ライダー バトライド・ウォーⅡ
…出典元の敵ポジションであるシネマが造り出した主役ライダー達の最強・究極フォームの模造品。
黒いオーラを身に纏うシネマの傀儡。
このロワではプレイアブルキャラしか使用不能な超必殺技の攻撃
(響鬼は音撃刃 鬼神覚声、カブトはマキシマムハイパーサイクロン)
も使用可能となっている。

ただしこれらの攻撃は連発は出来ず一度撃つと再使用に相応に時間がかかるようになっている。
またカブトの各種必殺技の、タキオン粒子由来の原子崩壊効果は再現されていない他、ハイパーフォームのハイパークロックアップも一度使用すると再使用まで相応に時間が必要となる。
どれくらい必要かは後続にお任せします。
なお、サモンライド出典のライダーとは異なりそもそもベルトを取れないようになっている為ベルト狙いの戦略は無意味。

162 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:15:09 ID:r72Fawog0
・ライオトルーパー(フライングアタッカー装備)@仮面ライダーディケイド
…第1話で光夏海が見た夢で登場した、仮面ライダーサイガの装備であるフライングアタッカーを装着したライオトルーパー。
撃破すると低確率でフライングアタッカーを落とす。

・仮面ライダーカイザ@仮面ライダー サモンライド!
…サモンライド仕様のカイザ。複数出てくる雑魚敵でゴルドスマッシュをひたすら放ってくる。
ファイズ本編ではカイザ及び変身ベルトのカイザギアは一品物だが、一応小説版では量産されていたりはする。

・ティガレックス@モンスターハンターワールド:アイスボーン
…轟竜との別名を持つ飛竜種のモンスター。
本来のサイズは通常個体は全長17m〜23m前後、全高4〜5m前後だが、このロワでは全長10m程になっている。
翼はあるが滑空用であり単体飛行能力は低い。
衝撃波のように周囲を破壊するレベルの威力がある咆哮を放てる他、突進や回転攻撃、四肢にある爪による一撃や噛みつき、前脚での薙ぎ払いや尻尾の振り回し、遠距離の相手に岩を飛ばす等が攻撃手段。
体力を減らすと怒り状態になり攻撃力機動力が上昇する。

163 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:15:55 ID:r72Fawog0
・ウィンダム(マルチランチャーパック)@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
…地球連合軍の量産型MSに、2発まで核弾道ミサイルを装填可能なパックを装着したもの。
パック自体が大型なので機動性が死んでいる。
ちなみに2発とも発射される前に撃破出来れば、低確率で核ミサイルをドロップする仕様となっている。威力や制限などは核メビウスのそれと同一。

【支給品紹介】
・マイティストライクフリーダムガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
…レジィ・スターに支給。
キラ・ヤマト准将が直々に設計に関わったプラウドディフェンダーを装着したストライクフリーダムガンダム弐式の姿…が起動鍵に落とし込まれた物。
日本刀のような形状の対艦刀フツノミタマや、対射撃武器用の放つ光もとい放電、原子崩壊による防御無視攻撃であるディスラプターが主な特徴。
なおディスラプターは本来とは異なりラクスの承認は不必要なものの令呪を切らないと原子崩壊効果は発揮されずただの破壊光線となる。その上一度撃つと次射までタイムラグが必要となっている。
また素のストライクフリーダムガンダム弐式にすることは不可能。

164 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:16:21 ID:r72Fawog0
・伝説の魔城ラダンの起動鍵@牙狼<GARO> -GOLD STORM- 翔
…麗美に支給。
世界を闇に変えようとしたとされる強大なホラーが起動鍵に落とし込まれた物。起動鍵な都合このロワでは巨人兵めいた形態限定となっている。ホラーだが自我は無い。
サイズは3〜4m程に縮小されており、侵入してきた相手用の武器である円盤型の兵士は外敵に放つ用になっている。

また攻撃手段としては破壊されても砲弾に出来る黒い槍状の飛び道具の射出や、三叉の矛状の武具を左手に持ち、素体ホラーを束ねて鎌にする事も可能。
ちなみに素体ホラーを無数に召喚できる様にするには令呪を行使する必要がある他、令呪を使えば動力源たる「月」に当たる存在が居る時同様矛の先端を通し生命力を周辺から徐々に吸収していく…という仕様にされた。

・護国機神シコウテイザーの起動鍵@アカメが斬る!
…望月穂波に支給。
代々皇帝の一族のみに起動出来る人型の帝具が起動鍵に落とし込まれた物。このロワでは一族でなくとも使用可能。
サイズは3〜4m程となっている。
格闘戦でも普通に強く、破壊光線である皇帝ビームや大量のミサイル等も搭載している攻守隙のない帝具。

・ゼウスシルエットの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
…マーヤ・ディゼルに支給。
オーブ地下の行政府を破壊する為に造られていたデスティニーガンダム用のシルエットを起動鍵に落とし込んだもの。巨大な砲身が特徴的。
このロワでは他の起動鍵と併用や生身で使用する事も可能となっている。
ただし装着すると背部にある装備は使用不能となる他、リニアキャノンを手持ちする都合携行武器等も使用不要となる。
燃費は原作よりは良くなっているものの重たく、何の補助や理由も無いなら2発程撃ったら使用不能となる他連射も不能。一度撃つと暫くインターバルが必要となっている。

165 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:16:40 ID:r72Fawog0
・預託令呪@Fateシリーズ
…鬼龍院羅暁に支給。
過去の聖杯戦争において使われないままマスターが脱落した結果宙に浮いた未使用の令呪を、聖堂教会の監督役が保持している物の総称。
このロワでは一画分のみ支給されており、令呪三画を全て消耗した場合に自動発動し一画分が所有者に補填される形となる。所有者の令呪が残っている状態だと自発的には使えない為他者に奪われる可能性もある。

・サウザンドジャッカー&ヘルライズプログライズキー@劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
…一之瀬帆波に支給。
エスが世界を滅ぼす為に用いていた物。2つセットで1つの支給品扱い。
ヘルライズプログライズキーを装填しサウザンドブレイクを使うと赤い刃状のエネルギーで周辺一帯を吹き飛ばす事が可能。またプログライズキーを飛電ゼロワンドライバーに使えばゼロワン ヘルライジングホッパーに変身出来る。
ヘルライズプログライズキーによるサウザンドブレイクについては本来より威力が下がっている他、1度放つと30分使用不能となり、連発出来ない仕様となっている。
サウザンドジャッカーはサウザー等のそれと同じ仕様でジャックライズも可能。

166 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:19:07 ID:r72Fawog0
・マイティノベルガシャット@小説 仮面ライダーエグゼイド 〜マイティノベルX〜
…真鍋志保に支給。
起動すると小説版のそれと同様、宝生永夢の過去を見せられた後数回ほど選択肢を2択から選ばされるようになっている。
起動した際5m以内の味方も一緒に過去を見せられる他、その間当人らの体感時間は加速させられている為余程手間取らない限り戦闘中に使用しても問題ない。

全て正解すると何かしらの報酬が手に入る様になっているが、間違えるとNPCとしてハイパームテキこと仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマーが出現、99.9秒間その場に居続け敵味方問わず無差別に攻撃しだす。
ハイパームテキのスペックは本来より弱体化されているがそれでも最上位クラスと戦闘可能なレベルとなっている。なおハイパームテキでの攻撃"では"参加者は殺せない仕様となっている。
99.9秒間の内に倒す事が出来た場合は倒した者に報酬が与えられる。この報酬は全問正解とはまた別個扱い。
ちなみにエグゼイド系列の仮面ライダーに変身した上でガシャットを装填しても、現時点ではノベルゲーマーにはなれないようになっている。

167 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:19:30 ID:r72Fawog0
・ザンバットソード@仮面ライダーキバ
…リーファに支給。
黄金のキバこと仮面ライダーキバ エンペラーフォームのメイン武器。
生命力たるライフエナジーを吸収しようとする危険な性質と、剣自身がファンガイアの王として相応しくないと判断した持ち手を暴走状態にしてしまう性質を持ったヤバい妖剣。
このロワでは余程相応しくない相手か、精神状態がよくない相手でない限り暴走状態にはならないようになっている。
普通に斬るだけでなく斬撃波も飛ばせる。
なおキバットバット三世が居ないと必殺技のファイナルザンバット斬は使用不能。

・ガンバレルストライカーの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED MSV
…キラ・ヤマト准将に支給。
ストライクガンダムや105ダガー用のストライカーパック…が起動鍵へと落とし込まれた物。
このロワでは他の起動鍵と併用や生身で使用する事も可能となっている他、空間認識能力が無くてもある程度は使えるようにされている。

168 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:19:50 ID:r72Fawog0
【ドロップアイテム紹介】
・カイザギア@仮面ライダー555
…仮面ライダーカイザに変身するためのツール。
このロワでは人間でも変身可能な代わりに常人が変身し解除すると灰化して死亡するようになっている。
カイザブレイガンなどの兵装は変身後使用可能となるが、ジェットスライガーやサイドバッシャーを呼び出せるかは後続にお任せします。

・ソーサラーのベルト&ソーサラーウィザードリング@劇場版 仮面ライダーウィザード in Magic Land
…仮面ライダーソーサラーに変身するためのツール。本来ならウィザードやメイジは体内にファントムを宿した上で絶望に耐える事が変身条件となるが、このロワでどうなのかは不明。
他のソーサラー用のウィザードリングやディースハルバード等は変身後使用可能となる。

・フライングアタッカー@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト及び仮面ライダーディケイド
…仮面ライダーサイガ用の飛行ユニット。
飛行だけでなく、威力のシングルモードと連射速度のライフルモードを持つ銃火器のブースターライフルモードを内蔵している。
またこのロワではミッションメモリーが無くても、飛行不能になる代わりに二振りのトンファーエッジを取り出す事が可能となっている。
サイガドライバーが付属していないのもあってかこのロワでは、これ単体だとエクシードチャージは不能かつ、一定時間飛行しているとしばらくの間飛べなくなるという制限がかけられた。

169 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 01:20:20 ID:r72Fawog0
投下終了します。タイトルは「すべて最低だと笑えたら」です。

170 ◆8eumUP9W6s:2025/05/23(金) 03:29:31 ID:r72Fawog0
>>146のエリア全体の備考に以下の一文を追記します
※ファムの契約モンスターであったブランウイングがどうなってるかは後続にお任せします。

171 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/23(金) 08:43:39 ID:hJDb2zOM0
皆さま、おはようございます。
心煩ロワの企画主です。平素より当ロワを贔屓にしてくださりありがとうございます。
さて、前々から予告していました第一回放送の件ですが、現状の予約分が問題なく投下されれば全てのキャラクターが作中時間9月2日の午前9時以降の字気感じ区に到着するので、スムーズにロワを進行させるためにも一時的に予約期限を最大で現実時間で6月6日までにする措置を取りたいと思います。
(例:5月25日にキャラクター5人で予約した場合、本来起源は延長込で6月8日までだが今回のルール適応で2日短い6月6日が期日になる)
何事もなければ6月7日までには第一回放送が投下できる予定です。
皆様のご理解とご協力のほど、よろしくお願いします。

172 ◆8eumUP9W6s:2025/05/25(日) 23:09:44 ID:UB9dG3DI0
聖園ミカ、キラ・ヤマト(SEED)、柳瀬舞衣、道外流牙、アスラン・ザラ、キラ・ヤマト准将、帝竜ジゴワット(NPC)、アスラン・ザラ(ミーム)、鬼龍院羅暁、黒見セリカで予約及び延長を行います

173 ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 21:54:05 ID:WI1wHyak0
投下します

174深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 21:57:34 ID:WI1wHyak0
気が付くと、雪の降る森の中にマイ・ラッセルハートは佇んでいた。

「……どういうこと?」
 そんな声が思わず出てしまう。
 さっきまで蛇腔病院の地下に居たはずだ。
 調査をするために降りたところを5道化を名乗るザラサリキエルとエケラレンキスに邪魔をされ、ザラサリキエルの能力で小夜とシェフィを失った。
 そして左虎と2人にされたところをエケラレンキスの手で無数の死体に襲われた。
 それがマイ=ラッセルハートの思い出せる最後の記憶だ。

「もしかしてアタシ死んじゃった?これは走馬灯って奴?
 ……というには変だね。こんな森全く見覚えないし。」
 森の中にある広場とでもいうべきどこか牧歌的な風景は、マイにとって今際の際に思い出す光景では決してない。
 寒さに身を震わせながら他に出来ることもないと道なりに進むと、教会や学校ようなレンガ造りの建物が穏やかに佇んでいた。
 
「とりあえず、あそこに行けばいいのかな。」
 白い息と共にひとりごちる。足を動かすと凍った地面がぱきりと子気味いい音を立てていた。
 近づくと小さな階段の上に木製の玄関扉が見え、その上にはロシア語で書かれた表札が飾られている。
『ユーリイ孤児院』。表札にはそう書いてある。知らない名前だ。

「……やっぱり聞いたことのない場所だ。」
「あら。自分がさっぱり知らないものを見るなんて、人の記憶を覗ける貴女にはいつものことじゃないの?」
 足元から聞こえる刺々しい言葉に、マイは思わず後ずさる。
 大きく吐き出した息を整え視線を下ろすと、誰もいなかった石階段の上に1人の少女が座り込んでいた。
 12・3歳くらいの風体だが妙に大人びてみえる。居るだけで周囲が冷たくなるかのような、異様な儚さが少女にがあった。
 警戒心を露にマイは少女を睨む。
 対して黒い服の少女はブロンドの髪を冷たい風に靡かせ、酷く優しい視線をマイへと向けた。
 
「アンタがアタシをここに呼んだの?
 そもそもここは何処?エケラレンキスが消えた後何が起こったの!?」
「質問が多いわね。ひとつ目に関しては……『イエス』と言うことにしておくわ。
 ふたつ目の質問だけど、ここは貴女の夢の中。
 心の中……と言ったほうがいいかしらね。」
「その割には覚えのない場所だけど。」
「貴女の付けている指輪の力で私の心が流れ込んでるもの。」
 そう答える少女の懐かし気な視線が、背後の孤児院へと向けられた。
 雪の降る広場凍り付いた地面にあって、真新しくこそないが手入れの行き届いた綺麗な建物。
 目の前の少女の思い出の場所と言うのなら、よほど大切な場所だったのだろうなとマイは思った。

「ところで指輪ってもしかしてこれのこと?」
 マイが指をわずかに掲げると、小指にはめた氷の意匠の施された黒い指輪――心遺物(メイド・イン・ハート)がキラリと光った。
 曰くその指輪は、持ち主の心を形とした聖痕(スティグマ)。
 世界を拒絶するように冷たい指輪。その本来の持ち主の名をマイ=ラッセルハートは思い出す。
 
「ってことは、あんたがツィベタ=コオリスカヤ?
 心を形にしたものがこの指輪だとは聞いていたけど、まさかご本人が登場とは思わなかったよ。」
「私もこうして参加者と顔を合わせられるとは思わなかったわ。この程度の干渉は許容範囲ってことなのかしら。」
 心遺物(メイド・イン・ハート)に関しては謎が多いが、転心輪を経由して瀕死の紅葉山テルに干渉したウツロや鏡を通じて小石川 惟子に接触したクァバラのように、”心”だけを残して他者に干渉できる例は事実としてある。
 運営達はその性質を持って、心遺物を”意思のある道具”として実装してた。
 マイは「成程ねぇ」と冷静に事態を受け止める。ドゴルドが空蝉丸の情報より『鎧そのものが意志を持った存在』だと知っていたことも大きいだろう。
 
「それで、お喋り機能がある割に今までだんまり決め込んでたのはどうして。
 手助けしてくれるならドゴルドだのエケラレンキスだのザラサリキエルだのがいる時にも手伝ってよ。」
「ここに居る私は指輪に残った残滓のようなものよ。
 夢でしか干渉できない……とは言わないけど、こうして話しかけられるタイミングは限られる。伝えられるような情報も持ってない。
 名簿に私の知ってる名前もないもの。私がここに居る以上1人か2人は同じ世界の参加者がいるんでしょうけど。」
「じゃあなにしに来たのよツィベタっち。
 言いたいことがあるらこんなところにいるんじゃないの?」
 痺れを切らつつあるマイの声はわずかに荒くなる。ツィベタは一瞬物憂げに顔を落とし、再びマイを見上げた。

175深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:01:32 ID:WI1wHyak0

「忠告しにきたのよ、マイ=ラッセルハート。
 私は貴方の支給品。貴女が生還することが私にとっても望ましい。
 その上で断言するけど、このままでは貴方は絶対に勝てないわ。」
「……!!」
 苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべ、悔しそうに唸る音を絞り出すマイをよそに、ツィベタはつづけた。

「エケラレンキスにもザラサリキエルも倒せなかったし。地下では『接木の庭園』から大した情報も得られていない。
 それどころか水神小夜もシェフィも失った。それが今の貴女の現状よ。」
「まだ最初に戻っただけ!
 左虎っちは健在だし、アタシの令呪も支給品も充分使える!
 ザラサリキエルという天敵はいるにしても、『編集』も『消去』も使える!アタシにもまだ――」
「この殺し合いが拳銃持った子供達を相手にするような環境なら、まだなんとかなったでしょうね。」
 でも、わずかに怒気を込めてツィベタは続ける。
 もういない誰かに怒られたような、そんな気分だ。
             ・・・・・・・・・・・・
「五道化がいる――五道化が実装されているような環境で、今の貴女に何ができるの?」

 駄々をこねる子供を黙らせるようなぴしゃりと告げられた言葉の中、含みのある一言がマイに新たな疑問を与えた。

 (――五道化が実装された環境?)
 冥黒の五道化は運営が用意した存在。最強のNPCモンスターだ。
                         ・・・・
 それは、参加者同士の殺し合いに出すには、あまりに強すぎる。
 覇世川左虎をもってしてもエケラレンキスやザラサリキエルを殺しきれず。
 ドゴルドに至ってはマジアアズールに致命傷を与え、別の地点ではギラ・ハスティーやユフィリア・マゼンタ、キョウリュウレッドとなったまふゆに真化したマジアマゼンタといった戦士を相手に渡りあった。
 忍者に魔法少女、守護者たる邪悪王に魔法の天才令嬢に牙の勇者の継承者。
 いずれもマイ=ラッセルハートが正面から戦って勝てる相手ではない。
 そんな者たちですら、単独で五道化に勝つことは難しい。
 
(そんな存在が下手に表立ったら、もうそれは『殺し合い』の体裁を保てなくない?
 それともあるの。五道化がいてもな『殺し合い』が成立する理由が。)

 ――冥黒の五道化が参加者を皆殺しにする。それは『殺し合い』を行いたい運営にとって最も不本意な未来のはず。
 ――対応するには最低でも左虎っちレベルの強さがいる。アタシはそのレベルの参加者は多く見積もって20人程度だろうと考えていたけど……
 ――支給品やソードスキルで参加者の戦闘力は底上げされている。その上で『最強のNPCモンスター』として4〜5人がかりのレイドボスとして五道化を配置?
 ――無駄が多すぎる。たかがNPCのためだけにそこまで参加者を強くする意味は……なくない?
      ・・・・・・・・・・
 ――なら、NPCじゃないとしたら?

 マイ=ラッセルハートは考える。
 頭に浮かんだ違和感を必死に言語化し、最も有用な可能性を導き出す。
 クロックハンズとして幾度もなく繰り返す中、目的を達成するために必要な強靭な精神と状況に対応した発想力。
 それがマイの最大の武器。
 それゆえマイ=ラッセルハートは気づく。自分でも信じたくない答えを、震える唇で紡ぎだす。

「……ドゴルドやエケラレンキス、ザラサリキエルが必要なほどに強力な参加者がいる。
 おそらく、あの化け物じみた連中を単独で倒せる存在が。
 そう言いたいの?ツィベタっち。」
 マイが呟くと、向き直るツィベタがわずかに微笑んだ。
 満点のテストを持って帰った母親のような顔つきだ。
 正解ということだろう。冗談じゃないと叫びたかったがその結論に行き着いたのは他ならぬマイ自身なのだ。

176深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:03:45 ID:WI1wHyak0

「マジで言ってる?ドゴルドに至っては4人がかりで逃げるのがやっとだったんだけど?
 根拠はあるの?」
 ・・・・・・・・
「私がここに居る事。
 ウツロちゃんじゃないから街一つ……とは言えないけど、アマラリルクの心遺物をその気になって使えば魔法少女や忍者に肉薄できるレベルになるでしょうね。
 残る支給品も万能の秘密道具に愛用のタイムマシン……。大盤振る舞いとしか言えないけど、逆に言えばそれほどのバックアップを与えてようやく盤面に並べるレベルなのよ、貴女は。」
 突き付けられる言葉には棘がある。
 だがそのどれもが、マイには反論することが出来なかった。
 
「……ソードスキル1つに人体実験までするような運営だし、言っていることはまあ分かる。
 実験が必要ってことは相応の成果や水準が求められることに他ならない。
 この場所は『殺し合い』……求められる水準はNPCじゃなく他の参加者と戦えるレベルだろうからね。」 
 言葉にするごとに憶測が肉付けられ、みるみる実感を帯びていく。
 ただでさえ戦力を失っているマイだ。楽観視する余裕はもはや残っていないのだ。
 
「……同じことが他の全参加者に言えるわね。
 放送が近く参加者も間引かれているとしたら、残るのは『単独で他人を蹂躙できる強者』と『周囲と協力関係を築いてことを為している人たち』
 貴女は前者じゃない。だけど貴女は周囲との協力関係を築いていない。
 でも他者の記憶を改竄し手下にするようなやり口を繰り返していては後者にもなれない。」
 
 ――駄目だよシェフィちゃん! この人は私たちの先生なんかじゃない!
 記憶を戻した水神小夜を思い出す。彼女は明確にマイを拒絶した。
 以後彼女やその仲間がマイに手を貸すことは無いだろうし、小夜が他の参加者と合流していたらマイのことを危険人物だと伝えるだろう。
 理不尽だとは思わない。自分が小夜であってもきっと同じことをする。
 それでも、小夜との間に……そして間違いなくシェフィとも明確な断絶が生まれたのは確かだ。
 
 彼女の予想は正しい。
 ルルーシュ・ランペルージを初め、多くの人間が『強者』の存在を認知し始めている。
 ある者は警戒し、ある者は敵対し、またある者は既に仲間を殺されている。
 そのような怪物と比して、マイ=ラッセルハートは敵(ヴィラン)としてあまりにも弱い。
 いずれ盤面は『強者』との戦いに動くだろうことは想像に難くない、そうなった時マイ=ラッセルハートに向けられる警戒はどれだけのものか。
 そんな雑魚を相手にしている余裕は、参加者の誰も持っていない。

「そうなっては貴女の未来は1つだけ。」
「……五道化が警戒するほどの『強者』を巡る戦いの渦中で、もののついでにアタシは負ける。」
 遮るようなマイの言葉が、ツィベタには痛々しく聞こえた。
 ぽっとでの雑魚のように。マイ=ラッセルハートの復讐は終わる。
 そんな未来がありありと想像できてしまうことが、マイ=ラッセルハートにとって最大の苦痛だった。

「だから自分を顧みろと、そう言いたいの?」
 苛立たしさと悲しさが入り混じった声だ。反抗期の娘のようだとツィベタは思った。

「選択するのは貴女。私にできるのは忠告がせいぜいよ。」
 マイ=ラッセルハートにとって、絶対に起きてはいけない最悪未来(バッドエンド)
 彼女の支給品であるツィベタ=コオリスカヤにとっても、その展開は否定したいものだ。
 生存のために必要なものは、『力』か『仲間』。マイ=ラッセルハートにはそのどちらも持っていない。
 マイ=ラッセルハートは、可及的速やかにどちらかを手にする必要があった。
 ツィベタ=コオリスカヤの望みを言えば、後者を。
 
「今のところ貴女は誰も殺していないし、他者を害する行動をとっていない。
 今ならあるいは、覇世川左虎にも本心をぶつければ仲間になれる可能性はある。」
「……。」
「すぐに結論を出せとは言わない。私の力も貴方の思う様に使っていい。
 それでも、後悔だけはしないように。
 一線を超える前に、貴女の道を選びなさい。」
 
 空色の瞳が優しくマイを見上げている。
 偽りの仲間による孤独な恩讐か。まっすぐ誰かと向き合う正しき協調か。
 マイ=ラッセルハートにとって、ここが分水嶺なのだろう。
 母親のように自分を諭す少女の言葉が、ずっと頭の中に残り続けていた。

177深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:04:48 ID:WI1wHyak0

 ◆◇◆◇◆

 マイ=ラッセルハートが目を覚まし、目に飛び込んできたのは病院の天井だった。
 白色の天井にチカチカと点滅する蛍光灯がその存在を必死にアピールしていたが、窓から入る日光が存分に部屋を照らしていた。
 病室の硬いベッドから起き上がり、眼鏡をかける。
 殺し合いの只中で平然と眠れる自分は意外と図太いのではないだろうか。起き上がりながらそんなことを考える。
 病室を遮るカーテンを開けると、 隣のベッドに腰掛ける覇世川左虎の姿が見えた。
 何やらぶつぶつと呟いていた彼だが、カーテンを引く音でこちらの存在に気づいたようだ。

 「目が覚めたか。マイ先生。」
 今までと変わらぬ涼やかな表情を左虎が向ける。
 顔どころか体や服にも大きな傷はない。エケラレンキスが残したゾンビの群れも、左虎にとっては大した消耗にはなっていないようだった。
 一安心だと胸をなでおろす。
 ――左虎の編集(エディット)が解除されていないことも含めて、一安心だと。
 
「あれからどうなった?
 地下室からのことをあまり覚えていなくて。」
「水神後輩とシェフィ後輩がいずこかに消え、エケラレンキスとザラサリキエルと名乗る怪物(バケモノ)どもも消え失せた。
 ブッ殺しきれなかった左虎の不覚。なんたる失態(シャバ)いことよ。」
「……そっか。」
「ゾンビどもは左虎の暗刃でブッ殺したが、衝撃(ショック)が大きかったのだろう、地上に戻り次第マイ先生の体を休める必要があった。
 その様子では疲れやダメージは残っていないようで。左虎は一安心だ。」
 予想していたことだが、こうして落ち着いて聞かされると敗北したという事実が重くのしかかる。
 夢の中でツィベタとした会話もあって、散々だなと乾いた笑いをマイは浮かべた。
 仲間を2人失い、強敵相手に大した成果もなく負けた。
 物憂げな態度に左虎の顔もわずかに曇る。マイでさえ感じた敗北感を百戦錬磨の忍者が感じないわけがない。
 重い空気が流れる中、左虎の肩に黒い何かがもぞもぞとよじ登りちょこんと座りこんだ。
 
「お2人とも、神妙な空気に割って入るようで恐縮でございますが。
 お話をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「この子は……?」
 人形のように座り込んだ何かは、ポケットに収まりそうなくらい小さな少女の姿をしていた。
 くノ一のような和装の薄着を身に着け鳥の骨のような仮面を頭につけている。
 レジスターもない。ツィベタ同様参加者ではないのだろう。

「あの後を偵察(パトロール)をしていたところ、病院の窓枠に横たわっていた。
 烏天狗というNPCであり支給品とのことだ。秋山小兵衛とアスナという参加者と行動を共にしていたとのこと。」
「正確には別のものに支給されたのですがその者は既に脱落しております。
 アスナ殿に下卑た目を向ける下劣の輩でしたし殺し合いに乗っていたであろう男ですし、致し方ないかと。」
「……まあ、君がいいならそれでいいけどさ。」
 自身が支給された男――ウンベール・ジーゼックのことなど気にもかけない。
 意志持ち支給品にここまで言われるとはよほどひどい男だったのだろうなと、早期脱落した誰かには呆れるほかない。
 
「それで、その秋山やアスナって人はこの近くにいるの?
 だったらこちらとしては敵対する気はないし、情報交換でもできればいいんだけど」
「……そのことだがマイ先生。少々危機(ヤバ)い事態が起こりつつある。
 烏天狗よ、二度手間になるが『黒衣の魔女』についての話を。」
「承知でございます。」
 左虎から放たれる張りつめた空気の中、烏天狗は語りだす。
 秋山小兵衛を殺しアスナを凌辱する災害の存在を。

178深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:06:44 ID:WI1wHyak0


「……つまりそのノワルってのがこっちに向かっていると?」
「ええ。レベル3の幻妖をあっさりと処理できる秋山殿やアスナ殿を、乳飲み子を相手どるかのように易々と殺し嬲る。
 この殺し合いにおいても間違いなく最上位に位置する存在でしょう。
 参考までに申しますと、秋山さまの実力は覇世川さまに勝るとも劣らないレベルかと。」
「それほどの猛者が、手も足も出ずに敗死(くたば)ったか……。」
 衝撃的な内容に、流石の左虎も冷や汗が垂れた。
 烏天狗の評価では左虎に比肩するだろう侍が、令呪で本領を取り戻してもなお瞬殺。
 一緒にいたアスナという少女に至っては、攻撃さえ成し遂げず拘束されてしまったという。
 話を聞いてノワルの悍ましいほどの強さに身震いしながら、マイはあることを思い出す。
 
(ツィベタ=コオリスカヤとの会話で浮かんできた、五道化を生み出す必要があるほどの圧倒的強者……。
 十中八九こいつのことだね。)
 ツィベタとの問答で浮かび上がった『強者』の造形に闇檻の魔女はこれ以上なく合致した。
 推測が当たっていたことで浮かぶわずかな満足感は、最悪の可能性が当たってしまったことの不安と悲壮感に押し流される。
           ・・・・・・・・・・・・・
 五道化がいるからにはノワル級の参加者があと4人いるのではないかと頭の片隅に浮かんだが、考える余裕など今のマイには残っていないので気にすることを止めた。
 目下対応すべきは、自分たちのいる場所に迫りつつある闇檻の魔女その人だ。

「私が見た範囲ですが、ノワルの能力は2つ。
 周囲の人間を拘束する術式。そして秋山殿の命を奪った指先から撃ちだす光弾。
 後者は……ノワルにとって児戯にも等しい一撃かと思われまする。故に事実上明らかに出来たのは拘束能力のみでございましょう。」
「……いや、それだけでもあるとないとでは話が変わる。
 秋山殿に支給されたソードスキル……念能力と言ったか?
 状況から整理すれば、そういった超常(マジカル)なもので補佐をしなければノワル相手に接近戦さえできないということ。
 左虎が無策で突撃(ブッコ)んでいては秋山殿の二の舞だったはず。
 秋山殿には悪いが、遺してくれた情報は有効に使わせてもらう。」
 アスナに起きた出来事を考えれば、ノワルの拘束は『触れる』必要さえなく黒い霧――闇檻さえあれば自在に相手を拘束・無力化できる。
 無数の毛髪による斬撃を用いる覇世川左虎をもってしても、そのような無敵(チート)じみた拘束を受けてしまっては何の意味もない。
 たとえわずかな情報しかないにしても、秋山小兵衛の奮戦が残したものは大きかった。
 
「そうしていただければ、秋山殿も本望かと。」
「でもノワルの能力がそれだけで終わるとは思えない。
 オマケに令呪は3画健在で、支給品だって不明。
 ……考えるだけで頭痛くなってくるね。」
「まったくだ。
 なんたる理不尽(クソゲー)か。
 ……だがそれでも既に1名の命を奪い、まず間違いなく今後多くの参加者を虐殺する魔女。
 早々に対処せねば、被害は増える一方に違いない。」
 左虎の中に残る忍者の本能がノワルの存在を拒絶する。
 退くという選択は覇世川左虎には存在しない。だが、今すぐ攻めるというわけにもいかなかった。

「左虎とマイ先生だけで対処するには、人材(マンパワー)が足りぬ。
 せめて水神後輩とシェフィ後輩がいれば、取れる手段もあったのだが……。」
「左様でございますな……。
 お2人には失礼でございますが、令呪を使い攻めたとてノワルの令呪を使わせることさえ難しいかと。」
「だよね……。
 ノワルを倒すために、どうにか戦力を集めることは必要か。」
 仲間を集める。
 くしくもそれはツィベタ=コオリスカヤとの会話で浮かび上がった、マイへの課題そのものだ。
 ツィベタに言われた通りに事が進んでいるようでどこか釈然としないが、相手が災害(あいて)だ。もはやマイ個人の感情でどうこうなる状況ではない。
 問題はその仲間になりえる人でさえ、ここにはいないということだが。

179深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:08:16 ID:WI1wHyak0

 (こんなことになるなら、無理やりにでもホシノっちたちを引き留めるべきだったかな?)
 小鳥遊ホシノ。マイと同じく喪失を抱えた少女。
 後に左虎に聞いて知ったことだが、彼女はモビルスーツを動かすディアッカ・エルスマンと渡り合えるほどの実力者だという。
 空蝉丸やディアッカ・エルスマン、マシュ・キリエライトにそのマスター藤丸立香。いずれもいてくれれば状況は違っただろう。
 ないものねだりもしたくなる、そんな手づまりな状況に。
 
「見つけたわぁ。」

 窓ガラスが砕ける大きな音と共に、囁くような声が響いた。
 マイ達がいる部屋は地上4階だ。その窓からふわふわと浮遊した少女たちが入り込む。
 両手両足を縛られた天使とでもいうべき姿をした3人の少女――天使βたちは、見定めるような粘ついた視線を左虎とマイに向けた。

「あら、綺麗な顔だけど男なのね。じゃあいらないわね。」
「でもあっちの白衣は女だよ。野暮ったい眼鏡かけてるの趣味悪いけど!」
 にこにこと、にたにたと。
 動物園でライオンやシマウマを眺める子供のような笑顔を天使たちは浮かべていた。
 こいつらは動物だから。私達より低次元の存在だから。そんな声が聞こえそうなほど、むかっ腹の立つ顔をしていた。

「令力の種類がノワルと酷似しております!
 恐らく奴の式神のようなものかと!!」
「制約(デバフ)を受けてなお手数があるか。
 なんたる無法(チート)か。」
 烏天狗がわななくように叫ぶ。
 ノワルの現在地は不明――少なくとも烏天狗の感知の外だ――にもかかわらず、使い魔を派遣できる。
 ノワルがNPCから吸い上げた魔力があってこそ為せる手段ではあったが、そんな事情はマイや左虎には関係がない。
 
「だが、距離(レンジ)がある故か手駒(ザコ)はどうとでもなるレベルのようだな。」
「何生意気言って……」
 ザコ と言う言葉にカチンときたらしい。
 天使たちは左虎の四肢を縛り上げるために腕を伸ばし。
 
「遅行(トロ)い。」
 ヒュンと何かが空を切る。
 それが覇世川左虎の刀より鋭き毛髪だとは気づくことも出来ない。
 魔法を唱えるより速く、天使の1人は両肘より先を失った。
 
「ぎゃあああああああああああああああ!!」
 噴水のように噴き出す流血。
 どうして?どうして?どうして?どうして?
 男なんて視界から弾き飛ばすだけの虫けらのはずなのに。
 自分たちは蹂躙する側のはずなのに。
 一瞬の出来事に3人の天使は残らず動揺し、致命的な隙を曝した。
 悲鳴と困惑の中、再度響く風切り音と共に近づいていた天使2体の首が飛ぶ。
 あまりの早業に左虎の肩に乗る烏天狗にも何が起こったかは分からないほどの一瞬のうちに、2匹の使い魔が絶命した。
 
「なんという早業!これが忍者の技術ですか。」
「流石に式神ではドゴルド並みの速さや強さとはならんか。
 だが、後一体。」
 2体倒したではなく、後1体残っている。そう考えるのが忍者の思考回路(メンタル)。
 油断なく、隙も無く。おろおろと慌てふためく最後の天使に刃が振るわれる。
 もはや止まらないはずの刃を前に、女が叫んだ。
 天使βではなく、マイ=ラッセルハートが。
 
「待って左虎っち!
 その一体は残して!」
 マイの叫びに左虎は髪の動きを変える。
 残る天使の頸を切るではなく、全身を凍らせるような気流(かぜ)を起こし。 天使の体が凍り付く。
 床から突き出た氷柱により天使の羽は凍り付き、四肢の拘束具が冷却され皮膚に張り付いているようだ。
 もはや一歩も動けないが、それでも天使は生きている。
 
「マイ先生が言うなら……だが残せば烏天狗がここに居ることが露見(バレ)るのでは?」 
「いや、それでいいんだよ。
 そんなこと気にしなくていい、の方が正しいかな。」
 ブッ殺さなくていいのかと。
 そう含みを持った左虎の問いに、マイはタイムマシンを掲げることで応えた。

180深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:09:48 ID:WI1wHyak0
 
「戦力を集めるいい方法を、思いついたからさ。」
 
 編集(エディット)。
 マイが唱えるとともに時計がバチリと火花を上げる。
 NPCにも編集(エディット)が有効であることは、ドゴルドで証明済みだ。
 そして編集(エディット)を使うなら――死体では意味がない。
 
「なに……なにをし……たの?」
 天使の顔から薄ら笑いが消えた。
 視界が歪み、記憶が歪み、自分の知らないナニカに上書きされていく。
 ノイズがかった思考に不快感を覚える天使は、目の前の女を見た。
 天使βの認識など、ノワルとそう変わらない。
 男はただのゴミ。女は美味しいミルクサーバー。例外はあの黒い神くらい。
 だというのに。

(この女の笑みは……なんだ?)
 混乱を招く何かを思いついたと言わんばかりの、邪悪な笑みを前に。
 生きながらえたのではなく、生かされたのだと。
 ようやく気付いた天使βの意識は、砂嵐に塗り固められ。そして――
 
◆◇◆

「それで、状況を報告してくれなきゃ流石の私も何も分からないんだけどね。
 貴方達は蛇腔病院に向かったはずよね。何があったのかいい加減話なさいよ。」
 帰還した使い魔を前にノワルはわざとらしくため息をついた。
 病院で左虎に捕縛され、マイに『何か』をされた使い魔だった。
 
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
 あからさまに不機嫌なノワルを前に、戻ってきた天使は子供のようにプルプルと震える。
 ノワルが不機嫌な理由は無様に逃げおおせたから――ではない。
 天使たちはノワルにとって最下級の使い魔だ。
 烏天狗を追う様に指示したのは万が一烏天狗が男を連れてきたら鬱陶しいので『間引く』ための行いだが、もし烏天狗の出会った参加者にアルカイザーやマジアベーゼ並みの実力があれば倒されるだろう。そんなことは承知の上だ。
 むしろ自分に情報を持ち帰るために生きて戻ってきたのは大した戦果だ。最低限の役目を果たしたとさえいえる。
 問題はその役目を果たした使い魔が――ノワルに何1つ情報を伝えようとしないことだ。

「もう一度だけ聞いてあげる。貴女は誰と戦ったの?あの支給品の子はどんな参加者と合流したの?
 子どものおつかいよりも簡単な質問のはずよ。知ってることを言うだけですもの。」
 目を潤めた天使の顎を、ノワルのしなやかな指がなぞる。
 愛撫のためではなく脅迫のために。
 指から伝わる温かさに一層身震いする天使は、それでも何も語らない。
        ・・・・
 何も語らない、語れない。

「ごめんなさい!」
「そんな言葉聞いてないわぁ。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
 壊れたラジオのように謝罪を繰り返す天使の姿に、流石のノワルも違和感に気づく。
 この使い魔は情報を明かさないことには、何か理由がある。
 例えば――ノワル以外の誰かに支配されてしまっているから。
 だとしたら今の彼女の主は――
 
「ごめんなさい!!
 ・・・・・・・・・・・
 ユア!マジェスティ!!」
「……そういうことね。」
 謝罪の言葉でさえ、ノワルに向けたものではなかった。
 そう理解すると同時に、びゅんとノワルの腕が空を払う。
 
「ばびゅ――」
 膨らんだ風船に針を刺したような破裂音と共に、天使の体が弾け飛んだ。
 跳ね飛んだ返り血を拭うノワルの顔は冷たい。
 
「私の使い魔を洗脳するなんて、思ったよりやるわね。
 男には興味ないけど、誰に喧嘩を売ったのか教えてあげたほうがいいのかしら。
 ねえ――ルルーシュ・ランペルージ。」
 天使の言葉は数時間前の映像に映る綾小路清隆の発した言葉と一致する。
 あのギアスなる力ならば、ノワル自身はまだしも使い魔を操ることは確かに可能だろう。
 ノワルにとってルルーシュは、洗脳能力こそ警戒すべきでそれ以外は大したことない小物であるが、少々考えを改める必要がありそうだ。
 率直に言って不快だった。『黒き神』のような明らかな規格外の存在ではない、ただの男を意識する必要があるというだけで心を穢されたような気分になる。

181深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:12:35 ID:WI1wHyak0

「ま、犯人が分かるだけ仕事したほうね。
 てっきりテレビ局で籠城していると思ったのだけど、意外とせこせこ動き回ってるのかしら。ネズミみたいね。
 まあ、放送で随分と大きな口をきいてくれたんだし、蛇腔病院が彼の管理下にあってもおかしくはないか。
 とにかく行先は決まったわ、なら多少はおめかししないとね。」
 パチンと指を鳴らす。
 ノワルのすぐそばで浮き上がる漆黒の宝珠。
 底の無い孔のようにも見えるそれは、ノワルの魔法闇檻を圧縮し女の子たちを閉じ込めたポケット闇檻だ。
 極小の結界でありその中にはリュックと違い参加者たちも閉じ込めることができる。
 一方その維持のためには結界の外からノワルが魔力を注がねばならず、ノワルが中に入り調教に現を抜かしすぎると崩れてしまう欠点があった。 

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」
「あああああああああああ!!!!!!」
「いい子たちねぇ〜。
 滅入りかけた気分が落ち着くわぁ。」
 
 ポケット闇檻の中に入り込んだノワル耳に響く、甲高い悲鳴、嗚咽、嬌声。
 ノワルの手で捕らえられた女性NPC達が大量の媚薬と闇檻の魔女の拘束により、お子様には見せられない絵面になってビクンビクンと壊れたおもちゃのように震えていた。
 休むことも眠ることも、死ぬことも許されず絶頂を繰り返す少女達。
 極上のオーケストラにも匹敵する最高に艶やかなコーラスをよそに、ノワルは少女の前で立ち止まった。

「ハァイ。元気かしら、アスナちゃん。」
 見上げる先には、王墓に収められるミイラのようにがっちりと縛り上げられた少女。
 装置に繋がった程よく大きな形のいい乳房と尻にはチューブ状の装置が施され。晒し者とされている。
 ギャグボールのような拘束を施された口のチューブからは媚薬と栄養を絶えず垂れ流され、舌を噛み死ぬことさえ許されない。
 常人なら数分と持たず快楽と絶望に呑まれるだろう地獄。
 それでも、閃光と呼ばれた少女の目は死んでいない。
 何度も意識を失った。暴力的な快楽で脳味噌を直接嬲られたような感覚が絶えず続いている。
 一体何時間たったのか、時間の感覚はもはやない。
 それでも少女は――アスナはただ一つの思いを胸に、必死にノワルを睨みつけた。
 ノワルに対する、尽きぬことない敵意を光らせ。その抵抗がノワルをさらに快(たの)しませた。
 
「ううううう!!!」
「まだ意識があるなんて。やっぱりいいわぁ貴女。」
 白く美しい顔ににっこりと笑みを浮かべ、大事なところから漏れる液を舐めた。
 不快感、羞恥心、屈辱、敵意、快楽。
 混ざり合った感情がアスナの全身を動かすが、哀しいかなたとえ令呪を用いても今のアスナではこの拘束を抜け出せないだろう。
 
「せっかくだし、貴女にも働いてもらおうかしら。
 これから、忙しくなるだろうし。」
 しなやかや指を顎に押し当て、ゆっくりとなぞる。
 ざわざわとした不快感。
 これからきっと、嫌なことが起こる。
 ミルクサーバーのなったアスナに拒否権はない。
 
(あなたの言いなりには絶対にならない!)
 拘束された口からわずかでも言葉を出そうと動かす。
 同時にノワルの手で尻から特能の媚薬が注がれ、アスナの全神経が雷に打たれたように絶頂を迎えた。

「今はとにかく、美味しい魔力を頂戴ね♡。」
「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」
 愛液を垂れ流す無様な姿を晒しながら、晒された乳房と共にノワルお気に入りのミルクサーバーがぷるんと揺れる。
 乳首を虐め続ける刺激と口をふさぐギャグボールもあり、反抗の叫びは家畜のような唸り声に成り下がっていた。

182深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:13:39 ID:WI1wHyak0

【エリアB-5/租界/9月2日午前11時】

 【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:ルルーシュに対する不快感、ダメージ(中)(回復中)
服装:ノワルのドレス
装備:賢者の石@鋼の錬金術師、万里ノ鎖@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3(ローラ姫のもの)、青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG、ホットライン、レジスター(ローラ姫)、ランダムアイテム×0〜2(アスナのもの)、ランダムアイテム×0〜1、 ラランダムアイテム×0〜1(ウンベールのもの)、アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ、ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)、ポケット闇檻、魔力サーバー(NPC)×いっぱい、魔力サーバー(アスナ)
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:アイツら(マジアベーゼ、マジアマゼンタ、イドラ、千佳、アルカイザー)にはいずれ報いを受けさせる
01:この殺し合いを乗っ取って、自分好みに改造してあらゆる世界から集めた女の子を愛でる
02:黒い男(アルジュナ)を強く警戒。気を引き締めないとねぇ
03:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃん、アスナちゃんの魔力はおいしかったわね。
04:まだ見ぬ異世界のかわいい女の子に会うのが楽しみ。今度は殺される前に会いたいわ
05:ルルーシュって奴、思ったよりも警戒するべきかもね
06:令呪とレジスターに関しても細工の余地がありそうね……
07:蛇腔病院に向かう。ルルーシュの管理下にあるのかしら
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
※ノワルに課された制限は以下の通りです。
闇檻 無限監獄の封印
魔力解放形態の封印
結界による陣地の作成不可
召喚できる使い魔は天使α、天使β、天使γ程度
闇檻 ラストレクイエムで呑み込める範囲を1/10未満に
※闇檻の応用によりポケット闇檻を作り出しました。
 「人間やNPCを入れられるリュック」のような性能をしており、中身に魔力サーバーに加工したNPCおよびアスナを収納しています。
 ただし制約として、ノワルが外部から魔力を使って維持する必要があるので、ポケット闇檻に籠城するといった手段は使えません
※数多くの女性NPCとアスナを魔力サーバーに改造してポケット闇檻内部に収納しています。内部から魔力を抽出可能です。


【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)】
状態:全裸、魔力サーバー、疲労(特大)、絶頂、ノワルへのうらみ(極大)
服装:魔力サーバーの装置と拘束具
装備:搾乳機、チューブ、バイブ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:"その時"が来るまで生きる
01:先生(小兵衛)の教えを肝に銘じる
02:生きて、先生(小兵衛)と私のうらみをあの女(ノワル)に返す
03:生きてミトに再会する……?
04:茅場って……あの茅場よね?
05:どういうこと?これはSAOとはどう関係しているの?
06:キリト……同じSAOのプレーヤー?
参戦時期:ミトにパーティを解消され、ジャイアントアンスロソーに殺される寸前
備考
※キリトに助けられる前ですのでキリトとの面識はありません。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
※小兵衛との会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※名簿の並びからキリト〜ユージオまでをSAOのプレーヤーではないかと推測しています
※胸の傷はノワルにより治療されました

 
 ◆◇◆
        ・・・・・
「これでノワルはルルーシュの手で手下を操られたと考える。
 テレビ局のある方向にノワルを誘導できる可能性が高いし、ルルーシュだってノワルほどの災害が近づくのなら対応せざるを得ないよね。」
 へらへらと緩い口調でマイは言う。
 マイが天使に与えたものは『自分がルルーシュに忠誠を誓っている』記憶だ。
 ノワルの元に戻った彼女がどんな反応をするか、その仔細まで操ることはできないが、間違いなくこれでノワルとルルーシュは敵対することだろう。
 ルルーシュの名前は全参加者が知っている。
 マイや左虎の名前で呼んでもノワルは歯牙にもかけずに誘導の意味をなさなかったかもしれないが、洗脳能力を持ち悪名高いルルーシュ相手では無視もできない。
 
 嬉しそうに説明しながら、3人は病院を離れ租界を南に進んでいた。
 歩きながらの説明に烏天狗はマイの『作戦』の容赦のなさに左虎の肩に乗りながら身震いしていた。

183深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:14:11 ID:WI1wHyak0

「お……恐ろしい手段を使いますなマイ先生殿……。
 ルルーシュ殿の根城はここから南のテレビ局。ノワルとの戦いに彼を巻き込もうというわけですな。」
「まあ、そういうこと。
 あれほど派手な演説をしたルルーシュだ。戦力だってそれなりに集めているはず。」
「それに彼奴には洗脳能力がある。
 他の参加者やNPCを配下に加えるのも児戯(ヌルゲー)に相違ない。
 この数時間を無策で過ごしているということはありえんだろう。」
「成程……。」
 戦力が足りないならある場所から持ってくればいい。
 褒められた手段ではないが、ノワルを相手にするにはこのくらいの無法は必要だろう。

「それでマイ先生。これからどうする?
 左虎としては敵前逃亡(トンズラ)というのは性に合わんのだが。」 
「うんそれなんだけどね。
 ……ちょっと待って。何か聞こえる。」
 ザッザッザッと規律良く聞こえる足音が、視界の端で足を止めた。
 マイを視界に捉えた黒いロボット、ルルーシュのギアスにより制御下に置かれたジンと呼ばれる索敵に向いたモビルスーツだ。
 規律の整った動きで進む2機のロボットがライフルを構え、左虎も同時に手刀を構えた。
 ライフルを持った機械(ポンコツ)2体。忍者ならば瞬殺できるが、走り出そうとする左虎をマイは止めた。

「ちょうどいいや、彼らで試そう。」
 ジンが引き金を引くより早く、マイはタイムマシンを起動する。
『編集(エディット)』と唱えるとともに、NPCの電子頭脳で電気が弾けた。
 武器を下ろした2機のジンは、手懐けられた犬のようにマイの傍まで近づき立ち止まる。
『自分の指示に従う事。』それがマイの与えた記憶だった。

「よし、上書きできたね。
 ただ触れない場所がある……成程。ルルーシュの力は記憶操作じゃないのか。」
 ルルーシュの洗脳、絶対順守のギアス。
 その能力は単なる記憶操作でどうにかなるものでは決してない。
 命令に従っている間記憶を失う性質もあってマイ=ラッセルハートでは干渉できない部分だ。
 『強制力』という点で言えば、その力はマイの上位互換ともいえる。
 想定内だ。
 
「となるとルルーシュが指示したら指揮権が戻るかもしれない。
 まあ機械系NPCなら細工できるし、そもそも通信機能は壊すつもりだったからどうにかなるけど。」
 満足げな笑みを浮かべ、マイは再び記憶を流し込む。
 指示を受け取ったジンたちは何かコンソールを動かした後、マイ達が元居た方向に向けて移動を開始した。

「ふむ、何を教導(インプット)させた?マイ先生。」
「呼び出せるNPCを可能な限り呼んでくること。
 それが終わったら蛇腔病院に向かう事。
 以上をルルーシュやアタシたち以外の参加者にはバレないように行う事。
 それを指示してる。
 ノワルを誘導するのは蛇腔病院にしたいからね。」
「ルルーシュとぶつけるのならテレビ局に誘導するのではないのですか?」
 ルルーシュの名前を使ってまで誘導した以上、ノワルとの決戦はテレビ局で行うのだと烏天狗は思っていた。
 
「ルルーシュの名前を使ったのはノワルの移動を東側に固定したかったからだよ。
 極端な話、ルルーシュ陣営の戦力をそれなりに稼いで蛇腔病院に誘導できれば及第点。
 当然、ルルーシュたちが本腰入れてノワルと戦ってくれればそれ以上はないけどね。そのために名前も出したんだし。」
「本命は別にいる。と言うことですか?」
「そう。
 死告邪眼のザラサリキエルっていう、NPC。それが対ノワルにおける本命。」
「彼奴か……。」
 つい先刻左虎とマイに辛酸を舐めさせ、小夜とシェフィが離れるきっかけを作ったフードの女。
 ドゴルドに並ぶ実力であればいかなノワル相手とはいえ一方的な勝負にはならないだろう。
 無論、ノワルの使い魔や一般NPCと違い、マイはザラサリキエルを操ってはいない。
 そも、ギアスキャンセラーをベースとした無効能力を持つザラサリキエル相手に編集(エディット)は効かないだろう。

 だが操らずとも行動を縛ることはできる。
 ノワルが蛇腔病院にやってくることはザラサリキエルにとって最悪のはずだ。
 なぜなら彼女は――あの病院の地下に潜む、血塗られた庭園の守護者なのだから。
 
「あの女が蛇腔病院を守護してるっていうのなら、そのど真ん中にノワルがやってきたら対処せざるを得なくなる。
 ただでさえ苦汁を舐めさせられたんだし。あいつにも痛い目見てもらわないとやってられないでしょ。
 それに、多分あの女はノワルにとても相性がいい。」
「といいますと?」
「ザラサリキエルの持つ能力の1つに、一定範囲の能力の無効化がある。
 ノワルの拘束があの女には通用しないってことだよ。」
 まさしく天敵だ。
 案外ザラサリキエルは対ノワルを考えて能力を与えられたのかもしれないなと、限りなく正解に沿った考えを頭に浮かべた。

184深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:17:19 ID:WI1wHyak0

「作戦は分かりました。
 ルルーシュの配下のNPCを使いノワルを蛇腔病院に誘導しザラサリキエルにぶつける。
 ルルーシュが参戦する可能性も考えれば、思いつく限りでは最善の手かと。」
「左虎も同意する。
 流石はマイ先生と言うべきか。
 これでも容易(ヌル)いとは言えぬが、戦闘(ボコ)れるめどは立ちつつある。」
 ひとしきりの作戦を前に、烏天狗と左虎も気を引き締める。
 ノワルをブッ殺すめどが、あるいはアスナを助けられるめどが立ちつつある。
 2人は気づかない。尋ねない。
 マイ=ラッセルハートがノワルの使い魔やNPCを操る時計は一体何なのか。
 それに違和感を抱かないような記憶を――2人は既に植え付けられていることに。
 
(――これでいい。これでいいんだ。
 平等な世界を目指すと決めた時から、アタシの道は1つしかない。)
 
 ただ一人。全てを知る女は自分に言い聞かせる。
 ノワルも殺す。ザラサリキエルも殺す。
 そのために全てを騙し、操り、利用する。
 結局こんな張りぼての未来しかマイ=ラッセルハートは選択しない。選択できない。
 
 ふと、ツィベタとの言葉が脳裏をよぎった。
 
 ――それでも、後悔だけはしないように。
 
 「アタシに後悔はないよツィベタ=コオリスカヤ。
 貴女には悪いけど、何を改竄(つか)ってでもアタシは勝たなきゃいけないんだ。」
 ぎゅっと時計を握りしめる。
 両親を失ったあの日から。世界の不平等さを知ったあの日から。
 マイ=ラッセルハートに迷いはなく。
 彼女に残った未来(ルート)は、1つしかない。

 彼女の心を救う誰かが、現れたりしない限り。

 【エリアC-6/蛇腔病院近隣/9月2日午前11時】

 【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(小) "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下 マイ=ラッセルハートへの信頼(大?) ノワルへの警戒(大)
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01?:マイ先生の懇願(たのみ)を断る左虎ではない
02:水神後輩に一体何が?
03:空蝉丸……ドゴルドと因縁がある参加者か。
04:よもや病院の地下にこれほど悍ましい物が眠っていたとは。
05:冥黒の五道化……マイ先生の為にも必ずブッ切除(つぶ)さねばなるまい。
06:ノワルなる魔女……必ずブッ殺さねば
参戦時期:死亡後
備考
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、邪樹右龍・繰田孔富含む一部記憶が欠損しています。
強い衝撃等があれば蘇るかもしれません。
※マイ=ラッセルハートにより、『マイのタイムマシンに違和感を抱かない』ように記憶を操作されています

【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:健康 小鳥遊ホシノへの興味(中)、苦々しい感情(大)
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士
   オコノミボックス@ドラえもん
   ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:左虎っちを利用する。優勝したら左虎っちの両親を蘇らせてもいい
02:タイムマシンの使用は慎重に。
  削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
  どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
08:ノワル……間違いなく五道化級の参加者。ヤバいねこれは。
09:ツィベタっちの言いたいことは分かる。それでもアタシは――。
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『鵺の陰陽師』の世界についてのある程度の知識を得ました。
※ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-は意志持ち支給品ですが、夢の中など特定の状況可でしか会話が出来ません。
※冥黒の五道化が必要なほど強力な参加者が5人いるのではないかと考えています。
※ルルーシュ配下のジン長距離強行偵察複座型@機動戦士ガンダムSEEDを操り、ノワル誘導のため蛇腔病院に向かわせました

185深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:19:32 ID:WI1wHyak0
【烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師】
状態:令力消費(中)、独立移動、ノワル戦のトラウマ(極大) 編集(エディット)影響下(小)
服装:烏天狗の服装
装備:なし
道具:なし
思考
基本:親しい者に危機が及ばない限り契約者の意向に従う
00:小兵衛の最後の指示を遂行するため、他の参加者を探す。
01:マイ・左虎と共にノワルを倒す。
備考
※秋山小兵衛より、以下の指示を受けています。
 殺し合いを打倒しようとしている参加者を探すこと。
 協力してくれる参加者を新たな主をすること。
 見つけた参加者に「アスナが闇檻の魔女に囚われた」ことを伝えること。
※マイ=ラッセルハートにより、『マイのタイムマシンに違和感を抱かない』ように記憶を操作されています
 現段階ではそれ以外に記憶の操作はされていません。


◆◇◆◇◆
 
「魔獣装甲の奴め、雑な仕事しやがって。」

 冥黒の5道化が一人死告邪眼のザラサリキエルは。黒いフードの奥で忌々し気に吐き捨てた。
 彼女がいるのは『接木の庭園』。
 蛇腔病院の地下にある、ソードスキルの実験場だ。

「『劣化複製(デッドコピー):覇瞳皇帝(カイザーインサイト)』
       ・・
 もし私がこの予測を見ていなかったらどうするつもりだったんだあの単細胞は。」
 覇瞳皇帝の権能、覇瞳天星。
 世界を演算することによる未来予測は、七冠の権能を複製しているザラサリキエルも所有している。
 その演算が蛇腔病院に接近するノワルの存在を予測した。
 対ノワルのための五道化である彼女がその存在を見逃すわけにはいかなかった。

「災害の魔女か。ひょっとしたら甘ちゃん皇帝に凶星病理の奴も……。
 いや、皇帝サマはともかくあの軟派馬鹿は怪しいな。どのみち邪悪の王以外にどこまでやる気を出すか。
 まったく、アビドス高校ほどじゃないとはいえこの病院もA級の要注意施設のはずなんだが。」
 はぁと肩をすくめる。状況はザラサリキエルにとって良くない方向に進んでいた。
 ザラサリキエルは対ノワルを想定した五道化だ。
 早々にエリア1つを潰し、アルジュナ・オルタと正面から渡り合い、令呪三画を起動した秋山を指先1つで抉り殺す。
 そんな所業を行う災害を倒す可能性を秘めているから彼女はここに居る。
 戦っても負けるつもりはない。
 だが、こんな早期にノワルを脱落させることはザラサリキエルにとって望ましい展開ではなかった。
 
「確かに私は最終的にあの魔女を倒すのが役目だが。こんなに早く倒しては意味がないんだ。
 あいつらにはもっと駒どもを間引いてもらう必要がある。クルーゼ様が五道化(私ら)を用意してまで巻き込んだ怪物がキルスコア0などシャレにならん。
 これが凡人の高校生だの堅物軍人どもなら何も考えず殺せたんだが……。とんだババを引かされれたものだ。」

 近隣にいることが確定している参加者を指折り数え、ザラサリキエルは嘯いた。
 五道化として殺し合いのバランスを整えることも役割である以上、盤上を大きく動かしかねない参加者は順序だてて殺したいところだ。
 そういう意味ではノワルやルルーシュと言った、影響力の高い参加者は中盤までは残しておきたい。
 無論、参加者たちが自発的に倒すことを止めはしない(したら羂索や茅場に何を言われるか分かったものではない。)が。
 参加者の手で誘い込まれた現状は、彼女にとって不服と言う他なかった。

「まあ、ノワルを『接木の庭園』に入れるわけにはいかないしな。
 あの魔女にソードスキルの研究データなど見せたら、どんな魔改造を施されるか分かったものじゃない。
 こればっかりはあのクソハッカーの作戦勝ちだ。
 激怒戦騎の言葉を借りるなら、腹立たしいことこの上ないがな。」
 
 左虎の手で真っ二つに切断され床に散らばったゾンビの群れを蹴り飛ばし、ザラサリキエルは地上に向かう。
 せまる災害に備え、守護者としての使命を果たすため。
 それが彼女たち、冥黒の五道化のプライドであり義務だ。
 贋作の信念を胸に、ザラサリキエルは庭園の扉を開けた。

186深海シティアンダーグラウンド ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:19:52 ID:WI1wHyak0
【エリアB-6/蛇腔病院地下 『接木の庭園』/9月2日午前11時】
【死告邪眼のザラサリキエル】
状態:健康
肉体:???(女性なのは確定)
装備:フード付きローブ、
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:多数の銃火器@???
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:魔獣装甲に代わりこの守護領域に留まる。
02:0005bとマジアアズールは……まあ仕方ないか
03:もし上の宇蟲王などがこちらに来てしまうことになれば撃退する。
04:魔獣装甲の奴、遊びすぎなければいいんだが。
05:誰がエルちゃんだ、誰が
06:ノワルを庭園に入れるわけにはいかない。
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※ヘイローを有しています。銃撃などに足して異様なタフネスを発揮します。
※肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※死告邪眼はギアスキャンセラーをベースにした彼女の固有能力です。
 発動すると有効範囲内の異能力を無効化できますが、その有効範囲に常に自分が含まれます。
※アストルムの七冠の権能@プリンセスコネクト!Re:DIVEを模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

187 ◆kLJfcedqlU:2025/05/28(水) 22:20:10 ID:WI1wHyak0
投下終了します

188 ◆TruULbUYro:2025/05/28(水) 23:58:55 ID:8C.fp4h60
投下させていただきます

189渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:01:10 ID:Wv9k5Xms0
工業の国シュゴッダムの要、コーカサスカブト城。
誇りなき殺し合いの地に再現された、誇り高きチキュー五大国最強の象徴
宇蟲五道化への最後の切り札でもある堅城は今やその栄華の面影さえ感じられぬ、無残な瓦礫の山と化していた。
黒き最後の神と災害の魔女二人の超越者同士の争い。
その前には母星の脅威に抗うべく、人智の粋を結集して築城された国家の象徴も塵芥と同じ。
人と神。人と災害。越えようのない生命としての残酷な格差。
コーカサスカブト城の落城は、その無情さを可視化出来る形で体現するかのようであった。

神話の争いの痕跡が残る戦場を一人の偉丈夫が練り歩く。
剛力無双の証たる金色に煌めく雷神の鉞を軽々と担ぎ。
ウェーブがかった青髪の奥から覗く双眸は、鋼のように冷たく、されど荒ぶる闘志を湛えて。
屈強な総身を支える筋肉の鎧は、大国の城塞に勝る程に堅牢。
肉体に見合う覇気を放ち、威風堂々と戦場を闊歩するその出で立ち。
此処に民草がいれば、彼の者は名だたる英雄かと。
そう認識するやもしれないが、本質はまるで異なる。

男は、英雄にあらず。
堕ちた英雄。否、一度たりとも英雄と認められず歴史の闇に消えた暴虐の徒。
なりそこねた英雄への憎悪と執着。
そして、死して尚癒えぬ闘いへの渇望のままに闘争を繰り返す狂戦士。
英雄殺し、暴斧のバルバトス・ゲーティア。
二度の死を経て、三度の生を享受する今となっても内に渦巻く悪意は潰えず。
異世界の戦場にて、乾きを満たす上等な獲物を探し求める。

「…つまらん」

そう吐き捨てる様に呟いたのは、落胆の念。
一刻に渡り鎬を削った歯応えのある獲物、グラファイトが光と共に飛び去った先。
東へと粛々と歩みを進めた結果、辿り着いた殺し合い最大規模の戦火の跡。
本来、英雄王の居城に勝る豪華絢爛であったろう贋作の古城。
それを無価値な塵屑へと早変わりさせた、まだ見ぬ強者への期待が膨らむが、既に祭りの後。
後を辿るには時間が経ち過ぎたか。破壊を齎した者達の足跡は碌に残されていなかった。

190渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:02:42 ID:Wv9k5Xms0

「百を越す参加者がいて、何故あれから一人とて出くわさん。
 戦場のゴミ掃除なんぞの為にこの俺を呼んだとでもいうのか」

かつてエルレインが奇跡によって己を蘇生させたように。
羂索ら主催者は外法を以て、バルバトスを地獄の底から呼び戻した。
聖女は下らぬ救済と平和を掲げ、その宿願を果たす為の駒を求めた。
ならば、此度の生にも目的がある。
奴等なりの希望、奴等なりの願望、奴等なりの大望。
何れかがあるからこそ、現世へ招き入れたのだ。

その所以をバルバトスは知らない。
推し量る道理もなければ、仮に知る機会があったとて米粒程の興味も沸かない。
だが、三度目の生に主催者らが求める思惑は明白だった。
歴史の闇に消えた暴虐の徒を生き返らせる理由など一つ。
聖女も、呪詛師も、腹の内は皆同じ。
奴等は口を揃えて、バルバトスにこう告げるのだ。

────闘えと。

暴れ狂え。刃を振るえ。敵を屠れ。血を啜れ。屍を築け。
闘争の中でしか生きられぬ、野蛮で哀れな男には相応しき役目であろうと。
美麗な相貌と魅惑的な甘言の中に、憐憫と嘲笑を含みながら。
生と死を神の如く自在に操り、運命を手中に収める超越者気取り共。
人を飼い慣らした気でいる連中の黒い腹など見え透いたもの。
主催者の底を薄々察した上で、バルバトスの答えはこうだ。

だからなんだ。
そんなことは知ったことではない。

歴史を庭とし駆け回る首輪付きの狂犬の次は。
仮初の世界を闘技場とし殺し合う枷付きの剣奴。
仮にも英雄の称号を求めた者の未来としては、滑稽の一言に尽きる末路。
もし彼の物語に観客がいるならば、皆後ろ指を刺して笑う事だろう。
だがしかし。
其れと己の願望を満たす事に、一体何の支障があろうか。

バルバトスは欲する。
どれだけ血を啜ろうと癒えない永遠の渇きを満たす者を。
バルバトスは憎む。
自分より遥かに弱き者共が、英雄の名を欲しいままとする事実を。

二度の死を経験して尚、その魂は敗北を一切認めず。
如何に生き汚く、卑怯卑劣と罵られようと。
執着の根源を遍く滅ぼし、屍の山の頂上で己が勝利を正史とする。
殺戮遊戯の旗の下、互いに利害が一致するならば剣奴すら甘んじよう。
断じて羂索共に媚び諂い屈服した結果などではない。
全ては己の意思で決めた選択であり、運命だ。
其処に不満など何ら無かった。


奴等の望むがままに、戦場を蹂躙してやろう。
己の欲望のままに、他者を捻じ伏せてやろう。
真贋の地に蔓延る英雄共を再び狩り尽くしてやろう。


だがそれは、この世界が渇望を満たしてくれればの話。

191渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:04:22 ID:Wv9k5Xms0

「何故俺が狩るべき英雄共は、俺の乾きを満たすに足る戦士共は…揃いも揃って俺の手から擦り抜ける?
 用意した駒の扱いならば、あの女の方が余程マシだったぞ」

バルバトスのお眼鏡に敵う英雄や戦士は存在した。
東軍総大将、天与の暴君、超絶進化の龍戦士。
歴史改変の折の英雄狩りでも、早々お目にかけない珠玉の猛者達。
だが、彼らとの闘いは運命の悪戯かと言わんばかりに全て流局。

一度目はボルテージが上がり、地形を顧みなかった結果のミス。
二度目は無粋極まりない偶発的なアクシデントで強制終了。
それから先、現れるは闇雲に襲撃するしか脳の無いNPC。
己と相手の力量を見定め、分を弁える事も知らぬ。
生存本能に従う魔物以下。生物としての出来損ないの集まり。

五体満足でこの殺し合いに足を踏み入れた時。
それは全身から魂に至るまで、歓喜に溢れたものだ。
自らの幕引きのため、神の眼により身を砕け散らせた先で。
二度ならず三度も、闘争の機会が巡ってくる等想像だにもしなかった故に。

だが、深い喜びの後に来る悲しみは一層酷いものとなる。
人質を取った"程度"で呆気なく剣を捨てる英雄を目の当たりにした失望や。
嘗て激しく憎悪した英雄への報復が、余りに容易く叶ってしまった時の虚無。
今に至るまでの退屈な放浪はそれらに並ぶ虚しさを感じだ。

「ただ破壊行為を繰り返すだけで、英雄共を呼び寄せられるのならば、容易い話だったのだがな…」

参加者の仕業であろう崩壊した城の残骸を見やる。
竜戦士グラファイトとの一時間にも渡る死闘。
一エリア全体を舞台とした結果、広がりに広がった破壊規模。
この城の落城と同様、他の参加者相手からはさぞ目立った事だろうに。
にも関わらず、群がってきたのは敵と呼ぶのも憚られる雑魚だけ。
ついぞ鳴り物入りで参戦する、強き乱入者は現れなかった。
どれだけ乱痴気騒ぎに興じようと、届く相手がいなければ狼煙にすらならない。
直近の施設で此処と同じ真似をしても、期待は薄いだろう。

残る望みは最初に出会った唯一の既知の相手。
ソーディアン、ディムロス・ティンバー。
一度目の生に終幕へ導いた張本人であり、英雄の座を奪った憎悪の対象。
今でこそ執着の矛先はカイル・デュナミスに移ってはいるが。
かの英雄に焦がれる少年が不在であれば、やむを得ない。
行き場の無い憎悪の矛先として、存分に利用してやるとしよう。

このバルバトス・ゲーティアの存在を知り、奴が放置を選ぶ?
断じてあり得ない。
互いの人となりはこの会場の誰よりも熟知している。
引導を渡したかつての戦友は、何度生き返ろうと性根は変わらず。
闘争を求め、誰彼構わず殺戮を繰り返す。 
そのような悪逆を、誇り高き英雄とやら良しとはしない。
必ずや同行者と共に、おのが自身をこの身へ突き立てに来る筈だった。
しかしそこまで大移動をしていないにも関わらず。
近辺にいるはずの宿敵は一向に現れない。

192渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:06:23 ID:Wv9k5Xms0
それは何故か。バルバトスもまた知っている。
地上軍の英雄たる中将閣下殿は、あいも変わらず英雄らしからぬ甘ったれで。
合理で人を切り捨てる事も知らぬ軟弱者であることも。 

この地におけるディムロスのソーディアンマスターたる女。
碌な警戒もせずルルーシュなる餓鬼の術を食らった愚かな小娘。
相対時に飛ばした殺気への反応からして、碌な戦も知らん非戦闘員。
そんな雑魚を懇切丁寧に気遣っていれば、進軍も遅くなろう。

全くもって残念だ。
正史の担い手であった四英雄や自身と張り合って見せた異界の英雄ではなく。
あんな喰らう価値もない小娘がディムロスの持ち主でなければ。
疾うの昔に過去の亡霊を屠るべく馳せ参じた奴と、三度の雌雄を決する死闘が勃発していだろうに。
もし因縁の闘いへ足を運ぶに当たっての足枷となっているのなら。
実に腹立たしい事実である。
小娘を庇い、先に刃を交えた小兵の剣士にでも握らせた方がまだ良い。

加えて、彼の脳裏を過ぎるのは先の戦闘。
グラファイトを彼方へ飛ばした無粋な塵(ドロップアイテム)の存在だ。
討伐に向かう道中で彼と同じ目に遭い、既に近辺にいない可能性。
それが無いとは言い切れまい。
仮に此方から出向いたとして、無駄骨だったならばどうする。
残るのは、行き場のない空虚だけ。到底許容出来る筈もない。

舌打ち混じりに踵を返す。
たらればに思考を張り巡らせても、女々しく男を腐らせるばかり。
当てなき旅路に、歩を進めた方が幾らか建設的だ。
深い苛立ちを抱え、早々に戦争跡を立ち去ろうとした──その時だった。


「ハロー、イカしたマッチョ君。ご機嫌斜めでどうしたの?」

背後から響いた声に、反射のように身体が動く。
あり得ぬ位置、気配も質量もなかったはずの空間に。
突然滲み出たような異物(イレギュラー)が、笑みを浮かべて立っていた。

 ◇ ◇ ◇

193渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:08:43 ID:Wv9k5Xms0

彩度の薄れた無機質な瓦礫の海。
先程まで何も無かった場所にいつの間にか佇む奇怪な男。
男は、さながら童が読む物語から飛び出した道化師の様だった。
真紅のシルクハットを頭に載せ、その下から覗く顔に
刻んだ奇抜なフェイスメイクを歪め、無邪気な笑みを浮かべる。
紫、黄色、赤、橙そして白。
下品な程鮮やかな色々が幾何学的に織り交ぜられたロングコート。
その内に身を包んだ、注目を引く挑発的な赤と黒の縦縞衣装。
「俺を見ろ」
そう世界に高らかに宣言するかの如く道化は華やかで満ち。
故にこそ、腰に巻かれた無骨で機械的なベルトが。
男の本質と酷く不釣り合いで、何よりも特別な存在に映る。

「折角のパーティゲームだぜ?もっと笑えって。
 滅多にない機会だし、とことんエンジョイしなくっちゃ」

そんな目立ちたがり屋の道化師は
此処が殺し合いの渦中である事を忘れたかの様に。
怪訝な顔で見つめる観客に向け、ひらひらと。
旧知の仲かの如く、さも親しげに手を振った。

「貴様…いつから其処にいた?」

馴れ馴れしいあだ名や言葉など耳には入らない。
バルバトスの関心は別にあった。
余所事に思考を巡らせてたとは言え、彼は武芸者としては一流。
足音も気配も見逃すはずがない。
背後を取られる事を人一倍嫌うこの男ならば尚の事。
にもかかわらず、気づいたのは声を掛けられた直後。
外見は細身で中身は軽薄。
所作もとことんふざけており、どう見ても強者には見えない。
だが弱い──そう断じるには、余りに無理がある状況。
己の本能が、安易な評価を下すことを拒んでいた。

「ついさっき。ちょっとここらを色々"見て"回りたくってね。
 おたくもココの観光に来たクチ?」
「塵の山を眺め、悦に浸る。そんな趣味が俺にある様に見えるか」
「ゴミって…ひっどいねぇ。ま、普通はそうだろうさ。
 愉快な皇帝ルルーシュ様のお城にGM羂索の肉体縁の地、アビドス砂漠。
 分かりやすく魅力的な観光スポットなんざ他に山程ある。」

そう言って道化は瓦礫の山を背景に一歩踏み出す。
両腕を大袈裟に広げ、廃城を背に取って愉しげに笑った。

 「でも、俺からしてみりゃこの残骸はゲームで一二を争う名所よ?
 なんたって…此処には"神と魔女の記錄"がぎっしり詰まってるんだから!」
「…神だと?」
「それで?遊びに来た訳じゃないなら、そっちは一体何しに来たわけよ」
「愚問だな…この地は全てが戦場。
 ならばすべき事など一つしかあるまい。こうして参加者同士対峙したならば、尚更だ…!」

言葉が終わると同時に、その眼光が鋭く道化を射抜いた。
バルバトスが放つ殺意は濃霧の如く辺りに満ち、空気が震えるほどに張り詰める。

「ハハ、良いねぇやる気満々って感じだ。
 じゃ、精々頑張ってよ。俺は観光があるからまた後で。」
「下らん戯言はそこまでにしろ…。此処は貴様の命の瀬戸際だ。
 助かりたくば、俺と殺り合う以外に、残された道は既にねぇ」
「…ハッ!殺し合いー?俺と?アンタが?
 ムリムリ、やってもしょうがないって!
 闘ったとこで勝負になる訳が無いって分かりきってるからさぁ、そんなのってアンタもつまんねーだろ?
 だから、俺達は身の丈にあった相手とやり合うのが最適ってわ・け!」

されど、振り撒かれる重圧も煽りもなんのその。
全て我関せずの知らぬ顔で男はバルバトスに背を向け歩き出す。
残骸の中を暫く歩いた後適当な場所で立ち止まると。
瓦礫の一つに手を触れ、瞑想する様に目を閉じた。

194渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:11:20 ID:Wv9k5Xms0

「……」

……なんだこいつは。
マイペース過ぎる態度に、バルバトスは微かに眉を顰める。
一般人ならば泡吹き気絶する、殺気を一身に浴びながらも無関心。
やれば負けると分かっていながら態度はお気楽そのもの。
一切の臆する反応を見せぬ異様さが、逆に不気味だった。
どうして死が間近に迫る中、他人事のように扱える

置かれた状況さえ理解出来ない見かけ通りの道化か。
諦念を抱き、生に頓着がなくなった腑抜けか。

"闘ったとこで勝負になる訳が無い"

──或いは前提が逆なのか。
現状を正しく理解した上で、このバルバトス・ゲーティアを。
何ら危機的状態ではないと認識するだけの'強さ"が。
瑣末事と切り捨てるだけの"何か"がコイツにあるというのか。

(…試すか。)

遠くに鎮座する男の背に照準を合わせる。
相手の意思などお構い無しの単純な実力テスト。
NPC程度なら漏れなく即死の一撃を見舞う。
初見の感想を述べるなら、違和感こそあれ。
強さはNPCに毛が生えた程度の雑魚にしか見えない。
テストで敢え無く息絶えるならば、所詮それまでの存在。
下らん道化に時間を潰された咎は、他の可哀想な誰かが負う羽目になるだろう。

だが、もしも生き延びたならば──

この先の結末に、僅かな期待と好奇心を込め。
新たな試金石へ溢れんばかりの力で鉞を振り被り、

「───あれ?もしかしてやる気?」

一瞥もせず飛び出した問いかけに、振り下ろす筈の刃が宙で止まった。

「折角のゲームだし、遊んだげたいのは山々なんだけど。
 俺今右手も左手も塞がっちゃって、大忙しな訳よ。
 だからさぁ、終わるまで大人しく待っててくれる?」

子どもの駄々をあしらう大人のように待ったをかけ。
意味もなくぷらぷらと右手に持った懐中時計を揺らす道化。
その仕草に真剣みはなく、挑発としか取れない態度。
当然、闘争に飢えた狂戦士が首を縦に振る道理は無かった。

「今の俺は非紳士的だ…運が悪かったな。
 只の命乞いなら聞くつもりはねぇらテメェの言い分を通したいなら武器を取れ!闘え!殺し合えぃッ!!
 醜く無様に足掻いてでも、己の生を勝ち取ってからほざいてみせるがいい!!」

久方ぶりの敵へと目掛け、特大の暴威が一直線に突き進む。
魔神剣。
剣を振るうと同時、地を這う衝撃波を遠くの敵へ放つ。
大陸の剣士ならば、誰もが序盤で覚える基礎的な剣技。
しかし暴斧の称号を冠する、怪力無双のこの男が放つとなれば。
通常のソレとは全く異なる、恐ろしいまでの"殺意"が宿る。
バルバトスの魔神剣──殺・魔神剣の破壊力は暴風の域。
標的を切り裂こうとも凶嵐は消えず、破壊と進行を続け。
骸を八つ裂きにするまで、決して終わる事のない小さな大災害。

195渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:13:54 ID:Wv9k5Xms0

「あっ…そ!じゃあ仕方ねぇか」

何もしなければ数秒後には息絶える。
常人であれば絶体絶命な状況にも関わらず。
殺意の対象たる男は依然として、溢れた余裕を崩さない。
さも面倒そうにゆったりと立ち上ると。
地に付けた手を空へ伸ばし、パチンと軽快に指を鳴らす。

「げっげっげっ」

瞬間、定められた主の号令をきっかけに。
不気味な笑い声を響かせ、懐から奇怪な生物が無数に飛び出す。
目玉に手と翼が生えた蟲、魔界の凝視虫(イビルフライデー)である。
魔界から全ての謎を食い尽くした、異端の魔人を主としていた魔界777ツ能力の一種。
その個体数と機動力、矮小故の隠密性から偵察や事件現場の探索が主な役目。

それは殺し合いにて主が変わろうと同じであったが。
その個体の一部に、道化は小間使いとして別の役目を課していた。
凝視虫は黒のバックルを二対。それぞれ二匹がかりで運び出す。
彼らの使命。それは例えいつ如何なる場合であっても。
主の為に合図一つで、最短最速の"変身準備"を完了させる事。

『X GEATS』
『BLACK OUT』

飛び出した虫達は、バックルを腰に装着したドライバーに装填。
認識音声が鳴れば、すかさずバックルを瞬時に回転。
数が揃えば戦闘機すら操縦出来る精密性。その程度の単純作業など造作もない。
ドライバーが180°回転するとバックルが大きく展開。
紫の双眸を光らせた、九つの尾を持つ化け狐が露となる。
新たな主のお膳立てを整え、工程は一つを残すのみ。

「サンキュ〜蟲くんたち。そんじゃ──変ー身っ」

暴斧の斬撃は、目と鼻の先。
不敵な笑みを浮かべ、バックルのスロットルレバーを一回転。
男の本性を表すかの如き、邪悪な紫炎が吹き上がった瞬間、


『REVOLVE ON』


不減の衝撃波は、標的を目前に敢なく霧散した。


目に毒な程の色彩を掻き消す、大量に放出される闇の中。
その中でバルバトスは、確かに見た。
天を震わす咆哮轟かせ、己の絶技を薙ぎ払った九尾の黒狐を。
神獣とも呼べる妖しくも雄々しき九尾が、滑稽な道化を覆う鎧へと変貌する様を。

『DARKNESS BOOST』
『X GEATS』

かつて、色彩と狂騒の化身のようだった男は消え去り。
現れたのは、漆黒を基調とした重厚な装甲を纏う狐面の戦士。
名は、仮面ライダークロスギーツ。
神殺しの戦装束に、道化の象徴たる華やかさは鳴りを潜め。
冷たい蒼光だけが黒鎧を縁取り、闇の中で静かに燃える。

「…まさか、これ程のものが出てこようとはな…!」

『READY FIGHT』

感情の起伏に欠けた、開幕のゴングが鳴り響く。
ゆらりと振り向いた黒狐は、禍々しき紫の眼差しを相対者へと向け。
何者にも抗えぬ、神々しさにも似た威圧感を漂わせていた。

196渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:15:34 ID:Wv9k5Xms0

「──フッ」

己が発した殺気を塗り替える、数段上の神気に身が震える。
無意識の自衛反応か、それとも戦士としての本能か。
天地戦争時代から今日に至る三度の人生。
時空を越え、多くの英雄と争い屠って来た闘いの歴史でもあり得ぬ恐れ。
よもや。ああよもや。
こんな軽薄さに服を着せた様な男に対し。
かような震えを抱く事になろうとは、全くの予想外だった。
その事実に、乾いた鼻笑いが漏れる。

「フハハハハハハハハハ──ッ!!!」

後退の螺子が外れた狂戦士ならば、当然後者。
笑いは徐々に熱を帯び、最後には咆哮のような哄笑が廃城跡に響き渡る。

「面白いッ!!」

笑わずにはいられまい。焦がれに焦がれた闘争が其処にある。
最早昂ぶりが抑えられぬとギラリと目を血走らせ。
雷神赤龍の子にして平安の世の神秘殺し。
坂田金時(バーサーカー)の鉞を力任せに担ぎ上げた。

「さぁやるぞ!貴様ならば、俺の乾ききった心も!積もり積もった退屈も!存分に満たせるだろうよ!!」
「そう?こっちはぜーんぜん盛り上がってないんだよねー。 
メインが盛り上がってるとこなのにさ。
 本筋に関係ないサブイベなんざ誰も求めてない訳よ、分かる?」
「貴様の快不快なぞ──知ったことかああっ!!!」

長きに渡る退屈を吹き飛ばす強敵の登場。
燃え上がるバルバトスの闘志と対象的に。
男のテンションは酷く冷めていた。
脳内にあるのは、ダル絡みを如何にスムーズに終わらせるかだけ。
直接戦闘において、突出した力量を持つ豪傑を相手に。
その様な思考が湧く時点で、"別格"と形容する他ないのだが。

「と!言うわけで、この勝負は"カット"ってことで──」

変身前から握り締めていた懐中時計を前へと突き出す。
明らかに人を小馬鹿にした態度でチョキン、と。
指で作った鋏で空を切るジェスチャーを取り─


「────『省略』」

瞬間、翳した懐中時計から赤黒い稲妻が迸る。
間違いなく、何かある。
戦士としての警戒と同時に、瞬時に膨らむ黒狐への激情。

「アイテムなぞ…」

絶大な力を持ちながら小賢しい道具に頼る卑しさ。
沸き立つ怒りに荒ぶるバルバ/ 
          
           『省略』
           
         /トン、とその腹に黒狐の足底が触れた。

197渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:17:21 ID:Wv9k5Xms0


「──使ってんじゃ………ッッ!?」

明確な異常に、さしもバルバトスも驚愕に顔が歪む。

何故、奴が眼の前にいる。
何ゆえ、間合いまで侵入を許す愚を犯した。
時計が光った直後に訪れた、空白の記憶に訝しんだ刹那。
その思考の遅れが、最高速の終幕を招き寄せる。

「そぉら、これで終〜しまい、っと」

クロスギーツはバックルのレバーを一回操作。
同時に、漆黒の胸部装甲に眠るカノミックエンジンが躍動。
燃え盛る蒼炎が全身から噴き出し、脚先へと収束。
世界の理すら変える力を純粋なる破壊一点のみに注ぐ。
創世の力による正真正銘、必殺の一撃が解放され──

『XGEATS STRIKE』

次の瞬間、桁違いの衝撃がバルバトスの臓腑を貫く。
三度の生涯で一度たりとも経験した事のない空前絶後の破壊力。
如何なる攻撃の前でも不動であった両足が、呆気なく宙へと放逐され。
何が起きたのか理解する暇もなく、世界が目まぐるしく景色を変えた。

「グッ…ぬぅぉぉぁあああ゛あ゛あ゛あ゛───ッッッ!!!」

バルバトスは咆哮と共に黄金喰いを地面に深く振り下ろした。
地を引き裂き、己を縫い止める杭を起点に浮いた両脚が大地への帰還を果たす。
土くれが爆ぜ、膝が砕けそうになる激痛を受け止めながらも。
漢としてのプライドが、無様に後退し、中空に翻弄され続ける己を拒絶した。
受けた衝撃が未だ内を暴れ狂う。唇の端から血が滲み出す。
それがどうした知ったことかと、胸の内で闘争心が燃え滾る。
獣のような息遣いの中、憤怒に燃える眼で黒狐を見据えた。


が、矛先を向けるべき者は既にもう其処にはいない。


「…!何処に───」

「はーいお疲れちゃん。」

ポン、と。背後から気安く肩に手が置かれた。
まるで死神に触れられたかのように、背筋が凍りつく。
皮膚という皮膚が粟立ち、生命の危機に対する警鐘を鳴らした。


馴れ馴れしく肩を組み、背後に立つクロスギーツ。
正面にいたはずの男が、後ろに取った理由は単純明快。
超高速移動が売りのブーストマークIIを遥かに凌駕する超越加速。
制限がかかって尚、常人には影さえ踏めない事象加速による早業によるもの。

「あ〜あ、ワンパンで終わらせるつもりだったのにやるねぇ。
 見かけ通り…いや想像以上にタフじゃん?」

勝負はもう付いた積もりで悠々と後ろでくっちゃべる道化。
命こそ健在だが、事実そのとおりだろう。
未だ激痛が蝕む中、背後を取られ生殺与奪を握られる。
そして握る相手は最上格。絶望的状況で普通の者ならどうするか。

矛を収めるか。

命乞いをするか。

土下座してでも、情けを乞うか。

敗北を受け入れ、静かに幕を引くか。

どれも有り体で、しかし絶対的強者の前では仕方のない末路。
ではバルバトス・ゲーティア、この男も同じか。
彼もまた有り触れた弱者と同じ、惨めな終わりを遂げるのか。







断じて、否───!!

198渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:19:38 ID:Wv9k5Xms0

「でもまあ?そんだけタフなら俺にも───お?」

軽口を叩く喉元を押し潰す衝撃に、瞬きする間に視界が跳ね上がる。
目にも留まらぬ速度で振り向いたバルバトスの剛腕。
言葉の途中で強制的に掴み取みとり、よく回る黒狐の口を黙らせる。

バルバトス・ゲーティアに後退の二文字はない。

晶術に頼る雑魚へは理不尽な圧殺を。

道具で策を弄する軟弱者へは断罪を。

そして、卑しくも、漢の背後を取ろうとする腰抜に送るは。

身を焼き焦がす憤怒を直接その身に喰らわせてやるのみ!

「あ、あらら?ちょっとなにする気…」
「俺の背後にィ──」

百キロを越す重量など意にも介さぬ剛力。
低く唸るような声と共に、クロスギーツの身体が片手で持ち上げられる。
手負いの野獣が驕る妖狐を捕らえ、その両足が宙を漂ったかと思えば、

「立つんじゃあ!!!」

即座に急降下。全霊を以て大地へ叩き付けられる黒狐。
爆ぜるような轟音が鳴り響き、世界が揺れる。
地面は深く抉れ、周囲に蜘蛛の巣状の亀裂を走らせた。
常人ならば圧死不可避の超暴力。働いた卑劣対して余りに過剰の罰。
されど狂戦士の怒りはまだ完結には至らない。

「ねぇぇぇええええええィ───ッッ!!!」

高まる怒気の全てを得物に宿し、黄金喰いが唸りを上げる。
握りしめた暴斧から、四方に暴れ飛び出す雷撃。
黄金喰いの内部に装填された雷により、威力を爆発的に上昇。
御返しと言わんばかりに、無様に地を這う狐を装甲ごと抉り飛ばす。
空になった薬莢が排出され、甲高い金属音を響かせる。
土煙の向こうへ消えた黒狐へ向け、口内に溜まった血反吐を吐き捨て叫ぶ。

「どうしたァ!?この程度で果てる虫ケラではない筈だろう!?」

爆風の余韻が残る中、土煙の内側で金属の軋む音がした。
次いで、カラン、と小石を蹴るような軽い音と共に、朧げな人影が浮かび上がる。

「───煙っ」

背のマントから生えた、紫のエネルギーで作られた九尾の尾。
本体を守る様に正面に伸びた尾が消滅すると。
軽く手を振って装甲の煤けを払い、気怠そうに声を漏らす。
先の攻撃が全て冗談と言わんばかりに、何事も無く立つクロスギーツがいた。
不完全ながらも、創世の神の力宿すタイクーン・ブジンソード。
DGにおいて最上級の攻撃力を持つ一撃をまともに喰らって尚、
笑って健闘を称える程度の損傷で済ませた規格外の耐久力を誇る。
純粋な攻撃力ならば上位に食い込みうるバルバトスの大技も。
創世の力を宿した尾で衝撃を殺しつつ、笑い話の一つに済ませた。

199渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:28:46 ID:Wv9k5Xms0

「そうだぁ…そうこなくては面白くない!さあ続きだ!
 必ずブチ殺してやる…簡単に死ぬんじゃねぇぞォ!!」

殺すのに死ぬなと、まるっきり矛盾した物言いで。
俄然命懸けの闘争への意欲を衰えさせないバルバトス。
その様子に肩を竦め、うんざりした溜息を吐き、ドライバーに手を伸ばす。

「もー、話ぐらい聞けっての」

腹部のバックルを取り外すと、漂う重圧と共に黒鎧が消失。
飄々とした笑みを浮かべた道化の素顔が再び現れる。
突然終局の空気を流し出した獲物に、戦狂いが何度目か知れぬ怒りに吼える。

「貴様ぁ…何故武装を解いた!?」
「勝負はもう終わり。
 一発でサクッと殺せねぇ時点でなんか萎えちゃった」
「終わり…?何ァにが終わりだァッ!!
 またしても決着もつかずに流れだなど、俺が二度と許さんんんん!!」
「キレんなって!暑苦しいったらありゃしねぇ!
 心配しなくても代わりの相手はたっぷり用意してやるからさ」

そう言った道化の指先に目玉の怪虫、イビルフライデーが止まる。
その上で蟲が翼を大きく広げると、その上に画面が浮かび上がり、異なる視界が映し出される。

「例えばさぁこの後ろのブッ壊れた城。
 コイツを派手に演出した連中とかに興味ない?」

道化に誘われ画面越しに"ソレ"を覗いた瞬間、世界の理がねじ曲がる音がした。

繋がった世界は此処とは違う戦場。
グラファイトとの闘いで相まみえた、見覚えのある姿も疎らに見えるが。
そんなものはどうでも良かった。視線はただ一点に釘付けとなるのだから。
黒曜石のような肌には、宇宙の深淵が映り込んでいるかのような光が揺れ。
白銀の髪は星々の奔流となって空間を漂う。
背後に浮かぶ幾重もの光球が静かに脈動し、彼の者意に従って蹂躙する。

その蹂躙劇を見据える眼差しは、善悪の彼岸に立つ絶対者のそれであり、人という概念すら超越した──まさしく神と呼ぶに相応しい存在。
空中都市に居座り、地上人を見下し神気取る天上人共とは次元が違う。
画面の向こう側から感じる、絶対的な納得感に、バルバトスはらしくもなく息を呑んだ。

「…何者だ?この怪物は?」
「神さ」

まるで心を見透かされたかのように、即答が返ってくる。
バルバトスが感じた印象そのままをさも当然の答えとして返す道化。
声量はそのままに、どこか底冷えするような抑揚が混ざる。

「正真正銘の神、アルジュナ・オルタ。
 優勝候補にして、神殺しである俺の大本命。」

「そんで俺はメラ、この神をブッ殺すの常勝無敗のメラ様だ!
 どうよ、このバトロワ!俺と一緒にエンジョイしない?」

道化の正体は、時空を股にかける時間犯罪者。
遊び感覚で世界滅亡の最速記錄を狙う、狂気の迷惑系配信者。
過去未来現在、全てを玩具と捉える享楽家、神殺しのメラ。
今日も今日とて世界を遊び狂う男は、
同じく時代を越えて暴れ狂う英雄殺しへ提案を持ちかけた。

200渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 00:32:24 ID:Wv9k5Xms0
「それは、組めと言う意味か…俺と貴様が?」
「イエース、その通り!」
「クックック……寝言をほざくなァ!!この殺し合いで生き残るのは一人だけ!
 女々しく身を寄せ合って群れる程、俺も貴様も弱くはねぇ。
 その上でメリットなんぞが何処にある。情けでもかけるつもりか、思い上がるなよ愚図がァ!」
 「そう釣れない事言うなよ。別に一生仲良しこよしなんて、言わねーって。裏切り、騙し討ちもバトロワの華だぜ?
 それに当然、美味しい思いはたっぷりさせてやるからさ」

主の言葉を合図に、蟲が見せる画面が単体から分割映像として切り替わる。
神に対する人類の足掻きを筆頭に、毛色が違う別々の映像が映し出される。

「これは──北の砂漠と、あの小僧の城か。」

羂索の肉体である梔子ユメが所属する学園、アビドス高校。
主催者に代わり、ゲームを支配するなど大言壮語を吐いた皇帝
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが座するテレビ局。
参加者が当面の目標を定めるに当たって代表的な施設の映像が目に止まる。

「正解、ホントは神と殺し合ってた魔女を追ってたけど、見てねー内に気づかれてぶっ殺されちゃっててさぁ。
 やっぱ仮にも魔女だから、魔力で動くもんには敏感なのかねぇ」

最後に見た時は女NPCを凌辱して盛ってた癖に無駄にお硬い女だと、ゲラゲラ嗤う。
獲物は一匹逃してしまったが、あの災害女が早々リタイアする訳もなし何れまた機会は来る。
情報収集の駒は一匹浮いたし、見失った分を補填する方法は既に考え済み。

「その点神は太っ腹だよねー!俺の尾行に気づいても見物を許してくれる。目線の先にいる俺の存在も把握済みだろうよ。
 それを踏まえて全て些事って訳さ、妬けるよねー!
 …まっ、そんくらい格があってこそぶっ殺しがいがあるってもんよ」

派手好きかつ短絡的。刹那主義を拗らせた道化の眼から。
あいも変わらずニヤつくメラの視線がギラついた質感に変わる。
創世の神の力で最強の権能(クロスギーツ)をデザインする以前より。
独力で神々を攻略し世界滅亡を成し遂げて来た、悪魔の眼。

メラから放たれる殺気と狂気を孕んだ眼差しに、バルバトスは無意識に眉をひそめる。
戯けた皮を剥ぎ捨てたその瞳と言葉は、冗談でも虚飾でもない。
実際に神を屠り、世界を崩した者だけが持ち得る──"実績ある悪意"だった。

201渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:22:11 ID:Wv9k5Xms0
大変申し訳ございません。
投下を再開させていただきます。
目に余るようでしたら破棄扱いとしてください。

202渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:23:44 ID:Wv9k5Xms0


「それで、貴様が提示するメリットとやらがこれか?」
「お前は闘う相手が欲しいんだろ?俺にはそのマッチング相手を探す眼がある。
エキサイティングなゲームを肩肘ついて観戦して、遊びたくなったら何時でも乱入出来るって寸法よ」

 監視先として選定した施設は参加者の集まりやすそうなスポットに配置した。
 ゲームの中心になり得る情報の集合地は要チェックポイント
 見失った魔女や他の本命候補も見つかれば御の字
 アテが外れて詰まらない映像垂れ流すなら、さっさと見切って次にいける寸法だ。

「だが、この蟲に映る場所には距離がある。今すぐ闘いに関与する事は不可能だ。
 それならば、やはり今目の前にいる貴様とやり合う方が幾分か速い。」
「もー我儘さんなんだからっ!ま、そう焦るなって!
 せっかちなお前も大満足なスーパーアイテムをご紹介してやるからさ。」

急かす交渉相手を宥め、左眼だけをギョロリと動かす。
キョロキョロと何かを探す素振りし、数秒。
悪戯を思いついた悪童の様な笑みを浮かべ、一言魔法を唱える。

「────『入替』(リプレイス)」

左手から戦闘でも垣間見えた赤黒い火花が散る。
それと同時刻、バルバトスの肩に掛かる重さが僅かに消える。
ふと見れば、背負い込んでいた筈の支給品入れが影も形もない。
背に向けた視線を戻せば、デイバッグがメラの手に収まっていた。

「転送、いや──」
「げっげっげっ」

奇怪な現象に答えを呟く前に、不快な笑い声が耳に届く。
掌にいた筈の蟲が、元はデイバッグがあった背に乗っている。
この状況が指し示す答えは一つ。

 「──入れ替えか。俺の前に気配もなく現れたのも、その小賢しい道具で瓦礫とでも位置替えした結果だな。」
「ピンポン、2連続正解〜!仕組みは教えてやんないけどね。
 俺の秘蔵っ子。ショートカット用の便利アイテムさ」

そう目を閉じて笑うメラの左眼は目蓋が見せる暗闇ではなく。
上空からメラとバルバトスを映した、俯瞰映像を見据える。
最後の支給品、クロックハンズ3時(スリーオクロック)のタイムマシン能力。

映像に映った同時刻の存在を入れ替える『入替』(リプレイス)
自分の時間を省略し攻撃の過程を飛ばす『省略』(スキップ)

これらは時間と運命を巡る事件に巻き込まれた一人の手品師が。
その人生の大半を費やし、自己矛盾と絶望の果てに得た力だが。
神殺しからすれば利便性の高いお助けアイテムにしか映らない。
つまらない過程を省略し、有用な結果のみを有り難く利用するのみである。

203渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:25:15 ID:Wv9k5Xms0

「流石にエリアの飛び越えや連続使用は無理だが、こいつで時間短縮や逃走防止は出来る訳。
 これで不安もある程度解消だろ?なっ、バルちゃん。」
「バルちゃん……だと?」
「だって、"バルバトス・ゲーティア"だろ?
 だからバルちゃん。名前、ちゃんと合ってるよな?しっかり"視た"んだし?」
「貴様…一体幾つ下らねぇ道具に頼ってやがる」

名乗る気も無かった名を正確に当てられたのは、何故か。
今まで呼び方が性格や外見由来だった事から察するに、元は名など知らない事は明白。
先程までの違いは、左手に置かれた自身のデイバッグのみ。
ひっきりなしに口から出る"視る"と言う単語。
わざとかそういう性分か、こうも露骨にヒントを与えられれば、誰でも察しがつく。
如何なる手段かは不明だが、物から記憶を盗み見ている。
一体どれだけ札を持ちあわせているのか。こうも恥ずかしげも無く使うさまを見ると。
アイテム嫌いのバルバトスも感心と呆れが同時に湧いてくる。

「まっ、これは支給品ってか正確にはNPC撃破報酬のソードスキル。
チンケな格の割にはドロップが美味しくって、もう"神"がかった幸運様々!
ま、噛ませ臭ムンムンだったからそれも移ってないかがちょっと心配かもねー。
ああそうだ、そん時の雑魚忍者共の話とか聞きたい?」
「くだらん、さっさと話を進めろ」
「だよねー!ま、俺だってもう殆ど覚えてねーし!」

突っかかった来た(何か名乗ってた気がするが名は忘れた)噛ませ犬共を瞬殺した時。
その一人から流れ込んで来た報酬のソード・スキル。
その情報を知覚した時はそれは大笑いしたものだ。

忍法記録辿り。
無生物が見聞きした記録を読み取る、情報収集に長けた探索能力。
これを使えば今は参加者に出会えずとも、一人にさえ出会えれば。
その服や支給品からゲーム開始から今に至る情報を毟り取れる。
言わば、参加者が勝手に情報を稼いできてくれるのだ。
しかも無生物相手との間には隠し事や交渉も不要。
効率を考える上でこれ程望ましいことは無い。
流石は不敗のデザ神から奪い取った豪運だ。
エンカウント率が塵だった部分は水に流してもいい。

更にコーカサスカブト城で繰り広げられた、アルジュナ・オルタとノワルの戦闘。
情報を得たタイミングと距離の関係上、最後しか観戦する事が出来なかったものの。
現地に行けば、今は残骸の城が見てきた記録が存在する。
直接の映像として、奴等の情報を読み解く事が出来る。
出張してくる手間とノワルを見失った分の補填に足る情報は得られるだろう。
まあその直後にバルバトスとの戦闘が始まり、観光の目的はまだ果たせていないが。

204渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:26:09 ID:Wv9k5Xms0

「情報探査と位置変え。コイツらを使ってプレイヤーの情報を追って対戦相手の元へ一緒にご案内〜。
 この城でも生き残った連中はチラホラいるみたいだし、そいつらの尻追っかけるのもアリかもね。」
「…分からんな」
「は、なに?まだ不満な訳?ちょっと我儘過ぎじゃない?」
「いいや、貴様と組む価値があるのは理解出来た。
 つまらん時の巡り合わせ関係なく、俺と闘いを引き合せられるならば、願っても無いことよ…
 だが、貴様が其処まで手札を開示して、俺と組むメリットが見えん。一体、何が目的でここまで話した?」

考え得る限り最上級の武具に、情報収集に長けた能力の数々。
とことんアイテム頼りの強さなのは、業腹だが呑み込むとして。
メラは一人で完結している。それは能力紹介を受け、うんざりなほど理解した。
ここ迄殺し合いを勝ち抜く装備が、揃っているなら仲間など不要だろうに。
態々徒党を組もうとする意図が不鮮明だった。
冷静さを取り戻したか当初と打って変わり、理を問うバルバトスに対し。
メラはきょとんとした顔を相手に向けると。
やがてふっと唇の端が吊り上げ、嘲るように鼻で笑った。

「はんッ、何?もしかしてバルちゃんも堅物系?
 嫌だね〜折角忘れかけてたうっぜぇ女思い出しちゃうじゃん。
 理由なんざどうでもいいんだよ、ばっからしい。」
「何だと…?」
 「お前は好きでやるゲームに一々理由つけなきゃ、遊べないわけ?
 思いついたから。面白そうだから。楽しそうだから。
 それでいいじゃん、何が不満だ?変に肩肘張らずにもっと純粋に今を楽しめよ」

理由を付ける意味とは何か。
脳裏を過ぎるは、闘いに全てを費やした二度の生涯。
其処で様々な理由を掲げ、殺戮を繰り広げていった。
英雄になる。怨敵に報復を果たす。あるべき歴史に修正する。
だがそんなものは、闘いに身を投じる大義名分に過ぎず。
全ては目くるめく闘争と果てにある、勝利の結果でしか無い。

前と主義主張に矛盾があろうと、我関せず突き進み。
ただあるがままに、渇望を満たせればそれで良い。
理由が無ければ、刃を振るう事も許されぬ。
そんな枷には飽き飽きしていただろうに。
3度目の生は、最も闘いに枷が無く、ただ呪い合えと。
軍の規則や聖女の制約に縛られず、思う限り自由があった。
だが、その自由を陳腐な運命とやらが邪魔をするならば。
強引に手繰り寄せるまで──眼の前の道化と手を組もうとも。

205渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:26:32 ID:Wv9k5Xms0

「…いいだろう、貴様の口車にまんまと乗ってやる。
 だが!もし俺の飢えを満たすに足りんと感じた時は、その代償は…貴様自身に払ってもらうぞ!」

利用し合うなど歪んだ大義を抱えた聖女の懐で経験済み。
言う通りなど業腹だが、メラの言う通りだ。
相手の思惑など知ったことでは無い。
使えるだけとことん使い潰し、真っ向から捻じ伏せるまで。

「はっ、そうこなくっちゃ。仲良くやろうぜバルちゃん。
 お前がプレイヤーで、俺が敏感サポーター。最強タッグの誕生だ。
 存分に遊ばせてやるから、精々俺を楽しませてくれよ〜?
 ただサポーターごっこがつまんなきゃ、使えねー役者は即クビだ」

押し掛けたメロの提案を受け入れ、脚が付く配信者活動を始めたのも気まぐれ。
他人のゲームに強制参加させられ、喜んで受け入れたのも、新たな刺激の模索の為。
仮面ライダーマシェード相手に、プロレスごっこしたのも遊びの一環。
全ての指針に己の快不快があり、この打診もまたその一つ。

ちっぽけな箱庭に招かれた神殺しと唯一神。
世紀の一戦を期待するのは火を見るより明らか。
日本、メソポタミア、エジプト、ギリシャ。
幾多の神話を単独で滅ぼした無敗の神殺しも。
事前準備、前情報双方ゼロの殺しは初体験。
それでもオーディエンスの期待に応えてやるのが、花形役者の役目。
本来神殺しに一日以上掛けるなどRTA走者として納得がいかないが。
レギュレーションが普段と違うと考えれば、多少は融通が利く。

だが、その過程にある端役共の相手がどうしても邪魔だった。
雑魚戦が鬱陶しくてメインゲームが詰まらないものになる。
それはいけない。
娯楽とは可能な限り、面白可笑しくストレスフリーでなくては。

元より全能故、拭えない退屈や感情の刺激不足を晴らすべく。
不自由な過去で理想的な娯楽を求めたのが未来人のルーツ。
メラが禁忌とされた世界滅亡に手を染めたのも。
最高にエキサイトするゲームを追い求めた、その究極系に過ぎない。
普通なら勝てない強敵を試行錯誤で攻略しタイムを縮め。
そのウイニングランとして、世界を消し飛ばす爽快感に魅入られた結果。
その快楽に比べたら、まどろっこしいルールなど馬鹿らしくなる。
無粋な堅苦しい道理や規則を持ち込むなどちゃんちゃらおかしな話だ。

折角久方ぶりの世界滅亡ゲーム以外の遊び。
本命も大事だが、道中考えてた矢先だった。
トップ層には及ばないが、雑魚をあしらえるだけの戦闘力と。
願いに飢えたデザグラの参加者のように、獣の如く血に飢えたその欲望。
片手間に殺すのは惜しい。露払い役にするにはピッタリだ。 
序に思い付いたデザグラの真似事をするのも一興。
勝利は既に決まっている。
ならば、その過程を盛り上げる為、探求していこう。
つまらなければ次に行けばいいだけなのだから。

「じゃ、先ずはこの城と本命君の観戦といこっか!
 こっから神相手に端役共がどれだけ残るか賭けたりしない?」
「下らねぇ。さっさと用を済ませろ。
 グダグダ御託を並べるだけなら、俺の刃は即座に貴様に向く事を忘れるな」
「かーっ、なんだよノリ悪ぃ。
 全く、愛しのメロが恋しくてしかたないぜ」

戦火の跡で、参加者の足掻きを肴に談笑にふける強者二人。
全てが絶対勝利を疑わない、驕りからなる思考の上に成り立つ同盟。

退屈を紛らわせる為に、ゲームに興じる神殺し。
終わらぬ渇望を癒すが為に闘争に興じる英雄殺し。
何方も欠けた何かを埋めんが為、思い思いの楽しみに身を投じる生粋の自由人。
ただその楽しむ行為に、一切のブレーキが存在しないだけ。
目に映る全てを無邪気な狂気で巻き込み、遊び、食い潰す。

それが彼らという単純明快な人間としての在り方である。

206渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:28:41 ID:Wv9k5Xms0

【エリアF-4/コーカサスカブト城/9月2日午前9時00分】
【バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニー2】
状態:疲労(小)、ダメージ(中)
服装:いつもの
装備:黄金喰い(ゴールデンイーター)@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:優勝して英雄になる(英雄になるのはついでで戦いたいだけ)
00:あの男(家康)と決着をつける。
01:次こそあいつ(グラファイト)を叩き潰す。
02:メラを利用し、心ゆくまで闘争を楽しむ。
  使えなければ、メラ自身と殺し合う。
参戦時期:死亡(二回目)後
備考
※黄金喰いに黄金大両断のソードスキルが内包されています。

 【メラ@仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐】
状態:正常、ダメージ(小)、ノワル・アルジュナオルタに対する期待(大)
服装:いつもの服装
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐
   Ⅹギーツレイズバックル@仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐
令呪:残り三画
道具:魔界の凝視虫@魔人探偵脳噛ネウロ✕4、ハイド/ジキルのタイムマシン装置@運命の巻戻士、ホットライン
思考
基本:愉快に楽しくバトルロワイアル
01:狙うは優勝。派手にカッコよく決められれば更によし。
02:バルバトスをパートナーとして遊ぶ。期待外れならば、さっさと殺すが。
02:コーカサスカブト城の記録を読み解く。本命はアルジュナオルタとノワルの戦闘記録。
03:テレビ局とアビドス高校に暫く監視。進展がなければ切り上げる。
04:ノワルとアルジュナ・オルタを本ゲームにおける標的に、同等の実力者がもう1・2人はいると予想
05:ノワルとアルジュナ・オルタを観察 藤丸立香に会えば聞き出す
錬金術使いの仮面ライダー(りんね)に若干の不快感。
次キズナブラックに会えば、サクッと殺す。
参戦時期:クロスギーツビクトリーで世界を滅亡させ帰還した直後
備考
※ロキの変身能力が使用可能ですが、一度使用すると暫く使用できず、見た目以外は変身できないです。レジスター・令呪を隠すこともできません。
 クロスギーツに変身する場合はメラ本来の姿である必要があります

【支給品紹介】

【ハイド/ジキルのタイムマシン装置@運命の巻戻士】
メラに支給。
クロックハンズの幹部スリーオクロックが所持する時計型タイムマシン。
リトライ機能は失われているが、固有の能力が入っており、中身は入替(リプレイス)と省略(スキップ)
表人格のハイドが前者、裏人格のジキルが後者をそれぞれ使い分けている。
制限として発動には必ずタイムマシンを手に持った状態で、能力名を宣言しなくてはならない。

入替(リプレイス):同時刻に存在する二つの物体を入れ替える。
ただし入替は監視カメラの様な映像越しに映った物でなければ対象に指定できない。
メラの場合、魔界の凝視虫からの映像を媒体としてこの能力を機能させている。
制限:入れ替えの範囲は同エリア限定。
   交換距離が長ければ長い程再使用までのインターバルが延びる。
   また自分以外の参加者の位置入れ替えた場合、入替は6時間使用不能となる
(原作のハイドとゴロー隊長のように巻込みによる入替ならその限りではない)

省略(スキップ):攻撃の過程を省略する。省略発動は本人の時間のみが進み、全体の時間は通常通り進む。
制限:飛ばせる時間は最大でも3秒。
   それ以上が経過すれば、攻撃が完了していなくても強制的に省略が終了する。

【ドロップアイテム紹介】

【ソードスキル・忍法記録辿り@刀語】
真庭忍軍十二頭領の一人、真庭川獺の忍術。
手で触れた無生物が見聞きした記録を読み取る。
制限として発動は左手かつ素手でなくてはならず、仮面ライダー等変身した状態での利用は不可。
また、殺し合い以前の記録は例え自分の持ち物であろうと「無」となっている。

207渇望SP:運命と狂気の矛先 ◆TruULbUYro:2025/05/29(木) 04:31:41 ID:Wv9k5Xms0
投下終了です。
この度は無言での投下中断、大変申し訳ありませんでした。
問題がありましたら破棄とさせていただきます。

208 ◆Drj5wz7hS2:2025/05/29(木) 07:11:30 ID:XmQw6kj60
おはようございます、当ロワの企画主です。
問題だなんてとんでもありません。
相変わらず実に読ませる文章でメラの軽薄で悍ましい知能犯っぷりとバルバトスの暴の者っぷりを書き上げてくださっております。
他のssの要素も丁寧に拾い上げ精緻に書き上げており、非常に楽しく読ませていただけました。
そのままwiki収録させていただきます。

209Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:53:02 ID:U0/OvivA0
皆さま投下お疲れ様です!
投下いたします。

210Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:53:25 ID:U0/OvivA0
真実はもとから存在している。 偽物は誰かが作らなければ存在しない。 
ジョルジュ・ブラック





「ここ……ですか?」
「……ええ、おそらく」 「なんか、いかにも”普通”の家っぽい」

三人はとある家の前にいた。
昨今、個人情報の観点なのか、表札が外されている家が多いが、その家は表札が掲げられている。
その家は「野比家」
外見は、一般家庭が住むどこにでもある一軒家。
ただ一点他の持家と違う特徴を語るとするなら、未来のネコ型ロボットが同居していることだろう。
ここはG10 ランドマークの一つ野比家。

☆彡 ☆彡 ☆彡

〜カフェを出た直後〜

「二人とも!その場から動かないでください!」
「「!?」」

3人のガッチャの証である曲が完成し、コロシアムに向かおうとケヤキモールを出ようと歩く中、先頭を歩くディーヴァは立ち止まる。
そして響き渡る。ディーヴァの強い静止の声が。
ラクスとゆうはディーヴァの口調の強さから体をビクリと震わせながらも指示に従う。
先ほどまでの歌詞づくりとは違う真剣な空気が漂う。

「そこの物陰に隠れている人、出てきて下さい。気配を隠しても無駄です」
言葉と同時にエイムズショットライザーとサーバルタイガーゼツメライズキーを握りしめる。
いざというとき、攻撃へ転じることができるように。

「……流石、100年の旅を果たしたAIですね」

ディーヴァの警告に従ったのか、物陰にいた人物が姿を見せる。
その正体は――

「貴方は……」
「坂柳有栖。この真贋交わる場のフェイク側です」

NPC坂柳有栖だった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

211Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:54:06 ID:U0/OvivA0

「フェイク側……」
(なるほど、NPC……というわけですか)
「名簿にない名前……クルーゼ側というわけですね?」
(これがNPC……ですが、本物の人間のように見えますわ)

有栖のフェイク側という返答にディーヴァとラクスは主催側が用意したNPCだと理解した。
「え!?そうなの!?」
(じゃぁ敵ってこと?……それにしてもこの有栖って子。美人だわ。絶対、アイドルになるべき。うん!)

一人、ゆうは違う感想を抱いていた。

「ええ。でもそんなに警戒しなくとも大丈夫です。襲い掛かかったりはしません。見てのとおり、坂柳有栖は、肉体ではなく頭脳派ですので」

有栖は警戒をとかない3人を前にしてもその優雅な所作を崩さない。

「……ふっ、私はあなた方歌姫に敵意ではなく敬意を持っています」

制服のポケットから3枚のカードを取り出すと、差し出す。

「これは、殺し合いという野蛮な方法ではなく、歌という信念をもって立ち向かおうとする歌姫たちへのチップです」

それは、所謂おひねり。
路上ライブでの観客による謝礼。
ただお金ではなくカード。現物だが。

「わたくしたちの歌を聴いたのですね」

ラクスの言葉に有栖は頷く。

「あの歌は……本物です」
「私のようなフェイクが温かさを知りました。自信を持ってください。あなた方の方針は間違っておりません」

坂柳有栖は堂々と伝える。
本来であれば、NPCとして襲うはずであった。
しかし、曲を聴いたとき、有栖に異変が起こった。
本物のガッチャ(曲)は、確かに偽りのガッチャ(NPC)に影響を与えたのだ。

「わかりました。ご厚意に甘えます」

ラクス達はカードを受け取ると、自分の一枚を除く2枚をディーヴァとゆうに手渡す。

「「「……」」」

(これは……このカードから何か感じる)
(この力は……このカードから。もしかしたら、わたくしたちを導くことになるかもしれませんわ)
ディーヴァとラクスは手渡されたカードが一つのキーになるのではと予感した。

(う〜ん……なんか男子が好きそう。カードなら、アイドルのチェキとかだと嬉しかったんだけどなぁ……)
そんな中、またしてもゆうは一人違う感想を抱いていた。

「それと……コロシアムに向かう前に野比家に立ち寄ることをお勧めします」
「「「野比家?」」」

有栖がいう野比家は、ケヤキモールから近くのエリアに表示されていた。
確かにコロシアムの前に寄ってもよいという場所だ。

「寄り道、脇道、回り道。しかし、それらは全て道です。無理に……とはいいませんが」

「二人とも……」

ディーヴァの野比家への立ち寄るかに二人は頷く。
肯定だ。

「わかりました。情報ありがとうございます。有栖」
「いえ、お気になさらず。……歌姫たちに祝福を」

最後まで有栖は戦闘を仕掛けることなく3人を見送った。

☆彡 ☆彡 ☆彡

212Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:54:44 ID:U0/OvivA0

〜そして、冒頭に戻る〜

「普通の家とはいえ、ランドマークとされているからにはただの家ではない可能性が高いと思います」
「ええ、それじゃあ、中にはいりますよ」

玄関扉のドアノブに手を近づけると――

「おーい!そこ!待ってくれー!」
「「「!?」」」

声を挙げながら近づく少年……いや青年が。
遊城十代。
誰よりもデュエルを楽しむデュエリスト。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ガッチャ!へへっ。ようやくツキがきたようだぜ」

十代はたずね人ステッキの的中率である70%を見事引き当てた。
目的だった三人以上の集団に。

「貴方は……?」
「おっと、そういや自己紹介をしないとな。俺は遊城十代。当然この殺し合いには乗っていないぜ」
「私は、ディーヴァ、そして」
「わたくしはラクス・クラインと申します。彼女は」
「私は東ゆう。よろしく」

「ディーヴァさんにラクスさんそして、ゆう……よっし名前覚えた!よろしくな!」
邂逅を果たした4人はそれぞれ自己紹介をすますと、ここまでの情報を交換する。

☆彡 ☆彡 ☆彡

213Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:55:24 ID:U0/OvivA0
〜4人が野比家前にて情報交換をしている最中〜

野比家。薄暗い台所にて。

トントントン!!!

女性が激しく包丁で食材らしきものを斬っている。

トントントン!!!

表情は無表情で。

トントントン!!!

ただひたすら包丁を振るっている。

その正体は、NPC野比家主婦――









          ――野比玉子――

            ドン☆

214Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:56:48 ID:U0/OvivA0
【エリアG-10/野比家前/9月2日午前9時30分】

【東ゆう@トラペジウム】
状態:精神的疲労(小)、覚悟(大)
服装:制服(城州東高校)
装備:デスティニーの起動鍵@ 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ムード盛り上げ楽団@ドラえもん、神のカード@遊戯王
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:元の世界へと帰る
01:ラクスさんとディーヴァさん、この人たちと協力したい。あと十代さんも
02:結果が全てじゃない。だから、このゲームに乗ってアイドルになっても意味がないんだ!
03:みんなに会ってごめんと謝れる自分に
04:今度こそ、人を笑顔にできるアイドルに!
05:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:東西南北崩壊後
備考
東ゆう、ラクス・クラインの世界の簡単な知識を得ました。

神のカード@遊戯王
NPC坂柳有栖から手渡された(ドロップ)神のカード。
肉体ではなく頭脳派である坂柳有栖のために用意されたカードだが、ディーヴァたち歌姫のガッチャにより使用されることはなかった。
三体の神を召喚し、生贄したとき、何か起きるかもしれない。
ラクスが所持したのは、オシリスの天空竜。
モンスターではない 神だ!!byマリク・イシュタール

【ラクス・クライン@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:通常
服装:和服?(戦艦乗艦時のあれ)
装備:神のカード@遊戯王
令呪:残り三画
道具:遠写鏡@ドラえもん、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ…亡霊が今生きる人に干渉してはなりません!
02:キラとアスランが二人ずつ……?ミーアのように同じ顔にさせられているのでしょうか?
03:歌で皆を止めるためにコロシアムに向かう。
04:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
東ゆう、ディーヴァの世界について簡単な知識を得ました。

神のカード@遊戯王
NPC坂柳有栖から手渡された(ドロップ)神のカード。
肉体ではなく頭脳派である坂柳有栖のために用意されたカードだが、ディーヴァたち歌姫のガッチャにより使用されることはなかった。
三体の神を召喚し、生贄したとき、何か起きるかもしれない。
ゆうが所持したのは、オベリスクの巨神兵。
神を生贄に捧げる!by海馬瀬人

215Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:57:08 ID:U0/OvivA0

【ディーヴァ@Vivy -Fluorite Eye's Song-】
状態:システムは正常に作動中
服装:軍服
装備:エイムズショットライザー&サーバルタイガーゼツメライズキー@ゼロワンOthers 仮面ライダーバルカン&バルキリー、神のカード@遊戯王、拘束ワイヤー射出器@リコリスリコイル
令呪:残り三画
道具:iPod@現実、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:もうシンギュラリティ計画は終わった。だから、今の私はただのディーヴァ。
02:マツモトはいないみたい……
03:歌で皆を幸せにするために戦いを止める。
04:そのためにコロシアムへ向かう。
05:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:アーカイブからの課題をクリアした直後
備考:プロローグのショート髪の方ではないです。ロングの方のヴィヴィです。
支給品のipadに曲を録音しました。
東ゆう、ラクス・クラインの世界の簡単な知識を得ました
十代と情報交換をしました。

拘束ワイヤー射出器@リコリスリコイル
ディーヴァに支給された支給品。リコリスに支給されているワイヤー射出器。レーザー照準器が搭載されており、射程距離は短いものの確実に相手を拘束できる。正に私達の歌をきけ!である。
生きてますよね?by井上たきな

神のカード@遊戯王
NPC坂柳有栖から手渡された(ドロップ)神のカード。
肉体ではなく頭脳派である坂柳有栖のために用意されたカードだが、ディーヴァたち歌姫のガッチャにより使用されることはなかった。
三体の神を召喚し、生贄したとき、何か起きるかもしれない。
ディーヴァが所持したのは、ラーの翼神竜 。
墓地に置いときゃあ恐れる必要はないんだよ!神はなぁぁ!by闇獏良

【遊城十代@遊戯王GX】
状態:健康
服装:オシリスレッドの制服
装備:黄金卿エルドリッチ@遊戯王OCG、
たずね人ステッキ@ドラえもん、八神のホットライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1(確認済み)
思考
基本:あいつ(真人)も羂索も倒す。覇王である俺も止める
00:継ぎ接ぎの男(真人)を何とかする手段を探す。
01:ルルーシュとはできれば話し合いたいが、
   あの能力はさすがに俺とユベルが融合していても無効にできないよな?
02:グラファイト……ヤバい奴には違いないけど、
   お前も決闘者だって言うなら、そのデュエル、受けたぜ!
03:こんなに同一人物を集めて、一体何を考えてるんだ?
04:へへ!ディーヴァさんにラクスさん。そしてゆうよろしくな!
参戦時期:超融合!時空を超えた絆の本編終了後
備考
※ラウ・ル・クルーゼの放送を聞けていません
ディーヴァたちと情報交換をしました。

216Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:57:27 ID:U0/OvivA0
NPCモンスター

坂柳有栖@ようこそ実力至上主義の教室へ
一人しか存在しない特殊NPC。
身体的なハンデから神のカードを武器として用意されていたが、歌姫たちのガッチャにより戦意喪失。その場では、襲うことはしなかった。現在、ケヤキモールに留まってはいるが……もしかしたら、移動する可能性もある。
ドラゴンボーイby坂柳有栖

野比玉子@ドラえもん
一人しか存在しない特殊NPC。
野比のび太の母。本ロワでは、息子である野比のび太は参戦していないため、ドラえもんとの縁にてNPCとして用意されたのだろう。
多くの世界から参加している中、ランドマークに選ばれた野比家。
なにかあるのか……?
ちなみに余談だが、古のロワ参加者でもある。
オッペケペッポー、ペッポッポー。アジャラカ、モクレン!! by野比玉子

217Gotcha! ◆s5tC4j7VZY:2025/05/29(木) 23:57:38 ID:U0/OvivA0
投下終了します。

218 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:55:53 ID:wVsDA9s60
ゲリラ投下します

219Shout baby ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:57:30 ID:wVsDA9s60
「そう言えばさ、電話って通じるのかな?」

時刻は午後11時まであと10分と言ったところ。
ジュール隊イザーク班はアビドス砂漠を突っ切りエリアC-8の二階建て民家に立ち寄っていた。
これ以上の進むことは放送前に余計なトラブルや戦闘に巻き込まれない為に休むことにしたのだ。
同じ理由でテレビ局と同じかそれ以上に人を集めるアビドス高校もスルーしている。

「電話って……簡単に外部と連絡を取らせるようなヘマをクルーゼ隊長がするとは思えないが?」

ソファーに浅く腰掛け、休んでいたイザークが呆れた様に返した。
軍の階級で言う所の佐官から将軍に相当するザフトの白服、その中でも特に武勇で名をはせるクルーゼ(しかもベースがナチュラルでありながら努力だけで勝ち得た)がそこまで考えていないはずがない。

「いや、そりゃあ警察に通報とかは出来ないと思うよ。
けど島の中にある別の建物に電話かけたりとかはできるんじゃないかな、って」

「……なるほど。
通信端末での連絡ともなれば話は違ってくるだろうが、テレビ放送が出来る時点で電波は飛んでいるし、家の固定電話も見た目通りに電話線が通っているなら通じるかもしれないな。
だが連絡先はどうする?」

「え?あ、そっかぁ……」

「個室の公衆電話なら電話帳ぐらい置いてあるだろうが、今時普通の民家にそんな物は……」

『イザーク、くるみ、索敵任務を終了した』

イザークの台詞を遮る様に罠やNPCモンスターの探索をしていたイチローが二階から降りて来た。
片手には古いアルバムのような物を持っている。

「それは?」

『どうやら所謂卒業アルバムを再現したマテリアルと推察される』

イチローはマニュピレーターを器用に動かし目当てのページを開くと、イザークたちから見て右側のページを指さした。
随分古い時代の物らしく、実家の住所や電話番号まで詳しく載っている。

「野比のび助?」

『ホットラインに閲覧可能な地図に野比家というランドマークが存在していた。
態々こうして民家内に設置されたアイテムに記載があったということは元になった家の主と同姓の別人、という可能性は低いと当機は予想する』

「……おいおい、ドンピシャじゃないか」

イチローから受け取った卒アル片手に勝ち誇った笑みを浮かべるくるみを横目にイザークが力なく呟いた。
早速くるみは早速固定電話で電話をかけ始める。
まあ、上手くいくなら上手くいくで良いだろう

「クルミ、電話に誰が出てに真っ先に聞いて欲しいことがあるんだが、頼めるか?」

「いいよ?何?」

「それはな……」

-----

野比家の固定電話の呼び出し音がなる。
2コール程待って細い指が受話器を取った。

-----

『もしもし』

スピーカーモードにした電話機から珠を転がすような綺麗な声が聞こえて来た。
緊張した面持ちで振り返るくるみに、見知った声ではないと首を振るイザーク。
先ほど決めた通りにくるみは問いかける。

「ッ!……こんにちは、そちらにマティウス市から来られた方はいますか?」

『?……少々お待ちください』

少しだけ電話が途切れ、僅かな物音の後にまた先ほどとは別の美しい声が聞こえてくる。

『お電話変わりました。
ラクス・クラインと申します』

「ラクス嬢!?」

『その声はジュール隊長?
ご無事でなによりです』

スピーカーにしていたため、思わずあげた声が拾われてしまった。
普通だったら失態だが、名簿の並びに意味があるとクルーゼが言っている以上、プラント……もっと言えばコズミック・イラの歴史から呼ばれた女性は彼女しかいないので問題ない。

「貴女こそご無事で何よりです。今G-10に?」

『はい、早くに協力できる方々と出会えたのは幸運でした。
そちらも同行者がいらっしゃるようですね』

「はい。ナチュラルにしては優秀なメカニックです」

『メカニック……もしやそちらにいらっしゃるのはクルミ・タイガという方ではないでしょう?』

220Shout baby ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:57:55 ID:wVsDA9s60
「それって……ねえラクスさんだっけ!?
そっちもスピーカーに出来ませんか!?
ゆうちゃん!南さん!美嘉ちゃん!」

思わず叫んだくるみはイザークとイチローが抑える。
ここで喚かれてNPCモンスターでも寄って来ようものなら折角余裕をもって休もうと思ったのが全てパーだ。

「離して!」

力でイザークに勝てないと分かっていながらもなお暴れるくるみにイザークは飛び出して行っても場所はG-10だぞと事実に基づく説得が出かかるが、今の彼女にはその言葉では駄目だろう。

「俺だってディアッカたちの所に行きたいさ!
でも今は無理だ分かるだろ!?」

「ッ……そう、だよね」

『くるみ、落ち着けたのか?』

「うん……ごめんね、イザーク、イチロー。
ラクスさんも、ごめんなさい」

『構いません、友人の無事が確認できるかもと思えばそうなんてしいまうのも……と、このまま私がしゃべり続けるのも良くありませんね。
今替わります』

くるみにとって、刹那でありながら永い一瞬だった。
誰が出るにしても、さっきのように感情を抑えられる自信がない。

『くるみちゃん?』

「ゆうちゃん!」

『くるみちゃん私!』

「よがった……」

『え?』

「無事でよがっだよぉおおお〜〜〜」

『……うん、うん!私も、私もくるみちゃんが無事でよかった!』

そこから恐らく双方涙を止められなくなってしまったらしく、イチローがくるみを電話から引きはがし、スピーカーモードはそのままにイザークが受話器を取る。

「もしもし?」

『ジュール隊長ですね?私はディーヴァ。
ラクス、東、そして十代と共に行動している者です』

「ザフト軍ジュール隊のイザーク・ジュールだ。
ユウは今ラクス嬢とそのジュウダイが?」

『東はラクスが。
先ほど戦闘があったこともあって心が落ち着いていなかったせいか、想像以上に取り乱してしまったようでず』

「戦闘?」

『はい。
NPCモンスターと思しき女性が包丁を振り回して襲って来たので対処しようとしたのですが……東が狭い屋内でデスティニーを使ったせいで武装が壁や家具に引っ掛かって身動き取れなくなってしまたんです。
そのまま一番前に居た彼女は何度も包丁を振り下ろされていました』

「ちょ、ちょっとそれゆうちゃんはだいじょうぶだったの!?」

『幸いPS装甲という物のお陰で全くの無傷だったのですが、他人に刃物を向けられたショックは大きかったようです』

「……そのNPCは倒したのか?」

『ただでさえショックを受けた東の前で血を見せるのは憚られたので拘束にとどめました。
今は十代が見張ってくれています』

「そうか……」

自分なら殺していたとは流石に言えないイザークだった。
その後イザークは自分とくるみに関する説明をしなくていいこともあって、今まで出会った敵と味方に関する情報を中心に話した。
ディーヴァもタイクーンとの交戦などについて話す。

「黒い剣士か。
聞いた限りかなりの性能を持った白兵特化のパワードスーツのようだが、一応絡め手も警戒しておくか」

『その方が良いでしょう。
流石にそちらの出会った継ぎ接ぎの男……どうやら聞く限り人間ですらなさそうな彼程ではないでしょうが』

「奴にはくれぐれも気を付けてくれ。
装甲越しでもやられる時はやられる」

義手の調子を確かめながら渋い顔で呟くイザーク。
電話越しで表情は見えないはずだが、何かを感じたのか少し間があって気を付けますと返された。

『そちらはこの後どうする予定ですか?』

「このまま放送を挟んでテレビ局に向かうつもりだ。
あとからさっき言ったキャルたちもその近辺で合流する予定だからな」

『そうですか。スタジアムとは方向が違いますね』

「合流は、一番遅くてクルーゼ隊長たちとの決戦前、ということもあるか」

そうつぶやいたイザークの軍服の裾をくるみが遠慮がちに引っ張った。

221Shout baby ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:58:31 ID:wVsDA9s60
「また、連絡取れたりしないかな?
例えば、携帯電話とか探せばあるかもだし」

『くるみ、残念ながら当機の演算では我々が都合よくランドマークの連絡先を入手し、尚且つ示し合わせたタイミングでそこに居ることはほぼ不可能だ』

「さっきも似たような事を言ったが、それが許されてしまったら今までのゲームバランスが変わるような事態はクルーゼ隊長たちも許さないだろう」

ルルーシュも清隆との無線通信を維持するためにルーターの役割を果たすNPCモンスターを随伴させていたのだ。
仮にゲームエリア内にある携帯電話などを使ったとしてもそう長い距離で通話することは出来ないだろうし、出来ても運営に盗聴されるのは確実だろう。
トランスシーバーのような玩具に近い物なら盗聴はないかもしれないが、今度は距離が足りなくなる。
やはりまともに話せるのは直接電話線で繋がった通話に限られるだろう。

「そっか……」

『ねえ、くるみちゃん!』

「ゆうちゃん?」

『そう遠くないうちに、私とラクスさんとディーヴァの3人でルルーシュみたいに皆に呼びかけるコンサートをやるの!』

「コンサート?」

『うん。
くるみちゃんだけじゃない……南さんにも美嘉ちゃんにも、それ以外のみんなにもこんな殺し合いに負けないって勇気を歌で届けてみせる。
だから、もう少しだけイザークさんやイチローと一緒に頑張って、絶対聞きに来て!』

本当なら目を見て面と向かって、いや、それ以前に東ゆうがくるみたちにしたことを考えればまずは謝罪だろう。
だが、それでも今一番くるみに必要な言葉はこれだろうと思ったら言わずにはいられなかった。

「……うん、分かった。
けどアイドルやるのはバックダンサーだとしても嫌だからね!最前列でゆうちゃん色のペンライト振ってあげるから!」

『……ありがと』

『東、私もいいですか?』

『ディーヴァ?いいけど……』

『ありがとう。イチロー、でいいのよね』

『個体識別名:ディーヴァ、当機に何か?』

『あなたは、話を聞いている限り私の知るAiとは大きく違うように感じる。
そう感じた上で、聞きたいことがある』

『何だ?』

『あなたの使命は何?』

ディーヴァの元居た世界において、AI一体につき一つの使命が課されていた。
ディーヴァならば『歌で人を幸せにすること』
他にも『人類のライフキーパー』など様々あったが、話を聞いている限りイチローに意図して組み込まれた使命はない様に思えた。
ならば今くるみやイザークに与する理由は何だろう?と、気になったのだ。
イチローは相変わらず表情筋のない顔で少しだけ思案する。

『当機の存在意義のことならば、それは造物主たるくるみの守護だ」

『それは貴女にとって何を置いても優先する価値のあるもの?
使命に迷うことはない?』

『生まれも増えも満ちもしない仮想生命と違い、本物の生命体はそれが出来る。
そしてそれが不可能になる生の喪失を恐れる。
自己防衛のために当機を組み上げたくるみの判断はなにも間違っていない』

『そう……最後にもう一つだけ良い?』

『なんだ?』

『あなたにとって心を込めるって、どうゆうこと?』

『当機にそのような機能は実装されていない。
だが……』

イチローはくるみ、そしてイザークの方を一瞥する。
思い出すのは、腕を失ったイザークと同じぐらい自分を案じてくれたくるみや、損傷を見て『ごめん、アンタのこと直せばいいとか考えてたかもしれない』と、誰もいないところでだったが謝ってくれたキャルの姿といった参照用のメモリーを表層に意識し

『きっとジュール隊の仲間たちが当機にしてくれたような行動をとることで、そのオーダーを完遂できるだろう』

『そっか、ありがとう。
イチローもライブ、楽しみにしていてね』

『ノープロだ』

「そこは楽しみにしている、でいいんだぞ。
俺も期待させてもらおう。
では、そろそろ放送だ。今度は直接会おう」

『ええ。またね』

『皆さま、どうかお気をつけて』

『ジュール隊長、くるみちゃんをお願いします!
くるみちゃん!今度そのイチロー、私たちや南さんや美嘉ちゃんにも自慢してよね!』

「うん!またね!」

「ラクス嬢も、どうかお気をつけて」

受話器が置かれる。
居間のテレビの画面が付いたのはそれと同時だった。

222Shout baby ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:58:54 ID:wVsDA9s60
【エリアC-8/民家/9月2日午前11時15分】

【ジュール隊イザーク班】
【イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEED】
状態:健康、顔に大きな傷跡、右腕欠損、義手装着、疲労(小)、ダメージ(小)
服装:ザフトの赤服
装備:ソウルメタル製の義手@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
   ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
   ケミーカード(マッドウィール)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   量産型ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:この殺し合いから脱出する。
01:死んだ部下を弄び、こんな殺し合いに加担して白服を穢したクルーゼ隊長は許せない。
02:クルミたちとテレビ局を目指し、反ルルーシュ派のゲームにのってない連中と合流する。
  地球連合の連中が居るなら出方次第だが協力してやらんこともない。
03:ニコル……お前がもしクチナシのように体を利用されてるだけだとすれば俺は!
04:この武器といいクルミの手袋といい、かなり良い物だなな。
  持ち帰って我がザフト軍で使えないか?
05:アスラン、ディアッカ……死ぬなよ
06:なぜアスランやキラとか言う奴の名前が二つも?
07:継ぎ接ぎ(真人)め。
  今度会ったらこの右手とお揃いにしてくれるっ!
08:キャル、ヨウスケとサヤカは頼んだぞ。
09:スパナ、貴様の武器と仲間の力、使わせてもらうぞ。
10:サヤカとロロの話がうまくまとまるといいんだがな
11:合流できるとしたらテレビ局か。先は長いな。
12:ヒデヨシという男や黒い剣士(スザク)を警戒。
  いつかは倒さねばならんだろうが、流石にもっと装備と人員を充実させてから戦いたい。
13:次似た様なことがあれば右腕だけで済むとは思えんな。
14:あの黒いドームはなんだったんだ?
15:ラクス嬢、ご無事で何よりです。
参戦時期:第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦でディアッカと再会した後
備考
※ソウルメタルのホラーを討滅する力は呪霊にも有効なようです。
※『トラぺジウム』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』に関する知識を得ました。
※ニコルが羂索のような何者かに死体を利用されているだけの可能性を考慮しています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【大河くるみ@トラぺジウム】
状態:健康、不安(中)
服装:いつもの私服
装備:技術手袋@ドラえもん
   キカイソダテール(残り3/5回)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:死にたくはない。
01:怖いけど、何もしない訳にはいかない。
02:イザーク、イチローとテレビ局を目指す。
03:東西南北(仮)の皆にはどうか無事でいて欲しい。
  どうか継ぎ接ぎ(真人)や秀吉や黒い剣士(スザク)みたいな人に会ってませんように……。
04:キャル、皆。気を付けてね。
05:ゆうちゃん……無事でよかった。
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※組み立てた01をイチローと名付けました。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

223Shout baby ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:59:16 ID:wVsDA9s60
【イチロー(NPCモンスター・非参加者)@キカイダー02+ロワオリジナル】
状態:戦闘可能
服装:全裸(ロボットの為)
装備:サン・ライズ・マシンガン、サン・ライズ・ビーム(充電不足の為現状使用不可)
道具:なし
思考
基本:造物主である大河くるみを守護する。
00:くるみを守護する。
01:イザークと行動を共にする。
02:キャル、花村陽介、糸見沙耶香の武運を祈る。
03:仮称継ぎ接ぎを撃破しきれなかったのは当機痛恨の失態である。
04:豊臣秀吉、仮称継ぎ接ぎ、仮称黒の剣士を非協力対象と判断。
05:使命に心を籠める行為は当機には現状不要なタスクだ。
  しかし……もし実行する時が来てもノープロだ。
  くるみたちがしてくれたようにすればいい。
備考
※くるみにより量産型01の残骸からくみ上げられたロボットです。
※キカイソダテールを二回投与され発声機能、会話能力を習得しました。
 それ以外の変化については後の書き手様にお任せします。
※サン・ライズ・ビームは充電さえ出来ていれば何度でも使えますが、そもそも一回の電力消費がすさまじいのでその時の蓄電残量次第ではその場で行動不能になってしまいます。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。



【エリアG-10/野比家前/9月2日午前11時15分】

【東ゆう@トラペジウム】
状態:精神的疲労(中)、覚悟(大)、安堵(中)
服装:制服(城州東高校)
装備:デスティニーの起動鍵@ 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ムード盛り上げ楽団@ドラえもん、神のカード@遊戯王
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:元の世界へと帰る
01:ラクスさんとディーヴァさん、この人たちと協力したい。    
  あと十代さんも
02:結果が全てじゃない。
  だから、このゲームに乗ってアイドルになっても意味がないんだ!
03:みんなに会ってごめんと謝れる自分に
04:今度こそ、人を笑顔にできるアイドルに!
05:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
06:くるみちゃん……無事でよかった
07:なんだったんだろ、あの包丁のおばさん
参戦時期:東西南北崩壊後
備考
※東ゆう、ラクス・クラインの世界の簡単な知識を得ました。
※イザークたちから電話越しで真人やキャル班の情報を入手しました。

【ラクス・クライン@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:通常
服装:コンパス総裁の陣羽織
装備:神のカード@遊戯王
令呪:残り三画
道具:遠写鏡@ドラえもん、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ…亡霊が今生きる人に干渉してはなりません!
02:キラとアスランが二人ずつ……?ミーアのように同じ顔にさせられているのでしょうか?
03:歌で皆を止めるためにコロシアムに向かう。
04:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
05:ジュール隊長にクルミ、ご無事で何よりです。
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※東ゆう、ディーヴァの世界について簡単な知識を得ました。
※イザークたちから電話越しで真人やキャル班の情報を入手しました。

224Shout baby ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:59:28 ID:wVsDA9s60
【ディーヴァ@Vivy -Fluorite Eye's Song-】
状態:システムは正常に作動中
服装:軍服
装備:エイムズショットライザー&サーバルタイガーゼツメライズキー@ゼロワンOthers 仮面ライダーバルカン&バルキリー、神のカード@遊戯王
令呪:残り三画
道具:iPod@現実、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:もうシンギュラリティ計画は終わった。だから、今の私はただのディーヴァ。
02:マツモトはいないみたい……
03:歌で皆を幸せにするために戦いを止める。
04:そのためにコロシアムへ向かう。
05:コロシアムで曲(東西南北〜手を取り合って100年の旅)を歌う。
参戦時期:アーカイブからの課題をクリアした直後
備考
※プロローグのショート髪の方ではないです。
 ロングの方のヴィヴィです。
※支給品のipadに曲を録音しました。
※東ゆう、ラクス・クラインの世界の簡単な知識を得ました。
※十代と情報交換をしました。
※拘束ワイヤー射出器@リコリスリコイルを野比玉子に使い切りました。
※イザークたちから電話越しで真人やキャル班の情報を入手しました。

225 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 10:59:43 ID:wVsDA9s60
投下終了です

226 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/01(日) 11:18:54 ID:wVsDA9s60
wiki収録に際し、一部を加筆修正させていただきました。

227 ◆8eumUP9W6s:2025/06/06(金) 23:57:30 ID:4/Qj4mio0
投下します。

228 ◆8eumUP9W6s:2025/06/06(金) 23:58:49 ID:4/Qj4mio0
空中にて、赤き戦闘機のようなMAがMS・ディンの群れを相手取る。
機銃やミサイルを用い迎撃するそれらを避けようとすらせず受け、傷ひとつつかない様子のMAはビーム砲を放って蹴散らした。

「……つくづく空気読めないよねー、あなたたちは」

憂さ晴らしには丁度いいかもだけど、と明るげにしかし悲しみを滲ませた声色を隠せないまま、MAに変形しているイモータルジャスティスを身に纏う少女聖園ミカは新たな目前の敵と相対する。
現れるはKMF。攻撃を仕掛けてきたそれを、MS形態に変形した上で盾を用いて受けた。
カウンターと言わんばかりに盾を至近距離からシールドブーメランとして射出し、コックピット部分と思われる箇所に直撃させる。

「…わーお、そっちの方が強そうだね☆」

229 ◆8eumUP9W6s:2025/06/06(金) 23:59:26 ID:4/Qj4mio0
しかし一撃は中から現れたコードが繋がった筋骨隆々の素顔の見えない騎士に止められてしまった。
おどけながらも驚いたのは事実。さりとて手を緩める事はせず、己の感情を込めるかのようにミカは攻撃を仕掛け続ける。
対し騎士は己の拳でそれを迎え撃った。

……少しの間近接戦闘が続くも、主は不在、不滅でもないとはいえ再生する騎士を機能停止に追い込むには現状の装備のミカでは些か足りず。しかし騎士もまた現状では装甲をぶち抜く事が出来ないと膠着状態に陥る。

(今回ばかりは、ミーティアもベロバもまだ使えなくて助かったよ。
……今の私じゃ、考え無しに使っちゃってただろうから)

なんて何処か他人事みたいに思いつつ、ミカはここで距離を取り同時に、起動鍵を変更した、
比較的使い慣れているバルバトス・ルプスレクスを身に纏い…納刀した日本刀を腰に下げる。

230 ◆8eumUP9W6s:2025/06/06(金) 23:59:58 ID:4/Qj4mio0
『泣かないで…………』
(……篝、ちゃん…っ…)

刀を振るっていた、今はもう居ない/自分のせいで命を落とした刀使の最期の言葉がフラッシュバックするも……ごめんねと、その一言だけを絞り出すかのように胸中で告げた彼女は距離を詰めメイスを振りかぶる。
回避行動に出た騎士だったがそれは予測済み。同時に動かしていたテイルブレードを勢い付けて刺突し妨害。そこから勢いよく蹴り上げ作った隙を突き……後は動かなくなるまでメイスをぶつけるだけだった。
何度も、何度も、心をグチャグチャにしている激情を少しでも発散させたいと言わんばかりの打撃を全身に受け続けた結果……KMF共々騎士は爆散、残るはスクラップとドロップしたソードスキルのみだ。

(…魔女の、ううん…疫病神の私でさえ使えちゃうんだ。
……ほんとに使い手を選ぶ刀なのかな?だとしたらキラくんや篝ちゃんと一緒で、見る目が無さ過ぎるよ…)

231 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:00:45 ID:IeXqMdWM0
この殺し合いでは御刀は、使い手が女性なら万全でこそ無いが誰にだろうとその力を与えるようにされていた。
故にそれが魔女だとしても、疫病神だとしても恩恵を得て戦える事には変わりはない。ルプスレクスの鍵と八幡力により更に強化された身体能力を以てすれば不滅なはずだった騎士を滅する事程度造作もなかった。

(……この御刀の、本来の持ち主が可奈美ちゃん、だったよね。
なら……もし見つけたらその時は、篝ちゃんの分まで……。
…そんな資格なんて無いのはわかってるけど、でも…キラくんがああなっちゃった以上……!)

若干頭も激情も冷え落ち着きを取り戻し始めるものの、考えが纏まらず思考がどんどん移ろいで行くミカ。
思わず考え無しにスキルを習得してしまう程度には、今の彼女の思考には纏まりが無かった。数時間前の復讐の為優勝すると無軌道に動きながらもルルーシュの狙いを考察出来ていた彼女は何処へやらと、今頃主催者達は嗤っているのだろうか。

「…そう言えばここ、何処だったっけ…?」

232 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:01:13 ID:IeXqMdWM0
思考は更に移る。道中取得し使用した高速化のエナジーアイテムもあって、それほど時間が経ってないにも関わらず…チェイスらが居た地点から結構な距離が離れてしまっていた。
キョロキョロと見回した後、ホットラインを確認しようとしたその刹那──飛来して来た銀色の金属をミカは咄嗟に躱してみせる。

「へえ?そういうこと出来るNPC…ってところかな?」

受けずに避けて正解だったかもと言いつつ、姿を戦闘機のようなMSに変えていく金属生命体・ELSに対し再びイモータルジャスティスの鍵を使用。
今度はフルートバスターと、鞘から取り出した御刀千鳥を構え…ELSが放ったミサイルを斬り飛ばし……勢いのまま本体をも乱雑に斬り捨てた。

振るい方も構えも乱雑、そもそもこの殺し合いに巻き込まれるまで剣系の武器に触れた事すら無かったのもあるとはいえ…その二刀流は黒の剣士キリトや大荒魂タギツヒメに比べれば児戯もいいところだ。
だがそれでも…八幡力と迅移を併用し速度と筋力を向上させた上で放てば、並大抵の相手はどうにか出来てしまえるくらいには彼女は強かった。

(…姿を変えるNPC…もしかして)

233 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:02:21 ID:IeXqMdWM0
「……チェイスおにいさんが、言ってた『先生』は──」

それ以上思考をする暇はミカには無かった。
もしもう少し考える時間があれば、先生の死…とまではいかずとも、姿を利用されているという所までは辿り着けたかも知れないが…そうならなかった事が幸か不幸かはまだわからない。
…ともかく、強烈な凍てつく風と殺気を感じた彼女は言葉を考え諸共に飲み込み、繰り出された手刀を千鳥により受け止めた。

(…なんで、いまっ……!!)
「気付かれるとは、奴から距離を取るには使えたが所詮ドロップアイテムか。暗殺には使えそうにない」
「……キラ、くんっ……!!」
「その御刀をお前が持っている……なるほど。柊篝は死んだみたいだね」

悲痛な声を零すミカに対して、被っていたドロップアイテムを取りながら何もかも無意味だと、虚しいだけだと冷酷に呟くは、キラ・ヤマトの成れの果ての氷竜。

234 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:04:33 ID:IeXqMdWM0
ムウ・ラ・フラガとラウ・ル・クルーゼのように空間認識能力持ち特有の感応を起こされて位置を特定されるのではと思い、もうひとりの…未来のキラ・ヤマトの追跡を躱す為被り逃走。一先ず撒いた所ミカを発見し奇襲を試みた形である。

(よりにもよって、アリウスみたいな事を……!)
「っ……誰!?キラくんをどうしたの!?」
「奴なら凍ってるよ、二度と表に出てこれないようにしておいた。
…そうだね、名乗るとするなら……『絶暴の氷竜』とでもしておくとしようか。以後、お見知りおきを」

一瞬言葉を詰まらせながらも返答次第じゃタダじゃおかないと言わんばかりに、二刀流をやめフルートバスターのみを向けるミカに対してそう氷竜は名乗る。
想起するはキラがこうなった主因のひとつ、魔王を名乗し最悪の錬金術師。

「へぇー、つまりあなたはグリオンの手先ってことでいいのかな?」
「寧ろ敵対関係にある。それと心外だよ、アレと一緒にされるのは」
「元のキラくんを凍らせておいてそういう事言うんだ?
……今すぐキラくんを解放して。でなきゃ──出て行ってよ、キラくんの身体から!!」

大真面目な様子で宣う氷竜に、我慢ならないと言わんばかりにミカは斬りかかった。

235 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:05:08 ID:IeXqMdWM0
(氷を盾代わりに…!)
「無駄な事はやめてよね。
…こいつの身体は僕の願いの為に必要なんだ。無理なお願いをするものじゃないよ…虚しいだけだって…どうして分からない?」
「無駄とか無理とか虚しいとか、そーいう事ばっかり言うのやめてくれないかな?しかもキラくんの口で……とっとと出て行ってくれれば一発で終わらせてあげるからさ☆
…で、その願いって??」

伝わる感触は斬り砕いた物のみ。
形成され向かってくる氷の枝を切り払いまた盾で受けながら、苛立ちと怒りを隠さずに反論しつつも一応願いとやらを聞いてみようとするミカ。

「そうだね…どれだけ頑張っても断ち切れない憎しみの連鎖を、綺麗さっぱり終わらせる事になる。
その為に……全てを凍らせる、それが僕の、いやキラ・ヤマトにとっての──」
「あっそう。もういいよ。皆殺しにすれば何も残らないとかそういう理屈なんだろうけど…キラくんの身体でそんな事、させようって言うならさー……消えてよっ!」

言ってる途中にも関わらず、目前の竜はゼインと同じ対話不能と判断…見切りを付けたミカはシールドブーメランを射出し直撃させた。

236 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:05:48 ID:IeXqMdWM0
「…たしかにキラくんは傷つきやすい所はあったけど…でも篝ちゃんと一緒に私みたいな疫病神にすら、手を差し伸べてくれた凄く優しい男の子だから…。
…そんなキラくんが、あなたの狂った願いが叶ったとしても…喜ぶわけない事ぐらいは分かるよ!」

「…ひとつ言っておくと、僕はキラ・ヤマトが抱いていた虚無感と無力感、絶望…それとグリオンとギギストの力の介在によって生まれた。だからお前よりはずっと、奴の事を分かっているさ…殺し合いに乗っているキヴォトス人、聖園ミカ。
…奴がどんな思いで戦って来たかを知ろうともしない癖によく言うよ」

手刀とフルートバスターで近距離から切り合う両者。
毅然とミカは言い切るも、反論しながら竜は氷でドラグーンを生成し、彼女目掛けて放つ。
反論出来ず、回避か盾や撃ち落としなどの防御に専念する外無かった。

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237 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:07:07 ID:IeXqMdWM0
『……何も知らないくせにさ、わかったようなこと…言わないでよキラくん。
…大切なものを全部奪われて、悪党の人殺しに成り下がった私の事なんて、あなたにわかるわけがないんだから…!!
──うしなったことがないから!!だからあなたは…わかったようなことが言えるんだよ!!取り返しなんてもう、つかないのに!!』

…最初にわたしが、キラくんと篝ちゃんと出会って戦った時吐き捨てるかのように言った言葉が浮かんだ。
……たしかに、記憶を読んでいるあの竜の方がキラくんのことを知ってるとは思う。
…情報交換の時に、軽く聞いたりしただけで……深く知ろうとか、思う前にああなっちゃったから。
…なにもしらなかったのは、わたしの方だ。

「お前にとっては今僕に構うメリットは無いだろう?参加者をもっと減らしてから殺しに来ればいい話だったというのに…」

そう言いながら竜は光の柱を出現させてきて…ふっ飛ばされちゃいそうなのをどうにかシールドで抑える。
……わかってるよ、優勝を狙う以上今は放置して、消耗したところを…ってした方が賢いんだろうねってことくらい。
…でも……あんなことしたグリオンや力を与えたギギストに、攻めてきたエターナルが悪いのはそうだけど……彼を、キラくんを目の前の化物にしちゃった一番の原因は私だから。差し出された手を取らなかったせいで、私なんかを庇ったせいで、私が手を届かせれなかったせいで……!!

238 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:07:46 ID:IeXqMdWM0
…それなのに、知らんぷりして…救われる筈だった、救われるべきだった彼を放置なんて、出来ない。責任を……ケジメを果たさないといけないから。
…私を庇ったせいで、死んじゃった篝ちゃんの分まで……死なせた身で烏滸がましいとは思うし、情けないことに、最期の言葉も未だに果たせそうにないし…でも……きっと篝ちゃんならそうするはずで。
──やることなすことぜーんぶうまくいかないけど、この憎悪を投げ捨てることもできないけど……少なくともキラくんを放ったらかして平然と優勝を狙うことは、今のわたしにはできそうになかった。
…そんなこと、したくもない。

「…そう、だね。放置してた方が賢いんだろうね。でも…放っておけないよ…あんな優しい子に、これ以上、殺させたくない…!!」
「…ならもうひとつ言っておこう。僕は既にもうひとり殺している。頭を砕いたよ、こんな風にね!」
「…──ッ!」

…最悪の事態として、想定はしていた。してはいても…胸の奥が痛む。またわたしはまにあわなかったんだって。心底自分が嫌になる。
……目の前に氷の竜の首が迫ってきていた。

239 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:08:16 ID:IeXqMdWM0
「……なら、なおさら放って置くなんてこと…無理だよ!!」

これ以上、彼に殺させない。殺させたく…ない!
それにあの時はそれとなくぼかしたから、気付かれてないとは思うけど…本格的にアレの、ゼインの 殺す対象になったってことだから…だからここで、竜を止めて…キラくんを、助けなくっちゃ!!
キラくんまで、殺させるわけにはいかない…!

迫ってた首を避けて側面から殴り付けた後私は、御刀の力で加速して──手を届かせた。
…考え無しに覚えちゃったけど、こうやって使うスキルだってのは…なんとなく、わかったから。

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触れた相手や周囲をも凍らせる今の自分に、起動鍵越しとは言え触れてくるとは予想していなかった為……ソードスキルは発動した。
瞬間、確かな冷たさと痛みを感じながらも聖園ミカの目前の光景は変化していく。

「え?これ、って……キラ、くん…??」

見渡しても氷竜の姿は何処にも在らず、呆然としている中…広がったのは日常を送るキラ・ヤマトの姿。
思わず触れようとするがその手はすり抜け虚を掴む。

『ったく…昨日渡されたのだってまだ終わってないのに』
(…あの竜も居ない…もしかして私、キラくんの過去の記憶を視てる…?)
「…何もなかったら、こんなことも言うんだね…キラくん…」

学友と思わしき相手と話し、年相応にぼやく彼の姿を目に映したミカは驚きつつ呟いた。
直ぐにでも戻らなければ追撃を受けるのではという懸念は浮かびはしたものの、雲散する。

(…これがキラくんの過去の記憶なら……向き合わなきゃいけない気が…する。…もしかしたらなにか、手がかりが掴めるかもしれないからね☆)

240 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:08:46 ID:IeXqMdWM0
という考えの元見届けようと決めたミカ。視線を戻すと、フレイという赤毛の少女とその取り巻きがキラ達と──最もキラはろくに話せてなかったが──会話を終えた所であった。
友人2人にからかわれ『僕は、別に!』とか『しつこいぞトール』なんて言っている彼と、自らが知っている彼があまり結びつかないでいる。

(…てっきりキラくんは彼女ちゃん…たしかラクスって子だっけ?一筋だと思ってたけど…)

なんて首をひねりながら考えてる最中も彼らは動く。目的地へと着き、先の少女に手紙を送ったらしい渦中の相手を前にまたもやキラがからかわれていた。
だが突如事態は動く。逃げて来る人達に思わず声を漏らすと、タイミング良く状況を把握出来る会話が聞こえてきた。
キラの方を見ると、友人達とは一緒に逃げずすぐに戻るとだけ告げて、金髪の中性的な少女を追いかけていく。

『何してるんだよ!?そっち行ったって…』
『何で付いてくる!?そっちこそ早く逃げろ!』
(…うん、口調が荒くなっちゃってる所もだけど、私の知ってるキラくんだ。この頃から…優しかったんだね)

その後、少女を引っ張っていく形になったキラは紆余曲折を経てシェルターを発見。しかし満員と言われてしまった彼は『なら、一人だけでもお願いします。女の子なんです。』と有無を言わさず少女をシェルターに押し込め、教えられた別の所へと向かう。

241 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:10:11 ID:IeXqMdWM0
(…あー、そういう所あるよねキラくん。ギギストに頼んだ時とかもだけど、即決即断できちゃうって言うか…)

向かっている最中、キラは鉛玉の飛び交う現場に出くわしてしまった。
そして視界の先には撃たれそうになっていた女性がいて…『あっ!?危ない後ろ!!』と、彼は思わず声を上げ警告。
その結果回避する事に成功した彼女により連れ出された先にあったのは1機のMSである。

「…しれっとドアしか無いとか聞こえたんだけど……改めて命が軽くて、物騒な世界だよね…」

等と呟きつつも、場面は移り変わる。

『……アスラン?』
『……キラ?』

その場では互いに確信を持てずにいたが、かつて別れた幼なじみが敵同士として再会を果たしていた。

(…あれがミームじゃない、本物のアスランくんかぁ。
……幼なじみ…ナギちゃんと子供の頃に別れて、次に会った時は敵同士だった……みたいな感じ、なのかな)

242 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:10:29 ID:IeXqMdWM0
キラの現状(最も過去だが)を目にし、自分に置き換えて考えてみようとするミカ。
それを待たずして状況は目まぐるしく変わっていく。

(…ガンダムって名付けたの、キラくんだったんだ…。でも、ルプスレクスの鍵使った時はあんな表記は出なかった…阿頼耶識…だったっけ?そういう単語も聞こえてこない辺り、別の世界の『ガンダム』ってことかな?多分。
……書き換えるの、めちゃくちゃ速いじゃん☆)

成り行きでMSに乗り込む羽目になったキラはOSにぼやきつつ即興でそれらを書き換えてしまい、初戦で敵MSを撃破に成功。
……しかし彼とその友人達は最新鋭の戦艦アークエンジェルに乗り込む羽目となり否応なしに戦火に巻き込まれる事となる。

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彼は友を守る為に戦い続ける。
コーディネイターな事を初手で察したムウによってバラされたり、幼なじみと改めて互いが敵同士になってしまった事を認識。

『お前が何故地球軍にいる!?何故ナチュラルの味方をするんだ!?』
『僕は地球軍じゃない!
…けどあの船には仲間が、友達が乗ってるんだ!君こそなんでザフトになんか!?』

いくら幼なじみが相手でも、今いる友達を見捨ててザフトへ下ることはできなかった。
どうにか退け最寄りの基地に向うもそこでは裏切り者のコーディネイター呼ばわり。

243 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:11:43 ID:IeXqMdWM0
襲撃を切り抜けるが、水の確保の為遺体がまだ浮いているコロニーの残骸付近の氷を取る事となって…流されるままではなく守る為明確に自分から、殺すという選択を取ってしまい…キラは嗚咽を漏らす。
そんな時だった、拾った救助艇から出てきたピンク髪の少女と出会いを果たしたのは。

「そっか、ここで…ラクスちゃんと会うんだ」
(天然って感じはするけど…それだけじゃなさそうなような…)

キラの心が傷付き軋む様を視る度、胸に去来する痛みに耐えながらも彼女は…聖園ミカは目を逸らさず、いや…逸らせずにいた。

『僕は!…僕もっ…コーディネイター、ですから…』
『…そうですか。でも貴方が優しいのは、貴方だからでしょう?』
(…ラクスちゃんの言う通りだよ、キラくんが優しいのは…キラくんだからで、コーディネイターだからとかじゃない)

しかし戦闘後赤毛の少女…フレイから受けた糾弾に耐えれず、ひとり絞り出すかのように彼は泣く。

『あんた、自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!?』
『パパ…パパを返してよぉ…!!』

その言葉を否定できず、結果彼女の父を守れなかった事を悔うキラは、偶然出会ったラクスに内心を吐露した。

『……僕は…僕はっ、本当は戦いたくなんてないんです。
僕だって…コーディネイターなんだし…アスランは…とても仲の良かった友達なんだ……』

244 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:12:44 ID:IeXqMdWM0
ラクスとの対話の末、キラは彼女を逃す事を決める。

「…キラくんらしいや」

そう呟きながらも、過去を視ているに過ぎないが故になにもしてあげれない、できない事がミカにとってはもどかしくて仕方がなかった。
…もしできたとしてその結果、殺し合いに巻き込まれて以降のように上手く行かなかったとしても。

----

ラクスをアスランに引き渡し、次は討つという彼の宣言に『僕もだ…!』と返したキラ。
だが覚悟が決まりきった訳でもなく…守ってくれたお礼と自分に折り紙をくれた少女が乗ったシャトルを、守り切れずに撃ち落とされてしまうといった事もあり更に彼の心は傷ついていく。

それまでの度重なる戦闘や意図してでない物も含めた心ない言葉、相手の殺害による罪悪感や自分が戦わねばみんな死ぬという状況から来ている心理的な重圧等により…肉体的にも精神的にも疲弊している状態にあった彼に近付いてきたのはフレイ。
父を守れなかったと責めた件を謝りながら、擦り減り荒むキラに寄り添うかのように近付き……地球へと降下した直後2人は身体すら重ねてしまった。

「…………わーお」

顔を真っ赤にしながらミカはそう呟き、またここからどうやってキラくんはラクスちゃんと…?と浮かんだりしたがそんな事誰も知る由もなく。

(あんなにコーディネイターのこと嫌ってたのに、キラくんと……?)
「…ダメだよキラくん!!絶対なにかあるって!!その子絶対キラくん利用してロクでもないこと考えてるって!!」

視ているのがキラ視点での記憶だけで無かったら、フレイがキラを利用し復讐を目論んでいた事にも気付けただろうがそこまでは出来ず。
しかし謀を企てているだろう事はわかる。
届かないとは、変えられないとは分かっていても思わず叫んでしまっていた。

245 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:13:35 ID:IeXqMdWM0
『やめてよね、本気で喧嘩したらサイが僕に勝てるはずないだろ…!』
『フレイは…優しかったんだ…。
ずっと付いててくれて…抱き締めてくれて…僕を守るって…!
……僕がどんな思いで戦ってきたか、誰も気にもしないくせに!!』

時は進み、やがて感情を爆発させたキラは以降コクピット内で生活し始めてしまう。

(……戦わなきゃみんなが死んで、戦ったら同胞を殺して……そんな重圧受け続けてたら、こうもなっちゃうよね……。
…明らかに、フレイちゃんが居なかったらキラくん…潰れちゃってそうだなあ…)
荒む様に悲しみを抱き、見ていられないと目を  閉じそうになるも……彼女は開く事をやめなかった。

(目を閉じて耳を塞いでじっとしてれば、その内これも終わってるとは思うけど……でも、ここで逃げちゃうのは、違うじゃん)

そんな中、かつて逃がした少女であるカガリとの思いがけない再会や交流があり、また気分転換にと連れ出された先で、敵同士だと知らないまま交流した相手との戦いと…その決着が付いた。

『僕はっ……殺したくなんかないのにぃぃぃっ!!!!』
「……ごめんっ…ごめんね、キラくん…」

慟哭が響く。先の発言から、氷竜の言っていたことはおそらく真実の可能性が高いとミカは判断していた。断定は出来ないが、このまま過去を視続ければ嫌でもわかるだろう。
…自分を庇った結果巡り巡って殺しを嫌がる彼に、他人を殺させてしまった。その重たさに対し彼女は俯き瞳を潤ませながら謝る事しか出来なかった。

246 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:14:21 ID:IeXqMdWM0
それは、その後フレイが自分を本心では好いていないと察して突き放し…居場所が無くひとり泣いていたキラの姿を視た時も同様であった。

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またも場面は切り替わる。突き放して以降もなあなあで続いていたキラとフレイの関係は、オーブ寄港時に破綻を迎えた。

『可哀相なキラ…独りぼっちのキラ…戦って辛くて…守れなくて辛くて…すぐ泣いて…だから、だから…うぅ…!
…なのに!なのになんで私が!あんたに同情されなきゃなんないのよ!うぅぅっ…!!』
『フレイ、もう止めて……もう止めようよ。
僕達…間違ったんだ……』
『なによ…!なによそんなの!!』
(……フレイちゃんのこと、絆しちゃってるじゃん…)

利用する為近くに居続けた結果、キラの抱えてる苦しみ悲しみを知ってしまったのもあり余計に情緒不安定になったフレイが半ば衝動的に破局を告げてしまう形となる。

(……あー……チェイスおにいさん達のところから逃げた時の私だ……)

感情任せに動いた結果の後悔が蘇り頭を抱えるも、そうこうしてる間も彼らの戦いは続き……半ばなあなあ状態だったキラとアスランが殺し合う事態へと到達してしまった。
事故でキラが強奪されたガンダムの内1機をパイロット諸共破壊、アスランの仲間の内誰かを殺してしまったんだと落ち込む最中の次の戦いで……キラの友人だったトールがアスランに殺されてしまう。
投げられたシールドがコックピット部分に直撃し、頭が千切れた後爆散する様を…MS越しとは言えキラの瞳は収めてしまっていた。

(……あの時キラくんが、左手犠牲にしてでも助けてくれてなかったら…私も、首を……)
『よくもトールを!!』
『お前がニコルを!!ニコルを殺したぁぁぁっ!!』
『アァァスラァァンッ!!』
『キィィラァァァッ!!』

247 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:14:59 ID:IeXqMdWM0
怒りと憎しみと悲しみのまま、両者は死闘を繰り広げた後…アスランが引き起こしたイージスガンダムの自爆にストライク諸共キラが巻き込まれる形で戦いは終わった。
涙を零しながら、呆然と視ている他に聖園ミカにできることはなく……ベッドの上で寝かされてたキラが起きる所に移ってようやく、あの状況でどうやって生き残れたんだろうという疑問が浮かぶ様相である。

(…うん、そうもなるよねー……)

アスランと戦って死んだはずだと混乱するキラに共感しつつも、ラクス達の元で静養する彼を、トールの凄惨な死を夢に見る彼を見守る形となっていたミカ。
だがやがて状況は変動し……ラクスとの交流の中キラは地球へと戻る事を決意する。

『何も出来ないって言って、何もしなかったら…もっと何も出来ない。何も変わらない…何も終わらないから』
『僕達は……何と戦わなきゃならないのか。少し、解った気がするから…』

「わーお。ラクスちゃん、すごい大胆なことするじゃん☆」

極秘裏に開発されていたMSフリーダムを、勝手にキラに渡した事をそう称しながらも…彼女がキラに伝えた言葉をまるで噛み締めるかのように呟いた。

「『想いだけでも…力だけでも…』」

それは偶然にも、記憶の中のキラと重なる。

----

地球へと降下し、絶体絶命の危機に陥っていたアークエンジェルを救援。
そして地下にサイクロプスが仕掛けられている事を知ったキラはその場で脱出勧告を行う。

(…キラくんが地下にしかけられてるかもって警戒してたやつだよね…。
…あれは…!)

248 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:15:54 ID:IeXqMdWM0
フリーダムに斬りかかるはデュエルガンダム、キラからすればシャトルを撃ち落とした仇であった。
記憶がフラッシュバックし、コックピット毎ビームサーベルで斬り裂こうとするも……寸前で下に下げて無力化に留まる。

(…アイツのせいでキラくんは…あの子を護れなかったのに……なのに思い留まれるなんて、すごいなぁ……)

自分が情けなく思えてきた所であったが時間は待ってはくれない。
サイクロプスが起動し巻き込まれたMSや戦艦が吹き飛んでいく中…危うく巻き込まれかけた敵MSの手を掴み助けようと試みるキラ。

『何故……助けた…?』
『そうしたかったからです』
『殺した方が、早かっただろう…に……』
『…クソぉっ!』

サイクロプスから逃がす事には成功したものの、致命傷を負っていたパイロットはキラの目前で息絶える。
地面を殴るキラの姿からミカは、結局救えなかった事への悔しさや悲しみを…感じ取れた気がした。

ともかくアークエンジェルと合流を果たしたキラは地球軍にもザフトにも与さない事を決め、またアークエンジェルに対してもデータを取ろうとするなら断りここを離れ、奪おうとするなら敵対してでも守ると宣言。

『あれを託された、僕の責任です』
(…せめてキラくんがああなった責任は……きちんととらないと、だよね…)

改めてその想いを強める中、キラはやめてよねの一件で半ば喧嘩別れになってたサイと和解を果たせたり、オーブでの戦いにてアスランと再会。
共闘した後、カガリのとりなしもあって和解を果たす事が出来た。

その後紆余曲折を経て、廃棄されたコロニーメンデルへと向かうこととなったキラ達。
だがザフトや地球軍との戦闘が勃発し、捕虜から味方となったバスターのパイロットディアッカが、敵にいるデュエルのパイロットイザークと話をしたいと言う。

249 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:16:34 ID:IeXqMdWM0
『分かりました。でも…僕とアスランみたいなことには、ならないで下さいね』
(…自分達みたいになって欲しくないって言えちゃうんだよね、キラくん…)

了承しつつそう言うキラの言葉には、酷く実感が籠もっていた。
兎も角、ムウと共にメンデル内に突入すると…そこに待つはこの殺し合いの主催の一角でもある仮面の男、ラウ・ル・クルーゼ。
クルーゼはキラの生存等に驚きつつ、彼や自らの出自を話す。

『あなたは何を言ってるんだ!?』
『君は人類の夢、最高のコーディネイター』
『そんな願いの元に開発されたヒビキ博士の人工子宮、それによって産み出された…唯一の成功体。彼の息子、数多の兄弟の犠牲の果てにね…』
「…それ、って…!?」
(…ここにあるのが全部……キラくんの兄弟達の……!)

思わず絶句し、せり上がってくるものを抑えるミカ。
続く自らがクローンとして生み出され、テロメアに問題があると知った途端捨てられたというクルーゼの過去も合わさり…殺し合いに乗ってる身でありながら、命を何だと思ってるのかと言いたくなってしまう程であった。

クルーゼに逃げられたキラ達は戦場へと戻るも、ここでクルーゼは人質としていたフレイを宙域に放出。

『キラ…』
『フレイ!』
『キラ!嘘…!』

一度行方不明になる直前、ギクシャクしながらも帰ったら話すとキラはフレイに言っていたが…果たせず今に至る。

250 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:17:17 ID:IeXqMdWM0
そんな彼女が居ると知り助けようとするも、地球軍側の猛攻もあり果たせないまま終わってしまった。

『僕が傷つけた…僕が守ってあげなくちゃならない人なんだ!!』
(…キラくん…背負い込みすぎだよ…)

自分が生きてていいんだろうか、生まれて来なかったほうが良かったのではとすら悩むキラを励ますラクスといった一幕を挟みつつ…ナチュラルとコーディネイター、互いに相手を滅ぼし合おうとする絶滅戦争は終幕へと向かう。

『昔…母に言われました。世界はあなたのもので、そしてまた、あなたは世界のものなのだと。
生まれ出て、この世界にあるからには……と。
……あなたを見つけて、わたくしは幸せになりました』
(……もう告白みたいなものだよね、これ…)

キラへ向けたラクスの言葉に、なんとも言えない表情を浮かべるミカなんて一幕を挟みながら。

----

敵も味方も死んでいく激戦の最中、キラはプロヴィデンスガンダムに乗り込んだクルーゼとの決戦を迎える事となる。

『また君か!厄介な奴だよ!君は!』
『あなたは!』
『在ってはならない存在だと言うのに!』
『なにを!』
(…好き勝手言って…!)

ビームの応酬の中、舌戦も交わす2人。
キラが心身共に追い込まれていく様を視てるしか出来ない中…救助艇を彼は発見。
フレイが乗っている物だと気付いた彼は守ろうとし…どうにか守りきれたと安堵した……その時だった。

251 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:18:12 ID:IeXqMdWM0
プロヴィデンスの放っていたドラグーンが、救助艇を貫いたのは。

『フレェェェイ!!!』
「……守れたって一度思わせてからとか、ムカつくことするね。殺し合いの主催なんてやるくらいはあるって、言えるのかな?」

守れず慟哭し、譫言のように後悔の念を呟くキラ。その様を視ながら、呟く少女の瞳には涙が溢れる。

(……キラくんを利用しようとしてたのは間違いないけど、でも…それでも、省みようとしてたのは…わかるし。私なんかよりはよっぽど、救われるべきだったのに……しかもこれじゃ、キラくんが…あまりにもっ……!!)

救われないじゃないかと。気付けば口に出てしまっていた。
だがそんな事は露知らず、戦いは続き…

『あなたは!あなただけは!!』

キラの目からハイライトが消え動きが良くなる。
だが負けじとクルーゼも抗いそして口撃を仕掛けていた。

『それだけの業!!重ねてきたのは誰だ!?』
『君とてそのひとつだろうが!!』
『それでも!』
『守りたい世界があるんだっ!!!』
「…キラくんが勝った、でもこれじゃ巻き込まれて……!?』

クルーゼを討った直後、あわやザフト軍の大量殺戮兵器ジェネシスの直撃に巻き込まれそうになるも寸でキラは助かった。
だが機体の損傷は激しく…しかもパイロットスーツとはいえキラは宇宙に投げ出され漂流状態となっていた。

252 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:18:50 ID:IeXqMdWM0
『…僕たちは……どうして、こんなところまできてしまったんだろう……僕たちの…世界は……』
「……きら、くんっ……!」
(戦争を止めることはできた、でも…キラくんは……キラくんの心は……っ)

涙を浮かべうわ言のように呟くキラが、探しに来たアスランとカガリに見つけられる様を…ミカは泣きながら視ていた。
守れたはずのフレイを目前で喪い、彼の心は限界を迎えてしまってるのだと察してしまっているが故に。

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……気づいたら場面は、知らないストライクガンダムのテストをするキラくんに変わっていた。
…あなたは……どんな気持ちで、その機体を使ってるの?だってその装備は……フレイちゃんの命を、キラくんの目の前で奪ったあのガンダム(プロヴィデンス)の武器を参考にしてる、みたいなのに……。

そうは思っても、時は止まってはくれない。また場面は移り変わって、よくないことをしようとしてる人達を止めるため…その機体をキラくんが使って、殺さないように戦っている所で。その人達を追いかけて、戦うキラくんを視てて……胸の奥が痛くなった。悲しくて仕方がない…って言うのかな…。
……あんなつらい目に遭ってなのに…まだ戦わなきゃいけないなんて……!

…そんなことを考えてる間も、彼の記憶は進んでいく。
事件の黒幕の、シヴァって女の人と直接対峙して…勝つことは出来たけど。でも…自分を殺すかここで死ぬかの2択を迫られて……悲痛な叫びをあげながら殺すことしかできなかった。
旦那さんと子供を理不尽に奪われたって言ってた辺り…きっと、自分じゃもう止まれなくなってたのかもしれない。
…だからって、もしそうだとしても…よりにもよって壊れかけてる状態なキラくんに…自殺の手伝いをさせたことは、許せそうにないや。

253 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:19:20 ID:IeXqMdWM0
『僕は……っ、また…救えなかった……っ!!』

コックピットの中でひとり泣いて、ラクスちゃんに慰められてたキラくんの姿を視て…余計にそう思う。
…そして、あの時キラくんが篝ちゃんと一緒に私を止めようとしてくれた理由も…わかった。
……お人好しの優しい子だからってのも大いにあるんだろうけど…シヴァって人の件があったら、止めようとするよね。

…なんて考えてたら、背景が変わった。

『そうでない者たちも居るが、一応はじめまして。
私の名前は羂索。
私と同じ世界の出身者、或いは呪術を知る者には呪胎九相図を造り出した加茂憲倫と同一人物だと言えば伝わるかな?』

……知っている声が聞こえて、知っている相手が立っていた。…ここからは、殺し合いに巻き込まれてからの記憶みたい。
……最初見た時はアビドスの人としか思わなかったけど……死体のまま操られてる可奈美ちゃんの有様やキラくんの記憶の中のメンデルの惨状を視た後だと……嫌だなあって、嫌悪感が湧き出て来た。

……それに、辛い思いばっかりしてるキラくんをこの殺し合いに巻き込んだ事への怒りも。仮面の人…クルーゼ辺りが入れたとかだろうけど……今キラくんがああなってるのは、あの人にとって想定通りなのか、喜ばしいことなのか…考えてもわからない。
…けれど所詮記憶で過去、今まで通り私の気持ちになんて何の配慮もしてくれないまま進んでいって……見せしめとして2人が殺され、殺し合いが始まる。

254 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:20:20 ID:IeXqMdWM0
『…クソっ、僕は…僕はまた、っ…!!』

血が出ちゃいそうなくらい拳を握りしめ、悔やんでたキラくんの前に……それは現れていきなり殴りかかった。

『キラァァァァッ!!!!馬鹿野郎!!!!』

…あー、これがキラくんや篝ちゃんが言ってた本物じゃない、ビーム…じゃなかった、ミームの方のアスラン・ザラなんだ。
本物よりちょっと大人っぽくて…めちゃくちゃうるさくてまるで壊れたスピーカーみたいじゃん☆
…なんて思ってる場合じゃない、キラくんがサンドバッグにされてるのに…!!と思った次の瞬間、割って入ったのは……

『止まって!…どうして貴方が、彼を殴ってたかは私には分からないけど…だからといって見過ごせません!このままじゃ彼は…!』

もう会えない彼女。私のせいで死なせちゃった刀使の女の子…篝ちゃんだった。

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キラくんを下がらせた篝ちゃんは、最初は生身で、途中からガンダムになったミームのアスランと戦う……無抵抗で万全とは言い難いけれど、「やめてよね」出来るキラくんを生身でボッコボコにして、御刀持ってる篝ちゃんに凄まじいって言わせるくらい動けるんだ。
…ミームの方がこれだけなら、本物の方もこれくらい動けるのかな?なんて思うけど…目は離せずにいた。

255 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:21:18 ID:IeXqMdWM0
『一度ネットの海に拡散されたミームは消えない!!!!!俺が消えるには、存在其の物の消滅というこの望みを…叶えるしかない…!!!!公式にすらおもちゃにされる気持ちが分かるか!?!?!もうおもちゃにされるのはウンザリなんだ!!!!!俺は!!!!』

終始うるさくって仕方ないミームのアスランだったけど、その叫びにはどこか…キラくん達と別れてから戦って…エターナル相手に一緒に戦う事にもなった黒い仮面ライダーみたいな悲壮さがあった気がして。
…まああの人からしたら、同じにされたくないかもしれないけどさ☆

レジェンド?ガンダムってのになってから、一時は追い詰めるけど…やがて篝ちゃんはフレイちゃんを殺した奴に似た武器のせいで追い詰められて。けどここで……キラくんは立ち上がってみせた。
…そうだよね。傷つきやすくて、でもそれ以上にとっても優しいから…何もできないのは嫌なんだよね…キラくんは。だから……【立ち上がれちゃった】んだって…今ならわかる。

『五月蝿い!!!!優勝は望みの為必須だが!!!お前達をここで討つ以上に、まずやらなくては行けない事があったのを思い出したんだ!!!!俺は!!!!』
「うるさいのはあなたの方だって…ほら、篝ちゃんも目がそう言ってるよ」

256 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:21:51 ID:IeXqMdWM0
届かなくてもそう言いたくなるくらい、喧しいミームはどこかへ逃げ去っていっちゃった。
そのまま2人は話しはじめて……へぇー、最初は「柊さん」 呼びで、篝ちゃんは出会った時に聞いてたんだね。

『…それと、泣きたい時は、堪えないで泣いていいんですよ。
私は仮初の存在ですが、それでも…受け止めてあげるくらいなら、出来ますから』
『…──…ありがとう、ございます。でも…僕はまだ、大丈夫ですから…』

ハッとした顔を浮かべたキラくんが見える。……私があの時、2人の手を取ってれば……!

「本当嫌になるよ、やることなすことぜーんぶ裏目に出てばっかりでさ……」

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放送が終わった後、2人は名簿を元に情報交換をし始める。
最もこれらについては情報交換時に2人から聞いている為、ミカからすれば目新しい情報は無く。

「……すごく目を逸らしたくなるんだけどー…」

そこからのかつての自らの襲撃、乱入者からの共闘に情報交換と既知の展開を視続けて…自らと別れた後まで場面は移る。

『でもミカが言ってた程、僕は立派な人間じゃない。犠牲の果てに生まれた上に、人間と言えるかすら怪しいし……』
「…人間だよ、ナチュラルとかコーディネイターとか、犠牲の果てに生まれたとか関係ないっ…キラくんは私なんかよりよっぽど…立派な人間だよっ…!!」

257 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:22:27 ID:IeXqMdWM0
自称救世主が言い放った人殺しに救われる権利など云々について気にしていたキラの言葉に、ミカの心は悲しみを抱き…気付くと叫んでしまっていた。
既に情緒が不安定極まった状態な彼女だが、そこからの篝の吐露……戦った際彼女が言っていた人殺しの経験についてを聞き更に心を揺さぶられる。

「…篝ちゃんだって……立派だよ…キラくんも篝ちゃんも…背負わなくていい…のにっ……なんで…!」

他ならぬミカ当人が、キラの氷竜化と篝の死に責任を感じ背負い込んでしまっているにも関わらず、言わざるを得なかった。

そんな中2人は怪物と戦い勝利するもギギストの介入を受け危うい状況に陥る…も、ミカやスザクの乱入にエターナル達の乱入もあってエターナル以外とは共同戦線を張る。
それはそれとして、ギギストに再会したら一発は絶対殴ると決めたミカであった。

そして、エターナル達への対応をしていたところでグリオンが現れ……後は既知。彼女の自責の念を改めて強める結果となる。

(……ごめんっ、キラくん……結局…私、バカだから…捨てれ、ないよぉ……)
「……凍ってるって、封じられちゃってる…ってことかな。…なら…呼びかけたりすればもしかしたら…」

氷竜人格が邪魔になるキラ当人を封印状態にしたのを視て、自分やミームのアスランを止めきれなかった事への後悔もその理由だと知り浮かぶのは……申し訳なさと、それでも錠前サオリへの怒りや恨みを捨てれない事への謝罪と自嘲だった。
それだけでなく、気付きを得た後……次に映るは彷徨う中出くわした虹色の髪の女と戦闘になる様。

258 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:22:54 ID:IeXqMdWM0
「…ゲーミングって感じのおばさんだね☆
…手強そうだなぁ…」

そう前半はおどけるように、しかし後半部分は真剣そうな声色で呟く中2人…いや2体は激闘を繰り広げた末戦場へと意図せず介入。
周囲の戦況やらを無視して互いに戦う最中、ゲーミング女は氷竜をその場の者に押し付ける。
物量に任せた絨毯爆撃を行いながら暴れた末……

「っダメ!ダメだよ!キラくん!!」

思わず叫んでしまうが、ここは記憶の中。映し出されるは変えようがない真実。
無慈悲にも氷竜は少女の上半身と下半身を泣き別れにし…挙句生成した氷の竜の首で頭部を壊してしまった。
何の感慨も無く、虚しいと冷たく言い放った上で…屠った少女が身を挺して守った少女もまた、氷竜は殺さんとする。

『…君は、君は一体なんなんだ…クソっ!』
「…ぇ?……きら、くん……准将の、方??」

その時だった。氷竜をよろめかせMSが舞い降りたのは。
記憶を視てきたのもあり、声や喋り方でミカはそれが誰かに気づく。

『…自分同士の争いなんて、虚しいと思わないのか』
『…そうだね。君が本当に過去の僕そのものなら…こんな事はしない。でも…だからこそ、僕の手で君を止める!』
(やっぱり…准将の方でも、キラくんはキラくんだ…)

彼の優しさが失われていない事に嬉しくなりつつも、さらなる災害のような介入者によって戦闘が終了したのをミカは見届けた。

259 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:23:50 ID:IeXqMdWM0
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…キラくんの記憶を視て、目を背けて、耳も塞いじゃって終わるまでジッとしていたくなったことがなんどもあった。
無自覚な差別意識…みたいなので、キラくんか傷付く度、特別な理由とかも無くゲヘナ嫌いを拗らせてめちゃくちゃをやった私が、益々愚かで滑稽に思えてくる。
でも……改めて、キラくんが優しくて傷つきやすくて、立派な子だってことがわかってよかったって…思ってる私も…たしかにいた。
……私だけが、知ってるってのも…不公平だから、だから助けたらその時は……私も、話さなきゃいけない。

それと…こうも思った。──出来るだけ彼には、戦って欲しくないって。
…まあこう言ってもきっとキラくんは戦おうとするし、止めれる気もしないけど…もう十分、彼は苦しんだ筈で…だからこれ以上…苦しんで欲しくなかった。
その為に…これ以上殺させる前に、止めないとね。

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風景が元に戻る。それは記憶を視る旅が終わり、殺し合いへと引き戻されたということ。
掴んだ手を以て、一度ミカはキラを思いっきり引き寄せ……殴り付けた。

「戻した後どうするかとか、全く浮かんでないけど…でも、今は言えるよ、キラくんを助けるために戦うって!!
…だから、キラくんも……!!」

すると氷竜は頭に手を置くような動きをして苦しみだし、周辺を見境無く生成したドラグーンで壊していく。
それに紛れて身隠しの布をまとったのか、猛スピードで何処かへと消えてしまっていた…ように見えて、凍った後が目印となっていた。

「…こんな時に来るとか、ほんとーに空気読めないよねー…!!」

邪魔をするかのように現れたNPCを、めちゃくちゃな情緒のままに聖園ミカは蹴散らしてから追う。

260 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:25:48 ID:IeXqMdWM0
時を少し遡らせよう。
エリアB-8、切島鋭児郎が息絶えたその地にて…本物のアスラン・ザラと道外流牙の両名は…クリスタルの中で湧き出てきたNPCへの対処に追われていた。

「アスラン、イルヴァ。舞衣は起きそうか?」
『起きそうな様子は…っ、無いな。リュウガ』
『まだ舞衣は起きそうにないですね。おそらく夢を見ているのかと』

会話を交わしながら、流牙は魔戒剣で統一された制服に仮面、マントを装着している兵士樽聖兵達を斬り飛ばし矢を避けアスランはズゴックとなりつつ禍々しい花から生えたライダー複数体に、攻撃を躱して射撃とソードスキルによる爆発で対応する。
切島の遺したアイテムをひとまず回収し、アスランが持つという事を決めた上で一時休息をしていたところ、NPCが攻めてきた形である。
最初は聖兵達や、明らかに致命傷を負った上で蠢く人間型NPCが多かったものの…金属片と花から生えたライダーが現れ閉じ込められてしまった。

そんな最中、向かってきた金属片を咄嗟に流牙が魔戒剣を当て飛ばして……跳ね返される形で当たったのはデストロイガンダムの残骸。

261 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:26:31 ID:IeXqMdWM0
すると、金属片は溶け込むかのように動いて……やがて再びデストロイガンダムは、金属生命体ELSに飲まれて動き始めた。

『NPCが復活した!?先程から混じってる奴等と同じなのか…?』
「わからない、だが……倒し方はわかってる、そうだろアスラン」

射撃兵装の弾幕をくぐり抜けながら、接近を2人は試みる。後方に寝かせている舞衣の存在もあり、ここから先に進ませる気は2人には皆無であった。

----

…これまでの人生でわたしは、可奈美ちゃんに付き合って観たりする事はあっても…自分からアニメとか、そういうのを観ることはあまりなかった。
だからあの子が、薫ちゃんが憧れてるヒーローについて…どういうものなのかあまりピンときていなくて。

……だけど、彼に…ライオットさんに/切島さんに庇われた時それが……わかった気がしたんです。
…きっと、彼みたいな人のことをヒーローって呼ぶと。

262 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:27:48 ID:IeXqMdWM0
……なのに。きっと、これから先もっと多くの人を救える筈だった彼をわたしは……みごろしに、してしまった。
…それはきっと、彼が助けるはずだった人達も、わたしひとりの判断ミスのせいでころしてしまったということ。
…しかもよりにもよって…可奈美ちゃんの手を、血に染めさせてしまった……。
…あの時、全体の体力上昇スキルを使ってれば……少なくとも切島さんは死ぬことはなかったはずで。
…多分わたしは助からなかっただろうけど、その方が……可奈美ちゃん達の中で、一番わたしが剣術の才能は無いから。ならあそこでわたしは……死ぬべきだったのに…!!
なのにわたしは……我が身可愛さで切島さんを……みんなが、特に薫ちゃんが知ったら…軽蔑されてもしかたない。
緑谷さんにもし遭っても、糾弾されて…ころされても、しかたないんだ。

…でも、生き残って"しまった"以上は……やれることをしないと、本当に……切島さんが、なんのために助けたのか……無意味になんて、できない。
…外で戦ってる音が聞こえた。…道外さんや本物のアスランさんはまだ、きっと戦ってる……わたしにそんな価値はないけれど……なら、戦わなきゃ!

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彼女はひとつ思い違いをしている事をここに記しておこう。
状況と何処ぞのハゲのせいで自責の念に囚われ視野が狭まっているせいで、自分が切島を見殺しにしたという考えに行き当たってしまっているが……これについては当人が考えてる通りそれをすればその場で切島がギリギリ生き残れても舞衣はシビトの可奈美の次の連撃やミーム野郎の攻撃で死んでいた。
それだけでなく…この場合は切島はそれでも死にかけ、かつシビトの可奈美もミームハゲも盤面に残り退かない為に、最悪の場合総崩れになる事もあり得る。
…柳瀬舞衣があの場でスキルの存在に思い至り行使して…その結果命を落としていたとしても、悲しいことに今よりマシな状況になる可能性は殆ど無いということであった。

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263 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:28:35 ID:IeXqMdWM0
クローにより何体目かの花から生えたライダーを撃破したアスランに、ハガネの鎧を召喚し聖兵を撃滅した流牙。
後は再生したデストロイのみ……という段階で、少女は目覚めた。

『舞衣、起きたんですね』
「……うん。心配かけてごめん。イルヴァ。……アスランさんに道外さんも…!」
「なっ…舞衣!?」
『起きたばかりだろう君は!?無茶はやめるんだ!』

言いながら彼女は、我が身を省みず迅移を以て射撃兵装の雨を交わし……納刀していた御刀を少し抜き──瞬間蒼炎を纏った強烈な一撃がELSデストロイを沈黙させた。スキルである十六手詰めを使用したのである。

「…それについてはごめんなさい、ただ…今後もこの力を使っていくなら、多少の疲れなんて気にせず慣れた方がいいかな、って」
『…一理はある、が…』
『先程のような、省みない戦いはどうかと思います…舞衣』
「…普段なら…そうだけど、そうも言ってられない状況みたいだよイルヴァ」

疲労を見せながらも、落ち着きを取り戻したように見せる舞衣。その様子を見て何か言いたげにした流牙だったが…それを状況は許してはくれない。

264 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:30:09 ID:IeXqMdWM0
現れるは、それなりにボロボロになりながらも進行を続けた帝竜ジゴワット。
そしてもう片方には…

「剣士2人に珍妙なMS…か」

ミカを一時的に撒き、平静を取り戻した氷竜が現れる。

「氷と、雷のドラゴン…」
『リュウガ、俺はあの氷の竜の方をひき受ける。嫌な予感がするんだ…!』
「わかった、舞衣は…」
「…雷の、砲台の方から2人で叩きましょう。道外さん」

肩の砲台から放たれた射撃を回避しながら、舞衣と流牙は近付き攻撃を加える。
対し氷のドラグーンを差し向けてきた氷竜を、アスランは回避や撃ち落とし、爆弾に造り変えた物の投擲で対応しようとする。

(2人があの砲台の竜を倒すまで、俺が引き受けよう…だが、あの氷のドラグーンは一体…??)

アスランからすれば声こそ同じだが変わり果てた姿の氷竜がまさかキラ・ヤマトの成れの果てとは思わず、キラの記憶がある氷竜からすれば声こそ同じとは言え時系列の都合ズゴックの存在等知らないのでアスランだとは気付かない。
互いに気付かないまま、閃光の刻は再び訪れた。

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砲撃を避けては斬りつけ、ヒットアンドアウェイも交えた近接戦を続けていた舞衣と流牙。
あからさまに高火力の射撃を撃てそうな背の砲台の存在もあって、短期決戦をするつもりであったのだが……ここでHPの減り具合もあってかジゴワットは雷撃を全体に放つ。

「っ、大丈夫か舞衣!」
「なんとか、大丈夫…です!」

ハガネの鎧を再び纏った流牙はそれを以て耐え、舞衣は耐えるも写シを剥がされてしまった。
とはいえ対応が間に合った為ダメージは少なく……ジゴワットがチャージをし始めたのもありより早期に撃破しなければと2人は考える。
そんな中…ここで案を挙げたのは舞衣。

265 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:30:50 ID:IeXqMdWM0
「道外さん、1分くらい時間を稼ぐことって…出来ますか?」
「出来るが…倒し方が浮かんだのか?」
「はい、上手くいくかは賭けになりそうですけど…これを使います。
あの砲撃を撃たれたら、このエリアは持たないと思いますから。それまでに倒さないと」
「……わかった、だが無理はするなよ」
『私からも、流牙の言う通り無理はしないでください、舞衣』
「……うん」

向かってきたディンの群れ等のNPC達を見据えて言いながら舞衣は、次の攻撃の威力と状態異常付与率が上昇するスキル『不動居』を行使。その上で落ちていたドロップ品である聖兵の剣をもう片手に持って…二刀流限定の奥義を使う事とする。
とは言え単体対象の奥義なのもあり、他の相手に攻撃が当たってしまえばバフが消えてしまうため他のNPCには流牙が対応する事となっていた。

「アスランがあの氷の竜を抑えてるんだ、守りし者として、ここは抑えて見せる!」

266 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:31:29 ID:IeXqMdWM0
魔戒剣を手に取り、迫るNPCを倒していく…またアスランも、熾烈な攻撃をどうにか凌いでいた。

『いまです、舞衣!』
「ありがとうイルヴァ。……──乱れ散々桜 双!」

その時は訪れ、舞衣は双剣専用の奥義を使用。『狩る者』の効果故か、視たことこそあれど初めて振るう二刀流にも関わらず問題なく使用でき──高速での連撃を何度も見舞った後、高く飛び上がり……

「わたしのやり方で、全力を以て終わらせます!はっ、たぁっ!!」

ギリギリチャージしきれず、無理矢理にでも電磁砲を撃とうとしたジゴワットだが…その前に頭部に二刀が突き刺さる。
火力のバフと八幡力による補正もあってジゴワットは動かなくなった。
狩る者により二度討たれた帝竜は、狩る者のスキルを覚え適合出来るか否かの狭間にいる少女によりまた討たれる。

【帝竜ジゴワット@セブンスドラゴン2020-Ⅱ 死亡】

267 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:32:02 ID:IeXqMdWM0
『舞衣!』
「舞衣、大丈夫か!」
「…ちょっとふらついただけだから…道外さんも、イルヴァも…アスランさんの、所に…」

疲労からかふらっと倒れそうになるも、自力で抑えどうにか立て直す舞衣。
威力に耐えれなかったのか、折れてしまった聖兵の剣を手放して御刀一本にしようかと考えて──

(…わたし、今…エレンちゃんの御刀で、なにを……)

切っ先を思わず心臓へと向けそうになって、どうにかそれを抑える舞衣。
そんな時、二人の前に突っ込んでくる相手が居た。頭のおかしいアスラン・ヅラことミームハゲだ。
エリア確認後、エナジーアイテムを数個取得し、ニヒトと高速化のエナジーアイテムを使用して切島の個性で硬化、そのまま突っ切って、道中にいた恐竜グリードやシャドームーン等のNPCを撃破した末たどり着いたというわけである。
なお上に挙げた2体はドロップアイテムを落としそれらは何処かへと行ってしまったが、この勢い任せの馬鹿野郎が覚えているわけもなく。存在すら認知してるか怪しいところだった。

「ヘァァァァァッ!!!!タァッ!!!!」
「っ、あなたは……!!」
「偽物のアスラン・ザラか…!」
「舞衣!!!!この見殺し野郎!!!!お前はここで討つんだ俺が!!!!」

ともかく言いながらマークニヒトの起動鍵を纏ったハゲ野郎は、ケーブルを尖らせる。

268 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:32:40 ID:IeXqMdWM0
「───っ!………っ!…どうして、なん、で……それを、っ……!!」

今にも泣き出してしまいそうな、怒鳴り散らしてしまいそうな悲痛な表情を舞衣は浮かべる。

(──だって、その力は、それは……わたしが、ころした…みごろしにしてしまった……切島さん、の……)
「舞衣!!これがお前が殺した男の力だぞ!!そしてこれが、お前が殺させた女の力だ!!この人殺し野郎!!!!」
「────ぁ、う…ああっ…うあぁあ"ぁぁっっ"!!」

どさくさ紛れでちゃっかり回収した、バタフライオルフェノクが持っていた千鳥をこれ見よがしに見せつけられたのもあり……泣き叫び感情がぐちゃぐちゃになりながら、迅移と八幡力を併用した上で舞衣は怒りと悲しみのまま剣を振るいケーブルを斬り払う…も。あまりにも隙だらけである。

「ウオオォォッ!!!トゥトゥトゥヘァー!!!!」
「ぁあっ!?」
「舞衣っ…!」

切島の個性で硬くしたニヒトの拳と、そこから千鳥の鞘で殴打される舞衣、流牙が受け止めなければ大ダメージは避けれなかっただろう。

「本物の俺も殺すが!!!!それより先にレジスターの確保だ!!!!俺がお前を消してやる!!!!馬鹿野郎俺のセリフじゃないぞ!!!!キャラデザで混合するんじゃない!!!!この…ファフナー野郎!!!!」

などと意味不明な発言をしながら纏めてワームスフィアーで屠ろうとするイカれ野郎。
一方アスランはというと、どうにか食い下がり続けたものの、物量による限界を迎えてズゴックの中身を出す前に変身を解除されてしまう。

「…あの喧しい方じゃないアスラン・ザラか。まあここで凍るといいよ」

このまま3人とも殺されてしまうのか────その時だった、2つのMSが舞い降りたのは。

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269 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:33:40 ID:IeXqMdWM0
トラウマを思いっきり刺激され続けてるせいか過呼吸に陥ってしまってる舞衣を、せめて彼女だけでもと身を挺し、守りし者として庇おうとしていた流牙だったが……ふっとばされる音と、オ、オレヴァ…という声が響く。
そちらに目を向けると…起動鍵を解除させられたアスラン??と、それを見下ろす舞い降りたMSと目が合った。

「君はアスラン…なのか!?どうして殺し合いなんかに…!!」
「准将の方のキラ、だと!!!???主催の議長達はここで俺を殺そうとしている!!!!!!」

言いながら立ち上がり、ファイティングポーズをとって殴りかかり手数で圧倒しようとするアスランのようなナニカ。
だが…クアンタの短距離ワープにより容易く避けられてしまいGNソードの持ち手で殴られぐああああ!?!?!?とふっ飛ばされる羽目となった。

一方、アスラン(本物)を殺そうと手刀を振るった氷竜だが……金属音が響く。

「…あっちのがミームで、こっちのが本物のアスランくん…でいいのかな。
……させない。それだけは、それだけはダメだよっ…キラくん!!」
「チッ、お前にも未来のキラ・ヤマトにも追い付かれるとはね」
「な……キラ?キラなのか!?!?」

ここで友達を殺させてしまえば、間違いなくキラは元には戻れなくなるという確信が聖園ミカにはあった。
一方氷竜の言い方から過去のキラが元になっているのは判断出来たものの、流石に意味が分からず困惑を隠せない本物のアスラン。

270 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:34:14 ID:IeXqMdWM0
混迷する状況の中、一網打尽にしてしまおうと動いたのは氷竜だ。
氷のドラグーンやソードスキル由来の突風、破壊光線に光の柱、衝撃波に氷の枝や三つ首の氷の竜を同時に斉射…その様はさながらドラグーンフルバーストのようであった。
だがこれは、GNバスターライフルを放った准将のキラともう一度ズゴックを纏ったアスランの一斉射撃により威力と速度が減衰。後は各々が…流牙は斬り払い舞衣は避け、ミカは盾で受け止め対処してみせる。ミームのハゲは射程外なのをいいことにしつつ、距離を詰めていっていた。
とにかく氷竜はならばとドラグーンを放とうとするが……

「く、っ…大人しく、凍っていればいいものをぉ…!」
「……アスラン…もうひとりの、僕…ミカ……?」

姿こそ氷竜のままなものの、苦しんだ末、未来の自分やミカ、それにアスランの存在もあってか…綻んだ凍結は一時的に解ける。呆然とした様子だったそれに、驚きと正気に戻ったんじゃという期待からミカは声をかけた。
舞衣や流牙は警戒を解かず、准将とアスランは見守る姿勢で居る。

「…キラくん、元に戻れたんだ…!」
「っ、来ないで!」
「…え?…なんで…」
「…自分だから、わかるんだ……今は一時的にこうできてるだけだって。その内また、僕は『彼』に乗っ取られる……」
「…そんな…」
「……ミカ、篝さんは…やっぱり」
「……私のせいで、死んじゃった……篝ちゃんは…篝ちゃんは悪意でなんか、動いてなかったのに…なのにアイツが、ゼインが……っ!!」

271 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:34:54 ID:IeXqMdWM0
涙を流し懺悔するミカに、会話から篝が対主催だった=そう言ってたミーム・ザラの信憑性が上がる→タギツヒメも篝さんのように…?という考えが浮かぶ舞衣。

「ミカは…悪くないよ。…僕とは違って……『彼』に、乗っ取られてたけど…なのに僕はっ、僕は……!!」
「…うん、知ってる…知ってるよ…キラくんの方こそ…悪く、ないよぉ……!」

完全に情緒がめちゃくちゃになってるミカと、後悔を滲ませながらも宥めるように接するキラ。今の彼の姿を抜きにしても、傍から見ればどちらが年上かわかったものではないだろう。
そんな中、彼は本題に入った。

「……ミカ、お願いが、ひとつだけある」
「…なに…?」
「……僕が、また乗っ取られる前に……僕を殺して、くれ」
「──なに、いって…なんで…」
「…もう…もう嫌なんだ…殺したくなんかないのに…このまま、全部を凍らせてしまったら…君やアスラン達まで僕はっ……」

今度はキラが狼狽、焦燥しきっていた。いつまた封じられてもおかしくはないと考えていたのも理由である。
…涙を流しながら、ミカはバッグからレーザーレイズライザーを取り出し、震える指で引鉄を引き……

272 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:36:30 ID:IeXqMdWM0











空へと撃った。

「……でき、ない…できないよ…篝ちゃんも…キラくんも…なんでわたしに、むりなこと…言うかなぁ……っ…!!」

殺せるわけがない。キラ・ヤマトを殺すには…聖園ミカは彼の事を知りすぎてしまっていた。

「……頼む相手を、間違えたのかな…じゃあ」
「…ダメ!…キラくんは、キラくんは殺させない…私は…助けたいよ…あなたに救われてほしい…から…!
…殺してあげたほうが…救いかもしれないけど。
でも… 私、悪い子だからさ。……ギリギリまで、可能性を探したい……そう、思っちゃった」

暗に、今殺そうとするなら相手になるよと周囲に示唆しつつ…ミカは助けたい意思を示した。自分でも身勝手で救いようのない馬鹿野郎なのはわかっていて…それでも、彼には自分や篝の分まで救われて報われて欲しいのだ。

273 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:38:42 ID:IeXqMdWM0
「…君は…どうして、そこまで…」
「……キラくんさあ、そういうところだよ……」
(…道外さん、アスランさん、どうします?わたしは…殺させたくないって、思ってますけど)
(…今は彼女の意思を尊重したい。だが…いざとなれば俺が斬る)
(…俺の知ってるキラよりは前みたいだが…だとしても、あいつが死んだ姿なんて見たくもない)

呆れ混じりで言うミカと、どうするか話す3人。そんな中…真っ先に反応したのは准将の方のキラだった。

「今だっ!!!!」
「くっ…昔の僕達の邪魔をしないでくれ!!」
「ウワァァァアッ!!!!」

レジェンドの起動鍵を用いてドラグーンを飛ばすミーム・ハゲを、ガンバレルストライカーとクアンタの併用で迎え撃ち、呆気なく解除させて撃ち落とす准将。
対し、疲労が積み重なってるのもあって落下したミーム存在のアスラン・ザラは舞衣の方を見据え……刀を振り下ろそうとした彼女に見苦しい怨嗟を叫ぶ。

「あなたの境遇が、悲惨極まりないことはわかります。でも──」

274 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:40:08 ID:IeXqMdWM0
「叶えるべき願いも無いただの人殺しのお前が生きて!!!!何故願いのある俺がここで死ななければならない!?!?!?!?
帰るべき場所などお前にはないだろう!?そんな身の丈に合わない力を持って帰ったところで居場所など何処にもありはしない!!!排斥されるか返り討ちにして覇王?とやらみたいになるのがオチだ!!」

流石にガンダムキャラでないスパロボに出たわけでもない覇王十代の事を知っているわけではないが、覇王という字面からしてなんとなくどんな存在かの想像はついていた。
故にありったけの精神ダメージを与え逃走する為口と頭を回す。
しかしその口ぶりには何処か憐れみもあった。

「……わたしに、帰る…場所が……」

そしてその甲斐はあった。事実、舞衣はまだ知らないがある世界の衛藤可奈美はその個人としては強すぎる力のせいで、政争に利用されそうになり出奔する羽目になっている。
仮に狩る者に適合した上で元の世界に帰還しても、別の世界の可奈美のように出奔せざるを得なくなるか、裏社会に潜るか、或いは立ちはだかるもの全てを蹴散らして覇王になるか……待ちうる可能性はそれくらいであった。

275 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:41:03 ID:IeXqMdWM0
そしてその聡明さ故に…別世界の可奈美の件を知らずともなり得る可能性には思い至ってしまう。
またタイミングの悪いことに、キラが再び苦しみだした。

「今 だ !」

動揺し呼びかけるミカ達や、凍結能力をまた発動させ去ろうとする氷竜、御刀を抜こうとするもまたも手が震え、過呼吸まで併発する舞衣と駆け寄る流牙という形の中…言いたい放題言ったアスラン・ヅラはいつの間にか取り出していたサソードヤイバーとゼクターを用いて変身。
ジャンプ強化のエナジーアイテムを使った上で飛び、クロックアップを発動しようとしたその時だった。
突如同高度から飛んできた銃弾が直撃し、なまじ強化していたのとクロックアップを誤爆した結果……「ヌオオオオオオ!?!?!?!?」とミームアスランは発電所付近へ不時着する。

「…状況とかまっったくわからないけど、でも…聞こえてきた声だけでも…アンタがグリオンやダークマイトの同類の最低野郎なのはわかるわよ!」

撃たれた瞬間、そんな声をアスラン・ザラモドキは聞いた。

276 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:42:35 ID:IeXqMdWM0
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「痛い!!!!これならクロックアップとやらを切ってマスクドフォームとやらになるべきだったんじゃないかシン!!!!?」

などと錯乱している頭のおかしなミーム野郎だったが、ここであるものを発見する。

「これは…オリジナルのGNドライヴだと!?!?粒子を放出させればレジスターを全て破壊できるじゃないか!!!!これならあの赤い服の男も殺せる!!!!」

などと、それをやれば自らの願いも破綻する事を棚に上げ喚き散らす中……声が聞こえた。

「ほう、それはいい情報を聞けたな」
「…にこ、る??ニコルゥゥゥッ!?!?!?!?」
「残念だが私はニコルとやらではない。…そうだな、大規模な戦闘が起こっているのは理解できるだろう?今は手駒が欲しい所だ…喜ぶがいい、生命戦維にすべてを捧げる歓びを理解できる事をな」
「 ウワァァァアッ!?!?!?!?」

277 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:43:05 ID:IeXqMdWM0
呆気なく仮縫いをされてしまうハゲラン・ザラ。
封じ込められる中……彼は自らの出自を思い出した。

「…オ、オレヴァ…五道化ノナリソコナイダッタンダ…オレハ…」

主催により五道化として造られたものの、規定外、しかし禪院扇やアクエリオンのようなNPC止まりというほどではない存在だったのを面白がられ投げ込まれた存在だと。
……自らの抱いていた想いは全て、贋作(虚構)だったと悟った彼?は折れた。

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あの人が落とした御刀を…可奈美ちゃんの千鳥を手に取る。
それを抜いてみようとして……何故か、固定されたみたいに動かなかった。
……御刀は、持ち主を選ぶらしい。…きっと、本来の持ち主に…可奈美ちゃんにころさせたわたしは、ふさわしくないんだってことなんだろう。
…利用されるのを防ぐ為に、今はわたしが持っておかなきゃ。

…今は使えるけど越前康継も、いつまで持ってられるのかな…。
…切っ先を自分に向けて、突き刺してしまいたくなる衝動を我慢しながら考えた。

……見殺しにしたわたしは、死ぬべきで…だけど、無為に、楽に死ぬことなんて許されない。

…そこまで考えていた最中、あのミカって子がキラって人の所に行こうとしていて、止めるためにわたしは動いた。

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278 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:43:52 ID:IeXqMdWM0
「離してよ!!キラくんを…キラくんを追わないと!!」
「…気持ちはわかるよ、ミカちゃん。でも…もうすぐ放送が始まるから。それに…わたしに抑えられちゃうくらい、疲れてるのに行っても……死にに行くだけにしかならない」

…シノンが最期に逃がしてくれた結果、何がなんだかわからないうちに私、黒見セリカは打ち上げられて…落ちていく中、向かってくるライダー?みたいなのと、声が聞こえた。
…内容だけで、ライダー?みたいなのが最低な奴なのはわかったから撃って、それに後悔は無い。

「…状況が全然わからないんだけど……誰か説明出来る??」

問題は、着地した先の状況がさっっぱりわからない所だった。
…一応言ってはみたけれど、もうそろそろで放送らしいから…それが終わってからになりそう。

「…放送が終わってからになるが、それでいいなら俺が話そう」
「…そうね、ありがと…えっと」
「道外流牙、魔戒騎士だ」
「黒見セリカ、よろしく…でいいのよね?」

やっぱりそうなるよね。
…魔戒騎士…羂索が触れてた単語にあったような…。

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などとセリカが考え、色々あったのもあり殺し合いに乗ってないかの確認を忘れてた中…流牙はリュックの中に視線を少し向けた。

(…放送が終わり次第、使うべきだろうな)

放送を迎えるまで使用不能となっていたとりよせバッグが使えるようになるまで、後2分程だった。
──そして、キヴォトスの生徒たちが、先生の死という絶望を知らされるまでも…2分前後である。

279 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 00:45:09 ID:IeXqMdWM0
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「そのキラくんって子を助けたいなら、今は無理しちゃダメだよ、ミカちゃん」
「…じゃあさ、舞衣ちゃん…は協力してくれるの?」
「うん。…あの人の分まで、あの子の分まで…生き残っちゃったわたしがやらないと」
「…償いのために?」
「……正直に言うと、そうなるけど……それ以上に、わたしが助けたいって、そう思ったから」
「…そっか」
(……篝ちゃんといい…刀使ってのは、どうしてこう……)

二人の情緒不安定な少女の行く末やいかに。

280 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:00:37 ID:IeXqMdWM0
【エリア全体の備考】
・エリアの何処かしらにドロップアイテムであるプテラ・トリケラ・ティラノのコアメダル@仮面ライダーオーズ、キングストーン(月の石)@仮面ライダーBLACKが落ちました。

【エリアE-8/発電所/9月2日午前11時13分】
【鬼龍院羅暁@キルラキル】
状態:疲労(大)ダメージ(大) 左腕切断(治療中)
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む
01:学郎は消えたか。少々惜しいがまあ構わんな
02:流子がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
03:ここにまともな参加者はいないのか????参加者以外もまともな物がいないんじゃないのか??
04:あの怪獣娘(セレブロ)は不快だ。あまりにも思考が合わん。
05:美嘉とノノミ、あの氷竜(キラ・ヤマト)とユージオを警戒
06:手駒はとりあえず増やせたが…
07:地下施設を壊せば…だがそれだと私も終わりか。
08:とりあえずコイツ(アスラン・ザラ?)から他に聞き出せないか試す。
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています
※火属性に弱い可能性があります
※左腕が破壊されましたが見た目だけはほぼ直っています。精度は劣化しており本来の半分程度だと羅暁は考えています。
 時間経過でどの程度改善されるかなどは後述の書き手様にお任せします。
※精神仮縫いによってNPCである神話型アクエリオン、シャドウフィルムライダー:装甲響鬼、ELSリボーンズガンダムを支配下に置いています。どれも先の戦闘でそれなりには疲労とダメージが溜まっています。付いてこさせてるか否か等は後続にお任せします。

281 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:01:37 ID:IeXqMdWM0
【アスラン・ザラ@ネットミーム】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、呆然自失
   マークニヒトの使用回数『5』、精神仮縫い
服装:SEED DESTINYでのザフトの軍服(赤)
装備:
令呪:残り一画
道具:レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
   マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン
   切島鋭児郎のレジスター、サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
思考
基本:オ、オレヴァ…
00:なり損ないだったんだ…俺は…
参戦時期:無し。(知識的にはこのロワが始まった2024年8月22日以前までのSEEDシリーズの展開やSEED関連のネットミームについては知っています)
備考
※ギルバート・デュランダル@機動戦士ガンダムSEED DESTINYが羂索達の裏に居ると勝手に決めつけています。
 また梔子ユメも羂索の協力者だと勝手に決めつけています。
※支給されていたソードスキル:Wの聖文字@BLEACHを習得しました。
※真人、真昼、真鍋、レン、ジンガ、エンシンをシン野郎としました。
 今後シン野郎と見なした相手は増えます。
※チェンジアタックは一度使用すると6時間使用不能となります。
 (9月2日の午後3時45分に再使用可能)また起動鍵を使用した状態では使用できません。
※ジャスティスを核爆発させる為にはジャスティスガンダムの起動鍵が必要です。
 他参加者に支給されているかドロップアイテムとして存在しているか、会場内に存在しているかは後続にお任せします。
※切島を同化した為、ニヒト使用時は彼の“個性”が使える様になりました。

282 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:05:21 ID:IeXqMdWM0
【エリア???/9月2日午前11時13分】
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED】
状態:内に秘めた悲しみ(大)、氷竜化、暴走状態、ダメージ(小)
服装:SEEDでの連合の軍服
装備:王印@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸(発動状態にある)
令呪:残り一画
道具:ホットライン、預託令呪@Fateシリーズ、身隠しの布@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
思考
基本:凍結
01:虚しい。
参戦時期:SEEDの本編及びRecollection終了後、AFTER-PHASE「星のはざまで」及びDESTINY以降よりは前。
備考
※篝との会話で隠世についてや可奈美達の話についてある程度は聞きました。
※篝やミカとの会話で刀使ノ巫女世界についてやブルーアーカイブ世界についてある程度把握しました。
※支給されていたソードスキル:疾風(シュトゥルム)@ストライクウィッチーズシリーズを習得しました。
※ギギストの力に適合し本来より更に強くなっています。
※現在暴走状態にあります。キラ当人の人格は再凍結されています。
※氷でドラグーンを生成する事が可能です。

283 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:10:24 ID:IeXqMdWM0
【エリアB-8/9月2日午前11時13分】
【道外流牙@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、申し訳なさ
服装:魔法衣
装備:イグスの魔戒剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、舞衣の手作りクッキー、ゼロノスカード(ゼロフォーム用、残り枚数未定)&ゼロノスベルト@仮面ライダー電王、とりよせバッグ@ドラえもん
思考
基本:守りし者としての使命を全うする。
00:放送を待ち、その後とりよせバッグを使う。
01:舞衣たちと行動する。りんねを助けに行きたいが…。
02:現状力は1から3割ぐらい削がれてるか。
03:イグス、もう少し力を貸してくれ。
04:羂索、人を纏う怪人たるお前はホラーも同然。
  お前とその一味の企てを打ち砕き、牙狼剣を取り戻す。
05:ソウジ、キズナブラックの事は頼んだぞ。
06:ジンガたち悪しき魂を警戒
07:…舞衣、すまない。ライオットを助けれず、スキルを君に使わせてしまった…。
参戦時期:ハガネを継ぐ者終了後
備考
※ハガネの鎧は令呪無しでも召喚出来ますが、牙狼の鎧は牙狼剣が手元にある状態で令呪を使わなければ召喚できません。
※ソウジ、舞衣、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や刀使ノ巫女世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。

284 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:16:08 ID:IeXqMdWM0
【アスラン・ザラ@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、不機嫌(極大)、切島についての記憶を忘却
服装:私服
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン×2、ズゴックの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、シン・アスカケーキ@ネットミーム、切島鋭児郎のランダム支給品1、舞衣の手作りクッキー×2
思考
基本:このゲームを止める。
01:ラクスたちは兎も角、名前が二つもあるキラは…俺とあのニセモノとは違って過去と未来…といった感じか。
02:ラウ・ル・クルーゼ……お前は復活していたがニコルは?
03:…ニセモノの俺、理解不能だが哀れでもあるな…。
04:あの男(やみのせんし)には、少し言い過ぎたな。
05:病院からテレビ局の様子を見に行きたい所だったが…。
06:…マイ、それにライオットという彼…俺が不甲斐ないばかりにっ…!
07:リンネの事も助けに行きたい所だが…。
08:…たとえ過去のキラだろうと、死んでる姿なんて見たくはないな。
09:今のキラと話してみたい所ではあるな。
参戦時期:本編終了後。
備考
※切島と情報交換を行い、ヒロアカ世界に関する知識を得ました。しかしゼロノスカードの消耗により切島の事を思い出せません。得た知識を覚えているかは後続にお任せします。
※流牙、舞衣と情報交換を行い、牙狼世界や刀使ノ巫女世界に関する知識を得ました。
※名簿の並びからルルーシュ、綾小路の関係者を予測しました。
※支給されていたソードスキルである紅蓮の錬金術@鋼の錬金術師を習得しました。

285 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:26:10 ID:IeXqMdWM0
【柳瀬舞衣@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、精神的ダメージ(極大)、疲労(大)、狩る者のソードスキル使用、消えない心の傷、自殺衝動、トラウマ、戦闘時以外の視野狭窄
服装:美濃関学院の制服(女子用)
装備:越前康継@刀使ノ巫女
   魔導輪イルヴァ@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ホットライン、舞衣の手作りクッキー(残り2袋)、ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ、千鳥@刀使ノ巫女
思考
基本:刀使として戦う。
00:わたしが、きりしまさんをみごろしにしたんだ。
01:道外さんたちと行動する。
02:よろしくね、イルヴァ。
03:姫和ちゃんたちや、空蝉丸さんたちを探す。
  まずは九堂りんねさんを助けに行きたかった、けど…今ミカちゃんを行かせるわけにはいかない。
04:ジンガや宇蟲王ギラたちには注意する。
05:キズナブラックさん……。
06:…ごめんなさいっ…切島さん…私のせいで、あなたは……ッ!!
07:…止めに行かなきゃ、いけないのに…可奈美ちゃんも、真昼さんもニセモノのアスランさんも…。
08:…姫和ちゃん達や、緑谷さんに…どんな顔で、会えばいいの…??
09:…篝さんやタギツヒメが抗おうと?…本当なのかも、しれない
10:…可奈美ちゃんを…止めれなかった…止めなきゃ、行けなかったのに…なのにっ…!!
参戦時期:アニメ本編22話「隠世の門」にて、可奈美を抱き締めて涙を零す彼女に寄り添った後から。

備考
※魔導輪イルヴァと契約しました。
※支給されていたソードスキル:狩る者を習得し力を行使しました。適合までどれだけ時間がかかるか等については後続にお任せします。
※ブーストマークⅢバックルの効果で、所有しているだけで攻撃や防御時に蒼炎が武器へと付与されます。
※ソウジ、流牙、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や牙狼世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。
※自分が命惜しさに切島を見殺しにしたと思い込んでいます。また自分が千鳥に選ばれなかったから使えないと思い込んでいます。

286 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:27:59 ID:IeXqMdWM0
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(大)、決意(大)
服装:コンパスの制服
装備:ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
令呪:残り三画
道具:ガンバレルストライカーの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED MSV、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ……分かった。
  今度も示すよ。僕の守りたい世界を。
02:ホナミさんとアビドス砂漠を経由してテレビ局を目指す…予定だったけど、竜になってしまった僕を止めてから向かおう。
03:ビスマルク・ヴァルトシュタイン……中々の強敵だった
04:ラクス、アスラン……イザークにディアッカに、ニコル?
05:どうして僕やアスランの名前が二つも?
  多分僕が准将の方だろうけど……
06:あの僕を止めないと……!
07:…ごめん…助けられなかった…!
08:あのMS…ストライクフリーダムに、僕が設計してる筈のプラウドディフェンダー……!?
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-には英文が刻まれています。
帆波は『世界はこんなにも簡単だと示してください』と訳しました。
※帆波と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。
 アヤネの追跡に気づいていたかどうかは後続の書き手様にお任せいたします。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。

287 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:38:12 ID:IeXqMdWM0
【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、精神的ダメージ(極大)、疲労(絶大)、動揺による情緒不安定気味(大)、魔女、キラと篝への罪悪感(特大)、脳に焼き付いたトラウマ、主催への怒り、羂索やシビトへの嫌悪感
服装:いつもの制服(返り血を浴びてる)
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(1時間47分変身不可能)@仮面ライダーギーツ、イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ(午前8時25分に使用、12分使用不能)、千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、ホットライン×2
思考
基本:魔女らしく荒れる。……それは、変わらないよ。……でも。
00:キラくんを助ける。キラくんは…救われるべきだよ、私なんかとは違って…!
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげる。それは……変わらない。でも優先順位ってのが…あるよね?
02:ゼインは見つけ次第壊してやる。
03:…せめて、キラくんは止める。
04:先生のことを詳しく聞く。殺し合いに乗った?そんな訳ないじゃん馬鹿なの?????でも、あのNPCの事考えたら……
05:邪魔したあの救世主って名乗った人(リボンズ・アルマーク)と仮面ライダーエターナル(大道克己)、それにキラくんをあんなにした魔王グリオンとミームの方のアスランくんは…次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
06:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
07:…しれっと逃げてたギギストは…次会ったら一発くらい殴ってもいいよね??
08:…あの人(スザク)は…どうするんだろ。
09:やることぜーんぶ、裏目に出てばっかりだなぁ…………
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
 一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※篝とのやりとりで刀使ノ巫女世界についてある程度把握しました。
※ドロップしたソードスキル:魔王ゼロのショックイメージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーを習得しました。10時45分に使用した為5時間32分使用不能です。
※キラ・ヤマトの記憶を視た為ガンダムSEEDとSEEDRecollectionについて把握しました。ただしキラ視点からわかることのみです。

288 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:39:53 ID:IeXqMdWM0
【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)魔王グリオンへの怒り(極大)
服装:アビドス高校の制服(リンチにあったため汚れ 大)
装備:エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
 トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
 ワープテラケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
 テラー世界線のリトルマシンガンⅤ@ブルーアーカイブ
思考
基本:こんな殺し合いにはのってやらない
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……この人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:マジアベーゼ……アンタの力、貰うわよ。
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
※トランスアイテムで魔法少女に変身できるようになりました。
 その姿をマジアアビドスと命名しています
※シノンの手で上空に吹き飛ばされました。現在地点については後続の書き手様にお任せします

289 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:41:05 ID:IeXqMdWM0
【NPC紹介】
・ディン-R@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
・ディン-F@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
…ザフトから払い下げされた空戦用MSをファウンデーションが購入した機体。
Rは無人機にされておりFは有人機。装備はディン固有の物だけでなくジンの物も使用している。

・ナイツ・オブ・ラウンズ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
…シャルル・ジ・ブリタニアが自らのギアスにより手駒とした、不死の兵隊となった元騎士。
(この世界線のシャルルのギアスは本編の記憶改ざんとは異なり死者蘇生であるザ・デッドライズ)
彼により蘇らされた歴代の騎士達や彼に逆らったものの敗死し傀儡となった者達で構成されている。
KMFに搭乗しているが元騎士なだけあってか生身でも普通に強い。
シャルルが滅びない限り不滅であり再生し続けるゾンビのような存在だったが、このロワでは主催側により再生能力を持っている程度に弱体化されている。

・蓮華座武神鎧武@仮面ライダー サモンライド!
・シャドームーン@仮面ライダー サモンライド!
・恐竜グリード@仮面ライダー サモンライド!
…サモンライド仕様の連中。
武神鎧武は通常形態では登場せずこの形態でのみ出てくるようになっていて、何処ぞのパックンフラワーの如く大抵の場合複数生えている。
シャドームーンは中ボスで通常より少し大きい。恐竜グリードは大ボスの個体と中ボスで複数同時に出てくる個体もあり今回のは中ボスのもの。

・ELSアスカロン@機動戦士ガンダム00I 2314
…ELSがアリオスガンダムアスカロンを侵食・融合した姿。
作中ではMS形態とMA形態の2体が現れている。
武装は作中では再現したGNミサイルコンテナのみ使っているが他のものが使用可能かは後続にお任せします。

・ELSデストロイガンダム@本ロワオリジナル
…デストロイガンダムの残骸をELSが同化した物。
とはいえ変更点などは特になく、弱点もそのまま。言ってしまえば再生怪人に過ぎない。

・聖兵@BLEACH
…滅却師の集団たる見えざる帝国の擁する軍隊、星十字騎士団の中の一般兵。ゾルダートと読む。
聖文字持ちの聖章騎士達とは異なり統一された制服に仮面、マントを装着している。
霊子により構成した神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)と剣を使い分け戦う。
作中でも雑兵扱いされているものの、第一次侵攻では疲弊+数の利もあったとはいえ死神達を追い込んでおり、またアニメでは第二次侵攻でも彼等相手に有利に立っていた為、単体なら兎も角複数現れると難敵だと言えるだろう。

290 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:41:26 ID:IeXqMdWM0






【支給品紹介】
・とりよせバッグ@ドラえもん
…道外流牙に支給。
このロワでは第一放送を迎えるまでは使用不能、かつ一度使うと6時間使用不能となるようになっている。
またその汎用性の高さ故か、持ち主の居ない支給品やドロップアイテムか、遺体の一部分のどちらかしか取り寄せる事が出来なくなっている。
(原作みたいに泥棒は不能。また当然ながら取り寄せる対象のある場所からするといきなり虚空から手が現れる形になるので、原作のように攻撃等の妨害を受ける危険性もある。
遺体については五体満足の場合だと取り寄せ時に一部分のみ切り取られる形となる。)
名前がわかっておりかつ取り寄せ条件を満たしている場合は狙った物を取り寄せれる。

【ドロップアイテム紹介】
・ソードスキル:魔王ゼロのショックイメージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
…触れた対象に過去を見せるギアスとは異なる異能。ロボ越しでも通じるようで、作中では枢木スザク相手に発動している。
このロワでは対象に過去を見せるだけでなく対象の過去を視る事も可能となっている。どちらになるかは使用者次第、かつどちらの効果でも一度使うと6時間は使用不能となる。
なお視ている間は当人の体感時間は加速させられている為、戦闘中に使用しても問題ない。

・プテラ・トリケラ・ティラノのコアメダル@仮面ライダーオーズ
…恐竜の力を秘めしコアメダル。3枚セット。
取り込むとオーズドライバーがあればプトティラコンボになれるようになる。このロワで恐竜グリードになれるかは後続にお任せします。
原作同様プトティラコンボになった場合は暴走状態となる。このロワでは一定時間が経過するか追い詰められるとそうなり、ダメージにより変身が解除されない限りは暴走し続ける仕様となっている。
どれくらい時間が必要かについても後続にお任せします。

・キングストーン(月の石)@仮面ライダーBLACK
…シャドームーンの体内に埋め込まれた特殊な鉱石。
エネルギー源であり次期創世王たる世紀王の証でもある。
このロワでは何らかの手段を以て体内に取り込まない限りは無用の長物である。

・聖兵の剣@BLEACH
…聖兵が行使する霊子兵装のひとつ。
耐久力はそれなりにはあるものの、このロワだと滅却師のように霊子を操れる者以外が無茶をさせると壊れる。

・身隠しの布@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
…ギルガメッシュの宝物庫の中に収められている、姿を隠す宝具類の原典。被せるか括るかした者や物を光学的及び魔術的に観測不能にする事が出来るものの、気配や音等はそのままな為状況次第では全く以て役に立たない。
ちなみに原作では本来の名前は「ハデスの隠れ兜」で、折りたたむと帽子として使用可能だという事が判明するが、このロワだとドロップアイテムなのもあってかそういう使い方は出来ない。
後何故か宝具ランクがE。

291 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 01:42:19 ID:IeXqMdWM0
投下終了します、259までが「キラ・ヤマト:リコレクション」で、それ以降が「奪い取ってしまった未来はいくつ?」です

292 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:42:30 ID:GjcMSQTM0
投下お疲れさまでした!
80話を超える素晴らしく楽しいssの数々をお寄せいただき厚く御礼申し上げます!
第一回放送、投下させていただきます!

293 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:42:59 ID:GjcMSQTM0
ラウ・ル・クルーゼによる放送開始から丁度6時間が経過した。
前回同様にホットライン、そして会場内のラジオやテレビに緊急入電が入り、画面のある機械には一人の男が映し出される。
クルーゼではない。
ましてや梔子ユメの肉体になっている羂索でもない。
如何にも研究職といった風貌の神経質そうな男だ。

『定刻の9月2日午前11時15分となった。
はじめまして、我々の集めた紳士淑女諸君。
私は茅場晶彦。
このゲームの主にシステム周りを司るゲームマスターだ』

少し疲れたようにも見える男は淡々と放送を進行させていく。

『前にクルーゼから説明の有ったように、この放送は後から見返すことも可能だが、情報とは鮮度が何よりの命だ。
なるべくこのタイミングで見ておくことを強く推奨する。
メモを取りながら聞きたいプレイヤーも居るだろうから、今より1分だけ猶予を与えよう。
その間に筆記用具などの用意をしておくといい。
……では、早速墓標アプリにも更新されているが、最初の2時間を含むこの8時間の間に死んだプレイヤーの名前を発表する』

294 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:43:41 ID:GjcMSQTM0
『葉多平ツネキチ
渋井丸拓男
真鍋志保
刹那・F・セイエイ
浅利切人
エンシン
セッコ
ウンベール・ジーゼック
五大院宗繁
ローラ姫
アントライオンの男
ビスマルク・ヴァルトシュタイン
麗美
先生
カラレス総督
宮藤芳佳
八神拓也
黒鋼スパナ
軽井沢恵
アリサ・ミハイロヴナ・九条
黒崎一護
卜部巧雪
衛藤可奈美
ロロ・ヴィ・ブリタニア
藤乃代葉
PoH
赤黒血染(ステイン)
成見亜里紗
満艦飾マコ
秋山小兵衛
切島鋭児郎(烈怒頼雄斗)
浅倉威
ザギ
望月穂波
勇者アレフ
柊篝
大道克己
松坂さとう
ディアッカ・エルスマン
柊うてな
ダークマイト
シノン
イドラ・アーヴォルン
レッド』

『……以上44名だ。
実に全体の約3分の1という計算になる。
順当にこのペースが維持されれば16時間後にはほぼ全滅……最終勝利者が決定する計算だが、それでは我々もプレイヤー諸君も面白くない。
そこで私は与えられたゲームマスターとしての権限に基づきビターな刺激を加えようと思う』

そう言って茅場はプレイヤーの1人でもあるグラファイトにも支給されているガシャコンバグヴァイザーを取り出し、彼と同じ手順で操作する。

『培養』

<Infection!
レッツゲーム!バッドゲーム!デッドゲーム!ワッチャネーム!?
THE BUGSTER!>

バグヴァイザーの銃口から噴出した大量のバグスターウイルスが茅場に取り込まれ、その姿を血を吸って硬質になった枝で再構成したヒースクリフ型の怪人とでも呼ぶべき姿へと変えた。

『これが私の戦闘形態。
我々ゲームマスターへの叛逆を決めたプレイヤー諸君にとっては倒すべきラスボスの1人でもあるヒースクリフバグスターだ。
この姿となった私は事前の準備さえあればこのゲームのルールを好きに書き換えることができる』

そう言ってヒースクリフバグスターは装備されたインセインコンカラーと宝剣デウスラッシャーを打ち鳴らした。
同時にゲームエリアを金色のブロックノイズが駆け抜ける。
傍目には何の変化も起きていないだが、茅場が選定したプレイヤーたちには決して聞き逃せない言葉が確かに聞こえた。

『心意システム、実装完了』、と。

『詳しくは私の選定したプレイヤーたち聞くと良い。
では、最後に立ち入り禁止となるエリアを三つ発表する。
D-1、E-9、J-8の三つだ。
放送終了後、一時間ごとに完全にゲームエリア外と同じ扱いになって行くので十二分に注意して欲しい。
では、これにて第二回定時放送を終了する。
生き残ったプレイヤー諸君の健闘を祈る』

その言葉と共に再び画面は暗転した。

295 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:44:00 ID:GjcMSQTM0
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「茅場」

「羂索か。一仕事終えた同僚をいたわりに来たのか?」

放送を終えたゲームマスター達の拠点にて。
人間態に戻った茅場に酷薄な笑みを張り付けた羂索が話かける。

「まあ、それもあるけど……なんでプレイヤーと接触してない五道化の成りぞ来ない共が影も形もなくなっているんだい?」

「システム実装に際してリソースにするために分解した」

「だとしても君の腕があれば全部バラす必要はなかった……というより、もっと効率的なやり方はいくらでもあったろう?」

「効率的だとも。
リソース確保とプレイヤーにとって過剰な負担にしかならないコンテンツの削除を両方行えるのだから。
まだクルーゼのお気に入りも五道化も脱落していないのにプレイヤーの中に明確な知識を持つ者の居ないジゴワットやアクエリオンのようなエネミーと連戦させるのも酷だろう?」

「……はいはい分かったよ。
全く、大人しい顔して君も案外やり手だね」

まるで勝負ごとに負けてすねる小学生のような負け惜しみを吐き捨てながら羂索は部屋を後にした。

「私には相談しておいて彼女に伺いをたてていなかったのか?」

「相談したところで思うままにやるがいいさとしか言わなかった君がそれを聞くか、クルーゼ」

背後からやってきた白い仮面の軍人に目もくれず、茅場はガシャコンバグヴァイザーを操作して転移する。
恐らく自分のラボに戻ったのだろう。

「羂索が始め、私が加速させ、茅場が刺激を加えたこのバトルロワイヤル……キラ・ヤマト、それにラクス・クライン。
君たちはどう抗ってくれるかな?
少なくともやりたくもない蹂躙を行っただけの価値はあると思わせて欲しい物だが」

自らが選び、そして試練と剣を与えた二人の選ばれし者を想いながらクルーゼは1人呟いた。



【全体備考】
※心意システム@SAOシリーズが実装されました。
※すでに登場している者を除き冥黒の五道化の成り損いを再利用したNPCモンスターは登場しません。
書き手の皆さまもそのような強さのNPCモンスターを登場させないでください。

296 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:44:28 ID:GjcMSQTM0
以上で第一回放送、投下終了です。
続けて投下します

297委任状 受け取って絶対 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:46:30 ID:GjcMSQTM0
茅場晶彦の放送が終わり、一瞬の静寂の後再び会場内のあらゆるテレビが電波を受け取る。
ホットラインは全く反応を示していないにもかかわらず、放送が始まるこの現象にはほとんどのプレイヤーの身に覚えがあった。

『ごきげんよう諸君、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ』

運営からの放送ですでに分かっていたことだが、綾小路清隆共々この8時間を生き残った彼は相変わらずテレビ局に居るようで、前の時と同じ革張りの椅子に腰かけ、不敵な笑みを浮かべている。

『今回は愚かにもゲームマスターを名乗る連中が伝えそびれた情報の伝達、及び諸君らの協力的な態度に謝意を示す為に放送をさせてもらっている』

そう言ってルルーシュは懐から二つの主を失ったレジスターを取り出した。

『諸君らの協力のお陰で愚かな我が父、先帝シャルル・ジ・ブリタニアの騎士であったビスマルク・ヴァルトシュタインは討たれた。
そして私自身も仮面ライダーエターナルを僭称した男と仮面ライダータイガを僭称した松坂さとうをこの手で処断することが出来た!
特にビスマルクを討ち取った者は是非名乗り出て欲しい。
我が下に来るならば仮面ライダーの称号と爵位、そして領地を始めとした格別の褒美をもってその働きに報いよう』

実際は満艦飾マコと成見亜里紗の物なのだが、あたかも大道とさとうの物であるかのように見せびらかしたレジスターを放り捨てると立ち上がるルルーシュ。

『さて、続いてある意味ではこれらの知らせ以上に諸君らに重要な知らせを伝えよう』

画面外からギアスで配下に置いたNPCモンスターである眼鏡の刀使がやってきて、持ってきたアタッシュケースを広げてカメラの側に魅見せた。

『これは私が預かっているプロトライダーガシャットと呼ばれる物だ。
バグスターウイルスを用いて開発された最初のアイテムで、これの解析が出来ればこの忌まわしい枷を外すまでの道のりを大幅に短縮できることだろう』

そこで、とルルーシュは一区切りいれると再びカメラの正面に立つ。

『医療技術を持つ者、機械工学に関する知識を有する者、このプロトガシャットの正当なる所有権を持つ九条マリアの身柄、神戸しおの身柄、そして私とゼアの共通の敵であるゼインの首級を私の元まで持ってきた者には先の私の放送で約束したものと同じ褒美を与えることとする』

298委任状 受け取って絶対 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:46:53 ID:GjcMSQTM0
では、私は引き続きこのテレビ局で待っているぞ。
そう告げたルルーシュは再び画面の前から姿を消した。

-----

「ルルーシュ君、一体何を考えて……」

テレビ局の廊下に設置されたモニターで運営、そしてルルーシュからの放送を聞いたドラえもんには困惑しかなかった。

「それは本人に直接聞いたらどうだ?」

ドラえもんに考える間を与えないように彼の頭上をマゼンタの人影が通り過ぎた。

「その声は、清隆君!?」

鋼の翼を背中に展開した001と似てはいるが別の仮面ライダーが降り立つ。

仮面ライダー迅 フライングファルコン

ルルーシュから新たに褒美として下賜されたフライングファルコンプログライズキーで清隆が変身した姿だ。

「ルルーシュ様はお前にここから黙って出て行かれては困るそうだ」

<フライングディストピア!>

ドライバーを操作すると清隆を中心にマゼンタの旋風が巻き起こり、ドラえもんが走るより早く拡大し巻き込む。
平衡感覚を失い無茶苦茶に振り回され、投げ出された。

「こら清隆。
これから頼みごとをするお客人だぞ?
もっと丁寧に扱え」

「申し訳ありません」

「う〜〜ん……ここは、ってルルーシュ、、様」

「立てるか?ドラえもん」

ルルーシュはドラえもんを立たせると努めて穏やかな口調で話し始めた。

「色々と聞きたいことはあるだろうが、貴方に折り入ってお願いがある」

「お願い?」

「私の名代としてアッシュフォード学園に向って欲しい。
あそこは私に所縁のあるランドマークであり、君も戦った黒衣の魔女や黒き魔神を討伐するための戦場にここや病院の様な他の参加者にとって生命線になりうる施設を使う訳にはいかない以上、どうしても必要な場所なのだ」

「あなたは……本当にこの戦いを終わらせる気があるんですか?
だったらなんであの手首が必要、、そもそもこの場にあるようなことになるんですか!?」

「私とて見ず知らずの死体を傷付けるなど不本意だったのだよ。
だが我々の肉体に施された『何か』を知るためにはどうしても必要だったのだ」

そう言ってルルーシュは腕に宿った三画の令呪を見せる。
すべて使い切ると消滅してしまうのはここに居る全員にとって何の縁もゆかりもないアルカイザーが証明している。
令呪は切り札と同時にレジスターと同じ枷に違いない。

「仮に羂索たちを倒せても、それをどうにか出来なければ我々は死ぬしかない。
君のようなロボットと違って我々生命体に『次』などないのでね」

「それは……」

確かに、ルルーシュたちに『修理』なんてことは出来ない。
だがそれでも、それだからこその掛け替えのない命が失われることはあってはならないはずだ。

「気を悪くしたのなら謝罪しよう。
だが君がロボットであるということは重要なのだよ。
どんな人間を名代にしても私の場合この『絶対遵守』の力のせいでどんな賛同者も『私の人形』としか見られない可能性がある。
NPCモンスターにしても同様だ。
その点君はロボットにしてプレイヤー、支給品もギアスも簡単に効かない公算が高い」

言葉に詰まった理由を誤解したままルルーシュはドライバーから金の短杖を生成し、ドラえもんに手渡した。

「これはインペリアルセプター。
神聖ブリタニア帝国において皇帝からの委任権を象徴する物だ。
是非君に受け取って欲しい」

「……分かりました。
けど二つ約束してください。
清隆君を貸してほしいのと、僕が戻るまで誰も殺さないで欲しいです」

299委任状 受け取って絶対 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:47:20 ID:GjcMSQTM0
「我が妹に誓って。
……引き受けてくれて感謝する、ドラえもん卿。
清隆、聞いた通りだ。
こちらの客将の護衛につけ。
親衛隊としてNPCモンスターもつける。
移動には前の作戦で使い残したコルベットブースターと地上車を使え。
詳細は追って伝えよう」

「イエス。ユア・マジェスティ。
ドラえもん卿、こちらに」

清隆に連れられ部屋を出たドラえもんを見送り、ルルーシュは革張りの椅子に座り、レイスの短剣の刀身に映る自分と目を合わせる。
アークとの対話はこれが一番スムーズに出来るからだ。

『上手く言いくるめたな。
だが本当に殺さない上にアッシュフォード学園も奴に任せる気か?』

「殺しはしないさ。殺しは、な。
それに何のために清隆を着けたと思っている」

『まるでジュリアス・キングスレイと枢木スザクの様ではないか。
父親に倣ったのか?』

「そんな訳があるか。
これはテストなどではない。
このまま遅々として自軍の拡張ばかり続けていてはいつまでも特記戦力共と戦えないというだけの話だよ。
それにゼインがこの距離にいる以上清隆を外に出す以上、私が城を空ける訳にもいくまい。
ロロも来るかもしれないからな」

『ロロ・ランペルージ……果たしてお前の知っているロロか?』

「死んだ卜部が本物だったんだ。
同じく死んだロロだけ本物じゃないなんて可能性は低いだろ?」

『では九条マリヤや神戸しおの名前を出したのは何故だ?』

「ゲームエリアの縮小に対してプレイヤーが減りすぎている。
積極的に他者を探して動き回ってもらわなくては運営に対抗できるだけの集団が出来上がるどころか特記戦力に関する正確な情報すら知る事が出来るか怪しい。
ゲーム開始から8時間が経過しているというのにそれはいくら何でも遅すぎる。
我々も、この六時間の間にノワルを討ち取れなければテレビ局……と言うより私の居城を台風の目にしておくのが難しくなってくる」

そう言ってルルーシュはレイスの短刀を懐に戻すと、ザイアスペックを使って清隆に裏の指示を下した。

「清隆、返事はせずにそのまま聞け。
アッシュフォード学園に到着したら、ドラえもん卿の護衛以外にもやってもらいたいことがある。
まず運営に繋がる手掛かりを探してくれ。
次に手がかりがないとお前が判断すればそのまま戦場にする前提で盤面を整えろ。
そして他のプレイヤーと接触した場合、それが美少女……特に異能力者であった場合は必ずこちら側への協力を取り付けろ。
ノワルをおびき寄せる餌にする。
親衛隊のNPCモンスターにゼツメライザーを装着した個体やマギアといったこちらの戦力を拡充できる者を多めに配置するから頭数は気にしなくていい。
それから、極力お前自身が戦うことは避けろ。
どの作戦を使うにしてもお前には死力を尽くして戦ってもらうことになるからな。
そして対ノワルに使う事が無くても黒き神相手には使うだろうから仮に俺がノワルを倒したと発信しても保持しておけ、何としても我らの手で特記戦力を倒すぞ」

300委任状 受け取って絶対 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:47:43 ID:GjcMSQTM0
そして一度通信を切ると、後ろに控えていた眼鏡の刀使を手招きする。

「偵察に出していた配下を招集しろ。
戻ってこない機体があれば報告を。
その場所を中心にもう少し詳しく調べる。
もしかしたら『特記戦力』の情報を持ったプレイヤーか、本人がいるかもしれない」

「イエス。ユア・マジェスティ」

全ての指示を終えるとルルーシュは一度ドライバーを外し、生成したガシャット用のコネクタを使ってプロトガシャットの解析を始めた。



【エリアD-7/テレビ局/9月2日午前11時30分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実
   ランダムアイテム×0〜1(ルル)
   ランダムアイテム×0〜2(清隆)
   ランダムアイテム×0〜1(軽井沢)
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   飛電ゼロワンドライバー&メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ヴィ・ブリタニア姓のロロ、それにビスマルクが死んだか
  ランペルージ姓のロロは俺の知っているロロだと良いのだが。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:地下の『アレ』については調べたいが藪蛇になりかねんか。
07:特記戦力に関する情報はもっと欲しい。
08:白のキングは例の魔神で確定か。
  なら色欲の魔女程度倒せん用では挑戦権すらないな。
09:他に有用なコマが居ないとは言え、もう少し清隆の行動に注意を払うべきか?
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとうにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトやジゴワットは倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。

301委任状 受け取って絶対 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:48:07 ID:GjcMSQTM0
(イエス。ユア・マジェスティ。
アッシュフォード学園に到着次第、順次命令を遂行します)

通信を終えた清隆は取材用の乗用車に乗り込むとエンジンをかけてサイドブレーキを外し、レバーを操作する。

「清隆君、君免許持ってないんじゃ……」

「ここは公道ではない上に、そもそも日本ですらないですよ」

そう言ってミラー越しに後部座席に座るドラえもんを見やると、彼は暫く納得のいかない顔をしていたがやがて諦め

「……くれぐれも安全運転でお願いします」

「イエス。マイロード」

若干緊張に苛まれながらもル清隆の運転に任せた。
清隆の運転する車を囲う様にバクゥが進み、上空はコルベットブースターに乗ったカッシーンがカバーする。
ゼインがいると予測される地点を迂回しながら彼らはアッシュフォード学園を目指した。
その背後にマギアが満載に乗ったトラックや、テレビ中継車を引き連れて。



【エリアD-7/テレビ局/9月2日午前11時30分】

【綾小路清隆@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:絶対遵守のギアス(極大)
   疲労(小)、ダメージ(小)
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:フォースライザー
   ライジングホッパープログライズキー
   フライングファルコンプログライズキー
   ザイアスペック
   アタッシュアロー
   プログライズキー×2(種類不明)
令呪:残り三画
道具:ホットライン、エナジーアイテム×5(種類不明)
思考
基本:ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを利用して自分の夢を掴む
00:『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアへの質問には包み隠さず答える』
01:ルルーシュに仕え、このゲームをひっくり返す。
02:堀北ら知り合いへの対処はその時次第。
03:ルルーシュの仮面ライダーとしてアッシュフォード学園での任務を全うする。
04:客将となったドラえもんを護衛する。
05:人って思ったよりあっさり死ぬんだな……。
06:実質ノワルとゼイン相手の二正面作戦だが……上手くやるしかないか。
参戦時期:少なくとも船上試験よりは後
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力を無効化する異能力をかけられない限り、新たにルルーシュのギアスの影響を受けることはない代わりにルルーシュからの質問に包み隠さず答えます。
※ザイアスペックでの通信はルーター無しでの場合同エリア内に居なければ不可能なようです。
※テレビ局内のどこかに成見亜理紗の手首(令呪付)と成見亜理紗のホットラインが保管されています。
※エナジーアイテム、ルルーシュより下賜された残りのプログライズキーの種類に関しては後の書き手様にお任せします。

【ドラえもん@ドラえもん】
状態:ダメージ(中)、悲しみと決意
服装:全裸(ロボットなので)
装備:空気砲@ドラえもん、ひらりマント@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ホットライン、チーターローション@ドラえもん、復元光線@ドラえもん、インペリアルセプター
思考
基本:皆が殺し合いから脱出出来る様に行動する。
01:卜部さん……
02:アッシュフォード学園に向かう。
03:清隆君が暴走しない様にボクが見張る。
04:約束は、守ってくれるよね。
05:総司令官の話には乗らない。
参戦時期:不明。(少なくとも、鉄人兵団の事件の後)
備考
※四次元ポケットは主催側によって没収されています。
※卜部とルルーシュから『反逆のルルーシュ』に関する大まかな流れを知りました。
※ルルーシュの計らいによりテレビ局内を案内されています。

302委任状 受け取って絶対 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 01:48:23 ID:GjcMSQTM0
投下終了です

303 ◆kLJfcedqlU:2025/06/07(土) 01:52:29 ID:B1FWqfAA0
放送投下お疲れ様です。
魔獣装甲のエケラレンキス、凶星病理のコルファウスメット、グリオン、冥黒アヤネ 予約します

304 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/07(土) 02:08:49 ID:GjcMSQTM0
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ロロ・ランペルージ、糸見沙耶香、キャル、花村陽介、タギツヒメ予約します。

305 ◆8eumUP9W6s:2025/06/07(土) 12:49:54 ID:IeXqMdWM0
第一放送突破おめでとうございます!
拙作の一部文章を以下の通りに修正・追記していただきます

「これは…オリジナルのGNドライヴだと!?!?粒子を放出させればレジスターを全て破壊できるじゃないか!!!!これならあの赤い服の男も殺せる!!!!」

などと、それをやれば自らの願いも破綻する事を棚に上げ喚き散らす中……声が聞こえた。
→「これは…オリジナルのGNドライヴだと!?!?粒子を放出させればレジスターを全て停止させれるじゃないか!!!!それにゼウスシルエットの起動鍵だぞキラ!!!!これで施設を壊せばあの赤い服の男も殺せる!!!!」

落ちていた起動鍵を拾った後に、それをやれば自らの願いも破綻する事を棚に上げて喚き散らす中……声が聞こえた。

「黒見セリカ、よろしく…でいいのよね?」
→「黒見セリカ、よろしく…でいいのよね?リュウガさん」

道具:レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
   マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン
   切島鋭児郎のレジスター、サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
→道具:レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
   マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン
   切島鋭児郎のレジスター、サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト、ゼウスシルエットの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(1時間47分変身不可能)@仮面ライダーギーツ、イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
→装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(午前10時に使用、1時間47分変身不可能)@仮面ライダーギーツ、イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

※ドロップしたソードスキル:魔王ゼロのショックイメージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーを習得しました。10時45分に使用した為5時間32分使用不能です。
→※ドロップしたソードスキル:魔王ゼロのショックイメージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーを習得しました。10時45分に使用した為5時間32分使用不能です。(午後4時45分に再使用可能)

【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)魔王グリオンへの怒り(極大)
→【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)魔王グリオンへの怒り(極大)、現状への混乱(大)

基本:こんな殺し合いにはのってやらない
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……この人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:マジアベーゼ……アンタの力、貰うわよ。
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
※トランスアイテムで魔法少女に変身できるようになりました。
 その姿をマジアアビドスと命名しています
→基本:こんな殺し合いにはのってやらない
00:とりあえず放送を待ってから、リュウガさんから話を聞く。
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……この人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:マジアベーゼ……アンタの力、貰うわよ。
07:シノン……。
08:ヘイローがあるってことは、あの子(ミカ)も先生の生徒…よね?
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
※トランスアイテムで魔法少女に変身できるようになりました。
 その姿をマジアアビドスと命名しています

306 ◆8eumUP9W6s:2025/06/10(火) 00:04:59 ID:oHwJrY9I0
衛藤可奈美(シビト)、十条姫和、龍園翔、伏黒甚爾、枢木スザク、キラ・ヤマト(SEED)、柳瀬舞衣、聖園ミカ、黒見セリカ、道外流牙、アスラン・ザラ、キラ・ヤマト准将、宇蟲王ギラで予約&延長します。

307 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/10(火) 05:49:59 ID:g5EQNQIM0
第一放送到達おめでとうございます🎉
今後の展開、楽しみです。
やみのせんし、キリト、緑谷出久、キズナレッドで予約します。

308 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:54:41 ID:yIJqYrL20
投下します。

309ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:55:35 ID:yIJqYrL20
「ここまでこのバトルロワイヤルの参加者様にまつわるトラックでお送りさせていただきました。
最後はディーヴァお姉さま以外で唯一正式に『歌姫』の称号を持つラクス・クライン様の楽曲で締めさせていただきたいと思います。
それでは、お聴きください『Fields of hope』」

テレビ局のバーラウンジの証明が落ち、濡れは色の髪の人造人間(オートマトン)……NPCモンスターのオフィーリアだけをスポットライトが照らす。
『小劇場の妖精』という通り名に違わぬ可憐な容姿に愛らしくも色気を感じる歌声が絶妙なタイミングで流れ始めたピアノの調べに乗って心地よくキャルの猫耳を撫でる。
ここまで既に5曲が披露されているが、そのどれもが歌唱、演出共にカルミナたちトップアイドルに全く引けを取らない素晴らしいものだ。
右を見れば鼻の下を伸ばしてすっかり彼女のパフォーマンスに引き込まれている花村陽介に未だ何かの罠では?という気持ちを捨てきれていないタギツヒメの姿が、左を見れば甘い紅茶に可愛らしいケーキに心を奪われている沙耶香と、よく見れば無意識だろうが曲に合わせて頭を揺らして一番コンサートを楽しんでいるロロの姿が見える。

(なんでこんなことになったんだっけ?)

なぜこんなにもジュール隊キャル班がのんびりできているのか。
話は運営とルルーシュの放送直後に遡る。

-----

運営による放送は全員で作った簡単な昼食を食べている途中で始まった。
シェフィの名前が呼ばれなかったキャルは比較的落ち着いて話を聞けたが、分かっていたとは言え可奈美や一護、スパナたち仲間の死を改めて伝えられた一同の表情は暗い。

(イザークも大丈夫かしら?)

一護たちとともに呼ばれた名前にあったディアッカ・エルスマンをイザークは同期で戦友だと言っていた。
取り乱していないと良いが……と心配しながらも準備さえあればルールの後付けとかいう最強の後出しジャンケンが出来てしまうヒースクリフバグスターの対処を考えているとテレビにノイズが走る。

『ごきげんよう諸君、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ』

未だ健在の悪逆肯定は血濡れた両手を金銀財宝か何かの様にひけらかすと同時にただ六時間籠城していた訳ではないと存分に示して一方的に放送を終えた。

「もうバグスターウイルスのヒントを……やっぱり兄さんはすごいや」

ルルーシュの放送を聴き終えたロロの第一声はそれだった。

「マリヤってのからの借り物っぽいけどね」

テレビ画面に兄の姿が見えた瞬間から見入っていた上に、仕草一つ一つに喜色と興奮を感じていたのが見て取れたキャルは思わず冷めた言葉を返す。
沙耶香から話を聞いていた時点であまりいいイメージはなかったが、こうして実際にあってみると兄を盲目的に信頼しているともとれる姿は昔の、覇瞳皇帝に縋っていた頃の自分を思い出すようで本当にいい気分がしない。

「そう言えば、結局名簿に仮面ライダーの名前で載って無かったエグゼイドってのがいたよな。
てことはそのマリヤがエグゼイドってことなのか?」

そんなキャルの感情に気付いているのか知らないが、陽介が推論を述べる。
確かにあの言い方だと九条マリヤが元々バグスターウイルスと無関係ってふうには聞こえない。

「いや、元々そのマリヤに支給された例の物が巡り巡ってルルーシュの元に行きついただけではないか?
クルーゼが言っていた名簿の並びの件が本当ならマリヤは他の仮面ライダーやその関係者と離れすぎている」

「それに羂索はエグゼイドとバグスターは敵って言ってた。
敵の道具を持ってるっておかしくない?」

「それは……そうかぁ」

いい線行ってると思ったんだけどなぁ、と残念そうにつぶやく陽介を他所にロロは続ける。

「出どころや真意は兄さんに聞けばいいよ。
問題は僕らがいかに早く合流するかさ。
エターナルや松坂さとうの関係者にゼイン……兄さんと僕らの合流を阻もうとする人は多いはずだし、急がないと」

間違いなく自分の欲に従った末の発言に違いないのだが、早めにテレビ局に到達し、その周りが戦場になり切らないうちに仲間や協力可能なプレイヤーと接触しなければならないのは間違いない。

「半分ぐらいは勝手に仮面ライダーの名前使ったルルーシュの自業自得な気がしなくもないけど……先行してるイザークとも合流したいのはそうなのよねぇ」

「それに美濃関がすでに滅茶苦茶にされてるならテレビ局だっていつどうなるか分からない」

沙耶香ともしても美濃関の現状を知らないまま舞衣たちが向かってしまう前にテレビを使って呼びかけたい、あるいはスタート位置の都合でテレビ局付近を通って美濃関に行くことに期待している部分があるのだろう。
基からの付き合いもあってロロを支持した。

310ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:56:19 ID:yIJqYrL20
「体力自体は全員戦える程度にはある。
どこに行くにしても誰も足手まといにはならないと思うぞ?」

タギツヒメは若干中立寄りの意見だ。
ロロ、もっと言えば一護の死に疑念はあれど自分から不和を起こすほどではないのだろう。
しこりのように引っ掛かりが残り続けるのは決していいことではないだろうが。

「そう……ヨウスケ、アンタはどう思う?」

「ロロの前でこんなこと言うのもなんだけど、洗脳能力相手に雁首揃えたくはないな。
けどいつまでもじっとしている訳にはいかねえし。
なあロロ、本当にこんなんで防げるのか?」

陽介が家の中で見つけたサングラスを見せる。

「ああ。眼鏡程度なら兎も角、そのバイザーなら問題なく防げるよ。
最も、僕としてはあまりつけて欲しくないけど」

「兄貴が危ない目にあうから?」

「……勿論。たった一人の兄さんだからね。
沙耶香、タギツヒメ。
実はさっき野菜の皮むきをしている時に、窓の外にアウトドア用らしい四駆が止まってるのが見えたんだ。
陽介のバイクと合わせて5人でも問題なく移動できるはずだよ」

2人を伴い奥に消えたロロの背中をキャルはやはり良くないものを見る目で見送った。

-----

「動きそう?」

「燃料車なんて初めて動かすけど、運転方法は変わらないみたいだから多分大丈夫」

「え?……もしかして、ロロの世界の車って大体電気自動車なの?」

「サクラダイトってレアメタルのおかげでね」

「初めて聞いた。タギツヒメは?」

「我もだ。
恐らくサクラダイトとギアスの有無が我らとロロの世界の大きな差なのだろうな」

そんな雑談を挟みながらロロの運転で走り出した乗用車に続いてサイドバッシャーも走り出す。
テレビ局まで約8エリア。
普通に考えてだいぶ時間のかかる距離だが、キャルたちは思いの外早く到着することが出来た。
特に租界エリアに入ってからは全くNPCモンスターに会敵しなかったからだ。

(随分スムーズにD-7まで来れたわね……NPCはルルーシュが洗脳するか殺すかしてるのかしら?)

アビドス砂漠にいた筈の五道化の成り損ないが他ならぬ運営の手で消されていたのも大きいだろう。
そうして北から回り込む様に進んでいくと、漸くロロたちはNPCモンスターを発見した。
キャルと陽介にも合図をおくり、路肩に降車する。

「どうしたの?」

「ようやくNPCモンスターを見つけた」

「マジか、どこにいた?」

「あそこのビルの上。テレビ局の方を見てる」

沙耶香が指差す先には確かにロロたちがこれから向かう方を注視するMSジンがいた。

「車の中で沙耶香に聞いたんだけど、キャルは飛べるんだってね。
一緒に来てくれるかい?」

零陽炎を装着したロロの提案に一瞬悩んだキャルだったが、直ぐに自分の戦杖を取り出し、サイドバッシャーを収納していた陽介に

「なんかあったら援護頼むわよ」

とだけ言ってスラッシュハーケンを使って壁を登るロロに続いた。

「やあ、少し時間いいかな?」

ジンのモノアイが真横に移動し、ロロたちを捕らえる。
見知らぬKMFの姿に機甲突撃銃を構える。
口がきけないとは言え、恐らく兄の配下ならば案内役頼みたいところだったロロは臨戦態勢を取るキャルを右手で制して戦闘の意志はないと示そうとして

『「おい」』

視界外から飛んで来た赤黒いエネルギー斬に盛大に吹き飛ばされた。

「な!?」

『「私の兵に何の用だ?」』

即座にその場を飛びのき、物陰に隠れながら様子をうかがう。
零陽炎は……解除はされてないがすぐに起き上がれそうにない。
ジンは……まるで敬意を示すように武器を降ろして膝をついている。
そして襲撃者は姿が見えない

『「もう一度だけ問うぞ」』

声がキャルの背後から聞こえた。
振り向くと漆黒の強化服に身を包んだ男がコルベットブースターからこちらを見下ろしていた。

『「私の兵に何の用だ?」』

311ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:56:52 ID:yIJqYrL20
コルベットブースターから飛び降りて来たアークゼロにキャルは思わず後ずさる。
ついさっきテレビで聞いたのと同じ声で淡々と問いかけられているだけなのに異様なプレッシャーを感じる。
いや、それどころかアークゼロの姿が黒くぼやけて見える程に禍々しい。

(何?なんなのこいつ……)

ここに居る全員が知る由もないが、先ほど実装された心意システムの影響だ。
悪意そのモノたるアークの力はそのまま膨れ上がっているに等しい。

『「答えないならば貴様もあのKMFのように……」』

「待って!待って兄さん!」

キャルにもアークゼロが右手に持つ赤刃が振るわれようとした時、まさに方々の体といった様子でロロが二人の間に走り込んで来た。

「僕らは、兄さんに協力するために来たんだ!
その証も持ってきた……だからやめてくれ!」

「ッ!……『何を世迷い言を」』

一瞬言葉に詰まったルルーシュだったが剣先をロロに向けながら一歩、二歩と歩み寄る。

『「お前は死んだはずの人間だ。ここに居るはずがない」』

「確かに、僕自身も驚いてるよ……けど僕はロロ・ランペルージだ!
ルルーシュ兄さんの弟だ!
どんな質問でもしてみてよ!どんなことでも答えられる!
兄さんのことで分からないことなんてない!」

「じゃあ聞くが、ピアスはどうした?
お前が手放すはずないだろう?」

「ピアス?もしかして、誕生日プレゼントのこと?
何言ってるのさ……兄さんがくれたのは白いハートのロケットだよ!
金色の四葉のクローバーのついた、僕の生まれて初めての誕生日プレゼント!
忘れもしない10月25日!
ナナリーの誕生日と同じ日に僕が貰った僕の、僕だけのプレゼントだ!
ピアスなんかじゃない!」

叫び出すように言ったロロにアークゼロは剣を降ろし、変身を解除する。
ずっとテレビ越しには見ていた白い皇帝服に身を包んだ美少年が現れる。

「ロロ」

その声はあまりに穏やかだった。
画面越しに見た傲慢不遜な皇帝のそれでも、今さっきまでのアークの声の混じった歪な声でもない。
例えるならさわやかな春の日にいい天気だと呟く時のような軽く、暖かで、同時に噛み締める様な声だ。

「本当にすまなかった。
羂索の、梔子ユメのあんな姿を見てしまったらお前も奴のように死体を別人に利用された誰かなのかと疑わずにはいられなかった。
愚かな兄を許してくれ」

剣を納刀し、ロロを抱きしめるルルーシュ。
ロロはダメージが残る身体ながら同じように優しく抱き返す。

「僕らは兄弟だよ。喧嘩だって普通にするさ。
だからこれで、仲直りしよう」

「ありがとうロロ。また会えて本当に嬉しい」

「僕もだよ、兄さん」

そう言って微笑み合った兄弟は手を取ったまま立ち上がり、キャルの方を振り向く。

「怖がらせてしまってすまない。
弟が世話になったようだな。
改めて、ロロの兄のルルーシュだ」

「……キャルよ」

あまりの代わりっぷりに少し面食らいながらもキャルは差し出された握手に応える。
それが終わるとルルーシュは耳に着けたザイアスペックに指を当て、通信を始めた。

「エステラか?
すぐに歓待の用意を頼む。ロロが友達を連れて来た」

-----

そして現在、恐ろしく丁重に歓迎された5人はバーラウンジにてミニコンサートを鑑賞している。
少なくないダメージを負ったロロは治療と着替えを終えてからだったが、キャルとしてはやはり二人きりの間に何か兄弟で悪だくみしていないかと不安でしかない。
と言うか、戻ってきたロロの服装がアッシュフォード学園の制服にフードパーカーからルルーシュの元に下ったのを示すかのように制服の金のラインがオレンジに変わった物の上にキャルは知る由もないがナイト・オブ・ラウンズのマントの色違い(当然のように色は黒とオレンジ)で戻ってきたのを見た時には実際に不安になった。
だが同時にあの芝居にしては臭すぎる感動の再会を思い出すと普通に仲の良い兄弟なのでは?という思いも頭を過って胸中複雑である。

「御静聴、ありがとうございました」

などと考えていると5人の為のコンサートは終わり、4人が小劇場の妖精に拍手を送る。
キャルも少し遅れて拍手を送った。
色々と考えていたのもあって全てをちゃんと聴いたわけではなかったが、それでも掛け値なしに素晴らしい歌だったのは間違いないからだ。

(……そう言えば、なんでルルーシュは態々この子を配下にしたのかしら?)

完全非戦闘型で、見た目も完全に可憐な少女……最初に自分たちを出迎えたエステラのように統率力がある訳でもなさそうだ。

312ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:57:15 ID:yIJqYrL20
「ヨウスケ、ちょっとサヤカたちとここで待っていてくれる?」

「いいけど、どうしたんだよ」

「オフィーリアに少し、聞きたいことがあるの」

-----

「増援要請?」

看護師型AIのグレイスと共にロロのけがの手当てと着替え、そして同時に情報交換を終えたルルーシュは引き返させた偵察部隊の報告を受け取っている途中だった。

「はい。北側の調査に向かっていたジンからの要請です。
片方が戻ってきていないので戦闘になった可能性は否定できませんが、通信装置が破壊されているなど不自然な点があります」

眼鏡の刀使の言葉にルルーシュは思案する。
言葉そのままに受け取れば相棒が撃破され、自身も通信装置を破壊されたため撤退を選んだといったところだろう。
だが報告者の言いたい事はそうではないらしい。

「増援の理由は?」

「話しません」

「よし、私が直接出向く」

仮面ライダーアークゼロに変身したルルーシュは待機させていた不審なジンに生成したケーブルを突きさし物理的に記録を抽出した。

「いかがでしょうか?」

『「何者かにメモリーを書き換えられ、オーダーの優先順位が変わっている。
直接命令を下せば簡単に指揮権をこちらが握れる程度だ」』

アークゼロはジンの異常……マイ=ラッセルハートにより植え付けられた記憶を削除すると変身を解除する。

「この眼鏡の女、こちらの兵隊を削りつつ自分の手ゴマを得たいようだが……ふむ、なるほど。
お前にはテレビ局の防衛指揮を任せる。
が、最悪ここを守り通せなくても構わない。
戦略上の全滅が危惧されれば早々に逃げ出しても良い」

眼鏡の刀使の瞳がグラスの奥で見開かれる。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのアドバンテージはこのテレビ局を擁することによる発信力であったはずだ。
それを捨ててもいいとはどうゆううことだろう?

「何、簡単なことだ。
ジンから得たデータを見る限り、ジンを洗脳した眼鏡の女は最初から私の戦力をかすめ取るつもりでいた。
つまり私に喧嘩を売るようなことをしてでも戦力を確保した差し迫った理由があったのだよ。
例えば『特記戦力』などの自分だけでは到底実力の及ばないプレイヤーを倒したい、などといった理由が」

眼鏡の刀使の疑問を見透かしたようにルルーシュが言った。
なるほど、確かにルルーシュはほぼすべてのプレイヤーに友好的と言い難い存在となっているが、間違いなく着実に戦力を集めている。
ルルーシュの力を削いだうえで別の団体に差し向け共倒れを狙うという考えは分からなくはない。

「下手人の理由は分かりましたが、何故御自らが出陣を?」

「前にも言っただろう?
キングが動かなければ部下は動かない。
それに、今回は少し個人的な理由もある」

偽りの記憶を植え付け意のままに操る。
今なお憎き先帝にして実父、シャルル・ジ・ブリタニアのギアスとよく似た力を振るう女を生かしては置けない。
自身のギアスの天敵なりえる力という実利的な面はもちろん、そんな女が自分を利用してでもかなえたい願いなど一見素晴らしく見えても実際は悪平等極まる何かであるに決まっているからだ。

「罠です」

「確かに先手を取られているに等しい状態だが、足場崩しは私の十八番。
眼鏡女も眼鏡の獲物もまとめて詰ませてみせるさ」

獰猛に笑ったルルーシュは早速兵隊の編成と想定される戦略、戦術パターンを練りながら部屋を後にした。

-----

「悪いわね、時間とっちゃって。
でもどうしても聞きたいことがあってね」

バーラウンジの奥、このテレビ局が実際に使われるのなら少し気を使わなければならない客をもてなすのに使われていただろう一画はオフィーリアの控室のようになっていた。

「はい」

キャルの声に少し不安そうな、緊張したような面持ちで応えるオフィーリア。
その仕草はいかにも自然で、何か不自然に手を加えられているようには感じない。

「あんた、ていうかあんた達ってルルーシュに操られてるの?」

「操られている訳ではありません。
私の使命は『歌で人を幸せにすること』です。
主人(マスター)がルルーシュ様であろうとなかろうと、それは変わりません」

「あの瞳の力で無理やり鞍替えさせられてるのに?」

「瞳?……いいえ、ルルーシュ様が私たちを掌握するのに使ったのはアーク様の力です」

「アーク?」

「ルルーシュ様が装着されているドライバーに内蔵されたサポートAIです。
よく今後の計画についてお話しなさってます」

「楽しそうな話をしてるね」

入口の方から革靴の靴音と共に高い少年の声が聞こえる。

313ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:57:49 ID:yIJqYrL20
「僕も混ぜてよ」

「ロロ」

「ランペルージ卿!
申し訳ありません、お迎えも出来ず……」

主人の弟にペコペコと頭を下げるオフィーリアを「気にしないで」と気遣いながらもこれ以上ルルーシュの情報をキャルに渡したくないのかさりげなく話題を逸らし始める。

「それより、どうして君がそんな話を聞けたんだい?」

「ルルーシュ様が放送で使われている部屋は、私の収録用の部屋だったんです」

「収録?」

「私は芸能人としてこのテレビ局に配置されたNPCモンスターで、ルルーシュ様がここを居城と定めなければ皆様に披露したようにただひたすらに歌を伝播で届け続けるのが役割になるはずだったんです」

「そうだったんだ。
ごめんね、兄さんが君の場所を盗っちゃって……なんだいキャル?
奥歯に何か挟まったみたいな顔してるけど」

不意にこちらを見たロロにそう問われてキャルはやはり納得がいかないという顔で告げた。

「正直あんたのこと、最初はルルーシュ相手には全肯定かつ駄々甘な上に胡散臭いロリコン野郎だと思ってたわ」

「ロリコンって……僕は沙耶香と4つしか違わないし、君だって沙耶香と2歳しか違わないよね?」

心外だな、と肩をすくめるロロの続く言葉をオフィーリアが慌ててさえぎる。

「ちょ、ちょっとランペルージ卿!
女性に稼動年数やカタログスペック上の重量の話をするのはマナー違反ですよ!謝りませんと!」

「そんなロボット的悩みなんてないわよ!」

「と言うか、先に失礼なこと言ってきたのはキャルだからね?」

なんだかロボットの癖に天然だなぁ、と苦笑するロロは笑みをそのまま少し意地の悪いものに変えて続けた。

「あと趣味と言えば、君こそ沙耶香にオフィーリアとなんとなく傾向がある様な気がするけど」

コッコロとの関係を知れば、ロロのからかいは確信になっていたかもしれない。

「偶然よ。
沙耶香もオフィーリアも、なんかほっとけない感じがするだけ」

「確かに。姫、って感じはあるかな」

「それだけではありませんぞ、ランペルージ卿」

2人と1機の間に新しくAIが混じってきた。
オフィーリアと違い、如何にもロボットと言った車輪付きの下半身にゴツいボディー、そして頭部には音響機器のようなスイッチやパネルが取り付けられている。
彼はアントニオ。
オフィーリアのサポートAIとして彼女の裏方からマネジメントまでこなす無二の相棒である。

「オフィーリアの歌は使命を果たし得るだけのモノがあり、彼女自身も素晴らしいAIです。
だと言うのにルルーシュ様はオフィーリアを何と評したと思いますか?
やれ『非戦闘型は交渉の先触れに使える』だの『この容姿なら多少喧嘩腰の相手でも戦意を削げる』だの上っ面の事情ばかり!
弟君であらせられる卿からもルルーシュ様に言っておいてくれませぬか?
オフィーリアの素晴らしさは……」

「ストップストップ!
お願いだから止まってアントニオ!
申し訳の仕様も有りませんランペルージ卿!
アントニオには私からきつく言っておきます!
なのでどうか無礼撃ちだけはご勘弁を!」

またぺこぺこと頭を下げだしたオフィーリアにロロは

「ふふ……はっはっはっは!」

耐えきれないとばかりに笑い出した。

「急にどうしたのよ」

「いや、、アントニオは本当にオフィーリアが大好きなんだなって思ってさ」

「え!?」

「……当たり前です。
我々は同じ使命を果たすパートナーなのですから」

「本当に使命だけ?」

「質問の意図を、測りかねますな」

「ごめんね、少し意地悪が過ぎたかな。
それで、君は何しにここに?
楽しく雑談、って訳でもなさそうだけど」

ロロに言われてアントニオはキャルに向き直る。

314ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:58:30 ID:yIJqYrL20
「キャル様に伝えねばならぬことがあってまいりました。
ルルーシュ様がお呼びです」

「そっちのランペルージ卿じゃなくてあたしを?」

「はい。なんでもあなた方女性の異能力者にとって天敵ともいえる存在について共有しておきたい、とのことです」

「……分かったわ。誰に道案内を頼めばいい?」

「刀使のNPCモンスターが向かってきております。
沙耶香様やタギツヒメ様も既にお待ちです」

「そう。分かったわ」

キャルを見送り、ラウンジ内にはロロと二人のAIのみが残る。

「陽介は?」

「私が行った時にはルルーシュ様が既に呼び出していました」

「通信で良いのに君が態々兄さんの所に寄った理由は?」

「こちらの品を預かっております」

アントニオはロロに戦極ドライバーとメロンロックシードを手渡した。
ロロが回収していたドライバーの残骸を基にルルーシュがゼロワン系列のライダーのデータもフィードバックしてロロ専用に調整しつつ修理した物だ。
その証拠にか、支給された時はカラーのフェイスプレートに銀の帯だったのがモノクロのフェイスプレートに蛍光イエローのベルトに変わっている。

「ルルーシュ様曰く、『多分少し良くした』とのことです」

「いいね、最高だよ」

クリスマスの朝の子供のような笑みを浮かべてロロは満足げにほほ笑んだ。

-----

「本当にもらちゃっていいのか?」

バイザーこそ装着したままだが、ルルーシュから受け取った短剣……風属性のオメガバゼラードにGK-06ユニコーンを確かめながら念を押すように尋ねる陽介にルルーシュは不敵な笑みで応える。

「いいとも。
代わりと言ってはなんだが、手伝って欲しいこともあるからな」

「手伝って欲しいこと?」

「私の『絶対遵守のギアス』とは似て非なる力……『記憶改竄』の異能のユーザーが私の兵隊を切り崩そうとしてきたのだ。
今後の展開を考えてぜひとも早期に排除、或いは無効化したい」

さらりと告げられた殺害宣言にこの男が既に二人の人間を殺したという事実を思い出す。
渡された武器に血はついていないが、いざとなればこの男は自分にその蛮行を強制できるのだ。
一気に警戒心が引きあがったのを感じたのか、ルルーシュは苦笑しながら立ち上がる。

「君たちに殺しはさせないよ。
約束もあるし、何より折角得た貴重な味方は失いたくない」

「じゃあ何をやらせようってワケ?」

「キャルちゃん、皆」

NPCモンスターに連れられてやってきた三人娘にルルーシュは温和な笑みを浮かべる。

「私とロロと陽介で記憶改竄の能力者と、彼女が我らの戦力を使ってでも仕留めたい敵を相手にする。
諸君らにはその間このテレビ局をゼインや他のプレイヤーたちから守って欲しい」

「ゼインって、放送でも言ってたけど誰なの?」

「今は少女だ」

「今は?……もしや、かつて我が折神紫に憑依していた時のようなことができるのか」

「そうだ。奴にとって人間など使い捨てのインナーフレーム……部品に過ぎない。
ゼインは善意のみを持つ存在などという何処にもいない者の為に悪意をわずかでも持つ者を余さず滅ぼさんとする無慈悲の極致のようなAIだ」

人を道具のように扱い、意志を否定し蹂躙する。
もうそんな物には屈しないとオリジンを定めた沙耶香の拳が強く握られるのをルルーシュは見逃さなかった。
これで沙耶香は協力してくれることだろう。

「なんでそんなのと喧嘩することになったのよ?」

「奴はいずれ人類を滅ぼす存在だ。
これでも統治者なのでね、民の生存を保証する義務があるのだよ」

「……そう。で、綺麗に男女別の理由は?」

「もし我らの戦力を使ってでも倒したい存在が色欲の魔女だった場合、君らは恰好の玩具兼予備バッテリーにしかならないからだ」

「魔女?……もしかしてそいつ、黒いドームみたいなのを展開する力を持ってたりしない?」

「黒いドームだと?
……持っていてもおかしくないな。
その話、詳しく聞かせてくれないか?」

とは言えキャルもそう詳しいことは知らない。
もしあれが攻撃だとしたらエリア一つ更地になってもおかしくない現象を遠目に見ただけだ。
それを聞いてルルーシュは一瞬だけ酷い渋面で思案したが

「酷い異能だ。
尚のこと、はやめに叩かなければな」

浮かべた凶悪な笑みを何処か仮面のように感じながらも、沙耶香はゼインに思う所しかないだろうし、こっちに残りたがるだろう。

315ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:58:52 ID:yIJqYrL20
「……ルルーシュよ、それは何をしてでも勝つという意味か?」

タギツヒメはテレビ局に辿り着いた時から変わらない疑惑の目を向け続ける。

「ああ。だがお前が心配しているようなことは、ロロや陽介を使い潰してでも勝つような真似はしないさ。
約束もある」

「約束?」

「今外に出ている清隆と、客将がらみの話だ今は気にしなくていい。
それより、この回答で満足かな?」

「……ああ。見極めさせてもらうぞ」

「良し、では魔女狩りといこうか!」

-----

預けられた刀使のNPCモンスターたちを見ながら、タギツヒメはずっと考えていた。

もしかしたらロロは一護の死に関して何か隠していることがあるかもしれない。

直観なのか、一護の死に何かが無かったなどと思いたくない自分が自分に言い聞かせていることなのか、本人にも分からないが時間がたつごとに疑念は大きくなっている。

(だが、ロロとルルーシュの間に打算のような物は感じられなかった)

本当に実妹の立場を奪った血縁の無い他人なのか?と思わずにはいられない程に、ただの仲の良い兄弟にしか見えない。

(……仮に、本当に仮にロロが一護を殺していたとしたら我はロロを殺すだろう。
だが、ロロを殺せばルルーシュは我を殺すだろうな)

一護に並ぶ恩人、ソラン・イブラヒムの言っていた『対話』の必要性と難しさを痛感しながらも、今は戦略的にも自分たちがルルーシュについて行くわけにはいかない。
テレビ局に女性だけと言うのもノワルが来た場合どうするのかと聞かれれば、ゼイン、そして地下に居る運営側の存在をぶつけて逃げろと、有難い知恵を戴いた。
確かにどんなにノワルが規格外でも、この殺し合いをゲームとして運営するつもりがまだあるなら運営のモノをぶつけるのが賢い選択ではある。

「……全く、どうせ孤独から救ってくれたなら友達の作り方や人との話し方ぐらい教えて欲しかったぞ」

もう届かないと分かっている愚痴のような呟きは誰の耳にも届かなかった。

316ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:59:17 ID:yIJqYrL20
【エリアD-7/テレビ局/9月2日13時00分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実
   キングガブリカリバー@王様戦隊キングオージャ―
   ランダムアイテム×0〜1(清隆)
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   飛電ゼロワンドライバー&メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……よく無事に俺の元まで来てくれた。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:地下の『アレ』については最悪留守中に『特記戦力』が攻めてきた場合ぶつける。
07:特記戦力に関する情報はもっと欲しかったし、場所も選びたかったが仕方ない。あの忌まわしき父と同じ力を持つ眼鏡の女共々今日中に倒す。
08:白のキングは例の魔神で確定か。
  なら色欲の魔女程度倒せん用では挑戦権すらないな。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとうにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトは倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。

317ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 11:59:41 ID:yIJqYrL20
【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)、ルルーシュに会えたことの歓喜(極大)
服装:ルルーシュの用意した制服とマント
装備:戦極ドライバー(斬月)、メロンロックシード
令呪:残り三画
道具:ホットライン、ランダムアイテム×0〜2(一護)、
一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン、零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:兄さんと共に記憶改竄能力者と、奴の狙う敵を倒す。
02:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
03:マーヤやイザークたちとも合流したい。
04:枢木スザクとビスマルク・ヴァルトシュタイン、二代目ゼロはとりあえず殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。
その時が来たら……。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。
それが…せめてもの。
07:沙耶香やキャルと離れるのは少し不安だけど、まずは陽介から信頼を稼ぐ。
08:色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
09:リボンズやアスラン・ザラ?、継ぎ接ぎの男(真人)を警戒。
10:このままキャルたちの信頼を稼ぐ。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続にお任せします。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。
※花村陽介やキャルとも情報交換をしました。

【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)、可奈美の死に複雑な想い、ロロへの複雑な感情(大)
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:ロロの事は信じたい、だが…一護の死は本当に、奴の言った通りなのか…??
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたが……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのギアス……我にも通じるのだろうか。
08:しかし継ぎ接ぎの男(真人)、荒魂より質が悪いな。
09:ルルーシュとロロは本当にただの仲の良い兄弟にしか見えん。だが……
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。
※沙耶香、ロロ、キャル、陽介とも情報交換を行いました。

318ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 12:00:09 ID:yIJqYrL20
【糸見沙耶香@刀使ノ巫女】
状態:精神的疲労(中)、真人への嫌悪(大)
   可奈美の死に動揺、ロロやイザークたちへの罪悪感(中)
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(沙耶香)、ランダムアイテム×1(真人)
ホットライン、ブラックコンドルのレンジャーキー@海賊戦隊ゴーカイジャー
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:ロロのこと、ちゃんと信じてあげたい。
02:可奈美は……私が止める。
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。
  でも…あの悲しむ様は……。
04:あの継ぎ接ぎの人、すごい嫌だ。
05:ロロのこと、多分羨ましい。
  タギツヒメのことも…きっと…。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:私が…可奈美や舞衣、十条姫和達と一緒に……?それに薫って人とも……?
08:恋とかはまだよくわからないけど、ありがとう、キャル。
09:大丈夫、もう利用させないよ
10:ゼイン……あなたも継ぎ接ぎや可奈美を操ってる人みたいな存在ならその時は……
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロからコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※ジュール隊のメンバーからコズミックイラ、アストルム、東西南北(仮)、自称特別捜査隊などの情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を脱しました。

【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:健康
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り三画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード、ホットライン
   ライドケミーカード(ホッパー1、テンライナー、スケボーズ、アッパレブシドー)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
  あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザーク、クルミ、イチロー、シェフィ……ひとまずは無事みたいね
03:ロロのこともルルーシュのこともひとまず信用してやるわ。
04:今度継ぎ接ぎ(真人)に会ったらイザークの右手の礼もサヤカの乙女心を傷付けたツケも全部払ってもらうわ
05:今回の件でサヤカが恋愛にビビりすぎちゃわないかが心配。
  本当の恋って、すごくいい物なのよ。
06:ルルーシュに会うより前にイザークと合流したかったけど、仕方ないか
07:ゼインに色欲の魔女ね……まあ、そのうち戦わなきゃいけなかった相手か。
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※スチームライナーはテンライナーへの再錬成、テンライナーからスチームライナーへの再錬成は自在に行えますが、ケミーライズにより大型状態で召喚、プレイヤーの運搬を行ったので9月2日14時00分まで再度の大型状態での運用は不可能です。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。

319ワタシだけのアルジサマ ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 12:00:26 ID:yIJqYrL20
【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(小)、精神疲労(小)
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1、熟練スパナ@ペルソナ4
思考
基本:殺し合いはしない
01:何なんだあのヤベー(ザギ)のは。
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
   けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロの奴とルルーシュはとりあえず信用しておく。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ルルーシュに会いに行く前にイザークたちとは合流したかったなぁ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったはいいけど、ただじゃなさそうだな。
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
   テレビの中じゃねえのに。
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。



【NPCモンスター解説】
・オフィーリア@Vivy -Fluorite Eye's Song
…世界初の人間に酷似した歌姫AI、ディーヴァを雛型に開発された後継シリーズ、シスターズの一体。
与えられた使命は『歌で皆を幸せにすること』。
テレビ局に『芸能人』として配置されていた所をアークを用いたルルーシュの配下にされ、『非戦闘タイプは敵意がないことを示す交渉の先触れとしては使える』と判断され残された。

・アントニオ@Vivy -Fluorite Eye's Song
…オフィーリアのサポートAI。
彼女のパフォーマンスの裏方全般を担う相棒。
オフィーリアには使命を超えた感情を抱いている。

・エステラ@Vivy -Fluorite Eye's Song
…世界初の人間に酷似した歌姫AI、ディーヴァを雛型に開発された後継シリーズ、シスターズの一体。
与えられた使命は『ライフキーパーとして人間のお世話をする事』。
当エピソードでは名前だけ登場。
どうやらオフィーリア同様配下に組み込まれ、非戦闘タイプのNPCモンスターの総括をしているようである。

・グレイス@Vivy -Fluorite Eye's Song
…世界初の人間に酷似した歌姫AI、ディーヴァを雛型に開発された後継シリーズ、シスターズの一体。
与えられた使命は『看護AIとして人間の命を助けること』。
当エピソードでは名前だけ登場。
どうやら生物タイプ、その中でも特に人間型のNPCモンスターやプレイヤーの治療を担当しているようである。

【支給品解説】
・キングガブリカリバー@王様戦隊キングオージャ―
…ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2に支給。
ヤンマ・ガストが桐生ダイゴロウの破損したガブリカリバーを修理する際にオージャカリバーのデータも使って強化も施した変身剣。
ルルーシュに支給されたのはクワガタオージャーの追加武装用にヤンマが複製した物で、チェンジ用の獣電池は付属しない。

・オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
…綾小路清@ようこそ実力至上主義の教室へに支給。
短剣武器の一つで、今回支給されたのは風属性。
奥義の神撃では敵に風属性6.5倍ダメージ、味方全体の風属性攻撃30%アップ、味方全体のダブルアタック確立30%アップを行い、初期スキルのシーカ・ルーベルは得意武器が短剣のキャラの攻撃力を20%、最大HPを10%上昇させられる。
選択スキルの詳細は後の書き手様にお任せします。

・GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
…軽井沢恵@ようこそ実力至上主義の教室へに支給。
仮面ライダーG3-Xの装備の一つで、普段は左腕にマウントされている近接用ナイフ。
刀身には電磁エネルギーが走っており、仮面ライダーアギトの最強武器シャイニングカリバーを超える耐久度を誇る。

320 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/10(火) 12:00:39 ID:yIJqYrL20
投下終了です

321 ◆kLJfcedqlU:2025/06/13(金) 21:22:08 ID:LJxkEVWY0
>>303 すいません こちらの予約ですが延長いたします

322 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/16(月) 02:07:47 ID:2dg7vc460
ノワル、アスナ、マイ=ラッセルハート、覇世川左虎、死告邪眼のザラサリキエル
で予約&延長します。

323 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/17(火) 06:33:07 ID:b5RVoHmE0
すみません。予約を延長させていただきます。

324 ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:38:33 ID:r2R68iiI0
投下します

325冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:41:52 ID:r2R68iiI0
「アッハッハッハ!!!マジか!マジか!!
 可奈美ちゃん死んでるじゃん!これは刀使の皆泣いちゃうなぁ〜!!」
 青白い蛍光灯が照らす無機質な部屋で、古波蔵エレンの顔をした少女は壁にもたれ掛かりケラケラと腹を抱えて笑い転げていた。
 放送で告げられた死者、特に衛藤可奈美に対して向けられたそれは、部屋中に響く大声とは裏腹に何の感情も籠っていない。
 コメディ番組を見ている時のような、面白いから笑っているだけの無邪気で残酷な哄笑だ。

 からからと笑いながらエケラレンキスは五道化専用の黒いホットラインを取り出し名簿を開く。
 参加者が持つ名簿どころかエンヴィーが持つ簡易名簿よりなお詳細な名簿には、顔写真と令呪の残数まで記録されている。
 衛藤可奈美の名簿を開くと、学生証に乗っていそうな愛らしい写真の上に赤くおどろおどろしい文字で『GAMEOVER』と記されている。
 
 衛藤可奈美の死を前に、益子薫は恩讐と激情に突き動かされた。
 この場に居たのが古波蔵エレンだったならばきっと同じ衝動に駆られただろう。
 古波蔵エレンではない少女――魔獣装甲のエケラレンキスにとって、その死に何の感情もない。
 管理すべき参加者の数にマイナス1。エケラレンキスにとってその死の価値はただの数字だ。

 「まあ、一応覚えておくかぁ。
 これは姫和ちゃんや薫ちゃんと会うのが楽しみデス!なんつって!」
 声だけは喜劇的に。しかしその眼は枯れた雑草を前にしたように空虚なまま、少女の指は次の情報へと移っていく。
 戦いの果てに死んだ者。
 誇りを守り果てた者。
 答えを見失ったまま朽ちた者。
 誰にどんなドラマがあったのかエケラレンキスには分からない。
 40を超える死者のうち、彼女が知る様はアビドス周辺で果てた数名に留まる。
 
 宇蟲王ギラに特攻をかけ多くの参加者を逃がしたディアッカ・エルスマン。
 致命傷ながら黒見セリカにその力を受け継がせた柊うてな。
 グリオンの奇襲を受けてなお他の参加者をその魔手から遠ざけたシノン。
 その死にざまを知る名を前に、か細い指がわずかに止まる。
 その指を止めたのは敬意なのか、はたまたある種の感嘆なのか。エケラレンキスには分からない。
 
「でもこいつら死んじゃったんだよねぇ。じゃあ意味ないなぁ!負け犬じゃん!」
 胸にこみあげる何かを振り払うように、勢いよくホットラインを動かした。
 エケラレンキスに分かることは、そいつらは既に脱落したこと。
 そして負け犬には、何の価値もないということだ。

326冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:42:53 ID:r2R68iiI0
 ◇
 
 殺し合いのゲームエリアでは、通信設備が生きている。
 イザーク・ジュールたちが確認したこの事実は、ただ参加者に都合がいいだけの設定ではない。
 エケラレンキスの手元で黒いホットラインが音を立てて振動し、ポチポチと操作したのち耳に当てた。
 
「よおレンキス。」
 デバイスの通話機能の先で、男の気だるげの声が聞こえた。
 凶星病理のコルファウスメット。そう名付けられた五道化のものだった。
 
「おっ、コルコルじゃ〜ん。元気?」
「元気なわけねえだろ。
 ルルーシュの野郎のせいで退屈で仕方ない。
 アイツ『機士の聖域』に入り込まねえからな。とっくに存在には気づいているだろうにビビり皇帝め。」
 子供っぽくイラついた声だ。この6時間が余程暇だったことは聞くまでもない。

「それで、何か要件があるからわざわざ連絡してきたんじゃないの?」
「ああ。ルルーシュについて少しな。
 奴が本格的にトップランク退治に動き出した。
 現状の狙いはノワルとジュナオだが、おそらく俺たち『五道化』も奴の討伐対象だろうし一応共有しとくべきだと思ってな。」
「マジで?その上であのバカみたいな放送してんのアイツ?」
 情報から伝わる真剣みに、エケラレンキスの口角がわずかに下がる。
 対都市級の怪物の存在を前にしても『皇帝』としてのスタンスを崩さず、参加者に喧嘩を売るような真似をしているということになる。
 
「まあ仮にもルルーシュ・ランペルージだし、自分よりも強い奴がいることくらい気づくか。
 未だにテレビ局から動いてないから、ただの雑魚寄せパンダで終わると思っていたけど。
 ……というかどうやって知ったの?遠征でもしてた?」
「ノワルとジュナオに接触した参加者がアイツの庇護下に来た。ドラえもんと松坂さとう。
 卜部って奴の差し金らしい。その当人はジュナオだかノワルだかに殺されたっぽいがな。
 ついでにコーカサスカブト城が吹っ飛んだとは聞いたが、まあ当事者が当事者だからなァ。」
「ノワルとジュナオ両方と接触して城の1つで済んだなら儲けものでしょ。」
 エケラレンキスの言葉に、コルファウスメットも端末越しに頷いた。
 これでも羂索やヒースクリフの手で弱体化されているという点にはあえて互いに触れなかった。
 
「話を戻すけど、ルルーシュ側で実力差に関する油断や認識のズレはほぼ無いと見たほうがいいのかな?
 ルルーシュは馬鹿だけど無能じゃない。部下が関わってる情報を妄言だと切り捨てたりはしないでしょアイツ。」
 ・・・・・・・・・・
「ルルーシュに関してはその認識でいいはずだ。
 現にエターナル相手に戦力フル投入して勝っている。早々にダインスレイヴまで切るのは正直意外だった。思い切りがいいのは嫌いじゃない。」
 含みのある言葉にエケラレンキスは「ん?」と首をかしげた。
 風都を震撼させた青い炎を正面から打ち破ったことだとか、支給品されていないはずのダインスレイヴがルルーシュの手元にあること――これは間違いなくクルーゼ様の仕業だろう――だとか。
 聞きたい情報は他にもあったが。優先すべき点は他にあるとエケラレンキスは訝しげに尋ねた。
 
「綾小路清隆は違うって事?」
 綾小路清隆。ホワイトルームの最高傑作である言葉通りの『天才』。
 現在のルルーシュの腹心にして、こと頭脳戦においてはルルーシュと並ぶ盤上最強の参加者だ。
 その名前を前に、端末越しの声は困ったようにため息をついた。

「違うってことはない。綾小路清隆も状況を誤認したり与えられた情報を頭から否定するような参加者じゃねえだろ?
 だがそうだな……ルルーシュと綾小路では見えているものが少し違うんだわ。」
 言葉を吟味するよう数秒呻り、男は続ける。

「ルルーシュはノワルやジュナオの脅威を認識したうえで、勝つ気概や勝つための策はあっても『必ず勝てる』という楽観はない。
 むしろああいう個人で滅茶苦茶やる連中は、ルルーシュにとっちゃ天敵も同然だろ。
 だからこそ自分が劣勢であることを自覚したうえで盤面を覆そうと動いている。今だってノワルを倒す気満々だしな。」
「ちゃぶ台返しからの逆転勝利は綾小路清隆も得意でしょうよ。」
 ・・・・・・・・・・・・・・・
「自分が劣勢だと自覚していればな。」

327冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:44:30 ID:r2R68iiI0

 かたや国やギアスユーザー、かたや学園のシステムや数多の天才たち。彼らは何度も戦いを繰り返し勝利を収めてきてる。
 だがその勝利は綿密な戦略や計画の上になされている。想定外の事態に崩される可能性を秘めている。
 事実ルルーシュ・ランペルージは枢木スザクというイレギュラーに何度も状況をひっくり返されているのだ。
 コルファウスメットから見れば、綾小路清隆の現状は枢木スザクどこどれないほど不安定だ。
 ――前提となる情報が食い違っていれば、いかな計略も意味をなさない。

「俺の主観になるが、綾小路清隆はルルーシュを過大評価……というより、ルルーシュ以外の参加者を過小評価している。
 はっきり言うと、綾小路はルルーシュの勝利を疑っていない。ルルーシュにはない『必ず勝てる』という楽観に近い意識が間違いなくある。」
「そんなにバカかなぁ?仮にもホワイトルームなんて蠱毒育ちでしょ?」
「あいつは松坂さとうにルルーシュと協力する理由を尋ねられ、こう答えたんだよ。
『オレはあの方が一番の勝ち馬だと思ったからだ。』ってな。ちなみにこれ言ってから一時間も経ってねえぞ。」
「……はぁ?」
 テレビ局内部の会話はコルファウスメットには筒抜けである。
 数秒の沈黙ののち、端末から女の甲高い笑い声が響きわたった。

「アッハッハッハ!!マジ???
 松坂さとうからの情報ってことはコーカサスカブト城をぶっ壊された後だよね?危機感無いのアイツ?」
「実際無いんだろう。綾小路清隆はルルーシュ以上に負け知らずの天才だ。何より異能や暴力に対する知識がない。
 だから001なんてポンコツライダーで満足するし、ルルーシュのギアスを見ただけで常識が塗り変わっちまう。
       ・・・・・・・
 エターナルを倒せてしまったのも良くねえな。ルルーシュもエターナルもノワルもジュナオもあいつにとっちゃ規格外のバケモンって意味じゃ違いがねえ。
 自分の力でバケモンを……ルルーシュ流に言えば『特記戦力』か。それを倒せると身をもって理解しちまった。」 
「流石にエターナルとジュナオを同列に数えるほどどんぶり勘定じゃないでしょ。」
「だとしてもだ。
 魔法も変身アイテムも起動兵器もない世界の人間が、バケモンの詳細なスペックをどれだけ正確に認識できる?
 強い奴を『どう強いか』なんて分かるためには、その分野に対する理解があってこそだろ?
 天才だろうと知らねえもんは理解できない。」
 
 それはチェスの試合を見て騎手の強さを理解することに等しい。
 一流の騎手たるルルーシュや綾小路ならともかく、チェスのルールさえ知らない者には騎手が駒を動かす根拠や戦略など分からない。途中経過を見てもどちらが優勢さえ分からないことだってざらだ。
 綾小路清隆にとっては、そのチェスは異能や起動兵器の類だといえた。
 
 綾小路清隆は、放送前のチェスゲームでルルーシュに敗れている。
 勝負の前に交わした条件を『勝利すれば』ではなく『負けないこと』に設定したルルーシュを前に、実力を過小評価したことが原因だった。
 その条件のように、エターナルに対する勝利が『無知』により曇った綾小路の目をさらに曇らせている。
 綾小路清隆に尋ねればきっと否定するだろうが。少なくとも彼の頭脳が精彩を欠いていることは明らかだ。
 もし普段通りの彼ならば、短慮に成見亜里紗を殺しルルーシュの頭を悩ませたりはしなかっただろう。

328冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:46:14 ID:r2R68iiI0

「まあ俺としては、甘ちゃん皇帝が男を見せてくれ始めてるってのにホワイトルームの傑作がそんな体たらくじゃつまんねえわけですよ。」
 男の声があっけらかんとした笑い交じりの言葉に変わる。
 先ほどまで1人の人間として綾小路清隆に向けていた眼は、『冥黒の五道化』として盤上の駒を見るものに変わっていた。

「過度な干渉は羂索様に怒られるよ。
 ……ってコルコルには釈迦に説法か。羂索様派だもんね。」
「んなこと言われるまでもねえ。羂索様が望むのは『混沌』だ。
 そこに俺ら五道化の意思が介在しちゃ、八百長もいいところだろ?
 だが道化ってのは、他人を楽しませてナンボ。盤面の駒を磨くのも俺たちの仕事でしょ?」
 悪びれもせず、しかし悪意があるわけでもなく。
 冥黒の五道化。殺し合いの調整者(レギュレーター)としての矜持が、個人の参加者への肩入れを許さない。
 ただ、彼らにも意思がある以上介在者(イレギュラー)にはなりうる。羂索がヒースクリフの反対を押しのけてまで用意した高性能な自立意識だ。
 
「俺はただ俺が持ってた『神のカード』を五道化落ちに渡してやっただけだよ。」
「綾小路関係の五道化落ちって……坂柳有栖ゥ?」
 綾小路清隆の同級生だった言葉通りの天才。その名前にエケラレンキスは怪訝な顔を浮かべた。
 NPCとして冥黒の五道化には劣る存在ではあるが、こと頭脳で言えば正式実装された面々を凌駕するだろう。
 五道化落ちの中でも禪院扇などとは比にならないほどの脅威。
 
「あんな性悪に三幻神なんて持たせて大丈夫?」
「アイツがどこに居て、誰に出会うかは知らねえよ。
 でもよ、あいつが綾小路清隆と出会えば間違いなく戦いになる。他の高育連中に会っても同じことだ。
 フィジカルがモヤシ以下ってのもいい。勝てない戦いをする奴じゃねえから忍者だの刀使だのに喧嘩売ったりもしないだろうしな。」 
「それで高育の奴らに三幻神が渡れば、誰であっても綾小路清隆を止めに向かうはず。
 確実ではないにしても、綾小路清隆に三幻神という脅威を突き付けることはできる……か。悪くないね。あのカードならルルーシュ相手にも有利が取れるし。
 坂柳有栖に負けたら負けたで雑魚掃除にはなる。どう転んでも得はあるか。」
 滔々と語られるプランに納得がいったと笑う女。端末の先で男も釣られて子供じみた笑いを上げた。

 この場の2人は知らぬことだが、坂柳有栖に渡った『三幻神』のカードは綾小路清隆とは無関係な少女たちの手に渡っている。
 『心を込めた歌で殺し合いを止める』という荒唐無稽に思えるプランを前に、贋作の少女の心を動かした三人の歌姫。
 この展開はコルファウスメットも坂柳有栖自身でさえ予想していなかったが、これもまた羂索の望む『混沌』だろう。
 しばらく笑いあっていた二人だが、ふとコルファウスメットが思い出したように尋ねた。
 
「そういや三幻神で思い出したけど。お前が持ってる『三幻魔』はどうしたんだ?」
「んー?
『ウリア』と『ラビエル』はまだ持ってるよ。」
 軽い返事と共に、エケラレンキスはポケットから2枚のカードを取り出した。
 赤い竜の描かれたカードと、青い魔人が描かれたカード。
 デュエルアカデミアに封じられている『三幻神』に並ぶ伝説のカードをひらひらと揺らめかせ、笑い声を交えて返した。

「そっちの『オベリスク』と違って純度100%の本物だしねぇ。使いどころは考えないと。」
「うるせえ。『オシリス』と『ラー』は本物だし、『オベリスク』も質そのものには問題ねえんだよ。」
 遊城十代と対戦経験がある三幻神は『オシリスの天空竜』と『ラーの翼神竜』の2枚だけ。
 残る神のカード『オベリスクの巨神兵』は、遊城十代が戦った決闘王のデッキが持つ莫大なエネルギーをNPCや支給品のエルドリッチに使うカードに注ぎ込んだ再現品だ。
 だからといって質に優劣があるわけでもない。そう気丈に噛みつくコルファウスメットだったが、これ以上突っつかれても面倒だと思い話題を切り替えた。

「んで?『ハモン』はどうしたのさ。」
「駄賃にあげた。泥人形ちゃんにタクシーしてもらったからさぁ。
 今頃グリオンの手元にあるんじゃないかな。」
「グリオンってお前ふざけてんのか?
 綾小路清隆どころじゃなくやべえじゃねえか。
 仮にも世界を一度支配した魔王だぞ。」
 端末から聞こえる素っ頓狂な声に、エケラレンキスはコロコロと笑う。
 してやったり。悪戯が成功した子供のように清々しい笑顔を女は浮かべていた。

329冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:51:06 ID:r2R68iiI0
「まあ、元の形は保ってないだろうね。
 アイツはルルーシュ・ランペルージよりも、よっぽど何しでかすか分からない。
 でもいいでしょ。こういうのが『混沌』ってやつデスよ!」
 語尾を歪ませ古波蔵エレンの真似事を返す。
 エケラレンキスがこういう喋りをするときはロクでもないことをしでかすときだとコルファウスメットは知っていた。
 
 遊城 十代が戦った『本物の幻魔』が何を引き起こすのか。
 端末越しに男は肩をすくめ、遥かなる場所にいる上司の1人の心労を思う。
 クルーゼや羂索はともかく、ヒースクリフが胃を痛めていることはもはや想像するまでもなかった。
 
 【エリアD-7/テレビ局地下 『機士の聖域』/9月2日午前12時】

【凶星病理のコルファウスメット】
状態:健康
■■:???@???
装備:黒いローブ、ガンダム・シュバルゼッテの起動鍵@機動戦士ガンダム水星の魔女
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:五道化専用ホットライン@オリジナル ????
基本:この場所(テレビ局地下 『機士の聖域』)を守護する。
01:グラファイトに釘は刺したけど、実際どうなるかな
02:綾小路清隆なぁ。勿体ねえよなぁ。
03:レンキスの奴め、滅茶苦茶しやがるな・・・。
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※データストームの完全耐性を得ておりGUND-ARMのフルスペックを遺憾なく発揮できます。
※歴代ユニバースロボ@スーパー戦隊シリーズの能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。
ただし宇蟲王ギラ以外を相手に使うと技の持続時間や射程が短くなってしまうようです。

 【エリアC-9/アビドス自治区『????』/9月2日午前12時】

 【魔獣装甲のエケラレンキス】
状態:健康
肉体:古波蔵エレン@刀使ノ巫女
装備:魔獣装甲エケラレンキス
   小烏丸@刀使ノ巫女
   ???の魔戒剣@牙狼<GARO>シリーズ
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:神炎皇ウリア@遊戯王GX 幻魔皇ラビエル@遊戯王GX 五道化専用ホットライン@オリジナル ????
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:思うままに楽しむ。
02:エルちゃんの連れてった二人もあの辺に居るだろうし遊んであげよっかな
03:さーて、アタシが戻るまでに何人集まるかな?
04:ママっ子先生とお医者さん人形は生きてたら相手をしてあげる。
05:エルちゃんったら、真面目が過ぎるから騙されるんだよ♪
06:特級呪霊に柊の鬼子……あのクラスの参加者はもっとガンガン暴れてほしんだけどなぁ
07:コルコルも色々考えてるんだねぇ。こっちも好きにやるけど
08:これからどうしよっかなぁ。可奈美ちゃんをネタに薫ちゃんを弄るかそれとも・・・
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※刀使としての能力を概ね高い水準で発揮できます。
※肉体が女性ですが両腕に魔戒騎士の遺骨を埋め込まれているので魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器は使えます。
※魔獣装甲は魔戒の鎧を召喚出来ない彼女の為の固有武装です。
 冴島鋼牙シリーズに登場した魔獣装甲コダマ同様自由に脱着できます。
※帝具@アカメが斬る!の能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

【支給品紹介】

五道化専用ホットライン@オリジナル
・ドゴルドを除く冥黒の五道化が持つ専用のホットライン
エンヴィーの持つ簡易名簿と同じ機能のほか、顔写真と令呪の残数が記録されている。
通話機能も付いている優れもの

三幻魔のカード@遊戯王GX
 魔獣装甲のエケラレンキスが所持
 『三幻神』に並ぶとされる、デュエルアカデミアに封じられていた伝説のカード
 現在のエケラレンキスは『神炎皇ウリア』『幻魔皇ラビエル』を保有している。

330冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:52:37 ID:r2R68iiI0

 ◆◇◆
 アビドス区画。カイザーコーポレーションの研究施設の一角にグリオンの姿はあった。
 パイプ椅子に腰かけ、更新された名簿の一角をコツコツと叩き男は目を細める。
 荒れた指先の先には彼の知る唯一の脱落者――黒鋼スパナの名があった。
 
「黒鋼スパナが死んだか。
 また私の傀儡にしてやってもよかったが、あれでも野良犬程度には厄介な錬金術師。脱落するに越したことはない。
 後は……ルルーシュの放送によればあのエターナルなる仮面ライダーは死んだようだ。実力を測るのならばこちらの方が喜ばしいな。」
 そう独り言ち名簿を眺めても、黒鋼スパナとエターナル(変身者の名前は分からないが、もはや興味もない)のほかには特に気になる名前もない。
 ホットラインへの興味を失ったころ、コンコンと扉を叩く音が部屋に響いた。

「アヤネだね。入り給え。」
「失礼いたします。
 例の三人の実験の結果を……ん?」
 一例をして部屋に入るアヤネ。その視線は、グリオンからその背後に立ち上る煙に向けられた。
 煙が立ち上るフラスコの中は、黄金色の砂を溶かしたような粘り気のある液体で満たされている。
 異様な存在感を放つ液体をグリオンが持ち上げると、揺れたフラスコがちゃぷんと音をたてた。

「これが気になるかね?」
「ええ。それは一体……」
「ダークマイトの腕だったものだ。
 を調べたところ、奴の体には金属の変化や操作を行う因子のような物が組み込まれていた。
 私の錬金術でその因子を抽出しフラスコに収めた。突貫だったのでまだ無駄が多いがね。なにぶん私にとっても全く未知の素材だ。」
 ダークマイトの世界で『個性因子』と呼ばれる、未だ研究中の材質。
 元の世界には存在しない未知の『素材』を前にどこか恍惚ささえ見える笑みをグリオンは浮かべた。
 
 「人体実験など飽きるほどしてきたはずだがな。異世界人と言うだけでこうも違うか。心が躍るよ。
 フフフ……奴に言わせれば、これもまた『ガッチャ』というのかな。
 この場所に研究設備があったのがよかった。製薬会社か兵器会社かは知らないがね。アヤネの手柄だ。」
「勿体なきお言葉。
 この場所が『カイザーコーポレーション』なる企業の施設だと奥空アヤネの知識にありましたので。
 かの企業はキヴォトスにおいて有数の大企業。研究施設も一級品かと。」
 そこまで言い終えたアヤネであったが、あることに気づき顔を上げる。
 
「しかしグリオン様。ダークマイトの肉体の分離が可能なら、運営が仕込んだ『バグスターウイルス』も除去できるのでは?」 
「無駄が多いと言っただろう。全く未知の因子やウイルスを容易く切り分けられるほど錬金術は万能ではない。この液体にもバグスターウイルスどころかダークマイトの血肉さえ含まれている。
 しかしそうだね。バグスターウイルスの知識……例えばルルーシュの持つプロトガシャットを調べれば、バグスターウイルスの除去や性質の変化はできるかもしれないね。
 パラケルススがそうであるように。錬金術は医学にも転用できる技術でもある。」 
「では標的はルルーシュにいたしますか?」
 グリオンを蝕むバグスターウイルスの除去はいずれ必要になる事項だろう。
 アヤネの提案に「ふむ……」と顎に手を当てたグリオンだが、テレビ局に居座り敵を作りすぎているルルーシュよりも錬金術で手駒を無数に増やしかねないギギストの方が排除の優先度は高い。
 何より、ギギストの持つ『賢者の石』を取り込めばグリオンの力はさらに増すのだ。

331冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:53:59 ID:r2R68iiI0

「いや、今はまだいい。無造作に敵を作るあの男をわざわざ手づから戦う理由はない。むしろ奴の放送による情報が無くなる方が損なくらいだ。
 ここからの標的はギギストと『もう1つ』。そのために造った『転入生』たちだが、首尾はどうかな。その報告に来たのだろう?」
 その言葉に、アヤネはここに来た要件を思い出す。
 多数の支給品と回収した骸をベースに生み出された、新たなる冥黒のデスマスクたち。

「はい。三名共に自我、スキルともにオールグリーン。『ラウズカードとの融合係数』も期待以上です。
 回収したNPCとの模擬戦闘もクリア済み。出力で言えばホシノやノノミ以上かと。」
「ふむ、ダークマイトの因子同様私にとっては未知の要素も合わせた錬成だったが上々のようだな。」
 氷竜となったキラ・ヤマトの存在をグリオンは思い出していた。
 コズミック・イラとは無関係の技術によるだろう変貌にギギストの錬金術まで組み合わさった怪物だが、暴力と悲劇に彩られたその姿は『異なる世界の存在を掛け合わせること』の有用性を示している。
 その再現にといくつかのアイテムやスキルに加え、シノンが持っていた『リ・イマジネーションのラウズカード』を素材として利用していたが、どうやら成功らしい。
 くつくつと満足げな笑みを浮かべ、男は一枚のカードを取り出した。
 
「これで私も、心置きなく自らの進化に着手できるというものだ。」
 グリオンの手にあるカードは、ライドケミートレカでもなければラウズカードでもない。
『降雷皇ハモン』 。
 五道化から手渡された黄金色のデュエルモンスターズカード。『三幻魔』と呼ばれる存在の最後の一枚だ。
 
(あのカードはただのカードじゃない。
 エケラレンキスが手づから持っていただけはある。ケミーの比にならないほどのエネルギー。)
 稲妻のように迸るエネルギーにアヤネの肌が粟立っている。
 対するグリオンは不易な笑みを崩さない。これから起こる事柄にワクワクしているような無邪気ささえ感じさせた。

 (だがグリオン様にとっては、それさえも素材の1つでしかない。)
 「本来は人々の絶望から錬成する手はずだったが……、ダークマイトの因子に幻魔のカード。
 これほどの素材があれば今の私の宿す賢者の石でも十分己の分身を錬成できる。」
 
――冥黒に染まれ。
 
 幾度となく絶望を生み出した言の葉を前に、ハモンのカードが黒い炎のような物に包まれる。
 心なしかカードの中で黄金の幻魔が抵抗しようともがいているように見えたが、グリオンが指を動かすとフラスコの中の黄金色の液体がハモンの全身に纏わりつきその色を染め上げていく。
 最強の幻魔も、偽りの象徴も。ことこの場においてはグリオンの管理するフラスコの中。
 錬金術師の悪意から逃げるすべは無い。
 
「ふむ、想定していたものとは違うが。これはこれで。」
「これは……」
 冥黒の炎が消え、現れた存在にアヤネは思わず感嘆の声を漏らす。

――『エルドラゴン』
 
 そう記されたカードを前に、アヤネは無意識のうちに片膝をついていた。
 まるで神の誕生を祝う様に、グリオンの生み出した新たな力を崇めんがために。

332冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:55:52 ID:r2R68iiI0


 冥黒のデスマスクには欠員が出ている。
 ホシノはデクとの戦いで文字通り惨敗し。ノノミもダークマイトや九堂りんねを巡る攻防で存在ごと霧散した。
 黒見セリカの武器は未だグリオンが所持しており、いわば『冥黒セリカ』と言える存在を生み出すことは可能だが、グリオンは今のところその手を使うつもりはない。
 アビドス生の贋作たるアヤネが無事である以上、アビドス生に絶望を振りまくのは彼女だけで充分だ。
 代わりに生み出す従僕がいるのならば、より多くの参加者の心を苛む存在がいい。
 
 ディアッカ・エルスマン。シノン。柊うてな。
 回収された3つの骸は、グリオンの望む条件を満たしている。満たしてしまう。

 彼らは全て、グリオンの作り出す冥黒のデスマスクが一員となった。
 ホシノやノノミがそうであるように、グリオンの生み出す人形たちは元の人格を嘲るような破綻を必ず起こしている。
 3人の『転入生』の様子を見るためグリオンとともに赴いたアヤネは、彼らの部屋から聞こえる声にその事実を嫌でも理解した。

「いやだいやだいやだいやだいやだ!!もう見たくない!見たくないって言ってるのに!!」
「私のせいじゃない!みんなやってた!みんな言ってた!だから……」
「なんで!なんでわたしばっかり!あの魔女がわるいのに!なんでよ!」
「知らなかったの!先輩があんなに苦しんでるなんて!知らなかった!!ねえ知らなかったのよ!!ねえ!!」
 
 悲鳴、嗚咽、懺悔、憎悪、絶望。
 心の中を切り開いたような声が部屋中から響く。
 『転入生』たちの声ではない、性能テストのために連れてきたNPC達の声だった。
 
「素晴らしい、こういう弱い者が嘆き苛む声が私は大好きでね。
 おそらくうてなだ。彼女にあのソードスキルが適合したようで嬉しいよ。」
 目を背けたくなる悲鳴のする方にグリオンは笑みを浮かべていた。
 
 
「あぁ!グリオン様じゃないっすかぁ!どうされたんですかこんな場所まで?
 あっ、部屋うるせえですよね。うてなの奴がいろいろやってるんですけど。ブチ殺して黙らせますか?」
 部屋に入ったアヤネとグリオンに、ディアッカ・エルスマンだった男が清々しい笑顔を向けた。顔と声だけなら非の打ち所がない好青年だろう。
 その右足が地面ではなく、土下座する少女の頭を踏みつけていなければだが。
 少女の頭を踏んでいることではなく、グリオンを前にしても蛮行を止めていないディアッカに対して眉をひそめ、アヤネは尋ねた。

「うてなよりも前にお前は何をしている?
 NPCを虐める指示など出した記憶はないが。」
「それがっすねアヤネ先輩。
 どうもディアッカの記憶の中じゃ『コーディネイター』てのが偉くて、それ以外の『ナチュラル』ってのが屑みたいなんですよ。
 でも俺様が偉いと思えるのなんてグリオン様だけですしね。どれがコーディネイターかんなんてさっぱり分かんねえし。
 あ、アヤネ先輩は例外ですよ。俺様は誇り高きザフト軍人なんで先輩のことはちゃーんと敬います。」
 敬意の一片も感じられない、へらへらとした笑いを浮かべディアッカは続ける。
 その間もディアッカの足元では頭を踏みつけられている少女が「いたい・・・もうやめて・・・」と羽音のように呻いている。
 誰も少女に視線さえ向けない中、ディアッカは雄弁に続けた。
 
「俺様は思ったんですよ。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 じゃあ俺が偉いと思わない奴は全部ナチュラルのクズどもってことにすればいいって。
 そう考えるとそいつらが俺様と同じように二本足で歩いてこっちを見てるのが無性にムカつきまして。
 試しに四つん這いにさせたり殴って見たりして自分がスッキリするポジションを探してて、いまこんな感じっす。」
「その理屈だと、グリオン様とどうもお目こぼしを受けたらしい私以外全員ナチュラルにならないか?」
「まあ、はい。そういうことっすね。
 でもディアッカの記憶でもナチュラルは俺たちと対等じゃないんですし、どうせ全員絶望させるなら同じでしょ?」
 
 この場にコーディネイターとナチュラルの確執の狭間で苦悩した本物のディアッカがいれば、なんとしてもこの男の口をふさいだことだろう。
 喋っているのが当のディアッカ・エルスマンというのは、キラ・ヤマトの話からコズミック・イラの差別や戦乱を知るアヤネには悪趣味な冗句のようだ。
 ため息をつくアヤネとからからと笑うディアッカだが、割って入るような笑いが響いた。

333冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 13:59:32 ID:r2R68iiI0

「そーそ、絶望するなら全員同じだってあーしもずっと言ってるし。」
 ディアッカよりもさらに砕けたシノンの声。その姿は右腕をライフルに変換した水色の怪人――トリガー・ドーパントと化している。
 その銃口がディアッカの足元、さっきまでディアッカに足蹴にされていたNPCに向いていた。

「ぇ……」
 シノンに注意を向いたことでディアッカの足は止まっていた。
 今なら逃げられる。ここから逃げればたすかる。もう痛いことをされない。
 絶え間なく続いた苦痛から抜け出せる一筋の希望に輝いていたはずの少女の目にトリガー・ドーパントの銃口が映る。

「残念でしたァ。」
「なんで……なんでよぉ……!」
 逃れられない『死』に顔を歪めたまま、悲鳴を上げる間もなく少女の脳天に孔が空いた。
 トロトロと赤い液体が額の穴から垂れ、潰れた無視のように哀れな最期をシノンはけたけたと笑う。
 面白くないのはディアッカだ。さっきまで玩具にしていた死体をを舌打ちと共に蹴り飛ばす様に、好青年の面影は残っていなかった。

「テメエシノン何しやがる!」
「いいじゃんいいじゃん。『死』を前に歪んだツラ!最高じゃん!
 コーディネイターもナチュラルも、最後はブッサイクな死体でしょ。んなもん気にする神経が分かんねえわ。」
「あの……ディアッカもシノンもアヤネ先輩もうるさいので黙っててくれませんか?
 彼女たちの声が聞こえないじゃないですか。はっきり言って耳障りです。」
 
 顔を付き合わせ殺意を向きだす2匹の骸に、これまた部屋の片隅からもう一匹の骸が鬱陶し気に投げかける。
 グリオンを含めた全員が一斉にその方向を向いた先では、巨大な茨に縛り上げられているNPCの少女たちが虚ろな目で叫び続けていた。
 その様はノワルが持つポケット闇檻の中のNPCやアスナの惨状と大差ない。
 少女たちのその中心に柊うてなの姿はあり、部屋の外まで響く悲鳴をレコードを聴くかのように楽しんでいたらしい。
 悪趣味極まる態度にディアッカとシノンどころかアヤネさえも言葉を失っていた。
 
「その茨は君に混ぜた『プラントアンデッド』のものか。
 彼女たちの心を蝕んでいるのも、君に与えたスキルだね。」
「は……はい。グリオン様より賜ったソードスキルを試しているんです。
 NPCでも記憶やトラウマってあるみたいで、みーんなわんわん泣いているんです。素晴らしいでしょう?」
「ふむ……劇作家の宝具(ノウブル・ファンタズム)などどの程度のものかと甘く見ていたが、評価を改める必要がありそうだ。」
 
 唯一上機嫌なグリオンの声もまた、昼下がりのティータイムを思わせる穏やかなものだ。
 シノンに手渡したT2トリガーメモリ同様、柊うてなに渡したソードスキル『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)』もまた、アヤネが回収したアイテムだ。
 グリオンにとっては異世界の産物も、自身の錬成物に十全に馴染んでいるようだ。
 
「成果は上々。といったところだね。
 本格的に君たちにも動いてもらおう。うてな、悪いがコンサートは中止だ。」
「……グリオン様がおっしゃるなら。」
 不服そうに頬を膨らませながらも、うてなが指を鳴らすと茨に縛り上げられた少女が電源を落としたように一斉に口を閉ざした。

「君たちには今から冥黒王ギギストを討伐してもらう。
 奴もやり手の錬金術師。ケミーを素体もなくマルガムにさえできる男だが、君たちに与えた力は奴にとっても未知だ。
 殺した後は賢者の石――ちょうどこの指輪についた石のような物が出てくるはずだ、これを必ず私の元に届けるのだ。」
 
 ディアッカとシノンの喧騒もうてなが起こした少女たちの悲鳴もない。しんと静まり返った部屋にグリオンの声が溶けていく。
 それが当然のように人形たちはグリオンの前に膝をつき、その眼はグリオンが取り出した赤い宝石のついた指輪――コーネロの指輪に向いていた。

「了解っす。」
 ディアッカの馴れ馴れしい声。
「かしこまりぃ。」
 シノンの軽薄な声。
「わ……わかりました。」
 うてなのびくついた声。

 各々の個性を徹底的に貶めたような悪意人形たちに、グリオンに逆らうという選択肢は存在しない。
 従順な態度を満足げに眺めたグリオンは指輪をしまうと、一枚のカードと金色のルービックキューブを取り出した。
 そのカード――エルドラゴンの正体を知るアヤネが目を丸くする中、金色のルービックキューブがグリオンの腰でその姿を変える。
 さかしまの三角の意匠が施されたバックルは、仮面ライダーが変身するためのアイテムそのものだ。

334冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 14:04:44 ID:r2R68iiI0

「君たちのおかげで異世界の技術も私の錬金術と適合させる実験が進み、私の力も大幅に向上した。
 君たちへの報酬だ。見せてあげよう。」
『EL DRAGON!』
 降雷皇ハモンのカードにダークマイトの因子を混ぜ合わせ錬成したカードをベルト――エルドラドライバーにスキャンし。グリオンが唱える。

「変身。」
 『イース・トン・エオーナ!エル・ドラード……!』

 冥黒と黄金の竜が浮かび上がり、グリオンの全身を黄金の魔人に変える。
 悪魔を思わせる角を頭から生やし、赤色の複眼からの視線には神々しささえ感じられる。
 魔王ならぬグリオンが至るはずの力に、■■■■ではない悪魔が至った。

「字は……そうさな。
 仮面ライダーエルド。とでも名乗るとしよう。」
「おめでとうございます。グリオン様。」
「「「おめでとうございます。」」」
 
 本来あり得ない、ある意味最悪の未来を想起させる光景。
 その生誕を魔王の配下たちは目を輝かせ見届けていた。



 冥黒ディアッカ。冥黒シノン。冥黒うてな。
 3人の人形が旅経つ中、アヤネの姿は未だグリオンの前にある。
 
「良かったのですか。
 奴らはアンデッドと融合したことで耐久性は折り紙付き。その上各々に適した異能を得ていますが、それでも最上位の存在に及ぶとは思えません。
 私もギギスト討伐に向かうべきでは……。」
「元より奴らは参加者減らしと偵察が主だ。
 奴らが削ったところで私自身がギギストを狩る。元よりそのプランだ。
 このエルドラゴンはデュエルモンスターズカードが元、正式なケミーではない以上奴では干渉できないだろうしな。」

 ――つまり、あの3人は捨てる前提の駒か。あるいは私でさえも。

 冷徹さを隠そうともしない言葉に、どこか他人事のようにアヤネは考える。

 ――ここに居るのが本物の奥空アヤネならば、反抗の1つもしただろうが。
 ――私にとっては、グリオン様のお役に立てないほうがはるかに苦痛だ。
 
 贋りの心に浮かんだ思いは、どこまでいっても忠節だ。
 心も顔も平静そのもののまま、アヤネは尋ねた。
 
「では私は何を?」
「この賢者の石だ。
 支給品にこのようなアイテムがある以上、その関係者が参加者にいるかもしれない。」
 コーネロの指輪はグリオンとは異なる世界の物質ながら、賢者の石がはめ込まれている。
 贋作の粗悪品ながら、その存在をグリオンは無視できない。

「知識を有する者、あるいは保有している者がいるかもしれない。
 可能な限り調査して、より品質のいい賢者の石があれば如何なるものでも私に献上してくれ。」
「お任せください。」
 僅かな逡巡もなく答える。
 恐怖でも強制でもなく、冥黒人形としてのアヤネはグリオンに従うことこそ至上の喜びだ。
 
「そう言ってくれると思っていた。
 選別だ。これも君に渡そう。」
 そうグリオンが取り出したのは、コーネロの指輪ともう2つ。
 シノンが扱ったリ・イマジネーションの仮面ライダーカリスのベルトカリスラウザー、そしてその変身に用いられた♡1のラウズカード。
 その全てが淀んだ光を纏い光の球となってアヤネの中に入り込んでいく。

「ぐっ……がぁっ……!!」
 内側から作り替えられるようなエネルギーに苦悶の声が上がる。それが賢者の石のものかはたまたラウズカードの中の不死生物のものなのかアヤネには分からない。
 ただただ耐える。苦痛にも変化にも必ず耐えて見せる。
 それがアヤネの示せる、グリオンに対する忠義だ。

 光が収まり体が感覚を取り戻すと同時に、アヤネは己の変化に気づく。
 右中指に黒い指輪がはまり、腰には黒い羽根の意匠が施された大きなバックルが装着されていた。
 いつの間にか所有していた2枚のケミーカード。『ヨアケルベロス』と『ネミネムーン』もアヤネの手の中にあった。

「これは……九堂りんねの指輪とドライバー。」
「カードの力を引き出し使用者の姿を変えるベルトに、賢者の石を有する指輪。
 これほどの素体があれば、作り出すことは造作もない。」
 仮面ライダーマジェードが持つ、ハイアルケミストリングとアルケミスドライバー。
 容易いことのように言ってのけるが、錬金術を扱えるアヤネにはドライバーの錬成が極めて難易度の高い絶技であることが見て取れた。
 
 「しかしこの色。九堂りんねの物とは異なりますね。」
 白と橙で色づけられた九堂りんねのものとは違い、エルドラゴンと同じ黒と黄金のカラーリング。
 その色が九堂りんねと最後に心を通わせた冥黒の少女。その形見から受け着いだ指輪――プロミスアルケミストリングと同じということは、この場の誰も知らないことだ。

335冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 14:10:39 ID:r2R68iiI0
『YOACERBERUS!』『NEMINEMOON!』 

 アヤネの操作に合わせ、ドライバーから響く動作音が九堂りんねの変身と同じように響き渡る。
 そこに九堂りんねが変身した時のような意志や決意は存在しない。
 兵器の性能をテストするような淡々とした動作と、己に力を与えてくれたグリオンへの信仰心。
 それだけがアヤネの行動理由だ。

「変身。」
 『『ガガガガッチャーンコ!』』
『スリーヘッドスリーパー!』 『『ムーンケルベロス!』』

 水色と白を基調とした本来のムーンケルベロス。
 しかしアヤネの変身したムーンケルベロスは、エルドラゴンのカラーリングをそのまま参照したように全体が黒く、水晶部分はメッキを張ったように黄金色だ。
 『黒いマジェード』。
 知る人が知ればこれほどの侮辱も無いだろう変身に、グリオンは大きく手を広げ高笑いを浮かべた。
 
「いい姿だ。私手づから名を与えよう。
 今よりお前は、『マジェード*テラー』だ。」
 アヤネの元となった武器のある。崩壊したキヴォトスに生まれた変貌者(テラー)。
 グリオンの手に染まったマジェードの贋作には、異様なほど適した名であるように思えた。
 新しく作り出した3人といい、仮面ライダーエルドといい、彼にとって都合のいい成果が次々と運ばれてくる。
 人でなしで人ならぬ■■■のグリオンであっても、その興奮は抑えきれない。
 
「賜りました。
 その字、このお力。グリオン様の名誉と栄光のためにありがたく使わせていただきます。
 ところでグリオン様。シノンの言っていた件についてはどのようにお考えで?」
「『心意システム』だったか。少し気になるね。」
 その発言はシノンが出立前に伝えてきたことだ。
 茅場の放送と合わせて『心意システム、実装完了』が確かに聞こえたらしい。
 ディアッカやシノンは「だーかーら、そんなの聞こえてねえって。」「シノンさんの幻聴じゃないんですか……感覚機能に問題があるならグリオン様に創りなおしていただいたほうが……」とまるで信じていなかったが。
 アヤネやグリオンにはどうにも無視できない要素に思えた。

「ヒースクリフが言うには彼はゲームのルールに介入できるらしい。
 ならば、その『心意システム』とやらもこのゲームにおける追加のルールだろう。」
「参加者のグリオン様にさえ聞こえない声が、シノンにだけ聞こえたのはなぜでしょうか。」
「ヒースクリフ……茅場晶彦なる男はもともとキリトやシノンと同じ世界の人間だそうだね。
 自分の世界の住人、あるいは自分が選定した参加者にだけこの情報を与えアドバンテージを持たせたかった。などいったところだろう。
 シノンも『心意システム』の詳細は知らないというのは残念だったが、あると分かった以上利用しない手はない。」

 会場のシノンはアンダーワールドの戦いを経験していない。
 そのため『心意システム』の用語を聞くことは出来ても、それが何なのかを説明することができないのだ。
 だがグリオンにとっては本来知るはずの無かった情報が手に入っただけでも僥倖と言える。
 分からないなら調べればいい、あるのなら理解し使えばいい。
 
「最低でも『心意システム』を知る参加者がまだ生きているはずだ。でなければこのタイミングで実装する理由もない。
 キリトやアスナあたりが筆頭候補だろうね。この意味が分かるね?」
 これ見よがしな言葉はアヤネにとっては絶対遵守の命令も同じである。
 
「かしこまりました。
『賢者の石』の捜索と並行し、『心意システム』の調査も遂行いたします。」
「ああ、期待している。」
 言葉通りの意味などないだろう言葉に、アヤネは一例をし研究所を出立する。
 1人残ったグリオンが研究室の古びた椅子に腰かけ。残る支給品を取り出すと、一丁の銃とラウズカードの束にある1枚を拾い上げ、嘲笑うように語り掛けた。

「さて、お前たちにはどう役立ってもらおうか。」
 視線の先には黒見セリカのシンシアリティと人間の祖が封じられた♡2のラウズカード。
 この素材がいかな悪意を振りまく弾丸となるのか。
 それは誰にもまだ分からない。

336冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 14:12:06 ID:r2R68iiI0

 【エリアD-9/アビドス自治区・カイザーコーポレーション研究施設/9月2日午前12時】
 
 【魔王グリオン@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、冥黒のアビドス対策委員会を率いる
服装:いつもの服装
装備:エルドラドライバー@仮面ライダーガッチャード エルドラゴンケミーカード(偽)@仮面ライダーガッチャ―ド(オリジナル) 心刀・無垢@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ホットライン、テラー世界線のシンシアリティ@ブルーアーカイブ、ガッチャードローホルダー@仮面ライダーガッチャード、双眼鏡@現実簡易救急キット@オリジナル
  金の指輪と金貨@僕のヒーローアカデミア オールマイトのシルバーエイジ時代のコス@僕のヒーローアカデミア
  ラウズカード♡2 ♡3〜10(7を含む三枚は使用済み)
基本:このゲームを利用して目的を達成する。
01:まずは悪意を振りまき、抗う者たちを蹂躙する。
02:アビドス高校か。別の歴史の一ノ瀬宝太郎共々絶望を見せてやろう。
03:いずれホシノを仕留めた連中もじわじわと嬲り殺す。
04:キラ・ヤマト…惜しかったが、絶望と悪意を振り撒いてくれるだろうと期待。
05:ギギストの賢者の石を手に入れ、さらなる力を手に収めたいところだ。
06:ノノミが死んだか。まあホシノよりはよくやった。
07:亀井美嘉は思いのほか揺らいでいたな。エンジェリードを回収できなかったことだけが失策か。
08:思いのほか収穫があった。さてここからどうすべきか
09:ギギストを初め賢者の石は回収する。ルルーシュのプロトガシャットもいずれ手にする必要があるな
参戦時期:少なくとも本編時間軸にドレットルーパー軍式を送り込み始めた後
備考
※■■■の意■に肉体を■■■られています。
※アヤネ(デスマスク)にネミネムーンとヨアケルベロスのカードを支給しました
※シノン(デスマスク)、ディアッカ・エルスマン(デスマスク)、柊うてな(デスマスク)にギギストの討伐を指示しています。
 
【冥黒アヤネ(非参加者)@ブルーアーカイブ+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大) 
服装:アビドス高校の制服
装備:アルケミスドライバー(偽)@仮面ライダーガッチャ―ド ハイアルケミストリング(偽)@仮面ライダーガッチャ―ド ラウズカード♡1(チェンジ)@仮面ライダーディケイド
道具:ネミネムーンケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド ヨアケルベロスケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド 
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:黒見セリカと水色の女を見逃した失態は必ず挽回する
02:ノノミめ、大口をはたいてこうもあっさり消えるとは
03:エケラレンキス……奴は危険かもしれない。
04:首尾は上場、さてここからだな
05:どいつもこいつも、まともなデスマスクは私だけか。
06:マジェード*テラーか・・・・良い名だ。
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です
※コーネロの指輪@鋼の錬金術師 カリスラウザー@仮面ライダーディケイド ラウズカード♡1@仮面ライダーディケイド は再錬成されました
※変身する『黒いマジェード』は『マジェード*テラー』と命名されています
 
【冥黒ディアッカ(非参加者)@機動戦士ガンダムSEED+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大)
服装:
装備:ラウズカード♡『スート不明』@仮面ライダーディケイド 錬金アカデミーの制服(赤)@仮面ライダーガッチャード
道具:ストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED 九堂りんねのドロップアイテム×1
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:俺様という暴力を前に無力さに嘆く顔が見てえ
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です
※グリオンとデスマスク以外を『ナチュラル』と認定し、見下しています
※♡のラウズカードと融合しており、耐久性が向上しています。 スートに応じた能力も使えますが何のカードと融合したのかは後述の書き手様にお任せします

337冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 14:22:25 ID:r2R68iiI0
【冥黒シノン(非参加者)@SAOシリーズ+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大)
服装:いつもの服装
装備:T2トリガーメモリ@仮面ライダーW ラウズカード♡『スート不明』@仮面ライダーディケイド
道具:マナメタルの結晶@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:死の運命を前に絶望する顔が見たい
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です
※♡のラウズカードと融合しており、耐久性が向上しています。 スートに応じた能力も使えますが何のカードと融合したのかは後述の書き手様にお任せします

【冥黒うてな(非参加者)@魔法少女にあこがれて+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大)
服装:学生服
装備:ソードスキル:開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)@Fate/Apocrypha ラウズカード♡7(バイオ)@仮面ライダーディケイド
道具:柊うてなのランダムアイテム×1 
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:屈辱に泣き叫ぶ顔が見たいです♡
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です
※♡7のラウズカードと融合しています。

【支給品紹介】

 ・エルドラドライバー@仮面ライダーガッチャード
  金色のルービックキューブ@仮面ライダーガッチャードが変化した変身ベルト
  『仮面ライダーエルド』のほかもう一体の仮面ライダーの変身に使用する
 
 ・エルドラゴンケミーカード(偽)@仮面ライダーガッチャ―ド(オリジナル)
  仮面ライダーエルドの変身に用いる、グリオンの分け身ともいえるケミーカード。
  原典とは異なり本ロワでは 『降雷皇ハモンのデュエルモンスターズカード@遊戯王GX』と『ダークマイトの個性因子@僕のヒーローアカデミア』より魔王グリオンが錬成した。

 ・アルケミスドライバー(偽)@仮面ライダーガッチャ―ド ハイアルケミストリング(偽)@仮面ライダーガッチャ―ド
  仮面ライダーマジェードの変身に用いる。九堂りんねが有するドライバー、指輪と同一の物。
  アヤネが持つ者は『カリスラウザー@仮面ライダーディケイド』と『コーネロの指輪@鋼の錬金術師』を素体としグリオンが錬成し、白と橙の意匠がある原点と違い黒と金の色合いをしている。

・T2トリガーメモリ@仮面ライダーW
 アヤネが回収していたドロップアイテム
 次世代型ガイアメモリである銃士の記憶を宿すメモリ 使用者をトリガー・ドーパントへと変身させる

・開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)@Fate/Apocrypha
 アヤネが回収していたドロップアイテム
 『赤のキャスター』の宝具であり、対象者の精神に働きかけ物語を幻覚のように体験させることができる世界改変型対心宝具。世界を閉塞させ、脚本を産み出し、物語を強制させる。
 冥黒うてなが使用する場合、対象の精神を凌辱することに重きが置かれる。基本的にはトラウマを再現させ徹底的に痛めつけるものとなる

338冥黒色の舞台裏にて ◆kLJfcedqlU:2025/06/21(土) 14:22:38 ID:r2R68iiI0
投下終了します

339 ◆kLJfcedqlU:2025/06/22(日) 09:02:43 ID:Apqng7as0
自身投下分ですが、脱字がありましたのでwikiにて修正を行いました

340 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:16:57 ID:UQX96Xuc0
予約していないキャラも含みますが、新たに予約されなかったので投下します。

341 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:21:00 ID:UQX96Xuc0
「待ってるなんて言いながら随分色々動き回ってるじゃない」

エリアB-5の民家の居間にて。
テレビに流れたルルーシュの二度目の放送を聴き終えたノワルが真っ先に抱いた感想はたった一言だけだった。
しかし自分に喧嘩を売ってきたのは存外ただ驕っている訳でもないとも考え始めている。
何故なら背景の映像や使っていた椅子が変わっていなかったことから少なくとも同じ場所で撮影した映像なのは間違いないのに既に二人の参加者を屠り、バグスターウイルスのヒントまで得ている。
これはそれなり以上に動き回っていなければあり得ない成果だ。

「ま、何にしたって今回の放送は私にとって朗報ね。
仮面ライダーなんて武骨なのとか、ナイトメアだっけ?
ゴーレムみたいな配下ばっかりじゃなくて普通にかわいい子も囲っているみたいだし」

放送にそう長くはない時間だが、女に目の無いノワルは見逃さなかった。
長い銀髪にシャープな眼鏡の似合うクール系の美女、ルルーシュが左腕として使っている眼鏡の刀使を。
ああいうタイプこそ、その整った顔を悦楽で歪ませることが出来たらと考えたら唾が止まらなくなりそうだ。

「レジスターは無かったからあの子もNPCモンスターなのよね。魔力の質は低そうなのは残念だけど、アスナちゃんの隣に置いておいても良い位の美女だったのは良いことだわ」

捕らぬ狸の皮算用と嗤う事は出来ない。
何故ならこの女ならば自分の欲しい物全て手に入れるぐらい造作もないことだからだ。

「一息にテレビ局に行ったらルルーシュには会えるけど、それだけじゃあ駄目ね。
誰に喧嘩を売ったのかを自分の足場が少しずつ崩れていく恐怖と共に教えてあげなくちゃ」

そう言って獲物を追い詰める爬虫類のような笑みを浮かべてノワルは席を立った。

「そう言えば、イドラちゃんは死んじゃったのよね」

イドラ・アーヴォルン。   ・・
このゲームに巻き込まれてから味見できた数少ないプレイヤーの1人。
魔法使い単品としてみた場合でも大魔導士だけあって自分のような規格外を除けば上の上と言っても過言ではなかった。
他にも女性と思しき名前がいくつもあったが、その中でもイドラが死んだという事実は特別残念でならない。

「減っちゃったわね、私の未来のコレクション」

イドラを殺した誰かも女でなければ惨く殺すことにノワルは決めた。

-----

「まさかここまで来ても尚上からとはな」

覇世川左虎の呟きにマイ=ラッセルハートも頷いた。

「でも私たちが五道化の相手に手いっぱいだった間に回り敵だらけの状態で6時間テレビ局を保持した上に集める物集めれてるあたり、相変わらず馬鹿には出来ないね。
戦力として、少しは期待していいと分かったのは大いに結構だけど」

ルルーシュの放送を視聴し終えた二人は至極冷静に状況を分析していた。
勿論ここまでに死んだ四十数名に何も感じなかったわけではないし、烏天狗などはかかわりの深かった藤乃代葉を殺されている。
今も左虎の肩の上で半べそかいているし、落ち込んでもいる。
だが口は真一文字に結ばれ、眼にはアスナのモノにも似た屈しないという感情が見て取れる。

今は実質的におびき寄せたノワルとザラサリキエルをぶつけて、あわよくばルルーシュも巻き込んで倒そうという大博打の真っ最中だ。
死を悼むことも喪失を嘆くことも大事だが今ではない。

(死を悼むと言えば……シェフィっちと小夜っちが生き残ったのはちょっと複雑かな)

実利だけを考えればマイの手の内の半分を知る上に今後の協力が難しい小夜が生き残ってしまったのは大いにマイナスなのだが、無事かは分からないがあの二人の青い少女が命を繋いだと聞いてよかったと思っている自分がいるのも間違いない。
なんて感傷を想いつつもマイは残しておいたジンに指示を編集で植え付ける。
頭部に一瞬青白い光がスパークし、三人を振り返ることなくジンは飛び去って行った。

-----

明らかに挙動不審なジン……マイが洗脳したジンを見つけた死告邪眼のザラサリキエルはその後を追っていた。
彼女の性能をもってすれば今すぐにもジンに追いついてスクラップに変えることなど造作もないが、こうして追いかけて行けばノワルと必ず接敵する未来が見えたのだからそうする理由がない。

(……魔獣装甲に凶星病理は今頃笑い転げているだろうな)

明らかに茅場寄りの自分に対して羂索やクルーゼ寄りの『混沌』を尊び『破綻』すら上等と嗤う五道化があの2人だ。
死んだ連中は役立たずとののしるかこれからの惨劇のスパイスにしようと画策するかして、生き残った連中に対しては五道化として生かすか個人として生かすか良くも悪くも頭を回していることだろう。

(私が言うのもなんだが、つくづく我々五道化のベースになった奴の面影は容姿だけだな)

342 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:26:54 ID:UQX96Xuc0
今更語るまでもないがドゴルドと、もしかしたらその中身の女(この中身に関しては本当に羂索たち三人しか知らない。五道化にも教えられていない。)以外の全員は元になった者の知識を持っていても人格を持たない。
この真贋入り混じるバトルロワイヤルを調停し、調律し、調整するには余計な要素だからだ。
その割にはエケラレンキスの人格は明らかに愉快犯じみているが、そこら辺は羂索かクルーゼの差し金だろう。
反動なのか、ザラサリキエルの人格は茅場監修の元徹底的に使命に忠実な存在として設定されている。

「さて、場所はC-6……そろそろか」

だからこそ逆様の青い不死鳥の紋様の浮かぶ右目が実態とはかけ離れた清貧な聖職者を思わせる黒衣を纏った金髪の女……ノワルを捕らえた次の瞬間から戦闘体制に移行する。
ノワルは昆虫のような黒い瞳をでザラサリキエルを捕らえ、彼女の性別を見定めると即座に自身の固有魔法を使おうとした。
だが直ぐに思いとどまった。
仮にも元居た世界では最強の一角に数えられた魔女。
魔法的観点からザラサリキエルの生物としての不自然さを感じ取ったようだ。

「その身体、どの程度まともな人間と同じ機能があるのかしら?
顔は結構好みで、そのオッドアイも素敵なのに、ちょっと残念ね」

「余裕だな。
確かこうゆうのを『鴨が葱を背負って来る』って言うんだぞ、闇檻の魔女。
最も今回の鴨はお前だがな」

「なんですって?」

その言葉の意味は分からなかったが、少なくともけなされているのを感じ取ったノワルが感じたのは不快感以上に困惑だ。
触り程度だろうと、この姿と闇檻の魔法が結びつくならば余裕など見せれるはずもないはずだ。
しかし目の前のローブの少女は自分を強者とは思っていても脅威と思っている風には感じられない。

「おかしいと思わなかったのか?
なぜ『炎獄』や『無垢』でもなければ手傷一つ追わせられないお前が何故クルーゼ様によって駒(プレイヤー)に選ばれたのか」

「その理由があなただとでも?」

「驚いた。
女の裸にしか興味がないと思っていたが、案外と頭の回転は速いじゃないか」

「生意気な子ね……決めたわ。
あなたは一から性感帯を植え付けて開発する。
あなたを手に入れるまで、玩具二号は欠番にしておくわ」

『闇檻』を発動する。
ノワルいつも通りにザラサリキエルの姿は黒い靄に包まれ

「『死告邪眼』」

一瞬で魔法どころか魔力に至るまで青い光にかき消された。
無傷のローブ姿が一瞬とは言え窮屈だったと言いたげにゴキゴキと首を鳴らす。

「なるほど、魔法破りの固有魔法ってところかしら?」

ならば直接叩き潰すと攻撃魔法と召喚天使による攪乱に切り替えるノワル。

「『劣化複製(デッドコピー):嚮導老君(グレートガイダンス)』!」


対するザラサリキエルはスコーピオンEVO3に権能を付与した銃撃で応えた。
弾丸が掠っただけで召喚天使たちが砕け散り、雑に周囲ごと薙ぎ払う様に放たれた魔法は人間離れした身のこなしに躱されローブの端を焦がすに留まった。

「まさか、他人の固有魔法を?」

「攫った女を乳牛代わりにしか出来ないお前と七冠(セブンクラウンズ)の力すら下僕の玩具に出来る羂索様たちでは次元が違う。
お前に私は勝てて当然の存在にすぎない。
カードを使うまでもない」

「ならあなたを蕩かしバラシて調べあげて今後の教訓にさせてもらうわ」

「それは良い考えだ。
貴様を殺す為だけに生み出されたこの死告邪眼のザラサリキエルが負けなしという一点に目をつぶればな」

あくまで不敵な笑みを崩さないノワルとローブの下に隠れて表情の読めないザラサリキエルの攻防が本格的に始まった。

「どうやら最初の賭けには勝てたみたいね」

病院から少し離れた民家にて。
現地調達のPCに編集して配下に置いた偵察型ジンから送られてくるノワルとザラサリキエルの魔法と銃撃の応酬を眺めながらマイ=ラッセルハートはほくそ笑んだ。
取り外しておいた別のNPCモンスターの通信装置に入った情報が正しければルルーシュは配下全ての半数を率いてこちらに向かってきているという。
どうやらここに来てようやく自分に流れが来ているらしい。
マイは背後に控える左虎たちをいd地度だけふり返り、再び画面に視線を落す。

「さ、ここまでお膳立てしてあげたんだから。
あなたも踊ってよね、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」

悪逆皇帝を待ちながらマイは何度もこの戦いの攻略未来を頭の中で反芻した。

343 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:28:06 ID:UQX96Xuc0
【エリアC-6/蛇腔病院近隣/9月2日13時30分】
【死告邪眼のザラサリキエル】
状態:健康
肉体:???(女性なのは確定)
装備:フード付きローブ、???
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:多数の銃火器@???
   ???のカード×?@???
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:守護者としての役割を全うする。
02:0005bとマジアアズールは……まあ仕方ないか
03:闇檻を迎撃し、庭園から遠ざける。
  倒しはしないが令呪一画は削っておきたいところだ。
04:魔獣装甲の奴、雑な仕事しやがって。
05:誰がエルちゃんだ、誰が
06:凶星病理もだが、アイツらが遊びすぎてないだろうな。
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※ヘイローを有しています。銃撃などに足して異様なタフネスを発揮します。
※肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※死告邪眼はギアスキャンセラーをベースにした彼女の固有能力です。
 発動すると有効範囲内の異能力を無効化できますが、その有効範囲に常に自分が含まれます。
※アストルムの七冠の権能@プリンセスコネクト!Re:DIVEを模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:ルルーシュに対する不快感、ダメージ(小)
服装:ノワルのドレス
装備:賢者の石@鋼の錬金術師、万里ノ鎖@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ローラ姫のランダムアイテム×1〜3
   青眼の白竜(2日19時30分まで使用不可)@遊戯王OCG
   ホットライン、ローラ姫のレジスター
   アスナのランダムアイテム×0〜2
   ランダムアイテム×0〜1
   ウンベールのランダムアイテム×0〜1
   アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ
   ウインド・フルーレ@SAOP 星なき夜のアリア
   ポケット闇檻、魔力サーバー(NPC)×いっぱい
   魔力サーバー(アスナ)
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:アイツら(マジアベーゼ、マジアマゼンタ、イドラ、千佳、アルカイザー)にはいずれ報いを受けさせる
01:この殺し合いを乗っ取って、自分好みに改造してあらゆる世界から集めた女の子を愛でる
02:黒い男(アルジュナ)を強く警戒。
  気を引き締めないとねぇ
03:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃん、アスナちゃんの魔力はおいしかったわね。
04:まだ見ぬ異世界のかわいい女の子に会うのが楽しみ。
  今度は殺される前に会いたいわ。
  NPCにも結構顔の良い子が居るみたいだし。
05:ルルーシュって奴、思ったよりも警戒するべきかもね
06:令呪とレジスターに関しても細工の余地がありそうね……
07:まずはへし折って躾けてあげるわ、ザラサリキエルちゃん。
08:禁止エリアにもちゃんと気を配らないとかしら
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
※ノワルに課された制限は以下の通りです。
闇檻 無限監獄の封印
魔力解放形態の封印
結界による陣地の作成不可
召喚できる使い魔は天使α、天使β、天使γ程度
闇檻 ラストレクイエムで呑み込める範囲を1/10未満に
※闇檻の応用によりポケット闇檻を作り出しました。
 「人間やNPCを入れられるリュック」のような性能をしており、中身に魔力サーバーに加工したNPCおよびアスナを収納しています。
 ただし制約として、ノワルが外部から魔力を使って維持する必要があるので、ポケット闇檻に籠城するといった手段は使えません
※数多くの女性NPCとアスナを魔力サーバーに改造してポケット闇檻内部に収納しています。内部から魔力を抽出可能です。

344 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:28:43 ID:UQX96Xuc0
【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)】
状態:全裸、魔力サーバー、疲労(特大)、絶頂、ノワルへのうらみ(極大)
服装:魔力サーバーの装置と拘束具
装備:搾乳機、チューブ、バイブ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:"その時"が来るまで生きる
01:先生(小兵衛)の教えを肝に銘じる
02:生きて、先生(小兵衛)と私のうらみをあの女(ノワル)に返す
03:生きてミトに再会する……?
04:茅場って……あの茅場よね?
05:どういうこと?これはSAOとはどう関係しているの?
06:キリト……同じSAOのプレーヤー?
参戦時期:ミトにパーティを解消され、ジャイアントアンスロソーに殺される寸前
備考
※キリトに助けられる前ですのでキリトとの面識はありません。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
※小兵衛との会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※名簿の並びからキリト〜ユージオまでをSAOのプレーヤーではないかと推測しています
※胸の傷はノワルにより治療されました



【エリアC-6/蛇腔病院近隣の民家/9月2日13時30分】
 【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(小) "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下 マイ=ラッセルハートへの信頼(大?) ノワルへの警戒(大)
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01?:マイ先生の懇願(たのみ)を断る左虎ではない
02:水神後輩に一体何が?
03:空蝉丸……ドゴルドと因縁がある参加者か。
04:よもや病院の地下にこれほど悍ましい物が眠っていたとは。
05:冥黒の五道化……マイ先生の為にも必ずブッ切除(つぶ)さねばなるまい。
06:ノワルなる魔女……ザラサリキエル共々必ずブッ殺さねば
参戦時期:死亡後
備考
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、邪樹右龍・繰田孔富含む一部記憶が欠損しています。
強い衝撃等があれば蘇るかもしれません。
※マイ=ラッセルハートにより、『マイのタイムマシンに違和感を抱かない』ように記憶を操作されています

【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:健康 小鳥遊ホシノへの興味(中)、苦々しい感情(大)
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士
   オコノミボックス@ドラえもん
   ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:左虎っちを利用する。
  優勝したら左虎っちの両親を蘇らせてもいい
02:タイムマシンの使用は慎重に。
  削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。
  その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
  どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
08:ノワル……間違いなく五道化級の参加者。
  ヤバいねこれは。
09:ツィベタっちの言いたいことは分かる。
  それでもアタシは――。
10:一緒に踊ってもらうわよ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『鵺の陰陽師』の世界についてのある程度の知識を得ました。
※ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-は意志持ち支給品ですが、夢の中など特定の状況可でしか会話が出来ません。
※冥黒の五道化が必要なほど強力な参加者が5人いるのではないかと考えています。
※ルルーシュ配下のジン長距離強行偵察複座型@機動戦士ガンダムSEEDを操り、ノワル誘導のため蛇腔病院に向かわせました

345 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:29:24 ID:UQX96Xuc0
【烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師】
状態:令力消費(中)、独立移動、ノワル戦のトラウマ(極大) 編集(エディット)影響下(小)
服装:烏天狗の服装
装備:なし
道具:なし
思考
基本:親しい者に危機が及ばない限り契約者の意向に従う
00:小兵衛の最後の指示を遂行するため、他の参加者を探す。
01:マイ・左虎と共にノワルを倒す。
02:代葉殿……学郎殿……
備考
※秋山小兵衛より、以下の指示を受けています。
 殺し合いを打倒しようとしている参加者を探すこと。
 協力してくれる参加者を新たな主をすること。
 見つけた参加者に「アスナが闇檻の魔女に囚われた」ことを伝えること。
※マイ=ラッセルハートにより、『マイのタイムマシンに違和感を抱かない』ように記憶を操作されています
 現段階ではそれ以外に記憶の操作はされていません。

-----

ノワル達の激突する場に向かう機装の軍勢の真ん中に何の変哲もない乗用車があった。
ルルーシュ、ロロ、陽介、そして運転手役の呪詛師の乗る車だ。
後部座席に並んで座るルルーシュの手にはタブレットがあり、先行させた偵察部隊……その中でも眼の役割を果たすランチャーストライカー装備の105ダガーの望遠カメラから届くノワルたちの暴れっぷりが映し出されていた。
どうやら魔法が関する使い魔の視線は気付いてもコズミック・イラの技術の粋であるMSの視線には鈍感であるらしい。

「……あんなのに俺らだけで勝てんのかよ」

思わずつぶやいた左隣の陽介にルルーシュは柔らかな笑みを浮かべて答えた。

「違うな、間違っているぞ」

「兄さん?」

「ロロ、陽介。我々は最初の賭けに勝ったのだ」

2人の頭上に同時に?マークが浮かぶ。
ただでさえ最悪記憶改変能力者含めて二つの勢力を相手にしなければならないのに片方な最も警戒していたと言っても過言ではない色欲の魔女、もう片方は運営肝入りの強NPCモンスター。
105ダガーかた伝えられた現状は最悪と言っていいはずだ。

「ノワルは女を性的に嬲る事で魔力を絞り出し自分の力に変換することができる。
実際は魔力を持つ生命体ならどんな存在でも性的快感を媒介に搾り取れるんだろうが、奴のプライドが男女問わず搾り取るなんて拾い食いのような行動を絶対に許さない」

そんな変態性癖をいまさら説明されても……と、陽介の困惑が深まったのを見て、ルルーシュは覚えの悪い生徒に根気よく教える教師のような顔になる。

「つまりキャルたちを置いてきた時点で我々は『ただでさえ指し手として向こうが二枚も三枚も上手』という状況こそそのままだが『こちらが取られた駒の数だけ相手の手番が増える理不尽極まる将棋』ではなく『ただ相手の実力と駒の数がこちらより多いだけのチェス』で奴に挑めるのだ」

散々枢木スザクと言う名のイレギュラーに作戦をかき乱されてきたルルーシュからすれば、いくら時間稼ぎが出来ようとノワルの前に女を並べるという超戦術級の存在を実質強化、または稼働時間を延長させる選択肢を取るなど出来るはずもないのだ。
単に一度懐に入れてしまったロロの友達を進んで凌辱させたくないというのも大きいが。

「それ、正直どっちもどっちなんじゃ……」

「確かにそうだ。
だからこそ、この子供だましに全てがかかっている」

そう言ってルルーシュは右隣のロロをまっすぐに見つめた。

「この作戦で重要でない役割を担う物等一人もいないが、強いて最重要は誰かと言えばほかならぬお前だ、ロロ。
仮面ライダーの力、上手く使えよ」

「分かってるよ、兄さん」

信頼する応答にもしかしなくとも最もキツイ役目を任せたルルーシュは不安と申し訳なさ、そして確かな信頼を浮かべて力強く頷き返した。

「よし、では出たとこ勝負も良い所だが……勝ちに行くぞ。
全員死ぬなよ」

白き皇帝もまた、万全とは言い難い策を片手に決戦の場に迫っていた。

346 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:30:49 ID:UQX96Xuc0
【エリアD-6/市街地/9月2日午後1時30分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常、車で移動中
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実
   キングガブリカリバー@王様戦隊キングオージャ―
   ランダムアイテム×0〜1(清隆)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   飛電ゼロワンドライバー&メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……最重要の役目は任せたぞ。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:地下の『アレ』については最悪留守中に『特記戦力』が攻めてきた場合ぶつける。
07:特記戦力に関する情報はもっと欲しかったし、場所も選びたかったが仕方ない。
  記憶改変能力者共々討ち獲る。
08:白のキングは例の魔神で確定か。
  なら色欲の魔女程度倒せん用では挑戦権すらないな。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとうにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトはジゴワット以外倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。

347 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:32:21 ID:UQX96Xuc0
【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)、ルルーシュに大役を任された歓喜(極大)、車で移動中
服装:ルルーシュの用意した制服とマント
装備:戦極ドライバー(斬月)、メロンロックシード
令呪:残り三画
道具:ホットライン、ランダムアイテム×0〜2(一護)
   一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン
   零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
   クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:兄さんと共に記憶改竄能力者と、奴の狙う敵を倒す。
02:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
03:黒い魔女……マーヤやイザークたちとも合流してから戦いたかったな。
04:枢木スザクと二代目ゼロはそのうち殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。
その時が来たら……。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。
それが…せめてもの。
07:沙耶香やキャルと離れるのは少し不安だけど、まずは陽介から信頼を稼ぐ。
08:色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
09:リボンズやアスラン・ザラ?、継ぎ接ぎの男(真人)を警戒。
10:このままキャルたちの信頼を稼ぐ。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続にお任せします。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。
※花村陽介やキャルとも情報交換をしました。

【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、精神疲労(小)、車で移動中
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG
   黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1
   熟練スパナ@ペルソナ4
思考
基本:殺し合いはしない
01:何なんだあのヤベー(ザギ)のは。
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
  けどカッとなったままじゃアイツとは真面に戦えねえ……
03:ロロの奴とルルーシュはとりあえず信用しておく。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ルルーシュに会いに行く前にイザークたちとは合流したかったなぁ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったはいいけど、ただじゃなさそうだな。
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
  テレビの中じゃねえのに。
09:本当に出たとこ勝負にもなってるのかよこれ
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。

348 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:32:59 ID:UQX96Xuc0
投下終了です。
タイトルは『バッドダンサー・イン・ザ・ダーク』です

349 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/23(月) 23:57:54 ID:UQX96Xuc0
wiki収録の際に一部誤字などを加筆修正させていただきました。

350 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/24(火) 23:21:26 ID:STJsgEE20
こんにちは、当ロワの企画主です。
何時も真贋ロワを盛り立ててくださり厚く御礼申し上げます。
さて、本日お伝えさせていただきますは当ロワのルールに関してのことで御報告があります。
予約キャラが10名以上で予約期限が通常より長くなるルールなのですが、
本来含まないNPCモンスターに関して
実質的に運営のキャラクターに等しい冥黒の五道化は10名に含めてよいというふうにルールを設定したいと思います。
今後とも真贋ロワをよろしくお願いします。

351戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:53:41 ID:Fqc0WLVE0
皆さま投下お疲れ様です! 投下します。

352戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:54:06 ID:Fqc0WLVE0
すべて繋いでみせる この世界で 牧島輝 「Cuz I 」より

ついに最終決戦。キズナファイブがゼツエンダ―の空中要塞に突撃だ。親玉の絶縁王へ挑むキズナレッド。激戦の果てにレッドはなんと異世界へと転移してしまった。こうして異世界で冒険者となったレッドだが、突如羂索の手により真贋交わる殺し合いのゲームの参加者とされてしまった。
開始直後から女体化にロボ子による拷問など数々の災難がレッドを襲ったが、彼は諦めることはなかった。
そして激戦の果てにレッドはついに羂索達の元へたどり着く。
終わらせよう。この贋物のゲームを。真実の絆の力で。

次回 戦隊レッドと絆の力

さぁ行こう!絆go!

353戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:54:54 ID:Fqc0WLVE0
「まいったね……まさか彼らのガッチャがここまでとは」
「だが知ることができた。人の可能性を」
「なるほど……彼らは示したというわけか」

膝をつくのはこの真贋交わる殺し合いを開幕した主催者3巨頭。
対峙するのは、彼らを打倒しようと結集した参加者たち。

「「「「「キズナレッド!!!!!」」」」」
「悪い奴は許さない」

彼らの呼びかけ。
集団の中心にいるのはキズナレッドこと浅垣灯悟。

「フン。あれだけ絆・絆と言い切ったのだ。ちゃんと貴様が決めろ」
「ああ。まかせろ!」
一言小言を言い放つと後を託す総司令官。
このゲームで最初に対峙した参加者。
あれから幾度と敵対した総司令官だったが、キズナレッドの熱意についに手を取り合い和解したのだ。

「人の子よ。さぁ行け」
アルジュナ・オルタ。争いをなくすために全てを滅ぼそうとしたが、絆の力が争いをなくして世界を救うと身体で示したキズナレッドに神は変化した。
腕組みをしつつ冷静にレッドを見つめるその姿は後方彼氏面。

「悪い奴は許さない」
オーズと呼ばれたバッタヤミー。今、彼を構成するは欲望のメダルではなく絆のメダル。
キズナレッドの正義がバッタヤミーを再び構成させ、偽りの仲間ではなくオーズとして真の仲間となった。

他にも出会った多くの参加者と絆を繋いだ。
だから、ここまで来た。

「終わりだ!!」
「世界の絆は俺が守る!!」

「絆(なんだかよくわからないもの)の力おもいしれーーー!」

マコの声援。
この真贋交わる場で最初に繋いだ絆の仲間。
ヒーローはどんな苦難の状況でも声援1つで打開できるのだ。

「無限の絆で、未来を創る‼ 絆創合体‼マキシマム・キズナカイザー‼」

掛け声と同時にモビルスーツのように身に纏うは、絆創戦隊キズナファイブの最終決戦兵器。

――― マキシマム・キズナカイザー ―――

「背中合わせの絆が防ぐ!! 虚空を断ち切る極光の剣!!勇輝一閃(ブレイブレイ)キズナスラッシュ!!」

そう――

絆の力は悪に負けないのだ

354戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:55:16 ID:Fqc0WLVE0






























「フサガナキャフサガナキャフサガナキャ アアアアア!!!!!」

現実は非情である。

☆彡 ☆彡 ☆彡

355戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:56:10 ID:Fqc0WLVE0
あれからアナザーオーズになった灯悟は悲痛な叫びをあげながら、結界内で苦しんでいた。
この苦しみから流れようと暴れたい衝動で意識が埋め尽くされているが、結界内ではそれも叶わず。
ただ時間が過ぎ去るだけであった。
結論からいうと、マシュの見立て通りク―フーリンの結界は放送まで持続した。
さらに本来なら、結界がまだ持ちこたえることは十分あり得たのだが、放送内容が全てをひっくり返した。

――― イドラ ―――

その名は読み上げられた死者の一人。

――― イドラ ―――

その名はキズナレッドにとって聞き逃してはならない名前。

――― イドラ ―――

その名は浅垣灯悟にとって。。。

「あああああああああああーーーッッッ!!! 」
(イドラーーーーーーーーーーーッッッ!!!」

悲痛な叫びと共に結界は壊れた。
絆を見失った悲しき怪人となったヒーローはただ走る。
いや導かれている。
■■■の元へと。

☆彡 ☆彡 ☆彡

356戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:56:40 ID:Fqc0WLVE0
デクとやみのせんしの攻防が続く中、放送が流れだす。
しかし、二人は戦いをやめない。
今の二人にとって放送は休憩に含まれないようだ。
前説が終わるとやがて、死者が読み上げられる。
そして、それが急展開を招き入れる。

――― アレフ ―――

「!?」

―――あ?

――― アレフ ―――

もう一人の俺(アレフ)死んだのか?

――― アレフ ―――

……
………
何、あっさり死んでやがるんだ!!!

別の世界軸の瓜二つの自分。
あの後の動向は知らないが、別にさほど強い関心はなかった。
既に自分は自由を得ようと勇者を捨てたのだから。
いつまでもローラ姫に囚われている勇者は、自分であって自分ではない。
そのはずだったのだが、いざ放送で告げられたもう一人の自分に苛立ちが生まれた。
その苛立ちを振り払うように”ベギラマ”を唱える。
だが、”それ”はベギラマではなかった。
強烈の閃光と炎がデクの顔面を横切る。
幸い、デクのワン・フォー・オールの個性の一つ、”危機感知”により全身直撃は避けることはできたが、しかし横切った”それ”は髪型の一部を一瞬で焼き尽くし、顔面に痛々しい傷跡を残した。

「なんだ――?」

戸惑うのは、デクではなくやみのせんし。
あきらかに”ベギラマ”を超えた炎。
確かに、この殺し合いの場で、自らの成長の壁を乗り越えている実感はしているが、ここまで燃え盛る炎が出せる自分に驚きを隠せない。

――― 心意システム ―――

主催の一人である茅場が第一放送を生き抜いた者達へ贈った新しいシステム。
それが、早速活かされたのだ。

357戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:57:14 ID:Fqc0WLVE0
「ぐぅ!?あっつぅぅぅ……!!!」
(今の閃光熱……轟くん並……いやそれ以上だ)

あまりの痛みにデクは床で転がったが、幸運にも髪に移った残り火を消すことに繋がった。

「どうしたこれで終わりか?ステインが認めたヒーローはそんなもんか」

床に転がるデクにやみのせんしは問いかける。

「お前をとめる……僕の出来ることを全てをかけて」

戦闘の合間から発するやみのせんしの節々の言葉から、自らの世界におけるプロヒーローのような立場で生きていたと推測する。
それが、何の因果か今はヴィランの道を突き進んでいる。
ふと、一人の男をデクは思い出す。
ヒーローになりたくてもなれず義賊になった男のことを。
故に、進んで勇者という立場を捨てたやみのせんしにデクは負けられない。

「……は!」

敵対しているとはいえ期待通りの返答に笑みが零れる

「なら、もっと足掻いてみろ!デク!!」

再び、ぶつかり合うデクとやみのせんし。
そこに。

「アアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

「「!?」」

突如、出現したのは、アナザーオーズことキズナレッド。
結界が壊れた後、イドラを追い求めていた彼は周囲のNPCを蹴散らしながら移動をしていた。
そして、導かれるかのようにイドラが最後を迎えたここ発電所まできたのだ。

「!?」

アナザーオーズの視界に斃れたイドラが。
一直線にそこへ向かうアナザーオーズ。
だが、それを二人のヒーローがそれを認めなかった※一人は元だが

358戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:59:07 ID:Fqc0WLVE0

「イドラさんに近づくな……ッこのヴィラン!!!」
(誰だ!?っ、まだ……よく視えない。だけど、危機感知が鳴りやまない!)

先ほどのダメージの影響は軽くなかった。
高熱の空気が充満し、視野が制限されているため相手がよくわからないが、一つ確かなことがある。
それは、仲間であるイドラの死体へ荒々しく向かおうとしていることだ。

(黒鞭5th)

とにかく仲間(イドラ)の元へ向かわせないと、黒い鞭状のエネルギーを放出し、アナザーオーズを足止めさせる。
それに応じてやみのせんしも動く。
阿吽の呼吸。
さながらデクの世界でいうヒーローとサイドキック。
まるで2人の連携。

「あの女はな、俺が敵と認めた女なんだよ」
「お前みたいなモンスターがきやすく近づいていい女じゃねぇぇぇんだよぉぉぉぉぉ!!!!!」

どこの誰だかは知らない。アレフの死にデクとの戦いに水を差したことに頭に血が上る。
残り火のMP全てを使ってでもあのモンスターを斃す。
先ほどの炎をもう一度。
やみのせんしの脳内に呪文の名が浮かび―――

「フサガナキャ!オオオオ……フサガナキャ!フサガナキャフサガナキャ!!」
(まってくれ!俺はヴィ……ヴィランじゃない!ましてはモンスターなんかではない!!)

一方、デクにヴィラン。やみのせんしにモンスター扱いされるは絆の戦士。
燃え盛るレッドの名を宿すキズナレッド。
その彼にヒーロー(勇者)であった男の必殺呪文が炸裂する。

「ギラグレイド!!!」

先ほどの炎の正体。
それはギラ系最高位呪文。
本来の彼が扱える最強の呪文は”ベギラマ”である。
さらに段階を踏むなら”ベギラゴン”であるのだが、それを一足飛びした。
この殺し合いの場での数々の戦闘がやみのせんしを格段にLevel upし続けている結果だ。
そう、心意システムにより勇者としての”経験”自由を得ようとする”願望”それらが悪魔合体のようにかみ合った。

「フサ……フサガナキャフサガナキャフサガナキャ アアアアア―――――!!!!!」
(俺は……燃え盛る熱き友情の戦士キズナレッドなんだ―――――!!!!!)

炎がアナザーオーズを包む。
さらに熱風の勢いで、アナザーオーズは発電所の一部の機器に激突する。
その衝撃で機器が光る。

後はヒーローのお約束。

それは……怪人の最後は爆発するのみ

【浅垣灯悟@戦隊レッド 異世界で冒険者になる 死亡】
 [鮮血(意志持ち支給品)@キルラキル 焼失]

☆彡 ☆彡 ☆彡

359戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:59:33 ID:Fqc0WLVE0
「……なぁ、デク」
「……何?」

突如、襲来したモンスター(灯悟)を撃破した二人。
戦闘再開かと思いきや、風向きが変わった。

「わりぃが、一旦この勝負お預けさせてくれねぇか?」
「え?」

やみのせんしはデクに戦闘ではなく一旦停戦を持ち掛けた。
まさかの提案にデクは一瞬間の抜けた声を出すが、ファイティングポーズを解かない。

「無理すんなよ。俺のギラグレイド、自分でいうのもなんだが半端な威力じゃなかっただろ?それにぶっちゃけ俺もMPが尽きた。急な横槍の消耗での決着は不完全燃焼でしかねぇ。だから中断」
「そんで……休憩がてらあの女を埋葬してやってくれねぇか?」
「また、さっきのようなモンスターがあの女に群がるのは簡便ならねぇ」
「……」

先のモンスター(灯悟)によってやみのせんしの関心は、デクとの決着よりイドラの遺体の扱いに上書きされた。
この殺し合いは参加者だけでなく、NPCモンスターも数多く跋扈している。
大半が知性なきNPCゆえに斃れた参加者だろうが関係なくその遺体を損傷してもおかしくない。
また、エトウカナミのように死んでもなお安らぎに眠ることなく彷徨うこともある。
敵として認めた女だからこそ殺めた。それが、”おおイドラよ!しんでしまうとはなにごとだ しかたのないやつだおまえにもういちどきかいをあたえよう”と参加者もしくは主催者の手で無理やり戦わされるのは忍びない。
また彼らが知る由もないが、現に宇蟲王が認めた戦士の遺体は魔王の配下の手によって回収され、魔王へと引き渡された。
そして、デスマスクとして尊厳を奪われた。
故にイドラを埋葬してくれとデクに中断を申し出たのだ。

「……わかった」

一方、デクも消耗激しい。
なによりレッドが命を燃やし、祝福してもらった肉体は一瞬でまた、ボロボロとなった現実。
ヒーローとして刺し違えるのは違うと判断したからだ。
やみのせんしは自身の提案を受け入れてもらうとニヤリと笑みをこぼした。

360戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/24(火) 23:59:47 ID:Fqc0WLVE0
現状の冒険を中断の書に記録します。
上書きされますがよろしいですか?

はい
いいえ

→はい

「んじゃ、またお互い生きてたら決着つけようぜ?」

やみのせんしはデクに背中を向けると静かに立ち去る。
デクはその後ろ姿がどこか寂しそうに見えつつも立ち去るのを見送るしかなかった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

――ザッ、ザッ、ザッ

「おい、もう一人の俺」

変身を解除し歩みを止めず、ただ一人口を開く

――ザッ、ザッ、ザッ

「……俺は生きる」

ただそう呟くと再び蛇喰病院を目指し、歩みだす。

361戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/25(水) 00:00:02 ID:WbWASJOw0

【エリアE-8とD-8の境目/発電所/9月2日午前12時00分】
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、MP消費(残り0)、『忍者』『刀使』に興味(小)、決意、
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー、ジョーカーのラウズカード@仮面ライダー剣
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。
0:俺は生きる。……もう一人の俺(アレフ)
1:二度と迷わない。方針は変わらない。だが使えるものは使い、ギギストの云うエターナルや魔王グリオン、ルルーシュのような、俺の掲げた『自由』を奪う力を持つ連中相手なら──
2:過去との決別を証明するため、アスラン・ザラは次会った時に殺す。そしていずれはギギストも。
3:蛇喰病院を目指し、拠点に構える。
4:デクとの決着はひとまず休憩
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
6:エトウカナミ……だったか。次にあのシビトやクロガネスパナ、ついでにあのドラゴン(ジゴワット)、それにキラ・ヤマトとやらを見つけたらその時は終わらせてやる。
7:俺自身の自由の為に、願いを叶えた後主催者共も殺す。特にケンジャクは。
8:ライダーの力については過信しない。不覚を取るのはゴメンだ。
9:休憩がてらMPを回復させたいな
参戦時期:竜王の誘いに乗った後
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。
※冥黒王ギギストにより力を付与され更に全ステータスが向上しています。
※シビトと化した衛藤可奈美の剣術を一通り視ました。再現可能かは後続にお任せします。
※数々の戦闘を経て以下の特技、呪文を習得しました。
※乱入してきたアナザ―オーズは、参加者ではなくNPCのモンスターだと思っています。(放送で読み上げられたアレフに対する怒りでレジスターに気づかなかった。
しっぷうづき、はやぶさ斬り、いなずま斬り、だいぼうぎょ
バイキルト ギラグレイド

362戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/25(水) 00:00:19 ID:WbWASJOw0
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……」
じっと手を見る。
この真贋交わる場でもデクのケツイは変わらない。
ヒーローとして救けて勝つ 勝って救ける
OFAは殺すための力じゃなく助ける為の力なのだから
しかし―――
「イドラさん……アルカイザー……」
最高のヒーローになるまでの道のりはいまだ遙か彼方。
【エリアE-8/発電所/9月2日午前12時00分】
【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト】
状態:ダメージ(中)、決意、髪型サイド刈上げ(424話)
服装:デクのヒーロースーツ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト
装備:同上
令呪:残り三画
道具:デクのランダムアイテム×1〜2、ホットライン、将来の為のヒーロー分析ノート(現地調達)、筆記用具(現地調達)、軽井沢恵のランダム支給品×1、失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ゼロワン、電王)、裁断済みのゼインカード(ストロンガー、アバドン)
思考
基本:羂索らこのゲームを仕掛けた一味を逮捕する。
0:キリトが目覚めるまで休憩。休憩の後、イドラを埋葬する。
1:成見さん、イドラさん、アルカイザー……。
2:キリトと行動する。切島君やキリトやイドラさんの仲間との合流を目指す。
3:イドラさんたちから得られた情報も元に考察を進めたい。
4:ギギストやステイン、ダークマイト、グリオンに翼竜のヴィラン(冥黒ノノミ)、そしてノワル達は要警戒
6:やみのせんしとの決着はひとまず休憩 可能なら分かり合えたい
参戦時期:映画終了直後
備考
※“ワン・フォー・オール”は制限されているがエナジーアイテムや“発頸”を活用すれば瞬間最大威力でなら100%を発揮できるようです。
ただ500%ともなると相応の『反動』を受けてしまいます。
※やみのせんしによるギラグレイドによって髪の一部が燃え尽き、サイド刈上げになって顔に傷痕が残りエピローグ時の外見(424話)になりました。
※乱入してきたアナザ―オーズは、参加者ではなくNPCのモンスターだと思っています。(突然の登場とやみのせんしによるギラグレイドによるダメージもあり、レジスターに気づかなかった)

【キリト@ソードアート・オンライン】
状態:気絶、ALOアバター、疲労(大)
服装:いつもの服装
装備:シャドーセイバー(長)@仮面ライダーBKACK RX、デュエルガンダム(核動力型)の起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ホットライン、シャドーセイバー(短)@仮面ライダーBKACK RX
思考
基本:このゲームを攻略する。
0:────。
1:態々俺に一対の剣を支給するってことは、間違いなく羂索の言ってた茅場は茅場晶彦だろう。今回で完全に決着をつけてやる。
2:デクたちと共にクルーゼや羂索、仮面ライダーを知る者たちを探す。
3:アスナたちやデクたちの仲間、ガッチャードなどの協力できそうな者を探す。
4:PoHやギギストにダークマイトだけでも厄介なのにグリオンにノワルにアルジュナ・オルタ……休む暇なしかもな。
5:ごめん、間に合わなかった……。
6:この短剣、もう投げるのはやめとこう。
  なんか毎回敵に拾われる。
参戦時期:少なくともマザーズロザリオ編終了後
備考
※アバターはALOの物です。

363戦隊レッドと絆の力 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/25(水) 00:00:50 ID:WbWASJOw0
投下終了します。 投下中に日付がまたいでしまったこと申し訳ありません。

364 ◆kLJfcedqlU:2025/06/25(水) 00:08:19 ID:qK4l1dcs0
皆様投下お疲れ様です。
ノワル、アスナ、マイ=ラッセルハート、覇世川左虎、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ロロ・ランペルージ、花村陽介、トランクス、神戸しお、死告邪眼のザラサリキエル
上記で予約して同時に延長させていただきます

365 ◆0ZMfbjv7Xk:2025/06/25(水) 00:31:28 ID:ir9KsczU0
皆様、お久しぶりです。連日の投下、お疲れ様です。

ドラえもん、綾小路清隆、エンヴィー、総司令官、シャチパンダヤミー(NPC)、アルジェナ・オルタ、〔回想・ロボ子(意思持ち支給品)、卜部巧雪〕で予約&延長を行います。

366通りすがりの者:2025/06/25(水) 01:05:09 ID:wrZypkIY0
すみません、s5tC4j7VZY様の執筆なさった『戦隊レッドと絆の力』について少し気になった事があって参りました。
アナザーライダーの変身者の意識というのは2種類あります。
①アナザービルドやアナザーアギト、アナザーキカイ(ウール憑依)、アナザーゴーストみたいに意識がないまま暴れるパターン
②アナザーエグゼイド、アナザーフォーゼ、アナザーキバ、アナザージオウみたいに自意識を保ったまま変身しているパターン
等です。
ですが作中を見る限り、浅垣灯悟は(待ってくれ〜)や(俺は〜)等意識を保っているのに変身を解除していないという表現になっていて、違和感を感じました。
というわけなので展開を変えないおつもりならば、()の2つの文章は削除した方がよろしいと思われます。
失礼しました

367 ◆s5tC4j7VZY:2025/06/25(水) 01:20:04 ID:WbWASJOw0
通りすがりの者様
まずは作品を読んでいただきありがとうございます。
また、アナザーライダーの変身者の意識について丁寧なご指摘ありがとうございます。
意識のセリフがあった方がより灯悟の悲痛さが伝わるかと思い演出として書きましたが、結果的に違和感を感じさせてしまい申し訳ありません。
作品として良い表現へと繋がっていくこと、大変ありがたいです。
この作品がwikiに載りましたら灯悟の()のセリフは全て削除といたします。

368前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:45:45 ID:OC6ZPgHk0
投下します

369前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:47:05 ID:OC6ZPgHk0
 アッシュフォード学園、生徒会室。
 広々とした部屋で行われるのは会議ではなく食事だ。
 何とも言えない行為ではあるが、元々ここの生徒会は自由な面も多かった。
 猫も飼っていたり、生徒会に顔を出さないこともざらな人物もいたりした場所だ。
 そんな中、ドロップ品となる菓子パンを片手間にパソコンのキーボードとマウスを動かす堀北。
 試してみることは無駄だと分かっているが外部への連絡。当然無徒労に終わったことだ。
 次にこの舞台における他の施設へのメール、或いは通話ができないかの確認をしておくことだ。
 移動手段があったとしても、一部施設では距離がありすぎる。連絡が取れる手段を持っておきたい。
 そう手段を模索してみるものの、似たような通信手段を試みたものがこの舞台に既にいるように、
 長距離の通話や通信の手段は必ずルーターのような中継がなくては成立しないことだ。
 ルルーシュ達やイザーク達のような、中継となる別途のものがあれば話は別だっただろうが。
 つまるところ、此処でできる収穫と言うのは大したものとはいいがたいものだった。
 何の気なしに生徒の資料を調べてみればルルーシュやロロ、スザクと言った情報はあるが、
 この学園に通っていたことが分かったからと言って何があるわけでもない。
 全員此処に来ないということは来る気がないか、もう去った後なのだろう。

「ねえ、君達の中にルーターとか用意できそうなの……って、レンがダメなら他もダメよね。」

 レンがおにぎりをほおばりながらぶんぶんと手を振り否定する。
 他の二人は肩やぶっ飛んだ戦国時代、かたや機械はあれどファンタジーな世界の出身。
 とてもじゃないがそんなもの作ったり扱えないだろうし、支給品にあるとも到底思えない。
 なおサビルバラは哨戒のため不在であり、此処には三人だけが居座っている。

「そのるーたーと言うのは何なんだ?」

「戦国時代風に言えば伝令の中継地点と言ったところかしら。
 それを使えば遠くの人と声や手紙で会話ができるって算段だったけれど、
 中継となるものがあればそうね……希望的観測込みになるけど、
 大体エリア二つ分ぐらい離れていたとしても伝令や狼煙を使わず会話ができる、
 とでもいうのが戦国時代の人間には伝わるのかしら?」

「未来の技術は凄まじいな。いつか取り入れたいものだ。」

「空を飛ぶ本多忠勝がいる時点で、君の戦国時代は既にオーバーテクノロジーよ。」

 ため息とともにツッコミながら、通信を諦める堀北。
 相も変わらずぶっ飛んだ戦国のワードを次から次へと飛び出してくる。
 何処の戦国時代に砲門とジェットパックを内蔵した本多忠勝がいるんだ。
 しかもそれで人間だというのだから余計に意味が分からない。

「あの、蛮野さんはルーターとして使えないんですか?」

「私にはそういう機能はない。すまない。」

「あ、いえ。機械だからできると思い込んでただけなので……」

「すまないが、これの開け方わかるか?」

 家康が籠手を外してコンビニのおにぎりを手に取るも、
 開け方がさっぱりわからず、レンが手にとって説明をしていく。
 何この空気、と堀北は内心嘆く。此処は一応殺し合いの舞台の筈で、
 その証拠に真一文字の傷は塞がったとはいえまだ傷跡は残っている。
 レンだって左目が失明、此処に不在のサビルバラも少なからずダメージを負っている。
 と言うより、朧気だったとはいえ人の死を目の当たりにした。他殺ではなく、自分達の意志で。
 とどめはサビルバラではあったが、当然気分のいいものではない。たとえ正当防衛であっても、
 たとえここでの殺しが世間に公表されることがないとしても、余り食欲は沸かなかった。
 だから彼女は菓子パンを食べるというよりは、一緒にドロップした水を飲み込むことで、
 食べるというよりは流し込むという方法で、強引に栄養補給を済ませていた。
 サビルバラの言う通り、食える時に食っておかなければならないのだと。
 そう言い聞かせるように、食事と言うよりは栄養補給を済ませていく。

『定刻の9月2日午前11時15分となった。
 はじめまして、我々の集めた紳士淑女諸君。
 私は茅場晶彦。
 このゲームの主にシステム周りを司るゲームマスターだ』

 各々がそうしていると、タブレットから見知らぬ声が出てきた。
 茅場晶彦の名はレンから詳しく聞いている。ソードアート・オンラインを開発し、
 ゲーム内で死んだら本当に人が死ぬというゲームを作った、悪魔の開発者だ。
 名前だけは最初の羂索の言葉から出ていたので特別驚くことはしなかった。
 表舞台に立ってまで何をしたかったかについては、少々わかりかねるものの、
 心意システムと言うのが一体何なのか。それについて強く疑問を持ことにはなったが。

370前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:48:35 ID:OC6ZPgHk0
 死者について、さほど特筆するべき相手はいなかった。
 いや、同じクラスの軽井沢は死亡したが、彼女と特別仲良くはなかったし、
 クラスでは平田と付き合ってるのと性格の明るさも相まってクラスのカースト上位にいたが、
 須藤程ではないにせよ余り真面目な生徒だったかと言うと少し怪しく、特別な感情は少ない。
 彼と同様に悼むことはしよう。だがそれ以上の行為に至るかどうかでいえば、何もなかった。
 後は勇者アレフ。死亡は確認済みとのことだったので分かってはいたことではあるが、
 改めて自分達の手で人を殺めたのだということを自覚させられ、軽く顔を顰める。
 レンも似た反応だ。自分が本当に殺し合うことになるというのは中々に恐ろしく、
 一度恐怖に陥れた男がとうに死んでいることに気づくこともなく、ただ不安そうな表情だ。
 家康は静かに聞いている。堀北からは彼が何を考えてるかはやはり読み取ることはできない。
 朧気な意識の中、彼とアレフの会話は聞いた。彼は理解者はいなくてもそれで構わないと。
 まるで嘗ての、クラス一丸となる前の自分よりも遥か高みにいる孤独な人間みたいだ。
 神様か何かにでもなりたいかのような、静かな狂気をどこかに感じる。

 放送が終わってみれば、人数はほぼ三分の一が脱落している。
 残り百人以上いるとしても、敵となりうる人物がどれだけいるのか。
 もし今のペースで参加者が落ちれば放送通り、次の日の朝を迎える頃に参加者は全滅だ。
 未だルルーシュに綾小路は健在。いや、綾小路について健在なのはまあ別にいいのだが、
 状況は芳しくない。相手はネックとなるレジスターの解除のためのキーとなりうる、
 プロトガシャットが彼らの手に渡っている。ルルーシュは既に堀北の上を行く状況だ。
 此方がこの六時間で進んだと言えば敵となるアレフを倒し、レジスターを手に入れただけ。
 期待していた設備についても派手なものはまだ散策途中で、拠点になっただけに過ぎない。
 仲間こそ増えてはいるが負傷自体はあまりよくはない。バルバトスの名前も挙がってないし、
 ルルーシュへの対抗策も用意できていない。いや、厳密には一つだけ当人が自覚してないものとして、
 絶対遵守のギアスは二度通じない彼女は、ある意味ではルルーシュに対抗しうる存在ではあるものの、
 それを知ることは現状は少なくともないため、事実上ないものと同義であると言っていいだろう。
 何か、命令を無力化できるものがあればいいのだが……などと思っていると足音が響く。
 広々としたこの学園での廊下では足音はよく響くものだ。食事を中断しながら、
 各自装備を整えた状態で、生徒会室のドアがノックされる。

(ルルーシュのこともあるから要警戒ね。)

 サビルバラが人質の状態で来ているならノックの回数を変えるなど、
 ある程度警戒はしておくため先に話し合っても、やはり気は抜けない。
 ルルーシュに意志を乗っ取られただけの可能性だってありうる以上は。

「サビルバラさん?」

「おう、スズネか。二人組の……男女であっちょるか?」

「こいつの身体だけは女だ。腕は……お前性別どっちだ?」

「さあな。メズールのことを考えれば俺の方は男でいいだろ。」

「とまあ、わけのわからん連中だが、敵じゃないことは分かっちょる。
 いや、どっちかと言うとこっちが値踏みされる番かもしれんな。入っても大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ。」

 珍妙な会話に疑問を抱く三人のところに、
 ドアを開けて入り込むサビルバラを含む三人。
 入ってきたのは、リュージとアンクに乗っ取られた十条姫和の二人だ。





「早速厄介ごとになってるじゃねえかよ、おい。」

「俺が知るか。こっちはメダルが必要だったんだよ。」

 車で北上しつつ、リュージは放送を聞いてごちる。
 松坂さとうが死亡して、神戸しおには戦う力を得た。
 明らかに悪い方向に転がってしまっている状況ではないか。
 一応予めトランクスには色々注意はしておいたものの、相手はまだ子供だ。
 話だけとは言え、世界が滅んでもなお願いに縋らなかった清らかな心を持った人物。
 トランクスと言う男はそういう男だ。自分と違って子供相手でも躊躇うところはあるはずだ。
 何事もなければ……なんてことはあるはずがないが、無事であることを祈る以外になかった。

371前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:49:21 ID:OC6ZPgHk0
「にしてもこっちは租界って名前の通り、スラム街みてえだな。」

 東京とかとは大違いの、荒れた土地、廃墟が立ち並ぶ光景。
 分かりやすい貧民街を体現させたかのような、整備やインフラのなさ。
 特に理由がなければ、北上してまで行きたいという人物は少ないだろう。
 それでも現代都市から行きたい奴はいるはずだ。道中で聞いたルルーシュの放送。
 あれを考えればゼインの首を土産にするだの、ビスマルクを倒した人物とかは特に。
 余計にルルーシュに勢力が集中する。このままだとまずい展開になるのは確実だろう。
 なお、何故北上することを選んだのかと言うとやはり車で移動できる範囲が広いのと、
 これ以上ルルーシュにクランを拡大させるわけにはいかないのを考えた結果でもある。
 つまるところ、家康達と同じ考えを持って移動をしていて、租界には場違いな学園へとたどり着いた。
 その後周囲を警戒していたサビルバラと邂逅することとなり、リュージには嘘は見抜ける。
 だからさして時間を食うことはなく、サビルバラは警戒こそ緩めずに二人を連れてきた。
 家康ならどうせ味方にするだろうとは思っていても、そこを補佐するのが自分の役割だ。
 堀北は一般人過ぎるし、レンも感性は人並みだ。やはり此処は自分がしっかりする必要はあると。
 どうにも気の抜けん状況だな……なんてことをサビルバラが静かに思う。

「過去の人間、と言うよりは過去の別の世界線の戦国時代の武将?
 ダーウィンズゲームをやってきたはいいが、此処まで行くと無茶苦茶だな。」

 色んな参加者をこさえて来て、銃も知らない参加者もいた。
 だから正直今更なことではあるのでさして驚くことはない。
 とは言え、若々しい青年でトランクスと近い年頃の人物が、
 あの徳川家康だと言われると何とも不思議な気分ではあった。

「悪いが全員、乗ってるかどうかだけは教えてくれ。」

「わしは乗ってないが、それだけで信用を得られるのか?」

「僕も同じく。」

「私もです。」

 特に嘘なし。問題はなさそうと言うことで、近くの席に座るリュージ。
 敵意がないことを示すべく隠し持ってた銃は置いて、情報交換を要望した。
 アンクも続けざまに座るが、余り態度のよくない座り方に堀北はどこか須藤を思い出す。
 とは言え、情報交換と言っても彼ら四人から得られる情報と言うものはさほど多くない、
 死を予見させるほどの絶望、と言うには縁遠かった家康達の戦いと比べてみれば、
 二人のは凄惨なものであり、家康を含めて言葉を失う、或いは無言でいるほどだ。
 運よく生き延びた。それが正しいと言い切れるぐらいの壮絶さは堀北も息をのむ。
 アレフであれだったのだ。それをゆうに超える存在など家康であってもかなり苦しいはずだ。
 いくら一騎当千の東軍総大将であったとしても、流石に相手にすれば苦戦は免れないだろう。

「なるほど、その人物は信玄公のように隕石を落とす力持つ、か。
 わしらが思ってる以上に、この戦いは信長公や秀吉殿に匹敵か、それ以上の存在が多いようだ。」」

「おめーのとこの武田信玄はどうなってんだよ。」

 これがその戦国時代における洗礼よ、慣れておきなさい。
 目を閉じ冷や汗と共にリュージのまっとうなツッコミにうんうんと頷く堀北。
 アンクはともかく、はちゃめちゃな戦国乱世にリュージも軽く頭を悩ませる。
 しかしそれを実行できるだけの強さがあるのは、彼が戦った壁の痕を見るなどで察せた。
 死んだ可奈美には申し訳ないが、彼女以上の戦力であることは間違いはないだろう。
 ことと次第なら、生身ですら仮面ライダーと相対しても応戦が十分できるはずだと。

「双方互いに知り合いに出会ってないし、此処で得られるものもない、か。」

 徒労というわけではない。トランクスと比べれば流石に酷と言うものだが、
 参加者でも結構上に位置するであろう参加者とコンタクトが撮れたのは大きいことだ。
 あの時出会った人物たちにも覚えはないとのことなので閑話休題に入るところに、

「話が一区切りのところすまないが、
 紫の服で変身する男がいると言ったが、彼はチェイスで間違いないだろう。」

「ん? 電話か何かか?」

「あ、いえ私の支給品の蛮野さんです。」

 意志を持った支給品もあるのか。
 などと思っているとサビルバラがスプーンを落とす。
 おっと、と呟きながら席を降りてリュージの方へと駆け寄り、

372前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:52:30 ID:OC6ZPgHk0
(リュージ、試してほしいことがある。)

 スプーンを掴まず、サビルバラが軽く小声で話す。
 突然の対応にどうしたと思うが、落としたスプーンをリュージが取ろうとすると、

(なんだ?)

 小柄なサビルバラだからこそ、
 耳打ちする際にリュージがしゃがんで耳を傾けても違和感がない。
 何事かと思いながらサビルバラの耳打ちに誰にも気づかれず対応できる。
 『その編み笠取った方が取りやすいだろ。』『そじゃったな。』と相槌を打ちつつ、
 回収したスプーンを洗いに席を立つと、リュージは取り出された蛮野を一瞥する。

「蛮野だったか。そのチェイスってのはお前にとっての味方か?」

『ああ、間違いなくこの殺し合いを打破してくれるはずだ。』

「……なるほどな。じゃあお前は何がしたい?」

『レン君や彼らと協力して、少なくとも生還を目的としている。
 私は肉体を取り戻すことが悲願だが、優勝の願いで得るわけにもいかないだろう。
 もっとも、タブレットにすぎない私にはできることなど、たかが知れているのだが……』

「素朴な疑問なんだが、肉体を得て何をしたいんだ?
 まあ元は研究者って言うなら自分の研究が主だろうけど、
 その肉体を手に入れる方法ってのは、まっとうな方法なんだよな?」

(なんだこの男。妙に食い下がるというか、尋ねてくるな……まさか、
 チェイスから聞いているのか? いや、違う。それならば私の名前が出た時点で、
 この男は糾弾するはずだ。今しているのは尋問。つまりまだ確信は持ててないとみていい。
 ……まさかと思うが、ルルーシュのような特異な力を持っている可能性もありうるな。
 下手なことは言わず、悪印象を持たれるとしてもある程度正直に話すのが吉だろうか……)

 蛮野は性格こそあれだが、元はこれでも相当な研究者だ。
 不測の事態もゴルドドライブの時期に十分に経験済み。
 だから少し言い淀み、静かな空気の中紡がれた言葉は。

『……いや、まっとうな方法ではないだろうな。
 私はロイミュードと言う機会生命体の身体を乗っ取る形で以前は復活した。』

「因みにロイミュードに人権とかそういうものは?」

『話すと長くなるから割愛するが、ロイミュードは人と敵対する存在だ。』

 流石にグローバルフリーズから話せば、
 三十分や一時間で話がまとまるわけがない。
 なので簡潔に、人類の敵であったことだけは話す。
 ロイミュードの中には人間と共存を望んだ者もいたそうだが、
 彼からすればチェイス同様出来損ないの欠陥品のようなものだ。
 だから相容れないのは間違いない、ということは否定しなかった。

「その人類の敵を乗っ取ってまでお前さんは復活したかったのか?」

『それは……』

「あの、リュージさんすみません。
 何でそんな蛮野さんを質問攻めにするんですか?」

 レンを含む三人のメンバーには方針を聞いて、
 それだけで信用した割には妙に蛮野だけに食い下がる光景にレンは訝る。
 堀北も妙だとは思ったがサビルバラが編み笠を取ったらと言われた際に、
 取らなかったことからスプーンを取る間に何か耳打ちしたのだと察しており、
 蛮野については何か嫌な疑念を持っている堀北にとっては確認のチャンスでもある。
 だから黙っておいて、蛮野の発言に何かあるのかを探らせてみるのを見届けることにした。

「いや何、しゃべる機械にいい思い出がなくてな。
 ただの偏見と思ってくれ。レンは助けられたわけだが、
 俺はどうも機械ってのに信用できねえ部分があるだけなんだ。
 気を悪くしたのなら悪い。ただ、どうしても確認したくってよ。」

 一応嘘ではある。
 ダーウィンズゲームがアプリから始まったのを考えると、
 機械にいい思い出があるかどうかと問われるとあながち嘘でもなく。
 しかし偏見を持つようなことはなく、ただ単に言われた通りに尋ねるだけだ。 

『ロイミュードは確かに機械生命体で世間的には怪物だ。
 ……しかし私はそれでも成さなければならない目的がある。
 その目的が達成されるまでは死ねないのだよ。タブレットになっているが。』

「そうまでしてなさなきゃいけない目的ってのはなんだ?」

373前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:53:35 ID:OC6ZPgHk0
(……なんとなく読めてきたぞ。この男、心を読むかそれに類する力があるな。)

 駆け引きが下手ではないが、かといって相手は蛮野だ。
 いくら彼でもある程度の質問攻めにあってしまえば、内容から察しが付く。
 どうやって勘付いたかまでは分からないが、自分が危険な奴と言う情報を引き出そうとしている。
 だから此処まで能力の開示をしない。開示をすれば必ずこちらは曖昧な答え方で逃げ切るからだ。
 これは五代院時と違い、動作ができないタブレット故に同じやり方を選べないのも理由になる。

(だが甘い。そうやってはっきりと目的を聞こうとする。
 心は読めるが恐らく細かくは分からない。分かっていれば、
 既に私は破壊されるか厳重な管理下に置かれるのは目に見えている。
 確信は持てないが今の問い方。イエスかノーでなければ分からないとみていい。)

『……研究者ならば自分の研究を第一に考える。
 その為なら機械生命体の身体であっても構わない。
 マッドサイエンティストと呼ばれるだろうが、それだけだ。』

 己の欲望の為だけにロイミュードを、息子を、クリムを利用してきた男は、
 少なくとも嘘ではなく、しかし真実も話さない。それが彼にとっての抜け道だ。
 暫くの沈黙ののち、なるほどとリュージが軽く呟くと、

「研究熱心なことで……悪い。タバコ吸ってくる。」

「まーたタバコかよ。」

「さっきも言ったが子供がいる前でできるかってーの。」

「あの、皆さんにずっと言いそびれてたんですけど……私大学生です。」

「えっ。」

 おずおずとレンが手を挙げながらの言葉に、
 堀北の気の抜けた声に限らず、各々が意外そうな声で見やる。
 騎空団のハーヴィンでもトップクラスの身長のサビルバラよりは大きいが、
 それにしたって明らかに小柄すぎて大学生と呼ばれてもとても感じられないからだ。
 飛び級の大学かと堀北に問われたが、そうでもなくGGOのアバターの姿だと告げる。

「そいつぁ悪かったな。だが堀北も高校生だしな。外で吸ってくるわ。」

「一人は危険ぜよ。わしも行く。」

 トランクスの時と同じように、
 適当なことを言って部屋の外へと出ていく二人。
 出て行って暫く適当に歩いて全員に聞こえない程度距離を取ると、
 静かにリュージが頭をかきながらつぶやく。

「あのタブレット、どうにも胡散臭いな。」

 蛮野は確かに警戒していたし、
 予想も正解だった。だが、僅差で対応が遅かった。
 最初に言った『ああ』は嘘だったわけだ。蛮野にとってチェイスは味方ではない。
 しかし、チェイスが自分達の味方になってくれるというのは、紛れもなく事実だ。
 ついでに途中から真実と言うよりは、どこか曖昧な返し方をしてきている。
 恐らく質問攻めにより何か勘付かれてしまった可能性が高いとみていい。
 お陰で糾弾するには材料が余り足りてるとは言えない。敵対してると言っても、
 チェイスとどういう意味で敵対してるかはわからないし、それだけで追及もできない。
 チェイスが蛮野の敵は事実。しかし敵対してるのに味方になってくれるのも真実。
 彼の目的が不明瞭すぎるし、この曖昧さでは余りレンは納得できないだろう。
 レンや家康は蛮野を信じてる。強硬手段を取って質問攻めなどをしてしまえば、
 余計な不和を招く行為に繋がりかねない。今の材料で糾弾することは立場を危うくする。
 仮に強硬手段に出て蛮野を排除できたとしても、家康はともかくレンは今大分負傷が大きい。
 その状況下で信頼しきってた相手が危険な存在だ、となればメンタルに影響が出るだろう。
 レンは銃器こそ使うようだがあくまでゲーム世界での話。リアルではただの大学生らしく、
 精神的な揺れは銃の照準をブレさせてしまう。幸い協力して生還するというのは真実だ。
 だから羂索やクルーゼたちを倒すことについて問題ない……とは思うものの、
 やはり疑わしいところがあることは否めなかった。

「ほぼ黒っちゅーことだけはようわかった。
 とりあえずチェイスと合流できれば全部が分かる。
 流石に元の世界で関係のある人物からの糾弾があれば、
 レンも納得してくれる……かどうかについては当人次第か、此処は。」

374前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:56:20 ID:OC6ZPgHk0
 何にせよ必要なのはチェイスだ。
 少なくとも放送では呼ばれてないのは確認済み。
 厳密な所在は分かってはいないのが痛いところである。
 かといって学園を離れすぎるわけにもいかない。近隣に、
 バルバトスがいる可能性のある中戦力の分散はかなり危険だろう。
 いや、アレフ戦のことを考えれば家康は一人の方が戦いやすいのかもしれないが。

「なあリュージ。話は変わるが……おんし、
 カナミの知己に出会ったらなんて言うつもりか?」

 可奈美の話をするときの際、
 アンクもリュージもどちらもよくない顔をしていた。
 あんまり思いつめるとろくなことにならないというのは、
 義弟のカラクラキルでよく知っている。だからやらかさないよう、
 メンタル面ぐらいはケアした方がいいのではないかと思い訪ねておく。

「……可奈美に殺しの覚悟を決めさせなかったのは俺の責任だ。
 そうでなければ可奈美はあんなことにならなかった。だから───」

「それ、本気で言うちょるんだったら、死ぬぞおんし。」

 ゾクリ、悪寒が走った。
 鋭い視線。幼児とそう変わらない体躯の相手が放つ気配は、
 鋭く、まるで射抜かれたかのような感覚すら感じられるものだ。
 これがゲームではなく生活として剣を振るってきたものの放つ殺気の類だと。
 サビルバラは怒っている。彼と交わした言葉はまだ少ないがそれだけは分かる。

「おんしのだーうぃんずげーむっちゅーのが、
 どんなのかはようは知らん。だがカナミはわしらと違って、
 刀を人のために振るうのであって、人を斬る為に使わなかった剣士。
 死生観が違いすぎる相手の仲間に殺しの覚悟を決めさせたかったなんて言うつもりか?」

 それはつまるところ『可奈美は覚悟もできない弱者だから死なせてしまいました』と一緒だ。
 可奈美は自分で決めた道を選び、それで死んだ。覚悟を決めた末の死でもあるのだろう。
 彼女のことは知らない。それでも、妹のクラーバラのように自分で決めた道なのだと。
 自分の命を落とすことになるとしても選んだ道を、他人が歪めるなど許されるものではない。
 一つの導としておくのなら別にいいだろう。けれど彼女はそれを善しとしなかった。
 ましてや、その覚悟を肯定してるであろう仲間に対して、
 そんな戯言を抜かせば相手次第で殺されかねない。

「……単に、殴られてえだけの自己満足かもしれねえな。
 クソ異能でソードスキルも、起動鍵もねえ。あの化け物相手に、
 できることなんて何一つなかった。間に合わずにこうなったのは覆しようがない事実だからな。」

 自分の異能の弱さをあまりにも痛感させられた。
 対人交渉においては無類の強さを誇るとしても、戦いには何もならない。
 カナメや花屋は勿論、子供であるスイとソータ相手にも危うく死ぬところだった。
 できるのはよくて経験者としての心構え等を教えられる、大人の立場ぐらいなものだ。

 もう一つ。仲間のカナメが覚悟を決めてしまったからできると思っている節があったのもある。
 友人を殺された瞬間、普段そこまで殺す気のなかったカナメがエイスのメンバーを何人も殺した。
 シュカと比べれば殺すことにずっと抵抗のあったはずのカナメが、躊躇せず敵を殺しつくしていた。
 だから心のどこかにあったのだろう。可奈美にもそういった何かを失うかもしれない状況において、
 誰かの命を奪うことに対する抵抗を薄れさせる可能性を。
 もっとも、あったところであの宇蟲王ギラを前にして、
 生き延びれたかは怪しくもあるのは事実だが。

「自己満足か……自己満足で死のうとしたわしが言えたことでもないが、
 ろくなことにならん。その辺の覚悟を決めた上で言うことを勧めるぜよ。」

「ご忠告どうも。だが一人だけ嘘をつき通して、
 一人だけ嘘を見抜けるってのは、あんまりフェアじゃねえだろ。
 敵や交渉の時ならまだしも、あいつとはほぼ最初から付き添ってた俺には、
 相応の糾弾は必要じゃねえのかとも思えるわけで。」





「アンク、で名前はいいのかしら。」

375前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:57:12 ID:OC6ZPgHk0
「何だ。」

「随分苛立ってるみたいところ悪いけれど、
 その隕石の相手について聞いてもいいかしら。
 隕石だけじゃなく、何か他の特徴的なもの一つでも。」

 歴戦の猛者たちですら太刀打ちできなかったのだ。
 彼女が出会えば瞬く間に死ぬ。仮にディムロスのスキルの中でも、
 ミクトランを倒した秘奥義『斬空天翔剣』を以てしても当たるかどうか怪しい。
 家康より強いであろうことが又聞きでもわかるトランクスでも五分五分なのだから、
 できることなら少しでも情報を得て、対策や何かしらの手段を考えておきたかった。
 断る理由もなかったので一先ず色々覚えてる、把握してる限りの情報を提供していくが、
 聞けば聞く程どうやって倒せばいいのか分からなくなりそうな情報ばかりが出てきている。
 アッシュフォード学園も簡単に塵にされるのではないかと言う疑念すら抱いてしまうほどだ。
 余計頭が痛くなってこめかみに指をあてながらどうするかを考えているところ、
 アンクは家康の方を一瞥する。

「家康。」

「む、わしか?」

「絆の力でどうとか言ってたな。それがお前の欲望か?」

「欲望か、と言われると少し悩むが……夢と言えば聞こえはいいが、
 それは裏を返せば欲望や野望と同じ。それを考えると否定はできないな。」

 『己の野望を夢と言う言葉で飾り立て、秀吉様の天下を汚したのだ』とは、
 彼が本来石田成から浴びせられるはずだった言葉ではあるのだが、
 此処では自分の夢を別の言い方に例えることとなる。

「しかし、わし自身の欲と言うよりは、
 そうしなければ天下泰平の世は訪れない。
 決意ではあるが、欲望とは少し違うのだろうか。」

「昔の映司みてえだな。欲がねえ奴だ。」

「フロイトの定説に夢は欲望の表れとも言うわ。
 だったら、それも欲望と言う扱いが正しいんじゃないかしら。」

「む、そうなのか? 定説の定義とかを知らないが、
 堀北はわしより学があるようだから、多分あってるとみていいだろう。」

 異なる日本であるのは分かっている。
 しかしだ。仮にも天下統一を果たした男そのものだ。
 そんな彼から学があると言われるのは畏れ多い部分があり、
 堀北は褒められてはいるのだが、何とも言えない表情になる。

「とんだ欲望だな。てめえにセルメダル一枚でも突っ込んだら、
 とんでもねえ怪物ができそうな予感がすると思うとぞっとするな。」

 いつだったか映司の欲望が形になったことはあるが、
 あれは底を知らない莫大な欲望の塊とも言える存在だ。
 家康も自覚はしてないのだろうが多分相当な欲望であり、
 元のスペックも相まって相当なヤミーが誕生してたのだろう。

「欲望の名を冠するだけあって、人の欲望に君は敏感なの?」

「まあな。そいつがどんな欲望を持ってるかまでは知らねえが。
 金が欲しい奴なら金を、食い物が食いたければ飯を食らってヤミーは成長する。
 仮にテメエにセルメダルを突っ込んだ時、どうなるか見てみたくはあるが……まあ、
 映司にあれこれ言われそうだからな。元から俺にはそのつもりはねえから安心しとけ。」

「冗談も人間離れしてるというか……ちょっと怖いですね。」

「その映司と言う人物はわしは知らないが、お前にもあるのだな、誰かとの絆が。」

 先ほどから姫和の記憶からか可奈美の死に苛立っていたアンクが、
 少しはましな顔になったのは、映司の名前を出してからだ。
 だから彼にとって映司と言う人物は浅からぬ関係なのだと察する。

「絆……? まあ、そうかもしれねえな。」

 最初は利害関係に過ぎなかった。
 人の命よりもメダルを優先する。対立も何度もあったことだ。
 しかし、いつしか相棒のような存在になっていたのは間違いなく、
 フッ、と家康の言葉に対して軽く笑みを浮かべるアンクだった。

「悪い、待たせたな、」

 そんな話をしていると、サビルバラとリュージは戻ってくる。
 双方は話に一区切りはついており、家康が話を持ち掛ける。

「隆二殿。貴殿らとは方針は同じだ。
 よかったらだが、わしらと同盟を結ばないか?
 勿論難しいなら組まなくていい。敵対しないだけでも十分だ。」

「東軍総大将様自らの頼みとはな。
 断る理由はねえし、あった時点でそのつもりだったさ。
 で、具体的に俺達は何をすればいい? 此処に固まっても、
 得られるものは少ない。動かざること山のごとし、ってわけでもねえだろ?」」

「ああ、勿論だ。隆二殿とアンク殿には、
 今まで通り車? と言うもので移動して、
 わしの名を広めてほしい。とはいえ人数は二人、
 どちらも疲労が大きい上にバルバトスも警戒しておきたい。
 だから一人だけ、わしらから人数を割きたいところなのだが……」

376前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:57:29 ID:OC6ZPgHk0
「僕が反対するわ。アッシュフォード学園は明らかに広い。
 初見だったら迷路と言っても過言じゃないぐらいの広大さは、
 襲撃を受けた際覚えておけば死角になる場所を探しやすいし、
 散策すればまだ何か見つかる可能性もないわけじゃないわ。」

 学園の広さは相当なもので、複数人で探索しても足りない広さだ。
 これだけ広いと何かが隠されていても別におかしい話ではないだろう。
 その探索予定も、先の襲撃とついでの食事で遅れてしまっている状況だ。
 できることならそこを早めに確認し、それでも何もなければ一時的に此処を発ち、
 六時間後にどれだけ集まっているかの確認をしておく。これが堀北の考えになる。
 家康としても反対する意見はなく、何より移動手段が足だけというのは疲労の蓄積に繋がる。
 無理な行軍は後につかえる。戦の常識だ。

「だったら俺達も残って探した方が早くねえか?」

「アンクの意見はもっともね。確かに効率は確実に良いわ。
 でも、確証がないのも事実よ。パソコンはルーターが足りなかったように、
 徒労に終わる可能性を危惧すると、生身で動いて人を探す方が効率はいいのよ。
 二手に分かれて行動した方がいいし、既にルルーシュの軍は上位に位置するはず。
 散策ばかりに気を取られてたら、将棋で言えば駒を大量に持っていかれてる状況よ。」

「……というわけなんだ。すまない。
 代わりと言っては何だが、レン殿の治療キットを渡しておこうと思う。
 隕石の男の前でこの程度は些事に過ぎないかもしれないが、できるだけのことはしておきたい。」

「こっちとしてはありがたい限りだ。」

 レンから最後の医療キットを受け取り、それをしまう。
 本当ならアレフの支給品も渡すつもりではあったのだが、
 彼には五代院の分も含めて結構な数の支給品があることが分かった。
 ならば別に無理にかさばらせるほどでもないものだとして残しておくことにする。

「リュージ。気ぃつけてな。色んな意味で。」

「ああ、分かってるよ。」

 去り際にサビルバラが念を押すように言っておく。
 この先彼がどうなるかについては全く予想ができない。
 彼女の知り合いがどのような性格をしてるかも分からないのだから。
 だから言うのであれば、相応の覚悟や限度を以て言うべきだと。
 無言の圧のようなものがどこかにあった。

「ほいじゃ、わしとスズネ、イエヤスとレンで二手に分かれて行動ぜよ。」

 二人が去った後、サビルバラが目配りをする。
 話したいことがあるのだろうということも分かるし、
 戦力の分散的にもこれが最適解であるのは分かっている。
 だから特に何を言うでもなく、席を立ち二人の方もよろしくと伝えつつ、
 先に生徒会室を出ていく。

「……そう。蛮野は危険なのは確定ね。」

「ああ。しかし糾弾するのは無理があった。
 あれ以上追求や強硬策はレンにとってよくはない。
 最悪、わし一人が離れることを覚悟もしておいちょる。」

「汚れ仕事ばかり押し付けるのは忍びないけど、
 依存ってのは簡単に抜け出せるものじゃないわ。
 速めにボロを出してくれるか、チェイスに出会えればいいのだけど。」

 そう都合よく行けば苦労はしない。
 疑念が確定しただけでも進展があったとしよう。
 爆弾のようなものを抱えて、どうしたものかと思案する二人だった。





(チェイスか……どうしたものか。)

 蛮野としてはチェイスは目の上のたん瘤。
 出会えば今までと違い問答無用で破壊しに来るだろう。
 だからなるべく善行を積み重ねておきたいところではある。
 そうすればレンだけでなく家康も味方してくれるはずだからだ。
 もっとも、全員が味方してくれるわけではないことについて、つゆ知らずなのだが。

377前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:58:04 ID:OC6ZPgHk0
【エリアG-4/租界 アッシュフォード学園/9月2日午前11時時50分】

【徳川家康@戦国BASARA3】
状態:疲労(小)、軽度の火傷
服装:いつもの
装備:ギガントナックル@グランブルーファンタジー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:絆の力でこの戦いを止める。
00:アッシュフォード学園の探索をしておきたい。
01:レンのように絆の力を説いて羂索達に対抗する。
02:隆二殿には人を集めてもらいたいが、大丈夫だろうか?
03:隕石の男(宇蟲王ギラ)への早急な対策は考えておきたいところだが。
参戦時期:赤ルート、関ケ原前
備考
※籠手が支給品の代わりとなってました。
※蛮野、隆二、アンクと情報を交換しました。

【レン@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
状態:疲労(中)、ダメージ(大)、精神疲労(小)、戦いへの恐怖心(ほぼなくなった)、蛮野に若干依存、全身に軽度の火傷、左目失明、左目や至る所に包帯、髪がそこそこ焦げてる、ずぶぬれ
服装:綾小路武芸学舎の制服@刀使ノ巫女
装備:無限バンダナ@メタルギアソリッドシリーズ、Vz.83@メタルギアソリッドシリーズ、ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ+渋井丸拓男のバイク@DEATH NOTE、治療キット×1@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン
令呪:残り三画
道具:予備マガジン×30、ホットライン
思考
基本:生き残ることを優先
00:怖いけど逃げない。生きるために。
01:家康さんたち。蛮野さんと共に行動する
02:松坂さとうと出会ったら警戒する
03:怖いけど、自分の不甲斐なさの方がよっぽど許せなくなった。
04:私本当に生きて帰れるのかな……左目、治るかなぁ……
05:SAOの人、生き返ってるんですけど……
参戦時期:第一回スクワットジャム終了以降
備考
※GGOのシステム(バレット・サークル、バレット・ライン)は制限なく使用できます。
※仮面ライダーとの戦いで強いトラウマを植え付けられました。
※松坂さとうを危険人物として認識しました。また仮面ライダーへの変身能力を持っている可能性があると判断しています。
※ブレンのタブレットの所有者になりました。ブレンのタブレットはレンに危害を加えることはありません。
※家康が自分の知っている歴史の家康とは別人だと理解しました。
※自分の不甲斐なさにキレたことで浅倉に対する恐怖はほぼなくなりました。
 が、常時キレてるわけではないので噛み千切ったりとかをいきなりはしません。
※隆二、アンクと情報交換しました。

【堀北鈴音@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:絶対遵守のギアス(極大) 蛮野に対する嫌悪、腹に傷(処置済み)
服装:高度育成高校の制服(女子)(腹部に横一文字の切れ込みあり)
装備:ソーディアン・ディムロス@テイルズオブデスティニー(DC版)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(武器以外)、SA・ホットライン
思考
基本:このゲームから生還する。
00:『一人称は僕、二人称は君を使う』
01:須藤君……なんてこと。
02:羂索にルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……。まさか魔法が実在したなんて。
03:戻った時に何て言われるかしら。
04:喋る剣に、小柄な三十代に、徳川家康……頭が痛いわ。
05:アッシュフォード学園を拠点にできた。後はどうするか。
06;あの蛮野、やっぱり何かあったのね。
07:アッシュフォード学園をもう少し散策しておきたい。
   これだけ広いとこの人数で探すのは一苦労ね。
参戦時期:少なくとも髪を切る前
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力解除の異能力をかけられない限り一人称が僕、二人称が君のままです。
※ソーディアン・ディムロスにスタン・エルロンの術技がソードスキルとして内包されてます。
※蛮野と情報を交換しましたが、蛮野に対して生理的悪寒を抱いています。
※隆二、アンクと情報交換しました。

378前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:58:17 ID:OC6ZPgHk0
【サビルバラ@グランブルーファンタジー】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、蛮野に対する警戒
服装:いつもの(ゲーム上における火SSRの恰好)
装備:蛍丸@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3(ロトの防具なし)、SA・ホットライン、アレフのレジスター、ロトの剣@ドラゴンクエスト
思考
基本:汚れ仕事はやる。だが殺し合いには乗らん。
00:アッシュフォード学園へと向かう。
01:バルバトスは早く倒しておきたい。
02:三人のサポートに回る。それがわしの役割ぜよ。
03:バンノには要警戒。必要なら斬る。
04:リュージ、気ぃつけとくんだぞ。

参戦時期:「待雪草祈譚」終了後以降。
備考
※男性のため御刀の力は引き出せません。
※ギアスコラボ、ドラえもんコラボ、ヒロアカコラボ、プリコネコラボには出てないため、
 ルルーシュやドラえもんの名前はうろ覚え程度の扱いになってます。
※蛮野と情報を交換しましたが、信用ならぬと感じています。
※隆二、アンクと情報交換しました。
※リュージの異能について把握してます。

【アンク@仮面ライダーオーズ】
状態:右腕を失った十条姫和に憑依
   割れたタカメダル@仮面ライダーオーズ
   財団X製の鳥系コアメダル@仮面ライダーオーズ
服装:現地調達
装備:青のコアメダル×3@仮面ライダーオーズ
令呪:残り二画(姫和)
道具:岡田以蔵の刀@Fate/Grand Order、富岡義勇の日輪刀@鬼滅の刃、DVディフェンダー@未来戦隊タイムレンジャー、ランダムアイテム×0〜1、姫和の右腕、ホットライン
思考
基本:この女の身体を使ってこのしみったれた儀式に抗う。
01:この女の知り合いの刀使に会ったら協力させる。
02:映司、アイツまさか下手打ったんじゃないだろうな?
03:アイスを持ってるのでリュージとは今の所縁を切るつもりはない。
04:可奈美の死に妙な苛立ち。
05:神戸しおに警戒。ガキにしちゃ随分デカい欲望を持ってやがる。
06:しおに徳川家康。とんでもねえ欲望の集まりの連中でも集めてんのか?
参戦時期:本編死亡後
※泉信吾の肉体を使っていた時のように怪人態への変身は問題なく可能です。また、姫和と表面的な記憶を共有できます。
 なので刀使ノ巫女に関する知識をある程度入手できています。
 逆に姫和も仮面ライダーオーズに関する知識は少しは得れているはずです。
※ある程度回復すれば姫和の意識も戻りますが、今は無理なようです。
※元々着ていた服は下着以外は放棄しました。
※堀北、レン、家康、サビルバラと情報交換しました。

【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:出血多量(処置済み・薬草の効果で多少回復)、疲労(大)、右腕欠損(肘から下)、気絶
服装:現地調達
装備:なし
令呪:残り二画
道具:なし
思考
基本:このゲームを脱出し、母の敵を討つ。
00:まだ何も成していない。死ぬわけにはいかない。
01:……
参戦時期:少なくとも一期十一話より前
備考
※支給品の入ったリュックを自分で破壊しました。

【前坂隆二(リュージ)@ダーウィンズゲーム】
状態:疲労(中)、ダメージ(大)
服装:Dゲーム時のもの、防弾装備@ダーウィンズゲーム(ただし、スカルフェイスはなし)
装備:ブラックテイル(弾数7/9)@バイオハザードRe:4、予備の弾(27発)、アリウス製アサルトライフル(9/15)@ブルーアーカイブ、蟇群苛の車@キルラキル
令呪:残り三画
道具:ボルトスロワー(予備マイン×30、ボルトマイン×17)@バイオハザードRe:4、大量のアイスキャンディー@現実、薬草×11@ドラゴンクエスト、お医者さんカバン(故障)@ドラえもん、アサルトライフルの予備マガジン×66、ランダムアイテム×0〜6(五大院の方には確定で武器が一つはある)、ホットライン、
思考
基本:Dゲームじゃないみたいだしとりあえず様子見。
01;とりあえずアンクと行動。逃げた連中と合流。
02:薬師恩寵の異能を持った奴か、仙豆を探す。
03:一応こっちでも松阪さとうを探してみる。
04:優勝させる気ないだろこれ……
05:蛮野のことを考えてチェイスにもう一度会っておきたい。
06:北側を散策して六時間後にアッシュフォード学園に集まっておきたい。
07:バルバトスには要警戒。
参戦時期:少なくともエイス壊滅以降〜(ダーウィンズゲームの方における)グリード出現前
備考
※お医者さんカバンは故障しており、修理しなければ使えません。
※堀北、レン、家康、サビルバラと情報交換しました。

379前坂リュージは嘘は視える ◆EPyDv9DKJs:2025/06/25(水) 19:58:33 ID:OC6ZPgHk0
投下終了です

380 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/25(水) 20:35:37 ID:cYTY4umg0
皆さま続々と投下ありがとうございます!
企画主として喜びでいっぱいです。
キリト、緑谷出久(デク)、鬼龍院羅暁、アスラン・ザラ?、益子薫、水神小夜、シェフィ、小鳥遊ホシノ、夜島学郎、ジーク、豊臣秀吉で予約させていただきます。

381 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:33:25 ID:wPGf6YSo0
投下します

382 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:38:09 ID:wPGf6YSo0
「ごめんなさい」

そこはキリトにとって全く身に覚えのない砂漠だった。
テレビ画面越しや図鑑や教科書に載ったエジプトなどの風景ともまた違う現代都市がそのまま砂に沈んだような異様な場所……もしキリトにもっと北に行く機会があったならそこがキヴォトスのアビドス自治区と気付けただろう。

「ごめんなさい」

キリトは何故か動けない。
唯一自由の効く視線は大粒の涙を流し懺悔する赤い眼鏡をかけた少女を中央に捕らえている。
どうにか前後左右を確認しようとするが、完全に少女を視界から外すことが出来ない。

(なんのゲームだったっけ?
こんな感じのチュートリアル、あった気がするな)

ぼんやりする頭の片隅でそんなどうでもいい思考が顔を出しかけるが、少女の着る制服がデクの倒した魔王グリオンの配下が着ていた制服と同じだと気付くと一気に意識が覚醒した。

「これは……」

クリアな思考に肉体と視界の自由を取り戻したキリトはまず状況を確認する。
服がゲームアバターの物から現実の私服になっていた。
耳を触ると普通の人間の形、髪型も現実での物だ。
腰や背中に手を伸ばすがシャドーセイバーの柄を掴めず空を切り、ポケットを漁ってもデュエルガンダムの起動鍵はない。

(気絶してる間に術中に嵌ったってところか。
デクは?イドラにアルカイザーは?
あの仮面ライダーもどこに行った?)

泣きながら謝る少女が術者でないとすると、この術中に嵌った犠牲者……生餌にでもされているのだろうか?

「私の、私のせいでシノンさんは……あなたの大切な人はグリオンに……」

「は?」

頭の回転が止まった。
今度は自分の意志で少女を視界の中心から外すことが出来ない。
シノンに、グリオンと言ったら最初の頃にデクが倒した怪人の主人ではないか。

「今、なんて……」

「全部私が悪いんです……私が、私のせいでシノンさんも、ディアッカさんも、うてなちゃんも……全部、全部……」

「誰だよそいつら!?
結局お前は何が言いたいんだ!
シノンに何が……いや、お前が何をした!?」

「私は、自分もグリオンも止めることができません」

「だから、なんの話を!」

嗚咽交じりに次げる少女に声を荒げる。
壁に隔てられているという訳でもないのにさっきからこっちの声が聞こえている気がしない。
そんな苛立ちも乗せて両肩を掴もうとしたが、少女の身体を両手がすり抜ける。

「え?」

「都合のいいお願いだと、自分でも思います。
でも、どうか私に会ったら、私を殺して止めてください」

そう言った少女の眼は、あの浮遊城でさんざん見た生きることを諦めた者のそれだった。

-----

「うっ……」

「キリト?起きたの?大丈夫?」

「デク?
……俺今背負われてるのか?」

不思議と肉体は動くような気はするし、連戦後とは思えない程に肉体が軽い。
いや、体どころではない。
頭も軽い……というより全体的に現実感の内容な感覚が抜けない。

(なんか、変な夢を見たような……あれ?)

「イドラとアルカイザーは?」

「……イドラさんは、ひとまず君を運んでからだよ」

「じゃあアルカイザーは?」

「荷物とレジスター以外、何も残ってなかった」

「そうか……ごめん」

「謝らないでよ。
僕も彼と、やみのせんしと戦ったから分かる。
頭数揃えればいいってレベルのヴィランじゃない」

383 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:43:46 ID:wPGf6YSo0
「アイツ、やみのせんしっていうのか。
倒せたのか?」

「ううん。
邪魔が入って、向こうが萎えて次に持ち越しになった」

デクはあえてやみのせんしがイドラの死後の尊厳を気にしたことを語らなかった。
恨めばいいという話ではないし、分かり合えたならとも思うがそれと実はいい奴かもみたいな期待で剣筋がぶれてまたキリトが怪我をする……最悪返らぬ人になるなんてことはあってはならないからだ。

「なんだそれ……ん?」

ふとキリトが顔を上げる。
もうあと一時間ほどで登り切るだろう太陽に陰りがあったからだ。

「なあデク、俺倒れる時に頭打ったみたいだ。
人が降って来る幻が見える……」

「いや、幻じゃない!ちょっとごめん!」

なるべく優しく、だがそれでもちょっと荒っぽく背中から降ろされたキリトはようやく頭の中の靄が晴れた。
浮遊と黒鞭で地面とキスしそうになる面々を助けようとするデクに続いて背中の羽を展開し、デクの『黒鞭』のギリギリ範囲外にいた一人をキャッチする。

「大丈──!?」

着地して受け止めた桃色の髪を降ろす。
怪訝そうにキリトを見つめ返す少女の顔は、軽井沢恵を殺した下劣な傀儡と同じ顔だった。

「えっと、もしかして私が忘れてるだけでこかで会ってたりするかんじ?」

「いや……多分違う。
悪い、俺もちょっと状況が呑み込めない」

「あーっ!」

キリトと少女、小鳥遊ホシノがぎこちない会話をしていると二人の背後でどこか舌足らずにも聞こえる黄色い悲鳴が上がった。

「シェフィちゃん?」

振り向くとキリトのようにゲームアバターの身体なのか、それともどちらかと言うと異形系の個性持ちなのか氷で出来た角や翼を持つ少女、シェフィがデクに駆け足で近付いていく。

「ねえ、マントとってみて!」

「え?ま、マント?えっと、こう?」

困惑しつつも言われたとおりに師匠から受け継いだマントを脱ぐデク。
それを見たシェフィはその場にしゃがみ込み、自分のリュックを漁る。

「やっぱり……デクだよね!?」

「そうだけど、なんで知ってるの?」

「カードもってるの!」

「カードって、僕の!?」

デクの世界において、ヒーローと言う職業はブランド化されており人気ヒーローとコラボしたパーカーなどといったグッズやブロマイドなどは大変人気で市場に多く出回っている。
しかし昨今は敵連合や異能解放戦線の暗躍などの社会不安の高まりと比例するヒーローへの不信から新規のグッズは下火になっている中で仮免ヒーローに過ぎないデクのグッズなどある筈がない。
だがシェフィの手元には、確かにデクのカードがある。

「それって、雄英ヒーローズバトルの……」

あの束の間の平穏だった正月の一幕に遊んだゲームは何の因果か見知らぬ少女の手に渡っていたようだ。
ちょっとデフォルメの効いた少し前の自分の描かれたカードを差し出される。

「サインちょうだい!」

年齢不相応に無垢な、期待と喜びに薄紫の瞳をキラキラと輝かせる少女にデクの胸は痛む。
たった今3人も取りこぼしたばかりだ。
なのにこの子にかつて、そして今も憧れる者たちのように振る舞うべきなのだろうか、と。

「僕のでいいの?」

どうにもためらってるように見えるデクにシェフィは一瞬怪訝な顔をするが、直ぐに何か思いついたようで、デクの手を取り、

「デクがいいの! デクのがいいの!」

と、まっすぐに断言した。
デクの目尻が熱くなる。
なんでヒーローが頑張れるか、その縮図が今のデクとシェフィだった。

「……ありがとう。これでいい?」

デクはノート用に確保しておいた筆記用具からサインペンを取り出し、少しだけ気恥ずかしそうに、そしてそれ以上に嬉しそうにシンプルなサインを書き上げた。

「わぁ……ありがとう!」

「よくわからないけど、デク君とこっちの黒コート君はひとまず信用してもいいんじゃない?」

その様子を見守っていた全員の中でホシノが一番最初に口を開いた。

「ありがとう。
それじゃあ、サイン会の続きは中で、と言いたいんだが……。
余裕のある奴には少し手伝ってもらいたいことがあるんだ。
話はそれからでもいいか?」

-----

なぜ、ホシノたちが発電所に降ってきたのか。
それを語るには二つの放送の直後まで時間をさかのぼる。

384 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:47:25 ID:wPGf6YSo0
『では、私は引き続きこのテレビ局で待っているぞ』

運営からの放送はホットラインで、ルルーシュからの放送は学郎に支給された携帯電話型メモリガジェット、スタッグフォンのワンセグ機能で確認した一同の表情は決して明るいものではない。
シェフィは余り状況が分かっていないように見えるが、それでも全員が何か重大な喪失をしたことを察しているのか、膝をついて呆然自失、といった様子のホシノをどうにか励まそうとしている。

「柊さん……」

「変身した後の姿を見た時から薄々思っていたが、君がうてなの言っていた魔法少女なのか」

柊姓の脱落者は二人いたが、なんとなくそんな気がしてジークが尋ねると小夜は驚きに目を丸くする。

「柊さん、柊うてなに会ってたんですか?」

「ああ。俺たちが宇蟲王と戦っていた場所からそう離れていない場所に居た。
恐らく、また別の脅威に襲撃されて戦闘になっていたんだろう」

「柊さんは、私たちを何て言ってましたか?」

「……魔法少女は自分にとってあこがれだと、言っていた」

「そっか。
じゃあもうこれ以上、それを裏切る訳にはいかないわね」

一度は落ちた。立ち直ってからも取りこぼした。
ならばもうこれ以上はとトランスアイテムを握りしめた。

「それは弱さだ」

それに冷や水をかける男が居た。
他でもない豊臣秀吉だ。

「そんな言い方!」

抗議する学郎も冷ややかな目で見降ろしながら立ち上がった秀吉が続ける。

「弱さを抱えるだけ人は脆くなる。
真に強さを欲するならば弱きを捨て、強さのみを求め覇道を征くことこそが最善の道。
つい先程名を挙げられた四十人程がその証左であろう?」

「その理屈が正しいならオレたち全員宇蟲王の奴隷にでもなるしかねえじゃんかよ」

真っ先に声を上げたのはやはり益子薫だった。
数分前にこの秀吉の怒りを買うことも構わず反論し、彼をこの場に留めさせた彼女はなお続ける。

「てか、強い強いと口では言うがお前の立場はオレたちとなんか特別違うのか?」

「なんだと」

「力じゃあの通り宇蟲王に負けて実績じゃプロトなんちゃゲットしたルルーシュに負けて、挙句餓鬼大将の理屈振り翳して総スカン。
よくよく思い返せばオレと比べ物になる程度の活躍しかないのにその態度って……猿山の王どころか良いとこ猿回しのいない猿じゃねえか」

「貴様、誰に何を言っているか分かっているのか?」

「ああ。
自称覇王の裸の王様だろ?
そんなダサいのの子分も宇蟲王の奴隷もオレは御免だね。
お前らは?」

怒りに肩を振るわす秀吉にエボルトラスターを構える薫。
続けてジークが斬魄刀を抜いた。

「……あの時はそれが最善と判断して協力した。
その在り方は確かに英雄のそれなのかもしれない。
だが、俺は託された力を蹂躙や圧政には使いたくない」

あの赤の狂戦士(スパルタクス)程ではないが、自分の力の使い方や使われ方は黒の剣士(ジークフリート)に恥じないものでありたい。
続けてアタッシュショットガンをリロードしながらホシノが立ち上がる。

「何が正義だとか悪とか知らない。
けど……お前には死んでも従わない。
視野も狭くて足元掬われそうだし。
そーゆーの私だけで間に合ってるんだよね」

こいつはアビドスと自分の心を救ってくれた先生を、自分たちの命を救ってくれたディアッカを愚弄した。
今すぐ殺しても良いぐらいだ。

「トランスマジア」

アズールに変身した小夜が氷の刃を構える。
シェフィや学郎も似たり寄ったりの反応だ。

「そうか。
どうしても我が配下にならんと言うなら仕方あるまい!」

秀吉が駆け出すと同時に薫がエボルトラスターを引き抜いた。
薫を中心に青白い光が弾け、間髪入れずに周囲が球状のエネルギーに覆われた。
秀吉の拳が炸裂するより早くそれは宙に浮き上がり飛び去っていく。

「……」

秀吉の脚力ならば簡単に追いつける。
どころか纏まったのを好都合と一飛びで捕まえて拳一発で沈めることも可能だ。
だが、それをしなかった。

「いや、あの様に弱さを抱え続ければ残らず次の放送とやらで名が呼ばれることだろう」

誰に言うでもないその呟きは酷く言い訳じみていた。

385 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:49:49 ID:wPGf6YSo0
【エリアD-8/大型立体駐車場の奥上階/9月2日午前11時45分】

【豊臣秀吉@戦国BASARA2】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、益子薫への……(大)
服装:いつもの服装(籠手の部分は別)
装備:神旺エクス・アリスタルコス@グランブルーファンタジー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
N・Sワッペン(S)@ドラえもん
思考
基本:天下統一の邪魔はさせぬ
01:異界の人材や技術、兵器は出来ることならこの手に収める。
02:あの黒き覇王とは何れ雌雄を決する。
03:陽介、我が軍門に下るというなら拒みはせん。
   だがいつまでも奴(スパナ)の死に、弱さに執心するなら要らぬ。
04:此処で豊臣軍を築いてテレビ局のルルーシュを倒す。
   だがそれには情報を集めねばならぬ。
05:あの光(サン・ライズ・ビーム)のような超遠距離攻撃も警戒はしておくか
06:赤き邪悪の王。これほどまでの手合いがいるとはな。
07:小娘共が弱さを捨てきれぬなら次の放送で名が呼ばれるだろう。
   ……そのはずだ
参戦時期:姉川蹂躙戦の後
備考
※エクス・アリスタルコスによって攻撃力が強化されてます。
※イチローのサン・ライズ・ビームは周囲一マス分ぐらいには目視できるようです。

386 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:53:42 ID:wPGf6YSo0
-----

「もう一度言って!」

現在、放送前までキリトたちが休むのに使っていた部屋はこの人数では手狭な上に鍵をかけられたのでイドラと亜里紗の死体をアズールの魔法とシェフィの術式で凍らせて安置し、一度は職員用の食堂に集まっていた。
そこでキリトは今、ホシノに馬乗りになられて首を締め上げられていた。

「落ち着けホシノ!
そいつに当たっても仕方ねえだろ!」

「けんかはだめ!
キリトをはなしてごめんなさいして!すぐ!」

薫とシェフィが組み付いて引き剥がそうとするが持ち前の馬力で直ぐに振り払う。
それでも二人は諦めないが、ホシノもキリトを離さない。

「うるさい!これはアビドスの問題だ!」

何故こうなったかを説明するには順を追って話さなければならない。
まず一同は死んだ仲間たちを弔い、彼らとイドラの死体に突っ込んできたヴィランのドロップアイテムらしき物の分配を行った。
デクとキリトの聞けなかったルルーシュの放送の内容などが共有された。
そして戦友であるシノンの死を知った直後ではあったが最終的に一番重要な茅場晶彦のことをキリトに喋ってもらい、そのままデクと共にここに来てからの事を話してもらう事になった。
当然彼らがギギストや今亡きステインの次に話すことは、魔王グリオンとその傀儡のことになる。

「そいつは!
グリオンとはいつどこで会った!?言え!」

「っ!」

たまらずキリトはデュエルガンダム・アサルトシュラウドを装着し肩部レールガンシヴァを撃つ。
実体弾がホシノの頭を捉え、キリトの首を離して仰向けに倒れた。
シェフィは直前に気付けた薫が撃たれるより早く引きはがしたので無事だった。

「ガハッ!ゲホゴホゴホ……」

「ホシノ!」

倒れたホシノをシェフィが助け起こす。
気絶まではしていないが、脳震盪は起こしている様だ。
無理もない。
ある程度状況から覚悟出来ていたにしても元の世界の知り合いを除けば一番付き合いの長いディアッカに恩師である先生の死を知る。
この時点で普通なら二週間は泣き暮らすだろう悲劇だ。
それに加えてイドラの死体に突撃してきたヴィランからのドロップ品は病院で別れたはずの空蝉丸の獣電池だったこと、倒されたとは言え自分の偽物と後輩の偽物が悪意の人物の傀儡になっていたなどと知らされれば普段避けれる物も良けれないレベルで取り乱す。

「キリト大丈夫!?
ごめん、僕が止めるべきだった」

「いや、仕方ないさ。
あれは止まれって言われて止まるそれじゃない」

パワードスーツを解除し、元の姿に戻ったキリトはコートの汚れをはらって立ち上がる。

「ホシノが落ち着くまで休憩にしよう」

「それは良いが、出るのか?」

「ちょっと外の空気が吸いたい」

そう言って一応片手に剣を片手に部屋を後にする。

「……シェフィちゃん、ホシノさんをお願い。
私はキリトさんの方に」

「わかった。カオル、あしもって」

「おうそこの壁際でいいか?」

「……」

2人が出て行った後の食堂には何とも言えぬ後味の悪さが残った。

-----

狙撃は警戒していたのか、一階の階段下の日陰という一見分かりにくい場所でキリトは涼んでいた。

「居た」

「アズール、でいいんだっけ?」

「ええ。その、大丈夫ですか?」

「平気だよ。
それにもし亜里紗たちが蘇って操られていたとか言われたらああならない自信が俺にはない」

「亜里紗って……」

「その……頭を潰されてた方だ。
前にも言ったかもだけど、ありがとうな。
嫌な役目引き受けてくれて」

「なんであそこまで厳重にやるのかって思ったりもしました。
けど、ここに居ないはずの人や直接会ったことのない人の贋物まで造るようなヴィランと会ってたからなんですね」

「多分本人が使ってた道具や又聞きの情報だけであれだけそっくりの贋物を造れるんだ。
死体なんて手に入れた日には……想像したくないな」

実際元々使ってた道具どころか死体を基に贋物を造られた者も居る。
ほかならぬ先の放送で名前を呼ばれたこの二人の友人たちだ。

387 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/29(日) 23:59:28 ID:wPGf6YSo0
「もう繰り返させない。
茅場の野郎のクソゲーはなんとしても今回で終止符を打つ」

手にした剣……マクアフィテルを掲げる。
あの時この両手から零れ落ちた命の、救えはしたかもしれないが決して癒せなかった少女の剣は何の因果か本物のキリトの元にある。
元々持っていた長い方のシャドーセイバーは学郎に渡している。

「どんな理由があろうと、あいつは奪い過ぎた。
そして俺たちに奪わせ過ぎた」

「奪わせ過ぎた?」

「……知らない方が良いし、多分もう関係ない話だ」

茅場が誰かに奪わせただろう地獄の王子は死んでいる。
まさかその地獄の王子こそが自分の贋物として暗躍した存在であり、自分と同じ顔のまま地球外生命体の贋作に取り込まれているなどとは流石に思い至っていない。

「贋物のあなたのことですよね。
私から言うのも違う気がしますけど、ホシノさんがごめんなさい。
キリトさんだって十二分に辛いのに」

「……確かにシノンやアルカイザーたちの件はどうしようもなく辛い。
けどここでまた折れたら、また誰か取りこぼす」

悲壮な覚悟を感じ取ったアズールはキリトの件を持っていない方の手を取る。

「……戻りましょう。
ホシノさんも少しは落ち着けたと思います」

-----

「あ、気付いた」

「う……っあれ?」

歪んだ視界と乱れた思考回路が戻ったホシノは額をさすりながら起き上がった。

「カオルちゃん、確か私……」

「お前とお前の知り合いらしいカーディガンの女の贋物がグリオンとかってのの手下になってるって聞いてブチ切れた。
挙句キリトにつかみかかって返り討ちになった」

「あ……」

「オレももし可奈美の死体が利用されてるとか聞いたらああならない自信全くないけどちょっとは押さえろ。
無茶言ってるように聞こえるかもだけど、このゲームで直接関係のある人が死んでない奴居ないんだから、お前だけ切れんな」

「……ごめん」

「オレよりキリトに言っとくんだな」

「あ、よかった。小鳥遊さん起きたんだ」

「緑谷くん」

食堂の調理スペースの奥からキリト以外の男性陣とシェフィが出て来た。

「それは?」

「腹減ったから飯作ってもらってた」

「といっても、レトルトみたいなのしかなかったですけど」

そう言って苦笑する学郎からあるだけありがたいと言ってカップ麺を受け取る薫。

「それでいいの?かつ丼とかもあるけど」

「知らないのかデク?
こいつは地球で一番売れてるラーメン……つまりどこで食べても一番うまいラーメンだ」

単にずぼらな薫が速かろう安かろうで食べる機会が多いというだけの気がしないでもない。

「そうなのか?」

「いや、大分語弊があるでしょ」

などと話しながら薫が麺を一口すする

(……恥ずかしい。何やってんだろ私)

デクは良い知り合いはキリト以外全員死んでおり、学郎は目の前で仲間を殺された上に傀儡にされ、悪人とは言え暴走するままに殺人まで犯している。
ジークだって柊うてなと分かれたっきり放送でその死を知った。
シェフィも仲間の死こそ経験していないが、アズールが言うにはまだマイ=ラッセルハートの洗脳から脱していない。
全員になにかしらの事情や辛いことがある。
薫に言われるまでもなく気付いて当然の事実なのに、自分だけ感情のままに暴れて情けない。

「……」

自己嫌悪に陥っているホシノを見てジークは悩んだ。
今のホシノにユメのことを伝えても負担にしかならないのではないか?
だが伝えなかったら伝えなかったで別の問題が後々別の所で生まれるのではないか?
などと悩んでいるとドアが開く。
キリトとアズールが戻ってきた。

「アズール!キリト!」

「ただいまシェフィちゃん。何もなかった?」

「うん!はいこれ!」

388 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:05:38 ID:BpKVvW5s0
と、アズールに牛丼を渡すシェフィ。
その後に続く様に薫がホシノを促す。

「キリト、あのさ……」

キリトと10㎝以上身長差のあるホシノが彼の顔を見上げる。
必然的に視界に入った廊下の窓にドラグーンが浮いているのに気付いた。

「防いで!速く!」

『危機感知』の“個性”が反応したデクが叫ぶ。
キリトは即座にデュエルガンダム・アサルトシュラウドを装着して対ビームシールドを構えた。
同時に部屋の窓から一斉に顔を出したドラグーンの熱線が部屋を焼き焦がす。

「この攻撃……アビドスで仕掛けて来た甲羅付きガンダムか!」

「しつこいなぁもう!」

煙が晴れて周囲を見る薫。
どうやら自分はジークや学郎共々『黒鞭』柱の陰に引きこまれて助かったらしい。
残るメンツはキリトの対ビームシールドとホシノの盾に守られている。

「どうする!?
飛び出して行ってもハチの巣だぞ!?」

「……全員どうにかオレの所に集まれ!」

「それって……でも益子さん、あれ結構疲労が馬鹿にならないみたいなこと言ってませんでしたか?」

「四の五の言ってられねえだろ!
このまま嬲られ続けたら全滅だ!」

そう言って薫がエボルトラスターを引き抜く。
青い光に包まれた薫の姿が異形のそれに変わる。
ジンガたちに煽られた負の感情のまま変身したダークアンファンスとでも呼ぶべきそれではない。
銀色の肌に銀の瞳。
胸部の赤い発光器官は人間の心臓と同じ働きを出来るのか、ドクンドクンと鼓動を鳴らしている。
そしてダークアンファンスを知る者がこの場に一人でも居ればその様子を肌荒れでもしたのか?と嘲っただろう。
ダークアンファンスに比べ、その肌はゴツゴツとした生物的なそれだ。
それもあってアンファンスのような姿でありながらその先にあるジュネッスの力も使えたダークアンファンスよりも明らかに弱弱しい。
ジュネッスどころかアンファンスの力すら十全には扱えないだろう。
だがそれでも益子薫自身の今ある精一杯の光だけで変身した姿は決して闇の巨人などではない。
薫が一歩だけ前に進んだことで得たウルトラマン。

名付けるならば『ウルトラマン・ザ・ネクスト アンファンス』と言ったところだろう。
ネクストアンファンスは光の国のウルトラマンたちも使える移動技……先ほど秀吉から逃れるのにも使ったトラベルスフィアを展開。
秀吉レベルの剛力でもなければ邪魔できない最小の聖域は限界高度に上がったタイミングで高濃度GN粒子のビーム砲に清めの炎を叩きこまれて砕けた。
技を破られた反動でそのまま薫の変身は解除され、バラバラに散る様に落ちていく。

「クソッ!」

悪態をつきつつもキリトは起動鍵を取り出し、デュエルガンダムのパワードスーツを装着する。
最初に装着した鎧の無い素のデュエルでもリボンズと戦った時のアサルトシュラウドでもない。
核動力仕様への改修に合わせて兄弟機であるブリッツの武装を参考に開発された新型アサルトシュラウドを装備した形態、デュエルブリッツガンダムだ。
防御兵装がない上に腕に武器が触接装着されているこの形態は二刀流で戦うキリトとしては取り回しが悪く使う機会がなかった。
しかしスラスター出力は三形態の中で一番高く、重量もただのアサルトシュラウドよりはるかに軽量という特徴を持つ。
一緒に飛ばされた二人を抱えて減速をかけるならこれが一番だ。

「アズール!ジーク!」

キリトは左腕装甲と一体化したロケットアンカー、ピアサーロック グレイプニールⅡで同じ方向に飛ばされていた二人を引き寄せどうにか姿勢を整える。

「無事か!?」

「なんとか平気だ!」

「でもこの後どうするんですか!?」

「このまま減速させるっ!」

影妖精の羽を展開し、全部のスラスターを思い吹かす。

「止まれぇええええええーーーっ!!!」

三人は地面との熱烈な再会を辛うじて回避することに成功した。

「うわ!」

「痛っ!」

それでも安着とは行かなかったが。

「2人とも大丈夫か?」

「なんとかな……」

「結構遠くまで飛ばされたみたいですけどここって……学校?」

「みたいだな。降りてみるか?」

キリトの提案に頷く二人。
今度は通常のアサルトシュラウドを装着し、二人が両腕に掴まると、スラスターと妖精の羽で減速しながら降り立つ。

3人が着地したのと校舎の中から赤いマントの青年と長い銀髪の美少女が出てくるのはほぼ同時だった。

389 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:09:31 ID:BpKVvW5s0
「君たちは……」

「この殺し合いを止めるヒーローの臨時サイドキックだ」

赤いマントの青年、ギラ・ハスティーの問いかけに答えるキリト。
信用していいものかと一瞬悩んだ銀髪の少女、ユフィリア・マゼンタだがすぐにキリトも左隣のアズールを見て気付く。

「その衣装……もしかして、あなたがハルカの言っていたトレスマジアのメンバーですか?」

「はるかって……ここにいるの!?」

一応放送で分かってはいたが親友の無事を知った様子にユフィも警戒を解く。

「どうやら、悪意の人物ではないようですね」

「ハルカたちの所まで案内するよ。
君もそれでいいかな?」

「ああ。俺もそれで構わない」

「ありがとう。
僕はギラ・ハスティー。
彼女はユフィリア・マゼンタ」

「よろしくお願いします」

「ジークだ」

「俺はキリト。
で、こっちはマジアマゼンタから聞いているとは思うけど……」

「水神小夜。マジアアズールです」

新たにヒーローチームと合流した一行は学園校舎に入って行った。



【エリアI-8/富良洲高校校舎入口/9月2日午前12時30分】

【キリト@ソードアート・オンライン】
状態:ALOアバター、疲労(中)
服装:いつもの服装
装備:マクアフィテル@SAOシリーズ
   デュエルガンダム(核動力型)の起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ホットライン、???
   シャドーセイバー(短)@仮面ライダーBKACK RX
思考
基本:このゲームを攻略する。
1:茅場晶彦……今回で完全に決着をつけてやる。
2:ギラたちと情報交換を行い、そのまま協力まで取り付けたい。
3:アスナたちや逸れたデクたち、ガッチャードなどの協力できそうな者を探す。
4:PoHやダークマイトは死んだらしいがギギストにグリオンにノワルにアルジュナ・オルタは健在……休む暇なしかもな。
5:シノン、亜里紗……また、間に合わなかった。
6:この短剣、もう投げるのはやめとこう。
  なんか毎回敵に拾われる。
参戦時期:少なくともマザーズロザリオ編終了後
備考
※アバターはALOの物です。

【水神小夜@魔法少女にあこがれて】
状態:ダメージ(中・最初の傷は治療済み)、疲労(中)
服装:錬金アカデミーの制服(青)@仮面ライダーガッチャード
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、???
   ホットライン、アビドス高校の体操服
   N・Sワッペン(S)@ドラえもん
思考
基本:今度こそ『マジアアズール』の矜持を貫く。
01:冥黒の五道化……あれだけ強くて参加者じゃないなんて。
02:今となってもシェフィちゃんと一緒にマイさんを庇ったのは間違ってないと思う。
03:シェフィちゃんは必ず守る。
04:左虎さんもシェフィちゃんもこの様子だと操られたままなのよね?
05:もしまたマイさんに会ったら……。
06:ディアッカさん、柊さん……そんな!
07:この先にはるかが!?
参戦時期:アニメ7話、原作2巻Episode10の終盤
備考
※マイの編集(エディット)により、バトルロワイヤルのルールを把握しました。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響で欠落した記憶が回復しました。
 植え付けられた偽の記憶も残っていますが偽の記憶と理解しています。

390 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:12:27 ID:BpKVvW5s0
【ジーク@Fate/Apocrypha】
状態:疲労(大)
服装:本編の服装
装備:浅打@BLEACH→幻想大剣(バルムンク)@ロワオリジナル(BLEACH+Fateシリーズ)
令呪:残り二画(竜告令呪)
道具:缶コーヒー@現実(残数2本)、???
   N・Sワッペン(N×10、S×4)@ドラえもん
   ホットライン
思考
基本:可能な限り被害を少なくゲームを終了させる
01:大聖杯はどうなっているのだろうか...
02:ユメたちは無事だろうか?
03:ノワルに宇蟲王はどこかで倒しておかなくては。
04:小鳥遊ホシノは明らかに大丈夫でなかった。
  もう一度合流しなくては。
05: ギラたちと情報交換を行い、出来れば協力も取り付ける。
06:うてな、ディアッカ……本当にすまない。
参戦時期:本編終了後
備考
※FGOコラボイベントのイベントの記憶も有しています。
※時系列的には邪竜の姿が正しいですが、ホムンクルスの姿をしています。本人は羂索の制約によるものだと考えています
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています。

【ギラ・ハスティー@王様戦隊キングオージャ―】
状態:疲労(小)
服装:いつもの服装(第二部)
装備:ドンブラスター+アバタロウギア×6@王様戦隊キングオージャ―VSドンブラザーズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン×2
思考
基本:ケンジャクたちザコどもを悉く滅ぼし、邪悪の王としてこのゲームの真の邪道を見つけて見せる
01:民は守る。この場にいない王様戦隊の仲間の分まで。
  ゲームに乗った者たちも極力無力化、撃退にとどめたい。
02:テレビ局に行く過程でケンジャクたちに反逆する仲間を集める。そしてケンジャク達の目的を探る。
  まずは獣電戦隊の仲間と合流したい。
03:ケンジャク、ルルーシュ、綾小路、ケンジャクの言っていたクルーゼ、カヤバ、クチナシ、カモ、ルルーシュが言っていたマリアンヌ・ランペルージ、ゼア、シュナイゼルについて知る者を探す。
04:宇蟲王ギラに最大級の警戒、どうにか打倒するための方法を見つける。
05:ドゴルド、覇王十代、アスラン・ザラ?にも警戒。
  名前が近い遊戯十代とアスラン・ザラと接触してどういう存在なのかを聞いておく。
06:アントライオンの男を殺した罪は背負いながら前に進んで見せる。
07:黒い鎧の彼(スザク)を止めたい。あのままじゃ彼は……。
08:梔子ユメと二人のキラ・ヤマトにも一応話は聞いておきたい。
09:ハルカの友達とその仲間を案内する。
参戦時期:VSキョウリュウジャー終了後
備考
※不死性はある程度削がれています。
※シュゴットは令呪を使わなければ呼び出せません。
 また、呼び出せたとしても大幅にスケールダウンしています。
※VSキョウリュウジャー終了後なので他のスーパー戦隊に関する知識も少しはあります。

【ユフィリア・マゼンタ@転生王女と天才令嬢の魔法革命】
状態:疲労(小)
服装:いつもの服装
装備:オージャカリバー@王様戦隊キングオージャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームに反逆する。
01:民は守る。まふゆが共に戦う以上は彼女のことも。
02:ケンジャクたちに反逆する仲間を集める。
03:ギラ国王と共に歩む、彼は信用出来ます。
04:ケンジャク、ルルーシュ、綾小路、ケンジャクの言っていたクルーゼ、カヤバ、クチナシ、カモ、ルルーシュが言っていたマリアンヌ・ランペルージ、ゼア、シュナイゼルについて知る者や医者を探す。
05:宇蟲王ギラ、覇王十代、アスラン・ザラ?を警戒。
  他にも強いマーダーがいる可能性が高いので積極的に同士を集めなければいけませんね。
06:参加者が異世界から集められているとは…勘違いをしてしまっていました。
07:周りは見たことがないものばかりです。
  この世界の文明器具について詳しく知っている人に教えてもらいたいですね。
08:ハルカの友達とその仲間を案内する。
参戦時期:少なくともまだナチュラルな人間だったころ
備考
※制限の詳細は後の書き手様にお任せします。
※シュゴッタム王国をパレッティア王国が認知してない程遠方の王国であると当たらずとも遠からずな勘違いをしていましたが、誤解は解けました。

391 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:18:22 ID:BpKVvW5s0
「カオルー!ホシノー!デクー!ガクロー!」

「その声は……おーいシェフィ―!こっち来てくれ!」

どうにか一塊に成れたキリト以外にもそれなりに近い位置に着地出来たらしいのは今まで動かす気も起きなかった背中の羽で精一杯勢いを殺して着地には氷の滑り台を作ってどうにか自力で降り立ったシェフィ。
そして木がクッションになった上に枝に服が引っかかったおかげで地面に激突しなかった薫だった。

「居た!益子さん!シェフィちゃん!」

「良かった。無事だった」

そしてあまり離れていない場所に『浮遊』の“個性”とエアフォースで着地したデク、そして黒鞭で回収された学郎も合流する。

「全ッ然無事じゃねえよ。
自力じゃ降りれないからお前の『黒鞭』でさっさと降ろしてくれ」

「分かった。ちょっと動かないでね」

無事に薫を降ろすことには成功した。
観た所怪我らしい怪我もない。

「あー死ぬかと思った。あれ?
ホシノたちとは逸れちまった感じか?」

「うん。黒鞭で夜島君を回収して、小鳥遊さんも掴もうとはしたんだけど届かなくて……」

「意識はあったし、自分でどうにかするとは言ってたけど心配ですね」

「心配と言えばアズールたちは?」

「シェフィ、キリトのガンダムがつかまえてるのみた」

「ジークさんや小鳥遊さんも一緒だと良いですけど」

「さがそう。シェフィ、ディアッカにホシノのこともまかされた!」

「だな。チビトリオ再結成目指して行こうか」

「うん!」

「直ぐに移動した方がいいのはそうでしょうね」

「ずっとここに居たんじゃ着地の様子を見てたヴィランやNPCモンスターが寄って来るかもしれないからね。行こう!」

分かれてしまった仲間に再び出会う為、そして何よりこの殺し合いを止めるために再び歩き出した。



【エリア?-?/???/9月2日午前12時30分】

【益子薫@刀使ノ巫女】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)
   死や圧倒的存在への恐怖(極大)
   無力感と力への渇望
   メモリーディスクによる記憶改竄
   適能者(デュナミスト)として覚・醒
   マークツヴォルフの使用回数『4』
   罪から逃げず自分を決して赦さないという思い(極大)
   サバイバーズ・ギルト、こんな自分でもなりたいものになりたい気持ち(極大)
服装:長船女学園の制服(血塗れ)
装備:防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS
令呪:残り三画
道具:ホットライン×2 、???
思考
基本:この殺し合いを終わらせる。
00:……結局どこまで行ってもここに居るオレは『益子薫』なんだな。
01:ごめんなみんな…。
  やっぱオレなりたいものになりてぇや。
02:ひよよん達と会ったら全部話す。
03:ジンガと、次会ったら真昼はオレの手で倒す。
  他の殺し合いに乗ってる連中も同様。
04:ガッチャードの奴はなるべく早めに見付けた方が良いよな。
05:ディアッカ……本当にごめんなさい。
  そんで、本当にありがとう。
06:祢々切丸があったとして…流石に刀使は名乗れねえな。
07:オレが死ねばよかった……。
  でも、やっぱり死にたくないなぁ、怖いなぁ……。
08:もし、オレにもっと力があっても、護れなきゃ意味ねぇんし、生き残れなかったら最悪だよな。
09:……可奈美の死体を見つけたら、その時はオレが終わらせる。
  ひよよんや舞衣、沙耶香に…背負わせる訳にはいかねえ。
10:……舞衣が誰かを殺したりっするはずない。そうだよな?
11:オレが言えた立場じゃねえけどホシノの奴は放っておくとヤバい。さっさと合流してやらねえと
12:なんか、呼ばれるはずだった名前が呼ばれてない気がする。気のせいか?
参戦時期:第24話「結びの巫女」にて、可奈美と姫和が未帰還な事を知り涙目で祢々切丸をぶん投げた直後から。
備考:
※支給されていたソードスキルによりドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!を習得しています。
※適能者(デュナミスト)として覚・醒し光のみでウルトラマンに成れるように慣れましたが、 現状ウルトラマン・ザ・ネクスト アンファンスにしかなれません。
技は原典のザ・ネクスト アンファンスの物に加えてネクサスのアンファンスの技をいくつかしか使えません。
※ストライクウィッチーズ世界についてある程度把握しました。
※適能者(デュナミスト)として覚・醒した影響で闇のパルファムを振り切りました。
※ジンガのメモリーディスクにより記憶を改竄されました。
 それにより宇蟲王との戦いで自分ひとりだけが生き延びてしまったと勘違いしています。
※マークツヴォルフのSDPを9月2日午前10時に使用しました。
 次に使用可能になるのは9月2日午後4時となります。

392 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:21:47 ID:BpKVvW5s0
【シェフィ@プリンセスコネクト!Re:Dive】
状態:幼児退行(小)、疲労(中)
   ドゴルドへの恐怖(中)
   "削除(デリート)"により一部記憶欠損
   "編集(エディット)"影響下
服装:いつもの服
装備:雄英ヒーローズ・バトル@僕のヒーローアカデミア
   ソードスキル:氷凝呪法@呪術廻戦、N・Sワッペン(S)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:フラッグポット+フロッグギジメモリ@仮面ライダーW、ホットライン、???
思考
基本:マイに従う
01:オールマイト、ありがと!
02:ディアッカ……。
03:ケンジャクっておねーたん、こわい
04:マイてんてー!サコー!どこー?
05:ドゴルドもあのおねーたんもこわい……
06:アズール、ちゃんとマイてんてーにごめんんさいしようね
07:シェフィが、みんなをまかされた
08:デクにサインもらえた!
09?:マイてんてー。だいすき
参戦時期:幼児退行が治って無かったころのどこか
備考
※具体的な参戦時期は後の書き手様にお任せします。
※精神状態が精神状態なので、このバトルロワイヤルについて色々とよくわかっていないと思われます。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、キャルを含む一部記憶が欠損しています。
 強い衝撃等があれば蘇るかもしれません
※雄英ヒーローズ・バトル@僕のヒーローアカデミアのデクのカードに本人のサインを書いてもらいました。

【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:疲労(中)ダメージ(小)
   代葉の死、PoHを殺したことへの動揺(中)
服装:いつもの服装
装備:シャドーセイバー(長)@仮面ライダーBKACK RX
令呪:残り三画
道具:クラスカード(バーサーカー)@Fate/kaleid liner
   魔女箒@転生王女と天才令嬢の魔法革命
   セイなる手榴弾×2@ブルーアーカイブ
   スタッグフォン+スタッグギジメモリ@仮面ライダーW
   ホットライン、???
   N・Sワッペン(S)@ドラえもん
思考
基本:生きる 生きて自分のすべきことを為す
01:キリトの贋物を殺したこと、藤乃さんを死なせたこと。
  俺が全部背負うよ
02:俺のせいで、シノンさんは……
03:ディアッカさん……本当にごめんなさい。
04:宇蟲王ギラは絶対に倒さないといけない。
  けど今はそれより……。
参戦時期:43話より後
備考
※精神仮縫いは解除されました。
※藤乃代葉の支給品を回収しています。

【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト】
状態:ダメージ(中)、決意、髪型サイド刈上げ(424話)
服装:デクのヒーロースーツ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト
装備:同上
令呪:残り三画
道具:デクのランダムアイテム×1〜2
   ホットライン
   将来の為のヒーロー分析ノート(現地調達)
   筆記用具(現地調達)、???
   軽井沢恵のランダム支給品×1
   失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ゼロワン、電王)
   裁断済みのゼインカード(ストロンガー、アバドン)
思考
基本:羂索らこのゲームを仕掛けた一味を逮捕する。
1:切島君、成見さん、イドラさん、アルカイザー……。
2:キリトやイドラさんの仲間との合流を目指す。
3:イドラさんたちから得られた情報も元に考察を進めたい。
4:ギギストやグリオンに翼竜のヴィラン(冥黒ノノミ)、そしてノワル達は要警戒。
6:やみのせんしとの決着はひとまず保留。
  可能なら分かり合えたい。
7:逸れてしまったみんなが無事だと良いけど。
参戦時期:映画終了直後
備考
※“ワン・フォー・オール”は制限されているがエナジーアイテムや“発頸”を活用すれば瞬間最大威力でなら100%を発揮できるようです。
ただ500%ともなると相応の『反動』を受けてしまいます。
※やみのせんしによるギラグレイドによって髪の一部が燃え尽き、サイド刈上げになって顔に傷痕が残りエピローグ時の外見(424話)になりました。
※乱入してきたアナザ―オーズは、参加者ではなくNPCのモンスターだと思っています。
突然の登場とやみのせんしによるギラグレイドによるダメージもあり、レジスターに気づかなかったようです。

393 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:24:48 ID:BpKVvW5s0
「……痛たた、この小柄で軽い身体もたまには役に立つもんだね」

少し自嘲しながらクッションになってくれた茂みを抜け出したホシノは服に着いた汚れを払うと装備を確認する。
片や元の世界からの愛用品で自分と共に幾つもの鉄火場を切り抜けて来た盾。
片や仮面ライダーゼロワンの世界にて様々なライダーの手を渡りながら数々の戦場で戦果を挙げたアタッシュウェポン。
そう簡単に壊れるはずもない。

「ッ……」

同じ様な理由で、今ホシノが立ち上がった拍子に落とした6番の獣電池も壊れていなかった。

「空蝉丸も、リツカくんもマシュちゃんも大丈夫だよね?」

だって、病院前で分かれた時はなんてことはなかったのだ。
連帯に関して言えば即席コンビだった自分とディアッカ以上だし、空蝉丸もキヴォトス人の感覚から見ても強い。
そう簡単に、それこそ理性なく死体に群がる怪物なんかに後れを取るとは思えない。
だがもしその怪物がハイエナの同類だったら?
倒した敵の死体や使い残した道具など興味も示さないようなタイプだったら、件の獣は食べ残しを運んで来ただけではないのか?

「……確かめなきゃ。
空蝉丸も、リツカくんもマシュちゃんも、セリカちゃんやユメ先輩も無事だって」

心意システム。
それは恩恵であると同時に呪いでもある。
あり得た世界で一度反転した少女の行く先で、悪しき賢者のビターな贈り物は毒となるか薬になるか。
まだ誰にも分からなかった。



【エリア?-?/???/9月2日午前12時30分】

【小鳥遊ホシノ@ブルーアーカイブ】
状態:疲労(大)、ユメ先輩の死体を利用されている現状への怒り(極大
   羂索)、茅場、クルーゼへの殺意(極大)、宇蟲王と秀吉への怒り(極大)
   仲間たちの安否に対する不安(大)
服装:臨戦
装備:アタッシュショットガン@仮面ライダーアウトサイダーズ
   折り畳み式の盾@ブルーアーカイブ、6番の獣電池×1@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン(画面にヒビ有)
   簡易救急キット@オリジナル、N・Sワッペン(S)@ドラえもん
思考
基本:羂索たちを殺す
01:ディアッカに、先生まで……
02:あいつ(秀吉)は絶対許せない。
03:最強のNPCモンスタードゴルド……もしセリカちゃんたちに手を出すなら空蝉丸さんより先に殺す。
最悪、中身ごとになっても。
04:私に、ノノミちゃんの贋物を操るグリオンにも落とし前を着けさせる。
05:マイ=ラッセルハート……もしその能力をセリカちゃんたちに向けるなら……
06:先輩と後輩をばらけさせるわけにはいかないもんね。
07:……また、喪った。
08:…カオルちゃんの有様見ると、もしかしてディアッカやリツカくん、マシュちゃんや空蝉丸さんには最初の私も…ああ云う風に見えてたのかも…。
  あそこまで…酷くはなかったハズだけど。
09:お礼とか、ごめんなさいとか全然言えてないや。
10:あんなNPC(ELS)もいるんだね。
参戦時期:対策委員会編第三章にて空崎ヒナと会敵するより前
備考
※ディアッカ、マシュ、立香、空蝉丸と情報交換しました。
 しかし本人がいっぱいいっぱいなのでどの程度理解できてるか分かりません。





【全体備考】
※鮮血@キルラキルと同様にキズナレッドのデイパックとホットラインは焼失しました。
※以下のアイテムをキリト、デク、小夜、シェフィ、ホシノ、薫、ジーク、学郎で分配しました。
誰にどのアイテムが行き渡ったかは後の書き手様にお任せします。
以下、分配したアイテム
・キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
・片太刀バサミ@キルラキル
・アナザーオーズウォッチ@仮面ライダージオウ
・ころころダンジョくん@Toloveるダークネス
・ライドベンダー@仮面ライダーオーズ/OOO
・なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)@ドラえもん
・セルメダル数枚@仮面ライダーオーズ/OOO
・イドラのランダムアイテム×0〜2
・イドラのホットライン
・ジャンプ強化のエナジーアイテム×2
・アルカイザーのランダムアイテム×0〜2
・通り抜けフープ@ドラえもん
・アルカイザーのホットライン

394 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:30:06 ID:BpKVvW5s0
「初手でしくじった以上は仕方ないか」

自身のダメージは無視できないほどに大きく、向こうは頭数では勝っている上に死んだ仲間たちの支給品を山分けして手数も増えていた点を考えると、ドゴルドの様な運営側の存在やマイ=ラッセルハートやギギストなどの厄介な参加者の情報の入手と配下たちの出力を見れただけ良しとしよう。

「運営側以外で一番警戒すべきは、やはりノノミの飼い主だな。
たしかグリオン、だったか」



【エリアE-8/発電所/9月2日午前12時30分】
【鬼龍院羅暁@キルラキル】
状態:疲労(大)ダメージ(大)
   左腕切断(治療中)
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン
   青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む。
01:学郎は存外悪運が強いようだな。
02:流子がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
03:ここにまともな参加者はいないのか?
  参加者以外もまともな物がいないんじゃないのか??
04:あの怪獣娘(セレブロ)は不快だ。
  あまりにも思考が合わん。
05:美嘉とノノミにその主人のグリオン、あの氷竜(キラ・ヤマト)やユージオなどを警戒
06:新しい手駒共の性能は問題なさそうだな。
07:地下施設を壊せば…だがそれだと私も終わりか。
08:コイツ(アスラン・ザラ?)からも奴らからも面白い話を聞けた。
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています。
※火属性に弱い可能性があります。
※左腕が破壊されましたが見た目だけはほぼ直っています。
 精度は劣化しており本来の半分程度だと羅暁は考えています。
 時間経過でどの程度改善されるかなどは後述の書き手様にお任せします。
※精神仮縫いによってNPCである神話型アクエリオン、シャドウフィルムライダー:装甲響鬼、ELSリボーンズガンダムを支配下に置いています。
 どれも先の戦闘でそれなりには疲労とダメージが溜まっています。付いてこさせてるか否か等は後続にお任せします。

【アスラン・ザラ@ネットミーム】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、呆然自失
   マークニヒトの使用回数『5』、精神仮縫い
服装:SEED DESTINYでのザフトの軍服(赤)
装備: レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
令呪:残り一画
道具:マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン
   切島鋭児郎のレジスター
   サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
   ゼウスシルエットの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
思考
基本:オ、オレヴァ…
00:なり損ないだったんだ…俺は…
参戦時期:無し。(知識的にはこのロワが始まった2024年8月22日以前までのSEEDシリーズの展開やSEED関連のネットミームについては知っています)
備考
※ギルバート・デュランダル@機動戦士ガンダムSEED DESTINYが羂索達の裏に居ると勝手に決めつけています。
 また梔子ユメも羂索の協力者だと勝手に決めつけています。
※支給されていたソードスキル:Wの聖文字@BLEACHを習得しました。
※真人、真昼、真鍋、レン、ジンガ、エンシンをシン野郎としました。
 今後シン野郎と見なした相手は増えます。
※チェンジアタックは一度使用すると6時間使用不能となります。
 (9月2日の午後3時45分に再使用可能)また起動鍵を使用した状態では使用できません。
※ジャスティスを核爆発させる為にはジャスティスガンダムの起動鍵が必要です。
 他参加者に支給されているかドロップアイテムとして存在しているか、会場内に存在しているかは後続にお任せします。
※切島を同化した為、ニヒト使用時は彼の“個性”が使える様になりました。

395 ◆Drj5wz7hS2:2025/06/30(月) 00:31:07 ID:BpKVvW5s0
投下終了です。
タイトルは『ブレイブの源』です

396 ◆8eumUP9W6s:2025/06/30(月) 23:50:33 ID:AscOmILI0
投下します。

397 ◆8eumUP9W6s:2025/06/30(月) 23:51:06 ID:AscOmILI0
『ゼロォォォォッ!!!!』
「くっ、まるでかつての僕を模しているみたいだ…!」

放送も間近になった頃、会場内にて白く喧しい騎士と黒い騎士が切り合う。
黒い騎士こそタイクーンブジンソード…枢木スザクが相対するは、かつての自らの愛機ランスロット。
それが話す内容はユフィを殺された後の自分のものであり…どこか彼はやり辛さのようなものを感じていた。

『ルルーシュゥゥゥゥ!!!!ここは協力する、ゼロ!!!!ゼロは何処だ!?!?俺はゼロをぉぉぉぉっ!!!!」』

一応会話を試みてはみたものの、壊れたスピーカーのごとくまくし立てて、ゼロ及びルルーシュへの憎悪と怒りを叫びながら(何故か協力するとか言い出したりもしてたが)攻撃を止めなかった為無駄に終わる。
この有様では仮に何かしらの情報を持っていたとして、それを話す事はないだろう。それこそルルーシュの身柄か首でも持ってきたなら話は別だろうが。

398 ◆8eumUP9W6s:2025/06/30(月) 23:54:10 ID:AscOmILI0
(もしコイツが模してる、この頃の僕が巻き込まれてたら……きっとゼロに…ルルーシュに復讐する為なら手段なんて一切選ばないんだろうな)

そんな事を浮かべながら武刃でMVSを受け止め鍔迫り合い。そこから飛ばされてきたスラッシュハーケンをジャンプし避けた上で……スザクは必殺技であるブジンソードビクトリーを発動、今回は斬撃波ではなく必殺キックを放つ。

「…僕は……お前のようにはなれない。そして復讐心だけしか背負ってないお前に……オレは負けてはやれない!」

ヴァリスを放とうとするランスロット目掛けて、過去に訣別を告げようとスザクは叫ぶ。
…復讐を果たす為だけに、真意を欺き潜り込みその時を待つには、自分は咎を…業を背負いすぎた。
故に皆殺しという血塗られた手段を取ってでも理想の世界を…全てを清算した世界を作らなければならないのだと、その思いを以て放たれたヴァリスとランスロットを貫く。

『ゼロォォォォッ!!!!』

最期まで怒りと怨嗟の叫びを響かせながら、ランスロットは爆散した。
そして残るは残骸とドロップアイテム。

399 ◆8eumUP9W6s:2025/06/30(月) 23:56:26 ID:AscOmILI0
「…僕は、オレは……」
(……取り扱いには気を付けたほうがいいか)

これまでの戦いと、その中で投げかけられた言葉と、結果共闘や並び立った事に加えて…かつての自らを模した相手との戦闘を超えた事により、否が応でも狂気とは別の所へと向き合わされるスザク。
…それらを一旦考えの外に置こうと、遺された火炎瓶を手に取ってリュックへとそっとしまうも…。

『定刻の9月2日午前11時15分となった。
はじめまして、我々の集めた紳士淑女諸君。
私は茅場晶彦。
このゲームの主にシステム周りを司るゲームマスターだ』

主催者は参加者達の感傷を考慮などしてくれない。ここで放送が流れた。

----

400 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:00:47 ID:5BDlKEvg0
茅場と名乗るどこか疲れた様子の男は、死んでいった参加者たちの名前を呼んでいく。

『ビスマルク・ヴァルトシュタイン』

…ヴァルトシュタイン卿が、ラウンズ最強の座に居るあのナイトオブワンが…?
……優勝を狙う以上いずれ殺さなければ行けない相手だったとはいえ、ブリタニア最強の騎士と言っても過言では無い彼が死んだという事実に…何処か動揺を隠せない自分が居た。
あのエターナルというライダーやグリオン、ゼイン辺りなら出来てもおかしくはないけれど…。

『カラレス総督』

…たしかゼロ…ルルーシュに殺された筈の元総督が、この殺し合いに??
そこまで考えて、ようやく自分が名簿すら見ていなかった事に気付く。…どのみち、皆殺す事には変わりないと言う自分と、だとしても知るべきだ、それがせめてもの…という自分が居た。

どちらの選択も取れないまま、名前は更に呼ばれていく。

『卜部巧雪』
『衛藤可奈美』
『ロロ・ヴィ・ブリタニア』

…自分にとってかつての師である藤堂さんの部下、四聖剣のひとりで…元総督同様死んだ筈の名前が呼ばれた。そして…あの時相対した操り人形に成り下がった少女に、自分の知らないブリタニア姓のロロ。

『柊篝』

…刃を交え成り行きで助けて一時共闘する事となった、今はもう居ない少女の名。たしかキラと呼んでいた彼に篝と呼ばれていたような。
…浮かんだのは、さっき視たピンク髪の輪っかを浮かべ羽を生やした…自分と同じ復讐者の少女。「ミカ」とキラや篝に呼ばれていた彼女の憎悪と悲しみが浮かぶ形相が、どうにも離れない。彼女もまた…あのランスロットとは違った方向で…あり得た自分の姿なのだろうか?

……それ以降、顔見知りや面識のある名は呼ばれず。茅場は姿を変えた上で……心意システムとやらを実装し、そのまま放送を終えた。

401 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:01:36 ID:5BDlKEvg0
……今更ながらに名簿をパッと見る。
…「ミカ」は聖園ミカか、或いは亀井美嘉のことだろうか?
氷竜と化してしまったキラ・ヤマトは准将の方なのか否か、さっき戦って…ゼイン相手に並び立ったギラと呼ばれていたあの王は、ハスティーの方か宇蟲王とやらの方なのか……浮かびはしても確かめる術は自分には無い。

『ごきげんよう諸君、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ』
「……ルルーシュ、君は…」

そんな中、ルルーシュの声が届く。……彼も放送を始めるらしい。

----

(ヴァルトシュタイン卿を討ったという実績は、彼にとっても評価が高いみたいだ。…てっきり嘘でも、自分が討ったと言ってもおかしくはなさそうだったけれど…) 
「…エターナルを、君が討ったのか。……なら、彼女は……」
ビスマルクを討った者にライダーの称号と爵位に領地等で報いるから名乗るよう言い、また自らの手でエターナル(とタイガ)を処断したと言い放つルルーシュに、スザクが抱くは尊大な振る舞いへの困惑と、エターナルが討たれたのなら操り人形となっていたあの刀使はどうなるのか、主が消えた以上は……という些細な思考であった。

その後画面の中に居るルルーシュは、プロトガシャットの件を告げた後医療或いは機械工学の知識持ちや、正当な所有権を持つらしい九条マリアとやら、神戸しおとやらの身柄やゼインの首を要求した上でテレビ局で待つとし、放送を終える。

(…君にとってもゼインは敵なのか、ルルーシュ。
……傍迷惑で過激な善意を振りかざして悪を討とうとする以上…それもそうか)

402 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:03:00 ID:5BDlKEvg0
プロトガシャットや九条マリア、神戸しおについては全く知らず反応しようがないが、先のミカの表情の事もありゼインの首を求めた件をそう解釈するスザク。だが仮面の内は相変わらず困惑の表情が浮かんでいた。

「……ルルーシュ、君は僕とは違う…結果が全てだとしても、もっといいやり方がある筈だ…!オレとは違って、やり方を選べる筈だろ!?…なのにどうして……?」

自分がフレイヤを発射してしまった結果、万単位の人間が死んでしまった。その中にはルルーシュの最愛の妹であるナナリーも含まれているだろう。
それを知っていて、2度の放送で行ったようなムーブをする理由が思い付かなかった。

正体を暴かれた際「全ては過去!!」だの最悪の開き直り方をしておいて、ナナリーを一緒に助けてくれだのほざいて来るくらいにはなりふり構わず、かつそれ程妹を大事にしている。
…数度裏切られまた裏切ったり誤解されたりしてなお、枢木スザクにとってルルーシュ・ヴィ・ブリタニアへのその認識は揺らがない物だった。だからこそ……理解し難い。

(…ナナリーを、妹を生き返らせたいと思わないのか!?
…思うならあんな目立つ上に敵しか作らない行動なんて取るのは愚策だ、真意を隠して暗躍して、優勝か主催から技術を奪うかして、最後に全部掻っ攫うくらいは出来るはずだ…それが君のやり方なんじゃないのか…??)

403 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:05:03 ID:5BDlKEvg0
自分の知るルルーシュなら、間違いなくそう動くだろうという確信があったからこそ、この殺し合いでの彼の動きの意図が分からない。

(…そもそも、あの時は気にもしてなかったけど……ルルーシュは黒の騎士団の事をシュナイゼルに与する騎士と同列扱いで、首を要求していた。
…何故か皇帝を名乗ってるのもそうだけど……彼は、本当に自分の知ってるルルーシュなのか…???99代皇帝という事は、シャルル皇帝に何かが…?)

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの頭の良さが突出しているから目立ちづらいが、別に枢木スザクは頭が悪いわけではない。
過去のトラウマ故の死にたがりと直情的な性格、単騎でルルーシュの策をひっくり返す暴れっぷりが合わさってそう見られがちとはいえ、どちらかといえば良い方だ。
でなければ本来の、及びいくつかの世界線で『ゼロ』として生きる事は出来ていないだろう。後事を任せる都合マニュアル等は遺してあるだろうとはいえ、『ゼロ』を務める以上頭の良さは重要になってくる筈だ。

──故に狂気が薄れ、考える時間が与えられれば疑問点に気付きもする。

(…いや、これ以上考えても今は意味は無い。どのみち…優勝を果たす以外に道はない)

404 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:06:44 ID:5BDlKEvg0
とはいえ並行世界だの巻き込まれた時間軸の違いだの等の発想に行き着くには、あまりにも情報が足りなかった。
良くも悪くも真面目、かつ殺し合いに積極的に乗っているのもあるとはいえ、誰とも情報を交換しようとせず名簿すら見ないまま彷徨い戦っていたツケである。今の所当人は知る由もないが。

(…もう一度、ちゃんと名簿を見よう)

ルルーシュの放送もあって先程はパッと見るだけに留まった名簿をスザクは、今度はしっかりと見ることとした。

----

名簿にあった、さっき呼ばれなかった参加者で元からの知り合いは3人。
ブリタニアの第99代皇帝を名乗ってるルルーシュに、弟という役割を与えられたランペルージ姓になってる方のロロ。
そして友達でありかつての同僚でもあった、MIAになった筈のマーヤ。

…ごめん、マーヤ。君が相手だとしても…僕は躊躇わない。躊躇う資格なんて……オレにはないんだ。ないはずなんだ。

それと、目に留まったのはもうひとつ……二代目ゼロという名前。
…ルルーシュが黒の騎士団をああ扱ったという事は、シュナイゼル殿下に騎士団が乗っ取られ…後継として擁立された存在、なのだろうか。

405 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:09:12 ID:5BDlKEvg0
……誰であろうと、願いを叶える為に、自分は──そうまで思った瞬間、聞こえてきたのは足音。
武刃を構え、先手を取るかそれとも受けた上でカウンターを狙うかを……そこまで考えたその時だった。

「…あなたは……まって、ください…!
…信じててもらえないかも…しれないけど。……わたしは…あの時とは、ちがいます」

刀を置く音と同時に、女の子の声が届く。震えて涙声になってるそれに、自分は聞き覚えはない。姿には見覚えはあった、けれど自分の知っているそれとは違う。
空虚な筈の瞳には光が灯って、泣き腫らした跡があった。それだけで……あの時とは違うという言葉に説得力が出る。

「…何が目的なんだ、君は」

斬ろうと思えば、斬ることは出来た。
…彼女は刀を2本とも…帯刀したのも含めれば3本か、全てを地面に落としている。
あの時とは違うと言えど、斬ってしまった方が早いだろうことは分かっていて……だけどなぜか、そうしてしまう気にはなれないまま、自分は彼女に問いかけていた。

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406 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:09:59 ID:5BDlKEvg0
時刻は少し遡る。
黒き最後の神の襲来をどうにか凌いだ十条姫和、龍園翔、伏黒甚爾の3名だったが、どう動くかの選択を委ねられた形となる龍園は…姫和の調伏に時間を費やし手札を増やす事を選んだ。

「私としては有難くはあるが…理由は?」
「さっきの色黒野郎や、先生とか呼ばれてた奴みてぇな輩に出くわしたらって考えりゃ、先に手札をもうひとつ増やしておくのも悪くはないと思ってな」

もし他参加者との接触に動いていれば、位置の都合方向次第だと柳瀬舞衣らと遭遇出来ていたかもしれないが…かつてルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが言った通り、全ては過去で終わった事。ifの話にしかならない。
ともかく、先程同様甚爾は調伏に駆り出され、1時間式神に追いかけ回されながらも難なく成功へと導いた。

「幸か不幸かは知らねぇが、そっちもNPC以外と出くわす事は無かったみたいだな」

確認するかのように言う甚爾。参加者との接触或いは接敵は互いに無し。よく言えば調伏に巻き込み要らぬ敵を作るような事態にはならなかったと、悪く言えば結局誰とも出会えないまま…仲間を集めていきたい龍園からすれば姫和の手札が増えた以外は何も進んでないも同然である。
この1時間の間で当人自身のプラスになった出来事といえば、時間経過でスタンガンによる痺れが回復した事くらいだろうか?

「ああ、お前を呼び戻すまでもなかったぜ。身体の痺れも問題は無くなったって言っていい」
「ドロップアイテムの類は何も落ちなかったがな。…お前の方も…」
「出くわした連中は潰してみたが、生憎戦果は0だ」

モビルワーカーの砲撃で大半は蹴散らし、討ち漏らしは姫和自身の攻撃により撃破したものの…と伝えた所欠伸をしつつ、言葉に応える甚爾。

407 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:10:30 ID:5BDlKEvg0
「…そろそろテレビ局のあるエリアに行くのか?」
「ここからまた調伏を行うにしてもだ、従来の方法でやればその最中に放送が流れちまう。まあ打って出た方が良いだろうよ」
「…それもそうだな。…お前は…」
「…さっきも言ったが、クライアントが決めた判断な以上、文句をつける気はねぇよ」

甚爾に任せず、姫和が単独で式神を倒して調伏を果たすなら別だが、消耗等のリスクを考えると避けた方がよろしいだろうという判断である。
ともかくテレビ局のあるD-7へと向かおうとする……その最中だった。

「…来やがったか!」

目にも留まらぬ速さで突っ込んで来た人影に、それまでだらけた体勢だった伏黒が即座に対応。エンジンブレードと刀がぶつかる音がした。

「チッ、このタイミングで敵襲かよ…十条?」
「…──な……っ…!!?」
「伏黒に任せておきゃ──」
「……わたしが、私が終わらせて、やらなきゃいけないんだ……っ!」

モニターに2人がモビルワーカーから下り付近の民家近くで剣戟を始めた様を映した途端、姫和は目を見開き、動揺した末…座席からハッチの外へと向かおうとする。
思わず声をかけた龍園だったが…姫和の瞳は潤んでいた。そうだけ言って、ハッチ外へと飛び出していく。

(…まさかあれが、お前の言っていた衛藤可奈美の……成れの果て、か?)

姫和から聞いていたそれと異なる上、血塗れかつ服が破け縫い目が見え光の無い瞳である為面食らったものの、彼女の態度から龍園は察する。
とはいえ予断を許さないだろう状況なのもあって、避けられる可能性を考慮しつつ砲身を相手へと向けておいた。

408 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:11:18 ID:5BDlKEvg0
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画面越しに視ただけで、それが可奈美『だった』モノなのはわかった…わかってしまった。
……ひとりだったら、なりふり構わず怒り泣き叫んでいたかもしれない。…共に帰ろうとした筈の、私の半分を持ってくれた相手で……有耶無耶になってしまった決着をつけれる筈だったのに……もう、彼女は居ない。
……なのに、殺されただけでなくっ……利用されて、血に塗れて……『殺してしまっている』なんて。
NPCを倒しただけだって楽観視は…私には出来そうにもなかった。
…よりにもよって、殺す道を最後まで選ばなかったあいつの、手を……!!!!

…せめて、これ以上あいつが、可奈美が手を汚す前に……止めてやらなければいけない。
……そんな役割を、舞衣や薫、沙耶香や母さんにはさせたくない。分かり合えた以上は、タギツヒメにもさせるつもりはない。
これは……私が負うべき重荷(つみ)だ。

「どういう風の吹き回しだ?十条のお嬢ちゃん」
「……アレの相手は、私にやらせてくれ。伏黒……これ以上、被害を齎す前にアイツを…眠らせて、やりたいんだ」

409 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:11:50 ID:5BDlKEvg0
鍔迫り合いに勝ち可奈美を遠方まで吹っ飛ばしたと同時に、そう聞いてきた伏黒に答える。
…聞き入れてもらえない可能性もあるが……。

「…勝てるのか?」
「勝つ。『どんな手段を取ってでも』だ」

端的に聞いてきた相手に、端的に返す。

「…じゃあお嬢ちゃんの好きにしろ。とは言えだ、ある程度の配慮はするだろうが…長引くようなら龍園は介入に入るだろうし、俺もクライアントの意見に逆らう気はねぇとは言っておくぜ」
「…感謝はしておく。…それと龍園に伝言を頼みたい、『今後私の知り合いに会ったら、可奈美の件は言わないでおいてくれ』と」

万一の事態を考慮した上で告げてみる。すると少し考えた後、

「考えておいてやるよ」

と残し、姿を消した。おそらく龍園の方まで行ったんだろう……なら、後は止めるのみだ。
刺し違える気はない。だが他に方法が無いのなら──そう考えたとほぼ同時に、迅移を使って斬り掛かってきた可奈美を長刀を以て迎え撃つ。
ぶつかり合いで伝わってくるものは、剣戟を行う事への楽しさではなく……命を刈り取らんとする殺意だった。

……ああ、やはりお前は……もう、いないのかっ……可奈美……!!

目から溢れる物を拭う暇など無い、猛攻を凌いだ上で……終わらせなければいけないのだから。

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410 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:12:40 ID:5BDlKEvg0
「龍園、十条のお嬢ちゃんから伝言だ」
「…戻ってきたって事は、十条ひとりでアレとやり合わせてるって訳かよ」
「当人のたっての希望だからな」
「…それで何だ?あいつの伝言は」
「知り合いに会ったらあの可奈美ってお嬢ちゃんの事は言うな、だとよ」
「……そうかよ」

2人の剣戟が続く中、モビルワーカー越しに注意を逸らさずにいた龍園の元にハッチを開けて現れる甚爾。

「…で、どうすんだ?まさか黙って見守るなんて事は言わねぇだろうが」
「…危うくなれば、介入を厭う気はねぇ。わざわざ時間を割いてやった貴重な戦力が死体人形とトレードになるのは御免被る」
「流石俺の依頼人(クライアント)、それが賢明な判断って奴だ」

言いつつも、死体人形となった衛藤可奈美を視て龍園に浮かぶのは──自分を負かし恐怖を植え付けた唯一の男、綾小路清隆が同じようになったらというif(もしも)。
ただでさえまんまとルルーシュに従わされている時点で度し難いというのに、そういなってさらなる醜態を晒すというのならば…当然、自分の手で終わらせにかかる事を選ぶだろう。冷静でいれる自信は無かった。
…故に、自分の手で可奈美を終わらせようと試みているだろう姫和の心情にはある程度理解はある。が……だからこそいざという時は介入する心持ちであった。

411 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:14:04 ID:5BDlKEvg0
「それともうひとつ言っておくとだ、直に放送が始まるぜ」
「…ルルーシュが何かしら動く可能性を考えると、一旦降りておくべきか」

先ほどのように放送をルルーシュが行った場合も甚爾なら聞こえるだろうが、自分自身で聞けるならそれに越したことは無い。
よって一旦モビルワーカーから降りた上で、内容が聞こえ易くなるよう民家の窓などを開けるという行動に龍園は出た。

その上で視線を2人に戻すと……居合による斬撃の雨と、連撃がぶつかり合う。


戦況は姫和が若干不利となっていた。
実力自体は本来なら伯仲であるものの、別の世界の様々な剣技を視て覚え、今も姫和が行使する石田三成の剣技をも覚えていっている。
しかも全集中の呼吸とソードスキルによるバフと刀使の技能も併さっている為、それでなお食い下がれている姫和が凄まじいと言えるだろう。
凪で防がれる事も多いものの、それをくぐり抜け写シを剥がしたり着々とダメージは与えれているも…姫和からしても疲労などが馬鹿にならない状態であった。

「……こんな場で、こんな形でお前と……斬り合いたくはなかった。…可奈美……!」

瞳を潤ませ溢してしまいながら、ここで姫和は影絵を描き、斬り合いだけでなく自らのソードスキルで調伏した式神、玉犬による攻撃を不意を打つ形で放つ。その瞬間…能面な表情が変わったように視えたのは姫和の気の所為なのだろうか。

412 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:17:03 ID:5BDlKEvg0
兎も角戦いは続く。
剣技だけでなく、式神の行使も躊躇わず行うようになった姫和と…なお斬撃を以て戦う可奈美。
しかし戦闘は均衡状態となり……やがて埒が明かないとなったのか、流れ始めた放送を気にも留めずに可奈美は不完全にしか使えない大技を…自らを屠った王の乱撃を放とうとする。

「そうか…っ…ここで、決着をつけよう…可奈美。…悪いな、龍園、伏黒……──布瑠部由良由良……」
「っおい、十条…!!」

対し姫和は今の自らに撃てる最大の火力を、代償を顧みず放とうとした。
…その式神を呼ぶとどうなるのか、事前に言っていたのもあり龍園は思わず声を荒げながらモビルワーカーへと戻ろうとする。
甚爾ですら勝てるかわからない、その場にいる全員に調伏の儀と言う名のクソゲーを強いる式神…八握剣異戒神将魔虚羅を呼び出そうとしたその瞬間だった。

……カラン、と。刀が落ちる音がした。
それは放送にて、脱落者達の名が読み上げられた直後である。

413 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:17:51 ID:5BDlKEvg0
「……ぇ、ぁ…わた、し……!?……そんな…わたし、ころ、ころしてっ……ぅぁあ
あああ"ぁ"ぁっ…────!!!!」
「…可奈美… 可奈美…なのか!?」
「……ひより、ちゃ……わたし、なんて…ことをっっ…わたしの、わたしのせいでぇっ……!!」

膝から崩れ落ち、慟哭する少女の瞳には光が戻っていた。
…きっかけは精神に作用するキノコによる綻び、それがやみのせんしとの交戦で広がり、更に姫和との戦いで広げられて、かつ従えていたエターナルこと大道克己が討たれた。
そして放送にて自らと自らが殺めてしまった相手である切島鋭児郎の名、それに止めようとしてくれていた柊篝の名が呼ばれたのがトドメとなり……彼女は己を取り戻した。…いや、取り戻して『しまった』。
そして同時に自壊へのカウントダウンも始まる。

思わず駆け寄る姫和を、龍園は止める気にはなれなかった。
ともすれば年齢よりも幼い子供のように泣き喚く可奈美のあの様が姫和を殺す為の演技だったとしたら、とんだ役者だろう。
第一、わざわざ放とうとしていた大技を中断し、あまつさえ武器である刀を放り出して隙を作ってまでそれをしようとしているとは考えづらかった。

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414 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:18:50 ID:5BDlKEvg0
しんだはずのわたしのあたまのなかにながれこんできたのは きづいたらかってにうごかされているこうけい。
ただみてることしかできなくて なんどもやめてっていっても…めのまえのこうけいはかわらない。NPCであっても ひとをなんにんもころして このてできりころしてしまったことも。

ないちゃいながらくやんでるかがりさんにも わたしをとめるためかがりさんたちといっしょにたたかってくれたかめんのひとにも こんなかたちじゃなかったらなかよくなれたはずっていってた どらごんにされちゃったきらくんってこにも
いまにもないちゃいそうになってたさやかちゃんにも つらそうにしてたたぎつひめにも…のってはいたけどおわらせようとしてくれた ふくめんのひとにも……なにもできない なにもとどかない。

なにより……まいちゃんをころそうとして それで…きりしまってひとをころしてしまって……まいちゃんのこころに きえないきずをおわせてしまったんだ。
じぶんかってなだけのわたしなんかとはちがう ふつうにやさしいこだから……だからきっと いっしょうまいちゃんはじぶんをゆるせなくなってしまった。わたしのせいで……しかも…あやうくひよりちゃんまでしなせかけて……わたし……さいていだっ……。


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泣き喚きごめんなさいと何度も謝る可奈美を、そっと抱き寄せ落ち着かせようとする姫和…という光景が暫し続いた後、ようやく彼女は目を潤ませながらも落ち着く。
その間ルルーシュの放送を民家のTV越しに聴いていた龍園と甚爾が戻ったのを視てから、涙声ながらも可奈美は話そうとする。

「…いいのか可奈美?…まだ、お前は……」
「…自分でも、わかるんだ。こうしてる内にも、少しずつだけど…崩れてるみたいな、感覚があって
…今のわたしの命が…仮初でしかないんだって。だから…伝えれることを伝えれるうちに、言っておかなきゃ…」

415 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:20:09 ID:5BDlKEvg0
気遣う姫和に、少し嬉しさを感じた素振りを見せながら言った後、可奈美は経緯を話した。その上で、龍園と甚爾が放送等での補足を行う形になる。

「そうか、母さんが……」
「呼ばれたのは後ろの方だったな。
それとエターナルとか言うライダーは放送でルルーシュが討ったと、レジスターを持ち出しながら言ってたぜ」
「…わたしが、こうして居れる時点でそうだとは思ってましたけど…やっぱり、そうなんですね…」
「…お前を操ってた奴が死んだって割には、浮かない顔してんな衛藤」

「…わたしを蘇らせた時、あの人は言ったんです。
『…過去が消えていくNEVERの方が、よっぽど上等に思えるとはな』って…吐き捨てるかのように。
……NEVERってものが、なにかはわからないけど…きっとあの人にも、そうなるだけのなにかがあったのかな…って」
「……十条の言ってた通り、難儀な奴だな」
「えっ。….…姫和ちゃんも人のこと言えないと思うけど!?」
「元はと言えば龍園がだな…!」
「…喚いてる時はどうしたもんかと思ったが、年相応のガキのやり取り出来るくらいには落ち着いたようだな」

抗議する可奈美に反論する姫和、それを視て何を思ったかは不明だが呟く甚爾。
そんな中…龍園の頭にはある可能性が過る。

416 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:23:10 ID:5BDlKEvg0
(…衛藤のあの目…十条と同じ、いやともすればそれ以上に頑固な奴のそれだ。従いたくない事には死んでも従わない…一度死んで蘇らせられるまでは最期まで人を殺そうとしなかったってのも納得がいくぜ。
それで消えかけてるって事は……同行は無理筋だろうな。…柳瀬舞衣の事やどっちかはわかんねぇがキラ・ヤマトってやつの事を気にかけてる以上…方針がテレビ局付近での他参加者との接触な俺たちとは合わない。

……とはいえだ、殺し合いに乗ってないのは変わりがなく。どの道消えちまうのなら…可能性の段階とはいえ、情報の整理を兼ねて教えておいてやってもいいか)

「衛藤、そのエターナルってライダーの本来がわかるかもしなれないぜって言えば…どうる?」
「…知りたいです、ひょっとしたら誰も知らないまま、ルルーシュさんに…殺されちゃったかもしれないのなら…」
「…まず放送で、お前の名前が呼ばれた直後に同行して戦ってたって言うブリタニア姓のロロの名前が呼ばれた。それで暫く空いた後、こっちで殺されたのを視たマコって奴の名前が、ひとつ空いてお前が殺しちまったって言う切島の名前が呼ばれて…そこから後、エターナル共々名前を挙げられていた松坂さとうが柊篝の2つ後に呼ばれた訳だが。
この辺りの事を考えれば、放送は死んだ奴順に呼ばれている可能性が出る。

…この仮定が単純に事実なら、松坂さとうの前か後ろかで呼ばれた大道克己かディアッカ・エルスマンがエターナルの正体なんじゃねぇかと思うが…現状絞り込むのは無理だな。まともに話せる参加者とロクに出会えてないせいで情報が足りないったらありゃしねぇ」

417 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:28:01 ID:5BDlKEvg0
放送で名を呼ばれた松坂さとうと満艦飾マコ以外だと接触した相手は、戦士と視て攻撃してきたグラファイト、乱入した斧の戦士、黒き神、先生、灯悟と呼ばれていた女。
この内マコと灯悟と呼ばれていた女とは話をする機会もなくあの顛末となった為、まともに話が出来たのはさとうひとりという現状となってしまう。

「…待て龍園、その仮定だと先生と名乗った男はどうなる?マコよりも先に、それも最序盤の方に呼ばれていたが…」
「それについては、死んで名前を呼ばれた筈のコイツが動き回った末今もここに居る時点でどうとでも考えれる。
コイツみたいに操り人形にされた…ってのは言動から薄そうな以上…死んだ後身体や姿を使われてるか、先生のニセモノを乗ってる側の人間が造った辺りかもな」

姫和の懸念に対して応える龍園。
もしここまでにこの場の誰かがELSと対峙していれば、姿を使われているだけでなく変身などの可能性も浮かんでいたかもしれないがこればっかりは仕方のないことだ。

「…ありがとう、ございます…龍園さん」
「俺としても情報の整理はやっておきたかった事だ。畏まられても困る」

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418 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:28:54 ID:5BDlKEvg0
その後、いくつか質疑応答をした後に…舞衣や薫、沙耶香にタギツヒメと元の知り合い、この場で共に戦ったリュージやアンク、マジアマゼンタやチェイス、果穂にラブリーチカ。
それにシビトとなってから、各々の動機は兎も角対峙し止めようとしてくれたギギストに黒い騎士って感じの仮面ライダー(スザク)に覆面の男(やみのせんし)、キラ・ヤマトに煩くない方のアスラン、流牙という男やミカという少女への伝言と…本来の遺体が残っていたら埋めるなりなんなりして欲しいと姫和へ頼む可奈美。

騎士の仮面ライダーや覆面の男については当人曰く、
「記憶が流れ込んできた時に、斬り合う中で伝わってくる筈だった気持ちも…わかったから」
とのことらしい。
兎も角了承を取り付けた可奈美は、その場から立ち去ろうとする。

「…わたし、そろそろ行かないと…」
「……何処へ向かうつもりだ、可奈美」
「…できればだけど、直接会いたい人がいて、それに止めなきゃいけない人がいるから。……償いになるなんて、思わないけど、でもっ……やれる事を、やらなきゃって……」

可奈美が浮かべるは心に消えない傷を負わせてしまった親友と、人ならざるモノへと変わってしまった少年。一応頼みはしたものの、自分の手で責任を果たせるならそれが一番だと彼女は思っていた。

419 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:29:35 ID:5BDlKEvg0
「……っ……!」

言葉を紡ごうとする姫和だが、出来ない。

(…せめて…せめて最期くらいは…看取ってやりたい。だが……私にそんな資格は…!)

かつて自らを犠牲にしてでも、成すべきと信じた事をやりきろうとして…可奈美がいなければそのまま犠牲になっていただろう選択を選んだ身として。遺された時間を贖罪の、そして出来る限りの事を成す為に使うという可奈美の選択に異を唱える事は……姫和には出来なかった。

「…そうだ。伏黒さん。ドロップアイテムですけど……多分、貴方が持ってた方がいいかな…って」
「…お嬢ちゃんと斬り合ってたのは1分も経ってないはずなんだがな。まあいいぜ、契約の延長報酬としちゃ悪くねぇ」

言いながらそれを手渡す可奈美。とりあえずそのドロップアイテムは、甚爾のお眼鏡に叶う物ではあったらしい。リュックへと仕舞った彼の視線は、可奈美を一瞥した後姫和へと向く。

420 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:30:19 ID:5BDlKEvg0
「…それを言うのはやめとけ、十条のお嬢ちゃん。
衛藤のお嬢ちゃんの面は……どうしてもこれだけは譲れない矜持ってもんがある奴のそれだ。勿論俺や龍園の言葉じゃ梃子でも動かねぇだろうし、十条のお嬢ちゃんの言葉でも動かねぇ。
…それとだ衛藤のお嬢ちゃん、龍園や十条のお嬢ちゃんはお前さんの事を難儀っつってたが、俺も同意見だ」
「……ごめんね、姫和ちゃん。……もっと、話してたかったし、もっと楽しく、殺し合いなんかじゃない斬り合いがしたかった。
けど……わたし自身の意思じゃなくったって、みんなを傷付けて…舞衣ちゃんの心に、二度と治らないくらいの傷を付けて、切島さんを……殺してしまって……キラくんって子が、氷のドラゴンになった原因にもなっちゃった以上…責任を、果たさなきゃいけないから」

珍しく真剣な様子で言う甚爾の様もあって、姫和は黙り込むしかなくなった。
それを視て名残惜しそうに謝りつつ…それでも、戦いへと可奈美は征こうとする。
生じた責任から逃げるわけにはいかないんだと。
…そして背を向け去り往こうとする可奈美に……姫和は引き止めようとする言葉以外を発する事を選んだ。
ここで最後になる。言えなければ…二度と、伝える機会は訪れないだろうという確信が、彼女にはあった。

421 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:31:22 ID:5BDlKEvg0
「……これだけは、言わせてくれ、可奈美。
……お前は、お前は何も悪くは無い…無いんだ。
…悪いのはお前を操っていたエターナルとかいう仮面ライダーであって…その責任をお前が……負う必要が何処にある!?そんな必要は…お前にはないんだ!!」

自然と、涙声になってしまいながらも…姫和は叫ぶ。
他の誰かがお前のせいだと糾弾するとしても、それでもお前は悪くないと、自分は思っていると…伝えんばかりに。

「……ありがとう、姫和ちゃん。
…そう、言ってくれるだけでも…わたしはもう、じゅうぶんすぎるくらいにっ……!
……バイバイ、姫和ちゃん!」

拭うも、溢れるものは止まらない。最後なのに格好がつかないなぁ、と思いながらも…笑顔を向けて、お別れをする事を衛藤可奈美は選んだ。

422 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:32:56 ID:5BDlKEvg0
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「……すまない、龍園、伏黒。少し……ひとりにさせて欲しいんだ」
「…おう、行って来い」

可奈美を見送った後、言葉少なげに、そう懇願するかのように言う姫和。対し龍園はあっさりと受け入れる。
礼を言うと、そう言った後姫和は民家の外へと出た。そして数瞬後…声は啜り泣きから始まり、やがて慟哭に至る。
どうしてだと、よりにもよってあいつが、可奈美が何故そんな罪を無理矢理背負わされなくてはいけなかったのだという怒りと悲しみの混じった叫びが響いていた。
しかも可奈美だけでなく、結局母とも再会を果たせぬままに死に別れる形となり…傷は浅くはない。

「…ひとりで行かせてよかったのか?」
「お前がそう聞いてくるのは珍しいな。…ある程度の理解は出来ても、そこから寄り添ってやれるかどうかは別だ。そして少なくとも十条は、そんなもんなくても立ち上がれる類の奴だ。今出来ることと言えば…泣かせるだけ泣かせてやるくらいだろうよ」
「まあ十条のお嬢ちゃんは…誰かの前では泣き辛え類だろうからな」

423 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:33:29 ID:5BDlKEvg0
他人事みたいにごちつつ、クライアントたる龍園共々甚爾は待つこととし……。

「悪いな、待たせてしまった」

やがて姫和は現れる、その瞳にはもう涙は無い。

「これからどうするんだ?龍園」
「…そうだな、ここは──」

姫和と龍園が話し方針を改めて定めようとする中、伏黒甚爾の脳裏に過るのは先程の衛藤可奈美の顔。

(……最強(ごじょうさとる)に挑んだあの時の俺も、衛藤のお嬢ちゃんみてえな面だったのかもな)

ふとそんな考えが過ぎり、そこから更に考えは移ろう。

(……もし俺が、お嬢ちゃんと同じ立場なら……)

そんならしくも無い思考が浮かんできた為、やめだ。とそれを打ち切った。
本来の歴史にて、死後自らを再現した存在が一時顕現した事を…ここに居る天与の暴君は知る由もない。

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424 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:34:56 ID:5BDlKEvg0
一方、姫和達と別れひとり進む事を選んだ可奈美。
宛もなく歩く形になっていた所…地面が凍結した部分を発見した。

(…きっと、氷のドラゴンにされちゃったキラくんって子の遺した跡だ…宛も無い以上、行ってみよう)

キラと遭遇したその時は、この遺された猶予時間(ロスタイム)を使い切ってでも止めると決めながら捜索をしていた所……彼女は見覚えのある仮面ライダーを発見。武器を一時的に手放した上で会話を持ちかけ、時は今へと戻る。

「…何が目的なんだ、君は」
「……止めたい人が、会わなきゃいけない人がいるんです。わたしに…時間が残されてる内に…」

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とりあえず聞いてもらえそうだったのもあって、わたしはここまでの事情を…名前を聞いたらタイクーンって名乗ったその人に話した。

「…だから君は、彼を…キラ・ヤマトを止めて、舞衣って子に会って謝りたいと。
…僕としても、彼がああなった事には……」
「…そうですよね、止めたいって…思いますよね」

あの時斬り合って、後からだけど伝わってきたのは…この人が優しさと真面目さ故に、苦しんで、狂気に身を落としてでも全てをひっくり返そうと藻掻いていた事。
…なら、わかってくれると信じたいなあって。

「……今から優勝を狙うって考えはないのか?」
「…それは無理、です。
ただでさえ、みんなを傷つけて悲しませてるのに……そんなこと、できないよ。
それに、わかってるから…それまでわたしのこの身体は保たないし、王を名乗った赤い人には…悔しくて仕方ないけど…今でも勝てないって。もしわたしが、なりふり構わず殺そうとしても……同じ終わりを迎えるだけだから」

425 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:35:45 ID:5BDlKEvg0
その上で、わたしは言葉をがんばって選んで話す。
…こんな事なら、もうちょっと座学の方の勉強も頑張っておくべきだったかなあ…。

「…一応、一緒にキラくんを止めてくれるなら…貴方にもメリットはあります。
…わたしが消えたその時、複製されてるものの内武器やスキルは引き摺られて消えちゃうみたいで…だけどこのレジスターは、遺るみたいなんです。
その瞬間まで居ればひとつは手に入る。
…参加者にとっての枷と弱点だけじゃ、殺し合いに乗ってる人達が手に入れれても旨味が無い以上…何かしら、レジスターを必要とする何かがあったりしてもおかしくはなくって。乗る側でも…持ってて損は無いかなあ…と」

龍園さんに聞かされたレジスターについての推察を、自分なりの言葉で噛み砕いて言ってみたけど……

「……わかった、少なくとも君が消えるその時までは、一緒に行動して、キラ・ヤマトを止めるため動こう」

よかった…とりあえず、聞いてはもらえたみたいだ…。

426 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:37:03 ID:5BDlKEvg0
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(君は……)

可奈美の一連の言葉を、返答を聞いた瞬間、スザクの脳裏に浮かぶは……キラ達と共闘した時の事、考えてみれば2回程彼に命を救われているという事実、そして……。

(…君が今も生きていたなら、止めようと…動いたんだろうか)

篝の事も想起した上で…スザクは了承をした。

ほんのもう少し後、結果こそが全てだと開き直った辺りから巻き込まれるか、或いはルルーシュにより「生きろ」ではなく「奴隷になれ」などというギアスをかけられた世界線なら優しさをかなぐり捨て、或いは完膚なきまでに狂気に堕ちた上で、一時共闘を果たせるかどうかすら怪しかっただろう。
けれども根本的に、枢木スザクという男は優しさを捨てきれない人間である。

でなければルルーシュに全ては過去だのと吐かれた上でナナリーを助けようと持ちかけられた段階で、ナナリーは俺がとは言えないだろう。
お前の妹なんぞ知ったことかとなっても何らおかしくない仕打ちを、既にスザクはルルーシュにされていたのだから。
この地にて既に散ったナイトオブワンことビスマルク・ヴァルトシュタインが本来の歴史で評した通り、スザクにとっては弱さこそが優しさという強さの裏付けなのだ。

427 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:38:48 ID:5BDlKEvg0
「……ひとつ聞かせてくれ、可奈美」
「…なんでしょうか?」
「…キラの事は…殺してでも止めるつもりか?」
「……それは…できない、かな。
…もう、わたしの手は血塗れになっちゃったけど。でも、ううん……だからこそ、もう殺したくなんてない」
「……強いな、君は」

フレイヤを撃ってしまった直後、呆然自失のまま狂気に身を委ねた自分が、愚かに見えてくる。
優勝の願い自体は揺らがずとも、可奈美のその在り方は、確実にスザクへ影響を与えていた。

----

二人は凍結した部分のある場所付近を捜索がてら、現れたNPCを倒していく。
幸か不幸か、NPCの中に人間型のそれは居なかった。

「……そういえば、最初、同じ世界のみんなとは同じ時間から呼ばれたって思ってたんですけど…昔の姫和ちゃんの身体を使ってるアンクさんに出会って、巻き込まれた時間の違いに気付けたんです」
「…時間の、違い?」

無言だった所からいきなりそんな事を言い出した可奈美に疑問を抱きつつ、先程の疑問点への答えに繋がりそうな気がしたスザクは促しつつ聞く事とした。

428 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:40:30 ID:5BDlKEvg0
「例えば、薫ちゃんはわたしと姫和ちゃんが隠世って世界に飛ばされた直後からで、名簿に載ってる方の姫和ちゃんは、わたしと一緒に隠世から帰ろうとした時から。わたしはその辺りの諸々が片付いてから…って感じで」
「…呼び出された時間が違う、同じ世界や…或いは違う世界から参加者を集めてる、と」
(…やっぱり、あのルルーシュは……僕の、オレの知らないルルーシュなのか)

「……タイクーンさんは、なんで優勝を狙ってるんですか?」

答えに行き着いた上で、暫し無言が続いた後…再び可奈美が言葉を話す。
その様は沈黙に耐えれなくなったか、或いは寂しがり屋気質な所もあって話さずひとりと同じ状態なら自責や罪悪感に押し潰されてしまいそうだからかは、スザクにはわからなかった。

「…僕は、オレが…自分が犯した罪を、ルルーシュが犯した罪を清算させたい、したいだけだ」
「……ルルーシュさんへの復讐を、最優先にはしないんですか?…復讐を考えてた周りの人だと、昔の姫和ちゃんなら…そうしそうだなって」
「……彼に、ルルーシュにかけられたギアスのせいで、それは無理なんだ」
「…堀北さんって人がかけられてたのと同じ物?」
「同じ世界ならの話だが、そのはずだ」

そこからスザクは、既にミカやキラ達との交戦時に吐露したのもあり…気付くと己がかけられた「生きろ」のギアスについて話していた。

429 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:41:29 ID:5BDlKEvg0
「……ルルーシュさんとは、親友だったんですよね?」
「…少なくとも、親友だったのは、間違いないよ」
「…今はどうかはわからないけど、かけられた状況的に…その時のルルーシュさんは、貴方に死んで欲しくなかったから、生きて欲しかったから…かけたんじゃないかなって。…結果として、貴方にとって呪いになってしまうとは、思ってもなかったんじゃと」
「……お人好しの考え方だよ、それは」

かつての自らなら、ある程度納得していたかもしれないそれを暗に否定する。
すると可奈美はそれについては肯定も否定もしないまま…自らの推察を話した。

「生きる事を最優先に動くのなら…例えばの話ですけれど、生きる為に目の前の相手を倒す…とか、そういう方向に考えれば、ある程度の制御みたいなのは出来そうだけど…」
「…──君は僕が殺し合いに乗ってる側なのを忘れてないか?」
「忘れてませんよ、けど……今は味方ですよね?それに……剣を交えて…苦しみとかも、伝わっちゃったから」

気付きを得てはっとしつつ、釘を刺し一線は引こうとするスザク。最も良くも悪くも自分勝手な所のある可奈美にはあまり通じていないが。

430 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:42:33 ID:5BDlKEvg0
──そんな時だった、二人目掛けて氷により生成されたドラグーンが向かってきたのは。

「タイクーンさんっ…!」
「わかってる、ここに居たとは…!」

かたや二刀流によって、かたや武刃による一刀によってそれらを砕き捌いた二人の目前に現れたのは、氷細工のドラゴン。

「…黒い騎士に死体人形とは珍しい、エターナルの次の主が彼という解釈でいいのかな??」
「…ううん、わたしは…この人と一緒に、あなたを止めに来たんだよ。
…あなたがそうなった原因の一端は、この人にもわたしにもあるから、だからせめて……!」
「そうか、ならここで凍らせて二度目の終わりを迎えさせてあげよう」
「…君はここで止める、今の自分にとって…それがやるべき事なんだ!」

氷の三つ首竜が生成され向かってくる様に、可奈美とスザクは構えて迎え撃った────!

431 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:44:31 ID:5BDlKEvg0
壊れ行くシビトとギアスの呪縛を受けし騎士が氷竜へと立ち向かう所から時間は…放送直後まで戻る。
もう一つの戦いが、一つ隣のエリアにて幕を開けようとしていた。

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とりあえず互いに名前だけでも聞いた上で、放送…主催者共だけでなくルルーシュの奴のにも備えてその辺りにあった空き家に待機する事になった私達。
…放送まで余裕があったのなら、ここに居る准将じゃない方の、ドラゴンってのになっちゃったらしいキラを助けたいだけで、乗ってるかどうかとか言わなかったミカに色々聞きたかった所だけど…時間は待ってはくれない。
…シノンの言ってた茅場って奴が、疲れてそうな様子で現れて、脱落者の名前を──

『先生』

え?……??……なに、いって……。

『柊うてな』
『ダークマイト』
『シノン』

……なにかの間違いだって信じたかった私の淡い希望は、あっという間に打ち砕かれた。
…ダークマイトとかいう最低野郎のひとりは見てないけれど(多分他の最低野郎に殺されてしまったんだろう)、うてなも、シノンも……私の目の前で、死んだ。この目で視た。
…先生が死んだのが嘘ならうてなだってシノンだって死んでないはずで、でも間違いなく二人とも……私の、目の前で……信じたく、ないのにっ……!!!!

432 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:45:20 ID:5BDlKEvg0
…『心意システム』ってのの導入を行ったらしい茅場の放送が終わって、今度はルルーシュの奴の放送が始まったけど……私のあたまのなかにははいらない。
先生が死んだって、認めたくない、そんなはずがないってあり得ないって叫んで喚いて、受け入れたくない現実に…向き合おうとするので手一杯で、涙が止まらなかった。
そんな中…放送が終わりかけたその時、近くで苦しげな声が聞こえた気がした。

「…にげ、て……このままじゃ…私っ……■■■…──!?」

次の瞬間、空き家に隕石…隕石!?
…とにかくそれが降ってきて……誰かに突き飛ばされた後、気付いたら……空き家を押し潰す隕石に、その上に「飛んでいて」日本刀を付けてる、ヘイローのあるキヴォトスの生徒が居た。

「……聖園、ミカ……?」

ヘイローの形は見えない。私達キヴォトス人はお互いぼんやりとした形でしか観測できない。けれど……今のミカが変質してしまってるのだけは、なんとなく…ぼんやりとしたヘイローだけで、わかる。
……雰囲気は、もうひとりのシロコ先輩のそれと似ていて……。

「…せん、せい……キラ、くん……────!!!!」

うわ言みたいに呟き、意味のわからない、言葉として成り立ってるかもわからない叫びをあげながら彼女は、いつの間にか手に取ってた?造ってた?銃を空に浮かべて……私達目掛けて、砲撃をしてきた。

433 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:45:48 ID:5BDlKEvg0
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『先生』

……え????そんなわけないよね??だって、チェイスおにいさんだって先生が…いや、あの銀色のNPCみたいに姿を変えれる奴はいるし、誰かが化けて先生に…そんなはず、先生がそう簡単に死ぬわけがないよね??だってだって、わたしのみかたでもあるって…せんせいがいなかったら、わたし───

『望月穂波』
『柊篝』

……キラくんが殺してしまった子に……わたしのせいでしんだ篝ちゃん。
……2人の名前がよばれたってことは先生は、先生はもう……。

『心意システム、実装完了』

……なに、これ……くるし、っ……わたし、どうなって???!?
…そんななか、きこえてきたのはルルーシュのことば

『そして私自身も仮面ライダーエターナルを僭称した男と仮面ライダータイガを僭称した松坂さとうをこの手で処断することが出来た!』

……なにそれ。グリオンとエターナルと、後ギギストのせいでああなったみたいなものなのに。わたし自身が一番悪いのはわかってるけど…でも、エターナルが追い詰めた結果ああなったのになのになんで………ゼインまで、私が潰すべきなのに…なのに潰そうって!!!!

次の瞬間……わたしのからだはわたしのせいぎょをはなれそうになって…咄嗟にセリカちゃん、だっけ?
その子伝えようとしたけど……そこでわたしは、かんぜんに身体をうごかすことができなくなった。
…ただわたしは…からだがかってに、みんなに向けて攻撃しだす姿をみてるだけしかできなくって……そっか、これが……キラくんの記憶をみて、それなのに…サオリへのにくしみをすてれないばつ、なのかな……?

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434 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:46:10 ID:5BDlKEvg0
心意システムの実装により、聖園ミカに異変が生じた。
精神的に不安定極まりない中、復讐を果たすため優勝するという捨てれぬ想いと、キラ・ヤマトを救いたいと、救われなきゃいけないんだという想い、それに……怒りを向けるべき対象のひとりたるエターナルがルルーシュにより殺された上、同じく怒りを向けるべき相手のゼインを殺そうとしている事への怒り。自分自身への怒りや呆れ、憤り等…。
それら全て、正も負も入り混じった感情が心意により高められてしまった結果……意図しない暴走が起きてしまった。

意識は明確なまま、身体の制御が効かず衝動のまま目に付く物全てを壊そうとする…これを暴走と言わずして何というのか。
なぜこんな状態になったかというと、キラ・ヤマトの過去を視てしまい、救われるべきだと願ってしまったのが大きい。それが無ければ、悲しみと怒りのまま優勝を狙うのみだっただろう。

そして彼女のヘイローは変質、銀河のようなそれからブラックホールを彷彿させるそれへと変わってしまう。
……その様はテラー化…存在の反転と呼ばれるそれと似ていた。
…最も、反転については詳細な条件は不明、これはあくまで心意により引き起こされた紛い物。
称するならテラー『擬き』とでも付けるべきもの。

兎も角それは、他参加者へと牙を剥く。

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435 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:47:01 ID:5BDlKEvg0
「…ぁ、セリカちゃん…無事で…よかった」
「…マイ、もしかして、アンタが…!」
「…まって、セリカちゃん…これ…」

咄嗟にセリカを隕石から庇う形で突き飛ばした舞衣だったが、自らも直撃は避けたものの衝撃で吹っ飛ばされ、写シこそ間に合ったが地面に身体を打ち付け解除されていた。

狩る者のスキルである丹田法の訓を使い味方全体の体力を上昇させるも…それまでの疲労や心労、ダメージもあって気絶寸前の状態に陥る。

「…刀なんて、使ったことないわよ!?」
「…だいじょう、ぶ…腰に付けてるだけでいいから…きっと、いまのわたしなんかより…あなたがもってたほうが…いい、はず……ミカ、ちゃんを…」
「マイ!?ちょっと!?最後まで言い切りなさいよ……!!」

御刀である千鳥をセリカに託すかのように渡したのち、最後まで言い切らないまま舞衣は気絶してしまった。
一瞬最悪の可能性が、また目の前で失ってしまったのではという考えがよぎるも……そうではないと安堵した上で、舞衣をその場から退かして寝かせる。

(いつもより身体が軽い、ような…この刀のおかげ?)

そのまま放たれる砲撃を躱すも、ミカ本体が殴りかかってくる。
御刀による異能の行使に全然慣れていないのもあり、危うく強烈な一撃を食らいそうになるも……介入に入るは魔戒剣を振るう流牙。

436 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:48:22 ID:5BDlKEvg0
「リュウガさん…!」
「リュウガ、策があるんだろう!?此処は俺達に任せろ!」
「僕も…昔の僕の分まで彼女を止めるために…戦う!此処は任せて、リュウガさん!」
「セリカ、舞衣は?それとミカがああなった事に心当たりはあるか?」
「マイは気絶しちゃったけど無事で…似た事になってた先輩と出会ったことは、あるわ…!…その時と違って、今のミカは暴れ回ってるけど…」
「…そうか。…少し試したい事がある、その間は准将のキラやアスランと一緒に…ミカを留めておいて欲しい」
「…よくわからないけどっ、それで彼女をどうにか出来るのね!?」
「様子がおかしくなり始めたのが先生の名が呼ばれてからな以上…上手く行けば助けれる筈だ」
「なら……信じるわ!」

クアンタの起動鍵を使った准将とズゴックの起動鍵を使ったアスランがミカを引きつける中、ここで使用可能となった支給品…とりよせバッグを流牙は行使する事に。
彼を信じる形で、セリカも准将とアスランの元へ向かう。

(…あんな有様になっても、それでも先生や…ドラゴンにされた方のキラの名前を呼んで……そこまでアンタにとっては、大事だってのはわかる。
それに、私にはたしかに聞こえてたわよ。
……たすけてって、言おうとしてたのが!)

「…アンタを助けて、ドラゴンにされた方のキラも助ける…マイや、先生の分までやってやるわよ!!」

隕石をまた降らせんとするテラー擬きに、黒見セリカ…否、マジアアビドスは啖呵を切った。

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437 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 00:48:52 ID:5BDlKEvg0
2つの戦場での戦いが佳境を迎えようとする最中…赤き王の男が付近に現れていた。

「…クズとカスとゴミと塵共が戦う音が聞こえる。ゴッカンの囚人共にでも聞かせておけばいいものを」

吐き捨てるかのように言い放つはこの殺し合いでも最強クラスの存在、宇蟲王ギラ。
アビドス高校を後にした彼は、放送前は出くわした五道化のなり損ないを掃除したり、放送を聞き唾棄すべき存在であるもうひとりのギラが存命な事に苛立ちを抱き、ルルーシュの演説を不愉快そうにしたり、降りかかる火の粉を振り払っていたらドロップアイテムで遠方へ飛ばされてしまったり、戻るために短距離転移を連続で使っていたら制限により一定時間使用不能になったりしつつ今に至った。

配下こそ一連の流れで今は居ないが、それでも戦場に現れれば……その瞬間、蹂躙が始まるだろう。

果たして、この一連の戦闘の結末やいかに。

438 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 01:40:32 ID:5BDlKEvg0
【エリアC-7/租界内の民家/9月2日午前11時35分】

【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:疲労(大)、精神ダメージ(大)
服装:平城学園の制服
装備:十種影法術@呪術廻戦、無銘刀・白@戦国BASARA3
令呪:残り二画
道具:治療キット@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る。
00:…可奈美……母さん……。
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため。
02:皆のことが心配。
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
04:テレビ局周辺で参加者を探すか、調伏で手札を増やすか…可奈美の頼みを聞く方向に行くか…
05:レンのことが気掛かり。とりあえず生きてはいるようだが…残して良かったのだろうか。
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
※十種影法術は現在玉犬、鵺が調伏済みです。また他にひとつ式神を調伏しましたが何を調伏させたかは後続にお任せします。
※可奈美に舞衣、薫、沙耶香、タギツヒメ、リュージ、アンク、はるか、チェイス、果穂、千佳、
ギギスト、スザク、やみのせんし、キラ、アスラン、流牙、ミカへの伝言を頼まれています。各々の内容は後続にお任せします。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園から聞いています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(大)、精神的疲労(小)、綾小路への怒り
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア、モビルワーカー(オルガ機)@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
02:テレビ局周辺で参加者を探していく。それか、先に十条の調伏に付き合うか?
03:綾小路の野郎、何をやってやがる。
04:他の同じ学園の連中は……まあ、合流する必要もねえか。真鍋と軽井沢は死んだみたいだが…。
05:グラファイトの言う友を探してみる。
06:仮面ライダーに変身する道具や起動鍵を、なるべく多めに手に入れておきたい。
07:蛮野はイマイチ信用出来ないが、レンのお守をする気も無い。
08:もし、衛藤のように綾小路の野郎が操り人形にされてたらその時は……俺の手で終わらせる。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
※個性『スティール』により肉体を鉄のコーティングが可能になりました。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察もしています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:疲労(中)、軽度〜中度の火傷
服装:仕事用の私服
装備:アクセルドライバー&T2アクセルメモリ@仮面ライダーW、エンジンブレード&エンジンメモリ@仮面ライダーW、衛藤可奈美から譲渡されたドロップアイテム×1
令呪:残り三画
道具:100万が入ったトランクケース@現実、バショー扇@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働くが、まあ上乗せは欲しいところ。取り敢えず追加分その2で更に契約更新。
02:加茂憲倫、と来たか。
03:まさかこんなところで禪院家の術式が見れるとはな。
04:あんな化け物まで参加させたのか?イカレてんな。
05:…強さは兎も角、アレはアレでやべぇな衛藤のお嬢ちゃんは。
06:らしくねぇ考えはやめだ。
参戦時期:死亡後
備考
※可奈美からドロップアイテムを貰いました、更に契約更新を決める程度には伏黒にとっても価値のあるもののようです。内容は後続にお任せします。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園から聞いています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

439 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 01:57:42 ID:5BDlKEvg0
【エリアB-7/9月2日午前11時45分】

【枢木スザク@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、狂気(沈静化)、情緒不安定(沈静より)、シビトへの嫌悪感(大)、気付き、キラを止めるという決意
服装:軍服(ナイトオブラウンズ)
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ、ブジンソードバックル@仮面ライダーギーツ、ニンジャレイズバックル@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、火炎瓶@現実
思考
基本:この殺し合いにのって理想の世界をかなえる
00:キラを止める。責任の一端は自分にもある以上…今は…!
01:ルルーシュ…君が悪いんだ……けれど、本当に君は僕の知るルルーシュなのか…??
02:みんな、みんな殺すんだ…相手がマーヤだろうと…殺してかなえなきゃ、俺はなんのために…。
03:これが僕の…オレの選んだ道…そのはずだ…けれど…今は。
04:グリオンとゼインは見かければ最優先で殺す。
05:ルルーシュへの復讐をはたす。けれど本当に、あのルルーシュは…?
06:この生きろのギアスの呪縛があるかぎり、信用を得れるはずなど…だが……!!
07:ギラの言葉に…………
08:彼女(篝)が死んだのか……
09:…君は強いな、可奈美。
参戦時期:フレイヤ射撃後
備考
※業スザクではないです。
※「生きろ」のギアスの呪縛は問題なく発動します。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も可奈美越しに聞いています。
※自分とルルーシュ達が別の時間或いは別の世界から巻き込まれた可能性に気付きました。


【衛藤可奈美(シビト・非参加者)@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、自我復活、精神的ダメージ(極大)、返り血、自壊(小〜中)
服装:美農関学院の制服(両腕、腹部、胸元に破損)
装備:岡田以蔵の刀(複製)、冨岡義勇の日輪刀(複製)、御刀・千鳥(複製)
道具:不明支給品の複製×1(オリジナルは現在アンクが所持)、アスラソキノコ@ネットミーム×1
思考
基本:のこされた時間を使って、たたかう
00:タイクーンさん(スザク)と一緒にキラくんを止める。
01:…できれば舞衣ちゃんに謝りたい、緑谷くんって人にも……。
02:…この格好、恥ずかしいけど……そんなこと言ってられない…!
備考
※以下の技を「視て」覚えています。
・宇蟲王ギラが放った連撃(ただし現状では使いこなせません)
・氷竜と化したキラ・ヤマトの高速での突き上げ
柳瀬舞衣が使った「金翅鳥王旋風」 (ただし威力や蒼炎の再現は出来ません)
・やみのせんしが使った特技「はやぶさ斬り」「しっぷうづき」、彼が変身した仮面ライダーデザストの技「カラミティストライク」(ただしカラミティストライクは紫緑の風の再現は出来ません)
・十条姫和が使った石田三成の技(どれを覚えたかは後続にお任せします)
※アスラソキノコを採取しました。精神面に影響が出始めています。
※ソードスキル:勝利のルーン@サガフロンティアを習得しました。
※撃破や自壊時、複製されてるレジスターをドロップするようです。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園越しに聞いています。
※その他龍園達と何を話したかの補足等は後続にお任せします。

【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED】
状態:内に秘めた悲しみ(大)、氷竜化、暴走状態、ダメージ(小)
服装:SEEDでの連合の軍服
装備:王印@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸(発動状態にある)
令呪:残り一画
道具:ホットライン、預託令呪@Fateシリーズ、身隠しの布@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
思考
基本:凍結
01:虚しい。
参戦時期:SEEDの本編及びRecollection終了後、AFTER-PHASE「星のはざまで」及びDESTINY以降よりは前。
備考
※篝との会話で隠世についてや可奈美達の話についてある程度は聞きました。
※篝やミカとの会話で刀使ノ巫女世界についてやブルーアーカイブ世界についてある程度把握しました。
※支給されていたソードスキル:疾風(シュトゥルム)@ストライクウィッチーズシリーズを習得しました。
※ギギストの力に適合し本来より更に強くなっています。
※現在暴走状態にあります。キラ当人の人格は再凍結されています。
※氷でドラグーンを生成する事が可能です。

440 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 02:12:47 ID:5BDlKEvg0
【エリアB-8/9月2日午前11時25分】

【道外流牙@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、申し訳なさ
服装:魔法衣
装備:イグスの魔戒剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、舞衣の手作りクッキー、ゼロノスカード(ゼロフォーム用、残り枚数未定)&ゼロノスベルト@仮面ライダー電王、とりよせバッグ@ドラえもん
思考
基本:守りし者としての使命を全うする。
00:とりよせバッグを使い、ミカを助ける為に助力する。
01:舞衣たちと行動する。りんねを助けに行きたいが…。
02:現状力は1から3割ぐらい削がれてるか。
03:イグス、もう少し力を貸してくれ。
04:羂索、人を纏う怪人たるお前はホラーも同然。
  お前とその一味の企てを打ち砕き、牙狼剣を取り戻す。
05:ソウジ、キズナブラックの事は頼んだぞ。
06:ジンガたち悪しき魂を警戒
07:…舞衣、すまない。ライオットを助けれず、スキルを君に使わせてしまった…。
08:准将、アスラン、セリカ…ミカの抑えは任せたぞ。
参戦時期:ハガネを継ぐ者終了後
備考
※ハガネの鎧は令呪無しでも召喚出来ますが、牙狼の鎧は牙狼剣が手元にある状態で令呪を使わなければ召喚できません。
※ソウジ、舞衣、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や刀使ノ巫女世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。

【アスラン・ザラ@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、不機嫌(極大)、切島についての記憶を忘却
服装:私服
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン×2、ズゴックの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、シン・アスカケーキ@ネットミーム、切島鋭児郎のランダム支給品1、舞衣の手作りクッキー×2
思考
基本:このゲームを止める。
01:ラクスたちは兎も角、名前が二つもあるキラは…俺とあのニセモノとは違って過去と未来…といった感じか。
02:ラウ・ル・クルーゼ……お前は復活していたがニコルは?
03:…ニセモノの俺、理解不能だが哀れでもあるな…。
04:あの男(やみのせんし)には、少し言い過ぎたな。
05:病院からテレビ局の様子を見に行きたい所だったが…。
06:…マイ、それにライオットという彼…俺が不甲斐ないばかりにっ…!
07:リンネの事も助けに行きたい所だが…。
08:…たとえ過去のキラだろうと、死んでる姿なんて見たくはないな。
09:今のキラと話してみたい所ではある…が、今はミカを止める番だ。
参戦時期:本編終了後。
備考
※切島と情報交換を行い、ヒロアカ世界に関する知識を得ました。しかしゼロノスカードの消耗により切島の事を思い出せません。得た知識を覚えているかは後続にお任せします。
※流牙、舞衣と情報交換を行い、牙狼世界や刀使ノ巫女世界に関する知識を得ました。
※名簿の並びからルルーシュ、綾小路の関係者を予測しました。
※支給されていたソードスキルである紅蓮の錬金術@鋼の錬金術師を習得しました。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。

441 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 02:13:15 ID:5BDlKEvg0
【柳瀬舞衣@刀使ノ巫女】
状態:気絶、ダメージ(中)、精神的ダメージ(極大)、疲労(大)、狩る者のソードスキル使用、消えない心の傷、自殺衝動、トラウマ、戦闘時以外の視野狭窄
服装:美濃関学院の制服(女子用)
装備:越前康継@刀使ノ巫女
   魔導輪イルヴァ@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ホットライン、舞衣の手作りクッキー(残り2袋)、ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ
思考
基本:刀使として戦う。
00:わたしが、きりしまさんをみごろしにしたんだ。
01:(気絶)
02:道外さんたちと行動する。よろしくね、イルヴァ。
03:姫和ちゃんたちや、空蝉丸さんたちを探す。
  まずは九堂りんねさんを助けに行きたかった、けど…ミカちゃんを、とめないと…。
04:ジンガや宇蟲王ギラたちには注意する。
05:キズナブラックさん……。
06:…ごめんなさいっ…切島さん…私のせいで、あなたは……ッ!!
07:…止めに行かなきゃ、いけないのに…可奈美ちゃんも、真昼さんもニセモノのアスランさんも…。
08:…姫和ちゃん達や、緑谷さんに…どんな顔で、会えばいいの…??
09:…篝さんやタギツヒメが抗おうと?…本当なのかも、しれない
10:…可奈美ちゃんを…止めれなかった…止めなきゃ、行けなかったのに…なのにっ…!!
参戦時期:アニメ本編22話「隠世の門」にて、可奈美を抱き締めて涙を零す彼女に寄り添った後から。
備考
※魔導輪イルヴァと契約しました。
※支給されていたソードスキル:狩る者を習得し力を行使しました。適合までどれだけ時間がかかるか等については後続にお任せします。
※ブーストマークⅢバックルの効果で、所有しているだけで攻撃や防御時に蒼炎が武器へと付与されます。
※ソウジ、流牙、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や牙狼世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。
※自分が命惜しさに切島を見殺しにしたと思い込んでいます。また自分が千鳥に選ばれなかったから使えないと思い込んでいます。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(大)、決意(大)
服装:コンパスの制服
装備:ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
令呪:残り三画
道具:ガンバレルストライカーの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED MSV、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
00:今は、昔の僕の分までミカさんを止める。セリカやアスランと一緒に。
01:ラウ・ル・クルーゼ……分かった。
  今度も示すよ。僕の守りたい世界を。
02:ホナミさんとアビドス砂漠を経由してテレビ局を目指す…予定だったけど、竜になってしまった僕を止めてから向かおう。
03:ビスマルク・ヴァルトシュタイン……中々の強敵だった
04:ラクス、アスラン……イザークにディアッカに、ニコル?
05:どうして僕やアスランの名前が二つも?
  多分僕が准将の方だろうけど……
06:あの僕を止めないと……!
07:…ごめん…助けられなかった…!
08:あのMS…ストライクフリーダムに、僕が設計してる筈のプラウドディフェンダー……!?
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-には英文が刻まれています。
帆波は『世界はこんなにも簡単だと示してください』と訳しました。
※帆波と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。
 アヤネの追跡に気づいていたかどうかは後続の書き手様にお任せいたします。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。

442 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 02:13:41 ID:5BDlKEvg0
【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、精神的ダメージ(極大)、疲労(絶大)、動揺による情緒不安定気味(大)、魔女、キラと篝への罪悪感(特大)、脳に焼き付いたトラウマ、主催への怒り、羂索やシビトへの嫌悪感、心意暴走によるテラー擬き化
服装:いつもの制服(返り血を浴びてる)
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(午前10時に使用、1時間47分変身不可能)@仮面ライダーギーツ、千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、心意で生成した銃@オリジナル
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ(午前8時25分に使用、12分使用不能)、祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、、イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、ホットライン×2
思考
基本:魔女らしく荒れる。……それは、変わらないよ。……でも。
00:せんせい…きら、くん……たす、けて……。
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげるつもりで……でも……これが、わたしのばつなのかな……??
02:ゼインは見つけ次第壊してやる。
03:…せめて、キラくんは止める。キラくんを助ける。キラくんは…救われるべきだよ、私なんかとは違って…!
04:先生のことを詳しく聞く。殺し合いに乗った?そんな訳ないじゃん馬鹿なの?????でも、あのNPCの事考えたら……
05:邪魔したあの救世主って名乗った人(リボンズ・アルマーク)と仮面ライダーエターナル(大道克己)、それにキラくんをあんなにした魔王グリオンとミームの方のアスランくんは…次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
06:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
07:…しれっと逃げてたギギストは…次会ったら一発くらい殴ってもいいよね??
08:…あの人(スザク)は…どうするんだろ。
09:やることぜーんぶ、裏目に出てばっかりだなぁ…………
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
 一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※篝とのやりとりで刀使ノ巫女世界についてある程度把握しました。
※ドロップしたソードスキル:魔王ゼロのショックイメージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーを習得しました。10時45分に使用した為5時間32分使用不能です。(午後4時45分に再使用可能)
※キラ・ヤマトの記憶を視た為ガンダムSEEDとSEEDRecollectionについて把握しました。ただしキラ視点からわかることのみです。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。

【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)魔王グリオンへの怒り(極大)、現状への混乱(大)、決意
服装:アビドス高校の制服(リンチにあったため汚れ 大)
装備:エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
 トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて、千鳥@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
 ワープテラケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
 テラー世界線のリトルマシンガンⅤ@ブルーアーカイブ
思考
基本:こんな殺し合いにはのってやらない
00:リュウガさんを信じて、准将やアスランと一緒にミカを止める。それからキラも助けてやるわよ!あんなになってそれでも、名前呼んじゃうくらいには…ミカにとって大事な人な筈だから!
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……あの人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:マジアベーゼ……アンタの力、貰うわよ。
07:シノン……先生……!!
08:今のミカの雰囲気、もうひとりのシロコ先輩に近いような……。
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
※トランスアイテムで魔法少女に変身できるようになりました。
 その姿をマジアアビドスと命名しています
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。

443 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 02:15:04 ID:5BDlKEvg0
【エリアB-9/9月2日午後12時35分】
【宇蟲王ギラ@王様戦隊キングオージャー】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、脛に引っかき傷
   トランクスへの怒りと期待、???(大)、人間態、苛立ち
服装:王の装い
装備:オージャカリバーZERO@王様戦隊キングオージャー
令呪:残り三画
道具:ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:塵芥ども悉く捻り潰し最後の勝者となる。
00:ゴミカス共を纏めて片付ける好機か。
01:青い戦士(トランクス)を敵と認め殺す。
02:他の雑魚共は殲滅する。
03:別次元の自分も殺す。ギラという名の王は一人でいい。
04:最後の勝者の証を得たらゴミ(羂索)とカス(クルーゼ)とチリ(茅場)も片付ける。
05:下僕共など歩けば幾らでも付いて来るだろう。
06:所詮赤い王も逃げ蟲。
  やはり期待できるのは青い戦士ぐらいか。
07:……小石風情が
参戦時期:ヤンマたちを処刑しようとしてキョウリュウレッドと戦闘になった直後。
備考
※あらゆる昆虫生命体を支配する力はある程度制限されていますが、発動自体は問題なく行えます。
※宇蟲王の転移能力で短距離であればワープ可能です。
 距離や回数には制限があります。現在暫くは使用不能です。

444 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 02:27:19 ID:5BDlKEvg0
【ドロップアイテム紹介】
・火炎瓶@現実
…読んで字のごとく火炎瓶。使い捨て。

【NPC紹介】
・ランスロット@コードギアス 反逆のルルーシュ+カオスパロボシリーズ(ネットミーム)
…本来は枢木スザクの乗機となる戦局を単騎でひっくり返すKMF。
しかしカオスパロボではこの機体が5体とガイヤー1体が六神合体することでゴッドマーズになる。
ユフィを失って以降のスザクを元にしたAIが積まれた上で会場内に放り込まれているようだ。

445 ◆8eumUP9W6s:2025/07/01(火) 02:28:51 ID:5BDlKEvg0
投下終了します、長引いてしまい申し訳ありません。
タイトルは>>430までが「昨日へは決して進めないから」で、それ以降が「暴走〜テラー?」 です

446 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/05(土) 02:01:27 ID:nXea6tk20
イザーク・ジュール、大河くるみ、亀井美嘉、冥黒うてな 予約します

447 ◆8eumUP9W6s:2025/07/07(月) 00:06:15 ID:vDVByiRQ0
衛藤可奈美(シビト)、枢木スザク、キラ・ヤマト(SEED)、黒見セリカ、道外流牙、キラ・ヤマト准将、アスラン・ザラ、柳瀬舞衣、聖園ミカ、宇蟲王ギラ、覇王十代、セレブロ、緑谷出久(デク)で予約と延長を行います

448 ◆2dNHP51a3Y:2025/07/07(月) 00:33:03 ID:5L3HpAtM0
小鳥遊ホシノで予約します

449 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:29:13 ID:8dIFwevs0
投下します

450亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:30:15 ID:8dIFwevs0
「馬鹿な……馬鹿な!」

運営、そしてルルーシュの放送が終わるまではどうにか耐えられた。
しかしもともと激情家のきらいのあるイザーク・ジュールにはそこまでが限界だった。

「イザーク……」

たまたま何の戦闘経験もない東西南北(仮)全員が最初の8時間を生き延びたのは奇跡と自覚しているくるみは激情を吐き出すイザークを止めれなかった。

「ディアッカが、ディアッカが死んだだと!?
そんな訳があるか!
アイツも伊達で赤を着てる訳じゃないんだ!」

『しかしイザーク。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは兎も角、羂索たちがこの放送で嘘をつく可能性は極めて低い』

「分かってるっ!
そんなこと、分かってるんだ!」

イチローの指摘に取り出したヴァルバラッシャーを床に振り下ろすイザーク。
一般家庭の床など簡単に砕けちり、木屑が宙を舞う。

「……情けない隊長で悪いな」

『構わない。それはディーヴァの言うところの、イザークがディアッカに心を込めているということなのだろう?』

「ちょっと外の空気吸ってきなよ。
またゆうちゃんたちから電話来たら受けとくから」

「すまんな」

そうとだけ言ってイザークは外に出た。
殆どの参加者にとって最悪の知らせが伝えられた後だと言うのに太陽は昇り、空は皮肉なほど明るい。

「馬鹿者……無断脱隊の軍法会議もまだだったんだぞ」

誰に聞かれるでもなく呟いた言葉は先程までの勢いなど微塵も感じられない。
一時の激情などそう長続きしない物だ。

(また、前のように実は生きていた……なんてことは流石にないだろうな)

部下だったからこそわかるが、ラウ・ル・クルーゼの目はそう簡単にごまかせるものではない。
それを差し引いても現実にこれほどのコトを行っておいて死人の数え間違い何て初歩的なミスを犯すとは思えなかった。

(ここはお前でもたった数時間で殺される程の戦場と言う訳か)

イザーク自身も無傷ではない。
母からもらった手首から先はプラントの再生医療をもってしても完治不能の重傷を負い、今は代用の無骨な鋼の拳が付いている。
これ以上のことが仲間や他の誰かに起こらない保証などなかったのだ。

「アスラン、ニコル……お前たちは無事なんだろうな?」

返事など期待しなかった呟きだが、その直後にイザークの頭上スレスレを光の斬撃が飛んできた。
そちらを向くと金色の拘束帯で作った人型が天使のマネキンを取り込んだ様な異形が居た。

「あ……」

「丁度良い。
今すぐ暴れたかった所だ!鉄鋼!」

ヴァルバラドに姿を変えたイザークは金色の怪人、エンジェルマルガムに斬りかかる。
ラッシャーブレードが突き立てられオレンジの火花が散った。

451亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:31:49 ID:8dIFwevs0
-----

イザークが出てからしばらくしてラクスたちからの電話がかかってきた。
やはりと言うか、電話越しの声は暗い。

『エルスマン大尉のことは、残念でした』

もしこの場にイザークが居れば呼び方の差異から時間軸の違いに気付けただろうが、残念ながらそうはならなかった。

「イザークも荒れてました。
そっちは大丈夫ですか?」

『唯一知り合いを亡くした私が気を遣われたぐらいです。
しかし今、この島のどこかに必ず私たちと比較にならない悲しみの中に膝をついた方も、傷ましくも立ち上がった方もいる以上、我々も立ち止まる訳にはいきません』

「……ラクスさんは凄いね」

『クルミ?』

「なんか、裏方ばっかりであんま役に立ってる気がしなくて……戦えたりした方が良いのかな、って」

『このままで良いかは分からないが、引き続き当機の整備を続けてもらわなくては困るぞ』

「イチロー?」

『当機はくるみの整備ありきで稼働しているのだ。
戦闘にかまけておろそかにされては困る』

機械故に表情の変化は読み取れないが、自分を気遣うような言動に頬が緩む。

『良い仲間を持ちましたね』

「うん。ありがとうイチロー」

『ノープロ……ではなさそうだな。
どうやらイザークが戦闘を開始した様だ』

「分かった。ごめんラクスさんまた後で!」

電話を切るとイチローと共に走り出すくるみ。

『くるみ、敵機と思しき機影が迫ってくる』 

「え?それってこのまま連れてったら不味いんじゃ……」

『幸い編隊から逸れたらしい一機だ。
当機が迎撃する。早くイザークのところへ』

「分かった」

イチローと別れたくるみはそれなりの距離を走った先でイザークことヴァルバラドとエンジェルマルガムが戦っていた。

「よかった、イザーク無事だ」

「てりゃあああーーーっ!」

大上段から振り下ろしたヴァルバラッシャーをフォールンハルバードで受けようとするエンジェルマルガムだが、イザークはヒット直前で剣を止め、スナップを効かせてフォールンハルバードを打ち上げそのまま突き攻撃に繋げる。

「うわぁあああ!」

(今の声!……嘘、まさか……)

「ええいしぶとい!」

しせいを崩したエンジェルマルガムにイザークはそのままケルビムマズルからエネルギー弾を放つ。
痛みに悶えるエンジェルマルガムだが、変身が解除される程ではない。

(ちっ!やはりエース用とは言え量産可能なヴァルバラド程度の性能では限界があるか……)

金のマルガムは正規の仮面ライダーであるガッチャードであってもガッチャーイグナイターを用いた強化形態にならなければ倒せない。
いくら赤服のイザークであってもヴァルバラドでは撃破はできない。

「う、うう……」

しかし変身者の事情も加味すれば話は別だ。
連続攻撃に晒され続けて体力に限界が来たのか変身を解除された亀井美嘉が倒れ伏す。

452亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:32:22 ID:8dIFwevs0
「プレイヤーだったのか。
てっきりNPCモンスターかと思ったが、まあ良い。
手こずらせやがって!」

イザークがヴァルバラッシャーのケルビムマズルを美嘉に向ける。
そしてそのまま引き金を

「駄目!美嘉ちゃん!イザーク!」

「クルミ!?」

走り込んで来たくるみがイザークの前に割って入った。
そうなると当然、銃口はくるみに向いている形になる。

「ぐああああああーーーっ!」

次の瞬間、激しい火花を散らしてヴァルバラドが倒れ伏した。
なんとか離さなかったヴァルバラッシャーを杖代わりに立ち上がると、亀井美嘉の背後からブラックホールの底かのような黒い腕が無数に伸びているのが見えた。

「み、美嘉ちゃん?な、何これ?」

幸いくるみにその腕は及んでいない。
美嘉本人が彼女を守る様に抱き込んでいるからだ。

「許さない……許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!
キィリィトォオオオーーーっ!」

「くっ!」

『イザーク!』

背後からのイチローの声に振り返ると脚部を破壊されたNPCモンスターの無頼を背負い投げの要領で投げる所だった。
放物線を描いてイザークの前に落下したそいつは美嘉の黒い腕に捕まってグチャグチャに捻り壊されてしまった。
だがその隙にイザークとイチローは離脱することに成功する。

「もう奪わせないキリトにもグリオンにも奪わせない奪うなんて許さない許さない許さない……」

「美嘉ちゃん!美嘉ちゃんしっかりして!
さっきのはイザーク!
キリトって人でもグリオンって人でもないよ!
美嘉ちゃんってば!」

いくら他の同年代に比べて小柄とは言え、なんの訓練も受けてない女学生に過ぎない筈の美嘉とは思えない腕力に捕まったくるみは力づくの脱出を諦め、どうにか美嘉に正気を戻せないかと呼びかけ続けた。
しかし美嘉は虚な目で自分でない誰かに呪詛を吐くばかりでくるみの声など届いていない様に見える。

「良い感じに仕上がりましたねえ。
大河くるみがもう少し怖がってくれたら百点満点でしたが……」

彼女がそうなる原因を作った悪意に満ちた死体人形がニヘラと建物の屋上から笑っていた。

-----

放送で茅場晶彦が告げた名前の中に、やはりシノンの名前があった。
あの状況で、外ならぬ自分のせいで致命傷を負いながらも敵も味方も全員逃がして見せた彼女は死んだ。
魔王グリオンなんて当てにした、戦場で気を緩めた、九堂りんねのせいなんかではない。
悪魔と知りながら悪魔と手を組んだ自分のせいだ。
そんな自分のせいでまたグリオンやキリトのような悪鬼が人を殺す。
殺されるのが自分ならまだいい。
でもこの子は、くるみちゃんは駄目だ。
蘭子さんも駄目だゆうちゃんも駄目だ代葉さんも駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ

「冥黒に染まれ」

私の、亀井美嘉の心はその言葉通り深くに沈んだ。

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魔王グリオンより冥黒王ギギスト討伐の任務を与えられた冥黒うてなだが、1人でやる気はなかった。
いや、実質的には1人かもしれないが誰かを使わないと言う発想がなかった。

(どうせ任務を達成するなら最上の結果を求めましょう。
きっとグリオン様もそれを期待して私にこんなにたくさんの『お小遣い』をくれたのですから)

彼女の手には元々柊うてなに支給されていたが、趣味に合わないからと死蔵していた超A級以上のエージェント用ケミーライザーと6枚のケミーカードが握られていた。
ケミーライザーに合わせてか6枚とも黒鋼スパナと浅からぬ縁のあるケミーが封じられており、もし魔王グリオンが直接遭遇したのが九堂りんねでなくスパナだったらこの冥黒うてながヴァルバラド*テラーとでも呼ぶべき擬似ライダーに仕立て上げられたかもしれない。

(しかし、放送直後で改めて自分がしたことの結果を突きつけられた直後とは言えよくここまで見事に暴走してくれましたね)

ほんの少しタイミングを合わせて冥黒の波動を与えただけでこうなったのには冥黒うてなと冥黒ディアッカが頑なに信じようとしなかった心意システムも関係しているのだが、今の彼女に知りようがない。

「あれは……逃げなかったんですね」

建物の隙間から脚部スラスターを吹かしてイチローが飛び出して来た。
サンライズマシンガンをばら撒きながら飛び回って黒い腕を避けている。

「姿の見えないヴァルバラド共々男性なのは残念ですが、こうして亀井美嘉が苦しみ続けるファクターになってくれるなら大歓迎です」

453亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:32:46 ID:8dIFwevs0
そう言って冥黒うてなは6枚のカードのうち1枚、ジョブケミーのレベルナンバー2、ドッキリマジーンを冥黒の波動に乗せて美嘉に送る。

「トランスマジア……なんちゃって」

無数の黒い腕にドッキリマジーンが取り込まれると、亀井美嘉の姿が再びマルガムへと変わった。

「うわぁあああ!」

変身のエフェクトに吹き飛ばされたくるみが見たのは、金の拘束帯に磔にされた天使のマネキンというおおまかな意匠はそのままに、マネキンの磔が剣や鋸の刺さった棺桶や鎖を伴った派手に失敗したマジックを思わせるそれになっている。
自らの意志で力を取り込む形だった冥黒の三姉妹のミクスタスとは違う歪な重ね掛け……エンジェルマルガムマジシャンミクスタス。

「キリトォオオオーーーっ!!!」

増大された悪意に黒い腕が暴れ狂う。
腕が触れたものから派手な火花や爆発するシャボン玉が発生して先程よりも破壊の規模が明らかに広がった。

「んんん〜〜♪良いですね!
ケミーと貴女の悲鳴が聞こえて来ますよ美嘉さん!
これぞ至上の音楽!
ああっ!もんなんだか下着がむずいことに……」

「他所でやれ見苦しい」

「っ!」

ケルビムマズルから放たれるエネルギー弾がうてなの手の甲を弾く。
同時に彼女の手を離れたケミーカードから飛び出したケミーたちはそれぞれの方法でうてなを攻撃すると銃撃の主……イザークの元まで飛んで行った。
咄嗟に怪我してない方の腕からプラントアンデッドの触手を伸ばしてケスゾーとジャマタノオロチは捕まえるもゲキオコプター、ガッツショベル、ダイオーニには逃げられてしまった。

「ヴァルバラド……なるほど。
あの機械人形は囮という訳ですか」

焼け焦げたにしてもおかしい黒い何かが滴る傷口を舐めながら冥黒うてなはジャマタノオロチを取り込み、オロチマルガムに変身した。
だがただのオロチマルガムではない。
元々うてなの内側に取り込まれているプラントアンデッドの能力と特性も使用可能なプラントミクスタスとでも呼ぶべき変身態だ。
その証拠に金色の拘束帯のスキマから凶悪なまでに刺々しい蔦が見え隠れしている。

「(なんだこいつ……ミカのとは違う?)イチローがお前の存在に気付いてくれてな。
カードを持ってきてくれて感謝しているよ。
そろそろこのヴァルバラドも性能が追いつかなくなって来たところだった」

「でしょうね。
それなりに上等ですが、所詮はただの錬金装甲。
仮面ライダーにも、この金色のマルガムにも及びません」

そう言って臨戦態勢をとるうてなをイザークは鼻で嗤う。

「おいおい、今ここで俺を倒す気か?
視野が狭いな」

「?」

「イチローの次は俺に気を取られているぞ」

イザークの言葉の一拍後に地面が派手に崩れて、視界を爆発性のシャボン玉が塞いだ。

(会話の間にあの機械人形が誘導を!?)

隣の建物の屋上に飛び移るうてな。
見るとイザークはコプターバーサークを展開して、くるみを救出したイチローと共に離脱していた。

「ん〜……両方女の子なら追いかける気にもなりましたが、あのまま東ゆうや華鳥蘭子でも連れて来てくれる方が嬉しいですね」

2人と1機を見逃すと決めると、流石に力尽きて肩で域をする亀井美嘉の背後に立つ。

「グリオン様からエンジェリードの力を持ち逃げした貴女には最期まで早贄兼奴隷になって貰いましょう。
次は、誰と戦わせてあげましょうかねぇ」

意地悪く笑うとオロチマルガムとしての力で石化させ、美嘉のリュックに収納してその場を後にした。



【エリアC-8/市街地/9月2日午前12時30分】

【冥黒うてな(非参加者)@魔法少女にあこがれて+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大)、オロチマルガムプラントミクスタスに変身中
服装:学生服
装備:ソードスキル:開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)@Fate/Apocrypha ラウズカード♡7(バイオ)@仮面ライダーディケイド
道具:ケミーライザー(スパナver)@仮面ライダーガッチャード
   ケミーカード(ジャママタノオロチ、ケスゾー)@仮面ライダーガッチャード
   石化させた亀井美嘉
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:屈辱に泣き叫ぶ顔が見たいです♡
02:ヴァルバラドたちには精々獲物を連れてきてもらいましょう
03:さあ、次は何処で暴れてもらいましょうかね、亀井美嘉
04:とは言えカード四枚分の失態はさっさと挽回したいところですね
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です
※♡7のラウズカードと融合しています。

454亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:33:26 ID:8dIFwevs0
【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:石化、疲労(大)、キリトに対する殺意(中)左目損傷(眼帯装着)
   自分の中の感情に対する困惑(小)魔王グリオンへの怒り(大)
   ダメージ(大)、後悔(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅(契約状態)@ダークギャザリング
 ソードスキル:星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)@HUNTER×HUNTER
 (継承スキル):幻妖と契約して力を得る能力@鵺の陰陽師
(継承スキル):冥黒錬金術@仮面ライダーガッチャ―ド
 未来の宝太郎の眼帯@仮面ライダーガッチャ―ド
   ケミーカード(エンジェリード、ドッキリマジーン)@仮面ライダーガッチャ―ド
令呪:残り二画
道具:香水@ダークギャザリング 、ホットライン
思考
基本:生きて帰る。キリトをどうするかはもう一度出会ってから考える?
00:…………
01:黒い剣士がどんな人なのか、知ってから考える
02:殺意は消さない。私が背負わなきゃ忘れられちゃう人が居るから
03:ゆうちゃん・・・・
04:シノン……。マジアベーゼ……。貴女たちのこと、忘れない。
  だって私のせいだから
05:グリオンみたいなやつらの好きには……
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
※究極メカ丸 絶対形態は破壊されました
※月蝕尽絶黒阿修羅の呪いを体内に宿しています。
 普段は通常通りの思考・会話が可能ですが、キリトの姿を見たり激昂すると暴走し、気を抜くと他者が全てがキリトに見える状態です。
※左眼を開くことが出来ません。
 失明したのか時間経過で回復すのかなど具体的な状態については後述の書き手様にお任せします。
※代葉を殺したキリトが贋者である可能性に行き着きました。
 方針としてはもう一度キリトと出会ってから決定する予定です。
※石化は時間経過で解除されます。詳細は後の書き手様にお任せします



「戻ってよ!
美嘉ちゃんが、あのままだと美嘉ちゃんが!」

「現状の戦力では無理だ。
どうにか一矢報いたが、向こうがこちらを舐めていたからに過ぎん!」

安全圏まで離脱した2人は言い争っていた。
片や友人を見捨てて逃げた形であり、もう片方は軍人でありながら腰抜けの様に敵前逃亡した格好だ。
平静を保てる訳もない。

『2人とも、ここで互いを口撃しても建設的な会話にはなり得ない。
現状を分析して最適な戦力増強プランを構築することこそ最善のはずだ』

「戦力増強?」

「確かに今の装備ではあの怪物どもをどうにも出来んが……」

「怪物って、美嘉ちゃんは違う!」

「人間にケミーが混ざったのが人外の魔でなくてなんだ!
まああの悪趣味女よりかはまだ元に戻せる目はあるか……」

「悪趣味女?」

『亀井美嘉にケミーを取り込ませた女学生の姿をした人型実体を目視で確認している。
人間ではなかったのか?』

「どんなコーディネイトをしても血液がタールの様な黒い何かに変わる訳がない。
少なくとも真っ当な人間ではないだろうな」

「そいつが、美嘉ちゃんを……」

「しかめお前のお友達と違って理性を保ったままケミーを取り込み暴れられる嫌なオマケ付きだ」

「なにそれ……束になっても勝てるの?」

間近で感じたからこそわかる。
あれは闇だ。
何よりも濃くて深いどんな意志も塗りつぶす底無しの闇。
自分に出来るのか?
真っ先につぶれて投げ出した自分が彼女の闇を晴すなんて……

「勘違いするなクルミ」

「イザーク?」

「元より非戦闘員のナチュラルに頭数になることなんて期待していない。
お前はあくまでメカニックだ。
パイロットに最高の機体を用意するのが仕事の筈だろう?
どんなジャジャ馬だろうと乗りこなしてみせる。
ザフトの赤服は伊達じゃないってところを見せてやるさ」

そう言ってイザークはくるみにダイオーニのカードを手渡した。

「……ありがと。
じゃあイザーク振り落とすぐらいに高性能にしてあげるから覚悟してよね!」

「望むところだ。
いくぞ!まずはキャルたちと合流して設備と材料の確保だ!」

「オーライ!」

『ノープロだ』

新たな目標を打ち立てたジュール隊は進軍を続けた。

455亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:33:43 ID:8dIFwevs0
【エリアC-8/市街地/9月2日午前12時30分】

【ジュール隊イザーク班】
【イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEED】
状態:健康、顔に大きな傷跡、右腕欠損、義手装着、疲労(小)、ダメージ(小)
服装:ザフトの赤服
装備:ソウルメタル製の義手@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
   ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
   ケミーカード(マッドウィール、ガッツショベル、ゲキオコプター)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   量産型ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:この殺し合いから脱出する。
01:死んだ部下を弄び、こんな殺し合いに加担して白服を穢したクルーゼ隊長は許せない。
02:クルミたちとテレビ局を目指し、反ルルーシュ派のゲームにのってない連中と合流する。
03:ニコル……お前がもしクチナシのように体を利用されてるだけだとすれば俺は!
04:この武器といいクルミの手袋といい、かなり良い物だなな。
  持ち帰って我がザフト軍で使えないか?
05:ディアッカ……死に急ぎやがって
06:なぜアスランやキラとか言う奴の名前が二つも?
07:継ぎ接ぎ(真人)め。
  今度会ったらこの右手とお揃いにしてくれるっ!
08:キャル、ヨウスケとサヤカは頼んだぞ。
09:スパナ、貴様の武器と仲間の力、使わせてもらうぞ。
10:サヤカとロロの話がうまくまとまるといいんだがな
11:合流できるとしたらテレビ局か。
12:ヒデヨシという男や黒い剣士(スザク)を警戒。
  いつかは倒さねばならんだろうが、流石にもっと装備と人員を充実させてから戦いたい。
13:次似た様なことがあれば右腕だけで済むとは思えんな。
14:あの黒いドームはなんだったんだ?
15:ラクス嬢、ご無事で何よりです。
16:戦力増強のために設備の整った場所に立ち寄りたい。
参戦時期:第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦でディアッカと再会した後
備考
※ソウルメタルのホラーを討滅する力は呪霊にも有効なようです。
※『トラぺジウム』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』に関する知識を得ました。
※ニコルが羂索のような何者かに死体を利用されているだけの可能性を考慮しています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【大河くるみ@トラぺジウム】
状態:健康、不安(中)
服装:いつもの私服
装備:技術手袋@ドラえもん
   キカイソダテール(残り3/5回)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
   ケミーカード(ダイオーニ)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:死にたくはない。
01:怖いけど、何もしない訳にはいかない。
02:イザーク、イチローとテレビ局を目指す。
03:東西南北(仮)の皆にはどうか無事でいて欲しい。
  どうか継ぎ接ぎ(真人)や秀吉や黒い剣士(スザク)みたいな人に会ってませんように……。
04:キャル、皆。気を付けてね。
05:ゆうちゃんは無事でよかったけど、美嘉ちゃん……。
06:美嘉ちゃんを助ける為にも今私の出来ることをする。
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※組み立てた01をイチローと名付けました。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

456亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:34:00 ID:8dIFwevs0
【イチロー(NPCモンスター・非参加者)@キカイダー02+ロワオリジナル】
状態:戦闘可能
服装:全裸(ロボットの為)
装備:サン・ライズ・マシンガン、サン・ライズ・ビーム(充電不足の為現状使用不可)
道具:なし
思考
基本:造物主である大河くるみを守護する。
00:くるみを守護する。
01:イザークと行動を共にする。
02:キャル、花村陽介、糸見沙耶香の武運を祈る。
03:仮称継ぎ接ぎを撃破しきれなかったのは当機痛恨の失態である。
04:豊臣秀吉、仮称継ぎ接ぎ、仮称黒の剣士を非協力対象と判断。
05:使命に心を籠める行為は当機には現状不要なタスクだ。
  しかし……もし実行する時が来てもノープロだ。
  くるみたちがしてくれたようにすればいい。
06:新装備開発、改造などによる戦力増強を行う。
備考
※くるみにより量産型01の残骸からくみ上げられたロボットです。
※キカイソダテールを二回投与され発声機能、会話能力を習得しました。
 それ以外の変化については後の書き手様にお任せします。
※サン・ライズ・ビームは充電さえ出来ていれば何度でも使えますが、そもそも一回の電力消費がすさまじいのでその時の蓄電残量次第ではその場で行動不能になってしまいます。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【支給品解説】
・ケミーライザー(スパナver)@仮面ライダーガッチャード
…柊うてな@魔法少女にあこがれてに支給。
ケミーカード(ガッツショベル、ドッキリマジーン、ジャマタノオロチ、ケスゾー、ダイオーニ、ゲキオコプター)とセットで支給されている。
ケミー回収任務に従事する錬金連合のエージェントに支給されたガジェット。
通信、ケミーの探知、ブランクカードへの封印、セットしたケミーの力の限定解放、ケミーをカードから解放しての使役など高性能で多機能。
更にはアカデミー生のケミーライザーにない三体同時にケミーを扱う為のミニガンケミーキャプチャーを備える。

【全体備考】
※ラクス・クラインは放送後も少しの間は野比家に留まっていたようです。
 詳細は後の書き手様にお任せします。

457 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/08(火) 00:34:26 ID:8dIFwevs0
投下終了です

458 ◆0ZMfbjv7Xk:2025/07/08(火) 22:44:02 ID:lYuM4Ock0
こんばんは、暑い中お疲れ様です。
自分の予約は明日までですが、破棄させて頂きます。

理由は七月に入り、身の回りが忙しくなった事と、今作の終盤の展開について上手く纏めが出来ていないからです。

作品を楽しみに待っていた方や、予約がしたかった方に対して本当にすいません。

出来ている部分もあるので落ち着いたら、キャラを変更するなどして投稿しようと思います。

また遅くなりましたが、企画主様。
拙作のリレーありがとうございました。

今後も真贋ロワを応援しています。

459 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/09(水) 09:17:06 ID:XbL.Y/820
こんにちは。当ロワの企画主です。
◆0ZMfbjv7Xkさん、委細承知しました。
今後も真贋ロワをよろしくお願いします

460 ◆ytUSxp038U:2025/07/09(水) 16:26:15 ID:RDwk/LQM0
皆様投下お疲れ様です

梔子ユメ、冥黒王ギギスト、ジンガ、冥黒シノンを予約し先に延長もしておきます

461 ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:04:12 ID:Vg02RYCI0
投下します

462Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:05:20 ID:Vg02RYCI0
「我が魂は無敵と共にありぃいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「喧しい」

人間であったら鼓膜が破れ兼ねない絶叫を、僅か三文字で切り捨てる。
言葉だけで黙る者でないのは承知の上だ。
重力操作で圧し潰し、騒音の原因は文字通りの一瞬でぺちゃんこ。
煎餅状に潰れた人体のグロテスクさへ、感じ入るものは只の一つもなく。
転がる戦利品を回収すると、最早何の関心も見せず背を向ける。

理解した、そうお決まりの台詞を言うのも億劫だった。
勇者“だった”男と別れ、標的の追跡を開始したものの順調とは言えまい。
タイミングを計ったかのように現れた非参加者、NPC達に余計な足止めを食わされどれくらい経ったか。
『愛』の一文字が特徴的な鎧武者他、時代を間違えたような人間共は今や物言わぬ肉塊。
冥黒王を相手取るならば、この数倍でも足りない。

戦闘とは到底呼べぬ掃除を終え、さてギギストは何を思ったか。
参加者ですらない雑兵の分際で、己の歩みを邪魔された苛立ちが皆無とは言えない。
だが不思議と内心は大きな波を立てず、なれど平静とも言い難い。

現在の最優先事項は一つ、同胞たる青年の遺体を回収。
自我なき屍兵へ成り下がった黒鋼スパナを、他者が排除するより先に手中に収める。
方針へ変更を加える気はない、考え直し中止と言い出すなど論外。
なのに何故だろうか、足取りは数時間前に比べどこかぎこちない。
確固とした意志の元向かっていると、一体誰が言えるのか。

463Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:06:29 ID:Vg02RYCI0
「……何を、躊躇する必要がある」

既にスパナがこの世を去った以上、生前程の利用価値は期待出来ない。
しかし、全く使い道が存在しないと言った覚えもない。
未知の金属生命体を片付け、残されたA級錬金術の抜け殻は自身の役に立たせる。
それで良いじゃないか、死んでしまったのは仕方ないで割り切れば簡単だろうに。

人の殻を脱ぎ去った冥黒王故の、常人とは一線を画す思考。
異論を挟む余地が見当たらない筈が、有り得ぬ雑念が顔を出し言う。
スパナがどこの馬の骨とも分からぬ相手に敗れ、あまつさえ死体をNPC如きに奪われた時。
抱いた感情は失望や落胆、それだけで済ませられるのか。

下らない問いかけだ、首を縦に振る以外の答えはないだろうに。
鼻で笑う気にすらなれない、煩わし気に頭から追い出そうとし、

頭部を失った哀れな屍が、死後も傀儡にされる光景が根を張り離れようとしない。

「…………」

呻く自らの声に何を籠めたのか、まるで分からない。
仮にスパナを後継者足り得ないと見なし、己が手で屠ったら。
所詮その程度だったと、一呼吸の間に終わる矮小な失望で終わったのだろうか。

「む……?」

まるで意味のない可能性へ思考を割くのは、幸か不幸か長く続かない。
人の枠に収まらない感覚が、急接近する気配を感知。
前方か?否。
背後か?否。
地中か?否。
となれば残るは一つ、空を仰ぎ見れば答えが自ら降って来た。

464Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:07:22 ID:Vg02RYCI0
「フンッ」
「ひゃんっ!?」

地面に赤い花が咲くのを見届けるか。
或いは流れ星の気分になった者が、華麗に着地を決めるのを見物するか。
そのどちらも選ばず自身の力を行使、対象は当然落ちて来たばかりの参加者。
重力操作で激突を防ぎ、宙へ逆様の体勢で固定。
ふとアスファルトを見やれば、支給品袋とは違う鞄に数枚のメダル。
ドロップアイテムはとっくに回収しており、見落とした覚えはない。
となれば今現在目の前にいる参加者を捕らえた際、衝撃で落ちたらしい。

「え、えっと…助けてくれたのは嬉しいけど…でも…!早く降ろして欲しいかな!」

本人の意志とは無関係に、逆立ちを強制されたに等しい体勢だ。
艶やかな翠緑の長髪は地面に毛先が触れ、豊満な乳房に隠れた顔には朱が走る。
スカートで本来隠すべき場所まで丸見えとあっては、羞恥を抱くなと言う方が無理。
幾ら相手が人に非ざる存在だろうと、無頓着にはなれなかった。

「貴様は……」

切実な頼みを聞き流し、落ちて来た少女の顔をまじまじと見やる。
見覚えがあるか否かと聞かれたら、ギギストのみならず全参加者が前者と答えるだろう。
表情も体型も、頭上へ浮かぶ光輪に至るまで一致。
但し唯一、額の縫い目だけが見当たらない。
疲労か羞恥のいずれかは不明だが、汗を浮かべた白い肌があるだけ。
他者の肉体を渡り歩く呪術師が気まぐれで会場を練り歩き、ギギストの前に現れた。のではなく、

「理解したぞ。貴様は羂索に肉体を利用された梔子ユメ本人だな」
「う、うん!誤解しない人(?)に会えたのは嬉しいけど…そろそろ降ろしてぇー!」

参加者と遭遇すること複数回、羂索と勘違いされたのは一度や二度じゃなく。
初見で本人と気付いてもらった安堵が、ユメに無いとは言わないがしかし。
それはともかく、いい加減この体勢は勘弁して欲しい。
羂索だと疑われた時とは別の理由で涙目になり、ふっと目線が正しい位置へ戻った。

465Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:08:20 ID:Vg02RYCI0
「わわっ!?」

急に地へ両足を着けた体勢となり、フラつくユメを見据える異形の貌。
ギギストが親切心から助けたのではない。
錬金アカデミーの人間達ならともかく、冥黒王に善意の行動を期待する方がどうかしている。
殺すのも、マルガムに変えて手頃な駒にするのも難しくない。
事実、殺し合いが始まった直後のギギストなら迷わずそうしただろう。

だが先の6時間はある種の慢心を拭い去るのに、十分な体験だったと言えよう。
死者を支配下に置く不死の傭兵、凍てつく竜へ堕ちたコーディネーター、進化を続ける“やみのせんし”。
何よりも、ギギストが知るのとは余りに違う闇の錬金術師。
理解した気になっていた驕りに亀裂を生み、手当たり次第にマルガムを増やし勝てる戦いに非ずと考え直す機会を得た。
自身の後継者が、早々に退場した事実も含まれているかはさておき。
早い話、殺し合い開始時と比べ慎重さがギギストにはあった。

ユメに未だ危害を加えずにいるのは、彼女の持つ情報を聞き出していないから。
容易く玉座を得られる戦場で無いと分かった以上、闇雲に動き回るのは己の首を絞める愚行に他ならない。
持ち得る情報を素直に言うなら良し。
仮に戦闘になったとて、見た所は彼女は手負いの身。
油断は持ち込まないが少なくとも、氷竜と化したキラや魔王を自称するグリオン程の脅威は感じない。
胸中で渦巻く理解不可能な感情を誤魔化す目的かは、本人も自覚が無いまま。
スパナの追跡を一旦中断するだけの価値があれば良いと思い、

『はじめまして、我々の集めた紳士淑女諸君』

その機会は少しばかり先延ばしにせねばなるまい。
一人と一体の持つホットライン、付近のテレビやラジオから響く聞き覚えの無い声。
何が始まったのかを、今更理解出来ない者はここにおらず。
まして耳を塞ぐ真似に出る馬鹿もいない。
殺し合いの監視者の一人による定時放送、間髪入れずに起こった悪逆皇帝の放送。
耳を傾けざるを得ない男達の声が終わり、静けさを取り戻し数十秒。
軽い混乱も引き、ユメは改めて告げられた事実を噛み締める。

466Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:09:09 ID:Vg02RYCI0
「うてなちゃん……シノンちゃん…………」

分かっていたことだ。
彼女達の名が呼ばれると、予め知っていた。
セリカに託し、薄暗い路地で息絶えるうてなを己が目で見た。
自分達を命懸けで逃がした直後、首をへし折られたシノンは見間違いなんかじゃない。
実は二人とも生き延びて、今の放送は嘘っぱち。
なんて現実逃避に似た言葉を、どうやったら言えようか。
ユメを含め、参加者達は最初の場で見せしめにされた少年少女をハッキリと見ている。
ここはアビドス地区で度々起こった、ゴロツキ同士の小競り合いで済む場所じゃない。
人が死ぬ、人が殺される、さっきまで話していた仲間の命が呆気なく散らされる殺し合いだ。

「……っ」

理解しているのと、死を仕方ないで流すかは全く別。
ホシノと比べれば共有した時間はずっと短い。
だけど、自分を羂索じゃないと信じてくれた。
気を遣ってもらい、肩を並べて戦い、命まで救ってくれた。
一緒に殺し合いを阻止し、無事に元の世界に帰る光景は決して現実にならない。
うてなが友人達と再会する機会は失われた、キリトが本当は悪人でないとシノン自身の目で確かめるのだって不可能。
喪失を実感し、目に見えぬ傷となってじくじくと血を流し続ける。
直接の面識はないが、うてなから聞いたイドラとレッドとも会う事は出来ない。
あれだけ怒りを向けたダークマイトの退場にも、安堵や喜びなど抱けず。
この世のどこにもいない現実として、後味の悪さがユメを蝕んだ。

「……」

表情を曇らせるユメを視界に入れ、ギギストは無言。
悲しみの理由は理解出来る。
永き時を生き、その都度こういった者は飽きるくらいに見た。
家族、友、恋人等々。
親しき者の死を嘆くその感情、人間ならば持ち合わせて当然。
尤も、理解しているだけで同調する気は微塵もない。
根本的に価値観の異なる冥黒王が、死者へ心を揺さぶれるなど天地が引っ繰り返っても起こり得ない。

467Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:10:46 ID:Vg02RYCI0
と、言い切れないのが今のギギストだった。

(奴らは生きている、か)

一ノ瀬宝太郎、九堂りんね、そしてグリオン。
連中の生存に驚きはなく、そうだろうなと納得さえあった。
忌々しくも自分を一度は打ち破った小僧と、ガエリヤを撃破した小娘。
記憶にあるのとは異なる、魔王を名乗る男。
簡単に死ぬようなら拍子抜けというもの、6時間程度生き延びるくらいはやってのけて当たり前。

(黒鋼スパナはやはり……)

生存者の中に己の後継者がいないのは、深く考えないようにする。
でなければ、眼前のユメや数時間前の柊篝をどうこう言えない。
死体をこの目で見て、脱落者として主催者直々に名を呼ばれた。
どうやったって覆しようのないスパナの死に、魂へ不快なざわめきが起きる。
そんな己を、死者への感傷に引き摺られていないと誰が言えるのか。

「梔子ユメ、お前の嘆きは理解する。だが我とて、無償の奉仕でお前を助けたつもりはない。見聞きした全てを話してもらうぞ」
「…………うん」

目尻へ僅かに浮かんだ涙を、袖で拭い頷く。
ともすれば反感を買ってもおかしくはない、気遣いを排除した物言い。
しかしユメに噛み付く様子は見られず、赤らんだ瞳で真っ直ぐに見据える。
悲しみに身を浸しても進展しないと、分かっている為か。
喪失を背負ってでも、戦わねばならないと覚悟したからか。
梔子ユメという娘の強さの一端なのかを考え、どうでもいいとすぐに思い直す。
手間を掛けずに情報聞ける、それで構わないだろうに。

468Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:11:35 ID:Vg02RYCI0
近場の廃倉庫の奥に移動し、早速情報開示へと移る。
本質的に騙す行為を好まないユメが、偽りを混ぜる真似は起きよう筈もなく。
ホムンクルスの少年との出会いに始まり、アビドス高校での死闘に至るまでを明かす。

「……成程。理解した」

より正確に言うと、理解せざるを得なかった。
この殺し合いは、ギギストの想定を明らかに超えている。
参加者の中で特に強く警戒すべきは己に土を着けた宝太郎と、ジェルマンの賢者の石を取り込んだグリオン。
二人の錬金術師こそ最大の障害と思っていたが、訂正の必要がある。
片や別行動中、片や二度と会えないユメの仲間。
ジークとうてなから齎された、規格外極まる参加者について。
前者の情報、アルジュナ・オルタについては未だ不明瞭な部分も少なくないが。
ノワルなる魔女の脅威は確定な上、当然の如く生存中。

更に死んだとはいえ、ダークマイトと名乗った男もまた只者ではない。
俗物極まる人間性はさておき、錬金術の腕はギギストをして目を見張る程。
所謂お人好しの類と察しが付くユメですら、どこか苦い顔で話していた。
仮に生きてる内に自分と会っても、秒で悪(ヴィラン)認定されただろう。
別にどうだっていいが。

よくよく考えればおかしな話でもない。
冥黒王たる己がいて、支給品の影響とはいえ氷竜となったキラも参加しているのだ。
自分達に匹敵どころか、遥かに上回る者がプレイヤーに登録されるのはむしろ自然とさえ言える。
以前のギギストだったら頭を抱え理解を拒んだかもしれない。
皮肉な事に敗北を経験し、且つ数時間前に痛い目を見た為受け入れるのは難しくなかった。
尤もダークマイトはもとより、風都タワー前で散々暴れ回った仮面ライダーエターナルも討伐済。
後者は放送の内容を信じるなら、ルルーシュに始末された事になる。
あれだけ大々的にパフォーマンスを行った以上、エターナル以上の戦力を持つのはむしろ当然か。

(ダークマイトなる俗物の退場はともかく、その場にグリオンが現われたのは面倒だな……)

シノンが殺されたのに然して興味はないが、グリオンに殺されたとあっては軽く見れない。
支給品と、付近に転がっているかもしれないダークマイトの死体。
そしてシノンの骸をグリオンが纏めて回収したとすれば、間違いなく風都タワー前での邂逅時より戦力が強化されている。
あえて奴の言葉を借りるなら、ケミストリーに必要な素材を苦労せず手に入れたのだ。
厄介だとは思えど、義憤に駆られはしない。
何せギギスト自身が同じ状況にあれば、死体を錬金術に利用するのだから。
例えば、行方を追っている後継者の成れの果てだとか――

「私からも良いかな?」

沈み掛けた意識を引き戻され、声の主を見やる。
ユメの方からはこれまでのいきさつを教えたが、その逆は無し。
精々自分の名前を告げた程度で、傍から見ればアンフェア。
今度はそっちの番だと、情報開示を求めてるのだろう。
殺し合いでの動向、元々の知り合いはいるのか否か、そもそも一体何者なのか等。
尋ねて当然の質問が次々浮かぶ中、ユメは真っ先に聞く。

469Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:13:31 ID:Vg02RYCI0
「あなたは……大事な人と離れ離れになったの?」
「……………………は?」

ギギストにとって、予想外にも程がある内容を。

「お前は何を言っている?」

余りにも理解不能だった。
一体全体自分の何を見れば、そのようなトチ狂った質問へ行き付くのか。
互いにあれやこれやと言葉を交わし、何らかの勘違いを起こした。
と言うのならまだ分かる。
現実には名前を言った程度であり、そこからどうやって今の言葉に発展するという。
怒りや不快感より先に、意味が分からな過ぎて困惑を率直に返していた。

「先のダークマイトとの闘争で、脳に傷でも負ったのか?」
「ち、違うよ!ボロボロにされちゃったけど、しっかりしてるよ!」

失礼なと言わんばかりの反応で、どこか緩い空気が流れるも長続きはしない。
ス、と真剣な顔で冥黒王の異形の貌から目を逸らさない。

「私の話を聞いてる間ずっと…ううん、私と会った時から心ここに非ずって顔してたから」
「……なんだと」
「私が話してるのを聞いてた時も、私じゃない誰かの事が頭から離れない。そんな風に感じたよ?」

梔子ユメという少女は、いつだって他人の為に動く善性を持つ。
生前に善性が原因で幾度も貧乏くじを引かされ、小鳥遊ホシノが頭を痛めた事態は数知れず。
馬鹿と嘲笑う者だって、一人や二人ではない。
だがユメの在り方が無意味だったと、断じるのも出来はしない。
悪意の対極に位置するその強さが、亀井美嘉に変化を齎したのは紛れも無い事実。
誰よりも他人の為に動けるからこそ、他者をよく見ている。

470Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:14:45 ID:Vg02RYCI0
アビドス高校から吹き飛ばされた先で出会った男は、まず間違いなく人間じゃあない。
キヴォトスにも人以外の者は多々いたが、このような異形は初めて見た。
しかしダークマイトのように、問答無用でメチャクチャな言い掛かりを付けはせず。
こちらの落下を防ぎ、情報開示の場を設け、危害を加える様子もない。
故に落ち着いて一対一で相手を見る事ができ、気付けたのだ。

自分の話を聞いているけど、一方で全く違う所を見ているように時折外れる視線。
自分の話を租借しているのに、別のものが浮かんだように微かな動揺が混じる雰囲気。
上手い表現が見付からないが、言葉に出すとすれば。
無くしたナニカを取り戻す方法を、見付けられずにいるみたいだった。

「……理解出来ん。お前の口にする全てが」

絞り出した声は自分でも驚く程、苦々しさに溢れていた。
黒鋼スパナを指し大事な人と言うのは、見当違いも甚だしい。
確かに、後継者として目を掛けていたのは認めよう。
だがそこへ人間達が口にする絆や友情、それこそ一ノ瀬宝太郎がケミー相手に抱く類が含まれてるなど断じて否。
つまらない価値観に自身も含まれてると思われるのは、虫唾が走る。
狂人の妄想如きで冥黒王たる己を理解した気になるなど――

「……っ」

では他ならぬギギストは、自分を理解出来ているのかと。
ふいに浮かんだ疑問が、苛立ちに冷水を浴びせる。
逸る怒りに身を任せ、ユメを黒炎に包む殺意へ自分自身への問いが待ったを掛けた。
理解してるに決まってる、冥黒王ギギストを誰よりも分かっているのは本人以外に存在しない。

なら答えられるのか。
スパナの死を知り、屍すらも弄ばれるのを見た時から。
感じているのが本当に失望だけなのかを。
理解したと断言出来るのか。
無自覚のままでいた、理解不能な感情が向き合えとばかりに顔を出す。

471Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:15:29 ID:Vg02RYCI0
「下らん、そもそも理解する意味など……」
「意味ならちゃんとあると思うよ?」

逃避の為に切り捨てた思考が、優しく拾われ目の前に差し出される。
触れられていないにも関わらず、両手を包まれたかのように。
放り投げた疑問を、大事なものだとでも言うように返された。

「理解するのに時間が掛かったり、理解したら凄くつらくなるかもしれないけど」

喪失の痛みは今もユメの心を突き刺し、絶えず痛みを与える。
捨ててしまえば、若しかしたら楽になれるのかもしれない。
理解出来ないと見ない振りをして、自分を誤魔化せば多少は苦痛も和らぐのだろう。
でもそれは、ユメにとっては絶対に取れない選択だった。
永遠に残る傷で、治す方法なんて見付からない痛みなのだとしても。
失った悲しみが無かった事になるのはきっと、出会いまで否定するのと同じだから。
望まない形の別れだろうと、出会いには必ず意味があった筈だから。
柊うてなとシノン、二人の仲間の死を理解しなければ悲しむ事だって出来ないから。

「沢山考えて理解出来たなら、あなたにとってもきっと意味があることだって思うの」
「………………お前、は」

微笑み言うユメに、ギギストは言いようの無い感覚を覚えた。
自分を上回る力を見せ、ケミー達を味方に付けた宝太郎を前にした時。
理解不能の存在が現われたような、恐怖にも似た薄ら寒さ。
かといって宝太郎とユメに感じたものが本当に同じかどうかも、まるで分からない。
返す言葉を見付けられないまま、案山子同然に棒立ちとなり、

コツコツと響く足音に、思考の中断を余儀なくされた。

472Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:16:29 ID:Vg02RYCI0



「おっと、逢引の真っ最中だったか?女一人と着ぐるみ一匹なんざ、随分変わった組み合わせだな?」

わざとらしく驚いた風を装い、廃倉庫へ現れた一人の男。
黒一色のコーデを完璧に着こなす、モデルのような体型と顔立ち。
刃の如く輝く銀髪の持ち主と会うのは、ユメもギギストもこれが初めて。

異性からさぞ黄色い歓声を浴びるだろう外見なれど、友好的とは言い難い。
見つめる瞳に宿るは親愛の証に非ず。
まるで世界そのものを見下し、足蹴にするかの傲慢な色。
遊戯盤へ無造作に転がった駒をどう弄ぶか、生命を生命と思わぬ悪辣な輝きがそこにあった。

「あい……びき……?綱引きの派生種目のこと?」

頭上へクエスチョンマークを複数浮かべ、すっとぼけたように首を傾げる。
「ユメ先輩はちょっと黙っていてください」、との辛辣な返しはない。
ふざけているのではなく素でこうだと、一番に知る彼女の後輩は不在。

「……理解したぞ、貴様は人ではない。いや、人を捨てたな?」
「着ぐるみにしちゃ大した名推理だ、拍手の一つでも送ってやろうか?」

嘲る態度は崩さず、かといって否定も返ってこない。
外見こそ人間のソレに相違なくとも、所詮見せかけとギギストには分かった。

人の世に生きるチンケな犯罪者などと訳が違う。
一人二人の血を浴びた程度では、爪先にすら到底及ばない。
魂を闇の奥底に沈め、純黒となるまで浸し続けた正真正銘の悪。
道理を外れ外法を良しとし、人間社会に混沌を齎す災厄。
尊き命をケミストリーと称し狂わせる錬金術師、或いは冥黒王たる己と同じ側に属する。
闇へ魅せられた魔人。

473Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:17:17 ID:Vg02RYCI0
「日が昇ってる時間だってのに、どういう訳か流れ星が三つ振って来てな。勘に任せて一つを追っかけてみりゃ、当たりを引いたって訳だ」

ホラー喰いのホラー、ジンガの言葉に嘘はない。
複数ある行き先の内どれを選ぶか、暫し思案の末にアビドス高校と決めた。
ドロップアイテムの試運転がてら、NPCを蹴散らし進んでいた時だ。
目的地がある方角から三方向へ向けて、人らしきものが空を駆けて行ったのは。
単なる空中を経由した移動と能天気には捉えず、何らかのアクシデントによるものと察し。
ひょっとすれば祭りはとっくに終わり、着いた時には死体が転がってるだけの可能性も否定は出来ず。
であるならアビドス高校へ行き無駄足を食うより、生存者らしき人物を追う方がマシじゃないか。
予定を急遽変更し、最も近くに落ちただろう位置へ赴き今に至る。

「じゃああなたも、アビドス高校に行くつもりだったの?」
「最初はな。もし俺が間に合ってたらどうなったのか、気にはなるが――」

特級呪霊達と共に様子見へ徹したか。
象徴の意味を履き違えた悪(ヴィラン)と、アビドスの地を守らんとする少女達。
双方にとって予期せぬ結果を生んだか。
或いは、魔王との接触を果たしていたか。

全ては起こり得なかった可能性に過ぎない。
アビドス高校での争乱に、ジンガは関わらなかった。
ならば終わった闘争は早々に捨て置き、新たな混沌を引き起こすまで。
ゆっくりと突き出した人差し指が睨むは、アビドス生徒会長の少女。

ではなく、冥黒王を真っ直ぐに射抜いた。

「なに……?」
「羂索がわざわざ器に選ぶ女だ、興味がないとは言わない。だがまずは、色々試すのにお前の方が丁度良い」
「ま、待って!あなたは殺し合いに……」

乗っているの、と最後まで言わせはしない。

「逆に聞くが、乗らない理由があるんなら是非教えて欲しいもんだ」

心底不思議でたまらないと言わんばかりに、目を見開き首を傾げる。
オーバーなリアクションの裏に嗤いが見え隠れし、口を噤んだユメをどう思ったか。
ジンガとしては楽しい“お喋り”に興じてやっても構わないが、優先するのがどちらかは今言った通り。
愛用の魔戒剣は鞘に納めたまま、代わりの玩具を取り出す。

474Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:18:19 ID:Vg02RYCI0
白い箱状のバックルを腰に当て、自動でベルトが巻き付く。
刻まれたクレストの戦士達を己が道具として使い捨てる、『破壊者』の通り名が相応しい戦士になる時だ。
取り出したカードをヒラヒラと揺らし、挑発交じりの仕草と共に装填。
魔戒騎士とは異なる鎧が、ジンガに新たな力を授ける。

「この玩具がどこまで役立つか、テストしてやるか。変身」

『KAMEN RIDE DECADE!』

折り重なった影が装甲を形作り、マゼンタに染まる。
複数枚のプレートが突き刺さった仮面に浮かぶは、悪鬼さながらの形相。
9つのライダー世界を旅し、絆を繋いだ果てに世界の真実を受け入れた破壊者の真の姿。
仮面ライダーディケイド・激情態が変身者を変え降臨。

「我を試すか…大口の代償が如何に高いかを知らぬと見える」
「生憎着ぐるみ相手にくれてやれるものは、そこまで多くない。精々死に方のリクエストを聞いてやるくらいだなぁ!」
「ほざけ!下賤な小童めが!」

あからさまに見下されて尚、笑って済ますおおらかな性質ではない。
怒りを籠め斬り掛かれば、望む所だと敵が返すのも刃。
途端に殺意が金属音となり響き、人を捨てた者同士の戦闘が勃発。

「っ、私も……!」

一手遅れる形になったが、ユメもまた肩掛けバッグへ手を伸ばす。
争いを好まず、対話で解決可能なら迷わずにそちらを選ぶ。
されど武力を用いねば打破不可能な状況が多々あると、分からない程鈍くもない。
ダークマイトのようなヴィランとの交戦を経た以上、同じ事態が起きた際に迷いで己を縛り付けはしない。
敵が破壊者の仮面を被るなら、こちらは守護者として立ち向かうまで。
取り出したメダルを装着しようとし、

475Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:19:01 ID:Vg02RYCI0
「うっそマジ!?あーしが一番乗りじゃーん!ラッキーはなまるうれピー!」

聞こえる筈のない声が聞こえた。

「えっ……?」

幻聴を疑い振り向き、両の瞳が現実を映し出す。
顔立ち、服装、髪の色に至るまで全てが記憶にあるのと同じ。
唯一、軽薄を絵に描いた笑みは彼女に無かった。
この目で終わりを見せ付けられ、無感動に死を告げられた仲間。

「シノンちゃん……?」

掠れた声で名を呼ばれた彼女は、まるで今気付いたというように視線を合わせる。
暫し見つめ合うこと数秒、先に表情を変えたのは向こうから。
ニタニタと不快に頬を歪め、油を差したように舌が回り出す。

「あーんユメせんぱーい!聞いてくださいよー!あーしがめ〜っちゃいい子だから、神様が奇跡をサプライズしてくれた的な?ヤッバ!感動し過ぎて――」
「違う、よね?」

知っている声で延々と垂れ流される内容を、静かに否定する。
実は運良く生き延びていただとか、都合の良い展開は最初から考えていない。
時に夢物語となじられる、楽観的な事を言い出すユメであれど。
現実を理解した上で、他者に言わせると「甘い考え」を実現させるべく奮闘する少女だ。
だから此度も、覆せない仲間の死は既に受け入れている。
何より、殺されたシノンが現われた理由についても察しは付く。

「ノノミちゃんと同じで、グリオンがあなたを生み出したんでしょ?」

悲しみと、同じくらいの怒りを籠めて言葉を紡ぐ。
仲間の命を奪っただけでは飽き足らず、死後も道具として使われたのだ。
知らず知らずの内、爪が食い込む程に拳を握る。

476Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:19:56 ID:Vg02RYCI0
「ちぇー即効バレテーラでやんの。だいせいかーい!てっきり栄養全部そのデカパイに取られて、米粒みたいな脳みそしかないって思ってたけどやるじゃーん」

失った仲間への想いも、冥黒のデスマスクには毛先程も届かない。
唇を尖らせ小馬鹿にする有様を見て、誰がコレをシノンと言えるのか。
黒の剣士の誤情報で心へ亀裂を生み、命を懸けて仲間を逃がした少女の面影は微塵もない。
悪意で構成された人形に、オリジナルの人格を期待する方が間違いだが。

「てかさー……グリオン“様”だろうがっ!呼び捨てにしてんじゃねえよホルスタイン女ァッ!!!」
「っ……!」

気の抜けた態度から一転、怒りを露わにユメへ蹴りが飛ぶ。
怒声と共に放った一撃を咄嗟に身を捩り躱せたのは、キヴォトス出身由来の身体能力の恩恵か。
靴底が頬を薄く裂き、赤い一本線が走るもシノンの動きはまだ終わりじゃない。

『TRIGER!』

いつの間にやら右手に握られた、水色のUSBメモリ。
己の存在を示すかの如く、電子音声が鼓膜を劈く。
敬愛する主から渡された凶器(プレゼント)へ、さも愛おしそうに口付けて。
躊躇なく自身の肉体へ突き刺した。
目を見開くユメへ嘲笑を一つ返し、次の瞬間にはその顔も異形へ変貌。

自身の髪と同じ色の、メカニカルな胴体。
頭部へ張り付く単眼は、スコープを思わせる形状。
最も特徴的なのは右腕だ、大口径のライフルと一体化し標的を貫くのを待ち侘びていた。
トリガードーパント。
風都最大の危機を迎えたNEVERとの戦いで、仮面ライダーアクセルに撃破された怪人がユメと対峙する。

「あーしにピッタリな力をくださるんだもん、グリオン様さっすがー!」

馬鹿なNPCどもの額に銃口を突き付け、絶望の表情を拝んでから引き金を引く。
とびっきりの快感を味合わせてくれるメモリを、自身へ渡した主には感謝してもし切れない。
我が子を愛でるようにライフルを撫でつつ、チラと視線をユメとは別の方へ移す。

477Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:21:35 ID:Vg02RYCI0
「本当はあっちのオクラ頭をぶっ殺す予定だったけどー。あのバーコード仮面が削ってくれるなら、美味しいとこだけゲッチュすりゃパーペキだよねー」

シノンを含めた配下三人が受けた命令は、ギギストの排除及び賢者の石の回収。
なので見付けた当初は自分が一番乗りで殺そうと思ったが、状況を見て予定変更。
現在ギギストはマゼンタ色のライダー、ディケイドと交戦中。
向こうが勝手に標的を消耗させるのなら、慌てて手を出す必要もあるまい。

となればその間、自身の悦楽を選んだとて何も問題はないだろう。
グリオンからの命令を遂行し、尚且つ戦利品で死体や支給品を献上。
自分も楽しめるのだからメリットだらけで、やらない理由を探す方が困難。
シノンの記憶で知った、生前共闘したこの女を仲間の見た目で殺す。
一体どれ程に絶望の表情を見せ、惨めに死ぬのか楽しみで仕方ない。

「つーわけでユメせんぱぁい…あーしに絶望した顔を見せて、とっとと死ねよ!オラ!」
「悪いけどそれは出来ないよ!シノンちゃんの姿で、誰かを傷付けさせたりしないから!」

シノンが殺意に溢れるように、ユメだって戦意は十分高まっている。
仲間の尊厳と生きた証を、これ以上踏み躙られない為に。
絶対に殺されてなんかやらないし、他の誰も殺させない。
必ずやここで倒すと決意を固め、メダルを強く握り締めた。

『スフィスフィ スフィンクス!』

「戴天身!」

『PATCH UP!!』

ピラミッド状のエネルギーで我が身を覆い、戦装束を纏う。
人と獣の特徴を併せ持つ、古代の神の力を宿す。
太陽の森の防人アメン、アビドス高校での戦いに続き二度目の変身。
一度は肩を並べ戦った仲間の登場へ、胸を打たれる異常事態(イレギュラー)はシノンに起きない。
抵抗に出るならそれはそれで良い、無駄と思い知った時の絶望はより甘美なのだから。

突き出した拳と銃声が開幕の合図、どちらかが倒れるまで幕引きは訪れない。

478Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:22:16 ID:Vg02RYCI0



冥黒王ギギストの強みとは何か。
神働術に由来する非常に高度な錬金術。
地獄の業火もかくやの火力を誇る、冥黒の炎。
そこへ加え、己の肉体を駆使した近接戦闘の技術も並の枠には収まらない。
少し先の未来で、二刀流のヴァルバラドを苦も無くあしらったように。
錬金術に頼らずとも、確かな強さを我が物としていた。

「着ぐるみにしちゃ悪くない腕だな?褒めてやるよ!」
「我を図るとは度し難いぞ貴様!」

しかし此度の敵は一瞬で決着が付く雑魚に非ず。
繰り出す刃は速く、それでいて破壊力にも秀でた斬撃。
渾身の一撃としてではない、軽口交じりで連続し放たれるのだ。
只の人間であれば殺された回数は、とっくに三桁を超えている。
一生分の幸運を使い最初の攻撃で即死を免れる程度が、人に許された精一杯だろう。

「そらよっと!」

数歩分の開いた距離を一度の踏み込みで詰め、突き出された破壊者の剣。
人間時代から振るった魔戒剣は、出番を控え舞台袖で待機中。
主の手で豪快に振るわれる得物、ライドブッカーが狙うは標的の顔面部分。
人体とは異なる形状の冥黒王だとて、脆い箇所は人と然程変わらない。
大ショッカーの技術を結集させ生み出した、世界の破壊者専用武器だ。
数多の怪人と、ライダー達を斬り刻んだディヴァインオレ製の刃。
そこへ変身者自身の剣技が加わり、ただの突きでありながら必殺の威力を叩き出す。

「小賢しい!」

しかし侮るなかれ、この程度で決着が付くなら冥黒王の肩書は返上確定だ。
弾き返す得物は千本桜、悪しき魂を浄化する死神の刀。
始解時のメリット・デメリットを把握した上で、未だ解号はせずに打ち合う。
あらぬ方へと逸らされた剣を引き戻す余裕を、与えてやる奇特な性質は持っていない。
装甲越しの喉へ狙いを定め、射出と見紛う勢いで刃を放つ。
喉を貫き、仮面の下で蟹のように血の泡を吹かせるのも時間の問題。

479Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:23:01 ID:Vg02RYCI0
命中すれば、という前提が覆されなければだが。
成程確かに警戒が必要な威力ではある、とはいえ慌てふためく必要も無し。
鬱陶しい羽虫を避けるように頭を動かす、回避動作などそれで事足りる。
急所スレスレを横切った刀へ見向きもせずに、唸りを上げ迫る破壊者の蹴り。
剣以外を使ってはいけませんなどのルールはない。
ライドブッカー同様の鉱石で覆われ、打撃力を増した脚が腹部へ捻じ込まれんとし、

「小賢しいと言ったばかりだろう!」
「ああ悪いな、聞いてなかったんでもう一回言ってくれ」

ギギストもまた、片脚を振り上げ相殺。
互いの蹴りによる衝突で弾かれ、間髪入れず再接近。
チマチマと急所以外を小突く真似はどちらもせず、十全の殺意を乗せた剣が駆ける。

頭上から振り下ろされた剣を弾いた傍から、胸部目掛けて切っ先が襲い来る。
躱した先でも刃が待ち構えており、防いだと思えば既に次の剣が振るわれた後。
遥か十数手先までもを読んだ悪夢同然の猛攻が、ギギストから徐々に逃げ場を奪う。
やがてその時が来た、何度目かの回避へ動いた瞬間に生じる隙。
数秒と掛けずに終える立て直しを、むざむざくれてやる物好きではなく。
必然、対処敵わぬ斬撃を受け入れる他ない。

ギギスト以外なら回避不可能な末路を、自身の術を駆使し否と答えた。

ライドブッカーが異形の肉体を斬った手応えは無し。
ついでに言えば、破壊者の瞳にも冥黒王を捉えられていない。
白紙へ墨汁を垂らした際にも似た黒穴が、ギギストを吸い込み消失。
まんまと逃れ、どこへ行ったかを律儀に言葉で伝えはしない。
空間転移で背後へ現れ、答え代わりの斬撃を見舞う。

480Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:23:53 ID:Vg02RYCI0
『ATTACK RIDE ONIBI!』

「ヌゥッ!?」

尤も、答えを聞くまでもなく予想の範囲内。
カード装填と同時に振り向き、口に当たる箇所から火炎を吐き出す。
魔化魍を怯ませる灼熱も、ギギストを焼き潰すには程遠い。
だが多少なりとも隙を作れれば問題無い。

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』

カードを読み取り、ディケイドライバーの根源たる次元エネルギーを解放。
刀身へ付与し破壊力を急激に上昇、斬り付ける獲物は目と鼻の先だ。
腕が消えたと錯覚を抱かん速さで振るわれ、下手な対処は不可能と確信。
であればギギストが選ぶは空間転移一択、僅かにタイミングがズレれば浅くない傷を刻まれたろう。

「便利な力で羨ましい限りだ。生憎こっちは魔鏡が無きゃ使えない、不公平と思うだろ?」

転移で距離を取ったギギストへ、気安い口調で話しかけた。
自身が使っていたのもあって、相手の術の面倒さは理解しているが強く警戒を抱くレベルには至らない。
そも、魔戒騎士時代に相手取ったホラーは正に千差万別。
特異な能力で手を焼かせた個体も数知れず。
ましてジンガは以前、魔戒法師リュメとの戦いで転移術に対処し切って見せた
今更同じ力に一々大騒ぎはしない。

第一魔戒騎士にとって、視界に頼らず殺気を感じ取るのは基本中の基本。
人間だった頃はホラーを、ホラーに堕ちてからは魔戒騎士を相手取り磨き抜いた感覚は健在。
死角からの攻撃を察知する程度、ジンガに言わせればやれない方がどうかしている。
破壊者の装甲も力にはなっているが、本質的な強さはそこじゃない。
神の牙とまで称された実力は偏に、踏みつけて来た無数の屍に裏打ちされたもの。

「理解したぞ、口先だけのつまらぬ男ではないらしい」
「お褒めに与り光栄ですってか?称賛ついでに首でも差し出してくれれば、泣いて喜んでやるよ」

とことん他者を馬鹿にし切った態度だが、強さを疑えはしない。
ガッチャードライバーとは異なる機械を使った戦士。
未知の能力という点では勿論警戒の対象なれど、敵にとっては遊びの延長戦。
ディケイド以上に脅威と見なすは他でもない、純粋な戦闘技術。
仮面ライダータイクーンや刀使達、刀剣類を得物とする者との交戦を経た上で。
連中にも匹敵か、未だ見えない底に或いはそれ以上やもしれぬと認めざるを得ない剣術の使い手だ。

羂索一派が始めたこの遊戯、つくづくこちらの予想を上回る。
理解したつもりがその実、まるで分かっていなかったと幾度も突き付けられた。

481Gの迷宮/守護心PARADOX ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:24:50 ID:Vg02RYCI0
「褒めてくださった礼だ、遠慮しないで受け取れ!」

『ATTACK RIDE STRIKE VENT!』

鬱々とした思考になりかけるも、戦闘は未だ継続中。
嫌でも気を引き締め直す電子音声に、新たな攻撃を察知。
破壊者の右腕に装着されたのは、赤龍の頭部を模したガントレット。
数時間前に脱落済の参加者、浅倉威が殺し合いで使ったのと同じ装備。
ドラグクローが5000℃の火炎を放射、火達磨の末路を引き寄せんと目論む。

「脆弱な炎が我に届くなどと、思い上がりも甚だしい!」

ミラーモンスターを生きたまま炙る龍のブレスも、冥黒の炎の足元にも及ばない。
迎え撃つべく両腕を翳し、黒炎が敵の炎を飲み込む。
勢いを維持し破壊者の元へ到達、装甲諸共灼熱に閉じ込める。
マグマの中でも耐えられる、ディケイドのスーツだろうと無関係。
冥黒王が下す灼熱地獄の刑は、死以外を認めない。

「この力、魔導火とも良い勝負が出来るかもなぁ?着ぐるみに使わせるにゃ勿体ない」

判決を覆す実力を、忌々しい事に此度の罪人は有する。
黒き炎に包まれる寸前で疾走、弾丸よりも速き身一つで肉薄。
無人の位置を虚しく燃やす火炎を鼻で笑い、姿勢を低くし回転。
腰の捻りを加え斬撃の勢いを増し、ライドブッカーが胴体へと襲来。
真っ二つに両断され、尚も生きていられるか見物だ。
刃の到達まで残り数秒も残っていない。

「ヌゥウウウ…!!

だがギギストが反応を見せるには十分な時間だ。
斬魄刀を防御に翳し、直後起こる刃同士の激しい衝突音。
押し返さんと力を籠めるも、逆に体勢を崩されたのはギギストの方。
馬鹿正直に鍔迫り合わず、足払いを繰り出した。
作り上げた隙へ追撃の剣が迫り、寸前で中断し跳び退く。
僅かに遅れ、ジンガがいた位置をギギストが作り出した空間が飲み込む。

「多彩な奴だ、次はどんな手品を見せてくれるんだ?」
「貴様の減らず口を永遠に黙らせる術とだけ、先に教えてやる」

隠そうともしない嘲笑へ吐き捨て、更なる力を引き出す。
言って黙らぬ男なら、力で強制的に口を閉じさせれば良い。
両腕へ赤黒い稲妻を迸らせ、視界の端を掠めた光景に動きが止まる。

理解不能の、いっそ恐怖すら覚えた娘が膝を付く姿がそこにあった。

482梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:26:13 ID:Vg02RYCI0



スフィンクスレリーフのアメンの持ち味は、何と言っても使い易さにある。
パワーとスピードどちらかへ偏らず、安定した性能を発揮。
他の形態と違い突出した力を持たない代わりに、基本形態故クセがない。
姿を変えるや疾走、先手必勝の拳を叩き込む。
頭に描いた戦法を現実のものとして、ユメが仕掛けたのが数分前のこと。

しかし現在、戦況は望んだのとはかけ離れた形となっていた。

「そらそらそらそらぁっ!もっと踊れよ!ブッサイクによぉ!!」
「くっ……!」

口汚い罵りに負けじと響く銃声。
右腕からは絶えず火が吹き、一向に銃身の熱が引かない。
一見苛立ちに任せ乱射中と思わせ、その実寒気がするくらいに正確無比。
只の一発も無駄撃ちをせず、全弾確実にユメを狙う。
元となったシノンのスキルを継承したか、トリガードーパントの能力がそれだけ高性能なのか。
若しくは両方か、強さの理由を考える余裕はユメにない。

両腕の交差で即席の盾を作り、エネルギー弾を耐え凌ぐ。
アメンの装甲は破壊困難な強度なれど、トリガードーパントの銃撃も負けてはいない。
正史において、仮面ライダーアクセルの重厚なボディを削った威力を秘める。
少しずつ、だが着実に防ぐ度体力を削がれていた。

(避けるのが一番良いんだろうけど……)

銃口が向けられた箇所から弾道を予測し、回避行動を取る。
アメンのスペックを駆使すれば不可能ではないが、シノンの射撃スキルが許してはくれない。
躱そうと動きを見せた瞬間に、照準をズラし発砲。
結果、避けた筈が命中の痛い目を数回見た。
意地の悪い、それでいて効果的な戦法によりユメが押されつつある。

483梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:27:31 ID:Vg02RYCI0
『スフィスフィ!スピリット・コフィン!』

下手に回避に出た所で、却って自分の首を絞めるだけ。
となると取る手は、エネルギー弾をものともしない大技の発動。
跳躍しトリガードーパントの頭上を確保、当然撃たれるが構わない。
突き出した片足を起点にピラミッドを生成し、眼下の標的目掛け蹴り降ろす。

連射されたエネルギー弾が命中、多少の勢い低下は起こるも止まりはしない。
この一撃で決着ないし、そうでなくともダメージとなる筈。
何発撃たれようと粉砕する気概のユメをどう思ったか、敵は得物を下ろし棒立ちで見上げるだけとなった。
勝てないと分かり諦めたのか、困惑が湧き上がるも一度放った技は止まらず、

「きゃっ…!?」

抉るような衝撃がユメの身を襲った。
不格好に宙を泳ぎ、仮面の下では口の端から血が垂れる。
苦しいながらも受け身は取り、地面への激突は防いだ。

何が起きたと考える時間はない、再度起こるトリガードーパントの攻撃。
抱いた疑問を戦闘への集中に戻し、新たなメダルに手を伸ばす。

『ジャカジャカ ジャッカル!!』

狩人たる獣の力を宿した、高速戦闘特化の形態へチェンジ。
地を駆け距離を詰め、腕部の爪を青い体に走らせる。
接近戦に持ち込まれるのを嫌ったのか、シノンが舌打ちを零し大きく後退。
その間もライフルは撃ち続け、ユメから照準を外さない。

ドーパント特有の優れた身体能力があれど、ユメの速さもこれまで以上。
エネルギー弾を斬り落とし再度接近、今度こそ刃を当てんと腕を振り被る。
寸前、またもやシノンが右腕を下ろす。
至近距離故に長銃では不利と悟ったからか、だとしてもこちらが攻撃を中断する理由にはならない。
獲物を引き裂く爪を振り下ろし、

484梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:28:32 ID:Vg02RYCI0
「ぐぅっ!?」

血飛沫のように火花が散る。
シノンではなく、ユメの方がだ。

「はいはいお疲れちゃ〜ん。お間抜けなパイセンへプレゼントの時間でぇ〜す」
「っ!?」

予期せぬダメージにたたらを踏み、直後装甲へ添えられた冷たい殺意。
失態を悟り自分を責める余裕すら与えない。
零距離での銃撃を連続で受け、悲鳴と共に吹き飛び強制的に距離を取らされた。
今度は受け身も取れず、地面を転がる羽目になる。

「ユメ先輩ってばちょー優しいー!自分から突っ込んで隙見せてくれるとか、普通だったらありえないよねー!『シノンちゃん、おバカなあたちをいっぱい撃って♡」、ってやつ?ウケる!」

これ見よがしに指を差し笑うシノンへ、ユメの攻撃が通らなかったのには勿論理由がある。
冥黒のうてながプラントアンデットを混ぜ錬成されたように、シノンもアンデットの能力を持つ。
♥スートのカテゴリー8、モスアンデットの力は攻撃の反射。
二度に渡って不可視のバリアを張り、自身へのダメージを相手に返したのだ。
高威力の技はむしろ悪手でしかなく、結果はユメの状態が物語っている。

「あっれぇ?よく見りゃユメ先輩大分お疲れモードじゃね?んー、何でそんなにグロッキーになってんのか、教えてもらっていいっスかぁ?」
「言わなくても…分かってるよね……?」

わざとらしく尋ねるシノンへ返す言葉から、疲労の度合いが簡単に察せられる。
ダークマイトとの戦闘による消耗は色濃く残り、今もユメに枷を付けたまま。
余裕があるとは言えない体力を更に削られ、ダメージの蓄積量も軽くは見れない。
キヴォトス人特有の頑丈さが無ければ、とうに限界を迎えただろう。

「ねぇねぇユメせんぱ〜い。これ以上先輩のクソダセぇとこ見るのつらいんでぇ、早いとこ死んで欲しいんだよね〜。あ、勿論死ぬ瞬間の絶望顔はキッチリ拝ませてもらうんでシクヨロ」

自身の優位が揺るがないと確信した挑発には構わず、別のメダルへ手を伸ばす。
戦闘続行の意志を見せるも、向こうが認めるかは別。
クイックドロウで撃ち抜かれたメダルが、パラパラと虚しく散らばる。
気弱な者なら心までも、今しがたのメダルと同じ末路を辿ったのは想像に難くない。

485梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:29:28 ID:Vg02RYCI0
「ううん、そのお願いだけは聞けないよ」

なればこそ、毅然と否を唱えるこの少女は。
簡単に思い通りになる弱者でないと、告げられているようで。
異形の皮を被った狙撃手の頬が、ピクリと不愉快気に震えた。

死ぬことの恐さを、自覚したからなのはそう。
羂索達を止められるず、力尽きるなど以ての外。
大切な後輩や、別行動を余儀なくされたジーク達との再会が叶わないのだって嫌だ。
シノン本人の魂はもうここに無くても、彼女の姿で手を汚させるのもお断り。
死を拒む理由なら幾らで存在し、その全てがユメにとっては正解。
けれどもう一つ、今だからこそ付け加える理由がある。

二人の仲間の死を自分の目で見て、定時放送で改めて突き付けられ。
残された人間としての痛みが如何なるものかを、己が心で知った。
痛くて、苦しくて、欠けたらいけないナニカが剥がれ落ちる。
言葉にするのは難しいけど、痛みとして確かにそこに存在した。

きっと自分が知るよりも早く、アビドス高校で出会った彼女も味わったのだろう。
黒の剣士への憎悪があった、矛盾する心への悲鳴があった、声なき声で助けを求めた。
藤乃代葉を奪われた理不尽への、どうしてという嘆きが。
喪失の苦痛は亀井美嘉を容赦なく蝕んでいた。

自分が殺される事で、大切な人達に残された者故の痛みが降り掛かる。
起こり得る未来を、ユメは決して認めない。
己が心で知ったからこそ、これ以上の連鎖は許さない。

「私の答えは変わらない。あなたには殺されないし、誰も殺させない」
「……へーへーそっスか。馬鹿みたいな内容であーし感動しちったー」

迷いなど欠片もない顔なのが、仮面の上からでも分かる。
それがシノンには面白くない、気分がシラケるのが抑えられない。
しかしふと、投げやりな態度から一転。
思い付いたように口を開く。

486梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:30:19 ID:Vg02RYCI0
「あーしのきゃわいいちょびっとした質問だけどぉ、ユメ先輩の言う“殺させない”って中にはもしかして…あっちのオクラ頭も入ってる的な?」

視線を向けた先には、破壊者と斬り結ぶ冥黒王の姿。
唐突な問い掛けに迷わず頷けば、可笑しかったのか吹き出す。

「ぷっ、くくく…じゃあそんなお優しいユメ先輩に、教えてあげま〜す。あいつは、あんたが散々ブチキレてたダークマイトとかいうキモ親父と同じクソ外道でぇ〜す!!」
「……っ」
「ぎゃはははは!んなナリしてる化け物が、良い奴な訳ねぇっての!こりゃ傑作だわ〜!帰ったらグリオン様にもこの馬鹿っぷりを聞かせてあげなきゃwwww」

素顔を隠しても無駄だ、息を呑む気配がハッキリと伝わって来る。
まさかとは思ったが本当に、よりにもよって冥黒王を仲間の括りに入れたのか。
だとすればお笑い種にも程がある、この女は自分を爆笑で殺すつもりとしか思えない。
敬愛するグリオンと比べる意図はないが、奴も主同様に悪へ分類される側。
そのようなな奴をよりにもよって殺させないとは全く――

「じゃあ後で、ちゃんと話を聞かないとね」
「…………あ?」
「よく考えたら、私まだ名前しか聞いてなかった!知ってること全然教えてもらってないよ……」

嘲笑を止め、思わず目の前の女を凝視する。
強がりの類と笑い飛ばせば済むが、信じられないことに。
あくまで本心から言っていると、嫌でも分かってしまう。

ギギストがどういった存在かを知り、驚いたのは本当だ。
もし出会いが違えば、僅かにでもタイミングがズレていたら。
対話ではなく、戦い以外に道はなかったのかもしれない。
ダークマイトやグリオンへぶつけたのと同じ怒りを、彼にも向けた可能性は否定出来ない。

けど、そうはならなかった。
欠け落ちた自身の心への、理解し難い痛みへの叫びをユメは聞いた。
答えを出せずに一人ぼっちで佇む錬金術師を、ユメは見付けた。
だからユメがやる事は、アビドス高校で生徒会長を務めた頃から何も変わらない。

助けたいと、放って置けないと。
他ならぬユメ自身が強く望んだが故に、迷い無く手を伸ばした。
幾度利用され、嘲笑われ、やめろと言われても。
この在り方を曲げたらきっと、自分自身を裏切ってしまうから。
争いにはならなかった自分と冥黒王の出会いには、きっと意味があるから。

「………………キッッッッッッッッッショいんだよノーテンキラキラ女がよぉ!!」

揺るがぬ強い善性は、シノンにとって受け入れ難い毒だ。
苛立ちと嫌悪をこれでもかと乗せ罵倒、だらりと下げていた長銃を跳ね上げる。
馬鹿な女に現実を突き付け、一頻り嗤ってから殺す予定が狂った。
萎えさせた代償はたっぷり支払ってもらわねば、到底気が治まらない。

487梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:31:04 ID:Vg02RYCI0



その全てをギギストもまた聞いていた。
意識せずとも聴覚機能が戦場の音を拾い、知る羽目になった。
思った事は十数分前と同じ。
余りにも理解不能。

シノンの言った内容は何も間違っていない。
よりにもよってダークマイトと一緒くたは不愉快だが、善から程遠い者と言うならその通り。
本来なら自分とユメは相容れない、一ノ瀬宝太郎らに同調する女だろうに。
自分の何を見て、死なせたくないなどとほざくのか。
全く持って理解が出来ず、頭痛さえ覚える。

そんな女が今、窮地に立たされている。
万全ではない状態で、仮にもグリオンが遣わした兵を相手取れば無理もない。
なって当然の結果であり、殺されたとしても「だろうな」としか思わない。

ユメが死んで、自分に一体何の不利益があるのだろうか。
むしろ好都合とさえ言えるんじゃあないか。
理解出来ない娘が、理解出来ないまま命を落とす。
思考へ混乱を捻じ込む邪魔な人間が消え、何の問題がある。
理解出来ない、いいやする必要もない娘だ。
消えてくれた方が遥かに、自分にとっての益となるだろうに。

なれば最早、あの娘に関して思考を回すのは無駄。
死体が出来上がったらシノンに回収される前に、こっちで確保するよう気を付ける程度。
これが正しいと十分理解し、

488梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:31:58 ID:Vg02RYCI0
(我を理解から遠ざけておきながら、一人勝手に死ぬのか?)

ノイズが走る。
理解し終えた結論へ、不要な疑問が顔を覗かせる。

沸々と湧き上がるのは、怒りだ。
あの娘は、狂人さながらの言葉で己を惑わした。
あの娘は、黒鋼スパナの喪失へ人間の感情を当て嵌めて来た。
あの娘は、理解不要の些事を引っ張り出し、己の結論を否定してみせた。

だから何だ、所詮は善意に現を抜かす愚者の戯言。
耳を傾けたのがそもそもの間違いではないか。
これ以上思考を割く意味などどこにもない。
どうせすぐ死ぬか弱き生命が何だと

(黙れ……)

耳障りな理屈如きが、我が怒りに異を唱えるな。
理解を放棄させる役立たずが、我が怒りへ水を差すな。
治まらぬ激情は今も、無様に殺され掛かった娘へ向かう。
何をしている、何を勝手に殺されそうになっている。
求めてもいない言葉で、己に煩わしい揺さぶりを掛けて、

身勝手に身勝手を重ね、死に向かう娘が腹立たしくて仕方なかった。

「散れ――『千本桜』!!」

名を告げられ、斬魄刀が応える。
解号と共に刀身が消失、途端に軽さだけが残るも構わない。
銘を表すかの如く、桜吹雪と化した千の刃が破壊者へ殺到。
斬り払いながら後退するも、真の狙いはそこじゃない。

489梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:33:04 ID:Vg02RYCI0
「チッ……」

気付いた時には遅い。
振り回す得物の鍔に当たる部分、ライドブッカーの収納スペース。
破壊せずとも問題無し、衝撃を与え中身が散乱。
目に付いた一枚を掴み取り、六腕へエネルギーを収束。
ばら撒くように黒炎を放ち破壊者と、狙撃手の牽制に成功。
素早く転移しシノンの眼前へ、始解状態から戻した刀で斬り付け更に怯ませた。

「……梔子ユメ」

「ぎゃあっ!」と少女らしからぬ悲鳴を上げた人形には、目もくれない。
振り返り、肩で息をする娘を見下ろす。
素顔に浮かべるのは助けて貰った感謝か、こちらの内面など知らず頭に来る。

「貴様は言ったな、考え抜いた末の理解には意味があると」

破壊者から奪ったカードと、自身の支給品袋から取り出した二つ。
そして、砕け散った守護者のメダル。
以上を対象に力を行使、四重錬成などこの手に掛かれば容易い。

「たかだか二十年すら生きていない小娘如きが、冥黒王に異を唱えたのならば――」

この行為に、何の意味があるのだろうか。
ギギスト自身全く分かっていない、理解が微塵も及ばない。
いいや、その言葉は正しくない。
理解出来ないんじゃなく、

490梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:33:49 ID:Vg02RYCI0
「貴様の足掻きで、我に理解させてみろ」

これから理解していくのだ。

「あ……」

投げ渡されたメダルを受け取り、まじまじと見つめる。
砕かれたのを元通りにしたのとは違う。
刻み込まれた意匠は、確認したものと全く別。
支給品の解説書に記載されてなどいない、未知の力。
しかもこれを作り上げたのが、ダークマイトと同じ外道の類だと。
否定不可の事実があり、普通だったら変身へ躊躇が生じるのが自然。

「…うん、ありがとう。あなたの想い、受け取らせてもらうね」

だがユメは、忍び寄る迷いと疑念を木っ端微塵に打ち砕く。
ギギストが過去に何をしたのか、殺し合いで本当はどう動いていたのか。
まだ知らないし、知ったら怒りを覚える瞬間があるのかもしれない。
だけど今この時は、彼は自分を助けた。
抱える迷いへ向き合い、己へ一つの想いを託した。
十分だ、その事実だけで戦う理由になる。

理解させろとの言葉を、誰が裏切れようか。

『PATCHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHUUUUUUPPPPPPPPP』

装填し響くは、聞くに堪えないエラー音。
本来想定した以外のメダルを、アメンは受け入れない。

「お願い…応えて!大切な皆を守りたい、私の声が聞こえてるなら!」

『GREAD UP!』

無慈悲な運命を、守れぬ末路を否定する。
ユメの声に応えるかのように、メダルが一層の輝きを放つ。
新たに響くは正史の世界において、アメンの変身者達が聞かなかった進化の証。
独自の構えを取り、高らかに叫ぶ。
不思議とこの力を使う時だけは、こう言うのが正しい気がした。

491梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:35:19 ID:Vg02RYCI0
「“変身”!」

『ブレブレ ブレイド!!』

アメンの装甲を覆うは、ピラミッド状のエフェクトに非ず。
13枚のカードが身体各部へ装着、新たな戦装束へと変化。
古代エジプトの王とはまた異なる、黄金に輝く王の力。
輝く真紅の瞳が、ここに降臨を知らしめた。

名付けるならば、アメン・ブレイドレリーフ。
或いは仮面ライダーブレイド・キングフォーム。
雨沼太陽やラーニヤが歩んだ戦いの歴史では、交わる筈の無い戦士の魂を宿した姿。
正しく未知の形態を実現させた正体こそ、ギギストが錬金術に使った複数のアイテムだった。

ライドブッカーから落ちたブレイドのライダーカードに、自身が持つレジェンドライダーケミーカードを錬成。
片方は失効状態だとて、二枚を掛け合わせ仮面ライダーブレイドの力を増大。
そこへ加わるは砕かれたアメンのメダル以外にもう一枚、ギギストの支給品。
未来の時間軸で生み出されたコアメダル、嘗ては仮面ライダーポセイドンの変身に使われた物を錬成。
グリードの意識を最初から排除し、純粋な欲望のみで構成された誕生経緯を持つ故に。
所持者の宿す欲をよりストレートに受け取る特性を発揮。

更にギギスト自身も把握していない要素が、少なくない影響を齎している。
心意。定時放送後に導入され、一部の者以外は知り得ないシステム。
強い想いへダイレクトに反応し、それぞれ異なる力を授ける。
どれ程の悪意に晒されようと揺るがないユメの善性と、心意システムの効果。
二つが欲望(願い)をダイレクトに反映するコアメダルと組み合わさり、生まれたが今のアメンだ。
たった一つでも欠けていれば、ギギストとユメの出会いが異なる形だったら実現は有り得なかっただろう。

492梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:36:03 ID:Vg02RYCI0
「は、はぁ!?勝ち確みたいな雰囲気出すなし!キモッ!キモいっつーの!金メッキがよ!」

予想だにしない事態への動揺が襲うも、取り繕い吐き捨てる。
無駄にピカピカ眩しいだけの、目立ちたがり屋の馬鹿に過ぎない。
同じ黄金でも主が得た力とは雲泥の差。
怯んだ事実を誤魔化すように長銃を向け、ありったけのエネルギー弾を発射。
対するユメは回避も防御もなく、ただ真っ直ぐに敵を見据える。
これでは単なる的と同じと、誰もが同じ言葉を呟く。

「んなっ!?」

悪意が笑う未来は断じて実現しない。
エネルギー弾が殺到し命中、煙が晴れれば砕け散ったメッキが見える筈。
なのに何故だ、五体満足で無傷の戦士がどうして立っている。
悪態を吐き捨て幾度もトリガーを引き、光弾が装甲へ当たり弾けた。
結果は何も変わらない、傷一つ付けられない。

現在のアメンが得たのは、キングフォームに近しい外見だけではない。
重厚な鎧ならではの防御性能は勿論、オリジナルのブレイドが持つ力もだ。
ラウズカードのリードを必要としない、13体のアンデットの固有能力の行使。
堅牢な装甲をトリロバイトアンデットの硬化で強化し、文字通りの絶対防御を手に入れた。

無論、防御だけで終わらせる気はない。
焦りを露わに連射を続けるシノンを見据え、更なるアンデットの力を解放。
敵が持つ反射能力に抜け道はないのか?いいやそんな筈は無い。
ダークマイトを倒し、りんねの解放に成功したように。
勝利への道は必ずどこかにある。

「っ!見付けた!」

仮面へ合わされた銃口を睨み返し、反撃に打って出る。
鎧姿に見合わぬ、シノンが標的を見失う程の速度で跳躍。
青い稲妻を迸らせた右脚を突き出し、急降下。
黄金の弾丸もかくやの勢いで迫る足底が、ロクな抵抗を許さない。
ライトニングソニック、アンデット達を撃破した蹴り技がナニカを砕き、

493梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:36:58 ID:Vg02RYCI0
「――――いっ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??!」

少女とは思えない獣染みた絶叫を、冥黒の狙撃手から引きずり出す。
足元に散らばるはトリガードーパントの得物、右腕の残骸。
肉体を変化させるガイアメモリの性質上、大口径の長銃も体の一部。
片腕欠損の激痛が容赦なく駆け巡った。

「やっぱり、攻撃と一緒には使えないんだね」

これまでのトリガードーパントの様子を思い出す。
反射する際必ず、長銃を下ろし無防備な体勢を取った。
余裕の態度の表れかと思ったが違う、あれこそラウズカードの発動条件。
攻撃中は反射能力を使えないと、この光景が正解を伝えている。

「クソがあああ…!よくも…よくもグリオン様に作ってもらった体を…!ぶち殺してや――」
「ううん、あなたが殺す前に私が――終わらせる!」

怨嗟を遮り決着の時を告げ、右手を翳す。
現われるは黄金に煌めく大剣。
キングフォーム専用の武装と酷似しているが、異なる箇所が一つ。
カードリーダーは存在せず、代わりにあるスロットへメダルを装填。

『ブレブレ!ロイヤル・ストレート・フラッシュ!!』

輝きを最大に増す大剣へ、シノンの喉が引き攣った音を立てる。
低能の人間共は希望の光とでも言うのだろうが、冗談じゃない。
理解したくないのに分かる、分かってしまう。
己の終わりが足音を立て近付いているのを。

「ちょ、タンマ!ね?ね?可愛いあーしが待って欲しいって言ってんだし、聞いてくれるよね?」

大剣から飛び出したのは、5枚のカード。
等身大のエネルギー体へ変化し、ユメとシノンの間に道を作る。

「そ、そうだ!あんたもあーし達の仲間になりなよ!グリオン様にお願いしてあげるからさ!」

腰を落とし大剣を構え、放つタイミングを見極める。
標的からは目を逸らさない、ここで終わらせる決意に嘘はない。

「ダッサいチャラ男のディアッカとか、根暗サド女のうてなより上の立場になれるって!アヤネ先輩もきっと納得してくれっから!」

吐き散らされる言葉を拾い、事実として今一度受け入れる。
“彼女”はもうこの世にいない、自分達を逃がして力尽きた。

494梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:38:27 ID:Vg02RYCI0
ならば、ならばこれ以上、シノンの生きた証を汚させてたまるものか。

「グリオン…私達の仲間は、あなたの道具なんかじゃない!!!」

「聞けよクソカスデカ乳女がよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

仲間を望まない形で現世に留める楔を、守護者の剣が打ち砕く。
振り下ろした大剣から斬撃が放たれ、カードを通過し力と輝きを増す。
最後の一枚を潜り抜けた時、刃は黄金のピラミッドへ変化。
アメンとしてキングフォームの力を行使した為かは、この際重要でない。

瞳を焼き潰す程の光が覆い、シノンは狂ったように叫び足掻きに出る。
反射能力を使えば、主がくださった力ならどうにかなる筈。
蜘蛛の糸に等しい希望へ縋り付き、光が押し留められる光景へ笑みを零し、

「チクショウ……」

反射し切れない程の膨大なエネルギーに己が身を焼かれ、現実を思い知った。

「あーしが…あーしが一番グリオン様の役に立つ筈だったのに……!」

逃れる術はない。
ゴミのように蹴散らし、絶望の最期を拝む筈だった女はよりにもよって。
主の障害たる冥黒王をも味方に付け、■■■へ反逆の意志を見せ付けた。

「グリオン様ぁあああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

世界の崩壊と親友の死を覆し、切札を掴み取った戦士の如く。
敗北の運命は今ここに塗り替えられた。

495梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:39:36 ID:Vg02RYCI0



廃倉庫の一画を吹き飛ばす光が治まり、後に残るは破壊の痕。
絶叫を最後に冥黒の人形は消え、髪の毛一本落ちてるかも怪しい。

「が……あ……」

では今聞こえたのは、幻聴の類だろうか。
アメンの聴覚機能が途切れ途切れの呻き声を拾い、思わず目を凝らす。
地べたへうつ伏せで倒れ、蚊の鳴くような発声を繰り返すモノ。
ドーパントの耐久性に加え、ラウズカードを錬成に使い打たれ強さが増した恩恵か。
確かな光景として、シノンは辛うじて消滅を免れていた。

尤も、無事の二文字は口が裂けても言えまい。
剥き出しの肌は焼き潰され、元の白さを見付ける方が困難。
トレードマークだった水色の髪は最早、口に出すのも憚れる有様。
虫の息と呼ぶに相応しい状態で、血走った両目だけが異様な存在感を放つ。
朧気な視界で、許し難き黄金の戦士を探し続け、

「絶望した顔を拝む、だったか?良いねぇ、お前とは気が合いそうだ」

頭上からの声に視線を移すのを待たず、腹へ蹴りが飛んだ。
みっともない悲鳴を一つ上げ、仰向けに変えられる。
錆びた天井を遮り瞳へ映る、鮮烈な輝きの銀髪。
自身を見下ろす男の笑みに、嫌と言う程見覚えがあった。

命を命とも思わない、絶望と苦痛の果ての死を至上の喜びとする外道。
他ならぬ自分達と、絶対的存在の主が浮かべるのと同じ。

「冥途の土産に拝んでいけよ。お前の大好きな、死ぬ瞬間の絶望の顔をなぁ?」

抜刀した剣を翳し、刀身を見せ付ける。
映り込んだ火傷だらけのその顔は、不思議と鮮明に瞳へ飛び込み。

「いや……やめ……」

最も望まない形で焼き付いた絶望の表情を最後に、シノンの意識は今度こそ途切れた。
全身が霞のように変化し、男の口へ吸い込まれる。
土に還る事すら叶わず、今の今まで存在した証を残らず奪い取るように。
腹の底へ閉じ込め、一仕事終えたとばかりに首を軽く解す。

496梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:40:24 ID:Vg02RYCI0
「あなた……何をしたの……!?」

思いもよらないシノンの最期を目の当たりにし、口を突いて出る戦慄の問い掛け。
殺される場面は複数回見た。
だが人の形をした存在を、同じく人の見た目の参加者が捕食する。
ユメにとっても予想していなかった末路だ。

「理解したぞ。悪食め、我を狙った理由はそれか」
「そういうことだ。ホラーじゃないが、随分陰我を溜め込んでそうだしな。俺にとっちゃ栄養満点ってことさ」

合点が行き、忌々しく吐き捨てるギギストへ傲岸不遜に笑い掛ける。
ジンガがギギストを狙った理由は正にその通り、捕食し己の糧に変える為。
規格外の参加者同士の衝突、柊真昼やデュミナストと化した益子薫との交戦。
それらを経て自身の戦力不足を知ったジンガは、魔鏡やラダンの探索を方針に付け加えた。
しかしもう一つ、移動中に思い付いたのが上記とは別に力を高める方法。
即ち、ホラーを喰うのと同じ感覚で行う捕食。

ジンガはホラーでありながらホラーを喰う、特異な存在である。
魔界の住人の血肉や魂は、ただの人間からすれば致死性の毒に等しい。
されど同じホラー、しかも並外れた力を持つジンガには嗜好品も同然。
冥黒のデスマスクを喰らったとて、悪影響を一切受けないだけの強靭な肉体。
何より悪意へ堕ち切った魂を持つ。
■■■の力を宿した骸人形は、ホラー喰いのホラーへ我が身を捧げたのだった。

「ほぉ…こいつの主様は大した力を持ってるな。是非とも御本人様に会ってみたいもんだ」

一端とはいえ、グリオンの力はジンガをして感心を抱く程。
腐り切った人間性をシノンに植え付けたのといい、趣向は嫌いじゃない。
機会があれば顔を見に行くのも悪くはないが、取り敢えずは後回し。
何処とも知れぬ魔王から、目の前の連中へ意識が戻る。

強烈な光を発する、『黄金』の戦士へと。


【冥黒シノン(非参加者)@SAOシリーズ+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル 消滅】

497Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:42:54 ID:Vg02RYCI0



「お前は後回しの予定だったが…気が変わった。今すぐ遊んでやるよ!」
「え、なっ……!?」

気怠い動作で振り返るのも束の間、全身をバネに変え跳躍。
宙での一回転を乗せた振り下ろしを、ユメの頭上から見舞う。
優先対象が自分へ移った驚きは一瞬に留め、体は即座の対処へ動く。
アメンの強化形態が齎す反応速度は、生身の時を遥かに超える。
電光石火もかくやの速さで腕を振り上げ、大剣による防御に成功。
相応の重量を誇る得物であっても、重みを感じさせず振るえるのが今のアメンだ。

分厚い刃と細身の刀身が喰らい合い、キリキリと摩擦音が鳴る。
高周波振動と高熱波、二つの特性を持ち合わせた金色の大剣。
アメンの得物と打ち合えば、並の武器など瞬く間に砕け使い物にならない。
しかしジンガが操る魔戒剣もまた、破壊不可能と言っても過言ではないソウルメタル製。
互いに折れず曲がらず、爪の先程の亀裂も生まれない。
武器の破壊が現実的でない以上、長々と膠着状態を維持する気は皆無。
両腕に力を籠め、ユメがアメンの膂力に任せて押し返す。

「おっと」

体勢が崩れた、いいや自分から剣を引きよろけてみせた。
踏み込み突き出された大剣へ、触れるかのように得物を添える。
自身を襲う脅威へ真っ向から歯向かうのでなく、あらぬ方へと受け流す。
虚しく宙を切り裂いた刀身を横目で眺めつつ、魔戒剣を軽く一回転。
がら空きの脇腹目掛け腕を振るい、悲鳴を心地いい音楽として奏でさせる。

聞こえたのは女の声に非ず、金属同士がかち合う音。
大剣を持つのとは反対の腕を翳し、腕部装甲で防御。
重量感ある鎧姿とは裏腹に、鈍重とは程遠い動きをアメンは可能にする。

引き戻した大剣を横薙ぎに振るうも、服の端にすら掠めさせない。
上体を大きく反らし回避、再び身を起こすや魔戒剣で袈裟斬りを繰り出した。
眩い装甲を刃が走るのを防ぐべく、大剣を防御に回す。
刀身同士の衝突音が一度響き、防がれたと分かればジンガの行動は迅速。
鍔迫り合いや打ち合いは避け、華麗な足捌きで死角へ移動。
仮面を叩き割らんと魔戒剣が牙を剥く。

498Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:44:29 ID:Vg02RYCI0
頭部を守るパーツを砕き、顔を輪切りにした手応えはない。
幾度も感じた、己の得物が相手の剣によって阻まれる感覚。
両手持ちに変えたアメンの大剣がジンガを押し返し、足元を縺れさせる。
すかさず追撃へ踏み込むも、むざむざと斬られてやるつもりは無し。
片手で魔戒剣の鞘を掴み、顎部分を打ち抜く。
何のダメージにもならないが、僅かに動きが鈍れば釣りが出るくらいに上出来。
宙へ身を躍らせ、空振りの大剣を見下ろしながら着地を決めた。

「良い玩具が手に入ったなぁ?俺じゃなけりゃとっくにお陀仏だ」

軽口を叩きながらも、ロクに刃が通らない現実を冷静に受け止める。
生身でも魔戒騎士や魔戒法師複数人を圧倒するジンガだが、流石に少々分が悪い。
膂力や反射神経、堅牢な防御をこのまま突き破るのは簡単とは言えまい。

(この人……)

一方でユメもまた、仮面の下では緊張の面持ちを作る。
身体スペックの点では間違いなく、アメンに変身中の自分が勝る筈。
実際、敵の攻撃は一つも届かずにいる。
では向こうが弱いかと言うなら、そんな訳がない。
通常形態のアメン以上の能力がありながら、ジンガは生身で大剣を捌きノーダメージを保つ。
剣術に関しては素人のユメでも、相手の技量が非常に高いとは察しが付く。

何よりジンガはまだ、力の全てを見せていない。

「そうだな…折角『黄金』の剣士と遊んでやるんだ。俺も相応しい姿になってやらなきゃなぁ!」

新しい玩具を見付けた子供のように、期待と悪意で瞳がギラ付き出す。
空いた手を顔の前に翳し、次いで大きく振り払う動作に出た。
まるで人の皮を脱ぎ捨てるが動きの直後、変化が表れる。

499Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:46:13 ID:Vg02RYCI0
闇が全身を覆い隠し、晴れた時そこに銀髪の男は影も形も存在しない。
赤黒く、鎧にも似た異形の肉体。
皮を剥いだかのおぞましき顔は、紅鬼か或いは悪魔か。

「――っ!!」

鮮血色に輝く瞳に射抜かれ、ユメの背を冷たいものが滴り落ちる。
古の時代より人々が恐れた闇が、明確な形を取り目の前に現れた恐怖。
絶望の到来を歓迎し、希望を捻じ伏せ喰らい潰す魔界の住人。
守りし者の使命を捨て、魂を腐らせた末に新生を果たした絶対悪。

ホラーとしての力を解放したジンガへ、頭ではなく本能が理解命令を下す。
備えろ、さもなくば死ぬ。

他の誰でもない、自分自身が強く感じた悪寒を信じずにどうする。
疑問や躊躇の全てを捨て置き、ユメが両腕を跳ね上げた。
重量感の一切を感じさせない速さで振るった大剣が、直後悪しき刃と激突。
十数歩分の距離を瞬きの間に詰め、眼前へ立つは紅き鬼。
一回り長大と化した魔戒剣と、守護者の大剣が再び牙を突き立て合う。

敵が生身であったら押し返せたが、もう違う。
重厚なアメンの装甲が見掛け倒しでないように、ホラー態のジンガも同様。
片方が腕に力を漲らせれば、負けじともう片方も膂力を発揮。
互いに押し込ませないし隙を晒さない。
膠着は数秒、示し合わせたかのタイミングで打ち合いへ持ち込む。

「そおらぁっ!!」
「っ、やあああああああああああっ!!」

生身の時でさえ速かった攻撃が、数段階上の脅威と化しユメを襲う。
一撃目は防御、二撃目は受け流し凌ぐ。
だが三撃四撃五撃と休む間もなく振るわれ、しかも異様に重い。
速さのみならず威力までもが、斬るのではなく粉砕すると言うべきソレへ昇華された。
ならばと、ユメも迷わず己の力を行使。
リザードアンデットの斬撃強化、ジャガーアンデットの高速移動。
二つを重ね合わせ真正面から迎え撃つ。

500Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:47:29 ID:Vg02RYCI0
ジンガの恐ろしさは攻撃の激しさに加え、その実無駄な動きが欠片もないこと。
襲い来る剣は確実に急所を狙い、一つでも打ち漏らせばそこからはあっという間。
下手にダメージ覚悟で突っ込めば、次の瞬間には細切れ死体となっても不思議はない。
新たな力を得たアメンに変身中にも関わらず、ユメは嫌なイメージを拭えなかった。
かといって臆すれば勝てる戦いでないとも理解の上で、怯まず果敢に挑む。

首元目掛け駆ける魔戒剣を弾き返し、脳天目掛け大剣を振り下ろす。
大振りな動作で避けるまでもない、軽く身を反らし回避。
一動作の間にも剣を振るう手は止めず、胸部へジンガが切っ先を突き出した。
胸部装甲と特殊スーツをも貫き、豊満な乳房を串刺しに。
惨たらしい予想図を己が手で否定すべく、真下から大剣を振り上げ対処。

と、ジンガが更に一段階引き上げ猛攻を繰り出す。
叩き付ける刃の暴風雨は、数十の斬撃が一纏めで放たれたかのよう。
戦慄の光景にも退きはしない、前へ出て剣を振るわねばむしろ危険と分かるから。

ボアアンデットの力を使い突進、踏み込む力を強化し剣戟を展開。
更には再びトリロバイトアンデットの力で、耐久力を上昇。
大剣のみならず肩や腕部のプレートをも使い、ひたすらにジンガの刃を急所へ当てさせない。
刃と刃が奏でる無骨な音楽は、一向に鳴り止む気配が訪れない。
聴覚機能が絶えず拾う中で、ユメの意識は眼前のホラーへ常に集中。

強い、小さく零れ出た二文字へ思いは集約している。
ダークマイト程の派手さや多彩さはない。
だが事、剣を用いた戦闘技術においては強敵以外の言葉が見付からなかった。
負ける気がないとはいえ、未だに持ち堪えられてる自分が不思議でならない。
大きく強化されたアメンの新形態と、剣術をアシストする各種機能。
ラウズカードの複数枚重ね掛け。
上記を経てようやく食らい付けるジンガの実力へ、気付けば堪らず問い質していた。

501Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:48:45 ID:Vg02RYCI0
「こんなに強いのに……どうして羂索の言い成りになって、殺し合いにこの力を使うの!?」
「言わなきゃ分からないか?楽しいからだ!他に理由がいるなら、是非ともご教授願いたいねぇ!」

身を屈んで躱し、反対に大剣で斬りを見舞う。
予想の範囲内だ、刀身を殴り付け狙いを逸らさしてやる。
得物を引き戻す許可はくれてやらない、魔戒剣が突き進む先にはアメンの瞳。
レンズを砕き視界を奪う気だろうが、誰が大人しく受け入れるものか。
顔を逸らし避けながら、叩き割る勢いで大剣を振るう。
果実の如く砕け散るのは御免被る、同等の威力と速度で魔戒剣が迎撃。
互いに得物を挟み、至近距離で視線が交差。
片や心底楽しくて堪らないと笑い、片やその喜びは認められないと怒りを見せた。

「…っ!人を、殺す為に…ここまで強くなったの!?」
「さぁて、最初は違ったかもな?だがどうでもいい、過去の話だ。お前の方こそ、意味なく意地を張るなよ」
「何を……」
「折角新しい力が手に入ったんだ。誰かの為じゃない、自分の為に使ってみたいと思わないのか?自由気ままに暴れ回ってみろ、胸がスッと軽くなるぞ?」
「そんなの…絶対に思わないよ。私がこの力を使う理由は、傷付ける為じゃない!」

大剣を握る手に力が一層漲る。
アメンの性能やアンデットの力ではない。
断じて受け入れられない悪意の誘惑を跳ね除ける、ユメ自身の心火が燃え盛ったが故にだ。

「私の体で殺し合いをさせる羂索を、許せないから…大事な人達を、助けを求めてる皆を守りたいから…!この力は私に託された想い、あなたの思うような力とは違う!」

どこまでも相容れぬ男へ叫び返し、包み掛けた闇を払い除けた。
闇が濃さを増すのなら、善意という名の光も輝きを強める。
決定的に相容れぬ存在と思い知らせる宣言へ、ジンガは暫し押し黙り、

「……お前と似た男を一人、知っている」
「えっ」
「同じ『黄金』ってだけでなく、こんなとこまで似るなんざぁ……偶然ってのも不愉快だな」

鼻で笑うように零れた言葉へ、ユメは思わず目を見開く。
どうしてだろうか、これまでずっと嘲りばかり口にしていたのに。
その男の事を話す声色に、違うものが宿ると感じたのは。
この瞬間だけは、真剣味が含まれてると思ってしまったのは。

502Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:49:23 ID:Vg02RYCI0
「退がれ!梔子ユメ!」
「っ!」

思ってもみなかった反応へ固まるも、背後からの声で我に返った。
聞き返すより早く体は動き、言われた通りに跳び退く。
黙って見送るジンガではないが、直後放たれた灼熱は捨て置けない。
一瞬で包み込んだ大火力の炎へ、悲鳴の一つも上がらない。
黒々と燃える業火がホラーを完全に覆い隠し、輪郭すら確認出来なかった。

ユメがジンガと斬り合っている間、ギギストも手持無沙汰で見学していた訳じゃない。
グリオンの遣わした人形は滅んだが、邪魔な手合いは未だ健在。
当然ながら己が身を他者の、それも錬金術師とは無関係の輩に捧げる気は皆無。
やみのせんしのように話が通じる手合いとも思えず、排除を選択。
一撃で屠れるだけの火力を六腕に収束、逃れる隙を与えずに火炎地獄を味合わせた。

同じく冥黒の炎を操るスパナとて、辛うじて生き延びるのが限界だったのだ。
此度の威力はあの時以上、ギギストの意志抜きでの鎮火はまず不可能。
何とも呆気ない幕切れ――

「懐かしいなぁ、魔戒騎士だった頃を思い出す」

信じられない声が聞こえた。

「なん……だと……!?」

驚愕に凍り付くギギストが見つめる先で、冥黒の炎が急速に消え始める。
より正確に言うなら、火達磨にされた筈の男の元へ。
ジンガへと吸収されていく。

503Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:50:32 ID:Vg02RYCI0
「悪いな、これでも火を使った遊びには覚えがあるんでね」

事も無げに言い放ち、冥黒の炎を完全に奪い取った。
ジンガという男にとって、魔戒騎士だった過去は単なる飾りじゃない。
闇に堕ちて尚も魔戒剣を操り、脅威的な戦闘力を発揮したように。
魔戒騎士としての能力をハイレベルに使いこなすホラー、それがジンガだ。

魔戒騎士が扱う術の中に、烈火炎装がある。
魔界の火を貯えた魔導具、魔導火の炎を武器や鎧に纏い強化を施す高等の技。
魔戒騎士の中でも少数のみが可能な秘奥義は、名を馳せた騎士であったジンガも我が物としていた。
過酷な修行を終えた魔戒騎士にしか扱えない魔導火を、力の一部とした経験。
人間を遥かに超越し、且つホラーの中でも上位へ位置する強靭な肉体。
二つが揃ったジンガだからこそ、冥黒の炎をも己が身へ取り込み糧へ変えたのだ。

「後継者でもない馬の骨が、我が炎をその身に宿すか…!」
「素敵なプレゼントをありがとよ。礼変わりだ、ヴェルダンで焼いてやるよ」

正統な後継者のスパナではなく、ギギストの意志で力を与えたやみのせんしでもない。
小賢しくも力を奪い取り、我が物のように振舞う。
傲慢を絵に描いた態度へ怒りを覚えるが、ジンガはどこ吹く風。
手に入れたばかりの炎を引き出し、全身へ纏わせる。
烈火炎装を彷彿とさせる姿で、灼熱の魔戒剣を大きく薙ぐ。

「くぅ…っ!」
「おのれ……!」

燃え盛る巨大な刃を飛ばし怯ませ、生まれた隙で突撃。
標的を最初と同じくギギストへ戻し、豪快に得物を振り回す。
対抗するのもまた剣だ、斬魄刀で以て防御。
しかしジンガの勢いたるや、破壊者の鎧を纏った時以上に苛烈。
ユメと斬り合いに興じた際をも超える、劇的な強化が起きてるのは明白。
よりにもよって自身が操る冥黒の炎を、利用された事実は度し難い。

504Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:51:11 ID:Vg02RYCI0
「我の力を貴様なぞが使うなど、認めはせんぞ!」
「生憎だが、お前の許可なんざ誰も求めてない」

憤怒と挑発が交差し、先に動いたのは冥黒王。
空間転移で距離を取り、六腕にエネルギーを流し込む。
冥黒の炎を放射ではなく、火球状に変え連続発射。
重火器さながらの弾幕を張るも、ジンガにはまるで脅威と映らない。
余裕の態度を崩さずに、魔戒剣一本で凌ぎあっという間にギギストの元へ到達。
転移で逃げる隙はくれてやらない、焼いて切り裂く剣の餌食へと変える。

「させない!」

錬金アカデミーと冥黒王の戦いの場であったら、誰も助けになど入らなかったろう。
しかし此度は異界の者同士を集めた殺し合い。
正史では有り得ぬ邂逅を果たし、単なる敵とは見れない縁を結んだ少女がいる。
ギギストの死をユメは決して望んでおらず、迷いなくジンガの一撃を阻止。
大剣越しに伝わる重さが増しており、強敵が更に手強くなったと受け入れざるを得ない。

突き付けられた現実を前に、尚もユメの戦意へ翳りなし。
昂る魂の咆哮へ引き寄せられるように、左手へ現れる新たな剣。
火炎が消え去った時、銀に輝く片手剣が握られてあった。
仮面ライダーブレイドの力を秘めた、現在のアメンだから使える力。
ブレイラウザーと大剣を構え、二刀流でジンガと相対。

「次から次へと玩具が手に入って嬉しいだろうよ!折角だ、どっちが多く人間を斬り殺せるか競ってみるか!?」
「お断りするよ!私の剣は、殺す為にあるんじゃない!」

相も変らぬふざけた誘いを切って捨て、語り合いは言葉から刃へ。
ブレイラウザーは大剣より威力もリーチも劣る。
しかしその分、取り回しに優れ速さで勝った。
リザードアンデットの力で斬撃を強化し、乱れ突きを放つ。
全身に風穴を開け兼ねない猛攻も、ジンガを突破するには至らない。
剛腕をこれでもかと活かし、それでいて残像が生まれるスピード。
長大な得物を振るっているとは思えぬ斬撃の嵐を、双剣を駆使し寄せ付けない。
どのタイミングでどちらの剣を使うのが正しいか、アメンの機能を総動員し弾き出す。

505Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:52:16 ID:Vg02RYCI0
得物を一本増やしただけで、勝てる相手でないのは承知の上。
ならば流れを変えるのは、ジンガが持たない存在か。
刀身を蹴り上げ、ブレイラウザーを持った腕ごと強引に跳ね上げられた。
大剣には手刀を叩き付け、カバーさせる隙を与えない。

魔戒剣がユメを切り裂くまで、指二本で数えるだけの時間も無し。
その僅かな猶予で十分だ、ギギストが空間転移を発動。
ユメを刃の間合いから遠ざけ、次元空間を通じジンガの背後へ移す。
振り返らずとも気配で察知し返り討ちにする気だろうが、そうはさせない。
真正面から斬魄刀片手に斬り掛かり妨害、魔戒剣を防御に回すまでが予想通り。
無防備な背へユメが双剣を振り下ろすも、咄嗟の判断で交差し盾に使う。
背後を見ないままで蹴りを放ち、双剣の刀身を足底が叩く。
剣の腕だけでなく、打撃一つとっても強化された一撃だ。
堅牢な鎧を纏っているにも関わらず、ユメの両足が地から離れ蹴り飛ばされる。

「散れ!『千本桜』!」

ユメが叩き付けられる前に転移させ地面へ降ろし、同時に自身の得物を解号。
銘を表すかの如く、桜吹雪の刃がジンガへ襲来。
一枚一枚を防ぐ間に、残る数百枚が体中を細切れに変える。
美しくも十全の殺意が宿った斬撃へ、取る手はあるか否か。
当然前者、魔戒剣へ更に炎を纏わせ振り下ろす。
一刀の元に散らされ、焼き払われる花弁の群れ。
斬魄刀の本来の使い手、朽木白哉相手に黒崎一護が月牙天衝を放った時にも似た対処法。
敵が数で押すならば、強力無比な一撃で捻じ伏せるまで。

尤も、届かない事くらいギギストの予想の範囲内。
灼熱の刃が己が身を焼く前に転移、宙へ陣取り炎を放射。
頭上からの目障りな熱さへ魔戒剣を振り被るが、迫る脅威は一つじゃない。
ディアーアンデットの力を引き出し、双剣へ青い火花を迸らせるのはユメだ。
電撃と炎が別方向より同時に放たれ、片方に気を取られればもう片方に焼かれるだろう。

506Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:52:59 ID:Vg02RYCI0
「甘いな、ガキでも思い付く策だ」

だったら対処は簡単、両方纏めて消し去れば良いだけのこと。
全身の筋肉を活かし回転、火炎を纏った魔戒剣が渦を生み出す。
宙と地上、二方向からの熱はどちらも霧散。
防ぎ切ってはいお終いでは済まさない、体内に宿るホラーのエネルギーを引き出し操る。

ドス黒い血の色をしたエネルギーを、複数本の武器へ変化。
細身の剣や戦斧、大剣などを模したそれらをユメとギギストへ射出。
放送前に一戦交えた参加者、柊真昼こと仮面ライダーソロモンが使った巨大剣の生成能力を参考にした技だ。
一本一本の質を捨てた分、数でごり押し剣山を作り出す。
過去に戦った魔戒騎士達の得物がモチーフだと、ユメ達には知る由もなく。
串刺しを回避せんとギギストが転移術を行使、揃って難を逃れた。

逃げるだけに使った訳じゃない。
双剣の間合いへ一瞬で移動したユメが斬り掛かるも、そう来るとはジンガにも分かっていた。
鼻で笑い自身も得物を振るい、しかし桜吹雪が妨害に出る。
千本桜を先と同じく火炎の一刀で消し去り、その間に必要な工程をユメは終えた。

『ブレブレ!ストレート・フラッシュ!!』

スロットにメダルを装填し、必殺のエネルギーを付与。
トリガードーパントを切り裂いたのとは違い、双剣が輝きを帯びた。
闇を消し去る乱舞へ、光を飲み込む火炎刃で対抗。
手数で勝るユメ相手に、不利をまるで感じさせない猛攻をジンガが可能とする。
他へ意識を向けるのを許さぬ攻防の果て、弾かれたのは双剣。
無手となったアメンは最早、魔戒剣の贄に首を差し出す以外の道は――

507Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:53:41 ID:Vg02RYCI0
『クロクロ クロコダイル!!』

「ッ!?チッ!」

当然ながら残されている。
ジンガ相手にはブレイドの力で戦ったが、アメンの真骨頂は多彩なフォームチェンジを活かした戦法。
左肩には爬虫類の太い尾が生え、右腕にはワニを模した顎を装着。
キズナレッドに抵抗を許さなかったパワーを発揮し、ジンガを挟み込む。

とはいえジンガ相手にこれだけでは心許ない、故に拘束をより強固なものにする。
途端に動きを鈍らせた原因は、ギギストの重力操作。
小範囲でジンガをピンポイントに狙い、ユメが技を使うのに支障を起こさせない。
心強いアシストへ礼を返しつつも、捕えた敵から意識は外さなかった。

『クロクロ!!クローズド・ダイン!!』

「これで決める!」
「そんなつまらない決着、俺が許すと思うか!」

跳躍し叩き付ける、シンプルながら一撃必殺の破壊力へ秀でた技。
戦闘不能へ持って行くつもりだろうが、素直に受け入れるジンガではない。
重力操作の影響下にある中で、火炎と邪気を漲らせ得物を振り被る。
ユメが早いがジンガが先か。
互いに敵に余計な真似をさせじとし、



『ヴァルバラドクラッシュ!』



弾丸の如き勢いで放たれた巨大工具が、ユメに命中した。

508Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:55:54 ID:Vg02RYCI0
「うああああっ!?」
「なにっ…!?」

突然の痛みへ訳も分からず吹き飛び、衝撃でジンガの拘束が緩む。
何事かと首を捻るのは敵も同じだが、考えるのは一旦後。
ユメ共々叩き付けられる前に、顎を抜け出し地へ降り立つ。
訝しく周囲を見やれば、すぐさま横槍を入れた張本人が視界へ飛び込んだ。

「お前は……!」

その姿を知る者は、この場でギギストのみ。
紫を基調とした装甲に、左右非対称の仮面。
特徴的な二本角はレンチを模し、拾い上げた巨大工具も相俟って金棒を持った鬼そのもの。
殺し合いにおいて、変身出来る可能性はありながら終ぞ至れなかった戦士。
冥黒の三姉妹の一人との別れも、因縁深き錬金術師との決戦も知る事無く。
正史から外れた地にて、無念の死を遂げた男の末路。

仮面ライダーヴァルバラドに、変身者の魂は存在しない。
黒鋼スパナを取り込んだ金属生命体が、生前の記憶を元に模倣しただけ。
そこかしこに出現するNPC同様、参加者を襲う以外何もやれない傀儡。
今になって説明されるまでもなく、分かり切った事実としてギギストの前に現れた。

追跡する筈が、何故か向こうから顔を出した。
廃倉庫での戦闘を少々派手にしたせいか、音を聞き付けやって来たのか。
理由が何にしても好都合、わざわざ探す手間が省けた。
早急に死体へ戻し、こちらの役に立たせればいい。

「黒鋼、スパナ……お前はやはり……」

そう頭で分かっているのに、体はどうしてか動かない。
美学を重んじたA級錬金術師の熱を、全くと言って良い程感じない。
力の差を思い知って尚歯向かった気骨も、一ノ瀬宝太郎達と共にジェルマンを倒した強さの欠片も。
何一つとして存在しない、たかがNPC如きに弄ばれる肉袋。
受け入れる他ない現実を改めて目の当たりにし、何を思ったか。
放送前は意識しなかった不可解な感情が、ユメとの邂逅を経て自覚せざるを得なくなる。

509Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:56:39 ID:Vg02RYCI0
『ガッチャーンコ!バースト!』

『カスタムアップ!オロチショベル!』

生前のスパナなら眉を顰めたろうギギストの様子にも、何ら反応を示さず。
参加者を襲うプログラムに従い、攻撃へ移る。
ケミーカードが無くとも再現可能らしく、派生形態へ変身。
レベル8のケミーを合わせ、両腕に巨大バケットを装着。
敏捷性を犠牲にパワーを上げ、狙った先には血染めの色をしたホラー。
偶然標的へ選ばれたジンガを、龍の意匠が睨み付ける。

「……ああ、そうかい」

が、当の相手は酷く冷め切った声で佇むのみ。
放って置けばミンチになるまで削り取られると、分かった上で何もしない。
正しくはする必要がない。
バケットがホラーの肉体へ触れた瞬間、ヴァルバラドの胴体から火花が散った。

無言のままによろけるヴァルバラドへ何が起きたか。
自身へ宿った力の影響だと知るのは、ジンガただ一人。
ラウズカードを錬成された冥黒シノンを喰らい、その影響が表れたのだ。
カテゴリー8、モスアンデットの反射能力をジンガも使えるようになっただけのこと。
ユメ相手には斬り合いを興じた為、使う気にならなかったが今は別。
高揚感を一気に萎えさせた死体を露骨に見下し、人間態へ戻る。

「NPCってのはどいつもこいつも……空気が読めねぇ、なぁ!」

『KAMEN RIDE DECADE!』

『ATTACK RIDE CLOCK UP!』

心底うんざりしたと言い放ち、破壊者の鎧を再び纏う。
続けて装填したカードのデータを読み込ませ、加速の世界へ侵入。
マスクドライダーシステムの使用か、若しくは時間そのものの停止。
上記の条件を満たさねば攻略は簡単ではない、クロックアップを発動。
動かないも同然のヴァルバラドを、ライドブッカーで幾度も斬り付けた。

510Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:57:56 ID:Vg02RYCI0
『FINAL ATTACK RIDE KA・KA・KA KABUTO!』

やがって加速の世界から弾き出され、ダメージが一気に全身を駆け巡る。
滅多切りの痛みが襲い、何が起きたかを理解させる必要もない。
カブトの力を宿すカードを装填、タキオン粒子を右脚に流し込む。
ワームを屠った技で、無粋な乱入者の息の根を止めるのだ。

しかし認めない者がいた。
破壊者の前に出現する炎の壁、誰の仕業かは聞くまでもない。
呆れたように振り返れば案の定、手を翳す冥黒王の姿が。

「おいおい、まさかとは思うが…慈愛の心にでも目覚めたのか?」
「そ奴は我の後継者だった男。勝手な真似は謹んでもらおう」

睨み合う両者に流れる火花も、自我なきNPCには無関係。
不利を悟ったらしく、肉体を粘液のように崩しながらヴァルバラドが去って行く。
生存本能は無駄に強いのか定かではないが、気付いた時には去る背中すら見当たらなかった。

「……力はともかく、やる気を奪うのは天才的だな」

消化不良も良い所な幕切れに、戦意を保てる程図太くはない。
つまらなそうに吐き捨て、ライダーカードを取り出す。
身構えるギギストと、痛みに呻きながらも立ち上がるユメ。
戦闘続行の意志を見せる両者を鼻で笑い、バックルへ雑に読み込ませた。

『ATTACK RIDE INVISIBLE』

「機会があったら続きを考えてやるよ。ああそれと、道外流牙に会ったら宜しく言っといてくれ。少なくとも、お前とは気が合うかもなぁ?」

ユメを指差し告げた所で、マゼンタ色の破壊者は消失。
周囲へ視線を張り巡らせても、現れる様子はない。
念の為に気を張るが、廃倉庫内からも気配が完全に薄れていた。

511Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 22:58:50 ID:Vg02RYCI0
「逃げちゃったのかな……?」
「理解したぞ、迷彩化の類を使ったのだろう。とことん小賢しい男だ」

面白くもなさそうに吐き捨てた通り、既にジンガは透明化し去った後。
場を掻き乱すだけ乱し、気分で矛を収めるとは。
もう何度目になるか数えたくもないが、腹立たしい限り。

ともかく戦闘が終わったと分かり、ユメも生身へ戻る。
ふうっと疲労を乗せた息を吐き、途端に崩れ落ち尻もちをつく。
立ち上がろうにも体中がやけに重い、額の汗で前髪が張り付いていた。

「あ、あれ?私ってこんなに疲れてたっけ?ホシノちゃんと二人で砂漠を掘ってた時よりも、全然余裕な気がしたんだけどな……」
「お前の言っている内容は理解出来んが、消耗の理由なら理解出来る」

ダークマイト戦での傷を抱えたまま、シノンを相手取っただけじゃない。
仮面ライダーブレイドの力を宿した、新レリーフがユメの体力を更に奪ったのだろう。
ジンガとの戦闘時は気を回す余裕も無かったが、気を抜けると分かった瞬間に疲れが一気に襲った。
原典の世界にて、剣崎一真はキングフォームへの初変身後に意識を手放している。
同様に軽くない消耗がユメにあっても、何らおかしくはない。

体力に余裕のないユメを、マルガムに変えるのは難しくない。
従順な駒を一つ作り、改めてスパナを追う。
異論を挟む余地がなく、やらない理由があるなら教えて欲しいくらいだ。
疲労で顔色の悪いユメを言葉無く見下ろし、必要な道具をリュックサックから取り出す。

512Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 23:00:03 ID:Vg02RYCI0
「………………食え。我に人間の食事は必要ない」
「わわっ。おにぎり?」
「体力を癒す力があるらしい。どの道我には無用の代物だ」

無敵がどうのと喧しいNPCを殺した際の戦利品を、ユメへ放り投げる。
どう見ても白米を丸め海苔で包んだ、何の変哲もないおにぎりにしか見えないが。
落ちていた解説書に、体力回復どうのと書かれていた。
眉唾だがしょうもない嘘をわざわざ載せる意味もない筈。
効果が本物でも、自分に不要なのは同じなので手放しても問題無い。

(何をしているのか、我自身にも理解出来んな……)

マルガムにするどころか、体力回復手段をくれてやる始末。
一体全体自分が何をやってるのか、己の事だというのに理解が出来ない。
今更になって、この娘の為に支給品を使い錬成物を譲渡したのも理解に苦しむ。
どこからおかしな方へ思考が進み始めたのか。
スパナの死を知った時からだとて、何故こういった方向に行くのか。

(まるで理解出来ないが……)

必ず意味があるとの言葉が、頭から離れようとせず。
理解出来ないソレを、出来ないままで終わらせないで。
永き時を掛けてでも理解へ辿り着いたなら、無意味じゃないと本当に言えるのか。

ふと、どうしてか思い出す。
自身の理解を超え、101体全てのケミーを味方に付けた少年。
悪意を知らぬ馬鹿だとの理解が、実は間違いだったのだろうかと。
捨て置いた過去が今になって声を上げ、そんな自分がやはり理解出来なかった。

まあ取り敢えずは、

「うん!じゃあ頂くね。ありがとう、ギギストくん!」
「やめろ」

その呼び方をやめさせるのから始めよう。

513Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 23:01:33 ID:Vg02RYCI0
【エリアF-9/廃倉庫内/9月2日/午後1時】

【梔子ユメ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(極大)、疲労(極大)、黒見セリカへの興味(大)、魔王グリオンへの怒り(大)
服装:アビドス高校の制服
装備:アメンバッグル&レリーフグリフバッジ(9種)@戦隊レッド 異世界で冒険者になる、ブレイドレリーフグリフバッジ@本ロワオリジナル
令呪:残り二画
道具:お助けカード@Fate/Grand Order、おにぎり×3@戦国BASARAシリーズ、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索の目的を知る
01:私の姿をした。羂索……
02:ジークくんと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
03:ホシノちゃんもいるんだ……
04:皆はどこまで飛ばされたのかな……
05:ノワルとアルジュナ・オルタは要警戒。
06:セリカちゃんアビドスの後輩なんだ!嬉しいな!
07:ギギストくんの話をちゃんと聞きたい
参戦時期:行方不明になった後
備考 ※ゲームに参加する前後の記憶が朧気です。 少なくとも自分が死んだような記憶はないです
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています
※お助けカードは残り2枚です
※ギギストの錬金術と複数の支給品、心意システムの影響でブレイドレリーフグリフバッジを入手しました。どのレリーフバッジを使ったかは後続の書き手に任せます。

【冥黒王ギギスト@仮面ライダーガッチャード】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)、賢者の石の49.5%を保有、スパナの死に言いようもない感情、ユメへの困惑
服装:なし(多分あれで全裸)
装備:千本桜@BLEACH、
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1(全て錬金術に関係する物)、ホットライン、ゴージャスカグヤファイル@仮面ライダーガッチャード、レジェンドライダーケミーカード(アギト、龍騎、ゴースト)、失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ブレイド)、未来のコアメダル×2@仮面ライダーオーズドロップアイテム×1
思考
基本:異世界の力をも取り込み真の王座を得る……と考えていたが、どうする?
00:我は羂索を理解した。このままでいい……と思っていたが…。
01:異界の能力…どれも興味深い物ばかりだ。我の力とするにふさわしき力を選定するには丁度いい。
02:梔子ユメ、この娘は理解に苦しむ、が――
03:魔王グリオン…我の知るグリオンとは違うようだが…とりあえず我を狙う事は間違いないだろう。
04:我が同胞、黒鋼スパナ……遺体を取り込んだ奴(ELSスパナ)は確保するとして──
05:キラ・ヤマトは今は関わらないでおきたい。理解した筈だったが…何故ああなった??
06:やみのせんしに我の力を与えてはみたが、やはり耐えてみせるか。さて……考えねばな。
参戦時期:ガエリヤの力を取り込んだ直後
備考
※羂索を本人なりに理解したと思っていましたが、理解し直す必要が出てきたと考えています。
※ゴージャスカグヤファイルにはブレイドと電王とゼロワンのカードも付属していましたが、マルガムのような異形へと変化させ撃破されました。
※制限などがどうされてるかは後続にお任せします。
※ELSスパナを追う方向に行きました。
※手に入れたドロップアイテムについては後続にお任せします。

※廃倉庫内に装備:T2トリガーメモリ@仮面ライダーW、マナメタルの結晶@戦隊レッド 異世界で冒険者になるが落ちています。

514Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 23:02:29 ID:Vg02RYCI0
◆◆◆


「殺し合いをさせたいなら、水を差さないよう玩具どもに言い聞かせて欲しいもんだ。なぁ?」

喉を突き刺され、血を吐き出す異形へ同意を求めた。
返答は最初から期待していない、塵へ還る前に吸収。
素体ホラー如き何体喰おうと腹の足しにもならないが、多少の体力回復には役立つ。
ディケイドの力を取り戻す為の闘争といい、NPCも使い方次第ということか。
だからといってそう何度も茶々を入れられては、ジンガと言えどもうんざりする。

積み上げた屍の山に腰掛け、先の闘争を含めてここに至る経緯を思い出す。
目的地をアビドス高校から変更し移動の最中、聞かされた放送に特別惹かれた情報はない。
直後に起きたルルーシュの演説も同じ。
仮面ライダーエターナルが討たれたのは多少驚いたが、後を引く程かと言うと首を横に振る。
既に規格外の参加者を4人程知っており、魔境と呼ぶに相応しい環境ならば納得だ。
エターナルも強者であった、しかし6時間を生き延びるには届かなかった。

流牙の生存に関しても、然して思う事はない。
自分を二度も敗北へ追いやった黄金騎士だ。
魔戒剣が手元に無かろうと、容易く殺せる男な訳があるものか。
それはそれとして、再戦時には本来の得物を取り戻してもらわねば困る。
引き続き自分の方でも魔戒剣を探し、所持者の首共々流牙への土産にしてやろう。

「で、あのチビ助も生き残ってると」

本人にとって運が良いのか悪いのか、薫の生存も放送で確認出来た。
放送で衛藤可奈美とロロ・ヴィ・ブリタニア以外の、宇蟲王との戦闘に参加した面々は呼ばれていない。
矛盾に気付けば、真実を思い出すのも時間の問題だ。
そんな余裕が今本人にあるかは知る由もないが。
放送の内容に気付けない程憔悴してるなら、ホラーへ堕ちる芽はまだ残っている。
だがもし、自分の与り知らぬ所で光を手にしたとすれば。
罪悪感すら吹っ切った、それこそ本人が憧れるヒーローへの再起を果たしたなら。

邪心の誘惑を完全に跳ね除け、消えぬ輝きを刻み付けた道外流牙。
どこまでも悪意とは真逆の道を往き、砕けぬ善意を見せ付けた梔子ユメ。
忌々しく、されど疑う余地のない強さを持った闇を照らす者。
光に背を向けた魔戒騎士として、暗黒の世界こそを至高とするホラーとして。
殺すべき存在へ、あの小娘が成ったとしたら。

「ま、お前程に楽しめるかは分からないがな。だろ?道外」

返答がないとは承知の上で、苦笑いを一つ零す。
目を細め見上げた空には、憎たらしいくらいに眩しい太陽が睨みつけていた。

515Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 23:03:13 ID:Vg02RYCI0
【エリアF-9/9月2日/午後1時】

【ジンガ@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)
服装:着崩した黒い服(いつもの)
装備:ジンガの魔戒剣@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
令呪:残り三画
道具:闇のパルファム@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者、メモリーディスク&専用プレイヤー&ペン@ドラえもん(午前8時45分に使用、午後2時45分まで使用不能)、ホットライン、宮藤芳佳のレジスター、ディケイドライバー&カード一式(激情態・ブレイドのカード損失)@仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010
思考
基本:好きにやる
00:さぁてどうする…?何処に向かってもいいが…
01:やっぱりお前もいるよな?道外……柊真昼の話じゃ病院手前に居たらしいが…移動してないとも限らねぇ上に牙狼剣を持ってないみたいだからなぁ
02:あの女(ユメ)は、下手な揺さぶりも無駄だろうな
03:薫がホラーになるのを期待。光の力に覚醒しやがったが…中途半端な上にまだ堕ちる可能性はある。さぁてどうするか
04:思った以上にぶっ飛んだ連中がいるってこととは思っていたが…ラダン級ばかりじゃねぇか
05:ラダンか、せめて魔鏡が手元に欲しい所だなぁ。参加者を喰って力を付けるのも手か
06:薫や柳瀬舞衣が人殺しに成り下がっちまった事や、衛藤可奈美が死体を使われている事をお仲間達に伝えてやろう
07:牙狼剣を持ってる奴を見つけたら、そいつの首ごと道外にプレゼントしてやる
08:コイツ(激情態仕様のディケイドライバー)で遊んでやるのも悪くはねぇ
09:レジスターは…どうにかしておきたいところだが
10:余裕があったらグリオンって奴の顔でも見に行くか
参戦時期:流牙に敗北後〜メシアに挑む前。
備考
※-GOLD STORM- 翔の作中にて、アミリの魔鏡の力による強化後に使用した能力(ワープゲートらしきものを生成し行う転移攻撃等)は魔鏡が無ければ使えないものとします。
※益子薫の記憶を覗いた事により、刀使ノ巫女世界についての知識をある程度把握しました。
※冥黒シノンを捕食し、リフレクトモス@仮面ライダーディケイドの反射能力が使用可能になりました。他に何らかの影響があるかは後続の書き手に任せます。
※冥黒の炎を吸収し使用可能になりました。
※ライダーカードは少なくとも現状クウガ〜カブトまで使用可能なようです。

【ELSスパナ(黒鋼スパナに擬態したELS・非参加者)@本ロワオリジナル(仮面ライダーガッチャード+劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-)】
状態:ダメージ(中)
服装:黒鋼スパナのそれと同じ
装備:ヴァルバラド及び仮面ライダーヴァルバラドの装備・使用アイテム一式を逐次再現、黒鋼スパナのレジスター
道具:なし
思考
基本:NPCとして他者を襲う。
備考
※レジスターをドロップするか否か、また元の黒鋼スパナの参戦時期的にはまだなれない、仮面ライダーヴァルバラドの形態である黒鋼やGTへの変身も可能になってるかどうかは後続にお任せします。
※詳細な位置は後続にお任せします。少なくともシビト可奈美やジゴワットとは一緒ではありません。


『支給品解説』

【未来のコアメダル@仮面ライダーオーズ】
…冥黒王ギギストに支給。
『MOVIE大戦 MEGA MAX』に登場。
鴻上会長が真木清人との戦いで失われた本来のコアメダルに代わって自ら開発を始め、40年後に完成させたもの。
グリード発生を防ぐために不純物を排し、純粋な欲望のみで構成されている。
仮面ライダーポセイドンの変身に使うサメ、クジラ、オオカミウオの三枚セット。

【ブレイドレリーフグリフバッジ@本ロワオリジナル(戦隊レッド 異世界で冒険者になる+仮面ライダーガッチャード+仮面ライダーディケイド+仮面ライダーオーズ)】
厳密には支給品でないがこちらに記載。
砕けたレリーフグリフバッジ、ブレイドのレジェンドライダーケミーカード、ブレイドのカメンライド用ライダーカード、サメのコアメダル。
上気四つをギギストが錬金術で錬成し生み出された、アメン専用のメダル。
使用するとアメン・ブレイドレリーフに変身、仮面ライダーブレイド・キングフォームの能力を使用可能な他、
キングラウザーに似た大剣や、ブレイラウザーの召喚を行える。
但し相応に変身者の消耗も激しい。


『ドロップアイテム解説』

【おにぎり@戦国BASARAシリーズ】
…冥黒王ギギストが3個セットで入手。
シリーズ共通の体力回復アイテム。主にステージ上の葛籠から手に入る。


『NPC解説』

【直江兼続@戦国BASARAシリーズ】
上杉軍に属する武将の一人。
事ある毎に自身を無敵と称して憚らず、常に自信満々で血気盛んに相手に勝負を挑んでいく。
しかし無敵を自称しておきながらその能力は低く、関連作品のほとんどでビッグマウスのやられ役扱いを受けている。

516 ◆ytUSxp038U:2025/07/12(土) 23:04:05 ID:Vg02RYCI0
投下終了です

517 ◆s5tC4j7VZY:2025/07/14(月) 06:14:13 ID:fCEIRmJk0
皆さま投下お疲れ様です!
九堂りんね、マーヤ・ガーフィールド、星野瑠美衣で予約します。

518 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/15(火) 00:37:54 ID:JOH4nkkc0
期限超過の為、◆2dNHP51a3Y 氏の予約を自動破棄とさせていただきます

519 ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:24:47 ID:G8TsH00E0
投下します

520厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:26:10 ID:G8TsH00E0

 ルルーシュがマイ=ラッセルハートを許すという選択は存在しない。

 記憶操作能力。怨敵シャルル・ジ・ブリタニアのギアスを思い出させる、他者を偽りの人生に閉じ込める異能。
 その異能を持つ者が会場に居ると聞いたルルーシュは、ロロや陽介とのノワル討伐への出立とは別にNPC部隊に女を抹殺する指示を出した。
 対話も不要。温情も不要。協力も不要。見つけ次第殺しレジスターを奪え。記憶を操作された憐れな犠牲者が遂行の妨げになるならもろとも殺せ。
 そう命じる男の顔は忌々しい異能に対しての嫌悪に染まっていた。
 命令を受けたNPC部隊にも悪感情は伝播していく。
 戦術的利益でもあり、個人的心傷でもある命を十全に果たし、マイ=ラッセルハートと覇世川左虎のセーフハウスを強襲したNPC部隊。
 交渉の余地も与えず、対話する可能性を残さず。彼らは手にした武装の引き金を引いた。熱と炸裂音が都市の一角に響き、セーフハウスは一瞬にして廃墟と化した。
 壁にはモビルスーツたちの銃撃で大小無数の穴で吹き抜け同然の有様であり、調度品のほとんどは熱線によって焼ききれその一部が融解している。
 アルジュナ・オルタやノワルがコーカサスカブト城で見せた惨劇と比べれば範囲は狭いが、家一軒を崩壊させるのに抹殺指令を受けた戦術兵器や戦闘機械は十分だ。
 
 そんな環境の中、あたりを見渡した覇世川左虎はぽつりと呟く。男の体には傷1つなかった。
 
「……やはり五道化に比べると、一般NPCの実力(レベル)はさほどでもないな。
 マイ先生。無事か?」
「おかげさまで。助かったよ左虎っち。」
 ひらひらと手を振って、無傷のマイは金属の塊に腰を下ろした。
 左虎の手で真っ二つに切断されたジム改の残骸である。周囲に同じように切断された人間サイズのモビルスーツが5機、瓦礫の合間でプスプスと煙を上げていた。
 
「貴様らァ!ルルーシュ様に賜った我が精鋭を!」
 そう叫ぶ指揮官機である金色のロボット――カッシーンは両腕両足を切り飛ばされ、胴と頭だけになった機体は氷でガッチガチに固められ身じろぎ1つ取れない。
 動くこともままならないカッシーン。せめてもの抵抗のようにその発声器官はマイに対する悪態を垂れ流し続けていた。ルルーシュ仕込みである。
 
「人の記憶を改竄するという唾棄すべき異能を持つ女なぞに!
 この氷さえなければ自爆してでも貴様らなんぞ消し飛ばしてやるものを!」
「うっわ。ちょっと戦力奪っただけでヘイト買いすぎじゃない?
 喧嘩売ったのは事実だけど、ノワル戦を前に戦力分散してまで殺しに来るとか想定外だけど。」
 
 あきれ顔でぽりぽりと頭をかくマイに対して、隣に立つ左虎の額には青筋が浮かんでいた。
  
「……マイ先生。そろそろ左虎の堪忍袋(ライン)を超えかねん。
 策アリと伺い四肢を捥ぎ氷に封じるにとどめているが、そろそろ廃棄(ツブ)していいのではないか?」
「待って待って、そのNPC……というより『機械型NPCの情報処理媒体』は今後のアタシに必要だからさ。
 自立起動するNPCがいたのはラッキーなんだよ、解体して再利用したい。」

 モビルスーツ連中と違いカッシーンが生きていることには当然理由がある。
 機械型NPC その頭脳ともいえる素体を利用するマイ=ラッセルハートの攻略(プラン)。
 左虎も詳細を知らないプランの存在に、声を上げたのはカッシーンだった。
 
「解体?再利用?ハ!好きにすればいい!
 貴様の願いも策もルルーシュ様が必ず叩き潰される!
 ルルーシュ様は仰られた!記憶を操るような下種の願いなど、悪平等極まる何かに決まっていると!」

 己を利用する計画を前に機械兵が上げたのは命乞いでも怨嗟でもない。ルルーシュ・ランペルージの代弁ともいえる、記憶改竄能力に対する忌避と敵意。
 自分たちの人生を狂わせ、戦う意思も最愛の妹との日常さえ奪った男。お涙頂戴のお題目を並べようと家族を捨てた事実は覆しようのない下らない自己保身の塊としてルルーシュに断罪された男。
 シャルル・ジ・ブリタニア――記憶改竄のギアスの所持者に対する敵意は、忠誠を誓うNPCの妄信を介しマイ=ラッセルハートに向けられた。

521厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:26:54 ID:G8TsH00E0

 「……ハァ?」
 憤慨と唖然が入り混じったような呆けた言葉を吐きながら、マイの額には青筋が浮かぶ。
 記憶を操るからと言うだけで、願いさえ貶められる謂れがどこにある。
 戦略的理由などではない。明らかに記憶操作に対する私怨が入り混じっているが、マイにしてみればルルーシュがどこの誰に記憶を弄られトラウマを抱いていようと知ったことではない。
 ましてや他人の行動を強制するどころか制約が無ければ生死さえ思いのままに操れるような男が、どの面下げてそんな台詞をほざいているのか。
 
「誰の話をしてるのか知らないけどさ。
 そういう力を使っているから願いも下らないなんて。短絡的にすぎない?」
「ルルーシュ様を愚弄するか!
 それに貴様は、現にそこの男の記憶を操り手下に引き込んでいるではないか!」
 文字通り鉄でできた顔に怒りをにじませたカッシーンが指をさす、その先には覇世川左虎の姿があった。
 
 「そこの男!いい加減目を覚ませ!
 貴様はそこの女に記憶を改竄されている!その女が貴様の友人や恩人だと思っているのならば、それは全て偽りだ!」
「……それは左虎に言っているのか?」
「そうだ!俺はお前の行動目的も願いも知らんが、これだけは言える!
 他の参加者のためにもその女はすぐにでも殺すべきだ!その女は貴様の武力を利用しているに過ぎない!」
 
 思考を回転させながら、カッシーンは叫び続けた。
 己の記憶が改竄され、己の真実が否定される。これに勝る屈辱は無いだろう。
 ルルーシュの実体験に基づいた価値観をカッシーンは聞かされ、カッシーン自身も同じ意見を抱いている。
 カッシーンの中でマイ=ラッセルハートは『悍ましき記憶改竄能力者』であると同時に、覇世川左虎は憐れな被害者である。

 (この男に記憶改竄の事実を突きつける!
 ルルーシュ様の予測によればこれで記憶改竄に綻びが出るはず!動揺し偽りの信頼が崩れるか、最悪敵対も期待できる!
 さすればモビルスーツ部隊を壊滅しうる戦力をこの女から引きはがす。最低限の任務を達成させることができる!)
 もしこれが支給品や異能――最悪、ソードスキルと化した『記憶改竄のギアス』だとしても。それほどの無法(チート)、運営の制限がかかっていないわけがない。
 記憶に作用する何らかの刺激……自分が記憶を改竄されているという真実を付きつければ、記憶改竄という偽りの世界を突き崩せるだろう。
 少なくともルルーシュはそう考え、結論から言えばその読みは正しかった。

 「左虎の記憶が偽りか。」
 投げつけられる言葉を前に、覇世川左虎は動きを止めた。考え込んでいるようにカッシーンには見えた。
 マイ=ラッセルハートは覇世川左虎の恩師である。
 2人の父と同列に敬意を抱いている、守るべき存在である。
 覇世川左虎に刻まれた記憶(おもいで)は、マイ=ラッセルハートの手が加わった編集物だ。
 しばし時間がたったころ、覇世川左虎は立ち上がると氷を紡いだような滑らかな髪をかき上げ、カッシーンに向き直り吐き捨てるように言った。
 
       ・・・・・・・・
「そんなこと、とうに知っている。」
「…………は?どういういみだ――」
 その言葉にカッシーンが答えるより早く、靡いた髪が機械兵の喉元をズタズタに切り裂き凍てつかせる。
 発声器官を失ったカッシーンは砂嵐を映したテレビのようなノイズ音を響かせていたが、その音も廃墟を吹き抜ける冷たい風にかき消された。

「……左虎っちさ。いつから自分の記憶に気づいてた?」
 静寂が戻った廃墟の中白衣の女はふうと息を吐きだし、日常的な疑問を投げかけるようにマイ=ラッセルハートは問いかける。
 その顔に驚きはない。諦観と納得がまぜこぜになったような視線だった。
 
「水神後輩……水神小夜の叫びを聞いて疑念も抱かぬほど愚鈍(ボケ)てはない。あの頃から己の記憶にズレのような物はあった。
 はっきりと自覚したのはつい今しがただ、今の機械(ポンコツ)の台詞は覿面に有効(き)いた。」
「そっかぁ……案外あっけなかったね。
 まあ、ザラサリキエルの時から疑われてたっていうのなら、仕方ないか。」
 
 病院地下。死告邪眼のザラサリキエルによって水神小夜に対する編集(エディット)は解除された。
 突然記憶が元に戻り、味方だったはずの者が敵になる。改ざんされた記憶に影響を与えるには十分な出来事だろう。
 その状態でカッシーンの言葉が突き付けられては、弱体化している記憶改竄が戻ってしまうのは必然でさえあった。

522厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:28:47 ID:G8TsH00E0

「どこまで覚えてるの?」
「全て。」
 静かに、しかしはっきりとした言葉だった。
 覇世川左虎がそういうのなら、文字通り全てなのだろう。
 邪樹右龍のことも、繰田孔富のことも、今の彼は憶えている。
 最愛の弟も命を奪った好敵手のことも消したマイの行動は、カッシーンの言った通り唾棄すべきものに他ならないだろう。
 殺されたって仕方ない。諦める気も受け入れる気もないが、マイの中で死の二文字が否応にも浮かび上がる中、左虎は続ける。

「そう、全て。
 水神小夜の命を救うことを躊躇った左虎を奮起(カツ)を入れた言葉も、全て覚えている。」

 ――じゃあアンタは!いま救済(すく)える命をここで見捨てるのかよ!!

 瀕死の水神小夜を前に、マイ=ラッセルハートは令呪を使用してまで命を繋ぐことを選んだ。
 今思うと気恥ずかしいセリフだが、マイの中に後悔はない。水神小夜と敵対している今もなお、彼女を助けることは正しかったと思っている。
 打算もあったし利益もあったが、マイ=ラッセルハートと言う人間が死にゆく命を捨ておくことを――不平等を許せなかった。
 その言葉は確かに、覇世川左虎の胸に響いていた。
 
「あの言葉は貴方の本心。少なくとも左虎にはそう見えた。」
 それ故に今はまだ、左虎は貴方を殺さない。
 背を向けがリュックを拾い上げる左虎の言葉は、マイ=ラッセルハートにはそう聞こえた。
 
 普段の覇世川左虎ならばこのような判断は決してしなかっただろう。
 情に心揺れし忍者はいとも容易く誤断(ミス)って死ぬ。その言葉通り、如何なる情を抱こうと忍者が容赦することはない。
 マイ=ラッセルハートはカッシーンが言った通り記憶操作の能力者と言うだけで厄ネタであり、殺し合いに乗っている。
 生かしておく理由がないという意味でカッシーン……ひいてはルルーシュの言葉は正しい。

 しかしこの場の左虎は、忍者である以上に『マイ=ラッセルハートの教え子』であった。
 たった一度、忍者でない覇世川左虎は情に揺れた。
 マイ=ラッセルハートが周囲に散らばるNPCのように無惨な骸となっていないのが、確たる証拠であった。
 
「願わくば、次に会う時に貴女をブッ殺さないでいたい。」
 わずかに残った”情”を吐き出すように、顔を合わせずに左虎は投げかけた。
 
「それは、無理だ。」
 マイ=ラッセルハートは即答する。
 ルルーシュがマイを許すことが無いように。
 マイ=ラッセルハートが、このゲームを諦めるという選択肢は存在しない。
 
「アタシは勝ちたい。羂索やヒースクリフの目論見なんてわかんないけど。
『平等な世界』のためならば、なんだって捨てられる。何だって奪える。ここまで誰も殺していないことだって、巡り合わせでしかないよ。
 そんなアタシを左虎っちが見逃さないことを、記憶を見たアタシは知ってる。
 その時には……お互いに『名乗り』あうんじゃないかな。」
 100%ブッ殺すと決めた相手には堂々名乗る。覇世川左虎の世界の”裏社会の礼儀(うらマナー)”。
 礼儀を果たした戦闘において、両者生存などという惰弱(ヌル)い決着がつくことはあり得ない。
 剣呑な空気の中、宣戦布告に等しい言葉に覇世川左虎は微かに笑みを浮かべ、短く一言だけ返した。
 
「左様か。」
 振り返ることもなく、それだけ言い残し覇世川左虎は姿を消した。
 彼のリュックには泣きつかれ眠っていた烏天狗の姿がある。
 まず間違いなくノワルの元に向かったはずだ。左虎の性格上ノワルを放置も出来ないし、アスナを救うという話も彼なら律儀に果たすだろう。

523厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:29:48 ID:G8TsH00E0
「さてと、こっちはこっちで始めますか。」
 1人残されたマイはうなだれながらオコノミボックスを取り出す。付属のマイクに声をかけると音を立てて四角い秘密道具がタブレットへと形を変えた。
 22世紀製の液晶画面には、氷に閉ざされたカッシーンの内部構造が事細かに記載されている。
 機械へのハッキングはマイの十八番だ。
 端末を動かし、カッシーンの中にある情報処理媒体……頭脳部とも呼べるシステムの性能と存在を見出しながら、ポリポリと頭を書いた。

 「ノワルは左虎っちとルルーシュに任せるしかないよね。アタシとしても死んでもらわなきゃ困るわけだし。
 アタシが行ってもいいんだけど、なんでかルルーシュに死ぬほど嫌われてるからなぁ。」
 結局のところ、ルルーシュに恨まれている理由はマイから見れば不明なままだ。
 記憶操作の能力が地雷だったということまでは予想出来ても、なぜそうなったのかは分からない。
 だからあくまで憶測以上のことは言えないが。

「まあ、記憶操作の能力者に大切な人でも殺されたのかなぁ。」
 根底にあるのは復讐ではないのだろうか。マイはそう結論付けた。
 だとすればわざわざ戦力を分散してまでマイを殺しに来る愚策にも、理解できる点はある。
 マイだって巻戻士に対する復讐を糧に時空犯罪者として活動してきた。
 両親を見殺しにし、不平等な性を押し付ける者たちへの憎悪は、十年を超える月日を経てなお褪せることはない。
 そう考えていたマイに隣から声が投げかけられた。幼い少女のものだった。

「ねえ。」
 
 振り向いた先の少女はくりくりとした愛嬌ある瞳でマイを見つめた。座っているマイの方が目線が上で、見上げる形となっていた。
 飴玉のようなコロコロとした声色で少女は続ける。愛らしい顔からは想像できないほどに、底冷えするほどの怒気が滲み出ていた。
 
「ルルーシュって言った?」
 
 10歳にも満たない。殺し合いの会場には不釣り合いでさえある少女――神戸しお。
 その宝石のように煌めく瞳に宿る昏い炎を、マイ=ラッセルハートは知っていた。
 
 その少女はマイと同じ、復讐を決意した者の目をしていた。

524厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:30:16 ID:G8TsH00E0
 ◇

「そんな……。」
 ヒースクリフの放送を前に、トランクスは青ざめた顔で膝をついていた。
 守れなかった者たちがいることは知っていた。宇蟲王ギラとの戦いでも彼の目の前で2人の命が失われた。
 半日も満たない時間で40を超える死者が出ることを、想定していなかったと言えばうそになる。

 彼の心を苛んだ名前は、松坂さとう。
 神戸しおに『さとちゃんを見つけて見せる』と約束したのはほんの6時間前の話だ。
 その約束を果たすことも出来ず。神戸しおの知らない場所で松坂さとうは殺された。

 ふと、しおを見る。
 声を上げて号泣しているものだとばかり思っていた幼い少女は、大粒の涙をこぼしながらしかし叫ぶことも嘆くこともしていない。
 まじまじと名簿リストを見つめ、松坂さとうの名前を指でなぞる。

「さとちゃん……。」
 名前を呼ぶ。
 もう決して会えない名前。もう決して伝えられない言葉。
 一度はともに死ぬことを選んだというのに、何故だか実感がわかない。
 もうこの世界のどこにも松坂さとうはいないんだなぁと、頭では分かっていても真に理解するには時間が必要だった。
 それを受け入れるにはもっと時間が必要だった。
 この時の神戸しおにとって、松坂さとうの死はどこか遠くに起きた出来事のはずで。
 怨みを晴らすにしろ、ゲームに勝利し松坂さとうを取り戻すにしろ、その決断を下すのは松坂さとうの死を受けいれるもっと後の出来事だ。

『――仮面ライダータイガを僭称した松坂さとうをこの手で処断することが出来た!』

 放送に映るルルーシュが、その名前を告げるその時までは。そのはずだったのだ。

 ◇

525厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:31:26 ID:G8TsH00E0

 「じゃあ、君が神戸しおなんだ。」
 穏やかな笑みを浮かべるマイの質問に、しおはこくりと頷いた。
 神戸しお。ルルーシュが探している少女の1人ということで名前だけは知っているが、見た目だけで言えば愛らしい普通の女の子でしかない。
 とはいえだ、マイ=ラッセルハートもルルーシュを過小評価してはいない。
 名指しで神戸しおを呼び出した以上、ルルーシュにとって手元に置くことで利益がある存在には違いなく。
 
「もしかして、松坂さとうか仮面ライダーエターナルの知り合い?」
 ――もっとも考えられるのは、敵になりうる存在を監視下に置きたい。と言う理由だ。
 松坂さとうの名前にしおの目元がわずかに動き、ぽつりと呟く。
 
「うん。
 さとちゃんはね、わたしの大切な人。」
 トランクスと最初に出会った時と、一言一句同じ言葉。
 だが、さとちゃんへの思いを楽し気に語る6時間前のしおとは違う。
 聞いているこっちが泣きそうになる、重く悲しい声だった。
 
「そっか。」
 神戸しおは、松坂さとうを喪っている。
 そして松坂さとうを殺したのがルルーシュであることは、全参加者が知っている。
 確実におのれを憎んでいるだろう神戸しおを、ルルーシュが無視することはできないだろう。
 意思が重ならない敵として早々に処刑するか。ルルーシュを巨悪として持ち上げるための『悪の敵』とでもいうべき旗印として活用するか。
 ルルーシュのこれまでの行動を思えば、そのどちらもあり得る話だ。
 
「喪いたく、なかったよね。」
 そんな予測を全て隅において、マイ=ラッセルハートは本心から呟いた。
 マイ=ラッセルハートに神戸しおと松坂さとうの関係性など知りようもない。
 姉妹か、友人か、先輩後輩か、はたまた同姓の恋人か。
 どんな関係であれ、神戸しおの心は深い悲しみの中にある。
 家族を失った時のマイと同じ心境で、同じ感情をいだいているのだろう。
 
 最愛の人の死を噛み締める少女とそれ以上の言葉を持たない女。
 次の言葉を持たず沈黙が続く2人の耳に、勢いよく駆け寄る足音が聞こえた。
 
「しおちゃん!!」
「……トランクスくん」
 明らかに間があったことにマイは気づいた。
 そのことに気づいているのかいないのか、トランクスと呼ばれた青年はしおの両肩に手を置き、心配げな視線を向ける。
 まるで若い父親か、年の離れた兄のようにマイには見えた。

「どうして一人で先に行ったんだ!」
「ルルーシュのところに行きたかったの。」
 反抗期の娘か妹のように、つっけんどんにしおは答える。
 トランクスもその返答は分かっていたのだろう。苦々し気に眉間にしわを寄せた。

「ルルーシュは、さとちゃんを殺した。」
 だから、殺さなきゃ。
 言葉にするまでもなく、そんな思いが伝わってくる。
 10歳にも満たない少女が発するにはあまりに冷たい言葉に、トランクスのみならず見ているマイにも冷や汗が垂れる。

「……気持ちは分かるけど、今ルルーシュのところに行くのは危険だ。」
 トランクスとて盲目ではない。そうでなくなったと言ったほうが適切だろう。
 リュージの話を聞く前のトランクスならまだしも、彼女が本心を隠し警戒すべき少女であると知った今ならば、しおが本気だということは気づいている。
 神戸しおは賢い。自分が殺し合いの只中にいることも、そこで自分に戦う力が必要なことも理解している。
 いつの間にか手に入れていた、アンクに渡したはずのジクウドライバーからも、その事実は読み取れる。
 
「……こんなこと言える立場じゃないかもしれないけれど。俺だってルルーシュは許せない。
 放送で松坂さとうを殺したことを誇るべき事のように言い放ったあの男は、どういう意図があれ殺し合いを受け入れている。彼は危険だ。」

 神戸しおは自分を信頼していない。
 その理由もいまだ分からぬままだが、信頼されていないなりに訴えかけようと言葉を選ぶ。
 神戸しおは未だにくりくりとした愛らしい目を向けてくれるが、それが演技なのか本心なのか読み取れない。
 ただ愛らしいだけの目に、トランクスは映っているのだろうか。それを尋ねることができないままにトランクスは訴えた。

526厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:33:34 ID:G8TsH00E0

「それでも、しおちゃんが戦う必要なんてないはずだ!」 
 人造人間との戦いを初め、セルにダーブラ、果てはゴクウブラックと幾度も死闘を経験しているトランクスの人生に、平和の二文字は存在しない。
 そんな彼にとって、平和な世界の平和な時代に松坂さとうとの愛をはぐくんだ神戸しおは、まさに守るべきものの象徴だ。
 松坂さとうと再会させるという約束を果たせなかったトランクスは、神戸しおを生還させることを己の使命のように考えている。
 これは神戸しおが特別なのではない。殺し合いを終わらせ皆を平和な世界に戻すことは、荒廃した未来の救世主にとって定めるまでもない絶対の使命である。

「――あるよ。」
 ――トランクスに誤算があるとすれば、『松坂さとうのいない平和』などというものを、神戸しおは微塵も望んでいないということだ。
 
「さとちゃんのことをちゃんと覚えている人は、ここには私しかいないもん。」
 この会場の松坂さとうしか知らない人間にとって、松坂さとうは早々に脱落した人物の1つでしかない。
 覚えている人間にとっても、松坂さとうの印象ははっきり言って最低に近い。

 ノワルにとっては、可愛らしく虐め甲斐のあるミルクサーバー候補でしかなく。
 ルルーシュにとっては、身勝手に人を殺して己の愛を押し付ける狂人でしかなく。
 ドラえもんにとっては勇者アレフとの戦いに乱入したよく知らない少女でしかなく。
 アルジュナ・オルタに至っては、認識しているかどうかさえ怪しいものだ。
 
 九条アリサを殺した女。仮面ライダータイガ。愚かにもルルーシュに歯向かった僭称者。
 気概も実力もなくイカレただけの女。覚えるまでもない雑魚。ただの文字列。
 神戸しおの手の届かない場所で死んだ松坂さとうに残ったのは、その程度の戦績だけだ。
 2人を永遠にするはずだった”死”の一文字は、そんな下らないレッテルにまで貶められた。
 
「だから、私がルルーシュを倒さなきゃ。」
 そんなものは引き剥がしてやる。私たちの愛で塗り潰してやる。
 殺し合いを生き抜いて、『さとちゃん』を取り戻す。
 それができるのは、元々の世界での松坂さとうを。
 彼女のくれたぬくもりを知る神戸しおだけだから。

「私は、さとちゃんが一番大事だから。」
「……しおちゃん。」
 だからもう、止まらないと。
 世界を背負う救世主に、ただ一人を背負う少女が告げる。決意表明であり、決別の証でもあった。
 それでも平和を喪う選択を、救世主は諦められない。

「でも……」
「差し出がましいようだけどさ。行かせてあげたらいいんじゃないかな。」
 その言葉にトランクスは初めてマイの存在に気づいたらしかった。
 
「貴女は……。」
「マイ=ラッセルハート。」
 殺し合いに乗っているかどうかまではあえて言わない。
 現状誰一人殺していないとはいえ、マイ=ラッセルハートは乗っている側である。
 五道化が相手をするレベルの参加者がノワルの他にもいる以上、トランクスのように戦闘に長けている参加者への警戒は怠れない。

「君たちに伝わるように言えば、ルルーシュとは敵対してる。」
 だからあえて、自分のことをそのように称した。
 神戸しおとルルーシュの関係が最悪である以上、この2人との対話や交渉で不利になることは無いだろうとの判断だ。
 その言葉に神戸しおはどこか嬉しそうに目を丸くして、反面トランクスと呼ばれた青年は困惑したのか動きが止まった。
 トランクスが何か言葉にする前に、マイの傍まで駆け寄ったしおが食い入るようにその顔を見つめた。

「そうなの?」 
「うん、そこのロボットもルルーシュが私を殺すためによこしたの。まあ私と私の友達で倒しちゃったけど。」
 氷漬けになったカッシーンを指さすと、しおは姿をまじまじと見つめ。

「これ、さっきわたしも見たよ。」
 あっけらかんとそう言い放った。
 青ざめるトランクスをよそに、マイはニヤリと笑みを浮かべしおに詰め寄った。
 宝石のように光る眼には、怯えも惑いも何もない。胆力がある子だなとマイは内心感心していた。

「マジ?」
「うん。一匹で動いてて『記憶操作の女の仲間か?』ってやってきたから。」
「きたから?」
「変身して斬った。」
「マジィ?」
 我慢できなくなったのかマイは大口を開けて笑う。
 その言葉に嘘があるようには思えない。『記憶操作の女』とわざわざ言っていたこともあればなおさらだ。

「結構強かったと思うんだけど、どうやって倒したの?」
「これだよ。」
 ニコニコ顔で尋ねるマイに、しおは自慢げに白いバックルを指さした。
 ベルト型の支給品。思い当たるものは1つしかない。

527厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:34:24 ID:G8TsH00E0
「あー。ルルーシュの言ってた仮面ライダーか。
君みたいな子供でもなれるんだねぇ。」
 人間の自由と平和のために駆ける英雄は、事この会場においては使い勝手のいい戦力という評価を受けている。
 変身における制約は皆無に近く。正規変身者・支給された存在・果てはNPCモンスターに至るまでもその力を振るう。
 話題にあがる松坂さとうもまた、鏡の世界で命を喰らいあうライダーの一人として、地獄のような戦場を生き抜いていたのだ。
 非力な少女である神戸しおだろうと、NPCに勝ちうる程度の戦力として数えられる。

「じゃあ、しおちゃんには戦う力はあるってことだ。」
「そういうことなのかな。」
「そういうことだよ。
ねえしおちゃん。しおちゃんはルルーシュのところに行くつもりだよね?
それは、その仮面ライダーの力があるから?ルルーシュを倒せる公算があるから?」
 問いかけながら意地悪な言い回しだなとマイは目を細めた。
 しかしルルーシュは仮面ライダーの力を他人に与えると公言している。
 その真偽はもはや問題ではない。
重要なのはそんな大言を言い放てるほどにルルーシュには力があるという事だ。
 
 ロロ・ランペルージと合流する前ならまだしも、今のルルーシュの陣営は層が厚い。
しおの変身するライダー一人で解決できる事態だと、無責任に言い放てる段階はとうにすぎている。
趨勢を観察していたマイ=ラッセルハートは、かなり正確にそんな予測を抱いていて。
 
「力とか、公算とか。よくわからないけどさ。
・・・・・・・・・・・・・
それってそんなに大事かなぁ?」
 神戸しおはそんなことを、微塵も考えていなかった。
  
「ルルーシュがどんな人でも、どんなに強くても。
私は私がやることを、もう決めたから。」
 強いことなど知っている。
 野望があることなど気づいている。
 分かったうえで、神戸しおは進むのだ。
 恩讐の炎で焼け焦げた、砂糖菓子の花道を。
 小さな復讐者の屈託のない言葉に、今度こそマイは顔を手で覆いながら腹の底からからからと笑う。

「……そっかそっか!これは悪いこと言ったね!!」
 腹を抑えて息を整え、マイはある一画を指さした。
ルルーシュのいる方角だ。

「ルルーシュは南の方角。この先をまっすぐ行ったらつくよ。
仲間の参加者が二人と、機械型NPCがたくさん。」
「わかった。」
「あと気を付けてね。
ノワルっていうすっごく怖い魔女がルルーシュと戦おうとしてる。
しおちゃん可愛いから、見つかったら捕まっちゃうよ。出来るだけ変身しててね。」
「わかった。」
 こくこくと頷くしおは、話を終えるとリュックを拾い上げ、ぺこりとマイへ頭を下げた。

「ばいばい、マイお姉さん。」
「ばいばい、しおちゃん。」
 その言葉を最後に、神戸しおは歩き出す。
 満足げに肩の力を抜いたマイに、茫然としていたトランクスが胸倉を掴みかかった。

「どうして行かせたんですか!
ルルーシュだけじゃない。巨大な黒い気があることをあなたも知っているでしょう。」
「…やっぱり、ルルーシュがどこにいるか知ってたんだね。」
 気で参加者を感じ取れるトランクスは、ルルーシュやノワルの存在をずっと前から気づいていた。
 この青年は神戸しおに、そのことを伝えていなかったのだろう。
 神戸しおも聞かなかったに違いない。短い会話しかしていないのに、そんな思考がありありと想像できた。
青年の責めるような目つきにマイは白けた目でため息をつく。

「逆に尋ねるけどさ、あの子が止まると思ってるの?」
 無理だろう。比較的好印象なマイやアンクでもしおを止めることはできない。
 地雷を踏んだトランクスなど言うに及ばず。
 言葉でも行動でも、彼女を止められるのは松坂さとうくらいのものだが。肝心要のそのさとうが死んでいるのだから、2人はこうして言い争っている。

「後押しする必要は無かったはずだ!
 あんな小さな子供にわざわざ辛く苦しい戦いを味わわせる事なんて!」
「あの子は復讐の道が辛く苦しいことも、分かっているよ。」
「何を根拠に…」
「私もあの子とおんなじだから。」
トランクスもマイも、幼いころから戦いを経験している。
しかし戦う以外の道が無かったトランクスと、自ら復讐に手を染め時空犯罪者の門を叩いたマイでは、戦うことの是非は決して噛み合わない。

528厄災ばかりの攻略未来 ―復讐の花が芽吹き― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:34:50 ID:G8TsH00E0

「『平等な世界』のためなら、私は何だって敵に回す。何だって利用する。
『松坂さとう』のためなら、神戸しおは間違いなく同じことができる。」
「そのためなら他人を傷つけ、不幸にしてもいいっていうのか!」
「いい悪いの話じゃない。好き嫌いの話でもない。
・・・・・・・・
それしかできないから、なんだってやるんだよ。復讐者(わたしたち)は。」
 ギリギリと白衣を締め上げていたトランクスの腕から、力が抜ける。
 この青年がマイの細い頸筋を同じように握っていれば、とっくに意識どころか命を奪っていただろう。
 折れ曲がった白衣を払いながら、うなだれる青年に目を向けた。
 まともに戦っていればマイを殺すことなど造作もない。
しおを力づくで従わせることも、彼にかかれば朝飯前だろう。

 トランクスはそれをしない。否――できない。
 救世主であるかれは、神戸しおやマイのように大切なものを選ばないから。
 リュックを拾い上げ、マイはカッシーンをリュックにしまい込む。
 既に機能を停止している彼はただの残骸に他ならない。解析もすでに終えていた。

「この金色ロボットの残骸は向こうにあるんだよね?」
 そういって、マイはトランクスたちが来た方を指さす。北東だ。

「……しおちゃんと僕がいた方角という意味なら、その通りです。」
「そう、情報ありがとう。”Merci beaucoup (メルスィー・ボクゥ)”。」
 ひらひらと手を振って、マイはしおとは別方向に歩いて行った。
 残された男は1人うなだれていたが、憔悴したまま神戸しおを追いかけ南に進む。
 
「…僕は、間違っていたのか?」
 神戸しおに人を殺してほしくないし。戦ってほしくはない。本心だ。
 本格的にルルーシュと交戦したり、まして殺し合いに乗るような行動をしてほしくはない。本心だ。
 だがこのまましおを無視しルルーシュに殺させるようなことも、トランクスにはできない。
 
 トランクス個人の思いを言えば、しおを安全な場所に避難させたのちマイの言っていたノワルなる怪物を倒したい。
 そう都合よくいかないことは、もはや考えるまでもなかった。
 神戸しおは止まらない。
 少なくともルルーシュ・ランペルージを殺すまでは。
 そしてトランクスの言葉に、その決意を止める力などない。
 リュージの言を信じるなら――しおはトランクスに対して好意も信頼も抱いていないのだから。
 
「でも……俺は……。」

 しおちゃんには、戦いを知らないままでいてほしかったんだ。
 松坂さとうに出会わせて、平和な日常に戻してあげたかったんだ。

 その言葉を聞き届ける者は、ここには誰もいなかった。

529厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:35:48 ID:G8TsH00E0
 ◇◆◇

 「何か見てるわね。機械型のNPCってことは、ルルーシュの下僕かしら?」

 埃の舞う租界の街並みを空から見下ろすノワルの視界に、その合間を動く存在が映り込む。
 ランチャーストライカー装備の105ダガー。ルルーシュがノワルの偵察のためによこしたNPCは、廃墟の物陰に隠れながらごてごてしい砲身を通し闇檻の魔女を『観測』している。
 壊すことなど造作もない。装備ごと『闇檻』で包み込むこんでも、秋山小兵衛にやったように闇檻で削り殺すしてもいいし。他の魔法を使ったっていいのだ。
 ましてやノワルは、マイ=ラッセルハートの奸計もありルルーシュを侮るような真似をしていない。
 それでも105ダガーに攻撃しない理由は、ごく単純。
 そんな余裕が今の彼女には存在しないのだ。

「よそ見をしている余裕があるのか?」 
 浮遊しているはずのノワルに、背後から声が投げかけられる。
 急いで距離を取るノワルに対し、深々と被ったローブで顔を隠した女は、指示を読み上げるかのように無感情に呟いた。
 
「『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)』そして『劣化複製(デッドコピー):嚮導老君(グレートガイダンス)』」
 光環(ヘイロー)を浮かべた女が指を鳴らすと、眼下の廃ビルがバターを切るようにカッティングされ、2mほどの無数の立方体となって宙に浮かび上がる。
 キャルやシェフィの世界でレジェンド・オブ・アストルムを生み出した七人の天才が一人、秘密結社の長が有する権能『オブジェクト変更』。
 女――死告邪眼のザラサリキエルは、権能によって浮かび上がった立方体の上を駆け抜けスコーピオンEVO3の引き金を引いた。
 同じく七人の天才が1人、エルフの長老の権能を持って”進化”させた銃撃は先ほどノワルの使い魔を粉々に撃ち滅ぼした。その威力はノワルを持っても警戒に値するレベルだ。
 空中に散らばる立方体の合間を縫うように飛び交い、ノワルは銃撃を続ける女に視線を落とす。
 張り付いたような笑みからは、余裕や慢心は消えていた。

「またその攻撃ね。芸の無い銃撃で本気で私を倒すつもり?」
「当然だ。私はお前を殺すための五道化だからな。
 言っておくが、得意の『闇檻』は使えんぞ。」
 ローブの奥でザラサリキエルの目が青く光っる。
 淡い光はザラサリキエルを中心に球状の結界を作り出し、光を浴びザラサリキエルの光環(ヘイロー)が掻き消える。異能殺しの領域。
 105ダガー越しに青い光を見たルルーシュやロロならば、それがギアスキャンセラーによるものだと気づいただろう。

「貴様を封じるために与えられたこの眼がある限り、下らない嗜虐趣味は楽しめないな。」
 ギアスキャンセラーを媒体にしたザラサリキエルの権能は、ギアスの性質上他者に干渉・変質させる異能を悉く消しさるものであるが。
 その仮想敵ともいえるものが、ノワルの代名詞ともいえる拘束魔法『闇檻』だ。
 この会場でも猛威を振るい、幾人もの淑女に牙をむいた力がこの光の中では無力と化す。
 
「封じる?何を言っているのかしら。
『闇檻』を使えなくした程度で私の天敵を気取るなんて、ナメすぎじゃない?」
 その光の只中に居て、闇檻の魔女の余裕は崩れない。
 キヴォトス人の銃撃スキルを十全に継承しているザラサリキエルの弾幕に、弾切れの隙も技量不足による誤射もない。
 常人ならば何度死んだか分からない弾幕をよそに、弾丸より早く宙を舞いながら、ノワルの手には光弾が生成される。
 魔力を溜め、撃ちだす。純粋な火力と手数がものをいう極めて基礎的な攻防の熟練度。
 そんなシンプルな攻撃を必要とする戦闘を、ノワルは既に経験している。
 
「本気で私を殺すというのなら、結界の効果は『闇檻の封印』じゃなくて『魔力の使用禁止』にすべきだったわね。」
 言葉のする方にザラサリキエルが向き直り、引き金を引く。
 1秒にも満たない早業だが、ノワルが魔法を撃ちだすのはそれよりずっと速いのだ。

530厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:36:55 ID:G8TsH00E0

「シャインレイン」
 ノワルを中心に横殴りに降り注ぐ、スコールがごとき細い光がザラサリキエルに直撃する。
 アルジュナ・オルタとの戦い同様遊びを抜きにした一撃だが、戦いの傷もあり全開とは言えない。
 アルジュナ・オルタに降り注いだ集中豪雨と比しても、賢者の石の強化を含め威力はせいぜいが7,8割。
 大半の参加者なら瞬時に蒸発させかねないが、対ノワル用の五道化であるザラサリキエルなら全力で防御すれば防げるレベルの攻撃である。――普段ならば。
 
「まあ、この結界を展開している今のアナタじゃあ、耐えきるなんて無理でしょうけど。」
「貴様……気づいていたのか!」
 光の豪雨の中わずかに聞こえたノワルの言葉に、ザラサリキエルは忌々し気に舌打ちで返す。
 ザラサリキエルのギアスキャンセラーの有効範囲には、ザラサリキエル自身も含まれる。
 その対象は七冠(セブンクラウンズ)のスキルだけでない、キヴォトス人の肉体に宿る神秘の効果も低減しザラサリキエルの防御力までも大幅に低下する弱点がある。
 ヘイローが消えてしまったことは必然とはいえ、ノワルにその事実を感づかせる結果となった。

「『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)』!」
 とっさにギアスキャンセラーを解除し、浮遊するコンクリートブロックを重ね合わせ防御に集中。
 だが、その媒体は租界にある建造物だ。その程度で防げるほど。災害の名は甘くはない。
 鉄球のような密度を誇る純白の光がコンクリートの立方体を貫通しザラサリキエルのローブを焼き切っていく。
 立ち上る煙を次の光弾か消し飛ばす光の災害。
 ノワルが魔法を解く頃には、コンクリートもローブもその全てが砂粒と成り果てていた。
 人影の見えない煙にあの程度で死んだなら拍子抜けだが、そんなノワルの考えは足元から広がる青い光が打ち消した。

「ワープの固有魔法も持っているなんて、中々多彩じゃない。」
「『劣化複製(デッドコピー):跳躍王(キングリープ)』。
 流石に一筋縄ではいかないか。闇檻の魔女。」
 ノワルの足元、荒廃した交差点の中央からザラサリキエルはノワルを見上げた。
 その姿は紫紺の鎧に包まれている。素顔は見えない中、鎧の奥で青い光が輝いていることをノワルは見逃していない。
 
「かわいい顔は見せてくれないのね。
 その鎧も何かのアイテム……かと思ったけど、何の力も感じないわね。」
「残念ながら、エケラレンキスの帝具の1つを迷宮女王の力で模しただけの張りぼてだ。
 だが、貴様のような変態に面を晒す醜態を避けるにはちょうどいい。」
 ザラサリキエルの紫紺の鎧。『修羅化身グランシャリオ』と呼ばれる帝具を模した装甲は、本物のようなブースターもなければ自己修復も出来ない。
 鎧としての力も本物には数段劣る。ノワル相手では紙切れと変わらない。
 そんなものを身に着けてまで顔を隠すザラサリキエルの態度は、ノワルにとってむしろいじらしく思えた。
 
「醜態ねぇ。
 そういうことなら今の状態がみみっちくないかしら。
 私の天敵みたいな雰囲気だしていたけど、あの黒い男の方がよっぽど強かったわよ。」  
「……成程。黒き最後の神との交戦を済ませていたのか。どうりで油断も隙も無いわけだ。」
 納得したように頷く。
 ザラサリキエルの知識ではノワルと言う女は誰彼構わず本気を出すような女ではないはずだった。
 闇檻をギアスキャンセラーで封じ、動きが乱れた彼女なら制することは容易だったろう。

 しかしノワルがこの会場で戦った相手は幸か不幸か一筋縄ではいかない猛者が多い。
 マジアベーゼやアルカイザーを初めとする戦士たちの戦いで手傷を追った。
 己と同等以上の怪物であるアルジュナ・オルタとの交戦で大幅な消耗も経てここに居る。
 闇檻封じはノワルと戦う上で必須になる要素ではあるが、それだけで攻略できるほど13の災害は生易しくない。

「認識を改めよう。貴様は強い。私の想定より遥かにな。」
 その事実を前にザラサリキエルが抱いたのは、憤慨でも恐怖でもない。
 あえて言葉にするなら、敬意だった。
 想定外の言葉に思わずノワルも目を丸くする。

「鴨が葱を背負って来ただの言っていた割には、随分素直になったじゃない。」
「客観的な判断だ。
 闇檻を抜きにしても貴様の出力は百地希留耶やトレスマジアどもを優に超える。
 どれだけ枷を付けようと、この会場で貴様以上の魔導士は存在せず。ただ対策しただけで御せるトラブルではない。
 忌み名通りの災害に他ならない。」

 お世辞でも何でもない。純粋かつ公正な評価としてノワルは強い。
 数多の制約どころかトレードマークの闇檻を封じられながらも、なお一線級の強さを誇る。
 その怪物を前にして、ザラサリキエルの対応はあまりにお粗末だった。
 ザラサリキエルは茅場謹製の高性能なNPCだ。当然反省も出来た。

531厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:37:41 ID:G8TsH00E0
「今だから言うが、私はここで貴様を殺すつもりは無かった。」
 脈絡のない言葉に、ノワルの頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。
 
「言い訳かしら?そういうのはミルクサーバーになってからいくらでも聞いてあげるわ。」
「そうではない。
 運営として、貴様のような優秀な殺戮者(マーダー)をこんな序盤で失っては損が大きい。
 減ったとはいえ有象無象の参加者(コマ)は100を超えている、その中にはクルーゼ様がねじ込んだバケモノもウヨウヨいる。
 貴様のような怪物には、まだまだ参加者を減らしてもらわねばならん。
 故にここでは令呪の一画でも使わせて、『庭園』から遠ざけられればいいと思っていた。」
 それは参加者として『生存』や『殺戮』を考える者たちと異なる、運営側からの言葉。
 都合のいいレベルで消耗させ、都合のいいように動いてもらう。そんな考えが透けて見えた。
 不快感を入り混ぜてノワルは返す。
 
「何が言いたいの?」 
「貴様を相手にするならば、殺すつもりでちょうどいい。
 故にここからは、殺すつもりで相手をしよう。」
「そういうセリフは『青い目』を止めてからにしなさいよね。」
 会話の最中もギアスキャンセラーは起動していた。
 ノワルは闇檻を使えない。正確には使うと同時に解除され、誰も縛ることができない。
 檻に対するマスターキーだが、その間は他の異能をザラサリキエルは使えない。ノワルが気づいていることはザラサリキエルも知っている。
 だというのに、ザラサリキエルの言葉にはどこか余裕がある。
 勝って当然と言った傲慢な態度は鳴りを潜めても、己が負ける可能性を全く考えていない。そんな態度だ。
 
「他人の固有魔法――七冠(セブンクラウンズ)と言ったかしら?
 その能力を使わずに私を殺せると?」
「そこまで己惚れてはいない。ただ、こちらにできることはまだあるということだ。」
 故にノワルはザラサリキエルを注視した。普段ならへし折り甲斐のある気概だが、こと運営側の調整者が相手ならば何か仕掛けがあるはずだと。
 特別な支給品があるのか。ギアスキャンセラーと併用が出来るスキルを有しているのか。
 ザラサリキエルの忠告にも正面から耳を傾け、故にこそノワルは異変に気付くのに遅れた。
 
 ノワルの周囲に浮いていた黒い宝珠――気に入った女性を閉じ込め魔力を搾り取っていたポケット闇檻が、解けていたことに。

「欲張りな魔女に1つ教えてやろう。
 ここはピクニックじゃない。おやつは没収だ。つまみ食い大好きなノワルちゃん。」

 言葉の意味を理解するのと、ポケット闇檻が砕け散るのは全く同時だった。
 女たちを魔力サーバーにするのも、闇檻に閉じ込めることも、全て闇檻による拘束だ。ギアスキャンセラーの対象内。
 中に閉ざされていたアスナが落下し、彼女を縛り付けていた機械も霧のように溶けていく。
 生まれたままの姿で落下していくアスナにノワルは手を伸ばしたが、彼女から排出できた魔力の塊たる珠をいくつかかろうじて手にするのが精いっぱいだった。

「はじめっからこれが狙い……!」
 むざむざ成果を奪われたノワルの顔から初めて笑みが消えた。ザラサリキエルは変わらず続けた。

 「闇檻の中に余剰魔力をNPCごと収納。
 魔力に余裕がある貴様だからこそできるアイデアだが、貴様に魔力を回復する隙など、与える余裕は無いからな。
 これで準備は整った。『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)――始原(アルファ)』」

 青い光を閉ざし再びヘイローを浮かべ、ザラサリキエルは権能を起動する。
 言葉に応じてノワルの眼下にある廃ビルや道路がもぞもぞと動いたと思うと、壁面や道路を埋め尽くすようにびっしりと穴が空いた。
 空に浮かぶノワルには毛穴やニキビのように見える小さな穴だが、まじまじと見つめ正体に気づく。
 全て、銃口だ。
 マシンガン。ライフル。バズーカ。ロケットランチャー。果てはモビルスーツに装着するようなレーザー兵器まで。
 迷宮女王の始原の冠装(アルファアバター)。『武装生成(アームズクリエイション)』が生み出した無数の兵器を前に、感じていた生理的な嫌悪は刺すような殺意に上書きされていく。
 
 「武器生成の固有魔法……。」
 「結城明日奈まで囚われていたのは誤算だったが、今なら巻き込む心配もない。――撃て。」

 掛け声とともに無数の銃火器が一斉に火を噴いた。
 一発一発はノワルにとっては虫が刺すような攻撃だ。嚮導老君(グレートガイダンス)の権能による進化もされてはいない。
 問題はその数が多すぎること。密集した無数の弾丸は黒い津波のようにノワルに押し寄せてきていた。

532厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:38:39 ID:G8TsH00E0
「シャインレイン。」
 銃弾の群れを前にノワルが選んだのは光線による相殺。
 闇檻の防御は横山千佳との戦いのようにギアスキャンセラーで無効化される。
 しかし防御障壁で防ごうにも、ロケットやレーザーなどの明らかに殺傷力の高い攻撃が権能で『進化』させられ、万が一にも貫通してはシャレにならない。
 故にノワルはそれらの危険性の高い攻撃に光線を集約させ、対空ミサイルのようにその攻撃を相殺する。

「まったく、あの爺さんは別としてもここでの戦いは頭を使うから大変ね!」
 言葉をぶつけながらも、ノワルの指先で動く光が期待通り殺傷力の高い攻撃を撃ち落とし、緋色のレーザーを正面から打ち消す。
 微細な魔力コントロールと必要十分な威力が求められ、さらに浮遊のための魔力をコントロールすることも求められるが。
 その程度の修羅場はアルジュナ・オルタとの戦いで経験済み。
 先の戦いとの違いは、手数の多さ。
 『個』の極致たる黒き神とは違い、『群』の極致たる攻撃では取りこぼしが発生するのは必然といえた。
 現にノワルの光線の合間を、数個の弾丸が抜きノワルの体に届きそうになっている。
 
「その程度!」
 だからどうした。
 ノワルがリスク管理に失敗し、致命傷を受けるような攻撃をみすみす逃がす無様を晒すような女であれば、アルジュナ・オルタとの戦いでとっくに死んでいる。
 取りこぼした銃弾の軌道はわずかにノワルの体を掠めるのみだし。掠めたところで誤差のようなダメージだ。
 全くの無問題。そう認識したノワルのローブに取りこぼした銃弾が掠め。

「『劣化複製(デッドコピー):誓約女君(レジーナゲッシュ)』」
 ――掠めた銃弾 計5発。 その全てが、ノワルの両腕に食い込んだ。
 
「なっ――」
「お前の想像通り、全ての武器をお前に有効なレベルに強化することは不可能だし。よしんば強化したとて黒き最後の神に並ぶ出力は出ない。
 だが、”お前に当たる攻撃”が1つでもあれば、誓約女君(レジーナゲッシュ)の権能はその全てを必殺(クリティカル)に変える。」
 誓約女君(レジーナゲッシュ)の権能 乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)と呼ばれるそれは、自他の攻撃の乱数を調整する絶対攻撃絶対回避を思いのままにする力だ。
 わずかにでも当たるのならばその攻撃はクリティカルヒット。ザラサリキエルはノワルにわずかでもあたる可能性がある銃弾にその権能を付与した。
 風。熱。魔力の歪み。他の銃弾との跳弾。
 権能を受けた銃弾は肌やローブを掠めるだけの未来を改変され、ノワルの肌を赤く濡らすまでに至った。

 銃声と爆発に阻まれ、ザラサリキエルの言葉はノワルの耳には届かない。
 だがこの攻撃がザラサリキエルの仕込んだものだということは分かる。
 腕から脳に伝わる痛みに悶えながら指で次の魔法を動かす。ノワルの目前に再装填されたレーザーが迫りつつあった。

「障壁を張るなら好きにすればいい。嚮導老君(グレートガイダンス)の権能と対MS兵装があればその上から貴様を叩ける。
 銃撃による必中必殺の飽和攻撃か、進化させた必殺兵器か。好きな方で死んでくれ。」
 
 今度の声はノワルにもはっきり聞こえた。
 その声に反応するより早く、撃ちだされたレーザーがノワルの体を捉え周囲の弾丸を巻き込み空中で爆ぜた。
 
 「直撃か。」
 ノワルを中心とした黒煙を前に、ザラサリキエルは弾丸の連射を止めた。
 周囲一帯の武器錬成はザラサリキエルにとっても負荷が大きい。使えば使うほど権能再現のインターバルは長くなり、次に同じ規模の武器を生み出せるのは数時間後になる。
 何せ手にしたスコーピオンと違い銃弾の1つに至るまでザラサリキエルが権能で生みだしている。死体に弾丸を撃つ余裕はザラサリキエルには残っていない。

「あわよくばこの攻撃で致命傷を負ってくれれば嬉しいが。」
 願望を漏らす。
 回復に令呪が必要なほどのダメージを受けてくれることがザラサリキエルの理想だ。病院から距離を取ってくれればなおいい。
 アルジュナ・オルタと真正面戦い生存するような女だ、ここで死ぬような淡い期待をザラサリキエルは抱いていない。

「まあ最悪死んだら死んだでいいが」
「誰が死んだって?」
 ヒュンと空を切った腕が黒煙を払い、中に潜む女の金色の髪が風に揺れた。
 ノワルが生きていたことに驚きはない。そんなザラサリキエルでさえ、目の前の光景にグランシャリオの仮面の中で目を丸くする。

533厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:39:08 ID:G8TsH00E0
「貴様……ノワルか?」
 今更な言葉をザラサリキエルは口走るのも仕方がない。
 爆心地であるノワルがいた場所に姿を見せたのは、ノワルの胸ほどの高さしかない少女の姿だったからだ。
 帽子をかぶり、金色の髪を二つに束ねた学生にも見える少女。
 その背には巨大なジェットパックが2つぎゅんぎゅんと音を立て、魔力とは別の理由で女に飛行能力を与えていた。

「貴女だって顔を隠してるんですもの。私がしても文句は無いでしょう?」
 悪辣な笑みに蕩けるような悍ましい声。
 間違いなくノワルだ。ではあの右目に眼帯をつけた少女の姿は?
 思考を巡らすザラサリキエルをよそに、少女の腕と肩が音を立てて変形し、無数のガトリングガンが飛び出してくる。
 
「MODE=戦女神(ヴァルキリー)」
 両腕に背中と肩。左右4丁ずつのガトリングガンから一斉に火を噴き、上空から降り注ぐ銃弾がザラサリキエルの周囲に展開した無数の銃火器を破壊していく。
 その姿を見てザラサリキエルは思い出す。
                 ・・・・
 ノワルの姿の正体。彼女が使用した起動キーの名前を。

「マイ=ラッセルハートの関連資料にあった、巻戻士のアンドロイドか!
 モビルスーツでもナイトメアフレームでもユニバースロボでもない。機械型エージェントの起動キーだと!」
 レモンと言う名の巻戻士はアンドロイドである。
 2075年の日本政府が総力をかけて生みだされ、その戦闘力は最強と呼ばれる巻戻士に張る。
 無論その耐久力も、過酷な巻戻士の任務に耐えられるほど頑強だ。
 
 ノワルが爆発を耐え抜いた理由など至極単純。うち放たれたレーザーをシャインレインで相殺する時に、あえてぎりぎりまで引き付けた。
 相殺したレーザーは言わずもがな、同時に展開した魔力障壁で上がった防御力にレモンの装甲を合わされば、爆発も銃弾もダメージなど与えない。
 ダメージが無ければ、どれだけ乱数を弄ろうとクリティカルヒットなど起こりえない。
 顔についたわずかな煤を払い、破壊され尽くした銃火器群を見下ろしてノワルはぐにゃりと笑みを浮かべた。
 
「ウフフ。レモンちゃんっていうのよね。可愛い顔ね。
 ここを出たらアンドロイドからどんな魔力が絞れるのか気にはなるけど、まあそれはそれ。」
 想定外の支給品に瞠目するザラサリキエルを、レモンの顔が睨む。
 起動キーとなった今の彼女に、オリジナルの性格など欠片も存在しない。
 
「私の体に傷をつけたこと、後悔させてあげるわ。」
 
 巻戻士の皮を被った魔女は仮面をつけたような笑みのまま、底冷えするような怒気とともに道化に銃口を向けた。

534厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:39:37 ID:G8TsH00E0
◇◆◇

「……カッシーンの小隊からの連絡が途絶えたか。
 流石にここまで生き残っただけはある。戦える程度の支給品か、手下の1人はいるようだな。」
 
 助手席に座りながらふてぶてしく足を組んだルルーシュは、通信機を投げ捨てると気分が悪いと言いたげに頭を抱えた。
 怨敵 シャルル・ジ・ブリタニアと同じ異能を持つイレギュラーなどルルーシュにとっては最優先の抹殺対象だが、ノワルとの戦いを目前としている今、排除当てられるのは最低限の戦力だ。
 温存している女性陣を導入して記憶操作の能力者を追うことも考えたが、万が一ノワルの戦闘領域(かりば)に彼女たちが入ってしまっては本末転倒だ。
 記憶操作の能力者――マイ=ラッセルハートを今すぐ始末することは断念せざるを得ない。逃す気はないとはいえ断腸の思いである。

「日本の言葉に『二兎追う者は一兎も得ず』というものがあるが。このままではその通りの展開を迎えるだろうな。
 狩るべき兎は一匹に絞るべきだ。ましてやこの会場でも指折りの大物ともなれば、よそ見などしてはいられんだろう。」
「よくもまああんなバケモンを兎だなんて可愛らしい例えで言えるなお前。」

 後ろの席で、陽介はげんなりした声を投げかけた。
 視線の先、ルルーシュの持つタブレットには偵察に出したNPCからの、ノワルとザラサリキエルの殺し合いと言う言葉さえ生ぬるい戦闘映像が流され続けている。
 空中を目にもとまらぬ速さで駆け抜ける魔女に、無数の銃火器から銃撃を浴びせる光景。
 一個大隊並みの銃火器を用いた飽和攻撃前に、ノワルが受けた傷は両腕に数発。それさえザラサリキエルの権能が無ければ成し得なかっただろう。
 それはつまり、ルルーシュの指揮する機械型NPCの攻撃ではノワルにダメージを与えることは極めて困難という意味でもあった。
 これが無関係の場所で起きる戦いならば単なる娯楽映画だが、陽介たちは今からこの戦いの渦中に入り込む必要があるのだ。

「どうした陽介、怖気づいたか?」
「怖気づくわこんなもん。
 流石にわかるぜ、あの青い光――ギアスキャンセラーだっけ?あれがある限りノワルの拘束能力は使えない。
 だからあのNPCとの戦いじゃ、その力は殆ど使ってないんだろ?」 
「みたいだね。
 ギアス以外にも作用するってことは、ギアスキャンセラーを元に運営側で用意した無効能力って感じだと思うけど。」
 ということは、厄介だと聞いていた拘束能力を無効化したところで都市を滅茶苦茶に出来る火力が襲ってくるだけだということではないか?
 その事実に陽介は冷汗を垂らしたが、反面ルルーシュはこともなげに続けた。

「だがいいニュースもある。
 ノワルはこちらが思っていたより好戦的だ。
 松坂さとうやドラえもんの情報になった色情魔なだけであれば、不利な状況になれば逃亡する可能性があったが。この戦いを見る限りその可能性は低いだろう。」
「それのどこがいいニュースなんだよ。」 
「記憶操作の能力者や黒き神のことを考慮すると、俺たちにノワルと二度戦う余裕は無い。
 そうでなくとも、他の参加者の支給品を回収しているだろうノワルのほうが質・量ともに上回ってる。あの少女姿の起動キーが奴の切り札だとは考えられんしな。
 万が一奴に逃げられ、消耗戦持ち込まれた時点で俺たちの負けだ。」
 戦力の『量』では圧倒的に勝っているはずなのになと付け加え、ルルーシュは何度目か分からないため息をついた。
 ノワルとの『再戦』があるとして、その時にルルーシュが切れるカードは疲弊した軍勢に温存している女性陣だ。
 タギツヒメやキャルに相応の戦闘力があることはルルーシュも考慮しているが、ノワルに拘束され魔力を搾り取られるリスクを考えると彼女たちをノワルとの戦いに出す未来は避ける必要がある。

535厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:40:10 ID:G8TsH00E0

「つまりここで何とかして勝たなきゃいけないということですね。」
「そういうことだ。
 そのためにも、今の俺たちがすべきはギリギリまでノワルとあのNPCの戦いを伸ばし、消耗させることだ。」 
 ルルーシュとて真正面から万全のノワルと戦って勝てるなどとは思っていない。
 ノワルの魔力を少しでも削り、戦うからを削ぎ落す。理想を言えば令呪2画を使わせたうえで挑みたいというのが本音だ。
 なにせ令呪により本調子を取り戻す前の時点で、キャルの言うドームを生み出す能力や都市部を灰燼にした戦闘をこなしている。
 この全てが松坂さとうやドラえもんの勘違いだったという一縷の望みも、映像越しのザラサリキエルとの戦いが否定した。
 故に待つ。
 兎を狩るために、兎が狩れる程度に手負いになる瞬間を、ルルーシュは待っている。
 圧倒的に格上の魔女を倒すにあたり、ルルーシュが選んだ戦略(プラン)はまさに最善と言っていい。
 
 だが、忘れては無いだろうか。
 ルルーシュが綾小路清隆に話した計画では、ノワルはアッシュフォード学園に誘導して殺す手はずだった。
 そのためにNPCや参加者を囮とし、ノワルを殺すための万全の対策を勝手知ったる学園に仕込む。
 この計画が瓦解した理由は、マイ=ラッセルハートがノワルとの戦いにルルーシュを強引に巻き込んだためだ。
 どれだけ卓越した頭脳で、一部の隙も無い策を練ろうと、想定外の一撃で瓦解する。
 そしてこの会場において、ルルーシュの策を崩す想定外は、枢木スザクのみにとどまらない。
 
『ルルーシュ様!急いでお逃げください!』
 ルルーシュの手元で、配下との連絡用端末がけたたましい振動と共に声を届ける。
 通信がルルーシュの耳に届くのと、軍勢の端で起きた爆発に気づいたのは、全く同時だった。
 想定外(イレギュラー)にルルーシュは目を見開き、焦りとともに通信機に叫んだ。
 
「何が起こった!応答しろ!」
『しゅ……襲撃者です!
 青い髪の男と、仮面ライダー!
 次々と味方がやられております!現在7……いえ、9機が戦闘不能に!』
「この一瞬でか……。」
 NPCモンスターの戦闘不能は、文字通りに破壊され再起不能であることを意味している。
 たったの二人か、そう結論づけることを今のルルーシュはしない。
 この会場には強者が多すぎる。エターナルやゼインレベルの猛者が2人となれば、今控えている全戦力をぶつける必要があるかもしれない。
 そうなればノワルに残す戦力など欠片もない。
 しばし悩んだ末、ルルーシュは通信機に向けて指示を伝えた。

「……アルファからデルタまでの部隊は先遣隊と合流しノワルとの交戦に備えろ。
 俺、ロロ、陽介の警護はイプシロン部隊だ。それ以外の者たちは襲撃者との交戦は避けろ。」
『いいのですか?』
「魔女狩りを始める前に戦力を喪うわけにはいかない。
 襲撃者隊も参加者だというのなら、ノワルの存在を伝えれば交渉の余地はあるはずだ。
 最低でもノワルを倒すまでの不戦。もし強力な男ならば共闘も見込める。いささかリスクが高いが、記憶操作の能力者が攻めてきたわけではないのであれば安心だ。」
『仮面ライダーが記憶操作の能力者だという可能性は?』
「もしそうなら、お前たちを襲撃などせず手駒に変えていたはずだ。ないとは言わないが低いはずだ。
 一先ずお前たちは散会し、待機しろ。交戦に関しては各自の判断で構わない。」
『イエス、ユアマジェスティ!』

 その言葉と共に、ルルーシュの周囲に残る数体の機械型NPCを除き、全ての部隊が規律正しくノワルのいる方向に進軍していく。
 機械の軍勢がいなくなった租界の道を、白い仮面ライダーが歩く足音が響いた。その後ろには青い髪の男が心配とも憤慨とも取れる、苦々し気な表情浮かべ追従していた。
 車から降りたルルーシュは、周囲のNPC達に武装させると、青年とライダーに向き直り。松坂さとうを相手にした時のように努めて穏やかにしかし威圧感を崩さずに告げた。

536厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:41:35 ID:G8TsH00E0

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。
 よくも私の配下を……といいたいところだが、今は非常事態だ。追及はしない。
 君も我々を信用できないだろう。変身している君は仮面ライダーのままで構わない、一先ず名を聞かせてくれないか。」
「……。」
「……トランクスです。」
 青い髪の男だけが答える。
 敵意を持って睨むような、こちら見定めているような。お世辞にも好感を抱かれているとはいえない視線だった。

(だが、その視線は想定内だ。むしろ望ましくすらある。)
 トランクスの態度はルルーシュの『巨悪』としての振る舞いが影響を与えている証左でもある。
 しかしとルルーシュは考える。仮にトランクスがエターナルやゼイン並みに強い参加者だとしたら、ここで敵対するのは自殺行為だ。
 こうして会話に興じてくれている以上、少なくともトランクスに関しては対話の余地がある。
 ならばノワルとの戦いの間の不戦、あるいは共闘の手はずを整えることは、ルルーシュの弁舌をもってすれば不可能ではない。
 そう考え、未だ名乗らない仮面ライダーへと視線を落とした。
 
「それで、君は?
 変身しないでもいいとは言ったが、男か女かさえ分からない状態で話をすることは難しい。」
「そっか……。」
 まだ幼い、少女の声。あどけなさが残るその声に、ルルーシュは不穏な空気を感じ取っていた。
 少女が仮面ライダーであること自体は、小宮果穂の例もあって想定していないわけではない。

「私はね、神戸しお。」 
「………………………………は?」
 だが、告げられた名前は、ルルーシュにとって最悪の相手だった。

「じゃあね。」
『FINISH TIME』
 もはや会話さえする気が無いと言わんばかりに、しおはベルトに装填されたウォッチを起動する。
 ルルーシュを囲むように『キック』と書かれた謎の文字が浮かび上がり、トランクスもルルーシュも対応する間もなくしおは駆けた。
 飛び上がり、ジクウドライバーを一回転。
 魔王の必殺技の発動シークエンスは、この行動を持って完了する。
 
『TIME BREAK!』
 ルルーシュを囲む文字がしおの右足に吸い込まれ、その足先はルルーシュに向かう。
 基本形態とはいえ、後の時の魔王が扱う一撃に今のルルーシュが耐えることは不可能だ。

「ペルソナッ!」
 だがそれも、彼一人ならばの話。
 陽介のペルソナ、ジライヤの両腕がしおの一撃が当たる直前にルルーシュの体を掴み一気に飛び上がる。
 標的を逃がしたしおの一撃は無人の車に向けて直撃し、中に残るタブレット事木っ端みじんに砕け散った。
 爆ぜる車をよそに、着地したルルーシュは駆けよる陽介にニヤリとした笑みを向けた。

「助かったぞ陽介。」
「間一髪だったな……。
 なんだあの仮面ライダー。お前を殺す気満々じゃねえか。」
「だろうな。
 奴が神戸しおというのなら、俺に対し恨みを抱いてしかるべきだ。」
 ルルーシュ・ランペルージは、松坂さとうを殺している。
 それが神戸しおにとって何を意味するのか、気づかないルルーシュではない。

 松坂さとうにとって神戸しおが代えの効かない甘く美しい愛の世界であるならば。神戸しおにとって松坂さとうもまた同じ。
 松坂さとうを殺し、あまつさえその死を喧伝したルルーシュを、神戸しおが許すことはあり得ないだろう。
 ルルーシュにもナナリーという代えがたい妹がいる。仮に他の誰かがナナリーを殺したことを高笑いと共に誇るならば、何をしてでもそいつを殺す。
 自分が復讐の対象になることを想像できないルルーシュではないと。陽介の前では予想していたことのようにポーカーフェイスを気取る。

(なぜ!よりにもよってなぜ今神戸しおが来るんだ!!!)
 その内心であまりにもタイミングの悪い事態に困惑と理不尽が渦巻いていた。
 神戸しおがルルーシュを殺したいほど憎んでいることも、出会ってしまっては戦うしかないことも想定内だが。
 まさかノワルとの戦いを控えているこの瞬間に責めてくるとは想像も出来ず。
 神戸しおを無視してノワルとの戦いに進んだとして、常に背後に迫る神戸しおの陰を気にする必要があるのだ。そんな状態で勝てる相手では断じてない。

「ルルーシュ!!!」
 少女が叫ぶ。恩讐と憎悪に塗れた苦々しい声で。
 仮面ライダージオウの『ライダー』とかかれたコミカルともいえる仮面が、おどろおどろしい威圧感を放っていると錯覚してしまうほど、神戸しおの激情は強かった。
 少女が変身しているとは思えない足取りで進む仮面ライダージオウ。

537厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:43:09 ID:G8TsH00E0

「兄さんは先に行ってください。」
 その両足が、宙に浮いたまま止まった。
 ロロ・ランペルージの右目が輝き。赤い光が周囲一帯を包み込む。
 ジオウだけではない。トランクスも同様だ。
 蝋で固めたかのように、少女と青年の動きだけが空間内で停止していた。

 ロロ・ランペルージの『絶対停止のギアス』。その効果だと気づいたルルーシュは、爆発する車の傍で苦悶の表情を浮かべる弟に目を見開いた。

「ロロ!」
「ノワルはここで倒さなきゃいけない。
 そのためには兄さんの力が必要なんだ!
 僕と陽介でこの2人を足止めする!その間に兄さんはノワルを!」
「……分かった!」
 ロロ・ランペルージが停止させられる時間は短い。
 故に余計な言葉も指示もなく、ルルーシュはロロ・ランペルージに背を向けた。

「イプシロン部隊!半分は俺についてこい!
 ロロの周囲にいる半分はロロ・陽介と共に襲撃者たちの足止めに回れ。」
「抹殺しても?」
「構わん!」
 ルルーシュの許可に合わせ、ロロは周囲に居たモビルスーツのNPCが武器を構えるように指示を出す。
 しめて6機。その全てが神戸しおへと照準を合わせていた。
 ロロ・ランペルージのギアスは機械には効果を及ぼさず、飛び交う銃弾は止まらない。
 機械型NPCならば、絶対停止のギアス下でも抹殺を行うことなど容易かった。

 神戸しおが無力な少女であれば、ルルーシュとてここまで強引な手段を取らなかっただろう。
 だが、今の神戸しおは仮面ライダージオウ。魔王の幼体にして仮面ライダーの中で有数のスペックを誇る戦士だ。
 殺さず無力化するには、ルルーシュの手札には余裕がない。

「ちょ……そんないきなり……」
 いきなりの抹殺指令に困惑する陽介をよそに、引き金が引かれた。
 塵の舞う租界の空気に乾いた破裂音が響き。飛び交う銃弾が魔王の体を貫通――

  ――しなかった。
 
「や……め……ろ……」
 掠れた男の声と共に、黄金色の光弾が6発。しおを狙ったモビルスーツを粉々に打ち砕いた。
 爆発と爆炎から身をかわしながら、ロロは光弾が来た方向を確認し、思わず声が震えた。
          ・・・
 絶対停止のギアスの影響下にあるトランクスの腕が、こちらに掌を向けていた。

「嘘だろ!」
 動揺する余裕もなく、爆発と爆炎で酸素を消耗したロロのギアスがここで切れる。
 停止していたトランクスとしおの時間が再び流れ出し、何事も無いように駆け出す神戸しおをよそに、トランクスは茫然と周囲を見渡す。

「今のは……」
 明らかに何か異変があったことを自覚している。
 絶対停止のギアスは他者の知覚さえ止める。”なにかあった”と理解できる時点でロロ・ランペルージにとっては異常事態に他ならないのだ。

 「彼は……動けないはずなのに!ギアスの影響は受けていたはずなのに!」
 動揺の中、ロロは己のギアスに課せられた制約を発揮と知覚する。規格外の相手には効果が薄いという酷くわかりやすい制約を。
 (タギツヒメの話なら、黒崎一護は彼女より強いらしい。
 彼を殺した時の違和感は、黒崎一護、あるいはタギツヒメにも僕のギアスが十全には効いていなかったからか!)
 そう納得したのもつかの間、気づいてしまった事実にロロの顔は一気に青ざめた。

 「冗談じゃないぞ……。
 絶対停止のギアスの影響下で動けるばかりか、なんの道具も無しにモビルスーツを破壊できる光弾を扱える男だと!?」
 動揺を見せたのはロロだけではない、ルルーシュもだ。
 理解できないものを見るように忌々し気に目を見開く彼は、ロロと同じ結論に至っている。
 トランクスが強いという事実。それもエターナルやリボンズに輪をかける、ノワルと同格の最強格の人物であると。
 そんな男が神戸しおと組んでいる。ルルーシュにとって悪夢にも等しい状況。
 そんな不運を嘆く暇もなく、神戸しおの刃はルルーシュの射程に入り込む。

 「やっと追いついた。」
 「ヤべえ!」
 ジカンギレ―ドを振り下ろすしおの攻撃を、陽介のジライヤが間一髪で殴り飛ばす。
 横からの攻撃に対応できず地面を転がるしおだったが、ジオウの体には大したダメージを与えているようには見えない。
 だが、陽介が殴り飛ばしたのはロロのいる方向だ。
 立ち上がるしおを陽介とロロが挟み込む。
 ルルーシュとの距離が離れてしまったことを仮面の奥で歯嚙みしつつ、神戸しおは立ち上がる。

 「その二人は任せるぞ!ロロ!陽介!」
 立ち上がるしおと陽介・ロロを一瞥し、ルルーシュはNPCを引き連れノワルのいる戦場へと向かう。
 この戦いはルルーシュにとって闖入者(イレギュラー)。本番(メイン)は未だ来ていないのだ。

538厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:43:46 ID:G8TsH00E0

「結局、こうなるしかないのか……」
 トランクスはその様子を、1人悔しそうに見つめ。拳を深く握りしめる。
 
 神戸しおが戦わない未来は、もはやどこにも存在しない。
 マイ=ラッセルハートの言った通り、他ならぬ神戸しおが、その未来を望んでいないのだから。
 
◇◆◇

 目を見開いたアスナに飛び込んできたのは、魔女の悪意で塗り固められた漆黒の壁ではなく、ひび割れたコンクリートの天井だった。
 四肢を封じる拘束具もなく、尊厳を貪り喰らう魔女の設備もない。
 目をこすって起き上がると自分の上に雪のような色合いの着物が体を隠すようにかけられていることに気づいた。八つの葉のような紋が背中に刻まれた、アスナより一回り大きなサイズの着物だ。

「目が覚めたか。」
 アスナが声をする方をみると、カフェのカウンターに座る若い男。
 鋭い目つきに腰まで伸ばした白い髪が窓からの光を受け煌めいている。アバターであるアスナ以上に何らかのゲームのキャラクターのような個性と美貌を称えていた。
 しばし顔と髪を見ていたアスナだが、その肩に居る何かに気づく。
 黒い何かがもぞもぞと動いたかと思えば、アスナめがけて飛び掛かる。
 掌に収まりそうなサイズの何かに、アスナは見覚えがあった。

「あ、アスナ殿〜〜!」
「わわっ。烏天狗ちゃん!無事だったのね!」
「アスナ殿こそよくぞ御無事で!」
 ウンベールから秋山の手に渡った幻妖にして支給品。
 アスナにとってはこの世界における数少ない顔見知りである。
 
「烏天狗ちゃん、この人は?」
「参加者の1人覇世川左虎殿でございます。
 ノワルから逃げた後、この方ともう一人マイ先生殿という参加者と合流できたのですが。」
「色々あって、今は左虎のみで動いている。」
 そう言って左虎は立ち上がると、アスナに近づいて顔をまじまじと見つめる。
 裸を着物で隠している状態のアスナは気恥ずかしさがあったが。

 「ふむ、顔色は良好(よい)とは言えんが、悲観するほどではない。
 ……NPC達に比べれば、遥かに良好(よい)。」
 その言葉に、己がさっきまでどういう状態だったのかをアスナは思い出すことになる。
 ノワルに囚われ優に2時間以上体液語と魔力を吸い出されていたのだ。回復魔法で外傷や破壊は治癒していても、永遠に搾り取れるようなものではない。
 
「そういえば、何があったんですか?
 私はノワルの闇檻に囚われて……落ちていったような覚えがあるんですが。」
「ノワルとザラサリキエルの戦闘(ドンパチ)の最中。ザラサリキエルの異能(チート)でノワルの闇檻が砕けた。
 丁度左虎はノワルを強襲(カチコ)まんと向かっていたところ、落ちてきていたお前たちを拾い上げたというわけだ。」
「この体にかかっているのは――」
「体を隠しているのは左虎の外装(ふく)。淑女(レディー)の裸を晒すわけにもいかぬが、意識のない者に強引に着せるような性加害(セクハラ)などしでかしては、愚弟に顔向けできん故。
 起きたのなら悪いが奥の部屋から適当に見繕って着てくれると嬉しい。」

 気恥ずかしさを誤魔化すよう左虎は頭を搔く。
その隣では烏天狗が警察らしい半袖の白いシャツと水色のスカートを持ってきて、期待の眼差しでこちらを見ていた。

「それは…?」
「NPCより回収したお召し物でございます!
いささかサイズは小さいやもしれませぬが!アスナ殿なら着こなせましょうぞ!」
「…まあ、何も着ないよりは確かにね。」
 そう手を取ったヴァルキューレ警察学校の制服にアスナは見覚えがあった、ノワルに囚われたNPCの所有物だ。
 暗いポケット闇檻の記憶の中で、ぼんやりとアスナはそのことを思い出す。
 恐らくポケット闇檻に残っていたものが、アスナと一緒に落下したのだろう。
 そう思いだしたアスナだが、ここで気づく。

539厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:44:21 ID:G8TsH00E0
「あの…この服を着ていたNPCは…?」
 ポケット闇檻に捕らわれていたのは自分だけではないのだ。
 その言葉に左虎の顔が明らかに曇らせ、怒気を込めて言葉を返した。

「…全員回収しているが。半分は既に死にもう半分は衰弱で立つこともままならん。」
 落下する少女を一人も見逃す左虎ではない。
 NPCも含め全員回収し、今いる建物の別室に寝かせているが。
 アスナを除いた被害者は、名医(ゴッドハンド)の左虎もってしても手遅れとしか言えない悲惨なありさまだった。

「ノワルの調教(ディーブイ)を受け神経が焼ききれたか、あるいは魔力ごと体液を搾り取られての重度の脱水。いずれも生きているのが奇跡といったところだ。」
「回復魔法で強引に生き長らえさせられただけですよ。」
ノワルとはそういう女だと、アスナはよく知っている。
生身の人間なら死ぬほどの魔力を絞り出し、絶頂を与え弄ぶ、
生き長らえさせていた魔法と栄養チューブが無くなっては、こうなることは必然だ。
ノワルの玩具としての生か、苦痛の中の死か。闇檻の魔女はそのどちらかしか齎さない。

「だから、あの女だけは許せないんです。」
「同感だ。」

 未だ顕在のその魔女を倒さねば、死体がNPCでとどまらないことは、言葉にするまでもなく2人とも分かっている。
 険しい顔をする2人に、烏天狗がつんつんと肩を叩く。

「そのNPCたちなのですが。彼女たちが握っていたものがございます。」

そう言って烏天狗が、両腕に抱えて持ってきたもの。
それは紫黒に怪しく光る、飴玉のような珠だった。

540厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:44:54 ID:G8TsH00E0
 ◇

「ルルーシュ様。ガンマ部隊からプレイヤーの発見方向がございます。」

 神戸しおから離れたルルーシュがノワルに近づく過程、そんな連絡を受けたのは5分ほど前の話だ。
 ルルーシュとしては可能な限りノワルとの戦いにイレギュラーを持ち込みたくない。強者にしろ弱者にしろ、ルルーシュの計算を狂わすノイズには違いない。
 そのためルルーシュは迷わず報告があった場所に向かう。
 戦闘に長けた男であるならばノワルとの戦いの助力を。
 女性や非戦闘要員であれば撤退を指示する。
 ルルーシュのとる選択はおおむねその二つのはずだったが、ルルーシュの目に飛び込んできたのは想定外の光景だった。

「・・・何をしている?」
 隠しきれない困惑がその言葉には含まれていた。
 ルルーシュの配下のモビルスーツ。ストライクダガーの小隊は、未知のど真ん中で密集しおしくらまんじゅうでもするように寄り集まっていたのだ。
 その内の一機が振り向くと、モビルスーツとは思えない感情的な声を上げた。

「る、ルルーシュ様!
あの男をご覧ください!」
「男?」
頸をかしげ、ストライクダガーをかき分ける。
その先に居たのは白い和装に身を包んだ青年と、NPCと同じ警察のような制服を着た少女。
足元には2機のストライクダガーが真っ二つに切断され倒れ込み、少女の手にはストライクダガーから強奪しただろうビームサーベルが握られている。
 だが何よりルルーシュの目を引いたのは、その男が記憶操作の女ことマイ=ラッセルハートと共にいた男であったことだ。

「貴様…記憶操作の女と共にいた!」
「ふむ、流石に露見(バレ)てはいるか。覇世川左虎という。
強襲(ケンカ)を吹っ掛けたのは貴様の部下だ。ブッ壊したことに謝罪はせぬ。」
 顔を歪ませるルルーシュに反し、和装の男は涼し気に答えた。
 隣の少女もある程度の事情は聴いているのか、『記憶操作』という言葉に戸惑いもせずルルーシュに警戒を向けている。
 対するルルーシュも、和装の男――覇世川左虎を忌々し気に睨みつける。
 記憶操作の女の仲間だったという時点で、ルルーシュが心を許せるはずもないのだ。
 背後に振り返り、攻めるようにストライクダガーたちを睨む。

「…記憶操作の女は抹殺対象だ。
その仲間であったこの男も、敵として伝えていたはずだが。なぜお前たちは撃たん。」
「そ…それがですね…」
 縮こまりながらストライクダガーたちは装備しているビームライフルをルルーシュに見せる。
 その砲身には奥までびっしりと、氷がつまりこんでいた。
 これでは光線は拡散してロクな威力にならないだろうし、下手に放射しては機関部分に水が入りショートするだろう。
 覇世川左虎の暗刃により機能を封じされたたのはそれだけでなく、よくよくルルーシュが見てみればストライクダガーたちの足も氷でガッチガチに固定されていた。

「この男が髪を振るう度に、武器が氷で封印されるのです!」
「成程。この男もまた『特記戦力』相当か。」
 あっさりと無力化されたストライクダガーたちを無様とは思わない。
 それだけ規格外の強さを持つ参加者なのだと頭が痛くなる思いを必死に隠し、ルルーシュは左虎へと向き直った。

「あの女はどこだ?」
 聞きたいことは山のようにあれど、ルルーシュは気にするのはその一点。
 記憶操作の女はルルーシュにとって不俱戴天の仇といえる。

「ここには居らん。既に左虎と彼奴とは袂を分かった故」
「ほう!殺したか?」
「まさか。
一度は同胞(ツル)んだ相手をそう簡単に殺すものか。」
「…本気で言っているのか?既に貴様は記憶操作の影響下にはないだろう。
無傷でストライクダガーの小隊を制圧できるほどの戦力を、そう簡単には手放さないはずだ。」
 その返答にルルーシュは小馬鹿にするような顔を左虎に向け、責めるような口ぶりで言葉を投げかける。
 
「慈悲深いことだ。
俺が貴様なら、記憶操作の能力者など呪いが解けると同時に確実に殺しているぞ。」
「左虎は貴様の部下ではない。
貴様の価値観に合わせる必要などないはずだが。」
「だとしてもだ!
都合のいい記憶を植え付け、他者の人生を偽りで塗り固める!
そのような力を行使した時点で許しがたいはずだ!その先にある願いなど愚にもつかないもののはずだ!」
 経験から自然と怒気は強くなる。
 この男は年相応に若造(あお)いなと、左虎は意外なことのように青年を見る。
 その隣でアスナは馬鹿な同級生を見るような、白けた顔を浮かべた。

541厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:45:50 ID:G8TsH00E0

「他人を操る能力を持ってるあなたがそれを言うの?」
「開幕(スタート)前に羂索に『死ね』と命令(ほざ)いたこと、左虎は憶えているぞ。
制約が無ければ人を殺すのも思いのままの貴様の能力を否定(ディス)るきはないが、あまりに五十歩百歩(ブーメラン)ではないか?」
「それはそれ。これはこれだ!」
 アスナと左虎の冷たい視線を前にして、ルルーシュは悪びれもせずに言い放つ。
 その豪胆さもまた、この男の武器なのだろう。

「…確かに、記憶操作という異能の危険性は身をもって左虎も知っている。」
 ふうと一息ついて、左虎は答えた。
 出会ったばかりの女を、親にも等しい恩師だと錯覚した。
血を分けた弟のことも、己を殺した宿敵のことも、つい先ほどまで覇世川左虎は忘却していた。
 思い出を奪い。仲間を奪い。敬意を奪い。家族を奪い。人生を奪う。
 そのような力が善か悪かと問われれば、間違いなく悪だろう。
 そのことは覇世川左虎どころか、マイ自身だって否定しない。

「ならばなぜ!」
「記憶操作の女はこの会場にて一人も人を殺しておらん。
むしろ瀕死の少女を救うために、管理下にあったはずの令呪を使うことを選んだ。」
「それがただの気まぐれでないとなぜ言い切れる!」
「気まぐれであろうと気の迷いだろうと彼女の救いは本気(マジ)だった。
人の可能性を信じられず、誤った救済(すく)いを押し通そうとした憤怒(キレ)るしかない者たちとは違う。」
 思い出すのは、己を殺した闇医者一派。
 医師として真っ直ぐに人と向き合い、懸命に命を救ったからこそ、幸福になれなかった者たちを見てきた優しき怪獣(モンスター)。

 ついさっきまで思い出すことすらできなかった者たちと、ついさっき決別した女を覇世川左虎は比較する。
マイ=ラッセルハートは彼らとは違う。
 いい意味でも、悪い意味でも。まったく別の価値観で生きている。

「正しき善も正しき救済(すく)いも知ったうえで。彼女は1つの道だけを進んでいる。
お前に言わせれば愚にもつかない道だとも。」
「そうだろうとも。記憶を操作してまで作り上げたい世界など所詮…」
「復讐だ。」

 その言葉に、ルルーシュの顔が引きつった。
 ルルーシュ・ランペルージが抱えていた願いと、全く同じものを。否定していた記憶操作能力者が抱えていた。
 復讐を果たしたルルーシュに、その願いを否定する権利はあるのだろうか。
 嘲笑し、否定し、貶めようと考えていた言葉が喉の奥から消し飛んだルルーシュを前に、左虎は続ける。

「その是非を語る言葉を左虎は持たん。
左虎はたまたまその一歩を踏み出さずに済んだだけの幸福者にすぎん。
左虎と彼女の違いなど、万分の一にも満たぬ可能性を拾うことができただけ。」
「万分の一の幸福か。」
 いいことを言うなと、掛け値なしでルルーシュはその言葉を受け入れた。
 万分の一の幸福者。まさしくそうなのだろう。
 スザクがいなければ。ナナリーがいなければ。C.C.と出会わなければ。ルルーシュの人生はどんな形をしていたか。
 少なくとも、復讐を果たし、悪の皇帝となる未来は無かっただろう。

「情(あま)かった数刻前の左虎は、それ故に彼女を殺さなんだ。
そして次にまみえたとき彼女が過ちを冒しているのであれば。躊躇いなくブッ殺す。」
 覇世川左虎の言葉は、ルルーシュの想像を覆し重い。
 こちらを見透かしているような鋭い視線からは、撃つ覚悟も撃たれる覚悟も読み取れた。
卜部やロロのおかげで大なり小なりルルーシュの印象が緩和していた今までの参加者とは違い、甘く温い平穏を享受せず自分で考え実行する胆力と自負がある。
はっきり言って厄介だ。
そしてもっと厄介なことにこれまでの確率から言えば、 覇世川左虎レベルの特記戦力はルルーシュの想像よりはるかに多いのだ。

「そうか。」
 ――その続きに何を言おうとしたのかは、もはやルルーシュ自身も覚えていない。
 確かなことは、覇世川左虎を厄介な相手と認め。
ロロや卜部のような緩衝材のいない中、ただルルーシュの態度や言葉だけで従わせられるような甘い相手は多くないのだと自覚したうえで。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 その全てを踏み越えねばならないという、己の野望の困難さをルルーシュは自覚し――

「全員伏せてください!!!」
 ――アスナの叫びが、一瞬にしてその思考を塗り替える。
 とっさのことに判断が遅れた左虎とルルーシュだが、アスナが指さす先にいる自分たちに飛びこんでくる紺色の何かを前に、危機が迫っていることを嫌でも理解させられた。

542厄災ばかりの攻略未来 ―穢れし月が空を満たし― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:46:59 ID:G8TsH00E0
 伏せた三人の隣で、飛来する何かがストライクダガーをボーリングのピンのように吹き飛ばす。
オマケのようにルルーシュの部下を再起不能に追い込むと、ビルの壁面に大穴をあけながら動きを停止する。
 それは紺色の鎧だった。
 両足をだらけさせるその装甲には、鎖で縛られたかのような煤けた後が色濃く残る。

「万里の鎖…特級呪物まであの魔女の手に落ちているとはな。
強者を強化してどうするんだ。まったくこれでは何のための支給品なんだか。」
 嫌味をこぼす紫紺の鎧だったが、すぐに三人に気づくと仮面の奥に青い光を称えて視線を移した。

「皇帝サマに呪血の忍者、おまけに閃光か。」
「その声・・・ザラサリキエルか。」
「死告邪眼と呼べ。
中々豪華な面子。普段なら相手してやりたいところだが、そんな下らない話をしている余裕は無い。」

 息を切らせて立ち上がるザラサリキエル。その視線は上空の陰に向いている。
 少女の姿をしたその怪物に初めはみな首をかしげる中、ぐにゃりと笑みを浮かべ機械の少女の口角が上がる。

「あらアスナちゃん!無事だったのね。安心したわぁ。」
「ノワル・・・!!」
 ぞわりと音を立て鳥肌が立つ様を、三人の参加者は感じ取っていた。
 起動キーでその身を隠そうと、『災害』と称されるその凶悪さ危険性を彼らの本能が訴えていた。

「聞いてた姿(ビジュ)とは違えど、危機(ヤバ)さはむしろ聞きしに勝る!」
「松坂さとうやドラえもんの話も、もはや笑えんな。」
「そっちはルルーシュに、男に機械ばっかりか。
つまんないわねぇ。放送に居た可愛い女の子でも連れてきなさいよ。」
 身を震わせる男たちをよそに、欲しいケーキが売り切れていたとでも言いたげにノワルは頬を膨らませる。
 レモンの愛らしいデザインも相まって愛嬌のある挙動のはずなのに、3人の参加者とNPC達にはその顔はこれから喰らうカエルを品定めする蛇のように見えてならない。

「でもそうねぇ。下手に範囲火力をぶつけてアスナちゃんを殺したら大損だしねぇ。」
 蛙を見る蛇のような粘っこい。あるいは豚を見るような無関心な目。
 上空からその全てを一瞥すると、ノワルは良いことを思いついたと微笑み、右目の眼帯を外す。

「使っちゃうか。奥の手。
せっかくの大盤振る舞いだし。奥の方にいる連中もまとめて、消し飛ばしましょう!」
 眼帯の奥にあった右目が外気を浴び、バチリと稲妻を光らせる。
その眼はリトライアイと呼ばれるタイムマシン。
タイムマシンの機能が失われていることを『ERROR』と書かれた瞳の文字が示していても、バチバチと音を立てるリトライアイはこの場にいる全員に不吉な未来を予感させる。

「潮時か。『劣化複製(デッドコピー):跳躍王(キングリープ)』」
ただ一人、ノワルの行動の意味を知るザラサリキエルは早々に撤退を選択。
他の全員がノワルにあっけにとられている間に、その姿は煙のように消えていた。

「やっぱり運営にはバレてるのね。厄介ね。
まあいいわ、アスナちゃんと遠くにいる仮面ライダー以外は男ばっかり見たいだし。
これだけ間引ければ充分って事にしましょう。」
 その悪辣な笑みに、この場の全員が理解する。
 ノワルの最も恐るべきところは、『闇檻』による概念拘束でもなければ都市1つ容易く滅ぼせるほどの莫大な魔力量でもないということに。

 ノワルは欲しいものを諦めない。手に入れるためなら文字通りどんな手段もとってみせる。
可愛い子はみんなほしい。手元に集めて可愛いミルクサーバーにして虐めたい。
野郎は全員死んでほしい。男なんて視界に入れるだけで不快な虫は潰して捨てたい。
子供じみた願いを叶えるためならば、何でもするし何でもできるのがこの魔女だ。
 自由を奪い、心を砕き、未来を閉ざす。相手の弱点になるなら瀕死の弟子に攻撃をすることもノワルにとって当たり前の手だ。
 宇蟲王ギラのような王の矜持とはまるで異なる。バルバトス・ゲーティアやメラにも通じる加害者としての躊躇いのなさ。

「開眼(バージョンアップ)停止(ストップ)。」

 故にノワルは実行する。この場の全員にとって最悪の一手を、躊躇いなく踏み越える。
 ノワルの右目が光る意味を知る者は、もはやここには一人もいなかった。

543厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:48:04 ID:G8TsH00E0

 ☒☒☒☒☒


 巻戻士レモンの開眼(バージョンアップ)。
 その停止(ストップ)の名に反さず、20秒時間を止める能力である。
 一瞬一瞬の攻防の中で生きている達人級の参加者たちにとって、それは文字通り規格外(チート)な力。
 それ故に制約は大きく、オリジナルの巻戻士が一度の任務で一度しかこの力を使えないように一回の起動に令呪を要求する。文字通りの切り札だが。
 
「人の話はちゃんと聞いておくべきね。
 イドラちゃんやマジアマゼンタの頑張りが、こうして役に立ってくれたし。」

 令呪は、魔力の代用となる。
 では逆に莫大な魔力を利用し、令呪でしか扱えない機能を動かせるのではないか。
 ノワルはそう推測し、その判断は正しかった。
 現在のノワルが出せる魔力のほぼ半分。それだけのエネルギーを消費し開眼は果たされた。
 
 「アスナちゃんも無傷で回収できそうだし、一安心ね。」
 ふうと呟くその言葉は、誰の耳にも届かない。
 そのままノワル全身の兵装を周囲の参加者(アスナ除く)に向けて、引き金を引く。
 遠くに戦うロロや陽介、トランクスも射程圏内。
時間の許す限り撃ち込んだ弾丸と魔力弾は、解除と共に殺人級のスコールとして彼らを襲う。

 あっけないと思う者もいるだろうか。しかし考えてみてほしい。
 ノワルはアルジュナ・オルタとコンマ数秒単位の攻防を繰り広げられる実力者。
 その彼女に、20秒も時間を与えることは――

「じゃあ、おしまい。」

 ――死を意味する。それだけのことだ。





時が戻った。




全ては終わった。



【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2 死亡】
【覇世川左虎@忍者と極道 死亡】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ 死亡】
【花村陽介@ペルソナ4 死亡】
【トランクス(未来)@ドラゴンボール超 死亡】

【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画) 意識不明・人権剥奪】

【神戸しお@ハッピーシュガーライフ ――

544厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:48:35 ID:G8TsH00E0


 ☒☒☒☒☒

これは既に、■■■■が見た未来だ。

 ◇◆◇

545厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:50:46 ID:G8TsH00E0

 時を少し遡る。

「なにか……みえた?」
陽介のジライヤを躱しながら、ふとしおの頭に映った映像にしお思いをはせる。
自分とアスナを除く少女が皆殺しにされ、自分も半死半生で捕らえられる光景だ。
悍ましい地獄変は、幻覚と切り捨てるにはあまりに生々しい。
足を止め、ノワルのいる方角を睨む。
トランクスのように気を感じるなどできないが、そこに『何か』がいることが今のしおにははっきりわかった。

「…どうした。もうお疲れか?
このまま帰ってくれるなら、俺としてはありがてえんだが。」
 軽口を叩きながらも、マハスクカジャによる回避上昇をかけなおす。
 陽介としてはロロに対する義理はあってもルルーシュに肩入れする理由は薄い。
 神戸しおの標的がルルーシュである以上どこかで倒す必要はあるかもしれないが、少なくともそれは今じゃない。
 話を聞く余裕くらいは、あっていいはずだ。

「ううん。全然疲れてないよ。
むしろ普段より元気なくらい。」
「へぇそうかい!仮面ライダーってのは羨ましいなぁ!」
「ただね。もうすぐ何か来る。
だから止まって見てるだけだよ。」
「何か…?」
 数歩距離を取り、陽介もその方向――ノワルのいる方角に目を向けた。
 遠くを見てみると、NPC達をめちゃめちゃに破壊していたトランクスも、同じ方角を睨みつけている。

「何をやっているんですか陽介さん!
ようやく彼女が隙を曝したんですよ!」
 ただ一人、零陽炎に乗ったロロだけがこの瞬間も戦いを続けていた。
 陽介と違い、明確にルルーシュへの敵意を表明したしおをロロが生かす理由はない。
 トランクスという特大のイレギュラーを抱えているならなおのこと。この場で無力化する必要がある。
 遠くを見つめるしおにめがけて零陽炎がライフルを向ける。
 引き金を引き神戸しおを殺す。陽介のマハスクカジャの効果がある今ならトランクスの攻撃もかわせると判断した。ロロなりに勝算があっての突撃。

――「開眼(バージョンアップ)停止(ストップ)。」
 遠くで魔女がその言葉を唱えたのは、そんなタイミングのことだった。

20秒の時間停止を知覚できるものはいない。
 なにせ今回の使用者はロロ・ランペルージとは比にならない強大な相手。
この会場最強の魔女にして5指に入る怪物だ。
 
 時が戻ると同時に、4人を襲うのは空を埋め尽くすほどの巻戻士の兵器と魔女の光弾。

「なっ!」
「なんだこりゃ!」
「しまっ!」
 三者三葉。3秒後にその体を襲う致死率100%の死の雨にその身を晒す。
 ナイトメアフレームもペルソナも、サイヤ人の血を引く肉体だろうともはや抗う余地はない。

「そっか。そういうことなんだ。」
            ・・・・
ただ一人。この光景を既に見ていた神戸しおだけは、ジオウの仮面の中から冷静にその様を見届ける。

546厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:52:00 ID:G8TsH00E0

「このままだと、ルルーシュもみんなも全員死んじゃうんだ。
私もこのままだとダメなんだね。」
 残り2秒。
 死の雨を生き抜いた――下手人がノワルである以上、おそらくしおだけは生き残るだろう――上でしおに待つのは、魔女の玩具という名の人生の終着点。
 アスナやNPCたちがそうであったように、その未来はしおにとって死も同義だ。
 ノワルの仔細を知らないしおでも、その未来は否定すべきだと分かっている。
 遠くの何かを探すように空を見つめるしおは気づいていない。
 彼女の腰に装着されたジオウライドウォッチが、光り輝いていることを。

「そんなの、嫌だな。」
 残り1秒。
 全ての弾丸と光弾が埋める視界に、流石のしおはとうとう実感として未来を理解する。
 しおもまた何も為せずに終わる。
 松坂さとうの死は永遠に意味のない下らないものとして嘲笑われる。
 
 しおの心にあったのは、死への恐怖ではない。
 己の決意を果たせず、砂糖菓子の平穏が無価値なもので終わることへの否定。

「だから、なかったことにしよう。」
 その言葉が、最後のきっかけ。
 しおの腰に宿るライドウォッチが輝いたかと思えば、ジクウドライバーの開いたもう1つのスロットに金と黒のライドウォッチ装填された。
 心意システムの影響と底なしの欲望の果て、魔王が目覚める。

『ジオウ Ⅱ!!』
 ジクウドライバーから響く力強い声に、誰もが神戸しおを見た。
 そこに佇む仮面ライダーの姿は、先ほどまでのジオウとは違う。
 仮面に刻まれた時計の針は左右対称の4本に増え、全身が金色のラインで縁取られている。
 仮面ライダージオウⅡ。底知れぬ心意により進化した魔王の力。
 その出現を祝う様に、降り注ぐ銃弾と光弾が青年たちの頭上数センチのところで停止し、巻き戻されたかのように同じ軌道で逆向きに進む。

「何が起きているんだ!?」
 誰がそう言ったのか、もしくは全員が同じ意見だったのか。
 確かなことはこの事態を引き起こしたのは、神戸しおだということだった。
 思わず駆け寄るトランクス。彼を静止したのは他ならぬしおだった。

「しおちゃ…」
「トランクスくん。お願いがあるの。」
 トランクスの側には目を向けず、神戸しおはジオウの顔が付いた剣を手に取る。
 サイキョーギレードと呼ばれるその剣をもともと持っていたジカンギレ―ドと合体させる。ジオウⅡを超えた魔王の剣、サイキョージカンギレ―ド。
 遠く空に弾丸と光弾が戻る先。
 忌々し気に目を見開く少女を前に、神戸しおは剣を構える。
 今日までしおは武器と呼ばれるものなんて持ったことのないはずなのに、その姿がごく当たり前のことであるように、その姿は様になっていた。

『サイキョー!』
『フィニッシュタイム!』
「あの奥にいる人を、やっつけてほしいの。」
「…分かった。」

 反論も質問もせず、トランクス舞空術で空を飛ぶ。
 神戸しおが彼に何かを頼むなど、きっとこれが最初で最後だ。
 そのことに喜びはない。リュージの危惧していた通り利用されているだけかもしれない。
 しかしトランクスという青年はそのことを恥じない。恨まない。
 彼はみんなの英雄だ。
 災厄の魔女を見逃す未来は、彼の中にはありえない。

547厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:52:55 ID:G8TsH00E0
 
 トランクスがいなくなった時、ロロも陽介も一言も言葉を発さなかった。
 空を飛ぶトランクスの力の高まりは、本来ならばそれだけで二人に実力差を知らしめる末恐ろしい力のはずだが。
 そのことに気づいたうえで、彼らの眼は神戸しおの持つ剣に向いていた。
 
サイキョージカンギレ―ドの刃が黄金の光を噴き上げる。
廃ビルと同じ高さにまで立ち上った『ジオウサイキョウ』と書かれた桃色の文字でさえ、魔王の力の強大さを示しているかのよう。

『キング!ギリギリスラーッシュ!!』
 神戸しおが刃を振り下ろす。陽介やロロではなく、彼方にいるノワルに向けて。
 その攻撃が有効だったのか、その真偽はここからでは分からない。
 少なくともその刃の衝撃は、ノワルのいる場所にまで届いているように見えた。

「はぁ…はぁ…」
 息を切らせた神戸しおの変身が溶ける。
 心意によるブーストに体が慣れていないのか。流石に消耗が激しかったのだろう。

 その様をロロも陽介も黙って見ていた。
 ノワルに攻撃する隙をつくことを恥だと思ったわけではない。特にロロはこの瞬間でも神戸しおを殺したかった。
 だが、今すべきことはそれではないとロロの本能が告げていた。
 
「陽介さん。お願いがあります。」
神戸しおの進化を前に決意を固める。
 ルルーシュ・ランペルージにとって最高の未来を手にするために、やるべきことは二つ。
 神戸しおを足止めし。
 トランクスがノワルを倒すよりも早く、ルルーシュの策を実行すること。
 そのために必要なのは誰か、ロロ・ランペルージは気づいている。

「なんだ?」
「僕の代わりに、兄さんの場所に向かってくれませんか?」
 魔女狩りにおけるもっとも重要な役目。ルルーシュをしてそう言わしめる栄誉を。
 ロロ・ランペルージは決意を秘めた目とともに、花村陽介に差し出した。

548厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:54:43 ID:G8TsH00E0
 ◇◆◇

「何だ今のは…」
 茫然と呟くルルーシュは、この場の全員の意見を表していた。
 ノワルが止めた20秒は誰一人として知覚していない。
 彼らにしてみればノワルの目が光ったかと思えば、頭上に無数のミサイルや銃弾が命を奪う災害となって降り注ぎ、その災害は実害を及ぼす前に巻き戻った動画のようにノワルのもとに戻ってきた。
 出来の悪いコメディ映像のようなものも、下手人がノワルである以上ただの演出ではありえない。
 ノワルが何かしらの攻撃をし。誰かがその攻撃を打ち消した。その結論に全員が至るまで、そう時間はかからなかった。

「…あっちね。
 この場の連中に今の攻撃をどうこうできるとは思えない」
 回収していた魔力の結晶を貪るノワル。
 その視線は足元の軍勢とは真逆の側に向いていた。
 レモンの体には無数のテクノロジーが搭載されている。
 ロケットがごとき速度で空を駆け、その先にいる未知の存在を確実に殺せるレベルにまで近づくことなど容易い。

『キング!ギリギリスラーッシュ!!』
 不快感に身を悶えさせ風を切るノワルの目に飛び込んだのは光の柱。
 サイキョージカンギレ―ドを構えたしおの一撃は、ギリギリノワルを射程に収める。

「しまっ…」
 レモンの速度に慣れていなかったノワルは一瞬、防護魔法の展開が遅れた。
 しおの攻撃は先端をわずかに掠めただけだが、とっさに防いだレモンの両腕には深々とヒビが入っていた。
 
――油断が過ぎた。
 生まれて初めてかもわからない自省がノワルの胸で渦巻く。
 魔王として成長を果たしたとはいえ、成体の災害であるノワルに比べればしおは木枯らしや小火程度の存在。
 消し去り喰らうなど造作もない。
 しかし現実に、防護魔法を施せばザラサリキエルの一斉射撃を耐えうるレモンの両腕はもはや使い物にならない。

 ノワルが油断した原因は、3つ。
 令呪と同等の魔力消費という切り札のような行動をかき消されたという困惑。
 アルジュナ・オルタにザラサリキエルという会場における最高峰の怪物たちとの連戦による疲弊もまた、『本気で戦う』などめったにしないノワルの精神を削っていた。

「我が麗しき(クラレント)―――」
 そして3つめ。
 この場の戦いにおいて、ルルーシュよりも、アスナよりも、しおよりも。
 ノワルが警戒し気を張っていた、最高最善のイレギュラー。
 その存在が他の参加者への警戒を、ほんの少しだけ薄めてしまった。

「――父への叛逆(ブラッドアーサー)!!!」
ノワルのトップスピードに勝るとも劣らない速度で駆け付けた青年は、赤い稲妻を纏う剣を豪快に振り下ろす。
 サイヤ人の末裔。破滅の未来の最後の希望。魔王でも災害でもない救世主。
 解放するは反逆の王子の魔剣。
 油断や慢心などはなから持ち合わせていないトランクスの刃が、制約を受けてなお最高峰の気の昂ぶりを持ってノワルに振り下ろされる。

「ノワル!お前はここで終わらせる!」
「あの黒い男に勝るとも劣らないムカつく気配を感じていたけど、やっぱり男だったのね!」
 全身の防御魔法を展開しながら、ノワルはリュックからもう1つ武器を取り出した。
 三又の刃を宿す赤い宝石を宿すその杖は、魔界の神と呼ばれるさる大魔王の使用する武器。
 光魔の杖。
 秋山がウンベールから回収していたその武器の性質は、魔力を際限なく吸い取り攻撃力を上昇させること。
 連戦に次ぐ連戦の上時間停止に半分以上魔力を消費した今のノワルでは、回収した魔力の欠片を取り込んでもその出力は全快時の半分がいいところ。
 それでもその刃は並の魔法使いが使う時とは比に張らぬほど、燦然と煌めく剣となる。

 反逆者の魔剣と魔王の光がぶつかり合う
 この会場で最大戦力光の衝突はわずかにトランクスが優勢だが、おおむね互角。
 飛び散った衝撃が風と斬撃を生み周囲の建物を切り刻む中、ノワルの耳に届くべきべきという破壊音。
 その源は、神戸しおの攻撃で傷ついたレモンの両腕からだ。

「破損した起動キーで受けられる攻撃じゃないってわけね。」
 強引に剣を弾き距離を取る。力任せの動きにひび割れた両腕が砕け、銃弾を受け血を流す白い細腕が露となった。
 両腕のみノワルの要素が予見したアンバランスな姿で、万里の鎖と光魔の杖を構え、ノワルは向かいに立つ救世主に向き直る。
 自身と同格ということは張り詰める気で分かる。
 これが女であったなら、さぞ素晴らしい最高の魔力サーバーに成れただろうに。本当に残念だ。

549厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:56:19 ID:G8TsH00E0
「これほどのエネルギー!これほどの素材を捨てるしかないなんて。
 流石の私も勿体なく思っちゃうわね!男だった自分を恨みなさい!」
「人を食い物やゴミにしか見ていないのか・・・お前は!!」

 その言葉を皮切りに救世主と災害の戦いの幕の火蓋が散る。
 アルジュナ・オルタとの戦いが示したように、この規模の戦いが平穏無事には終わらない。
 何が失われるのか、それは未だ誰にも分からない。


「では、行くか。」
 危機が去った後覇世川左虎は立ち上がる。
 その視線の先にはノワルと乱入したトランクスの異次元喧嘩。

「アスナ。体は動けるか?
 そこの機械兵(ポンコツ)を一機倒し、回復運動(リハビリ)にはなったか?」
「…はい!」
 手を強く握りこみ、少女は力強く言った。
 ヴァルキューレ警察学校の制服にストライクダガーから奪取したビームサーベルというアンバランスな格好を気にさせないほどに、ノワルを睨む少女の眼は強い光を称えていた。
 一度は師とした秋山小兵衛をあっさりと縊り殺し、その死に何の感慨も抱かない魔女は、アスナにとっても憎い敵だ。
 ザラサリキエルに覇世川左虎と重なった幸運を、ここで逃す気などさらさらない。
 歩を進めようとしたアスナの耳に、ガシャと何かを動かしたような音が響く。
 振り向くとルルーシュの指示で、彼の周囲にいるモビルスーツたちがアスナへと銃口を向けていた。

「待て。覇世川左虎はまだしもお前を行かせるわけにはいかない。」
「どうしてですか。」
「お前が女だからだ。」
「…流行(はや)らぬぞ、今時姓差別(ジェンダーバイアス)なぞ。」
「くだらない冗談は寄せ。
 知っているだろう、ノワルは女を捕らえ魔力を吸い上げる。
お前がむざむざとノワルの前に出ては、あっという間にノワルに回復と強化を施す羽目になるのだぞ!」
 その可能性はルルーシュが最初に排除した負けフラグ。
 女性を捕らえ回復するノワルに対抗するために、ルルーシュはキャルや糸見沙耶香、タギツヒメという優秀な戦力をこの戦場から引きはがしたのだ。

「大丈夫。」
 一度はノワルに囚われたアスナが、その可能性を考慮していないはずがない。
 その言葉と共にアスナが取り出したのは、紫黒の色をした飴玉のような珠だった。

「その珠は・・・」
「ノワルが吸い出した魔力の塊。
 これを使えば、短時間ですが闇檻に対抗できるはずです。」
 その珠は、ノワルから解放された最中、NPCの少女たちが最後に生み出した。
 いわば遺品のようなものだ。
 烏天狗が持ち運んだそれを、アスナと左虎は全員分回収し綺麗にわけあっていた。

「なんだと?」
「闇檻は別のエネルギーで弾くことができる。先生…秋山小兵衛が残した事実です。
 万全ならまだしも、消耗している今のノワルならばこのわずかな魔力でも対抗手段になるはず。」
「ふむ…」
 理屈は通っている。怪しく光る珠を手に取りながらルルーシュはそう結論付けた。
 闇檻が魔法的なエネルギーで回避も防御も不能だろうと、同質のエネルギーがあれば抵抗は出来る。
 それはイドラ・アーヴォルンやマジアマゼンタが令呪を使い見つけ出したノワル対策であり、秋山小兵衛が示したように令呪を使い強化すれば余波で拘束を解くことさえ可能となる。

「お前、名前は?」
「アスナ。」
「アスナ。この宝珠に免じて。このルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがお前の従軍を認めよう。
 だが憶えておけ。万が一貴様がノワルに捕まった時は、ノワルに搾り取られる前に俺が殺してやる。」
「…ありがとうって言っておけばいいのかな。」

 過剰なロールプレイともいえるルルーシュの言葉に面喰いながらも、その真意ははっきり伝わる。
 不器用な男だという感想を飲み込み、アスナは軽く一礼し左虎ともどもノワルの方に向かう。
 残されたルルーシュに、配下のNPCが訝し気に問いかけた。

550厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:56:44 ID:G8TsH00E0

「よろしかったのですか?」
「よろしいわけがないだろう!
アスナは間違いなく本調子ではない!仮に彼女が覇世川左虎並みの強さがあったとて、今の彼女ではノワルの前では間違いなく不足だ!」
 だがと前置きし、ルルーシュは言った。

「この場で彼女や覇世川左虎と敵対する余裕が無いのもまた事実。
味方ではないが敵も同じだ、せいぜい利用させてもらうさ。」
「・・・なーんでお前はそう悪役ぶった物言いしかしねえんだよ。」
 取り繕ったような悪人面のルルーシュに、呆れた顔で男が声をかける。
 花村陽介は全力で走ってきたのだろう、ルルーシュが振り向いた先で息を切らせて足を震わせている。
 
「ご苦労。よく来てくれた・・・ロロはどうした?」
 辺りを見回すルルーシュに、陽介は息を整え答えた。

「お前の作戦。ロロの担当する部分は俺が引き継げと。」
「なっ…。ロロがそう言ったのか!?」
 信じられない。喉元まで出かかった言葉をルルーシュは必至に飲み込んだ。
 ロロ・ランペルージは人を信じ頼るという点においては恐ろしく鈍い。
 ましてやこの作戦の要を務める仕事は、ルルーシュが直々にロロに与えたものだ。
 その役目を他人に譲るなど、ルルーシュの知るロロなら絶対にしない選択。
 それでもロロ・ランペルージは、ルルーシュ傍に立たない未来を選んだ。

「あいつは、神戸しおを何が何でも止めるつもりだ!」
 ルルーシュを守るために、戦うことを。1人の少年は選んだのだ。

551厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:58:13 ID:G8TsH00E0

 ◇◆◇

「待っていてくれたんだね。」
 トランクスも陽介も居なくなった戦場で、ロロ・ランペルージは改めて少女に向き直る。
 変身が溶けたことで剣も失った彼の敵は、まだ10歳にも満たない。
 戦場に立っていることさえ場違いに思える、愛らしいあどけない顔だ。仮面ライダーとなってルルーシュの陣営どころか闇檻の魔女にさえ一矢報いた女にはとても見えない。

「トランクスくんの目の前で襲ったら、きっと怒るもん。」
「だろうね。彼は良い人だ。
 彼がその気だったら、僕も陽介もとっくに生きていなかった。」
 辺りを見渡す。
 ルルーシュが残したNPC部隊はこれまでの戦いで粉々に砕け、既に一機も残っていない。
 ノワルの範囲攻撃が原因ではない。その前にトランクスが光弾で全てを破壊しつくしたのだ。
 それなのに零陽炎を身に着けていたロロばかりか生身の陽介でさえ、トランクスはかすり傷1つ与えていない。

 いい人というロロの言葉にネガティブな意味が1つもないとは言わないが、ロロは本心からそう思う。
 神戸しおと組んでさえいなければ、彼はとても心強い味方となっていただろう。

「今ならまだ間に合うよ。退いてはくれないかな。
トランクスが一緒なら、兄さんもすぐには君を狙わないかもしれない。」
「やだ。」
 可愛げに溢れた言葉には、絶対にひかないという強い意志が宿っている。

「ルルーシュはさとちゃんを殺した。」
「そうだね。でも兄さんが……」

 兄さん――ルルーシュ・ランペルージが行ったことなら理由がある。
 松坂さとうは死ぬべくして死んだんだ。兄さんが決めたんだから仕方がない。

 今までのロロなら平然と言っていたかもしれないそんな言葉を前に、ロロ・ランペルージは口をつぐんだ。
 
「……いや、なんでもない。
 君は何があっても兄さんの敵で。僕は――ロロ・ランペルージは何があっても兄さんの味方だ。
 兄さんが誰を殺しても、僕が何を殺しても、きっとそれは変わらない。」

 ライダーの仮面を剥いだ先にある少女とは思えない恩讐者の目。
 ルルーシュ・ランペルージが松坂さとうを殺したことにどんな理由があっても、きっと変わらないのだろう。
 さとう以外のすべての人間を救うために松坂さとうを殺したとしても、神戸しおは同じように命を選んだルルーシュの前に立ちふさがる。
 ロロにとって松坂さとうはルルーシュに踏み潰された路傍の花だが、神戸しおにとっては世界であり愛だ。
 ロロにとってルルーシュ・ランペルージは何にも勝る『居場所』だが、神戸しおにとって恩讐が向かう先にある悪だ。
 
「じゃあ、てきだね。」
「そうだね。」
 そんな思考を、神戸しおはたった一言で言い表した。
 ロロ・ランペルージと神戸しおの関係は、ただそれだけで十分に思えた。

552厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:58:48 ID:G8TsH00E0

「1つだけ教えて。
 ルルーシュって、ロロ君にとってどういうひと?」
「そうだね。難しい質問だ。
 『兄さん』ではあるけど。兄弟だから大切と言うのも多分違う。
 僕たちは、まあ色々複雑な関係でね。」

『兄さん』という言葉に目を濁らせたしおだったが、続く言葉に小首をかしげる。

「1つだけ言えることは。
 僕のいるべき場所。それが兄さん――ルルーシュ・ランペルージの居る場所なんだ。」

 どの面下げてこんなことを言っているのだろう。口にしながらロロ・ランペルージはわずかに笑う。酷く自虐的な笑みだと鏡を見なくても分かった。
 シャーリー・フェネットを躊躇いなく殺した。   ――きっと兄さんは僕のことを恨んだだろう。今なら分かる。
 黒崎一護を躊躇いなく殺した。  ――タギツヒメが知ったら間違いなく僕を殺すだろう。神戸しおと同じ目を僕に向けて。

「その居場所を守るためなら、僕は何でもする。」

 だから松坂さとうを殺したルルーシュの罪を前に、僕はこうして立っている。
 躊躇いなど、欠片もない。
 儚げな笑みを前に、しおもわずかに口角を上げた。
 その感情をあえて言葉にするならば、共感だろう。

「じゃあ、わたしたちおんなじだね。」
「そうだね。
 君と松坂さとうの関係は想像することしかできないけど。大切な人だってことは、僕にも分かるよ。」
 
 トランクスのように『家族』という言葉で片づけず、『居場所』であり『大切な人』と形容する。
 それはロロが神戸しおを慮ってのものではない。
 神戸しおの年齢離れした聡さか、誰かの大切な人を奪った過去に対する罪悪から来るものか。とにかくロロは彼女にはより噛み砕いた説明をするべきだと思っていた。
 偶然その対応が、しおの傷を刺激しなかった。ただそれだけの話だった。

「ちょっとさみしいな。トランクスくんよりは仲良くなれたかも。
 でも、ルルーシュは絶対に殺すから。」
「僕も残念だ。君がその立場を貫く限り、君とは仲良くなれない。
 そして君は変わらない。きっかけを作ったのは兄さんだけど、松坂さとうを殺したことを僕も兄さんも間違いだとは思わない。」
「そっか。」
 
 その偶然は、事態を好転させるにはあまりに遅く。
 そんな万分の一の幸福を、この2人は求めてなどいなかった。

 その言葉を最後に、互いにドライバーを手に取った。
 1人は己の心意で進化させた、魔王の刃を。
 1人は兄から授かった、異界の果実を。
 
 『ジオウⅡ!』
 『メロン!』

 世界(あい)を失った少女が叫ぶ。
 世界(あい)を殺した少年が吼える。
 
 「「変身!」」

 世界(さとちゃん)を取り戻すために少女は駆けた。
 世界(にいさん)を守るために少年は構えた。

 仮面ライダーとなった者たちの刃がぶつかり合う音が、2人だけの世界に悲しく木霊した。
 互いに情も手加減もなく、守るために殺すことを2人は受け入れている。もはや誰にもその刃は止められない。
 この2人が手を取り合うことは永劫ありえないのだから。

553厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/15(火) 23:59:30 ID:G8TsH00E0
【エリアD-6/市街地/9月2日午後1時45分】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)、しおを止めるという決意(極大)
服装:ルルーシュの用意した制服とマント
装備:戦極ドライバー(斬月)、メロンロックシード
令呪:残り三画
道具:ホットライン 零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ 一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:兄さんと共に記憶改竄能力者と、奴の狙う敵を倒す。
02:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
03:黒い魔女……マーヤやイザークたちとも合流してから戦いたかったな。
04:枢木スザクと二代目ゼロはそのうち殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。
その時が来たら……。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。
それが…せめてもの。
07:沙耶香やキャルと離れるのは少し不安だけど、まずは陽介から信頼を稼ぐ。
08:色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
09:リボンズやアスラン・ザラ?、継ぎ接ぎの男(真人)を警戒。
10:このままキャルたちの信頼を稼ぐ。
11:神戸しお……兄さんを殺すというのなら進ませられない
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。極めて実力が高い相手には『完全な停止』までがいたらず、動き・知覚を大幅に遅延するにとどまります。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。
※花村陽介やキャルとも情報交換をしました。

 【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、ルルーシュへの殺意(極大)トランクスへの生理的嫌悪感(極大)
服装:いつもの
装備:ジクウドライバー&ジオウⅡライドウォッチ@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、天使の杖@ドラゴンボール超、ホットライン
思考
基本:ルルーシュを殺す ゲームに勝ってさとちゃんを生き返らせる
01:ルルーシュは絶対に許さない 絶対に殺す
02:そのためにはトランクスくんと一緒にいるのも我慢しなきゃ。
03:ロロくんはトランクスくんよりは仲良くできそうだけど、ルルーシュを守るなら敵だね
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考

554厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:01:00 ID:Glqg4QEE0
 ◇◆◇
 
「どういうことだ……。時を止めたノワルの攻撃で死者が誰もいないだと?」

 遠く離れた場所で戦場を俯瞰していたザラサリキエルにとっても、その光景は予想外。
 あの攻撃に対応できるのはノワルに並ぶ最強格の参加者であるトランクスくらいのものだろうと高をくくっていたところに、神戸しおの心意覚醒。
 その他の参加者が生存していることなど完全に想定外で、さしものザラサリキエルも呆けた顔で眺めるしかなかった。

 「しかもサイヤ人の末裔が戦列に加わるとなれば、いよいよノワルがここで脱落する可能性も視野に入るか…。
 となると私の『カード』や『ドロップ品』はどうすべきかな。」
 鎧越しに顎に手を当てうむむと呻る。
 殺し合いの正常な運航として、セーフティである五道化がノワル級の怪物を倒すよりも、参加者自身の手で攻略したほうが健全だ。
 とはいえそうなれば、ノワルに対抗できるザラサリキエルの戦力が自由になる。
 既に好き放題動いているドゴルドが居る中、こうも早く五道化が3人も暇になるのはよろしくないのではなかろうか。
 思索にふけるザラサリキエルだったが、その意識は背後から投げかけられた声に引き戻された。

「じゃあ、対ノワルの五道化のキミも、ここで脱落すればいいんじゃないかな。」
「なっ!?」
 ふいに投げられたと言葉と共に、バチリと脳幹を撫でられたような刺激が走る。
 反射的に背後に回し蹴りを喰らわせた先で、悠々とけりを交わした女と目が合った。
 アナログ時計を手にした眼鏡の女。マイ=ラッセルハートがそこに居た。

(マイ=ラッセルハート!!
 不味い、今のは編集(エディット)か削除(デリート)!
 私の記憶に干渉された!!)
 とっさにギアスキャンセラーを起動し、青白い光が周囲を照らす。
 その只中でザラサリキエルはマイに向き直り、その変化に気づいた。

 白衣は同じ、眼鏡も同じ、時計(タイムマシン)も同じ。
 しかしその背中には、巨大な蜘蛛の足を思わせる氷柱を左右に一本ずつ生やしていた。
 よくよく見ると氷柱の先端、円錐状の部分には四肢を捥がれた黄金色の機械が、氷の中で貯蔵されているかのように設置されている。
 それが四肢を捥がれたNPCモンスターであることに、ザラサリキエルは気づいた。

「クロックハンズのハッカーか。随分見てくれを変えたようだな。武器のつもりか?」
「まあ、そうだね。
 リキエルっちがここに来ることは分かってたから。君と戦えるくらいの準備は整えておかないとね。」
「つまらん挑発だ。貴様の奇襲は失敗した。
 貴様がしたのが編集(エディット)だろうと削除(デリート)だろうと。ヒースクリフ様よりたわまった青き光を前には無力。
 何より、私は跳躍王(キングリープ)の権能で転移してきたばかりだぞ。
 貴様程度に私の行動が予測できるはずが無かろう。苦し紛れのハッタリも意味がなかったな。」
 仮面の奥で嘲笑うザラサリキエルは拳銃を構えため息とともに引き金を引いた。
 スコーピオンEVO3とは形状の異なるアサルトライフル、SIG516。
 しかも至近距離は10mと離れていない、射程400を超えるこの銃を前にザラサリキエルの技量なら外す方が難しい。

「じゃあな三下テロリスト。
 既に放送も超えた、貴様のような面白みのない駒は片づける時間だ。」
 感慨もなく引き金を引く。
 乾いた破裂音が埃の舞う空に響き、銃弾の斜線上でマイ=ラッセルハートは――笑っていた。

「よろしく、ツィベタっち。」
 引き金を引くより数秒早く。
 指輪に宿る少女に語るマイ=ラッセルハートの右腕に青龍刀を思わせる形状の氷が生み出され、マイは勢いよくその刃を振るう。
 その光景はザラサリキエルにとって無様を通り越して笑いさえ起きない。
 銃弾に反応できるノワルやトランクスならまだしも、氷の刃を振り回したところでマイの技量では掠める確率さえ万分の一。
 憐れみを向ける視線の先で氷と銃弾が交差し。

「――編集(エディット)。誓約女君(レジーナゲッシュ)。」

 ジジジとオレンジ色のノイズが掛かった氷の刃が、ライフルの銃弾を弾き飛ばした。
 まさしくそれは、ノワルにさえ有効打をもたらしたザラサリキエルの劣化複製権能(デッドコピースキル)そのものだ。

555厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:02:20 ID:Glqg4QEE0

「誓約女君(レジーナゲッシュ)の権能だと!」
「シェフィっちの記憶では乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)って言ったっけ。」
「名前なんぞどうだっていい!
 なぜ貴様がその権能を…使え…」
 言葉がつまる。ザラサリキエルは気づいたからだ。
 マイ=ラッセルハートのタイムマシン。その機能は記憶の編集であり削除。
 そしてそれは、他者の記憶や技量の再現さえ可能とする。

「さっきの記憶操作は私の記憶を編集や削除するためではない!
 私の記憶から、権能を覗くことが目的か!
 だが話が合わない。それではまるで貴様は私が転移する場所を読んでいたとでもいうつもりか?」
「そう言ってるじゃん。
 もしかして、ここがどこだかわかってないの?」
 マイが親指で背後を指し、ザラサリキエルはその奥にある灰色の建造物にようやく気付く。
 殺し合いの場に最も不釣り合いな建造物。――病院の存在に。

「蛇腔病院。アンタの守りたい庭園があるここに、必ず戻ってくると思ってたよん。」
 余裕ぶったその笑みが、ザラサリキエルの神経を逆撫でする。
 ザラサリキエルはマイ=ラッセルハートを舐めていた。
 得意の記憶操作はギアスキャンセラーで無力化できる。その他の攻撃も戦闘が本職の連中く比べれば下の下だ。
 おまけに見知った参加者もおらず、盤面における影響力も微々たるもの。
 蛇腔病院の地下での戦いでエケラレンキスが来なければ、そのまま殺していたに違いない。
 その程度の女が、こうして五道化の前に立ちふさがってくる。

「…正直驚いた。
 よもや権能まで再現するとはな。氷に封じた機械はオーマジオウの機械兵たちか。
 その電子頭脳に、私から奪った権能を再現しているな。
 神殺し(ディーサイド)といったか。貴様の必殺兵装の再現というわけだ。」
 マイ=ラッセルハートのデータにあった彼女の切り札。
 タイムマシンで学習した4人の達人の技量を4本の機械の腕に再現する。いわば4基の英霊を同時に召喚するに等しい最終兵器。
 氷とNPCだけでマイ=ラッセルハートはその武装を再現して見せた。

「神殺し・心傷(ディーサイド・アマラリルク)とでも命名しようかな。
 でも君の権能の再現は思ったより簡単だったよ。」
「なんだと?」
 ザラサリキエルの頭で血管がブチブチとキレる音がマイにも聞こえた。
 その言葉は、ザラサリキエルにとって地雷だ。
 ヒースクリフより賜った権能は、贋作(NPC)たる道化にとって、唯一誇れるものであるゆえに。

「2033年の中古品(レトロゲー)の技術でしょ?再現するのは難しくないんだよん!」
 死告邪眼のザラサリキエルには、その言葉が許せない。

「貴様ぁ!!」
 SIG516を思いっきり乱射する。撃ちだした銃弾はマイが生み出した氷の壁に阻まれる。
 刹那、ザラサリキエルは理解する。
 乱数聖域で撃ち落としたあの挙動さえ、マイのデモンストレーションでありザラサリキエルへの挑発だったのだったと。
 マイ=ラッセルハートの狙いは、初めから死告邪眼のザラサリキエルだったのだと。
 
「ふざけんじゃねえぞ…」
 
 ブチブチと頭の中で何かが切れ、普段の冷静な調整者の顔は消し飛んだ。
 ノワルを前にした時以上の激情が、紫紺の鎧の奥でぐちゃぐちゃと混ざる。
 激怒戦騎に非ざる道化が、怒りのままに吠える。
 それが、第二の戦い開戦のゴングとなった。

「貴様だけはここで殺す!
 三流の駒でしかないクソハッカー風情が、私の賜った権能を掠めどるにあきたらず侮辱するなど許しがたい!」
「やれるもんならやってみなよ!三下道化師!」

556厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:03:47 ID:Glqg4QEE0

  【エリアB-6/蛇腔病院前/9月2日午後1時45分】

 【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:健康 小鳥遊ホシノへの興味(中) ザラサリキエルへの敵意(中) 神戸しおへの興味(中)
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士
   オコノミボックス@ドラえもん
   ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
   カッシーンの残骸×2@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ホットライン カッシーンの残骸×4
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:なんだって利用してアタシは勝つよ
02:タイムマシンの使用は慎重に。
  削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。
  その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
  どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
08:ノワル……間違いなく五道化級の参加者。
  ヤバいねこれは。
09:ツィベタっちの言いたいことは分かる。
  それでもアタシは――。
10:一緒に踊ってもらうわよ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
11:アンタはここで死ね 死告邪眼
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『鵺の陰陽師』の世界についてのある程度の知識を得ました。
※ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-は意志持ち支給品ですが、夢の中など特定の状況可でしか会話が出来ません。
※冥黒の五道化が必要なほど強力な参加者が5人いるのではないかと考えています。
※カッシーンの残骸にザラサリキエルの権能を付与することで能力を再現しています?

【死告邪眼のザラサリキエル】
状態:ダメージ(中)
肉体:???(女性なのは確定)
装備:グランシャリオ@アカメが斬る の再現品、???
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:多数の銃火器@???
   ???のカード×?@???
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:守護者としての役割を全うする。
02:0005bとマジアアズールは……まあ仕方ないか
03:闇檻を迎撃し、庭園から遠ざける。
  倒しはしないが令呪一画は削っておきたいところだ。
04:魔獣装甲の奴、雑な仕事しやがって。
05:誰がエルちゃんだ、誰が
06:凶星病理もだが、アイツらが遊びすぎてないだろうな。
07:流石は闇檻 一筋縄ではいかないが……あれほどの顔ぶれが揃うとはな
08:三下のクソハッカーが、もはやこのゲームには不要だ。
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※ヘイローを有しています。銃撃などに足して異様なタフネスを発揮します。
※肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※死告邪眼はギアスキャンセラーをベースにした彼女の固有能力です。
 発動すると有効範囲内の異能力を無効化できますが、その有効範囲に常に自分が含まれます。
※アストルムの七冠の権能@プリンセスコネクト!Re:DIVEを模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

557厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:04:44 ID:Glqg4QEE0
 ◇◆◇

 人間の行動を最も簡単に制御する方法は、『目的』を与えることである。
 
 『ルルーシュという悪』を前にプレイヤーたちを団結させ、羂索を含めた運営を打倒する。
 ルルーシュ・ランペルージの目的は端的に言えばこのようなものだ。元の世界で行った計略――ゼロ・レクイエムの応用ともいえる。
 そしてこの場のルルーシュは知らないが、彼はこの作戦を成功させている。
 少し先の未来で、ルルーシュと枢木スザクによる世界をペテンにかけた茶番劇(えいゆうたん)により、世界の怒りと憎しみは悪逆皇帝と共に清算された。
 
 とどのつまり、この場のルルーシュには世界の憎悪を背負い全ての敵になる覚悟と能力があるということだ。
 同一の野望を掲げるルルーシュ・ランペルージのバトルロワイヤル上の行動にミスがあるかと問われれば、否だろう。
 不完全とはいえ有効なギアスに従えたNPC軍団、綾小路清隆という優秀な副官も早々に手に入れ。放送施設を占拠することで会場における発言力を独占した。
 会場の全ての人物がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名を知っているし、ほとんどの参加者がルルーシュに抱く印象は彼の望み通り最悪だ。
 もしこの戦いが銃を持った中学生の集団によるものであったならば、今頃ルルーシュはこのゲームを支配できていただろう。

 彼に足りなかったものは、想像力と実力。
 羂索やクルーゼが混沌を望んだ坩堝の中身は、ルルーシュの想像をはるかに超える魔境だった。
 
(流石にそこまで容易く事が進むなどと驕ったつもりはなかったが……。)
 歯嚙みしながら、男は戦場を見上げた。
 青い髪を靡かせる剣士と黒衣の魔女がぶつかり合い。その足元では和装の青年と少女剣士が戦線に介入するために魔女の一挙手一投足に目を光らせている。
 それは隣に立つ学生服の青年も同様だ。到底見切れない速度の剣劇と魔術戦を前に生唾を飲み込みながらも腰を抜かしているわけでも臆病風に吹かれているでもない。強い気迫を称えた目をしていた。
 
 誰もが戦場を見つめている。
 誰もが戦場に立っている。
 ノワルも、トランクスも、覇世川左虎も、アスナも。配下としている陽介でさえ例外でない。
 撃たれる覚悟も撃つ覚悟もない者など、ここには一人としていない。
 
 そんな戦場に立つ者が、誰一人ルルーシュのことを見ていなかった。
 その光景が、この殺し合いにおける今の自分の縮図のように思えてならない。

 (『五道化』。ザラサリキエルはそう言っていたな。
 奴と同格の運営が、5人。となれば運営手づから対処する必要がある者も恐らく5人前後。ノワルとトランクス、黒き神を含めてもあと2人はいる。
 そのような環境で、エターナルやリボンズ、左虎レベルの参加者がそれより少ない可能性は……ないな。)

 心をかきむしりたくなる屈辱の中、この現状が会場においてのルルーシュの縮図だと、ルルーシュ・ランペルージには見えていた。
 宇蟲王ギラ。真人。鬼龍院羅暁。魔王グリオン。ザギ。ダークマイト。やみのせんし。仮面ライダー王蛇。激怒戦騎のドゴルド。
 ルルーシュの介入など意に介さず暴れに暴れた特記戦力たち。
 ただ勝利するだけならば、ルルーシュの集団はその大半に勝ちうるだろう。既に仮面ライダーの中でも指折りの危険人物であるエターナル――それも正規変身者である大道克己を彼は撃破している。
 
 だがルルーシュの目的は一度の勝利ではない。
 運営に合わせた放送で存在を誇示し、『ルルーシュという悪』を前にプレイヤーたちを団結させることだ。
 現時点でその成果が出ていると言えるのは、マイやマクギリスのように真意に気づいた存在かロロやシャーリーのようなルルーシュと知己の参加者。
 それ以外では松坂さとうの復讐に駆られる神戸しおくらいのものだ。
 まだ見ぬ特記戦力や彼らとの戦いに明け暮れる大半の者にとって、ルルーシュの放送は『テレビ局をジャックしているよくわからない男の妄言』以上の重みをもっていなかった。

(ギアスもなく死んでいたままのあのころとは違う!
 ギアスも兵力も手にしたにもかかわらず、何も為せぬ終わってなどなるものか!)
 最低でも、ノワルやトランクスに並ぶ危険人物とならねば。彼の野望は果たせない。
 目の奥にギラついた光を宿し、隣に立つ青年に声をかけた。

558厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:06:07 ID:Glqg4QEE0
「陽介。作戦は覚えているか?」
「ああ。一応な。だが今からでも変えたほうがいいと思うぜ俺は。
 トランクスは無茶苦茶強ええ。
 あいつ正面に立ってもらって俺らはそのサポートってのが一番被害がすくねえだろ。」
 
 視線を動かさずに陽介は答える。余波でさえ人が死にうるノワルとトランクスの戦いの前では目をそらすわけにはいかなかった。
 花村陽介の意見はルルーシュにも同意できる。
 トランクスは強い。正面からノワルと打ち合える参加者はそうはいない。
 ましてや男は神戸しおの陣営だ。ここでトランクスとノワルが共倒れになることがルルーシュにしてみれば最上の結果ともいえるかもしれない。
 戦力も温存できる。そうすれば神戸しおを殺し後顧の憂いを絶つ余裕さえある。

 「駄目だ。」
 そこまで理解したうえで、ルルーシュじゃはっきりと拒絶を示した。 
 確かに最善だ。だがそれはルルーシュが現状を許容し、維持するために戦うならという前提が付く。
 そしてルルーシュは、自分の現状に何一つ満足などしていなかった。

「短期的にはお前の言った通りだが。将来的に黒き神も倒す必要がある。
 そうでなくとも、同格の参加者やあの五道化なる連中も俺たちの敵だ。今のままでは奴らの敵にさえなれていない。
 俺が奴らにとって『敵』となりうる存在であることを示すためにも、ここでは俺自身が戦う必要がある。」
「……野暮なことってのは重々承知の上で言わせてもらうが、そうまでしてお前自身が強くなる必要はないんじゃねえのか?」
 陽介が思い出すのは、赤い覇王 豊臣秀吉の姿。
 個の強さのみを至上とし、弱さも迷いも許さない。敵になるものは排除すると言い放った男の言動は、1つの芯こそ通ってはいたが陽介にしては受け入れがたいものだった。
 ルルーシュの将来的な目標が、己自身でノワルやザラサリキエルを倒す個としての完成であるならば、やはり陽介には受け入れられないだろう。
 思い悩む陽介に、ルルーシュは静かに言った。

「正義、思想、野望。どんな願いでもそれを叶え、認めさせるには強さが必要だ。
 お前の言う通り、ただ強さを追い求めるだけでは意味がない。
 肝心なのはその力を得て何を為すか。
 そのためにここで俺が絶対にこなさねばならん『条件』がある。」
「なんだそれは?」
「『俺』がノワルを倒すことだ。
 トランクスでも覇世川左虎でもザラサリキエルなるNPCでもなく。な。」
 発言の意図が理解できず、陽介は首をかしげた。
 花村陽介が知るルルーシュの策は、あくまで最低限の部分だけなのだ。

「箔が付くとでもいいてえのか?」
「悪いがこれ以上は話せん。
 ただ、俺が言えることは1つだけ。
 運営を打倒しすべてのプレイヤーを救うために、俺が出来る手段を実行している。」
「結局、何も教えてくれねえってわけだな。」
 諦めたようにうなだれ、しかし陽介の目は今はルルーシュに向いている。
 この男の全てを信じているわけではない。
 ロロの兄ということを差し引いても、危険で冷徹な男であると同時に、確実な勝利者には程遠い。

「まあいいさ。ロロに頼まれた分くらいは、俺のやるべきことをやってやる。
……だからぜってー勝てよ。」
 それでも、今はこの男に命運を預けるほかないのだ。そう決断する陽介の顔は思いのほか晴れやかだった。

「言われるまでもない。」
 
 言い聞かせるようにルルーシュは言葉を返す。
 
 今の戦い、彼が求める条件などまるで揃っていない。
 神戸しお(イレギュラー)により肝心要のロロは使えず。
 アスナ(イレギュラー)により排除したはずの選択肢が再び浮き上がり。
 覇世川左虎(イレギュラー)により忌避していた記憶操作能力者を倒す道も失い。
 トランクス(イレギュラー)が下手をすれば、ルルーシュの目論見は崩れ去る。

「薄氷の上だろうとまぐれのようなものだろうと、俺の目的のために全てを利用し勝利する!
 それが俺の使命だからだ!」
 そんな中でもルルーシュに、戦いから逃げるという道はない。
 神戸しおがルルーシュへの復讐以外の道を捨て去ったように。
 悪を為し全てを救う、そんな道しかこの男は選ばないのだから。

559厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:07:49 ID:Glqg4QEE0

 【エリアC-6/市街地/9月2日午後1時45分】

 【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:屈辱(大) 反骨精神(大)
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実
   キングガブリカリバー@王様戦隊キングオージャ―
   ランダムアイテム×0〜1(清隆)
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   飛電ゼロワンドライバー&メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
 魔力の結晶@オリジナル
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……よく無事に俺の元まで来てくれた。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:地下の『アレ』については最悪留守中に『特記戦力』が攻めてきた場合ぶつける。
07:特記戦力に関する情報はもっと欲しかったし、場所も選びたかったが仕方ない。あの忌まわしき父と同じ力を持つ眼鏡の女共々今日中に倒す。
08:白のキングは例の魔神で確定か。
  なら色欲の魔女程度倒せん用では挑戦権すらないな。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
11:なぜ!今神戸しおが来るのだ!おまけに「絶対停止」のギアスで止まらない男が仲間だと!?俺に対する嫌がらせか!?
12:『条件』をクリアするためにも、この戦い必ず勝つ!
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとうにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトは倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。

560厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:09:12 ID:Glqg4QEE0
 【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:ルルーシュに対する不快感、トランクスのに対する不快感(大)、ダメージ(中)、魔力の消耗(中)、両腕から出血
服装:レモン@運命の巻戻士の姿(両腕を除く)/ノワルのドレス
装備:賢者の石@鋼の錬金術師、万里ノ鎖@呪術廻戦 光魔の杖@ドラゴンクエスト ダイの大冒険 レモン@運命の巻戻士の起動キー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(ローラ姫のもの)、青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG、ホットライン、レジスター(ローラ姫)、ランダムアイテム×0〜2(アスナのもの)、アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ、ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画) 魔力の結晶@オリジナル×いくつか
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:アイツら(マジアベーゼ、マジアマゼンタ、イドラ、千佳、アルカイザー)にはいずれ報いを受けさせる
01:この殺し合いを乗っ取って、自分好みに改造してあらゆる世界から集めた女の子を愛でる
02:黒い男(アルジュナ)を強く警戒。気を引き締めないとねぇ
03:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃん、アスナちゃんの魔力はおいしかったわね。
04:まだ見ぬ異世界のかわいい女の子に会うのが楽しみ。今度は殺される前に会いたいわ
05:ルルーシュって奴、思ったよりも警戒するべきかもね
06:令呪とレジスターに関しても細工の余地がありそうね……
07:ザラサリキエルだったわね。中々厄介な相手ね
08:ハァイルルーシュ。女の子を連れてこなかったことを悔いて死になさい
09:青い髪の男……これは遊んでいられる相手じゃないわ
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
※ノワルに課された制限は以下の通りです。
闇檻 無限監獄の封印
魔力解放形態の封印
結界による陣地の作成不可
召喚できる使い魔は天使α、天使β、天使γ程度
闇檻 ラストレクイエムで呑み込める範囲を1/10未満に
※ポケット闇檻は破壊されました
※レモン起動キーの両腕は破壊されました

【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(小)、精神疲労(小)
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1、熟練スパナ@ペルソナ4 クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner
思考
基本:殺し合いはしない
01:何なんだあのヤベー(ザギ)のは。
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
   けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロの奴とルルーシュはとりあえず信用しておく。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ルルーシュに会いに行く前にイザークたちとは合流したかったなぁ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったはいいけど、ただじゃなさそうだな。
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
   テレビの中じゃねえのに。
09:……ロロにああまで言われたら、やるしかねえか。
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。

561厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:10:42 ID:Glqg4QEE0
 【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(小) マイ=ラッセルハートへの信頼(?) ノワルへの警戒(大) ルルーシュへの警戒(小)
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン 魔力の結晶@オリジナル×数個
思考
基本:運営をブッ殺し殺し合いを終わらせる
01:マイ=ラッセルハート。 思うところはあるが次会う時はブッ殺すことになるだろうな。
02:水神小夜もシェフィも記憶操作の影響にあったか。成程
03:空蝉丸……ドゴルドと因縁がある参加者か。
04:よもや病院の地下にこれほど悍ましい物が眠っていたとは。
05:冥黒の五道化……忍者として必ずブッ切除(つぶ)さねばなるまい。
06:ノワルなる魔女……必ずブッ殺さねば
参戦時期:死亡後
備考
※記憶は復活しています マイ=ラッセルハートに対する印象は不明ですが、特に嫌悪感はないようです。

 【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)】
状態:疲労(特大)、ノワルへのうらみ(極大)
服装:ヴァルキューレ警察学校の制服@ブルーアーカイブ
装備:ES01ビームサーベル@機動戦士ガンダムSEED 烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師
令呪:残り三画
道具:ホットライン 魔力の結晶@オリジナル×数個
思考
基本:ノワルを倒す 全てはその後
01:先生(小兵衛)の教えを肝に銘じる
02:生きて、先生(小兵衛)と私のうらみをあの女(ノワル)に返す
03:生きてミトに再会する……?
04:茅場って……あの茅場よね?
05:どういうこと?これはSAOとはどう関係しているの?
06:キリト……同じSAOのプレーヤー?
参戦時期:ミトにパーティを解消され、ジャイアントアンスロソーに殺される寸前
備考
※キリトに助けられる前ですのでキリトとの面識はありません。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
※小兵衛との会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※名簿の並びからキリト〜ユージオまでをSAOのプレーヤーではないかと推測しています
※胸の傷はノワルにより治療されました
 
 【烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師】
状態:令力消費(中)、独立移動、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:烏天狗の服装
装備:なし
道具:なし
思考
基本:親しい者に危機が及ばない限り契約者の意向に従う
00:小兵衛の最後の指示を遂行するため、他の参加者を探す。
01:アスナ殿!よくぞ御無事で
02:アスナ殿・左虎殿らと共にノワルを倒す。
03:マイ殿と左虎殿はなぜ袂を分かってしまったのでしょうか
備考
※秋山小兵衛より、以下の指示を受けています。
 殺し合いを打倒しようとしている参加者を探すこと。
 協力してくれる参加者を新たな主をすること。
 見つけた参加者に「アスナが闇檻の魔女に囚われた」ことを伝えること。

562厄災ばかりの攻略未来 ―孤独の雪が王を迎える― ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:11:18 ID:Glqg4QEE0
【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(中)、飛行中
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order、通信機@ドラゴンボール超
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、レジスター(ロロ@ナイトメア・オブ・ナナリー)
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:ごめんしおちゃん。さとちゃんと会わせてあげられなくて。
02:あの白髪の男(アルジュナ・オルタ)は必ず倒す。その為には同志を集めないと……。
03:赤い服の男(宇蟲王ギラ)やキヴォトスの関係者にも要警戒。
04:しおちゃんを怒らせるような事を俺はしてしまったのか…?
05:あれがルルーシュ……
06:ノワルは必ず倒す
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。

 
【支給品解説】

 レモンの起動キー@運命の巻戻士
 ローラ姫に支給
 巻戻士の中でも有数の戦闘力を持つアンドロイド少女を模した起動キー
 全身に武装を埋め込まれている他令呪一画か同等のエネルギーを用いることで『開眼(バージョンアップ)』を使え20秒間時を止めることができる
 現在両腕が破壊されている。
 なお他のタイムマシン支給品同様タイムマシンとしての機能はない 景品表示法違反では?

 光魔の杖@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
 ウンベール・ジーゼックに支給
 若かりし頃のロン・ベルクが魔界の神のために用立てた武器であるが、要はリミッターの外れた理力の杖。
 使用者の魔力に応じて攻撃力が飛躍的に増大する 制作者にとっては戯れ程度のアイテム

魔力の結晶@オリジナル
ノワルが抽出した珠の形をした魔力
紫黒の珠をしていて、食べることで魔力を回復できる

563 ◆kLJfcedqlU:2025/07/16(水) 00:12:07 ID:Glqg4QEE0
投下終了します 時間を超過して申し訳ございません
誤字を発見しましたのでwiki収録時に修正いたします

564 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/16(水) 00:13:13 ID:BNpM2L1A0
素晴らしいssをありがとうございました。
私も企画主として負けていられません。

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、花村陽介、アスナ、覇世川左虎、ノワル、トランクス、神戸しお、ロロ・ランペルージ予約します。

565 ◆07JJdXWj.M:2025/07/19(土) 18:22:52 ID:8/JuzMQk0
いまさらですが放送突破おめでとうございます!
久しぶりに、以下のメンバーで予約します。
レジィ・スター、井ノ上たきな、一之瀬帆波

566 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:44:08 ID:H/WVApKo0
投下します

567I'm a KAMEN-RIDAER ロロ・ランペルージ:オリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:45:12 ID:H/WVApKo0
「本当は金積まれたって御免だけど……お前の覚悟に泥塗ったら男が廃るってもんだよな。
いいぜ!お前の仕事、確かに任された!」

差し出したアイテムを受け取り兄の元へと駆け出した陽介の後ろ姿を見送った時、確かに僕は嬉しかったんだ。
彼が味方で良かったと、掛け値なしに思える程に。
あり得ないこの後に、全部が無事に終わったら試合後にユニフォームを交換し合う様な晴れやかな気分での再開したいと夢見るほどに。
でもそんな幸せが許される訳がない。
ロロ・ランペルージの両手はそれほどに血濡れている。

-----

わたしにはさとちゃんしかいなかった。
わたしにむけてくれるやさしいえがお。
あたたかなまなざし、どんなおかしよりもあまいこえであいをささやくきれいなくちびる。
それだけでしあわせだった。
かりにしんじゃったとしても、それがさとちゃんといっしょならべつにかまわないってぐらいにあいしてる。
けどルルーシュがうばった。
さとちゃんをころした。
こうべしおとさとちゃんしかいないはずのせかいをくろいかめんライダーのベルトをつかってさとちゃんをころしてせかいをこわした。
ゆるさない。ゆるせるわけがない。
でも、そんなわたしがだいきらいなルルーシュがたいせつだっていうロロ君がじゃまをする。
でももし、ルルーシュがさとちゃんになにもしなかったらロロ君とはなかよくなれたとおもう。
だからちょっとざんねん。
あたまのいいさとちゃんならこのきもちをもっとじょうずにことばにできたのかな。
ロロ君のルルーシュとおそろい目がひかる。
うらやましいな、わたしの目はさとちゃんとおそろいじゃない。
きづけばわたしはころんでた。
ロロ君はまたくるしそうになっていた。

-----

正直、ルルーシュの邪悪の王っぷりにもロロのブラコンっぷりにも引いてた。ドン引きだった。
テレビ局に着いた後にロロがルルーシュからもらったっていう悪の組織の幹部みたいなマントを見せてきた時には早くイザーク達に来て欲しいと切実に願ったさ。
来てどうにかなるとも思わなかったけど。
その後テレビ局でも車の中でも碌に会話できなかったし、ルルーシュ以外で一番付き合い長い沙耶香ちゃん以外でちゃんと仲良い奴いないロロだけど、俺に任せるって誰より信頼してる兄貴から任されたもの全部を差し出す覚悟を……俺の相棒にもにた姿を見せられて断っちゃあ特別捜査隊の名が泣くってもんだよな。
今までイマイチ決まらなかった俺だけど、ここでバッチリルルーシュを勝たせて汚名返上と行くぜ!
だからお前も勝てよ、ロロ!

-----

ルルーシュの忠実な弟、ロロ・ランペルージ対松坂さとうの最愛の人、神戸しお。
最初からすべてを奪われていた中でルルーシュに与えられた物と、ようやく松坂さとうと言う全てを手に入れたにも関わらずルルーシュに奪われた女の対決。
奇妙な因縁と因果を感じさせる好カードに思えるが、実の所泥試合の要素が強い。

幾つか理由はあるが、まず使っている道具の差だ。
オリジナルの変身者たちが使った場合のスペックを数字にすると斬月がパンチ力10.2tキック力13.0tで100mを6.1秒、ジオウⅡがパンチ力25.2tキック力58.3tで100mを2.4秒となる。
実際にこの数字そのままではないだろうが、ベースとなるアイテムは半分同じなのでロロとしおの変身している状態でも上記スペックから微減微増程度の差しかないだろう。

一番差がないパンチ力すら2倍近い差をつけられて斬月が負けている時点でロロの負けが決まっているように思えるかもしれないが、今のロロのドライバーはルルーシュがゼロワン系の技術も盛り込んで修理した物であり、恐らくロロ専用にチューンナップされている。

いくらしおの尽きることない愛と負の心意で真価を引き出したジオウⅡと言えど、手に入れたばかりの力。
最初から使い手に合わせて用意された斬月の方が先に使いこなせるに決まっている。
というか、ルルーシュは格上相手にもロロが十全に戦えるように態々零陽炎が無事なのに修復したドライバーを与えたのだ。

次に変身者の差だ。
ロロは元々暗殺者という正面戦闘が本職ではないとは言えまともな訓練を受けた人間である。
幼少の頃より与えられたギアスを使って数々の要人を暗殺してきた。
このバトルロワイヤルにおいても先程まで零陽炎で問題なく戦えていたし、分身とは言え改修前の斬月に変身して黒崎一護やタギツヒメといった実力者相手に相手にドラグーンの熱線が降り注ぐ中防がざるを得ない攻撃を繰り出していたことからも単体戦闘能力においては決して低くはない。
対して神戸しおはただの小学生だ。
その異形と化した精神性を除けば特筆すべきことなど何もない。
ほとんどの参加者にとって支給品を加味しなければ鎧袖一触で殺せてしまう程度の強さしか持ちえない。

568I'm a KAMEN-RIDAER ロロ・ランペルージ:オリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:45:36 ID:H/WVApKo0
生きてきた重みが違うなどとは口が裂けても言え何が、くぐってきた修羅場の数は間違いなくロロの方が上だ。
パラド風に言うなら経験値が違う。

勿論神戸しおの怨みの力……怨恨から来る火事場の馬鹿力は決して油断できる物ではない。
実際何の資格もないはずなのにジオウの力を引き出せている。
が、それは先程ノワルがもたらすはずだった破滅の否定に使ったばかりだ。
そう何度も乱発出来るものではない。
だからこそロロは守勢に回る。

<ライダー!ライダー斬り!>

しおが二刀流に構えたうちの片方、サイキョウギレードの斬撃に対してスーツの伝える事象に対する結論の中から最適なものを選択し実行。
強化された斬撃を弾き、二の手で放たれたジカンギレードの突きを防ぎ、振り上げられた右脚を後ろに飛んで避ける。
ジオウⅡにはそれを上回る未来予知じみた力があるのだが、実は対策しようがある。

「っ!まただ……」

最初はしおの方がダメージを与えられていたが、今はそうではない。
タイミングを合わせて時間を奪い、確実にロロは防御する。
これは戦争の話だが、攻勢側が守勢を打ち破るのに2倍から3倍の戦力が必要だという話もあるのだ。
現状諸々のプラスマイナスを加味すればしおの現戦力はロロの約1.8倍。
耐えられない程の差ではない。

「いくらそのライダーが強くても……あの時ノワル相手に使って見せた未来を支配する力があっても今この瞬間の時間を奪えるのは僕で、その仮面ライダーの変身者はたまたまベルトを手に入れただけの君だ。
いきなり枢木スザクみたいな無茶苦茶な動きが出来る様になる訳でも、僕のギアスに対処しきれる訳でもない」

仮にロロの絶対停止のギアスを加味した上で予想しようとそううまくいくものではない。
初見では卜部やナイト・オブ・ラウンズ、果ては紅月カレンすら翻弄され、トランクスすらロロの結界の中ではまったく動けない瞬間が存在する能力なのだ。

例え手の内が分かっていようとそう簡単に対策も対抗も出来ないからランペルージ兄弟のギアスは『絶対』の名を冠している。

しかもロロはその『絶対』を活かす為にジオウⅡに近接戦しか仕掛けていない。
近接戦における愚は一瞬の隙。
長い時間止めようと思ったらスペック差もあり無理だろうが、一瞬踏み込みを遅らせる、僅かに剣先を鈍らせることさえ出来れば撃ち合い程度なら問題なく行えるのだ。
シンプルな超パワーや超スピードならジオウⅡで封殺することができるだろうが、ロロの力はジオウⅡとは異なる形で時に手をかける力。
しかも基本的に能力のオンオフがロロに委ねられる以上どうしたってしおは後手になる。

(ただそれもぼちぼち限界かな……)

ルルーシュの絶対遵守が一度使った相手に二度は使えない様に、ロロの絶対停止のギアスにも弱点がある。
発動中はロロの心臓が完全に止まってしまうのだ。
実際ロロはこのデメリットのせいで一度死んでおり、今もあまり良い状態とは言えない。
神戸しおも体力的に余裕がない為、幸い時間が経てば経つほどこちらが不利になる訳ではないが、別に時間が味方してくれる訳ではない。
元にルルーシュがアップデートしてくれたスーツの生態維持機能がバイタルや予測される運動量を基にあと五回連続でギアスを使えば戦闘不能になると告げている。
だがそれでも十分に時間は稼げたはずだ。
あのノワル相手に聡明な兄がだらだらと戦いを長引かせるはずがない。

「ねえ、一つ気になったんだけど最期に良いかな?」

肩の力を抜き、剣を下ろしたロロを見て、ジオウⅡも歩を止めた。
どうやらルルーシュの弟にも関わらず遺言を聞き届けてくれる程度にはこちらに対する印象は悪くないらしい。
自分も逆の立場ならそうしていると思う。

「はぁ……はぁ……なに?」

「君の居場所に松坂さとう以外の誰かはいるのかい?」

<ライダーフィニッシュタイム!!
トゥワイズタイムブレーク!!>

遠慮なしに大上段からの斬撃を叩き込まれた。
一瞬だけしおの時間をギアスで奪いその隙にスライディングしながらドライバーのカッティングブレードを操作する。
残り四回。

<イヨ〜!メロンオーレ!>

ジオウⅡの脇をすり抜ける様にして避けた斬月が立ち上がりながら無双セイバーを振り抜く。
ジオウⅡは受け身も取れずに壁に激突した。
流石に効いたらしく、取り落としたジカンギレードをどうにか手繰り寄せて杖代わりにして立ち上がった。

「いなかった……でもいまはルルーシュがいすわってる!
ルルーシュが、さとちゃんをころさなかったら二人しかしいなかったのにっ!」

「松坂さとうや兄さん以外の誰かにいて欲しいとは思わないのかい?」

「そんなのいらない。
さとちゃんがあいしてくれればそれでいい!」

569I'm a KAMEN-RIDAER ロロ・ランペルージ:オリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:46:02 ID:H/WVApKo0
ふらつきながらも低姿勢で突っ込んでくるジオウⅡにロロはギアスを使った。
交差する一瞬だけ時間を奪いすれ違い様の攻撃を封じる。
あと三回。

「このバトルロワイヤルに巻き込まれる前の僕だったら一瞬の躊躇もなく君に同意してたと思う。
けど、今の僕はそう思わない」

一昔前の自分が聞いたら、自分のみならず今の兄やキャルたちが聞いても仰天しそうな台詞だ。
何せロロはかつて、ルルーシュの実妹ナナリーを謀殺しその立場を完全に奪おうとしたこともあったのだから。
だが、自分の頼みを「任された」と快く引き受けてくれた花村陽介の姿に兄に褒められた時ほどではないが、嬉しく思ったのは事実だ。
だから言える。
ルルーシュの隣にナナリーが居ても嫉妬はあれど不快感はないと。
あの場で兄を託せるのが陽介だけだった様に、結局ルルーシュを支えて癒せるのはナナリーだけなのだから。
人には人の居るべき場所とやれることがあって、それは簡単に奪えるものではない。

「わたしは、さとちゃんいがいいらない。
だからいらないルルーシュをころす。
ロロ君みたいによそ見しない!」

「なら僕はその余所見をできた幸運に感謝しよう。
兄さん以外の誰かを見ようとしなければ、この景色は見えなかった」

目の前に神戸しおという女がいる以上、そして何より自分が罪を重ねた今となっては有り得ない仮定だが、もしナナリーや一護も無事で沙耶香たちと『ルルーシュとどういった関係か』という色眼鏡を外して、ただの友人の様に過ごせたならどうだっただろうか?
自分はナナリーや一護とどんな会話をしただろう?
自分を本当の弟だと思っていたルルーシュとの生活を思い出してみるが、あの時の出来事は自分が目にも足にもハンデがないからこそできたことも多いのであまり参考にならない。
でもだからこそナナリー本人に泣かれない程度に自慢したかった。

タギツヒメとはどんな関係になれただろう?
一護の件で負い目がある状態とは言え、表面上はそう悪くない関係を築けているが、あれが本当の関係になったら楽しいだろうか?
もう少し気安くてもいい気がする。

キャルと裏の読み合い以上の会話がなかったかもしれない。
沙耶香に車の中で少し教えてもらったキャルのニブチンな王子様のことでからかってやったら面白い反応が返って来るだろう。
そしたら今度は自分とルルーシュの関係をからかわれるだろうから覚悟がいるな。

そういえば陽介のバイクの運転は拙かったから、教えてあげたら喜んでくれたかもしれない。
いっしょにツーリングに出かけてどんな些細なことでもいいからいい思い出をもって帰る事が出来たら本当に嬉しいだろう。

沙耶香とは……本当の、までとも行かずとも兄妹の様に仲良くなれただろうか。
兄がナナリーにするように慈しみ、兄が自分にしてくれたように何かを教えて、ルルーシュともナナリーとも別の……いや、それはもうロシア紅茶を振る舞ってあげていた。
……冬の寒い日が来るたびに出会った事をロシア紅茶で思い出せる。
柄じゃないけどまるで詩の一節の様で素敵じゃないか。

可奈美や舞衣とも、話してみたかった。
自分とは別ベクトルでコミュニケーションが得意とは思えない沙耶香が心を開く子たちだ。
きっといい子で、ルルーシュとも友人になってくれたんだろう。
せめて柳瀬舞衣だけでも無事に沙耶香と会って欲しいものだ。

(本当に、本当に口惜しいよ。
どれだけ欲しがってもこの景色は手に入らないって、分かっているほどに欲しくてたまらない)

胸を張って、ナナリーが自分の代わりにルルーシュを支え癒す様に自分がナナリーの代わりにルルーシュの為に戦い守るのだと言って兄を安心させたかった。
もう無理だ。
でも諦めたり歩みを止めるなんて選択肢はあり得ない。

(なるほど、これが願いか)

神戸しおにはもうそれがない。
彼女の心には死んだ松坂さとうと殺したルルーシュ・ヴィ・ブリタニアしかありはしない。
心を自分とさとうの亡骸だけにするためにルルーシュを消滅させることは願いとは言わないし、今更言葉で神戸しおは止まらないだろう。

「わらってるなんてよゆうだね」

仮面越しのロロの顔を見透かした様にあどけない声が苛立ちの色を隠さず言う。

「そう見えた?
……実際今僕は笑ってるんだろうね。
多分、優越感で。
嫌だなあ、掃き溜め生まれなお陰で綺麗な言葉で例えられないや」

「なんでルルーシュとあえなくなるのにわらえてるの?」

「なんでって……僕には死んでも大切な思い出と願望が出来た。
これが叶わないのが今までの所業の罰だと言われたら納得するしかない程に素晴らしい願いを持てた」

「かなわないねがいにいみがあるの?」

「兄さんを倒そうなんて不可能な夢見てる君が言うかい?」

しおの怒気が一段回上がる。
ロロは盾を捨て、ロックシードドライバーから外した。

570I'm a KAMEN-RIDAER ロロ・ランペルージ:オリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:46:19 ID:H/WVApKo0
「ごめんね、質問には答えるよ。
君にとってはくだらない物言いだろうけど、兄さんがナナリーにそそぐ愛を横取りしようとしたって結局兄さんは益々ナナリーを愛するだけなんだ。
だから僕は僕のやり方で兄さんを全力で愛する。
これを絶対、意味のある物にして見せる」

そう言って無双セイバーのスロットに装填ようとして……ロックシードが本来あり得ない光を放っているのに気付いてやめた。

「まさか……」

自分が先程体験したからしおにはわかった。
叶わないと分かりながら尚手を伸ばしたロロにヒースクリフの仕掛けが力を貸したのだ。
重用なのが燃え盛る心高だというなら、黒い火花と同じでほほ笑む相手を選ばない。

「させない!」

ロロの右目の不死鳥の紋様が光り、しおの時間が奪われる。
あと三回……いや、それなりに長い時間を止めるから二回分は使う。
後一回の使い所は決めているから実質これが最後の絶対停止だ。

「聞いてくれる人もいないけど、宣言するよ。
僕は罪人で、幸せ者で……ナナリーに代わって兄さんを守る仮面ライダー!
お見せしよう……」

<カチドキ!>

変化したロックシードをドライバーに装着。
仮面とメロンのアーマーが弾け、代わって頭上に展開されたライダモデルの鎧が出現する。

「変身!」

ルルーシュがアークゼロに変身したのと同じポーズを取り、ドライバーを操作。
ライドウェアだけになったロロに鎧が被さり新しい仮面を形成する。

<カチドキアームズいざ出陣!
エイ!エイ!オー!>

「────っ!しまった!」

「はぁっ!」

ギアスの解除と同時に新たに装備された火縄甜瓜DJ銃を片手に一息で距離を詰めると腹部にゼロ距離で光弾を叩き込んだ。
三半規管を殴打されたに等しいジオウⅡは仮面越しに口元を押さえながら後退る。
しかしすぐさま二刀持った剣を合体させ

「おおぶぅ……う、ぁああああああ!!」

切り掛かる。
もうギアスは使えない以上ロロはそれを真っ向から受け止める。
左肩で派手な火花が爆ぜ、尋常ではない激痛に銃を落としそうになる。
だが歯を食いしばって耐え抜くと無双セイバーを右手で抜刀。
再びしおの腹部に激痛が走る。
どうせ剣筋や射線を予知されるなら攻撃箇所を絞ってダメージを蓄積させようという魂胆だ。

「まけない……ぜったいにまけない!」

「何が何でも君を止める!」

ロロも無双セイバーと火縄甜瓜DJ銃を合体させ、大剣にして構える。
今更だがカチドキアームズのスペックをもってしてもジオウⅡには届かない。
付け加えるならアーマーがゴツくなったせいで体重が増えてスピードがメロンアームズの時より落ちている。
だがまだ体力だけならロロが上であり、自分が同じ経緯で手に入れた力の程を分かっているしおは敵のパワーアップにどうしても焦る。
これがルルーシュ相手なら負の心意で一方的にゴリ押すことも難しくなかっただろうが、しおはロロをルルーシュ程は憎めない。
これがロロの愛だと知ってしまったから。
両者一歩も引かない大剣の斬りつけ合いが続く。
ジオウⅡは遮二無二振り下ろすばかりだが、ロロは何処を斬りつけられようと仮面にひびが入ろうと執拗に腹部を狙い続ける。

「僕が兄さんを守って、絶対に勝たせる!!」

<イヨ〜!カチドキスパーキング!>

「ルルーシュはぜったいにころす!
だれにもじゃまさせない!」

<ライダーフィニッシュタイム!!トゥワイズタイムブレーク!!>

光を帯びた双方の切っ先が双方を斬り『違和感』ぬいた。
同時に変身が解除される。
最後に立っていたのは……。

「ばいばいロロ君」

神戸しおだった。

571I'm a KAMEN-RIDAER ロロ・ランペルージ:オリジン ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:46:36 ID:H/WVApKo0
【エリアD-6/市街地/9月2日午後2時15分】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:致命傷、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)、しおを止めるという決意(極大)
服装:ルルーシュの用意した制服とマント
装備:戦極ドライバー(斬月)、カチドキロックシード(KLS-02)
令呪:残り三画
道具:ホットライン、零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ 一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:兄さんと共に記憶改竄能力者と、奴の狙う敵を倒す。
02:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
03:黒い魔女は兄さんと陽介に任せる。
04:枢木スザクと二代目ゼロはそのうち殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。
その時が来たら……。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。
それが…せめてもの。
07:色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
08:これは……もうだめだね
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。極めて実力が高い相手には『完全な停止』までがいたらず、動き・知覚を大幅に遅延するにとどまります。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。
※花村陽介やキャルとも情報交換をしました。
※致命傷を負いました。そのままならあと五分足らずで死にます。

【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、ルルーシュへの殺意(極大)トランクスへの生理的嫌悪感(極大)、疲労(極大)、腹部を中心としたダメージ(大)
服装:いつもの
装備:ジクウドライバー&ジオウⅡライドウォッチ@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、天使の杖@ドラゴンボール超、ホットライン
思考
基本:ルルーシュを殺す。
   ゲームに勝ってさとちゃんを生き返らせる
01:ルルーシュは絶対に許さない 絶対に殺す
02:そのためにはトランクスくんと一緒にいるのも我慢しなきゃ。
03:ばいばいロロくん。
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考

【アイテム紹介】
・メロンロックシード→カチドキロックシード(KLS-02)
…ロロの何が何でもルルーシュを守るという心意によって変化したロックシード。
メロンアームズからスピードを犠牲に装甲とパワーが跳ね上がり、新たな武装に登旗と火縄甜瓜DJ銃が装備され火力も上がる。
ロロは世界を蝕む悪意に屈しない覚悟を決めたわけでも、高貴なる者の責務を果たす為に戦う訳でもない。
それでもこの力が与えられたのは、どちらかと言うと斬月の変身者の縁者が『命捨てるほどの覚悟でもって大切な人の大切な場所を守る』という行為に理解を示したからではないだろうか。

572I'm a KAMEN-RIDAER 影色ダンサー・イン・ザ・ダーク ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:47:29 ID:H/WVApKo0
ノワルと言う女は一見最強に見える。
並ぶ者のほぼいない圧倒的な魔力保有量。
攻防回復どれをとっても一級品の魔法の数々。
恵まれた才能とそれを磨きに磨き上げて手に入れた魔力操作などの魔法的テクニック。
そしてなにより彼女の代名詞とも言える当たれば勝ちが決まると言っても過言ではない協力無比な固有魔法『闇檻』と、紋切り型のプロフィールを並べ立てるだけでもういい聞きたくないと言いたくなるほどに実力差を実感する。

だが……否、だからこその付け入る隙が一つだけある。
近接戦闘だ。
何を馬鹿な、と思うかもしれないがノワルとて今は魔女だが人の子には違いない。
ずっと使っていない機能や技能は退化していくし、向き不向きがある。
前者に関しては使っていないと言うより本来必要ないと言った方が正確で、後者は不向きなことを必要としないほどに自分の個性を伸ばした末なのだが、兎にも角にもノワルは近接戦闘がからっきしなのは事実だ。
だからこそ

「てりゃああああああーーーっ!!!」

「いい加減離れなさいってのよ!」

自分と同等かそれ以上の出力を有する近接が本職の戦士……しかも闇檻が効きにくい存在を相手にするなどノワルにとっては悪夢に等しい。
しかも先のザラサリキエルとの戦闘でどんなに甘く見積もっても総戦力の四割を損耗している。
それでも怪我した両手に持った武器を離さず追いかけっこを続けれているのだからその実力は本物だと実感する。

(本当に柄じゃないわ、私自ら攻めるなんて!)

心中で悪態をつきながら魔力弾をばら撒く。
トランクスは短距離瞬間移動を交えながらすり抜ける様に回避して肉薄。
血濡れの王剣を振り下ろす。

「ぐっ!」

万里ノ鎖を振るって距離を造ろうとするノワルだったが、狙ったのとはややずれた方向に飛んで行ったせいでトランクスの追撃を許してしまった。
咄嗟に防御魔法を展開するも衝撃までは吸収できず、吹き飛ばされる。

(一瞬だけど鎖がところどころ凍っているのが見えた!
ルルーシュやアスナちゃんとは考えにくい……あの時いたもう1人の男ね!)

女だったら絶対にミルクサーバーにしていたと断言できる程に整った顔立ちだったな、とか場違いなことを思い出しながら立ち上がり、トランクスの居る方を見上げるノワル。
トランクスを直接相手にしながら周囲に気を配り続けることは難しい。
否が応でも視界の中心、思考の中心がトランクスになる。

(本当に忌々しい!この私が男なんかに)

トランクス風に言えば、特大の気がとんでもないスピードで追って来るの感じながら迎撃しようと構えた時

<マリスラーニングアビリティ!>

あまりにちっぽけで見落としていた者がいた。
偏頭痛を感じて振り返ると、魔力とは何か違う物がノワルから抜け出て背後に立つ黒い仮面ライダーの手に持つデータキーに吸い込まれるところだった。
背後でトランクスが急ブレーキをかけた様に中空で止まったのが分かる。

「シャインレ……ッ!」

魔法を使おうとしたノワルの頭すれすれを太いビームの光が飛んで行く。
飛びのいて振り向くと、ザラサリキエルとの戦いの時からこちらをデバガメしていたランチャーストライカー装備の105ダガーがこちらを狙っていた。

『ラーニングと解析に時間がかかってしまったが、覇世川左虎は本当によくやってくれた』

ノワルから万里ノ鎖を奪うべく、あの破壊の嵐を潜り抜けてアークゼロの予測と指示通りの場所に指示通りの氷を鎖に付着させてくれた左虎は影のMVPと言えよう。

「ルルーシュ!」

主人を守る様にトマホークとシールドを装備したサザーランドや重斬刀を構えたジンハイマニューバが飛び出してくる。
だが今更この程度の敵、苦手な近接だろうとノワルには問題ない。

(青髪の男の強大すぎる魔力に紛れて戦力を集めていたのね)

的確に魔力弾を頭部にぶつけて破壊する。
一度トランクスと撃ち合ってるとあって、この程度の格下相手には苦手な近接だろうと負けるわけがない。
だがアークゼロからすればこの状況を……ノワルを地上に縛り自分たちの土俵で戦わせる状態にしたうえで変身までの時間を稼げればよかったらしい。

<アークワン!>

アークゼロはノワルの生来の悪意、他者に与えてきた恐怖や絶望、羂索、ルルーシュやトランクに対する殺意をラーニングしたキーのスタータースイッチをもう一度押す。
自動展開して変身待機状態に移行した。

『変身』

起動させたプログライズキーをドライバーに装填。すると、バックル部分が展開され、むき出しの基盤を思わせる形状だったドライバーが白いほぼ線対称の形になる。
そして更なる悪意のデータで拡張されたシステムと白色の装甲がアークゼロに装着される。

573I'm a KAMEN-RIDAER 影色ダンサー・イン・ザ・ダーク ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:48:26 ID:H/WVApKo0
<シンギュライズ!
破壊 破滅 絶望 滅亡せよ!>

<コンクルージョン・ワン>

それは本来ならば夢に向かって飛ぶ意志を折られた若き社長の死装束だったはずの姿、仮面ライダーアークワン。

(青い男が攻撃してこない……こいつらを巻き込むからね)

羽虫のあがきのお陰で良い小休憩になると判断したノワルは回復魔法の行使が許される程でないとは思ったが身体を休めるために会話を始めた。

「そう言えば聞きそびれていたわね。
こそこそカタツムリのように引きこもって悪戯の準備をしているかと思ってたのにどうしてこちらに喧嘩を売る気になったのかしら?」

『……何を言っている?』

本気で困惑したようにアークワンが返す。
両者が知る由もないが、この戦場にノワルとルルーシュが居るという事態はマイ=ラッセルハートの奸計で、ルルーシュはそれに罠と分かって乗っかっただけなのだ。
自分から喧嘩を売りに来たのとは少しだけ事情が違う。

「? まあいいわ。
白を切るならそれでも。『闇檻』」

ガチャンガチャンと無数の重たい金属が複雑に絡まり合うような音と共にアークワンの姿が黒い靄に覆われる。
そしてそれが晴れると

<バーニングレイン!>

炎の刃がノワルの眉間目掛けて放たれた。
杖で防ぎ払ったノワルの形の良い眉が仮面越しに不快感に跳ねる。

「……そうよね。
荒れだけ大口叩いたんだから傀儡は兎も角、流石に本人が無策ではないわよね」

自分の『闇檻』がこの場では『絶対』かもしれないが『無敵』ではない。
その事実を改めて感じながらノワルは武器と別の魔法を準備する。

『エネルギー効率が良いとは言えないがな』

身体前身にスパイトネガのエネルギーを絶えず流して、闇檻の魔力が触れた瞬間に解析。
スパイトネガのエネルギー波形を『闇檻』と反発する形に変えて弾いたのだ。
超予測と流体多結晶合金を自在に操る精密性を持つアークの仮面ライダーだからこそ出来た芸当だ。

「良いこと聞いたわ、磨り潰す」

無数の魔弾と生成されては射出される武器の応酬が始まる。
トランクス戦とは違う勝者が決まり切った我慢比べが始まった。

-----

頬を撫でる風が気持ち良い。
長らく閉じ込められ、嬲られ続けた身体が無視できない疲労を感じながらにも喜んでいる様に感じる。

「はっ!」

一閃。
ノワルとアークワンの攻防の隙間、眼孔を狙ってビームサーベルを繰り出す。
この後に及んでもノワルは自分を、アスナという玩具1号を手放す気はないらしく魔力の波動で雑に薙ぎ払うに止める。
それでも刀身に重さがない故にまだ扱いきれていないビームサーベルを取り落としてしまう。

「『闇お……ああもう!」

必殺技を使おうとしたノワルめがけて赤い光刃を生やした青いビームブーメランが投擲される。
首を捻って避けるノワルに対してこちらに自分が持っていたビームサーベルを投げ渡しつつ、背中の対艦刀を引き抜いたソードストライカー装備の105ダガーが撃破されるのを見ながら先程ルルーシュから伝えられた作戦を思い出す。

「簡単ではないが単純な話だ。
魔法を唱えさせなければ良い」

今のノワルは今までになく疲れている。
体力や魔力の消費ということ以外にも折角戻ってきた獲物を捕まえられないもどかしさ、男なんぞに翻弄されているという苛立ち、慣れない戦い方を強いられいつも通りの戦いが出来ないストレス。
全てがノワルを削っている。

「どんなに強い相手だろうと、本来なら不意打ちで拘束、どんなにてこずっても雑な遠距離攻撃で弱らせての拘束で勝ててしまうのがノワルだ。
だがアスナ、君という楔でその雑な遠距離攻撃を封じる」

「いくら彼奴がアスナに執心(おねつ)と言えどそこまで追い詰められてなお捕らえんとするか?」

「あの手の病気は死んでも治らん」

「それは……そうだな」

「それにトランクスとの戦闘は奴にとって決して楽な戦いでない以上、疲れるはずだ。
ならばトランクスを倒せていないうちに我々がご馳走片手に乱入すれば必ず食いつく。
『いつものペース』を取り戻すために」

「なぜならそれで勝てるから」

574I'm a KAMEN-RIDAER 影色ダンサー・イン・ザ・ダーク ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:49:00 ID:H/WVApKo0
「そういう訳だ」

「あの悪趣味は養分補給を兼ねるからこそだな。
それで、お前の策に乗った場合左虎たちに何をさせる気だ?」

という会話の果てに2人はルルーシュの策に乗った。
今の所はなんとか上手くいっているように見える。

(一度でいいから闇檻さえ使えればこんな奴ら!)

この乱戦で手加減できないノワル相手にアスナたちを巻き込まない為に下手に介入してこない。
今頃歯噛みしてこちらを注視し続けている事だろう。
これはいい。
しばらくトランクスの相手をせずに済むならそれに越した事はない。

だがまた飛んでくるかも分からない『時に手をかける攻撃』を気にしながら下手にルルーシュを殺す訳にもいかずチマチマ力を加減して無力化しなければいけない。

(女を盤上に出さざるを得ないならば最大限有効活用させてもらう。
このままアスナを楔にノワルを止める。
人参をぶら下げられた馬の如く同じ場所を回り続けるが良い)

ルルーシュは状況を確認しながら遠距離に待機させた砲撃装備持ちのNPCモンスターたちにザイアスペックで指示を出す。

(Q1がパターンAで攻めた場合Δ3とΔ4で十字砲火。
パターンB、Dの場合はγ1が斬り込め。
パターンCとそれ以外の場合は待機。
アークワンに任せろ)

『『『イエス!ユア・マジェスティ!』』』

因みにQ1とはアスナのことだ。
一度の攻防が終わればまた次の攻防が始まる。
殆どラグ無しで手番が変わるチェスのようなヒリついた感覚でルルーシュは次の指示を

「ルルーシュ」

送ろうとして呼び止められた。

「左虎か?
先程はよくぞノワルの鎖を封じてくれた。
後は我々に……」

「使ったな。瞳の力を」

物理的にも心情的にも冷たく容赦のない気配がルルーシュに突き刺さる。
だがルルーシュは一切顔を向けず、ザイアスペックのコンタクトレンズ型ディスプレイに送られてくるデータを分析し、頭を並列に使って指示を出し続ける。

「……濡れ着と言いたいところだが、実は私のギアスはオンオフ不能で、普段は特殊なカラーコンタクトレンズで抑えているんだ。
だが今はザイアスペック用の透明なやつを使っているから『どうか私の策に協力して欲しい』と頼んだ拍子に仕掛けてしまっていても不思議はない」

「最後にそう頼む以外で左虎とアスナに徹底して命令口調で喋りかけなかったくせによく言う。
懇切丁寧に策を語ったのもあの状況下でノワルが聞き耳を立てる余裕がない以上に理詰めで左虎たちを少しでも納得されて制限(デバフ)がかかった瞳の力の発動する確率(パーセンテージ)を少しでも上げる為だろう?」

「だったらどうする?ここで私を殺すか?」

返事をする代わりに左虎は仕掛けた。
ルルーシュの腕の令呪が輝くがもう遅い。
マイの分析が正しければルルーシュのギアスはそう何度も使える代物ではない。
ならば、、ならば何故今使った?

「なんだと?」

ルルーシュの姿が、景色に溶ける様に消えていた。
取り残された左虎はどうしようもなく嫌な流れを感じてノワルの方に向かった。

575I'm a KAMEN-RIDAER 影色ダンサー・イン・ザ・ダーク ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:49:20 ID:H/WVApKo0
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「ようやく玩具の兵隊も品切れみたいね!」

幾度仕掛けて、何度躱され、今手に持つ剣が何本目かも分からない。
ランナーズハイに等しい状態のアスナは終わったら倒れることを確信しながらも絶えず動き続ける。
でなければ正に今拘束されてしまった彼を助ける事はできない。

「ジェノサイド!」

拘束された四肢はピクリとも動かせないようでアークワンの装甲に魔法の光が炸裂した。
ギリギリでエネルギーをかき集めて着弾面に集約させた様だが、ガクリと首を下げて動かなくなる。

「やめろぉおおおーーーっ!」

「辞める訳がないでしょうっ!」

やっと邪魔者を攻撃できてハイになったのか、ノワルは躊躇わずに令呪を解放。
心意システムの恩恵も上乗せされた最大以上の出力でトランクスを幾重にも拘束して身動ぎ一つ出来なくしてから超火力なんて言葉では生ぬるい魔力砲を炸裂させて吹き飛ばす。
脱出してすぐさま戻ろうと思ったら令呪を使わないわけにはいくまい。
結局互いの絶対値が同じならリミッターを先に外した方の勝ちだ。
続けてアスナと烏天狗も拘束する。
これは事前に奥歯に仕込んでいた宝珠で相殺するが、アスナの表情を見てそう何度も使える物ではないと判断したらしく、もう一度闇檻を使って直接魔力サーバーに変換する。
一体でも近くにNPCモンスターが残っていれば防げたかもしれないが、これでは駄目だ。

(青髪へのトドメはお仕置きも兼ねてアスナちゃんから搾り取った魔力で刺せば良い!
あの黒い神も次戦うまでに魔力サーバーを揃えておけば問題ない!
まずは今のうちにルルーシュとコソコソ隠れてる長髪の男を……)

『TRANS-AM』

アークワンの肉体が暗い紫色に発光を始めていた。
解禁した令呪のパワーを高濃度圧縮して全面解放したからだ。
三倍になった出力で強引に拘束を引きちぎり急接近すると左手でノワルの口周りを掴み、右の拳で頭を殴りつけた。
いくらノワルが人間を超えた力を持つ災害級の魔女とは言え、人体構造はただの人間と大差ない。
令呪使用中だろうと脳震盪を起こして前後不覚になったまま右拳の強打を受け続ける。
アークワンも長くない有利を自覚しており、殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴り続ける。
仮面が割れ、鎧が砕け、真っ二つに折れた起動鍵が乾いた音を立てて地面を跳ねる。


『ふんっっっ!!!』

肉体の発光が切れ、最後の一発と右フックが振り抜かれる。
ノワルは受け身も取れず(今まで受け身が必要になる場面がなかったせいで習得すらしていないのだろう)地面を転がる。

『やはりタウ型GNドライヴ……それもNPC用の模造品を参考にしGN粒子を令呪のエネルギーで代替した擬似TRANS-AMではこれが限界か』

そう呟いたアークワンがピロリーで拘束され、両腕の動きを封じられたまま無数の光弾を叩きこまれる。

「よくも……よくも私の顔をっ!」

歯は抜け飛び、皮もめくれ、血で濡れた顔を回復魔法で癒しながらオーバーダメージで変身解除寸前のアークワンに接近して、胸部を思い切り踏みつけるノワル。
攻撃の勢いで破壊されたピロリーの代わりに四肢を拘束するリングが地面から出現。
動けなくする程度ではすませておかない。
仮面を剥いで洗脳魔法を使おうとした瞬間にこの人差し指と中指で眼をえぐり潰して生まれる性別を間違えた細く美しい顔面を踏み潰してやる。
魔法使いがわざわざ魔法を使うまでもなかった存在として葬ってくれる。

「褒めてあげるわ。
私をここまで苛立たせたのはここ数十年であなたがはじめてよ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!」

男の名前を戒めとして覚え続ければならない屈辱に肉体が熱くなるのを感じながら踏みつけたアークワンの仮面を右腕で引っ掴む。
そして仮面を剥がそうと引っ張るべく上体を起こした。

「『黙れ』」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
急にノワルの目の前に現れたルルーシュが現れた。

「────?」

何かしゃべろうとしたのだろうが、ノワルは喋れなかった。
喋れるはずもない。
一人につき一回。
しかしその制約さえ守れば集合無意識相手にだろうと絶対不変のものを刻み込める最強の力だ。
普段のノワルなら抗えたかもしれないが、今の疲弊しきったノワルには無理だ。
彼女が彼女の魂を持つ限り二度とその喉は声を出せない。
当然魔法の呪文を唱えることも出来ない。

「チェックメイトだ。ノワル」

ノワルの腹部をルルーシュの短刀が貫く。
それがアスナが気絶する寸前に見た最後の光景だった。

576 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:50:24 ID:H/WVApKo0
ロロに最初に支給されたアサシンのクラスカードには他のクラスカードにはない特性があった。
基本的にカードごとに使える英霊の力が決まっていて、使用者ごとに若干衣装の変わる程度の変化しかない通常のクラスカードと違い、使う人間ごとに異なる英霊の能力を引き出せるのだ。
これは所謂バグなどではなく、このカードが『アサシン』という枠組(クラス)を触媒に特定個人ではなく暗殺者の語源とも言うべきアサシン教団の歴代教主に繋がっているから起こる現象で(具体例は後で知ったのだが)ロロや聖杯の少女が使った場合は百貌の二つ名を冠するハサンの力を引き出し、エインズワースの傀儡と化したある魔術家の男が使えば呪腕と呼ばれた触手と心臓破壊を武器とするハサンが、朔月の神稚児が使った場合は静謐と呼ばれた肉体から分泌する毒を武器とするハサンの能力を宿したという。

だから自分が使う場合もロロの使ったハサンとは別のハサンの力を使うことになるとは分かっていた。
正直かなり魔法寄りのアイテムなのでノワルが消耗しきってから使いたかったが、トランクスがあれだけ規格外ならば流石のノワルも相手にしている怪物以外に気を配る余裕もないだろうという判断で最初から使うことにした。

「夢幻召喚」

自分の身体が光に包まれ、その姿が英霊の力を発揮するための装束に……変わっていないように見えた。

「は?」

我ながら素っ頓狂な声とともに顔を上げると、そこには『影』しかなかった。
全面白の空間、床に落ちた俺の影以外に黒い色はない。
だが『影』の中に白がある。
頭骨を模した仮面が浮いている。

『我が力を引き当てた男よ、お前に人生を捧げるだけの信念があるか?』

仮面が語り掛ける。
俺の声ではない。
まして本来この周囲に居るはずの誰の声でもない。
俺は酷く混乱した。
何故なら消去法でこの性別ぐらいしか分からない声の持ち主は俺が引き出した英霊の声ということになるからだ。

『その信念を、人の命を奪ってでも貫く覚悟があるか?』

だが説明書の通りなら本来クラスカードに英霊の自我など宿る筈がない。
英霊の力だけを引き出す為の処置がされた魔術礼装がこのクラスカードのはずだからだ。
特に傲慢にも19人の英霊の力を引き出すこのカードならなおのこと英霊の意志が介在する余地などないようにしていなければおかしい。
ならなぜこんなことが起こる?
ロロと違って限定展開ではなく夢幻召喚しているから?
それとも茅場が放送で言っていた『ビターな刺激』とやらのせいか?
色々と考えり必要のある事態にも思えるが、こうなっている間に外がどうなっているか分からない以上、時間はかけられなかった。
だからこう答えた。

「知ってるさ。
撃って良いのは撃たれる覚悟のある奴だけだと。
それに付け加えるなら、これは信念の実現などではない!
権利だ!
思うままに壊し、思うままに造り変える……このルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのみが有する世界を救う権利の行使である!」

影の英霊は一瞬だけ黙ったがすぐに返答を寄越した。

『そうか。
ならばもう分かっているとは思うが、信念を曲げれば必ずを呪いとなって返ってくる』

「ああ。良く知っているよ。
俺と、ジュリアス・キングスレイという愚者が良く知っている」

視界が元に戻り、俺がライダーとは違うふうに変身する直前、この呟きが彼に、幽弋のハサンに届いたかは分からなかった。

577 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:50:41 ID:H/WVApKo0
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脳味噌が鈍く揺れる感覚が抜けきらないうちに腹部に鈍い痛みが走り、直後に嵐が吹き抜ける。
今となってはあり得たかもしれない未来で真正面から打ち破ったはずの、それでもノワルの結界を斬り裂くほどに強烈な風の刃だ。
声を奪われ魔法を失った魔女の肉体を斬り裂くなど訳もない。
腹部に空いた風穴を無意識に抑えようと手を伸ばすが、ジクジクと足元のアークワンのアーマーが変形した流体金属が両手の指を絡みとり、同時に腹部にも入り込んでいく。

「最後の一手だけはお前に気付かれずに接近しなければならなかった。
だからお前が完璧に油断する俺へのトドメを刺す瞬間にお前を完全に止める為に令呪で全力全開を解禁したロロの『絶対停止』でお前を止めた上でこうしたかったのだが……結果上手くいって何よりだよ」

尋常ではない苦痛と共にノワルの体内から内臓が掻き出され、機械のそれに置き換えられていく。
零れ落ちた臓物を放置するような愚をルルーシュは犯さない。
一つ残らず足元に広がる流体金属の池が取り込んでいく。
ノワルの脈拍も呼吸も痛覚も何もかもがルルーシュの支配下に変えているのだ。

「ここまで来てようやく私の筋書きに修正できたのだ。
すべて解析しきるまでに死んでもらっては困る。
特注の人造臓器で死ぬ一瞬前まで確実に生かしてやるからな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒い暗殺装束の姿が弾けルルーシュの服が白い皇帝服に戻る。
そして令呪の効力が切れて剥がれ落ちたアサシンのクラスカードが砕け散った。
欠片すらも錆とも砂ともわからぬ何かになって崩れ去る。

「最初に変身した瞬間に分かっていたことだ。
強力過ぎて私かカードその物のどちらかが能力をフルで一回使えば自壊してしまう上に貴重な令呪を一画消費してしまった。
だがお前相手には、それだけの価値がある」

攻撃に移った状態ですら通常のハサンの気配遮断と同等の隠密性を発揮し、全力で潜もうと思えば世界そのものと同化すら可能な初代の影とまで謳われた幽弋のハサンの能力を使うのだから当然と言えば当然だ。

「あとでロロには褒美と同時にこのカードの詫びも兼ねて格別の物をくれてやらねばな。
そう思うだろう……」

そんな間にノワルを生かしながら殺す為の拷問器具に変形しきった為、鎧でなくなったアークワンの中から、極力ノワルの方を見ないようにして

「花村陽介」

・・・・・・・・・・・・
花村陽介が起き上がった。

「どんな神算鬼謀を使うかと思ったらこんな漁夫の利作戦かよ……」

愚痴る陽介にルルーシュは少し苦笑しながら

「陽介、私は君と言う漢を見誤っていたよ。
最初は逃げ蟲共の退路を塞いでもらうだけのつもりだったが、君には末代まで感謝しても足りない働きをしてもらった」

陽介の手を取り立ち上がらせる。

「本当に、本当にありがとう陽介。
『まともに動けるようになるまで休め』」

ルルーシュの左目の不死鳥が陽介の瞳に吸い込まれる。
既に限界を超えていた陽介はゆっくりと意識を手放した。
そんな陽介の身体をルルーシュが支える。

「ルルーシュ貴様……何をする気だ?」

そんな二人の前にボロボロの忍者装束姿で肩で息をしている状態ながらまだ自分の両脚だけで立って歩けている覇世川左虎がやってきた。
使い残しの宝珠で拘束を解かせた裸のアスナを背後に守りながらこちらを睨んでいる。

「流石だな、覇世川左虎。
生身であの戦場を潜り抜けてその程度で済んでいるとは」

「質問に答えろ!
何を、何をした!?何をする気だ!?」

一切余裕のない左虎に酷薄な笑みを浮かべるルルーシュが滔々と語り出す。
その様は事件を解決する探偵と言うより完全犯罪を自慢する犯罪卿だ。

「……一つ目の質問はもう陽介が漁夫の利の一言で済ませてくれただろう?
だが詳しく説明すると……いや、何度蓋を開けなおしても本当にただの漁夫の利で子供騙しだな。
二度の放送で私こそアークドライバーの仮面ライダーであるという先入観を逆手に取った身代わり……当初の予定ではロロがアークの仮面ライダーに変身し、私がロロの支給品であるアサシンのクラスカードを夢限召喚。
消耗しきったノワルに最高のタイミングで最強の魔法武器を叩きこむ手筈だった」

言葉にすればこれだけだが、ルルーシュと入れ替わる者の信頼がなければ無理だ。

578 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:51:04 ID:H/WVApKo0
だからこそ精神的に不安要素のあるロロであっても、自分を絶対裏切らないという確信があったから最高の切り札を託した。
ロロは絶対にルルーシュの策を信じそれを完遂するために全力を尽くすのが当然と思う故にクラスカードを託した。
そして下手をすればノワル以上にルルーシュの脅威となる女を一人引き受けることすら厭わなかった。

「これは完全にいい意味で予想外だったが、ロロの献身は花村陽介という漢の心を動かしてくれた」

気を失った陽介を背後に来ていたサザーランドに預ける。
本来陽介と共に勝手に戦線を離脱する者たちを狩るために待機させていた連中の内の最後の生き残りだ。

「情けない告白をすればノワルは確かにほぼ無敵という最悪の前提事情の上に数えるのも馬鹿らしいイレギュラーの数々が乗っけられていく度に心中で叫んでいたさ。
記憶操作の女や神戸しおという大事からお前らと言う小事にいたるまでもうたくさんだと叫びたかったよ。
だが遂に勝利し、最も欲しかったものが手元にある」

そう言ってルルーシュは捕らえたノワルの金糸のように美しい髪を弄びながら続ける。

「こうしてしまえば天下に名だたる闇檻もかわいらしいものだな、ノワル。
お前の敗因はさっきまでの私と同じだよ。
人間、歩けばたまに転ぶという世の絶対の真理を忘れていたのだ」

そのままノワルのあごに指を這わせて頭を持ち上げる。
普段のノワルなら憤懣やるかたないと睨むどころか一瞬で殺せるはずのルルーシュ相手に何もできない。
尋常ではない屈辱にノワルの頭は血管が千切れるほどに頭がゆだっているはずなのだが、そうはなっていない。
置き換えられた内臓と、生成される薬剤や与えられる電気刺激が決してノワルが死ぬことを許さない。
例え九割死体と言えるような状態になろうとノワルは生かされ続ける。
何故なら……

「このまま解析し、バラバラに暴き砕きながらノワルを『魔女のロストモデル』に変換する。
運営がソードスキルと言う形で異世界の異能を統一規格にできるのだ。
私だけが出来ない道理はない」

実際に人間のロストモデルで変身するアークの仮面ライダーは存在する。
ならば特定個人をロストモデルに変換することも不可能ではないはずだ。

「ロストモデル?」

「このアークドライバーゼロのエネルギー源の一つで、一言で言えば絶滅生物のデータだ」

「まさかお前は……」

「私自身が『ノワルの力を宿した仮面ライダーとなり恐怖の象徴の椅子を奪還する』!
これこそ今回の作戦!」

「他人の褌で相撲を取るとは散々誇示した大物面も見せかけか!」

左虎の糾弾をルルーシュは涼しい顔で流した。

「最初に宣言したはずだ。
私こそ支配者にして裁定者であると。
ならばこの『闇檻』も巡り巡って私の元に戻ってきたにすぎん」

<マリスラーニングアビリティ!>

ルルーシュが手にしたアークワンプログライズキーのスタータースイッチを押すとノワルが流体金属の池に沈んでいく。
否。取り込まれていく。
抵抗など出来るはずもない。
既に膝寄りしたがない。
利き腕は肩先からない。
令呪の宿る腕は五指が根元からない。
常に肉体を襲う激痛のお陰で魔力の制御すらままならず、消耗しきった現状では練る事もままならない。
そして自分が磨きに磨いた魔法は初歩も初歩の初球の物すら使えない。
自分が物理的にやっていたように口をふさがれ末期の言葉すら吐き出せない。

(いやよいやいやいやいやいやいや……)

「そろそろ走馬灯でも流れ始めてる頃だな、ノワル。
最期に思い浮かぶ者は誰だ?
お前のことだから男の顔ってことはないだろう
ママか?おばあちゃんか?
逃したデカい魚って場合はアスナあたりか?
まあ、誰だったとしてもよく思い出せないだろうよ」

ノワルは恐怖に染まった瞳でルルーシュを見上げた。
よく見ると女性的なハンサムや男前と言うより美形と言った感じの顔立ちだと今気づいた。
そして何より、眼がおかしい。
両目に宿った不死鳥の紋様は同じだったはずだ。
流石に警戒した洗脳魔法の源だと思ったからこれは覚えていた間違いない。
だが今は違う。
左目は血のような赤の上に紫色の不死鳥の紋様が浮かび、
右目は闇檻と同じ黒の上に赤い不死鳥の紋様が浮かんでいる。
取り返しのつかないほど奪われたのだと気付いた。

(だめ、だめよ。かえして。わたしのやみおり……)

「他者を縛り捕まえ閉じ込め……見たい場所しか見えないようにそれ以外の全てを拒絶したお前は『人』を見てるはずなかったのだからな」

(とらないで)

思えば不思議な話だ。
自分の実力しか信じていないような女の能力が神所や天使をモチーフにした物ばかり。

579 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:51:18 ID:H/WVApKo0
これでノワルが神の格好でもしているなら納得も出来るが、彼女自身の格好はシスターや天使の用ではないか。
本院すら覚えているか定かではない遠い昔に、ただの魔法使いだったはずのノワルがどうしてこうなったのか最早知る事は出来ない。
今際に頭を駆け巡るのは自分はもっと好き勝手我儘に生きるはずだったのに、自分はもっと可愛い女の子を可愛がって嬲って過ごすはずだったのに、自分はもっと思うがままに弱者を蹂躙するはずだったのに、といった具合の何故自分が死ななきゃいけないのか分からないという見当違いで身勝手な想いばかりだ。
そんな沈みゆくノワルの表情が左虎には意地悪をされた子供のように見えて仕方なかった。



【ノワル@魔法少女ルナの災難 死亡】



「ただし人間としてはだがな」

ノワルが完全に沈むと、ルルーシュの腕にノワルの令呪が浮かび上がる。
黒地に白だったプログライズキーも形はそのままに黒だった部分は白に、白かった部分はブラッドレッドに染まって『変身』を完了した。
それをルルーシュは満足げに見つめる。

「お前は私がこの力を手放すまでこのプログライズキーの中で遍く責め苦に苦しみながら私に使われ続ける。
他人を散々食い物にしてきたお前らしい最後だと思わないか?」

「今直ぐにその記憶媒体(データキー)を破棄(すて)ろ。
でなければ左虎はお前を……」

「『闇檻』」
      ・・
左虎の言葉を呪文で遮る。
呪血の忍者兄弟の片割れをもってしても抗いきれない程強固な拘束が彼を後ろ手に縛りあげた。

「この魔法(わざ)はノワルの……」

「変身しなければ使えないなんて半端な状態で完成させていると思ったか?
流石のお前と言えどもう頭を回す余裕はないらしい」

ルルーシュは陽介の腰に着いたままのアークドライバーゼロに変化したキーを向ける。
アークの意志がドライバーからキーに移った。
既に一度陽介に合わせたアークワンに合わせた上書きをしてしまった以上、まだプレーンな状態のベルトの方が望ましい。

(そう言えば、さとうから献上されたベルトがあったな)

ルルーシュはリュックから飛電ゼロワンドライバーを取り出して装着。

<ダークケージズアビリティ!>

再びプログライズキーをスタータースイッチを押すルルーシュ。
今度はキーが変形し、変身待機状態に移行する。

「はははははは!良い悪意だ!
他者を思うままに蹂躙し、尊厳を弄び、散々食い物にしてきたお前が、魔法という翼をもぎ取られ、残った血肉の残滓も私の道具となる……実に気分がいい!」

ルルーシュはそのままドライバーの認証装置にキーをかざす。
認証(オーソライズ)実行と同時にドライバーが上書きされ、ルルーシュ専用機へと変わったことを示すように深紅に染まる。

「今この瞬間、世界に新たな絶対の真理が生まれる」

「真理だと?」

「人間は泣きながら生まれてくる。
これはどうしようもないことだ。
だは最期に泣けるか笑えるかは……このルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの裁定である!」

スロットにプログライズキーを装填。
展開された中央の円形の部分から流体金属とスパイトネガがあふれ出てルルーシュを虜にするように檻状の変身領域を形成。
それがルルーシュを押しつぶすように集約。

「『変身!』」
纏う色は赤。
野望の、人間の内側の、そしてなにより責め苦の赤。
単なる者よ、絶望し首を垂れよ。
貴様なお前に立つ者こそ、生まれついての悪逆皇帝。
即ち……

「『力なき者よ、我を求めよ!力ある者よ、我を恐れよ!
我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝!
アークゼロもゼロワンも超えた仮面ライダーアークゼロワンである!』」

580 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:51:40 ID:H/WVApKo0
ルルーシュ……ノワルの力すら取り込んだ仮面ライダーアークゼロワンが高らかに宣言する。
同時に装填されたプログライズキーをもう一度押し込んだ。
同時にノワルから奪った令呪を解放。
アークの力も上乗せした『闇檻』を全開で使う。

「『令呪解放+眷属召喚+怪人生成+データ付与+監獄領域』」

<アークライジングインパクト!>

「『“闇檻(ダークケージ) 監獄聖域(ティル・ナ・ノーグ)”』!!!」

一瞬だけ左虎は完全に視界を遮られた。
一切の光を通さない結界が一瞬だけ展開されたからだと分かった。
視線をアークゼロワンに向けると、彼の右掌の上に先ほど左虎も使ったノワルの宝珠に似た物が浮いていた。
随分と見晴らしの良くなってしまった周囲の光景から当たりのがれきやNPCモンスターの残骸を集めた物だろう。
それはゆっくりと宙に浮くと中空の洞へと変わった。
そこから血の池のような赤いスパイトネガがあふれ出し、その中から無数の腕が生え、肉体が生成されながら這い出ずる。
その姿はどれも既存のNPCモンスターに似ていた。
グロースター・ソードマン、暁、ジンアサルトにスローターダガー、オーバーフラッグやイナクトカスタム、ティエレンタオツーやバトルマギアにロイミュードといった機械型が多いが、それだけにとどまらない。
ノワルの魔法を得たことにより使い魔の召喚も可能になった今のルルーシュは拘束具を纏った天使やS装備を纏った刀使、キヴォトスの生徒や呪詛師なども生み出せるようになった。

「なんということだ……」

メタリックブラックを基本にオレンジの差し色が入ったカラーリングで統一されたNPCモンスターたちに思わず左虎が息をのむ。
NPCモンスターの域を出ないならばいくらでも対処できるし、自分一人なら今すぐにでも逃げ出せるが、背後で気絶したアスナを放っておける左虎ではない。

「『闇檻機装兵団(ダークケージレギオンズ)、とでも呼ぼうか。
実に良い色だ。
オレンジは私に忠義する者の色。
黒によく映える。さて、覇世川左虎』」

「ッ!」

ルルーシュは左虎に悪意の波動を放つ。
咄嗟に髪と冷気で防ごうとするが物理的なそれではないオーラは左虎を素通りし、彼のリュックに及び

「レ、レスラーGぃいいい!」

「ルパァ―――!」

二枚のケミーカードを奪い取ってルルーシュの元に戻った。
変身した時から左虎の支給品の中にアークの悪意に過剰反応する存在があるのには気付いたし、少し分析すればキャルの持っていたカードと同質のアイテムと気付けた。

「『左虎、ノワルを仕留めるのに貢献したお前の働きに免じて不遜にも勇者に及ばぬ身で私を殺そうとした罪はこのカード没収のみとしてやろう。
お前のようなドブ攫いが持っていても仕方ない物でもあるしな。
格別の恩情に感謝すると良い。
それから……』」

ルルーシュは左虎の足元にキングガブリカリバーとノワルから奪った元々ローラ姫の支給品である美濃関学院の制服、それからノワルのホットラインを入れたデイパックを投げる。

「『それの中身は全てアスナへの褒美だ。
私に代わって貴様が渡しておけ』」

そう言ってルルーシュは配下の何体かに陽介を抱えさせると踵を返す。
今ここに、対ノワル戦は完全に終結した。

「ジーク・ハイル・マイン・カイザー!」

闇檻機装兵団の中の誰かが拳を振り上げ叫んだ。
続けて他のNPCモンスターたちも拳や武器を振り上げ口々に叫ぶ。

「「「オール・ハイル・ルルーシュ!」」」

「「「オール・ハイル・ルルーシュ!」」」

「「「オール・ハイル・ルルーシュ!」」」

「「「オール・ハイル・ルルーシュ!」」」

「「「オール・ハイル・ルルーシュ!」」」

「「「オール・ハイル・ルルーシュ!」」」

地獄の行進を見送った左虎は激戦の疲労に膝をつく。

「うっ……あれ、私、、」

「起きたかアスナ。
すまぬが着替えたら左虎のリュックから魔力結晶を取り出してくれないか?
両腕がこの通りだ」

「……嘘ですよね左虎さん。
あれだけ戦ってまさか……」

「落ち着け。
ノワルが男を生かしておくはずが無かろう」

「あ、そっか……じゃあ誰が?」

「ルルーシュだ。
この戦い、奴の一人勝ちで終わってしまった」

未だ訳が分からないと言いたげなアスナを他所に、左虎は考える。

581 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:52:45 ID:H/WVApKo0
(左虎のような忍者(ドブさらい)が持っていても仕方ないらしいあの絵札(カード)……マイ=ラッセルハートも中の錬金生命体という全く未知の上に会話も出来ない化生(もののけ)に下手に手を加えるとどうなるか分からんと触れなかったが、ルルーシュの言う勇者とやらにとっては意味があるというのなら共に支給されたあの妙な機械(メカ)も……)

そしてドライバーの無い中、全く意味のない物と死蔵していたガッチャーイグナイターの存在に思い至った。



【エリアC-6/市街地だった更地/9月2日午後2時15分】


【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)マイ=ラッセルハートへの信頼(?)、ルルーシュへの警戒(極大)、ルルーシュの言う勇者への興味(?)、腕部拘束
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン 魔力の結晶@オリジナル×数個、ガッチャーイグナイター@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:運営をブッ殺し殺し合いを終わらせる
01:マイ=ラッセルハート。
  思うところはあるが次会う時はブッ殺すことになるだろうな。
02:水神小夜もシェフィも記憶操作の影響にあったか。成程
03:空蝉丸……ドゴルドと因縁がある参加者か。
04:よもや病院の地下にこれほど悍ましい物が眠っていたとは。
05:冥黒の五道化……忍者として必ずブッ切除(つぶ)さねばなるまい。
06:ルルーシュ……必ずブッ殺さねば。
  だがなんだろうな。違和感が……
07:これはルルーシュの言う勇者に渡すべきか
参戦時期:死亡後
備考
※記憶は復活しています マイ=ラッセルハートに対する印象は不明ですが、特に嫌悪感はないようです。
※ルルーシュのギアスの影響を受けました。
 異能力破りの異能力を喰らわない限りこれ以上ルルーシュのギアスの影響をうけません。

【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)】
状態:疲労(特大)、困惑(大)
服装:全裸
装備:烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師
令呪:残り三画
道具:キングガブリカリバー@王様戦隊キングオージャ―
   ノワルのホットライン
   美濃関学院の制服@刀使ノ巫女
思考
基本:未定
01:先生(小兵衛)の教えを肝に銘じる
02:ルルーシュが勝ったってどうゆうこと?
03:生きてミトに再会する……?
04:茅場って……あの茅場よね?
05:どういうこと?これはSAOとはどう関係しているの?
06:キリト……同じSAOのプレーヤー?
参戦時期:ミトにパーティを解消され、ジャイアントアンスロソーに殺される寸前
備考
※キリトに助けられる前ですのでキリトとの面識はありません。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
※小兵衛との会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※名簿の並びからキリト〜ユージオまでをSAOのプレーヤーではないかと推測しています
※胸の傷はノワルにより治療されました
※ルルーシュのギアスの影響を受けました。
 異能力破りの異能力を喰らわない限りこれ以上ルルーシュのギアスの影響をうけません。

【烏天狗(意思持ち支給品)@鵺の陰陽師】
状態:令力消費(中)、気絶、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:烏天狗の服装
装備:なし
道具:なし
思考
基本:親しい者に危機が及ばない限り契約者の意向に従う
00:小兵衛の最後の指示を遂行するため、他の参加者を探す。
01:アスナ殿!よくぞ御無事で
02:アスナ殿・左虎殿らと共にノワルを倒す。
03:マイ殿と左虎殿はなぜ袂を分かってしまったのでしょうか
04:……
備考
※秋山小兵衛より、以下の指示を受けています。
 殺し合いを打倒しようとしている参加者を探すこと。
 協力してくれる参加者を新たな主をすること。
 見つけた参加者に「アスナが闇檻の魔女に囚われた」ことを伝えること。

582 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:53:12 ID:H/WVApKo0
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:アークゼロワンに変身、歓喜(極大)
   闇檻機装軍団を従える
服装:皇帝服
装備:アークゼロワンプログライズキー
   赤い飛電ゼロワンドライバー
令呪:残り二+一画
道具:チェスセット@現実
   ランダムアイテム×0〜1(清隆)
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
   賢者の石@鋼の錬金術師
   万里ノ鎖@呪術廻戦
   光魔の杖@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
   ランダムアイテム×0〜1(ローラ姫のもの)
   青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG
   レジスター(ローラ姫)
   ランダムアイテム×0〜2(アスナのもの)
   アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ
   ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)
   ケミーカード(レスラーG、アントルーパー)@
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークとノワルの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……よくぞ神戸しおを止めてくれた。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:地下の『アレ』については最悪留守中に『特記戦力』が攻めてきた場合ぶつける。
07:ついに特記戦力を倒した!
  あの忌まわしき父と同じ力を持つ眼鏡の女も必ず殺す。
08:黒き神とは今度こそもっと準備を整えてから戦いたいものだ。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ。
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
11:さて、結構な距離吹っ飛ばされたトランクスが戻ってくる前にロロを回収しなければ
12:花村陽介。お前の漢気、魅せてもらったぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとう、花村陽介、覇世川左虎、アスナにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトは倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。
※ノワルの力を奪いました。
 制限はノワルと同じ物がかけられていますが、アークの力を併用することである程度その穴を突けます。
※ノワルの令呪を二画奪いましたが、一画使いました。
 もう一画使うと闇檻は焼失してしまいます。

583 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:53:37 ID:H/WVApKo0
【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(大)、絶対遵守のギアス(極大)、気絶
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1、熟練スパナ@ペルソナ4
   オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
思考
基本:殺し合いはしない
00:『まともに動けるようになるまで休む』
01:ここにはヤベーのしかいないのかよ
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
  けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロもルルーシュもかっとんでんな、ほんと。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ルルーシュに会いに行く前にイザークたちとは合流したかったなぁ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったぜ
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
   テレビの中じゃねえのに。
09:……ロロ、なんとかやり切ったぜ
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。
※ルルーシュのギアスの影響を受けました。
 異能力破りの異能力を喰らわない限りこれ以上ルルーシュのギアスの影響をうけません。

【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(大)拘束されて吹っ飛ばされている、
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order、通信機@ドラゴンボール超
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、レジスター(ロロ@ナイトメア・オブ・ナナリー)
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:ごめんしおちゃん。
  さとちゃんと会わせてあげられなくて。
02:あの白髪の男(アルジュナ・オルタ)は必ず倒す。
  その為には同志を集めないと……。
03:赤い服の男(宇蟲王ギラ)やキヴォトスの関係者にも要警戒。
04:しおちゃんを怒らせるような事を俺はしてしまったのか…?
05:あれがルルーシュ……
06:ノワルは必ず倒す。
  その為にも速くもどらないと!
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。




【NPCモンスター解説】
・闇檻機装兵団(ダークケージレギオンズ)
…ルルーシュがノワルから奪った力とアークの能力を使って生成したNPCモンスターの軍隊。
メタリックブラックを基本にオレンジの差し色が入ったカラーリングで統一されており、以下のNPCモンスターたちと同じ姿をしている。
〇グロースター・ソードマン
〇暁
〇ジンアサルト
〇スローターダガー
〇オーバーフラッグ
〇イナクトカスタム
〇ティエレンタオツー
〇バトルマギア
〇ロイミュード
〇ノワルの天使
〇S装備を纏った刀使
〇キヴォトスの生徒
〇呪詛師

584 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/19(土) 23:54:25 ID:H/WVApKo0
投下終了です。
最後のエピソードのタイトルは
『I'm a KAMEN-RIDER ルルーシュ:ヴィ・ブリタニア:オリジナルライトニング』です

585名無しさん:2025/07/20(日) 00:17:53 ID:CaT07RJY0
皆様投下お疲れ様です

糸見沙耶香、タギツヒメ、キャル、グラファイト、ジンガ、小宮果穂、仮面ライダーゼイン、桜井侑斗(シビト)、ELS一護、凶星病理のコルファウスメットを予約し延長もしておきます

586 ◆ytUSxp038U:2025/07/20(日) 00:18:27 ID:CaT07RJY0
失礼、トリ忘れてました

587 ◆kLJfcedqlU:2025/07/20(日) 00:23:35 ID:MCHCWbLE0
皆様投下お疲れ様です
マイ=ラッセルハート、死告邪眼のザラサリキエル、魔獣装甲のエケラレンキス
予約と同時に延長もさせていただきます。

588 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/20(日) 09:14:50 ID:abUBmqek0
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ロロ・ランペルージ、花村陽介、トランクス、神戸しおで予約します。

589通りすがりの者:2025/07/21(月) 00:22:35 ID:1IvdRG520
素晴らしいssだと思いました。特にアークゼロワンの誕生はウォズのように祝え!!と言いたくなりましたね
ところで質問なのですが、アークワンに作中では変身する描写がありましたね、そのためにアークワンプログライズキーが使われていましたし、マリスラーニングアビリティとしても使われていました。
ですがそのアークワンプログライズキーはどこから来たのでしょうか、支給品解説にもなかったので少し気になりました。
誰かのランダムアイテムの中にあった等を追記した方がいいのではと思いました。
後、367のスレでs5tC4j7VZY変更の承認を得ていたアナザーオーズの心の声についても削除の修正がされていないので、修正した方がいいのではと思いました。

590 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/21(月) 09:03:19 ID:psL9uG/.0
感想有難うございます。
アークワンのキーに関しては清隆のフォースライザーやプログライズキーと同じくアークドライバーゼロで生成した物です。
いちいち生成するシーンを差し込むと話のテンポが悪くなるのと、その隙を見逃すノワルではないということでトランクスとノワルが殴り合ってる間に作ったつもりで書いていましたが、説明不足だったようですね。
アナザーオーズの心の声に関しては作者が自分でwikiを編集すると思って放置していました。
対応させていただきます。

591 ◆s5tC4j7VZY:2025/07/21(月) 23:15:29 ID:QUpyCsa60
すみません。予約を延長いたします。

また、「戦隊レッドと絆の力」において自ら編集すべきことを結果として行えなかったこと、誠に申し訳ございませんでした。

592 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:27:16 ID:vhJe/0IE0
投下します

593 ロロ・ランペルージ:エンディング ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:28:45 ID:vhJe/0IE0
神戸しおは勝負に勝った。
目の前にはもうどうしようもない傷を負ったロロ・ランペルージが倒れていて、しおは生きている。
だがそれだけだ。
既にしおも満身創痍。
心身共に疲れ切ってその場に座り込んで動けない。
仮にこのままルルーシュの所に向かったところで、たまたまばったりNPCモンスターに出くわすだけで死にかねない。

(あせっちゃったな……ロロ君がつよくなったからぜったいたおさなきゃっておもっちゃった)

だがルルーシュも同じはずだ。
トランクスが殺すようなことはしないだろうが、トランクスがあれだけ手を焼く魔女と戦って無事で済むはずがない。

(だからはやく……え?)

ガッチャガッチャと鎧を着たまま更新するような足音が聞こえてくる。
向こうの決着がついて生き残った者たちが来たのだろうか?
それにしては数が多すぎる。

「あ……」


まず現れたのは頭から血を被ったような赤い仮面ライダーだった。
続いて黒にオレンジの機械や鎧姿のNPCモンスターが続く。
色は違うが同じような姿をした者が憎きアイツの配下に居たと思い出す。

(この赤い仮面ライダーはルルーシュ?
ルルーシュがかったの?)

トランクスは何をしていたんだと叫びたかった。
だって目の前には死に体のロロと自分しかいない。
先ほどルルーシュの放送を聴いた自分と同じだ。
ロロを殺したのはしおしかありえない。

(わたしはまだルルーシュをころせてない。
ルルーシュにころされるわけには……)

ルルーシュはロロに命捨ててでも守りたいと思うほど愛されていた。
ならロロもルルーシュに同じだけ愛されているはずだ。
自分とさとうがそうなのだからそうでなくてはおかしい。

「『……』」

赤い仮面ライダー、、ルルーシュの変身した仮面ライダーアークゼロワンはロロとしおを交互に見ると背後に居た配下の1人、オーバーフラッグに合図を送りしおに銃口を向けさせると変身を解除してロロの元に向って彼の頭を持ち上げて抱き寄せた。

「ロロ」

薄く目を開けたロロは力なく笑う。
よく見ると、ロロの令呪が二画消えていた。
どうやらいままで令呪の力でほぼ死んでいる状態ながら現世にしがみついていたらしい。

「にい、さん……。
さっきの姿になったってことは、勝ったんだね?」

「ああ。
お前のお陰で俺と陽介はノワルとの戦いに集中できた。
お前の判断と献身のお陰で、俺たちは勝てたんだよ」

「やったね、にいさん。
これで、にいさんがさいきょうの仮面ライダーだ」

「何を言う。
お前や陽介を超える仮面ライダーを持つことなど不可能だぞ」

「そうだ、きいてよにいさん」

「なんだ?」

「ぼく、がんばったんだ。
ナナリーが、にいさんをいやすなら、ぼくがにいさんをまもるって。
そしたら、べるとがこたえてくれたんだ」

そう言ってロロはベルトのカチドキロックシードを撫でる。
今気づいたが、しおは最後の一撃を撃ち込めてもずらされていた。

(そっか、ルルーシュにベルトをわたすために……)

ロロが最後に一回だけ残した『絶対停止』はこれからも戦う兄にベルトを、戦力を託す為に残していたのだ。

「すごいじゃないかロロ。
流石は俺の自慢の弟だ」

「ありがとう……でも、ごめんなさい。
ぼく、にいさんにもかくしてたことが、あるんだ。
さやかやタギツヒメに、たくさんウソついたんだ。
さいしょのであいも、いちごのことも……」

594 ロロ・ランペルージ:エンディング ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:29:10 ID:vhJe/0IE0

「全く、似て欲しくない所ばかり似よって」

ロロが目を閉じる。
もう限界が近いんだろう。
令呪を使う気力もないらしい。

「ごめん。さいごにおねがい、きいてくれる?」

「なんだ?」

「沙耶香たちを、助けてあげて。
僕らみたいにならないように……」

身体から力が抜け落ち、ロロ・ランペルージは完全に動かなくなった。
ルルーシュはロロの亡骸をゆっくりと地面に降ろす。

「……ころさないの?」

「黙れ。俺は今ロロと話している」

神戸しおが抱いた疑問を拒絶するとルルーシュはロロの頭を撫でる。

「ロロ、もしこんな俺たちに『次』なんて贅沢が許されるなら……一緒に花火を観よう。
俺もお前もナナリーも他のみんなも、戦いの関係のない世界で初めて出会って、きっと同じ花火を見上げるんだ」

そう言ってルルーシュは配下たちに合図を送るとロロを抱き上げ歩き出した。

「わたしをころさないの?」

「ルルーシュ・ランペルージはお前を絶対許さない」

しおに背を向けたまま、ルルーシュは淡々と告げた。

「じゃあなんでどこかにいこうとしてるの?
わたしだったら……」

「我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
神聖ブリタニア帝国の皇帝である。
雑兵が戦場で首級を上げる程度の雑事に一々心を配ると思うのか?」

言葉の意味は若なら買ったが、この状況を些事と言っているのは理解できたしおは先ほどまでとは違う怒りも込めてルルーシュの背を睨む。

「ロロ君をあいしてたんじゃないの?」

「思いあがるな一兵卒が。
貴様はこの俺の敵に値しない」

「は?」

訳が分からない。
自分を許さないのだろう?
なのに何故自分殺さない。

「私はノワルを倒して、残った奴の純なる力を取り込み運営すら介入を躊躇わない次元へと至った。
ロロに目的の悉くを阻まれ、こうして仇敵の前で地べたを舐める以外何も出来ないお前を敵として見れる訳がなかろう?
ああ、そう言えば松坂さとうも最期はコンクリートに潰されて地べたを舐めてたな。
お前のことより先に私への恨み節を口走っていたよ」

怒りに肌が粟立つ。
幼い拳に爪が食い込み血が流れる。
疲労で笑いっぱなしの膝で立ちあがろうとするが、控えていたジンアサルトに顔を蹴られて倒れる。

「私と対等な敵になろうと思ったらその程度ではダメだ。
ノワルと同等の五道化が必要な程の脅威……今まで通り『特記戦力』では括りが広すぎるな。
やつを抜いて四凶とでも呼ぶか」

「なんの、はなしを……」

「兎に角、私の敵になりたくばトランクスや他の3人と同等の力を手に入れて見せろ。
その時は貴様を我が審判に値する賊として葬ってくれる」

そう言うと今度こそルルーシュはしおの前を立ち去った。

「……そっか」

ジオウからジオウⅡに至るだけでこれ程の消耗なのに、あのノワルと同じになるには、何を捨てなければならないだろう?

(かんけいない。
わたしは、ルルーシュをゆるさない……)

だが決意だけで支えるには余りにも疲れすぎた体には違いなく、しおは意識を手放した。

-----

どうにか拘束を吹き飛ばして戻ってきたトランクスは我が目を疑った。
確かにノワルの気が一瞬消えたが復活するなど不可解な現象を感じ取っていた。
だが現状はあまりに不可解、と言うか信じ難い光景が飛び込んできた。

(ノワルみたいな気を持った機械みたいなNPCモンスターたちが気絶した男を運んでる?
ノワルが態々そんな事をする訳がない。
じゃあ、まさか?)

「『遅かったじゃないか、トランクス』」

先頭に立つ赤い仮面ライダーから少し加工された様な、だが確かにあの悪逆皇帝とわかる声がした。

595 ロロ・ランペルージ:エンディング ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:29:35 ID:vhJe/0IE0
「ルルーシュ……ノワルは?」

「『我が鉄槌により潰えた。
ついでに有効活用させてもらっている』」

「馬鹿な……」

「『馬鹿は貴様だ。
神戸しおはもう戻れんぞ』」

言葉に詰まったトランクスにルルーシュは畳みかける。
折角しおがやる気になってくれたのだから、お守りのコイツも頑張ってくれなければ困る。

「『ノワルを倒しきれず、神戸しおの側にも居れず、私の目論見も阻止できない……結果『闇檻』と言う恐怖はこのバトルロワイヤルに残り続け、今の私を倒そうとする神戸しおは何をするだろうな?』」

「────っ!お前!」

ルルーシュの胸ぐらを掴もうとして、ロロの亡骸に気付いた。

「神戸しおは俺から弟を奪った。
『だがまだ私の命が欲しいようだぞ』」

「そんな……」

「『諦めろトランクス。
もうお前としおはGAME OVERだ。
精々積み重ねた失態に見合う働きをしてから死んでくれ』」

何も言えなくなったトランクスを置いてルルーシュはテレビ局に戻った。

-----

ルルーシュは妙な者を見つけた。
かつて自分が纏っていたゼロの衣装を纏った男だ。
自分がロロを抱えるのと同じポーズで血塗れの神戸しおを抱えている。

「何の真似だアーク」

ショーウィンドウに写った人影……一瞬二代目ゼロかとも思ったそれはルルーシュの鏡像を借りたアークだった。

『今のお前はこうしてやりたい気分だろうと思ったからな』

しおの死体を下ろし、仮面を外すアーク。
赤い瞳のルルーシュの顔が現れた。

『神戸しおをお前を討つ者たちの旗印にする気か?』

「ありえないな。
あれは俺を殺したいだけの女だ。
俺を倒した後にあれが今の俺と同じだけの力を持っていた場合、羂索たちを倒すどころか奴が最終勝利者になりかねん」

『では何故あんな焚き付ける様なことを?』

「あの時に手をかける攻撃は状況証拠からしおが使ったに違いない。
もし伸びるなら他の四凶か五道化を掃除させられる。
トランクスも同様だ。
死ぬならせめて、同格と相打ちになって貰わねば」

『もし神戸しおが四凶か五道化の力を取り込んだ場合は?』

「手は考えている」

『ほう?どんな手だ?』

「次に狙うは五道化だ。
運営に繋がる物や四凶を相手にする以上奴らにだけ許された法外な何かを手に入れる。
特にザラサリキエルの強化ギアスキャンセラーは是非欲しい」

『手に入れてどうする?』

「手に入ればどうとでも使えるさ。
手元に置くにしても誰かにくれてやるにしてもな」

そう言ってルルーシュは今度こそテレビ局に戻る道を急いだ。

596 ロロ・ランペルージ:エンディング ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:29:52 ID:vhJe/0IE0
【エリアD-6/西側のどこか/9月2日午後2時45分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:アークゼロワンに変身、健康
   闇檻機装軍団を従える
服装:皇帝服
装備:アークゼロワンプログライズキー
   赤い飛電ゼロワンドライバー
令呪:残り二+一画
道具:チェスセット@現実
   ランダムアイテム×0〜1(清隆)
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ランダムアイテム×0〜1(ローラ姫)
   ランダムアイテム×0〜2(アスナ)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
   賢者の石@鋼の錬金術師
   万里ノ鎖@呪術廻戦
   光魔の杖@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
   青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG
   ローラ姫のレジスター
   アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ
   ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)
   ケミーカード(レスラーG、アントルーパー)@仮面ライダーガッチャード
   戦極ドライバー(斬月)
   カチドキロックシード(KLS-02)
   ロロのホットライン
   零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
   一護の腕(レジスター付き)
   一護のホットライン
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークとノワルの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……お前は自慢の弟だ。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:地下の『アレ』については最悪留守中に『特記戦力』が攻めてきた場合ぶつける。
07:残る四凶や五道化、それにあの忌まわしき父と同じ力を持つ眼鏡の女も必ず殺す。
08:黒き神とは今度こそもっと準備を整えてから戦いたいものだ。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ。
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
11:キャルたちになんと伝えるべきか
12:花村陽介。お前の漢気、魅せてもらったぞ。
13:神戸しおとトランクスには精々頑張ってもらおうではないか。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとう、花村陽介、覇世川左虎、アスナにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトは倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。
※ノワルの力を奪いました。
 制限はノワルと同じ物がかけられていますが、アークの力を併用することである程度その穴を突けます。
※ノワルの令呪を二画奪いましたが、一画使いました。
 もう一画使うと闇檻を喪失してしまいます。

597 ロロ・ランペルージ:エンディング ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:30:08 ID:vhJe/0IE0
【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(大)、絶対遵守のギアス(極大)、気絶
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1、熟練スパナ@ペルソナ4
   オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
思考
基本:殺し合いはしない
00:『まともに動けるようになるまで休む』
01:ここにはヤベーのしかいないのかよ
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
  けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロもルルーシュもかっとんでんな、ほんと。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ルルーシュに会いに行く前にイザークたちとは合流したかったなぁ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったぜ
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
   テレビの中じゃねえのに。
09:……ロロ、なんとかやり切ったぜ
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。
※ルルーシュのギアスの影響を受けました。
 異能力破りの異能力を喰らわない限りこれ以上ルルーシュのギアスの影響をうけません。



【エリアD-6/市街地/9月2日午後2時45分】

【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、ルルーシュへの殺意(極大)トランクスへの生理的嫌悪感(極大)、疲労(極大)、腹部を中心としたダメージ(大) 、気絶
服装:いつもの
装備:ジクウドライバー&ジオウⅡライドウォッチ@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、天使の杖@ドラゴンボール超、ホットライン
思考
基本:ルルーシュを殺す。
   ゲームに勝ってさとちゃんを生き返らせる
01:ルルーシュは絶対に許さない 絶対に殺す
02:そのためにはトランクスくんと一緒にいるのも我慢しなきゃ。
03:ばいばいロロくん。
04:今のままじゃルルーシュを殺せないなら……
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考

【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(大)
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order
   通信機@ドラゴンボール超
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、レジスター(ロロ@ナイトメア・オブ・ナナリー)
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:ごめんしおちゃん。
  さとちゃんと会わせてあげられなくて。
02:あの白髪の男(アルジュナ・オルタ)は必ず倒す。
  その為には同志を集めないと……。
03:赤い服の男(宇蟲王ギラ)やキヴォトスの関係者にも要警戒。
04:しおちゃんを怒らせるような事を俺はしてしまったのか…?
05:ルルーシュ…… なんてことを。
06:俺は、俺は間違えたのか?
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。

598 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/23(水) 00:30:25 ID:vhJe/0IE0
投下終了です

599 ◆07JJdXWj.M:2025/07/25(金) 20:34:06 ID:LLyBMOk60
予約を延長します。

600 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:21:25 ID:diYNJsbo0
投下お疲れ様です。自分も投下します

601壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:22:52 ID:diYNJsbo0
「パラドは無事…当然か」

道を違えた友の無事へ、思わず浮かべた不敵な笑み。
嘲りや苛立ちはない、パラドの実力を知っているが故の納得。
嘗て肩を並べ戦ったバグスターに、想いを馳せるものも束の間。
緩んだ口元を引き締め、今しがた知った名を呟く。

「茅場晶彦……」

口から漏れ出た四文字こそ、定時放送を行った男。
数十名の脱落者より、グラファイトの意識を掻っ攫った運営側の一人。
見た目からして研究者然とした姿に、見覚えはない。
赤い甲冑を纏ったような異形も同様。
但し姿を変える際に使ったデバイスと、口にした名称は別。

「バグスターウイルスをプレイヤーの枷に使うだけではない。奴自身が力の恩恵に与るか」

既に殺し合いへバグスターウイルスが組み込まれてる以上、こういったやり方で利用されても不思議はない。
仮面ライダークロニクルが本格始動する前ならともかく。
元々人間だった者がバグスターになるのは、檀黎斗という前例が存在してるのもあり。
多少の驚きこそ抱くも、長ったらしい混乱を招く程ではない。
茅場はバグスターの力を自在に操る、己の目で見た情報を受け入れるのに抵抗はなかった。

それはそれとして、不快感がないとは言わない。
同胞を増やす為でなく、羂索達の私欲でバグスターウイルスを利用されたのだ。
子供のように癇癪を起こしはせずとも、表情に険しさが増すのまで抑える気はない。

(ゲンムやクロノスといい、裁定者を気取る奴は力を見せびらしたがるな)

準備が必須なれど、ルールを自在に書き換えるゲームマスターの特権能力。
檀正宗が使う時間停止(ポーズ機能)とどちらがマシか、考えるだけ無意味なので早々に打ち切る。
自分と違い人間達との共闘を選んだパラドも、今回の放送で思う所はある筈だ。
かといって今更バグスター側に付くなどと、優柔不断な真似をする男じゃない。
参加者を蝕むウイルスの除去も含め、本格的な対策へ乗り出すだろう。

602壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:23:28 ID:diYNJsbo0
尤も先に起こったもう一つの放送を見る限り、ルルーシュに一歩先を行かれたらしい。
羂索達からすれば、ウイルス除去も殺し合いの一環。
主催陣営との直接対決を否定しないなら、ある程度は除去成功の芽も残して当然。
プロトガシャットが手に入るよう仕向けたのもそれの内だろうが、入手した人物は良くも悪くも注目を向けざるを得ない皇帝。
順当に医療関係者が集まり、プレイヤー達は無事に解毒成功と考えるのは楽観が過ぎる。

媚び諂い軍門に下るか、利用せんと本性を隠し近付くか。
最初から奪い取るつもりで武力行使に出る者も、ゼロではあるまい。
この先もルルーシュが拠点に使うとしたら、テレビ局は放送前を超える火薬庫と化す。
ウイルス除去はグラファイトの関心を引かない、ただ戦闘が勃発するとあらば話は別。
己が敵として戦うに相応しい戦士がいるやも知れぬ、現在位置から見ても向かわない選択はない。

(地下に陣取る奴と再び顔を合わせるかは分からんが……何にせよ、現状は俺の望みが果たせているとは言い難い)

テレビ局の地下から転送され、定時放送を聞き今に至るまで。
戦いどころか参加者との接触自体叶っていない。
巡り合わせが悪いとは狂戦士の一件以降感じていたが、流石にここまでとは思わなかった。
さしものグラファイトも、時間の浪費にはため息の一つくらい零したくなる。
6時間を生き延びたのだって、これでは強さ故じゃなく単に戦闘を回避し続けたのと同じじゃないか。
伏黒甚爾との一戦や遊戯十代との決闘の誓い、銀髪の少女の命を拾ったのが無駄と言うつもりはない。
しかしいい加減、自身の本懐を遂げる闘争に恵まれても良い気がしないでもない。

件の少女は既に脱落し、回り回ってプロトガシャットがルルーシュの元へ届けられたと知る由もなく。
退屈という名の拷問を経て、ふいに立ち止まり一点を睨む。
視界に映る建造物は、悪逆皇帝の根城。
バグスターの、何より戦士としての感覚が剣呑な気配をハッキリと捉えた。

「やはり穏当に済む訳がないな。ルルーシュ、王自ら出るか玉座で待ち構えるかは知らん。だが既に、俺はお前の城を次なる戦場と見たぞ」

己が立ち塞がるに相応しい者か、神聖な戦場に泥を塗る無粋な輩か。
どちらにせよ、戦わない理由は無し。
数時間で蓄積した燻りをも焼き尽くす、膨大な熱が戦意となり燃え盛る。

紅蓮の龍による侵攻を、皇帝の城にいる者達はまだ知らない。
知る余裕もないと言うべきか。
何せ王が不在の間、城には既に嵐を引き起こす来訪者の姿があったのだから。

603壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:24:13 ID:diYNJsbo0
◆◆◆


(リラックスしてる、って雰囲気じゃないわねよねぇ)

私もだけど、そう心の中で付け加え手を伸ばす。
相応に値段の張るだろう、焼き菓子を口に含み租借。
高級感ある甘さは嫌いじゃないが、水分も欲しくなる。
冷蔵庫から拝借したドリンクで喉を潤し、改めて同室の二人を見やった。

記憶改竄の能力者討伐へ、ルルーシュ達が向かって早数十分。
テレビ局の防衛を任されたキャル達は、宛がわれた一室にて待機中。
予め気を遣って用意したのか、テーブルの上に置かれた菓子を時折摘まんでは口に放る。
女子三人の空間にしては、余り華やかな空気とは言い難い。

「アイツらのことが心配?」
「……うん」

問い掛けられた沙耶香が数秒の間を挟み、こくりと頷く。
ルルーシュとて無策や分の悪過ぎる賭けで、意気揚々と出て行ったのではない。
本人なりに勝算ありと判断し、念を押した上で狩りへ乗り出したのだ。
それは沙耶香のみならず、残った三人全員が分かっている。

ただ相手が相手だ。
記憶改竄の能力者のみならず、その者がルルーシュ達を利用してまで殺したがる魔女。
聞く限り危険度たるや、最初に襲ったNPCどころか下手をすれば継ぎ接ぎの男以上。
万が一失敗し、ロロ達が命を落とす可能性もゼロではない。

「それにルルーシュが言ってた、ゼインっていう参加者に利用されてる女の子の事も……」

自分と同じように洗脳され、都合の良い道具にさせられた少女。
直接顔を合わせてはいないけれど、数時間前の己と照らし合わせると他人事に思えない。
それまでに結んだ友情や大切な記憶を踏み躙られ、望まない人殺しを強要される。
沙耶香自身、一つ間違えれば取り返しのつかない事態へ陥っていた。
辿ったかもしれないIFの悲劇に、片足を掴まれてる女の子がいるのなら。
意思を否定し傀儡とする存在へ屈しないと、固く誓った身としても助けたいと思う。

「その利用された娘を救い出しても、他者の体を自由に渡り歩くのだろう?確実に潰さねば、次は我らの知る者が操られんとも限らん」
「やってることは、ほとんど寄生虫みたいなもんじゃないのよ」

心底嫌そうに顔を顰めるキャルを尻目に、タギツヒメもまたゼインへ思考を割く。
ルルーシュ曰く、いずれ人類を滅ぼす存在。
少なくとも殺し合いに招かれる前の自分だったら、笑みの一つでも浮かべただろう。
生憎作り笑いをする気にもなれず、ただ興味がないとも言わない。
何を考え行動し、その果てに何故人類滅亡へ繋がるのか。
存在理由として人間に怒りを抱き続けた故、ゼインにも問いをぶつけたい。
望んだ答えが返って来るとは限らず、まして恩人の一人程の対話が出来る自信も無いが。

「まあ、もしかしたらこうやって駄弁ってる間にアイツらが――」

帰って来るかもと、楽観的な予想は最後まで口に出来ない。
扉が勢い良く開かれ、ノックも無しに部屋へ飛び込む小柄な体躯。
黒のセーラー服と頭上の光輪が特徴的な、正義実現委員会の生徒。
息を切らせ、目元を前髪で隠していようと明らかな焦燥感。
次に出て来る言葉が何か、三人全員嫌でも分かった。

「て、敵襲です!えっと…出動をお願いします!」

604壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:24:52 ID:diYNJsbo0
◆◆◆


兜の隙間へ剣を差し込み、後頭部まで突き抜けた。
皮を裂き、肉を斬り、骨を貫き、命を終わらせる。
生物が呼吸をするのと同じくらい、己が身に馴染んだ感触。
脆い生がプチっと潰れる音はNPCも同じらしい。
とはいえ、本物の人間を殺した際の爽快感からは程遠い。
所詮データの塊に過ぎないが、これはこれで使い道もある。

「き、貴様!この場所を、そして我らを誰だと思っている!?偉大なるルルーシュ様に仕えr」

最初から貸してやる耳はなく、ついでに言うとその手の内容は聞き飽きている。
顔面を真っ二つに断たれ、崩れ落ちる骸がまた一つ追加。
豪奢な金色の鎧の一団も今や、凄惨なバラバラ死体の山。
恨みがましく見上げる目を鼻で笑い、軽く首を解す。

「黄金を着込んでるならもうちょっと根性見せてみろよ、なぁ?」

破壊者の鎧を脱ぎ去り、振り返って笑い掛けた先には数十人の少女達。
銀髪で端正な顔立ちの男へ、頬を染め俯く初心な反応は一つも無し。
皆一様に緊張感を浮かべたまま、決して得物を離すまいと手の力を強める。
屈しない意思の表れか、恐怖を誤魔化す儚い抵抗か。
どちらにしても、玩具の分際で一丁前に人間らしい仕草だとジンガは嗤う。

因縁深い黄金騎士とどこか重なる、「守りし者」の強さを秘めた少女と斬り合ったのが少し前。
消化不良同然の、モチベーションを削ぐ終わり方への気分転換も籠めて。
NPCを狩りながら皇帝の居城、テレビ局へとやって来た。

道中、素体ホラーや類するNPCを喰らい体力を回復。
万全とまではいかないが、鬱陶しい疲労感は現状薄い。
ついでに、ディケイドのカードを取り戻すのにも利用。
戦闘どころかジンガからすれば、何の面白みもない軽作業だったが条件はクリア。
こんな手間を掛けさせ意味があるのかと思いつつ、目的地へ到着し今に至る。

605壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:25:28 ID:diYNJsbo0
「あなたをこれ以上進ませる訳には行きません。彼ら「金色の手」もまた、ルルーシュ様の配下。私達の王への敵対行為と、そう見なされて同然では?」
「おいおい、こんな連中まで引き入れるなんざぁ…皇帝様ってのは随分人手にお困りなんだな?」

留守を任されたNPCの一体、眼鏡の刀使が警告を発する。
表情には警戒が見て取れるが、他NPC以上にオリジナルへ近付け生み出された為だろう。
凛とした佇まいに微塵の陰りも見られず、ジンガ相手にも臆さず立つ。
大の大人であっても気弱な性格なら、たじろんで当然の威圧感。
彼女の毅然さに感化されたのかは不明なれど、徐々に周囲の少女達も戦意を取り戻す。
忠誠を誓った主の城を守るべく、一人が抜刀の構えを取り、

「大事な話の邪魔しちゃいけませんってのは、人間の常識だろ?」

耳元で囁かれた声に凍り付いた。
途端に背後から感じる気配へ、振り向く自由も与えられず。
何時の間に動いたのだとか、至極当然の思考すら抱く暇もなく。
ゴキリと、そんな音を最後に地面へ散らばる肉塊の仲間入りを果たした。

「ああ悪いな、軽く撫でただけのつもりだったんだが。人間は脆いってのをすっかり忘れてたよ」

哀れな少女の魂を、駄菓子と同じ感覚で味わい。
首を180度回転させられた刀使が足元へ転がる。
NPCとはいえ少女を一人殺しても、何ら悪びれず楽し気な態度。
人の見た目だけを真似た悪魔と、そう言われても通用する男へテレビ局前には寒気が漂う。

「まるで、自分は人間ではないとでも言いた気だな?」

来訪者の異様さが場を完全に支配する前に、待ったを掛ける者達が現われた。
名刀さながらの鋭い声色で言い放ち、タギツヒメがジンガと対面。
魔獣ホラーと大荒魂、人に仇為す異形同士の視線が交差。
その背後では視界へ飛び込む惨状に、沙耶香が思わず息を呑む。
NPCと分かっても人型で、しかも自分と同じ刀使も含まれている。
感情が希薄だからといって、グロテスクな死体へ無反応ではいられない。

「うっ……」

隣ではキャルも口元を抑え、せり上がった嘔吐感を抑える。
元となった金色の兵士達に良い思い出などない。
いけ好かない貴族の手駒であり、仲間と共に地下牢へ連れ込まれた事だってあった。
それでも凄惨な光景に、ざまあみろと言える程悪趣味になった覚えもなく。
頭を振って動揺を幾分鎮め、しでかした当人へと集中。

606壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:26:03 ID:diYNJsbo0
「ほぉ……まさかここで会えるとはなぁ」

一方ジンガは現れた三人、特に沙耶香とタギツヒメへ反応を見せた。
わざとらしく驚愕した風を装い、他者を挑発するのは常套手段だ。
ただこの時ばかりは予想外なのも事実、驚きは本心からのもの。
直接会うのは初めて、しかし顔も名前も何をして来たかも把握済。

「皇帝様は随分と刀使がお気に入りらしい。あのチビを手土産で連れて来れば、融通が利いたかもな」
「なに?貴様、どこで刀使のことを……」
「肝心の皇帝様本人は、玉座で柳瀬舞衣と十条姫和でも囲ってる最中か?だとすりゃ良いご身分なこって」
「…っ!どうして舞衣達を知ってるの……?」

冗談めかして言った内容は沙耶香達からすれば、無視出来る類じゃない。
刀使の二文字のみならず、関係者の名前を正確に出した。
当てずっぽうで言えるものではなく、何者かから情報を手に入れたと考えるのが自然。

問題はその人物が可奈美や舞衣だった場合。
この男と遭遇し、単なる情報交換で済むのは有り得ない。
NPCの惨殺だけではない、態度や言葉一つへ籠められた悪意が心を許すべきでないと警戒を抱かせるのだ。
何らかの危害を加えられたか、ひょっとすると可奈美を殺した張本人の可能性とて否定出来ない。
声に緊張を滲ませる沙耶香とは正反対に、ジンガは楽し気な姿勢を崩さない。
思い出す様な仕草をわざと取り、焦らして余裕を剥ぎ取る工程を経て言う。

「心配しなくても、お前がご執心のお優しい刀使に俺は手を出しちゃいない。ヒーロー志望のチビが、親切にもお前らの話を教えただけだ」
「益子薫が、か?」

集められた刀使の中で、ジンガの言う人物に当て嵌まるのは薫のみ。
名を出しておいて何だが、タギツヒメには俄かに信じ難い。
薫だって刀使としての実力は非常に高く、可奈美らと共に自分との決戦へ臨んだ少女。
ジンガの危険性が分からない筈ないだろうに、ペラペラ仲間の情報を口走る程迂闊とは思えなかった。

「奴を庇う気はないが信じられんな。貴様のような男に向けるのは言葉に非ず、刃のみだろうよ」
「初対面だってのに自分嫌われたもんだ。大荒魂のお姫様は間違いなく、“こっち側”と思ったんだがなぁ?」

意外そうに見つめる視線へ殺気を一つ返す。
刀使の情報を得ている以上、予想は出来た事だ。
こちらの正体についても知っており、だから余計に分からない。
まさかとは思うが、薫まで沙耶香のように洗脳され情報を抜き取られたのか。

「ま、刀使なんざどいつもこいつも荒魂やホラーと大差ないかもな」
「……何が言いたいの?」

初めて聞くワードへの疑問も一旦捨て置く。
勿体ぶった言い方へ焦燥を覚える一方で、嫌な予感があった。
具体的にどうと口に出せず、だが本当に聞いて良いのかも分からない。
沙耶香の内心を見透かしたように、弧を描いた口元が動く。

607壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:27:57 ID:diYNJsbo0
「お前の大事なお友達の三人。衛藤可奈美と柳瀬舞衣、それに益子薫は立派な人殺しになったってだけの話さ」
「え………………」
「なっ…!?」

あっさりと、それこそ今日の天気でも告げるように。
衝撃的という表現では到底片付けらない程の、頭部を激しく叩き付けられた痛みが襲う。
何を言われたのか、理解が出来ないししたくもない。
聞こえなかった振りに逃げるのを、残念な事にジンガは決して許さなかった。

「いや実に見事なもんだ、拍手の一つでもしてやりたいくらいにな」
「あなた、なに言って……」
「聞こえなかったのか?お前の、大事な、お友達が、殺したんだよ!それも死んだ方が世の為になるような悪党じゃない。人間の価値観で言えば、疑いの余地なんざどこにもない善人って奴を!」

自分が今どんな顔をしてるのか、まるで分からない。
自分の声が震えてるのに気付ける余裕なんて、とっくに消え失せた。
知りたくなかった、信じたくない内容が耳から侵入し脳の奥まで届く。
出て行ってと、どれだけ願っても叶わない。
舞衣達が人を殺した、その言葉が毒となって沙耶香を蝕む。

「偽りを並べるにしても、失敗だったな阿保が。連中の甘さは我とて知っておるわ。貴様の戯言通りに動く筈があるか」
「信じないのは勝手だ。だが少なくとも、衛藤可奈美は今も張り切って殺し回ってる最中だろうよ」
「…貴様、まさかそこまで知って……」
「おっとぉ?そういう反応するのはつまり、会ったんだな?今のアイツに!」

沙耶香に代わり否定するも、返って来た嘲笑へ苦い顔を浮かべる。
舞衣と薫はともかく、可奈美については違うと断言不可能。
何せ今の彼女は自我を失い、無差別に殺戮を広げる骸人形。
雪原地帯を離れ別のエリアで剣を振るい、結果我が身を返り血で染めたとておかしくない。
ジンガの嘲りへ同意など御免だというのに、首を横には振れずにいた。

608壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:28:27 ID:diYNJsbo0
「ま、死後もこき使われるのには流石に同情してやらん事もない」

軽薄な笑みと共に吐き出された軽口へ、沙耶香は何も言えず立ち尽くす。
色白の肌は更に青褪め、視界が安定しない。
自分が本当に地面へ立ってるのかすら、あやふやになる。

頬に付けられた小さな傷を、塞いでくれた舞衣が。
命じられるまま冥加刀使になるのは嫌だと、そう思える切っ掛けを作ってくれた彼女が。
自分に温かさを教えてくれた手を、誰かの血で汚した。
嘘だと言ってやりたい、自分を騙そうとしてると突っ撥ねたい。
なのに肝心の言葉は喉奥で消え、掠れた呻きさえ出て来ない。

(私があの時、可奈美を止められなかったから……?)

同時に思うのは舞衣だけでなく、可奈美まで他者を殺めたとの事実。
沙耶香もまたタギツヒメ同様、死して尚動く殺戮者をこの目で見た。
もし自分が真人に操られ、偽りの恋心へ現を抜かしていた間。
ジンガの言った内容が起きたとすれば。
それはつまり、可奈美を止められなかった自分のせいで誰かの命が潰えたんじゃないか。

「あ…わた、し……」

直接殺してないなんて、何の言い訳になるという。
自分があの時失敗し、よりにもよってロロ達へ剣を向けたから。
自分の未熟さが事態を招いたとしたらと、考えるのが止められない。
水の中に落とされたみたいに息苦しく、視界がぼやけ出し――

609壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:29:42 ID:diYNJsbo0
間近で聞こえた弾ける音が、意識を現実へ引き戻した。

ハッと顔を上げればいつの間にやら、鞘に納めた剣を構えた男が見える。
急に何だと問い掛けるでもなく、次いで自分の横へ視線を移す。
杖を男に突き付け、不快感をこれでもかと籠め睨むキャルがいた。

「ご挨拶だな。自己紹介から始めようって気もないか、最初から常識を知らないのどっちだ?」
「女の子いじめて喜ぶカス野郎が、常識どうのとか言える立場?顔の良さ以外ぜーんぶ、ドブに捨てちゃってるんじゃないの?」

挑発には挑発を返し、いつでも撃てるよう魔力を練る。
今しがたの魔力弾は防がれたが、次も同じで済ます気は無い。
射殺さんばかりにジンガを睨み付けたまま、沙耶香へ言葉を向ける。

「こいつがまだ本当の事言ってるかなんて、分かんないでしょ。ホラ吹いて回っておちょくるのが好きなのよ、見るからに性格最っ悪だし」

刀使の情報は得ているも、沙耶香やタギツヒメと違い可奈美達との関りはない。
そんなキャルだから二人に比べれば、心を乱されず冷静さを保てた。

確かに何故この男が刀使を知ってるか、疑問に感じるのは最もだ。
かといって、話す内容全部が事実と断定するべきじゃない。
或いは本当に沙耶香の友人達が、人を殺したとしても。
重要な部分を歪曲したり、もしかするとほとんど事故同然な可能性だってゼロとは思えない。
どうせ素直に全容を教えてくれる奴じゃないのは、分かり切っている。
だったら、何をするかは一つだけ。

「徹底的にボコって動けなくしてから、知ってること洗い浚い吐かせてやりゃ良いのよ。そんで改めてブッ殺す!」
「野蛮極まりない、と言いたい所だが我も同感だ。あの継ぎ接ぎと同じ、荒魂よりずっと悪辣だからな」

少女らしからぬ殺気立ったキャルへ呆れつつ、タギツヒメも殺意を滾らせる。
直に相対し、肌を撫でる不快な気配で察しは付く。
真人と同じく、人の世に蔓延る負の念を煮詰めた悪しき魂。
斬るのに躊躇を抱いたが最後、骨の髄まで呪い尽くされると確信があった。
双剣を引き抜き構えを取り、チラと背後を見やる。

610壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:30:26 ID:diYNJsbo0
「…奴がどこまで真実を語ったかは我にも分からん。だが、柳瀬舞衣達はまだ生きているだろう」
「っ!」
「戦って生き延びろ、全てはそれからだ。死ねば真実を確かめる術も、言葉を交わす機会すら水泡へ帰すのみよ」

優し気に告げられたのとは違う、淡々とした言葉遣い。
でもそこに籠められたのが、戦闘を促すだけの冷淡さじゃないと分かり。
今言われた通り、死んでしまったら何一つやれないのは本当だから。

全部を吹っ切ったとは言えないけれど、迷いで剣を錆び付かせている場合じゃない。
御刀を引き抜き写シを発動、肉体が霊体と化す慣れた感覚が駆け巡る。

「ありがとう二人とも」
「別にこれくらいでお礼とかいいわよ。タギツヒメに言ってやりなさい」
「我とて礼欲しさに言ったつもりはない。それに――」

それに、一護や刹那だったらもっと上手く言えたと。
口に出さず胸に留め、即座に意識を眼前の敵へ集中。
こちらの戦闘態勢を見てか、向こうもその気になったらしい。

「お喋りよりも殺し合うのがお望みか?いいねぇ、分かり易くて嫌いじゃない」

数で圧倒的に差を付けられた事実を認識し、尚も余裕は崩さない。
強がりに過ぎないと楽観的に思える者は、NPCを含めて一人もおらず。
右手を顔の前に掲げた動作こそがトリガー、闇に全身を覆い隠される。

そして現れるは紅い異形。
誇り高き騎士の鎧を腐らせ、悪しき魔獣の衣へ変貌させた姿。
人の皮を剥ぎ取りホラーの本性を見せたジンガに、場は緊張感を増す。

「ま・ず・は、一番喰い甲斐がありそうなお前からだ!」
「チッ…!」

遊び相手を決めるかの仕草で突き付けた指先には、人との対話を経た大荒魂。
足元から吹き荒れた黒き炎が、ジンガへ爆発的な加速を齎す。
距離を詰め叩き付けた一刀をあえて受ける理由はない。
既に写シは発動済だ、双剣を翳し防御。
八幡力を使い押し返さんとするも、予想以上の怪力へ逆に押される。
防いだ体勢のまま見る見る内に、沙耶香達の元からジンガ共々離されて行った。

「…って、ちょっと!?どこまでぶっ飛んで行くのよアイツら!?」
「わ、分からないけど私達も追わなきゃ……!」

周辺の民家やらを巻き込んで、遠く遠くへ戦場を移した
速さを極めた沙耶香をして、息を呑む加速力。
ブルリと緊張故の震えが走るも一度に留め、キャルを促し追うべく踏み出し、

611壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:33:18 ID:diYNJsbo0
「お待ちくださいお二人共。敵はあの銀髪の男だけではないようです」

眼鏡の刀使が待ったを掛け、揃って振り向けば答えが自らやって来た。
『金の手』部隊の屍の山には目もくれず、こちらへ近付く一人の参加者。
民族衣装らしき装いで、癖っ毛が特徴の青年。
ジンガのような嘲る気配は見当たらずとも、友好的とは言い難い。
全員の視線が己へ集まったタイミングで足を止め、矢を思わせる眼光で射抜く。

「強い気配を感じたが、一足遅かったか」

肌が引き裂かれるのにも似た、強烈な二つの闘気。
それらへの期待を籠め急いだつもりだが、どうやら既に始まった後。
惜しくは思うも問題無い、何せ戦士は件の二人だけじゃない。

「…良い目をしているな、やはりここに来て正解だった」

伏黒甚爾程の強さは感じずとも、纏う気配は紛れもない戦士のソレ。
銀毛の剣士と猫耳の術師、そして眼鏡の剣士。
三人目は参加者でないとはいえ、これまで出会ったNPCよりかはずっと上等。
ならば最早躊躇が入り込む余地はなし。
これより、敵キャラクターとしての本懐を遂げさせてもらおう。

パット型のバグスター専用デバイス、ガシャコンバグヴァイザーを操作。
待機状態に移行し、不安を煽る気味の悪いメロディが流れ出す。
この場に集まった少女達全員、否応なしに理解してしまう。
苛烈極まる闘争の幕開けは、ここから始まるのだと。

612壊乱Ⅰ:WITCH QUEST Side B ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:34:33 ID:diYNJsbo0
「培養!」

『INFECTION!』

『Let's GAME!BAD GAME!DEAD GAME!What's a NAME!?』

『THE BUGSTAR!』

体内のバグスターウイルスを最大限に活性化、人の皮を脱ぎ捨て真の姿へ変身。
火炎が屈強な肉体を形作り、存在を堂々と知らしめる。
レベル上限の枠を飛び越えた、紅蓮の龍がここに降臨。
グレングラファイトバグスターの登場へ、闘争が避けられないと誰しも思い知らされた。

「俺の名はグラファイト!この舞台で、戦士と認識する者全ての敵となる男だ!」
「い、いきなり出て来てやる気満々みたいだけど……空気を読みなさいよアンタはぁっ!」

突然の展開やグラファイトの気迫に飲まれていたが、我に返るや怒鳴り返す。
襲撃者が複数人現れる可能性は、キャルとて考えなかったというと嘘になる。
だとしてもこんな風にタイミングが重なれば、文句の一つや二つは言ってやりたい。
大人しく引き下がるならこっちも有難い、残念な事にそう都合良くはいかないだろう。

「…どうにか退けるか、若しくはお二人が離脱する隙を作るしかありません」
「それが実際にやれるかは別問題だけどね……」

何でこうなるのやらと頭を抱えるキャルを尻目に、眼鏡の刀使も自身の御刀へ手を掛ける。
キャル達はルルーシュの協力者だ、みすみす死なせる訳にはいかない。
今はまだテレビ局を放棄する選択は選ばず、この場で迎え撃つ。
昂り始める戦意を向こうも感じ取ったらしく、興奮を抑えられずに言う。

「お前達も戦士ならば名乗れ」
「…鎌府女学院、糸見沙耶香」
「え、あたしも言う流れ?……ったくもう!キャルよ!空気読めない赤いバカをブチのめす女の名前!」

片や静かに、片やヤケクソ気味に名乗りを上げた。
導火線にはとうに火が灯り、爆発の時を今か今かと待ち侘びている。
今更になって舞台は降りられない。
勝つか負けるか、生きるか死ぬかの二択以外に道は存在せず。

「お前達の強さを、俺に見せてみろ!」

荒ぶる龍の咆哮が響き渡り、避けられぬ戦いが始まる。

613壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:36:09 ID:diYNJsbo0



先手を取られたのは痛いと、そうタギツヒメは思わずにいられない。
傷こそ付けられていないものの、テレビ局から引き離された。
建造物の壁を幾つも背中で突き破り、しかし肉体的なダメージは未だ無し。
写シを発動中なのに加え、金剛身で鋼の耐久力を獲得。
更に元々人間以上の生命力を持つ荒魂なのが重なり、不快な感触こそあれど痛みは皆無。

とはいえ何時までも押し飛ばされる体勢を取った所で、戦況に変化は訪れない。
力で向こうが上だとて、やりようは幾らでもある。
八幡力で再び腕力を上昇、押し返すのではなく逸らすように腕を動かす。
敵の剣の矛先が僅かに傾いた瞬間がチャンス、蹴りを叩き込んだ反動で跳ぶ。

「お行儀が悪いな、お姫様?」

嘲りの声に、今の打撃が聞いた様子はない。
焦らず片腕を翳して防御、少しの痺れも走らなかったらしい。
ホラーと化したジンガは身体機能全般のみならず、肉体強度も既存の生物の限界を遥かに上回る。
当たり所によっては一撃でダウンへ持ち込む、大荒魂の打撃だろうと威力が足りなかった。

ただこれでいい、目的はダメージを与える事に非ず。
ある程度の距離を取って、膠着状態を脱した。
仕切り直しの成功にニコリともせず、即座の反撃へ打って出る。

「シィ……ッ!」

唸り声と共に迅移を発動、スロモーションの世界へ迷い込んだ感覚へ囚われた。
十数歩分の距離を詰めるのに数秒すら必要ない。
通常の時間から逸する術だが、使い手によって精度も異なる。
並み居る刀使の追随を許さぬ実力のタギツヒメなら、当然速さも別格だ。

紅い鬼の眼前へ到達するや、有無を言わさぬ一刀で以て終わらせる。
先程の会話で嫌という程に分かった、この手の輩に容赦は無用。
情報を吐かせる為殺しはしないが、戦闘可能な芽は全て潰す。
まともに当たれば致命的となる刃が迫り、

614壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:37:28 ID:diYNJsbo0
当然の如く弾かれ、反対に長剣がタギツヒメの首元を噛み千切らんと襲い掛かった。

「チッ……!」

舌打ちを一つ零し回避、数ミリ先を刀身が横切り空気が切り裂かれる。
迅移を使った上での攻撃にも対処してみせた。
今しがたの事実へ息を呑むのすら惜しい。
一撃防がれた程度で驚くには既に、集められた参加者が一筋縄でいかないのを知り過ぎている。
なれば意識を戦闘から外すのは悪手以外の何物でもなく、再び斬り付けるまで。

筋肉をしならせ、双剣による連撃を繰り出す。
死神代行・黒崎一護の斬魄刀。
元501部隊隊長・坂本美緒の愛刀。
生まれた世界は違えど、人に仇為す人外の者を斬る刃。
振るうのが人類の敵であった大荒魂であれど、切れ味に一切の衰えなし。
まして使い手の技量もハイレベルと来れば、悪鬼も泣き出す猛攻の完成となる。
思考を眼前の敵にのみ割き、無駄な動きを残らずカット。
雨あられと襲い来る刃の軍勢の恐ろしさたるや、一体如何程か。

「二刀流ってやつか。良い腕だな?魔戒騎士の中にも何人かいた気がするが、お前程じゃなかったっけなぁ」

発せられた軽口に戦慄や、恐怖を隠す意図は微塵も宿っていない。
事実、ジンガの目には何の脅威とも映らなかった。
視界を埋め尽くす斬撃を、一つ残らず鼻歌交じりに捌く。
得物の大きさなど感じさせない、軽やかな動き。
切っ先が肌へ軽く触れるのすら許さず、全て到達前に弾かれる。

付け加えて言うなら、永遠に受けの体勢へ回る気もない。
百発目間近の剣を躱し、ジンガが一歩踏み込む。
前方より吹き荒れる斬撃の暴風雨へ、自ら突っ込む自殺行為。
などと嘲笑う者全員が口を噤む光景を、現実のものとする。

「ハハハッ!!」

愉快で堪らないとの笑いも、響き渡る殺意の応酬へ掻き消される。
魔弾の如き威力で放たれた突きが、双剣の結界に亀裂を生む。
僅かにタギツヒメが押された、それで十分だ。
荒々しく、それでいて不要な動作を削ぎ落とした剣を放つ。

一撃へ対処した傍から、数十が群れを為し襲い来るかの勢い。
霊体故にたとえ斬られても、死には至らないと楽観的な考えは真っ先に捨てる。
剥がされれば最後、再び写シを使う前に細切れは確実。
もとより、写シによるダメージの肩代わりへ過信を抱く気はない。
であるなら、より一層意識を研ぎ澄まし迎え撃つまで。

615壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:39:06 ID:diYNJsbo0
「ノリが悪いなお姫様。愛想笑いの一つでもしてみろよ」
「貴様相手に斬り合った所で、微塵も愉快に思わん!」

得物の数は自分が多くとも、ジンガ相手に手数で有利とは言えまい。
数十本の腕を同時に振るったと、錯覚を抱き兼ねない光景が分かり易い答え。
唇が渇き喉がヒリ付く殺意にも、心を乱さず双剣を操る。

どのタイミングでどちらの得物を振るい、その間もう片方はどの位置へ置くか。
攻撃一つを見てから考えるのではなく、十数手先までを読み戦術を構築。
常人であれば脳が焼き切れるか、考え終える前に斬り殺されるかの二択。
タギツヒメにはいらぬ心配だ。
実行に移せる力があるからこそ、人類を脅かす大荒魂として君臨したのだから。

下手に後退を選べば却って敵の思う壺、故に恐れず前進。
脅威へ自ら飛び込み、二振りの刃が魔獣ホラーと真っ向より激突。
敵が隙を見せないなら、自らの手で作るまで。
弾いた瞬間のほんの小さな裂け目へ、斬魄刀を捻じ込み突破。
胸部目掛けて突き進む黒き刀身を、異形の瞳は見逃さない。

掬い上げるように振るった魔戒剣が、斬魄刀を跳ね除ける。
再度手元へ引き戻すのに、指を折って数える程の時間は掛からない。
だがジンガを前に致命的な隙なのは確か、獣の如き唸りで空気を引き裂き刃が襲来。
目前に迫る脅威は、タギツヒメにとっても予想出来た展開。
次の手は既に打ってあり、もう片方の得物を振り被る。

「っ、小細工か…!」

烈風丸が使い手の死に異を唱え、斬撃波を飛ばす。
魔法力を練り固め放つ技は、ネウロイの強固な外皮を切り裂く程に強力。
むざむざ己が身で受ける趣味は持ち合わせてない。
魔戒剣を振り下ろし、剛腕で以て霧散。
ノーダメージで凌ぐも、生じた隙を利用しタギツヒメが後退。
逃げの一手ではない、本命を放つのに必要な距離を稼いだ。

「月牙天衝!」

大荒魂として、体内に溜め込まれた負の神聖か。
若しくは斬魄刀自体の霊力を削っているかは不明だが、必須となる力を収束。
一護の代名詞とも言える、超高密度の霊圧を斬撃として放つ技。
現世に蔓延る虚を切り裂き、浄化して来た刃が狙う先には当然ジンガ。
斬魄刀の性質上、悪しき魂を持つ異形の天敵と化す。
数時間前の真人がそうだったように、ホラーとて例外はない。

616壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:40:00 ID:diYNJsbo0
「大荒魂がホラーを祓う力を使うか!冗談にしちゃ気が利いてるぜ!」

今度は正しく脅威と認識し、尚も笑い飛ばす。
当たれば危険、だったら当たらない方法を取れば良い。
魔戒剣へ邪気を収束、更にもう一つ力を引き出す。
冥黒王から奪い取った火炎を纏わせ、刀身が禍々しく輝き出した。
振るわれた得物から光刃が飛び、黒刃と削り合う。
やがて互いを貪った刃は消滅、二度目の仕切り直しとなる。

「雑魚じゃないのは分かってたが、それにしたって大した腕だ。つくづく、人間共の味方をしてるのが残念でならない」

異形の貌故、どんな表情かまでは分からないが。
声色には相も変らぬ嘲りと、素直な称賛が混じっている。
真紅の暴君や青い戦士のような、規格外は抜きにして。
ジンガから見ても上澄みと言わしめる実力を、タギツヒメが持つのに疑いはない。
薫の記憶を見て強さは知っていたが、現実に斬り合えば感じ入るものも違う。

「ああ…本当に惜しいな。強さはあるってのに、精神が追い付いてないんだからなぁ?」
「……何だと」
「人間への怒りに燃えてた時の熱が、今のお前にはない。かといって刀使のガキや魔戒騎士のように、守る為に振るう剣としても足りない。要はお前、中途半端なんだよ」

時に剣は言葉以上に、相手を知る事が出来る。
可奈美が大荒魂を巡る戦いで幾度もそうしたように、斬り合いの中でこそ分かるものは少なくない。
本質的に刀使と相容れないジンガなれど、その点だけは否定しない。
現にこうして、今のタギツヒメがどういった存在かを察せられた。

「腐り切った性根の分際で、知ったような口を聞くな。貴様なんぞの理解など、我は求めておらん」

忌々しさを隠そうともせず吐き捨てる。
中途半端、中途半端と言ったか。

617壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:41:48 ID:diYNJsbo0
そんなもの、自分が一番理解している。

一護のように、護る為の剣と口が裂けても言えない。
刹那のように、対話で以て真に理解し合う程の強さもない。
恩人に等しい男達を殺した者への、怒りは嘘偽りでなくとも。
嘗てのような、憤怒のみを原動力にしてるともまた言い難い。
護るどころか幾度も護られて、取り零してばかり。
他者に言われるまでもなく、どっちつかずな自分への呆れも今に始まったものじゃない。

「お節介が過ぎたなら悪かったな。ちゃんと自覚してるなら何よりだ」
「ほざけ、痴れ事はもう聞き飽きた」

軽薄さを切って捨て、再び双剣の構えを取る。
無駄に苛立たせる挑発を、これ以上聞く義理は欠片も無し。
今度はこちらから仕掛けようとし――





両者の間に振ってきた存在が、戦場の空気を瞬く間に支配した。





「――――――――――」
「こいつは……」

乱入者を視界に入れ、ジンガの口から驚きが零れ落ちる。
NPC共の茶々入れに辟易させられるのは、腹立たしい事に数回経験済。
此度も空気の読めない輩が、馬鹿の一つ覚えで襲って来た。
などと言い切れないのは偏に、発せられる強大なプレッシャー故。
レジスターは見当たらず、コレが参加者じゃないのは明白。
可奈美のように死後利用された類の可能性も、ゼロではないが。
正解が何にしろ、気を緩められる相手でないのは間違いない。
NPC如きが持って良い強さじゃないだろと、至極真っ当な呆れは胸中に留める。

ジンガの様子へ気付く余裕を、一瞬の内に削ぎ落とされ。
タギツヒメは両眼を見開き、呆然と立ち尽くす。
ついさっきの沙耶香をどうこう言えない、激しい動揺っぷりだと。
そんな自分への呆れ笑いすら、思考から完全に剥げ落ちた。

現われたソレに、正しく見覚えがある訳じゃあない。
大荒魂の姫達を思わせる、人の色と異なる白い肌は記憶してるのと別。
髑髏を思わせる仮面も、西洋の悪魔に似た角だって初めて見た。
だけど、右手に下げた黒き刀身の得物は。
仮面の後ろから垂らされた、特徴的なオレンジ色の髪は。
こんなにも違うのに、『彼』だとハッキリ分かってしまう。

618壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:42:32 ID:diYNJsbo0
「一……護……?」

自分自身のものとは思えない程、掠れた声で名前を呼ぶ。
百年の時を孤独に生きた、疲れ果てた老婆の如き声色へ。
ソレは一声も発さず、ただ仮面越しにタギツヒメを見やる。
対話の意図を籠めたのでは断じて違う。
仮面に隠れた瞳に射抜かれ、理解せざるを得なかった。

獲物を見付けた獣の目だと、分かった時には既に遅い。

「がっ……!?」

咄嗟の判断で金剛身を使い正解だった、そう僅かでも思ったかどうか定かでなく。
ただ気が付けば乱入者の姿が消え、背をどっと冷や汗が滴り落ちた。
備えなければと頭で考えるより早く、体が勝手に動いて。
すぐに腹部へ衝撃が襲い掛かり、両足が地から離れ吹き飛ばされる。

「……っ、っ!」

地面への激突は回避すべく、どうにか受け身を取るのに成功。
立ち上がり、自分の体が霊体でないのが分かった。
金剛身を使って尚、馬鹿げた衝撃が駆け巡ったのみならず。
拳一発で写シを剥がすダメージを、与えたと言うのか。

戦慄に苛まれる時間は、タギツヒメに寄越されない。
何せ敵はとっくに動き出し、目の前で剣を振り被ってるのだから。
疑問やその他諸々の全てを捨て置き、思考を切り替えなければ死ぬ。

「ぐっ……おぉ……!」

写シの再発動と並行し、八幡力で膂力を強化。
双剣を交差し振り下ろされた一撃を防いだ、まではいいが重過ぎる。
霊体にも関わらず両腕の感覚が急激に薄れ、眩暈を感じる程だ。
鍔迫り合うなど冗談じゃない、間違いなく圧し潰されるだろう。
歯を食い縛って刀身を受け流し、体勢が崩れた一瞬で迅移を発動。
すかさず死角へ動き斬魄刀を振るうも、敵も同様の得物で振り回す。

619壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:43:28 ID:diYNJsbo0
(何だこの力は……本当に一護なのか……!?)

殺し合いが始まった当初、生前の一護と一戦交えたのはハッキリ覚えてる。
あの時も強かったが、今現在斬り結ぶ存在はまるで別物だ。
技の冴えは大きく落ち、ハッキリ言って童子が暴れ回っているかのよう。
しかし膂力も速さも数段階上、何より一刀打ち合う毎に蝕む膨大な力。
霊圧の密度が会った時の一護とは、余りに違い過ぎる。

「何故だ一護!お前に何が…っ!?」

問い掛けへ言葉は返って来ず、代わりに叩き付けられる剥き出しの殺意。
受け流し切れずよろけたタギツヒメを、斬首せんと駆ける刀身。
危うげな体勢ながら辛うじて避け、間髪入れずに剣戟が再開。
言葉をぶつけても望んだ答えは得られないと、理解する他なく。
苦い顔でタギツヒメも己が力を行使、数手先までの未来を視る。

一定の時間を置いたからか、再び発動可能となった。
可奈美の例があるだけに過信はしないが、相手の手の内を把握可能なアドバンテージを活かし迎撃。
圧倒されたのは最初だけで、逆に追い詰める光景が――ない。

(我の反応が追い付かん……!)

次の次の更に次まで、一護がどう攻めるかは分かる。
しかし身体スペックに大きな差が生まれ、反応が間に合わない。
八幡力と迅移を使えど、膂力と速さは依然として向こうが上。
更に常時発せられる霊圧がじわじわと削り、霊体を軋ませる。
生命力の点で言えば刀使を大きく上回るが、無限の体力の持ち主に非ず。
写シの複数回使用は当然消耗が軽くない、かといって使わずに勝てる相手じゃない。
焦りはストレートに剣に現われ、叩き付けられた一刀を防げず斬り飛ばされた。

吹き飛ぶタギツヒメに、三度目の写シを使わせない。
死神の移動術とは異なるスピードで、一気に距離を詰めようと動き掛け、

620壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:44:29 ID:diYNJsbo0
「途中参戦の癖にはしゃぎ過ぎだ、少しは気を遣えよ!」

振り向くや背後からの斬撃を、片腕で防ぐ。
生身の白い肌に魔戒剣が噛み付いたというのに、掠り傷一つ付かない。
手を抜いた覚えはなく、今だって相応の力を籠めてこれだ。
マジかよと、小さく苦笑いしたのを聞いたかどうか。
反対の手に握られた得物が食い破るより一手早く、ジンガが後退。
全身に冥黒の炎を纏ったのと、大量の光弾が殺到したのは同じタイミングだった。

「理性のぶっ飛んだ野獣同然だってのに、手数は一丁前に豊富か!」

皮肉を飛ばしながらも棒立ちにはならない。
一発一発の威力は低いが速度と手数で押す、虚弾(バラ)呼ばれる技とは知る由もなく。
火炎を纏った刃で薙ぎ払い、時には片手からの放射で掻き消す。
煙が視界を覆うも、魔戒剣の一閃ですぐに晴れる。

「ハハッ……!」

一呼吸終えたかも怪しい猶予で、一護が間近に迫っていた。
目を見張る速さに思わず笑いが漏れ、跳ね上げた腕で攻撃を防御。
無論、防いだ相手への称賛が飛ぶ筈はなく。
タギツヒメにやったのと同様、猛攻と呼ぶのすら憚れる悪夢の如き斬撃が襲来。
出鱈目でガキのような動きだが、決して低くは見れない。

タギツヒメも、少し前の梔子ユメやギギストも。
攻防一体の剣術を使っていたが、一護は丸っきり違う。
動作全てを攻撃の為に使い、自分への被害を防ぐのを考えない。
尤も、桁外れな能力を思えば防御に出る必要性も抜け落ちるだろう。

ホラー態に加えて、冥黒の炎で自身を強化。
上記二つを駆使し食らい付くも、一護の力はジンガをして舌を巻く程。
打ち合いを経る毎に両腕へ負担が襲い、ならばと戦法を変える。

621壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:45:07 ID:diYNJsbo0
「向こう見ずなガキには覚えがあるんでなぁっ!」

放送前、散々追い詰めてやった薫を思い出す。
自身の被害を鑑みない動きは型から外れているが、別に対処法がない訳ではない。
そも、魔戒騎士時代は膂力で勝るホラーと戦ったのだって一度や二度じゃない。
捨てた過去なれど培った技術を用い、カウンター重視の動きへ出る。
一護の繰り出す斬撃を捌き、受け流し様に急所へ一撃入れた。

「……ま、あのチビ程単純じゃないってことか」

燃え盛る魔戒剣は確実に、脇腹を走った。
だというのに血の一滴も流れず、元の白さを保ったまま。
まるで皮膚自体が強固な鎧なようだと、呆れ笑いを浮かべるのも束の間。
振り回した刀が叩き付けられ、防御を取った体勢のジンガを大きく殴り飛ばした。

偶然か意図してかは不明だが、激突地点はタギツヒメのすぐ隣。
無様に背から落ちるのは御免だと、両足で踏ん張り着地。
傍らで三度目の写シを張ったタギツヒメも、気怠く肩を動かすジンガも。
互いには一切目をやらず、視線は宙へ固定された。

「あれ、は……!」
「大盤振る舞いも大概にして欲しいな、おい……」

驚愕と苦笑いの、反応こそ異なるも。
認識している脅威は同じ、膨大な霊力を一点に集中させた一護から目を離せない。
ELSに肉体を弄ばれる一護は、生前の能力を全て使える。
それは本来辿った筈の、少し先の未来で見せた技。
自我を保ち、仲間に微笑み掛け安心させた面影は欠片も存在しない。
最早護るという決意すら、魂と共に消え失せ純粋な破壊を齎す。

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)。
数ある破面の中でも選ばれた者達、十刃のみが扱う最強の虚閃。
強大過ぎる威力故、虚夜宮(ラス・ノーチェス)内での使用を藍染惣右介が禁じた程。
生半可な抵抗を無に帰し、骨の欠片も残さず焼き払う閃光。
負を宿す二体の異形への神罰とでも言うように、頭上より降り注いだ。

622壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:46:10 ID:diYNJsbo0
「く…おおおおお……!!」
「がっ…あああああああああああああっ……!!」

逃げられる大きさではない、防いだ所で全て無駄。
だからといって、死を受け入れる殊勝さは持ち合わせていない。
月牙天衝と、冥黒の炎を纏った斬撃。
共に引き出せる最大出力の刃を放ち、勢いこそ削ぐもそこが限界。
空間すら歪む熱量が、大荒魂と魔獣ホラーの視界を焼き。
地面諸共、光が包み込んだ。

天から見下ろす一護の瞳が映し出すのは、原型を留めていないアスファルト。
爆撃が起きたとしか思えない惨状を、生み出した当人は無言。
見た目と力だけを再現し、人格は無い動く死体。
ELSは特別個体を除いたNPC同様、参加者を見つけ次第襲うだけ。
尤も、手を下すまでもなく死ぬ者までは別かもしれないが。

「がっ……ぐっ……!ぐぉ……」

膝を付き、胸元を抑え呻く銀髪の男。
ホラー態を保つだけの余力を奪われ、尚もジンガは生きていた。
但し額に大量の汗を浮かべ、何かを耐えるように奥歯を軋ませる様は無事とは言い難い。
纏った黒の衣服にも、覗かせる肌にも傷はない。
外ではなく、内側で荒れ狂う激痛がジンガを苛んでいる。

閃光に焼き払われる瞬間、ジンガが取ったのは諦める選択ではない。
一護が放った王虚の閃光を、ホラーを捕食するかのように喰ったのだ。
ELSの再現とは言っても虚の霊力を籠めたのなら、体内に取り込む事が出来ない訳ではない。
直前に放った斬撃で、威力が削がれていたのもプラスに動いた。
危うい所か自殺行為に等しい賭けだが、結果は成功。

だが当然、無事に済む訳がない。
人間の魂や肉体を餌にするホラーと、生きた人間の魂魄を喰らう虚。
互いに相性は悪くないが、一護の霊力はそこらの低級虚とは比べ物にならない。
第二形態の帰刃を解放した破面、ウルキオラ・シファーを圧倒する正真正銘の怪物。
虚としての力を完全に引き出した一護は、ジンガですら手を焼く狂戦士。
強過ぎる力は却って毒にしかならず、内側から肉体を滅ぼさんと蝕む真っ最中。
自らが喰らったモノが敗因へ繋がる、ホラー喰いのホラーが皮肉な末路を辿るのも時間の問題だ。

623壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:46:43 ID:diYNJsbo0
更にもう一体の異形もまた、刻一刻と死が足音を立て近付きつつある。

「………………ぁ………………」

微かに漏れ出た声が何と言ったのか、タギツヒメ自身にも分からない。
指一本動かすのも億劫で、吐息一つで全身に苦痛が襲う。
瞳をどうにか動かし、今どうなってるかを見てみる。
即座に後悔しそうになったくらいには、惨たらしい有様だった。

ジンガが喰ったのもあってか威力は落ちたが、直撃は避けられなかった。
写シなど一瞬で剥がされ、体中を熱が包み込んだのがほんの数秒前。
大荒魂特有の純白の肌など、どこにも見当たらない。
こんな状態でまだ生きてられるのが、自分でも不思議でならない。

運良く、いいや運悪く即死を免れたに過ぎない。
己を動かす命の感覚とも言うべきモノが、薄れていくのが分かる。
最早疑いの余地はない、これは確実にあれだろう。
もうじき自分は死ぬ。

(そう、か…………)

分かってしまったら、あっという間だ。
真っ先に浮かんだのは、一足早く逝った男達への申し訳なさ。
彼らのお陰で孤独から解放され、命まで救われた。
なのにその命が、こんなにも早くに喪われようとしている。
何度悔いても悔やみ切れず、出て来るのは「済まない」の四文字ばかり。

思えば何一つ、生きてる内にやれなかった。
一護の死の真相を確かめられず、ロロへの疑いが正しいか否かも分からず終い。
キャルと沙耶香を残し、勝手に一人息絶える。
我ながら余りにも情けなく思うも、既に視界すら曖昧だ。
未練ばかりが顔を出すのに、肝心の生きる力がもう残されていない。

624壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:47:18 ID:diYNJsbo0
(ハッ……分の悪い賭けに出ちまったか……)

己の終わりを悟ったのはジンガも同じ。
身に余る力は己を滅ぼすとは、古の時代から人間達への戒めにされた言葉。
よりにもよって自分が体現してしまい、苦笑いを浮かべるのが精一杯。
別に今更死を恐れてはいないが、まさか死に方すらも選べないとは。
ホラーに堕ちた魔戒騎士に相応しい最期、と言えばその通りかもしれない。

こんな風に受け入れる辺り、どうやら自分の中でも諦めが大半を占めてるのか。
参加者ですらない死体人形に敗れ、みずぼらしく死に絶える。
笑わなければやってらない。

何を思おうと、辿り着く結末は一つだけ。
大荒魂とホラー喰いのホラーは、黒崎一護の死体を利用した金属生命体に敗れた。
ぞれぞれの未練や因縁も関係無く、揃って脱落者の仲間入り。
酷く呆気ない最期が、





(死ぬのか……?“あの”一護を残して……?)

(諦める、ねぇ……)





火が灯る。
小さく、一吹きで消えそうなくらいに頼りない。
だけど熱を宿し、消えてたまるかと光を発する。
そんな火が、確かに灯された。

625壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:50:32 ID:diYNJsbo0



怒りが、タギツヒメの中で膨れ上がる。

自分がここで死んでも、一護はきっとこの先も参加者を殺し続ける。
善人か悪人か、戦う力があるかどうかも一切関係無し。
平等に死を振り撒く、文字通りの死神へ成り果てて。
生前の面影は何処にもない、どんな男だったかを誰もロクに知る機会だってない。

そんな光景が現実になるのを、許せる訳がないだろう。

黒崎一護という人間は、何度思い返しても馬鹿な少年だった。
殺そうとした自分を理解しようとし、実際に抱え続けた孤独を言い当てて。
激情のまま斬り掛かっても、殺すつもりの反撃は決してせず。
本気で自分を助けようと、刹那と共に決死の『対話』を試みて。

その果てに、自分を残して逝ってしまった。

(そうだ……そんな馬鹿だからこそ、我は救われた)

自我なき暴力として暴れ回る、今の一護は強い。
しかし、誰かを護る為に命懸けで戦った少年の魂はそこにない。
黒崎一護の生きた証を、護る事を諦めずに散ったあの大馬鹿者の戦いを。
踏み躙られ、唾を吐かれ、徹底的に汚すに等しい存在を放置するのか。

いいやさせない、させてたまるか。

孤独に苛まれ抱いたのとは違う、より激しく熱き怒りが燃え盛る。
一護の生き様を嘲笑う、許し難き存在への。
一護を苦しめる存在を前にし、生を手放そうとした己への。
しつこく引き摺り落とさんと手を伸ばす、『死』への怒りがあった。

626壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:51:07 ID:diYNJsbo0
(随分とまぁ、我ながら物分かりが良くなったもんだ。情けないくらいに、な)

嘲笑を向ける対象は他の誰でもない、ジンガ自身。
下手を打ったからといって最後まで悪足掻くでもなく、仕方ないで済まし諦める。
一体全体自分はいつの間に、負け犬根性が染み付いたのか。

自分をも超える強者が参加してると、早期に把握した。
今のままかち合っても分が悪いと理解しており、呆気なく死んでも不思議はない魔境だ。
こういう結末が、起こり得ないとは言い切れない。

だから何だと言うのか。

どれ程の強大な力を持っていようと、己を歯牙にもかけない奴だろうと関係無い。
自分が唯一、敗北を認めたのはこいつではない。
忌々しい輝きを刻み付け、強さの理由もその在り方も理解している守りし者。
道外流牙以外の手で滅ぶ最期を、受け入れられるものか。
あの男と同じ強さを何一つ持ち合わせない、単なる死体如きに屈するなどお断りだ。

(そうだよなぁ……お前の顔も見ずに死ぬなんざ、つまらないにも程があるよなぁ。――道外!)

お前はあいつじゃない。
あいつの、黄金騎士の輝きを持たない死体が。
道外流牙とは似ても似つかない、殺戮しか能の無いガラクタ風情が。
この俺を殺せると思うな。
簡単に命をくれてやるなどと、思い上がるな。

627壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:51:53 ID:diYNJsbo0
抱いた感情は全く違う。
憤怒と執着、後者に至っては善意などあろう筈もない。
しかし、想いの強さに疑いの余地もなく。
予定調和の終焉を覆す、逆転のトリガーが引かれた。

「――――――ッ!?」

黒崎一護の肉体を奪ったソレの前に、膨大な熱が広がる。
天を衝く光の柱が出現し、眩さで視界を支配下に置く。
神の齎す奇跡とでも言うべき現象は、徐々に収縮。
等身大にまで治まり、やがて新たなる戦士が産声を上げた。

焼き爛れた肌は元の白さを取り戻し、人ならざる肉体は一層の活力に漲る。
両手に下げた双剣は変わらず、ただ纏う衣装は違う。
ノロの眼球を模した意匠は排除され、白一色のコートに変化。
曝け出した腹部にも傷一つなく、何より意識を奪われるのは頭部。
無機質な仮面が素顔を隠し、その下の表情は窺い知れない。

言葉無く片手を持ち上げ、思い切り叩き付けた。
斬魄刀、天鎖斬月の柄が凶器と化す。
被った仮面に亀裂が入り、脆いガラスのように砕け散る。

「我の新しい……いや、お前が齎した力か」

額に仮面の一部を残し、黒き斬魄刀を見やりそう呟いた。

タギツヒメは人に近い見た目をしているが、正しくは人間ではない。
珠鋼の製錬時に分離した不純物が結合を繰り返し、果てに知性を獲得。
元々神聖を帯びたのもあり人格を形成、自らの魂を作り上げた。

負の念で構成された魂を持ち、生きた人間を襲う性質を持つ。
細かな違いは多々あれど、その在り方は現世の人間とは違う。
むしろ――虚に近い。

土台は最初から組み上がっていた。
虚の代用とも言うべき魂魄。
主催者の細工が仕込まれたとはいえ、天鎖斬月という死神の力。
王虚の閃光を浴び、肉体に焼き付いた霊力で虚の影響が増大。
そして最後の一欠片(ピース)、心意システムが激しい怒りに呼応し完成に至った。

正規の方法とは全く異なる過程を経て、タギツヒメは破面化を果たしたのである。

628壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:52:32 ID:diYNJsbo0
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」

響き渡るは傲岸不遜を絵に描いた高笑い。
世界そのものを見下し足蹴にする、悪意で彩られたホラーの叫び。
ザエルアポロ・グランツのように貪欲で、グリムジョー・ジャガージャックやノイトラ・ジルガのように闘争心を剥き出して。
己を蝕み崩壊へ導いた霊力を、逆に乗っ取り糧へと変える。
強いられる滅びと激痛すら、意思一つで捻じ伏せ屈服。
ただ自分の為だけに使われろと、有無を言わさず命令を下す。

伝説の牙城、永遠の命を授ける方舟、正史にて道を踏み外し堕ちた転生体。
全てを我が物にした時同様、黒崎一護の霊力をも支配下に置く。
昂りに逆らわず力を解放、死に体のホラーはもうどこにもいない。
悪しき魂の新生を祝福するかの如く、強風が吹き悲鳴のような音を立てた。

より荒々しく、より攻撃的で、邪悪さ極まる紅い異形。
同族の魔界の住人や、凄腕の魔戒騎士すら裸足で逃げ出す重圧感。
魔獣ホラー・ジンガ翔。
黄金騎士ガロが、邪気を浄化し力を増すのとは真逆。
大量の邪気を一気に取り込み、本来ならば有り得ぬ進化を果たした。

ヴァサゴやガブリエル・ミラーがそうだったように。
心意システムは微笑む相手を選ばない、意思の強さが物語る。

霊圧が格段に上昇し、一護も即動きに出る。
標的たる参加者が死を脱し、未だ歯向かう気で立つならば。
プログラムに従い殲滅を実行するのみ。
二体目掛けて虚閃を放ち、

「生温いな」

黒炎を纏った魔戒剣の一振りで、線香花火さながらに儚く散る。
虚閃が掻き消えるや既に、目の前にはジンガが到達。
音を置き去りに振るわれた剣へ、一護も咄嗟に自身の得物を翳す。
膂力の高さも相俟って、突破不可能な防御。

「ッ!?」

描いた光景は実現せず、一護の望まない現実が降り掛かる。
先とは段違いのパワーで防御を崩され、肉体へ刻まれる刀傷と火傷。
鋼皮(イェロ)によるダメージ軽減があれど、勢いまでは殺せない。
空気の抜けた風船のように、あらぬ方へと吹き飛んで行く。

宙で無防備な体勢を、いつまでも取り続ける訳にはいかない。
一回転し着地、霊力を固め即席の足場に使用。
追撃を仕掛けるだろうジンガに備え、斬魄刀に力を掻き集めた。

629壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:54:35 ID:diYNJsbo0
「どこを見ている」

背後からの声に、人間だったら冷や汗の一つでも流しただろう。
打撃一発で血肉の雨を降らせんと、振り返り様に裏拳を放つ。
だが当たらない、標的は影も形も見当たらず虚しく宙を切るのみ。
視線を周囲へ張り巡らせるまでもない、霊圧探知で居場所を特定。
死角目掛け斬魄刀を突き出すも、向こうは既に読んでいる。

「烈風斬!」

魔力の代わりに霊力を喰わせ、斬撃波を走らせた。
不可視の刃に斬り刻まれた挙句、暴風に囚われる。
揉みくちゃで吹き飛ぶ一護だが、このまま離脱させる気はない。
すかさず響転を使い急接近。
視界には標的ともう一体、最優先で斬る異形を挟み紅いホラーも映り込んだ。

「よう」

飛翔態となり、一護が吹き飛ばされるだろう位置を先読みし上昇。
タイミングを合わせたつもりはなく、しかし示し合わせかのように二体の怪物が剣を振るう。

「力ばかりが強くとも、一護の意志が無ければ勝てぬ道理はない!」

高密度の霊圧を撒き散らし、暴れ狂った鬼さながらに得物を振り回す。
癇癪を起こした童子も同然の動きへ、先程までは手を焼かされたがもう違う。
流れる水の如き鮮やかな、尚且つ激流を思わせる勢いを乗せた双剣。
タギツヒメが浮かべる顔に焦りはなく、己が滅ぼすべき者をしかと見据え繰り出す剣技。
ただ強いだけの者では、勝てる道理もないと華麗に捌く。
頭上から振り下ろす一撃へ、刀身を添え力の向きを別方向へと変える。
引き戻すまでの僅かな硬直を見逃さず、あっという間に赤い線が無数に刻まれた。

「馬鹿力の誤魔化しが効かなくなって来たな!一から鍛え直してみろよ!」

幾度も繰り出す斬撃が届かないのは、もう一体もそう。
十全の威力を乗せた斬魄刀と、時には霊力でコーティングした拳を叩きつける。
重く素早い猛攻を前に、ジンガが防戦一方となりはしない。
真っ向から魔戒剣や打撃を叩き付け、押し返し怯ませる。
復帰はほんの一瞬で済むも、生じた隙へ刃を捻じ込み反撃の機会を悉く奪う。
デタラメな連撃に思えて、その実的確に一護を斬り体力を削り取る。
顔面へ突き進む拳もなんのその、腕を掴んで引き寄せ蹴り飛ばす。

共闘の意識はなく、自分の思うがまま剣を振るっているに過ぎない。
だというのに互いの動きで阻害される事態にはならず、常に追い詰められるのは一護の方。
事前の斬り合いで手の内は知った、だから次にどこを斬る気か予測出来る。
優先して一護を倒す両者共通の意志が、皮肉にも下手な仲間同士以上のコンビネーションへ繋がった。

630壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:55:44 ID:diYNJsbo0
「――――――ッ!!」

ほんの数分前まで圧倒し、死の寸前まで追い詰めた筈。
なのにどうだ、今やいい様に弄ばれてばかり。
単なる練習台の人形も良い所だ。
このまま勝ちを譲ってやりはしない、霊力の足場を蹴り跳躍。
勝利への執着故に非ず、NPCとしてのプログラムされた思考が大技を選択。
収束する膨大な力に、タギツヒメ達も覚えがある。
王の名を冠する閃光で以て、今度こそ纏めて焼き払う気か。
桁外れな威力の高さは身に染みており、直撃し二度も生き延びられる幸運には期待出来ない。

命乞いには聞く耳を持たない。
一度目で死を受け入れなかった愚行を後悔させるかのように、王虚の閃光を発射。
頭上より降り落とされた光の柱に、一護自身の視界も薄れる中。
ハッキリと見た、神罰に異を唱える度し難き怪物達を。

「我にしてやれるのは、結局こんなことしかない……。一護、今お前を解き放ってやる!」

両手で構えた天鎖斬月が貪り喰らう、タギツヒメ自身の霊力。
これ以上一護を歪んだ形で縛り付けない為なら、幾らでもくれてやる。
だから力を貸せと言えば、斬魄刀に宿る力が数段増す感覚を覚えた。
まるで刀の意志が、元の使い手の暴挙に憤るかのように。

「遊んでくれた上に、力を一つくれた礼をしなきゃなぁ?遠慮しないで、たらふく喰え!」

長大化した魔戒剣が纏うは、悪しき力の集合体。
魔界の住人、冥黒の炎、現世の調和(バランス)を乱す堕ちた魂魄。
自分自身を滅ぼし兼ねない陰我をも、手足同然に扱う。
安寧など断じて訪れはしない、怨嗟に包まれ無間の苦痛を味わい死に果てる。

631壊乱Ⅲ:chAngE ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:56:13 ID:diYNJsbo0
「月牙――天衝!!!」
「じゃあな!それなり楽しかったぜ!!」

相反する意思を籠めた剣が振り抜かれ、幕引きの瞬間は訪れた。
王の閃光を押し返すだけでは飽き足らず、純黒に染まる刃が侵食。
輝きが失われて尚止まりはしない、喰らい尽くすまで決して終わらない。

「――――――――――――――ッ!!!!!」

悪足掻きで振るった剣も何もかも、全て飲み込まれていく。
放った王虚の閃光は最早、蛍より小さな輝きを一瞬灯すだけ。
二度と肉体を利用されない為に、金属生命体の存在した痕跡を根こそぎ消し去る。

パラパラと落ちたのが焦げた皮か、骨の欠片か。
答えを知る術はもない、熱風が全てを持ち去って行く。
空一面を彩る黒い霊圧の残滓が、一つの終わりを伝えていた。

「一仕事終わり、と。それじゃ、続きといくか」

見届けた消滅を鼻で笑い、軽く首を回し視線を外す。
双眸が見つめる先には当然、白を纏った大荒魂。
暫し閉じた瞳の奥で、何を噛み締めているのか。
開いた時には僅かな悲しみを宿すも、すぐに切り替える。
怜悧な目がジンガを射抜き、戦闘再開へ応と答えた。

「疲れてるんなら素直に言えよ?一撃で終わらせてやるくらいの気遣いは、俺も出来ない訳じゃない」
「抜かせ。貴様こそ、消耗を理由に降参可能なのは今が最後だぞ」

軽口交じりの挑発を、毒を吐き捨て切り捨てる。
力を増したのはどちらも共通、警戒はあれど負けを認める潔さはない。
掛ける言葉はこの先不要、殺意を籠めた剣だけで構わない。

空が元の青さを取り戻し、白と紅の魔剣士達が再び戦の音色を奏で出す。



【ELS一護@本ロワオリジナル 消滅】
【黒崎一護@BLEACH 解放】

632壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:57:24 ID:diYNJsbo0



戦士、という見立ては間違っていない。
ギアスの影響でルルーシュの配下となったNPCに、背を向け逃げ出す思考は存在しない。
攻撃へ躊躇を抱かず、迷いで己を縛り付けない者。
それが当て嵌まるのは二人の少女、キャルと沙耶香もまた同じ。

抜刀と同時に写シを発動、すかさず迅移により加速。
プレイヤーに選ばれた刀使の中で、最も体力的に劣るのが沙耶香だ。
速さを極めた長所を活かすには、呑気な様子見ではなく先手必勝。
急接近で懐に潜り込み、構えた刀が線を描く。
一度や二度で終わらせはしない、敵が反撃に移る暇は決して与えない。

即効で終わらるのが難しくとも、何らかのダメージにはなる。
刀身が敵の肉体を撫で、思い描いた光景はしかし。
現実にはならず、異様な手応えに表情が凍り付く。

「エナジーアイテム抜きでその速さか、面白い!」

頭上からの声に苦悶の色はまるで宿っておらず、今の攻撃が効果無しだと知らせて来た。
硬過ぎる、異形の肉体とはいえ既存の生物とはまるで違う。
ならばと八幡力を使い膂力を引き上げるが、相手もここで攻めに入る。
牙を二本組み合わせたような剣を振るい、その動作一つで大気が絶叫。
途端に沙耶香の脳が危険信号を鳴らす、コレとの打ち合いは絶対に避けろと。

僅かな硬直時間で到達する剣を阻むは、後方よりの援護魔法。
魔力を練り固めた弾が複数飛来、紅蓮の肉体に命中。
魔物の外皮を削り、脆い内部を焼き焦がすキャルの術。
此度は相手が悪いとしか言いようがなく、全く堪えた様子が見当たらない。
だが多少動きを阻害する役目は果たし、沙耶香が動ける猶予が生まれた。
上半身を逸らしながら後退、少々遅れて横薙ぎの剣が通過。
剛腕が叩いた空気の揺れだけで、剥き出しの頬に痛みが走る。

633壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:58:06 ID:diYNJsbo0
「三番隊前へ!二番隊撃て!」

凛とした声がインカム越しに届く。
戦いに挑むのは参加者のみならず、拠点防衛を命じられたルルーシュの軍隊もだ。
平城学館の刀使達が抜刀し突撃、更に別方向からは銃弾が飛ぶ。
日常的に銃火器を使用する、キヴォトス出身故にだろう。
正義実現委員会の生徒達が撃つ弾は、正確に標的を捉えた。

「ほう、ライドプレイヤーよりはマシな攻撃が出来るらしい」

背中に当たる銃弾へ、ほんのちょっぴりの感心を籠めた呟きが出る。
痛がる素振りは見せず、事実本人は痒いとさえ思えない。
陣を組み斬り掛かる刀使も、成程人間の子供らしからぬ乱れの無さ。
こういった者達が仮面ライダークロニクルのプレイヤーなら、一体どうなっただろうか。

「だがこの程度、まるで話にならん!」

ふと浮かんだどうでもいい考えを捨て、二振りの牙を豪快に振り回す。
バグスター態となったグラファイトの剛腕に掛かれば、一振りすら絶大な威力を発揮。
写シを剥がすどころか、再使用の暇も無しに両断。
悲鳴も上げられずに屍と化し、あえなく自らの役目を終えた。

「お前はどうだ、糸見沙耶香。今の斬撃のみで終わりではないだろう!」
「……っ!」

散らされた骸から、標的を参加者の刀使に変更。
アスファルトが弾け飛ぶ勢いで踏み込み、眼前へと距離を詰める。
叩きつけん勢いの双刃を、身を捩って回避。
直接触れていないにも関わらず、発生する暴風だけで宙へ舞い上がりそうだ。

(打ち合ったら確実に押し負ける……!)

膂力の点では間違いなく、八幡力を使ってもグラファイトには及ばない。
下手に鍔迫り合おうものなら、己の腕に負担を強いるだけ。
よってここは速さを武器に、打ち合いを避けつつ着実に攻撃を当てていく。

戦法を決めた以上は即実行あるのみ。
死角へ移動して御刀を突き出し、向こうが反応するより早くまた移動。
斬っては避け、突き刺しては避けを繰り返す。
写シは未だ剥がされず、常にこちらの攻撃が当たっている。
だというのにまるで効いた様子がない、そればかりか両腕に痺れが蓄積。
小針を延々と岩石に突き刺す、途方もない労力に出ている気がしてならない。

634壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:58:41 ID:diYNJsbo0
「オイオイ何だってんだよクソがよぉ!あの真っ赤野郎に全然効いてねぇぞ!?」
「キャルの姐御ォ!魔法の支援はどうなってんだよ!えぇ!?」
「っさいわね!もうとっくにやってるわよ!」

セーラー服にバツ印のマスクが特徴なスケバン生徒達が、軽機関銃を乱射。
小気味いい音を立て発射された弾は確かに、グラファイトへ当たってはいる。
しかし呻き声の一つも漏らさず、こちらの銃撃など気にも留めず沙耶香と戦闘を繰り広げてるではないか。
これでは何の為に撃ってるのか分からなくなった。

「嘘でしょ…アイツどんだけ馬鹿みたいに硬いのよ!?」

キャルが使う魔法は、単純に相手を攻撃するだけが能じゃない。
物理・魔力への耐性を下げダメージを通り易くする。
ランドソルにいた頃から度々使い、仲間達に有利な状況を作った術もその一つ。
発動が妨害された形跡はなく、確かに効果が表れてる筈だ。
なのにグラファイトから異変が感じられない、という事はつまり。
耐久性を低下させられて尚も、桁外れな頑強さを持つのに他ならない。

辿る筈だった未来において、レベル100の仮面ライダーブレイブとレベル50の仮面ライダースナイプを単独で相手取り。
殺し合いでは天与の暴君、伏黒甚爾をして面倒な硬さと言わしめた程。
小手先の技や装備で突破できると思うなら、紅蓮の龍戦士を甘く見過ぎである。

「全然……斬れない……!」

後方支援に徹するキャル達ですら、息を呑む厄介さだ。
間近で得物を振るう沙耶香が、感じる危険性は更に上。
グラファイトの双牙に切り裂かれるのは避けてるといっても、振るう度に起こる衝撃は確実に体力を削ぎ落とす。
加えて得物に火炎を纏わせるせいで、焼け付く熱さが集中力をも乱していく。

「五番隊出過ぎないように!八番隊構え!」

沙耶香に隙が生じそうになれば、間を縫うのはNPC達。
立て直しの時間を稼ぐべく、長船女学院の刀使が突撃。
ツナギを着た少女達、傭兵バイトの一団も各々銃を持ち援護。
双刃に薙ぎ払われ、離れた位置のNPCにはガシャコンバグヴァイザーから光弾を撃つ。
次々に力尽きる一方で、辛うじて無事な者もチラホラ。
後退し部隊を編成し直す間、少しでもグラファイトを止めようとキャルが魔力弾を連射。

635壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:59:13 ID:diYNJsbo0
(今のままじゃ、やっぱり厳しい……)

稼いでもらった猶予で息を整え、幾分冷えた思考を回す。
戦況を変えるのに何か一つ、使える手はないかと悩み。
ふと思い出したのは、未使用の支給品の存在。
説明書を読み効果は知った、自分との相性も多分悪くない。

問題があるとすれば、自分じゃなく真人に支給された道具なことか。
強い嫌悪を抱く男の支給品を使うのに、一切抵抗がないと言えば嘘になる。
しかし個人的な理由で意地を張り、仲間達を危険に晒し続ける程。
自分勝手になった覚えもなく、頭を振って迷いを払い除ける。
グラファイトの視線がキャルを捉え、踏み込まんとするのが見えたなら悩む時間は終わりだ。

写シを維持したまま、御刀を鞘に納める。
代わりに別の得物を取り出し抜刀、すぐさまソードスキルを発動。
独自の呼吸音が音色を奏で、沙耶香が本来知り得ない技を繰り出す。

――霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り

「ヌッ!?」

滑り込むように懐へ潜り込み、斜め上に刀を振るう。
速さが一段と上がっただけでなく、動き自体もこれまで見せたのと違う。
傷こそ付けられないが、グラファイトの意識を逸らすのには成功だ。

衛藤可奈美が冨岡義勇の愛刀を振るったように、沙耶香もまた日輪刀を手にした。
霞柱・時透無一郎の得物を手にし、全集中の呼吸を発動。
血液が瞬く間に沸騰、指の端まで力が漲る。
写シとの相乗効果で身体能力を大幅に強化、鬼狩りならぬバグスター狩りへ挑む。

「戦法を変えたか、成程な」
「卑怯って言いたいの?」
「まさか。CRの人間達が、ガシャットを使い分けるようなものだ。遠慮せずに掛かって来い」
「ガシャットってルルーシュが持ってた……ううん、今は…!」

気になる単語が出て来たが、考え込んでる場合じゃない。
詳細を聞くにしても、まずは勝たなければ。
意識が標的の打倒へと沈み込み、技を繰り出す構えを取る。

636壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/26(土) 23:59:54 ID:diYNJsbo0
――霞の呼吸 弐ノ型 八重霞

小柄な体躯から放たれる、一呼吸の間に放つ無数の斬撃。
体幹に大きな捻りを加えた事で、手数に優れた連撃技へ繋げた。
振るう得物は一本なれど、襲い来る刃は複数に分裂したかのよう。
細切れの末路を引き寄せる脅威を前に、グラファイトも双刃を振るい対処。

「悪くない技だが、まだまだ足りんっ!!」

発した咆哮は強がりに非ず、己が力で打ち破れると確信を抱くが故。
沙耶香が放った斬撃と同じ数、同じ速さで双刃が唸りを上げる。
描いた一閃は全て打ち払われ、紅蓮の肉体に傷の一つも許さない。
膂力と耐久力だけが全てではないと、思い知らされた直後に次の手札を切る。

――霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫

両手持ちの日輪刀が描くは、霞を消し飛ばす巨大な円。
大振りながらも隙を生じさせない、爆発的な加速。
威力と速度の両方に優れ、尚且つ広範囲をカバー可能。
衝撃波をグラファイトに叩き込み、強引にでも距離を稼ぐ気か。
間違った戦法とは言わない、だが効くかどうかは別の話。

「なに……!?」

双刃の一閃で押し返さんとし、動作に鈍りが発生。
何事かとの答えは、紅き肉体を痛め付ける雷の魔法。
高出力で迸る電撃が、拘束具の如くグラファイトを抵抗を封じる。
とはいえ以前の自分ならともかく、今はもう違う。
力任せに痺れを払い除き、あっという間に自由を取り戻した。

「まあ効かないって分かってたけど、いざ本当になるとムカつくわね……」

グラファイトに電撃を浴びせた当のキャルは、渋い顔で愚痴を呟く。
以前ルーセント学院で、ミソラが洗脳騒ぎを起こした際に使った魔法だ。
あの時は一般生徒を気絶させるに留めたが、グラファイト相手に威力の細かい調整は不要。
最大出力で放ったはいいものの、ほんの少し邪魔をするのが限界。
頑丈さには呆れと文句しか生まれずとも、無駄ではない。
どんなに僅かだろうと隙は隙、そこを見逃す沙耶香じゃない。

637壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:00:42 ID:RqEoB1FI0
――霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海

標的から目を離さずに突撃、腕が掻き消えて見える程の速度で振るう。
動作を最小限に抑える事で、絶え間ない斬撃を実現。
参ノ型が霞を払うのなら、こちらは霞を生み出すが如き技。
大量の刃が群れを成し殺到、一撃一撃の威力は低くとも全て集まればどうなるか。
グラファイトへ叩き込まれた衝撃は、これまで沙耶香が放ったどれよりも上。
傷はないが問題無い、体勢がよろけ後退した今がチャンス。

「サヤカ!」
「うん!」

名前を呼ばれ、何の用だと聞き返しはしない。
魔力の収束で光を帯びたキャルを見れば、何をする気かは明白。
させじと動き出すグラファイトへ、次々命中するNPC達の銃弾。
倒せなくともほんの僅か、妨害さえ出来れば構わない。
巻き添えを食わない位置へ、沙耶香の退避を確認。
こちらも準備万端だ、梃子摺らされた分を籠めて思いっ切り叩き込む。

「アビスバースト!!」

広範囲の敵を巻き込む、特大の魔法が放たれる。
たった一体相手にかと思うなかれ、此度の敵には過剰な威力のがむしろ丁度良い。
大型の魔物だろうと仕留める、強力無比な必殺の術だ。
これが決まればと勝気な笑みを浮かべ、途端に凍り付いた。

魔法の直撃まで後僅か、だがグラファイトの戦意に欠片の揺らぎも生じない。
高火力で自分を打ち倒そうというなら望む所、相応の技で以て返さねば無礼だろう。
双刃に火炎が迸り、並外れた密度のエネルギーを収束。
小細工無用、真正面から打ち破ってこそ戦士の戦い也。

「ドドドド爆龍剣!!」

一刀両断の如く振り下ろし、放たれるは燃え盛る巨大な刃。
ドラゴナイトハンターZのプロトガシャット使用時に使っていた、黒龍剣という名の技。
レベル99すら超越した今なら、以前を凌駕する威力を叩き出す。
魔法を真っ二つに切り裂き、辺りを襲う爆熱と魔力の霧散。
離れた位置にいたキャル達にまで及び、そこかしこで悲鳴が起こる。

638壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:01:13 ID:RqEoB1FI0
「きゃああああああああっ!?」
「うっ……ああっ!?」

よりにもよって自分の魔力で痛め付けられ、枯れ葉のように宙を舞う。
楽しくもない空中遊泳は、壁に激突し強制中断。
目から火花が散るとの比喩は、あながち間違ってもいない。
視界が一瞬スパークし、次いでじわじわと襲う鈍痛。
小さく呻きながら立ち上がると、すぐ隣で同じ動きに出る気配があった。

「…サヤカ!?あんた、大丈夫なの……?」
「どう、にか……。写シは、剥がれちゃったけど」

日輪刀を杖の代わりにし、肩で息をなしながら言う。
体力消耗による疲労だけではない、地面へ叩き付けられた際に負った傷が痛む。
死に至る程の重傷が無いのだけは幸いか。
視線を移せば息絶えたNPC達と、運良く被害を免れたのがチラホラ。
そして何よりも存在を無視できない、仁王立ちする紅蓮の龍戦士。
紅き肉体は何処にも傷が見当たらず、依然変わらぬ脅威としてそこにあった。

「良い一撃だった。以前までの俺なら危うかったかもしれん」
「前のあんたなんて、こっちは知らないわよ……!」

煽り抜きに称賛を向けたつもりだが、キャルからすれば嫌味にしか聞こえない。
手を抜いて放った覚えはなく、そもそも加減が通用する相手なものか。
グラファイトの強さを改めて思い知らされ、延々と悪態を吐き捨ててやりたい。

(使うしかない、わよね……)

言っては何だがNPCでは足止めが限界であり、残った面々に過度な期待は無理。
現状最も接近戦に優れたタギツヒメは、未だこっちへ戻って来る気配無し。
現状打破の手段と言えば、自分が使える切り札。
チラと片手に視線を落とし、三画健在のソレを見やる。

使うべきだと言うだけなら容易いが、躊躇が無いとも言えない。
一画消費毎にゲームオーバーへ近付き、使い切った時が最後。
見せしめにされた二人のようになるのか、別の形で消え去るのか。
どちらだろうと死には相違なく、意識せずとも震えが走り――

639壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:02:18 ID:RqEoB1FI0
「キャル、危ないからもうちょっと下がって……」

頬に汗を垂らしながら、自身を庇い前へ出た小さな背中に。
自分よりもチビの癖して、果敢に得物を構え戦おうとする姿へ。
ギルドハウスで待っているだろう、エルフの少女が重なって。
抱いた迷いなど、あっという間に消し飛んでいった。

「……あーもう、やだやだ。ほんっとムカつく!」
「えっ?えっと…ごめんなさい、私怒らせるようなことを……」
「違う違う、あんたは何にも悪くないわよ。ただ、うじうじやってた自分に苛ついただけ」

不安気に尋ねる沙耶香へ笑いを一つ返し、フッと息を吐く。
ウザったく自分の中で渦巻いた、恐れだの何だのを払い除ける。
グラファイトと同じ事を言うようで、ちと気に入らないが。
以前までならともかく、今の自分はもう違う。
『美食殿』のキャルだと、胸を張って言える自分だから。

「チェンジ!プリンセスフォーム!」

令呪一画の消費と引き換えに、紡いだ絆の奇跡を見せてやる。
素肌を大胆に晒すのも一瞬、新たに纏うは豪奢な純白。
少女の憧れ、花嫁衣裳にも似た姿の名はプリンセスフォーム。
諦めきれなかった想いと共に、過去の呪縛を振り切った証。

「成程……それがお前の本気という訳か。面白い!全力で俺に強さを見せてみろ!」
「言われなくてもやってやるわよ!」

諦めを淘汰し足掻き続ける、戦士への歓喜へ啖呵を切り。
翳した手から魔力を放射、紅蓮の肉体を焼き潰す。
真正面より叩き込まれる力に対し、グラファイトに後退の二文字はない。
獲物を食い千切る龍の如く、双刃が捻じ伏せ霧散。

「っ!傷が治ってる……?」

防がれたが構わない、本命は攻撃じゃなく仲間への支援。
全快とまではいかないが、沙耶香の傷を癒す。
更にはケミーライザーへカードをセットし、トリガーを引く。
アッパレブシドーの力を限定的に開放、沙耶香の機動力を上げる。

640壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:02:53 ID:RqEoB1FI0
「体が軽い…これなら……!」
「ええ!さっさとこいつをぶっ潰して、テレビ局守ってルルーシュに借り作ってやるわ!」

威勢の良さは見せかけに非ず、魔力を操作し光線に変え発射。
数十本を一斉に放ち、尚且つ的確にグラファイトを狙う。
棒立ちの的にはならずと、双刃を回転し防御。
打ち消しながら突き進むも、僅かに押され足が止まった。

光線一本一本の威力が、先程までの魔法を大きく超えている。
火力と手数倍増を実現させた新形態。
レベル50のスナイプを思い出しつつ、これしきが何だと力を漲らせた。

「甘いっての!」

この程度で簡単に上回れるとは、キャルも思っていない。
バラバラに放った光線を収束、一点集中で威力増加。
グラファイトの進撃に歯止めを掛け、徐々に後退させていく。

「甘い、か。それは俺の言う台詞だ!」

なれど、流石は龍戦士グラファイトと言うべきか。
咆哮一閃、火炎を纏った斬撃が光線を叩っ斬る。
飛散した魔力が完全に消えるまでの僅かな間で、キャル目掛け急接近。

――霞の呼吸 弐ノ型 八重霞

忘れるなかれ、此度の闘争に臨むのはキャル一人じゃない。
全集中の呼吸とケミーの助力、二つが沙耶香の剣速を引き上げる。
繰り出す連撃は仲間の盾にもなり、グラファイトを寄せ付けない。
双刃と日輪刀が鎬を削り、持ち前のパワーを活かし前者が捻じ伏せんとし、

「カラミティサンダー!」

頭上からの落とされた雷撃が、容赦なく直撃。
鬱陶しい痺れを振り払うも、キャルの攻撃はまだ続く。
空中飛行のアドバンテージを活かし、宙より魔力弾を連射。
貫通性を高め、且つ狙いも疎かにならない。
煌びやかな弾幕を打ち払いつつ、放つ本人を直接叩くべく跳躍。
天駆ける龍のように、一跳びで標的の元へと得物を届かせる。

641壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:03:24 ID:RqEoB1FI0
――霞の呼吸 壱ノ型 垂天遠霞

そうさせない為にいるのが、鬼狩りの剣を振るいし刀使だ。
天を突き刺すかのように、両手持ちで日輪刀を突く。
両足をバネにした一撃が双刃に命中。
武器の破壊には至らなくとも、衝撃で狙いを逸らせれば上出来。

「目に物見せてやるわ!精々ビビって吠えてなさい!」

地面に降り立つや術を行使、自身の魔法の威力を更に底上げ。
大技の下準備は終わった、後は放つだけだと魔力を集中。
キャルの全身を迸る光を目にし、グラファイトも理解する。
ついさっき打ち破った術を遥かに超えた、強烈無比な一撃が放たれようとしていると。

なればどう出るのが正しい。
発射を妨害し、撃たれる前に仕留めるか。
いいや違う、それは余りに無粋の極み。
本気を出し己を倒さんと挑んだ戦士への、無礼に他ならない。

「良いだろう!お前の全力に俺も応えよう!」

構えを取り、こちらも力を集中。
全身より放出された炎を双刃に纏わせ、必殺の威力にまで昇華。
羂索達のゲーム打倒を誓った戦士に立ち塞がる、敵キャラクターとして。
己という壁を打ち破ってみせろと、龍が叫び。
上等だと少女が不敵に微笑み、激突の時が訪れた。

「アビスエンド――バースト!!!」
「ドドドドドドドドドドド紅蓮爆龍剣!!!」

放つは極大の光、振るうは爆熱の紅蓮龍。
輝きが薙ぎ払うか、火炎が飲み込むか。
互いに一歩も譲らず、前へ前へと突き進む。
見据えるのは眼前の敵のみ。
徐々に押され出したのはキャルの方、歯を食い縛ってこれ以上は退がるまいと耐え、

642壊乱Ⅳ:切り札の名はPrincess! ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:04:46 ID:RqEoB1FI0
「キャル…!私も……!!」
『ホッパ!ホッパー!!』

片手に添えられた白い手と、勝手に実体化し必死に背を押すバッタ。
呆れるくらいにお人好しで、心強い仲間に笑みが零れる。
グラファイトの勢いをほんの僅かでも落とすべく、残ったNPC達も攻撃。
これ程に支えられてしまっては、何が何でも勝つしかないじゃあないか。

「ぶっ飛べぇぇーーーーっ!!!」
「まだだ…!これしきでぇええええええっ!!!」

絶対に勝ってやる。
そう簡単に負けてはやらない。
相反する感情を声に乗せ、魂の底まで揺さぶる。
どちらか一方が倒れるまで、決して終わらない闘争の行方は――





<クロスセイバー!>

<執行!ジャスティスオーダー!>





天空から降り注いだ十本の聖剣により、誰にとっても望まぬ展開へ捻じ曲げられた。

643壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:06:42 ID:RqEoB1FI0



時間を定時放送の直前まで遡る。

早々にダインスレイヴという手札を切り、並行して松坂さとうを使い潰す。
余計な出し惜しみを抜きにエターナルを追い詰め、最終的には討伐完了。
大道克己と彼が率いた死者の軍勢は、ルルーシュ陣営の勝利で幕を閉じた。

配下を引き連れ拠点に戻ったルルーシュを、ゼインが見逃す理由はない。
アークに与するその一点で、世界に悪意を齎す敵と認識。
ならば、救世主たる己が必ずや裁く必要がある。
今すぐにでも追い掛けたいが、善意を阻むのもまた善意の化身。
大道克己の傍迷惑な置き土産、使い捨てた過去の器。
シビトと化した桜井侑斗が纏いしゼイン相手に、足止めを強いられていた。

「ふむ、やはりこちらが些か不利ですか」

掛け声一つ発さずに、殴打の嵐を叩き込む侑斗。
時に腕部の装甲で防ぎ、時には身を捩り回避。
ダメージとなる一撃は未だ貰わずにいるものの、現状はゼインが防戦一方。
首を狙った蹴りを躱し、次いで放たれた拳も防御。
対処への集中を切らさず、自身と敵の力量差を冷静に受け入れる。

変身後のスペック自体は、どちらも然程変わらない。
強いて言えば所有するカードの数だろうが、基本的な能力は同じと言って良い。
ここまでの完璧な再現を現実とした、ソードスキルへの警戒はさておき。
変身後の機能に差が出ないのであれば、原因は変身前。
より正確に言うと、誰が変身してるのか。

富良洲高校でゼインが得た新たな器、小宮果穂は元々争いとは無縁の小学生。
運動神経が良く、アイドルとしてのレッスンをこなしてるのもあり体力は高い。
しかし所謂、戦士の体付きでないのも事実。

一方で敵対中のシビト、桜井侑斗はどうか。
ゼインに変身する以前から、仮面ライダーゼロノスとなり時の運行を守って来た。
仮面ライダー電王こと野上良太郎と時に反発し、時に肩を並べと戦ったのだ。
実戦で鍛え上げられた体は、魂無き死体となっても劣化しない。
果穂に比べ、動作一つとっても非常に洗練されている。

644壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:08:10 ID:RqEoB1FI0
尤も、有利不利は侑斗の知った事ではない。
衛藤可奈美やジゴワット同様、スキル保持者の死に引き摺られず戦闘を続行。
当の本人が死んで尚、克己以外の参加者を殺す為に動く。
たとえそれが、全く同じ姿のライダーだろうと無関係。

侑斗の放った回し蹴りを両腕の交差で防御するも、衝撃は殺せず距離が開く。
顔を上げた時には既に、敵はドライバーへ手を掛けていた。

<2号!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

解放された力は、栄光のダブルライダーの片割れ。
力の2号の異名が示す通り、拳一発が文字通りの必殺。
ショッカーの改造人間達を屠った鉄拳が、オリジナルの仮面ライダー2号を超える威力を叩き出す。
ライダーパンチ、本来なら言う筈の技名は口から出ず。
自分自身を弾丸に変えたが如き勢いで、ゼインへ突撃。
突き出した拳が装甲を叩けば、中の脆い少女の肉体もタダでは済まない。

<ジャスティシュパニッシュメント!>

カードを用いない、ゼイン自身の技を発動。
プログライズキーからエネルギーを伝達、打撃力を高める。
打ち出す暇は与えんと迫りくる拳に、慌てるでもなくじっと見つめ、

仮面を叩き割る正にその寸前、突き出した腕を無駄のない動きで受け流す。

「そう来ると分かっていました。残念ですが、既に見切っています」

返答がないとは承知の上で淡々と告げ、頭一つ分体勢を低くし反撃。
狙うは腰のベルト部分、正義の一撃が命中し火花が散る。
巻き付いていたパーツへ衝撃を受けて、ゼインドライバーが地面へ落ちた。
変身ツールを強制的に外された以上、姿を保つのは不可能。
生身へ戻った侑斗をあっという間に組み伏せ、無駄な抵抗を封じる。

645壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:09:36 ID:RqEoB1FI0
(す…凄いです!贋物のゼインさんも強かったのに、一瞬でシュバッってやっつけちゃいました!?)

純粋な驚きと、尊敬が籠められた声はゼインにしか聞こえない。
自分の体とはいえ、実際に戦闘を行ったのはベルトを通じコントロールしたゼインだ。
それでも有利だったのは敵の方だと、果穂にも分かる。
殴り掛かって来る侑斗相手に、防ぐので精一杯。
と思っていたのだが、鮮やかな決着は予想外だった。

「難しい話ではありません。確かに桜井侑斗は優れた肉体の持ち主でした。ですが、あの男の動きは私が一番良く知っている」

衛藤可奈美のように始末剣や全集中の呼吸を使った例外は抜きにして、シビトの動きは基本的に生前と同じ。
即ち、ゼインの記憶データに保管された侑斗そのものだった。
以前の自身の器だったなら、戦闘中の細かい癖に至るまで知っていて当然。
故にあえて大技を誘い、ゼイン以外には隙とも呼べぬ隙が生まれるのを待ったのである。

(流石ゼインさんです!贋物のゼインさんを倒したなら、今度こそルルーシュさんを倒しに行くんですね!アークさんと手を組んでたなんて、絶対に許せません!)
「勿論、彼を放置する気はありません。しかしその前に一つ、試したい事があります」

理解を放棄し、一つの正義だけに心酔。
本来の果穂なら絶対にしない、歪み切った善意を諫めるでもなく。
ただこのまま、ルルーシュとの戦闘へ赴くつもりもない。
侑斗を相手取ってる間に流れた、定時放送を確認しておきたいのも理由の一つ。
加えて果穂に言った通り、思い浮かんだものを実行したかった。

檜佐木修兵の私物のバイクに跨り、片手でハンドルを操作。
もう片方の腕で侑斗を押さえ付け発進。
ジタバタと藻掻くも、生身でゼインの拘束を解けはしない。
テレビ局から遠ざかり、道中聞こえたルルーシュの放送に耳を傾けながらもエンジンは吹かしたまま。
皇帝の城は目視不可能な場所まで到着、適当な民家へ足を踏み入れた。

念の為、屋内で見付けたガムテープで侑斗を拘束。
表情を変えずに蠢く嘗ての資格者へ、何一つ感じ入るものはない。
ホットラインで放送内容を観返せば、バグスターを参加させただけでなく主催者も力の恩恵に与ったと判明。
プロトガシャットという、ウイルス除去の鍵を独占するルルーシュ。
未だ裁きを逃れ続ける二体のバグスター達。
連中を含めて必ずや滅ぼさねばならぬ、そう改めて方針を固めたのも束の間。

646壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:10:17 ID:RqEoB1FI0
「では始めましょうか。果穂、念の為離れていてください」
(は、はい!)

言われた通り、侑斗から距離を取る。
するとゼイン自身の意思で、果穂の腰からドライバーが外れる。
拘束は解かず、座らせた体勢の侑斗へ装着。
凍り付いたように動かなくなり数秒、空の器の昏い瞳が青に染まった。

「ゼ、ゼインさん……ですか……?」
「ええ、元々私の資格者だったからか。理由はともかく、私が動かす分には問題ありません」

抑揚のない声で告げる様は、自我なき哀れなシビトとは正反対。
可奈美と違って死体を元に蘇生させられた、或いは今言った通り元々の資格者故か。
どちらにせよ、シビトの侑斗はゼインの傀儡として新たに機能した。

侑斗の屍を自分が操る、それがゼインが試したかった戦略。
最初から自我の存在しない器なら、パラドの時のように抵抗される心配も不要。
自分はこれまで通りに戦い、果穂も自由に動ける。
上手くいくかどうかは賭けだったが、結果は上々。
本物のゼインだと分かり安堵する果穂に命じ、拘束を解く。

「不足分のカードはこちらで頂きます。残りのカードは果穂、あなたの戦力に」
「はいっ!ゼインさんのお役に立てるよう、張り切っちゃいますっ!」

シビトの侑斗が持っていたゼインカードから十数枚を拝借。
既に裁断済だった分を取り戻し、これで補充完了。
ゼインカードを再使用可能にする手は勿論探すが、一旦はこれでいい。
ついでに残りのカードはドライバー共々、果穂に手渡す。
オリジナルと違い、あくまでソードスキルに引っ張られ再現された物。
単なる変身用の道具でしかなく、意識を奪われる事態も起こらないだろう。
フェザーサーキットが問題無く機能し、自身を心酔中の彼女なら使わせて構わない。
本物の自分と模倣品の果穂、これで二体のゼインが揃った。

体力回復の為暫し民家に留まり、頃合いを見てテレビ局へ戻る。
檜佐木のバイクとブーストライカーがある為、移動の手間が軽減されるのは有難い。

「では行きましょうか。愚かにもアークへ魂を売り渡した、悪逆皇帝を駆逐しに」
「はいっ!ゼインさんの正義と違う事をした、ルルーシュさんが悪いですもんねっ!」

来た道をそのまま戻り、目的地へ徐々に近づいた時。
喧騒を察知し、果穂に合図を出し隠れて様子を窺った。
見えたのは裁きの対象、バグスターのグラファイトと見知らぬ少女達。
会話や状況から、ルルーシュの協力者と判断。

ならば味方する理由はなく、ゼインカードを裁断。
上空から聖剣の雨を降らすのに、何の迷いもなかった。

647壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:11:34 ID:RqEoB1FI0



仕留め切れなかった。
傷を負い、なれど五体満足で現世にしがみ付く罪人達。
第三者の介入が起きたと察知し、キャルもグラファイトも放つ最中の技を聖剣の迎撃へと急ぎ変更。
ブロンズドライブのような串刺し刑は免れたが、全てを防ぐ事は叶わなかった。

「今度、は……なん、なのよ……っ!」

忌々しく吐き捨てるも、体中に走る痛みのせいか苦し気だ。
プリンセスフォームは解除され、魔法学園の制服姿に逆戻り。
所々が赤く滲み、流れる血が体力を容赦なく奪う。
横目で見やれば沙耶香もほとんど同じ。
霊体ではなく生身の体で、ダメージの肩代わりは不可能なのだから。

額に汗を浮かべながらも、回復魔法を発動。
自分と沙耶香の出血が止まり、痛みも幾分マシになる。
トゥインクルウィッシュのユイ程の治癒力はないが、放置するよりはずっといい。

「貴様……神聖な勝負に泥を塗る許し難き蛮行、断じて許さん……!」
「ただの殺し合いを神聖呼ばわりですか。やはりバグスターとは、世界を破滅へ導く病原菌以外の何物でもない」

グラファイトもまた相応の傷を負ったが、ダメージなど気にならない怒りが湧き上がる。
全力で自分に挑んだ少女達との戦いへ、横槍を入れられ許せる筈がない。
激怒を叩き付けられたゼインは怯む様子もなく、改めてバグスターは滅ぼすべき悪意と断定。
ルルーシュの仲間共々、裁きで以て終わらせてやろう。

「私はグラファイトと術師の少女を排除します。果穂、剣士の少女はあなたに任せても構いませんね?」
「分かりました!小宮果穂、ゼインさんの為に出撃ですっ!」

指示を受け、意気揚々と沙耶香に殴り掛かる果穂を最後まで見送らず。
自身の標的を青い複眼が捉える。
龍戦士のバグスター、獣の特徴を持った魔法の使い手、その他運良く死を免れたNPCども。
問題ない、一体残らず殲滅するのみ。

648壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:12:44 ID:RqEoB1FI0
「ゼイン、って…ルルーシュが言ってた――っ!?」

テレビ局を襲う可能性が高い、ルルーシュ曰くいずれ人類を滅ぼす存在。
騎士を思わせる白い仮面ライダーがそうなのかと、問い掛けても言葉は返って来ない。
脚部装甲に備え付けられた機能を用い、引力を操作。
引き上げた走力で突撃、手始めに美濃関学院の刀使を数名軽く薙ぎ払う。
写シを張る暇もなく、顔面を潰された死体には目もくれず拳を放った。
ほとんど反射的に杖を翳し、直後キャルの体は宙を舞う。

「いっ、つ……!」

ドライバーから供給するエネルギーを全て、純粋な破壊力に変換した一撃だ。
防いだ体勢のまま殴り飛ばされ、杖を通じて両腕に鈍痛が襲う。
痛みに顰めた表情は次の瞬間、焦燥を露わにし始める。
落下までを呑気に待たず、跳躍しキャルへ追撃。
白の足部装甲が無慈悲な凶器となり、首を捩じ切らんと接近。

慄くのも悲鳴を上げるのも、全部後回しで術を発動。
至近距離で魔力を放射、ゼインの狙いを逸らし難を逃れる。
纏った装甲を砕く程の威力はない為、ノーダメージで敵は着地。
キャルが次の動きに出るのを待ちはしない。

<ライダーマン!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

流れるようにゼインカードを取り出し裁断、栄光の7人ライダーの力を使い潰す。
デストロンの元科学者にして復讐鬼、ライダーマンのカセットアームを右腕に装備。
本来の力の持ち主は、後に正義の魂へ目覚めたがゼインは違う。
余りに突き抜け過ぎた、最早悪意と変わらない善意で標的の排除を実行。

「マシンガンアーム!」

無骨な黒い機関銃の照準をセット、特殊硬化ムース弾を連射。
ある世界線において、頑強なヨロイ一族を全滅へ追いやった威力だ。
獣人であれど、肉体強度は人より多少打たれ強いキャルを肉片に変えるのは難しくない。

649壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:13:52 ID:RqEoB1FI0
「ぬえええええいっ!!」
「なに…?」

惨たらしい数秒先の未来図を変えるは、火炎を纏った双刃。
殺到する弾丸の前に身を躍らせ、ただの一発もそれ以上は進ませない。
鉄の群れを焼いて溶かし、地面へ落ちる前に消滅。
撃った本人も同じ末路へ叩き落とすべく、憤怒に突き動かされ猛接近。

「ロープアーム!」

カセットアームを即座に入れ替え、カギ爪突きのロープを射出。
紅蓮龍の剛腕に巻き付け、投げ飛ばさんと引き寄せるが思い通りにはさせない。
傷を負った身とは思えぬ怪力を発揮し、逆にゼインを投げ飛ばす。
距離を離された所へ炎刃が飛来、純白の装甲は煙で覆い隠された。

「あんた……何のつもりよ?」

自分を助けるような真似に出たグラファイトへ、困惑と警戒を織り交ぜ問う。
ほんの数分前まで、生きるか死ぬかの戦いに身を投じた間柄だ。
間違っても仲間意識など存在せず、助ける理由もない。

「まさかとは思うけど、仲間になりたいとかほざく気?」
「有り得んな。俺は“アイツら”とは違う、人間の敵である事を変えるつもりはない」

人間の味方に付くという、同胞への裏切りも同然の選択。
その道を選んだパラドやポッピーを、責める気はない。
ただ自分はそちらに行けない、敵キャラクターとしての本懐を果たす事こそが存在意義。
人間の手を取ってしまったら、それはもう龍戦士グラファイトではないのだ。

「だがお前は俺が敵として立ち塞がるに相応しい、戦士と認めた者だ。真剣勝負の果ての死ならともかく、奴の手で討ち取られるのは許さん」

グラファイトは決して、人類の友にはならない。
しかし、戦士への敬意を忘れたつもりもない。
神聖な戦いに唾を吐く無粋な乱入者に、諦めを拭い去り己へ挑んだキャルを殺させるのは真っ平御免だった。

650壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:14:24 ID:RqEoB1FI0
「あー……そういうタイプなのねあんた。あいつと似たような…いや違うか。あっちのが面倒かしら?」

覇瞳皇帝に執着していた、色んな意味で破天荒な七冠の一人。
好戦的な笑みを思い出し頬が引き攣るも、ややあってため息を零す。
何に対しての呆れかは自身の胸中に留めて、術を一つ発動。
ドリル状のアームに変えたゼインが、グラファイトへ狙いを付けた時。
頭上からの電撃が阻み、丁度そのタイミングでカードの効果も切れた。

「あーら、偶然あんたを狙ってた攻撃を防いじゃった。まっ、どうせ自力でどうにかできたろうけど」
「礼は言わんぞ。支援を求めた覚えもない」
「いらないっての。むしろ、あんたから頭下げられたら鳥肌が立つわ」

からからと笑って減らず口を叩くキャルに、鼻で笑い返す。
呆れは含まれるも、嘲りの色は見当たらない。

グラファイトが人間の仲間になる気がないように、キャルもグラファイトが心変わりをするとは思っていない。
武人気質だろうと、殺し合いに乗った事実に変わりはなく。
仮にゼインが現われなかったら、自分達が負けて死んだ可能性もゼロとは言い切れない。
だからグラファイトという参加者は、これまでもこの先もずっと敵のまま。

けれど、迷わず倒せる相手だがそれは今じゃない。
自分もこいつも、今真っ先に潰すべき存在は他にいるから。

「あの空気読めない牛乳野郎の仮面叩き割って、終わったらあんたもぶっ殺してやるわよ!」
「咆えたな!ならば精々、奴相手に遅れを取る無様は晒してくれるな!」

互いから視線を外し、ゼインの排除へ意識は集中。
敵対者同士の共闘を前に、救世主たるライダーは何も言わない。
協力しようがしまいが、どの道揃って殺すのみ。

651壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:15:56 ID:RqEoB1FI0
<電王!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

イマジン達と共に時の運行を守った戦士、仮面ライダー電王。
自身の不幸体質や喧嘩の弱さへ言い訳せず、立ち向かう事を諦めなかった変身者。
野上良太郎を知って尚、使い潰すのに欠片の罪悪感も持たない。

電王専用の可変型武器、デンガッシャーを装備。
ソードモードの先端が分離し、ゼインの手で遠隔操作。
間合いを取ったまま、四方八方より飛来する刃にグラファイトも己の得物を振るう。
双刃とデンガッシャーが打ち合う中、後方からキャルが魔力弾で狙い撃つ。
あえて食らう意味もない、メダジャリバーを取り出し斬り落とす。

十数度目の打ち合いで、グラファイトが大きく敵の刃を弾き飛ばした。
次の攻撃は待たずに疾走、だがこれくらいはゼインも予測出来た展開。
デンガッシャーをロッドモードに切り替え投擲。
咄嗟に双刃で防御に出るも、悪手だったと直ぐに悟る。
先端から展開されたエネルギーが、亀の甲羅状に広がりグラファイトを捕えた。

「叩き割ってあげましょう」

素早くアックスモードへ変えたデンガッシャーを、脳天目掛け振り下ろす。
頑強なグラファイトの肉体とて、頭部は他と比べ脆い。
血と脳漿代わりの火花が散るのを、不意にゼインを襲った気持ちの悪い感覚が阻む。
耐久性を下げる魔法だと、知るのはキャルただ一人。
僅かに動きを止めたのは失敗だ、全身に力を漲らせたグラファイトが拘束を打ち破る。

「激怒竜牙!」
「くっ……」

刀身に火炎を纏わせ、十字状に斬り刻む。
ゲムデウスどころかプロトガシャットすら使う前に、振るっていた技だ。
レベル超越の影響を受け、当時の比じゃない威力を発揮。
双剣で防御に出たゼインを怯ませ、デンガッシャーを叩き落とす。
一々拾うよりも、別の手を使う方が手っ取り早い。
新たなゼインカードを取り出し、裁断の寸前で弾き飛ばされた。

652壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:16:47 ID:RqEoB1FI0
「余計な真似を……」
「漁夫の利狙った奴が言えた台詞じゃないでしょ!」

妨害したキャルを睨むも、当の本人はざまあみろとでも言うように笑う。
何らかの大技を発動する際、カードを腹部の機械に読み込む。
といった工程さえ分かっていれば、どのタイミングで邪魔するのがベストかは言うまでもない。
範囲を狭めた魔力弾でピンポイントの狙撃。
術の細かい調整にも秀でたキャルなら、これくらいはやってのける。

(奴の使うカードはまさか……いや、試すだけの価値はある筈!)

今しがたゼインの手を離れたカードを見て、グラファイトがふと思い付く。
突拍子がないとは自分でも分かる、確実に上手くいく保障はゼロ。
とはいえ試さない内に無意味と言い切るよりも、試してみるべきか。
ガシャコンバグヴァイザーを向け、スイッチを操作。
回収される前にゼインカードが粒子へ変わり、デバイス内部へ吸い込まれた。

「ヌ、グ……オオオオオオオオオオオオッ!!!」

吸収したデータを自分自身に取り込み、途端に起こるのは拒絶反応。
ラウズカードなどの不純物が、グラファイトの肉体を内側から苦しめる。
だが苦痛に耐え乗り越えた先に、必ず力が手に入る。
放送前にパラドが実践してみせたものを、やれない道理はなく。
カードを構成するのに使われたバグスターウイルスが、龍戦士と適合した。

「使うぞ、お前の力を!」

腕を大きく振るう仕草は、殻を突き破り新たな自分へ生まれ変わるかのよう。
紅蓮の肉体は今まで以上に強靭で、ともすれば鎧を思わせる形状へ。
右手にはこれまで同様の双刃を持ち、左手には全く異なる得物を装備。
竜の意匠と、掌型のパーツが特徴的なソレの名はアックスカリバー。
仮面ライダーウィザード・インフィニティースタイルのカードを取り込み、グラファイトが得た力の象徴。

「パラドといいあなたといい、バグスターというのは全くハイエナのようですね」
「ほう……俺より先にパラドが実践していたか」

袂を別った友は、一足先にゼイン攻略の糸口を見付けたらしい。
交わらない道を歩んだとはいえ、誇らしい気持ちになるのは一瞬に留める。
湧き上がる力が錯覚でないと証明すべく、ゼイン目掛け突き進む。

653壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:17:27 ID:RqEoB1FI0
<ダブル サイクロンジョーカー!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

敵自ら突っ込んで来るのなら好都合。
自ら狩り場に顔を出した、哀れな獲物に過ぎないと思い知らせる。
パラド相手に使い裁断済のカードだが、シビトの侑斗から奪った同名の物を使う。
緑色の竜巻が発生し浮上、半分に分かれたゼインが蹴りを叩き込む。
時間差で胸板を足底が痛め付けるも、グラファイトは微動だにせず。
やせ我慢に出ているんじゃあない、本当に効いていないのである。

「効かん!効かんなぁ!」
「ぐっ…!」

インフィニティースタイルの防御性能を上乗せし、肉体強度を更に引き上げた。
仮面ライダーダブルのマキシマムドライブを物ともせず、逆に殴り飛ばす。
無様に地面を転がるのは避けるも、後退を余儀なくされた。
倒すには至らない拳一発で、グラファイトが満足しよう筈もなく。
アックスカリバー中央に備わった、掌を複数回叩き巨大化。
同じく大技で対処せんと、ゼインもカードを引き抜いた。

<龍騎サバイブ!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

「ドドドドドドドドド紅蓮爆龍砕!」

殺し合いでも浅倉威が変身した、龍騎サバイブの力を解放。
専用の召喚機から銃剣状に刃を伸ばす、ドラグソードを振るい十字の火炎を放つ。
対するグラファイトもまた、身の丈を超えるサイズの斧を叩きつける。
自身の力を乗せた影響で、火炎が龍を形作り大口を開けるオマケ付きだ。

互いに本来の変身者に非ず、されど繰り出すは主を支え続けたドラゴンの力。
焼き尽くすか、完膚なきまでに砕き潰すか。
二つに一つの決着を付けんとする闘争は、



彼方より落ちて来た少女によって、思わぬ方向へ転がり出す。

654壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:17:57 ID:RqEoB1FI0



<ブレイド!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

オリハルコン製の片手剣、ブレイラウザーを召喚し装備。
まるで特撮番組の主人公が使う武器のようであり、事実世界と友の両方を救った青年の力の一端だ。
この剣を使ってこれからゼインの為に悪を倒す。
そう考えると俄然やる気が湧き、戦意に背を押され斬り掛かった。

それがほんの数分前のこと。
気合十分で挑んだはいいものの、現状は果穂の望んだ通りとは言い難い。
ルルーシュの協力者たる少女は未だ健在。
時折刃が届きそうになってもヒラリと躱すか、周囲のNPCが邪魔に出る。

「逃げずに大人しく倒されてください!ゼインさんの邪魔をする人達は、いちゃいけないんです!」
「それは、聞けない!私にだって……まだ死ねない理由があるから!」

首を狙った刃を躱し、突き付けられた要求へ否を叫ぶ。
言っても無駄なら、直接力で永遠に黙らせるまで。
地面を強く踏みしめ突きを放てば、銃弾をも軽く超える貫通力を発揮。
鉄板数十枚とて貫く勢いだ、沙耶香の華奢な体など紙切れと同じ。
だがどれだけ強力でも、当たらなければ意味無し。

どうもやりづらい相手だと沙耶香は思う。
年頃が近くとも、戦闘経験で言ったら確実に自分が勝る。
にも関わらず攻め切れないのは、複数の理由が重なってるが故。

第一にゼインの身体スペックの高さに加え、全身を覆う装甲の頑強さ。
これだけならまだやりようはある。
定時放送前にブラックコンドルを斬った時同様、生身の相手でなくとも戦えない道理はない。
まして果穂は殺し合いで複数回の戦闘を経たが、動き自体は素人の域を未だ出ていない筈。

655壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:18:48 ID:RqEoB1FI0
なのに沙耶香相手に拮抗可能な理由は、ゼインに搭載された機能。
両手のガントレットは単なる飾りじゃない。
ライダーの武器を装備する事で、内部の機能が瞬時に効果を発揮。
初めて触る物だろうと関係なしに、使いこなせるのだ。
この影響で果穂は剣術を未習得であっても、仮面ライダーブレイドと謙遜ない戦いが可能となった。
更に沙耶香自身の消耗や負傷も響き、未だ鎮圧ならずの状況が続いている。

「教えて!あなたはどうして、ゼインに手を貸すの!?」
「何ですかいきなり!ゼインさんはあたしに、幸せの羽をくれたからですよっ!」

得物を挟んで問いをぶつけるも、返答はいまいち容量を得ない。
幸せの羽とやらが、具体的にどんなものかは分からないが。
本当に幸福を招く類でないとは、沙耶香にも察せられる。

「あたし、プロデューサーさん達と違ってまだまだずっと子どもだけど…でも!生きててこんなに幸せな気持ちになれたことって、初めてなんです!」

羽を受け取った瞬間の、天にも昇るかの浮遊感。
不安や恐怖が全て取り除かれ、胸いっぱいの幸福が広まった。
アイドルを始めて今に至るまで、沢山の苦労と嬉しいことを経験したけど。
幸せの羽が齎すのに比べたら、酷くちっぽけに思える程だ。
W.I.N.Gに優勝し、プロデューサーと喜びを分かち合った時の記憶すらボヤけて感じる。

「だから!こんな幸せをくれたゼインさんの為に、あたしはどんなことでも……!」
「本当に……あなたの心がそう言ってるの?」

感極まって言う果穂を、悲し気な顔を隠さずに見つめる。
もしも果穂が紛れもない、彼女自身の意思でゼインへの協力を決めたなら。
何も言えなかっただろうけど、これは違う。
事前にルルーシュからゼインの情報を聞いていなかったとしても、違うと断言出来た。
仮面で素顔が見えないのに、今の彼女はまるで。

「言いたくないことを、無理やり言わされてるみたいな……本当にやりたいのとは別のことを、させられてるようにしか見えない」

ただ言われるがまま刀を振るい、自分の意思を宿すなど許されず。
僅かに芽生えた人間性すら、奪われそうになった。
高津学長の傀儡だった時の自分と、真人の道具にされていた自分と。
どうしようもない程に、目の前の少女が重なる。

「私は……自分の心がそれは嫌だって言ったから、今もここにいられる。あなたの心は、本当は何て言ってるの?」
「あたしの、心……?そんなの――」

幸せをくれたゼインの為、そう自信満々で答えようとし言葉に詰まった。
何を迷う必要がある、言ううべきはその一言で十分だろうに。
なのに何故か、針で刺したよりも小さい痛みを感じ――

656壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:19:34 ID:RqEoB1FI0
「っ!?」
「なっ、なんですかあれ!?」

突如起こった異変に、二人揃って意識を奪われた。
テレビ局から少し離れた位置、空が暗黒に染まって見えたではないか。
王の閃光をも掻き消す、異形達の黒き刃が齎す現象。
強大な霊圧の残留により、沙耶香も果穂も動きを止める。

「……え?あれって……?」

天が元の青さを取り戻し間もなく、沙耶香の目には別の異変が映った。
空中を激しく飛び回り、幾度も激突を繰り返す奇妙な光。
聞こえる音も、地上を揺さぶる振動も徐々に強くなっていく。
二つの光が近付いて来てるからだと気付き、同時に正体も判明。
発せられる力が、両方自分の知るより格段に上がっているが間違いない。
白と紅、二体の剣士の片方が翼の殴打を受け地へ落ちる。

「チィ…!小賢しい真似ばかりしよってからに!」
「何でもありを謳うのが殺し合いだろ?ルールが欲しけりゃ、竹刀でも代わりに振るったらどうだ?」

双剣を翳し翼の一撃を防いだはいいが、民家数軒を吹き飛ばす暴風が巻き起こる威力だ。
ジンガ同様、力を急激に増したタギツヒメでなければ危うかった。
破壊の痕が新しいアスファルトを踏みしめ、優雅に降り立つ異形を見据える。
飛翔態を解くも、荒々しく進化を遂げた姿は健在。

強烈な存在感を伴って、剣士達が皇帝の城へ帰還を果たす。

「…む。気配、いやこの場合は霊圧か?探知に引っ掛かっておったが、招かれざる客が増えておるな」

ジンガへの警戒は微塵も緩めずに、テレビ局前に集まった者達を見やる。
NPCは大分減っているが、参加者は増えた様子。
起動鍵を使ったMSとはまた違う装甲の者が二名。
彼らは勿論、赤龍の如き怪物も油断ならない強者と見て間違いない。

「タギツヒメ…よね?な、何かちょっと目を離した隙に雰囲気変わってない?」
「事情は後で話す。時間がない故簡潔に聞くが、集まった者どもは全員敵でいいのか?」
「ん、まああの赤い奴は、今だけ敵じゃないっていうか…いや敵なのはそうなんだけど……」

最初にグラファイトが襲って来て、次にゼインと果穂が乱入して来た。
三人共に敵対者なのはその通りが、今すぐ全員へ攻撃すべきという訳でもない。

657壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:20:05 ID:RqEoB1FI0
「曖昧な言い方じゃなく断言出来んのかお前は」
「うっさいわね!ってかあんたこそパワーアップしてんのはいいけど、何であっちの銀髪野郎までもっとヤバい雰囲気になってんのよ!?」

仲間が強くなって戻って来るのは大歓迎。
しかしどういう訳か、敵まで強化の恩恵に与ってるのは非常に納得がいかない。
ただでさえ混乱が激しい場なのに、余計頭が痛くなった。

「ほう……あの二人が最初に感じた気配の正体か」

グラファイトもまた眼前の敵への警戒はそのままで、意識を新たな顔ぶれに割く。
どちらもバグスターではなく、かといって人間でもない。
様子から察するに白い少女はキャル達の仲間。
逆に紅い悪鬼とは敵対中、といった所か。

「皇帝様のお人形コレクションは大分減ったが、どうにもごちゃついてるな」

集まった一同の顔を、値踏みするように視界へ閉じ込めた。
殺し合いに抗う暑苦しい連中が集まり、自分の排除へ動く気でいる。
というのとは違いようで、各々の事情で敵意をぶつけ合うのが正しい。

タギツヒメを含め、一人一人相手取っても別に問題無い。
が、ふと自身が持つ玩具の存在を思い出す。
複数人が集まっている今だからこそ、派手な光景を演出できる力が。

宿敵であり黄金騎士の道外流牙、守りし者に通じる強さを持つ梔子ユメ。
彼らがいれば魔戒剣を用いた闘争へ身を投じたが、そうでないなら遊び方には拘らない。
どの道手に入った以上、いずれ試す気だったのは本当。
偶々その機会が前倒しでやって来ただけの話。
であれば難しく悩む必要は何処にも見当たらず、ホラー態を解除。
訝しく睨むタギツヒメへ皮肉気に笑い掛け、破壊者の鎧を纏う。

「えっ!?あれって、先生が変身してたのと同じ!?」
「いえ、あのディケイドは……ドライバーが二つ存在するのですか?」

アッシュフォード学園で戦ったマゼンタ色のライダーと、非常に酷似した戦士。
驚く果穂を尻目にゼインは答えに辿り着くが、ジンガの『変身』はまだ終わっていない。
テレビ局に来るまでの道中、NPCを蹴散らし手に入ったアイテム。
破壊者の使命を受け入れたディケイドを、一つ上の領域へ押し上げる鍵を取り出す。

658壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:20:35 ID:RqEoB1FI0
『KUUGA AGITO RYUKI FAIZ BLADE』

『HIBIKI KABUTO DEN-O KIVA』

タッチパネルに表示されるは、九つのライダー達を示すクレスト。
これまでの旅路を思い出すかのように。
或いは、破壊の痕を今一度刻み付けるようになぞっていく。

『FINAL KAMEN RIDE DECADE!』

やがてゴール地点、ディケイドの紋章へ到達。
電子音声を発する機械をベルト中央に装着。
更にこれまでその位置にあったディケイドライバーは、右腰部分へ移動。
必要な手順をすべて終え、遂に姿を変える時が来た。

十字の意匠を刻んだ装甲に貼り付く、九人のライダーのカード。
肖像画にも、破壊され晒し首にも見える歪な鎧。
額には他ならぬ、ディケイド自身のカードを掲げる。
我こそが王とでも言い放つかの様で、高き場所にて他ライダー達を見下ろす。

仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム。
ネガの世界で旅の続きを選んだ門矢士が、世界の破壊者の真の姿に変身した姿。
だが悪鬼さながらに歪む形相こそ、正史には存在しなかった証。
激情態の姿を維持し、コンプリートフォームに至る。
ある意味、ホラー喰いのホラーの装束として相応しいのかもしれない。

「っ、まさか……!」

異様な風貌のライダーへ、困惑と警戒が広まる中。
いち早く何をする気か察したのは、この中で誰よりも仮面ライダーの知識を有する者。
データバンクに記憶された、ディケイドの能力から予測された答え。
このまま敵の好き勝手を許せば、大惨事に繋がるのは確実。
阻止に動こうとゼインカードへ手を伸ばすも、僅かに遅い。

659壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:21:57 ID:RqEoB1FI0
『ATTACK RIDE TIME!』

「――――っ!?」

気付いた時には既に、遅かったと理解させられる。
ゼインのみならず、その場の全員がだ。
見ている光景が信じられない、だが信じる他ない。
悪夢染みた状況だろうと、紛れも無い現実なのだから。

「な、ん……どうなってんのよこれ……何であの遺影みたいな奴が増えてるのよ!?」

青褪めるキャルの言葉に嘘は無い。
数秒どころか、瞬きを終えるかどうかの一瞬前まで一人だったディケイドが。
今や十人に増えた挙句、それぞれ隣には見た事の無い戦士達が並ぶ始末。
更に言うなら、全員が得物を手にし大量のエネルギーを収束。
すぐにでも高威力の技を放てる段階へ、到達してしまっていた。

「まさか……クロノスと同じ力か……!?」

奇怪極まる現象への答えを、グラファイトが愕然と口にする。
実際の所、間違いと言う訳でもないが。

タイムスカラベのカードで時を止めた。
長続きはせず、この状態ではどれだけ攻撃に出ても傷を付けられない。
だから必要となる準備を、時間停止中に全て終わらせた。
イリュージョンのアタックライドカードで、九人の分身を出現。
耐久力以外は本体と同性能なのを活かし、それぞれがコンプリートフォームの能力を発動。
士が通りすがった世界のライダー達の、最終形態の分身を召喚。
間髪入れずにカードを装填し、最大威力の技の待機状態へ入った。

激情態のディケイドは他の仮面ライダーへ変身せずとも、固有能力のカードが使える。
ブレイドのライダーカード自体はギギストに錬成へ使われたが、ブレイド関連の他のカードまで消えてはいない。
ジンガが手に入れたドライバーが、激情態のディケイドじゃなかったら。
コンプリートフォームの変身に必須な、ケータッチをドロップしてなかったら。
ケータッチ使用の条件である、九人のライダーの力を取り戻していなかったら。
どれか一つでも当て嵌まれば実現はなかった、しかしそうならなかった為に生まれたのがこの状況。

660壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:22:46 ID:RqEoB1FI0
「皇帝様の城と心中したくなけりゃ、死ぬ気で抗え!」

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』

本体のディケイドがドライバーにカードを叩き込み、響く音声が合図となる。
カード状のエネルギーを潜り抜け、標的目掛け蹴りを繰り出す。
シンプルだが通常形態の時を凌駕した破壊力だ。
何よりも、気を払わねばならない攻撃はこれ一つじゃない。
九人のディケイドと九人の影法師、計十八名による一斉掃射が放たれた。

「っ!!!我の後ろに来い!」
「果穂!あなたもカードを……!」
「はっ、はい!」

各々余裕を完全に削ぎ落とされ、だが抵抗を諦めた覚えはない。
規模と威力を備えた技で迎え撃つ。

「ぐ、お、お、おおおおおお……!!」

双刃とアックスカリバーに火炎を纏わせ振り下ろす。
まともな死体も残さず、炭と化す炎刃が押される。
仮面ライダーキバ・エンペラーフォムと、仮面ライダーブレイド・キングフォーム。
二人の王が繰りだす魔剣と聖剣、そこへ二体の破壊者が同等の威力加わればどうなるか。
燃やし尽くす筈の炎は勢いが衰え、蝋燭の火と変わらぬ小ささとなるのも時間の問題だ。

「こん、の……!ふっ、ざけんな……!!」
「おのれ……っ、決して前に出るなよ沙耶香…!そこを動けば、我でも守り切れん……!」
「っ、で、でも……!」

月牙天衝に加え、キャルも魔力全てを注ぎ込む勢いで特大の魔法攻撃を放つ。
なのに打ち破れない、拮抗を維持するだけで体力が激しく削られる。
高威力の技を放つ為に必要な、『溜め』が足りないのが響く。

「くっ……!ふざけた真似をしてくれる……!」
「うああああ……!ま、負けちゃ、ダメです……!ゼインさんの正義が、負ける筈は……!」

原典のライダー以上の火力で技を再現可能な、ゼインとて例外ではない。
幾ら何でも数で圧倒的に敵が勝り、その上先手を取られたとあっては苦戦必至。

661壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration- ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:23:15 ID:RqEoB1FI0
彼らが防げているのはあくまで、自分達の身か傍らの者のみ。
破壊の規模がたかが数人を痛め付けるので済む筈がなく、エネルギーの大半は何処へ向かうか。
背後に聳え立つ皇帝の城と、周囲一帯がこれ以上ないくらいの答えだろう。
消し飛ぶ音にすら、誰もが意識を向けていられない。

「……っ、だめ……もう……!」

諦めては死ぬと分かっているのに、抗う力が届いてくれない。
訪れる末路は必然、とっくに原形を留めていない建造物の仲間入り。

最後まで足掻き続け、尚も届かず朽ち果てる。
無情な結末なれど、絶対に起こり得ないとも言い難く。
魔女狩りの裏で繰り広げられた闘争は今、










「救急戦隊(マックスビクトリーロボ) マックスノバ」










最後の役者の参戦を以て、佳境へ突入する。

662壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:25:00 ID:RqEoB1FI0



「あのなぁ、そりゃ確かに暇してたのは否定しないけどよ」

起きた事を説明するなら、何も複雑じゃあない。
今の今まで影も形も見えなかった何者かが現われ、ディケイドの一斉攻撃を吸収。
反対に大量の光線やエネルギー弾を撃ち、分身達を消し飛ばした。
ただそれだけの話であり、だからこそ余計に混乱を招く。

「あの甘ちゃん皇帝、態度はデケェのにチキンだからな。いつまで経っても降りて来ねぇでやんの。退屈ってのも度が過ぎれば拷問と一緒だろ?」

煙が晴れ、乱入者の姿が全員の目に晒される。
生身の肉体に非ず、黒と灰のカラーリングを基調とした鋼鉄の装甲。
頭部アンテナも非常に特徴的であり、天の遣いを思わせる円盤状。
藤色に輝くカメラアイに射竦められたとあらば、猛獣の檻に放り込まれた哀れな贄と同じ。

「だからってお前、ここまでしろとは言ってねぇだろうがよ……。モノホンの門矢士でも、もうちょっと加減したぞ」
「貴様は……」

うんざり、というよりは少々引き気味に愚痴る存在。
仮面ライダーではなく、起動鍵を用いてMSを纏った者だ何者なのか。
正体を知るのはただ一人、敵キャラクターであらんとするバグスター。
ゲームの根底のほんの一端へ気付いた為に、直接相対を果たしていたグラファイトの視線が険しさを増す。

「“凶星病理”。自分の巣穴を飛び出して来たか」
「おっとぉ?そういうお前は龍戦士クンじゃないですかー。大体5時間ぶりか?つーか結局ここに戻って来たん?」
「貴様が考え無しに転移させたおかげで、俺の望む戦いに巡り合えなかったからな」
「マジ?定時放送までずっと?ウッソだろ勿体ねぇ!お前が戦闘(バト)れば良い感じに混沌(カオス)るってのによー……」

異形の姿な為表情は変わらないが、憮然としてるのが察せられる不機嫌な声色。
遠回しに不満を言うグラファイトへ、向こうは悪びれず頭を振る。
最上位の化け物連中程でないとはいえ、『乗った』側の参加者として期待は寄せていたのだ。
自分と別れてから早数時間、大半が単なる散歩で終わったのは非常に勿体ない。

「ちょ、ちょっとあんた……何かいきなり出て来たけど、誰なのよ?」

友好的、とも言い難いがグラファイトと言葉を交わす怪人物。
唐突過ぎる展開に少々置いてけぼりとなったキャルが、たじろぎつつ問い質す。
言葉に出さないだけで、他の者達も思う内容は一緒。
注目が集まるも怯む様子はなく、むしろ一世風靡のスターになった気分で堂々と名乗る。

663壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:26:00 ID:RqEoB1FI0
「聞かれたからにゃ答えない訳にはいかねぇよなぁ。良く聞け諸君!羂索様達が用意した、選ばれし最強のNPC!冥黒の五道化が一人!凶星病理のコルファウスメットたぁ俺のことよ!」

歌舞伎役者さながらの大仰な動作を加え、己が名を口にした。
MSの見た目でやるのはどこかミスマッチだが、そこを気にする者は一人もいない。

「羂索……?それに五道化って、最初の放送で言ってた……!」
「そういう事ですか。察するに羂索達の手駒が、ここへ潜伏していたと」

驚愕を露わにする果穂と反対に、感情を震わせず敵意のみを膨れ上がらせるゼイン。
キャル達も顔色を変えて、髑髏にも似た頭部の機動戦士を見やる
テレビ局地下の厄ネタの存在自体は、事前にルルーシュから伝えられてはいた。
しかしいざ本物が現われたとなると、無反応ではいられない。

「ほぉ……で?羂索の小間使いがわざわざ何の用だ?」

少々意外そうにしつつも、声色に戦慄の類は宿らせない。
破壊を完遂する正に寸前で、横槍を入れた非プレイヤー。
自我のあるなし関係無く、介入に出るNPCへさしものジンガも辟易さがあった。

「遊び相手欲しさに、引き籠り卒業ってやつか?」
「野良犬みたいに噛みつくなよ、神の牙の異名が泣くぜ?俺だって上でやってたドンパチを、大人しく観戦する気だったんだよ。お前がライダーどもの技を全ぶっぱやらかすまでは、な」
「派手にやらなきゃ面白くないだろ?大体この環境じゃ、これでもまだ優しい方だ。引き籠りのケツを蹴るには、こんぐらいが丁度良い」
「前半までは同意しちまうのがムカつくわ。ま、地下のお部屋の守護も大事なお仕事なんでね」

激怒戦騎と違い、参加者同士の戦闘へ積極的に首を出すつもりはない。
しかしディケイドが放った大火力で、テレビ局にも大規模な被害が発生。
万が一、地下の守護領域にまで火の手が及んでは呑気に構えていられない。
ジンガの言葉へ頷くのは癪であるも、自分を引っ張り出す効果は十分発揮されたのだ。

「つーわけで、だ。地下にまでちょっかい掛けるってんなら、黙ってられんのよ。お返事は?」
「わざわざ聞くまでもないよなぁ?」
「で・す・よ・ねぇ〜〜〜〜。んじゃ、潰すわ」

アッサリとした宣言を聞き終えた直後、ジンガが分身に指示を飛ばす。
災魔一族の長兄に初勝利を治めた、救急戦隊が駆る巨大メカ。
マックスビクトリーロボの一斉砲撃は、半分以上の分身を消し飛ばした。
宇蟲王以外に使えば劣化が生じるものの、強力な事に変わりはない。

664壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:26:29 ID:RqEoB1FI0
『ATTACK RIDE SLASH!』

『ATTACK RIDE SLASH!』

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』

次元エネルギーの付与と、アンデットの能力を解放。
上記二つを重ね斬撃の威力と速度を増し、必殺の技を発動する。
分身とはいえ、発揮可能な能力は本体とほとんど同じ。
ライダーの肖像画を貼り付けた、動き辛そうな見た目とは裏腹の俊敏さで接近。
カード状エネルギーの道を潜り抜け、標的目掛け得物を走らせた。

「っと、危ねぇ危ねぇ。その見た目で普通に早いとかおかしいだろ」

複数本に分かれたライドブッカーを、木の葉のようにヒラリと跳んで回避。
同じ起動鍵でも、参加者への支給品と思ってもらっては困る。
ガンダム・シュバルゼッテを自身の手足の如く、軽やかに動かせるのだから。

「侍戦隊(シンケンオー) ダイシンケン侍斬り!」

ビームブレイドを引き抜き、武士を思わせる構えを取る。
『斬』のモジカラを最大限に籠めた、侍戦隊の巨大戦力の技で迎え撃つ。
嘗て、世界を超え共に戦ったディケイドとシンケンジャーの力で害し合う。
皮肉な光景と知るのはただ一人、円月殺法で分身を両断した五道化のみ。

『ATTACK RIDE FAIZ SHOT!』

『ATTACK RIDE BEAT!』

『FINAL ATTACK RIDE FA・FA・FA FAIZ!』

悲鳴も零さず消えた分身を、最後まで見送らず二体目が動く。
仮面ライダーファイズが使う、パンチングユニットを装備。
そこへライオンアンデットの力で、打撃力を強化。
拳一発とは思えない威力を叩き出すべく、フォトンブラッドを一点集中。
異なるライダー同士の力を組み合わせた、激情態ならではの戦法だ。
無数のオルフェノク達と同様、直撃を許せば灰の山に変わるだけ。

665壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:26:58 ID:RqEoB1FI0
「獣拳戦隊(ゲキトージャ) 大頑頑拳!」

拳には拳で以て返すまで。
無手となり独自の構えを取るや、急激に回転。
人力で竜巻を起こすもこれで終わりじゃない、ディケイドが一撃必殺ならこっちは連撃で押す。

「獣拳に相反する二つの流派あり、ってな!」

拳士達が練り上げた激気の獣達が、合体を遂げた巨人の奥義。
回転により放たれる拳がファイズショットを弾き、無防備な状態へ追いやる。
胴と顔面を無数に叩く殴打の嵐が止んだ時、崩れ落ちた分身は爆散。
これで二体目も難なく打ち破った、だが戦いの終わりは未だ訪れない。

「特捜戦隊(デカレンジャーロボ) ジャスティスフラッシャー!デリート許可?んなもん俺の独断で十分だろ!」

ビームブレイドを納刀し、ビットステイヴを集合。
大剣の先端に備わった銃口へ、宇宙警察の巨大メカのエネルギーを収束
怪重機や巨大化アリエナイザーを屠った正義の銃弾は、悪しき破壊の凶弾と化す。

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』

ディケイドが使うのもまた遠距離武器。
自身と敵を繋ぐカード状の道を、発射された光弾が通過。
帯状に重なり極大の光線へ変化、ディメンションブラストが真っ向より食らい付く。
暫しの拮抗を見せるも長くは続かず、破壊者の力が霧散。
多少勢いこそ落ちたが相殺には至らない、本体のディケイド目掛けて突き進み。

「いいや?抹消(デリート)なんざお断りだ」
「うおっ!?」

一刀の元に両断、蛍の光のように散らばりやがて消えた。
振るったのは破壊者専用装備、ライドブッカーに非ず。
鍔のない、人間時代より愛用し続けた魔戒剣。
本来の得物が破壊光弾を寄せ付けず、この地で初めて技の一つを破られた。

666壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:28:35 ID:RqEoB1FI0
「……お前一体幾つ力を手にれた?闇鍋も良いとこじゃねえか」
「最高の表情(かお)で俺の腹を満たしたお人形、親切な着ぐるみ、死んでもこき使われるオレンジ頭。どいつもこいつも親切で、感謝してるさ」

指を数えて嗤うジンガへ、装甲の下で思わず呆れ笑いが漏れる。
五道化という立場上、正規参加者の持つ力のほどは全て把握済。
当然ジンガの強さの程も知っているが、今見せたのは明らかに資料に記されたのと別物。
多少威力が落ちていようと、ホラー態になってもいない刃で己の技を潰すとは。
不可解な強さの正体は、今の一刀に宿る力で凡その察しは付く。

「おいおい冥黒王お前…推しのスパナくんが死んだからって、後継者選びミスってんじゃねぇかよ」

闇の力を操る錬金術師の中でも、更に少数のみが扱う炎。
ジンガが元々使う力には入っておらず、となれば誰が授けたかは明白。
黒鋼スパナが早期退場したからといって、よりにもよってホラーに冥黒の炎を渡すとは。
実際には継承ではなく、奪い取ったと言う方が正しいが。

更に今の一瞬だけだがジンガが放った力と、地下にいた時テレビ局からそう離れていない場所で起きた霊圧同士の衝突。
何よりも、ジンガと斬り合っていた大荒魂の変化から導き出される答えは一つ。

「あーあー、そう来るか!シビト、いやELSか?まあどっちだろうとい、悪くねぇ仕事したな死神代行!肥やしになって感謝感激雨嵐ってやつよ!」
「貴様……一護を今何と言った?」
「おーこっわ。んな殺気立つなよタギツちゃん。俺だってチャンイチくんの退場は勿体ねぇって思ってたぜ?」

既に死亡した参加者が仮初の生を受け、動き回る現象も殺し合いでは珍しくない。
魔王グリオンの錬金術や、大道克己に支給されたソードスキル。
会場へ解き放った金属生命体の寄生等々、一度死んだ程度じゃ安らかには眠れないのだ。
黒崎一護もまたそういったいずれかが原因で、屍が暴れ回っても不思議はない。
二体の異形を見るに、彼らの手で討たれた判断して良いだろう。

「混沌を引き起こす良いスパイスってのは否定しないが、程々が大事だろ?名簿に横線引かれた脱落者(サブキャラ)が、生存者(メイン)の見せ場取ったら本末転倒だからな」

その点、一護はキッチリ仕事を果たして舞台を降りたと言える。
生存中の参加者の強化に一役買い、自分が対処するまでもなく二度目の死を迎えたのだから。

667壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:29:16 ID:RqEoB1FI0
「んな力持ってるなら早く言えってんだ、なぁ?慣れない鎧なんざ捨てて掛かって来いよ」
「ハッ!本気で相手して欲しけりゃ、もっと気張ってその気にさせてみろ。大層な二つ名は飾りか?」
「あんま吠えんなよ、殺したくなるだろ。宇蟲王といざ殺り合う前の、ウォーミングアップくらいはさせてくれや」
「宇蟲王……?」

何気なく発した三文字に、ジンガは自身の記憶を探る。
主催者側直々に戦闘が確実とでも言いた気な、王と名の付く存在。
該当する者は一人、自分でさえ強く気を引き締めた正真正銘の怪物。

「あの赤い暴君に喧嘩売る気か?お前」
「おっ?その言い草だと、宇蟲王にぶつかったのか。よく生きてられんな」
「生憎、直接会った訳じゃない。元気にエリア一つ消したのを見たくらいだ」
「傑作だわ。どいつもこいつもエリア丸々おじゃんにして、スコアでも稼いでんのかよ」

これそういうゲームじゃねぇから、とツッコまずにはいられない。
地下の聖域を守護する都合上、基本的にテレビ局周辺以外の状況はサッパリだ。
ここに来て齎された、いざとなれば自身が相手取る絶対的強者の情報。
内容は案の定と言うべき、ノワルやアルジュナ・オルタに引けを取らぬ暴れっぷりである。
宇蟲王の被害がエリア一つ程度で済んだ、と言い換えても正しい。

「ああそういや。お前のお友達の衛藤可奈美、あいつも赤い暴君と斬り合ってたか」
「っ!可奈美が……?」

メモリーディスクを覗いた為、市街地で起きた宇蟲王の蹂躙劇はほとんど知っている。
青い戦士が介入し、最終的にどう決着は付いたかはともかく。
それ以前に、誰がどうなったかは薫の記憶越しに見た。
可奈美の名前を出され目を見開く沙耶香へ、仮面で隠しても分かる嘲りを浮かべた。

「赤い暴君相手に一騎打ちを挑んだ雄姿!全く感動的で、涙が零れそうだったよ。結局どうなったかは……おっと、言うまでもないよな?」
「……っ」
「ほっほー、衛藤可奈美にしちゃ随分脱落が早いと思ったが。ま、相手が悪過ぎだわな」

参加させられた時間軸を加味すれば、たとえ御刀が手元に無くても簡単に死ぬ刀使じゃない。
そう思っていた可奈美が誰に殺されたか、知ってしまえば納得もいく。
エケラレンキスが聞いたら、どう反応したのやら。

668壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:31:09 ID:RqEoB1FI0
「さて、と。ちょいと脱線しちまったが、続きどうするよ?」

得られた情報は中々興味深いが、そもそも自分達は戦闘の真っ最中。
得物を肩に担ぎ問い掛けると、即答はなく暫しの沈黙。
ややあって肩を竦め、魔戒剣を鞘に納めたのが答え代わりだ。

「なんでぇ、お喋りして解散かよ」
「“本命”の予約ならもう入れてあるからな、そっち以外に延々とかまけてられないんでね」

参加者だろうと五道化だろうと、殺し合うこと自体は構わない。
しかし主催者が直々に用意した相手だ、有象無象のNPCと同じとはいかないだろう。
となれば仮に倒すとなった時、ジンガも相応の戦意で以て挑まねばなるまい。
一護の霊力を我が物に変え、傷は綺麗に言えたが疲労は別。
負ける気がなくとも、軽くない消耗を抱え勝てる程温い敵と甘く見ない。
であればここいらが退き時、撤退用のカードを一枚取り出す。

「待って!舞衣達のこと、もっとちゃんと教えて……!」

『ATTACK RIDE INVISIBLE!』

動揺を引き出す内容を断片的に言われたが、肝心な部分はボカされたまま。
納得出来ず食い下がる沙耶香を一瞥、鼻で笑いながら姿が消えていく。

「本人を直接探すんだな。それか、柊真昼に会ってみろ」
「そいつがマイ達とどう関係してんのよ?もっと具体的に言いなさいっての!」
「喚くなよ、次はキャットフードでも用意してやる。それまでに、精々飼い主様に躾けてもらえ」
「んなっ!?」

そう言い残し、ジンガの姿も気配も完全に消失。
頭に血を昇らせたキャルが手を伸ばすも、虚しく宙を掴むに終わった。

「そんで、そっちのゼインコンビは?一応まだ挑戦者受付中よ?俺」
「いえ、我々もここは退くとしましょう。ですが、二度目はありません。行きますよ果穂」
「は、はい……!」

自分はともかく、果穂のダメージを考えゼインも撤退を選ぶ。
仮にシビトの侑斗が使い物にならなくなれば、別の資格者に移らねばなるまい。
フェザーサーキットの効果で従順な果穂がスペア候補に望ましく、体調にも幾分気を配る。
ジャスティシュパニッシュメントを地面に放ち、土煙と道路の破片が目晦ましの役目を果たす。
晴れた時、白い装甲はもう何処にも見当たらない。

669壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:31:52 ID:RqEoB1FI0
「お前らはどうすんの?あ、続きやりたいんなら俺は手出ししないで見学してっけどさ」

友人へ接するかの気安さで問えば、キャル達にも緊張が走る。
なし崩し的に一時休戦となったとはいえ、グラファイトとは元々敵同士。
ゼイン達が去った以上、改めて決着を付けようとしてもおかしくない。

「フン、お前の指図で再戦に出る気はない」

だが予想に反し、グラファイトに戦闘の意志は見られない。
人間態へ戻り、意図が読めない一同を見据える。

「お前達との決着は必ず付ける。だが邪魔者のせいで余計な消耗を負ったお前達を倒した所で、それは俺の望む戦いじゃない」
「だからお前も、この場は去ると言いたいのか?」
「ああ。次に会った時はお前達の強さを、改めて俺に見せてみろ」
「正直暑苦しいのは余所でやって欲しいけど…まあいいわ。見逃したこと後悔させてやるわよ」
「フッ、期待していよう」

友好的なんかじゃない、敵意を籠めたキャルの言葉と視線。
しかしそこに悪意は宿らず、だからグラファイトも笑みを一つ零し去って行く。
次があればこんな終わり方にはならない、そう確信を抱いて。

「じゃ、俺もそろそろ戻るわ。ルルーシュのやつに、新居探し頑張れよって伝言よろ」

帰って早々ストレスに胃を痛める姿を想像し、けらけらと笑う。
五道化故に持たされた機能か、姿が消え一瞬で地下へ移動。
止めるものはおらず、何とも言えない顔でコルファウスメットが立っていた場所を見やる。
いずれ戦う時が来るにしろ、少なくとも現状挑むにはコンディションが良いとは言えなかった。

ホラー喰いのホラー、救世主、紅蓮龍、凶星病理。
ルルーシュの言葉を借りるなら「特記戦力」の参加者と、冥黒の五道化。
各々が異なる方へと姿を消し、ようやっと闘争の熱も引き始める。
一件落着と言い切る前に、被害と向き合わねばなるまい。

670壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:32:30 ID:RqEoB1FI0
「……申し訳ありません。私の判断ミスです」

顔色を曇らせ謝罪を口にする眼鏡の刀使は、憂いを籠めテレビ局『だった』物を見上げる。
一体誰が、ここに皇帝の拠点があったと言えるのか。
廃墟の二文字すらまだマシな、完全崩壊一歩手前の有様。
辛うじて破壊を免れた箇所が残っているのは、奇跡という他ない。

当然の如く、NPC達にも被害は大きく出た。
ノワルを警戒し、置いて行った少女達は非常に多い。
なのに今や、見る影もない程に減ってしまった。

なまじ、グラファイトが強敵であれど絶対に倒せない相手でなかったのが判断ミスを生じさせた。
もっと早くにコルファウスメットへ働きかけ、表舞台に引き摺り出せば。
拠点は失えど、軍の全滅は避けられたろうに。
ゼインの乱入やジンガの暴挙へ振り回され、結果この始末。
誰がどう見ても、テレビ局は使い物になるまい。

「奴の砲火を防ぎ切れなかった我が言えた事じゃないが、余り気を落とすな。お前が配下の者を動かしたおかげで、幾らか持ち堪えられたのだぞ」

チラと振り返れば、原形を留めていない鉄屑がチラホラ。
少女タイプのNPC以外にルルーシュが残した、マシンタイプの兵。
無人偵察機、メタルギア月光の成れの果て。
ディケイドが一斉攻撃を仕掛けた時、眼鏡の刀使の指示でメタルギア月光を全機投入。
巨体を盾に使いながら、大破するまでの間に搭載済みの機銃を乱射。
少しでもタギツヒメ達の負担を減らそうと試みた。
コルファウスメットが出張るまでの時間を稼ぐのに、十分貢献したと言って良い。

「奴が派手にやったせいで、別の参加者が寄って来るやもしれん。我が気を張って置くから、お前もお前のやるべき事をやれ」
「……はい、ありがとうございます」

テレビ局内に待機させたNPC含め、被害規模のチェック。
それに運良く消し飛ばされず、無傷で残った車両も少数ながら確認出来る。
ルルーシュの帰還までにやるべき事は、一つや二つじゃない。
顔色が良いとは言えないが、どうにか切り替えた。

671壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:32:59 ID:RqEoB1FI0
「チックショウ許せねぇ!アケミをダイナミック火葬しやがって…!」
「このままで良いのかよ姐御ぉ!あいつら全員ぶっ殺して、キャスパリーグなんて目じゃない伝説創ってやろうぜ!」
「んなもん創るか!っていうかキャスパリーグって誰よ!?ああもう!あんの銀髪野郎、次会ったら髪の毛全部毟り取ってやるわ!」

運良く生き延びたスケバン達に負けず劣らず、怒り荒れ狂うキャル。
元気な奴らだと呆れるも、落ち込むよりは良いのかもしれない。
放っておいても大丈夫そうだと視線を外し、タギツヒメの瞳はもう一人に移る。

「舞衣……可奈美……」

今どこにいるか分からない者と、生きてる内に会えなかった者。
二人の名を呟く沙耶香に影が見え隠するのは、戦闘の疲れだけが理由じゃない。
人殺しになったという、ジンガの言葉。
自分達を弄ぶ嘘だと思いたい、けれど偽りだという確信もない。
本人に会えば、或いは柊真昼なる者なら真実を知れるのだろうか。

(それに、あの子も……)

ゼインに操られた果穂を助けたい気持ちは本当だけど、上手くやれなかった。
もし彼女が自分の時と違い、取り返しのつかない事態に陥ったら。
たとえ正気を取り戻せても、心が無事でいられるとは思えない。

キャルも沙耶香も無事とはいえ、どこか苦々しさが残る結末。
とっくに思い知っているが改めて、護る事が如何に難しいかが圧し掛かる。
重いため息を零し見上げた空は、地上の者達の苦悩など気にも留めないような。
腹立たしい程の青さで、澄み渡っていた。

672壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:35:19 ID:RqEoB1FI0
【エリアD-7/租界 テレビ局前/9月2日午後14時30分】

【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:破面化、疲労(大)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)、可奈美の死に複雑な想い、ロロへの複雑な感情(大)
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:ロロの事は信じたい、だが…一護の死は本当に、奴の言った通りなのか…??
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたが……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのギアス……我にも通じるのだろうか。
08:継ぎ接ぎの男(真人)も銀髪の男(ジンガ)も、荒魂より質が悪いな。
09:ルルーシュとロロは本当にただの仲の良い兄弟にしか見えん。だが……
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。
※沙耶香、ロロ、キャル、陽介とも情報交換を行いました。
※破面化を果たしました。能力全般の上昇に加え、破面の基本的な能力が使用可能です。その他の影響は後続の書き手に任せます。

673壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:35:51 ID:RqEoB1FI0
【糸見沙耶香@刀使ノ巫女】
状態:疲労(大)、ダメージ(中)、精神的疲労(中)、真人への嫌悪(大)
   可奈美の死及び舞衣達が人を殺したかもしれない事への動揺、ロロやイザークたちへの罪悪感(中)
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女、時透無一郎の日輪刀@鬼滅の刃
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(沙耶香)
ホットライン、ブラックコンドルのレンジャーキー@海賊戦隊ゴーカイジャー
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:ロロのこと、ちゃんと信じてあげたい。
02:可奈美は……私が止める。
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。
  でも…あの悲しむ様は……。
04:あの継ぎ接ぎの人、すごい嫌だ。
05:ロロのこと、多分羨ましい。
  タギツヒメのことも…きっと…。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:私が…可奈美や舞衣、十条姫和達と一緒に……?それに薫って人とも……?
08:恋とかはまだよくわからないけど、ありがとう、キャル。
09:大丈夫、もう利用させないよ
10:ゼイン……あなたも継ぎ接ぎや可奈美を操ってる人みたいな存在ならその時は……
11:舞衣達が、人を殺した……?
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロからコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※ジュール隊のメンバーからコズミックイラ、アストルム、東西南北(仮)、自称特別捜査隊などの情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を脱しました。

【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:疲労(大)、ダメージ(中)
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り二画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード、ホットライン
   ライドケミーカード(ホッパー1、テンライナー、スケボーズ、アッパレブシドー)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
  あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザーク、クルミ、イチロー、シェフィ……ひとまずは無事みたいね
03:ロロのこともルルーシュのこともひとまず信用してやるわ。
04:今度継ぎ接ぎ(真人)に会ったらイザークの右手の礼もサヤカの乙女心を傷付けたツケも全部払ってもらうわ
05:今回の件でサヤカが恋愛にビビりすぎちゃわないかが心配。
  本当の恋って、すごくいい物なのよ。
06:ルルーシュに会うより前にイザークと合流したかったけど、仕方ないか
07:ゼインに色欲の魔女ね……まあ、そのうち戦わなきゃいけなかった相手か。
08:グラファイトとは次に会ったら必ず倒す。ま、そうなるしかないわよね。
09:あの銀髪野郎(ジンガ)ムカつく、本っ当いムカつく
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※スチームライナーはテンライナーへの再錬成、テンライナーからスチームライナーへの再錬成は自在に行えますが、ケミーライズにより大型状態で召喚、プレイヤーの運搬を行ったので9月2日14時00分まで再度の大型状態での運用は不可能です。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。

674壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:36:28 ID:RqEoB1FI0
【エリアD-7/テレビ局地下 『戦士の聖域』/9月2日午後14時30分】

【凶星病理のコルファウスメット】
状態:疲労(極小)
■■:???@???
装備:黒いローブ、ガンダム・シュバルゼッテの起動鍵@機動戦士ガンダム水星の魔女
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:五道化専用ホットライン@オリジナル ????
基本:この場所(テレビ局地下 『機士の聖域』)を守護する。
01:グラファイトに釘は刺したけど、実際どうなるかな
02:綾小路清隆なぁ。勿体ねえよなぁ。
03:レンキスの奴め、滅茶苦茶しやがるな・・・。
04:暇っつったけど、誰もここまでやれとは言ってねぇ
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※データストームの完全耐性を得ておりGUND-ARMのフルスペックを遺憾なく発揮できます。
※歴代ユニバースロボ@スーパー戦隊シリーズの能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。
ただし宇蟲王ギラ以外を相手に使うと技の持続時間や射程が短くなってしまうようです。


【?????/?????/9月2日午後14時30分】

【グラファイト@仮面ライダーエグゼイド】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、アリサ・十代・沙耶香への期待(中)、伏黒甚爾・キャルへの期待(大)
怪人態(レベルオーバー)、バルバトス・ゼインの怒り(特大)、インフィニティースタイルの能力獲得
運営、及びその傀儡への警戒(大)
服装:いつもの服装(人間態時)
装備:ガシャコンバグヴァイザー@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
   八神のリュック(ランダム×0〜2)
思考
基本:敵キャラとして戦う。
00:神聖なる戦場に立つ資格のない者たちは排除する。
01:この俺に敵キャラを全うさせてくれる戦士を探す。
02:女(アリサ)、遊城十代、お前たちの眼は戦士の眼だ。
   次に会う時は敵として立ちはだかってくれること期待する。
03:伏黒、キャル達、そして十代とは次会う時に決着をつける。
04:奴(バルバトス)やゼインは今度会ったら必ず倒す。
05:GM肝入りの強ボス……冥黒の五道化か。
06:答え合わせの出来た事実を報酬にして誰かと戦うのもいいかもしれない。
参戦時期:ゲムデウスウイルスに適合した後
備考
※リュックの中に別のリュックを収納することも可能なようです。
※仮面ライダーウィザード・インフィニティースタイルのゼインカード(複製)のデータを体内に取り入れました。
 耐久力の上昇やアックスカリバーの召喚等、インフィニティースタイルの能力が使用可能です。

675壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:37:49 ID:RqEoB1FI0
【ジンガ@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-】
状態:疲労(大)
服装:着崩した黒い服(いつもの)
装備:ジンガの魔戒剣@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
令呪:残り三画
道具:闇のパルファム@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者、メモリーディスク&専用プレイヤー&ペン@ドラえもん(午前8時45分に使用、午後2時45分まで使用不能)、ホットライン、宮藤芳佳のレジスター、ディケイドライバー&カード一式(激情態・ブレイドのライダーカード損失)@仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010、ケータッチ@仮面ライダーディケイド
思考
基本:好きにやる
00:一旦どこかで休む。流石に連戦し過ぎたか?
01:やっぱりお前もいるよな?道外……柊真昼の話じゃ病院手前に居たらしいが…移動してないとも限らねぇ上に牙狼剣を持ってないみたいだからなぁ
02:あの女(ユメ)は、下手な揺さぶりも無駄だろうな
03:薫がホラーになるのを期待。
  光の力に覚醒しやがったが…中途半端な上にまだ堕ちる可能性はある。さぁてどうするか
04:思った以上にぶっ飛んだ連中がいるってこととは思っていたが…ラダン級ばかりじゃねぇか
05:ラダンか、せめて魔鏡が手元に欲しい所だなぁ。参加者を喰って力を付けるのも手か
06:薫や柳瀬舞衣が人殺しに成り下がっちまった事や、衛藤可奈美が死体を使われている事をお仲間達に伝えてやろう
07:牙狼剣を持ってる奴を見つけたら、そいつの首ごと道外にプレゼントしてやる
08:コイツ(激情態仕様のディケイドライバー)で遊んでやるのも悪くはねぇ
09:レジスターは…どうにかしておきたいところだが
10:余裕があったらグリオンって奴の顔でも見に行くか
参戦時期:流牙に敗北後〜メシアに挑む前。
備考
※-GOLD STORM- 翔の作中にて、アミリの魔鏡の力による強化後に使用した能力(ワープゲートらしきものを生成し行う転移攻撃等)は魔鏡が無ければ使えないものとします。
※益子薫の記憶を覗いた事により、刀使ノ巫女世界についての知識をある程度把握しました。
※冥黒シノンを捕食し、リフレクトモス@仮面ライダーディケイドの反射能力が使用可能になりました。他に何らかの影響があるかは後続の書き手に任せます。
※冥黒の炎を吸収し使用可能になりました。
※王虚の閃光を捕食し、能力全般が強化されています。他に何らかの影響があるかは後続の書き手に任せます。
※ライダーカードはクウガ〜キバまで使用可能です。

676壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:38:25 ID:RqEoB1FI0
【仮面ライダーゼイン@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:侑斗(シビト)へ憑依中
服装:侑斗(シビト)と同一
装備:ゼインドライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインプログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインカード一式@仮面ライダーアウトサイダーズ、メダジャリバー+オースキャナー@仮面ライダーオーズ
令呪:
道具:
思考
基本:悪意に満ちたこのゲームを破壊する。
01:このゲームの運営についての情報を集める。
02:邪魔する者は排除する。
03:悪意に満ちた参加者は見つけ次第排除。
  まずはバグスター、そしてアークとアークに同調するルルーシュ、及びルルーシュの協力者を優先。
その為に旧幻夢会社へ向かう
04:小宮果穂を予備の資格者として行動。
  今度は余計な抵抗をされないようにしなくては
05:次にチェイスと会った時、私の善意を理解するならば良し。
  そうでなければ排除する。
06:メダジャリバーを使う為にセルメダルを排出するNPCと戦いたいですね
07:ゼインカードの再使用可能となる方法を探す。
08:冥黒の五道化、彼らもいずれ滅ぼさねばなりません
参戦時期:仮面ライダーゼロスリーと対峙するよりは前
備考
※桜井侑斗(シビト・非参加者)@仮面ライダーアウトサイダーズの肉体を乗っ取りました。常に装着する必要のあるゼインドライバーを破壊、もしくは取り上げない限り解放されません。
また、変身者が死ぬ→新しい変身者を乗っ取るを繰り返す度にゼインの干渉は難しくなります。完全にできなくなった場合、ゼインの参加者としての資格はなくなります。
※時間停止は1秒のみ、そして3回使用すると次の放送が流れるまで使用できません、ゼインはこのことを把握しています。
※令呪を使った場合、昭和ライダーの力の場合はシンプルに威力増加、平成、令和ライダーの場合は最強フォームにカードが戻るようです。また、時間停止も再度可能になります
※裁断された仮面ライダー2号、仮面ライダースーパー1、スカイライダー、仮面ライダー龍騎、仮面ライダーカブト、仮面ライダーダブル、仮面ライダーオーズプトティラコンボ、仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル、仮面ライダービルドジーニアスフォームのゼインカードは回収されました。
ゲーマドライバーとランダムアイテム=マイティブラザーズXXガシャットは『ゼインカード(仮面ライダーエグゼイド ダブルアクションゲーマーレベルXX(量産型脳無))@オリジナル』になりました。

※使用済ゼインカード『ストロンガー、ゴースト、ダブル、カブト、スーパー1、エグゼイド、スカイライダー、龍騎、2号、ウィザード・インフィニティースタイル、オーズ・プトティラコンボ、ビルド・ジーニアスフォーム、響鬼、BLACK、ファイズ、アギト、クロスセイバー、ライダーマン、電王、ダブル(複製)龍騎サバイブ)
※ゼインが所持中の複製カード『ストロンガー、ゴースト、スーパー1、エグゼイド、スカイライダー、龍騎、オーズ・プトティラコンボ、ビルド・ジーニアスフォーム、響鬼、BLACK、ファイズ、アギト』

【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
状態:疲労(大)、ダメージ(小)、フェザーサーキットによる侵食
服装:私服(いつもの)
装備:フェザーサーキット@仮面ライダードライブ、ゼインドライバー(複製)&ゼインプログライズキー(複製)&ゼインカード一式(複製、ウィザード、カブト、ブレイドは使用済)
令呪:残り三画
道具:デザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル@仮面ライダーギーツ、強制退出装置@遊戯王OCG(2時間10分使用不可能)、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、メダジャリバー+オースキャナー@仮面ライダーオーズ、裁断されたゼインカード@仮面ライダーアウトサイダーズ、檜佐木修兵のバイク@BLEACH、桜井侑斗のレジスター、ホットライン×3
思考
基本:ゼインさんの言う通りにします!
   何も間違ってないですよね?
01:こんなに幸せな気持ち初めてです……
参戦時期:不明。少なくともW.I.N.G.の優勝経験あり。
備考
※フェザーサーキットの影響で思考が汚染されいます。

677壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:39:02 ID:RqEoB1FI0
【桜井侑斗(シビト・非参加者)@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:ダメージ(大)、ゼインが憑依中
服装:私服
装備:
道具:なし
基本:ゼインが憑依中の為なし
00:……
備考
※ドライバーにゼインの意志までは複製されていません。

※グラファイト、ジンガ、ゼイン&果穂がどこへ行ったかは後続の書き手に任せます。

【全体備考】
※D-7テレビ局と周辺で起きた戦闘により一帯に大規模な被害が出ました。テレビ局は最低でも8割が破壊されています。
※テレビ局に待機していたNPCは、眼鏡の刀使@刀使の巫女他少数を除き壊滅しました。具体的な数は後続の書き手に任せます。
※被害を免れた車両が少数あります。具体的な車種や台数は後続の書き手に任せます。
※タギツヒメ、ジンガ、ELS一護の霊圧の衝突、及びディケイド・コンプリートフォームによるテレビ局の破壊は近隣の参加者に目撃された可能性があります。


『支給品解説』

【時透無一郎の日輪刀@鬼滅の刃】
…真人に支給。
霞柱・時透無一郎が使う日輪刀。
ソードスキルとして全集中の呼吸、及び霞の呼吸が使用可能になる。


『ドロップアイテム解説』

【ケータッチ@仮面ライダーディケイド】
…ジンガが入手。
ネガの世界で門矢士が手に入れた、ディケイドの強化ツール。
使用すると仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームに変身可能。
九つのライダーの力を全て取り戻していなくては、変身出来ない。

678壊乱F:青天井はどうしようもなく澄み渡っている ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:39:34 ID:RqEoB1FI0
【NPC解説】

【『金の手』部隊@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
ゴウシン議長直属の部隊。
所属する全員が金色の鎧で装備を統一している。

【スケバン@ブルーアーカイブ】
キヴォトスの各地で活動する武装不良集団。
名前の通り構成員の多くはロングスカート、マスク、革グローブなど、かつて現実の日本に存在した不良女学生・スケバンの容姿をした少女たちである。

【傭兵バイト@ブルーアーカイブ】
その名の通り傭兵のバイトをしている生徒達で、民間の傭兵とも言われる。
黒髪おさげでツナギの作業着を着て安全ヘルメットを被っていると言うまるで工事現場で働く作業員のような恰好をしている。
着ている作業着は青やピンクなどがある。

【メタルギア月光@メタルギアソリッドシリーズ】
アームズ・テック・セキュリティ社製の無人二足歩行兵器。
全高5メートル前後で、RPG等にも耐える堅牢な装甲を持ち、屋内での掃討なども視野に入れ、軽量化と高機動化がなされている。
胴体上部と股間部に通常のダンボールなどの中身を透視できる高度な赤外線メインカメラが搭載されて、広い視界を確保している。

679 ◆ytUSxp038U:2025/07/27(日) 00:39:58 ID:RqEoB1FI0
投下終了です

680 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/27(日) 01:02:13 ID:8pYbZlPM0
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、花村陽介、キャル、糸見沙耶香、タギツヒメ、イザーク・ジュール、大河くるみ、イチロー、龍園翔、伏黒甚爾、十条姫和予約します。

681 ◆TruULbUYro:2025/07/27(日) 01:27:10 ID:ysNSjpng0
皆様投下お疲れ様です
メラ、バルバトス・ゲーティアで予約+延長させていただきます

682 ◆8eumUP9W6s:2025/07/27(日) 23:59:37 ID:hV7h/Sfg0
予約に冥黒ディアッカを追加して投下します

683 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:02:49 ID:hVDK0tA20
『“もちろん、ミカの味方でもあるよ。”』

…身体が勝手に動いて、みんなを攻撃しちゃってる所を見せられてる中、頭に浮かぶのは……私なんかの味方で居てくれると言ってくれた、もう居ない、きっと誰かに殺されて、姿を使われてしまっている先生の言葉。

ナギちゃんやセイアちゃんと同じ、失いたくない人で…優勝を狙ってる身の私が言うのも、おかしな話だけど。
知ったら絶対止めに来てくれるって期待と、今の酷い有様な私を見て欲しくないって気持ちと、殺したくなんてなくて、でも復讐を果たすためには殺さなきゃいけなくって……なんでこんなに、ぐちゃぐちゃな気持ちになってるのか。
…自分でも、正確に口には出来なかった。けれど……馬鹿だなあ、わたし……喪って、はじめて……ようやくきづくなんて……。

『…アンタを助けて、ドラゴンにされた方のキラも助ける…マイや、先生の分までやってやるわよ!!』

──セリカちゃん…だったよね?その子の声で、後悔に溺れそうになっていた私の心は引き上げられた。……きいて、くれてた。とどいて…たんだ…!
……先生なら、きっとそうする。意識飛んじゃってる舞衣ちゃんでも、それに……篝ちゃんだって!
…きっと……そうだ、せめて、キラくんだけでも……たすけ、ないと……!!

落とされた隕石を、セリカちゃんも、准将の方のキラくんも本物のアスランくんも、それに流牙お兄さんって人も……掻い潜ってくれていて。
業を煮やしたのかはわからないけど、独りでに動いてる私の身体は、起動鍵を使おうと……そんな事、させ…ない……!!

684 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:03:15 ID:hVDK0tA20
必死に止めようと、制御を取り戻そうとしてはみたけれど…起動鍵を使わせないようにするだけで、手一杯だった。
……こんな有様じゃ、キラくんを助けれないのに……!!

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隣のエリアにて繰り広げられるは、氷の竜……キラ・ヤマトの成れの果てが飛ばす氷や風に光の柱等を回避する少女……自我を取り戻し崩壊が近づきつつある衛藤可奈美と仮面の騎士……タイクーンブジンソードとなった枢木スザク、2人の剣士という戦闘光景。
氷で形成したドラグーンを切り払いまた避けるスザクと可奈美、その2人は即興で連携をこなして行く。

三つ首の氷細工の竜を放つ氷竜に対し、可奈美が先程の戦いで「視て」覚えた技、慙悔を行使。居合による無数の乱撃を以て対応した。
その間に持ち前の人間離れした身体能力を以て回り込んだスザクが、武刃の斬撃波を氷竜本体へと放つ。
氷を盾代わりとして氷竜には防がれたものの、それで生まれた隙を掴むように、迅移で加速した可奈美が覚えた特技「はやぶさ斬り」で攻撃。
手刀で受けられるも直接斬り掛かったスザクの一撃が氷竜へと当たった。

…柊篝と共闘した時同様、ソードマスターチェストの恩恵が連携により更に活かされているのが大きい。
しかし戦局自体は膠着…否、可奈美とスザクの方が徐々に追い詰められ始めていた。

(…動きがどんどん、慣れていってるみたいに早くなってる…!)
(戦いの中で、成長しているとでも言うのか…!?)

全ての才能の要求値を最大にした上で、全てが要求通りなスペックを以て産まれてきたスーパーコーディネイターであるキラには、本来は機会こそ殆ど無いか相手が悪く一方的な展開を許すかだったが…当然生身での戦闘等の才もある。

685 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:05:45 ID:hVDK0tA20
殺し合いの中で研ぎ澄まされていっていたそれは、完全に氷竜と化してからもなお健在。
しかも心意システムは、彼に対しても有利に働く。
全てを凍らせて終わらせるという、諦観と絶望という強大な負の感情によって心意の増幅がされているためだ。
それらも考慮すると、可奈美が視て覚えれるのが剣術や手刀の類のみなのもあってこのままでは遠からず押し切られる可能性すらあった。

そんな中、可奈美は二刀で手刀と斬り結びながら口を開く。

「…たしか、言ってたよねキラくんは。
…話してみたかったって、仲良くなれたはずだからって……わたしも、だよ。
……それに、これだけ短時間で動けるようになるんだから…きっと、剣術でもすごく強くなれたと思うから」
「…奴は面倒くさがりだよ。仮定の話をして何になるのかな」

にべもなく切って捨てる氷竜に、今度はスザクが斬撃波を飛ばしながら仮面越しに口を開く。

「…君は、なんのために戦っているんだ?」
「ラウ・ル・クルーゼや奴の…キラ・ヤマトのような、そして僕自身のように…人の業そのものといえる存在がこれ以上産まれなくていいよう憎しみの連鎖を全て断ち切る。
それを成すには全てを凍らせて、悲劇が起きる土壌を断ち、そこでようやく……生み出されたという奴の罪も僕の罪も、償う事が出来る!
…お前にだってそれは分かるだろう?いいや分かるはずさ!!」

686 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:07:46 ID:hVDK0tA20
「…確かに、気持ちは理解できなくもない。けれど……いやだからこそ、ここで君は止めなきゃ行けないんだ!」

親殺しという大罪を背負っておきながら、罪を罰される事なくのうのうと生かされていた身であるスザクからすれば…それまでとは異なる、激情を滲ませた言葉に思う所は多々ある。
だが、曲がりなりにも悲劇を無かった事にしようとしているスザクとは異なり、目前の竜は全てを凍らせたらその先はない。
確かに彼の願いが叶えば、憎しみの連鎖も悲劇も全てが断ち切られる。しかしそこにはただ凍りつき滅んだ世界が遺るのみ…そんな有様を望む者はそう居ないだろう。

…第一、キラ・ヤマトがこうなってしまった責任の一端を背負う者として、彼を止めない選択肢はスザクにも、そして可奈美にも無かった。

(…何かが落下している音…?…付近でも戦いが起こっているんだ。
……纏めて凍らせてしまうチャンスかな…きっと、そうに違いない)

斬り結ぶ中ソードスキルにより風を自らに纏わせ、纏めてふっ飛ばそうとするも…スザクにも可奈美にも避けられてしまう氷竜。
だが聞こえてきた戦闘音に耳を傾け……繰り広げられてる乱戦に介入して一網打尽を狙わんと定める。

(音が…地面に何かが落ちて…もしかして、近くで誰かが戦ってる…?)
(…このままじゃいずれ力負けする、なら一か八かで音の方に向かうのもありか…?)

一方2人もその音を耳にしていた。
二ヶ所の戦場が合流するその時は、すぐそこまで迫っている。

687 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:10:58 ID:hVDK0tA20
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「隕石ばっかり、落とすんじゃないわよ…っ!」
「…一撃一撃が、重いな……!」
「けど、精度は悪い…なんとか、持ち堪えてみせる!」

砲撃を掻い潜り、隕石をどうにか避け又は防ぎながらも、フルートバスターを使い、また場合によっては御刀の技能を行使しながら、直接殴りかかる事もある本体へ対応するキラ准将、アスラン、セリカの3人。
准将はクアンタとガンバレルストライカーの起動鍵を併用し、ドラグーンとガンバレルによる射撃を行う。アスランはズゴックによる近接戦をしつつ、射撃兵装やソードスキルを行使。セリカは不慣れながらも御刀による刀使の技能を以て回避行動を優先しつつ、マジアマゼンタとして隙を掻い潜り銃弾を見舞う。

(加勢に来てくれた時より、動きがチグハグに思える……起動鍵も使用に踏み切る様子が見れないな)
(…何かを取り出そうとして、出来ないまま隙が生まれてる…ミカ、君は……戦ってるんだね)
(…ミカ、やっぱりアンタの言おうとしてた言葉は…!…わかってるわよ、アンタも必死に戦ってるって…だから…!)

テラー擬きとなってしまった聖園ミカとの戦いは……隕石が落ちエリアが壊滅する程の規模、かつ相応に時間が経過してなお、相対する対主催を誰一人殺せていないという状況にあった。
これについては、柳瀬舞衣が使ったスキル丹田法の訓による味方への体力バフの影響もあるが…良くも悪くも正負どちらの心意も混ざり合った結果ミカが暴走しているが為だ。

688 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:13:30 ID:hVDK0tA20
もし、キラ・ヤマトや柊篝との縁が聖園ミカになければ……傾いた負の心意も合わさって、頭の良さ等はそのまま優勝の為に一切容赦しないマーダーが生まれていたかもしれず、そうなれば犠牲は避けれなかっただろう。
また本来の歴史でのホシノ*テラーのように暴れる場合も、犠牲を出さない立ち回りを通すのは困難を極めていたと思われる。
 
それらの場合と比べてしまうと、当人の意思すら介せず勝手に手当たり次第に破壊して回るだけならまだしも、ある程度当人の抵抗を許してしまっている今のテラー擬きミカは本来出せるスペックよりも弱く…弱体化甚だしいとすら言える程だ。

ともかく、セリカらの奮闘により出来ている隙に、隕石を避けつつ行動に出たのは流牙。
支給されていたとりよせバッグを行使し…目当ての物を掴み引き寄せんとする。

(…ミカ、やはり君は抵抗を…。…セリカ達の意志を尊重して、出来る限りの事はやろう。その上で……いざとなれば、守りし者として──)

考えを定めつつ、バッグの中に流牙は手を入れた。
…放送を迎える前は、牙狼剣や(あった場合だが)魔導輪ザルバの確保が可能か否か、不可能にしてもこの殺し合いに存在しているか否かを知る為にも使おうと考えていたものの、ミカの変貌と助けようとするセリカ達、それにミカ自身の抵抗もあり……目当ての物を変える。
暫し後……それはバッグの中から出てきた。

689 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:14:04 ID:hVDK0tA20
(…すまない、先生。だが今は…あなたの教え子を、助ける為に必要な事なんだ……!)

心中で詫びながら、出てきたそれに触れサイコメトリーめいた力を以て…声を聴こうと試みる。

聴こえてきた声は、とりよせた身体の一部分の持ち主……先生の今際の思考。
生徒達の無事を祈りながらも、ホークアイと名乗った手を剣へと変化させた相手への警告を抱き、遺す形となってしまった生徒達への言葉を胸中で告げる。
そして最後に…殺し合いに巻き込まれる前、向かわねば、伝えなければと思っていた……単身不滅の敵軍へと立ち向かい戦い続けているであろう、不良生徒で問題だらけなお姫様へと……遺した言葉を、流牙は確かに聞き届けた。
ふと見ると、隕石落としにより巻き添えになったNPCが遺したと思われる布があり…それで包んだ後、彼は駆ける。

「セリカ、君はリュウガさんの所へ!」
「ここは、っ…俺達が抑える!」
「任せたわよ!アスラン、キラ准将!」

キラ准将とアスランがミカを抑える中、セリカと流牙は再度合流を果たした。

「…リュウガさん、その…出来たの…?」
「ああ。声は聞き届けた…後は彼女に、ミカに伝えるだけだ。
それと…君にも伝えておくことがある」

690 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:14:26 ID:hVDK0tA20
「そうですか……ありがとう、ございます。リュウガさん。
……っ…せん、せい……!」
(…きっと、先生だったら…生徒を助ける為なら…って、受け入れちゃうわよね…)

布に包まれたそれが何なのかはなんとなく分かっていて、思う所があるかどうかで言えば間違いなくあるし、面食らった所もあった。
だけども……堪えるような流牙の表情から、本意ではなかった事も容易に想像出来る。
告げられた言葉を噛み締め、嗚咽を必死に耐えながらも……黒見セリカは、マジアアビドスは改めて啖呵を切った。

「…みんなと一緒に、アンタを助けて…それで今度はアンタとも一緒に、キラを助けるわよ!聖園ミカ!!…先生のっ、分まで!!」

----

…セリカちゃんも、流牙おにいさんも…准将の方のキラくんも本物のアスランくんも…わたしを……そしてキラくんを助けようとしてくれてる。
…わたし自身も、使わせないようにしてるだけじゃ…ダメなのは、わかってるけど……身体は止まらない。
なんて言ってるのか、わたし自身にも聞き取れない、わからないまま……宙からまた隕石を落としながら、浮かせた銃を流牙おにいさん達に放って。

691 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:16:10 ID:hVDK0tA20
『今です、舞衣!』
「──十六手詰め!」

……隕石が、割れた…!?
…わーお。いつの間にか起きてた舞衣ちゃんが、刀を抜いて……青い炎を…刀身っていうのかな?それに纏いながら割っちゃった。
こんな真似が出来るのなら、疲れるよねって…納得いくなぁ。

「遅れてすみません道外さん、銃撃はわたし達が…!!」
「…助かる、舞衣!」

…放送前に話した時から、そんな気はしてたけど…舞衣ちゃんもやっぱり、助けようとしてくれてるんだ…。

銃撃を舞衣ちゃん達が防ぐ中……ハガネ、だったっけ?そういう鎧を纏った流牙おにいさんが近づいてくる。
わたし…の身体は、御刀を持って迎え撃とうとして
……剣と剣がぶつかり合ったその時だった。

「…先生の最期の声を聞いた。ミカ……今からそれを、君に伝える!」

……え??どうやって、だってせんせいは……せんせいはっ……!!

「リュウガさんは触れた物の声や、それを持ってた人の最期の言葉や想いを聞けるみたいで……本当なのは、私が保証する。私も……伝えて、もらったから…!」

692 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:17:22 ID:hVDK0tA20
目に涙を浮かべたセリカちゃんが、そう言ってる。……そうだよね、先生をうしなって、つらいのは……わたしだけじゃない、よね。

「──『…たいせつな……どうか…きみも……すくわれ、て……』と、君の、ミカの事を…お姫さまだと、そう思いながら…亡くなった」

………え?……せんせいが……わたし、を……。
…わたしが、すくわれていいわけが…ないのになんで……??
…でも…もし、もしわたしが、すくわれていいなら……まず、もっとすくわれるべきひとがいる……!!

「……君はどうしたい、ミカ」

斬り合いながら、流牙おにいさんが聞いてくる。
……さっきまでとは違って、不思議と…口を動かせる気がした。せんせいが…わたしなんかのことをおもって、すくわれてほしいって…おもってくれてたのを知れた、からかな…?…きっと、そうだとおもいたい。

「……──わたしは…わたし、はっ……キラくんを……助け、たい!!!!」

…力のかぎり、叫んだ。そうだ…キラくんを助けないと……こんな所で、こんなわけわかんない状態になってる場合なんかじゃ、ない……!!
…憎しみも怒りも悲しみも、全部消えてはくれない、けれどっ……助けたい、救われて欲しいひとがいる、なら……今は、全部飲み込んで……それの為に使う!!

693 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:17:53 ID:hVDK0tA20
「……そうか」

心なしか、ホッとした声色で流牙おにいさんがそう言ったように聞こえて、剣に光を集めて…いや、光に変えた上で集めてるのかな?
…使い方を決めた、定めた途端…身体の制御…ってものをだんだんと、取り戻せてるような気がして……ひょっとして、あんな風にすれば……!

金属同士がぶつかる鈍い音がする。…思いついたわたしは、御刀を構えて…心のなかにあるぐちゃぐちゃな、よくない感情を全部……変えるように意識して、その上で……全力で流牙おにいさんの剣を受け止める。
おにいさんの鎧が解除されていくと同時に……わたしの身体は、完全に私自身の物に戻ってた。

----

流牙が放ったのは、闇を光へと変えて集めた上で放つ技、閃光剣舞。
暴走しながらも抵抗しようとし制御を取り戻しつつあるミカに視せる事で、完全に己を取り戻す最後の一押しになれば…という考え故であり…それに応える形でキラ・ヤマトを救いたい、助けたいんだという思いを以て…自らの負の心意を正の心意へ変換・増幅させる事により聖園ミカは制御を自身へと戻した。 

「…ぁ……えっと、みんな…あの……その……」

自らを取り戻し、真っ先に目に入ったのは壊滅状態なエリア。隕石を何度も落とした結果がこれである。暴走していた結果エリアへの被害は甚大となったが、止めようとしてくれていたセリカらへの被害はそこまででもなかった。
とはいえミカの胸の内に去来したのは迷惑をかけてしまつた申し訳なさであり…気まずくなり、言葉を発そうとするも上手く出てこない。

(…いっそこのまま、なあなあに…ううん、ダメだよ私。私なんかを…助けようとしてくれてたのにそれは…ダメだよね。おどけるのもダメ。
…この後、キラくんを助けるのにも協力して貰わなきゃいけないし…。みんな、さっきはああ言ってたけど…愛想尽かされちゃってても、おかしくないくらいに私…うまくいってなかったから…)

694 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:18:20 ID:hVDK0tA20
「……ごめんっ!みんなに迷惑…いっぱい、かけて……傷つけて…!
……さんざん、めちゃくちゃなことしておいて…しかも、その…乗ってる身で言うのも…なんだけどさ……でも、もし…もし許されるなら……今だけで、いいから……私に力を貸して、ほしいんだ。
……どうしても、助けてあげたい子を…キラくんを止めるには…あの氷の竜から助け出すには……くやしいけどわたしひとりじゃ、足りない…から…だから…だからっ…お願い…!!」
「……ミカ…」

暫し思考した後、意を決したようにミカは頭を下げる。
謝罪はその場にいる面々にも、それだけじゃなく…チェイスら別れた対主催の面々にも、もういない先生や篝に対しても向いていた。
そして…涙を零しながら、その場の面々にミカは助力を頼む。自分が殺し合いに乗っていることすら、直接言ってはないものの開示してしまう。なりふり構わない行動を彼女は取った。

その様は彼女が未だ捨てれずにいる憎しみを向けているサオリが、本来の歴史にて先生相手にした懇願のそれに似ていたが…それをこの場の誰も知る由はなく。ともかく…半ば呆れた様子なアスランを含めて、彼ら彼女らの返答は決まっていた。

695 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:18:50 ID:hVDK0tA20
「……さっきから言ってるでしょ?アンタを助けて…その後はキラをみんなで助けるって」
「…わたしも、さっき言った通りだよミカちゃん。キラくんって子を助けるのに協力するって。その気持ちは…変わらない。わたし自身がそうしたいから…だから、顔を上げて?」
「可能性があるのなら、俺は君の…君達の意志を尊重したいと思っている」

「…僕も、昔の…竜にされてしまった方の僕を止めたい。助けられるのなら…助けたいと思ってるよ」
「…これで分かっただろう?少なくともこの場には…君の願いを無下にする者は居ない。
…行こう、君が助けたいと願っている…昔のキラを助けに」
「……セリカちゃん、舞衣ちゃん…流牙おにいさん、准将の方のキラくん…アスランくん……みんな、ありがとう……っ…!」

目元を拭い、アスランの差し出した手を取りミカは立ち上がる。
そしてすぐにでもキラを探しに向かおうとし…止められた上で一時話し合った上で動く事となった。

----

チェイスおにいさん達の所から衝動的に離れちゃった時みたいに、危なくまたひとりで感情任せに向かっちゃう所だったけど…どうにかみんな、引き留めてくれた。

696 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:20:17 ID:hVDK0tA20
「アンタが乗ってるって言ってたの、ちゃんと聞いてたからね」

……そうセリカちゃんが釘を刺してくる。
…聞き流してくれてないかなぁ…なんて思う私もちょっとだけいたけど、うん…そうだよね。そんなわけないよねー…。

「そういえば…聞きたかったんだけど今聞くね。昔の僕を助けて……その後君はどうするの?」

准将の方のキラくんが、そう問いかけてくる。
警戒とかは無さそうで…純粋にどうしたいのか、聞いてるのかな?なんというか…私のよーく知ってる方のキラくんより、考えて動いてる感じがする。
……ちょっと悩んで、考えながら…ぐちゃぐちゃな心のまま私は正直に答えていくことにした。

「……わかんない。…生きて帰って、復讐を果たさなきゃいけないって、思ってる私はまだ居て、消えてくれてない。
……けれど、先生は私に、救われて欲しいって……最期にそう思ってくれてたんだよね?
……なら、乗ったままじゃ…救われるわけもなくて……。…だから、とりあえず……わたしより、よっぽど救われるべき子なキラくんを助けてから…改めて考えようと、思ってる」
「じゃあ絶対に…助け出さないと」
「…乗るようなら、わたしも、みんなも…改めてミカちゃんを止めるから」
「…そっか、うん…わかった」

697 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:20:48 ID:hVDK0tA20
そこからは、キラくんをどうやって助けるかって話。
…あの氷の竜はキラくんを凍らせたって、二度と出れなくしたって言ってた。きっとキラくんは、さっきまでの私みたいに…心の中で動きを取れなくされちゃってる。
さっき戦った時は、アスランくんの姿見たのが決め手で…一時的に取り戻せたみたいだけど。

…私がぐちゃぐちゃな感情に飲み込まれちゃったのは茅場って人が心意システム?ってものを導入してからで……それで、セリカちゃんの啖呵と、流牙おにいさんに先生の最期の言葉を伝えてもらえて…どうにか取り戻せた形になる以上…多分強い気持ちがシステムの起動条件で、それ込みなら…きっかけさえ作れれば、助けれる気がするんだよね。
その辺りも話した上で、みんなに私は聞いてみた。

「だからどうにかして、キラくんの心に直接呼びかけて起きてもらうか……それか凍らせたって言い方的に、いっそ心の中に入って、凍らせてる竜を倒して…とか出来たら…。
…触った相手の過去を見れるソードスキルがあるんだから、そういうのがあってもおかしくないんじゃって私は思うけど……手立てとか、あるかな…?
なにかあれば…心意システムってのとの併用で、助け出せるかも知れない」

動けなくなるまで痛めつけて……っていうのは、極力したくなかった。それで戻ってくれる保証が無いのもあるけど、キラくんにそんなことしたくない、傷付けずに済むなら……それが一番いいはずだからさ。

698 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:21:11 ID:hVDK0tA20
「…手元には無いが、そういう類いだと…アコードの読心・精神干渉がスキルに落とし込まれている可能性はあるな」
「ジンガはその手の類の事をやれるが…当人が殺し合いに呼ばれているにも関わらずスキルという形で別の誰かにまで配るかは…わからない」
「…わたしが覚えれる職業のスキルじゃ、そういうのはない、かな…タギツヒメならノロを与えた相手を操ったりできるけど…道外さんの言った通り、当人を呼んでるのに別個で…ってやるかは、わからない…ごめんねミカちゃん」

「…マジアベーゼ…うてなから受け継いだ、私の魔法少女としての力なら……。
強く思い描けないから、取り戻すのは多分無理だけど、ミカの言う通りなら…さっき茅場とかいう奴が導入した心意システムってのと合わせて、干渉する隙は…作れるかも」
「……僕の起動鍵、ダブルオークアンタにも…それらしき事が出来るのはある。セリカが隙を作った時に…クアンタムバーストを使えれば…。
でもこの場合、心意システムの事を考えると…多分僕がやるより君がやった方がいいと思う、ミカ」
「…ありがとうみんな、じゃあ……え?准将の方のキラくんじゃなくて…私が!?」

…たしかに、この場で一番助けたいって思ってるのは…間違いなく私だけど。…使い慣れてない起動鍵でってのも……その起動鍵があの救世主名乗ってた傲慢な人(リボンズ)の使ってた機体そっくりなのもあって… なんだかなあってなっちゃう。

「…システムを最大限に活かすなら、僕より君が使うべきだ。イモータルジャスティスや…バルバトス・ルプスレクス、だったっけ。君はそれらを使えるんだろ?なら…出来る筈だ。
それに……今の、自分の中の憎しみに飲まれるんじゃなく…向き合おうとしている君だからこそ、対話の為のこの機体を…使って欲しい」

699 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:21:30 ID:hVDK0tA20
……対話の為。……そうだ、私……最初はアリウスとも、純粋に和解したいって、思ってたんだっけ。…なんでわたし、先生を騙す為の出任せだって……思い込んでたんだろ。バカだなぁ…ほんとうに…。

「……そこまで言われちゃったら、引き受けないのも違うよね。うん、じゃあ……代わりに准将の方のキラくんにはこれを貸してあげるじゃんね☆」

…名簿の並びとか的に、ラクスちゃんは准将の方のキラくんやアスランくんと同じ…か近い時間の方だと思う。…苦労させられてそうだなあラクスちゃんも…なんて浮かびながら、私はルプスレクスの起動鍵を准将のキラくんに手渡した。

「……イモータルジャスティスじゃないんだ、てっきりそっちを僕にかな、って」
「…准将の方のキラくんや、アスランくんからしたら変に見えるんだろうけど…私にとってはやっぱり、イモータルジャスティスは……キラくんのってイメージが強いから。
後…私にああ言ったんだから、准将の方のキラくんもルプスレクスくらい使いこなせるよね??」
「えっ…あ、うん…わかった」

…ちょっと困らせちゃったかな?
とにかく、話は纏まって後はキラくんを探しに行く……はずだったんだけど。
隣のエリアからかな?転がってくる2人と、追う形で現れた竜が、目の前に現れて。

700 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:21:59 ID:hVDK0tA20
「…チッ。よりにもよって居たのはお前達か」
「くっ……君達、は……」
「可奈美、ちゃん?…うそ…もしかして、戻ったの…??」
「……舞衣、ちゃん……?」

竜には勿論、転がってきた2人にも私は見覚えがある。
片方は…ルルーシュに恨みがある、…私やキラくん達と戦って、結果的に…もうひとりの子の方や、エターナルにグリオン相手に一緒に戦う事となった仮面ライダーの人。
……そしてもうひとりの、何処かヒフミちゃんみたいな声をした子は……殺された後、人形としてエターナルに利用されてた刀使…篝ちゃんが止めたがってた……衛藤可奈美ちゃん。

…私は、篝ちゃんからの伝聞と、舞衣ちゃんのちょっとだけの話でしか知らないけど……泣き腫らした跡と、目にある光、少しずつ崩れかけてる身体、喋る姿が…可奈美ちゃんがもう、操られて殺す人形じゃなくなってるんだって事はわかった。

「…舞衣ちゃんっ…ごめんっ!…謝っても、許されることじゃないけどでも…わたしのせいで、舞衣ちゃんに……」
「…ううん、可奈美ちゃんはわるくないよ。切島さんは……わたしが……」
「……まい、ちゃん……っ!!」
「余所見とは随分だね、仲良くみんなで凍りたいのかな?」
「そうさせない為に、僕が居る…!!」
「…タイクーンさん…!」
「…可奈美ちゃん、今はあの竜を…!」
「……そう、だね……舞衣ちゃん」

701 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:22:30 ID:hVDK0tA20
舞衣ちゃんの言葉に、また目を潤ませる可奈美ちゃん、それを纏めて殺そうとする竜を止める、タイクーンって言われてる人。
みんなが竜に対応する中…置いてきぼりになっちゃってる気がするから、とりあえず声をかけてみることにした。

「…えっと、タイクーンくんって呼ぶね?…あなたと可奈美ちゃんはキラくんを…どうしたいの?」
「僕は…オレは」
「止めて、助けれるなら助けたいって思ってるよ!その為に今…あまり時間は、遺されてないみたいだけど…」
「……彼がああなった責任の一端は、自分にもある。だから彼を止めたい…その思いは、彼女と同じだ」

タイクーンくんがなにか言おうとするのを遮って、可奈美ちゃんはそう宣言してくれた。
…言い淀んだ末、諦めたという様子でタイクーンくんもそう言う。
…乗ってる側なままなんだろうけど…一緒に戦った事もあるし、今はそれでも…心強かった。篝ちゃんがこの光景を見たら…なんて言うのかな?となりながらも……私は答える。

「…じゃあ、一緒に戦おっか。あの氷の竜を止めて…キラくんを助ける為に!」

試運転がてらにクアンタの起動鍵を使って…竜の氷の攻撃に、ソードビットっていう兵装を使って対応してみる。
准将の方のキラくんが使ってたのは、遠目で…それか暴走してた時に視てたから、見様見真似だけど……!

「ありがとっ、アスランくんもセリカちゃんも!」

702 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:23:48 ID:hVDK0tA20
私がソードビットを使ってる間、タイクーンくん、可奈美ちゃんに舞衣ちゃん、ルプスレクスの起動鍵を使って…難なく使いこなしてる准将の方のキラくんが前衛をして、セリカちゃんとアスランくんが中〜遠距離から援護、私が対応しそびれた時にも氷を撃ち落としたりしてくれていた。
セリカちゃんが自分の力を使って…って流れに持って行くには、避けられる可能性を減らす為ある程度消耗させなきゃいけない。
耐える形で持ち堪えてたんだけど……ここでセリカちゃんに私は呼ばれる。

「どうしたのセリカちゃん、まだ消耗させれてないけど…」
「御刀持ってたわよね、ミカ。……ちょっと貸りるわよ、今のカナミの状態を…どうにか出来るかもしれないから」

----

2人がかりから8人がかりになったとはいえ、それまでのダメージや消耗もあって、衛藤可奈美の自壊進行度は馬鹿にならない状態となりつつある。
戦えなくなり消え去るのを待つだけ…そうなる前に、咄嗟に可奈美の手を引きセリカは一時戦場を離れる。

703 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:24:09 ID:hVDK0tA20
「えっ!?セリカちゃん、だっけ…なにを…」
「アスラン、マイ!この子が…カナミが…崩れかけて…止めれるか試すから、この場はお願い!!」
「…わかった、セリカちゃん…ここは、任せて!」
「ああ、持ち堪えてみせる…!!」

まだ戦おうとしていた可奈美だが、崩れかけてるのもあってか困惑しつつもされるがままになるしかない。

「マイが言ってたけど確かこれ…アンタの御刀よね??それで、御刀には持ち主選ぶくらいの意思はあるんだって…」
「う、うん…そうだよ。…もしかして取り返して、くれたの??」
「私じゃなくてマイが、喧しいパチモンの最低野郎な方のアスランからやったって…とにかく、それなら後は……ちょっと待っててカナミ、もしかしたらアンタの崩れてるそれ、もうちょっと保たせるくらいは…出来るかもしれないから!」

そう言いセリカは駆け…ミカからもう一振りの千鳥を借りて、ついでに意見を聞いた後戻ってきた。

『…1回殺されちゃって、それで放送でも名前呼ばれちゃった以上…主催からしたら多分、今の可奈美ちゃんは参加者じゃなくて、参加者に隷属してるNPCみたいな存在になる…んじゃないかなって』
(カナミがNPC寄りで、御刀に意思がある……もしかしたら、強く思い描く所を補えるかもしれない!)

「カナミ、一応聞くけどアンタまだ戦いたいのよね!?」
「…うん、それが……舞衣ちゃんを傷付けて、切島って人を殺してしまったわたしの……それに、わたしも…助けたい、から…!」
「ッ……!!……わかったわ、試してみる」

704 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:24:32 ID:hVDK0tA20
アンタは操られてただけなんでしょ!?何も悪くないじゃない…!!…と、喉から出かかった言葉を飲み込む。刻一刻と、目前の少女が再びこの世から消えるまでのカウントダウンが迫っている以上…今言うべきはそれではない。
セリカは自らの魔法少女としての異能、『信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)』を……二振りの千鳥と可奈美を同時に貫くように放った。


……『信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)』の変化の対象となるのは、黒見セリカ…もといマジアアビドスの強く思い描いた存在のみ。
だが意志のある、衛藤可奈美を使い手として選んだ御刀の千鳥が二振りここに在る。
可奈美自身がNPC…魔物等に近い存在、更に…セリカ自身の、可奈美の願いに応えたいと、そして決めて啖呵を切ってしまった以上キラも助けたいと……その願いが心意システムを動かした。
……それらを代替(理由)として可奈美を変化させ、一時的に自壊までのカウントをある程度戻すくらいなら…今のセリカにも出来る。

結果、衛藤可奈美は立ち上がった。血に染まり破れた服を元の装い…ではなく、別の世界(Another)での彼女のそれと同じ装いへと変えて。

705 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:25:14 ID:hVDK0tA20
「…ごめん、カナミ…私の力じゃ、保たせるのが精一杯だった」
「…ううん、謝らないで。それと…ありがとうセリカちゃん、これで…多分この戦いが終わるまでは、保ちそうだから。
…あの格好、恥ずかしかったから…だからこれに変えてくれて、嬉しいんだ」
「あー…好きでやってたわけじゃないのね」
「ええっ!?…わたし、そんな趣味ないよ!?」

安心させるかのように微笑みかけるも、そう言われ慌てて否定する可奈美。
対し安心したと言いつつ、御刀を拾い直したセリカは可奈美と共に戦場に舞い戻ろうとし……視界に入るは目掛けて飛んできた赤色のビーム。
そしてそれをソードスキルの爆発で防ぎにかかったアスランの姿だった。

----

「あーあ、防がれちまったかぁ」

グリオンの命を受けた人形、冥黒ディアッカは道中のNPCを倒し遊びながら進んでいた所激戦に遭遇。
穴凹塗れのエリアにドン引きしつつも、いっちょ漁夫の利を狙おうと、再起動を果たそうとしたらしい死体人形と主たるグリオンから一度は逃げおおせた黒見セリカをランチャーストライクのアグニで狙おうとしたが…寸前でアスランに防がれてしまった。

706 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:26:01 ID:hVDK0tA20
「…何故ディアッカと同じ声をしている、あいつは……放送で名前を呼ばれたはずだ!!」
「…その言い草、お前こいつの記憶の中にあるアスラン・ザラかよ!
…バレちまったなら仕方ねえ。御名答、俺はディアッカ・エルスマンの死体を使ったグリオン様が創り上げた冥黒の生徒会がひとりだ!」
「……なん、ですって…?」
「聞こえなかったのかよ黒見セリカ!グリオン様が死体を使って──」

(放送で、ディアッカはうてな達の前に呼ばれてた……)
「……まさか、うてなや……シノンも」
「その通り!ナチュラルのくせに辿り着くのが早えなあおい」
「──ッッッ……!!アンタは、アンタらはぁぁっ!!!!」
「待てセリカ、アレは俺が引き受ける。怒りに飲まれる気持ちはわかるが……お前にはやるべき事があるだろう?」
「……そう、よね。…アスラン、アレについては任せたわ、行くわよカナミ!」
(…声が違う…きっと、エターナルはディアッカさんじゃなく…大道克己って人だったんだ)
「…うん、今は、キラくんを!」

激昂するセリカに対し、アスランは怒りを滲ませ
つつ冷静に諭しながら対応。

707 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:26:58 ID:hVDK0tA20
ランチャーストライクからソードストライクへと換装していた冥黒ディアッカ相手に近接戦闘でやり合う、起動鍵により隠れたその表情は…ファウンデーションの戦いで救援に来た時同様、不機嫌極まったそれだった。
一方セリカは堪え、可奈美もまた大いに思う所はあるも引っ張られる形で氷竜との戦いへと挑む事に……と思いきや、ここで氷竜は冥黒ディアッカへターゲットを向ける。

「グリオンの手先の死体人形め、まずはお前から凍らせてやる」
「そういうお前はグリオン様に匙ぶん投げられた失敗作じゃねえかよ!」
「クソっ、引き受けた意味があるのかこれじゃ…!!」
「…アスラン、下がって!」
「──ああ、っ…!」

乱戦の最中、氷竜と冥黒ディアッカが互いとアスランを最優先とした事で……隙が出来た。ディアッカはともかく氷竜はそれなりに疲労はたまりつつあるが故だ。
それを見逃さず、セリカは『信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)』を放つ。
寸前まで相手取っていたアスランは持ち前の超人めいた身体能力・反応速度で躱し…それは氷竜を貫いた。
次いでそれを視ていた可奈美も動き…二天一流の攻撃で斬りつける。
変則的な形で生み出したとは言え、『信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)』の物体変質効果は可奈美にも付与されており……この連撃によって、精神世界への介入をよりしやすくなった。

708 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:27:47 ID:hVDK0tA20
「ミカ!返すわよ!」
「うん!上手くいった、みたいだね…!」

投げられた御刀を難なくキャッチしたミカは、一旦起動鍵を解除、腰に掛けた上で再び起動鍵を使い……クアンタムシステムを発動させる。

(…キラくんを……助ける。凍らせてるあの竜を……どうにかして、その為に……今は力を貸して!クアンタ!!)
「──クアンタム!バーストッ!!」

先程自我を取り戻したように、意志を集中させた上で……クアンタムバーストは引き起こされる。
…ただし、対象はキラ・ヤマトのみ。心意を以て対象を限定する代わりに…令呪を温存した上で、精神世界に巣食い本来の彼を凍結させている竜を倒そうと試みた。

……しかしここで、いい意味での誤算が1つ生じる。
聖園ミカが対象としたのは「キラ・ヤマト」。そしてこの場にはもうひとり、キラ・ヤマト…准将となった方が居た。
キラ・ヤマトは変質してしまい氷竜となったが、それでも存在自体がキラ・ヤマトとは別の物に変わり果てたわけでは無い。故に氷竜がキラ・ヤマトな以上、時代こそ違うがキラ・ヤマトである准将もまた、精神世界へと赴く資格がある。

709 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:29:01 ID:hVDK0tA20
「…よくはわからないけど、僕も向かえるみたいだ。行こう、ミカ。昔の僕を助けに!」
「… わーお、准将の方も来てくれるのは…頼もしいじゃん☆
…そうだね、とっとと行って助けちゃお、キラくんを!」

「何考えてるか知らねーけどなぁ、そうやすやすと行かせると思ってんのか??」
「それはこっちの台詞だ!昔のキラを助けて来い!キラもミカも!」
「ここは私達に任せて行ってきなさい!…キラ准将、ミカの事は任せたわ!
…そしてミカ、アンタ…暴走してた時も先生やキラの名前を呼んでたでしょ?…それだけ、アンタにとって先生や……キラが大事で、好きな人なんでしょ!?なら……絶対に、助けてあげなさいよ!!」

各々が言葉をかけ、竜と冥黒がやり合う最中……セリカが言い放った言葉に、思わず空気が変わる。

710 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:29:33 ID:hVDK0tA20
「…ぇ?……す、好き?私が??キラくんを????…ちょっ、なにいって……だってキラくんには……」
「キラ????」
「いや昔の方の僕の事だと思うけど!?」
「ハッ、お姫様みてえな外面のくせにそういう趣味かよ!!ナチュラルってのは変態かなんかか!」
「黙っていろ、彼女の思いは…そんな物じゃない!」
「え、ええっ!?そうだったんだ…」
「なるほど…それならあそこまで助けようと執着するのも納得は行くが…」
「…そっか、そうだよね…うん、罪悪感とかだけじゃ…あんなになっても頑張れないよね」
「────????」
「……と、とにかく…今は行ってくるねみんな!」

混乱するミカと疑念を抱くアスランに即座に反論する准将。
貶す冥黒ディアッカに、一蹴する流牙、驚く可奈美と納得が行くスザクに舞衣。
違うの??と言いたげにキョトンとするセリカ
そして氷竜は理解が出来ない様子で……干渉しやすくされてしまったのもあり、2人の内在世界へ突入を許してしまった。

711 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:30:20 ID:hVDK0tA20
准将とミカが精神世界へと突入した途端、それまで饒舌…ではないがそこそこ喋る時は喋っていた氷竜が黙り込む。

「お??何いきなり黙り込んでんだよ失敗作、俺様を凍らせて黙らせるんじゃね──ぐへっ!?」
「く、ぅっ…動きが余計に早くなってるとでも、言うのか!?」

嘲った冥黒ディアッカを疾風を付与したパンチで殴り飛ばし、その勢いのまま加速に転用、脚でのキックでアスランを蹴り飛ばす氷竜。

「…さっきまでとは違う、斬り合ってるのに何も感じない…多分、ミカちゃんや准将さんの方のキラくんで手一杯なんだと思います!」
「普通こういうのは動きも鈍くなるものでしょ!?早くなってんじゃないわよ…!!」
「2人を信じて、竜とあの人形をここで抑える他無いか…」
「…みたいだ、出来る限りの事を…自分もやろう」
「…ですね、道外さん、タイクーンさん…行くよ、イルヴァ!」

712 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:30:49 ID:hVDK0tA20
更に動きが良くなっていく氷竜と、情けない声を挙げたものの即座に立て直し、エールストライクとなった冥黒ディアッカ相手に、各々が連携を取り立ち向かう。

(剣を通して伝わってくる……私達への嫌悪と、グリオンって人への信仰心が…!!)
「この状況で、まだ貴方はひとりで戦うんですか…!?」
「ナチュラル共と、それもお前みたいな死体人形と組めってか!?冗談じゃねえよ…死体を弄んでいいのはグリオン様だけだってーの!!」
「…一応聞いておくわねアスラン、アンタの知ってるディアッカってあんなのなの?」
「違うな、似ても似つかない…偽物の俺のような必死さも無い、アレはどうしようもないな。死体を使ったのが本当なら……終わらせてやる他無い」
「よーくわかったわ、アイツがそんな感じなら、どうせうてなやシノンのもガワと声以外は似ても似つかない、最低野郎だって事が…なら遠慮なく、ぶっ倒す!」
「やれるもんならやってみやがれってんだ、グリオン様を拒んだ最低のネコ野郎がよぉ!!」

713 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:31:47 ID:hVDK0tA20
自分と創造主たるグリオン、先輩である冥黒アヤネ以外の全てが平等に塵(ナチュラル)だと思考する冥黒ディアッカに、本物のアスラン達と共闘するという選択肢は無い。
なので竜を攻撃しながら、アスラン達も相手取っていた。

袋叩きになるなら即座に逃亡したが、自分を排除したい以上に失敗作(氷竜となったキラ・ヤマト)をどうにかしたいと彼らが考えているだろうからと、いい感じに妨害しつつあわよくば失敗作と彼らの内誰かくらいは殺した上で手土産にしたいと、冥黒ディアッカは考えている。

ともかく、エールストライクの機動力を生かした冥黒ディアッカはライフルを撃ちつつ攻撃を回避。
竜はドラグーンを氷で再び形成して全方位に展開、掃射しながら自身は光の柱や三つ首の氷竜等を放つ。

714 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:32:15 ID:hVDK0tA20
これらに対し、舞衣は創世の力による蒼炎を纏った斬撃で首を壊し、そこから迫った氷の鋭利な枝をブジンソードビクトリーを発動させたスザクが蹴り砕いた。
また光の柱を迅移で避けながら、可奈美ははやぶさ斬りを放つ。そして攻撃したのは彼女だけでなく流牙もであり…魔戒剣による連撃を間髪入れずに差し込み傷を付けた。
ドラグーンの掃射には、可奈美や舞衣、流牙は避けつつ直接切り払って無効化。スザクは切り払いまた武刃による斬撃波も使い分けていた。

冥黒ディアッカには生前ディアッカと縁のあるアスランに、主であるグリオンと因縁のあるセリカが対応。
放たれるビームライフルをアスランが防ぐ形にしつつ、御刀由来の技能の八幡力と迅移で加速したセリカがドラグーンを破壊しつつ、シンシアリティによる銃撃をお返しに見舞う。
当然アスランも防御には徹さずクローによる近接戦闘、火器類やソードスキルによるドラグーンの無力化等を行っていた。

「これなら本物のディアッカの方が、それどころかあの可哀想なアコード(シュラ)の方が100倍は強かったぞ?」
「言ってろやナチュラルのゴミが!死んじまった奴と土俵にすら居ない奴に比べりゃ、今こうしてお前らを苦戦させてる俺様の方が遥かに格上に決まってるだろうが!」
「さっきからいちいちナチュラルのゴミだのなんだのうっさいのよ!!」
「大体俺がコーディネイターなのは、本物のディアッカの記憶を持っているならわかるだろうに」
「うるせぇのはお前らの方だっつってんだろうがよぉ…!!俺様にとっちゃ俺様とグリオン様、ついでにアヤネ先輩以外は全部ナチュラルの屑!!それ以外に何の価値があるってんだよ、ええ!?」
「ほんっとう心底、アンタもグリオンも性格悪いわね!!!!」

715 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:33:02 ID:hVDK0tA20
等と応酬が続くも、2人で優勢に追い込めない程度には冥黒ディアッカには実力があった。いくら軽薄で思慮の浅いカスだろうと、そもそも誇示できる力が無ければこんなドブのムーブはしないだろうから当然ではある。

----

「……ここが、キラくんの心の中……寒っ!?寒くないかな!?」
「…やっぱり、凍り付いてるからかな」

凍ったMSの残骸等が浮かぶめちゃくちゃな内在世界の最中、起動鍵越しにも関わらず冷気を感じ思わず身震いするミカと、警戒を強める准将。
すると氷の弾丸が目掛けて飛んできて……難なく避けた2人の前に、氷の竜が姿を現す。

「わざわざそんな面倒な手を使ってまで、奴を助けに来たのかい?」
「うん。私は…ううん、私達は…キラくんを取り返す為に、助け出す為にここに居る」
「君が昔の僕から生み出されたって言うのなら…なおさら今の僕にも、君を止める理由がある」
「……理解出来ない。あれだけの戦力が集ったんだ、キラ・ヤマト諸共殺した方が早いだろう?ましてそこの聖園ミカは乗ってる側の人間だ、躊躇う理由はお前には無いだろうに」
「…そうだね。たしかにそうしちゃった方が…早いかもね。でも……そんなこと、私はしたくない。仮にもキラくんから生まれたのなら、それくらいわかると思うんだけどなぁ…」

716 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:33:42 ID:hVDK0tA20
「…彼女が、ミカが昔の僕を撃てなかったのを見なのか…」

心底理解出来ない様子な氷竜に、ミカは怒りを通り越して憐れみを、准将は呆れを見せる。
対し氷竜はというと、向けられた感情を至極どうでもよさそうにしながら氷の枝を生成。

「まあいいや、どの道奴の元には行かせない。
僕の願いを…全ての凍結を叶える為。お前達は氷漬けだ」
「…わからず屋。……キラくんを返して貰うよ!!」
「みんなにも託されたんだ、だからここで君を止めて…昔の僕を助け出してみせる!」

射出された枝を、ミカはGNソードVとフルートバスターにより切り払う。准将もメイスにより打ち砕いてみせるが…氷竜からすれば想定内。
奥へと進もうとし果敢に攻める2人に、ドラグーンや突風、光の柱で対応しつつ、近接戦闘では手刀を竜は放つ。
ソードビットとドラグーンの激突が起こる最中、メイスと手刀がぶつかり合い鈍い金属音が響き…側面からのフルートバスターでの斬りつけに、氷竜は咄嗟に反応。

「っ……力強い…お前はゴリラか何かか…!?」
「…女の子にそういうこと、言っちゃダメだって…わからないかなぁ…っ!!」

デリカシーの欠片もない言いように、怒りを見せながら御刀由来の八幡力で更に腕力を増させる。
そのまま力で押し切ろうとするも…間一髪衝撃波を放ち距離を取った。
だが間髪入れずに向かってくるのは鉄の尻尾…テイルブレード、斬りつけられる所を疾風を纏わせた手刀で防ぎにかかる氷竜だったが……風により威力が上がっている筈の手刀は空を切る。

717 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:34:14 ID:hVDK0tA20
「っ…ぐああっ!?…ワイヤーを絡めただと!?」
「今だ、ミカ!!」

ワイヤー部分を巻き付け動きを封じにかかった上で、蹴りと同時にヒールバンカーを作動させて吹っ飛ばす。

「…足癖が悪いのは相変わらずなんだね、准将の方のキラくんも…うん、任せて!!」

出来た隙を、聖園ミカは見逃さない。
1度目は避けられ、2度目は誤爆してしまった、そしてこの後どうなるか次第だと、今後使えるか怪しくなるだろう必殺技を、ここでミカは切る。
獣電池をフルートバスターに装填、魔楽章デーボスフィニッシュを放った。
邪悪な感情を…サオリへの復讐心等を捨てきれてないが為、起動し技を行使出来る形である。

邪悪な恐竜型エネルギー弾が氷竜へと激突する…もダメージはそう多くはない。
獣電池の起動条件すら満たせなくなっているわけではないが、今のミカがこれを使っても、心意システムにより増幅された正の感情によって弱体化してしまうからだ。

(やっぱり、あんまり効いてないよねー…でも、予想通りだよ☆)
「…たしか、こう…だったよね!」

最も想定内の範疇、そのままブーメランにしたフルートバスターを投擲した隙に…ソードビットをGNソードVと合体。バスターソードへと変え、八幡力によるバフと迅移による加速で切り抜け……竜を勢いよく吹っ飛ばした。

「待っててね、キラくん…!」
「一気に吹っ飛ばしたね、でも…これで近づいていけてる筈!」

竜を追う形で進むと、奥へと辿り着く。

718 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:34:38 ID:hVDK0tA20
「……これは……僕が、経験してきた…」
「……きら、くん?…准将の方のキラくん見て、キラくんが、あそこに……!!」

周辺に広がるは、キラ・ヤマトが体験してきた悲劇、痛みと喪失の場面が凍った状態で浮かんでいるという現実離れした光景。
そして……その先にあるのは、氷漬けにされピクリとも動かないキラ・ヤマトの姿。
思わず向かおうとしたミカだったが…当然そう上手くは行かない。黄色の破壊光線が飛んで来て、咄嗟に迅移でそれを避ける。

「邪魔しないでよ…!キラくんをあんなにして、まだ苦しめる気…!?」
「それはこっちの台詞だよ、全てを凍らせて、憎しみの連鎖を全て断ち切らなければ…コイツは苦しみながら戦い続ける」
「…あなたが生まれた以上、そう思う心自体は、たしかにキラくんにもあったかも知れない。けれどだからって、キラくんがそんな事望む訳ないことくらい…なんでっ、わからないかなあ!?」
「──苦しむだけで最期には朽ちる命なら、最初から存在しない方が、生まれてこない方がいいに決まっている。
だが憎しみ合いが止まらない限り、ラウ・ル・クルーゼやキラ・ヤマトや僕のような存在は際限なく生まれる!!」
「…っ……あなたは…きみは……きみ自身の事じたいも……」

719 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:35:37 ID:hVDK0tA20
手刀…ではなく、ビームサーベルを模したかのような氷剣を以て斬りかかる氷竜と、取り回しの良さを考慮し通常状態に戻したGNソードVで対応するミカ。
斬り合いの最中、竜が抱く諦観・絶望が自分自身の存在にすらかかっている事に気付いたミカは…言葉を紡ごうとするも出てこない。

「……守りたい世界すら君が壊そうと言うのなら!!僕は…君と戦う!!」
「…准将の方の…キラくん…」
「その世界すら、いずれ憎しみに飲まれて狂う!!人の業とはそういうものだとお前だって知っているはずだ!!キラ・ヤマト准将…!!」

だがここで割って入るはキラ・ヤマト准将。メイスを大きく振りかぶり、氷竜を殴打。
氷を盾代わりにして防いでみせるも、近距離から放たれた腕部200mm砲と、そこからのルプスレクスネイルによる一撃を氷竜は諸に食らう。
立て直しを図らんと、再生成したドラグーンを含めてまたもやフルバーストをしようとする氷竜だったが…

「させないよ!!…自分自身が嫌になる気持ちは……正直めちゃくちゃわかるけどさー…でも、それでキラくんの守りたいものまでぶっ壊そうって言うなら……それだけでもう、私がきみを止める理由になる!」

ライフルモードにしたGNソードVに、ソードビットを接続。GNバスターライフルモードにして高出力のビームをミカが発射した事で妨害される。
しかし氷竜もタダでは終わらず、疾風を付与した上での手刀と氷剣をぶつける。

720 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:36:06 ID:hVDK0tA20
「お前にっ…何が、わかるっ!!」
「っ…あ"っ!?…っ…ああっ!?」
「ミカ…!!」
「…ごほ、っ…ぁ…ぅ……知ってるよ、視てきた…から。
…キラくんが…本当はめんどくさがりな子なのも、散々追い詰められて…きたのも、ひどい産まれなのも……キラくんのその、恥ずかしい…ところも……てもそれ以上に!
…ひっどい目にばっかり遭っても…優しさを捨てれない、誰かの為に立てちゃう……優しくて、カッコいい男の子だって所も…だから、これ以上…キラくんの身体で好き勝手……させるわけには、行かないよね!!」

氷竜の種が弾け、発動したSEEDと負の心意の合せ技か、今度は竜の方が早かった。
ふっ飛ばされて氷の壁にぶつかり、写シを張ったはいいものの追撃を受け剥がされ解除。起動鍵も解除され口から血を吐いてしまう。
准将が引き受けている間、ミカはそれでも、フルートバスターを支えに立ち上がり……叫んだ。

「…そこまでして、何故奴を…キラ・ヤマトを助けようとする??助ける価値も意味も無い、生まれてくるべきでない存在を何故だ…!!それをして、何の得がお前にある!?」
「それを決めるのは…君じゃない、昔の僕で…彼女だ!」

そう言われた瞬間、ミカの内心に去来したのは……この世界へ突入する前、セリカに…明らかに自分とキラの関係を勘違いしているだろう彼女に言われた言葉だった。

721 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:38:17 ID:hVDK0tA20
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『アンタ…暴走してた時も先生やキラの名前を呼んでたでしょ?…それだけ、アンタにとって先生や……キラが大事で、好きな人なんでしょ!?なら……絶対に、助けてあげなさいよ!!』

……セリカちゃんにこう言われた時は、何勘違いしてるんだろ?ってなった。
だって、そもそもキラくんには…明確に好きとか言ってた所は視てないけど、名簿の並びとか的に、この殺し合いに居るのはアスランくんに准将のキラくん達の方の時間だろうけど……ラクスちゃんが居るし。

…第一、それで、好きになるって…我ながらチョロすぎるじゃんってなって。仮になったとしても、吊り橋効果?だったっけ…それのせいで、勘違いしてるだけだって…それかキラくんへの負い目が重なりすぎて変なことになってるだけだって…なってる私が居る。

……けれど、だけど……セリカちゃんにそう言われて、キラくんに呼びかけてて……否定、出来なくなっちゃった。そう思ってる私が居ることに……気付いちゃったんだ。
……悪い子だなぁ、わたし……先生への想いも、捨てれてないのに……2人も同時に好きになっちゃって、片方の子には横恋慕同然で……とんだ魔女だって、疫病神だって…自分でも思う。
……でも。先生の時は、気付けないまま、気付かないまま手遅れになっちゃった。もう、あんな後悔はしたくない。
……だから、だからね……私は……ここで言うよ。

722 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:39:04 ID:hVDK0tA20
「"──好きだから。
……わたし、悪いお姫様だからさ。先生の事もキラくんの事も…どっちも好きになっちゃったみたいで。
……好きになった人を助けたいって、もういない人達の分まで助けてあげたいって思う事の……何がいけないのかな!?"」

半分くらい自棄になりながら、叫んだ。
…起動鍵も使ってないから、傍から見たらきっと…顔真っ赤っかになっちゃってるんだろうなぁ…って、どうでもいい考えが浮かんでくる。

「……は?正気に戻れ聖園ミカ。それは吊り橋効果か、積み重なった自責の念が──」
「そうかもね、けど……それでも!今この瞬間のわたしのこの気持ちは……嘘なんかじゃない。
きみにも……たとえキラくん自身にだって!!…否定なんてさせないから!!
だから…きみを倒して…凍って眠ってる王子様(キラくん)を助け出してあげるよ、悪いお姫様の私が!!」

わかり切った事を言われて、更に勢いのまま叫んじゃった。
……なんかもう色々と恥ずかしいけど、准将の方のキラくんがどう思ってるのとか、色々気になるけどでも…あそこまで言っちゃったらもう……仕方ない、よね?

723 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:39:30 ID:hVDK0tA20
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参加者のひとりであるメラが滅ぼそうとしていた、デザイアグランプリの存在する世界では…人の心など欠片も無かったあるクイズ王の男が、平凡で善良なある人間の記憶を得たり挫折を味わった結果罪悪感や良心が芽生え自らを省みたという事例がある。

人の心が欠落した男でさえそうなるのだから…悪い子な部分は多々あれど良心や優しさ自体も人並み以上にあった
(なまじあったから傷付いてボロボロになって思い詰めて、止まれなくなった所もある)
ミカが、それまでの経緯を踏まえた上で…キラの記憶を視て、苦しみを、悲しみを、境遇を…そして優しさを識ってしまえば…諸々の理由を込みとしても、好意という感情を抱くのはなんら不思議では無いのだ。

「…えっと……ミカ…」
「准将の方のキラくんにはラクスちゃんが居るよね?好きなら好きって、はっきり言ってあげた方がいいと思うな☆」
「…う、うん…」
「後フレイちゃんとの事は、ラクスちゃんに遭っても黙っててあげるから安心してね」
「…本当に、全部視たんだね…」
「……横恋慕な上2人を同時に好きになるなんて、とんだお姫様だなお前は!」

724 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:39:58 ID:hVDK0tA20
起動鍵の、ルプスレクスの下で苦笑するしか無い准将と、完全に開き直ったミカ。
暫し思考が止まってた氷竜はそう、苛立ちと困惑を隠さぬままに氷剣で斬りかかる。

「させるかっ…!…ここまで言わせちゃった以上、昔の僕にはちゃんと、責任を取ってもらった方が良さそうだから。…だからミカ…ここは僕が抑える!」
「うんっ、ねぼすけな王子様を、叩き起こしてくるね!」

だがそれをメイスで受け止めつつ、テイルブレードを見舞うはキラ准将。
昔の自分の方のラクスに申し訳なさはあるものの、ミカがこうなるまでに脳を焼かれてしまったのは恐らく昔の自分のせいなので、責任を取らせる他無いと認識していた。
過去の自分が氷竜になっているにも関わらず、今の自分に何の影響もない辺り、地続きにはならないだろうという思考もある。

「邪魔を…するな!!お前も、貴様もキラ・ヤマトなら…!!」
「そっちこそ、彼女の邪魔をしないでくれ!!」

725 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:40:25 ID:hVDK0tA20
…ともかく氷剣から手刀へ変えながら光線を放った氷竜に対して、こちらもSEEDを発動、躱しながらまたもや蹴りの後にヒールバンカーを起動させ…間髪入れずにルプスレクスネイルを突き出しながら格闘戦を挑む。更にガンバレルストライカーも併用し、ガンバレルによる射撃も同時に行った。
凍結によるダメージはある上、相手は相変わらず再生していくものの…疲労はさせれる上、外で戦ってるアスラン達にいい影響を与えれるかも知れない。そして……准将の目的はミカが過去の自分を起こすまでの時間稼ぎな以上、これでよかった。

「…キラくん。まずは…ごめんね…あの時、君の手を取れなくて……君を、あんな怪物にしちゃって……殺したくなんてないって思ってた君に……ころさせてっ……!
……私だけ、一方的にキラくんの過去の事知っちゃってるのも…アレだから…私も話すね…なんで復讐なんてしようとしてるのか、とか…」

キラを閉じ込めている氷の牢を、フルートバスターと千鳥の御刀を振るって壊そうとしながら、ミカは自分の過去を…復讐を果たす為に優勝しなきゃと至った経緯を話す。

726 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:40:53 ID:hVDK0tA20
「…よかれと思ってやった筈だったのに…わたしがどうしようもないバカだったから、だからぜーんぶうまくいかなくて…利用されるだけされて…わたしだけならともかく、わたしの大切な人達がわたしのせいで傷付いて……なのにのうのうと生きてる、サオリに報いを、受けさせなきゃって……。

……思い返すだけで、やっぱり……許したくないって気持ちはあって…でも、人殺しで悪党に成り下がっちゃったわたしを…先生は最期まで……なら、わたしにも…サオリにもきっと……。
…でも、それ以上に……君は、キラくんは……救われて欲しいし、救われるべきだって思ってる。

…苦しみながら、殺したくなんてないのに、本当はぐーたらしてたいのに…守りたいものを守るために戦った、優しくて頑張りやさんなキラくんが……わたしは好き。
……負い目とか罪悪感とか、吊り橋効果とか…多分そういうのもぜーんぶ含めて…気付いたら大好きに、なっちゃってたんだ。
……先生と、会って欲しかったなぁ…絶対、仲良くなれてたと思うし…好きな人同士が仲良くなってるとか、それだけでわたしなんかには勿体ないくらいに…もう、救われる気がしたから。
…だから……祈るね、キラくんが救われるように。キラくんを救う為に……!」

氷の牢獄を壊しつつ語りかけた末、ミカは祈り…一撃を見舞わんとする。
心意システムを介して己の願いを、気持ちを以て…氷だけを壊して助け出さんとする為に。
そして……一撃により砕けたのは氷のみだった。
恋する悪いお姫様の願いは、システムを動かしてみせたのだ。

727 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:41:28 ID:hVDK0tA20
「……ミカ……君は、そこまで……??」
「…えっと、もしかしてキラくん…聞いてた、の?」
「…うん…聞こえてたよ、奥まで未来の僕と、ミカが来てくれた時から……」
「…へ…へー、そうなんだ…じゃ、じゃあ……わたしにここまで言わせた責任、ちゃんと取ってね☆
…それとこれ、キラくんの!」
「…流石に……ああまで言われて、聞かなかったことにするのは無責任だと思ってるとは言っておくよ」
「わーお。…言質は取ったから忘れないでねっ、キラくん」

身体を動かせずにいたものの自由を取り戻したキラに、照れと嬉しさが入り混じりながらも…ミカはイモータルジャスティスの起動鍵を手渡した。
そして自らも、クアンタの起動鍵を再び手に取る。

「キラ・ヤマト、イモータルジャスティス!出ます!」
「聖園ミカ、ダブルオークアンタ…派手に荒れちゃうよ☆」

起動鍵によりMSをその身に纏えば、後は持ち堪えてる准将の方に介入するのみ。
拮抗していた状況の中、ミカはGNバスターソードを振るいキラはビームサーベルとしたヴィーゼルナーゲル ビームブーメランを振るって氷竜に傷を負わせる。

728 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:42:02 ID:hVDK0tA20
「待たせてごめんねっ、准将の方のキラくん!」
「ごめん、未来の僕…ようやく、僕は僕を取り戻せたよ」
「…待ってたよ、ミカも、昔の僕の事も。
…心なしか、彼の動きがだんだんと、鈍くなってる気がするんだ。…きっと、アスラン達が外で頑張ってくれてる」
「…おとなしく…凍っていればよかったものを……脳内ピンクの色ボケ魔女めが…ぁっ…!!」

「色ボケ魔女って、それって私のこと?…仕方ないじゃん、好きになっちゃったんだから……。
後、脳内ピンク呼ばわりは怒るよ??ゴリラ呼ばわりもだけど、君ってデリカシーとかないのかな??まああのニセモノのディアッカくん共々、そーいうの無いんだろうけど……だから、殴るね☆」
「っ、ぐは…まだ、だ…僕の願いは…まだこんな所で潰えるものじゃない…!!」

言いがかり(かはともかく)のノンデリ発言の負け惜しみをした結果、宣言通りバスターソードの持ち手で殴られる氷竜。
だが諦めず、負の心意を以て立ち向かわんとし…何度目かのフルバーストを放とうと…見せかけ、ここで令呪を切ろうとして、ドームを精神世界全域に展開する事で諸共に滅却を試みた。

729 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:42:44 ID:hVDK0tA20
最も最大火力という意味で使ってくるのは予見できた為…3人もそれを防ぎにかかる。
精神世界故に分離しているが、覚えたソードスキルは共通状態な為使えるソードスキル:疾風を纏わせたシールドブーメランの射出をキラは行い、准将は完全に撃たれる前に潰すと言わんばかりにメイスとテールブレード、ガンバレルを駆使。
そしてミカはGNバスターソードからバスターライフル状態に変形させた上で……

「…正直、きみの言い分に思う所がないわけじゃない…けどさ。それはそれとして……キラくんの身体をこれ以上、好き勝手に使われるのはもう嫌なんだよねー…!!
…──『トランザム』っ!!」

トランザムを発動、出力を向上させた上でバスターライフル形態で切り裂こうとする。

「…まだだ、僕はっ…僕が負ければ……奴に、キラ・ヤマトに安息など……!!」
「……たとえ、戦い続けた先にもっと苦しい事が待ってたとしても……覚悟はあるよ、僕は……戦う!」

令呪行使及び滅却ドーム展開を中断し、フルバーストを以て抗おうとする氷竜だったが…防ぎきれず吹っ飛んだ上に、キラ自身のその叫びを以て放たれた、ビームブレイドによる蹴りによって叩きつけられる。
…死んではいないが立ち上がる気配は無く…3人は…そしてキラ・ヤマトは、己から生まれた氷竜を打ち破る事が出来たのだ。

730 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:43:08 ID:hVDK0tA20
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「…負け、か。…何故……殺さない…」
「…君も、また僕から生まれた存在で……わかる部分もあるから」
「…穂波と呼ばれていた女を殺したのを、忘れたわけじゃないだろう…」
「…僕にも責任はある、君の罪も…存在も、無かったことにする気はない…進んでいくよ、僕は」

「……勝手にすればいい、憎しみの連鎖を完全に断つという願いを拒んだのは…お前達だ……せいぜい、グリオンやラウ・ル・クルーゼ共相手に足掻いて見せればいい、お人好しめ」
「…昔の僕にも、今の僕にも……覚悟はある、戦い続ける為のが」
「…キラくん達がそう言うんじゃ、私も…受け入れるよ。また悪さしたり、デリカシーの欠片もない事言うようなら、何度でも殴ってあげるけどね」

氷竜は乗っ取りを諦めたのか、言い残してそこからは消え去る。
同時に、世界も崩れ…元の戦場へと戻らんとしていた。

「…そうだ、准将の方のキラくんは、先戻っといてよ。
…キラくんに、聞いとかなきゃいけないことがあるから」
「……うん、わかった」

なんとなく察したのか、准将は先んじて出口へと向かう。

731 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:43:30 ID:hVDK0tA20
後に残されたのは、満身創痍で、起動鍵も解除されてしまっているキラと、自分から解除したミカ。

「…こういうの。普通逆じゃないかな…?」
「流石に、今のキラくんにこれさせる訳には行かないよ。
それに…お姫様が、王子様を助けてこうするのもいいって思わない??」
「…そう、かな…改めて、ありがとうミカ。君と、篝さんがいなかったら……きっと、化物として僕は死んでた筈だから」
「…礼を言うのは、私の方だよ……キラくんと、篝ちゃんが居なかったらきっと私……もっと、ひどいことになってたから」

持ち前の力を以て、キラをお姫様抱っこしてミカは歩く。そんな会話をしながら進んでいくと、出口が見えた。流石にと降ろして貰った上で、キラは……。

「…そう言えば、君の告白に…答えてなかったね。
────」

答えを告げる。言われたミカは呆然とした後…顔を赤らめながらも、微笑み……そして暫し後、精神世界から2人は帰還を果たした。

732 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:43:53 ID:hVDK0tA20
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一方時間は少し巻き戻る。
冥黒ディアッカとアスラン、セリカの戦いは…意外にも泥仕合状態となっていた。
理由はアスランやセリカの消耗と、ディアッカ側の耐久力の高さ、それに彼が創られた際グリオンにより融合させられたアンデッド…ハートスートの9、リカバーキャメルの特性が主因である。
キャメルリカバーによる自己回復が、ディアッカ擬きのタフネスさを更に強めていた。
最もその冥黒ディアッカも、アスランとセリカに抑えられる形となり、対氷竜を妨害出来ずにいるのだが。

「ああもうウザってぇなあナチュラル共が!!」
「こっちの台詞よ!無駄にしぶといのはアンタの方でしょうが!!」
「いい加減その口を黙らせてやりたい所だが…!」

ランチャーストライクでアグニを乱射、ガンランチャーも使いながらキレ散らかす冥黒ディアッカに、シンシアリティでの砲撃を行いながらキレ返すセリカ、錬金術による爆発や各種火器類の射撃、クローやビームライザーによる近接戦闘を行いながら吐き捨てるアスラン…という状況であった。
セリカに関しては隙をついて『信頼の銃弾(ムニツィオーネ・シンシアリティ)』を命中させようとはしているものの、それに限って回避か、冥黒ディアッカ本体に当たらないよう彼が立ち回るせいで有効かどうかすらわからない状態である。

733 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:44:14 ID:hVDK0tA20
対氷竜はというと、装いが変わっただけでなく媒介故か強化もされた可奈美が、スザクや流牙共々主に前衛を担当。
戦闘時なのとイルヴァの助けもあって、舞衣が指揮を取りつつ自らも前衛に出向く形となっていた。

『舞衣、竜の動きが…!』
「明眼や透覚でわかってる、可奈美ちゃん、道外さん…そっちは」
「ううん…切り合っても相変わらずわからなくって…でも、動きが鈍くなってる気は…するかな」
「…疲労もあるだろうが、内部でミカやキラが戦ってる影響…だろうな」
「…セリカちゃんとアスランさんが抑えてくれてる間に…押し切りましょう。それがもしかしたら…ミカちゃん達の為にも、なるかもしれないから。タイクーンさんもそれでいい…ですよね?」
「ああ、ここで彼を止めよう…!」

突風と衝撃波を放ちながら、疾風を全身に纏わせ突撃する氷竜を…間一髪躱しながらブジンソードビクトリーを行使するスザク。斬撃波として放ち迎え撃つ中…可奈美もまた、視て覚えた技である金翅鳥王旋風を放つ。その上で舞衣も、蒼炎を付与した斬撃…旋風巻きを放ち相殺、吹っ飛ばすことに成功した。

734 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:44:38 ID:hVDK0tA20
その隙を、歴戦の魔戒騎士道外流牙と、感知という点では"刀使の中では"トップクラスな柳瀬舞衣は見逃さない。

「道外さん、今です!」
「ああ。…キラ、これが少しでも君の助けになるのならば……!!」

狩る者のスキルのひとつ、多段突きを見舞う抜刀術八双大蛇突きを舞衣が使った後…ハガネの鎧を着た流牙が使うは閃光剣舞。
閃影剣舞を使おうとも考えたが、光を闇へと変え邪気を溜め込む都合、鎧を纏えなくなるデメリットが現状では重たかった為まずはこちらを使う事とした形である。

内側からの抵抗もあって闇を光へと変える一撃は弱体化しつつある氷竜に大ダメージを与え……それにより、内側の氷竜本体にも疲労が蓄積。この攻撃も一因となって…氷竜は、己の…キラ・ヤマトの精神世界にて敗北を喫する事となった。

そして、立ち上がろうとしていた氷竜が動きを止め突如光り輝く。その様は交戦中の冥黒ディアッカにも、セリカにもアスランにも視認できた。

735 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:45:35 ID:hVDK0tA20
「はぁ!?なんの光だよありゃ!?」
「…もしかして、ミカと准将の方のキラが…!」
「おそらくは、成し遂げたんだろうな…やるじゃないか、ミカも」

そして光の中から現れるは、2人のキラ・ヤマトに聖園ミカ。
その光景は…氷竜の敗北を、そしてミカ達の目的が果たされた事を意味していた。

「…みんな、ただいま!ちゃんと准将の方のキラくんと一緒に、ねぼすけな王子様を連れて帰ってきたよ☆鍵は返しとくね…流石に、つかれたから…」
「…みんなの前で言われるのは恥ずかしいかな、流石に…」
「気持ちは分かるよ、昔の僕…あ、うん… 僕もこれは返すね」
「…ほら!!やっぱりそういう仲なんじゃないの!…よかった……」
「あっさり負けるとかマジねぇわ。所詮は失敗作だなクソがよぉっ!」
「失敗作はお前だ。本当に使えないな」

736 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:45:59 ID:hVDK0tA20
勝利宣言をしつつクアンタの起動鍵を返すミカと、気恥ずかしげにするキラに同情しつつルプスレクスの鍵を返す准将。
予想してた通りだったじゃないとしつつ、ホッとした様子のセリカに、吐き捨て苛立ちを隠さない冥黒ディアッカ。
吐き捨て返すアスラン……3人とも疲労困憊とは言えこの状況、後は冥黒ディアッカをどうにかすればこの場は……と思った次の瞬間、空気が変わった。

「……──これ、は……あの人だ。あの人が……!!」

この空気を、衛藤可奈美は識っている。自らを一度屠った、暴虐の王のそれだと認識したその刹那…声が響いた。

「雁首揃えて何の様だ。王が現れたのだから、頭を垂れるのが礼儀だろう?塵共が……。
……死人は大人しく、ハーガバーカに居れば良いものを……!!」
「……お前、は……」

真紅の暴君、宇蟲王ギラ。
平坦な声で呟いた筈が……視界に衛藤可奈美と冥黒ディアッカを見つけた途端、吐き捨てるかのようにそう呟く。
自らの知る王…ギラ・ハスティーと似た声、だが相対しただけで決定的に違うとわかる相手に…思わずスザクは呟くが意に介されず。

……次の瞬間、宇蟲王は宇蟲剣ブラッドフォークを大量に生成、それら全てを射出しその場の参加者に無差別に襲いかからせた。
狙いを付けたわけでも、勿論全力でもない。だが…この程度を超えられなければ、小石にすらならないと、無慈悲に剣を降り注ぐ。

737 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:46:30 ID:hVDK0tA20
それを避ける暇も余裕も、聖園ミカには無かった。
起動鍵を使おうにも間に合わない、令呪を切ろうともどうにもならない、できることは、なにもない。

(……キラくんを助けれただけ……いいほう、なのかな……)

呆然と、そんな思考が頭を過ぎり……


「ミカっ!!!!」

令呪が消えたと同時に、咄嗟に動いたキラにより伏せさせられ…ギリギリの所で難を逃れる。

「…キラく………ぇ、あ……????」

真っ先に自分を伏せさせた相手を見ようとしたミカの視界に映ったのは──脳と心臓にブラッドフォークを刺されたキラ・ヤマトの姿。
……血がまた、ミカの身体を、服を汚し……ソレはピクリとも動かず倒れ伏した。

「……きら、くん……や、やめてよ…せっかくおきたばっかりなのに、またねちゃだめだよ……ねえ、おきて…おきてよ、きらくん……!!」

現実を受け入れられず、ミカはまるで幼子のようにキラ・ヤマトだった肉塊を揺さぶる。
だが応えなど返ってこない。いくらスーパーコーディネイターだろうと、頭と心臓を貫かれて生きているはずが無いのだから。

「……やだよ、やだよきらくんっ…だって…まだ、これから……もっといっぱい…わたし……こんなのって……そんな…いやっ……いやああああああ!!!!」
「喧しいゴミめ」

現実からの逃避にも限度があった。崩れ落ちた少女の慟哭が虚しく響くも、宇蟲王からすれば塵が喧しく喚いているだけに過ぎないのだ。

738 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:47:28 ID:hVDK0tA20
キラ・ヤマトが肉塊へと変わった剣の掃射は、他の面々にもダメージを少なからず与えていた。
咄嗟にハガネの鎧をまたもや纏った流牙はどうにか切り払い対処には成功、だが鎧を解除されてしまう。
冥黒ディアッカはここに着くまでに手に入れていた高速化のエナジーアイテムを大量使用、全速力でその場からトンズラをするも……離れる前に何本も宇蟲剣を刺されてしまっていた。

可奈美はかつて宇蟲王が自らを屠る為使った剣による暴撃を放ち、全集中の呼吸とソードスキルのバフもあり切り抜けはしたが傷は浅くはなく。
アスランはミラージュコロイドを駆使しまた紅蓮の錬金術による爆破も併せ、セリカを庇い回避に動くも突き刺され、ズゴックの中身を開示する間もなく解除されて重傷。
そのセリカもキヴォトス人特有の頑丈さとアスランが庇ったがそれでも傷は浅くない。

739 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:47:48 ID:hVDK0tA20
准将はクアンタの量子テレポートや、ソードビットにガンバレルを駆使して切り抜けるものの、先の戦いで既に疲労困憊。
スザクはニンジャバックルを用いて対処、ブジンソードの防御力もあってか比較的ダメージは少なかった。
生きろギアスが発動するも、どういうわけかその場から逃げることは無い。

そして舞衣は……使わなきゃいずれ自分も殺されるだけだと、なんのために切島さんは自分なんかを庇ったんだと、このままじゃミカちゃんまで殺されるとイルヴァの制止も無視し令呪を行使、緩やかに適合するか否か決まるはずだった『狩る者』を強制的に適合させ──宇蟲王との斬り合いが始まる。

かたや本来地球の意志が創り出した、選ばれた存在たる狩る者…をスキルという形で取り込んでしまった、特別でない少女。
かたや善意が空回りした結果、本来の役目たる宇蟲王を斃すどころか、あろうことか自分がそうなってしまった特別な青年。
互いに本来あり得ない状態同士の戦いとなった。

「そこの身の程知らずの塵よりはやるようだが…俺に届くとでも思ったか?カスめ」
「届く届かないじゃ、ないっ…わたしが…わたしが抑えないと!!」
「青い戦士に比べれば遊戯に過ぎん、が…トウフの八百長試合よりはマシか」

740 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:48:31 ID:hVDK0tA20
冷淡に、余裕たっぷりと言った様子で剣を振るう宇蟲王。対し舞衣は蒼炎を纏った剣を振るって…先程までよりずっと跳ね上がった攻防速でそれに食らいついていた。
しかしこの拮抗はそう長くは続かない。宇蟲王が本気を出せばそれで終わり。そうでなくとも…強制的に適合を試みた結果、斬り合いの中で舞衣は血を吐いてしまっている。

ソードスキルに落とし込んだ上で、令呪という形で進化を強制促進させた弊害が彼女の身体を襲っているのだ。
そんな無茶苦茶な状態が長続きするわけがない、有効時間である99.9秒まで保たないか、保ったとしてこのままでは切れた瞬間に舞衣の手と足と首が飛ぶ結末が待っているだろう。

(…勝てないのはわかってる、でも…稼げるだけ稼いで……みせる、っ…!)

血を拭う暇も無く、一刀流の奥義である天と地を断つ斬撃、天地断ちを蒼炎を付与して放つ舞衣。
対し宇蟲王は……何の感慨も無く、それを乱雑に放った斬撃波で迎え撃ち相殺。

「足りん。俺の前に戦士として立つならば、せめて一撃程度は与えてみせろ」

この手で殺したはずの死体の顔が過ったのかはわからないが、そう吐き捨てるように言い…拳で舞衣を殴り飛ばす。
写シを一瞬で解除して、そのまま追撃に向かおうとする宇蟲王だったが…先の掃射で掃除したか、そうでなくとも行動不能に追い込んだ筈の相手を一瞥する。

「氷細工はゴッカンにでも行っていろ」

741 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:49:08 ID:hVDK0tA20
…その視線の先には、氷の竜の姿があった。傍らには泣き喚いてた筈の塵が、装束のような物を纏っている。

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「……ここは……さっきの…」
「足掻いて見せればいいとは言ったが…アレが付近に居るとはとんだ不運だな、キラ・ヤマト」
「…君は……僕は確か、ミカを庇って……」
「咄嗟に令呪を切ってやった、残ってるのはあのババアから奪った分だけだ。だが……このまま復帰すれば、お前は氷竜として死ぬ事になる。当人の意思確認ぐらいはしておいた方がいいだろ?」

精神世界にて、キラ・ヤマトの目前に居るのは負けを認め消えたはずの氷竜だった。
彼はキラに、このまま人として死ぬか氷竜となり立ち上がるかを選択を委ねる。

『キラくんっ…やだよ…おきて、おきてってば… ねぇ…!!!!』

…聞こえてくるのは、諦めきれないのか虚しく死に体な身体を揺さぶり喚くミカの声。

「……お姫様が、助けを求めてるんだ。なら……彼女の王子様になっちゃった以上……立ち上がらない、訳には… 行かないだろ?」
「…お人好しのお前らしい答えだな。だが…アレ相手に生き延びれる可能性は殆ど無い、竜の死体の出来上がりだ。
それでも行くのか?」
「うん…僕は僕自身の手で…未来を、選びたいんだ…全てが手遅れになってしまう前に、まだ出来ることは…ある筈だから!」
「…行って来い、キラ・ヤマト。せいぜいどうなるか眺めておいてやる」

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キラだったモノの手を握り、座り込み泣きじゃくるミカだったが…その手が、動く。

742 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:49:52 ID:hVDK0tA20
「…へ…きら、くん……??…また、その姿に…!?」
「……ううん、大丈夫。ごめん…でも、君には死んでほしく無かったから」

手を優しく握り返したそれは、先程の氷の竜と同一。令呪により超再生…再生能力を活性化させ、命を繋ぎ止めた。
だがその瞳には先程の竜とは異なって…キラ・ヤマトのそれと同じ、悲痛さと優しさがあったように、聖園ミカには見える。

「…舞衣って子でいいんだよね?今アレと戦ってるのは」
「…うん、舞衣ちゃんが…ひとりで、でもこのままじゃ……!」
「…なら…みんなが逃げれる時間を稼がないと」
「…っ、待って!!…そんな、また…またキラくんが死ぬ所を見ろって、わたしに言うの…!??」

「……ごめん。でも……何ができるかもしれないのに…しないままってのは…僕には、無理だから」
「……そう、だよね…わかってるよ…キラくんがそういう子だって…意地悪言ってごめんね…でも…わたし……!」
「……ありがとう。そう言おうとしてくれるだけで…僕は…こんな姿になっても、君は……」
「…どんな姿でも…キラくんはキラくんだよ…!!」

舞衣にタゲが向かってくれている為どうにかなってる現状だが、切り札らしい技を使ってなお防がれた以上…宇蟲王が纏めて終わらせようとしても何ら不思議では無い。
故にせめて、撤退準備を稼ごうと考えた。キラ自身は知らないが、まさか案も無しに氷竜となった自分をどうにかしようとしたわけでもあるまいと。

743 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:50:14 ID:hVDK0tA20
蘇ったにも関わらず、ミカは止めるも…それでキラが引き下がるとは思っていない。だから、自分も彼と同様…出来ることをしようと決めた。

(…篝ちゃん、使わせてもらうね、この鍵も…!)

起動鍵を行使、祭祀礼装・禊を…神秘の籠もった装束をミカはその身に纏う。
そして……キラが疾風で自身を最大限加速させた上で、手刀と氷剣を以て突っ込む中、彼女もまた、迅移と八幡力の併用を以て、フルートバスターをブーメランとして投げながら、千鳥を振った。

「速度も力も足りん、王を目前に児戯にも劣る物を見せるとは何のつもりだ?」

剣すら振るわず、手でそれを受け止めるのが宇蟲王。
フルートバスターを事も無げに投げ返し、接触による凍結も意に介さず氷竜も、神秘の重ねがけなキヴォトス人も薙ぎ払わんとする。
──しかし、出来ることをやろうとしたのは、彼らだけでは無かった。

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744 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:50:45 ID:hVDK0tA20
かつて戦ったあの王とは程遠い、目前の暴君を目にして…生きろのギアスは相も変わらず逃げる事を進め続け、自分の身体を突き動かそうとする。

『生きる事を最優先に動くのなら…例えばの話ですけれど、生きる為に目の前の相手を倒す…とか、そういう方向に考えれば、ある程度の制御みたいなのは出来そうだけど…』

頭に浮かんだのは、彼女の…衛藤可奈美の言った言葉。

…そして、目の前にあるのは、舞衣が落とした…バックルのような物。
…嵌めれるかはわからない、けれど……少なくとも、目の前の…邪悪の王を名乗っておきながら、殺し合いに抗おうとしていた彼とは程遠い……あの王と戦おうとするなら、必要だ。

傍目で見ると、彼女も…衛藤可奈美も、できる事をやろうとしていた。

……なら、尚更逃げるわけには行かない。アレは彼以上に……自分とは決して、相容れない…ともすればルルーシュ以上にそう言える存在だと、なぜかそう確信できる自分が居た。

さっきやれたみたいに、逃げるんじゃなく戦い生きる道を願ったように……自分は願った。
…舞衣、この力は…今は借りさせてもらおう。
そう思いながら、自分はそれを使った。

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心意により、目の前の敵を倒し生きるんだという枢木スザクの想いに呼応した結果…彼はブジンソードでありながらブーストマークⅢバックルを同時併用可能な状態となった。
カラーリングはブジンソードのそれに統一されており、出力が更に上昇している。
その勢いを以て、蒼炎を纏った武刃の斬撃を宇蟲王目掛けてスザクは放った。

最もいくら創世の神の力であれど、柳瀬舞衣の蒼炎のそれが通じなかったのと同様、宇蟲王の前には通用しない。対応こそキラとミカにより遅れたが、防がれてしまう。纏う真紅の服装には炎の燃え跡ひとつない。
しかし躊躇わず、速度重視の猛攻をかけるスザク。
手や足で雑に対応を続けていた宇蟲王だったが…ここで動くは魔戒騎士道外流牙。
一定時間鎧を着れなくなるリスクを考慮してなお、表裏一体の技より威力自体は上な一太刀を浴びせる事を彼は決めていた。

745 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:51:27 ID:hVDK0tA20
ハガネの鎧を纏って放たれる一撃は閃影一閃、牙狼の鎧を纏って使った際は破滅の門を破壊してみせた程の威力を持つ。
ハガネな以上その時より火力は落ちるが…スザクの猛攻から矢継ぎ早に繰り出されれば、さしもの宇蟲王も剣を使った防御をせざるを得なくなった。

そしてその隙を縫って…重傷の身を挺し起動鍵を再び装着したアスランは、セリカから預かった御刀千鳥を舞衣目掛けて投擲。

「舞衣ちゃん、千鳥を……使ってあげて…!」

可奈美の懇願と、戦闘中なのもあり…躊躇無く引き抜いた舞衣は再び二刀流となる。血をまた吐くも、皆が戦ってる以上…柳瀬舞衣には戦わないという選択肢は無かった。

当然、セリカ当人も見てるだけな筈もない。『信頼の銃弾』を放ち……二刀流となって、早速スキルである双剣 大一文字を行使した舞衣や、ミラージュコロイドステルスをフル活用したアスラン、それにクアンタのソードビットとガンバレルでの遠距離支援を行う准将に、凍結狙いのキラと重たい一撃をぶつけようとするミカ。
速度任せの猛攻をしかけようとするスザクに、鎧を纏えなくとも戦闘経験を活かし避けて戦う流牙という、全てに対して対応必須な状態となった為なのか。

偶然、偶々一発の『信頼の銃弾』が直撃。
ダメージで言えばディアッカ・エルスマンが与えた傷よりも下、文字通り塵芥に過ぎないのだが…本来の歴史にて、宇蟲王ギラからギラ・ハスティーが分離させられた事からギラ・ハスティーを取り込んだ宇蟲王ギラ(イーヴィルキング)という裁定となったかはわからないが、程度こそ軽度なもののダークマイトが陥った弱体化のそれと同じ現象が起こった。

746 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:52:05 ID:hVDK0tA20
そして……衛藤可奈美も黙ってはいない。

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渡り合う舞衣ちゃんの、タイクーンさんの、道外さん達の剣を視て…あの人の剣の動かし方も更に視て。それでも……わたしじゃ、あの赤い王の人には勝てないって確信が持てちゃうのが……どうしようもなく、悔しくて。相変わらずあの人は、わたしのことなんて見てもいないし。
……でも、今わたしがするべきことは、勝つことじゃない…セリカちゃんが補強してくれたとは言え、壊れかけてる以上…あの人をどうにか退かせるか、みんなが逃げるまで稼ぎ切るか。

…放送前は使えなかった、あの時はどうしようもなかった…複製されてる支給品さえ使えれば、逃がす事は出来るかもしれない。その事は…舞衣ちゃん達にも伝えてる。
譲渡出来たらよかったんだけど…龍園さん達にやろうとして、出来なかったからなあ。

…とにかく…視た技は覚えれた。再現できるように……強く、願う。
心意システムが、わたしみたいな死人に効いてくれるかはわからないけれど…この想いは、心は、偽物なんかじゃないって…そう思いたい。

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心意システムは、その仕様上感情や類する物を持つ存在には誰にでも恩恵をもたらし得る。
それがNPC寄りの存在たるシビトだろうと、自壊というデメリットと己の罪を背負う事と引き換えに、自我と心を取り戻した以上は……恩恵を得れる対象となった。

747 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:52:35 ID:hVDK0tA20
故に……自分がかつて視た技、カラミティストライクを…心意によって、風なども含めて完全再現してみせる。
そこから連続で、いなずま斬り→水の呼吸 拾ノ型 生生流転→双剣 大一文字というコンボを再現し……そして、宇蟲王の斬撃も、かつて己を屠った攻撃をも再現。

「…ここまでしておいて、まだ殺意を持たぬとは…身の程知らずのチリが、何処まで俺を舐めれば気が済むのだ」
「…舐めてなんかないよ、わたしは…殺す剣は振るわない。…振るってもあなたに勝てないのはわかってる……だから、わたしはわたしの、戦いをする!!」

さしもの宇蟲王も、これには全力を以て対応せざるを得なくなり……そうごちるも、これができるならなぜあんな腕を腐らせる真似などしたのだと言いたげであった。
対し、あくまで自分のやり方で全力でやってるんだと、剣を振るいながら可奈美は叫ぶ。

ぶつかり合い、他の面々は退避を選ぶ中…並び立つのを選ぶは可奈美の親友、舞衣。

「あまり時間は残ってなさそうだけど…やるよ、可奈美ちゃん!」
「…うんっ、舞衣ちゃん!」

本来の歴史であれば、可奈美が強くなりすぎたが故成立しなかった、背中合わせでの2人の共闘。
剣撃を振るう可奈美のフォローを入れるかのように、すかさず援護を行っていく。

748 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:53:13 ID:hVDK0tA20
(…青い戦士程ではない、それは揺らがん。
……だが存外、歯応えはあるかも知れん…)

先程の銃弾のせいか、何故か小石(ディアッカ)の事が浮かび…王骸武装を切るという選択肢が出てきその時だった。

「行けっ、キラァァァァ!!」
「──うおおおお!!今だ!!」

紅蓮の錬金術による爆発で自らを加速させたズゴック…アスランが、勢いのままクアンタ…キラ准将を投擲。
当然捉えて錆にしてやろうとする宇蟲王だったが、量子ワープでそれは避けられる。
短距離転移が制限で使用不能であるが為…それは隙となった。

「……なん……だと……!?ソードスキルか……!!」

キラ・ヤマト准将に支給されていた、放送を超えなければ使用不能となっていたソードスキル:メタスタシアの斬魄刀消滅能力。
主催によりチューニングされたそれは、条件さえ満たせば宇蟲王にも届きうる。
一時的なものとはいえオージャカリバーZEROが消滅し、イーヴィルキングになるという選択肢は封じられた。

749 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:54:45 ID:hVDK0tA20
とはいえ即座に気付いた宇蟲王は、ここで権能の行使をしようとしたが……

「させるかあああっ!!」
「邪魔を…するか、氷細工風情が…!!」

生成した氷剣…を、生成量を増やして巨大化・刀身の延長をさせた上で疾風を纏って、キラが突撃。
質量を以ての攻撃なのもあり、妨害には成功するも…格闘であっという間に殴打されふっ飛ばされてしまう。
しかし矢継ぎ早に、舞衣が双剣 影無しを行使。最速で放てる上、『信頼の銃弾』の弱体化もあって付与されてるスタン効果が働き…狩る者としてのバフもあって突き上げる形で上空へと吹っ飛ばすことに成功した。
そしてこれで…可奈美の支給品の、ソードスキルの準備は整う。

「舞衣ちゃん、最後に…言っておくことがあるね。
…姫和ちゃんが、わたしに言ってくれた通り……たとえ、舞衣ちゃん自身が…自分の事を許せなくて、自分のせいだって思ってても……切島さんの件は…舞衣ちゃんはなにもっ、なにも悪くないから…!!」
「可奈美ちゃん…可奈美ちゃんっ…!!」
「…セリカちゃん。舞衣ちゃんの事…お願い」
「っ……わかった、わよ……!!」

ソードスキルに落とし込まれた魔戒法師ムツギの転送術により、近くに居た准将と流牙、アスランとミカ、そして舞衣とセリカはエリア内の何処かへと飛ばされる事となった。

750 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:55:44 ID:hVDK0tA20
「…ミカ、ここでお別れだ。アスラン、後は任せたよ…ミカの事も、それと…ニコルやイザーク、ラクスの事も」
「キラくん…離してよアスランくん!!わたしも…わたしもキラくんと一緒に…!!」
「馬鹿野郎!!キラの…アイツの想いを、尊重してやれ……クソっ…任された以上は…やるしか、ない…!」
「…ミカ……乗るかどうか、この後どうするかは……自分の心に従ってほしい。…篝さんは、泣かないでって言ったらしくて…僕も、出来れば君には泣かずに、あの時みたいに笑ってて欲しいけど。
…篝さんがそう言ったなら、僕は……重荷にならないようにしたい。君自身の意志で…決めて欲しいんだ」
「……うん、っ…やっぱり…泣かないなんて…無理、だよぉ……っ…!!」

転移を選ばなかったスザクに、流牙は問いかける。

「君は残るのか?」
「…死ぬつもりはない。生きる為に……奴と自分は戦う。…可奈美とも、彼女とも…約束したから」
「…なら、生きて会えたらいいですね。…たとえ、敵同士だったとしても」
「…そうか」

准将の言葉に、スザクはそう返すしかできなかった

751 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:56:19 ID:hVDK0tA20
かくして、6人は2人ずつエリアの何処かに飛ばされ…スタン状態で飛んでいくだけだった筈の宇蟲王は……

「おのれ……ぇっ…貴様ら程度に俺が……退けさせられて……たまるかぁあっ"っ!!」

ここで怒りを引き金として、心意システムを無自覚ながら起動。
スタン状態を無理やり解除した上で、宇蟲剣を掃射しようとし……その身を以て、キラ・ヤマトが壊しまた受け止めてみせる。

「キラくん!?」
「君はっ… 」
「僕に、は…再生がある…今のうちに2人は、彼を…!!!」

それでも破壊光線を放ち2人の援護を行うキラ。
思うところはあれど無駄にはしないと、可奈美もスザクも動く。
ブジンソード・ブーストグランド・ビクトリーストライクなる、創世の力同士のバックルによる蒼炎を纏いし超強力な斬撃を放ち、また宇蟲王の一撃を再び再現。

「守りたい世界がっ……あるんだああぁっ!!!!」

その勢いで、回復込みでも満身創痍ながらキラがパンチを見舞った事で宇蟲王は彼方まで飛んでいった。
……だが、権能は最後の最後に起動を果たす。
心意により強化された隕石が、エリア一個を消し飛ばすレベルのそれが降ってきたのだ。

752 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:56:58 ID:hVDK0tA20
「た、タイクーンさん!?あれ…どうにか…なりれるかもしれない。どの道……そう長くは、ないから……」
「…そんなっ…それじゃ、ミカちゃんは……」
「…伝えるべきことは伝えれた以上…悔いは……あるけど…でも、できることは…やれるだけはやったから…最後まで、全うさせてほしい…」
「……わかり、ました……」
「…それが、君の想いなら」

令呪の効果があってなお、再生するそばから血を流す様は…誰がどう見ても手遅れなのが明白である。
故にその想いを…可奈美もスザクも尊重。速攻で別エリアへと退避した。

『結局こうなるのか』
「…みたいだ。ごめん…せっかく僕を生かしてくれたのに」
『…あの化物相手に、お前らはよくやっただろうさ』

等と、氷竜と話しながら…預託令呪を切ったキラは滅却ドームを展開。エリアに隕石が衝突する寸前、自らもどうにかスザク達の方向へ向かった先で……隕石の衝突と、滅却が同時に巻き起こる。
どうにか死に体で、スザクと可奈美の所へと辿り着いたキラだが……令呪の効果時間が切れるのを待つまでもなく、終わりが来るのはわかっていた。可奈美の方を見ると、既に大半が崩れ去っており…こちらも時間の問題だろう。
そして、元いたエリアの方を見ると……そこにはエリア1個丸々分の孔が空いていた。
元々テラー擬きとなったミカの隕石で地面はボロボロ、そこに宇蟲王の巨大な隕石と、滅却まで合わさってしまえば……地面の部分すら跡形も無く消えてもなんら不思議ではない。

ともかく……こうして、一連の戦いは終わった。

753 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:58:47 ID:hVDK0tA20
……遠くから見えた、めちゃくちゃ大きな隕石と、包むかのように見えた…滅却するドーム。
……きっと彼は、キラくんは最後の令呪を切って……あの隕石をどうにかして……いのちを、おとした。
……もうにどと。わたしは…あえない。もうひとりの…だいすきなひとに。

……きづいたときにはもう、なにもかもておくれだったせんせいのときも…つらかったけど……ちゃんとつたえれた、キラくんのときもっ……うぅ、ぐすっ…ぁぅ…ぁぁ……っ────!!!!

……喚いて、泣いて、なんで…どうしてって…返してよって、めちゃくちゃになってた。
暫くして落ち着いて、……優勝すれば…先生も、キラくんも篝ちゃんも……って考えが浮かばなかったって言ったら、嘘になる。

『…ミカ……乗るかどうか、この後どうするかは……自分の心に従ってほしい。…篝さんは、泣かないでって言ったらしくて…僕も、出来れば君には泣かずに、あの時みたいに笑ってて欲しいけど。
…篝さんがそう言ったなら、僕は……重荷にならないようにしたい。君自身の意志で…決めて欲しいんだ』

キラくんの…わたしが聞いた彼の最期の言葉が、頭をよぎる。

754 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 00:59:28 ID:hVDK0tA20
「……これでさ、先生やキラくんや、篝ちゃんの為に殺し合いに乗っちゃったら……それこそ、みんなの思いを…そこで寝てるアスランくんみたいに、協力してくれたみんなの思いを…踏み躙っちゃうよね。
……今のわたしには……できないや。……わたしは、わたしは──わたし自身の意思で……先生やキラくん、篝ちゃんの分まで……がんばりたい」

涙は、いくら拭っても消えない。胸の中の痛みも、欠落も……いつからこんな、泣き虫になっちゃったんだろとすら思うけど、でも……それでも、決めたんだ。

「…すまない…キラ……」

…とりあえず、処置はしたけど…アスランくんは魘されてるみたい。…起こすのもアレだし…暫く待ってみよっと。
……大丈夫かなぁ…私が言うのもなんだけど、特に…キラくんを助けれなくて、可奈美ちゃんともあんな別れになった舞衣ちゃんと、乗ってる側だけど、残ったタイクーンくんも……アスランくんが起きたらその辺りも、話しておかないと。

755 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:02:59 ID:hVDK0tA20
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一方、近隣エリア。
消え行くのを待つ身となったキラ・ヤマトと、崩れ自壊しきるのを待つのみとなった衛藤可奈美。
そして枢木スザクがここに居る。

「……そうだ…タイクーン、さん……最後に…君の名前を…僕も、可奈美も…もう助からないから…一緒に戦ってくれてた…君の名前くらいは……」
「……どうせ最期なら…私も、知りたいです」

二人の言葉に、スザクは少し思案した後……ベルトの変身を解き、姿を晒す。
「…スザク。自分は…枢木スザクだ」
「…ルルーシュに恨みがあるのは…そういうこと、か……最期に…言えるのは……憎しみ合うだけじゃ…今の君は、ギアスって物に…縛られてるだけの存在じゃい…のは…わかるから……」

そう言い遺し、言いたいことだけ言ってキラ・ヤマトは死んだ。死体は竜のままである。

756 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:03:56 ID:hVDK0tA20
「……スザク、さん。……最期に私も、ちょっと頼んじゃいますね…。
……殺し合いに乗ってる事は変わりないだろうけど、だからこそ……同じ、乗ってる…覆面の人に…伝えて欲しいんです。
一応姫和ちゃんにも言ったけど……。
『…どんな思惑があっても、止めようとしてくれて…正気に戻る、きっかけをくれた事には…感謝してます』って」
「……最期だから言うけど、割と自分勝手だね、君は」

「…はは、母さんにも…優しいけど自分勝手だって、言われたことがあったなぁ…。…後…そのバックル、でしたっけ?ちゃんと…舞衣ちゃんに…」
「ああ、わかっている。ちゃんと返すさ」
「…それと…キラくんが言ってた…とおり…憎しみ合うだけじゃ……だめ、だって…わたしも、おもうんだ…結局、そうするしかなくても…話し合おうとしてみて…それからでも、遅くはない…はず…たとえ、違う世界や時間から…でも──」

そう言い遺し、可奈美もまた、言いたいことだけ言って消え去った。
カランと、レジスターが落ちる音が虚しく響く。

「……ルルーシュ、君が…何を考えているかは自分にはさっぱりだ。けれど……優勝して願いを叶える結論はかわらないけど……いずれ、君とも向き合う必要はある」

そう言ったスザクは、トゥートゥー言うキノコと、キラ・ヤマトだった遺体を火炎瓶で焼き払う。

(…キラ、せめて君が…これ以上弄ばれないように…この事は、彼女にも…ミカにも伝えるべきだ)

遺ったレジスターを手に取り……彼は違和感に気付いた。

(…確か、王印なるアイテムのせいで、彼は氷のドラゴンに……その王印は……何処かに落ちたのか!?
…他の参加者に渡っている可能性があるなら…また新たな氷竜が生まれかねない……見つけ出すのも、必要になるか)

ギアスの呪縛を、正史とは違った形で乗り越えた騎士は思考し…その場を離れる。
後には何も、残ってはいない。

【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED 死亡】
【衛藤可奈美(シビト・非参加者) 自壊/解放】

757 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:10:15 ID:hVDK0tA20

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「あっぶねー、マジで死ぬかと思ったぜ。元のディアッカと同じ奴に殺される所だった」

突き刺さった宇蟲剣を、キャメルリカバーによる回復も併せてなんとか無理やり引き抜いて、冥黒ディアッカは傷を癒すまで潜伏する事にした。

「しっかし、アスラン・ザラってのはつまんねー反応しかしてくれない煽り野郎だったなんてな。グリオン様が言ってた、違う時代?なせいなのか…まあいいや、今は休まなきゃやってらんねえよ」

758 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:16:32 ID:hVDK0tA20
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「…寄生生物、いや…ガワの通りハイパーカブトとでも呼べばいいか?」
「好きにすればいい、どうせこれはいつ壊れてもおかしくない繋ぎの器だ」
「…本題に入ろう。貴様はこれに見覚えはあるか?」
「無いな。参加者が落とした物だろう事以外は分からない。…これを落とした出涸らしが付近に居るなら、レジスター回収くらいなら出来るかもしれん。どうする?」
「…主催を打倒するならば、いずれこの枷も解除しなくてはならない。探してみるのも悪くはないか」

王印を手に取った覇王十代と、傍らの寄生生物セレブロ…が乗っ取った、シャドウフィルムライダーの行く先やいかに

759 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:22:33 ID:hVDK0tA20
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「リュウガさん、無事ですか!?」
「ああ、だが閃影剣舞を使った以上、暫くはハガネの鎧は呼べない」
「そうですか…。……」
「…昔の君と、ミカの事か?」
「…それも、あるけれど……ラクスに僕は……ちゃんと、好意を伝えてなかったんじゃって…ミカのあの、大胆な告白を見たら」
「…出会えたらまず、伝えるべきだろうな」
「…そう、ですよね…。…行き先ですけど、TV局は…どうでしょう」
「何か宛があるのか?」
「…元から、行く予定だったのと…ホナミさん…同行してた人がいるかもってのと、ルルーシュが…ビスマルクを殺した人はって言ってたから…」
「…宛がこちらにはない以上は、そっちに向かうのもアリかもしれないな」

疲労困憊な准将と、鎧を暫く呼べない魔戒騎士は思案する。

760 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:37:59 ID:hVDK0tA20
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「……けっきょく…わたし、なにも……できなかった」
「……マイ…アンタ、何言って……!」

飛ばされた先で遭遇したNPC脳無を撃破し、出てきたドロップアイテムを視た途端……切島が自分のせいで死んだと改めて認識、そして戦闘が終わった事で視野がまた狭くなった結果、そう譫言のように言い出す舞衣。

「…だって….たすけなきゃいけなかったのに…キラくんも可奈美ちゃんも……結局、タイクーンさん共々置いてきて……なにも、わたしは…偽物のアスランさんも止めれなくて…」
「……あんな最低野郎の事でっ…アンタが抱え込むことなんて無いじゃない!!」

思わずそう言うセリカに、舞衣はハッとした様子で彼女の顔を見る。

「……そう、だよね。感情を、以てなにかしようとしても…けっきょくなにもできなかった。なら……殺し合いを止めるためにはそんなもの、いらないよね??…結果を出せなきゃ、なんのいみもないんだから」
「っ……違う、私が…言いたいのは……!!」

ハイライトの消えた目で、自らの優しさを全て投げ捨てようとする舞衣を慌てて止めるセリカ。
もしここで止めていなければ…心意システムと反応し、感情を捨て去って主催打倒さえできれば何でもいいただの機構、ゼインよりもおぞましいナニカになってしまっていたかもしれない。

それ程までに…柳瀬舞衣という人間から、優しさを捨てさせる事は危険だ。なまじ頭が回るせいで…自分を含めて全てを使い捨てるようになってしまう可能性がある。
最も…そこまでしても、今の彼女はなにもかもがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの下位互換なのだがそんな事知る由もなく。また今の所は防がれた未来である。

761 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:46:40 ID:hVDK0tA20
「……アンタが、アンタが居なかったら……あの場にいたみんな、間違いなくアイツに殺されてた!!
…助けれなかったのはそうかも、しれないけれど…でもっ…助けた分を、誇ったっていいじゃない!!…そうしていいくらいに、アンタは頑張ってたわよ……アンタ!カナミの言ってたこと…忘れちゃったの!?」

…止めなきゃ、間違いなく舞衣が戻れなくなるという確信がセリカにはあった。
故に言葉を選んで、必死に引き留めようと試みる。

「……わたし……なんてことを、ごめん…セリカちゃん……」
「分かればいいのよ、分かれば…マイ!?」

亡き友の最期の言葉すら、結果とは関係ないからと忘れそうになっていたことに愕然としながらも… 疲労からまた舞衣は倒れる。
駆け寄るも、また寝ている事、吐血はしてない事を確認してホッとしたセリカだったが…ここで、何かの残骸らしきものを見つけた。
舞衣を寝かせた上で、それを拾ってみる。

762 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 01:53:02 ID:hVDK0tA20
(…さっきまでは。色々あり過ぎたから使う機会がなかったけど……何があったのかとか、場合によっては乗ってる奴が近くにいるかもとか、わかるかもしれない…使ってみる事にしましょう)

支給品であるオモイデコロンを、残骸にかけてみる。するとセリカがその眼で視ることになったのは……あるヒーロー"だった"者の成れの果ての経緯とその末路だった。

763 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 02:34:25 ID:hVDK0tA20
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「……なによ、これ……」

呆然と、声が思わず出た。
…間違いなく、自分みたいな普通の存在じゃない、ヒーローだって言える存在が……こんな終わり方を…??

先生の偽物に騙されて、守りたかった、筈の相手に致命傷を負わせて……すがった絆はニセモノで…化け物になって……最期は、暴走しながらも大切なひとの亡骸を取り返そうとして、敵(ヴィラン)として、何も知らないまま、ヒーローとヴィランにころされた。

……そんなの、そんなの…あまりにも…!!

「…あんまりじゃ、ない……っ!!…誰も、知らないまま……こんなのって……なんで…アイツがこんな終わりっ……先生も、シノンも、うてなも、キラも、カナミも、アイツも……どうして…どうして…こんな目に…ぃっ…!!」

…気付いたら私は、泣きじゃくってしまっていた。…最低野郎なら…気分はいいかは別としてまだしも…なんでっ…アイツらがあんな目に遭って、あんな終わり方をしなきゃ行けないのよって思ったら……止まらなく、なっちゃった。
…マイが寝ててよかったって、心底そう思う。…こんな重荷、背負わせたら今度こそ…きっと壊れてしまうから。
……きっと、これは私が……ずっと抱えて行きなきゃいけない。誰かに…それこそ、あのヒーローや…ヴィランだって…知ったらきっと……。

『イドラさんに近づくな……ッこのヴィラン!!!』

『あの女はな、俺が敵と認めた女なんだよ』
『お前みたいなモンスターがきやすく近づいていい女じゃねぇぇぇんだよぉぉぉぉぉ!!!!!』

…反応から、アイツの、キズナレッドの事を…イドラって奴との関係を知ったら……誰もしあわせにならない。
……わたしがひとり、かかえていくしか……そう思った時だった。

「…声が聞こえたから、来たんだけど大丈夫!?…もしかして、小鳥遊さん達と同じ……」

……なんで。どうして…よりにもよってこのタイミングで……アンタが来るのよ……!!

声をかけてくれたヒーローは…キズナレッドをヴィランだと思い込んだまま倒そうとした…マイが殺してしまったって言ってた、エイジロウって奴の仲間のデクって奴だった。
……隠せる気がしなくて、ホシノ先輩の事を、知ってるかもって期待もあって……でも…それ以上に…言わなきゃいけないことがある。

「……私より…そこで寝てる…マイを…お願いっ……!」

寝ててくれて、本当に良かったと思う。起きてたらきっと……衝動のままに…私じゃ、止めれるか不安だったから。

764 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 02:56:25 ID:hVDK0tA20
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シェフィや薫、学郎と共に散策をしていたデクだったが、聞こえてきたのは少女の嗚咽。
ヒーローとして、皆ですぐにでも向かいたいところではあったが、罠の可能性も否定は出来ず。
故にデクのみが、先行する形で向かった結果の…邂逅である。
今だって眼を潤ませて、何かを必死に堪らえようとしてるセリカに気になることはあるが…舞衣といえば、薫の元の世界での仲間。それもありどうすべきなのかと考える。

これも、ギラグレイドによる熱風でアナザーオーズ自身が加速させられた上で機器に激突、その余波で起きた爆発で破片レベルとなり、爆風により飛距離の伸びた破片が熱などによって残骸レベルになり、いくつかに分かれる。その内のひとつが転がっている所にセリカと舞衣が転移するという悪い意味での偶然が齎した結果である。
果たしてヒーローと、魔法少女の着地点やいかに。

765 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:31:05 ID:hVDK0tA20

【エリア全体の備考】
・9月2日午後13時00分時点で、エリアB-8は一帯が丸ごと孔になりました。落下するとエリア外となりレジスターが作動してゲームオーバーとなります。
また遠くからでも、落とされた宇蟲王の隕石に展開された滅却ドームが視認可能だったようです。
・とりよせバッグの効果により、先生の遺体から右手が切り取られました。遺体が何処にあるかは後続にお任せします。

【エリア????/????/9月2日午後13時00分】
【宇蟲王ギラ@王様戦隊キングオージャー】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、脛に引っかき傷
   トランクスへの怒りと期待、???(大)、人間態、苛立ち(大
)、『信頼の銃弾』の影響…?
服装:王の装い
装備:オージャカリバーZERO@王様戦隊キングオージャー(現在30分間喪失中)
令呪:残り三画
道具:ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:塵芥ども悉く捻り潰し最後の勝者となる。
00:ゴミカス共を纏めて片付ける好機か。
01:青い戦士(トランクス)を敵と認め殺す。
02:他の雑魚共は殲滅する。
03:別次元の自分も殺す。ギラという名の王は一人でいい。
04:最後の勝者の証を得たらゴミ(羂索)とカス(クルーゼ)とチリ(茅場)も片付ける。
05:下僕共など歩けば幾らでも付いて来るだろう。
06:所詮赤い王も逃げ蟲。
  やはり期待できるのは青い戦士ぐらいか。
07:……小石風情が
08:……既に終わっただろう死人(可奈美)と氷細工(キラ・ヤマト)以外の塵共に次は無い。
参戦時期:ヤンマたちを処刑しようとしてキョウリュウレッドと戦闘になった直後。
備考
※あらゆる昆虫生命体を支配する力はある程度制限されていますが、発動自体は問題なく行えます。
※宇蟲王の転移能力で短距離であればワープ可能です。
 距離や回数には制限があります。現在暫くは使用不能です。
※詳細な位置は後続にお任せします。

【エリア????/????/9月2日午後13時00分】
【冥黒ディアッカ(非参加者)@機動戦士ガンダムSEED+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:グリオンへの信望(絶大)、ダメージ(極大、治癒中)、疲労(中)
服装:
装備:ラウズカード♡9『リカバー』@仮面ライダーディケイド 錬金アカデミーの制服(赤)@仮面ライダーガッチャード
道具:ストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED 九堂りんねのドロップアイテム×1
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:俺様という暴力を前に無力さに嘆く顔が見てえ
02:アスラン・ザラ、つまんねー煽り野郎だなああおい。
03:失敗作は所詮失敗作だったっつーこったよ。
04:とりあえず今は休憩だ休憩、やってられっかよこの状態で。
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です
※グリオンとデスマスク以外を『ナチュラル』と認定し、見下しています
※♡9のラウズカードと融合しており、耐久性が向上しています。

766 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:38:09 ID:hVDK0tA20
【エリア????/????/9月2日午後13時00分】
【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、精神的ダメージ(極大)、疲労(絶大)、動揺による情緒不安定気味(大)、キラと篝への罪悪感(特大)、脳に焼き付いたトラウマ、主催への怒り、キラと先生への想い
服装:いつもの制服(返り血を浴びてる)
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(午前10時に使用、1時間47分変身不可能)@仮面ライダーギーツ、千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、心意で生成した銃@オリジナル
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ(午前8時25分に使用、12分使用不能)、祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、、イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、ホットライン×2
思考
基本:…わたしは、悪いお姫様だから。
00:わたしじしんのいしで、先生やキラくんたちのぶんまでがんばる
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげるつもりだったけど…今はもう
02:ゼインは見つけ次第壊してやる。
03:…だいすきだよ、キラくん。
04:先生のことを詳しく聞く。殺し合いに乗った?そんな訳ないじゃん馬鹿なの?????でも、あのNPCの事考えたら……
05:邪魔したあの救世主って名乗った人([[リボンズ・アルマーク]])と仮面ライダーエターナル(大道克己)、それにキラくんをあんなにした[[魔王グリオン]]とミームの方のアスランくんは…次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
06:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
07:…しれっと逃げてたギギストは…次会ったら一発くらい殴ってもいいよね??
08:…タイクーンくん(スザク)は…どうするんだろ。
09:やることぜーんぶ、裏目に出てばっかりだったけど……。
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
 一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※篝とのやりとりで刀使ノ巫女世界についてある程度把握しました。
※ドロップしたソードスキル:魔王ゼロのショックイメージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリーを習得しました。10時45分に使用した為5時間32分使用不能です。(午後4時45分に再使用可能)
※キラ・ヤマトの記憶を視た為ガンダムSEEDとSEEDRecollectionについて把握しました。ただしキラ視点からわかることのみです。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※詳細な位置は後続にお任せします。

【アスラン・ザラ@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、不機嫌(極大)、切島についての記憶を忘却、気絶
服装:私服
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン×2、ズゴックの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、シン・アスカケーキ@ネットミーム、切島鋭児郎のランダム支給品1、舞衣の手作りクッキー×2
思考
基本:このゲームを止める。
00:(気絶)
01:ラクスたちは兎も角、名前が二つもあるキラは…俺とあのニセモノとは違って過去と未来…といった感じか。
02:ラウ・ル・クルーゼ……お前は復活していたがニコルは?
03:…ニセモノの俺、理解不能だが哀れでもあるな…。
04:あの男(やみのせんし)には、少し言い過ぎたな。
05:病院からテレビ局の様子を見に行きたい所だったが…。
06:…マイ、それにライオットという彼…俺が不甲斐ないばかりにっ…!
07:リンネの事も助けに行きたい所だが…。
08:…たとえ過去のキラだろうと、死んでる姿なんて見たくはなかった。
09:今のキラと話してみたい所ではあったが…。
参戦時期:本編終了後。
備考
※切島と情報交換を行い、ヒロアカ世界に関する知識を得ました。しかしゼロノスカードの消耗により切島の事を思い出せません。得た知識を覚えているかは後続にお任せします。
※流牙、舞衣と情報交換を行い、牙狼世界や刀使ノ巫女世界に関する知識を得ました。
※名簿の並びからルルーシュ、綾小路の関係者を予測しました。
※支給されていたソードスキルである紅蓮の錬金術@鋼の錬金術師を習得しました。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。
※詳細な位置は後続にお任せします。

767 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:42:04 ID:hVDK0tA20
【エリア????/????/9月2日午後13時00分】

【[[道外流牙]]@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、申し訳なさ
服装:魔法衣
装備:イグスの魔戒剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、舞衣の手作りクッキー、ゼロノスカード(ゼロフォーム用、残り枚数未定)&ゼロノスベルト@仮面ライダー電王、とりよせバッグ@ドラえもん、布@現実、先生の右腕
思考
基本:守りし者としての使命を全うする。
01:准将たちと行動する。りんねを助けに行きたいが…。
02:現状力は1から3割ぐらい削がれてるか。
03:イグス、もう少し力を貸してくれ。
04:羂索、人を纏う怪人たるお前はホラーも同然。
  お前とその一味の企てを打ち砕き、牙狼剣を取り戻す。
05:ソウジ、キズナブラックの事は頼んだぞ。
06:ジンガたち悪しき魂を警戒
07:…舞衣、すまない。ライオットを助けれず、スキルを君に使わせてしまった…。
参戦時期:ハガネを継ぐ者終了後
備考
※ハガネの鎧は令呪無しでも召喚出来ますが、牙狼の鎧は牙狼剣が手元にある状態で令呪を使わなければ召喚できません。
※ソウジ、舞衣、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や刀使ノ巫女世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。
※詳細な位置は後続におまかせします。

【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、決意(大)
服装:コンパスの制服
装備:ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
令呪:残り三画
道具:ガンバレルストライカーの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED MSV、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
00:今は、テレビ局に行くべき…かな?
01:ラウ・ル・クルーゼ……分かった。
  今度も示すよ。僕の守りたい世界を。
02:ホナミさんとアビドス砂漠を経由してテレビ局を目指す…予定だったけど、竜になってしまった僕を止めてから向かおう。
03:[[ビスマルク・ヴァルトシュタイン]]……中々の強敵だった
04:ラクス、アスラン……イザークにディアッカに、ニコル?
05:どうして僕やアスランの名前が二つも?
  多分僕が准将の方だろうけど……
06:あの僕を止めないと……!
07:…ごめん…助けられなかった…!
08:あのMS…ストライクフリーダムに、僕が設計してる筈のプラウドディフェンダー……!?
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-には英文が刻まれています。
帆波は『世界はこんなにも簡単だと示してください』と訳しました。
※帆波と情報交換を行いました。
 また、その内容を[[冥黒アヤネ]]に聞かれて追跡されています。
 アヤネの追跡に気づいていたかどうかは後続の書き手様にお任せいたします。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。
※詳細な位置は後続におまかせします。
※ソードスキルとしてメタスタシアの斬魄刀消失能力@BLEACHを習得しました

768 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:44:17 ID:hVDK0tA20
【????/????/9月2日午後13時00分】

 【遊城十代@遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX】
状態:覇王 ダメージ(大) 疲労(大) セレブロへの警戒(大)
服装:覇王の装束
装備:偽剣デインノモス@テイルズオブヴェスペリア アナザーガッチャ―ドウォッチ@オリジナル(仮面ライダージオウ)
 ぎんのたてごと@ドラゴンクエストⅠ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、王印
思考
基本:ただ勝利し、支配する
01:超融合は必ず取り返す
02:足がかりとなる兵や将を集め、勢力を作る
02:あの赤き覇王とは何れ雌雄を決する
03:一ノ瀬宝太郎、華鳥蘭子、マジアサルファ 覚えたぞ お前たちは強い
04:仮面ライダーガッチャ―ドの力 なかなか悪くない。取り返したくば奪って見せろ
05:俺を奪いたければ好きにしろ寄生生物 奪えるものならな
06:このアイテムは…
参戦時期:ジムに勝利した後
備考

 【セレブロ@ウルトラマンZ】
状態:興奮(小) 疲労(中)ダメージ(中) 覇王の体への興味(中)
服装:なし
装備:鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン@遊戯王OCG
シャドウフィルムライダー(カブト)@バトライドウォーⅡ
   ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
   オール・フォー・ワン(個性)@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームを楽しむ
01:キヴォトスの神秘、頑強で面白い
02:羂索たちのゲームは実にいい 俺がもっと盛り上げてやる
03:ノノミの計画はなかなか楽しかった。いい気分だ。今度俺もやってみようか。
04:鬼方カヨコはもう出涸らしだ。不要だな
05:覇王 期待していたほどではないが悪くはなさそうだ。
06:今の身体からの乗り継ぎ先も探したい
参戦時期:ウルトラマントリガー・エピソードZ終了後 
備考

769 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:49:16 ID:hVDK0tA20
【????/????/9月2日午後13時00分】
【柳瀬舞衣@刀使ノ巫女】
状態:気絶、ダメージ(大)、精神的ダメージ(極大)、疲労(大)、狩る者のソードスキル使用、消えない心の傷、自殺衝動、トラウマ、戦闘時以外の視野狭窄
服装:美濃関学院の制服(女子用)
装備:越前康継@刀使ノ巫女
   魔導輪イルヴァ@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ホットライン、舞衣の手作りクッキー(残り2袋)
思考
基本:刀使として戦う。
00:わたしが、きりしまさんをみごろしにしたんだ。
01:(気絶)
02:道外さんたちと行動する。よろしくね、イルヴァ。
03:姫和ちゃんたちや、空蝉丸さんたちを探す。
  まずは九堂りんねさんを助けに行きたかった、けど…ミカちゃんを、とめないと…。
04:ジンガや宇蟲王ギラたちには注意する。
05:[[キズナブラック]]さん……。
06:…ごめんなさいっ…切島さん…私のせいで、あなたは……ッ!!
07:…止めに行かなきゃ、いけないのに…可奈美ちゃんも、真昼さんもニセモノのアスランさんも…。
08:…姫和ちゃん達や、緑谷さんに…どんな顔で、会えばいいの…??
09:…篝さんやタギツヒメが抗おうと?…本当なのかも、しれない
10:…可奈美ちゃんを…止めれなかった…止めなきゃ、行けなかったのに…なのにっ…!!
参戦時期:アニメ本編22話「隠世の門」にて、可奈美を抱き締めて涙を零す彼女に寄り添った後から。
備考
※魔導輪イルヴァと契約しました。
※支給されていたソードスキル:狩る者を習得し力を行使しました。適合までどれだけ時間がかかるか等については後続にお任せします。
※ソウジ、流牙、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や牙狼世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。
※自分が命惜しさに切島を見殺しにしたと思い込んでいます。また自分が千鳥に選ばれなかったから使えないと思い込んでいます。
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。

【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)魔王グリオンへの怒り(極大)、現状への混乱(大)、決意
服装:アビドス高校の制服(リンチにあったため汚れ 大)
装備:エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
 トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて、千鳥@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、思い出コロン@ドラえもん、ホットライン
 ワープテラケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
 テラー世界線のリトルマシンガンⅤ@ブルーアーカイブ
思考
基本:こんな殺し合いにはのってやらない
00:──なんで、いまなのよ
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……あの人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:マジアベーゼ……アンタの力、貰うわよ。
07:シノン……先生……!!
08:今のミカの雰囲気、もうひとりのシロコ先輩に近いような……。
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
※トランスアイテムで魔法少女に変身できるようになりました。
 その姿をマジアアビドスと命名しています
※放送等をどれくらい聴けてるかは後続にお任せします。
※丹田法の訓により6分間程体力が向上しています。

770 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:49:32 ID:hVDK0tA20
【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト】
状態:ダメージ(中)、決意、髪型サイド刈上げ(424話)
服装:デクのヒーロースーツ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト
装備:同上
令呪:残り三画
道具:デクのランダムアイテム×1〜2
   ホットライン
   将来の為のヒーロー分析ノート(現地調達)
   筆記用具(現地調達)、???
   軽井沢恵のランダム支給品×1
   失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ゼロワン、電王)
   裁断済みのゼインカード(ストロンガー、アバドン)
思考
基本:羂索らこのゲームを仕掛けた一味を逮捕する。
1:切島君、成見さん、イドラさん、アルカイザー……。
2:キリトやイドラさんの仲間との合流を目指す。
3:イドラさんたちから得られた情報も元に考察を進めたい。
4:ギギストやグリオンに翼竜のヴィラン([[冥黒ノノミ]])、そしてノワル達は要警戒。
6:やみのせんしとの決着はひとまず保留。
  可能なら分かり合えたい。
7:逸れてしまったみんなが無事だと良いけど。
参戦時期:映画終了直後
備考
※“ワン・フォー・オール”は制限されているがエナジーアイテムや“発頸”を活用すれば瞬間最大威力でなら100%を発揮できるようです。
ただ500%ともなると相応の『反動』を受けてしまいます。
※やみのせんしによるギラグレイドによって髪の一部が燃え尽き、サイド刈上げになって顔に傷痕が残りエピローグ時の外見(424話)になりました。
※乱入してきたアナザ―オーズは、参加者ではなくNPCのモンスターだと思っています。
突然の登場とやみのせんしによるギラグレイドによるダメージもあり、レジスターに気づかなかったようです。

771 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:50:44 ID:hVDK0tA20
【????/????/9月2日午後13時00分】
【[[枢木スザク]]@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、狂気(沈静化)、情緒不安定(沈静より)、シビトへの嫌悪感(大)、気付き、キラを止めるという決意
服装:軍服(ナイトオブラウンズ)
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ、ブジンソードバックル@仮面ライダーギーツ、ニンジャレイズバックル@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、キラと可奈美のレジスター
思考
基本:この殺し合いにのって理想の世界をかなえる
00:王印を誰かが…?
01:ルルーシュ…君が悪いんだ……けれど、本当に君は僕の知るルルーシュなのか…??
02:みんな、みんな殺すんだ…相手がマーヤだろうと…殺してかなえなきゃ、俺はなんのために…。
03:これが僕の…オレの選んだ道…そのはずだ…けれど…今は。
04:グリオンとゼインは見かければ最優先で殺す。
05:ルルーシュへの復讐をはたす。けれど本当に、あのルルーシュは…?
06:この生きろのギアスの呪縛があるかぎり、信用を得れるはずなど…だが……!!
07:ギラの言葉に…………
08:彼女(篝)が死んだのか……
09:…君は強いな、可奈美。
参戦時期:フレイヤ射撃後
備考
※業スザクではないです。
※「生きろ」のギアスの呪縛は問題なく発動します。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も可奈美越しに聞いています。
※自分とルルーシュ達が別の時間或いは別の世界から巻き込まれた可能性に気付きました。

772 ◆8eumUP9W6s:2025/07/28(月) 06:55:29 ID:hVDK0tA20
長引いてしまいましたが投下を終了します、大変申し訳ありませんでした。
タイトルについては>>710までが「sprinter-死人に口あり-」
>>711-737までが「sprinter-聖園ミカは悪いお姫様である-」
>>738-752までが「sprinter-キラ・ヤマト:リブート/枢木スザク:ライジング+衛藤可奈美:アンブレイカブル-」
それ以降が「sprinter-永遠(とわ)の別れ-」です

773名無しさん:2025/07/28(月) 13:32:01 ID:gJUiJwwM0
すみません、ytUSxp038U氏が執筆なされた、壊乱Fシリーズのゼインカードの描写について違和感があってまいりました。

本来ゼインカードによる最強フォームの力の行使は令呪による力の解放がなければいけなかったはずです。実際ゼインが初めて出た作品『ワタシが正義で仮面ライダー』から『そうじゃないだろ』まではそういう描写で一貫していました。

ですが何故かクロスセイバーの力が令呪なしに使われていたり、最強フォームの力が令呪が使われていなくても行使されてしまっていました。

これではそれぞれの作品と作品の間で矛盾が生じてしまいます。特に令呪で最強フォームの力を行使した『使いこなすCard&Energy』とは大きく違いができてしまっています。

早急に修正した方がいいと思われます。

それでは

774 ◆ytUSxp038U:2025/07/28(月) 15:27:34 ID:U3dc2nig0
wikiで修正しました

775花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/28(月) 23:59:06 ID:LjAPires0
皆さま、投下お疲れ様です!
投下します。

776花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/28(月) 23:59:43 ID:LjAPires0
復讐しないやつはロバ(馬鹿者)の甥
スーダンの格言



















前回までの仮面ライダーガッチャ―ドは、高校生であり錬金術師の九堂りんねが、はた迷惑な勘違い野郎の手によってヒロインとされてしまった。初めは嫌悪感でしかなかったが、彼と行動を共にするうちにいつしか彼との絆を感じてしまう。オーマイガッチャ!そして彼のために尽くして戦う中、マジェードマルガムにされてしまったりんね。無事変身は解けたが、そこに現れたのは、宿敵の錬金術師のグリオン。彼の言葉攻めはりんねの心を深く抉った。シノンの手により一度その場を離れることとなったが、果たしてりんねの行く末はやはりバッドエンドでしかないのか?

☆彡 ☆彡 ☆彡

777花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:00:05 ID:qZLToqtg0
三人の参加者がいる。
一人は一緒にまだ戦いたい想いを抱きつつも無念の死を迎えた若き錬金術師
一人は国に家族と名前。自分自身であることを奪われ、反逆の道を選んだ黒い狂犬
一人はアイドルの母を殺され、その道を引き継ぎ、嘘つきばかりの世界の悲しみを嘘で隠すアイドル

黄金の錬金術師(グリオン)、帝国(ブリタニア)、世間(母の墓を暴く者たち)

第二放送を経て、各対象に並々ならぬ想いを抱く三人はどうケツイするのだろうか――

桜並木。
それは、卒業に相応しい青春の空間。
ひらりひらりと舞い落ちる桜の道を2人の卒業生が歩く。
会話なく互いにゆっくりと歩むその姿は、一枚画の題材に相応しい空気だ。
やがて、一人が言葉を紡ぐ。

「私、一ノ瀬に言わなきゃいけないことがあるんだ」

「私……」

☆彡 ☆彡 ☆彡

778花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:00:23 ID:qZLToqtg0
シノンが命を賭した結果、りんねは宿敵の手で命を落とすことなく逃げ切れた。
ここは、D-10
下が砂漠なのもあり、無事に着陸できたが、りんねは先の戦闘並びにグリオンの言葉攻めによって心のメンタルがやられたのもあり、再び意識が落ちていた。
やがて、目を覚ますと――

「う……ん……・」

「私……?」

りんねは意識を取り戻すと同時にアビドスでの激闘を思い出す。

「ッ……!!」

それと同時に嫌でも脳裏に浮かぶ。
悪意に満ちた黄金の金言を。

「君のせいだろう?君がいなければマジアベーゼが戦った時点で彼女たちは勝っていた。
 そもそも君がダークマイトなどという小物に敗けさえしなければ、アビドスが戦場になることもな   
 かったかもしれない。
 こうも疲弊してあっさり負けるような無様は晒さなかっただろう。」

「わたしが……」

否定したい。でも否定しきれない。
確かに自分はダークマイトのヒロインとして彼女らと刃を交えたのだから。
ぐちゃぐちゃとした感情が渦巻くりんねに近寄る人影。
りんねのすぐ近くまで近寄ると人影が声をかける。

「目をさましたんだね」
「貴方は……!!」
「おはよう、りんねちゃん」

声の正体はアトロポス。冥黒の三姉妹の長女。

☆彡 ☆彡 ☆彡

779花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:00:50 ID:qZLToqtg0
「アトロポス……もしかして貴方も参加者なの?」
「僕が参加者?……ふふ、この様子じゃ名簿も碌に確認してないようだね」
りんねの問いかけにアトロポスはクスリと笑うと否定する。

「僕はアトロポスであってアトロポスじゃないってことだよ」
「……どういうこと?」

アトロポスに問いただそうと、りんねは起き上がろうとするが、その瞬間、体の全身に痛みが電流のごとく流れる。

「うっ……!?」

--ズキ

足が、胸が痛む。
先ほどは、グリオンの言葉攻めでしっかりと自身の身体の状態を意識していなかったが、こうして意識がはっきりしたため、痛みの信号が脳へと送られている。
ダークマイトのヒロインとして己を省みない戦闘は確実にりんねの肉体を消耗していた。
また、痛みは”肉体”だけではない。

--ズキ

心も痛む。
先ほどの戦闘でりんねはマジェードマルガムとなった。
マルガムとは、ケミーが人間の悪意と結合した結果生み出される怪人。
りんねはケミーの掟【人の悪意に触れさせてはならない】を大切にしていた。
そんな自身がマルガムにされたことは錬金術師としての尊厳破壊に等しい。

「無理しないほうがいいよ。君はダークマイトの手で乱暴に扱われてたのだから」
そういうとアトロポスは自身のことを説明しながらりんねにある薬を手渡す

「これは……?」
「回復薬だよ」
「どうして私に?」
「どうしてだろうね。お父さんに愛される君がうらやましいのに……」
「もしかしたら、りんねちゃんみたいな友達がほしかったのかも」
「……ありがとう」
目の前のアトロポスはNPC。しかし、その吐露は偽りない心情なのかもしれない。
りんねは、素直に感謝を述べると手渡してきた薬を飲んだ。

「ん……んんっ!」
アトロポスが手渡した薬の効果は絶大で、口にした瞬間、体全身を駆け巡り、内側からじわじわと満たされるような幸福感に包まれた。

「立てる?」
「……ええ」
アトロポスから渡された回復薬により、りんねは立ち上がることが出来た。
そしてアトロポスを真っすぐ見つめる。

「つまり……貴方はアトロポスの姿をしたNPCというわjけね」
「そう。流石りんねちゃん。理解が早いね」

りんねの理解の速さにアポロトスは満足そうに頷くと、りんねに問いただす。

「それでりんねちゃんは、ダークマイトの元へ戻るのかな?」

780花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:01:07 ID:qZLToqtg0
「……」
(ダーク……マイト…■)
ダークマイト。
それは錬金術を己の欲望のためだけに使う者。
その悪辣さはグリオンと大差ない。
出会い当初は顔を見るのも名前を口に出すのも嫌悪があったのだが、どうにも今は嫌いになりきれない。

マナメタルの結晶を見つめる。
その決勝はヒーロー(ダークマイト)とヒロイン(りんね)を結ぶ絆。
もっとも”絆”などはじめからあるわけないのだが。
本来なら、忌まわしき男との繋がりなど断ち切りたい。
だが--

「いいえ戻らない。おそらく、ダークマイト様は斃れた。なら、私はその意思を継ぐ」
「……」
(ダークマイト”様”……気づいているのかな、りんねちゃん。君はまだ、はた迷惑な勘違い野郎から解放されていないことを)
アトロポスはそのことに気づいたが、あえて口に出さない。

ダークマイトによる支配からは解放された。
しかし”命れいじゅう”の効果は今だ切れることはない。
なぜならダークマイトがりんねに命じたのは、ダークマイトが死ぬまで従い尽くす”ではなく、”全てを捧げてダークマイトに従いつくす”
りんねの脳裏にダークマイトとの会話が想起される。

☆彡 ☆彡 ☆彡

781花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:01:24 ID:qZLToqtg0

〜気絶から目を覚ましてアビドス高校に向かう前〜

【FUFUFU目を覚ましたかい?りんね】
【貴方は……っ!】
【ん〜〜〜、相変わらず綺麗な顔と髪だ。やはり俺に相応しい女だよ】
【……っ!】(きょ……拒絶することができない……っ!)
【どうやら、命れいじゅうの効果はきちんと効いているようだな】
【これで、りんねは俺のヒロインとなったわけだ】
【冗談……っ!貴方が私を好き勝手にできるのも貴方が斃れるまで】(確か、私に向けた命れいは全てを捧げてダークマイトに従い尽くす ……ならおそらく、ダークマイトが斃されれば効果は切れるはず)
【ん〜〜〜?HAHAHA面白いジョークだ。いいかいりんね?象徴は決して”死ぬことはない永遠”なのだよ。そう、オールマイトがその役割を終えたからこそ俺が象徴となったのだから。ダークマイトは名前と同時に象徴でもある。そして俺に選ばれた君は象徴のヒロインだ。胸をはって従い尽くすがいい】

☆彡 ☆彡 ☆彡

782花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:01:46 ID:qZLToqtg0
「……」
ダークマイトがりんねに語ったように象徴は”不滅”。オールマイトからダークマイトに象徴が移行したのなら、今度はダークマイトから九堂りんねに移せばいいだけだ。
そして、象徴としてこのゲームを終わらせる。
それがダークマイト(象徴)に従い尽くすに当てはまると命れいじゅうは捉えた。
不運なことに命れいじゅうは”魔法ではなく”科学”
ザ・サン×ユニコンがあまり効果が期待できない。
よって、究極のつり橋効果×命れいじゅう=最悪
はた迷惑な方程式がここに完成したのだ。

ーー 壊れた心は簡単に治りはしない ーー

「それで?意思を継ぐというけれど、どうやってだい?」
「アトロポス、コインか何か持ってる?」
「?、ああ、あるけど」
りんねはアトロポスからコインを受け取る。
そしてスッとコインを握り投げると--

「万物はこれなる一者(ひとつもの)の改造として生まれうく」
りんねの言葉と同時に錬金兵が生み出された。

「これは……異世界の錬金術かい?」
「ええ。ダークマイト様の錬金術」

りんねはいわゆる優等生である。
世界が違えどダークマイトがりんねの錬金術について把握したようにりんねもダークマイトの錬金のやり方を覚えたのである。

「これで私は象徴……ダークマイト様を受け継いだといってもいいはず」
「……」
(この錬金兵……そうなんだ、君はもうケツイしたんだね)
アポロトスは無言で錬金兵を見つめる。
そのデザインに目を細める。
りんねが生み出した錬金兵。そのデザインは先ほど自身がなったマジェードマルガムにそっくりであった。
後戻りをしないケツイ。

「それで、ダークマイトから象徴を引き継いだりんねちゃんはこの殺し合いでどうするんだい?」
「私は……」

目を瞑るりんね。
浮かぶは、先ほどの桜並木。

(さっきの夢。宝太郎と一緒に歩いていた桜並木……あれは、あり得た未来だったのかな)
あの桜並木を歩く自分と宝太郎の制服の胸にリボン徽章が付いていたことから富良洲高校を卒業したのだろう。
卒業か……そういえば、私達って高校生だった。
オロチマルガムを斃せなかったあの日から全てが変わってしまった。
そういえば宝太郎は大物錬金術師になるのが夢だったっけ。
私は……ロンドンに留学かな。
もっともっと錬金術師として高みを目指したいから。
そんでもってライダーの先輩たちとガールズリミックスを結成してみたり
そんな先輩たちとマジェマジェしながらスムージ―を作りながら女子会トークをしていたかもしれない。

でも……それは私の一つの未来。
今の私が選ぶ未来は……

「グリオンを斃す。そして象徴としてこのゲームを終わらせる!」
「……その道を選ぶんだね?」

「ええ。私の道は私が決める!」

りんねはケツイした。
過酷で修羅の道を。

「……」
(変革の兆しか……おそらくダークマイトの影響だね)

りんねの宣言。
アトロポスはそれに思うところがあるのか、一瞬暗い表情を見せるがすぐに表情を戻すと

「それじゃあ、新たな道を自分で選択したりんねちゃんにご褒美をあげるね」
「ご褒美?」
「うん。ご褒美」

言葉と同時にアトロポスは、りんねに物を渡す・

「これは……」
「ケツイだけではグリオン様は斃せないよ。だから…これは僕から君へのプレゼント」

”マジェスティードライバー” ”プロミスアルケミストリング”

それは、別の時間軸のりんねがアトロポスから授かったドライバーとリング。
そのドライバーとリングをデイブレイクのりんねは手にしたのだ。
そして同時にザ・サンとユニコンはそれぞれ進化をした。

丁度そのとき、放送が流れる。

☆彡 ☆彡 ☆彡

783花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:02:08 ID:qZLToqtg0

(……黒鋼先輩)

黒鋼先輩が同じ世界の人物かどうかはわからない。
でも、知り合いの名が読み上げられるのは心にくる。
だが、先輩への意識はアトロポスへうつる。

「アトロポス!?」
「……どうやら僕はここまでのようだね」
(これは……茅場の仕業か)

放送が終わると、アトロポスの身体が光はじめた。
殺し合いを新たなステージに突入しようとするなか、茅場は五道化の成り損いを心意システムのリソースにしたのだ。
消えゆくアトロポスをりんねはただ見送るののではなく、抱きしめた。

「りんねちゃん?」
「貴方とは……もしかしたら違う結末があったのかもしれない。だから……消える前にこれだけは伝える。ありがとうアトロポス」

りんねとしては、純粋にNPCであると理解しつつアトロポスへ感謝を伝えるために抱きしめたのだが、それが一つのトリガーとなった。

「……」
(……NPCである僕とりんねちゃんが一つになることはおそらく羂索も予測してなかったはず。りんねちゃんがどんあENDを迎えるか楽しみだよ)

アトロポスを構成していたデータがりんねとガーチャンコ!

一人のライダーが生まれた。
既に太陽も純白もくすんだ。
そこにいるのは復讐を果たさんとするオールマイト(象徴)を引継ぎし錬金術師。

仮面ライダートワイマイトマジェード

784花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:02:22 ID:qZLToqtg0

【エリアD-10/砂場/9月2日午前11時30分】

【九堂りんね@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:象徴としてのケツイ 魔王グリオンへの怒り(極大) 魔王グリオンを斃すケツイ(極大)
服装:錬金アカデミーの制服(ボロボロ)
装備:ケミーカード(トワイライトザ・サン、トワイライトユニコン)@仮面ラ二イダーガッチャード 、ハイアルケミストリング@仮面ライダーガッチャード、マジェスティードライバー@仮面ライダーガッチャ―ド、 プロミスアルケミストリング@仮面ライダーガッチャ―ド
令呪:残り二画
道具:マナメタルの結晶@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
思考
基本:象徴は私。ダークマイト様の意思を継ぐ
01:グリオンを斃す。
02:ダークマイトの意思を継ぎ、ゲームを終わらせる。
参戦時期:冥黒王に殺害された後、意識をザ・サンへ移す直前
備考
※ラウ・ル・クルーゼの放送と同時にNPCモンスターに襲われたため、名簿などチェックはできておりません。→名簿のチェックを行いました。
※ルルーシュの通信演説も同様に耳にしていません。
※ヒロインとして接した結果、ダークマイトの錬金を使用できるようになりました。

マジェスティードライバー並びにプロミスアルケミストリング@仮面ライダーガッチャ―ド
NPCアトロポスより譲渡。
りんねの世界軸(デイブレイク)では、入手することはなかったが、今回手にした。これも一つのガッチャなのかもしれない。
仮面ライダートワイライトマジェードに変身することができる。
また、ザ・サンとユニコンは進化した
ただし今ロワでは、NPCとしてのアトロポスとのガッチャンコと命れいじゅうの効果としてダークマイトの意思を引き継いだため、本来のトワイライトマジェードではなくトワイマイトマジェードと変身した。
アトロポス……一緒に戦ってくれる?by九堂りんね

アポロトス@仮面ライダーガッチャ―ド
冥黒の三姉妹の一人にしてその長女。真贋交わるこのロワでは、本人ではなくNPC。
久堂りんねに対する五道化のなり損ない。
次なるステージのため第一回放送にて茅場の手で退場となる。
本編とデイブレイクの時間軸両方が交わっていたため、りんねに手助けを行った。
粒子となって消滅する瞬間、りんねとガッチャンコした。今後、もしかしたら何か影響が起こるかもしれない。

☆彡 ☆彡 ☆彡

785花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:02:38 ID:qZLToqtg0

一方、二人の参加者は……

あれから氷竜(キラ)から逃げおおせた二人は、F10のオアシスまで逃げ切ると腰を下ろして休息をしている。

「……」

瑠美衣は無言のまま体育座りでいる。ただ一点を虚ろの目で。

「……」

マーヤも瑠美衣に話かけることなく無言で休憩している。
今の瑠美衣には、話しかけるよりそっとしたほうがいいと判断したためだ。

「……」
今の瑠美衣の脳裏に浮かぶ光景は一つしかない。
そう、自身を庇って命を散らした望月穂波の姿。
どうして見ず知らずの私を救ってくれたの?なんで身体を上半身と下半身と真っ二つにされたのに満足そうな表情だったの?たくさん湧き出てくる疑問は尽きない。
ただ一つ確実なのは、望月穂波がいなければ自分は確実にあそこで死んでいたということ。

「私……」

「……?」
瑠美衣の呟きにマーヤは顔を向ける。

「私、望月さんの分まで生き抜く」
はっきりと宣言した。

「……そう」
(正直……もう立ち上がらないと思ってた)
瑠美衣の世界は、ブリタニアがないのもあり、比較的平和な世界で生きていると感じていた。
そう、ルルーシュが言っていた弱い人間でも、力を持たない人間でも安心して暮らせる世界。
そんな世界であのような死を間近でみたら、
マーヤの予想は良い方向で外れた。
瑠美衣はそんなに弱くなかった。

歯を食い縛って、少女の死の整理なんて出来ないまま
苦しさも悲しさも抱えたまま瑠美衣は立ち上がったのだ

--ありがとう。望月穂波さん
ーーやっぱり私、ここで死ぬわけにはいかない
ーーだから貴方の分までこの殺し合いを生き抜いてみるよ
ーー正直、心の整理も何もできていないけど
ーー大丈夫。マーヤさんも含めて全員を出し抜いて見せる
ーーだって嘘はアイドルのとびきりの武器だから
ーーそして私は願いを叶える

ーー瑠美衣はきちんと立ち上がった。
ーー私も疲れている場合ではない。
ーー先ほどの氷竜をはじめ、明らかに参加者の戦力の差が大きい
ーー弱者は支給品や組んだ参加者が恵まれなければあっというまに死を迎える
ーー勝者が弱者を蹂躙するなんて許されるはずがない。
ーーつまり羂索たちはブリタニアと大差ない
ーーなら叩き潰す
ーー勿論ブリタニアも叩き潰す。
ーーそのためにもここで死ぬわけにはいかない。
ーールルーシュ。ここの貴方は”居場所を創る”貴方と変わらないわよね?
ーーもし、違うのなら私は……

やがて、放送が流れた。

786花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:02:52 ID:qZLToqtg0

【エリアD-10/砂場(オアシス)/9月2日午前11時30分】

【マーヤ・ガーフィールド@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、疲労(小)、精神的疲労(小)
服装:制服(アッシュフォード)
装備:ランスロット・アルビオンの起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ロケット花火@ペルソナ4、ホットライン
思考
基本:ブリタニア(概念)を叩き潰す
01:ルルーシュの真意を確かめるために瑠美衣とテレビ局に向かう。
02:色々な世界があるってことは、あのルルーシュが私を知るルルーシュとは限らないか。
03:ロロも卜部さんも死んだはずなのに名前がある。
  死ななかった世界の2人って事かな?
04:二代目ゼロに……ロロ・ヴィ・ブリタニア?
05:星野瑠美衣は民間人だから、ちゃんと守らないと
06:…多分、彼女(望月穂波)も民間人…だったのかな
07:卜部さん……
参戦時期:2部13章から

【星野瑠美衣@推しの子】
状態:狂気、ダメージ(中)、精神的ダメージ(極大)、疲労(中)
服装:【Be red】ルビーのアイドル衣装@アイドルマスター シャイニーカラーズ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランスロット・コンクエスター(フレイヤ搭載)の起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2、星に願いを@オーバーロード、マイティノベルガシャット@小説 仮面ライダーエグゼイド 〜マイティノベルX〜、ホットライン
思考
基本:願いを叶える
00:しばらくはマーヤたちを隠れ蓑に穏健な参加者のふりをする。
01:ユージオを、ゼアを排除することでマーヤたちとルルーシュに決定的な亀裂を創り殺し合わせようと…思ってたけど…逸れた今は保留かな
02:知り合いは誰も居ないか。ま、都合がいいね。
03:私は絶対に……。
04:ユージオやゼアの排除は……
05:…穂波さんの、言っていた学郎くんと朝比奈先輩には、きちんと 穂波さんの最後を伝えなきゃ
参戦時期:連載106話から
備考
※フレイヤを使用するには令呪二角が必要です。
※星に願いをは一回のみ使用可能な使い切りです。
※キリトの事でユージオを励ましたのは、雨宮吾郎が例え並行同位体だろうと、自分からアイを奪った者と同類のなにかであってほしくないと言う感情からです。
また、そのことにまったく無自覚です。

787花はまだ咲かない ◆s5tC4j7VZY:2025/07/29(火) 00:03:31 ID:qZLToqtg0
投下終了します。
投下終了時に時間が過ぎてしまったこと申し訳ございません。

788 ◆dxXqzZbxPY:2025/07/29(火) 22:47:10 ID:18KNOcXM0
ゲリラ投下します。ただ、これから投下する文章はDrj5wz7hS2様に許可を頂けるかどうかというと自分にとってもグレーゾーンであると認識した上で投下いたします。没ならば没で問題はございません。

789 ◆dxXqzZbxPY:2025/07/29(火) 22:49:37 ID:18KNOcXM0
「さっき別れたばかりなのにわざわざ私の所に来て何のようだい?私も暇じゃないんだが」

羂索が居座っている部屋にて茅場が転移してきたのだ

「先程から気になっていた事があった、最初はわざわざ質問する必要がない事かとは思ったが…しばらく考えてからやはり聞いた方がいいと考えて聞く事にした」
「良いけど手短に頼むよ、私も忙しいんだから」

2人は共にモニターをみながらとある矛盾について問いかける

「ゼインについてだ、私は彼は今までのレジェンドライダーの軌跡など知らないと思っていた。故にパラドを彼の太元である仮面ライダークロニクルのデータにおいて人類に危害を加えるバグスターウイルスと登録されていると
いう事だけで敵視するというのは筋が通っていると思っていたのだが…実際はゼインカードの力を十全に振るう為にレジェンドライダーの情報も知っていてチェイスが仮面ライダーチェイサー、正しく生きたライダーである事を知っていて、アークが今まで行ってきた事を知っている…という事だった、開発者があのライダーオタクであるジョージ狩崎である以上筋は通っていたと言える…だが」

そこで言葉を区切ると…ここからは事実確認ではなく、異常があると認識した場所を話し始める。

「おかしくないか?だとしたら何故パラドを悪だと認識した?彼はエグゼイドの歴史の終盤にてエグゼイドの変身者、宝生永夢と和解し、人間の命の為に戦う仮面ライダーになっている、それを知らないとは到底考えにくい、更に言うならチェイスもドライブの世界における敵勢力、ロイミュードだ、序盤において魔進チェイサーとしてドライブと敵対した事は確かにあった、それを知っているはずなのに、何故彼だけ正義のライダーとして認識した?」

律儀にライダーの歴史について知っていた茅場の指摘について…羂索は

「多分ゼインの知能が2人に抱いた印象の違いじゃないかな?チェイスは確かに敵対した事はあったが、その前にプロトドライブ…ドライブの歴史の始まりにおいてグローバルフリーズの時に多くのロイミュードを倒して被害を極小にする事に成功するという偉業をしている、これに対してパラドは彼の大元のデータに登録されている情報がバグスターとして登録されている上、彼が味方になったのは終盤も終盤だった。だからゼインの中で正義と見なすには情報不足だったということかもしれないよ?私だってあの人工知能について詳しく知っているわけじゃないんだ、推測でしか話せないよ」
「そうか、もしかしたらお前達が揉め事を起こしやすくするためにゼインの知能に改変を加えたと私は疑ったのだが」
「もしそうだとしたら君にも伝えているさ、そういう情報格差でこの殺し合いが面倒な事になるのは防ぎたいからね」

羂索の答え…もとい推測に対し納得した茅場は黙って部屋を立ち去ろうとする。

790 ◆dxXqzZbxPY:2025/07/29(火) 22:50:15 ID:18KNOcXM0
「茅場、次はこっちが今思いついた質問していいかな?」
「なにかな?」
「先程心意システムの実装のついでに他にした事ってあったりするかい?万が一の事があったらと思うと確認をした方がいいと思ったんだけど」
「特に何もしていない、しいて言うなら支給アイテムの説明書の内容をより詳しくしただけだ」

そういって次は茅場の研究スペースに二人揃ってワープ、目の前の機械を弄ると2つのモニターがとあるアイテムの説明書を映す、それは改変前と改変後の物であった。

「例えばドンブラスター&アバタロウギアセットの説明書、これには② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体は男になるとしか描かれていなかった…だから変身時は『桃井タロウ』の肉体になると書き直しておいた」

アバターチェンジは戦士に変身すると肉体も変身した本来の世界の戦士の物に変わる。例えばこの世界において確認されたキョウリュウレッドへのアバターチェンジは肉体を桐生ダイゴのアバターへと変質させていた。

変身アイテムに内蔵されているデータが変身者の肉体に合わさるように形を変えるのではなく、変身者の肉体が変身アイテムに内蔵されているデータに合わせて変えられるのだ。

羂索達はこのシステムを本来のドンブラザーズにも適応、この世界においてドンブラザーズにアバターチェンジすると本来の変身者である桃井タロウ、鬼頭はるか、以下略の肉体へ変化させるのだ(アバターチェンジしたギラはそれを既に実感している、言葉から自然と『祭りだ祭り』だが出たのはその為)。因みに桃井タロウ以外の措置はオニシスター、サルブラザー以下略のアバタロウギアが使われた場合に備えた措置である。

だがそれを最初の説明書において端折ってしまった。女性は男性になるというあいまいな書き方をしてしまった。故にそれを遠隔で修正したのだ。

これ以外にも他のアイテムの説明書を書き換えて…いるかもしれない、この殺し合いが面白くなるように、加速するようにと

(それぐらいならいいかな、殺し合いに大きな影響は起きないだろうし)

そう納得すると羂索は自分の部屋に戻っていった。

※ドンブラスター+アバタロウギア×6(ドンブラスター+アバタロウギア×6(ドンモモタロウ、キョウリュウジャー、マジレンジャー、他戦隊のアバタロウギア×3)@王様戦隊キングオージャ―VSドンブラザーズの説明書を変更しました。
② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体は男になる→② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体はドンモモタロウのものになる、というように制限の描き方を変更します。
※他にも支給品の説明書が変化しているものがあるかもしれません

791 ◆dxXqzZbxPY:2025/07/29(火) 22:51:05 ID:18KNOcXM0
以上で投稿を終了します。タイトルは『善意の使徒は何故チェイスを誘ったのか』です

因みに以下の文章は没文章、というよりこれは流石にダメなのではないかと考えたものです。もし許可を頂けたら

「特に何もしていない、しいて言うなら支給アイテムの説明書の内容をより詳しくしただけだ」を
「特に何もしていない、しいて言うなら支給アイテムの説明書の内容をより詳しくしたのと、アイテムの転送の実験をしただけだ」


に変更したうえで

これ以外にも他のアイテムの説明書を書き換えて…いるかもしれない、この殺し合いが面白くなるように、加速するようにと

の文章の後を以下の文章に変更します。

「で、それでもう一つのアイテムの転送の実験というのは?」
「これから予想外の展開、例えば参加者の誰かが万が一ノワル等の怪物の力を吸収するような対主催が現れた時に、それに対処する必要が出てきた五道化にアイテムを渡す必要が出来た時にNPCを使わすのは手間がかかる。それにそれを届ける間に対象が死んでしまうような事があったら目も当てられられない、だからそういう時間をカットする為の転送を行う実験をした」
「そうかい、それで何を会場に転送したんだい?」
「なに、この殺し合いに殆ど影響がないだろう物だし、間もなく立ち入り禁止になるエリアに送ってある、多くのプレイヤーに見つかる事はないだろう、見つかっても別に構わないが」

そう言ってモニターに移したものは先程話題に出たゼインによって裁かれた者がカードになった物…小悪党の命が込められているカードであった

(…それぐらいならいいかな、殺し合いに大きな影響は起きないだろうし)

そう納得すると羂索は自分の部屋に戻っていった。

※ドンブラスター+アバタロウギア×6(ドンブラスター+アバタロウギア×6(ドンモモタロウ、キョウリュウジャー、マジレンジャー、他戦隊のアバタロウギア×3)@王様戦隊キングオージャ―VSドンブラザーズの説明書を変更しました。
② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体は男になる→② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体はドンモモタロウのものになるに制限の描き方を変更します。
※他にも支給品の説明書が変化しているものがあるかもしれません

・ゼインカード(ライドプレイヤー)@仮面ライダーアウトサイダーズ
仮面ライダーゼインがファイズブラスターフォームの力で裁いたライドプレイヤー@仮面ライダーエグゼイド、がカードになったもの、D-1、E-9、J-8の三つのエリアのうちどこかに置かれています

792 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/29(火) 23:15:43 ID:fAfWI5lo0
◆dxXqzZbxPYさん、投下お疲れさまでした。
運営側の心の底が見えてるようで見えない薄暗い会話が中々良いお話でした。
没文章に関しては、流石に不採用とさせていただきます。
これ以上ギミック増やしても拾いきれるか分からない上に無理に増やしても仕方ないと考えたからです。
なので、修正前の物を採用とさせていただきます。

793 ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:37:19 ID:DFizB86s0
投下します

794不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:38:29 ID:DFizB86s0
 家族とは何かと問われ、帰ってくる答えは個人によって変わってくるはずだ。
 
 ルルーシュ・ランペルージにとっては『かけがえのないもの、あるいは私の道を阻む敵』。前者に該当するのは実妹のナナリー・ランペルージのみだろう。

 神戸しおにとっては『私を解き放ってくれたものであり、私が選ばなかったもの』。家族と愛を天秤にかけ、後者を選んだのが彼女である。

 覇世川左虎にとっては『継ぐべき二つの意志であり、意志を託した者』。二人の父の魂を、死の間際に弟に託して彼はここに居る。

 「じゃあ、貴方にとっては?」
 マイ=ラッセルハートの心の中、マイの持つ指輪に宿る意志『ツィベタ=コオリスカヤ』は、雪の降る孤児院で呟いた。
 心象風景というべき景色だが、これはあくまで心遺物が見せるツィベタの記憶の残滓だ。
 孤児院から巣立った外の世界で摩耗し疲弊し潰れ、娘を残して死んだ一人の女の無垢なる楽園(アマラリルク)。
 だが、この場でこの女のことを語る意味もなければ余白もない。
 
 肝心なのは、支給品に宿る意志ではなく、使用する参加者(プレイヤー)のこと。
 マイ=ラッセルハート。
 幼少の折に家族を喪い、死の運命を覆す巻戻士(ヒーロー)に救われなかった女。

 ――家族とは、何か。
 喉元まで出かかった問いかけに口をつぐみ、ツィベタは孤児院の扉を開く。
 扉を開く。噴き出した火の粉と熱風が、ツィベタの髪をわずかに焼いた。 
 
「聞くまでもないのでしょうね。
 ・・・
 あなたの中に燃え続てている、この光景が全ての答え。」
 ツィベタの視界の先、ツィベタの記憶の奥底に残り続けていたマイ自身の心象風景。
 孤児院の中に広がるとは思えない、巨大なビルを思わせる吹き抜けた建造物。
 その全てが、炎と黒煙に包まれていた。
 無数の火柱が立ち上り、上階に溜まった黒煙のせいで景色は曇天のように暗い。
 地面に散らばったガラスが足を裂き、火のついた空気が喉と目を焼く。生存確率ゼロパーセントの地獄。
 
 ツィベタはマイ=ラッセルハートの記憶から、この光景を知っている。
 2068年8月1日。
 マイ=ラッセルハートの命を奪うはずだった、インベントビル爆発火災。
 彼女はその火災を生還した。同じく救われた397名と同じく。巻戻士(ヒーロー)に救われて。

「でもそのヒーローは、貴方の両親だけは救わなかった。」
 吹き抜けたフロントの中央。最も目立つ場所に並ぶひときわ大きな火柱を前にツィベタは呟いた。
 ぱちぱちと油が弾け焼けた匂いが乾いた空気に漂っている。
 火柱のの中では人型の何かが動き続け。口も喉の焼き切れているのに身を焦がす苦痛からくぐもった悲鳴を絶えず響かせていた。

 言葉を失うツィベタだったが、その耳にガタリと崩れたような音が届いた。
 振り替えるとさっきまで燃えていた小さな火柱が崩れ、その中で燃えていた物の姿が露になる。
 無数の懐中時計を継ぎ合せた等身大の人形だった。無数に燃え上がる火柱は全て同じものが燃えているだろう。
 最も大きく燃え上がる、悲鳴が響く2つの火柱――救われなかった2人の炎を除いては。
 
 「私が言える言葉じゃないけれど。
 貴方のご両親は、こんなものを遺したくはなかったはずよ。」
 十年以上経ってもなお、マイ=ラッセルハートの中で燃え続ける炎。
 それは彼女の砕けた心の象徴であり、命を選ぶ者への恩讐の炎。
 マイ=ラッセルハートの身を焦がし、愛を喪った彼女を突き動かす。
 あるいはそれはルルーシュ・ランペルージや神戸しおと同質のものかもしれない。
 
 1人の人の親として娘にそのようなものを遺してしまった悲劇にツィベタは悲壮な目を向け呟いた。
 その眼もその言葉も誰に届くものではないと知りながら。
 
 家族とは何か。
 
 それは愛すべきものである。
 それは失ってしまった者である。
 それは英雄が救わなかった者である。
 
 それは、マイ=ラッセルハートが世界を否定する原罪となったものである。

 家族を否定した不平等な世界を壊すために進む彼女の時間は。
 ひょっとしたら、家族が死んだ瞬間から止まったままかもしれなかった。

795不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:39:28 ID:DFizB86s0
 ◇◆◇

 はっきりと言ってしまえばこの会場において銃は弱い。
 ヒースクリフらが用意した箱庭についてザラサリキエルはそう結論付けた。
 
 素の状態で弾丸程度ものともしない参加者は10や20ではきかない上に、仮面ライダーや起動キーが大量に支給され参加者の防御力の平均値は大幅に底上げされている。
 キョウリュウジャーのガブリボルバーのような特殊な武器ならまだしも、キヴォトスで市販されている銃火器が脅威となる参加者は実力下位の3割がせいぜいだろう。
 
「こいつもその枠、のはずなんだがな。」
 目の前の敵、マイ=ラッセルハートは生身である。
 特異な異能を持つわけでも、肉体を極限まで高めているわけでもない。
 蜘蛛の足にも見える腰から生やした4本の氷柱は別として、その姿は白衣を纏い薄ら笑いを浮かべるただの女だ。
 
 銃口を向け、引き金を引く。ノワルの使い魔を撃滅した時の『権能』さえ必要がない。
 ただの人間なら致命傷になりうるその動作に、ほんの10mほどしか離れていないマイは舌打ちを返した。
  
「もしかしてリキエルっち、まだアタシを舐めてるわけ?」
 苛立たし気に指を鳴らす。
 雪の結晶のような指輪を中心に冷気が漏れ、マイとザラサリキエルの間に生えた分厚い氷の壁が銃弾を閉じ込め勢いを殺す。
 仮面ライダーやモビルスーツと違い、今のマイ=ラッセルハートだろうと銃弾が当たれば死ぬ。
 だが当たらない。だから今までザラサリキエルは彼女を殺せずにいた。

「舐めているわけではないんだがな。だが覇世川左虎ならともかく貴様の動体視力で銃弾を見切り防ぐなど不可能なはずだ。
 貴様、未来を見ているな。『誓約女君(レジーナゲッシュ)』に飽き足らず『覇瞳皇帝(カイザーインサイト)』の権能も再現したか。盗人猛々しいなクソハッカー。」
「どうだろうねぇ。アンタが射撃下手(クソエイム)なだけかもしれないよ!リキエルっち!」
「減らず口を叩くなパクリ女!!」
 氷壁の多くで屈折する笑みに向けて駆けだすザラサリキエル。
 マイの挙動はそれより早い。
 再度指輪が光ると同時に、ザラサリキエルとマイを遮る氷の壁が生き物のようにもぞりと蠢いた。
 
「えーと、なんだっけ。『編集(エディット)。 迷宮女王(クイーンラビリンス)。』
 いや、こう言っちゃおうか。『オブジェクト変更』!!」
 迷宮女王(クイーンラビリンス)の権能を受け、ザラサリキエルの目の前で平坦な氷壁を埋め尽くすようにびっしりと棘が生え、その1つ1つが触手のように延びザラサリキエルに襲い掛かった。
 キヴォトス人からさらに強化された動体視力をもって、ザラサリキエルはその正体を見極める。
 先端に楔のついた氷の鎖だ。芸術品のように精巧な作りをしていたのがザラサリキエルの癪に障った。
 
「貴様っ……また私から簒奪した権能で!!」
「取られたくなきゃセキュリティかけときなよ!」
「どの口が!」
 悪びれない態度に舌打ちを返し、蔦のようにとびかかる氷の鎖を体をひねり躱していく。いつの間にか周囲の道路はスケートリンクのように氷で覆われ、地面から生える鎖は20を軽く超えている。
 その全てに、オレンジ色のノイズが掛かったことをザラサリキエルは見逃さなかった。
 そのノイズは、必中を確定させる女君の命令。

「『乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)』!!」
「ちっ……『劣化複製(デッドコピー):誓約女君(レジーナゲッシュ)』!!」
 絶対攻撃の権能を受けた鎖を、絶対防御の権能で受ける。
 ノイズとともに蛇のように鎌首もたげ真っ直ぐに突き刺さる鎖を、体との交差する場所にノイズを走らせ透かす。
 本来なら自動(オート)で動く権能も、相手が同じ能力を使えるとなればその精度は8割減だ。相殺されていると言っていい。
 視覚や感覚を駆使して細部の攻撃を透かしながら自発的(リモート)で権能を動かす。マクロを組んで行う仕事をそろばんで行うような過酷な演算に、脳が糖分を求め悲鳴を上げていた。
 躱し、透かし、反らす。鎧越しに肌を掠める冷気を前に、ザラサリキエルはふと疑問を抱いた。

796不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:40:26 ID:DFizB86s0
(七冠の権能――レジェンド・オブ・アストルムの"権能"は、元を辿れば園上矛依未の超能力を電脳空間に落とし込んだものだ。
 その技術は同時代の物とは一線を画す。それを奴は2つ……いや、奴の反応速度を見るに『覇瞳皇帝』の権能も使えると見ていいだろう。
 その権能を劣化した再現品とはいえ――あの程度の装備で処理できるものか?)
 
 マイ=ラッセルハートの演算機構は、マイ自身の脳を除けば氷に閉ざされたカッシーン二機の電子頭脳だ。
 マイ=ラッセルハートとは異なる世界の2068年。時の魔王に仕える機械兵士の頭脳はザラサリキエルから考えても収集な部類である。
 レジェンド・オブ・アストルムよりは2世代ほど未来であるとはいえ、ただの戦闘用アンドロイドの頭脳で複雑な超能力の再現が可能だろうか。
 
 不可能だ。権能を与えられたザラサリキエルは確信する。
 天才が生み出した架空世界の特権、そのの難易度は同時代の技術より1つ抜けている。生中なアンドロイド程度で処理しきれるものではない。
 実用に耐えうるレベルに劣化させて一機で1つ。それがせいぜいだろう。
 
(そのレベルに劣化させているのであれば、私の権能と相殺するような真似は出来ないはずだ。そもそも既に3つの権能を起動していることとも矛盾する。
 となればあの2体のこれ見よがしなカッシーンはブラフ……ではないにせよ、サブの演算機の可能性が高い。)

 ならば――。そう思考を巡らせ、ザラサリキエルは手に持ったSIG516を投げ捨てた。
 未来予測ができる上に氷壁や乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)で対処可能な武器では意味がない。
 血に飢えた蛇のように迫る鎖を交わし、蛇腔病院の駐車場に紫紺の鎧は足をつける。ここまではマイの凍結は及んでいない。
 
「『劣化複製(デッドコピー):迷宮女王(クイーンラビリンス)』」
 なおも迫る鎖が、ザラサリキエルの出現させたオブジェクトを前に粉々に砕け散る。
 地面からせりあがったコンクリートでできたタール色の防壁だった。
 マイが作った氷壁とは違う。ザラサリキエルを中心に360度ぐるりと囲み、横から鎖で攻め入るのは不可能だ。
 すぐさま防壁を『オブジェクト変更』させての攻撃を警戒し身構えるマイだが、どれだけ時間がたっても防壁は身じろぎ1つおこさない。

(壁のコンクリを武器に変える。あるいはノワルとの戦いでやったように銃火器を生成して一斉掃射かな。
 いや、アタシのような再現じゃなく本物の『オブジェクト変更』なら、材質も範囲も思いのままに変えられる。そうじゃなくてもワープ能力で逃げている可能性も。)
 マイ=ラッセルハートはシェフィの記憶を覗き、ザラサリキエルの権能を記憶として獲得した。
 故に知っている。七人の天才の持つ権能(チート)はどれをとっても汎用性・対応力に極めて優れていることを。
 ヒースクリフが帝国が冠する48の超兵器や五色の英雄たちが従えた50を超えるユニバースロボと同等に、五道化の権能とするだけのものだということを。

 「……『覇瞳天星』」
 ザラサリキエルが有する無数の手札を前に、マイは未来を見ることを選ぶ。
 周囲の空間全てをマイの持つ『演算機』が情報として捕らえ、防壁の中の存在が次に行う行動を導き出す。
 その負荷はわずかながらマイ自身にも伝わってくる。マイが生み出す氷はツィベタ・コオリスカヤの力で変質してはいるが、元はマイ自身の『心の力』である。

797不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:41:11 ID:DFizB86s0

 (まったく、これをゲームとはいえ世界規模でやってのける本物の七冠には恐れ入るよ。
 特にこの『未来演算』。脳が3つは無いと処理しきれないでしょこんな情報!『覇瞳皇帝』ってのはバケモノか何かかな!)
 
 実のところマイ=ラッセルハートが編集で得た権能は、どこまで行っても再現品だ。同等の精度とは言い難い。
 覇瞳皇帝の権能による未来演算も、世界全てをデータとして閲覧できる七冠のそれより観測できる範囲は狭い。
 それでも『演算機』なしで行えば知恵熱の1つでも出でいただろう。
 脳と情報を扱うプロフェッショナルであるマイからしても、オリジナルの『覇瞳皇帝』の情報処理能力は尋常ではない。七冠と呼ばれる天才が殺し合いに居ないことにマイは心底安堵していた。
 
 (とはいえアタシが見える・想定できる範囲の情報は予測演算に組み込める!乱戦ならともかく1対1なら行動を読むくらいできるはず!)
 目を凝らし。耳を澄まし。肌で感じ。周囲を掴む。    ・・・・
 そうして演算した『覇瞳天星』に変化が起きるのは、今から15秒後のこと。
 
 コンクリートの上から、ハンドボールほどの何かが投げ込まれる。
 黒い筒のような何かは、マイがその形状を思い出すのと、筒が光を放つのに時間差が無かった。 

「閃光弾(スタングレネード)ッ!」
 正式名称 XM84
 非致死兵器と呼ばれる分類だが、下手な銃火器や爆弾よりよほど今のマイには効果的だ。
『武装生成(アームズクリエイション)』により生み出された190デシベルの爆発音と100万カンデラ以上の閃光が、マイの目と耳を埋め尽くした。

 ◆
 
「つぐづく己の甘さを痛感するよ。
 貴様程度の三下を始末するのに、こんな小細工が必要になるとはな。
 一度の放送を生き延びたプレイヤーは、どいつもこいつも一筋縄ではいかないな。」
 閃光と爆音が止んだ中、コンクリートの防壁を解除しザラサリキエルはマイへと歩み寄る。
 既に氷の鎖どころか見える範囲の氷は全て溶け消え、そのど真ん中でマイ=ラッセルハートはうつぶせに倒れ伏していた。
 
「凶星病理ほどの派手さはないが、故にこそ七冠の権能は扱う者の才覚が問われる。
 ノワルといいお前といい、いい経験になったよ。その点だけは感謝しよう。」
 アスファルトを踏みしめ歩くザラサリキエルの右腕に、漆黒の槍が生成される。
 グランシャリオを模した紫紺の鎧と相まって、歴戦の騎士のようにその武器はザラサリキエル腕に馴染んでいた。

 マイの傍まで歩み寄ると、氷を維持できなくなったのかカッシーンの残骸がマイの周囲に転がっている。
 四肢を捥がれ、喉元にも深々と傷がある。こうなれば動くことも語ることもままならず、ただ演算するためだけの部品でしかない。
 金色の金属を蹴り飛ばすと、カランと軽い音と共にカッシーンは転がっていく。空き缶を蹴ったような気分である。

「やはりこの程度の連中で、権能の完全再現など不可能だ。
 何らかの演算機を持っていることは確実だろうが……まあ、殺してから考えるか。」
 
 死告邪眼のザラサリキエルはNPCモンスターである。
 柊シノアや坂柳有栖のような例外を除き参加者を殺すことを至上命題としている。運営直下の五道化とあらばなおさらだ。
 マイ=ラッセルハートを殺すことに何のためらいもない。
 槍の先端にオレンジ色のノイズが走る。
 うつぶせに倒れ伏し、身動き一つしない相手だろうと死告邪眼のザラサリキエルは手を抜かない。
 絶対攻撃の権能を纏った槍が振り下ろされ、マイ=ラッセルハートの心臓部を貫いた。

 パリンという軽い音と共に、絶対攻撃の槍がアスファルトに突き刺さる。
 力なく両腕を垂らしモズの早贄のような様でわずかに浮き上った骸を前に、ザラサリキエルが抱いたのは達成感ではなく違和感だった。

「……妙だな。手ごたえが無さすぎる。」
 心臓を貫いた一撃はあまりに容易かった。軽かった。
 マイ=ラッセルハートの死体は一滴の血も流さず、一切の反射も示していない。
 死体の指先からぽたぽたと垂れ落ちているのは、無色透明の液体だ。その事実を前に不快な想像が頭によぎる。
 これではまるで、目の前の女がただの氷の彫像か何かのような――。

「アタシの神殺し(ディーサイド)は、4つの腕(アーム)に伝説の武芸者の記憶を編集(エディット)し、自在に動かす。」

 声が聞こえた。目の前の女から。

798不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:42:36 ID:DFizB86s0
血も流れず、息もしておらず、心臓を貫かれた女が喋る。
 衛藤可奈美や黒崎一護のように死者が活動する例はこの会場ではいくつも確認されているが、そのどれとも経路が異なる。

「でもその技量を十全に発揮するには、持ち主に合わせた腕(アーム)のカスタマイズが必須になる。
 ツィベタっちの氷と『オブジェクト変更』があればここはどうにかなるけれど、やっぱりネックなのは記憶の保存。
 『覇瞳皇帝』の劣化(デッドコピー)だけでも人が扱うには無茶な権能(スキル)だ。アタシの脳以外の記憶を保存するユニットが必要だった。」
「そのためのカッシーンとでもいうつもりか?
 だが、いかにあの機械が2068年の魔王が配下だとしても、権能を処理するのは出来て1つ、それも私のようなゲーム全般に干渉できるものではなくなるはずだ。」
「大正解。bonne réponse(ボン・レスポンス)。
 アタシの権能が影響を及ぼせるのは、アタシ自身かアタシの所有物がせいぜい。
 跳躍王(ワープ)や変貌大妃(変身)みたいな演算でどうにもならないものだって、アタシが使うのは難しい。
 でも逆に言えば、心遺物(メイドインハート)の氷と演算で再現できるものならアタシは自由に使えるんだよん。」
 
 武器も作れる。絶対攻撃も付与できる。未来だって演算できる。
 たとえ自分自身の複製だろうと、作る手段はマイ=ラッセルハートの手の中にあった。
 
「……そういうことか。
 己を模した氷像を『オブジェクト変更』で生みだし、変貌大妃(メタモルレグナント)の分身で上書きしたのか!」
「『ミラーミラー』でいいのかな。シェフィっちの記憶じゃここまで詳細には読めなくてね。」

 変貌大妃(メタモルレグナント)。その権能は『変身』と『コピー』。
 自分自身の複製を生み出すことなど、彼女にとっては造作もない。
 となればその権能を与えられたザラサリキエルは元より、その記憶から権能を再現しているマイにだって同じことはできる。
 1つの疑問が解けたとはいえ、ザラサリキエルの頭にはさらなる疑問が浮かぶ。
 これでマイ=ラッセルハートの使える権能は4つになる。いよいよもってカッシーン2台で賄える情報量ではなくなってくる。

「やはり持っているんだな、カッシーンとは比にならない本命の演算機を!」
 分身体に突き刺さった槍を強引に引き抜き、マイ=ラッセルハートの姿をした氷像を蹴り飛ばす。
 ガラスが砕けるような軽快な音と共に女の死体が破片となって飛び散ってもなお、ザラサリキエルの気は晴れない。
 演算機の心当たりなどまるでなかった。
 彼女の知る支給品の中で、そのようなことが可能なアイテムは蛮野天十郎の宿るタブレットくらいだが、蛮野天十郎であればマイ=ラッセルハートなどという我の強い参加者と協調するとは思えない。
 自分の想定していない何かが起きている。その事実がザラサリキエルの神経を逆撫でし続ける。
 
「……まあいい。どのような道具だろうと貴様の本体ごと破壊するだけだ。」
「何イラついてるのか知らないけどさ、アタシは大したことなんてしてないよ。」
 アスファルトを転がるマイ=ラッセルハートの分身はもはや頭部を残すのみだ。
 ころころと煤け、熱を浴びて体積と縮む女の顔と目が合った。
 笑っていた。
 何かを成し遂げたかのように晴れ晴れとした笑いだった。

「ただ、マイクで言っただけだよ。『スパコンになれ。』ってね。」
 
 その言葉を最後にマイの分身は色を喪い、シャーベット状の塊となってザラサリキエルの手足に纏わりついた。
 分身はマイ=ラッセルハートが生み出した氷。すなわち『オブジェクト変更』にていかようにも操作できる。
 紫紺の鎧ごと手足の動きを封じられ。レプリカの装甲が急速に冷え鈍く嫌な音を立てる。
 
 ――しまった。油断した。
 ザラサリキエルが悔いる理由は動きを塞がれたからでも、鎧が劣化したからでもない。
 キヴォトス人の肉体の上で強化が施されているザラサリキエルなら、この程度の拘束は鎧の劣化を考慮しても数秒立たずに破壊できる。
 だがこの場は重畳跋扈する殺し合い。
 数秒の隙は致命的だと、ザラサリキエルも知っている。

「ありがとう。分身の無駄話に付き合ってくれて。
 おかげで閃光で潰れた目や耳も、すっかりもどったよ。」
 
 背後から聞こえる耳障りな声に、ザラサリキエルは振り返る。
 腰から生やした蜘蛛の足のようなパーツ。左右後部にあるその部位から勢いよく氷を生成しマイ=ラッセルハートがザラサリキエルめがけ飛び掛かる。
 走るよりもはるかに速い勢いの中、はためく白衣に何かがくっついているのが見えた。

799不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:43:30 ID:DFizB86s0
氷によって白衣に張り付いた、大判の文庫本ほどの緑色をした直方体。
 そのアイテムの名を――オコノミボックスという。
 四角い道具であればあらゆる機能を持たせられる。
 テレビでも、レコードプレイヤーでも、ストーブにでも、クーラーにでも――そして当然、演算機にだってなれる。

 「22世紀の……ひみつ道具!」
「だから言ったでしょ。2033年の技術なんて中古品(レトロゲー)だって!
 22世紀製のスパコンと2068年の機械兵なら、4つや5つ演算くらいできて当然なんだよん!」
 机に置けるサイズのスパコンは2025年の時点で存在する。
 そこから70年も先、それも魔王が支配する荒廃した未来ではなく自立型ロボットが貧乏家族でさえ所有できるほど技術が進歩した未来なら、スパコンの大きさと演算能力をとっても天才の権能を演算することは難しい話ではない。

「じゃあ種明かしも出来たところで。さよならだよリキエルっち!」
 右腕を動かし、空中を引っ搔くように振り下ろす。
 それが無意味な動作ではないことを、ザラサリキエルの卓越した動体視力は捕らえていた。

 氷でできた極細の糸。
 それがマイ=ラッセルハートの右腕から伸びていた彼女の武器の正体だった。
 マイの指の動きと合わせ糸が空気中で揺らめくたびに、小さな氷の結晶が次々と生まれていく。
 これはマイ=ラッセルハートの使える、どの権能とも一致しない。
 だがザラサリキエルは知っている。それはマイと共にいた男の技だ。
 
「覇世川左虎の凍剣執刀(とうけんしっとう)……」
 空気を揺らし凍てつかせる糸の暗刃。天才の権能とはまた異なる、達人が有する技術(スキル)。
 氷の糸はザラサリキエルの紫紺の鎧に食い込んだと思えば、その装甲を裂きザラサリキエルの全身を絡めとっていく。
 本物のグランシャリオなだまだしも、ただのレプリカではこの暗刃は防げない。
 何よりもその鋭利な糸には――オレンジ色のノイズが掛かっていた。
 
「乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)そして凍剣執刀(とうけんしっとう)!!
 自分で言うのもなんだけど、いいコンボだと思わない?」
「きっ……さまぁ!!!」
 切断し氷結する糸に重なる絶対攻撃の権能。
 マイ=ラッセルハートの言う通り、2つの能力の相性はまさに抜群だった。
 声をあげ身をよじらせるが、無数の糸が意志を持つかのようにザラサリキエルの体に食い込んでいく。
 凍てついた鎧に身を守る機能はとうになく、ばらばらと音を立って氷の上に屑が積もる。
 そのたびに氷の糸はザラサリキエルの体に食い込み、その肉体を裂き始めていた。

 肘にかかる。とうに鎧は切断され手にした槍が音を立てて地面に落ちた。
 膝にかかる。氷に覆われた足が全く動かないまま、鋭利な痛みだけがザラサリキエルに伝わっていく。
 首にかかる。いかに最強のNPCとはいえ首を切断されれば死ぬ。
 
(回避――不能?
 撤退――不能?
 ギアスキャンセラー――駄目だ、既に肉体に届いている以上誓約女君(レジーナゲッシュ)の権能を消したところで意味はない!
 現在の出力でこの状況を打開するには――)
 敗北の2文字がよぎる。
 死の結末が目前に迫る。
 ノワルのような強者との戦いならいい。
 キリトのような英雄との戦いならいい。
 だが、目の前にいるのは強者でもなければ英雄でもない。
 復讐に呑まれた時空犯罪者。その程度の女に追い詰められるどころか既に負ける段階に来ている。

(私の切り札。……『カード』を使うか!
 いや、それでは遅い!起動するより早く私の頸が飛ぶ、であれば……) 
 懐にある『カード』へと伸びた手を止め、ザラサリキエルは唱える。

 「『劣化複製:幻境(ヴィジョンズ)……」
 「ッ!シャレにならないねそれは!!」
 ザラサリキエルの決断と同時に、マイ=ラッセルハートは己の肌が粟立つのを知覚していた。
 これまでザラサリキエルが使用していた権能とはまったく別種の何かがくる。
 何かを成し遂げるための技術(スキル)ではなく、何かを排除するための超常(スキル)。
 ザラサリキエルから権能の情報を得たマイは――その能力を知っている。

 それは、あらゆる恐怖を否定する女の純粋な感情。
 それは、現実世界にさえ干渉可能な惑星外の超常。
 電脳世界の特権などでは到底収まらない。文字通りの『超能力』。
 彼女のもう1つの切り札。最後にして最凶の七冠。その権能(チート)――否、異端(チート)。

800不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:46:16 ID:DFizB86s0
「竜(エンプ)……」
 詠唱は止まらない。
 ザラサリキエルの全身から赤い稲妻のようなエネルギーが迸る。冷却と損傷でボロボロになっていた首から下の装甲が、四肢を縛る氷の糸ごと弾けとんだ。
 鎧の下からはザラサリキエル本来の肉体――引き締まった女性の肉体が露出する。
 へその出たノースリーブインナーと、薄い紺色のパンツスタイル。ベルトには頭蓋骨を思わせる髑髏のマークが描かれている。
 それが誰の姿なのか、キヴォトス人の知識がないマイには知りようがないし。考える余裕もない。

「させないって……言ってるでしょうが!」
 右腕から伸ばした氷の糸をさらに伸ばし、マイ=ラッセルハートは両腕でザラサリキエルの頸を締め上げる。
 腰から生やした氷柱ももはやなく、周囲にはバチバチと音を立てながらカッシーンの残骸が無造作に転がる。カランという軽い音は2人の耳には届かない。

「アンタはここで殺す!そうじゃなきゃ……アタシの願いは叶わない!」
 ザラサリキエルが言っていた通り、マイ=ラッセルハートは参加者の中では明確に格下である。
 最上位の参加者を仮想敵と定めている五道化を単体で殺すなど本来なら不可能だ。
 その上、ザラサリキエルの射程圏内に入ると同時に、マイの武器である編集(エディット)も削除(デリート)も意味をなさなくなる。
 まさに天敵だ。ギアスキャンセラー本来の対象であるルルーシュ以上に相性が悪いといえた。

 覇世川左虎の髪刃を再現させた氷糸の強度は低いが、削れくだけるたびに生まれる氷が糸を復元し、ザラサリキエルの頸を断たんと形を変える。
 より鋭く、より冷たく、より強靭に。
 触れるだけで皮を剥ぎ取りそうな冷気を纏う糸が神秘の宿る表皮を突き破り、首から噴き出る緋色の水が冷気を受けて凍り付く。
 常人なら間違いなく致命傷。それでもマイは糸を握る力は弱まらず。むしろ確実に頸を断つまで話さないという覚悟が糸を通してザラサリキエルに伝わってくる。

 全ては、マイ=ラッセルハートの願いのため。
 平等な世界。命を区別されない世界。
 大好きな両親が死ななくてもよかった、あったかもしれない世界のために。
 
 マイ=ラッセルハートは、命を賭けて命を奪う。

 「后(レ)……」
 そこまで唱え、器官にまで届いた糸が詠唱を阻む。
 ガフッ。という溺れたような声を上げ、ザラサリキエルの口から血と空気の混ざった泡が零れる。
 喉から噴き出る赤い氷は肌を隠すほどにまで増えて、内側からザラサリキエルの喉を抉っていた。

 ――ザラサリキエルは間に合わない。
 ザラサリキエルとマイの思考が一致した。
 
 (こんなところで……こんなやつに……負ける?)
 ザラサリキエルは冥黒の五道化の中で、ヒースクリフの思想を最も強く受け継いでいる。
 ゲームとしてのバランスを重んじ、無秩序な道化の中で屈指の穏健派。
 しかしそれは、この殺し合いを最も”ゲームとして”観測していることを意味する。
 故にザラサリキエルは見誤った。
 マイ=ラッセルハートという復讐者が抱く願いの強さ。何を殺してでも生き延びようと望む生き汚なさ。
 ”命がけの戦い”に臨む者の、命を天秤にかけたことによる先の無い足掻きを。

(…………そうか。)
 もし『最後の七冠』の力を起動したのが10秒早ければ勝っていただろうが、そんなものは結果論だ。
 どこか納得したように、ザラサリキエルは己の終焉を受け入れる。
 力を緩めないまでも、マイも己の勝利を確信していた。
 
 もしここでザラサリキエルかマイのどちらかが『覇瞳皇帝』の未来予測を行っていれば何を見ていただろうか。
 ――少なくともマイ=ラッセルハートが死告邪眼のザラサリキエルに勝利する光景ではない。

 
 「『劣化複製:魔獣変化(ヘカトンケイル)』」
  
 マイが振り向き糸に寄せる力が緩んだその瞬間、背後から飛び込んだ大きな口が、氷の糸を残らず噛み砕いた。

801不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:48:43 ID:DFizB86s0
全身の力で糸を引いていたマイは、力の行き場を失い膝をつく。
 反対の方向で、ザラサリキエルはうつぶせのままアスファルトめがけて倒れ込んだ。
 ガリガリと音を立て糸をうまそうに飲み込んだその何か、白い犬のように見えたそれは、マイの目の前で煙のように溶け消えた。
 
「今のは……」
「これは自立型帝具……ということは……。」
「エルちゃんさぁ、真面目過ぎるんだよね。
 相手に合わせて理想的なボスキャラを……ってのはヒースクリフ様の理想だけど、そんなもの律儀に守ってるのエルちゃんだけだよ。
 ま、首チョンパされる寸前まで本気出さないとか真面目じゃなくてマヌケだよね。」

 獣のような唸り声と入れ替わり、落胆したような声が戦場の空気に溶け込んでいく。
 文字通り水を差した闖入者を前に、もはや戦いを続けようという熱気はこの場のどこにも残っていなかった。
 
「アンタは……」
 ちぎれた糸を手繰り寄せ、マイはその少女を睨んだ。
 長船女学園の制服を纏う刀使の姿をしているが、この女が刀使ではないことなどこの場の全員が知っていた。
 
 引きつったような表情を向けるマイの目の前で、少女はウインクをしながら両手を合わせた。
 謝っている動作なのにちっとも悪びれていないように見えるのは、少女が薄ら笑いを浮かべているからか。
 こめかみをひくつかせ、マイはその女の名を叫んだ。
 
「エケラレンキス!」
「ほんとーに悪いんだけどさぁ。
 その攻撃、ちょっと待ってくれないかな。」
 
 ◇◆◇
 
 ――なぜ、エケラレンキスがここに?

 ゆっくりと起き上がり、ザラサリキエルは突如現れた同僚の姿を見た。
 へらへらと感情の読めない笑みを浮かべているのは普段通りのふざけた態度だが。増援には違いない。
 べっとりと両手を赤く染めたままザラサリキエルは立ち上がり、悔し気に顔を歪めるマイへと視線を落とす。
 
「だがちょうどいい!この女は危険だ!
 私とお前で今のうちにゲームから排除……。」
「劣化複製:魔神顕現(デモンズエキス)」
 
 エケラレンキスが有する帝具が1つ。氷を操り世界を止める血液の帝具。
 その氷が女の――ザラサリキエルの全身を包み。ガッチガチに縛りあげていた。
 マイでさえ唖然と目を見開く中、ザラサリキエルは顔を歪ませ恨めし気に同僚を睨みつけた。
 
「何のつもりだ!貴様!」
「何のつもりだはこっちの台詞。
 どうみても致命傷でしょその傷。つまりここでの勝負はエルちゃんの負け。
 不意打ちだろうと奇策だろうと、参加者の勝利を後出しで無効なんてヒースクリフ様ならしないでしょ?」
「むぅ……。」
 フルフェイスメットの下にある喉元の傷は未だ顕在。喉の7割が深々と切り裂かれてもなお生きているのは、彼女が死体を元にしたNPCだからに他ならない。
 エケラレンキスの介入がなければ切断されていたことは明らかだ。
 ザラサリキエルとて全力を出していない――出せなかったともいえるし、出さなかったともいえる――ながらも、自身の敗北にいちゃもんをつけるような質ではなかった。

 黙りこくったザラサリキエルを冷ややかに見下ろし、エケラレンキスはマイへと向き直る。
 蛇腔病院の地下で出会った時の嘲笑ばかりの表情とは違う。期待以上の何かを見せてくれた相手を歓待するような、晴れやかで余裕のある笑みを浮かべていた。

「さてマイ=ラッセルハート。私の要求は1つ。
 エルちゃんを見逃してくれない?」
「……アンタがそんな仲間思いだったなんて意外だよ。」
「仲間思いィ?アハハハハハ!!
 アンタの口からそんな言葉が聞けるなんて、悪いジョークでしょ記憶破壊者(メモリースナッチャー)!
 ルルーシュの気持ちが分かるわぁ。端的に言って反吐が出る!」
 作り物のような鮮やかな笑顔を浮かべ、少女はからからと笑う。
 口汚く罵りながらも、その表情からマイに対する嫌悪感は読み取れない。
 道化というだけあって本心が見えない。根が真面目なザラサリキエルよりよほど厄介だとマイは思う。

「ま、こっちも中間管理職だからさぁ。ゲームがつまらなくなる展開は避けるように上から言われちゃうんだよねぇ。」 
「そんな下らない理由でアタシの邪魔してくれたわけ?」
 エケラレンキスが運営側である以上、その言葉はマイにも理解できた。左虎や小夜が聞けば激昂しそうな言い回しではあるが。
 だがマイからしてはそんな思惑はどうでもよく、自分の天敵を殺しうる絶好の機会を無下にされたことに憤りを感じていた。
 ”下らない”という言葉にエケラレンキスがむっと頬を膨らませたが、嫌味を返したりせず続けた。

802不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:49:24 ID:DFizB86s0
「ま、アンタの言い分も分かるよ。実際ヒースクリフ様や羂索様ならアンタのようなC級が起こす大番狂わせ(ジャイアントキリング)を嬉々として楽しむだろうしね。
 ただ、伝わるように言うなら――イベントスチルが未回収で終わっちゃうのはもったいないじゃん?」
「……はぁ?」
 ぽかんと口を開けるマイを尻目にエケラレンキスはザラサリキエルの傍にまで歩み寄ると、その頭に残った紫紺の兜を乱雑に投げ捨てた。
 晒されたザラサリキエルの素顔は目つきの鋭いシャープな印象の美しい少女だ。ノワルが気に入り嬉々として戦ったのも納得だと今更ながらマイは腑に落ちる。
 霞掛かった空のような薄い青紫の瞳だが、左目にだけ翼を広げ羽ばたく鳥ををひっくり返したような蒼い紋章が光る。
 さらさらと風に靡く濃紺の髪の上に、浮かぶ歪な光輪(ヘイロー)が一瞬だけ夜空に浮かぶ星のような形を浮かべた。
 その姿にマイ同じ光輪を浮かべた少女の姿を思い出す。

「……頭の輪っかから薄々予測はしてたけど、ホシノっちと同じキヴォトスの生徒か。趣味悪。」
「大正解♪まあこの女と縁があるのは”そっち”じゃないけどね。」
「そういうことね。五道化のアンタたちにも縁がある参加者がいるんだ。」
「理解が早くて助かるぅ♪」
 病院で左虎が出会った空蝉丸という男は、マイ達を襲った五道化こと激怒戦騎のドゴルドとは不俱戴天の間柄だという。
 他の五道化にとっても似たような関係がある参加者がいると考えるのは、考えてみればごく自然な話だ。
 むしろゲームとしての面白さを求めるのなら、どこの誰とも知らない他人を強敵に据えるよりよほど腑に落ちる。

「で?それをアタシが慮る理由はある?」
「ないね〜!うん、ない!
 アタシがアンタならキレると思うよ。今こうしてお話してくれて逆にありがとうって言いたいレベル!
 だから、こうするのさ!」
 大げさにぺろりと舌をだしたエケラレンキスだったが、そのまま右腕をザラサリキエルの側に向けた。
 全身を覆う氷を生み出したのはエケラレンキスだ、手を突っ込むたびに氷が砕け開いた穴を少女の細腕が伸びてゆく。
 
「何を……」
「じっとしててね〜。下手に動いたら殺しちゃうからさ!」
 困惑するザラサリキエルには耳を貸さず、しばらくゴソゴソと手を動かしていたエケラレンキスは、「ああ、あったあった」と満足げな顔で何かを取り出した。
 マイの眼には配線の剥き出しになった小さな黒い直方体に見える。マイの知識で最も近いものはプラスチック爆弾だろうか。

 「貴様!それは……」
 銃火器が格落ちの武器になるこの殺し合いでは価値がある道具には思えなかったが、ザラサリキエルにとっては違うらしかった。
 それが盗られたのがよほど許せなかったのか、抵抗を示し身を悶えさせる。
 氷で動かないまま虫のように足掻くさまは、いっそ哀れですらあった。

「いやぁ。こっちの都合で物言いしてるんだよ。
 勝者には報酬を。ゲームの基礎の基礎デスよ。エルちゃん♪」
 ヘラヘラとした口調ながら、切り捨てるようにエケラレンキスは言い放ち、歯噛みしながらもザラサリキエルは抵抗を止めた。
 既に反論する権利はないらしい。

「さて、マイ=ラッセルハート。
 仮にも五道化に膝をつかせた君にプレゼント。大事に使ってね♪」
 ぽいと黒い直方体を投げ捨てる。
 爆弾だとすればあまりに雑な扱いに「はぁ!?」と頓狂な叫びをあげるが、綺麗な軌道を描いたその直方体はマイの手元にすっぽりと収まった。

「何これ。」
「え?見て分かんない?爆弾だけど。」
 ぽかんと口を開けたエケラレンキスの顔の顔には「貴方は馬鹿なんですか」と書いてあるように思えてならない。
 舌打ちをしながら、マイは最も気になる質問を投げかけた。余計な会話をこの女と交わすつもりはもはや欠片もなかった。

803不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:50:15 ID:DFizB86s0
「そうじゃない。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 爆弾程度がこの殺し合いで何の役に立つのかって聞いてるの。」
「うーん。普通の爆弾ならアンタ程度の雑魚参加者を殺すくらいしかできないよね。」
「喧嘩売ってる?」
「買ったら死ぬのはアンタだよ。クロックハンズ。」
 へらへらとした軽口を浮かべていたが少女だったが、爆弾を指さし声色を変えた。
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「その爆弾は、五道化というNPCを倒したことによるドロップアイテム。
 神秘殺し。キヴォトスにおける禁忌が1つ。
 ――ヘイローを破壊する爆弾。」
「ヘイロー……。」

 ザラサリキエルを見る。額に浮かぶ歪な光輪を。
 頑強な肉体に『神秘』を内包し、概念的なレベルで”死”が希薄なキヴォトスの生徒。
 マイの手元にもたらされた爆弾は物理的な命ごとそうした超常を、悪意を持って奪い去る。
 神秘殺し。という言葉の仔細をマイは分からないが。この爆弾が壊すものが物理的なものではないことくらいは、想像するのは難しくない。
 
「――五道化から手に入るだけの価値はある代物ってことね。」
 ごくりと生唾を飲み込む。12時(爆弾マニア)に聞くまでもなく、この爆弾は”厄ネタ”だ。
 さっきまで軽かったはずの爆弾の重みが、マイの両手にずっしり伝わってくる。
 
「ご褒美はここまで、アタシはエルちゃんと話したいからアンタはどっか行ってほしいんだけど。
 こっちもこっちで、面倒なことが起きててさぁ。万が一でも盗み聞きされたら困るんだよね。」
 軽薄なしかし真剣みのある声色でエケラレンキスは指を鳴らす。
 瞬時にマイの足元に淡い光が広がった。エケラレンキスが姿を消した時と同じ、転移の能力だ。
 
「『劣化複製:次元方陣(シャンバラ)』
 エルちゃんに勝ったサービスとして好きなランドマークに飛ばしてやるから、30秒以内に選んでくれないかなぁ。」
「へぇ、太っ腹だね。
 一応聞くけどアンタが禁止エリアに飛ばしてアタシを殺さないって保証は?」
「ルルーシュならまだしも、アンタ程度にそんな狡い真似するほど落ちてると思ってるワケぇ?」
 嘲笑交じりの言葉は、正面切って戦えばマイにも勝てるという自信に満ちていた。
 マイにしてもルルーシュが戦力を広げている場所から離れたかったし、渡りに船には違いない。
 
「サービスついでに教えてやるけど、今のルルーシュからは逃げたほうがいい。
 シャルル・ジ・ブリタニアのこともあるし、あの反抗期皇帝サマはどう考えてもアンタを殺すだろうしね。」
「それこそアタシにとって知ったこっちゃないんだけど。
 それで、どうヤバいのかは教えてくれないの?」
「そこまで伝える義理がどこにあるのさ。気になるなら自分で調べたら?
 好奇心に殺されても文句が無いのなら、だけど。」
「じゃあやめとく。
 アタシは別にルルーシュに恨みや因縁があるわけじゃないし。出会ってすぐ殺してくるような暴君に喧嘩売る趣味はないよ。」
「ふーん。で、どこにすんの?決まらないならそれこそ禁止エリアに飛ばしてやるよ。残りじゅう〜びょお〜。」
 
 これ見よがしに急かすザラサリキエルに、マイはホットラインの地図を広げある一点を指さした。
 
「ならアタシは――――」

804不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:51:38 ID:DFizB86s0
◇◆◇

「役者だな。」
 マイのいなくなった駐車場で、責めるような視線をザラサリキエルは向ける。

「エルちゃんなんのことぉ?頭に血が上っておかしくなっちゃったぁ?
 あっ、クロックハンズにボコボコにされて血が足りないんだっけ!」 
「ルルーシュの危険度が上昇したことは分かるが、”何が”起きたかまではお前は知らないだろう。」
 バカバカしい挑発など無いかのように、冷淡にさえ思えるほど低く僅かにかすれた声が確信をもって投げかけられる。
 その言葉にエケラレンキスは、わずかに舌を出し悪びれた様子のない笑みを浮かべた。
 
「バレた?
 ま、邪魔者をはぐらかすにはちょうどいい情報だったでしょ。嘘は言ってないしね♪」
 ため息が自然と漏れたザラサリキエルをよそに、エケラレンキスはわずかに姿勢を正した。
 
「んで、ここからが本命の情報。クルーゼ様からの速報ね。ノワルが死んだ。」
「そうか。」
 勿体つけた割にその程度か、というのがザラサリキエルの本音だった。
 驚きが無いと言えば嘘になるが、アルジュナ・オルタやザラサリキエル自身との戦いで大きく消耗していた上、あの場には同格の実力者たるトランクスを初め多数の参加者がいた。
 束になって挑めばノワルであろうと倒せる可能性は低くはない。
 
「それが私の醜態を笑ってまで持ってきた報告か?
 サイヤ人の末裔がその気になれば疲弊した魔女を倒すのは自然だ。そもそも奴は死神代行どもどもノワル級を滅ぼすための参加者だろう。」
「そんな予定調和ならクルーゼ様は動かない。
 知ってるでしょ、参加者の生死の情報は私らだって放送までは分からない。ノワルの死だってただ倒れただけならこんな通達が下りてきたりはしないはず。」
 作り物のような笑みではない、真剣そのものの鋭い目つきでエケラレンキスは続けた。
 
「倒したのはルルーシュだよ。」
「……そう繋がるのか。面倒になったな。」
 トランクスがノワルを倒すだけなら話が速い。戦闘力こそ最強だが良くも悪くも予測がしやすい参加者だ。
 しかしルルーシュともなれば話は違う。
 明確に運営への敵対を宣言するだけならまだしも、放送施設の独占したことで会場への影響力は随一。
 NPCを多数従え、ギアスという異能を別にしても高い知能を最も活用できる参加者と言える。
 唯一の欠点は突出した暴力を持たないことだったが、ルルーシュがノワルを倒したということはその欠点を克服したということに他ならない。
 
「しかしクルーゼ様を疑うわけではないが、ノワルを倒せる布石はいくつも用意していたはずだろう。速報が下りてくるほどの事態か?」 
「分かってないなァ。
 詳細は分からないけど、ルルーシュの挙動はクルーゼ様も予想外の事態だった。
 憶測だけど全勢力をぶつけて命からがらでの勝利じゃない。余力どころかルルーシュ自身の強化につながるような”何か”を起こした。」
「そうたやすくそんなことが起こるか?」
「現にマイ=ラッセルハートは起こしたじゃん。記憶弄るしか能のない数合わせがエルちゃんをここまで追い詰めるとか誰が想像したよ。
 プレイヤーも馬鹿じゃない。支給品やソードスキル、心意システムも含めあいつらは何でも使う。悪用も外法もやりたい放題じゃん。
 マイ=ラッセルハートと同じことをルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが出来ないとは限らないし、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが出来ることを他の参加者が出来ないとも限らない。でしょ。」
「むぅ。」
 そう言われるとザラサリキエルは言い返せない。納得と共にため息が自然と零れ、諦観とともに空を見上げた。
 大番狂わせだけではない、”何か”は間違いなく起きていた。
 放送を待たずして五道化に情報が下りるほどの、何かが。

805不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:52:52 ID:DFizB86s0
「ま、これに懲りたら舐めプするのは止めることだね。」
 エケラレンキスが指を鳴らす。
 帝具によって生み出された氷が砕け、ザラサリキエルの体はようやく自由を取り戻した。
 さっきまで氷の覆われたからだがぐっしょりと濡れていたが、喉元だけは赤く染まる。マイとの戦いによる傷だった。
 
「……全くだ。返す言葉もない。」
 自戒とともに、ザラサリキエルは喉元の傷に手を翳す。その動作で深々と入った喉物の傷が一瞬で復元された。
 しかしこれは傷が治っているわけでも体力が戻っているわけでもない。
『迷宮女王(クイーンラビリンス)』の権能により固まった血液を操作し傷を塞ぐことで、見た目だけは正常に取り繕っただけだ。
 ノワルとマイの連戦によりザラサリキエルの消耗は著しいものがあった。
 手を握り開くを繰り返す。そんな単純な動作からでも、本人はもとよりエケラレンキスからも消耗が読み取れた。

「出力今どのくらい?」
「ノワルとの戦いも含めれば全快時の半分といったところだ。
 流石に少し休む。その後は私の行くべきところですべき役目を果たすさ。」
「一応聞いてあげるけど。役目って何するつもりデスか♪」
 悪戯っぽく尋ねる姿に、ザラサリキエルは呆れたように肩をすくめた。
 エケラレンキスはザラサリキエルの”肉体”を知っている。分かり切った問いだった。
      ・・・・
「白々しい。聖園ミカのところに決まっている。
 お前の言い方を借りるなら、イベントスチルの回収に向かう。それもまた道化の仕事だろう。」
「さっすがエルちゃん!話がはや〜い。
 じゃ、あとは今まで通り。ゲームの円滑な運営のために頑張ろうね♪」
 
 その言葉を最後に、2人の道化は与えられた権能を行使する。
 空間転移。
 運営としての特権でどこまでも自由に動く道化たちは、未だ顕在だ。

「『劣化複製:次元方陣(シャンバラ)』
 じゃあ頑張ってネ、”錠前サオリ”。」
 
「『劣化複製:跳躍王(キングリープ)』
 貴様もな、”古波蔵エレン”。」

 互いに名乗り逢うは、素体となった少女たちの名。
 それは悪趣味なジョークであると同時に、互いの目的を確認するための行為でもあった。
 少女達と縁ある者たちが出会うことは、愉快な殺し合い(ゲーム)の刺激として、期待された脚本(シナリオ)の1つだ。

 激怒戦騎は雷鳴の勇者と。
 死告邪眼は純粋なお姫様と。
 魔獣装甲は英雄たる刀使と
 凶星病理は■■■■■■■と。
 ■■■■は――――――

 その全てが果たされるかは、羂索の言を用いれば『手から離れた混沌』の導くまま。誰も知らない物語。
 
 1つ確約できることがあるならば。
 
 道化の顔を知る者にとって、試練は未だ、始まってすらいないということだ。

 【?????/?????/9月2日午後14時30分】

 【死告邪眼のザラサリキエル】
状態:ダメージ(大) 自省(大) 首の裂傷(復元済み)
肉体:錠前サオリ@ブルーアーカイブ
装備:
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
ドロップアイテム:ヘイロー破壊爆弾@ブルーアーカイブ(マイ=ラッセルハートに強制譲渡済み)
道具:多数の銃火器@???
   ???のカード×?@???
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:守護者としての役割を全うする。
02:0005bとマジアアズールは……まあ仕方ないか
03:魔獣装甲の奴、雑な仕事しやがって。
04:誰がエルちゃんだ、誰が
05:凶星病理もだが、アイツらが遊びすぎてないだろうな。
06:流石は闇檻 一筋縄ではいかないが……あれほどの顔ぶれが揃うとはな
07:参加者を侮りすぎていたか。まったく、ルルーシュじゃないがイレギュラー続きには頭を抱えるな
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※ヘイローを有しています。銃撃などに足して異様なタフネスを発揮します。
※肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※死告邪眼はギアスキャンセラーをベースにした彼女の固有能力です。
 発動すると有効範囲内の異能力を無効化できますが、その有効範囲に常に自分が含まれます。
※アストルムの七冠の権能@プリンセスコネクト!Re:DIVEを模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

806不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:55:05 ID:DFizB86s0
【?????/?????/9月2日午後14時30分】

 【魔獣装甲のエケラレンキス】
状態:健康
肉体:古波蔵エレン@刀使ノ巫女
装備:魔獣装甲エケラレンキス
   小烏丸@刀使ノ巫女
   ???の魔戒剣@牙狼<GARO>シリーズ
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
ドロップアイテム:????@????
道具:神炎皇ウリア@遊戯王GX 幻魔皇ラビエル@遊戯王GX 五道化専用ホットライン@オリジナル
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:思うままに楽しむ。
02:エルちゃんの連れてった二人もあの辺に居るだろうし遊んであげよっかな
03:エルちゃんったら、真面目が過ぎるんだから♪
04:特級呪霊に柊の鬼子……あのクラスの参加者はもっとガンガン暴れてほしんだけどなぁ
05:コルコルも色々考えてるんだねぇ。こっちも好きにやるけど
06:これからどうしよっかなぁ。可奈美ちゃんをネタに薫ちゃんを弄るかそれとも・・・
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※刀使としての能力を概ね高い水準で発揮できます。
※肉体が女性ですが両腕に魔戒騎士の遺骨を埋め込まれているので魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器は使えます。
※魔獣装甲は魔戒の鎧を召喚出来ない彼女の為の固有武装です。
 冴島鋼牙シリーズに登場した魔獣装甲コダマ同様自由に脱着できます。
※帝具@アカメが斬る!の能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。
 
 ◇◆◇

 彼女が転移先に選んだのは、会場の南東にあるオシリスレッド寮だった。
 寮とある以上休息できる場所だろうし、端にあることから合流を目的にするような参加者がとどまってはいないと踏んだことが理由だった。
 病院からごたごた続きのマイ=ラッセルハートには、わずかでも休む時間が必要だった。

 「ヘイロー破壊爆弾。か。」
 木造のベッドに腰を下ろし、手渡された爆弾を眺める。
 神秘を殺す爆弾と銘打たれてはいるが、情報を見る限りその効果範囲はかなり広い。
 ザラサリキエルやホシノのようなヘイロー持ちの少女だけではない。魔力や超能力を持つ人物にだって有効。半面そうした異能の無い人間に対しては通常の爆弾未満の効果しかないらしい。

「つまりノワルやルルーシュ、五道化は殺せるけれど、アタシや左虎っちには効かないのか。」
 強力だが使いどころが難しい武器だ。誰に異能が宿っているかなど、マイが知る知識は乏しい。
 有効に使うためには、他の参加者の情報が必要だ。
 
「ま、使いどころは後で考えよっか。」
 爆弾をリュックにしまい、白衣のままごろりとベッドに寝転んだ。
 殺し合いの只中に無防備に眠るつもりもなかったが、わずかでも体を休めたい。
 なにせこの殺し合いは長丁場だ。マイのようなソロプレイヤーにとって休息時間は値千金の価値がある。

「こっからどうするかなぁ。」
 興奮と熱気が収まっていくなか、ぽろりと零れる。
 今後のプランは全くと言って決まっていない。それを考える時間も必要だった。

 さしあたって確定していることは1つ。
 マイ=ラッセルハートがこの殺し合いから抜けるという択は、ありえないということだけだ。

807不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/29(火) 23:55:21 ID:DFizB86s0
 【エリアI-12/オシリスレッド寮/9月2日午後14時30分】

 【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:疲労(大) 小鳥遊ホシノへの興味(中) 神戸しおへの興味(中) ルルーシュへの警戒(大)
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士 オコノミボックス@ドラえもん ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
   カッシーンの残骸×2@仮面ライダージオウ ヘイロー破壊爆弾@ブルーアーカイブ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:なんだって利用してアタシは勝つよ
02:タイムマシンの使用は慎重に。
  削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。
  その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
  どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
08:ツィベタっちの言いたいことは分かる。
  それでもアタシは――。
09:ルルーシュには関わりたくないな。会ったら殺されるし。

参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『鵺の陰陽師』の世界についてのある程度の知識を得ました。
※ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-は意志持ち支給品ですが、夢の中など特定の状況可でしか会話が出来ません。
※冥黒の五道化が必要なほど強力な参加者が5人いるのではないかと考えています。
※22世紀のスーパーコンピューターに変化させたオコノミボックスとカッシーンの残骸にザラサリキエルの権能を付与することで能力を再現しています。
 現在は『オブジェクト変更』『乱数聖域』『覇瞳天星』『氷の像を用いた分身の作成』を限定的に使用できます
 デメリットなどにつきましては後続の書き手様にお任せします。

808不可逆廃棄物 マイ ◆kLJfcedqlU:2025/07/30(水) 00:00:36 ID:Ex2lWVtY0
【ドロップ品紹介】

ヘイロー破壊爆弾@ブルーアーカイブ
 
 死告邪眼のザラサリキエルを討伐する際に手に入るドロップアイテム
 厳密には『ヘイローを破壊する爆弾』だが上記の名称で登録されている

 見た目は黒いプラスチック爆弾のようだが、神秘をもつ生徒の肉体も神秘も破壊できるというとんでもない作品
 本ロワにおいて神秘のみならずあらゆる魔術・異能の類に有効であり。
 元々魔法や超能力を扱えたり魔力が体に巡っている存在には致死的な効果を及ぼす反面、超常に縁がない人物への効果は非常に薄い。
 ソードスキル持ちに対する効果は現状不明

 完全なワンオペ品であり、現在がマイ=ラッセルハートが所有している
 そのため今のザラサリキエルを倒しても新たにドロップはしない…多分

809 ◆kLJfcedqlU:2025/07/30(水) 00:01:57 ID:Ex2lWVtY0
投下終了します。
いくつかの点につきまして◆Drj5wz7hS2にご確認いただいております。この場を借りてお礼申し上げます。

810 ◆kLJfcedqlU:2025/07/30(水) 00:09:07 ID:Ex2lWVtY0
立風館ソウジ、キズナブラック、柊真昼、亀井美嘉、冥黒うてな、激怒戦騎のドゴルド
上記で予約と同時に延長いたします

811 ◆s5tC4j7VZY:2025/07/30(水) 09:24:48 ID:KJ2wlgS60
皆さま投下お疲れ様です!
ピルツ・デュナン、纏流子、繰田孔富、サチ、鳩野ちひろ 、ニコル・アマルフィ
(NPC)柊シノア、(支給品)アストルフォで予約します。

いつもwiki編集してくださっている方、ありがとうございます。

812 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/30(水) 23:59:29 ID:OzXHXDQY0
投下します。

813 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:00:03 ID:wwry9O920
「ええい!ノワルの力を手に入れたところでイレギュラー続きなのは変わらんと言うのか!」

自分はそうゆう星の下に生れついたのだろうかと思わざるを得ないルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは生成したコルベットブースターで随伴するサザーランド可翔式とエールストライカー装備のスローターダガー二機づつを伴ってテレビ局に急いでいた。
遠めに見えて来た自分の牙城が戦闘音と共に崩壊するのが見えたからだ。

(ロロが文字通り身命を賭して稼いでくれた時間のお陰で求めていた物を手に入れたというのにテレビ局が崩れたせいでプレイヤーに周知させられませんでしたでは流石に笑えん!)

それにキャルたちに何かあった場合もしかしたら一時的な協力が可能かもしれないイザーク・ジュールや大河くるみと決定的に対立してしまう可能性がある。

(無意識に考えないようにしていたが、これはスザクがユフィが死んだ直後から呼び出されている可能性を考慮せねばならんな。
想像力の欠如していた数時間前までの自分が恨めしい!)

今後五道化や四凶を狩っていく上で何よりも重要なのは最悪を想定する事だろう。
トランクスの能力の全容はまだ明らかになっていないし、ノワルの能力も自分の物にした今だからこそ本来はあの程度の戦力差ですまなかったのが分かる。

(そんな風に苦労して手に入れた力を見せびらかしてもいずれ捨てなければならないのが悲しい所だな)

(黙れアーク!今後の展開を考慮すれば第三のシンギュラリティは俺以外が手にすべきなのは自明だろう!
それに闇檻の制御を優先して生命維持機構を二の次にしたアークゼロワンは俺の体力じゃあ最終的に使いこなせん!)

茶々を入れて来たアークの意志に苛立ち紛れに返事をしながらルルーシュは先を急ぐ。

(最悪致命傷さえ受けていなければ回復魔法で戦闘できる程度まで行けるかは分からんが少なくとも命は繋げられるはずだ。
それに放送に関してはある程度機材が生き残ってくれていればアークドライバーでどうとでもできる。
……喫緊の問題を解決したら、いよいよ地下の『何か』を突くか)

流石に五道化の全力全開は四凶に重症以上のダメージを与えられる『何か』であることぐらいは確信を持って良いだろう。

(となると五道化の特権や最強の一手が四凶の最大出力に相当するスケールと考えても差し支えはないはずだ)

ならば次の戦場も過酷なものとなるだろう。
いくら闇檻機装兵団を得てロロ以外重大な損失は差し引きゼロだったとは言え自分と陽介はノワル、キャルたちはテレビ局を襲撃した連中と合わせて二連戦になるのは体力的にも心情的にもギリギリだと思いながらもやれねばならないことに内心頭を抱えていると、人影が見えて来た。

「タギツヒメ!キャル!沙耶香!」

「むっ!ルルーシュか」

コルベットブースターを飛び降りたルルーシュは着地するなり三人の元へと駆けよった。

「色々と聞きたい事はあるが……怪我はないか?
気分が悪かったりレジスターが損傷したりは?」

相手が女性でなければ思い切り身体をべたべた触っていただろう勢いのルルーシュに気圧される沙耶香とキャルを庇う様にタギツヒメが前にでる。

「落ち着けルルーシュ。
疲労は馬鹿にならんが全員五体満足だ」

「……そうか、それは何よりだ」

そう言いながらもルルーシュは崩れ去ったに等しい惨状のテレビ局を見上げて、遠い眼をしながら力無く笑う。

「気付かなかったよ。
こんな見晴らしよかったんだな、ここ」

「現実を確認したいのか見たくないのかどっちよ」

キャルのツッコミに我に返ったルルーシュは咳払いを一つして向き直る。

「いや、現実は一つ一つ的確に対処せねばならん。
軍の被害状況は?」

「ルルーシュ」

事務的に事を進めようとするルルーシュに沙耶香が待ったをかけた。

「ロロと陽介は?」

嘘は許さないと、口にせずとも伝わるまっすぐな問いかけにルルーシュは一瞬だけ悲し気に目を伏せたが、元の皇帝の顔に戻ると

「……陽介は無事だ」

と極力平坦に告げた。

「うそ、それって……」

「これ程の戦いを終えた後に辛い話だが……」

「その話、我らも聞かせて貰おう」

「なんか面白そうなことになってるじゃねえか。
俺たちも混ぜろよ」

「誰だ!」

サザーランドとスローターダガーが一斉に声のした二方向にそれぞれ一機づつ銃口を向ける。
片方にはヴァルバラドとイチロー、そしてその背に隠れるくるみが、もう片方には仮面ライダーアクセルと龍園翔に十条姫和がいた。

814 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:01:11 ID:wwry9O920
「イザーク!クルミにイチローも!」

「何があったか知らんが、よく令呪一画だけで済んだな」

「ホントよ、アンタたちが居なくて大変だったんだから!」

「そっちも本当に大変だったね……」

『だが我らが来たからにはもうノープロだ』

『ホッパー!』

『ウィルウィール!』

『レスラーG!レスラーG!』

イザーク、キャル、そしてルルーシュの手元から勝手に飛び出したケミーたちが輪になって踊り出す。
それほどまでに再開が嬉しいらしい。

「沙耶香!」

「十条、姫和……」

「無事だったか、良かった。
それと、お前は……」

「諸君らの因縁は知っているが、タギツヒメは我が弟の友人で私の協力者だ。
刃を向けるつもりなら相応の対処をさせてもらうぞ」

沙耶香に駆け寄ってきたと同時にタギツヒメに気付いた姫和の間にルルーシュが割って入る。

「御自慢の城も兵隊もズタズタの癖にデカい口叩くじゃねえか」

自分の協力者への態度と、ルルーシュと清隆の関係を思い出し皮肉をぶつける龍園。
だがルルーシュは一度龍園の制服を確認し、清隆から情報の有った一人だと分かるや冷たい笑みを向ける。

「違うな、龍園翔。
前提を間違えているぞ」

そう言ってルルーシュは左右色違いの瞳と不死鳥の紋様を不気味に輝かせながら右手の人差し指と中指で黒い宝珠を挟んで龍園の方に掲げる。
そしてそれを素早く拳で握り込む。

「もう必要ないんだよ」

そう言うと同時に指のスキマから赤いスパイトネガがこぼれ出し、地面に触れると人型となって起き上がる。

「我が戦列に加われ」

「イエス。ユア・マジェスティ」

生成された闇檻機装兵のグロースターが下がって行くのを見送り、龍園は息をのむ。
そして同時に納得する。
必要となれば軍隊を自分で作れるならいくら死のうがルルーシュの能力で生成可能ならば確かに倒された者たちは『必要ない』。

(おいおい嘘だろ。
この肌が粟立つ感覚……あの色黒と殺し合ってた金髪の姉ちゃんの時のじゃねえか。
このガキ、どうやったか知らんがあいつから術式と呪力を引っぺがして自分のにしたのか?
それとも『浴』みたいなことをやって呪具にでもしたか?
どっちにしろなんて無茶苦茶やりやがる……)

伏黒が見覚えのある呪力に隙を見せる程ではないが、目を丸くする。
キャルたちも先程コルファウスメットに対峙した時と似た感覚を味わい、ルルーシュが何をしたのかを察した。

(いや確かにタギツヒメの事もあるしできる事自体は納得できるけど、実際やれるかは別問題でしょ!?)

(ルルーシュは、ロロを死なせてまでこれが欲しかったの?)

(あのホラーや五道化にも負けず劣らずのドス黒い力だな……よくこんな物を内包して正気を保っているものだ)

それぞれがルルーシュと言う存在を図りかねている内に当の本人が口を開く。

「キャル、テレビ局がここまで崩れているということは、地下の『何者か』が介入した結果こうなったのだな?」

「……ええ。
冥黒の五道化のコルファウスメットとか名乗ってたわ」

「ほう!ザラサリキエルと同じ五道化か。
丁度良い。
では引っ越し前に大掃除といこうか!」

不敵に笑うルルーシュに彼以外の全員が顔を見合わせた。

───────

「うっ……」

どうにも落ち着かない揺れる感覚に花村陽介は目を覚ました。
上体を起こし周囲を見渡すと、自分は見慣れない黒とオレンジのNPCモンスターたちに運ばれている最中だった。

「……こんな奴らルルーシュの手下に居たっけ?」

「起きられましたか、花村卿」

陽介を背負っていた呪詛師が気付く。
まだ動けそうにない身体でなんとか目と口は動かせる陽介は質問を重ねた。

「お前らは?」

815 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:01:42 ID:wwry9O920
「我らは闇檻機装兵団。
ノワルの力を手中に納めたルルーシュ様より生成された兵にございます」 

「マジかよ。
ルルーシュの奴俺が気を失ってる間に無茶苦茶やってんじゃねえか。
ところでロロや他の連中は?」

「ランペルージ卿は戦死なさいました。
最期までルルーシュ様に尽くし、壮絶に戦われたとのことです。
残る二人は不遜にもルルーシュ様を殺そうとしましたが、功績に免じて生かされたと聞いております」

「……なんだよそれ。
なんであの闘いの後でなお殺されそうになるんだよルルーシュ。
そんで何死んでんだよロロ……何あんな小さな子に殺されてんだよ。
沙耶香ちゃんたちになんて言えば良いんだよ」

「……着きました、花村卿。
立てますか?」

NPCモンスターたちの肩を借り、どうにか両足で立つ。
着いたのはテレビ局……だったと思われる残骸の中で、開けた場所に豪奢な天幕が用意されており、それをNPCモンスターたちが警備している。

「さあ、こちらに」

中に入ると、正面の椅子にルルーシュが、入り口から見て右手にイザーク、くるみ、イチロー、タギツヒメ、キャルが、左手に龍園翔、伏黒甚爾、十条姫和、糸見沙耶香が座っている。

「ヨウスケ!アンタ大丈夫なの?」

「ようキャルちゃん……なんとか無事だよ。
何度死にかけたか分かんないけど」

「陽介の献身のお陰で私の命が、そしてこの状況がある。
この功績をたたえ、陽介には十分に英気を養ってもらうべく本作戦の参加を見送らせたいのだが、構わんかな?」

「……は?ちょっと待てよルルーシュ。
あんだけ戦って、そんで結局ロロは死んで敵作っただけで終わってまだ戦う気なのかお前!?」

「ロロが死んだからこそだ。私はその献身に報いねばならない。だから『今は休んでくれ陽介。まだ満足に動けないだろ?』」

「───ッ!……くそっ」

力なく座り込んだ陽介をルルーシュは目線だけで配下のNPCモンスターに指示を出して下がらせる。
まだ天幕の中でルルーシュたちが何か話していたが、その内容を聞くだけの気力がまだ陽介に戻っていなかった。

─────

『機士の聖域』の床を複数の靴音が踏み鳴らす。
10時間近く待ち続けた変化にようやくかとコルファウスメットは立ち上がった。
ガンダムフェイス越しに入口の方を見ると、白い皇帝服を纏った少年を先頭に複数の人影が入ってきた。

「お、やっと来たじゃねえか。
チキン皇帝に……マジか、天与の暴君に残りは改造したNPCモンスターか?
引っ越し前のあいさつにしては贅沢なメンツだなあ、ええ?」

「挨拶?なにを馬鹿なことを」

ドライバーとキーを取り出しながらルルーシュは嘲って言う。

「お前はキッチンに出たゴキブリ相手に態々『おはようございます』とか隣人にするような挨拶をするのか?」

「……弟やお友達と一緒にはじめてのおつかい大成功させてテンション上がってんだかしらないけど、口の利き方に気を付けろよ駒(プレイヤー)風情が!」

ビームブレイドを抜き放ち、最初にグラファイトに使ったキラメイジンの必殺技、キラメイダイナミックを放つ。

「『闇檻』」

それをルルーシュは当然のように一言呟くだけで黒い宝珠に変えて見せた。

「は?おいおいまてまてその魔法が使えるってことは……」

「魔力濃縮+エネルギー純化+スパイトネガ」

コルファウスメットの驚きを無視してルルーシュは防いだ攻撃のエネルギーを元本に広範囲のスパイトネガを展開。
エネルギーの波をブラインドに飛びあがるなり飛翔するなりしたNPCモンスターたちが銃撃を仕掛けてくる。

「超獣戦隊(スーパーライブロボ) スーパービッグバースト!」

戦隊初の一号ロボと二号ロボの合体ロボの決め技でブラインド諸共雑兵を薙ぎ払う。
鬱陶しいカトンボ共を残さず落とせたは良いが、一番倒さなければならなかった二人は既に準備を終えていた。

<ACCEL! UP GRADE!>

<アークゼロワン! オーソライズ!>

「「変身!」」

<BOOSTER!>

<Final Conclusion!アーク!ライジングホッパー!>

闇檻の魔女の力を宿したアークゼロワンに鮮やかな黄色と増設ブースターが目を引く新たな姿のアクセルが並び立つ。

「一応念を押しとくが、この『前金』は返さねえぞ?」

そう言って伏黒はアクセルメモリにセットしたガイアメモリ強化アダプターを触る。
協力の見返り、そしてこの作戦の必要経費としてルルーシュから譲り渡された物だ。

816 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:02:06 ID:wwry9O920
「『一度渡した物を後から返せなどとせせこましいことは言わないから安心してくれ。
君の方こそ、今からでも家無し皇帝呼ばわりを撤回して忠誠を誓う気はないか?』」

「それはこの戦い次第だな!」

走り出したアクセルに続いてルルーシュは両手にプロトガシャットのデータを得たことで生成可能になったガシャコンマグナムとガシャコンスパロウを生成。
伏黒の動きを阻もうと繰り出されたGUNDビットを的確に撃ち落としながら倒されたにしても随分と中身の少ないNPCモンスターの残骸を踏み越えて戦列に加わった。

「チックショウ!ざけんなよリキエル!
一番真面目ちゃんのお前が一番仕事しなきゃいけない時に居なくてどうする!」

愚痴りながらも伏黒甚爾の猛攻を捌きながらルルーシュ相手にGUNDビットを操作して対応するめちゃくちゃ器用なことをこなすコルファウスメットを相手にしながらルルーシュも今度こそ自分の策が完遂されることを祈る。

(さて、初手は順調。
あとは頼むぞタギツヒメたち)

─────

「アンタら生きてる!?」

背後から聞こえてくる派手な戦闘音につい数刻前の破壊の嵐を思い出しながらキャルが振り返る。

「どうにかな。
タギツヒメにリュウエンだったか?
お前らも無事か?」

「我は人間より丈夫だ、支障はない」

「俺も平気だ。
にしても大将自ら囮役になるから俺たちには便衣兵と空き巣の真似事をやれとはな。
貴族の兵隊とは思えねえ作戦だな」

キャル、イザーク、タギツヒメ、龍園の4人は地下を進んでいた。
最初にルルーシュがブラインドを仕掛けたタイミングでNPCモンスターの残骸で出来た鎧を脱ぎ捨て、雑に薙ぎ払われる機装兵団の残骸に紛れて奥へと向かったのだ。

「ふん!最低限の条約もなしに始まった戦闘にルールも何もあるものか」

「運営が後出しで良く分かんないルール追加してくるようなクソゲーよ。
反則も何もないでしょ」

だがつくづく絡め手なのは確かで、多分あのドス黒い力を手に入れたのもこんな気を衒った作戦を使ったんだろうなと思いながらキャルはつい先程の作戦説明を思い出した。

「私と甚爾で奴を足止めする。
その間に留守を守る者以外の4人には地下空間に潜入してほしい」

「まて。
現状最高戦力で一番ヤバいのを相手にするってのはいい。
けど便衣兵組の面子はおかしくねえか?
俺とイザークは兎も角、そっちの色白姉ちゃんと魔法使いは連戦になるんだろ?
だったら十条と2人のうちどちらかを入れ替えるべきだ」

ルルーシュの案に待ったをかけたのは龍園だった。
建前はそれっぽいが最高戦力にして浮ゴマになりえる伏黒が役割上動かせないならせめて伏黒への追加報酬を探すよう協力させられる姫和を自分と同行させたいゆえの発言だ。

「翔。君の懸念も最もだが、陽介や非戦闘員の守りをおろそかにするわけにもいかないぞ。
それに考えてみろ。
本来コルファウスメットを、戦闘の余波だけでテレビ局をこんなにしてしまえる奴を倒す程の戦いをした後に行き着く場所が罠満載、敵満載なんて不条理があるか?」

「そりゃゲームとかならないだろうけど……」

不安そうにいうくるみにルルーシュは「そう、ゲームの話だ。ただし今回の場合命懸けのな」と前置きし、続ける。

「このバトルロワイヤルもゲームだ。
不平等極まりないのは否定出来んが、令呪や先の放送でヒースクリフが加えた『ビターな刺激』などどのプレイヤーにも逆転の目がある。
つまり極力公平にはしようとしているのだ。
さらに付け加えるなら、未だ100名近いプレイヤーが犇く中で1人でも他のプレイヤーを多く殺せるプレイヤーはまだ連中にとっても生きていて欲しい存在の筈だ」

「だからコルファウスメットさえ素通りできればその後は何か出てきたとしても程度が知れていると?」

「ああ。
守っている以上、その奥は視られて困る物だったり壊れ物のはずだ」

そのルルーシュの予測はおおむね当たっていた。
奥へ奥へと進めば進むほど出てくる警備役のNPCモンスターはどんなに派手な武器でも電磁ナイフ程度の物しか装備していない。
強さもそこまでではなく、一番近接が苦手なキャル以外の全員が手持ちの武器と持ち前の戦闘能力で簡単に対処できる強さだった。

「あんがとよ、いい肩慣らしになったぜ!」

実体バヨネッタで警備のNPCモンスターにトドメを刺しながらヴェルデバスターガンダムのパワードスーツを纏った龍園が吠える。
最初は憎悪のホワイトルーム生に渡され、アーリャ、さとうを経由してルルーシュの手に渡り死蔵していた起動鍵は『前金』として彼に渡されていた。

817 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:02:56 ID:wwry9O920
「ちっ!こんなのもバスターだとはな」

「あのパワードスーツの元になったガンダムを知っているのか?」

「……改修前のバスターはさっきの放送で名前を呼ばれたディアッカの機体だった」

「そうか。お互い、辛いな」

「しんみりしているところ悪いけど、着いたみたいよ」

「これは……」

そこは確かに名前の通りに聖域のような趣を感じる造りをしていた。。
中央の太い通路の先の階段の上に頑丈そうな鉄の扉があり、それとは別に左右の狭い通路が用意されている。
細い通路の壁はショーウィンドウのようになっているのか、光が漏れている。

「どうする?」

「一本道が三つの中で馬鹿正直に全員固まって動く必要はない。ツーマンセルに分かれるぞ」

「良し。じゃあお前は俺と真ん中だ。
横道は女どもに任せるぞ」

「アンタねえ、もうちょっと言い方ないわけ?」

「十条姫和の苦労が察せられるな」

「ちっ!軍籍もない奴が勝手に仕切りやがって。
残りの探索は任せるぞ」

勝手に進みだした龍園を追って念のためヴァルバラドに鉄鋼したイザークが後を追う。

「じゃ、アタシらもやることやりますか」

キャルはケミーライザーと六枚のケミーカードを取り出す。
その中から留守を任せた礼として受け取ったアントルーパーのカードをセット。
十数匹ほどの群隊で召喚する。

「変なもん見つけたら戻ってきなさい!」

「「「「ルーパー!」」」」

元気の良い返事と共に散会したアントルーパーたちは1分とかからず戻ってきた。


「ルパルパ!」

「左か」

「行ってみましょう」

先導に従い進んだ先で見たのは無数の等身大サイズとなった機動兵器たちだった。
NPCモンスターかと思って身構え武器を抜く二人だが、すぐにそいつらが身じろぎ一つしないことに気付く。
更によく見ると、その中に見覚えのある機体がいくつか混じっていた。

「あれってロロの零陽炎じゃない!」

「あっちは刹那のダブルオーライザーに、リボンズのフルセイバーだと?」

仲間や因縁ある敵の機体だ。
装着者である彼らがこの場に居ない以上、これらが動くことはあえり得ない。
カードにアントルーパーを戻すと二人は武器を降ろして廊下を進む。
ショーウィンドウはタッチパネルも兼ねているのか、青白い文字が浮かび上がっている。

「『Type-02/0X ZERO-KAGEROU』……本当に零陽炎だわ。
てっきり起動鍵から飛び出てる物だと思ってたけど、起動鍵を目印に一々ここから召喚されてたのね」

「さしずめここはパワードスーツの工廠兼調整所と言ったところか」

「……ケンジャクたちはなんでそんな重要な場所にアタシらが入れるようにしてのかしらね。
ルルーシュがもっと殺し合いに乗り気だったらここをあの身の毛のよだつ魔力で滅茶苦茶に壊して間接的に十何人殺してるに決まってるのに」

「我も同意見だ。
この件、素直にルルーシュに伝えるべきか……ん?」

ふとタギツヒメが変化に気付いた。
ずらっと並んだパワードスーツの列の中に不自然に空いた場所があったのだが、一瞬光ったと思うとそこにパワードスーツが出現したのだ。

「バスターだと?
まさか、あの二人になにかあったか?」

「急ぎましょう」

頷き合って二人は来た道を戻って階段を駆け上がる。
見るとあけ放たれた扉の前で鉄鋼を解除したイザークと尻もちを搗くような恰好の龍園がいる。

「何があったのよ?」

「キャル、これを見てどう思う?」

イザークが義手で指さした扉の開かれた奥を見ると、キャルは一瞬平衡感覚を失ったように感じた。
だが本当に一瞬で、直ぐに正気に戻ったキャルは自分の陥った感覚含めて分析する。

「分かっちゃいたけどケンジャクたち無茶苦茶やるわね。
この扉の先だけ異界化してるじゃない。
態々パワードスーツと別枠にしてまで手元に置いておきたいほどの……モノなんでしょうね」

キャルが扉の先に仕舞われた物を見て、自分の腕を抑える様に掴む。
その鎧の輝きに、気品を感じる金色のそれから目が離せない。

818 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:03:17 ID:wwry9O920
「不思議な感覚だ。
古い友に出会ったような温かみと、一度好みを傷付けた武器に出会ったような冷たさを同時に感じる。
御刀以外にこんな気持ちを抱いたのは初めてだ」

「……お前らもあの鎧に触れたくなったのか?」

「安心しろリュウエン。
俺もお前が先に触れようとしなければ同じようなことをしていただろう。
こんな風にな」

そう言ってイザークは扉の向こう側に右手を突きだす。

「おいイザーク!」

直ぐに腕をひっこめたイザークは無事だった。
しかし義手を隠すように装着していた黒い皮手袋が緑色の炎を上げて焼失してしまった。

「決まりだな。
この鎧はこの義手と同じソウルメタルで出来ている」

予備の手袋を装着しながらイザークが言う。

「ソウルメタルとはなんだ?」

「この義手に使われている金属で、あの継ぎ接ぎにも有効打を与えられる破魔の鋼だ。
なんでもホラーとかいう怪物の死体をマグマで固めて造るらしい」

「なるほど、異なる世界における珠鋼か。
道理で我も引き付けられるはずだ」

扉の異空間に安置された三体の鎧……特に真ん中の黄金騎士ガロの鎧を見つめながらタギツヒメは呟いた。

─────

時間を少し戻し、地表部分にて。
どうにか瓦礫の山の中から見つけ出した冷蔵庫などからかき集めた氷と一緒に毛布でくるまれたロロの死体を安置した車の前で糸見沙耶香は座っていた。
ルルーシュたちが出陣してからずっとその場におり、さながら飼い主を待ち続ける忠犬のようにその場を守っているのだ。
先の戦いの生き残りのNPCモンスターたち気を遣う以上に瓦礫の中からの仕えそうな物の発掘や武装や破損個所の修理など他にやる事がどれだけでもあり、地上に残された闇檻機装兵団たちはテレビ局だったエリア周辺の警備に専念している。
必然的にその場には沙耶香だけが残っている。

「沙耶香」

そんな中、不意に声をかけられ顔を上げる。

「ちょっとでも腹に入れておけ」

左右の手に一個づつ持ったホットドックの内、左手に持っていた方を渡される。

「ホットックの自販機何て近くにあったんだ」

「いや、協力の褒美とか言ってルルーシュが押し付けて来たグルメテーブルかけから出て来た奴だ。
変な味だとか毒とかはないから安心しろ」

「……ありがと。隣、座る?」

「ああ」

十条姫和が隣に座ったのを確認し、受け取ったホットドックに視線を落とす。
受け取ったはいいが、なかなか食べる気にはなれない。
じっと包み紙に入ったままのホットドックを見つめているのもおかしいと思いもう一度姫和に視線をやると、彼女は沙耶香をまじまじと見つめていた。

「なに?」

「いや……見た目は全然変わらないように見えるが、私から見ると結構過去の沙耶香なのが不思議でな」

この十条姫和はタギツヒメと大体同じぐらいの時間から来たらしい。
それ以前から呼ばれているならどのタイミングから呼ばれていてもルルーシュが止めに入るまでに問答無用でタギツヒメに斬りかかっているはずだから沙耶香にはすぐに分かった。

「私はあなたのことも、益子薫のことも良く知らない。
勿論、ロロたちのことも」

「お前の知っているロロ・ランペルージはどんな奴だったんだ?」

「……やさしい人だった。
はじめて会った時に助けてくれて、寒かったからロシア紅茶を淹れてくれて、舞衣や可奈美ともちゃんと友達になれるって言ってくれて、色々あって御刀を向けちゃったこともあったけど許してくれて、その後野菜の皮むきを教えてくれた。
後ろ暗いこともたくさんしてきたって自分で言ってたけど、私の前では『すごいお兄ちゃんが自慢の普通の男の子』でしかなかった」

よく観ずとも不自然な個所はあったと思う。
兄を盲目的に信じている姿に危うさを感じなかったと言えば嘘になるだろう。
その上たった半日足らずの付き合いときた。
たまたまこの不浄の島に放り出された場所が近かっただけのめぐりあわせ。
親しくなれる要素はあまりにも少ない。
それでも今までの人間関係が希薄だった沙耶香にとってはロロとの出会いは強く印象に残る物だった。

「でも私はロロのことを全然知らないし、分からない。
大好きなルルーシュに会えなくなるのになんで死ぬまで戦ったんだろう?
刀使みたいに使命ってわけでもないのに、あなたみたいに復讐って訳でもないのに」

819 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:04:06 ID:wwry9O920
包み紙からケチャップとマスタードがこぼれだす。
無意識に手に力が入っている事にも気づかず、沙耶香は話し続ける。
話て、思考の整理がついてきてしまったのだろう。
戦闘の余熱で保たれていた平静さが薄れて、こみ上げてくるものを抑えきれない。

「可奈美ともロロとももっとちゃんと話せばよかった。
もっといろんなことがしたかった。
こんな場所じゃないと会えなかったのかもしれないけど……でも……」

赤と黄色に汚れた手に透明な液体がこぼれてくる。
声も震え、ただでさえ小柄な身体が小刻みに震える。
友達なれたかもしれない男の子の死体と対面した後の12歳の女の子の反応だ。
今の彼女をいったい誰が責められようか。

「わたし、おかしい……可奈美のあんな姿を見て、黒い人の戦う姿だけ使われてるのを見て駄目だって思ったのに。
今は、今はロロにまた動いて欲しいって思ってる!
もっと喋りたいって、もっと知りたいって、もうどうしようもなく手遅れなのに!
おかしい……おかしいよ……」

「おかしくなんてあるもんか!」

勢い良く立ち上がった姫和を見上げる。
悔しさに目を潤ませ、耐え忍ぶように拳を握っている。

「理不尽に奪われて……踏みにじられて!
怒らずにいられるか!悲しまずにいられるか!
もっと一緒に居たかったと、思わずに……いられるもんか……」

そう言って肩を落とす。
今の姫和の姿に沙耶香は出陣前にルルーシュと二人きりで話せたときのことを思い出した。

「ねえルルーシュ」

「沙耶香か。
休めるうちによく休んでおいてくれ。
こんな時間を次いつ作れつか分からない」

「その力、なんで欲しかったの?」

「ブリタニア皇帝の威光は異世界の者には理解されがたい。
だからこそ必要だったのだ。
誰の目から見ても私と言う脅威を伝え歩かずにはいられない程に絶対的な……我が絶対遵守のギアスですら勝てるとは言えぬ最強格の首を討ち獲れるだけの力がな」

そう言って不敵に笑ったルルーシュに沙耶香は思ったままを告げた。

「ロロがルルーシュの立場なら、そんな力よりあなたの無事を欲しがったと思う」

そう言われた後のたった一瞬だけ、ルルーシュは今にも泣きそうな顔をした。
だがすぐにロロと話していた時のような穏やかな笑顔を見せる。

「ロロのベルトだ。
ロロをそこまで想ってくれている君が持っているべきだろう」

そう言って斬月の戦極ドライバーを渡してルルーシュは出陣していった。
そんなやり取りがあったから、果たして自分はあの兄から弟の遺品を受け取れるほどロロを理解しきれていたのだろうか、とこうして考えていたのだ。
苦しい時間だったように思えるが、必要な時だったとも思う。

「あなたのこと、姫和って呼んで良い?」

「沙耶香?」

「もう、良く知らないままお別れしたくない。
こうして出会った以上、姫和のこともちゃんと知りたい。
もしかしたら姫和からしたらもう何回も聞いた話かもしれないけど」

「構わない。
ちょっと難しいが、私もお前が私の知ってる沙耶香だと思わないで接することにする」

そう言って二人はどちらともなく右手を……

820 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:04:42 ID:wwry9O920
『お嬢ちゃんたち、それをやる前に手を洗った方がいいぞ。
あとついでと言わず俺様のこともしっかり洗ってくれよ?』

差し出そうとして沙耶香の指から聞こえる呆れたような声に我に返った。
奇しくも二人そろって右手に持っていたホットドックは見事に握りつぶされて二人の右手、そして沙耶香がルルーシュより心探知の補助とすべく褒美として渡された牙狼の相棒魔導輪ザルバを派手に汚してしまっていた。

「……ふふっ。ふふふっ」

「わ、笑うな!大体、その喋る指輪ごと汚してる沙耶香の方が酷いだろう!?」

「だって、だっておかしくて……ふふ、あはははは」

こらえきれなかった沙耶香に釣られて姫和も笑い出す。
その様子を同じく不参加を告げられたくるみとイチローが少し離れた場所から見ていた。

「なんか変に気を張ちゃってるような感じだったけど、もう大丈夫そうだね」

『……人間とは器用だ。
あれほど悲しんでいたのに、楽しいことがあればあんなに笑える』

「イチローもそのうち出来るようになるかもよ」

『くるみ、造物主である君なら不可能だと分かる筈だ』

「いいじゃん、夢ぐらい持っても」

『夢……』

「さ、濡れたタオルかなんか持ってきてあげよう!
流石にあのまま握手はまずいだろうし」

そう言って無事だった別の車両に向かうくるみの後ろ姿にイチローは黙ってついて行った。

─────

エンジンブレードとビームブレイドで切り結ぶ。
数多のドーパントを屠ってきた復讐の刃相手にアド・ステラの禁じられた技術の一端たる刃は全く見劣りしない切れで返す。

「流石は仕掛け人謹製の傀儡。
手品抜きにもそれなりにやるもんだ」

「最強でも負けなしでもねえ奴が偉そうに語るなよ、未亡人クン!」

「テメェ、戦争売ったな?言い値で買ってやる」

天与の暴君を致命的に怒らせるという元の世界で考えれば秒で斬殺される未来しかなくなる蛮行を行ってなおコルファウスメットは健在だった。
高機動空中戦を最も得意とするアクセルブースターを相手にGUNDビットを腰部増設スラスターとして装着し速度を底上げ。
それでも小回りは兎も角、瞬間速度はアクセルのが勝っているので防御力強化でしのぎ、さっきから援護射撃がうざったいルルーシュにも対処すべく劣化複製権能を使う。

「炎神戦隊(エンジンオー) Vシールド!
 百獣戦隊(ガオキング) 天地轟鳴アニマルハート!」

左手に炎神ベアールVの機体下部を模した大楯を装備し、同時にオーバーラップさせたガオキングの幻からパワーアニマルの幻影を放つ。
引っ込めたGUNDビットの代わりにアークゼロワンを襲う。

「『その程度予測済みだ』」

両手に持った武器を放り捨てたアークゼロワンは両足の底にスパイトネガを纏わせて地面を統べるように移動する。
四方八方から攻撃してくるパワーアニマルたち相手に足元からの攻撃という選択肢を消しつつ、回避しながらこの状況に最適な武器とプログライズキーを生成。
スロットに装填し、グリップエンドのレバーを引く。

<Progrise key confirmed. Ready to break.>


「『行け!』」

<THOUSAND BREAK!>

トリガーを押しながらサウザンドジャッカーを振るい、ライダモデルを召喚して一斉攻撃させる。
パワーアニマルたちと噛み合い、引っかき合い、ぶつかり合う。

「ちっ!そういや出来たなそんなことも!」

<アークライジングインパクト!>

「上か!」

どうやらパワーアニマルたちよりも一体多くライダモデルを召喚していたらしく、コンドルのライダモデルに掴まってコルファウスメットの上を取ったルルーシュの急降下パンチを繰り出される。
アクセルの剣逸らしつつ身を捻って避ける。
しかし最初から当てなくても良い攻撃だったらしく、避けている間にアクセルはスロットにギジメモリを装填し、刀身に電撃を纏わせ突っ込んできている。

<ELECTRIC!>

「食らうかよ!
警察戦隊(パトカイザートレインズ) スパークアップストライク!」

電撃を纏わせたエンジンブレードの斬撃にこちたもVシールドに電撃を纏わせた打撃で対応。
派手に電流をまき散らし両者大きく吹き飛ばされる。

「『伏黒!』」

「どーも」

既に吹っ飛ばされる先すら予測していたアークゼロワンが着地したアクセルにT2メモリを投げ渡す。
反対の手にはもうメモリの装填されたエターナルエッジが握られている。

<UNICORN!MAXIMAM DRIVE!>

<ICEAGE! MAXIMAM DRIVE!>

821 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:05:08 ID:wwry9O920
同時に放たれた攻撃は途中で一つとなり、螺旋状に回転する氷槍となって突っ込んでくる。
当然避けるか防ぐかしようとすれば、技を放ったと同時に左右から回り込んだアークゼロワンとアクセルが次の攻撃に移っている。

「そんな小細工で勝てるとか、思い上がんな!」

コルファウスメットは眼前に迫る氷槍に真正面から突っ込む。

「爆竜戦隊(アバレンオー) 爆竜電撃ドリルスピン!」

真正面から二大ライダーの合体技を打ち破り、地下空間全体に粉砕された氷で一気に視界が塞がれる。

「高速戦隊(ターボロボ) 高速剣・ターボクラッシュ」

そして氷のブラインドの中からそれぞれのライダーを狙ってエネルギー斬が突きだされる。
アクセルは持ち前の野性的直観と反応速度で、アークゼロワンはエネルギー察知と闇檻で防ぐが、アクセルほどすぐさま超加速は出来ないと踏んでコルファウスメットは技を防いだ一瞬のスキを突くのはアークゼロワンが寄りと判断し肉薄。

「騎士竜戦隊(キシリュウネプチューン) アンモナックル!」

拳に纏わせた騎士アンモナックルズ型のエネルギーを叩きこむ。
流石に防ぎきれず吹っ飛ばされるアークゼロワンだったが、直前のターボクラッシュを封じ込めた宝珠のエネルギーを圧縮、純化して元本として魔法を使う。

「『闇檻』」

壁に激突するより早く吹っ飛ぶ先に無数の鎖の網を出現させ、プロレスリングのロープように使って復帰を果たす。
戻ると既にアクセルとコルファウスメットは再び切り結んでいた。

「ふっ!」

「ちっ!」


互いに仕切り直し、アクセルは戻ってきたアークゼロワンの隣に立つ。

「どうにも高専の前髪のガキと違って手持ちの能力はどれも一級品らしいな。
わっかの付いた兜を勝ち割って素顔を拝んでやりたいがどうにも上手くいかない」

「『流石は五道化。
アークワンだったら間違いなく勝てなかったな』」

常人ならば眼で追うことすら難しい激戦の最中であっても雑談のように軽口を叩き合う。
目の前の状況を額面通りに受け取る事が出来ればコルファウスメットは何も感じなかっただろう。
なにせ天与の暴君と心意システムにより性能を底上げされたアークゼロワン。
茅場晶彦が最初に想定した展開でこいつらが出てこようものなら一方的な蹂躙撃劇なるに違いない特級戦力にして最強コンビだ。

(問題はこのとっちゃん坊やが『闇檻』まで持ってる事だよ。
漢を魅せ始めてるとは思ってたがいくらなんでもバクアゲがすぎるだろうが。
お陰でこいつ相手には出力制限なしで戦えるのは良いけど、合間合間に黄色いのが、本気出せない相手が差し込まれるせいで出力の強制調整が入るせいで頭バグるし普通に全力出すより疲れる!
もっとガンガン『闇檻』使えや!
いや、使ってこんな狭い所で全力ぶっぱもやったらやったで問題だけれども……)

現在、テレビ局の地表部分が潰れてから大体30分が経過している。
つまりルルーシュたちがテレビ局を出発してからどんなに長く見積もっても二時間ほどしかたっていない。

(流石にそんな短時間で使いこなせていないのか全然『闇檻』使ってこないが、心意システムが実装された今になってアークの力がノワルの悪意で強化されてるだけでもマズイ!
あーもう!せめて令呪一画ぐらい使わせないと撤退もしてくれなさそうだし!)

さらに言えばコルファウスメットは五道化としては脱落する訳にも、せめてアルジュナ・オルタが脱落するまでノワルと同じ力を手に入れたルルーシュを倒す訳にも行かないというジレンマに陥ってしまっている。
しかも彼の守護領域は他の二つと違いこのバトルロワイヤルの運営に直接必要な要素を孕んでおり、捨てていくわけにもいかないのだ。

「ま、仕方ねえか。
ちょいと本気だしますかぁ!」

そう言ってコルファウスメットが一歩踏み込んだ時、ルルーシュは仮面の奥で凶悪な笑みを浮かべた。
それに気付いてコルファウスメットの動きが一瞬鈍る。

「『どうした?背中でも痒いのか?』」

アークゼロワンが復帰に使った鎖が消えているのに気付いた。
振り向こうとするがもう遅い。
流体金属で出来た鎖は足元をすり抜け床の元々の色に擬態しコルファウスメットの足元に潜んでいた。
そこから無数の銃口、AIMSショットライザー、アタッシュショットガンにオーソライズバスターのような元々生成可能アサルトライフルや重突撃機銃、スプレーガンが生成され特殊弾やビームが雨霰と放たれる。

「がっ!テメェ!」

そして思わずルルーシュを睨んでしまった。
アークゼロワンの仮面は一部が流体金属に戻って解けた様になっており、不死鳥の紋様の浮かぶ瞳が露出している。

(───しまった!)

822 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:05:49 ID:wwry9O920
コルファウスメットの敗因はあまりにも闇檻や天与の暴君といった脅威に目を奪われたこと。
そしてもう一つ、闇檻なんかよりもずっと警戒すべきルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの切札を忘れていたことだ。

「『令呪をもってルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる!』」

命令が言い切られるより早くコルファウスメットは自分のホットリアンを握りつぶした。
こんな無茶苦茶な皇帝陛下に主催者たちと直で繋がれるこの端末を渡すわけにはいかないからだ。

(真っ先に破壊したということは今の端末が運営に繋がるアイテムか!
だったら第二プランだ!)

運営に繋がるアイテムを手に入れられればそれが一番良かったが、不可能なら不可能で次善の策を使うまで。

「『お前が運営に与えられている特権の中でも最強の物を今ここで行使せよ!』」

不死鳥の輝きがツインアイ越しのコルファウスメットの眼に光が届く。
視覚機能は意図的に装着者がいじれないようにされている。
それをやってしまえば閃光弾などが通じなくなり、勝負にならなくなるからという茅場の判断だ。

「クソックソックソックソックソッ!
こんのたまたまパパが偉かっただけの童貞坊やが!
宇蟲王を!掛け値なしの絶望を滅ぼす為に造られたこの俺が!
お前みたいな凡人が束になったら苦労する程度で倒せる奴にぃいいいいいい!」

「『何度も言わせるな。
我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!
貴様らの飼い主に代わってこのバトルロワイヤルを支配する者だ!
さあ見せろ!お前たち五道化の底を!
四凶の命を借りとる刃を!』」

「チックショォオオオオオオーーーーーーー!」

コルファウスメットが剣に纏わせた七色の光を真上目掛けて放つ。
地面を貫き、天上に咲いたそれは四凶を討つのにふさわしい奇跡となって降り立った。
地響きに続いて地下全体が揺れて崩れ始める。
気付けばコルファウスメットの姿は消えていた。

「『伏黒、先に上に戻れ。4人は私が回収する』」

「いや、俺も行く。
流石にクライアントが生き埋めになって報酬貰い損ねたくないんでね」

「『そうか、なら手早く済ませよう』」

変身したままの2人は先ほど4人が進んだのと同じ道を走った。

823 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:06:14 ID:wwry9O920
【エリアD-7/テレビ局跡地下/9月2日午後3時15分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:アークゼロワンに変身、健康
   闇檻機装軍団を従える
服装:皇帝服
装備:アークゼロワンプログライズキー
   赤い飛電ゼロワンドライバー
令呪:残り二+一画
道具:チェスセット@現実
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ランダムアイテム×0〜2(アスナ)
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
   賢者の石@鋼の錬金術師
   万里ノ鎖@呪術廻戦
   光魔の杖@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
   青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG
   ローラ姫のレジスター
   アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ
   ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)
   カチドキロックシード(KLS-02)
   ロロのホットライン
   零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
   一護の腕(レジスター付き)
   一護のホットライン
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークとノワルの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……お前は自慢の弟だ。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:タギツヒメたちを回収したら奴の切札の全容を把握する。
07:残る四凶や五道化、それにあの忌まわしき父と同じ力を持つ眼鏡の女も必ず殺す。
08:黒き神とは今度こそもっと準備を整えてから戦いたいものだ。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ。
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
11:これが終わったらイザークや龍園との利害関係を明確にせねば
12:花村陽介。お前の漢気、魅せてもらったぞ。
13:神戸しおとトランクスには精々頑張ってもらおうではないか。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとう、花村陽介、覇世川左虎、アスナにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトは倒されていません。
 近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。
※ノワルの力を奪いました。
 制限はノワルと同じ物がかけられていますが、アークの力を併用することである程度その穴を突けます。
※ノワルの令呪を二画奪いましたが、一画使いました。
 もう一画使うと闇檻を喪失してしまいます。
※他のプレイヤーに褒美や前金などと称して支給品を分けました。
 くるみ、タギツヒメ、イザークにももしかしたら何か渡しているかもしれません。

824 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:06:32 ID:wwry9O920
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:疲労(中)、軽度〜中度の火傷
服装:仕事用の私服
装備:アクセルドライバー&T2アクセルメモリ@仮面ライダーW、エンジンブレード&エンジンメモリ@仮面ライダーW、衛藤可奈美から譲渡されたドロップアイテム×1、
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
令呪:残り三画
道具:100万が入ったトランクケース@現実、バショー扇@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働くが、まあ上乗せは欲しいところ。取り敢えず追加分その2で更に契約更新。
02:加茂憲倫、と来たか。
03:まさかこんなところで禪院家の術式が見れるとはな。
04:化け物よりもヤバいことするじゃねえかルルーシュ。
05:…強さは兎も角、アレはアレでやべぇな衛藤のお嬢ちゃんは。
06:らしくねぇ考えはやめだ。
07:コルファウスメットは殺す。
参戦時期:死亡後
備考
※可奈美からドロップアイテムを貰いました、更に契約更新を決める程度には伏黒にとっても価値のあるもののようです。内容は後続にお任せします。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園から聞いています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

825 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:07:31 ID:wwry9O920
─────

コルファウスメットの『切札』の影響はすさまじく、地下で調査を続けていたイザークたちの元にも及んだ。

「うお!結構揺れたな……」

「爆破か?」

「どちらかと言えば地震のが近くないか?」

「ジシン?地球特有の気象現象か?」

「え?プラントって地震ないの?
って、そんな話してる場合じゃないわよ!
地震にしても爆破にしてもここが崩れるかもしれないの変わんないじゃない!さっさと出ないと……」

と、キャルが来た道を戻ろうとした時より激しい揺れが聖域で起こった。
そしてそのまま大型エレベーターが下に下がるような感覚に襲われた。

「な、なによ!?今度は一体何が起こってるのよ!?」

「どうやらこの区画だけ上で致命的ななにかが起こるとより地下に潜って安全を確保するように出来ているようだな」

念のためヴァルバラドに鉄鋼しながらイザークが言う。
それを見て龍園もヴェルデバスターを装着。
タギツヒメも御刀抜いて写シを張る。
完全に揺れが収まると、入口が開いた。
外……地下の更に地下は暗黒の空間らしく、開いた扉の外は月も灯の無い夜のように暗い。

「お前ら夜目は効くか?」

「前衛ほどじゃないけどヒューマンよりは効くわ」

「御刀を使えば恐らくキャルよりもずっと効くぞ。
我が先頭か?」

「いや、言い出しっぺで装甲持ちの俺が行く。
遠近両用のヴァルバラドや砲戦型のバスターは当然のように暗所も動けるからな。
リュウエン、ケツ持ちは頼むぞ」

「取り分は弾むんだろうな」

「無事にまた太陽を拝めたら考えてやる。行くぞ」

聖域を出た4人は慎重に、だが迅速に地上に戻るべく進んだ。

「なんか、暗い上にじめじめしてて嫌なところね。
変なにおいするし嫌に静かだし」

「空気こもってるからだろうな。
こんだけ静かならなにかが近づいてくればすぐ気付けそうなのはありがたいが……」

等と言い合いながらとても歩きやすいとは言えない瓦礫が積み重なって狭いでこぼこの道を行くこと5分。
元々は噴水を真ん中に道が十字に重なる広場だったらしい場所に出た。
らしい、と言うのも、本来噴水でもありそうな所には巨大な金属の柱のような物が倒れており、元の状態が分からないのだ。
だが周囲の壊された建物の感じや元は手入れの行き届いた花壇だったらしき物から察するに元は品のある商業施設や博物館のような施設が集まる場所だったのだろう。
そちらも気になったが、まず一同は明らかに最初からこの場所に無かっただろう倒れた柱に注目する。

「あれ?これよく見たらなんかでっかい文字書かれてない?」

「アラビア数字だな。
なんでかパソコンでよく見る並びだが……」

「これは、ザフトのMS用テンキー!?」

イザークが驚いた声を上げて距離を取り、折れた柱全体が見渡せる位置に移動する。
柱の真ん中にはボール状の機構があり、中ほどで折れているがセットされたキャニスターが残っている穴もあった。

「なんということだ!
まさかこれをこんな戦場でも何でもないこんな場所で使っただなんて!」

「これが何だか知っているのか?」

尋常でないイザークの様子にタギツヒメが問う。
仮面越しでもわかる程に言いずらそうに一瞬黙ったイザークだったが、絞り出すように答えた。

「……グングニール。
我がザフト軍が開発した戦略兵器だ。
重力圏では生成不可能な特殊圧電素子を用いて強力なEMPを放つことができる」

「つまりどうゆうこと?」

「文明中世で止まってるお前にも分かりやすく言ってやれば、一撃で物を壊さずに水路とかガスの配管とかを一撃で破裂させて街を使い物に出来なくする武器ってことだ」

「使いようによっては直接ぶっ壊すよりヤバいコトできるじゃない!」

「実際に俺も参加した作戦ではパナマの敵基地のマスドライバーをライフラインごと自壊させるために使われた。
そんなものを、クルーゼ隊長はこんななんの軍備もない街中で使ったとは……軍人の誉れはもう捨てたということか!」

イザークの怒りに満ちた声に残る三人は眼を逸らす。
嫌でもグングニールと、それに加えて与えられただろう攻撃で破壊された建物や花壇が見えた。

「俺は納得がいったぜ。
上の街はこの殺し合いの為に態々作ったんじゃない。
ここを使い物にならないくらい壊しちまったから、用意しただけだったってことだっろ?」

「クソみたいな贅沢ね」

「……行くぞ。
どうにか上に上がる手段を探すんだ」

826 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:08:03 ID:wwry9O920
イザークを先頭に再び四人は歩き出す。
とりあえず一番手近な建物に入った。

「うっ!」

「おい、マジかよ……」

「上にあの街を作っている以上、こちらの掃除などしているはずもないか」

そして入ったことを後悔した。
4人を待ち構えていたのはおびただしい血痕と弾痕の跡だった。
それ以外にも先ほどルルーシュが使役していたキヴォトス人たちの中にもそれなりに居た正義実現委員会の構成員のベレー帽や銃、他にも腕章や空になったマガジンなどが無造作に転がっている。

「どうやらここがこんな有様なのはクルーゼ隊長たちだけのせいではないらしい」

「どうゆう意味だ?」

「裏工作ぐらいはしてたかもだが、落ちている装備品の規格や腕章や帽子のエンブレムを見るに最低3つの勢力がここで撃ち合いをしている。
直接的にはザフト以外の勢力同士による戦いがあったに違いない」

義勇軍とは言え正規の訓練を受けて実際に戦場にも出ているイザークが一番この現代戦の跡にて冷静に動けていた。
死体を踏まない様に進み、一番奥の扉の仕舞っていた扉に手をかける。
鍵がかかっていたのでヴァルバラドの脚力に任せて三度蹴りつけ無理やり破った。

「おいイザーク」

「鍵なんぞ探している時間はないだろう?」

動じないと言ってもクルーゼの蛮行への苛立ちはあるらしく、乱雑にドアの残骸やバリケードを崩しながら進む。

「ん?」

最奥らしき部屋に着いたが、中は何かがおかしかった。
奥にもう一枚扉があり(元は隠し扉だったらしくドアと同じサイズの本棚がドアの真横にある)、そこで今まで通ってきた通路にも居た黒いベレー帽と銃が落ちている。

(扉の前に武器まで堕ちているのはなぜだ?
籠城しようと思ったのなら最後まで武器は手放すはずない……入る前に力尽きたならもっとここに血痕がなければおかしい)

ここだけに限らず、大規模な戦闘があったにしては不自然な個所が多い。
そもそも死体一つ残っていない。

「奥の扉も破るぞ」

「……一応聞くけどなんで?」

「放置された戦場痕にしては死体が無さ過ぎる。
それ以外にも不自然な点が多い。
調べてみるのも無駄じゃないだろう」

ヴァルバラッシャーを扉に挟みこみ、てこの原理で一気にカギを壊す。
そこはそれなりの立場の者のために用意された場所らしく、放置された時間の分だけ埃は積もっていたが高そうな家具の並んだ部屋だった。

「何もないじゃねえか」

「さっきまでのように放り出された武器や血の跡すらな。
逆に何かあったのではないか?」

「ねえ、これって……」

キャルがテーブルの下に落ちていた何かを拾った

「お前それ、茅場とかいうのが使ってた変身アイテムの色違いじゃねえか」

ここに居る全員が知る由もないが、それは財団Xが蛮野天十郎やブレンを復活させるために仮面ライダークロニクルガシャットの媒介として使ったバグヴァイザーと同じカラーリングをしていた。

「使えるのか?」

「確かアイツはこうやって……うわあ!」

急に色違いのバグヴァイザーからオレンジ色の光が噴き出た。
驚く4人を飛び越えて、一か所に集まり、人型を取る。

「あ、あれ……私は、なんで?」

現れたのは亜麻色の長い髪に白い翼を持つキヴォトス人の生徒……今生き残ったプレイヤーの中では聖園ミカと最もかかわりの深い桐藤ナギサという少女だった。

827 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:08:25 ID:wwry9O920
【エリアD-7/テレビ局跡の地下の地下/9月2日午後3時15分】

【イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEED】
状態:健康、顔に大きな傷跡、右腕欠損、義手装着、疲労(小)、ダメージ(小)
服装:ザフトの赤服
装備:ソウルメタル製の義手@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
   ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
   ケミーカード(マッドウィール、ガッツショベル、ゲキオコプター)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   量産型ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:この殺し合いから脱出する。
01:死んだ部下を弄び、こんな殺し合いに加担して白服を穢したクルーゼ隊長は許せない。
02:まさかルルーシュの頼みでこんなことした挙句こんなものを見つけるとはな
03:ニコル……お前がもしクチナシのように体を利用されてるだけだとすれば俺は!
04:この武器といいクルミの手袋といい、かなり良い物だなな。
  持ち帰って我がザフト軍で使えないか?
05:ディアッカ……死に急ぎやがって
06:なぜアスランやキラとか言う奴の名前が二つも?
07:継ぎ接ぎ(真人)め。
  今度会ったらこの右手とお揃いにしてくれるっ!
08:陽介もどうにか無事だったか
09:スパナ、貴様の武器と仲間の力、使わせてもらうぞ。
10:ロロ・ランペルージ……ついぞ会えなかったな
11:この女は一体?
12:ヒデヨシという男や黒い剣士(スザク)を警戒。
  いつかは倒さねばならんだろうが、流石にもっと装備と人員を充実させてから戦いたい。
13:次似た様なことがあれば右腕だけで済むとは思えんな。
14:あの黒いドームはなんだったんだ?
15:ラクス嬢、ご無事で何よりです。
16:戦力増強のために設備の整った場所に立ち寄りたい。
参戦時期:第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦でディアッカと再会した後
備考
※ソウルメタルのホラーを討滅する力は呪霊にも有効なようです。
※『トラぺジウム』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』に関する知識を得ました。
※ニコルが羂索のような何者かに死体を利用されているだけの可能性を考慮しています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り二画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード、ホットライン
   ライドケミーカード(ホッパー1、テンライナー、スケボーズ、アッパレブシドー、レスラーG、アントルーパー)@仮面ライダーガッチャード
   ガシャコンバグヴァイザー(?)
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
  あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザークたちはひとまずは無事でよかったわ。
03:ロロ、ルルーシュ……アンタら本当に、、。
04:今度継ぎ接ぎ(真人)に会ったらイザークの右手の礼もサヤカの乙女心を傷付けたツケも全部払ってもらうわ
05:今回の件でサヤカが恋愛にビビりすぎちゃわないかが心配。
  本当の恋って、すごくいい物なのよ。
06:シェフィ、アンタも無事でいてよね。
07:ケンジャクたちはなんつーもんを使ってるのよ
08:グラファイトとは次に会ったら必ず倒す。ま、そうなるしかないわよね。
09:あの銀髪野郎(ジンガ)ムカつく、本っ当にムカつく
10:こいつは一体……
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※スチームライナーはテンライナーへの再錬成、テンライナーからスチームライナーへの再錬成は自在に行えますが、ケミーライズにより大型状態で召喚、プレイヤーの運搬を行ったので9月2日14時00分まで再度の大型状態での運用は不可能です。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。

828 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:08:48 ID:wwry9O920
【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:破面化、疲労(中)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)、可奈美の死に複雑な想い、ロロへの複雑な感情(大)
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:ロロ……結局お前は、どうだったのだ?
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたが……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのギアス……我にも通じるのだろうか。
08:継ぎ接ぎの男(真人)も銀髪の男(ジンガ)も、荒魂より質が悪いな。
09:……ルルーシュ、見定めさせてもらうぞ。
10:こやつは一体?
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。
※沙耶香、ロロ、キャル、陽介とも情報交換を行いました。
※破面化を果たしました。能力全般の上昇に加え、破面の基本的な能力が使用可能です。その他の影響は後続の書き手に任せます。

【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(中)、精神的疲労(小)、綾小路への怒り
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア
   モビルワーカー(オルガ機)@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。
   一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
02:あまりにテレビ局がヤバそうだから来てみたが……思ったより展開速いなおい
03:こいつが綾小路を……
04:他の同じ学園の連中は……まあ、合流する必要もねえか。真鍋と軽井沢は死んだみたいだが…。
05:グラファイトの言う友を探してみる。
06:仮面ライダーに変身する道具や起動鍵を、なるべく多めに手に入れておきたい。
07:蛮野はイマイチ信用出来ないが、レンのお守をする気も無い。
08:もし、衛藤のように綾小路の野郎が操り人形にされてたらその時は……俺の手で終わらせる。
09:やっと起動鍵が手に入ったな
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
※個性『スティール』により肉体を鉄のコーティングが可能になりました。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察もしています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

【桐藤ナギサ@ブルーアーカイブ+仮面ライダーエグゼイド+ロワオリジナル】
状態:困惑(大)、???
服装:ティーパーティーの制服
装備:なし
令呪:なし
道具:なし
思考
基本:???
00:???
参戦時期:???
備考:
※キヴォトス人の要素を持ったバグスターです。
 状態としては檀正宗の配下として復活した九条貴利矢に近いです。

829 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:09:21 ID:wwry9O920
─────

異変が起きたのは地上でもだった。
慌ててロロの遺体を乗せた車から飛び出た二人の刀使にロボ系アイドルとその被造物が観たのは、つい数時間前までテレビ局があった場所に三つの摩天楼……否、巨体であった。
それぞれ寒色系のボディにランスと大楯を装備した戦闘巨人、金で彩られた漆喰のような黒と紅の鎧武者と車の意匠を持つ炎神合体、そしてリュウソウ族とドルイドの戦いにおいて最初に開発された原初の騎士竜巨人である。

「なに、これ……」

「一体下で何をやってどうなったらこうなるんだ!?」

『これもナイトメアフレームやモビルスーツなのか?
にしてはどれも技術系統が違い過ぎる……しかも、どうしてどれも動物の頭のような意匠を?
くるみ、君の所感は……くるみ?』

「─────ッ!」

感動に打ち震えるくるみを放置することに決めたイチローは改めて三つの巨体を見上げる。
この4人は知る由もないが召喚されたロボたち……今は石造のような姿になって動かないこれらは『バクレンオー』、『炎神大将軍』、『キシリュウジン』と呼ばている。
ユニバース大戦にこそ間に合わなかったが、掛け値なしに世界を滅ぼすことも救う事も可能な力を秘めたスーパー戦隊たちの誇りを体現していたはずの守護神たちである。



【エリアD-7/テレビ局だった廃墟/9月2日午後3時15分】

【糸見沙耶香@刀使ノ巫女】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(中)、真人への嫌悪(大)
   可奈美の死及び舞衣達が人を殺したかもしれない事への動揺、ロロやイザークたちへの罪悪感(中)
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
   時透無一郎の日輪刀@鬼滅の刃
   魔導輪ザルバ@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(沙耶香)、ホットライン
   ブラックコンドルのレンジャーキー@海賊戦隊ゴーカイジャー
   戦極ドライバー(斬月)
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:ロロのこと、もっと知りたかった。
02:可奈美は……私が止める。
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。
  でも…あの悲しむ様は……。
04:あの継ぎ接ぎの人、すごい嫌だ。
05:ロロのこと、多分羨ましい。
  タギツヒメのことも…きっと…。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:未来のことは知らないけど、よろしくね。姫和。
08:恋とかはまだよくわからないけど、ありがとう、キャル。
09:大丈夫、もう利用させないよ
10:ゼイン……あなたも継ぎ接ぎや可奈美を操ってる人みたいな存在ならその時は……
11:舞衣達が、人を殺した……?
12:なにこのロボ……
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロからコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※ジュール隊のメンバーからコズミックイラ、アストルム、東西南北(仮)、自称特別捜査隊などの情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を脱しました。

【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:疲労(中)、精神ダメージ(大)
服装:平城学園の制服
装備:十種影法術@呪術廻戦、無銘刀・白@戦国BASARA3
令呪:残り二画
道具:治療キット@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン
   ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、グルメテーブルかけ@ドラえもん
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る。
00:…可奈美……母さん……。
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため。
02:皆のことが心配。
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
04:私が知っているのとは少し違うらしいが、よろしくな沙耶香。
05:レンのことが気掛かり。とりあえず生きてはいるようだが…残して良かったのだろうか。
06:巨大、ロボ?
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
※十種影法術は現在玉犬、鵺が調伏済みです。また他にひとつ式神を調伏しましたが何を調伏させたかは後続にお任せします。
※可奈美に舞衣、薫、沙耶香、タギツヒメ、リュージ、アンク、はるか、チェイス、果穂、千佳、
ギギスト、スザク、やみのせんし、キラ、アスラン、流牙、ミカへの伝言を頼まれています。各々の内容は後続にお任せします。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園から聞いています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

830 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:09:55 ID:wwry9O920
【大河くるみ@トラぺジウム】
状態:健康、神への感謝(大)
服装:いつもの私服
装備:技術手袋@ドラえもん
   キカイソダテール(残り3/5回)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
   ケミーカード(ダイオーニ)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:死にたくはない。
01:怖いけど、何もしない訳にはいかない。
02:イザーク、イチローとテレビ局を目指す。
03:東西南北(仮)の皆にはどうか無事でいて欲しい。
  どうか継ぎ接ぎ(真人)や秀吉や黒い剣士(スザク)みたいな人に会ってませんように……。
04:キャル、皆。気を付けてね。
05:ゆうちゃんは無事でよかったけど、美嘉ちゃん……。
06:美嘉ちゃんを助ける為にも今私の出来ることをする。
07:沙耶香ちゃん、大丈夫そうでよかった
08:神よ、感謝いたします……
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※組み立てた01をイチローと名付けました。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【イチロー(NPCモンスター・非参加者)@キカイダー02+ロワオリジナル】
状態:戦闘可能
服装:全裸(ロボットの為)
装備:サン・ライズ・マシンガン、サン・ライズ・ビーム(充電不足の為現状使用不可)
道具:なし
思考
基本:造物主である大河くるみを守護する。
00:くるみを守護する。
01:イザークと行動を共にする。
02:くるみは、、大丈夫か
03:仮称継ぎ接ぎを撃破しきれなかったのは当機痛恨の失態である。
04:豊臣秀吉、仮称継ぎ接ぎ、仮称黒の剣士を非協力対象と判断。
05:使命に心を籠める行為は当機には現状不要なタスクだ。
  しかし……もし実行する時が来てもノープロだ。
  くるみたちがしてくれたようにすればいい。
06:新装備開発、改造などによる戦力増強を行う。
07:夢、か。
備考
※くるみにより量産型01の残骸からくみ上げられたロボットです。
※キカイソダテールを二回投与され発声機能、会話能力を習得しました。
 それ以外の変化については後の書き手様にお任せします。
※サン・ライズ・ビームは充電さえ出来ていれば何度でも使えますが、そもそも一回の電力消費がすさまじいのでその時の蓄電残量次第ではその場で行動不能になってしまいます。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(大)、絶対遵守のギアス(極大)、入眠
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1、熟練スパナ@ペルソナ4
   オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
思考
基本:殺し合いはしない
00:『まともに動けるようになるまで休む』
01:ここにはヤベーのしかいないのかよ
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
  けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロもルルーシュもマジでなんなんだよ……。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:キャルちゃんたちも無事だったのは良いけどまた戦いかよ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったぜ
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
   テレビの中じゃねえのに。
09:……ロロ、なんとかやり切ったぜ
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。
※ルルーシュのギアスの影響を受けました。
 異能力破りの異能力を喰らわない限りこれ以上ルルーシュのギアスの影響をうけません。

831 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:10:19 ID:wwry9O920
───────

「クソ!ソウルのない抜け殻のあいつらを動かせるのは俺ら五道化だけだが、ルルーシュがあんだけ無茶苦茶出来る以上心意だなんだで他の誰かが動かせちまってもおかしくねえ!」

一度しか使えない切札を使わされてしまったコルファウスメットは地下の地下まで機士の聖域が下がっていたのを確認できたのもあって一度逃げていた。
自分の醜態と失態に頭が煮え立ちそうになるのを必死で抑えながら彼はパワードスーツを解除してローブのフードを脱ぐ。

「ぜってぇ吠え面かかせてやるっ!
宇蟲王共々お前は俺の獲物だ!」

五道化用のホットラインとしう実質的に羂索たちからの首輪を失ったコルファウスメットはかつて星野亜久亜海と呼ばれた少年の端正な顔立ちを怒りと屈辱に歪ませながら激情にせかされるままに叫んだ。
だが何度か荒い呼吸を繰り返すと落ち着きを取り戻したようでそこにあった自販機を蹴り壊して吐き出させた缶ジュースを空けながら壁にもたれかかって思案する。

「あー……やっと落ち着いた。
ま、ルルーシュはそのうち殺さなきゃいけないのは確定として……この苛立ちと鬱憤晴らすついでにルルーシュに誰かぶつけるか。
そういやアビドスのオアシスにさりなちゃん居たっけ?」

半分以上中身の残った缶を投げ捨てるとステージセレクト機能を応用した転移でアビドスへと向かった。



【エリア?-?/アビドス砂漠のどこか/9月2日午後3時15分】

【凶星病理のコルファウスメット】
状態:疲労(極小)
肉体:星野愛久愛海@【推しの子】
装備:黒いローブ、ガンダム・シュバルゼッテの起動鍵@機動戦士ガンダム水星の魔女
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:????
基本:五道化としてこのゲームを盛り上げる。
01:グラファイトとか綾小路とかもう後でいい。
  今はそれよりルルーシュだ。
02:まずは弧の苛立ちを適当なサンドバックにぶつけるついでにルルーシュの余裕を削る。
  さりなちゃん辺りが丁度良いよな
03:他の五道化何やってんだろ。
  ホットライン壊しちまったからな〜
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※データストームの完全耐性を得ておりGUND-ARMのフルスペックを遺憾なく発揮できます。
※歴代ユニバースロボ@スーパー戦隊シリーズの能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。
ただし宇蟲王ギラ以外を相手に使うと技の持続時間や射程が短くなってしまうようです。
※一回限りに切札として三体の実寸大ロボを召喚しました。
 ソウルの無い状態なので五道化以外には基本起動できません。
 ですが心意システムなどが関わればどうなるか分かりません。

832 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 00:11:42 ID:wwry9O920
投下終了です。
支給品や全体備考はwiki収録の際に加筆させていただきます。
タイトルは『神のいかづちが眠る地下』です

833 ◆Drj5wz7hS2:2025/07/31(木) 08:22:24 ID:wwry9O920
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、イザーク・ジュール、大河くるみ、イチロー、キャル、タギツヒメ、糸見沙耶香、龍園翔、伏黒甚爾、十条姫和、桐藤ナギサ、凶星病理のコルファウスメット、死告邪眼のザラサリキエルで予約します

834 ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:30:10 ID:uOAZyX7Y0
投下します

835真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:30:47 ID:uOAZyX7Y0
時計の針が午後四時を回った時、テレビ画面にノイズが走り、映像が表示される
ホットラインに反応はなく、ルルーシュの放送……しかし今まで通りの物とは違う運営側の放送と関係ないタイミングのそれにプレイヤーたちがそれぞれの反応を見せる中、映し出された映像にルルーシュの姿はなかった。
背景もどうやらTV中継車の中で撮影されているらしく、今までと違う。
画の真ん中には両目に包帯を当てた少女が座っている。

『このバトルロワイヤルに集められた皆さま、はじめまして。
私は桐藤ナギサと申します。
かつてトリニティ総合学園の生徒会長……ティーパーティーのホストという不相応な地位にあった者です』

綺麗な唇から紡がれる柔らかな声が彼女にとっての深い後悔、そしてイザークたちがテレビ局で発見した惨状の全容を語り始めた。

-----

私も全てを知ったのはつい先ほどのことで、憶測や私の主観が多分に入った話であることをどうかお許しください。
しかし、今や梔子ユメ……いえ、羂索たちによってキヴォトスは全滅し、真相の一端を語る事ができるのも私だけでしょう。
どうか、最後まで私の懺悔を聞いてください。
きっと羂索の企みに巻き込まれた皆様の助けになる情報の筈です。
そう確信して私はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿に無理を承知でこの放送を発信させてもらっています。

ではそろそろ、本題に入らせていただきます。

かつてここにはキヴォトスと呼ばれた学園都市がありました。
その中でもトリニティは三本指に入る程のマンモス校で、私はフィリウス分派という派閥の代表……三人いる生徒会長の1人でした。
なぜそのようなことになっていたかと言うと、トリニティはその名の通りかつて別々だった学校が一つとなって出来た物で、一つにまとまり何年も経った後でも派閥と言う形で名残があったのです。
そんなトリニティはほぼ同規模の勢力を誇るゲヘナ学園と長らく対立している状態にありました。
いつ始まったかすらわからなくなった血濡れた歴史から現在に至るまで互いが互いを見下し合っており、和解の道は果てしないように思えました。
しかしそれでもと、私はエデン条約と呼ばれるはずだった友好の取り決めを推し進めていました。

そんな時でした。
キヴォトスに機装の巨人たち……ZGMF-1017ジンの大軍が侵攻してきたのは。

既にNPCモンスターという形で人と同じサイズになった彼らと対峙した方もいると聞いておりますが、私たちが対峙したジンは本物の……見上げる様な巨体を持つ本当の意味でのMSジンでした。
既存火器や戦車ではほとんど歯が立たず、一定以下の規模の学園の中にはジン一機の為に自治区ごと焦土にされたこともあったと聞いています。
それでも奴らは手温く……いえ、今にして思えばキヴォトスと言う世界を真綿で絞めるように追い詰めていきました。

死者が出なかったのです。
大怪我で再起不能になる者は後を絶たなかったと聞きますが、命まで落とす者はキヴォトス人の頑強さを考慮しても稀でした。
それでもほとんどの物が頑強な肉体を持ち、銃弾程度では多少乱暴な喧嘩にしかならないキヴォトスにおいて死人の出かねない暴力は明確な脅威であり異常でした。

事態を重く見たティーパーティーはトリニティと同規模の学園、先に述べたゲヘナ学園やミレニアムサイエンススクールなどのジンを撃破出来た実績を持つ学園を中心に戦時急造版エデン条約とでも言うべき取り決めを交わし、持ち寄られた残骸からジンへ有効な打撃を与える装備の開発と量産も進めました。
か細い希望ではありましたが私たちは自治区を失った生徒や元々学籍を持てていないような生徒たちとも協力し、どうにかジンを退けるべく歪ながらも団結したのです。
ですがそれは、私の描いた理想にもキヴォトスを危機から救うにも足りないものでした。
大袈裟な言い方をすれば常識は同じでも文化の違う者同士がいきなり手を取り合えと言われて心身限界の中一か所に集うのです。
不平等感や役割の違いから何度も瓦解の危機を迎え、揉め事が起こるたびに……口に出すのもはばかられるような手段も使ってどうにか大同団結を維持しました。
そうでもしなければ超人と謳われた連邦生徒会長を欠いたキヴォトスが助かる道などないと、私の視野は狭まっていたのでしょう。
取り返しのつかないことまでしてようやく開発にこぎつけたビーム兵器は確かにジンに効きました。
ですがここまでのあがきすら羂索たちにとっては予定調和でしかなかったのでしょう。
我々が神の雷と呼んだものが、グングニールが使われたのです。

836真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:31:26 ID:uOAZyX7Y0
グングニールは一言で言えば大出力EMPによるライフライン破壊を目的とした戦略兵器です。
新たに開発した装備はことごとく破壊され、迎撃に当たった者たちは総崩れになり最高戦力を中心に大勢の死者が出ました。
同時に行われた対城装備のジンによる徹底的な破壊により既存の通信やネットワークも破壊され、最先端の技術力こそが武器であったミレニアムは特に深刻な被害を受け、その日に陥落。
栄華を誇ったミレニアムタワーは中ほどで折られ、似つかわしくない死肉を啄む烏の声が耐えなかったと聞きます。

私も直接確認できたわけではありません。
グングニールがミレニアム以外の自治区にも投下されたことで我々トリニティも事態をこれ以降正確に把握できなくなってしまったのです。
そんな中、ただでさえ派閥間での政治的牽制が特色としてあったトリニティでは噂が流れ始めました。
先の大敗はパテル分派が裏切り、ジンの軍勢に情報を売ったからだという噂です。
最初はどうにか止めようと、トリニティを纏めようと力を尽くしました。
しかし聞く耳を持つ者は少数でした。
皆、限界だったのです。
我慢して、頑張って、慣れないことに振り回され、不平等や理不尽に終えることがあっても、これもジンを退ける為と自分たちに言い聞かせていたのに、二度と起き上がれない程に負けてしまった。
こうなっては勝てないジンに牙をむくよりも、自分より劣った立場に石を投げることを選んでしまったのです。
派閥に分かれてトリニティの生徒同士で殺し合いが始まりました。
食べ物を隠すことに始まり、拳が、銃が、砲弾が飛び交い、酷い時には争いを止めようとしたものが双方から暴力を受け、火を着けられたことすらありました。

そんな風に自分の学園の維持もままらなかった私は、背後から刺される形で完全にしてやられてしまいました。
恐らくはこちらと同等かそれ以上の混乱があったらしいゲヘナの生徒会……万魔殿の戦力部隊がトリニティに侵攻してきたのです。
向こうの言い分としては先にこちらが万魔殿の丹花イブキという議員を暗殺したということでしたが私にはまったく覚えがありませんでした。
今になって当時の状況を考えれば、自棄を起こしたパテルの誰かが本当にそうしていたとしても、羂索の手の物がトリニティの誰かの仕業に見せかけてそうしていたとしても全くおかしくなかったように思います。

兎に角トリニティ生徒同士と万魔殿の戦闘が起こり、私は逃げることを選びました。
もう事態は誰の手にもどうにもできないと判断し、全てを投げ出すことにしたのです。
口ではそれでも私をホストと仰ぐ者たちに一時の措置と言いましたが、そんなつもりはありませんでした。
当然、卑怯者の私に罰が下りました。
最後の扉を開けに来たと語るジンの指揮者……プレイヤーの皆様にラウ・ル・クルーゼと名乗った男に直接襲撃されたのです。
私と共に来てくれた者たちは恐らく皆様に投与されたのと同じバグスターウイルスで殺され、私自身も両目をえぐられた上でそのウイルスを浴びせられました。
指揮が途切れる寸前、クルーゼはこう言いました。
「お休み桐藤ナギサ。まだ聞こえているならばせめて君の神に二度と目覚めぬことを祈りたまえ」
と。
どうにも私は、その祈りすら出来ずにずっと眠っていたようです。
こうして皆様に、醜態をさらしています。

……この終わってしまったキヴォトスに上塗りするように作られた不浄の地で殺し合いを強要される皆様、どうか、どうかお願いです!
こんな殺し合いに従わないでください……私たちと同じ地獄を味わうことはありません!
どうか、、私たちの学校をこれ以上血で汚さないで……

-----

もう光の無い眼を抑えて蹲ったナギサに代わってテレビ画面を見慣れた白い皇帝服の男が独占する。

『ありがとうフロイライン桐藤。
諸君らの静聴にも感謝する。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ』

彼の姿はテレビ局の外にあるらしく、巨大なロボットを背に屋外に立っている。

『諸君らが気になって仕方がないだろう背後の巨神たちはノワルの力を掌握した私が追い詰めた運営直属のNPCモンスター、冥黒の五道化の1人、凶星病理のコルファウスメットが切札を用いて召喚したものだ。
KMFやMSに親しみのある者ならばこれがどれほどの物か理解できることだろう』

そう言いながらルルーシュは移動し、膝をつくオフィーリアとアントニオに手をかざす。

『さて、すでに諸君らはフロイラインからもたらされた情報だけでキャパオーバーであろうから、私からの通達事項は簡潔に伝えよう。
私は、最強になった。「闇檻」』

2人は一瞬だけ黒い霧に包まれ、それが晴れると拘束された姿で現れた。

『「解除(リリース)」』

そしてその一言だけで拘束を解除すると、再び画面はルルーシュだけを映す。

837真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:32:01 ID:uOAZyX7Y0
『ああ、それからもう一つ。
ザフト軍将兵の諸君に通達だ。
君たちの優秀な指揮官、イザーク・ジュール隊長の協力への感謝として、我が神聖ブリタニア帝国はプラントを有効国家と認定する。
新たな拠点が決まればすぐに伝えよう。
そこでザフト軍へは可能な限りの補給をうけれることを約束する。
最も、補給中に吉が襲撃された場合は防衛に参加してもらうが、そのような事態が起きないようこちらも努力しよう。
では、また新居が決まり次第、引っ越しのあいさつをさせてもらう』

そう言い切るとテレビ画面は再び暗黒か砂嵐に戻った。

-----

「酷い様だな、凶星病理」

コルファウスメットが進んでいると背後から見知った声が聞こえて来た。

「おうリキエル……そう言うお前もその首どうした?」

「雨宮吾郎の医療知識を持つお前にごまかしは効かんな。
クロックハンズのハッカーに一杯食わされた」

一瞬だけなぜやられたにしたって数合わせAみたいなプレイヤーの名前が出てくる?と思ったコルファウスメットだが、自分もルルーシュに随分な目にあわされたしさもありんなんと流す。

「で、お前はどんな醜態をさらしたんだ?」

「ノワルの魔力と魔法を取り込んで超絶進化したアークゼロワンに気を取られ過ぎてギアスの方を喰らっちまった」

「……通りで直々に通達が来るはずだ。
これじゃあ実質ノワルが脱落していないどころか絶対遵守と近接能力を得たノワルが生まれたような物だぞ」

「全くだよ!挙句ホットライン奪われないように壊さなきゃいけねえわ奥の手のロボ召喚使わされる話で散々だ!」

「前者は兎も角、後者は宇蟲王ギラが破れかぶれで巨大化しない限り問題ないだけマシだな」

ロボ召喚はダグデドとほぼ同じことのできる宇蟲王ギラなら制限なしなら惑星規模のサイズに巨大化できるだろうことを考慮して用意された力で、極論本来の歴史の時のように等身大サイズの時点で倒せるなら死蔵していただろう能力だ。
例え世界を滅ぼしかけた氷の爆竜、サムライワールドをその命を代償に救った機神、その身を引き換えに超巨大隕石を砕き古代を守った守護神といった絶対にユニバース大戦に間に合わなかったが実績と性能は折り紙付きのロボたちの復元という苦労が骨折り損になったとしても宇蟲王が暴れすぎなかったということなら万々歳。
茅場どころか羂索すらそう考えているレベルで四凶は規格外なのだ。

「確かに俺もあのプライドの塊が巨大化するほど追い詰められる事態ってどんなだ?とは思うし保険の保険の保険程度の能力だと思ってたさ。
けど心意システム実装された今となっては呼んだロボがプレイヤーの便利アイテムに出来るかもしれない状態で放置されてんのはどうかとも思ってさぁ」

がりがりと後頭部を掻くコルファウスメットにエケラレンキスは表情を変えずに返す。

「別にいいんじゃないか。
もう出てきてしまった物は仕方ないだろう。
私としては聖園ミカがテレビ局……いや、もうテレビ局跡か。
あそこを目指す理由が出来ただけでお前の敗走に意味がある」

「……お前、そんなにパテルのプリンセスのこと気にしてたっけ?
レンキスは趣味が趣味だし仕事に差し支えない範囲でそうゆうことやるとは思ってたけど、性能テストでアリスクぼこった時も『返せ返せと無理な注文ばかり叫んで鬱陶しい』とか言ってた殺してたじゃねえか」

「我らは五道化。
この顔にされた意味と期待には応えるさ。
お前も天童寺さりなの所に行く気だろう?」

「まーね。
つーか、冷静に考えて色んな意味で一番性格愉快犯じみてるレンキスが唯一失態らしい失態のない五道化ってヤバいな」

「他は二人そろってこのザマで、もう二枠は制御不能だからな」

「あれはキョウリュウゴールド生きてても死んでても怒りのままに暴れるだけだしあんま気にしなくていいだろ」

それもそうか、と言ってザラサリキエルはコルファウスメットが元来た方へと歩き出した。

「もう行くのか?」

「ああ。
いつ誰が死んでもおかしくないし、どのユニバースロボも……いや、どの機体もそれより前に滅んでるから厳密には違うか。
兎に角早い者勝ちだからな」

「そうかい。ま、お互い楽しもうや」

運命の輪から外れた存在であるがゆえに異能力者や得意な人型でもないにもかかわらず五道化の素体に選ばれた男の顔で醜く笑って同胞と分かれた。

838真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:32:24 ID:uOAZyX7Y0
【エリア?-?/アビドス砂漠のどこか/9月2日午後4時15分】

【凶星病理のコルファウスメット】
状態:疲労(極小)
肉体:星野愛久愛海@【推しの子】
装備:黒いローブ、ガンダム・シュバルゼッテの起動鍵@機動戦士ガンダム水星の魔女
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
ドロップアイテム:????
道具:????
基本:五道化としてこのゲームを盛り上げる。
01:グラファイトとか綾小路とかもう後でいい。
  今はそれよりルルーシュだ。
02:まずはこの苛立ちを適当なサンドバックにぶつけるついでにルルーシュの余裕を削る。
  さりなちゃん辺りが丁度良いよな
03:あーあ、レンキスになんも強いコト言えなくなっちまった。
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※データストームの完全耐性を得ておりGUND-ARMのフルスペックを遺憾なく発揮できます。
※歴代ユニバースロボ@スーパー戦隊シリーズの能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。
ただし宇蟲王ギラ以外を相手に使うと技の持続時間や射程が短くなってしまうようです。
※一回限りに切札として三体の実寸大ロボを召喚しました。
 ソウルの無い状態なので五道化以外には基本起動できません。
 ですが心意システムなどが関わればどうなるか分かりません。

【死告邪眼のザラサリキエル】
状態:ダメージ(大) 自省(大) 首の裂傷(復元済み)
肉体:錠前サオリ@ブルーアーカイブ
装備:
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
ドロップアイテム:ヘイロー破壊爆弾@ブルーアーカイブ(マイ=ラッセルハートに強制譲渡済み)
道具:多数の銃火器@???
   ???のカード×?@???
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:守護者としての役割を全うする。
02:0005bとマジアアズールは……まあ仕方ないか
03:ひとまずルルーシュの方に向かう。
  桐藤ナギサがいる以上、聖園ミカも向かうだろう。
04:誰がエルちゃんだ、誰が
05:凶星病理も災難だったな。
06:流石は闇檻 一筋縄ではいかないが……あれほどの顔ぶれが揃うとはな
07:参加者を侮りすぎていたか。
  まったく、ルルーシュじゃないがイレギュラー続きには頭を抱えるな
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※ヘイローを有しています。銃撃などに足して異様なタフネスを発揮します。
※肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※死告邪眼はギアスキャンセラーをベースにした彼女の固有能力です。
 発動すると有効範囲内の異能力を無効化できますが、その有効範囲に常に自分が含まれます。
※アストルムの七冠の権能@プリンセスコネクト!Re:DIVEを模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。

839真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:33:29 ID:uOAZyX7Y0
-----

ルルーシュ含めたテレビ局地下の戦いを生き残った面々は実は放送ではじめてナギサのバックボーンを知った。
というのも、ナギサが地上に出た直後にルルーシュとこんなやり取りがあったのだ。

「お前、盲目だな?
しかもそうなってから殆ど時間がたっていないだろう?」

「ッ!わかるのですか?」

「身内に君と少し事情は異なるが、似たようなことになった者がいてな。
それで、君は何者だ?」

「私は……このバトルロワイヤルの根底を知る者です」

「なんだと?」

「私を見つけてくださった方々から聞きました。
ルルーシュさん、あなたは全ての参加者に呼びかけることができるそうですね」

「まさか独占してこそ価値のある知恵の実を手放せというのか?」

「はい。そうしなければ、この戦いは絶対に終わらないと確信を持っています。
どうか、どうかおねがいです」

これに対してルルーシュが折れて放送が行われたのだが、正直言ってあまりにあまりな過去に全員が先ほどルルーシュが言っていたように受け止めきれていない。

「ねえキャル、イザークは……」

「そっとしといてやりなさい」

「昔の上司がさっきまでの自分たちより軍人としてマズイことやっての知った直後だ。
殴られたくなきゃしばらく話しかけない方が身のためだぞ」

そんな中、かつての直属の上司がただの学生相手に行った所業を知ったイザーク・ジュールだけはしっかり腸が煮えくり返っていた。
何故所持するケミー達を取り込んでマルガムになっていないのかがまるで分らないレベルで、もう完全に一周して癇癪起こすより前に武器の手入れを始めている始末だ。

「……私も傍目から見ればあんな風に余裕がなく見えていたのかもな」

「それはこの場に居る誰にもわからんが、少なくともイザークに関してはどうにか本人が呑み込むのを待つしかあるまい」

イザークの放置を決め込み、残る一同は炎神大将軍の足元まで移動する。
そこではルルーシュと花村陽介が待っていた。

「陽介、もう動いて大丈夫なの?」

「ああ。たっぷり休ませてもらったからな」

「おい、俺たちが見つけた鳥女は何処やった?」

「淑女への言葉遣いを学ぶべきだな、龍園。
なに、心配はない。
君の用心棒が着いている。
色々な意味で君としては安心なはずだ」

「そうかよ」

「それはさておき、丁度いいタイミングに来てくれた。
どうやら彼女の方も終わったようだ」

ルルーシュに言われて顔を上げるとイチローに抱えられながらくるみが炎神大将軍から降りてくるところだった。

「くるみ、こいつの中身はどうだった?」

「結論から言うと全く分からない。
一応コクピットらしき部分には入れたんだけど、そこで完全に手詰まりになっちゃって、壊れてるのかどうかも分からない。
あと、これはただの印象なんだけど……壊れてるって言うより動かなくなってるって感じの方が近い気がする」

「……つまりどうゆうことよ?」

「本当に分かんないんだって!
私から言えるのは機械としては全く壊れてないってことだけ」

「では石像のような質感になっている理由も不明か?」

「うん。元々こうなのかすらわかんない」

「そう、なんだ」

そう言って沙耶香が何気なく炎神大将軍に触れた。
次の瞬間、炎神大将軍が金色に輝き始める。

「まさか……退避だ!頭を守れ!」

「ううん。大丈夫」

840真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:35:25 ID:uOAZyX7Y0
「沙耶香?」

見ると沙耶香の手荷物ブラックコンドルのレンジャーキーも淡い光を放っていた。
それに呼応するように両手で持てるサイズに縮んだ炎神大将軍が三つの炎神キャストに分かれて沙耶香の手に収まった。

「一体何が……」

「沙耶香ちゃん、それちょっと貸して」

「はい」

沙耶香から炎神キャストを受け取ったくるみは可動部分やスイッチなど巨大サイズでは確認できなかった場所を確認していく。

「からっぽだ」

「からっぽ?どの辺が?」

「このマシンの共通規格のスロットみたいになってる部分が全部空っぽになってる。
巨大化した時もこの状態だったんだとしたら、そりゃあ動くわけないよ」

「つまり代わりになる何かを用意出来れば……」

「そんなことさせない」

沙耶香がくるみの手から炎神キャストを取りあげた。

「なんのつもりだ?」

「この子たちは、可奈美と同じ。
眠っていたはずの所無理やりたたき起こされた。
それをまた無理やり動かそうなんてさせない」

「なぜそう思う?」

「大きかったこの子たちに触れた時、ロロの身体に触れた時と同じ感じがした」

「そうか……ならば沙耶香。
それらはジュール隊への本作戦への貢献に対する報酬としてそのまま所持を認めよう。
だが残る二機に関しては、流石に我々も譲れない」

そう言った瞬間今度は吹雪が吹き荒れた。
観ると、丁度炎神大将軍が出現した位置と向かい合おう場所に出現したバクレンオーの機体が氷に覆われていくところだった。

そして身体が完全に氷に隠れると地面をすり抜け地下へと降りていく。

「今度は何だよ……」

「直接調べたくるみを除き、あれには誰も直接触っていない。
そうだな?」

「そのはずだけど……」

全員で顔を見合わせるが、人間にもダイノアースの者に邪命生命体にも散々利用され尽くしたあげく、今度は悪しき三賢者に利用される悲惨極まるバクレンオーの経歴など知るはずもなく、一同は最後の一体の方を向く。

「まあ仕方あるまい。
どの道持ち運びなど出来るとは思っていない。
誰の手にも入らないというならそれはそれで好都合だ」

ルルーシュはアークゼロワンのプログライズキーを起動して変身。

「『沙耶香、その三つに分かれたロボをロロの遺体の用だったと評したな』」

「そうだけど……」

「『つまり本来あれらにはケミーの持つような悪意に呼応する心があるはずだ』」

<アークライジングインパクト!>

「待って!」

「サヤカ伏せなさい!」

アークゼロワンの掲げた左腕から赤黒い悪意の波動が放たれ、キシリュウジンを黒く染める。
しかしキシリュウジンの両肩から金色のパーツ……二体のコブラーゴが外れた。
外れたコブラーゴはみるみる小さくなっていき、バラバラの方向に飛んで行こうとする。

「『それが欲しかった!』」

しかしアークゼロワンは左虎からケミーカードを奪った時の要領でコブラーゴを二体とも捕まえて手繰り寄せる。

841真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:39:19 ID:uOAZyX7Y0

「『よし。これで一機は確実に私の物だ』」

「なるほど。奪われそうになると起動できなくなる仕組みがあると踏んでか」

「『厳密には違う。
ドライバーを装着者に合わせて上書きし最適化する能力を使ってあのロボ……キシリュウジンを渡しように上書きしようとした。
それを防ぐべくキシリュウジンは完全に沈黙しようとしたためエンジンキーの役割を果たすこれらを強制排出する……それを捕まえたのだ』」

そう言ってルルーシュは変身を解除する。

「さて、報酬の正当な分配も終わったことだが……諸君らはどうする?」

「アタシらはイザークが落ち着いてくれるまで待つつもりだけど、アンタらは?」

「あの羽女から聞きたい事は大体聞けたし……ルルーシュ、確認だが本当に綾小路はアッシュフォードに向かったんだな?」

「ああ。機装兵団(レギオンズ)には及ばないがそれなりの兵隊を預けた。
戦う気か?」

「どうだろうな。
テメェのギアスとやらでアイツの面がどのくらい腑抜けてるかによる」

「発電所のGNドライヴはいいのか?」

「自棄起こしてぶっ壊す奴がいるかもって不安はあるが、お前と違って兵隊整えられる訳でもないのに制限時間まであと丸一日以上残ってるのに穴熊ってのは性に合わねえ。
いくぞ十条」

「……だそうだ。
またな、皆。
ちょっとどころでなく善人とは言い難いのも居るが、無事でな」

「うん。またね」

「気を付けなさいよ!」

離れていく二人を見送り、ルルーシュ以外もイザークの居る方に戻った。

842真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:39:32 ID:uOAZyX7Y0
【エリアD-7/テレビ局跡地上/9月2日午後3時15分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:健康
服装:皇帝服
装備:アークゼロワンプログライズキー
   赤い飛電ゼロワンドライバー
令呪:残り一+一画
道具:チェスセット@現実
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ランダムアイテム×0〜2(アスナ)
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×6
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー@仮面ライダーW
   T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗、満艦飾マコ、ローラ姫のレジスター
   賢者の石@鋼の錬金術師
   万里ノ鎖@呪術廻戦
   光魔の杖@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
   青眼の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG
   アニールブレード@SAOシリーズ
   ウインド・フルーレ@SAOP 星なき夜のアリア (映画)
   カチドキロックシード(KLS-02)
   零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
   一護の腕(レジスター付き)
   コブラーゴ×2@スーパー戦隊シリーズ
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:『特記戦力』と戦う為の戦場としてアッシュフォード学園を占有する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークとノワルの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ロロ……お前は自慢の弟だ。
05:二代目ゼロは死ななかったか。
06:最低限欲しいものは手に入れた。
  自分で使ってもいいが……勇者に託してもいいな
07:残る四凶や五道化、それにあの忌まわしき父と同じ力を持つ眼鏡の女も必ず殺す。
08:黒き神とは今度こそもっと準備を整えてから戦いたいものだ。
09:清隆、ドラえもんとアッシュフォード学園は頼んだぞ。
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
11:龍園はそう動くか。イザークはどうかな?
12:花村陽介。お前の漢気、魅せてもらったぞ。
13:神戸しおとトランクスには精々頑張ってもらおうではないか。
14:桐藤ナギサの関係者がどう動くかな?
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとう、花村陽介、覇世川左虎、アスナにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※ノワルの力を奪いました。
 制限はノワルと同じ物がかけられていますが、アークの力を併用することである程度その穴を突けます。
※ノワルの令呪を二画奪いましたが、一画使いました。
 もう一画使うと闇檻を喪失してしまいます。
※他のプレイヤーに褒美や前金などと称して支給品を分けました。
 くるみ、タギツヒメ、イザークにももしかしたら何か渡しているかもしれません。

843真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:39:53 ID:uOAZyX7Y0
【イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEED】
状態:健康、顔に大きな傷跡、右腕欠損、義手装着、疲労(小)、ダメージ(小)、激怒
服装:ザフトの赤服
装備:ソウルメタル製の義手@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
   ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
   ケミーカード(マッドウィール、ガッツショベル、ゲキオコプター)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   量産型ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:この殺し合いから脱出する。
01:クルーゼ隊長……最早軍法会議にかけるまでもない!
02:まさかルルーシュの頼みでこんなことした挙句こんなものを見つけるとはな
03:ニコル……お前がもしクチナシのように体を利用されてるだけだとすれば俺は!
04:この武器といいクルミの手袋といい、かなり良い物だなな。
  持ち帰って我がザフト軍で使えないか?
05:ディアッカ……死に急ぎやがって
06:なぜアスランやキラとか言う奴の名前が二つも?
07:継ぎ接ぎ(真人)め。
  今度会ったらこの右手とお揃いにしてくれるっ!
08:陽介もどうにか無事だったか
09:スパナ、貴様の武器と仲間の力、使わせてもらうぞ。
10:ロロ・ランペルージ……ついぞ会えなかったな
11:桐藤ナギサには詫びの仕様もない。
12:ヒデヨシという男や黒い剣士(スザク)を警戒。
  いつかは倒さねばならんだろうが、流石にもっと装備と人員を充実させてから戦いたい。
13:次似た様なことがあれば右腕だけで済むとは思えんな。
14:五道化に四凶、か
15:ラクス嬢、ご無事で何よりです。
16:戦力増強のために設備の整った場所に立ち寄りたい。
参戦時期:第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦でディアッカと再会した後
備考
※ソウルメタルのホラーを討滅する力は呪霊にも有効なようです。
※『トラぺジウム』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』に関する知識を得ました。
※ニコルが羂索のような何者かに死体を利用されているだけの可能性を考慮しています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り二画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード、ホットライン
   ライドケミーカード(ホッパー1、テンライナー、スケボーズ、アッパレブシドー、レスラーG、アントルーパー)@仮面ライダーガッチャード
   ガシャコンバグヴァイザー(?)
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
  あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザークが落ち着いたら今後の方針を話し合う。
03:ロロ、ルルーシュ……アンタら本当に、、。
04:今度継ぎ接ぎ(真人)に会ったらイザークの右手の礼もサヤカの乙女心を傷付けたツケも全部払ってもらうわ
05:今回の件でサヤカが恋愛にビビりすぎちゃわないかが心配。
  本当の恋って、すごくいい物なのよ。
06:シェフィ、アンタも無事でいてよね。
07:ケンジャクたちはなんつーもんを使ってるのよ
08:グラファイトとは次に会ったら必ず倒す。
  ま、そうなるしかないわよね。
09:あの銀髪野郎(ジンガ)ムカつく、本っ当にムカつく
10:ナギサはこの後どうなるのかしら?
11:こんなゴーレムが必要になるような奴をプレイヤー側で呼ぶな!
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※スチームライナーはテンライナーへの再錬成、テンライナーからスチームライナーへの再錬成は自在に行えますが、ケミーライズにより大型状態で召喚、プレイヤーの運搬を行ったので9月2日14時00分まで再度の大型状態での運用は不可能です。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。

844真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:40:23 ID:uOAZyX7Y0
【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:破面化、疲労(中)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)、可奈美の死に複雑な想い、ロロへの複雑な感情(大)
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:ロロ……結局お前は、どうだったのだ?
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたが……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのギアス……我にも通じるのだろうか。
08:継ぎ接ぎの男(真人)も銀髪の男(ジンガ)も、荒魂より質が悪いな。
09:……ルルーシュ、見定めさせてもらうぞ。
10:ナギサ……お前も温もりをすべて失ったのか。
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。
※沙耶香、ロロ、キャル、陽介とも情報交換を行いました。
※破面化を果たしました。能力全般の上昇に加え、破面の基本的な能力が使用可能です。その他の影響は後続の書き手に任せます。

【糸見沙耶香@刀使ノ巫女】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(中)、真人への嫌悪(大)
   可奈美の死及び舞衣達が人を殺したかもしれない事への動揺、ロロやイザークたちへの罪悪感(中)
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
   時透無一郎の日輪刀@鬼滅の刃
   魔導輪ザルバ@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(沙耶香)、ホットライン
   ブラックコンドルのレンジャーキー@海賊戦隊ゴーカイジャー
   戦極ドライバー(斬月)
   炎衆の炎神キャスト@スーパー戦隊シリーズ
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:ロロのこと、もっと知りたかった。
02:可奈美は……私が止める。
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。
  でも…あの悲しむ様は……。
04:あの継ぎ接ぎの人、すごい嫌だ。
05:ロロのこと、多分羨ましい。
  タギツヒメのことも…きっと…。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:未来のことは知らないけど、よろしくね。姫和。
08:恋とかはまだよくわからないけど、ありがとう、キャル。
09:大丈夫、もう利用させないよ
10:ゼイン……あなたも継ぎ接ぎや可奈美を操ってる人みたいな存在ならその時は……
11:舞衣達が、人を殺した……?
12:この子たちを利用させない。
13:姫和、気を付けてね
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロからコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※ジュール隊のメンバーからコズミックイラ、アストルム、東西南北(仮)、自称特別捜査隊などの情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を脱しました。

845真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:40:46 ID:uOAZyX7Y0
【花村陽介@ペルソナ4】
状態:背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(大)、絶対遵守のギアス(極大)、入眠
服装:八十神高校制服(冬服)、サングラス(現地調達)
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1、熟練スパナ@ペルソナ4
   オメガバゼラード(風)@グランブルーファンタジー
   GK-06ユニコーン@仮面ライダーアギト
思考
基本:殺し合いはしない
00:『まともに動けるようになるまで休む』
01:ここにはヤベーのしかいないのかよ
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
  けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロもルルーシュもマジでなんなんだよ……。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:キャルちゃんたちも無事だったのは良いけどまた戦いかよ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:やっとまともな武器手に入ったぜ
08:つかなんでペルソナ使えるんだ?
   テレビの中じゃねえのに。
09:この後どうなんのかな、マジで
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊、ロロにタギツヒメと情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。
※ルルーシュのギアスの影響を受けました。
 異能力破りの異能力を喰らわない限りこれ以上ルルーシュのギアスの影響をうけません。

【大河くるみ@トラぺジウム】
状態:健康、神への感謝(大)
服装:いつもの私服
装備:技術手袋@ドラえもん
   キカイソダテール(残り3/5回)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
   ケミーカード(ダイオーニ)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:死にたくはない。
01:怖いけど、何もしない訳にはいかない。
02:イザーク、イチローとテレビ局を目指す。
03:東西南北(仮)の皆にはどうか無事でいて欲しい。
  どうか継ぎ接ぎ(真人)や秀吉や黒い剣士(スザク)みたいな人に会ってませんように……。
04:イザークが落ち着いたら方針を話し合う。
05:ゆうちゃんは無事でよかったけど、美嘉ちゃん……。
06:美嘉ちゃんを助ける為にも今私の出来ることをする。
07:沙耶香ちゃん、大丈夫そうでよかった
08:ロボが死体みたい、か
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※組み立てた01をイチローと名付けました。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

【イチロー(NPCモンスター・非参加者)@キカイダー02+ロワオリジナル】
状態:戦闘可能
服装:全裸(ロボットの為)
装備:サン・ライズ・マシンガン、サン・ライズ・ビーム(充電不足の為現状使用不可)
道具:なし
思考
基本:造物主である大河くるみを守護する。
00:くるみを守護する。
01:イザークと行動を共にする。
02:くるみは、、大丈夫か
03:仮称継ぎ接ぎを撃破しきれなかったのは当機痛恨の失態である。
04:豊臣秀吉、仮称継ぎ接ぎ、仮称黒の剣士を非協力対象と判断。
05:使命に心を籠める行為は当機には現状不要なタスクだ。
  しかし……もし実行する時が来てもノープロだ。
  くるみたちがしてくれたようにすればいい。
06:新装備開発、改造などによる戦力増強を行う。
07:夢、か。
備考
※くるみにより量産型01の残骸からくみ上げられたロボットです。
※キカイソダテールを二回投与され発声機能、会話能力を習得しました。
 それ以外の変化については後の書き手様にお任せします。
※サン・ライズ・ビームは充電さえ出来ていれば何度でも使えますが、そもそも一回の電力消費がすさまじいのでその時の蓄電残量次第ではその場で行動不能になってしまいます。
※ラクス・クラインたちから電話越しスザクなどの情報を入手しました。

846真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:41:05 ID:uOAZyX7Y0
【全体備考】
※D-7テレビ局跡地下にバクレンオーが自らを封印し、炎神大将軍は炎神キャストに戻って沙耶香が所持しています。
キシリュウジンは実寸大のままですが、コブラーゴなしには絶対に起動できません。

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中継を終えた桐藤ナギサは生き残りの車両の一つである乗用車に待機させられていた。
真面な屋根のあるスペースが少なく、目の見えない彼女をいざ逃がすとなるとバグヴァイザーに収納する以外ではこれなら車を発進させるだけで済むからだ。

「なあ、桐藤のお嬢ちゃん」

そんな彼女を伏黒甚爾が必殺技用のT2ガイアメモリを報酬に護衛していた。

「なんでしょう?」

「その目じゃあ何かと苦労するだろうが、どうしてここに残るんだ?
喋らせたいことを全部喋らせた今、皇帝の坊主くんがこのまま丁重に扱う保証もないだろ?」

「今の私は光、名声、財産……友達や帰る場所も何もかも失った身。
言わばはぐれ者です。
いずれ調べられてわかる事を楔に死んだも同然の我が身を守り生き恥を晒すより、まだあなた方のような生きて前に進む人々の糧になるのが道理でしょう」

「道理ねえ」

伏黒はナギサを車から引っ張り出すと、受け身どころかタタラを踏むことすら出来ない彼女を床に組み伏せエンジンブレードの刃を白く細い喉に這わせた。

「じゃあここで死んでも良いのか?」

「出来れば、なるべく早くお願いできますか?
もう苦しいのも辛いのも散々なので」

包帯越しに二つの意味で光を失った瞳を見た気がして伏黒は刃を納めた。

「……金無し女の頼みを聞くなんざ御免だ」

そう言ってナギサを立たせると持ち前の聴覚で龍園たちが来たのを察してその場を後にした。

「ナギサ嬢、大丈夫ですか?」

「はい。ありがとうグレイス。
……トウジさんもあなたの主人も良い人かは分からないけど優しい方ね」

ルルーシュにあてがわれた看護師型AIの手を借りて立ち上がるナギサ。
令嬢らしい背筋の伸びた立ち姿からは、最初にロロが沙耶香に感じたような風が吹けば折れてしまいそうな雰囲気があった。

847真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:41:43 ID:uOAZyX7Y0
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:疲労(中)、軽度〜中度の火傷
服装:仕事用の私服
装備:アクセルドライバー&T2アクセルメモリ@仮面ライダーW、エンジンブレード&エンジンメモリ@仮面ライダーW、衛藤可奈美から譲渡されたドロップアイテム×1、
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
令呪:残り三画
道具:100万が入ったトランクケース@現実、バショー扇@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働くが、まあ上乗せは欲しいところ。取り敢えず追加分その2で更に契約更新。
02:加茂憲倫、と来たか。
03:まさかこんなところで禪院家の術式が見れるとはな。
04:化け物よりもヤバいことするじゃねえかルルーシュ。
05:…強さは兎も角、アレはアレでやべぇな衛藤のお嬢ちゃんは。
06:道理ねえ。
   ……報酬分の働きはしたぞ、皇帝坊主。
07:コルファウスメットは殺す。
参戦時期:死亡後
備考
※可奈美からドロップアイテムを貰いました、更に契約更新を決める程度には伏黒にとっても価値のあるもののようです。
内容は後続にお任せします。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園から聞いています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(中)、精神的疲労(小)、綾小路への怒り
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア
   モビルワーカー(オルガ機)@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。
   一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
02:こんなロボが必要な相手……居たな、少なくとも一人は
03:アッシュフォードに行ったんだってな、綾小路
04:他の同じ学園の連中は……まあ、合流する必要もねえか。真鍋と軽井沢は死んだみたいだが…。
05:グラファイトの言う友を探してみる。
06:仮面ライダーに変身する道具や起動鍵を、なるべく多めに手に入れておきたい。
07:蛮野はイマイチ信用出来ないが、レンのお守をする気も無い。
08:もし、衛藤のように綾小路の野郎が操り人形にされてたらその時は……俺の手で終わらせる。
09:やっと起動鍵が手に入ったな
10:キヴォトスね……ま、知ってる奴が居たらあってみるのも手か。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
※個性『スティール』により肉体を鉄のコーティングが可能になりました。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察もしています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。

848真贋バトルロワイヤルZERO ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:41:54 ID:uOAZyX7Y0
【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:疲労(中)、精神ダメージ(大)
服装:平城学園の制服
装備:十種影法術@呪術廻戦、無銘刀・白@戦国BASARA3
令呪:残り二画
道具:治療キット@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン
   ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、グルメテーブルかけ@ドラえもん
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る。
00:…可奈美……母さん……。
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。
   あくまで監視のため。
02:沙耶香はまあくるみたちが居れば大丈夫だとは思うが舞衣と薫は……
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
04:あのロボで本当にあの黒いのと同格の何かを倒せるのか?
05:レンのことが気掛かり。とりあえず生きてはいるようだが…残して良かったのだろうか。
06:巨大、ロボ?
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
※十種影法術は現在玉犬、鵺が調伏済みです。また他にひとつ式神を調伏しましたが何を調伏させたかは後続にお任せします。
※可奈美に舞衣、薫、沙耶香、タギツヒメ、リュージ、アンク、はるか、チェイス、果穂、千佳、
ギギスト、スザク、やみのせんし、キラ、アスラン、流牙、ミカへの伝言を頼まれています。各々の内容は後続にお任せします。
※放送で名前を呼ばれた順=死亡した順なのでは?という考察と、レジスターについての考察、エターナルの変身者が大道かディアッカのどちらかという推察も龍園から聞いています。
※その他可奈美と何を話したかの補足等も後続にお任せします。


【桐藤ナギサ@ブルーアーカイブ+仮面ライダーエグゼイド+ロワオリジナル】
状態:困惑(大)、盲目
服装:ティーパーティーの制服
装備:なし
令呪:なし
道具:なし
思考
基本:???
00:どうかこれ以上キヴォトスが血で穢れませんように
01:???
参戦時期:???(彼女の時間軸はエデン条約編より前から分岐している)
備考:
※キヴォトス人の要素を持ったバグスターです。
 状態としては檀正宗の配下として復活した九条貴利矢に近いです。
※補助のためにグレイス@Vivy -Fluorite Eye's Song-がついています。

849 ◆Drj5wz7hS2:2025/08/02(土) 22:42:08 ID:uOAZyX7Y0
投下終了です

850 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 17:54:51 ID:lIY44TOo0
予約期限は超過していますが、投下させてもらいます。

851走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 17:57:09 ID:lIY44TOo0
「うおっ、危な!」

 G-12エリアにて、先の混沌を引き起こした一人であるレジィ・スターは、NPCに追われていた。
 その相手とはブランウイング。仮面ライダーファムと契約したミラーモンスターだ。先の混戦で主を失ったブランウイングは、ほどなくしてエネルギー不足で消滅する定め。しかし、その事実を知らないレジィは、捕食されないために飛来する怪物から逃げ回る羽目になっていたというわけだ。

(まったく不運だなぁ……しばらく身を隠して、手負いの輩を狙うつもりだったのに)

 ブランウイングの翼を転がるように避けたレジィは、憎々しげに舌打ちをした。
 ひときわ大きな爆発が起きた後、倒壊したビルの陰に身を潜めていたのを発見されたのは偶然で、レジィ自身の落ち度ではないと自認しているからだ。

(とりあえず、この追いかけっこを続けるのも時間と体力の無駄だ)

 レジィは溜息をつくと、Uターンして再び飛来してくるブランウイングに視線を向けた。
 そして彼我の距離が50メートルを切るが早いか、レシートを取り出して「再契象」を発動。
 その瞬間、ビル街には不釣り合いな和風の平屋が、二者の間に出現した。

(建築面積30坪の木造平屋。これで殺せるとは思わないけど、足止めにはなるでしょ)

 レジィの推測通り、ブランウイングは平屋に激突して動きを止めた。
 窓ガラスはほとんど割れて、木材はギシギシと軋む音を立てているが、レジィは無傷である。
 ブランウイングの最高時速は400㎞にまで達する。それほどの高速なればこそ、予期せぬ障害物への激突は不可避だった。

「……あれ、もしかして倒せた?」

 時を同じくして、エネルギー不足でブランウイングは消滅し始めた。
 レジィはいささか拍子抜けしたように「やれやれ」と呟くと、平屋に背を向けて周囲に意識を向ける。
 それなりに目立つ戦闘をしたことで、また参加者や化物を呼び寄せるのは面倒だと考えたのだ。

「さて、トンズラこくとするかね……っと、その前に」

 ふらついたのを自覚して、レジィは即座に次のレシートを呪力で焼き切った。
 混戦から間を置かずに追いかけ回されて疲労していた心身を、回復するための手札を使う。

「名湯『幸楽荘』1泊2日。岩盤浴&全身マッサージコース。これで万全だ」

 肌つやの良くなったレジィは、満足そうな表情で悠然と歩き出した。



 一之瀬帆波は、G-12西端のコンビニで食料品を確保していた。
 スポーツドリンクやゼリー飲料など、手軽に栄養補給できるものをカゴに入れていく。
 レジを通さないことに一抹の罪悪感を抱きながら、商品を手早くレジ袋に詰めて休憩室へ。

(まだ気絶してる……大丈夫かな)

 休憩室のソファには、学生服を着た黒髪の少女が寝ていた。
 先の戦闘の余波で気絶した彼女を、帆波はガンダム・バエルで運んできて横たえたのだ。
 身体に大きな傷こそ無いが、もう一時間以上は気絶したままなので心配は募る。

(それに、ヤマト准将も……無事だと良いんだけど)

 ――ホナミさん!君はテレビ局に行ってくれ…!

 スポーツドリンクを一口飲んで、帆波はヤマト准将の絞り出すような声を思い出す。
 氷竜の暴れるさまを目の当たりにして、それを「止めなければならない」と臆することなく追いかけていくのは、並大抵の精神力では出来ない。

(まるで本物の軍人さんみたい。なんて、今更だけど)

 これまでもヤマト准将は、絶えず周囲を警戒しながら声をかけてくれていた。
 NPCに襲われたとき主に対処してくれたのも、ガンダム・バエルの操作方法をレクチャーしてくれたのも、ヤマト准将だ。
 そうした時間を過ごしてから、今こうして独りになった帆波には、ヤマト准将という人間の優しさが、ことさら身に染みて感じられるのだった。

852走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 17:59:20 ID:lIY44TOo0
「戦場は甘くない……か」

 帆波はそう小さく零すと、ふたたび少女に目を向けた。
 少女の傷ついた制服の腰まわりには、特徴的な形状のベルトが巻かれている。
 直感的に、帆波は理解できた。これは戦うためのアイテムであり、少女は戦いを決意した人なのだと。
 まだ名前も知らない少女を前に、帆波は思いを巡らせた。

(この子から話を聞きたい)

 これまでなし崩し的に戦闘に参加していた帆波としては、同年代の少女がどのように決意を固めて戦場に赴いたのかが、無性に気になったのだ。
 そして少女の頬についた土の汚れを濡れタオルで拭こうとしたとき、休憩室のテレビがついた。
 主催者による放送の時間である。



「へぇー。まだ殺されてなかったんだ、あの生意気なガキ」

 レジィは半壊した診療所に置かれたテレビで、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアによる放送を見ながらひとりごちる。
 ゲームの開始直後に見たときは「早晩に殺されるだろう」と気にも留めなかったが、その予想は見事に外れたらしい。

(なかなかどうして、優秀な手合いなのか?それとも強力な駒が掌中にあるのか)

 あれだけ自分に注目が集まるように仕向けておきながら、ここまで生存しているのだ。
 ルルーシュとその側近の綾小路への認識は、改めておく必要があるだろう。

「それに、茅場晶彦の放送も見過ごせる内容じゃない」

 ゲームマスター・茅場晶彦の告げた死者の数は、参加者の三分の一に到達する勢い。
 同時に“ビターな刺激”と称して提示されたラスボスのひとり“ヒースクリフバグスター”。
 いろいろと考察しがいのある放送を立て続けに見て、レジィはつるりと顎を撫でる。

「さぁて、どうするかな」

 レジィは診療所から新たなドローンを飛ばしていた。
 強大な参加者やNPCを見てもなお、レジィはスタンスを大きく変更するつもりはなかった。レジィの最優先は殺し合いを楽しむことで、他者と協力するつもりは毛頭ない。
 しかし、二つの新たな放送を経て、思考の更新を行うことにした。

(ルルーシュたちを一大勢力と考えるなら、彼らの情報は重要だ。
 それにゲームマスターの発した『心意システム』についても同様だろう)

 ルールやシステムを知らずにゲームをプレイするのは、およそ無謀な行為だ。
 とくにレジィにとって未知の単語『心意システム』の情報は是が非でも得たいと考えて、穏当に話の出来そうな相手を探すことにしたのである。

「ま、そう都合よく行くとは思ってない……おや?」

 手始めにと周辺のエリアを飛ばしていたドローンに、一人の女子生徒が映り込んだ。
 顔かたちは見知らぬ少女だが、その臙脂色の上着には見覚えがある。

「この制服。あの綾小路クンとやらと同じカラーリングだよねぇ?」



 帆波は二つの放送を見て、動揺した心を落ち着けようとしていた。
 災害でもなければ耳にしない数の死者に、女子高生が平気な顔でいられるわけもない。
 最初の放送に輪をかけて眩暈のしてくる内容に、帆波は呆然自失になりかけたのをすんでのところで耐えると、新鮮な空気を求めて店外へと出る。
 胸に手を当てて深呼吸。それから目を開いてヤマト准将の飛んで行った空を見た。

(ひとまず落ち着かないと……あっ)

 その瞬間、近くに浮いているドローンと目が合った気がして、帆波は血の気が引いた。
 反射的に店内へと戻ると、思考を巡らせる。

(あれが危険人物のアイテムだったら、不味い……!)

853走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 18:04:41 ID:lIY44TOo0
 自分自身はともかく、気絶した少女を抱えて動くのは帆波の力だけでは難しい。
 となればガンダム・バエルを起動するしかないが、それはそれで目立つことに変わりない。
 最善は少女に起きてもらい、ドローンから気づかれないように動くことだ。
 そう結論づけた帆波は、休憩室へと駆け足で戻る。

「ねえ、起きて!お願い!」

 しかし、声をかけて身体をゆすっても少女の反応はない。
 数分間しても一向に目覚めないので、帆波は次善の策を考える。

(仕方ない、バエルでこの子を――)
「いらっしゃいませ〜♪」
(ッ!?)

 休憩室の外から響いてきたのは、男性の猫なで声。
 いやに芝居がかった声色に、むしろ警戒心を引き上げる。

(不審者……!)

 休憩室のドアをそっと開いて窺おうとした帆波は、そこで異様なモノを目にする。
 レシートを大量に集めた蓑らしきものを身に着けている長髪の男。
 サウザンドジャッカーを握る手も、心なしか汗ばんだ。

(不審者だ……!!!)

 確信した帆波は逃げる策を講じるが、相手はめざとく休憩室を見つけて向かってきた。
 ぐいと力強くドアノブを引かれてしまえば、帆波の細腕では抗えない。

「やあお嬢さん。お名前は?」
「……人に名前を名乗るときは、そちらから名乗ってもらいたいです」

 自分の声の震えを自覚して、帆波は悔しさに歯噛みした。
 これでは相手に対して平静を保てていないのがバレバレだ。

「俺はレジィ。レジィ・スターだ」
「……私は一之瀬帆波です」

 相手を刺激しないために、帆波は本名を教えた。
 嘘を教えて露呈したときのリスクは大きい。

「少しお話を聞かせてもらえるかな?」
「……なんでしょうか?」

 こちらを値踏みするように見てくるレジィに対して、努めて冷静に応答する帆波。
 しかし、次の問いは帆波の予想していないものだった。

「綾小路清隆クンのこと、知ってるかい?その制服、綾小路クンと同じだろ?」

 レジィの口から出てきた名前に、帆波は素直に動揺していた。
 同じ制服ではあるが綾小路清隆のパーソナリティは知らない、と答える逃げ道はある。
 一方で帆波は、事実として綾小路清隆に幼気(いたいけ)な恋心を利用されている。
 二つの思考はないまぜになって、結果的に帆波が応答するまでの微妙な間を作った。

「知りません。制服が同じなのはたまたまで――」

 ドン!と拳を壁に叩きつけたレジィに、帆波はビクッと萎縮した。

「…………知りません」
「はいウソ♡」

 直前の行動とは裏腹の軽快さに、帆波は思わず「え?」と返してしまう。

「“目は口程に物を言う”……つまらない嘘はいいからさ、答えてもらえる?」

 男の圧力に、帆波はいよいよヘルライズプログライズキーを使う覚悟を決めた。
 狭い店内で放てば帆波や少女もどうなるか分からないが、それ以上に今は窮地だと。
 胸ポケットからヘルライズプログライズキーを取り出した――瞬間。

「はい、それダメ」
「痛っ!」

 帆波はレジィに腕をひねり上げられた拍子に、ヘルライズプログライズキーを落とした。
 そのまま両手を後ろ手にされて、サウザンドジャッカーも弾き落されてしまう。

(この人には敵わない。私、ここで殺されるのかな……?)

 あまりの実力差に、帆波の胸中には無力感が渦巻いていた。
 このままなす術もなく殺されてしまう、という最悪の展開が頭をよぎる。
 レジィの手に力がこもるのを感じて、帆波は思わずギュッと目をつぶった。

「その手を放してください」



854走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 18:05:17 ID:lIY44TOo0
井ノ上たきなは状況を打破する策を講じていた。
気絶から目を覚ましたとき、既に一之瀬帆波とレジィ・スターは剣呑な雰囲気を醸していた。
そして案の定、レジィは帆波に対して圧力をかけ始めた。言葉の圧と暴力の圧だ。
リコリスとして、悪人の実力行使を見過ごせるはずがない。

「……もう一人いたのか。誰だ、お嬢ちゃん」
「井ノ上たきなです」
「たきなちゃんね。この状況は理解してる?
 帆波ちゃんの生殺与奪の権は俺にあるんだけど」

帆波の手を身体の後ろで押さえながら、レジィはたきなに不遜な態度を取る。
それに対してたきなは平然と答えた。

「把握しているつもりです」

たきなはソファの傍らに置かれていたリュックから、あるアイテムを取り出した。

「なにそれ、花火?ふざけてんの?」
「ふざけていません」

ロケット花火。ユージオから分配されたそれの先端をレジィに向ける。
するとレジィは、苛立ちの混じる声をたきなに向けてきた。

「あのさぁ、降伏するなら楽に殺してあげるよ?
たかがロケット花火で、どうやってこの状況を……」

レジィの言葉を最後まで聞かずに、たきなはロケット花火を発射した。
ただのロケット花火ではない。“令呪を消費して使用する”ロケット花火だ。

「な!?」

火力に速度、ついでに派手さも倍増したロケット花火はレジィの顔面に直撃。
ただのおもちゃに令呪を使う奇策で以て、レジィの虚を突くことに成功したのだ。
そのまま間髪を入れずに、デザイアドライバーにマグナムバックルをセット。

『SET MAGNUM』
『READY FIGHT』

電子音と同時に、たきなの身体を覆うように装甲が現れ、マグナムフォームへと変身した。

「帆波さん、逃げてください」
「え、でも……」
「早く!」
「……ありがとう!」

帆波はわずかに逡巡してから、コンビニの外へと駆け出して行った。
いきなり指示をされると当惑して動けない者は多い。帆波がそのタイプではなかったことに安堵して、たきなは改めてレジィへと向き直り言い放つ。

「ここで貴方を制圧します」
「おほっ、自信たっぷりだ」

どこか楽しそうな態度のレジィを不審に思い、たきなは仮面の下で眉をひそめた。
まじまじと見れば珍奇と評するのが相応しい服装だ。ロケット花火ではないが、奇策を打ってくる危険性も視野に入れつつマグナムシューター40Xの銃口を向ける。
照準は脚に。「制圧する」と宣言したのは嘘(ブラフ)のつもりではない。

(真島のように食えない相手……付け入る隙を与える前に、撃つ!)

飄々(ひょうひょう)とした油断ならない人物。
似たところのある敵を相手にした経験は、たきなの引き金を軽くした。

「おほっ、容赦ないね」

狙い澄まして一発。続けざまに二発。それらの銃弾を、レジィは大きく転がることで避けた。
そのままコンビニの外まで転がり出たレジィは、きょろきょろと何かを探す様子を見せた。

(この状況で逃げた帆波さんを……?)

855走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 18:05:45 ID:lIY44TOo0
G-12エリアはほとんど壊滅状態で、高い建物は数えるほどしかない。
つまり、見通しが効くということでもある。事実として、遅れて店外に出たたきなにも帆波の後姿は視認できた。

「帆波さんの元へは行かせませんよ」
「まさか。勝負しよう――正々堂々と」

言い終わるが早いかパチン!と指を鳴らすレジィ。
するとレジィの真横に突如トラックが出現し、なんと運転手不在のまま走り出した。
咄嗟に身構えるたきなだったが、トラックはたきなを素通りして後方へと加速していく。

「なっ!?」
「おや、危険運転かな?このままだと彼女、轢かれちゃうよ?」

その言葉でトラックの標的は帆波であることに気づいて、たきなはレジィを睨みつけた。

「貴方は……!」
「君は知らないだろうけど、呪術師は嘘ついてナンボなのさ」

ニヤリと笑うレジィ。
たきなの奇策に対する意趣返しだとしても意地が悪い。

「ちなみに銃でパンクさせても無駄。帆波ちゃんを追尾させているから」
「くっ……!」

まさに考えていた方法を嘲笑うように否定された。
たきなはレジィの評価を“底意地が悪い”に下げて、それならばと別のアイテムを取り出した。

『SET BOOST MARKⅡ』

ブーストフォームマークⅡ。ある男の覚悟で誕生した新たなフォーム。
気力・体力の大幅な消耗を伴うため、気軽に切れる手札ではないが、今は切るべき時だ。

『READY FIGHT』

瞬間移動に等しいスピードでトラックの正面に回り込むと、ストレートを叩き込む。
猛スピードのトラックを止めるための方法に、たきなはゴリ押しを選んだのだ。

「止まれえええ!」

五発。十発。二十発。
衝撃を受けながら二十四発の拳を叩きつけたとき、ようやくトラックは静止した。
たきなは安堵から深く息を吐いて、次いでレジィを制圧せんと顔を上げた。
その時である。

「はい、ご苦労さん」

背後からニヤついた声が聞こえて、たきなは腹部に痛みをおぼえた。
自分の腹部を見ると、そこから普通あるはずのない黄金の槍が飛び出していた。
サウザンドジャッカー。コンビニで帆波が使おうとして、レジィに弾き飛ばされた武器だ。

「ごほっ」

たきなは口内から溢れてくる血液にむせて、その場に膝から崩れ落ちた。
ざらついた地面を頬で感じていると、リコリスとして学んだ医療知識が思い出された。

(これは……間違いなく内蔵が傷ついている)

適切な応急処置を施さなければ、失血死は免れないということだ。
しかし、都合のいい救援は見込めない。たきなの脳は冷静に思考していた。
また、レジィをここで見逃すのは帆波を危険に晒すのと同義。

(帆波さん……どこまで逃げられたでしょうか)

856走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 18:06:09 ID:lIY44TOo0
一之瀬帆波。奇しくも先の混戦で助けられなかった望月穂波と同じ、ホナミだ。
たきなは二人のホナミについて、全く何も知らない。それでも彼女のことを助けたいと思うのは、ひとえにリコリスの精神が根付いているからである。

「さて、変身が解除されたらアイテムを追いはぎして、そしたら帆波ちゃん探しだ」
(それだけは、ダメ)

どんどん視界が霞んでいく感覚を、たきなは味わっていた。
その恐怖に抗いながら、マグナムシューター40Xの照準を“あるもの”へと向ける。
つい先程、トラックを止める過程で気づいたそれに一縷の望みを託して、たきなはトリガーを引こうとしたが、腕に力が入らない。

(――そうだ!)

たきなは令呪のことを思い出して、一切の迷いもなくそれを使用した。
生命力を失いかけているたきなの身体が、令呪によって一時的に活性化する。
本来ブーストをかける効力は、たきなの生命力減少に伴い、たきなの力を平常時まで戻す程度の効力しか働いていない――だが、たきなにとってはそれで充分だった。

(どうか、逃げてください)

想いを込めた一条の光が走る。
命中の感覚をおぼえたのと同時に、たきなの全身から力が抜けていく。

(千束のように上手くは行きませんね……)

たきなより非効率的な思考回路ではあるが、たきなより優秀なリコリス。
相棒と呼ぶべき間柄の少女を思い出して、井ノ上たきなは命の花弁を落とした。

【井ノ上たきな@リコリス・リコイル 死亡】



「やっと力尽きたか。手間取らせやがって」

「しかし、最期は見当違いな場所に撃ってたね。
おおかた既に目が見えなかったか、それとも――」
「――――!!!」

レジィの嘲笑をかき消したのは、獰猛な咆哮だった。
ハッとした表情で、咆哮の主を探すレジィ。この声には聞き覚えがある。

「このガキ!最期の一発で怪物(モンスター)を起こしやがった!」

つい数時間前の混戦でも暴れていた、轟竜ことティガレックス。
戦闘で負ったダメージを回復するために、爆風に紛れてその場を離れていたモンスター。
それをたまたま発見したたきなは、銃の一撃を食らわせることによって注意を引いたのだ。

「―――!!!」
「オイオイ、勘弁してくれ!」

休息を妨害された怪物は怒気を孕んでレジィのもとへ突進してくる。
つい先程も鬼ごっこしたばかりだと、レジィは辟易した様子で構えた。



帆波は道路を走りながら泣いていた。
ヤマト准将に守られて、井ノ上たきなに逃がされて。
この状況で何事も成せていない帆波自身に、挫けそうになっている。
挫けそうな心を保たせているのは、テレビ局に向かうという強い意志。
綾小路清隆に再会する。その一念のみで、一之瀬帆波は走る。


【エリアG-11/中央/9月2日午後12時30分】
【一之瀬帆波@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、精神的疲労(大)、綾小路清隆への……(大)
服装:高度育成高校の制服(女子)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ガンダム・バエルの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ランダムアイテム×1〜2、ホットライン、ビスマルクのリュック
思考
基本:このゲームから生還する。
00:テレビ局へと急ぐ。今の私には、それしか……。
01:綾小路くん……人が苦しんでる間に楽しそうだね?
  一言いいに行くから待っててよ?
02:ラウ・ル・クルーゼの目的は?ヤマト准将やラクスさんのことも気にかかる。
参戦時期:2年生編12巻終了後から
備考
※キラ准将と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されていました。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。



857走れ正直者 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 18:06:30 ID:lIY44TOo0
結果的に、たきなの目論見は成功したと言えるだろう。
レジィはティガレックスへの対処で大幅に足止めを食らい、逃げた帆波を完全に見失った。
それに加えて、起動鍵という貴重なアイテムを一つ消費させられもした。

仮にも轟竜という異名で恐れられたモンスター。
数多くのハンターを震撼させてきた凶暴性は、多少のサイズダウンでは鎮まらない。
ラッパラッターで呼び出した護国機神シコウテイザーと相打ちの形で、ようやく沈黙した形だ。

「ったく……羂索のやつ、ゲームバランスってもんを考えたことがないのか?」

レジィは主催者への愚痴を呟きながら、サウナのレシートを「再契象」した。
ぶつくさ言いながらも口角は上がっているのだから、楽しんでいるのは間違いない。

「やりたい放題の殺し合いだ。俺もやりたいようにやらないとな」


【エリアG-11/東部/9月2日午後12時30分】
【レジィ・スター@呪術廻戦】
状態:健康
服装:レジィの蓑@呪術廻戦
装備:レジィの蓑@呪術廻戦 ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー
令呪:残り三画
道具:マイティストライクフリーダムガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、伝説の魔城ラダンの起動鍵@牙狼<GARO> -GOLD STORM- 翔、スーパー手ぶくろ@ドラえもん、デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ、ブーストマークⅡレイズバックル@仮面ライダーギーツ、マグナムレイズバックル@仮面ライダーギーツ、サウザンドジャッカー&ヘルライズプログライズキー@劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME、ホットライン
思考
基本:やりたい放題の殺し合いを楽しむ あわよくば生き返る
00:ひとまずルルーシュの放送の再検討から。
01:あの人形(月蝕尽絶黒阿修羅)は流石にヤバい。特級相当だろ。素人に配るとか羂索は馬鹿か?
参戦時期:死亡後
備考


【全体備考】
※ブランウイング@仮面ライダー龍騎 は消滅しました。
※ティガレックス@モンスターハンターワールド:アイスボーン は消滅しました。ドロップアイテムの有無については後続にお任せします。
※(たきなの所持していた)ロケット花火@ペルソナ4 は使用されました。
※護国機神シコウテイザーの起動鍵@アカメが斬る! は破壊されました。

858 ◆07JJdXWj.M:2025/08/04(月) 18:07:26 ID:lIY44TOo0
投下終了です。
予約期限の超過、申し訳ありません!以後気を付けます。
ティガレックスと相打ちで破壊される起動鍵をシコウテイザーにしたのは、現状参加者との因縁も無いシコウテイザーを描写するためだけに「アカメが斬る!」を読むのは面倒だと思ったからというだけの理由なので、もしシコウテイザーを活かしたい書き手さんがいるなら、別の起動鍵にするのもやぶさかではありません。

859 ◆kLJfcedqlU:2025/08/06(水) 19:51:40 ID:AbkOgnHw0
申し訳ございません。
一身上の都合で >>810の予約を破棄させていただきます

860 ◆07JJdXWj.M:2025/08/06(水) 19:58:45 ID:13gVmN6k0
wiki編集ありがとうございます!
「走れ正直者」について3点修正しました。
>>854 以降の文章において、地の文の頭に一文字ぶん空ける
>>856 「やっと力尽きたか。手間取らせやがって」の後に、『レジィは正義感を鼻で笑いながら、たきなの遺体を足で小突いた。』の一文を追加
③状態表の時刻を他の作品にならって午後→午前に修正

ついでに「タイトル元ネタ」のページも記入しました。
他にも何かあれば指摘お願いします。

ゼロ(シャーリー)、マリヤ・ミハイロヴナ・九条、マクギリス・ファリド 予約します。

861君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:54:21 ID:NmiBKcQo0
皆さま投下お疲れ様です!投下します。

862君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:54:47 ID:NmiBKcQo0
男女の間では、憎しみは愛の裏返しです。 嫉妬もまた愛のバロメーターです
瀬戸内寂聴

863君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:55:06 ID:NmiBKcQo0
これは放送前の出来事。

「マスター、その…本当に大丈夫かい?

声の主はライダー。先の禪院家のデストラップに近い戦闘の最中にてケガをしたマスターである鳩野ちひろを気遣う。

「う……うん!ピルツさんと孔富さんのおかげで。というか私は怪我というより貧血だから

「私としては、サッちゃんと流ちゃんの方が心配だよ」
ちひろは自身の体調よりもサチと流子を心配する。
なにせNPCである禪院扇の全斬撃を直に受けたためだ。

「私も大丈夫。すごいよね、ピルツさんと孔富さん。傷一つ残らずに治療するなんて

「流ちゃんはどう?」
「……」
「流ちゃん?」
「おう……まぁな

「「……」」
(う〜ん。機嫌悪そうだ)
(シノアちゃんとのことがまだ納得いってないのかな)

流子の返事から、まだシノアについて疑念を抱いているのだと二人は察した。
ちなみにシノアは現在、流子と距離をとって歩いている。
ニコルが会話の相手をしている。
そして、ちひろはまだ二人にきちんとお礼を伝えていないことを思い出す。

「あ、あの!」
「ん?」
「あら?どうしたの」
「先ほどは治療していただきありがとうございました。お礼が遅くなってすみません……」
「気にしなくていいわ。それがアタシの役目なんだから」
「ええ、ヒーローのいう通りよ。一般人(パンピー)を守るのは私たちの役目💛

救済(すく)うのは当然とばかりの返答。

「かっこいい……」
(う〜ん、ヒーローと大人の人と仲良くなれる体験自体初めてだからうれしいな〜〜〜死ぬほどうれしくてにやけちゃうな〜〜〜←呑気すぎる)

ピルツと孔富の言葉にちひろは胸がじーんとくる。

「そうだ。ちひろ、あれから立ち眩みなどはない?」
「はい。元気100倍です!」
「そ、…ふふん。さすがアタシ!パーフェクトな予後だわよ!」
ちひろの言葉にピルツはうんうんと頷く。
ちひろの予後に合わせて孔富も2人に問診を行う。

「サチと不良少女(レディース)はどうかしら?」
「はい。私も大丈夫です。治療していただきありがとうございました」
「ああ、私も大丈夫。感謝してるよ」
孔富の問診にサチと流子も問題ないと答える。

「ピルツさん。孔富さん。僕からもお礼を言わせてください。3人を助けてくれてありがとうございます」
「さっきも言ったけど、アタシは命をあきらめない。だから気にしなくていいわよ

「ま、この世界的名医の私とヒーローガールがいればブラックジャックの出番は必要ないわ。ね?

「ま、ブラックジャックは置いとくとして。だけど、相棒の言う通りよ。どんな痛みもアタシが癒してあげるわ」

「「傷は…ね」

(あの子…サチだったわね。恋する乙女……危ういわね)
(そのブラックジャックも言ってたわね。心の底までは治せないって。嫌な予感が当たらなきゃいいけど)
ピルツと孔富の言葉にニコルは神妙な面持ち。シノアは無表情でその会話を聞いていた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

864君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:55:25 ID:NmiBKcQo0

再び、サチ・ちひろ。流子は三人で会話を続けていた。

「ま、ボクがいるからマスターはどーんと構えていてよ!」
霊体化していたライダーは実体化すると自信満々に宣言した。

「う、うん。頼りにしてるよ。」
(ライダー……えっと確か真名は“アストルフォ”だっけ)
アストルフォ。シャルルマーニュ十二勇士の一人。タタール王アグリカーネの撃退に巨人カリゴランテを捕虜にするなど、いくつもの冒険譚があるが、中でも月へ旅立った逸話が有名だ。正確にはサーヴァントである彼はアストルフォ本人ではなく、英霊の影の存在なのだが、一般人のちひろにとっては百人力であることは確かだ。

「でも、支給品とはいえライダーのような偉人がいるんなら、やっぱり徳川家康と豊臣秀吉も同性同名のそっくりさんではなくて本人なのか?」
「そういえば、はとっち。歴史が好きなんだよね

「うん。実は直接会えるのが楽しみなんだ♪」
(早く二人に会いたいなぁ〜。矢賀ちゃん驚くだろうな。徳川家康に豊臣秀吉に会ったと知ったら←普通は頭大丈夫か?と心配される)
ちひろは歴史好き。同じく歴史好きの共通点からクラスメイトの矢賀緑と親しくなり、高校生活新学期早々からのぼっちを避けることはできた経緯がある。
名簿に“徳川家康”“豊臣秀吉”とったメジャー級の人物。
テンションがアガル⤴しかないだろといった様子。
もっともこの真贋交わる殺し合いにいる両者は一般的に知られている姿とは大きくかけ離れているが……

「そうだ。ねぇ、はとっち。これを受け取って」
サチはそうそうと思いだすと、支給品の一つをちひろに見せる。
それはイヤリングだった。

「え?でも、それってサッちゃんに支給されたやつだし……」
まさかのサチの申し出にちひろは断ろうとする。
だが、サチは引かない。

「ううん。はとっちに受け取ってほしいの」
サチは神妙な顔で話す。

「あのとき、はとっちと最初に出会わなければ、私はきっと心が砕けていた。だけど、はとっちの演奏が私を奮い立たせてくれた。かっこよかった。まるでキリトみたいに」
「それと、キリトへの気持ちが恋だということに気づかせてくれた。だから、これは私の心からのお礼……だめかな?」
サチにとってちひろはこの真贋交わる殺し合いにおいてのヒーロー。
故にサチはちひろに感謝を伝えたい。

「受け取ってやったらいいんじゃないか?せっかくの好意を無下にすることもないだろ?」
「…うん。わかった!ありがとう、サッちゃん!」
流子の勧めもあるが、ちひろはサチから支給品のイヤリングを受け取ると。スカートのポッケにしまう。

「青春ね💛」 「いいんじゃない」 「うん…そうだね」
孔富、ピルツ、ニコルはそのやり取りを微笑ましく見守っていた。

「……」
シノアも会話に口を挟まずじっと見つめていた……

歩きながら話しを続けていく中、ついに一行はI-4 キリトの家へたどり着く。

――― キリトの家 ―――

といっても現実のキリトの家ではない。
この真贋交わる殺し合いのランドマークとなっているこの家は、SAOアインクラッド第22層に存在し、キリトとアスナが一時的に娘のユイも含めて3人で暮らしていたログハウスことプレイヤーホーム。

☆彡 ☆彡 ☆彡

865君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:55:48 ID:NmiBKcQo0

「ここが、キリトくんの家……」
(この家……外見からみると現実の家じゃなさそうな?)
「あん?なんか家というよりログハウスみてーだな」
流子の疑問も当然。
材質などから一軒家というよりログハウスといったほうがいいのかもしれない。

「「「……」」」
ニコル、ピルツ、孔富はじっとキリトの家を眺める。

「んじゃ、中に入ろうぜ?」
「そうだね。お、おじゃましまーす……!?」
「どうした?ちひろ?」
「なんか、扉が閉まっているみたいで開かない💦

どうやら玄関扉は鍵がかかっているのか閉じていた。

「近くに鍵とかねぇのか?」
「そうだね。探してみようか」
ちひろと流子が扉の鍵を探そうとしたとき、サチが口を開いた。

「はとっち、ごめん。少しどいて?」
「サッちゃん……?」
サチの不穏な様子に額から汗が流れるが、その申し出にちひろは横にズレる。

「……」
サチは無言で玄関扉前まで歩くと槍を構える。
そして、両手で槍を掴むと勢いよく振り下ろした。
それはアバン流槍殺法“地雷閃”
サチの支給品の一つ。鎧の魔槍。
説明書には詳細が記載されていなかったが、アバン流槍殺法をソードスキルとして扱うことができていたのだ。

「す、すごいねサッちゃん!」
(なんか、サッちゃんらしくないけど……)
「へ。力技は嫌いじゃないぜ」
サチの意外な行動にちひろはとりあえずグッとサムズアップする。
流子はひゅ〜と感心したように口笛を鳴らした。

「……」
サチはそんな二人の言葉に反応を示さず、スタスタと中へ入る。
サチが玄関を歩き終わるとそのとき玄関の床が光だした。
床には魔法陣が描かれていた。

――― トラップ ―――

そうトラップが発動された。
直後、大量の口がついた植物のようなモンスターが出現しちひろと流子へ襲い掛かる。
モンスターの名はリトルネペント

「マスター、後ろへ下がって!」
「うお!?なんだこいつ等!」
再び霊体化していたライダーは素早く実体化するとちひろを後ろへ避難させると、槍でリトルぺネントを薙ぎ払う。
さらにキリトの家周辺の地面が浮き始める。

☆彡 ☆彡 ☆彡

866君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:56:30 ID:NmiBKcQo0

ちひろのラブギターロッドによるビートソニック。
流子の万物切断エクスタス
ライダーのトラップ・オブ・アルガリア
時間がかかったが、三者三様の武器で室内のリトルぺネントを一掃する。

「サッちゃん!どこ?」
「サチさんは2階にいきましたよ」
「…シノアちゃん」
いつの間にかシノアも一緒にいた。
そしてサチが2階にいったのをちひろと流子に伝える。

「おいガキ。お前また何か企んでいるんじゃねぇか?」
「シノアちゃんを疑うのもいいですが…」
「今は私と口論している場合じゃないんじゃないですか?」
「流ちゃん。シノアちゃんの言う通りだよ!急ごう!」
「…ちっ!」
ちひろの正論。故に流子もこれ以上シノアを詰問することなく
先行したサチを追いかける。

2階に上がり、扉が開いている部屋を見つけると中に入る。

―――え?

ちひろと流子の目の前に映し出されるのは、拘束されているサチ。

魔力サーバー サチ

☆彡 ☆彡 ☆彡

867君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:56:58 ID:NmiBKcQo0

「サッ……ちゃん?」
「…悪趣味にもほどがあるぜ!」
眼前にある光景。
サチの体はコンクリートだろうか感情そうな材質の長方形のような装置によって拘束されている。
そして、女性にとって大切な秘所から血がポタリポタリと垂れている。
そう、サチの処女が機械によって散らされた証である。

「ん゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛…ッ」
乳房に大事な秘所にコードみたいなのが繋がっている。
そして完全に拘束された身体を小刻みに痙攣させられている。

「み゛な゛い゛で……ふ゛た゛り゛どもォォォ!!??」

――ビクビクゥゥゥ

サチはイったのか秘所の部分から潮が勢いよく吹き出す。

「そうそう、はじめから素直にイけばいいんだよ」
ちひろと流子の前に姿を現したのは、教会のシスターらしき人物であった。

おそよ聖職者とは思えない言動をするシスター。

「てめぇ!サチを開放しやがれッ!」
声の主。シスターが今の状況を作り出したと流子は判断し、エクスタスで切り裂こうとする。
判断が早い。
だがーー
目の前のシスターは、これまで出会ったこともない行動を行う敵であるのが流子の不運であった。

「くく、人というより猪だな」
シスターは両手を前に出すと唱える。

「マーキング。そしてくらいな」

――― 固有魔法 ハンティングタイム ―――

「マスター、危ない!」
ライダーがちひろの手を引っ張り後ろへ隠す。
それが二人の命運を分けた。

「チッ!2人同時に拘束するはずだったんだがな」
二人同時に拘束する予定だったらしくイラつくシスター。

「く……っぉ゛ぉ゛お゛!?

突如、流子の両手が後ろ手に拘束されてしまった。
突然の拘束に流子は転ぶ。そのタイミングをはかっていたのだろう。
シスターの後ろから天使が出現する。

「じっとするです〜」
「は…放しやがれッ!」
「魔力サーバーになりましょうね〜」
抗議する流子を無視し、天使たちは流子を持ち上げると、サチと同様に装置にはめ込む。

魔力サーバー 纏流子

――ブチブチィィ

「がっ、あっ・・・!?ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!?

(わ……わたしのが……ちくしょお……)

男勝りの口調だが、流子も女の子。
色恋沙汰に対して初心で一般的な常識をもっている。
純潔を意に沿わない方法で奪われたことに悔しさを隠せきれない。

「なんだ?お前処女だったのか?ははは!」
「クソが!お前らぶっ潰す!」
「魔力垂れ流すだけの奴隷の分際で、口を開くんじゃねぇよ?」
処女を失いながらも自分を失わずシスターを目で殺そうと睨みつける。
シスターはそんなことにも構わず流子を蹴り始める。

もちろん、魔法がないSAOのアバターのサチに魔力とは無縁の流子だが、そこは運営から問題ないように装置が改良されているようだ。

「ん゛お゛ッッ!」
シスターの蹴りに合わせて装置のチューブが激しく振動し、流子に快楽を与える。

「お゛お゛お゛お゛っっっ!!!」

――ビクビクビク!!!

絶頂と同時に纏の体液はチューブを通り、下のタンクに貯まる。

「一体……何をやってるの?」
ちひろには理解できない。
人は理解に及ばないことに出くわしたとき、思考が停止する。
ちひろにとって正に今この場所がそうだ。
ライダーもマスターの安全第一。相手を下手に刺激しないよう様子をうかがっている。

「あ?見てわからねぇのか?」
悪びれずに舌をだしながら答えるシスター。
シスターはおもむろに服を脱ぎ捨てる。
すると、姿が露わになった。
その正体は……

――― 闇檻六天使 メラフェル ―――

四凶ノワルの眷属を模したNPC

☆彡 ☆彡 ☆彡

868君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:57:33 ID:NmiBKcQo0

「サッちゃん……流ちゃん」
(何これ?悪夢?)
ちひろは呆然と魔力サーバーにされた二人の名前をつぶやく。

「あ〜〜〜?この魔力サーバーだった時の人間の名前か?」
「まぁ、この猪は人間じゃなさそうみたいだけどな」

ケタケタケタとメラフェルは嗤う。

「さ゛っさ゛…と゛……か゛い゛ほ゛…う゛し゛ろ゛ぉぉへ゛ん゛だい゛お゛ん゛な゛ぁあ゛あ゛」
(私が人間じゃない!?どういうことだ……!?)
メラフェムの言葉が自分を指していると理解した流子は一体どういうことか快楽に耐えながら考える。

「は!気の強い女はアナルが弱い」

流子の訴えにメラフェムはヘラヘラ嗤いながらスイッチを押す。
魔力サーバーとして拘束している装置には女性の尊厳を破壊する装置がある。
ケツ穴に媚薬注入用チューブが刺さっている。
生意気に抵抗する魔力サーバーに行うようだ。

「どうだ?ケツ穴への媚薬浣腸はキクだろ?」
「あ゛あ゛そ゛……の゛ぐせ゛ぇぇ口…と゛じて゛ろ゛ぉォォ!?」
「追加スイッチONだな」
「お゛お゛お゛お゛!」

――ビクビクビクッッッ!!!

流子は激しくイった。

「ったく、うっせーな。魔力サーバーなんだから大人しくしてろよ?」
流子の喘ぎにメラフェルはやれやれといった風にあきれる。

「もういっちょケツ媚薬追加だな」
「っぅ!?…や゛め゛ろ゛ぉぉぉっ!?」

「っとと、もう一人を忘れてちゃいけねぇな」
「おい、魔力サーバー共。はやく魔力を吹き出せよ」
そういうとメルフェルは二人を拘束しているサーバーを蹴り飛ばす。

「ん゛ん゛ん゛っっっ!?

「ぐそ゛ぉぉぉ!!

胸部の母乳回収機が母乳を回収しようと作動する。
当然、二人は妊娠していないため普通なら母乳は出るはずがないのだが、そこは魔力サーバーの運用管理を任されているメラフェムと運営の手腕。
問題なく二人からの乳首から母乳がビュービューと絞り出される。
快楽。快楽。快楽。二人は必死に耐える。

「なに、耐えてんだよ?ほら!」
二人の無駄な抵抗にいら立つメラフェム。

「無駄な抵抗せずにとっとと絶頂しとけばいいんだよ。このザコが」

「ん゛ん゛ん゛ッッッ…!」
「う゛う゛う゛ッッッ…!」

――ビクビクビクッ!!

サチと流子は絶頂した。
絶頂と同時にサチと流子の体液がチューブを通り、下のタンクに溜まった。

「……ッ!」
(あいつの魔力が上がった?マズいかも!)
ライダーはメラフェムの魔力が向上していることに警戒MAX

「あはははは」
「次の一撃、耐えられるものなら耐えてみろ」
メラフェルの魔力が上昇した

「……」
ちひろは以前、呆然と立っている。
無理もない。

「恨むなら、魔力を提供したクソ魔力サーバーを恨めよ?」
「ぶっ放せェ!!!」

869君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:57:53 ID:NmiBKcQo0

――― 固有魔法 カタストロフィ・フローガ ―――

部屋全体が爆発する。
キリトの家の2階は木っ端みじん。

「マスター、大丈夫かい?」
「……うん。ありがとうライダー……

間一髪。ちひろはライダーが使役するヒポグリフに乗せてもらい窓から外へ出たため助かった。

「ちッ!おい!お前達のクソ魔力のせいだぞ!」
仕留められなかったことにメラフェルは八つ当たりぎみにサチと流子を蹴り上げる。

「役立たずの魔力サーバーにはお仕置きが必要だよなぁ?」

「ッ!?い゛……や゛ぁ゛あ゛」
「ぐぅ゛そ゛ぉ゛お゛お゛お゛!?!?」
メラフェルは躊躇なくスイッチを押す。
媚薬注入用チューブから媚薬が容赦なく二人のアナルに注がれる。
二人の苦悶な声をメラフェムは嗤う。

ちひろにとってもう我慢の限界であった・

「……サッちゃんと流ちゃんを開放して」
「ははは、そんなのするわけなぇだろ?」
「今のこいつらはただの魔力サーバー。人権はねぇよ」
メラフェルは顔を向けることなくちひろの嘆願を嗤いながら却下する。

「……」
「許さない……」
「あ〜〜〜?」

ちひろの呟きにメラフェルは八つ当たりを中断し、視線を向ける。

「はッ!許さないって地味女ごときが何できるんだ?」
「ぶっ飛ばす!」
鷹見に対する怒り以上の怒りがまさに爆発した。
言葉と同時にイヤリングを身に付ける。
サチから渡られたイヤリングを。

それは――

――― ソールのイヤリング ―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

870君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:58:10 ID:NmiBKcQo0

一方その頃

〜〜〜 森林での戦い 〜〜〜

キリトの家が浮上するのをなすすべなくいた三人。
ニコルはブリッツガンダムになって追いかける案もあったが、森林から出没する予想以上のリトルぺネントの数を数を見て、方針転換。
三人はキリトの家が地上に戻ってきても大丈夫のようにまず地上のNPCを一掃しようと奮闘している。

「ああ、もう!数が多くてうっとおしいわ!」
「だけど攻撃パターンは単調ね」

そう、リトルぺネントの攻撃パターンはツタによる切り払いと突き。そして腐蝕液噴射。
SAOの初心者ならいざ知らず。ヒーローに元破壊の八極道。ザフトの職業軍人であるニコルにとってパターン化された攻撃は脅威とならない・

「大量のモンスターの中に葉ではなく実がついているのがいます。おそらく実が割れたらトリガーとなるから下手に攻撃しないほうがよいと思います」
ニコルの観察眼は的確だった。
リトルぺネントの実つきは、広範囲に仲間を呼び寄せる。
その脅威は侮れない。なぜならアスカとミトが分かれる原因でもあったのだから。

「わかったわ」「了解💛
(予想通り顔(ツラ)が可愛いだけじゃないわね💛)
ピルツと孔富はニコルのアドバイスから葉つきを処理していく。
ニコルはその間、実つきを冷静に処理していく。
SAOのトラップは多くの参加者の命を奪った。
先ほど、脅威は侮れないとあったが。彼らにとって脅威とはならない。
三人の迫力に押されたのかリトルぺネント達はじりじりと距離をとりはじめる。

「なかなかやるようですね」
「…君は?」
大量のリトルぺネントの中、一人のシスターがそこにいた。

「改めよ」
シスターはそういうと、服装を脱ぎ捨てる。
そして、姿をあらわに―――

「私は闇檻六天使が一人、ゲート」
参加者ノワルの眷属を模したNPC

☆彡 ☆彡 ☆彡

871君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:58:30 ID:NmiBKcQo0

ニコル達が奮闘している最中

――― 空の戦い ―――

ソールのイヤリング。
それは、魔力の結晶。

ソールのイヤリングが発光するとちひろの体を包み込む。
ソール。それは《十三の災害》にして、現世最強の魔法使いの一人。
名づけられた異名は“炎獄”
鳩野ちひろは“イノセンスワールド” “イノセンスドライヴ”を習得した。

「はっ!お前も今すぐ魔力サーバーにしてやるよ」」
先ほど流子を魔力サーバーにしたように再びメラフェムは行動する。
「マーキングからの!」

―― 固有魔法 ハンティングタイム ――

―― イノセンスワールド ――

「なっ!?」

イノセンスワールドは全ての拘束技を受け付けない。
それはノワルの禁忌固有結界“闇檻結界 監獄協会”をも防ぐ
当然、参加者ではないNPCごときの固有魔法の拘束技など効くはずもない

「お前…さっきまでそんな魔力を纏ってなどなかっただろ!?」
「これは、サッちゃんが私にくれたもの」
「サッちゃんとの絆の力。お前なんかに負けるもんか!」
誇らしげにソールのイヤリングを見せつけ誇る。

「か……茅場の野郎!一体何を考えてやがるんだ!」
(…もしかして地味女がつけているイヤリングはもしかして炎獄のか!?)
自らの拘束魔法を防がれメラフェムは動揺を隠し切れない。
メラフェルには理解できない。
NPCとはいえ自分たちを用意したくせにこのような支給品があることに。

「ッ!?」
(茅場って……!)
茅場。
参加者全員が聞き逃してはいけない名前。
茅場晶彦。この真贋交わる殺し合いを強要している3巨頭の一人。
そして。サチをはじめ約一万人のプレイヤーをデスゲームに巻き込んだSAOの管理者。

「もしかして、メラフェムをキリト君の家に設置したのは意図的?」
「はん。人間の中にも変態趣向をもつのがいるらしいからな。茅場もそっちなんじゃねぇか?

実質自白のような解答。
茅場に対する怒りがこみ上げる。

「いくら炎獄のイヤリングとはいえ魔力を身に纏った程度で0から1になっただけだろ」
「自分の愚かさを、たっぷり後悔しろよ?ザコ!」

☆彡 ☆彡 ☆彡

872君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:58:59 ID:NmiBKcQo0

――― 森林の戦い 決着 ―――

「あんた達ははっきりいって教育に悪いわ」
「治療の邪魔よ。退出願うわ!」
先ほど、ゲートの固有魔法を受けたピルツと孔富だが、ニコルの手によって解放された。
戦いの最中の会話で、どうやら変態趣向のNPC達がいることを理解する。

ピルツによる渾身の蹴り上げ。
ゲートは宙(そら)へ浮く。
そして孔富の追撃。

「同感💛 あなた達の性癖は視聴者(よい子のみんな)に毒。だからネビュラマン(ヒーロー)ではなく元極道として退治(治療)するわ
四つ手でゲートの体を固定(ロック)し、さらに急上昇(ジャンプアップ)

「カマすわよ💛」


――― 生命の技巧(アート・オブ・ライフ) ―――

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……

ゲートはうめき声をあげながら消滅した。

「いい特効薬(オクスリ)でしょ?」
「……相棒」

――ㇲ ――ㇲ
――パシィ!

ゲートの消滅を見届けると、二人はハイタッチを行った。
指揮官がブッ殺されたのか残りのリトルペンネント達は散って逃走しはじめた。
二人は深追いすることなく見逃す。

「すみません!ボクは三人のもとへ向かいます!」
森林の戦いを制したのを確認すると、ニコルは素早くブリッツガンダムのまま空へ飛ぶ。

「さてあの子たち。大丈夫かしら……」
「ええ。助太刀にいけないのが歯がゆいわね」

以前として空中に浮かぶキリトの家を眺めつつ二人は見守る。
誰一人欠けることがないことを。

☆彡 ☆彡 ☆彡

873君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:59:19 ID:NmiBKcQo0

――― 空の戦い 決着 ―――

メラフェムのほかにいたNPCの天使たちはちひろとライダーの手でことごとく撃墜された。

「おら!イケイケイケこのクソ魔力サーバー共

メラフェルは容赦なくサチと流子を捕えている装置を蹴り上げる。

「ん゛ん゛ん゛っっっ!?」
「ちく……しょ……お゛お゛!?」

――ビク……ビクゥゥゥゥ!!!!

既に何度目かの絶頂。

「魔力チャージ完了。クソ魔力サーバーにしては、ちったぁ役に立ったぜ?」
「使いたくねぇが、仕方がねぇ。吹き飛べェ!!」

ソールのイヤリングを装備したちひろをメラフェムは最大の脅威と認識した。
故に己の切り札を放とうとする。

――― 固有魔法 カタストロフィ・イクリクシ ―――

そのときだった――

サチと流子を拘束していた装置が一瞬で破壊された。

「なっ!?」
予想外の出来事にメラフェムも切り札の魔法を中断してそちらに気をそらす。
正体はニコルことブリッツガンダム。
ブリッツガンダムの電撃作戦。
ブリッツの攻盾システム“トリケロス”
3連装超高速運動体貫徹弾ランサーダートとビームサーベルの連続攻撃が2人を拘束から解放できた。

「チヒロ!」
「ありがとう!ニコル君!」
ちひろはニコルが生んだこのチャンスを逃さない。
すぐさまライダーへ指示を出す。

「ライダー!」 「うん、まっかせてマスター!

ライダーを乗せたヒポグリフがメラフェムへ真っすぐ突っ込む。

「キミの真の力を見せてみろ!」
ライダーの呼びかけにヒポグリフはさらに加速する。
マスターの怒りを乗せて。

「そん……、な……。バカな……」
メラフェムはこの状況を信じられないといった様子。
だが、もう遅い。ライダーの攻撃を避けられない。

「茅場晶彦……ッ!この」

NPCとはいえ、四凶の一人に数えられるノワルの眷属闇檻六天使の一人。本来ならこんな地味人間に負けるはずがなかったこの戦い。
そもそもSAOと無関係な自分をここに配置したのは、キリトの関係者(女)を魔力サーバーにするためのはず。
なのに、よりによってサチ(魔力サーバー)に“ソールのイヤリング”を支給する茅場の矛盾だらけな行動。メラフェムには理解できない。

――― この世ならざる幻馬 ―――

「養分の不足した豆もやしがぁぁぁぁぁ!!!!!」

メラフェムは茅場晶彦への恨み節をまき散らしながら消滅した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

874君がくれた魔法 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/06(水) 23:59:38 ID:NmiBKcQo0

「流ちゃん!」
「私の方はいい……それよりサチの方へいってやれ」
流子もサチ同様短時間とはいえ魔力サーバーとして女性の尊厳を穢された。
だが、自分よりもサチを優先するようちひろに伝えたのだ。
流子の言葉にちひろはごめんといった顔でサチの方へ走り出す。
ぐったりと倒れているサチを抱きかかえるとちひろは寄り添う。
サチはちひろの目を見つめると、悲痛な想いを口に出す。

「はとっち……私……私……」
「キリトと一緒に……なれない」
「だって……こんな…汚れた私……キリトが受け入れてくれるはず……」
サチの秘所から太ももにかけて垂れ流れた乙女の証。
本来なら想い人に捧げたいと女の子なら思うはず。
だがサチの純潔はキリトにあげられない。
無機質な機械によって散らされてしまった。
乙女ではない自分に自己嫌悪を隠し切れない。
それに部屋であの“写真“を見てしまった。
サチの心はズタズタ。

「サッちゃん……」
生気のないサチの目。
涙を流すサチにちひろも自然と涙を流す。

「そんなことない……そんなことないよ!」
(そう。キリトさんならサッちゃんのこと拒まないはず!)
サチを優しく抱きしめる。
そして、ちひろはケツイする。

サチとキリトを絶対に出合わせると。

「ッ……くそ!」
(クルーゼ隊長は本当に軍人としての誇りを失ってしまった!)
ニコルは、この殺し合いに参加してから何度も隊長への怒りを抱いていた。が、心のどこかで軍人としての矜持が残っているのではと希望を抱いていた。
だがもはやそんな甘い幻想を抱くステージは終わった。

「クルーゼ隊長はボクが報いを受けさせる」

静かな怒りの炎を抱きニコルはケツイする。

「リュウコ。君もクルーゼ隊長の蛮行の被害者だ。…ごめん」
「謝る必要ねぇよ。それより下の方はどうなんだ」
「ああ。そっちは大丈夫。問題なく処理したよ」
「そうか。んじゃ早く合流しようぜ…ん?」
「強がりはやめた方がいいですよ」
「根性なんて昭和です。どうぞ」
シノアはそういうとベッドのシーツを手渡そうと差し出す。

「……」
流子は無言で受け取り、体に巻く。

やがて、キリトの家は再び地面に着陸した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

875キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:00:19 ID:nbPgQAUc0

時はすこし遡る

〜〜〜 サチがキリトの家に入ってから魔力サーバーにされるまで 〜〜〜

キリトの家にたどり着いた瞬間、体はすでに動いていた。
アバン流殺槍法。SAOでは、見たことも聴いたこともない技。
当然、SAOでそのような技を私はしたことがない。
でも、体は覚えていたかのように滑らかに技を繰り出していた。
力を込めた地雷閃はキリトの家の玄関扉を難なく破壊した。
どうしていつの間にかそのような技を私はできるようになったのだろうといった疑問は、尽きないが、とにかく中へ入る。

――はぁはぁ
――胸の動悸が収まらない
ーーキリト?ここの家は一体なんの家なの?
――現実の家?それともSAOでの家?
――もしSAOなら住まいというより攻略の拠点としてだよね?
――だってこんな殺人ゲームに巻き込まれているのに呑気に誰かと一緒に住んでいるわけないよね?
――当然一人で住んでいるんだよね?
――まさか誰かと……■■■さんとじゃないよね?

なぜだろう。不安が拭えない。額から汗が流れているが拭う暇すらおしい。
後ろからサッちゃんたちの声が聞こえるけど、振り向く気すらおきない。
どうして?

「こっちですよ。サチさん」
声が聞こえた方向へ顔を向けるとそこにはシノアちゃんがいた。
シノアちゃんはクスリと笑みを浮かべると、階段を登って行った。
ふと、私の体は後を追いかけるように足を進める。
2階にあがると、部屋の一室の扉が開いていた。
まるで、シノアちゃんが招いているかのように。
私は部屋に入室する。

「ここは……」
ベッドが設置してあることからどうやらこの部屋は寝室のようだ。
ただ、サチの不安が一つ的中する。
ベッドはシングルではなく“ダブル”だった。
ということは、誰かと住んでいるということだ。
――キリトは誰と住んでいるの?
――まさか■ㇲ■さん?
――ううん。流ちゃんもいってたけどこの家はどちらかというとログハウスに近いように見える。
――攻略仲間を泊まらせるなどといった用途の部屋なのかもしれない
――そうだよね?キリト?

必死にキリトが誰かと住んでいるであろう事実から目を背け、周囲を見渡す。
するとベットとベットの間に大きなコルクボードがあるのに気づいた。
そこには何枚か写真が貼られていた。

「これは……?」
いくつか仲間らしき人が写っている写真があるが、私がとくに目を惹かれたのは、ボードの中心に貼られていた写真。
それは……

「ッ!?」
キリトの横には知らない女性。さらに二人の間には少女が一緒にいた。

「これが……ア■ナさん」
キリトの隣にいる女性が“アスナ”であると私は確信した。
なんだろう。明確な根拠はないけど、女の勘というのかな。

「綺麗な人……」
キリトと一緒に写っているアスナさんは同性からみても綺麗な人。
栗色の長いストレートヘア。はしばみ色の瞳。スッと通った鼻筋の下で、桜色の唇が華やかな彩りを添えられている。
キリトが照れているのもわかる。
キリトとアスナさんの間にいる女の子は誰なのだろう?
もっとじっくりと見たいのと興味もあり、ボードから写真を手に取る。

「え……?」

写真の裏側に文字が書かれていた。

――― 愛する妻アスナと愛娘ユイ ―――

――ドクン

愛する妻アスナ

――ドクン ドクン

愛娘ユイ

――ドクン ドクン ドクン

――キリ…ト…?

876キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:03:17 ID:nbPgQAUc0

「本当、惚気てますね」

シノアちゃんが横に立っていた。

「……」
「デスゲームに巻き込まれているのに結婚してマイホームまで購入。はっきりいってドン引きです」

「……」
「新婚生活を満喫するだけでなく挙句の果てに娘までこしらえる。はぁ……」

「……」

――ビリビリビリ

いつの間にか私は写真を正中線に沿って破り捨てるとキリトが写っている部分(+ユイ半身)だけをしまった。
無意識?
いや、違う。私はおそらく■■している・
アスナさんに……いや“アスナ”に。

丁度、そのときだった。
後ろから声が聞こえたのは。

「よお、お前か?サチとかいう人間は」
「今からお前はザコ魔力サーバーだ。しっかり働けよ?」
「それにしても茅場ってやつ。私たちをわざわざここに配置するなんて……キリトって奴にそうとうな感情があるんだな。それか変態だな」

キリトの真実に触れた私は、なすすべもなく魔力サーバーにされた。

「あ゛あ゛っ!?───っあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

キリトに捧げたかったな……私のはじめては。

☆彡 ☆彡 ☆彡

877キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:03:54 ID:nbPgQAUc0

「一階はなんとか大丈夫みたいね」
あれから一行はひとまずキリトの家で休憩をとることにきめた。
サチは疲れがたまり近くのソファーで横になって寝ている。
ちなみに流子は大丈夫だと、ピルツと孔富の安静するようにの指示を振り切って一緒に探索している。
流子の性格的にじっとさせるよりは動かした方がいいと診断したピルツと孔富両者は、これ以上止めなかったのもある。

「ん?」
「どうしたの流ちゃん」
「いや…そこのテーブルになんか置いてあるなって

流子が指さす方向にテーブルがあり、なにか本らしきのがこれみよがしと置いてあった。
それはアルバム。

「アルバム……え?」
「な!」
アルバムの写真を見た瞬間、ちひろと流子は驚き、いや戸惑いといった風な大声を上げた。
その声にニコル・ピルツ・孔富が近寄る。
3人もアルバムの写真がなんなのか覗き込む。

「「「「「!!!!!?????」」」」」

いくつもの衝撃写真がそこにはあった。

シリカ リズベッド アルゴ シノン リーファ フィリア ストレア プレミア レイン メディナ ロニエ リネル・フィゼル ソルティリーナ カーディナル ティーゼ ファナティオ シェータ セルカ アリス

多くの女性たちと個別に添い寝している写真であった。(リネルとフィゼルは二人…つまり3Pか!?)
心なしか彼女たちの表情はまんざらでもないような……
さらにページをめくると添い寝いじょうの写真が。

いあゆる情事の写真であった。
ご丁寧に経緯や行為中の詳細な説明が書かれていた。

相手は二人おり。

一人はリズベット。
どうやらレアインゴットなる素材をともに採集しているさい、ドラゴンの巣穴に落ちてしまい、一晩をすごしたようだが、その際どうやらキリトはリズベットと体を重ねたらしい。

もう一人はアスナ
記載されていることが真実ならどうやらこのログハウスのようなキリトの家はサチが巻き込まれたSAOのプレイヤーホームらしい。
いわゆる朝チュン。

「……」
(これはまずいわね)
「……」
(同感。サチにこれは劇薬すぎるわ)

ピルツと孔富はこのアルバムは不味いと瞬時に判断した。

「……」
(おそらく、このアルバムをわざわざテーブルの上にご丁寧に置いてあることから運営の仕業ね)
「……」
(そもそものこの場所に特殊性癖のNPCを設置している以上、全部を鵜呑みにすることはないわ。だけど一つ言えるのは)

「「……」」
((キリトという男は何人もの女の心をかき乱していることはまちがいない))

「……」
(このキリトって野郎……スケコマシか?)

「……」
(どういうこと!?サッちゃんから聴く話では、このキリトって人。殺し合いに巻き込まれているんだよね?それなのに、こんな……大勢の人と!?しかも……その……あんなことまで!もしかしてサッちゃんのことも数多くいる人の一人と数えているの!?)

「……」
(ミスター鷹見以上のクズなのでは?)

キリトのアルバムをテーブルに戻す。

「……!」
(もし、サッちゃんを弄んでいたなら、殺してやる…絶対に殺してやるぞキリトォ〜〜〜!)

サチとキリトを絶対に出合わせる
そのケツイに変わりはないが、ちひろのキリトへの悶々とした感情は消せない。

ぐぬぬ……

アルバムの写真は正にこのパーティの爆弾。
各々のキリトへの印象は最悪。

「……くす」
キリトのアルバムをこっそり回収し、その様子をシノアはクスリと眺めていた。

重い空気が時間をさらに進め――そして、放送が響き渡る

878キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:04:18 ID:nbPgQAUc0
【エリアI-4/キリトの家(2階部分半壊)/9月2日午前11時30分】

【サチ@ソードアート・オンライン 】
状態:正常?、疲労(大)、負傷(小)、キリトへの恋へのケツイ、
アスナへの■■(極大)キリトへの■■?。処女喪失
服装:アスナの私服@ソードアートオンライン
装備:鎧の魔槍(+ソードスキルアバン流槍殺法)@ダイの大冒険
令呪:残り三画
道具:デスガン@ソードアート・オンライン、ホットライン、キリトの家にあった写真の一部(キリト部分(ユイ半身))
思考
基本:殺し合いに乗らない、キリトに会って気づいた自分の気持ちを伝える(恋)
01:鳩野(はとっち)・ニコルと行動を共にする
02:もう、私は逃げない。この世界で頑張る
03:キリトにキリトの真実が真か確認する(SAOで結婚して新婚生活を満喫していたのか)
04:キリト……それでも君に伝えるね。私の気持ち
05:あの写真に写っていたのが……アスナ……ッ!
06:キリト……もし、それが真実なら私は…
参戦時期:迷宮区のダンジョン中、トラップに引っかかる前
備考
※鳩野ちひろの演奏によりキリトへの想いは”恋”であると位置づけました。
※ニコルとの会話からSeedの世界のことについて簡単に理解しました。
※名簿に記載されているアスナはキリトとなにかしら関係があるのではと推測しています。
※ピルツ達と情報を交わしました。
※鎧の魔槍に付与されていたソードスキルアバン流槍殺法を会得しました。
※メラフェルの手で魔力サーバーにされた際、処女を失いました。

▪ デスガン@ソードアート・オンライン
サチに支給。劇薬『サシルニルコシン』を充填した『無針高圧注射器』サシルニコルコシンは、筋肉の動きを弱める『筋弛緩薬』の中でも即効性が高く、高濃度で体内に入ると直ちに心臓と呼吸のための筋肉が冒され、死に至る危険な薬品GGOの死銃事件で使用された。本ロワでは、参加者ならどんな体・耐性持ちでも効果が効く。
ないよ、剣ないよぉ!!by金本敦(ジョニー・ブラック)

アスナの私服@ソードアートオンライン
アスナの私服。
SAOnoアバターの服装はメルフェムの魔力サーバーの際、ぼろぼろとなったので、ドロップしたアスナの私服を着用した。なぜドロップアイテムにアスナ私服があるのか…
貴様のようなザコプレイヤーにアスナ様の護衛が務まるか!byクラディール

【鳩野ちひろ@ふつうの軽音部 】
状態:正常、疲労(小)、負傷(小)、自意識アニマル(中) キリト・茅場に対する怒り
服装:谷九高等学校の制服
装備:ラブギターロッド @スイートプリキュア♪ ソールのイヤリング@魔法少女ルナの災難
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1ホットライン
思考
基本:ゲームには乗らず、生きて帰る
01:サチ(サッちゃん)・ニコルと行動を共にする
02:サッちゃん……流ちゃん……
02: サッちゃん……キリト君に告白できるといいね
03:バンドメンバーがいないのはよかったけど、どうして私だけ……
05:よろしくね!ライダー!
06:キリト〜〜〜!(お前はじつはミスター鷹見系男子なのか!?)
時期:20〜21話の間
備考
※ニコルとの会話からSeedの世界のことについて簡単に理解しました。
※サチとの会話からSAOについて簡単な知識を得ました。
※ライダーのマスターになりました。
 その事により令呪がプレイヤー用の物からマスター用の物に変質しています。
 使い切っても脱落にならなくなった代わりにサーヴァントにしか使えません。
※ピルツ達と情報を交わしました。
※令呪の調整およびソールのイヤリングの効果で魔力を身にまといました。
※キリトのアルバムからキリトに対して怒りが生まれました。

▪ ソールのイヤリング @魔法少女ルナの災難 
サチに支給。 サチからちひろに譲渡されたためちひろが身に付けている。
メラフェムの行為およびそうなるよう仕向けた茅場達三巨頭による怒りで効果が発動した。
イノセンスワールド;覚醒固有魔法 このロワでは、拘束系の技を受け付けない状態となる効果を他の参加者にもかけることができる。
イノセンスダイブ:覚醒固有魔法 カウンター無効の大ダメージを与える。

879キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:04:34 ID:nbPgQAUc0

【ピルツ・デュナン@SHY-シャイ-】
状態:疲労(小) キリトへの低評価
服装:ヒーロー姿
装備:転心輪@SHY-シャイ- 、斬魄刀:肉雫唼@BLEACH
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。ヒーローとして手の届く人たちを助ける。それを終えたら、
   柊の闇を治療する。
01:怪獣医(孔富)の更生の行く末を見守る、更生させる。相棒としても先輩としても頼りにしてる。
02:病院へ向かいつつヒーローとして行動する
03:柊真昼に出会ったら救済(すく)う
04;当面の間だけニコル達と同行する
05:流子……サチ……
06:キリトって男。女として好感はもてないわ
参戦時期:74話
備考
互いの世界について簡単に知りました(キルラキル、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました
ニコル達と互いの情報を交わしました。
サチの精神的不安定に気づきました。
キリトのアルバムからキリトに対する評価は低評価です。

【纏流子@キルラキル】
状態:疲労(小)、負傷(小)、苛立ち(大) キリトへの疑念 処女喪失 
服装:私立征嶺学園の制服@時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん
装備:万物切断エクスタス@アカメが斬る!
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らねぇし、あの羂索とかいうやつはぶっ飛ばす
01:鮮血がいてくれたら探すのは楽なんだが……
02:鬼龍院皐月と決着をつけるのは元の世界に戻ってからだな
03:マコ……私と再会するまで死ぬんじゃねぇぞ
04:病院へ向かうか
05:柊真昼……ったく、どんなつらしてるか会うのが楽しみだぜ
06:くそっ!私は……弱い!!
07:当面の間ニコル達と同行する
08:なんだ?キリトって野郎はスケコマシなのか?
09;あの野郎(メラフェム)がいっていた“私が人間じゃない”本当なのか?
参戦時期:14話、鮮血の断片を取り戻しに大阪に向かう最中
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました
ニコル達と互いに情報を交わしました。
メラフェルの手で魔力サーバーにされた際、処女を失いました。

キリトのアルバムからキリトへの疑念が生まれました。

私立征嶺学園の制服@時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん
私立征嶺学園の制服。
着ていた赤いジャージはメルフェムの魔力サーバーの際、ぼろぼろとなったので、リトルぺネントからドロップした制服を着用した。
あたしの可愛い後輩が仲裁に行ったのに、あいつら、見苦しい言い争いを続けてたらしいじゃん。だから、軽く締めたby更科茅咲

880キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:05:04 ID:nbPgQAUc0

【繰田孔富@忍者と極道】
状態:疲労(小)、負傷(小)、キリトへの懸念
服装:医師の服装
装備: ウルトラメダル@ウルトラマンZ、
ソードスキル:マチ=コマチネの念糸@HUNTER×HUNTER
     ソードスキル:ウルトラマンゼット@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:救済(すく)う。お兄ちゃんに怪獣役譲っちゃったから、今度は私がヒーロー役ね
   そして、これの後は、柊家に襲撃(カチコミ)
01:短い間だけれどよろしく頼むわね、レディに不良少女にシノア
02:あの兄弟もいるのね……今回の私はネビュラマン(ヒーロー)役だから共闘したいわね
03:柊真昼にであったら救済(すく)う
04:当面の間ニコル達と同行する
05:流子……サチ……
05:キリト。あれ(写真に情事の描写)は運営の意図的な印象操作ね。だけど彼はサチにとって救済(すくい)ではなく(麻薬(ヤク)かもしれないわね…
参戦時期:死亡後
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、キルラキル)
シノアから柊家について簡単に知りました
ニコル達と互いに情報を交わしました。
サチの精神的不安定に気づきました。
キリトのアルバムからキリトへの懸念が生まれました。

【ニコル・アマルフィ @機動戦士ガンダムSEEDシリーズ 】
状態:正常 疲労(小)、キリトへの不信 サチ・リュウコへの
服装:ザフト軍の赤服
装備:ブリッツガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ  
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ゲームには乗らず、生きて帰る
01:サチ・鳩野と行動を共にしつつ二人を守る
02: バグスターウイルスへの対処方法を探る
03:キリト。全てを鵜呑みにはしないけど、本当に彼は誠実な人といえるのだろうか?
04:隊長……僕はあなたを許さない
05:アスラン?には警戒しておく
06:サチとリュウコには本当にお詫びのしようもない
参戦時期:本編死後より
備考
※情報交換から、異なる世界があることを推測しました。
※サチとの会話からSAOについて簡単な知識を得ました。
※名簿に記載されているアスラン?についてはとりあえず、同性同名の別人ではないかと推測しています。
※ピルツ達と情報を交わしました。
※キリトのアルバムからキリトへの不信が生まれました。
〈柊シノア@終わりのセラフ一瀬グレン、16歳の破滅〉
状態:健康
服装:私服
装備:四鎌童子@終わりのセラフ一瀬グレン、16歳の破滅
思考(参加者と会話ができ、自我があるように見えるがあくまでモデルのように動く設定。)
道具:キリトのアルバム@ソードアート・オンラインシリーズ
基本:“柊シノア”として行う。
01:柊シノアとして動く
備考
※柊真昼の妹。たくさんいるのではなく一体のみのNPC。あるていどとの再現とはいえ記憶や記録が用いられているため、積極的に襲撃はしない。ただし、NPCモンスターであることは変わりないので、モンスターとして行動するときは躊躇なく四鎌童子で参加者を襲う。

キリトのアルバム@ソードアート・オンラインシリーズ
SAOAやSAOALといったキリトとの添い寝イベントのCGが写真としてアルバムに収められている。※写真の横に名前が記載されている・
また、Sword Art Online #16.5・Sword Art Online IF「カラダの温度」の描写が記載されています。
もう何度目とも知れない絶頂にふるえるアスナのからだの奥底を、俺が噴き上げた熱いしぶきが激しく打ちつけるのを感じた。どくん、どくんと二年分の精液が際限なくアスナの中に流れ込んでいく。性器が一度脈打つたび、頭の中ではげしく火花が散る。byキリト

881キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:05:17 ID:nbPgQAUc0

〈ライダー@Fate/Apocrypha 〉
状態:健康、疲労(小)
服装:騎士姿
思考
基本:英雄としてマスターを守る
01:鳩野ちひろのサーヴァントとして行動する
備考
※真明は【アストルフォ】クラスは:ライダー
支給品としてマスターに従い守る。現マスターは鳩野ちひろ
ちひろは生粋の魔術師ではないため、基礎パラメーターなど本来より能力が低下している。
ソールのイヤリングの効果でちひろが魔力を身に纏い、元まではいかないが能力が向上した。
Fate/Apocrypha内での記憶があるかどうかは他の書き手にゆだねます。

【NPCモンスター解説】

メラフェム@魔法少女ルナの受難
参加者のノワルの眷属である闇檻六天使の一人。個体のNPC
暴虐的な性格に口の悪さは見事に再現されている。
元は魔力サーバーの自作と運用管理を任されていた。
SAOと関係ないが、茅場の手によりキリトの家に設置されていた。
はははっ、お前クセぇな淫乱なメスの匂いだbyメラフェム

ゲート@魔法少女ルナの受難
参加者のノワルの眷属である闇檻六天使の一人。個体のNPC
真面目で物静かな性格。固有魔法断罪の台座は、相手の足を石で硬め行動を制限にする技。回避ができない相手に向けて魔法による一斉攻撃を行うのだが、使用したのはいいが、空を受けるブリッツガンダムのニコルの手により突破された。元の世界では使用する前にレイスに倒されたが、奇しくも同じような末路を辿った。メラフェム同様SAOと関係ないが、茅場の手によりキリトの家の周囲に設置されていた。

882キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:05:54 ID:nbPgQAUc0
投下終了します。投下終了時間が過ぎたこともうしわけございませんでした。

883キリト爆弾 〜サチにみせるな〜 ◆s5tC4j7VZY:2025/08/07(木) 00:09:32 ID:nbPgQAUc0
すみません。お伝えすることを忘れていました。
前編が 君がくれた魔法
後編が キリト爆弾 〜サチに見せるな〜 です。

884 ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:44:46 ID:bxpBkqhE0
皆様投下お疲れ様です。ゲリラ投下します

885宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:46:15 ID:bxpBkqhE0






Q:王とは何ぞや?








屈辱の二文字を半日も満たぬ内に、複数回味わう。
自分にとって初の体験ではないかと、ふと思考の片隅に浮かんだ。
雲一つない青空に見下ろされ、地べたに背を付けた今の姿は。
王とは程遠い、敗残兵さながらの惨めさ。
返り血の如き赤の装束は、所々に汚れが付き。
纏う本人もまた、複数個所の負傷が見られる。

蟻の行列を踏み潰すように、有象無象を蹂躙する暴君。
それこそが銀河を支配下に置き、唯一無二の絶対的存在として君臨した宇蟲王。
では一体、この様は何だ?

「塵どもが……」

漏れ出た声は決して大きくなく、風が吹けば溶け消える程度のもの。
だが一度耳に入ればたちまち震え上がり、命だけはと誰もが泣き叫ぶだろう。
王自身を焼き焦がさんばかりの憤怒に、未だ鎮火の気配は見られなかった。

青い戦士との再戦で辛酸を舐めさせられたのなら、まだ納得はいく。
怒りこそ覚えるも、あの男の強さは直接剣を交え理解出来た。
他ならぬ己自身が敵と認めた強者だ、一筋縄でいくとは思っていない。

しかし、先程の連中は違う。
生前以上に技が冴えながら、結局は微塵の殺意も持てなかった小娘。
王の剣を消し去るという、小細工に頼る軟弱者共。
百歩、いや千歩譲っての話だが。
こちらが宇蟲王の本領を発揮出来ぬ内に、何が何でも討ち取ろうと殺しに来るのなら分かる。

886宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:47:30 ID:bxpBkqhE0
実際はどうだ、千載一遇のチャンスを奴らは逃げに使った。
己をここまで殴り飛ばした氷細工、あの場で最も強さを秘めた死に損ないの小僧。
奴が残る生命力全てを殺意に変換していれば、無論死ぬ気はないが煩わしい引っ掻き傷の一つは付いた可能性もゼロじゃない。
現実には自分を殺す為ではなく、仲間の塵どもを逃がす為に余力を使い切った。
全く持って、コケにしているとしか思えない。

更に思い返せば、あの程度の連中相手にイーヴィルキングを切る選択を一瞬でも浮かべた事。
否定のしようがない事実にも、腸が煮えくり返る。
塵は塵なりに全力で抗った、中々に歯応えがあるとも感じた。
が、果たして本当に宇蟲王の真の姿を見せてやる程だったろうか。

強き竜の者や青い戦士、己が敵と見定めたブレイブの持ち主達。
一体いつから自分の本気は、奴らに及ばぬ者共に拝ませてやるような。
愚衆が好むだろう見世物へ落ちぶれたのか。

「目障りと思った塵は数えられんが……」

腹立たしいと思わせたのは、羂索らを含め殺し合いで次々現れる。
何よりも、そんな者達にしてやられた自分自身が最も許せない。

所詮一時凌ぎに過ぎずとも、王の剣を消され。
群れる事を強さと勘違いする、脆き連中をロクに殺せず。
挙句死に掛けの氷細工の一撃を受け今に至る。
我が事ながら、どれだけ怒っても怒り足りなかった。

のっそりと立ち上がり、言葉のないまま歩き出す。
寝そべり続けたとて、渦巻く激情に鎮静の兆しは訪れない。
であれば塵の掃除、特に先程の連中を蹴散らせば多少は溜飲が下がるだろうと、

887宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:48:32 ID:bxpBkqhE0
「…………」

不意に足を止め、じっと見つめるはガラス窓に映った自分。
見慣れた顔は眉間に皺が寄り、真紅の瞳は釣り上がっている。
怒りを露わに、別の言い方をすれば余裕というものが一切宿らない。
今の自分がそんな表情をしていると、気付いたが為に問う。

苛立ちを隠そうともせず、地団太を踏みながら歩き。
癇癪を起こし、血走った目で怒りのぶつけ先を探す。
己への絶対的な自信も、揺るがぬ巌の如き存在感も亀裂が入った有様。
これが、こんなものが自分か?

このような無様を晒すのが、宇蟲王ギラか?

「…………………………全く。まさか俺自身に、ここまで怒りを覚える日が来るとはな」

沈黙を挟んでため息を零し、浮かべた顔は呆れ笑い。
喉元過ぎれば何とやら、と言うには未だ憤怒が色濃く残っている。
しかし他でもない、自分の無様さを直視出来たとなれば。
思考を鈍らせる熱も引き、自嘲する余裕くらいは生まれる。

怒りに背を押されるまま暴れ回ったとて、塵芥からすれば依然変わらぬ脅威。
されど同じ轍を踏まないと、言い切れるか否か。
当然前者と答えるには、宇蟲王と言えども屈辱を味わい過ぎた。
立ち止まって、来た道を振り返る。
踏み躙った過去が足枷となるなら、ここらで木っ端微塵に砕いていく。

支給品袋から取り出すは、騎士の少年の剣。
プリンセスナイトの力を授ける以外では、強度に優れた程度の得物。
オージャカリバーとは比べられよう筈もない。
未だ小細工の効果が継続中な以上は、代用するのも致し方なく。
加えてある意味、本来より劣る剣が丁度良い。

888宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:49:13 ID:bxpBkqhE0
瞳を閉じ、集中力を高めた。
精神にへばり付く余分な熱を削ぐには、やはり剣を振るうに限る。
単なる素振りなどではない。
記憶の内から相対した敵の姿を引っ張り出し、仮想敵として斬り結ぶ。
現実に目の前にはいない、だが意識を闘争の記憶へ沈ませあたかもそこへいるかのように想像。
刀使、氷竜、覇王、ザフトのパイロット。
複数人から選び取るのは一人、この地で初めて自分に手傷を負わせた男。

「いくぞ」

開戦の呼びかけに応えるかの如く、振るわれるは白銀の剣。
サイヤの血を引く戦士の猛攻を、一太刀とて受け入れぬと捌く。
あくまで記憶から再生したイメージの産物。
そう理解の上で、本物との闘争と同じ気概で挑む。
雑魚相手ならばまだしも、青い戦士が敵では案の定得物に違和感を感じた。
握った際の感触、刀身の長さ、腕に掛かる重さ。
全てが宇蟲王を振りへと導く。

やがて敵に変化が表れた。
金色に染まった髪を逆立て、膨大なエネルギーを放出。
先までの斬撃が遊戯に思える程の、苛烈極まる刃の嵐。
防ぎ、弾き、躱し、そうやって凌ぐのにも限界があった。
現実には傷一つないが、宇蟲王からすれば自身の体には無数の斬傷が生まれている。

チキューの人間共からすれば、目を疑う光景だろう。
長年に渡り母星を支配した王に、ここまでの傷を負わせるなど。
否、少なくとも羂索達の始めた殺し合いでは不思議なんかじゃあない。
青い戦士はもとより、氷竜やザフトのパイロットだって届かせたのだ。
見下していた者達にだって、何らかの強さがある証拠。
疑いようのない事実を認めない限りは――

889宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:50:10 ID:bxpBkqhE0
(黙れ)

自分らしからぬ思考を、一言で捻じ伏せる。
ギラ・ハスティーだったら、シュゴッダムの王程度で満足する自分だったら。
長々と考え込んだろうが、己からすれば不純物も同然。
俺は俺だ。
ギラ・ハスティーではない、イーヴィルキングは名前の一つでしかない。
宇蟲王ギラ、それ以外の何者でもないが故に。
今一度己が魂に問い掛ける。

王とは、何を以て王とするのか。
先祖代々受け継いだ血筋か。
玉座でふんぞり返り、臣下へあれやこれやと喚き散らすことか。
いいや違う、力だ。
逆らう全てを叩き潰し、ただ一人に許された頂点へ永遠に君臨する。
それこそが宇蟲王なれば、更に問おう。

たかだか得物一本が使えなくなった程度で、塵に後れを取るのが宇蟲王ギラか?

(断じて否、だ。俺を――誰だと思っている)

青い戦士を射殺さんばかりに睨みつける。
金色を纏った形態の秘密は、放送前の戦闘で凡そ理解出来た。
内包したエネルギーを一気に解放し、爆発的な強化を可能とする。
切り札と呼ぶに相応しい力であり、イーヴィルキングと渡り合った事実からも強さに疑いの余地はない。
反面、消耗も少なくない。
少なくとも殺し合いでは短期決戦用の技であって、連続使用は自身の首を絞めるだけ。

しかし、だ。
強化方法そのものは、決して悪いとは言えない。
死後も動き回った剣士の小娘がやった、奇妙な呼吸による身体能力上昇。
あれは元々脆弱な人間が、格上に食らい付く為に生み出した技術。
つまり最初から完成された肉体を持つ自分には、無用でしかない。
一方で青い戦士はどうだ。
体の鍛錬ではそれ以上望めない強さを、遥か先まで押し上げる術だと言うなら――。

「……」

宇蟲剣の生成や力場の発生、或いは宇蟲五道化の創造。
能力行使に必須となる、秘めたエネルギーを余す事なく掌握。
ほんの僅かでも意識外に置けば、途端に綻びが生まれる。
なればこそ、集中を乱す訳にはいかない。
既にイメージ上のダメージで、夥しい血を流して尚も。
動揺を引き出すには至らず、一歩先へと突き進む。

金色を纏いし戦士が、決着を付けんと迫る。
白銀の剣が首を刎ね、暴君の支配を終わらせる未来の到達を、

890宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:52:00 ID:bxpBkqhE0
「王の判決だ。貴様に死を言い渡す」

鮮血よりも濃い紅を纏った王の剣が、一刀の元に否定。
振り上げた斬撃は想像上の敵を両断し、それだけでは終わらない。
背後にあったマンションを、文字通りの真っ二つへ変えた。

轟音を立てて崩れ落ちる建造物を、何の感慨もなしに見上げる。
瓦礫の大雨は力場を生み出し防御。
大パニックが起きるだろう光景も、宇蟲王からすれば鬱陶しい通り雨と変わらない。

「フン、流石に本物の奴がこうもあっさり片付きはせんだろう」

薄く笑う王は、真紅のエネルギーを放出しそこにいた。
イーヴィルキングにはなっていない。
だというのに発せられる威圧感たるや、これまでの人間態とは明らかに違う。

金色を纏う強化は、強力な反面消耗も大きい。
であれば強化の度合いこそ幾分落ちるも、消耗を抑え安定性を重視してはどうか。
そう考え実行に移したのが、現在の姿。
己が体内へ秘めたエネルギーを用いて、能力全般の出力を上昇。
暴発しいらぬ負担が圧し掛からないよう、精密なコントロールを行った上でだ。

その技が元はどう呼ばれるか、宇蟲王は知らない。
宇宙を脅かす王とは正反対、幾度となく危機を救って来た宇宙最強の戦士。
孫悟空が使う、界王拳に酷似してるとは露知らず。
もう一段階力を上げ、宇蟲剣を生成。
強化の度合いによってはイーヴィルキングにならねば、却って肉体の崩壊を招くと理解し。
しかし今は再出発の意図を籠め、上空へ射出。
地上を遥かに見下ろす位置で破裂させれば、青い空が血の色に染まる。

「来るならば来い。俺が認める強者は一握りにも満たんだろうが……歯向かう気概は塵でも持ち合わせているだろう?」

アビドスの地で掠り傷を負わせた小石。
あの男を青い戦士と同列に数える気はないが、しかしだ。
奴の足掻きが、自身の節穴を自覚させたのもまた事実。
そこへ加えて先の連中だ。
腹立たしいとは思う、なれど童子染みた意地を張らずに認める。

己を斬る剣は持たなくとも、突き立てる牙の一本程度は雑魚共にもあると。

準備は済んだ、安寧はもう終わりだ。
死にたくなければ抗え、生きたければ戦え。
王を前に背を向けるならば、死すらも生温い地獄が待つと覚悟しろ。

「皆殺しだ」

覆す事のない判決を口にし、王は往く。
消失した本来の剣を取り戻す、15分前の一幕だった。

891宇蟲王:ニュー・バース ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:53:16 ID:bxpBkqhE0






A:この俺のことだ








【エリア????/????/9月2日午後1時15分】

【宇蟲王ギラ@王様戦隊キングオージャー】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、脛に引っかき傷
   トランクスへの怒りと期待、???(大)、人間態、『信頼の銃弾』の影響(微小)
服装:王の装い
装備:オージャカリバーZERO@王様戦隊キングオージャー(13時30分に復活)、ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:塵芥ども悉く捻り潰し最後の勝者となる。
01:青い戦士(トランクス)を敵と認め殺す。
02:他の雑魚共は殲滅する。が、雑魚は雑魚なりに牙を持つか
03:別次元の自分も殺す。ギラという名の王は一人でいい。
04:最後の勝者の証を得たらゴミ(羂索)とカス(クルーゼ)とチリ(茅場)も片付ける。
05:下僕共など歩けば幾らでも付いて来るだろう。
06:所詮赤い王も逃げ蟲。
  やはり期待できるのは青い戦士ぐらいか。
07:……小石風情が
08:……既に終わっただろう死人(可奈美)と氷細工(キラ・ヤマト)以外の塵共に次は無い。
参戦時期:ヤンマたちを処刑しようとしてキョウリュウレッドと戦闘になった直後。
備考
※あらゆる昆虫生命体を支配する力はある程度制限されていますが、発動自体は問題なく行えます。
※宇蟲王の転移能力で短距離であればワープ可能です。
 距離や回数には制限があります。現在暫くは使用不能です。
※体内のエネルギーをコントロールし段階的に強化する、疑似的な界王拳が使用可能になりました。
※『信頼の銃弾』による思考への影響を意思一つで捻じ伏せています。今後何らかの切っ掛けで影響が増大、又は完全に消失するかもしれません。
※現在位置は後続にお任せします。
 また宇蟲剣の意図的な破裂で空が真紅に染まりました。近隣の参加者に目撃された可能性があります。

892 ◆ytUSxp038U:2025/08/07(木) 21:53:49 ID:bxpBkqhE0
投下終了です

893 ◆kLJfcedqlU:2025/08/09(土) 00:38:37 ID:8qbpq/7w0
立風館ソウジ、キズナブラック、柊真昼、亀井美嘉、冥黒うてな、激怒戦騎のドゴルド
目途が立ちましたので改めて予約させていただきます。


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