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Fate/clockwork atheism 針音仮想都市〈東京〉Part3
768
:
天体のメソッド
◆0pIloi6gg.
:2025/08/31(日) 21:25:29 ID:GKRVG56.0
その失意は凄まじいものだ。
完全な堕天を待たずして、既に天使は絶望の底。
とめどない自己嫌悪が少女の輝きを隠す暈になっている。
折れた手の痛みすら問題にならないほどの心の摩耗。
心はもうすり切れそうで、波打ち際の砂の城も同じだ。
今はギリギリのところで踏み止まっているだけに過ぎない。
「……あのね」
懺悔めいた悔恨を聞き届けたアンジェリカは、目の前の萎れた少女に――
「思い上がりすぎ。いい子通り越してちょっと痛いよ」
「あいたっ!?」
ぽか、と、軽いげんこつをお見舞いした。
咄嗟に左手で頭を押さえ、鏡越しに見てくる天梨にアンジェリカは嘆息する。
同時に確信した。この娘は巷で言われてるような悪女なんかじゃ断じてない。
むしろ逆だ。
輪堂天梨は、あまりにもいい子すぎる。
というか苦手なタイプでさえある。大衆の私刑に同意する気はないが、彼女が敵を作ってしまう理由も分かった気がした。
何ならアンジェリカ自身、さっきの告白を聞いている時には鼻につく女だなと苛立ちを覚えてしまったくらいだ。
「わたしはあんたのこと知らないから、知ったようなこと言うしかないけどさ」
アイドルとしてなら、彼女は確かに最強だろう。
自負が違う。自覚が違う。ジャンルに明るくないアンジェリカでさえこの短い時間でそう思わされた。
裏表なく、打算抜きに大衆の理想像を貫ける人間なんてそういない。
「世の中、そんなにあんた中心で回ってないよ」
要するにこの少女は、舞台の上と下の区別をつけられないのだ。
「っ、違……そういうつもりで言ったんじゃ」
「いいや、そういう風に聞こえた。少なくともわたしはね」
それがアイドルのあるべき姿だと言われたら返す言葉もないが、少なくともこんな非日常の中でまで貫くことじゃないだろう。
オンとオフの切り替えがないのは大半の人間に好印象を与えるだろうが、逆に鬱陶しさを見出す者もいるのは正直よくわかる。
というか、たぶんアンジェリカは後者側の人間だった。
この子と一緒にいると、どんどん自分を嫌いになっていきそうだから。
「あんたが天使であるとかないとか、はっきり言ってほとんどの人にはどうでもいいでしょ。
それを気にする奴なんておたくのヤバいサーヴァントと、あの無愛想なホムンクルスくらいじゃない?」
「……、でも」
「大体、その……マンテンちゃん? だっけ。
その子って、あんたがちょっと汚いところ見せただけで幻滅するような奴なの?
だったら付き合い考えなよ、そんな奴いてもいなくても変わんないから」
「そ――そんなことない!」
いきなり声を荒らげられてちょっとびっくりしたが、それだけ大切な友人でありライバルなのだろう。
きーんと残響の残る耳を指で穿りながら、アンジェリカは思った。
769
:
天体のメソッド
◆0pIloi6gg.
:2025/08/31(日) 21:26:27 ID:GKRVG56.0
「そんなこと、ないもん……」
「反論する元気があるなら、いつまでもうじうじしてないでしゃんとしなさい。
わたしはあのホムンクルスは嫌いだけど、あんたがそんな調子だとあいつも困るでしょ。多分」
とはいえあの場で天梨が健在だったなら、ホムンクルスは祓葉を探しに行くとか言い出す可能性もあった。
赤騎士蠢き祓葉舞い踊る地獄の新宿から離脱できる理由を作ってくれたのには、やっぱり感謝している。
が、仮にも同盟相手な彼女がこうだとこの先困るのは本当だ。
ほぼ初対面の相手にだいぶズケズケ言った自覚はあるが、そこはカウンセラーの当たりが悪かったと諦めてほしい。
わしゃわしゃときれいな薄紫の髪を泡立ててやりながら、アンジェリカはぽつり問う。
「……元気出た?」
「……出た、かも。
でも……そうだよね。私がこんなじゃみんなにもっと迷惑かけちゃうし。ありがとう、えっと――アンジェリカさん……?」
「ん。アンジェリカ・アルロニカ。ホムンクルスから聞いてるでしょ。
あとアンジェでいいよ。うちのサーヴァントとあと厄介な後輩一名はそう呼んでる」
「じゃあ、アンジェさんだ」
本人も言う通り、ちょっとは元気が出たらしい。
まだ本調子には程遠いというか、無理してる感が傍目にもわかるが、それでもさっきまでに比べれば随分マシだろう。
安堵してから、らしくないことをしてしまった、と少し気恥ずかしくなった。
時計塔のアンジェリカ・アルロニカは、決してこんな面倒見のいい人物じゃなかった。
いつも現状に辟易していて、いつも苛立っていて、そしていつも諦めていた。
自分の未来を諦めてるような人間が、他人の辛さなど慮れるわけもない。
もしそんな余裕が彼女にあったなら、ノンデリ発言で友人と決闘を演じることもなかったろう。
変化の理由はいくつか考えられる。
意地でも望みの未来に食らいつかなきゃいけなくなったことがもちろん一番だ。
実際に死にかけて、いろんなことを知って、ますますその気持ちは強まっている。
だけどそれを筆頭に挙げられる"いくつか"の中には、やはり"あいつ"の存在も含まれていた。
――厄介な後輩。
出会ったばかりの自分を命がけで守り、先輩と慕い、屈託のない無邪気な顔を向けてきたあの女。
他人の運命を遊び感覚で狂わせておきながら、毛ほどの邪悪も見て取れない超越者。
興味はないが、もしも魔術世界の道理ですら説明できない本物の神様がどこかにいるのなら、それはああいう性格をしてるのかもしれない。
神寂祓葉は神様で、人間だ。
世界はその矛盾を許容しない。
ヒトはその矛盾に耐えられない。
彼女と共に生きられる人間はいない。
じゃあ、わたしは。わたし達は。
あのとても綺麗(あわれ)な女の子に、何をしてやればいいのだろう?
770
:
天体のメソッド
◆0pIloi6gg.
:2025/08/31(日) 21:27:28 ID:GKRVG56.0
「アンジェさん?」
「――ごめん、ちょっと考え事してた」
天梨に呼びかけられて、自分が黙りこくっていたことに気付く。
これじゃさっきまでとあべこべだ。取り繕いながら、シャワーで泡を流してやる。
やはり手は痛むのか、バスタブの方に避難させていた。
「ていうかあんたさ、とんでもないのに懐かれちゃったね。
知ってると思うけど六人(あいつら)、揃いも揃ってドの付く異常者だよ。
わたしもあいつの昔馴染にえらい目に遭わされたんだから」
「あはは……、でも、ほむっちはいい子だよ」
「いい子ぉ? あの根暗が?
天使様の眼はどうなってんだか――そういえばあいつ、私が会った時より大きくなってる気がするんだけど……もしかして何か知ってたり」
「あ、えっとね。詳しく話すと長くなるんだけど……私の魔術って、他の人を強くすることができるらしくて」
その影響だって言ってたよ、と事もなく言う天梨に、アンジェリカは一瞬固まった。
(……他者強化? それも、生き物を強制的に成長させられるレベルの?)
これをさらりと打ち明けられてしまう時点で、輪堂天梨が魔術に関して素人なことはよく分かる。
他人へ施す強化魔術はその道の最高技術だ。"できる"と知られた瞬間、冗談抜きに周りの見る目が変わるレベルである。
もちろんアンジェリカもできない。ましてホムンクルスとはいえ、人間規格の生物を即座に成長させるほどの術なんて聞いたこともない。
魔術界は広い。探せば可能な者はいるかもしれないが、今回それをやったのは魔術師の何たるかも知らないような市井の少女なのだ。
「――そっか。だからアレの眼鏡に適ったわけね」
天梨に聞こえないよう、水勢を強めながら独りごちるアンジェリカ。
共通項を見つけた瞬間、パズルのピースが独りでに填まっていく。
最初は半信半疑だったが――思えば、似ているところは多い。
美しい見た目、非凡な才能、魔術のルールを逸脱した"超能力"。
そして、ヒトの社会から拒まれていること。
本人に悪意がなくとも、存在するだけで誰かの心を揺らしてしまう地上の星。
継代のハサンの忠告の意味がわかった。
確かに彼の言う通り、輪堂天梨は神寂祓葉の同類だ。
実際に会って言葉を交わしたアンジェリカにはそれがわかる。
771
:
天体のメソッド
◆0pIloi6gg.
:2025/08/31(日) 21:28:25 ID:GKRVG56.0
(じゃあ、この子の不安はあながち間違ってもないってコトか――)
自分の天使性を自覚して病んでいる姿には苛立ちが勝ってしまったが。
彼女が祓葉と同族であることを踏まえて考えると、確かに"堕天"は絶対に避けなければならないだろう。
未開花の状態で既に、世の大半の魔術師を凌駕する才覚を発揮しているのだ。
天梨が完成した時、彼女の翼の色が白でなかったなら、いったいどれほどの災厄が産み出されるのか……考えただけでもゾッとする。
それに。
あえて言葉にはしないが、そうでなくてもこの娘を放っておきたくはなかった。
あの後輩に似ているけれど、まだこちら側の世界にいる彼女を。
あんなにも美しく、そして悲しい存在にはしたくない。
もう一度深いため息をつく。ついでに心のなかで祓葉に毒づいた。
――こっちは生き抜くだけで手一杯だってのに、余計なモノ押し付けやがって。
――やっぱりあんたは最悪な女だよ。寂句の言ってたことは本当に正しい。
「これくらいでいいかな。ほら、上がって手当てするよ」
「うん。……ごめんね、お願いしてもいいかな。アンジェさん」
「言われなくてもそのつもり。わたし以外に適役いなそうだしね――あといちいち謝んないの」
気分も身体もさっぱりした様子の天梨からぷいと顔を背けて、アンジェリカは彼女の頭にバスタオルをかぶせた。
「わぶっ」
「片手じゃ大変でしょ、やったげる。
……ああもう、言っとくけど普段こういうキャラじゃないんだからねわたし……!」
半ばやけっぱち気味に世話を焼くその姿は、先輩というよりかは姉に似ていた。
【渋谷区・超高級ホテル 最上階スイートルーム/二日目・未明】
【輪堂天梨】
[状態]:疲労(大)、左手指・甲骨折、全身にダメージ(中)、自己嫌悪(ちょっと落ち着いた)
[令呪]:残り二画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:たくさん(体質の恩恵でお仕事が順調)
[思考・状況]
基本方針:〈天使〉のままでいたい。
0:正直まだ落ち込んでるけど、確かにこのままじゃかけちゃう。
1:ほむっちのことは……うん、守らないと。
2:……私も負けないよ、満天ちゃん。
3:アヴェンジャーのことは無視できない。私は、彼のマスターなんだから。
4:アンジェさんを信用。誰かに怒られたのって、結構久しぶりかも。
[備考]
※以降に仕事が入っているかどうかは後のリレーにお任せします。
※魔術回路の開き方を覚え、"自身が友好的と判断する相手に人間・英霊を問わず強化を与える魔術"(【感光/応答(Call and Response)】)を行使できるようになりました。
持続時間、今後の成長如何については後の書き手さんにお任せします。
※自分の無自覚に行使している魔術について知りました。
※煌星満天との対決を通じて能力が向上しています(程度は後続に委ねます)。
→魅了魔術の出力が向上しています。NPC程度であれば、だいたい言うことを聞かせられるようです。
※煌星満天と個人間の同盟を結びました。対談イベントについては後続に委ねます。
※一時的な堕天に至りました。
その産物として、対象を絞る代わりに規格外の強化を授けられる【受胎告知(First Light)】を体得しました。この魔術による強化の時間制限の有無は後続に委ねます。
【アンジェリカ・アルロニカ】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:ヒーローのお面(ピンク)
[所持金]:家にはそれなりの金額があった。それなりの貯金もあるようだ。時計塔の魔術師だしね。
[思考・状況]
基本方針:勝ち残る。
0:考えなきゃいけないことがいっぱいで嫌になる。どいつもこいつも勝手な奴ばっかり。
1:天梨の手当てが済んだら、ホムンクルスから色々聞き出さないと。
2:神寂祓葉に複雑な感情。
3:蛇杖堂寂句には二度と会いたくない。
4:天梨は祓葉の同類、確かにそうかもしれない。……二人目、ねぇ。
[備考]
※ホムンクルス36号から、前回の聖杯戦争のマスターの情報(神寂祓葉を除く)を手に入れました。
※蛇杖堂寂句の手術を受けました。
※神寂祓葉が"こう"なる前について少しだけ聞きました。
772
:
◆0pIloi6gg.
:2025/08/31(日) 21:28:55 ID:GKRVG56.0
投下終了です。
773
:
◆0pIloi6gg.
:2025/09/02(火) 01:12:11 ID:KxGdnrbs0
赤坂亜切&アーチャー(スカディ)
アルマナ・ラフィー&ランサー(カドモス)
ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)
悪国征蹂郎
華村悠灯&キャスター(シッティング・ブル)
周鳳狩魔&バーサーカー(ネアンデルタール人/ホモ・ネアンデルターレンシス) 予約します。
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