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真贋バトルロワイヤル part3

1 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/18(月) 00:36:35 SWoFVjhg0
その絆、本物?贋物?



※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1726764704/


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2 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/18(月) 00:37:05 SWoFVjhg0
前スレが960に届いたので早めに立てさせてもらいました


3 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:00:11 S9Fd3ZVU0
投下します


4 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:00:38 S9Fd3ZVU0

「見失ったか」

そうつぶやいたのは、羂索たちの招いたバトルロワイヤルのプレイヤーではない。
羂索の哀れな器、梔子ユメと同じアビドス高校の制服を身にまとい、紅い眼鏡をかけたエルフタイプのキヴォトスの生徒……の姿だけをまねた怪人、他二人に倣って冥黒アヤネとでも呼ぶべき奥空アヤネを模して落陽の世界を統べる魔王、グリオンが錬成した傀儡である。

(思った以上の逃げっぷり。
そして恐らくはグリオン様も予想していなかったはずの条件が重なってしまったのもあるか)

本来なら世紀王を背に乗せ走るはずのスーパーマシン、バトルホッパーは創生王の証の一つに数えられるだけあり破格の性能を持つ。
全速でかっ飛ばしたのだから相応の距離を稼がれるのも当然のことだ。
それだけならば、冥黒アヤネにとっても想定外ではない。
あのリンチの場に乱入して怪我人を庇いながら逃げるのに考えなしだったとは思わない。
バイクの性能や残る支給品など十二分に闘争を成功させる公算があっての行動でないはずもない。
でなければ余程のお人よしかただの馬鹿だ。

(あるいは、公算があった上でのお人よしのどれかだな。
正解がどれかは追いついてから確かめればいい。
だが、問題は私、というより冥黒の対策委員会全員が恐らくNPCモンスターに襲われるということだ)

いくらガッチャーイグナイターと同等かそれ以上の出力が無ければ撃破不可能な黄金マルガムに変身可能とは言え、ああも群がられてしまっては多少は相手にしない訳にはいかない。

(恐らく我々もグリオン様の能力の一端、つまり参加者の一部扱いされているんだろうな)

一瞬は穏健派のプレイヤーをだますのに使える事実かもしれないが、そのあとすぐ乱戦になるかもしれないと考えるとあまり良いこととも言えない。

(やれやれ。
これでは戻った時にホシノやノノミに何を言われるか分かった物ではないな。
ん?)

などと考えていると、冥黒アヤネは空を駆ける二つの人影を見つけた。

(あれは……パワードスーツか?
似たような白い顔に二本角だが、顔周り以外はあまり似ていないな)

やさし気な顔でボディに青い色が多い方のが動きが良く、その後に続く白の割合の多い方のが動きがぎこちない。

(ナイトメアフレームかモビルスーツか知らないが、片方は明らかに戦い慣れていない様子……。
少し寄り道するのも有りか)

そう言って冥黒アヤネはポケットからネミネムーンのケミーカードを取り出し、ムーンマルガムに変身すると陰に潜伏する能力を使って二体のMSを追跡した。


5 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:01:10 S9Fd3ZVU0

ビスマルクを撃退し、手に入れたMSの起動鍵で帆波も変身が叶ったため、極力会敵を避けて飛んでい移動した先は小さなバーだった。
最初の二時間が尾張に差し掛かり、運営からの情報を見逃すまいとテレビ画面の前で待機していたのだが……。

『掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』

画面から白い仮面の男の姿が消える。
次々と明かされた情報や事実に一之瀬帆波は眩暈を覚えた。
しつこいまでに強調されるゲーム性から恐らく今回放送された内容にいくら隠していることはあったかもしれないが、さらりと明かされた最強のNPCモンスターや運営の元に繋がるなにかも、凡そは本当なんだろう。

「そう言えば、クルーゼの言っていたザフトってヤマト准将が言ってた……!?」

キラ・ヤマト……正確には名簿にはキラ・ヤマト准将と記された方の彼はあらゆる甘味をぐちゃぐちゃにしたものを飲み込んだかのような酷い顔になっていた。
そして左手で頭を押さえながらフラフラとバーカウンターの方に寄って行く。

「や、ヤマト准将?」

「ごめんホナミさん、少しだけ、少しだけ時間をくれないかな?」

そう言ってキラは背もたれの無い椅子に腰かけ、置きっぱなしにされていたグラスに水を注いで、一息に飲み干した。
そしてガン!と力任せにカウンターに戻す。

「何が最高のガッチャだ……ッ!」

(たった数時間の関係だけど分かる!
普段絶対こんなこと言う人じゃない!)

一体クルーゼは、彼に何をしたんだろう?
と、気になるが聞き出せない空気に帆波、そしてキラも居心地悪さを感じていると、テレビが再び起動し、勝手に映像が流し始める。

『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

最初の羂索の開会宣言の時に洗脳の異能を使った少年、ルルーシュだ。
彼の大胆極まるパフォーマンスには驚かされたがそれ以上に帆波の眼を引いたのが

『清隆!変身せよ!』

『イエス。ユア・マジェスティ』

自分の恋を粉々に砕いたあの男が、右腕を気取って悪逆皇帝に仕える姿だった。

「あの学生服……ホナミさん、もしかし知り合……!!?」

バーカウンターを離れ、再び帆波の横に立ち、その顔を覗き込む。
その口は笑っていた。
その頬は笑っていた。
口調だって穏やかその物だ。
だが眼は、眼だけは宇宙の色彩の中から特別黒い部分を救い出してきたがごとく冷たい色をしていた。

「ふふふ、ふふふふふふふふ。
楽しそうだねぇ、清隆君」

「え、えっと、ホナミさん?」

「ヤマト准将、私もお水貰いますね」

そう言って帆波はカウンターに置かれたままのグラスに水を注いで、それを一気に煽ると乱暴にグラスを置いた。

(数時間前に会ったばかりだけど分かる!
普段この子はこんなこと絶対にしない!)

「すいませんヤマト准将。ちょっと私、気が立ってるみたいです」

「うん。見ればわかる。僕こそ、さっきはごめんね。
ラウ・ル・クルーゼとは良い記憶が無くて」

互いの非を認めた二人は、少しだけ仲良くなった気がするのだった。


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6 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:02:07 S9Fd3ZVU0

「なんだか、似たような歴史を繰り返しているみたい」

「そうなのかな……ホナミさんの世界の歴史と途中までまったく同じだったとも思えないけど」

バーカウンターに隣り合って座る二人の姿を影の中から観察する。
話を纏めると、男の方はキラ・ヤマトといい、コンパスなる準軍事組織の准将で、モビルスーツのパイロット。
最初の運営側の放送に映ったラウ・ル・クルーゼはかつて討ち取ったはずの宿敵とのことだ。
女の方は一之瀬帆波といい、高度育成高校なる学校の生徒で、ルルーシュの放送で悪逆皇帝の右腕と紹介された綾小路清隆とは浅からぬ因縁がある様子である。
名簿には死んだはずの人間の名前があったり、同一人物と思しき名前が連続して載っているなど、かなり不可解な物であったが、とりあえずそれは置いておいて現状確実に分かる事を話し合う事としたらしい。

「私は……今となってはどうして彼があんな風に私を、裏切ったのかも今ああしてルルーシュって人の手下になってるかも分かんないんです。
ヤマト准将は、あのクルーゼって人がなんでこんなことをしているか分かりますか?」

「……かつて、クルーゼは言ったよ。
自分にはただ一人、宇宙でただ一人全人類を滅ぼす権利があるって」

「そんな身勝手な!」

「……人の欲の果てに、権力者の出来損ないのクローンとして生まれた彼は、かつて封印された核を解禁する物を地球連合軍に提供した。
そして、地球連合が再びプラントに核を撃った」

核。
一之瀬帆波の世界でも二度故国を焼いた人類の太陽。
宙空に無数に浮かぶ人の住む大地にそれらが撃ち放たれた。
そう言われてもあまりにも壮絶過ぎて実感がわかない。

(つまりその世界はグリオン様が手を下すまでもなく滅びに進んでいる訳か)

二人の会話置きく土くれ人形の聴衆の感想は冷めていた。

「クルーゼは、また賽を投げたつもりなのかもしれない。
あれだけ人は所詮他者より上へと、有利にと足掻く者と嗤っておきながら……」

「クルーゼに、もしかしたら羂索や茅場って人もそんなつもりなんでしょうか?」

「そこまでは分からないけど、クルーゼに関しては多分間違いないよ。
だから僕にこんなものを……」


7 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:02:17 S9Fd3ZVU0
そう言ってキラがダブルオークアンタの起動鍵を眺めていると、帆波は有る違和感に気付いた。

「ヤマト准将の鍵、バエルのと違って文字彫ってあるんですね」

「本当だ……」

それは、極めて短い英文だった。
掌に乗る鍵に刻めるだけの文字量なのだから当然と言えば当然だが、キラにはこれがクルーゼの言葉とは思えなかった。
いや、態々キラに対話の為の機体を渡すような皮肉屋がクルーゼ以外にいるはずもないのだが、それにしたってこれはどうゆうことなのだろう?

「『世界はこんなにも簡単だと示してください』?」

帆波は直訳的に読み上げたが、キラにはあの日、『生まれ故郷』で真実を聞かされた時のように

『ならば示してみるが良い!世界は私が言うようなものではないと!』

などと言われたようにしか思えなかった。
世界は、歌のように優しくはない、
そう言ったのはお前じゃないか。
人は滅ぶべくして滅ぶと言ったのも、お前じゃないか。
核戦争を起こし、あんな死体一つ残さない悍ましいウイルスで脅してこんな殺し合いまでさせておいて、今更世界は自分の言うようなものではないと示せだと?

「……疲れてたのかな」

「え?」

「その、クルーゼって人は、疲れてたのかなって、思ったんです」

「ホナミさん、いくら何でもそんな連勤開けのサラリーマンみたいな理由で絶滅戦争を起こそうとはしないよ」

「信じているモノが全部足元から崩れて、それでも信じたいって思い続けて裏切られたら、そうも思いませんか?」

もしかして、あのキヨタカって男の子の事?とは聞けなかった。
スーパーコーディネイターとして恵まれた才能何て使うまでもない。
今、目の前の少女は信じたかったものに裏切られたという一点だけを頼りにキラよりもクルーゼを理解しようとしているのだろう。

「君は、優しいね」

「別にそんなんじゃないです。
男の見る目最悪の、バカな女ですよ、私」

そう言って自嘲する帆波にキラは起動鍵を持っていない方の手を差し出す。

「君は僕が死なせない。
奴の望み通りに、僕がクルーゼの望み通りにさせない。
だからどうか、一緒に来てほしい」

「……傷心の女の子に彼女持ちの男の子がそんな歯の浮くような事言っちゃっていいんですか?」

「え?」

「冗談です」

あまり上段に聞こえない、というより微かに軽蔑すら感じたが、立ち上がった帆波は少し吹っ切れた様にも見えた。

「それで、当てはあるんですか?」

「地図の上が北とした場合、今僕らは南東側にいるから、アビドス砂漠を通ってテレビ局に向おうと思う。
羂索は梔子ユメがアビドスの生徒会長だと、そしてクルーゼはこの会場のどこかに運営に繋がる『鍵穴』があると言っていた。
なら、ここにその『鍵穴』……その物でなくともヒントくらいはあると思うんだ。
テレビ局は……ホナミさんには少し厳しい所だと思うけど」

「構いません。
大丈夫、ではないですけど、あんな放送が合った以上他の高育生はテレビ局を目指すでしょうし、彼に一言言ってやりたいと思ってたところなんで」

「そっか。あと、今気づいたけどなんで呼び方ヤマト准将なの?
別にファーストネームで呼んでもらっていいけど」

「私はただの一学生で、准将歴戦の軍人でしかも彼女持ちじゃないですか。
あんまり女の子が親しくしてると、彼女さん嫉妬しちゃいますよ」

「嫉妬?ラクスが?」

もしそんなことになったら、どんな様子になるだろうか?と、ちょっと余計かも知れないことを考えながら荷物を検めるキラと帆波。

(どうせ黒見セリカもアビドスを目指すだろうし、丁度良いか)

2人は不吉な月影が憑いて来ているとはまだ気付けなかった。


8 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:04:15 S9Fd3ZVU0
【エリアG-10/どこかのバー/9月2日午前6時】

【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:精神的疲労(大)、決意(大)
服装:コンパスの制服
装備:ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ……分かった。
  今度も示すよ。僕の守りたい世界を。
02:ホナミさんとアビドス砂漠を経由してテレビ局を目指す。
03:ビスマルク・ヴァルトシュタイン……中々の強敵だった
04:ラクス、アスラン……イザークにディアッカに、ニコル?
05:どうして僕やアスランの名前が二つも?
  多分僕が准将の方だろうけど……
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-には英文が刻まれています。
帆波は『世界はこんなにも簡単だと示してください』と訳しました。
※帆波と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。

【一之瀬帆波@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:健康、精神的疲労(中)、綾小路清隆への……(大)
服装:高度育成高校の制服(女子)
装備:ガンダム・バエルの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン、ビスマルクのリュック
思考
基本:このゲームから生還する。
00:私は……また失敗した。
01:綾小路くん……人が苦しんでる間に楽しそうだね?
  一言いいに行くから待っててよ?
02:とりあえず荷物を検めてからアビドス砂漠、そしてテレビ局を目指す。
03:ラウ・ル・クルーゼ。あなたも裏切られたの?
04:立場も違い過ぎるし、彼女持ちに親しくし過ぎるのも問題だし、ヤマト准将呼びってことで。
05:ラクスさん、ちょっと苦労してそうかも
参戦時期:2年生編12巻終了後から
備考
※バエルの起動鍵はビスマルクが爆散したあと、帆波が回収しました。
※キラ准将と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。


9 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/23(土) 05:04:47 S9Fd3ZVU0
投下終了です。
タイトルは 立ってアタシのヒーロー です


10 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 11:54:11 Sfc7SlU20
やみのせんし予約します


11 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 17:19:24 Sfc7SlU20
投下します


12 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 17:21:23 Sfc7SlU20

『これで私が諸君らに与える力の程を理解できたことだろう。
力ある者よ!我を恐れよ!
力なき者よ!我を求めよ!
このバトルロワイヤルは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが裁定する!
私は会場内のテレビ局で待っている。
諸君らの賢明な決断を期待する』



仰々しさと言う言葉を、可視化したような映像が、会場中に流れる。
それは勿論、勇者だったこの男にも届いていた。


(くだらないな……)


届いていただけだ。その映像に関して、これと言った感情を抱くことは無い。
あえて言うなら、うるさくて不快、ぐらいだ。
従うか抗うか、そう問われても、どちらをするつもりもなかった。
どちらかと言えば従い、邪魔する者を殺すぐらいだが、誰彼構わず殺したくてたまらないという訳ではない。
ローラ姫を殺したのは、自分が勇者であることを捨てるための、通過儀礼のようなものだ。
むしろ彼としては、せっかく手に入れた自由を楽しみたいと考えている。
その上で、主催者からの言葉はノイズだった。


(ところで、これはどちらの『俺』を指している?)


名簿もどうでもよかったが、予想もしていない誰かが参加していることも鑑みて、一応確認してみることにした。
現に自分がもう1人いること自体が大概予想できないことだ。さらに1人か2人自分がいてもおかしくない。
もしかすれば竜王やその配下のような、魔の者が参加していることも考えられた。
だが、アレフの予想に反して。過去の知り合いはいなかった。
知っている名前は、すでに殺したローラ姫と、自分の名前だけ。


ただ気になったのは、ここに書いてある『勇者アレフ』が、誰のことを指しているのかということだ。
2人の自分が参加しているというのだから、名簿に『アレフ』が2人書いてあってもおかしくはない。
まとめて記載されている節も考えられなくはないが、それならそれでアスラン・ザラという名前が2つある件と矛盾している。


13 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 17:21:48 Sfc7SlU20
(“勇者”アレフだというなら、奴の方か?ならば俺の名は此方の方か…)


アレフとローラが名簿の隣同士にあることから、同じ世界から参加した者が、名簿に固まって纏められているのは分かった。
件の2人のアスランは離れた場所に記載されていたが、それはもう考えないことにした。なんか片方“?”がついてるし。
ローラ姫の下に記載されてあった、『やみのせんし』と言う名前に視線を置く。


(名前ですらない、ひどい名だな。まあ『先生』のように役職らしき名前はあるが…)


名簿にそこまでの期待をしても仕方がない。
話が逸れるが、先祖である勇者ロトは、自分とは異なり冒険に仲間がいたらしい。
ただ仲間がいたことしか、彼は知らない。名前や役職、どのような性格の持ち主か、そういったことは文献には正確に記されてなかった。
名簿にしろ記録にしろ、名前を記した媒体など、所詮はどの世界も適当に出来ている。その程度のものだと割り切った。


(最早どうでもいいことか。)


勇者であることを捨てられた。
その証明になったことが、彼に高揚感をもたらした。


(さて。この辺りには誰もいないみたいだが、どうするかだな……)


優勝を目指すが、全力で殺しを行うつもりはない。
参加者がここまで多い殺し合いだというなら猶更だ。
1対1の戦いに引けを取るつもりはないが、さすがに100人以上を皆殺しにするには骨が折れる。
だが、それをしないとすると、何をすればいいのか。
ラルス16世からはした金と粗末な道具を渡されて以降、常に自分の目の前には課せられた課題があった。
鬱陶しいと思っていたそれも、無くなってしまえば、どうすれば良いのか分からなくなる。
魔物たちさながらに、破壊を楽しもうにも、ここまで広大な会場だとそれも一苦労だ。


(そうだ。もう一つ俺を縛っていたモノを壊すとするか。)


辺りをもう一度確認し、誰もいないと分かると、すぐに兜を外した。


「ギラ」


2本の角が生えた兜を地面に投げ捨てると、炎の魔法を放つ。
彼のトレードマークとなっていた頭装備は、白銀の炎に包まれ、すぐに燃えてなくなった。
鎧、脛あて、小手なども同じように燃やされていく。
愛する者、名前、そして元の格好と、彼を勇者付けた物が次々と消えていく。いや、消されていくと言った方が正解か。
本当はロトの防具を壊したかったが、この場にないのなら仕方がない。


(なんともあっけない…ラダトームの奴ら、仮にも魔王を倒してもらおうとする人間に、よくこんなものを渡したな。)


14 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 17:22:03 Sfc7SlU20
ラダトームは元々、地方の町や村に比べても、売られている武具がお粗末なものばかりだった。
だが、その中でも彼がつけていた鎧は、布の服と大差ない防御力しか無かった。
そのまま鎧の下にあった山吹色のボディスーツも脱ぎ、鍛えた肉体が露わになる。
最後の下着も脱ぎ捨てようと思ったが、さすがにそこまではしなかった。


(最低限の下着ぐらいは捨てないでおくべきか。
身の守りが上がる下着が支給されていればな……ついでに敵からの魔法の耐性が上がったり…
あるわけないかそんな都合の良い物)


自分を自分付ける防具を燃やしたのは良い。
別に文字通り裸一貫で戦うつもりはないので、別の防具は無いのかと支給品を漁ってみる。
最初に出てきた道具が破壊の剣で、それを出してからは確認を怠っていた。
支給品袋をひっくり返すと、出てきたのは一つの覆面、そしてグローブとマントのついたボディスーツのようなもの。
どちらも金色をベースとしており、マントと覆面にはイナズマを模した赤いラインが走っている。


(稲妻…勇者の雷と何か関係あるのか?)


雷と言うのは、彼の世界にとっては正義のシンボルだった。彼の先祖ロトが雷の魔法を使っていたという伝承がある。
尤も、彼が使えたのはベギラマという、その雷に似せた炎と閃光の魔法だったので、半信半疑だったが。
何にせよ、彼にとって見慣れたデザインではなかった。だが、アレフガルドと縁を切った機に、着けてみるのも一興かと考えた。
その前に、支給品に付いてある説明書を読む。


(…呪血の忍者兄弟(にんじゃブラザーズ)弟、邪樹右龍の忍装束?呪われていないよな?)


支給品名に『邪』やら『龍』やら『呪血』やら不吉な文字が書かれていたため、呪われている装備なのかと訝しむ。
彼にとって、呪いのベルトや、死の首飾りといった呪われた装備をつけてしまうことは、死活問題に繋がる。
もし彼に解呪魔法を使えたら、あるいはそれが使える仲間が同行していれば変わったかもしれないが、どちらも無かった。
万が一その状態で敵に負ければ、城に戻され、『しんでしまうとはなさけない』と詰られた挙句、呪われし者として追い出される。
どこへ行けば呪いを解けるのか分からないこの世界なら、猶更警戒しなければならない。
最初に見つけた破壊の剣も呪われているが、『魔族の王のような、悪に与する者は金縛りに遭わずに使える』と書かれていたため、装備することを選べた。
だが、全く分からない支給品が、ハズレの支給品という可能性も十分にある。


(……呪いはかけられていないのか。しかし『忍者』とは何だ?)


最初に彼が思い至ったのは、勇者ロトの仲間だ。
彼は文献で読んだだけだが、ロトには仲間がいたというだけで、どのような仲間がいたのかは終ぞ分からなかった。
ある文献では勇者の仲間に、戦士、僧侶、魔法使いの3人がいたと記されていた。
しかし、別の文献には武道家、賢者、遊び人の3人全く違う職業の仲間がいたと記されていた。
最近になって、怪物たちを手なずけた『魔物使い』が仲間にいたという記録が、発見されたらしい。
そもそも勇者の性別さえ不確定なもので、確実に伝わっている内容は、異世界からやってきた勇者ロトが魔王を倒し、アレフガルドに光を取り戻したことぐらいだ。
話が逸れたが、『忍者』とやらが勇者ロトの仲間の職業であっても、おかしくはない。


15 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 17:22:22 Sfc7SlU20
(考えても仕方ないか…もしかすれば、この世界で会えるかもしれん。)


忍装束に袖を通してみると、すぐに分かった。
この装備は、極めて戦い向きであると。冒険の途中に様々な防具を身に着けた彼が理解するのに、時間はさほど要さなかった。
頑丈さはロトの鎧や魔法の鎧に劣るが、頑丈な生地で出来ており、その上何も着けていないかのように動きやすい。
おまけに伸縮性もあり、最初見た時は大きすぎたかと思ったが、こうして着てみればそれほど違和感を覚えない。
最初はイロモノかと思ったが、明らかに芝居用の衣装ではなく、戦う者に適した作りになっている。
邪樹右龍という忍者も、相応の力を持った者だと考えるのが妥当だ。
もし戦うとするなら、それなりに手間がかかる相手かもしれない。
どの道、殺すか別の参加者に殺されるのだから関係ないが。


(さて。折角新しい防具も手に入ったし。そろそろ行くか。ついでに拠点も欲しい。)


姿を変え、勇者だった何かは行く。
勇者だった煤を残して。



【エリアD-6/9月2日午前6時】

【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:高揚感 『忍者』に興味(小)
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII 邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:なし
思考
基本:当然殺し合いに乗る
01:とにかく壊すことを楽しむ。しかし、どこから壊すべきか
02:まずは拠点を探すか。悪の道に進むというのなら、小さい物でも居城がなければ味気ない。
03:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後


【支給品紹介】

・邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
やみのせんしに支給された服。帝都八忍の1人、邪樹右龍が極道との戦いの際に着こなす衣装(コスチューム)
稲妻模様の赤い線(ライン)が走った金色の覆面と、米漫画(アメコミ)のヒーローを彷彿とさせる赤マント、黒いグローブと金のボディスーツが印象的
これを着ていた邪樹右龍は、帝都八忍の中でも一番の巨体の持ち主だが、装束特有の伸縮性もあり、他の者が着けるのにも問題はない。
大柄なキャラの装備を小柄なキャラが使いまわせるのはRPGではよくあることだしな。


16 : ◆vV5.jnbCYw :2024/11/23(土) 17:23:25 Sfc7SlU20
投下終了です。
タイトルは 武器や防具を持っていても、装備していないと知ることが出来ない です


17 : ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:10:48 Y5mWZkcY0
ゲリラ投下します 自己リレーとなりますがご了承ください


18 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:14:36 Y5mWZkcY0
 ノノミとセレブロが美嘉と羅暁の前に現れる数分前。
 戦場から少し離れたビルの屋上から、ノノミは階下の戦場を前に「いいですねぇ」とニヒルな笑みを浮かべていた。

「夜島学郎。思った通り出てきましたね。
 鬼龍院羅暁の支配力は行動すべてを縛れるほどではなさそうです。」
「ルルーシュ・ランペルージのギアスがそうだが。このゲームの運営は他者を操る能力を殊更警戒しているようだからな。
 遠目でもわかる。あのババアは化け物だ。あの小僧の洗脳も本来は自由意志を許すようなものではないはず。」
「ではあなたもそうなのですか?寄生生物のセレブロさん。
 鬼方カヨコを縛る力は本来よりも衰えていると?」
「黙れ。」
 黒白の少女が苛立ち返した声に、ノノミはニヤついた笑顔を向けた。
 寄生生物の肉体は参加者の1人、キヴォトスに籍を置く便利屋の参謀鬼方カヨコのものである。
 無表情なカヨコの顔をしたセレブロは、ノノミが持つドッグタグを指さし睨んだ。
 
「そんなものがなければ、俺の存在が貴様程度に気づかれることもないんだがな。」
「便利でしょ〜。行きがけにブチ殺したミノタウロスどものドロップ品です。」
 ノノミの持つアイテムの名は、ステータスタグ。
 手に取り魔力を込めることで記された人物のステータスを知ることが出来る。
 ドロップ品として設定されたバトルロワイヤルでは、最初に触れた参加者のステータスを確認できる設定になっているのだが。ノノミの手元には鬼方カヨコとセレブロ、双方のステータスが記載されたタグが握られており、ノノミの文字は何処にもない。

「私は偉大なるグリオン様の生み出した人造人間(ホムンクルス)。
 ・・・・・・・・・・・・
 参加者ではないですからね。」
「ふざけた仕様だ。欠陥という他ない。
 グリオンとやらのしでかした無法。運営も想定しておくべきだ。」
「お褒めの言葉と受け取らせていただきますよ。悪い気はしませんね。
 何より貴方の存在に気づけたのは大きな収穫です。
 それで……私との協力については。どうされますか?」
「しゃらくさい。少し黙れよ木偶人形。」
 ノノミとセレブロは仲間になったわけではない。
 目的があって鬼方カヨコに接触したノノミが、意図せずセレブロと出会ってしまったという方が正しかった。
 ノノミからしては思わぬ出会いではあったが、ステータスタグの中身を見て考えを改める。
 
 ステータスタグにてノノミが知った情報は多い。
 名前・職業(鬼方カヨコのみ)・身体的特徴・有する異能。
 それらを知ったノノミはセレブロにある提案を持ちかけたが、ノノミの目的をすでに聞いていたセレブロは訝し気に目を広げた。

「お前の目的は聞いた。
 ホシノといったか。グリオンとやらの失った手駒の後釜を埋めるのではなかったか?
 そんな下らねえ作業で俺を喜ばせられるとでも?」
「そうですね。私の目的は人員採掘です。
 初めは貴方か夜島学郎を囲うつもりだったのですが。どちらも先約がいましたからね。
 まったく、ホシノの愚図が早々に脱落しなければこんな面倒を背負うこともないのですが。」
 面倒だと言いながらも、ノノミの顔は緩んでいる。
 グリオンの指令は緑谷出久により倒された冥黒ホシノの後釜を探すことだ。
 最もどこまで本気で言っているのかはノノミ自身にも分からない。
 早々にホシノが壊れたこともあり、参加者の強さを再確認するための偵察が主目的かもしれないが。命令は命令、グリオンに心酔するノノミに逆らう理由はない。
 
「初めはまあ、複雑な思いはありましたよ。
 貴女はまだ話が分かりますが鬼龍院羅暁なんて大変だったんですよ。
 めちゃくちゃ目立つのに隙が無いんです。なんなんでしょうねアレは。
 分かったことは彼女の名前と、夜島学郎を洗脳していることだけです。
 おかげで夜島学郎は諦めざるを得ませんでした。時点で貴方を当たったら寄生済みです。
 貧乏くじですねぇ。この場にはロクな参加者がいなくて困ります。」
「お前が言えたことじゃねえな。」
「貴方が言えたことでもないですね。」

 ノノミはコホンとわざとらしく咳をついて、話を続けた。


19 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:15:13 Y5mWZkcY0

「それで私思ったんです。    ・・・・・・・・・
 ちょうどいい人員がいないなら。創ればいいんですよ。」
「ほう。」 
 ぴくりと黒白の少女の――寄生生物の食指が動く。
 セレブロは己の享楽のために、数々の惑星に怪獣を呼び寄せ兵器を生み出させ。
 力に溺れた原住民どもを自滅させる。文明自滅ゲームの担い手だ。
 滅亡遊戯の主催から殺し合いの参加者に変わろうと、行動原理は面白いかどうか。
 
「セレブロさんもお好きでしょう?愚か者が扱いきれない力で自滅する姿。
 まあ私は、もう少し精神的な苦しみで悶えるほうが好みですが。」
「悪趣味だな。だが悪くない。分かるぞその気持ち。」
 人でなしどもがくつくつと笑う。
 見た目だけなら女子高生の朗らなガールズトークだが、実態は武器から生まれた悪意人形と寄生生物の暗躍だ。
 まともな善性も人心もここにはなかった。
 
「俺と組めば、その姿が見られると?」
「まあ、ぶっちゃけ貴方がいなくてもいいんですがね。
 ただ、貴方の協力があったほうが、面白くなりそうなので。
 ステータスタグに書いてあったスキルを使えば…………」
 こしょこしょと耳もとでノノミが囁く。
 無表情だったセレブロの顔は、話が終わる頃には歪んだ笑顔に変わっていた。

「……お前は不愉快だ。だが、お前の提案は面白い。
 グリオンと組む気はまるでないが、その提案には乗ってやる。」
 ああは言ったがセレブロに断る理由はない。
 バトルロワイヤルの名簿に宇宙警備隊の関係者がいないのはいいが、セレブロの知った名前もなく方向性を定め損ねていたところだ。
 ノノミの、ひいてはその背後にいるグリオンの益になるのは気に入らないが。そこは最終的に壊すにしろ奪うにしろ好きにすればいいのだ。
 
「感謝します。ええ、感謝してますのでグリオン様に対する不遜な態度は今だけ見逃してあげましょう。」
「それで、お前の言う人員とは?あの場にいるんだろう?」
 手すりにもたれ掛かる2体の悪は、女子高生のようにはしゃいで都市部で起こる戦場を眺める。
 ノノミが指さした先は、巨大な怪異の合間を飛び交う戦士たちではなく。
 背後から現れた光放つ女に気おされへたりこむ。1人の少女だった。

「亀井美嘉。
 極大の悪意を秘めた道具を与えられただけの。ただの小娘です。」


20 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:15:54 Y5mWZkcY0
◇◆◇◆◇
 
 ラウ・ル・クルーゼと茅場晶彦が選んだ参加者たちの中には、群を抜いて強力かつ凶悪な者が紛れている。
 
 インド神性を統合した異聞の神。
 十三の災害が1つにして最悪の魔女。
 守護神の魂を喰いつくした邪悪の王。
 戦闘民族王家の血筋にして最後のZ戦士。
 怒りを宿し対話を望んだ荒魂の姫。
 己が覇道を突き進む裂界武帝。
 鬼龍院羅暁もまたその存在と名を連ねる、図抜けた強者の1人である。

 「小賢しいぞデカブツがぁ!」
 ペダニウムゼットンの両腕で抑え込まれた羅暁は、全身に力を入れ強引に振りほどくと、既に抜いていた青薔薇の剣のみならず天穿剣を鞘から引き抜いた。
 両腕と胴体目掛け放たれる高速の剣劇は、一撃一撃が重いが何より速い。二回の衝突音が重なって聞こえるほどの速度は、2本の腕で成し得るとはとても思えない。
 ただ者ではないだろうと思っていたが、一地球人が繰り出せる斬撃の範疇を超えている。
 ペダニウムゼットンの体と言えど抑え込むことは出来ず、セレブロは大きく弾き飛ばされた。

「お前。本当に地球人か?」
 元居た家屋から200mほど離れた公園のような小さな空き地。
 その中心に立つ怪獣が、向かいで剣を構える女に問うた。
 鬼方カヨコの体ならいざ知らずペダニウムゼットンとなり膂力が跳ね上がっている。
 体格こそ通常のものより格段に小さい3mほどにまで縮小されているが、カブラギ・シンヤを素体にした時と異なり鬼方カヨコの神秘も上乗せされているのだ。
 ただの膂力と剣戟で弾き飛ばせるほど、脆いものではないはずだ。

「妙な言い方をするな。貴様、さてはただの小娘ではないな?」
「質問に応えろ。その膂力……いや、神経か?何と混ざりこんでいる。」
「混ざっているとは恐れ多い。捧げているのだよ。
 服に身を委ね生命戦維と一体になる。この素晴らしきあり方こそ理想の姿だ。」
 蕩けた顔で羅暁が語るたびに、彼女の背後で虹色の光がギラギラと輝きを増していく。今の己の姿を本心から崇高だと思っているのだろう。
 鬼龍院羅暁の肉体は宇宙生命体生命戦維と同化している。
 神経に作用する生命戦維の生態を筆頭に、身体能力も再生能力も常人とは次元が違う。
 
 星を渡り知性体を育て、服となり表面を覆うことでエネルギーを得る生命体。それが生命繊維だ。
 鬼龍院羅暁の正体は、いわばその代弁者(メッセンジャー)。
 星そのものを生命戦維に捧げ、世界を一枚の布で覆うことさえ厭わぬ怪物だ。

 熱烈に語る羅暁と反比例してセレブロの言葉からは熱が失われていく。
 興味のないアーティストの良さを長々と説明されているかのように、目に見えて空気が冷めていた。
 
「理解できん。体(ふく)など己のために使い捨て使い潰すものだ。
 捧げるものでも身を委ねるものでもない。布切れ一枚に何を見ている。」
「……………………………………はぁ?」
 ブチブチと音を立て顔を歪ませる羅暁に対し、セレブロは白けた声色を隠さない。
 怪獣になっていなければ欠伸の1つでもしていただろう。
 纏流子や鬼龍院皐月がしたような怒りに満ちた反応ではない。心底無価値なものを前にしたような気の抜けた反応が羅暁の神経を苛立たせる。

 セレブロの発言に挑発の意図はなかった。本当に全く理解できなかったのだ。
 寄生生物のセレブロには『服を着る』という概念そのものが存在しない。
 地球人含め衣服の文化を持つ存在に寄生することはあれど、それも寄生対象の地位や人間関係を利用するための記号でしかない。
 乗っ取る体さえ必要なら乗り換えるのだ。体が着る装飾品など気にしたことさえないだろう。『服』という単語を知っていたかさえ怪しいくらいだ。
 
「生命戦維とやらを使っているのはお前だろう?
 地球人の中でもただの糸屑をありがたがっている奴は初めて見る。貴様の世界の人類はみなそんな阿呆なのか?」
「それ以上の愚弄は許さんぞ!小娘ェ!!!!!!」

 この瞬間、初めてセレブロは羅暁にとって”敵”となった。


21 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:17:11 Y5mWZkcY0
 勢いよく飛び掛かり羅暁が二刀を振るう。
 鬼龍院羅暁は剣士ではない。
 アンダーワールドの整合騎士のような流麗な剣術など持ちえない。
 だが彼女の身体能力から繰り出される殴りつけるような豪快な斬撃は、生半可な技術よりよほど破壊力がある。
 仮想世界における神器が1つ。 青薔薇の剣と天穿剣の最上の天命(つよさ)がその衝撃を余すところなく世界に伝え。
 セレブロがどうにか回避した先では、斬撃の余波が公園どころか周囲の街をも滅多切りにしていた
 
(これは、面倒だな。)
 ちらりと背後の惨状を見て、セレブロは考える。
 直撃してはペダニウムゼットンだろうとダメージは避けられない。余波でレジスターが砕けたりしてはたまったものではない。
 羅暁を亀井美嘉から引きはがした後は適当に時間を潰そうかと思っていたが、そのような余裕は無さそうにみえた。
 
「何をよそ見している。」
 羅暁の反応は早かった。
 一気に距離を詰め出鱈目に二刀を振るう。
 ペダニウムゼットンの装甲がガリガリと切られ傷ついていく。無視できないダメージを追うのも時間の問題だ。
 
「しつけえぞこの糸クズババア!」
 後退しつつ剣戟を捌くセレブロは、埒が明かないと両腕に赤いエネルギーを溜める。
 赤色の稲妻。ペダニウムスパークを前に、羅暁は青薔薇の剣を地面に突き立て言葉を刻む。
 
「エンハンス・アーマメントォ!」
 氷塊の剣の記憶を解き放つ、武装完全支配術。
 剣を中心に周囲が氷河に呑まれたように氷で覆われ、氷の波がペダニウムゼットンに向けて襲い掛かった。
 赤い稲妻と青い氷が正面からぶつかり合う。
 雷熱で焼かれた氷から煙が上がり、その煙を花開いた青薔薇が凍てつかせる。

「……互角か。」
 羅暁が苦々しく呟く。
 正面から互角の威力の技のぶつけ合い、羅暁にとって一番面倒な展開だった。
 なにせ先に解除したほうが確実にダメージを追う我慢比べだ。
 牽制技なら良かったが。青薔薇の剣の武装完全支配術は整合騎士序列二位ファナティオを抑えこめるほどの威力がある。
 対するぺダニウムスパークもウルトラマンジードのストライクブーストと真正面から打ち合える熱量だ。
 掠る程度ならまだしも正面から喰らえばただでは済まないのは両者同じである。
 
「ハハハハハハハ!!!!」
 苛立たし気に呻る羅暁に対し、セレブロはけたたましく笑う。
 セレブロが羅暁のことを理解できなかったように、羅暁もまたセレブロのことが理解できない。
 なぜこのような消耗するだけの競り合いにこの存在が興じているのかが。分からない。

「貴様。時間稼ぎのつもりか?」
 苛立たしげな声で、今度は羅暁が問いかけた。
 小娘の能力か変身体の力か、あるいは”その奥にいる何者か”の力か知らないが、目の前の小娘はテレポートができる。
 このような我慢比べになる前に逃げればいい。
 だが目の前で高笑いを上げる怪獣の姿は『逃げられなかったから自棄になっている』ようなものではない。
 心の底から愉しんでいる。まるで物事が自分の思い通りに進んでいるような。そんな笑いだ。

「あの家屋に現れたのはもう一人の翼竜のような怪物の力だろう?あの怪物女と手を組んでいるのはまだいい。
 だがなぜあの弱弱しい小娘を助ける。
 戦力を探しているのか?だとしたら市街で戦う藤乃代葉や黒い剣士の方がよほど優秀だろうに。」
 鬼龍院羅暁は見ていた。
 自身が蹴り飛ばした亀井美嘉のすぐ背後。赤黒いワープゲートをくぐって表れた翼竜のような怪人――プテラノドンマルガムとその隣に立つ鬼方カヨコの姿を。
 屋内にワープして現れたこと――方法はどうでもいい。異世界の能力や支給品の力を使えばいくらでも手がある。
 考えるだけ無駄だろう。
 だが”なぜ現れたのか”については気にする必要があるだろう。
 亀井美嘉――羅暁はその名前さえ知らないままだ――にこの怪物が目をかけるほどの何かがあるとは思えない。


22 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:17:55 Y5mWZkcY0
「そっちの方が面白そうだからだ。それ以上の理由が必要か?」
 セレブロの返答に、羅暁の目の色が失望に染まる。
 仮にも企業の総帥を務めた羅暁の考えは実利に即している。
 だが帰ってきた答えは『面白そう』という極めて自己中心的で利にならぬものだ。
 
 彼女は人は服の奴隷だと考えている。ただの人に価値を見出さない。
 だが目の前の怪獣は、その人ほどの価値もない。
 『崇高な使命』のために動く羅暁とは、どこまでも相いれない相手だった。
 
「もういい。そしてはっきりした。貴様はその小娘ではない。
 羂索は頭に輪っかを浮かべた小娘を『キヴォトス人』と言っていたが、貴様には人ほどの価値もない。
 不愉快だ。ここで消えろ。」
「テメエの趣味が悪いだけだろうが!このゲーミング糸クズババアが!」
 氷塊と熱線。ぶつかり合う先のエネルギーが臨界に達し。稲妻は爆ぜ氷が砕ける。
 公園を中心に周囲の家屋は氷に包まれ、公園の外の道路は熱線の衝撃で電柱や外壁がボロボロに砕けた。
 それでも戦いが止まる気配はない。
 まるで二匹の怪獣が暴れているような戦闘痕が、彼らが動くたびに広がっていった。
 
◇◆◇◆◇
 
 「はあああああああああああああああ!!!!!」
 槍から伸びた二本の帯がレベル3の体を捕らえ、代葉の槍が照準を合わせる。
 染離改 重炸炎烈撃墜槍。
 その本質は、霊力で収縮させた槍を打ち込むパイルバンカーだ。
 槍が爆ぜ、帯で縛り付けた左腕から骨を伝って衝撃が伝わる。
 歯を食いしばって打ち込んだ槍の威力は絶大。貫通した槍を受けてレベル3の右半身に大穴が開いた。そして――
 
「おいおい嬢ちゃん。やってくれるじゃねえか。」
 レベル3に空いた穴のむこう。横に構えた黒い剣で槍の直撃を防いだ黒の剣士――PoHがいた。
 先ほどまでPoHを乗せていたガットゥーゾが、2つ隣の屋根の上寂し気に吠えた。
 代葉への攻撃をNPCモンスターに任せ、逃げていたはずのPoHが槍の斜線上にいることにはもちろん理由があった。

「お前の烏、他人とも位置を入れ替えられたのか?なんで今まで使わなかった?」
「使う必要がなかった。」
「嘘だな。大方令呪で制限されていたんだろ。
 元から強いチーターどもは大変だなぁ。俺みてえな凡人は気楽でいい。」

 PoHの言葉は当たっていた。
 忌々し気に顔を歪めた代葉の反応を見て、PoHもその事実に気づき神経を逆撫でするような笑みを浮かべた。
 狂骨との修行で強くなり式神の転移能力を他者にまで及ぼすことが出来たが。その力は令呪使用時にしか適用できない。
 PoHがへらへらと笑う間に令呪の効果時間は切れる。
 上限を超えた数の烏が消え、入れ替え範囲の適用も自分だけだ。
 そもそもが不意打ちの奇策だった。二度は通じないだろう。
 
「それによぉ。お嬢ちゃんじゃ俺には勝てねえ。
 お前、人を殺したことないだろ。」
 相変わらずへらへら笑いで向けられた言葉に、代葉の背筋がぞくりと冷えた。
 貴方はあるの。そう問いかける気にさえならない。
 
「背後の俺事刺そうとしたんだろう。ならなんで貫通した瞬間手を抜いたんだ?
 そもそもお前、レジスターがない側の腕を狙ったろ。
 心臓も頭もレジスターも狙わねえんじゃ、防ぐのなんざサルでもできるぜ!」
「私の敵はあくまで幻妖。
 貴方はここで無力化してもらうけど。殺すつもりは……」
 いかにもなヒーロー気取りが紡ぎそうな甘ったれた言葉だ。
 閃光――アスナあたりと出会えば実に気が合うことだろうなとPoHは思う。
 藤乃代葉に参加者を殺させれば、PoHの望む愉悦を楽しめるだろうが。今この場で実行しては失われるのは己の命。
 それでは意味がない。マクアフィテルに手をかけながら、勿体ねえなぁとため息をついた。
 
 「だーかーらぁ。
 そんな調子でデスゲームやってんじゃねえっつてんだよ!このサル!!」
 幻妖に隠れたPoHの腕が、汚泥のような泡を吐いていた幻妖の顔を貫いた。
 手に握られたマクアフィテルは、有言実行と言わんばかりに代葉の腕――レジスターのある部位に狙いを定める。
 染離で弾く隙に剣は幻妖の影に隠れ、レベル3への止めを兼ねたもう一撃を見舞っても大穴の先にPoHはいない。
 隣に視線を移すと、屋根を飛び移る黒の剣士が。おちょくるように飛び交う烏を切り落としていた。


23 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:19:24 Y5mWZkcY0
「逃がさない!」
 幻妖の残骸を槍に取り込む――藤乃代葉の持つ希少な能力がなせる業だ。
 陰陽師の中でも希少な『幻妖と契約してその力を使う』能力。
 藤乃家固有の特異体質。『幻妖を吸収する力』。
 出し惜しむ余裕は無い、万が一レベル3が蘇生などされては大惨事だ。

 互いに屋根を飛び交うことに恐怖はない。
 追跡では転移が使える代葉が有利だが、PoHはご丁寧に代葉が奇襲できる範囲の烏をその刃で切り落としている。下手に転移しては隙をさらすだけだった。
 それでも代葉には負けるつもりは毛頭ない。
 早さに自信のある先輩陰陽師周防七咲には劣るとはいえ。陰陽師である代葉の速度はPoHより上だ。
 だが追いつくよりも早く、変化は起きた。
 
「日本人は真面目なのが美徳だって言うがな。俺にいわせりゃ頭でっかちの知能遅れだ。
 前だけじゃなくて上を見ろよ上を。」
「何を……。」
 PoHの挑発と同時に、空が陰に埋め尽くされる。
 代葉が気づいた頃には、ギリアンが巨大な掌を叩きつけてんと迫っていた。
 視界から外した瞬間に剣士の姿は消えていた。どうやら狼――ガットゥーゾと合流されてしまったらしい。

「しまった。」
 幻妖と剣士に気を取られすぎていた。
 大虚は脅威ではあるが、死神でも滅却師でもなく陰陽師である代葉にとっては未知の相手だ。
 警戒心は知識ある幻妖よりどうしても劣ってしまう。明確な失態を歯痒く思うが、悔やんでいる余裕は代葉にはない。
 動きこそ遅いが建物1つが丸ごと射程内。
 射程外の烏と位置を変える余裕もなかった。

「もう一撃くらいなら、いけるはず。」
 上から降ってくる巨大な掌に代葉は回避ではなく迎撃を選択する。
 槍に令力が込められぎちぎちと圧縮され、爆発寸前のエネルギーが槍のから溢れそうになる様を左腕に縛り付けて抑え込こむ。
 重炸炎烈撃墜槍があと何発使えるか、令呪の制約を受けているかさえ代葉自身はっきりと理解していない。
 この一撃で大虚を倒せるとも思っていない。
 だが、ここで出し惜しんでは死ぬだけだ。
 
「私に力を貸して……夜島くん。」
 彼だったら絶対に退かない。
 彼だったら絶対に諦めない。
 その思いで槍を突き立てる代葉。
 

「柱刀骸街(ゼノブレード)」


 その耳に、聞き間違いようのない男の声が確かに届いた。
 陰陽師の影を纏う刃が、市街地の空に黒く線を刻む。
 大虚の右肩が両断され、代葉の穂先が落ちゆく腕を貫き、大虚の腕は無数の白い骨片に変わる。
 霊子となって溶けゆく残骸の合間に、藤乃代葉はその姿を確かに目にした。

「夜島くん!」

 藤乃代葉の最も信頼する仲間の1人。夜島学郎。
 いることは知っていたが、こんなに早く会えるなんて。
 大きく目を見開き、代葉の高揚が声となり空に響く。
 心の中にあった不安や緊張がどんどんと薄まる。駆け寄ろうと虚の処理もそこそこに代葉は駆けそうとして……異変に気づいた。

「ガアアアアアアアア!!!!」
「夜島……くん?」

 夜島学郎は、何も答えない。
 覚悟を決めた叫び……というより、獣が吠えるような叫びをあげ。代葉には一瞥もくれず大虚に刃を向けた。
 色を塗り忘れたように白んで見える学郎の姿は、どう見ても正気のそれではない。
 そもそもがらしくないのだ。
 夜島学郎は常に他人を気遣うお人よしの権化だ。
 代葉を見つけた時に気遣う言葉の1つもないというのはあり得ない話だ。

 獣のように呻り刃を振るう友人の姿は、代葉の思考を止めるには十分だった。

 ここで出会うまでの数時間で、夜島学郎が鬼龍院羅暁の手で思考を奪われていることなど知る由もない。
 亀井美嘉の、代葉と学郎を会わせてはいけないという感覚は正しかった。
 困惑が脳を駆ける。混乱が判断力を後れさせる。
 
「どうしたぁ。あのハンサムくんが来てから隙だらけだぜぇ。」
 だからキリトの――PoHの言葉に反応することができず、彼が投げた何かが代葉の背に深々と突き刺さった。
 痺れるような痛みと熱さに、思い悩む余裕も与えられずに代葉の意識は引き戻された。
 
 夜島学郎の姿は既に遠く、別人のように荒々しい刃を振るい大虚を滅多切りにしていた。
 追いかけることも心配することも、助けることも今の代葉には許されなかった。


24 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:20:01 Y5mWZkcY0
 
「こ……のっ。」
 生温かいものが垂れる背中から、刺さったものを強引に引き抜いた。
 爪の先が赤く濡れた獣の前足だった。投げやすいサイズに切断された爪の先は緑色に変色している。
 代葉が既に殺してPoHによって切り取られた、ガットゥーゾの爪だった。

「しまった……この爪には……」
「毒がある。だろぉ。
 基本的なバステだ。ポーションを買い忘れたテメエのミスだなぁ。」
 
 背後から向けられるじっとりした声に槍を振るう。
 どうにかギリギリで振るわれた剣を弾いたが、ガットゥーゾの毒は3秒毎にHPが最大値の5%分ずつ減少するという超即効性。
 血管に針が刺さったような痛みが走り、藤乃代葉は片膝をつく。

「あばよお嬢ちゃん!」
「……まだっ!!」
 愉快なショーを見る子供のように興奮し、マクアフィテルを振り下ろすPoH。
 ポイズンクロウによる毒ダメージのせいか、代葉の反応は笑えるほどに遅かった。
 彼女の槍は黒曜の剣を弾くには間に合わない。
 できて――彼が騎乗する狼の首を捻じ切る程度。

「うわぉ。」
 鳴き声さえ言い残せず、ランスの刺さるガットゥーゾの首が180度ぐるりと回り泡を吹いた。
 狼の両足は力を失い、PoHのレジスターを狙った刃は大きくそれる。
 だが、動けない今の代葉がその刃を避けるには、1手遅かった。

「それで反撃したつもりかよ!
 いいか!剣ってのは、人を切り裂き殺す道具なんだよぉ!!」
 この会場にいる誰かに投げかけるような、狂信的な言葉を吐いて黒曜の刃が肉を裂く。
 PoHの刃は代葉の右足を捉え、黒曜の剣がべきべきと骨をへし折る音が代葉の中を伝わった。
 
「………………!!」
 歯を必死に食いしばり、体を流れる令力を回すことに専念する。
 PoHの言葉を証明するかのような、取り返しのつかない傷だ。
 この瞬間をもって、藤乃代葉の右足は機能を失った。
 令力を回して止血を図るが、足の大半を失う傷は処置しきれない。
 
 代葉の足は見るも無残な状態だった。
 マクアフィテルの鋭利な刃で裂かれた傷口こそまっすぐだが、合間合間に白く浮き上がる骨が粉々に砕けた。
 皮とわずかな筋線維だけでぶら下がった足から血液があふれ、スレート屋根を赤く染める。
 
 その光景は日々幻妖と戦う代葉にとって、ありえないものではない。だから声をあげなかった。
 その光景は電子戦闘に慣れたPoHには幾分か生々しいが、下手人ということもありショッキングなものではない。だから声を上げなかった。
 だがその光景は、命の危機も暴力による争いも縁遠い人間にとっては――

 
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 
 ・・・・
 亀井美嘉にとっては、あまりにも残酷で刺激の強い光景だった。
 
 突如戦場に響いた悲鳴に、代葉もPoHも声のする側……道向かいに立つ3階建てのビルを見あげた。
 いつの間に移動したのだろうか。ゆらりと異様な雰囲気を纏う亀井美嘉がライオンのぬいぐるみを構えて立っていた。

「盈たして」
 
 どす黒い声が静かに、しかし道向かいにいる二人にも聞こえるくらいはっきりと奏でられた。
 声の主が持つライオンのぬいぐるみから青黒い靄のようなものが吹き上がる。
 現れたのは傷だらけの日本人。年端もいかない子供ながら、その姿を視界にとらえただけでPoHの感覚が撤退を促した。
 思えば、初めて亀井美嘉を見た時何か嫌な予感がしていたのだ。
 キリトを前にした高揚とも、覇王を前にした畏敬とも違う。
 死の予感とも言うべき感覚に、PoHの体が無意識に後退していた。
 
 ――――美嘉、何があったの。
 対する代葉は、亀井美嘉の顔を見ていた。
 別れてから30分と経っていない。五体満足で無事であることは幸いだったがそれ以上に美嘉の様子は異常だった。
 目は血走り隈が酷い。恐怖か憎悪か分からないが目は大きく見開かれ、歪んだ顔は元々が整った美貌だからか違和感と不快感を強烈に与えている。
 夜島学郎ほど派手な変化はないが、間違いなく正気を失いかけていた。
 
 変質した美嘉の後ろでは、翼竜のような頭部の怪人がその様子をニヤニヤと楽しそうに眺めている。
 あれは誰だ?
 間違いなく美嘉の変質の原因だろうが、それ以上のことを代葉が知るチャンスはない。
 
 PoHが逃げるよりも早く。
 代葉が声を届けるよりも早く。

 言霊は、解けた。


25 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:21:52 Y5mWZkcY0

◇◆◇◆◇

 ノノミが美嘉に頼んだことは、代葉の戦う戦場で美嘉の持つ悪霊――月蝕尽絶黒阿修羅を起動することだった。
 何故ノノミがその支給品のことを知っているのか、尋ねられるほど美嘉は頭が働いていないし尋ねたところでノノミは答えないだろう。
 だが少しでも危機から逃げたい今の美嘉は、何故そんなことをするのかが気になった。
 危機にさらされ荒んだ中差し伸べられた手だ、美嘉にノノミを疑う思考も余裕もない。反射的に漏れたどうしてという質問は純粋な興味からのものだ。

「聞いてて愉快な話ではありませんよ。
 私の仲間が一人、あの黒い剣士とその仲間に殺されています。」
「そんな……。」
 既に折れかけている美嘉の心を、ノノミの言葉は深々と抉る。
 ノノミとセレブロの乱入が数秒遅ければ羅暁に殺されていた美嘉だ。人の死は既に遠いものではなくなっていた。
 バトルロワイヤルが始まって2時間強。たったそれだけの時間で人を殺すような危険な相手と戦う代葉のことが心配でどうにかなってしまいそうだった。

「彼の名はキリト。貴方やあの少女にNPCモンスターをけしかけたのも彼でしょう。
 どうにかして彼を倒したい。それが私の願いです。」
「それって……。」
「……殺す気はありません。ただ、これ以上彼のような危険な参加者に蹂躙される仲間たちは見たくない。
 そのために彼を止めたいんです。たとえ彼を傷つけることになったとしても……。
 ……そう思ってしまう私は善人ではないんでしょう。
 はっきり言って私情です。……最低ですよね。」
「そんなこと……ないと思います。
 私も、ゆうちゃんたちが酷い目にあっていたら。きっと……。」
 
 それ以上は口に出せなかった。
 平和だったとは口が裂けても言いたくないが、少なくとも命の危機とは無縁の世界でいた美嘉の価値観は。このゲームに巻き込まれ3時間もたたずに打ち砕かれている。
 東ゆう達が殺されるなど、今までならば想像することさえできなかっただろう。
 今では、出来てしまう。
 美嘉は知ってしまった。
 獣に乗った黒い剣士。正気を失った陰陽師。存在そのものが理解を拒む人の姿をした怪物。
 それ以上を言ってしまたら、美嘉の頭はそいつらの手で東ゆうが襤褸切れのように縊り殺される姿を思い浮かべてしまいそうで。

「美嘉さんは優しいんですね。」
 今にも泣きだしそうな顔をしたノノミが、ぎゅっと美嘉の手を握る。
 かじかんでいるのだろうか。彼女の手は冬空の下にいたかのように冷たかった。
 
「ノノミさん……。」
「美嘉さんがこんな殺し合いには相応しくない。誰かを傷つけることさえ貴女はきっと嫌うでしょう。」
「私は……そんな立派な人じゃ。」
「立派ですよ。誰とも知らない私の話を真摯に聞いてくださってる。
 気づいていましたか?貴方今泣いているんですよ。」
 顔に半分だけ残っていたメカ丸の装甲をノノミがそっと外す。
 空気に触れた左目の目元は赤く腫れ、恐怖でない涙が止めどなく流れていることに美嘉は初めて気が付いた。
 
 「キリトを殺してほしいわけではないんです。ただ彼を止めるためにも力を貸してほしい。
 これ以上私の仲間や、貴女の友人が酷い目に合う姿は見たくない。
 キリトのような危険な人物が参加していては、いつ貴女の友人が被害にあうかわかりません。
 願わくば貴女のような優しい人に生き延びてほしい。私はそう思っています。」
 まっすぐに見つめるノノミの目。
 エメラルド色の優しいまなざしが、美嘉の中の善意に訴えかけ。
 彼女の力になりたいと、美嘉はただ純粋に願った。
 
 リュックから香水を取り出し、ノノミにかける。
 黒阿修羅が味方だと認識する香りは、美嘉にとっても味方だと証明できる心穏やかなものになっていた。
 
「私に……何ができるかなんてわかんないけど。
 私にできることがあれば、なんでもする。それがゆうちゃんたちを守ることにつながるのなら。
 私達でキリトを止めよう!ノノミさん。」
「美嘉さん。」
 ありがとうございます。そう大きくお辞儀をしたノノミの顔は――笑っていた。


26 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:23:02 Y5mWZkcY0

(ま、嘘なんですけどね。
 嘘をつくときは半分くらい真実を混ぜるのがコツですよ★)
 すっかり信じ込んだ亀井美嘉を前に、ノノミは迫真の演技だったなと自賛する。
 殺された仲間というのはもちろんホシノ(参加者の小鳥遊ホシノではなく、グリオンの生み出した冥黒ホシノ)のことだが、厳密にはホシノを倒したのは緑谷出久だ。
 だが嘘は言っていない。緑谷出久とキリトは行動を共にしているし仲間というのも事実だ。
 問題があるとすればホシノが死んだのはホシノ側がキリトらを襲ったことが原因だし。
 目の前にいる黒の剣士はキリトとはまるで無関係の畜生であるということだ。

(キリトがグリオン様の敵であることは確定してますし。あの偽者さんには悪いですが美嘉はキリトを恨んでくれた方が都合いいんですよねぇ。)
 ノノミはキリトのことを顔と名前しか知らない。
 あの偽キリトの正体が誰なのかも分からない。
 ただ、”今後の計画”のために亀井美嘉をおだてるにあたり、キリトの存在を使うことは都合がよかった。
 美嘉の中ではすっかりキリトは凶悪なマーダーだろう。
 
「そろそろ行きましょう。少し刺激が強い姿になりますので、覚悟してくださいね。」
 前置きしたノノミがプテラノドンマルガムにその姿を変える。
 作り出した赤黒いゲートがワープホールだと聞き、こうやって自分の元に現れたんだなと美嘉の中で謎が解けた。
 黄金の包帯で翼竜を縛り上げたようなその姿は、ノノミだと知っているからか不気味さはない。

「ええ。自分が何ができるか分からないけど。
 殺し合いを止めるために。出来ることを精一杯!」
 ノノミの腹の中などは知るよしもなく、決意を秘めた眼を美嘉は煌めかせる。
 東ゆうなら。いつだって泣かなかったあの強く眩しい少女なら。そう言って進むはずだ。
 ワープホールを潜ることに恐怖は無かった。
 先を行くプテラノドンマルガムが嗤っている事にも、気づかなかった。
 
 ワープを潜った先、戦場にほど近い小ビルの上。
 戦場の光景が亀井美嘉の目に飛び込んだ。

「それで反撃したつもりかよ!
 いいか!剣ってのは、人を切り裂き殺す道具なんだよぉ!!」
 
 藤乃代葉の右足が、黒の剣士の手で叩き折られた。その光景が。


 「――――――――――――――え?」


 阿呆面としかいいようがないほどに、目と口を大きく広げたまま美嘉は固まった。
 都市部で行われた混戦は、いくつもの屋根を飛び越えて破壊痕と血の跡を残している。
 幻妖は吸収され、代葉の手で穴が開いたガットゥーゾの肉片が飛び散っている。全ての残骸がバラバラの場所にあった。
 夜島学郎が虚を滅多切りにしている場所も、美嘉の足では遠いと言える地点だ。
               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そんな広大な場所のど真ん中。狙いすましたかのように美嘉の目の前で。
 藤乃代葉が殺されかけている。

 どくんと、腹の底から何か黒いものがあふれた。
 焼け焦げた煙のような靄が、美嘉の全身からわずかに溢れ出すさまを、ノノミだけが捕らえていた。
 腹の中で捕らえるケミー、エンジェリードがカードの中でぶるぶると震え。対照的にノノミは嬉しそうに腕をかざす。
 黒い靄をもっと黒く染める言葉を。亀井美嘉を作り替える悪意(のろい)を。言の葉に乗せる。
 




「暗黒に、そ〜まれ★」


27 : ■を為す女ー外道賛歌 ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:24:05 Y5mWZkcY0


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 
 後ろでノノミが何かを言っている。

 
 何を言っているかはよく分からない。


 喉が裂けそうになるほどの悲鳴を、美嘉は止めることが出来なかった。

 
 ただ彼女が言葉を紡いだ瞬間、胸の奥から漏れ出た何かが完全に溢れ出し。

 
 黒く冷たいその激情に抵抗することも反発することも、今の美嘉にはできなかった。


 気が付くとライオンのぬいぐるみを美嘉は構えていた。
 その顔は憎悪に歪み、血走った眼を大きく見開き黒の剣士を睨みつけていた。
 道向かい不安そうに見つめる代葉の言葉も、今の美嘉には届かない。
 
 「盈たして」

 自分の声だとは思えないほど、血の通わない冷たい振動が美嘉の口から響いた。

 亀井美嘉という人間は、善人ではあるが無垢ではない。
 小学生のころ壮絶な虐めにあい、唯一信じられたヒーローが海外に行って暫くで小学校に行けなくなった。
 13にも満たない年で顔を整形(か)え、クラスメイトとの関係性が続くことを恐れて受験を選んだ。
 変わりたかった。拒みたかった。嫌われたくなかった。
 ――――それでも、自分をイジメた人たちを殺そうとまでは思わなかった。

 頭をよぎらなかったかどうかまでは、亀井美嘉本人のみが知る話だ。
 それでも亀井美嘉は、自分を否定した世界への反逆を破壊ではなく自己成長と安寧を選んだ。
 そんな人間の胸の内。抜け落ちていた、あるいは抑え込まれていた思いを、ノノミの錬金術がこじ開けた。

 「月蝕尽絶黒阿修羅ァ!!!!!!」

 言葉にするのなら――殺意。
 その思いはまさしく、彼女が呼び指す少年霊の根幹にあるものと同じだった。

 少年霊と亀井美嘉の足元の影から、透明の腕が無数に湧き上がる。
 藤乃代葉が式神を呼び出した光景に酷似していたが、半ば暴走しているからかその危険性は比にならない。
 どこまでも腕は伸び、どこまでも敵を捕らえる。
 左右の建物に向けて伸び広がり。周囲を飛び回る烏を伸び掴み。
 PoHと代葉がいる目の前の建物に向かって勢いよく飛び掛かった。


28 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:25:26 Y5mWZkcY0
◇◆◇◆◇

「潮時だな。」
 羅暁が放つ剣戟をバリアで防いでいたセレブロがぼそりと呟き、テレポートで羅暁の背後に移った。
 市中の戦場から冷たい殺意が溢れ出た光景に、羅暁も腕を止める。

 遠くに佇むビルの上に先ほど殺し損ねた少女が見える。
 足元からは群れたクリオネのように透けている腕がわらわらと湧き出てうねり伸びた。
 伝わる威圧感はレベル3幻妖や大虚と遜色ないが。NPCモンスターでないためか彼らよりずっと濃く冷たいもののように感じられた。
 
「なんだあれは?」
「亀井美嘉――貴様が殺し損ねた女が持つ支給品だ。
 聞いていた以上だな。建物1つ程度なら軽く潰せそうだ。」
 際限なく伸び続けている透明の腕はビルの屋上から周囲の屋根を覆いつくしていく。
 本物はダム一帯を縄張りにしていたS級の悪霊だ。制限を受けても建物数件は射程内である。
 クラゲやクリオネのような透明感ある白い腕に捕まれ烏はガアガアと暴れていたが、前触れなく胴体に大きな穴が開き羽を撒き散らしながらどろりと溶けていく。
 生き物がつぶれる瞬間というのは見ていて気分がいいものではない。流石の羅暁も思わず眉をひそめた。
 
「お前の言っていた面白いこととはあれか?」
 セレブロが美嘉を守った理由があの怪物を扱えるというのならまだ納得できる。
 だがそれは、いつでも殺せていた小娘が厄介な敵に変わることと同義だ。
 
「わざわざ敵を増やして何が楽しい。
 曲がりなりにもここは殺し合いの場だ。縛れもできない怪物を増やして何の意味がある?」
「だからお前はつまらん。
 検証実験を経てこそ、面白い光景は見られる。
 ノノミの口車に乗る形になるが、無力な地球人を怪物に変えるのはなかなかにそそるな。今度俺もやってみよう。」
「……変えるだと?
 あの怪物は支給品だと言ったのはお前だろう。
 ただ扱うだけでは人と変わらん。その身を捧げ一体となり始めて変えられるのではないか。」
 変わるというのなら内部に取り込んでこそだろう。
 生命戦維と一体化している羅暁はそう考える。
 同じく生命戦維を内に宿す纏流子や針目縫が、まがい物の神衣や極制服を扱うだけの鬼龍院皐月やその配下よりも上位であるように。

「……初めて意見が合ったな。
 そうだ、今のままではあの小娘は強大な力を持つだけの雑魚。
 だから今から変える。俺の『個性』と鬼方カヨコの『念』を使ってな。」
「何を言っている?」
「これ以上伝える義理はない。」
 言うべきことは言い切った。
 そう言っているかのようにセレブロはペダニウムゼットンの角を赤く光らせ、腕のに円環状の黒い稲妻を走らせたと思うと、燃え滾る火球を作り出した。

「ところで鬼龍院羅暁。
 貴様は俺の熱線をわざわざ氷で防いだ。
 糸クズのことなど俺は知らんが……ああいう繊維は良く燃えるのではなかったか?」
 般若のような顔をした羅暁が何か言う前に、セレブロは手から火球――ぺダニウムメテオを撃ちだした。
 本来の羅暁の耐久力ならば、火球程度受けても再生できるだろう。
 だが夜島学郎に対する精神仮縫いのように自身の再生能力にも制限がある可能性を捨てた羅暁ではない。
 事実として再生能力は落ちていたし、OGIKUBOの宇宙パトロールの前に姿を見せた生命戦維は火で燃えたという実例もある。
 そんなトンチキな世界のことを当然羅暁は知らないが、どちらにせよ生身で受けるには危険すぎた。

「氷の剣では分が悪いな。だが、剣はもう一振り、あるぞぉ!
 エンハンス・アーマメント!!」
 もう1つの支給品、天穿剣の先端に陽光が収束し、セレブロの火球に勝るとも劣らない熱を帯びる。
 その神器の性質は『鏡』。
 剣先に陽光を集約し撃ちだす兵器。
 一閃と共に放たれたレーザーが火球を両断し、飛び散った火の粉がわずかに羅暁の肌を焼いた。
 開かれた視界の先には、怪獣の姿は影も形も無かった。
 
「……テレポートで逃げたか。」
 天穿剣によって反らされた火球が周囲の建造物をメラメラと燃やし尽くす。
 煙が立ち上る街に、羅暁の足跡だけがかつかつと響いた。

「どこに行ったかは……聞くまでもないな。」


29 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:26:18 Y5mWZkcY0

◇◆◇◆◇

「順調そうだな。」
「おかげさまで。貴女が羅暁を抑えてくれていたので楽でしたよ。
 ああ変身は解かないことを勧めますよ。貴女も射程内ですので。」
 
 いまや戦場の中心となったビルの屋上。
 ノノミの言葉通りに隣に姿を現したペダニウムゼットンに向けて透明の腕が何本も迫ってきていた。
 あらゆる相手が憎き継母に見えるという性質を持つ黒阿修羅は、亀井美嘉のの持つ香水の香りで敵味方を区別する。
 セレブロの――ひいては鬼方カヨコの肉体はその影響を受けていない。

「難儀な能力だな。」
 ペダニウムゼットンが片腕を掲げると、その全身を橙色のバリアが覆った。
 透明の腕ががりがりとバリアをひっかく中、亀井美嘉の背後にまでたどり着いたセレブロは肩に手を当てた。
 
「検証実験に入る。」
 怪獣の腕のまま肩に手を当てると、数秒と経たずに手を離した。
 一見するとただ肩に手を当てただけだが、この短時間でセレブロの持つ能力は行使されていた。
 
「終わったぞ。後はゆっくり楽しませてもらう。」
「ええどうぞ、貴女とはまた仲良くしたいものです。
 次に会う時が敵でないことを祈りますよ。」
「それは貴様とグリオン次第だ。
 面白ければ手を貸してやる。つまらなければ殺すがな。」

 そう言い残しペダニウムゼットンの姿は消えた。
 バリアに張り付いていた透明の腕たちが抑えを失いバランスを崩し倒れこみ、屋上の床をガリガリ削る。
 うねうねと蠢く腕を踏み潰し、ノノミは面白いものが見れると期待を込めて街を見下ろす。
 
「さてあとは
 ――藤乃代葉を殺すだけですね。」
 
 亀井美嘉には聞こえないように。呟きながら。

◇◆◇◆◇
 
「おいおいおいおいおいおいなんだよありゃあ!」
 向かいのビルから湧き出る透明の腕を前に、代葉にとどめを刺すことさえ忘れPoHは逃げた。
 遠目からやってきた藤乃代葉と亀井美嘉を見た時、明らかに無力な一般人の亀井美嘉から嫌な予感がしていたことを思い出す。
 屋根の上の戦場から飛び降りて、物陰を動きながら無人の街を駆けだした。
 背後を透明の腕が追ってきている様子はないが、だからと言って足を止める理由はなかった。
 
「あの予感の正体はこれか!なんてもん支給されてやがるあの小娘!」
 背後でぐしゃりぐしゃりと音が立てられる。藤乃代葉が遺した式神が透明の腕に捕まれると体に穴が開いて消えていた。
 式神だから死骸も残らないことは烏を切り伏せたPoHも知っている。だがその潰され方は握りつぶされたにしては妙だ。
 ビルに視線を移すと、傷だらけの少年霊がスケッチブックに何かを描き、その動きに合わせて掴まれた烏が潰れていた。

「あの手はあくまで拘束。本命はあのスケッチブックか!
 ……てことは見られたら敗けじゃねえか!ふざけやがって!」
 屋根から降りた判断にまだ己の勘は腐っちゃいないと確信する。
 3階から見下ろす立場の以上遮蔽物のない屋根の上に居れば死んでいただろう。

「流石にありゃあゲームにならねえ。バランス調整間違えてんじゃねえの?」
 嫌味を吐いても始まらないが、吐かないとやってられなかった。
 どうにか烏に気を取られているうちに逃げなければ。
 方向も道筋も知らないままPoHは走る。
 アバターだからか息切れや消耗はほとんどないが、ただ走るだけでは不安は振り切れない。
 走力のあるガットゥーゾが全滅させことを本気で後悔し始めていた。

 ひたすらに走り続け、PoHは小路を抜けて大通りまで進んできていた。
 未知を曲がると同時に、道に倒れこむ身長ほどある巨大な白い仮面と目が合った。
 夜島学郎と交戦していたギリアンの残骸。
 既に両足が叩き切られ、黒い布のような全身には無数の刀傷が残っている。不気味な白い仮面もヒビだらけだ。
 だがそれでもこの怪物は生きていた。PoHに気づいたギリアンはもぞもぞとミノムシのように体をくねらせPoHを喰おうと口を広げた。
 
「しまった……まだこいつがいやがったか!
 あのクソガキも殺すならきっちり殺しとけ!」
 のたうち回るギリアンを前に、悪態をついてPoHは引き返す。
 ギリアンの後ろからはあの透明な腕が迫っていたし。別方向に進む道は夜島学郎とギリアンの戦闘の結果か、電柱や瓦礫の類でほとんど塞がってしまっていた。

「ガアアアアアアアア」
 透明の腕に捕まれ潰されているのか。悲鳴を上げてギリアンがのたうち回る。
 足元を見るとガリガリと音を立て穴が開いている。夜島学郎から受けた傷もあり、そう長くは無いだろうなとPoHは思った。


30 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:27:01 Y5mWZkcY0

「そういえば、あのクソガキはどこ行ったんだ?」
 交戦していた夜島学郎の姿が見えないことをPoHは訝しむ。
 耳をそばだてるとうねうねと迫る無数の腕が蠢く音の中、PoHにはなれた剣戟音が確かに聞こえた。
 意外なことに元来た道を引き返すたびに、剣戟の音は強く響いている。
 剣戟音がはっきり伝わる場所まで来てPoHは目を丸くした。
 先ほどまでPoHがいた場所に、右足を失った藤乃代葉を守るように夜島学郎が立っていた。

「ガアアアアアアアア!!!」
 PoHが見上げた先で、夜島学郎は無数に迫る透明の腕から藤乃代葉を守ろうと剣を振り続けている。
「――――――――。」
 その背にしがみ付く藤乃代葉が、必死に何かを叫んでいた。
 距離と剣戟音もあり何を言っているかは分からなかったが。透明の腕に対する恐怖は無いように見えた。
 ガールフレンドを守る剣士だなんてなかなかロマンチックだなとPoHは思う。日本人じゃなかったらエールの1つでも送っていたかもしれない。
 ブラッキーと閃光を思い出すシチュエーションだったが、それ以上にその姿が何か妙だとPoHの勘が訴えていた。

「あの透明の腕はあくまで拘束で、本命はスケッチブックによる塗りつぶし。じゃねえのか?」
 顎に手を当てて、ふーむと脳を働かせる。
 PoHにとって亀井美嘉の手で現れた少年霊は怪物だったし、その認識は寸分の狂いもいなく当たっていた。
 透明の腕の正体が本命の攻撃の前の拘束であることも。黒阿修羅の攻撃射程が視界であることも。当たっていた。
 
「だったらなんで――あの小僧は潰れてねえんだ?
 そもそも――あのクールビューティちゃんもなんでまだ生きてんだ?」 
 夜島学郎の剣戟は遠目から見てもなかなかの速度だ。SAOの攻略組にも引けを取らない。
 だが、建物を丸ごと覆うような透明の腕を相手に1人で捌ききれるとは思えない。
 使用者の少女――亀井美嘉がコントロールしているようにも見えなかった。

 そもそも――夜島学郎が対処する腕は、ギリアンを襲った腕の数より明らかに少ない。
 理由は――藤乃代葉を狙う腕が少ないから?
 否、亀井美嘉(プレイヤー)による操作(リモート)ではない以上、あの少年霊本人に意思がない限り反射(オート)でしている動きだ。
 そんな中途半端な反応はするか?
 あの場で夜島学郎が相手しているのは、たまたま近くを通っただけの腕で。

「あのクールビューティ―ちゃんは……あの化け物の攻撃の対象外なんじゃねえのか?」
 普段のPoHであるならば。人心を利用し殺意の波を荒々しく蠢めかれす地獄の王子ならばその可能性に真っ先に気づいただろう。
 藤乃代葉が呼び出した烏が潰されたことで、PoHの頭からその可能性が欠落していた。
 ――黒阿修羅の呪いは、香水を吹きかけた藤乃代葉は対象にしない。
 カラクリは分からないまでも。PoHはその事実に気づいた。気づいてしまった。

 自分の直感はまだ死んでいない。
 無策ではなく藤乃代葉を盾にして逃げれば確実だとPoHは代葉を標的に定めたが、今度は別の問題が浮上する。
 ビルから溢れた腕は既に周囲数軒を繁殖した苔のようにびっしりと覆っていた。
 下手に近づいては抑えられ、烏やギリアンのように潰れて死ぬのは時間の問題に見える。

 隠れ進みながら、苛立ちを覚えるPoH。
         ・・・・・・・・・
 その目の前に――赤黒いワープホールが現れたのは。PoHにとっても前触れなく起きた事態だった。


31 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:28:04 Y5mWZkcY0
 
◇◆◇◆◇
 
 鬼気迫るとは、今の夜島学郎のことをいうのだろう。
 
「フジノサンニ……チカヅクナァ!!!」
 ギリアンとの戦いで霊衣は傷つき、肩から血を流している。
 何より強く刀を握りこんで手のひらと指先がボロボロだ。
 それでも、学郎は透明の腕に刃を振るい続ける。
 その背にしがみ付く代葉が、歯の奥を食いしばり泣き出しそうな目で叫んだ。
 
「夜島くん!止まって!
 よく見て!その手は私を狙ってない!!」
「ガアアアアアアアア!!!!」
 
 代葉の言う通り香水をかけられた藤乃代葉を、黒阿修羅は味方と判断している。
 夜島学郎が正気であれば、透明の腕は代葉を避けるように二手に分かれていることがわかるだろう。
 代葉がしがみ付く学郎もまた安全圏であり、学郎が切り捨てる手はたまたま近くを進んでいただけのものに過ぎない。
 だが、精神仮縫いを受けた学郎は思考ができない。代葉の声も届かない。

 「……仕方ない。こうなったら」
 覚悟を決めた代葉がリュックから取り出したものは、ノノミの持つケミーカードとはまた異なる。くすんだ色合いのタロットのようなカード。
 数秒のためらいの後、夜島学郎の背に向けてそのカードを叩きつけると、カードを中心に黒色の魔法陣が展開された。

 代葉の使ったアイテムの名は、クラスカード。
 狂戦士の金型(クラス)が収められた魔術礼装。
 代葉がずっと使わなかったのは、バーサーカーというクラスのデメリット――狂化スキルによる理性の喪失を嫌ったからだ。
 だが、今の理性を失った夜島学郎に使えば、あるいは――
 
「狂気と狂気が合わさって打ち消し合える……。
 そう都合よくいかなくても……夜島くんを縛る何かに打ち勝てるかもしれない!」

 洗脳を解くことのできるアイテムがあればよかったが、そう都合よくはいかない。
 自分で言っていて笑っちゃいそうなほどか細い望みだったが、今の代葉に出来ることが他に何も思いつかなかった。
 だからその言葉を言うことだって、後悔はない。
 
 ・・・・・・・・・
「令呪をもって命じる!
 バーサーカーのカードに宿る英霊!夜島君を助けるために力を貸して!!」
 代葉の声に応じて痣が輝き。クラスカードから噴き出すエネルギーが夜島学郎に凝縮される。

 式神の制限を解き放つために1画。バーサーカーのカードに重ねてもう一画。
 残り一角がゲームエリアにおける命綱である以上代葉はもう令呪を使えないが、後悔はなかった。
 夜島学郎を助けるために、出来る力をすべて使いたい。その選択は正しい白の中にある。
 
「グラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 夜島学郎を包むように魔法陣から光が吹き上がり、左目に宿る焔のような装飾から赤い稲妻のような線が走る。
 怪異の祖と契約した英雄の肉体に、半人半神の英雄の性質が重なるようにその姿が変化する。
 漆黒の盡器は巨大な斧剣へと姿を変える。
 ただ姿が変わっただけなのに沸き上がる圧力が段違いに増していた。
 しがみ付いていた代葉が衝撃に吹き飛ばされるが、その顔は晴れやかなものだった。
 
「オレ……おれハ……いったい何が。
 穂波さんとあの子は……どうなって。」
 頭を抱える学郎の声に、次第に色が戻っていく。
 彼の脳内では脳を縛る生命戦維と脳を侵す狂化の魔力が互いに喰いあっている状態だ。
 アメリカにおける偽りの聖杯戦争で呼び出されたバーサーカーのように、狂気と狂気が打ち消し合うことは決してゼロではない。
 ましてや令呪を使ったのだ、夜島学郎が正気に戻るのは必然と言えた。

 後ろ姿だけでも今までの暴走していた姿とはまるで違う。
 思わず目を潤ませる代葉だが、夜島君の前では凛とした自分でいたいという思いが涙を拭わせた。
 
「夜島くん!!」
「その声は……もしかして藤乃さん?どうしてここに?」
 
 聞き馴染みのある声に夜島学郎の意識が一気に覚めた。
 もしかして藤乃さんが助けてくれたのか?
 だとしたらまず初めに謝らないと。


32 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:29:14 Y5mWZkcY0


いつも通りの申し訳なさと、友と再会できる喜びを胸に振り返る夜島学郎の目の前で。







「「え?」」
「もしかして、……また俺なにか、やっちゃいましたぁ?」


 ――藤乃代葉の胸から深々と、黒曜の剣が突き刺さっていた。


33 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:30:25 Y5mWZkcY0

 口と心臓から血を吐き出し、代葉の目が急速に光を失っていく。
 その姿を受け入れられない学郎は、脳が目の前の事態を理解できずしばし茫然と立ち尽くす。
 学郎と代葉の姿がツボに入ったのか、ギャハハと下劣な笑みを黒の剣士は浮かべていた。
 
 夜島学郎の目には剣士の背後の空間に一瞬だけ赤黒い穴のようなものが見えたが。瞬きを終える頃には消えていた。
 だからこの男が何者なのか。どうやって透明の腕が蠢く屋根の上に現れたのか。
 学郎にも代葉にも分からない。
 
 藤乃代葉の体から香る香水が、無数にうごめく腕をPoHに近づけさせない。
「あ……あ……。」と苦しそうに頭を抱える学郎に代葉は手を伸ばしたが、PoHが後ずさるたびにマクアフィテルに刺さった代葉の体も後退していく。
 伸ばした手は届かず、だらりと力なく垂れ下がった。
 
 「ご……めん。美嘉。夜島くん。」
 
 その御免がいったい何に向けられたものだったのか。
 それを知るすべは、もう誰にも残っていなかった。
 
【藤乃代葉@鵺の陰陽師 死亡】

◇◆◇◆◇
 
――――――スキルの発動条件を満たしました。

◇◆◇◆◇

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
 
 剣を抜いた夜島学郎の右目は色を失い涙を流し、対する左目では炎がどす黒く燃えていた。
 狂気と狂気を打ち消し合う藤乃代葉の策は成功した。
 令呪を行使したことでギリギリ成立した奇跡は、極めて危ういバランスで成り立っていた。
 藤乃代葉の死亡により動揺した今の学郎の不安定な情緒では、そんな安定など起こらない。

 バーサーカーのカードの影響はいまだ健在。
 学郎以上に大きく膨れ上がった斧剣を狂戦士は振るう。
 刃が弧を描きPoHへと迫るが……体に当たる寸前で止まった。

 PoHが向けた刃の先端には、マクアフィテルに刺さったままの藤乃代葉の肉体があった。
 
「どうした?ヤクでも決めたみてえなツラしてもお友達は斬れねえってかぁ!?」
「オマエェ!!!!!!!!!」
「おうおういいじゃねえか!猿みてえにキャンキャン泣いてよぉ!
 日本人(サル)が一匹死んで泣けるとはなぁ!
 もったいないってのはジャップの美徳だなぁ!安上がりで羨ましいぜオイ!!」
「モウお前ハ喋るなァァァァ!!!」
 
 麻薬ジャンキーにでもなったような白目をむいた笑顔で、PoHは笑った。
 頭の中を尋常でないアドレナリンが駆け巡っている。夜島学郎の一手一手がはっきり見えた。
 攻撃に合わせて剣にぶら下がった藤乃代葉がPoHによって差し込まれる。
人間の盾とでもいうべき下劣な手を使う黒の剣士を前に、学郎の怒りが際限なく湧き上がる。
 血液が別の何かに入れ替わったような感覚が全身にある、歯を食いしばるたびに胸の内で何かが燃え上がる。

「お前だケは!!オマエハァァァァァ!!!!」
「やれるもんならやってみな。
 お友達のキレ―な顔をザックリ斬れるもんならなぁ!!!」
 
 だが、事態は好転しなかった。
 なんど刃を振るっても、PoHは狙いすませたように代葉の体を斜線上に持ち出してくる。
 ポールを前に興奮する犬をおちょくるように、藤乃代葉という極上の玩具が夜島学郎の前にぶら下げられる。
 アバターの腕力でブンブンと振るわれる代葉の血液がびちゃびちゃと飛び散り。目を見開いた死に顔はケチャップをこぼしたように全身が赤く色づいている。
 その姿に死者への尊厳など感じられない。
 もはやその様は戦いではなく。凌辱にも等しかった。
 PoHも長い戦いで疲弊しているが、バーサーカーのカードを使う夜島学郎の方が明らかに消耗が著しかった。
 もはや都市中を襲う黒阿修羅の腕もPoHを襲わない。
 夜島学郎が倒れるまで、この凌辱は続くと思われた。
 

 
 「許さない。」

 ――亀井美嘉の声が戦場に響くまでは。


34 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:31:57 Y5mWZkcY0

 横から入り込んだ美嘉の腕ががっしりとPoHの手首を掴んだ。
 手首のスナップを強引に抑えこまれたPoHは、苛立たし気にその手の先を睨む。
 
「あぁなんだお前。今いいとこ……ろ……」
「キみハ…………」

 動きを止めた男たちの前で、美嘉は首を曲げPoHを見やる。
 その姿はPoHのようなアバターでもなければ、学郎のような戦闘服でもない。
 ベージュ色のブレザーに胸元に青いリボンをつけた城州北高校の制服は。都市部としては適切でも殺し合いという環境にはそぐわない。
 そんな殺意や敵意とはかけ離れた格好のまま。殺意と敵意をむき出しにして亀井美嘉は冷たく言い放つ。
 
「許さない」
 
 その姿に、思わず一歩PoHは後ずさった。
 光を失ったように真っ黒に染まるその眼は、どう見ても正気のそれではない。
 向けれられた目は覇王十代と同じ。絶望に冷えきり壊れた者の底知れぬ色。
 否、覇王のように無関心な絶望ではない。
 濃縮された絶望全てが、PoHに向けられている。

「許さない」
 
 メカ丸を纏っているのならいざ知らず、女学生の腕力でアバターどころか生身のPoHを止めることさえできないはずだ。
 にもかかわらず。PoHの腕は動かない。
 ぎりぎりと音を立てて首が締め上げられる。
 亀井美嘉の異常な握力にPoHが苦悶の声を上げても、美嘉は握り続けることを止めない。

「許さない」

 美嘉の全身から、さっきまで学郎やPoHを襲っていた透明の腕がシュルシュルと無数に湧き上がる。
 いや、その腕は透明ではなかった。
 透明だった腕が墨でも垂らしたように真っ黒に染まり、学郎やPoHではなく美嘉の全身をぐるぐると覆う。
 いつしか美嘉の全身が漆黒の腕に覆われ、無数の腕が寄り集まった4本の巨大な腕が美嘉の背中から生えていた。

「許さない」

 PoHを握る腕も漆黒に覆われ。黒く肥大した手の中から獣が噛み砕くような嫌な音がした。
 マクアフィテルを手放し強引に手を引き抜くと、PoHの手首は交通事故にでもあったかのようにぐちゃぐちゃになっていた。
 残る美嘉の右手にはタッパーが握られている。
 どこからともなくタッパーの中に肉団子が出てきたかと思えば、数本の黒い腕が歯を生やしてもりもりと喰いつくしていた。

「許さない」
 
 腕が肉団子を喰う度に、美嘉から生える黒い腕の数は増えていく。
 すでに顔も、体も、腕も漆黒の腕に覆われた。既に亀井美嘉の面影は何処にもない。
 この場の人間は誰一人知る由もないが、その姿は月蝕尽絶黒阿修羅の第三形態『纏』そのものだった。

「許さない」
 
 腕でぐるぐる巻きになった顔の中。
 唯一亀井美嘉の面影を残す左目が、光を無くした星のような目でPoHを見ていた。


35 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:33:40 Y5mWZkcY0
◆◇◆◇◆
 
 「あの偽キリトさんのおかげで随分楽させてもらいました。
 ありがとうございますね。どこの誰だか知りませんが★」
 
 ノノミの計画とは、いわば亀井美嘉を怪物に『錬成』することであった。
 
 魔王グリオンが生み出した悪意人形であるノノミは、冥黒の三姉妹がマルガムを生み出す被験者を見つけ出せることと同様悪意に敏感だ。
 夜島学郎の中に秘められた、人類の怨敵である幻妖の祖の黒いエネルギーも。
 鬼方カヨコの持つ黒き王のメダルの底知れぬ可能性も。
 亀井美嘉の持つS級の悪霊も、感知することは容易かった。

 優先度が高いのは支給品ではなく己の力として黒いエネルギーを有する夜島学郎。
 だが必死に追跡し調べ上げた情報は、夜島学郎を引き込むことは不可能だという事実だけだ。
 既に羅暁の手で脳を縛られた彼を味方に引き込むことは、羅暁というグリオンや冥黒王に並ぶ危険人物に喧嘩を売るに等しい。

 早々にその選択肢を放棄し次に当たった鬼方カヨコもセレブロの支配下にあったが、ステータスタグで見た2つのソードスキルを前に天恵が下りた。

 ――鬼方カヨコに支給されていた『念能力』。星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)。
 仲間の死をトリガーに、その能力を受け継ぐ屍を背負う覚悟の証。
 ソードスキルとなったため念能力以外も継承できるが、代わりに得た力は一度しか使えず。永続化するには令呪の対価が必要となった。
 鬼方カヨコならば使えたであろうその力は、その体を奪ったセレブロにとっては持ち腐れもいいところだ。
 何せ仲間意識がない。仲間を作る気もなければこれからできることも無いだろう。

 だがこのスキルを亀井美嘉が持ち、なおかつ藤乃代葉が死ねばどうなるだろうか。
 ノノミは考えた。
 夜島学郎と藤乃代葉が同質の力を持っていることは似た装束のこともあって見ればわかった。名簿で隣り合っていることも根拠として働いた。
 幻妖の祖と契約し黒いエネルギーを宿す夜島学郎。
 同質であるはずの藤乃代葉の能力を得て、亀井美嘉が持つ黒いエネルギーを同じように内に宿させることが出来れば、ホシノを上回る素晴らしい手駒になるのではないかと。
 
 ノノミの計画を面白がったセレブロは、己に支給されたソードスキルにて亀井美嘉にその能力を”譲渡”した。
 
 ――セレブロが持つその力の名は、巨悪の名を冠する個性『オール・フォー・ワン』。
 奪える範囲にソードスキルを含んだ調整版の『個性』により与えられた『念』は、抵抗なく美嘉に混ざりこんだ。

 仲間意識がないセレブロとは違い。弱く優しい、だからこそ協調できる亀井美嘉には仲間がいた。
 黒の剣士によって成された仲間の死をもって『錬成』が完了した。

 ノノミの勘違いは、幻妖と契約し力を得る技能は、学郎ら陰陽師なら誰もが持つものだと考えたこと。
 ノノミの幸運は――藤乃代葉と亀井美嘉の不運は、藤乃代葉が文字通り夜島学郎と同じ力を持っていたということ。


 亀井美嘉の不幸は、悪意に目をつけられたこと。
 

 藤乃代葉の死で動揺しむき出しとなった美嘉の心に、星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)が作用した。
 継いだ星は代葉の特異体質。幻妖と契約しその力を扱う希少な才能。
 後天的なソードスキルへと変質した力は、美嘉の隣に立つ悪霊を契約対象と定めた。

 藤乃代葉の能力は、本来彼女の持つ盡器に幻妖の肉体を取り込むものだ。
 だがそもそもの話として、亀井美嘉に盡器などない。
 その代わりとしてなのか、藤乃家の持つ特異体質まであわせて継承したのかは不明だが。
 黒阿修羅の肉体は抵抗の末、亀井美嘉の肉体の中に入り込んだ。
 体に入った異物はソードスキル無くしては制御できない。
 そう判断した美嘉の体が、ベンジャミンバトンの対価として自然と令呪を切った。
 
 「ダメ押しにもう1つ。グリオン様のお言葉を捧げましょう。
 ――冥黒に染まれ。」
 
 令呪の赤い光と、湧き上がる冥黒の瘴気。
 その両方が収まる頃にはノノミの計画は完遂され。北の星に影は落ちた。
 亀井美嘉も月蝕尽絶黒阿修羅さえも望まぬまま。殺意に歪んだ契約は成された。
 
 「許さない」
 
 美嘉の喉を震わせる音は、美嘉の口から出た者とは思えないほど冷たかった。
 黒の剣士を殺す。
 ただその願いを燃やし続ける。冥黒の北星となって。
 亀井美嘉はPoHの前に躍り出た。


36 : ■を為す女ー病ンデル彼女が■■ました ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:34:48 Y5mWZkcY0
◆◇◆◇◆

「うがぁぁぁぁ!!!こんのクソガキ!!!」
 腕を失ったPoHは少しでも離れようと、今度は屋根を飛び越え逃げ去った。
 亀井美嘉の変貌した怪物の標的が自分であることなど、誰がどう見ても明白だ。
 マクアフィテルの刺さった代葉を抱えて茫然とする学郎をよそに、美嘉もPoHを追いかけんと動き出す。

「この姿なら――あのクソ狼の姿なら逃げられるんじゃねえか!」
 もはやなりふり構ってなどいられないと、PoHは変身の指輪に魔力の塊の中身を流し込んだ。
 住宅街から離れ屋根の道が立ち消えると同時に、飛び降りざまの姿が四足の魔獣ガットゥーゾのものへと変わった。
 NPCを連れてくるどころか「キリトとしてふるまう」命令すら無視することになるが、命あっての物種だ。
 ガットゥーゾの走力で駆け抜けるPoHだったが、何度も曲がりひたすら走り。撒けたと思い振り返り鳥肌が立った。

「キィリィトォォォォ!!!!!!」
 嘆くように叫ぶ亀井美嘉が、左目を見開いて迫っていた。
 2階ほどの高さに浮かぶ美嘉は、背後から伸びる4本の手を動かして器用にPoHを追いかける。
 その姿は蜘蛛の化け物のようだ。
 巨大な腕が地面を握るたびに家屋や地面が音を立てて抉れていく。怪獣映画のワンシーンのような光景を前に、PoHから戦う選択肢は完全に消えた。
 
「ふざけんな!あんな化け物まともに相手してられるか!」
 万全ならまだしも、片腕を失い剣を失った今のPoHでは歯向かっても死ぬだけだ。
 日本人の小娘を前に尻尾巻いて逃げる屈辱に頭がおかしくなりそうだが。堪える以外に道はない。
 4本の腕を伸ばして迫る怪物。しかも捕まったら今度は手首どころか全身がミンチになって肉団子の仲間入りだろう。
 覇王と言い藤乃代葉といいこの小娘といい、別世界の日本人は化け物しかいないのではないか。
 
 息を切らせてPoHは駆ける。
 さっき逃げた方角はギリアンが暴れて道が残っていない。
 反対側――くしくも覇王が向かった西側に向けて、息を切らせて走る。

 無人の街が見える――知らん。
 遠くで何か巨大な戦いがあったような気配がする――どうでもいい。
 真っ白の誰かを通り過ぎた――敵じゃないなら何でもいい。

「キィリィトォォォォ!!!!!!」
「なるほど、これは確かに面白い。」
 背後で女の声が聞こえた――何が面白れえんだクソババア。
 
 走る。走る。走る。走る。
 
 足――特に本来は腕にあたる前足が限界を迎えたころ。目の前に赤黒い穴が浮かんでいることにPoHは気づいた。
 自分を藤乃代葉の元に送り届けたワープホールと全く同じものだった。

「ありがてえ!悪魔は俺を見放してなかったみてえだなぁ!」

 誰に向けたのか感謝を叫ぶと、何の疑いもなくPoHは穴に飛び込んだ。

 普段のPoHであるなら間違いなく疑っただろう。
 『このワープホールは何なのか』『誰が仕組んだのか』をまず考える。
 現にこのワープホールを潜ったせいで藤乃代葉を殺してしまい。亀井美嘉という怪物に追われる羽目になったのだ。
 生き急いでくぐる選択など、平時なら間違ってもしなかったはずだ。
 だが片腕を失うほどのダメージを追い、逃げ損ねては死ぬばかりの状況で誰が彼の選択を責められようか。
 
 電柱の上から見下ろす翼竜の怪物の姿に、PoHが気づくことは終ぞなかった。


37 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:36:35 Y5mWZkcY0

 ◇◆◇◆◇

 鬼龍院羅暁が今起きている事態に関心があるかと言えば。はっきり言ってなかった。
 セレブロが言っていた「面白いこと」も蓋を開けてみれば凡人1人作り替えるだけのもの。
 羅暁だって人間を生命戦維と適合させたり、人間を生命戦維に取り込ませたりと似たようなことはやったことがある。
 この場でだって夜島学郎を精神仮縫いで思考を奪って手駒にしている。

 だがその行いは”地球を生命戦維で包み込む”という崇高な目的に通じるための『手段』にすぎず。
 人間に扱いきれない力を与え、その変質を楽しむという『目的』としてはまるで面白くない。
 理解が出来ないと言っていい。少なくともノノミやセレブロと羅暁の趣味はまるで合致しなかった。

 悠々と大通りを歩き事態の移り変わりゆくさまを遠目に眺めていても、食指が動くようなことはなかった。
 羅暁が本気で蹴とばせば縊り殺せるような小娘。下手にコストをかけて作り替えるくらいならカバーズの糧にでもしてしまったほうがよほど有意義だ。
 だから羅暁の興味は美嘉よりは自分と渡り合ったセレブロの側に向いていたし、歩いて進む理由も夜島学郎を回収するためであった。
 生きていればよし。死んでたのなら仕付け糸だけでも回収して。それでこの話はおしまい。
 
「と、思っていたのだがなぁ。」
 酷く青ざめた顔で逃げる狼とすれ違った羅暁は、奥から進むその怪物を見てわずかに呻った。
 漆黒の腕を長く伸ばしクモのように動く姿。
 それ以上に全身から放たれる尋常じゃ無く強く暗いエネルギーに、目の前の少女の脅威度を上方修正した。
 ほんの数十分前まではごくありふれた少女だったはずだが、こうも殺意と敵意の塊にまで変えられるものだろうか。
 
 ノノミとセレブロの計画は、いい意味でも悪い意味でも羅暁の期待以上であった。
 脅威と断じて天穿剣を構えているが、その顔は不快感を隠そうともせず目を吊り上げていた。
 
「キィリィトォォォォ!!!!!!」
「想像以上に不快だな。生命戦維により与えられた知恵を捨てて猿に戻る気か?
 あの武骨な鎧の方がよほどましだったぞ亀井美嘉!!」
 
 羅暁の世界は、生命戦維が猿に服を与え人に変えた。
 発展も知性も元をたどれば生命戦維の恩恵だ。
 殺意に呑まれ獣のように吼える少女は、その恩恵をかなぐり捨てている。
 無数の腕で服の代わりが務まるものか。殺意だけで人になれるものか。
 今の美嘉の姿は、羅暁にとって冒涜に近い。
 やはりあの怪獣少女とは趣味が合わない。改めて確信した羅暁は迫りくる美嘉を前に青薔薇の剣を突き立てた。
 
 「エンハンス・アーマメント!」
 青薔薇の剣を中心に道路が氷に覆われる。
 道路だけでなく周囲の電柱や壁も剣の武装完全支配術の効果範囲であり、それらにしがみ付いていた黒い手も巻き添えで凍り付いた。
 
 それでも、美嘉の動きは止まらない。
 べりべりと音を立て腕から氷を引きはがし、壁を掴んでいた腕二本を自分の前に掲げた。
 ギロリと美嘉の左目が動き、不遜な笑みを浮かべる羅暁を見下ろすと。ぽつりと一言呟く。

「見つけた」
 
 その瞬間、弾丸のような勢いで腕が伸び、羅暁を握りつぶそうと襲い掛かった。
 鋭く伸びた爪からは、友の仇を前にしたかのような激情がひしひしと伝わってきた。
 月蝕尽絶黒阿修羅の呪いは、美嘉に宿り続けている。
 継母に惨殺された少年霊があらゆる相手が継母に見え殺意を向け続けてしまうように。
 暴走している今の美嘉には、全ての人間がキリトに見える。
 鬼龍院羅暁の後光さす姿もまた、悪意に歪む腹立たしいツラをした黒の剣士に見える。
 藤乃代葉を殺し、東ゆうたちを危険にさらす最悪の男の姿に見える。

「猪口才なぁ!」
 右手に伸びた黒い腕を羅暁は天穿剣で弾きとばした。
 握られるのが危険ならば手首を狙えばいい。
 弾かれた腕は地面に倒れ、継続している青薔薇の剣の武装完全支配術により青い茨が咲いて縛り上げられる。
 
 だが、地面に青薔薇の剣を突き刺していた左手は反応が遅れた。
 左肘を黒い腕が握りしめ、ギリギリと音を立て砕かれていく。
 これにはさすがの羅暁も冷汗が垂れた。
 生命戦維を宿す羅暁の肉体を物理攻撃で破壊するには「超高度の物質による双方向からの斬撃」以外ありえない。
 だが運営の調整により耐久力や再生力が落ち、双方向どころではない「360度全方向からの削り取る破壊」を受けたことにより羅暁の左腕がブチリと嫌な音を立ててちぎれた。


38 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:37:52 Y5mWZkcY0
「やはり再生も遅い。精神仮縫いのみならず生命戦維そのものの効果が制限されているとみて間違いなさそうだ。
 それでも私の腕を引きちぎるとは……万死に値する蛮行だがそのパワーは素直に認めよう。」
 羅暁の体を破壊できる相手である以上。もう目の前の少女を羅暁は雑魚とは思わなかった。
 セレブロとはまた違う意味合いで、鬼龍院羅暁は亀井美嘉を『敵』と見定めた。
 
「だが知能のない怪物ごときが、この私に勝てるものか。」
 左肘を中心に腕の3割ほどを握りつぶした黒い腕。
 次は足でも潰そうと美嘉はその手を広げようともがいたが、まるで動かない。
 美嘉が目を落とすと握りしめたままの黒い腕が赤い糸で縛り上げられている。
 腕を縛る強靭な糸と同じものが、羅暁の傷口からびっしりと伸びていた。

「貴様の破壊はあくまで『握りつぶした時』に作用する。
 純粋な腕力で生命戦維を破壊したわけではないな。最もそのようなことが出来る存在がいるとは思えんが。
 私の中にある生命繊維で縛り上げられてはこの腕もウドの大木だな。」
 赤い糸で固められた腕が氷に落ち、氷から生えた青い茨がその腕を凍結させる。
 今回はそれだけにとどまらない。
 青い茨が伸びた腕を伝って美嘉の体にまで迫りくる。冷気が美嘉本人の周囲にまで届き、吐きだす息が白く染まった。
 
 あくまで青薔薇が覆うのは亀井美嘉の肉体ではなくそこから伸びた黒阿修羅の腕だ。どれだけ凍らされてもダメージにはならない。
 そして、そんなことは羅暁も分かっている。
 青薔薇が美嘉の体を縛り上げその顔にまで茨が届くことを確認した羅暁は、茨にそうように天穿剣を構えた。
 
「どうもこの力は使えば使うほど私の体力だけでなく武器そのものの耐久力まで奪うようだ。
 貴様程度相手に、より上位の切り札など切ってられん。」
「な……に……。」
「エンハンス・アーマメント。」
 
 美嘉が茨を砕こうと暴れるよりも、羅暁が唱えるほうが早かった。
 剣の先端が光輝いたかと思えば、一条の光が線青い茨の中を突き抜ける。
 氷の反射率は高い物では9割に及ぶという。
 青い茨はまさしく即席の光ファイバー。
 光熱で溶け外に漏れる光がエネルギーを減衰させるが、そもそもが人体を貫通するほどの威力なのだ。
 文字通りの光速で、茨を伝う陽光は美嘉の顔にまで届く。
 唯一美嘉の対組織がむき出しになった。……左目に届く。

 とっさに目を閉じ、無数の黒い腕でガードしたが、天穿剣の光は太陽の恩寵。
 腕の隙間から入り込んだ光と熱だけで、美嘉の左目を焼くには十分だった。

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「この距離で左目に当てる確証はなかったからな。小細工させてもらった。
 実に無様だな。再生もできないのに視覚に頼り、目を曝したのが貴様のミスだ。
 内包する力だけならこの羅暁に迫るものがあるが、肝心の器がその程度では皐月の部下にさえ劣る。」
 
 セレブロが楽しんでいただけの性能はあっても、中身がただの小娘では目を縫い合わせた剣士の方がよほど見どころがある。
 ダメージに耐えかねたのか、はたまた暴走していたエネルギーが収まってきたのか。
 暫くじたばたと悶えていた美嘉は動きを止め、それにともない黒い腕がしゅるしゅると美嘉の中に吸い込まれた。
 壁を掴んでいた黒い腕も、それらを拘束する青薔薇もなく。宙に浮いた亀井美嘉は力なく落下し始める。
 
「たす……けて……。」
 左目から血を流して、誰知らず美嘉は呟いた。
 か細く紡がれた、しかし心からの叫びは。誰の耳にも届かない。
 むしろ追い打ちをかけるように、鬼龍院羅暁は真下にまで近づくと天穿剣を掲げた。

「左腕はいくらでも用立てられるが……この羅暁の肉体を傷つけた報いはしっかり受けてもらうぞ。」
 落下する少女はどうやら気を失っているらしい。
 そんなことなどお構いなしに、再度天穿剣から光が打ち出される。
 アンダーワールドのような治癒術がないこの場所で。今の美嘉が喰らえばどこを撃たれても致命傷だろう。
 よしんば生き延びても、落下する体が天穿剣に貫かれておしまいだ。

 落下する体と上昇する光線。
 両者がぶつかり合うその瞬間に、割り込むように赤黒い穴が空間に生成された。

「何!?」
 羅暁のレーザーと美嘉の体があ赤黒い穴に吸い込まれ消える。
 闖入者の存在に気づいた羅暁が背後を見上げると。凍り付いた電柱の上に黄金色の体をした怪物――プテラノドンマルガムがいた。


39 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:39:05 Y5mWZkcY0

「流石は鬼龍院羅暁。夜島学郎を容易く抑えるだけはありますね。
 今の美嘉さんでは勝てませんか。
 これ以上貴方と戦っては、せっかくの錬成体が潰されかねません。回収させてもらいますよ。」
 翼竜のような顔の怪物が少女の声で話すというのは、先に闘ったセレブロ同様妙な違和感があった。
 セレブロの時はノイズががった声だったから正気でないことが分かったが、溌溂とした声をしたプテラノドンマルガムでは違和感もひとしおだ。
 不快な奴らばかり目につくなと、この怪人の名前に気づいた羅暁が忌々し気に口を開いた。
 
「成程、貴様がノノミだな。
 あの怪獣少女同様、随分性格の悪そうな顔だ。」
「怪獣少女……ああ、セレブロさんのことですか。
 あいつ名乗らなかったんですか?まったくコミュニケーション能力のない寄生虫で困ります。」
「それで、何のつもりだ?
 貴様もセレブロともどもあの小娘を助けに来たとでもいうのか?」
 羅暁の物言いを前に、プテラノドンマルガムはケラケラと笑う。

「何がおかしい。」
「貴女の辞書に助けるなんて言葉があるなんて驚きです。
 質問の答えですが、勿論違います。
 恐らくあなたが夜島学郎を手駒にしたのと同じ理由と思っていただければ。」
「使い捨てるという訳か。」
「失敬な。活用すると言ってください。
 これでも錬金術師の端くれ。完成品には敬意をもって滓になるまで使い切りますよ。」
 さらりと最低な言葉を吐き捨てるプテラノドンマルガムの姿に、セレブロとはまた別種の嫌悪感があった。
 同族嫌悪のように見えて、決定的に相互理解が出来ないような感覚。
 怪物の顔をしているのに、その奥にいる少女の醜悪な笑みが透けて見えていた。

 睨み続ける羅暁を前にして、ノノミは背後にワープホールを生み出す。
 ちらりと羅暁を見下ろしたが、どうやら追いかけたりこの場でノノミを倒すつもりは無いらしい。
 左手が半分引きちぎられ、セレブロ戦・美嘉戦と武装完全支配術を連用し体力・神器の天命ともども大きく消耗している羅暁だったが、その威圧感はまるで損なわれていない。
 手負いだろうと勝てる気はしないし、逃がしてくれるのなら願ったりだ。
 
「それではさようなら。
 お互い二度と会わないことを祈りますよ。」
「そうだな。次会えばセレブロや美嘉ともども真っ先に殺してやる。」
「貴方が言うと大言壮語に聞こえないから怖いですねぇ。」
 それだけ言い残して、ノノミの姿は吸い込まれ消えた。
 
 1人残った羅暁は溶けつつある氷の上に落ちた左腕を拾い上げ、体内の生命繊維を動かし縫い合わせる。
 握り潰された部分が再生をしていると思ったが、落ちた腕の中の生命繊維はほとんど動きを見せなかった。
 そのうえ腕が明らかに縮んでいた。右腕と比べると肘を中心に腕全体の1割強がごっそりなくなっていることになる。

「潰すだけでなく、削り消失させる能力だったのか?
 どうやら思った以上にあの小娘は厄介なようだ。」
 羅暁はそういうと体内の生命戦維を動かし、千切れた腕と結びつける。
 短くなった部分は新たに生命戦維で覆う――両腕を失った針目縫に施したものと同じ処置だ。
 肘の部分だけ黒い不格好なものながら羅暁の腕は再生した――――が当の本人は目を吊り上げ苛立たし気な様子だ。

「見てくれだけは治ったが。治癒能力が著しく劣化しているな。
 羂索にクルーゼめ!!どこまで生命戦維を冒涜すれば気が済むのだ!!」
 手を握り。手を放す。
 円滑に見える動きも強度・速度ともに羅暁の満足いくものではない。
 時間が経てば治るだろうが、今現在の左腕の性能は本来の半分を下回るだろう。
 慢心が消えたわけではないが、纏流子以外にも敵になりうる存在がいるという教訓を羅暁は得た。
 
「まったくこのバトルロワイヤルには碌な参加者がいないな。
 この武器も性能はいいが消耗が激しい。やすやすと勝たせてはくれないということか。」
 氷を噴き出すことを止めた青薔薇の剣を抜き、羅暁はため息交じりに吐き捨てる。
 もはやこの会場にまともな人間など一人もいないのでないかなどと。らしくないことを考えていた。


40 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:39:35 Y5mWZkcY0

【エリアE-12/市街地/9月2日午前8時】
【鬼龍院羅暁@キルラキル】
状態:疲労(大)ダメージ(中) 左腕切断(治療中)
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む
01:学郎は消えたか。少々惜しいがまあ構わんな
02:流子がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
03:ここにまともな参加者はいないのか?
04:あの怪獣娘(セレブロ)は不快だ。あまりにも思考が合わん。
05:美嘉とノノミを警戒
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています
※火属性に弱い可能性があります
※左腕が破壊されましたが見た目だけはほぼ直っています。精度は劣化しており本来の半分程度だと羅暁は考えています。
 時間経過でどの程度改善されるかなどは後述の書き手様にお任せします。
 
◇◆◇◆◇
 
「何だお前?」
 エリアを超えたE-13にある町はずれ。わずかな潮風と雪原から入り込む肌寒い風の中。
 突然目の前に現れたガットゥーゾを前に鬼方カヨコは――セレブロは首をかしげた。
 赤黒いワープホール――ノノミのものだ――を潜り抜けたガットゥーゾを苛立ち交じりに蹴り飛ばそうとすると、慌てたガットゥーゾが叫びその姿を変えていく。
 ガットゥーゾの姿からキリトの姿に戻ったPoHは、両手を振り敵意がないことを必死に示した。

「待て待て待て変身してたんだよ!!
 俺はキリト、アンタは――」
「俺のことなどいい。それより貴様のことを話せ。
 ノノミとはどういう関係だ。貴様もグリオンとやらの配下か?」
「ノノミ?グリオン?
 何のことだか知らねえが聞きてえんだろ、話してやるからちょっと待て。」
 今のPoHはマクアフィテルを失っている。
 美嘉によって失われた手は変身の指輪の力で形だけ復元させたが、他の支給品もそのままだと武器にならない事実上の丸腰だ。
 命には代えられないと会場に来てからのことを断片的にPoHは明かすことにした。

「……成程。覇王十代か。
 貴様がどういう意図であの場にいたのか気になっていたからな、合点がいった。」
 PoHの話を聞き終えたセレブロは、初めて聞く名前に興味を抱く。
 PoHの戦闘について一部始終を見ていたセレブロは今更気になるところはない。
 何せ彼は亀井美嘉が変貌した瞬間までは、遠くからケタケタ笑って鑑賞していたのである。
 セレブロが気になったのは、PoHに指示を与えた覇王十代という人物のこと。
 鬼龍院羅暁やグリオン同様、あるいはそれ以上に軍勢を用いてゲームの攻略を目指す勢力らしい。
 単独でも怪物じみて強い鬼龍院羅暁やノノミがいるグリオンの陣営に組してしまっては過剰戦力でつまらないだろうと考えていたセレブロにとって、その存在は渡りに船だ。

「キリトだったか。
 その覇王とやらに興味がある。
 聞けばお前はその小娘どものせいでせっかく集めた戦力を失ったそうだな。」
「ああ、あんな化け物になるなんざ聞いてねえよ。
 まったく、割に合わねえ仕事だ。」
「そこでだ、俺を貴様の陣営に引き入れるのはどうだ。
 3匹のNPCモンスター対価に参加者一人。130人以上いるらしいこの場では不足かもしれないが、手ぶらで帰るよりはいいだろう。」

 セレブロの提案に「マジで!いいのか!?」とPoHは目を輝かせる。
 どうにか生きて帰ってきたはいいものの、成果がない体たらくを覇王にどう報告したものか内心悩んでいたのだ。

「しかしアンタ。戦えんのか?
 殺し合いに消極的……ってツラには見えねえが。」
「頭上の輪が見えるか?俺や梔子ユメのようなキヴォトス人が持つヘイローというものだ。
 羂索が言っていた通り『神秘』を有するキヴォトス人の肉体は頑健だ。
 そこに支給品の性能が加われば、今のお前よりはやれるだろう。」
「そーいえば羂索がそんなこと言ってた気がするな。
 丸腰だからそのムカつく態度は見逃してやる。次はねえからな。」
 言葉は荒いが叛意があるようにはセレブロからは見えない。
 亀井美嘉のように敵対的でないと気づいたからか、PoHはセレブロを引き込むことにすっかり乗り気であった。
 地図アプリをのぞき込み、二人は顔を突き合わせる。


41 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:40:26 Y5mWZkcY0
 
「覇王サマがどこにいるか俺は知らねえ。
 あっちあっちで参加者を引き込みに行っているからな。
 ただ俺がいるよりも西側だったことだけは確かだ。」
「ならそちらに向かうか。
 生憎俺たちのいる場所は会場の東端だ。俺は今から北の雪原地帯に向かうつもりだったからな。」
「あー。通りで寒いわけだ。
 しかしわざわざ雪まで降らすとは凝ってるねえ。ラグとか気にならねえのか?」
「別に電脳の遊戯をやっているわけではないだろう。この会場に処理落ちがあるように見えるのか?」
「なんだアンタ。案外話せるな!」
 鬼方カヨコの記憶のこともあり、セレブロは覇王よりはこの手の話題に詳しかった。
 いけ好かない小娘だと思ったが都合よく利用でき、思いのほか話せる相手にPoHの機嫌が目に見えて上がる。
 
 藤乃代葉を殺せたが、それ以外の点では素寒貧もいいところだ。
 下り調子に思えた自分だったが、やはり自分の勘は死んでいない。最後の最後でいい拾い物が出来た。
 などと考えていたPoHは、気が緩んでいたのだろう。
 死の恐怖から逃れた直後に予想外の成果が転がり込んできたのだ。無理もない。
 だがその緩みが――迫る風切り音に気づく時間を遅らせた。


 
 「ミィィィィツゥゥゥゥゥケェェェェタァァァァ!!!!!!」
 

 都市部から一直線に向かってくる黒い何か。
 PoHが気づくよりも早く距離をとったセレブロが観察すると。霊衣を纏った青年が箒に乗って空を飛んでいた。
 その箒は、パレッティア王国王女が魔学により生み出した。空を飛ぶというロマンを形にした試作の箒。
 学郎の令力を纏い迫るその姿は、音の壁を超える黒い矢さながらだ。
 
「アアアアアアアア!!!」
「夜島学郎。」
「なっ!テメエは!!」
 セレブロより数秒遅れてPoHは飛翔する学郎に気づき、目を凝らす。
 その右手には黒曜の剣。
 PoHが戦場で藤乃代葉ごと無くしたマクアフィテルが、強く握られていた。

「オマエダケハ……オマエダケハ!!!」
 突進する箒の速度がさらに上がる。
 スポーツカーと見まごう速さを搭乗する学郎はコントロールできない……していない。
 既にバーサーカーのカードの効果は切れ、今の学郎は精神仮縫いの影響を受けている。
 細かな思考などできるはずもなく。
 その脳内は亀井美嘉同様、代葉の仇であるキリトを殺すことでいっぱいになっていた。

「オマエダケハァァァァ!!!!!」
 箒が気を利かせたのか、勢いをつけた学郎が飛び降りた先はPoHのいる場所ドンピシャであった。
 乗り手を失った箒が地面スレスレに落下し土埃を上げるより早く。
 マクアフィテルの刃がPoHに突き刺さる。

「このサr」
 何か言おうとしたPoHの声はぐちゃというおどろおどろしい音にかき消された。

 箒の加速を受けた学郎の一閃は、もはや斬撃の体を成していない。
 右肩からばっさりと振り下ろされた傷は、骨や臓器を切るというよりも粉みじんに擦り砕いていた。
 
 残ったセレブロはゼットライザーを構えペダニウムゼットンへと姿を変える。
 夜島学郎は弱者ではない。
 この場を切り抜けるためには変身する必要が合ったゆえだが……その考えは杞憂に終わる。
 学郎はペダニウムゼットンには目もくれず、何度も何度もPoHの死体を切り刻んでいた。

「オマエダケハ……オマエダケハ……オマエダケハ!!!」
 首に刃を当てる。嫌な音を立てて捻じ切れる。
 心臓部を何度も抉る。ただただ噴き出す血の量が増えただけだ。
 右足を何度も何度も刃を振るい斬り飛ばす。
 藤乃代葉を傷つけたお返しだと言わんばかりに、骨が叩き切れるまでその行動は繰り返された。


42 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:41:22 Y5mWZkcY0

「なんだ、一度は藤乃代葉の手で羅暁の支配から逃れたんじゃないのか?」
 藤乃代葉によってバーサーカーのクラスカードを与えられた学郎は、確かに一瞬正気に戻ったように見えた。
 その後のことをセレブロは知らなかったし。亀井美嘉が暴れ始めてからは巻き添えにならないよう早々にテレポートで町はずれにまで逃げていたのだ。
 だから今の夜島学郎の状態を、セレブロは何も知らない。

 目の前の残酷な出来事に疑念を抱きつつ。ペダニウムゼットンはテレポートでその姿を消した。
 夜島学郎は未だ暴走状態。その仔細を調べることもせず寄生生物はそう結論付けた。

 しばらく死体を叩き潰していた学郎だったが、マクアフィテルを振るう腕がぴたりととまった。
 首が捻じ切れ、四肢が潰され、体中に剣で穴が開いていた。
 その無残な姿を前に――涙を流してうずくまった。

「オレハ……俺ハ……」
 動揺し涙で震える声は、さっきまでよりわずかに明瞭に聞こえた。
 夜島学郎の後悔は、人を殺したことだろうか。死体をぐちゃぐちゃに叩き潰したことだろうか。
 否。そのことを悔いれるほど今の学郎は正常ではない。
 いずれ酷く公開する時が来るだろうが、今ではない。
 
 夜島学郎の精神仮縫いは継続中だ。
 基本的に思考はできない。鬼龍院羅暁の仕付けはそう甘いものではない。
 本来の学郎なら絶対にしないだろう、死体に鞭打つような行いもその影響によるものだ。
 
 だが藤乃代葉が使用したバーサーカーのカードによる狂化。
 使用者の正気を奪うそのエネルギーが脳を縛る生命戦維にも浅くないダメージを与えていた。
 あと1つ。大きな刺激があれば学郎は正気を戻せるかもしれない。
 希望的な憶測だが――その可能性が見えるほどにまで精神仮縫いの支配は緩んできていた。
 
「フじ……ノ……さん」
 正気に戻りつつあるからこそ、学郎の心には傷が残る。
 学郎の後悔は。藤乃代葉を死なせたこと。
 守りたかった。ともに背負いたかった。
 仲間として戦う未来も、あったかもしれない。

 その未来は、もう来ない。
 藤乃代葉は死んだ。
 どれだけ犯人を叩きのめしても。藤乃代葉の死に顔が脳に焼き付いて離れない。

 敵を取った姿にはまるで見えない。白目をむき涙を流したまま、とぼとぼと陰陽師は歩く。
 箒に乗ってどこかに飛ぶ気には、今はとてもなれなかった。

 後に残されたのは、男の死体。
 魔力の塊で稼働する変身の指輪の効果は、PoHが死んでも有効なままだ。
 キリトの惨殺死体が、E-13エリアには残されている。
 キリトの姿をしたキリトではない男は。
 誰にもその姿を知られることなく、愛しきブラッキーとしてゲームオーバーを迎えた。

 【Poh@SAOシリーズ 死亡】
 
【エリアE-13/市外/9月2日午前8時】
【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:『精神仮縫い』(弱体) 疲労(大)ダメージ(中)
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:クラスカード(バーサーカー)@Fate/kaleid liner
 マクアフィテル@SAOシリーズ
 魔女箒@転生王女と天才令嬢の魔法革命 ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ーーーーー
01:羅暁様に従う?
02:藤乃さん……
参戦時期:43話より後
備考
 ※精神仮縫いが緩んできています。
 ※藤乃代葉の支給品を回収しています。

 【セレブロ@ウルトラマンZ】
状態:興奮(大) 疲労(中)ダメージ(中)
服装:鬼方カヨコと同一
装備:鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ 
   ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
   オール・フォー・ワン(個性)@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームを楽しむ
01:キヴォトスの神秘、頑強で面白い
02:羂索たちのゲームは実にいい 俺がもっと盛り上げてやる
03:ノノミの計画はなかなか楽しかった。いい気分だ。今度俺もやってみようか。
04:キリト(偽)の言う覇王か、なかなか気になる名だ
参戦時期:ウルトラマントリガー・エピソードZ終了後 
備考

 【鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ】
状態:セレブロにより意識不明・洗脳状態 ダメージ(中) 
服装:普段の服装
装備:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:キヴォトスの生徒が参加していないか探す。現在はセレブロにより自意識が封じられている
01:キエテ カレカレータ…
参戦時期:対策委員会編2章終了後
備考  各イベント・便利屋日誌における出来事をどこまで経験しているかは、後述の書き手様にお任せします


43 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:42:01 Y5mWZkcY0

 ◆◇◆◇◆




 ――気が付くと。小学校の教室にいました
 ――ほぼすべての席に人がいて、教壇には先生も立っています
 ――その全員が、嘲笑するような顔で私を見ていました

「なんで……なんで……」
 
 ――私を見る笑いが、どんどん強く煩わしくなっていきます

 ――ぐにゃぁと世界が一瞬歪んだかと思うと、クラスメイトの顔が全部キリトのものにかわりました

 ――先生の顔もキリトでした
 ――モンスターを使って私達を襲い、代葉さんを殺した とてもこわいひとです
 ――ぜったいにぜったいに、ゆるせないひとです。
 ――そいつが張り付いたような笑顔で、私を見て嗤っていました

 ――前から笑い声が聞こえます
 ――右からも左からも聞こえます
 
 ――後ろからは聞こえませんでした
 ――小学校で私のことを見てくれた人なんて、1人しか知りません

「たすけてゆうちゃん!」

 ――振り返ると、そこにはゆうちゃんがいました
             ・・
 ――そこに、ゆうちゃんがありました


 
「アハハハハハハハハハハハ!!!!!!」



 
 ――笑顔のキリトが黒い剣で、ゆうちゃんを刺していました

 ――ゆうちゃんの死体が、ありました


44 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:42:59 Y5mWZkcY0
 
◇◆◇◆◇

 ぺちぺちと頬をはたかれ、亀井美嘉は「んん……。」と呻り目を開いた。
 なんだか嫌な夢を見ていたような気分で、全身がじっとりと汗で濡れていた。
 
「お目覚めですか美嘉さん。」
「ノノミさん……私はいったい……。」
「随分うなされていましたね。まあ色々ありましたし。悪い夢でも見たのでしょう。
 どこまで覚えていますか?必要ならばお伝えしますが。」
 
 周囲を見渡そうとしても、右目しか開けない。
 左目が茹で上がったように熱く、開こうとすると痛みが走る。
 さっきの戦いで負った傷なのだなと、何故だか冷静に認識できた。

 ゲームエリアにある一軒家の1つ。
 ただベッドと本棚だけがある質素な部屋の中、亀井美嘉はゆっくり起き上がった。
 
「いいえ……憶えてる。
 代葉さんの足がキリトに斬られて……その時なんだか、自分でもどうしようもないくらいキリトのことが許せなくなって……。
 それで……それから……キリトが代葉さんを……。」
 語りながら。思い出しながら。
 美嘉の胸からどすぐろい何かが沸き上がる。
 手元を見ると漆黒の細い腕が、しゅるしゅると小さい蛇のようにいくつも飛び出していた。

「これって『あの子』の?
 そういえば……あの時。」
 記憶がどんどん鮮明になっていく。
 藤乃代葉が死ぬと同時に体の中にあの子――月蝕尽絶黒阿修羅が流れ込んできた。
 自分の体から無数に伸びた黒い腕。まるで怪物のように変貌した自分の体。
 これまで感じたことのないどす黒く冷たい情動が、美嘉の体を動かしていた。
 黒阿修羅の悪霊となっても消えずに残り続け、生者死者問わず数多の存在を食らいつくした怪異の力。
 その力が美嘉の中に宿っていることに、なぜだか拒否感や不快感はまるでなかった。

 ただその後の行動は、思い出すほどに自分がしたことだとは思えなかった。
 気が付くとキリトの手首を砕いていた。
 気が付くとキリトを追いかけていた。
 気が付くと彼女は戦い敗れていた。

「おえぇ……!!」
 素手で相手の肉を抉るぐしゃぐしゃとした不快な感触を思い出し。美嘉は思わずえづいた。
 既に羅暁に蹴り飛ばされた時に粗方吐いたからか、ベッドの上に胃酸だけが飛び散った。
 
 流石にもう寝ることは出来ないと二人は寝室を離れてリビングに移る。
 建物の水道で口をゆすいだ美嘉は、ショールームのような最低限の机と椅子しかないリビングでノノミと向かい合うように腰かけた。
 
「ノノミさん。あの後どうなったの?
 ・・・
 キリトと戦って、左目がギラギラした光で焼かれて。それからのことをが覚えてないの。」
「キリトと?貴方が戦ったのは鬼龍院羅暁では?
 体格も性別もキリトとは似ても似つかないはずですが……。」
「そうなの?
 なんでなのかな……私にはキリトにしか見えなかったんだけど……。」 

 ノノミと美嘉が揃って首をかしげた。
 ノノミは少し考え、ステータスを見ればわかるかもしれないと手元に会ったステータスタグを差し出した。
 表示された美嘉のステータスをノノミと美嘉は顔を寄せてのぞき込む。
 アイドルのプロフィールようなレイアウトをした美嘉のステータスには、星座や誕生日も記載がある。ご丁寧に体重は黒塗りされていた。

「ああ、これですね。」
 ステータスの下側。アイドルのプロフィールにはないだろうスキルの欄。
 そこにはこう書かれていた。
 
所有スキル
・念能力:星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)
・特異体質:幻妖の契約する能力
 ――契約対象:月蝕尽絶黒阿修羅
 ※黒阿修羅の殺意に呑まれると、周囲の存在全てが殺意の対象に見えるようになります。


 さらりと書いてあるが、要は本気を出すと敵味方の区別もつかないということだ。
 あまりにリスクの大きい話だが、むしろこの一文を見た2人の中には腑に落ちるものがあった。


45 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:44:40 Y5mWZkcY0

「そっか、だから香水を振りかけていたんだ。
 香水の香りで敵味方が分かるって言ってた気がする。」
「成程、視覚では判断できないので嗅覚でということですね。
 この悪霊をぬいぐるみに封じた本来の所有者は随分頭が回るようです。
 本来は別の方でしょうが、美嘉さんにとっての殺意の対象はキリト。ということなのでしょう。」
 ノノミの言葉に、美嘉は静かに頷き肯定の意を示す。
 その反応にノノミの口元が緩んだことに、美嘉は気づかなかった。
 本来の彼女では考えられない行為だ。
 誰かに殺意を抱くことさえなかったはずの少女は、己の中にある殺意をあっさり受け入れた。

「ちょうどいいですね。このままグリオン様の元に向かいましょう。」
 直接的な行為に抵抗こそあれど、今の美嘉は悪霊をその身に宿しただけに飽き足らず、ノノミの錬金術によって悪意に染まりつつある。
 少なくとも『キリトを殺す』ことに関しての抵抗感はもはやないように見えた。
 ノノミにとっては理想的な展開にほくそ笑みつつ、プテラノドンマルガムに姿を変えワープホールを作り出した。
 
「グリオン様?」
「私の主です。これも何かの縁ですし、このまま手を組みませんか?
 それにあの方なら……貴女の願いを叶えてくれます。」
 願いを叶えてくれる。
 まるで神様の話をするように恍惚とした顔を浮かべるノノミを前に、その言葉を聞いた美嘉はびくりと身を震わせせる。

 今の自分の願いは何だろうか。
 
「ねえ、ノノミさん。
 そのグリオン様に着いていけば、ゆうちゃん達を助けられる?」
「あなた一人で動くよりは可能性はあるでしょうね。」
 願いの1つを尋ねると、悩むそぶりもなくノノミは答える。
 亀井美嘉は、ノノミのことを信頼していた。
 そんな人がここまで言うのなら、ついていってもいいのだろう。

「ねえ、ノノミさん。」
 もっと大事なことを尋ねるために、美嘉は一呼吸置いた。



「その人についていけば、キリトを殺せる?」
「殺せます。」



 先ほどよりも早く、確信をもってノノミは答えた。
 キリトはグリオンの手駒であるホシノを倒した集団の一員だ。既に敵対しているようなもの。
 キリトを殺すという願いをグリオンが聞けば二つ返事で許容するだろう。
 最も――美嘉が恨んでいる相手はキリトに化けた偽物だったうえに、既に死亡しているわけだが。
 そんなことはつゆ知らず、何かの決意を固めるように、ギュッと美嘉は拳を握りしめた。

「これからもお願いします。ノノミさん。」
「ええ、良き出会いに感謝しますよ。美嘉さん。」
 ノノミが手を差し出すと、美嘉もまたしっかりとその手を握り返す。
 決意を秘めた目でノノミを見つめる亀井美嘉。
 その姿は、あまりにも――滑稽だった。

(最後にキリトを逃がしておいて正解でしたね。)
 ノノミは笑いをこらえながら、自分の所業の達成感に酔いしれていた。
 PoHが藤乃代葉を殺すために通ったワープホールも。PoHが逃走する時にくぐったワープホールも。もちろんノノミが生み出したものだ。
 代葉を殺したのはPoHであるがその手引きをしたのはノノミである。
 その事実に亀井美嘉は気づかない。
 
 そしてPoHを逃がした理由。
 その理由は美嘉の中に芽生えた暗黒の感情――キリトに対する殺意を絶やさぬため。
 敵意や殺意というのは実に強い感情だ。
 グリオンと敵対した暁の錬金術師だって、その感情ゆえに20年ものあいだ戦い続けられたのだ。
 実際はノノミの目論見は外れ、偽キリトことPoHは夜島学郎に殺されてしまったが。
 美嘉がそのことを知らなければいいのだ。

 亀井美嘉は殺意を秘め、黒阿修羅の呪いを受け入れ。こうして晴れてノノミの味方となった。
 亀井美嘉は悪魔の手を取った。
 その結果彼女がどのような末路を辿るのかは、今は誰にも分からない。


46 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:45:42 Y5mWZkcY0

「ところでノノミさん。グリオンさんのところに行く前にちょっと待ってもらっていい?」
「いいですけれど。どうしました?」

 美嘉はリュックから何かを取り出すと、閉じ続けている左目を覆った。
 それは何の装飾もない、シンプルな黒い眼帯だった。
 支給された時はどうすればいいんだと悩んだものだが。実際目に傷を負ってみると。あの時の自分は傷を負う可能性さえ考えられないほど甘かったのだなと痛感する。

 美嘉のダメージは眼球だけで、幸運にも周囲に火傷や傷はほとんど残っていない。
 天穿剣のレーザーが細かったことが理由だろう。
 それもあって、眼帯をつける美嘉の姿は痛々しいながらなかなか様になっていた。

「あまり褒めてるように聞こえないでしょうが……お似合いですよ。」
「誉め言葉として受け取りますよ。ありがとう。」

 ノノミの言葉に複雑な顔ではにかみつつ、美嘉はワープホールを潜った。
 その先にある冥黒の深淵に会うために。
 殺意を抱いた黒い剣士を確実に殺すために。
 
 その眼帯がグリオンに全てを奪われた、暁の錬金術師のものであることなど。
 今の美嘉には、知る由もなかった。
 
【エリアF-12/市街地/9月2日午前8時】
 【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:疲労(大) キリトに対する殺意(極大)左目損傷(眼帯装着)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅(契約状態)@ダークギャザリング
 星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)@HUNTER×HUNTER
 幻妖と契約して力を得る能力@鵺の陰陽師
 未来の宝太郎の眼帯@仮面ライダーガッチャ―ド
令呪:残り二画
道具:香水@ダークギャザリング 、ホットライン
思考
基本:生きて帰る。黒の剣士を殺す。
01:あの黒い剣士は許さない。必ず殺す。
02:夜島学郎は、どうなってたんだろう。
03:ゆうちゃん・・・・
04:ノノミと協力する。グリオンにつきキリトを殺す。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
 ※究極メカ丸 絶対形態は破壊されました
 ※月蝕尽絶黒阿修羅の呪いを体内に宿しています。普段は通常通りの思考・会話が可能ですが、キリトの姿を見たり激昂すると暴走し、気を抜くと他者が全てがキリトに見える状態です。
 ※左眼を開くことが出来ません。失明したのか時間経過で回復すのかなど具体的な状態については後述の書き手様にお任せします。

 
【支給品一覧】

 クラスカード(バーサーカー)@Fate/kaleid liner
 ・藤乃代葉に支給。
 ある世界の聖杯戦争にてピトスの泥を用いて作られる魔術礼装。
 正式名称はサーヴァントカードといい、カードを英霊の宝具に変身させる限定展開(インクルード)と自身に英霊の力を降ろす夢幻召喚(インストール)の二種類の使い方がある。
 英霊たちの座に繋がっており、使用者によって引き出される英霊の力は異なる。
 夜島学郎の場合ギリシアの大英雄ヘラクレスの力を引き出せる
 なおバーサーカーのカードのみの制約として、完全に意識が失われる前にカードが自動で排出される。時間にして10分ほど
 現在は夜島学郎が保有
 
 星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)@HUNTER×HUNTER
 ・鬼方カヨコに支給
 自身に忠誠を誓う者が死んだときにその念能力を引き継げる。カキン帝国の第一王子の念能力。
 本ロワにおいては念能力のみならず『仲間』と判断した人間の死を引き換えに、固有の能力・ソードスキル含め何かの力を引き継ぐことが出来る。
 非常に条件が緩くなっているが、死者と能力者が互いに『仲間』と認識する必要がある。
 そのためカヨコに寄生したセレブロには無用の長物(仲間意識がないため。)
 制約として
 ・一度得た能力は一度しか使えない。永続化する場合は令呪の消費が必要
 となっている。
 現在は亀井美嘉に譲渡済み
 
 幻妖と契約して力を得る能力@鵺の陰陽師
 ・支給品ではないが便宜上ここに記載する。亀井美嘉が星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)@HUNTER×HUNTERにて習得
 藤乃代葉が有する希少な能力。原作では代葉は狂骨という幻妖と契約しており、戦闘にその能力や性質を活用できる。
 本ロワにおいては契約対象は霊的存在であれば幻妖に限らないようで、亀井美嘉は月蝕尽絶黒阿修羅と契約しその力を行使できるようになった。
 黒阿修羅が美嘉に協力的であるにもかかわらず、気を抜くと黒阿修羅が有する無差別の殺意に取り込まれそうになっている。


47 : ■を為す女ー救いがないほど深く ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:46:18 Y5mWZkcY0

 オール・フォー・ワン(個性)@僕のヒーローアカデミア
 ・セレブロに支給
 他者の『個性』を奪い与える最強最悪の個性
 対象に直接触れることが発動条件
 本ロワにおいては『個性』以外の能力も奪い与えることが出来る。
 なお制限としては以下の通り
 ・触れてから奪うまでに十秒前後の時間が必要
 ・セレブロ本人がストックできる能力は1つだけ。使用者(セレブロの場合は寄生対象)によって容量は変化するが鬼方カヨコの場合は3つまでストック可能
 ・『個性』及び支給されたソードスキル以外を奪う場合は令呪が必要
 ・令呪を使うことで個性を奪うことに抵抗が可能 一度令呪で抵抗した相手の個性は一定時間奪えない
 ・与える場合は上記の条件を無視し瞬時に与えることが可能。
  ただし明確にデメリットのみの能力の場合はその限りではなく、対象の合意がない限り上記の時間・令呪の制限が適用される

 魔女箒@転生王女と天才令嬢の魔法革命
 ・夜島学郎に支給
 パレッティア王国王女が作り上げた、風の精霊石を推進源とした“空飛ぶほうき”
 制作者の完全な趣味の為に作られた為乗り心地などは一切配慮されていない。
 試作段階の為ごくたまに出力が不安定になり制御不能の暴走を起こしてしまう事がある。

 未来の宝太郎の眼帯@仮面ライダーガッチャード
 ・亀井美嘉に支給
 未来の宝太郎がグリオンとの戦いで付けた傷を隠すために着けている眼帯
 本来は右目に追う傷を隠すものだが。損傷箇所のつごう美嘉は左目につけている

 
【ドロップ品一覧】
 ステータスタグ@戦隊レッド異世界で冒険者になる
 ・ドロップ品として冥黒ノノミが所有
 ドッグタグのような形をしていて、最初に手にした参加者のステータス(戦闘能力・所有能力(ソードスキルを含む))が確認できる
 冥黒ノノミは現在3枚所有している(うち2枚は鬼方カヨコ&セレブロ・亀井美嘉のステータスがそれぞれ記載)
 余談だが、参加者によってステータスの表記画面が異なっており。
 亀井美嘉のものはアイドルのプロフィール的、鬼方カヨコのものはゲームのステータス画面、セレブロのものは児童誌のようなデザインとなっている。


48 : ◆kLJfcedqlU :2024/11/24(日) 21:46:36 Y5mWZkcY0
投下終了します


49 : ◆ytUSxp038U :2024/11/24(日) 23:59:32 2RE8naAw0
皆様投下お疲れ様です

伏黒甚爾、龍園翔、十条姫和、レンを予約します


50 : ◆07JJdXWj.M :2024/11/29(金) 07:53:36 xb7mvPVY0
予約を延長します


51 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 00:44:12 Oy/FdI7o0
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、綾小路清隆、ドラえもん 予約します


52 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:31:55 Oy/FdI7o0
投下します


53 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:32:25 Oy/FdI7o0
時刻は午前7時。
真贋入り混じるバトルロワイヤルにて、新たに登場したラウ・ル・クルーゼと同等かそれ以上に混沌をもたらした少年、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの姿は相変わらずTV局にあった。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命に従え!」

ドライバーの力で支配下に置いたマシンタイプのNPCモンスターたちによって拘束され、無理やり目を見開かされた温泉開発部部員や冥加刀使、呪詛師集団Q戦闘員の三人をあえて一人づつギアスをかける。
全員問題なく一瞬の硬直の後、膝をついて首を垂れたが、ルルーシュは眼に長時間狭い画面を見続けた時に似た疲労を感じる。

「ふむ……どうやら乱発だけはNPCモンスター相手でも多少制限されるようだな。
命令内容や鏡越し、有効射程距離と言った条件も特に変わりなしか。
今新しく配下に加わった3人、そこの死体を処分しろ。
その後は各持ち場のカッシーンの指示に従い防衛の任に当たれ。
ナイトポリス、そいつらを焼却場に案内してやれ」

「「「イエス。ユア・マジェスティ!」」」

発声機能の無いナイトポリス以外が元気よく返事をすると、三人は協力して自分で自分の首を斬り、血の池に沈む長船の制服の刀使を運び出す。
当然参加者の一人の益子薫ではなく、NPC相手なら自死の強制も出来るかどうかの実験で自殺させただけのNPCだ。
他にも同様の実験で自殺させたNPCモンスターやここに連れてこれず戦闘で殺害したNPCモンスターの死体は焼却するように命じてい有る。
後々病気の元になっても嫌だし、見せしめかのように殺した死体を丁寧に焼かせるのも『悪意の皇帝』の良いパフォーマンスになると思ったからだ。

「ルルーシュ様、ご報告申し上げます」

死体を運び出した4人と入れ替わる様にこのバトルロワイヤルにおいて、ルルーシュの一番の臣下になった少年が入って来た。

「清隆か。申せ」

「はっ。ご命令通り外部バリケードは二重に作成、エナジーアイテムの配置を前提にした罠と適切なNPCモンスターの設置も終えています」

「ご苦労。では次の仕事にとりかかってもらう」

そう言ってルルーシュが指を鳴らすとさっきまで温泉開発部員たちを取り押さえていたMSたちが一歩前に出る。

「こいつらは?」

「長距離強行偵察タイプのジンだ。
この六機とステルス機能の付いたジンをもう六機お前に預ける。
それぞれを端末、そしてルーターとして使って租界エリアを中心に情報収集を行え」

「任務は了解しました。
ただ、いくつか質問をさせていただいてよろしいでしょうか?」

「構わん。なんだ?」

「籠城の準備が整った段階で何故私が外に?」

「籠城の準備を整えることが可能だったかだ。
ここまでドライバー、そしてギアスで順当に配下を増やしてきたが、あまりに簡単に行きすぎだ。
参加者や主催者に対しては直接害を及ぼすような命令は出来ない、あるいはお前の時のチェスの勝敗を条件に組み込むような条件を加えなければ出来ないようにされてるにも拘らず、NPCモンスター相手には乱発以外は特に制限されていない。
羂索はこれがゲームと言っている以上、この制限は俺だけを贔屓した結果ではない」

「なるほど、少なくとも複数人はそれくらいの無法が許されなければ抵抗しようのない存在が居る、ということですね?」

「そうだ。
極端な話、単騎で地震を起こしてこのテレビ局ぐらい簡単に崩壊させるような奴が居てもおかしくない。
そしてそいつらが全員反ゲーム派とも思えん」

「もしそうならこのゲームは参加者同士ではなく参加者と運営で戦うゲームになってしまいますからね。
その事を考慮すると、単騎で他のプレイヤーを圧倒できる特記戦力たちの殺しに積極的な者とそうでない者の比率は少なくとも前者が上回らなければおかしいでしょう」

「案外、前者5、6人に対して後者が一人だけ、なんてこともあるかもしれないな。
その場合、特記戦力にとってクリティカルになる道具や武器、情報が支給されているか、明確に天敵となる誰かが参戦してくれていなければおかしいが」

「そう言った者たちの捜索も任務の内、ということですね?」

「ああ。頼めるな?」

「イエス・ユア・マジェスティ。
ルーターと合流しツーマンセルになった者から行動開始。
等間隔六方向に散り、ルーターが配置に着いたらそこを起点に調査を行え。
交戦は極力避け、記録映像は必ず持ち帰らせろ」

一礼すると6機のジンは部屋を後にする。


54 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:32:54 Oy/FdI7o0
「清隆、お前はこれを持っていけ」

そう言うとルルーシュはドライバーから新たに二つのアイテムを生成した。

「これは?」

「アタッシュアローとザイアスペック。
001に固有武器はないだろう?
仕込み刃付きのこれなら全距離をカバーできる。
ザイアスペックは右耳につけて使ってくれ。
特殊な防護幕を展開して毒ガスなどの吸引を防げる。
が、こっちは副次的な機能で、ステルスジンをルーターに俺との通信を行うことに使ってくれ」

「御心のままに」

清隆も部屋を後にすると、ルルーシュは護衛のグロースター二機を控えさせたまま放送の時に座っていた椅子に座る。
その前にはテーブルが用意されており、そこには清隆が献上した支給品が全てとチェスセットが並べられていた。

「さて、この手ゴマでどうにか出来る奴はどの程度いるかな?」

『少なくともゼイン相手では第三のシンギュラリティと同等の何かが必要だ。
綾小路清隆と、お前を利用しようと目論む連中のみでどうにかできると良いな』

手にした短剣の刀身に映る自分の顔がルルーシュの意志に反して動いているように見える。
前に鏡写しになったルルーシュの像を借りたのと同じようにアークが話しかけてきているのだ。

「確かに白のナイトは強敵だ。
だがキングを見誤ればチェックをかけられるのはこちらだ」

『あれだけ大々的に自分の居場所を晒せばそうもなろう』

                  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「清隆にはああいったが、唯一の幸運はこのテレビ局が一撃で粉砕されるようなことだけはないことだな」

絶対に他の参加者と何かしらの縁があるだろう固有名詞の与えられているランドマークではなく、ここを選んだ甲斐があるという物だな。
運が良い』

「全くだ。
このツキが向いている内に王手をかけたいのだが……一度受け身で待つと宣言してしまったからな。
引き続き地味に軍団を整えるとしよう」

そう言ってルルーシュは予備兵力のストライクダガーを呼び出し、ゼツメライズキーのセットされていないゼツメライザー生成しては持たせていく。

「俺に逆らうマシンタイプのNPCモンスターにこれを装着させれば我が支配下となる。
生物型、人間型の者はここに連れて来れないなら殺せ」

命令を受けたストライクダガーが部屋を出るとルルーシュは頬杖を突き、短剣を置いてチェスセットを見つめる。
果たして彼は白の駒を操る物を誰と思っているのだろうか?


55 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:34:13 Oy/FdI7o0
【エリアD-7/テレビ局/9月2日午前7時30分】
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実、ランダムアイテム×0〜1(ルル)、ホットライン
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:映像を観て集まって来る者の中でも生かしておくべきでない者は鉄砲玉で使い捨てるか始末する。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
  にしても仮面ライダーアークゼロ、か。偶然とは思えんな。
04:ランペルージ姓とヴィ・ブリタニア姓のロロの名前が二つあるのが気がかり。
  もし羂索のように弟の死体を利用する何者かだったのなら、容赦はしない。
05:二代目ゼロ?扇め、そこまで準備していたとは。
06:地下の『アレ』については調べたいが、藪蛇になりかねんか……。
07:特記戦力とそのカウンターに関する調査、頼んだぞ清隆。
08:白のキングは誰か、早い段階で見極められると良いのだが。
09:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音と綾小路清隆にギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。




【NPCモンスター解説】
・温泉開発部部員@ブルーアーカイブ
…ゲヘナ学園の問題児の集うあらゆる場所を温泉開発の名目の元耕し焦土にする部活動、温泉開発部の構成員。
ヘイロー持ちなので物理銃撃には多少頑丈。
掘削器具ももっているので、多少の近接戦も出来るかも

・冥加刀使@刀使ノ巫女
…ノロを投与され諸々の能力を底上げされた刀使の総称。
アニメ本編だと親衛隊や一部綾小路の刀使たちがこれにあたる。
刀使として基本的な技能を平均的な刀使たち以上のパフォーマンスで発揮できる。

・呪詛師集団Q戦闘員@呪術廻戦
…アニメ版懐玉・玉折編のOPで未来の特級二人にボコボコにされてた連中の一人。
どんなに高く見積もっても呪術高専の資格換算で2級以上の力は持っていないと思われる。

・ナイトポリス@コードギアス反逆のルルーシュ
…警察に払い下げられた旧型KMFグラスゴーを出力制限した上でパトランプを装備しカラーリングを白と青に改めた機体。
大型シールドや対暴徒用ハンドガンなどを装備している。

・長船女学園の刀使@刀使ノ巫女
…刀使養成学校・伍箇伝の一角、長船女学園の制服を着た刀使。
恐らく刀使として基本的な技能を平均的な出力で発揮する。

・ジン長距離強行偵察複座型@機動戦士ガンダムSEED
…ザフト軍の主力量産型モビルスーツ、ジンのバリエーションの1つ。
索敵・通信機能が大幅に強化され、その名の通りの長い航続距離を誇り単騎での広範囲偵察が可能。
本来は索敵精度を上げるために操縦と索敵を分ける複座仕様だが、、NPCモンスターではどうなのだろう?

・ジン戦術航空偵察タイプ@機動戦士ガンダムSEED
…ザフト軍の主力量産型モビルスーツ、ジンのバリエーションの1つ。
重力下での航空偵察のために単独飛行能力を付与されたジン。
期待ほどの性能を出せなかったが後のザフト軍の制空用MSシグーやディンのベースになっている。
なんと発動中動けないという制約こそあるがミラージュコロイド・ステルスを搭載している。
武器もビーム兵器を有するが、牽制の目くらまし程度しか出来ない。

【支給品解説】
・レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
…綾小路清隆@ようこそ実力至上主義の教室へに支給。
リコの師匠、レイスの魔力の込められた短刀。
使い切りだが闇檻の結界すら斬り裂けるレイスの固有魔法を発動できる。


56 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:35:11 Oy/FdI7o0
「あれは……」

偵察に出た綾小路清隆はテレビ局がまだ視界にとらえられる範囲に居るうちに立ち止まることになった。
青い……アザラシともタヌキとも何とも言えない二頭身の何かが外側のバリケードを警備するカッシーンと揉めていたからだ。

「お前たちは先に行け」

途中で合流していた2機のジンに指示を出し、001自慢の脚力で一飛びでトラブルの現場までジャンプする。

「不遜にもほどがあるぞ
この先が一体何方の居城だと思っている?」

変身解除しながら話しかけると二体のカッシーンは神聖ブリタニア帝国式の敬礼をする。
青い二頭身は確か、清隆君…と呟く。
どうやら放送を観て来た者では有るらしい。
日本語も通じるようで何よりである。

「清隆殿!」

「申し訳ありません、この狸擬きがルルーシュ様へのなんの手土産もなく謁見を願い出て来たもので……」

「僕は狸じゃな〜〜〜いっ!
はるか未来、22世紀からやってきた子守用ネコ型ロボットだ!」

言われてみると、首につけた鈴の首輪やひげ、口のカタチとデフォルメ化したネコらしき要素が見て取れる。

「名簿には何と載っている?」

「僕はドラえもん、ルルーシュ君のことは卜部さんから聞いている!」

「ルルーシュ君だと!?」

「口を慎め耳欠けの不良品が!」

トライデントを構え、今にも飛び掛かりそうになるカッシーンを手で制し、ながらいつでも変身できるようにプログライズキーだけは構えておく。

「……一度だけならルルーシュ様がこの場にいるわけでもないので見逃してやる。
だが次はない。
それで、お前はゼアの身柄などのルルーシュ様が要求した忠誠の証以上の価値を提示出来るのか」

「っ!……二人、あんな他の皆に喧嘩を売るようなことを続けていたら絶対に勝てないぐらい強い人に関して知ってる!」

それは何ともタイムリーな話だ。
早速任務の1つをこなせたのは行幸だが、すでに二人は確定か、という思いもある。

「良いだろう。
その言葉が虚言であった場合はお前も実験台のNPCモンスター共同様、焼却場送りになるだけだ」

「しょ、焼却場!?」

驚くドラえもんを無視してザイアスペックに指をあてる。

「こちら清隆。
ルルーシュ様、お時間よろしいでしょうか?」

『なんだ?まさかもう進展があったのか?』

「はっ。卜部なる人物によりルルーシュ様の事を聞いているという……ロボットの参加者が謁見を願い出ています。
何でも、特記戦力に関する情報を有しているとの事です」

『なんだと?
……分かった。人語の分かるNPCモンスターを案内につかせろ。
お前は引き続き偵察任務を続行してくれ』

「イエス。ユア・マジェスティ。
では、通信を終了します」

指をザイアスペックから話すと、清隆はカッシーンの片方に人語の分かるNPCモンスターを連れてくるように命令する。

「喜べドラえもん。
お前に拝謁の栄に浴する許可が与えられた」

「本当に!?ありがとう清隆君!」

「別に感謝されるようなことはしていない。
あの鎧のNPCモンスターについていけ」

丁度S装備の刀使を伴って戻ってきたカッシーンを指さす。
確かバイザー越しでもギアスが通用するかのテストに使ったNPCモンスターだったはずだ。

「くれぐれも無礼の無いようにな」

「わ、分かったよ。それじゃあ、案内宜しくお願いします」

S装備の刀使がドラえもんを先導していくのを確認し、清隆は001に再変身するとその豪脚でテレビ局から遠ざかり始める。
悪逆皇帝の最初の臣下が向かう先は───。


57 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:35:22 Oy/FdI7o0
【エリアD-7/テレビ局外側バリケード外縁部/9月2日午前7時45分】

【綾小路清隆@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:正常、絶対遵守のギアス(極大)
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:フォースライザー
   ライジングホッパープログライズキー
   ザイアスペック
   アタッシュアロー
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを利用して自分の夢を掴む
00:『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアへの質問には包み隠さず答える』
01:ルルーシュに仕え、このゲームをひっくり返す。
02:堀北ら知り合いへの対処はその時次第。
03:ルルーシュの仮面ライダーとして諜報活動を行う。
04:ドラえもんの持つ情報がルルーシュ様にとって有益だといいんだがな
05:一度アタッシュアローの使い勝手を試したいな。
参戦時期:少なくとも船上試験よりは後
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力を無効化する異能力をかけられない限り、新たにルルーシュのギアスの影響を受けることはない代わりにルルーシュからの質問に包み隠さず答えます。
※ザイアスペックでの通信はルーター無しでの場合同エリア内に居なければ不可能なようです。
※テレビ局からどこに向かうかは後の書き手様にお任せします。

【ドラえもん@ドラえもん】
状態:ダメージ(中)、悲しみと決意
服装:全裸(ロボットなので)
装備:空気砲@ドラえもん、ひらりマント@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ホットライン、チーターローション@ドラえもん、復元光線@ドラえもん
思考
基本:皆が殺し合いから脱出出来る様に行動する。
01:卜部さん……
02:思ったより早く着けちゃった。
  にしても、放送から二時間でもうこんなバリケードを……。
03:清隆君、本当にルルーシュ君に忠誠を誓ってるの?
04:焼却場!?
05:総司令官の話には乗らない。
参戦時期:不明。(少なくとも、鉄人兵団の事件の後)
備考
※四次元ポケットは主催側によって没収されています。
※卜部から黒の騎士団やブリタニアの大まかな情報を聞きました。



【NPCモンスター解説】
・刀使(S装備)@刀使ノ巫女
…刀使の基本的な能力を底上げするパワードスーツ、ストームアーマーを装着したタイプの刀使。
バッテリー駆動で燃費は悪いので耐久戦に持ち込めば確実なパワーダウンと防御力低下は見込める。


58 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:36:19 Oy/FdI7o0

場所と時間を少し戻って、テレビ局。
そのメインエレベーターでしか行けない地下のさらに下エリア。
薄暗い円柱状の空間に黒いローブの誰かが立っていた。
ローブの誰かはそう言った能力を与えられているのか、それともそう言った視線に敏感なのか、天井に着いた監視カメラを見やる。
正確には、アークドライバーゼロによるハッキングでこのテレビ局の全てを把握しようとしているであろうルルーシュを観る。
別段恐れる必要はない。
この空間に直接乗り込む方法は一つしかない。
ならばその時まで何もする必要はない。



自分の次の出番は、まだ当分先だろうな、と冥黒の五道化の一人は他人事のように思った。



【エリアD-7/テレビ局地下 ???/9月2日午前7時】

【■■■■の???@ロワオリジナル】
状態:???
■■:???
装備:黒いローブ、???
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:???
基本:この場所(テレビ局地下 ???)を守護する。
01:???
02:???
03:???
■■■■:???? 
備考
※???

【全体備考】
※テレビ局地下に『何か』があります。
 破壊されそうになると運営からの介入があるかもしれません。


59 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/11/30(土) 12:36:42 Oy/FdI7o0
投下終了です。
タイトルは 白のキングはまだ見えない です。


60 : ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:00:15 B5VekMtk0
皆様投下お疲れ様です
自分も投下します


61 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:01:20 B5VekMtk0
改めて説明するまでも無いが、伏黒甚爾は呪力を持たない。
呪術師との関りを持たない一般人程度の量だけ、ということではなく。
事実として、生まれつき一切の呪力が存在しないのである。

呪術師の家系に生まれながら、呪力を持たない人間。
そんな者が家からどのような扱いを受けるか、想像に難くない。
特に甚爾の生まれの禪院家は、「禪院家に非ずんば呪術師に非ず、呪術師に非ずんば人に非ず」を掲げる筋金入りの選民思想。
術式どころか呪力自体を、産声を上げた瞬間より天に取り上げられた忌み子。
蔑まれ、見下され、嘲笑われ、嫌われ。
それ以上に、恐れられた。

呪力の完全喪失という縛りと引き換えに、甚爾は天与の恩恵に授かった。
フィジカルギフテッド。
放つ拳は砲弾に等しく、一度走れば最高速度のスポーツカーすら追い抜き、機銃の掃射など綿毛が舞うより簡単に目視可能。
果ては呪いの感知及び耐性を兼ね備え、魔人の領域へ鎮座する男。
ある者には恐怖(トラウマ)を刻み付け、またある者には憧憬を焼き付けた。

若き日の最強相手に敗れ、何の因果か異界の者を集めた蟲毒へと強制参加。
持ち得る力はこの地においても遺憾なく発揮されている。
NPC複数体を軽く蹴散らし、バグスターの中でも上位個体であるグラファイトと渡り合った。
多少の縛りを加えられてはいるも、その強さに翳りは無し。

だからこそ、瞬時に判断を下せたのだ。
「これは無理だ」と。


62 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:02:01 B5VekMtk0
「口閉じとけ。舌噛んでも責任取らねえからな」

雇い主の少年と、協力関係を結んだ少女。
有無を言わせず二人を片腕ずつで担ぎ、背後を見ぬまま駆け出す。
米俵のような扱いには当然文句が飛ぶも、すぐに言葉を引っ込めた。
まともに喋れない速度を甚爾が出したから、それも理由の一つ。
だが何より、エリア内に生じた急激な異変を目の当たりにし、あれやこれやと口を出す場合でないと理解。
付近の建造物が爆撃を受けたように崩壊、一つ二つではなく数十纏めてだ。

(敵襲…!?)

担がれた内の一人、姫和が緊張の面持ちで周囲を見回す。
少し遅れてもう一人、龍園も攻撃を行った者を視界に収めんとする。
絶叫マシンに乗っているに等しい景色の中で、彼らの目は捉えた。
光と闇。
目視不可能な程離れているにも関わらず、力の衝突がハッキリと。
地上から空中へと舞台を移し、無数の輝きが現れては消える。

「……っ」

ギリ、と。
奥歯をキツく噛み締めた音は誰の耳にも聞こえない。
音を発した龍園自身にもだ。
抱くのは己への苛立ちと、正体不明のナニカへの戦慄。
どんな奴が具体的に何をやっているかは分からない。
しかしエリアの破壊を引き起こしているのが、化け物という言葉ですら足りない存在なのは理解せざるを得ない。
自身に初めて恐怖を覚えさせた、無機質な拳の雨とは違う。
人の領域ではどう足掻いても辿り着けない絶対的な力。
普通とは言い難い学校生活を送っていても、生涯出会う事の無かったろうモノ。
人であれば恐れて当然である、しかし龍園は心に震えを走らせた己への憤りを隠せない。
例えこの地に集められた者が綾小路清隆ですら及ばない、正真正銘の怪物だとしても。
恐怖へ屈することだけは、己のプライドに懸けて認められなかった。

心がへし折れたとしても誰も文句を言わないだろうが、意地で跳ね除けてみせた。
と言ってもそれを褒める者はおらず、龍園自身も称賛は求めていない。
崩壊の音が小さくなり、周りの家々も無事な物が多くなる。
絶大な存在感がようやく消えたのを確認し、甚爾も徐々に速度を落とす。
頃合いを見計らって二人を下ろし、僅かながら緊張感を解いた。


63 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:03:23 B5VekMtk0
「お疲れさん。吐きたいなら向こうで頼むぜ、生憎エチケット袋なんざ持ってないからな」
「余計な気遣い回してんじゃねぇよ」
「さっきのは一体……」

軽口へ龍園が舌打ちを返す横で、逃げて来た方を姫和が見つめる。
参加者同士の衝突、とだけは辛うじて分かった。
異常なのは件の何者かが放つ力と、大きく距離があるにも関わらず感じたプレッシャー。
祭殿で初めて大荒魂(タギツヒメ)と対峙した時を思い出す。
タギツヒメが参加している以上、匹敵する存在がいても不思議ではない。
現に甚爾等は御刀があり可奈美達との協力込みでも、確実に勝てるとは言えない力の持ち主。
とはいえ、流石にここまで桁外れだとは姫和にも予想外だ。

「おっかない半裸のにいちゃんと、面だけは良いねえちゃんが仲良く殺り合ってやがった」
「…なに?伏黒、奴らの姿を捉えたのか?」
「まぁな」

事も無げに頷く甚爾だが、内心では激突した二名への警戒を強めていた。
姿は見えたが常にハッキリと捉えられたのではない。
術師殺しの伏黒甚爾をして時折見失う程に、黒い男と女は速かった。
この時点で甚爾にとっては現状ぶつかるべきではないと、即決を下すのに十分な理由だ。
スピード、破壊の規模、馬鹿げてるとしか言えない秘めた力。
以上を加味すれば連中は間違いなく術師・呪霊双方の観点で特級クラス。
それも上澄み中の上澄みというおまけが付く。
グラファイトも大概だったが、先の二人は文字通りの規格外。
特に男の方は、ハッキリ言ってあんなモノまで参加させる羂索の正気を疑う。
装備が万全では無く、足手纏いを抱えた状態で仕掛けるのは自殺行為に他ならない。
幸い連中の意識は互いに割かれており、余計なちょっかいを出さず逃げに徹すれば生き延びられた。

「アイツらはテメェでも無理か?」
「少なくとも今殺り合った所で、猿の死体が一つ出来上がるだけだろうよ。後一応言っとくが、俺を使って連中を消したいならどうすりゃ良いか分かんだろ?」

百万で護衛を引き受けてはやった。
だが黒い男と女を殺すには、とてもじゃないが金額が足りない。
最低でも三桁は吊り上げて貰わねばお断り、百万程度ガキの小遣いと何ら変わりないだろう。
一番良いのは自分の知らぬ所で化け物同士仲良く共倒れ、といった展開なのだが。


64 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:04:26 B5VekMtk0
「言われるまでもねぇ。一旦アイツらのことは置いて、こっちは協力できる奴らを探しに行くぞ」

現状、黒い男と女をどうこうできる術を自分達は持っていない。
三人の中で最強格の甚爾が難しいと言うなら、龍園と姫和にだって無理だ。
よって当初の予定通り仲間を増やし、尚且つ甚爾を他者に引き抜かれないよう報酬の確保へ動く。
並行しグラファイトの友やらも捜索してバグスターウイルスの情報を得る。
努力嫌いを公言する反面、その実勝利の為には手間を惜しまない。
負けると分かり切った博打に打って出る程自暴自棄ではなく、ここは堅実な方法で地盤を固める。

「十条、お前の方も文句は無いか?」
「…ああ。今はそれが最善だろうな」

復讐優先で動いていた頃と違い精神的な余裕も幾らかあってか、危険な参加者を放置した場合の被害に思う所はある。
けれど戦力不足は姫和自身も痛感しており、このまま立ち向かったとて無駄死が関の山。
御刀を手に入れるか、式神のレパートリーを増やすか。
いずれにしろ今すぐに叶う内容では無い、調伏にしたって黒い男と女からもっと離れたエリアでやらねば危険。
ならやはり、龍園の言うように協力可能な者を探すべきだろう。

(会ってすぐに手を組めそうなのは十条の仲間と、後は一ノ瀬くらいか…)

三人共に意見が一致し、この先協力が可能な面々を龍園は思い浮かべる。
衛藤可奈美を始め刀使の少女達なら、殺し合いに乗っておらず尚且つ共闘も難しくない。
姫和同様、屈服は難しいだろうが手を組めるのであれば取り敢えず良しとしておく。

一方で龍園自身の知り合いについては、少々雲行きが怪しい。
ルルーシュの飼い犬に成り下がった綾小路は論外として。
堀北は殺し合いに乗るような人間性でないとはいえ、友好的な関係とは言い難い。
主に龍園の挑発的な態度が原因であるが、向こうも積極的に探そうとはしないだろう。
軽井沢についても同様。
以前黒幕が誰かを聞き出す為に散々嬲ったのもあってか、彼女から龍園への印象は最悪。
加えてルルーシュの放送を見ていた場合、綾小路の変貌に錯乱している可能性は大いにある。
こちらも積極的に探すつもりは無し。

Dクラス以外の面々なら、唯一マシなのが一ノ瀬か。
強い善性の持ち主で自分とは相容れない、しかしBクラスを纏める手腕は認めている。
案外既に複数人の仲間を引き入れ、グループを作り上げているのかもしれない。
ルルーシュの説得に動くという、お人好しにも程がある行動に出ている可能性も無いとは言い切れないが。
1年度最終特別試験で負かされたからといって、一ノ瀬なら協力を拒みはしない筈。

後は元Cクラスの真鍋。
軽井沢に集団で陰湿なイジメを行い、龍園には一転し下手に出る典型的な小物。
退学が確定した際の取り乱しぶりは中々のインパクトであったが、逆に言うとそれ以外で言及すべき箇所はない。
何故こいつを参加させたのか分からない、というのが正直な感想である。
まだ櫛田や阪柳の方が参加者として相応しいのではなかろうか。


65 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:05:30 B5VekMtk0
Aクラスの者だけ綺麗に外されている等、主催者の人選に少々謎を覚えるが深々と考える程でもない。
切り替え出発、と行きたい所だがそれはまだ早いらしい。

「ちょっと待て、俺ら以外で逃げて来た奴がいる」

何かに気付いた素振りで甚爾が視線を動かす。
素で常人以上の五感を持つ故に、龍園達よりもいち早く察知可能だった。
グラファイトに襲われた時と同じだ、今更甚爾の能力を疑いはせず二人も警戒に移る。
逃げて来たとの言い方からして、租界を破壊した怪物とは別の参加者。
尤も、その者が殺し合いに乗っていない保障は無い。

同じ方を見つめる彼らの前に、現れたのは一台のバイク。
ようやく龍園達にも見える距離まで近付き、ドライバーの姿も確認出来た。

「ガキか…?」

龍園が訝し気に呟くのも無理はない。
自身の腰に届くかも怪しい小さな体躯。
良くも悪くも目立つことこの上ないピンク一色を着込んだ少女。
乗り回してるとはお世辞にも言えず、振り落とされないようしがみついていると言うべきか。
徐々に速度を落とし停車、幾度も背後を振り返る顔色は悪い。
あのような破壊に巻き込まれかけたのを思えば、至って当然の反応ではあった。

「おい、グロッキーになってるとこ悪いが良いか?」
「ひっ……!」

ともかく、他の参加者を見付けて無視を決め込むの無しだ。
ある程度落ち着いたタイミングを見計らって声を掛ける。
が、少女は龍園を見るや否やあからさまに震え出す。
殺し合いで見知らぬ男に話し掛けられたら無理もない反応だが、少々過剰な怯え方ではないか。


66 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:06:28 B5VekMtk0
「龍園、相手はまだ子供だぞ。恐がらせてどうする」
「こいつが勝手にビビり始めたんだよ」

姫和に窘められ面倒そうに後頭部を掻く様は、クラス委員長に注意を受ける不良生徒のよう。
高育では他クラスに舐められないよう高圧的な態度を取っていたとはいえ、殺し合いで学生生活のセオリーが通じるとは龍園も思っていない。
下手に出るに気は微塵も無いが、かといって協調性皆無の姿勢を無意味に取るのは悪手。
だから龍園なりに気を遣って話しかけたが結果はご覧の通りだ。
流石にここまでの年下に怯えられては、龍園と言えども扱いに困った。

「十条、お前ガキの相手出来るか?」
「い、いや私も子供と接する機会はほとんど……」

急に振られ答えに詰まる。
少し前まで同年代の女子にも壁を作っていたのだ。
舞衣や可奈美なら優しく話し掛け心を開かせられるも、自分には難しい。
却って余計に恐がらせてしまうのではと、そんな危惧を抱く。

「伏黒……やっぱなんでもねぇ」
「おう、期待されても困るわ」

他人事のように手をヒラヒラ振り、そっちに任せるとアピール。
仮にも自分達3人の中で年長者だろと、呆れを姫和が視線に乗せるも効果は無い。
さてどうするかと顔を顰める龍園へ助け舟が意外な所から出された。

『君達は殺し合いに乗っていない、そう判断して良いのかな?』

聞こえたのは男の声。
周囲を見回すも姿は無く、まさかピンクの少女が発したのではあるまい。
だが龍園達と違い彼女は声の主を知っているようだった。
少し慌てたように自身が乗っていたバイクへと話し掛ける。

「あ、ば、蛮野さん……」
『勝手なことをしてすまない。しかし彼らはいきなり襲う真似はせず、むしろ我々との対話を求めているように見えた。
 協力し合える仲間となってくれるかもしれないなら、きっと君にとっても悪い話では無いと思ったのだが』

謎の声の説得には思う所もあるらしく、少女から反論は飛ばない。
それを承諾の証と取ったのか、独りでにバイクが動く。
本来ならば装着されていないタブレット、その画面に顔らしき物が映っている。
己へ視線が集まるのを画面の向こうからでも確認し、一同へ告げた。

『彼女を責めないであげて欲しい。君達と会うまでに色々あったんだ。お互い殺し合いに乗る気が無いなら、まずは移動してから話をしようじゃないか』

少女を気遣いつつも情報交換の場を設ける提案。
奇妙な存在から齎されるとは予想外であるも、断る理由は無かった。


67 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:08:34 B5VekMtk0
◆◆◆


小比類巻香蓮にとっての人生を変えた日とはいつか。
本音をぶつけ合える数少ない友人、篠原美優と出会った日。
地元の北海道を出て東京の大学に進学した日。
そして何より、GGO(ガンゲイルオンライン)にログインした日。
コンプレックスであった長身と、せめてVR内でおさらばするべく数々のゲームを巡り続けた果てに、理想のアバターを手に入れた。
現実の香蓮を高く見上げる程の小柄さ。
大学生の香蓮ではない、GGOプレイヤーのレンとして登録した日から彼女の日常は変わり始めた。
と言っても、SAO事件のように命懸けの戦いに身を投じるだとかではない。
ゲーム内での交友が現実の世界にも広がり、内向的だった自分を変えられた。
色々な意味で濃い人達が多く、頭を抱える場面も少なくは無いけれど。
GGOを始めて良かったと、そう心から思える。

しかし不運は常に思いもよらぬところからやって来る。
何の前触れもなく巻き込まれた殺し合い。
GGOの新イベントが始まったのではない、かのソードアート・オンライン同様の悪夢染みた遊戯。
香蓮ではなくアバターのレンとして強制参加させられた挙句、最初に出会った参加者はよりにもよって“乗った”側の人間。
恐怖を抑え付け立ち向かう心をへし折るのに、十分過ぎる暴力の洗礼を受けた。
間一髪の所で不思議な支給品に助けられたものの、絶大なトラウマは短時間で消し去れない。
仮面ライダー龍騎から命辛々逃げ、一旦どこかで休もうと移動。
だがそう時間を置かずに起こったのは、龍園達も巻き込まれた租界エリアの破壊。
一難去ってまた一難との言葉が現実のものとなり、立て続けに起こる大ピンチにただでさえ疲弊していた精神はパンク寸前。
彼女を助けた支給品がどうにか落ち着かせ、バイクを猛発進してくれたおかげでどうにか何は逃れた。

「で、その赤い仮面ライダーからもっと離れた場所に移動しようとして――」
『大破壊に巻き込まれかけた、という訳だよ』

現在、レン達は場所を変えてここに至るまでの互いの経緯を明かしていた。
車庫付きの民家を見付け、シャッターを開け中へと侵入。
バイクがある為そこいらのリビングよりはこちらの方が良い。
痛め付けられた際の恐怖に時折言葉を詰まれせれば、彼女を助けた支給品…蛮野が補足を入れる形で話は進行。
聞き終えた三人は何故レンがああも怯えていたのに納得する。


68 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:09:24 B5VekMtk0
「そう、だったのか…すまない、もう少し気遣うべきだった……」
「い、いえそんな!十条さんが謝ることじゃないですよ。私の方こそ、龍園さんを恐がったりしちゃって……」
「別に気にしてねぇよ」

龍騎に変身した男と龍園では全くの別人だが、どこか威圧感のある雰囲気は似ている。
話しかけられた際につい警戒を剥き出しにしてしまったのは、今思えば良くなかったとレンは反省。
当の龍園は特に気を悪くせず、素っ気なく返す。
一方で姫和は龍騎へ警戒と怒りを同時に抱く。
正義に熱いタイプでなくとも、レンをここまで恐怖させる程暴行を加えた相手へ良い感情を向けよう筈もない。

(年上なのに気を遣わせちゃったな……)

口には出さず、内心でレンも姫和達へ申し訳なさを感じていた。
相手はまだ十代の学生、本来なら大学生の自分がしっかりしなければならないだろうに。
尤年齢不相応な彼らの落ち着きを見れば、平時であっても場を纏められるかは自信が無いが。
話を聞くにSAO事件のことは知らず、反対に刀使だの高度育成高校だの聞き覚えの無い単語を返される始末。
ただでさえ精神的な傷の大きいレンには理解が追い付かない。

『ふうむ…つまりあの大破壊は目的があったのではなく、あくまで戦闘の余波だと?』
「エリア共々ぶっ壊してスコア獲得、なんて様子じゃ無かった。ありゃお互いを殺す事しか頭にねぇ。俺らは傍迷惑な痴話喧嘩に巻き込まれたんだろうよ」

蛮野達の会話が聞こえ、レンは軽く眩暈を覚えた。
冗談めかして言う甚爾だが全く笑えない内容だ。
ぶつかり合っただけでエリアの破壊を引き起こす参加者、それがなんと二人もいるらしい。
分かり易い直接的な暴力の龍騎以上の、最早災害と言って良いレベル。
ピトさんと呼ぶ、(ゲームで)殺し合った仲の彼女でも流石に引くんじゃなかろうか。
タトゥーが特徴の凶悪な笑みをつい思い浮かべる。

また件の怪物達程では無いが、甚爾が戦った参加者にも警戒が必要。
聞くに甚爾も相当な手練れだそうで、そんな彼でも少々梃子摺る異形に襲われたとのこと。
乱入して来た別の危険人物との戦闘がどうなったかは不明。
どちらも殺し合いに積極的、但し異形の方は無差別に殺して回っているのではない。
トラウマを刻み付けられた今のレンなら、興味も抱かれないだろう。
残念ながら乱入者の方は武人肌とは言い難く、会ってしまえば問答無用で殺しに来る可能性が高い。


69 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:10:25 B5VekMtk0
危険人物の情報についてはレン達から、龍騎以外にもう一人提供出来る。
と言っても、直接姿を見たのは蛮野の方。
彼の元々の所持者ともう一人の参加者を殺した少女、松阪さとうだ。

「その者は必死の抵抗に出た末に殺めたんじゃないのか?故人に言うのは何だが、殺された二人と言うのは……」
『姫和くんの言いたいことは分かる。だが私の見た限り、彼女は余りにも殺しへの躊躇が薄かった』

強姦の被害に遭い抵抗した結果、相手の命を奪ってしまった。
有り得なくはない可能性も蛮野の証言で否定される。
二人の男を殺す手際の良さや、躊躇が全く見られなかったことからも恐らく殺人行為が初めてではない。
幾ら相手が唾棄すべき性根の持ち主だとて、そこまで簡単に殺しを実行するのは普通とは言い難い。

「最悪の場合としてじゃなく、普段から殺しを手段の一つに数えてやがるって訳かよ……」

腕組し険しい表情で呟く龍園。
必要とあらば暴力も辞さない姿勢でCクラスを纏め上げた彼でも、流石に殺しは簡単に超えるべきではない一線と見ている。
本当に、他にどうしようもなくなった時の最終手段。
その禁忌をあっさりと破るさとうには、黒い男と女やグラファイトとは別種の警戒心を抱く。
超常的な存在とは違う、ブレーキの壊れた人間という身近な脅威だ。
一応、蛮野の話ではあくまで強姦されそうになったから殺したのであり、最初は言葉であしらおうとしていた。
なので殺し合いに乗っていると決め付けられないが、警戒はしておくべきだろう。

互いに友好的・殺し合いには乗っていないだろう者と、警戒する者の情報を共有。
一通りの話が終わり、これからどうするかに内容が移る。
龍園達は当初の予定通りテレビ局周辺に向かう、レンがこっちに協力するつもりなら同行しても構わない。


70 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:12:19 B5VekMtk0
「私、は…………ごめんなさい、まだ……」
「だろうな。無理強いはしねぇよ」

同行を断られたのに驚きは無い。
もう少し休む時間が必要なだけではなく、レンは仮面ライダーに対し強いトラウマを植え付けられたからだ。
無論、ガッチャードのような善人もいると分からない訳ではない。
しかし龍騎から受けた暴行と殺され掛かった際の恐怖は、非常に大きい。
加えて松阪さとうも龍騎と同じような小箱を持ち、テレビ局に陣取るルルーシュと綾小路は言わずもがな。
レンの中で、仮面ライダーに対する印象が悪い方へ寄るのも無理はなかった。
そして彼女が残る以上、当然蛮野の龍園達には付いて行かない。
市販のバイクをハイスペックに改造する技術力は惜しいが、強引に持ち去る気も無い。
そのような真似に出れば姫和が黙っていないだろう。

「あ、あと、その…厚かましいお願いだけど……」

おずおずと気まずそうに口を開き、レンが頼んだのは銃があったら譲ってもらえないかというもの。
支給品のP90は龍騎との戦闘で落としてしまい、今は手元に無い。
まず間違いなく龍騎に拾われており、取り返しに行くにはリスクが高い。
GGOなら永久ログアウト確定のチートアイテムも、肝心の銃が無ければ只の装飾品。
幾ら何でも図々しいとは自覚しているが、心情的にも武器が無いのは大きく不安だった。

「…これで良いか?」

幸い、特に機嫌を悪くはせず姫和から武器の譲渡があった。
レンが最も得意とする短機関銃は、刀使である姫和にとっては無用の代物。
刀剣類ならまだしも銃を使った経験など無く、NPC相手にいらぬ苦戦を強いられたのは記憶に新しい。
調伏という手間こそ掛かるが用途多様な術式があれば、銃は無くても困らない。

「ありがとうございます…!あの、貰ってばっかりなのも悪いので…」

お返しとして治療キットを差し出す。
御刀が無く写シを使えない現状、ダメージの肩代わりは不可能。
傷を癒せる道具の存在は有難く、礼を言って受け取る。

『暫く休んだら私達も移動するよ。君達と同じ方向へ向かうかはまだ未定だがね』
「そうかい。ま、精々死なねぇようにしとけ」

やる事が全て済んだ以上、龍園達が留まり続ける理由は無い。
一人と一台を残し、皇帝の城と化したテレビ局方面へと移動を再開した。


71 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:13:51 B5VekMtk0
◆◆◆


本当に良かったのだろうか。
民家を後にしてからも、姫和は心にどこかしこりが残る思いだった。

「本人が無理だつってんだ、お前が気に病んだってどうしようもねえだろ」
「……まだ何も言ってないが」
「顔見りゃ俺じゃ無くても分かる」

レンをあのまま残して大丈夫なのかと思うも、龍園が言ったように彼女自身がテレビ局方面には行けないと告げた。
仮面ライダーに大きなトラウマを持っている彼女へ無理強いはさせられない。
かといって、レンが落ち着くまで付き添う程の時間的なの余裕も無い。
エリアを崩壊させるレベルの参加者が二人確認されており、他にも同程度の力を持った者がいないとも限らない。
人員、情報、武器を掻き集めるのに悠長に事を構えていれば、敵は欠伸交じりに全てを壊す。
焦り過ぎは禁物だとて、のんびりしてられるような状況でも無かった。
幸いレンの傍には蛮野がおり、心身のサポートを任せられる。
先の情報交換の際にも度々気遣っており、レンからも信頼を得ているのが見て取れた。

(まあ、蛮野の奴も本当に信用できるかは微妙だけどな)

内心で独り言ちる龍園はレンと違い、どうにも蛮野を信用する気が起きない。
別に民家での会話で不審な点があったとかじゃあない。
支給品とはいえ言動を聞けば、落ち着いた雰囲気の善寄りの者と印象を抱くだろう。
出会って短時間しか経っていない相手を気に掛けるお人好し。
一ノ瀬や、或いはDクラスの平田を知っているだけにそういう輩が現れたとて驚きは無し。
自分とは噛み合わない人間性なれど、不快を抱く程でも無かった。

だが学生生活で見たお優しい面々と比べ、蛮野の言動や態度は妙に鼻につく。
具体的な根拠がある訳ではない。
しかし裏切りや駆け引き、騙し合いが日常茶飯事の高育に在学しているのもあってか、龍園は他者の感情の変化には敏感だ。
人間では無いデータ上の存在なのを考慮しても、善意の類を感じ取れなかった。
だからといってそれを追求するつもりはない。
自分でも根拠が弱いとは分かっているし、仮に蛮野が悪党だったとしてもあの場でそれを明かすメリットは薄い。

(蛮野がロクでもねぇ本性だろうと、損得で動ける奴ならまだ利用する手はある。だがそうなりゃ、レンがネックになるな)

恐怖で屈服させ支配するのはCクラスでの常套手段であるも、度が過ぎれば駒どころか単なるお荷物。
レンは情報交換程度は問題無いが、この先共に手を組む相手としては及第点も与えられなかった。
今の所龍園は殺し合いに乗っていない、しかし誰彼構わず手を差し伸べるヒーローになった覚えもない。
自力で恐怖に打ち勝つのであれば良し、そうなれないなら面倒を見てやる義理も無い。
最低限の自分の面倒も見れない者にかまけていられる程、殺し合いは温い環境でないのだから。
真意不明でもレンのサポートを買って出る蛮野を邪魔し、こっちがいらぬ手間を掛けられるのはお断りだ。


72 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:14:30 B5VekMtk0
「にしても茅場ねぇ…まさかあんなお嬢ちゃんが運営連中の情報を持ってるとは思わなかったな」
「ソードアート・オンライン、だったか?レンが言ったような事件を起こしたなら、私達がいる島もゲームの中なのか…?」
「どうだかな。ゲームの中に放り込まなくても、やりたい放題出来るだろうよ」

刀使、呪術師、仮面ライダー、バグスターウイルス、個性。
コミックブックから飛び出たようなものが腐る程あるなら、わざわざVRゲーム内での殺し合いに拘る必要も無い。
あくまでSAO事件は一つのエッセンスであり、参加者がいるのは紛れもない現実と考えても不思議は無かった。
それにレンが知っていた茅場の情報は、あくまでニュース番組など世間一般に広まったものだけ。
より深く突っ込んだ内容までは得られなかった。

「とにかくレンの方は蛮野に任せるとして、だ。運が良けりゃテレビ局に行く途中で、アイツを襲った男か松阪さとうが見付かるかもしれねぇ」

どちらも危険な参加者で、仮面ライダーの変身道具を持っている。
さとうの方は交渉が可能かもしれないが、レンを襲った男は不可能に等しい。
であればそれはそれで好都合、倒して変身に使った小箱を奪う。
甚爾への報酬の上乗せや、若しくは龍園か姫和の戦力強化など用途は多々ある。
何より、小箱を使って変身する仮面ライダーは鏡の中を移動する力を持つとのこと。
ならその力を使えば、テレビ局の防壁を無視し直接ルルーシュや綾小路の元へ辿り着くのも難しくないんじゃあないか。
ルルーシュ達が小箱を使うライダーの存在を、把握していないという前提付きだが。

「テメェの方もそれで良いか?」
「俺はクライアントの指示に従うだけだ。報酬上乗せの算段が付いたってんなら、文句言う筋合いもないわな」

小箱を手にれるとなれば十中八九戦闘は避けられない。
少なからず緊張感のある龍園と姫和と違い、甚爾の反応は実に軽い。
今に始まったことでも無いので、一々指摘する気も起きないが。

寄り道はしたが得られた情報は有益。
二人のライダーを標的に付け加え、三人は改めてテレビ局周辺へと進んで行った。


73 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:16:09 B5VekMtk0
【エリアG-3/租界/9月2日午前8時】

【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:疲労(小)
服装:平城学園の制服
装備:十種影法術@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:治療キット@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る。
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため。
02:可奈美や皆のことが心配。
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
04:テレビ局、その周辺へ向かう。
05:レンのことが気掛かり。残して良かったのだろうか。
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
※十種影法術は現在玉犬、鵺が調伏済みです。

【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(大)、綾小路への怒り
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
02:テレビ局周辺で参加者を探していく。敵でも味方でも構わねえ。
03:綾小路の野郎、何をやってやがる。
04:他の同じ学園の連中は……まあ、合流する必要もねえか。
05:グラファイトの言う友を探してみる。
06:蛇柄の服の男(浅倉)か松阪さとうを探し、仮面ライダーに変身する小箱を手に入れる。
07:蛮野はイマイチ信用出来ないが、レンのお守をする気も無い。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
※個性『スティール』により肉体を鉄のコーティングが可能になりました。

【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:健康
服装:仕事用の私服
装備:片太刀バサミ@キルラキル
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、100万が入ったトランクケース@現実
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働くが、まあ上乗せは欲しいところ。
02:加茂憲倫、と来たか。
03:まさかこんなところで禪院家の術式が見れるとはな。
04:あんな化け物まで参加させたのか?イカレてんな。
参戦時期:死亡後
備考


74 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:16:51 B5VekMtk0
◆◆◆


三人が去り、一人と一台が残された車庫内。
粗末なパイプ椅子に腰を下ろし、どっとレンは息を吐き出す。
殺し合いに乗っていない人達は自分以外にもちゃんといた。
もし彼らと先に会えていればこんなに恐怖しなくても良かったのかと、有りもしない事を思い浮かべる。
戦闘、逃走、情報交換と続き、ようやっと休める時間が来た。
気が抜けたからか、眠気にも襲われる。

『少し眠るといい。その間見張りは任せてくれ、もし危険な人物がやって来た時には、すぐに逃げられるよう準備もしておこう』
「あ……すみません、お願いします……」

蛮野にばかり負担を強いて申し訳ないとは思うも、心は休息を求めている。
暫し迷ったが甘えてさせてもらう。

『…済まないね。本当はもっと気の利いたことを言ったり、或いは君を守れる程の力があれば良かったんだが……。我が身の無力さが恨めしいよ』
「そんな…蛮野さんは私をずっと助けてくれたじゃないですか。自分のことを責めないでください」

声色に悔しさを滲ませる蛮野を責める気などレンにはない。
龍騎から助けてくれて、度々心身を気遣い、今だってロクに動けない自分の傍にいてくれる。
正規の参加者でなくとも、蛮野の存在は僅か数時間でレンの支えになっていた。

「蛮野さんがいなかったら、私は本当に……っ」
『無理に思い出さない方が良い。とにかく今は休むんだ』

嬲られた際の光景がフラッシュバックし震え上がるレンを宥め、睡眠を取るよう促す。
弱々しく頷き、ゆっくりと目を閉じた。
これまでの全部が悪い夢で、起きたら自室のベッドにいた。
なんて都合の良い展開が起きないとは分かっている。

(私、この先どうなるんだろ……)

なけなしの闘争心をへし折られ、拭い切れない恐怖を刻み込まれ。
本当に生きて帰ることが出来るのだろうか。
SAOから生還が叶わなかったプレイヤーのように、自分もアバターのレンのまま命を落とすのではないか。

(帰りたいよ……)

ピトさん、エムさん、美優、家族、SHINCのメンバー。
自身の日常を彩る大切な人達。
いるのが当たり前のように感じていた彼女達が、今は酷く遠くに感じる。
永遠に失うかもしれない日々を想い、一筋の涙が零れた。


75 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:17:46 B5VekMtk0



『眠ったか』

レンが夢の世界へ旅立つのを見届け、誰に向けるでもなく呟いた。
生身の肉体を持たない、データとしての意識だけの自分とは違う。
傷を負えば血が流れるし、治療をしなくては悪化し最悪死に至る。
体力を失ったままでは動くのもままならない、生きた人間の体。
合間合間で休まねば壊れてしまう。
だから少しの間だけでも、睡眠により心身の疲労を取り除いて欲しいものだ。
その為なら寝ている間の護衛くらい引き受けよう。

何故なら彼女には――





『まだまだ働いてもらわねば困るのだからなぁ』





画面越しに放たれた言葉は、これまでレンを気遣っていたのとは全く異なる悪意に満ちた声色。
映し出された顔に変化は無い。
しかし仮に人間であれば、見るに堪えない醜悪な笑みを浮かべていただろう。

そもそもレンは蛮野天十郎という存在への認識を根本から誤っている。
渋井丸拓男に支給されたこと、松阪さとうの凶行など語った内容に嘘はない。
タブレットの所有者に危害を加えられない制約も、本当のこと。
但し、龍騎に立ち向かうレンの勇姿に心を打たれたのは真っ赤な嘘。
では何故蛮野はレンを助け、彼女を新たな所有者にしたのか。

(同じ馬鹿でもあのシブタクとか抜かす知性の欠片も無い猿と違って、こいつはまだ使い道のある馬鹿だ)

半端に正義感があり、尚且つ精神の不安定な者。
出来損ないの息子と同じ、利用するのに打って付けだ。
助けてやって気遣う素振りを見せれば案の定、笑ってしまう程に容易く信頼を勝ち取れた。
特状課の連中もこれくらい単純だったらと思うも、とうに過ぎ去った過去の話。
終わったものよりこれからの事を考えねばなるまい。


76 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:18:46 B5VekMtk0
『にしても羂索め…私を復活させた功績は認めてやっても良いが、いらぬ枷を付けるとは万死に値するぞ…!』

消滅した自分を再び現世に連れ戻した、それは良い。
だが参加者どころか支給品、しかもゴルドドライブのドライバーからロイミュード共に囚われていた時のタブレットへ逆戻り。
不親切すぎる境遇に苛立ちを募らせるも、聞き入れる相手でないとは流石に分かる。
参加者でない以上、優勝して願いを叶え完全復活という手段は使えない。
故に他の参加者を利用し、どうにか生き延びるしかなかった。
よりにもよって性欲だけで構成された猿に支給された時は、存在しない筈の頭痛を覚えた。
自身の代わりに片付けたさとうは、蛮野目線では警戒どころかむしろファインプレー。
お陰でレンという、より扱いやすい道具に出会えたのだから。

(しかし龍園達に同行出来なかったのは、少し惜しかったか……)

レンはルルーシュへ近付くのを恐れていたが、蛮野としては接触は悪い手では無いと考えている。
ドライブシステムとは違う仮面ライダーのベルトを持ち、テレビ局を要塞化出来るだろう手段を有し、尚且つ洗脳能力も扱う。
危険度は高い反面、利用出来た際に得られる旨みも大きい。
下手にテレビ局周辺への移動を強行し、レンからの信頼をゼロにする訳にも行かなかったので断念したが。
尤も、ルルーシュの元へ行く機会が完全に失われたのではない。

(まぁ、まずはこいつからの信頼を確たるものにしておくか。プロトゼロと会った時、余計な抵抗を封じられるかもしれんからな)

参加者の中で蛮野の知る者は一体だけ。
プロトゼロことチェイス、自分を巻き込み自爆を図ったロイミュード。
直接トドメを刺した剛程ではないが、敗北の原因を作った忌々しい男だ。
もし自分の存在を知ればいらぬ話を他の参加者に広めるのだろうが、そうなる前にこっちはレンからの信頼をより深めておく。
剛を騙していた時と同じだ。
あの時もクリムだけが異様な怒りを見せたが、父を信じたい剛は蛮野の肩を持っていた。
守るべき人間であるレンが蛮野の味方に付けば、チェイスも強硬手段は取れまい。

(何にしても、ここには未知の研究材料が溢れている、私への非礼は許さんが、この状況も何か何まで悪い訳ではない)

自身の知らない仮面ライダーを始め、研究者としての欲を刺激する存在が多々ある。
中には、超進化態のロイミュードを超える力を持つ参加者だっているのだから驚きだ。
そういった道具の数々は自分が存分に使ってやろうではないか。


77 : YOU GOTTA RUN ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:20:05 B5VekMtk0
『その為にも、最後まで役に立ってくれることを期待するよ。レンくん?』

ロイミュードの王からは、ここまで最低の人間を知らないと吐き捨てられ。
果てに実の息子からも、人ですら無いと言わしめる。
一度滅んで尚も狂気と悪意は決して消えない。
世界を支配下に置く野望を叶えるべく、黄金の体を失った悪魔は策謀を張り巡らせていた。


【レン@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
状態:疲労(中)、ダメージ(微小)、精神疲労(大)、戦いへの恐怖心(極大)、睡眠中
服装:デザートピンクの迷彩服
装備:無限バンダナ@メタルギアソリッドシリーズ、Vz.83@メタルギアソリッドシリーズ、ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ+渋井丸拓男のバイク@@DEATH NOTE
令呪:残り三画
道具:治療キット×2@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、予備マガジン×30、ホットライン
思考
基本:生き残ることを優先
00:……
01:殺し合いに乗っていない参加者と合流したい
02:蛮野さんと共に行動する
03:松坂さとうと出会ったら警戒する
04:怖い……怖いよ……
05:私本当に生きて帰れるのかな……
参戦時期:第一回スクワットジャム終了以降
備考
※GGOのシステム(バレット・サークル、バレット・ライン)は制限なく使用できます。
※仮面ライダーとの戦いで強いトラウマを植え付けられました。
※松坂さとうを危険人物として認識しました。また仮面ライダーへの変身能力を持っている可能性があると判断しています。
※ブレンのタブレットの所有者になりました。ブレンのタブレットはレンに危害を加えることはありません。

【Vz.83@メタルギアソリッドシリーズ】
38口径のチェコ製小型サブマシンガン。レーザーサイト付き。
内蔵されたレートリデューサーにより連射速度は落ちるが反動が軽減され、また軽量な為携帯性にも優れる。
メタルギアソリッド4に登場。
リキッドの私兵部隊とのバイクチェイスの際、ビッグ・ママことEVAから渡された物。


78 : ◆ytUSxp038U :2024/12/01(日) 23:20:33 B5VekMtk0
投下終了です


79 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/02(月) 01:02:07 .S61lErM0
皆様投下お疲れ様です
自己リレーを含みますがキラ・ヤマト(SEED)、柊篝、冥黒王ギギスト、聖園ミカ、枢木スザク、大道克己、魔王グリオンで予約し事前に延長しておきます


80 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/02(月) 21:10:21 1FxrmB6E0
皆様、お疲れ様です。
此方も自己リレーを含みますが、総司令官、浅垣灯悟、満艦飾マコで予約をします。

三人+支給品・NPCモンスター(鮮血、ロボ子、シャチパンダヤミー)と登場人物が多く不安な為、此方も事前に予約延長を行います。


81 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 00:51:28 jLiNdS6Y0
アスラン・ザラ(本物)、切島鋭児郎、やみのせんし 予約します


82 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/03(火) 01:35:00 z/f7oKuQ0
皆さん投下お疲れ様です。

自分が執筆した『Stellar Stream/PHOENIX』『使いこなすCard&Energy!!』『ザ!!因果応報だぜ』の文章の細かい修正と追記、行間の整理を行いました。


また、支給品のアバタロウギアの内訳について『ドンモモタロウ、キョウリュウジャー、マジレンジャー、ゴーカイジャー、タイムレンジャー、他戦隊のアバタロウギア』を『ドンモモタロウ、キョウリュウジャー、マジレンジャー、他戦隊のアバタロウギア×3』に変更してよろしいでしょうか?確認を忘れて変更していましたので、改めて確認する事にしました。

そしてステインで予約します。延長も最初からしておきます。


83 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:33:03 jLiNdS6Y0
◆dxXqzZbxPYさん、おはようございます。
企画主です。
予約の件は了解しました。
ただ変更に関しましては流石に今回っきりにしてほしいです。
これ以上変更があるとリレーをためらう人も出てきそうなので、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いします


84 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:35:17 jLiNdS6Y0
投下します


85 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:36:15 jLiNdS6Y0
こちらアスラン県名物、正論のタコ殴りでございます。
お好きなアスランMADを添えてお召し上がりください。

「へえ!じゃあズゴックは生まれながらの改造人間なんすね」

「MSを解除している間はアスランで頼む。
まあ、そんな言い方も出来なくはないな」

アッガイを退けたズゴックことアスランと烈怒頼雄斗こと切島鋭児郎は暫く飛んだ後、病院近くの民家に寄っていた。
もうすぐホットラインが解禁される時間だったのと、ここを逃すといつ休めるかが分からないので食事やトイレなどを済ませておきたかったからだ。
そんな訳で冷蔵庫に残っていた物で適当に食事を作って完食し、交代でトイレも済ませて情報交換まで進んだところで互いの常識が食い違うことに気付いた。

「遺伝子的コーディネイトもなしにそんなことが起こりえるのか……」

「俺としては“個性”もなしに宇宙に移住とか巨大ロボットで戦争とかの方が信じられないっすね」

そもそも肉体を転々と出来る脳味噌怪人が主催の殺し合いの時点でなんでも有りか、と半ば考えることを辞めたアスランはひとまず一番重要な事柄に関する話に移る。

「ラウ・ル・クルーゼは、かつてキラが討ったはずの俺の元上司。
失われた核の技術を解禁させる術を地球連合に流し、あと一歩で人類が絶滅するまで止まらない戦争に陥るきっかけを作った男だ。
それも、もう既に死んでいるはずの人間でもある」

「なんか途方もなさ過ぎてイマイチ想像つかないっすけど……復活云々は一旦置いといて、今回の一件、スケールダウンしてる気がしないっすか?」

確かにそれはアスランも思ったことだ。
このパワードスーツ然り技術として確立するまでに相当の苦労が無ければおかしい代物を用意しておいてやらせることが個人レベルの殺し合いというのは少ししょぼく感じる。
オマケにキラから聞いた話と今まで上司部下として接して来た経験も併せて考えると、ニヒルな皮肉屋ではあったが、愉快犯的なことをやる人間とは思えない。

「そういう意味では、限りなく公平な『ゲーム』にしようとしているのは、らしいと言えばらしいか」

あの闘いで連合には核が、ザフトにはジェネシスがあった。
最終的なゴールは兎も角、人が抗えるだけの余地が残っていた上に、自らキラ、そしてムウ・ラ・フラガと決着をつけるべく出撃している。
なんだかんだ人類を憎んでいたかもしれないが、不良隊長ではあっても悪い上司ではなかったし、公平でもあった。
それが今のアスランのラウ・ル・クルーゼ評である。
最も

『掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』

こんなふざけた放送に怒りを感じない程アスランは人間が出来ていないが。

「その、アスラン?大丈夫っすか?」

「大丈夫だライオット。
ただ少しだけ、少しだけ冷静になる時間が必要なだけだ」


86 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:36:27 jLiNdS6Y0
そう言ってアスランは電源を消そうとテレビに近づく。

『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
 亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
 神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

次の瞬間、画面に現れた悪逆皇帝の宣言にその手を止めることになる。

「……」

アスランの表情は果たしてこの先このバトルロワイヤルに居る間にその眉間のしわがほぐれる瞬間は訪れることはなにではないか?と思ってしまう程見事な不機嫌顔に変わってしまった。

「名簿を、確認しよう。
俺と君の知り合い、そしてルルーシュとアヤノコウジの知り合いを確認する必要がある」

「……うっす」

こんな言い方は良くないが、とても逆らえる気がしないし今すぐ飛び出していかないだけの理性が有ったので大人しく従うことにした。

「俺の場合、信用できるのは緑谷出久。
あと場合によっちゃ説得できそうなのがステイン、多分問答無用で戦うことになりそうなのがダークマイト、ってとこっすね。
アスランはどうっすか?」

「イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、ラクス・クラインは信用していいと思う。
だがキラ・ヤマトとニコル・アマルフィは、少し判断しかねる」

「アスランもっすけど、なんか同じ名前や似たようなコードネームで並んでたりしてましたよね」

「このクジョウみたいな明確に姉妹だろう並びは兎も角、キラはなぜか肩書がある方とない方と分かれているし、ニコルはラウ・ル・クルーゼ同様死んだはずの人間だ」

「放送に出て来たクルーゼみたいに復活してるってことすか?」

「最悪の場合、梔子ユメのように別の何かに乗っ取られているということもある」

「! 確かにそれは最悪っすね……味方だと思って近づいたら敵(ヴィラン)だった!
なんてこともあるかもですし」

「もし俺以外にも死んだ知り合いの名前があると言う者に出会ったら注意が要るかもな。
ルルーシュの知り合いは、このロロ・ヴィ・ブリタニアまでか?」

「多分そうでしょうね。
綾小路の制服は……最初に助けらんなかった須藤って奴のと同じだったから、堀北から益子薫までっすかね?」

「俺やお前の関係者の参加人数を考えると、多すぎる気がするがタクヤ・ヤガミ……いや、その後がアンクまで全員女性名で有ること考えるとカナミ・エトウあたりで一区切り入るかもしれんな」

「なるほど。
じゃあルルーシュや綾小路の知り合いにあったら、なるべく穏便に情報交換を持ちかける、って感じっすかね」

幸いこちらにはラウ・ル・クルーゼの情報というある程度以上の理性を期待できるならテーブルにつかざるを得なくする切り札がある。
余程こちらの態度に問題が無ければいきなりドンパチにはならんだろう。

「それで、君に知り合いについてもう少し詳しく聞かせてもらっていいか?」

「うっす!緑谷は俺と同じヒーロー科のクラスメイトで、すっげぇ頼りになる奴っす!
間違いなく羂索やクルーゼたちの言いなりにはならない筈っすよ。
ステインは……んー、羂索に従ったりはしないっすけど、アイツの言う贋物のヒーローやヴィラン相手に殺しをためらわないタイプっすね」

「最後のダークマイトというのは?」

「自分こそがオールマイトの後継者とか言って日本に攻めて来た奴で、一言で言っちまうとはた迷惑な勘違い野郎(ヴィラン)っすね。
説得しようにも多分自分が都合の良い様にしか他人の話聞かないと思うっす。
挙句普通に緑谷と後二人同じぐらい強い奴が束になって漸く勝てた相手なんで、いざ真正面から殴り合ったら俺らだけじゃきついっすね」

「始末に負えんな」

オマケに羂索たちが繰り返しこれはゲームと言ってる時点でそいつと真正面から殴り合える誰かが最低一人はいると確定しているようなものだ。
せめてその誰かがダークマイトよりは会話の出来る者だといいのだが、と思わずにはいられない。

「俺の知り合いのイザークとディアッカはアカデミーの頃からの同期で戦友だ。
ラクスも直接戦う力こそ持たないが、平和を目指す意志は硬い。
キラやニコルも俺の知ってる二人ならば信用できるが、?付の俺共々今は少し、微妙なところだ。
合流しようにも、俺の知る限りキラたちの向いそうな場所は、あれだけ大々的にパフォーマンスしたルルーシュの居るテレビ局ぐらいだ。
ライオットはどうだ?」

「本物じゃないとは思いますけど、雄英の校舎と蛇腔病院っすね。
どっちも俺にも緑谷にも縁のある建物っす」

「良し、ならば俺たちの現在地からも近いし病院、高校に向かい最終的にテレビ局を偵察するルートが良いか?」

「異存ないっす!」

「よし、では行こう」

民家を後にした二人はアッガイとの戦闘の後に離脱したのと同じようにズゴックの背中に切島を載せる形で出発した。


87 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:36:57 jLiNdS6Y0
「見つけた」

D-6から怪我人が集まるなら獲物には事欠かないだろうと言う考えで病院を拠点に使おうと北上していたやみのせんしは丁度こちらが追いかける形になっている赤い空飛ぶ鎧(?)を見つけた。
小手調べと呪文を唱えて火球を放つ。
クルーゼ、そしてルルーシュの放送から約数分。
歩き続けてようやくであったNPCモンスター以外の獲物だ。
今まで見たどんな魔物よりも珍妙な見た目だが、羂索がいうにはこの世界にはもう一人の自分以外にも異なる世界の者が参加してると言う。
ならあんな風に空飛ぶ変な鎧を着て戦う世界もあるかもしれない。
そう考えて腕試しとばかりに攻撃を仕掛けたのだ。

「ズゴック!」

『分かっている!上手く降りろよ!』

鎧の背中から誰かが飛び出る。
軽装で武器は持っておらず、恐らく武闘家だろう少年だ。
着地寸前を狙って魔法を放とうとするが、紅い鎧がそれを許さなかった。
灼熱させた両腕で合計六本の爪を繰り出し、近接戦を仕掛けてくる。
やみのせんしは手にしたはかいの剣で弾き、いなし、フェイントも織り交ぜながら反撃する。

『こいつ、出来る!』

「お前もなかなかやるじゃないか!」

そう言ってバックステップを踏んでギラを唱える。
赤い鎧、ズゴックが手甲で弾くと再び接近してインファイトを仕掛けてくる。

(気の抜ける見た目に反して軽快な割に硬いな。
地味に削るしかないか?)

等と考えていると後方から誰かが駆けてくる。

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

“個性”で硬化された拳が振り下ろされる。
はかいの剣で受けるが、振動が武器を通じて全身に伝わり思わず大袈裟なまでの横振りで斬り払って距離を取った。

「剛健ヒーロー!烈怒頼雄斗、参上!
2対1だ、観念しやがれ!」

「冗談、お楽しみはここからじゃないか!」

『気を付けろライオット!コイツは強いぞ!』

「うっす!」

同志討ちを避けるためにズゴックは射撃兵装を使わないので、必然的に接近パワー型の2人に対して近、中距離オールマイティなやみのせんしという構図になる。
筋力勝負では赤い二人が有利だが立ち回り次第ではやみのせんしも決して不利にはならない。

「マジに強いっすね!」

『気を付けろ。
あと最低一つか二つは支給品も温存しているはずだ』

「果たして本当にそうかな?
案外、三つ四つと持っているかもしれないぞ?」

「それってお前まさか……」

「ああ、殺した。
あの名前を呼ぶのも忌々しいお姫様は結構あっさり死んだよ!」

「マジかよ……」

「お前もそうしたいって思ったことはないのか勇者(ヒーロー)?」

「は、はぁ!?」

「耳をすませば聞こえてくるだろう?
賞賛に交じって助けて助けてと無責任な機体と責任を上乗せしてくる声が。
何も、手伝いすらしようとしない身勝手で無責任な歓声が!
俺はどうしようもなくそれが馬鹿らしくなったから自由にやった!それだけだよ!」

はかいの剣を上段に構えて突っ込むやみのせんし。
背中の羽を起動して上に避けたズゴックは一旦無視して烈怒頼雄斗に肉薄する。

「うっ!」

「お前も、りゅうおうの誘いに乗った俺のように少しは自由にやってみろよ。
開けた視界ってのは本当に新鮮で、王も姫も国もどうでもよくなるぜ!」

そう言って烈怒頼雄斗の体制を崩し、前蹴りを叩きこんだやみのせんしに

『黙って聞いていれば酷い話だな!』

派手な飛び蹴りが叩きこまれる。


88 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:37:20 jLiNdS6Y0
「ズゴック!」

『ライオットのことを良く知らないくせによくもまあ、そんな知ったふうな口が利けるモノだ。
今まで言われるままに過ごして、勇者と呼ばれてからも国王陛下や王女さまに請われるままに戦って、いただいた勲章に舞い上がって自分なら何でも出来てどんな正解も選べるとでも勘違いしたのか?』

「そんなことはもう過去の話だ!
俺は俺の道を俺自身の意志で選んで自由になった!
自分で選んで自分の道を決めた!」

そう言って飛び掛かって来るやみのせんしの切っ先を軽快に避けながらズゴックは言葉の刃を突き立てる。

『自由意思?嗤わせるな。
興味本位で犯罪者の口車に乗っただけだろう?
今のお前は自由を得た一個人なんかじゃあない。
遅めの反抗期に身に余る力がのっかっただけの、ライオットの言葉を借りるなら『はた迷惑な勘違い野郎(ヴィラン)』以外の何物でもない!』

嘲笑に近い笑みしか浮かべていなかったやみせんしの表情が初めて崩れる。
ギリッ!と歯を食いしばりズゴックに剣と殺意を向ける。

「貴様こそっ!そんな偉そうなことを言う資格があるのか!?」

『あるとも!
俺はかつて父に言われるままに戦った事も!
穏やか平和主義者のふりをした魔王の口車に乗ったこともある!』

自分に消せない傷を刻み、今なお世界に続く争いの芽となった父、パトリック・ザラ。
そしてそんな父に対する複雑な感情を利用し自分を都合の良い戦士に仕立て上げようとしたギルバード・デュランダル。
アスランにとって国王、そしてりゅうおうと呼べる二人はある意味で今なおアスランの中で生きている。
だからこそ、もう道を違えることはない。

『本当に可哀そうだよお前は!
俺と違って、首根っこを掴んで引っ張り上げてくれる仲間(とも)も!
誤った道に進んでもなお信じてくれる女性(ひと)も居ないんだから!
いや、居たかもしれないが、お前は見つけられなかった!
あるいは流れのままに自分から居なかったことにした!
誰かにとって都合の良い救世主(セイヴァー)からりゅうおうとやらにとって都合の良い機械(マシーン)になっただけの駄々っ子だ!
大方りゅうおうに必要とされたお前は!
奴にとっては勇者(ジャスティス)を屈服させたという格好の箔付け(レジェンド)に必要だっただけだろう!!!』

「いい加減黙れ!」

剣筋がぶれた。
怒りのあまり力を籠め過ぎたのだ。
その隙を見逃す烈怒頼雄斗ではない。

「烈怒交吽咤(レッドカウンター)!」

硬化した皮膚に刃を止められ、カウンターで右アッパーが綺麗に顎に決まる。
ぐらんぐらんと揺れる頭でどうにか着地するも、視点が定まらない。

「烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!」

続いて強烈な左フックが決まる。
冒険中何度も嗅いだ土と草の臭いがする。

「観念しろ!今ならまだこれ以上手荒なこともしねぇ!
一国の姫様殺しちまったのは、なんつうか、お前の世界のこととか分かんなねえからどれくらい重い罪になるのか知らないけど、どうにか反省できる機会が与えられるように俺もズゴックも説得する!
だから……」

「ライオット!」

ズゴックが烈怒頼雄斗を押しのけるように前に出る。
同時にそのライジングフリーダムガンダムをも上回る頑強な装甲に火球が爆ぜた。

「すんませんズゴック、助かったっす!」

『無事で何よりだ。
だが、逃げられてしまったようだな』

見るとやみのせんしの姿は消えており、代わりに砕けた宝石のような物が残っている。
2人が知る由もないが、茅場晶彦の世界で転移結晶と呼ばれるゲーム内アイテムである。
ズゴックのセンサー類でも近くに脅威となる存在を感知できなかったので、アスランはパワードスーツを解除した。

「……アイツ、大丈夫じゃあないっすよね」

「だろうな。我ながら過去の自分を棚に上げて言うだけ言ってしまったよ」

そう言ってアスランは盛大に溜息をついた。

「いやいや!
そう言うことって、ちゃんと悩んでちゃんと迷って答え出したからこそ言えることじゃあないっすか!
まあ、確かに大人しくさせる為に結構なこと言っちゃってますけど、きっと必要なことだったっすよ」

「君は良い奴だな」

その気遣いが今は少し痛いと思わずにはいられないアスランであった。


89 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:37:39 jLiNdS6Y0
【エリアC-6/市街地/9月2日午前6時30分】

【切島鋭児朗@僕のヒーローアカデミア】
状態:ズゴックの背中に乗って飛行中
服装:烈怒頼雄斗のヒーローコスチューム@僕のヒーローアカデミア
装備:同上
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
思考
基本:羂索をとっちめてこの悪趣味な殺し合いを終わらせる。
01:要救助者の保護しつつ緑谷やアスランの仲間たちとの合流を急ぐ。
02:殺し合いにのっちまった子たちやヴィランは止める。
  あいつ(やみのせんし)、大丈夫かな? 
03:アスランの世界、“個性”なしで宇宙まで行って戦争ってヤバいな。
04:緑谷が居るのは心強いけど、ステインにダークマイト……一筋縄じゃいかないな。こりゃ。
05:病院、雄英とよって最後にテレビ局の様子を見に行く。
参戦時期:少なくともユアネクスト終了後
備考
※アスランと情報交換を行いコズミック・イラに関する知識を得ました。
※名簿の並びからルルーシュ、綾小路の関係者を予測しました。


【アスラン・ザラ@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:正常、不機嫌(極大)
服装:私服
装備:ズゴックの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームを止める。
01:ラクスたちは兎も角、何故俺やキラは名前が二つも?
02:ラウ・ル・クルーゼ……お前は復活していたがニコルは?
03:超人社会か、想像つかないな
04:あの男(やみのせんし)には、少し言い過ぎたな
05:病院、雄英とよって最後にテレビ局の様子を見に行く。
参戦時期:後の書き手様にお任せします
備考
※切島と情報交換を行い、ヒロアカ世界に関する知識を得ました。
※名簿の並びからルルーシュ、綾小路の関係者を予測しました。


90 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:38:05 jLiNdS6Y0
「はぁ……はぁ……はぁ……」

決して勝てない戦いではなかった。
二対一でも、十二分に拮抗で来ていた。
なのに結果はどうだ?
良い様にやられた挙句言われたい放題言われて破れかぶれで逃げ出して道端に蹲っている。

『本当に可哀そうだよお前は!』

「黙れ!」

ガン!と、壁を強く殴りつける。
首のないずんぐりむっくりの仮面越しの煽る声が耳にこびりついてしまったように思える。

「これは、自分で決めたんだ!
誰でもない、この俺が!」

そうとだけ吐き捨てると立ち上がったやみのせんしは周囲を見渡す。
誰に何を言われようと



【エリア?-?/???/9月2日午前6時30分】

【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:心身ともにダメージ(中) 『忍者』に興味(小)
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII 邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:なし
思考
基本:当然殺し合いに乗る
01:とにかく壊すことを楽しむ。
  つもりだったが、あの赤いの(アスラン)は次会った時は徹底的に壊す。
02:まずは拠点を探す。病院を奏するつもりだったが、今地図でどのへんだ?
03:……何が罪を償う機会だ。
04:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後


【アイテム解説】
・転移結晶@ソードアート・オンライン
…ドロップアイテムの1つ。
使い切りだが、使用者を会場内のランダムな場所に転移させる。


91 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/03(火) 08:38:32 jLiNdS6Y0
投下終了です。
タイトルは セカイ ノ ハンブン です。


92 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/03(火) 11:25:56 gKhbcoWg0
>>83
了解です、そして変更も終わりました。
迷惑をかけかねない事をしてしまい、本当にすみませんでした。今回以降の内容変更はしないようにしていきます


93 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/04(水) 20:04:49 c8Q5n2C20
皆さま投下お疲れ様です。
ゼロ(シャーリー)、マリヤ・ミハイロヴナ・九条、マクギリス・ファリドで予約します。
また、支給品の説明が中途半端なものや投下作品の誤字や行間といった微修正などを後ほど行いますことご承知願います。(展開の変更などはございません)


94 : <削除> :<削除>
<削除>


95 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 00:44:49 ac0cmVV20
すみません!遅くなりましたが投下します。


96 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 00:48:00 ac0cmVV20
ゼアの話を聞き終えたユージオたちは、早速テレビ局へと向かうことにした。
先頭はユージオ、しんがりはマーヤが務めて、たきなと瑠美衣の二人はその間にいた。
いわゆるビル街に入ると、オシリスレッド寮周辺と比べて建物は高く、また密集している。
奇襲や狙撃をするには絶好の場所だと、たきなは警戒心を強めた。

「ねえねえ、ゼアの話どう思う?」

ユージオに聞こえないように、耳元に顔を近づけて問うてくる瑠美衣に、たきなは端的に応答した。

「……半信半疑ではあります」
「だよね!別の世界?世界線?の説明はされたけどさー。
 マーヤの話にも驚いたけど、ゼアの話はレベルが違いすぎて、まだ呑み込めてないや」

たきな自身も瑠美衣と似た感想を抱いていた。
AI搭載人型ロボ・ヒューマギアと、それを管理する人工衛星。そして、仮面ライダー。
ゼアの語る荒唐無稽な内容は、たきなを含む三人を混乱させるには充分すぎた。
「まるで漫画やアニメだよ」と話す瑠美衣に、たきなは少し言い淀んでから「ですが」と返した。

「納得した部分もあります」
「納得?どこに?」
「この大人数を殺し合わせるには、相当な組織力が必要になるはずです」

たきなは常識外れの内容を呑み込んだ上で、考察していた。
機密組織に所属しているからこそ、世間に隠匿された情報の多さは理解しているつもりだ。

「ここに来たとき、現代社会でこれほど大規模な犯罪を行えるのか疑問でした。
 だけど、そもそも世界が、技術レベルが違うというなら、話は変わってきます」

ゼア曰く。ヒューマギアは日常生活に浸透しているのだという。
それを踏まえて、たきなはひとまず「常識外れに納得せざるを得ない」と結論づけた。
このバトルロワイヤルを開いた羂索は、それ相応の常識外れな力を有しているのだと。

「瑠美衣は納得できませんか」
「うーん……正直、よくわかんない」

あっけらかんと答えた瑠美衣に、たきなは呆れた。
瑠美衣について、頭を使うのは不得手のようだと把握して注意する。

「まあ、とにかく。何が起きても対応できるように、警戒だけは……」
「二人とも、ストップだ」

会話をユージオに遮られて、たきなは意識を瑠美衣から戻した。

「どうしたんですか?」

ユージオの言葉に従い足を止めて、前方のビル群を見やると、赤い煙がたなびいている。

「煙?まさか火事!?」
「いや、通常の火災なら煙は白か黒のはず……あれは発煙筒だと思う」
「そうですね」

後ろから追いついたマーヤの言葉に、たきなは同調した。
ユージオも意見は同じのようで、マーヤの言葉に「つまり」と続けた。

「誰かがSOSを出しているってことだ」
「……助けに行くの?」
「罠ってことはありませんか?」

どこか不安そうな瑠美衣に次いで、たきなは懸念を口にした。

「もちろん罠の可能性もある。だから、こうするのはどうだろう?
 僕とたきなで現地に向かい、マーヤと瑠美衣は一定の距離を保ちつつ待機。
 もし奇襲を受けたら、そのときは全力で逃げながら、大声やアイテムで知らせる」

オシリスレッド寮を出る前に、ユージオは支給品のロケット花火を全員に分配していた。
いざという時はそれを使用するように指示しているのだ。


97 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 00:48:41 ac0cmVV20
「異論はないかい?それじゃあ慎重に行こう」

たきなは装着したデザイアドライバーの位置を確かめながら、ユージオの言葉に頷いた。



レジィ・スターは雑居ビルの屋上から、双眼鏡で周囲を見回していた。
二つの放送を聞いて、レジィは取り逃がした少女たちを追うのを止めた。
他の参加者はともかく、NPCモンスターに遭遇する危険をわざわざ冒す理由はない。
ひとつの獲物に固執するのは愚策。むしろ一ヵ所に留まり戦いやすい状態にするべきだと判断した。

「……そろそろ餌を撒くか」

それからしばらく、レジィは雑居ビルを拠点として行動していた。
周辺の建造物を確認しながら、どこを逃げ道とするか、どこに罠を張れるかをチェック。
やがて地の利を得たと確信すると、発煙筒で参加者をおびき寄せることにしたのである。

「おっと、いきなり四匹とは大漁大漁」

効果は覿面。ほどなくしてレジィは双眼鏡で四人の男女を捉えた。
金髪の少女一人を除いた三人は、周囲を警戒しながら歩みを進めている。

(一般人ではないとなると、流石に一対四は無謀。
 せっかくだから、まずは搦め手で様子見させてもらおうか)

レジィは屋上から階段を降りると、とある部屋の扉を開けた。
その小綺麗な事務所の床には、ロープで拘束した少女が転がっている。
周囲を確認していたとき、たまたま向こうから近づいて来た哀れな得物だ。
意識のない少女の頭を足で小突くと、うめき声を上げてから驚いたように目を見開いた。

「出番だ、お嬢ちゃん」
「あなたは……ッ!」

色素の薄い茶髪を揺らしながら、懸命に身体を起こそうとする少女。
レジィはその肩を踏んで押さえつけると、少女の眼前にある支給品をかざした。

「これ、何だかわかるだろう?君の支給品のカードデッキ。
 これで“仮面ライダー”とやらに変身できるらしいんだけどね?
 そのライダーとやらの性能を知りたいんだ。試しに変身してもらいたい」

これで少女に変身させて、四人の男女とぶつける算段だ。
カードデッキの性能を知ることができ、男女の小手調べにもなるので一石二鳥だ。
踏みつけられた衝撃と恐怖で声を出せない様子の少女に、レジィは続ける。

「戦う相手はこちらで用意する。どうだ?」
「……できません」

目線を落として、震える声で答える少女。
あまりに想定内の答えに、レジィは心中で舌打ちした。
しかし苛立ちはおくびにも出さずに、譲歩の意思を伝えた。

「相手を殺す必要はない。ただ性能を知りたいだけ……これでも?」
「……」

ここまで説得に時間をかける理由は一つ。
カードデッキの性能を知りたいのは、レジィの本心だからだ。
装甲を身にまとう仮面ライダーは、レジィの用いる術式とは食べ合わせが悪い。
それゆえに、実践において己の術式より優先できる代物か否かをテストしておきたいのだ。

(変身アイテムを相手に渡すリスクはあるが、ゼロに等しい。
 おそらく、いや確実に。この少女は人を殺せるタイプじゃない)

少女が麗美のように、人を殺す手段と覚悟を持った手合いなら、レジィは即座に殺して支給品を奪っていただろう。
しかし、少女は違う。殺し合いの場で「危険人物に襲われた。助けて欲しい」と助けを求めてきた。
戦う力を持ち合わせていないどころか、過酷な環境に身を置いたこともないのだろう。


98 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 00:50:26 ac0cmVV20
「そうだ、俺に協力してくれたら、君の話していた人を助けに行こう。
 学郎くん……名簿によると夜島学郎かな。彼のことが心配なんだろう?」
「そ、それは……」

少女の瞳に迷いの色が見える。
いわゆる“お人好し”なのだとレジィは結論づけた。およそ呪術師には向かない人種だ。

「ここまで頼んでもダメなら仕方ない……」

相手の心が揺らいだところで、レジィはダメ押しの一言を言い放つ。

「ここで死んでもらう」

大前提として、レジィは少女の殺害を躊躇う理由は何ひとつとして存在しない。
あくまで利用しやすい駒として数えているだけなのだ。

「……わかりました」

しばらく黙考してから頷いた少女は、眉を八の字にしていた。
目は口程に物を言う。発言と表情に乖離が見られるとき、正しいのは表情だ。

(微塵も信用されていないね……それで当然。
 とはいえ、おおむね想定通りに事を運べそうだ)

レジィは少女の拘束を解いて、カードデッキを渡して指示を始める。
少女の震える全身を見て、老獪な呪術師はニヤリと口角を上げた。



雑居ビルの入口。外には発煙筒が転がっている。
望月穂波は壁に背をもたれて、カードデッキを握りしめていた。

(どうして、こんなことに……)

学郎と別れてからのことを思い出す。
しばらく逃げた後、抱えていた少女を診療所に運び入れたまではよかった。
しかし、手当に必要な支給品は見当たらず、それに加えて学郎の心配は増すばかり。
居ても立ってもいられずに、他の参加者に助けを求めようとして――今に至る。

(あのとき、もっと気をつけていたら……ううん、それは仕方ない)

男を遠目で見たとき、奇妙な服装だと感じたのに、避けずに近づいてしまった。
少女と学郎のことで頭はパンク寸前、考える余裕がなかったとはいえ迂闊だった。
それから今では、その男から戦うことを半ば強制させられている。

(でも、あそこで断っていたら、きっと殺されていた)

男に「死んでもらう」と言われたとき、背筋の凍る感覚をおぼえた。
死ぬのは怖い。穂波は緊張と不安の渦巻く中で「いいえ」とは言えなかった。
拘束を解かれて、カードデッキを渡されて、これから近づいてくる人間と戦えと指示されて。
これもまた無力なせいだと、穂波は自分自身を責めていた。

ピイィーッ!

ホイッスルの音。男の指示にあった合図だ。
穂波は苦い顔のまま、自身の姿を反射したガラス製のドアに、カードデッキを向けた。
どこからか出てきたベルトが腰に装着される。すると、次の言葉は自然と口をついて出た。

「変身」

そこに現れたのは、白い姫騎士の如き仮面ライダー・ファム。
これよりライダーとして、穂波は望まぬ戦いを強いられることになる。

(戦いなんてしたくない……どうにか、この場を切り抜けないと)

ただ逃げてしまうと、男に約束違反を理由に殺される危険性がある。
つまり殺されないように、それでいて相手を傷つけないように戦わなければならない。
具体的な方法は思いつかないまま、接近してくる二つの人影を見ながら、穂波は震える手でレイピアを手にした。


99 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 00:53:33 ac0cmVV20
【エリアG-12/雑居ビル周辺/9月2日午前7時30分】
【レジィ・スター@呪術廻戦】
状態:健康
服装:レジィの蓑@呪術廻戦
装備:レジィの蓑@呪術廻戦 ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー
令呪:残り三画
道具:ガンダム・ファラクトの起動キー@機動戦士ガンダム 水星の魔女、スーパー手ぶくろ@ドラえもん
 ランダムアイテム×0〜3(望月穂波の分を含む)、ホットライン
思考
基本:殺し合いを楽しむ あわよくば生き返る
01:あの人形(月蝕尽絶黒阿修羅)は流石にヤバい。特級相当だろ。素人に配るとか羂索は馬鹿か?
02:罠にかかった四人組で遊ぶ。まずはライダーの性能を調べつつ、時が来たら……
参戦時期:死亡後
備考 
 ※麗美@呪術廻戦の荷物を回収しています
 ※望月穂波の荷物を回収しています。ホットラインはビルの一室に放置しています。


【望月穂波@プロジェクトセカイ】
状態:健康、不安、恐怖、変身中
服装:いつもの服装
装備:ファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
令呪:残り三画
道具:なし
思考
基本:元の世界に戻りたい
01:この場をどうにかして切り抜ける。……死にたくない。
02:学郎くん……それにあの子(リーファ)を……助けたい。
参戦時期:「導く勇気、優しさを胸に」後
備考


【ユージオ@SAOシリーズ】
状態:正常、ゼアを許容
服装:いつもの服装
装備:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード
   ライドケミーカード(パイレッツ、バンバンブー、マックラーケン)@仮面ライダーガッチャード
   飛電ゼロツードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ
   ゼロツープログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:ユージオのランダムアイテム×0〜1(刀剣類ではない)、ホットライン
思考
基本:この狂った儀式を止める(ユージオ)
   下した結論に基づきこのゲームをクリアする。(ゼア)
01:可能ならばキリトと合流したい。
02:前提を確定させるために羂索、クルーゼ、茅場に関する情報を集める。
また、アークの思考を読み解くためにルルーシュに関しても情報をもっと集める。
03:この3人とルルーシュの元に向かう。
04:ウンベールは一応警戒。
  キリトやその知り合いと思しきプレイヤーたちに関しては並行世界の別人という線も視野に入れておく。
05:あの白騎士(ファム)は……!?
参戦時期:死亡直後(ユージオ)
     アークと同じ結論に至った後(ゼア)
備考
※ユージオがゼアを許容した為、ドライバーを装着している間はゼアが肉体の主動権を握れます。
ドライバーかキーが近くにあれば、遠隔でも可能なようです。


【井ノ上たきな@リコリス・リコイル】
状態:通常
服装:リコリスの制服
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ブーストマークⅡレイズバックル@仮面ライダーギーツ、マグナムレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ホットライン
思考
基本:このゲームに抗う
01:知り合いが誰も呼ばれてないのは……まあ、良かったです。
02:マーヤ、瑠美衣、ゼア(ユージオ)と共にテレビ局に向かう。
03:並行世界にギアス……このベルトを手にしたときから薄々感じてましたが、本当にいよいよファンタジーですね
04:あの白騎士(ファム)は……!?
参戦時期:アニメ最終話から


100 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 00:54:04 ac0cmVV20
【マーヤ・ガーフィールド@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:通常
服装:制服(アッシュフォード)
装備:ランスロット・アルビオンの起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ブリタニア(概念)を叩き潰す
01:ルルーシュの真意を確かめるためにたきなたちとテレビ局に向かう。
02:色々な世界があるってことは、あのルルーシュが私を知るルルーシュとは限らないか。
03:ロロも卜部さんも死んだはずなのに名前がある。
  死ななかった世界の2人って事かな?
04:二代目ゼロに……ロロ・ヴィ・ブリタニア?
05:星野瑠美衣は民間人だから、ちゃんと守らないと
06:周囲を警戒しつつ、ユージオとたきなの様子をうかがう。
参戦時期:2部13章から


【星野瑠美衣@推しの子】
状態:狂気
服装:【Be red】ルビーのアイドル衣装@アイドルマスター シャイニーカラーズ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランスロット・コンクエスター(フレイヤ搭載)の起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2、星に願いを@オーバーロード、ホットライン
思考
基本:願いを叶える
00:しばらくはマーヤたちを隠れ蓑に穏健な参加者のふりをする。
01:ユージオを、ゼアを排除することでマーヤたちとルルーシュに決定的な亀裂を創り殺し合わせる。
02:知り合いは誰も居ないか。ま、都合がいいね。
03:私は絶対に……。
04:この機会に、ユージオやゼアを排除できないかな?
参戦時期:連載106話から
備考
※フレイヤを使用するには令呪二角が必要です。
※星に願いをは一回のみ使用可能な使い切りです。
※キリトの事でユージオを励ましたのは、雨宮吾郎が例え並行同位体だろうと、自分からアイを奪った者と同類のなにかであってほしくないと言う感情からです。
また、そのことにまったく無自覚です。


【エリアG-12/診療所/9月2日午前7時30分】
【リーファ@ソードアート・オンライン】
状態:ALOアバター、気絶、全身に切り傷(大)、火傷(中)、右太腿に貫通痕
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない
01:――
参戦時期:アリシゼーション後
備考
※アバターはALOのものとなっています


【ファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎】
望月穂波@プロジェクトセカイに支給。
鏡に映すことで仮面ライダータイガに変身することが可能となるデッキ。
各種カード(アドベント、ソードベント、ガードベント、ファイナルベント)も付属されている。


101 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/07(土) 01:02:11 ac0cmVV20
投下終了です。タイトルは「Brand New Wave Upper Ground」でお願いします。
重ねて、すみませんでした!


102 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/09(月) 11:09:08 tcNUHEJs0
柳瀬舞衣、キズナブラック、立風館ソウジ、道外流牙、予約&延長します


103 : ◆TruULbUYro :2024/12/10(火) 00:07:19 9j5HYLd20
天川薫子、邪樹右龍、ザギで予約・延長させていただきます。


104 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:41:08 4K5.evB20
投下します


105 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:41:33 4K5.evB20
前回までのキョウリュウジャーは!
突如謎の呪詛師羂索の手によって殺し合いゲーム、バトルロワイヤルに巻き込まれてしまったソウジとウッチー!
何の因果かソウジはウッチーに支給された牙狼剣の本当の持ち主、道外流牙と!
魔導輪と契約した刀使の少女、柳瀬舞衣と行動を共にすることになる!
果たして彼らはこの惨劇を止められるのか?!
どうなるソウジ、どうなるウッチー!
どうなるキョウリュウジャー!?


106 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:42:56 4K5.evB20
『このバトルロワイヤルは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが裁定する!
私は会場内のテレビ局で待っている。
諸君らの賢明な決断を期待する』

ぶつん!と音がしてテレビが沈黙を取り戻す。
舞衣、ソウジ、流牙の3人はクルーゼ、そして続けて流れたルルーシュの放送を雄英高校で視ることになった。

「色々と新しい情報が出てきましたけど、お二人はどう思いましたか?」

「ルルーシュに関して言わせてもらえば、笑えないジョークだよ。
仮面ライダーが暴君の手下だなんて侮辱以外の何物でもない」

「ソウジは仮面ライダーについて知っているのか?」

「最初に羂索に叫んでたガッチャードってライダーとは会ったことないけど、ウィザードたち仮面ライダーとは他の戦隊のみんなとスペースショッカーっていう連中と戦ったことがあるんだ」

『つまりソウジからすると、ガッチャードは戦友の後輩なのですね』

カチカチと金属音を鳴らしながら舞衣の指に嵌ったイルヴァが言う。

「そういうこと」

「ではルルーシュの言ってることはでまかせ、というより、将来何らかの理由で邪魔になるガッチャードを排除するためのパフォーマンスなのか?」

「だと思う。舞衣ちゃんには何か分かったこととかあった?」

そうですね……と言いながら、イルヴァにも見せる様にホットラインを操作する。

「名簿の方では衛藤可奈美から柊篝までが私の関係者だと思います。
アンクという人と死んだはずの、それも結婚して姓が変わっているはずの柊篝さんはちょっとよく分からないですけどタギツヒメ以外とは協力できるはずです」

「タギツヒメって言うのは危険人物なの?」

「かつて紫様……刀使のトップに寄生して裏から管理局を操っていた大荒魂です。
……道外さん?」

「いや、気にしないでくれ。
少し嫌な思いをさせてくれた奴を思い出していただけだ。
地図の方には何かなかったか?」

「地図に表記されてる名前のある施設に私や可奈美ちゃんの通ってた美濃関学院があります。
流石にイミテーションだとは思いますけど、可奈美ちゃんたち刀使の参加者は目指すと思います。
あと、羂索……というより梔子ユメさん関連だとアビドス砂漠やアビドス高校ですね」

「クルーゼは立ち入り禁止に指定するエリアは偽の鍵穴だと言っていたし、次の放送で指定されなければ確定で何か有るとみていいな」

「ですね。道外さんはどうですか?」

「地図や放送に関して特にない。
だが、このジンガという男は危険だ」

「どんな人なんですか?」

「一言で言えば闇に堕ちた魔戒騎士だ。
その上もう人じゃない」

「人じゃない?」

「ああ。かつては神ノ牙とまで称えられ、手練れの魔戒騎士複数人が束になっても互角に戦えるほどの実力でホラーを狩る守りし者だった。
だがある時息子を助けようとした人々に殺されたのをきっかけに魔戒法師だった妻共々闇に堕ち、討たれた」

「討たれたって、死んだってことですか?
じゃあ今は梔子ユメさんみたいに別の誰かが身体を?」

『確かに陰我ホラーは人の肉体を乗っ取り人間の世界に出ずる存在です。
しかしジンガの場合は、人間に絶望した人格と陰我が溜まり溜まったことで生じたホラーの人格が混ざり合うという少々特殊な経緯で誕生しています』

「だから魔戒剣を使えるし、殺したホラーを吸収して強くなることも出来る」

「まるで、ノロを取り込んだ刀使みたい……」

「ノロ?」

「私たち刀使が鎮める荒魂の……身体を構成する物で、負の神性です。
それを肉体に投与して力を底上げ出来るんですけど、もしその刀使が死んだ場合、体に残ったノロが荒魂になって……」

「ジンガのように肉体を乗っ取られる?」

「はい。道外さんとイルヴァの説明を聞く限り、厳密にはちょっと違ってそうですけど……」

私もちゃんと理解できてるかと言われると微妙ですし。
と、少し自信なさげに言う舞衣。

『違いに関してはさしたる問題ではないでしょう。
所でソウジ、放送に関しては聞きましたが、名簿や地図に関しては何か見知った名前や場所はありましたか?』


107 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:44:22 4K5.evB20
「地図に関してはタイガーボーイだね。
本物には獣電戦隊の秘密基地への入り口の1つがあったけど、仮に羂索たちが俺たちの基地のイミテーションまで用意してたとしても日本に無い限り意味がないし、他のランドマークともまあまあの距離があるから行く意義は薄いかな?」

「どうして日本でないといけないんだ?」

「獣電池のエナジーは恐竜たちのスピリットで、キョウリュウジャーは改造された恐竜である獣電竜から力を借りることでチェンジしてる。
一番効率的にパワーを貯めれるのが獣電竜が生まれた黄金の地が大陸移動の末に変形した日本なんだ」

竜の王の力を巡った一件が起こったことを考えると朝鮮半島、特に韓国の部分も黄金の地だったと思われるが、ソウジはその事を知らない。

「名簿の方はどうですか?」

「空蝉丸、ウッチーは俺と同じ獣電戦隊の一員で、間違いなくこの殺し合いに反する立場だと言える。
もう一人の知り合いのギラは王様戦隊のレッドで、かつて俺たちの星を滅ぼそうとした宇蟲王ギラと共に戦ったんだ」

「同じ名前ですね」

「もしかして、何か深い関係があるのか?」

「流牙たちの言葉を借りるなら、ギラ・ハスティーが闇に堕ちなかった姿で、宇蟲王ギラが闇に堕ちた挙句ホラーをたらふく食ってその気になれば星を割れるぐらいの力を身に着けた存在、って感じ」

「星を、割る?」

あまりにスケールが滅茶苦茶の話に舞衣は一瞬理解を放棄しかけた。
流牙も少し理解に苦しむような顔をしている。

「よく勝てたな?」

「キングの、獣電戦隊のリーダー、牙の勇者キョウリュウレッドの機転でどうにか宇蟲王からギラを分離した上でキョウリュウジャーとキングオージャ―全員で束になって漸く勝てたんだ」

流牙で言う所の蛇崩猛竜たちボルシティで出会った仲間たちに加え秋月たちラインシティで出会った仲間やアゴラの三剣士たちと共同戦線を張った上で大掛かりな法術を行って弱体化させたうえで勝ったと言ってるようなものである。

「ジンガと同等かそれ以上と見積もっていいな」

「ああ。だからクルーゼやルルーシュの言葉を信じて仮面ライダー狩り、みたいな殺し合いの加速が起こる前に合流を……」

そんな風に話していると、道外たちは異様な気配を感じた。
この中で一番その手のことに疎いはずの舞衣もすぐさま御刀を引き抜き臨戦態勢に移っている。

「イルヴァ、これって?」

『ホラーではなさそうですが……十分注意してください。
闇に魅入られた騎士でもこんなにまがまがしい気配を発することは稀です』

イルヴァの警告から一拍空いてドアが開く。
入ってきたのは、顔の傷と険しい表情さえなければ、探せばいそうな青年だった。

「あなたは?」

「……名簿にはキズナブラックと記されてる」

「キズナ、ブラック?」

思わず視線がソウジを向く。
だがソウジはそんな戦隊は知らないと首を横に振った。

「……俺は道外流牙。
そっちの緑のシャツが立風館ソウジ。
日本刀の子が柳瀬舞衣」

「その様子なら無いとは思うけど、黒と青の装甲に狐の面を付けた奴が来なかった?」

「いいや。
俺たちは今までNPCモンスターにしか会ってないが……」

「ならメラという男に気を付けて。
俺が必ず奴を倒すが、もしそれより先に出会ってしまったら逃げてくれ」

「それは良いが……一人で勝てる相手なのか?」

「勝てる勝てないじゃない。
アイツはこの殺し合いを本気でゲームとして楽しむ気でいる。
速く倒さないと取り返しのつかない事態になる」

「ジンガと似たタイプか」

「ジンガ?」

流牙の呟きを聴き逃さなかったキズナブラックが問いかける。
少しどころではない不安を感じながらもいきなり遭遇して死なれては申訳がないと詳細を教えることにした。

「奴は一見人と変わらない姿をしているが、人を喰らう魔獣ホラーだ。
ソウルメタルの武器で斬るか、レジスターを破壊するかしなければ恐らく倒せない。
他にも宇蟲ギラやタギツヒメも、同等の脅威だ」

「分かった。
もし行き先が決まっていないなら、北に向かってくれ。
九堂りんねというガッチャードと同じマントを羽織った人が居るはずだ」

「合流して欲しい、ってとこですか?」

「ああ。頼──」

「断る」

全員の視線が、立風館ソウジに集まる。
キズナブラックが入室してきてから沈黙を貫いていた彼の顔は、酷く冷めている。
まるで金曜日の仕事帰りに大好物の入った熱々の弁当を買って冷めないうちに帰ってきたのに玄関先に酔っ払いのゲロがぶちまけられていた時のようだ。


108 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:45:19 4K5.evB20
「一人で行く気なんだろ?
俺だけでもこのまま君について行くよ。
負けるって分かってる奴を送り出すほど非道にはなれない」

「何?」

明らかに、キズナブラックの纏う雰囲気が、鉄みたいな冷たい物から確かに熱のある感情に変わった。
怒気?戦意?いや、どれも違う。
少なくとも舞衣にはひどく悲しい感情のように思えた。

「ソウジ……お前、こいつの何がそんなに気に入らないのか?」

「ブラックは、弾丸の勇者の色は最悪自分が死ぬまで戦えばなんとかなる、いや、自分だけでどうにかする気しかないブレイブをはき違えた奴が名乗っていい色じゃない」

「……そっか。ごめん」

『舞衣!』

そう言ってキズナブラックはりんねにやったように絆創拘束(バンソウバインド)で3人を拘束し、自分一人でメラ、そしてジンガら凶悪で強力なマーダーの元に向おうとした。
このような事態も想定していなかったわけではないのでメラの行先は告げていない。

「謝るぐらいならこんなことしないでほしいな」

「なっ!」

いつの間にか、キズナブラックの喉元にはガブリカリバーの切っ先が突きつけられていた。
どうやら、対応が遅れたのは舞衣だけの様で、そんな彼女すらイルヴァの忠告に素早く反応して抜刀しながら飛びのき、それでも引っ掛かった部分は御刀で斬り裂いて脱出している。
流牙は言わずもがな。
ソウジ同様いつの間にか抜刀した魔戒剣を納刀している。

「どうする?
嫌って言うんなら首に鎖引っ掛けてでもついて行くけど」

剣を納めながらそう問うソウジにキズナブラックは苦い、というより苦しそうな顔をしながら問う。

「どうしても守らないといけない絆を、仲間や友達を呼ばれてないんですか?」

「弱い奴なら心配するよ。
けどウッチーやギラは……雷鳴の勇者に邪悪の王はそんな軟じゃない。
……前半はウチのレッドの、牙の勇者の受け売りだけど。
君の仲間はそんなに心配?」

ソウジの言葉にたっぷり一分は悩んだだろうか?
キズナブラックは右手で頭を抱えながら

「……分かった。
けど絶対に命が危ないと思ったら俺のことなんて気にしないで一目散に逃げてくれ。
貴方にとって一番大事なのは、その雷鳴の勇者と邪悪の王との絆の筈だ」

ここで戦っても無為と思えるだけの理性は有ったのだろう。
今にも吐きそうな顔をしながら絞り出すように答えた。


109 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:45:58 4K5.evB20
「分かった。
そう言う訳で流牙、舞衣ちゃん、イルヴァ。
悪いんだけど……」

「皆まで言うな。
りんねって人のことは任せろ。
舞衣、君はどうする?」

「私は道外さんと一緒に行かせてもらいます。
魔導輪は魔戒騎士の側に居た方がいいでしょうし」

そう言って舞衣は指にはめたイルヴァを撫でた。

「では、俺たちは北に向かう。
また生きて会おう、斬撃の勇者」

「今度一緒に戦う時はご自慢の鎧を見せてよ、黄金騎士・牙狼」

グータッチを交わす二人の背中を見つめていると、紅白の学生服がキズナブラックの眼に入る。

「キズナブラックさん」

「舞衣、でいいんだったけ?」

「はい。これ、良かったらどうぞ」

「これは?」

「ここに着いた時、放送まで時間があったんでクッキー焼いたんです。
こんな状態だといつちゃんとが反食べれるかもわからないですし、これなら摘まめるから、いいかなって」

払持ちもいいですよ、と言って可愛らしいラッピングに包まれたクッキーを差し出す舞衣。

「悪いけど……」

「もしかして……小麦粉だめでした?」

「あ、ああ。そんなところ。
ソウジさん」

「ああ。じゃあ、またね」

『ソウジ、キズナブラック、どうかご武運を』

近づいて来たソウジの意図を察して舞衣はソウジに二つ分のクッキーを差し出した。
遠ざかる二人の背中を見送り、二人の剣士と魔導輪も道を急ぐ。

「キズナブラックさんは女性が……その、怖いんでしょうか?」

「多分、本人はジンガのように慣れてしまった方が楽だったろうと思わずにはいられないようなことが起こったんだろう。
後はソウジに任せるしかない」

そうは言われても舞衣は歳の割に気遣いが出来て世話焼き、そして洞察力に優れた少女だ。
彼の抱える哀しみの一端はここまでのやり取りで簡単に想像できてしまう。

「……」

もし、可奈美や沙耶香を失ったら自分もああなるのだろうか?
言いようのない不安を感じながらも、今出来るのは刀使として少しでも困っている誰かの力になる事だけだろう。

「行きましょう」

「ああ」

二人の剣士は北を、北を目指した。


110 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:46:09 4K5.evB20
【エリアC-8/雄英高校本校舎/9月2日午前6時】

【道外流牙@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者】
状態:健康
服装:魔法衣
装備:イグスの魔戒剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、舞衣の手作りクッキー
思考
基本:守りし者としての使命を全うする。
01:舞衣たちと行動する。まずはりんねを助けに行く。
02:現状力は1から3割ぐらい削がれてるか。
03:イグス、もう少し力を貸してくれ。
04:羂索、人を纏う怪人たるお前はホラーも同然。
  お前とその一味の企てを打ち砕き、牙狼剣を取り戻す。
05:ソウジ、キズナブラックの事は頼んだぞ。
06:ジンガたち悪しき魂を警戒
参戦時期:ハガネを継ぐ者終了後
備考
※ハガネの鎧は令呪無しでも召喚出来ますが、牙狼の鎧は牙狼剣が手元にある状態で令呪を使わなければ召喚できません。

【柳瀬舞衣@刀使ノ巫女】
状態:健康
服装:美濃関学院の制服(女子用)
装備:越前康継@刀使ノ巫女
   魔導輪イルヴァ@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、舞衣の手作りクッキー
思考
基本:刀使として戦う。
01:道外さんたちと行動する。
02:よろしくね、イルヴァ。
03:可奈美ちゃんたちや、空蝉丸さんたちを探す。
  まずは九堂りんねさんを助けに行く。
04:道外さんたちの剣、可奈美ちゃんが見たら何て言うだろう?
05:ジンガや宇蟲王ギラたちには注意する。
06:キズナブラックさん……
参戦時期:少なくともアニメ本編12話〜タギツヒメの改心を知る前のどこか
備考
※魔導輪イルヴァと契約しました。


111 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:46:57 4K5.evB20
ある呪術師は言った。
「新しい自分になりたいなら北へ」
「昔の自分に戻りたいなら南へ行きなさい」
と。

全ては今度こそ絆を失わない為。
それはキズナブラックにとってなりたいじぶんの筈だ。
だが彼が向かう先は、南。
輝かしく二度と手に出来ないモノが待つ場所だ。



【エリアC-8/雄英高校本校舎/9月2日午前6時】

【浅垣灯悟(バッドエンド)@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:正常
服装:いつもの服装
装備:キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる、ブラック絆装甲@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:バッドエンドに導く存在は全て消す。自分自身も例外なく。
01:メラやジンガを探し出し殺す。
02:イドラと似た夢を持つりんねには生きていて欲しい。
03:自分の中の悪意を抑えきれなくなれば、誰かの絆を奪う前に自害する。
04:ソウジさんは……こうなった以上命に代えても守り抜く
05:舞衣、ごめん。俺に君と絆を紡ぐ資格はない……
参戦時期:ウラギリスの封印を破り、灯悟たちと対峙する前
備考
※キズナブラックの装備は採用時後続の書き手様にお任せしますが、最低限握手カリバー、縁結ビームガンは召喚可能です。

【立風館ソウジ@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:健康、疲労(小)
服装:私服
装備:ガブリカリバー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   ガブリボルバー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   4番の獣電池×6@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、舞衣の手作りクッキー×2
思考
基本:この殺し合いを止める
01:キズナブラックと行動する。
02:レジスターに削がれた力は全体で1〜3割減、ってところかな。
03:空蝉丸やギラ、流牙や舞衣ちゃんたちの仲間を探す。
  戦えない人が来ているなら助ける。
04:羂索や名前だけ出たクルーゼや茅場に関して知ってる人も探す。
05:宇蟲王ギラやメラを警戒。
06:キズナブラック……ブラックはそんなブレイブを履き違えた者の色じゃない。
参戦時期:キングオージャ―VSキョウリュウジャー終了後
備考



112 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/10(火) 20:49:06 4K5.evB20
投下終了です。
タイトルは 信-Lost Essence- です


113 : ゼロ・フォース ◆EPyDv9DKJs :2024/12/11(水) 12:03:40 xAtD6MO60
短いですがゲリラ投下します


114 : ゼロ・フォース ◆EPyDv9DKJs :2024/12/11(水) 12:04:15 xAtD6MO60
「やべえ……まずい。」

 十代は途方に暮れていた。
 真人との戦いをしのげたのは幸運なことだ。
 エルドリッチのスペックがなければまず命はなかっただろう。
 しかし、その時のある行動が今の途方に暮れる彼に至らせる結果となっている。

『まさか発動コストにしたのがホットラインとはね。』

「これじゃ何が起きてるかさっぱりわかんねえ〜〜〜! そもそも今どこにいるんだよ俺は!」

 頭を抱えながらじたばたと暴れる十代。
 ユベルの言う通り、彼はホットラインをエルドリッチの発動コストにしてしまっていた。
 おかげで彼はほぼすべての生存者が知りうるであろう情報を何一つとして手にできていない。
 定期的に見返すといいと言っていた以上何かしら重要な情報もあっただろうに。
 当然、ラウ・ル・クルーゼの宣言すら彼は聞いてなどいなかった。

『逆に考えた方がいいよ十代。支給品にデッキがあった時失っていたかもしれないと。』

「俺の支給品に俺のデュエルディスクがなかったからあんまり変わらなかっただろ!!」

『どうだろうね? エルドリッチの攻撃力を考えると、
 今の支給品があってもこの先は心許ないと思うよ僕は。』

「まあエルドリッチが強いと言っても限度はあるよな……」

 デュエルモンスターズを式神と言っていたあの男(真人)は、
 こちらと違いモンスターを使わずともモンスターと渡り合えていた。
 さながらデュエルモンスターズが跋扈していたあの異世界の住人だ。
 デュエルなしでも強い人物や、それ以上の強さを持っている人物が、
 この舞台には恐らく何人もいることだろう。エルドリッチの攻撃力2500は、
 先の男との戦いを考えるとかなり不安な数値ともいえるだろう。
 安全と呼べる数値はF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)などの5000ぐらいだろうか。
 最悪、混沌幻魔アーミタイルのような10000でも到達できない猛者がいるのかもしれない。

『まずは人を探すしかないね。情報のアドバンテージは、
 何よりも大きいことはデュエルモンスターズで身に染みてるだろう?』

「ああ、わかってるさ。唯一得られたのはルルーシュと綾小路、
 それと最初の場所にいた仮面ライダーガッチャードと堀北だけか……」

 近くのテレビショップに置かれていたテレビに報道されたルルーシュの演説。
 羂索に何かの力を使おうとしていたところを見るに彼も殺し合いには懐疑的なはず。
 だというのに敵を作る、まるで覇王のような振る舞いは違和感が拭えなかった。

『まるで覇王だね。武力や恐怖でこの殺し合いを収めようとしている。』

「覇王、か……」

 覇王となれば忘れてはならない、苦々しい思い出。
 ヨハンに固執し続け、仲間を失って墜ちたあの時のことを。
 覇王十代となり異世界を蹂躙していったことは忘れることはない。
 だからこそ一時期デュエルの楽しさを忘れてしまったり、
 皆を避けていた部分はあるのだから。

『ルルーシュのやり方に十代はどう思う?』

「俺に聞くのは皮肉かよ……確かにありだと思うぜ。
 あれだけ目立つことをすれば、殆どの参加者が動くと思う。」

 ユベルの質問に一瞬げんなりとした表情をする。
 十代としては、ルルーシュのやり方はありだと思った。
 きっと自身と違ってちゃんとホットラインで情報を得ているのだろう。
 だから人を集め、敵も集め、このゲームを乗っ取るつもりでいるのだと。
 そういった手段に長けており、タクティクスだけならば間違いなく、
 武藤遊戯に匹敵するか、それ以上の手腕を持っていると言えるだろう。
 もしデュエリストなら、ぜひともデュエルを申し込みたくなるほどの相手だ。
 もっとも、そのためのデッキが存在しないのが残念なところではあるが。

「あいつはわざと演じてるんだ。わざと悪い奴のふりをしている。」

 と、此処まではデュエリストとしての、ゲームの盤面として見た場合の話。
 エンタメのためふざけた行為をせざるを得なかった万丈目に少しだが似ている。
 自分を悪という役割に殉じて、他の参加者の行動を煽っている台風の目。
 武力で異世界を統べる覇王十代とは全くの別物である。
 悪行をもって善を成そうとしている行為だ。
 覇王十代の経験やデュエリストだからこそ、
 ルルーシュの考えがそういうものだと十代は感じた。

『正解だ。開始早々味方以上に敵を増やすのはそういうことだろう。
 味方が増えると言ってもあまりにリスクが大きい行為。あの時、
 羂索に立ち向かった彼のことを考えれば、すべて納得がいく行為だ。』


115 : ゼロ・フォース ◆EPyDv9DKJs :2024/12/11(水) 12:04:32 xAtD6MO60
 ユベルと言う相棒がいて心底安心する十代。
 お世辞にも学力があるとはいいがたい彼でも辿り着けた答えではあるが、
 判断を促せる相手がいるというのは、この状況では頼もしさがより増していく。
 今の状況ではヨハンやエドと言った仲間がいるのかどうかでさえ分からない状況なのだから。
 いるとするなら、隣に立っている三メートル越えの黄金の化身、エルドリッチだけだ。

『テレビ局の彼を止めに行くかい?
 まあ、僕たちはテレビ局の場所も知らないが。』

 地図も名簿もすべてホットラインに入っている。
 それがないのではテレビ局はおろか、現在地がどこかさえ二人にはわからない。
 朝になったとはいえ現代都市エリアは広大であり、どこを彷徨ってるかも定かではなかった。

「テレビ局ならこの辺のどこかに……って思ったが、テレビ局ってどういう形してるんだ?」

『やれやれ、そういうと思ったよ……と言いたいが、
 テレビ局の特徴は僕にもわからない。おそらくはビルだろうけど。
 ホットラインがあれば確認できただろうに、どうするんだい十代?』

「場所がわからないのもあるが、
 今行くとルルーシュのアレにやられそうなんだよな……」

 藤原、と言うよりはそれに変身したオネストの記憶の改竄を思い出させる能力。
 視線を向けているだけで起きてしまうそれは下手に出会えばまず術中に陥るだろう。
 いくらユベルと融合してると言っても、それをはねのけられるかどうかは怪しくもある。
 今のまま出会ったところで意味をなさないのは間違いなかった。

『なら、仮面ライダーを探すのはどうかな?
 名前に仮面とついているんだ。直接目を合わせてないと、
 発動できない可能性が高いし、君にもそういう装備は必要だろう?』

 真人との戦いでは十代は避けることこそできたが、
 攻め手は完全にエルドリッチに依存している状態だった。
 エルドリッチの攻撃力も不安な今、自衛の手段は用意しておきたい。
 残念なことに彼の支給品の中にはそれらしいものは存在していなかった。
 このまま無策に歩き回るのはNPCの不意打ちを考えるとより危険だろう。

「となると、こいつの出番だな。」

 支給品の中にあった、
 先端に機械のようなものがついたステッキを取り出す十代。
 たずね人ステッキ。ドラえもんと呼ばれる存在のひみつ道具の一つであり、
 たずね『人』ではあるが、『物』を探すこともできるので仮面ライダー、
 もといああいった変身ベルトを探す手段となりうる代物だ。

「よし、これで仮面ライダーガッチャードを……って、あいつの名前なんだっけ?」

『知らないよ。羂索はあの時仮面ライダーガッチャードとしか言ってないからね。』

 閑話休題。
 仮面ライダーガッチャードと言う抽象的なワードで、
 果たしてこれが通じてくれるのかどうかが分からない。
 成功率が70%と言う微妙に外れやすい確率も考えると、
 とりあえず試してみて正解にたどり着くかもわからなかった。

「仮面ライダーの変身するための道具はどこ? で試すしかねえか……?」

『それでも当たるかどうかは……いや、この際気にしない方がいいか。
 出会えるといいね。仮面ライダーを使っている敵でないことを祈りながらだけど。』

「だから不安を煽るのはやめろって。」

 暗雲立ち込めるような状況に不安を感じながら、
 たずね人ステッキを倒してその方角へと進む十代。
 もう一人の十代がこの世界に参加していることを知ることになるのは、
 少なくとも今この時ではないだろう。

【エリアH-11/街道/9月2日午前6時】

【遊城十代@遊戯王GX】
状態:健康
服装:オシリスレッドの制服
装備:黄金卿エルドリッチ@遊戯王OCG、たずね人ステッキ@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1(確認済み)
思考
基本:あいつ(真人)も羂索も倒す。
00:継ぎ接ぎの男(真人)を何とかする手段を探す。
01:ルルーシュとはできれば話し合いたいが、
   あの能力はさすがに俺とユベルが融合してても無効にできないよな?
02:情報がなさ過ぎてやばい。
参戦時期:超融合!時空を超えた絆の本編終了後
備考
※ラウ・ル・クルーゼの放送を聞けてません
※ホットラインがないため名簿も地図もわかりません

【たずね人ステッキ@ドラえもん】
十代に支給。先端に機械のようなものがついたステッキでひみつ道具の一つ。
人や物をイメージしながら倒すとその方角へと倒れるが、確率は7割と微妙に外れる。


116 : ゼロ・フォース ◆EPyDv9DKJs :2024/12/11(水) 12:04:48 xAtD6MO60
以上で投下終了です


117 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:06:58 toz7Pomk0
皆さま投下お疲れ様です。
すみません。時間が過ぎてしまいました。投下します。


118 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:08:29 toz7Pomk0
本当に悪い天気なんてものはない。
ただ、さまざまな種類のよい天気があるだけだ。
ジョン・ラスキン


119 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:08:53 toz7Pomk0
「蘇った……だと?」

目の前の男、マクギリス・ファリドの言葉に二代目ゼロ……シャーリーは”ゼロ”として怪訝そうに問いただす。

「ああ、この私、マクギリス・ファリドは確かに死んだ。……友に討たれてね」

マクギリスは改めて自身が一度死んだことを2人に申告する。
”友”という言葉を口に出したとき、死してなお自信に満ちていた顔に一瞬陰りを見せつつ。

「討たれたって……」
「……」

マリヤは友の手に討たれたことに困惑を隠しきれず、シャーリーはいざという時に動けるよう心構えをしていた。
そんな二人の様子に気にも留めずにマクギリスは問いかける。

「ところで一つ訊ねたいが、ギャラルホルンという言葉、もしくはクーデリア・藍那・バーンスタインという人名を知っているかな?」
「いいえ。知らないわ」
「……右に同じ」

「ふむ。では、やはり異なる世界があるということは間違いなさそうだ」

マクギリスは二人の反応からこの殺し合いに異なる世界があるということを確信する。
自身に支給された”紅蓮”もそうだが、地球出身者でギャラルホルンを。火星出身者でクーデリア・藍那・バーンスタインの名前を知らぬ者などいないはずだからだ。

シャーリーとマリヤもマクギリスの話から先ほどの共通認識が確信になった。

「君たちの名前を聞いても構わないか?」
「ええ構わないわ。私は、マリヤ・ミハイロヴナ・九条。よければマーシャと呼んで」
「……二代目ゼロだ」
「では、遠慮なくマーシャと呼ばせてもらうよ。それと……君は二代目で構わないか?」
「好きに呼んで構わない」

互いに自己紹介を終えると同時に放送が流れた。

『……現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。
おはよう諸君。
一応、はじめましてと言っておこう。
私の名前はラウ・ル・クルーゼ。
ザフト軍クルーゼ隊隊長にして、羂索から君たちプレイヤーの人選に関してかなりの裁量を与えられていた者だ』
☆彡 ☆彡 ☆彡


120 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:09:26 toz7Pomk0
放送が終えると、3人はアプリで名簿の確認を行う。

「どうやら、私の知り合いは一人もいないようだ。マーシャ、君はどうだった?」
「アーリャちゃん……妹がいるわ」

マリアはそういうと顔を俯く。
普段からふわふわしたオーラを纏うマリヤも、このときばかりはそのような雰囲気は欠片もない。
身内がこのような催しに巻き込まれている状況では致し方ないが。

「そうか……無事でいることを願おう。二代目は?」

マクギリスはマリヤに同情しつつ、シャーリーにも尋ねる。

「……何人かいる。彼らが私の知る彼らならばの話だが」
「?それはいったい――」

シャーリーの意味深の言葉にマクギリスが問いかけようとした瞬間。
突如――

「む?」「え?」「!?」

『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

再び放送が流れる。
ただその放送は主催者側ではなく同じ参加者からであった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


121 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:09:51 toz7Pomk0
「ルルーシュ……まるで、自分の合わせ鏡のような男だな」
「どういう意味だ?」
(ルルと同じ…?)

ルルーシュの宣言を聴き終えたマクギリスは率直の感想を口に出すと、それにシャーリーはマクギリスに真意を問い詰める。


「私はかつて組織の腐敗を正し、理想の世界を叶えるために、バエルの力で旗印になろうとした。彼もまたこの殺し合いで旗印になろうとしているのだよ。仮面ライダーの力でね」

「……」
(理想の世界……確かに言葉通りならルルと同じだけど、マクギリスさんの理想の世界はどんな世界なのかしら……)

「ん〜〜?私は、あのルルーシュって男の子、自分に重きを置いているように見えなかったわ」

片やマリヤの印象は違った。
その言葉に二人は顔を向ける。

「あの演説って、一見我儘を感じさせるけど、周りの結束を促そうとしているんじゃないかしら?きっと不器用なのね」

「ふむ……そういう見方もあるか」
(自分を贄に周りの結束……もし、マーシャの見立てが正しければ彼は私とは違うな。理想を叶えるために不可欠なのは、集団ではなく強烈な個だ。アグニカ・カイエルのような)

マリヤの感触にマクギリスは顎に手を置きつつふむふむと頷く。

「……」
(うん……ルルのことだから、自分達でもいいし、別なグループでも構わないと考えているわ。だからあえて参加者を挑発するような演説をしたんだわ。……自分が死んだ後のことも準備していたのは……それらを想定していたから

マーシャの見立てにシャーリーは仮面の奥で同意していた。
アンケイジ・プロトコルを用意していたのがその証拠。
それと同時に”神聖ブリタニア帝国第99代皇帝”を名乗ったことからシャーリーは理解してしまった。
この場にいるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが自分が知る彼ではないことを。

「だって、私の知るルルならその称号は決して名乗らない。だって、その称号ではナナリーちゃんが安心して暮らせる世界が叶うはずがないから」

図らずもルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが自分の知る人物ではないことが証明された。
シャーリーの目元から一滴の涙が流れていることに二人は気づかない。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「さて、これからどう動くか……二代目の考えを聞かせてくれないか?」

一段落ついたのもあり、3人は今後の行動の指針を話し合う。

「レジスターの確保と黒の騎士団並びに一ノ瀬宝太郎との接触を優先すべきだろう」
「確かに、一ノ瀬宝太郎は接触を図りたい。他の参加者も注目しているだろうしね。レジスターはバグスターウイルス対策だろうが、黒の騎士団は、あれかい?ルルーシュとの合流を視野に入れているのかな?」
「……いや、今の段階ではルルーシュとの合流は考えていない。黒の騎士団は私の配下というのもあるが、私の知る彼らかの確認も含めという意味だ」
「なるほど、確かにアスラン?や階級の有無なだけのキラという参加者がいることから、同じ人物とは限らないこともありうるか」
「私は二代目の考えに賛成だ。マーシャはどうだい?」
「ええ、私もそれで異論はないわ」

シャーリーの考えに二人は同意する。


122 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:10:11 toz7Pomk0
「では、どこへ行くか決めようと思うが……」

行動指針が決まり、次は向かう場所決め。
すると、マリヤが挙手をする。

「それなら、この近くにあるタイガーボーイって名前のレストランはどうかしら?」
《イイネ!》

マリヤは、目的地の候補にタイガーボーイを挙げる。
そして、マリヤに同意するかのように機械音が鳴り響く。
音の正体はハロ。
マリヤに支給された桃色の小型ロボット。

「その機械は……?」
(紅蓮といい、様々な機械が支給されているようだな。これは興味深い)
「私に支給されたピンクちゃんよ。可愛いわ〜」
《オオキニ!》

「……」
(か、可愛い!!……私も抱いてみたいなぁ)

マリヤはニコニコしてハロを抱きかかえる。
シャーリーは自分も抱きたいと思いつつも、ゼロとしての体面を重んじるため必死にその欲求を抑えている。

「レストランなら人が集まりそうだし、時間的にも一度お腹を満たしておく必要があると思うわ」

殺し合いの幕が上がり、これから血が流れる。
故に食事がとれるときにとるのがいいとマリヤは提案する。

「ふっ……それもそうだな。確か厄祭戦前にあった国の言葉に”腹が減っては戦はできぬ”というのがあると聞いたことがある。どうする?二代目」
「……異論はない」
(それに、他の参加者と接触するという意味でも近場にあるレストランは最善だわ)

マリヤの提案に両者は、同意すると3人は歩み出す。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「……」

……演説で確信したけど、あのルルは、私の世界線のルルとは違う……なら、やっぱり私は私のやり方でルルの願いを叶える。それが生き残った私の義務。そうでしょ?ルル……

シャーリーは愛した相手を胸に秘めつつ一人ケツイする。
それが、この場に居るルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと敵対することになったとしても。

「……」

久世君……お願い、私とアーリャちゃんを……ううん、私はどうなってもいい。だから……アーリャちゃんだけでも生きて戻れるよう見守って。ね……”さーくん”

マリヤはハロを抱きつつこの場に居ない初恋の相手に願いを望む。
もっともその願いは叶えられることはない。
最愛の妹は既にその美しき銀髪を血で汚しつつ斃れた。

「……」

お前は私が再び生を得たことに納得していないだろう……だが、この状況は私にとって僥倖。異世界の技術を手にして私は必ず再び帰参する。そして今度こそ私の手で”理想”を叶えて見せる。それが達成した暁にはあの言葉の続きを口に出させてくれ。なぁ、ガエリオ(親友)……

マクギリスは己の人生に幕を下ろした友へ想いを募らす。
そのためには、気づかなければならない。
アグニカ・カイエルの伝説を肯定するのではなく否定しなければならないという残酷を。

渦巻く三者。
彼らの行く先は三者三様ならぬ三者三葉。
幸せ(三つ葉のクローバー)が訪れるかは神のみぞ知る。


123 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:10:28 toz7Pomk0

【エリアC-2/路上/9月2日午前6時】

【ゼロ(シャーリー)@ コードギアスGenesic Re;CODE】
状態:通常
服装:ゼロの服
装備:パトリオット@メタルギアソリッドシリーズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いを止める
01:タイガーボーイへ向かう
02:強者による弱者の蹂躙は……私が、ゼロが裁く!
03:ルル……でも、あなたは違う。だから……私は私のやり方を選ぶわ
04:マクギリスさん、アナタは味方……でもあなたの理想の世界はどんな世界?
参戦時期:「そして、話し合いのテーブルへ」後から参戦
情報交換をしました(ロシデレ、鉄血)
この場に居るルルーシュは別人だと理解しました

パトリオット@メタルギアソリッドシリーズ
ゼロ(シャーリー)@ コードギアスGenesic Re;CODE に支給された突撃銃。
ザ・ボスが特注で作らせ、愛用していた。
ライフル弾の火力とマシンピストルの取り回しの良さの両立が持ち味だが反面、反動も大きく命中精度が難しい。照準の難しさを火力(手数)で補う」銃である。
人生最高の10分間にしよう、ジャック!byザ・ボス


【マリヤ・ミハイロヴナ・九条@ 時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん】
状態:通常
服装:制服
装備:ハロ(桃色):SEED@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:生き残る
01:タイガーボーイへ向かう
02:ゼロと出会えたことは幸運だったわ
03:色々な世界があるのね
04:異能力持ちが普通に居るのは脅威ね
05:アーリャちゃん……お願い、アーリャちゃんを見守ってさーくん
参戦時期:7巻体育祭後
情報交換をしました(ギアス、鉄血)
ゼロが女性であることを知りましたが、自分から他の参加者に話す気はありません。

ハロ(桃色):SEED@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ
マリヤ・ミハイロヴナ・九条@ 時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさんに支給。
アスラン・ザラがラクス・クラインにプレゼントしたもの。
ソフトボールぐらいの大きさで手足がある。
簡単な単語を登録でき、桃色のハロには高度な開錠能力が搭載されている。
また、侵入者や銃口を向けられるなど危険を察知すると騒ぐなど反応して知らせる。
催眠ガスは一回使用すると12時間は使用不可能となる。

クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー
マリヤ・ミハイロヴナ・九条@ 時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさんに支給。
銀色のブレスレッドでタイムレンジャーに変身できる。
マリヤのクロノチェンジャーはタイムピンク。
タイムピンク用のダブルベクターとボルスナイパーも付属している。
クロノレンジャー!タイムピンクbyユウリ

【マクギリス・ファリド@ 機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ】
状態:通常
服装:ギャラルホルンの制服
装備:紅蓮聖天八極式の起動鍵@ コードギアス 反逆のルルーシュR2
   ブレッシング@ブルーアーカイブ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:自身の正義を成す
01:蘇ったのだ、これは私に今度こそ成すべきを成せという世界の意思だろう
02:私をわざわざ参加させたのだ、このゲームにはバエルが用意されているだろう。ならば、手に入れなければ
03:借り物の力など不要だ。私の自由は、バエルと純粋な力によってのみ成立する……
  それが正しいはずだ
04:彼らとは協力出来そうだ
参戦時期:死亡後から参戦

情報交換をしました(ギアス、ロシデレ)
ゼロが女性だとは気づいていません。

ブレッシング@ブルーアーカイブ
マクギリス・ファリド@ 機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズに支給された銃。
ヒナタが使用している拳銃で、平時は鍵を失くした扉を開くためなど、困っている人たちを助ける目的で使われる。銃のモデルはデザートイーグル。威力がめちゃんこ強い。
あ、お帰りなさいませ、先生!今日もどうか、安らかな一日になりますように……! byヒナタ


124 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 01:13:05 toz7Pomk0
投下終了します。
寝落ちしてしまい、結果的に過ぎてしまったこと申し訳ございませんでした。


125 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/12(木) 18:40:18 VZw9GGxI0
◆s5tC4j7VZYさん、こんばんは。企画主です。
素敵な作品をありがとうございました。
ただどこにもタイトルが見当たらないのでそれだけお教え願います。


126 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/12(木) 20:06:14 toz7Pomk0
返信が遅れましたこと申し訳ありません。
すみません!抜けておりました……
タイトルは 三者三葉 でよろしくお願いします。
素敵な作品をありがとうございました。
↑ありがとうございます。励みになります。それと同時に延長宣言してない中、投下日を過ぎてしまい申し訳ありませんでした。

ビルツ・デュナン、纏流子、繰田孔富で予約します。


127 : ◆07JJdXWj.M :2024/12/14(土) 22:20:42 AdvN3Wck0
皆様投下乙です!
自作「Brand New Wave Upper Ground」で支給品「ロケット花火」の記述が抜けていたので、wikiにて捕捉しました。
ユージオと、作中でユージオから分配された三人(たきな、マーヤ、瑠美衣)の状態表にも追記してあります。
捕捉した支給品説明は以下のとおりです。

【ロケット花火@ペルソナ4】
ユージオ@SAOシリーズに支給。
ゲームにおいては敵1体に火炎属性で50ダメージを与える消費アイテム。
今回は通常の花火として使えるものとする。5本セットで支給された。


128 : ◆kLJfcedqlU :2024/12/15(日) 01:48:25 gZhKdpyo0
皆様投下お疲れ様です
空蝉丸、藤丸立香、マシュ・キリエライト、小鳥遊ホシノ、ディアッカ・エルスマン
水神小夜、シェフィ、マイ=ラッセルハート、覇世川左虎
以上で予約して同時に延長させていただきます


129 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:00:42 W7VUxL.E0
遅くなりましたが、投下します。


130 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:01:33 W7VUxL.E0
――この宇宙に《英雄》はいない。



私は長年、母国の為に尽くして来た。
我が国は上流階級の貴族・軍人と下流階級の庶民・労働者に分かれており、貴族が下層階級の者達を労働力として―奴隷として使役していた。

しかし、その様な階級制度に対する不満が高まり、『民は皆、平等』という言葉の元、下層階級から待遇の改善を求める運動が続いた。

日々、その活動は高まり、政府も彼らの要求を飲まざるを得なくなり、
下流階級に代わる新たな労働力―または彼らの下の被差別階級を作る為、
他国―他の星から奴隷を徴集する事となった。

だがそれまでに、苛烈となった運動の結果、内戦が起こり、我々政府に仕える軍人の手で多くの下層階級の者を葬った。

彼らは死ぬ前に「いつか、我等を救う英雄が現れる。」と口々に言った。

私は彼らに言った。
「英雄などおらん。弱者の抱く、妄想に過ぎん。」と。

しかし、その考えは否定される事となった。

労働力を徴集する為に訪れた惑星。
そこでは、種族の違いを越え、一体のロボットが戦力にもならない筈の子供を率いて、数万を超える我が軍勢とまともに戦ったのだ。

―その光景を見て、私は考えを改めた。

この遠い辺境の地に―、《英雄》は存在したのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


131 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:02:50 W7VUxL.E0
湖のほとりから市街地に向かう道を三人の―、いや三体の人外が歩いていた。

真ん中の赤い兜の様な装束の人物―《総司令官》が右側の白いワンピースの少女―《ロボ子》に現在のメカトピアの国情について、説明していた。

「素晴らしいお話ありがとうございます。
最後に出て来た“英雄”とやらが、仲間にしたいと仰られた“地球のロボット”ですか?」

「その通りだ。地球の全戦力が奴一人とは思わん。…恐らく、忠誠心が高い為、地球軍が体勢を整えるまでの時間稼ぎに指名されたのであろう。
しかし、奴は殆ど一人で我等《鉄人兵団》を一時的とはいえ、追い詰めたのだ。
その策略、行動、全てが賞賛に値する。
味方に付けたいと考えるのも当然の事だ。」

「…それで宜しいかと。敵であろうと相手の力量を正確に評価し、自軍に取り入れようとするなど、流石は総司令官様。懐が広いですわね。」

すかさず、主を讃えるロボ子。
しかし、内心は穏やかではなかった。

(総司令官様にここまでのお褒めの言葉を貰えるなんて、そのロボットは羨ましいわ。
でも、そこまでの評価を受けて、一度は誘いを断るなんて許せないわ!
リルルとかいう尻軽女を騙した手口といい、そんなタヌキみたいなロボットに私はなびかないわよ!!)

近い未来での雇い主に、心の中で悪態をつくロボ子。

そんなに二人の様子を見ているのか見ていないのか分からないパンダの様な外見の怪物―《シャチパンダヤミー》は彼らの左側におり、赤子の泣き声のような足音を出しながら、ついて来ていた。

「此度の殺し合い、地球での任務を一時放棄する事になるとは不甲斐ないが、私は必ず生還する。この殺し合いで得られる異世界の情報と主催陣の首を持ってな。
その時はロボ子よ。貴様も私と共に我が母星に迎えてやるぞ。」

「…はい!!」

総司令官に共に帰る事を約束され、ロボ子の先程の怒りは収まった。

彼ら新生《鉄人兵団》はしばらく街道を歩いていた。

総司令官自身は空を飛べるのだが、二体の配下は飛べず、また空中に長くいる事で敵に見つかるリスクを避ける為、地上を進む事を選んだのだった。

やがて先頭の総司令官は足を止めた。

「さて、着いたか。」

彼らの数メートル先には民家が立ち並ぶ市街地が存在していた。

総司令官は、ホットラインを取り出し、メニューから地図を選び、画面上のコーカサスカブト城を指差す。

「市街地を探索した後、この城に向けて出発するぞ。」

市街地の入り口からでも、コーカサスカブト城の荘厳な姿はハッキリと見える。

放送前には通り過ぎた城だったが、手下を増やし、敵にも備えた総司令官は、まずは市街地を調べ、それから城内も探索する事を考えていた。

「ロボ子、何が起こるか分からん。ここは戦闘体勢に入れ。」

「はい。」

ロボ子は腰にレイドライザーを装備し、ファイティングジャッカルプログライズキーのボタンを押す。

『レイドライザー!ハント!』

機械による音声が響いた後、重低音の電子音が流れ、ロボ子はプログライズキーをライザーにセットする。

「実装!!」

『レイドライズ!ファイティングジャッカル!

"Deciding the fate of a battle like a Valkyrie."』

ライザーによる音声の後、機械の少女の立っていた位置に猫を思わせる黒の怪人が現れる。

「では、行きましょう。」

ロボ子―ファイティングジャッカルレイダーは生成した大鎌を右手に持ち、市街地に向け、足を踏み出す。

―それを総司令官は止める。

「待て、少し策を練って行った方が良いかも知れん。」


132 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:03:59 W7VUxL.E0
◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇

時間は最初の放送前に遡る。

「ひゃー!!気持ちいいーー!!!!!」

「あんまり、動くなよ。下に落ちても知らないぞ。」

眼下に大きく広がる湖。

その湖の上を二人の女性を乗せた物体が、風を切って飛んでいた。

その物体とは何か。
小型飛行機か。
プロペラ機か。

全く違う。
それは、普段なら乗り物ではないモノ。

――自動販売機である。

幾つかの缶が入った自動販売機が横になり、二人の女性―普通(?)の女子高生、満艦飾マコと諸事情で女体化してしまったキズナレッドこと浅垣灯悟を乗せて、空中を飛行していた。

何故そうなったのか、そこから話そう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

時は更に遡る。

"太古の魔竜"《リメインズ・ドラゴン》を倒した後、元気良く駆け出したマコであったが、すぐにUターンして戻って来た。

見ると森のあちこちに恐竜―いや、“怪獣”達がウヨウヨしていた。

嘴のように尖った口と襟巻きを持つ怪獣。

炎の様な服を纏った黒い恐竜の様な怪獣。

そして大きな口と、両手が口になった緑色の怪獣。

それらが、森を徘徊していた。

灯悟の負傷の事もあり、流石に相手には出来ないと、一行は木々の中を隠れながら移動する。

「あ〜あ、私にもヒーローになれる道具が支給されているのに。」

小声で愚痴を呟くマコ。

それに対し、灯悟の着ている学生服―《鮮血》が変身アイテム《キズナブレス》を介して、答える。

『マコ、私も灯悟も君に戦ってほしくはないんだ。
如何に戦いに慣れた者でも、状況によっては命を落とす事も有り得る。
マコには、私達が危機的状況に陥った時に手助けして貰いたいんだ。』

「でも、リュックの中のあの支給品、最初の広間の人みたいに仮面ライダーになれるって書いてあったよ。あれになったら少しは楽になるんじゃない?」

『……あの道具は、見た目からして禍々しい。使う場面は選ばないと、変身者に良からぬ事が返ってくるかもしれない。』

やがて、一行は湖の畔へと出る。

『森の中は危ない。湖を渡り反対側へ行こう。何か湖を渡れる物はないか。』

鮮血の助言を受け入れ、支給品を確かめるキズナレッド一行。

そこでリュックの中から出て来たのが自販機であった。
名前は《ライドベンダー》といって説明書によると、バイクにも変形できるらしいが、変形の仕方が分からない。

普通の自販機と同じく硬貨を入れる穴はあるが、当然ながら誰も小銭を持っていない。
また持っていたとしても、それでバイクに変わるかは分からなかった。

次にリュックから出て来たのは、飛行機の操縦桿の様な物だった。

説明書を読むと《なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)》と書かれてあった。

最初の自販機を横にして、前方に取り付けると、宙に浮き、空を飛べる体勢となった。

「何も変わってないけど、飛行機になった!
ハイ、変わった〜!」

「取り敢えず、不格好だけど乗り物が出来たな。では行くか。」

灯悟は自販機に跨り、操縦桿を握る。
後ろにマコと2人分のリュックを詰め込むと、自販機は空高く動き始めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


133 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:05:01 W7VUxL.E0
キズナレッド一行が湖の向こう岸への移動中、主催による一回目の放送が始まった。

何故か羂索ではなく隣にいたクルーゼと名乗った仮面の男が行っており、本格的な殺し合いはこれからで、強力なNPCを送り込んで来ると話していた。

放送が終わり、マコは直ぐ様、ホットラインの名簿を確認する。知り合いが参加させられていないか調べる為だ。
キズナレッドも脇見運転はいけないなと思いつつ、ホットラインを開く。
と鮮血がそれを察し、『知っている者がいたら後で教えてくれ。』と画面を見て名簿を読み上げる。

名簿の確認が終わり、一同は情報交換に入る。

『やはり流子も来ているのか…。しかし、鬼龍院羅暁まで…。
私は羂索らの後ろに羅暁率いるREVOCSコーポレーションが絡んでいると思ったのだが…。』

「でも良かった〜!!流子ちゃんが居てくれて。私だけじゃ、皐月様のお母さんに敵わないよ。」

『うむ、鬼龍院皐月や生徒会四天王が居ないのは残念だが、こんな殺し合いに知り合いは少ない方がいい。…灯悟、君の方はどうだった?』

「俺の知っている人物はイドラだけだ。でも…、」

名簿に気になる名前を見つけた。
キズナブラック。

その名は自身の、キズナレッドの強化形態だった筈だ。
自分の強化形態の名前が何故名簿に載っているのか?
ブラックへの変身も他の者では出来ない筈だ。

運転をしながら考え込む灯悟に対し、後ろからマコの声が聞こえた。

「ねぇ、最初に広間で説明していた梔子ユメっていう女の子の名前が載っているよ。
自分で殺し合いを開いたのに何で参加するのかなぁ。」

『いや、梔子ユメは主催――羂索ではないだろう。
君達の話を聞くと奴は脳だけの生命体と見た。
恐らく、彼女の身体を捨て、違う身体に乗り移ったのだろう。
馴染む迄に時間がかかる為、放送はクルーゼに頼んだと推測出来る。
⋯だが今のマコの様に彼女を主催の一味と勘違いする者もいるかも知れない。』

「じゃあ、急いでユメちゃんを探さないと!」

『だが、彼女が何処に飛ばされたかは分からない。ここは慎重に行かなければ。まずは君達の安全を確保し、近くにいる参加者を助ける事を考えなければ。』

二人の話を聞きながら、灯悟は今はキズナブラックの事を考えるべきではないと思い直した。

鮮血の言う通りだ。
殺し合いが進む前に、他の参加者を守る為に動かなければ。

と、再びマコが口を開く。

「ねぇ、私、お城に行きたい!この近くにあるって!!」

マコが指差したのはホットライン上で【コーカサスカブト城】と表示された所だった。

『丁度この先にあるな。どうする、灯悟?』

灯悟は迷ったが、
「構わない。ただその前に代わりの服を探したい。」と話した。

彼―今は彼女だが、運転中も、慣れないスカートや下着も付けてない状態に違和感を感じて、気持ちが落ち着かなかった。
鮮血によると城の手前に市街地があるので、住民には悪いがそこで衣類を拝借しようと考えたのだった。

「取り敢えず、男に戻った時の為に服を探したい。城に行くのはそれからでいいだろう?」

マコは城に早く行きたくて不満そうだったが、渋々納得してくれた。

こうしてキズナレッド一行は市街地へと自販機を飛ばしたのだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◇◆


134 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:06:01 W7VUxL.E0

「……誰も居ませんね。」

市街地に入ったファイティングジャッカルレイダー―ロボ子は民家や商店等の建物を見て回り、主人に報告を行う。

「ふむ……、これほどの街なら人がおらずとも、生活の様子が窺えるのだが、それもない…。まるで“地球のロボット”が偽の街を、世界を作った時のようだ。」

側にいた総司令官はロボ子の報告を受け、彼女と共に道を進む。

しばらく行くと道の端に人間の使う銃器―P90が落ちているのを見つける。

近くには破壊された黒い乗用車があり、そこで戦いがあった事を伺わせる。

乗用車の近くには、全てガラス窓が破壊されたファミリーレストランがあった。
…その先からは異臭が漂っていた。

「…総司令官様、私が先に。」

P90をリュックに入れ、大鎌を持ったロボ子はレストランの先へと進む。

そして、道に人間の死体が放置されているのを見つける。

無精髭を生やした人間の男で右肩から左腰にかけて斜めに両断されて横たわっていた。
顔は銃弾を受け、あちこちに穴が空き、喉には鋭利な刃物で切られた跡が見られた。
近くに下半身も見つけたが、此方は事故でもしたのか、骨折の跡が見られた。

「……幾ら敵対する人間だからといってここまでするとは理解出来ませんわ。」

「うむ…、どうやら殺した後、死体を盾にして戦ったようだが、確かに耐久性の低い肉塊を使うとは正しい考えとは言えんな。
異常な思考回路を持った“欠陥品”の人間がこの惨状を作ったようだ。」

総司令官は手首を確かめる。
そこには無傷のレジスターが装着されたままだった。

総司令官はしばらく考えていたが、やがてロボ子に指示を出す。

「ロボ子よ、この者をお前のリュックに詰め込むぞ。
貴様の身体が入っていたのだ。少なくとも人間一人は入れられる筈だ。
…機会を見て、遺体を解剖、もしくはレジスターを外し、“バグスターウィルス”とやらの駆除方法を探らなければな。
主催を追い詰めたのはいいが、鎮静剤切れまで逃げられては困るのでな。」

「分かりました。流石は総司令官様、後々の事もよく考えていますね。」

「世辞はいい。私は一刻も早く帰る手段を模索しているだけだ。」

上司に促され、ロボ子は自分のリュックに遺体を詰め込んだ。
(流石にそのまま入れる気持ちにはなれなかったので、遺体はレストランにあったゴミ袋に包んでから入れた。)

その時だった。

黒の学生服と白の学生服を着た女子高生と思われる女性二人が来たのは。


135 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:09:32 W7VUxL.E0

◇◇◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

市街地に辿り着いた浅垣灯悟は自販機をリュックに直し、衣類を探そうと、どの建物に入るか迷いながら、マコと足を進める。

その時に壊れた乗用車が放置され、近くのレストランの窓が破壊されている事に気が付く。

『これは…。』

「ああ、どうやら戦闘があったみたいだ。注意して。」

そして二人と一着は目撃する。

ゴミ袋に包んだ遺体をリュックに詰め込んでいる二人の人物を。

丁度、向こうも気が付いたようで目が合う。

相手の外見は、昆虫を思わせる羽と兜を持った赤い鎧の人物と黒い猫の様な装束を纏った女性と思われる人物。

女性の方を見て、浅垣灯悟は目を丸くする。
それは異世界にて行動を共にしていたエルフの少女、ラーニヤが変身する仮面の戦士《太陽の森の防人アメン》に似ていたからだ。

「お前…、ラーニヤか?」

「ラーニヤ?ロボ子の事か?知り合いなのか?」

総司令官は傍らの少女ロボに訊ねる。

「誰だが存じませんが、人違いですわ。私は総司令官様以外の方は知りません。」

言われて見ると確かに目の前の女性戦士は《アメン》に似ているが、細かい部分が違うようだ。

「そうか、なら済まなかった。……所でさっき、あんた達死体をリュックに詰めていたな。…殺したのか?」

「我々が来た時にはこの二人は死んでいた。
…遺体を回収したのは羂索の言うウィルスとやらを調べる為だ。」

二人の話に耳を傾けながら、マコは小声で鮮血に話し掛ける。

「なんか、悪の組織の首領と女幹部みたいな人達だね。」

『人を見た目で判断するのは良くないぞ。……確かに善人には見えないが。』

マコ達の会話を聞きながら、浅垣灯悟は目の前の怪しい人物達が嘘を付いている様子には見えず、引き続き話を続ける。

「…俺は浅垣灯悟。戦えない人々を守り、犠牲を出さずにこの殺し合いを破壊したいと思っている。」

灯悟の自己紹介に対し、相手の赤い鎧の方が名乗りを上げる。

「…私は《総司令官》。我が母星、メカトピアに所属する軍隊《鉄人兵団》の指揮を任された者だ。」

「“そーしれーかん”?それって、名前じゃなくて役職じゃないの?お名前は?」

相手の威圧感に物怖じせず、マコが尋ねる。

「……名前など、貴様らに教える必要もなかろう。私の立場のみ伝えるだけで充分だ。」

「あっ、ひどい!名前を聞いてるだけなのに!!」

頬を膨らませるマコの横にプンスカという文字が現れる。

それをなだめる鮮血。

マコに構わず、灯悟は質問を続ける。

「…お前はこの殺し合いに乗っているのか?」

「……愚問だな。他人を拉致し従わせる、あの様な輩に従う理由はなかろう。
寧ろ我々は主催に対抗する為に兵を集めている。私には急いで戻らればならん理由があるのでな。貴様らも我等と共に来ないか?羂索に対する憤りがあるのは同じであろう。」

目の前の相手は協力を持ち掛ける。
しかし、浅垣灯悟は長く戦って来た経験か、総司令官の発言に不穏な物を感じた。

「……その急いで戻らなくちゃならない理由って何なんだ?」

赤いヒーローは、機械の軍隊の長に自分の疑問を尋ねる。


136 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:10:40 W7VUxL.E0
「知れたこと。我が母星メカトピアの為に地球征服を行い、人間を奴隷に堕とし、労働力として搾取する事よ。」

「そうか…。ならアンタはここで止める…!」

浅垣灯悟はマコからキズナブレスを貰うと物陰に隠れる様に促し、二体のロボットに対峙する。

「愚かな事よ。個人の思惑は兎も角、今は手を組むのが得策であろう。」

総司令官は相手の判断を憐れむ言葉を発する。

「…今じゃなくても、いずれ地球の人々の平和を脅かす存在を俺は《ヒーロー》として見過ごす訳にはいかない!」

浅垣灯悟―キズナレッドは総司令官―鉄人兵団を秘密結社ゼツエンダーや異世界の魔王達と同じく、人々に災いをもたらす存在と判断する。

そして、例え違う世界の地球の話であっても顔も知らない人々の為に戦う事を宣言した。

その言葉を聞いた総司令官は訝しげな表情を見せた後、空に向かって顔を上げ、大きな声で笑い出す。

「クハハハハハ……、貴様の様な女が“英雄”だと!!…………大軍と対峙した事もなく、一人で自国の行く末までも背負った事のない者が抜け抜けと………、巫山戯るのも大概にしてもらおうか…!!!!!」

笑い声から一転、怒気を込めた声で浅垣灯悟を睨みつける。

「ロボ子よ、気が変わった。
奴を痛め付けろ。……“英雄”を名乗る資格があるのか確かめて見せろ。」

「御意。」

ロボ子―ファイティングジャッカルレイダーは大鎌を構え、浅垣灯悟に対峙する。

と、次の瞬間、黒の女怪人の姿は灯悟の視界から消えていた。

先手必勝。

ファイティングジャッカルレイダーは相手の目にも止まらず、間合いを詰める。

(もらった!)

ロボ子が大鎌を灯悟の首目掛けて、振り下ろそうとした瞬間――



「人衣絆創――」




「――神衣鮮血!!!!!」


137 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:11:41 W7VUxL.E0
相手が何やら大声を出したかと思うと爆発が起き、爆風でロボ子の身体は建物の壁に叩きつけられる。

(爆発!?何処から!?)

ロボ子が立ち上がると、先程の女が居た場所に
、四肢と肩のアーマーを除けばかろうじて豊満な胸と股間を隠したような極端に露出度の高い姿をした痴女が立っていた。

背後に何故か過剰なほどに大きな文字で、「人衣絆奏」「神衣鮮血」という赤い文字がデカデカと映し出されていた。

「⋯⋯姑息な真似を!その様な衣装で総司令官様を誑かそうとは!!
総司令官様!目をつぶって下さい!この衣装は毒です!!!!」

「何?生体兵器なのか?よく分かるな。」

上司と多少ズレた会話を行うが、目の前の相手には警戒を怠らない。

目の前の相手は、続いて腕にはめたブレスレットに何かをセットしている。
『ぺっTURN!!』


「絆装チェンジ!」

「燃え盛る熱き友情の戦士!!」

「キズナレッド!!」

 その瞬間、背後には「燃え盛る熱き友情の戦士キズナレッド」と書かれた文字がドン!と現れると共に、先程より強力な爆発と爆風が起きる。
背後の破壊された乗用車等数メートル飛ばされていた。
相手はヘルメットを被った姿に変わったものの、身体は先程の痴女衣装のままだ。

ロボ子は爆風の中でも、相手と距離を縮めようと、前進する。

「絆創拘束(バンソウバインド)!!」

二段変身を終えたキズナレッドは腕のブレスレットより大型の絆創膏を作り出し、ロボ子に向かい、放つ。

(動きを封じるつもり?舐めないで!!)

ロボ子は難なく避ける。
と、再度大型の絆創膏が迫って来る。

同じ技―と思えば、絆創膏は錐状へと変化し、黒の女戦士に降り注ぐ。

「パイル・カットバンカー!!」

ロボ子は大鎌を振るい、相手の攻撃を跳ね返す。

そのまま、ロボ子は地面に鎌を突き立て、地面を削り、土やアスファルトの瓦礫をキズナレッドに向けて放る。

瓦礫と土埃でキズナレッドの視界が塞がる。

その間に死の神―アヌビスの形を持った女戦士は赤い戦士の背後へと回る。

(今度こそ⋯!)

ロボ子は大鎌をキズナレッドの頭部に振り下ろす。
―それをキズナレッドは片手で受け止める。

「な!?」

そのまま、鎌ごとロボ子を地面に放り投げる。

「ぐっ⋯!」

地に叩きつけられるロボ子。
幾ら怪力を持ち、レイダーによる俊敏性を身に付けたとはいえ、ロボ子は戦闘の素人。

長くゼツエンダーと戦い、異世界で冒険者として過ごしたキズナレッドとは経験・技量が違う。


138 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:12:45 W7VUxL.E0
キズナレッドの方は女性―しかも知り合いに似ているとあって、ある程度の手加減をする余裕があった。

「ふむ、貴様の実力は分かった。確かに“英雄”とほざくだけの力は持っているようだ。」

ロボ子の敗北を受け、素直に相手に賞賛の言葉を贈る総司令官。

「それはどうも。実力が分かった所で、部下に任せるのもそこまでにして、そろそろアンタ自身が出て来たらどうだ。」

「勘違いするなよ、娘。私が認めたのは力の方で、知能の方は落第点だ。」

「何!?」

「たーすーけーてー!!」

戦闘に巻き込まれない様に隠れている筈のマコの声が響き、キズナレッドは後ろを振り向く。

見ると、黒と白の模様の生物――パンダのような怪物がマコを抱き締めている所だった。

「あ〜。」

「ちょっ、このパンダさん!お目々が人の顔になってる!なんか、怖いんだけど!!」

マコは目玉が飛び出んばかりのリアクションをとった後、何とか逃げ出そうと、手足をジタバタ動かす。

―総司令官は街に入る前にシャチパンダヤミーには物陰に隠れ、少し離れて着いて来る様に命じていた。
そして、合図で動くようにと指示を出した。

殺し合いに乗った強者を想定し、不意打ちを行わせる為にとった策であったが、
此度のように人質を取る事にも功を奏したようだった。

「娘よ。戦場では伏兵を潜ませるのが常よ。よく覚えて置け。」

「……卑怯だぞ。」

「陳腐な言葉だな。貴様は他の参加者と一対一の殺し合いを想定しているようだが、私は主催との“戦争”を想定している。
戦の場ではあらゆる手段が許される。
寧ろ、策を労せずに正面から来る等、愚物のする事よ。」

総司令官は赤いヒーローへの話の後、リュックからきびだんごを取り出す。

「さて、貴様にはこの食物を食べて貰おう。
心配するな、毒は入っておらん。
我々と羂索を倒す同盟を結んだ証の様なものだ。」


139 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:13:25 W7VUxL.E0
毒が入ってないのは理解が出来る。
殺すつもりならそんな回りくどい事をせずに、直接殺せばいい。

それなのに、これを食べろという事は―

(洗脳か。)

キズナレッドは相手の思惑に気付いた。
洗脳し、手駒として使うつもりだと。
恐らく、マコを人質にとったパンダの怪物も同じ手法で洗脳したのだろう。

正義のヒーローが悪の組織の手先になる。
それだけは避けなければ。

キズナレッドはこの場をどう切り抜けるか思考を巡らせる。

令呪を使い、マコを助けるか。

しかし、相手は三人。
パンダの怪物はNPCだろうが、敵に令呪を持った者が二人もいるのだ。
ここで使っても助けられる保証はない。

―正確には、敵方で令呪を持っているのは総司令官だけなのだが、
ロボ子は変身していて、参加者の証の令呪・レジスターが見えず、灯悟は彼女も参加者と誤認していた。

手をこまねいているうちにロボ子―ファイティングジャッカルレイダーが立ち上がり、近付いて来る。

「まずは変身を解きなさい。そうしなければ、あの小娘のどこを傷つけて欲しいのかしら?」

「……分かった。」

ファイティングジャッカルレイダーの言葉に従い、浅垣灯悟はキズナレッド及び鮮血の変身を解く。

「素直なのは、良い事だ。では…。」

総司令官は灯悟に近付き、きびだんごを渡そうとする。


140 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:14:06 W7VUxL.E0
と、より灯悟に近かったロボ子がそれを止める。

「総司令官様、その前に…。目を背けて下さい。」

そう言ったロボ子―ファイティングジャッカルレイダーは地面に落ちた自身の大鎌を拾う。
と、次の瞬間、灯悟の着ていた学生服・鮮血は二つに千切れ、地に落ちる。
浅垣灯悟は一糸纏わぬ全裸となるが、その事に気を取られる事はなかった。

「鮮血!!!!!」

『私の事は……、大丈夫…だ。再…生出来る。それより…、マコの事を……頼む。』

千切れた鮮血を尻目にロボ子は総司令官に視線を向ける。

「…同盟を結ぶ前にこの女の心を折りたいと存じます。
見えないだけで武器や能力を隠し持っているかもしれません。
また、心を弱らせる事で貴方により忠実になると思われます。
……失礼ながら、お見苦しい所を見せる為に、総司令官様は暫し、離れて頂きたく存じます。」

ロボ子はその場に跪き、総司令官に許しをこうた。

「……いいだろう。好きにしろ。
確かに“地球のロボット”ではない紛い物の英雄など、躾けてやった方が良いかも知れんな。
それと、私の事なら気にするな。人間がいくら搾乳器官を晒そうとそれに劣情を抱く事はない。」

総司令官は、先程の戦闘でロボ子は不甲斐ない所を見せたので、挽回したいのだろうと判断した。
機械の軍隊の長は自身の装備している杖をロボ子に投げて渡す。

「使い方は分かるな。其奴を死なぬ程度に電流で痛め付けろ。私は近くを見回ってくる。数分で戻るぞ。」

総司令官はそう話すと、ファミレスの奥の店舗へと入って行った。

「総司令官様、有り難う御座います。さて…。」

ロボ子―ファイティングジャッカルレイダーは赤く輝く瞳を赤いヒーローへと向ける。

「我等と“同盟”を組む前に、上下の区別を教えなければね…。」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


141 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:14:58 W7VUxL.E0
「ぐうっ!がぁっ!!」

浅垣灯悟はファミレスから持って来た椅子に座らされ、手足を縛られ、杖から出る電流に耐えていた。

「案外打たれ弱いのね?“英雄”を名乗るからには強いと思っていたわ。」

ロボ子による“調教”が始まって数分―。

時間にしては僅かだが、浅垣灯悟の身体には電流による火傷の跡が所々付いていた。

一方、戻って来た総司令官もファミレスから椅子とテーブルを持ってきて、それに腰掛け、拷問の様子を見ていた。

「強情な奴だ。手を組みたいという我等の誠意を無下にするつもりか。」

総司令官が訪れたファミレスの奥の店舗はロボット専用のレストランであった。

そこから好評と書かれた《純生石油十億年物》のポリタンクを持って来ており、レストランから拝借したグラスに注いでいた。

「不味いな、私の口には合わんぞ。」

石油の味に文句を言いながら、灯悟とマコのリュックの支給品を確認する。
が、期待通りではなかった為、テーブルの上に放置する。

そこでチラリと、人質の小娘と、それを抑えている配下に目をやる。

小娘―マコの方は最早抵抗せずに、目に涙を浮かべ、キズナレッドと名乗った娘の“調教”を見守っている。
反対に気になったのは、クマ科の下僕―シャチパンダヤミーの変化であった。

マコを抱き続けている間、シャチパンダヤミーの体内でのコアメダルは増え続け、ロボ子との戦闘での負傷は回復し、更に技の強化も進んでいた。

(あのクマ科の動物は女を抱くと体内の硬貨が増え、傷が回復するのか…。変わった性質だな。)

シャチパンダヤミーの体質についてはロボ子も推測していたが、ここで総司令官も把握する事となった。

そして、ロボ子が千切った衣類にも目をやる。

支給品の説明書で確認した《鮮血》という戦闘用の衣類との事で、2つに千切れたにも関わらず、再生している。
ただ制限の為か完全に再生した訳ではなく、継ぎ接ぎの様な見た目で無理矢理引っ付けた様な不格好だ。

加えて、《鮮血》は血液がないと戦えないという。
娘―キズナレッドを助ける者はこの場にいないという事だ。

しかし―、キズナレッドこと浅垣灯悟はしぶとくその肢体に傷が幾らつきようとも、唸り声を上げるだけだった。

拷問を受けても屈しない力強さを見た総司令官は、言葉で堕とそうと、灯悟に近付く。


142 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:16:07 W7VUxL.E0
「……貴様の支給品の説明を読んだぞ。
“絆”とやらがないと作動せぬ欠陥品ではないか。」

ピクリと赤い戦士の顔が上がる。

「私が戦い、認めた“英雄”は違う。
その様な道具など頼らずとも、策略で数万もの軍勢を封じ込めたのだ。
……手駒に子供を使ってな。」

「何…だと?」

「聞こえなかったのか?
それこそ貴様の言う“絆”を使い、奴は子供を兵士とし、自分の手足として使ったのだ。
子供の方も調教が行き届いているのか、疑念の様子も見せず我が兵と戦ったわ。
素晴らしいであろう。正規の軍隊を使わずに捨て駒で戦力を削ぐ。
まさに“絆”が紡ぎ出す美しい戦法よ。
貴様も私と絆を育み、共に主催を倒そうではないか。」

浅垣灯悟に向け、手を差し出す総司令官。
それに対し、灯悟は顔を背ける。

「…そんなずる賢いタヌキみたいな奴のやり方なんて…俺は…認めない…。」

「残念だ。未だ地球が我等《鉄人兵団》に蹂躙されていないのはそやつのお陰だと言うのに。
奴はこの会場にも呼ばれている。
地球を命懸けで守った者には酷だが、会ったら直接批判して貰おうか。」

総司令官は会話は終わりと灯悟から離れようとするが―、

「もうやめて!なんでこんな事をするの。あの脳ミソの人を倒したいのなら、素直に仲良くすればいいじゃない!!」

シャチパンダヤミーに拘束されたままのマコが涙ながらに大声を上げる。
彼女は、悪の首領にいがみ合いを止めるように嘆願する。

「…小娘。それは出来ぬ相談だ。確かに羂索を倒す為、他の参加者と手を組まねばならん。
しかし、問題はその後、羂索を倒す際の話だ。


機械の軍隊の長は、白い服の女子高生を諭すように話す。

「この殺し合い、奴らも反攻を受ける事は承知の上。参加者に対する戦力も確保しているだろう。
恐らく、奴らを倒したとしても、生き残るのは一握りの者だけだ。
……皆、その中に入りたい筈だ。その事で、仲間内で揉めては話にならん。
……誰かが皆を纏め、一致団結せねばならん。
それを考えている者がこの場に何人いるかは知らんが、私は私に忠実な者達で纏めたい。それに従わぬ者など邪魔者でしかない。」

「……ふん、偉そうな事を言いながらも、参加者グループの主導権を握り、結局は自分だけが生き残りたいだけじゃないか。」

マコと総司令官の話に入り込む浅垣灯悟。

それに対し、顔色を変えず総司令官は答える。

「減らず口は立派だな。貴様の言う通りだ。だが、それに何の問題がある?
有象無象の人間の命等、我等ロボットに比べれば生かす価値のないものだ。
それを主催一味を狩る為に役立てる――犠牲になってもらうだけだ。
ゴミに役目を与えるのだ。有り難いと思われても良いと思うのだがな。」

「……間違っている。お前のように他者を差別し、人の命を何とも思っていない…。寧ろ、犠牲になるのが当然だと思う考えが!!
そんな“絆”を否定する様なやり方、俺は認めない…!!!!」

赤いヒーローは悪の組織の首領の発言に対し、真っ向から反論する。

「ほう…、では聞こうか。一人の犠牲もなく、この場から百五十人近い参加者を逃がす方法を。」

「それは………。」

「どうした?答えないのか?
貴様も本心では分かっているだろう。能力が制限されている中…、『百人以上も救うのは、無理だと。』。」

「加えて、貴様が陥っているこの状況…。
あの小娘の命を無視すれば、助かるものを。
戦闘において、勝利には常に犠牲が伴う。
敵方の兵、味方の兵、…お前も“英雄”を名乗るからには、犠牲を払って勝って来たのではないのか?」

総司令官の言葉は否定出来なかった。

キズナシルバーこと二階堂天理。

灯悟の想い人であったが、絶縁王との戦いで自分を庇って、命を落としてしまった。

また冒険者となってからでの戦い。
そこでも、多くの人々の死を見てきた。
戦いの影には味方であれ、敵であれ、犠牲がついて回った。

「娘よ、改めて言おう。
あの小娘は死ぬ。何の力も持たない者なぞ、この場所に呼ばれた時点で死は確定している。
今、助かっても、次の放送、その次の放送、そして主催との決戦…。
どうだ、そこまであの小娘を守り続ける自信はあるのか?」

「それは……、」

「貴様が“英雄”としてすべき事は、あの小娘を見捨て、強者のみを集め、主催を打倒する事だ。…でなければ、第二、第三の殺し合いが起こるかも知れんぞ?そうなれば、今以上に人が死ぬ。……我が《鉄人兵団》としても採取する労働力が減るのを避けねばならんのでな。貴様が協力してくれると助かるのだが。」

「断る!誰がお前達の仲間なんかに……」

そこで総司令官は振り向く。後ろにロボ子が来ていたからだ。


143 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:17:20 W7VUxL.E0
「総司令官様、続きを…。」

「済まなかったな、お前の出番を取ってしまう所であった。」

「では…。」

総司令官は後ろに下がり、
再びロボ子は調教の名目で、キズナレッドを痛め付ける。 


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◆◇◇◇◇◆◇◆◆◆◆


それから数分、再びキズナレッドは拷問を受ける事となる。

この様な絶望的な状況の中で彼女達にとって運が良かったのは総司令官が近くにいた事だ。

女性に嫉妬し、憎むロボ子にとって、この二人も殺害の対象であった。

しかし、総司令官が仲間を募っている今、無闇に殺す事は出来ない。
そんな事をすれば、たちまち総司令官の信頼を失う。

だからこうやって痛め付けて、憂さを晴らしている部分もあった。

「こんな破廉恥な服を着て、何人の男を誘惑したのかしら!よりにもよって、総司令官様も毒牙にかけようとするなんて!!」

始めと比べ、痛め付ける力にも言葉による暴力にも熱が入るロボ子。

「俺は…、男だ……。」

辛うじて、否定の言葉を捻り出す。

その言葉にロボ子はハッとする。
確か、奴らの支給品の中に性別を変える物があったと気付く。
しかし―、それがなんだというのか?
筋力低下を狙い敵を女体化するならまだ分かる。
だが、コイツは自分自身に使っている。
戦闘で自ら性転換する理由が見当たらない。
つまりコイツは自らの歪んだ性的嗜好の為に使っている。
“英雄”どころかとんだ変質者だ。

説明書には載っていない《鮮血》に適応する為に性転換したとは知らず、ロボ子は憤りを覚える。

「へぇ、そう。……男をやめてまで、総司令官様と見初められたかったの。添い遂げたかったの。」
「………ん、」

敢えて猫撫声を出し、身体を屈め、灯悟の右乳房に手を当てる。
これまでと違い、優しい物言いと攻め方に歴戦のヒーローも動揺を覚える。

「分かるわ。格好良いものね。……低俗な人間の――男のままではいられなくなるわよね。」

灯悟の乳房の輪郭に沿って、指を這わせる。
ロボ子は顔を灯悟に近付け、耳元で囁く。

「図に乗るな。人間の分際で、あのお方の気を引こう等と。」


144 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:18:15 W7VUxL.E0

次の瞬間、ロボ子は、右側の乳首を指で摘んで――潰す。


「―――っ!!!」



「これじゃ、愛しい総司令官様に吸ってもらえないわね。
…片方だけじゃ可哀想だから、もう一方も失くしてあげる。」

もう片方の乳首も潰そうと乳房に指を這わせるが…。


「……その位にしておけ。これ以上、負傷させると使い物にならなくなる。」

総司令官はロボ子が何を言っているかは聞こえない。
しかし、灯悟の身体に傷が増えているのが見え、“駒”としての価値が下がるのを心配したのだった。

「……そうですね、では。」

ロボ子はキズナレッドが捨てたきびだんごを拾うと、それを自身のつま先――地面へと落とす。
そして、浅垣灯悟を縛っている手足の紐を解く。

「下等な人間……、口で拾いなさい。
人間が犬にするように。主人に媚びて、忠実になる証を受け取りなさい。」

分かっている。
この食物は先程考えた通り、相手を従える・洗脳する物だと。

正義を志す浅垣灯悟にとって、悪に屈し、また悪の組織の一員として悪事に加担する訳には行かない。

しかし―チラリとマコを見る。

マコは口を塞がれて苦しそうな状態であった。
パンダの怪物の腕の力も徐々に強まり、マコの体力の消耗も見て分かった。

「……分かった。」

赤いヒーローは―、キズナレッドは敗北を受け入れた。

殺し合いの序盤にて、何も成せずに悪に下る事はヒーローとして許されない。

――しかし、たった一人の危機も救えられない等、ヒーローとしても人間としても失格だ。

身も心も悪に屈したヒーローは犬のようにかがみ、悪の首領への忠誠の証に唇を付けた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


145 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:19:40 W7VUxL.E0
痴女―キズナレッドがきびだんごを口に入れた。
間もなく、総司令官様の忠実な下僕となるだろう。

(さて、次は…。)

次はパンダの怪物が捕まえているあの小娘だ。

足元の痴女は戦力になるから生かすと妥協しても、何の役にも立ちそうもない小娘は生かしておく必要はない。

痴女に再三、小娘を処分する様に説いていたが、時間を置けば、総司令官様はあの小娘までも仲間にすると言いかねない。

それは困る。
あの方に仕える女性は私一人のみ。
他の女は殺すか、洗脳し、捨て駒とする。

総司令官様の指示が出る前に――その前に首を刎ねる。

あの小娘が戦力にならない事は、目に見えて分かる。

殺した後なら、いくらでも言い訳が思い付く。

そう考えた後、目にも止まらぬ速度で、小娘の前へ来る。

後は首を刎ねるのみ――。

その時だった。

緑色の電撃が私とパンダさんに降り注いだのは。

「あ〜。」

衝撃でパンダさんは小娘を抑えていた手を離してしまう。

「だ、誰!?」

辺りを見渡すと近くの民家の屋根に人影が見えた。

「トゥ!!!!!!」

掛け声と共に、その人影が降りてくる。

その人物は全身が緑色で昆虫の様な触覚が頭にあり、脇腹には虫の様な脚が存在していた。

まるで人間と昆虫を組み合わせたその化け物は 小娘を守るかの様に私の前に立ち、ハッキリとした声を出した。

「悪い奴は許さない。」

異様な外見に加え、リュックも無く、手にはレジスターも令呪もない。

―それは明らかに参加者ではない、本来主催の手駒である筈のNPCモンスターであった。

(何故、NPCが参加者の味方を!?)

チラリと小娘に目をやる。
彼女は怪物が助けに来たのが信じられない様子だった。
此方のパンダさんと違って、洗脳されている訳ではないようだ。

だが問題はない。
新たに配下になったキズナレッドを向かわせればいい。

キズナレッドもそれに応えるかの様に立ち上がり、落ちていたセーラー服を拾う。

「キズナレッド!!貴方も総司令官様の下僕になったのなら、コイツを…。」

言い終わる前に、私の顔面に何か生温かいモノがかかる。

下を見ると唾液の付いたきびだんごが落ちていた。

キズナレッドはきびだんごを口に含んだものの、飲み込まず、乱入者が来て幸いと吐き出したようだ。

「人衣絆創――」

「――神衣鮮血!!!!!」

キズナレッドは変身し、乳房の露出した痴女の格好になる。

「この痴女が…!!素直に総司令官様の奴隷になれば良いものの…!!!!!!」

怒りの余り、手に持った総司令官様の杖を落としてしまう。

「落ち着け、奴は手負いだ。」

激昂する私に対し、後ろから総司令官様が落ち着いた声で助言を送る。

私はその声で冷静になる。

彼女は私に対し、戦闘の構えを取る。
今度は二段階目の変身は行わないようだ。
私は宙より、大鎌を生成し、戦闘に備える。

「その《鮮血》の説明文も読んだが…、生物の血液を必要とする欠陥品だったな。
2度の欠陥品に続き、動向者が無力な小娘では先が思いやられるな。」

「勝手に欠陥品と決めつけるなよ…!皆の、《絆》の力を見せてやる…!」

相手が何かをほざくが私に―、私達には関係がない。

私と総司令官様には唯一無二の力―

《愛》があるのだから。


146 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:20:37 W7VUxL.E0
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◆◇◇◆◆◇◆◇


一方、《鉄人兵団》の一員であるシャチパンダヤミーは、乱入して来たNPCと対峙していた。

「あ〜。」

「悪い奴は許さない。」

この殺し合いで初めてのNPC同士の戦い。
そして、説明は後になるが、これは同族同士での戦いでもあった。

シャチパンダヤミーは右手の爪を伸ばし、攻撃を仕掛ける。

対する緑色の怪人は避けて、反撃の糸口を伺うが相手にその様子は見えない。
逆に少しずつ爪の切っ先が当たり始めた。

ならばと怪人の方は、触覚から電撃を出し、相手と距離を取ろうとするが、相手も空中から回転するヒレを繰り出し、電撃を弾いてしまう。

シャチパンダヤミーの技の威力や体術等はロボ子と戦った時より上がっていた。
長く女性を抱き、体内のセルメダルから得る力は膨大。
緑色の怪人は灯悟達の助太刀に来たものの、なす術のない状態であった。

「あ〜。」

パンダの怪物は大きな頭を、緑色の怪人に押し付け、後退させる。
その際にすかさず、右手の爪を怪人の脇腹に刺す。
また頭上から、鋭利なヒレを召喚し、両肩に刃を喰い込ませる。

「ゔぅ…。」

怪人は脇腹や肩の傷口から硬貨の様な物をこぼしながら、後退する。
膝さえつかなかったものの、負傷は酷く、立っているのもやっとの様子だった。

浅垣灯悟の様子も悲惨な物であった。
ロボ子の尋問による怪我と総司令官の言葉責め。
精神と体力を消耗した状態では、先程とは違い、明らかにロボ子に押されていた。

「さっきの勢いはどうしたのかしら!」
「くっ…!」

鮮血も拷問による体力の消耗を察して、血液の摂取を余り行わなかった。
また絆エネルギーが少なく、キズナレッドへの変身も行えない。
それが戦闘力の大幅な減少を招いていた。

緑色の怪人もパンダの怪人に押されて、テーブルの近くへと倒れ伏す。

「虫さん!!!!!」

今迄は戦闘の恐怖で動けなかったが、身体の自由を得たマコは辺りを見渡す。

幸いな事に総司令官の視線は、浅垣灯悟の方へ向けられていた。

また彼は自身の杖を回収する為、ロボ子側へ動いていた為、テーブルからも多少の距離が出来ていた。

マコは駆け出し、テーブル上のリュックから、最後の支給品を取り出し、怪人に駆け寄る。

「お願い、虫さん!レッドさんを助けて!!」

マコは支給品のスイッチを押すと緑色の怪人に押し付ける。
すると、支給品は怪人の身体に入り込み、次の瞬間黒い影が怪人を包んだ――。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ハッピー・バースデイ!新しい■■■■の誕生だ!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


147 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:21:39 W7VUxL.E0
――黒い靄が晴れ、緑色の怪人が立っていた所に三色のヒーロー、いや新たな怪人が立っていた。


鷹のような鋭い瞳に嘴。
虎のような長く鋭い爪。
飛蝗のような筋肉質の両脚。


そこにはそれぞれの動物の力を模した存在、《仮面ライダーオーズ》が居た。


――正確には、それはオーズではない。

アナザーオーズ。

タイムジャッカーという時間を操る者達によって、本来の変身者からオーズの資格を取り上げ、別の人物に無理矢理資格を与えた、英雄を否定した怪人であった。

最後の支給品の名は《アナザーオーズウォッチ》。
タイムジャッカーが使うライダーの力を奪い、分け与える道具である。

「最後の支給品か。私とした事が見物などせずに、最初に取り上げればよかったな。」

流石に総司令官は気付き、杖を構え、自身も参戦しようとする。

「あ〜!あ〜!」

その前にシャチパンダヤミーが動き出す。

「ほう、獲物を私に取られたくないか。全く血の気の多い手下共よ。」

軽口をたたきながら、総司令官は再び傍観に入る。

アナザーオーズとなった緑色の怪人は再度パンダの怪物と向き合う。

「あ〜!!」

シャチパンダヤミーにとっては姿は違えど、元々の敵である《オーズ》との邂逅。

意志はなくとも容赦する事はなく、空中からのヒレの乱射で、仕留めようとする。

「トゥ!!!!」

オーズの名を持つ怪人は、空中に飛び上がった後、鋭利な爪でヒレを一つずつ落としていく。

パンダの怪物は、地上で迎え撃とうとし、右手の爪を伸ばすが、相手は地に足が付いたと同時に跳躍し、敵との間合いを詰めさせない。

アナザーオーズの下半身は昆虫である。
緑色の怪人にとって、慣れた足技で相手を翻弄する。

「悪い奴は⋯許さない。」

今度はオーズから仕掛ける。

跳躍を続け、相手の間合いを詰めていく。
そして、虎の鋭い爪で相手の身体を抉っていく。

「あー!あー!」

アナザーオーズの俊敏性は、シャチパンダヤミーのトリッキーな動きを封じ、防戦一方にしていた。

偽りの王の爪が動く時、パンダの怪物のメダルの鎧が少しずつ剥がれていく。

防戦だったレッドも助っ人の―アナザーオーズの善戦の様子を見て、希望の光を見出す。


148 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:22:47 W7VUxL.E0

―しかし、その希望を破壊せんと、戦闘中のキズナレッド達の背後から、数発のミサイルが飛んでくる。

反応が遅れたキズナレッドは躱しきれず、何発かの攻撃を受けてしまう。

「ぐはっ!!」

地に倒れる赤い戦士。

ミサイルは続けて発射され、今度は満艦飾マコを狙う。

「やめろ!!!!!」

ダメージを受けたキズナレッドはすぐに立ち上がれない。

しかし、隣のアナザーオーズはその跳躍を生かし、マコとミサイルの間に滑り込む。

そして―その身全てにミサイルの集中砲火を受けた。

「お前⋯!!」「虫さん!!!!!」

ミサイルの直撃を受けたアナザーオーズの変身は解除され、元の緑色の怪人がマコの前に横たわる。
側にはカランと《アナザーオーズウォッチ》が転がる。

「すまんな、伏兵が一人とは言ってなかったな。」
悪ぶれもなく、総司令官は言葉を発する。
キズナレッド達の背後からブリタニア帝国最強のナイトメアの一角、《パーシヴァル》が現れる。

市街地に入る前、総司令官は自身の支給品《サイコントローラ》で《パーシヴァル》を遠隔操作し、シャチパンダヤミーと行動を共にしていた。

そして、頃合いを見て、シャチパンダヤミーをマコの背後に回る様に誘導し、パーシヴァルはロボ子とシャチパンダヤミーが敗北した時の為に、隠していたのだ。
ハドロン砲を使わず、ミサイルで攻撃したのは浅垣灯悟を生かして手に入れる為であった。

「さて、貴様の手札は尽きたようだな。
これが最後の機会よ。我が《鉄人兵団》に加われ。
今なら、その小娘と虫ケラの狼藉も許してやろう。寛大であろう?」

寛大とは程遠い、傲慢な物言いに正義のヒーローが首を縦に振るはずもなかった。

再び、負傷を押して立ち上がり、悪の首領と対峙する。

「その心意気は良いな。…私自ら、最後の兵団の入団試験をしてやろう。」

総司令官は《パーシヴァル》を自分の側まで移動させるとそれを纏い、自身の杖を赤い戦士に向ける。

今度こそ、勝たなければ。
鮮血も、あの善良なNPCも、そしてマコも終わる。
こうなったら令呪を使うしかない。
最悪の場合、ここで全部使い切る。


命を掛けても――。

キズナレッドが死を覚悟して戦いを臨もうとした―


149 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:23:49 W7VUxL.E0
―その時だった。
地面が大きく揺れたのは。

「な、何だ!!」

「地震か!?こんな時に……。」

地面からの大きな振動に両陣営とも動きが止まる。

そして――、轟音がその場を支配した。

「み、見て!!お城が!!!!!」

マコが、街の外れを指差す。

そこにはコーカサスカブト城が立っていた。

しかし、その外装には火の手が上り、外から見える窓は全て溶け落ちていた。

そして――、彼らは、見た。

荘厳な城が頂上から崩れ、倒壊する様子を。

その後―、爆音と共に、強風が両陣営に襲いかかる。

「おのれ…!!」「きゃあーー!!!!!」

総司令官は杖を、ロボ子は鎌を地面に突き立て、耐えようとするが勢いは凄まじい。
まるで台風の中に放り込まれたようだ。

「あー!あー!」

その時、総司令官の目に、地面に爪を立てて耐えるシャチパンダヤミーの姿が映った。

「クマ化の下僕よ!!ロボ子を抱け!!!急げ!!!!!」

「あー!!!!!」

欲望の力か、シャチパンダヤミーは這いつくばった姿勢でも素早くロボ子に辿り着いた。

「総司令官様!何を……キャア!!!」

ロボ子を抱くシャチパンダヤミー。
すぐに体内にはメダルが生成される。

「そのまま、背中を風の方に向けろ!!ロボ子も出来るだけ弱い力で抱け!!!」

総司令官の指示に従うシャチパンダヤミー。
メダルの重さで風除けが出来、総司令官は影に隠れる。

「……総司令官様の為のこの身体……、二度も三度もケダモノに………。」

何やらロボ子がブツブツ言っているが、取り敢えずは耐えれそうだ。


150 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:24:22 W7VUxL.E0
一方、キズナレッド側は《鉄人兵団》側より余裕がなかった。

戦闘によるダメージで、浅垣灯悟の身体は限界であり、
鮮血共々、最早動けない状態であった。

と、同じく負傷し動けない筈の緑色の怪人が何とか這って、マコを抱き締める。
そのまま激しい爆風の中、キズナレッドにも近づき同じく抱き締める。

「やめろ⋯、やめてくれ⋯。」

思い人の二階堂天理の件も含め、庇われる行為に良い思い出のない浅垣灯悟はそれを拒絶する。

しかし、緑色の怪人はそれに構わず、強く力で抱く。

「悪い奴は、許さない。」

瞬間―緑色の怪人の重量が増え、シャチパンダヤミーと同じく、自らを風の盾としていた。

(奴も女を抱くと体重が増えるのか?)
(…なんて嫌らしい種族…。)

総司令官とロボ子も横目で彼等の様子を見るが今は構っている場合ではない。

その場にいる者達はただ風が止むのを待った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


キズナレッド―浅垣灯悟は裸体のまま、拷問を受ける以上に恥辱を感じていた。

誰も倒せず、何も守れない。

ヒーローとして失格な行為を続けた自分。
それに対し、緑色の怪人はマコや自分を守り続けている。

己の無力さ、不甲斐なさを感じながら、押し潰されそうな心で暴風に耐えていた。


◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇


151 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:25:02 W7VUxL.E0
数分間、彼等は地に伏せ、風が止むのをただ待った。

ある程度、爆風が落ち着き、顔を上げると城のあった所には爆煙が立ち昇っていた。

周りを見ると爆風により、幾つかの民家・建物は倒壊し、見るも無残な様子になっていた。
辺りの乗用車はあちらこちらに飛ばされ、ファミレスも鉄骨が残るだけの無残な様子となっている。

誰もが動けない中、最初に言葉を発したのは総司令官だった。

「……撤退だ。早くここから離れるぞ。
城を破壊した連中が此処に来るかも知れん。」

「…は、はい。」「あー…。」

機械の軍隊の長はそう言うと、二体の配下と共に城の反対側へと進む。

「……ま、待て。」

浅垣灯悟は彼らを呼び止める。
それに応えるかのように総司令官は足を止める。

「……娘、いや、《キズナレッド》よ。貴様を“英雄”として認める訳にはいかんが優れた“戦士”としては認めてやろう。
そして忠告だが、あの城には近付かん方がよかろう。
無論、生存者もいるかも知れん。しかし、あの爆発ではまともに動ける者はおるまい。
負傷者の様な足手まといを庇うと貴様も羂索に名前を呼ばれる者の中に入るぞ。」

「な!?」

「そして、意地をはるな。
先程の食物を食べずとも、私と手を組む事が生存率を高める事になる。
私が唯一認めた“英雄”にも言ったが、我が《鉄人兵団》への入団、気長に待っているぞ。
……出来れば、そこの役立たずを自らの手で“処分”している事を願うがな。」

その言葉と共に、部下を引き連れ、機械の軍隊の長はその場を離れた。

対するヒーローは何もせず、立ち尽くしていた―。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


152 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:26:21 W7VUxL.E0
数分後、キズナレッド一行は近くの民家にいた。
いや―、民家だった廃屋にいた。

皆、手負いの為、その場を動けなかった。
城の倒壊から数分間は警戒したが、城の方角から危険人物は来る事はなく、怪我の手当てと休息の為、ある程度形を残した近くの民家へと移る事にした。
皆を救った緑色の怪人も着いてきた。

「取り敢えず、悪の組織の人達から助かって良かったね。
でも、お城を壊した人達もいるし、もっと強い仲間を集めないと。」

マコは再度、《キズナブレス》を介して鮮血と会話を行う。
灯悟の方は、疲れたのか壁にもたれ掛かって、座り込んだままだ。

『仲間…、私は総司令官の話にあった奴の世界の“英雄”が気になるのだが…。』

異世界の侵略者、宇宙規模の軍隊・鉄人兵団。
数万の軍勢と一人で対峙した存在。
本当なら、まさしく《英雄》に値するが…。

「でもその人、子供を戦わせて相手の戦力を削っていたんでしょ?そんなずる賢いタヌキみたいな人と組んだら、私達なんかあっという間にボロ雑巾みたいに使われて捨てられちゃうよ。」

『しかし、それはあの男、総司令官の話だ。嘘を付いているとも…。』

「そんな風に見えなかったけどなぁ。」

実際、嘘は付いてないのだが、敵からの視点で見え方が違う事に、この場の人物達は気付いていなかった。

『…ところでマコ。自販機の事だが、先程のパンダの怪物やこの虫の怪人が負傷した時に出て来たメダル…。ひょっとして、あれが使えるんじゃないのか?』

鮮血は移動の際に拾った数枚のセルメダルを見せる。

「ないない。そんな出来の悪い二次創作じゃなんだから、都合の良い事なんて起きないよ〜。」

『ん、そうか…?しかし、試しに使ってみてもよいのでは?どう思う、灯悟――。』

と頭上の赤いヒーローに呼び掛けて気付く。

その瞳が何も映ってなく、真っ暗な事に。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◆


153 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:27:11 W7VUxL.E0
キズナレッド、浅垣灯悟は失意の中にいた。

ロボ子の拷問の傷も痛い。
しかしそれ以上に総司令官の言葉の刃がキズナレッドの臓腑に突き刺さっていた。

この殺し合いで誰も犠牲にせず、戦えない者を守ってみせる?
馬鹿な事を。
―既に犠牲は出ているのだ。

最初の広間での二人の見せしめ。
市街地にて総司令官と配下のロボットが持っていった遺体。
そして、目の前で起こった城の爆発。
これで何人亡くなっただろうか。
―彼らはもう大切な人と“絆”を紡ぐ事は出来ない。

分かっていた。
自分は何も守れていない。
殺し合いを破壊するどころか、今の所、羂索やクルーゼの目論見通り、殺し合いは進んでいる。

総司令官との戦いでも、自分は役立たずだった。
決して判断を誤らなければ、勝てる筈だったのに。
自分達が生きているのは、善良なNPCがいたからだ。

奴の―総司令官の言う通りだ。
自分一人で、全ての人間を救う事は出来ない。

なら、参加者の事は諦め、主催陣を倒す事に専念すべきでは――。



「レッドさん…。ダメだよ、そんな顔しちゃ。」


ハッと我に返る。
目の前には不安そうなる顔をしたマコの姿があった。

「今のレッドさん、あの“そーしれーかん”と一緒。皆を助ける事を諦めて、脳ミソの人を倒す事だけを考えている。」

「大丈夫。今、殺し合いに乗っているのは元の世界でも悪かった人だけだよ。
…でも、こんな事が続いたら、他の参加者も悪い人達に騙されて、殺し合っちゃう。
そうなったら、例え脳ミソの人達を倒しても、悪い人ばかりが生き残っちゃうよ。
レッドさんはそんな人達を助けたいの?」

善人を見捨て、悪人を見逃す?
そんな事は許されない。
許してはいけない。
弱者が泣き、悪が笑う。

そんな光景をなくす為にヒーローになったのではなかったのか。

だとしたら、危うく間違いを犯す所だった。
ヒーローの目的は相手を倒す事じゃない。
人々を救う事だ。

マコや助けを求める人々を救えないのなら、キズナレッドを辞めてもいい。

これがただの開き直りと後ろ指を刺されてもいい。
偽善と嘲笑されても構わない。

大切な物を―《絆》を守る為に、俺はヒーローになったんだ―。


154 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:28:16 W7VUxL.E0

「それと、ごめんなさい。私がお城に行きたいって言わなかったら、レッドさんはこんな目には…。」

「気にするな。お陰で《鉄人兵団》という危険人物達な情報も手に入れて、城を爆破出来る様な参加者も居る事も分かった訳だしな。」

謝るマコを慰める浅垣灯悟。
その顔は先程と違い、晴れやかであった。

『…どうやら、立ち直ったようだな。』
鮮血も灯悟の変化に気が付く。

「ああ、お陰で……、




俺は男を辞める決心が着いた。
俺は……、制服の似合う女子高生になる!!」





「え!?」
『何っ!?』
「悪い奴は許さない。」



レッドの言葉に三者三様、様々な反応を見せる。

一般視聴者やスポンサーからは苦情が来るであろう男児向けヒーローによる突然の大幅な路線変更。
その場にいる意思ある者達は唖然とする。

『灯悟、まさか、あの食物を口に含んだ副作用が…。
悪には堕ちなかったが、雌には堕ちていたのか…?』

「レッドさん、拷問を受け過ぎて、目覚めてしまったの!?
ダメだよ!心まで女の子になったらイドラさんはどうするの!?」

男らしいヒーローの鏡の様な人物の衝撃発言に動揺する一人と一着。
彼らはヒーローの望まぬ方向への【覚醒】を止めようとする。

「ああ、違うんだ。俺は心の中まで女の子になりたいんじゃない。
……正直、俺はこの身体になった事を恥ずかしいと思っていた。でも一番恥ずかしいのは、ここにいる参加者を守れない事だと気が付いたんだ。
もう男の衣類や下着にも拘ない。
鮮血を使いこなす為に…、制服の似合う女の子になる。
だから…、新たな戦力になるアイテムが見つかるまで、俺はこの身体で―鮮血と共に戦うよ。鮮血との絆も大切にしたいしな。」

『灯悟…。そこまで私の事を……!!!!』

(大丈夫?目覚めてる?目覚めてないよね?)

感涙する鮮血に対し、複雑な表情を見せるマコ。


155 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:29:36 W7VUxL.E0

「それに…、俺はコイツとも絆を育みたい。」

灯悟の視線の先には、アナザーオーズ――に変身していた緑色の怪人の姿があった。

「お前のお陰で皆は助かった。感謝してもしきれない。…ありがとう。」

「悪い奴は許さない。」

礼を言う灯悟に対し、同じ言葉を繰り返す緑色の怪人。

「…きっとこの人も、元の世界ではヒーローだったんだよ。だから、NPCになって自我を失っても皆の為に戦ってくれるんだよ。」

マコはそう話すと、緑色の怪人を変身させた《アナザーオーズウォッチ》に目をやる。

「ねぇ、この人の名前が分かるまで、この支給品の名前をもらって、《仮面ライダーオーズ》って呼ばない?」

「オレは賛成だ!コイツは誰よりもヒーローらしい行動をとったんだ。それに合った名前があって当然だ!!」

『確かに⋯、名無しというのも呼びにくいしな。私は構わないが。』

「みんな、ありがとう!今から貴方の名前は《仮面ライダーオーズ》だよ。よろしくね!オーズさん!!」

「悪い奴は許さない。」

喜んでいるのかは分からないが、緑色の怪人―、《仮面ライダーオーズ》はマコの言葉に答える。

一息つき、浅垣灯悟は周りを見渡す。

マコに鮮血、そして自分。
皆、生き延びた。

そして新しい仲間に、善良な―いや、《正義》のNPC・仮面ライダーオーズが加わった。

彼と《絆》を築いていけば、きっと多くの参加者を救え、主催も倒せるだろう―。

浅垣灯悟――キズナレッドは殺し合いの中で出会った《英雄》に感謝をしていた。


156 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:30:46 W7VUxL.E0

【E‐4/市街地の民家/ 9月2日午前7時50分 】



【浅垣灯悟@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:女体化、ダメージ(大)、精神的なダメージ(大)[若干、回復。]、右乳首欠損、若干の火傷
服装:鮮血@キルラキル
装備:キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
令呪:残り三画
道具:ライドベンダー@仮面ライダーオーズ/OOO、なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)@ドラえもん、セルメダル数枚@仮面ライダーオーズ/OOO、ホットライン
思考
基本:皆の絆を断とうとする主催陣営を倒し、殺し合いを止める
01:マコや《仮面ライダーオーズ》と共に行動する。彼等との“絆”を深めたい。
02:イドラやマコの仲間と合流する。または、殺し合いに反対する者達と“絆”を紡ぐ。
03:衣類には拘らない。俺はヒーローとして、《鮮血》と絆を深める為に、女子高生になる!
04:もしイドラが自分の知らない場所で死んでしまった時は……
参戦時期:少なくともキズナレッド・バースとの交戦前
備考
※女体化した後の外見はキズナレッド・バースの一人である浅垣灯子と酷似しています。
※元着ていた服はドラゴンに燃やされました。
※女体化している時のみ、鮮血を装備できます。
※情報交換し、キルラキル世界の事を多少知りました。
※纏流子を味方で、鬼龍院羅暁を危険人物と認識しています。
※総司令官と配下のロボ(ロボ子)、パンダの怪物を危険人物と認識し、警戒。
※ロボ子はファイティングジャッカルレイダーに変身していたので、外見を知りません。
※総司令官の語る“英雄”は、ずる賢いタヌキで『子供を駒にする危険人物』と思っています。


【満艦飾マコ@キルラキル】
状態:膝に擦り傷、軽傷(ヤミーに抱き締められた時のもの。)
服装:セーラー服
装備:ころころダンジョくん@Toloveるダークネス
令呪:残り三画
道具:アナザーオーズウォッチ@仮面ライダージオウ、ホットライン
思考
基本:殺し合いなんて間違ってるよ!
01:レッドさんと《仮面ライダーオーズ》さんと共に行動する。
02:流子ちゃんやイドラさんと合流する。
03:レッドさん用の服は…探さなくていいの?
レッドさん、“目覚めて”ない?
参戦時期:少なくともカバーズから救出された後
備考
※名乗った時などに背後に現れる文字は誰からも視認できます。
※キズナレッドの世界の事や転生した異世界の事を灯悟から教えて貰いました。(理解しているかは分かりません。)
※そーしれーかんと配下のロボ(ロボ子)、パンダの怪物を危険人物と認識し、警戒。
※ロボ子はファイティングジャッカルレイダーに変身していたので、外見を知りません。
※そーしれーかんの語る“英雄”は、ずる賢いタヌキで『子供を駒にする危険人物』と思っています。

[鮮血(意志持ち支給品)@キルラキル]
状態:中度の損傷(再生中)
思考
基本:仲間と共に殺し合いの打破。
01:灯悟やマコを導き、共に戦う。
02:流子と合流したい。
03:総司令官の世界の“英雄”は本当に危険人物か?
04:《仮面ライダーオーズ》…。信用出来るのか?
※キズナレッドの世界の事や転生した異世界の事を灯悟から教えて貰いました。
※総司令官と配下のロボ(ロボ子)、パンダの怪物を危険人物と認識し、警戒。
※ロボ子はファイティングジャッカルレイダーに変身していたので、外見を知りません。
※総司令官の語る“英雄”の『危険人物』と言う話を疑問視しています。


157 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:31:44 W7VUxL.E0
◇◆◇◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


何処かで赤い鳥が泣き、悪が嗤った―。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


傷心から立ち直った浅垣灯悟は気付かない。

己の変身アイテム―【キズナブレス】の絆エネルギーが増えていない事に。

――《仮面ライダーオーズ》に絆の力を感じない事を。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇


灯悟もマコもお互いにいがみ合った者や敵を仲間にして来た経験があった。
彼らの中に、殺し合いに乗った者や意思のないNPCモンスターでも仲間に出来るという思いが少なからずあった。

また、何度も助けてくれた《オーズ》に対し、ヒーローに対する“憧れ”がなかったとは言えないだろう。

しかし、現実はそう甘くなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


憧れは理解から最も遠い感情だよ――

               藍染惣右介

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


158 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:32:51 W7VUxL.E0
ヤミー。
それは人間の欲望から生まれた怪物。
その存在は親であるグリードと呼ばれる怪人の為に、宿主となった人間の求める欲望を集め、体内でセルメダルに還元し、グリードに献上する為にある。

アナザーオーズに変身している個体――その名はバッタヤミーという。

バッタヤミーの集める欲望は《正義》。

マコや灯悟を助けたのは善意ではない―、
全ては欲望の為、セルメダルを増やす為である。
無論、NPCに意志はない。
しかし、ヤミーとしての“習性”が人助けを行えば、メダルが増えるという事を理解しており、それを行わせているのである。

そして、ヤミーには本当の意味での【正義】は理解出来ない。

例えば、善良な者が殺し合いに乗った者から身を守る為に誤って相手を殺してしまった場合。

または生者が生き残る為、死者からリュックを許可なく拝借する場合。

普通なら状況を見て善悪を判断するが、バッタヤミーは正しい判断が出来るのであろうか。

前者なら『殺した』、後者なら『盗んだ』事を引き金に善良な者にも危害を加えるのではないだろうか?

何故ならヤミーは《欲望》で動く。
バッタヤミーにとって己が《正義》を行ったという【欲望】が満たせれば、本来の善悪等どうでもよいのである。

――そして

満艦飾マコは気付かない。
オーズという名をヤミーに上げる事がその名の《英雄》を否定する事に。

浅垣灯悟は気付かない。
その名を渡す事で、彼と共にした鳥の王との《絆》を壊す事に。




〈バッタヤミー(NPCモンスター)@仮面ライダーオーズ/OOO〉
状態:中度の負傷(“正義”の欲望を叶えた事で少し回復)
服装:裸
思考(自我はなく、欲望で動く。)
基本:“正義”を行う。
00:悪い奴は許さない。
01:悪い奴は、許さない。
02:わるいやつはゆるさない。
備考
※「悪い奴は許さない。」としか喋れません。
(「トゥ!!」は掛け声です。)
※欲望を満たすと、身体を構成するセルメダルが増え、怪我の修復や、技の強化に繋がります。
※行う“正義”は主観による物で、それが本当に正しい事かは考えません。
※場合によっては度が過ぎた“正義”(暴力)を行う事があります。


159 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:34:15 W7VUxL.E0

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「では、奴は羂索の支配下から逃れ、参加者を守ったわけではないと?」

市街地から離れながら、総司令官は自らの推測をロボ子に話していた。

「そうだ、考えても見ろ。
終盤ならまだしも殺し合いの序盤であの様なイレギュラーが出るのはおかしい。
また後の事を考えると主催にとって、反抗的な強者を最後に残したくない筈だ。
なら、NPCによる適度な介入を行い、意図的に弱者を残す様に仕向けてもおかしくはない。
私の予想では奴は弱者のグループに入り込み、頃合いを見て、本性を現す事だろう。」

「それでは、主催の言っていたNPCには意志が無い話と矛盾しませんか?
また主催側が介入を行えば、全うな殺し合いでの“優勝者”は出てきませんが…。」

「主催の話す事を全て信じるのは愚かな事よ。
またNPCに意志がなくとも、条件を満たせば裏切る様に設定すれば問題はない。
…私は恐らく主催陣は優勝者を出すつもりはないと考える。
先程の爆発、参加者の能力か支給品の力かは分からんが、各々の力量に差があり過ぎる。
これでは一人の参加者に数十人が虐殺されてもおかしくはない。
だが、その事にも意味があるのだろう。
奴らにとって我々は『実験動物』だ。
奴らがこの殺し合いを開いたのは、“最強の個人を決めたい。”のではなく、“殺し合いで奴らに得られる物”があるからではないかと私は考えている。“参加者の戦闘データの入手”か、それとも“支給品の性能を確かめる為”か、それ以外の目的かは分からんがな。」

「それでは、あの女と小娘は…、少なくともキズナレッドの方は主催のスパイにいずれ裏切られ、命を落とす可能性があるという事ですね。」
と何故か嬉しそうに話すロボ子。

「ふん…。奴が、あの虫ケラが英雄かどうかの【真贋】を見極められねば、そうなるな。」

そこで機械の軍隊の長は言葉を切る。

(そう、ここで死ぬのならそこまでの事…。)

総司令官は後ろを振り返り、今はなきコーカサスカブト城があった位置を見る。そこではまだ空高く煙が立ち上っていた。

(最初の邂逅…、あの“地球のロボット”は私の後から来ていただろう…。
位置的にあの城へ先に行き、今の爆発に巻き込まれた可能性があるな…。)

これほどの爆発、巻き込まれれば、普通なら一溜りもなく命を落とすであろう。

(だが奴は、我が鉄人兵団での戦いでも幾度の窮地に陥った筈だ。それを生き延びた。
…奴は“英雄”だ。
同伴していた人間の軍人は駄目でも、あ奴は生き延びているかも知れん。
……いや、必ず生きている!!)

総司令官はロボットに相応しくない感情的な思考を巡らせる。

(“地球のロボット”よ。
私は自身の安全を確保しなければならん為、城には行かんが、同伴者がいなければ我が元に来い。
……全く、人間を守る等、不可解な行動をしよって…。
直接何体手をかけたのかは知らんが、貴様の策で我が兵団員をとうに百五十体以上破壊しているではないか…!
貴様がその気になれば、この場にいる有象無象等、自由に操り、好きに殺す事も可能であろうに…。
同族は殺し、他種族は生かす等、通りが通らぬ!
私の“英雄”よ…。人間との“絆”を捨てろ。そして、メカトピアの…ロボットの“正義”に従うのだ!!)

機械の軍隊の長は、自身の唯一の“英雄”に対し、生存の望みと憤りを見せていた―。


160 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:34:57 W7VUxL.E0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


本格的な殺し合いが始まって、間もなく2時間。

参加者達はそれぞれの《英雄》を求め、
他者との《絆》を育み、
各々の《正義》を実現しようとする。

しかし、彼らは忘れていた。

他者を蹴落とし、自らの生存が優先される
このバトルロワイアルにおいては、

《英雄》の称号は無価値に等しく、
《絆》はいずれ破壊され、
《正義》は存在しないのだから。


161 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:35:52 W7VUxL.E0
【E‐4/市街地の外れ/ 9月2日午前7時50分 】

【総司令官@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜】
状態:正常(爆風により、ボディに若干の傷あり)
服装:ロボットなので服は着ない
装備:総司令官の杖@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜
令呪:残り三画
道具:パーシヴァルの起動キー、サイコントローラー@ドラえもん のび太と鉄人兵団、桃太郎印のきびだんご〔50個入り〕(残り43個)@ドラえもん、純生石油十億年物@ドラえもん のび太とブリキの迷宮、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻り、地球人の奴隷化計画を進める。
00:戦力を集め、羂索を打倒する。
01:ロボ子と共に使える者を探す。他の参加者に配下に加わらないか交渉する。また人間なら奴隷として使役する。
02:交渉が決裂、もしくは出来ない場合、きびだんごを食べさせ、洗脳する。NPCモンスターでも使えそうならきびだんごを食べさせる。
03:“バグスターウィルス”を調べる為、市街地にて回収した遺体(渋井丸拓男)の解剖及び腕のレジスターが外れないか確かめる。
出来れば、専門の医師・技術者を探したい。
04:地球のロボット(ドラえもん)の腕を買っている。出来れば仲間にしたい。大爆発の中でも生きていると信じたい。
05:ロボ子の忠誠心が高い事を気に入る。これからの働きに期待する。
06:キズナレッドは“戦士”として使えると判断。“緑色の怪人”に騙されない事を願う。
参戦時期:鉄人兵団の援軍が来て、ジュド(ザンダクロス)やドラえもん達を圧倒していた所から。〔消滅前〕
備考
※将来、鉄人兵団が消滅する事は知りません。
※様々な世界から参加者を集めたとは知らず、ナイトメアフレームの事を元々のドラえもん世界の物だと思っています。
※ロボ子に自分が見た殺し合いの開幕から、カラレスを殺した事までを話しました。
※ドラえもんの名前を知りません。
※ロボ子の本性を知りません。
※シャチパンダヤミーの特性を知りました。
また、羂索が作ったものと勘違いしています。
※羂索の事を寄生生物と思っています。
※浅垣灯悟の事を元から女性だったと思っています。
※参加者に戦力差があるので、主催は“優勝者”を出すつもりはなく、殺し合いで何らかの“得るもの”(データ収集)を目的としているのではと考察しています。


[トモダチロボット ロボ子(意志持ち支給品)@ドラえもん]
状態:軽度の負傷
服装:ワンピース
装備:レイドライザー&ファイティングジャッカルプログライズキー@仮面ライダーゼロワン
道具:カラレスのホットライン、セルメダル約50枚(シャチパンダヤミーの身体から出た物)@仮面ライダーオーズ/OOO、桃太郎印のきびだんご(5つ)、P90@現実、渋井丸拓男の遺体@DEATH NOTE(上半身と下半身に分かれている物をゴミ袋に包んでいる。)
思考
基本:総司令官に従い、配下を集め、羂索率いる主催陣を討伐する。
00:総司令官様を慕う。どんな事でも従う。
01:総司令官の指示ではないが、女性の参加者を排除する。
02:地球のロボット(ドラえもん)を警戒。人を騙すんだから、タヌキみたいな外見をしていると評しています。
03:キズナレッドという変質者を警戒。主催のスパイ(バッタヤミー)に殺されてほしい。
04:リルルへの怒り。総司令官様を裏切ったクソ女を八つ裂きにしたい。
参戦時期:ドラえもんがロボ子をレンタルする前。
備考
※総司令官から、殺し合いの開幕から、カラレスを殺した事までの話しを聞きました。
※また名前は知りませんが、ドラえもんと卜部巧雪の外見の情報を総司令官から教わりました。
※総司令官はリルルの裏切りでのショックを引きづっていると思い込みました。
※思い込みで勝手な行動を取る事があります。
※シャチパンダヤミーの特性と女性に執着がある事に気付きました。
※浅垣灯悟を女性になりたい願望のある変質者と思っています。


〈シャチパンダヤミー(洗脳されたNPCモンスター)@仮面ライダーオーズ/OOO〉
状態:中度の負傷(アナザーオーズ〔バッタヤミー〕との負傷)、きびだんごによる洗脳(洗脳解除まで、残り11時間10分)
服装:裸
思考(自我はなく、欲望で動く。)
基本:女性を抱き締める。総司令官に従う。
00:あー
01:あ〜
02:あぁ―
備考
※「あ〜」しか喋れません。
※欲望を満たす(〔殺すまでいかなくとも〕女性を抱く)と、身体を構成するセルメダルが増え、怪我の修復や、技の強化に繋がります。

【地図情報】

※【E‐4/市街地】にバッタヤミーとシャチパンダヤミーの体内から出たセルメダルが数十枚、浅垣灯悟が吐き出したきびだんご(一つ)が落ちています。


162 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:36:26 W7VUxL.E0
【支給品紹介】

【ライドベンダー@仮面ライダーオーズ/OOO】
2つの形態を持つライダーマシン。

一つは《マシンベンダーモード》と呼ばれる自販機偽装形態。
内部にはカンドロイドが各種収納されており、セルメダルを投入し、ディスプレイから目的のカンを選択する事でカンドロイドを排出。
(今ロワでは、カンドロイドが搭載されているかは次回の方に任せます。)

もう一つは《マシンバイクモード》と呼ばれる大型バイク形態。
《マシンベンダーモード》にセルメダルを投入し、中央部の黒い大型ボタン「マルチTaSセンサー」を押すことで変形出来る。


【なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)@ドラえもん】
レバー型の飛行機の操縦桿の様な道具。
これを取り付けたものを飛行機のように飛行させる効果がある。


【アナザーオーズウォッチ@仮面ライダージオウ】
《アナザーオーズ》に変身する為の道具。
本人か、他者にウォッチを埋め込む事で変身出来る。

《アナザーオーズ》
タカ・トラ・バッタの力を持った仮面ライダーオーズと同じスペックの怪人。

戦闘能力以外にも参加者やNPCに、メダルを埋め込む事で、《屑ヤミー》に似た怪人を使役する事が出来る。
《屑ヤミー》に似た怪人は戦闘力は無いが、強度が高く、変身させられた者は倒されるまで、解除される事はない。


【純生石油十億年物@ドラえもん のび太とブリキの迷宮】
正確には支給品ではなく、市街地のロボット専用レストランにある物。劇中では話だけ出ていた。
チャモチャ星製のロボット達には好評だが、メカトピア星製の総司令官には口に合わなかったようだ。


163 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:37:00 W7VUxL.E0

【NPCモンスター紹介】

《森の中の三匹の怪獣》

【強化地底怪獣エリマキテレスドン@ウルトラマンZ】
某怪獣王に似た怪獣の付けている襟巻きを着けた地底怪獣。

【ゴジロ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄〜】
某怪獣王に似たプロヒーロー。一応、怪獣ではない。

【暗黒種デーボス@獣電戦隊キョウリュウジャー】
某怪獣王とは関係ない。
デーボス軍の首領・デーボスが恐竜を滅ぼした時の姿。


【バッタヤミー@仮面ライダーオーズ/OOO】

司法試験の合格を目指す男性《神林進》の『世に蔓延る悪い奴を懲らしめたい』と言う欲望から生まれた昆虫系ヤミー。

始めはひったくりから鞄を取り返す等の善行を行っていたが、暴走族や悪徳政治家の賄賂等を取り締まる内に彼等に過剰な暴力を振るうようになる。

飛蝗の能力を生かした高い跳躍能力、頭の触覚からの電撃、ライダーキック(?)等の多彩な技を持つ。


164 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/17(火) 00:38:14 W7VUxL.E0
投下終了します。
タイトルは『《英雄》と《絆》と《正義》』でお願いします。
長文と時間超過、本当にすみませんでした。


165 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:22:37 S.SbiBjI0
おはようございます、企画主です。
制限喰らってしまった◆8eumUP9W6s氏に代わって予約分を投下させていただきます


166 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:23:50 S.SbiBjI0
先の自称救世主ことリボンズ・アルマークに、仮面ライダーエターナルこと大道克己との戦いからどうにか脱したキラ・ヤマト、柊篝はここで成り行き上共闘し結果命を救う事となった聖園ミカと別れる事となっていた。

「じゃあね、2人とも。拾った命は大事にしてよ?
…すぐに他の誰かに殺されちゃったりしたら、見逃してあげた意味がないんだからさ☆」
「……待ってくださいミカさん、貴女を無理に引き留める気はありません。ですがせめてその前に…互いが持つ情報の交換だけでも、しませんか?
…貴女が知っている情報を伝えてもらえば、私とキラくんが殺される可能性は減るかもしれない。逆に私達が知っている情報を知る事が出来れば、生き延びれる可能性が増えるかもしれません」

しかし立ち去ろうとするミカに向けて、篝は一瞬迷った後、そう提案する。
本当は殺し合いに乗ったままな彼女を止めたい。しかし現状この消耗した状態で戦いになれば、死ぬのは自分とキラだという事は分かっていた。

(それに、私はともかくキラくんは…私とミカさんを乗せて全速力で飛び、着地に失敗して衝撃を受けたせいで消耗が激しい。…無理をさせるわけには行きません)

悔しさと申し訳無さを抱きながらも、止める行動に出る事は「今」はせず、一先ず情報交換しようと持ちかける。
ミカは先の戦いになる前にキラと話していた、名簿の「梔子ユメ」の近くに有り下の名前がカタカナ表記で統一されていた面々の内ひとり。とりあえずその件だけでも聞いておければと思ったが為であった。

「…言われてみればそうだね。うん、その方がいいよ」

呼び止められたミカは、一瞬考えたのち答える。
自分にとってもメリットはあり、先程言った通り2人が即死してしまえば見逃すと決めた事に意味が無くなってしまう。なら情報…特に先に推測したルルーシュの目論見についてだけでも共有しておければ、彼への牽制にはなるだろう。
それに彼らがあの時自分に声をかけていなければ、今頃あの竜のビームに焼かれて息絶えていたか、そこからエターナルの追撃で殺されていただろうから。

(…まあ私の知り合いは、先生以外いないんだけど…そういえば名簿の順番に意味があるって、あの仮面の人(クルーゼ)は言ってた。
多分他のカタカナ表記な下の名前の子達は、私と同じキヴォトス人で、その事とヘイローについてと…先生の事と、ついでにルルーシュの事話せば、それだけでも十分かな☆)
「…ありがとう、ミカ…。
…早速だけど名簿の中に、君の名前付近に載ってた、下の名前が同じカタカナ表記な人達の中に…知り合いはいる?」

話す内容を決めたミカに対し、疲れを隠せない様子ながらも答えたのはキラ。
ここまで篝任せになってしまった事に申し訳なさそうにしつつ、単刀直入にそれを聞いた。

「キラくん達が気になってるのは、私と『小鳥遊ホシノ』ちゃんに『黒見セリカ』ちゃん、『鬼方カヨコ』ちゃんに……あの羂索って人が名前の内ひとつとして名乗ってた『梔子ユメ』が、私の知り合いかどうか…だよね?
…残念…かは微妙な所だけど、その中に私の知り合いは居ないよ」
「…そう、なんだね」

何ともいえない表情を浮かべ答えるミカと、俯くキラ。

「でも、知り合いはひとり居るかな。誰かわかる?キラくん、篝ちゃん」
「…貴女の名前の下に載ってて、ルルーシュの名前の上に載っている『先生』が…ミカさんの知り合い…という事ですか?」
「正解だよ。…うん、先生が唯一この殺し合いに巻き込まれてる、私の知り合い」
「…役職名にしか思えなかったけど、先生って…名前だったんだ…変わった名前の人だなって」
「キラくん、もしかして天然?それともそれだけ疲れてるのかな…?
…本名かどうかは私は……そういえば聞いたこと、なかったから……わかんないや☆」
「…そう、ですか」
(…ミカ、君は…)


167 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:24:11 S.SbiBjI0
「先生」が自分の知り合いだという事を言ったミカは、キラの反応に半分は冗談から、半分は本気で心配を向けつつ…想起してから、おどけてみせる。最も敢えてこのような反応をしたことについては、そう言うまで間が空いてたのと、言った際の表情もあって篝にもキラにも見抜かれていたが。

「先生はね、キヴォトスの生徒の味方をしてくれる人なんだ。
私なんかとは違って、絶対殺し合いには乗らない。他のキヴォトスの生徒の事は知ってるはずだし、きっとキラくんや篝ちゃんの力にもなってくれるはずだよ」
「ありがとう、探してみるよ。…そのキヴォトスの生徒っていうのは、みんな君みたいに羽が生えてたり、頭の上に輪っかみたいななにかがあったりするの?」
「…羽は人による、かな☆
輪っか…ヘイローはみんなあるよ。意識がなかったり……死んじゃったりしてたら見えなくなるけど」

先生の事、キヴォトス人の特徴であるヘイローについてを話した上で、ミカは言葉を続けた。

「あと…そうだ、篝ちゃんとキラくんは、あのルルーシュって人の放送聞いてどう思った?」
「…私は、彼は横暴で傲慢にも程があると思いました」
「…殺し合いに乗ってないだろう宝太郎さんの首まで狙う人に、賛同はできないし篝さんの言う通り、傲慢だと僕も思うよ」
「…わーお、2人共気が合うじゃん。
私もああいう傲慢な人は気に食わないから…推測だけど目論見を教えてあげるね☆
…ルルーシュは、自分があえて悪目立ちしちゃうようにした上で、利用しようとしてくる人達諸共捨て石になって…その上で、対抗戦力を纏めさせて…そこから主催の人達打倒に値する人達を選別する気だよ」

「…そんな事を彼が…ところでミカさん、なぜそこまで詳細に推測できたんですか?」
「それはね、ルルーシュが私と同じ、『悪い子』だって…なんとなくだけどわかったからだよ」
(…君が『悪い子』なのかは兎も角…)
「…凄いよ、ミカは。正直僕も篝さんも…彼が何を考えて、あんな自分は傲慢な人間ですって感じの、敵を増やすだけの放送をしたのか計りかねてたのに」
「それでそこまで推測出来るのは…私も、すごいと思います」

ルルーシュについての推測を聞き内心複雑そうにしつつも、素直にそうキラと篝は言った。

「……まあ、それ以外に根拠は無い推測でしかないけどね。
…私から言えて、2人の役に立ちそうなのはこれくらいかな。じゃあ次は…」
「…私達が知ってる情報を、話させて貰います、ミカさん」
「話が早くて助かるよ☆」

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168 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:24:36 S.SbiBjI0
その後、キラと篝がミカへと話したのは自分達の知り合いについてと交戦したニセモノのアスラン・ザラことアスラン・ザラ?について。
キラと主催のひとりであるラウ・ル・クルーゼについての因縁、それに名簿上に2つの同じ名前がある件の考察と、篝に支給されていた千鳥の説明文の件についてだった。

「名簿の並び的にそんな気はしてたけど、やっぱり2人共…呼ばれちゃってる知り合いが多いんだね」

ミカは率直にそう感想を述べる。
自分の知り合いは先生ひとりだけなのに、キラはアスラン?と准将の方を含めて7人、クルーゼも併せれば8人も居た。
篝の方も、直接面識があるのは娘の姫和、先輩の娘であり姫和の仲間で友達な可奈美、宿敵である意味自分の仇だったが憑き物が落ちた様子だったタギツヒメの3人だが、それら3人と関わりがある者が3人で、キラ程ではないが6人も知り合いや知り合いの知り合いが居るという状態である。

「…とりあえず、篝ちゃんが今持ってる御刀…千鳥だっけ?それの説明文の内容に、キラくんが此処にいる方と准将の方で2人居て、キラくんとアスラン抜きにすると同じ名前持ってる人がロロと十代とギラで3組、主催のアビドスの人…ユメもしくは羂索と、名簿に載ってる方のユメも併せれば4組。
それで『本来異能力や異形の存在しない世界の者たち』って発言に…」
「僕もミカも篝さんも、同じ世界なら知ってて当然な単語なのに、聞き覚えの無い単語ばかり出てくる事になって齟齬もいっぱいあった」
「…総合して考えると、羂索達主催者は異なる世界、異なる時間から私達をこの殺し合いに巻き込んだ事になりますね」
「…キラくんや篝さんが言ってた通り、もしあの仮面の人が嘘言ってたら全部瓦解する……けど…」

一先ず結論を出し、3人は認識を共有する。そんな中、突如ミカは言葉を止めた。

「…どうしたの、ミカ?」
「……異なる、時間からだったらさ……もしかしたら先生は、私と会う前から……かも」
「…それどころか、キヴォトスとやらに赴任したての頃から呼ばれてしまっている可能性もある…と?」
「……うん。……そうだったら、役に立たない事言っちゃった。ごめんね」

おどける様子もなく、申し訳無さげにミカは謝る。
世界が異なるのは最初の羂索の言葉から察していたが、時間まで異なる可能性があるとは思わず、キラ・ヤマト准将やアスラン・ザラ?も、別の世界の同一人物の線とばかり考えていた為であった。


169 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:25:09 S.SbiBjI0

(…私の味方でもあるって、言ってくれた先生より…前から呼ばれてたり、するんだろうなあ……)

落ち込み気味なのはそれだけではなく、ミカ視点で唯一の知り合いである先生が、違う時間から呼ばれていた場合彼からすれば自分は赤の他人な可能性すらあるという考えに至ってしまったからである。
なまじ他に知り合いがいない状況なのもあって、そういう嫌がらせじみた事をしてきてもおかしくはない…とマイナス方向に思考が進んでしまっていた。
…しかしここで、ミカに声をかけたのはキラ。

「…僕の考え、というか推測があってればだけど……君の話からして先生って人は…例え君の事を知る前から呼ばれてても、キヴォトスの生徒だってわかれば味方になってくれると、思うよ」
「……さっきはあんな天然な事言ってたのに、急に的確に見抜くの、やめてよね。キラくん」
「…ご、ごめん…」
「…でも私も、キラくんの言う通りだと思いますよ。…ミカさんの話を聞く限り、面識が無くても、それこそ殺し合いに乗ってても…生徒なら止めて助けようとする方だと、私は思いました」
「…篝ちゃんまでそういうこと言う・…。
……そうかな。…そうだと…いいな……ありがと、2人共」

心配から出た言葉であったが、ミカの返答のせいで脳裏にかつて自分がサイ・アーガイルに言ってしまった言葉
「やめてよね、本気でケンカしたら、サイが僕に敵うはずないだろ…」
が浮かんだのもあり、キラは申し訳なさそうに謝る。
一方篝は間髪入れずにフォローに入り、結果ミカは素直に感謝を述べた。

「…これくらいですね、私達から貴女に伝えれる事は」
「…じゃあ今度こそ、バイバイかな☆
キラくんも篝ちゃんも…あっさり死なないでね?」
「…ミカ、君は…」
「…キラくん。私の願いは変わらないよ。……それを果たすために最後には全員、殺さなきゃダメなのは…変えれない。
…それに、あの人も…自称救世主の人も言ってたでしょ?『人殺しに救われる権利なんて無いんだよ』って」
「…それなら、私や……キラくんも…」
「…2人共、それでも殺し合いには乗ろうともしてないじゃん。それで、殺し合いに乗ってる私なんかすら助けちゃうくらい優しいんだから……違うんだよ、私なんかとあなた達は」

揺らぎながらも、復讐を捨てる事を良しとしていないが為結論は変わらない。
思うところありげではあるものの、そうミカはキラの言いたい事も、篝の反論も察した上で…切り捨て断絶を告げた。

「…君も、気を付けて……ミカ。
…あの人の…クルーゼの事だから、NPCで核ミサイルを積んだMA(モビルアーマー)メビウスが出るようになってたり、核ミサイルを支給品にしたり、マップに表記してないだけでメンデルの中の施設みたいな……見るだけで気分が悪くなる建物があったり、地下にサイクロプスを仕掛けてたり…そういう事、してもおかしくないだろうから」
「…篝ちゃんの世界…というか、現世の篝ちゃんが刀使やってた時代も大概だけど、命が軽いよね、キラくんの世界って……うん、頭には入れとく」

反論出来ないままだが、せめてもと物騒な想定をした上で注意を呼びかけたキラにそう返し、ミカは2人の元を立ち去っていった。

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──もしここで、私が彼の差し出した手を取っていれば……あんなことには、ならなかったのかな。
……後悔しても、時間はもう、戻ってくれないのに。

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170 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:25:46 S.SbiBjI0
一方その頃、時刻は午前8時を過ぎた辺り。場所は天ノ川学園高校が"あった"所。今は瓦礫と灰が遺るのみのこの場所で、大道克己は何かがある可能性を考慮し、調べていたところであった。

「…レジスターやその残骸らしき物も無い、か。あの3人には逃げられたと見るべきだな」

先程の電磁砲で、3人を仕留めれたかどうかと、逃げて行った自称救世主が何かを見つけていたのではという確認を克己は行っていた。
レジスターすら遺らず消し飛んだ可能性もあるにはあったものの、そう楽観視はしない。

「…設置出来る分はしておいたが、過信はできん。…奴のような相手には時間稼ぎになるかも怪しいか」

そう言い、己の駒である帝竜ジゴワットによりエリア内の4箇所に設置させた、敵を自動迎撃する電磁砲を見据える。
脳裏に浮かべるは最初に戦った男が変じた赤き異形。設置後試しにエターナルへと変身した上で性能を試してみたが、あの異形へ対処するには心許ないというのが克己の結論であった。設置された4つの他に、スクラップとなり残骸と化した物がひとつあるのがその証拠である。
ちなみにこの残骸に蘇生能力を使おうと試みたものの、先の戦いを行う前大量に斃れていたNPCの中に散見された人型の機械同様に、純粋な機械であったせいなのか不可能だった。

もっと多数設置出来るのなら話は変わるかもしれないが、生憎と主催による制限により、1エリアにつき4個が砲台の設置上限となっていた。
それを抜きにしても、設置すると決めて直ぐに生成する事は出来ず、設置時ジゴワットは他の行動が出来なくなるデメリットがあるのもあり、接敵時に生成・設置する事により火力面や手数で頼りにする事はせず、予め設置型しておくタイプの罠と割り切った運用をすると克己は決める。

(…今は8時を過ぎた辺り、ならこの能力の内…死体無しで直に蘇生召喚する方の力が使えるが…コイツ(ジゴワット)のように戦闘中にするべきか?)

等とホットライン内にあった、現在時刻を確認するアプリを見ながら思考した克己。
しかしその時、彼めがけて新たなNPCがビームを放つ。
回避し当たる事は無かったものの、赤色のビームが被弾した箇所の地面は抉れていた。いくら克己がNEVERだろうと変身をしておらず直撃を受けていれば、レジスターの制限も併さってまたもや地獄送りだっただろう。

「…火力は脅威かも知れんが、当てれなければ意味はない。所詮はNPCか」

言いながら彼はジゴワットに目前の蟹を想起させる形の機械の相手をさせ、横目で見つつ蘇生能力による召喚を試みる。

(…壊れたままの装備…直す当てもない以上必要ない。装備の選択?…決まっているだろう)
「…いちいち手間だな。戦闘中に召喚するには隙が大きいとは…主催の連中は統一くらいしておけばいいものを」

帝竜のように即時召喚出来ない事と、相手からのダメージこそほぼ無さげではあるものの、蟹型の機械が発生させているバリアのような物によって射撃攻撃が尽く防がれているジゴワットの様を見つつ、選択を行った克己は蘇生召喚をした。
結果、現れた元死体の操り人形は…瞬く間に機械の四肢を切断、コックピット目掛けて剣を突き立て機械の機能を停止させる。
剣を引き抜き、克己の方を向くその表情には何も浮かばず、何も喋らない。眼には光も映らない。ただ蘇生させた主の為に刃を振るう感情無き人形、殺人マシーンの出来上がりだ。

「…過去が消えていくNEVERの方が、よっぽど上等に思えるとはな」

生前の自我も新たな精神も宿らぬその有様を見て何処か吐き捨てるかのように呟くも、克己はただそれを駒として利用し、使い潰す事を選ぶ。
人らしい感情は過去と共に全て腐り落ちた。遺ったのは悪逆を成す冷酷非道の死神のみ。

「使える駒がひとつ増えたが…今仕掛けるのは早計だ。まずは風都タワーに向かうとするか」

エクスビッカーがある可能性のある風都タワーへ向かうという当初の目標はそのままにしつつ、自分も含めた仮面ライダーの首を求めている、先の自称救世主に勝るとも劣らない傲慢不遜な男ルルーシュの根城テレビ局への侵攻を視野に入れた上で、大道克己は竜と死人(しびと)と共に先へと進んだ。


171 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:27:20 S.SbiBjI0
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「…これがエナジーアイテム…」
「…ちゃんと回復してますか?キラくん」
「…はい、痛みが引いていって…疲れもマシになった気がします」
「よかった。…ところで、キラくん」
「篝さん…どうしたんです?」
「……あの自称救世主が言った言葉を、気にしてるんじゃないかと…」

『人殺しに救われる権利なんて無いんだよ』

ミカと別れた後、2人は近隣のランドマークである風都タワーを目指す中民家を発見、キラの消耗もあり休憩する形となった。
この際内部にあったエナジーアイテム:回復を発見しており、篝が心身共に消耗しているキラのダメージと疲れを考慮してキラに使うように言い、キラ自身も使う事を選ぶ。結果疲労もダメージもマシになった。
…ものの浮かない顔をしていたキラに、篝は先程ミカが挙げた傲慢な救世主を名乗る者の言葉を思い返し、心配しながら推測する。

「……気にはなってるよ。
…でもミカが言ってた程、僕は立派な人間じゃない。犠牲の果てに生まれた上に、人間と言えるかすら怪しいし……それに、あの時篝さんが来てくれなければ、殺し合いに抗うかどうか以前に……あの僕の知らないアスランにそのまま、殺される事を選んでたと思うから」
「……キラくん、貴方は…そこまで…っ」
「…篝さんには感謝してるんです。あの時助けてくれて…僕に、戦う為の意思を思い出させてくれて。
…だからそんな、悲しそうな顔は…やめてください」

そこまでキラの当初の状態がどん底にあった事に、悲しみを抱き隠せずにいる篝。
対しキラは彼女の赤眼を真っ直ぐ見た上で、改めて感謝を述べた。

「…いえ…あそこで助けなければ、本物の…現世の私にも、姫和にも…仕えていた紫様や、美奈都先輩にも…顔向け出来ませんでしたから。刀使として、果たすべき責務を成しただけです。
……立派な人間だったとは、私も言えませんが」
「…僕でよければ、聞いてもいいですか?
……篝さんは、僕に背負わせないって言ってくれました。だから僕も…篝さんに、背負わせたく、ない」

何かを抱えているのだと、先の発言を気にしていたのは彼女もだと察し、そうキラは篝に聞く。

「……ありがとうございます、キラくん。
……先の戦いの時、荒魂化してしまった人間についてミカさんに、話しましたよね」
「…確か、人間だった頃から変質してしまうか、残っていても斬って祓うしか……救えない、って。…人殺しと、罵られた事も何度もある…って」

「…その通りです。
……生きたまま荒魂と化してしまう事例も少ないながらありましたが、一番多かったのは遺体が荒魂化する事でした。
…最初に私が人を殺したのは、殉職した仲間"だった"刀使が…荒魂化した時でした。
…仲も、悪くは無かったので……彼女が亡くなった際は、助けられなかった事を悔み…気付くと泣いてしまっていて……葬儀もまだ行われる前に、荒魂と化した彼女は……変質してしまっていました。

…その時点で、斬っていれば…なのに、斬れず躊躇ってしまって……紫様に仕える、神薙の刃の立場である以上は…余計に斬らねばならなかったのに…なのにそのせいで、私は…わたしは荒魂化した仲間に、生きていた仲間を殺させて、しまった……!」
「…篝、さん…」

そう、懺悔するかのように語る篝の瞳は潤み、声は震えていた。思わずキラも、かける言葉が出てこない。

「…結局、私は荒魂化した仲間を…この手で斬りました。遺族からは人殺しと、あなたがもっと早く斬っていれば…と罵倒を受けて…何もかも事実だったから…ただ謝る事しか、私には出来ませんでした。

……以降、荒魂化した人間が、刀使"だった"相手でも私は…迷うこと無く斬って祓っていって。…荒魂化した時点で、もう息絶えた遺体なのはわかっていて…けれど人殺しである事には代わりはなくて、どれだけこの手を…汚しても…慣れる事なんて、無かった。
……紫様や美奈都先輩達…それにあの人(篝の夫にして姫和の父)が居なかったら、きっと…潰れてしまっていたかもしれません」
「…背負わせないでいてくれたのが、その人達だった…という事、ですね」

「…姫和の話からして現世の私は…美奈都先輩を亡くしてからは後悔に打ちひしがれていたようですが。
そして私も…美奈都先輩にまで背負わせてしまって、可奈美さんから母親を奪ってしまった事に、紫様に20年間苦しい思いをさせ続けてしまった事は、今でも…悔やんでも悔やみきれません」
「…あの時、ああしていればよかったってなるのは…僕にも覚えがあります。…大切なのは、後悔しても…そこで止まらず立ち上がる事で…僕は篝さんのおかげで、こうして立っていられる。
……それと、無理に慣れるべきじゃないと思います。覚悟を決めていたとしても…人を殺してしまう事なんて…つらくて、当然だから。割り切れなくてもいいんですよ、篝さん」


172 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:29:54 S.SbiBjI0
篝に対してそう話すキラは、何処か自分に言い聞かせているかのようであった。

「…泣きたい時は、堪えないで泣いていいって言ったのは私の方…だったのに…自分が、情けないです」
「…僕が泣きたい時に泣いていいなら…篝さんだって、同じ筈だから…」

言いつつもキラの瞳も潤んでいる事に、篝が気付く余裕は無かった。

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「…先程は見苦しい所を……思い出したくない事を浮かべてしまって…すみません」
「いいんですよ、その分…苦しい時は、篝さんに頼らせて貰います」

篝が落ち着いた事にホッと安堵するキラ。その上で、刀使や荒魂、姫和や可奈美の事等について聞いたり…逆にMSやアスラン、ラクスやディアッカの事等について話したりした。

「…姫和曰く、相手を斬るしかない状況でもなお、斬らない道を探してそれを選び抜いたらしいです」
「…凄いな、可奈美さんは…」
(…僕にも、彼女のように力があったら…殺さずに済んだか、死なせずに済んだことも…)
「…姫和さんにもだけど、可奈美さんにも一度、会ってみたいな…きっと、仲良くなれる気がするから」

可奈美の人を斬りたくないという志を知り、殺したくなくても殺さざるを得ない状況に居たキラは羨ましさと、殺したくない事への共感、それに仲良くなれるんじゃないかという思いを持った。
…最もこの願いはもう果たされぬ物だが、それを知る由もなく。

兎も角そんな訳で、時刻が8時過ぎとなっていたのもあり2人は再び風都タワー方面へと向かう。
そして風都タワーが見えてきた所…目前に人影らしき物を発見。
祭祀礼装の起動鍵の使用不能時間を過ぎたのもあって、キラだけでなく篝も起動鍵を片手に取って臨戦態勢を取る中…人影は、カブト虫の角を想起させる不気味な大柄の化け物はキラと篝目掛けて襲いかかった!

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「…ガッチャード、一ノ瀬宝太郎にマジェード、九堂りんね、それに我の同胞黒鋼スパナまでならば、まだいい……魔王グリオン……だと……!?」

名簿を確認した冥黒王のひとりギギストは、驚愕を抱いていた。

「…人形風情が魔王とは、身の程を弁えない存在なのは理解していたが…随分と大きく出たなグリオン。
…だが冥黒王ではなく魔王とは…ひとつ言えるのは、ここでグリオンを討てれば、奴の分の賢者の石は手に入るという事。探してみる価値はある」

魔王グリオンという謎かつ不穏な記述が、また羂索だけでなく、同じ主催の仮面の男ラウ・ル・クルーゼもが、理解できぬとしたガッチャを使ったのもあって、理解した筈の羂索の事を本当に理解出来ていたのか?という疑念をギギストの中に呼び起こす。
だがそれを振り払い切り替えて…一先ずグリオンを含めた他参加者を捜索、異世界の力を理解し、その中から相応しい物を選び奪い取る事を定めた。

そこからギギストは近辺の捜索に励んでいた所日本刀と、半分ほど燃えて読めなくなっていた説明文の書かれている紙を発見する。

「…千本桜、斬魄刀…意志を持つ刀…なるほど、理解したぞ。
他参加者の支給品がバッグから飛び出、この場所に落ちたと。爆殺された結果だと見るべきだな」

全ての人間の理解者だと自称し人でないホムンクルスにも煽りや侮蔑含めだが理解するぞと言い放つ上、的を射ている事が多いギギストからすれば、半分燃えカスとなり読めなくなっている説明書の文面も、この刀が此処にある理由も理解するには造作もない事であった。

「物は試しだ、『冥黒に染まれ』!」

ならば早速と、バインダーからブレイドのレジェンドケミーカードを取り出し、意志のある刀である斬魄刀・千本桜と併せて錬成させる。
それによりかつて仮面ライダージオウが戦ったアナザーブレイドの姿によく似たマルガム擬き、ブレイドマルガムといえる怪物を誕生させた。

「直接剣として振るってみるのも悪くは無さそうだが…斬魄刀という異界の技術、我が力とどれほど適応するか試させて貰おう」

そう言うと、ブレイドマルガムを引き連れ近隣のランドマークである風都タワーへ赴いた。すると遠くに見えるは2人の人影。

「…試すには丁度よい、行け。貴様の力を我に見せてみよ」


173 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:30:50 S.SbiBjI0
ブレイドマルガムを迎撃に向かわせ、自分は物陰から戦況を伺う事としたギギスト。
そして彼の目先にて…ブレイドマルガムは、イモータルジャスティスとなったキラに祭祀礼装を纏った篝と戦闘を開始した。

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手にした大剣で斬りかかるブレイドマルガムに、キラはヴィーゼルナーゲル ビームブーメランをビームサーベルとして振るい受け止めようとする…も、大剣相手では分が悪いのと、ただのマルガム擬きではなく、斬魄刀も錬成元として使用しているせいなのか押し返されそうになる。

「こいつ…力強いっ…!」
「させませんよ、っ!」

そこに御刀・千鳥で加勢に入ったのが篝。2人がかりでブレイドマルガムの大剣を押し上げ振り払う…も、ここでブレイドマルガムは雷を放つ。
キラはシールドブーメランを盾として受け止め防ぎ、篝は1段階目の迅移による加速で難なく避ける事に成功した。
そこからキラは20mm 近接防御連装機関砲 ヴァンダーファルケと、高エネルギービームライフルを同時に発射しまた反撃、直撃させる。篝もそれに乗じ、大剣を回避しながら2段階目まで至らせた迅移によるヒットアンドアウェイの戦法により着々とダメージを与えた。
しかしブレイドマルガムは攻める手を緩めず、ここで千本桜由来の目に見えない程の大きさの大量の刃を放ち、2人を囲ませながら大剣をまた振るう。

「桜の花びらみたい、と言ってる暇も無いですね…!」
(囲まれてるせいで迅移で避けきれない、写シも剥がされて行く…このままでは…!)
「篝さん!くっ、邪魔だ!!」

迅移を封じられ写シでどうにかやり過ごそうとするも、刃の物量でどんどん削られ剥がされていく篝。
VPS装甲により、耐えながら助けようとするキラめがけてブレイドマルガムの大剣が来るも、カルキトラ ビーム重斬脚を用いたキックでこれを迎撃し防いだ。

「うおおおおっ!!疾風(シュトゥルム)ッ!!」

自分は兎も角このままでは篝が危ない、そう感じたキラはソードスキルにより風の風量を操作し・自らに纏わせ突撃。
刃を疾風により吹き飛ばし、やらせるかと強い意志を以てSEEDを発動。
反応速度と戦闘速度の向上と、刃を吹き飛ばされた事により生じたその隙をついてシールドブーメランを直撃させ大きなダメージを与える。

(キラくん、ニセモノのアスランさんの時やミカさん達の時よりも、動きが慣れて来てる…私も、彼が作ってくれた隙を逃しはしません!)
「はぁっ!」

迅移を2段階目の速度にし、八幡力を併用させた上で篝もここで逃しはせず倒すという強い意志で、SEEDを発動させる。
勢いのまま御刀を突きで放ち、そこから振り下ろした結果…斬り裂かれた上で、ブレイドマルガムは倒れた。

「…これは…カードと、刀…?御刀では、無いみたいですが…」
「…モノクロになってるけど…とりあえず…、っ、篝、さ…ぅぐ、ぁあ…!!いったい何が…!?」
「きゃ…ぁあ、っ!?…これは…っ」
「我は冥黒王ギギスト。理解したぞ。お前達は人間よりもホムンクルスやケミーに近い存在だと。
…この使い物にならないケミーカードは兎も角、その斬魄刀…千本桜は我の物だ、盗人共め」

ブレイドマルガムが斃れ遺った色を失ったカードと、千本桜を拾おうとした2人を突如として強力な重力が襲う。
その発生源は、様子を窺っていたもののブレイドマルガムの敗北を見て、空間錬金術を用いた転移により奇襲をかけたギギスト。
キラと篝が純粋な人間ではない事を見抜いた上で、そもそも他人の遺した支給品を手に入れただけなのに自分の物だとして、2人を盗人呼ばわりした。

「…ぐぅ…ざ、斬魄刀…だ…って…?…バルトフェルドさん…みたいな声で、ぇっ…!!」
「…ケミーの中に貴様のような声の個体が居たのは把握している。
……理解するぞ、モビルスーツという児戯とはいえ、使いこなせるパイロットならば重力への耐性がある程度はあるという事か。
だが我は貴様達を許そう…この異界の力の糧となるがいい──散れ、『千本桜』」


174 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:31:37 S.SbiBjI0
そして返ってきた反応には一瞬思考したの答えつつ、キラが動こうと藻掻いてる様と、羂索が最初に言った内容から彼がMSのパイロットであり、純粋なヒトでない為に普通の人間よりはG耐性…強い重力への耐性を持っていると理解をしてみせたのだ。
…その上で用済みだとし、ギギストは斬魄刀の解号を言い放つ、先程同様桜のような刃が身動きの取れない篝や、動こうとするも間に合いそうにないキラを襲おうとした……その時だった。
ギギスト目掛けて、黒い甲冑の戦士がぶつけられ、次の瞬間メイスを持った機体を纏いし少女がギギスト諸共それを甲冑の戦士へと叩きつけたのは。

「なっ!?」
「ぐは、っ…お前も…!!」
「……ミカ…?どうしてここに」
「ミカさん…!?…その傷は」

千本桜による包囲も超重力による制圧もキャンセルされ立て直そうとするギギストに、甲冑の戦士は殆ど傷のない様子で刃を向け斬りかかった。
その間に立ち上がって、困惑するキラと心配そうにする篝の2人に…ある程度損傷した機体、ルプスレクスから気まずそうな声色を出しながらミカは答える。

「……また会っちゃったね、キラくんも篝ちゃんも。まさかこんなに早く再会しちゃうなんて。
…この傷?あっちのわからず屋の刀が本当に、何でも斬れちゃいそうな感じだったからだよ」

そして一先ず、3人は簡潔に状況把握を試みた。
──新たな闖入者達が近付いて来ている事と、既に闖入者が虎視眈々と風都タワーの内部から観戦しているという事に、ギギストやスザク共々気付かないまま。

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「…どうしよ。近くのランドマークだと、風都タワーとキッチンいちのせがあるけど……風都タワーはキラくん篝ちゃんが行ってそうだし。
…うん、宝太郎くん絡みの建物っぽい、キッチンいちのせの方に行ってみよっか☆」

その為キッチンいちのせのあるエリアまで赴かんとミカは考えていた。

(…篝ちゃんやキラくんの知り合いに会ったら……とりあえず、2人の事は伝えるとして……うーん、その時に決めよっ。
多分名前からして飲食店っぽいから…まあ誰かいるでしょ☆)

浮かんだ悩みを先送りしてまずは向かってみる事とし、該当エリアへと足を踏み入れ…キッチンを目前としたその時、黒き甲冑を纏った相手が現れ剣を突き付けてきた。

「ここでお前には死んでもらう」
「…へぇ、殺し合いに乗ってる…って感じだね。…柊篝って子やキラ・ヤマトって子は知ってる?」
「そんな奴らは知らない、お前を殺したら次はそいつらの番だ…だからここで死んでくれ!」
「あっそ。…じゃ、遠慮はいらないってことでいいよね☆」
(…これは、私と同類…かなあ?)

憎悪と殺気に満ちた、どこか悲壮かつ「そうしなければならない」と思っていそうな声色に推測を立てつつ、ミカは起動鍵を使用。
彼女は再び、ガンダムバルバトス・ルプスレクスをその身に纏った。
それを見たと同時に黒の戦士…キッチンいちのせへと向かっていた所ミカを発見した枢木スザクが変じた、仮面ライダータイクーン、ブジンソードは己の武器たる武刃で斬りかかる。
対しミカはルプスレクスの装甲を以て受け流そうとする……も、盾とした部分の装甲を斬り捨てられ、ダメージも入った。

「いたっ…!…その剣、御刀みたいなやつかな…!」
「羂索が言っていた刀か…だがこれはそんな物じゃない!この剣で、お前を殺す!!」
「へぇ・、なんの為に?」
「僕が…俺が望む世界を、理想の世界を手に入れるため…そして俺の大切な相手を殺し全てを奪ったルルーシュへの復讐を果たすためだ!!だから…だから俺は!君を…お前を!!」
(…復讐。やっぱり、同類なんだね君は…でも対象がいるならさぁ)


175 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:32:12 S.SbiBjI0
装甲を貫かれた事から、武刃を受け止めるのはまずいと悟り回避しながらミカは、腕部200mm砲を放ったりフルートバスターで斬りつけたり、テイルブレードで関節部を狙いに行くものの…どれもブジンソードの装甲、及び膝や肩のブジンアーマーにより有効打を与えられずまたテイルブレードも避けられる。
先の戦いで関節部やベルトにバックル狙いをされたスザクは、2度も同じ手は食わないと狙われた途端回避や切り払いに徹していた。
その最中交わす会話にて、ミカは目前の相手が復讐の為皆殺しを目論んでいると察し、メイスをぶつけた上でこう言う。

「…ねぇ、君はルルーシュに復讐したいんだよね?ならさ…なんで、ルルーシュを殺すこと最優先にしないの?」
「…ルルーシュだけを殺しても意味はないっ…お前たちみんなを殺さなきゃ、俺の望む世界は手に入らない…手に入れなければ俺はっ…なんのために!!」
「…あのさ、復讐する相手が、ちゃんと居るのに…あんな演説したんだから、他の誰かに取られちゃうかもしれないのに…最優先にしないとか、舐めてるの?放っておけば置くほど、どんどん戦力を拡大していくと思うよ?
…殺したいだけなら、ルルーシュを殺すまでは主催に抗うフリして、殺してから裏切るなんてこともできるでしょ?」
「…黙れっ、お前になにが…!!」
「じゃあ君にわかるの?復讐相手がいないから、生還して復讐を果たすために皆殺しにしなきゃいけない私の気持ちが。…理解しようとしてくれるのかな?キラくんみたいにさ」
「っ…君は!…クソっ、ルルーシュが…ルルーシュが俺から死を奪わなければ俺は…僕はっ…!!」

"自分とは違って"、復讐相手が此処に、この殺し合いにいるというのにそれを果たすよりも、他人の殺害を優先する様に呆れ果てた様子で、ミカは辛辣に言葉を浴びせかける。
対しスザクは、ルルーシュによりかけられてしまった『生きろ』というギアスの呪いにより、例え潜伏しても命の危機が迫ると自己の生存を最優先にしてしまうようになっている現状から…辛そうにしながらもそれを拒絶する。
鉄火場で自分の命を最優先にし逃走しかねない存在を、誰が信用するというのだろうかと、彼はそう考えていた。

「…自分の罪に押しつぶされそうなのは、痛いほど、わかるけどさ☆……相手がいるなら、まずそっちを狙うべきじゃんね」

心なしか動きが鈍くなったスザクに対し、ブーメランにしたフルートバスターをぶつけ、更にレクスネイルで攻撃を加える。

『──どうして!??なんでこんな殺し合いに乗るの!?それで願いが叶うって本気で信じてるの!?』
『貴方は優しく、そして悲しい人ですね』
『優しすぎて、自分の犯してきた罪に押しつぶされて、それを償うためあえて狂気の道を行こうというのですね……』

「…黙れ!!黙ってくれ!!俺は決めたんだ…今更!!覆すだなんて!!理想の世界を叶えない限り過去はもう…戻らないんだ!!そうじゃなきゃ…償えない…ルルーシュの罪も、俺の罪も!!」

先の戦いで少女らに言われた言葉が脳裏にフラッシュバックし、それらやミカの言葉を、必死に自分に言い聞かせるようそれを拒絶するスザク。
だがその隙は致命的であり……ブジンソードはテイルブレードで宙に浮かされた後、レクスネイルをぶつけられそこから拳で殴り飛ばされ……ギギストに激突。そこにミカがメイスで叩きつけて、今に至るという訳だ。

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176 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:32:42 S.SbiBjI0
「お前も!!お前も俺が殺してやる!!」
「成程、理解するぞ。その胸中に渦巻く復讐心と罪悪感…それに揺れ動く優しき心を」
「お前まで!!俺を惑わすつもりかぁっ!!」
「創世の神の力とやら、我に見せてみるがいい」

通り魔同然で、半ば自棄になっているスザクに襲いかかられたギギスト。
一瞬とはいえ脳内に浮かんだのは困惑、かつ武刃によりダメージを何度も受けてしまったが、すぐさま理解をしてみせ対応する。
武刃の斬撃を的確に回避した後、先程ステインに使った黒い炎の譲渡をするか転移で回避するか、或いはレジェンドケミーカードを使ってマルガムに錬成するかを考え……転移により回避し、キラ達へぶつけてやろうと決めた。

「うあああ"ぁっ!!!」
「っ、ギギストが…!」
「押し付けて高みの見物、というつもりですか…!」
「…そっか。そっちも…厄介そうなのと戦ってたんだね…今は、一緒に戦おう、キラくんに篝ちゃん」

ぐちゃぐちゃな感情のままに斬りかかるスザクに対し、距離を取り様子を伺いつつ、危うくなればマルガムに錬成してやろうとするギギスト。
一方簡易だが情報共有を果たし共闘を選ぶミカ、キラ、篝。
3人とも武刃を回避しながら、キラはビームブーメランを、ミカはフルートバスターのブーメラン形態を同時に投げ、また篝は3段階目まで加速させた迅移による突撃で攻め立てていく。

「お前達も俺の!!俺のルルーシュへの復讐を!望む理想の世界の…邪魔をするのかっ!!」
「…ミカにも言われただろうけど、ルルーシュを止めたいのなら、それを先にやるべきじゃないのか!優先順位を間違えちゃ…ダメだって!どうしてわかってくれない!?」
「…復讐は否定しません、ですが無関係な方に刃を向け、あの冥黒王の思うがままに戦うなら…神薙の刃として貴方を、止めます!!」
「…ルルーシュにかけられたギアスの!!生きろという呪いのせいでそれは出来ないっ!!お前達まで僕を!俺を!!知ったような顔でまやかそうとするなぁっ!!!」
「ルルーシュが、君にそんな事を…!!でも…僕みたいに…犠牲の果てに生み出された訳じゃないだろう!?…なら生きたいって思うのは、間違いなんかじゃないはずだ!!」

頭では言ってる事は理解出来ている。このままではギギストの玩具になるだろう事も、ルルーシュへの復讐を果たすなら殺し合いに抗うフリをした方がいい事も、早くしなければ他の誰かにルルーシュが殺されるかルルーシュの戦力が増強される一方だという事も…。
だがそれでも憎しみは払えず、理想の世界を叶えて償わなければ、全てが無駄に、無為になってしまう…だから全てを殺すんだという意志を覆す事はどうしても出来ない。
悲壮な叫びをあげながら、ギアスの呪縛の事すら思わず話してしまうくらいに…枢木スザクの情緒はめちゃくちゃな状態となっていた。

「…この有様ではそろそろか。冥……」

レジェンドケミーカードをバインダーから取り出し、スザクをマルガムに錬成してしまおうとしたその時──ギギストの視界に迫り始めていたのは、高出力のビームの奔流。咄嗟に転移で、ギギストは範囲から離れ逃れた。

「あれは…っ、キラくん!篝ちゃん!!」

ギギストが退避したのとほぼ同時に気付くはミカ、2人に呼びかけ、範囲からの離脱を試みる。

「これはあの時の…!!…君も離れるんだ!!」
「ふざけるなっ…俺はお前達を!!」
「死にたいんですか!?貴方は…復讐も果たせずに!」
「…死ぬ…?俺はっ…俺は…生きるっ!!!!」

なおも斬りかかろうとするスザクに、キラは退避を呼びかけたが通じず、それならと篝が、先の彼の言葉から死を連想させるように、復讐を果たせなくていいのかと呼びかけた。
結果、スザクにかけられた「生きろ」のギアスの呪縛が発動。一目散に範囲から撤退していった。
キラは変形したイモータルジャスティスで、篝は3段階目の迅移と八幡力の併用で範囲から抜け……射線上の建物は、風都タワーの前にあった建造物は尽く全て、光の奔流に飲み込まれ灰燼と瓦礫、焦土に成った。


177 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:33:15 S.SbiBjI0
どうにか回避し、敵へと向き合おうとするキラ、篝、ミカ。ギアスにより回避させられ逃がされた事に気付きつつ、想像以上の威力に…巻き込まれていれば良くて瀕死、悪ければレジスター以外何も遺らない可能性すらあるレベルの火力に呆然とするスザク。
様子を伺うも、状況の不利さを理解し撤退か、冥黒王としてのプライドを投げ捨てて共闘かを検討するギギスト。
…しかし次の瞬間、"まるでいきなり加速したかのような早さで"逃さないと言わんばかりに少女がギギストへと斬りかかる。

「…理解したぞ。この状況…手を組まねば全滅だ」

双剣の連撃を回避し切れず少なくないダメージを負ったのもあり、転移でキラ達の元へ現れたギギストは秒で共闘を選んだ。
その場に現れるは、黒マントをはためかせた白き死神、仮面ライダーエターナルと、外宇宙からの尖兵たる金色の砲撃雷竜、帝竜ジゴワット。
…そして先程、ギギストに斬りかかった少女。
…その顔を、その様を視た篝は呆然とした様子で、震える声で…信じられないとばかりに、少女の名を呼んだ。

「……かな、み…さん……!?」
「…そんな、っ…クソぉっ!」
「…可奈美ちゃん、だっけ。もう、あの子は……」
「……理解するぞ。娘の仲間で先輩の娘が、命を落とし、あまつさえ遺体を弄ばれている事実を受け入れがたい心情は。
だが奴らを相手に、感傷に浸る暇はあるまい」

何の表情も浮かべず、光の消えた虚ろな目に、両腕と腹の部分のみが破けた制服、そこから見える縫い目のような、或いはツギハギしたかのような痕。
…誰がどう見ても、目前の少女が…衛藤可奈美が、その死体を操り人形にされているという状態なのは、明らかであった。

----

…可奈美さん。美奈都先輩の娘で、姫和の大切な仲間で友達…直接話せたのは僅かですが、姫和の言ってた通りの子で……美奈都先輩に、年相応か、それより幼い表情を浮かべて泣きじゃくっていた姿が印象的で…だからこそ、眼の前の、空っぽな亡骸と……結び付きがたくて。
……けれど、これは夢ではないんです…可奈美さんは、あのエターナルに殺されたか、死体を見つけられ操られてるか……もう、現世に彼女は居ない……理解せざるを得ず、気付けば涙が零れていました。
……ごめんなさいっ…美奈都先輩……姫和……可奈美さんのこと…わたしは、たすけれなかった……!!

『……理解するぞ。娘の仲間で先輩の娘が、命を落とし、あまつさえ遺体を弄ばれている事実を受け入れがたい心情は。
だが奴らを相手に、感傷に浸る暇はあるまい』

……先程まで敵だった身で、腹立たしい事を言うギギスト。しかし彼の言葉のおかげで、少しは平静を取り戻せた気がします。
…ここで、可奈美さんを止めなければ…誰かを殺めてしまうかもしれない。まだ生きているキラくんやミカさん達を…よりにもよって、不殺を志していたという彼女の亡骸に殺させるなど、あってはならない事ですから…!!

「…可奈美さん…神薙の刃として、刀使として…殺し合いに抗う者として……姫和や、その友達達に手をかけてしまう前にあなたを止めます…っ!!」
「…行け」

声の震えは止まらないまま、それでも御刀を向けて……次の瞬間、エターナルが可奈美さんに指示を出したと同時に、剣戟が始まりました。

----

エターナル相手にキラとミカが、ジゴワット相手にギギストが応戦し、スザクが呆然とする最中、二人の刀使は切り合う。
…20年前、現世の篝が現役の刀使であった頃は刀使ノ巫女本編の時間軸よりも荒魂の出現率が高く、更に死した人間の荒魂化が多発、生きたまま荒魂化する事例も少ないながらあった。
当然、殉職する刀使も多く…そんな中相模湾大災厄まで生き延び刀使として戦ってきた篝…の技量経験、それまでの記憶を持った隠世の篝は現代の刀使の上位層にも引けを取らない強さを持っている。


178 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:33:35 S.SbiBjI0
少なくとも経験の面では、シビトと化した今の可奈美よりなお勝ると言えた。

…しかしシビトとなった事で、機能している間とはいえアンクに回収された筈の刀二振りを持ち更に生前殺し合いに巻き込まれる前の装備だからと出現した、己の御刀千鳥を帯刀している今の可奈美には……技とそれを活かす技量、それになにより…自我が在れば、余程の事が無ければ芽生えない筈の殺意があった。
その差が容易く、絶対的な経験の差を上回り……篝からすれば、当人の心情もあり余りにも分の悪い戦いを強いられる形となっている。

鹿島新當流による突きや切り上げ、切り下ろしや切り払いをしても、全てを凪で対応され碌にダメージを通せない。
その上可奈美側は水の呼吸や、これまでに視てきた剣術の再現によって着々と篝を追い詰める。SEEDによる戦闘・反応速度の向上が無ければ今頃、篝はバラバラな惨殺死体と化していただろう。

「…これほどまでに強く……だというのに、貴女はっ…」

悲しみを堪えられない様子で、息を切らしながら呟く篝。しかし意に介さず可奈美は斬りかかる。シビトに躊躇や躊躇いは無く、ただ主である大道克己…仮面ライダーエターナルの為に剣を振るい殺すだけだった。
篝が防ぐ為に振るった並行世界の可奈美の千鳥を、以蔵の刀と義勇の日輪刀の二刀で打合せそのまま押し切る。
吹っ飛ばされ壁にぶつけられ、口から血を吐く。

(…隠世の存在な、私も…血は現世の人達と同じ、なんですね……)

などとこの状況下ではどうでもいい事を浮かべてしまいつつも…表情豊かだった生前の面影が無い無表情で、可奈美が近付いてくるのが視界に入った篝。
御刀を支えに立ち上がろうとするも、それより早く迅移を可奈美は使い、首を取りに来るだろう事が分かりきっていた。

「逃げて、っ…篝さん…!」
「篝ちゃん!」

エターナルに押されながらも自らを心配するキラとミカの声が聞こえるが、結果は変わらない。篝がアクションを起こす前に、可奈美がその命を奪い取る。そしてその内、彼女もまた…シビトとなり殺戮マシーンと成り下がるその未来は変わらない……はずだった。

「…キラくん、ミカさん……ごめん、なさい……姫和…」

だが、無感動に振り下ろされた一撃は…金属同士のぶつかる音と同時に受け止められる。

「…どうして、貴方は…??」
「……見てられなかっただけだ。今は…今だけは、彼女達を優先的に、終わらせる」

シビトの可奈美の一撃を武刃で止めたスザクは、立ち上がった篝に向けてそう言った。

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『──どうして!??なんでこんな殺し合いに乗るの!?それで願いが叶うって本気で信じてるの!?』
『貴方は優しく、そして悲しい人ですね』
『優しすぎて、自分の犯してきた罪に押しつぶされて、それを償うためあえて狂気の道を行こうというのですね……』
『…あのさ、復讐する相手が、ちゃんと居るのに…あんな演説したんだから、他の誰かに取られちゃうかもしれないのに…最優先にしないとか、舐めてるの?放っておけば置くほど、どんどん戦力を拡大していくと思うよ?
…殺したいだけなら、ルルーシュを殺すまでは主催に抗うフリして、殺してから裏切るなんてこともできるでしょ?』
『じゃあ君にわかるの?復讐相手がいないから、生還して復讐を果たすために皆殺しにしなきゃいけない私の気持ちが。…理解しようとしてくれるのかな?キラくんみたいにさ』
『…自分の罪に押しつぶされそうなのは、痛いほど、わかるけどさ☆……相手がいるなら、まずそっちを狙うべきじゃんね』
『成程、理解するぞ。その胸中に渦巻く復讐心と罪悪感…それに揺れ動く優しき心を』


『…ミカにも言われただろうけど、ルルーシュを止めたいのなら、それを先にやるべきじゃないのか!優先順位を間違えちゃ…ダメだって!どうしてわかってくれない!?』
『…復讐は否定しません、ですが無関係な方に刃を向け、あの冥黒王の思うがままに戦うなら…神薙の刃として貴方を、止めます!!』
『でも…僕みたいに…犠牲の果てに生み出された訳じゃないだろう!?…なら生きたいって思うのは、間違いなんかじゃないはずだ!!』


179 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:34:01 S.SbiBjI0
亡骸を動かされている、可奈美と呼ばれていた子が無慈悲に剣を振るう中、その有様に言いようのない嫌悪感を抱いた俺の脳裏には…言われてきた言葉が浮かび続けていた。

……もし、ユフィが今の可奈美のように、遺体を利用されて、死後もなお尊厳を踏み躙られたら……そう考えると、可奈美やあの竜を操る仮面ライダーは、倒さなければ行けないと思えて、殺されそうになっていた彼女…篝が呟いた時、気がつけば俺の身体は動いていて。
……今は、今だけは優先順位を間違えないと…俺は決めた。

----

ラクスやゆう、ミカや篝やキラの言葉に、可奈美の有様を見た末……一時的とは言え、協力する方にスザクの心は傾いた。
なにかひとつが欠けていれば、羂索に身体を使われている梔子ユメの有様に思うところが無かったように傾きはしなかっただろう。

ともかく、2人はシビト可奈美に対応・共闘を図る。金属同士の、ぶつかり合い鍔迫り合いになる音が響き渡った。
……ブジンソードの拡張装備であるソードマスターチェストは何者にも頼らず武刃の剣技で多勢を圧倒する戦闘力を使用者へと与える機能がある。
頼らずにそこまでの戦闘力を得れるというならば、頼り連携が出来れば更に戦闘力が上昇するという事でもあった。
篝ひとりだけで迎え撃っていた時よりも、大幅に余裕が増えた形である。

一方その頃、ギギストは転移によりジゴワットを翻弄しつつターゲットを自らに向けていた。

(理解するぞ、あの高威力の電磁砲は暫くは撃てず手間がかかると。…エターナルをキラ・ヤマトや聖園ミカが倒せばこちらも撤退するのみだが……この竜は黒い炎でどうにかなるとも思えん、力を与えても適合しかねない…)

超重力で足止めを行いながらも、それでも飛んでくる砲撃を転移を駆使しどうにか他戦線への介入を防ぐ。
介入されれば後は総崩れ、戦線は崩壊し全滅するシナリオがギギストには見えていた。
千本桜を再び展開、及びソードスキルとして落とし込まれている卍解を使用すればダメージはもう少し与えられるだろうが…この状況で、無傷圏という入りこまれるリスクと自傷するリスクが付き纏う千本桜を使うのは悪手と認識した為、使わず足止めに徹する。

そして篝とスザクが奮闘している方を見た後、もう一方の戦場へ目を向けると……壊滅一歩手前の有様が広がっていた。

----

時は少し遡る。

「…あなたが、あなたが可奈美さんを殺して、あんな風にさせてるのか!?」
「生憎殺したのは俺じゃあない、ただ駒として使ってやってるだけだ。使える物は全て使う、優勝して全てを地獄へと叩き落としてやる為にな」
「…復讐のため?」
「そんな人間らしい感情、過去と共に消え失せたさ。とっくの昔にな!」

言い合いながら、ミカが剣状態のフルートバスターでエネルギーの斬撃波を放ちキラもビームライフルでエターナルを迎撃したが、尽くそれらを躱わされていく。

「はっ、その程度か」
「ぐ、ぅ…まだ…!!」
「全然当てれなくてムカつく、んだけど…!!」
「当てられないお前が…弱いだけだ!」
「うわ、っぁ!?…っいっ、たいなぁー…!!」

そしてエターナルエッジを振るい、イモータルジャスティスのサーベル代わりのブーメランとぶつかり合ったが…咄嗟に体勢を立て直し事なきを得たがキラが押し負けてしまう。
当然黙って見ているミカではなく、テイルブレードで奇襲を行うが…回避され続けた挙句、エッジから飛んで来た蒼炎を思い浮かばせる青きエネルギー刃により少なくないダメージを受けてしまった。
エナジーアイテムで回復できたのと、元より窮地に陥ってから粘り強く戦う事に長けているキラは兎も角。
ダメージと疲労を負ったまま、スザクの武刃に更にダメージを受けさせられたのもあり、いかなキヴォトス人であっても蓄積された疲労と傷のせいでミカは消耗、動きが鈍くなりつつあった。
加えてエターナルは先の戦闘ではダメージは無く、疲労はあれどNEVERの特性もあり十全の戦闘力を発揮出来ていた。

それを逃す気も情も無く、エターナルはエッジを振るいエネルギー刃を飛ばし続ける。
どうにか回避を試みるも、動きの鈍さ故被弾を避け切れない。徐々にルプスレクスはボロボロになっていった。

「ミカっ!」
「…まだへーき、隙作れる?キラくん」
「…わかった、やってみる」
「何を目論んでいるのかは知らんが、纏めて地獄へと送ってやろう。死体は俺の手駒として使ってやる」
「…そんな事、させないっ…!!」


180 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:34:27 S.SbiBjI0
令呪を切りリミッター解除を行うか、この状況下で巻き込みのリスクを冒してまで、最後の支給品を使用するか…それとも、貴重な獣電池をもうひとつここで使ってみるか…考えた末ミカは獣電池の使用へと踏み切った。
選択ミスをした事に気付かないまま、フルートバスターに装填、キラがカルキトラビーム重斬脚でエターナルエッジの一撃を受けている間に、魔楽章デーボスフィニッシュを放ちトバスピノ型エネルギー弾を撃つ。
それはエターナルへと直撃……する寸前に、エターナルエッジを退かせた彼はキラを盾にする事でこれを避けた。

「ぐわあああっ!?」
「ぁ…キラくん!!」
「今のは危なかった。丁度いい盾が無ければお前達が有利だったかもな…!!」
「い…っぅ!?」

誤爆してしまい動揺するミカは、隙だらけなのも合わさり…エネルギーを纏わせたままのエッジで直接攻撃してきたエターナルに対応出来ず、ルプスレクスの起動鍵を解除させられてしまう。
地面を転がされた彼女にエターナルは容赦なく追撃。ミカの羽目掛けてエッジを振り下ろし…切断こそ寸前で避けにかかられたのもあって出来ずとも、付け根に食い込み血が流れた。

「ぅあ、ぁぁあ"っ!?」

思わず痛みに声をあげ顔を歪めてしまうミカ。それでもと、復讐を果たすため死ねないと立ち上がろうとした…その時にはもう、エターナルはエッジを投擲してミカの首を撥ね飛ばそうとしていた。
投擲される、エネルギーを纏ったエターナルエッジ。ミカの脳裏に浮かんだのは走馬灯。

(…ここで、終わるの?…そんなの、いやだ…でも令呪も起動鍵も、間に合わないっ……!!
…ナギちゃん…セイアちゃん…先生……ごめん)

令呪を使おうにも起動鍵を使おうにも、その前にエッジにより首を掻っ切られ転がるのが先だと、ミカにはわかってしまっていた。
…こうして全てを踏みにじらんとした魔女聖園ミカは、ティーパーティーの2人や、殺そうと考えてるとはいえ、味方だと言ってくれた先生に内心謝り…復讐を果たせず無念のまま命を落とす……事はこの場では無い。

「させるかああああっ!!!!」

寸前に疾風により風で自らを加速、そのままシールドのある左手でエッジの強力な一撃を…キラ・ヤマトが身体を張り受け止めたからだ。

----

『ダメだトール!!来るな!!』
『トールゥゥゥ!!!!』
『よくもトールを!!!!』

投擲されたエッジにより、ミカの首と身体が泣き別れにされんとしていたその時、キラの脳裏に浮かんだのは共に戦おうとしてくれた友達トール・ケーニヒの最期。
シールドがコックピットに直撃し、首がもげるその凄惨な死は…キラの記憶に焼きついてしまっていた。
だからトールのような死に方をさせない、今度こそ助けるんだ!!と、誤爆によって決して少なくはないダメージを負いながらもキラはミカを庇いに行った。
…最も、仮にトールの死というトラウマを想起させる状況では無かったとしても…その優しさ故に彼はミカを命を賭してでも庇いに向かっただろう。

----

…来るはずだった、首に突き刺さる感覚は私には来なくて。代わりになにかが零れて、かかった。
…生きてる…?って疑問に思いながらも私は閉じてた目を開いて……。

「…よかった…守れた、君を…」

──え?…きら、くん??

……起動鍵を解除され、右手に金色の何かを握ったまま、力無く私に微笑みかけながらそう言ったキラくんには……左腕が、無かった。

かかったのは、キラくんの血…?
……わたしの、せいで…キラくんの腕、が……???

----

時は今へと戻る。左腕を切り落とされ今にも血の海に沈みそうなキラと、呆然自失状態なミカ。
意に介さずエッジを回収した上で、2人纏めて殺しにかかるエターナル。
このままでは押し切られ、2人揃って可奈美のように死体を操られ手駒にされてしまうだろう。そうなれば後は制圧され全員纏めて手駒に成り下がるのみだ。
故に迷うこと無くギギストは介入。超重力により引き続きジゴワットを止めつつ、生成した異なる空間へエターナルのみを一時的に閉じ込めた。

「…ギギスト…その斬魄刀でこれをっ…!!」
「理解しているとも」

息も絶え絶えな様子で言ってきたキラに対して、即座にギギストは金色の物…王印に千本桜を突き刺した。
するとキラの姿が変わり…再生能力により千切れた左腕を徐々に戻らせながら…二足歩行の氷竜へとなった。


181 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:34:58 S.SbiBjI0
「…キラ、くん…なの…?」
「ありがとう、ギギスト。…うん。暴走のリスクがあったから極力使いたくなかったけど…使うしか、無いみたいだから…!」

ギギストに素直に感謝を述べつつ、我に返るも、今度はキラの居た所に氷の竜が居り混乱するミカに簡潔に話した上で…キラは口から氷を発射し、シビト可奈美に直撃させる。
凍結こそしなかったものの、隙は作れ…そこにスザクと篝が攻撃をして、張っていた写シを剥す事に成功した。
そして口から今度は、黄色の破壊光線を放ちジゴワットにもダメージを与える。

「…今の内に、ミカ…篝さんにそれを!」
「…う、うん…篝ちゃん!受け取って…!!」

エターナルを閉じ込めれている内に、イモータルジャスティスの起動鍵を渡すようにミカに伝えるキラ。
ミカは篝目掛けて起動鍵を投げ、八幡力による跳躍力強化もあって篝は上手くキャッチする事が出来、キラの思惑は果たされた。

「やってくれる。だがお前も、人間を捨てた魔物に成り下がったようだな」
「違う、僕は…僕はっ…人間の、つもりだ…!!」

空間を脱してきたエターナルに対して、最高のコーディネイター(スーパーコーディネイター)として夥しい犠牲の下に生まれた、人の業そのものにしてあってはならない存在である自分がそう言っていいのかと迷いつつも、それでもキラは啖呵を切り……手刀でエターナルエッジと打ち合う。
先程とは違い王印の力もあるのと、片腕だけとはいえ再生しつつあるのと、ここまで何度も等身大での近接戦闘を行い続け、最高のコーディネイターとして造られどの分野でも最大限素質や才能を持たされて生まれたキラが死線を超える度、その才覚を研ぎ澄まさせていったのもあり両者互角の様相を見せていた。
キラは手刀に疾風を集中させ、エターナルのエネルギーを纏ったエッジとぶつかり合わせて相殺を引き起こす。

「…あんな竜になる支給品まで、あるのか…」
「……今はキラくんが作ってくれた隙を、活かしましょう!」

驚くスザクに対しそう言いながら、イモータルジャスティスへと変じた篝。シビト可奈美の刀による攻撃をVPS装甲で受け、ビームブーメランを投擲しつつ御刀で攻め、スザクに攻撃に専念させようとする。
またジゴワットを止め続けていたギギストは、空間への隔絶を行わんとし、ミカも再びルプスレクスの起動鍵を使用しようとした。

スタンスは異なり、キラと篝以外は皆殺し合いに乗っている有様だが、それでも目前の相手が死者を操る力を持っている以上、死者を出せば思う壺と判断し、手を組み戦う事を選ぶ。だが目前の戦いに集中していたが故に……ずっと戦況を伺っていた闖入者に、彼らは気付くのが遅れに遅れてしまった。
…次の瞬間、エターナルと戦うキラの元にいつの間にやら近付いていた男が呟いた。

「さあ、未来なき者達の無駄な抵抗を見せてもらおう…『冥黒に染まれ』」

行動をする前かつ、比較的近くに居たミカが咄嗟にキラに手を伸ばす。同じく行動する前だったものの、少し距離が離れていたギギストが次に気付き、空間転移を行使しようとした。
──しかし、間に合わない。
ミカの手がキラに届くその寸前に、男の錬金術は発動された。

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……伸ばした手は、とどかなかった。
ほんの少しでも、早く動けてたら…それか、起動鍵を使った後だったら……。
……彼は怪物に、ならずに済んだはずなのに…!!

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「さて、ノノミには行かせたが…私自身も動くとしよう。
ランドマークな以上、抗う者達にしろ受け入れる者達にしろ…既に来ていてもおかしくはないはずだ」

ワープテラを取り込ませた冥黒ノノミを送り出した後、魔王グリオンは自らも手駒を探し悪意を振り撒こうという考えで風都タワーへと向かった。野比家の方角には冥黒アヤネが向かった為、次に近いこの場所に白羽の矢を立てた形である。
そしてタワー内部を散策するグリオンだったが…予想に反して、他の参加者は誰も内部にはおらず居たのはNPCばかり。
自ら…というよりは"この身体"が覚えている洗脳・記憶改ざんの錬金術によりNPCの同士討ちをさせつつ、くまなく探したが結局参加者は発見できなかった。

仕方なく、ドロップした双眼鏡を用いて外を眺めてみると…戦いが勃発していた為観察を行う。
すると有象無象の中に冥黒王ギギストが居たのを発見。賢者の石を取り込めばさらなる力を手に入れれるだろうとグリオンは虎視眈々と機会を伺った。
そんな中、参加者のひとりが左腕を奪われた後、ギギストが持つ日本刀を右手に持っていた物に刺されたと同時に、氷の竜と化す。
そして劣勢だった戦況を覆していくその光景を見て…彼は思った。


182 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:35:33 S.SbiBjI0
(あの氷竜は死体人形達に対するその場の連中の希望という訳か。だがそんな物は認めない…絶望を見せて悪意を振りまいてやるついでに、手駒として使ってやろう)

そうと決まればと、他の面々が目前の戦いに集中し流れ弾も飛び交っていた戦場を堂々と歩き不意を突いた形である。比較的近くだったミカとギギストには気づかれたものの…その時にはもう遅く、洗脳の錬金術がキラを襲った。

「うぅ、ぐ…うわぁあっ!?!」
「抵抗しているのか?だがそれも直ぐに無意味となる…」

叫び声をあげ悶え苦しむ仕草をするキラを見ながらも余裕たっぷりという様子をグリオンは見せた。

「…キラ、くん…キラくんっ!!」
「人の獲物を横取りか、邪魔をしてくれる…!!」
「…貴方はっ…キラくんに何を!なにをしたんですか!?」

苦しむキラに呼びかけようとするミカに、突然の闖入者に苦言を言いながらエネルギー刃を放つエターナル、問い詰めようと、シビト可奈美の剣技をイモータルジャスティスの装甲で受け止めつつ声を張り上げる篝。
対してグリオンはあっさりとエターナルの斬撃波に対応しながら名乗った。

「話していなかったのか?ギギスト。…ならば名乗る必要があるな。
…私はグリオン。名簿には魔王グリオンと表記されていた、いずれこのゲームを…悪意と、それにより齎される絶望で彩る男だ。
以後、お見知りおきを」
「手駒すらいないのにその表記とは、格好が付かない魔王も居るんだな」
「生憎と我が配下はひとり欠員が出て、残りは出払っていてな。私自らも欠員を埋める為に出向いてみれば、ギギストにキラ…キラ・ヤマトかキラ・ヤマト准将のどちらなのかは知らないがともかく、彼を発見したというわけだ」

エターナルの煽りながらの攻撃に平然と返し、迎撃をしつつグリオンは氷竜へと視線を向ける。

「思っていたよりは粘るな、そこまで私の軍門に下りたくないか?
…まあいい、そう長くは保たないだろう…それに好きなんだ…君のような未来が無い者達が、必死に無駄な足掻きを続ける様を見ることが…」
「…だれ、が、っ…お前なんかの元に、ぃっ…!!」

そう返すも、キラの限界はすぐそこまで近付いていた。気を抜けば、或いは意識を手放せば自分はおそらく、自我を奪われ魔王の傀儡と化してしまうだろう。

(…ここまで耐えるとは想定外だったぞキラ・ヤマト。しかしこの様子なら或いは…)
「──令呪だ。令呪を切れ、キラ・ヤマト!!」

そんな最中空間転移で距離を取りつつ黙り込み、グリオンに名を出されても反応せず空気に徹していたギギストが、突如そう言い放つ。
ギギストの脳裏に浮かんだのは、先程令呪を以て黒炎を相殺し、それでも残ったダメージをも耐えてみせたステインの姿。令呪無しでここまで耐えて見せているキラ・ヤマトなら、用いれば抗いきる事も可能ではとした形となる。
最もそれだけでは最悪グリオンに片手間で始末されるか、マルガムと無理やり錬成させられるかと考えたのもあり…ここでギギストは自らの力を与える事とした。

(耐えれれば一先ず、我の逃走は可能となるだろう。仮に耐えれず消え失せたとしても、グリオンの戦力が増える事は回避出来る。遺体も残らない以上、衛藤可奈美のようにエターナルに操られる事もあるまい)

そしてその結果、苦しみながらもなんとかキラは令呪を切り……起こったのは彼にとっても、グリオンにとってもギギストにとっても想定外の事態だった。

----

まず、キラはギギストの力に耐える事は成功した。そしてグリオン目掛けて氷を飛ばしダメージを与えようとした事から、グリオンの洗脳の錬金術にも耐えてみせている事もわかる。
しかしその直後、氷竜は自分を中心とした付近に凍結能力の行使を開始。敵も味方も巻き込みかねない範囲である。

これは王印自体に元々暴走のリスクがあったせいなのと、キラ自身のメンタルが不安定だったのも大きな要因だ。
フレイ・アルスターを目前で喪い、ラウ・ル・クルーゼを倒した後から巻き込まれたこのキラ・ヤマトは、本来1・2年程静養し続けていなければいけない程心に深い傷を負っていた。
実際アスラン・ザラ擬きに殴られ蹴られても、篝が割って入るまでなすがままに暴行を受け続けていたくらいである。
それでも彼が立ち上がり殺し合いに抗おうとしたのは、篝が目の前で殺されそうになったのがきっかけだった。
…限界を迎えていても、誰かが目の前で殺されそうになっていたら…殺させたくないと立ち上がり戦う事が『できてしまう』少年がキラ・ヤマトなのである。
その不安定さが…暴走へのカウントダウンの引き金となった。

「何っ!?」
「ギギスト!?…キラくんに…何したの!?」
「…成程。制御不能という訳だ…私の配下に出来ないのは惜しいが、これならば存分に絶望を振り撒いて──!?」


183 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:35:51 S.SbiBjI0
「…出力が上がってはいても…くっ、令呪を使ってるのに制御が…これで令呪が切れたら…僕はっ…!!」

混乱するギギストに、氷を避けつつ問い詰めようとするミカ、ギギストやキラの想定外となった事を嘲笑っていた所、氷竜が放った黄色の光の柱の直撃を受けかけ咄嗟に避けたグリオン、制御しきれず常時接触した物及び周辺を凍結させ続け、攻撃をするのも一苦労な有様なキラ。
戦況は混迷を極め、風都タワー周辺は半ば氷漬け状態と化した。

そんな最中、凍結による地面の不安定化や凍結自体の回避をしていたのもあって、一瞬生まれた隙をシビト可奈美が突き、篝とスザクを斬り裂かんとする。
制御に苦心していたものの目に入ったキラは、やらせるかと全速力で向かい、不意を打った手刀で、刀使としての異能の行使や凪をさせる前に空中へ突き上げたのち、ソードスキル疾風と氷竜の使用可能な突風を同時併用。
そのまま吹っ飛ばし付近から離れさせた。氷竜となった時点で攻防速全てが上昇している上、更にギギストの力により強化されており、SEEDによる戦闘反応速度の向上も併さったが為出来た芸当である。

(…あれで止まってくれるといい、けど…)
「…残念だよ。君とは、話してみたかったな…仲良くなれた、はずだから」

空の彼方へ消え何処かに墜落しただろう、シビトと化した可奈美に想いを少し馳せながらも、自らに残された令呪により防げている、完全に暴走するまでのリミットもそう長くは無い、現に何もしていないにも関わらず、周辺に虚や大虚が発生し始めて囲まれつつあるのだから。それもありキラは決断をする。

「…みんな、僕の令呪が機能している内に早く…ここから退避するんだ!」
「…退避って、それじゃ…キラくんは!?」
「理解したぞキラ・ヤマト。その自分を犠牲にしてでもという自己犠牲の精神に、仲間を、分かりあえるかもしれない相手を殺したくないという思い…ならばこの場では、我はそれに応えるまでだ」

ミカがキラの決断に気を取られた隙に、そう言い残したギギストは空間転移でいち早く逃げ出した。

「令呪の発動時間が過ぎたら、きっと僕はもう…僕じゃなくなる。その前にみんな、ギギストみたいに逃げてくれ…!!」
「俺はまだ、奴等を…!!」
「やめてくれ!!死にたいのか!?」

相応に体力を消耗させながらも、ブジンソードの防御力の高さ故にダメージはそこまでなかったスザクはグリオンとエターナルが戦い、それにジゴワットの砲撃が降る戦場の真っ只中に突っ込もうとする。しかしキラの言葉により生きろのギアスが発動し、彼は撤退していった。

「…どうにか、ならないんですか!?…このままキラくんを置いて行くなんて…本物のアスランさん達に、合わせる顔がっ…それに、ニコルさんに謝りたいと、貴方は…!」
「…篝ちゃんの言う通りだよ、キラくん……私のせいで、こんなことになってるのに…置いて行くなんて!!」
「…ごめん、篝さん。でも…篝さんになら、僕の知ってるアスランやラクス達の事、任せれるから。…可奈美さんが…ああなって、だからせめて…姫和さんを、助けてあげて下さい。
…ミカ、君のせいじゃないよ。悪いのはあのグリオン…だから、気にしないで欲しいし、背負い込まないで欲しい。…僕を置いて行かないと、生きて帰れない。それじゃ復讐を果たせないだろ?」
「……卑怯だよ、キラくん。そう言われたら……わたしは、っ…でも…やっぱり…!!」
「…それでも……嫌です、私は…!!」
「……お願いだ、2人共っ…僕が、僕を保ってられる内に……僕に、君達をころさせないで、くれっ…撃ちたく、ない…撃たせないでっ……!!」

悩みながらも、置いて行く事を良しと出来ない2人に、キラはそう懇願するように頼む。
その声色は震えていて、竜の瞳から零れたなにかが凍り付いた。

「…行きましょう、ミカさん…キラくんの想いを私は…私はっ…踏み躙りたく、ありません…」
「…でも、そうするには色々増えちゃってるね……だから、キラくんがこうなっちゃった責任がこれで…なかったことになるなんて言わないけど…できることは、やるよ…!」

苦渋の決断をした2人。エターナルやグリオン、ジゴワット以外にも大虚や虚が溢れ、このままでは突破口を見出せない状態だったが…ここで温存していた起動鍵を、ミカは容易く使う事を選んだ。

ミカを中心とし、形成・展開されるはMS用の大型兵装ユニット。
この殺し合いでは生身の状態でも纏う事が出来、核動力を内蔵している他、本来とは異なりマルチロックオンシステムが組み込まれている、超高速戦術強襲支援機…ミーティアだ。

「…私達を、通してもらうよ!」


184 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:36:17 S.SbiBjI0
ミーティアからビームソードを出現させ、付近の敵を薙ぎ払うミカ。近隣の敵は全て、高出力のビームによって消し飛んだ。間髪入れず、ジゴワットやエターナル、グリオンを含めた遠方の敵をマルチロックオンシステムで捕捉し…遠距離の全兵装を一斉射。爆発を大量に起こす。

「ミカさん!乗ってください、行きますよ…!」

ミーティアを解除するとほぼ同時に、イモータルジャスティスを変形させた篝はミカを背に乗せ飛び立たんとする。

「…そうだ…ミカ、あれからずっと…君が…自分の事を悪役だとか魔女だとか言ってた君がどんな子なのか、考えてたんだ。
…今なら言えるよ。君は、悪役とか…悪い子じゃ…ないっ…て…断言…できる。
…グリオンが来た時に…下手すれば自分も、洗脳されてたはずなのに…なのに君は、僕に手を伸ばしてくれて。
……届かなかったけども、それだけで僕は…僕は嬉しかったんだよ。…よかった…最後に、伝えれて」

そうキラが声をかけた後、イモータルジャスティスは飛び立つ。同時に、凍結能力により風都タワーが凍り付きまた…周辺にドームが形成される。そして数瞬後…ドーム内の全てが滅却された。
後に残るは僅かな瓦礫と凍てついた地面、そして氷の柱となった風都タワーに……キラ・ヤマトだった氷竜のみ。彼の意識は闇へ落ちた。

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…タワーが凍って、ドームが出て消えて…私と篝ちゃんはどうにか離れれたけど、篝ちゃんは無理しすぎたせいか気絶しちゃった。

……キラくんは、ああ言ってくれたけど、笑っちゃうくらい…見る目がないよね。だって…だってどう考えても…最初に別れてなきゃ、あんな混戦具合にはならなかった……はずで。なのに私が、悪い子じゃないなんて……ありえない。ありえないよ…そんなこと…!

元の世界でも大切な人たちを傷付けてっ…この殺し合いでも……命の恩人で、助けてくれて、わたしを理解しようとしてくれたのに…なのにわたしは…彼の手を…掴めなかった…!!

頭の中から、さっきの…キラくんの左腕が斬られて、わたしに血がかかった光景が…消えない、消えて…くれなかった。

「…ご、め……なさ、ぃっ…」

…このぐっちゃぐちゃな感情に身を任せて、もうどっか行っちゃおうかななんて思ってた所に、聞こえたのは篝ちゃんのうめき声だった。篝ちゃんの目からは涙が零れてて、懺悔するかのように、謝っていて。
…とてもつらそうに見えて……自然と、自分の頭が冷えていったような気がした。
……キラくんがああなったのは、間違いなく私にも責任がある。…だから、彼にこれ以上…殺させない為にも、止めなくちゃ。
……復讐の為に優勝するって考えは捨てれないけど、でも……それくらいは、果たさなくっちゃ、それこそ不平等…だよね。
…勿論、今の私と篝ちゃんだけじゃ敵いっこないから…止めてくれる誰かも、探さないと。
……あなたならそうするよね?先生。

【エリアI-9/9月2日午前8時30分】
【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、動揺による情緒不安定気味、魔女、キラへの罪悪感(極大)、脳に焼き付いたトラウマ
服装:いつもの制服(返り血を浴びてる)
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ(午前8時25分に使用、3時間使用不能)、ホットライン
思考
基本:魔女らしく荒れる。……それは、変わらないよ。……止めてみれば?
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげる。それは……変わらない。でも優先順位ってのが…あるよね?
02:…篝ちゃんが起きるまで、とりあえず待つね。無理に起こすのは…よくなさそう。
03:…せめて、キラくんは私達で止める。2人だけじゃ、ダメだから…探さないと。
04:邪魔したあの救世主名乗った人(リボンズ・アルマーク)と仮面ライダーエターナル(大道克己)、それにキラくんをあんなにした魔王グリオンは…次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
05:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
06:…しれっと逃げてたギギストは…次会ったら一発くらい殴ってもいいよね??
07:…あの人(スザク)は…どうするんだろ。
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
 一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※キラや篝とのやりとりでガンダムSEED世界や刀使ノ巫女世界についてある程度把握しました。


185 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:36:45 S.SbiBjI0
【柊篝@刀使ノ巫女】
状態:気絶、ダメージ(大)、疲労(大)、精神的ダメージ(大)、魘されている
服装:鎌府高等学校の制服
装備:千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火(午前8時5分に使用、1時間使用不能)、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める、それがきっと、隠世と一緒に消える筈だった私の役目…!
01:…キラくん…私が、不甲斐ないばかりにっ…!!
02:…私はまた、たすけられなかった…。
03:ニセモノのアスランさん…討つしかないと云うのなら…!
04:ルルーシュといい自称救世主(リボンズ・アルマーク)といい仮面ライダーエターナル(大道克己)といい、魔王グリオンといい…傲慢な強敵ばかりですね…。
05:…これじゃ本物のアスランさんやラクスさん達に…合わせる顔が無いです…なんて、伝えれば…!!
06:ミカさん…貴女は…。
07:…ギギストには…まだ注意が必要かと。
08:……キラくんを置いていくことしかできず、可奈美さんを終わらせることもできずっ…何が、なにが神薙の刃ですか…!!
参戦時期:本編終了後。
備考
※支給されていたソードスキル:SEED@機動戦士ガンダムSEEDシリーズを習得しました。
※隠世の方です、刀使としての力は発揮できるとします。
※キラとの会話でクルーゼについての話やキラの出自等を大まかに聞いています。
※キラやミカとの会話でガンダムSEED世界やブルーアーカイブ世界についてある程度把握しました。
※迅移については四段階目を使用すると昏倒する仕様のまま、また五段階目は制限により使用不能となっています。

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その先生がもうとっくに息絶えている事を、ミカは未だ知らない。

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一方、風でふっ飛ばされたシビトと化した可奈美。
地面に叩きつけられる前に迅移や八幡力、写シを駆使してそれを回避しダメージを軽減したお陰で、蘇生後直ぐに1度目の致命傷を負うような事は避けれたものの…手刀を受けた際、制服の胸元が破けてしまっている。
しかしそれを意に介さず…シビト可奈美は偶々近くに居たNPC、美濃関学院の刀使を一瞬で何の躊躇いも無く屠ってみせ、返り血を浴びた。

此処に在るのは、衛藤可奈美の形をしている主の為に刃を振るうだけの、ただの殺人マシーンだと言わんばかりにスタスタと、シビト可奈美は何処かへと歩いて行く。
先のNPC惨殺の際、迅移を以てして加速し突き上げるかのように切り上げていたのは…その目で氷竜の手刀捌きを視たからか、単なる偶然か…どちらにせよ、シビトには基本自我も人格も無いし芽生えない以上、些細事だろう。

※シビトと化した衛藤可奈美はいずれかのエリアまでふっ飛ばされました。何処にふっ飛ばされていてもおかしくないです。
ダメージ(小)、返り血、岡田以蔵の刀(複製)と冨岡義勇の日輪刀(複製)を所持、御刀・千鳥(複製)を帯刀、バッグには不明支給品の複製(複製元は現在アンクが所持)が存在、制服の胸元が破けた状態です、詳細な位置は後続にお任せします。(位置不明扱い)

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186 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:37:22 S.SbiBjI0
「…これは配下達との合流を優先すべきか」

持ち前の錬金術により、どうにか射撃兵器の雨霰をやり過ごし逃げ延びてみせたグリオンは冷静に思考する。

(となると、ギギストが持つ賢者の石は今後絶望と悪意をばら撒くのなら是非とも確保しておきたい所だが…さて)

かくして今は配下なき最悪の魔王は、散らばっているだろう彼女達の元へと向かった。

【エリアF-11/9月2日午前8時30分】
【魔王グリオン@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、冥黒のアビドス対策委員会を率いる
服装:いつもの服装
装備:金色のルービックキューブ@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ホットライン、テラー世界線のシンシアリティ@ブルーアーカイブ、ガッチャードローホルダー@仮面ライダーガッチャード、ライドケミーカード(ヨアケルベロス、エンジェリード)、双眼鏡@現実
思考
基本:このゲームを利用して目的を達成する。
01:まずは悪意を振りまき、抗う者たちを蹂躙する。
02:アヤネに黒見セリカとバイクの少女を追わせる。
03:アビドス高校か。別の歴史の一ノ瀬宝太郎共々絶望を見せてやろう。
04:いずれホシノを仕留めた連中もじわじわと嬲り殺す。
05:キラ・ヤマト…惜しかったが、絶望と悪意を振り撒いてくれるだろうと期待。
06:配下達の元へ向かう。
07:ギギストの賢者の石を手に入れ、さらなる力を手に収めたいところだ。
参戦時期:少なくとも本編時間軸にドレットルーパー軍式を送り込み始めた後
備考
※■■■の意■に肉体を■■■られています。
※アヤネ(デスマスク)をムーンマルガムに変身させたうえでセリカたちを追わせました。
※ホシノ(デスマスク)を処分しました。
※ノノミ(デスマスク)をプテラノドンマルガムに変身させました

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187 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:37:39 S.SbiBjI0
「…アレは本当に、我の知るグリオンか?」

率直な疑問を浮かべるギギスト。

(奴なら錬金術を使う際、黄金に染まれと言う筈だが…実際は冥黒に染まれだった。
それに口癖であったケミストリーのケの字も、黄金に対する執着もあのグリオンには見見当たらない。…アレを呼んだ羂索やラウ・ル・クルーゼに茅場晶彦……)
「…認めざるを得ないかも知れんな。我は主催者達の事を理解した気でいたが…思い違いをしていたと」

そう考えつつ、状況の変化にグリオンという不安要素もあって総取りが出来るか怪しくなってきたのもあって、スタンスもまた変えるべきかともギギストは考えていた。

「…グリオンは我を間違いなく狙ってくるだろう。ならば…早急に我が黒炎を継ぎうる同胞、黒鋼スパナを確保しておかねば」

しかし、そのスパナがとっくに惨死体となってしまっている事を、この冥黒王はまだ知らない。

【エリアE-10/9月2日午前8時30分】
【冥黒王ギギスト@仮面ライダーガッチャード】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、賢者の石の49.5%を保有
服装:なし(多分あれで全裸)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(全て錬金術に関係する物)、ホットライン、ゴージャスカグヤファイル@仮面ライダーガッチャード、レジェンドライダーケミーカード(アギト、龍騎、ゴースト)、千本桜@BLEACH
思考
基本:異世界の力をも取り込み真の王座を得る。
00:我は羂索を理解した。このままでいい……と思っていたが…果たして。
01:異界の能力…興味深い物ばかりだ。
02:我の力とするにふさわしき力を探す。
03:あの三人(デク、キリト、亜理紗)はマルガム共に任せたが。
04:魔王グリオン…我の知るグリオンとは違うようだが…とりあえず我を狙う事は間違いないだろう。
05:我が同胞、黒鋼スパナを手元へ確保しておく必要があるか。
06:キラ・ヤマトは今は関わらないでおきたい。理解した筈だったが…何故ああなった??
参戦時期:ガエリアの力を取り込んだ直後
備考
※羂索を本人なりに理解したと思っていましたが、理解し直す必要が出てきたと考えています。
※ゴージャスカグヤファイルにはブレイドと電王とゼロワンのカードも付属していましたが、マルガムのような異形へと変化させ撃破されました
※制限などがどうされてるかは後続にお任せします。

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188 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:38:03 S.SbiBjI0
「…僕は……俺は……結局ギアスに振り回されて……!!」

逃げ延びた後にひとり、そう言いながら枢木スザクは彷徨う。
エターナルやグリオンは次に見かけたら最優先で狙うとはしつつも、肝心の仇敵であるルルーシュや、結果的に共闘する形となった篝達についてどうするかが宙ぶらりん状態のままであった。
願う世界はブレず。しかし復讐を果たす事を最優先にした方がいいのか?という迷いが生まれ…当てもなくスザクは歩いていった。

【エリアJ-9/9月2日午前8時30分】
【枢木スザク@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、狂気、情緒不安定、シビトへの嫌悪感(大)
服装:軍服(ナイトオブラウンズ)
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ、ブジンソードバックル@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いにのって理想の世界をかなえる
01:ルルーシュ...君が悪いんだ。
02:みんな、みんな殺すんだ…殺してかなえなきゃ、俺はなんのために…。
03:これが僕の...オレの選んだ道…そのはずだ…!!
04:エターナル(大道克己)とグリオンは見かければ最優先で殺す。
05:ルルーシュへの復讐をはたす。
06:この生きろのギアスの呪縛があるかぎり、信用を得れるはずなど…!!
参戦時期:フレイヤ射撃後
備考
※業スザクではないです。
※「生きろ」のギアスの呪縛は問題なく発動します。

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「目当ての物があったか、確認する暇も無かったな」

射撃武器の爆撃を、ジゴワットに迎撃させながらどうにか逃げ延び、エリアにしてF-9の野原に着いたエターナルこと大道克己。
風都タワー内にエクスビッカーが再現されているかどうかを確認したかったのだが、結局確認する間も無くタワーは氷結してしまっていた。

「それに衛藤可奈美は何処へ行ったかもわからん。とはいえ…こいつを発見出来たのは朗報と言えるだろう。
…暫くは衛藤可奈美との合流と、参加者を殺し遺体を手駒にして行く事を優先とするか」

克己の視線の先には、焼け野原にて真っ二つとなり放置されていた桜井侑斗の遺体があった。

【エリアF-9/焼け野原/9月2日午前8時30分】
【大道克己@仮面ライダーW】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)
服装:NEVERのジャケット
装備:ロストドライバー&T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
令呪:残り三画
道具:細胞維持酵素×5@仮面ライダーW、包丁や果物ナイフ数本(現地調達)、ホットライン
思考
基本:優勝し、風都を始め世界を地獄に叩き落とす
01:参加者を探して殺す。
02:さっきの奴(ジンガ)とは…次に会った時に殺せばいいか。
03:左翔太郎もフィリップも居ないのならば、風が再び吹いても負けるまい。
04:自称救世主(リボンズ・アルマーク)は次に会った時に殺すか。
05:衛藤可奈美を探しつつ遺体を手駒にし他参加者を殺していく。何処に投げ飛ばされたんだ奴は。
06:殺して手駒を増やしつつ、いずれはルルーシュ達や魔王グリオンを狙いに行く。今はまだ早いか。
参戦時期:『AtoZ 運命のガイアメモリ』で死亡後。
備考
※NEVERの肉体は映画本編と同じく、定期的に細胞維持酵素を投与しなければ崩壊します。
※支給されていたソードスキルを使用し、第5真竜フォーマルハウトの蘇生能力を習得しました。現在帝竜ジゴワットを蘇生させ配下においています。午前7時に使用した為6時間後の午後2時まで帝竜の蘇生召喚は不能となっています。
また参加者の死体無しで行う蘇生召喚を午前8時5分に使用しました。(4時間後の午後0時5分まで死体無しでの蘇生召喚は使用不能)
判明した制限として、参加者をシビトとして蘇生召喚する際は装備の選択等がある為即時召喚は不可能です。また完全に機械の存在(MS、MA、KMF等)は蘇生して使役する事が不可能です。
他、令呪を用いても死体無しでの蘇生や帝竜の蘇生召喚の時間は短縮できません。
※ジゴワットによって、エリアH-7/天ノ川学園高校跡地に電磁砲@セブンスドラゴン2020を4台設置しました。
※ジゴワットは現在ダメージ(中)、疲労(中)の状態です。

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189 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:38:33 S.SbiBjI0
凍り付き柱となった風都タワーの頂上、二足歩行の氷竜が佇む。
そこに最早、キラ・ヤマトとしての自我は無い。移動し他参加者を襲うのかそれとも近付いてきた参加者を迎撃するのか…それはまた別の話となるだろう。

【エリアH-9/風都タワー頂上/9月2日午前8時30分】
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED】
状態:内に秘めた悲しみ(大)、氷竜化、暴走状態
服装:SEEDでの連合の軍服
装備:王印@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸(発動状態にある)
令呪:残り一画
道具:ホットライン
思考
基本:凍結
01:----
参戦時期:SEEDの本編終了後、AFTER-PHASE「星のはざまで」及びDESTINY以降よりは前。
備考
※篝との会話で隠世についてや可奈美達の話についてある程度は聞きました。
※篝やミカとの会話で刀使ノ巫女世界についてやブルーアーカイブ世界についてある程度把握しました。
※支給されていたソードスキル:疾風(シュトゥルム)@ストライクウィッチーズシリーズを習得しました。
※ギギストの力に適合し本来より更に強くなっています。
※現在暴走状態にあります。原作での宗次郎同様喋れなくなってるかどうかは後続にお任せします。

【エリア全体の備考】
※風都タワー付近は滅却ドームにより滅却され殆ど何も無いor凍てついてるor瓦礫な状態です。
※風都タワーが凍結しました。位置次第では他参加者がそれに気付くかもしれません。



【NPC紹介】
・ザムザザー@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
地球連合が開発した機体。射撃武器を無効化する陽電子リフレクターを持ち、高出力のビーム砲に近接戦闘用のツメも持ち合わせている蟹型MAである。

・美濃関学園の刀使@刀使ノ巫女
刀使養成学校・伍箇伝の一角、美濃関学園の制服を着た刀使。
恐らく刀使として基本的な技能を平均的な出力で発揮する。

・電磁砲@セブンスドラゴン2020
ジゴワットが設置した、移動不能だが自律的に敵を迎撃する砲台。
ジゴワットを蘇生召喚した際は、1エリアにつき4台まで設置が可能。
1ターン=1分チャージが必要だが、必殺技であるレーザー砲は行動不能の状態異常を全体に付与してくる。

・シビト(死人)可奈美@刀使ノ巫女+本ロワオリジナル
扱い的にはNPCとなる為とりあえずここに記載。
大道克己に支給されたソードスキル:フォーマルハウトの蘇生能力により蘇生された衛藤可奈美。フォーマルハウトの蘇生能力により蘇った参加者は暫定名称だがシビトと呼称する。
シビトの特徴は以下の通り。

・蘇生された参加者(シビト)はNPC扱いとなる。
・主催者により、武装はロワに招かれる前の本来の物+生前の物という組み合わせになっている。
なおこれらはスキルや異能などにより奪取しない限りは蘇生参加者の機能停止と同時に消滅する。
両立出来ない場合は蘇生主がどちらにするか、都度選択の必要が生じる。
・死体がない状態で蘇生させた参加者の遺体は、機能停止すると同時に消滅する。
一方死体を発見した上で蘇生させた場合はそのまま遺体が残る。
・行動や技量等は基本生前と同一だが、精神面由来の物は再現されない。
蘇生主の意向に従い動く。
・意思持ち支給品が複製された場合は、人格の再現や自我の芽生えは行われず機能面のみ再現がなされる。
・蘇生された参加者の欠けた部分の損傷は、余程凄惨でない限りはとりあえず五体満足にはなる。
(切断された場合は該当部の服が破れておりまた継ぎ目らしきものが分かる傷が見え、死ぬ前に切断された或いは斬られて死んだのが分かるようになっている。)
・蘇生された参加者の瞳には光は無い。
・生前の自我が戻る事は基本的に無く、また新たな人格が芽生える事も基本的には無い。
・遺体である為痛みなどは感じず、本来なら致命打になる攻撃も、一度までならその状態のまま戦闘が可能。
(首を切り落とされても首がないまま戦闘を行い、心臓に当たる所をぶち抜かれてて胸に風穴開けられても平然と動き戦う。)

この場合本来の可奈美の遺体は会場内に遺ったまま、スキルによりシビト可奈美が新たに生成・複製された形となる。


190 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:38:48 S.SbiBjI0
【支給品紹介】
・ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ
聖園ミカに支給。ザフト軍が開発・製作した大型兵装ユニット。分かっている範囲だとナンバー01・08の8機分製造されている。
モビルスーツの機動性をある程度維持したまま、戦艦クラスの火力を付与する事が目的として作られた。
このロワではモビルスーツなどの起動鍵との併用は勿論生身の状態でも纏う事が出来、核動力を内蔵している他、本来の仕様とは異なりマルチロックオンシステムが組み込まれている。武装はビームソードに各種射撃武器、必殺技と言えるのはマルチロックオンシステムにより多数の相手を標的として掃射を行うミーティアフルバースト。
1度起動鍵を使用すると3時間の間使用不能となる。

・千本桜@BLEACH
護廷十三隊六番隊隊長である朽木白哉の斬魄刀。真鍋志保に支給されていたが彼女がゼインに爆殺された際、バッグから吹っ飛び後にギギストに拾われる。
主催者により始解だけでなく、卍解である千本桜景厳もソードスキル扱いで使用可能となっている。ただし無傷圏はきちんと存在しており大きな隙にして弱点となりうる。
終景・白帝剣等が使えるかは後続にお任せします。

・双眼鏡@現実
遠くの物を見渡すのに便利な片手サイズの物。
NPCを洗脳により同士討ちさせていた魔王グリオンの元にドロップした。


191 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/17(火) 10:39:15 S.SbiBjI0
代理投下終了です。
タイトルは 命の冒涜者 です。


192 : ◆ytUSxp038U :2024/12/17(火) 23:07:30 lKQ8RoNU0
皆様投下お疲れ様です

聖園ミカ、柊篝、花菱はるか、横山千佳、小宮果穂、チェイスを予約します


193 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:38:32 ekI3xXpI0
投下します。
タイトルは『仮面ライダーアウトサイダーズepEXTRA:異世界の灰色達と信念なきライダー』
です。


194 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:39:55 ekI3xXpI0
アウトサイドの意味はご存知だろうか?

アウトサイド…それは外側という意味だ。
人々は皆基本的に何かの区分に入って生きている。例えばこの殺し合いにおいては
対主催…主催達を打倒する意志を持つ人達
その中には他の参加者をどうでもいいと思う人々もいるだろうし、そのための殺しを是とする者もいるだろうし、全ての参加者を守りたいという人々もいるだろう
一方で優勝を目指す人達もいる
その中には積極的に殺す人達や、
ステルスマーダーという消極的殺人者達もいるだろう

このように多くの人達は何らかの区分の元の中でこの殺し合いを生き残っていくのだろう
では『彼』はどうだろうか?
彼は殺しに躊躇はしない…つまりマーダーと多くの人は言うだろう
だが悪党は許さない、故に主催たちも殺すつもりだ…この姿勢は対主催とも言えるかもしれないが…
自分の定めたヒーローじゃない者も殺すという…やはりマーダーだと多くの人々は言うかもしれない
但し彼はヒーローと認めた者を助ける気でもあるようである…やはりやはり対主催か
断っておくが彼の世界や私達がいる現実世界では勿論彼は即刻逮捕で死刑は間違いない、当然だろう
だが今彼がいる世界はそんな法律など存在しない善と悪が交わる灰色の世界、彼を永続的に捕まえる方法は無い
そんな世界でこの殺し合いの区分においてアウトサイドに居続けるであろう黒に近い灰色の彼は何を見出すのか、どのような最期を迎えるのか…

それは誰にも分からない
…そんな灰色な彼の元には、多くの灰色が集まってきたようだ、それをご覧頂こう

「ハァ…チィッ…!!」

ステインは己に激昂していた…贋物もヴィランも始末出来なかった自分に対して
贋物はデク達と共に向こうに行ったのは分かってはいる。だが今は黒い炎からのダメージから身体を休めたい
そう考え、彼は住宅街の家で身体を休める事にして…食事をしている時に家のテレビから放送が流れた



「何が最高のガッチャ…ハァ…くだらん」

主催の奴らはテンションが上がっているようだったが、どういうヤツらだろうがどうでも良かった、何れも徒に未知の力を振り回すヴィラン…粛清対象なのは変わらないからだ

その映像が切れた瞬間…

『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

新たな映像が流れ始めた



ステインは…仮面ライダーの力を利用しこのバトルロワイヤルに混沌を齎した敵…粛清対象であるはずの彼に大きな関心を抱いていた
短い演説の時間だったが…その演説の中で感じ取ったのだ
彼の凄まじい信念と力強さを…そしてそれだけではない何かを

(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…お前は何を考えている…?)

ステインは気になり始めたのだ、何故そこまでの信念を持っているのか、その裏に何かを秘めていると言うこの予感が当たっているのかどうかを

彼はルルーシュの所へ向かう事を決めた、その為にはレジスターのサンプルか、ゼアという存在等が必要らしいが…それは行く道中で贋物、もしくはヴィランから確保すればいいと考え…家を飛び出そうと…したが

「………」

彼は歯を食いしばる悔しげな表情を浮かべながら…支給品を取り出した。
ギギストとの戦いで…彼は思い知らされてしまっている。この戦場には確実に格上がいる事を
更に己の個性が通じないであろう人外がいる事を

ステインは主催を粛清対象として決めている。故にそんなヤツらから支給されたものを極力使用するつもりはなかった、刀だけはどうしても必要だから使ったのだ。
だが己の命を縮める令呪まで使用させられるまで思い知らされているのだ、もうそんな事を言ってられない
使うしかない、支給された忌まわしき過去を想起させる『仮面』を、そして己の身に刻まれた『呪い』を

この屈辱は必ず返すと誓いながらそう決めるしかなかった


195 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:42:00 ekI3xXpI0

彼は自分からNPCがいる野原に飛び込んでいく、かつて自分が雄英をやめてから暗殺技術を身につける時にも鍛錬をしていた、新しい戦闘技能を理解する為には必要な事だと認識したのだ
ステインが捕捉した存在、それは本が胸に引っ付いている怪人達…6体のアヒルメギド、キリギリスメギド、アリメギド達…更に何体かのシミー達であった。中々の数、故に多くの人達は踏み込むのを躊躇するだろう、だが今の彼には丁度いい相手であった

まず1つ目の…『呪い』を行使する、その瞬間




先程の戦いで身体についた傷口から血が吹き出した





…『彼』はとある人間の欲望で作られた生まれながらの呪いでもあり、人でも、そして『お兄ちゃん』でもある存在だ。
故に彼は常にお兄ちゃんであり続ける為に、時には黒く、時には白くあり続けた、周りからどう見られようとも、どんな色であろうとも『お兄ちゃん』として生きたかったのだ。
だがお兄ちゃんであり続ける為に沢山の白と交わる中で白に近づきながらも…最期はお兄ちゃんである事を優先し、最愛の弟を護り通し息を引き取った、故に白の中で生き続ける事は出来なかったのである。
そんな限りなく白に近い灰色の力は…今、灰色と交わった。






「赤血操術・百斂」

その瞬間、肉体から出た血は凝固し、幾つかの血の塊に。そしてそのうちひとつを両手で挟み込む

「穿血」

放たれるは超速の血液のビーム、並の敵等簡単に両断するものである。迫り来ていた兵隊アリメギドに直撃し、堪らず爆散した。
ステインは横に薙ぎ払うように光線を動かす、それだけで兵隊アリメギド達とシミー達は真っ二つになり爆散していく、残る相手は耐えきった女王アリメギドとキリギリスメギド、そしてアヒルメギド5体…
いや6体だ

ステインは天才的な戦闘における勘の良さで潜む気配を察知…そしてそれをより具体的に炙り出す。
『彼』オリジナルの技で

「超新星」

ステインが両手を挟みながら上にあげて…赤い生命の元が弾け飛ばす事で、近くの敵全員にある程度のダメージを与える。それと同時に透明になっていたアヒルメギドは姿を強制的に顕にされる。

(遠距離攻撃としては使える…最後にコレの斬れ味を試す)

最後の血の塊を握りしめ

「血刃」

血で作成されたチェーンソーのように表面が動く刃を作り上げる、そして透明になっていたアヒルメギドの脳天を刺し貫く、致命傷を受けたアヒルメギドは爆発の中に消えた

(斬れ味も上々…だがこの技の多用はやめた方がいいか)

そう、ステイン…というより誰でも知っている事だが、人間は失血しすぎると…具体的に言うと2000cc前後の血液を失うと死んでしまう。そうでなくても脳に血が行き渡らず朦朧としてしまう、戦闘中に起きていい事ではないのは明らかだ
勘違いを起こさないように言っておくが、確かにステインには『彼』の術式をソードスキルとして渡されているが、肉体の特性まで変化した訳では無い、故に血の量は限界がある。
だから彼は…もう1つの戦い方を試す事にした。

取り出したのは黒い聖剣、今回使うのは千刀・鎩ではない、性能を試す為である
その聖剣を使いながら…顔に赤い模様を浮かばせる

「赤鱗躍動」

その瞬間、ただでさえ高い身体能力が更にブーストされる。
迫り来るメギド達、だがそれら全ては今の彼にとって問題は無い

鉤爪を喰らわせようとした2体のアヒルメギドはそれ毎胴体をぶった斬り
空から奇襲してこようとした赤い翼をもつアヒルメギド達…いや
ステインは本能から同じく空にいたキリギリスメギドから嫌な予感を察知、奴の爪から切り落とす、結果、怪音波を未然に防ぐ事に成功する。そして空中で3体とも頭を斬り、爆散させた。

…地面に降り立つと同時に再び兵隊アリメギドが増えていた。女王アリメギドとリーダー格のアヒルメギドはアリメギド軍団の後ろから逃げていた…背を向けていたのだ、一旦逃げて立て直すつもりのようだ
兵隊アリメギド達は毒液を吐いてくる、その液は生身のステインを一瞬でドロドロに溶かすだろう。
迫り来る攻撃、逃げる首領
だが彼にとって…全く問題はない



「遅い」

今の彼にはそれら全てを乗り越える赤鱗躍動によってブーストされた身体能力による速さがある
その神速は兵隊アリメギド達を一刀両断しながら首領達の元にたどり着く事を可能にし…
動揺した首領達は攻撃する暇もなく

爆発四散する結末を迎えた


「………」

メギド達の残骸を見渡していた時に彼は何を感じとったのか?それは間もなく明らかになるだろう…そしてその途中に
彼は青色と緑色の奇妙な『本』を見つけた、倒した奴らの中に埋まっていたようだ

「………アレと同じ奴か」

一応持っていく事にした。

そして彼は次のNPC達を探す…もう1つの力を試さなければいけないからだ…例え試したくないとしても


196 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:46:12 ekI3xXpI0
そしてそれらしき存在を見つけて近づいた瞬間
ステインの周囲は謎のクリスタルとそれらが発する雷で囲われた
更に現れたのは6人の仮面ライダー

橙色の目に青い外装に覆われている機械的な仮面ライダー、G3-X
全体的には黒いが所々青い模様が描かれている鬼、威吹鬼
スズメバチの触角が特徴的な黄色いマスクドライダー、ザビー
聖職者を思わせる白さと赤い目の仮面ライダー、イクサ
帽子と骸骨のフェイスがとても似合うハードボイルドな伝説の戦士、スカル
橙色の宝石が光り輝く魔法使い、メイジ

本来正義もしくはそれに準じた道を歩むはずの仮面ライダー達はただただ自我の無いまま…ステインに牙を剥く

『SKULL MAXIMUMDRIVE!!』

奏でられる清めの音
メモリの力が秘められた光線
サラマンダーによる巨弾
3つの遠距離攻撃がステインを狙う

「くっ………!!」

音撃が身を震わせてくるのに耐えながら聖剣を振るい、巨弾と光線を斬り飛ばす
先程から聖剣の硬さには大いに助けられている。軽快に振り回せる剣ではないが、それは使い分ければいい
だがそうして攻撃を弾いている合間を攻めてくる仮面ライダーもいた。

『テレポート ナウ』

目の前に瞬間移動してきたメイジがライドスクレイパーを奮ってくる。
ステインはそれを上に蹴り飛ばし方向を逸らす

『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』
『RIDER STING』

それによって不安定になってしまった姿勢のステインにイクサの刃とザビーの刺突が襲う。どうにか聖剣で防御するが、不安定なまま防御したのだ、耐えきれず吹き飛ばされる。
そのままクリスタルが発する雷が張っていた透明な壁に衝突する。

「ぐっ…!!」

そこまでダメージはないが、ステインは攻撃力だけはそれなりだと認める。もし聖剣ではなく千刀・鎩で防御していたら粉々にされたうえである程度のダメージを受けていただろう

透明な壁に覆われている事はたった今把握した、ステインは推測する。コイツらを倒さなければ逃げ場はないと…最も、ハナから逃げるつもりは全くなかったが

『SKULL MAXIMUMDRIVE!!』

ステインは、遂にもう1つの力を両手に持つ、力を試す時が来たようだ
サラマンダーとマキシマムドライブを斬り伏せて、地面を爆発させながらドライバーを腰に、そして…力を使う為に本を開いた


…『彼』は『お兄ちゃん』と同じく作られた存在だった、但しお兄ちゃんとは違い、気まぐれで作られた存在であり…創造者にとって至極どうでもいいものであった。
彼は普通に人を殺す事に躊躇はない怪物…つまり悪と言える存在であった。事実2人の剣士は彼によって殺された。
だが彼は本来正義のままあり続けるべきであるとある剣士の迷走を共に歩みながら…彼が成長する大きなキッカケになった。
更に彼は創造者の世界の終末という結末に抗う剣士に変身し、戦った事もある。
この2つの文を見る限り、彼は善という存在と思う人がいても仕方がないだろう、最も、悪と言われた行為も、善と言われたも彼が好き勝手にやりたいからやったに過ぎないが

そんな白でも黒でもない3人目の灰色が







『骸骨忍者伝!!』

宿敵かつ戦友であった緑の剣士との共鳴によって生まれた力が

『かつての宿敵は今日の戦友!!冥府の術で魑魅魍魎!!』

ステインに新たな2つ目の力をもたらす


恐怖を感じさせる音が鳴り響く中…ステインは聖剣…ドライバーに挿した黒嵐剣漆黒を握る。
そして彼はあの言葉を…







言わない

ステインは放送で仮面ライダー001への変化を既にみている。
その時に綾小路は『変身』と言っていた

先程書いたようにステインは『仮面』に対して忌まわしき過去がある。
故に彼はこの世界でも『仮面ライダー』を名乗るつもりは毛頭ない。
それ故に…彼は無言でドライバーから聖剣を抜いた。

『漆黒抜刀!!』
『骸の咆哮!!忍の残香!!黒嵐渦巻く百鬼夜行!!骸骨忍者伝!!』

血の色をした仮面、紫色の上半身、それ以外が漆黒に染まったボディ
字を『仮面ライダーデザスト』そして彼がこの世界で名乗る戦士としての名前は…『デザスト』だ

デザストへ変身した彼は軽く手を握る、そして…まずは徒手の強さを確かめに図る。


197 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:51:28 ekI3xXpI0
『RIDER STING』

ザビーの必殺技の突きを右に回避しながらカウンターパンチ、堪らず吹き飛んでいく。

『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

今度はイクサの剣が振るわれる。それも回避しながら右脚で蹴り飛ばす、そしてサラマンダーの弾を手で掴み逆にG3-Xに投げ返す。3人とも大きなダメージを受けたようだ

(…力の向上は確かか)

今までにない力を感じ取れたようだ
デザストはあのアークゼロにも互角に戦える身体能力がある、避ける事も、力の大きな向上も当然と言えよう

『テレポート ナウ』

瞬間移動からの後ろからの攻撃も研ぎ澄まされている感覚が察知し見事にジャンプして回避、聖剣を抜いて斬りつける。

『SKULL MAXIMUMDRIVE!!』

紫の銃撃と清めの音がその隙を狙うがこちらも剣で対処し、そのまま一気呵成でジャンプし近寄り何度もスカルと威吹鬼を斬りつける。
吹き飛ばされるがどうにか立ち上がる威吹鬼とスカル、そして

『SKULL MAXIMUMDRIVE!!』
『テレポート ナウ』
『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』
『RIDER STING』

それぞれ銃撃、魔法、一閃、突き、巨弾、演奏の準備をする

「……………」

…さて、そろそろ読者の方々も薄々気になってきただろう



さっきから敵のNPC達、同じ技しかしてなくね?と
ステインはそれらの攻撃をジャンプして避ける、NPC達には残念な事だが彼はジャンプをする事が出来たようだ
そして近寄ってしまったメイジ、ザビー、イクサをそれぞれ始末にかかる
まずはメイジを反撃する暇を与えないまま連続で斬り続ける、ザビー達他の5人の攻撃を避けながらダメージを与え続ける。何度も同じ攻撃をされている以上、見切るのは簡単すぎたのである。
やがてメイジは体力の限界を迎えたようで倒れた後に光になって消滅した。
そしてそれをザビー、イクサと同じように繰り返す。こうして残る敵は3人となった

『SKULL MAXIMUMDRIVE!!』

ああ、彼らは呪うべきであろう、創造者が単純なタスク以外出来なくしてしまった事を。本当なら多彩な魔法や、ライダーキックの技を使えてもおかしくなかったはずなのに、同じ行動を繰り返すしかないのだから
ステインにとってもはや彼らは敵ではない、技を試すためのサンドバックに成り下がっていた

『かつての神獣!!ふむふむ!!習得一閃!!』

銃による攻撃を避け続けながら脳内に伝わる技の使い方に合わせて一旦本を閉じた後に刀に読ませてまたベルトに戻す。
エネルギーが補填され、薄黒い真紅に染まる刀…
それに加え、彼は肉体の動きを活性化させる

「赤鱗躍動」

ステインの身体能力、デザストの力によってあふれるパワー、そしてそれらをすべて高める赤血操術
3つの灰色による先程の速度を超える瞬間移動とその加速をものせた一撃は




容易く鎧に守られているはずの3人のNPCを消滅させた




姿をステインに戻した彼は開口一番

「ハァ…やはり贋物…どいつもこいつも弱い」

そう吐き捨てた

彼は知っていた、本当はもっと威力の強い技がデザストにはある事を、だがこんな同じ行動しかない能無しかつ信念なき敵意しかない贋物に対しては使うまでもないと判断した、メギド達に対しても同じように思っていたのだろう
この鍛錬でデザストに変身している時は己の個性が使えない事も分かった。当然である。血を舐める為の舌を覆われる物のせいで口から出す事が出来ないのだから
故にステインは決めた、使い分けが大事であると

生身の人間→個性+赤血操術+千刀・鎩
化け物&非人間&仮面ライダー→デザスト+赤血操術

という戦いをしていくことにした


198 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:54:33 ekI3xXpI0
鍛錬が終わったと見切りをつけた彼は支給品をしまった時、漸くホットラインの名簿に目を通す、鍛錬の方を先にして、名簿を見る事を後回しにしていたのだ。
今思うとギギストにやられた屈辱が鍛錬の優先度を高めていたのだろう、よくよく考えれば粛清対象の確認を第一にするべきだろうに
そう考えながらもステインは名簿を見る、まずは己の名前の周りの人物から

デク…緑谷出久
烈怒頼雄斗…切島鋭児郎…デクと同じヒーローかもしれない、見定める必要はある















ダークマイト

「あ“?」



ステインは身体能力が上がる姿…デザストに再びなり、橋の上を走っていた
鍛錬の時間を後悔し始めていた、まさかここまで真っ先に見定めるべき人がいるとは思わなかったのだ

ダークマイト…その名前は
ステインにとっての唯一の本物のヒーロー、オールマイトに酷似しすぎていた。

確かめなければ、ダークマイトが、何故あの男と酷似した名前をしているのかを、そして敵か、ヒーローなのかを
デクと同じようにヒーローの素質がある者なら問題はない

ステインはダークマイトの居場所について全く知らない、故にまずは見定める対象が確実にいるテレビ局へ向かい、それまでにレジスターを確保する事が出来たらルルーシュに会い、少し話をした後に即離脱しダークマイトを再び探すと決めていた、もしかしたらダークマイトの情報を知っているかもしれないとも考えた
デクにダークマイトについての情報を聞くというのも考えた、だが彼が本当にダークマイトについて知っているのかどうか分からなかった、つまり無駄足になる事を考えたのだ。
それでももしかしたら知っているかもしれない可能性に賭けるのもありではあったが、鍛錬の間にどこに行ったのかは不明である以上、確実に知っている人がいる場所を辿った方がいいと考えたのだ、それに加えてもしかしたらダークマイトも出久達も放送を知ってテレビ局に行っている可能性も高いと考えた

こうして彼はただただ疾走する。ダークマイトについて知る為に





















と言ったが、ひとつ付け加えさせてもらう
『デクと同じようにヒーローの素質がある者なら問題はない』と言ったがそれには続きがある。
薄々本当は察している。そもそもオールマイトを本当に継いだヒーローならば『ダークマイト』という名前なんかならないと

つまり…奴は

ここから続きを彼は考えていない、正確に言うと考えないようにしている。
普通ならばオールマイトの贋物として粛清対象として真っ先に見なすべきだが彼は敢えてそれをしていない
そうしなければ自分がどうなるのか、彼は自覚しているのだ





理性が吹っ飛ぶ程の怒りに飲まれ、自分が自分でなくなってしまうのではないかという事を
だから彼はそれを抑える為に、抑える為に彼がヒーロー足りうる素質がある者であるかもしれないと無理やり思い続けているのだ、違うだろうという考えをしないようするために
実際のダークマイトを、自分勝手な勘違い野郎を知った時、彼はどうなるのだろうか?
まぁそれでも問題はないかもしれない、彼は十二分に強化されている。単独で互角に戦える可能性は高いだろう、オールマイトを騙る贋物の粛清は出来る可能性は高い

だがそれは本当にいい事なのだろうか?

赤血操術での血流操作、あれは確かに協力である。だが実を言うとあれは諸刃の剣である。何故ならあまりにも制御が出来ずに血流が早くなりすぎると血管がブチ切れて致命傷になってしまうからだ。勿論赤血操術を使用できるようには肉体もある程度調整されてはいる、だがそれにも限界は絶対にある、それを超えてしまったら?

打倒主催に最後まで力を貸した白色
対主催になりうる存在を間引き続けてしまう黒色
もしくは…何かも殺し続けた赤色

同じ趣旨の質問でもう一度問おう、果たして彼はこの殺し合いを『何色』で終わるだろうか?


199 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:55:06 ekI3xXpI0
【エリアF-8/橋の上/9月2日午前7時30分】
【ステイン@僕のヒーローアカデミア】
状態:正常、黒い炎を耐えたことによる疲労とダメージ(小)、苛立ち(中)⟵無理やり怒りを抑えつけています。少し精神的に不安定
服装:デザスト(仮面ライダーデザスト)に変身中
装備:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り二画
道具:ホットライン、千刀・鎩@刀語、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー、ソードスキル(赤血操術)@呪術廻戦
思考
基本:ダークマイトを一刻も早く探す
01:ダークマイトを…見定める、そう、見定めるだけだ
02:その為にダークマイトが向かうかもしれないテレビ局に向かい、ダークマイトが来るのを少しだけ待つ
03:ルルーシュを見定める、テレビ局に入る事が出来なかったら即諦めてダークマイトを探す
04:デク達がテレビ局に向かっている事を期待する。
05:その道中に贋物もしくはヴィランがいたら最速で粛清し、ルルーシュに渡すレジスターを手に入れる
06:次に会った時、あの女(亜理紗)とギギストは粛清する。…だがそれよりダークマイトだ
07:黒衣の少年は様子見。真の英雄になり得ないと判断すれば殺す。
08:仮面ライダーの名前は要らない
09:支給品と渡されたスキルは使える物だった、使い分けていく





















◼◼:ダークマイトを殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す←理性を保つ為に抑えつけています

参戦時期:少なくともデクと交戦し一度拘束された後。
備考
※元々発動までの手間が多かったためか、“個性”に関してはそこまで制限されていないようです。
【支給品紹介】
・ソードスキル:赤血操術@呪術廻戦
ステインに支給
脹相の赤血操術が支給されているようで、超新星まで使用可能、但し特殊体質まで継承しているわけではない、まだ肉体に完全に馴染みきってはいないようで、使えば使うほど精度が上がっていきそうだ。
・黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ
ステインに支給
仮面ライダーデザストへ変身出来る。必殺技はカラミティストライク、但しステインは仮面ライダーは名乗らないようだ
・ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー
アリメギドとキリギリスメギドに埋まっていたワンダーライドブック、聖剣に読み込ませればそれぞれの本の能力を使う、習得一閃を使用できる。



彼が鍛錬を、そして去ったG-8エリア、そこには新たな仮面ライダー達が集まりつつあった

ミラーワールドの仮面ライダー…仮面ライダーシザース、仮面ライダーゾルダ
スマートブレインの技術の結晶…仮面ライダーデルタ
ゼインの産みの親、そして変身者でもあった仮面ライダー…仮面ライダーギャレン、仮面ライダーゼロノス、ゼロフォーム
とある将軍との絆で生まれた姿をしている王…仮面ライダーオーズ、ブラカワニコンボ
アウトサイド中のアウトサイドの仮面ライダーであり最高神…仮面ライダーゲンム

これらの面子は勿論あの6人と同じく、
プレイする人にとって苦難に満ちていて、そうそう作られる事はないだろうゲーム…檀黎斗が知ったら即クズみたいなゲームだと罵倒するであろうゲームから召喚…サモンライドされたNPCである
それに加え、もう1人…いやもう1体

凄まじき戦士の相棒たる戦闘機…『クワガタ』の形の機械、ゴウラム

ステインが早々に去っていった後に7人の仮面ライダーと1体の機械が跡地に現れた。
この面子、どこかで見た事がないだろうか?そう、彼らは様々な理由でアウトサイダーズに関わった者達だ…(シザースは変身した姿を見せていない事には目をつぶって欲しい)
この世界にはステインの変身するデザストを始め、ゼイン、ゼア、アーク、浅倉威、蛮野天十郎、様々なアウトサイダーズの物語の役者が集まりつつある。そして今回その役者達が変身する仮面ライダー達が一気に追加された…まぁ+αがいるがそれにも目を閉じといて欲しい。ロワの参加者にはしっかり関係している。
そして、彼らは散り始めた。それぞれプレイヤーを襲う為に、信念も意思もない傀儡とかした仮面ライダー達がこの世界に波紋を起こしていく


200 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:56:51 ekI3xXpI0
ここで、彼らの仕様について説明しよう
彼らはプレイヤーを見つけるやいなや、即座にプレイヤーを巻き込んでクリスタルケージを展開する。
それに囲まれた瞬間、囲まれたプレイヤーはその範囲内にいるNPC全てを倒さなければ脱出は不可能となる、下手したらプレイヤー達が分断される可能性がある
絶体絶命のピンチ?…いや、それだけではないだろう、何故ならば戦力となるものを得るチャンスでもある訳だ。
但しそれには条件がある、それは変身アイテムは必ず奪わなければいけないという事だ。
つまり今回ステイン達がやったように、そのまま体力を0にした場合、変身アイテム毎仮面ライダーは消失し、何も益は無くなるという訳だ。ゲームの再現がされているという事かもしれないし、仮面ライダーの力を多くのプレイヤーが得すぎないための処置もかねているかもしれない
変身アイテムを取るのは一定の力を持つ者ならば簡単かもしれない、あの世界の異常なNPCの強さの再現を兼ねてか、NPC達の攻撃の威力は上がっているが…その代わり先程のようにただただ同じ技しか使ってこないからだ。
奪う事が出来た仮面ライダーの力は本来の力を使う事が可能になっている。手に入れる事が出来た者へのご褒美と言った所だろう。

力は命懸けで手に入れようとする者こそ手に入れる事が出来る。そして贋物たる仮面ライダーの力をプレイヤーの手で真なる力にしてみろ

という…ある種の主催達の挑戦状だといえるだろう。それに加えて仮面ライダーへの風評被害も狙っているのかもしれないが
因みにゴウラムはハッキング、或いは虫を操る者が力を行使する以外味方にする事は出来ないと言っておこう

だがここで誰にも届かないが1つの忠告をしておく
仮面ライダー達の中に2つ…分かる者には分かる大外れがいる(シザース?確かに弱いから…いやいやそれでも何もないよりはマシだろう)、その大外れのベルトの使い手達は普通に倒したほうが良いだろう、メリットよりデメリットの方が大きいからだ…残念だが今この世界にそれを知っている者はいないし、配られた物でない以上、説明書なんて当然ついていないが

運と実力がものを言うバトルロワイヤル、NPC仮面ライダー達の力はどう生かされていくのか…楽しみだ


201 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:57:03 ekI3xXpI0
【NPCモンスター解説】
アヒルメギド×6、キリギリスメギド、女王アリメギド、シミー×複数@仮面ライダーセイバー
仮面ライダーセイバーの序盤に立ち塞がったメギドという怪物達、アヒルメギドはそれぞれが透過等の固有の能力を持ち、キリギリスメギドはピーターファンタジスタによって飛行能力、アリメギドはジャッ君と土豆の木
増殖能力を持っていた

仮面ライダーG3-X@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダー威吹鬼@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーザビー@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーイクサ@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダースカル@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーメイジ@仮面ライダーサモンライド!
下記に書かれているNPC達と同じ特徴を持つ、G-8エリアの野原で全員撃破された、跡には何も残っていません。

仮面ライダーシザース@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーゾルダ@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーデルタ@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーギャレン@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーゼロノスゼロフォーム@仮面ライダーサモンライド!、仮面ライダーオーズ ブラカワニコンボ@仮面ライダーサモンライド!、ゴウラム@仮面ライダーサモンライド!がG-8エリアからバラバラに散りました。どのように散ったのかは後続の書き手の皆様におまかせします
彼らはプレイヤーを捕捉次第、クリスタルケージを展開します。
エリア内のNPCを全員倒さなければクリスタルケージの壁は解除されません。
クリスタルケージの壁は余程の参加者でなければ破壊不可能です。
NPC達は下記に書いてある行動しかしません。但し威力は通常の時の同じ行動より上がっています。

シザース:シザースピンチによるアッパー
ゾルダ:シュートベント
デルタ:ルシファーズハンマー
ギャレン:ファイアバレッド
ゼロノスゼロフォーム:バスターノヴァ
オーズブラカワニコンボ:ワーニングワイド
ゴウラム:体当たり

もしベルトを奪う事に成功した場合、ベルトの出典が変更されます。
例:オーズドライバー&コブラメダル、カメメダル、ワニメダル@仮面ライダーサモンライド!→オーズドライバー&コブラメダル、カメメダル、ワニメダル@仮面ライダーオーズ


















すまない、1つ嘘をついていた事を告白したい

1人だけ…そう、1人だけだが他のNPCとは違い、別の世界から召喚された者がいる。

その名は仮面ライダーゲンム、彼だけは同じ攻撃を繰り返すわけではなく、敵に対して対応した行動を取ってくる上、攻撃力も原作基準、クリスタルケージを展開する力はもたない存在だ。但しベルトを奪わず倒した場合消滅するのは同じようだ
そういう行動をするゲンムのNPCがいる世界ってあったっけ?という疑問にも回答しよう
彼は仮面ライダークロニクルのプロトタイプのゲーム、爆捜トレジャーでのNPCとして登場したゲンムがこの世界に招かれたようだ
しっかりシャカリキスポーツも所持している。
ただしプロトガシャットはケースの中にある故に今回彼が所持しているのはレベル3のガシャットではあるが
マイティアクションXのプロトガシャットが2つある事になってしまう?
原作を見れば分かると思うが、あのガシャットは檀黎斗が再開発した結果、原作でも2つあるのだ、それを再現していると考えてもらいたい
…この殺し合いにおいてバグスターウイルスは大きな鍵になるのは、明白だ、何故ならどんなに強大な参加者であろうと、ゲーム病にされてしまっているのが現実だからだ。
そんな中バグスターウイルスの貴重なサンプルとなりうるガシャットを手に入れるチャンスをこのゲンムはくれていると言えるだろう。
文字通り神の恵みという訳だ
そんな恵みを得る事が出来るプレイヤーは…誰になるだろうか、もしかしたらこのバトルロワイヤルの重要な鍵に…なるかもしれない

【NPCモンスター解説2】
仮面ライダーゲンム@仮面ライダーエグゼイド
てれびくん超バトルDVD仮面ライダーエグゼイド[裏技]仮面ライダーレーザー
においてプレイされた爆捜トレジャーというゲームのセキュリティプログラムが具現化したもの
シャカリキスポーツガシャット@仮面ライダーエグゼイドも所持しています。

彼もG-8エリアを離れました。


202 : ◆dxXqzZbxPY :2024/12/17(火) 23:58:45 ekI3xXpI0
投下終了です。後で行間を調整する為に少し修正します。

後、タイトルをタイトルは『仮面ライダーアウトサイダーズep.EXTRA 異世界の灰色達と信念なきライダー』に変更します。


203 : ◆NYzTZnBoCI :2024/12/18(水) 00:13:52 mqnFZZPA0
皆様投下お疲れ様です。
ステイン、やみのせんしで予約と同時に延長申請もさせていただきます。


204 : ◆ytUSxp038U :2024/12/18(水) 23:14:42 dVc0eBic0
>>192の予約に浅倉威を追加し延長もしておきます


205 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/19(木) 05:43:54 WbaNGxPE0
すみません。延長申請をさせていただきます。


206 : ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:30:46 4rgGhfgk0
投下します。


207 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:31:55 4rgGhfgk0

 〝ヒーロー〟とはなにか。
 その簡単な問いに完璧に答えられる者はそういないだろう。


 弱者を守る者。
 秩序を守る者。
 悪を正す者。
 正義を全うする者。


 世間一般から出る答えなどたかが知れてる。
 民衆にとってのヒーローとは、とどのつまり己の不都合を取り除いてくれる都合がいい存在である。
 そんな都合がいい存在を、それ正直に言うのがはばかられるため綺麗な言葉に置き換えているだけだ。

 たとえばスポーツ選手。
 スポーツにおいて悪はいない。
 だがスポーツ選手には〝ヒーロー〟と呼ばれる存在が数多にもいる。

 それはなぜか?
 言うまでもなく、チームを勝利に導いてくれるからだ。
 選手や観客にとっては自身のチームが正義なのだから当然だ。
 しかし、相手のチームからすればそのヒーローはたちまち厄介な敵となる。


 回答者が無垢な子供であれば、ヒーローとはなにかという問いにすぐ答えられるかもしれない。
 けれど経験を積み、現実を知った大人であればあるほどに答えを出すことが出来ない。
 みんな、間違いを恐れているから。





「────ならば、お前は英雄(ヒーロー)ではない」




 だが、ここに一人いる。
 〝ヒーロー〟とはなんなのか、迷いなく即答できる大人がいる。

 その男にとってヒーローとは。
 ある一個人を指すものであり、その人が持つ信念そのものである。
 己の理想と異なるものは全て贋物と捉えるような、狂信とも取れる異常な崇拝。
 しかし、彼は一瞬たりともその問いへ迷いを抱いたことなどない。




「んなこと俺が一番よくわかってるよ」




 相対する者もまた、答えを知っている。
 自身が一度そうであったから。
 勇者(ヒーロー)たれ、と。幼い頃から刻まれた血筋に相応しい人間であることを強いられてきたから。
 敷かれたレールの上を歩き、ヒーローとして語り継がれるはずであった男は最後の最後で道を外れた。

 常人から見て二人は異常だ。
 彼らの行動理念は到底理解できるものではない。

 いや、理解されてはいけない。

 彼らの抱えた過去を、苦難を。
 それを知らぬ者がおいそれと土足で立ち入ることは許されない。



 黒い風が吹く。
 誰にも理解されず、理解されることを望まず。
 勇者(ヒーロー)であることをやめた者と、英雄(ヒーロー)を見定める者。
 本来交じりあうことのなかった水と油のような両者は、運命の悪戯に引き合わされた。






◆   ◆   ◆


208 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:32:37 4rgGhfgk0
 





 邂逅は少し遡る。
 アスランと切島から逃走するため、転移結晶の力により見慣れぬ土地に移されたやみのせんしはあてもなく彷徨っていた。
 誰を殺すわけでもなく、目的地があるわけでもなく。
 ただ漫然と歩き続ける旅人は一時間以上そうしていた。



 ──── 『はた迷惑な勘違い野郎(ヴィラン)』以外の何物でもない!



「うるせぇな……」

 頭からこびりついて離れない。
 あの赤い怪物の言葉が思考を蝕む。
 
 自分の意思がない?
 仲間がいなくて可哀想?

 ふざけるな。
 これは自分が選んだ道だ。
 仲間などいらない。
 ようやく課せられた責務から解放されたというのに、そんな邪魔なものは必要ない。


 そのはずなのに。
 所詮は何も知らぬ者の戯言だと、とっくに切り捨ててしまえるはずなのに。
 なぜこんなにも胸が詰まるのだろう。

「……っ、ち」

 舌打ちと共に街灯に刃を振るう。
 破壊の名を冠した剣はいともたやすく対象を両断し、あわれ残骸と化したそれを力のままに蹴り飛ばす。

 足りない。
 こんなものでは気が済まない。
 腹の底からふつふつと湧き上がる怒りが血液を滾らせる。
 この意味不明な感情の正体を収める術は。
 わからない。わからないからこそ、その足取りの行方は定まらないのだ。

 ぴたり、と。
 やみのせんしの足が止まる。
 距離にして三十メートルほど先。横断歩道の中央に佇む人影を捉えた。

「貴様、プロヒーローか」
「────あ?」

 その男は珍妙な格好をしていた。
 両腕に、更に目の周りを覆うように巻いた包帯を靡かせて。首元には対となる赤色の布が乱れている。


209 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:33:08 4rgGhfgk0

 しかし、もっと珍妙なのはその問いだ。
 プロヒーローなんて言葉には聞き馴染みがない。
 ない、が。その言葉の意味することはなんとなくわかる。
 そしてそれが今もっとも聞きたくない言葉だと理解すれば、自然と口が動いていた。
 
「女を殺した。そしてこれからも殺す」

 空気が変わる。
 暴力的なまでの殺気が肌を焦がす。

 まるで答えになっていないような返答(アンサー)は包帯男──ステインにとってなによりの判断材料となった。

「ならば死ね、贋物」

 地を蹴り、コンクリートの壁を蹴る。
 卓越した身体能力をフルで活かして目の前の贋物(ニセモノ)の首を刈り取らんと迫り、刃を振るった。
 だがステインの手に返ってきたのは肉を斬る感触とは程遠い痺れ。
 甲高い金属音が過ぎ去り、やみのせんしの背後にステインが着地する。
 そこではじめてステインは自身の攻撃が防がれたのだと理解した。

「おいおい、いきなり物騒じゃねぇか」

 やみのせんしは笑う。
 アスランや切島のような鎮圧を試みたなまぬるいモノではなく、命を奪うことに躊躇のない攻撃だった。
 〝同類〟だ。この男相手ならば思いっきり暴れられる。
 それこそ、この不快な感情も鎮めてくれるのではないか。

「…………」
 
 ステインは憤る。
 彼が男へとプロヒーローか否かを問うたのはその容姿にあった。
 やみのせんしが何気なく着替えたその衣装は奇しくもステインの知る英雄(ヒーロー)のものに酷似していた。
 というのも、彼が装着しているマントはステインの世界でのヒーローの象徴なのだ。

 誇りを汚す目の前の男へ。
 そして一瞬でもこいつを見定めようと考えた自分自身へ。


「────赤血操術・百斂」


 燃え盛る怒りが血液の流れを早める。
 比喩ではない。ステインの傷口から滲む血がどくどくと宙に浮かび、塊となったそれを両手で叩いた。


「穿血」

 
 合わされた両手から深紅の銃弾が放たれる。
 音速すら軽く超えるそれを牽制と呼ぶには憚られる。
 小手先の一つに過ぎないそれだけでも並の個性を凌駕する性能なのだから。

 近接能力は先の一撃を見切ったことから十二分に理解した。
 この遠距離攻撃はあくまでやみのせんしの対処法を伺う様子見に過ぎない。
 本来レーザービームのように持続して放つことも可能な術式を〝銃弾〟に抑えたのはそれが理由だ。
 一度に大量の血液を失うこと。そしてそれ以上に隙を晒すような真似はリスクに繋がる。
 
「なんだそりゃ」

 そんなステインの判断を嘲笑うかのように。
 曝された口元に笑みを張りつけたまま贋物は首を傾けてそれを躱す。
 それを視認した瞬間、ステインの全身が総毛立った。
 戦闘においてなによりも助けとなってきた天才的な勘が危険を訴える。

 思考よりも先に後方へ飛び退いた。
 と、コンマ数秒の差もなく。
 ほぼ同時にステインがいた空間を破壊の剣が通り過ぎる。
 力のままに、殺意のままに振るわれたそれの威力は空気の鳴く音がこれ以上なく伝えてくれた。

「悠長すぎんじゃねぇか?」

 ステインの行動は早かった。
 対人間用の刀を仕舞い、対怪物用の〝聖剣〟を引き抜く。
 ドライバーを左手に、聖剣を右手に。
 本来の彼であれば躊躇いに費やしていたであろう数瞬すら惜しいとばかりに迷いを捨てる。

 抵抗があるとか、そんなこと言っていられる場合ではない。
 
 こいつは、この男は。
 生身の人間と考えていい相手ではない。


210 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:33:36 4rgGhfgk0
 

『骸骨忍者伝!!』

「あ?」

『かつての宿敵は今日の戦友!!冥府の術で魑魅魍魎!!』


 響き渡る異質な音に眉を顰める。
 さきほどの術式の予備動作といい、一手一手が重要視される攻防を繰り広げてきたやみのせんしにとっては隙でしかない。
 攻撃でも回復でもない行為にターンを費やすなど愚の骨頂だ。

「さっきから悠長だな。…………まぁ付き合ってやるよ」

 それは、気まぐれではない。
 どんな力を使われようが真っ向から叩き伏せてから殺してやろう。
 それがなによりも相手への屈辱となり、勝利の証となるのだから。


『漆黒抜刀!!』
『骸の咆哮!!忍の残香!!黒嵐渦巻く百鬼夜行!!骸骨忍者伝!!』


 やみのせんしの思惑通り、ステインから放たれる威圧感が数段跳ね上がる。
 元の禍々しさも相当だが、まるで質の違う魔物じみた姿にひゅうと口笛を鳴らした。

「へぇ……第二形態、ってやつか?」
「黙れ、貴様のような私欲のまま破壊を繰り返すゴミは────この〝ステイン〟が粛清するッ!!」

 吐き捨てられた言葉を置き去りに、デザストとなったステインが疾駆。
 速い──繰り出される拳を剣の鎬で防ぐが大きく後退させられる。
 追撃を仕掛けるため迫るステインへやみのせんしは右手を突き出し、口早に詠唱を始めた。

「ギラ」

 閃熱がステインの顔面を焼く。
 生身であればそれだけで致命傷であっただろうが、皮肉なことに彼を守る〝仮面〟が呪文の威力を本来の十分の一以下に抑えた。
 しかしダメージとは関係なく塞がれた視界は機能を失う。
 時間に換算することさえ億劫さが勝つであろう刹那の隙はされど致命的。
 視界が晴れるより先に本能のまま聖剣を盾に構えれば、予想を越える衝撃がステインの腕に伝わった。

「ぐッ……!」
「ち、」

 反撃の刃を振るうステイン。
 彼が破壊の剣の威力に狼狽したように、やみのせんしもまたステインの攻撃の鋭さに舌打ちを鳴らす。
 ある程度能力が上昇することは覚悟していたがよもやここまでとは。
 筋力だけでいえばステインの方がやや上か。呪文という搦手無しではいずれ追い詰められるだろう。
 
「その服装、気に入らんッ! 貴様のような信念なき殺戮者がヒーローごっこなど……地獄すら生ぬるいッ!」
「ヒーローヒーローうるせぇなぁ……! こちとらそんなもん、一番聞きたくねぇ言葉なんだよ……!」

 閃撃が閃撃を撃ち落とす。
 剣戟が剣戟を弾き返す。

 周囲を鑑みない激闘の余波が街の崩壊を進めてゆく。
 数分ともたず崩壊するアスファルトの足場はもはや戦場として機能せず、両者は常に場所を変えながらの戦闘を余儀なくされる。

「ヒーローごっこだぁ? ふざけんな…………そんなもんした覚えねぇ。こっちから願い下げだ!」
「ならば貴様は贋物にすらなれぬ〝ヴィラン〟だ! 尚更生きる価値はない!」
「てめぇ…………っ、……さっきから偉そうに説教垂れてるけどな……お前だって俺と同類だろ?」

 街路を、交差点を、路地裏を、店前を。
 至る箇所に破壊の跡を残しながら攻撃と言葉の応酬を繰り返す。
 ステインの天才的な戦闘センスをやみのせんしの勇者たる経験が相殺し、この戦いにおいて両者は未だ無傷。

 だからこそ。
 戦いが拮抗している分、言葉で動揺を誘うため意図せず会話の形を成していた。


「────違うッ!!」


 そしてそんな形式上の会話は。
 予想以上にステインの反感を買った。


「オレは贋物共が蔓延る世界を粛清し、真なる英雄(ヒーロー)を選定するため……己の正義を全うしているに過ぎないッ!!」
「っ、……」

 それは、ひどく勝手な理屈だ。
 どんな理由であれ殺人がまかり通る世界などない。
 彼の生きる世界でならば尚更に。でなければ彼の言う真なる英雄(ヒーロー)も生まれていないのだから。


211 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:33:59 4rgGhfgk0


(────なんなんだ、こいつ…………)


 なのにこの男は、微塵も己を疑っていない。
 心の底から自分は正しいと信じ、贋物死すべきと迷いなく剣を振るう。
 ただの異常者と切り捨てるには惜しいほどのなにかが。
 言うなれば人を惹きつけるカリスマがひしひしと感じられて──それが元勇者の不快感を加速させた。

「だったらてめぇの言う本物の英雄(ヒーロー)ってのはなんだ?」

 やみのせんしとて人が語る倫理観は理解できる。
 当然だ、彼は元勇者(ヒーロー)だったのだから。
 人を殺すのが悪いこと。人を助けるのが良いこと。
 幼少の頃から叩き込まれた教養は、りゅうおうの誘いに乗り人を殺す道を選んだとしても早々脳からこぼれ落ちたりはしない。

「無論、言うまでもない!」

 だからこそ、気になった。
 ここまでステインを狂信に走らせる本物の英雄(ヒーロー)とやらが。
 この男がどうしてここまで迷いなく外道を歩めるのか。
 己の意志を持たぬと切り捨てられた孤独な戦士にとっては、眩しく見えたから。

「見返りを求めず、富や地位を得るための手段ではなく────真心から人を救うことが出来る者だ! かの本物(オールマイト)のように!」
 
 頭が痛い。
 鼓動が一際大きく打つ。
 拮抗していた鍔迫り合いが崩れ、やみのせんしの身体が強制的に仰け反らされた。

「……っ!」

 回避が遅れたやみのせんしの胸に一筋の切創が刻まれる。
 リーチからは逃れたつもりだったが鋭すぎる太刀筋が風の刃となり襲いかかった。
 流れる血が雫となって灰色の地面を色付かせる。
 続く突きを打ち上げてやり過ごし、数歩分距離を取る。
 ステインが迫る一瞬の内、左手に宿る魔力を胸にあてがった。
 
「ベホイミ」

 女神の加護を受けた勇者の子孫。
 とうにその加護を受ける資格など無くしたというのに、たちまち胸の切創は塞がった。
 奇怪な光景を前にステインの追撃が遅れる。
 と、返しの刃がデザストの鎧に火花を散らさせた。

 重い──!
 攻撃した者とされた者、そのどちらもが同じ感想を抱く。
 二撃目を嫌ったステインは大きく跳躍し、ビルの谷間を飛び交いながら血液を駆動させる。
 雰囲気の異変を察知したやみのせんしも魔力を集中させ、高速で移動する標的へ狙いを定めた。

「赤鱗躍動」
「ベギラマ」

 大蛇の如き豪炎が黒い影を追う。
 しかしデザストの能力向上と赤鱗躍動によるステータス強化により直撃は大きく免れた。
 焔が後方で爆ぜるのも構わず神速をもって肉薄。
 反射的に身を捻るが、遅い。
 舞う血飛沫を視認してはじめてやみのせんしは自分が斬られたのだと認識した。

(速い──!)

 辛うじて死から逃れられてはいるがジリ貧だ。
 メタルスライムにも匹敵する速度。呪文が追いつくはずもない。
 鍛え上げられたやみのせんしの肉体をキャンバス代わりに、瞬く間に赤い筆跡が刻まれてゆく。


212 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:34:25 4rgGhfgk0

「金銭を落とす者や社会的地位を築き上げた者!己の得になるような存在を選び、踏み台にするためヒーローを演じる者は総じて贋物!」

 声高に叫ぶステインに余裕はない。
 追い詰められているのはやみのせんしだけではない、ステイン自身もだ。
 ベギラマの熱による体温の上昇、そして目前のヴィランへの強い憤りが必要以上に血流を促進させる。
 それ即ち、赤血操術のタイムリミットが迫っていた。

「しかし貴様はそんな贋物にも劣るッ! 女を殺し、それをこと自慢げに語り! 反吐が出る行いを正当化するために英雄(ヒーロー)の姿を真似るなど……もはや救いようのない巨悪ッ! 貴様のようなゴミに生きる価値などないッ!!」

 だからこそ勝負を急ぐ。
 優位を取れている今この瞬間に勝たなければならない。
 磨き上げた殺人術を聖剣にのせる。
 狙うは首元。頭と身体を分断されて生きていられる者などいない。

 残像を描くヒーロー殺しの一撃が、元勇者の首に放たれた。



◾︎



 ────随分と好き勝手言ってくれる。
 あの赤いのといい、どうやら人に講釈を垂れるのがよほど好きな連中が集まっているらしい。

 否定したかった。
 自分がどんな道を歩んできたか、弁明したかった。

 好きでこんな姿になったわけじゃない。
 紛れもない、見返りなどない真心で世界を救いたかった。
 押し潰されそうなほどの期待とプレッシャーに吐き気を抑えながら人々を救ってきた。
 ヒビが入る正義感に見ないふりをして、欠けてはいけない信念を掲げてきた。

 そんな自分が、たった一度。
 たった一度、最後の最後に自分の意思を見せただけでここまで言われなければならないのか?


213 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:34:51 4rgGhfgk0
 
 贋物だとか、ゴミだとか、可哀想だとか。
 かけられる言葉一つ一つが間違いなんだと否定したくて。
 けれど、命を奪い合う最中にそんな暇はないから。




「────うるせぇよ」




 その一言に、全てを込めた。





 甲高い金属音の叫びと共に盛大な火花が散る。
 壁へ、地面へと叩きつけられるステインは状況を理解するのに数秒要した。

 彼の誤ちは勝負を急ぎ攻撃が実直になったこと。
 無論、だからといって対処出来る者などこの会場にも一握りだろう。

 もう一つの誤ちは、この男が〝一握り〟の存在だったこと。
 ステインの神速はメタルスライムに匹敵────つまり、彼にとっては何度も〝視てきた〟範疇でしかないのだ。
 初見ならばまだしも幾度と経験したそれを見切ることは元勇者にとってそう難しいことではない。

「お前、ドラゴンを倒したことはあるか?」

 ざり、と。
 アスファルトの残骸を踏み抜いて迫る。
 カウンターのダメージだけではない、失血の影響もあってステインはすぐに起き上がれなかった。

「レンガの巨人は? 動く鋼鉄の鎧は?」
 
 更に言えば、その破壊力も誤算。
 あらゆる衝撃や呪文を無効化するメタルスライムの装甲を一撃でぶち抜く桁外れの膂力。
 生身でありながら並の仮面ライダーをも凌駕する元勇者が、この世で最も破壊に適した剣を振るう。


「────俺はあるぜ」


 魔物からすれば想像したくもないだろう。


 
 痛む身体に鞭打ち、どうにか起き上がる。
 この身体では術式は使えないだろう。いつの間にか先程つけた傷も回復呪文によって塞がれている。


214 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:35:29 4rgGhfgk0


 ならば。


「カラミティストライク」


 この身で持てる最大の技を放つ。


 必殺技の予備動作を終えると同時、やみのせんしの細胞が警鐘を鳴らした。

 冷や汗が伝う。
 万が一にもこれを受けてはならない。

 地獄の業火にも、鉄をも引き裂く爪撃をも耐える肉体ですら避けろと訴えるのがどれだけの異常事態か。
 それを知る由もないステイン本人は、目の前の障壁を討たんと紫色の風となり────


「ラリホー」


 ────意識を落とした。




◾︎
 



「────は、」


 どれほど眠っていただろうか。
 一秒か、十秒か。
 
 跳ね上がるステインは咄嗟に剣を握ろうとして──それが手元にないことに気がついた。


「よぉ、お目覚めかい」


 それだけで人を殺せるのではないかという睥睨を声の主に送る。
 と、そこにはやはり己が不覚を取った男の姿。
 余裕を見せつけるかのように胡座をかく姿は挑発とも取れる。
 なるほど、変身道具の一式まで没収されているようだ。無手となった自分に抵抗手段がないことを悟る。

「殺れ」
「はっ、」

 絞り出した一言を嗤う。
 その行為を侮辱と捉えたステインは思わず無謀を承知で飛びかからんとしたが、片腕で制された。

「最初はそうしようとしたよ。けどな…………湧かねぇんだよ、殺す気が」
「なに?」

 不愉快と疑問が入り交じった表情でステインが眉を顰める。
 当然だ、さきほどまで命の奪い合いをしていた男がしていい発言ではない。


215 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:35:59 4rgGhfgk0

 とはいえ、だ。
 意識を失った時点で事実上ステインは一度死んでいた。
 生殺与奪の権は完全に握られている。
 隙を伺うためにも今は話を聞く素振りをしてやろうと、沈黙という答えを示した。

「俺はよ、自分がわかんねぇんだ。王の命令を捨てて自由の身になったってのに、ずっと胸がつっかえるような感じがして…………そんなもんも、戦ってるうちに消えると思ってた」

 ぎゅう、と。
 握られた拳を胸にやる元勇者(ヒーロー)。

「アンタの前にも変な赤いやつに会った。そいつにも散々言われたな……お前は可哀想なやつだとか、はた迷惑な勘違い野郎(ヴィラン)だとか。そんときはさ、次会ったら徹底的にぶち殺してやろうって気持ちが湧いて湧いて止まらなかったよ」

 歪な笑みで昔話を語る。
 まるで殺戮に身を委ねたのは生粋の狂気によるものではない、と。
 ステインにそう感じさせるなにかを言葉に乗せていた。

「けどな、アンタと戦ってるうちに俺を縛る感情が〝怒り〟じゃねぇことに気づいたんだ」

 事実、なぜ自分がこんなにも動揺していたのか掴めなかった。
 心無い民衆の言葉など慣れているはずなのに、どうにもこのぐちゃぐちゃに乱された情緒を戻せなくて。
 海の底に投げ出されたような孤独を味わううちに、自分が本当に存在するのかと迷いを抱くようになってしまった。
 
「アンタも俺と同類、ってのは言ったな。悪かったよ、人を殺すって選択肢を取ってるからにはおたくもそれなりのクズ野郎だと思ってたんだ」

 今思えばやってることはあいつ(アスラン)と同じだった。
 人を殺したから悪人だと決めつけ、過去を知ろうともしない。
 他者へ理解を示すというのが世間に謳われているのに、それがどんなに難しいことなのか改めて思い知らされた。

「けどな、アンタは俺とは違う。なぜそんなに迷いなく悪の道を歩めるのか? 他人に何を言われても取り乱さずにいられるのか? …………少し考えたけどな、やっぱり答えは出なかった」

 きっと、世間一般的には自分もこの男も同じだ。殺人犯という恐怖の対象であることに変わりはない。
 けれど、だからこそ。
 浮き彫りになった〝違い〟は、鎖の如くやみのせんしに絡みついた。

「ひとつ言えることは、アンタを殺しても答えは見つからないってことだ」
「だから生かした、と?」
「ああ」

 長い独白を聞き終えたステインは呆れの混じった睥睨を飛ばす。
 獣を思わせる吐息はいつしか鳴りを潜めていた。
 それが何を意味するかを察したやみのせんしは独白を続ける。
 この男ならば答えを出してくれるのではないか、と。
 確信めいた直感がやみのせんしの口をつらつらと動かした。


216 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:36:19 4rgGhfgk0



「まぁ聞けよ。世界は善意の上で成り立ってると、心からそう信じてた憐れな男の昔話をさ」
 


──────
────
──


 それは、まるで絵本の中の話だった。
 かつて世界を救った勇者(ヒーロー)の血を引く者が一人、世界を侵す悪へ立ち向かう。
 数多の障壁を前にしても挫けず、血を流すのは自分だけでいいと

 攫われた姫を救うため。
 魔物に怯える民を守るため。

 嘘偽りのない真心から、たった一人で戦う道を選んだ男の──捻りのない物語(ストーリー)。
 平和な世界しか知らぬ者が聞けば鼻で笑ってしまうような、そんなおとぎ話。


 それをステインは。
 一言も口を挟まずに聞いていた。



「────とまぁ、こんなところさ」

 話し終えるのにどれだけ時間を要しただろうか。
 よくもまぁこんな長い話に付き合ってくれたものだ、と。終始表情を変えぬステインを見て思う。

 この男は何を思うのだろうか。
 英雄(ヒーロー)に拘る男にとって自分はどういう存在なのだろうか。
 粛清とやらの対象なのか、同情に値する者なのか。
 きっとそれを聞いたところで答えてはくれないだろう。

「長話して悪かったな」

 だから、
 この男から答えを聞くには、やはりこうするしかないのだろう。

「続き、しようぜ」

 刀を、聖剣を、変身道具の一式を投げ渡す。
 なんのつもりだと言いたげなステインの顔を一蹴し、立ち上がると共に剣を斜めに構えた。
 
 過去を話したことで変わったことは──ない。
 強いて言えば気の持ちよう。相手がどうあれ自分を知ってもらえるという行為により存在証明ができた。
 自分は自分の意思で竜王の誘いに乗ったのだ、と。
 それを再認識できたのだから儲けものだ。

「……………………」

 ステインは何も言わない。
 無言のまま刀を手に取り、立ち上がる。
 彼の感情を読み取れる者など一人とて存在しないが、やみのせんしも例外ではなかったようだ。


217 : 堕悪・ヒーロー ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:37:00 4rgGhfgk0



「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎────!!」



 そうして構える両者の後方。
 破壊の跡を追って来たのであろう、二匹の異形が彼らの命を狙い駆ける。

 ステインの背後には翼の生えた脳無が。
 やみのせんしの背後にはキースドラゴンが。

 それぞれが因縁のある相手。
 一度殺められたことのあるという有り得ない経験に加速させられた憎悪は、まるで図ったかのようなタイミングで彼らに襲いかかった。


 動いたのは同時だった。
 ステインの首を狙い鋭い翼を振るう脳無の首はやみのせんしの一刀に落とされる。
 勇者へ火の息を放たんとする蒼竜の眼孔はステインの刺突に貫かれ、容易く脳へと到達する。

「ドラゴンならば今討った」
「…………はっ、レンガの巨人と鋼鉄の鎧がまだだぜ」

 亡骸が地に沈む音を待たずして交わす両者。
 剣は収めない。まだ戦いは終わっていないのだから。

「ひとつ聞かせろ」

 もしも、ステインを知る者がいれば目を剥いて仰天するだろう。
 あのステインが一度〝贋物〟と切り捨てた相手を前にして自ら対話を望むなど。
 天地がひっくり返るほどの衝撃的な光景はしかし、この二人しか知り得ない。

「貴様はなぜ、その道を選んだ」

 振り返らぬまま問いかける。
 ステインは知りたかった。

 この男の話が本当ならば、人々を導く真なる英雄(ヒーロー)になり得たはずだ。
 それこそかのオールマイトにも匹敵するほどに。未来永劫語り継がれる伝説となったであろう。
 
 なのになぜ、道を誤った。
 最後の最後────この男ならば竜王を討つことなど出来たはずなのに、なぜ誘いに乗ったのか。

 ステインは、それを知りたかった。


「…………、……さぁ、な」


 問われた元勇者はしばし押し黙り、紡ぐ。
 耳触りがいいおべんちゃらで取り繕えば理解を示してくれるのかもしれない。
 期待するばかりで何も与えぬ世界に失望したとか、正義も悪もわからなくなっただとか。
 或いは、助け出した姫が極悪人だったとか──そんな嘘を交えれば、認めてくれるかもしれない。


 けれど、ちがう。
 そんなもの望んでいない。
 なによりも────ステインの信念を曲げてしまう。

 それだけは許されないと、元勇者として残された一欠片の栄華が顔を出す。

 だから、やめよう。
 ステインの判断は間違いではなかったと、そうやって背中を押そう。
 この男が考えを曲げている姿など、見たくなかったから。


「好奇心だよ、ただのな」


 そうか、と。
 返す声には安堵が含まれていた。
 やはり自分は正しかったのだと確信し、ステインが振り返る。


「────ならば、お前は英雄(ヒーロー)ではない」
「んなこと俺が一番よくわかってるよ」

 
 堕ちた者は、二度と光を浴びない。
 眩いばかりの光はもう、見飽きてしまったから。
 並ぶ資格はないと諦めた男たちはそれでもエゴをぶつけ合う。


 答えを、求めて。






◾︎


218 : ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:37:26 4rgGhfgk0
以上で前編終了です。
タイトル変わりまして後編を投下します。


219 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:38:10 4rgGhfgk0






 ステインは冷静に状況を見る。
 変身道具は手元にある、あの姿(デザスト)になればこの男とも渡り合えるだろう。
 呪文は一通り把握した。
 あんな失態は二度と犯さない。

 眠って冷静になったぶん赤血操術も使用可能になったはずだ。
 戦いの中で練度が上がった今、さきほど以上に強力な武器となるだろう。


 そうしてドライバーを手に取って────



(────ちがう)



 ステインの手が止まる。
 自分は今、何を考えていた?
 こんなものに頼ってまで勝ちを目指すことが、己の信念なのか?


 仮面ライダーデザスト。
 赤血操術。
 

 確かに強い。
 だが、それはもう〝ステイン〟ではない。
 腐りきった社会を粛清するため、英雄回帰を目指すために費やした半生に──そんなものはあったか?

 仮面を捨て、ヒーロー殺しとなった自分が仮面ライダーの力を借りるなど。
 それこそ、この男に対して下した〝誇りを穢す〟という行為に他ならない。

「おい、それ使わねぇのか?」
「こんなものに頼っていれば、また不覚を取るだろう」

 確かにそれもある。
 慣れぬ力の向上は自身でも扱い切れず隙となり、思わぬしっぺ返しを食らう可能性が拭えない。

 だがそれ以上に。

 この男とは、戦わなければならない。

 ヒーロー殺しのステインとして。
 赤黒血染として。
 この堕ちた勇者を討つのは、自分でなければならない。

「いくぞ」
「いつでも」

 千刀・鎩を携えて第二ラウンドを宣言する。
 やみのせんしが破壊の剣を構えるのを見て、ステインは疾走した。


◾︎


220 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:38:32 4rgGhfgk0


 力任せに振るわれた元勇者の一撃が大地を割る。
 衝撃に身を任せるように破片を躱しながら飛躍するステイン。
 蛇のように不規則な動きで迫る刃はやみのせんしの頬を掠めた。

「さっきよりいい動きだぜ、アンタ」

 それはお世辞ではない。
 本来デザストに変身した方が身体能力はずっと上だ。やみのせんしとてそれは理解している。
 けれど、戦いづらさで言えば今のステインの方がずっと厄介だった。
 それが何故なのか──きっと、理屈ではないのだと思う。

「本物の英雄(ヒーロー)とはなにか」

 高速の刺突が繰り出される。
 それを剣で受け流しながらも、ぽつりと漏れた声を元勇者は聞き逃さなかった。
 
「貴様はそれを知っていたはずだ」
「ああ、かもな」
「ならばなぜ」
「知ってるだけさ。なろうとは思えなかった」

 火花が散る。
 ステインの不規則な刀剣を動体視力で無理やりに弾く。
 防ぎきれぬ斬撃が絶えず身体に傷を作ることも構わず、やみのせんしは言葉を続けた。

「アンタは──いや、なんでもねぇ」

 ────なぜその道を歩まなかったんだ?
 そんな野暮なことは聞かない。
 きっとステインだって目指したんだ。
 本物の英雄(ヒーロー)になるために、オールマイトという目標の為に最大限の努力をしたはずだ。

 そうして、味わったんだ。
 数え切れない挫折を、知りたくない失望を。
 自分には彼のようにはなれないと思い知らされたからこそ、世界を穢す贋物を粛清するという独自の道を歩んだんだろう。

 たしかに信念なき殺戮をする自分とは違う。
 けれど、それだけではない気がする。
 自分とこの男の違いは、それだけではない。

「はぁッ!」
「ぐっ……!」

 思考に遮られた太刀筋が鈍る。
 ステインの回転斬りが太腿を浅く刻み、移動の妨げとなった。

「ホイミ……!」
「遅い!」

 回復呪文は悪手だった。
 ステインには既にその呪文を見せているのだから。
 一手遅れたやみのせんしの肩を鋭い刺突が刺し穿つ。
 苦悶の声を漏らしながらも思考は冷静だった。


221 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:38:59 4rgGhfgk0

「ギラ!」

 この至近距離では剣は振るえない。
 ゆえに密着した状態のままステインの身体に手を当てがい、零距離での閃熱呪文を唱える。
 間一髪身体を離すステインだがあくまで直撃を避けただけ。
 脇腹が焼き焦げる音を聞いてステインは大きく距離を取った。

「は、ぁ…………はぁ、……!」
「…………っ、……」

 疲弊が色濃く現れはじめている。
 喋る余裕などとうにないはずなのに、それでも互いは言葉を交わすことをやめようとしなかった。

「アンタは、俺をなんだと思う?」
「……変わらん。貴様が堕ちた英雄(ヒーロー)であろうとなかろうと、明確な意思も思想もなく他者を殺めるなど……粛清の対象だ」
「じゃあ、意思があれば人を殺していいのかよ?」
「それが世のためならば」

 振り掛かる絶剣をやり過ごしながらステインは迷いなく答える。
 やはり、違う。
 自分が同じ問いを投げられたらきっと言葉が詰まるはずだ。
 なのにこのステインという男は迷わない。
 善悪を自分の中で完成させているからこその芸当だ、おいそれと真似できるものではない。

「アンタの言うオールマイトが人を殺したら、それも認めるってのか?」

 それは、心の底から湧き出した疑問だ。
 この男はなんて答えるのだろうか。
 
 ステインのそれは盲信に近い。
 オールマイトのやることならば全て受け入れる、というのがやみのせんしの予想だった。
 善人を殺そうが悪人を殺そうが変わりない、崇拝の対象であると。
 世のためであればそれも仕方がない、むしろ汚れ役を買うなど称えられる行為だと。
 そう答えるだろうと思っていた。


 
 けれどステインにとってその質問は。



「────〝彼〟が人を殺すなどありえんッ!!」



 万が一にも投げてはならない愚問だった。


222 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:40:13 9YCN0PiQ0



 気圧されたやみのせんしの腕を切先が走る。
 尾を引く血の線をどこか他人事のように眺めながらぼんやりと考える。

(幸せもんだな、オールマイトさんよ)

 ステインにここまで言わしめる英雄(ヒーロー)は、果たしてどんな男なのだろうか。
 きっと自分では届かない場所にいるのだろう。
 出会ったこともないのにやみのせんしが思い描いた英雄像は奇しくも、本物のオールマイトのそれと全く同じものだった。


 ────ああ、たしかに。
 そんな男の背中を見ちまったら。
 世に蔓延る中途半端な善人なんて、全部贋物(ニセモノ)に見えちまうよな。



 後退するやみのせんし。
 追撃を嫌った行動だがその気のなかったステインにとってはありがたい。
 僅かに生まれた時間で刀に付着した血を舐めとる。
 その行為の意図を汲めず、しかし最大限の警戒を保ったままやみのせんしは────固まった。

「な…………!?」

 動けない。
 指先一本すら言うことを聞かない。
 なんだこれは、一体なにをした。
 考えを巡らせたところで身体が動くことはない。浮かび上がる疑問符は意味もなく消えてゆく。

 この事象を説明できる者は生憎、今まさにトドメを刺さんとするステイン一人だけだ。
 

「終わりだ、元勇者(ヒーロー)」


 脳天を狙い繰り出される刺突。
 抵抗すらままならない堕ちた勇者の旅は呆気なく幕を下ろすこととなる。


223 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:40:33 9YCN0PiQ0




「────レミーラ」



 それは、彼自身にしか扱えぬ呪文。
 歴代の勇者も、これから先生まれる子孫にも扱えない。勇者(アレフ)オリジナルの技。

 暗闇を〝光〟で照らすというちっぽけな呪文。
 けれど、一寸先も見えぬ洞窟を鮮明に照らし出すというその輝きは。
 闇(ステイン)にとっては眩しすぎた。


「──────!!」


 声にならぬ悲鳴を上げたヒーロー殺しは目を覆い立ち竦む。
 攻撃どころではない、思考そのものが正常に働かない。
 強烈な目の痛みと驚愕が一瞬にしてステインの脳を真っ白に染め上げた。

「惜しかったな、ステイン」

 ようやく視界が取り戻された頃には拘束具から抜け出したやみのせんしの姿が映された。
 絶望的な状況────自身の個性はあくまで初見殺しでしかないため、二度とは通用しないだろう。
 
「俺は、負けてはならない」

 けれど、立ち上がる。
 なにを相手にしようと、あの男ならば絶対に挫けぬはずだから。

「本物(オールマイト)が築き上げた世を穢す者を正すためッ! 彼の意思を継ぐためッ! 今ここで貴様を討つッ!!」

 吼える。
 己を奮い立てる叫びが耳をつんざく。

 この瞬間、互いに理解した。
 次の一撃でこの勝負は決まる、と。
 破壊の剣を構える元勇者へ、ステインは全身全霊を持って加速した。

 

◆   ◆   ◆


224 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:40:59 9YCN0PiQ0



 ああ、そうか。
 アンタがなぜこんなに眩しく見えたのか、今ようやく分かったよ。
 そして、俺がなぜこんなに心を乱されてんのかも────なんだよ、答えがわかっちまえば簡単だったじゃねぇか。

 俺はさ。
 ずっと、誰かにとっての特別(ヒーロー)になりたかったんだ。
 アンタにとってのオールマイトみたいにさ。
 

 ────つまんねぇ男だな、テメェは。


 本当に、そう思う。
 ローラ姫を殺した時点でそんな願い、捨てたつもりだったのに。
 勇者なんだから当然だろ、って態度で責任を押し付けてくる奴らの声に負けて。
 『はい』か『いいえ』しか選べない世界に嫌気が差して。
 なれたかもしれねぇヒーローの道を捨てたっていうのによ。


 たしかに可哀想なやつだよ、俺は。
 取り返しのつかねぇことをしちまった現実から逃げるために、無理やり自分が正しいと思い込んでたんだからさ。
 自分でも気づかなかったけどよ、図星だったから──それを認めたくなくて、殺意で抑え込んでたんだ。


 ありがとよ、ステイン。
 もう迷わねぇ、アンタを見習って生きていく。
 

 俺は、俺だ。
 これから先選ぶ道は、全部俺自身が決めたことだ。
 他人の声なんてどうでもいい。
 俺が掲げた〝自由〟の道は誰にも邪魔させねぇ。



 だから、
 俺はもう、過去(すべて)を捨てる。




◆   ◆   ◆


225 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:41:21 9YCN0PiQ0





 ばきり、と。
 根元から折れる刀の破片と共にステインの身体が地を転がる。
 どくどくと溢れる血液がアスファルトの溝を伝い、排水溝へと流れ落ちる。
 かひゅ、と。呼吸にもならない空気が漏れる音を響かせるステインへ馬乗りになった。


 この勝負、元よりステインの勝機は薄かった。
 素の身体能力も、手数の多さもやみのせんしが大きく上回っている。
 第三者の介入しない純粋な勝負となれば当然ステインの敗北は濃厚だったはずだ。

 なのになぜ、彼がここまで渡り合えたのか。
 デザストの能力向上? 赤血操術による搦手?
 いや、違う。

 それは一重に、〝覚悟〟の差。
 実際のところこの戦いが長引いた要因としては精神的(メンタル)の影響が大きい。
 迷いを持ち、それを掴めぬまま戦うやみのせんし。
 対して贋物を断罪するためと明確な目的を抱えて戦うステイン。

 それが、接戦の正体だ。
 拮抗が崩れた原因はすなわち、やみのせんしが迷いを捨てたことにある。

 精神の条件はこれで五分。
 となればあとに残るのは身体能力の差。
 やみのせんしが答えを見つけ出した時点で、この結果はほぼ決まっていた。
 
「なぁ、俺の仲間にならねぇか? そうすれば手当てもしてやるし、アンタの粛清も手伝ってやる。悪い条件じゃねぇだろ」

 提案した二択は奇しくもかつて自分が投げられたものだった。
 絶対的な危機にこそ人間は本性を表す。
 死にかけの状態で甘い蜜を垂らせばおおよその人間は『はい』と答えざるを得ないはずだ。

 けれど。
 きっと、この男は。


226 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:41:47 9YCN0PiQ0
 

「────ことわ、る……!!」


 ああ、やはり。
 自分と違って間違えなかった。
 
 ふ、と笑みが漏れる。
 鏡を見ているつもりだったのに、まるで違う生き様を見せつけられて。
 自分もこうなれたのだろうか、と。叶わぬ夢を見た。

「この世には輪廻転生ってもんがあるらしい。世界樹に芽吹く葉は一枚一枚が命で、死して落ちた後は再び別の命となり芽吹くんだってよ」

 それは、勝者のエゴでしかない。
 命を握る者にのみ許された〝憐れむ〟という特権。
 けれど、それは紛れもない本心であった。
 
「もしもアンタが生まれ変わって、まだこんなクソみたいな世界に希望を見い出せたんなら。そん時は────」

 きっとこんな陳腐な言葉、気休めにもならないだろう。
 けれど、それでもいい。
 エゴを押し通してこそ自由の証明なのだから。
 受け取ってくれ、せめてもの礼を。



「────なれたらいいな、そんな本物(ヒーロー)に」



 罪人の首へ、死神の鎌が振り下ろされた。





【赤黒血染(ステイン)@僕のヒーローアカデミア 死亡】






◾︎





「…………はっ、」


 ステインを殺めて暫く、やみのせんしは市街の中で剣を振るっていた。
 彼との戦闘は大きな経験値となりレベルアップをもたらした。
 全体的なステータスの向上をありありと感じ取れる。

 それだけではない。
 やみのせんしは、この戦いが生半可な力技で突破できるものではないということを知った。
 元の世界ではステータスと呪文でゴリ押せていたが、得体の知れぬ強者を相手にするとなればまた危機に陥るだろう。

 ゆえに、やみのせんしは剣技を磨く。
 あのステインが見せた殺人術の真似事をしているうち、偶然会得した剣技。
 はやぶさ斬り、そしてしっぷう突き。
 必要がなかったから覚えようとしなかっただけで、勇者の才覚を持つ者がこれを覚えられぬ道理などなかった。

「……こんなもんか」

 鍛錬を終え、身支度を整える。
 久しぶりの感覚だった。気持ちを改めて旅立つというのはこんなにも清々しい気持ちだったのか。

「さて、と。…………行くか」

 堕ちた勇者は悪の道へ。
 しかしその足取りに、もう迷いはなかった。


227 : そんな〝ヒーロー〟になるための歌 ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:42:09 9YCN0PiQ0


【エリアF-9/街中/9月2日午前8時30分】
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、MP消費(小)、『忍者』に興味(小)、決意
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。
1:二度と迷わない。
2:過去との決別を証明するため、あの赤いの(アスラン)は次会った時に殺す。
3:まずは拠点を探す。病院を奏するつもりだったが、今地図でどのへんだ?
4:もう一人の俺(アレフ)はどうするか。
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後

※ステインとの戦闘を経てはやぶさ斬り、しっぷうづきを習得しました。今後も戦闘の度に新たなる特技や呪文を習得するかもしれません。
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。


228 : ◆NYzTZnBoCI :2024/12/20(金) 18:42:26 9YCN0PiQ0
投下終了です。


229 : ◆0ZMfbjv7Xk :2024/12/22(日) 15:22:25 f33mr2r20
皆様、お疲れ様です。
拙作、『操り人形達』と『《英雄》と《絆》と《正義》』の誤字と行間等を整理しました。
『《英雄》と《絆》と《正義》』の方はロボ子が灯悟の乳房を触る部分に少し文章を加えています。


230 : ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:28:46 M4AzajS.0
皆様投下お疲れ様です。自分も投下します


231 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:30:07 M4AzajS.0
富良洲高校。
一ノ瀬宝太郎や九堂りんねの母校であり、地下に設置された錬金アカデミーの隠れ蓑としても機能する場所。
一時期はグリオンに乗っ取られた事もあったが、今宵の訪問者達にそういった事情は知る由もない。
真紅の王による隕石群の破壊からどうにか生き延び、チェイス一行が到着したのがこの場所だった。
移動中も目を覚まさず、未だ意識が現実へ戻って来ない千佳とはるか。
意識は健在であれども消耗は消して軽くない果穂。
彼女達を休ませる為にもっと近場の施設、例えば当初の目的地だった必留間運転免許試験所が選択肢に無かった訳ではない。
ただ先の戦闘で猛威を振るった宇蟲王の脅威を思えば、少しでも離れたエリアの方が良いのではと考えた結果。
チェイスにとって縁の深い施設は候補から外れ、こうしてドライブとは違うライダーに馴染みの深い場所へ来たのである。

到着しバイクを降りても変身は解かずに、はるかと千佳をそれぞれ運びながら進む。
元々人間以上の身体機能を持つチェイスは勿論、ナーゴに変身中の果穂なら人間一人抱き上げるのは容易い。
気絶した二人共チェイスが運んでも問題は無いが、万が一奇襲された場合を想定し片手は自由にしておきたかった。
果穂としても自分に手伝える事なら断る理由も最初からなく、任せてくださいと承諾。
尤も襲われる事態には発展せず、広い校舎内で見付けた保健室へ何事も無く着いた。

「……」
「ん……」

ベッドに寝かせた二人は顔色が良いとは言えない。
片や死んでもおかしくない重傷を負い、片や9歳の肉体には酷な消耗に蝕まれた。
それでも両名共に、死へ誘う手を振り払い命は繋がったまま。
恐怖し何も出来なかったとしても責められない状況で、千佳が必死に回復呪文を唱えたから。
絶望的な光景が幾度広がろうと、生きることを誰もが諦めなかったから。
二人共に生きているのだと改めて実感する。

「千佳ちゃん……はるかさん……」

生きられなかった、助けられなかった人達がいるのを忘れたつもりはない。
けれど上下する胸が、微かに聞こえる声が、そっと握った手から伝わる温もりが。
彼女達が目の前にちゃんといる証明になって、果穂へ安堵を齎す。
勿論、一番最初に出会った彼と永遠の別れにならなかったこともだ。


232 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:30:46 M4AzajS.0
「果穂」

その彼、チェイスに名を呼ばれ振り返る。
薬品棚から傷薬やガーゼを取り出し、どことなく難しい顔でいた。
何に使う気なのだろう、と分かり切った疑問は抱かない。
自分達三人共に傷を負っており、死ぬ程では無いが放置して良いものでもない。
手当てに使う物が見付かったなら、今更使用に躊躇も無い筈。

「これは俺がやって良いのだろうか……」
「……あ、そ、そうですよね」

チェイスの言わんとする内容を理解し、納得と同時に頬を赤くし果穂の目が泳ぐ。
負傷箇所は手足以外にもあり、当然衣服を脱がす必要がある。
寝ている少女達にそれをやって本当に良いものか、チェイスの懸念は最もだ。
所謂邪な欲望を向けるような男でないとは果穂も十分理解しているが、やはり異性の面から見て大丈夫ですとは即答出来なかった。

「むむむ…!じゃああたしが二人の手当てをしても良いですか?」

険しい、と言うには少々迫力に欠ける顔で悩んだ末に自分が引き受けると返答。
同じ事務所の霧子程手際良くとはいかないだろうけど、出来ないわけではない。
手当てに必要な道具一式を受け取る。

「すまない。お前も疲れているのに働かせてばかりだ」
「あたしはまだまだ大丈夫ですっ。二人の怪我は放って置けないし、それにチェイスさんこそ休まなくて良いんですか……?」
「お前から貰った道具を使えば、損傷個所は治る。第一俺は人間のように疲れはしない」

メカ救急箱の使用回数はまだ残っている。
おまけにロイミュードの体は体力消耗とは無縁。
なので心配無用と伝えるも果穂が納得した様子は見られない。


233 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:31:15 M4AzajS.0
「でも……痛かったり、疲れたりするのは、体だけじゃないと思います」
「……」

じゃあどこがと、聞き返すまでも無く分かった。
機械の体であるも涙は流せるロイミュードな故に。
失恋の誇らしい痛みに頬を濡らし己や、ブレンの喪失へ悲しみの雨を降らせたハートとメディック。
優れた視覚センサーでも捉えられない心という箇所への、形容し難い痛み。
刀使の少女と偽りの魔王、肩を並べて戦った仲間の死による無力感。
人を守ると言っておきながら果たせなかった現実が、目に見えない傷となっているんじゃないか。
そう問い掛けられたら、否定は出来ない。

「学校の中を見て回って来る。俺達以外の者が潜んでいるとも限らん。戻って来た時は……俺も、少し休んでおこう」
「は、はい!じゃあそれまで千佳ちゃん達はあたしが守りますっ!」

アッシュフォード学園程豪華でなくとも広い施設だ。
偶々移動中に会わなかっただけで、実は先客がいる可能性は十分にある。
友好的な者ならともかく、反対であればのんびり休んでもいられない。
そういった事態にならないのを願おう。

保健室にいる人数が三人になり、まずははるかと千佳の手当てから始める。
引き受けた以上は手を抜く気もサボる気も最初からない。
失礼しますと返事がないのを承知で断りを入れ、そっと衣服に手を掛けた。


234 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:31:43 M4AzajS.0
◆◆◆


「あなたたちって本っ当に空気読めないよねー」

声色に確かな苛立ちを秘め、間近の機械兵を切り裂く。
両腕のアームを振り回し、狂ったように襲い掛かった敵は哀れ真っ二つ。
これで地面に散らばる残骸がまた一つ増えた。
掠り傷すら付けられず返り討ちにされた連中への感傷も、NPCが抱こう筈もなく。
スパイクや歯車を叩き付けんとするも、案の定標的には当たらない。
カメラアイが靡く桜色の長髪を僅かに捉えた時にはもう、彼らは原型を留めずスクラップの仲間入りを果たした。

「あっ、ごめんごめん。脳みそもないポンコツにこんなこと言っても意味ないよね。うっかりしちゃった☆」

残った片腕で立ち上がろうとする兵士の頭部を踏み付け、軽く力を籠める。
核となるパーツは呆気なく粉砕、今度こそ沈黙。
害鳥が散らかした生ゴミを見るような視線を向けるのも束の間、すぐに興味も失せその場を去って行く。

参加者の心身の状態を考慮せずにNPCは襲い掛かる。
風都タワー周辺における戦闘で、精神的な疲弊の激しいミカと篝も例外ではない。
命からがら撤退し、篝が起きるのを待とうとしたが群れを成して現れたのが今しがたの集団。
タイミングを考えない襲撃へストレスを感じながらも、一体残らず破壊してやった。
ロボットタイプのモンスターな為、フルートバスターで操れはしなかったが今更この程度の相手に遅れは取らない。

「もうちょっと待っててね、篝ちゃん」

背負った少女からの返事は無く、代わりに聞こえたのはか細い声での謝罪。
それが自分に向けてのものでないとは分かっている。
殺人と裏切りの重圧に苛まれて尚も正しい道を選び、藻掻き続けた青年。
本当だったら、自分が選択を誤らなければ今も篝の傍にいただろう彼。
キラ・ヤマトという、この地でミカが新たに犯した罪の象徴。
届かない声を背中で紡がれ、内に抑えた罪悪感が肥大化し続ける。
全て投げ出し逃げたくなる衝動を跳ね除け、足早に篝を休ませられる場所まで向かった。


235 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:32:28 M4AzajS.0
戦闘を聞き付けた別のNPCや殺し合いに乗った参加者との接触を避け数十分。
辿り着いたのは少年少女が通う学び舎。
トリニティと比べればランクは大きく落ちるも、一々気にする状況ではない。
中へ入り目に付いた近場の部屋、校長室の扉を開けた。
殺し合いで再現されたレプリカの学校に、部屋の主は当然の如く不在。
それなりの金を掛けただろう来客用のソファーへ、そっと篝を寝かせる。

「……ごめんね」

屈んで顔を覗き込み、頬が濡れているのが分かった。
指先で目尻の雫を掬い、呟いた謝罪はミカ本人以外誰にも聞こえない。

(やっぱり、私はどこに行っても同じだね……)

キヴォトスから殺し合いの会場に変わったとて、自分が周囲に不幸を撒き散らす魔女なのは変わらない。
子供染みた発想で、セイアを病院送りにしようとアリウスに手を貸した時から一緒。
アリウスがセイアのヘイロー破壊を目論んだのを知らなかったと、そんなもの言い訳にしかならない。
現にセイアはミカとの和解を拒み、強く責め立てたのだから。
何より、補習授業部の担任として先生をトリニティに招いた件。
あれが原因で廻り廻って先生はアリウスに命を狙われる羽目になった。
味方でいてくれた大人ですら、自分のせいで死ぬかもしれない状況に追いやったのだ。
極め付けがキラの氷竜化。
散々差し伸ばされた手を振り払っておきながら、自分が下手を踏んだ時にはキラに代償を支払わせた。
挙句の果てに、何一つ悪くない篝へ精神的な負担を強いる始末。
改めて考えても最悪の二文字以外に言葉が見付からず、乾いた笑いが漏れる。


236 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:33:09 M4AzajS.0
(でも……まだ終わってない)

自分のせいでキラが凍てつく竜へ堕ちたのなら、ケジメを付けなければならない。
手を汚す前に何としてでも止める。
優勝という己の方針を考えれば明らかな矛盾だろう。
あのまま放置し参加者を減らすのに利用する方が、きっとよっぽど賢い。
理解しているがしかし、もう既にキラと篝を単なる殺害対象としては見れなくなった。
どう足掻いたって復讐を、自分を利用しておきながら何も失わずにいる錠前サオリへの憎悪は捨てられないけど。
救われるかもしれなかったキラの可能性を潰した責任は果たすつもりだ。

「…羽織るのとか持ってきてあげた方が良いかな」

余り意識しなかったが、学校内はどこか肌寒く感じる。
暖かいブランケットなど気の利いた物は校長室には見当たらない。
早目に休ませてあげたいとこの部屋を選んだが、多少時間を食っても保健室を探すべきだったか。
ちょっぴり後悔しても今更だ、他の教室に行き拝借してくるしかあるまい。
他にも起きた時の為に、喉を潤せるのも必要だろう。
支給品には食料や水の類は入っておらず、現地調達しろと言いたいらしい。
不親切極まりないと呆れながら、音を立てないように出入り口へ向かう。

「篝ちゃんのこと見ててあげて。何かあったら知らせに来てね」

その際、リュックサックから取り出した手のひらサイズの物体に指示を出しておく。
NPCを片付けた際、幾つかのドロップアイテムも入手出来た。
内の一つが今話しかけている物。
篝を置いて学校を出る気は無くとも、少しの間目を離す以上は念を入れて損はない。
なるべく早く戻って来るつもりで校長室を後にした。


237 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:33:48 M4AzajS.0



そして富良洲高校に集まった参加者の内、一人と一体が遭遇することとなった。
負傷者を残し単独で校内の探索に動いた男と少女。
だだっ広い廊下にてバッタリ出くわし、チェイスとミカが睨み合う。

「あっれー?他にも誰か来てたんだ。まっ、ここ結構広いしすぐには気付けないよね」

おどけた口調と能天気を絵に描いたような笑み。
毒気を抜くか不快感を煽るか、対峙する相手によって齎す効果は違う。
此度はそのどちらでもなく、感情の読み取れない真顔をミカにぶつけるばかり。

「何者だ?殺し合いに乗っているのか?」
「えぇ…そんなド直球で聞く?こんな可愛い女の子が話しかけて来たんだし、もうちょっと乗っかってくれても良くない?」
「……」
「分かったから!その無言で風船みたいに威圧感を膨らませないで!」

ちょっぴりむくれた風を装いつつも、相手がどのような男かを見極める。
冗談が通じる類では無く、良くも悪くも生真面目な堅物の印象が強い。
こちらの話にきちんと耳を傾けてはくれる。
殺し合いで出会った男はキラ以外、問答無用で殺し来る輩ばかりだったがようやくそうじゃないのが現れた。

「少なくともあなたと喧嘩するつもりはないよ。変な気を起こさなければ、だけど」

争う意図はない。
但し殺し合いに乗っていないとは言わず、明確なスタンスを伏せた上での返答。
そこに気付かず警戒を緩める、等と単純な男ではないらしい。
初対面の、それも衣服に返り血が付着した相手には至極当然の反応か。
場を蝕む緊張感は未だ薄れずに両者を包み込む。


238 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:34:34 M4AzajS.0
「乗っていないとは言わないのか」
「そりゃあねえ。場合によっては抵抗も止む無し、でしょ?えっ、もしかして襲われても手を出すなって言い出すタイプ?」
「違う」
「即答いただきましたー☆じゃあ良いよね。はいっ!次は私が質問する番!」

のらりくらりと躱しながらも会話は続行。
相手を見極めたいのはミカも同じだ。
キラを止めるのに協力可能な参加者として、篝に引き合わせるべきか否か。
腹に良からぬ物を秘めているようなら、自分が対処しておかねばなるまい。

「まずおにいさんの名前から教えてくれない?っていうか、名乗りもせずにいきなり問い質すのって大分失礼だと思うけど?」
「……それも、そうか」
「あっ、そこは納得するんだ」

妙な所で物分かりが良く、却ってミカの方が少々困惑を抱く。
生真面目というよりは天然の気でもあるのだろうか。
どうでもいいことを考えるミカの内心を知らず、低い声で己を表す四文字を告げる。
チェイス。グローバルフリーズが起きた夜、ハート達の手で再改造を受けた際に付けられた名前。
ガッチャードから続く名簿列に、確かそんな名があったのを思い出す。
仮面ライダーの関係者、それもエターナルと違っていきなり襲い掛かったりはしない。
篝に会わせても問題無い方へ少し傾けた。

「チェイスおにいさんね。うん、バッチリ覚えたよ。それじゃあこっちも教えてあげなきゃフェアじゃいないよね。私は聖園ミカ、よろしく――」

最後まで言い切る前に、言葉を引っ込めた。
名乗った瞬間、チェイスの雰囲気が明らかに一変。
立っているだけで感じる重苦しさは、向こうの警戒度が大きく跳ね上がった証拠。
大きな問題にはならずに済む筈だったが、事はそう簡単なものでは無くなったようである。


239 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:35:14 M4AzajS.0
「…どうしたのおにいさん。私、何か変なこと言ったかな?」

まさか今更になっておどけた口調に怒りを覚えた、なんて理由ではあるまい。
チェイスの様子が変わったのはミカが名前を告げた直後。
名乗っただけでこうも警戒心を強めたのは何故か。
思い当たる節としては、梔子ユメの関係者と疑われているからかもしれない。
名簿の並びを見ても、羂索の体になった筈の少女と非常に近い位置に記載されている。
であれば実は主催者と関係してるなどの疑念を持たれたとて、無理もない話だろう。

実際は全く異なる理由だが。

「お前は、キヴォトスの…先生の教え子の一人なのか?」
「え……」

ヒュッと、息を呑む音がいやに大きく聞こえた。
その名前が出て来る可能性を、全く考えていなかったつもりはない。
同じ島にいる以上、先生が他の参加者と会うのは不思議でも何でもなく当たり前。
しかしいざ本当に他者の口から先生の話が出ると、驚き思考が暫し止まってしまう。
再起動するまでに数秒を要し、金魚のように言葉無く口を開閉すること更に数秒。
絞り出した声は自分でも震えているのがハッキリ分かった。

「先生に、会ったの?」
「……ああ」
「そっ、か……」

深く深く吐き出すように、零した言葉に籠められた想いは到底一言では説明が付かない。
嬉しいのか、悲しいのか、どちらでもない別のモノか。
ミカ自身にも判断を付けられないソレの正体を、チェイスにも察するのは難しい。
何より、チェイスが『先生』に抱く感情はミカのとは到底別物なのだから。

「先生は、何か言ってた?」

そうとは知らずに、堪えるような笑みで問う。
どんな時間から呼ばれているにしても、きっと自分を含めた生徒の味方であろうとする大人のことを。


240 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:35:52 M4AzajS.0
予想するのとは全く異なる答えが返って来るとは知らずに。

「…俺の会ったあの男は、殺し合いに乗っている。自分の教え子もまた、この状況を楽しんでいると語った」

空気が凍り付くといった表現は、正にこの瞬間にこそ相応しい。
チェイスからすると、己が目で見た事実を口にしたに過ぎない。
悪評を広める意図も無ければ、ミカを誑かす悪意だって宿っていない。
『先生』が善人の仮面を被って近付き、自分と果穂を殺そうと襲い掛かった。
彼曰く、キヴォトスの生徒も殺し合いを楽しむ少女達だと。
少なくとも、チェイスと果穂にはそれらが起きた本当の事だった。

「………………………………………………………………」

しかし、ミカにとっては素直に受け入れられる内容では無い。

先生が自分と会う前、補習授業部の件を引き受ける前の時間から参加しているかもしれない。
その可能性は大いに有り得るとは考えていた。
だけど、たとえ自分の知るよりも過去の先生だったとしても。
あの人が殺し合いに乗るかと聞かれたら、ミカは迷わず首を横に振る。

偽り以外を口にしない大人ならば、ミカの味方でもあると断言しなかった。
他者を喜んで傷付ける大人ならば、袋叩きにされた挙句コハル共々撃たれそうになった時助けに来なかった。
己以外はどうでも良い大人ならば、セイアと和解出来るように働きかけてはくれなかった。

捨てられない復讐の為に優勝を決意し、殺すしかないと覚悟しても、それでも。
本当だったら、アリウスの手で始末されずに済んだあの人を手に掛けたくはない。
今の汚れ切った自分を見て欲しくなんかない。

彼に向ける感情の正体を、まだ正確に口には出来ないけれど。
ナギサやセイアと同じ、先生だって失いたくない大切な一人だった。


241 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:36:33 M4AzajS.0
「お前は――っ!?」

黙り込んだミカに何かを言い掛け、その姿が視界から突如消えた。
何処へ行ったのかとの疑問を置き去り、戦士としての勘が告げる。
マズい事態になった、脅威に備えろと。

動体センサーが至近距離で動く存在を感知。
ハッキリと捉えるのを待たずに、両腕を交差し防御を取る。
直後、衝撃が駆け巡り靴底が床に別れを告げた。
殴られ体が宙に浮いた、冷静に己の現状を弾き出した時にはもう遅い。
ガラス窓を砕いて外へと吹き飛ぶ。

まともに体を動かせないまま、哀れ地面に激突。
ただの人間であればそうなったろう末路も、ロイミュードであり歴戦の戦士が故に遠ざける。
不安定な状態から体勢を直し受け身を取った。
人なら骨の一本は覚悟しなくてはならない高所からの落下を、無傷で凌ぐ。
尤も、並以上の力を持つのはチェイスのみに非ず。
殴り飛ばした張本人は今の一発だけで済ませる気は無い。

「ねえ」
「っ…!?」

声が聞こえた次の瞬間、首を絞め上げられ再び体が宙へ浮く。
俄かには信じ難い光景があった。
チェイスよりも背の低い少女が、細腕を伸ばし持ち上げているなど。
笑えないジョーク染みた絵面は紛れもない現実。
そして当人達にとっては何一つとして面白くない状況だ。


242 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:37:18 M4AzajS.0
「よく聞こえなかったからさ、もう一回ちゃんと言ってくれるかな?」

寒気がする程に据わった目で射抜き、口の端を吊り上げ問う。
己自身を度々揶揄する、魔女らしい笑みで。

「誰が、殺し合いに、乗ってるって?ねえ?ねえ??ねえ???」

五指の力が強まり、いつへし折られても不思議はない。
拘束から抜け出すべくミカの腕に手を伸ばすも、その必要は無くなった。
首を絞める手は離れた、チェイスを片腕で大きく投げ飛ばすという形だが。

「がっ…!」

鉄製の扉を破壊し、広々とした空間へ叩き付けられる。
全校朝礼や体育の授業、部活動にその他行事で多々使用される場所。
体育館には生徒も教職員も不在。
いない方が幸せだ、今からこの場は魔女が怒りを振り撒く場となる。

「勝手に離れないで欲しいなー。もしかして鬼ごっこ?えー、女の子に鬼役させるってみっともないよー?って、ごめんごめん☆私が投げ飛ばしたんだもんね!」

扉の残骸を踏み付け砕き、己の狩場に魔女が入り込む。
馴れ馴れしい口調とは裏腹に、目は全く笑っていない。
全身から発せられるのは友好的とは到底言い難い、ドス黒い負の感情。

双方にとって運が悪かったと、そう言う他ないだろう。
風都タワー周辺での戦闘が原因で、今のミカは精神的な余裕が全くと行って良い程ない。
自分のせいでキラを氷竜に変貌させた罪悪感。
余計な事ばかりをしてキラを追い詰めたグリオンらへの怒り。
未だ目を覚まさず弱り切った篝を今だけは守らないと、キラに申し訳が立たないと己を追い詰め。
そんな非常に気が立っている時に齎されたのは、先生が殺し合いに乗っているなどとふざけた内容。
リボンズ・アルマークや大道克己、ギギストやグリオン、何よりミカ自身のような殺し合いを肯定する救いようのない悪と先生を同類に仕立て上げられた。
これで冷静になれとは無理な話だった。

ましてチェイスもまた、宇蟲王ギラという最上級の強敵相手にどうにか生き延びた後。
消耗の激しい少女達三人が別室におり、出会ったのは数時間前に戦った危険な男の教え子。
こうなる事はどの道決まっていたのだろう。


243 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:38:02 M4AzajS.0
仮に先の場に篝が同席していたら。
チェイスの側にも果穂や、はるかと千佳が共にいたなら異なる展開になったかもしれない。
ミカを落ち着かせ、対話で互いの情報の矛盾を解明する事だって不可能では無かった。
現実にはそうならず、戦闘は最早避けられない。

(何だこの力は……)

少女の見た目からは想像も出来ないパワーに、驚愕を隠せなかった。
先生は戦闘の際仮面ライダーになったが、ミカは生身でこれだ。
羂索がわざわざ己の体に選んだ辺り、普通の人間には無いものがキヴォトスの少女にあるとは察していたが。
成程、殺し合いに乗っていない者へ向けられるとすれば脅威である。

「もしもーし?聞こえてるー?私が話してるんだからさ、無視するのっておかしいよねっ!」

返事があろうとなかろうと何をするかは同じ。
白いスカートを靡かせ、タイツ越しの細い脚で駆け出す。
文字だけ見れば少女の可憐な動作だが、拳を振り上げ弾丸の如き勢いで迫れば恐怖の対象だ。
大した威力のない一撃とは見れない、当たればチェイスであっても危険。

『BREAK UP』

ならばここからは、己も相応の力で以て対処する他無し。
生身相手に魔進チェイサーに変身するなど、本来なら有り得ない。
だが殺し合いでは元々の戦いにおける常識も当て嵌まらない。
それに死ねない理由は自分にだってある。
全身を機械仕掛けの装甲で覆い隠し、カメラアイが真紅に発光。
変身完了と同時にミカの拳を受け止めた。


244 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:38:49 M4AzajS.0
「…へえ?それって仮面ライダー?何だか継ぎ接ぎっぽい見た目だけど」

軽口を叩きながらも伸ばした腕に力を籠める。
防いだ左手共々粉砕する気でいるが、相手は苦し気に呻くものの耐え切った。
仮面ライダー相手に幾度も渡り合った魔進チェイサーの強化グローブだ。
そう簡単に壊れる程軟な性能ではない。

素手で壁を粉砕できるパワーがミカにはあれど、敵もまた持ち得る力は並以上。
しかし問題無い、素手で時間を掛ける前に武器を使うまで。
左手に握ったフルートバスターの切れ味を今更疑う気はない。
御刀とも打ち合えた威力を機械の体に味合わせてやる。
胴目掛け走らせた刃が、部品の雨を床一面に降らせる未来は訪れなかった。
ミカが得物を扱うのであれば、魔進チェイサーとて使わぬ手は無し。
変身用も兼ねた専用武装、ブレイクガンナーの強度は言わずもがな。
スパイク部分が刃を阻み逆に押し返す。
あらぬ方へと左腕が跳ね、ミカの体勢にも揺らぎが生じる。

「おっとっと、今のは危なかったな。ヒヤヒヤしちゃった」

生まれた隙へ入り込ませず、華麗に跳び一旦距離を取った。
生身ながら頑丈な肉体であるも、いらぬ傷は負わないに限る。
すっかり慣れた動作で機動鍵を取り出し、敵と同じく機械の鎧を纏う。
ガンダム・バルバトスルプスレクス。
火星出身の少年兵、鉄華団のエースが駆る機体をパワードスーツに落とし込んだ物。
ブジンソードのタイクーンに付けられた傷は少なくないが、使う分には何の支障もない。

(仮面ライダー、ではないな)

ベルトを用いない鋼鉄の戦士は、今までチェイスが遭遇を免れた相手。
最初の説明であったパワードスーツの一種だろうか。
疑問を懇切丁寧に答える相手では無く、こっちも最初から期待していない。
武器を用いたやり取りが望みなら、同じく持てる力で死を跳ね除ける以外に選択肢は無かった。
運動部のシューズが数え切れない程に踏んだ床が、ミカの踏み込みで粉砕。
生身以上の勢いで迫る敵に、魔進チェイサーも棒立ちでいる気はない。


245 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:39:24 M4AzajS.0
『GUN』

遠距離形態に変えブレイクガンナーの引き金を引く。
あらゆる場面で自分を助けて来た、最も手に馴染む武器だ。
全機能は正常に働き、命中精度に低下は引き起こされない。
真正面から突っ込んで来たミカを、銃撃で強制的に止めてやる。

「なに……?」

予想を裏切りミカは微塵も速度を緩めず、こちらへ向かって来る。
エネルギー弾は一発も撃ち漏らさず当たった。
にもかかわらず怯む様子は無く、銃撃を物ともしない。
機体保護に使われたナノラミネート装甲は、イモータルジャスティスの武装でも正攻法では突破出来なかった。
同じくブレイクガンナーもまた出力が足りない。

「あっれぇ?今何かした?痛くも痒くもないから気付かなかったよ」

アーマーの舌で舌を出し悪戯っぽく微笑むも、殺意は全く揺るがない。
黄金の五指が生え揃った右手を振り被る。

ギャラルホルンの精鋭部隊をも蹴散らした武装は、等身大サイズになっても健在。
ロイミュードを紙切れ同然に引き裂く魔爪へ、回避を選び真横へと跳ぶ。
見失った標的の代わりに破壊された床は無視、再度銃口を向け引き金に力を籠めた。
エネルギー弾を吐き出す前に、ミカがフルートバスターを投擲。
ブーメランの接近に銃撃を中断、右腕を振るい弾き返す。

ミカが持つ飛び道具は一つだけでは無い。
ガンダム・バルバトスはどの形態も近接戦をメインとした機体であるが、遠距離対応の武装も備わっている。
手首に内蔵された射撃兵装、200mm砲が火を吹く。
轟音を響かせ弾丸が雨霰と発射、機械の戦士を標的に殺意を籠めた鋼鉄が殺到。


246 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:40:04 M4AzajS.0
追加装甲越しに魔進チェイサーの視覚センサーが脅威を分析。
優先度の高い順から回避に動き、時には腕部装甲や得物を駆使して防御。
ドライブやマッハ、殺し合いではディケイドと言ったように高火力の武器を使う相手との戦闘は経験済み。
焦りも感じず対処に動くも、ミカの手数はこれだけに非ず。

200mm砲を凌ぎ隙を伺う魔進チェイサーの頭上より刃が襲来。
後方へ大きく退がるも、一度躱した程度では無駄。
尾を思わせる武装、テイルブレードはミカの感覚に従い変幻自在な攻撃を可能とする。
重装甲のMSですら容易く両断する切れ味を、我が身で受ける気は更々無い。
複合モジュールにより弾き出された最適解を実行、ワイヤーブレードを掠らせもしない。

無論、回避に専念しているだけでは無意味だ。
得物を振るう敵を直接叩く。
背後からの一撃を屈んで避け、前へ前へと突き進む。

走る最中も隙を見付けてはブレイクガンナーを撃つ。
ダメージとなったエネルギー弾は未だ一発も見られず、却ってミカの攻撃は激しさを増すばかり。
あらゆる方向から貫かんと迫るテイルブレードに意識を割きつつ、近寄らせまいと放たれた銃撃にも対処。
弾丸とブーメランが時折命中し火花を散らすが足は止めない。
一度止まれば、どうぞ殺してくださいと己を差し出すのと同じ。
ただ突っ立って的になるのだけは避けねばなるまい。
多少のダメージは捨て置き更に大きく踏み込んだ。

『BREAK』

格闘形態に変えブレイクガンナーの打撃力を強化。
スパイクを叩き付けるが反応できないミカではない。
杭のような爪で振り払い、今度は自分の番とばかりに攻めへ転じる。


247 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:40:48 M4AzajS.0
「そっちから近付いて来たんだから、文句は言わないでねっ☆」

キラッと星が飛びそうなウインクを一つ飛ばし、返答待たずで腕を振り下ろす。
対する魔進チェイサーの武器は変わらずブレイクガンナー。
スパイクと爪が互いを砕くべく激突、どちらも破壊は免れ弾かれる。
一手早くミカが腕を引き戻し二撃目を放てば、数歩分身を捩り回避。
再度距離は取らせない、左腕のフルートバスターが牙を剥く。

リーチは圧倒的に魔進チェイサーが不利であれど、その分スピーディーな動きが可能だ。
喰らい付く刃を防ぎ、がら空きの胴へ蹴りを放つ。
足先に溜めたエネルギーを一瞬で解放、生身の時を大きく超える威力を叩き出す。
とはいえ武装の豊富さのみならず、反射速度もMSの脅威の一つ。
腕部プレートで蹴りを防ぎ、当然の如く傷一つ付かない。
押し返し反対に敵の隙を作り出し、再度左腕で斬り付ける。
咄嗟の防御が間に合うも馬鹿に出来ない威力だ、体勢は更に大きく崩れた。

「もーらいっ!」

絶好のチャンスを見逃してやる理由は、探す方が難しい。
伸ばした腕の先には希少超合金製の爪。
武器を手にしなくとも腕自体が、標的を貫く槍と化す。
プロトドライブ以上の耐久性を誇る魔進チェイサーとて、直撃すれば無事で済まない。
だがここにはロイミュードの番人の死を望まない存在がいる。
銀色のミニカーが三台、縦横無尽に駆け回りミカを妨害。
小型ながら侮れない威力の体当たりで、強引に魔進チェイサーから引き離した。

「痛いっ!?いたっ、ちょ、痛いってば!」
「すまん、助かった」

文句には耳を傾けず、頼もしい仲間達へ礼を告げる。
クラクションを鳴らし応じる姿はどこか微笑ましいが、和んでいる暇はない。
これまでの攻防で気を抜ける相手でないと、嫌でも思い知らされた。


248 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:41:18 M4AzajS.0
生身の時から持つ身体能力の高さを、MSを纏い更に磨きを掛けただけでなく。
近・中・遠、それぞれをカバー可能な武装と使いこなすセンス。
ディケイドに変身した先生とはまた異なる強さの持ち主だ。

銃を用いた荒事が日常茶飯事のキヴォトスにおいて、ミカの能力は非常に高い部類に位置する。
先生の指揮下に入ったアリウススクワッド相手に、単独で渡り合い。
負傷と精神面の影響込みとはいえ、錠前サオリを一騎打ちで下し。
ユスティナ聖徒会の足止めを、たった一人で夜明け近くまで引き受けた。
辿る筈だった正史で振るわれた力が、モビルスーツを纏い存分に発揮されている。

されど自分以上の力を持つ相手との戦いなど、チェイスにしてみれば今更珍しくもない。
この程度で己の戦意を折るのは不可能。
片手に収まった三台のチェイサーバイラルコアを全て読み込ませる。

『TUNE CHASER SPIDER』

『TUNE CHASER COBRA』

『TUNE CHASER BAT』

銀色の専用武装を三つ纏めて展開。
近接戦用のクロー、中距離戦用のウィップ、加えて飛行ユニットを背中に装着。
準備が整ったならやるべき事は一つだけ。
翼を振るい勢いを付けて接近、斬り付ければ敵も黙ってはいない。
爪と剣の二つを用いて迎撃、手数を活かして返り討ちにせんと激しく振るう。
フルートバスターをクローで挟み動きを封じ、ならばと開いた五指で貫くべく腕を伸ばした。

「うぇっ!?」

魔進チェイサーを切り裂く筈の腕が急に引っ張られ、素っ頓狂な声が飛び出る。
原因は右腕に巻き付いた鋼鉄製の蛇だ。
クローを装着済の右腕から伸びる鞭を、しゃらくさいと力任せに振り解く。
今度こそ爪を突き刺そうとした時には既に、魔進チェイサーの姿は目の前から消えていた。

移動先は頭上と察すると同時にエネルギー弾が降り注ぐ。
宙を自在に飛び回り、真下からの銃撃を躱す。
天井が穴だらけになるも互いに知った事では無い。
標的への命中のみを意識して撃ち続ける。


249 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:41:56 M4AzajS.0
「そんなの無駄――っ!?」

ラミネート装甲は突破できまいと高を括るも、間違いに気付き回避へ移行。
確かにブレイクガンナーではバルバトスの装甲を貫けないがそれは機体が万全だったらの話。
スザクとの戦いで損傷を受けた箇所は、肝心のエネルギー兵器への耐久性もほとんど期待出来ない。
いらぬ所で足を引っ張る黒い復讐者に苛立つ一方、魔進チェイサーは自身の狙いが間違いでないと確信。
連射速度を引き上げるが、一方的に狙われるのをミカも大人しく許してはやらなかった。

高く飛ぼうとも天井を突き破ってない以上、テイルブレードの射程範囲内だ。
目障りな害鳥を叩き落とす矢の如く、頭上目掛けて疾走。
予測できない動きのワイヤーブレードは、ある意味弾丸よりも厄介。
なれど対抗手段がゼロと言った覚えもない。

『EXECUTION COBRA』

銃口を押し込み鋼鉄の鞭、テイルウィッパーにエネルギーを充填。
漲る力に急かされ魔進チェイサーの元を離れる。
直接振るうよりも更に自在な動きが可能なとなり、テイルブレードとぶつかり合う。
主への狼藉を許さぬ従者のように、飛行中のロイミュードには掠り傷一つ付けさせない。
この状態が長続きしないのは百も承知だ、得られた猶予で次なる動きに出る。

「うーわ、乱暴過ぎじゃない?」

体育館の天井に設置されたライトをもぎ取り、ミカへと投擲。
壁を破壊しダイナミックな脱獄を果たした自分を棚に上げ、軽く引きつつも床を蹴り回避。
飛び散るガラスを腕の一振りで払い除け、ふざけた真似に出た男へ得物を振り被る。
だがフルートバスターの投擲を待たず、魔進チェイサーは次なる手に出ていた。


250 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:42:34 M4AzajS.0
『EXECUTION BAT』

響く電子音声は、展開済の武装へ再びエネルギーが送られる合図。
鋼鉄の翼、ウィングスナイパーに紫の光が迸る。
ライトの投擲程度でどうにかなるとは最初から思っていない。
僅かなりとも動きを止められたなら上出来だ、加速の勢いを乗せた蹴りを真下へ放つ。

「わざわざ突っ込んで来るなんて気が利いてるね!それともバカなだけかな?」

軽口を挟んで銃撃を見舞うも、物ともせずに急降下。
だったら真っ向から捻じ伏せてやるのみ。
右腕を槍に見立てて突き刺し、靴底とぶつかり合う。
脚諸共木っ端微塵に破壊してやらんと力を引き出し、

「……っ!」

軋みを上げる体に動きが硬直、拮抗は崩れ天秤は傾く。
押し負けるのは確定と理解しても、素直に蹴り飛ばされてはやらない。
敵の勢いを少しでも削ぐべく、開いた左手でフルートバスターを振るう。

尤も、魔進チェイサーには見抜かれた攻撃だ。
自由に動かせる手があるのはミカだけではない、すかさず照準を合わせトリガーを引く。
エネルギー弾は破損個所を正確に貫き、内部のミカにもダメージが届いた。
ラミネート装甲による威力低下が起こらなければ、流石に平然としてはいられない。
怯んだタイミングは最大のチャンス、とうとう押し負け蹴り飛ばされる。

「こん…のぉっ!!」
「ぐ…っ!」

それでも攻撃の機会を強引に手繰り寄せ、吹き飛ぶ最中に足を突き出す。
踵部分に仕込んだパイルバンカーを発射、金属製の杭が一直線に襲来。
咄嗟の判断で右腕のクローを盾に使ったが間に合わず、魔進チェイサーもミカ同様に床を転がった。
押し負けた理由も自分の体なのだから直ぐに分かった。


251 : Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:43:13 M4AzajS.0
キラと篝との初戦に始まり現在に至るまで、ミカは連戦続きでロクに休めていない。
一般人を超える力のキヴォトスの人間とはいえ、傷や疲労は他の生物同様に付いて回る。
風都タワー付近でエターナルと戦った時と同じだ。
蓄積された疲労が足枷となり、肝心な場面で力を出せなかった。
軽くない消耗を抱えたまま、魔進チェイサーと戦えただけでも十分並外れてはいるが。

対するチェイスもまた、宇蟲王ギラとの戦闘からそう間を置かずにミカとぶつかった。
メカ救急箱の効果は継続中で、回復は進んでいるが即座に完治とはならない。
が、チェイスはミカと違い機械生命体ロイミュード。
生物ならばあって当然の肉体的疲労は、機械の体故に存在しない。
その為疲労が原因によるコンディションの低下も起こらず、ミカよりは万全に近い状態で戦闘が可能だった。

「この程度で勝った気になられたら、流石にイラっと来ちゃうかなぁ……!」

全身が訴える疲労もミカを止めるには至らない。
闘争へ駆り立てる怒りは依然として燃え盛ったまま。
この男は言ってはならないことを言った、やってはいけないことをやった。
つまらない冗談と鼻で笑い飛ばしてやれない、言うなれば地雷を踏んだのだ。

殺すしかないと決めておきながら、ムシの良い話だとは分かっている。
自分が皆から嫌われる魔女だとつくづく思う、セイアが和解を拒むのも当然だろう。
それでも、それでもこれだけはどうしても許せない。

「スクラップになれば、もう何も言えなくなるよね!」

腰からメイスを引き抜くや間髪入れずに突進。
相手が起き上がるのを悠長に待ってやらない。
原型なんて留めない程に破壊し、二度とさっきのような事を言えなくしてやる。
鉄華団の悪魔と恐れられた少年のように、無慈悲な鉄槌を振り下ろす。



その寸前で、ミカの前に少女が飛び込んで来た。


252 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:44:25 M4AzajS.0



「あれ……?」

はるかと千佳、そして自分自身の手当てを終え一息ついた頃。
物音が聞こえたような気がして、果穂は周囲へと目をやる。
変わった所は何も無い。
ベッドの上には衣服を元の位置に戻し、包帯が巻かれた二人の少女。
傷の手当てを行っている間、一度も目を覚まさなかった。
それだけ疲労が大きいのなら、無理に起こす必要もあるまいとこちらから目覚めを促しはせずにいる。
彼女達でないということは、校舎内を調べに出た仲間だろうか。

(チェイスさん……?)

何となく、不安を感じそっと保健室の外に出る。
雑談に花を咲かせる女子生徒も、移動先の教室へ急ぐ男子生徒も、目敏く見付け注意する教師もいない。
誰に見られることもない張り紙がずらっと並んでいるだけの、いっそ気味が悪い程の静けさ。
太陽が照らす時間帯にも関わらず、まるでホラー映画のような雰囲気があった。

嫌なものを感じる静寂は、突如響いたクラクションで破られた。

「ひゃっ!?と、トレーラーさん…?」

突然で驚きはしたが、音の正体は果穂も知っている存在。
保健室を出る前、念の為にとチェイスが自分達の傍へ付かせたトレーラー砲だ。
シフトカーの例に漏れず自律行動を行い、音を発して果穂の周りをグルグル走る。
悪ふざけでこのような真似に出たのではない。

「もしかして……」

バっと振り向くと今の今までいなかった者が瞳に映り込んだ。
その男の顔を忘れてはいない。
既に一度会っており、向こうも果穂の顔は覚えているだろう。
尤も友好的な相手とは間違っても言えない。
チェイスは勿論、先の戦闘で共に戦ったリュージやロロとも違う。

「お前…あの時のガキか」

蛇柄の衣服を着こなし、薄っすら浮かべた笑みは肉食獣のように凶悪そのもの。
忘れる筈も無い。
一番最初に自分と出会い、殺そうとした危険人物が立っていた。


253 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:45:15 M4AzajS.0



話は数時間前に遡る。
殺し合いが本格的に開始し、最初の獲物にまんまと逃げられた後。
租界エリアで浅倉は休める場所を探していた。
怪物染みた凶暴性の浅倉と言えども、肉体はあくまで普通の人間。
動き続ければ疲労が溜まるし腹も減る。
故に万全へ近付ける為にも手頃な休憩場所を求めたのだが、知った事かと襲い掛かる者達の相手を強いらる羽目になった。

「アアアアアアアアアアアッ!!」

獣染みた雄叫びと共にドラグセイバーを振り下ろす。
激しい殴打の嵐を受け虫の息となっていた所へ、渾身の一撃を食らってはもう手遅れ。
悲鳴も出せずに爆散し、先に逝ったミラーモンスター達と同じ所へ旅立った。

それなりの数は揃っていたが、ミラーモンスターの相手など元の世界での日常と何ら変わりない。
苦戦する場面も無く、あっという間に全滅。
虫の居所の悪い浅倉を襲ったのは不運としか言いようがなく、凄惨な暴力を標的に選ばれた。

「チッ、もう終わりか……」

イライラさせやがると吐き捨て変身を解除。
疲れているとはいえ、レンに逃げられた苛立ちの解消にはなるだろうと応戦。
結果は余り効果があったとは言えず、歯応えの無さに却ってストレスが溜まるばかり。
無駄に時間と体力を削られただけ、とも言い切れないが。

「何だこりゃ?」

モンスターの死体があった場所に転がる奇妙な物体に眉を顰める。
NPCを倒した際、一定の確率で入手可能なドロップアイテムだ。
ご丁寧に説明書まで落ちており、軽く流し読みし小さく鼻を鳴らす。
役に立つか立たないかと聞かれれば、間違いなく後者。
拾っておいて損はなく、拾おうと手を伸ばし、


254 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:45:51 M4AzajS.0
周囲一帯に激しい揺れが起こった。

「っ!」

地震かと身構えるも違う。
自然現象ではない、弾かれたように顔を上げ見た。
遠くの方に聳え立つ城らしき建造物が、砂のように崩れ去るのを。

異変は城の崩壊だけに留まらない。
破壊の音が徐々に近付き、やがて浅倉のすぐ傍までやって来た。
光が空気を焼き、怖気の走る闇が家々を喰らい尽くす。
子供が気まぐれにミニチュアを踏み付けるかの如き勢いで、租界エリアに破壊が巻き起こる。

「こいつは…!」

誰がやっているのかは分からなくとも、闘争を求める本能が理解する。
これは祭りだ。
ライダーやミラーモンスターなど目ではない程の化け物共が、自分を差し置いて祭りを楽しんでいる。
自然と頬が吊り上がり、体中の血が滾り出す。
感じていた肉体的な疲れすら、どうでもいいと思えるくらいの高揚感。
ド派手なパフォーマンスを見せ付けられて、大人しくなどしていられなかった。

尤も、破壊の原因である二人の参加者。
神と魔女が意識を割くのはお互いのみ、浅倉の存在など少なくともこの時は眼中にない。

「チッ…!」

浅倉を取り囲む建造物が纏めて吹き飛び、瓦礫が豪雨となって降り掛かる。
再度デッキを取り出し変身している余裕は無い。
かといってこのままコンクリートに埋もれ、誰にも知られず脱落など真っ平御免。
頭であれこれと考え込むより早く、手に入れたばかりの道具を使用。
掲げた一枚のカードが光を発し、直後瓦礫が覆い被さった。


255 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:46:48 M4AzajS.0
辺りを見回すとさっきまでは無かった筈の施設があった。
崩壊した建造物群は影も形も見当たらない。
握り締めたカードが自分の命を救った、そう理解しても浅倉が浮かべるのは不機嫌な表情。
逃走には成功したものの、肝心の祭りからは遠ざかったらしい。
ホットラインで現在位置を確認すれば、今から行っても到底間に合う距離ではない。
レンに逃げられた時といい、どうにも上手くいかずイライラが募る。

とはいえ休める場所が見付かったのについては文句もない。
青春の学び舎には相応しくない脱獄犯だろうと、殺し合いでは等しく受け入れる。

中に入り、浅倉が真っ先に向かったのは購買部。
主催者が気を利かせたのか、無人であるが商品は置かれていた。
犯罪者に金銭を支払わない罪悪感など微塵も無く、片っ端から手に取り開封。
惣菜パンやスナック菓子を次々に食らい、ジュース数本をがぶ飲み。
腹を満たす為なら野良犬や泥でも胃に流し込むが、普通の食事にありつけるならそれに越した事はない。
平らげ満足がいくと、残った商品をリュックサックに放り込む。
これで移動先でも食料には一先ず暫くは困らない。

空腹を凌げば適当な教室に行き、椅子に腰掛け目を瞑る。
食事と睡眠は疲労回復の基本だ。
連戦の疲れも影響しすぐ眠りに落ち、その様子をガラス越しに契約モンスターが睨む。
アドベントカードさえなければ、すぐにでも腹の底へ真っ逆様になっただろう。

「くぁ……」

数時間後、欠伸と共に目を覚ますと軽く肩を解す。
疲労全てが抜けてはいないが、幾分か楽にはなった。
後は肝心の獲物を見付けてイライラを消し去るのみ。
自分が寝ている間にこの場所を訪れた者がいるかもしれず、中を探し回ること数分。
通りが掛った部屋から見覚えのある少女が現れた。


256 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:47:29 M4AzajS.0
「あなたは……」
「何だ、いるのはお前だけか?」

分かり易く顔を強張らせた少女の傍に、紫の服の男は不在。
死んだのか別行動中か、どちらにせよつまらない。
あの男なら戦うのに丁度良い相手なのだが。
またしても苛立ちが湧き上がる、しかし代わりなら目の前に突っ立っている。

「おい、死にたくないなら俺と戦え」

腰のベルトを指差し短く告げる。
カードデッキとは違うがライダーに変身可能ならば、自分の相手は多少務まるだろう。
ビクリと震えたのは意に介さず、問答無用でデッキを取り出す。
反射物はそこら中にあり、一々探し回る必要も無かった。

「変身!」

デッキを翳しバックルが出現、慣れた手付きで装填すれば変身は一瞬で完了。
鏡像が重なり合い、赤龍を従える真紅の騎士の鎧を纏う。

気だる気に首を回す龍騎へ、果穂も逃げられないのを悟った。
バイザー越しの赤いレンズが射抜き、早く変身しろと急かす。
凍り付いたままでいれば痺れを切らし、生身だろうと構わず痛め付けるに違いない。
他人を悪く言いたく無いけれど、そういう人だとは最初の出会いで嫌と言う程に分かった。

(あたしが、戦わないと……!)

本音を言うなら勿論恐い。
チェイスの助けも借りられず、自分一人で危険な男と戦う。
大好きな特撮番組を見るのとは全く違う、命の懸かった本物の戦いだ。
殺し合いではもう何度も経験してるけれど、恐怖は未だに無くならなかった。

それでも自分が戦わなければ、きっとこの人ははるかと千佳まで傷付けようとする。
眠りに落ちた二人を今守れるのは自分しかいない。
そう思ったら手は自然とレイズバックルに伸び、ドライバーに叩き込んだ。


257 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:48:04 M4AzajS.0
『SET』

緊張を少しでも和らげるように深く息を吐く。
迷っていては自分も、大切な仲間も皆殺されてしまう。
善が敗北し悪が一人笑う、血濡れたバッドエンドは望んでいない。
脳裏に浮かんだ最悪の光景は、隣で聞こえたエンジン音に掻き消される。
ライトをチカチカと点灯させて、言葉が無くてもトレーラー砲が何を伝えたいのかは分かった。
仮面ライダードライブと共に戦場を駆けた一台として、果穂と共に戦う気だ。

「ありがとうございますトレーラーさん!トレーラーさんが一緒なら、きっと大丈夫ですっ!」

心強い味方の存在に感謝し、瞳に力強さが宿る。
恐怖は消えずとも迷いは最早欠片程も無い。

「変身っ!」

『BEAT』

猫を思わせる仮面を被り、上半身には装甲を纏う。
ナーゴの変身を見届け、待ちくたびれたとばかりに龍騎は笑いを零す。
散々闘争の機会を取り上げられ、いい加減我慢の限界だ。
誰が何と言おうと止まる気はない。

『READY FIGHT』

ライダーバトルとデザイアグランプリ。
願いを懸けた異なる戦いの参加者が、異界の地で激突。
真っ先に動いたの龍騎、握り拳を作り顔面狙いで殴り付ける。
相手がまだ小学生の少女だろうと関係無い、ライダーになった時点で己のイライラを晴らす対象なのだから。


258 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:48:46 M4AzajS.0
対するナーゴは真っ向から迎え撃つのではなく、回避に動いた。
強化されたライダーの能力を以てすれば、向かって来る拳をハッキリ捉えるのも難しくはない。
無慈悲な暴力の標的に選ばれ緊張感が増すも、これまでの戦いが冷静な判断力を齎す。
何も出来ずに棒立ちでいたって事態は悪くなるだけ。
全身を大きく捩って躱し、動きを止めずにガラス窓へ体当たり。
破片が体中を切り付けるも無問題、装甲とボディースーツの恩恵で傷一つ付かなかった。

ナーゴが真っ先に優先しなければならないのは、保健室から龍騎を遠ざけること。
自分達の戦いにはるか達を巻き込み、いらぬ負傷をさせる訳にはいかない。
龍騎がこちらへ視線を寄越すのを確認し、背を向け駆け出す。

「あたしはこっちですよ!」

追い掛けてみろと安易に伝えれば、向こうもその通りにする筈。
戦いたがっている龍騎なら、安い挑発と分かっても切り捨てられまい。
俊敏なナーゴの機能を駆使し疾走、保健室からはあっという間に遠ざかる。
後は龍騎本人をどうにかするまで。

「っ!?」

チラと振り返った時、龍騎の姿はどこにも見えない。
変わりに近くのガラスから、赤い影が飛び出して来た。
反応が遅れるナーゴ目掛け知ったことかと拳が飛ぶ。
命中を確信するも、龍騎が感じた手応えは殴り飛ばしたのとは別物。

「チッ……」

自らの頑強な車体を盾にし、トレーラー砲がナーゴを守った。
零れた舌打ちは、けたたましく響くクラクションに掻き消される。
ミラーワールドを使い追い掛け、不意打ちで殴り付けたが結果は失敗だ。
己を盾代わりにしただけではない、運転席部分からレーザーを発射。
以前は敵同士だった魔進チェイサーをも怯ませた威力だが、当たらなければ無意味。


259 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:49:26 M4AzajS.0
「邪魔だ!」

左腕のガントレットを叩き付け、トレーラー砲を殴り飛ばす。
召喚機として備わった箇所であるも、強度の高さ故にこういった使い方もある。
悲鳴のようなエンジン音を聞き流して、素早くカードを引き抜く。
元々変身する姿でなくとも、神崎士郎のライダーシステムなら慣れた動作だ。

『SWORD VENT』

青龍刀タイプの武器、ドラグセイバーを掴むや否や接近。
型も何も無い荒々しい一撃へ、無手で迎え撃つのは些か無謀。
幸いにして変身と同時に得物は手元に出現済み。
拡張武装、ビートアックスで刃を受け止める。

「う……」

曲を掻き鳴らすのみならず、斬撃武器としての性能も持つ。
ドラグセイバーを真正面から防ぐのは問題無いが、拮抗を保つのは難しい。
両腕に掛かる重さへ、ほんの僅かでも気を抜けば簡単に押し負けるだろうと確信。
今こうして防御しているだけでも、骨がへし折れそうだった。

互いの変身後のスペック差に加え、成人男性と女子小学生ではどうあっても力では勝てない。
そして膠着状態を長々と維持するのは、龍騎にとっても望む所に非ず。
腹部へ蹴りを入れ、呻き後退したナーゴへ追い打ちを掛ける。
させじと阻むはトレーラー砲、レーザーを連射し龍騎の足を強引に止めた。

『METAL THUNDER』

仲間の援護に感謝しつつ、ビートアックスを操作。
弦を鳴らし雷を振らせるも、龍騎は数時間前に戦った頭領ジャマト以上に手強い相手だ。
前方へと飛び込むようにして地面を転がり、雷を回避しながらナーゴへ距離を詰める。
背後からトレーラー砲が阻止に動くが、その程度は予想の範囲内。


260 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:50:16 M4AzajS.0
『GUARD VENT』

赤龍の腹部を模した盾、ドラグシールドを両肩に装備。
レーザーは悉く盾に阻まれ、龍騎の動きを微塵も止めることが叶わない。
間近へ迫りつつある赤い騎士に、弦を鳴らすのは間に合わないと理解。
咄嗟の判断で得物を翳すも、龍騎の剣はナーゴの抵抗をも上回る速さ。
次第に防ぎ切れなくなり、とうとう刃はすり抜けた

「うあ…っ!」

胸部を龍の尾が切り上げ、両者の視界を火花が覆う。
装甲がダメージを最小限に抑え即死を防ぐも、一撃で終わらないのは龍騎とて分かっている。
だからこれだけで終わらせはしない。
二度三度と続けて剣を振るい、辺りへ散る火花は激しさを増す。
地面へ転がり倒れてもまだ続く。
腹部へ足を乗せ体重を掛ければ、靴底から痛みを訴える声もより大きなものとなった。

「あぐ……や、やめてくださ……げほっ!?」

何を言われようと止めるつもりはない。
イライラを晴らすように腹部を蹴り上げる。
爪先がボディースーツ越しに捻じ込まれ、痛みと吐き気が同時に襲い掛かった。

「お前といいあのガキといい、弱過ぎて余計にイライラする……」

救出へ動いたトレーラー砲へ盾を投擲し弾き飛ばす。
助けを期待できなくなったナーゴの片腕を踏み付け、ビートアックスに伸ばし掛けた手を止める。
本当に骨が砕けそうな痛みに悲鳴が上がるも、聞き入れるような罪悪感は無い。
つまらなそうに鼻を鳴らし、頭部目掛け剣を振り下ろした。


261 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:51:10 M4AzajS.0
「メラ!」

寸前で聞こえたのは幼い少女の声。
同じタイミングで龍騎を火の粉が襲い、仮面の上から熱を感じる。
火炎で攻撃するカードを持っているが自分じゃない。
鬱陶し気に振り払うも意識が逸れたタイミングで、邪魔をする者が更に現れた。

「てやあああああああああっ!!」

またもや聞き覚えの無い声に振り向けば、光輝く得物が勢い良く振り被られた。
ドラグセイバーで迎え撃つも、今度は敵が一手早い。
傷こそ負わずとも後退させられ、ジロリと今しがたの乱入者を睨み付ける。
ピンク色の衣装を纏った、なれどレンとは似ても似つかない少女。
ナーゴを背に庇い、その後ろではこれまた見知らぬ少女が駆け寄るのが見えた。

「果穂ちゃん!大丈夫!?」
「うぅ……千佳ちゃん……?はる…マジアマゼンタさんも……」
「遅くなってごめん!今治すから!」

龍騎に警戒を払いながらも、得意の回復魔法を発動。
痛みが和らぎ、何とも言えなこそばゆさが包み込む。

目を覚ました時、はるかも千佳もすぐに状況を理解出来なかった。
見知らぬ部屋のベッドに寝かされ、傍らには殺し合いが始まって間もない頃に出会った仲間の姿。
隕石が振る地獄から脱出出来たのか、はるかに至っては自分が斬られて以降何があったのかを知らない状況。
ただ痛みこそあれど死は遠ざけられた己の体と、瞳を潤ませ安堵する千佳に心配を掛けさせたとは理解。
「ごめんね」と言いながら抱き合ったのも束の間、外から争い合う音が聞こえた。
千佳からも一緒に逃げた筈の果穂がいないと言われ、もしやと思い急行。
駆け付けた先でナーゴが痛め付けられるのを目にした時、迷わず介入に出たのだった。

「どうしてこんなことするの!?」

槍を構え問い掛ける瞳には、明確な怒りが宿っている。
普段は温厚なはるかと言えども、大切な仲間を傷付けられ笑って済ませられない。
マジアマゼンタへの変身はとっくに済んでいる、返答次第では再度斬り掛かるのに躊躇は無し。


262 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:51:56 M4AzajS.0
「殺し合いってのはそういうもんだろ?」

何を馬鹿なとでも言うような態度で答えが返って来た。
瞬間、マジアマゼンタとしての意識が龍騎を倒す方向へと即座にシフト。
果穂を殺そうとしておきながら悪びれもしない態度から、言葉でどうこう出来る相手でないのは明白。
ヒーローらしい外見でも、アルカイザーとは似ても似つかない悪人だ。
ノワルやギラ程の絶大な力の持ち主でなくとも、放って置ける相手に非ず。
他の仲間達がどうなったのかは非常に気になるが、今は詳しく聞ける状況でも無い。

「ノコノコ顔を出したんなら、お前も俺の相手をしろ!」

有無を言わさずに斬り掛かった龍騎へ、マジアマゼンタも己の得物を豪快に叩き付ける。
魔力で生成した槍はライダーの装備とも打ち合える強度だ。
リーチの差と持ち前の素早さを活かして突きを放つ。
対する龍騎もまた、剣を用いた殺し合いはライダーバトルでは最早お馴染みの光景。
雑に見えてその実的確に捌き、一撃だろうと受け入れない。

「二人共ありがとうございます…!もう動いても大丈夫なんですか…?」
「うん!ぐっすり眠ったから、すっかり元気だよ!」

本当はまだ体が重く、疲労が残っている。
けれど気を失った時に比べればマシ、何より果穂へ暗い顔をさせたくはない。
普段通りの、ラブリーチカとしての笑みを見せ杖を握り締める。
皆が戦っているのに、自分だけ休んではいられない。
サポートすべく呪文を唱えようとし、ナーゴもまたビートアックスへ手を掛けた。

だが少女達の様子に龍騎も次の手に出る。
千佳はともかく、ナーゴが演奏による支援を行う気なのは察しが付く。
また無駄にストレスを溜めさせられるのは御免だ、槍を弾き流れる動作でカードを引き抜く。


263 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:52:40 M4AzajS.0
『AD VENT』

熱の籠らぬ電子音声に応え、龍騎の契約モンスターがミラーワールドから出現。
ガラス窓を通って巨大な赤龍、ドラグレッダーがナーゴを襲う。
本来の契約主と違って友好的なものを何一つ抱けぬ男であれど、アドベントカードがある限りは命令に従う他ない。
たとえそれが、少女を殺すという己の主が決して望まぬ命令であってもだ。

「きゃっ…!」
「あ、果穂ちゃん!」
「だ、大丈夫です…!トレーラーさん!千佳ちゃんをお願いします…!」

演奏を中断し回避したお陰で、牙の餌食にはならずに澄んだ。
慌てて駆け寄ろうとする千佳を制し、起き上がったトレーラー砲に彼女を任せる。
変身しているのもあってか、襲う優先度は自分の方が上らしい。
巨体を揺らして尾を叩き付けられ、大きく跳んでどうにかやり過ごす。

「ピオリム…!」

トレーラー砲の誘導で距離を取りつつ、千佳も呪文を唱えて支援。
敏捷性を強化し幾らかは余裕が生まれるも、決して油断は出来ないのが此度の敵。
ドラグレッダーの巨体から繰り出す威力は、変身していても直撃すれば大ダメージは確実。
元々スピードに優れたナーゴだからこそ、変身者が一般人の果穂でも危うい所で躱せていた。
マジアマゼンタも同様に、呪文の恩恵を受けはしたが焦りも加速。
果穂達がドラグレッダーに襲われているのはこっちにも確認出来た。
助けに行きたいが龍騎が素通りさせてくれない。

仲間達や宿敵のように、真化を未だ使えない以上打開策はない。
己の不甲斐なさに唇を噛み、ふと思い出すのは支給されたアイテム。
一番の武器であるトランスアイテムがある上に、使いこなせるかどうかも分からず仕舞ったままにしていた。
だが腐らせておくよりは少しでも状況を変える為に、ここらで取り出すべきじゃあないか。


264 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:53:38 M4AzajS.0
「やあっ!」

決断したなら即実行に移すまで。
横薙ぎに槍を振り回し、龍騎を僅かにでも怯ませる。
得られた猶予は多くない、リュックサックから急ぎ目当ての物を取り出す。

手にしたのは槍、但し魔力で生成した自身の得物とは違う。
形状は細く全体が黒に染まっており、ハート型の自分のとは全く別。
天を突き刺す得物を握り締め、改めて構え直す。

「お願い、力を貸して!」

願いに応えるように、マジアマゼンタの頭へ流れ込む複数の術技。
ソーディアンや日輪刀と同じソードスキルの一種だ。
槍の本来の使い手と同じ力が、装備する事で使用可能となる。
豊富過ぎて逆に使いこなせるかどうか不安という、ディムロスを持った堀北鈴音と同じ感想が無い訳ではないが。
浮かんだ弱気な思いを捻じ伏せ、いざ技を放たんとし――

「……って、なにこの恰好!?」

いやに体がスースーする違和感へ視線を落とせば、嫌な予感は的中。
服装がトレスマジアのコスチュームから一変していた。
基本的に露出を抑えた魔法少女の衣装と違い、腹部も脚も大胆に晒し。
胸元の布までパージしており、中学生ながら発育の良い谷間が丸見え。
マジアベーゼやレオパルトのように、己の体を見せ付けるかの恰好だった。

「何で!?服まで変わるなんて書いてなかったよ!?」
「マジアマゼンタさんもパワーアップしたんですね!かっこいいです!」
「魔法少女だけじゃなく、違う変身ヒロインになれたんだぁ……」

へそ出しのアイドル衣装も珍しくない果穂と千佳からすれば、羞恥を覚えるような類ではなく。
むしろキラキラとした視線をぶつけられ、逆に胸が痛い。
何故こんな仕様なのか、羂索の趣味かと頭を抱えたくなるも得られた力は本物。
ハート型のシールだけで秘部を隠した時に比べればマシと、内心言い聞かせる間にも龍騎は構わず斬り掛かった。


265 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:54:23 M4AzajS.0
「天月旋!」

緩い空気は終わりだ、新たに得た力で反撃に出る。
ドラグセイバーが身を切り裂くよりも早く、龍騎の懐へ潜り込む。
頭上から剣が振り下ろされるのは待たず、顎を蹴り上げた。
脳を揺さぶられながら宙へ浮いた標的を追い、マジアマゼンタも回転斬りを繰り出す。
マスク越しに蹴りを受けた為か敵の復帰も迅速、真下からの刃を弾き返す。
両足で華麗に着地、敵をしかと視界に捉える。

「月影刃!」

龍騎の目と鼻の先にマジアマゼンタが現れた。
ライダーの動体視力を以てしても、舌を巻く速度で間合いを詰め攻撃。
突き出された槍へ咄嗟に防御を取るが、加速の勢いを乗せた一撃は重い。
後方へと大きくよろけ隙が生まれたなら、どう動くかは決まったも同然。

「月牙!」

跳躍し龍騎の頭上へ陣取り、垂直に落下。
真上からの蹴りを両肩の盾で防ぎ、力任せに押し返す。
格闘戦に特化した龍騎だからこその荒業だが、マジアマゼンタにはむしろ好都合。
宙へ投げ出された勢いを利用して、一気に仲間の元まで到達。
執拗にナーゴを狙う赤龍へ、これ以上好き勝手はさせない。

「旋月刃!」

リーチを活かした薙ぎ払いが顔面を切り裂く。
出血こそ無いがライダー同様に火花が散り、悲鳴交じりの咆哮を上げる。
巨体であっても脆い部位への攻撃には溜まらず、鏡の世界へと逃げて行った。


266 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:55:00 M4AzajS.0
「いいぜ、ようやく楽しめそうだ……」

不甲斐ない下僕に憤るでもなく、むしろ反撃を受けた事で闘争への期待が高まる。
やはり歯応えがなくてはつまらない、昂る心のままに龍騎も更なる力を解放。

『SURVIVE』

ガントレットから銃形態へ召喚機が変化。
より分厚い装甲を纏い、火炎の如き赤に染まる。
城戸真司の決意の証を踏み躙るように、龍騎サバイブが殺し合いにて二度目の降臨を果たす。

『SWORD VENT』

青龍刀から銃剣タイプの装備、ドラグブレードを手に有無を言わせず突進。
黒槍を振るうマジアマゼンタと真っ向から激突。
言葉は不要、刃を用いた応酬で白黒付ける以外に道はない。
リーチで勝る分、懐に潜り込まれれば取り回しで不利になる。
その点を理解しているが故、マジアマゼンタは一歩足りとも龍騎を進ませない。

(さっきよりも重い…!)

急に姿を変えたかと思えば、感じるプレッシャーも増大。
見掛け倒しでないのは一刃を弾く度に襲う、腕の痺れが確かな証拠。
真化とはまた違う強化形態、味方ならともかく敵が使えば非常に厄介。
しかもエノルミータと違って、本気で殺すつもりの攻撃を仕掛けて来る。


267 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:55:39 M4AzajS.0
だが戦場に変化を起こしたのは龍騎だけではない。
命を取り合う熱気の加速に引き寄せられ、新たな戦士がエントリーを果たす。

背後からの猛烈な敵意が龍騎の肌を刺し、急遽標的を変更。
黒槍を弾き即座に一回転、振り返りながら刃を放つ。
響くは剣と剣の衝突による甲高い音、バイザー越しに襲撃者の正体を捉えんとする。

が、見えたのは風に靡いた黒髪の残像。
龍騎サバイブですら一瞬見失う速さに、目で追ってるだけでは無理と理解。
二撃目が来るより早く飛び退き、距離を取って次に備えた。

「咄嗟に助太刀に入りましたが……念の為に聞いておきましょう」

セーラー服に日本刀という、奇妙な出で立ちの少女。
彼女もまた目を覚ました直後は、混乱から暫し抜け出せずにいた。
もしや全てが隠世から消える間際に見た、泡沫の幻の出来事だったのかと。
都合の良い逃避は全身を苛む傷と、今尚軋む自身の心が許さない。
罪悪感に絡め取られ、それでもと正しき道で抗う青年。
彼が圧し潰されないよう支えると誓っておきながら、何の助けにもなれなかった無力感。
自身を最も苦しめる感情が、皮肉にも現実を直視させる役目を果たした。

「あなたはこの悪辣極まる殺し合いに――」
「ごちゃごちゃうるせえ!」

自分と共に逃げた『彼女』はどこへ行ったのか。
姿は見当たらず、玩具のような物体が近くで走り回っているだけ。
不安に駆られ捜索に出た所、目に飛び込んだのは平和とは言い難い光景。
仲間を庇いながら槍を振るう少女と、失礼ながら悪意しか感じない真紅の騎士。
この状況でどちらに味方すれば良いかは言うまでもない。


268 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:56:15 M4AzajS.0
「っ、成程…では遠慮は無用ですね」

質問は切って捨てられ、十全の殺意を乗せた刃が迫り来る。
であれば最早、どう対処すれば良いかは決まったも同然。
写シの効果で体は既に霊体だ、引き上げた身体能力は仮面ライダー相手にも通用する。
IFの道を辿った可奈美の愛刀を手に、刀使が騎士と斬り結ぶ。

この地で戦った相手は誰も彼もが常人を超える膂力の持ち主。
故に此度も軽く見て良い威力では無いと考え、予め八幡力を行使。
判断は正しく、ぶつけた衝撃で細腕に無視できない衝撃を篝は感じた。

両手でしかと握らねば一瞬で剣を落とし兼ねない、なれどそのような初歩的ミスを犯す少女に非ず。
写シを使用中だからとて、受けるダメージは最小限に止めるに限る。
ドラグブレードを御刀が撫で力の行く先を誘導、望まぬ方へと剣が走れば篝が攻撃に移るチャンス。

だがサバイブ形態の龍騎は膂力のみならず、能力全般が大きく強化されている。
生まれた隙を即座に縫い付け、逆に敵へ一撃食らわせるのも容易い。
首を狙った刃に、焦りは微塵も浮かる事なく数歩後退。
再度自身へ振るわれるまで数秒もない、されど篝には十分過ぎる時間。
軽やかながら刺突剣の如き踏み込みで胸部を突き、龍騎を怯ませた。

「崩蹴月!」

篝だけに押し付けはしない。
マジアマゼンタが放つは回転蹴り、本来の彼女らしからぬ格闘術だ。
重装甲の龍騎であっても宙へ浮きそうな威力へ、更に後退を余儀なくされる。

「助けてくれてありがとう!あたしはマジアマゼンタ!もっと詳しい話は一旦後って事で!」
「私もそれで構いません。名乗るのが遅れましたが、柊篝と言います」

互いに短く名乗るだけで済ませるも、敵では無いと分かっている。
だったら最優先は龍騎を倒し、他の話は全てその後。
離れた位置のアイドル達もそこは理解したらしく、揃って支援に出た。
戦場へナーゴの演奏が響くと同時に、篝は自身の体が軽くなった感覚を覚える。
千佳がピオリムをもう一度唱え、敏捷性がマジアマゼンタ同様に強化された。


269 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:57:00 M4AzajS.0
「あァ……」

思考を掻き乱す雑音はこれが初めてでは無く、消し去るにはどうすれば良いか。
難しく考える必要は無い、その為の手段は持ってるのだから。

『STRANGE VENT』

召喚機が読み込むも目に見えて大きな変化は起きない。
しかしこれでいい、手元のカードの絵柄は龍騎のデッキには存在しない物へ変わった。
ストレンジベントは武装を召喚させる等のカードとは異なり、他のライダーの力を行使可能になるという効果。
視線を落とせば見覚えのある絵が描かれており、思わず仮面の下で呆れた笑いを零す。
レンと名乗ったガキといい、妙な所で因縁が続くものだ。

『TRICK VENT』

電子音声が告げるのは、篝達にとって悪い冗談のような光景。
サバイブ形態の龍騎が4人に増え、凍り付く少女達を一斉に睨む。
本来仮面ライダーナイトが持つカードは見ての通り、複数体の分身を作り出す効果がある。
耐久性以外は本体と同スペックで、単純ながら強力な数の暴力を実現させた。

「これって、先生と同じ……!」

アッシュフォード学園で戦ったライダーの能力と同様ならば、脅威の程は身に染みて理解している。
戦慄を籠めたナーゴの言葉を皮切りに、4人の龍騎がドラグブレードを振り回し突撃。
残る本体は軽く首を鳴らしながら、新たな得物を装備。
カード効果で召喚した武器ではない、支給された三つ目の道具だ。


270 : Brave Souls ─ガールズリミックス─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:57:39 M4AzajS.0
「祭りの始まりだ……!」

暴力的な喜びを声に出し、双剣を翳しいざ参戦。
狙われたのは隠世より引き摺り出された刀使、篝へと二振りの刃が振り下ろされる。
手数が増したからと言って今更動揺は抱かない。
慣れた己の御刀でなくとも、信頼の置ける少女の愛刀が手に有れば恐れる理由は無し。
八幡力で腕力を引き上げ、ドラグブレードを弾き返す。
片方が防がれ、次は己の番と言わんばかりにもう片方が牙を剥く。
ライダーの装備とは明らかに違う、刃こぼれの激しい長刀の一撃。
リーチはドラグブレード以上、少し退いた程度では避けられない。
だったらここは全身あるのみ、姿勢を下げて懐へ潜りこみ刃を走らせた。

「遅ぇ!」
「っ!」

自身の刀が切り裂くよりも、龍騎の双剣が速いと背筋を駆ける悪寒が伝えた。
迅移を一気に3段階まで引き上げ回避、両断はされずとも刃の到達は防ぎ切れない。
十字に刻まれる傷へ写シが大きく剥がされた。
後一撃受ければ解除は確実だろう威力に、唾を飲み込んだ音がいやに大きく聞こえる。

(動きは乱雑、ですがこれは……!)

構え一つ取っても剣を学んだ者の動きとは程遠い。
技術の面で見るならば、驕り抜きに事実として確実に自分が勝るだろう。
しかしその差を覆す程の、異様な身体能力が発揮されている。
仮面ライダーに変身中というだけではなく、理由は恐らく左手の得物。
ノコギリのように刀身が削られた長刀こそ、龍騎に力を齎した。

一体全体どれだけ乱暴に扱ったのだと、刀使として一言言いたくなるが。
それ以上に、御刀とは異なる神秘的な力が感じられる。
似たような感覚で言うなら、ギギストが使っていた刀身を桜吹雪の刃に変える刀が近い。

「などと考えている場合ではありませんね…!」

思考をあっちこっちへ割いてられる余裕は皆無。
龍騎の力は言わずもがな、苦戦中のマジアマゼンタ達の様子が篝を更に焦らせる。
ビデオ再生のように脳裏で繰り返されるは、手を届かせられなかった青年。
そして自我無き骸人形と成り果てた、輝かしい未来を生きる筈だった少女。
零れ落ちた彼と彼女は、集中せねばと分かっていても動揺を引き出す。

「っぁ……!」

速さと威力の両方を兼ね備えた斬撃が、二つ同時に叩き込まれる。
防御が間に合ったのは幸いと、素直には言えまい。
写シを使用中にも関わらず、篝の華奢な体が跳ね上がり宙を泳ぐ。
見えては消える加速の世界の光景は、叩き付けられた衝撃で消失。
一体どこまで吹き飛ばされたのか、視界の端に映り込むのは先程までの戦場ではない。
霊体から生身の肉体へ逆戻り、歪めた顔で立ち上がろうとし、

「え……」

見上げた直ぐ先で、鉄塊を振り被る悪魔がいた。


271 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 22:59:19 M4AzajS.0



「――――!?」

目を見開いて自分を見上げるのが、別室で寝ている筈の少女と気付くも手遅れ。
今更止められない、ドロドロとした衝動に突き動かされ殺意は振り下ろされた。
『彼』から託されたMSを纏っておらず、度々見せた傷を肩代わりする術も恐らく発動されていない。
優れた剣の腕があっても、決して不死の肉体を持つ異形に非ず。
ヘイローの無い彼女が自分の一撃を頭部に受けた時、どうなるかは馬鹿でも分かる。

「だ――」

ダメだと、口を突いて出る筈の言葉は消える。
代わりに自分の声が、殺せば良いと耳元で木霊した。
殺し合いにおける方針を忘れた訳ではない。
皆と手を取り合って主催者を倒す、その正反対を行う。
全員殺して優勝し、あの女(サオリ)に突き付けてやるのだ。
あなたのせいでこうなった、自分と違って仲間も居場所も失っていない女への復讐を果たす。
だからここで一人殺したって、何も問題は無い。
優勝を目指してるのであれば殺人に躊躇を抱く方が矛盾の極みだ。

その筈なのに、またしても自分の声が問い掛ける。
じゃあ『彼』は、何の為に自分達を生かしたというのだろう。
自分なんかよりずっと信頼出来る少女を、同じく『彼』に生かされた自分が殺すのは。
幼稚な考えに突き動かされてセイアを襲わせ、何もかも取り返しが付かなくさせた時と変わらない。
結局自分は、キヴォトスにいようといまいと――

(私は……)

全てが振り出しに戻る。
冥黒王とは違う、本当の意味で自分を理解しようとしてくれた、彼らとの間に生まれたモノを壊す。
後に残るのは何もかもを失った一人の魔女。
やること為すこと全部裏目に出るというのに、学習できない自分がただただ惨めだった。


272 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:00:01 M4AzajS.0
「…………?」

と、ぶち撒けた墨のように諦観が広まる中で違和感があった。
床に赤い花が咲くまでほんの数秒にも関わらず、未だその気配がない。
そもそも何故こうも長々と自嘲に耽っていられるのか。
コミックの中のモノローグじゃあるまいし、何かがおかしい。
まるで世界が、スローモーションに閉じ込められてしまったかの不自然さ。

「……!?」

否、本当に自分の動きが異様に遅くなっている。
得物を叩き付けるのに数秒どころか、下手をすれば数十分は掛かるかもしれない鈍重さだ。
奇怪な世界で唯一速く、とういうよりは元の速さで動けるのはこの状況を作った張本人のみ。

「わっ……と!?」

困惑から覚めぬまま動きが正常に戻り、動きに従い得物は床を粉砕。
いるべき筈の標的は忽然と消え、被害を受けたのは運動部の聖域の一部だけ。
訳が分からず周囲へ視線をやれば、少し離れた位置に彼らはいた。

「無事か?」
「は、はい。ありがとう、ございます……?」

いつの間にやら抱えられ、危険から遠ざかり命は助かった。
感謝を伝えたは良いが、状況をハッキリと飲み込めてはいない。
重加速、そう呼ばれる現象だとはミカにも篝にも分かる筈が無く。
現実として存在するのは、キラ・ヤマトが残る自我を振り絞り逃がした少女達の間で、大きな悲劇には発展しなかったこと。

徐々に頭も冷え、篝はミカの真正面へ移動。
パワードスーツを着ている少女と視線を合わせると、向こうは微かに震えた。
自分を助けてくれた、名も知らぬ男と戦っていたのを問い詰める。
それも一つの正しさだろうし、破天荒な先輩と会う前の自分ならそうしたと思う。


273 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:01:15 M4AzajS.0
「ミカさん……良かった、あなたが無事でいてくれて……!」

でも今は刀使としての正解よりも、純粋に無事を喜びたかった。
涙ぐみながら、鋼鉄で覆われたミカの顔へ手を当てる。

「か、篝ちゃん……?」
「キラくんがあんなことになって、その上あなたにまで何かあったら……!」
「……っ」

ミカが篝をただの殺害対象と見れないように、篝もまたミカを単なる危険人物だとは思えなかった。
自らを魔女と嘯き、おどけた態度の裏でずっと傷口を抉り。
間違った道を進んで尚も善性を捨て切れず、己の不甲斐なさを恨み続ける。
殺す機会なら幾らでもあっただろうに、眠りに落ちた自分を守ってくれた。

「だから、ありがとうございます。無事でいてくれて、私を守ってくれて……」
「……本当に、キラくんも篝ちゃんも見る目無さ過ぎで心配になるよ。よりにもよって……」

自分に向けて良い言葉ではない、自分が受け取るべき言葉じゃない。
MSを纏ったままで良かったと心から思った。
きっと今浮かべているのは、到底誰かに見せられる顔じゃないから。

「…あなたとミカさんの間に起きた事情を、私は把握していません。ですがどうか、今だけは矛を収めては頂けないでしょうか」
「あ、ちょ、篝ちゃん!?」

視線をミカから外し、自分を助けた機械の戦士へと向き合う。
両者の間で戦闘が起きた理由を知らない、相手からすれば憤りを覚えるだけの出来事があったのか。
或いはミカの逆鱗に触れてしまったのか。
どちらにしても、助けられた事からも話が全く通じない相手では無い筈。
深々と頭を下げると、ややあって低い声が頭上から聞こえた。


274 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:01:46 M4AzajS.0
「謝る必要はない。原因が誰かというならそれは――」

一度言葉を区切り、変身を解除。
コピーした人間の姿でミカに目をやれば、昏い瞳で睨まれた。
『先生』に関する内容で偽りを語った覚えはなく、この目で見た事実を口にしたに過ぎない。
だとしても、彼女にとってはきっと違う。

「すまなかった。お前と、お前が信じる先生を傷付けたことを謝罪する」

人間に関する事を多く学んだつもりだったが、まだまだ自分は無知な部分も多いと思い知らされる。
自分と果穂を襲った『先生』への警戒は変わらずとも、真実はそう単純ではないのかもしれなかった。
篝と同じように深く頭を下げられ、ミカは何か言いた気に口を動かすも肝心の言葉が出ない。
解けないパズルを目の当たりにしたような、苦い表情で視線を彷徨わせる。

「…お互い話すべきことは多いでしょうけど、今は戻らなければいけません」

ここまで自分を吹き飛ばした元凶は、おそらくまだ健在。
三人の少女達に相手を押し付ける形となったが、急ぎ自分も加勢に行かねば。
ミカを見ると頷いてくれた。
キラの件を経て彼女がどう動くか不明瞭な点はあれど、共闘関係は継続中。
不謹慎ながら心強さと、見えぬ所で罪悪感を溜める危うさへの心配を抱く。

尤も現状の最優先は赤い龍の騎士を倒すこと。
先程よりも力強い足取りで駆け出した。


275 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:02:34 M4AzajS.0
◆◆◆


『SHOOT VENT』

分身体の龍騎を見てナーゴがディケイドと同じと考えたのは、強ち間違いでもない。
耐久性と支給品の長刀を持たない以外は、本体と何も変わらない。
カードを使った戦法も例外ではなく、3体の分身が同じ効果を発動。
契約モンスターを呼び出さない代わりに、龍騎単体で火炎弾を連射する技。
飛竜爆連弾を生きた的へ放つ。

『ROCK FIRE』

『TACTICAL FIRE』

炎には炎で対抗するべく、音にエレメントを付与。
弦を掻き鳴らすナーゴの下半身を覆うのは赤い装甲、ブーストフォームに変身した証だ。
火力を大幅に引き上げ、殺到する灼熱の弾を切り裂く。

「嵐月・燕!」

黒槍を振り回してマジアマゼンタも火炎弾を近寄らせまいとする。
刃は即座に旋風へと変化、徐々に巨大化して悪しき炎を消し飛ばす。
火炎弾の掃射が止まり、煙が晴れた時には五体満足で立つ少女達の姿。
余裕があるとは言い難いが、揃って火炙りにされる末路は退けた。

ナーゴとマジアマゼンタの技に加え、千佳が唱えたマジックバリアがダメージを最小限に抑え込んだのだ。
敵の放った呪文の威力を半減する効果は、ミラーモンスターとの契約で得た力にも作用するらしい。
無事に凌いだと安堵するには早過ぎる、防がれたと分かるや否や直接斬り掛かった。
仲間には近付けさせまいとマジアマゼンタが立ち向かうも、襲うのは一体だけではない。

「うぁ…!」
「果穂ちゃん!この…!どいて!」

ビートアックスの防御も空しく、双剣を用いた斬撃が全身を痛め付ける。
顔色を変えたマジアマゼンタ目掛けドラグブレードが突き出され、剥き出しの肌に赤い線が複数刻まれた。
この程度大した傷では無い、かといって対処に動かねば串刺しは免れない。
助けに行きたくても二体の龍騎に阻まれ、自身への猛攻を防ぐだけでも手一杯。


276 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:03:11 M4AzajS.0
「か、果穂ちゃんから離れて…!」

恐怖を押し殺して千佳が杖を振り被るが、目障りとばかりに接近。
トレーラー砲が絶えず放つレーザーを長刀が切り払い、反対の剣を振り下ろす。
ツインテールの髪が赤く汚されるまで一刻の猶予も無い。

「うああああああああっ!!」

己を苛む痛み以上に、目の前で新しく出来た大事な友達が死ぬ方がもっと恐い。
脚部のマフラーが火を吹き急加速、銃剣の前に自らナーゴが割って入った。
ビートアックスを翳すも全てを防ぐのは叶わない。
胸から腹部を刃が駆け、盛大に散る火花は血飛沫の代わり。
装甲の恩恵で即死は免れてもダメージは大きい、地面を転がった先で変身が解除される。

「果穂ちゃん…!?」
「まだまだ…大丈夫です…!誰かを守る時…ヒーローはとっても……強くなれるんです……!」

殺し合いに巻き込まれなければ、生涯感じる機会は無かっただろう激痛。
零れそうになる涙を堪え、背中に庇った千佳へ少しでも安心させられる言葉を紡ぐ。
手が白ばむ程にドライバーを握り、立ち上がろうと足に力を籠める。

「お前、城戸の馬鹿と似たような奴か」
「え……?」

頭上から掛かった声に思わず聞き返す。
見下ろす顔は自分と同じく、仮面に隠れて表情は確認出来ない。
けど何故だろうか。
不思議な事に今の言葉にだけは、これまでのような苛立ちは宿っておらず。
純粋な呆れが感じられた。

龍騎の雰囲気が変わったのは僅か一瞬だけ。
まるで今のちっぽけなやり取りは最初から無かったように、命を刈り取る刃を振るう。


277 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:03:48 M4AzajS.0
寸前、響き渡る銃声が凶刃を阻む。

「チッ…!」

飛来したエネルギー弾が次から次へと命中。
装甲のみならず四肢にも火花が咲き乱れ、龍騎の全身へ痛みが襲う。
ナーゴの首を落とすのは急遽中止で後退し、更には好機と見たトレーラー砲がここぞとばかりに連射。
鬱陶しい銃撃の嵐にあっという間にナーゴの死が遠ざかった。

「はああああああっ!」

龍騎が齎す終焉を望まないのは一人だけではない。
悪しき騎士の剣を弾き返すは、隠世で命を終える筈だった刀使の刃。
御刀同様、珠鋼の効力を宿した装飾を纏い戦乙女(ヴァルキュリア)の如き煌めきを発す。
剣筋の鋭さたるや、少し前に斬り合った時とは別物。
撫でる刀に脇腹を切り裂かれ、臓物は零れずとも痛みは殺せない。
魔法少女を追い詰める手が止まり、すかさずもう一人が畳みかけた。

「そーれっ☆」

気の抜ける声とは裏腹に、金色の物体が砲丸もかくやの勢いで投擲。
メジャーリーガーですら及ばない剛力で投げたソレは、分身の龍騎へ見事にヒット。
短く呻き怯んだ隙に、マジアマゼンタは仲間の元へ駆け寄る。

「ミカさん?今投げたのはいったい……」
「あーあれねー。一応拾ったけど正直いらないから、こういう使い方もアリかなって。ミナトとか何とか言う人らしいけど」
「美奈…っ!?い、いえ、偶然同じなだけですね」

剣を構えたポーズの黄金像を指差しながらの会話が聞こえるが、果穂の意識は違う方へ向かう。
自分を助け、腕の中に抱き止めた男へと。


278 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:04:17 M4AzajS.0
「チェイスさん……」
「すまない、遅くなった」

真顔で謝罪の言葉を口にするも、チェイスの内心に湧き上がるのは龍騎と自分自身への怒りだ。
ミカへの対応を間違え不要な戦闘を発生させてしまったせいで、肝心な時に果穂達の元へいてやれなかった。
自らの不甲斐なさに憤りを覚えるが、ここですべきは延々と己を責めるのに非ず。
果穂を抱き上げ仲間達の所へ向かい、傷の回復をマジアマゼンタに頼む。
任せてと力強く頷かれ、果穂だけでなく全員の負傷を癒すべく力を行使した。

手を離す直前、傷を負いながらも戦った少女を見つめ、

「良く、頑張ったな」
「……っ」
「後は任せろ」

自分を支えると宣言し、共に悪へ立ち向かった小さなヒーロー。
決して守ることを諦めなかった彼女へ恥じぬよう、ここからは己も戦う。
人を守る戦士の名を、暴虐の所業で踏み躙る龍と対峙。
チェイスの戦意に呼応するかのように、掌でエンジン音が響く。

ミカがドロップ品として手に入れ、篝経由で己の元に渡ったアイテム。
まるで愛車をそのまま小型化した機械を、再び手にするとは思わなかった。
偶然にしては余りに出来過ぎている、しかし胸の中で高出力エンジンとは別のナニカが熱を帯びるのも事実。
導かれるように取り出すのは、ロロ・ヴィ・ブリタニアの最後の支給品。
嘗て、自分を信じ続けた人間の女に託され、黄金の悪魔との決戦で失い、今また戻って来た機械。
もう一度、『あの姿』になるのに必要な二つが揃っている。

もしかすると、これすら主催者達の差し金なのかもしれない。
本来の力を使って殺し合いを加速させろと、そういう魂胆だとも言い切れない。
だけど、仮にそうだとしても。
自分がこの力でやる事は今も昔も、否、グローバルフリーズの夜からずっと同じ。

腹部に当てた機械、『マッハドライバー炎』からベルトが巻き付く。
パネルを開き軽快な音楽が鳴り、右手を顔の横へと構える。
手にするもう一つのキーアイテム、『シグナルチェイサー』を装填。
魔進チェイサーではない、再起を図ったもう一つの姿へと変わる時だ。


279 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:05:10 M4AzajS.0
『SIGNAL BIKE!』

「変身!」

『RIDER CHASER!』

タイヤ状のエネルギーが重なり、現れるはロイミュードの番人ではない。
太陽を浴び一層輝く、シルバーメタリックのボディースーツ。
パープルのラインを走らせた装甲は、魔進チェイサーに比べスマートだが性能は倍。
左右非対称の仮面を被り真紅の瞳が輝きを発す。

仮面ライダーチェイサー。
記憶を失い、人間の敵となり、そして迷走の果てに本来の使命を取り戻した姿。

眩い銀の戦士を目に焼き付けながら、果穂は静かに意識を落とす。
傷が癒える心地よさ、蓄積された疲労による体力の限界、出会ってからずっと信頼を向けるヒーローが来てくれた安堵。
それらが重なり暫しの眠りへと誘われる寸前、

「かっこいいです……」

憧れのヒーローを目の当たりにし、年相応の無邪気な笑みを浮かべた。

「はっ、何だ。そっちのがライダーらしいなお前」

機械仕掛けの装甲姿より、今の見た目の方が自分の知るライダーにまだ近い。
低く笑う龍騎とチェイサーの視線が交差、両者の間で対立の火花が弾ける。

「お前が遅れて来やがった分、余計にイライラしたぜ。これでようやく、ライダーの戦いが楽しめる」
「俺は戦うのは守る為だ。お前のように、欲望のまま他者を殺す為ではない」
「だったら守ってみせろ!御託はどうだっていい!」

龍騎が求めているのは対話でなく戦い。
故に最早これ以上の問答に意味は無く、言葉で止まる男でないのは誰の目にも明らか。
双剣を打ち鳴らして突進する赤い騎士に、遅れは取らぬと分身達も続く。
異世界の戦士達が入り交じる闘争が幕を開けた。


280 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:06:03 M4AzajS.0
ピオリム、千佳の唱える四文字が全員の耳に届く。
魔法少女や仮面ライダーのように、正面切って戦う力が無くても出来ることはある。
傍らで目を閉じた果穂があれだけ頑張ったのだから、自分も守られるだけではいられない。
来てくれた皆を笑顔にした、サマーライブの時とは違うけれど。
誰かを助ける為の魔法というなら、どんな場だろうとラブリーチカは唱えてみせる。

敏捷性の強化を実感し、内心で感謝を伝えながらもチェイサーは疾走。
見据えるは前方より迫りくる双剣の騎士、仮面ライダー龍騎。
二振りの刃を血で染め、人々の屍を積み上げる真似は断じて許さない。
長刀と銃剣、リーチの差を活かして先制を打たれるも怯まず前進あるのみ。

「がぁっ!?」

くぐもった悲鳴は龍騎から。
血を求める刃が銀の装甲を食い千切る、疑いも無く描いた予想図は呆気なく崩れた。
剣の到達を抜き去る速さで懐へ潜りこみ、腹部へ拳を叩き込む。
高圧縮エネルギーの解放を受け、衝撃波を伴った打撃に骨まで悲鳴を上げる。

たたらを踏んだ標的を逃がしはしない。
頬を狙った鉄拳が命中、脳を揺さぶられ龍騎の視界が不安定に。
なれど一方的なサンドバッグになるのはお断り、ドラグブレードを狙いも付けずに振り回す。
牽制のつもりだろうがチェイサーは冷静に見極め、強化グローブの裏拳であらぬ方へと弾いた。

もう片方の長刀が振るわれるのを許した覚えはない。
制御機関が備わる腕部へ手刀を振り落とし、斬り付ける前に対処。
敵が攻撃へ移る前に二発、三発と拳が胴体を叩く。
仮面の下で漏れる呻き声には構わず、腰の捻りを加えた一撃を放った。
命中箇所は分厚い胸部装甲。
最も高い耐久性があるというのに、痺れる痛みに襲われ大きくよろける。

一撃一撃が重い、変身者は同じでも魔進チェイサー以上の力が引き出されている。
変わったのは外見だけではない、最初の時と同じだとは侮れない。
身を以て知った龍騎だが、戦意喪失は有り得ない。


281 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:06:52 M4AzajS.0
「があああっ!」

餓えた野獣の雄叫びを思わせる声は、聞く者によっては恐怖で身が竦むだろう。
生憎チェイサーが抱くのは恐怖どころか、必ずや龍騎を倒さねばという折れぬ決意。
ドラグブレードの一閃を強化グローブで防御、間髪入れずに頭上から長刀が襲い来る。
脳天へ食い込み真っ二つにする狂人の刃へ、高性能複合モジュールが最適の対処法を伝達。
得られたデータは実行可能か否か、無論言うまでもない。

「ふっ!」

パシリと音を立て、両掌に刀身が挟み込まれる。
真剣白刃取り、得物を用いず無手で刀を封じ込める技。
このまま両手が使えない体勢の維持は不利になるだけ、おまけに龍騎が長刀へ籠めた力も非常に危険。
自由に動かせる右脚を突き出し蹴り飛ばす。
強化グローブ同様、靴底の圧縮エネルギー解放により通常よりも威力が数段上だ。

仮面ライダーチェイサーは魔進チェイサーに比べ、全体的なスペックが上昇している。
特にパワー面は劇的な強化を受けており、スマートな外見と裏腹に重々しくも力強い格闘戦が可能。
そこへピオリムの効果で走力も引き上げられ隙の無さを我が物とした。

『GUN』

距離を取らされた龍騎の接近をむざむざ許しはしない。
魔進チェイサーの時から変わらぬ愛用武器、ブレイクガンナーを遠距離形態へチェンジ。
持ち前の射撃能力は当然、補佐する各種機能も劣化はしておらずむしろ向上。
何処を撃てば着実に体力を減らせるかを瞬時に弾き出し、迷わずトリガーを引く。
エネルギー弾が的確に急所を狙い、アスファルトへ火花の雨を降らせる。

猛吹雪の如き光弾が叩き付けるも、龍騎はこれを真正面から力任せに突破。
通常形態以上の耐久性と、長刀の影響でよりキレを増した身体能力。
何よりライダーバトルで磨きを掛けた戦闘スキルが、無茶を可能にする。

荒々しくも速い双剣の乱舞がエネルギー弾を斬り落とす。
連射速度を一段階上げるが、尚も龍騎は平然と食らい付き距離を詰める。
獲物を噛み千切る牙を突き立てるように、チェイサーへと迫る剣。
防御性能も強化済みだとて、必ずしも無傷で耐えられるとは限らない。
ならば、最も強靭な部分で受け止めるのみ。

「あ゛!?」

突如背を向けたチェイサーへ、疑問を超えに出しながらも攻撃は続行。
二本の牙は背中に惨たらしい傷跡を、付けられない。
高速回転するタイヤ型のコネクターは、頑強さを利用し盾にもなる。
生前、チェイサーに初変身した際も同じ方法でロイミュードの攻撃を防いだ。
回転に巻き込まれギャリギャリと耳障りな音が鳴るばかりで、一向に切り裂けない。

『TUNE CHASER SPIDER』

その隙にチェイサーは次の手を終えた。
背部コネクターは仮面ライダーとなっても、魔王進チェイサーの武装展開を可能にする。
銀色の蜘蛛を思わせるクロー、ファングスパイディーを装備。
振り返り様に横薙ぎの斬撃を放つも、今度ばかりは龍騎もやられてばかりじゃあない。
ドラグブレードを咄嗟の盾にし防御、弾かれ合い間髪入れずに長刀で攻め込んだ。


282 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:07:39 M4AzajS.0



苛烈に攻め立てるのは本体だけじゃあない。
長刀が無くともドラグブレードがあれば十分だと、分身の龍騎は篝と斬り合う。
強度と切れ味はドラグセイバーを超え、龍騎自身もサバイブ形態になり膂力は上昇。
少女の細腕が振るう日本刀で打ち合える相手では無い。
呆気なく砕かれた挙句、白い素肌を己が血で染め上げるのが当然の末路。

であれば繰り広げられる光景は、俄かには信じ難いだろう。
打ち合う刀は折れず曲がらず欠けず、神秘の宿ったかの輝きを未だに保ち。
使い手たる麗しき少女もまた、刀を自分の手足同然に振るい応戦。
赤龍の牙を我が身へ掠らせまいと、水流の如き軽やかさで捌く。

(やはり、力という面では私が不利ですね)

左胸目掛け突き進む切っ先を弾き、反対にこちらが袈裟斬りを仕掛ける。
蚊を叩き落とす様な動きで払われ蹴りが飛ぶ。
受け止めたとて御刀は破壊されない、とはいえ防御は最適な選択とは言えまい。
跳躍し頭上からの振り下ろすも、薙ぎ払う動作で腕を振るい防御。
刀身へ受けた衝撃にあえて逆らわず、距離を取って一旦仕切り直し。
向こうから近付くのを待つ義理は無い、迅移を用いての突きを放つ。

闘争に集中しつつ、龍騎との力の差を極めて冷静に受け入れる。
まず乱入した時から分かり切っているが、単純なパワーは写シと八幡力込みでも龍騎が上。
時間制限の解除された祭祀礼装を纏って尚、打ち合う毎に腕へ低く見れない衝撃が走る。
分かり切った事だが刀を主武装にする以上、腕のダメージは何よりも深刻だ。
写シを剥がされても再使用可能とはいえ、回数が重なれば重なった分体力も消費。
後先考えずに戦えばガス欠を起こし、逃れられない死を受け入れる未来が待つのみ。

なので直接の得物の打ち合いは避け、最初と同じく回避へ重点を置く。
首元へドラグブレードが走れば頭を下げ、姿勢を低くしたまま疾走。
回転斬りを繰り出すも刃が当たったのは敵の武器、防御を維持し龍騎が大きく後退。


283 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:08:14 M4AzajS.0
『STRANGE VENT』

埒が明かないのを向こうも理解したのだろう。
篝は未だ己の剣を届かせられないが、龍騎も同様に命を喰らえていない。
このまま変わらぬ剣戟を展開し続けるより、もっと別の手を考えた方が得策。
取れる手段は剣一本だけじゃない、もっと強力なカードが己にはある。

『SHOOT VENT』

読み込ませたのはトリックベント同様、龍騎ではないライダーの所持カード。
両肩に装着されるのは緑色の大砲、ギガキャノン。
遠距離攻撃を主体にする、仮面ライダーゾルダが召喚可能な装備の一つ。
両腕を自由にしたまま、高火力の二門の大砲で照準を合わせる。
ミラーモンスターを消し飛ばす威力が直撃すれば、写シは一撃で剥がされるだろう。
再度使用するのを待たず、肉片へ変えられても不思議はない。

それなりの連射も効く大砲が放たれ、篝は迷わず迅移を発動。
真横へ跳び退き、数秒前まで立っていた場所がアスファルトごと吹き飛ぶ。
これを見て命中しても大丈夫など、楽観的には考えられまい。

続けて放たれる砲撃を躱し、またその次も地を蹴り回避。
逃げ惑う獲物を甚振るように、徐々に追い詰める。
そう捉える事も出来る光景なれど、篝は一切の焦りを面に浮かべずジグザグに駆ける。
厄介かそうでないかと言えば前者、脅威に感じていないつもりはない。

(だからといって、今更怯んでもいられません……!)

やらねばならないことがある、止めねばならない人達がいる。
刻まれた傷は自分が思う以上に深く、気を抜いた瞬間に血を垂れ流すだろう。
きっとこの先も、本来辿る筈だった終わりを迎えて尚慣れはしない。
しかし痛みを抱えたままでも駆け抜け、剣を振るわねば本当に何もかもを取り零してしまう。
それに罪悪感と無力感へ苛まれている間にも、自分よりずっと幼い少女達までもが歯を食い縛って戦っている。
守りたい者を守る為、喪失と死の恐怖へ立ち向かっているのだ。

「すみませんが、押し通らせてもらいます!」

大火力の砲撃が目前に迫った時、両の瞳から光が消失。
抗えぬ末路へ希望を失ったのではない、自らの剣で絶望を斬り伏せる合図に他ならない。

いつの間にやら自身の背後へ移動した篝を、龍騎は終ぞ視界に収められなかった。
急上昇した思考速度が動くべき位置を弾き出し、秒と掛けずに実行。
接近を許したと気付かぬ内に、荒ぶる魂を鎮める刀が全てを終えた。
腹部へ刻まれた傷に何一つ感じ入る事なく、鏡が砕け散るように無へ還る。


284 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:08:54 M4AzajS.0



「何ていうかさぁ」

銃剣と渡り合うのは、笛ともブーメランとも付かない可変型の武器。
ドラグブレードがミラーモンスター、ライダー両方に有効なダメージを与えるのは言うまでもない。
だがミカが持つフルートバスターもまた、獰猛の戦騎Dが愛用する得物。
悪のメロディを奏で獣電竜を支配下に置いた力は、使い手がデスリュウジャーでなくとも健在。
NPC達を操り同士討ちを強要、屍で舗装された道を作り出したのはミカ自身記憶に新しい。
笛としての力のみならず、直接敵を地獄に叩き落とす剣としての性能も優秀。
キョウリュウジャー達を刃の餌食にし、悲鳴を上げさせた切れ味を仮面ライダー相手に発揮。
生え揃った牙を思わせる装飾は、肉を求める唸り声が今にも聞こえて来そうだった。

「ほんの数時間でやらなきゃいけないことが、どーんと増えちゃってねー」

急所目掛け次々に襲い来る剣を、打ち漏らさずに全て防ぐ。
龍騎サバイブと真っ向に得物をぶつけ合えば、却って自身の腕に負担を強いる。
しかしそれに当て嵌まらない者もゼロではない。
痛みは勿論、僅かな震えすら感じずに顔面を襲う刃を弾き返す。
次の剣が来るのを待たずに、反対の手を叩き付けた。

『STRANGE VENT』

『STRIKE VENT』

引っ掻くと言うには凶悪極まりない爪が傷を生み、声は無くとも龍騎はダメージに後退る。
戦い方を変えるべきだと判断を下し、変化したカードを装填。
サイの頭部に似た籠手、メタルホーンは仮面ライダーガイの武装だ。
パワー重視の武器に持ち替え、突進の勢いを乗せて突き出す。
ドリル状の一本角はライダー複数人を纏めて吹き飛ばす威力を誇り、MSのパワードスーツでも危険である。


285 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:09:25 M4AzajS.0
「向こうのチビっ子ちゃん達と、あのエッチな恰好の女の子はキラくんを止めるのに協力してくれそうだし」

ではこれは、一体何が起きているのだろうか。
一本角を片手で掴み、突進を力技で阻止。
分身とはいえ龍騎サバイブの走力は劣化していない、なのにこれ以上進めない。
握り締めた角が軋みを上げ、徐々に亀裂が生まれる。
ガンダム・バルバトスルプスレクスのパワーだけが理由じゃあない、纏う本人の尋常ならざる力が加わっているからだ。

「それから、チェイスおにいさんに先生のことをく・わ・し・く聞いておきたいし」

砂糖細工のように掌の中で砕け散り、パラパラと零れ落ちる。
軽く手を振って破片を落とすのを最後まで見届けず、龍騎が新たにカードを引き抜く。
が、召喚機へ読み込ませるのは叶わない。
メタルホーンを破壊したばかりの手で顔面を鷲掴みにされ、頭部を締め上げられた。
ついでにフルートバスターでカードを叩き落とし、抵抗を封じてやる。

「だから、ね?」

パワードスーツの舌でどんな表情を作り覗き込んだのか、分身体の龍騎は知る由もない。
仮に知った所で辿った末路に変化が起きはしない。

「あなたは今一番邪魔なの☆」

バリンと、砕け散る音と共に分身体は消滅。
血の一滴も落ちずに消え去った騎士へ、ミカが抱いた者は何もない。
所詮は魂なき鏡像、自我があるのかも怪しいNPCを蹴散らしたのと何が違う。

救われぬ道だろうと止まる気は無い。
漆黒の騎士のように復讐を望むでもなく、まして譲れない願いを叶える為でもない、
殺したいから殺す、そんな理由で“乗った”獣に足を取られてなるものか。


286 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:10:16 M4AzajS.0



「弧月閃!」

斬撃の軌道が満月を描き、赤龍の牙を打ち鳴らす。
背後へ黒槍を振り回し、自らが生んだ月を真っ二つに。
二連撃を防ぎつつ後方へ跳ぶ、撤退の意思が宿ったのではない。
カードを引き抜き装填の流れを無駄なく実行、元々の召喚機でなくともすっかり慣れた。

『STRANGE VENT』

『FREEZ VENT』

読み込み完了と共に、マジアマゼンタの全身が凍り付く。
殺し合いでは松阪さとうも変身した仮面ライダー、タイガが持つカードだ。
少女の柔肌が冷たく硬い氷に変わり、生きた氷像と化す。

「っ!待ってて、今助けるから!」

獰猛なミラーモンスターすら凍結させる効果も、今この場においては間違いなく悪手。
マジアベーゼから託された固有魔法、イノセンスはあらゆる束縛を認めない。
拘束魔法の完成形とも言える闇檻ですら無効化した力には、タイガのカードも紙切れ同然。

「ありがとうラブリーチカ!」

凍結が一瞬で解除され、またもや助けてくれた魔女っ娘へと感謝を告げる。
ほのぼのとした空気は長続きしない、フリーズベントが効かないと分かるや龍騎は宙に十字を描く。
ドラグブレードで生成した炎刃が、近付く事すら憚れる熱量を帯び飛来。
バーニングセイバーとも呼ばれるこの技は、下手なファイナルベントをも超える威力を持つ。

「落月爪!」

となればマジアマゼンタもより高威力の技を選択。
柄を掴む力を強め、穂先へ黒槍に籠められたエネルギーとマジアマゼンタ自身の魔力が宿る。
渾身の一撃を叩き込む、シンプルながら月をも砕けんばかりの奥義。
怯まず退かず、炎刃目掛け黒槍が激突。
火炎と魔力が衝撃で飛び散り、光となって龍騎の視界を覆う。
片手で振り払う中捉えたのは、使い手を失い宙へクルクルと円を描く黒槍。
立ち向かったは良いが返り討ちに遭った。
分身故に敵の呆気ない末路へ特別何かを思うでもなく、焼け焦げた死体を確認しようとし、

「せりゃあああああああっ!!」

有り得ぬ声を聞いた時には既に手遅れ。
炎刃を迎え撃った奥義はこの瞬間の為の一手に過ぎない。
視界が封じ、手元から離れた黒槍へ龍騎の意識が逸れたタイミングで死角へ移動。
命の危機より羞恥的な危機が常に付き纏うエノルミータとの戦いだが、こうした戦法を取れるくらいには踏んだ場数が糧となっている。

ピンクの魔法少女衣装を再び纏い、両手に構えるはマジアマゼンタ本来の武器。
ハートをモチーフにした槍が腹部を貫き、力の核であるデッキを破壊。
分身であっても弱点は本体と同じ、全身に亀裂が走り砕け散る。
最初から存在しなかったように消滅、残ったのは勝利を収めた魔法少女だけだった。


287 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:11:10 M4AzajS.0



刃と刃、守護者の爪と獣の牙が互いを引き裂かんと攻め立てる。
剣の道に生きた者による、一つの完成された舞のような美しさは無い。
仮面ライダー、ミラーモンスター、ロイミュード。
異なる世界での戦いに身を投じ、今日に至るまでに培われた戦闘技能で以て食らい付く。

得物の数の差をここぞとばかりに活かし、手数で勝る龍騎が四方八方より斬り込む。
一つ防いでも休む間もなく襲い来る刃へ、ファングスパイディーを時には盾として使い対抗。
二方向より同時に来た剣をパワーに物を言わせて薙ぎ払い、素早く技の発動準備へ掛かる。

『EXECUTION SPIDER』

ブレイクガンナーの銃口を押し込みエネルギーを充填。
爪の先端部分へ光弾を生成、必殺の威力にまで高める。
仮面ライダードライブを幾度も苦しめた力を、此度は悪を倒す為に放つ。
だが善側の勝利を歓迎する気は皆無、ドラグブレードによる十字状の炎刃で相殺。
霧散した炎が装甲表面に当たるも両者共にダメージはゼロ、直接当てるまでは倒れない。

「ああいいぜ、やっぱり戦いってのはこうでなくちゃな……!」

燻っていたイライラが薄れるのを実感し、上機嫌でカードを引き抜く。
デッキを使って変身する相手とは違うも、ライダー同士の戦いは飢えと渇きを満たす最高の娯楽だ。
このまま斬り合うのも選択肢の一つ、しかしチマチマ小競り合いを続けるよりは派手な技で勝負を動かす方が良い。

『FINAL VENT』

サバイブの恩恵は契約モンスターにも及び、重装甲のドラグランザーがミラーワールドから出現。
反抗的な態度は変わらずであれど、カード効果には逆らえない。
巨体を震わせ光を放出し大型バイクへと変形、運転席と化した胴体へ飛び乗る。
敵対者の屍で舗装された道を往く、邪悪な騎乗者が疾走。

「やはりそれが来るか……」

一度見た攻撃方法だが決して油断は出来ない。
重加速は篝を助けるのに使い、制限もあっては未だ再使用は不可能。
最初の時と同じ方法が無理な以上、こちらも正面突破あるのみ。


288 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:11:41 M4AzajS.0
『ヒッサツ!』

『FULL THROTTLE!CHASER!』

ドライバーのパネルを操作、上部のスイッチを押し込む。
シグナルチェイサーの特殊エネルギーを最大まで増幅させ、コンディションを知らせるメーターが炎を吹く。
放出した力は全身から右足へ収集、地を蹴り高く跳び上がった。

フロントフェンダーが激しく首を揺らし、火炎弾を連続して発射。
灼熱の弾幕をチェイサーが蹴り砕きながら龍騎へと迫る。
仮面ライダーマッハとの一騎打ちや、No.099のロイミュードとの死闘を制した蹴り技だ。
望む所と龍騎もスピードを一気に引き上げ急加速。
真紅と白銀のが我が身を弾丸に変え激突、押し通らんと拮抗を見せ溢れるエネルギーが互いを痛め付ける。

「ぐっ…!」
「がぁ…っ!」

両者それ以上は前に進めず、破裂音と共に揃って後方へと吹き飛ぶ。
冷たく硬いアスファルトに衝撃緩和の役目は期待できない。
叩き付けられ地面を転がるチェイサーの反対で、龍騎もドラグランザーから離れ地に放り出された。
致命傷には至らずとも痛む体へ顔が歪み、だが生きているなら戦闘続行を選ぶ。
よろけながらも立ち上がるべく動きを見せる。

「いいえ、ここで終わりにします!」

これ以上暴れ回って被害を広めるのは、刀使としても許容出来ない。
分身を片付けた篝が迅移を使い、人の限界を凌駕する速度で接近。
御刀による流星の如き一撃を前に、反射的に龍騎の体は防御を取る。
長刀を翳すが籠めた力は篝に些か劣り、体勢が大きく崩れた。

「もう付き合ってられないから、いい加減大人しくしてよ!」

篝が作ったチャンスを捨てる気はなく、分身相手の戦闘を終えたミカが片手を振り被る。
持ち前の力にMSのパワーを加えたフルートバスターの斬撃は、幕を引くのに十分な力。
何やら殺し合いを楽しんでいるようだが、長々と付き合う義理はない。
餓えた赤龍はとうとう一人も食らえないまま、魔女の刃で沈黙。
誰もが確信を抱いた決着の未来を、現実にするべくミカの剣が軌道を描く。

ここまで来て狙いが外れた、などと肩透かしな展開は起こらない。
悪しき魂の宿る刃は深く傷を刻み付けた。


289 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:12:44 M4AzajS.0





ミカの眼前に現れた篝を標的にして。





「は……?」
「なっ……」

理解が及ばぬ声が二人分呟かれた。
斬った者も斬られた者も、自分達に起こった現象へ理解が追い付かない。
終わらせる気で振り下ろした刃だ、写シは一刀の元に解除。
痛みを感じる間もなく霊体から生身へ戻り、凍り付いた思考が再び熱を帯び、

「がふっ…!?」

激痛と熱さが襲った。
喉奥からせり上がるモノを堪らず吐き出し、赤いソレは自分を生かす為の血液だと理解。
見下ろせば刃こぼれの激しい刀身が、胸から違う生き物のように生えている。
刺されたとようやく分かった途端、痛みをより強烈に感じ出す。
次いで湧き上がるのは疑問、何故ミカの攻撃が自分に当たったのか。
何故の二文字が瞬く間に脳内を埋め尽くした。

「うそ……」

MSのカメラレンズへ飛び散った赤が、ミカに現実を叩き付ける。
彼女もまた全てを正しく把握出来ていない。
それでも分かるのは一つ、キラが左腕を失った時と同じ。
自分が原因でこの惨状は引き起こされた。


290 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:13:32 M4AzajS.0
「はっ、こりゃ面白ぇカードだな」

もう一人の原因は、篝を刺したのとは反対の手に持つアイテムへ笑みを浮かべる。
租界エリアで手に入れたドロップ品の名はシフトチェンジ。
デュエルモンスターズの罠カードであり、攻撃対象に選ばれた時別の相手と位置を変える事が可能。
殺し合い中は現実世界にも効果が及ぶよう細工が施され、篝を身代わりにし助かったのだ。

刺したままの長刀を真横へ動かし、バックリと腹部が裂かれる。
祭祀礼装を自らの体液で汚し、篝の意識も急激に薄れる。
歯を食い縛って耐えるも望まぬ眠気に襲われ、嫌でも終わりが間近に迫りつつあると分かった。

『BREAK』

力づくでも死から引き離すのは、生きた者達の役目だ。
打撃力を上げたスパイクで殴り掛かり、龍騎を篝には近付けさせない。
拳を放ちながら振り返り、同じく駆け付けた魔法少女へと叫ぶ。

「果穂達の所まで下がれ!この男は俺が……!」
「分かった!」

余裕ぶって会話してられる状況でないのは明白。
チェイサーに頷き返し、マジアマゼンタは篝を運び退避。
その際、茫然自失のミカにも「こっちに来て」と付いて来るよう促す。
言われた内容を理解したのか、或いは篝が離れて行くの見て体が勝手に動いたのか。
理由を察する暇は無い、運んだ先で急ぎ傷の回復を試みる。

「あ…ぐ……ミカさ……」
「今は喋らないで!」

ゴボゴボと泡のような血を零す篝へピシャリと言い放ち、回復魔法の発動に集中。
これまでの戦闘の影響もあり疲労が重く圧し掛かるが、知った事では無い。
額に汗を浮かべるマジアマゼンタへ、ほんの少しだけ力が加わった。

「ホイミ…!」

マジアマゼンタよりは低い効果だが、傷を癒す術は千佳にもある。
まともに話せていない人だけど、初対面の自分達を助けてくれたのは事実。
少しでも役に立てればと疲労を押し殺して呪文を唱える。

「……」

二人の魔法少女が刀使の命を必死に繋ぎ止める光景。
それをミカは色の抜け落ちた瞳で見ていた。


291 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:14:17 M4AzajS.0



「貴様は……!」
「近くにいたあいつが悪い」

憤怒を拳に乗せ殴打の嵐を放つも、鼻で笑いながら双剣で捌かれる。
罪悪感の欠片も無い態度へ怒りを覚えたチェイサーを、さらりと受け流して跳躍。
ファイナルベントを破られ、少なくないダメージを負った。
サバイブに変身中なのもあって、消費される体力もそろそろ無視出来ない。
それでも尚、龍騎が選ぶのは殺し合いの続行。
こんなにも楽しく、イライラが消える戦いを終わらせるなどそっちの方が馬鹿げている。
何よりもだ、自分にはまだとっておきの手札が残してあった。

「良いもの見せてやるよ…!」

長刀を両手で持ち構えを取る。
身体能力強化の恩恵を齎すこの得物は、それだけが持ち得る全てではない。
令呪一画という鍵を使い、封じ込められた力を解き放つ。
留まる所を知らない闘争心のままに、獣がソレを告げた。

「呑め――――『野晒』」

戦を求める本能へ、剣が応える。
満たされぬ飢えに同調し、食らわせろと顔を出す。
絡み付く鎖を砕き、待ちくたびれたと牙を覗かせる。
全てはただ、思うがままの斬り合いの為。

巨大で、
無骨で、
頑強で、
なれど疑いようもない、『力』の塊。
身の丈を遥かに超える、最早剣と呼べるかも不確かな鉄塊があった。

名/銘は野晒。
護廷十三隊、十一番隊現隊長の斬魄刀。
歴代最強の剣八と常に共にあったソレが、狂える赤龍の切り札。
魂魄を斬り魂を浄化する性質は、刀使と縁の深い珠鋼にも劣らぬ神秘。
篝の祭祀礼装をも貫いたとて何らおかしくはない。


292 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:15:09 M4AzajS.0
「――――ッ!!!」

大剣と、そう呼ぶべきかも分からない斬魄刀へチェイサーも最大限の警戒を抱かざるを得ない。
機械の体でありながらも感じる、人間で言う悪い予感。
勝機が一気に遠のいたのは、恐らく気のせいではない。
だからといって逃げる選択肢は最初から無し。
届かぬ高みへ位置する強敵だろうと、最後まで抗うのみだ。

『SIGNAL BIKE!SHIFT CAR!』

『RIDER!DEAD HEAT!』

変身するのは生前の戦いで実現しなかった形態。
上半身に纏う装甲は、ドライブと同じ燃え盛る赤。
左型には限界値を知らせるメーターを装着。
顎部分も同様に頑強なパーツで覆った、チェイサーの新たな姿。
デッドヒートチェイサー、その名を知る者はここにいない。

『BURST!』

『キュウニデッドヒート!』

ドライバー上部のスイッチを連続で押し、稼働状態を最大出力へと移行。
全身から稲妻の如きエネルギーを迸らせ急加速。
速度と威力の両方を通常のチェイサー以上に強化し、先手必勝で叩き込む。


293 : Brave Souls ─Spinning Wheel─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:15:39 M4AzajS.0
「オオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

気合の叫びはそのまま攻撃の勢いに変換、両の拳のスピードは銃弾を遥かに超える。
加えて一発一発が必殺級の破壊力、生身の人間ならば原型の留めぬ死体となっただろう。
ガトリングの掃射に等しい殴打の嵐へ、龍騎がやったのは野晒をただ振り回す。
特別な技術も何もない、単純な動作一つでデッドヒートの拳を打ち消す。

「っ!!」

迫り来る刃へ地面を転がって回避。
あのまま攻撃を続けていたら、一矢報いる機会すらなく破壊された。
戦士としての直感に逆らわず起き上がり、ブレイクガンナーの照準を合わせる。
デッドヒートとなりエネルギー弾の威力も強化済み、引き金を引き続けるが龍騎には豆鉄砲と変わらない。
薙ぎ払うように振るった剣にあえなく霧散、余波だけで体がぐらつくも隙は見せじと踏ん張る。

「ハハハハハ!良いぜぇ、こんなに面白ぇ力は初めてだ!」

狂気染みた笑いには聞く耳持たず、チェイサーバイラルコアを装填。
銀の翼を展開し飛行、両手には意志に応じて駆け付けたトレーラー砲があった。
レーザーを放ちながら龍騎を少しでも自身の方へと引き寄せ、マジアマゼンタ達から離す。
戦闘の巻き添えは万が一にもあってはならない。

(奴の刀は危険だが、逆に奴自身を追い詰める毒にもなっている)

脅威を正しく認識しながらも、危険な状態なのは敵も同じと分析。
視覚センサーが装甲の下の肉体構造を調べた結果、ある事実が判明。
自分の攻撃が当たっていないにも関わらず、龍騎は常にダメージを受け続けていた。
恐らくだが、大剣の持つ力の絶大な負荷が使い手自身をも苦しめている。

チェイサーの推測は間違っていない。
野晒は規格外の戦闘能力で特記戦力に名を連ねる、更木剣八だからこそ使える斬魄刀。
主催者の細工があるといえ、本来ならばただの人間には過ぎた力。
サバイブ形態の龍騎になっているから辛うじて耐えているのであって、それでも肉体に掛かる負荷は軽くない。
当然発揮出来る破壊力も、剣八が振るった時とは大幅な劣化を免れなかった。

だとしても、弱体化していようと危険なのには変わらない。
まして龍騎はサバイブ以上の力を手に入れた歓喜と、戦いへの尽きぬ欲求へ突き動かされている状態。
負傷を受け止め撤退を選ぶのは帰隊するだけ無駄。
警戒度は依然として揺るがぬままに野晒を紙一重で躱し、急降下の勢いを乗せた蹴りを放つ。
刀身に阻まれ、衝撃波を伴ったキックも罅一つ入らない。
サイズに見合った強度が備わっており、武器の破壊は現実的じゃあない。
押し返されれば枯れ葉のように吹き飛ばされる、故に自ら脚を引いて再上昇。
トレーラー砲にバイラルコアを装填、威力を高めた砲撃を放つべく指を掛け、

巨大な影が、二人を覆い隠した。


294 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:17:34 M4AzajS.0



どうしてこうなっちゃうんだろう。
青白い顔で虚ろな瞳を宙に向ける篝へ、言葉を掛けることもなく。
生者の世界から旅立とうとする命を引き留める魔法少女達へ、何も手を貸さず。
立ち尽くすミカは、ただ自問自答を繰り返すばかり。

キラは左腕を斬り落とされた、自分を庇ったせいで。
キラは自我を失い氷の竜へ堕ちてしまった、自分が手を掴めなかったせいで。
そして今度は篝まで、自分のせいで刺され重傷を負った。
何をやっても望んだ結果にはならず、ただただ被害が広まっていく。
魔女とトリニティの生徒に罵られたが、本当にその通りだ。
いるだけで周りに不幸を齎す、これが魔女でないなら何だと言う。

振り返り、篝を刺した男を見やる。
足を引っ張って原因を作ったのは自分だけど、直接手を下したのは龍の騎士。
そいつは耳を塞ぎたくなるような、不快な声で笑い暴れていた。
篝に瀕死の重傷を負わせた張本人は、そんなの知った事じゃ無いと言わんばかりの態度。

ギシリと、自分の中で何かが軋む男が聞こえた。

「おかしいよね、そんなの」

仮面ライダーエターナルも、グリオンも、赤い龍の男も。
キラと篝を苦しめた奴らが、何も失わないでのうのうと生きている。
それは余りにも不公平じゃあないか。

「そうだよね。私、魔女だもの」

だったら何をすればいいのかなんて、難しく考える必要もなかった。
魔女は魔女らしく、不幸を撒き散らす。
キラや篝を傷付けた連中を、不幸のどん底に突き落としたって良い筈だ。

パワードスーツを脱ぎ去り、桜色の長髪を靡かせる。
背後から聞こえて来る困惑と制止の声すら、心には届かない。
コールタールのようにドロドロと粘着く内面とは裏腹に、足取りは非常に軽い。
心の底から誰かを殺したいと思ったら、こんなにも力が漲るのか。
なんて改めて驚く必要もない。
ティーパーティーに和解の道が、自分にも救われる道があるという思い違いを砕かれた日。
錠前サオリへの復讐を決意させた時と同じなのだから。

魔女ならもっと魔女らしい姿で殺してやろう。
目障りなNPCを排除し手に入れた、最後のドロップアイテム。
円盤状の銃身をした武器をクルリと一回転、愛銃に比べれば随分と軽い。
尤もこれはただ単に撃つ以上の使い方があると、とっくに把握済みだ。
牛のようなクレストが描かれたカードを口元に近付けた後、フッと笑い装填。


295 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:18:08 M4AzajS.0
『BEROBA SET』

流れ出すのは明るい筈なのに、どこか不穏なものを宿らせるメロディ。
良く言えば天真爛漫、悪く言えば幼稚な色が宿った瞳はそこに無い。
昏い色に染まりおぞましく、なれど血涙を流しそうな悲痛さ。
笑い、嗤い、歌うようにその言葉を口にする。

「変身☆」

『LASER ON』

『BEROBA LOADING』

トリガーを引き、発射されたのは銃弾ではない。
キューブ状のエネルギーがあっという間に全身を覆い、キヴォトスの少女とは似ても似つかぬ姿へ変える。
黒を基調としたボディースーツの上から、二色の装甲を展開。
白とピンク、偶然にも普段のミカを象徴するカラーリング。

だが今の彼女を見て、ミカだと気付ける者が果たしているのやら。
全身の装甲だけが理由じゃあない、特筆すべきはそのサイズ。
富良洲高校を見下ろし、本来のサイズのKMFすら踏み付ける巨大さ。

仮面ライダーベロバ。
デザイアグランプリの公認サポーターだった、未来人の女がデザインしたもう一つの姿。
自らを魔女と嘯く少女の元へ、他者の不幸を至上の喜びにする魔女の力が渡ったのは偶然だろうか。

『READY FIGHT』

「魔女らしく蹂躙してあげる。嫌って言っても聞かないから」

仕組まれたかどうかは本人にとって重要ではない。
己を突き動かす衝動に全てを委ね、戦場目掛け巨腕を振り下ろした。


296 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:18:48 M4AzajS.0



善と悪の戦いとは口が裂けても言えない光景だった。
守りたい誰かの為、貫き通す己の正義の為、曲げられない信念の為。
そういった類は一つとしてない、両者が抱くモノは憎悪と闘争心。
憎いから殺す、楽しいから殺す、他の理由は余計でしかない。
文句があるなら命を奪って止めてみろと、剥き出しの殺意を浴びせた。

「ハハハハハハハハハハ!!」
「何笑ってるの?」

正気を完全に捨て去った笑い声を発し、龍騎が豪快な一撃を振り下ろす。
一振り放つだけで肉体が悲鳴を上げるも眼中にない。
襲い来る鉄塊へ戦慄は抱かず、至って冷めた声で吐き捨てる。
話が通じる相手とは思ってない、返答は拳で返す。
籠めた力は並以上、だが共に破壊には至らず弾かれ合った。

「なーんにも面白く無いし、気味が悪いからぁ……プチッと潰れちゃえ☆」

一発で死なないなら二発、それも無理なら三発、しつこく耐えるなら四発。
疑いようのない終わりを迎えるまで、何度だって痛め付けてやる。
その時まで拳を引っ込めはしない。
マウントを取った相手を一方的に殴るような、或いは癇癪を起こした子供のような。
滅茶苦茶と言う他ない動きでひたすらに殴り付けた。

巨人の如き体躯の仮面ライダーベロバに比べれば、人間大の龍騎は害虫同然。
だが掌で潰される末路はいつまで経っても訪れない。
頭上より絶えず襲い来る鉄拳を野晒が同等の力で防ぎ、弾き返す。
元から付いた刃こぼれ以外、一切の損壊は見当たらない。
敵の大きさが変わった所で野晒の破壊は非現実的である。


297 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:19:38 M4AzajS.0
「デカいだけで大したことねぇな!そんなもんか!?」
「強がらないでよ!本当はもう限界のくせに!」

挑発には挑発をぶつけ、お次は死を与えてやる。
巨体故に機動力は、サポーターが変身するライダーの中でも最下位。
しかし鈍重さをカバー可能な能力が搭載されており、躊躇なしに起動。
重力操作装置の影響下に入り巨体が浮遊、地上の蟻へ銃を向ける。
変身に合わせて巨大化した得物、レーザーレイズライザーが火を吹く。
大きさに見合った威力の光弾を発射、銃撃というより爆撃に近い。
おまけとばかりに粉砕されたアスファルトの破片、ついでに放置されたままの黄金像を重力操作で射出。
集中砲火の的となった龍騎の対処法は同じ、両手で握った野晒を振るう。
それだけで十分なのだ、現に光弾も瓦礫も薙ぎ払われ煙のように消え去って行く。

「うんうん頑張って足掻いてるねー。でも、そろそろ終わりにしよっか!」

『FINISH MODE』

銃口へエネルギーを掻き集め、紫色の光が校舎を照らす。
元の変身者がジャマーガーデン一帯を焦土に変えた、最大火力の攻撃だ。
死体はおろか服の切れ端すら残るか怪しい。
下手をすれば、富良洲高校も含めたエリア全域に被害が及ぶ可能性とてある。
仮にそう伝えたとしても、今のミカが聞き入れるかは不明だが。

「それじゃあこれでバイバ……イ……?」

撃つのではなく銃口を直接叩き付け消し炭に変える。
その判断を鈍らせたのは、視界の端にチラと映った眼下の光景。
傷付いた刀使の治療を続ける少女達と、戦闘の余波から彼女らを守る機械の戦士。

「全員無事か……!?」
「う、うん!私達も、篝ちゃんも大丈夫。チェイスさんこそ大丈夫なの…?」
「俺はロイミュードだ、この程度で破壊されはしない」

拳と野晒の衝突で発生した衝撃波。
加えて破壊された校舎の瓦礫がそこかしこから飛来。
傷の回復で動けないマジアマゼンタ達だけなら、柔肌にコンクリートがめり込み、或いは吹き飛ばされた可能性もあった。
チェイサーが自らの体を盾にし、時には瓦礫を撃ち落とした事で止む無きを得たが。
114kgの重量があるチェイサーですら、どっしりと地に足を付けねば暴風に弄ばれる枯れ葉同然だったろう。


298 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:20:34 M4AzajS.0
「え、あ、あ…ち、ちが、私……篝ちゃん、まで……」

冷水を浴びせられたように、燃え盛る憎悪が途端に勢いを弱める。
誰も死んでいないからと言って、安堵が出来る筈もない。
周りを見ず己の怒りを優先した結果、篝が助からなかったかもしれない。
自分が篝にトドメを刺していた、最悪の可能性もゼロではなかった。
アリウスに馬鹿な頼みをする前、散々セイアに言われた小言がいやにハッキリ頭に浮かぶ。
一時の衝動に身を任せ、何度目になるかも分からない過ちを繰り返す所だった。

「ボサっとしてんなら、今すぐ殺してやるよ!!!」
「っ!?」

ミカの動揺も龍騎には一切関係ない。
跳躍し巨大な標的目掛け、野晒を横薙ぎに振り回す。
間近まで迫りつつある脅威へ、ミカも一手遅れて迎撃に出た。
銃口を突き出し輝きで焼き潰さんとする。
太陽へ自ら飛び込むかの如き龍騎の愚行、自殺行為と取られてもおかしくはない。

「うおらあああああああああああああっ!!!」

本来なら起こり得ない勝利を野晒が実現させる。
星十字騎士団のグレミィ・トゥミューが『想像』し、あわや瀞霊廷諸共崩壊の危機を迎えた時。
一刀で消し去ったのが他ならぬ剣八の斬魄刀なのだから。

全身に掛かる負荷が増大、気を失ってもおかしくはない激痛に苛まれる。
だが龍騎…浅倉を止めるだけの効果は毛先程も無い。
ただの人間でありながら、その実化け物よりも化け物染みた精神性。
消えることのない苛立ちと闘争への飢えが、灼熱を打ち破る。

光は押し負け、巨体を切り裂く戦斧に似た斬魄刀。
装甲は霞の如く消失、魔女の座からも引き摺り落とされた少女が露わになる。
共に地面へ落下し、一足先に龍騎が着地。
肩で息をし、圧し掛かる疲労へ立ち眩みしながらも戦意は衰えない。

「――――っ」

憎たらしい程に眩しい空を睨みながら、ミカも落ちて行く。
伸ばした手は誰にも掴まれず、硬い地面が激突の時を今か今かと待ち侘びている。
楽園を追放された天使には、慈悲も救いも差し伸べられない。
魔女に救いは訪れない。


299 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:21:13 M4AzajS.0
「――――え」

だが、分かり切ったバッドエンドを否定するのはいつの時代、どの世界でもヒーローの役目だ。
鋼鉄の翼を広げた戦士、チェイサーが落下中のミカを救出。
地面に魔女の成れの果てが打ち捨てられる光景を、現実のものにはしない。
武装展開された翼を動かし降下、叩き付けられる筈だった場所へ静かに降ろす。

「なんで……?」
「人間を守るのが、俺の使命だ。篝にも、お前を助けてくれと言われた」
「篝ちゃん、が……」

朦朧とする意識の中で、篝自身も生きることを諦めなかった。
可奈美を、キラを、望まぬ殺戮に手を染める前に止めなければならない。
姫和や未来を生きる者達を守らねばならない。
全てが終われば消えゆく隠世の住人だからと、自暴自棄になるつもりは無し。
それに、自分が死ねばきっとミカの心にまた一つ傷を作るだろう。
おどけた態度の裏で、自傷してばかりの彼女がこれ以上傷付くのを、自分もキラも、彼女が言う先生も望んでいないから。
だから死への誘惑を振り解き、意識を保ち途切れ途切れでチェイスに頼んだのだ。
ミカの方へ行ってあげて欲しいと。

頼みを承諾しない訳にはいかない。
篝を引き続きマジアマゼンタ達に任せ、武装展開し急行。
チェイスを見送ったマジアマゼンタもまた、篝の意思に応え回復に臨んだ。
死んでたまるかと篝が戦っているのに、自分の方が投げ出すなんてのは有り得ない。
傷付いている人を助けないなら、生きることを諦めない人を支えないなら。
魔法少女になった時の自分を裏切る事になる。


300 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:21:46 M4AzajS.0
「喋ってないで…俺と戦え……!」

戦い以外を求めない狂気の赤龍が野晒を構える。
戦う気が無いなら、この一撃で全て壊れても構わないと思う程だ。

「いい加減にしてよ……!!」

決意も、悲しみも、余さず殺し合いに塗り替える。
欲に突き動かされるまま皆を傷付け、好き勝手振舞う男への怒り。
恐怖以上の感情を爆発させ、小さな体から光が迸る。
この場で最も幼い少女、千佳が放ったナニカへ龍騎は咄嗟に防御。
分厚く幅広い斬魄刀は盾としても優秀だ。

「がああああっ!?」

では何故、龍騎から悲鳴が上がったのか。
防いだはずの光に焼かれ、全身を猛烈な熱さが襲ったのか。
千佳が放ったのはまどうしのつえによる呪文、ではない。
固有魔法イノセンス、その可能性の一つであるイノセンスドライブ。
隕石群からの脱出時にも活躍したこの魔法は、力をただぶつけるだけではない。
最大の特徴は敵の防御やカウンター魔法を無視し、直接ダメージを与える効果。
野晒がどれ程の強度を誇るかも関係無しに、悪しき魂へ傷を付けた。
命中を見届けるも息が上がり、千佳はどっと尻もちを付く。

「っ!礼を言う…!」

始解状態になってから初めて、龍騎が怯み隙が生まれた。
このチャンスを逃す手はない。
ミカが変身し戦い、千佳が一撃を与えた事で龍騎自身も限界が近い。
決着を付けるにはこの時を置いて他になかった。


301 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:22:42 M4AzajS.0
『ヒッサツ!』

『FULL THROTTLE!DEAD HEAT!』

シフトデッドヒートのエネルギーを最大まで供給。
ドライバー左部のメーターが火炎を吐き出し、メーターの最大値を計測。
真紅の稲妻がチェイサーの全身に迸り、必殺のパワーを付与。
跳躍し右脚を突き出した先には見間違える筈も無い強敵、龍騎。
ロケットもかくやの加速により、勢いを乗せた蹴りを叩き込む。

「ぬ…うううううう……!」
「これが……どうした……!!」

衝撃と流し込まれるエネルギーに体力を削られ、それでも龍騎は敗北を認めない。
仮面の下で血反吐を零し、口周りを汚しながら叫ぶ。
蹴りが更に深くめり込むも、最後に勝つのは自分だと野晒を振り被った。
脳天から叩き割ってやる気概の龍騎へ、チェイサーはさせじと突き進む。
悲鳴すら雄叫びで捻じ伏せ、斬魄刀が頭上より襲い来る。

「なに…!?」

勝利を阻むのは龍騎自身の力。
ガラス窓から現れた巨龍、ドラグランザーが妨害に出た。
チェイサーではない、契約カードを持つ龍騎をだ。

眼前の敵を睨むチェイサーには見えない、だが龍騎には見えた。
後方で状態だけを起こし、剣にも見える笛に口を突けた少女を。
デスリュウジャーのメインウェポン、フルートバスター。
悪の音楽で獣電竜を意のままに操る力は、殺し合いでも度々発揮された。
NPCのモンスターすら操れたのなら、ミラーモンスターを支配下に置き主人の邪魔をさせるくらいは容易い。
魔女としても中途半端だった少女は乾いた笑みを浮かべ、だけどハッキリと伝えた。

「やっちゃえ、おにいさん」

「ああ……!」

声は背に届いた、己の助けとなった。
誰にも止められないし、止まらせない。
魂を浄化する剣の一撃をも追い越し、守護者は必殺の弾丸となる。

「――――――」

貫かれた狂気の獣が零した言葉も。
割れた鏡のように散らばった、赤龍の力の核も。
全ては爆炎の中に飲み込まれた。


302 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:23:20 M4AzajS.0



立ち込める煙に背を向けチェイスは歩く。
前方に見えるのはへたり込んだままの少女。
背中の翼は力なくだらんと下がり、生えた本人の心情を露わにしているよう。
と、こちらを見る彼女の目が急に見開かれた。
理由は尋ねるまでもない。
背後で感じた気配に弾かれたように振り向く。

「まだ……だ……」

煙の中から現れた男の正体を、詳しく記す必要も無いだろう。
浅倉は生きていた、だが果たして生き延びたと素直に言って良いものか。
ボリュームのある茶髪も、彼の好みである蛇柄の服も、狂い切った笑みの浮かぶ顔も。
体中どこもかしこも血だらけ、元の色を保っている箇所を探す方が難しい。
左腕はおかしな方へ曲がり、歩くどころか立つことすらままない程に重症。
そんな状態であっても、殺し合いを求める心だけは無くしていない。
長刀に戻った野晒を棒切れのように振るいよろける様は、下手糞なマリオネットを見ているよう。

「もっと……俺と……戦え……!」

夥しい量の血を流し、ライダーですら無くなっても。
生きている限り、完全に消ないイライラを薄れさせる為に。
何度だって戦いの中へ飛び込む。
それが浅倉威という男だった。

「がああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

瀕死の体のどこにまだ、そんな声量を出せる力が残っていたのか。
人とは思えない絶叫を上げ走る。
すぐ傍には銀色のライダーが、戦う相手がいるのだから。
もっと殺し合って、飢えを満たさなくては。
本能だけに突き動かされ、斬魄刀片手に斬り掛かり、





急に目の前が真っ暗になった。

それが、浅倉が最後に見た光景だった。


303 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:24:00 M4AzajS.0



「なん……だと……」
「…………わーお」

信じられないものを見た。
チェイスもミカも声色に多大な困惑を籠め、呆然と言葉を漏らす。

起きたことを説明するなら、難しい話ではない。
ガラスの中から赤い龍が飛び出て、浅倉を食った。
斬り掛かる正にそのタイミングで頭から丸飲みにされ、それで全部終わり。
リュックサックと斬魄刀を、まるで食べカスのように吐き出す。
浅倉が生きた、ついさっきまでチェイス達の目の前にいた証はこれが全て。
突き刺さった野晒が墓標のようにも見えた。

「お前の指示によるもの、か?」
「流石に今のは違う……かな」

ドラグランザーを妨害させたのと同じ方法かと思うも、本人の口から否定。
ミカ自身、あの龍がこんな行動に出るとは予想もしなかった。
何と言えば良いのやら、どうにも後味の悪い決着に暫し言葉が出ない。
とはいえ現実に自分達は生き延びたのだから、やるべき事をやらなくては。

荷物を回収しはるか達の元へ戻ると、先程と違って篝の瞳は閉じられている。
もしやとミカが顔色を変えるも、その心配はない。

「血は止まったし、ちゃんと生きてるよ……流石に気は失っちゃったけど……」
「そう、なんだ……篝ちゃん助かったんだ……」

安堵か罪悪感か、どちらとも付かない呟きを聞き取ったのか篝が小さく口を動かす。
くしゃりと顔を歪めるミカに、一同はまた沈黙。
ややあって話を切り出したのはチェイスだ。


304 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:25:23 M4AzajS.0
「積もる話はあるだろうが、全員一度休んだ方が良い」
「そう、だね……あたしが倒れてから何があったのか気になるけど…皆の体も大事だよ」

ギラに斬られて、それからどんな経緯で自分はここにいるのか。
詳細を聞きたいけど全員疲労困憊。
果穂と篝は意識を失い、千佳もヘトヘト。
かくいう自分も体力的に余裕はほとんどなく、弱音を言うなら一度腰を下ろしたかった。
先の戦闘を受け校舎は破壊されたが、まだ無事な所も存在する。
一旦中に入って、積もる話はそれからが良いだろう。

篝ははるかが、果穂はチェイスが運び校舎へと足を動かす。

「千佳ちゃん大丈夫…?もし足が痛いんだったら……」
「ヘーキだよっ!ラブリーチカは疲れたりなんてしないのっ!」

本当は疲れているけど、心配を掛けさせまいと明るく振舞う。
そんな彼女達の後ろにミカは暗い顔で続く。
篝が助かったのは良い事だ。
でもそもそも倒れる原因を作ったのは自分。
キラに庇われた時からずっと、やる事が全部裏目に出てばかりだ。

キラを止める、その為に協力者を集める。
その後は、復讐の為に優勝を目指す。
方針は何も変わらない、最優先を見誤るつもりはない。

だけどそれまでに、自分は一体あと幾つの間違いを犯すのだろうか。

捨てられぬ憎悪を抱えながら、魔女は藻掻く。
救いを得られる筈だった道から外れ、救いの大きな可能性を示す筈だった大人の喪失を未だ知らずに。


305 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:26:03 M4AzajS.0



全てが反転した世界で龍は咆える。
契約が切れた途端に、ミラーモンスターがライダーを襲う例は珍しくない。
ドラグレッダーもその例に漏れず、デッキが破壊されここぞとばかりに浅倉を襲った。

空腹を満たす為か。
気に食わぬ人間を一刻も早く殺したかったから。
戦いを望まぬ本来の主の力で、他者を殺そうとした怒りからか。
城戸真司への義理立てがあったかどうかすら分からない。

真意を誰にも知られぬまま、ミラーワールドで龍が咆えていた。



【浅倉威@仮面ライダー龍騎 死亡】



【エリアI-8/現代都市 富良洲高校/9月2日午前10時00分】

【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(極大)、疲労(極大)、動揺による情緒不安定気味(中〜大)、魔女、キラと篝への罪悪感(極大)、脳に焼き付いたトラウマ
服装:いつもの制服(返り血を浴びてる)
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(3時間変身不可能)@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ(午前8時25分に使用、1時間30分使用不能)、ホットライン
思考
基本:魔女らしく荒れる。……それは、変わらないよ。……止めてみれば?
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげる。それは……変わらない。でも優先順位ってのが…あるよね?
02:篝ちゃんが起きるまで待つ。今は少し、休みたいかも。
03:…せめて、キラくんは私達で止める。2人だけじゃ、ダメだから…探さないと。
04:先生のことを詳しく聞く。殺し合いに乗った?そんな訳ないじゃん馬鹿なの?????
05:邪魔したあの救世主名乗った人(リボンズ・アルマーク)と仮面ライダーエターナル(大道克己)、それにキラくんをあんなにした魔王グリオンは…次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
06:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
07:…しれっと逃げてたギギストは…次会ったら一発くらい殴ってもいいよね??
08:…あの人(スザク)は…どうするんだろ。
09:やることぜーんぶ、裏目に出てばっかりだなぁ…………
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
 一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※キラや篝とのやりとりでガンダムSEED世界や刀使ノ巫女世界についてある程度把握しました。

【柊篝@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(絶大・回復処置済み)、疲労(極大)、精神的ダメージ(大)、気絶中
服装:鎌府高等学校の制服
装備:千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火(1時間使用不能)、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める、それがきっと、隠世と一緒に消える筈だった私の役目…!
00:……
01:…キラくん…私が、不甲斐ないばかりにっ…!!
02:…私はまた、たすけられなかった…。
03:ミカさんが無事でいてくれて良かった…でもどうして彼(チェイス)と戦っていたんですか…?
03:ニセモノのアスランさん…討つしかないと云うのなら…!
04:ルルーシュといい自称救世主(リボンズ・アルマーク)といい仮面ライダーエターナル(大道克己)といい、魔王グリオンといい…傲慢な強敵ばかりですね…。
05:…これじゃ姫和達や、本物のアスランさんやラクスさん達に…合わせる顔が無いです…なんて、伝えれば…!!
06:ミカさん…貴女は…。
07:…ギギストには…まだ注意が必要かと。
08:……キラくんを置いていくことしかできず、可奈美さんを終わらせることもできずっ…何が、なにが神薙の刃ですか…!!
参戦時期:本編終了後。
備考
※支給されていたソードスキル:SEED@機動戦士ガンダムSEEDシリーズを習得しました。
※隠世の方です、刀使としての力は発揮できるとします。
※キラとの会話でクルーゼについての話やキラの出自等を大まかに聞いています。
※キラやミカとの会話でガンダムSEED世界やブルーアーカイブ世界についてある程度把握しました。
※迅移については四段階目を使用すると昏倒する仕様のまま、また五段階目は制限により使用不能となっています。


306 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:27:16 M4AzajS.0
【花菱はるか@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(極大)、精神的疲労(中)、ダメージ(大・回復処置済み)、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:学生服/マジアマゼンタのコスチューム
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り二画
道具:ウォーパイク@テイルズオブヴェスペリア、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:魔法少女として殺し合いを止める
01:千佳ちゃん達と行動。今は皆休んだ方が良いよね…
02:トレスマジアの二人とうてなちゃんを探す。どうしてうてなちゃんまで…
03:↑に並行しイドラさん達とも合流したい。
04:ノワル、赤い服の男の人(宇蟲王ギラ)に対して最大限警戒
05:マジアベーゼはいつか仲間になってくれると思ってるよ!ここで正体は探らないって約束する!
06:あたしが気絶してから何があったんだろう…?
参戦時期:少なくともマジアマゼンタ フォールンメディックに覚醒前
備考

【横山千佳@アイドルマスターシンデレラガールズ U149(漫画版)】
状態:疲労(極大)、精神的疲労(大)、ダメージ(中)(回復処置済み)、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:普段着
装備:イノセンス@魔法少女ルナの災難、まどうしのつえ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:怖いけど、殺し合いになんて負けない!
01:はるかちゃん達と一緒にいる。疲れたけど、心配させないようにしなきゃ。
02:イドラちゃんとレッドくん、どこにいるのかな?
03:マジアベーゼのこと、あたしは信じたい。
参戦時期:サマーライブ編(原作14巻)終了後以降
備考
※まどうしのつえでスクルト、ピオリム、ルカニ、ホイミ、メラ、マジックシールドが使用可能なようです。
 他にどの呪文が使えるかは後続の書き手に任せます。


307 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:28:28 M4AzajS.0
【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
状態:疲労(極大)、ダメージ(大)、悲しみ、気絶中
服装:私服(いつもの)
装備:デザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストライカー(変形済み)@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして皆を助けますっ!
00:……
01:新米ヒーローですが、チェイスさんと一緒に戦いますっ!
02:先生は本当は殺し合いに乗ってる人だったんですか…?
03:仮面ライダー…本当にヒーローがいたなんて凄いです…!
04:どうして283プロの事務所まであるんでしょうか…
参戦時期:不明。少なくともW.I.N.G.の優勝経験あり。
備考

【チェイス@仮面ライダードライブ】
状態:ダメージ(大・メカ救急箱の効果で回復中)、無力感
服装:紫のライダースジャケット(いつもの)
装備:マッハドライバー炎&シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ、ブレイクガンナー&チェイサーバイラルコア@仮面ライダードライブ、シフトデッドヒート@仮面ライダードライブ、ライドチェイサー@仮面ライダードライブ
令呪:残り三画
道具:トレーラー砲@仮面ライダードライブ、メカ救急箱(使用回数4/5)@ドラえもん、野晒@BLEACH、大量の購買部の商品、ホットライン
思考
基本:人を守り、殺し合いを止める
00:今は全員休んだ方が良い。
01:守るべき人間として、共に戦う仲間として果穂と行動。
02:久留間運転免許試験所へ向かう傍ら、協力可能な参加者を探す。
03:先生や学園都市キヴォトスの関係者を警戒。が、ミカの話を聞き真実を見極めたい。
04:蛮野もこの島にいるのか?
参戦時期:死亡後。
備考
※制限により重加速は短時間で強制的に解除。連続使用は不可。

【全体備考】
※富良洲高校で校舎の破壊が起こりました。全壊にはなっていませんが、具体的にどの程度かは後続の書き手に任せます。
※龍騎のカードデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ『烈火』@仮面ライダー龍騎、ミナト先生の黄金像(レプリカ)@仮面ライダーガッチャードは破壊されました。
※ドラグレッダー@仮面ライダー龍騎が野良モンスターとなりミラーワールドを彷徨っています。

『支給品紹介』

【野晒@BLEACH】
…浅倉威に支給。
護廷十三隊十一番隊隊長、更木剣八の斬魄刀。
始解時の解号は『呑め、野晒』。
解放前は柄と鞘にさらしが巻かれ、剣八自身の霊圧で刃が常時削れている刃こぼれした長刀。
解放後は剣八の身長を上回る巨大な斧状の剣に変形。
グレミィが夢想家の能力で生み出した巨大な隕石ですら、一刀の元に粉砕するほどの破壊力を誇る。
本ロワでは令呪一画を使用し始解が可能、卍解は制限により使用不可。
ある程度の調整が施されており人間でも始解は可能だが、使用者によっては絶大な負担が襲う。
既に支給されている千本桜等と違い始解にも令呪を必要とするのを考慮してか、解放前でも身体能力上昇の恩恵に与れるよう細工してある。

【ウォーパイク@テイルズオブヴェスペリア】
…花菱はるかに支給。
クリティア族の放浪者、ジュディスが使う槍。
ソードスキルにより装備するとジュディスの術技が使用可能。(数は多いので割愛)
服装もジュディスと同じに変わるおまけ付き。

【マッハドライバー炎@仮面ライダードライブ】
ロロ・ヴィ・ブリタニアに支給。
バイクのマフラーを模した形状の変身ベルト。
こちらはチェイスが使用する方であり、第24話で沢神りんなが研究用に作成したスペアドライバー。
ライドチェイサーを模したシグナルバイク・シグナルチェイサーを装填することで変身する。


308 : Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:28:59 M4AzajS.0
『ドロップアイテム紹介』

【シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ】
…聖園ミカが入手。
チェイスの愛用バイク、ライドチェイサーを模したシグナルバイク。
マッハドライバー炎と組み合わせる事で、仮面ライダーチェイサーに変身する。

【レーザーレイズライザー@仮面ライダーギーツ】
聖園ミカが入手。
デザイアグランプリの運営公式のサポーター達が所持している銃型変身デバイス。
単独で光線銃として使うことが可能なほか、レイズライザーカードとの併用で使用者を仮面ライダーに変身させる。

【レイズライザーカード(ベロバ)@仮面ライダーギーツ】
上記のレーザーレイズライザーとセットで聖園ミカが入手。
レーザーレイズライザーとの併用で仮面ライダーに変身可能。
これはベロバ用であり、裏面には推しである仮面ライダーバッファのマークが刻まれている。
デザグラ関係者の中でも随一の巨大なライダー、仮面ライダーベロバに変身する。
一度の変身後は3時間変身不可。

【ミナト先生の黄金像(レプリカ)@仮面ライダーガッチャード】
聖園ミカが入手。
富良洲高校の教師兼錬金アカデミーの指導員、ミナトが本編終盤グリオンに黄金像にされた姿。
……を精巧に再現したレプリカ。
あくまでレプリカであり本物のミナト先生ではない。

【亜空間物質転送装置@遊戯王OCG】
浅倉威が入手。
通常罠
(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その自分の表側表示モンスターをエンドフェイズまで除外する。
今ロワでは対象をランダムに別のエリアに転移させる。
一度の使用後6時間使用不可。

【シフトチェンジ@遊戯王OCG】
浅倉威が入手。
通常罠
自分フィールド上のモンスター1体が
相手の魔法・罠カードの効果の対象になった時、
または相手モンスターの攻撃対象になった時に発動できる。
その対象を、自分フィールド上の正しい対象となる他のモンスター1体に移し替える。
本ロワでは参加者だけでなくNPCとも位置の入れ替えが可能。
一度の使用後6時間使用不可。

『NPC紹介』
【魔界の機械兵@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1400/守1200
闇の力でつくられた機械兵。狂ったように敵を破壊する。

【マイティガード@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/地属性/機械族/攻 500/守1200
警備用として開発された機械の戦士。
錆びない金属でできている。

【スパイク・ヘッド@遊戯王OCG】
通常モンスター
星5/闇属性/機械族/攻1800/守1700
地獄の魔術師が生み出した機械兵。
両腕の鉄球で敵味方関係なしに攻撃を繰り返す。


309 : ◆ytUSxp038U :2024/12/24(火) 23:29:33 M4AzajS.0
投下終了です


310 : ◆TruULbUYro :2024/12/24(火) 23:59:14 6lEJWClA0
投下させていただきます


311 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:00:21 S8/8tWvs0

「ふざけるなァッ!!」

ひらけた無人街に響き渡る怒声。
次の瞬間、癇癪の矛先となった街路樹や街灯、そしてNPC達が哀れにも両断されていく。
手に持ったホットラインを感情のままに付近にいた怪物へと投げ捨て。
制裁と言わんばかりに斬撃と爆撃を瞬時に叩き込み、NPC諸共塵へと還した。
隠密や合理など頭から完全に抜け落ちた、仮にも一流の暗殺者の肩書を持つ者とは思えない所業。
見慣れぬ魔導器(ブラスティア)の操作に苛立ちながらも、ようやっと目当ての名簿を開いたにも関わらず。
余りにも己の意にそぐわないその内容に男───殺し屋ザギの怒りが爆発した。

「オレがいるんだぞ…何故お前がいないユーリ・ローウェルゥッ!!
 おまえがいる場所はオレの居る場所と───そう決まってるだろうがァァッ!!」

初めて傷を与えた男。初めて敗北を味合わせた男。初めてその強さに心奪われた男。
あらゆる初めてを奪った、脳髄の奥底までその名を刻み込んだ愛しき男──ユーリ・ローウェル
取る足らない雑魚を淡々と処理するだけの冷めきった人生に激しい熱を齎した好敵手。
稀に見ない強者と心ゆくまで鎬を削り合い、共に高みへ昇り詰めるべく。
肉体の一部を魔導器(ブラスティア)に変える外法の改造を施すに至った執着の大元。
必ずいると存在を確信していた獲物の不在が、ザギの苛立ちを加速させていった。

「ケンジャクゥ……!!───舐めた真似しやがって…ブチ殺すぞォ!」

無理やり拉致し、枷を嵌め、縛りを設け、闘いを強いる。
船上やノードポリカの闘技場以上に逃げ場のない殺戮に適した最高の舞台。
ここまで完璧な御膳立てを整えておきながら一番肝心な役者がいないとは何事だ。
愚劣極まる人選を行った主催者達への殺意が止めどなく溢れ出る。
今すぐにでも無能共の素っ首を叩き落とし、眼前に並び立てねば気が済まない。

「…うずく……うずきが止まらねぇ…!
 今すぐにでも殺らせろと…オレの刃と魔導器が喚いてやがる!!」

目に映る全てに片っ端から激情をぶつけようと。
発散を遥か上回る勢いで溜まる鬱憤が晴れる訳もなく。
全身を支配する疼きと猛り。それを鎮めるには惚れこんだ男とのめくるめく闘争以外他になし。
乾いた刃に強者の肉を切り裂かせ、暖かな血を啜らせる。
だが、その意中の相手──ユーリ・ローウェルは不参加は確定済み。
ならばもう、餌を求める武具の飢えを満たす手段はないのか。
しけ切った殺し合いを楽しむ術は存在しえないのかと、そう問われれば、答えは否だ。

「クロガネ・スパナ、ハナムラ・ヨウスケ…」

飢えた獣が思い起こすはこの地で最初に出会った新たな二匹の獲物。
奇妙な武装魔導器で全身を武装した熟練の戦士、黒鋼スパナ
使役する魔物との巧みな連携を魅せた軽薄そうな青年、花村陽介。
普段殺しの依頼で相手する、少し刃を振るえば呆気なく死に至る有象無象共とは別格。
ユーリやその取り巻き達と同類。久方ぶりに逢う、己と渡り合える実力者達。

「ククク…ああ、そうだったな。此処は雑魚ばかりじゃねぇ。殺りがいのあるヤツは幾らでもいる。」

自身の標的足りうるは彼らだけではない。
羂索が言うには、一般人でも十分に戦える様に幾つかの調整を施したと聞く。
スパナが装着した武装や自分に支給された"自前以外の刀"が、その言葉の信憑性を高めている。
元来からの強者のみならず、本来歯牙にもかけない弱者が、強者に化ける可能性を秘めた世界。
ユーリの代替品、いや、彼に並ぶ逸材も見つかるかも知れない。


312 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:02:53 S8/8tWvs0

「オマエの代わりになれるヤツらを全員殺してから、その後にまたおまえを殺りに行こう。
 おお…そうだ!それがいい、それが一番だ…!
 ヒャハハハ…!おまえのせいだぞ…おまえのためだ、ユーリィィィッ!!」

此処にいる者全てを魔導器の餌へ変える。本来この刃を受け止めるべき男がいないが為に。
大勢の参加者と無能共の首を、彼への土産として持参してやろう。
自分の不在が原因で、沢山の人間が死んだとなれば、あの男はどう思うだろうか。
怒りか嘆きか、何にせよその感情の昂ぶりが後の闘いのスパイスとなれば。
好敵手無きこの殺し合いにも大きな価値が出てこよう。
実際はユーリがいようといまいと。下す結論は同じく皆殺しだったが、その程度の差異など些末事だ。

「スパナ…ヨウスケ…先ずはアイツラから…
 いや、"今は"駄目だ…最後には逃げやがる連中じゃ今は満足出来ねぇ!!」

ザギが求めるのは、何方か一方が死に絶えるまで続く命懸けの勝負だ。
此方の魔導器の暴走があったとは言え、奴等は最終的に逃走を選んだ。
強さこそ及第点以上あれど、消極的な輩じゃ些か物足りない。
現在に至るまでの時間を通して、溜まりに溜まったストレス解消の相手。
例え何時如何なる状況だろうと敵の首を取りにかかる同類でなければ。

そうして茹だった脳で自分好みの相手との出逢いの手段を考え始めた頃。

「オウオウ、オレ等の縄張り(シマ)で何やがんだ兄ちゃんよぉ!」
「……あ?」

久方ぶりにザギの耳に届いた画面越しではない肉声。
首を上へと傾けると、スタジアムの入り口からぞろぞろと姿を見せる人の群れ。
彫りの深い顔立ち(ツラ)に、背広(スーツ)がはち切れそうな程の屈強な体格(ガタイ)。
揃いも揃って短刀(ドス)に拳銃(チャカ)を携えた野蛮な男衆。
表社会に馴染めず爪弾きにされた裏社会(ヤミ)の住民、総じて"極道"。

彼らは皆NPCだが、本能的に襲う怪物や人型NPC達とは違い。
参加者を積極的に襲えと明確に設定(インプット)されている訳ではない。
唯一つ、会場(フィールド)全体は自分達の縄張りである、とした認識操作。
ただそれだけの一手間で、極道はいとも容易く参加者に害意を振り撒く敵となる。
身内以外の誰かに悪事を働くのに一切の呵責もない。それ程までに相容れぬ存在なのだ。

「その長刀(ナガドス)に義手(メカウデ)!どう考えても一般人(カタギ)じゃねぇな!?」
「…まさかたった一人で襲撃(カチコミ)かァ!?殺(ッ)ぞコラァ!」
「侮辱(ナメ)てんのか!?特攻(ブッコ)みかました度胸(ガッツ)は認めてやるがよォ!」

ひしめき合う集団からまずは三人。
上半身を曝け出した極道達が前に出て正面階段を降りていく。
顔以外の肌に所狭しと刻まれた刺青(もんもん)を堂々見せびらかし。
下品な程に荒れた声量と眼力で威圧しながら、無謀な襲撃者へと対峙する。


313 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:03:48 S8/8tWvs0


「雑魚共が…テメェらじゃ何回殺(や)ろうが逝けねぇんだよ!!」

人の形をし、豊かな感情表現をして、流暢に言葉を交わす。
しかし彼らにはスパナ達のような全身を高揚させる気配をまるで感じない。
つまりはNPC──また"ハズレ"だ。数が多いだけの近隣に湧くの魔獣以下の塵の山。
癇癇に沸き立った激情に燃料を投下する薪に過ぎない。
何の足しにもならない雑魚を早々に片付けようとした所で───ザギの脳裏に一筋の光明が差した。

「!テメー!抜刀(ぬ)く気だな!?」
「上等(ジョートー)だオルァ!!オレの短刀(ドス)で滅多刺しにしたらああ!!」

だらりと下がったザギの腕が腰へと延びる。
動きを見せた外敵の行動に極道たちの語調は更に荒立った。
手の伸びた先、腰の凶器を見るや否や、戦闘の意志有りとみなし。
それに応戦するように全員短刀を抜き放ち、一気に階段を駆け降りる。
周囲に巻き散らす殺気を勢いに変えながら疾走る極道。
彼らが最下段に到達するよりも速く、ザギは刀を手にしたが。
彼が抜いたその刀は、普段腰に差した愛用の双刀ではなかった。

「なんだぁその刀!短(ショ)ッ小(ボ)!!」

刃物と呼ぶには充分だが、刀と呼ぶには余りに小ぶり。
その形状は奇しくも旧時代(オールドタイプ)な忍者が使う"苦無"に近しいか。
自前の武器を押し退けて取り出した刀。ザギはそれを投擲するでも、迫り来る敵に向けるでもなく。
自らの服の首元を引っ張りあげ、金に輝く刃先を自身の身体へとむけたかと思えば。

次の瞬間、何の躊躇いもなく心臓部へ深々と突き刺した。

「…グ、おおお────!」
「自殺!?冗談(マジ)かよあの野郎!」
「怖気(イモ)り通り越して精神薄弱(ヘラ)った!?理解不能(いみわかんね)ーぞ!?」

口元から血を垂らし、苦悶に喘ぐザギに阿呆と内心嘲る極道達。
ザギに抱いていた警戒は露と消え、三人の頭は困惑と嘲笑で埋め尽くされる。
本格的に始まる前から終わったも同然の戦い。
だが、矛を収めるつもりは皆無。謎の自傷を行った理由など知った事ではない。

「苦痛(くる)しいだろ!?慈悲深(やさ)しい俺達が介錯(らく)にしてやらあ!!」

溺れた犬を叩く勢いそのままにザギへと飛び掛かり、一斉にドスを振り下ろす。
最早死体蹴りに等しい極道達の同時攻撃は───三撃揃って空を切った。


314 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:04:43 S8/8tWvs0

「お!?不発(スカ)った!?」
「違え!逃避(にげ)やがったんだ!何処だ!?」

勝ちを確信し切っていたが故に置かれた現状に混乱する極道たち。
半ば遅緩しきっていた警戒を引き締め直した矢先。
彼らの鼓膜が"二つ"の音はキャッチした。

一つ目はコツ、コツ、と。ゆっくり階段を昇る靴音。
二つ目はバチ、バチ、と。火花が弾けるような放電音。

何方も位置は後方。発生源は恐らく消えた襲撃者に違いない。
如何なる手段で逃げおおせ、死角(バック)に回ったかは知るまいが。
不可解であっても所詮死にぞこない。今度こそ確実に仕留めてみせよう。
躊躇(びび)ることなく、背後を振り向いた所で。

「後ろだァ─────ぁれ?」

感じる、強烈な違和感。

「後ろっていうか───真上じゃね?てか、なんか全体的に巨(デ)ッ大(ケ)…─────」

初めは前方、次は後方にいた襲撃者が。
今では何故か己の視界の真上にいて、悠々と階段を昇っている。
それだけではない。
先程駆け下った大階段。居座っていたスタジアム。
最上段に残して来た仲間たちまでの距離までも。
映る景色全てが桁違いに大きく膨れ上がったように見える。
一体これは何だ。不可解な現象を目の当たりにしたせいか些か気分も悪い。
原因を究明すべく双眼と脳を忙しなく動かし、漸く気づく。

「あ、違ぇ。これ──俺らが斬首(ちいさ)くなったんだわ」

世界が見上げる程突然巨大になったのではなく。
自分達の目線が遥か"下"にあるのだと理解して。
分かたれた胴体が遅れて崩れ落ち、意識も途絶えた。

「や、危険(ヤベ)ェ!みんなァ────!!」

一部始終を傍から見ていた誰もが。
仲間の首が跳ぶ瞬間まで、一切攻撃に気づかなかった。
夢幻かと目を疑う異常性に、眼前の敵の脅威を正確に認識。
集団の先頭付近に立っていた極道が声高々に叫ぶ。

「ヤ」

地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)
理不尽極まる強者に対抗しうる切り札。
個で劣るが、数で勝る弱者が。
個を限界まで強化した上で数を以て難敵を迎え撃つ。

「ク」

今はとにかく時間が惜しい。
一刻も速く。
一秒でも速く。
迫り来る危機を脱するために。

「キ」

自身も回数券(ヤク)を取り出しながら。
己の背後で未だ動揺冷めやらぬ同胞達へと。
服用を促すべく首を振り───

「m…──」


バチリ、と迸る閃光。


その中心に立つ"強者"の姿を見た刹那───


「────閃空烈破…!」



────吹き荒れた紅嵐に総身を四散させた。


315 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:09:13 S8/8tWvs0


「ひいいいいいいい!!」

有無を言わさぬ繰り広げられた殺戮劇。
双刀の回転の間合いにいた者は声を出す間もなく塊肉と化し。
範囲外だった者も斬撃の余波に巻き込まれ、浅からぬ傷を負った。
幸か不幸か、集団の端にいて難を逃れた極道の一人は。
凄惨極まる衝撃の光景に、女々しくも悲鳴をあげるしかなかった。

「み、見てたのにまるで分からなかった…!同胞瞬殺(やら)れる瞬間が…!」

先陣を切った三人が目にも止まらぬ速さで殺され。
先頭に立っていた同胞の一人が「危険い」と叫んだその時はまだ。
襲撃者は階段の下で昇って来ていたのを確認している。
それがどうだ。振り向こうとした次の瞬間には。
集団の中心へとするりと入り込み、人体を分解(バラ)す凶風を吹かせた。

「瞬足(はや)過ぎる…!俺らが回数券(ヤク)キメたってあんな速度だせっこねぇ…!」

瞬間移動の如き、神速の脚運び。
人間の身体能力を飛躍的に向上させる薬物、地獄の回数券。
その薬効を理解して尚、常識外れと言わざるを得ない、戦意をへし折る埒外の速度。
そんな非現実を現実に変えられる規格外は、頭にある限り二つ。
裏社会の頂点に立つ全極道希望の星、破壊の八極道か。
或いは────

「に、忍者……!」

怯えで緩んだ口から飛び出た忌むべき単語。
生き残った全ての極道が耳にした途端にどよめき立ち竦む。
一同が想起するは恐怖の象徴。警察も法も恐れない彼らが唯一恐れる存在。
裏社会で悪事かますと必ず来襲する悪夢の体現者。
弱者(ごくどう)を虐げ、踏み躙り、ブッ殺す───絶対的強者(にんじゃ)。

己の脚力のみで空を蹴り、疾風の如く戦場を駆け巡り。
凛々の明星との多対一の戦闘を幾度繰り返してものともしない。
ザギもまた蒙昧な弱者に辟易する強者に違いなく。
その領域を押し上げたのが、心臓に突き刺した刃にある。

天才刀鍛冶四季崎記紀が完成系変体刀十二本が一振り、悪刀『鐚』
刃に帯電した雷が所有者の生命活動を極限まで活性化させる。
その効果たるや、傷を許さず。疲れを許さず。死さえも許さない。
人類の夢を体現するこの世で最も『善』良な刀であるかの如く見せかけて
その実、人が誰しも持ち得る永久の安らぎを奪うこの世で最も『悪』辣な刀。
だがしかし、闘争の為に肉体さえ煩わしいと思う狂人の中では。
『悪』刀は紛れもなく良縁であり、その餌食となる者にとっては紛れもなく『悪』縁であった。

「テメェらは"飾り"だ…」

ぐりん、と緋色の眼が生き残った極道達の方へと向く。
凡そ人間に向けるものとは到底思えない、家畜かそれ以下の塵に注ぐ冷め切った目線。
その狂気の視界に入った誰もが幻視した、避けられぬ"死"。
恐怖に耐えかねたうちの一人が、背を向けてスタジアムへと走った矢先。
"頭部"だけが一瞬で目的地へと到達し、飛来した刃で壁面に打ち付けられた。

「オレの"本命"が来やがるように、全部バラシて飾り立ててやるよォ!!!
 ひひ…ひははっ!ひゃははははははははは─────!!」

本来熱狂が渦巻く球戯場の入り口に、響き渡る絶叫と狂笑。
恥も外聞も全て捨て、抗えぬ生存本能──恐怖に従い我先へと逃走を図る弱者の群れ。
その後を追うように、微かな雷光と共に強者の影が消え去り。
一分と経たずして──会場には再び一時の静寂が返った。


316 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:11:51 S8/8tWvs0

◆◆◆


「病院行ってみねぇか?」

仮面の男、ラウ・ル・クルーゼ。悪逆皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
開幕と混沌を告げる二つの放送が終わり、開示された情報をあらかた咀嚼し終えた矢先。
"帝都八忍"呪血の忍者兄弟(ブラザーズ)が末弟、邪樹右龍は開口一番、同行者へとそう投げ掛けた。

「病院〜?オッサンには無縁の場所に思いはりますけど?」

同盟を結んだ連れからの提案にマジアサルファこと、天川薫子は右龍を見やる。
麓から見上げる大山と見紛う迫力の巨躯と、鋼鉄よりも遥かに強固な肉体。
あらゆる怪我を寄せ付けない、右龍の頑強さを言い表すのに余計な言葉など不要。
彼を全身を構成するあらゆる箇所が、その健康優良加減を何より雄弁に物語る。
人間を蝕む病魔(ウイルス)さえ尻尾を巻き、回れ右して一目散に逃げだす偉丈夫。
そんな彼が病院に顔を見せれば、縁者や友人の見舞いか冷やかしとしか思われないだろう。

「まぁ…確かにうちらは今は縫い目の腐れ女にけったいな病気仕込まれとりますけども。
 まさか首謀者が用意した病院に駆け込めば、一発で治る〜なんてご機嫌な話したい訳やないやろ?」
「オウオウ薫子(かおる)っち!そりゃお兄ちゃんと比べりゃ頭脳明晰(あたまいい)わけじゃねぇけどよ〜。
 流石にオレもそんな夢物語(アホ)な話を恥ずかし気もなくいう訳じゃねぇぞ!
 ……ちっとばかし本気(マジ)でそうも考えてたのは秘密(ナイショ)だぜ?」
「冗談やて。で、病院が目的地って事は…オッサンは"合流最優先"でいきたいワケか?」

薫子は魔法少女の鉄則から、右龍は忍者大原則に乗っ取れば。
第三者に自身や仲間の正体を明かす事は最大の禁足事項(タブー)であるが。
混沌とした状況下に規則(ルール)を気にして。
これから共に肩を並べ戦う相手に情報を秘匿するのは非合理であり不義。
故に元の世界における秘密主義は一時撤廃。諸々の諸事情は概ね共有済み。
それを踏まえた上で右龍の口から病院の文字が飛び出せば。
天才外科医、覇世川左虎──彼の兄の存在に結びつくのは自然な思考の推移。

「応(おう)!一番上手く病院を有効活用出来んのが医者だからな。
 弱体(デバフ)喰らってる今だとお兄ちゃんが施設の力借りに来る可能性はそれなりにあるだろ
 ただな、オレの病院行き理由は合流(ソレ)だけじゃねー。」

「さっきも言ったが一番上手く病院を有効活用出来んのが医者だ。
 "良くも悪くも"な。で、この殺し合いにオレの知る限り医者は二人。
 一人はご存じオレのお兄ちゃんで、もう一人は───"極道"だ。」

怪獣医(ドクター・モンスター)・繰田孔富。
名医(ゴッド・ハンド)の称号を欲しいままとする左虎が最も尊敬する医師であり。
右龍の同胞帝都八忍を幾人も葬った破壊の八極道の一員。
殺し合いの打破に於いても決して避けて通れない忍者にとって不俱戴天の敵。

「お兄ちゃんの医術(テク)は文句なし最上級(ピカイチ)!
 そこに真面な設備がありゃ更に沢山の参加者を救える可能性はグンと上がる。
 だが、その可能性と同じだけ、参加者に地獄見せる力があんのが繰田孔富だ。
 あの怪獣医が先に病院占領(おさ)えた時、どんな厄介(ヤバ)ェ悪事(わるさ)が出来っか。
 医学知識(ガク)のねェオレにゃ想像もできねェ。」


317 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:13:57 S8/8tWvs0

施設の内部構造や置かれた物品まで忠実に再現されている会場内において。
一般的な病院も現実と同等の設備や薬品が存在すると仮定すれば。
豊富な医学知識を持つ者にとっては、無限の手札を与えるに等しい。
善意で扱えばその全てが良薬となり、悪意で扱えば全てはその劇薬と変わる。

病院を制した者が宿敵を殺す最大の好機(チャンス)を物にする。
部下の医師団も悪事を成す土壌も奪われた八極道、一人。
仲間の帝都八忍と裏社会を見通す目を捥がれた呪血の忍者兄弟、二人。
悪に精通する怪獣医が混沌を制し忍者を討つか、兄弟が集い両雄揃った最強の布陣で極道をブッ殺すか。
幸か不幸か────条件は対等(ごぶ)。

「病院は狡猾(わるぢえ)働く悪党が悪事(わるさ)かます為にあるんじゃねー。
 命救う為にあんだ。だから、弱者善人利用しに集る野郎どもが寄り付く前に。
 迅速(なるはや)でオレ達が制圧(おさ)えて安全圏にしときてェのよ」

病を抱えた人々。怪我に苦しむ人々。
そんな弱き者達の駆け込み寺となるのが病院であり。
憔悴した心の拠り所となるのが、従事する医者(ドクター)達だ。
尊敬する義父と兄の背を見て来たからこそ、医療の偉大さは重々承知している。
救いの象徴たる在り方は殺し合いでも変わらない筈。
一縷の希望を求めて来た人々が、少しでも安心して心と傷を癒せる様に。
孔富やルルーシュの様な悪事かます悪党から守り抜く。それが忍者が成すべき責務の一つだ。

「───ってのが俺の都合だ。で薫子っち。オメーはどうだった?
 そっちにもどっか行きてー施設あんなら先付き合うぜ。」
「いや、こっちは特に施設で合流の目安は無いし、オッサンの案で何も文句あらへんよ
 病院抑えといたら、うちのお人よし二人が怪我人連れ添って来はるかもしれへんし。」

薫子の知人は三人。同じ魔法少女、トレスマジアのメンバー花菱はるかと水神小夜。
そして"何故か"場違いな殺し合いに連れて来られた一般人のクラスメイト、柊うてな。
充分人となりを見知った友人ではあるが、だからこそ彼女らがどう行動するか指針が読めない。
マゼンタやアズールは間違いなく人助けを優先し、自分の事情は後回しにするタイプ。
うてなはこの魔境で無事の場合は、厳しい事を言うが善良且つ同行者に恵まれた場合のみ。
つまりは何方も同行者の指針に左右されやすい傾向にある。その相手の分からぬ今は同行を読むのは困難。
出来る限り迅速に動く事さえ念頭に置けば、保護や合流はおのずと叶う。
理にかなった方針には黙って頷くのみでいい。

「応(おう)、感謝(サンキュー)な…!
 速いとこ薫子っちの親友(ダチ)とも合流出来るように迅速(なるはや)で行こうぜ。」
「て、当面の目的地は病院でええとして、逃げおった怪獣はどないする?
 ウチら二人でトントンやった奴相手に出来る参加者早々おるとは思わんし。
 なるべく戦力が揃っとるこっちで仕留めなアカンやろ。」

目的地の方針が定まったところで議題は次へと移る。
洗脳と思しき干渉を受けた少女と彼女が変身する大怪獣。
電撃、光線、バリア、テレポート。多彩な能力と驚異的な肉体(フィジカル)を有し。
単独では先ず苦戦必死。忍者と魔法少女の即席同盟でようやく撤退に追い込んだ強敵だ。
此方がまだ万全な内の早期決着が望ましいところだが、現実はそう上手くはいかない。


318 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:15:00 S8/8tWvs0

「怪獣(デカブツ)があのまんま悪事(わるさ)してりゃ即で分かるが…
 薫子っちが言うにゃ、アイツ元は女子高生(じぇーけー)なんだろ?
 人間サイズに戻られちまうと"目"のねェ今のオレ達で探すのはちっとばかり難儀(きび)いぜ。
 派手な騒動(トラブル)がありゃ、速攻(ビョウ)で駆け付ける!がこっちが出来る精一杯だな」
「ったく、コソコソ逃げ回って手間ばっかかけおってからに…
 さっさとブチのめしたるさかいとっとと出てこんかい!デカい図体しとる癖して肝っ玉はノミレベルか!?」

3m近い巨躯に住宅街を崩壊せしめた破壊規模。
右龍らが最後に見た姿そのまままであれば、恐らく補足・追跡は容易であろう。
だが、怪獣は薫子が最初に見た変身前──鬼方カヨコとしての姿を持ち合わせている。
頭部の光輪(ヘイロー)こそ目立つが、人間の姿で巧妙に広い会場内を隠れられると発見は困難を極める。
忍者の監視の目となるぺしゃり烏や鼠坊衆の力を借りられない以上。
彼女が大怪獣として悪事を働くまでは、後手に回らざる負えないのがもどかしい現状。

「一気に真反対(ウラ)まで逃走(トンズラ)したり、連続で使える無法(チート)は早々ねェだろうし
 転移(ワープ)出来てもそう遠くにゃ行ってねー筈だ。ここら駆け回りゃ近いうち遭遇(あ)えんだろ。」
「すぐ会えてもまたええとこで逃げられたら敵わんで。
 こっちはいっぺんはぶちのめしとるし、ウチら見たらすぐ跳んで逃げるやろアイツ」
「と、なると怪獣(デカブツ)を逃がさねー手段も見つけなくっちゃだな!
 っても、んな丁度(ピンポ)で特攻(メタ)れるもん都合よくあるとは思えねーが…」
「せやろか。好き放題出来る能力が野放しになってるなら、その分お灸据えるもんもあるんとちゃいますの?
 例えば、達者な演説してはった兄(あん)さんの能力なんていい例や。
 洗脳し放題やけど解除の手段はない、なんて全然フェアちゃうやろ。
 それを何もせんと黙認しとるなら主催者のやっとる事ちぐはぐ過ぎへんか?」

少なくとも無数の制限や強化アイテムでバランス調整を施している点を鑑みるに。
個々人の能力一つでやりたい放題出来る環境にはなっていない。
羂索達が飽くまで殺し合いを公平に催したいならば。
無法とも思える能力を無力化する支給品や能力が用意されるのが妥当。
すなわち、二人が頭を悩ませる洗脳や転移の対抗札も必ず存在すると考えるべきだ。

「成程(なる)だぜ。つまりは主催が公平(フェア)意識してんなら探しゃそのうち出る。そういうこったな!」
「まあそういう事やけど、なんやざっくりし過ぎやないの?」
「複雑(ムズ)い事は熟慮(かんが)えられる仲間と合流してからだ。
 とにかくオレらは病院を目指す!一般人(パンピー)は救助!仲間と合流して!悪党はブッ殺す!!
 これ位単純明快(さっぱり)してる方が身軽で動きやすいだろうぜ。」
「ま、確かにせなあかん事山済みやしね。きびきび動いて人探さんと話にならんわ。」

目的地と方針を定めると、右龍とサルファは急ぎ北上を開始した。
兼ねてより速さには自信ありの両名。多少の弱体(デバフ)が身体を蝕もうとその速度は健在。
時折NPCが往く手を阻むも、地を駆ける二閃の稲光を止めるには至らない。
群れをなし善良な一般人を脅かす害悪を片手間に駆逐しながら、参加者を捜索する二人。
怪人怪物では全く抑えられなかった探索であったが、突如としてその歩みは止まった。


319 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:16:05 S8/8tWvs0

「気づいたか、薫子っち。」
「ウチらと毛色はちゃうけど魔力っぽい気配を感じる。オッサンは?」
「薫子っちみてーな特別な魔力探知(カン)はオレにゃねぇが…。
 色々鍛えてっからよォ、嗅覚(ハナ)は利くモンだぜ。…こいつァ血の匂いだ。」

魔法少女として備わった感性と忍者の卓越した五感が異変を感じ取る。
一点から漂う異質な気配と嗅ぎ慣れた惨劇の臭気は進路を変える要因として充分。
ホットラインに添付されたマップ情報と照らし合わせながら出所を探る。

「この方角はスタジアムか。丁度見えて来てんぜ。」
「ホンマや。しっかし、何の為にわざわざあんなもん建てたんやろか。
 どう考えても金の無駄やろうに。殺し合いで仲良く球遊びでもしとけいうとんのか」

参加者が一同に会し、サッカーや野球に興じる超次元な映像が一瞬脳裏を過ぎる。
アホか、と下らない妄想に毒を吐き、思考を現実へ戻す。
事件の気配があるならば、馳せ参じ無ければ正義の味方の名折れ。
言葉を交えずとも二人の意志は合致し、稲妻の如き俊敏さで現場へと急行する。

現場に近づくにつれ、濃度を増していく血の匂い。
スタジアムの前に聳え立つ大階段に到着する頃には。
嘔吐きたくなる程の濃く醜悪な臭いをサルファにも克明に嗅ぎ取れる程に強まっていた。
上段から下段にかけて滴り落ちる赤い川が最上部の惨状を想起させる。
一足跳びに階段を飛び越え、その先に待つ地獄と呼称するに足る惨劇を見た。

「なん……やこれ────」

視界いっぱい、見渡す限りの血、肉、そして首。
人から生み出された"赤"を塗り広げるかの如くばら撒かれた肉片。
恐怖で固定された生首の表情は、当時の壮絶な状況を物語っており。
出入口を取り囲む死肉の山は外部からの介入を拒むバリケードのようだった。

「刺青、短刀に麻薬(ヤク)…典型的な極道だな。腕輪(レジスター)は見当たらねぇ。
 つーてぇとコイツらはNPC(モブ)で間違いねェだろうが…」
「随分と趣味が良ぇ輩がいはるようやね。──…ほんま胸糞悪いわ…」

肉の海を平然と直視しし、掻き分けながら遺品や死体の検分を進める右龍。
その所作には一切の動揺が見られない。
顔を顰めるばかりの自分との違いは、間違いなく潜った修羅場(けいけん)の差。
真紅に染まった凄惨極まる光景も、忍者にとってはまだ日常の範囲内。


320 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:18:30 S8/8tWvs0

暴力性、残虐性。
そういった野蛮な類に一番耐性のあると思っていた自分ですら。
悪意の残骸だけでこうも堪えるのならば。その源流に直接晒された時。
はるかや小夜はこの先も正義のヒロインとして戦い抜く事が出来るのだろうか。
一般人であるうてなは世界で生き続ける事が出来るのだろうか。
悪意に満ちた世界で闘う遠く離れた友人達。そのこれからの道程に一抹の不安が過ぎる。

(…何勝手に想像して勝手に呑まれそうになっとんねん。それこそ一番アカンやろ)

「薫子っち、ちょっとキツいかもだが、これ見れっか。」

サルファの傾いた心情に気遣うように右龍が呼び掛ける。
此処で引くのは相棒に毅然とした態度で方へ向かう。
入口に立て掛けるように放置された背中が曝け出された極道の死体。
五体満足──首が無いので、四体満足か。
比較的原型の残った死体には刺青とは別の無数の切り込み線が刻みこまれていた。
無造作ではない、規則性を持った切り口。
唯の裂傷にしか見えないそれは、目を凝らすと何か文字のようにも見えた。
日本語でも英語でもない、異邦の言葉。理解出来たのは、黒幕らによる調整故か。
乱雑な字体から、読み取れた文字はただ一言。

『中で待つ』

「どーやら挑発(おさそい)みたいだぜ。突入(いけ)るか?」
「正直に言うなら関わりたないのが本音や。けど、こんな真似しおるアホたれを野放しにしとけるかいな」

グロテスクな視覚情報を通じて垣間見た、悍ましき殺し合いの世界が内包する悪意の一端。
エノルミータとの対決で女幹部たちに感じる不快感が如何に生温く穏当なものであったかと錯覚する程に。
どこまでも暴力的で凶暴な悪意の形。
NPCとは言え、姿形は人そのもの。仮にも同族相手に人は此処まで残酷になれるのか。
狂気じみた暴力性の発露を躊躇なく実行出来、中規模集団を皆殺しにする実力を持つ人物。
NPCに留まらず、罪なき参加者の元にもその牙を剥けるのならば。
優しき世界に生きる大切な友にその穢れた悪意を向けるのならば。

(させへんわ)

何がなんでも絶対に守り通す。
元より殺し合いと認識した時点で覚悟はしている。
良い子のみんなに顔向け出来ない汚れ役。
純真無垢で最も正義のヒロインらしいマゼンタにも。
最近は変態チックだが高潔な意志を持つアズールにも任せられない。
トレスマジアでそれを担えるのは、性質が"向こう"寄りな自分位なもの。

(はるかや小夜、うてなはんには絶対向けさせへん。)

やられっぱなしは許せない。舐められたら徹底的にぶちのめす。
相手を殴り倒すのが気持ちいい。外面は守ってはいるが、気性の荒さが見え隠れする。
なんと野蛮なことか。清廉潔白でおしとやかな魔法少女向きではない。
殺す気で来た相手の命を奪うのに怖気づいて、いい様にやられるなど真っ平ごめん。
それで友を傷つけられ、悔しい想いをする位なら、例え拳を血で汚す事になっても───。


321 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 00:54:25 S8/8tWvs0
失礼いたします
現在PCが落ちまして投下が出来ない状態にあり、大変勝手ながら投下を一時中断させていただきます
早朝までに復旧目処がたたないようであれば予約含めて破棄致します。この度はご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございません。


322 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 06:06:08 S8/8tWvs0
失礼いたします。
復旧いたしましたので、遅ればせながら投下を再開させていただきます。
問題がありましたら、予約ごと破棄させていただきます。


323 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 06:07:36 S8/8tWvs0

「…オイオイ〜!全身硬直(ガチゴチ)じゃねェか薫子っち〜!
 もう少し弛緩(リラックス)してかねーと土壇場で失態(ミス)ッちまうぜ〜?」

突如華奢な肩にかかる強烈な圧力。
魔法少女でさえ大きくよろける腕力で両肩を叩かれ。
昏く沈みかけた意識が、痛みで一瞬にして現実へと浮上する。
その後、子が親に純真な心でするように屈託のないにこやかな笑顔でもみもみと。
骨太な巨腕に似合わぬ優しい手付きで肩を揉みしだき始めた。

「ちょ!何急に触ってとんねん!手付ききしょいで!」
「──怖ぇか?薫子っち。」
「な…怖ないわ!アホぬかしなや!」
「虚像(ウソ)が稚拙(ヘタ)だな〜おい。極道の山見た時の反応みりゃ一発(パツイチ)で分からあ。
 それによ、気付かなかったのか?ドアの鏡越しに完璧(ばっちし)映ってたぜ。
 糞(クソ)みてーな現実に破れかぶれで神風(とっこう)しようとする悲痛(やけっぱち)な面がよ。」

あんなしかめっ面男館(ホスト)じゃなくても楽勝で分かるぜ、と口角を挙げる右龍。
醜い泥を被ってでも、穢れ無き友の為に誰かを殺す事。
その罪と迷いに頭が一杯になっていたあの時のサルファは、取り繕う事など頭から抜け落ちていた。
例え取り繕えていたとしても。どれだけ身体能力に弱体(デバフ)が掛かろうとて。
少女(オンナ)の感情の機微を見通す艶(い)い男の眼は決して曇る事はない。

「安心しな。美人(マブ)い魔法少女(ヒロイン)の手は汚させやしねぇ。
 黒幕共が強いやがる理不尽なんかに薫子っちの人生(ミチ)歪ませたりしねぇ。」
「オッサン…。」
「魔法少女(かおるっち)じゃ出来ねぇ分は忍者(オレ)がやる。
 忍者(オレ)一人じゃ力不足な部分は魔法少女(かおるっち)が補う。
 忍者と魔法少女──俺ら"二人"で殺し合いをブッ壊す!
 俺達は忍魔同盟(タッグ)だろ?だから抱え込まずドンドン頼ってくれや」
「…せやな。ホンマや。ひとりでガチャガチャ考えて…何の為の同盟やっちゅー話や。」

実にシンプルで当たり前の解決手段だろうか。
魔法少女の矜持を守れなくとも、仲間と友を救い出す。
そんな風に自分で背負い込もうとしていたが。たかが一人に何が出来る。
単独では怪獣相手に死んでいたちっぽけな身だというのに。
それでも、迫り来る困難や現実を打破する為に、自分達は組んだのではなかったか。
パチンと両の頬を叩いて気合を入れ直し。
凝り固まった心に喝を入れてくれた相棒に礼を返すと忍者は爽やかな笑顔で返した。

「ウチは友達(ダチ)を助けに行きたい。でも、近所の悪党はきっちりブッ潰す!
 速攻ぶちのめして次いくで!力貸してくれるか、オッサン!」
「応!任せときな!楽勝で勝てなきゃ怪獣(デカブツ)共も忍殺番長(カタキ)だって倒しゃしねー!」

のしかかっていた重い足取りは何処へやら。
取り戻した勢いをそのままに、狂気の待ち受けるスタジアムへと突入する。
観客席がずらりと並ぶスタジアム内部。
外部と同様、その壁面や床にはペンキを無造作にぶちまけたかの如く。
皆殺しにされた極道達も血や肉片が散乱する。
猟奇的な光景などに今更怯む事なく、通路を闊歩し選手入場を果たした先でその男は立っていた。


324 : ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 06:08:16 S8/8tWvs0

「待ちかねたぞ」

ヴィジュアル系バンドのボーカルのような奇抜な髪色と機械仕掛けの左腕が特徴的な細身の男。
サッカーボールを転がすようにNPCの生首を足蹴にしながら待ち構えていた。
名も知らぬ怪獣少女、鬼方カヨコのような無機質かつ無感情な様相とは正反対。
真夏の太陽から降り注ぐ熱波にも似た、肌を突き刺す荒々しい殺気。
男の出自やスタンスなど問うまでもない。誰の目から見ても、間違いなく"乗ってる側"の人間だ。

「応(おう)来てやったぜ!待たせて悪かったな。
 それでテメーか?外(おもて)で挑発かましやがったのは───」

言葉は不要。返礼代わりに返すは痛烈なミドルキック。
ボールは生首。その威力たるやプロ顔負けの必殺蹴球(シュート)。
対話の姿勢に唾吐き捨てる奇襲を、忍者は極太の片腕でキャッチ。
超人じみた威力を受けても微動だにせず、その威力を完全に殺した。

「いい反応だ…悪くねぇ!」
「コミュ障にもほどがあるやろ。流石大層な趣味してはるだけの事はあるわなぁ」
「良蹴球(ナイスシュート)だぜ、悪党!ただこれだけは聞かせろや。
 外のNPC(モブ)と同じ真似、何も関係ねー一般人(パンピー)にもするかよ?」
「…それがおまえらの好みか…?なら、今すぐにでも殺(や)りにいってやる…!!」

そうザギが口角を吊り上げると同時、会場に二対の雷撃が迸る。
憤怒の拳を叩き合わせ、生み出される圧電の閃光。
華奢な身体に装着された、無骨で巨大な雷の腕。
両者から膨れ上がるは、純然たる殺意。
闘争を求め殺戮を繰り返し、堂々恐喝(ガジリ)をかます。
真っ黒な性根に正義の使者の腹は完全に決まった。
悪事(わるさ)を働く者あらば、忍者・ヒロインが来襲たりて悪を誅する。
100%『ブッ殺す』と決めた相手には堂々名乗る。
それが魔法少女・裏社会の流儀(ウラマナー)。

「"帝都八忍" 邪樹右龍」
「"トレスマジア" マジアサルファ」

「テメェはオレ/ウチらがブッ殺/潰す────!!」

「クク…はっ、ひゃはははッ!!
 殺す…!殺すか!!いい…いいぞ!そうでなくっちゃ待っていた甲斐がねェ!」

悪刀に刺激され、研ぎ澄まされた直感(カン)と気配(ニオイ)で分かる。
雑魚相手に不毛な殺戮を続け、時間を潰した一時は決して無駄ではなかったと確信を持って言える。
数だけはいたNPCの死体を手当たり次第にぶちまけ、メッセージを残す。
非戦闘員、消極的な者は死体の山を見ればまず近づかず、戦闘を避けようとする。
死体の山を踏み越えて尚、この地に辿り着くだけの度胸と気概を持った参加者。
それが正義を成す為か、自分と同じく欲求を満たす為かはどうでもいい。
求めるは一度始まれば、完全な決着がつくまで永遠に終わらない至福の死闘(じかん)。

「覚えておけ、オレの名はザギ。お前ら殺す男の名だ…」

二つの雷に呼応するかの如く、胸部のスパークが激しさを増す。
忍者と極道、闇の眷属達が生存競争を繰り広げる異世界。
その流儀を知ってか知らずか、ザギも倣い名乗りを挙げる。
邪魔が入ろうとも、暴走しようとも、命が尽きようとも。
殺し抜くと心に誓った相手に最期の相手の名を刻み込むが為に

「さぁ──おっぱじめようぜェッ!!」

闘技場と化したスタジアム。
この闘いに弱者はいない。強者と強者の喰らい合い。
無効試合(ノーゲーム)では終わらせない。
何方が生きるか死滅(くたば)るか。
さぁ──天にすら届きうる闘争を始めよう。


325 : HIGH VOLTAGE ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 06:15:05 S8/8tWvs0

【エリアG-11とG12の境目/スタジアム/9月2日午前7時】

【天川薫子@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(大) ダメージ(中) 
服装:学生服
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて 泥の指輪@魔人探偵脳嚙ネウロ 
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに巻き込んだクソッタレをぶん殴る
00:名乗りはかました。ザギはうちらがブッ潰す
01:病院へ向かい、制圧しておく。マゼンタらはおったらラッキー位やな
02:頭に輪っかつけてる連中にはロクなのがおらんな
03:知り合いとの合流。優先はうてな(一般人)>トレスマジア。なんでうてなはんだけおんねや?
04:あの怪獣(=セレブロ)は絶対に倒す。対抗手段も確保しときたい。
05:殺しとなったら専門家(オッサン)に任せる。その分ウチは敵をぶちのめすだけや。
06:騒がしいオッサンやけど強いな。これで変身しとらんのやから恐れ入るわ
参戦時期:アニメ13話以降 おおむね原作24話以降
備考 鬼方カヨコが正気ではないと思っていますが、その理由や状況までは分かりません。
 現状としてはルルーシュのギアスを疑っています

【邪樹右龍@忍者と極道】
状態:疲労(軽)
服装:私服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを終わらせる デカブツ=セレブロは倒す
01:名乗りはかました。ザギは俺らがブッ殺す。
02:孔富より先に病院へ向かい、制圧しておく。お兄ちゃんが先にいるといいけどな。
03:薫子っちには殺しはやらせねー。それは忍者の仕事だ。忍っちの好きなプリンセスみてーな嬢ちゃんだが 見た目以上に気骨(ガッツ)があるな!
04:ルルーシュ・怪獣(デカブツ)対策に洗脳や転移を特攻(メタ)れるもんを探す。
05:女の子が怪獣みてーになっちまうとは。
06:忍っちの好きなプリンセスみてーな嬢ちゃんだが 見た目以上に気骨(ガッツ)があるな!
参戦時期:幼狂死亡友戯終了後から極契大壊嘯までの間 原作82話〜87話のいずれか
備考

【ザギ@テイルズオブヴェスペリア】
状態:悪刀『鐚』による活性化、テンションが上がっている
服装:いつもの+魔導器、服の内側 心臓部に悪刀
装備:ザギの双剣@テイルズオブヴェスペリア、魔導器@テイルズオブヴェスペリア、悪刀『鐚』@刀語
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:戦いを思いっきり楽しむ。優勝したら主催とユーリを殺しに行く
00:ウリュウ・サルファとの闘争を楽しむ。
01:スパナ! 陽介! 覚えたぞ!
02:痛みがねぇ…全然ねぇ…
参戦時期:闘技場(作中で言うザギ三戦目)で撤退後以降
備考
※本来魔導器はエアルがないと使えませんが
 本ロワでは使えます。
※魔導器が支給品枠として扱われてます。
※悪刀『鐚』による身体能力と再生能力の活性化が行われています。
 心臓部から引き抜くか、悪刀の帯電が無くなると効果が切れます。

【NPCモンスター解説】
・極道@忍者と極道
…裏社会で悪事をかます、一般極道。身内には甘く、それ以外には非常に厳しい。
自らの悪事に無頓着であり、自分達を理不尽に虐げられるか弱くい存在であると自認している。
極道技巧(スキル)を持たず、戦闘力は銃や短刀持った一般人と同程度だが。
一人一枚所持している地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)を使用する事で身体能力と再生能力が向上する。
会場全体を縄張りとして認識しており、参加者を見れば自分達のシマに無断で侵入する敵とみなし、恐喝及び襲撃を行う。
地獄の回数券の使用関係なく、生首になってもしばらく普通に喋ったりもする。
使用前であれば、地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)@忍者と極道をドロップする。


326 : HIGH VOLTAGE ◆TruULbUYro :2024/12/25(水) 06:17:09 S8/8tWvs0
投下終了です。
この度は此方の不手際でご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした。
対応に対して問題ございましたら拙作は破棄をさせていただきます。


327 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:22:22 OREHLF1E0
皆さん投下乙です、自分もゲリラ投下します


328 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:23:21 OREHLF1E0
『これよりこのバトルロワイヤルはより一層加速していく!
最強のNPCモンスターも投下され、君たちスタンスに関わらずは否が応でも戦わざるを得なくなることだろう!
掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』

「…一ノ瀬宝太郎…宝太郎くんや羂索ってあの脳みそに続いて、あのクルーゼって仮面の人も『ガッチャ』…何かの重要なキーワードかしら?」

放送を聞いた少女、柊真昼は呟く。
想い人たる一瀬グレンと同じ読み、「ノ」が無いだけの苗字を持つ青年が言っていた『ガッチャ』について思考しつつ、まずは名簿を確認する事と彼女はした。

(クルーゼは、名簿の順番には一応意味があるって言っていたけど……そう、グレンもシノアも、暮人兄さんも居ない、巻き込まれたのは私ひとりだけみたいね。なら遠慮なく皆殺し出来るわ。
…柊性が、篝ちゃんにうてなちゃんと2人居るけど……順番に意味があるという点を考えると、私の知る『柊家』とは無関係と見た方がよさそうかな?
となると…柊家が関わってる線は薄いか。だって関わってるなら…よりにもよって私だけを、柊家の筋書き通り死ぬ運命にある私だけを巻き込むのはおかしいから。
…なにか代替出来る方法でも見つけたとか、大幅に筋書きを変える必要が出来たとか、柊家ではなく百夜教や真祖達の方が関わってるとか…そういう線もあり得なくもなさそうだけど…今の段階じゃこれ以上考えても意味はなさそうね)

グレン達が巻き込まれてないことに内心ホッとしつつ、推測の果てに行き詰った為真昼は一先ず思考を打ち切る。

「…やるべき事は変わらないわ。とりあえず引き続き他の参加者を探して、見つけたら最初から、全力でやってみようかしら」
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

そう真昼が言ったと同時に、付近の民家にあるテレビから響き渡る声。
ルルーシュの一連の演説が始まり、そして終わるまで真昼はそれを黙って聴いていた。

(……あのルルーシュって彼は、私と同類ね。
何もかも敵に回して欺いてでも、成し遂げたい何かを持っている…さしずめこの場合は、自分やそれに従う者達を礎に、真っ当に主催者に抗うつもりな人達を対ルルーシュ勢力として纏めさせた上で、見定めたい…と言った所かしら。
そうすれば後に残るのは、私みたいな殺し合いに乗ってる人達だけ、と。
…まあルルーシュ達を倒す為だけに、殺し合いに乗ってはいるものの対ルルーシュ勢力に協力するような人が居ないとも限らないけど)


329 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:23:51 OREHLF1E0
「…ただ、あのニーナって子が殺された時の反応からして……私程人でなしじゃなさそうだからその点がどう転ぶかわね。
…これが殺し合いの場じゃなきゃ、見定めに行ってみるのも悪くはなかったんだけど……この力を手放す訳にもいかないから」

真昼の方針は変わらない。優勝して自らの望み…普通の世界で、普通の女の子として想い人やたったひとりの妹と共に生きたいという願いを叶えるために、全てを皆殺しにするという結論のままだ。
それは元の世界では決して叶わぬ願い。死の運命を定められ、同日に世界は一度滅ぶ…それが柊家の望む筋書き(シナリオ)。水面下で抗えるだけ抗ってはいるものの、その運命を自力のみで変えるまでには至らない筈だった。
だがこの殺し合いで最後の一人になれば、全てをひっくり返す事が出来る…その為にはライダーの力を手放す訳にはいかないのである。

「…レジスターやバグスターウイルスをどうにか出来る人が居たら、その時は話は別だけど。
それと…薫ちゃん、多分益子薫かな?彼女の付近に名前がある子に会ったら…彼女が芳佳ちゃんを殺しちゃった事を伝えてみて、どんな反応をするか見るのもいいかも、っ……!」

等と性格の悪い事を考えつつ、自分めがけて放たれた一撃を軽々と避ける。
真昼の視線の先には、口から角のような物を生やした虎の姿があった。

「…ヨハネの四騎士の遺伝子持ちの実験体…キメラね。こんな物まで、羂索達はNPCとして再現出来るなんて。
…ただ、1体だけなんて私を舐めているのかしら?」

先程は全力でやってみようと言ったものの、明らかに参加者ではない相手に出す全力は彼女にはない。
ましてや相手が、4体揃ってなお、鬼呪装備を持った自分ひとり殺せず犯せなかった存在なのだから尚更であった。
故に変身はせず、ノ夜を縦と横に振り斬撃波を放つ。
撃たれた斬撃波はキメラを襲い、四等分へと分けられそのまま、キメラは活動を停止した。

「…てっきり、私の知ってるキメラより強化とかされてると思ってたんだけど…これなら真っ二つにするだけで十分だったわね」

形態を変化させる間もなく、自己再生出来ない程の威力を以てキメラを屠った真昼はそうごちる。

『あなたを殺さないよう犯させることもできますよ』
「…まあ私にあっさり負けるくらいだから、余程痛手を受けるか、数の利で襲われるか、不意打ちに引っかかるか、可哀想な事に巻き込まれた一般人とかでもない限りは無理でしょうね」

百夜教の男が、教団の力を示す為にと4体のキメラを自分に差し向けた際言ってきた悪趣味な言葉を思い出しつつ呟く真昼。

『…これでもヒーローに憧れてんだ、お前みたいな奴放っておく選択肢はねえよ』

そんな彼女の脳裏に次に浮かぶは、相対した小柄な剣士が言っていた言葉。そして自らの策にまんまと引っかかり、手を汚した少女益子薫の姿だった。


330 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:24:15 OREHLF1E0
(…そういう趣味は持ってないけど、せっかくだから薫ちゃんの居た方に誘導して……ってするのもよかったかも。
…あのちっちゃい身体で、めちゃくちゃにされたとして…それでも薫ちゃんはあんな事を言えるのか…ヒーローってものへの憧れを持ち続けれるかは……)
「…まあ、もう倒しちゃったし関係ないか。NPCだから別の所に湧いてるかもだけど…その時はその時ね」

呪符を用いて精神に干渉した上で、そういう欲望を揺さぶったり煽ったりはするものの、真昼はそういう類の悪趣味は持ち合わせてはいない。
…ヒーローへの救いを期待できない身であった真昼からすれば戯言に過ぎないにも関わらず、どうにもその憧れを彼女が成せるかが気にかかっていたせいなのか。兎も角そこから思考を切り替えた真昼は、民家へと入ろうとするも……それは叶わず、目前に広がるはクリスタルと雷。
咄嗟に真昼がソロモンへと変身を遂げたその数瞬後、『エクスプロージョン、ナウ』という音声と共に爆発が真昼目掛けて襲って来た!

----

「あー、これ変身してなきゃ死んでたかもね」

どうにか回避しようと試み直撃は避けたものの、爆発が掠りそれだけでもそれなりに衝撃と痛みが真昼へと伝わる。
態勢を立て直しながら口では軽そうに言うが、視線は目前に居る5体の敵を見据え放さず、警戒を強めていた。

真昼の前に居るのは、世界を作り変えし金色の魔法使い、仮面ライダーソーサラー。
液体金属の生えたドラゴン、外宇宙から飛来した真竜の尖兵たる帝竜、その亜種であるトリニトロ・オルタ。
全身が黒色となっている人型兵器、かつてソレスタルビーイングに悲劇をもたらした機体、その複製機に擬似太陽炉を積んだガンダムプルトーネブラック。
ネウロイコアを積んだ自律人型兵器として秘密裏に造られ、魔女(ウィッチ)に代わる新たな戦力となるはずだった機体、ウォーロック。
顔が無い人間のような上半身とスカートめいた長さの下半身を持つ、宇宙から飛来した美しき金色のケイ素生命体、フェストゥムの一種スフィンクスA型。

『あなたはそこにいますか?』

5体の内、真っ先に行動するはスフィンクスA型。自らの問いにいると答えた相手は同化しにかかり、いないと答えた相手はワーム・スフィアーで殺害しようとする。その習性も、主催者達は忠実に再現していた。

(…居るかどうかなんて、見れば分かるでしょうに…いや、文面通りとは限らない。もう少し考えて…っ、答える暇は無さそうね…!)

どう回答するか真昼は思考するも、他の4体が攻撃を見舞って来た為中止、無回答のまま迎撃へと移る。
ソーサラーは先程同様、指輪をドライバーへとかざし機械音声を響かせながら爆発を放った。乗じてプルトーネブラックはGNビームライフルを構えて発射。ウォーロックは両腕から機銃とビームを同時に斉射し、トリニトロ・オルタは全体攻撃かつ炎属性のヒートボールを放つ。
クリスタルにより限られた範囲の中に飛び交う弾幕の嵐を、持ち前の身体能力に反射神経、それにソロモンのスペックも併せて回避し、またある時はノ夜やカラドボルグで真昼
は切り払った。


331 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:25:06 OREHLF1E0
(…これは一網打尽を狙った方が……不味い気がする、避けて……!?
…NPCがこの強さって、ゲームバランスって言うのかしら…おかしくない?それともアレが、クルーゼが言ってた最強のNPC…??
…どうなのかは知らないけど、真っ先に倒すべき相手なのは分かったわ)

そんな中アクションを起こすはスフィンクスA型。黒い球体を発生させ、真昼目掛けてそれを放つ。
直感でくらえばただでは済まないと察し回避に動くと、着弾地点に在った地面が範囲分丸ごと…空間諸共に消し飛び、真昼は驚愕を隠せないでいた。
推測をしつつ、最優先撃破対象と定めた上でカラドボルグで斬りかかるが交わされる。
ならばとノ夜の斬撃波を打ち間髪入れずに、オムニフォースワンダーライドブックを閉じドゥームズライドを1回押し発動。赤黒い衝撃波を掌から放ち畳み掛けようとするも……どちらも避けられた。
それならともう一度、ドゥームズライドを1回のみ押して隕石を召喚、スフィンクスA型の逃げ場を無くすように動かしつつ他の4体も牽制していくが…まるで全て読んでるかのように尽く避けられてしまう。

(…まさかこいつ、心でも読んで…!?…なら、こうしてっと)

推察した上で回避や防御に徹しつつも真昼は、読心しても避け切れないだろう範囲に広がる攻撃で攻撃を決める。
ライドブックを閉じドゥームズライドを2回押す事で、カラドボルグを巨大化させたような紫色のエネルギー体を生成、無心で振り回し全体にダメージを与えた。更にまたもやドゥームズライドを2回押し、空中にカラドボルグを無数に召喚。そのまま斉射して降り注がさせる。
1体に対して集中して放つのではなく、無差別に放つ事で読心による回避をし辛くさせていた。範囲攻撃な都合自らにも降りかかるものの、容易くそれを回避。
そしてダメージが蓄積したタイミングでトドメと言わんばかりにソロモンキュイラスの働きで引き出したライドブックの能力を行使し、獄炎と空間断裂を発動。それに巻き込む事でスフィンクスA型を沈黙させた。

「まずは1体、って所かしら。じゃあ次は……!?…死に際にまで使ってくるとはね。じゃあ次は…」

しかしスフィンクスA型は黒い球体…ワーム・スフィアーを自己を中心として放ち周囲を巻き込む形で自爆。
咄嗟に避けにかかった為助かったものの、直撃を受ければソロモンの装甲のお陰である程度耐えれはするが痛手になっただろう。
兎も角思考をそこで切り替えて、球体に巻き込まれ痛手を負って、再生しようとしているトリニトロ・オルタ目掛けてカラドボルグで斬りかかる。

どういう訳か単調に攻撃を繰り返すしかしないソーサラーのエクスプロージョンを避けながらライドブックを閉じ、ドゥームズライドを1回押して掌とカラドボルグの刃から同時に赤黒刃を発射。
そして2回連続で操作して、赤いエネルギーを刃として打ち出す。また纏わせたままに直接斬りに行った上で、畳み掛けるかのようにまたもやドゥームズライドを1回押し隕石を集中して直撃させ…トリニトロ・オルタも沈黙。何かしようとしたのを見て真昼は間髪入れずにノ夜を振い斬り裂き、何もさせずにトドメを刺した。


332 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:25:43 OREHLF1E0
「…これで2体目。じゃ、次は…!」

残りはひたすらに同じ攻撃しかしてこない木偶の坊ソーサラー、半壊状態のウォーロック、GNフィールドの展開によりウォーロックよりは余裕のあるプルトーネブラック。
それを確認したと同時に、爆発やウォーロックの機銃やビームを避けながらソーサラー目掛けてノ夜とカラドボルグで攻撃、そして斬り伏せる。
それでもまた爆発攻撃を馬鹿正直にしようとしてきたソーサラーを蹴り飛ばしプルトーネブラックへとぶつけた上で、またもやライドブックを閉じドゥームズライドを3回押す。

大量のカラドボルグを降り注がせながら、空間断裂を行使しソーサラーとプルトーネブラックを諸共に破壊した。いくらGN粒子によるバリアフィールドだろうと、展開する前に空間ごと裂かれてしまえばどうしようもない。

「…3体目と4体目。そしてこれで…はい、おしまい」

残ったウォーロック目掛けて、ドゥームズライドを一度押し赤黒い刃をカラドボルグから発射しながら投擲。更に掌からの赤黒い刃も放った上でノ夜での斬撃も撃ち…損傷もあり避け切れなかったウォーロックはスクラップとなった。
それと同時に、範囲内のNPCが全滅した為にクリスタルの防壁は解除。後にはスクラップと竜の残骸、そしてドロップアイテム2つが遺り、迷わず真昼はアイテムをリュックへと仕舞い、民家へと改めて入る。

----

「とりあえず…あの同じ動きばっかりしてきた単調な奴は、ベルトとか剥ぎ取れそうだし次似たようなのを見つけたら試してみるとして。…厄介な相手を纏めて倒せた報酬として…これは適正なのかしらね」

机に座り込んだ真昼はそう思案していた。
ドロップしたアイテムの内ひとつは、使用制限を考慮しても当たり寄りと言える。だがもうひとつは当たりかと言われると…判断に困るものであった。


333 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:26:05 OREHLF1E0
(せめてもうひとつくらい、落としてくれてれば違ったんだけど)
「…よりにもよって、私の元に、クリスマスケーキが落ちるとかどうなの?これは嫌がらせと見ていいのかしら」

机の上に置いている、キャラクターをデコレーションしたようなクリスマス用のケーキと、付属していたフォークとナイフを見ながら真昼はため息を吐く。

「…今すぐにでも、もうひとつの方を使ってみた方がいいんだろうけど……」

ここに至るまで他参加者とは遭遇出来てなかったのもあり、どこにつながるかわからない上使用すると6時間もの間再使用が不能となるらしい、どこだかドアとやらをとっとと使っておくべきだと真昼は思考を纏めようとし……襲って来たのは空腹感。
吸血鬼になってから食べ物の変わりに血さえ吸えればどうにかなるが、生憎とこの殺し合いに巻き込まれた時期の柊真昼はまだそこまで壊れてはいなかった。
空腹故に、思考が纏まるか怪しくなり始め……。

「…持って行っても食べるタイミングがあるかはわからない。それにここで食べずに、空腹のせいで隙を突かれて…なんてことになったら、ばかみたいよね」

結局、ケーキを食べる事となった。
……本来の歴史において、柊真昼は16歳のクリスマスに死ぬ運命にある。そしてそれより少し前に、彼女は吸血鬼となっている筈であった。
吸血鬼となってしまえば、人間が食べれる食事を受け付けなくなる。故に16歳となった真昼がクリスマスケーキを食べる事は本来なら、彼女には訪れる筈もないという訳である。

──様々な世界時間から参加者を巻き込み執り行われるこの殺し合いでは、例え他参加者の干渉や介入が無くとも、本来あり得ざる出来事・体験が起こり得る。
未来は未だ…白紙だった。


334 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:26:29 OREHLF1E0
【エリアF-6/民家の中/9月2日午前6時30分】
【柊真昼@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、柊家への怒り(再燃)、益子薫への微かな期待、空腹
服装:普段の学生服
装備:ドゥームズドライバーバックル&オムニフォースワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー、ノ夜@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
令呪:残り三画
道具:精神に作用する呪符×10@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅(残り8枚)、ホットライン、どこだかドア@ドラえもん、クリスマスケーキ(フォークとナイフ付属)@仮面ライダーエグゼイド
思考
基本:優勝して好きな人(グレン)と妹(シノア)と一緒に、普通の人間として生きれる世界を願う。
01:とりあえず今はケーキを食べて、ドアを使うのはその後。フォークとナイフは、洗って投擲用に持って行ってもいいかも。
02:令呪三画…侮れないわね。
03:薫ちゃん、あなたはその憧憬を貫けるかしら?ついでに名簿で薫ちゃんの近くにいる知り合いっぽい子達に会ったら、薫ちゃんが人殺しになっちゃった事を伝えてみる。
04:主催者達が柊家絡みの線は薄くなったけど…今は情報が足りないわね。
05:基本皆殺しだけど、レジスターの解析やバグスターウイルスの対処が出来る人なら話は別かな。
06:こんな状況じゃなかったら、ルルーシュとは1回話してみたかったな。
07:羂索に一ノ瀬宝太郎くんにラウ・ル・クルーゼ…『ガッチャ』に何の意味があるのかしら??
08:クリスマスケーキ、ねぇ……。どうせなら、グレンやシノアと一緒に食べたかったんだけど。
参戦時期:第一渋谷高校襲撃事件にて離反後、吸血鬼となる前の何処かから。
少なくとも漫画版7巻のInterlude〜生きる意味〜(第27話と第28話の間)よりは後。
備考:

【ドロップアイテム紹介】
・どこだかドア@ドラえもん
のぶドラ版のアニメあべこべの星
(元になった原作のエピソードやわさドラではあべこべ惑星というタイトル)
にて、ドラえもんが出したひみつ道具。正式名称は不明だがとりあえずこの名前とする。
のび太に使わせたものの、ドアの繋がった先は何処かもわからぬ断崖絶壁だった。

このロワでは一度使うと6時間の間使用不能になるものの、会場内の何処かにランダムで移動が可能という効果となっている。ただし繋がる場所次第だと落下して死んだり溺れ死んだり、戦場の真っ只中に放り出されたりするリスクもある。

・クリスマスケーキ(フォークとナイフ付属)@仮面ライダーエグゼイド
第12話であるクリスマス特別編 狙われた白銀のXmas!にて、永夢達が食べてたケーキ。
サンタクロースの帽子を被ったエグゼイド アクションゲーマー レベル1 の顔がデコレーションされており、また切り分けて食べる用にフォークとナイフが付属している。


335 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:26:59 OREHLF1E0
【NPC紹介】
・ヨハネの四騎士の実験体のキメラ(虎)@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
百夜教が造り出した、ヨハネの四騎士とやらの遺伝子を持ったキメラの虎型。口から伸ばす角のような鋭利な物が主武器。
対象を殺さず犯すことも可能らしいが詳細不明。
普段は虎の姿だが異形の姿へと変じる事が可能で、上野動物園にて放たれた際は再生力が脅威となったが鬼呪装備を手にしたグレンの前にあっさり敗北を喫した。
その後他のキメラ3体と共に真昼に差し向けられるも、後の展開的に殺すことも犯すことも出来ないまま纏めて真昼に屠られたと思われる。

・スフィンクスA型のフェストゥム@蒼穹のファフナーシリーズ
ケイ素生命体フェストゥムの、対象に『あなたはそこにいますか』という問を投げかけた上で対象の行動に合わせて同化orワーム・スフィアーでの殺害を行うタイプの個体。
フェストゥム特有の同化やワーム・スフィアー、また読心を使う他、死亡時にもワーム・スフィアーによる自爆を敢行する。
当初は出るたび多大な被害を齎していたものの、対策が成される度被害は抑えられ、EXODUS時点では雑魚に成り下がってしまっている。

・ウォーロック@ストライクウィッチーズ
ブリタニア空軍所属のトレヴァー・マロニー大将が独断かつ秘密裏にウィッチの代替戦力として開発していた機体…が組み込んだネウロイコアのせいで自我に目覚めそして暴走したもの。
ネウロイコア由来のコアコントロールシステムによりネウロイを制御下に置いて同士討ちを引き起こせる他、飛行や機銃やビームを両腕から発射が可能。
最終的には暴走した末、ネウロイでもウォーロックでもないナニカとなったのち戦艦赤城と融合するも撃沈された。

・トリニトロ・オルタ@セブンスドラゴンⅢ code:VFD
シリーズ最終作に登場した、帝竜トリニトロの亜種。打倒すべき敵のスケールが上がった都合中ボス扱いだがそれでも強い…ものの、どういうわけか今ロワではフォーマルハウトのスキルで蘇生召喚可能な原種のトリニトロより弱く設定されてしまっている。
原種同様自爆も可能だが、阻止させられる運命にある。
戦闘では炎属性の攻撃及び付与可能な火傷による状態異常と、自動回復による耐久戦が得意。

・ガンダムプルトーネブラック@機動戦士ガンダム00F
かつてプルトーネの悲劇を齎した第2世代型ガンダム、ガンダムプルトーネの複製機。
相違点はカラーリングだけでなく、動力が太陽炉から擬似太陽炉へと変更されており、また技術の問題で不能だったGNフィールドの展開が可能となっている。
武装はGNビームライフルとGNビームサーベル。
作中では2機登場しその内1機は00Fの主人公フォン・スパークに鹵獲され、色を複製元に塗り直された上で運用される。

・仮面ライダーソーサラー@仮面ライダーサモンライド!
NPCと化した世界を作り変えれる程の力を持ちし金色の魔法使い。
プレイヤーを捕捉次第、クリスタルケージを展開し特定の行動しか行わない存在。クリスタルケージの壁は余程の参加者でなければ破壊不可能、突破するにはエリア内に収まった全てのNPCを倒すもしくは洗脳・ハッキングなどで無力化、隷属下に置く等の必要がある。
ただし威力は通常の時の同じ行動より上がっている。

NPCなのでエクスプロージョンのリングによる爆発魔法の行使しかしてきません。


336 : ◆8eumUP9W6s :2024/12/25(水) 06:27:28 OREHLF1E0
投下終了します、タイトルは「Xmas-catastrophe」です。


337 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:45:09 DOPJEmIU0
皆さま投下お疲れ様です!
投下します。


338 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:45:23 DOPJEmIU0
もし人のいのちを救ってその人の人生をかえたなら もしかしたら歴史だってかわるかもしれないだろう?
ブラックジャック


339 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:45:56 DOPJEmIU0
「ーーアタシは生命を、諦めない…!」

「レディブラック……それがあなたの仇名(コードネーム)というわけね」
「へっ、いい名乗りじゃねぇか」

レディブラックの姿にネビュラマン(ヒーロー)を見出し、微笑む怪獣医(ドクターモンスター)
自信満々に名乗る姿に自分もこうありたいと見つめる女子不良(レディース)

そして――

「では、まず何処へ向かうか決めないといけませんね」

「「「……」」」

自分たち以外の場に響く声。
そして、見知らぬ少女。
3人は少女から距離をとる。

「……誰だ?お前」
「?。私は、柊シノア。”柊真昼”の妹です。そして、貴方の支給品でもあります」

流子の問いかけに少女はそう名乗ると、流子を指さす。

「私の……?」

片や流子も目の前の少女が支給品だということに戸惑いを隠せない。
少女は、そんな流子の様子をジッと見つめていると、ため息を吐き――

「はぁ……自分の支給品の把握もできていないなんて、とんだはずれの参加者ですね」
「なっ!……」

シノアの辛辣な言葉に流子は真っ赤にして、詰め寄ろうとするが、それをレディ・ブラックが遮る

「落ち着きなさい流子。こんな小さい子にムキになるんじゃないわよ」
「そうね〜〜。いくら女子不良(レディース)でも、小学生(ショーボー)相手に手を出したら擁護できないわよ。それと、怒りはお肌の敵」
「うっせ!……んじゃ、私の支給品ならお前は何ができるんだ」
「……?特に何も」
「はぁ!?」
「シノアちゃんはただの子供です」
「ったく、そんじゃ、ただのガキじゃねぇか。よくそれで人のことはずれだなんて言えるな」

シノアの説明に流子は呆れるようにため息をつく。
すると――

「なら、私を殺しますか?」

「「「……」」」

シノアの問いかけに三人は黙る。

「私は支給品としてこの場にいますが、大した役に立てるわけでもありません。それに私が、ある日どこかで死んでたとしても誰もきにしないでしょう?」
「お荷物はとっととポイするのがよいかと」

シノアは”本気”で口にしている。
それが分かるから三人は黙ったのだ。
そして、シノアは3人に語る。
自分と姉のことを。
自分の家である”柊”が行っている実験も含め。

「「「……」」」

「……なぁ。!!??」

シノアの語りに一段落がつき、流子がそれに合わせて、声をかけようとしたとき、それらは流れた。

『……現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。
おはよう諸君。
一応、はじめましてと言っておこう。
私の名前はラウ・ル・クルーゼ。
ザフト軍クルーゼ隊隊長にして、羂索から君たちプレイヤーの人選に関してかなりの裁量を与えられていた者だ』

『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

主催に参加者と放送が。

☆彡 ☆彡 ☆彡


340 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:46:19 DOPJEmIU0
放送が終わり、各自名簿を確認する。

「アタシの知り合いはいないわ……二人は?」
「私もいないわ〜〜不良少女(レディース)は?」
「私は……いたぜ。クソ!」
(マコ……無事でいてくれよ!)

流子は知り合いが巻き込まれていることに憤怒する。
満艦飾マコ……父の仇を探し求める中、転校先で出会ったクラスメイト。
始めは初恋の味泥棒の姉でただの一クラスメイトでしかなかったが、今では、大切な友達だ。
故に流子は怒る。このクソみたいな殺し合いを強制する羂索たちに。

(それと鬼龍院羅暁 ……もしかして鬼龍院皐月の関係者か?……まぁ、会ったとき問い詰めりゃいいか)
また、同時に鬼龍院羅暁の名も気になった。

「柊真昼……シノアの姉もいるわね」
「まぁ、この子が支給品としているなら、参加者としているのは当然ね」

名簿にシノアの姉である真昼の名を確認。
レディと孔富は当然とばかりに名簿に記載されていることに納得する。

「柊篝に柊うてなと柊性があるけど、名簿の位置から関係はない可能性が高いとみていいわね」
「ええ、放送で言っていた通り、名簿の並びに意味があるならそうでしょうね」

同姓の柊は柊真昼のほかにも記載されていたが、記載の位置から柊姉妹とは無関係であると予想する。

「地図を見ると……病院があるわね」
「医療に携わる者として向かうなら、そこは鉄板ね」
「ええ。ただ……アタシたちがいるのは、J2の霊園……病院とは距離が離れすぎているのが、やっかいね」
「私達の配置はおそらく意図的ね」
「ったく、どこまでも性根が腐ってやがるな!」

そう、3人がいるのは、地図の南にある霊園。
片や病院は北の方にある。
遠すぎる距離。
そう楽にいかせないという意図が透けて見える。

「でも、だからこそ、やっぱり目指すべきだわ」
「……そうね。殺し合いを強制しておきながら、掴め!最高のガッチャ!という参加者へ発破をかけるような言葉。どこかゲームのようにも聞こえるしね」

無駄足に終わるかもしれない。
だけど、何か攻略の手がかりがあるかもしれない。
移動の方針は定まった。

「では、行先は病院というわけですね」
「それと、柊篝さんと柊うてなさんですが、お二人の考察通り、私の”柊”とはおそらく関係ないかと」

行き先が決まるとシノアは3人の会話に入る。
そこで、流子は先ほどの会話が中断していたことを思い出すと、シノアに声をかける。

「おい、ガキ。さっきの話の続きだけど」
「ガキではありません。シノアちゃんという立派な名前があります」
「うっせ!生意気なガキはガキで十分だろ!」
「悪いけど、二人とも話は後よ」
「同感」

レディブラックと孔富の言葉に流子とシノアは周囲に目を配る。
NPCが周囲を取り囲んでいた。
ヨーロッパの何処かの村の服を身に纏っている。


341 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:47:04 DOPJEmIU0
「Un forastero! 」
「A avisar a los demas 」

「おいおい、なんだかイッてるような様子だけど、もしかして薬中か?」
「これは……操られている?」
「ええ。意識はないようだけれど、言葉を発することが出来ていることから脳は生きている。おそらく寄生体のようなものね」

2人とも医療の道に携わるだけあって、見抜くのは一瞬であった。
レディブラックの診断に孔富は同意する。
そう、この村人はもう既に人ではない。
ガナード。
寄生生物「プラーガ」に寄生された人間。

「Te cogi 」

鎌を持った村人がシノアに襲い掛かる。

「ガオ――」
「それを言うならグワーだろっ!」

流子はシノアにツッコみつつも守るため、言葉と同時に村人を蹴り倒す。
他の村人も動き始める。

死者が眠る霊園が騒がしくなる。

☆彡 ☆彡 ☆彡


342 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:47:18 DOPJEmIU0
「Agarralo」

「崇めろだぁ?誰に崇めろってんだ?」
「違うわ。これはスペイン語で”捕まえろ”と言ってんのよ」

流子の疑問にレディ・ブラックは説明する。

「んじゃあ、これもスペイン語なのか?」

流子は別の村人ガナードを指さす。

「Os voy a romper a pedazos」

「ええ、”八つ裂きにしてやる!”ね」
「まさか、”おっぱいのペラペラソース!”なんて聞こえたとかいわないわよねぇ?」

丁寧なレディブラックの翻訳。
そして孔富は、あきれたような口調で流子へ問いかける。

「お、おうよ!いくら何でも私がそんな破廉恥な聞き間違えをするわけねぇだろ!」

顔を真っ赤にしながら否定する。
……が。

(したのね)(したわね)(したのですね)

流子の返答にジト目で三者三様に反応を返した。

「それでレディ?どうするの?」

孔富の”どうするの”
それは、この場をどう切り抜けるという意味。
NPCとはいえ、”斃す”のかという意味。

「……いったでしょう。私は命を諦めない!」

言葉と同時にレディは、村人の身体に手を添える。
すると――治療する。

「治療するだけよ!」

「ア……アア」

治療の力が終えると同時に村人は斃れる。
だが、その表情はどこか安らぎのように見えた。

「素敵……」

孔富は素直に口に出す。

そう、レディ・ブラックの心の力”治療”
その力で体内のガナードを消滅させたのだ。
本来、既にガナードが成体となった場合は手遅れだ。
また、切除しようとするなら宿主は激痛に耐え切れず死んでしまう。
だが、レディ・ブラックの力により痛みなく取り除くことができた。
結果としては亡くなることにはかわりはないが、村人は安らかな最後を迎えられた。

これがとある外国のエージェントなら、ハンドガンで顔を撃った後蹴り倒す。
ショットガンで頭を吹き飛ばす。
といった手段で対応しただろう。
だが、レディ・ブラックことピルツ・デュナンはエージェントでも対テロ組織に所属している隊員でもない。
黒十字の看護部員として働き、また、人々を救うヒーローでもあるのだ。

今、目の前に居るのはNPCであるが、斃され、資金の足しにされる本来の役割(人生)を変えた。
確かに救済(すく)ったのだ。

「女子不良(レディース)ちゃん。私達がやるべきこと理解できたわよね?」
「……ああ!」

ならば、二人の役割は定まった。
救済(すく)う。
ただそのために。
動く。
理由はそれだけで十分だ。

☆彡 ☆彡 ☆彡


343 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:47:53 DOPJEmIU0
「もう……いなそうだな」
「ええ。そうみたいね。お疲れ様、レディ」
「別に……たいしたことじゃないわ」

労いの言葉にヒーローとして当然と返事を返すと、旅だった村人たちに向けて、静かに黙祷をする。

ごめんなさい
  こうするしかなくて
    せめてその道(未来)に安らぎを

「ふぅ……」

黙祷を追えると、レディ・ブラックはシノアに近づく。

「シノア。先ほどの問いかけだけど、答えはNOよ」
「それは、ヒーローだからですか?」
「それだけじゃないわ。看護師を目指す者としても命を軽々しく扱う選択肢はありえない」

レディ・ブラックは凛として宣告する。

「そうね〜、それに話を聞く限り、貴方のお姉ちゃんは貴方のことを想っているわ。きっと。」
「……?」

孔富の言葉に何を言ってるのですかと首を傾げるシノア。

「私にも兄がいたわ……とても不器用な想いをもつ兄が」
「あいにく私達は兄弟だけど、姉妹だって同じよ。私が断言する」

そう、兄や姉という生き物は不器用なだけなのだ。

本当はオレも怪獣――やりたかったなぁ……!!

本当の気持ちを押し殺す。
弟や妹のために。
不器用な存在。

「……」
(私に想いを?あの姉が……?)

シノアは黙って聞く。


344 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:48:10 DOPJEmIU0

「安心しなさい。”柊”は黒十字が必ず治す」
「……貴方と私の世界は違うのに?」
「大丈夫よ。羂索(あいつら)の力なら、そちらの世界に行くことも可能のはず」

そう、この殺し合いにために、多くの世界が巻き込まれていることが明白。
干渉が可能ならそれは絵に描いた餅ではない。

「それに……腕の立つDr.もいるしね」
「あら?もしかして私も入れてる?」
「当たり前でしょ。それと……先ほどのサポート助かったわ!相棒(サイドキック)」

レディ・ブラックの感謝の言葉に孔富は一瞬、間の抜けた表情を見せた後、微笑む。

「ま、これでも私、世界的名医だしね」
(ネビュラマン(ヒーロー役)も案外悪くないわね……)

「……悪事(わるさ)かましている奴には忍者が来襲(く)るのがお約束なんだけど……」
「いいわ。一度死すれど、これでも破壊の八極道。これを終わらせた後、忍者の代わりに柊に襲撃(カチコミ)して更生(ブッ殺す)だ」
「……いっておくけど、本当に殺すのは駄目よ」

――チラリ

レディ・ブラックと孔富が流子を見つめる。
”あなたはどうするんだ”……と。

「あー……悪かった。大人げなかったよ。だけどな、お前のその根性は私が叩き直してやるから、そこんとこ覚悟しときな!……よろしくな、シノア」
「まぁ、短い関係にならないことを願います」
「ほんと……可愛くないなお前」

そんな二人のやりとりを眺めるレディ・ブラックと孔富。

「あら、怖い。やっぱり女子不良(レディース)ね」
「あれは流子なりの優しさよ」

優しさ。
形は違えど、それはヒーローの条件


345 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:48:31 DOPJEmIU0
【エリアJ-2/霊園/9月2日午前7時】

【ピルツ・デュナン@SHY-シャイ-】
状態:疲労(極小)
服装:ヒーロー姿
装備:転心輪@SHY-シャイ- 、斬魄刀:肉雫唼@BLEACH
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。ヒーローとして手の届く人たちを助ける。それを終えたら、
   柊の闇を治療する。
01:怪獣医(孔富)の更生の行く末を見守る、更生させる。相棒としても先輩としても頼りにしてる。
02:病院へ向かいつつヒーローとして行動する
03:柊真昼に出会ったら救済(すく)う
参戦時期:74話
備考
互いの世界について簡単に知りました(キルラキル、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました

【斬魄刀:肉雫唼@BLEACH】
ピルツ・デュナンに支給。護廷十三隊四番隊隊長卯ノ花烈が使用した斬魄刀。解号は不明のため、口に出さなくても発動は可能である。鞘から巨大なエイのようなものが出現させ、人を乗せて空中を浮遊することができる。体内には治癒効果があり、怪我人を体内に取り込んで回復させつつ搬送することも出来る。卍解は現在は使用できない。※何かしらの条件で使用可能になるかもしれない。


346 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:48:54 DOPJEmIU0
【纏流子@キルラキル】
状態:疲労(極小)
服装:赤いジャージ
装備:万物切断エクスタス@アカメが斬る! 柊シノア(同行)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らねぇし、あの羂索とかいうやつはぶっ飛ばす
01:鮮血がいてくれたら探すのは楽なんだが……
02:鬼龍院皐月と決着をつけるのは元の世界に戻ってからだな
03:マコ……私と再会するまで死ぬんじゃねぇぞ
04:病院へ向かうか
05:柊真昼……ったく、どんなつらしてるか会うのが楽しみだぜ
参戦時期:14話、鮮血の断片を取り戻しに大阪に向かう最中
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました

【柊シノア@終わりのセラフ一瀬グレン、16歳の破滅 】
纏流子に支給。柊真昼の妹。四鎌童子と契約する直前に拉致された。しかし、参加者ではなく、あくまで支給品としてこの殺し合いにいる。


347 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:49:08 DOPJEmIU0
【繰田孔富@忍者と極道】
状態:疲労(極小)
服装:医師の服装
装備: ウルトラメダル@ウルトラマンZ、 ソードスキル:マチ=コマチネの念糸@HUNTER×HUNTER
   ソードスキル:ウルトラマンゼット@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:救済(すく)う。お兄ちゃんに怪獣役譲っちゃったから、今度は私がヒーロー役ね
   そして、これの後は、柊家に襲撃(カチコミ)
01:短い間だけれどよろしく頼むわね、レディに不良少女にシノア
02:忍者はいない……なら、心置きなくネビュラマン(ヒーロー)役をするわ
03:柊真昼にであったら救済(すく)う
参戦時期:死亡後
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、キルラキル)
シノアから柊家について簡単に知りました

【ソードスキル:マチ=コマチネの念糸@HUNTER×HUNTER 】
操田孔富に支給。念能力者ではないため、体力を消費しなければ使用することはできないが 、世界的名医である孔富と念糸での相性は抜群。糸の強度は長さと反比例し、1メートル以内なら、1tの位の重量を難なく吊れるほどの強度だが、念糸が手元から離れると強度は著しく落ちる。念糸縫合や拘束に追跡と応用の幅が広い。

【ソードスキル:ウルトラマンゼット@ウルトラマンZ 】
操田孔富に支給。ウルトラマンゼットに変身することができる。なおあくまでソードスキル扱いのため、ゼットと一体化しているわけではないので、ゼットと会話ができるわけではない。※現状では

【ウルトラメダル@ウルトラマンZ 】
操田孔富に支給。ウルトラマンの力を秘めたメダル。使用することで、ウルトラマンゼットは様々な形態へ変身する。ゼロメダル・セブンメダル・レオメダルと使用するためのウルトラゼットライザーが付属している。幼少の頃、兄弟でネビュラマンを視聴していたことから相性は抜群。兄に怪獣役を譲ったため、ネビュラマン(ヒーロー)になれるメダルが孔富に支給されたのは必然なのかもしれない。
本ロワでは、鬼方カヨコに支給されたゼットライザー同様、変身後のサイズは3mほどであり、攻撃の威力も本来のものより格段に劣る。
ご唱和ください我の名を!ウルトラマンZ!byウルトラマンZ

NPCモンスター

村人ガナード@ダイの大冒険
寄生生物”プラーガ”に寄生された人間。よってゾンビではない。
元はスペインの片田舎の村人で、彼らが会話する言語はスペイン語なのだが、とあるニコニコできる動画で、そのセリフが空耳として面白く聞こえると話題になったことがある。
ああ…中野バーガー…by村人ガナード


348 : 優しい言葉 ◆s5tC4j7VZY :2024/12/26(木) 23:49:21 DOPJEmIU0
投下終了します。


349 : 名無しさん :2024/12/27(金) 00:44:30 9K9aFeK.0
真贋バトルロワイヤル参加者一周おめでとうごさいます。
簡易ですが感想を。
ガナードさん……(ノ∀`)
あの姉がこの状況を知った時が楽しみですね!
3人の探索楽しかったです。
48話の右龍の病院周りの懸念が杞憂で笑う。
深夜の投稿お疲れさまでした。


350 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 01:22:29 2ywzOJlw0
感想ありがとうございます。
嬉しいです。また励みになります。

優しい言葉
NPCがいるロワだからこそ出来ることをしたいなと。
あくまで個人的な考えですが、ヒーローとは、救済(すく)うが本質だと思うので、村人たちはピッタリだな…と。
バイオ4のEDで徐々におかしくなる村の人々の様子を初見で見たときは、胸が痛みました。
まぁ、プレイ中は容赦なく斃して資金稼ぎをしてしまいますが(笑)

今回、原作の真昼の行動原理を知ったとき、美味しくなるかもと思い今回の状況を考えました。※あくまでリレー作品なので今後どうなるかわかりませんが
48話の右龍の病院周りの懸念が杞憂で笑う。
↑ロワあるあるですね!
時間がかかりましたが、投稿できほっとしております。


351 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/27(金) 01:54:03 2IF3TJh60
◆s5tC4j7VZYさん、こんばんは。
企画主です。
作品の投下、ありがとうございました。
しかし、支給品扱いの柊シノアなのですが、オープニングの羂索ユメの

「このリュックは魔戒騎士の纏う魔法衣と同じ素材で出来ていて、生物以外はどんな物でも収納する事が出来る!
支給品と合わせて上手に活用してくれ」

という台詞と矛盾してしまうので、非常に心苦しいのですが加筆修正、それが不可能な場合は破棄をお願いしたく存じます。
何卒ご理解とご協力をお願いいたします。


352 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:41:44 2ywzOJlw0
◆Drj5wz7hS2さん
返信が遅くなり申し訳ありません。
まず、始めにオープニングの読み込み不足だったことすみません。
柊シノアの扱いですが、支給品ではなくNPCとしての扱いで冒頭から村人達と戦うまでの部分を加筆修正いたしました。

投下します。


353 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:42:13 2ywzOJlw0
もし人のいのちを救ってその人の人生をかえたなら もしかしたら歴史だってかわるかもしれないだろう?
ブラックジャック

「ーーアタシは生命を、諦めない…!」

「レディブラック……それがあなたの仇名(コードネーム)というわけね」
「へっ、いい名乗りじゃねぇか」

レディブラックの姿にネビュラマン(ヒーロー)を見出し、微笑む怪獣医(ドクターモンスター)
自信満々に名乗る姿に自分もこうありたいと見つめる女子不良(レディース)

そして――

「……」

「「「……」」」

鎌を持った少女が歩いてきた。
それは、まるで幼い死神のようであった。
3人は少女から距離をとる。

「……誰だ?お前」
「……?」
「お前だよ!お・ま・え!」

少女は不思議そうに首を傾げると流子はツッコみのように鋭く少女を指さす。

「柊シノアです。NPCです」

少女は自身がNPCだと自己申告してきた。
三人は少女がNPCだということに戸惑いを隠せない。

「NPCって……あれか?羂索(あのヤロー)がいってた?」
「怪獣(モンスター)にしては、随分可愛らしいわね」
(もし、この子が本当にNPCモンスターなら、救済なき医師団(あの子)達や下っ端極道達もNPCモンスターとしている可能性もあるというわけね……)
「たしかに可愛らしいですが、参加者ではありませんよ?」
「自分で自分を可愛いというな」

少女は、そんな流子の様子をジッと見つめていると、ため息を吐き――

「はぁ……ひがみは老いを加速させますよ?」
「なっ!……」

シノアの辛辣な言葉に流子は真っ赤にして、詰め寄ろうとするが、それをレディ・ブラックが遮る

「落ち着きなさい流子。こんな小さい子にムキになるんじゃないわよ」


354 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:42:50 2ywzOJlw0
「そうね〜〜。いくら女子不良(レディース)でも、小学生(ショーボー)相手に手を出したら擁護できないわよ。それと、怒りはお肌の敵」
「うっせ!……小学生といってもNPCモンスターなんだろ?んで、そんじゃあ、可愛いモンスターさんは私達を襲いにきたってことでいいのか」
「……?特に何も」
「はぁ!?」
「シノアちゃんはただの子供です」
「ったく、そんじゃ、NPCというよりただのガキじゃねぇか」

シノアの説明に流子は呆れるようにため息をつく。
すると――

「なら、私を殺しますか?」

「「「……」」」

シノアの問いかけに三人は黙る。

「私はあくまで記録や記憶から再現されたNPCとして過ぎないので。それに私が、ある日どこかで死んでたとしても誰もきにしないでしょう?」
「邪魔者はとっととポイするのがよいかと」

シノアは”本気”で口にしている。
それが設定(ロールプレイ)なのか判断つかないから三人は黙ったのだ。
そして、シノアは3人に語る。
自分と姉のことを。
自分の家である”柊”が行っている実験も含め。

「「「……」」」

「……なぁ。!!??」

シノアの語りに一段落がつき、流子がそれに合わせて、声をかけようとしたとき、それらは流れた。

『……現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。
おはよう諸君。
一応、はじめましてと言っておこう。
私の名前はラウ・ル・クルーゼ。
ザフト軍クルーゼ隊隊長にして、羂索から君たちプレイヤーの人選に関してかなりの裁量を与えられていた者だ』

『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』

主催に参加者と放送が。

☆彡 ☆彡 ☆彡


355 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:43:15 2ywzOJlw0
放送が終わり、各自名簿を確認する。

「アタシの知り合いはいないわ……二人は?」
「私はいたわ〜〜、よりにもよって私と因縁深い忍者が。不良少女(レディース)は?」
「私も……いたぜ。クソ!」
(マコ……無事でいてくれよ!)

流子は知り合いが巻き込まれていることに憤怒する。
満艦飾マコ……父の仇を探し求める中、転校先で出会ったクラスメイト。
始めは初恋の味泥棒の姉でただの一クラスメイトでしかなかったが、今では、大切な友達だ。
故に流子は怒る。このクソみたいな殺し合いを強制する羂索たちに。

(それと鬼龍院羅暁 ……もしかして鬼龍院皐月の関係者か?……まぁ、会ったとき問い詰めりゃいいか)
また、同時に鬼龍院羅暁の名も気になった。

「柊真昼……シノアの姉もいるわね」
「まぁ、この子がNPCなら、参加者としているのは当然ね」

名簿にシノアの姉である真昼の名を確認。
跋扈しているNPCモンスターは、記録や記憶から再現されているのが本当なら、レディと孔富は当然とばかりに名簿に記載されていることに納得する。

「柊篝に柊うてなと柊性があるけど、名簿の位置から関係はない可能性が高いとみていいわね」
「ええ、放送で言っていた通り、名簿の並びに意味があるならそうでしょうね」

同姓の柊は柊真昼のほかにも記載されていたが、記載の位置から柊姉妹とは無関係であると予想する。

「地図を見ると……病院があるわね」
「医療に携わる者として向かうなら、そこは鉄板ね」
「ええ。ただ……アタシたちがいるのは、J2の霊園……病院とは距離が離れすぎているのが、やっかいね」
「私達の配置はおそらく意図的ね」
「ったく、どこまでも性根が腐ってやがるな!」

そう、3人がいるのは、地図の南にある霊園。
片や病院は北の方にある。
遠すぎる距離。
そう楽にいかせないという意図が透けて見える。

「でも、だからこそ、やっぱり目指すべきだわ」
「……そうね。殺し合いを強制しておきながら、掴め!最高のガッチャ!という参加者へ発破をかけるような言葉。どこかゲームのようにも聞こえるしね」

無駄足に終わるかもしれない。
だけど、何か攻略の手がかりがあるかもしれない。
移動の方針は定まった。


356 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:43:43 2ywzOJlw0
「では、行先は病院というわけですね」
「それでは、シノアちゃんは、ここいらで失礼します」

行き先が決まるとシノアは3人の会話に入る。
そして、さようならとばかりに背を向けて歩き始める。
そこで、流子は先ほどの会話が中断していたことを思い出すと、シノアに声をかける。

「おい、ガキ。さっきの話の続きだけど」
「ガキではありません。シノアちゃんという立派な名前があります」
「うっせ!生意気なガキはガキで十分だろ!」
「悪いけど、二人とも話は後よ」
「同感」

レディブラックと孔富の言葉に流子とシノアは周囲に目を配る。
シノアとは別のNPCが周囲を取り囲んでいた。
ヨーロッパの何処かの村の服を身に纏っている。

「Un forastero! 」
「A avisar a los demas 」

「おいおい、なんだかイッてるような様子だけど、もしかして薬中か?」
「これは……操られている?」
「ええ。意識はないようだけれど、言葉を発することが出来ていることから脳は生きている。おそらく寄生体のようなものね」

2人とも医療の道に携わるだけあって、見抜くのは一瞬であった。
レディブラックの診断に孔富は同意する。
そう、この村人はもう既に人ではない。
ガナード。
寄生生物「プラーガ」に寄生された人間。

「Te cogi 」

鎌を持った村人がシノアに襲い掛かる。

「ガオ――」
「それを言うならグワーだろっ!」

流子はシノアにツッコみつつも守るため、言葉と同時に村人を蹴り倒す。
他の村人も動き始める。

「私達もいくわよ!」
「人型でも彼らみたいのは分かりやすくていいわね」

死者が眠る霊園が騒がしくなる。

☆彡 ☆彡 ☆彡


357 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:48:48 2ywzOJlw0
それと、戦い後の加筆修正です。



358 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:49:02 2ywzOJlw0
「もう……いなそうだな」
「ええ。そうみたいね。お疲れ様、レディ」
「別に……たいしたことじゃないわ」

労いの言葉にヒーローとして当然と返事を返すと、旅だった村人たちに向けて、静かに黙祷をする。

ごめんなさい
  こうするしかなくて
    せめてその道(未来)に安らぎを

「ふぅ……」

黙祷を追えると、レディ・ブラックはシノアに近づく。

「シノア。先ほどの問いかけだけど、答えはNOよ」
「それは、ヒーローだからですか?」
「それだけじゃないわ。看護師を目指す者としても命を軽々しく扱う選択肢はありえない」
「だから……私達と同行してもらうわよ?」

レディ・ブラックは凛として宣告する。

「……まぁ、貴方たちの死を見届けるのもNPCの役割ですから。構いませんが」

しょせんはNPC。再現された存在でしかないのに、物好きな参加者たちだなと、外野は見たら思うだろう。
しかし、NPCだろうと見捨てないのがヒーローなのだ。


359 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:49:36 2ywzOJlw0
「よろしくね。可愛いNPCモンスターちゃん。それと話を聞く限り、貴方のお姉ちゃんは貴方のことを想っているわ。きっと。」
「……?」

孔富の言葉に何を言ってるのですかと首を傾げるシノア。

「私にも兄がいたわ……とても不器用な想いをもつ兄が」
「あいにく私達は兄弟だけど、姉妹だって同じよ。私が断言する」

そう、兄や姉という生き物は不器用なだけなのだ。

本当はオレも怪獣――やりたかったなぁ……!!

本当の気持ちを押し殺す。
弟や妹のために。
不器用な存在。

「……」
(私に想いを?あの姉が……?)

シノアは黙って聞く。

「安心しなさい。”柊”は黒十字が必ず治す」
「……貴方と私の世界は違うのに?」
「大丈夫よ。羂索(あいつら)の力なら、そちらの世界に行くことも可能のはず」

そう、この殺し合いにために、多くの世界が巻き込まれていることが明白。
干渉が可能ならそれは絵に描いた餅ではない。

「それに……腕の立つDr.もいるしね」
「あら?もしかして私も入れてる?」
「当たり前でしょ。それと……先ほどのサポート助かったわ!相棒(サイドキック)」

レディ・ブラックの感謝の言葉に孔富は一瞬、間の抜けた表情を見せた後、微笑む。

「ま、これでも私、世界的名医だしね」
(ネビュラマン(ヒーロー役)も案外悪くないわね……)

「……悪事(わるさ)かましている奴には忍者が来襲(く)るのがお約束なんだけど……」
「いいわ。一度死すれど、これでも破壊の八極道。これを終わらせた後、忍者の代わりに柊に襲撃(カチコミ)して更生(ブッ殺す)だ」
「……いっておくけど、本当に殺すのは駄目よ」

――チラリ

レディ・ブラックと孔富が流子を見つめる。
”あなたはどうするんだ”……と。

「あー……悪かった。大人げなかったよ。だけどな、お前のその根性は私が叩き直してやるから、そこんとこ覚悟しときな!……よろしくな、シノア」
「NPCに根性も何もありませにょ?まぁ、短い関係にならないことを願います」
「ほんと……可愛くないなお前」

そんな二人のやりとりを眺めるレディ・ブラックと孔富。

「あら、怖い。やっぱり女子不良(レディース)ね」
「あれは流子なりの優しさよ」

優しさ。
形は違えど、それはヒーローの条件


360 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:52:02 2ywzOJlw0
最後に操田孔富の状況欄に忍者がいないとミスをしていたので、その修正とNPCモンスターです

【繰田孔富@忍者と極道】
状態:疲労(極小)
服装:医師の服装
装備: ウルトラメダル@ウルトラマンZ、 ソードスキル:マチ=コマチネの念糸@HUNTER×HUNTER
   ソードスキル:ウルトラマンゼット@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:救済(すく)う。お兄ちゃんに怪獣役譲っちゃったから、今度は私がヒーロー役ね
   そして、これの後は、柊家に襲撃(カチコミ)
01:短い間だけれどよろしく頼むわね、レディに不良少女にシノア
02:あの兄弟もいるのね……今回の私はネビュラマン(ヒーロー)役だから共闘したいわね
03:柊真昼にであったら救済(すく)う
参戦時期:死亡後
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、キルラキル)
シノアから柊家について簡単に知りました


361 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:54:40 2ywzOJlw0
NPCモンスター

村人ガナード@ダイの大冒険
寄生生物”プラーガ”に寄生された人間。よってゾンビではない。
元はスペインの片田舎の村人で、彼らが会話する言語はスペイン語なのだが、とあるニコニコできる動画で、そのセリフが空耳として面白く聞こえると話題になったことがある。
ああ…中野バーガー…by村人ガナード

〈柊シノア@終わりのセラフ一瀬グレン、16歳の破滅〉
状態:健康
服装:私服
思考(参加者と会話ができ、自我があるように見えるがあくまでモデルのように動く設定。)
基本:“柊シノア”として行う。
01:柊シノアとして動く
備考
※柊真昼の妹。たくさんいるのではなく一体のみのNPC。あるていどとの再現とはいえ記憶や記録が用いられているため、積極的に襲撃はしない。ただし、NPCモンスターであることは変わりないので、モンスターとして行動するときは躊躇なく四鎌童子で参加者を襲う。


362 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 05:55:42 2ywzOJlw0
以上です。
ご確認をお願いいたします。


363 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/27(金) 06:22:12 2ywzOJlw0
すみません…! シノアが支給品からNPCになったので流子もでした…

【纏流子@キルラキル】
状態:疲労(極小)
服装:赤いジャージ
装備:万物切断エクスタス@アカメが斬る!
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らねぇし、あの羂索とかいうやつはぶっ飛ばす
01:鮮血がいてくれたら探すのは楽なんだが……
02:鬼龍院皐月と決着をつけるのは元の世界に戻ってからだな
03:マコ……私と再会するまで死ぬんじゃねぇぞ
04:病院へ向かうか
05:柊真昼……ったく、どんなつらしてるか会うのが楽しみだぜ
参戦時期:14話、鮮血の断片を取り戻しに大阪に向かう最中
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました

何度もすみません。


364 : ◆Drj5wz7hS2 :2024/12/27(金) 12:12:50 2IF3TJh60
企画主です。ご対応ありがとうございました。
修正後の方をwikiにて収録させていただきます。


365 : ◆s5tC4j7VZY :2024/12/28(土) 12:02:15 SnQDnz7M0
◆s5tC4j7VZYです。
返信が遅くなり申し訳ありません。
確認並びに収録ありがとうございました。


366 : ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:07:30 vSkHIL0M0
投下します


367 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:08:38 vSkHIL0M0

 ナハトベースから蛇腔病院に向かう道筋は、拍子抜けするほどスムーズに進んだ。
 
 他の参加者に出会うこともなければNPCモンスターに出会うこともない。
 ナハトベースの周囲に広がる荒れ地のような空間から、B-6エリアに入り舗装された道路を進んでも、敵の影どころか気配さえ感じない。
 ディアッカ・エルスマンからしてみれば都合がいいことこの上ないが、クルーゼが関わるような殺し合いでこんなスムーズに事が進むのは不気味に思えた。

「すぐ南にテレビ局があるし、このあたりのNPCモンスターはあのルルーシュがもう手を付けてるのかもしれない。彼には人を従える魔術か何かがあるみたいだしね。」
「確かにな、ああもはっきりと他の参加者に喧嘩を売る奴だ。
 勝算も無しにそんな真似はできないだろうし、手駒くらい用意してて当然か……ぞっとしねえ話だな。」

 藤丸立香の言葉をディアッカはため息交じりで返す。憶測というにはあまりにも可能性の高い事態にマシュも空蝉丸もホシノも渋い顔をしていた。
 彼の推測は当たらずも遠からず。
 NPCモンスターに出会わなかったことは彼らの幸運も働いたが、ルルーシュの指揮下に収まったことでNPCモンスターの数が減少していたのは事実である。
 現在7時前。既にルルーシュは人型・機械型を中心に多数のNPCを指揮下に収めていたが。彼らはまだそのことを知らない。

「それに、すでに動いている者がルルーシュだけとは限らないでござる。
 150人もの人間を殺し合いの場に呼ぶ以上、積極的に殺しに動く者の10や20はいると見るのが自然。
 既に大きく趨勢が動いている場所もあるやもしれぬ。」
「それって、さっき言ってた黒い何かの話?」
 ホシノの言葉に「うむ。」と空蝉丸はらしくもない険しい顔で返す。
 
 数十分前、ドゴルドが南にいると感じ取っていた空蝉丸は、周囲の警戒もほどほどに南に視線を向けていた。
 より正確にはルルーシュのいるテレビ局の方向……彼から見て南東部。
 そこで彼は、わずかな瞬間”何か”を見た。言葉にするならば遠くに見えるビルの隙間に映り込む、黒いドームのようなもの。
 その正体はF-7区画で闇檻の魔女が引き起こした区画の大破壊、その断片である。
 
「ビルの隙間に一瞬だけ見えるごくごく小さなものであった。遠くに見える建造物よりさらに奥。仮に起きたとしたら相当南……それこそテレビ局より南でござろう。
 わずかしか見えなかったゆえ、普段なら見間違いだろうと気にも留めないところだが。」
「……まあ、こんな状況じゃ何があってもおかしくはないが。」
 
 呆れたような返しながら、ディアッカの顔つきは険しい。
 振動も魔力も伝わらないほど遠くで起きた事態故に、彼らの中でその事件に気づいたのはたまたま南を見ていた空蝉丸だけだったのだ。
 
 無論、その原因も分からなければ、そこから命からがら逃げのびた5人のことも彼らは知らない。
 その現象が何なのか、その元凶が誰なのかも、今の彼らは知る由もない。
 ”何か”が起きた。かもしれない。
 今の彼らの手物にある情報はそれだけだ。
 だが、だから気にしなくていいと切り捨てる者はここにはいなかった。


368 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:10:23 vSkHIL0M0
 
「空蝉丸の見間違いの線は無しの方向かな〜?」
「アルジュナ・オルタなんて化け物みたいな奴が参加してるんだ。何が起きても”ありえない”と言うほど平和ボケはできねえよ。」
「しかしテレビ局より南で起きた”何か”が拙者にまで見えるとなると、規模としては区画1つに影響を与えるほどではないか?」
 顔を突き合わせるホシノ・ディアッカ・空蝉丸。
 3人の視線が自ずと藤丸立香に向く。
 区画1つに影響を与える何かを起こせそうな存在。その心当たりが3人には1つだけあった。
 立香はしばし考えこみ、頬をかきながら答えた。
 
「多分、アルジュナ・オルタなら”区画1つ滅ぼす”ことは出来ると思う。」
「まあ……そう答えるよね。
 念のため聞くけど、それって制約を加味した上での発言?」
「クルーゼが他のサーヴァントじゃなくてわざわざアルジュナオルタを選んだ以上。彼の能力のすべてが封じられているとは考えられない。
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 その上で言うと、制約を加味しても、区画1つならアルジュナオルタは滅ぼせる。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そのでなければ参加者に彼を選ぶ理由がない。」
 アルジュナ・オルタは本来、単独で世界を滅ぼし創り替えられる神霊(サーヴァント)。
 仮に一切の制約無くこの殺し合いに参加しているならば、開幕と同時に会場を消し飛ばして話が終わることだろう。

 無論、この場のアルジュナ・オルタは闇檻の魔女や宇蟲王同様権能の多くを封じられている。
 だがそれはあくまで制限であり制約であるが、他者と均等にまで揃えたわけではない。
 ましてや相手はアルジュナ・オルタ。戦闘機並みの実力と称されるサーヴァントを鎧袖一触で討ち滅ぼせる異聞の王なのだ。
 確証をもって告げられた立香の返答に、ディアッカとホシノは何度目か分からないため息をついた。
 
「……筋が通っているのがなんかムカつく。」
「同感だ。リツカのことはそれなりに信用しているが、そんな奴と殺し合いするとか考えたくねえ。」
 反論や反証ではなく。純粋な忌避感から2人は眉をひそめた。
 小鳥遊ホシノもディアッカ・エルスマンも決して弱者ではない。
 特に小鳥遊ホシノはキヴォトス最高の神秘とまで称され、自身以外のアビドス生をまとめて相手取っても圧勝できる実力がある。
 その2人をもってしても、アルジュナ・オルタの前では赤子同然といっても過言ではない。
 制約があることを考慮しても”敵”と認識されるラインにさえ届かないだろう。
 その事実を頭では理解しながら何かが反論せずにはいられない。
 子供じみた言い方をすれば。はっきり言ってプライドが傷ついていた。
 
「……せめて拙者の見たドームがアルジュナ・オルタのものであることを期待する他ないか。」
 空蝉丸の反応は若者2人に比べ穏やかなものだった。
 藤丸立香の言葉を素直に理解し、単体で勝てる相手ではないのだろうと冷静に理解している。
 年齢故の落ち着きもあるが、デーボスや宇蟲王など規格外の怪物などと戦った経験がおおいに生きた形である。

 空蝉丸は知っている。規格外の怪物は実在するということを。
 空蝉丸の危惧は、自分が見た黒いドームが”アルジュナ・オルタによるものかどうか”に向いていた。
 つまり、区画1つに影響を与えられる規格外の怪物が、アルジュナ・オルタ以外の存在する。その可能性にいち早く気付いている。
 遅れて気づいた3人の思いは、「やめてくれよセミのオッサン。そんな核爆弾みてえな連中が2体も3体もいたら手の打ちようがねえ。」というディアッカの言葉に集約されていた。
 
 「皆さん!どうやら到着したみたいですよ!!」
 難しい顔をした4人は、前を行くマシュの明るい声に視線を上げる。
 物々しい名前とは裏腹に、その実態は地域に根ざした6階建ての総合病院。
 どこにでもありそうな蛇腔病院の姿を前に、その名前の物々しさからナハトベースのような異質なものをイメージしていた彼らは気が抜けたように顔を見合わせる。
 
 ほっとしたような微かな笑みを浮かべあった彼らの表情は。
 ―― 蛇腔病院の目の前にあった。乾ききっていない小さな血だまりを前に、一瞬にして青に染まった。
 
「なんだよ……これ。」
 5人の胸の内を表すように、誰かが呟く。
 ぽたりぽたりと誰かの足音を残すように、血だまりから続く血痕が病院の中へと歩んでいた。


369 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:13:09 vSkHIL0M0
 ◇◆◇◇◆◇

 見える限りでは、蛇腔病院にはNPCモンスターもいなければ、消毒液が混ざったような病院独特の空気感もない。
 かつかつと音を立てて登るディアッカと空蝉丸の足音だけが響いた。
 
「ううむ。ホシノ殿たちが心配でござる。
 ディアッカ殿、やはり分かれて動くべきではなかったのではないか?」
「気持ちは分かるがな、ここはあくまで物資の補充のために立ち寄っただけだ。
 長居するほど誰も疲れちゃいないし、そんな余裕もないぜ。特にオッサンとホシノはそうだろ?」
 
 ドゴルドがこの会場にいる。それも名簿にない以上十中八九敵である。
 その存在をただ一人感じ取れる空蝉丸は、若いディアッカの手前平静を装っているが、内心はアビドスに向かいたいホシノと変わらないくらいは焦りがあった。
 その気持ちを見透かされ、「いやはや……ディアッカ殿はよく見ておる。」と困ったように空蝉丸は返した。
 
「それに……」
 俯いたディアッカ。空蝉丸の視線も彼の足元に寄せられる。
 入り口から続く血痕は階段の上にも乾ききらずにはっきりと残っていた。
 
「病院の入り口から血痕がぽたぽた残ってんだ。
 この病院には誰かいる、それも間違いなく負傷している奴がな。」
 「そうでござるな……。」
 空蝉丸の声はわなわなと震えている。ディアッカには彼の気持ちが痛いほど分かる。
 殺し合いが本格化して二時間。空蝉丸の危惧した通り自体は大きく動いていて。負傷者も出ている。
 その事実がガツンと2人の胸にのしかかっていた。
 
 かつかつと、再び音を立てて階段を上る。
 蛇腔病院の入り口から垂れ続けた血痕は、3階にある「手術中」と書かれたランプのあるドアの前で途切れた。

「……手術室。だと?」
 重症者が運び込まれる場所としては最も適切な部屋ではある。
 だがそれはこの病院が正常に運営されていればの話。
 無人の病院で、手術室に運び込んで何の意味があるんだとディアッカは首をかしげながら扉を開けたが……中には誰もいなかった。

 だが手術室の中には、軽く調べるだけでも誰かが使用した形跡が山のように見つかった。
 中央に置かれた手術台には最近掃除されたかのように綺麗であり、ゴミ箱には血に濡れたガーゼや包帯があふれんばかりに残り、使用済みの輸血パックも見つかった。
 一方でメスなど明らかな手術器具――大半はディアッカにも空蝉丸にも用途どころか名前も分からない――は殆ど手を付けられていなかった。
 まるで誰かがここにある道具を使わずに、手術を完遂させたかのようであった。
 
「そんなことがありうるのか?」
「ありうるんじゃねえのか。
 医学に長けた参加者もいるだろうし、支給品を使った可能性もある。
 俺たち参加者は世界も技術もバラバラなんだ。想像だにしないことの1つや2つ起こるだろうぜ。」
 感心したように頷く空蝉丸を前に、ディアッカは続けた。
 
「それに、これはいいニュースと取るべきだ。
 山ほど出血して輸血してるような奴が、自分一人で治療できるとは思えねえ。」
「治療ができるような仲間がいる。ということでござるか。
 その者が無事かどうかはこれから調べる必要があるが。拙者としては一安心でござる。」
 心底嬉しそうに笑う空蝉丸に 「ああ、実にグレイトだ。」とわずかな安堵と共にディアッカも答えた。
 マシュのような例もあるとはいえ相手がコーディネイターでた。ある可能性は限りなく低いが、それでも安堵できた自分が何だか誇らしく思えた。


370 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:14:19 vSkHIL0M0

「となると、俺たちはその誰かに話を聞かなきゃならねえ。俺やホシノの知り合いかもしれねえしな。
 そうでなくても別世界の知識や支給品のあれこれと、他の参加者と会って得られる情報は少なくねえ。」
「そうでござるな。
 上手くいけばドゴルドとの戦いやアビドスに向かうための戦力を増やせるかもしれぬ。」
「……顔見知りならともかく、軍人として普段なら民間人を戦場に出すような真似はしたかねえが。今この場においては軍属だの生まれだの言ってられねえしな。」
 強調するような言葉とともに、2人は自分たちのいる環境を再認識する。
 ディアッカは血痕の主を既に戦闘不能の負傷者……はっきり言って足手まといになるだけだと思っていたのだが(大っぴらに言うとマシュや空蝉丸に文句を言われるし、またホシノとやり逢う羽目になりそうなので黙っていたが。)、治療を受けており仲間もいるのなら認識を改めるべきだろう。
 数は力だ。ホシノがいる都合将来的に羂索ら運営との直接対決も視野に入ることを考えると、1人でも多く参加者と友好関係を築いておきたい。
 ディアッカのような軍人や空蝉丸のような達人ばかりではないだろうが、この殺し合いでは多少の戦力差は支給品で埋められる。人間サイズとはいえガンダムと生身で渡り合ったホシノがいい例だ。
 どちらかと言えば”小鳥遊ホシノという化け物相手に起動キー1つで渡り合えたディアッカ”という構図ではあるのだが……なんだかムカつくのでディアッカはそれ以上考えないことにした。
 
「それで、どこを探す?」
「しらみつぶしに探すしかあるまい。
 だが拙者ならば人の出入りが多い一階は選ばぬ。
 それに複数人で動いており戦闘で消耗しているのなら体力の回復を優先するのが自然でござろう。」
「なら病室か、この規模の病院なら入院設備くらいあるだろうし。そのセンで……」
 
「そこで何をしている。」
 
 今後の相談をしていた2人に、背後から男の声が投げかけられる。
 言葉には殺気が籠り、背中に冷たい刃を当てられたような感覚がディアッカと空蝉丸の全身を駆けた。
 冷汗を垂らしながら振り返ると、氷のような印象を与える儚げな美青年が、手術室の前で手刀を構えて立っていた。
 
「マイ先生の教授(おしえ)の通りよ。
 殺しに乗った者共は野犬(ノラ)のごとく血を辿り手負いを狙う。」
 ごくりと生唾を飲み込みながら、目の前に立つ無手の男――覇世川左虎に対してディアッカの感覚が警鐘を鳴らす。
 隣では空蝉丸がザンダーサンダーを構え、目の前の青年に意識を向けている。
 その様はまるで、牙を持つ狼を前にするかのような鬼気迫るものがあった。

(なんだよ……こいつ……。)
 生身の人間から発せられる、まるで最新型のモビルスーツ乗りを相手にするかのような殺伐とした空気。
 それは、ディアッカ・エルスマンにとって初めての経験であった。
 
 ディアッカは軍人ではあるが、現代日本とは大きく常識の外れたコズミック・イラの住人だ。
 彼のイメージする強者とは、遺伝子改造により優れた才覚を得た者たち(その限りではないと最近は思い始めているが)がモビルスーツを初めとした超常兵器を扱うことで成立しているものだ。
 その認識は多かれ少なかれ殺し合いの中でも変わらない。
 支給された武器や兵器の強さを重要視していたし。小鳥遊ホシノや空蝉丸の強さも彼らの持つ装備によって下駄をはいたものであると心のどこかで思っていた。

 眼前の青年――覇世川左虎はそうではない。
 武器は無く、兵器もなく、氷のような白い髪を伸ばした体格のいい青年だ。
 ソードスキルが与えられているかもしれないが、見える限りでは支給品らしき装備もない。
 
 普段の彼ならば武器もない人間など歯牙にもかけないだろう。
 ストライクガンダムを起動し、その兵装で両断できる。
 ディアッカの常識では非戦闘員に属するような男に、戦場のような緊張を感じずにはいられなかった。

(俺の勘が言っている。ホシノや蝉のオッサンと同格か、下手したらそれ以上。
 俺が戦うとしても、ストライクガンダムを使ってようやく互角!
 そして起動キーの起動の隙をこの男は確実についてくる!
 蝉のオッサンもそれを分かってるから、剣を構えたまま動かねえ……動けねえんだ!)

 変身も起動も覇世川左虎の前では多大な隙となる。
 相手も2人が雑魚(カタギ)ではないと察したのだろう。
 静寂だけが、手術室を支配していた。


371 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:15:33 vSkHIL0M0

「少しよいか。」

 最初に口を開いたのは空蝉丸だった。

「拙者たちは殺し合いに乗るつもりはないでござる。
 ここに来たのは医療品の回収と、殺し合いに乗ってない参加者との合流のため。」
「それを信じろと?
 露見(バレ)てるだろうが、左虎の仲間には負傷者がいる。
 貴様らが負傷した参加者を狙う卑劣漢(ハイエナ)でないという確証はない。」
「んだと!」
 青筋を浮かべて怒鳴ろうとしたディアッカを、空蝉丸が制止する。
 目の前の青年は、少なくとも聞く耳を持たない怪人ではない。対話ができるならそれに越したことはないと空蝉丸は考えていた。
 
「信じられぬのも無理もない。既に重傷を負った者がいるのはこちらも推測できるでござる。
 1つ尋ねるが、その傷を負ったものは無事でござるか?」
「勿論(もち)也。
 この左虎が全霊を持って治療(なお)した故。
 既に意識も戻り会話も成り立つ。」
「なんと、貴殿は医者でござったか。
 それに無事であるのなら、それに越したことはないでござる。」
 空蝉丸はほっと胸をなでおろし、正面に立つ男を見やる。
 指先を一点に揃えた独特の手刀を構えたままだが、殺気がわずかに和らいだ気がした。
 
「どうも無法の輩ではないようだ。
 そのような温和(ヌル)い笑顔(ツラ)を見せられては、疑うのも馬鹿らしい。」
「そう言いつつも隙が見えぬのは流石というべきか、相当の武人とお見受けする。
 貴殿をしてそこまで警戒させる相手は何者か?
 すぐ南にそびえるテレビ塔を占拠したルルーシュなる者でござるか?」
「……左虎らが戦ったのは参加者ではない。
 獅子の仮面をつけた、剣士のNPCよ。
 名をドゴルドと名乗っていた。」
 
 想像だにしなかった名前に、ディアッカと空蝉丸は目を見開いた。
 空蝉丸の感覚ではドゴルドがいるのは随分南のはずだったからだ。
 
「マジかよ!!」
「よもやドゴルドの名をここで聞くことになるとは!何たる重畳!」
「知己か?
 よもやドゴルドと友好(ツル)んでいたとは言うまいな。」
 
 痛々しい疑いの視線を向ける左虎とは裏腹に、投げかけられた空蝉丸は物憂げに答えた。
 
「逆でござる。
 一度だけ共闘したことはあるが……拙者と彼奴は因縁ある大敵でござる。」
 
 死んだはずの仇敵(とも)を思いだすような言葉に、左虎もディアッカも何も返すことが出来なかった。
 
 ◇◆◇◇◆◇

 包帯と消毒液を抱えた立香が戻ると、マシュが小袋にピンセットやガーゼをしまっていた。
 持ってきた器具を机の上に並べる立香に気づいたマシュが、「お疲れ様です。」と笑みを向けた。
 
「はい、包帯と消毒液。
 これくらいあれば足りるかな。」
「充分です。
 1人ずつに分けても問題なさそうですね。」
 手元にある4つの袋に、マシュが均等に包帯を割り振っていく。
 彼女が今作っているのは、そのまま持ち運べる簡易的な医療キットであった。
 
 1階の診察室に残る3人は他の参加者を助けるための医療器具を探していたが、ここで1つ誤算があった。
 持ち運びができる医療キットが1つしか見つからなかったのだ。
 ドゴルド側に向かう空蝉丸とアビドスに向かう面々に最低2つ。可能なら一人ずつ簡易の治療キットは欲しい。
 蛇腔病院は広い。探せば医療キットもいくつか見つかるだろうが、施設全体を探す時間は3人(特にホシノ)にはなく。
 代案として1階で見つかる医療器具で簡易的な医療キットをつくることにしたのだ。
 
「マシュちゃん。他に回収しておいた方がよさそうなものって何があるかな。」
 均等に消耗品を分けるマシュと藤丸に、脚立に乗ったホシノが尋ねる。
 2人の後ろにある棚を背伸びしながら探すホシノは、険しい顔をしていた。

「はい。包帯や消毒液は十分量ありますので、あとは薬剤類でしょうか。
 気休めにでも、解熱剤や痛み止めはあったほうがいいかと。」
「だよね。でもどれがどれだか……。
 見つかったキットと同じ薬を入れればいいにしても、名前が全部おんなじに見えるんだよねぇ……。」
 薬の入った箱や瓶を前にホシノはぼやく。
 カタカナで書かれた長ったらしい名前の薬では効能などまるで分からない。
 1つ1つ探す時間は3人にはないが、当てずっぽうで入れてしまう訳にはいかない。
 頭を抱えるホシノだったが。
 次の瞬間、どこか楽しそうな女の声が、ホシノの耳に届いた。


372 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:18:17 vSkHIL0M0
 
「解熱剤は右の棚の赤い箱。
 痛み止めは下の引き出しにある黄色いラベルの貼ってある黒い瓶だね。
 ちょっと強い奴がその隣にある緑の箱に入っているけど、絶対に二錠以上飲むなって左虎っちが言ってたから気を付けてね。」

 突然の言葉に「はへ?」と頓狂な声をあげたホシノだが、言われた通りのものを調べると確かに探していた効能の薬だった。
 
「あったー!ありがとうマシュちゃん!」
「……いえ?私は何も言ってませんが?」
「え?」
「え?」
 マシュのアドバイスだと思っていたホシノの顔が一気に曇り、その様子を見た立香とマシュも目をぱちくりさせる。
 
 少年少女がふためきと共に声のした場所――診察室の入り口に目を向けると、丸眼鏡をかけた白衣の女性が気の抜けた笑顔で3人を見つめていた。
 
 ◇◆◇◇◆◇

 「成程。事情は把握した。
 空蝉丸とドゴルドは因縁(えん)のある敵であり。空蝉丸の目的は彼奴をブッ殺すことだと。
 また小鳥遊ホシノは梔子ユメの縁者(みうち)故、アビドスに向かいたいということか。中々多忙(ハード)な状況とみうける」

 手術室前の椅子に腰かける左虎は、空蝉丸とディアッカの話を前にふむと頷いた。
 目的がはっきりしている上に殺し合いに乗るつもりのない相手。左虎にとっても空蝉丸やディアッカと敵対する理由はすでに無くなっていた。
 
「左虎の知るドゴルドの情報は先刻話した通りだが、空蝉丸の知る相手で相違ないか?」
「獅子の仮面。荒々しい剣技に「腹立たしい!」という口癖。
 ここまでくると疑いようもないでござる。」
「ではそちらは空蝉丸に任せるとしよう。
    ・・
 左虎も後輩を負傷(キズモノ)にされた故、どこかでお礼参り(リベンジ)したい気持ちはあるが……マイ先生はしばらくこの病院に留まるのならば左虎もそれに従わねば。」
 どこか引っかかる言い回しだなと空蝉丸とディアッカは思ったが、左虎は構わず続けた。
 
 「それに場所も遠い。何らかの技巧(スキル)か支給品(アイテム)なくば日が暮れようぞ。」
 「ホントだぜ。
 左虎の話通りなら、ドゴルドがいるのはここと真反対じゃねえか。」
 地図と照らし合わせながらディアッカは大きくうなだれた。
 彼らが今いるのはB-6だが。ドゴルドと戦った場所はH〜Jの2〜4のいずれかになるという。
 左虎らは瞬間移動できる支給品のおかげで移動ができたが、そのアイテムも使い捨てでもう手元にないという。
 サクラハリケーンで駆け抜けるにも、ずいぶん時間がかかりそうだ。
 空蝉丸は「南」と言っていたが、何もここまで遠くなくてもいいだろとディアッカは毒づいた。
 
「しかし鎧を纏った人間ではなく鎧そのものがドゴルドだとは。流石に驚嘆(ビビ)ったぞ。」
 ドゴルドの正体は鎧を纏った武人……ではなく、獅子の鎧そのものだ。
 戦ったキョウリュウジャーたちでさえその事実を知ったのは空蝉丸が鎧に取り込まれていることを知った時で、数度の戦いでは気づくことが出来なかった。
 左虎を初め先にドゴルドと戦った面々が気づかないのも無理からぬ話だった。
 
「しかしそうなると――ドゴルドはNPCではなく支給品という可能性(パターン)も考えられるのではないか?」
「ああ。そういう可能性は考えてなかったな。」
 意識の外にあったなとディアッカは感心したように顎に手を当てた。
 ドゴルドの正体が生きた鎧というのなら、自分のストライクガンダムやルルーシュの映像にあった仮面ライダーのような、装着するタイプの支給品の可能性もある。
 ドゴルドが生きた鎧だということは空蝉丸から聞いていたが、その”中身”については全く意識の外だったのだ。
 
 ドゴルドが支給品であれば、ドゴルドの中身が参加者である可能性だって考えられる。
 当初の予想通りNPCだとしても参加者の体を乗っ取っているかもしれない――事実として空蝉丸がドゴルドに乗っ取られた過去がある――し、そうでなくとも中身が人間である可能性は高いのだ。
 ディアッカはあまり好戦的とは言えない空蝉丸が、ひょっとしたらドゴルドとの戦いを考え直すのではないかと疑ったが。
 
「どちらにせよ変わらぬ。
 水神小夜でござったな。年端もいかぬ少女を……他の参加者をドゴルドは既に傷つけている。拙者の知る頃と露も変わらぬ危険な存在。
 であるのならばそれを倒すのが拙者の役目に相違ない。」

 ディアッカの考えを一周するかの如く、空蝉丸はドゴルドと戦う覚悟をはっきり口にした。

 使命だとか義務だとかそういう簡潔なものではなく。これが宿命と言わんばかりにその覚悟は重かった。
 左虎にもその覚悟は伝わったようで、氷の忍者は雷鳴の侍に笑みを浮かべた。


373 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:19:32 vSkHIL0M0

「1つ伝えねばならんことがある。
 稲妻に剣術。それはドゴルド自身の……あるいは空蝉丸を乗っ取った際に会得(パク)った技術(わざ)なのは分かる。
 だが空蝉丸の話には、『黒い稲妻』……否、『黒い火花』ともいうべき技が出てこなかった。」
「『黒い火花』?」
 コズミック・イラやキヴォトスのことを聞いたときと同じ、全く未知のものを前にした時の顔で空蝉丸は答えた。
 
「ああ、まるで彼奴の打撃と彼奴の中に流るる何らかのエネルギーが寸分の狂いなく重なり合ったかのような一撃(クリティカル)。
 これまでの攻撃も達人の技だったが、あの一撃を出してからは明らかにドゴルドの精度(キレ)が向上していた。」
「ふむ……拙者の知らぬ未知の力か。
 羂索やクルーゼの手によって何らかの改造を施されているかもしれぬな。」
「となると先の中身の話も事情が変わる。
 本来は意識がないドゴルドの”中身”も、ドゴルドの力を最大限利用できる人物が割り当てられている可能性さえ考えられる。
 仕込まれた未知の力ももう1つや2つあっても何ら不思議ではない。」
「ちょっとまて、それってつまり――」
                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 それはつまり、この場にいるドゴルドは、空蝉丸の知るドゴルドより強いということなのではないか?
 ディアッカ・エルスマンが抱いた危惧に、3人はそろって顔をしかめたのだった。
 

◇◆◇◇◆◇

 小鳥遊ホシノという人間は、ある種の二面性を抱えている。
 
 年相応とは言えない小さな見た目ながら飄々とした態度を崩さず、いつもぐうたらなめんどくさがりの昼行燈。
 例えば黒見セリカが小鳥遊ホシノのことを聞かれると、いろいろ小言を言ったりツンデレを発揮しながらも大意ではこのような人物だと評するだろう。
 その評価は間違いではないし、ノリがいい面なんかも素の小鳥遊ホシノである。

 だが小鳥遊ホシノは、元来非常に攻撃的な質である。
 梔子ユメを喪ったトラウマからか、大切なものを守るためには”大切なものを蔑ろにしてでも”1人で全部背負おうとする。
 排他的で人間不信な、自罰的ともいえる一面は未だ根深く残っている。

 羂索に梔子ユメの体が利用されたこと。
 殺し合いの会場にアビドス高校が存在すること。
 その他さまざまな理由はあれ、これらの事態にホシノは既にブチギレており。現代の飄々とした仮面は殆どはがれてしまっている。
 立香やディアッカに先の黒見セリカの総評を伝えても「「誰のことを言っているんだ??」」と困惑するだろう。
 ディアッカ・エルスマンとの戦いと空蝉丸の仲裁で一端の落ち着きを見せた彼女の攻撃性は、実のところ全く落ち着いてなどいなかった。

 行動を共にする4人はわずかに信頼を置いているが、その他の人間(アビドスの生徒と先生を除く)は未だホシノの敵である。


374 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:21:18 vSkHIL0M0
 
 マシュ・キリエライトは目の前の事態にどう対応すべきか戸惑っていた。
 
 白衣の女性――マイ=ラッセルハートと名乗った――は現時点では敵意があるようには見えなかった。
 覇世川左虎がディアッカたちに話しているように、マイは既に自分のあらましを3人に話していた。
 この病院には彼女と行動を共にしている参加者が3人いること、ドゴルドとの戦闘の後支給品により病院まで転移し身を休めていたこと。
 ディアッカと空蝉丸が追った血痕はその戦闘で仲間の1人――水神小夜が負った傷が原因であるということも分かった。
 マイの説明に矛盾や違和感はなかった。ドゴルドという名前が空蝉丸の言ったNPCと合致していたことも理由だった。
 何より、敵意や悪意のある参加者ならわざわざ自分たちの前に顔を出さず、不意打ちの1つくらいしてもおかしくないのではないか。
 
 マシュも立香もそのように考えたからこそ、声をかけた彼女のことを警戒こそすれ強く疑いはしなかった。
 だが、小鳥遊ホシノはそうではなかった。
 マシュと立香の向かいに腰を落ち着けるマイに対し、ホシノは疑いの目を向けていた。
 事実として、ホシノはマイの背にアタッシュショットガンの銃口を突き付けている。
 引き金に指こそかけていないが、はた目からはホシノがマイを脅しているようにさえ見えた。
 
 「随分なごあいさつだね。ホシノっち。
 何やら医療キットか何かを用意してたんじゃないの?そっちを優先しないでいいの?」
 その様子に怯えるも怒るもせず、どこか飄々とした言葉だった。
 薄ら笑いを浮かべたマイの態度が、ナメられているようでホシノには気に食わなかった。
 
「煩い。あとホシノっち言うな。
 まだ私たちは、貴女が何のためにここに来たか聞いてない。」
「だから、小夜っちの治療にこの病院の設備を使いたかったから。
 この部屋だって小夜っちのための塗り薬を取りに来ただけなんだよ。」
「……信用できない。」
 飄々とした態度を崩さないマイに対し、ホシノの苛立ちは募り続ける。
 マイ=ラッセルハートの言葉1つ1つに、取り繕ったような不気味さを感じて仕方がなかった。
 
「ど、どうしましょう先輩!
 このままホシノさんとマイさんの険悪な雰囲気が続くのは良くない気がするのですが。」
 一方で剣呑な空気に呑まれていたマシュだったが、せっかくの殺し合いに乗っていない(ように見える)参加者とこんな敵対的な対話をしていいものなのか心配だった。
 アルジュナ・オルタやドゴルドの存在もあって、1人でも味方が欲しいのが実情だ。
 立香も全く同じ気持ちで、マシュの言葉に深くうなずいた後、少し考えて口を開いた。
 
「この病院にはマイさん含めて4人いるんですよね。
 なんで今1人で1階に?危険じゃないんですか?」
「ああ、そのこと。まあ理由はいくつかあってね。
 まず、アタシはこの病院の監視カメラを把握してるからさ。リツカっち達が入ってきたのに気づいてたの。
 んで、ちょうど1階に用があったアタシがこっちに来て、上に向かった2人を左虎っちに見にいってもらっただけだよ。
 それに、アタシも戦えないことはないからね。」
 マイが右腕を掲げると、小指に氷のような装飾のある綺麗な指輪が嵌められていた。
 心遺物(メイド・イン・ハート)と呼ばれるその指輪は、ツィベタ=コオリスカヤという女の心を形にしたものである。
 
「それは支給品ですか?」
「うん。氷を生み出すことが出来るんだよね。
 ……あ、今はやんないよ。ホシノっちに撃たれたくないからね。」
「だからホシノっち言うな。」
 苛立ちを込めた言葉を吐くホシノに「はいはい」とどこか楽し気に返し、マイは続けた。


375 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:24:09 vSkHIL0M0

「それで3つ目の理由だけど。
 リツカっちたちはさ、この会場になんで病院があるかおかしいと思わなかった?
 羂索やクルーゼは殺し合いのためにアタシたちを呼んだのに、治療設備が生きている病院を用意する理由がないと思わない?」
「そういわれると……確かに奇妙ですね。」
 マシュだけでない、立香もホシノもマイの言葉に目を見開いた。
 わざわざアルジュナ・オルタやドゴルドを用意して、一般参加者にも起動キーや仮面ライダーへの変身能力を与えてまで行われる殺し合いに、治療施設は必要だろうか。
 相応に特殊な事例がない限りは不要だろう。
 では、特殊な事例とは何か。
 
「……これはまだ仮説なんだけど。
 アタシはこの蛇腔病院は、バグスターウイルスに関係があるんだと思う。」
 自然と、全員の視線が腕に取り付けられたレジスターに移る。
 この場にいる人間にとってバグスターウイルスは枷であり時限爆弾だ。自分たちの力を奪い、命に蓋をする忌々しい制約に他ならない。
 そのウイルスに関する情報となれば、値千金と言って差し支えない。
 
「根拠は?」
「さっきアタシがこの病院の監視カメラを把握してるって言ったよね。
 この病院、1階の何か所かに明らかな死角があった。
 通路の合間だったり、一見死角になっても気にならない場所ではあったけどね。
 ――多分この病院には、隠された部屋がある。」
「もしかしたら、そこにバグスターウイルスのワクチンか何かがあるかもしれないってこと?」
「流石にそう都合よくいかないだろうけど、資料くらいはあるかもしれない。
 羂索の言ってたエグゼイドって仮面ライダーなら、その資料からバグスターウイルスに関する情報を見つけ出せるかもしれないしね。」
 今度こそ全部言ったよ。そう言いたげにマイは両手を上げた。
 
「はい、アタシの憶測も含めた情報はこれでおしまい!ホシノっち、満足した?」 
 マシュと立香は納得したような眼差しを向けていたが、背後に立つホシノは苛立たし気な顔つきから変わらない。
「まあ、いいよ。
 真偽はともかく、話にならない手合いではないみたいだし。」
 ただ、ホシノも一応の納得はしたようで。「ホシノっち言うな」と忌々し気な顔つきをしつつもマイに向けられたアタッシュショットガンを下ろしていた。
 背後で銃を下ろす音に、マイは意外そうな顔を浮かべ振り返る。
 
「あれ。信じてくれるの。」
「これ以上疑っても、マシュちゃんや藤丸くんの迷惑になるだけだからね。
 今は敵じゃないみたいだから別にいい。それだけ。」
「ドライだねぇ。
 そこまで嫌われる様なことした覚えは……ああいや、違うのか。」
 ホシノの鋭く悲し気な目に、マイは見覚えがあった。
 どこで見たのだったか、思い出せずにまじまじとホシノを見つめる中。頭上に浮かぶ桃色のヘイローがふと目についた。
 
「ホシノっち。頭に浮かんでいる輪っか、羂索――いや、梔子ユメか。あの子に似てるけど、もしかしてお姉さんか何か?」
 一瞬だけびくりとホシノが震え、マイを冷たい目つきで睨みつける。
 わずかな逡巡の後、小さい体には似つかわしくないほど重々しい声で口を開いた。
 
「……学校の先輩。
 地図にあるでしょ、アビドス高校って。私はそこの生徒。」
「成程ね。羂索もアビドス生徒会長とか言ってたし。そういうこと。
 作っていた医療キットはアビドスに行くための準備ってことか。
 いいの?羂索がアビドスの名前を言っていた以上、あの場所に集まる人間は多いと思うけど。」
「関係ない。
 セリカちゃんを……先生を……。
 そしてもし本物なら……もしまた会えるのなら……。
 ……今度こそユメ先輩を助けられるのなら。それでいい。」

 それさえ守れるのなら、私は何とだって戦ってやる。
 それが自分の宿命だと。
 そう言いたげに強く重く言い切ったホシノは、診療室の扉に手をかけた。
 
「ホシノさん!どこに。」
「もうここに用はないでしょ。
 先にエントランスで待ってるから、上の2人とそこで落ち合おう。」
 ドアを開き、荒々しく閉める。
 これ以上言う事はないと、自分の事を喋りすぎたと。
 そう言いたげに、少女は退室した。


376 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:25:49 vSkHIL0M0

 残った部屋の中、神妙な空気の中マイはマシュと立香に尋ねる。

「マシュっち。リツカっち。
 もしかしてだけどさ。
 ……梔子ユメって、もう死んでたりする?」
「……はい。
 ホシノさんからは2年前に亡くなったと聞いてます。」
 「そっか。」

 ホシノが見覚えある目つきをしていた理由が、マイにはやっとわかった気がした。
 あれはマイ=ラッセルハートと同じ目だ。
 最愛の両親を巻戻士に見殺しにされ、憎悪と恩讐のままにクロックハンズに手を染めたマイ。
 彼女が怨敵である巻戻士を見るときと同じ目を、ホシノはマイに向けていた。
 黒見セリカを。『先生』を。
 アビドスを。梔子ユメを。
 傷つけるかもしれない敵として。ホシノの目にマイは映っていたのだろうか。
 
 マイ=ラッセルハートは守れなかった。
 失った両親はもはや戻ってこない。
 小鳥遊ホシノはどうなのだろうか。
 この会場には梔子ユメがいる。

 ――今度こそユメ先輩を助けられるのなら。
 ホシノの言葉がひどく耳に残っていた。
 彼女も一度、守れなかったんだなと。らしくもない同情をマイ=ラッセルハートは抱いていた。
 
 
「……今度こそ守れるといいね。ホシノちゃんの一番大事なもの。」
 ぽつりとマイは零す。
 マシュも立香も、その言葉に何も言えなかった。

 ――アタシにはもう、誰もいないからさ。
 扉の前で立ち尽くす小鳥遊ホシノには、マイの言葉がそんな風に聞こえてならなかった。

 
 ◇◆◇◇◆◇

「なるほどね。そっちでそんなことが……。」
「俺だってリツカの話を聞いて驚いたぜ。
 まさか一階にマイ先生って奴がいたとはな。」
「互いに無事でいられてよかった。
 話が分かる御仁達で幸運でござったな。」

 マイや左虎と別れ、5人は蛇腔病院のエントランスで顔を合わせる。
 ホシノは宣言通りエントランスの長椅子で微動だにせず座っていたし。ディアッカや空蝉丸が1階に戻るのはマシュと立香が戻るのとほぼ同時だった。
 各々得られた情報をまとめていく中。ディアッカが何か言いたげに手を上げた。

「1つ思ったことがある。
 ドゴルドへの対処だが、オッサン1人で行かせるのは反対だ。
 左虎の話じゃ、ドゴルドはオッサンが戦った時より強くなっているかもしれねえ。」
「ディアッカ殿!拙者は――」
 淡々と告げられたディアッカの言葉に空蝉丸は思わず立ち上がり、何か言いたげに顔を歪めた。
 
「現状ドゴルドが居ることを知っているのは左虎の一団と俺たちだけなんだぜ。
 ソウジとかいうオッサンの仲間はドゴルドの存在を感じられないんだろ?
 ドゴルドの正体がNPCであれ誰かの支給品であれ、この殺し合いの参加者にとっては完全なイレギュラーが滅茶苦茶つええとなると。真っ先に何とかしないと後々が怖いぜ。
 左虎と他3人が相手でもドゴルドを倒しきれなかったんだ。確実に倒すためにも複数人で挑むべきだ。」
「しかし……。」
「まさかオッサン、自分が死んででもドゴルドを倒すとか言わねえよな?
 そういうバカはこのチビだけで充分だ。」 
 
「誰がバカのチビだ!」と指さされたホシノを立香とマシュがなだめる横で、空蝉丸は考える。
 ディアッカの危惧はまさしく言う通り。ドゴルドの存在を感知できる空蝉丸が万が一にも負けてしまえば、存在を知られない怒りの戦騎が暴れまわることになる。
 侍の誇りとしてはいつかの決着がごとく正々堂々闘いたいが、その誇りを優先して無数の参加者に被害を出すことになってはパーフェクトには程遠いだろう。

「致し方あるまい。
 して誰がくる?
 生憎拙者の移動手段はディアッカ殿より頂いたバイクのみ。頑張れば二人乗りは可能だろうが……」
「なら、俺が空蝉丸についていくよ。
 あのナハトベースでも一件を考えるに、ホシノもディアッカも広範囲の戦いに向いている。
 アビドスに向かう参加者は多いだろうし、万が一乱戦になるのならマシュはともかく俺がどこまで力になれるか分からない。
 だったら俺が空蝉丸についていったほうがいいんじゃないかな?」
「だったら、マシュちゃんも連れていきなよ。」
 手を上げた立香にそう提案したのは、意外なことにホシノだった。

「いいの?アビドスに割く人手が減っちゃうけど……。」
「藤丸君。逆に聞くけど先輩と後輩を離れ離れにさせるようなことを、私が許すと思う?」
「ああ……。ホシノにそう言われたら……。」
 小鳥遊ホシノにそう言われては何も言えず、ばつが悪そうに頭をかいた。
 あまりに説得力のある言葉に、立香どころかディアッカでさえ無言で頷くばかりだった。


377 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:27:11 vSkHIL0M0

「マシュちゃんもそれでいい?」
「は、はい。
 ですがとなると問題は移動手段です。空蝉丸さんのバイクでは乗れて2人が限度ですし。
 先輩の支給品にどうにかなりそうなものはありませんか?」
「うーん……。
 実は起動キーなら1つあるんだけど、多分ディアッカのやつほど機動力があるものじゃないんだよね。」
 立香が取り出した起動キーは、バイザーを装着した銀色の機械人間のような姿をしていた。
 『ウルトロイドゼロ』という名前を持つその兵器は、ディアッカの知るモビルスーツとはまた異なる世界の技術でできている。
 
「一応ジェットエンジンはついているから、バイクに並走するくらいはできると思うよ。」
「なら十分だろ。
 俺とホシノでアビドスに。
 空蝉丸のバイクをマシュが二人乗りして、リツカはその起動キーで並走する形でドゴルドに向かう。
 こういうことだな。」
「簡易的ですが医療キットを作成しています。
 皆さんひとつづつ持って行ってください。
 ホシノさんは病院においてあった箱のキットをどうぞ。」
 
 方針がまとめられ、てきぱきと各々が準備を終える。
 一行は名残惜しそうに握手を交わし、蛇腔病院を出て起動キーやバイクを取り出した。

「ではディアッカ殿!ホシノ殿!ご武運を!」
「ホシノさんの事お願いしますね!!」
「ちょっとマシュちゃん!私が任される側なの!?
 ……ドゴルドのことは任せたよ、それとキヴォトスの皆や先生に会えたらお願いね!」
「ザフトの皆やキラのことも頼むぜ!
 ハテナついてるアスランはともかく、癖がつええが信頼できる連中だからよ!」
「わかった!そっちもアルジュナ・オルタにだけは気を付けて!」

 にぎやかな別れの後、小鳥遊ホシノとディアッカ・エルスマンはアビドスに。
 藤丸立香、マシュ・キリエライト、空蝉丸は南に向かって。移動する。

 
「〜♪」
 その様子をマイ=ラッセルハートは病室の窓から眺めていた。
 

 ◇◆◇◇◆◇

「と、いうわけで。思いがけず色々情報聞けちゃったぁ。」
         ・・・・
「よかったですね。マイ先生。
 まさかあのドゴルドと因縁のある参加者がいるなんて。」
 窓からホシノ達の出発を見届けたマイは、小夜のベッドに腰掛け上機嫌に笑う。
 ドゴルドにより重傷を負った魔法少女、マジアアズールこと水神小夜は嬉しそうなマイに警戒心の欠片もない笑顔を向けていた。

「それで小夜っち。調子はどう?」
    ・・・・・
「ええ、覇世川先輩のおかげでこの通り。もう動くこともできます。」
 ベッドの上で起き上がる小夜が、これ見よがしに両腕を動かした。
 細腕を動かす様子は快活に見えるが、その胸はつい1時間前まで内臓に達するほどの傷を受けていたのだ。
 覇世川左虎の卓越した医療技術と、魔法少女マジアアズールの強靭さがなければこうも短時間で回復はしていないだろう。
 
「あずーるうごいちゃだめ!!クリームがぬれない!」
「はいはい。ごめんねシェフィ。」
 小夜が起き上がったことで、胸の傷に軟膏を塗っていたシェフィがぷりぷりと頬を膨らませる。
 年齢は大きく差は無いが、シェフィの情緒が幼いからか姉妹のようなやり取りに見える。

「シェフィっちもすっかり元気だね。
 小夜っちもまだまだ全快ってわけじゃないんだから、もうちょっと休んでてね。」
「ええ、分かりました。」
         ・・・・
「うん!ありがとうマイ先生!」
 シェフィもまた、小夜と同じよう心の底から信頼した笑顔をマイに向けている。
 本来は小夜もシェフィもマイもそれぞれ赤の他人のはずなのだが、彼女らの記憶ではそうではない。
 
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「本当に良かった。大恩あるマイ先生と出会えた上に、同じくマイ先生の教え子の覇世川先輩とシェフィに会えたんですもの。」
 ここに小夜の仲間である花菱はるかや天川薫子がいたら卒倒していたことだろう。
 マイと小夜と左虎とシェフィは、面識どころかもといた世界さえ違うのだ。
 だが今、彼女たちはマイ=ラッセルハートの『編集(エディット)』と『消去(デリート)』により、『マイ=ラッセルハートに幼いころ世話になり、恩師して尊敬する』記憶を植え付けられている。
 少し思い出せば彼女たちにマイ=ラッセルハートとの思い出などないことも、大切な仲間や友達の記憶がかけていることも気づけるはずだが。
 今の彼女たちがその事実を認識することは、できないのだ。


378 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:28:14 vSkHIL0M0
                   ・・・・
「邪魔をする。容体(チョーシ)はどうだ水神後輩。」
 少女たちが談笑する部屋に入る医師。覇世川左虎もまた記憶に介入を受けていた。
 
「覇世川先輩、お陰様で動けるまでに回復してます。」
「ほう、流石は魔法少女。治癒速度が奇跡的(バリハヤ)也。
 この様子ならもう30分もあれば戦闘ができる程度には治りそうだ。
 ・・・・・・
 シェフィ後輩も用法通り薬を塗っている。優秀(パーペキ)也」
「わぁい!」
 ・・・・・
 偽りの後輩たちに感心するように頷いて、左虎はマイに向き直る。
 その眼もまたマイをまるっきり疑わない。気の抜けたものだ。
 
「それでマイ先生。彼奴等は既に移動(うご)いたか?」
「ああうん。アビドス方面とドゴルドに方面にそれぞれね。
 どうやら分担したみたい。」
「上策(グッドアイデア)也。空蝉丸は構えと殺気から分かる実力者だが、ドゴルドに単独(ソロ)で挑むには不足。
 ……話を聞く限り空蝉丸の知るドゴルドより、この場のドゴルドの方が凶悪(ヤバ)い故な。」
「そうだねぇ。アビドスのこともドゴルドのことも、ホシノっちたちには頑張ってもらわないとね。
 本当はアタシらもどっちか、特にドゴルド討伐には行ったほうがいいかもしれないけどね。」
 遠くに行った他の参加者に期待するようなそぶりを見せつつも、「でも、」とマイは続けた。
 
「アタシたちはこの蛇腔病院の探索を優先する。
         ・・・・・・・・・・・
 地下室の入り口はもう見つかっているしね。
 バグスターウイルスに関わるものかどうかは分かんないけど。普通病院に隠し地下通路なんてないでしょ?」
「あるわけがなかろう。
 正規の地下室で霊安室などがあることはあっても、そんな忍者屋敷(ダンジョン)のような構造など。」
 ダンジョンとは言い得て妙だとマイは思う。
 蛇腔病院などという奇天烈な名前の病院にある地下室は、近未来的に整備された長い通路の様相なのだ。
 
「水神後輩が回復し次第その場所に突入(カチコミ)が確実(まる)い。
 魔法少女である水神後輩なら30分もすれば十分動けよう。今が7時半故、8時にはその場に赴くということでいいか?」
「私は問題ありません。覇世川先輩。」
「シェフィもだいじょうぶ!」
 病室に座り込む少女たちが、目を爛々と輝かせる。
 恩師であるマイ先生の役に立てることが嬉しいのだろうか。
 その姿を前にしたマイに、後悔や罪悪感は見られない。
 心に芽生えた申し訳なさは、「良い手駒を手に入れたな」という達成感や3人に対する憐憫に。
 そういった独善的な感情は、巻戻士達への憎悪とバトルロワイヤルの勝利への執着に塗りつぶされていた。

「して、この病院の地下室。
 秘密部屋(ヤサ)の場所は何処ぞ。」
「ん〜。実はさっき左虎っちが言ってたよ。」
 そんな感情は表に出さず。”優しいマイ先生”のまま、マイは答える
 
「霊安室。
 そこから地下に続く通路がある。」
 
 
 ◇◆◇◇◆◇
 
 マイ=ラッセルハートは一つ勘違いしている。
 蛇腔病院はバグスターウイルスとは何ら無関係ということだ。
 
 蛇腔病院の地下。
 霊安室から続く地下通路を進む先には、本来とある研究施設が存在する。
 超常が日常となり、ヒーローが活躍する世界において生まれた巨悪。
 彼の手のものにより生み出された怪人・脳無の研究施設。

 本来の世界でこの研究施設は、ヒーローたちによる蛇腔病院制圧に際し破壊されている。
 内部に残る人道に反したデータも含め、その全てが既に存在しない。
 
 だがこのバトルロワイヤル上では、未だ施設は生きている。
 その内部に残されたモノがなんであるか。
 この場にその全容を知る者は、ただの1人もいないのだ。


379 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:28:54 vSkHIL0M0
【エリアB-6/蛇腔病院地下/9月2日午前7時30分】


【水神小夜@魔法少女にあこがれて】
状態:ダメージ(中・治療済み) 
 "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下
服装:学生服(ボロボロ)
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う。
01:ドゴルド……あの強さで参加者じゃないなんて。
02:シェフィちゃんとメガネのお姉さん 2人を守れたのなら良かった
03?:マイ先生がいるのなら安心ね。覇世川先輩とシェフィもいることだし
参戦時期:アニメ7話、原作2巻Episode10の終盤
備考
※マイの編集(エディット)により、バトルロワイヤルのルールを把握しました
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、トレスマジアを含む一部記憶が欠損しています。強い衝撃等があれば蘇るかもしれません

【シェフィ@プリンセスコネクト!Re:Dive】
状態:幼児退行(小) ドゴルドへの恐怖(中)"削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下
服装:いつもの服
装備:雄英ヒーローズ・バトル@僕のヒーローアカデミア 
 ソードスキル:氷凝呪法@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01:オールマイト、ありがと!
02:アズール、なおってよかった。
03:ケンジャクっておねーたん、こわい
04?:マイてんてー。だいすき
参戦時期:幼児退行が治って無かったころのどこか
備考
※具体的な参戦時期は後の書き手様にお任せします。
※精神状態が精神状態なので、このバトルロワイヤルについて色々とよくわかっていないと思われます。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、キャルを含む一部記憶が欠損しています。強い衝撃等があれば蘇るかもしれません

【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(中) "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下 マイ=ラッセルハートへの信頼(大?)
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01?:マイ先生の懇願(たのみ)を断る左虎ではない
02:無事に目覚めたのなら良かった。予後も問題なさそうで一安心
03:空蝉丸……ドゴルドと因縁がある参加者か。
04:病院の地下に何かあるか。流石はマイ先生だ、よくぞ見つけ出したな。
参戦時期:死亡後
備考
マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、邪樹右龍・繰田孔富含む一部記憶が欠損しています。強い衝撃等があれば蘇るかもしれません。

【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:健康 小鳥遊ホシノへの興味(中)
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士、オコノミボックス@ドラえもん ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:左虎っち・小夜っち・シェフィっちを利用する。優勝したら左虎っちの両親を蘇らせてもいい
02:タイムマシンの使用は慎重に。削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。その意思は揺るがない
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下に行く。あわよくばバグスターウイルスに関して何か情報を掴めるかもしれない
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』の世界についてのある程度の知識を得ました


380 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:30:30 vSkHIL0M0
◇◆◇◇◆◇

 ホシノとディアッカの姿が見えなくなったころ、空蝉丸は神妙な声で立香とマシュに尋ねた。

 「マシュ殿、立香殿、1つ確認したいことがあるでござる。
 そなたたちは、マイ=ラッセルハートをマイ先生と呼び慕うようになってはおらぬか?」
 質問の意図が分からず首をかしげる2人に、空蝉丸はホットラインから名簿を見せる。

「これは……名簿ですよね。」
「クルーゼが言うには名簿の並びには何らかの理由があるという。
 クルーゼをよく知るディアッカ殿の反応を見るに、この発言は出鱈目の類ではないはずでござる。」
「そう言ってた。
 だからディアッカやホシノの知った名前は2人の近くに会ったし、俺とマシュ、空蝉丸と立風館ソウジは名前がすぐそばにある。
 ハテナのついたアスランやギラ・ハスティーみたい例はあるけど、原則近しい存在が並んでいる……っている感じだったよね?」
 深く頷いた空蝉丸が、ホットラインを動かし名簿の一点――覇世川左虎の名前を指さした。
 
「先の病院で出会った覇世川左虎殿がここだ。
 上に邪樹右龍、下に繰田孔富という名前がある。
 拙者たちの法則に則れば、少なくともこのどちらかは左虎殿にとって知った名前であると考えられる。
 だが左虎殿はこう答えた。
――どちらも存じ上げぬ と」
 「では、左虎さんが知っている名前は名簿にあったのですか?」
「知っている名前は1つだけ。マイ先生ことマイ=ラッセルハート殿のみだそうだ。
 だが、マイ=ラッセルハートの名前は名簿の上では……」
「……随分と遠いね。」
 名簿の真ん中あたりにある覇世川左虎に対し、マイ=ラッセルハートという名前は遠く離れた後半部分にあった。
 邪樹右龍や繰田孔富のことを覇世川左虎が知らないというのは、小鳥遊ホシノが聖園ミカを知らないのと同様まだ分かる話だ。
 だが、元々の知り合いがこれほど遠くの名簿に名前があるのは、立香たちの知る法則と乖離しすぎている。
 
「加えて左虎殿はこうも言った。  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――水神小夜、シェフィの両名は、自分と同じマイ=ラッセルハートの薫陶を受けた身であると。」
 今度こそ、藤丸立香とマシュ・キリエライトは事の重大さに気づき青ざめた。
 水神小夜はまだしも、シェフィという名も覇世川左虎から随分と遠い。
 加えて三名とも、マイ=ラッセルハートからはニアピンどころでない距離に記載されているのだ。

「流石におかしい……。よね。」
「うむ。左虎殿らの事情は名簿の法則と乖離しすぎている。
 無論、ギラ殿や?のあるアスラン殿など例外らしきものはあれ、3人全員がこうも離れているのは信じがたい。」
「となると名簿が正確だとしたら、正確じゃないのは左虎さんの記憶……あるいは認識ということでしょうか?」
 記憶や認識。そういったものに影響を与える力として真っ先に思い出すのはルルーシュのギアスだ。
 だがルルーシュの影響を受けたにしては、移動した場所や病院周囲に戦闘跡がないことと辻褄が合わない。
 となると別の誰かによるものだということになるのだが。
 
「……一番疑わしいのはマイ殿でござろうな。」
 マイ=ラッセルハートの教え子である。
 そういった認識を植え付けることで最も得をするのは間違いなくマイ本人であり。
 必然有力な容疑者として要警戒になってしまう。
 だが、マシュや立香が見たマイは、そのような非道に手を染めるような人物には見えなかった。


381 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:31:48 vSkHIL0M0
「正直信じられません。
 マイさんは話していてそんな行為をするような方には見えませんでした。」
「無論、別人によるもの……例えばドゴルドが持つ未知の力の影響という可能性も考えられるが。
 調査するには時間も証拠も足りぬ。何とも歯痒い。」
「その話、ディアッカさんは……」
「無論知っておる。
 むしろ、 下手に深入りして錯乱した左虎殿らと戦うことになる可能性と天秤にかけたディアッカ殿が深入りせぬよう拙者を止めた形でござる。
 左虎殿は傷ついた水神小夜なる少女を本気で案じておられた故、目下対処すべき事態ではないとのこと。
 お2人やホシノ殿から聞いたマイ=ラッセルハートの人柄を加味しても、彼女がドゴルドより優先すべき危険人物だとは拙者にも思えぬし。」
「……気分がいい話じゃないけど。ここはディアッカが正しいと思う。
 そんな能力があるのなら、何らかの制約を受けているはずだし。簡単に使える力じゃないと思うよ。」
「使わないのか使えないのか。はたまたマイ=ラッセルハート以外の要因なのか。
 ただ警戒が必要かもしれぬということ以外、今は分からぬ。」
 苦虫を嚙み潰した様子のまま、空蝉丸は蛇腔病院の方を見た。
 殺し合いの場に似つかわしくない総合病院の風貌が、わずかにくすんで見えた。

「ホシノさんはこのことを知っているのでしょうか。」
「ディアッカ殿がホシノ殿にこのことを尋ねたかどうかは分からぬが……。彼女の心労を鑑みるに尋ねぬ方が得策やも知れぬ。
 ホシノ殿にとって優先すべきはアビドスのこと。
 目下の影響がないのであれば、話さず置くのも一つの手でござろう。」
「マイさんは少なくとも話ができる感じでしたし、私達にその能力が使われた感じはしません。
 そもそもマイさんは私達と喋っている時に怪しいそぶりをしていませんでした。」
「まあ、ほとんどの時間ホシノにショットガン突き付けられていたってのもあるけどね……。」
「何と過激な……。だが、問題はないと見てよさそうでござるな。」

 どこか煮え切らない情報だけを残し、一行は南へ向かう。
 彼らが事の真実を知る時が来るのかは……今はまだ分からない。

 【エリアB-6/蛇腔病院外部/9月2日午前7時30分】

 【空蝉丸@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:決意と罪の意識(大)、ドゴルドを察知 
服装:いつもの服装
装備:牙狼剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
   ガブリチェンジャー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   ザンダーサンダー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   6番の獣電池×6@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:獣電ブレイブボックス@獣電戦隊キョウリュウジャー、2、3、5、11〜25の獣電池(15、20は使用済み)@獣電戦隊キョウリュウジャー、サクラハリケーン@仮面ライダー鎧武、ホットライン
思考
基本:このバトルロワイヤルを止めるでござる
01:この気配、ドゴルドの!
02:大分獣電池に余裕が出来たし、脚も手に入ったでござる。
  マシュ殿、ディアッカ殿、かたじけない!
03:ディアッカ殿とホシノ殿は喧嘩するほど仲が良いでござるな
04:一度4人と共に病院に寄ってからドゴルドを探すでござる。
05:ソウジ殿もギラ殿も無事だと良いが……
06:宇蟲王ギラはやはり拙者のせいで?
07:流牙殿にこの剣を届けるでござる。
08:左虎殿……かなりの手練れでござる。まさか既にドゴルドと戦闘した者がおるとは
09:黒い火花に未知の能力、ドゴルドの装着者も不明となれば、拙者1人で挑むわけにもいかぬか。
 マシュ殿、立香殿、感謝いたす。
参戦時期:宇蟲王イーヴィルキングを倒した後
備考
※このバトルロワイヤルがまた自分が引き起こしたタイムパラドックスのせいなのでは?と思っています。
※400年間ドゴルドに封じられていた影響でドゴルドの気配を感知できます。
少なくとも大雑把な方角ぐらいは分かります。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています


382 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:32:29 vSkHIL0M0
【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
状態:正常
服装:いつもの服装
装備:霊基外骨骼オルテナウス改修型@Fate/Grand Order
令呪:マスター持ちサーヴァントの為なし
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索の企みを阻止する。
01:先輩、空蝉丸さんとドゴルドのいる南側に向かう
02:C.Eにキヴォトス……特異点や異分帯、先輩がレムレムしている様子やぐだぐだな感じはしませんね。
03:羂索たちの用意した令呪は預託令呪に近いようですね。
04:ディアッカさんからすれば私のような存在は珍しくないのでしょうか?
05:ホシノさん……ひとまずは安心なのでしょうか?
06:アルジュナ・オルタやドゴルドには要警戒。
参戦時期:少なくとも二部第五章後半より後
備考
※ディアッカ、ホシノと情報交換しました。
※少しだけディアッカとホシノの令呪を調べカルデアの物とは違い預託令呪に近い物であると考えています。
※ストライクのビームサーベルを一本喪失しました。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています

【藤丸立香(男)@Fate/Grand Order】
状態:正常
服装:カルデア戦闘服@Fate/Grand Order
装備:カルデア戦闘服@Fate/Grand Order ウルトロイドゼロの起動キー@ウルトラマンZ
令呪:残り三画(マシュ、ブラックバレル以外に使用不可)
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索の企みを阻止する。
01:マシュ、空蝉丸さんとドゴルドのいる南側に向かう。
02:マシュ以外のサーヴァントと繋がってない……。
  いつも通りと言えばいつもも通りだけど
03:ホシノ……ひとまず大丈夫かな?
04:かっこよかったなぁ、ガンダム。
  キョウリュウジャーも回数制限なかったら変身を観たかった。
05:ドゴルドの中で
参戦時期:少なくとも二部第五章後半より後
備考
※ディアッカ、ホシノ、空蝉丸と情報交換しました。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています


 ◇◆◇◇◆◇

 ディアッカはホシノにマイ=ラッセルハートの話をしなかった。
 ただでさえ苛立ちと焦りがあるホシノに余計な負担をかける必要はないと思ったし。
 ルルーシュのギアスに似た能力を持っていると知った時、こいつは黒見セリカや梔子ユメにその能力を使う可能性を考えブチギレるだろうことが目に見えていたからだ。

「ディアッカはさぁ。マイさんとは会ってないんだよね?」
 だからいきなりマイの話を切り出され、ストライクガンダム中で冷汗を垂らした。
 だが続く言葉は、ディアッカの想像とはかけ離れていた。

「あの人。ここに来る前に何があったのかな。」
「……そりゃあ何もないってことはないだろ。
 俺はザフト軍。蝉のオッサンはキョウリュウジャー。リツカとマシュは異聞帯だの特異点だので大事に巻き込まれてるみてえだし。
 大なり小なり、自分とは生まれも何も違う奴にだって。背負うもんや大事なもんはあるんじゃねえの。」
 こいつ、まともに他人のことを考えられたんだなと失礼な視線をモビルスーツ越しに向けながら、自分だってそんな殊勝なことを考え出したのはつい最近だとディアッカは思い出す。
 コーディネイターでない者たち――今のところザフトの連中とマシュを除くほぼ全員――の事情など、ちょっと前までは考えることはなかっただろう。
 
「そうだよね。」
 ホシノの場合は、この戦いに前後してのユメの残した契約に関する騒動やバトルロワイヤルでのホシノの逆鱗に触れ続けるような出来事で考える余裕がなくなっていた。
 だからディアッカが平静を保ったことに激昂したり、マイ=ラッセルハートという怪しい大人の存在に警戒心をむき出しにしたり。
 心のどこかで自分だけが不幸で、自分だけが苦しんでいるような。そんな感情を抱えているような気がしていた。

 ――今度こそ守れるといいね。ホシノちゃんの一番大事なもの。

 扉越しに聞こえたマイの言葉が、ホシノの耳に響いている。
 あれはどういう意味だったのか。
 マイ=ラッセルハートもまた、自分と同じように何かを喪ったのではないか。
 
「もうちょっとちゃんと、聞いてみればよかったかな。」
 後悔とはまた違う。やり残したような感覚がほんのちょっとだけあって。
 その様子がディアッカ・エルスマンには、少女が放つ棘がわずかに減ったように見えたのだった。


383 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:33:16 vSkHIL0M0
【エリアB-6/蛇腔病院外部/9月2日午前7時30分】

【ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEED】
状態:正常、ダメージ(小)
服装:錬金アカデミーの制服(赤)@仮面ライダーガッチャード
装備:ストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED
令呪:残り三画
道具:ホットライン、私服、錬金アカデミーの制服(青、黒)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:あの脳味噌女をとっちめる。
01:イザークに、死んだはずのニコルまで!
  なんでキラとアスランは名前が二つも?
02:クルーゼ隊長、マジにあの脳味噌女と組んでんのか……。
03:リツカ、マシュ、チビ、セミのオッサンと病院に向かい、その後アビドス砂漠の方に向かう。
04:少しはこのチビともうまくやんねえとな。
05:学園都市の癖に物騒すぎだろキヴォトス。
06:人理再編ねぇ。戦争とどっちがクソなんだか。
07:ルルーシュの野郎、準備万端じゃねえか
08:ムウのオッサンとラスティの分も暴れてやるぜ
09:装備も無しにヤバい手合いはいるみたいだな。気を付けねえと。
10:ホシノのやつ。なんか落ち着いたか?
参戦時期:少なくとも第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦開始後
備考
※ストライクは起動時にパックなし、エール、ソード、ランチャーを選択できます。
※マシュ、立香、ホシノと情報交換しました。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています

【小鳥遊ホシノ@ブルーアーカイブ】
状態:健康、ユメ先輩の死体を利用されている現状への怒り(極大)、羂索、茅場、クルーゼへの殺意(極大)、一応今は冷静
服装:臨戦
装備:アタッシュショットガン@仮面ライダーアウトサイダーズ
   折り畳み式の盾@ブルーアーカイブ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン(画面にヒビ有)
思考
基本:羂索たちを殺す
01:羂索たちに関する情報を集める。
02:こいつ(ディアッカ)、リツカ君、マシュちゃん、空蝉丸さんと病院に寄ってからアビドスを目指す。多分セリカちゃんや先生も行くだろうし
03:最強のNPCモンスタードゴルド……もしセリカちゃんや先生に手を出すなら空蝉丸さんより先に殺す。
最悪、中身ごとになっても。
04:クルーゼの部下だったらしいけど、そりゃあキツイか
05:マイ=ラッセルハート。どこか胡散臭いし信用はしないけど。悪いだけの人じゃないのかも
06:先輩と後輩をばらけさせるわけにはいかないもんね。
参戦時期:対策委員会編第三章にて空崎ヒナと会敵するより前
備考
※ディアッカ、マシュ、立香、空蝉丸と情報交換しました。
 しかし本人がいっぱいいっぱいなのでどの程度理解できてるか分かりません。


384 : マイ=ラッセルハートの暗躍カルテ ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:33:54 vSkHIL0M0
【支給品一覧】

 ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
 ・マイ=ラッセルハートに支給
 アマラリルク消滅時に残る、当人の心の結晶ともいえる指輪
 一度死亡した彼女たちの心と体を繋ぎとめる力があるが、他者が使えばその者の”心の力”を行使できる
 ツィベタの場合は氷を生み出し扱うことが出来る。
 
 ウルトロイドゼロの起動キー@ウルトラマンZ
 ・藤丸立香に支給
 対怪獣用ロボット『特空機』4号
 ウルトラマンゼロをモデルに生み出された機体だけあり、特空機の中でも最高位のスペックを誇る機体
 全身に多彩な武装が施されている。「人類の手で人類を守護する」というコンセプトのもと作り出された、文字通りストレイジの特空機の集大成である
 欠点は使用者に負荷がかかることと、カラータイマー部のコアから照射する『D4レイ』の使用には令呪が必要であること
 またD4レイは「次元崩壊を起こす」ほどの絶大な破壊力を持つ兵器であり、使用した場合搭乗者並びに周辺環境に何が起こるかは未知数である。

 簡易救急キット@オリジナル
 ・藤丸立香、マシュ・キリエライト、小鳥遊ホシノ、ディアッカ・エルスマン、空蝉丸が所持
 支給品ではないが便宜上ここに記載
 病院にある包帯、消毒液、絆創膏、ガーゼ、風邪薬など 一般的な救急箱に入っているものを集めた簡易キット
 蛇腔病院で集めたアイテムが元になっている 
 あくまで簡易のキットであり、「今後この場に訪れる参加者たちの邪魔にならないように」という意味で、消毒液や包帯などの消耗品は病院にまだまだ残っている。
 ホシノの持つキットだけは病院においてある箱型キットをそのまま運び、その他4人は同じ内容物が小さい袋に収められている。


385 : ◆kLJfcedqlU :2024/12/29(日) 23:35:04 vSkHIL0M0
投下終了します

簡易救急キット@オリジナル を状態表に記載するのを忘れていたので、wikiにて後程修正いたします


386 : ◆ytUSxp038U :2025/01/02(木) 00:24:35 7zrb2Tdc0
皆様投下お疲れ様です

タギツヒメ、ロロ・ランペルージ、糸見沙耶香、真人を予約します


387 : ◆ytUSxp038U :2025/01/08(水) 20:34:15 BF333xLk0
>>386に衛藤可奈美(シビト)を追加し延長もしておきます


388 : ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:48:53 WU3cdZq20
投下します


389 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:50:07 WU3cdZq20
民家に留まって情報交換の続きを行う。
考えた末にロロが出した答えはそれだった。

「一応理由を聞いても?」
「君の話を聞く限り、リボンズや自称アスランは相当手強いんだろう?もし出発を急いでまた遭遇したら、情報を明かす所じゃなくなる。
 それに君もまだ万全じゃないだろうし、もう少し休んでからでも良いと思うんだ」
「そこまで柔ではないが、気遣いは受け取っておこう。沙耶香も構わんか?」
「うん、私はロロに任せるって言ったから……」

直接自分の目で見た訳では無いが、聞く所によるとリボンズ・アルマークやアスランを名乗る狂人は機動鍵込みでも相当な強さの持ち主達。
遭遇した場合、まず間違いなく苦戦は免れない。
一方で沙耶香の警戒具合や話の内容から察するに、タギツヒメもまた相当な実力者。
消耗が足を引っ張りリボンズ達には苦渋を舐めさせられたとはいえ、万全ならばまた違った結果になっただろう。
危険人物に出会った際の対抗策として、彼女をアテに出来るよう体力は回復してもらいたい。
そういう利己的な目論見もあった。

同時にロロ自身、体はともかく精神的には安定してるとは言い難い。
自身のミスを悟った動揺と、罪悪感により内心は乱れている。
こんな状態で移動しトチ狂ったアスランにでも襲われたら、戦闘中に後れを取るんじゃないか。
若しくはどこかでボロを出し、一護殺害が明るみに出るんじゃないか。
危惧を解消する為に、冷静さを取り戻す為の時間がもう少し欲しかった。
悠長にしてもいられないが既に軽くない失敗を犯したのもあり、頭を冷やしてからでも損はあるまい。

内面を見せずに居間へ戻り、三人揃ってソファーに腰を下ろす。
まず明かしたのは、互いの住まう世界の大前提について。
神聖ブリタニア帝国、刀使と荒魂。
どちらもその世界に生きる人々からすれば、知らない方が有り得ない。
殺し合いが始まった直後だったら何らかの語弊が生まれた可能性もあるが、タギツヒメの話で既に異なる世界の存在は把握済み。
驚きはしても受け入れるのに抵抗は無い。


390 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:51:16 WU3cdZq20
流れで話はロロと同じ世界の出身者、ルルーシュへ移る。
参加者の中では堀北鈴音や一ノ瀬宝太郎に並び、大々的に顔を知られた者。
最初の場で堀北に奇妙な術を使った場面のみならず、殺し合いが本格スタートを切ってからも大きなアクションに出た。
と言ってもルルーシュの放送が行われた時、タギツヒメはまだ生きていた頃の一護共々戦闘の真っ最中。
映像どころか音声を確認出来たかも怪しい上に、常時キレ散らかす狂人が相手ではそんな余裕は皆無。
ロロの口から初めて放送の大まかな内容を聞かされた。

「……随分と大胆な真似に出たな」

或いは命知らずと言うべきか。
電波を利用し大々的に呼びかける策の有用性は理解出来る。
高津雪那を駒に使っていた時には公共の放送で、折神紫にヘイトが向くよう虚偽の会見を行った。
だがルルーシュの場合、彼自身へ敵意が集中しても不思議はない内容。
防御を固める術を有するにしろ、火力に優れた術や支給品を持つ参加者とて少なくはない。
リボンズや偽アスランのような好戦的な連中には恰好の的になるだろうに。
そういったリスクも承知の上で放送を行ったのか。

(少なくとも、ロロの方針を決定させるだけの効果はあったらしいがな)

ルルーシュについて説明する間、ロロは随分と饒舌になっていた。
これだけでも如何に兄へ信頼を置いているかが分かる。
下手に放送内容への批判を口走れば、即座に険悪となるだろうとも察しが付く。
だから「大胆な真似」という言葉で濁すに留めた。
尤もルルーシュのいるテレビ局へ向かうのを反対する気は無い。
放送で見せた顔が本性でロロのことも道具として使っているに過ぎないなら、相容れない存在と見なす。
逆に真意を別の所へ隠してるのであれば、その時はまた違った展開になるだろう。
殺し合いを打破する方針を変える気はない、だが己のみで解決へ導くのが厳しいとも身に染みて理解している。
ルルーシュの配下になるのは御免だが、協力出来る可能性がゼロでないなら会って損は無い筈。


391 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:52:21 WU3cdZq20
(それにだ、ロロについても深く知る機会になるだろう)

初対面で、しかも人間では無い自分を拾い介抱してくれた少年。
一護を野晒しにせず遺体を屋内に運んでくれたのもあり、信じたいとは思う。
だが一方で本当に真実のみを語っているのか、どこか頷けずにいる。
兄と再会しロロの素顔に近付き、それが一護に何が起きたのかを具体的に知る足掛かりになるのなら。
テレビ局まで同行するのも一つの手だ。

「お前がそこまで信頼する相手なら、一度会ってみても良い。テレビ局には我も行こう」
「っ!そっか…!ありがとうタギツヒメ……!」

反対され余計ないざこざになる可能性も考えたが、そうはならず内心で安堵。
何と言われようとテレビ局行きを変えるつもりはない、なれど兄の為にも利用できる人材は多い方が助かる。
湧き上がる罪悪感から目を逸らし、あくまで純粋な感謝と偽り頭を下げた。

テレビ局行は決まったがそれより先に向かうのは美濃関学院。
全国五ヵ所に存在する刀使養成学園の一つ。
可奈美と舞衣の母校でもあり、彼女達がいる可能性は低くない。

「十条姫和と、それから……薫って人も信用して良いの?」
「我のいた時間では、お前と肩を並べて剣を振るう間柄だったぞ。向こうがどの時間から参加しているかは知らんが、少なくとも益子薫なら協力も難しくは無いだろう」

本来であれば追手として現れた燕結芽との戦闘を挟み、高津学長にハッキリと反抗の意思を伝え、舞衣や可奈美との友情を結ぶ。
なれど沙耶香はその正史を辿る直前で殺し合いに招かれた。
当然益子薫や古波蔵エレンとも会っておらず、タギツヒメの話を聞いていなければ赤の他人としか思わなかったろう。
薫の指揮下に入り、荒魂に対する益子家教えを通じ彼女とも距離を縮める。
あった筈の未来を知る由もなく、少し先の時間軸で仲間になっているとだけ聞かされ何とも言えない想いを抱く。


392 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:53:22 WU3cdZq20
(逆に、十条姫和はどの時間からだろうと協力は難しいだろうな……)

参加者である刀使の中で、最もタギツヒメに敵意を向けているのが姫和だ。
殺し合いに乗る気が無いと伝えたとて、はいそうですかと即座に納得してもらえるとは思っていない。
沙耶香やロロが共にいれば一応話は聞くだろうが、最悪なのは姫和が沙耶香よりも前の時間軸から連れて来られている場合。
御前試合での襲撃を発端に可奈美と逃走劇を繰り広げる前、本当に一人で大荒魂を葬る刃を研いでいた頃から呼ばれた。
なんて事も無いとは言い切れず、そうなっては説得の難易度も困難を極める。
同じく母である篝とも、すんなり協力は難しい。
彼女の先輩達へやったことを思えば、怒りを覚えるなとの方が無理難題だ。
主催者達へ抗う方針に変わりなくとも、前途多難な現状に自分のことながら気が重くなった。

「ちょっと待ってタギツヒメ、この人は沙耶香の仲間とは違うの?」

名簿を見ながら信用出来る参加者を整理していたロロが、ふと疑問を口にする。
指差した箇所にはアンクの三文字。
タギツヒメと柊篝の間に記載されており、並び的にもまず間違いなく刀使の関係者。
だというのに先程からアンクについては一切言及しておらず、流石に気になったのだ。

「そやつに関して我も分からん。名前の位置を見るに我や沙耶香と同じか、そうでなくとも刀使や荒魂と関係のある者だとは察せるが……」
「私も知らない。てっきり薫って人みたいに、少し先で知り合うのかもって思ったけど…」
「まあ、お前や衛藤可奈美達の交友関係を全て把握してはいないのでな。我が知らんだけで、向こうはお前を知っているかもしれん」

だとしても少々不自然な人選だと思わないでもない。
エレンや元親衛隊の面々等、現代でタギツヒメと浅からぬ因縁を持つ刀使。
若しくは藤原美奈都や折神紫といった20年前の事件に深く関係する者ではなく、何故あえてアンクなる者を参加させたのか。
何と言えば良いのやら、強引に捻じ込んだようなちぐはぐさを感じる。

まさか十条姫和が二人存在し、片方は偶発的に自我を得たNPCが憑り付いているとは夢にも思わず首を捻るばかり。
真実を知る術は現状三人共持っていない。


393 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:54:08 WU3cdZq20
何より、長々と考え込む時間は与えられなかった。

「――――っ!」

目では捉えられないナニカが肌に突き刺さる感覚。
殺気という、他者へ害を為す瞬間に発せられるモノ。
自分達へ向けられたと理解し、体は無駄を削ぎ落とした速さで動く。
立ち上がり双剣を引き抜くのに5秒と掛からない、刃同士が激突する音が響く。

人外故の反射速度を見せたタギツヒメに少々遅れ、沙耶香も抜刀。
写シを張る隣では、敵襲と察したロロが機動鍵を使いパワードスーツを装着。
3人共に戦闘準備が完了し、襲撃者を己が視界に収める。

「…………は?」
「うそ……」

呆けた声が自分の口から出たと、タギツヒメも沙耶香も果たして自覚出来たかどうか。
己の瞳に映る襲撃者の姿が、現実のものとは思えない。
所々が破れた布は、見間違える筈の無い美農関学院の制服。
見え隠れする素肌を縫い目が走り、まるで綿が零れないよう修復されたぬいぐるみを思わせる。
結われた栗色の髪も、その下の顔も記憶にあるのと全く同じ。
人形染みた無表情という一点を覗いて、だが。

「お前、は……」

酷く掠れた、老人の如き声だと。
どこか現実逃避気味に考えるも、目の前の光景は何も変わらない。
斬り掛かり今も鍔迫り合う者の名を、タギツヒメが忘れる筈も無かった。


394 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:54:53 WU3cdZq20
「衛藤可奈美……?」

問い掛けられても向こうからの答えは言葉に非ず、刃に乗せた殺意。
刀身に掛かる重さが増し、八幡力と察するや両足が縺れる。
己のつまらないミスへ舌を打ち、斬首を狙った剣を迅移で回避。
斬り合うのに民家の居間は狭過ぎる、窓を突き破り外へ出れば逃がさぬと敵も背を追い掛ける。

狙い通り舞台を外へ移し、背後からの斬撃に対処。
双剣を水平に斬り払う、【水面斬り】へ同じく二振りの刀を叩き付けた。
刀使の術が使えるのは可奈美だけではない、タギツヒメも八幡力で強化。
共に剣が弾かれ、隙を突かれる前に再度攻撃へ打って出る。
一手早いのは可奈美、両の切っ先が首と心臓を同時狙う。
【雫波紋突き】は鬼の頸を落とすのには向かないが、逆に相手が鬼でないなら必殺の技と化す。

「チッ…!」

先手を譲る形となったが、大人しく剣を受け入れるのまで許してはいない。
記憶に残ったどの可奈美の動きとも違う、初見の技なれど防げないかと言うなら否。
烈風丸で剣の腹を叩き、天鎖斬月の刀身で切っ先を押し返す。
ノーダメージで凌ぎ反対に斬り付けるも、宙を舞う紙切れのような掴み所の無い動きで躱される。
【流流舞い】で回避する間も瞳はタギツヒメから離さない、死角へ移動し敵の目が捉えるのを待たずに腕を振るう。
狙うは急所、写シを剥がし再び張られる前に仕留める気だ。

「随分と、お前らしからぬ戦い方だな…!」

視界のみに頼るつもりは最初からない。
針を毛穴に捻じ込まれる痛みにも似た感覚が、可奈美の位置を嫌でも知らせて来る。
弾き返し両手の剣を同時に叩き付ければ、交差させた得物で防御。
衝撃までは殺せずに後退を余儀なくされるも、踏み込まれる前に迅移でタギツヒメへと接近。


395 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:56:06 WU3cdZq20
(まさかとは思ったが、やはりそうなのか……)

表情を変えずに剣を振るう可奈美と斬り結びながら、紛れもない現実を受け止める。
見慣れぬ技や得物を我が物にしているが、目の前にいるのは衛藤可奈美だ。
ルルーシュの持つ異能のような、他者を操る術の支配下にあるのではない。
苛烈な剣に殺意はあれど、嘗て自分と斬り合った時の熱は微塵も感じられない。
剣を振るう姿をこの目に映して尚、生者の気配は漂って来ない。
ここにあるのはただの肉袋に過ぎず、可奈美本人はもうこの世にはいないのだろう。

「……っ」

訳も分からず胸がざわめく。
タキリヒメやイチキシマヒメと違い、自分と刀使は敵同士のまま殺し合いに招かれた。
可奈美が死んだとて多少の驚きこそあれど、激しい動揺を抱く程ではない筈。
だというのに、今感じているのは既にこの地で二度味わったものと似ている。
大事なナニカを取り零してしまったような、喪失感とも呼ぶべき痛み。

「いや、そうか……」

困惑はやがて納得に変わる。
ただ気付かない振りをしていただけで、本当は自分でも分かっていたのだ。
思えば一護と斬り合った時もそう。
己の全てを出し切るような技と技の応酬で、認めたくなかったが自分の孤独が埋まる気がしていた。
言葉では無く剣を通じ、互いを理解する。
一護が自分にやったことであり、可奈美が多くの者にやってきたこと。

だから多分、心の奥底では期待していたのだろう。
衛藤可奈美ならば、埋まらない筈の孤独を癒してくれる。
どの刀使よりも強く、それでいて斬り合いを心から楽しむ彼女だったら。
剣と剣で奇妙な、だけど自分にとっては救いとなる「縁」を作ってくれるのではと。
そんな風に願っていたかもしれないと、救われた今ならそう思う。

「もう遅いがな…」

呟きに可奈美は何の反応も見せない。
当たり前だ、これは可奈美の姿をしているだけの骸。
彼女を彼女たらしめる心は二度と戻っては来ない。

左右から首へ迫る刃に、身を屈めて躱し懐へ潜り込む。
頭上で剣がかち合う音は無視、脇腹へと己の剣を走らせた。
虚やネウロイを斬る筈の得物が、人ならざるものと化した刀使を黄泉へ送り返す。
だが自我が無くとも終わりを受け入れる気は皆無、跳躍しタギツヒメの頭上を取る。
人間と大荒魂、共通の脆い箇所へ【滝壷】を繰り出した。

「馬鹿者が……」

四文字に籠められた感情をタギツヒメ自身も理解しないまま、振り下ろされた一撃を迎え撃つ。
一護も、刹那も、そして可奈美も。
誰かの心を揺り動かし、大きく変える事が出来る者達に限って死んでいく。
本当に馬鹿ばかりだと苦い顔で剣を振るった。


396 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:57:05 WU3cdZq20



(何だこのデタラメな戦いは……)

シビトと化した刀使と、孤独から解放された大荒魂の闘争。
パワードスーツのレンズ越しに見つめるロロは、内心で肝を冷やしていた。
生身で超人的な戦闘能力を持つ者には心当たりがある。
ジェレミア・ゴットバルトや篠崎咲世子、自分と同じ参加者の枢木スザク。
三人共ギアス無しに馬鹿げた力を持つが、タギツヒメと可奈美の速さは彼らをも超える。
パワードスーツや仮面ライダーの恩恵に与ったのとは違う、刀使の術と純粋な剣術を最高レベルに発揮した剣戟。
沙耶香の話から強いとは察したがこれ程なのか。

「可奈美……どうして……」

その沙耶香は苛烈な斬り合いを前に呆然と立ち尽くしていた。
襲って来たのは可奈美の偽物、或いは何らかの方法で洗脳されただけ。
都合の良い方に考えようとしても、目に映る彼女の姿にハッキリ否定を突き付けられる。
自分達の知らない所で可奈美がどうなったのか、生々しい縫い目がその証拠だ。

「私は……」

どうすれば良いのかが分からない。
突然斬り掛かって来た事からも、今の可奈美が無差別に人を襲う存在なのは疑いようもない。
タギツヒメに加勢し、共に可奈美を斬る。
刀使としての役割や殺し合いに抗う者の方針としては、きっとそれが正しい。

(私に出来るの……?)

以前までの、高津学長に言われるがまま動くだけの自分だったら迷いも無かっただろう。
だけど、可奈美と再戦を約束し、舞衣の優しさに触れた今では躊躇が生じる。
魂が無いからといって、自分に可奈美を斬れるのか。
もし舞衣にそれを知られたら、一体どう思われるのだろうか。
一方でここで可奈美を斬らねば、舞衣にも容赦なく襲い掛かる。
自分以上にショックを受けるだろう舞衣へ、余計に精神的な負担と危険を強いるくらいなら自分が手を汚すべきでは。
なまじ人間らしい情緒が育っただけに、却って迷いが剣を鈍らせた。

「沙耶香……」

目に見えて動揺する沙耶香へ同情の素振りを見せつつ、内心では無理もないかと独り言ちる。
沙耶香にとっての可奈美や舞衣は、自分にとってのルルーシュと同じ。
使われるだけの人生を変えてくれた存在が、あろうことか骸となり自我無き殺戮人形へ堕ちたのだ。
自分だって沙耶香の立場なら、まともな思考が出来たか自信は無い。
ルルーシュを殺し使役した相手を憎むだろうけど、同じかそれ以上にショックで動けなかったろう。
とはいえずっと見物に徹する訳にもいかない。
あの可奈美がルルーシュに危害を加える可能性が高い以上、出来ればここで排除しておきたかった。


397 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:58:44 WU3cdZq20
「いやぁ、派手にやってるねぇ」

沙耶香に向けて言い掛けた言葉を引っ込め、弾かれたように振り返る。
聞き覚えの無い声の主はすぐに見付かった。
長髪に全身の継ぎ目が特徴の、見ていると不安を覚える男。
戦場には似つかわしくないヘラヘラとした笑みを浮かべ、呑気に斬り合いを眺めていた。

「誰だ…?まさか彼女をああしたのは…!?」
「その通り、って言ったら俺も楽しいんだけどね。生憎無関係だよ。あっ、因みに俺は…藤丸立香っていうんだけどさ」

ロロの警戒もお構いなしに名を告げ、近付いて手を伸ばす。
偶然出会った友人へするような、気安い動作。
余りに自然に行うものだから、ロロも沙耶香も反応が遅れる。
可奈美の件もあって混乱から抜け出せない沙耶香の肩に、ポンと手が置かれ――

「失せよ下郎が!」

その寸前で、不可視の刃が男を襲う。
手を引っ込めて飛び退き、唇を尖らせて顔を上げる。
斬り合いの真っ最中のタギツヒメが、烈風丸から斬撃を真空刃を放ったのだ。

「迂闊にその男には近付くな!荒魂よりも質が悪いぞ!」
「そんなあっさりネタバラシとか、空気読もうよ。ってか君こそ俺をどうこう言える側じゃないでしょ」

人ならざる者として、何より怒りを原動力に生きたタギツヒメだからこそすぐに分かった。
現れた男は荒魂が宿す喪失感や復讐心よりも尚おぞましい、純然たる悪意で構成された存在。
謂わば呪いが人の形を取った、正真正銘の化け物だと。


398 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 22:59:41 WU3cdZq20
同じく男…真人もまたタギツヒメの本質は自分達呪霊に近いと即座に察した。
だからこそ本心から呆れを抱く。
人間を庇い、利用するのではなくまるで仲間のように扱う姿勢。
それは違うだろうと、そんなものが呪いの在り方な訳が無いだろうと。

美農関学院から飛び去り、道中でNPCの集団を相手に実験がてら無為転変を使い魂を弄り続けた。
運が良い事に、人間タイプのNPCになら自分の術式は有効だと判明。
質は低いが数を揃えるだけなら十分だと、改造人間のストックを増やすのに成功。
秀吉相手に使った分はある程度補充し、移動再開となった所でタギツヒメ達を見付けたのだった。

「まっ、こっちはこっちで勝手に楽しむから良いんだけどさ」

アッサリ切り替え、右腕から棘を生やして沙耶香に伸ばす。
肉の鞭の襲来へ迅移を用いて回避、速度を維持したままで接近。
一瞬で懐に潜り込み御刀を突き出すも、真下からの攻撃に弾かれる。
膝を斧に変えての蹴り上げだ、がら空きの胴体目掛け左拳を放った。

ノコギリを思わせる刃をを生やした拳は、空しく宙を切り裂くのみ。
再び迅移を使い死角へ移動、間髪入れずに斬り込む。
速さに特化した沙耶香が得意とする戦法だ。
並の相手は反撃の暇もなく細切れと化すも、此度の敵は変幻自在の特級呪霊。
人間の関節では有り得ない動きで全身が曲がり、刃を掠めさせもしない。

大口を開けると舌が刺突剣に変化、沙耶香の顔面狙いで伸びた。
首を動かし躱すも、避けた先には鎌状へ変えた右腕。
刀で防ぎつつ一旦距離を取れば、枝分かれした鎌が頭上より飛来。

雪原を赤く染める刃の群れ、それを阻むは軽快な音を立てる銃弾。
ロロがアサルトライフルを連射し、沙耶香から脅威を遠ざける。
更には左腕のグレネードランチャーが火を吹き、真人を直接狙い撃つ。
両足を獣に変え疾走、回避しつつも両腕を肉の盾に変化し爆風から身を守る。
無論避けるだけでは真人自身つまらない、砲撃を躱しながら接近し肥大化させた拳を叩き付けた。

「くっ…!」

ランドスピナーの回転数を速め、拳の範囲内から脱出。
入れ替わりに沙耶香が突撃、対する真人も次の手を選択済みだ。
改造人間複数体をばら撒くと、干し柿のような姿は一変し異形が出現。
魚や虫に似た、生理的嫌悪を誘発する怪物が涎を垂らしながら襲い来る。

近付く異形を撃ち殺すロロに倣い、沙耶香も刀を振り被った。
人に害を為す怪物の相手は今に始まったものではない。
斬るのに躊躇はいらないと仕留めに掛かり、


399 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:00:22 WU3cdZq20
「たす……け……」

己が剣をピタリと止めた。

「え……?」

目を見開く沙耶香へお構いなしに異形達は手を伸ばす。
まるで救いを求めるかのように。

「ころ……して……くれ……」
「だれか……おかーさ……」

途切れ途切れの嗄れ声だが、確かに人語を発している。
荒魂とは違う、かといって大荒魂とも別物。
嫌な予感に背筋を冷たいものが滴り落ち、それを見計らってか楽し気な声が掛かった。

「ああそうそう、言い忘れてたけどそいつらは元々人間なんだ。まあ気にしないでよ、そうなったらもう助からないからさ」

毒のように真人の言葉が沙耶香を蝕む。
一体残らず人の形をしていないが、嘗ては間違いなく人間だった。
醜悪な形に変えられたが、人としての自我はまだ残っている。
そんな彼らを殺すのか。
真人が言ったように助かる方法が無い以上、斬る以外に道はない。
刀使として彼らの魂を解放する事こそ、最も正しい選択。

「……っ」

そう理解して尚も動けない。
最初から人では無い荒魂を斬るのと、元は人で自我を残された改造人間を斬るのでは全く違う。
例え異形に変えられたとしても、彼らを斬るのは人殺しと同じになるのではないか。
効率的に敵を倒すだけの機械、そうはなりたくないから殺し合いを拒否した。
舞衣や可奈美がくれた温かさを手放したくないからこそ、主催者の言い成りにはならないと決めたのに。
これでは結局、自分の手を人の血で汚すのと一緒なんじゃないのか。


400 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:01:07 WU3cdZq20
生まれた迷いは致命的な隙へと直結する。

「ありがとう、分かり易いくらいに動揺してくれて」
「っ!」

傍らで囁かれた声に強張るも遅い。
群がる改造人間を撃ち殺したロロが気付いて銃口を向ける。
ギアス卿団の暗殺者として屍を積み上げ、殺し合いでも既に一人を手に掛けた故に元人間だろうと躊躇は抱かない。
尤も、トリガーを引くより真人の方が早かったが。

「折角だし、色々試してみるのも悪くないよね」

翳した掌が齎すのは魂を弄ぶ術式、ではない。
本来の真人が持ち得ない、主催者から与えられた異能。
沙耶香の視界を光が覆い隠し、思考が瞬きの間に塗り替えられた。
寝起きの時にも似た気の抜けた顔を真人が覗き込む。

「おーい、俺の声聞こえてる?」

アサルトライフルの銃撃を傘に変えた腕で防ぎ問い掛ければ、すぐに反応があった。
ハッとしたように肩を揺らして、コクコクと慌てて頷く。
色白の頬は紅潮し、瞳を潤ませた様はどう見ても呪いに向ける表情ではない。
効果ありを確信、内心で嘲笑しながら新しく手に入った“玩具”に命令を下す。

「早速だけど、あっちにいる鉄男を殺して来てよ」
「う、うん……!」

首を縦に振り迅移を発動、一気に零陽炎を纏ったロロの元へ到達。
未だ事態を飲み込めず困惑する相手へ、一切構うことなく剣を振り被る。
暗殺者として育てられたのが活きたのだろう、殺意へ自然と体は動いた。
両腕を交差し防御、腕部へ走る衝撃は沙耶香が叩き付けた御刀の一撃。


401 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:01:45 WU3cdZq20
「沙耶香!?急に何を…っ!?」
「ごめんねロロ。でも、彼の為にやらなきゃいけないから」

理解も納得も出来ない答えと共に、続けて刃が襲い来る。
速度に物を言わせたお得意の攻撃に加え、八幡力で威力も強化。
更に得物は破壊困難な御刀、愛用する妙法村正なのも影響し油断ならない斬撃の嵐だ。
KMFの耐久性で凌いではいても、一方的に受けてばかりではダメージの蓄積は免れない。

(まさか、兄さんのギアスと同じような力か!?)

今の今まで敵対していた相手の命令を、急にすんなり受け入れた。
不可解極まる現象にはロロも心当たりがある。
兄であるルルーシュが持つ、絶対遵守の王の力。
制約はあるが一度支配下に置かれれば、どんな命令も実行するギアス。
それと同じような洗脳能力の類を使われ、沙耶香は敵の操り人形となった。
よもやルルーシュ以外にも似た力を持つ者が現れるとは、厄介な敵にぶつかったと歯噛みする。

スラッシュハーケンを伸ばすも紙一重で躱され、再び刃が迫る。
零陽炎も反応速度が致命的に低くは無いが、速さで言うなら沙耶香が上。
ましてジェレミアや咲世子と違い、ロロは白兵戦に秀でた戦士という訳でもない。
KMFの操縦とは勝手の違う戦いの分は沙耶香にあった。

(どうする?ギアスを使えば…でも……)

自身のギアスなら、抵抗を許さず無力化も不可能ではないだろう。
が、課せられた制限が使用に躊躇を抱かせる。
もし沙耶香を大人しくさせる間、一護殺害の時と同じ違和感が発生しタギツヒメに気付かれたら。
疑念を向けられ廻り廻って一護を殺した件が明るみに出てしまえば、洗脳中の沙耶香のみならずタギツヒメまでもを敵に回してしまう。
襲って来た可奈美や藤丸立香(真人)が味方になる筈も無く、この場でロロは孤立を余儀なくされる。


402 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:03:00 WU3cdZq20
「隙だらけだよ鉄男。自分から的になってくれるなんて、気が利いてるね」
「っ!ぐあああああああああっ!?」

判断の遅れと沙耶香に意識を割き過ぎたツケが回って来た。
沙耶香へ命令を下したが、真人自身が何もしないと言った覚えもない。
NPCを相手取った際に手に入れた武器、二つセットのバズーカ砲を構え連続で発射。
戦国乱世に名高い武将達とも渡り合った、愛の伝道師の得物だ。
高火力の砲撃が命中、悲鳴を上げて吹き飛ばされる。

「がふっ……」

雪の上を転がり、止まった時には衝撃でパワードスーツも解除。
アッシュフォード学園の制服へ水分が染み込むのも、全身を苛む痛みで気にならない。
ギアスの副作用で感じる苦痛とは別種の苦しさだ。
機動鍵が無かったら今頃は火達磨になっていたに違いない。
何とか立とうとする意思とは裏腹に、軽くない傷を負った体は意識を落とす。
小さく漏れた悪態はロロ自身にしか拾われないまま、視界が黒に染まった。

「へぇ、人間の武器ってのも中々面白いね。あ、そういや巻き添えとか食らってない?」
「うん大丈夫。えっと、心配してくれて、あ、ありがとう」

心配と言うには軽い態度で聞かれたが、思考がまともでない沙耶香にはそれだけでも歓喜を抱くものだったらしい。
赤い顔でもじもじと礼を告げる姿に、内心で馬鹿を見る目を真人は向けた。

倒れたロロなど眼中にないとばかりの態度は、可奈美を相手取るタギツヒメにも見えた。
状況は悪化の一途を辿り、一向に改善の兆しは見えない。
自分の焦りも敵には無関係、心臓目掛け切っ先が突き出される。
烈風丸で弾いた傍から脇腹へと刃が駆け、身を捩ってどうにか躱す。
攻撃の勢いは衰える気配を見せず、既に死人の相手には体力消耗も期待出来ない。
そうこうしている間にも、ロロの方へ真人が近付きつつあるというのに。


403 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:04:01 WU3cdZq20
「いい加減に…せんか貴様ァッ!!!」

リボンズの時に始まり、敵へ良いようにやられてるだけの自分。
悉く自分との縁を奪おうとする襲撃者達。
以前までの原動力とは違う理由で湧き上がった怒りが、タギツヒメの剣を一層激しいものへ変える。
感情的な攻撃は戦いを有利にも不利にも動かすが此度は前者だ。
怒涛の攻めは水の呼吸の型を繰り出す隙を与えない、可奈美の防戦一方へと変化。
生前ならば焦りと高揚の混ぜ合わさった表情を浮かべたろうけれど、生憎シビトに感情は存在しない。
別方向から同時に飛来する刃を金剛身で防御し、体勢を立て直される前に【雫波紋突き】で射抜く。
刀をタギツヒメが引き戻し防ぐも勢いは可奈美が上、得物が両手から弾かれた。

「貴様は…一護や刹那と同じような馬鹿者だった筈だ!」

だが得物の損失にもタギツヒメは慌てない。
金剛身で掌を硬質化させ、襲い来る刃を掴み引き寄せる。
可奈美の顔目掛け自身の額を叩き付ける、頭突きという原始的な手段。
痛覚は薄くとも衝撃は受けるらしく、よろけた隙にもう一撃食らわせるべく動いた。

「それが本物の大馬鹿者に成り下がりおって…!!」

八幡力を発動し、伸ばした足が腹部へ吸い込まれる。
靴底が叩き、蹴り飛ばされた可奈美は見えない手に襟を引っ張られているかのよう。
激突の瞬間までを見送らず、落ちた得物を拾うや否やロロの元まで疾走。
気付いた沙耶香が迎え撃たんとするも、本来の意思を失った剣で止められはしない。

「寝ていろ!」
「きゃっ……!」

一刀の元に写シを剥がし字面へ転がす。
残る標的は呪い一体、五指を鞭に変え四方八方から振るう。
先端は鉤爪状に変化し、紙切れのように切り裂くつもりだ。
なれどタギツヒメには何ら脅威足り得ない攻撃、視線は真人から外さないまま全方向からの刃を弾く。
距離を詰められれば左手を肥大化、叩き潰すべく放つも細切れにされた。
再生させつつ両脚をバネに変形、大きく跳びながら腕を突き付ける。


404 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:05:23 WU3cdZq20
銃口へと変え、改造人間を弾丸代わりに発射。
本物のマシンガンもかくやの勢いだが、タギツヒメ相手には足止めにもならない。
一体残らず斬り落とされた挙句、烈風丸から真空刃が飛来。
目には見えないが空気の揺れで攻撃の正体を察知、上半身を下げると煎餅のように平たくなる。
頭上を刃が通過し終えるや否や元に戻り、ついでに両腕を巨大な網に変えてタギツヒメを閉じ込めた。

内側には無数の棘、いやドリルが飛び出している。
網を狭めれば回転数を速めるドリルに貫かれ、全身串刺しの上にミンチだ。
逃げ場無し、と諦めるのは並の力しか持たない者の弱音。
無ければ自ら切り開くのみ、両腕が搔き消えた思えば次の瞬間には網がバラバラと落ちた。

「やってくれるね」

腕の再生と共に改造人間を吐き出し、大技に打って出る。
二つ以上の魂を合わせ、拒絶反応を攻撃に利用した術。
秀吉相手にも使ったソレは気軽に撃てるものでもないが、改造人間はNPCで補充済みだ。
巨大な芋虫にも似た呪霊を筆頭に、波がタギツヒメへと押し寄せる。

大質量が迫りつつある中、タギツヒメは目を細め静かに見据える。
成程、単に肉体を変形させるよりも危険だ。
写シを張ってはいても直撃は避けるに限る、だが回避に動く必要も無い。
真っ向より捻じ伏せる技が、今の自分にはあるのだから。

「――月牙天衝」

黒き刀身が力を帯び、振るえば斬撃が呪霊を喰い殺す。
波を打ち消して尚も勢いは衰えず、継ぎ接ぎの呪い本体をも飲み込まんとする。
命中を受け入れるのは真っ平御免だ、両脚を獣に変え大きく飛び退いた。

「…ちょっとヤバいかも」

ニヤつく顔のままで敵の脅威の度合いを引き上げる。
秀吉のような派手な破壊力とは違う、しかし負けず劣らずの強さを持つ。
体術や武器の扱いに優れた呪術師は知っているも、タギツヒメはそれらの追随を許さない剣術の使い手だ。
加えて面倒なのは得物の片方、黒い刀身の刀。
チラと目を落とせば躱し切れなかった箇所に痛みを感じ、真人に事の重大さを認識させる。
肉体ではない、魂にダメージが入ったのだ。
難しく考えるまでもなく、当然と言えば当然の話か。
呪霊が参加しているのだから、ソレを祓(ころ)す呪具の類とて配られていても不思議は無い。


405 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:06:31 WU3cdZq20
真人は知らないがタギツヒメが振るったのは天鎖斬月。
黒崎一護が残した斬魄刀、その卍解形態。
元々斬魄刀とは虚(ホロウ)と呼ばれる、魂が悪しき霊体へと堕ちた存在を浄化する死神の得物。
世界は違えど魂を斬る為の剣故に、呪霊である真人を葬る武器としても機能する。

「まさか二度も破られるとは思わなかったけどさ。自信無くしちゃうよ、俺」

おどけて言うが驚きは本心からだ。
秀吉に続き二度も大技を打ち破られるとは予想外。
まあ特級クラスの呪具を使ったタギツヒメはまだ納得のいく範囲内。
人間にも関わらず拳で捻じ伏せた秀吉の方がおかしい。
「何なのかなあのゴリラは」とボヤく真人だが、タギツヒメは会話に興じるつもりもない。
コレを相手に対話へ持ち込むのは流石に不可能だと分かる、早々に片付けるまで。

「だめ…!」
「なっ…!?」

しかし、この場で唯一真人の死を望まない少女が割って入る。
写シが剥がされても構わず、己の体を盾に沙耶香が立ち塞がった。
敵なら真人共々切り捨てるが、洗脳されただけの相手を殺す訳にもいかない。
間一髪で振り被った腕を止め、生まれた隙を逃さず真人が沙耶香を抱き寄せる。

「ありがと沙耶香!そんじゃ、俺達はそろそろお暇するよ!」
「待て貴様…!」

肉体変化を駆使し飛び去る真人へ斬り掛かろうとするも、沙耶香の存在が待ったを掛ける。
烈風斬や月牙天衝なら威力・範囲・速度全てが真人を地に落とすのに十分な技。
だが放てば確実に沙耶香を巻き込んでしまう。
恋人に抱きしめられた気分でうっとりしている彼女は、望まぬ思考に支配されている被害者。
大荒魂である自分に歩み寄ってくれた沙耶香まで斬る事は、タギツヒメには出来なかった。

「くそっ…」

悪態を吐いても事態は変わらず、あっという間に真人達は見えなくなった。
自分もいつまでも立ち尽くしている訳にはいかない。
蹴り飛ばした可奈美が戻って来たら、有無を言わさず戦闘再開は確実。
いらぬ被害が生まれる前に仕留めておきたいが、意識の無いロロに気を遣ったまま勝てる相手ではない。
疑念を抱いているとはいえ、自分を拾ってくれた恩人。
見捨てる選択肢は選べず、ロロを連れて可奈美が戻る前に離れる事を決めた。


406 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:07:22 WU3cdZq20
写シを解除し、ダブルオーライザーの機動鍵を仕様。
使い慣れたとは言い難いが、MSの機動力は迅速な移動に持って来いだ。
片手で担ぎ、民家の方へと振り返る。

「……すまん一護」

自分を救ってくれた男を、埋葬するでもなく民家に置き去りにする。
抵抗はあるが時間が無いのも事実、申し訳なさで心が重くなるも振り切るように飛び立つ。
美農関学院へ向かう当初の目的から大きく外れたが、それについてもロロが起きてから改めて話せば良い。
何より、操られたままの沙耶香も放っては置けない。

「護るというのは……」

難しいものだな。
その呟きは誰にも聞こえず、冷えた空気に溶けていった。


【エリアA-12/南部/9月2日午前9時】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(大)、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)、気絶中
服装:アッシュフォード学園の制服(男子用)、フードパーカー
装備:零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、ランダムアイテム×0〜2(一護)、一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン
思考
基本:兄さんを生還させる。
00:……。
01:美濃関学院に寄りつつ、兄さんのいるテレビ局へと向かう。マーヤと合流したい所だけど…。
02:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
03:沙耶香は兄さんのギアスと似たような力を受けたのか…?
04:枢木スザクとビスマルク・ヴァルトシュタイン、二代目ゼロはとりあえず殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。その時が来たら使い捨てる。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。それが…せめてもの。
07:違う世界の、ブリタニア姓の僕…か。
08:…色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
09:リボンズやアスラン・ザラ?を警戒。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続にお任せします。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。

【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)、可奈美の死に複雑な想い、ダブルオーライザーを装着中、ロロを担いでいる
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:ロロを連れて一旦退く。
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたようだが…よりにもよって柊篝が巻き込まれているとは……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのあの異能…我にも通じるのだろうか。
08:ロロの事は信じたい、だが…一護の死は本当に、奴の言った通りなのか…??
09:沙耶香はいずれ取り戻す。藤丸立香なる男(真人)、荒魂より質が悪いな。
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。

※どこへ向かったかは後続の書き手に任せます。


407 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:08:19 WU3cdZq20
◆◆◆


真人が沙耶香を操ったのに特別深い理由はない。
別に、スパナや嘗ての順平と同じく無為転変の餌食にしてもそれはそれで良かった。
ただ折角主催者から支給された未知の異能があるのなら、試してみても悪くない。
遊参加者で遊ぶ方法は千差万別、趣向を変えてみるのも面白い。
子供のような好奇心に突き動かされ、実験台に沙耶香は選ばれた。

「愛(ザ・ラブ/The Love)」。
聖十字騎士団の滅却師、ペペ・ワキャブラーダの聖文字(シュリフト)。
対象を魅了し盲従させる異能こそ、真人に支給されたスキル。
本来、この力は愛が薄い相手には相応に低い効果しか齎さない。
仮に沙耶香がもう少し前の時間軸から呼ばれていれば、真人が思うような結果にはならなかったろう。
皮肉にも可奈美や舞衣、そして共感を抱くロロの存在が情緒を育み、ザ・ラブの効果を引き上げるに至った。

今の沙耶香にとって真人は祓(ころ)すべき呪いではない、胸を高鳴らせる初恋の異性に等しい。
相手が嘲笑と嫌悪を織り交ぜた目を向けているとは気付かず、暫し空のデートに身を委ねた。

「……?」

と、不意に真人のポケットからはみ出た物体に気付く。
何かのカードらしいソレを見つめ、察したのか真人から説明があった。

「ああ、それはロロとかって奴のポケットから落ちたのを拾ったんだよ。呪術師の符とは違うけど、籠めた力は相当なもんさ」
「ロロが……?」

何か違和感を感じた。
支給品を互いに明かし、タギツヒメと御刀を交換し合った時。
ロロは自分の支給品を起動鍵一つと言っていた。
こんなカードを持っているなんて、一言も口にしていない。


408 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:09:19 WU3cdZq20
(待って、確かあの時……)

疑問は沙耶香の記憶をより鮮明にしていく。
真人が回収したカードを、自分は一度どこかで見ていなかったか。
元の世界ではない、殺し合いに巻き込まれてから。
ややあって思い出す。
一護が既に殺されたとロロが言った際、彼のポケットから端を覗かせていた筈。
あの時は自分も内心では平静でいられなかった為、カードのことなんて頭には入って来なかった。
だがある程度時間が経ち、洗脳下にあるのも相俟って不可解に思えて来る。

単に私物のトレーディングカードなら、わざわざ言及しなかったのにも納得はできる。
しかし真人曰く、何らかの力が籠められた物であれば黙っていたのはおかしい。
何故ロロはこのカードの存在を隠したのだろうか。

(ふーん?どうやら、ただ仲良しこよしでつるんでたって話でも無さそうかな?)

沙耶香の様子に、ロロ達の間には仲間意識以外のナニカがあったのを真人も察する。
具体的な話は降りて沙耶香から事情を聞けば良い。
場合によってはまた一つ、人間達を使った遊びが思い付くかもしれない。
或いは、式神使いこと花村陽介に沙耶香をぶつけても面白い。
スパナの時とは違って元の形を保った少女を、果たしてあの少年はどうするのか。
虎杖悠仁が不在なら、代わりに精々苦しんでもらおうじゃあないか。

刀使を従え呪いは嗤う。
信念も、誇りも、誓いも、何もかも全てを踏み躙る悪童の如く。


【真人@呪術廻戦】
状態:ダメージ(中)、楽しい、タギツヒメへの警戒と呆れ、両腕を翼に変形
服装:いつもの
装備:改造人間@呪術廻戦、Lの聖文字@BLEACH、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner
令呪:残り三画
道具:ザビーのバズーカ×@戦国BASARA、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:いつも通りにする。呪いらしく、人間らしく狡猾に。
00:さて、どうしようかな。
01:そんなホイホイ宿儺もどきがいても困るんだけどね。
02:やっぱ呪いはこうでなくちゃ。
03:沙耶香から話を聞いておく。面白くなりそうだね。
04:あの白い女の子(タギツヒメ)、それは呪いの在り方じゃないでしょ。
参戦時期:少なくとも渋谷事変よりも前
備考
※魂の輪郭を知覚していればダメージはより通りますが、
 魂の輪郭を知覚してなくてもダメージは通るようになってます。
※改造人間が没収されてない代わりに支給品が1枠減ってます。

【糸見沙耶香@刀使の巫女】
状態:疲労(中)、真人に魅了、可奈美の死に動揺、真人にしがみついて飛行中
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:彼(真人)の為に頑張らないと。
02:可奈美が死んだ…?私はどうしたら……
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。でも…あの悲しむ様は……。
04:舞衣たちのいるかもしれない美濃関学院に寄りつつ、テレビ局へと向かう。
05:ロロのこと、多分羨ましい。タギツヒメのことも…きっと…。でも、彼(真人)が一番大事だからしょうがないよね。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:私が…可奈美や舞衣、十条姫和達と一緒に……?それに薫って人とも……?
08:どうしてロロはあのカードのことを隠してたんだろう?
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロから少しだけコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を受け、真人に魅了されています。

※どこへ向かったかは後続の書き手に任せます。


409 : 手が届く先の君が見えなくなりそうだ ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:10:03 WU3cdZq20
◆◆◆


生者が一人もいなくなった戦場跡を見回し、可奈美も踵を返す。
戻って来た時には全員散らばり、遅かったと思い知らされた。
あるのは死神代行の骸が一つ。
生前ならばまだしも、シビトとなった刀使に死者を悼む気持ちなど皆無。

己を蘇らせた永遠の名を持つ悪魔との合流。
並びに彼が望む、参加者の殲滅。
それら二つのみを行動原理にし、衛藤可奈美“だった”モノもまた去って行った。


【衛藤可奈美(シビト・非参加者)@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(小)、返り血
服装:美農関学院の制服(両腕、腹部、胸元に破損)
装備:岡田以蔵の刀(複製)、冨岡義勇の日輪刀(複製)、御刀・千鳥(複製)
道具:不明支給品の複製×1(オリジナルは現在アンクが所持)
思考
基本:大道克己との合流及び参加者の殲滅。
00:……
備考


『支給品紹介』

【Lの聖文字@BLEACH】
…真人に支給。
聖十字騎士団の団員、ペペ・ワキャブラーダの聖文字。
両手からハート型の光線「ラヴ・キッス」を放ち、命中した相手をは魅了され盲従する。
また能力が解除されても支配下にあった時の記憶は覚えている模様。
誰にでも効く訳ではなく、機械のような無機物や愛を持たない相手には無効となる。
加えて愛が薄い相手には能力の効きも非常に低い。
今ロワでは制限が施されており、

○能力で支配下に置けるのは最大一人のみ。別の相手を魅了するには、現在支配下に置いた参加者の魅了を解除する必要がある。
○魅了された参加者が気を失うなどの強い衝撃を受ければ、能力は自動で解除される。

となっている。


『ドロップアイテム紹介』

【ザビーのバズーカ@戦国BASARA】
…真人が入手。
ザビー教のトップ、ザビーが愛用するバズーカ。二つセット。
高火力の砲撃を行う他、トンファーのように振り回す打撃武器としても使用可能。


410 : ◆ytUSxp038U :2025/01/14(火) 23:10:36 WU3cdZq20
投下終了です


411 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/15(水) 01:09:58 fgDtyEjM0
真人、糸見沙耶香、イザーク・ジュール、キャル、大河くるみ、豊臣秀吉、花村陽介、予約&延長します


412 : ◆8eumUP9W6s :2025/01/20(月) 01:44:16 ti4yVQZU0
柳瀬舞衣、道外流牙、アスラン・ザラ(本物)、切島鋭児郎、柊真昼、アスラン・ザラ(ミーム)、衛藤可奈美(シビト)、予約&延長します


413 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:36:08 .GDcePgc0
投下します。


414 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:37:32 .GDcePgc0

現代都市を有する南側の島で唯一砂で浸食された一帯を二台のバイクが駆けている。
片方はオフロードタイプのシンプルなバイク、もう片方はただでさえデカくて重そうなのに更にゴツいサイドカーが付いた黒と暗いゴールドのバイクだ。
前者の名前はジャイロアタッカー、後者の名前はサイドバッシャー。
どちらも人類の進化系、オルフェノクの自助組織である大企業、スマートブレインの傘下、スマートブレイン・モーターズが開発したスーパーマシンである。
本来人間狩りの為の殺戮兵器であり、このバトルロワイヤルでも他のオルフェノク同様にNPCモンスターとして出現する量産型仮面ライダー、ライオトルーパーの装備として配備されたマシンであったが、今となっては4人の、厳密には3人と1機の足として使われている。

「やっと砂漠も一旦終わりか」

ジャイロアタッカーを停車させ、運転していたイザーク・ジュールがヘルメットを外しながらつぶやいた。
その背中にしがみついていた大河くるみもヘルメットを脱ぎながらシートから降りて大きく伸びをする。

「んーーー!身じろぎできなくてキツかったー!」

「オフロードなんだから仕方ないだろ」

「キャルー、次サイドカーかわってよ」

「あたしよりがチビのあんたでそんなに窮屈なんだからあたしなんてもっとよ。
我慢なさい」

ヘルメットを外して帽子をかぶり直しながらサイドカーを降りるキャルが言う。
サイドバッシャーの運転はくるみがNPCモンスターの残骸を基に組み上げた人造人間(アンドロイド)、イチローが担当していた。

「2cmしか違わないじゃん!」

「お前のが圧倒的に小柄だろ。
と言うか!運転しなきゃいけない俺はかわれないんだからお前らが贅沢言うな!」

「「は〜い」」

「全く……ところでクルミ、今何時だ?」

くるみはポケットからヒットラインを取り出し、時間を確認する。

「丁度8時。一回派手に戦った割には良いペースで進んでるんじゃない?」

これはライオトルーパーの部隊に襲われた際にイチローが真っ先に指揮官が運転するサイドバッシャーを奪えたことが大きいだろう。
量産のために変形機能など各種能力をオミットしたジャイロアタッカーと違い、サイドバッシャーは元々仮面ライダーカイザの専用バイクとして設計、開発されている。
バトルモードへの変形により、四連装フォトンバルカンと六連装ミサイル砲といった火力を発揮する本機を奪ったイチローは即座にこれらで部隊のほとんどを蹴散らし、横転したバイクを捨てて逃げようとしたライオトルーパーは量産型ヴァルバラドに鉄鋼したイザークとキャルによって倒された。
その後近くのアンテナショップからヘルメットを調達して4人で乗り物や起動鍵を渡されていないプレイヤーよりも早く移動できたという訳である。

「やっぱ足確保できたのがデカいわね。
アンタも案外安全運転だったし」

『ラーニングさえ済めば理論上当機に運転できない車両はない』

「んー……ねえイチロー。
普通の人はそんな風に受け答えしないよ。
こーゆー時はノープロだ!とかそうゆうふうに答えなきゃ」

『そうなのですか?』

「ダメダメ、そうなのですかって、喧嘩してるときでも友達には言わないよ。
そーなの?とかもっと砕けた感じで!」

『……そーなのか。
では、喧嘩をしている時はどんな言葉を使う?』

「いい感じじゃんその調子!
そうだね、喧嘩を売るってなったら『さっさと失せろベイビー!』とか?
喧嘩が始まって、調子乗ってる奴の鼻を明かしてやってから『お楽しみはこれからだ!』とか!
あ、あとここが引き時、って思ったら『ずらかるぞ!』とか?
色々組み合わせて使ってもいいんだよ?」

途中からテンションが上がってきたのか、シャドーボクシング交じりに捲し立てるくるみをイチローは暫くじっと見ていたがやがて

『……お楽しみはここまでだ、さっさとずらかるぞ』

と、口にした。
その様子にイザークは盛大なため息を吐く。

「クルミお前……よくそんな積もった埃が㎝単位になってそうなぐらい古い映画や音楽を知ってるな?」

そろそろ西暦が終わって一世紀が経とうとしている世界を生きるイザークからすれば有名すぎるにしたってあまりに古いチョイスに気が抜けてるとかそんな注意より呆れが先行しているようだ。

「イザークだって宇宙に住んでる人と地球に住んでる人で戦争してるような未来生きてるのに知ってるじゃん」


415 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:37:58 .GDcePgc0

「あたしだけ置いてけぼりなんだけど。
てか、そんな事より早く北の島の方に行きましょうよ。
寄り道するような場所もないでしょ?」

と、待つのも飽きたのか帽子を脱いでサイドカーのシートに再び背を埋めるキャル。

「一応、美濃関ってところにも行けるけど?」

改めて地図を確認したくるみが尋ねる。

「あたしは反対。
その学校ある場所冬地帯でしょ?
寒くって仕方なさそうだし、それ以外特になんも無さそうなら態々寄る意義薄くない?」

と、キャル。
イザークはふむ、と言いながら顎に手を当て、少しだけ考えると

「イチロー、お前はどうだ?」

と最後の一人に意見を求めた。

『当機のコンディションだけの話をするならば、現状の電力残量なら理論上連続3時間の活動に支障はありません。
また、マップ上に名前が記載されている以上、何らかの意味を持つ施設であることも踏まえると立ち寄る事も無駄ではないと愚考します』

「……キャル、悪いが少し我慢してもらうぞ」

「えー、なんでよ?」

「お前は今後行きたがらないだろうし、テレビ局付近では激戦が予想される。
あれだけ他のプレイヤーを煽ったのだからルルーシュも防衛網くらいは用意しているだろうし、そうでなくても他の連中とルルーシュに与する、逆らうでひと悶着起こる場合もある。
次いつ休めるか、荷物を整えれるか分からん」

そこまで言われてキャルはポン!と手を打つ。

「ここを逃すといろんな意味で中々寄り道出来ないって訳ね。
学校なら食べ物や包帯も病院程はないでしょうけどはあるにはあるでしょうし……。
オッケー、今回は隊長殿に従うわ。
けど目ぼしい物なかったらさっさと引き返すわよ」

「よし。ではジュール隊、出るぞ」

再びバイクに乗り込んだ四人は雪原に繰り出していった。



×
「十二歳!
十二歳でそんな事やらされてんのか〜。
若いのに頑張ってるねぇ」

「い、いえ。私に出来ることなんて戦うことぐらいで……」

頬を赤らめ、照れくさそうにはにかむ白い髪の少女、糸見沙耶香を人が人を恐れる感情から生まれた呪い、真人が内心見下しながらおだてる。
吉野順平(だっけ?もう忘れた)の時とは少し状況は違うが、術師未満の力ばっかりある子供の扱いは慣れたもので、的確に必要な情報だけを一方的に抜き取る。

(荒魂に刀使、かあ。
人に依らない呪いに、元々に輪をかけて適正者の少ない術師ってイメージで大体あってるかな?)

御刀が絶対必要な分呪詛師に相当する連中少ないだろうし、そこら辺の面倒は呪術師よりなさそうだななんて思ったところで思考を刀使からタギツヒメに移す。

(あの二刀流も結局荒魂なら一皮むいてやれば『負の神性』とでも言うべき中身があるはず……いいね、楽しくなってきた。
けどあいつらには血だらけの沙耶香と御刀を見せてやる程度で良いかな。
折角下ごしらえは済んでるし、こいつも美濃関に行きたがってる事だし)

支給されたLの聖文字で心を奪った沙耶香から聞き出した世界観を自分なりに噛み砕いた真人の考えは決まっていた。
多分もうどうしようもないスパナの死体に泣いてすがって動けないでいるだろう陽介に助けられるかもしれない沙耶香をあてがい、ここぞというタイミングで沙耶香をスパナのように『変身』させてその心を完全に折ってやるのだ。
秀吉が居るかもしれないのは少々ネックだが、あの宿儺や自分、そして今沙耶香経由で話に聞いたルルーシュとは別ベクトルの唯我独尊な性格を考えるとどうせ勝手に死ぬと陽介を捨て置いてる公算も高い。
居たら居たで別に自分が戦えばいい。
秀吉はこの場に居ない天敵である虎杖と同じゴリゴリの接近パワー型。
色んな意味で頭を使う必要のない圧倒的膂力と体術で攻め立てるタイプ。
ある意味では丁髷ゴリラこと東堂葵よりいなし易い相手であると言える。

「立香さん?」

「ああごめん、ちょっと考え事。
と言うのも、君に手伝って欲しいことがあってさ。
協力、してくれる?」

そう言って真人が手を差し出すと、沙耶香は嬉しそうに「はい!」と言ってその手を取ろうとして……ひっこめた。

「あれ?どうしたの?」

「い、いえ。ただその、えっと……」

「……ま、いいや。
で、その手伝って欲しいことなんだけど、多分美濃関にとどまってるだろう酷い奴のことなんだ。
君も行きたがってたし、丁度いいでしょ?」

そう言って真人は先を歩き出した。

(なんかぼんやり俺に触れたらまずいって思ってるっぽいな。
ま、元々他人の術式みたいな物だし、多少効果弱いのは仕方ないか。
今はホイホイついて来るだけでも良いし)

と、相変わらずの本人曰く呪いらしい切り替えの早さで納得した真人の背を追う沙耶香の胸中は、複雑だった。

(私、立香さんのこと、好きなんだよね?)


416 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:39:13 .GDcePgc0
舞衣や可奈美に感じた想いとも、ロロやタギツヒメに抱いた共感に近い物とも違う。
その顔や声を聴くだけで胸が暖かくなる。
心臓が早鳴って頬が熱くなる。
舞衣と出会ってから、忘れていたのか初めて知ったのかもわからない色んな感情を覚えて来たがこんなものは初めてだ。
だからこの想いにもう少し踏み込んでみたいと思う自分が居る。
けど、それを全力で引き留める自分もまた居るのだ。
さっきの真人の手を取ろうとした時も、一瞬だけ自分の手を掴んで止める美濃関の制服の腕とアッシュフォードの制服の腕が見えた気がして引っ込めたのだ。

(私、どうしちゃったんだろう?)

そう思いつつも真人について行かないと言う選択肢をとる事は出来ず、ひよこのようにその後を追った。




見ているだけで震え上がる程の雪景色の続く冬地帯にて、低体温症を疑う程に顔を白くし、死んだ目のままフラフラと彷徨う男が居た。
ペルソナ使いの花村陽介である。
相棒、と呼ぶにはあまりに短い時間しか共に過ごすことは出来なかったが、命を懸けた戦いで背中を預けた黒鋼スパナを真人により怪物に変貌させられ、挙句秀吉により殺された彼は、最初はそれを認めることが出来なかった。
喚き散らして地面を殴って漸く少しは冷静な思考が出来るようになったところで、最終的にスパナを殺した下手人である豊臣秀吉に言われた。

「己の無力さ、痛感したであろう。
いや、己のみが無事である苦痛、筆舌に尽くし難いであろう。
……そうなると、そんな余計な弱さは自身の死を招くゆえに我は自ら弱さを捨てた。
それが出来ぬならそこで延々と蹲っていればよい。
だがもし、抗うと決めたなら我が軍門に下れ」

陽介に発破をかけたつもりなのか、もう使い物にならないと判断したのか。
その胸中は分からなかったが、捨て置かれた陽介は秀吉を追わなかった。
認めたくはないが、スパナの亡骸をそのままにしておくのは忍びなかったのだ。
湧き上がる罪悪感に潰されそうになりながらもどうにか保健室から毛布を回収し、歪ながら辛うじて人型を保つスパナをくるんで運んだ。
まさか態々そんなことをする奴がいるとは思えないが、真人(陽介は彼の偽の名乗りを真に受けて先生と名簿に載っていると思っている)みたいな遊び感覚で人間を異形に変えて腹の底から笑える者が居ることを考慮すると、スパナの死体に何かしでかすような連中もいるかもしれないと思ったので適当な教室に運び、机を寄せてその上にシーツを敷いて安置した。
本当はベッドに横たわらせてやりたかったが、こんな盛大に破壊された建物であっても医療物資を求めて保健室に誰か立ち寄るかもと思ったら、鍵がかかって入れなかったから死んでしまったなんてことが有ったら流石に申し訳が立たなすぎる。
実際は元はぶっきらぼうながら確かな信念と正義感を持っていた男が何も知らない誰かに意図せずビビられたり、気持ち悪がられるのが嫌だったのがなにより大きいのだが、自分でその事に気付けるだけの余裕は今の陽介にはない。

「……ごめんな、お前の飼い主助けてやれなくて」

『ウィール……』

他の誰かに利用されたくもなかったので、マッドウィールにネオスのカード、そしてヴァルバラッシャーともう一つの支給品は貰って行くことにした。
ホットラインだけは、二個も必要なかったし、手元に何もなくては心細いのではと思ったので残して来た。
そうして神聖な仕事を終えると陽介は美濃関を後に冬地帯を歩き出した。
たが行く当てはなかった。
飛行能力を持つ真人を相手に追跡するには時間が経ち過ぎているし、名簿を見ればこの地でスパナや秀吉などの出会った者たち以外に見知った名前はない。
一応、徳川家康も知っている名前と言えば知っている名前だが、秀吉同様教科書で習ったのとは似ても似つかぬ同姓同名の頭戦極な筋肉ゴリラの可能性もあるので考えても仕方ない。
では先生の関係者を探そうとも思ったが、名簿で彼の前後を挟むのは聖園ミカとルル―シュ・ヴィ・ブリタニア。
後者は秀吉とは別ベクトルで運営に喧嘩を売った男で、何らかの異能力を有しているらしいが、真人の肉体を変身させる能力とは明らかに系統が違い過ぎるように思うし、ラウ・ル・クルーゼの名簿の並びには何かしらの意味があるという発言も併せて考えると、彼の知り合いは恐らく親戚であろうロロ・ヴィ・ブリタニアという名前までと考えられる。
その一個下の堀北鈴音も一応ルルーシュの関係者と言えなくはないが、あの時のやり取りから明らかに初対面と思われるので偶々ルルーシュの関係者と堀北の関係者の順で連続しただけだろう。
聖園ミカは漢字の姓にカタカナの名の法則が羂索が肉体として利用している梔子ユメ(なぜか名簿にも名前が載っている)と同じなので、そちら側の関係者だと推測できる。


417 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:40:25 .GDcePgc0
恐らく、先生もまた自分のように特定の知り合いが呼ばれていない参加者なのだろう。
最も、あの短い間で嫌という程痛感した人間の悪辣な部分に用事特有の残虐性をブレンドして賢くしたような最悪な性根を考慮すると別に知り合いの有無にかかわらず悪意を振りまき、それによって狂い悶える姿を観察して腹を抱えて爆笑しているだろう姿をありありと想像できてしまうが。

(クソッ……三対一とは言え、あの秀吉すら仕留め切れない相手だ。
どうにかして対策を立てねえとアイツはどんどん遊び半分で他人を利用して欺いて殺して回る!
何か手は……)

そう考えながら歩いていると凍てつく世界の右端に海が見えて来た。
対岸にはサハラ並みに雄大な砂漠の景色が見える。

(寒暖差どうなってんだよ。地球温暖化ってレベルじゃねーぞ)

目の前の衝撃であった秀吉や真人のせいで若干頭から外れていた羂索たちの出鱈目っぷりに改めて驚いていると、このエリアには似つかわしくないバイクのエンジン音が聞こえて来た。

「ねえ、海見えちゃってるしこれどう考えても道間違えてない?」

「みたいだな。今どのへんだ?」

「あちゃー、美濃関途中で素通りしちゃってたみたい」

そちらに向かうとオフロードにサイドカーの二台に乗る4人組がいた。
全員降りて周囲を警戒しながら地図を確認している。

「むっ!そこの貴様!
敵意がないなら両手を上げて出て来い!」

赤い軍服の少年が陽介に気付いて武器を向けながら吠える。
その姿に陽介は弾かれたように飛び出た。

「っ!戦う気か!?」

「ま、待ってくれ!違うんだ!ただ、その武器……俺も同じのを持ってるんだ」

「何?」

確かに説明書には量産型と書かれていたし、そう言うこともあるか。と、軍服の少年、イザークはひとまず納得した。
次いでその事で反応したのはキャルだ。

「じゃあアンタもこれと似たようなの持ってる?」

サイドカーから降りてきた猫耳の少女、キャルが学生服のポケットから四枚のカードを取り出す。

『ホッパー!』

『スケボーズ!』

『アッパレアッパレ!』

『ライナー!』

『ウィール!ウィールウィール!』

陽介のポケットから飛び出たマッドウィールが仲間たちに駆け寄ろう様に飛んで行く。

「……この男もマルガムとやらになっていないようだし、話位は聞いても大丈夫か?」

「なんじゃない?ならどこか家か部屋入ろうよ。
この人なんか具合悪そうだし」

「そうね。アタシもいい加減このクソ寒い風をしのげるとこに行きたかったし」

「よし、ではついて来てもらうぞ。
イチロー、悪いがバイクを盗られないか見張っていてくれ」

『ノープロだ』

軽い口調とザフト式の敬礼で早速ラーニングの成果を見せるイチローになんだか変な方向に尖ってきたな、と一抹の不安を感じるイザークだった。




「……てのが、大体の流れだな」

「……仮にデュエルを取り戻してもPS装甲を過信するわけにはいかなくなったな」

「マッドウィールだっけ?あんたも辛かったわね」

『ウィール……』

『ホパホ……』

陽介から事の次第を聞いたイザークとキャルは手にした武器とカードを見つめながら険しい顔で呟く。

「触っただけでそんなことになるなんて……」

想像してしまったのか、くるみは青い顔で口元を抑えた。
この場に居ないイチローはキャルのケミーライザーの通信機能を使って聞いている。

『花村陽介、一つ疑問がある。
仮称先生の特殊攻撃は当機のような非生物実体にも有効なのだろうか?』

当然双方向の通信が短距離なら可能なので発言も出来る。
イチローの質問に思い出すのも嫌な記憶を掘り返しながら唸る陽介。


418 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:41:10 .GDcePgc0
「……どうだろう?一応スパナの服とか武器は無事、だったと思う」

「だが無生物には通じないと考えるには一つおかしな点がある。
俺も使ったから分かるが、ヴァルバラドはケミーが直接強化装甲に変形してヴァルバラッシャーの使用者に装着されるパワードスーツだ。
その継ぎ接ぎ面の……体質だか能力が純正のマッドウィールに作用しなかったのはどうゆうことだ?」

「ヒデヨシって筋肉達磨が言うには直接触れるとヤバいのよね?」

「服越しぐらいなら不味いのは確かだと思う」

「それなのに腕とか伸ばして攻撃して来るとか最悪じゃない」

(……厄介極まりない相手だな。
いざとなったら文字通りに『あの手』も使わざるを得んか)

イザークの量産型ヴァルバラド以外の力の1つは、一回限り『肉を切らせて骨を断つ』ことが可能に出来る物だ。
思いついた時、自分のことながらそんなことをやる程の状態とはなんだと自問自答し、いや、クルーゼ隊長が裏で糸を引いていて態々これを渡したのだから自分がこれを使わざるを得ないと判断する事態に直面するかもしれないと半ば覚悟した。

「服越し程度は危険、なら武器越し、持っている剣に触れられた場合はどうだ?」

「いや、流石に分からない。
ただ、自分の身体以外は多分手で触れないと……発動できないのは間違いない」

「ちょっと頭こんがらがってきたわね。
イチロー、簡潔にまとめて」

左手に持つケミータイザーにキャルが話しかける。
一度覚えたことを基本忘れないロボットのイチローをメモ代わりにするつもりらしい。

『ノープロだ。
まず仮称先生の能力は「生体の変形」という言葉に集約できる。
発動条件は「両手のどちらかで触れる」こと。
ただし自身の肉体は例外で、予備動作無しで変形させることができ、この応用で破壊されてもほぼ元通りに再生が可能。
他者への肉体は少なくとも人体に対してはかなり自由な変形をさせることが可能で、自身の腕部や他者の肉体その物の武器化、他者の意志を奪い本能だけで暴れる状態に変えるなど正しく変幻自在と呼べる能力であると推察できる』

「苦手な距離がない上に手札も豊富で本人の性格も愉快犯的。
聞けば聞くほど厄介だな」

イザークが唾棄すると、イチローもそれを肯定し、話を進める

『ここからは花村陽介の証言とイザークたちの考察を基にした当機の考察だが、現状肉体全身を一度に消し飛ばす、或いは頭部の完全破壊以外は致命的な打撃にならない可能性が高い』

「治す、ってよりは壊れたのを元に戻せるんだもんね」

『くるみの言うとおり。
但し破損部位の大きさによる再生時間の差異が出る可能性は否定できない』

「足止めは出来る、か」

『そして他者の生体への影響だが、この考察を裏付けるには花村陽介に今一度質問をする必要がある』

「な、なんだよ?」

『仮称先生は黒鋼スパナがヴァルバラドを装着する瞬間をどの程度詳しく観察できたと考える?』

「変身する瞬間は観てたはずだぜ、スパナの事変身ヒーローとかって呼んでたし」

『では、マッドウィールのカードを正確に観察で来ていたと思うか?』

質問の意図が分からず首をかしげる陽介。
しかしキャルは何かに気付いたように疑わし視線をケミーライザー越しにイチローへ向ける。

「つまりイチロー、あんた継ぎ接ぎ顔がマッドウィールのことを生き物と思ってなかったから無事だったって言いたいの?」

「そんなことあるの?」

「いやいや!確かにマッドウィールは無事だけど、スパナは変えられた時はヴァルバラドもおかしくなってたぜ?」

『それは透明な袋に液体を満たしている状態を想像すると分かりやすいかもしれない。
外側から掴まれれば袋ごと形を変える』

「つまり継ぎ接ぎ男は袋を無視して水を凍らせたと言いたいのか?」

「ありえないだろ……」

『当機の主観で言えば、キャルの魔法や花村陽介のペルソナなる力も大概不可解である』

「あんな悪趣味と魔法を一緒にするんじゃないわよ」

「もういい!敵の能力の概略と出鱈目っぷりは分かった。
問題は対策だ。
今のところ奴より早く動く、なるべく武器で受けるぐらいしか思いつかんが……」

次の瞬間、爆音と共に壁が崩れた。
即座にキャルが回り込んで防御魔法を展開したので全員煤を被った程度で済んだが、窓と壁が吹き飛び、煙と共に冷気が部屋に流れ込んでくる。

「はっ!イチローは!?イチローは大丈夫なの!?」

キャルの手からケミーライザーをひったくる様に奪い取ったくるみが叫ぶ。

『ジャイロアタッカーの燃料誘爆などによる物理衝撃により腰部増設スラスター破損。
再使用不能(デッドウェイト)の為、強制パージ。
その他各種機能、機構に支障なし。
CODE:01、稼働率78.3%を維持、戦闘続行に支障なし』


419 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:41:38 .GDcePgc0

だがそれより先に瓦礫をかき分け当機が立ち上がり、ファイティングスタイルをとる。

「黒閃程じゃないけど結構いい感じに呪力乗せれたと思ったのに全然元気じゃん!
あの変身ヒーローといい、現代科学もあなどれないね〜」

冷たい風と共に、場違いな程にのんきな声が響く。
ほぼ直感的に陽介に視線を送ったイザークが見たのは、この世で最も恐ろしい者とこの世で最も憎んでいる者の両方と再会したようなぐちゃぐちゃな顔であった。

「先生……っ!」

「あれ?誰かと思ったら何時間かぶりじゃん式神使い。
感動の再開だね!握手でもする?」

「ざけんな!テメェだけは、テメェだけは許しちゃおけねえ!」

スパナを、奪われた仲間と同じ名前の武器を握りしめ吠える陽介。
その気迫は戦闘慣れしていないくるみはビビッてキャルの背中に隠れてしまう程なのだが、それをぶつけられる本人はどこ吹く風といった様子だ。
強烈な悪感情の良いにおいが溜まらないとすら言い出しそうなほどに機嫌よく笑う。

「熱烈なラブコールに大歓迎!
と、行きたいとこなんだけど、生憎君にはこのカワイ子ちゃんと遊んでほしくてさ」

パチン!と真人が格好つけて指を鳴らすとキャルたちの背後に音もなく切り込む小柄な人影がある。

「させっかよ!ペルソナァ!」

誰か参加者、あるいはどれかNPCモンスターを改造して伏兵にしたと判断した陽介はジライヤを発動し、振るわれる鈍い銀色の刃を受け止める。

「人間!?」

「っ!」

強襲を防がれた少女、糸見沙耶香は大きくバックステップを踏んで仕切り直す。
その構えに一切の無駄はなく、瞬きの間にでも一気に距離を詰めて斬りかかって来ることだろう。

「おい、変形させて暴れさせるのがこいつのお家芸じゃないのか?」

「あ、やっぱり俺の術式はもう知ってる感じ?
けど残念。
羂索の言ってたソードスキルだっけ?でちょっと遊んでみたんだ。
沙耶香!その式神使い殺したら今度二人切りでデートだよ」

「は、はい!」

鉄面皮な暗殺剣にしか見えなかった少女が一瞬で恋する乙女に変身し、また元に戻った。
真人が新たに手に入れた能力がどうゆう物か凡そ察した陽介は苦悶と怒りを、キャルは呆れと嫌悪を一切隠さない視線を真人に送る。

「全く、笑えないジョークだ」

『ウィール……ッ!』

『ゲキオコ……ッ!』

意図したわけではなかったがかつて真人に倒された戦士の口癖と同じ言葉と同時にイザークはレプリケミーカードを構える。

「何それ、式神……いや、君に呪力はないけどそいつらにはあるっぽいし、呪霊だか受肉体を封じた札?
てかその武器……」

『ガキン!MADWHEEL!ゴキン!』

「おい、あんまりワクワクさせるなよ……」

真贋入り混じるバトルロワイヤルの真のスタートまそこそこに花村陽介を襲った地獄絵図。
その再現が今、起ころうとしている。

「イザーク・ジュール!ヴァルバラド出る!」

『TUNE UP! MADWHELL……』

量産型ヴァルバラドに鉄鋼したイザークは武器をアサルトライフルのように構え、ケルビムマズルから紫の光弾を連射しながら距離を詰める。

「俺の術式聞いてて知らないはずないよなぁ!
そいつじゃあ無為転変は防げねぇよ!」

「それが貴様を倒さない理由になるかぁ!
その古雑巾みたいな顔面を八つ裂きにしてやるっ!」

「他人のこと言える程男前かよ!イザーク・ジュール!」

ラッシャーブレードとカマキリに似た形に変形した腕部が火花を散らす。
超A級錬金術師の師匠がオリジナルと同等の性能を持たせて造った叡智の刃は人間の悪意の化生とも言うべき天性の肉体に対抗出来ても傷一つ与えることはできない。
当ロワではある程度ダメージが通るように羂索らによって手が加えられているので金色のマルガムを撃破できるだけの性能があればある程度削る事は出来るだろうが、やはり魂を知覚できる者の方がよりこうu科的なダメージを与えることができる。
いくら実力至上主義のザフト軍においてトップガンの一人にして赤服を着るガンダムのパイロットであるイザークでもそんなオカルトに膝まで突っ込んだ芸当は今のところ不可能だ。
同じガンダムのパイロットでもGN粒子に導かれ革新へと至った者たちならばもしかしたかもしれないが、種すら割れないイザークではこうして拮抗出来ているように見えるのも、所詮真人が遊んでいるからに過ぎない。

(思ったよりガンガン来るな。
あの式神使い、筋肉達磨が見破った俺の術式の発動条件もきっちり教えてるわけだ)

真人の腕が人型じゃないうちは無為転変にビビりすぎる必要はない。


420 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:42:01 .GDcePgc0
物理攻撃だけ警戒して削れるだけ削っておく。
いくらある程度勝負になる様に調整されているとは言え、呪霊である真人は高度な反転術式が無くても肉体を再生できる上に、術式の特性上よっぽど派手に欠損しなければ即座に傷を再生できるので有効とは言い難い。
だが真人的には実にナイスな展開だ。
こうして人間が無駄なあがきを必死に行っている様をまじかで眺められるのは目の前で大事な物を滅茶苦茶にしてやる程じゃないが、中々に愉快だ。

(射撃も全然下手じゃなかったけど、本人は近接が好きなのかな?
熱くなりやすい質みたいだし……)

イザーク個人、というよりイザークのヴァルバラドは共闘したスパナのヴァルバラドより膂力は上だが動きが若干鈍いと感じる。
呪術的な足し引き算の観点からも、先ほどの分析からも色々と納得できる。

(なら、これはどうかな!)

踏ん張って押し込むふりをして踵を変形させ、地面を潜らせイザークの後ろを取る。
先端をドリル状にした上で掘り進む勢いのまま背後を指し貫こうとする。

「なめるなぁあああーーーっ!」

イザークはまず前方の鎌の片方を量産型ヴァルバラッシャーの剣先のレンチ状になっている部分で絡め取り、もう片方の鎌にぶつけて姿勢を崩させると、タイテンスクラッパーを締めて安全装置を破壊する。

『SCRAP!VALVARABREAK!』

装甲全体にエネルギーを纏わせることで真人の『直接触れる』条件を妨害。
そして回転回し蹴りの要領で背後に迫っていた二本の螺旋を根元から蹴り千切り、振り向くと同時に峰でとらえる。
さながら真人の天敵の一人、釘崎野薔薇が金槌と釘でやるようにジャストミートさせて真人に向けて撃ち返した。
ただ打ち返しただけなら肉体に再吸収されて終わりだっただろうが、量産型ヴァルバラドのエネルギーを受けた螺旋は真人を貫き、よろけさせる。
この隙を逃さずイザークは着地と同時に地面に光弾を放って砂塵を巻き上げてからエネルギー斬撃を放った。
攻撃の勢いで煙が晴れると、そこには正中線で真っ二つに割れた、否、自分で身体をバナナの皮みたいに半分にして攻撃をやり過ごした真人が居た。

「残念♪俺じゃなきゃ殺せてたかもね」

最も自分は祓わないとどうしようもないんだが、と、態々手で頭を戻しながら真人は笑う。
人が食って、寝て、犯す様に殺し、戦い、嗤う。
それこそ呪い、それこそ自分。
ならば思いのほか足掻く玩具も遊びつくさなけれあもったいない。

「今度こそ本当に唐竹割にしてやろう」

闘志を燃やし斬りかかって来る獲物を次はどう遊んでどう転がしてやろうか。
無邪気な感情を燃料に頭はフル回転。
自分と相手の無数の戦術を思い浮かべながら真人は戦い、戦い、戦う。




「それじゃあ殺させてもらうね。
えっと、式神使い」

偽りの熱に浮かされ愛刀を構える刀使、糸見沙耶香。
対するは自称特別捜査隊のキャプテン・ルサンチマン、花村陽介。
物理的、状況的どちらの意味でも最悪以外の何物でもない真人の掌の上で二人の異能力者が視線の火花を散らす。

『仮称先生の提案を否定。
仮称サヤカの迎撃には当機が行う』

そんな未来を阻止すべく、太陽電池を鈍く光らすロボット、イチローがファイティングスタイルを取りながら一歩前に出た。

「いや‼よく分かんねぇけどその子がアイツの、先生のせいでおかしくなっちまってんだったら俺のせいだ!
このけじめは俺自身で!」

イチローを押しのけなお前に出ようとする陽介を肩を掴んで無理矢理押し戻すイチロー。

『当機の予測では、令呪の使用による潜在能力の発揮が現状比1.8倍の能力向上であると仮定しても花村陽介が仮称サヤカに勝利できる可能性はわずかに23.6%。
極めて非合理的な判断であると言わざるを得ない』

「数字なんて知るかよ!
アイツの企みは知らないけど、あの子は俺が止めないといけないんだ!」

『ならば、数字に寄らず貴方の非合理かつ短絡的な行動を諫めよう。
仮に23.6%の勝利をあなたが得たとして、貴方が後悔しない展開は当機の性能をもってしても予測できない』

「でも!」

「いい加減になさい!」

陽介の側頭部を消して弱くはない衝撃が襲う。
何事かと見ると、くるみを背後に庇いながら杖を手にしたキャルが魔法を使ったようだった。
陽介はバケツでもひっくり返したかのようにびしょぬれになっている。

「話聞く限り前もそうやってパニクってそうした方がよかったどうかは兎も角、アイツ追っかけることも出来なかったんでしょ?
冷静じゃないままやって大怪我させるわけにもいかなし、スパナってやつの二の舞出したくないなら引っ込んでなさい!
……その代わり、しっかりあたしとクルミを守りなさいよ。あたしら近接からっきしなんだから」


421 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:43:14 .GDcePgc0
「キャルちゃん……」

「イチロー、もう始めていいわ」

『了解。
サン・ライズ・マシンガン、非殺傷モードで展開。
これより対象を無力化する』

手首を折り畳み、銃口を露出させると特殊エネルギー弾、太陽の欠片を発射しながら距離を詰める。
スピードを追求した刀使である沙耶香は難なく弾幕をすり抜けて肉薄。
近接戦に移行する。
腰部スラスターを失ったイチローはエネルギーを脚部スラスターに集中。
自身の関節軸の安定性能を信じ、感性と回転の勢いに任せた激しい蹴りを戦闘スタイルに選択し、沙耶香を迎撃する。
バランスこそ危ういが、そう何度も写シを張れない沙耶香はよりスピードを上げる。
『無念無想』
高津雪那が目指し、沙耶香がたどり着いた速さの極致。
当代最強クラス、それもまだまだ伸びしろのある沙耶香が能ではなく背骨で考えてトップスピードで攻め立ててくるのだ。
大抵の相手からすればたまった物ではない。
イチローもスラスターや銃口を斬り落とされ、機動力と武装を一気に奪われてしまう。

「イチロー!」

くるみが思わず悲鳴を上げるが、状況は変わらない。
沙耶香の怒涛の剣戟はナノスキンを、プロテクターを斬り裂き確実にイチローへダメージを与えていく。

「……」

削ぎ堕ちていく。
イチローの身体が、沙耶香の視界が、先鋭化されて最期に残るのはひたすらの無心。
命じられるままに斬る意志無き殺人兵器(キラーマシーン)。
高津雪那、そして真人が望んだとおりの冷え切った金属のような刀使。
あの日また戦おうと可奈美が差し伸べてくれた手とは、さっきロロがずっと寒い外にいたことを考慮して振る舞ってくれたロシア紅茶とは真逆の冷たくて、何もないからっぽの……。

(嫌だ)

自分の声が喉以外から聞こえた。
そう思った瞬間、また沙耶香の手を美濃関の制服の腕とアッシュフォード学園の制服の腕が掴んだ。

(な、なんで?私は大好き人のために……あれ?)

『ラーニング完了』

時間にして一秒に満たない停滞。
だが本物の機械にはそれだけで十分。
観て、聴いて、学び、二度と同じ過ちを犯さない。
良くも悪くも、機械は時に人を超える。
剣先を弾かれた沙耶香のがら空きの腹部に無用のサン・ライズ・マシンガンを露出させておく意味のなくなったため元に戻していた拳を叩きこむ。

「ごっぷ……」

写シをはがされ、衝撃も殺しきれなかった沙耶香は腹部を抑えて膝をつく。
イチローは腕を上げられる間に剣先を踏みつけて動きを封じた。

「よっしゃ!」

「よ、よかったぁ」

「マジにあの無茶苦茶速ぇのを捌いちまった……」

『仮称サヤカは超加速状態に移行した後から物理的スペックの上昇に反比例するように思考がパターン化していた。
結果、実際の脅威度は低下し、短時間のラーニングで制圧に成功した』

喜ぶキャル、胸をなでおろすくるみ、驚きが勝っている陽介、淡々と事実を述べるイチロー。
そのすべてを沙耶香は正しく認識できなかった。
元々自分の能力ではない上に『制限』か、それともソードスキル化に当たって無茶があったのかオリジナルに比べて劣化している聖文字により植え付けられた情動がはがれかけている。
沙耶香の感情の機転に居た真人がどかされ、元々そこにいた者の姿が、柳瀬舞衣の表裏無き善意の温かさが浮かんでくる。
真贋が、今再び入れ替わる。

「舞衣……可奈美……ロロ……」

自分に温かさをくれた舞衣、友達になれたかもしれない……事実有り得た未来では友達になれた可奈美。
そしてその行動が舞衣のような純然たる善意からだったわけではないかもしれないが、自分と同じ様な境遇を持ち危ない所を助けてもくれた、そして操られたとは言え傷付けてしまったロロ・ランペルージ。
前者二人に比べてロロとの関りは薄いはずだが、それでもランペルージ兄弟の関係は沙耶香にとって自分と舞衣との理想の関係の一つに出来るかもしれない姿だと思っている。


422 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:43:41 .GDcePgc0
それを奪おうとしたことは沙耶香に罪悪感と、あと一歩で可奈美を殺し骸人形に仕立て上げた者と、今の沙耶香は知る由もないが仮面ライダーエターナルこと大道克己と、同じところまで堕ちていたかもしれないという恐怖として偽りの愛の裏に確かに根付いていた。
それが可奈美やロロの腕の幻覚という形で沙耶香を引き留めていたのだろう。
聖文字が本来の影響力を有していればこうはならなかっただろう。
そして真人が呪霊ゆえに生理的な性欲を持たず、恋愛という物に関しても別段深い興味を抱いていなかったのも大きい。
もし戯れに沙耶香を犯す、なんてことをしていたら流石に偽の愛が深まって戻れぬ深みにはまっていた可能性もなくはない。

「なんか、正気に戻ってない?」

「ならふん縛ってあの継ぎ接ぎに触られない場所に放っておくでいいでしょ。
ヨウスケ、あんたロープとか持ってないの?」

などと話していると轟音と共に人ぐらいの大きさのものが吹き飛んで来た。
量産型ヴァルバラドだ。

「イザーク!」

「来るな!一人で、立てる!」

強がってはいるが、薄汚れた装甲はあちこち軋んで紫の火花を散らし、一部はデザイン的にではなく本当に損傷して使い物にならなくなっている。
どうにか致命的な『触られる』ことだけは回避していたようだが、それはただでさえ不慣れな武装で普段絶対やらないことを繰り返すのと同義であり、体力と神経をすり減らし次第に追い詰められてしまったのだろう。
どうにか武器を盾に凌いだようだが、もう気力だけで立ち上がっている状態だ。

「余計な事してくれたね、半分こ呪骸モドキ。
もうちょっと面白いことになるかと思ったけど、ま、所詮後付けの術式だしこんなもんなのかな?」

イザークを吹っ飛ばしたのは純然たる質量であったらしい。
巨大化した拳を元のサイズに戻しながらあくびでもかみ殺しているような調子で言う。

「イザーク一人ぶっ殺せてないくせに何大物ぶってんのよ縫い目ロン毛。
その半分子のお陰でアンタがイザークを嬲ってる間に手下はボロボロであたしとヨウスケは元気ピンピンでイチローもまだ余裕だけど?」

不敵に笑い杖を構えるキャルを相手の怒りのツボを見つけた小学生のようなニタニタとした笑みで真人は受け流す。

「嘘が下手っ!
お前らみたいなファッションヤンキーの根明くん根明ちゃんが沙耶香やそっちのチビを気にしないで戦えるわけないっしょ?」

そう言って真人は右腕を頭上に掲げ……

「ま、もう気にすることもないだろうけど」

無数の枝状に分裂させて伸ばした。
その先端一つ一つには手が、絶対に触れられてはいけない最悪の凶器が形造られている。

「さあさあ!他人の事なんて気にしてたら一発アウトだよ!」

「貴様ぁーーーっ!」

吠えながら量産型ヴァルバラッシャーに新たなカードを読み込ませてレプリコプターバーサークを装備するイザーク。
だが遅い。
真人の精密動作性をもってすればバラマキ全てを避けて必殺の手全てを当てることも可能だ。
さあ誰を残そうか?
散々利用した挙句無関係な連中を全滅させたという絶望を味あわせるなら沙耶香だ。
自分がかかわった全員が死ぬと思わせるなら陽介一択。
今まさに決死の覚悟で自分を停めようとしているイザークも捨てがたいが、ついさっき啖呵を切ってくれやがったキャルも捨てがたい。
くるみは……どちらかというと目の前でイチローとかいうロボットをバラバラに引き裂いてやりたいな。
イニミニマニモ―、神さまの言う通り、神の悪戯、呪いの気まぐれ。
無垢なる人の呪いが指し示す次の悲劇は……。

「くそがぁあああああああーーーーーーっ!」

たった一人のコーディネイターの意地に指ごとへし折られることになる。

(まっすぐ向かってくる?
おいおい根元の俺を速攻で倒して全員助けるつもりか?)

満身創痍のその身体で、今にも変身解除されそうで強化武装を維持するのが精いっぱいのその鎧で?
その疑問は武器腕と化した右腕の銃を使わない動きをしたことで消えた。
伸びきった無数の腕が誰にも触れることなく高速回転するメインローターを模したブレードに巻き込まれて絡め取られていく。

「マジかよお前!!?死んで勝つ気か!?」

「誰が貴様なんぞとぉ!」

そうは言うがイザークの右腕に真人の無数の腕が密着する。
条件は満たした。
あとはたった一瞬念じるだけ。

「無為転変!」

ボコボコと右腕のヘリコプターが歪に膨れ上がる。
それは装甲を伝って量産型ヴァルバラドその物もとても金属とは思えない形に変形していく。

「うぅうううおおおおおおおおおおーーーーーーーっ!!!!!!」


423 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:44:09 .GDcePgc0

イザークも絶叫を上げて狂い悶える。
無生物の量産型ヴァルバラッシャーで真人の腕を斬り飛ばすが焼け石に水。
真人に触れられた魂を有する存在は望むままにその魂をいじくり回され、それに引っ張られた肉体は異形に変貌する。
文字通りの必殺技。
人だろうと呪霊だろうと殺害の意図を込めて使われた場合、触れられた場所を即座に斬り飛ばすが刹那の瞬き以上の時間接触しない以外に助かるすべはない。
唯一の例外は魂のカタチを無意識でも知覚すること。

つまりイザークが助かるには身にまとう仮面ライダーの力で『例外』になるほかない。

だが実際問題仮面ライダーの力で両面宿儺の器のような状態になれるだろうか?
浅倉威や望月穂波が手にした神崎士郎製の仮面ライダーでは無理だろう。
あれは純然たる強化服だ。
黒鋼スパナの二の舞にしかならない。

大道克己のようなガイアメモリの仮面ライダーでも無理だろう。
あれはドーピングの延長、生体装甲、どこまで行っても強化した生身だ。
まあ、魂が腐ってそうなNEVERに効くかと言われる微妙だが。

チェイスのドライブシステムの仮面ライダーの場合も神崎士郎製のライダーと同じく強化服なので無理だろう。
変身者がロイミュードの場合は魂そのものであるコアを直接弄られてしまう可能性があるので、下手したら人間の変身者以上に無為転変に弱いかもしれない。
だがドライブドライバーと、クリム・スタインベルトの魂の複製と文字通りの一心同体、同じ肉体に複数の魂が同居する状態になれば唯一の例外になり得る可能性はある。

同じ理由でももしかしたら今の仮面ライダーゼインや本質的にケミーと人間の多重錬成、同じ肉体に人造とは言え複数の魂を有する状態となる錬金術の仮面ライダーならばあの黒い火花に愛された少年と同じ状態と言えるかもしれない。
だが、残念ながらイザークに与えられた力はヴァルバラド。
仮面ライダーに満たない錬金装甲。
変形させたケミーの鎧に堪えれるように肉体の一部を再錬成しているだけ。
とても同じ体に複数の魂が同居しているとは言い難い。

だが黒鋼スパナとイザークにはいくつか決定的な違いがある。

生まれた世界?人種?そんな物はむき出しの魂にしたら意味がない。
使っている力と真人の認識だ。
スパナは純正のケミー、すなわち悪意を持たないケミーを用いて鉄鋼していた。
だがイザークは量産性を考慮されたレプリケミー、生まれ持ってある程度の悪意を有するケミーで鉄鋼している。
次に真人の認識だ。
スパナを改造人間に変身させた時、真人はマッドウィールまでは変身させなかった。
これは彼の気まぐれではない。
先ほど花村陽介が述べた様に、真人は秀吉と工具コンビが戦闘を始めるまでの流れをどこか遠くからは観ていただろうが鉄鋼の際に手元までがっつり見ていた訳ではない。
つまりスパナが『生き物が鎧に変形したのを纏っている』とは思っていなかったのだ。
その上ケミーは純粋で、真人が最も敏感に感じ取れる魂の代謝である悪意を持たない。
そしてマッドウィールも呼吸するように命を奪う真人から殺意などを感じ取れなかったので真人と結合してマルガムになるようなこともなかった。
だが今回真人は量産型ヴァルバラドの変身のメカニズムをなんとなく理解するタイミングがあった。
それはレプリケミーが悪意の存在であることを、代謝する魂を持ちえると意識するのに十分な出来事である。
元々彼の住む世界に呪符に呪霊や式神を封じて持ち歩く手段があるのもその理解を加速させた。
長々説明させていただいたが結論何を言いたいかというと

『ウィールぅう宇右uうううぅUUうう!!!??』

『げ、ゲゲゲ、げげげっげっげげっげげげgゲキオコぉ!?』

レプリケミーは、呪霊同様無為転変の術式対象である。

「ぷはぁっ!」

限界まで膨張してはじけ飛んだ装甲の中からイザークが出て来た。
まだ肉体の一部再錬成の効力は残っているのか、目元には涙の痕のような黒い紋様が浮かんでいるが生きている。
これにはさすがの真人も驚いた。
だが同時に納得もした。

(術式の解釈を広げ過ぎてイザーク本体より先に周りの呪霊の鎧を弾かせてしまった!
けどあれだけガッツリ触れたんだ。安くはすまない!)

実際その通りだった。
一拍遅れて赤い袖に隠れた右腕が震えだす。
イザークは令呪もレジスターもついていない側という事も有り、躊躇なく噛んで無理矢理袖をまくると左手に持つ量産型ヴァルバラッシャーのラッシャーブレードを突き立て引き下ろす。
切断された右腕は爆裂四散してレプリケミーの残骸と見分けがつかなくなってしまった。

『!?』

「うそでしょ……」

「イザーク!」

「あ……」

(そんな!また、また先生のせいで、チクショウ!)

「痛い…痛い…痛いぃぃぃ!」


424 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:44:43 .GDcePgc0
武器を取り落とし、リュックを抱え締める様に蹲って悶えるイザーク。
当然だろう。
まだ17歳の少年が自分で自分の皮を斬り、肉を裂き、骨を断ったのだ。
心身の苦痛は計り知れない。
あれだけ心身痛めつけられて何度でも他人のために戦える宿儺の器やスーパーコーディネイターがおかしいのだ。

「なんだよ!あとちょっとでもっとカッコよくなったのに!」

腕を無数の刃に変形させながらイザークに迫る真人。
たった一回でも凌いだのは素直に見事だ。
だが支払ったコストはあまりに高い。
鉄鋼不能、手持ちのカードは0枚でバースト技も使用不可。
挙句片手を失い満足に格闘も出来ない。
令呪を使ったところで生身で出来ることなどたかが知れている。
正に詰み。
仕方ないとはいえ捨て札にしては大盤振る舞いが過ぎた。
キャルもイチローも陽介も駆けだしているが、真人の攻撃の方が速い。

「ぶゅっ!」

だが、イザークが破れかぶれに反撃するとしても右手での攻撃はない。
その油断と思い込みが真人の虚を再び突いた。
血が舞う。
真人とイザークの血だ。
拳の無い右手で殴ったわけでもない。
イザークの右腕には、黒鋼色の新しい拳がついている。

(こいつっ!ピーピー鳴きながらひっくり返った蟲みたいな無様見せながら義手を付けてやがったのか!?
しかも、痛い!義手その物が呪具か!)

その義手は、黄金騎士・牙狼こと道外流牙の戦友、炎刃騎士・漸がかつて殺戮の闘将ゼドムのプラントを刺され、魔導ホラーへと変貌を遂げつつあったゆえに捨てた右腕の代わりに得たソウルメタル製の義手である。
奇しくもイザークは元の持ち主とよく似た状態、状況でこの支給品を使うこととなった。
ソウルメタルには、人の負の感情を呼び水に人界に出ずる人食いの魔獣、ホラーを討滅する力がある。
流石に今回のこれは文字通りのラッキーパンチだが、イザークは呪いに届くかもしれない力を手に入れた。

「イザーク!」

「やれぇえええキャルぅううううう!」

ここまでのあまりにもあまりな展開に言葉を失い動けずにいたキャルが駆けだす。
手に持つ杖はある世界を恐怖と理不尽で蹂躙する魔王のコレクションの一つ、ブラスティングスタッフ。
物理攻撃力は一切なし。
しかしそのかわり、肉体に当たれば絶対に距離を取らせる後衛職の魔法使いには必須の能力。

「吹っ飛べぇえええええ!」

「────────っ!」

全身が武器に変形する肉体を持つ真人にとっては天敵ともいえる武装である。
痛みもなしに急に景色が後ろに流れる。
打ち上げられたと察するのに時間がかかった。

(丁髷ゴリラの術式ほどじゃないけど分かってないと本当に混乱する……っ!)

だがまだだ。この程度鳥にでも変身すれば即座に戻れる。
イザークはもう火事場の馬鹿力を使い切っただろうし、こっちはまだ改造人間も支給品も使っていない。

『太陽エネルギー、急速チャージ開始』

だが切り札を切っていないのは別に一人だけではない。
ここにも一機、『最強』を温存していたロボットが居る。

『ジェネレーター直結、収束臨界……』

蓄えられた太陽エネルギーが機体限界ギリギリまで圧縮され、頭部に集中。
あまりの高熱にボディーの透明な部位を残さず眩く発光させながら、イチローは倒すべき敵を見据える。
超高火力による一撃必殺。
現状令呪無しで唯一真人への致命打に成りえるかもしれない一撃。
その可能性をイチローが提示したのは、令呪以外の手段に限ってはジュール隊で唯一自身がそれを可能だからだ。

「……はぁ、つまんな」

『サン……ライズ・ビィ────────ムッッッ!!!』

その名の通り登り往く朝日にもにた山吹色の光柱がイチローの額から放たれた。
圧倒的熱量が真人の下半身を吹き飛ばし、残る上半身もはるか上空に連れ去った。

「終わった、のか……」

陽介の呟きと同時に体中から煙を上げながらガクッ!とイチローが膝をつく。

「イチローしっかり!大丈夫?何か焼き切れちゃった!?」

『すまない……倒し、損ねた。
……残存エネルギーが20%を低下。
太陽電池機構の冷却が済み次第、急速充電を実行。
それまでスリープモードに、移行……』

そう報告するとイチローはうんともすんとも言わなくなってしまった。

「……お疲れ様。ありがとう」

技術手袋越しとは言え、まだ熱いゼイチローのボディーをねぎらうように撫でるくるみ。
限界なのはイチローだけではなかった。


425 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:45:04 .GDcePgc0

「ぐっ……ううう……」

殆ど尻もちをつく様にあおむけに倒れたイザークはそのまま気絶してしまった。

「イザーク!イザークしっかり!あいつらでもこんな無茶絶対しないわよ!
ちょっとヨウスケ!それに、サヤカだっけ!?あんたらもこっち来て手伝いなさい!」

「お、おう分かったって寒っ!あれ?
なんで俺だけこんなずぶ濡れなんだっけ?」

怒鳴るキャルにせかされ正気に戻った陽介だったが、正気に戻ったせいで自分がずぶ濡れという事実を思い出し震え上がってしまった。

「もうほんとあんたってカッコつかないわね!
冷えないところでクルミとイチロー見張ってなさい!
サヤカ!あんたで良いからこっち来てイザークの手当て手伝って!」

「う、うん」

仕方なく陽介とは別の意味で正気に戻ったばかりの沙耶香を呼びつけ、まだ結合しきってないのに無理やり真人を殴ったせいで血が止まってない右腕を破いたリュックの布を巻き付け止血し、二人がかりでイザークを運ぶ。

「あ、これって……」

沙耶香はイザークに駆け寄ろうとして、真人が吹き飛ばされた場所に見覚えのあるカードと見覚えのない支給品が落ちているのに気付いて拾い上げた。

「ちょっと!そんなの後で良いから!」

キャルの怒鳴り声に道具を素早くリュックにしまうと二人に駆け寄る。

「あんたの事情は後できっちり聴かせてもらうけど、まずは折角生き残ったんだからこれ以上死なないようにしましょう」

「……うん。えっと」

「あたしはキャル。魔法使いよ」

「糸見沙耶香、刀使」

自己紹介もそこそこに二人はまだ壊れていない家にイザークを運び込んだ。




「あっぶな。
流石にレジスターや令呪が焼き焦がされたらヤバかったよなぁ」

真人は生きていた。
元居たC-11とC-12の境目辺りから吹き飛ばされて河に堕ち、どうにか無理くり生やした下半身を魚に変形させて泳いで向こう岸のC-10にたどり着いた。
だが呪力も大幅に消費させられ、流石に休まない訳にはいかない。
数時間も休めば領域以外は大体使えるぐらいに回復できるだろうが、このバトルロワイヤルにとらわれてから初めての失態だ。

「リュックは……マジか、底が焦げていくらかこぼれちゃってるじゃん」

事実として真人は優位に立っていたはずなのに、今回は負けたと言っていい。
相手が確実に本気を出せないだろう従順な手ゴマ、多彩な手札、改造人間のストック、そして令呪なしに使えるかは怪しいが領域展開。
まともに戦えば、真人に勝てるプレイヤーはその気になれば国土を蹂躙出来る連中を除くとそんなに多くない。
強襲自体も上手くいき、スパナと違い、まだ助けれるかもしれない沙耶香に背後を取らせてそちらに注目を裂かせることで量産型ヴァルバラドと一対一の状況をつくる事に成功している。
終始優勢だったと言ってもいい。
なのに一人も殺せなかった。

「あー!むかつく!
でもいいや、式神使いと、沙耶香。
無為転変仕込んだりは出来なかったけど種は撒いてる」

肉体と違い、魂は何度でも殺せる。
今回の戦いで真人はあのチームにイザークの右腕欠損という盛大なくさびを打ち込んだ。
料理の仕様はいくらでもある。

「今回ちょっとおごって真面に攻めすぎちゃったのは、流石に認めないとまずいよね。
ガラにもなく恋愛ごっこなんてするもんじゃなかったかな?」

こんなにも早く陽介の魂を折ることが出来ると舞い上がってしまったせいか、若干ヴァルバラドに執着してしまった感も否めない。
今回も呪いらしく振舞ったつもりではあったが、どうにも色々と裏目に出てしまった。
だがその一個前のロロたちとの戦いで場をひっかきまわせるのは分かったから、次から場を引きましたらさっさと改造人間にすることにしよう。

「やっぱり『らしさ』って大事だね。
もっと人らしく、呪いらしく狡猾にいかなきゃ」

支払ったコストは高くついたが、ここまでの流れで得た者が全くない訳ではない。
刀使の存在する世界、多分最低限だろうがロロの元居た世界の知識は得れた。
あのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと対峙することがあれば大いに役に立つだろう。
リュックも失ってしまったが、持ち運ばなければいけないのはザビーのバズーカぐらいで、改造人間は元の世界でやったように口の中にでも入れておけばいい。
幸い落とさなかったホットラインを起動し、地図を確認する。

「さて、たった二日しかないんだ。
休んだらまた動かないと。
ここからだと一番近いのは……アビドス高校か」

気の向くまま、足の向くまま、思うままに他者を蹂躙する。
人が人を恐れた胎から生まれた呪いはこのバトルロワイヤルでも変わらない。
彼にとっての真実とは、どこまで行っても呪いが呪いである事なのだから。


426 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:45:30 .GDcePgc0


【エリアC-10/川沿いのどこか/9月2日午前10時】

【真人@呪術廻戦】
状態:五体満足、呪力消費(大)、タギツヒメへの警戒と呆れ、反省(小)
服装:いつもの
装備:改造人間@呪術廻戦、Lの聖文字@BLEACH
   ザビーのバズーカ×@戦国BASARA
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:いつも通りにする。呪いらしく、人間らしく狡猾に。
00:不慣れな奴ほど奇を衒う、じゃないけど今回はらしくない遊びが過ぎたかな?
01:もっともっと人らしく、呪いらしく狡猾に行こう。
02:イザーク・ジュールたちは次会った時に身も魂も殺してやる。
03:沙耶香の知り合いに会ったら、適当な改造人間沙耶香ってことにしても面白いかも。
04:タギツヒメ、それは呪いの在り方じゃないでしょ。
05:ロロに関しては頭にとどめておく程度。
   もしルルーシュと遊ぶ機会が有ったら、ってところかな?
06:流石にちょっと休憩。
07:次に行くならアビドス高校かな?
参戦時期:少なくとも渋谷事変よりも前
備考
※魂の輪郭を知覚していればダメージはより通りますが、
 魂の輪郭を知覚してなくてもダメージは通るようになってます。
※改造人間が没収されてない代わりに支給品が1枠減ってます。
※沙耶香から『刀使の巫女』、ロロから聞かされてる限りの『コードギアス』に関する知識を得ました。
※レプリケミーも呪霊同様術式対象に出来るようです。
※リュックを失いました。




「あれは……」

エリアD-10の大橋の上にて。
豊臣秀吉は一条の光柱が天を射抜かんばかりに発射されるのを見た。

「あれも異界の技か技術か?
ここからでは子細までは分らぬが、なんと……」

よっぽど腕に自信のある者が挑戦者を募りたいからそうするのならばもっと派手な、それこそ花火でも使えばいい。
そうでないというならばあれは何かしらの攻撃の意図を持ち、破壊力のある何かということになる。

「我が肉体が滅することが叶わぬとしても、種子島よりも遠くより狙い打たれては面倒だな」

まともな人間がくらえば一撃で消し炭になるサン・ライズ・ビームを見てそんな反応が出てきて当然な者がこの秀吉以外にもまあまあいるのがこのバトルロワイヤルの恐ろしい所である。
だが秀吉は自分と同格かそれ以上の存在を覇王十代しか知らない。
知らない。
配下にして参謀の竹中半兵衛との関係を猿と猿回しと揶揄されることもある秀吉だが、知らないことがどれだけ恐ろしいかぐらいは十分理解している。
だからこそ、知りに行かねばならない。

「アビドス砂漠……確か羂索もアビドス生徒会かどうのと言っていたな」

自分と同じように羂索の言葉を思い出した者たちはアビドス高校を目指し、集うだろう。
それにこの砂漠を突っ切って行けばルルーシュが居城に選んだテレビ局がある。
近くまで行けばロロ・ヴィ・ブリタニアやルルーシュの知古と出会えるかもしれない。

「待っていろルルーシュ。いずれ貴様の国も我が版図としてくれよう……」

赤き覇王が歩みを進める。
真人がもたらすとのはまた毛色の違う悲劇もまた、アビドス高校に近づいていた。



【エリアD-10/大橋/9月2日午前10時】

【豊臣秀吉@戦国BASARA2】
状態:健康
服装:いつもの服装(籠手の部分は別)
装備:神旺エクス・アリスタルコス@グランブルーファンタジー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:天下統一の邪魔はさせぬ
01:異界の人材や技術、兵器は出来ることならこの手に収める。
02:あの黒き覇王とは何れ雌雄を決する。
03:陽介、我が軍門に下るというなら拒みはせん。
   だがいつまでも奴(スパナ)の死に、弱さに執心するなら要らぬ。
04:此処で豊臣軍を築いてテレビ局のルルーシュを倒す。
   だがそれには情報を集めねばならぬ。
05:あの光(サン・ライズ・ビーム)のような超遠距離攻撃も警戒はしておくか
06:まずはアビドス高校に向かう。
参戦時期:姉川蹂躙戦の後
備考
※エクス・アリスタルコスによって攻撃力が強化されてます。
※イチローのサン・ライズ・ビームは周囲一マス分ぐらいには目視できるようです。




「う……」

じっとりと汗をかいた気持ち悪さと、右腕の止まらない痛みでイザークは目覚めた。
身体を起こしてみると自分はベッドに寝かされていたようで、軍服の上着だけ脱がされた状態であった。

『ウィール!』

ベッドサイドテーブルを見ると、純正のマッドウィールがイザークの目覚めを喜び跳ねている。


427 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:46:13 .GDcePgc0
「……見張ってくれてたのか?」

『ウィルウィール!』

「そうか、助かった」

右腕を伸ばそうとして、それが硬いソウルメタルの義手である事を思い出し、引っ込めて令呪の宿る左腕でカードを掴む。
ハンガーにかけられていた赤服を羽織って、壁に立てかけられていた量産型ヴァルバラッシャーを手に部屋を出る。

「イザーク!あんた思ったより元気そうね」

風呂場の方から出て来たキャルと出会った。
見ると手には水の入った桶とタオルがあり、同やら汗を拭こうとしてくれていたらしい。

「面倒をかけたようだな。
他の連中は?」

タオルを受け取り、顔を拭きながら尋ねる。

「下のガレージでイチローの修理。
動けるなら顔出したげなさい。
あいつら、今にもピーピー泣き出しそうだったんだから」

「そうさせてもらう。俺のリュックは?」

「クルミが預かってるわ」

タオルをキャルに返してイザークは階段を降りた。
どうやら自分は二階に寝かされていたらしい。
ガレージの方に向かうと、キャル以外の全員が揃っていた。
どうやらサイドバッシャーは無事だったようで、運び込まれている。

「あ、イザーク!もう起きても大丈夫なの?」

駆け寄ってきたくるみからリュックを受け取り、イザークは笑みこそないがいくらか穏やかな声で答える。

「どうにかな。イチロー、貴様はどうだ?
かなりの大技を使ったように見えたが、不調はないか?」

『修理不能の損傷を受けた部位は予備パーツに換装済み。
それ以外の部位は技術手袋とキカイソダテールによるリペアが間に合った。
増設スラスターの喪失による機動性能の低下はあるが、通常戦闘に支障はない。
太陽電池も正常に稼働している。極めてノープロだ』

ザフト式の敬礼をしながら答えるイチローに安どのため息を吐く。

「無事なら何よりだ。
高くついたが、全員命あっての物種だからな」

「その腕……ごめんなさい」

沙耶香が深々と頭を下げるが、イザークは鼻を鳴らす。

「これは俺が自分で斬った。
それに貴様のせいで捨てることになったわけでもない」

「でも、、」

「申し訳ないと思うなら知っている事を全部話してもらうぞ。
今後のこともある。
キャルも交えて話そう」

リビングに戻ると、キャルがソファーに座ってホットラインを弄りながら待っていた。
ソファーはテーブルに沿うようにL字に二つ配置されており、入って来た方から見て縦線の元からキャルが座っていた隣にくるみがすわり、もう一つのソファーに沙耶香が遠慮がちに腰を下ろす。
イザークはイチローと共に立っているつもりだったが、怪我人だからと他の全員に促されて沙耶香の隣に座った。

「怪我したのは脚じゃないぞ」

「でも結構血も流してんだから大人しく座る!
で、とりあえずあたしらから話す?」

真人と最もかかわりが薄いという事も有り、3人と1機で行動するようになった経緯と、主にラウ・ル・クルーゼについて話された。

「死んだ人間を利用する能力……じゃあニコルって人も、死ぬ前から連れてこられてるわけじゃないなら可奈美みたいに人形に?」

「人形?俺のイメージとしては梔子ユメの様な乗っ取りだったんだが……」

「どっちにしろ本人じゃない時点で最悪じゃねえかよ」

「とにかく、こっちの事情は大体こんな感じ。
沙耶香ちゃんと花村君は、どんな感じ?あんまり話したくないことも多いだろうけど」

「俺ももう一回話すのかよ」

「サヤカが話について行けないんだから仕方ないだろ」

陽介は自信とペルソナの事、ザギ、豊臣秀吉、そして真人との戦いを。
沙耶香は刀使と荒魂に、ロロやタギツヒメとの出会い、黒崎一護の死や真人に洗脳された経緯などを話した。


428 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:46:34 .GDcePgc0
「美濃関が、そんなことに……」

「羂索たちの用意した贋物なんだろうけど、ごめんな。
俺が秀吉や先生を倒せてれば……」

「ううん。あやまらないで。
どうしようもなかったのは嫌って程分かるから。
私を操ってた人は、陽介たちには先生って名乗ったの?」

「ああ。そう言えば、沙耶香ちゃんはアイツの事、立香さんって呼んでたな」

「多分『藤丸立香』のことじゃない?
名簿の中で並び的に浮いてる名前から適当に名乗ってるんじゃない?
先生は漢字の姓にカタカナの名前の人とルルーシュの知り合い丁度間だし、藤丸って名前は全部カタカナの名前の中に全部漢字って違和感あるし」

沙耶香の疑問に名簿を見ながらくるみが答えた。

「じゃあ次に名乗るとしたらPoHとか浅利切人あたりか?」

「あの継ぎ接ぎがこっちとまともに取り合う気がないってだけでしょ?」

キャルは真人の様な性根が腐った野郎が仲間を大事にする姿も想像できないから、多分自分の知り合いを名簿から予想されたくない……知古を巻き込まれたくないとかそんなことを考えて違う名前を名乗っている訳ではないと言いたいのだ。

「仮に上等な考えがあるとしても適当な他者の悪い噂を流布させたい、ってところか?」

「でしょうね。
後話聞いてる限り継ぎ接ぎとは別ベクトルできな臭いのはロロよ」

沙耶香の方を見ながらキャルが言った。
白兜に襲われる沙耶香を助けたりはしているが、あとから仲間になった(しかも沙耶香の世界では倒すべき害獣の一種である)タギツヒメ相手ならまだしも、純粋に被害者なのが分かり切っているはずの沙耶香にまで支給品を隠し持っていたのは少し違和感がある。

「純粋に協力する気なら手の内晒さないのはおかしいってのは確かにその通りなんだが、ロロはルルーシュの弟なんだろう?
洗脳能力が敵に回った時の恐ろしさや厄介さを知っていたから黙っていた可能性もあるんじゃないのか?」

イザークの推論は、ある意味で現実になった出来事でもある。
そんな意図はなかったのだが、突きつけられた仲間を斬ったという事実に再び胸に鈍痛の走った沙耶香は期せずして取り戻したクラスカードを片手につぶやく様に言った。

「……ロロに会わなきゃ。
会って、ちゃんと謝らなきゃ」

イザークたちも後顧の憂いを断ちたかったし、ルルーシュという地雷さえ踏まなければ真人よりは圧倒的に理性的かつ建設的な会話が可能に思えるロロと会って話すのは損ではないと判断する。
上手くいけば、ルルーシュと不可侵協定ぐらいは結べるかもしれないというのもデカい。

「けどいつまでも冬地帯であっち行ったりこっち行ったりって訳にもいかなくない?
私たち元々テレビ局に向ってたわけだし」

「そうね。ロロもテレビ局に行きたがってるならそこで合流出来ればいいし、二手に分かれる?」

「だが人数が増えたのに対してバイクはサイドバッシャーだけになってしまっているぞ」

それにメカニックとロボットのくるみとイチローを可能な限り分けたくない。
だがそうなると非戦闘員を連れ歩く以上、どちらかの戦力に偏りが生じてしまう。

「なら直接テレビ局に行くのはイザーク、クルミ、イチローでいいんじゃない?
あんたらは一緒に呼ばれてる知り合いも多いんでしょ?」

そもそもロロに会いたがってる沙耶香を除くと元からの知り合いが全く呼ばれていない陽介と、知り合いがシェフィのみのキャルは長い距離を探し回ったところで知り合いとエンカウントできる可能性はそこまで高くないという判断だ。

『そちらの戦力バランスがかなり偏ってると思われますが、よろしいのですか?』

「あんたとイザークの義手になんかあった時にどうにかできるのクルミしかいないんだから仕方にでしょ。
そこはあたしがこいつらのケツひっぱたくから大丈夫。
移動ならこいつらを頼っても良い訳だし」

『スケボーズ!』

『スチームライナー!』

と、キャルはビークルのケミーカードを見せた。

「あれ?スパナの持ってたカードって、今キャルちゃんが持ってるんじゃないのか?」

「もともとイザークが使ってた連中は継ぎ接ぎにやられちゃったから、ヴァルバラドになれるように預けてるわ」

『ウィール!』

イザークもポケットからマッドウィールのカードを取り出す。

「事後承諾になってしまったが、こいつを譲ってくれないか?」

「……だったら、これも持ってってくれよ」

少し悩んだ陽介だったが、スパナの使っていたオリジナルのヴァルバラッシャーを取り出し、イザークに差し出した。

「いいのか?この武器は仲間の形見なんだろう?」

「俺よりお前の方が上手く使えそうだし、そいつとこれを引き離す物も可哀そうな気がしてさ。
そのかわりに絶対に死ぬなよ」


429 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:47:26 .GDcePgc0
そう言われてイザークは自分が元々持っていた量産型のヴァルバラッシャーをリュックに収納し、陽介から渡された方を装備する。

「ならば有難く使わせてもらおう。
所でヨウスケ、バイクは運転できるか?」

「え?もしかして俺にあのサイドカー運転しろってこと?」

「俺とイチローは生憎と別行動だからな。
キャルは運転できないし、サヤカはどう見てもエレメンタリーを卒業したばっかりだろう?」

糸見沙耶香、12歳。
成人年齢が15歳のプラントであってもまだまだ子供である。
特殊車両を運転させるわけにはいかない。

「いや確かにぼろい自転車からバイクに乗り換えるのが当面の目標で貯金や勉強したりはしてるけど、実際に動かしたことは全然ないぜ?」

「この島はどう考えてもどこの国土でもないだろう?
細かいことは気にするな」

「いやそうは言ったってよぉ……」

「男なんだから腹くくりなさい。
念願のバイク?なんでしょ」

「確かにそうなんだけどさ」

「大丈夫。いざとなったら金剛身がある」

「サイドカー横転させる前提で話進んでる!?」

『仮称継ぎ接ぎや豊臣秀吉との戦闘を避けるために北側の橋を使用することを当機は提案する』

「そしてスルーされた!?」

なんてコントみたいなやり取りを挟みつつ、それぞれの方針とメンバーが決まり、各々荷物と武器を今一度確認してから外に出る。

「キャル、二人のことを頼んだぞ」

「隊長殿も無理すんじゃないわよ。
クルミ、イチロー、あんたらも無事でね」

『了解。当機もキャル、花村陽介、糸見沙耶香の武運を祈る』

「ありがとう。皆も気を付けて」

「うっし!なんとかなりそうっちゃなりそうだな。バイク出せるぜ」

陽介からヘルメットを受け取った沙耶香がサイドカーに座り、キャルはケミーライザーでスケボーズを召喚してその背に乗る。
別れのあいさつを交わして、サイドバッシャーとスケボーズが発進する。
その背中を見送るとイザークたちも歩み出した。



【エリアC-11/市街地/9月2日午前10時】
【ジュール隊イザーク班】
【イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEED】
状態:健康、顔に大きな傷跡、右腕欠損、義手装着、疲労(中)、ダメージ(中)
服装:ザフトの赤服
装備:ソウルメタル製の義手@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
   ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
   ケミーカード(マッドウィール)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   量産型ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:この殺し合いから脱出する。
01:死んだ部下を弄び、こんな殺し合いに加担して白服を穢したクルーゼ隊長は許せない。
02:クルミたちと最北の橋経由でテレビ局を目指し、反ルルーシュ派のゲームにのってない連中と合流する。
  地球連合の連中が居るなら出方次第だが協力してやらんこともない。
03:ニコル……お前がもしクチナシのように体を利用されてるだけだとすれば俺は!
04:この武器といいクルミの手袋といい、かなり良い物だなな。
  持ち帰って我がザフト軍で使えないか?
05:アスラン、ラクス嬢……ディアッカ。死ぬなよ
06:なぜアスランやキラとか言う奴の名前が二つも?
07:継ぎ接ぎ(真人)め。今度会ったらこの右手とお揃いにしてくれるっ!
08:キャル、ヨウスケとサヤカは頼んだぞ。
09:スパナ、貴様の武器と仲間の力、使わせてもらうぞ。
10:サヤカとロロと上手く話がまとまるといいんだがな
11:合流できるとしたらテレビ局か。先は長いな。
12:ヒデヨシという男を警戒。
  いつかは倒さねばならんだろうが、流石にもっと装備と人員を充実させてから戦いたい。
13:次似た様なことがあれば右腕だけで済むとは思えんな。
14:あの黒いドームはなんだったんだ?
参戦時期:第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦でディアッカと再会した後
備考
※ソウルメタルのホラーを討滅する力は呪霊にも有効なようです。
※『トラぺジウム』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』に関する知識を得ました。
※ニコルが羂索のような何者かに死体を利用されているだけの可能性を考慮しています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。


430 : イザーク・ジュール:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:47:45 .GDcePgc0

【大河くるみ@トラぺジウム】
状態:健康、不安(中)
服装:いつもの私服
装備:技術手袋@ドラえもん
   キカイソダテール(残り3/5回)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:死にたくはない。
01:怖いけど、何もしない訳にはいかない。
02:イザーク、イチローとテレビ局を目指す。
03:東西南北(仮)の皆にはどうか無事でいて欲しい。
  どうか継ぎ接ぎ(真人)や秀吉みたいな人に会ってませんように……。
04:キャル、皆。気を付けてね。
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※組み立てた01をイチローと名付けました。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。

【イチロー(NPCモンスター・非参加者)@キカイダー02+ロワオリジナル】
状態:整備完了、増設スラスター喪失
服装:全裸(ロボットの為)
装備:サン・ライズ・マシンガン(修理済み)、サン・ライズ・ビーム(充電不足の為現状使用不可)
道具:なし
思考
基本:造物主である大河くるみを守護する。
00:くるみを守護する。
01:イザークと行動を共にする。
02:キャル、花村陽介、糸見沙耶香の武運を祈る。
03:仮称継ぎ接ぎを撃破しきれなかったのは当機痛恨の失態である。
04:豊臣秀吉、仮称継ぎ接ぎを非協力対象と判断。
備考
※くるみにより量産型01の残骸からくみ上げられたロボットです。
※キカイソダテールを二回投与され発声機能、会話能力を習得しました。
 それ以外の変化については後の書き手様にお任せします。
※サン・ライズ・ビームは充電さえ出来ていれば何度でも使えますが、そもそも一回の電力消費がすさまじいのでその時の蓄電残量次第ではその場で行動不能になってしまいます。

【支給品解説】
・ソウルメタル製の義手@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
…イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEEDに支給。
ホラーの死体がマグマで固まる事で生まれる特殊金属、ソウルメタルで出来た義手。
魔戒騎士の蛇崩猛竜が魔導ホラーのプラントに刺し貫かれ捨てるしかなくなった右腕の代わりに魔戒法師の符礼が用意した物。
武器に加工された物ではないので性別問わず扱えるはずだが、イザークはこれを武器と思っている上で右手を捨ててでも仲間のために戦う覚悟と白服を穢し死んだ戦友すら利用するクルーゼへの正しい怒りでもって制御しているのでこれで殴ればホラーや呪霊に普通にダメージが通る。

【NPCモンスター解説】
・ライオトルーパー@仮面ライダー555
…スマートブレインが仮面ライダーファイズを基に開発した量産型仮面ライダー。
生産性が重視されており、ここの性能はファイズの基本フォーム以下だが兎に角数が多い。
しかも個体によっては仮面ライダーサイガの武装であるジェットスライガーを装備出来たり、仮面ライダーカイザの専用マシンであるサイドバッシャーや三本のベルト共通の大型バイクジェットスライガーを操縦していることもある。
共通武装は専用マシンのジャイロアタッカーと、そのハンドルも兼ねるエネルギーガンと超振動実体剣の特性を持つアクセレイガン。

【ドロップアイテム解説】
・ジャイロアタッカー@仮面ライダー555
…スマートブレインの自動車部門、スマートブレインモーターズが開発したライオトルーパー専用バイク。
アクセレイガンをセットすることで起動する。
没になったオートバジンの後継機の設計図を基に変形機構の廃止などのコストカットと生産性の向上が行われており、ライオトルーパー同様無数に登場する。


431 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:48:42 .GDcePgc0
イザークたちと別れてキャル班として別行動を開始した3人はエリアC-12に到着したタイミングで一度休むことにした。
サイドバッシャーはその名前の通りサイドカー付きなのでジャイロアタッカーのように二人乗りがきついなんてことはないのだが、生き物であるケミーを乗り物にしているキャルが追いつけなくなってきてしまったのだ。
冬地帯というだけあって外の冷気も相当でスケボーズはもう限界を迎え、三人も一度暖を取るべきと判断した。

「冬地帯とは言うけどちゃんと人の住める場所があるのは良心的よね。
ま、今日誕生日の奴をこんなクソみたいな殺し合いに連れて来てる時点でケンジャクもクルーゼもカス野郎だけど」

と、適当に上がった民家で冷蔵庫をあさりながらキャルが言った。
その発言に一瞬聞き逃しそうになるが、付き合いの浅い同行者二人が驚いて振り向く。

「えっ、キャルちゃん今日誕生日なの?」

「9月2日生まれの14歳。
皮肉のつもりか支給品の一つは誕生日ケーキだったわ。
ホッパー1に食べられちゃったけど」

(……舞衣と同い年なんだ)

「こんな時になんだけど、その、おめでとう」

「ありがとう。でも無理に祝わなくていいわよ。
それよりヨウスケ、あんたサイドバッシャーちゃんとリュックにしまって来た?」

取り出した缶ジュースを見比べながらキャルはなんてことない様に尋ねた。

「そんなこと言ってたっけ?
てか、バイクがこのサイズのリュックに入んの!?」

「前に出しっぱなしにしてて片方壊されたんだから仕舞っとくって話したでしょ?
それにケンジャクも生き物以外はなんでも入るって言ってたんだから入るわよ。
ほら!分かったらさっさと回収してくる!」

「分かった!分かったから押さないでって!」

陽介を屋内から追い出したキャルは残った沙耶香に見つけた二本の缶ジュースを見せる。

「冷たいのしかなくて悪いわね。
オレンジジュースとサイダーだったらどっちがいい?」

「……オレンジ」

缶を受け取り、ダイニングテーブルの椅子に隣り合うように座った。

「炭酸ダメなの?」

「そうゆうわけじゃないけど、こっちのが好き。
私からも質問していい?」

「答えられる事は答えるわ」

「嘘ついたよね」

羂索がリュックに何でも仕舞えるという話はしていたが、キャルがバイクをどうこうしようと言っていた記憶は全くない。
不信に思いつつも、陽介が居る前で言わなかったのは、キャルが彼を追い払おうとするときにわざとらしく二本の缶ジュースを見せて来たからだ。


432 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:49:20 .GDcePgc0
「ええ」

あっけなく肯定したキャル。
沙耶香は質問を重ねた。

「私と二人になりたかったの?」

「確認したい事と、言いたいことがあったから」

確認、とは言うがついさっきまで洗脳されて操られていた沙耶香を信頼していないと言う意味には聞こえなかった。
キャルがの立場なら沙耶香に何か疑いを抱いていたとしても不思議ではないはずだが、そうでないのならばなんだろう?

「確認したい事って?」

「カナミだっけ?
例の死体を操られた友達のこと、どうしたいの?」

贋物の熱がすっかり引いた今ならその肉体が壊れるまで何者かの意図にそって刃を振るう存在でしかないと突きつけられる殺意だけを込めた太刀筋を克明に思い出せる。
もう2度と、彼女が笑う事はない。
頭では分かっているが、心でどうしても認めたくない。

「……出来る事なら傷つけたくはない。
でも、私の剣に本気で向き合ってくれた可奈美が、あんな風に剣を振るって無差別に人を傷つけるなら、舞衣を傷付けるかもしれないなら止めるべきとは思ってる」

あれは衛藤可奈美とは言えない。
ただ衛藤可奈美の姿をした人形に過ぎない。
そう簡単に割り切れたらあの時真人相手にもう少しマシに戦えていたのだが、それが出来てしまえる糸見沙耶香はもういない。
魔戒騎士ならば落第物だが、彼女は刀使。
それも柊篝たちの時代程荒魂が人を乗っ取るような事もなくなった時代の刀使だ。
人を纏った獣を斬らねばならない確率など自動車事故に遭遇するぐらいの確率でしかなかったはずなのだ。
現代に日々車に惹かれるかもしれないと恐怖して暮らす一般人がいるだろうか?
よっぽど車にトラウマを植え付けられた者以外居ないだろう。
それにいざその事態に直面したからって簡単に覚悟できる者はそんなにいない。
タギツヒメから未来の出来事を聞かされた今となっても、沙耶香には体制を敵に回す戦いに巻き込まれる覚悟など出来ていない。
よく考えればわずか14歳で現体制にたった1人で喧嘩売る覚悟だった十条姫和は例外中の例外のはずなのだ。
今亡き衛藤可奈美にしてもそう。
浅倉威やノワルのような様々な意味で対話不能且つ凶悪極まるマーダーを殺す覚悟を求めていた前坂隆二の考えは的外れも好い所だったと言えよう。
衛藤可奈美は闇に沈む物を引っ張り上げ、愛に逸れた者によりそう者救う者、助ける者であって、闇に居ながら闇を斬り、愛を追わず使命に殉じる守りし者ではない。
だからあの悲劇に繋がってしまったともいえるのが、なんとも苦しい所だが。

「……それで、言いたい事は?」

「正直、カナミの件に関してはあたしはあんたたちの苦しみを理解出来ない。
ロロってやつのこともきな臭いとは思うけど、実際の所会ってみないと判断つかないわ。
だから茶化してるみたいに聞こえたり、否定されたように感じたら悪いんだけど……あんまり深刻に考えなんじゃないわよ。
あんたもカナミもあたしと違って自発的に裏切って仲間傷付けたわけじゃないんだから」

「裏切ったって……」

「ここに来る前ね、拾ってくれた人の命令を拒めなくて友達になってくれた連中をぶっ殺しそうになったの」

ジュール隊全員での情報交換では元の世界の知り合いがシェフィ一人しかいないのと、イザークが主催者の一人であるラウ・ル・クルーゼの部下という事もあって、キャルは自身の過去を込み入ったところまで語る時間はなかった。
大雑把な世界観と自分の手札を教えたのみだった。
それに態々自発的に話して利がある事でもないのだが、沙耶香の過去を聞いて少し自分と似ていると思ったのと、自分のように苦しんでほしくないと思ったから話すことにしたのだ。

「あたしがシェフィと一緒に所属してる美食殿ってギルドにはね、最初に入った理由は陛下に、仕えていた覇瞳皇帝様に場合によっては始末しろと命じられた監視対象が二人も居たからなの。
1人は陛下に姫位どころか周囲の記憶ごと立場を簒奪された可哀そうな本物のお姫様で、もう1人が陛下のお知り合いのプリンセスナイトの男の子。
それからあとエルフのチビの4人で冒険して、遊んで、酸いも甘いも分かち合って、その裏ではずっと裏切り続けてた」

ここに来て少しだけためらうそぶりを見せたキャルだったが、それも一瞬。
一口だけサイダー飲んで続きを話し始めた。

「挙句の果てに陛下が本格的に動くとなったら、憧れの人に見放されるのが嫌で迷走して暴走して、大切だったはずの連中を魔物に襲わせて、魔法で痛めつけて、ひっ捕らえて牢にぶち込んで、殺す以外の酷いことは大体したような気がするわ」


433 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:49:41 .GDcePgc0

(……私も高津学長から離れられなかったら、そうなったのかな?)

もしそうだった場合、舞衣や可奈美と共に行動しながらも舞草のスパイのような事をしていたのか?
それともどこかのタイミングで可奈美や舞衣、十条姫和たちを背中から斬りつけていたのだろうか?
ロロ・ランペルージとロロ・ヴィ・ブリタニアのような、明確に別物と化したであろうAnother(もうひとつ)の未来。
多分、そうなった未来では沙耶香の魂は死んでしまうだろう。
高津雪那が望んだ最高の妙法村正の後継者が、無念無想の極地たる意志無き刃の完成という訳だ。

「……辛かった?」

「笑いながらやってたわ。
器に見合わない力を与えられて、肉体が壊れるのも構わず至高の御方に忠誠を捧げる自分に酔ってた」

本当に他人事とは思えない。
自分もあの時抵抗しなければ冥加刀使にされていた……本来持ちえない力を与えられていたのだから。

「……あたしは幸せ者だわ。
こんなバカやってもまだ友達だって言ってくれる奴らがもがいても沈んでいく泥沼からあたしを引っ張り上げてくれたんだから」

今でも覇瞳皇帝本人どころかその似姿を見ただけで震え上がってしまう程に畏敬の念を抱いている。
あの暗い過去が、仮面で文字通りに視界を閉ざして行った蛮行の数々は決して払拭できない。
でも、それだけではない。

「そんな最低なことやらかしたあたしが、あたしでも図々しく学校通って、青春して、運命の王子様まで見つけれちゃったのよ。
次にあの継ぎ接ぎに会った時に、あんたよりいい男はとっくに見つけてるって言えちゃうぐらい幸せになっても、罰何て当たんないわよ」

自分を責めるなと言外に励ますキャルは沙耶香と大して年齢差はないはずだが、落ち込んでしまった妹を励ます姉のような優しさを感じる。
少し気恥ずかしさを覚えながらも舞衣がくれたのに似た温もりに洗脳が溶けてから初めて沙耶香の表情が柔らかくなった。

「……恋愛とか、いろいろと自分で納得できるかとかまだ分からない。
けどありがとう。ちょっとだけ軽くなった」

そう言って胸に手を当てる沙耶香に笑みを返し、サイダーを一口飲む。
冷たいが、味は悪くない。

「そのうち分かるわよ。
ま、ロロってやつは個人的にはあんまりお勧めできないけどね」

恋とは、少なくともキャルにとっては素敵な物だ。
掃きだめ生まれ、路地裏育ちのこんな自分もプリンセスにしてくれる王子様に出会えたのだから当然と言えば当然だが、沙耶香は話を聞く限り、恐らく身体的性別(セックス)は兎も角精神的性差(ジェンダー)を意識するほど情緒が育っていない。
あのお人よしのプリンセスナイトの周りに女性の知り合いが多いことに嫉妬する11歳のコッコロの方がそこらへん分かってるのではないかと思う程に精神のある一部が幼い中で、初めての恋愛感情が贋物で、挙句相手があの真人。
真っ当な神経をしていれば恋愛という物に対して嫌悪感を抱いてもおかしくない。

だが沙耶香が何も悪いことをしていないのに恋愛に対して否定的な感情を持ってしまうのはあまりに可哀そうでもったいないとキャルは思ったのだ。
幸い、デフォルトのちょっと困ったような顔つきのまま小首をかしげる様子を見るに、少なくとも恋愛に対して恐怖感の様な感情は抱いていないらしい。
なんてキャルが密かに安堵していると、ドアの外からこの不浄なるバトルロワイヤルの会場で何度も聞いたビーム銃の音が聞こえて来た。

「ったく、休む暇無しね。行くわよ!」

「うん」


434 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:50:04 .GDcePgc0
各々武器を片手に飛び出すと、すでに陽介が迎撃に当たっていた。
と言うより、襲撃されて応戦していたといった方が正しいか。
対峙しているのは全身を黒い鳥の意匠のバトルスーツとヘルメットで覆われた戦士……体格からして男だ。
令呪は兎も角、レジスターも見当たらないのでNPCモンスターに違いない。
ただ生き残る事を考えるならさっさと逃げてもいいが、放っておけば他の善良なプレイヤーを襲うかもしれない以上ここで倒しておくべきだろう。

「ヨウスケ!」

キャルが魔法で炎の弾を撃ち込むと、二人は一歩飛びのいて仕切り直す。
スパナを構える陽介の左右に並ぶように沙耶香とキャルが合流する。

「あいつは?」

「バイク仕舞って戻ろうとしたら上から襲って来たんだ。
話しかけても何も返事しないし、沙耶香ちゃんの言ってた白兜の仮面ライダーと同類じゃなきゃNPCだと思う」

黒い戦士は手にしたビーム銃、バードブラスターをホルスターにしまうと、見得を切る代わりか翼を広げる鳥を思わせる様なポーズを決める。
この戦士の名前はブラックコンドル。
このバトルロワイヤル参加者であるソウジや空蝉丸、ギラたちの先輩にあたる鳥人戦隊ジェットマンの一員。
裏次元より襲来した次元戦団バイラムから地球を守り、その命を散らした名誉と栄光ある戦士である。
しかし今回変身アイテムだけを奪われたタイムレンジャーやドンブラザーズと同様に羂索らの手でこの真贋入り混じるバトルロワイヤルの舞台装置として組み込まれてしまっている。

「……ッ!」

近接装備のブリンガーソードを引き抜くと三人に斬りかかってきた。
散会した三人はまず後衛のキャルを守る様に陽介がガードに入り、ブラックコンドルとの直接戦闘は沙耶香と召喚したジライヤで行うフォーメーションを組む。
能力構成がスピード寄りな二人で前衛を張るのは若干不安に思うかもしれないが、キャルは敵の物理・魔法防御を同時に下げる魔法を使え、本人の攻撃力も高いのでさほど問題にならない。
いざとなったら得意の範囲攻撃もジライヤはシンプルにひっこめればいいし、沙耶香は持ち前のスピードでさっさと安全圏に離脱できるので使える。
問題はブラックコンドルの機動性が沙耶香とジライヤを上回っている事だ。

「あいつ飛べるの!?」

「だから一人じゃ苦労したんだ!
イチローかイザークが居てくれたら有利に戦えたんだけど……」

「イザークのへリコは継ぎ接ぎにぶっ殺されたしイチローはサヤカが厚着させてたのぶっ壊してるからどっちみち無理よ!」

くるりくるりと縦横無尽に空を飛び、キャルの魔弾やジライヤの風の刃を潜り抜けるブラックコンドル。
時折急降下しながら一閃、二閃と沙耶香やジライヤにブリンガーソードの刃を振るう。
鳥や蟲など飛行可能な動物に似た姿をとる荒魂との交戦経験もあるので対抗出来ているが、その動きにどうにも切れがない、というより何かが気になって精彩を欠いているようである。

(右、左、回り込んで左背後、また上昇して右、左……これって!)

洗脳され、心の在り様が可奈美たちを強襲した頃に近くなっていた先の戦いでイチローに指摘されたのと同じだ。
ブラックコンドルの動きは全くそのままなぞっているという訳ではないが、明確にパターンがある。

(……嫌だ)


435 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:50:25 .GDcePgc0
どれも的確にトドメに繋げるための技。
闘いに対する何の熱も感じない作業じみた技の数々。
それを繰り出す戦士からは生気を感じない。
中身が空っぽの人形。
それも誰かの戦う姿だけが独り歩きした殺戮装置(キラーマシン)。
洗脳される直前に対峙した、死体人形と化した衛藤可奈美と同じ姿と技だけのナニカ。

「サヤカ!一旦下がんなさい!」

「態々そいつの土俵で戦うことないって!」

キャルの魔法の派手な爆発と、次いで飛び掛かったジライヤの連続攻撃をくらい、地面と再会を果たすブラックコンドル。
しかしただでやられはせず、素早くホルスターから抜いたバードブラスターを連射して追撃をさせなかった。

「そこらのNPCなんかよりは強いわね」

「でもこっちは三人だ。
勝てない戦いじゃねえ!」

そう言って今度は自分もと前に出ようとした陽介を遮る様に鈍い銀色の刃が待ったをかける。
沙耶香の妙法村正だ。

「沙耶香ちゃん?」

「あの人は、私が斬る」

「あんたねぇ、態々数の利を捨ててどうすんのよ?
よっぽど雑な攻めしなかったら確実に勝てるわよ?」

「ここでこの人も止められないようじゃ、可奈美もきっと止められない」

そう言って妙法村正を構える沙耶香の背中にキャルは溜息を吐く。

「理由は良く分かんないけど、腹決めたって訳ね。
分かった。
けどヤバくなったら何言われても水入りさせてもらうわ」

「いやいいのかよ?
まあ、俺もあんま自分と似たような後悔して欲しくないけどさ」

「……ありがとう」

バードブラスターを放ちながら接近してくるブラックコンドル。
沙耶香は光弾を避けながら急接近し、当てずらくさせることで対応した。
銃を仕舞ったブラックコンドルはブリンガーソードを振るうが、加速して躱される。
そのまま剣対剣の戦いとなった。
一閃、二閃。
数多の次元獣や死してなお宇宙帝国ザンギャックの尖兵たち相手に猛威を振るったバードナイト特殊鋼の刃とはるか古より人界を荒魂から守るために振るわれてきた神薙の刃が火花を散らす。
一撃でも喰らえば肉を斬り、骨を断つ斬撃の応酬は両者一歩も引かずに斬り合う。

単純な腕力ではブラックコンドルが上だ。
流石に刀使でもトン単位の膂力を出せる物はそうは居ない上に沙耶香は何度も言う様にスピード型。
だが衛藤可奈美みたいに何度か打ち合ったらその技を実戦レベルで模倣出来る、なんてほどではないが、決まりきったワンパターンの動きと分かっていればそれを見切るのに大した時間はかからない。

(そこ!)

横凪の斬撃を下から絡め取って崩したところで背中に一閃。
こちらを振り向こうとする間に腰のホルスターを斬り落としバードブラスターは使わせない。
そして振り向き切ったところを袈裟斬りにもう一閃。
膝をついた次の瞬間にはさらに加速した沙耶香の怒涛の連撃がブラックコンドルに襲い掛かった。
派手な火花を散らし金色の光を発してブラックコンドルの姿は霧散してしまった。

「魂さえ持たない剣に、敗けるわけにはいかない」


436 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:51:23 .GDcePgc0
本来の変身者である結城凱や、かつてその力を使って戦ったゴーカイグリーン/ドン・ドッゴイヤー相手ならばまた話は違っただろうが、今回はイチローのような明確な意思を持つわけでもない中身のない人形相手。
しかも可奈美の時のように情の尻尾が邪魔をするわけでもないのなら負ける可能性はあっても勝てない理由はなかった。

「やったな沙耶香ちゃん!本当に一人で倒しちまった!」

「もう完全に本調子って感じね」

駆け寄ったきた二人に振り向き、無意識だろうが少しだけはにかむ沙耶香。

「うん……ありがとう。私の我儘に付き合ってくれて」

「魔物やデカい虫を嬉々として料理しようとか言い出す連中にくらべたら大したことないわよ」

「ま、魔物に……」

「デカい虫ぃ!?」

「味は意外と平気よ。
ヒトとして大切ななにかを食べる度に失って行ったような気はするけど」

と、遠い眼をするキャル。
その様子に思わず顔を見合わせる沙耶香と陽介。

「ってあれ?今沙耶香ちゃんが倒した黒いのどこ行っちまったんだ?
NPCモンスターって、倒してもその、死体とか残骸ってのこるよな?
少なくとも俺とスパナで倒した連中はそうだったと思うんだけど……」

「確かに、イチローもNPCの残骸から造ったって言ってたし、おかしいわね」

今回ブラックコンドルは跡形もなく消えてしまった。
彼が居た場所を検めてみると、何か手のひらサイズの物が落ちていた。
拾い上げると彼の姿を模した人形のような物が落ちている。

「何んだそれ?」

「もしかして、こいつがなんかの魔導具だか魔法だかで一人歩きさせられてたのかしら?」

試しに少し触ってみると、両手を上げて下半身を折り畳むと鍵の形になった。
このアイテムの名前はレンジャーキー。
スーパー戦隊たちの戦う力とその姿が元持ち主から分離し、形を成した物で、これがここにあるという事は何らかの手段で羂索たちは少なくともブラックコンドルのクロスチェンジャーを確保し、ゴーカイブルーことジョー・ギブケンがブンブルーのブンブンチャンジャ―からブンブルーレンジャーキーを生成したようにこれを生成したということになる。
タイムピンクやドンモモタロウの変身アイテムも確保し支給品として配っているので別にこれを羂索たちが持っていてもおかしくはないが、プレイヤーとして招かれたキョウリュウジャーやキングオージャ―、それにアイテムを奪われているタイムレンジャーやドンブラザーズ以外の戦隊のアイテムや能力も奪われていると考えると、実はかなり不味い事態なのかもしれない。

「その人形鍵、なんかに使えないかしら?」

「それって、例えばイチローみたいに味方に出来たりってことか?」

「駄目だよ」

「サヤカ?」

「これ以上利用したら可哀そう。
陽介はヴァルバラドがイザークじゃなくてリモコンか何かで操られていたら、許せる?」

「それは……」

イザークはスパナの仇と命懸けの戦いに挑んだ末に右腕と共に鉄鋼に必要なレプリケミーを失ったから、彼が生き残るために、そしてスパナの想いを穢すこともないだろうと思ったからカードも武器も託したのだ。
だがもし羂索たちに変身能力だけを実体化させて使役する形でヴァルバラドが利用されたら、スパナ本人が異形にされて無差別に人を襲わされたのと同じようなことになる思うと……怒りが一蹴して頭の芯が冷える感触すらある。

「……絶対に許しちゃおけない」

「分かったわ。
サヤカ、その鍵はあんたが持ってなさい。
もうケンジャクみたいな連中に奪われるんじゃないわよ」

「うん」


437 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:51:46 .GDcePgc0
「さて、これからどうする?
もう十時半……放送が五時十五分の六時間後だからあと一時間もないけど、進む?
それともちょっと早いけど昼ごはんでも食べながら放送を待つ?」

「飯かぁ、今までいろいろありすぎて忘れてたけど俺実質朝飯抜いてんだよな……」

「あたしも食べ物配られてたけどホッパー1に勝手に食われたから結局さっきジュース飲んだぐらいね」

思い返せば沙耶香もさっきのオレンジジュース以外は最初の二時間でロロにロシア紅茶を淹れてもらったぐらいである。
さっきの戦いもあるし、休んでもいいような気もする。

「ライナー!」

と、考えているとキャルのポケットからスチームライナーが飛び出してきた。
そしてその身をカードごと眩く発光させると、ホッパー1がクロスホッパーに変身したように自分自身をレベルナンバー10に再錬成し、テンライナーとなった。

「テンライナー!」

「へぇ、あんたも出来たのね」

「もしかして、自分なら時間までにロロたちの所に行けるって言いたいのか?」

「お願い、できる?」

「ライナー!」

「ま、休むのはあんたの中でもできるし、丁度良いかしら」

そう言ってキャルはケミーライザーにテンライナーをセットし、その力を解放する。

<ケミーライズ!テンライナー!>

出現したその名の通り十両編成の生きた列車に搭乗した三人は流れゆく冬景色を見ながらようやく一息つくことができた。
向かう先にロロとタギツヒメは留まっているだろうか?
それだけを不安に思いながら沙耶香は最硬のケミーの車体に揺られた。

【ジュール隊キャル班】
【エリアC-12/市街地/9月2日午前10時30分】
【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:健康、テンライナーに搭乗
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り三画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード、ホットライン
   ライドケミーカード(ホッパー1、スチームライナー、スケボーズ、アッパレブシドー)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
  あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザーク、クルミ、イチロー、無事でいなさいよ
03:ヨウスケ、サヤカと一緒にロロに会いに行く。
04:今度継ぎ接ぎ(真人)に会ったらイザークの右手の礼もサヤカの乙女心を傷付けたツケも全部払ってもらうわ
05:今回の件でサヤカが恋愛にビビりすぎちゃわないかが心配。
  本当の恋って、すごくいい物なのよ。
06:シェフィ、無事でいなさいよ
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などにに関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※スチームライナーはテンライナーへの再錬成、テンライナーからスチームライナーへの再錬成は自在に行えますが、ケミーライズにより大型状態で召喚され、プレイヤーを運搬した場合、使用後三時間使えなくなります。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。


438 : 糸見沙耶香:オリジン ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:52:05 .GDcePgc0
【花村陽介@ペルソナ4】
状態:疲労(中)、背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(中)、精神疲労(大)、テンライナーに搭乗
服装:八十神高校制服・冬
装備:熟練スパナ@ペルソナ4
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1
思考
基本:殺し合いはしない
01:何なんだあのヤベー(ザギ)のは。
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
   けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:キャル、沙耶香ちゃんと一緒にロロってやつを探す。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ロロってやつと話がまとまると良いんだけどな
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:つかなんでペルソナ使えるんだ? テレビの中じゃねえのに。
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行ってません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊と情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されてます。

【糸見沙耶香@刀使ノ巫女】
状態:肉体的疲労(中)、精神的疲労(大)、真人への嫌悪(大)
   可奈美の死に動揺、ロロやイザークたちへの罪悪感(大)、テンライナーに搭乗
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、真人のランダムアイテム×1、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
00:私、なんてことを……。
01:ロロがどんなつもりでこのカードのことを隠していたか分からないし、聞きたい。
  でも、操られて斬りかかったことは謝りたい。
02:可奈美は……私が止める。
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。
  でも…あの悲しむ様は……。
04:あの継ぎ接ぎの人、すごい嫌だ。
05:ロロのこと、多分羨ましい。タギツヒメのことも…きっと…。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:私が…可奈美や舞衣、十条姫和達と一緒に……?それに薫って人とも……?
08:恋とかはまだよくわからないけど、ありがとう、キャル。
09:大丈夫、もう利用させないよ
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロから少しだけコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※ジュール隊のメンバーからコズミックイラ、アストルム、東西南北(仮)、自称特別捜査隊などの情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を脱しました。



【NPCモンスター紹介】
・ブラックコンドル@海賊戦隊ゴーカイジャー
…鳥人戦隊ジェットマンのメンバーであるブラックコンドルの変身能力の結晶であるレンジャーキーが実体化した戦士。
意志も自我も持たず、当ロワの運営の意のままに操られており自立行動はするが自由意志はない。
倒されるとレンジャーキーに戻ってしまう。
……つまり羂索たち運営は当ロワを妨害する可能性の高い歴代スーパー戦隊の多くからレンジャーキーを奪っている可能性がある。

【ドロップアイテム解説】
・サイドバッシャー@仮面ライダー555
…仮面ライダーカイザの為に開発された可変型スーパーバイク。
その名の通りサイドカーの突いたビークルモードとバトルモードの二種類の姿を持ち、前者では360kmの最高速度を誇り、後者ではサイドカーが脚部、前輪と後輪が腕に変形しフォトンバルカンと六連装ミサイル砲による超火力を誇る。
右腕の鋏と見た目に反した機動性能で格闘戦までこなせるが、元がバイクである都合上操縦席がむき出しなので上を取られると弱い。
オートバジンよりは量産性が高いのか、ライオトルーパーが乗っていることもある。

・ブラックコンドルのレンジャーキー
…鳥人戦隊ジェットマンの一員、ブラックコンドルの戦士としての力の結晶。
これを使えば適性のない者でもブラックコンドルに変身できる。
また、ラッパラッターなどのアイテムを使うことで実体化させて使役させることもできる。
余談だが、レンジャーキーを実体化させるためのアイテムであるラッパラッターがプレイヤーに支給され、KMFやMSの起動鍵にも対応している辺り、クルーゼや茅場はレンジャーキーを参考に起動鍵を開発したのだろうか?


439 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/01/23(木) 20:52:25 .GDcePgc0
投下終了です


440 : ◆ytUSxp038U :2025/01/25(土) 00:11:42 OQO1b1Q.0
ギラ・ハスティー、ユフィリア・マゼンタ、朝比奈まふゆ、聖園ミカ、柊篝、花菱はるか、横山千佳、小宮果穂、チェイスを予約します


441 : ◆ytUSxp038U :2025/01/26(日) 22:46:28 Con8eKm20
>>440に枢木スザクを追加し延長します


442 : ◆kLJfcedqlU :2025/01/28(火) 00:07:03 QtNWuaBs0
一ノ瀬宝太郎、華鳥蘭子、遊城十代(覇王)、天川薫子、邪樹右龍、ザギ、鬼方カヨコ、セレブロ
予約して同時に延長します


443 : ◆ytUSxp038U :2025/02/02(日) 23:52:06 DRKqEqEI0
>>440の予約にパラド、仮面ライダーゼイン、ドゴルドを追加します


444 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/03(月) 23:59:25 6o8zVAvg0
ギリギリになりましたが投下します。


445 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:00:49 vWqWi8vM0
死神代行の亡骸のみが遺るエリアA-12を後にし、シビトへと身を堕とした刀使・衛藤可奈美は西へと進む。
己を蘇らせた主である大道克己とは離れる方向へと進んでいるが、これは蘇らされたとはいえ主の位置を把握出来ている訳では無いが為であった。ちなみにだが、克己側からもシビトの位置は把握出来ないようになっているようだ。
ともかくそんな事を知る由もなくシビトの可奈美に目掛けて襲いかかるは、MSやKMF等の機械系や、刀使等の人間系のNPC達。

人類軍がかつて運用していた灰色のファフナー、メガセリオン・モデルがライフルから放つプラズマ弾に、呪術組織である帝ノ鬼に所属する第一渋谷高校の生徒が、弓型の鬼呪装備から放つ雀蜂の弾丸。またロンダーズファミリーの戦闘員であり、ジャンクパーツから作られたアンドロイドなゼニットが物量を活かしてマシンガンにも出来る剣で弾丸を放った。
弾幕がシビトの可奈美目掛けて飛び交うも…迅移を使えば回避には造作もない。
そのまま二刀流によりゼニット達をあっという間にジャンクパーツへ逆戻りにさせてしまった。
それでも引き続き雀蜂の弾丸を放つ第一渋谷高校の生徒に、今度はガルム44による射撃を行ったメガセリオン・モデル。
だがこれらもあっさりと避けた上で可奈美は、メガセリオン・モデル目掛けて【生生流転】を繰り出し装甲にダメージを与え、間髪入れずに迅移で段階を上げて加速。自分に対して氷竜と化したキラ・ヤマトがやったように突き上げて、これを残骸へと変えた。
その勢いのまま彼女は第一渋谷高校の生徒の懐へ入り込み、四肢をあっという間にバラバラに。その上で遺った胴体の心臓部分へ剣を突き刺して、トドメを刺した。

このように二刀を以てNPC達を捌き無表情のまま鏖殺し、スクラップと血溜まりと人間系や魔物等の類のNPC"だった"肉塊をその場に遺して、ドロップしたアイテムやソードスキル手に入れ、スキルを習得した上で衛藤可奈美は移動していく。
…もし他参加者がこの様を目撃したとして、元参加者現死体人形がこの惨状を創り出したという答えに、何の情報もなく辿り着ける者はまず居ないだろう。

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時間は少し遡り、また視点の人物…人物?も移る。黒崎一護に月牙天衝で墜落させられた後、レジスター確保の為他参加者を探す事を決めたアスラン・ザラ?だったが、運が良いのか悪いのか遭遇したのはNPCのみ。
こちらを攻撃してくるのとドロップアイテム目当てで、レジェンドガンダムの起動鍵を用いて撃破していったものの…こちらも期待外れに終わり、疲労ばかりが蓄積されつつあった。疲れのせいなのか、心なしか面構えもハゲ疑惑が出そうな有様だ。

「このドロップアイテムの出なさはなんだシン!!!!この塩野郎!!!!」

などとこの殺し合いに居ない相手にキレ散らかすクソコテアスランザラモドキ。とはいえ暴言を吐いて落ち着いたのか、ここに来て今の今まで本物の自分とシン・アスカが居るか否かの確認だけした直後、タギツヒメと一護の襲撃を行った為に忘れ去っていた名簿を見ることとした。


446 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:01:30 vWqWi8vM0
「キラが2人だと!?!?!?!?どちらかがミームなんだ、俺と同じ…!!
…直接会った昔のキラがそうとは考えにくい、さては准将の方か?新たなる剣と称してファクトリーからおかしな機体ばかりを提案されて傲慢呼ばわりされてシンが廃人と化しているのは専ら准将になってからのキラ…いや変な機体をラクスに渡されるのはその前だった!!

だがそもそもミームなのか!?!?単純に過去と未来、それか並行世界かも知れないというのに!!クソッデュランダル議長や羂索達は俺を混乱させてる内にNPCを用いて暗殺しようとしている!!!!
ビームライフル、とくと味わえ!!バカヤロウ!!レイは本編で言ってないぞこんな台詞!!!!」

喧しくヒートアップしながらレジェンドガンダムの起動鍵を用いて無関係なデュランダル議長に冤罪をかけつつも、現れたNPCである地球連合軍の非正規特殊部隊ファントムペインにて主力MSとして運用されていた105スローターダガーを、こともなげに高エネルギービームライフルで撃ち抜き斃したアスラン・ヅラ。
襲撃もあって落ち着きを取り戻したのもあり、名簿の確認へと戻る。

「ラクスにディアッカにイザーク……それにニコル!?ニコルゥゥゥゥゥゥッ!!!!
…死ぬ前から連れてこられたのか、それとも何度も何度も回想で殺されたからミーム化したのか…だがどちらにせよ、俺の願いを叶える為には討つしかない…ないんだ…!!」

険しい顔を浮かべながら確認中、ニコルの名前を見て突如泣き叫ぶも、スンと素面に戻ったかと思えばまたもや険しく、覚悟を定め絞り出すように言い出す情緒不安定極まったヅラ疑惑の男。
とはいえ何度目かの落ち着きを得た彼は引き続き名簿の確認を行う。

「…SEED絡みの知り合いはこれだけか。殺し合いの促進を円滑にしたいならレイやアッシュ・グレイやマーレ、アズラエルにジョエルやブーステッドマンにエクステンデッド達、父(パトリック・ザラ)やジブリール、それにオルフェや使えないシュラ、グリフィン達アコード辺りを参加させそうな物だが…デュランダル議長は何を考えてるんだ!?!?!?
大体、わざわざキラァァァァ!!!!を2人呼んでいるのならついでに拗らせてた頃のカナードでも呼べば嬉々としてキィィラァァ!!!!を殺しに行った筈だ!!
……それに万全を期したいなら梔子ユメのようにクルーゼ隊長自身も参加者になっていてもおかしくないだろうに。

…いや待てよ、その分俺の知らない殺し合いに乗り気な連中を大量に投入していると見れるぞ!!だが俺が会ったのはキラァァァァ!!に篝、それにアウル野郎こと一護にタギツ野郎とあの鎧武者(仮面ライダー斬月)に変身していた男(ロロ・ランペルージ)以外は対主催ばかりだ…っ!!あの男の顔は見たが名前が分からない!!
しかもあのソルなのかアグニスなのかハインラインなのか似た声ばかりでややこしいルルーシュ野郎はスタンスがわからないじゃないか!!放送してたのは把握出来ても!!あの状況でどう内容を聞き取れと言うんだバカヤロウ!!!!」

ミーム故に本物のアスラン・ザラが知り得ないガンダムSEEDやASTRAY等の派生作品絡みのメタな知識を元にして、躁鬱っぷりを発揮しまた聞き取れなかったのは自分が一護やタギツヒメを襲ったせいなのを棚上げしながら考察するアスラン。そしてふと名簿へと目を戻しざっと一瞥、記憶に留まったのは6つの名。


447 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:02:29 vWqWi8vM0
「『真』人に『真』鍋、『真』昼にレン、ジンガにエンシン……俺は何をやっていたんだろう!!6人もシン野郎がいるじゃないか!!!!
『真』はシンと読める!!レンはシンと語感が似ている!!ジンは実質シンだこのZ.A.F.TのMS野郎!!そしてエン『シン』!!!!
つまり全員シン野郎!!シン野郎は全員殴る!!そしてステラの所へ行ってもらうぞ!!向こうでステラによろしくな!!!!」

スローターダガー撃破時に続いてSEED関連のミームだからと他人の台詞(しかも本編では言ってない)をパクりながら、意味不明な理屈の言いがかりをつけ事実上の抹殺宣言を行う錯乱したハゲ(疑惑)。
ざっと一瞥しただけでこれな以上、名簿を見直したり他参加者と対峙すればシン野郎認定は更に増える恐れがある。

最も6人の内真鍋とエンシンは放送前にとっくにステラの所(あの世)へ行ってるのだが、それを知った所でこのハゲはシン野郎呼ばわりを辞めないだろう。
「こんの馬鹿野郎!!!!殴ってもない内に勝手に死ぬなシン!!!!上手い!!!!」「シン!!!!でしまうとは何事だこのシン!!!!野郎!!!!」等と自己完結した意味不明かつ上手くもなんともない事を言い出すのが、ミームとしてのアスラン・ザラがクソコテ呼ばわりされる要因の一つだ。
それはそうとアスラン(偽)は、もうひとつある事に気付いた。…キラ以外にも同じ名前が複数ある参加者が居ることでは無い。
過去と未来か並行世界か、或いは自分と本物のアスラン・ザラのような贋作(ミーム)と本物(オリジナル)の存在の内どれかなのは大凡想像がついていた。

「今の日付と時刻が9月2日だと!?!?俺の記憶は8月22日までしかないぞ!?!?どういう事だシン!!!!議長は俺を時差ボケにしようとしている!!!!俺はボケじゃない!!!!」

ここに来てようやく、ミームとしての自らの記憶がある最新の日付と現在の日付のズレを把握したのだ。自分の記憶と殺し合いの開始日時との間の空白の11日間に何があったのかと混乱し喚き自分の言葉に自分でキレる厄介っぷりを発揮するアスラン(ミーム)。
暫しキレ散らかした後、またもや急に落ち着き思考を再開させた。

「8月22日の時点から俺を呼んだというだけの可能性も捨て切れない、か……。
…願いを叶える段階まで進めれればの話だが、その際に聞いておくべきだな。
そうと決まれば…参加者が居そうな付近のアビドス高校に向かうとしよう」

まるで本物のアスランかのように落ち着いた思考・声色でパチモンのアスランはアビドス高校に向かう。そしてNPCを追加で数体屠りつつ到着した…はいいものの、内部の探索や他参加者の捜索をしようとした段階で疲労のせいでオ、オレヴァ…と寝落ち。目覚めたらもう時刻は8時を過ぎていた。

「この寝落ちヤロウ!!だが眠気はやがて俺を肝心な所で殺す!!だから仕方ないじゃないか!!!!」

等と喚きながらも、急いで捜索を行うアスラン(ニセ)。しかしめぼしきものも他参加者も見つけれず、結局は高校を後にする事となった。
最も、急いで捜索したのもあり何かがあったとしても見逃している可能性は普通にあるし、誰かと入れ違いになっている可能性もあったが。


448 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:03:35 vWqWi8vM0
「名簿に『アスラン・ザラ?』等と書かれた以上、否が応でも他の参加者の注目を集めてるだろう。その上キラや篝、タギツ野郎経由で俺の存在と殺し合いに乗っている事は広まっている筈だ!!!!
これ以上広まる前にレジスターの確保と本物の俺の抹殺の為!!参加者が集まりそうな病院へ発進する!!アスラン・ザラ、レジェンド、出る!!!!」

懸念を理由に病院方面へと出発したアスラン・ザラのようなナニカ。
実際、タギツヒメから沙耶香とロロ、キラと篝からミカにミームアスランの存在は確実に伝わっている上に、時系列上先の話になるが沙耶香は真人やイザーク達と情報交換(前者はほぼ一方的に抜き取られる形だったが)を行い、また篝とミカはチェイス達と合流した為まともに情報交換が行われれば彼らにも伝わる以上、この懸念は的中していたと言えるだろう。

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一方時間はまたも遡り視点も変わる。
ケーキを食べ終え空腹を満たした柊真昼は、フォークとナイフを洗った後予定通りドロップしたアイテムであるどこだかドアを使う…前に仮面ライダーソロモンへと変身した。

「どこに着くかわからない以上、一応変身しておいた方がよさそうね。不用意に移動アイテムを使ったせいで死にました、なんて笑えないもの」

空中や海中、水中や地中等に飛ばされれば、人間の域を超えている真昼でも生身のままでは良くて大ダメージ、悪ければそのまま死亡しかねない。変身する猶予が在ればいいが、無ければ最悪詰みである。その為変身した上で…真昼はドアを使う。

「…へえ、随分なご挨拶じゃない」

ソロモンとなった真昼がドアを開けた先は水中でも空中でも地中でもなかった。しかしその場に居たのはNPC、神聖ブリタニア帝国が計画したランスロット量産計画「ヴィンセントプラン」にて造られたKMF、ヴィンセント。
真昼の姿を目にしたヴィンセントは強化型スラッシュハーケンを放ち迎撃。だがこれを真昼は取り出したカラドボルグでこともなげに切り払う。
そのままノ夜を振りかぶった所、ヴィンセントは咄嗟に片肘のニードルブレイザーで相殺しにかかった。

「NPCの思考ルーチン…と言うのかしら。種類によってかなり差があるよう、だけど…!」

だがノ夜から放てる斬撃波をゼロ距離から撃つ事で、真昼はこれを突破。肘から先を破壊してみせる。
片腕が実質機能不全となったヴィンセントだが、MSVこと連結型メーザーバイブレーションソードをもう片手で持ち、破損故に連結出来ないまま振った。

「…さっきのNPC達に比べたら全然ね、これでもし、ソロモンへの変身制限でもあれば危なかった所だけど…」

だがあっさり鎧袖一触され、ノ夜とカラドボルグの二振りの一撃でヴィンセントは機能を停止し鉄クズとなった。
先程のフェストゥムを筆頭とした厄介気味だったNPC軍団を想起しつつ、変身自体への制限が無い事に若干だが安堵を浮かべ解除を行う真昼。
生身のままでも倒せはしたが、消耗疲労もありここまでの完勝は難しかったかもしれないだろうが為である。

「とりあえずは、他の参加者を探して…今度は最初から襲撃はせず、まずは話しかけに行ってみようかしら。薫ちゃんの知り合いも居るかもだし」

先程浮かんだ、薫が芳佳を殺してしまった事を告げたら彼女の知り合い達はどう反応するのかという考えを元に、ドアをしまいつつひとまず真昼は行動を開始した。

(それにしても、『柊』な篝ちゃんの比較的近くに『十条』な姫和ちゃんが居るなんて。
…名簿の順番からして私の知るそれとは違いそうだけど、妙な偶然もあったものね)

そういえば自分の知る柊家の分家の内一つが十条家だったなと、思い返しながらも真昼は進む。


449 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:04:39 vWqWi8vM0
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時は戻りまた視点も移ろう。
キョウリュウグリーンこと立風館ソウジと、キズナブラックこと浅垣灯悟(バッドエンド)(最も彼の名が浅垣灯悟だと知る参加者は現時点だとイドラ以外には居ないが)の2人と別れた刀使・柳瀬舞衣と魔戒騎士・道外流牙…人ならざる者から人々を守る使命を持つも似て非なる存在な2人は北へと向かった…ものの、NPC達の対処へと追われていた。

「舞衣、そっちは大丈夫か」
「はい、何とか捌けそうです。道外さんも…大丈夫そうですね」

こともなげに御刀・越前康継を振るってNPC達を倒していく舞衣と、素手での徒手空拳とイグスの魔戒剣による剣戟を以てNPCを倒す流牙。
舞衣と比べると戦闘経験の多さと一時とは言え使った事がある物というのもあり、流牙の方が剣捌きは慣れた様子であった。

『舞衣、流牙、新手のようです』
「ありがとうイルヴァ。…これは…」
「…結界のような物か、これまでより敵の数は少ないが、全て倒さなければ解除出来ない…と考えるべきだな」
『無理に破壊しようと試みるよりはまず、目前の敵を一掃した方がいいでしょう』

雷とクリスタルが展開される中、2人の前に現れるは仮面ライダー部にて運用された可変型のパワードワーカーであるパワーダイザー、元特攻用の兵器を改修したMSであるガガキャノン、天使の名を冠したMAの子機であるプルーマ。3機の機械だった。
魔導輪イルヴァの忠告に従い、2人は戦闘態勢を取る。

先に仕掛けてきたのはパワーダイザー、タックルを流牙と舞衣目掛けて放つ。同時にガガキャノンはGNキャノンを発射しプルーマは内蔵されたレールガンを放った。

「…まるで人が乗ってるみたいな、動きを…!」
「それも含めて、あの羂索は再現したんだろうな」

タックルを散開し避けた上でGNキャノンとレールガンを回避した舞衣と流牙。タックルを放ったパワーダイザーがキラーンと効果音がなりそうな仕草をした事に反応しつつも、流牙はガガキャノン相手に斬りかかり舞衣はプルーマを斬らんとする。遠距離攻撃を使ってきた2体を先に倒すと2人は決めていた。

越前康継を振るった舞衣に対しプルーマはドリルを以て迎撃。
金属同士がぶつかり合う音と、ドリルの回転音が響くも…御刀は基本的に破損しない強度を持っているが為、プルーマの目論見通りに破砕は出来ず、八幡力による筋力増強と、本来のサイズより縮められている事もあり押し潰すことも出来ずにいた。

「このくらいなら…これでっ!」

埒が明かずドリルを放したと同時にレールガンを撃とうとするプルーマだったが、それを読んでいた舞衣は迅移で加速、撃たれる前に数撃入れて、発射されたそれも回避。そのまま更に何撃も入れる事で見事にスクラップへと変えてみせた。ドロップアイテムを見逃さず舞衣は拾う。

『お見事です、舞衣』
「あの武器(ドリル)は写シとの相性が悪そうだったから、長期戦に持ち込んだら危うそうだって思って…道外さんは?」
『…流牙もどうやらあの敵を倒したようです、残るは…』

詳細を確認する前に流牙の方へ視界を向けると、ガガキャノンのGNバルカンとGNキャノンをこともなげに避けた上で、斬撃に徒手空拳を交えた一挙一動の攻撃で危なげなく倒した姿が映った。
残る一体であるパワーダイザーはまたもやタックルを行うも、クリスタルに覆われていて逃げ場が狭くなり、ダイザー自体の動きも遅くはないとはいえ、2人には避けられる。その上で流牙は剣を振るう、が……。

「…手応えはあったが…っ…怯みはしないか」
(人が乗ってるみたいな動きで、道外さんは乗ってそうな所を攻撃したのに…)

怯む様子は無く、キラーンとポーズを決めた上でまたもやタックルを見舞おうとするパワーダイザー。
出典元のサモンライド!では常時スーパーアーマーであるが為この殺し合いでも同じ仕様となっていた。
流牙が回避に動く中今度は舞衣が、居合の態勢を取った上でタックルし終えてポーズを決めているダイザー目掛けて一撃を見舞う。


450 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:07:21 vWqWi8vM0
「えっ!?…なんで蒼い、炎が…??」
『おそらく先程、あの機械からドロップしたアイテムの効果だと思われます』

刀身に付与された蒼炎に驚きつつも、一撃をきちんと与えた舞衣。蒼炎の由来もあってなのか、相応のダメージは入ったもののスーパーアーマー故にダイザーは止まらず、方向を転換しタックルを行おうとする。しかしそれよりも早く動いたのは回避に成功した流牙。

「光を受けて…闇に還れぇっ!!」

斬撃波のように金色の光を魔戒剣から放ち、拘束した上で横に一閃する閃光剣舞を放つ事で、パワーダイザーを沈黙させた。

「そっちも片付いたようだな、舞衣。…それはドロップアイテムか?」
「はい、そうみたいです道外さん。デザイアドライバーという物が無ければ、真の力は発揮出来ないらしいですが…このブーストマークⅢバックルという物を持ってるだけでも、蒼い炎が攻撃に付属されるみたいで」
『恐らくはソードスキルとして、そのバックルに蒼炎の付与効果が内蔵されているのだと思われます』
「説明書も付属してましたけど、イルヴァの言う通りみたいで。…後炎は創世の力?って物が由来らしいです、道外さんは聞いたことはありますか?」
「…いや、聞き覚えが無いな」

等と会話をする2人とイルヴァ。その中で流牙は何処か浮かない顔な舞衣に気付く。

「…キズナブラックの事が気にかかってるのか?」
「…はい。立風館さんが付いて居てくれてるとは言え……どうしても。
……あの人がどうしようもなく、深い哀しみと傷を抱えてるように見えて。…隠そうとして出来てない所が、この殺し合いに巻き込まれる前に視た、可奈美ちゃんみたいで……不安に」
「…君よりも強いんだろう?なら親友として、信じてあげるべきだ」
「…わかっています、ただ…可奈美ちゃんは哀しみとか、そういう負の感情を抱え込んで、無理しちゃうタイプの子だから……今も何処かで無理して、心の中で泣いてるか、泣きたいのに、何でもないように振る舞ってないかって」
「…ジンガに出会ってない事を願いたいな。…ともかく今は、早期に合流出来るか、ソウジ達が見つけてくれる事を信じて進むしかない」
「…はい」

この殺し合いに巻き込まれる前、無理に普段通り振る舞おうとした末に、自分の胸で涙を零した可奈美の姿を想起し舞衣は不安を浮かべた。
それに本当はもう少し寄り添うべきだとは思いつつも、時間制限が定められた殺し合いに巻き込まれている現状、今は一先ず進まなければならない事も理解している流牙。それも舞衣も分かっていて、共に進む。
…親友が、衛藤可奈美の『心』がもうここ(現世)には『いない』事を彼女が知るのは、まだ少し先の事だった。

そのまま病院方面へと進む中…1体のNPCが現れる。
小さな竜といった容貌の外宇宙生命体、ドラゴンの1体リトルドラグだ。

「…竜、ドラゴンか」
「道外さん、ここは私に任せて貰えませんか?蒼い炎について、試したい事があるので」
「…1体だけのようだから大丈夫だが…君が危なくなったら助けに入ろう。だから…無理にソードスキルを使おうとするな」
『流牙の言う通りです、舞衣。その力は極力、使うべきではありません』
「…わかってるよ、イルヴァ…道外さん」

相手が竜(ドラゴン)なのもあり、自らに支給されていたソードスキルの存在を想起する舞衣に、心配を向ける流牙とイルヴァ。
言葉を胸に留めながら、舞衣は蒼炎を御刀へと纏い斬りかかる。

(ごめん、エレンちゃん…でもこの殺し合いを、止めるまでは…!!)

仲間であり友である、唯一この場に巻き込まれていない筈の御刀の元の持ち主に内心謝りつつも、舞衣は躊躇わない。リトルドラグに太刀を数撃浴びせる事に成功する。
だが竜もやられっぱなしではなく、己が速度と牙を用いて噛みつきにかかった。


451 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:08:02 vWqWi8vM0
『舞衣!』
「やっぱり噛みつきに…なら!」

齧りつかれそうになる舞衣は蒼炎を纏ったままの御刀で、牙を受け止める。御刀が原則折れず錆びない刀であるが為、耐久性に賭けたのだ。
そのまま蒼炎が御刀から牙へと伝わり、リトルドラグを焼く。ダメージに反応を見せた竜に出来たその隙を突き、舞衣は迅移で加速した上で八幡力も併せた一撃を振るった。
…結果、斬られたダメージと創世の力による蒼き炎によって、外宇宙からの尖兵の竜は焼き尽くされる。
舞衣は見事、最後の手段になるソードスキルを切らずしてドラゴンへと勝利してみせた。

「俺の出る幕は無かったか。見事だな、舞衣」
『舞衣、流牙だけでなくソウジも言っていた通り、例のソードスキルは最後の手段だと考えておくように』
「…ありがとうございます、御刀の硬さなら出来ると思ったので…上手く行ってホッとしました。…うん、使わずに済んで…よかった」

使わざるを得ない時が来るかも知れないと思い、習得自体はしたものの…極力使いたくはないとこのソードスキルについて舞衣は思っていた。
流牙もイルヴァも別れたソウジも、彼女には極力ソードスキルを使わせたくないと考えている。使ってしまえば、彼女に待つ未来は何もできなくなった末に迎える血に塗れた凄惨な死か…さもなくは人という生命を超えた存在となるかの二択、どちらにせよ最早日常には戻れないのだから。

(…デメリットが重たすぎるのもそうだが、スキルに乗っ取られる可能性も捨て切れない。それもあって舞衣が使うような事態にならないよう、立ち回らないとな)

万一舞衣がスキルへと適合出来ても、強大な力に振り回された挙句…となる可能性を危惧する流牙。かつてのジンガやアミリ、ムツギ法師のように…慣れてしまった方が楽な事態に直面してしまい、非道の道へと堕ちてしまう…そんな事は絶対にさせてはならないと、彼は決めていた。
──最も、スキルに乗っ取られるかもしれないという危惧については杞憂なのだがそれを知る由もなく。

ともかく、先に進む事にした2人だが…刀使の技能の一つである透覚により聴覚を強化している舞衣に元々聴覚に優れている流牙は接近する大きめな敵の存在に気付き、迎撃態勢を取る。
すると2人の目前へと近付いて来たのは、先程戦ったパワーダイザーよりも大きなMS。その名の通り破壊する為の兵器であるデストロイガンダムの姿。本来よりサイズは縮み10m程に抑えられてるがそれでも等身大の参加者には大きく映った。

「…これだけ大きなNPC、それも機械が居るなんて…!」
『来ますよ、舞衣、流牙!』
「巨大な機械相手だろうと、やるしかないか!」

舞衣と流牙に目掛けてデストロイガンダムは、口部分に内蔵されたビーム砲である200mmエネルギー砲、ツォーンMk2を放った!


452 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:08:38 vWqWi8vM0
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「…なんて威力…!」
「直撃すると、生身じゃ不味いな…!」

着弾地点の地面に開いたクレーターを見て敵の火力に驚きを見せながらも、舞衣と流牙は接近。
写シを張り迅移と八幡力も併用して立ち回る舞衣と、鎧を召喚していれる時間が99.9秒しか無い以上今は召喚せず、素の身体能力でビーム等の射撃兵装を回避していく流牙。2人の斬撃がデストロイの装甲へとぶつかるも、PS装甲と同様、物理的な攻撃を無効もしくは軽減化させるTP装甲の前には伝わるは衝撃のみ。

続く形で蒼炎が付与された舞衣の御刀の一撃は、創世の力由来の炎であるが為ダメージにはなるも、図体の大きさもあってさしたるダメージにはまだ至らない。
反撃にデストロイは、バックパックの上部分に装備した高エネルギー砲である、アウフプラール・ドライツェーンを発射。強力なビームで地面を抉りつつ2人を焼き払わんとするが、避けられてしまった。

「一撃入れて避けてを繰り返しても、このままじゃ戦いにくくなるだけ…!」
「…持久戦は不利だな。舞衣の青い炎が効いた辺り、純粋な物理攻撃以外は通じるようだが…」
(通じそうなのは閃光剣舞、或いは閃影剣舞か…!)

両者とも回避は出来ているものの、地形を抉り取る威力の攻撃を連発されては戦いづらくなり余計に消耗、最終的にすり潰されるだけ。
そんな思考を浮かべつつ接近しにかかった2人に、デストロイは両腕を射出、付属しているシュトゥルムファウストによりビームの雨霰を放った。
回避や御刀、魔戒剣による切り払いで防ごうとする2人だったが、ドラグーン等と同じ無線誘導により発射角の自由度が高い為苦戦を強いられる。
威力こそ比較的低いが、それでも何撃も受ければ舞衣の写シが剥がされてしまう程だ。

『舞衣!』
「っ…まだ写シは張れます!道外さんは…」
「どうにか捌けてはいるが、ハガネを召喚すべきかもしれないな…!」

写シを剥がされてもすぐさま立て直した舞衣と、経験の差故に全て回避または魔戒剣での防御に成功しつつもここでハガネという手札を切るか考慮する流牙。
そんな中、飛行し迎撃を行い続けているシュトゥルムファウストの内片方目掛けて…突如現れた赤い鎧の飛行しているMSが突っ込み、リフター部分のビームライザーから発振させたサーベルにより切り裂いた。

『サイズは縮められているようだが、まさか羂索達がデストロイまで再現しているとはな。
…こちらは、ターミナル所属の機体ズゴック!あなたとそちらの少女は…』
「殺し合いには乗っていない、助かる…そうだ、舞衣の方は!」
『そっちにはライオットが向かった、彼の硬さならそのマイという子にとっても大いに助けになるだろう。
…デストロイは射撃武器やビームを無効化する陽電子リフレクターが厄介だが、懐に潜り込みTP装甲を突破できる攻撃を腹部にぶつければ倒せる筈だ』
「…分かった。閃光剣舞ならあの敵にも通る筈だ」
『なら俺は攻撃を引きつける、その隙にその閃光剣舞とやらを使ってくれ』

そう言い、ズゴックは囮役を買って出る。多数のビームやイーゲルシュテルンを回避し引きつけながら動くズゴックを横目で見つつ、流牙もそれに応え駆け出した。


453 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:13:46 vWqWi8vM0
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とりあえず病院へと向かおうとしていた本物のアスラン・ザラと切島鋭児郎の2人は、NPCを倒しドロップ品としてパイプ椅子を手に入れた上で付近まで近付いていたものの、聞こえてくる戦闘音とビームの発射音から一先ずそちらへと向かう事に決める。
すると縮小されてるとはいえ巨体を誇るデストロイガンダムが参加者らしき青年と少女目掛けて砲撃を行っていた為、直接の交戦経験こそ無くとも厄介さは把握していたアスランの意見もありとりあえず2人は加勢する事になった。

『ライオットはあの少女の方へ向かってくれ、俺はあの男の方へ向かう。
…あのデストロイはTP装甲を用いている、純粋な物理的ダメージは通じないと見てくれ』
「それ俺との相性最悪じゃないっすか!」
『攻撃面ではな。だがお前の硬さなら、あの手からのビーム(シュトゥルムファウスト)程度なら耐えれる筈だ。
それに今のお前には俺と同じく、ソードスキルがあるだろう?』
「…守って助け出す、って事っすか。うっす!今度は俺に任せてください、ズゴック!」

そう言い、切島もとい烈怒頼雄斗はズゴックもといアスランの背中から降りる。
頼雄斗が向かう先は、シュトゥルムファウストが狙い撃とうとし、少女が御刀で受けるか避けるかの二択を迫られている所。

『舞衣、上から誰かが来ます!』
「NPCなの?それとも…っ!」

ビームが放たれ、対応しようとする舞衣という状況の中、頼雄斗は先のやみのせんしとの戦いでは使う暇が無かったソードスキル、十条家の呪法を用い赤い光輪を頭の上に出現させ、身体能力を限界まで強化した事により自らの速度を向上。
弱点である機動性をある程度補いながら、舞衣の目前に立ち自らの個性『硬化』を使って、ビームをその身で受け止めてみせた。

「…あなたは…って、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ、これくらいなら今の俺なら耐えれる!ズゴックの言った通りだったぜ!
…っと、名乗ってなかったな。剛健ヒーロー、烈怒頼雄斗参上!殺し合いには反対だぜ、あっちの男の人の方にはズゴックが助けに入った!」
(…ヒーロー…ヒーロー好きな薫ちゃんなら、反応したのかな)
「道外さんの方にも…来てくれてるんだ。助けてくれてありがとうございます、えっと…ライオットさん。
私は柳瀬舞衣。美濃関学院の刀使です」
『ありがとうございます、頼雄斗』
「うお、指輪が喋った!?」
「彼女…でいいのかな。彼女はイルヴァって魔導輪で、今は私に力を貸してくれてます」
「…とりあえず了解!柳瀬、イルヴァ、あの腕に与えれる有効打って…あるか?」

驚きつつ心配する舞衣に、そう明るく言いつつ名乗った烈怒頼雄斗。
対し舞衣は礼を言いつつ名乗り返し、イルヴァに驚く頼雄斗に簡単に説明した。
受け入れた頼雄斗は、自分ではTP装甲とやらを突破出来るか怪しい為まずは舞衣とイルヴァへ有効打の有無を聞く。無いようなら連れて距離を取り、有るようならそれを通し腕を壊す為に尽力するつもりだ。

「えっと…物理攻撃だけじゃ、衝撃は与えられても効かないみたいです。でも…私にはこの力があるから、ビームを掻い潜れれば」
「…蒼い炎、って……!?…いや、刀にだけか、じゃあ俺の知ってる個性じゃねえや」
「個性?」
『頼雄斗、個性とはなんでしょうか?』
「二人共知らねえのか…じゃあズゴックみてえに違う世界の…今はそれどころじゃねえな、後でズゴックと一緒に話す!
…とにかく、その為の手段があるんだよな?なら防御は俺に任せとけ!柳瀬、イルヴァ!」
「…は、はいっ。任せます、ライオットさん!」

舞衣の蒼炎を見て、彼女が敵(ヴィラン)である荼毘の個性をソードスキルとして支給されたのではと一瞬考えるも勘違いだと気付いた頼雄斗。そして会話の中で自分とアスラン同様、舞衣とイルヴァが別の世界の存在だと悟った彼は壁役を引き受け、舞衣はそれを受け入れ迅移と八幡力を発動。
呪法による身体能力強化で動きつつ、ビームが着弾する直前に硬化を以て頼雄斗が受け止めてみせる中、加速した上で距離を詰め……蒼炎を付与した御刀の連撃で、腕毎シュトゥルムファウストを撃墜してみせた。


454 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:16:30 vWqWi8vM0
「やったな柳瀬!イルヴァ!」
「ライオットさんが受けてくれたおかげです」
『感謝します、頼雄斗。後は流牙達がどうなのかですが…』
「…ライオットさん、あの…なんというかずんぐりむっくりしている…機械を使ってる人がズゴックさんですか?」
「ズゴックはあのMSってのの名前で、本名はまた別だけどな。
…ズゴックは、お前が言ってた道外って男の人の助けになってるみたいだぜ」

目を向けると、ツォーン等のビームやイーゲルシュテルンを全てかわし捌きながらヘイトを集めているズゴックと、至近距離まで来た流牙が再び閃光剣舞を放とうとする姿が視界へ入る。

「…光を受けて、闇に還れっ!」

跳躍した上で腹部目かげて流牙は閃光剣舞を放ち、闇から変換された光を纏った一閃でデストロイを沈黙させた。

「助かったぞ、ズゴック」
『…あっちも片付いたようだな。あなたは…』
「道外流牙、守りし者…黄金の魔戒騎士だ」
『リュウガか、俺はアスラン・ザラ。アスランと呼んでくれ」

戦いが終わったのもあり、名を聞くズゴック。対し名乗った流牙に、起動鍵を解除した上でズゴックもといアスランも名乗った。

「道外さん、無事でなによりです」
「ズゴック、じゃなかったアスラン…片付いたんすね!」
「ああ、お前の方も助けれたようだなライオット」
『流牙、そちらの方は…』
「アスラン。アスラン・ザラだ、俺を助けてくれた」
「柳瀬舞衣です。道外さんを助けてくれてありがとうございます、アスランさん」

こうして合流を果たした4人は、まずは互いに名乗り情報を交換する事とした。

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「柳瀬と道外はもう雄英高校に行ってたんすね」
「ああ、そこでキズナブラックと出会い、ソウジが彼と共に向かう形になって俺と舞衣が北へ…病院方面へ向かう事になった」
「…そうか、マイの巻き込まれた知り合いに死んだ筈のカガリに取り込まれた筈のヒヨリが……それにリュウガの討った筈の宿敵ジンガに、ソウジ達が斃した筈の宇蟲王のギラ…」
「…はい。アスランさんの推測のように乗っ取られている可能性は……否定出来ないです」

各々の情報を話す事となった4人とイルヴァ。知られている筈の用語を知らなかったり、年号年代等の相違点等もあって皆が、個性のある世界に、C.E.の世界、刀使と荒魂がある世界にホラーとそれを狩る守りし者がいる世界と別の世界の住人だと気付いた。
そして舞衣は知り合いの内可奈美、沙耶香、薫は間違いなく協力出来、タギツヒメは警戒すべき敵と、篝はよく分からず姫和は当人なら協力出来るとし、またソウジやキズナブラックについてや可奈美についての不安等を告げる。

「…その衛藤って子も、すっげえ頼りになるけど抱え込んじまうタイプかぁ…」
「…はい。可奈美ちゃんはこう…ギリギリまで追い詰められないと弱音を言おうとしない、言わない子なんです。
…姫和ちゃんが、目の前でああなって…なのに普段通り振る舞おうとしてて…今だって…助けられなかった後悔と悲しみで、つらくないはずがないから、心配で…」
「…緑谷も、抱え込んで一人で突っ走っちまってた頃があったからなぁ…早く見つけ出して、場合によっては止めてやらねェとな」
「ライオットさん…そうですね、もしそうなら…親友として、私が止めます。可奈美ちゃんを」
「その時は俺も手伝うぜ、漢として!」
「カナミがそうでない事を俺は願うよ。
…ただの喧嘩や叱責なら兎も角、友達同士での戦いなんて、辛く悲しいだけなんだ…だからその時は、俺も手を貸させてもらおう」
「勿論俺も協力するよ、舞衣」
(…それにしても実感の籠もった言葉だな、アスラン…)
「……ありがとうございます、みなさん……!」

また舞衣は、自らの未だ使えずにいるソードスキルについても話した。

「…使わねぇ事に越したことは無さそうだな。死ぬか人で無くなるかって……」
「俺も極力使わない方が良いと思うぞ、ただ…宇蟲王のような強大な相手には、切らなきゃ不味いかも知れない以上…習得した事は間違いではないと思う」
「…アスランさん、そう、ですよね…。…覚悟は、出来てるけど…でも、死んじゃうのは勿論、日常に戻れなくなるのも…怖いとも、思っちゃいます」
「…怖くなるのも仕方ねぇだろ。そんな二択突きつけられたら…俺だってそりゃ尻込みするぜ。
しかも柳瀬はまだ14歳…中学生なんだろ?」
「…可奈美ちゃんなら、迷わず使っちゃうだろうから…」
「多分そりゃ、そうするだけの根拠はあったとはいえ、流れで体制側に反逆出来ちまう衛藤がおかしいだけだろ…緑谷もそういう危うい所あるからなぁ…その危うさってのが不安なのはわかるけどよ。
…とにかく俺が言いたいのは、怖くなるのは普通、当たり前だって事だぜ」


455 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:17:06 vWqWi8vM0
「…マイ。大切なのは、力に飲まれて想いを失わない事だと俺は思う。
…『想いだけでも、力だけでもダメなのです』という言葉を、ラクスが言っていたとキラからかつて聞いた」
「…いい言葉を言うんだな、そのラクスって子は。
ジンガや宇蟲王、メラやタギツヒメのような強敵がいる以上…使わざるを得ない時が来るかもしれないが、力を行使出来るようになったとしても、恐怖を抱いても闘い抜くという想いは必要になるだろうな。
最も…極力そうはさせない為に俺達は居る」
「…ライオットさん…アスランさん…道外さん…」
『勿論私も、尽力させて頂きます、舞衣』
「…ありがとう、イルヴァ」
(…ライオットさんもアスランさんも、道外さんも立風館さんも…きっとキズナブラックさんだって…私はいい人にばっかり出会えて…心配ばかりかけちゃってるから、少し…心苦しい。
…可奈美ちゃん達とも、仲良くなれるだろうなあ)

そして流牙はイルヴァやジンガについてや魔戒の鎧について、リュックの素材が魔法衣で出来ている事等を話した。

「魔戒の鎧ってのが99.9秒しか着れないヒーローコスチュームみてぇなのは分かったけど、令呪の有効時間も同じ99.9秒なんだよな」
「…それに、このリュックの素材が道外さんが着てる魔法衣と同じという事は…」
「…心当たりはあるか?リュウガ」
「…ジンガが居る上に、アスランの言う通りなら、何か関係が有るかも知れない…としか今は言えないな、すまない」
(…ジンガが参加者として居る以上、アミリ辺りが蘇って…?だがそれを根拠にするには情報が足りなすぎるな)

ここでは魔戒騎士絡みかホラー絡みと関係がある可能性を、4人の間で共有するに留まる。
そして次はアスランの番となり、ラクスやディアッカ、イザークは信用出来る、ただ2人居るキラと死んだ筈のニコル、それに何故か自分から離れてる上に(?)が付いているアスランは微妙だと言う話や、ラウ・ル・クルーゼについて、それに先に戦った男(やみのせんし)についてや未だ使わずにいるソードスキルについて等を話した。

「討たれた筈のクルーゼ隊長が居る以上、デュランダル議長やアコード達の元締めのアウラが居る可能性も一応考えてはいる…が、無関係な可能性が高いと俺は見ているな」
「…どうしてですか?」
「関係しているなら、配下達を参加者として差し向けている筈だ。だが参加者には彼らの名は影も形も無い。
…まあ主催者側の戦力として出てこないとも限らないし、名簿に名前が載っていない…というのもあり得なくはない」
「…そうか、やはり既に殺された参加者が…」
「逃げられちまったけど、アイツが大丈夫なのか…気になるんだよな…」
「…状況からして、多分アイテムを使って逃げたんだと思います。せめて普通に逃げたのなら、追いかけにも行けるんですが…」
(…話からするに、狼狽えた辺りまだ…止めれる余地はあったように聞こえる。…可奈美ちゃんならきっと、止めようとする筈)

その男がもうとっくに覚悟を決めてる事を知らぬまま、最後に頼雄斗の番となる。
緑谷が信用出来、ステインが状況次第では対話可能、ダークマイトが傍迷惑な勘違い野郎でまず話など聞かないだろう事、それにソードスキルについて等が共有された。

「…ライオットさんの話の通りなら、ステインという人も大概ですけれど…ダークマイトって人はどうしようも無さそうに聞こえますが」
「…殴り倒して言う事聞かせようとしても、それでも多分都合の良い風な解釈しかしねェと思うぜ…流石に俺とアスランだけよりはマシだけど、俺ら4人だけだと殴り勝てても消耗が馬鹿にならねェ気がする」
「とは言え、乗っていない強い参加者が2人(ソウジ、キズナブラック)居るのを知れたのは収穫だ。…合流はあまり望めないかも知れないが」
「…そういや柳瀬、この十条家の呪法ってソードスキル…お前の知ってる十条家と関わりがあったりするか?」
「…私は、聞いた事が無いです。もしその呪法って物があったら…姫和ちゃんが使わない筈が無いから、多分別の世界の物…だと思います、ライオットさん」


456 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:17:58 vWqWi8vM0
『一通り情報共有は終わったようですが、このドロップアイテムはどうしましょうか?』

情報共有が終わったのを見計らって、イルヴァが4名に声を掛ける。

「…何故俺のかつて乗っていた機体がプラモデルに、しかもドロップアイテムになっているんだ??それにこのケーキは…」
「…アスランが思わず『シン!!』って叫んだのにはビックリしたぜ」
「それに…今にも叫び出しそうな表情なのはどうしてでしょう?」
「…確かに発狂してる表情を描いたように見えるな」

デストロイを倒してドロップしたアイテムは、ジャスティスガンダムの144分の1スケールのプラモデルに、この殺し合いには居ないシン・アスカの顔が描かれているケーキ。どちらも強敵を倒した報酬としては不相応にしか見えなかった。
ケーキの方は今にも『うわああああ!?!?』だの、『ケーキは、こうやるんだぁぁぁっ!!』だの叫び出しそうな気迫もしくは迫力のような何かを、舞衣達に感じさせる物がある。

「…プラモデルの方は俺に支給されたソードスキルを使ってみよう、ケーキは…」
「…落ち着ける場所に行けたら食べてみるのも、いいかもしれません」
「とりあえず、ケーキは俺が持っとくっす」

プラモデルはアスランが、ケーキは頼雄斗が持つ事となった。
その後作っていたクッキー(4袋、残り2袋は自分用と可奈美達用)からどうぞと渡され、それを美味しそうに食べて
「柳瀬が焼いたこのクッキー、美味えな!」
と笑みを見せながら素直に言う頼雄斗。

一方
「…悪くはないな」
と言ったアスランは流牙に
「もうちょっとこう…言い方があるだろ、ライオットを見習ったらどうだ?」
と苦言を呈され、頼雄斗にも
「せっかく焼いてくれたんだから、美味いなら美味いってちゃんと言ってあげるべきじゃないっすか?アスラン」
と言われてしまう。
当の舞衣には
「…カガリさん、でしたっけ?その人にもこんな調子なんですか?アスランさん。…あんまりそんな感じだと、その内愛想を尽かされちゃいますよ?」
と、微笑みながらも目だけが笑ってない様子で言われてしまった。

「…あ、あいつは料理とか自分じゃ全然出来ない癖に、舌だけが肥えてるから…」
と言い訳(最も事実だが)をしつつも、
「…わかった。善処するよ。…ありがとう、マイ。君の焼いてくれたクッキーは美味しかった」
と最終的にちゃんと美味しいといい感謝を述べ、この殺し合いで初めて表情が少し綻んだアスラン…という一幕を挟んだ上で、4人とイルヴァはは次にどう動くかを話し合う事に。
近くの病院へと直行するか、それとも…となったその時だった。

「…アスラン、感じるか?」
「ああ、異質な何かの気配を感じる…」
『舞衣、流牙、アスラン、頼雄斗。注意してください』
「…キズナブラックさんの時とは、また違う、けど…!」
「…俺にも分かる、敵(ヴィラン)…じゃねェといいんだけど…望み薄かもな」

感じとった人ならざるモノの気配に、4人は揃って臨戦態勢を取る。そして少し後、現れたのはベルトを巻き、制服を着た長い薄紫色の髪をした少女。


457 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:19:16 vWqWi8vM0
「いきなり戦闘態勢を取るなんて酷くない?私、まだ何もしてないし…ただちょっとあなた達とお話したいだけなのに」
「…そう言う割には、貴女も日本刀を構えてますよね?」
「だって、あからさまに警戒されてるし。…まあいいわ、とりあえず話は聞いて貰えそうだから」

おどけたように言う少女に、警戒を解かないまま舞衣は毅然と言う。
対し少女は諦めたかのように言った上で、名乗りまた問うことを決めた。

(…同じ姓のよしみで篝ちゃんかうてなちゃんの名前を名乗ってもいいけど…知り合いが居ても困るし、とりあえず本名でいいかしら)
「とりあえず私から話させて貰うわね。私は柊真昼。用件は2つで…この中に益子薫ちゃんの知り合いって居るかしら?それと…レジスターや、バグスターウイルスって物をどうにか出来そうな人も探してるんだけど」
「…薫ちゃんは、私の仲間で友達です。真昼さん、どうして貴女が薫ちゃんの事を…!?」
「私は名乗ったわよ、聞きたいのなら貴女も名乗るべきじゃない?」
「…舞衣、柳瀬舞衣です」
「…じゃあ単刀直入に言うわね、舞衣ちゃん。
…私は見たの、薫ちゃんが他の参加者を…確か、宮藤芳佳ちゃんだったかしら。その子を剣で突き刺して殺した姿を」

反応した舞衣に対し、そう仕向けたのは自分だという事実をしれっと伏せた上で柊真昼は言い放った。

「──薫ちゃんは、薫ちゃんはそんな事しません。ヒーローに憧れて刀使になった、自堕落だけど…確かな信念を持ってるあの子が、誰かを望んで殺すなんて、まずあり得ない。
それが事実だとしても…きっと、薫ちゃんにはそんなつもりはなくて…それこそ、誰かに陥れられたとかだと、思います」
「…仲間を、友達を信じるって訳ね。でもこの場は殺し合いよ?なのに友達が、仲間が変貌してないって言うの?」
「…友達だから、仲間だからこそ…私は信じていたいです。…そんな意地悪な言い方をする、貴女には分からないだろうけど」

一瞬呆然とはしたものの、舞衣はそう言い切った。
それに真昼は更に食い下がってみるも、舞衣は返してみせる。

「……そうね。私には貴女の気持ちは分からないわ。
…まあ、信じたいなら好きにすればいいと思うわよ。裏切られて後悔するのは、貴女なんだから。
…もうひとつの用件は…」
「バグスターウイルスについては分からないが、レジスターについては構造を把握出来れば或いは…と言った感じだな。俺はアスラン、アスラン・ザラだ」

思う所有りげにしつつも、突き放すかのように会話を終わらせレジスターやバグスターウイルスについて真昼は聞くこととした。
すると答えたのはアスラン。とはいえその顔は相変わらず、眉間にしわが寄った超絶不機嫌な様子だった。

「…少しは不機嫌さを隠したらどう?まあ…いいわ。レジスターのサンプルを複数確保出来ればいいのね?」
(…解除出来る可能性がある参加者を見つけれた以上、猫を被るのはこの辺りが潮時かしら)
「…構造の把握等を行うには一つじゃ心許ないな」
「…なら、早速協力させて……貰うわ」
『舞衣、流牙、頼雄斗!』

言いながら真昼は突如日本刀…ノ夜を振るい、アスラン以外の舞衣達3人へ向けて斬撃波を放った!


458 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:20:16 vWqWi8vM0
----

「っ……真昼さん、貴女は!」

打たれた斬撃波を舞衣は、イルヴァの忠告もあり御刀で受け止めてみせる。

「あら、その喋る指輪は鬼呪装備の一種かしら?」
「…それは魔導輪、人類に友好的なホラーだ」
「柳瀬も道外も無事みたいだな…俺もどうにか防げたぜ。助かった、イルヴァ」

斬撃波を躱した流牙と、個性である硬化で受け止めた頼雄斗。
しかし凌がれた事自体は想定通りと言わんばかりに真昼は笑う。

「魔導輪…知らない単語ね。
…へえ、貴方も私の邪魔をするんだ?そこで大人しく見ておけば、レジスターのサンプルが3つ手に入るのに」
『…お前のような人の心が欠けた奴に、従ってやるつもりはない』

そして3人の前にいつの間にか立ち、起動鍵を用いてズゴックとなったアスランはそう断言する。

「否定はしないけど、酷い言いようね。傷付いちゃうなー」
『口ではどうとでも言えるだろう、思ってもいない事を』
「まあ、そうだけどね」
「…何故殺し合いに乗っているんだ?」
「これは薫ちゃんにも言ったけど…願いを叶えないとどうしようもなく詰んでる…そんな人生だから。大好きな人ともたったひとりの妹とも一緒に居れない、生まれた時からいつ死ぬかすら決められた運命を、人生を強いられて……それを全部ひっくり返せるかも知れない望みに縋って、何が悪いのかしら?」
「…やっぱり薫ちゃんも、貴女が…!!」
「少し考えれば分かりそうな策にまんまと引っかかる、短絡的な薫ちゃんが悪いんだよ、舞衣ちゃん」
「…なんつーか、お前がどうしようもなく悲惨な境遇に居たみてェなのは分かったよ、けどな……だからってやっていい事と悪い事ってのがあるだろ!それに…何も殺し合いに乗らなくたって…!」
「…さっきアスランが言った通り、私には欠けてるの。生まれつき人の心が…人為的に…って言うのかしら。そう作られちゃってるから。
大切な人や、信用出来る人以外の事が、心底どうでもいい存在にしか見えないように…だからそれは無理な相談ね、じゃあ、そろそろ…変身」


459 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:20:56 vWqWi8vM0
ズゴックへそう言いつつ、流牙の問に答えるついでに薫を嵌めた事を明かす真昼。
怒りを静かに自分へと向けてくる舞衣を煽るようにそう言い放ち、問いかけてきた頼雄斗に冷めた様子で答えた上で、ソロモンへと変身を遂げる。
発見した時点で4対1になる事は想定していた為、奇襲が失敗した場合は最初から変身して戦闘を行う事を真昼は決めていたのだ。
そしてカラドボルグを振るうソロモンに、沈黙を保っていたズゴックが自らの爪を用い防ぎつつも再び話し始める。

『…さっきから聞いていれば何だ。悲惨な環境だの、生まれた時から心が欠落しているからだの、人為的に生まれただの…俺には全て言い訳にしか聞こえないな!』
「…何も知らなければ、そうでしょうね」
『お前より酷いかどうかは分からないが、この殺し合いに巻き込まれているキラは…多数の犠牲の果てに最高傑作として生み出されて、友達の為に同じコーディネイター相手に戦って、裏切り者だと言われて殺したくなんて無いのに戦って…何度も間違えて、喪って…それでも正しい道を以て抗って!戦い抜いたんだ!
だと言うのに…何だお前は!!』

爪と剣がぶつかり合う中、憎しみのままキラと殺し合った過去を思い返したせいか、何処か後悔を滲ませた声色でズゴックは叫ぶ。

「……そう。名簿に居たキラ・ヤマトくんは…そんな道を選べたのね」

冷めたようで、何処か羨望も感じさせられるように呟きながら真昼は、ここでドゥームズライドを一回押し隕石をその場へと降り注がせた。

(あのベルトを通して力を使ってるみたい。なら、取り上げれれば…!)
『これは…避けてください、舞衣!』
「…わかってる、イルヴァ!」

迅移を以て加速し降ってくる隕石を舞衣は躱していく。
ズゴックはある時は避けある時は撃ち落とし、流牙は的確な動きで魔戒剣により切り払って見せ、頼雄斗は個性とソードスキルを用いてそれらを受け止めてみせた。

「へえ…やるじゃない」

素直に感心したように言いながらも、真昼は攻撃を辞めない。
カラドボルグから赤黒い刃を、ノ夜から斬撃波を放ちつつ、それぞれの掌から赤黒い刃を射出してみせる。

「道外さん!ライオットさん!アス…ズゴックさん!」
『大丈夫だマイ、回避出来る』
「分かっている、舞衣!」
「おう、柳瀬!」

真っ先に舞衣が蒼炎を纏った御刀の一振りで、カラドボルグからの赤黒刃を受け止め切る。
ノ夜の斬撃波を難なくズゴックが回避し、片方の掌からの刃は流牙が剣で受け切り、もう一方は硬化により頼雄斗で受け止めて弾いた。

(何気に連携も出来ているようね。なら…これならどうかしら?)

その勢いのまま斬りかかる舞衣と流牙に、片方はノ夜、もう片方はカラドボルグで対応しながら真昼は、ライドブックを閉じドゥームズライドを2回押して、巨大化させたカラドボルグのようなエネルギー体を出現。そのまま4人纏めて薙ぎ払おうと試みる。

「ここは俺の個性に任せろ、ズゴック、道外、柳瀬!」

対し前に出るは頼雄斗。彼は自らの必殺技と言える硬くなる事へと特化した安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)を発動させその身でエネルギー体を受け止めようとした。

「く、ゔ…うおぉおっ!!」
(ライオットさんの顔、すごい事になってる…)

ソリッド化した皮膚により怖さを感じさせる様相となった頼雄斗に内心そう思いつつも、これで睨まれでもすれば否が応でもそちらにターゲットは向くとも考える舞衣。
それを他所に頼雄斗は、エネルギー体をしっかりと受け切った。

「…ひとりでそれを受け止め切るとはね。けれど…相応に消耗してるんじゃないかしら?ヒーロー気取りの代償は高くつくわよ?」
「…気取りじゃねェよ、俺は剛健ヒーロー烈怒頼雄斗だ!いい加減、観念しやがれ柊真昼!」
「……ヒーローに憧れた薫ちゃんの次が、ヒーローを名乗る男の子…何の因果かしら」


460 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:21:27 vWqWi8vM0
思う所をまたもや見せながらも、再び真昼が行動に移ろうとし、それをさせないようアスラン、舞衣、流牙が動く中……その場の誰にとっても、酷く聞き覚えのある声をした喧しい闖入者が突如現れた。

「ようやく見つけたぞ!!!!本物の俺!!!!ドラグーンの熱線に焼かれて諸共に死ぬがいい!!!!」

レジェンドガンダムの起動鍵を使用しているパチモンアスランがここでまたもレイ・ザ・バレルの台詞(本編では言ってない)をパクりつつエントリー、ニセモノとホンモノの対決の火蓋が切られた!

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「アス…ズゴックさんと同じ声!?」
『…十中八九、相手はアスラン・ザラ(?)かと』
「デストロイのシュツルムファウストみてェに厄介だな…クソっ!」
『お前が…アスラン・ザラ(?)なのか…??』
「何が目的だ、もうひとりのアスラン・ザラ」
「…加勢に来てくれた…訳じゃなさそうね」

各自各々に反応する中、ミームのアスランは流牙の問のみに答えた。

「俺の目的だと!!ただ一つだと言うのに!!なぜ分からない!?!?俺はそこのズゴック等とふざけたモビルスーツを着込んだ本物のアスラン・ザラを殺し!!ミームとしてのアスラン・ザラの存在そのものを消す事だ!!ついでにシン野郎は殴る!!!!バカヤロウ!!!!」

『…ニセモノを自称するだけはある胡乱っぷりだな』
「なんですかシン野郎って…」
「意味わかんねェよ!?さてはダークマイトの同類か!?」
「…同じ声なのが余計にややこしく、始末に負えないな」

ドラグーンの熱線を避けまたは防ぎ耐えつつも、けおり散らかしているアスラン・ザラ(モドキ)に呆れと困惑を隠せない面々。
すると今度は舞衣の問いにのみ、彼は答える。

「シン野郎は名前にシンが付くか入ってるかシン読み出来るかジン野郎か語感が似てるか!!ウジウジしたり悩んだりする奴の事だ!!!!
つまり真!!人!!と真!!鍋!!と真!!昼!!とレン!!とジン!!ガ!!とエンシン!!がシン野郎だぞバカ野郎!!!!シン野郎はぶん殴ってステラの所へ行ってもらう!!トゥ!ヘアー!!!!」
「…ジンガと遭遇でもしたのか?」
「してるわけ無いだろう!!!!このザフト野郎!!!!」
『ジンガをザフトのMSの同類とでも思ってるのか??お前は…!!?』

ビームジャベリンで流牙の魔戒剣と鍔迫り合いをしつつ、ビームスパイクをズゴック目掛けて射出しながら喚き散らかすパチモンの方のアスラン。
宿敵が意味不明な言いがかりをつけられた挙句、預かり知らぬ所で実質的な抹殺宣言をされる様には歴戦の魔戒騎士たる流牙といえど困惑を隠せない。
それはズゴックも同様で、ニセモノとはいえここまでトチ狂っていて、それでいて技量等は自分と同等というトンチキ存在に抱くは怒りや嫌悪を通り越した混乱であった。

「うるさい!!この…カガシコ野郎!!お前が破廉恥な妄想をするから俺がまた玩具にされたんだぞ!!!!」
「……えっと…それって、どういう」
「ず、ズゴック…??」
『変な言いがかりはやめろ!確かに心を読む相手の動揺を誘い策に嵌める為にしたが!!』
「使えないシュラが童貞野郎だったからとはいえ!!お前は!!モウヤメルンダッ!!」
『状況が混迷として来ましたが今です、舞衣!』

言いがかりを本物の自分へと押し付けつつ、頼雄斗をヘァァァッ!!と蹴り飛ばして、聖文字の力も使い真昼のソロモンの攻撃を全て歪曲させ防ぐアスラン野郎。
それに対して、というかこの現状そのものに困惑を隠せずにいるも、イルヴァの声に従い越前康継に蒼炎を纏わせ…柳瀬舞衣は斬りかかった。


461 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:23:12 vWqWi8vM0
「ヌオオオッ!?!?何だそのっ…熱い!!!その炎…熱いぞこの野郎!!その炎はVPS装甲を貫通している!!
…その動きさてはお前も刀使だな!!!?篝といいタギツ野郎といい何故刀使共は俺の邪魔をする!!何故優勝して願いを叶えようとしない!?!?」
「ぁ、っぅ…!?…十条篝さんや、タギツヒメが…!?」
(…でも、言ってるのがこんな頭のおかしな人じゃ…!!)
「…あの仮面ライダーが、柊真昼さんです!」

舞衣が刀使だと悟りまたも喚くアスラン?ザラ。内容には驚くも、ソースがよりにもよって目前の異常者なせいで鵜呑みには至らなかった。
とはいえ先程のシン野郎判定している相手を聞き逃さなかった舞衣は、真昼が目前の仮面ライダーに変身している事を躊躇無く教えた。カオスな状況と化したが、友を仲間を嵌め人殺しの罪を背負わせた事への怒りが消えた訳もなく。

「っ!?…自業自得では、あるんだろうけど…!」
「✝虚無の申し子✝の起動鍵を使って!!殴るっ!!!!
真!!!昼!!!早速シン野郎に会えるとは幸先がいいな!!!それはそれとして死ね本物のアスラン・ザラ!!俺の願いの為に!!!!」

マークニヒトの起動鍵を使い、レジェンドから姿を変えたキチガイはその勢いのまま真昼が変身するソロモンを殴り飛ばしつつ、ズゴック目掛けてワームスフィアーを発射。
避けられたものの着弾点を消し飛ばした。

『何故そこまでして俺を殺す事に執着する!?』
「全てお前が悪い癖に何をのうのうと!!二十年だ…二十年間ハゲだのヅラだの、女難だのトゥ!ヘァー!だの散々に玩具(おもちゃ)として遊び弄り倒された俺の気持ちが、お前に分かってたまるものか!!もううんざりなんだ!!玩具(おもちゃ)にされるのは!!
そしてFREEDOM公開で俺は悟った!!アスラン・ザラという存在が記憶の中に生き続ける限り、ミームは決して消えないと!!ネットの海に流れに流れた以上もう手遅れなんだと!!!!だから俺はお前を消して!俺の存在そのものも否定するっ!!!!」

喧しさの中に悲痛そのものな叫びをあげながらも、ホーミングレーザーやルガーランス、紫電のビーム等を放ち無差別攻撃を行うアスラン・ザラのようなモノ。
対しズゴックは…ここでソードスキルの行使を決めた。
事前に作り替えておいたドロップ品のパイプ椅子を、うおおお!!とニヒト目掛けてぶん投げる。
聖文字による自動防御は本来とは異なり、反応出来た物にしか発動しない。故に反応しきれず…ニヒトは諸にそれを受け、衝撃により爆発する爆弾へと錬成されてた椅子の爆発を受けた。


462 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:26:22 vWqWi8vM0
ソードスキル:紅蓮の錬金術。爆弾狂にして信念を持ち貫こうとする者を好むイカれた男の錬金術がソードスキルへと落とし込まれた物。
それが渡ったのは、乗機を数回自爆させている男だった。

「ぐあああっ!?!?この爆発は何だ!?ジャスティスを核爆発は起動鍵が無いと出来ないと言うのに!!俺は!!」
『ソードスキルという奴だ。腐っても俺なら、反応速度も同じ筈、捻じ曲げれる攻撃と出来ない攻撃の差からするに、反応が出来なければ曲げれないようだな』
「爆発は俺がやるべきなんだぞ!!!馬鹿野郎!!!」
『……馬鹿はお前だ、きっとお前にはカガリのような相手が居なかったんだろう。だから…ここまで狂ってしまったんだな』

意味のわからない抗議をするミームのアスラン目掛けて、何処か同情するように言いながらズゴックはジャスティスのガンプラを投擲、またも爆発にニヒトは巻き込まれた。ついでに地味に戦場に到着し、取り込みを狙っていたNPC、小型ELSも爆発に巻き込まれて消滅した。

「ぐぅっ、まだだ!!まだ…本物の俺を殺すまで!!シン野郎を全員殴って全員ステラの所へ行かせるまで俺は!!!!キラキラバシューン!!!!」

ここでSEEDを発動させ、アスラン擬きはなおも足掻こうとする…も、視界に入ったのは、先程頼雄斗を蹴り飛ばした際に落ちたシン・アスカのケーキ。

「シン!?!?!?!?……ケーキだったんだっ、お前は…!!!!ぐおぉっ!?!?」
「烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!とりあえず大人しくしやがれ、ニセモノのアスラン!」
「オ、オレヴァ…」

そう悲しげに、或いは憐れみを見せながら言った隙を突かれ、頼雄斗が見舞った烈怒頑斗裂屠により起動鍵を解除され、顔を怒りで真っ赤に染めながら贋作のアスランはとりあえず制圧されてしまう。
数の理だけでなく、ここに来て消耗が響いたのもその要因だった。

「ニセモノのアスランさんは無力化出来た…後は、真昼さんを…」
『舞衣、先程同様クリスタルが!』

だがここで、ズゴック達を囲むはクリスタル。そして現れたのは、仮面ライダーゼロノスゼロフォームに、水のエル強化体、それに仮面ライダーG4。どれも強敵である。
早速ゼロノスはバスターノヴァを発射し、水のエルは紋章を空に浮かべ地面へと迫らせる。G4はミサイルであるギガントを発射し、思い思いに参加者達を追い詰めんとしていた。

「皆避けろ!多分当たったらやべえ!」

頼雄斗が叫び、流牙や舞衣、ズゴックは回避に動きそれに成功。しかし…ここで動くは制圧されたものの矢継ぎ早の展開により即座に抜け出したアスラン・ミーム。

「こうなったら!!使うしか無い!!!!」
「が、っぐ、お前はニセモノのっ…!?」

そのまま起動鍵を使わず、ミームのアスランはスーパーロボットへと姿を変え頼雄斗をチェンジアタックによりダメージを与えていく。制限により一度使えば6時間使えずまた起動鍵使用時は使えない仕様となっていたが、切り抜けレジスターを手に入れる為に躊躇無くこのアスランめいたナニカは手札を切る。

「この機体に託された想い、忘れはしない!」「キラから預かった機体だ!使いこなしてみせる!」
「基本はジャスティスと同じだ!」「ジャスティスの力を保ってすれば!」「ブリッツの運動性なら!」
「状況も分からぬナチュラル共が、こんな物を造るから…!」「お前がニコルを!!!!ニコルを殺したあああっ!!!!」
「Gに乗ってるだけで勝てると思うな!」「バスターの火力なら!」「キィィィラァァァッ!!」

等と支離滅裂な発言をしながらアスラン??は頼雄斗を打ち上げ、地面へと叩き付けた。
咄嗟に令呪を一画切り、安無嶺過武瑠を使用しソードスキルも併用した為死は避けれ、また落下時に真下にいたゼロノスゼロフォームのベルトを偶然だが剥ぎ取る形になり、消滅させたものの…頼雄斗は意識を手放してしまった。


463 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:27:12 vWqWi8vM0
「ライオット!」
「ライオットさん…っ、今は貴女と、戦ってる場合じゃ…!」
『くそっ…生身でもそんな真似が出来るとは、デタラメにも程があるだろう…!』
「これはさっきのお返しよ、舞衣ちゃん」

駆け寄ろうとする舞衣に、仕返しと言わんばかりに攻撃を加えつつ、飛んでくるギガントや打たれる紋章を避けG4のそれを奪おうと試みる真昼。
一方流牙はそれらを潜り抜け、同じ行動しかしない水のエル目掛けて剣を振るう。
そして再びニヒトの起動鍵を用いたアスラン(贋)は…ズゴックと一対一の攻防を繰り広げていた。
最も合間に何度も真昼への攻撃を行った辺り、シン野郎判定した相手への執着は強いようだ。

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戦況が混迷を極める最中、閃光剣舞にて水のエルを流牙が撃破。
一方G4は撃破には至らず、実質舞衣と真昼との三つ巴状態。頼雄斗は未だ目を覚まさず、偽者アスランはズゴックと一進一退の攻防を続ける。
瓦礫をソードスキルにより時限爆弾へと錬成し投擲するアスラン。対しミームは直撃を受ける前にホーミングレーザーで消し飛ばす。

『同じ手は食ってくれない、か…!』
「当たり前だろ?ニセモノだが俺はお前だ」

素面に戻ったかのように言い放つアスラン同士の戦いは、ミーム側の聖文字の仕様もあり決着がなかなか見えなかった。

──そんな中、真昼がとうとうG4からギガントを強奪、その後ソロモンストラッシュにより始末した結果…ドロップ品という形でギガントは手元へと残った。

『まだ写シは張れますか?舞衣』
「…もうそろそろ、後数回で張れなくなっちゃいそう…でも、可奈美ちゃんなら…こんな状況でもまだ…!!」

NPCがとりあえずそこに居なくなった為、クリスタルは解除される。
…解除された周囲が舞衣の視界に映ると同時に、見覚えのある姿を彼女は視た。

(…あの髪型は……可奈美、ちゃん!?…来てくれたんだ…!)

しかし彼女に突きつけられるは、残酷な現実である。


464 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:27:58 vWqWi8vM0
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可奈美ちゃんはとても強くて、あの手この手で私が、追いつくために技を覚えて攻めの手を変えても…楽しみながら、対応しちゃう。
…追い付けるのかな?って、折れちゃいそうになった時も何度もあったけど…ひとりぼっちになるのが嫌な、寂しがり屋の可奈美ちゃんを…放っておくことなんて出来なかった。
…強さの象徴で、大切な親友で…なのに、可奈美ちゃんの近くからは…死臭、って言うのかな…そんな物が漂って…もしかして、薫ちゃんみたいに……頭に浮かんだ最悪の結末を振り払って、私は可奈美ちゃんに声をかけようとして──

…ぇ…??…かな、み…ちゃん…?

…血だらけの彼女が、光の無い瞳が、破けた制服が、縫い目が…無表情な顔が、目に入って。わたしの喉から出るはずだった言葉は、どこかに消えてしまった。
わたしの胸の中で、零すように泣いていた、表情豊かな可奈美ちゃんは……そこにはもう、『いなかった』。

嘘だ、可奈美ちゃんが、あんなに強い可奈美ちゃんが、こんな有様になるわけがっ…!!…そう言いたくても、口には出なくて。真昼さんやイルヴァに、道外さんが何か言ってたような気がしたけど…なにも頭に入らなかった。
…しんじたく、ないよ…!どうして、なんで…こんな、ことにっ…!!

「なんて、なんてことを!」

そして…気付くとわたしは、可奈美ちゃんだったモノと、それを操ってる誰かにそう…涙ながらに叫んでいた。

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シビトと化した可奈美は、まず近くの敵を倒すと言わんばかりに真昼へ斬りかかる。
習得したソードスキルである勝利のルーンにより、武器の威力が向上している事もあり剣術では真昼に勝ち目はなく。
ソロモンの力を用いても、全てを避けまた捌いてしまう。

「…可奈美ちゃんだっけ、可哀想ねぇ、死体をそんな風に使われて」
(…この辺りが潮時かしら)

そう判断した真昼は手に入れたギガントを地面へと放ち爆風を巻き起こす。
暫く後にそれが晴れると…既に彼女の姿は見えなくなっていた。
最も、そんな事を気にしないのがシビト。可奈美は舞衣目掛けて斬りかかろうとするが…それを止めるのは守りし者、道外流牙。

「…舞衣をやらせはしない、君はここで俺が止めて祓う、可奈美」

そして互いに剣戟が始まる。
果敢に攻める流牙に対して、水の呼吸の【凪】にてそれらを捌く可奈美。
こちらも一進一退の攻防となり、金属同士がぶつかる中…ここで横槍を入れるはズゴックと戦っていた筈の偽りのアスラン・ザラ。

「可奈美!!!!この破廉恥野郎!!!!お前が欲しかったのは!!本当にこんな力か!!バカヤロウ!!!!」

胸元が破かれてるのもあったのか、彼女が自分と同じ誰かの玩具(おもちゃ)、それも悪趣味な類にされてると察したが為、キレ散らかし殴り込みに来たのだ。
最もそこに心が無い以上、何を言おうと届かないのだが、この気狂いにはそんな事は知った事ではない。
ただ言いたいように言うだけであった。

最も迅移によりニヒトの拳やルガーランス、ワームスフィアーをも回避した可奈美は、ニヒトが反応出来る速度を超えた【生々流転】を見舞って、流牙諸共吹っ飛ばした。
ふっ飛ばされた先でニヒトはズゴックに迎撃され、流牙はズゴックに助けられる。


465 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:28:57 vWqWi8vM0
『舞衣っ、舞衣!』
「…可奈美ちゃん…うそ、だよね…だって、だって…そんな…の…!!」

イルヴァの叱責でようやく御刀を持ち構えたものの、目に見えるくらいに動揺を隠せず、舞衣は涙を流し続けていた。
…これが衛藤可奈美ではなく、糸見沙耶香や益子薫であったなら、悲しみながらも、これ以上操られる前に止めるとし介錯して、慟哭するに留まっただろう。
十条姫和であったなら、巻き込まれる前の時期の都合、躊躇いは見せるが…最終的には介錯出来ていただろう。
だが彼女の目の前にいるのは…よりにもよって大切な親友の亡骸。強さは据え置きな都合、躊躇いと動揺があったままでは、柳瀬舞衣が勝てる筈など無かった。

振るった剣は尽く【凪】で受け止められ、蒼炎もシビト故か暑がる素振りも見せないまま、舞衣の写シをあっという間に剥がしてしまう可奈美。
そして彼女は、生前ならまずやらなかっただろう手を使う。迅移により加速し八幡力を併用した上で、日輪刀を投擲。
舞衣の心臓をそれで貫かんとする。貫いた後は迅移で回収し、万一息の根が止まってないならそこでトドメを刺すつもりだった。

『こいつは俺が足止めする、行ってくれリュウガ!』
「舞衣っ!」
「…やっぱり…強いや、可奈美ちゃんは……ごめん、ね……止めて、あげれなくって……」

ミームのアスラン・ザラをズゴックが足止めする中、ハガネを纏った流牙が助けに入ろうとするも、間に合わない。その前に貫かれ死。
令呪も間に合わない、その前に貫かれて死。ソードスキルを使おうにも、間に合わない、死。
必死に頭を回したものの、ここで親友の亡骸の手にかかり死ぬ未来しか、舞衣には浮かばなかった。思わず諦めと謝罪の言葉が口から漏れてしまう。

そして無情にも日輪刀が投擲される。だが──日輪刀により、鬼を殺す為の刀により貫かれたのは舞衣では無い。

「…え?…ぁ、あぁ…どうして、なんで…わたし、をっ…」
「……今、動かなかったら…あの時の、弱ェ自分に…戻っちまう…から…な…」
「…ライオット、さん…っ…!!」

貫かれ血を胸元付近から零すのは、寸前で意識を取り戻し、たまたま倒れてた付近に舞衣が近付いてたのもあって、ベルトを用い変身した上で令呪をまた一画切って防御を行った、頼雄斗だった。


466 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:30:24 vWqWi8vM0
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あのアスラン擬きに気絶させられて…気付くと俺の目に映ったのは、泣いてる柳瀬に、血塗れで無表情の制服の女。そして手元にはNPCから取れたベルトと、説明書。女は俺の事は気にも留めないまま、柳瀬に切っ先を向けている。
説明書の記述には、使用者の記憶を消耗して変身出来るなんて事が書いていた。…柳瀬のソードスキルよりはマシだけどデメリットが重たすぎるだろ!!…って言いたくなったが、そんな猶予がねェのは分かっていた。
…制服からして、あの女が…衛藤で、梔子ユメみたいに…遺体を使われちまってるんだろう。…柳瀬は衛藤の事を親友だって言ってた。……なら、ダメだろ…親友に、殺させるなんて事…させちゃ、ならねェ…!!

気付くと俺の身体はもう、勝手に動いていた。変身を遂げ、令呪とソードスキルで少しでも防御力を上げて、柳瀬を庇った……んだけど、なぁ…これで貫通される、なんてな……。

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それが目に映った瞬間、舞衣に湧き上がるは自分の甘さを責める自責の念と怒りと悲しみ、二度と自分が望む日常には戻れないという絶望。
……そして、彼女は感情のままに力の行使を決めた。

「──金翅鳥、王旋風(こんじちょう.おうせんぷう)!」

ソードスキルに内蔵されていたスキルを行使し、舞衣は蒼炎を纏った御刀による回転斬りを発動。勢いのまま、日輪刀を回収したばかりの可奈美を吹っ飛ばし、彼女は壁に激突し突き抜けた末に視界から消えた。
同時に、透覚もあり頼雄斗の声が聞こえた気がした舞衣はまだ生きてる、なら…!と駆け寄ろうとするも……耳へ響いたのは崩れ落ちる音。それにパチモンアスランのうめき声。

ズゴックを追い詰めていたミームハゲだったが、頼雄斗が最期の力を振り絞り放ったゼロノスゼロフォームの必殺技、バスターノヴァの直撃を受け形勢を逆転、更に流牙の加勢もあり逆に追い詰められそうになっていた。戦局をひっくり返した上で…ヒーロー・烈怒頼雄斗は力尽き、事切れた。

「…ライオット、さん…?…」

呆然とする舞衣を他所に、ここまで令呪を温存していたミームのアスランは、躊躇うことなく行使。SEEDを発動させつつワームスフィアーを乱射し流牙とズゴックを足止めして移動した上で、頼雄斗の遺体をニヒトのケーブルで同化しその上でレジスターを確保した。


467 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:31:26 vWqWi8vM0
(すぐにでも立ち去らなければ不味いっ…今の彼女に、舞衣に攻撃されれば俺は殺される!!!!そんな予感がすると!!俺は!!)

「舞衣!!お前がライオットを!!ライオットを殺したあああっ!!!!」

正しいか誤っているで言うなら、間違いなく誤っている。殺したのはシビトと化した可奈美であり、責があるなら可奈美を操ってる者だという事は理解している。
だが今必要なのは真実ではなく、自らがこの場を切り抜ける為に相手の心に出来た傷を抉り、動揺させる為の言いがかりである事もアスラン・ザラモドキは理解していた。

「今だ!!」

令呪による制限突破もあり、紫電ビームとホーミングレーザー、それに凍結属性付与のワームスフィアーを同時に放って目眩ましにした事もあって、重症を負いながらもどうにかアスラン(ニセモノ)はこの場から離脱した。

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『舞衣!!お前がライオットを!!ライオットを殺したあああっ!!!!』

…わたしが、わたしが可奈美ちゃん相手に…最初からソードスキルを使ってれば。ライオットさんは…切島さんは死なずに、済んだのに。
…死んでいたのは、わたしのはずだったのに…なのに…!!
…それに、可奈美ちゃんの身体にわたしはっ…殺させて、しまった……そんなこと、させたく…なかったのに……2人とも、生きてたら絶対…仲良くなれた、はずで……緑谷さんや、姫和ちゃん達にっ…出会った時に…なんて、言えばっ…!!
…答えてあげる事も看取る事も出来なくて、遺体すら奪われて…わたしは……ッ!!

----

『舞衣…』
「…マイ、これは…」
「すまない、舞衣…俺が間に合っていれば、ライオットは…」
「……死ぬのは、可奈美ちゃんにころされるのは……わたしの、はずでした。…わたしの、あまさが…ライオットさんを…切島さんをっ…ころして、しまった……うぅ…っ、ぁ…ああっ"…!!」

泣き叫ぶ気力すら無く、ただ涙を流し嗚咽を漏らすことしか、今の舞衣には出来なかった。
そして暫くした後…彼女を襲うは疲労感。

「…まだ、倒れてる…場合じゃ…ないのに…真昼さんを…あの、ニセモノのアスランさんを…可奈美、ちゃんを…止めなきゃ……なの、に……っ」

そのまま舞衣は、倒れ伏し意識を手放した。


468 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:32:09 vWqWi8vM0
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『…舞衣は疲れから眠っているだけです。ソードスキルの消耗によるものかと』
「…リュウガ、イルヴァ。お前達は…誰が殺されたか、憶えているか…?」
「アスラン、何を言って……まさか、あのベルトが…」

頼雄斗が遺した、変身に使ったベルトの説明書を見る流牙。そこの記述により、彼はアスランに起きた現象を把握した。

「…アスラン、おそらくお前がライオットの事を覚えてないのは…このゼロノスカードの消耗のせいだ」
「…記憶を、対価にして仮面ライダーになるか。そこまでして…そのライオットという彼は…」

そしてベルトを手に取った流牙だが、ここでベルトから頼雄斗の声が流れて来た。

『なぁ、柳瀬…俺…なれたかな…守れる、ヒーローに……』
「…ライオット…!」

自然と拳を強く握る流牙。イグスの時といい、守りし者とて取り零してしまう事はある。歴戦の魔戒騎士となってもなお、喪失には慣れなかった。

(これが魔戒騎士…守りし者なら、創磨にしたように叱責するべきなんだろうが、舞衣はあくまで刀使。守りし者とは似て非なる存在…それに彼女はまだ14歳、亡骸とはいえ親友を斬れというのは…余りにも酷だ)

かつて10年間苦楽を共にした羅号を斬った時の事を想起する流牙。
一方アスランは、舞衣が零した悲痛な言葉に、かつてニコルを喪った時の事を思い出していた。

『討たれるのは俺の…俺のはずだった…ニコル…俺が…今まであいつを討たなかった俺の甘さが…お前を殺した!』
(…マイ…俺のようにならない事を…今は祈るしかない…くそっ…俺が不甲斐ないばかりにっ…!!)

3人がこの先どう進むのかは、まだ白紙だ。

【切島鋭児郎(烈怒頼雄斗)@僕のヒーローアカデミア 死亡】

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夢の中で、知らない女の子が泣いていた。
取りこぼしこそあったけど、それでも守れた筈の物を…一瞬で殆ど奪われまた裏切られ…大切なヒトを自分の手で殺して、また別の大切なヒトの死に目にも間に合わず亡骸を目にして…泣き崩れていた。
…きっとこの子も、深い哀しみを、消えない傷を抱えていたんだろう。
キズナブラックさんや……今の私のように。


469 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:32:56 vWqWi8vM0
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舞衣が行使したソードスキルの名は狩る者。
星の意思により先天的にドラゴンへと対抗する為の異能を身に着けた、星が生み出した防衛システムにして、第7真竜に至りうる存在。
この殺し合いでは、力を行使すれば能力が跳ね上がる。
更に適合さえ出来れば、インドの異聞帯の神や13の災害のひとりにして最悪の魔女、邪悪なる宇蟲王や未来世界最後の希望のZ戦士、神殺しRTA走者と言った規格外と正面からやり合えるようになっていた。
──適合出来ればの話だが。

出来なければ病に身を蝕まれ戦闘すらまともに出来なくなり、やがて血を大量に吐き絶命する運命にある。適合出来ても、人を超えし存在へと進化した以上…元の日常へ帰る事は叶わないだろう。
……もしも柳瀬舞衣に地獄が待つとするなら、寧ろここからが本番という事だ。

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一方、ふっ飛ばされる最中ドロップアイテムのキメラのつばさを使ってどうにか立て直すことに成功したシビト可奈美。
流石にダメージも蓄積されて来たものの、シビト故にまだまだ戦闘は可能。それに彼女は、先の舞衣が放った技を『視た』。最も威力や蒼炎の再現までは不可能だが。

そんな中、シビト可奈美の耳に響くはトゥートゥーという先程似た声を聞いた音。
徐ろに探してみると、奇妙なキノコを発見し、とりあえずそれを採取してリュックへと仕舞った。

可奈美が採取したキノコの名はアスラソキノコ。描写からして採取するだけで疑心暗鬼を拗らせるような幻覚を採取した者に感じさせる程凶悪なキノコである。

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一方、どうにか逃げ出しレジスターを手に入れたものの、とんぼ返りする形になったミームのアスラン・ザラ。
可奈美同様にキノコを発見したものの、レジェンドの起動鍵を使い周辺諸共それをドラグーンの熱線で焼き払った。

「なんだあの俺そっくりでトゥートゥー鳴るキノコは!?!?議長は俺の代わりにキノコを参加者にしようとしている!!!!」

狂っているがそれ故に、ミーム・アスラン・ザラは幻覚を回避してみせた。

「シン野郎には逃げられ本物の俺は殺せず、レジスターは一つ確保出来たが……詳しく探せていないアビドス高校へと戻ってみるか」

言いながらアスラソキノコモドキは、回復のエナジーアイテムを取り、瀕死からダメージ中程度にどうにか持ち直してみせた。
そしてクリスタルが展開される中、現れたNPC、やたらと攻撃範囲の広い仮面ライダーサソード一撃を紙一重で避けたアスラン(にせ)は、先程ライオットやシン野郎の内ひとりがやったようにアイテムらしき物を奪いにかかり…持ち前の身体能力もあってそれに成功した。

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その頃真昼は南方面へと逃げ、どうしようかと思案していた。

(舞衣ちゃんには通じなかったけど…他の子にはどうかしらね。まあ…その舞衣ちゃんも、犠牲で助かっちゃってそうだから、その事も言ってあげよう)

またも性格の悪い事を考えつつ、真昼は戦利品であるギガントをリュックへと入れた。


470 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:33:56 vWqWi8vM0
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「ところで羂索、一つ聞きたい事があるのだが…いいかね?」
「私に答えれる範囲なら、答えさせてもらうよクルーゼ」
「…狩る者にデメリットがあるのは何故なのかね?元の世界では先天的に決まるとは言え、そのようなデメリットは無かった…とあったが」
「先天的に決まる強大な異能を、ソードスキルという形で落とし込んだ上に、後天的に付与するという形な以上は、仕方のない事さ。
それに呪術的に考えれば、天与呪縛を後払いで貰おうって言ってるような物だからね、これくらいのデメリットはあって然るべき、当然だと私は考えているよ」
「…なるほど、落とし込む形式の都合と、対価としてこうなっているわけか」

2人の主催はそう、会話を交わした。


471 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 00:35:04 vWqWi8vM0
投下終了します、タイトルは「あんなに一緒だったのに/傷は消えず、仄暗く深き悲しみと共に」です。
状態表などは後ほど投下させて貰います、申し訳ありません。


472 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 06:02:08 vWqWi8vM0
一先ず状態表について投下します。
【エリアB-8/9月2日午前9時45分】

【道外流牙@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)
服装:魔法衣
装備:イグスの魔戒剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、舞衣の手作りクッキー、ゼロノスカード(ゼロフォーム用、残り枚数未定)&ゼロノスベルト@仮面ライダー電王
思考
基本:守りし者としての使命を全うする。
00:ライオット…。
01:舞衣たちと行動する。りんねを助けに行きたいが…。
02:現状力は1から3割ぐらい削がれてるか。
03:イグス、もう少し力を貸してくれ。
04:羂索、人を纏う怪人たるお前はホラーも同然。
  お前とその一味の企てを打ち砕き、牙狼剣を取り戻す。
05:ソウジ、キズナブラックの事は頼んだぞ。
06:ジンガたち悪しき魂を警戒
07:…舞衣、すまない。ライオットを助けれずスキルを君に使わせてしまった…。
参戦時期:ハガネを継ぐ者終了後
備考
※ハガネの鎧は令呪無しでも召喚出来ますが、牙狼の鎧は牙狼剣が手元にある状態で令呪を使わなければ召喚できません。
※ソウジ、舞衣、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や刀使ノ巫女世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。

【柳瀬舞衣@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、精神的ダメージ(極大)、疲労(特大)、狩る者のソードスキル使用、消えない心の傷、気絶
服装:美濃関学院の制服(女子用)
装備:越前康継@刀使ノ巫女
   魔導輪イルヴァ@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
令呪:残り三画
道具:ホットライン、舞衣の手作りクッキー(残り2袋)、ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ
思考
基本:刀使として戦う。
00:……。
01:道外さんたちと行動する。
02:よろしくね、イルヴァ。
03:姫和ちゃんたちや、空蝉丸さんたちを探す。
  まずは九堂りんねさんを助けに行きたかった、けど…。
04:ジンガや宇蟲王ギラたちには注意する。
05:キズナブラックさん……。
06:…ごめんなさいっ…切島さん…私のせいで、あなたは……ッ!!
07:…止めに行かなきゃ、いけないのに…可奈美ちゃんも、真昼さんもニセモノのアスランさんも…。
08:…姫和ちゃん達や、緑谷さんに…どんな顔で、会えばいいの…??
09:…篝さんやタギツヒメが抗おうと?でも、言ってる人があのおかしなニセモノの、アスランさんなのが……
10:…可奈美ちゃんを…止めれなかった…止めなきゃ、行けなかったのに…なのにっ…!!
参戦時期:アニメ本編22話「隠世の門」にて、可奈美を抱き締めて涙を零す彼女に寄り添った後から。

備考
※魔導輪イルヴァと契約しました。
※支給されていたソードスキル:狩る者を習得し力を行使しました。適合までどれだけ時間がかかるか等については後続にお任せします。
※ブーストマークⅢバックルの効果で、所有しているだけで攻撃や防御時に蒼炎が武器へと付与されます。
※ソウジ、流牙、アスラン、切島と情報交換を行い、キョウリュウジャー世界や牙狼世界、SEED世界やヒロアカ世界に関する知識を得ました。

【アスラン・ザラ@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、不機嫌(極大)、切島についての記憶を忘却。
服装:私服
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、ズゴックの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、舞衣の手作りクッキー
思考
基本:このゲームを止める。
01:ラクスたちは兎も角、名前が二つもあるキラは…俺とあのニセモノと同じく、普通とミームとやらの違いか??
02:ラウ・ル・クルーゼ……お前は復活していたがニコルは?
03:…ニセモノの俺、理解不能だが哀れでもあるな…。
04:あの男(やみのせんし)には、少し言い過ぎたな
05:病院からテレビ局の様子を見に行く。
06:…マイ、それにライオットという彼…俺が不甲斐ないばかりにっ…!
参戦時期:本編終了後。
備考
※切島と情報交換を行い、ヒロアカ世界に関する知識を得ました。しかしゼロノスカードの消耗により切島の事を思い出せません。得た知識を覚えているかは後続にお任せします。
※流牙、舞衣と情報交換を行い、牙狼世界や刀使ノ巫女世界に関する知識を得ました。
※名簿の並びからルルーシュ、綾小路の関係者を予測しました。
※支給されていたソードスキルである紅蓮の錬金術@鋼の錬金術師を習得しました。

【エリア全体の備考】
シン・アスカケーキ@ネットミーム、切島鋭児郎のランダム支給品1、舞衣の手作りクッキーが1袋分、ホットラインが落ちています。


473 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 06:03:41 vWqWi8vM0
【エリア???/9月2日午前9時45分】

【衛藤可奈美(シビト・非参加者)@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、返り血
服装:美農関学院の制服(両腕、腹部、胸元に破損)
装備:岡田以蔵の刀(複製)、冨岡義勇の日輪刀(複製)、御刀・千鳥(複製)
道具:不明支給品の複製×1(オリジナルは現在アンクが所持)、アスラソキノコ@ネットミーム
思考
基本:大道克己との合流及び参加者の殲滅。
00:……
備考
※氷竜と化したキラ・ヤマトの高速での突き上げを「視て」覚えています。
※柳瀬舞衣が使った「金翅鳥王旋風」 を「視て」覚えました。ただし威力や蒼炎の再現は出来ません。
※アスラソキノコを採取しました。何かしら影響が出るか否かは後続にお任せします。
※ソードスキル:勝利のルーン@サガフロンティアを習得しました。
※詳細な位置は後続にお任せします。

【エリア???/アビドス高校付近/9月2日午前9時45分】

【アスラン・ザラ@ネットミーム】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、自らの存在抹消を願う思い(極大)、マークニヒトの使用回数『3』、シン野郎を殴りステラの所へ向かわせたい気持ち(大)、シビト可奈美及びそれを操る相手への嫌悪と怒り(大)
服装:SEED DESTINYでのザフトの軍服(赤)
装備:
令呪:残り二画
道具:レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY、マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン、切島鋭児郎のレジスター、サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
思考
基本:まずは本物のアスラン・ザラを殺す!!!それで俺が消えないならば優勝して望みを叶える。縋るしか無いんだ俺は!!!!
00:今はレジスターの確保が先だ!!!!本物の俺が居たら始末しレジスターを手に入れてみせる!!!!レジスターは手に入れたぞ!!!!もう何個か欲しい所だがとりあえずアビドス高校へもう一度向かう!!!!
01:羂索達の裏に居る議長は俺を殺そうとしている!!!!!
02:キラは敵だ!!!!!篝!!!この…甘ちゃん野郎!!!!!
03:シン!!!!!居ないだとシン!!!!????何度でも殴ってやるぞシン!!!!語感が似た名前だったり名前にシンが入っていればお前もシンだ!!!!!バカヤロウ!!!
04:トゥ!ヘァー!
05:望みを叶えるなら他を殺すしかないんだ…何故わからない!?!?!?
06:わかった…。
07:おもちゃだったんだ、俺は…!!!!
08:レジスターの解除方法を探り残存参加者のレジスターを核爆発させる!!!!
09:あのキノコは何だったんだ!?!?!?!?
参戦時期:無し。(知識的にはこのロワが始まった2024年8月22日以前までのSEEDシリーズの展開やSEED関連のネットミームについては知っています)
備考
※ギルバート・デュランダル@機動戦士ガンダムSEED DESTINYが羂索達の裏に居ると勝手に決めつけています。また梔子ユメも羂索の協力者だと勝手に決めつけています。
※このアスランが抱いている自分の存在抹消を願う思いが彼自身の物か、それとも主催側が何かしらの干渉を行った事による物なのかは採用された場合、後続にお任せします。
※支給されていたソードスキル:Wの聖文字@BLEACHを習得しました。
※詳細な位置は後続にお任せします。
※真人、真昼、真鍋、レン、ジンガ、エンシンをシン野郎としました。今後シン野郎と見なした相手は増えます。


474 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 06:03:53 vWqWi8vM0
【エリア???/南方向の何処かしら/9月2日午前9時45分】

【柊真昼@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)、柊家への怒り(再燃)、益子薫への微かな期待、空腹
服装:普段の学生服
装備:ドゥームズドライバーバックル&オムニフォースワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー、ノ夜@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
令呪:残り三画
道具:精神に作用する呪符×10@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅(残り8枚)、ホットライン、どこだかドア@ドラえもん、クリスマスケーキ(フォークとナイフ付属)@仮面ライダーエグゼイド、ギガント@劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4(残弾数不明、1発消費)
思考
基本:優勝して好きな人(グレン)と妹(シノア)と一緒に、普通の人間として生きれる世界を願う。
01:今はとりあえず南へと向かってみよっと。
02:令呪三画…侮れないわね。
03:薫ちゃん、あなたはその憧憬を貫けるかしら?ついでに名簿で薫ちゃんの近くにいる知り合いっぽい子達に会ったら、薫ちゃんが人殺しになっちゃった事を伝えてみる。
04:主催者達が柊家絡みの線は薄くなったけど…今は情報が足りないわね。
05:基本皆殺しだけど、レジスターの解析やバグスターウイルスの対処が出来る人なら話は別かな。
06:こんな状況じゃなかったら、ルルーシュとは1回話してみたかったな。
07:羂索に一ノ瀬宝太郎くんにラウ・ル・クルーゼ…『ガッチャ』に何の意味があるのかしら??
08:舞衣ちゃんの事についても、薫ちゃんのついでに話してみよっと。
参戦時期:第一渋谷高校襲撃事件にて離反後、吸血鬼となる前の何処かから。
少なくとも漫画版7巻のInterlude〜生きる意味〜(第27話と第28話の間)よりは後。
備考
※詳細な位置は後続にお任せします。


475 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 06:22:05 vWqWi8vM0
【NPC紹介】
・メガセリオン・モデルのファフナー@蒼穹のファフナー Dead Aggressor
かつて人類軍が運用していた量産型のファフナーの1種。タフな精神を持って無ければ乗りこなせない。
今回の機体は灰色の一般機。

・帝ノ鬼所属の第一渋谷高校生徒(鬼呪装備)@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
漫画版での10巻にてグレン達を殺しに来たモブキャラ。このNPCは少女。
矢を雀蜂へと変え放つ弓の形をした遠距離型の鬼呪装備を持っている。(名称不明)
グレン達は彼女らの名前も知っているようだったが名前を思い出せば刀が鈍るとそのまま惨殺した。

・ゼニット@未来戦隊タイムレンジャー
ロンダーズファミリーが運用するアンドロイド。手負いだったとはいえ何気に数少ない戦隊メンバーを殺害した戦闘員でもある。
一応人間にも化けれるが動きでバレる、このロワで再現されてるかは不明。

・105スローターダガー@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
連合軍の特殊部隊ファントムペインにて運用される機体。
一応ラミネート装甲があるものの、シビリアンアストレイのビームライフルで撃ち抜かれる程度の効果しか無い。

・ヴィンセント@コードギアスシリーズ
ランスロット量産計画により造られたKMF。これはロロが乗っていた初期量産試作型ではなぬ普通の量産機の方。

・ガガキャノン@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
元特攻兵器を回収した物。ぶっちゃけ数合わせ兼残っていた機体の有効利用のような物で、ELSとの対話の際この機体で帰還できたのは1割にも満たなかったとのこと。

・プルーマ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
ハシュマルが生産する子機のMA。全てにナノラミネートアーマーが標準装備されている。

・リトルドラグ@セブンスドラゴン2020
攻撃力がやたら高く、スピードも中々のものを誇る外宇宙からの尖兵の1体な小さなドラゴン。

・デストロイガンダム@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
本来なら20m級だがこのロワでは10m程のサイズとなっているMAにも変形可能なMS。
破壊する為の多種多様なビーム兵器を持ち、TP装甲と陽電子リフレクターによる堅牢さもあるが、懐に潜られるとどうしようもない弱点も併せ持つ。

・小型ELS@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
金属生命体の小型版。このロワで融合されたらどうなるのかは後続にお任せします。

・パワーダイザー@仮面ライダーサモンライド!
・水のエル(強化体)@仮面ライダーサモンライド!
・仮面ライダーG4@仮面ライダーサモンライド!
・仮面ライダーサソード@仮面ライダーサモンライド!
前の話にて登場済みなゼロノスゼロフォームも含めて全員サモンライドの連中。全て雑魚敵として出てくる。
パワーダイザーはタックル、水のエルは紋章を宙に浮かばせ地面に押し付けると同時に爆炎を発生、G4はギガントを発射しサソードはやたらと攻撃範囲の広いライダースラッシュを放ってくる。
パワーダイザーはハッキング等かコックピットに入り込めば利用可能となっており、水のエルは洗脳系の能力を使えば味方化可能となっている。


476 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 06:35:16 vWqWi8vM0
【支給品紹介】
・ソードスキル:狩る者@セブンスドラゴンⅢ code:VFD
柳瀬舞衣に支給。狩る者とは、星(=この場合は地球を指す)の意思により先天的にドラゴンへと対抗する為の異能を身に着けた者を指す。2020-Ⅱでのアイテル曰く「星が生み出した防衛システム」との事。
しかし出典元及びこの殺し合いでの狩る者は、第7真竜になり得る存在の事を示している。

ソードスキルにしては珍しく、使用しても当人が力を行使する意志を示さない限りは何の影響も及ぼさない代わりに、順応しない内は力を行使すると思考しない限りそれらの利を得れない。
力を行使する意志を使用者が見せると、攻防速が大幅に上昇、更に適性のある職が習得できるスキルを行使可能になる。
(舞衣の場合はサムライのスキルが使用可能となる、ただし双剣用のスキルは一刀のみの状態では使えない)
また適応さえ出来れば更に能力が上昇し、力を使うと思考しなくともスキルを行使可能、かつ戦いや経験を積む程に能力が成長していくようになる。

ただしデメリットもあり、一度でも力を行使すれば適応出来るか否かの判定が始まり、適応出来なければ竜斑病を発症。咳から始まって、病状が進行すればまともに戦闘も出来なくなり最終的には大量に吐血した末に死亡する。
また適応途中で力を行使すればするほど、身体に負荷がかかり激しく疲労する仕様となっている。
竜斑病を発症した場合でも他参加者には感染しない物とします。適応出来るかどうか、適応にどれだけ時間がかかるか等は後続にお任せします。

このような仕様になったのは、元々先天性の、かつ強大な異能・才能である狩る者を無理矢理ソードスキルに落とし込み後天的に参加者へと付与した為である。

・ソードスキル:紅蓮の錬金術@鋼の錬金術師
アスラン・ザラ(本物)に支給、紅蓮の錬金術師ことゾルフ・J・キンブリーが使う錬金術がソードスキルへと落とし込まれた物。
対象を爆破物へと作り変えれる。原作での描写的に、爆破物以外にもそれっぽく偽造した普通の物に作り変える事も出来るようである。


・ソードスキル:十条家の呪法@終わりのセラフ 16歳の破滅
切島鋭児郎に支給、十条美十が使う、使用時に頭に赤い光輪が出る呪法。
自身の身体能力を限界まで高める効果がある。


477 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 06:36:03 vWqWi8vM0
【ドロップアイテム紹介】
・ゼロノスベルト&ゼロノスカード(ゼロフォーム用)@仮面ライダー電王
仮面ライダーゼロノスゼロフォームに変身するためのツール。
本来とは違い変身の対価が誰の記憶から消えるかはランダム、かつ対象は参加者の記憶限定となっている。
カードが何枚あるかは後続にお任せします。

・シン・アスカケーキ@ネットミーム
叫ぶシン・アスカの顔が描かれたケーキ。

・ジャスティスガンダムのガンプラ@現実
144分の1スケールのプラモデル。

・パイプ椅子@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
劇中でリボンズと同じ配列のイノベイドを乗っ取ったELSめがけて沙慈・クロスロードがぶん投げた物。GNパイプ椅子とも呼ばれる。

・ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ
創生の力が含まれているバックル。
このロワでは持っているだけで所有者の武器に蒼炎がエンチャントされるようになる。

・ソードスキル:勝利のルーン@サガフロンティア
武器の威力を上昇させるルーンがソードスキルとして落とし込まれた物。

・キメラのつばさ@ドラゴンクエスト1
本来とは異なりこのロワでは使うとランダムに会場内の何処かへと飛ばされるようになっている。

・ギガント@劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4
G4のメイン装備。客演時にはサイドバッシャーのミサイルと併せて仮面ライダーJを倒したりグランドジオウ達を吹っ飛ばしたりとその高い威力を見せる。
残弾数は後続におまかせします。

・サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
仮面ライダーサソードに変身するためのツール。
クロックアップについての制限などがこのロワでどうなるのかは後続におまかせします。

【会場内にあったアイテム紹介】
・アスラソキノコ@ネットミーム
トゥートゥー鳴る毒キノコ。学名はアスランマッシュルーム。
採取しただけで疑心暗鬼を拗らせ、食べると幻覚を見た挙句精神を強く病む効果がある。

改めて投下を終了します、申し訳ありません。


478 : 名無しさん :2025/02/04(火) 13:25:56 1uXGu0pc0
すみません、8eumUP9W6sさんに質問です。

『あんなに一緒だったのに/傷は消えず、仄暗く深き悲しみと共に』についてですが、NPCの仮面ライダー達から変身アイテムを奪い取り使用する事は確かに可能です。ですが説明書は付属していなかったはずです。支給されたアイテムではないので
その為、文章を1部修正する必要があると思われます。


479 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 22:23:07 vWqWi8vM0
>>478
説明書絡みについて失念していました、つきましては、拙作の説明書絡みの描写について以下のように書き直させてもらいまた一部追記を行います。

「そっちも片付いたようだな、舞衣。…それはドロップアイテムか?」
「はい、そうみたいです道外さん。デザイアドライバーという物が無ければ、真の力は発揮出来ないらしいですが…このブーストマークⅢバックルという物を持ってるだけでも、蒼い炎が攻撃に付属されるみたいで」
『恐らくはソードスキルとして、そのバックルに蒼炎の付与効果が内蔵されているのだと思われます』
「説明書も付属してましたけど、イルヴァの言う通りみたいで。…後炎は創世の力?って物が由来らしいです、道外さんは聞いたことはありますか?」
「…いや、聞き覚えが無いな」

「そっちも片付いたようだな、舞衣。…それはドロップアイテムか?」
「はい、そうみたいです道外さん。デザイアドライバーという物が無ければ、真の力は発揮出来ないらしいですが…このブーストマークⅢバックルという物を持ってるだけでも、蒼い炎が攻撃に付属されるみたいで」
『恐らくはソードスキルとして、そのバックルに蒼炎の付与効果が内蔵されているのだと思われます』


480 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 22:23:41 vWqWi8vM0
あのアスラン擬きに気絶させられて…気付くと俺の目に映ったのは、泣いてる柳瀬に、血塗れで無表情の制服の女。そして手元にはNPCから取れたベルトと、説明書。女は俺の事は気にも留めないまま、柳瀬に切っ先を向けている。
説明書の記述には、使用者の記憶を消耗して変身出来るなんて事が書いていた。…柳瀬のソードスキルよりはマシだけどデメリットが重たすぎるだろ!!…って言いたくなったが、そんな猶予がねェのは分かっていた。
…制服からして、あの女が…衛藤で、梔子ユメみたいに…遺体を使われちまってるんだろう。…柳瀬は衛藤の事を親友だって言ってた。……なら、ダメだろ…親友に、殺させるなんて事…させちゃ、ならねェ…!!

気付くと俺の身体はもう、勝手に動いていた。変身を遂げ、令呪とソードスキルで少しでも防御力を上げて、柳瀬を庇った……んだけど、なぁ…これで貫通される、なんてな……。

あのアスラン擬きに気絶させられて…気付くと俺の目に映ったのは、泣いてる柳瀬に、血塗れで無表情の制服の女。そして手元にはNPCから取れたベルト。女は俺の事は気にも留めないまま、柳瀬に切っ先を向けている。
何故か知らねえけど、ベルトを使うべきじゃないって、そんな予感がした。けれど…んな猶予がねェのも俺は、分かっていた。
…制服からして、あの女が…衛藤で、梔子ユメみたいに…遺体を使われちまってるんだろう。…柳瀬は衛藤の事を親友だって言ってた。……なら、ダメだろ…親友に、殺させるなんて事…させちゃ、ならねェ…!!

気付くと俺の身体はもう、勝手に動いていた。変身を遂げ、令呪とソードスキルで少しでも防御力を上げて、柳瀬を庇った……んだけど、なぁ…これで貫通される、なんてな……。

----

ゼロノスゼロフォームへの変身のデメリットは、ゼロノスカードを使用した者にまつわる記憶が、使用者を憶えている対象からランダムに忘れ去られることである。
とはいえ、仮にそのデメリットを頼雄斗が知っていたとしても…デメリットの重たさに驚きながらも、柳瀬のソードスキルのデメリットよりはマシだしなと、彼はゼロノスへの変身を選んだだろう。


481 : ◆8eumUP9W6s :2025/02/04(火) 22:24:45 vWqWi8vM0
『…舞衣は疲れから眠っているだけです。ソードスキルの消耗によるものかと』
「…リュウガ、イルヴァ。お前達は…誰が殺されたか、憶えているか…?」
「アスラン、何を言って……まさか、あのベルトが…」

頼雄斗が遺した、変身に使ったベルトの説明書を見る流牙。そこの記述により、彼はアスランに起きた現象を把握した。

「…アスラン、おそらくお前がライオットの事を覚えてないのは…このゼロノスカードの消耗のせいだ」
「…記憶を、対価にして仮面ライダーになるか。そこまでして…そのライオットという彼は…」

そしてベルトを手に取った流牙だが、ここでベルトから頼雄斗の声が流れて来た。
彼は物に触れることで、そこから流れてくる「声」を聞き取るサイコメトラーめいた事が可能なのだ。

『なぁ、柳瀬…俺…なれたかな…守れる、ヒーローに……』
「…ライオット…!」

自然と拳を強く握る流牙。イグスの時といい、守りし者とて取り零してしまう事はある。歴戦の魔戒騎士となってもなお、喪失には慣れなかった。

『…舞衣は疲れから眠っているだけです。ソードスキルの消耗によるものかと』
「…リュウガ、イルヴァ。お前達は…誰が殺されたか、憶えているか…?」
「アスラン、何を言って……まさか、あのベルトが…」

頼雄斗が遺した、変身に使ったベルトを取ってみる流牙。
するとベルトから頼雄斗の声が流れて来た。
彼は物に触れることで、そこから流れてくる「声」を聞き取るサイコメトラーめいた事が可能なのだ。

『なぁ、柳瀬…俺…なれたかな…守れる、ヒーローに……』
「…ライオット…!」

自然と拳を強く握る流牙。イグスの時といい、守りし者とて取り零してしまう事はある。歴戦の魔戒騎士となってもなお、喪失には慣れなかった。

そしてこれを用いて頼雄斗が変身してたのを知っているのもあり、流牙はアスランに起きた現象をある程度だが把握、おそらく変身の対価として周囲から記憶が消えるのだと察した。

(…魔導輪との契約みたいな物か。最も…自分じゃなく周囲、それも命ではなく記憶から対価を払うようだが)
「…アスラン、おそらくお前だけがライオットの事を覚えてないのは…このアイテムを使って、ライオットが仮面ライダーになって戦った結果だろう」
「…記憶を、対価にして仮面ライダーになる…か。そこまでして…そのライオットという彼は…」


482 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/05(水) 23:02:02 05.6swCc0
修正ありがとうございました。


483 : ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:02:22 dV/MzLTg0
投下&修正お疲れ様です
自分も投下します


484 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:04:01 dV/MzLTg0
民家内の安全を確認し終えると同行者へ手招きし、大丈夫だと伝えられる。
コクリと頷いた少女は周囲へ気を配りつつ、保護対象と共に足を踏み入れた。
音を抑えるように扉を閉め、先に中へ入った王と合流。
ようやく一息つけると分かり、はしたないと思われない程度に力を抜く。

「二人共大丈夫?」
「はい、私は問題ありません。まふゆは…」
「わ、わたしも大丈夫だよ。」

口にした言葉とは裏腹に小型の恐竜を強く抱きしめる様は、相応の恐怖を感じたのだと分かる。
ギラにもユフィリアにも、まふゆがそういった反応を見せるのは無理もないと思えた。

風都で連続殺人事件を起こした男の支給品を回収後、方針を纏め旧幻夢本社へ向けて出発。
となったはいいものの、運の悪いことに出鼻を挫かれるアクシデントに見舞われた。
主催者が各エリアに配置し、参加者を襲うようにと指令をインプット済みのNPC。
その集団に出くわし戦闘へ発展。
無論、ギラもユフィリアもNPC複数体に梃子摺る程軟では無い。
問題なのは出現した数だ。

彼を襲ったNPCとはミラーモンスターの一種、シアゴースト。
ヤゴの特性を備えたこのモンスター、一体一体の能力は然程高くなく動きも緩慢。
しかし個体数が非常に多く集団戦法を用いるのを殺し合いでも再現され、現れたのは10や20どころではない。
さながらライダーバトルが起こった世界で大量発生した時のよう。
加えて時間経過で飛行能力を宿す進化態、レイドラグーンへと脱皮。
トドメとばかりにミラーワールドを行き来可能な力も利用し、不意打ちを行う者も少なくなかった。
幼いまふゆを守りつつの戦闘で目的ルートの北部から外れ、どうにか全滅に追いやったが消耗は避けられない。
ギラとユフィリアだけならば体力的な余裕は十分あるが、まふゆに移動を強いるのは酷。
よって一度民家に立ち寄る事となった。


485 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:05:29 dV/MzLTg0
「いきなり災難だったね…」
「ええ……」

とはいえ他の善良な参加者の安全確保に繋がると思えば、先の戦闘も無駄にはならない。
まして三人は知らないが、現代都市エリアには宇蟲王へ堕ちたギラもいた。
仮にもう一人のギラがシアゴーストの大群を見付けた場合、一匹残らず支配下に置かれただろう。

「おにいちゃん、おねえちゃん、ごめんなさい……」
「どうしてまふゆが謝るのですか?」

落ち込んだ様子で突然の謝罪へ、困惑気味に尋ねる。
謝るべきことなどこの少女は何もしていない。
意図が読めず聞き返すと、ビクリと震えながら口を開いた。

「わたしが疲れちゃったから、またお休みしてるんだよね…?ふたりとも、はやく行きたいところがあるのに…」

先の戦闘でも、手強いギラ達よりまふゆを執拗に狙うレイドラグーンがいた。
ミニティラが守りはしたものの数が数だ、近付けさせないようギラ達も神経を張り詰め迎撃。
攫われもせず傷の一つも付いていないが、怪物の大群に襲われる光景はまふゆに少なくない恐怖を与えた。
そういった心身の疲弊に気を遣ってくれたと幼いながらに察し、二人の足を引っ張り申し訳なさを抱いている。

「ごめんなさい…ふたりの邪魔をしちゃうわるい子で……」
「そんなことは……」

悪い子、まさかそのような言葉が出るとは思わず言葉が詰まる。
潤んだ瞳から雫が零れ落ちるのも時間の問題。
そうなる前に、屈みこんで視線を合わせるのはギラ。
責めなくてもいい事で自分自身を責め、心に引っかき傷を作る。
まふゆがやろうとしているのを見過ごせない。


486 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:06:27 dV/MzLTg0
「まふゆは悪い子なんかじゃないよ。恐い目に遭ったのに、僕達のことを考えてくれる優しい子だ」
「やさしい…?」
「うん。優しいのに悪い子なんて嘘を吐くなら、邪悪の王である俺様がこうしちまうぞ〜!」
「うにゃっ!?くしゅぐったいよぉ」

柔らかい頬を軽く揉まれ、こそばゆさに自然と笑みが生まれる。
まるで仲の良い兄妹のようなやり取り。
まふゆが抱えたミニティラがギラの指に齧り付けば、バッと手を離しわざとらしく仰け反った。

「ぬぅ!?小さくも強き竜よ、邪悪の王に楯突くとは良い度胸だ!」

さながら御伽噺の悪役を思わせる台詞へ、勇ましく咆える小さな獣電竜。
間近のやり取りはまふゆの暗い感情を徐々に薄め、年相応の無邪気な顔を取り戻す。
そんな様子を驚いたように見つめる瞳に気付き、齧られた指を擦りながらギラが問い掛けた。

「ユフィリア?どうかした?」
「あ、い、いえ。何でもありません、失礼致しましたギラ様」

取り繕うように頭を下げる。
無意識の内にか不躾な視線を向けていた自分を内心で叱咤。
異なる世界とはいえ一国の王、失礼があってはならないだろうに。
因みに名前もさん付けで呼ばれていたのだが、呼び捨てで構わないと伝えてある。
格式ばった事に拘らなくて良いとは言われたものの、国王へさん付けさせるのは幾ら何でも不敬。
婚約破棄された身なれど、次期王妃として徹底教育を受けたユフィリアは内心気が気でなかった。


487 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:07:16 dV/MzLTg0
(不思議な御方、ですね……)

それでもふと思ってしまうのは、目の前の王が自分の知る貴族とは大きく違うだからか。
子供と同じ目線に立ち、保護対象としてのみならず友のように接し心を開かせる。
同時に剣を握った際の立ち回りは武芸に秀でたユフィリアをして、見事と言わざるを得ない。
パレッティア王国の貴族が持たなければならない責任感を、彼も当然のものとし宿していた。

何より印象深いのは、彼が口にした邪悪の王。
あくまで自らを鼓舞する為であり、素のギラは自分やまふゆと接する時の温厚な青年だとは分かる。
ギラが言う邪悪とは言葉通りの、他者を傷付け暴虐に振る舞う者ではない。
力による理不尽な服従を打ち破り、押し付けられた道を否定し自らの邪道で塗り変える。
型破りながら己の定めた王道を微塵も外れぬ姿勢。

その姿に、どうしても元の世界に残した者達を思い浮かべる。
魔法の権威が根付く王国で、魔道具という貴族にとっての『邪道』を生んだアニスフィア。
貴族の横暴で腐りゆく国へ憤り、民が魔法という呪いに蝕まれる現状を変えようとしたアルガルド。
精霊信仰が引き裂いた姉弟の、決闘の結末を見たからこそ考えてしまった。
邪道を以て古の風習を終わらせ、民一人一人の為に尽力する王が、あの二人が手を取り合いパレッティア王国を変えたもしもの未来を。

「……っ」

そう考えて、一瞬でもギラとアニスフィア達を比べようとした自分へ猛烈な嫌悪感を抱く。
アルガルドが事件を起こした原因の一つは、婚約者としての完璧ばかりを考えた自分が彼に歩み寄らなかったからだろうに。
己の至らなさへの怒りが意識せず顔に浮かんだのか、真正面のギラが驚くのが見えた。

「えっと、もしかしてさっきの提案に怒ってる…?ご、ごめん!当たり前だよね、あんな失礼なこと言うなんて…」
「え?……い、いえ!違います!戦力を考えれば間違っては…あ、頭をお上げください!国王陛下ともあろう御方が、私なぞにそのような……!」

シアゴーストに襲われる前の移動中、ユフィリアに一つ相談を持ち掛けた。
回収した支給品、ドンブラスターの使用について。
自前のオージャカリバーがある自分はともかく、戦力強化の意味も込めて彼女に渡そうかと考えた。
生身でも剣術と魔法の二つを天才と称されるレベルで発揮するが、ドンブラスターで変身するメリットは大きい。
問題となるのは変身した場合、不可思議な制約により肉体の性別まで変わる一点。
そう伝えると難しい、というより引き攣った顔を浮かべられた。

「本当にごめん!忘れちゃって良いから…!」
「ギラ様がそうおっしゃられるなら……で、ですから頭をお上げください!」

冷静に考えなくても当たり前だ。
まだ15歳の少女へ一時的でも男の体になれなど、幾ら何でもデリカシーが無さ過ぎる。
王様戦隊の面々が見たら揃って呆れるに違いない、特にヒメノとリタからは何を言われるのやら。
謝られている当の本人は国王に頭を下げさせた現状へ、顔を真っ青にしそれどころではないが。

「ふたりともどうしちゃったのかなぁ?」

片方が全力で謝りもう片方は大慌て。
不思議な光景に首を傾げるまふゆの腕の中で、ミニティラは呆れたように首を振った。


488 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:08:14 dV/MzLTg0
その後、どうにか落ち着きドンブラスターは一先ずギラが持ったままで話は纏まった。
休憩も十分済まし、頃合いを見計らって民家を出る。
当初は旧幻夢本社へ行くつもりだったが、現在位置から最も近いのは富良洲高校なる施設。
ならまずはそちらに向かい、物資の確保や協力者の捜索を行うと決定。

通行人は存在しない、息が詰まる程に静まり返った街を行く。
三人と一体の足音以外は何も聞こえない空間を、どれくらい進んだ時か。
ミニティラが唸り声を上げ、ギラとユフィリアも揃って同じ方を睨む。
彼らの様子にただならぬものを感じ、震えるまふゆを背に庇う。

自分達以外の気配が濃くなった。
またNPCか、今度こそ参加者か。
友好的な者か、主催者の甘言に惑わされ殺戮に手を染めんとする輩か。
腰に下げた剣をいつでも抜けるよう意識し、気配の正体がなにかを見極める。

(騎士の方、でしょうか?)

豪奢な青い外套を羽織り、白を基調とした衣服に身を包んだ青年。
学院に通っているだろう若さだが、パレッティア王国では見慣れぬ人種。
誉ある騎士団の一員、そう言い切るには余りに昏い目だ。
どれ程の絶望を味わったのか、どれ程の憎悪を抱え込んでいるのか。
血を分けた家族と殺し合った元婚約者の顔が、名も知らぬ青年に重なる。

「……」

ギラ一行の姿を捉え、相手も取るべき行動を決めあぐねる。
己の最終目的は勝ち残って理想の世界を創ること。
その過程で、許し難き嘗ての親友を討つ。
優勝と復讐、どちらも妥協は出来なくとも至るまでに取れる手は千差万別。
善良な仮面を被り、他者を欺き復讐に役立てる。
誰彼構わず剣を向ける必要も無い、時が来るまで牙を研ぎここぞの場面まで温存するのも悪手に非ず。


489 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:09:17 dV/MzLTg0
「……っ!」

『SET AVENGE』

そう理解して尚も、この道しか選べない。
トリニティの魔女から冷たく吐き捨てられ、シビトと化した刀使と斬り合い、己の方針に疑問を抱いたのは事実。
優先順位を考えようとし、なれど脳裏に焼き付く地獄の如き光景が魂を狂気から離そうとしない。

「変身…!」

『BLACK GENERAL BUJIN SWORD』

消し飛ばされたトウキョウ租界。
敵も味方も、あろうことか戦いとは無関係の者の命まで奪った。
背負いきれない、決して消えない罪の重さが突き動かす。
数多の屍を積み重ねてでも、望む世界を実現させろ。
でなければ最早、マトモに立つことすら出来なくなるのだから。

「理想の世界の為に、ここで死んでくれ…俺には結局、こうする以外にないんだ…!」

『READY FIGHT』

東の少女へ、歌姫へ、魔女へ、己の心を揺さぶった者達へ叫ぶ。
ナイトオブセブン、その称号も最早フレイヤを使った大虐殺の前には塵に等しい。
過程を重視した青年の面影は大罪により砕かれた。
仮面ライダータイクーン・フジンソードに姿を変え、枢木スザクが殺意を撒き散らす。

漆黒の将軍の降臨に、王達も戦うしかないと理解。
剣を抜き、来る刃に備えようとし、





「わぁ〜!人がいたでちゅ〜!」





「え、な、何?」

突然聞こえた舌足らずな声。
今正に戦闘が始まるとこのタイミングで、空気を完全にぶち壊す。
敵の仲間かと疑うも、どうやら向こうも覚えはない様子。
ギラ達同様、困惑を隠さずに声が聞こえた方へ顔を動かした。
皇神楽耶と妙に似ている声だが、当然ながら彼女な筈もない。


490 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:09:57 dV/MzLTg0
そこにいたのは人では無い、しかし先のミラーモンスターとも違う存在。
ずんぐりとしたまるで着ぐるみを思わせる体型。
青い瞳は大きくくりくりとしており、丸い頬はピンク色。
おしゃぶりを咥え、天使の羽にも似た髪の何とも奇妙な赤ん坊。
一目で人でないのが明らかであれど、庇護欲を大いに刺激する愛らしさがあった。

「うわぁ!かわいい〜!」

現れたのは、遊園地のマスコットキャラクターと言われても違和感のない存在。
不安気な顔から一転、まふゆはキラキラと目を輝かせる。
抱きしめたミニティラが不機嫌そうに咆えた。

「あいつも敵…なのか?」
「…………はっ、え、ええ、油断は禁物ですね」

反応が妙に遅く訝し気に見やれば、ユフィリアの目が泳いでいる。
先程に比べて頬にも赤みが増しており、気を引き締め直さんと頭を振った。

(なんでしょうこの奇妙な感覚は……)

まふゆ程分かり易くは無いが、謎のNPCを見ていると戦意が途端に薄れ出す。
傷付ける事の憚れる愛くるしさに、油断すれば剣を落としそうだ。
これでは駄目だと自身に言い聞かせようにも、NPCの姿が視界に映る度に胸が熱くなり落ち着かない。

その状態こそ敵の望むものだと、直ぐに思い知る羽目となる。


491 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:10:37 dV/MzLTg0
「今でちゅ!ガラガラビーム!」
「なっ!?」

緩い空気を一気に引き締めさせたのは、NPCが放った光線。
手に持った赤ん坊の玩具、ガラガラから熱線が襲う。
アスファルトへ命中し、火花が弾け全員の視界を覆い隠す。
生まれた僅かな隙でNPCは動き、まふゆの腕を掴んで引き寄せた。
妨害に出たミニティラをガラガラで殴り、一目散に去って行く。

「こいつはもらってくでちゅ!お前達から引き離して悲しませた後で、ジ・エンドにしてやるでちゅよ〜!」
「っ!?や、やだ!離して!」

可愛らしい見た目の裏の本性にようやく気付き、藻掻くも無駄な抵抗だ。
ガッチリと捕らえられ見る見る内にギラ達から遠ざかる。
この体系で何故こうも早く逃げられるのか疑問に思うも、下を見れば即座に解消。
体が宙に浮いている、より正確に言うならNPCが飛行していた。

見た目こそ愛くるしい赤ん坊だが、NPCの正体は間違っても天使などではない。
獣電戦隊の宿敵、デーボス軍が生み出したデーボモンスターのデーボ・キャワイーンである。
元の世界では幼い子供から親を引き離し、悲しみの感情を集める目的で動いていたが此度の舞台は殺し合い。
デーボス復活の為の感情エネルギーは必要無く、ましてこのデーボ・キャワイーンはオリジナルに近い形で再現されたNPC。
幼い子供の参加者を仲間の元から連れ去り、悲しませてから殺すというオリジナルとは別ベクトルで質の悪い目的で動くよう設定を受けた。

「まふゆ!」
「くっ、さっきのは魅了魔法の…!」

姿を見ただけで急激に庇護欲を刺激されたのは、嘗ての婚約破棄騒動の原因の一つと同様。
他者を魅了し正常な思考を奪い去る、ヴァンパイアの魔石。
レイニ・シアンと似た術にまんまと嵌ってしまった。
厄介なのはレイニと違い、あのNPCは己の力を自覚し利用している所か。
他者への判断に徹底して感情を抜いた学院時代と違い、離宮での生活で自分の感情を出すようになった事が、却って能力の影響を受けやすくなったのは皮肉だろう。
己の失態を責めたいが、急いで追いかけまふゆを無事に取り戻す方が先決。


492 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:11:30 dV/MzLTg0
「どこを見ている!」
「っ!」

だというのに漆黒の将軍が道を開けようとしない。
レイピアとも違う細身の剣、武刃の一撃をギラが防ぐ。
得物は自身の方が厚く重量もある筈なのに、異様な重さを感じる。
今はそれどころじゃ無いと、言うだけ無駄な気迫を間近でぶつけられればどう動くかを即断。
武刃を防いだまま仲間に叫ぶ。

「こいつは僕が引き受ける!ユフィリア達はあっちを追ってくれ!」
「…っ。承知いたしました!どうかご武運を!行きますよミニティラ!」

ギラ一人を残す躊躇を抱くも、迷えばその分危険に陥るのはまふゆだ。
会って数時間かそこらの少女で、ギラのような国家の運営に大きく関わる人間ではない。
争いとは一切無縁で平和に暮らしていた、自身の世界で言う所の平民。
なれど犠牲の容認を認める程、人でなしになったつもりはない。
親元から無理やり引き離された挙句、望まぬ殺し合いの地で息絶える。
力無き善良な少女がそのような理不尽極まる末路を強いられるなら、手遅れになる前に阻止してみせるまで。

ミニティラを肩に乗せ駆け出す。
敵は空を自在に飛び回り、遠く遠くへと向かう。
飛行魔法は自分でさえ制御に苦労するものだというのに、まさかあんなNPCが簡単に実現するとは。
ある意味この光景をアニスフィアに見せずに済み、良かったと言っていいのかもしれない。

ユフィリア達の離脱を確認し、タイクーンの腹部を蹴り付ける。
ダメージは一切期待出来ないがそれでいい、反動を利用し後退。
一刀防げば生身のまま相手取るのは悪手と理解。
剣のトリガーに指を掛け、こちらも王の戦装束を身に纏う。


493 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:12:15 dV/MzLTg0
『Qua God!』

「王鎧武装!」

『You are the KING You are the You are the KING!』

『クワガタオージャー!』

纏う装甲は灼熱の赤。
熱風により肩から垂らしたマントが靡き、黒のバイザーが敵を捉える。
守るべき民へ剣が向けられるならば、同じく剣を以てして守護するのみ。
シュゴッタム王国が国王ギラ・ハスティーのもう一つの姿、クワガタオージャーがここに降臨。

「あああああああああああっ!」

レイズバックルや機動鍵とは異なる変身方法に、然したる驚きは抱かない。
相手が誰であろうと屍に変え、理想の世界の礎とする。
タイクーンが自分以外の参加者に求めるのは死以外になく、対話の余地を入り込ませはしない。
悲鳴染みた絶叫を上げ突撃、纏った鎧ごと叩っ斬る勢いで刀を振り下ろす。

「はあっ!」

自らへの鼓舞を籠め、短くも力強い一声と共に迎え撃つ。
王の身を走る下賤な刃は届かせない。
ブジンソードの専用拡張装備、武刃は並の防御を容易く突破し切り刻む。
なれどクワガタオージャーの得物も並に非ず。
選ばれし王の証、オージャカリバーの切断は如何に最終形態のタイクーンとて困難を極める。
刃同士が衝突し互いに砕けず拮抗。

どちらも相手の優勢を許すつもりは無い。
余計な小細工を用いず、真正面から斬り勝利を収める。
共通したファイトスタイルの両者が腕に力を籠め、競り勝ったのは真紅の王。
押し返し僅かによろけたタイクーンへ一撃を見舞う。


494 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:13:04 dV/MzLTg0
「舐めるなぁっ!」

隙をこじ開けられたなら、再度埋め直せば良い。
袈裟斬りに対し武刃を切り上げ、弾き返し逆にがら空きの胴を作る。
王の鎧だろうと関係無い、願いへの重さが宿った斬撃が襲う。

上半身を軽く捩って躱し斬り付けるも、手元へ戻した武刃で防御。
重厚な装甲に反し動きの一つ一つが速い。
しかし速さと言うならクワガタオージャーとて引けは取らず、四方八方より怒涛の攻めを繰り出す。
耐久性と動きやすさの両立を実現させた、王の装束だから叶う動きだ。

対するタイクーンの動きも激しく、それでいて的確。
剣を防ぎ、隙を見極め斬り付け、時折刃が当たるも微動だにしない。
分厚い装甲は決して見掛け倒しに非ず、歴戦のライダーの攻撃すら弾く強度だ。
変身者が桜井景和でなくとも、性能の高さは変わらない。
攻めに転じた筈が肝心の剣の効きが悪く、敵の勢いを削げずに却って反撃の手を増やすばかり。
徐々にクワガタオージャーの不利へ傾き、仮面の下で一筋の汗が滴り落ちる。

(何だこの動き……)

言動や態度から精神的な余裕はゼロに近く、何かに追いつめられるように自分達を襲った。
心の迷いはダイレクトに剣へ出る。
シュゴッタムの王城でラクレスから王の証を奪い、今日に至るまで戦ったが故に味わって来たことだ。
だというのにタイクーンの剣筋は精神の脆さとは正反対に鋭い。
何がここまでの強さを引き出しているのか。
変身者自身の戦闘センスも勿論理由の一つだろうが、何よりも纏った装甲による所が大きい。

デザグラに登録されたライダーの中でも上位の基本スペック。
胸部の拡張装備が己が刀一本での制圧を可能とする戦闘力を付与。
各部装甲箇所は防御面のみならず、剣技を用いる上での理想的な体捌きを実現。
更には頭部に搭載した機能が間合いの敵を斬る最適なアシストを行う。
標的を斬り倒す、その一点に特化し調整を施されたのがブジンソード。
安定から程遠い精神のスザクを最大限に補強し、油断ならない強さの発揮を可能としている。

未完成ながら創世の女神の力で生み出されたバックルだ、クワガタオージャーでも易々と勝てる相手ではない。
とはいえ未だに命を奪われず、伸ばされる死への誘いを跳ね除けるのもギラの強さの証明。
タイクーンがレイズバックルの機能で剣術を発揮するなら、ギラの剣はこれまでの実戦に裏打ちされたもの。
バグナラクや宇蟲五道化相手に繰り広げた死闘、時には実兄ラクレス・ハスティーとの決闘。
数々の戦いにおいて剣は常に王様戦隊と共にあった。
クワガタオージャーに変身しての強化のみに頼らない、ギラ自身が磨き上げた技でタイクーンに食らい付く。


495 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:13:56 dV/MzLTg0
『BUJIN SWORD STRIKE』

数歩の所で届かない現状に苛立ったのか、一際強く相手を弾き飛ばしタイクーンが勝負に出る。
バックルを操作し必殺のエネルギーを得物に付与。
円を描くように武刃を振るい、真正面から斬り込む。
シンプルながら仮面ライダーバッファを打ち破った、強力無比な斬撃だ。

『OHGER FINISH!』

高威力の技の発動を察知し、クワガタオージャーもトリガーに指を掛ける。
友にして相棒、ゴッドクワガタのエネルギーを刀身に纏わせ振り下ろす。
バグナラクとの戦いで強敵達を屠った刃が、武刃と真っ向から激突。
ほんの少しでも気を逸らせば即座に牙が突き立てられる、故に双方敵から目を逸らさない。
一歩たりとも押し負けまいと腕に力を漲らせる。

「どうして君は……この強さを殺し合いの為に使うんだ…!?」

鍔迫り合いの最中、苦し気ながらも王が問う。
自分自身を追い詰めているとしか思えない叫びを聞き、問わずにはいられなかった。

「守るべき子供や…優しい人達を犠牲にして…!羂索達の言い成りになって理想を叶えたって、そこは虚構に満ちた今以上の地獄じゃないのか!?」
「っ!そんなことはお前に言われるまでもない!!」

糾弾とも取れる王の言葉に、騎士も堪らず叫び返す。
自分の選択が正しさとは程遠いなど、本当なら分かっている。
親友を殺すだけではない、他の無関係な人達まで手に掛け、願いを叶えてくれる保障のない連中に首を垂れるのだから。

「だとしても、俺にはもうこれしか残っていないんだ!ここで止まったら、躊躇したら俺は何の為に……!」
「そうやって突き進んでも、君自身は救われないだろう!」

激情に支配された頭が、瞬く間に困惑で染まる。
何を言われたのか理解出来ないとでも言う風に、仮面越しに相手を見やった。


496 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:14:42 dV/MzLTg0
「僕は君が何をやったのか、何がそこまで君を追い立てるのかは知らない。だけど…!」

罪を犯した者には相応の罰を下さねばならないのを、否定するつもりはない。
形はどうあれ悪事に手を染めたのなら、償いが求められるのだって当たり前だ。
だがしかし、罪の重さに圧し潰され苦しんでいる者は救われてならないと言うのは、違うと断言出来る。

「自分のやった事で君が道を見失っているなら、僕はそれを見過ごせない…!」

守る為とはいえ人間を手に掛け、罪悪感に苦しむギラだからこそ。
ともすれば自分以上の苦痛に苛まれ、血を吐きながら更に罪を重ねようとする相手を放っては置けない。
彼に何らかの罰が下されるとしても、過去の行いが消えないとしても。
ここで止めなければきっと、進んだ先で彼は今以上の後悔と絶望を味わう。

「な、ん……」

王の言葉は罪の追及以上に深くスザクへ突き刺さる。
幼少時に父を殺して以来、罪の意識は絶えず付き纏って来た。
結果の為には何よりも過程を重視する価値観を生み、それすらフレイヤ発射で崩れ去った。
許される筈が無い、手を差し伸べられていい訳がないと誰よりもスザク自身がそう考えている。

なのに目の前の青年は、よりにもよってそんな自分にも救いがあるべきと言ってのけた。
ふざけるなと言い返そうにも、肝心の言葉が喉の奥でつっかえ出て来ない。
仮面でお互いの顔が見えずとも、間近で感じられる気迫で理解できる。
この男はふざけているのでも半端な同情から告げたのでもない、ありのままの本心をぶつけたのだと。

「僕は……」

声が震える、真っ直ぐな王の前へ立ち続けるのにどうしようもない後ろめたさが宿る。
伸ばされた手を、己の過ちを正す刃を――


497 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:15:52 dV/MzLTg0
「……無理だ!全部無理なんだよ!」

脳裏に焼き付き離れない、地獄の如き光景が跳ね除ける。
死体一つ残らず焼き払われたトウキョウ租界が、手を取る選択をスザクに取らせない。
ルルーシュに掛けられたギアスが原因だとしても、フレイヤを撃った事実には変わらない。
あの光景を生み出したのは他でもない己だと、覆せない罪がスザクを勝利へ突き動かす。

「お前も僕の願いの為に、ここで死ね!!!」
「ぐう…!?」

王者の顎を砕き、武刃が王の装束を食い千切る。
血飛沫のように火花を散らし吹き飛び、地へ背中を付けた。
クワガタオージャーから生身へと戻り、節々の痛みに低く呻く。

(勢いを殺してこれか……!)

オージャカリバーとの打ち合いで幾分か削がれたにも関わらず、変身解除へ持っていかれる威力。
不死身の肉体を持つとはいえ、痛みを感じない訳ではない。
まして制限を受けた殺し合いでは、いつ死者へ名を連ねてもおかしくはない。
苛む痛みを噛み殺し、剣を支えに立ち上がる。
敵が健在な以上は呑気に転がっていられない、再度クワガタオージャーの鎧を纏う。

意識を逸らしたのは、懐から転がり落ちた一丁の銃だった。

「……」

それを使うことを全く考えなかったとは言わない。
力を借りたとしても、別に責められるものでもない。
ただ自分は既に、シュゴッダムの王として殺し合いの打破を決意した身。
故に王様戦隊としての姿以外になる気は無いと、そう考えた。

(いや、でもそうか……)

しかし、しかしだ。
定められたルールだけに従い、型に嵌ったやり方へ馬鹿正直に従う。
そんなものが自分らしいかと言うなら、否と答えざるを得ない。
押し付けられた正道とは相反する邪道こそ、己にとっての武器ではないか。

いつの間にやら凝り固まっていた頭につい苦笑いを浮かべ、銃を拾う。
僅かな躊躇が生まれるも、脳裏へ浮かぶは破天荒な男の顔。
都合の良い妄想と言われたら否定できない。
燻る後ろ向きな想いを掻き消すように、不敵な笑みで男が言った。


498 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:16:58 dV/MzLTg0
――『面白い、お前が俺の力に恥じない戦いが出来るか見ていてやろう!』

「……ああ!しかと見ていろ桃井タロウ!貴様の度肝を抜いてくれるわ!」

負けじと笑みを浮かべ、ドンブラスターにギアを装填。
慣れた変身方法と全く異なる工程を挟む、
王様戦隊とは異なる世界で戦い抜いた、赤き戦士へ姿を変える時だ。

「アバターチェンジ!」

『いよぉー!どん!どん!どん!どんぶらこ!アバタロウ!』

『ドンモモタロウ!よっ!日本一!』

クワガタオージャー同様の赤いスーツ、なれど姿は完全に別物。
侍を思わせる丁髷が頭部から突き出し、額にはメタリックな桃の装飾。
瞳を隠す巨大なサングラスは、これまた桃の葉と桃尽くし。
破天荒なドン王家の末裔、ドンモモタロウが異界の地に立つ。

右手には専用装備のサングラソード、左手にはギラ本来の得物であるオージャカリバー。
元の変身者とは違う双剣スタイルで構えを取る。
勝負はここから、新たな祭りの始まりだ。

「姿を変えたからなんだ…!」
「邪悪の王が繋いだ縁の力を甘く見るなよ!」

啖呵を切り合い疾走、間合いに入るや否や刃が激突。
タイクーンの戦法はこれまで同じ。
武刃一本での制圧を可能とする、極限まで引き上げられた剣技。
対するは二つの戦隊のリーダーの得物を組み合わせた二刀流。
先程までのクワガタオージャーと違うのは、手数が増えたことのみではない。
動作一つ一つがより荒々しく、全身を派手に動かしタイクーンを攻め立てる。


499 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:17:51 dV/MzLTg0
「祭りだ祭りだ!貴様も派手に踊るがいい!」

高笑いを上げながら両腕を振るい、二方向より刃が襲来。
横薙ぎの武刃で弾き返し、踏み込み胸部へ切っ先を伸ばす。
突いたのは赤いスーツではなく熱気が漂う宙、空振りを悟ると同時に敵の位置を把握。
上体を倒し回避、そこから地面へ転がり込んで真横へ移動しての斬り付けが迫る。

「それがどうした…!」

マントを翳しながらタイクーンも回避。
己の手元を隠し次の剣を読ませないまま蹴り付け、防いだ瞬間に再度突きを繰り出す。
真っ直ぐに向かう刃は真下からの切り上げで、タイクーンの意思と無関係に跳ね上げられた。
引き戻すまでの数秒あるかどうかの猶予を使い、ドンモモタロウが腹部へ蹴りを放つ。

僅かに後退したタイクーンを追うように跳躍、宙で回転しつつ双剣を振るう。
勢いを乗せた刃は自身の得物を防御に回し防ぐ。
ドンモモタロウの着地を見据えたタイミングで武刃を振るうも、敵とてそう来るのは予測済み。
双剣を叩き付け己から力ませに遠ざけた。
防がれたなら当たるまで斬るだけ、そんなタイクーンの殺意へ応えるかのように双剣を振るう手を止めない。

「貴様を駆り立てるものも、貴様が過去に何をやったかも俺様は知らん!」

デザグラのライダーに拡張装備は数多くあれど、一点特化の極致はブジンソードのみ。
復讐心に突き動かされた願いが形となり、己のみで理想の世界を実現出来る力。
それこそがタイクーンの今の姿なのだから。

「だが!過去の行いを新たな罪で上塗りし、貴様個人の為に他者へ犠牲を強いるそのやり方は!」

武器の数で劣っていようと関係無い。
たとえ相手が複数人だろうと制圧し、ただ一人の勝者となる。
そうするだけの力を秘めたタイクーンに、姿を変え武器を増やした程度では叶わない。
その筈だった。


500 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:18:39 dV/MzLTg0
「つまらん!下らん!!気に食わん!!!」

だというのに現実はどうだ。
未だ敵を倒せない、刃が届いても膝を付かせず止められない。
双剣の勢いは加速し防御をすり抜け、装甲越しに騎士を切り裂く。
強固な耐久力を持つとはいえ幾度も刃が当たり続ければ、徐々に痛みは増し体力も削られる。
殺せる筈の相手に自身の剣が届かない現状は、タイクーンの焦りにも繋がった。

「軽い軽い!貴様の剣は軽い!確固たる意志なき剣など、幼子の振るう棒切れにも劣るわっ!」
「黙れ…!!」

互いに一際強く得物を叩きつけ合い、揃って後退。
逸る感情に背を押され、レイズバックルを操作。
一度は変身解除へ追いやった剣をもう一度食らわせるべく、武刃へエネルギーを纏わせる。

『BUJIN SWORD STRIKE』

電子音声が充填完了を伝え、鞘に納める。
降伏の意思では無い、鞘内部の機能により切れ味を研ぎ澄ませた上で抜き放つのだ。
なればドンモモタロウも逃げはしない、サングラソードのギア部分へ手を伸ばす。

『HEY!HEY!HEY!COME ON!』

『アーバタロ斬!アバタロ斬!アーバタロ斬!アバタロ斬!』

ギアの回転により威力を最大まで強化。
合の手を入れる音声が響く中、タイクーンの元へと駆け出す。
馬鹿正直に突っ込んで来るならむしろ好都合、自ら猛獣の餌になるのと変わらない。

「終わりだ…!」

間合いに一歩踏み込んだ瞬間が最後、必殺の居合を解き放つ。
剣を振り下ろしたとて意味はない、弾かれ頭上をクルクルと回る。
使い手から離れた得物には一瞥もくれてやらず、本人を斬り殺さんとし、


501 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:19:13 dV/MzLTg0
「な――」

赤い敵が視界から消え失せた。

(違う!あいつは――)

真下へ映り込んだ影が敵の狙いを気付かせる。

サングラソードが弾かれると同時に身を大きく屈め疾走。
頭部と背中の真上を走る剣には目もくれず、もう一本の得物で脇腹を斬る。
オージャカリバーがタイクーンを食い千切り、痛みに体勢が崩れた。
が、隙を大きく晒せば敗北へ一気に突き落とされてしまう。
歯が砕けんばかりに噛み締め耐え、武刃を振り落とす。

「っ!?」

しかしそれすら狙い通りだ。
オージャカリバーを武刃に添え受け流し、落ちて来た剣を片方の手が掴む。
必殺の刃で斬るタイミングはここだ、だからわざとサングラソードを弾かせた。

スザクを生かす呪い(ギアス)は発動の兆しを見せない。
ブリタニアの皇子が下した命令は「生きろ」の三文字。
命に危機に瀕した際に強制発動し、死を逃れる為のあらゆる術をスザクに取らせる。
逆に言うなら、敗北が迫ろうと死に直結する類でなければギアスの強制力も効果は無い。
王の目的は殺すことに非ず、打ち倒し迷える騎士を引き戻すこと。

故に勝敗はこの瞬間に決まった。


502 : Reason for(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:20:03 dV/MzLTg0
「サングラソード・快刀乱麻!」

『必殺奥義!アバ・タロ・斬!』

七色の光がレンズ越しにタイクーンの瞳を焼く。
ド派手な剣が切り裂く様は、さながら物語の英雄の鬼退治の如く。
黒き装甲を塗り潰す輝きを受け、堪らず悲鳴を上げ斬り飛ばされた。

「があああああああああああっ!?」

蹴り飛ばされた空き缶のように転がり、建造物の一つへ激突。
壁を壊し屋内へと身を横たわらせる。
これまでの戦闘で多少の傷や体力の消耗はあったが、今回が一番だ。
まだ生きている、まだ戦える、今度こそ殺さなくては。
そう考えても動揺を完全には抑えられず、思考が渦を巻き酷く気持ち悪い。
痛みで多少は頭が冷えるかと期待したものの、却って混乱が強まった気さえする。

武刃を杖代わりに立ち上がり、ふと屋内に浮かぶ物体に気付く。
敵が追って来るまで一刻の猶予も無い、弾かれたようにソレへ触れた。

≪高速化!≫

「なっ、待て!」

制止の声もあっという間に消えた背には届かない。
エリア内に配置されたエナジーアイテム、それも逃走に打って付けの効果。
敵ながら運が良い、追いかけようにも騎士一人にかまけてはいられない。
最優先はユフィリアと合流しまふゆを助けることなのだから。

「タロウさん、ありがとうございます」

変身を解き生身に戻る。
一度戦った為ドンモモタロウの力がどれ程かは知っており、今回は大きな助けになった。
ドンブラスターを使用中は根性次第で傷も治る効果のお陰で、タイクーンに斬られた痛みも幾らか薄れている。
とはいえ慣れない姿で戦った為かやけに疲れた。
今後も場合によっては使うかもしれないが、基本は王鎧武装で戦うのがベストだろう。

逃げた騎士も気になるが今はまふゆ達だ。
再びクワガタオージャーに姿を変え、走力を引き上げた。

王と騎士の戦いは一旦幕を閉じ、舞台はもう一つの戦場へと移る。


503 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:21:57 dV/MzLTg0



バトルロワイヤルと銘打った闘争の舞台にいるのは、ラウ・ル・クルーゼによって選出された参加者だけではない。
数多の世界の情報を元に再現し、各エリアに散らばるNPC。
武器やスキルの練習台、手っ取り早い使い捨ての兵隊、ドロップアイテム狙いの標的等々。
どう扱うかは正式な各々自由だが、極一部の例外を除きNPCに共通しているものがあった。
参加者を見付ければ問答無用で襲い掛かる。
たとえそれが大きな戦いを終え、疲弊中の相手であってもだ。

「何かが来る」

短く告げ振り返ったチェイスに倣い、三人の少女も同じ方を見やる。
後味の悪い形だが龍騎との戦闘を終え、体力回復の為に屋内へ移動しようとした矢先に出鼻を挫かれた。
太陽が燦燦と照らす下には、木っ端微塵となった校門の残骸。
校内への無断侵入を防ぐ役目は全く期待出来ない、ただの破片と化した上を歩く複数の異形。
人に近い部位を残しつつも、人間からかけ離れた集団が姿を現す。

「女の子がいっぱい…」
「それに皆可愛いー」
「持って帰って、食べちゃおっか…」
「うん、そうしよう」

抑揚の無い声で言葉を交わすのは、少女らしき二体。
纏った黒のドレスが病的なまでの肌の白さを際立たせる。
輝く瞳はカラーコンタクトの力を借りない、生まれつきの真紅。
眠たげだが整った顔立ちも相俟って、異性ならず同性をも惹き付けるだろう魅力があった。
但し、下半身の異様さを除いてだ。

スカートから覗く足は計8本、人間よりも6本多い。
臀部があるべき場所には異様に肥大化した袋状の部位、虫の腹。
飾り物ではない、少女達の体の一部。
この存在、名をアラクネといい魔物の一種である。
元は魔女のお茶会のメンバー、リスティが作り上げた結界内の森に住んでいた。
基本的には人間に友好的なのだが、殺し合いではNPCのプログラムに従い参加者を襲うエネミーと化している。


504 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:23:25 dV/MzLTg0
「も、もしかして、またあの人が…?」

アラクネ達の会話や、自分達へ向ける粘着くような色欲濡れの瞳。
それらが嫌でも闇檻の魔女との戦いを千佳に思い出させる。
ノワルや彼女が従える天使達に嬲られたのは、9歳の幼子にとっては相当なトラウマ。
心は拒絶しても体は開花する刺激へ熱を帯び、愛撫や口付けの度に歓喜で色付く。
深く根を張り剥がれない記憶に、震え出すのも無理はない。

「……大丈夫、魔力の気配は全然感じないよ」

はるかもまた、アラクネ達の様子からノワルや天使達と近しいモノを感じた。
イドラ共々拘束され辱めを受けた際の、いっそ嫌悪を覚える程の快楽は忘れられない。
もしやこのタイミングでまた襲って来たのかと緊張が走るも、落ち着いて魔力を探れば杞憂と判明。
付近にノワルの強大な魔力反応はゼロ、仮に近くにいるならあれ程の存在感を感知出来ないのは不自然だ。
恐らくアラクネはノワルと関係無く、偶々襲って来たNPCに過ぎない。
尤も、危険度が下がったからといって安心するには早い。
庇った千佳と背負った篝の存在が、疲れを押し退け意識を張り詰めさせる。

何せ敵はアラクネ二体だけではない。
彼女達の背後へゾロゾロと続く集団は、二足歩行なれどやはり人とは言い難い。
檻にも閉じた口にも見える頭部と、触手を垂らしたような外套。
胸元に金属製のプレートが貼り付けられたその者達を前に、正体を知るチェイスの瞳が鋭さを増す。

「死神部隊か」
「知り合い?それともおにいさんの友達?ならどっか行ってくれるように説得して欲しいなっ☆」
「同胞の粛清目的で改造を受けたロイミュードだ、NPCでなくても俺の話は通じん」
「ロリ…少女?まあ名前はともかく、やっぱりそうなるかぁ」

正義実現委員会のような治安維持組織とは違う、何とも血生臭い連中らしい。
NPCなのでそもそも会話が通じるとは思っておらず、ミカとしても冗談で問い掛けたようなものだが。
何にせよ、風都タワーから逃げて来た時と同じ。
こっちの事情を考慮せず、空気の読めない主催者達の玩具がいらぬちょっかいを掛けに来た。
何故鬱々としているタイミングばかりを狙うのか。
聞いた所でどうせ返答はない、ならさっさと壊してしまうに限る。
苛み続ける倦怠感と傷の痛みを無視して一歩前に出れば、待ったを掛ける声が一つ。


505 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:24:13 dV/MzLTg0
「相手は俺がする。代わりに果穂を頼む」

気を失った少女を背負い言うチェイスに、頬を膨らませ睨み上げ抗議。
鬱憤晴らしも籠めて殲滅してやろうと思ったのだが、叶わなくなった。
それを分かっているのかいないのか、表情筋をピクリとも動かさず続ける。

「今この中で適任なのは、人間と違って疲労を感じない俺だろう」
「私だってそこまでひ弱じゃないんだけどー?え?そんなに心配?あ!もしかして、私のファンになっちゃった!?」
「違う。果穂を連れ全員で奥へ行け」

おどけてみるも相手の反応は最初に会った時と変わらず、淡々としてつまらない。
ついでに言葉から察するに、人間ではないとのこと。
ギギストのように分かり易い怪物の外見では無いけど、さっき言ったロイミュードとやらこそ正体なのか。
詳しく聞く状況では無く、何より次の言葉で黙らざるを得なくなった。

「痛むのは体だけではないと、そう言われた。痛みを少しでも癒す時間が必要なら、その間守るのは俺の役目だ」
「……」

開きかけた口は半ば程で止まり、言おうと思っていた内容は隙間から漏れ霧散。
何か言い返そうとしても、上手く纏まらず組み立ては崩れるの繰り返し。
知ったような口を聞かないでとかを、思わなかった訳ではない。
ただどう表せば良いのか。
真剣さの中に悲痛さと優しさを宿すキラとはまた別の、真っ直ぐ貫く弾丸のような瞳。
論すのともまた異なる、無意味に飾らず本心をストレートにぶつけられ目を逸らしたくなった。

「今ですーゴー」
「男はいらないから、ちゃっちゃと壊して…」

と、両者の話が纏まるのを待たずに場は動く。
アラクネに焚き付けられ、NPC達が我先にと襲い掛かって来た。
元より参加者の状態を無視して攻撃を仕掛ける存在だ、空気を読んでくれはしない。


506 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:25:34 dV/MzLTg0
「お前達には聞いていない」
「邪魔しないでくれるかな?」

片や温度を感じさせない声色で、片やうんざりし吐き捨て右手を跳ね上げる。
ブレイクガンナーとレーザーレイズライザー、それぞれの得物で薙ぎ払うように撃ち死神部隊を牽制。
怯んだNPC達を冷めた目で見ながら銃を仕舞う。
呆れを含んだ瞳に変化し、譲らぬ姿勢のチェイスへ向き合った。

「その果穂ちゃんだっけ。おにいさんがおんぶしたままの方が、絶対安心すると思うんだけどさぁ」

言いつつも受け取り、両手で抱き上げる。
チェイスの背を離れた時、一瞬顔が曇ったような気がした。
そら見た事かと思うも、当の本人はNPCを相手取るべくドライバーを取り出す。
ミカなら信頼し合う仲間も無事に運んでくれると、そのように考えてるのだろうか。

(まぁそうなるよね。私、なーんにも言ってないもん)

自分が殺し合いでの優勝を目指していると、知っているのは気絶中の篝のみ。
加えて様子から察するに、赤い仮面ライダーとの戦闘で情報交換どころでは無かっただろう。
ミカのスタンスを誰にも明かさず、重症を負い気を失った。
チェイスとの戦闘は「先生」に関する情報の食い違いが原因、浅倉相手に巻き添えを気にせず暴れたが犠牲者はゼロ。
明確にミカが殺し合いに乗ったと言える行動を起こしていない為、羂索達に抗う者と勘違いされても不思議はない。

(……今は殺す気もないから良いけど)

少なくともキラを止めるまでは、殺し合いに乗っていない者を手に掛けるつもりはない。
富良洲高校に集まった者は善人ばかり、事情を話せばキラの件で協力を得られる可能性は低くない。
自分に託された命を複雑そうに見下ろす。
果穂を避難させ、それからミカにも休めと伝えられた。
体は確かにヘトヘトだ、天ノ川学園高校での一戦に始まりロクに休めず戦い続き。
如何に並外れた戦闘能力を持つミカとて、無尽蔵の体力は持っていない。
気を失った篝をそこらに放置し戦闘の巻き添えを受けるのだって、望む所にはない。

それに、体以外も痛いのはその通りだ。
言われなくたって、自分のことなんだから分かる。
殺し合いの前からずっと血を流しており、休んだ程度で何か変わりはしない。
自分がやりたいのは痛みを消し去るんじゃない、痛みの原因となった女へ憎悪を叩き付けてやること。
あの女の安寧も仲間も居場所も、自分が失った全部を壊してやる
傷を塞げる段階は、とっくに過ぎたのだから。


507 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:26:14 dV/MzLTg0
ああ、けれど、助けられた事実までは無かったことに出来ない。
受けた恩を平然と仇で返せないから、優勝狙いの筈が思わぬ方へと転がり続けている。
羽をもがれた虫みたいに落ちる自分の手を、打算なく掴んだ男の仲間。
彼女の安全確保が借りを返すのに繋がるなら、

「じゃあ今から果穂ちゃんは私のお姫様だねっ☆薄情なおにいさんなんて知らないよーだ。ささっ、チビっ子ちゃんと全身ピンクちゃんも急いで行こう!」
「全身ピンク……え、あ、あたしのこと?」

天真爛漫に冗談めかして撤退を促す。
珍妙な呼び方をされたはるかは暫し困惑したものの、意を決して頷く。
迷う素振りを見せた千佳に「ごめんね」と断りを入れ、胴体に腕を回し担いだ。
片手ずつで篝と千佳を運べるのも、魔法少女に変身し身体強化の恩恵を受けたからこそ。

駆け出し破壊を免れた校舎へ入るのを見ずとも、気配が離れて行くのが分かれば問題無し。
敵は6体、偶然にも自分達と同じ数。
とはいえ如何に相手がNPCだとて、参加者側の消耗が激しければ殺される末路も有り得る。
ましてこちらは龍騎との戦闘直後で体力を多大に消費し、内二人は目覚めぬ状態。
故にロイミュードの体を持ち、幾らか余裕のある自分が片を付けるまで。

『SIGNAL BIKE!』

「変身」

『RIDER!CHASER!』

展開されたタイヤ状のエネルギーが、シルバーメタリックのスーツと装甲を纏わせる。
頭部を覆う左右非対称の仮面は、魔進チェイサーの面影を残しつつより新たな戦士のものへ。
追跡者の名を持つ仮面ライダーへと変身完了。

戦闘準備を終えれば敵も一斉に襲い掛かって来た。
同じ死神の名を与えられたロイミュード、なれど互いの在り方は相容れない。
もしNPCでなかったとしても、人間の守護者であることを選んだ男を死神達は許さないだろう。


508 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:27:34 dV/MzLTg0
先頭のロイミュードが両手の得物を振り被る。
禍々しい意匠の大鎌は一般的に農作業等で使われるのとは大違い。
失態を犯した同胞を、何より宿敵である仮面ライダー達を葬る為の装備。
部隊に付けられた名前の通り、命を刈り取る黄泉の遣いとなり死へ誘う。

「ハッ!」

纏わり付く終焉の気配を、短くも力強い声で掻き消す。
リーチは敵が圧倒的に勝る、しかしここは前進あるのみ。
刃が切り裂くよりも早く懐に潜り込み、拳を胴へ叩き込んだ。
強化グローブに蓄積した高圧縮のエネルギーを解放、打撃の威力を倍にし殴り飛ばす。

パワー面においては、シフトデッドヒートを使ったドライブやマッハを凌ぐのがチェイサーだ。
スマートな外見と裏腹の重い一撃に、堪らず背中から地面へダイブ。
反撃に遭った仲間へ視線をくれてやること無く、二体目と三体目が仕掛ける。
一方が大鎌を装備し、もう一方は鋭利なカギ爪を伸ばす。
リーチは短くとも切れ味は油断ならない、並の防御では障子紙同然の頼りなさだろう。

だが並以上の性能を発揮するのがチェイサー。
大鎌による薙ぎ払いを身を屈め躱し、体勢を戻すや即座に片腕で防御。
腕部に備わったアーマーはパワー強化機能のみならず、盾としても優秀な役割を果たす。
カギ爪を押し留めそれ以上動かしはさせない、反対の爪で裂かれる前に蹴りを放つ。
よろけた敵から視線を外し、もう一度大鎌による斬撃を試みたロイミュードをレンズが捉えた。

防御か、回避か、迎撃か。
三者一択に長々と時間を掛ける必要はない。
高機能の分析モジュールと、変身者自身の戦闘経験が最適解を弾き出す。

手刀がロイミュードの腕を走り、得物を握る力が弱まった。
チャンスを逃さず手首を蹴り上げると、衝撃とダメージに武器を手放す。
宙を舞う大鎌を敵の手に渡すつもりはない。
跳躍し奪取、真下の標的目掛け振り下ろせば火花がアスファルトへ散った。
無論一撃で終わりじゃあない、先の敵と同様の横薙ぎで追い打ちを掛ける。


509 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:28:13 dV/MzLTg0
チェイサーの好き勝手は許さぬとばかりに、後方からロイミュードが接近。
殴り飛ばした最初の個体だ、奪ったばかりのと同じ得物が首を刈らんと迫る。
死を跳ね除ける手段なら今手に入れた、こちらも大鎌を豪快に振るい回す。
金属の衝突音が幾度も響き、互いに刃の端を掠めさせもしない。
とはいえ無傷の応酬を長引かせるのは望む所に非ず、チェイサーが流れを変えに動く。

敵の攻撃を弾き、踏み込みの勢いを乗せた一撃を見舞う。
防御へ僅かに遅れが生じ、刃が胸部プレートを疾走。
ロイミュードの個体数を記す箇所からダメージが襲い、強制的に動きが止められた。
敵対者へ慈悲を見せる真似はしない、まして相手はNPCだ。
刃の睨む先を上方に変え斬り上げ、敵は宙を泳いだ後に地面へ激突。

三体のロイミュードの不甲斐なさを目の当たりにし、残る一体が思うものは何も無い。
怒りも嘲笑も、ただ参加者を襲えとだけプログラムされたが故に抱けない。
意思なき単なる機械として、対象への攻撃を実行。
カギ爪を打ち鳴らし跳躍、空中に黒い影が現れては消える。
これもまた死神部隊に与えられた、高速移動というシンプルながらも強力な固有能力だ。

仲間に倣ってか、復帰を果たした二体目と三体目も同じ手を取る。
人間の視界では捉えられない速度でチェイサーを取り囲み、自らの身を使った檻を形成。
下手に逃げようとすれば大鎌の餌食に遭い、かといって防ごうにもこの速さでは簡単じゃない。
タイプフォーミュラ、或いは最終形態のドライブならば対処は安易。
いない人間を頼ったとて何の意味も無いが。

余裕を持てない状況だとて、チェイサーに焦りは皆無。
人間らしい感情の全てを得ていない機械だから、という理由だけではない。
大鎌を構えそれ以上の動きを見せないチェイサーは、死神部隊からすれば単なる的。
勝利への喜びは抱かず、対象抹殺のプログラムに従うのみ。
三方向からの斬撃が襲い掛かる。


510 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:28:54 dV/MzLTg0
「フンッ!」

ほぼ同じタイミングでチェイサーも対処に出た。
豪快に振り回した大鎌がロイミュード三体の胴を走り、攻撃の到達を阻む。
火花が頭上から落ちる中、地面へ叩き付けられる音を三つ拾う。

死神部隊の高速移動は確かに厄介である。
しかし生前の戦いで幾度も死神部隊を相手取ったチェイサーにすれば、見慣れた戦法に過ぎない。
まして此度は自我が無く、インプットされた動きしか出来ないNPCのロイミュード。
どのタイミングで一斉攻撃を仕掛けるか、予測を立てるのは不可能に非ず。
一気に決着を付けるべく、大鎌を放り投げ別の武器へ手を伸ばす。

「みんな役に立たなさ過ぎー」
「しょうがない…手伝う…」

が、チェイサーの勝利をむざむざ認めない存在が他にもいた。
死神部隊だけでは無理と踏み、援護に動くは二体の魔物。
茫洋とした口調の中に容赦の無さを交え、アラクネ達が援護に出る。

「っ……」

警戒を払いつつ先手を打とうとし、四肢が極端に重くなったのを気付く。
見ればいつの間にやら、白い糸に絡み取られている。
アラクネが得意とする蜘蛛の糸を使った拘束だ。
死神部隊へチェイサーの意識が割かれた間に、戦場へ蜘蛛の巣の如く罠を張っておき功を為した。

振り解くべく力を籠めるも、意図が千切れる気配は見られない。
むしろ余計に拘束が強まった気さえする。
アラクネの放つ糸は粘着性が強く、藻掻けば藻掻いた分脱出は困難を極める。
体力に優れた魔法少女であっても、一度囚われれば後はされるがままを許すのみ。
これが校舎内へ逃げたはるか達であったら、毒の口付けで感度を上げられ玩具となっただろう。
生憎アラクネ達に男、それも人ですら無い機械を嬲る趣味は無かった。

「後はそっちでボコボコにしといてー」
「今の内に女の子を捕まえに行こう…」

雑な指示を出し校舎の方へと八本脚を伸ばす。
命令内容に逆らうつもりはないらしく、よろよろと立ち上がったロイミュード達が近付くのが見えた。
動きが封じられた所を袋叩きにし、完全に機能停止するまで刃は振り下ろされ続ける。


511 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:29:44 dV/MzLTg0
「この程度…!」

但し対抗策が一つも無ければの話。
背部コネクターの回転数を速めエネルギーを周囲に拡散。
本来は展開中の武装に流す力を使い、張り巡らされた糸を全て焼き切る。
拘束を脱した瞬間に振り下ろされる刃、だがチェイサーには届かない。

支給品袋から飛び出したトレーラー砲を掴み、銃身を盾にする。
数あるシフトカーの中でも巨体に見合った高い耐久性を持つ、ドライブ専用装備の一つだ。
大鎌を防ぎ逆に押し返す、よろけたロイミュードを押し退け別の刃が来るも遅い。
至近距離でレーザーを発射、薙ぎ払うように撃ち四体全員大きく怯みアラクネの前に転がった。

「あっヤバそう…」
「逃げろー」

能天気で危機感を感じさせない声だが、動きは迅速。
慌ててアラクネ達が逃げ、銃口が睨み付ける先には四体のロイミュード。
チェイサーバイラルコアとシフトデッドヒートを装填し、エネルギーを充填。
ロイミュード達を葬り嘗ては魔進チェイサーにも勝利を収めた銃が、必殺の光弾を解き放つ。

『FULL THROTTLE!』

『フルフルデッドヒートビッグ大砲!』

クリム・スタインベルトの聞き慣れた声に従い、トリガーを引く。
鮮烈な真紅の輝きが発射され、死神部隊を纏めて焼き払う。
攻撃性能を高めるシフトデッドヒートを使った為、威力も範囲も大幅に強化済みだ。
爆発が治まった時、破片の一つも残ってはいなかった。

これが元の世界での戦いなら、ロイミュードのコアも砕け散り消滅。
だが敵はあくまで主催者に再現されたNPC。
コアは出現せず、意思を持たない人形のまま消え去って行く。

(やはり俺を復活させた技術とは違うか)

コアが消滅した自分の復活と、NPCの再現は別物。
分かっていたことだ、驚きは無く意識もすぐに切り替わる。
敵は残り二体、直撃はしなかったが爆風で吹き飛ばされた魔物達。
八本脚を器用に動かし、起き上がろうとする彼女達へ銃口を向けた。


512 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:30:57 dV/MzLTg0
「ごがあああああああああああああああっ!!!」
「なっ……」

唐突に聴覚機能へと届いた奇声が、早急に片付く筈の展開へ否を唱える。
背後からの気配が急速に近付き、比例して声の大きさも増す。
振り返り咄嗟にトレーラー砲を翳し、直後銃身へ衝撃が走った。
叩き付けられたのは重厚な回転式機関砲、ガトリングガンとも呼ばれる重火器。
襲撃者は何と銃を手に持つのではなく、銃と腕が一体化していた。

「お前は…」

奇怪なのは腕だけではない。
グレーのボディに蝙蝠を思わせる頭部の姿を、チェイサーが知らない訳がない。
何より目を引いたのは、胸部に貼り付けられた金属プレート。
そこに刻まれた個体ナンバーには見覚えがある。

「051…!?」
「チェイスウウウウウウウウウウッ!!」

こちらの声が聞こえていないかのように名前を叫び返される。
籠められたのは疑いようのない怨嗟。
ロイミュード051、嘗て人間の金に執着を持ち強盗事件を繰り返した個体。
プロトドライブと魔進チェイサー時代にそれぞれ一度ずつ体を破壊されており、チェイスとは浅からぬ因縁を持つ。
099のロイミュードによる事件の際コアを砕き、完全消滅となったのが少し前。
とはいえ訳あってチェイスは事件の記憶の大半を失った為、思い出すのは不可能だが。

「お前も、羂索達の道具にされていたのか…!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

名簿に名前は載っておらず、NPCの一体だとは分かる。
様子を見るに自我の無かった死神部隊と違い、自分への恨みだけを残されたと言うべきか。
悪趣味だとは思うも同情はしない。
仮に連れて来られたのが本物の051だったとしても、考えは変わらなかったろう。
この地で出会った仲間や、善良な参加者へ危害を及ぼすのは認めない。


513 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:31:41 dV/MzLTg0
銃身をまるで剣のように叩きつけ合い、先に一撃貰ったのは051の方。
たたらを踏んだ所へ照準を合わせ、近距離でビームを放つ。
機械の体を焼く光は051が地面を転がり避け、背後にあった瓦礫の山を焦がすに終わった。
武器を持つのはチェイサーだけではない。
起き上がり様にガトリングは火を吹き、轟音と共に光弾が雨霰と発射。

両腕・両肩の強化アーマーを盾にし防御。
距離を取りながら反撃の隙を窺えば、チャンスとばかりに校舎への侵入を目論む魔物が視界に映る。
させじとトリガーに指を掛けるも、狂ったような絶叫で051が殴り掛かった。
ガトリングはその巨大さ故、直接叩き付ける鈍器にもなる。
身を捩って躱すが敵の勢いはまるで衰えない、滅茶苦茶に振り回しながら光弾を乱射し始めた。

「今度こそレッツゴー」

チェイサーが051の妨害を受け、アラクネ達には運が回って来た。
ガトリングに肘を打ち込み狙いを逸らし、蹴りを放って距離を離す。
作った機会を活かしアラクネを撃とうとするも、気配の接近を再び感知。
横に跳び躱すと、遅れて地面を棍棒が叩く。
051ではない、そもそもロイミュードとは別の異形がそこにいた。

頭部に巨大な笠を被り、両肩から生やすのは複数のキノコ。
グレー一色の全身は中世の騎士の鎧にも見えるが、れっきとした肉体。
名をトードスツールオルフェノク。
仮面ライダーファイズに撃破された個体も他のNPC同様、殺し合いを動かす小さな歯車。

「次から次へと……!」

龍騎との戦闘を終えたタイミングで続々とNPCが現れ、狙っているのかと毒づく。
今度こそ邪魔が入らないと分かり、アラクネ達は悠々と自身の獲物を追い掛けた。
頭の中では捕えて好き放題に「食べる」ことで満たされ、



「そうはさせないよ!」



桃色の光が欲に塗れた進行を阻んだ。


514 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:32:26 dV/MzLTg0
◆◆◆


「チェイスくんの所に行くんだよね?」

奥へ奥へと進み運良く無事だった保健室に到着し、果穂と篝を寝かせた直後。
確信を持ったように問われ、はるかは驚き視線を下げた。
見上げる彼女と目を合わせていると、下手な誤魔化しや曖昧な嘘は口に出せない。
信頼を寄せ合う千佳にそういったものを言う気は、最初から無いのだが。
ただ行動を起こす前に考えを言い当てられ、驚いたのは本当のこと。
浮かび上がった疑問を察したのか、得意気に笑い告げる。

「魔女っ娘ラブリーチカにはなーんでもお見通しだよっ!マジアマゼンタの顔を見たら、すぐにピンと来ちゃった!」
「そんなに分かり易かったかな…?」

そこまで顔に出ていたかと思わず頬を擦るのが、何だか面白くて小さく声が漏れる。
実際、言っていることは正解だ。
気を失った果穂と篝を避難させ、消耗の大きい千佳とミカに代わりチェイスの援護に向かう。
ミカに撤退を促された時から、そうしようと決めていた。
優先すべきは負傷の大きい者を少しでも危険から遠ざけること。
だから自分も残ると言い出し口論で時間を潰すのは避け、迅速な動きに出た。
以前、薫子がトレスマジアを裏切った振りをしてマジアベーゼに一人で挑んだ時のような、手を出すべきじゃないというのならともかく。
助けが必要、共に戦った方が良いと少しでも思えるのなら、迷うことなくその選択を取る。

「それに、マジアマゼンタならそうするだろうなって分かってたから…」

ノワルとの戦いに始まり、はるかが千佳を傍で見続けたように。
千佳もまた、マジアマゼンタという魔法少女をずっと見続けて来た。
仲間をたった一人で戦わせはしない、友達に危機が迫っていれば自分の負傷も二の次で駆け出す。
飾らないどこまでも真っ直ぐな、千佳があこがれ、マジアベーゼが何よりも尊いと思える魔法少女。
それこそが花菱はるか…マジアマゼンタなのだから。

「……うん。やっぱりじっと待ってるのは出来ないから…行って来る。それで…」
「任せておいて!果穂ちゃん達はちゃーんと見ててあげる!」

皆まで言うなとばかりに応えれば、一瞬驚きの表情を作るもすぐに力強く頷く。
なるべく早くチェイスと共に戻ると伝え、頭を撫で立ち上がる。
もう一人、自分達のやり取りに口を挟まず見ていた少女は肩を竦め口を開いた。


515 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:33:34 dV/MzLTg0
「ここで嫌って言ったら流石に空気読めて無さ過ぎだからねー。うんうん、おにいさんがカッコ付けておいてボコボコにされてたら可哀想だし、行ってあげた方が良いじゃんね☆」
「さ、流石にそうはなってないと思うけどなぁ」

どこまで本気かわからない内容につい苦笑い。
小夜や薫子とも、この地で会った仲間とも違うタイプの少女だ。

「…良いの?私ってさ、さっき巻き添えとか全然考えないで暴れ回った奴だよ?それにどうせおにいさんからも聞いてるんでしょ、……先生のこと、とか」

能天気を絵に描いたような態度を不意に引っ込め、どこか自嘲するような顔を作る。
篝を回復中で身動きが取れない彼女達を、怒りに身を任せ危険に追いやった。
全員無事だからといって、チャラになるとは思えない。
何よりも、チェイス経由で先生に関する情報を得ているだろう。
殺し合いに乗っており、生徒達も同じだと言い放った。
ミカとしてはふざけているのかと憤りを覚えるデタラメでも、知らない者は真に受けてもおかしくない。
そんな奴に仲間を任せても平気なのかと疑問をぶつける。

「篝ちゃんを傷付けられて怒ったから、でしょ?」
「……っ」
「だったらあたしは、ミカちゃんのことも信じられるよ!チェイスさんだってミカちゃんが悪い子じゃないって分かったから、助けんだと思う!」

屈託の無い笑みに息を呑み、返すべき言葉が出て来ない。
戦場へと戻る背はあっという間に見えなくなり、残ったのは四人。
暫しの間、室内は静寂に支配される。
数秒か数分か、時間の流れに意識を割けずぼうっと立ち尽くす。
どれくらい経った頃かややあって乾いた唇が動く。

「あなたは、行かせて良かったのかな?本当はピンクちゃんが傍にいた方が、安心できたんじゃない?」

突然の質問へ咄嗟の答えは返せない。
困惑した様子を見せながらも、自分の中で言いたいことを一つずつ組み立てる。
一時的にでもはるかと離れ、不安が全くないと言うなら否だ。
自分もチェイスの所へ戻って、魔法で一緒に戦う選択肢も無かった訳ではない。
消耗が激しい自分に気を遣ってくれたのは分かるけど、それを言うならはるかだって疲弊している。
心身的に万全とは程遠いミカよりはまだ戦えるからと言って、本当なら体力回復に努めるべきだ。
だからチェイスも有無を言わせず自分達を退避させたのだろう。


516 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:34:54 dV/MzLTg0
「…前にね、あたしが困ってる時に言ってくれたことがあるの」

そっと自分の胸に手を当て思い出す。
テレビ番組に出る魔女っ娘の真似じゃない、自分自身にとっての魔女っ娘はどういうものなのか。
答えを出せずに焦りが募り、プロデューサーとも喧嘩してしまった。
けれど仲直り出来ないままで迎えた、遊園地でのショーの本番当日。
泣いていた女の子の笑顔を取り戻したかった時、全力でサポートしてくれたのは他でもないプロデューサーだった。

「この気持ちが真ん中に必要になるなら、諦めさせたくないって」

ファンの人達だけじゃない、困っている人達を助けて笑顔にしたい。
千佳にとってこうありたいと胸の真ん中に置いた、曲げられない魔女っ娘(アイドル)の在り方。
闇檻の魔女に嬲られ、宇蟲王に剣を突き付けられ、狂える赤龍の暴虐に襲われても。
決して砕けず横山千佳と共にあった、彼女を支える柱。
そんな気持ちを持っているのは、自分一人だけじゃない。
はるか、イドラ、レッド、果穂、チェイス。
仲間達を形作り突き動かすソレを、曲げて欲しくは無いし否定したくもない。

「マジアマゼンタにとって譲れない、胸の真ん中にある魔法少女としてこうありたいって気持ちだったら、それは大切にしなきゃダメだって思ったから…かな」

プロデューサーみたいにもっと自信満々に言えれば良かったろうけれど、少しだけ言葉尻が下がってしまった。
だけど紛れもない、偽らない本心だ。

「……そっか。うん、そっかそっか。あー…なんか私だけ物凄い子供っぽくてへこみそう……」
「そ、そんなことないと思うよ!あ!じゃあラブリーチカが元気になれる魔法を…」
「あー待って待って!私今服こんなだし、そういうのはもっと千佳ちゃんの為に頑張った娘にやってあげないと」
「きゃっ!?」

ハグして元気を注入する魔法はキャンセルされ、ひょいと両手で持ち上げられる。
眠り続ける果穂の傍にそっと降ろし、ミカ自身は篝の顔を覗き込んだ。

「果穂ちゃん……」

自分を守る為に何度も傷付き、痛いのを堪え立ち上がろうとした少女。
思わず手を握れば温もりを感じ、ちゃんと目の前にいると伝えて来る。

(重いなぁ……)

千佳の様子を尻目に、ミカは小さくため息を零す。
胸の真ん中にある譲れない気持ちに、覚えが無い訳ではない。
アリウスよりも補習授業部を選んだアズサであったり、トリニティ生徒による暴行を止めようとしたコハルであったり、我が身を犠牲にミカを助けたキラであったりと。
絶対に曲げたくない想いに突き動かされた者達。
かくいう自分にも、ある。
これだけは何があっても諦められないモノが。
はるか達のようなキラキラしたのとは正反対、自分も大勢を傷付けた癖に被害者振るなと言われれば否定できない。
だとしてもやり遂げねばならない復讐を、今更捨てる気はない。

ただトリニティで檻を壊した時に比べ、今は胸の中がやけに重い。
引き返せない、引き返す道を選べない、そうして進んで行けば行く程に自分自身を一番追い詰める。
心に絡み付く重しの外し方を知らないまま、冷え切った手で篝の頬を撫でた。


517 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:35:45 dV/MzLTg0
◆◆◆


「うぼあー」
「あっあっあっ…」

桃色に輝く槍が突き刺さり、煙のように魔物は消えた。
辛うじて避けたもう一体のアラクネは、危機感を感じているのか分かりにくい表情で距離を取る。
ハート型の可愛らしさに反し、一撃で同胞を屠った得物を引き抜くのは逃げた筈の一人。
向こうからノコノコ餌がやって来た、そう嘲るのが憚れる程に堂々とした佇まい。

「お待たせチェイスさん!あたしも今から手伝うよ!」

一人で持ち堪えた仲間へ掛ける声色は、先の戦闘の疲れを微塵も感じさせない頼もしさがあった。
死神部隊は見当たらず、全滅したと察しが付く。
単独で撃破へ追い込んだが新手のNPCが現れたといった所か。
ならここからは自分も加わり、手早く倒せば良いだけ。
仲間や殺し合いに乗っていない参加者へ手を出される前に、自分達で片を付ける。

「…助かった。奴の糸には用心しろ、抜け出すのには梃子摺る」
「うん!チェイスさんも気を付けて!」

戻って来たマジアマゼンタに驚きつつも、戻れと共闘を拒みはしない。
果穂のように強い人間の仲間がいる事実を噛み締め、敵の能力へ警戒を促す。
会話を遮り叩き付けられた棍棒を回避、顔面狙いで拳を叩き込んだ。

殴り飛ばされたトードスツールオルフェノクの背後へ急ぎ回り、アラクネはマジアマゼンタを迎え撃つ。
参加者を襲う一択のみの思考が、より近い方を標的に選ぶ。
チェイサーからマジアマゼンタへと狙いを変え、灰色の怪人が得物を振り被った。

槍と棍棒、手にする武器はどちらも長得物。
迂闊に踏み込めば自ら猛獣の口へ入り込むのと同じ。
保つべき距離を今更分からないマジアマゼンタではなく、しかし同じ場所で槍を振るうだけでは倒せない。
ましてNPC相手とはいえ、体力的な余裕も考えれば無駄に長引かせる必要も無し。
穂先で突く速度を初手から引き上げ、敵に反撃の隙を与えず撃破へ持ち込まんとする。
目論見は成功、棍棒が大きく弾かれ生まれた隙へ接近を試みた。


518 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:36:32 dV/MzLTg0
「っ!」

が、肌を撫でる不快な予感に急遽攻撃を中断。
目だけを動かせばいつの間にやら位置を変えたアラクネ。
このまま追撃に動けば敵の思惑に嵌ると勘が告げ、一旦距離を取る。
自分の判断が間違いでは無いと、視界が捕えた蜘蛛の糸でハッキリ分かった。
トードスツールオルフェノクを相手取る間に罠を張り、勝ちを確信したタイミングで絡め取る気だったのだろう。
事前に警戒を促されていた為、気を尖らせておいて正解だ。
失敗を悟ったアラクネは直接糸を発射、横に跳んで躱せばすかさず棍棒が迫る。

「当たらないよ!」

身を低くすると頭上で風を切る音が聞こえる。
余計な事へ意識は割かず、敵の対処へ集中。
横薙ぎの槍が灰色の腹部を切り裂き、火花を散らしトードスツールオルフェノクは後退。
数時間前に戦ったスカラベオルフェノクよりも、幾分か耐久力は下。
連撃を繰り出せば倒すのも不可能じゃない。

「よっと…!」

一方でアラクネの糸への警戒も忘れない。
トードスツールオルフェノクへ掛かり切りなのを狙うのには注意がいるが、これくらいなら対処可能。
マジアベーゼやノワルの脅威を嫌と言う程味わって来ただけに、彼女達程の厄介ではないと見る。
捕まってしまったらマズい、であるなら捕まらないようにするだけ。
油断はせず、かといって尻込みせずに果敢と立ち向かう。

しかし敵も同じ戦法ばかりには頼らない。
トードスツールオルフェノクが頭部を激しく揺らし始めた。
追い詰められたことへ苛立ちを抱いた、のではなく毒の胞子を撒き散らす攻撃。
スマートブレイン製のベルトで変身した者ならともかく、生身のマジアマゼンタには危険だ。


519 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:37:23 dV/MzLTg0
「それなら…!」

だが敵からされるがままを許しあえなく食われる、哀れな子羊に非ず。
エノルミータとの戦いに加え、殺し合いでの経験がマジアマゼンタの助けとなる。
圧倒的な力を我が物にする強敵、自分や仲間の命が本当に奪われるだろう死闘。
元の世界では無かった戦闘が、咄嗟の判断力や動作一つ一つの速さのキレを増す。
リュックサックから黒槍…ウォーパイクを取り出し装備。

黒槍を握った瞬間に頭の中へ流れ込む、少なくない術技の数々。
立ち眩みを覚え掛けるも歯を食い縛り、そんな余裕は無いと技を選択。
実際に果てる力が今のマジアマゼンタにはある。

「円月・鳶!」

魔法少女の衣装がパージし、より露出の多い服に変わるも羞恥は捨て置く。
全身の回転と共に黒槍で切り裂き、斬撃と突風を巻き起こす。
威力と範囲の両方に優れた技で、胞子を纏めて吹き飛ばす。
刃はトードスツールオルフェノクをも容赦なく斬り、アラクネを巻き込んで地面を転がった。

降参を要求しても呑む相手では無く、NPCにそれをやっても無意味だとはマジアマゼンタとて分からない筈もない。
黒槍を構え直し決着を付ける技を選び、



「あぎゃんっ!?」



突っ込んで来たナニカがアラクネ達にぶつかり、素っ頓狂な悲鳴を上げた。


520 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:38:05 dV/MzLTg0



撒いただろう頃合いを見て地上へ降り立ち、後は適当な場所でまふゆを悲しませ殺す。
そのつもりでデーボ・キャワイーンはエリア内を駆けていた。
腕の中でまふゆがジタバタと藻掻くも、無駄な抵抗に過ぎない。
如何に可愛らしい外見だとてデーボモンスター、幼子一人を押さえ付けるのは実に簡単だ。

と、そこまでは順調だったかもしれないが偶然富良洲高校前を通ったのが運の尽き。
吹き飛び地面へ倒れた他のNPCに躓き転倒、ドラム缶のように転がる羽目となった。

「きゃっ…」

衝撃で手放されたまふゆもアスファルトの上に倒れる。
幸いと言って良いのか不明だが、アラクネがマット代わりになり怪我はせずに済んだ。
どこか棒読みで「うぎゃっ」と声を出し、彼女なりに痛みを訴える。

「え!?女の子と…なに?」

またもや乱入者が現れマジアマゼンタは困惑。
051の顔面へ打撃を叩き込み、大きく怯ませたチェイサーも同様の反応を見せる。
だが立ち尽くすのは僅かな間に留め、まずは少女の救出を優先すべきと切り替えた。
外見は元より手首のレジスターから参加者なのは間違いない。

「待ってくだちゃい!こんないたいけな赤ん坊に、酷いことしないでちゅよね?」
「っ!?」

黒槍片手に勇ましく飛び出したものの、デーボ・キャワイーンが立ち塞がる。
そのまま切り裂き少女を助ける、正しい選択肢はそれしかない。
なのに黒槍を振るう動きが止まり、目の前のNPCから目が離せなくなった。

「うっ…ど、どうしよう…可愛い……!」

無垢な赤ん坊を思わせる、キラキラ輝く瞳にたちまち戦意が薄れる。
三つ子の妹達や公園で遊ぶ子供達とも仲が良く、ネロアリスが遊び(赤ちゃんプレイ)を望んでいると察したら敵であっても無下には出来ない。
デーボ・キャワイーンの魅了能力はこの上なく効果を発揮した。


521 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:38:54 dV/MzLTg0
「……」

『GUN』

といったマジアマゼンタとは反対に、無言でブレイクガンナーを取り出すチェイサー。
流れる動作で遠距離形態に変え引き金を引く。
銃口が睨む先には勿論デーボ・キャワイーン、エネルギー弾が頭部へ命中し火花が顔面を覆い隠す。

「うぎゃあああっ!?」
「えぇっ!?チェイスさん!?」
「落ち着け、いたいけな赤ん坊なら人間の子どもを攫いはしない」
「そ、そうだよね!しっかりしなきゃ!」

人間ほど感情に振り回されずドライな面もある故か、チェイサーには効き目が悪かった。
極めて冷静に返され、しっかりせねばと自身の頬を叩く。
喝を入れ直し今度こそ駆け寄ろうとするが、デーボ・キャワイーンが許さない。
ドゴルドすらも怒りを引っ込める愛らしさだけが全てに非ず。
逆立ちすると重力に従い幼児服が捲れる。
人間ならば下着が丸見えだろうがデーボ・キャワイーンは違う、もう一つの顔を露わにする時だ。

「舐めてんじゃねえぞ銀ピカ野郎!」

愛らしい容姿からは想像も付かない罵りを吐き捨てる。
尤も、今の姿を見れば誰もが見た目に違わぬ言葉遣いと納得を抱くだろう。
ピンクの幼児服から一変、黒のドレスを纏い鞭を装備。
ギラ付く赤い瞳に蝙蝠状の頭部は、童話に登場する魔女を想起させる恐ろしさ。

バッド・キャワイーンとも呼ばれるこの姿こそ、デーボ・キャワイーンの正体。
凶暴性を全面に押し出し、オリジナルは苛烈な鞭捌きでキョウリュウゴールドを痛め付けた程。
立場的には上司のラッキューロにすら牙を剥く、危険な本性だ。


522 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:39:52 dV/MzLTg0
「その緩いピンク頭みてぇに引っ掛かっれば良いものを!能天気じゃねえ奴はこれだから困るぜ!」
「酷い!?」

まさかNPCにそこまで罵られるとは思わず、素でショックを受ける。
傷付いたマジアマゼンタを無視し振るわれた鞭が、空気を切り裂き襲来。
獣戦隊の特殊スーツ越しにもダメージを与える威力だ、当然直撃は避けるべき。
それぞれ躱すと狙いすましたようなタイミングで、残るNPCが襲い掛かった。

「くっ…!」
「またなの…!」

奇声を上げる051と、言葉無く棍棒を振るうトードスツールオルフェノク。
執拗な二体が邪魔をする間、ここぞとばかりにアラクネが目当ての餌を確保。
粘着く糸でまふゆの四肢を拘束、年相応の力しか持たない少女が抜け出すのは不可能。
魔力はないがそれでも少女、インプットされた行動に従い顔を近付ける。

「ひっ!?」
「小っちゃいおへそ…」

スカートを捲り腹部にキスを落とす。
シミ一つないスベスベとした肌触りと、子供特有の体温の高さ。
両方を唇で味わい、すぐにまふゆへ異変が起きた。

「あっ、やっ、なにこれぇ……」

体中が異様な熱を帯び、下腹部が疼き出す。
尿意とはまた違った未知の感覚へ、両手で股を押さえたくとも拘束中な為叶わない。
毒を受け発情し始めたまふゆを容赦なく嬲る。


523 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:40:32 dV/MzLTg0
「お子様パンツだ…」
「やぁっ…やだ、やだぁ…!」

スカートの中に顔を突っ込み、脚へぺっとりと舌を這わす。
まるでナメクジが引っ付いているような気持ち悪さも、快楽へと変換。
直接触れられていないにも関わらず、下着で隠れた箇所が熱い。
察したのか脚を舐めるのはストップ、代わりに今度は最も敏感な箇所へ狙いを変更。
薄い布越しに舌先が秘部を突き、まふゆの全身が大きく跳ねた。
自慰行為など到底理解していない幼女の体には、余りにも刺激が大きい。

「お尻も小っちゃくて可愛い…」
「あっ、はぅ…や……」

両手が下着の上から小振りな尻を揉みしだく。
肉付きは薄いが柔らかく、体温も相俟って人工物では到底味わえない感触。
スンスンと鼻を鳴らし匂いを嗅ぎ取る。
ミルクのような香りと、性的興奮による汗のにおい。
元の生活を送っていれば10にも満たない少女から発せられることのなかった、甘ったるい女の体臭。

「美味し…」
「はぁぁぁ……」

腿を滴る汗を舌が掬い取り、ややあって顔を離す。
これで終わりにしてやる為、ではない。
両手が動かせないのを良い事に上着を更に捲り、腋へと顔を埋める。
汗を掻き易い場所だからか、アラクネの鼻孔を突く甘さが濃さを増す。
樹液を味わう虫のようにたっぷりと舌で堪能。
チラリと見上げれば目尻に涙を浮かべ、頬を上気させたまふゆと目が合う。
体中を駆け巡る快楽もまふゆには理解の及ばない、恐怖の対象以外の何でもない。

「唇もーらい…♪」
「ひっ……」

頬に手を添え唇に狙いを定めた。
口内を蹂躙し、唾液と共に毒を流し込めば馬鹿になって気持ちよさ以外考えられなくなる。


524 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:41:31 dV/MzLTg0
「いい加減に…!」
「そこを退け…!」

幼い少女が嬲られる光景をいつまでも許すつもりはない。
執拗に邪魔をするNPCと、不甲斐ない己への怒りを燃料に変える。
棍棒を弾き跳躍、トードスツールオルフェノクを見下ろしながら回転。

「月破紫電脚!」

脚部に電撃を纏わせた蹴りが灰色の怪人を貫くもまだ終わりじゃない。
胴を踏み付け再度跳び上がり、黒槍を渾身の力で投擲。
魔物達を屠った得物に魔法少女の腕力が加わり、笠諸共頭部を貫通してみせた。

「お前のせいで俺はああああああああアアアアアアアアッ!!」
「知ったことか!」

中途半端に再現された憎悪を切って捨て、ブレイクガンナーを撃つ。
狙った先には重火器の銃口。
発射寸前のタイミングに合わせエネルギー弾が命中し、暴発を起こす。
ガトリングのみならず二の腕まで吹き飛び、皮肉にもオリジナルが右腕を斬られた時より被害は大きい。
尤もその時の記憶データがチェイサーにあるかは怪しく、覚えていたとしても感じ入るものは皆無。
片腕を失い悶え苦しむ嘗ての同胞を今度こそ終わらせる。

『ヒッサツ!』

『FULL THROTTLE!CHASER!』

シグナルチェイサーの特殊エネルギーを最大まで増幅。
炎を吹くメーターが技の発動準備完了を知らせ、051へ跳び蹴りを叩き込む。
強化ブーツがマシンボディを叩き、悲鳴を上げ今度こそ爆散。

「チィッ!役に立たねえポンコツどもが!」

灰と鉄屑の山をなじり、デーボ・キャワイーンが口から光弾を放つ。
自分の獲物だったまふゆをアラクネに取られた苛立ちもあるが、やはりNPCだけあってか参加者への攻撃を優先するらしい。
黒槍を回収する手間すら惜しいと、マジアマゼンタは魔力で生成した己の得物を翳し防御。
チェイサーもまたブレイクガンナーで光弾を叩き落とす。

すぐ傍の喧騒には見向きもせず、アラクネはまふゆの唇と自身のを重ね――


525 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:42:56 dV/MzLTg0
「あだっ…!?」

頭部に衝撃が襲い、もんどり打って倒れる。
痛む頭を押さえながら視線をやれば、少女を守るようにして小さな獣が咆えていた。
まふゆの危機へ駆け付けたのは一匹だけではない、これ以上辱めるのを許さぬと真紅の閃光が奔る。

「――――」

命乞いや断末魔の叫びすら出せず、一刀両断の末路を辿る。
更には少女を捕えた糸を光が焼く。
拘束を解かれ支えを失ったまふゆが地面とキスする前に、サッと伸ばされた腕の中へ抱き止められた。
快楽の残滓で熱い吐息を吐きながら、自分を助けた者を見上げる。

「おねえちゃん…?」
「ええ!遅くなってごめんなさい…!」

最初に会った時から変わらぬユフィリアの美貌に、今は焦りと安堵が混ぜ合わさっている。
最悪の事態を防ぐ為に急いだが、追跡中は間に合わなかった光景が嫌でもチラついた。
嫌な妄想を掻き消すように光属性の魔法を使用、身体強化し富良洲高校へ到着。
見付けたのは鎧らしき物を纏った参加者と槍使いの少女、そして初見の魔物に弄ばれるまふゆの姿。
完璧であれと教育を受けたが故の義憤だけではない、短い時間でも縁を結んだ者を傷付けられた怒りを宿し剣を振るった。

「追い付きやがったか!こうなりゃ…」

鞭をチェイサー目掛け放ち、片腕に巻き付ける。
動きを封じるだけが目的ではない、奥の手である強制キャワイーンを使うつもりだ。
バッド・キャワイーン状態で口付けされれば、たとえ仮面越しであっても洗脳下に置かれる。
獣電戦隊との戦いでもキョウリュウブラックが洗脳され、味方へ容赦なく引き金を引いた。


526 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:43:46 dV/MzLTg0
『TUNE CHASER COBRA』

「んげぇっ!?」

かといってチェイサーがむざむざ洗脳を受け入れるかは別。
引き寄せられる前に素早く武装展開し、テイルウィッパーを装着。
鞭には鞭だ、鋼鉄の蛇が逆にデーボ・キャワイーンに絡み付く。

「は、離しやが――!?」

急接近する二つの刃が最後まで言わせない。
桃色の槍と鮮血色の剣、それぞれを操る少女達が示しわせたように斬撃を繰り出す。
互いに名乗ってはいないが、敵意を向けられていない事から一先ずNPCの撃破を優先。
魔法少女の得物が真一文字に切り裂き、ダメージの大きさに敵の手から鞭が落ちる。
デーボモンスターな為表情は変わらないまま苦悶の声を上げ、次の瞬間には絶叫へと変化。

マジアマゼンタが付けた傷の上をより深く抉り、致命傷を与えた。
終わりを齎した剣の銘はサタンサーベル、ゴルゴムの世紀王にのみ許された魔剣。
ブラックサンもシャドームーンも不在の地にて本領発揮は叶わない、だが此度の使い手は並の範疇に収まる凡人に非ず。
騎士団から手ほどきを受け学んだ基礎を修練にて伸ばし、齢15にして天才の領域へ君臨する少女。
魔法のみならず武芸もまた他者の追随を許さないユフィリアが振るったなら、デーボモンスターを下す必殺の刃と化す。

「ギャワイ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!」

可愛さの欠片もない声を最後に爆発。
復元水を掛けられ巨大化といった展開も、ラッキューロがおらずそもそもNPCなので起きない。
まふゆを連れ去り一悶着を起こした元凶は肉片一つ残らず消滅。
他のNPCも全滅しており、次にやるべきは王の合流を待ちながら名も知らぬ参加者達への対応。
と、その前に改めてまふゆの状態を確かめる。


527 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:44:30 dV/MzLTg0
外傷は見当たらないが額に汗が浮かび、息が上がっている。
アラクネが消滅しまふゆを蝕んだ毒も消えたが、強制的に発情させられたのだ。
体はまだ火照ったまま、やはり屋内で休ませるべき。
そう考えるユフィリアのとは打って変わり、まふゆはグスグスとべそをかく。

「ごめんなさいおねえちゃん…わたしまた、心配ばっかりかけるわるい子になっちゃった……」

わるい子。
攫われる前にも口にした言葉へ、ユフィリアはどこか引っ掛かりを覚えた。
具体的にどこがどうおかしいとは言えない。
ただどうにも、この年頃の少女にしては悲しみ方に違和感が見え隠れする気がしてならない。
正体は分からずとも、黙ってまふゆを泣かせ続ける気は無し。
魔剣を鞘に納め手を伸ばし、壊れ物を扱うように頭へ手を置く。

「心配はしていました。でも悪いのはあなたを連れ去った魔物であって、まふゆではありません。…私の方こそごめんなさい。恐い思いをさせてしまいましたね……」

少しでも安心出来るようにと頭を撫でる。
眉尻を下げこつんと額を軽く当てれれば、瞳に互いの顔が映り込む。

「おねえちゃん、悲しそうな顔してる…わたしのせい?」
「まふゆが気に病むことは何もありません。でも、あたなが笑ってくれれば私も笑顔に戻れる、かもしれないですね」

表情を柔らかくして告げれば、つられてまふゆも徐々に笑みを取り戻す。
足元では二人の様子に安堵したのか、ミニティラが小さく咆えた。

口を挟まず様子を見守っていたチェイサー達も、この様子では殺し合いの乗った者でないと判断。
再会の邪魔に出るのは少々忍びないが、このままずっと見物に徹する訳にもいかない。
頃合いを見て口を開き、


528 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:45:46 dV/MzLTg0
「おーい二人とも!」

聞こえた声に身を強張らせた。

赤い王の鎧を纏った戦士、クワガタオージャーが駆け寄って来る。
ユフィリアとまふゆには信頼の置ける仲間の姿だ。
黒い騎士と独りで戦い、ここにやって来たなら勝利し退けたのか。
王の力を信じてはいるも心配はしており、こうして無事に合流出来て安堵の表情を作る。

「無事で良かった…まふゆも大丈夫?」
「うん!おねえちゃんとミニティラちゃんが助けてくれたから…」
「ギラ様もご無事で何よりです。あの殿方とは……」
「ごめん、そっちは逃げられた。ところで、…そっちの二人は?」

視線を向けた先には桃色の衣装の少女と、銀色の戦士。
後者は自分の知るどの戦隊の者とも異なる姿。
もしかするとルルーシュの放送であった、仮面ライダーなる存在か。
こちらの様子を窺っており、警戒の色がハッキリ見える。
少なくともいきなり襲いはせず、ユフィリア達に攻撃を加えていなかった事からも対話は可能だ。
王鎧武装を解除し、生身のギラ・ハスティーへ戻った。

「――ッ!」
「あの人、は……」

現れた素顔に両者の反応は友好的とは程遠い。
息を呑み構えるチェイサーの隣で、マジアマゼンタは血の気の引いた顔になった。
忘れない、忘れる筈も無い数時間前の死闘。
複数人掛かりでも歯が立たず、悪夢の如き力でエリア一つを壊滅へ追いやった真紅の王。
よく似ているどころの話じゃない、全く同じ顔の男が目の前にいる。


529 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:46:38 dV/MzLTg0
「え……?」

ただならぬ相手の様子に、ギラも流石に異変を感じる。
殺し合いという状況で初対面の参加者を警戒するのは当然だが、幾ら何でもおかしい。
初めて顔を合わせる者へ見せる反応では無い。
どちらかと言うと、明確な脅威と認識した上で見せる敵意ではないか。
理由が分からず困惑を抱くも、時間を掛けず答えに辿り着く。

(まさか……)

心当たりは一つしかない。
自分と同じ顔の男が、否、狂った歴史に君臨したもう一人の自分が島のどこかにいる。
宇蟲王となったギラに襲われ、どうにか逃げ延びたのか。
予想出来なかった内容ではないがしかし、既に宇蟲王の被害が出てしまったのか。

警戒と困惑が両者の間に漂い始め、どちらも次の動きへすぐに出れない。
誤解されているのをハッキリ理解しギラが一歩踏み出すも、けたたましい音に止めざるを得ない。
チェイサーバイラルコアが持ち主の警戒を感じ取ってか、エンジン音を響かせ近寄るなと威圧。
これに黙っていられないのは仲間へ攻撃的な態度を取られたミニティラだ。
咆哮を上げ怒りを叩き付けると、負けじとチェイサーバイラルコア達もクラクションで対抗
ミニカーとミニ恐竜、傍目には男児の玩具が牽制し合う奇妙な光景が生まれるも緊張感は嘘じゃない。

「だ、だめ!」

重苦しさを増す空気を切り裂いたのは、幼い少女の声。
ユフィリアの腕を離れ、驚きと制止を求める声が掛かるも今だけは聞けない。
ギラの前へ庇うように飛び出したまふゆが、幼い瞳で精一杯に睨み付ける。

「おにいちゃんにいじわるしないで!おにいちゃんは、わ、わるい人じゃないよ…!」

彼らとギラの間で何が起きているかを正確に分かってはいない。
だけど自分を助けてくれた優しい王様が困っているなら、じっとしてなんかいられない。
恐怖を隠さないまま言い放つまふゆの隣へ、同じく王の仲間が並ぶ。


530 : Reason for(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:48:04 dV/MzLTg0
「お二人とギラ様の間に何が起きたかを存じてはおりません。ですが、悪意で剣を向け命を奪う御方で無い事は確かです。誤解があるようでしたら私が説明を請け負いましょう」

一歩も退かずに毅然とした態度で向き合う。
この数時間でギラが信頼を置ける者か否か、答えはとっくに出ている。
殺し合いに抗う者同士が余計ないざこざで内部崩壊を起こすのは、彼女とて望まないのだから。

「…二人ともありがとう。僕を警戒する理由には心当たりがあるし、それについてもちゃんと説明する。だからいきなり難しいのは当然だけど、今は僕の言葉を信じて欲しい」

仲間達からの信頼を噛み締めつつ、自身の言葉で敵意が無いとハッキリ伝える。
血を流す闘争ではなく、手を取り合うことを望む王へややあって機械の戦士が答えを返す。

「…すまない。誤解をお前に向けていた」
「あ、あたしもごめんなさい!落ち着いて考えれば、あの人とは違うって分かるのに……」

同じなのは顔だけで、纏う空気は全く異なる。
露骨なまでに他者を見下し殺意を振り撒く王と、目の前の青年はまるで違う。
何より信頼し合える仲間がいる時点で、記憶に焼き付く王でないのは明白だ。
強過ぎる警戒で不要な争いが起きたかもしれず、謝罪すれば向こうも雰囲気が幾分柔らかさを取り戻した。

とにかく、校舎前に集まった面々は殺し合いに否定的な参加者。
警戒を引っ込め安全と判断出来た以上、立ち話を続けるつもりもない。

「話は中に入ってからにしたいが、構わないか?」
「うん。それじゃあ――――!?」

行こうと言い掛け抜刀したギラへ、その場の誰も疑問に思わない。
誰もが武器を構え弾かれたように一点へ向き直る。
複数人の視線を集めても意に介さず、むしろ己が存在を見せ付けるかの堂々とした様。
新たな参加者が現れただけなら、こうも臨戦態勢を取ってなどいない。
隠すつもりの無い殺意と憤怒を垂れ流し、ソイツは一同を睨み付けた。

「ケッ、こんな所で群れてやがったか。もっと早くに出て来いってんだ!腹立たしいぜ!」

七支刀を肩に乗せ、八つ当たりを吐き捨てる。
天から降りた雷の化身や、厄災を祓う神の使いを思わせる外見だが本性は紛れもない悪。
暗黒種に生み出された、怒りを司る戦騎。

狂気の赤龍が死して尚も闘争の気配は残り続ける。
若き錬金術師達の学び舎は、今再び戦場と化す。


531 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:49:55 dV/MzLTg0



全く持って腹立たしい限りであると、何度そう思ったかドゴルドには分からないし分かりたくもない。
未知の力を引き出し高揚感を得て、歯応えのあった人間共を葬る。
描いた光景は欠片も実現へ近付けず、4人全員を逃がすという何とも締まりのない結末。
消化不良な終わりへの怒りを抱えたまま、次なる獲物の捜索に出た。

森林エリアの探索に見切りをつけ、より参加者の集まりやすいだろう街へ向かったものの結果は成功と言い難い。
出会う奴は揃ってNPC、それもゾーリ魔のような数だけ多い低級ばかり。
苛立ち紛れに蹴散らしても気分は晴れず、むしろ歯応えの無さに余計ストレスが溜まった。
行き先とタイミングが会えば、宇蟲王やサイヤの血を引く戦士との遭遇が叶った筈。
或いは森林エリアでの捜索を粘った場合でも、東軍総大将や怪獣医(ドクター・モンスター)といった実力者を見付けられた可能性も低くはない。
現実にそうならなかった為、ただただ苛立ちだけが増していったのだが。
呪力による会心の一撃を加えてから4時間以上が経っており、あの全能感に似た感覚も徐々に薄れつつある。
折角引き出した力で暴れ回ろうにも、肝心の相手がいないなら無意味だろう。

溜まりに溜まったぶつけ所の無い怒りは、ようやっと獲物を発見し戦いの熱へ変わる。
獣電戦隊の二人はいないがこの際構わない。
マジアアズールや覇世川左虎のような強者かもしれないなら、喧嘩を売らぬ理由は無し。
溢れ出た戦意が雷へ変わり刀身を走った。

「お前は……」
「生憎こっちはお喋りしたくて来た訳じゃねぇ。体中が疼いてやがんだ、今すぐ戦え!!」

拒否を一切認めない怒声を浴びせ、愛刀片手に接近。
巨体からは予想も付かない速さで迫るドゴルドへ、みすみすやられる気はない。
いきなり現れ名乗りもせずに襲い掛かった、つまりは赤いライダー同様の危険な存在。
理解出来たなら自分達が何をやるべきかは決まったも同然。


532 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:50:59 dV/MzLTg0
『GUN』

得物を遠距離形態に変え、照準を合わせトリガーを引く一連の流れには無駄がない。
倒すと決めた以上は容赦も加減もチェイサーにはない。

「小賢しいんだよ豆鉄砲が!」

連続発射のエネルギー弾を、豪快に振り回した刃が掻き消す。
ピンポイントで急所を狙う正確性、対ライダー・ロイミュードを想定した威力と速度。
以上を兼ね備えた銃撃もドゴルドを倒すには至らない。
間合いへ到達し稲妻の如き喧嘩上刀の一閃が奔り、身を捩って直撃を躱す。
刀身から発せられる電撃の影響で、直接触れずともじわじわと体力を削られそうだ。

銃撃で倒せるとは最初から思っていない。
少しでも自分の方へ意識を惹き付ければ、各々が必要な動きに出れる。
刀を肘で打ち己から遠ざけ、次いで放たれた蹴りには同じ攻撃で対抗。
互いの脚を叩きつけ合い、脚部アーマーへ伝わる衝撃へチェイサーが一歩後退。
すかさずドゴルドが踏み込み腹部へ切っ先を突き出すも、視界の端から迫りくる真紅へ急遽狙いを変えざるを得ない。

(速い…!)

首目掛け振るったサタンサーベルは敵の刀に阻まれ、僅かな傷も与えられない。
反射速度へ息を呑むユフィリアだが、驚きは一瞬に留めねば今度は自分が首を斬られる。
押し返された衝撃に逆らわず後方へ跳べば、胸部スレスレをドゴルドの刀が通過。
僅かに遅れていたなら、胸の膨らみごと削がれたのは想像に難くない。

「おねえちゃん!」
「こっちへ来てはいけません!」

不安気に叫ぶまふゆへ釘を刺し、ドゴルドから視線は外さない。
ドーパントの時と違い、まふゆを近くで庇ったまま戦える相手では無い。
チェイサーが稼いだ時間で可能な限り遠ざけ、ミニティラに守護を頼んだ。


533 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:51:46 dV/MzLTg0
「チッ!キョウリュウレッドの野郎、テメェの相棒をあっさり奪われてんじゃねえよ!腹立たしい!」

癪だが実力は認めている男のパートナーが、殺し合いに利用された。
しかもドラゴン娘(シェフィ)以上に見ていてイライラする、人間の小娘の手に渡る始末。
あんなガキにガブティラを渡すくらいなら、キョウリュウレッド本人を参加させれば良いだろうに。
クルーゼの選出はイマイチ理解出来ず、苛立ちが増す原因となる。

『Qua God!』

「王鎧武装!」

『You are the KING You are the You are the KING!』

『クワガタオージャー!』

主催者への不満を吐き捨てる間に、ギラの戦闘準備が完了。
発せられるドゴルドの気迫へ、生身で戦うのは不利と見て鎧を纏う。
クワガタオージャーに変身するや距離を詰め、オージャカリバーを振り被る。
そっちから近付くのならむしろ好都合、戦騎が愛刀で以て迎え撃つ。
刃同士の衝突音が打ち鳴らされ、得物を挟んで睨み合う。

「キョウリュウジャーとは別の戦隊か?面白ぇ!簡単にくたばるなよ!」
「っ!何でキョウリュウジャーを知って…まさかデーボス軍の…!?」
「自分で考えろ!答え合わせしてやる義理はねぇ!」

ドゴルドが強制的に打ち切ったことで会話は終了。
疑問へ答える気がないなら、剣を用いて倒すのみ。
小細工抜きで真正面からの斬り合いに身を投じ、譲れぬ勝利への想い/執念を乗せた得物が喰らい合う。
一撃だろうと貰ってやらず、敵の剣を弾き返しては逆に斬り付け、それを弾かれまた攻撃の繰り返し。


534 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:52:39 dV/MzLTg0
「てやあああああああ!」

変わらぬ攻防へ変化を促すは、仲間というドゴルドになく王にはある存在。
一直線に突き進む桃色の槍へ鬱陶し気に舌打ちを零し、頭部を動かして回避。
避けて安心はまだ早い、クワガタオージャーに斬り掛かられ頭部へ剣が到達するまで一刻の猶予も無い。
とはいえこの程度で危機感を覚える力しか持たないなら、デーボス軍の幹部の座からは早々に転げ落ちただろう。
迫る王の剣へ愛刀を鈍器のようにぶつけ、クワガタオージャーの腕へ痺れが襲った。
怯んだ時間は1秒にも満たないが、ドゴルドはそこを決して見逃さない。
咄嗟の防御に出た王と魔法少女の得物へ、喧嘩上刀の薙ぎ払いによる衝撃が叩き付けられた。

「ぐぁ…!」
「きゃっ……!」

踏み止まらんとする意思を嘲笑い、風に吹かれた枯れ葉のように体が宙へ浮く。
吹き飛び地面へ叩き付けられた二人へ、喧嘩上刀の切っ先が向けられた。
刀身に迸る電撃を浴びせ追い打ちを掛ける気だ。
ちょっとやそっとでは死なない姿に変身中とはいえ、受けるダメージは少なくない。

『TUNE CHASER SPIDER』

させじと攻撃を仕掛ける戦士と魔法の使い手。
武装展開し蜘蛛モチーフのクローで斬り掛かり、別方向からは世紀王の魔剣を振るう。
チェイサーとユフィリアの放つ斬撃へ動揺の素振りは見せず、むしろ望む所と獰猛に笑った。
野太い声と共に放った蹴りが向かう先にはユフィリア。
直撃した際の被害は骨折で済めばマシ、臓器を幾つ使い物にならなくされるのやら。
攻撃を強行するのはリスクが大きい、剣を引き回避へ移行。
一方チェイサーとは得物で斬り合うのを選択、銀と金の刃が絶えずぶつかり敵を砕かんと金属音を響かせた。

「おらおらどうした銀ピカ野郎!温い刃で俺を殺せるかよぉっ!」

威勢の良い挑発には乗らず攻撃を防ぐも、内心では敵への警戒度を引き上げる。
パワーに優れた性能であるチェイサーをして、ファングスパイディーから伝わる重さは危険と言わざるを得ない。
腕部アーマーにより威力を高めた斬撃を放っても、力任せの一振りで霧散。
生半可な攻撃を幾ら続けた所で体力ばかりを失いドゴルドは倒せない。
そう理解したのはチェイサーのみに非ず、再度距離を詰め刃を放った少女も同じだ。


535 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:53:22 dV/MzLTg0
「“エアニードル”!」

剣技に魔法を組み合わせ打って出る。
サタンサーベルの刺突に合わせ空気の針が打ち出された。
一本二本では済まない、一息の間に数十を超える乱れ突きを受ければ全身へ無数の穴が生まれる。
なれど敵は主催者直々に用意した冥黒の五道化の一体。
ここで倒れるようでは最強のNPCの肩書も単なるハリボテに過ぎない。
片腕に力を漲らせ刀を振り下ろす。
たったそれだけの動作で暴風の如き刃を飛ばし、空気の針の連射を打ち破った。

呼吸が途切れ針の弾幕も消え、ドゴルドが相手を殺すのに十分な隙が生まれる。
無論、そう来ることはユフィリアにも予測の範囲内。
跳躍し頭上を取れば、小賢しい虫を落とすべく剣が突き出された。
それすら読んでいたとでも言うように宙で体勢を変え躱す。
飛行魔法の応用で身動きのとり辛い宙だろうと、こういった真似が可能だ。

着地の瞬間に斬り掛かられるも、反射速度に優れているのはドゴルドだけの特権ではない。
魔剣を翳し防ぎ、両腕の痺れに打ち合いを続けるのは悪手と判断。
膂力で勝る相手とどう戦えば良いかも心得ており、喧嘩上刀の刀身へ己が剣を添え受け流す。
力任せにぶつけ合うよりは負担も抑えられる。

ドゴルドの剣が嵐ならユフィリアは流水。
いっそ美しさすら感じられる剣は、天性の才によるもののみに非ず。
学んだ基礎を徹底的に伸ばし洗練させる、弛まぬ鍛錬を今日に至るまで欠かさなかった証。
努力が齎した強さはデーボス軍の怒れる戦騎とも渡り合う光景を、夢幻ではなく現実のものとする。
刃から実力の高さを感じ取り、ドゴルドの戦意は益々上昇。

「テメェといいアズールの奴といい、小娘の分際で大した腕してやがるぜ!」
「…っ!他人の力を素直に認められる度量がおありなら、殺し合うのを止めて欲しいのですが…!」
「そいつは無理な相談だ!」

実力は認めるがそれとこれとは話が別。
腹立たしいがNPCとしての役目を放棄するつもりはゼロ。
戦国の世から続く因縁との再戦に向けて、己が刀へ血を吸わせねばならない。


536 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:54:08 dV/MzLTg0
「アズール……?」

剣戟の最中に聞こえた名前へ、暫し思考が凍り付く少女が一人。
まさか戦闘中の相手からその名が出るとは思わず、我に返り問い質す。

「まさか…アズールに会ったの!?どこで……」
「あ?何だ、アイツのお友達か?さあな!運が悪けりゃ、次の放送で名前が呼ばれるだろうよ!」
「っ!!」

望んでいたのとは違う答えにヒュッと喉が鳴る。
マジアアズールとの戦闘がどうなったかを説明してやる義理は無い。
青褪めるマジアマゼンタを無視し、一際強く剣を振り回す。

「くっ…!強化してこれ程の…!」

光属性の魔法を使い既に身体強化は施してある。
にも関わらず馬鹿げた威力を叩き出され、受け流すのにも負担が増す。
両腕の痛みにほんの一瞬対処が遅れれば、次にどうなるかは決まったも同然。
辛うじて防御を取ったは良いものの、弾き飛ばされるのまでは避けられない。
鎖で幾重にも縛られた所へ、風魔法を使われた気分だ。
受け身も取れないまま激突を待つだけの身となる。

「おっ…と!」

待ち受ける痛みはやって来ず、視界には信頼を置く赤が映った。
受け止められたとすぐに分かり、少々慌てて離れ礼を言う。
王の手を煩わせた申し訳なさと純粋な感謝は簡潔に留める。
この状況で長々と会話に興じる余裕はゼロ、王も理解しており一度頷き即座に敵へ向き直った。
思った通りだ、吹き飛ばした程度で満足せずに襲い掛かって来る。


537 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:55:01 dV/MzLTg0
『EXECUTION SPIDER』

「チィッ…!」

接近を阻むは銀色の蜘蛛が放つ光弾。
高威力の技を撃たれればドゴルドも無視は出来ず、そちらへと剣を振るう。
たったの一振りで打ち消すのは流石のパワーなれど、飛散したエネルギーが全身を痛め付けた。
ある程度治まったとはいえ、左虎達との戦闘で受けた傷にも響く。
だが戦闘続行へ追いやられる程ではない、舐めた真似をしてくれたチェイサーへと電撃を放つ。
横へ大きく跳んで躱し、クラクションを鳴らし走って来たトレーラー砲をキャッチ。
発射されたビームにドゴルドは愛刀を翳すことで防御、小癪な飛び道具共々叩っ斬るべく力を籠める。

『OHGER FINISH!』

「“ファイアーアロー”!」

反撃をむざむざ許してやる程、王と公爵令嬢は優しくない。
光刃と炎の矢が、防御の真っ最中で身動きの取れないドゴルドを狙う。
ゴッドクワガタの力を乗せた刃は勿論、ユフィリアの魔法も貫通力と連射性能を高水準で兼ね備えている。
強固な鎧のドゴルドであってもノーダメージで凌ぐのは困難。

「舐めてんじゃあねえぞぉおおおおおおおおおおおっ!!!」

しかしここにいるドゴルドは、嘗てキョウリュウゴールドに敗れた時とは違う。
本来であれば手にする事の無かった数々の異能を組み込まれた、バトルロワイアルの特別NPC。
持ち主の怒声に愛刀が応え、纏めて蹴散らすように振るう。
雷と斬撃が三方向からの脅威を全て打ち消し、放った当人達をも痛め付けた。

「やはり…あの力は……っ」

背中から倒れ苦悶の声を上げながら、ユフィリアは敵の強さの理由へ戦慄を抱く。
剣の腕や電撃を放つドゴルド本来の力も強力だが、より危険なのは戦闘中常に武器や打撃へ纏わせたナニカ。
魔法に精通したユフィリアだからこそ気付き、背中を冷たい汗が伝った。
闇属性の魔法に近いようで違う、臓腑が凍り付くような薄気味悪いモノ。
それが「呪力」と呼ばれるとは現状知る由も無い。


538 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:56:02 dV/MzLTg0
先の戦闘で発生した黒い火花の名も、そもそも呪力とは具体的にどういった力かもドゴルドは知らない。
ただ己の中に呪力が宿っているのを認識しているかしていないか、それだけでも雲泥の差がある。
内へ力があると分かり、黒閃を経た事で呪力の引き出し方も頭では無く魂で理解出来た。
そこからやったのは呪術師にとっては珍しくも無い、呪力を用いた強化。
単純であるも決して侮るなかれ。
負の感情を母体にする呪力と、怒りこそが最大の原動力であるドゴルドの相性は言わずもがな。
でなければ偶発的とはいえ、黒い火花は微笑まなかっただろう。
一撃の重さ、速さ、発生する電撃の火力。
それら全てが会場へ解き放たれた直後を超え、此度の闘争で単騎無双を作り上げた。

「アズールに何をしたの…!?」

ドゴルドが如何に危険か、瞳に映る情報で理解せざるを得ない。
だとしてもマジアマゼンタを止める効果は発揮されなかった。
アズールに…小夜に何があったのか、今どうなっているのか。
分からない、本当の事を知りたくても相手がマトモに答えてくれない。
焦りを隠そうともせずに突撃するも、届かないのは誰の目にも明らかだ。

「教えて欲しけりゃもっと本気で来やがれ!アイツは腹まで裂いてやっても立とうとしたぜ!」
「な、ん……!?」
「今のテメェよりもよっぽどしぶとかったぜぇ!腹立たしいくらいにな!」

凍り付いたマジアマゼンタの手から槍が弾き飛ばされる。
小夜の負傷がどれ程かを今の言葉だけで知ってしまい、動揺が鎖となって絡み付く。
槍の再生成、或いは黒槍を取り出すかなど選択肢を頭に浮かべる暇すらドゴルドは与えなかった。

「腹立たしい!テメェじゃアズールの足元にも及ばねぇんだよ雑魚が!」

怒りのままに刀を振り下ろし魔法少女の生に幕を引く。
数秒先で訪れる末路を回避すべく、仲間達が全身の痛みを振り払って駆ける。
魔法やエネルギー弾を撃ちドゴルドの動きを阻害。
マジアマゼンタへの巻き添えを防ぐ為高威力のモノは撃てず、倒すには至らずとも剣を振るう手が止まった。
この隙にと急接近するも刀身から電撃が放たれ、クワガタオージャーとチェイサーを怯ませる。
唯一止まらなかったのはユフィリアだ、男達が自らを盾代わりにし彼女を行かせたのだ。

「彼女から離れなさい!」

飛行魔法の応用で自身の背を突風で押し出す。
突き出したサタンサーベルが真っ直ぐドゴルドへ吸い込まれ――


539 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:56:58 dV/MzLTg0


彼女の手を離れ、あらぬ方へと飛び去って行った。


「な――――」

起きた現象へ理解が追い付かない。
持ち主の元を勝手に離れる効果なんて、付属していた解説書のどこにも無かった。
急にどうして、何故こうなったのだろうか。
浮かび上がる疑問を全て追い払ってでも、一気にマズい方へ転がった状況への対処へ思考を引き戻す。
咄嗟だというのに見事な切り替えの速さだろう、可能な限り身を捩ったのも常人に出来る事では無い。

どう足掻こうと手遅れだが。

「あ……」

餌に食らい付く獣のように、柔肌へ刃が食い込み骨まで断つ。
離宮へ住むようになってからアニスフィアがくれた、青を基調にした衣服。
それを汚し色を濃くするのは、ユフィリア自身が流す液体。
崩れ落ちる少女へ戦場は一瞬の静寂が支配し、

『――ッ!!』

弾丸の如き速さで駆け、王とロイミュードが怒りの戦騎を引き離す。

「あ、だ、駄目…!今治すから…!」

僅かに遅れてマジアマゼンタもまた、現実を認識し回復魔法を掛ける。
自分のミスがユフィリアの重傷へ繋がり、手が震えるもどうにか抑え込む。


540 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:58:00 dV/MzLTg0
「おねえちゃん…?おねえちゃん……おねえちゃん…!」

離れ隠れていたまふゆも、ユフィリアが倒れたのを見て駆け寄って来た。
今だけは、言い付けを破り「わるい子」になった事を考えていられない。
体中を汚す赤が一体何なのか、これからどうなるかは幼いながらに理解している。
だからこそ、その結末は受け入れられない。
最初はちょっと恐いと思ってしまったけど、でも自分を助けてくれて、赤い王様と同じくらい優しい人だと分かって。

「やだ…おねえちゃん…起きて……」

なのにこんな形で別れるなんて、絶対に嫌だ。
泣きじゃくり必死に呼び掛けるまふゆへ応えたい、その気持ちは嘘じゃない。

「……っ」

だというのに回復が一向に進まない。
龍騎にNPC、加えてドゴルドとの連戦がここに来て大きく響く。
消耗が魔法の精度を著しく下げ、ユフィリアをこちら側へ引き戻せない。

「丁度良い、こいつの実験もしてみたかったんだよ!」
「ぐあ…!」
「まだ力を隠していたのか…!?」

更にマジアマゼンタを焦らせるのは、ドゴルドと戦う仲間達の苦悶の声。
喧嘩上刀だけでなく、もう片方の腕からも高出力の電撃が放たれる。
装甲から火花を散らし怯んだクワガタオージャー達へ、今度は上空からの脅威が襲った。
地上へ神罰が下されたとでも言うのか、雷撃に爆発が起き吹き飛ぶ。
校舎の残骸の上を転がり、衝撃とダメージで変身が解除。
生身と擬態した人間の姿を晒す二人を見下ろし、ドゴルドは己の掌に電気を迸らせる。

「雷霆(ザ・サンダーボルト)」。
ドゴルドに与えられたソードスキルの内の一つ。
元々は見えざる帝国(ヴァンデライヒ)所属の滅却師、キャンディス・キャットニップが持つTの聖文字(シュリフト)。
雷を操るシンプルながら破壊力に優れた能力は本来持つ力とも相俟って、ドゴルドとの相性抜群。
黒閃を決め己に眠る力を引き出せるようになり、ようやっと日の目を見た。


541 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:58:47 dV/MzLTg0
「治さないと…!あたしが、急いで…でないと……!」

治さねばと分かっているのに、思い通りにはなってくれない。
傷付く仲間達、安否の分からない小夜。
焦り、恐怖、無力感。
心を蝕み弱くする毒が広まっていく。

(どうしよう…どうしよう……!)

両手の震えは自分でも抑えられなくなり、気付かぬ内に涙が溜まる。
助けたいのに目の前の光景が告げるのは、余りに残酷な現実。
自分では助けられない、何も出来ない。
死ぬのを見ている以外に、何一つやれはしない。

「…………っく…ふっ……!」

しかし、悲劇へ否を叩き付ける者がいた。
血を吐き出しながら緩慢な動作で傷口へ手を翳し。
回復魔法を発動した、他ならぬユフィリア本人が。
瀕死の身にありながらも抗う彼女は、目を見開くマジアマゼンタをゆっくりと見上げる。
いつ限界が来てもおかしくないにも関わらず、瞳の輝きは微塵も失われていない。

「感謝します……私の命を…繋げてくれて……」

微弱ではあったが回復魔法は効果があり、ユフィリアへ力を与えた。
沈んで消えるだけの意識を起こし、まだ死ねないと彼女自身を奮い立たせたのだ。
瀕死の身ではユフィリアと言えども、回復魔法を使ったとて治りが遅い。
血が全て失われるのは時間の問題かもしれない。


542 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 18:59:46 dV/MzLTg0
だからなんだ、そんなものは諦める理由にならない。

帰りを待つ人達がいる、帰って支えねばならない人がいる。
元婚約者であり、あの人の弟からも言われた。
彼の姉を、アニスフィアを頼むと。

死ねない理由は、この地で出会った者達だってそう。
共に戦うと約束した王の信頼を、こんな形で失いたくない。
それに、ああ、今も傍で泣きじゃくる少女を悲しませたいとも思わない。
「わるい子」と言って自分を責める顔よりも、無邪気に笑っている方がきっと良いのだから。

「だから私は……絶対に……!」

「………」

この場で最も死に近く、それでいて生を諦めない姿が。
どんな宝石よりも輝き、心にへばり付いた毒を洗い流す。
唇を強く、強く噛み締め、

「……っ!ごめんなさい、それからありがとう!」

両手で自身の頬を強く叩き、喝を入れ直す。
無理だとか、もう助からないとか、そうじゃないだろう。
皆が諦めていないのに、自分だけ真っ先に諦めるなんておかしいだろう。

(小夜ちゃん…あたしも、薫子ちゃんも、小夜ちゃんのこと信じてる…!だから今は、あたしにやれることを……!)

小夜の事で不安が全部無くなってはいない。
けれどここで焦り自分を見失うのが、正しい選択な訳が無い。
迷って助けられる人に手を伸ばせない、そんな自分が胸を張って小夜と薫子に再会など出来るものか。
だから、今目の前で起きている戦いに集中する。
逃避なんかじゃない、もう一度大事な友達に会う為にも、だ。

力が高まっていくのが分かる。
初めて魔法少女になった時からずっと変わらない、花菱はるかを突き動かす想いが最大限に高まる。
助けてくれた皆への感謝、それ以上に、


543 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:00:34 dV/MzLTg0
「あたしはもっと、みんなの力になりたい!!!」

光が、溢れた。

「これは……」
「きれい……」

激痛と、悲しみを一瞬忘れる程の光が魔法少女を包み込む。

眩しく、尊い、あこがれを誰よりも集めた彼女は新たなステージへ。
真化(ラ・ヴェリタ)。
正史とは異なる場ではあるが、マジアマゼンタもとうとうそこへと至った。





或いは、至ってしまったと言うべきか。





「あっはぁぁぁ……♡」





「…………え?」

眩い輝きは一瞬で暗黒に変わり、人の形を生み出す。
ユフィリアが呆けた声を零すのも無理はない。
現れた彼女は数秒前とは余りに違う。
違い過ぎた。


544 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:01:57 dV/MzLTg0
魔法少女のコスチュームから一転、身に纏うのは露出過多のナース服。
白衣の天使、などとありふれた表現は到底使えまい。
胸元にはハート型の切れ目が入り、わざと谷間を見せ付ける。
下腹部も同様に晒し、臀部に至っては丸見え状態でスカートが全く機能していない。
へその真下へ浮かび上がった漆黒の星は、トレスマジアにあらざるべきもの。
褐色に染め上がった肌も相俟って、清楚や純真無垢とは程遠い有様。
マジアベーゼやマジアサルファがこの場にいたら、ショックで血を吐いたのは間違いない。

「みんなをい〜っぱい、癒してア・ゲ・ル♡」

爛々と輝く瞳の色に天真爛漫の四文字は無く、肌が泡立つ程の妖艶さがあった。
マジアマゼンタ・フォールンメディック。
本来のはるかならば起こり得なかったこの姿は、マジアベーゼの魔力という劇薬が注入されたのが原因で生まれた。
尤も思考や行動理念までもがマジアベーゼ一色に染まったのではない。
本質は元のマジアマゼンタから変わっていない、だから余計に質が悪いとも言えるが。

「なっ!?」

ボリュームを増したツインテールが巨大な手に変化し、ユフィリアを押え込む。
突然の暴挙へ怒るより先に、圧倒的な羞恥が湧き上がった。
下半身を高く突き上げたポーズで、しかもスカートを捲られる始末。
薄い布一枚で隠した尻を晒され、頬に熱が集まる。

「なっ、いきなり何をするん……ですか……」

抗議の声は瞬く間に勢いが衰え、変わりに顔が青くなる。
振り返った途端、巨大な注射器の狙いを澄ますマジアマゼンタが見えたからだ。
刺突剣のようにギラリと光る針、どこへ突き刺すつもりかは聞くまでもない。
公爵家に生まれ早15年、これ程の恐怖を感じた事があっただろうか。

「待って…早まらないでください……そ、そんなの入るわけ……」
「心配しなくても大丈夫♡お注射で元気になるだけだからぁ♡」
「い、いやっ!お願いやめ――」



ズ ブ リ

「んみゅっ!!!!!!!???!!」



「ほ〜ら♡あったかいのがビュクビュク流れてくのが分かるでしょぉ?」
「ひぐっ!?うぅっ!んあっ♡も、や…♡」

注射器に収められたモノが流れ込み、その度に全身を痙攣さえ喘ぎ声を漏らす。
もしここにパレッティア王国の、ユフィリアを知る住民がいたら悪趣味な幻覚を見せられていると思うだろう。
由緒正しい公爵家の娘が人前で痴態を晒すなど、厳格な彼女の父とて卒倒し兼ねない。


545 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:02:48 dV/MzLTg0
「……あの女、頭おかしくなっちまったんじゃねぇのか?」
「…俺に聞くな」
「……そ、それより止めた方が…」

異様過ぎる光景にはドゴルドも怒りより困惑が勝った。
一体全体何が起こっているのか、理解に苦しむ状況だが何も特殊なプレイを始めた訳ではない。

「これは…傷が完璧に治ってる!?」
「あっは♡大成功♡」

蕩けた笑みでピースサインを作るマジアマゼンタを尻目に、自身の体へ驚愕を隠せなかった。
あれだけの重傷が完治しており、痛みはどこからも感じない。
こうも劇的な効果は、優れた魔法の腕を持つユフィリアから見ても驚異的だ。

「おねえちゃん…?お怪我はもう大丈夫なの…?」
「は、はい。彼女のおかげで……」
「良かった…おねえちゃん…!」

理解不能の光景に固まっていたまふゆも、ユフィリアの無事には安堵の涙を流して抱きつく。
幼い子供に自らのあられもない姿を見られた羞恥はあれど、強引に引っ込める。
心配させてしまったまふゆを優しく撫で、和やかな空気が流れるも戦いはまだ終わっていない。

「お、おねえちゃん…!わたしも、おねえちゃんとおにいちゃん達のお手伝い、しちゃだめ?」
「えっ?急に何を言うのですか?」
「だ、だって!みんなが戦ってるのに、わたしだけ隠れてばっかりで……」

守ってもらうだけの自分に負い目を感じているのだろうか。
そんな事を気にしなくて良いと言う前に、褐色の腕が伸びた。


546 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:03:37 dV/MzLTg0
「うんうん、言いたいことは分かったよ♡だからあたしで、もっと元気になろうねぇ♡」
「ふえっ?」
「はい!?」

少女二人の手首を掴み、あろうことか自身の胸元へ持って行く。
掌から伝わる柔らかさの正体を、一々説明するまでもない。
動かす度にムニュムニュと形を変え、興奮で谷間に汗が滴り落ちる。
まふゆの小さいが温もりの宿る手、ユフィリアの細く滑らかな指。
タイプの異なる感触を同時に味わい、マジアマゼンタは堪らず嬌声を上げた。

「あっ♡やんっ♡二人とも上手♡もっといっぱい触ってぇ♡」
「な、な、あ、あなたは…!?何をして…!?魔力が回復している……?」
「お、おねえちゃん…わたし何だかドキドキして…体も熱くなって…へ、変だよぉ……」
「いけませんまふゆ!こういった行為はまだ……って、いつまで揉ませているのですかあなたは!?」

少女三人のしっちゃかめっちゃかなやり取りへ、戦場の緩い空気は更に加速。
男性陣は唖然とし、ドゴルドですら頭を抱えたくなる始末。

「覗き見はNGだよっ!」
「痛っ!?」
「む……」

視線が集まるのに気付いてか、マジアマゼンタが複数本の注射器を投擲。
ユフィリアに使ったのとは違う、一般の医療施設で使用されているサイズだ。
鋭利な針がギラとチェイスに突き刺さり、一見すれば乱心したと思われても違和感はない。
違うと即座に分かったのは、ギラ達のダメージも急激に回復されたから。
真化状態とはいえ根は元のはるかのままな為、男女関係無く仲間を助けたい気持ちは失っていなかった。
どこか雑なやり方なのは、マジアベーゼの魔力に影響を受けたからかもしれない。
アルカイザーへの素っ気ない対応を思えば納得である。

「あの女!イカレてるだけかと思ったが、小賢しい真似しやがって!」

ドン引きしていたドゴルドも、敵の負傷が次々癒される光景に怒りを取り戻す。
再び電撃を放つべく力を籠めるが、させじとチェイスがブレイクガンナーを撃ち妨害。
そこへ三台のチェイサーバイラルコアも突撃、手のひらサイズながらドライブにもダメージを与えられる威力だ。
怯んだ隙に仲間達の元へ合流、そのタイミングでようやっとマジアマゼンタも手を離した。
胸を揉まされ顔の赤いまふゆに、屈み込んで口を開く。


547 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:04:28 dV/MzLTg0
「恐いって思うんだったら、無理に戦うことなんてないよぉ?悪いことじゃないんだもん♡」
「あう……」
「でもぉ…大好きな人を、困ってるみんなを助けたいって気持ちは絶対に間違いじゃないからね♡まふゆちゃんが何をするにしても、あたし達が守ってあげる♡」

快楽へ誘う猫撫で声は変わらずとも、まふゆの想いは否定しない。
困っている人を助けて笑顔を取り戻す、それがマジアマゼンタの魔法少女としての在り方。
そうしてもう一人、この地で出会った新しい友達もそう。
絶体絶命の状況にあっても、逃げずに立ち向かうことを選んだ小さな魔法少女(アイドル)。
誰かの為に頑張れる者を知っているからこそ、ユフィリアやギラの力になりたいという願いは、間違ってないと断言出来る。

「わたしは……」

僅かに迷う素振りを見せるも、顔を上げ瞳が仲間達を映し出す。
恐くないと言ったら嘘になる、痛い思いなんてしたくない。
だけど、ギラとユフィリアを失うのはもっと恐い。

(おにいちゃんとおねえちゃんの手、あったかかった……)

遊園地で迷子になり、母を悲しませるわるい子になってしまった。
その時自分を二度と離すまいとして握った手が、恐いくらいに冷たかったのをハッキリ覚えている。
心配して無事を喜んでくれるのは同じなのに、どうして母とギラ達で違うのか。
正確な理由までを幼いまふゆは分からない。
ただ自分は、短い時間でいつの間にか大好きになってしまった二人を助けたい。
二人から温もりをもらい守られたなら、自分も力になりたい。

「わたしは…!おにいちゃんとおねえちゃんのこと、大好きだから!一緒に、た、た、戦う…!」

たどたどしくも己の決意は曲げずに言い放つ。
声は確かに聞き届けた、であるなら応えない理由は無い。
小さな獣電竜が勇ましく咆え、まふゆの手の中に飛び乗る。
人の言葉は発せずとも、何を伝えたいかは分かった。


548 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:05:14 dV/MzLTg0
「ミニティラちゃん…うん!わたし、やってみる!」

『グルリンチョ!』

まふゆの手でミニティラは新たな姿へと変わる。
頭部が回転し銃身へ、腹部からはグリップが飛び出す。
恐竜と銃が組み合わさった見た目だが、単なる玩具ではない。
自身の力をまふゆに貸すことをミニティラも決めたのだ。
守りたい人達の為に戦う、幼い少女が精一杯の勇気(ブレイブ)を見せたのなら。
誰よりも熱いブレイブを秘めた男の相棒である自分が、応えない訳にはいかないだろう。

『ガブリンチョ!オーバーチャージ!』

「わわっ!?体が勝手に踊っちゃうよ〜!?」

銃口のスロット部分に獣電池を装填。
すると軽快なサンバ調の音楽が流れ出し、まふゆの体も自然と踊り出す。
奇妙な現象をよく知っているのはギラとドゴルドの二人だけ。
共闘と敵対、異なるスタンスではあるも彼らは見て来た。
地球の音楽が奏でる、獣戦隊の変身を。

「えっと、キョウリュウチェンジ!」

『OH!マツリンチョ!カーニバル!イィィィヤッハァァァ!マツリンチョカーニバル!』

「ふぁ、ファイアー!」

ハイテンションな電子音声に気圧されつつ、トリガーを引く。
獣電池に籠められた力を解放し纏うは、燃え盛る赤いスーツ。
牙を模したマスクには恐竜の鶏冠を生やす。
上半身を覆う装甲はミニティラ改めガブティラの頭部。
キョウリュウレッド・カーニバル。
ガブティラが相棒と一つになり戦いたいという願いを叶えた、牙の勇者の新たな形態。


549 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:06:01 dV/MzLTg0
「嘘だろおい…あんなガキがキョウリュウレッドだと!?」

桐生ダイゴに遥かに劣る小娘が、よりにもよってキョウリュウレッドになった。
主催者側の細工があるのを含めても、嘗てキョウリュウジャーと激戦を繰り広げたドゴルドからすれば理解し難い。

「わ、わたし何だか凄いことになっちゃった…!」
「まふゆ……」

キョウリュウレッドとなったまふゆを前に、ユフィリアは複雑な感情だ。
彼女からの信頼が嬉しくないとは言わない、決意を強く否定するつもりもない。
ただ本来ならば争いと一切無縁の少女を、こうして戦場に駆り出させてしまった。
これで本当に良かったのかと悩むも、王が落ち着いた口調で言う。

「戦わせたくなかったって気持ちは僕も同じだ。…自分が不甲斐ないなって思う」
「ギラ様……」
「だけど、一緒に戦いたいって想いまで否定したくないのも分かる」

ダグデドとの決戦を前に、六王国の民を騙す形で別の惑星に逃がそうとした時を思い出す。
チキューを捨て新天地で一からやり直して欲しい。
王様戦隊の最後の命令を、あろうことか全ての民が拒否し共に戦う道を選んだ。
守るべき者が守られるだけじゃなく、肩を並べて戦おうとする。
その選択を選ばせた事に何の後悔も無いかと言うと、首を縦には振れない。
しかし、彼らの勇気が力を与えてくれたのもまた事実。

だから、そう、

「なーっはっはっはっはっは!俺様の命令に背き、強き竜の衣を纏うか!その気概、実に気に入ったぞ!それでこそ邪悪の王の仲間に相応しい!」
「え、ギ、ギラ様?」
「貴様の命は既に邪悪の王の支配下にある!俺様のモノを勝手に奪わせはせん!歓喜に咽び泣いて力を振るうが良いわ!」

突如始めた邪悪の王の振る舞いへ目を白黒させるも、内容に思わずフッと笑みを零す。
成程、支配した命ならば奪わせる訳にはいかないだろう。
言葉の意味を理解したらしく、まふゆも嬉しそうに頷いている。
彼らしい信頼の向け方につい呆れ笑いが浮かぶも、それを不快には思わない。
自分も影響を受けているのだろうかと思い、スと剣を差し出された。


550 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:06:58 dV/MzLTg0
「今の貴様なら使いこなせる筈だ!存分に暴れてみせろ!」
「…宜しいの、ですか?」

サタンサーベルが戻って来ない以上、武具には頼らず魔法のみで戦うしかない。
そう覚悟していたがまさか王の剣を貸してもらえるとは。
異なる世界同士であっても、恐れ多いことこの上ない。
素直に受け取って良いものか悩むが、ギラにはまるで気にした様子がなかった。
謙遜と遠慮はあらゆる場で必要とされる、しかし度が過ぎれば却って不敬。
何より最優先は脅威への対処だ、緊張しつつ受け取り構える。

剣に秘めた力をどう使うかは、ギラを見ていた為知っている。
本当に自分に出来るのだろうか、不安の大きさに肩が微かに震えた。
しかし他でもない、所持者であるギラが信頼の証として剣を振るう事を許してくれたのだ。
一呼吸置きトリガー部分に指を掛ける。
どうしてそこへ決めたのか詳細な理由は自分でも分からない、ただこれで間違いないのだと不思議と確信が持てた。

「名も知らぬ王よ…どうか私に力を御貸しください…!」

『Come and kick it!』

「王鎧武装!」

『You are the KING You are the You are the KING!」

『カマキリオージャー!』

オージャカリバーを振るい迷いを断ち切る。
王剣が正しき心に応え、ユフィリアを花のような眩い装甲とマントが覆う。
頭部へ装着されたバイザーはクワガタオージャーとも異なる形状。
名はカマキリオージャー。
我がままに我儘を貫くイシャバーナの気高き女王、ヒメノ・ランのもう一つの姿。
殺し合いでは王の資質さえあれば王様戦隊以外の者も使用可能。
近い未来、全てを失ってでも貫きたい我儘(願い)で王になると決めたユフィリアだからこそ、この姿になったのかもしれない。


551 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:07:39 dV/MzLTg0
「俺様達も続くぞ!我が新たな下僕よ、女どもに恥じぬ戦いを見せてみろ!」
「そんなものになった覚えは無い。だが、言いたいことは分かった」

尊大な口調へ淡々と返しつつも己の戦意を高め、敵を見据えた。
人間の持つ強さを、勇気を、愛の力をチェイスは知っている。
そんな彼らを守ることこそ己の使命であり本能。
自分を支えると言ってくれた少女のように、誰かの為の決意が生まれたのなら。
人間の守護者として奪わせない。
ギラとチェイスが取り出すのは、元々自分達が力を引き出すのではないアイテム。
時に幾度もぶつかり、時には肩を並べて戦った仲間の。
死者の国での奇妙な騒動を経て、断ち切れぬ縁を結んだ男の。
信頼出来る彼らの力を借り強敵に打ち勝つ。

『SIGNAL BIKE!SHIFT CAR!』

「変身…!」

『RIDER!DEAD HEAT!』


「アバターチェンジ!」

『いよぉー!どん!どん!どん!どんぶらこ!アバタロウ!』

『ドンモモタロウ!よっ!日本一!』

戦隊と仮面ライダー、共に纏うは赤き鎧。
ドンモモタロウとデッドヒートチェイサーが並び、唯一生身の少女が黒槍を振り回す。
ポールダンスのようにしな垂れながら、ドゴルドへ指を突き付けた。

「さ〜て…これからたっくさんお仕置きしちゃうんだからぁ!♡」
「ほざけ変態女がァッ!!」

怒れる戦騎の咆哮を皮切りに、第二ラウンドが幕を開ける。


552 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:12:46 dV/MzLTg0
「うおらァッ!」

怒号一閃、持ち前のパワーと怒りで増幅した呪力を乗せ刀を振り下ろす。
その威力たるや斬るではなく最早粉砕する程。
武器を翳し防御を取ろうと、地面を汚す鉄と血肉の雨に変わるだけ。
一方で速度もまた侮れない、鍛えた達人であっても真っ向勝負は困難を極める。

「ぜえりゃぁっ!」

だが立ち向かうは、シュゴッタムの国王がチェンジしたドンモモタロウ。
チキューを守る戦いで技を磨き経験を積んだ、一騎当千の王にして戦士。
敵がデーボス軍の幹部であろうと容易く破れる弱者に非ず。
負けじと腹の底からの気合を乗せ、サングラソードで迎え撃つ。

「祭りだ祭りだ!貴様も派手に踊れ!」
「指図してんじゃねえよ腹立たしい!」

挑発には怒りを返し、喧嘩上刀の勢いへ加算。
大柄な体躯からは予想も付かない、疾風怒濤の四文字を現実にさせた斬撃が襲来。
一撃当たれば瞬く間に体勢を崩し、後はただされるがままで死へ一直線。
死神の鎌を首へ添えられたような緊張感に、ドンモモタロウは尚も笑う。

スーツを切り裂き肉を断つ感触は一向にやって来ない。
刀身から腕へ伝わり震わせる、剣をぶつけ合い起きる振動。
避けるのではない、サングラソードでの斬り合いに身を投じる。
休む間もなく迫る凶刃を弾き返し、時には打撃を当て隙を作りに出た。

ドゴルドとてタダで攻撃を受け続ける甘ちゃんではない。
拳には拳を返し、蹴りには蹴りをぶつける。
斬撃と打撃の応酬で、互いに負ったダメージは未だゼロ。
呪力で強化しているというのに、押し負けず互角に渡り合っていた。


553 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:13:36 dV/MzLTg0
「はああああっ!」

ドゴルドへ立ち向かうのはドンモモタロウ一人じゃあない。
跳躍し宙で魔法を発動、回転数を増した剣でカマキリオージャーが斬り掛かる。
顔面部分を叩き割られる一撃へ、ドゴルドも即座に対処へ移った。
ドンモモタロウへ蹴りを放つも得物の刀身で防がれる。
これでいい、距離を一旦離してやれれば問題無い。
刀に稲妻を迸らせ、わざわざ突っ込んで来た羽虫を焼き斬る。

ドゴルドのパワーなら回転を力任せに止めるのも難しくない。
オージャカリバー目掛け刀を振るい、見事に外れた。
そう来ることはカマキリオージャーも読んでおり、再度魔法を使い宙での急な体勢変更を可能に。
空振った際に生まれる隙を突き、懐へと潜り込む。
右手にはオージャカリバー、そして左手には王様戦隊専用装備のキングズウエポン。
シールドを基本形態に各武器へ変形する機能で、刃を90°展開。

剣と鎌、二つの刃が振るわれる様はまるで華麗な舞のよう。
苛烈な斬撃の中に目を惹く美しさを宿し、ドゴルドを細切れにせんと得物を振るう。
手数を活かした猛攻へ、刀一本で凌ぎ切る。
武器の数で上回れられようと関係無い、真正面から打ち破る力を今のドゴルドは持つのだから。
横薙ぎの喧嘩上刀を後方へ跳んで回避、このまま逃がす気は当然無し。
聖文字の力で片腕に電気を充填、だが放つ直前でエネルギー弾が全身を狙い撃ち霧散。

「おねえちゃん達にひどいことしないで!」
「このガキ…!」

銃形態のミニティラ、ガブティラ・デ・カーニバルを構えたキョウリュウレッドだ。
通常形態を超えるキョウリュウスーツの機能により、射撃能力にも大きな補正が掛かった。
戦闘行為など初めてのまふゆであっても、狙い撃てる腕前を発揮。
尤も、イアン・ヨークランドといった根っからの射撃の名手には及ばないが。


554 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:14:13 dV/MzLTg0
キョウリュウレッドの真似事をしただけの小娘に邪魔をされた。
屈辱的な事実へ怒りが増し、呼応するように刀身を覆う呪力も増加。
抑える気の無い衝動のままに駆け、真紅の戦士が立ち塞がる。
人を守る揺るがぬ使命に背中を押され、チェイサーが拳を叩き込む。

「テメェも赤か銀ピカ野郎!どいつもこいつも目が痛くなるんだよ!」
「知るか!」

互いに怒りを叫ぶも長ったらしい会話には発展しない。
赤と黄、稲妻を迸らせ拳と刀が激突。
二本の腕と一本の武器から繰り出されるとは思えない、数秒の間に何十もの打撃と斬撃が放たれる。
怯み後ろへ下がればそこで負け、一歩も譲らず前へ乗り出し猛攻がぶつかり合う。
刀身を拳が叩き、手刀を切っ先が押し返し、一撃たりとも受けてはやらない。

強化グローブ越しとはいえ、無手で喧嘩上刀と打ち合い痛がる様子はまるでない。
先程とは姿を変えたのもあるだろうが、それにしてはどこかおかしい。
いやそもそも、他の連中にしたって自分と渡り合えているのは――

「あたしのことも忘れちゃダメだよっ♡」

拭い切れない違和感は、薄気味悪い猫撫で声で思考の隅へ追いやられた。
跳躍し頭上を取ったマジアマゼンタが、真下目掛け黒槍を突き刺す。
狙うは肩だ、武器を振るう際の影響も少なくない。
大きく舌打ちし、チェイサーの拳を防ぎながら真横へ跳ぶ。

「月影刃♡」

地へ降り立ちすかさず槍を突き出す。
踏み込みの勢いも乗せ、速度に優れた一撃を刀で防御。
如何に速くとも小娘の槍程度逆に押し返せれる筈が、両者拮抗を見せる。

「チッ!邪魔くせぇガキが…!」

タイミングを狙い澄ましてキョウリュウレッドが銃を撃つ。
それも棒立ちになってではない、踊るようにダイナミックな動きを行いながらだ。
チマチマ電撃を撃っても紙一重で躱される、なら範囲を広げ焼き潰すまで。


555 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:14:44 dV/MzLTg0
「どこを見ている!」

だが仲間の危機を事前に潰すべくドンモモタロウが参戦。
脳天を叩き割らんと、サングラソードが頭上より振り下ろされる。
キョウリュウレッドへの電撃は中断し防御、互いに弾かれ即座に再度斬り付けた。
オージャカリバーを使った時とはまた別の、縦横無尽な斬撃の嵐を見舞う。

「ギラ様!」

背後から己を呼ぶ声に意図を察し、頭を下げる。
急に斬り合うのを止めてまで体勢を変えた意味が何か、ドゴルドにもすぐに分かった。

「“エアカッター”!」

風属性の魔法を唱え真空刃を放つ。
元のカマキリオージャーには無かった、魔法を使った攻撃。
風を刃に変え標的を真っ二つにするシンプルな効果も、使い手が天才と称される令嬢故に威力は跳ね上がる。
小賢しいとばかりに薙ぎ払い風の刃を打ち破る。
ただのそよ風と変わらない筈が腕と腹部へ小さく痛みが走り、幾分かを打ち漏らしたと理解。
またもや違和感が膨れ上がるも、考えさせないのはやはり憎たらしいあの声。

「雷神月詠華ぁ♡」

逆立ちし黒槍を回転、浮上しながら連続で蹴りを放つ。
ほとんど機能していなかったスカートの中が丸見えだ、防ぎつつも羞恥は無いのかと内心呆れる。
相手が何を思っているかも興味を抱かず、マジアマゼンタは一気に上昇。
振り下ろした黒槍に合わせ電撃が落ち、ドゴルドが避けた箇所を黒く焦がす。

「今の俺相手に電撃だと!?舐めてんじゃねぇぞ!コラァッ!!」

空蝉丸の技に比べれば脆弱、当然自分にも遠く及ばない。
そんな弱っちい電撃で攻撃され、嘲笑ではなくコケにされた怒りが湧く。
憤怒のまま斬り掛かるもくねくねと海藻のような動きで避けられ、「いやーん♡こわーい♡」とほざかれた。
ドゴルドが鎧ではなく生身の生物だったら、血管の数本は切れていたに違いない。


556 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:15:39 dV/MzLTg0
『BURST!』

『キュウニデッドヒート!』

どれ程の怒りを抱こうがチェイサー達には関係無い。
ドライバー上部のスイッチを連続で押し、全身を走るエネルギーもより激しさを増す。
シフトデッドヒートの稼働状態は最高へ移った、暴走のリスクを孕んではいるも既に乗りこなした為無問題。
地面が焼ける程の熱を発し疾走、自らを魔弾に変え拳を突き出す。
突っ込んで来るなら容赦はしない、愛刀を振り抜き押し切らんと踏ん張る。

「この…野郎がぁ……!倒れやがれ…!」
「断る…!」

腕諸共斬るつもりで刀を振るった、なのに敵は未だ健在。
やがて互いに後方へと押し返されるも、再度距離を詰め同じタイミングで攻撃。
赤い光を帯びた拳の連打を、電気の迸る刀身が一撃たりとも近付けさせない。
それは同時に、ドゴルドの剣も未だチェイサーには届いていないことを指す。
加えて拳一発一発が、蜘蛛型のクローを振るっていた時よりも重い。
呪力で強化した今のドゴルドへ食らい付ける程に。

「だからどうしたっ!」

ドゴルドの全身を走る電気に、このまま接近戦を挑むのは危険と判断。
両腕を交差しつつ後方へ跳び、直後電撃の放射が来た。
瓦礫の山が消し飛ぶのを横目に躱し続けるも、怒れる戦騎の攻撃は止む気配が無い。

『OHGER FINISH!』

「ッ!ああ腹立たしいったらねぇぜ!」

だったら方法は一つ、強制的に止めてやれば良い。
カマキリオージャーが振るった剣から、高威力の光刃が飛ぶ。
電撃をチェイサーから急遽変更し相殺、互いの視界を煙が僅かな間覆い隠す。
刀の一振りで煙を掻き消すも、敵もまた大人しく待ってはいない。
牙の勇者と赤き王、銀色の追跡者がそれぞれ銃を構える。
彼らに倣い二人の少女も各々術を発動。


557 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:16:20 dV/MzLTg0
「“ファイアーボール”!」

「嵐月・燕ぇ♡」

エネルギー弾の一斉掃射に加え、炎と風の力を収束した魔弾を発射。
得物を振るい、電撃を放ち打ち消すも弾けたエネルギーがドゴルドの身を焼く。
案の定と言うべきか、斬撃や打撃のみならず遠距離攻撃も威力が明らかに増していた。
5人全員がそれぞれ最初と違う姿とはいえ、こうも大きく変わるのか。

ギラ達が今のドゴルドに渡り合える理由、それはまふゆにあった。
彼女自身も気付いていないが、切っ掛けとなったのはデーボ・キャワイーンが倒れた際に現れたドロップアイテム。
それも目に見えるアイテムの類ではなく、スキルの一種。
偶然にも近くにいたまふゆが使用可能になった力の名はマハタルカオート。
参加者の一人でもある花村陽介ら自称特別捜査隊が、マヨナカテレビ内での戦闘で活用したペルソナのスキル。
戦闘開始時に味方全員の攻撃力を強化する効果は、ドゴルド相手にも大きな助けとなった。
但しスキル所持者が戦闘に参加しなければ肝心の効果は表れず、キョウリュウレッドになり共に戦うことでようやく発動されたのだ。
尤も説明書を一々読む暇もなく、本人にマハタルカオートを発動した自覚は無いが。

「チマチマ遊んでんじゃねぇぞテメェらぁっ!!!」

怒髪天を衝くとはこのこと。
さながら地上人の勝手に憤った雷神の如く、天からの罰が降り注ぐ。
爆撃と見紛う落雷により、地面のあっちこっちで爆発が発生。
吹き飛ばされる戦士達への怒りは、より強大な力をぶつけねば晴れそうもない。

「こいつはテメェらが初だ!泣いて喜んで焼かれちまいな!」

喧嘩上刀を両手持ちに変え上空へ突き上げる。
操る力はブレイブのみじゃない、呪力と聖文字も活用。
正と負、本来は相容れぬブレイブと呪力が混ぜ合い更にはTの聖文字で電撃の威力を底上げ。
神の武器と言われても不思議の無い輝きが発せられる。

今の自分ならば、本来の技の使い手である空蝉丸をも超える威力を出せるんじゃないか。
忘れられない宿敵との死闘を思い浮かべつつ、得物を握る手に力を籠める。
大きな力を我が物とし振るう高揚感に急かされ、解放の瞬間は来た。
対峙する者へ絶望しか抱かせない輝きが、戦士達を飲み込む。


558 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:17:04 dV/MzLTg0
「――――ッ!?」

正にその直前でドゴルドの動きが急に鈍くなる。
スローモーションの世界へ閉じ込められたように、刀を振り下ろすのが異様に遅い。
数センチ動かすのにも数分を要するだろう程の鈍重さ。
奇怪な現象の正体が重加速だと知る者は、この場にただ一人。

「急げ!この状態もすぐ元に戻る!」

仲間達に決着を促しつつ、チェイサーもドライバーへ手を伸ばす。
コアドライビアを持つ者以外は、ディケイドのような例外でない限り重加速の影響下から抜け出せない。
だが現実にチェイサーの声を聞き、困惑を捨て置きドンモモタロウ達も各々動き出す。
彼らの肩にはそれぞれ三台のチェイサーバイラルコア、キョウリュウレッドの元にはトレーラー砲が待機。
シフトカーや同じ機能のバイラルコアが、重加速内での行動を可能にしたのだ。

「小細工をっ!?」
「動いちゃダ〜メ♡」

元の動きを取り戻したのも束の間、再びドゴルドは身動きを取れなくなった。
印を結び標的を桃型の結界に閉じ込める、ドンモモタロウの能力。
光鎖で生み出した結界に閉じ込めダメージを与える、マジアマゼンタの術技(バーストアーツ)。
長くは持たないだろう、されど残る三人が動くには十分過ぎる。

『ヒッサツ!』

『FULL THROTTLE!DEAD HEAT!』

『OHGER FINISH!』

『OHGER SLASH!』

「いっけえええええええ!」

シフトデッドヒートの特殊エネルギーを全て叩き付ける蹴り。
王の武器二つから連続して放つ光刃。
更にはミニティラとトレーラー砲が、現在出せる出力の最大でビームを発射。
だから何だと言わんばかりにドゴルドも剣を振るうも、一手遅い。
結界を叩き割った時には既に、己が身へ着弾した後。


559 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:17:57 dV/MzLTg0
「これがどうしたああああああああああっ!!」

勢いが落ち痛みに苛まれようと、誰が負けを認めるものか。
雷電残光とは到底呼べぬ斬撃であれど、苦し紛れと呼ぶには侮れない力だ。
王と竜の者の輝きを捻じ伏せ、ロイミュードをも弾き返す。
よろけながらも絶対に膝は付かない、こんなものかと睨み付け、

「アバターチェンジ!」

『キョウリュウジャー!』

『でぇーせんぱい!でぇーせんぱい!いよっ!獣電戦隊!』

これで本当にケリを付けるべく、ドンモモタロウから更にチェンジ。
牙の勇者にして、最も熱いブレイブの持ち主。
宇蟲王ギラとの戦いでも共に戦った獣電戦隊のキング。
キョウリュウレッドがまふゆとは別に、もう一人現れる。

「あぁ゛!?キョウリュウレッドの野郎……どんだけパクられてやがんだ!?」

むしろここまでパチモンが現れておきながら、何故本人だけ不参加なのか。
クルーゼの謎選出には改めて理解が追い付かない。
仮面の裏で何を考えているのやら、訳の分からない主催者への苛立ちすらも闘争の熱へ変える。

(ダイゴさん…あなたの力も借ります…!)

狂った歴史に囚われた自分の解放に一役買った男へ、胸中で頭を下げる。
人の身には収まらない程の、否、人間だからこその大きなブレイブを少しの間貸して欲しい。
装着されたガブティラの頭部を模した武器、ガブティラファングを構える。
湧き上がる闘志がギラを敵の元へ送り届けた。

「これで終わりだ!俺様達が勝つ!」
「ほざきやがれ!キョウリュウレッドの猿真似如きで、俺が倒せるかよぉっ!」

骨のある連中だとは認めてやろう。
だがしかし、キョウリュウジャーの力を借りた程度で自分を倒せるなどと。
腹立たしい程のブレイブに溢れた宿敵達に近付けると、本気で思っているのなら。
ふざけた思い上がりを完膚なきまでに叩き潰す。
怒りが火炎の渦の如く巻き起こり、呪いの力の純度を高める。
決して枯れることのない負の泉こそ、ドゴルドをどこまでも高みへ昇らせるのだ。


560 : Reason for(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:18:38 dV/MzLTg0
(引き出してやるよ…あの力をもう一度…!いや何度だってなぁ……!)

極道を一刀の元に下した光景がリピートされる。
あの時繰り出した力は鍛えて放てる技では無い、呪力の扱いへ今以上に慣れたとて毎回出せるとは限らない。
アレは技ではなく現象、様々な要因が揃いようやく発生する力。
だから出そうと試みても、思い通りになる保障は全くない。

なれどドゴルドは今、己の怒りがよりドス黒く染まるのを感じる。
因縁深いからこそ、自分を幾度も追い詰めたからこそ。
キョウリュウジャーの真似事に出た相手が、無性に腹立たしくて仕方ない。

己の宿る呪力がより洗練されていく。
ここに来ての尋常ならざる強化を前に、だが今更ギラも止まれない。
獣電竜の力を宿した拳が打つか、呪力を流すた刀が斬るか。
黒い火花は再び激怒戦騎へ微笑むのか。

王が突き進む、戦騎が迎え撃つ。
突き立てるべき牙が――





放たれる寸前、両者の間に何かが落ちて来た。





「えっ!?」
「……はぁ?」

急ブレーキを掛けたように足を止め、勢い余ってつんのめる。
倒れて地面へ転がるソレへぶつからないよう、ギラは必死に踏み止まった。
対するドゴルドもまた技の出し所をすっかり見失い、不機嫌を露わに睨む。


望まぬ形で激突を止められた両者の疑問を余所に、聖園ミカは激痛で声も出せなかった。


561 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:20:32 dV/MzLTg0



「じゃあこのアスランっていう人は危ないの?」
「そっちじゃなくてこっちこっち。このハテナマークが付いてる方。何か自分をミームだかビームって言ってたらしいよ」
「ミー……それってどういう意味?」
「んっとね、私もよく分かんないかなっ☆」
「えぇ……」

ウインクし悪戯っぽく舌を出すミカに、それでいいのかと千佳は困惑。
保健室のすぐ隣の空き教室にて、名簿を見ながら出会った参加者について話をしていた。

チェイス達が戻って来るのを待つ間、それぞれ眠りに落ちた少女達を心配し沈黙が流れる中。
自分の中で渦巻く重苦しさを誤魔化す為か、ただ単に何となくか。
知り合いは呼ばれてないのかと問いを投げた理由は、ミカ自身にも分かっていない。
急に話を振られ少々驚きつつも、いないと素直に答えた。
反対に同じ質問をミカに投げた所、どこか複雑そうな笑みを一瞬浮かべたのを千佳は見逃さない。
唯一知っている参加者の先生はミカ自身の想いや、チェイスからの情報も相俟って今の彼女へ迂闊に踏み込める話に非ず。
意識せずとも失言したと察し慌てて謝る千佳へ、気にしてないとおどけた仮面で返す。
どこか気まずい空気が流れ、拭うようにこれまで会った参加者の話題へ少々強引に以降し今に至る。

「ギギストって奴は何かあるとすぐ、『フッ、理解したぞ我は』とかカッコ付ける奴だね」
「何かすっごいキザな悪役っぽい!」

冥黒王の似ていないモノマネをしつつ、取り敢えず危険な参加者達の話は大雑把ながら終えた。
その上で、改めて殺し合いという事の重大さが圧し掛かる。
救世主を自称する青年に始まり、悪辣な力で命を作り変え(ケミストリー)する錬金術師、アルカイザーやチェイサーのようなヒーローではない悪の戦士。
次々に齎される『乗った』側の者達に、幼いながら千佳も緊張を隠せない。

(強い奴がチラホラいるなあってのは分かってたけどさぁ…流石にやり過ぎじゃない?)

自身もグリオンやエターナルと同じ側だとは明かさず、得られた内容に頭が痛くなる。
闇檻という強力な魔法を操る魔女、たった一人で地獄を生み出す宇蟲王。
複数人掛かりでも苦戦必至な異様と言う他ない強さの持ち主達。
そんな連中へたて続けに遭遇し、よく無事生き延びられたものだと素で驚く。


562 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:21:31 dV/MzLTg0
(……どっかで相討ちにでもなって欲しい、っていうのは高望みかな?)

自分を弱いとは思わないけど、件の連中相手に勝てると豪語は流石に出来なかった。
闇檻なる術は単なる力任せで突破可能なものではないらしく、一度捕まれば詰みと考えても決して大袈裟じゃない。
後者に至ってはエリア丸々隕石を落とせる相手に、どう勝てば良いのかこっちが知りたいくらいだ。
サオリへの復讐の為に参加者を殺すのはブレずとも、その過程でミカ自身が死んでは無意味なのだから。

「あ、で、でも!一緒に戦ってくれる皆だっているよ!」

暗い話題を吹き飛ばそうと千佳が明る気に言う。
最初に出会ったイドラに始まり、ノワルとの戦いで信頼関係を結んだ者達。
ほとんど会話は出来なかったけど、宇蟲王ギラ相手に共闘した面々。
殺し合いを肯定する者は少なくないが、否定する者だってちゃんといる。

「だから、キラくんって人を一緒に助けてくれると思う!勿論あたしも!」
「…そ、っか」

殺し合いに乗ってなくて、篝と一緒にいたけど、風都タワー前での戦いの際に暴走した。
短い情報を口にするだけでも、ミカの笑みに影が差さったのを見逃していない。
若しかするとまだ話してない複雑な背景があるのだろうか。
何にしても、目の前でそんな反応をされたら見て見ぬふりは出来ない。
少しでも元気付けようとし、

「……っ」

不意に千佳の顔が急に曇ったので、気になり問い掛ける。
すると目を泳がせ服の端を強く握りながら、絞り出すように口を開く。
富良洲高校に来る前の戦いで、真紅の王に殺される人を見た。
あの時は状況が目まぐるしく変わり深く考える余裕も無かったが、ある程度落ち着いた今になって鮮明に思い出す。
遠目に見ても分かった、凄惨な死を迎えた少女の姿を。

「確か、可奈美って呼ばれてた人が……」
「…………そう、なんだ……」

バグスターウイルスで消滅したのとは全く違う最期へ、ブルリと全身が震える。
そんな千佳を慰めるでもなく、聞き覚えのある名前にミカもどうにか言葉を返す。
まさかその名が出るとは思わなかった。
篝より先に自分が衛藤可奈美殺害の犯人を知る事になるとは。


563 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:22:18 dV/MzLTg0
(伝えない、なんてのは許されないよね)

篝が起きたらこの情報も教えねばなるまい。
怒りを燃やすのか、ただ静かに受け入れるのか、どちらでもない反応を示すのか。
どうなるにしても中々に気が重い。
キラの件が後を引いている彼女の精神へ更に負担を掛けるのはミカの望みではないが、真実を伝えないのも納得がいかない。

(でもまずは……)

謝るべき、なのだろう。
龍騎との戦闘で故意じゃないとはいえ、彼女が瀕死の重傷を負う原因を作った。
殺し合いに乗っている癖に、わざわざ謝るのはおかしいと理解している。
キラの件でケジメを付けたら敵同士に戻る、距離を縮める意味はない。

分かってる、そう分かっていても頭から離れない。
自分の失敗のツケをキラに払わせたにも関わらず、責めるどころか涙ぐんで無事を喜んだ顔が。
自分のせいで死にそうになったのに、助けに行って欲しいとチェイスに頼んだ彼女が。

篝ならきっと、先の戦いでの事を恨んだりはせず許してくれるだろう。
それが理解出来るからこそ、責められずに済むと心のどこかで安堵を抱き。
同時に、身勝手で浅ましいそんな自分が堪らなく嫌だった。

「――ッ」
「え、ミカちゃん?」

何とも言えぬ息苦しさが教室を支配する中、突如ミカが立ち上がり入り口を睨む。
いきなりの行動へ首を傾げる千佳には答えず、背に庇い得物を取り出す。
レーザーレイズライザーをいつでも撃てるようにし、貼り付けた笑みで口を開く。

「女の子がお喋りしてる時は、横槍厳禁って知らないの?それとも覗きが趣味の変態?どっちにしても気持ち悪いね☆」

スラスラと飛び出す朗らかな口調での罵倒に、千佳も状況を理解し強張る。
誰かが自分達の様子を隠れて窺っていた。
はるかとチェイスならそんな真似に出る理由がない、校舎へ入って来た別の参加者。
銃口が睨み付ける先で、ゆっくりと扉が開く。

「武器を下ろしてください。こちらに交戦の意図はありません」

穏やかな声と共に現れる長身の青年。
警戒の視線を意に介さず、青く輝く瞳が少女達を射抜いた。


564 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:23:15 dV/MzLTg0



予定を少し変えた方が良いかもしれない。
ゼインがそう考えたのは、パラドの体を乗っ取ってすぐの事だった。

F-9の住宅街に赴き体力の回復に努める。
そう考え移動したは良いものの、邪魔するように複数体のNPCが出現。
幸い消耗の大きな身でも対処可能な程度には弱かった為、苦戦せずに撃破。
だが執拗に現れ続けては休むどころではなく、貴重な体力を無駄にするだけ。
森林地帯と住宅地は離れているとはいえ、少々派手に暴れ過ぎた。
NPC達が騒音や閃光に引き寄せられるのは、ある意味当然の結果だったろう。
加えてNPCのみならず、参加者までもが騒ぎに反応しやって来る可能性も低いとは言えない。
最初に出会った軽井沢恵等の一般人、若しくは殺し合いに抗う善側の者ならともかく。
グラファイトのような悪側で、尚且つ高い実力の持ち主と今すぐぶつかるのはゼインと言えども危険。
故にF-9のエリアから早々に離れた後、改めて休むと決めた。

幸運にもドロップアイテムが幾つか手に入り、内の一つはバイク。
仮面ライダー達が駆るスーパーマシンではないが、役に立つのは間違いない。
移動時間の短縮及び体力の温存、両方に持って来いの足を使い早速移動。
仮にF-9へ留まるのを選んでいたら、数時間後に大道克己との戦闘が起きた可能性が高かった。
悪を討つ機会を逃し不運と捉えるか否か、どっちにしてもエリアを離れたゼインには知る由のないことである。

移動先の適当な民家でバイクを降り、中で身を休めた。
バグスターであるのが理由か、人間よりも体力が戻るのも早い。
悪を裁くのに役立つのは否定しない、かといって永遠にこの体を使う気も皆無。
全快、とまではいかなくとも戦闘へ支障は無し。
軽く体を解し異常が無いのを確認し終えると、再びバイクを運転し出発。

そうして辿り着いたのが富良洲高校だった。
嘗て一度だけ本物が存在する世界を訪れるも、錬金アカデミーとは一切関わらなかったので詳細は知らない。
ただ校舎が一部倒壊してるのは確認出来たので、立ち寄る価値はありと見る。
一々正面まで回る必要は無い、近くの非常口から校舎内へ侵入。
幾つかの空き教室を通り過ぎた先で、人の気配と声を察知。
教室にいる者も手練れらしく気付かれたが、特に慌てず姿を現した。


565 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:23:58 dV/MzLTg0
「初めまして。私の名はゼイン、悪意を駆逐し殺し合いを終わらせる協力者を求めここへ来ました」
「……あ、そういえばそう言う名前が載ってたっけ」
「待って確か…うん!仮面ライダーって付いてるよ!」

告げられた名に考え込む仕草を取る。
知り合いでは無いが特徴的な名前であり、ガッチャードと同じく仮面ライダーが頭に付く。
それらの理由で何となく覚えていたのを頭の隅から引っ張り出す。
思い出すように頭を揺らすミカに倣い、開いたままの名簿アプリを千佳が確認。
仮面ライダーゼインと確かに記載されてあった。

「ふーん?でもそれだけですぐ信じろっていうのは無理かな☆」

仮面ライダー=正義の図式はミカの中で簡単には成り立たない。
ルルーシュと綾小路を始めエターナルにタイクーン、更には龍騎と悉く危険な者ばかり。
今の所知る限りで真っ当に善側と言えるのは、ガッチャードとチェイスくらいだろう。
御大層な内容を口にした程度で銃は下ろせない。

「私達と協力して、殺し合いを止めたいって言いたいの?」

何よりも、具体的な根拠ではなく本能的な部分でどうにも拒否感がチラ付く。
単に気が立っているだけと断じはしない。
他ならぬ自分自身の直感を信じないでどうする。
笑みを崩さず問えば、向こうはニコリともせずに返答。
チェイスも基本的に真顔だったが、ゼインからは更に人間味を感じられなかった。

「私が求めているのは主に二つ。殺し合いの運営者達の情報、そして私と共に善を為し、この体を滅ぼす資格者です」
「…どういう意味?」

何やら物騒な単語が飛び出た。
前者はともかく後者、善を為すまでは分からなくもないが滅ぼすとはどういう意味なのか。
この時点でロクでもない予感がするも、何でも無いようにゼインは続ける。


566 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:24:49 dV/MzLTg0
「勿論説明しましょう。滅ぼすべき悪意、バグスターについても」

支配権を得た体を通じて、パラドという参加者についてを話す。
人間の肉体に感染し、ゲーム病と呼ばれる病気を発症させる特殊なコンピューターウイルス。
全参加者の命を脅かす脅威が人の形を取ったのが、他ならぬパラドである。
ゼインとしても人類を脅かす悪意は早急に排除したいが、それをやるには他の参加者の協力が必要。
仮面ライダーゼインの資格者が必要不可欠なのだと言う。

「……」

話を聞いたミカと千佳は何も言えない。
そもそもバグスターウイルスが具体的にどういったものかも、全く知らなかった。
ただ漠然と未知の存在とだけ考えていたら、まさか参加者の中にバグスターがいるなど予想外。
ゼインの話が真実だとすれば、危険視するのも分からんでもない。

「…うん、言いたいことは分かったよ」
「それはなにより。では――」
「他人の手を汚して、そのパラドくんを殺させるってことでしょ?」

吐き捨てた声は、自分でも驚くくらいに冷たかった。
自分の行いを崇高な使命か何かと思っているのだろうが、早い話が殺人の片棒を担げということだろう。
パラドは人では無くバグスターだと、そんな言い訳が通用すると思ったら大間違い。
手に掛ける対象はパラドのみで終わらない、ゼインが悪と定めた者も同様に裁く(殺す)。
大体幾らバグスターなる存在とはいえ、人の形をした者を誰もが平然と殺せるとでも思っているのだろうか。

同じなのだコイツは。
馬鹿な自分を利用してセイアのヘイローを壊そうとしたサオリと。
ティーパーティーや先生も巻き込み被害を出しておきながら、今も尚被害者面して復讐に走る自分と。
抱いた拒否感は間違ってなかった。
殺し合いで自分の心を揺さぶった言葉とも、嘗て先生が掛けてくれたのとも違う。
比べることすら腹立たしい、嫌悪感がせり上がる。


567 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:26:07 dV/MzLTg0
「本当に、そのパラドっておにいさんは、こ、殺さなくちゃダメなの…?」

おっかなびっくり、されどゼインに視線を合わせ千佳も疑問をぶつけた。
殺すことへの抵抗は勿論だが、ゼインへ賛同できない理由は他にもある。
パラドが一体どんな男なのかを話でしか知らない。
悪に属する身でありながら譲れない信念と、魔法少女へのあこがれを尊重してくれるエノルミータの総帥を信じているからこそ。
はいそうですかと即座に納得はし兼ねる。

加えて千佳も薄々ゼインからは不気味なものを察していた。
これまでに会った魔法少女やヒーロー達のような、信じられるものを感じ取れない。
純粋な応援と心ない中傷が飛び交う、アイドルの世界に身を置く故に他者の感情には敏感だ。
だから自分達を必死に守ろうとしてくれた者達と、ゼインは根本的な部分で何かがズレている気がしてならない。

「もっとちゃんと、パラドくんから話を聞いてからの方が……」
「その行為は推奨出来ません。幼いあなたは悪意への影響を特に受けやすい。場合によっては、あなたも排除が必要になるでしょう」
「そ、そんな……」

羅列される内容に千佳は思わず後退り、一方でミカの瞳は冷たさを増す。
これが先生なら子供であっても聞き流さず、耳を傾け意見を尊重しただろうに。
自分の味方でいてくれた大人への感情は一旦置き、昏い視線をぶつける。

「例えばの話、だけど。傷付きやすいけど凄く優しくて、ロクでもない魔女みたいな奴にも手を差し伸べるお人好しの男の子がいたとしてさ。その男の子が自分の意思と関係無く大勢を殺しちゃったら、あなたはどう思う?」
「過去にどれだけ善意が満ちていようと、悪意に染まった者は裁く以外にありません」
「ああそう、もういいよ」

馬鹿な質問をしてしまったと乾いた笑みが浮かぶ。
嫌と言う程によく分かった。
例えキラを止める目的が一致しても、コイツとだけは無理だ。
単なる悪としか見なさずキラを殺すコイツを、篝に会わせるのだってお断り。
もし氷竜から元のキラへ戻す方法が見付かったとしても、きっとゼインは聞く耳持たずで殺すのだろう。

「…ふむ。どうやらあなたを生かしても、私の邪魔にしかなり得ない可能性が高いようだ」
「私の台詞を取らないで欲しいんだけどー?え?もしかして意見一致?わーお、お揃いになってこんなに嬉しくないのって初めてかも☆」

協力への拒否と膨れ上がる敵意に、ゼインもこれ以上の会話は無駄だと理解。
毒にも薬にもならない軽井沢のような者なら捨て置くが、ミカはその枠に収められない。
バグスターや殺し合いに乗った者だけでなく、自分の邪魔をする者も同様に粛清の対象。
となれば、すべきことは一つ。


568 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:26:52 dV/MzLTg0
<ZEIN>

「変身」

<ZEIN RIZE>

<JUSTICE!JUDGEMENT!JAIL!ZEIN!>

剣を抜き放つように、プログライズキーを起動。
白亜のドライバーへ装填、同時に背後へ二色の光球が現れる。
映し出されるのは現代人が忙しない日常を過ごす街並みと、幻想の住人達の世界。
異なる映像同士がバグスターの体に重なり、善意の化身へ姿を変えた。

<"Salvation of humankind.">

純白の装甲を走る金と水色のライン。
はためかせたマントと合わせ、高貴な騎士を思わせる。
スカイブルーの瞳が映すのは悪意に満ちた世界と、己が裁くべき罪人達。
悪意の根絶を目的に生まれ、揺るがぬ意思の元で善を為す。
救世主であり、同時に善意と言う名の醜悪な怪物。
時の運行を守った男は既にいない、器としての役目はもう終えた。
バグスターを傀儡へと変え、仮面ライダーゼインが許し難き悪意と対峙する。

「綺麗なのは見た目だけじゃんね。上から目線の嫌な性格が滲み出てるよ?」

軽口を叩き起動鍵を使用、狼の王の名を冠すMSを装着。
鉄華団のエースの愛機は魔女の戦装束として機能。
巨大メイスを取り出しながら、背後で震える気配に離れてと短く告げた。
複数の戦いを経験したが故にすぐさま頷き、言われた通りに距離を取った瞬間、両者が激突。

教室内の学習机が天井へと吹き飛び、落下する前に砕け散る。
素の腕力にMSのパワーを上乗せし、巨大メイスを豪快に振り回す。
等身大に落とし込まれたが、元はギャラルホルンの精鋭部隊をも叩きのめす威力だ。
半端な装甲や盾程度、ゼリーをスプーンで崩すように破壊されること間違いなし。


569 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:27:39 dV/MzLTg0
(さっさと終わらせるに限るよね!)

多少休んだとはいえ疲労は未だ全身に圧し掛かったまま。
如何なヘイロー持ちの少女と言えど、無尽蔵の体力保持者ではない。
戦闘が長引けば不利になるのは確実にミカの方。
チェイス達が戻って来るまで粘り加勢に期待、なんて悠長な戦法は取らない。
狙うは早期決着、チマチマ様子見には出ず強烈な一撃をぶつける。
戦闘不能ないし無視できない負傷を与えられれば御の字。

「ライダーではありませんね。ですが、結論は既に出ています」

しかし敵はゼイン、人類を超越した善意で以て悪を滅ぼす救世主。
迫るメイスをレンズがしかと捉え、その上で焦らず対処へ動く。
右手にはパラドの支給品だったメダジャリバーを装備。
セルメダルは一枚も持っていないが、単純な斬撃武器としても高性能だ。
加えて両手のガントレットには、全ての仮面ライダーの装備を完璧に使いこなせる機能を搭載。
長年使い続けた愛剣の如くメダジャリバーがフィット、絶妙な力加減で刀身をメイスに添える。
あらぬ方向へと受け流され、ミカは前のめりになりあわや転倒。
強引に体勢を戻した時にはもう、銀の刃が目前に迫りつつあった。

「あっぶな…!」

頭部フレーム諸共叩き割らん勢いの刃へ、冷や汗を掻きつつ後退。
すかさず踏み込み剣を突き出すゼインに対し、自ら狩り場に飛び込んだと教えてやる。
両手持ちに変えメイスを振り下ろす。
得物のサイズに不釣り合いな速さを、ゼインは最低限の動きで避けた。
すぐそばに鉄塊が叩き付けられても動きに動揺がまるで見られない。

「だったら…!」

懐に潜り込まれるも対抗策が無いと言った覚えはない。
獣の尾に似た武装、テイルブレードを操作。
感覚に従い自在な動きを可能とする刃で、ゼインの死角から突き刺す。
気付いた時には既に遅い、貫かれ戦況は一気にミカの有利へ傾く。
その展開を覆せるだけの力を、ゼインは持っていた。


570 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:28:29 dV/MzLTg0
「噓っ!?」

ミカから視線を一切外さず、テイルブレードのワイヤー部分を片手で掴む。
手繰り寄せ体勢を崩し、腹部を膝蹴りが狙い打つ。
装甲の恩恵でダメージが抑えられるも、鈍い痛みに思わず呻く。

「っ、離れてよ!」

この程度の痛みで死には至らない。
次に来るだろう斬撃の方が厄介だ、メイスを激しく振り回し無理やりに遠ざける。
軽やかに跳んだゼインへ照準を合わせ、手首部分の200mm砲を発射。
轟音が響き弾丸が群れを成して襲い掛かる中を、ゼインは剣一本で突き進む。
斬り落とし、時には腕部装甲で防ぎながら再度ミカの元へ到達。
メダジャリバーの間合いを確保したなら、直接切れ味を敵で試してやるのみ。

疾走する刃を阻むのは、敵の手にあるもう一つの刃。
フルートバスターの強度はメダジャリバーにも一切引けを取らない。
弾かれ合い、間髪入れずに揃って斬り掛かる。
刀身同士が擦れる度に火花が散らされ、機械製の仮面を照らす。
パワー・スピード・武器の性能の全てで互角に渡り合う。

「この…!」

なれど追い詰められているのはミカだ。
打ち合いに興じたのは最初だけ、今はどれだけフルートバスターを振るっても空しく宙を切り裂いてばかり。
反対にゼインの攻撃は面白いように当たり、着実にミカの体力を削り取る。
刃が装甲へ一つまた一つと傷を付け、合間を縫って放つ打撃が鈍痛を引き寄せた。
ミカもまた、フルートバスターだけでなく爪を使い手数を増やすも効果は無い。
掠めさせても貰えず、ほぼ一方的に痛め付けられた。

「うあっ!?」

踏み込み突き出した切っ先が胸部を突き、ミカを校舎の外へと吹き飛ばす。
窓ガラスを突き破って、生徒用の自転車置き場へ落下。
屋根を破壊し倒れるミカを追い掛け、ゼインは華麗に降り立つ。

ゼインの最大の特徴はゼインカードによるライダーの武装や技の使用であるが、それだけが全てでは無い。
カードを用いずともアウトサイダーズを圧倒するだけのスペックを有す。
同じプログライズキーシステムで変身する仮面ライダーゼロツーの演算能力には及ばずとも、高性能な機能に裏打ちされた予測で攻撃を寄せ付けない。
万全の状態のミカであれば違っただろうが、消耗の大きい体で戦うには手を焼く相手だ。

「無駄な抵抗はよしなさい。力の差は思い知った筈です」
「あっは☆その上から目線な言い方、ほんっとにムカつく!」

自らに絶対的な自信を持つが故の見下す物言いへ、ささくれ立つ心のままに立つ。
言葉を投げても無駄と悟ったのか蹴りが飛び、フルートバスターを翳し防御。
反撃へ移られる前に畳みかけるべく、幾度もゼインが拳を叩き込む。
得物と装甲を駆使し防ぐもずっとこのままとはいかない。
おまけにどうにか躱しても、それすら読んでいるように打撃が命中。
殴り飛ばされ怯んだミカへメダジャリバーを振るう。


571 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:29:17 dV/MzLTg0
「ミカさん!」

しかし命を奪う瞬間はやって来ない。
ミカの前に現れた、新たなMSが刀で以て死を跳ね除ける。

『ROCK FIRE』

「ルカニ!」

戦場へ起きた変化は一つに留まらない。
自身に言いようの無い不快感をゼインが覚えると同時に、火刃が飛来。
剣の一振りで掻き消すも僅かに焼かれる感触があった。
その隙にミカを連れMSは後退、距離を取って言葉を交わす。

「篝ちゃん!?もう起きたの…って、こんだけ騒いでたらそうなるよね」
「ええ、事情は千佳ちゃんから聞きました」

イモータルジャスティスを装着した篝に加え、アイドルの少女達もこちらへ駆け寄るのが見える。
すぐ隣の教室で騒音が響き、保健室で眠る二人の意識も急速に現実へと引き上げられた。
ロクに会話もしていなかったが、戦闘が起きたと即座に篝が察知。
目を白黒させる果穂の手を引き保健室を出て、すぐに千佳とバッタリ対面。
矢継ぎ早に事情を伝えられ、大まかながら理解。
ミカ一人に戦いを押し付けさせまいと、三人も参戦を果たしたのである。

「…一応聞いておきます。今からでも剣を下ろす気があるのかどうかを」

千鳥を構え油断なく見据えながらも、ゼインへと問う。
一応殺し合いには乗っていないらしく、即座に斬り掛かりはしない。
だからといって、ミカを痛め付けられた怒りが無い訳ではないが。

「あたしも!ゼインさんが何をしたいのかまだよく分かってないから…だから、ちゃんとお話しませんか…?」

果穂もまた、ミカのことはほとんど知らないけど龍騎との戦闘で助けに来てくれたのは覚えている。
そんな彼女へ攻撃を加えたのが良い事だとは思えない。
けれどゼインも打倒主催者を目的に動くのなら、争い以外の方法だってあるかもしれない。
自分と彼の正義は本当に相容れないのか、お互いを知らないままで判断を下したくはなかった。


572 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:29:59 dV/MzLTg0
「私の結論は既に出ています。パラド及び、邪魔となるだろうあなた方がミカと呼ぶ少女の排除。それらを変えることは不可能です」
「そ、そんな…!?」
「反対にこちからも問いましょう。私と共に悪意を殲滅する意思が、あなた達にあるのか否かを」
「……少なくとも、その悪意にミカさんが含まれると言うならお断りさせて頂きます」

慌て気味な千佳の説明からでも察せられたが、実際に言葉を交わすと予想以上に過激な思想の持ち主だった。
美奈斗と出会う前の自分とて、ここまで頭が硬くはなかった筈。
善性も突き抜け過ぎれば危険であり、これでは殺し合いに乗っていなくても何の切っ掛けで牙を剥くか分かったもんじゃない。
エターナルとは別の理由で警戒必須なライダーらしい。

「篝ちゃん……」
「私はまだ、あなたのことを諦めていません。キラくんもきっと、同じことを言うでしょうから」

諦めていないとはきっと、ミカが優勝の道を突き進むのを止めることだろう。
龍騎との戦闘での件で恨み言を口にせず、自分の為に迷わずゼインとの敵対を選ぶ。
この期に及んでも手を差し伸べ引き戻そうとする篝へ、仮面の下でくしゃりと顔が歪む。

復讐を止める気はないのにどうしてという苛立ち。
こんな自分をまだ見捨てないでくれる嬉しさ。
散々傷付けておきながら喜びを感じる自分への、どうしようもない嫌悪。
それらがない交ぜになり何を言えば良いのか分からなくなるが、会話を続けられる暇はない。

「残念ですが仕方ありません。悪意は伝染するもの、これ以上広まる前に元を断たねばならない」
「構えてくださいミカさん!果穂ちゃんもこれ以上は…!」
「…っ、わ、分かりました…!」

向こうが話を打ち切った以上、戦闘回避は最早不可能と見るべき。
苦い想いが突き刺さるも、切り替える他ないとは果穂にだって分かる。


573 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:30:49 dV/MzLTg0
距離を詰め仕留めに掛かるゼインへ、篝は緊張の面持ちを仮面で隠し迎え撃つ。
出血が止まったとはいえ重傷を負った身だ、体力的な消耗は富良洲高校の参加者の中で最も大きい。
本来ならば安静にしているべき体を、刀使としての気力で奮い立たせる。
写シを使えるだけの体力は無い、キラから託されたMSで挑む。

「ピオリム!」

疲労を押し殺して戦うのは篝だけではない。
呪文を唱え、額に汗が浮かぶのを感じても杖は落とさない。
少しの休憩を挟んだが千佳とて疲労が溜まっており、戦わず隠れていても責められないだろう。
だが目の前で仲間達が戦っているなら、じっとしてなんかいられない。

千佳の隣ではナーゴもビートアックスを激しく掻き鳴らす。
自分が気を失ってから何があったのか、チェイスとはるかは無事なのか。
考えることは山ほどあるけど、今疲労を押し殺し戦うしかない。

少女達の援護を受け、MSを纏った二人のすばやさが急上昇。
ハイスピードなナーゴの演奏は戦意を高め、一時だけでも疲れを忘れさせる動きを齎す。
敵が増え強化されようとゼインには無関係、纏めて葬るだけだ。
千鳥、フルートバスター、メダジャリバー。
破壊困難な得物による斬り合いで、甲高い衝突音が鳴り止まない。

「ぐ……」

短い呻き声はゼインから。
敏捷性の強化された二人の猛攻へ、一手対処に遅れが生じる。
装甲を切り裂き痛みが走るも怯んだままでは不利になるだけだ。
二方向からの剣を防ぎ、脇腹を襲う痛みにまたもやよろける。

四方八方より襲い来るテイルブレードを弾くも、時折刃が掠めるのは避けられない。
おまけに鞭のようにしなる刃のみに意識を逸らせば、すかさず二本の剣が迫る。
防ぎ切れず避け切れず、徐々に攻撃を受ける回数も増加。
マントを大きく振るいミカ達の目を隠し、動きが止まった一瞬の内に剣で薙ぎ払う。
揃って火花を散らし後退した隙に畳みかける算段は、幼い少女の声で崩れた。


574 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:31:29 dV/MzLTg0
「スクルト!」

メダジャリバーは確かに二人の胴を走り痛みへの声を出させた。
しかしそれだけだ、大きな隙を見せる程ではない。
反撃の刃を叩き付けられ、咄嗟に防御するもゼインの方が後退を余儀なくされる。

防御力強化の呪文で多少の攻撃には動じなくなり、敏捷性も上昇。
演奏が続く限りは動きのキレが増し、更にはゼインの耐久力が削られた状態。
千佳とナーゴの支援が活き食らい付くも、そう易々と撃破が許される敵じゃあない。

(この状況は少し良くありませんね)

敵の強化と自分が幾らか脆くなったのもそうだが、思考にどこか雑念が混じりつつあるのを自覚した。
これもまたナーゴの演奏の影響、浅倉やエンヴィー程の苛立ちは無くとも放って置くには面倒。
だが問題無い、戦況を己の有利へ戻す方法は幾らでも存在する。
これまではミカの消耗が大きいのもあって、斬った殴ったのみで倒せる筈だった。
そろそろゼインドライバーの本領を発揮するのに良い頃合いかもしれない。

<響鬼!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

魔化魍を退治し人を守った音撃戦士のカードを装填。
使用済のゼインカードの例に漏れず、裁断されパラパラと地面へ落ちる。
彼の弟子や猛士の面々が見たら何を思うか、といった不要な考えは抱かず効果を発動。

仮面ライダー響鬼の装備、音撃棒・烈火が両手に出現。
近付かれる前に振り回して、鬼の顔を象った先端から火炎弾を放つ。
全方位へばら撒かれ爆発を起こし、堪らず四人全員が怯む。
倒せてはいないが構わない、すかさずミカへ接近し掌を押し付ける。


575 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:32:17 dV/MzLTg0
「ちょ、なにこれ!?」

火炎鼓と呼ばれる円盤状の装備を取り付けられ、ミカの動きが封じられる。
無論、拘束して終わりではない。
烈火をリズミカルに幾度も叩き付け、音撃波が全身を襲う。
痺れるような痛みに襲われ、抜け出そうと藻掻くも体力を奪われる方が速い。
祭りを盛り上げるダイナミックな動きで、少女から苦悶の声を引き出す。

「ギターが鳴らない…!?」

よろけつつも立ち上がったナーゴがミカを助けるべく、弦を掻き鳴らすも音が出ない。
ビートフォームのナーゴは自身の演奏を最大限に響かせる機能が複数搭載されており、大抵の雑音程度では妨害不可能。
しかしゼインの手で奏でられるのは、大型の魔化魍すら鎮める響鬼の音撃。
何より、ゼインカードの効果で放つ技は原典のライダーよりも威力が上。
音楽を力に変えるナーゴの能力が音撃に打ち消されてしまっているのだ。

「彼女から離れなさい!」

ミカを助けに動くのはナーゴ一人じゃない。
腰部からビームブーメランを引き抜き、ゼイン目掛け篝が投擲。
等身大サイズになっても高出力のビーム刃だ。
ゼインと言えども無視するにはリスクが伴い、攻撃を中断し回避を選択。
拘束から解放されたミカは即座に攻撃を決行。
トドメの一撃は無く、スクルトで防御力が上がったのもあり致命的なダメージにはならずに済んだ。

「ミカさん!これを!」
「ありがと篝ちゃん!」

投げ渡されたビームライフルを掴み、もう片方の手にはレーザーレイズライザーを装備。
銃の類は専門外の篝と違い、キヴォトスの生徒にはあって当然の得物だ。
サイズの異なる二丁の銃を連射、散々痛め付けてくれた礼をしてやる。
音撃が止まりナーゴの演奏も効果を取り戻し、射撃スキルにも磨きが掛かった。
どうにか躱した先には篝が待ち受けており、銃撃と斬撃で逃げ場はない。


576 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:33:14 dV/MzLTg0
<BLACK!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

尤も、ゼインに逃げるつもりは皆無。
悪意の持ち主達を調子付かせるのも、いい加減終わらせるに限る。

「キングストーンフラッシュ!」
「っ!?」

ゼインドライバーから放たれた猛烈な輝きにミカの銃撃は掻き消され、篝も剣を振り被った体勢で吹き飛ぶ。
どうにか受け身を取り、ふと自分の体が妙に重く感じた。
おかしくなったのではない、千佳の呪文が唱えられる前の状態に戻ったのだ。
他の者も同じようで、唐突な異変に思わず己の体を見下ろす。

ゼインの外見に変化は起きておらず、新たな武器も見当たらない。
だがカードが解放されたのは、足元に散らばる裁断された成れ果てがその証拠。
仮面ライダーBLACKの力の源にして次期創世王の証、キングストーンの光を放ち敵の強化と自身の弱体化を打ち消したのだ。

「ほう、これは運が良いと言うべきか」

キングストーンが戦場へ齎した影響は他にもある。
上空から飛来して来た物体を掴み取り、正体にゼインも思わず驚きを籠めて呟く。
真紅の刀身が妖しい輝きを放ち、サタンサーベルが新たな使い手を選んだ。
ゼインカードの効果であってもキングストーンの力を宿す以上、ゼインこそ会場で最も世紀王に近い存在。
暗黒結社ゴルゴムと南光太郎の激闘の記録にて、剣聖ビルゲニアの元を離れシャドームーンの手に渡ったのと同じ現象が起きたのだ。


577 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:34:02 dV/MzLTg0
まさかサタンサーベルを支給された者が同エリアにいるとは、ゼインにも予想外。
これが原因で別の戦場に大きく影響を与えるのを知る由もなく、正義執行へこのまま利用させてもらう。
単に振り回して斬るだけがサタンサーベルの全てに非ず。
キングストーンのエネルギーを刀身に流し込み、鮮血色の輝きが一層増す。
対峙する者達にとっては不吉な予感以外に何も感じず、攻撃を阻止しようと動きに出る。

「きゃあああああっ!?」

しかし遅い、遅過ぎる。
放射された光線が戦場を焼き払い、世紀王による裁きを下す。
悲鳴が誰のものかさえ互いに分からないまま、装甲越しに襲う熱へ意識が飛び掛けた。
ダメージは抑えられている、なのにこれ程の痛みだ。
生身だったらステーキになってたかもと、呑気な事を思考の片隅に浮かべミカは膝を付く。

「ほんっとに…笑えないんだけど……!」

巨大メイスを支えに倒れまいとし、荒い呼吸を繰り返す。
篝とナーゴも同じく武器を杖代わりにしており、軽くない傷なのは明らか。
それでも生きていられるのは装甲の恩恵と、千佳が咄嗟に唱えたマジックシールドの効果だ。
当の本人は自分を庇った果穂の元に堪らず駆け寄り、青褪めた顔で声を掛けている。

「終わらせるとしましょう、あなたの悪意がこれ以上広がる前に」

少女達の悲痛な姿も、ゼインの考えを変えるだけの効果はない。
最初に殺すのはやはりミカだ、思えばこの戦闘は彼女から始まった。
BLACKの力はまだ発揮可能、キングストーンのエネルギーを右脚にチャージ。
数多のゴルゴム怪人を撃破し、三神官との死闘でも勝利へ導いた必殺の技。
ライダーキックを叩き付け悪意に満ちた魔女の命へ幕を引く。

いざ放つべく跳躍の体勢を取り、



「――――ッ!?」



動きを止めざるを得ない異変がゼインの中で起きた。


578 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:34:44 dV/MzLTg0



恐怖。
パラドが抱く感情はそれだけだ。

意識があるまま自分の体を勝手に動かされ、どれだけ返せと叫んでも届かない。
紛れもないバグスターであるパラドの体なのに、本人のコントロールを全く受け付けない。
主導権は最早完全にゼインが握り、まるでパラドの方こそ異物のような存在へと落ちぶれた。

数時間が経過して尚、体を取り戻せる気配は全くない。
学校らしき場所で戦い始めた時は、若しかしたら相手の女達がドライバーを壊してくれるかも。
そう淡い期待を抱くも結果は芳しくなく、全滅は時間の問題。
ゼインが悪意の根絶を目的に動いているのならば、悪と見定めた者を殺す度に支配力も強まるんじゃないか。
その果てに元々の体の持ち主であるパラドの意識は更に弱まり、最終的には消滅するのでは。

確たる根拠のない妄想に過ぎないと思いたいが、体を好き勝手される現状を考えれば否定は出来ず。
自分自身の推測で恐怖は更に加速し、留まる所を知らなかった。
だからこそ、この結果に繋がるとはゼインもパラド本人も予想しなかっただろう。
己の体で人は殺させないだとか、強固な意志ではない。
だが限界以上に膨れ上がった恐怖もまた、ベクトルは違えど魂を揺さぶる強い感情に他ならない。

資格者を変える度にゼインの支配力が弱まる制限。
宝生永夢の手で敗者に相応しいエンディングを見せられる、本来辿る筈だった正史にも劣らない恐怖。

「いや、だ……!消えたくない……!俺の、体…っ、返せよぉ……!」

それら二つが原因で引き起こされたのは、ゼインの支配を一瞬だけパラドの感情が上回った。
ただ一言、存在消失への恐怖を己が声で発する。
やれたのはただ一つだけ、体の主導権はすぐにまたゼインヘと移り元のまま。
思いもよらない現象へゼインも驚くが、所詮は僅かながらの無駄な抵抗。
大方主催者達がいらぬ枷を付けたのだろう、裁く理由がまた一つ増えた。


579 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:35:25 dV/MzLTg0
「邪魔が入りましたが、結果は何も変わらない!」

妨害を受け右脚へ収束したエネルギーは霧散、カード効果も切れキングストーンの力は引き出せない。
太陽の子へ進化したライダーのカードを使うか、いいやサタンサーベルは変わらず手元にあるのだ。
顔面を串刺しにすれば多少頑丈であっても死は免れない、ミカへの裁きを続行。

『BOOST TIME』

「てやあああああああああああああっ!!!」

真紅の魔剣が下す死を、灼熱の正義が阻む。
溢れ出る戦意を炎に変えて疾走、ゼインの前に躍り出たナーゴが得物を翳し防いだ。
バイクのマフラーに似た形状のパーツが火を吹き、爆発的な強化を齎す。
ブーストレイズバックルの力を借り拮抗するも、長く状態を維持出来る相手じゃあない。
しかしナーゴは歯を食い縛り耐える、ここで退いたら正義と言う名の凶刃がミカに振り下ろされてしまう。

「パラドさん!聞こえますか!?」

何よりも、声を届かせなければならない者がいるから。

果穂はパラドについてほとんど何も知らない。
ゼインに体を乗っ取られて、参加者を苦しめるバグスターウイルスらしくて、元の世界でも何やら酷いことをやった。
時間的な余裕が全く無かった為、千佳が話したのは非常に大雑把な内容。

「あたしが…あたし達はここにいます!パラドさんは一人なんかじゃありません!」

だけどたった今、自分は彼の怯える声を耳にした。
ほんの少しの間であっても、助けを求める声を確かに聞いた。

「だから……!絶対に助けます!」

であるのなら、黙っている訳にはいかなかった。
小宮果穂はヒーローを愛し、ヒーローであろうとする少女だから。
自分なりのやり方で皆を笑顔にする、ヒーローのようなアイドルだから。
「恐かったね」「もう大丈夫」「君を助けるヒーローが来たよ」。
悲しみの涙を安堵の笑みに変える言葉を掛けて、無事に救出しハッピーエンドへ導く。
そんなヒーローにずっとあこがれてきたから、いつだって手を伸ばすのだ。


580 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:36:15 dV/MzLTg0
「幼さ故の無知とはいえ、愚かな選択を……」

怒るでもなく、嘲笑うでもなく、感情の宿らない声で否定する。
自分の正義と異なる正義は、ゼインにとって悪以外の何物でもない。
バグスターを助けようとする果穂の正義を、ゼインは決して認めなかった。

「愚かってなに……?」

ポツリと呟いた言葉にどれ程の怒りが籠められているか、千佳自身にも分からない。
ただ言わずにはいられない、友を否定する善意へ言い返さずにはいられない。

「あたし達はパラドくんのことを詳しく知ってるわけじゃない。でも!だから知らないままじゃなくて、ちゃんと理解(わか)ろうって思うんだよ!」

魔法少女のことをちゃんと知らないのに、分かったようなことを言われ腹が立った時を思い出す。
でも彼は、プロデューサーは時間を作って魔法少女のアニメを見てくれた。
千佳ともう一度きちんと向き合う為に、千佳が大好きな魔女っ娘を理解しようとしてくれた。
そんなプロデューサーだから、千佳は自分のなりたい魔法少女(アイドル)を胸の真ん中に置くことが出来た。

「あたし達の胸(ここ)にあるものを、間違いだなんて絶対に言わせないんだから!」

押し付けられる善意へ反逆の輝きを放つ。
空色の魔法少女の力を浴びせられ、ゼインに目立った傷は無い。
無駄な抵抗とすら呼べない子供騙し。

「…………!?」

そう結論付けるには、無視できない程の異変が起きる。
固有魔法イノセンス、その力はあらゆる束縛からの解放。
今この場で最も自由を封じられた者にこそ、最大の効果を発揮する。
誰のことかは言うまでもない。


581 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:37:17 dV/MzLTg0
「っ!!!ゼイン…!俺の体から出て行け……!」
『パラド!?あの少女が邪魔を……!』

ゼインの支配により、奥深くへ封じ込められたパラドの意識が急浮上。
今尚巣食う善意の怪物の意識を押し退け、体の主導権を奪い返さんと藻掻く。
そのような真似をゼインは許さず、強引に抑え込むべく抵抗。

「隙あり…です!」

内側からの妨害を受け、サタンサーベルに籠めた力が弱まった。
生まれたチャンスを無駄にする訳にはいかない、ナーゴが火炎を噴射し更に踏み込む。
ゼインの手から魔剣が弾かれ、勢いに負け後方へとよろめく。

流れを止めてはならない、前進あるのみと更に踏み込む。
しかしパラドの抵抗を受けながらも、ゼインの脅威は揺るがない。
メダジャリバーを振るい牽制、ゼインカードへ手を伸ばし決着を急ぐ。
選び取ったライダーの歴史をこれまで同様裁断、その寸前で投擲された物体が腕を直撃。

『ぐ……!」

痛みは然程強くないが、攻撃の手は強制的に止められた。
戻って来たビームブーメランを掴む篝へ敵意を向ける余裕もない。
少しでも意識が逸れた途端に、ゼインの望まぬ言葉が口から飛び出す。

「ベルトをぶっ壊せ…!そうすりゃこいつは何もできない……!」

ゼインという存在の核は、他でもない仮面ライダーゼインへ変身する為のベルト。
人間を自らの器として操るゼインと言えども、ベルトが壊れれば存在の維持は不可能。
パラドの中で人間の手を借りる事に抵抗が全く無いと言えば嘘になる。
だが今この時だけは、自分一人の抵抗でどうにもならないと理解していた。


582 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:37:51 dV/MzLTg0
「だったら壊さないって選択は取れないよね!」

フルートバスターを強く握り締めミカが突撃。
これまで散々手を焼かされた相手を倒すには、この僅かなチャンスを活かす以外にない。
ちょっとやそっとじゃ壊れない頑丈さだろうと、全力で叩っ斬れば破壊は免れないだろう。

『余計なことを…!』

主催者を殺せず、元の世界で悪意の根絶を果たせないまま散る。
自らの使命を中途半端どころか、何も為せずに滅ぶなど真っ平御免だ。
これ以上ペラペラといらんことを口走る前に黙らせ、返り討ちにすべくミカを視界に捉える。

『FUNK BLIZZARD』

突っ込んで来るMSを破壊し、装着者共々消し去る筈が動けない。
エレメントを付与したナーゴの演奏が、ゼインの四肢を凍り付かせたのだ。
カードを使わずとも素の身体スペックのみで、抜け出すのは可能。
なれど隙が生まれたのは事実、MSの機動力でミカが眼前に迫りつつあった。

「派手に弾けちゃえ☆」

ここまで来て外す大失敗を犯しはしない。
狙いは腹部のベルトへ正確に付け、腕を思いっ切り振り被る。
悪意だ何だと好き勝手に言った相手の手で壊されるという、屈辱的な末路。
数秒先に訪れるだろう光景を現実のものとすべく、フルートバスターが疾走。
誰もがゼインの敗北を確信し、





「っ!?駄目だ離れ――」





フルートバスターは篝を斬り付け、MSから大量の火花が散った。


583 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:38:46 dV/MzLTg0




「うっ…あ…!?」
「―――――――え」

訳も分からぬ内に激痛が襲い、短く悶える声が零れる。
一体全体何が起きたかを全く理解できず、呆けた声が零れる。

地面を転がり後者に激突。
衝撃とダメージの大きさでパワードスーツが解除、制服に身を包んだ生身を晒す。
装甲越しで受けた為即死には至らなくとも、ミカの腕力にガンダム・バルバトスルプスレクスのパワーを上乗せした斬撃だ。
元々近接戦主体のMSだけあって、武器を振るった際に弾き出される威力は非常に高い。
コズミック・イラには存在しない機体の力を、よりにもよって共闘相手の手で味合わされた。
負傷と消耗の大きい体には相当堪え、呼吸だけでも激痛で脂汗が滲む。

「こいつ……!」

引き攣った声を出すパラドだけは、何が起きたかすぐに分かった。
ミカにゼインドライバーを斬られる寸前、ゼインは迷わず己の能力を行使。
仮面ライダークロノスと同じ時間停止でほんの少しの猶予を手に入れ、素早くもう一つの力を発動。
パラドの支給品から手に入れたガシャットデュアルギアで、エナジーアイテムを引き寄せた。
直接パラドクスに変身しなくとも使えるのは、NPCの脳無相手で把握している。

使う力は何でも良かった。
攻撃を耐え凌ぐ鋼鉄化でも、伸縮自在の体で回避する伸縮化でも、姿を変え動揺を引き出すモノマネでも。
半ば賭けに出る形でエナジーアイテムを手元に引き寄せ、結果ゼインは敗北を覆した。
自分ではなくミカに使ったエナジーアイテムは、混乱。
数時間前の戦闘でパラドが逆転の切り札になった効果が、今回はゼインにとっての斬る札となる。
対象を混乱状態にし敵味方の区別が付かなくり、ミカの刃はゼインを外れ篝の元へ。
そうして出来上がったのがこの光景だ。

「あ、え、え、なん……」

クエスチョンマークで埋め尽くされた脳内へ、答えを教えてくれる者はいない。
己の瞳に映る光景が、詳しい説明をせずとも現実を突き付ける。
自分はまた失敗を重ねた、またしても守ろうとしてくれた相手を傷付けた。
受け入れ難い事実へ脳がキリキリと痛み、心が錆びた機械のように軋みを上げる。


584 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:39:43 dV/MzLTg0
<ジャスティスパニッシュメント!>

「うあああっ!?」

我を取り戻すまで律儀に待つ者なら、そもそもこんな戦いは起きていない。
プログライズキーから流し込んだエネルギーを纏わせ、ストレートパンチが炸裂。
棒立ちでわなわなと震えるミカを殴り飛ばす。
篝同様地面を転がり装着解除へ追い込まれるが、ゼインは追撃に出ない。
代わりにメダジャリバーを投擲、ミカではなく視界の端で動く別のライダーにだ。

「うっ…!?」

切っ先が腕を突き、鋭い痛みに思わずビートアックスを落とす。
素手で投げ付けただけなのに、銃弾もかくやの勢い。
ミカが篝を攻撃し困惑を抱いたナーゴだったが、呆けている場合じゃないと我に返った。
ブーストレイズバックルの力で再び加速を試みるも、一手早く阻止され次の動きを許してしまう。

<ファイズ!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

引き出す力は人類の進化系オルフェノクと戦った戦士。
仮面ライダーファイズの装備、ファイズエッジを新たに装備。
専用バイクのオートバジンがいなくては取り出せないが、それはあくまで原典におけるファイズの話。
カード一枚で自由に武器や技を行使可能なゼインには関係無い。

サタンサーベルとはまた違う真紅の刃から、衝撃波を放つ。
単に吹き飛ばすだけの力じゃない、円錐状に変化しナーゴを拘束。
このまま接近し両断、というのが技の流れだがナーゴは一旦放置。
先に死にぞこないの連中を片付けようと、ミカの方へと駆け出す。
MSが解除され、体力的にも余裕が無い状態では咄嗟の反撃もままならない。

「この…!」

藻掻くミカへ憐憫も侮蔑も抱かないまま駆け、光剣を振り被った。
超高熱のフォトンブラッドの刃だ、キヴォトスの生徒とて無事では済まない。

「いや…!私はまだ…何にも……!」

エターナルの刃が迫った時と同じ、終わりへ直面する感覚。
復讐も、キラを止めることも、篝へ謝ることも、先生の真実を確かめることも。
何一つとして為せず、ただ悪戯に周囲を傷付けただけでお終い。
ある意味で魔女らしい惨めな末路を回避する術を――





「ミカさん…っ!」





一つの命と引き換えに、手に入れた。


585 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:40:35 dV/MzLTg0
○○○


間に合わない。
視線の先で起こる処刑を止めるには、どうやったって手遅れ。
起動鍵は離れた場所に落ち、取りに走って装着している間に刑は執行確実。
迅移で駆け出そうにも、写シを使えるだけの体力も残っていない。
破れかぶれで御刀を投げ付けたとて、きっと相手は見向きもせずに剣を振るう。
どうやったってミカは助けられないと、腹の立つくらいに冷静な部分が告げる。

だけど諦められない、もう誰も取り零したくなかったから。
戦争で心身共に傷付き、拭えぬ罪悪感を背負い続けた青年。
先輩の娘であり、未来の自分の娘の大きな支えとなった少女。
隠世の住人としていずれ消える自分とは違う、この先も生きる筈だった彼らに、自分の手は届かなかった。

だからもう同じ後悔はしたくないと立ち上がり、息を切らせて走る。
自分の体とは思えない程足が、全身が重い。
これで間に合える訳が無いと、自分自身が分かっているけど。
それでも走るのを止めない。

もう少しだけ、力を貸して欲しい。
誰に向けるでもなく強く願い、すっと体が軽くなった。
羽が生えたようだとか、そんな風に喩える程ではないけれど。
令呪を使ったことで、まだ自分にやれることが一つ出来たと分かったから。
前だけを見て、今にも殺されそうな少女から目を離さずに。
迷いなんか捨てて飛び出した。

「篝ちゃん……?」

驚いたように自分を見つめる彼女と目が合う。
背中に焼けるような痛みを感じ、それもあっという間に薄れていく。
ああ、これはもう駄目だと理解するのに時間は掛からなかった。


586 : 絡みつく全てをJust Reset ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:41:29 dV/MzLTg0
結局、私がやれたことはほとんどなかった。
助けたい人を助けられず、止めるべき人を止められず。
私が果たさなければいけなかった責任すら、残される人達に、終ぞ会えなかった自分の娘にも押し付ける。
情けなくて、本当だったら延々と己を責めていたい。

「ミカさん……」

でも、たった一つだけやれることがある。
自嘲へ逃げるなんて真似を捨てて、やらなきゃいけないことが残ってる。
目の前の彼女から決して目は離さない。
終わるその時まで、彼女の顔を見続ける。

「ミカさんの…せいじゃない……ミカさん…は…魔女なんか……じゃ…ないから……」

私の死が、あなたを永遠に苦しめる傷にならないように。
私の死が、あなたを永遠に責め続ける罪にならないように。
私の死が、あなたを新しい復讐に縛り付けないように。
私の死が、あなたから本当の笑顔を奪ってしまわないように。


だから、



「泣かないで…………」



【柊篝@刀使ノ巫女 死亡】


587 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:43:10 dV/MzLTg0



眼前で繰り広げらる光景にゼインは一切の反応を見せない。
ただ己の器となったバグスターには違うらしい。
パラド本人にも理解出来ない感情が溢れ、放って置けば自分の支配をも塗り替えそうな勢い。
つくづくこの体を使うのは失敗だったと思い、予定を変更。
いらぬ危惧を抱えたまま使う体は早急に捨てて、新しい資格者を手中に収める。

「きゃあっ!」

脚部装甲の引力操作機能を使い、走力を爆発的に上昇。
拘束中のナーゴの元へ一気に駆け寄り、片手で首を掴んで赤い檻から引き離す。
当然ジタバタと藻掻くがこっちも時間を掛けはしない、モタついてればまたパラドが邪魔に出る。
よりにもよって自分と同じ方法で敗北を遠ざけられ、動揺している間がチャンス。

首を掴むのとは反対の手を、ナーゴの腹部へと伸ばす。
デザグラ参加者の資格、デザイアドライバーをレイズバックルごともぎ取った。
途端に装甲も拡張武装も消失、エントリーフォームですらない生身へ逆戻り。
ライダーの変身を解かれた者を殺したところで、新たなゼインカードは手に入らない。
だが問題無い、目的はカード入手ではないのだから。

「痛っ…」

支給品袋から目当ての物を取り出し、一切の躊躇なく果穂へ突き刺した。
異物が肌を貫く痛みに、小さな悲鳴が聞こえるも無視。
どうせ痛みなどすぐ気にならなくなる。

「まさかお前……!?」

何をするのかパラドが気付くも、もう遅い。
支給品袋は地面に放り投げる、回収のタイミングは必要な準備を全て終えてからだ。
ゼイン自身の意志に従いドライバーが外れ、真正面の対象へと再装着。
好奇心旺盛さを表すパッチリとした目が、彼女ではない青色に輝く。
仮に器だったバグスターにもう用は無いとばかりに、軽やかに跳び離れた。


588 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:44:28 dV/MzLTg0
「も、戻った……?」

悪夢から覚めたように、急激にパラドの意識が覚醒。
両手を自分の頬に当てて、思った通りの動きが出来るのを確認。
体を取り戻し、いずれ自我が消える恐怖からは解放された。
そう素直に喜べないのは、自身をこの状況に追いやった脅威が未だ健在だと分かっているからか。

「果穂ちゃ……うぁ……!」

苦し気な声に思わず振り向けば、駆け寄ろうとし転ぶ千佳の姿。
息が上がっており顔色も悪い。
握り締めたままの杖を振るおうとしても、力が入らないのか上手くいかない。

ファイズエッジの拘束を消し去るのも、篝の傷を癒すのも。
今の千佳なら不可能じゃない、但し体力に余裕があったらだ。
宇蟲王との戦いで気を失う程に消耗し、続く龍騎との戦闘でも呪文を使用。
そして今回のゼイン相手にも複数の呪文とイノセンスを使い、千佳の体力は限界だ。
バテないように限界を見極めレッスンの指導をしてくれる、アイドルとしての活動とはまるで違う。
これ以上体を酷使して魔法を使ったら、消耗死は免れないだろう。

果穂が捕まり、篝の命が失われた。
なのに自分は何も出来ない、皆を助ける魔法少女なのに助けられなかった。
悔しさに視界が滲むも、涙声すら限界間近の体では荒い呼吸に掻き消される。

「誤った選択をしたと、身を以て理解できたことでしょう」

痛々しい千佳を憐れむでもなく、ただ機械的に間違いを突き付ける。
己が絶対的と信じて疑わない善意の怪物が、白亜の装甲を纏い罪人達を見据えた。
校舎の陰から覗く太陽を浴び、光を背負う様は民衆を導く救世主のよう。
容赦のなさと傲慢さを嫌と言う程に知るパラドからすれば、悪魔にしか見えない。
折角体が戻っても万事解決にはならず、燻る恐怖が全身を蝕む。
戦うしかないのかと、ゼインが回収し損ねたガシャットデュアルギアを握り締めた。


589 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:45:14 dV/MzLTg0
「うあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

高まる緊張と死の予感を切り裂く絶叫。
何事かと周囲を確認するまでもない。

声の主が、狼の王の名を冠す装甲を纏いゼインの元へ突き進む。
既に物言わぬ刀使を背に、己を魔女と呼ぶ少女が鉄塊を振り下ろす。

<アギト!グランドフォーム!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

だがそれは獲物を喰らう王の狩りに非ず。
執行人に自ら首を差し出すに等しい、自殺行為に他ならない。

カードを読み砕き、仮面ライダーアギトの力を発動。
傍へ現れた赤いスーパーバイク、マシントルネイダーに飛び乗る。
シートへ跨り運転する通常のバイク操作とは違う、スライダーモードと言うより高速移動に特化した形態だ。
巨大メイスを叩き付ける速さを追い抜き、水平状態の前輪が腹部を叩く。
呻くミカへの攻撃は始まりに過ぎず、機体を空中へと急上昇。
マシントルネイダーに持ち上げられ宙に投げ出され、反撃の隙を与えず再度激突。

悲鳴すらもロクに出せない有様で、地上へと叩き付けられた。


590 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:46:01 dV/MzLTg0
◆◆◆


「ミカ…!?」

落ちて来た少女の名をチェイスが口にし、ギラの行動は即座に決定。
彼女を抱え後退、ドゴルドの近くに転がったままではどうぞ殺してくださいと言ってるのと同じ。
初対面の相手であるもチェイスの反応から察するに、彼の仲間の可能性が高い。
ならばドゴルドとの決着より、助けられる命を優先する。

「…あれ?あたし今まで何してたんだっけ?って、ミカちゃん!?」
「……もしかして記憶が、い、いえ、今はそれどころじゃありませんね」

褐色肌の過激な衣装から元に戻り、何が何やら分かってない様子。
もしやあの姿になっている間の記憶が無いのか、自分とまふゆにあれだけ破廉恥をしておきながら覚えてないのか。
言いたいことが無い訳ではないが、それは今重要じゃない。

「彼女はあなた方の仲間なのですか?」
「うん!どうしてこんなに酷い傷……っ」
「お待ちください、消耗はあたなも軽くないでしょう。ここは私が」

痛ましい姿に顔を歪めるはるかを制し、治癒魔法を発動。
先程魔力を回復してもらったのもあって、ユフィリアの方が余裕はある。
肝心の方法が胸を揉みしだかせるのについては、この際考えない。
レイニの時と同じく穴の開いた器に水を注ぐようなもの、とはならず。
少しずつではあるが全身に負った傷が塞がり始めた。

「チッ、ふざけたタイミングで降って来やがって……!」

勝つか負けるか、殺すか殺されるかの緊張感が最高に高まったタイミングで乱入。
故意でないにしても空気が全く読めておらず、闘争の熱気へいらぬ冷水をぶっ掛けられた。
不機嫌を露わに電気を迸らせるドゴルドから視線を外さず、ギラ達は背にミカを庇う。
回復をユフィリアに任せながら、内心チェイスとはるかは尽きぬ疑問に頭を悩ませる。
一体自分達がドゴルドと戦っている間、ミカ達に何が起きたのか。
他の者達は無事なのかどうかと、嫌な予感が浮かんでは消えずに傷痕を残す。


591 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:46:46 dV/MzLTg0
『彼女の治療は即刻止めて頂きたい。それは悪意の側に付く行為と見なす他ありません』

長々と考えるまでも無く、疑問への答えが姿を現した。
マシントルネイダーを飛び降り優雅に着地、一同の視線を集める純白の救世主。
ゼインの登場へ面食らうも、すぐさま気を引き締め直す。

「よくも……」

治療の手を振り払いゼインを睨み付けるミカへ、ユフィリアが窘めようと口を開く。
が、浮かぶ表情に息を呑み言葉を引っ込めざるを得ない。
記憶に新しいあの夜、離宮でアニスフィアと対峙したアルガルドと同じ。
自分自身さえ呪いそうな程の怒りがあった。

「篝ちゃんは、悪意なんかで動いてなかったのに……なのに……!」

憎悪と言っても過言ではない声色へ、篝に何があったかを察する。
共にいた時間は短くとも、共に戦った仲間だった。
目を見開き震える声を零すはるか、一方でチェイスはゼインへの警戒と怒りを籠めて睨む。
だが自分に向けられる敵意に何も感じていないのか、相手の反応は至って涼しいもの。

『仮面ライダーチェイサー、ですか。あなたのことも知っています。善側に所属するライダーとして、私の目的も理解してくれると有難い』
「…何を言っている?」
『チェイス、あなたはブレンと同じ愚か者でも、まして蛮野のような救いようのない悪とも違う。完璧な正義のプログラムを持つマシンだ。私に手を貸し悪意を駆逐する事が正しいと、そう分かる筈です』

何故相手がブレンや蛮野を知っており、自身のプログラムの事まで把握しているのか。
新たな疑問が生まれるも、すぐに答えには辿り着けない。
ベルトを見るにドライブシステムやアーマードライダーとは、全く異なるライダー。
正体不明の相手からの勧誘に、返すべき言葉は一つ。

「俺の使命は人間を守ることだ。目的が何であれ、篝を手に掛けたお前の手を取るつもりはない」

ブレイクガンナーと共に拒否を突き付ける。
悪意の駆逐とは言うが、その枠に篝やミカが入っているなど到底納得できない。
トリガーに指を掛けつつ他の仲間はどうしたのかを、今度はこっちから問い質す。


592 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:47:38 dV/MzLTg0
尤も、次の光景には言うべき言葉も消え失せた。

『では彼女はどう思うでしょうね?私の資格者として、彼女は快く協力を決めたのですから』

意味深に告げながらドライバーへ手を伸ばす。
ゼインカードの使用ではない、プログライズキーを引き抜き変身を解除。
装甲もマントもあっという間に消失、仮面に覆われた素顔も明らかになる。

「な……に………」
「うそ……」

晒された顔を知る二人、チェイスとはるかが愕然と声を漏らす。
癖っ毛のある赤茶色のロングヘアも、好奇心旺盛さを表す瞳も。
一見小学生らしからぬ長身だって。

「果穂……!?」

全てが、自分達と会ってからの小宮果穂と何一つ変わっていない。

「ゼインさんの言う通りですよ、チェイスさん!あたし今、ゼインさんのおかげですっごく幸せなんです……」
「何を言っている……?」
「ど、どうしちゃったの果穂ちゃん!?え?え?な、何で果穂ちゃんが…」

篝を殺したライダーに果穂が変身していた。
これだけでも理解が追い付かないのに、果穂の様子も普通とは言い難い。
戸惑う仲間達を前にし、果穂はずっと笑みを浮かべたまま。
ヒーローに憧れた快活さとは違う、どこか薄気味悪さすら覚える程の満面の笑みだ。

「こんなに幸せなのも全部――」

困惑を意に介さず、上着の裾を捲り上げた。
お気に入りの私服の下に隠された素肌が露わとなる。
細い腰も、膨らみを包むスポーツブラも。
だがチェイスの視線は一点、妖しく輝く金の翼から放せない。


593 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:48:40 dV/MzLTg0
「ゼインさんがくれた、この幸せの羽があるからなんです!」
「何故お前にそれが……!?」

宝物を扱うように、うっとりと胸元の羽を撫でる。
果穂の体に宿る異物の正体を、チェイスは知っていた。
フェザーサーキット。
099ことエンジェルロイミュードが発明した金色の羽は、植え付けられたロイミュードに人間と同じ感情を授ける。
しかし実際には羽の侵食が進むに連れ思考停止状態に陥り、最終的にはただの傀儡と化す。
チェイスもまたフェザーサーキットの侵食を受けた一体。
生前の戦いでは戦闘不能に陥ったが、最終的には自力でエンジェルの支配を脱し勝利を収めた。
とはいえチェイスは事件の記憶の大半を失っており、人間の感情を欲する切っ掛けになった出会いもデータ内には存在しない。
僅かながら、果穂の胸のモノが彼女を蝕む悪魔の羽だとは微かに覚えているが。

「あたし今、本当に幸せなんです!アイドルもヒーローも、今ならなんだって出来ちゃいそうな気がします!チェイスさん達だけじゃなく、プロデューサーさんや283プロの皆さんに助けてもらわなくたって、大丈夫なんです!」

湧き上がる幸福感がガラスのように薄っぺらい偽りと、果穂には分からない。
本当の自分自身と、信頼する皆を傷付ける言葉だとも気付けない。
こんなに幸せにしてくれる羽をくれたゼインの言うことは、全て正しい。
有り得ざる思考になっているのへ疑問を抱かず、電源を落としたように笑みを消す。
キラキラと星のような輝きも、決意に燃える熱もない。
伽藍洞の人形の如き瞳で、自分の幸せを阻む者達を睨み付ける。

「邪魔、しないでください」

<ZEIN>

「変身」

<ZEIN RIZE>

<JUSTICE!JUDGEMENT!JAIL!ZEIN!>

色を失った声で変身を実行。
初めて会った自分を助けてくれたチェイスを、今度は自分が助けたい。
心火を燃やし、ヒーローとしての一歩を踏み出した時とはまるで違う。
善意の傀儡として命じられるままに、身も心も覆い隠す。

<"Salvation of humankind.">

再びライダーとしての姿に戻ったゼインへ向けられる視線に、友好的なものは一つもない。
当然と言えば当然の話だろう。
チェイスとはるか、ミカは言わずもがな。
果穂と面識の無かったギラ達も、支給品か何かを使い少女の思考を弄ったと分かり警戒を強める。


594 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:49:15 dV/MzLTg0
『フェザーサーキットは必要なことだったのです。未熟な正義は悪意に染まり易い。道を誤らず私の資格者となるには、彼女の精神は必要な犠牲でしょう』
「ふざけるな…!果穂はお前の道具ではない!」

いけしゃあしゃあと言ってのけるゼインへ、最早敵対以外に選ぶ答えはないと確信。
同時にゼインの正体がドライバーであるとも察しが付く。
意識データを移植したベルトの存在は、チェイスの身近にも存在していた。
されどクリムのように、償いと正義の心で戦う者とは正反対。
蛮野と同じ、目的の為なら平然と他者を道具として切り捨てる外道だ。
ゼインは蛮野を救いようのない悪と評したが、同じ穴の狢としか思えない。

両者の間で火花が塵、闘争の火蓋が切って落とされるのは時間の問題。
真っ先に誰が動いてもおかしくない中、予想外の人物が仕掛ける。

『DUAL ON』

『GREAT』『NINJA』

無機質な電子音声が木霊し、ゼインを襲うは漆黒の将軍。
それも複数人が同時に斬り掛かり、メダジャリバーと打ち合う。
頭上からの振り下ろしを弾き、前後挟み撃ちで走る刃には回転斬りで対処。
切り裂いた手応えは薄い、火花は散らず煙のように消滅。
分身と分かった瞬間へ迫るは、回転の勢いを乗せた蹴り。
重厚な鎧を纏っているとは思えない俊敏さへ、ゼインもまた脚部装甲を叩き付ける。

『READY FIGHT』

遅れて響く戦闘開始の合図。
蹴り同士で弾き合い後退、富良洲高校前に新たなライダーがエントリーを果たす。
仮面ライダータイクーン・ブジンソード。
一振りの日本刀を得物に無双を実現させる形態だが、肝心の刀はどこにも見当たらない。
両手に装備されたのは忍者刀、レイズバックルも片方はブジンソードと違う。
タイクーンと最も相性の良いニンジャレイズバックルだ。
ブジンソードバックルの機能により、既存の能力を損なわないままニンジャフォームの力を発揮。
分身の術で先手を取り、高い俊敏性で回し蹴りを放ったのである。


595 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:49:56 dV/MzLTg0
「君は……」

驚くギラの傍でまふゆが怯えたように後退り、ユフィリアが庇うように立つ。
ミカもまた僅かに目を細めるも、視線はすぐに怒りを宿しゼインへ戻る。
面識のある者達の反応を背後で感じ取るも、スザクは振り向かない。

「…勘違いしないでくれ。君の手を取るつもりはない」

顔を見ないままギラに釘を刺しておく。
彼の手を取り、自分が救われる道を歩む気は無い。
ギラとの戦闘後、目的地も決められず迷いを振り払うことすら出来ずあてもなく彷徨った。
ルルーシュの元へ急ぐべきなのかどうかも決断しないまま、いつの間にやら辿り着いたのが富良洲高校。

「僕はただ――」

そこで見たのは、少女の器を手に入れた善意の怪物。
悪びれる様子もなく言葉を並べる姿に、重なるものがあった。
大切だった彼女を虐殺皇女に仕立て上げ、命を奪った親友と。
心を操り己の道具として使い捨てる、呪い(ギアス)で人々を支配する仇と。
ルルーシュではない相手にかまけて本命を逃すのは、賢いとは言えない。

「そいつが、気に入らないだけだ」

そう指摘され、スザク自身も反論出来なかったが。
気付けば体は勝手に動き出し、ゼインへ斬り掛かった。
ギラともう一度会うことへの期待だとか、そんなものでは断じてない。
どこか言い訳がましく己へ言い聞かせ、燻り出す苛立ちから目を背ける。
意識を逸らすのに丁度良い敵なら、目の前にいるのだから。


596 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:50:41 dV/MzLTg0
「いた……はるかちゃん達も……!」
「こんなに参加者が集まってたのかよ…」

スザクの参戦に引き寄せられたのか、更に別の者達が顔を出す。
疲労困憊で徒歩移動もままならない千佳を背負い、パラドも再びゼインと対峙した。

『成程…こちらが些か不利ではあるか』

続々と集まる面々を見やり、冷静に結論付ける。
ゼインカードを駆使すれば複数対一だろうと渡り合えるが、苦も無く圧勝可能となるかは怪しい。
新たな資格者の果穂の消耗は軽くない、後れを取る可能性は否定できなかった。
先は長いのに少なくない代償を無理して支払う必要もないだろう。

『ここは素直に退くとしましょう。チェイス、次に会う時には正しい判断を期待しています。それにパラド、バグスターが存在する事は決して許されない』
「逃がさん…!」
「なに勝手に逃げようとしてるの…!!」

好き勝手に場を荒らし篝を殺した挙句、果穂まで連れ去ろうとしている。
逃走を許すつもりは皆無、チェイスとミカが武器を手に飛び掛かった。
対するゼインの動きは迅速だ。
取り出す逃げの一手はゼインカードでなく、果穂の支給品にあったデュエルモンスターズの一枚である。
強制退出装置という名の、指定した二名の参加者を他エリアに転移させる罠カード。
ベルトが本体の特殊な形とはいえ名簿に登録されたゼインと、資格者の果穂を対象に効果発動。
伸ばした手は何も掴めず、振るった刃は善意を壊せず空しく宙を斬る。
悔しさを滲ませた所で、再び姿を現す気配はどこにも無かった。


597 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:51:30 dV/MzLTg0
「シラけちまったな……」

一部始終を見ていたドゴルドの呟きには、苛立ち以外に辟易さを隠せていない。
いきなりしゃしゃり出て来たゼインとかいう奴が場を掻っ攫い、戦闘開始の寸前で逃げおおせた。
数分前までの高揚感と憤怒へ水を差され、怒りのぶつけ所がスルリと離れる始末。
率直に言って萎えており、さあもう一度暴れようなんて気にはさしものドゴルドもなれなかった。

「ケッ!止めだ止め。テメェらを殺すのは後にしてやる」
「っ、お前も逃げる気か?」
「寝言抜かしてんじゃねぇぞパチモン野郎。見逃してやるっつってんだよ」

嘲笑混じりに吐き捨て愛刀を掲げる。
刀身に電気を迸らせ振り下ろせば、雷が全身を覆い隠す。

「俺は冥黒の五道化が一人ドゴルド!テメェらが倒したがってる羂索どもの用意した最強のNPCよ!キョウリュウレッドのパチモン共々、次は纏めて潰してやらあ!」

雷鳴すらも掻き消す怒声が響き渡る。
それを最後にドゴルドもまた姿を消し、富良洲高校で猛威を振るった存在は二名共に去った。
焼けたアスファルトを何も言えない顔で見つめるギラの頭には、ドゴルドと決着を付けんとした時の光景がリピートされる。
勝つつもりで拳を放った、だがあの時のドゴルドから感じたプレッシャーは並大抵の類じゃあない。
もし自分の拳が届かず、反対に敵の刃を身に受ける結果となっていたらどうなったか。
不死身の肉体を持つギラ自身、耐え凌げるとは言い切れないモノがドゴルドにはあった。

「なあ……」

ギラの内心を余所に声を発するのはパラド。
近寄りがたい威圧感が放たれるミカの背に、どこか気まずそうに話しかける。
僅かに振り向き見えた顔には、底の見えない沼のような瞳が張り付いていた。

「あの篝って人間の道具、お前が、持ってた方が良いだろ……」

気圧されつつも差し出したのは、ゼインとの戦闘で散らばっていた篝の支給品。
猛獣の檻に入り餌をやるような慎重さで差し出せば、バッと引っ手繰られた。
余りの速さに堪らず身を竦ませるも、ミカはもう見向きもしない。
起動鍵を取り出しイモータルジャスティスを身に纏う。


598 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:52:16 dV/MzLTg0
「待てミカ、お前は……」
「来ないでよ…!」

咄嗟に制止を呼び掛けるも、返って来たのは拒絶。
言葉だけではない、ビームライフルとレーザーレイズライザーを乱射し牽制。
当てる気がないとは言っても高火力の銃撃だ、全員動きを止めざるを得ない。
一面に火花が散り煙が視界を塞ぐ中、ミカはMAへ変形。
地上からの声が届かない速度で、あっという間に飛び去って行く。

加えて今のどさくさで逃げたのか、スザクの姿も気付けば見えない。
ニンジャフォーム術を使えば意識が逸れたタイミングでの撤退も、そう難しくはないが。

これで富良洲高校に残った参加者は7名、異なる形ではあれど全員が羂索達に抗う者。
去ったばかりの少女が実は殺し合いに乗っていると、知る者は一人もいない。

嵐は過ぎ去り、闘争の熱は鎮火。
取り戻した静寂を、心地良いと思えるものはおらず後味の悪さが残る。
無事に生き延び、形はどうあれ強敵を退けた。
などと楽観視するには、失ったモノが軽くない。

「……っ」

地面に拳を叩き付けるも痛みは感じず、ロイミュードの体故傷も付かない。
しかしチェイスは、見えない刃で胸を裂かれるような痛みを感じた。
支給品やはるかの回復魔法が活き、そう時間を置かずにダメージは全て消え去るだろう。
けれどこの痛みだけは残り続ける。

篝が殺されるのを防げず、果穂を連れ攫われ、ミカを止められない。
宇蟲王と戦った時と同じだ、人を守る仮面ライダーであるのにこの様か。
自分を支えると言ってくれた少女がゼインの手に落ち、阻止できなかった事実が重く圧し掛かる。
無力感と怒りに苛まれる今の自分が、まるで人間に近付いたようなど到底思える筈もない。


599 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:53:08 dV/MzLTg0
「……」

気軽にチェイスへ声を掛けるのが憚れる中、パラドもまた複雑な胸中で佇む。
一体何をしたいのか、何を考えて動いたのか自分自身にも分からない。
千佳を仲間達の所まで運んでやったのは、人間に借りを作ったままなのが気に入らないから。
結果がどうあれゼインから体を取り戻せたのも、あの場で戦った4人の少女の力があってこそ。
認めるのは癪であれど、パラド一人でゼインをどうこう出来たかは怪しい。
素直に礼を口にする気は無くとも、頼みを一つ聞いてやるくらいは承諾してやってもいい。
ただそれだけのことで千佳をおぶってやった。

ゼインから解放され奴へのリベンジと、改めて殺し合いのゲームクリアを狙う。
なのにどうしてだろうか、心が全くと言って良い程踊らない。
死への恐怖のみならず、パラド自身にも理解不能な感情が渦巻き続けている。

バグスターの自分を助けると言った少女がゼインに操られ、訳も分からずムカムカする。
避けられない死を前に怯えるのではなく、仲間の為の言葉を遺した少女が頭に焼き付いて離れない。

人間達がどうなろうと、自分が助かったのなら問題無い筈。
けど考える、考えてしまうのを止められない。
自分がゼインのベルトを破壊さえしていれば、篝が殺されず今も生きていられたんじゃないか。
果穂だって操られる事態にはならなかったのではないか。

怒りに染まったミカの顔を思い出す度に、言葉が何も出なくなる。
大事な仲間を奪われたチェイスに、後ろめたさで顔を向けられない。
一時的に協力し利用するだけの者達へ、何故こんなことを思ってしまうのか分からない。

(クソッ、どうしちまったんだよ俺は……)

内に芽吹く感情が、死の恐怖を味わったが故の罪悪感だと。
そう教える筈だった、彼の宿主たる研修医はここにいなかった。


【エリアI-8/現代都市 富良洲高校/9月2日午前10時40分】

【ギラ・ハスティー@王様戦隊キングオージャ―】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)
服装:いつもの服装(第二部)
装備:ドンブラスター+アバタロウギア×6@王様戦隊キングオージャ―VSドンブラザーズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン×2、
思考
基本:ケンジャクたちザコどもを悉く滅ぼし、邪悪の王としてこのゲームの真の邪道を見つけて見せる
01:民は守る。この場にいない王様戦隊の仲間の分まで。ゲームに乗った者たちも極力無力化、撃退にとどめたい
02:テレビ局に行く過程でケンジャクたちに反逆する仲間を集める。そしてケンジャク達の目的を探る。まずは恐竜戦隊の仲間と合流したい
03:ケンジャク、ルルーシュ、綾小路、ケンジャクの言っていたクルーゼ、カヤバ、クチナシ、カモ、ルルーシュが言っていたマリアンヌ・ランペルージ、ゼア、シュナイゼルについて知る者を探す。
04:宇蟲王ギラに最大級の警戒、どうにか打倒するための方法を見つける
05:ドゴルド、覇王十代、アスラン・ザラ?にも警戒、名前が近い遊戯十代とアスラン・ザラと接触してどういう存在なのかを聞いておく
06:アントライオンの男を殺した罪は背負いながら前に進んで見せる
07:黒い鎧の彼(スザク)を止めたい。あのままじゃ彼は…
08:梔子ユメと二人のキラ・ヤマトにも一応話は聞いておきたい
参戦時期:VSキョウリュウジャー終了後
備考
※不死性はある程度削がれています。
※シュゴットは令呪を使わなければ呼び出せません。
 また、呼び出せたとしても大幅にスケールダウンしています。
※VSキョウリュウジャー終了後なので他のスーパー戦隊に関する知識も少しはあります。


600 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:54:01 dV/MzLTg0
【ユフィリア・マゼンタ@転生王女と天才令嬢の魔法革命】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)
服装:いつもの服装
装備:オ―ジャカリバー@王様戦隊キングオージャ―
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームに反逆する
01:民は守る。まふゆが共に戦う以上は彼女のことも
02:ケンジャクたちに反逆する仲間を集める。
03:ギラ国王と共に歩む、彼は信用出来ます。
04:ケンジャク、ルルーシュ、綾小路、ケンジャクの言っていたクルーゼ、カヤバ、クチナシ、カモ、ルルーシュが言っていたマリアンヌ・ランペルージ、ゼア、シュナイゼルについて知る者や医者を探す。
05:宇蟲王ギラ、覇王十代、アスラン・ザラ?を警戒、他にも強いマーダーがいる可能性が高いので積極的に同士を集めなければいけませんね
06:参加者が異世界から集められているとは…勘違いをしてしまっていました
07:周りは見たことがないものばかりです…この世界の文明器具について詳しく知っている人に教えてもらいたいですね
参戦時期:少なくともまだナチュラルな人間だったころ
備考
※制限の詳細は後の書き手様にお任せします。
※シュゴッタム王国をパレッティア王国が認知してない程遠方の王国であると当たらずとも遠からずな勘違いをしていましたが、誤解は解けました。

【朝比奈まふゆ@プロジェクトセカイ】
状態:疲労(大)、不安(中)、精神的疲労(中)
服装:私服(家である程度汚れを落としました)
装備:ミニティラ@獣電戦隊キョウリュウジャー、マハタルカオート@ペルソナ4
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:おうちにかえりたい
01:おかあさん、おとうさん……。
02:ギラおにいちゃん、ユフィリアおねえちゃんといっしょにいく
03:わたしもおにいちゃんたちのお手伝いをがんばる
04:ユフィリアおねえちゃんはちょっとこわいけど、やさしくてあったかい
05:だれもしってる人がいない…こわいよう…
参戦時期:幼少期
備考
※元の戦闘力がほぼ無いので特に制限はされていません。
※マハタルカオートを使えることに気付いていません。


601 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:54:36 dV/MzLTg0
【花菱はるか@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(極大)、精神的疲労(中)、ダメージ(小)、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:学生服/マジアマゼンタのコスチューム
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り二画
道具:ウォーパイク@テイルズオブヴェスペリア、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:魔法少女として殺し合いを止める
00:みんな……
01:千佳ちゃん達と行動。
02:トレスマジアの二人とうてなちゃんを探す。どうしてうてなちゃんまで…
03:↑に並行しイドラさん達とも合流したい。
04:ノワル、赤い服の男の人(宇蟲王ギラ)に対して最大限警戒
05:マジアベーゼはいつか仲間になってくれると思ってるよ!ここで正体は探らないって約束する!
06:あたしが気絶してから何があったんだろう…?
参戦時期:少なくともマジアマゼンタ フォールンメディックに覚醒前
備考
※真化形態に覚醒しました。原作同様真化中の記憶はないようです。

【横山千佳@アイドルマスターシンデレラガールズ U149(漫画版)】
状態:疲労(絶大)、精神的疲労(大)、ダメージ(中)(処置済み)、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:普段着
装備:イノセンス@魔法少女ルナの災難、まどうしのつえ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:怖いけど、殺し合いになんて負けない!
00:あたし、みんなのこと助けられなかったの…?
01:はるかちゃん達と一緒にいる。疲れたけど、心配させないようにしなきゃ。
02:イドラちゃんとレッドくん、どこにいるのかな?
03:マジアベーゼのこと、あたしは信じたい。
参戦時期:サマーライブ編(原作14巻)終了後以降
備考
※まどうしのつえでスクルト、ピオリム、ルカニ、ホイミ、メラ、マジックシールドが使用可能なようです。
 他にどの呪文が使えるかは後続の書き手に任せます。


602 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:55:22 dV/MzLTg0
【チェイス@仮面ライダードライブ】
状態:ダメージ(小・メカ救急箱の効果で回復中)、無力感(大)
服装:紫のライダースジャケット(いつもの)
装備:マッハドライバー炎&シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ、ブレイクガンナー&チェイサーバイラルコア@仮面ライダードライブ、シフトデッドヒート@仮面ライダードライブ
令呪:残り三画
道具:ライドチェイサー@仮面ライダードライブ、トレーラー砲@仮面ライダードライブ、メカ救急箱(使用回数3/5)@ドラえもん、野晒@BLEACH、亜空間物質転送装置@遊戯王OCG(5時間20分使用不可)、シフトチェンジ@遊戯王OCG(5時間20分使用不可)、大量の購買部の商品、ホットライン
思考
基本:人を守り、殺し合いを止める
00:俺は……
01:ゼインから果穂を助ける。今どこにいる?
02:久留間運転免許試験所へ向かう傍ら、協力可能な参加者を探す。
03:先生や学園都市キヴォトスの関係者を警戒。が、ミカの話を聞き真実を見極めたい。
04:蛮野もこの島にいるのか?
参戦時期:死亡後。
備考
※制限により重加速は短時間で強制的に解除。連続使用は不可。

【パラド@仮面ライダーエグゼイド】
状態:死の恐怖(極大)、主催者への怒り、ダメージ(大)、疲労(大)、無自覚の罪悪感(大)、ゼインへのトラウマ
服装:人間体での服装
装備:ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド、サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
令呪:残り二画
道具:
思考
基本:主催者打倒。同胞やウイルスを奪われているなら取り戻す
01:心が躍らない…俺は何がしたいんだ?
02:まずはグラファイトと合流する、そのために旧幻夢会社に行くか
03:他にも協力プレイできる奴を探す
04:俺も下手したらあんな死体のようになるのか…?
05:永夢達はいないのか…この場なら協力出来ただろうから少し残念かもな
06:レジスターも旧幻夢会社で調べるつもりだったが、取られちまった
参戦時期:33話あたり
備考
※バグスターの特殊能力である瞬間移動は制限されています。
※主催者が自分たちバグスターを捕らえているか、あるいはバグスターの肉体をウイルスから分離して、自分がウイルス感染しているのは後者により人間に近い身体にされたからではと考えています。
上記考察が事実でなかったとしても、どっちみちこんなことに巻き込んだ主催陣を許す気はありません。

『全体備考』
※富良洲高校の敷地内に裁断されたゼインカード(響鬼、BLACK、ファイズ、アギト グランドフォーム)が落ちています。


603 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:55:56 dV/MzLTg0
◆◆◆


衝動的に飛び出したのが悪手だと、ミカだって理解している。
あのまま残って集まった参加者達と情報を共有し、キラの件も含めて今後の方針を決める。
どう考えたって正しい。
感情任せに離れて行ってどうなるという。
今からでも戻るべきだと、分からない訳じゃない。

それでも今は一人になりたかった。
誰にも会わず、何も考えたくなかった。
突き動かす怒りは消えていない、しかし肝心の仇が手の間をすり抜ければ他の感情にも向き合わされる。

「本当にさー、キラくんも篝ちゃんも見る目無さ過ぎだって。あれじゃあ彼女ちゃんとか旦那さんも相当苦労するよねー」

魔女じゃないと言われたけど、到底受け入れられる言葉ではない。
自分の失敗に悉く巻き込み、望まぬ殺しに手を染める状態へ陥らせ。
挙句今度は死へ追いやる原因となった。
誰も彼にも不幸を撒き散らす生きた災厄。
これが魔女でないなら何だ。

「それか疫病神ってやつ?わーお、私ってばいつの間にか神様にランクアップしちゃった☆美味しいものいーっぱい献上してもらえるかも!」

キラにも篝にも恨まれて当然のことをしでかした。
なのに二人共、決してミカに怒りをぶつけなかった。
自分みたいなロクでもない女と、関わるべきじゃないくらいに優しい二人。
そんな彼らの想いに触れて尚、今やってるのは逃避行動。

「……無理だよ」

篝が最後の言葉が何度も頭の中で繰り返される。
泣かないでと、恨みつらみとは正反対の言葉が。

「無理……だよぉ……!」

とめどなく溢れる涙に頬を濡らし、魔女は孤独に空を逃げる。


【エリアI-8/現代都市 空中/9月2日午前10時40分】

【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(大)、疲労(絶大)、動揺による情緒不安定気味(大)、魔女、キラと篝への罪悪感(特大)、脳に焼き付いたトラウマ、イモータルジャスティスを装着・飛行中
服装:いつもの制服(返り血を浴びてる)
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー、Dの獣電池×4(2つ空になった為使用可能なのは残り2つ)@獣電戦隊キョウリュウジャー、レーザーレイズライザー&レイズライザーカード(ベロバ)(2時間20分変身不可能)@仮面ライダーギーツ、イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ミーティアの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ(午前8時25分に使用、45分使用不能)、千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火、祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火(20分使用不能)、ホットライン×2
思考
基本:魔女らしく荒れる。……それは、変わらないよ。……止めてみれば?
00:今は誰にも会いたくない、何も考えたくない
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげる。それは……変わらない。でも優先順位ってのが…あるよね?
02:ゼインは見つけ次第壊してやる。
03:…せめて、キラくんは止める。そのつもりだったけど、私じゃ……
04:先生のことを詳しく聞く。殺し合いに乗った?そんな訳ないじゃん馬鹿なの?????
05:邪魔したあの救世主って名乗った人(リボンズ・アルマーク)と仮面ライダーエターナル(大道克己)、それにキラくんをあんなにした魔王グリオンは…次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
06:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
07:…しれっと逃げてたギギストは…次会ったら一発くらい殴ってもいいよね??
08:…あの人(スザク)は…どうするんだろ。
09:やることぜーんぶ、裏目に出てばっかりだなぁ…………
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
 一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※キラや篝とのやりとりでガンダムSEED世界や刀使ノ巫女世界についてある程度把握しました。

※どこへ向かうかは後続の書き手に任せます。


604 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:56:52 dV/MzLTg0
◆◆◆


ミカが飛び去り意識が逸れた隙を突き、スザクも富良洲高校から離れて行った。
あのまま残った所で多勢に無勢、ブジンソードがあるとは言っても過信は禁物。
一度は自分に打ち勝ったギラがいる以上、油断は決して持ち込めない。

逃げる最中にふと思うのは、あの場にいなかった少女。
憎悪を剥き出しにしたミカの様子を見れば、篝がどうなったかを察するのは難しくない。
風都タワーでの騒動を生き延びた彼女も、限界を迎えたのだろう。

「そうか……」

会話らしい会話なんてなかった。
仲間でもないし、衛藤可奈美が現れなかったら一時的な共闘も実現しなかったかもしれない。
悲しむような間柄じゃない、むしろ自分の優勝を阻む壁が一人消え都合が良い。

その筈なのに、骸となった可奈美と斬り合う悲痛な顔を思い出すと――

「彼女が、死んだのか」

呟きに籠められた感情の正体は、スザク自身にも分からなかった。


【エリアI-8/現代都市/9月2日午前10時40分】

【枢木スザク@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)、狂気、情緒不安定、シビトへの嫌悪感(大)
服装:軍服(ナイトオブラウンズ)
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ、ブジンソードバックル@仮面ライダーギーツ、ニンジャレイズバックル@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:この殺し合いにのって理想の世界をかなえる
00:彼女(篝)が死んだのか……
01:ルルーシュ…君が悪いんだ。
02:みんな、みんな殺すんだ…殺してかなえなきゃ、俺はなんのために…。
03:これが僕の…オレの選んだ道…そのはずだ…!!
04:エターナル(大道克己)とグリオンは見かければ最優先で殺す。
05:ルルーシュへの復讐をはたす。
06:この生きろのギアスの呪縛があるかぎり、信用を得れるはずなど…!!
07:ギラの言葉に…………
参戦時期:フレイヤ射撃後
備考
※業スザクではないです。
※「生きろ」のギアスの呪縛は問題なく発動します。


605 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:58:25 dV/MzLTg0
◆◆◆


戦場を離れた先でドゴルドは進む。
参加者もNPCも安易に近付くのを躊躇う程に、不機嫌のオーラをこれでもかと放出。
生前から腹立たしいが口癖で非常に短気なドゴルドだが、今は殊更苛立っている。
数時間収穫無しのフラストレーションをぶつけられる殺し合いを、ふざけた横槍のせいで戦意を大いに削がれたのだ。
尤も、苛立ちの理由は他にあるが。


――『きみのママとパパの2人だけが、犠牲になったよ』

――『やつらはこの事故で死ぬ400人のうち、お前の両親の命だけを見捨てたんだ』


へばり付いて消えない、ドゴルドのものではない記憶。
編集(エディット)で流し込んだ大量の記憶(メモリー)の中にあったもの。
両親に愛された少女が復讐鬼と化した起源(オリジン)。
記憶の本来の持ち主であるマイが意図的にやったのではない。
ほんの僅かな足止めの為に流し込んだに過ぎず、自分のだろうと他者の記憶だろうとどっちでも良かった。

(あの女……)

別に、マイの過去に興味はない。
ただ過去を知ったからこそ気にかかることもある。
直接的な戦闘力がゼロに等しい身で時間稼ぎを行い、重症の左虎達全員を連れての撤退に成功。
これだけ聞けば仲間を決して見捨てない善人と思われるだろうが、過去の知ったドゴルドは素直にそう思えない。
殺し合いという現状と照らし合わせれば、別の答えが見えて来る。

マイ=ラッセルハートは両親の蘇生を叶える為に、優勝を狙っているんじゃないか。
左虎達はマイにとって都合の良い駒と化し、利用されているだけなのでは。
確証を持って言える訳ではないが、絶対に違うとも言い切れない。


606 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 19:59:42 dV/MzLTg0
仮に事実だとして、この情報をドゴルドが他の参加者に伝え警戒を促す気はない。
冥黒の五道化たるドゴルドからすれば、マイに限らず全参加者が敵。
仲良しこよしでつるむ関係になるつもりはなく、スタンスに関わらず皆殺し。

ただ気掛かりなのは、空蝉丸までマイの術中に嵌り傀儡になる可能性もあること。
ブレイブではない偽りの信頼で動く人形となった空蝉丸と殺し合うのは、十全の奴と戦うのとは程遠い。
宿敵に限って下手を打つとは思いたくないが、一度浮かんだ嫌な予感というやつはしつこく残り続ける。

「全く…腹立たしい……!」

存分に暴れ回る筈が、どうもおかしな方へ向かっている気がしないでもない。
かといって役目を放り出すつもりもなく、燻る苛立ちのぶつけ先を探し進むのだった。


【エリアI-8/現代都市/9月2日午前10時40分】

【ドゴルド@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:ダメージ(中) 全身に浅い裂傷と凍傷 正常、怒り(大)、戦意(大) 黒閃と自身の力に対する高揚と困惑(大)、消化不良気味でイライラ(中)
肉体:???(女性なのは確定)
装備:喧嘩上刀@獣電戦隊キョウリュウジャー、Tの聖文字@BLEACH
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:なし
基本:十全の状態で空蝉丸と決着を付ける。
01:プレイヤーどもを痛めつけて戦隊どもを引っ張り出す。
02:ヒースクリフ共、縛りを破ったら分かってんだろうな?
03:ここまで一人も殺せてない上に、シケた気分にさせやがって!腹立たしい!
04:マジアアズール……覇世川左虎……、中々の相手だな。
05:あの黒い稲妻は一体なんだ?
06:マイって女は殺し合いに乗ってるのか?
07:少なくとも、今すぐ富良洲高校の連中と殺し合う気は無い。萎えてんだよこっちは
参戦時期:死亡後 
備考
※単純な復元による復活ではなくヒースクリフたちにより再錬成される形での復活な為、巨大化などのデーボモンスター固有能力を喪失している代わりに呪力、ソードスキル、ブレイブなどを使える様になっています。
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※使ってる肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※黒閃を決めたことによる一時的に能力がいつまで有効かは後続の書き手様にお任せします 詳しい効果には薄々気付きつつあります。


607 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 20:00:29 dV/MzLTg0
◆◆◆


『収穫が大きいとは言えませんね』

無事撤退し、誰に向けるでもなくゼインは独り言ちる。
新しい資格者を得て、ついでに邪魔者を一人排除できたのは良い。
しかしパラドやミカは未だ健在、ガシャットデュアルギアを回収し損ねたのも痛い。
支給品袋に入っている分はまだしも、富良洲高校で裁断したカードはそのままだ。
敵の強化に利用される可能性を思えば、最善の結果とは言えまい。

『…探してみるのも手、かもしれません』

ゼインが考えるのは、裁断済みのゼインカードを再利用可能とする道具やスキル。
殺し合いには仮面ライダーとは無関係の、未知の異能や技術が転がっている。
若しかするとゼインカードの復元も可能かもしれない。
カードの枚数にはまだ余裕があるとはいえ、使い捨てるシステムの都合上長期戦になれば自ずと手数は減少。
自分であっても追い詰められる場面が少なくないなら、探す価値はある。

乱用を防ぐ目的で裁断する仕様なのに、再利用出来ては本末転倒。
だがそれは悪意を持った者の手に渡った場合の話だ。
絶対的な正しさを持つ自分が使うのだから、何も問題はあるまい。
開発者のジョージ・狩崎が聞けば頭を抱える結論を下す。

『一先ずどこかで休みましょう。私の力を行使する以上、万全の状態に近付けておかなくてはなりません』
「はい!いざって時に疲れて動けなくなったら、ゼインさんも困っちゃいますね!」

命令に逆らわず、言われるがままに動く少女へ冷静に考える。
フェザーサーキットの侵食が進めば最終的に、平和に逆らう行動が封じられるのは把握済みだ。
戦闘行為そのものをできなくなる訳だが構わない。
戦えなくなるのはあくまで果穂の意識の時のみ、自分が体の主導権を奪って戦う分には問題無い。

(こんなに幸せな気持ち初めてだなぁ…ゼインさんの為に頑張らないと!)

自分が道具として使い潰されるとは思っておらず、幸せをくれた恩返しの気持ちで従う。
何も不安に思う必要はないし、そもそも不安なんて浮かんでいない。
ゼインの言うことは正しいのだから、きっと大丈夫。
だって自分は、今まで感じたことがないくらいに幸せで――


608 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 20:02:12 dV/MzLTg0
「あれ?」

なのにどうしてだろうか。
心の片隅で、違うことを思ってしまうのは。
大事な何かを捨ててしまったような、大事な誰かを傷付けてしまったような。

大切な約束を裏切ったような気がして、気付かぬ内に頬が濡れていた。


【?????/?????/9月2日午前10時40分】

【仮面ライダーゼイン@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:果穂へ憑依中
服装:果穂と同一(装備〜道具まで同様)
装備:
令呪:
道具:
思考
基本:悪意に満ちたこのゲームを破壊する。
01:このゲームの運営についての情報を集める。
02:邪魔する者は排除する。
03:悪意に満ちた参加者は見つけ次第排除、まずはバグスターであるグラファイトを排除する、その為に旧幻夢会社へ向かう
04:小宮果穂を資格者として行動。今度は余計な抵抗をされないようにしなくては
05:次にチェイスと会った時、私の善意を理解するならば良し。そうでなければ排除
06:メダジャリバーを使う為にセルメダルを排出するNPCと戦いたいですね
07:ゼインカードの再使用可能となる方法を探す。
参戦時期:仮面ライダーゼロスリーと対峙するよりは前
備考
※小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズの肉体を乗っ取りました。常に装着する必要のあるゼインドライバーを破壊、もしくは取り上げない限り解放されません。
また、変身者が死ぬ→新しい変身者を乗っ取るを繰り返す度にゼインの干渉は難しくなります。完全にできなくなった場合、ゼインの参加者としての資格はなくなります。
※時間停止は1秒のみ、そして3回使用すると次の放送が流れるまで使用できません、ゼインはこのことを把握しています。
※令呪を使った場合、昭和ライダーの力の場合はシンプルに威力増加、平成、令和ライダーの場合は最強フォームにカードが戻るようです。また、時間停止も再度可能になります
※裁断された仮面ライダー2号、仮面ライダースーパー1、スカイライダー、仮面ライダー龍騎、仮面ライダーカブト、仮面ライダーダブル、仮面ライダーオーズプトティラコンボ、仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル、仮面ライダービルドジーニアスフォームのゼインカードは回収されました。
ゲーマドライバーとランダムアイテム=マイティブラザーズXXガシャットは『ゼインカード(仮面ライダーエグゼイド ダブルアクションゲーマーレベルXX(量産型脳無))@オリジナル』になりました。

【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
状態:疲労(極大)、ダメージ(大)、フェザーサーキットによる侵食、ゼインの資格者
服装:私服(いつもの)
装備:ゼインドライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインプログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインカード一式@仮面ライダーアウトサイダーズ、フェザーサーキット@仮面ライダードライブ
令呪:残り三画
道具:デザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル(2時間使用不可能)@仮面ライダーギーツ、強制退出装置@遊戯王OCG(6時間使用不可能)、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、メダジャリバー+オースキャナー@仮面ライダーオーズ、裁断されたゼインカード@仮面ライダーアウトサイダーズ、檜佐木修兵のバイク@BLEACH、桜井侑斗のレジスター、ホットライン×3
思考
基本:ゼインさんの言う通りにします!何も間違ってないですよね?
01:休める場所に行きます。疲れたままじゃ、ゼインさんの為に頑張れません!
02:こんなに幸せな気持ち初めてです……
参戦時期:不明。少なくともW.I.N.G.の優勝経験あり。
備考
※ゼインの資格者に選ばれました。
※フェザーサーキットの影響で思考が汚染されいます。

※どこへ転移したかは後続の書き手に任せます。


609 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 20:03:18 dV/MzLTg0
『支給品紹介』

【ニンジャレイズバックル@仮面ライダーギーツ】
…枢木スザクに支給。
デザイアグランプリで使用される大型レイズバックルの一つ。
甲冑鎧を纏い機動力・俊敏性・隠密性に重点を置いた装備を展開、忍術の使用が可能となる。
拡張武装は両刃と二刀流を兼ね備えた剣、ニンジャデュアラー。

【強制退出装置@遊戯王OCG】
…小宮果穂に支給。
通常罠
お互いはそれぞれ自分フィールド上のモンスター1体を選び、
そのモンスターを持ち主のデッキに戻す。
本ロワでは指定した対象二名をランダムに別エリアへ転移させる。
一度の使用後6時間使用不可。

【Tの聖文字@BLEACH】
ドゴルドに与えられたソードスキルの一つ。厳密には支給品ではないがここに載せる。
聖十字騎士団の滅却師、キャンディス・キャットニップの聖文字。
空や掌から雷撃を繰り出したり、肉体そのものを稲妻に変え機動力を上げることも可能。


『ドロップアイテム紹介』

【マハタルカオート@ペルソナ4】
…朝比奈まふゆが入手。
戦闘開始時に味方全員の攻撃力を上げるマハタルカジャを自動で発動する。
この時、SPや類似する力の消費は発生しない。
スキル所持者が戦闘に参加していることが発生条件である。

【檜佐木修兵のバイク@BLEACH】
…ゼインが入手。
護廷十三隊9番隊副隊長檜佐木修兵が自腹で購入した現世のバイク。
カワサキのZ-2。

【フェザーサーキット@仮面ライダードライブ】
…ゼインが入手。
エンジェルロイミュードが開発した金色の羽。
植え付けたロイミュードに人間と同じ感情を与える。
だが実態は植え付けられると思考が徐々に停止状態へ陥り、エンジェルの言うことに何の疑問も持たない傀儡と化す。
最終的には平和に逆らう行為が不可能となり、戦闘もできなくなる。
またロイミュードだけでなく人間にも効果を発揮する模様。
本ロワでは幸福感を感じ、刺した対象の言う事を抵抗なく受け入れる傀儡と化す。
但し、精神の強さによっては自力で支配を跳ね除けられる可能性もある。


610 : 悲しみが終わる場所とはどこか ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 20:04:04 dV/MzLTg0
『NPC紹介』

【シアゴースト@仮面ライダー龍騎】
ヤゴの特性を備えたミラーモンスター。
口から種子を吐き出し人間に植え付ける他、粘着性の糸を絡ませる能力を持つ。
戦闘力はそれ程高くなく動きも緩慢だが、個体数が非常に多く集団戦法を取る。
本ロワでは原作及び劇場版での光景を再現し、大量数がエリア一つに設置された。

【レイドラグーン@仮面ライダー龍騎】
上記のシアゴーストの成長形態である、トンボの特性を備えたミラーモンスター。
両手首と足首の鉤爪や、鎌のような武器を使う。
ホバリング状態でじっくり獲物を見定め、接近し上空に連れ去ってしまう。

【デーボ・キャワイーン@獣電戦隊キョウリュウジャー】
親を奪われた子供は哀しむという考えから生み出されたデーボモンスター。
赤ちゃんと天使を合わせたような愛くるしい見た目で人間を虜にする能力で子を持つ親を子供と引き離し、自分だけを愛するように洗脳してしまう。
この形態だけでも手にしている「ヌケガラガラ」からのビームで攻撃できる。
一方で逆立ちすることで、「バッドキャワイーン」という悪魔のような本来の姿となり、凶悪な本性を現して愛用のムチ「キャワウィップ」で相手をしばき倒す。
また、地獄のキスで相手を強制的に洗脳する「強制キャワイーン」なる技を持つ。
可愛い子ぶってはいるが、その本性は家族の愛をぶち壊して悲しむ子供を嘲笑う陰湿かつ卑劣な性格。

【死神部隊@仮面ライダードライブ】
メディック直属の軍団として複数で行動するロイミュード。
強化改造能力によって戦闘力が強化されており、大鎌ヘルサイスや鉤爪といった武器を装備して戦う他、高速移動能力も兼ね備えている。

【ロイミュード051@仮面ライダードライブ】
バット型のプレーンロイミュード。
グローバルフリーズの夜に強盗事件を起こして以降金に執着し、度々同様の犯罪に手を染めた。
プロトドライブ時代のチェイスに一回、魔進チェイサーになってからも一回の計二回体を破壊されている。
進化態ではないがブレイクガンナーの銃撃を耐えるなど、戦闘能力は高い。タフって言葉は051の為にある。

【アラクネ@魔法少女ルナの災難】
森に住んでいるクモの魔物。
腹ペコの時に近付くと襲われることがある。
粘着力の高い糸で獲物を捕らえ、発情効果のある毒の口付けで弱らせてから持ち帰る。

【トードスーツオルフェノク@仮面ライダー555】
スマートブレインに所属する、毒キノコの能力を持つオルフェノク。
頭部の笠から毒胞子を撒き散らす他、接近戦では巨大な鉄棍を武器に使用する。


611 : ◆ytUSxp038U :2025/02/08(土) 20:04:25 dV/MzLTg0
投下終了です


612 : ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:23:11 EtfBAALk0
投下します


613 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:24:33 EtfBAALk0
  
 商業施設が立ち並ぶエリアは、既に生活できる世界ではなくなっていた。
 コンビニやスーパー、クリニックにジム。
 蘭子の住んでいた街にもあったようなありふれた様相は、無数に散らばる破壊跡とNPCモンスターの残骸で埋め尽くされていた。
 惨状の中心には、既に戦いを続ける二人の参加者。覇王十代と一ノ瀬宝太郎の姿がある。
 彼らの刃は互いにではなく、それぞれ怪物に向けられていた。

「何体いるんだよ!!このNPCモンスターってのは!!」
 年相応な青い苛立ちをこぼし場がらも宝太郎の――仮面ライダーガッチャ―ドの視線は目の前にいる見上げるほどに大きな機械の蛇に向いている。
 エクシードマイティに変身したガッチャ―ドは機械の蛇――サイバー・ドラゴンの体を踏み台に、仮面ライダークウガ譲りのフィジカルで高く飛び上がる。
 飛び上がるための踏み台にサイバー・ドラゴンの尾を利用したが、随分と硬い。
 材質は何なのか。そもそもこれは機械なのか生物なのか。錆丸先輩やミナト先生が知れば細かに気にしそうだが、今の宝太郎にそんなことを気にする余裕は無い。
 
「体は固いし一から砕く余裕もない!覇王が残ってるんだ!だったら!!」
『ケミーセット』
 上空に飛び上がりガッチャ―トルネードを構える。
 噛みつこうとしたのかあるいはレーザーでも放とうとしたのか。サイバー・ドラゴンは浮遊したガッチャ―ドめがけ大きく口を開き襲い掛かる。
 だが、ここに居る仮面ライダーガッチャ―ドは101体のケミーをフルガッチャした百戦錬磨の戦士。

「そう来るよね!」
『トルネードアロー!!』
 サイバー・ドラゴンが攻撃(バトルフェイズ)に入る時点で、ガッチャ―ドの攻撃は完了していた。
 ビルドのケミーカードを装填したガッチャ―トルネードが矢のようなエネルギーを三度撃ちだし、サイバー・ドラゴンの口内から入り込んだエネルギーがNPCの内部をズタズタに破壊していく。
 ガッチャ―ドが地面に着地する頃には、悲鳴ともエラー音とも取れる奇声をあげサイバー・ドラゴンは力なく倒れる。
 時間にして2分とかかっていない。数多のマルガムとの交戦を経た一ノ瀬宝太郎の熟達した強さにはある種の美しささえ感じられた。
 スタームルガーを構え物陰に隠れていた華鳥蘭子は、彼の戦いぶりを前に歓声をあげた。
 
「凄いですわ!!また倒しましたわね!」
「うん。でも……。」
 仮面越しにも分かる物々しい雰囲気に、蘭子の顔も険しいものになる。
 
「……」
 2人の視線の先。
 覇王と呼ばれる男の背後にはガッチャ―ドが倒したものと同じ、サイバー・ドラゴンの姿がある。
 だがその体は偽剣デインノモスにより滅多切りにされており、傷の節々からは切断された機械が破壊されたようにバチバチと火花を立てている。
 既にNPCモンスターとしての役目を果たせない様であることは、調べるまでもなく明らかだった。

 どしんと倒れるドラゴンには目もくれず。宝太郎と蘭子の視線に気づいた覇王は仮面でもつけているかのように冷たい表情で、眉一つ動かさず何かを取り出した。
 漆黒の鎧を纏う覇王の腕の中にあるのは、美しい装飾が施された銀色の竪琴だ。
 怪しげな魅力を持つ美術品として飾れても価値がありそうな竪琴を前に、宝太郎は不愉快そうに呻った。
 何せ、宝太郎が覇王ではなくサイバー・ドラゴンと――それを含むNPCモンスターと既に6度も戦わされている。
 その元凶こそこの竪琴だ。
 
 「お前!またモンスターを呼び出す気か!ズルいぞ!」
 「俺の手下という訳ではない。何より、戦場に卑怯も何もないだろうに。
 言っただろう。どんな手でも使うと。
 羂索らの殺し合いを壊すためになら、奴らからの支給品だろうと躊躇いなく使う。お前と同じだ。」
 
「ぐっ……」と言い返せない宝太郎をよそに、覇王の指が竪琴にかかる。
 ポロンポロンと覇王の手により穏やかながら底冷えするような冷たさを感じさせる音色が響く。
 偽剣デインノモスに次いで覇王に与えられた2つ目の支給品の名は、ぎんのたてごと。
 ガライという吟遊詩人が愛用した楽器にして、その音色は魔物を呼び寄せる。
 この会場においては、NPCモンスターを呼び寄せるための道具であるといえた。


614 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:25:32 EtfBAALk0

 「さて、次は何が来る。」
 デッキからカードを引く時のように、冷徹に声を響かせた。
 覇王十代には超融合のカードどころかデュエリストには必須ともいえるデッキが支給されていなかった。
 だがガットゥーゾを従えた経験から、NPCモンスターを活用することはデッキを補う戦力になりうると覇王は考えた。
 無論リスクは大きい。ぎんのたてごとで呼び出したモンスターは、演奏者をも襲う。
 覇王が切り捨てたサイバー・ドラゴンも、覇王十代に襲い掛かり返り討ちにあった結果があの無惨な骸である。
 その事実は逆説的に、覇王にとって凡百のNPCモンスターは敵ではないということを意味していた。
 
 「南さん!!気を付けて!どこから来るかわかんないから!」
 「は……はい。」
 ガッチャージガンを構え、周囲を警戒する宝太郎。
 蘭子をかばう様に覇王との斜線上に体を動かし、きょろきょろと周囲を警戒している。
 物陰からか?空からか?ひょっとして地面からか?
 過去闘ったマルガムのように、亜空間や影の中から姿を見せるかもしれない。
 警戒の中、宝太郎は戦いに巻き込まれないよう距離を取る華鳥蘭子を一瞥した。
 
(南さんを巻き込まないように……気を付けないと……)
 


(私は……何か役に立てているのかしら。)
 
 蘭子も彼に倣い、建物の影に背をつけながら警戒しつつスタームルガーの引き金に指を駆ける。
 見下ろすと、6発埋まっていたシリンダーの中に残る弾倉は2発だけ。
 何に撃ったのか、その銃弾は誰にどんな傷をつけたのか。
 蘭子は全く覚えていない。
 宝太郎の攻撃を当てるための威嚇程度の役に立てていればいいが、覚えていないということはそんな場面は無かったのだろう。
 
 凡百のNPCであれば敵ではないのはガッチャ―ドも同じだ。
 キッチンで話した時は快活で純粋な青年だと思っていた。年下ということもあって可愛い後輩のように見えたその姿が、戦場ではとても大きくて頼もしく見えた。
 あの恐ろしい覇王とだって正面から渡り合えそうな、そんな頼もしさと強さがあった。
 素人目には覇王と宝太郎に大きな実量差はない。戦いの洗練度でいえば宝太郎のほうが有利にさえ見えた。
 ぎんのたてごとさえ攻略すれば、充分に勝機はあるだろう。
 
 (ですが……)
 ぎんのたてごとを引くためには、片手で竪琴を構えもう片方の手で旋律を奏でる必要がある。
 つまり、覇王に勝つには竪琴を奏でる隙を与えない近接戦闘しかない。
 そしてその唯一ともいえるチャンスは、覇王が竪琴を奏でるその瞬間だ。
 当然そんなチャンスは宝太郎も気づいている。だが宝太郎はその隙を狙わず、覇王が悠然と隙を曝す。
 宝太郎は隙を狙わないのではない、狙えないのだ。
 他でもない、華鳥蘭子がここにいるから。
 
 竪琴を奏でる隙を狙い宝太郎が近づきすぎれば、宝太郎が守る前に竪琴により呼び出されたNPCに蘭子は殺される。
 だがその展開を嫌い蘭子が近づいたまま覇王と宝太郎が本格的に争えば、覇王は間違いなく蘭子を狙うだろう。
 あの恐ろしい存在感を放つ覇王なら、卑怯だと嘯くこともせずそうするだろうという確信があった。
 
 ちらりと覇王を見る。
 年は蘭子や宝太郎と変わらない。威圧的な漆黒の鎧を着ている以外はただの青年の姿。
 それなのに威圧感と存在感が、ただの人どころかNPCの怪物たちとも比べ物にならないほど濃く、重く、冷たい。
 仮面ライダーガッチャ―ドだって本気で挑まねば勝てない強敵だ。今の蘭子では戦いにさえならない。
 その足を引っ張ることしかできないことが悔しかった。
 
 嫌な閉塞感の中、蘭子はばっさばっさと巨大な羽が風を巻き上げる音が聞こえた。
 次のモンスターが来たのだ。
 次こそは私も宝太郎さんの力になりたい。
 祈るように視線を上げる蘭子の目に、その姿は映った。
 
「まぁ……。」
「ペガサス!?」

 羽ばたきの先にある光景はあまりに美しく。蘭子の頭から思考を吹き飛ばした。
 サファイアだろうか。青い宝石の角を持った天馬が偽りの陽光を浴びて力強く空を駆けていた。
 天馬は宝太郎と蘭子に困ったような視線を向けていたが、覇王の姿に眼を大きく見開いた。


615 : more&lt;STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:26:10 EtfBAALk0

「遊城十代!?その姿は!!」
「喋った!!!」「喋れますの!!?」 
「宝玉獣サファイア・ペガサス……。」
 
 遊城十代の竹馬の友、ヨハン・アンデルセンというデュエリストと絆を結んだカードの精霊。宝玉獣の一体であった。
 今までと同じ感情の読めない重苦しい言葉で、その名を呼んだ。
 覇王十代と顔見知りの天馬だが。蘭子と宝太郎には敵意や威圧感は感じられない。むしろ殺し合いとは思えぬほど、穏やかな存在に見えた。
 
「そうか……君もこの殺し合いに参加していたのだった。ヨハンがいないから安心していた。
 無事であることは嬉しいが。なぜ君が他の参加者を襲っている!
 どうしたというんだ!お前は本当はそんな奴ではないはずだ!」
「名簿を見ているのなら知っているだろう。俺は覇王十代。
 俺のことをどの程度知っているかは知らんが、もはや貴様の知る男ではないと知れ。」
「そうか、君が……。
 その口ぶり、君には覇王であったころまでの記憶しかないのだな。
 ならば聞け!お前は……」

 力強く羽ばたくペガサスの言葉。
 覇王十代にとって……遊城十代にとって意味を持つはずだった言葉は、噴き出す血の音で掻き消えた。
 自分を知る者の言葉に心は動かされず。覇王はデインノモスを振るう。
 
 「がっ……」
 「覇王を知るのなら分かるはずだ。
 貴様ごときの言葉で動く俺ではないと。
 まして貴様は羂索らが用意した贋作。戯言を抜かすくらいなら死ね。」
 
 偽者とはいえ見知った顔を相手にしたとは思えない。サイバー・ドラゴンを切るのと同じようにサファイア・ペガサスの巨大な羽を叩き切る。
 無数の羽が宙を舞う中、バランスを失ったサファイア・ペガサスは体制を崩して壁に突っ込み、撒きあがった粉塵が覇王の視界を閉ざした。
 煤けた砂埃にわずかに白い羽根が飛び散る様を、煩わしそうにマントで払いのける。
 開けた視界に飛び込んできたのは。

「お前!!!」
『ケミースラッシュ!!』

 ガッチャ―トルネードを振り下ろすガッチャ―ドの姿だった。
 デインノモスがフォーゼのカードを装填したガッチャ―トルネードとぶつかり合い、金属音が砕けた都市部にこだまする。
 甲高い音と火花飛び散る中、一ノ瀬宝太郎は叫んだ。

「なんで斬ったんだ!覇王!!」
 
 怒りに震えたようなガッチャ―ドの声色に、覇王はわずかに疑念を向ける。
 華鳥蘭子が気づいていた通り、宝太郎の勝機は竪琴による増援を封じる近接戦のみ。
 その勝機をつかむため、覇王がサファイア・ペガサスを切り捨てた隙を狙って攻撃したと覇王は思っていた。
 
 「なんでだよ!あいつはお前のことを知ってるんだろ!
 何か言いかけてたじゃないか!お前が無事で嬉しいって言ってたじゃないか!
 なんでそんな簡単に斬れるんだよ!!」
 「所詮は羂索らが用意したNPC。情の1つでも湧けとでも言うつもりか?」

 純粋な子供のような怒りをぶつけられ、覇王は自分の認識が誤りだと気づく。
 ガッチャ―ドの行動は、隙をついただとか勝機を狙ったとかそんな小賢しいものではない。
 一ノ瀬宝太郎は怒っていた。
 サファイア・ペガサスが何者なのかは分からない。
 彼が言ったヨハンという名前も知らないし。覇王十代が……遊城十代がどのような人物なのかも知らない。
 
 だがサファイア・ペガサスが言っていた言葉に、嘘はないのだということは感覚で分かる。
 覇王十代は、本来の遊城十代よりも”らしくない"存在で。
 本来の遊城十代を知る者にとっては、その覇道を止めるべきものであるのだと。
 だからサファイア・ペガサスは、NPCモンスターとして宝太郎や蘭子を襲うよりも早く十代に向けて飛び掛かったのだと。
 覇王十代は、その気持ちを踏みにじった。
 贋作のNPCとはいえ十代を思う言葉を継げようとしたペガサスの意思を、無慈悲な斬撃で否定した。
 それが一ノ瀬宝太郎には、許せなかった。
 あるいは、宝太郎は会話のできる幻獣でありただの怪物ではないあの天馬を、ホッパー1やニジゴンといったケミーと重ねていたのかもしれない。


616 : more&amp;lt;STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:27:41 EtfBAALk0

 「お前には失望した。仮面ライダーガッチャ―ド。
 参加者どころかNPCにさえ情を湧かせ、羂索や俺に向かって切った啖呵はどこにいった。」

 沸き上がる激情に駆られた宝太郎の刃が鋭さを増していくのに対し、覇王の心は急速に熱を失っていた。
 仮面ライダーガッチャ―ドは強い。
 赤き覇王には及ぶまいが、若さゆえの熱量を持ちながら戦いの経験は熟練だ。
 この殺し合いの中でも十分強者の域にいるだろう。
 あるいは殺し合いに積極的な者がこの力を有していたのならば――覇王の敗死という万が一が起きていた可能性も捨てきれなかっただろう。
 
 だが、その中にいる青年はあまりにも惰弱。それが覇王の下した評価だった。
 下らない戯言を語り。弱い女を見捨てられず。あまつさえNPCの戯言に耳を傾け感情を顕わにする。
 その生き様はまさに、覇王になる前の遊城十代を思わせる。
 覇王の在り方とは鏡合わせのように対極で、決して認められないものだ。
 
 振るわれるガッチャ―トルネードをデインノモスで正面から防ぎ、がら空きになった胴体を覇王は勢いよく蹴り飛ばす。
 ふいにぶつけられた一撃に宝太郎の体が大きく後退し、倒れそうな体を片膝でどうにか支えていた。
 変身を解除させるどころか大したダメージにもなっていないはずの攻撃が異様に重く感じられたのは覇王の力ゆえだろうか。

「貴様の強さは分かった。不相応な力を持っただけの子どもだということが。」
 近づいてくる覇王の足跡が、宝太郎にはやけに大きく聞こえた。
 ガッチャ―ドの前で足を止めると、そのまま胸倉をつかんで持ち上げる。
 その右手にはデインノモスでもぎんのたてごとでもない、小さなデバイスが握られていた。
 
「貴様がほざく夢物語は、仮面ライダーの力があってこそ。
     ・・・
 その力を失った後も同じセリフがほざけるか。見せて見ろ。」
「どういう……意味だ!」
 宝太郎の言葉には答えず。覇王は右手に持つ時計のようなデバイスを宝太郎に押し当てる。
 デバイスの名は――ブランクライドウォッチ。
 覇王最後の支給品にして。ライダーの歴史を歪め、贋りの王を生み出す最悪の力だ。

「あっ……がぁっ!!!」
 苦悶の声を上げる宝太郎から流れるエネルギーが、ウォッチに吸い寄せられ覇王の手中に収まっていく。
 ガッチャ―ドライバーにノイズがかかると思うと、暗い虹色のエネルギーとなって宝太郎の腰から消えていく。
 奔流が収まった後に残るのは、顔を歪める一ノ瀬宝太郎と禍々しい顔の描かれた時計のようなデバイス――アナザーガッチャ―ドウォッチ。
 変身の解けた宝太郎を覇王は雑に投げ捨てると、ウォッチを起動する。
 
 


 『ガッチャ―ド!!』
 不気味にくぐもった声が、その字(あざな)を告げた。
 


 
 「さて、仮面ライダーの力。どれほどのものか。
 お前で試してみるとしよう。」
 
 カードをドローするように掲げられた右手から、けばけばしい水色と橙のエネルギーが覇王の全身を覆い、姿を歪めていく。
 その姿はいうなれば、ミイラのような素体にガラクタの鎧を積み上げたバッタの怪人。
 髑髏のような顔立ちをした怪物が水色に変色した巨大なバッタの皮を頭からかぶり、胸から沸き上がる有害そうな水色と橙の煙がマフラーを思わせるようにたなびいている。
 どことなくその姿は、冥黒王によりマルガムにされたホッパー1にも似ていた。
 
 スチームホッパーがホッパー1とスチームライナーを正しく錬成した姿とするならば。
 その怪人は、蒸気を巻き上げる錬金術という科学が飛蝗を苦しめ殺すような。そんな歪な科学を形にしたように見えた。
 右足にはペンキで塗りたくったように『GOTCHARD』の文字が書かれ、反対側には4文字ほどの何か……本来ガッチャ―ドの歴史が書かれるはずの部分は深い漆黒で塗り潰されていた。

 運営が調整したのか覇王が力の簒奪のためだけに使用したからか、あるいは、この会場に関わる別の理由が存在するのか。
 歴史が刻まれない理由を知る者は参加者サイドでは誰もいない。そもそも仮面ライダージオウの関係者がいないのだから。
 だからマジェードやヴァルパラドも――参加者の黒鋼スパナは既に死亡しているが――残存しているし、支給されたガッチャ―ドの武器やケミーにも影響はない。
 
 ただただ、一ノ瀬宝太郎が変身能力を失い、覇王十代がその力を得た。それだけの事態であり。
 この一手で、この場における一ノ瀬宝太郎と華鳥蘭子の敗北が確定した。


617 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:29:29 EtfBAALk0

「今より俺が、仮面ライダーガッチャ―ドだ。」
 
 力を手にしたというのに、その言葉には高揚も興奮も愉悦も感嘆も何もない。
 今まで通りの冷たい声で覇王は――アナザーガッチャ―ドは名乗る。
 本来のスチームホッパー形態のガッチャ―ドと同じ力で地面に投げ出された生身の一ノ瀬宝太郎は、砂ぼこりでどろどろになった制服など意に返さず覇王を睨みつける。
 
「返せよ……。
 ガッチャ―ドの力は!仮面ライダーガッチャ―ドの字は!お前みたいなやつが語っていいものじゃない!!」
「なら取り返してみろ。
 お前にそれができるのならばな。」
 冥黒王を思わせる覇王の威圧感は、贋りのガッチャ―ドの力を経てより強く、より暗く。
 体が震え、呼吸が途切れる。気を抜けば気絶してしまいそうな空気の中、立ち上がった一ノ瀬宝太郎はガッチャージガンに指をかけた。

「変身は出来なくても。まだ武器は使える!」
 支給品であるガッチャ―トルネードやガッチャ―ジガンは、ガッチャ―ドの力の有無にかかわらず宝太郎の手元にある。
 消滅したガッチャ―ドライバーから吐き出されたクウガとファイズのケミーカードをスキャンして、両の指で構えて引き金を引いた。
 
『ガッチャージツインバスター!』
「これでもくらえ!!」
 矢印のようなエネルギー。威力はガッチャ―ドが使用した時と変わらぬ破壊力。
 アナザーガッチャ―ドであろうと当たれれば十分なダメージを生み出せるはず、そう信じて放った一撃だった。

「その気迫、その闘志。去勢という訳ではないようだ。」
 目の前の相手は改めて己の”敵”なのだと。ガッチャ―ドの力を失ってもなお折れぬ宝太郎を覇王は見定める。
 自分に迫りくる衝撃の前に悠然と手を掲げ。告げた。
 
「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』。」
 
 ガッチャージツインバスターのエネルギーが爆発を起こし、爆風が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
 もし覇王十代が生身で喰らっていればひとたまりもなかっただろう。
 勝利を確信した宝太郎だったが、爆風の収まった中で目にした光景に言葉を失う。
 
「……無傷って。」
「お前の敗因。それは女を守ることやNPCモンスターの排除に精を出したこと。
 そしてこの攻撃を、俺が変身する前に行わなかったことだ。」
 
 がらがらと崩れる銀色の壁のむこうから、アナザーガッチャ―ドは傷1つなくその姿を現し。どこか残念そうにつぶやいた。
 どこか見覚えのある銀色の壁の正体は、先に宝太郎が倒したNPCモンスター、サイバー・ドラゴン。
 その骸が捻じ曲げられたように強引に引き延ばされ、覇王を守ったのだ。
 こんな芸当ができるものを、一ノ瀬宝太郎は1つしか知らない。

「まさかそれは……錬金術!?
 なんでお前が!!」
「貴様が使える技だ。俺に仕えん道理はない。
 俺は仮面ライダーガッチャ―ドなのだから。」
 アナザーライダーは元のライダーと同様の能力を有する。
 アナザーウィザードが魔法を扱う様に。
 アナザーガッチャ―ドが錬金術を扱えることは、当然のことである。
 
 一ノ瀬宝太郎は理解する。
 今彼の目の前に立ちふさがるのは、もどきではあれ、贋物ではあれ、仮面ライダーガッチャ―ド。
 ケミーと人が錬成された、錬金術の戦士でありながら。
 ケミーとの共存も弱者の守護にも目を向けない。最悪の凶敵であると。

 絶望と喪失感に崩れ落ちそうになる中、義憤だけが一ノ瀬宝太郎を立ち上がらせる。
 ガッチャージガンの引き金を引いた。
 引き金を引いた。引き金を引いた。引き金を引いた。
 矢印のようなエネルギーがガッチャージガンの銃口から放たれ、その全てがサイバー・ドラゴンの骸を操る覇王の錬金術により防がれる。
 王の歩みを止めるには至らず、宝太郎の目前まで迫る覇王はデインノモスを抜いた。

 覇王にはこの光景が無様に見えただろうか。
 否、覇王は冷酷非情ではあるが、他者を嘲笑し侮るような人物ではない。
 もはやガッチャ―ドの力を失い、デインノモスを振り下ろすだけで命を切り捨てられる。
 そんな局面を前にしても、一ノ瀬宝太郎の眼は強く覇王を睨んでいる。


618 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:32:29 EtfBAALk0

「さらばだ。名も知らぬ仮面ライダーの残滓。」
 ここで殺しておく方が賢明だろう。
 一ノ瀬宝太郎という男には、覇王がそう思わせるだけの”何か”があった。
 既に趨勢は決した。一ノ瀬宝太郎に勝機はない。
 覇王はデインノモスを振り下ろす。一ノ瀬宝太郎の確実な死を見届けようと――
 
「させません!!」
 ぱぁん。と何かが響いた。
 覇王の肩にわずかな衝撃が走り、デインノモスを握る腕が握力を失う。
 落下する剣の音に2人が目を向けた先には、こちらに駆けるサファイア・ペガサスに乗りスタームルガーを構えた華鳥蘭子の姿があった。
 
「南さん!?」
「どういうつもりだ?」

 2人の意識が蘭子とペガサスに向けられる数秒間。2人の動きは止まる。
 その間にもサファイア・ペガサスは走り続け、すれ違いざまに一ノ瀬宝太郎の襟首を噛みつき引き上げると、そのまま翼を羽ばたかせて飛び上がる。
 覇王に受けた傷は生々しく跡が残っているが大きく回復しているように見える。
 華鳥蘭子が何かしたのは明白だが、それを考える暇はない。

「逃がすと思うか。」
「逃げてみせます!」

 覇王が錬金術で妨害するために手をかざす。
 華鳥蘭子が引き金を引くのは、それよりもずっと速かった。
 スタームルガーに装填された最後の弾丸は大きく弧を描き、覇王の右手に命中した。
 
「今です!ペガサスさん!」
 
 蘭子の声と共に、サファイア・ペガサスは大きく翼を羽ばたかせ飛び去った。
 アナザーガッチャ―ドの装甲において、蘭子の放った銃弾などかすり傷にもならない。
 それでも、妨害するための錬金術の起動を数秒遅らせることに成功し、次に覇王が視線を向けた時には宝太郎と蘭子の姿は何処にも見えない。
 
「有言実行か。この俺を出し抜くとはな。」
 逃げられたことへの憤慨も殺し損ねたことの落胆もなく、覇王はサファイア・ペガサスが倒れていた場所を調べる。
 サファイア・ペガサスによって壁面が壊され光の粒子が血痕のように残る中。覇王は散らばっていたカードを拾い上げる。
 それは、覇王が呼び出し一ノ瀬宝太郎が倒したNPCモンスターたちからのドロップ品であった。

「治療の神 ディアン・ケトにレッド・ポーション……。」
 その他何枚か魔法カードが残っていたが、その全てがライフ回復の効果を持つカードだ。
 拾い上げたカードには何かが抜け落ちたかのように何の力も感じない。
 使い切りなのか再使用まで時間がかかるのかは分からないが。どちらにしても誰かが既に使用しているということだ。
 誰が、何に使ったのか。それはもはや考えるまでもなかった。
 
「成程、ライフ回復の魔法カードでサファイア・ペガサスの傷を癒したのか。
 あの小娘。姿が見えないと思ったら、味な真似をする。」
 傷を負っていたはずのサファイア・ペガサスが飛べた理由は分かった。
 負傷した羽ではそう遠くには行けないはず。覇王はそう思っていたがどうやらそれでは認識が甘いようだ。
 
 「だが、その程度で逃げられるなどと、本気で思っていないだろうな。」
 再度、銀の竪琴を覇王は奏でる。
 サファイア・ペガサスで逃げた二人を追い込む理由は、覇王十代にはない。
 だが、だからといって逃がす理由はなおのことないのだ。
 竪琴に集められたモンスターはまたも頭上から現れた。
 覇王の目の前で5匹の黒い竜が駆動音のような咆哮をあげ襲い掛かる。
 
「サイバー・ドラゴンに宝玉獣。次いで貴様らか。当てつけのつもりか?
 ヘルカイザーのサイバー・ダーク。知らん顔もいるが大差ない。」
 空を飛び交い覇王に敵意を向けるは、裏サイバー流の怪物たち。
 サイバー・ダーク・ホーン。サイバー・ダーク・エッジ。サイバー・ダーク・キール。
 そしてその周囲を飛び交うは、十代が知らない裏サイバーのカード。
 サイバー・ダーク・カノンにサイバー・ダーク・クローだ。

「足になる者でもいればと思ったが。こうなれば『全員』利用してやった方が賢そうだな。」
 1体1体はともかく、5対1となれば並大抵の参加者ならてこずるであろう状況。 
 そんな状況を意にも返さず、覇王はただ静かに手をかざす。
 骨とも飛蝗の足とも取れるアナザーガッチャ―ドの鋭い指に、紫色の光が淡く輝いた。


619 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:33:41 EtfBAALk0
 
「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』。
 いや、この場合はこう言ったほうがより俺らしい。
 ――融合召喚。」
 手をかざした先で、覇王の意思に合わせ5体のサイバー・ダークががちゃがちゃと音を立てて捻じれ混ざり合う。
 かつて遊城十代と戦ったアムナエルという錬金術師は、十代を融合の天才であり高い錬金術の素質を持つと評価した。
 そのためアナザーガッチャ―ドの持つ錬金術の力を、あっさりと引き出し使いこなすことが出来たのだ。

 「……。」
 目の前で起こる変化。強大な力を持つ怪物の変成。
 その様を前にしても、アナザーガッチャ―ドの仮面の奥の覇王は笑わない。
 所詮はただのNPCであり、ただの足変わりだ。サファイア・ペガサスがそうだったように何の感慨も湧きはしない。
 だから冷たい眼を向ける覇王が考えていたことは、サイバー・ダークたちのことではなく。
 仮面ライダーの力を失ってもなお折れなかった少年と、何の力も持たないのにまんまと覇王から逃げおおせた少女のことだった。 

「あの二人。
 名前くらいは聞いておくべきだったな。」
 
 ◆◇◆◇◆

 覇王の姿が見えなくなり、ペガサスに襟首を噛まれてぶら下がっていた宝太郎はどうにか蘭子に引き上げられ、騎乗する。
 その顔は普段の宝太郎とはまるで違う、光が陰ったように昏く淀んだものだった。
 
「ごめん……南さん。
 俺がなんとかしなきゃいけなかったのに……」
 憔悴し、謝罪を繰り返す一ノ瀬宝太郎。
 その腰には元から何もなかったかのようにガッチャ―ドライバーが消え去っていた。
 
 九堂風雅から託された錬金術師としての希望の力も。
 ケミーと力を合わせて戦う、彼の夢の象徴も。
 華鳥蘭子のような戦えない人たちを守るための力も。
 そのすべてが覇王の持つ贋りの暴力へと簒奪された。

 親友であるケミー『ホッパー1』がマルガムに変えられた時と同じような苦しみが宝太郎の胸中を支配していた。
 片腕を失ったような喪失感、無力さを突き付けられた絶望。
 自分には何もできないのではないか。覇王の言う通り自分の理想はただの甘い戯言だったのではないか。
 
 そんならしくもない考えが頭によぎりそうになる宝太郎。
 蘭子はその肩にそっと手を置いき、語り掛ける。
 
「……大丈夫です。宝太郎さん。
 まだ、私達には戦えます。」
 
「何言って……」
 食って掛かろうとした宝太郎の目の前に、何枚かのカードとアイテムが差し出された。
 宝太郎のポケットから飛び出していた。クウガ、ファイズ、ダブル、オーズ、フォーゼ、ビルドのケミーたち。
 そして宝太郎の支給品である、ケミーの力を引き出すデバイス、ガッチャージガンとガッチャ―トルネード。

 「ケミーのみなさんはまだここにいますわ。
 共に戦うための力も、私達には残っているでしょう。」

 にこりと微笑む蘭子を前に、宝太郎も涙を拭ってカードを受け取る。
 元は宝太郎の盟友、鳳桜・カグヤ・クォーツが持つ並行世界のライダーのゴージャスな力。
 カードの中のケミーたちは宝太郎を励ますように、もしくは先輩として背中を押すようにブンブンと動きを見せていた。

 ――一ノ瀬宝太郎。お前の輝きはそんなものではないはずだ。
 この場にカグヤがいれば、そんなことを言うだろうな。
 涙を拭いながら、自信過剰でゴージャスな青年のそんな声が聞こえた気がした。


620 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:34:27 EtfBAALk0

「……ありがとう南さん。」
「お互い様です。
 宝太郎さんがいたからここまで私は生き延びられました。」
 
 そう答える蘭子の顔は、どこか申し訳なさそうに影が帯びていた。
 これまでの戦いを宝太郎に任せっきりにしていたこと。
 宝太郎はまったく気にしていなかった、むしろ蘭子のおかげで覇王から逃げられたことに礼を言いたいくらいだったのだが。
 華鳥蘭子はそうは思わなかったのだろう。

 「ですが……これからはもう少し私も頼ってくれませんか。」
 2つの武器を抱え、少女は仮面ライダーをまっすぐに見つめた。
 その言葉に、宝太郎を責めるような意図はなく。
 むしろ、自分を戒めるような。そんな強さを感じさせた。
 
 ――覚悟さえあれば、戦えないことはない!
 参加者全員を前に、羂索ははっきりそう言った。
 逆に言えば、戦えない今の自分には覚悟ができていなかったのではないだろうか。
 その甘さが宝太郎だけに戦いを強いて、ガッチャ―ドの力を奪われるという結果を生んだのではないか。

 ガッチャ―ドの力を失ったことに。宝太郎は蘭子に怒鳴られても仕方ないとさえ思っていたが。
 蘭子が怒りを向けていたのは、自分の無力さについてだった。
 
「分かった。」
 その言葉と共に宝太郎が蘭子の持つ武器のうち、ガッチャージガンだけを手に取った。
 ガッチャ―ドの武器を最もうまく扱えるのは、ケミーとの関係性を構築している宝太郎だろう。
 蘭子がスタームルガーを持っていたこともあって、武器を分けようということはしていなかった。
 だが、これからはそうも言ってられない。
 蘭子を戦場に立たせる歯がゆさはあるが。蘭子に背中を預けるという決断が宝太郎の選択を決めた。

「代わりにこのケミーたちをお願い。」
 差し出したクウガとファイズのケミーを、蘭子は宝物を扱う様に優しくポケットにしまい込んだ。
 一ノ瀬宝太郎はケミーをただの力としては見ていない。
 並行世界のライダーの力が、蘭子を守ってくれるという祈りを込めて。
 華鳥蘭子という人物が、ケミーと共に歩んでくれるという信頼を込めて。
 
 わずかなやり取りながら、その空気はやけに厳かで。
 互いにらしくもなく顔をこわばらせていたことに気づいて。渡し終えた2人は顔を見合わせクスリと笑った。
 
 「落ち着いたようだな。」

 足元から投げかけられた声に、宝太郎は「うわぁ!」と驚き倒れそうになる。
 穏やかな男性の声で語り掛けたのは、2人が乗る宝玉獣サファイア・ペガサスだ。
 覇王に羽を斬られたと思えば、蘭子を背に乗せ宝太郎たちを逃がしたNPCモンスター。
 遊戯王のカードではなく、カードに宿る精霊が元なので喋ることが出来るのだ。
 
「そういえばこのペガサスは?覇王に斬られてたんじゃ。」
「ドロップ品のカードで傷を癒してましたの。
 他のNPCモンスターの方々と違って、話ができるように見えましたので。」
 よくぞ尋ねてくれましたと、ふふんと自慢げに答える蘭子。
 覇王がサファイア・ペガサスを斬り捨て、粉塵が巻きあがったあの瞬間。
 宝太郎が覇王に突っ込むと同時に蘭子はサファイア・ペガサスに近づいていた。
 その後は覇王が推測した通り、ドロップした回復系魔法カードでペガサスに傷を癒し、代わりに自分たちを連れて逃げるように説得したのだ。
 蘭子の行動にサファイア・ペガサスは呆れ顔でため息をついた。

「全く、無茶をする。
 せっかくの回復アイテムだぞ。逃げるためとはいえ、私のようなNPCに使わなくても……」
「でもその甲斐はあったでしょう?あのままでは私たちは2人ともやられてました。
 それに、逃げるためだけに回復させたわけではありません。
 貴方には聞きたいことがあります。」

 首をかしげるサファイア・ペガサスに、蘭子は続けた。

「教えてくださいませんか?
 遊城十代という人物について。」
「……俺も気になってた。
 ペガサスは覇王を見て”お前はそんな奴ではない”って言ってたよね。」
「……そういうことか。
 君たちは遊城十代を、覇王としてしか知らないのだな。」
 
 一ノ瀬宝太郎と華鳥蘭子は、遊城十代という男を知らない。
 覇王の危険性、冷酷さを目の当たりにした2人にとって、遊城十代とは弱者を踏みにじり冷徹に事を成す男という印象が強い。
 サファイア・ペガサスが『そんな奴ではない』と口走った人間性も、もう一人の遊城十代についても、彼らは何も知らない。
 
 分からないけど恐ろしい奴。
 それだけで済ませていい相手だとは、2人には――特に、覇王に友の影を見た華鳥蘭子にはどうしても思えなかった。
 
「君たちには傷を治してもらった恩がある。
 語るのはやぶさかではないが、かなり長くなるぞ。」
「構いません。」
 そう答える蘭子と宝太郎に向けて、サファイア・ペガサスは語り始めた。


621 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:35:42 EtfBAALk0

 
「……というのが、私が知る遊城十代についてだ。」

 戦場を離れてとうに1時間は過ぎただろう。
 サファイア・ペガサスが語り終える頃には朝焼けだった太陽も随分上っているように見えた。

 食いるように聞いていた二人だったが、あまりにも常識外の情報が多く呑み込むためには時間がかかった。
 デュエルアカデミアのこと。カードの精霊のこと。三幻魔のこと。異世界のこと。ユベルのこと。
 たかがカードゲームで随分壮大だなとは思ったが、ワクワクさせられる話には違いなく。こんな殺伐とした場所でなければ感情的に盛り上がれたことだろうなと残念に思う。
 
 そして、遊城十代が覇王へと至ったその一部始終を宝太郎と蘭子は知った。
 流石に超融合のカードに関して事細かなことまでは知らないが、彼の断片的な話だけでも2人に衝撃を与えるには十分すぎた。
 長い話になってすまないなというサファイア・ペガサスの言葉を前に、少年少女は俯いていた。
 
 「そんなことが……」
 サファイア・ペガサスが語る本来の遊城十代の人格は、勝負事を楽しむ明るいもので。まるで一ノ瀬宝太郎のようだ。
 そんな彼が、あのような冷徹な人格になるほどの経験。戦い。そして絶望。
 異世界だとかカードの精霊だとか悪しき光の波動だとか、理解しきれていないことも少なくない。
 それでも、彼がそこまで変わってしまう経験をした。根っからの非道な人物でないことは理解できた。
 
 華鳥蘭子はその境遇に、自分が感じた覇王と東ゆうの重なりが、錯覚ではなかったと確信した。
 アイドルになることだけを意識し、周りや己を傷つけながら痛々しく歩み続けた東ゆう。
 孤独と怒りの中で闇に呑まれた十代の境遇は、アイドルとデュエルという違いこそあれ泣きたくなるほどよく似ている。
 くるみが限界を迎えた時にも、蘭子と美嘉にアイドルの楽しさを妄信するように語った彼女の痛々しい姿。
 彼女を前にした時の後悔によく似た思いが、砕けて散ったガラスが胸に刺さったように蘭子の心を駆け巡った。
 
「……それでも、俺は覇王を許せない。
 正直、カードゲームで人が消えるだとか、12の次元だとか。よく分からないことも多かったけどさ。
 覇王の力の使い方を決めたのはあいつ自身じゃないか。」
 一ノ瀬宝太郎は蘭子ほど覇王に同情は出来なかったし、彼への思いも同情や憐憫よりも義憤の方が勝っていた。
 ガッチャ―ドの力を奪われたことを抜きにしても、冥黒王やグリオンに似た行動を選んだ覇王としての十代は、認められる相手ではない。
 
「今の覇王は別にユベルってのに唆されてるわけでもない。
 自分の意思で他人を否定して弱いものを犠牲にして。力で全てを支配しようとしている。
 覇王になったことはあいつが望んだことじゃないにしても、間違った力の使い方をしているのなら。俺はあいつを認められない。
 あいつは強いけど……強いだけだ。」
 覇王十代は強い。
 生身でもNPCモンスターを悠々倒し、仮面ライダーと渡り合える人間がガッチャ―ドの力まで手にした。
 羂索らと戦うという言葉にも、嘘はないのだろう。

 だが彼は、羂索らを倒す気は合っても。参加者たちを救うつもりは欠片もない。
 殺し合いの舞台を否定しても、殺し合うこの惨状そのものは否定しない。
 その考えは、綺麗ごとでも誰も傷つかないで殺し合いを終わらせたい宝太郎たちの考えとは、どこまでも相容れないものだ。
 止められるものならその凶行を止めたい。
 
「どうすれば、彼を止められる?」
「止めたい?
 殺したいではなくてか?」
 当然のように投げかけられた言葉に、2人の空気は凍る。
 サファイア・ペガサスは失言だったと察し、ばつが悪そうに目を細めた。

「すまないな2人とも。
 何処まで行っても私はカードの精霊、宝玉獣サファイア・ペガサスを模したNPC。運営側だ。
 この殺し合いを肯定する立場にある。
 そんな奴の話でよければ、続けるが。」
「……大丈夫だよペガサス。
 ペガサスは俺たちを助けてくれただろ。信じられる。」

 「そうか。」
 どこか嬉しそうにサファイア・ペガサスは答える。
 わずかに緩んだ顔は背中の2人には見えなかったし、サファイア・ペガサス自身も気づかなかった。


622 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:36:36 EtfBAALk0
 
「今の彼は心の闇に捕らわれた状態だ。
 覇王は十代自身の力ではあるが、
 宝太郎の知る『マルガム』に近い、ケミーではなく十代本人の力であることを除けばだが。
 止める方法があるとすればその闇を晴らしてやるしかない。
 あの覇王が知っているかどうかは不明だが、覇王十代は一度そうやって敗けている。」
 十代が覇王となったことを知った彼の友。ジム・クロコダイル・クックとオースチン・オブライエン。
 彼らとのデュエルの末、凶行を成していた覇王十代の力は一時その姿を消した。
 孤独に溺れ力に支配された覇王の分厚い心の闇に、決死の覚悟で声をかけた友たちの、命がけの一撃で遊城十代は救われた。

 「その方法は、私達にはできないのでは。」
 蘭子が言った。苦しそうに顔をしかめる宝太郎も同じ思いだろう。
 彼の友の献身は、勇気は、何にも代えがたい素晴らしいものであるが。
 自分は覇王十代のことをそれほど強く思えない。
 仮に思ったとしても、その声はきっと覇王十代には届かない。
 
 「ああ、遊城十代を真に救いたいと思う。彼の友だからこそできたことだ。」
 責めるでもなく、その声は淡々と事実を告げていた。
 出会ったばかりの者たちを命がけで救えるものはいるかもしれないが。
 その思いを真に届けるには、何かしらの根拠が必要になる。
 時間でも、信頼でも、縁でもいい。逆にえばそれがない救いはどうしても浅くなる。
 よく知らない相手への浅いの救済が届くほど、心の闇は軽くない。

 宝太郎も蘭子も、この殺し合いに友達が巻き込まれている。
 だからこそ、友情の尊さも名も知らぬ覇王の友の強さも理解できた。
 だからこそ、覇王の友ではない自分には覇王を救うことも止めることもできないと理解できた。

 ――私は、友達だって救えなかったのに。

 特に、華鳥蘭子には痛いほど、理解できた。

「倒すにせよ。止めるにせよ。
 君たちは遊城十代に会うべきだ。
 殺すというなら話は別だが、君たちにそのつもりは無いだろう?」
 どこか意地悪そうに――あるいは、NPCモンスターとしての感性のズレを見えるように、サファイア・ペガサスはそう提案する。
 遊城十代を止めるために遊城十代を知る者が必要だというのなら。
 この殺し合いにおいてそれは、もう一人いる遊城十代しかありえない。
 サファイア・ペガサスにしても覇王十代はそのまま見過ごしたい相手ではなく、一ノ瀬宝太郎と華鳥蘭子にとってはなおさらだった。
 
「私の予想が正しければ、もう一人の遊城十代は覇王を経てユベルと1つになっている。3年生か、デュエルアカデミアを卒業した後の十代だ。
 そうでなければ参加者の記憶から生み出されたNPC(わたし)が、覇王が覇王でなくなった後のことなど知るはずもないからな。
 だから覇王を止めるなら彼を頼るのが最善だ。」
「ですがそれって……」
「当然、遊城十代自身も覇王の力も有している。
 既に話した通り、覇王というのは遊城十代自身の力で。消滅するようなものではないからな。
 だが、力を有しているだけでその力を凶行に使う人間では決してないよ。」
 覇王の力を持つ男。
 その事実だけで冷汗が垂れるが、サファイア・ペガサスは不安になるようなことはないと確信する口ぶりだった。

「彼を覇王にさせたのは友との決別と孤独だが。彼を覇王から救ったのも友の思いだ。
 彼は覇王の力を正しく使うことを知っている。
 自分の力に責任を持つことも。忘れてしまったものを取り戻す大切さも。
 自分の弱さと向き合うことも。絆の尊さも。全部な。」

 覇王しか知らない宝太郎と蘭子にとって、あまりにもイメージのつかない言葉の並びだ。
 その言葉を聞いたサファイア・ペガサスはどこか愉快そうに艶のある笑いをあげた。

「本来の十代はむしろ宝太郎、君によく似ている。
 君たちならきっと気が合うはずだ。」

 そうだろうか、一ノ瀬宝太郎は訝しんだ。
 そうだともと頷くサファイア・ペガサスが、蘭子にはとても嬉しそうに見えた。


623 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:37:19 EtfBAALk0


「追いついたぞ。」
 
 逃避行を続け遊城十代をさがる宝太郎と蘭子。
 彼らの平穏を脅かす、威圧的な声が空から響いた。
 視線を上空に向けた宝太郎の蘭子の前には、兵器のようなカノン砲を取り付けた黒鉄の竜の姿があった。
 5体のサイバー・ダークの融合体、鎧獄竜-サイバー・ダークネス・ドラゴン。
 サファイア・ペガサスの数倍の体躯を誇る巨竜にのる覇王と目が合い、2人がペガサスに全速力で走るよう頼み込む声が重なった。

「都市部に紛れて攪乱する!振り落とされるなよ!!」
「それでいい!お願いペガサス!!」
 宝太郎の号令に合わせ、サファイア・ペガサスが飛翔する。
 覇王の乗るサイバー・ダークネス・ドラゴンは巨大だ。高度も速度も負けているペガサスが逃げる手段は限られる。
 彼らはいつしか都市部の随分南に来ている。すぐ目の前にはスタジアムがその存在感を遺憾なく発揮し、その周囲の光景に宝太郎と蘭子は眉をひそめた。

「何があったらこんなことに……」
 スタジアムへと近づくにつれ強くなる、鉄の匂いと腐臭にえづきそう。
 バラバラになった人間……ザギによって虐殺されたNPCの極道たちの猟奇死体が、赤いカーペットとなってスタジアムへと続いていた。
 覇王とはまた異なる、ストレートな残虐性。
 ろくでもない存在が近くにいる。そう思ったのは2人だけでなく覇王も同じだった。
 
「なかなか目立ちたがりがいるようだが……せいぜい利用させてもらおう。」
 猟奇性を分析するように眺めて、ぎんのたてごとをかき鳴らす。
 ぎんのたてごとはNPCモンスターを呼び寄せる。
 無論この場においては、この近隣をなわばりにしている極道たちが集まることになるが、今回はそれだけではない。

 飛翔するサファイア・ペガサスの真下の地面で、ちらばった肉や骨がぐちゅぐちゅと音を立てて集まり動いた。
 極道たちの死体は流れ出る血こそ固まっていたが、バラバラになったものから頭部以外は残っているものまでその状態は千差万別。
 その肉が、その骨が、NPCモンスターを呼び寄せる竪琴の力で集い形を成していく。

「おい龍(ドラゴン)がいっぞ!高揚(かっけ)ぇなぁ!」
「黒い鎧(アーマー)つけてるガキがいるぜ、厨二病(ししゅんき)かぁ!?だが恐怖(おっか)ねぇ・・・。」
「あっちには天馬(ペガサス)だぜぇ。夢物語(ファンタジー)でも始まったのかぁ!!」
「おいその天馬(ペガサス)に乗ってる姉ちゃん!美麗(マブ)いねぇ〜、乱交(あそ)んでかない?」
 
 ざわざわと騒ぐ外連味のある言葉遣い。
 覇王のような恐怖感とはまた別の、関わってはいけない生々しい嫌な予感が2人の若人を青ざめさせた。
 その言葉は、飛翔するサファイア・ペガサスの足元にある。骸の散らばる血だまりから聞こえてきた。
 
 NPCモンスターというものは、ゾンビのような者たちだって含まれる。
 首なしの死体がそのまま起き上がり、むき出しになった骨が寄り集まり。ひき肉になった者たちがずるずるはい回り人型に固まっていく。

 正確な名前を言うなら、がいこつ、あるいはくさったしたい。そう呼ばれるモンスターたち。
 そうとも知らない宝太郎たちは、嫌悪と共に彼らを極道ゾンビと名付けた。
 知性があるのかないのか叫びながら頭上を飛ぶペガサスを睨む……うち数体は明らかに蘭子に下卑た視線を向けていた。

「いいかぁテメエら。さっきみてえに瞬殺(デオチ)かますわけにはいかねえ!
 今度こそ麻薬(ヤク)キメろ!!」
「おう!」
「……思ったんだが、死んでからも麻薬(ヤク)って効能(キ)くのか?」
「知るかよ!とにかくキメろ!」
 
「ねえ宝太郎さん。あの方たちはさっきから何を言っていますの???」
「分かんないけど。分かんないほうがいい奴だと思う!」
 何を言っているのか分からないが、ロクでもないことだけはわかる会話を続けながら。ゾンビたちは宝太郎たちを取り囲むように集まってくる。
 飛翔するサファイア・ペガサスをつかもうと肩車をしたり、拳銃を投げつけるものまでいた。
 
 上空を飛んでいるサイバー・ダークネス・ドラゴンやその上にいる覇王十代の威圧感には近づきたくないのだろう。
 サファイア・ペガサスも飛んでいるとはいえその高度は2mを大きくは超えない。 
 スタジアムを避けて街中に逃げ込むことは、もはや不可能だ。
 万が一捕まっては、宝太郎と蘭子は嬲り殺しにされてしまうだろう。


624 : more<STRONGLY/2023:我が為のアルケミスト ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:37:54 EtfBAALk0

「宝太郎!蘭子!サイバー・ドラゴンたちからドロップしていたカードを使え!
 最高速度でスタジアムに突っ込む!そこでこいつらを撒くんだ!」
 
 ”最悪”を想定したサファイア・ペガサスの行動は早かった。
 言われるがままカードを取り出した2人だが、起動するのにわずかな躊躇いがあった。
 サファイア・ペガサスの言う通りにカードを使った場合、サファイア・ペガサスは死亡する。
 NPCだという理屈は分かっていても、使い捨てにする選択にはどうしても躊躇いがあったが。
 その行動をせかしたのは他でもない、サファイア・ペガサスだった。

「宝太郎にも言ったはずだ!私たちはあくまでNPC!
 皆を守るためにも、友との再会のためにも!君たちは生きねばならない!違うか!」
「……違わない!」「……違いません!」
 逡巡の末、少年少女は天馬の問いに答え。サイバー・ドラゴンからドロップし秘密裏に蘭子が回収していた魔法カードを起動した。
 
「永続魔法!機械仕掛の夜-クロック・ワーク・ナイト-!」
 蘭子の発動したカードがフィールド全体に適用される。
 足元で蠢く極道ゾンビたちの体がブリキや鉄を思わせる色合いに変化していき、「なんだぁ!俺らの体が機械(ロボ)になってんぞぉ!?」と知能の低い叫びをあげていた。
 その効果は、フィールド上のモンスター全てを機械族に変更し、自分フィールドのモンスターは攻撃力500アップ、相手フィールドは500ダウンという効果だ。
 その効果はサファイア・ペガサスにも適用されている。
 純白の天馬の姿は宝石でコーティングされたような堅固なものへと変化していく。

「速攻魔法発動!リミッター解除!!」
 間髪入れずに宝太郎が取り出した、速攻魔法。
 クロック・ワーク・ナイトの効果で機械族となっていたサファイア・ペガサスの速度が急速に上昇し、鋭い刃のように研がれた翼がびゅんと風を切って進む。
 リミッター解除の効果を受けたモンスターの攻撃力は、倍になる。
 クロック・ワーク・ナイトの上昇値を含め、今のサファイアペガサスの攻撃力は通常の2.5倍を超えていた。

 攻撃力が上がるということ。
 それはつまり大地をかける筋力の上昇であり
 風を切る翼の強度の上昇であり。
 駆け抜ける速度の上昇であり。

「うおぉぉぉ!!!!」
 咆哮と共に自動ドアのガラスを突き破り、ガラスの雪が降る中2人の本物と1匹の贋作がスタジアムに突入する。
 その光景を、一ノ瀬宝太郎と華鳥蘭子は忘れる事は無いだろう。
 それは一匹の贋作が見せる、最高の輝きであった。


625 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:38:57 EtfBAALk0
◆◇◆◇◆
 
 臓物と脳漿に染まるスタジアムの中を、邪樹右龍とマジアサルファが稲妻のごとく飛び交う。
 2人が狙いスタジアム前で極道を鏖殺した鬼人ザギは高笑いと共に駆け回る。
 心臓に悪刀を差したザギもまた、活性化された体の残滓に稲妻宿していた。

「ちっ、ちょこまかとぉ!!」
 サルファの両腕は既に少女の細腕でなく、黄色の炎を帯で縛ったような右龍をも超える巨腕だ。
 上空を飛びながら二階の観客機を駆けまわるザギを捕らえ、拳を叩きこむ。
 並の大人であれば一撃で全身骨折は免れないだろう一撃を前に、ザギはパーティー会場にいる子供のように笑ったかと思えば、大きく飛び上がる。
「ちいっ!!」
 舌打ちと共に空を切ったサルファのパンチが、椅子を3脚ほど纏めて粉みじんに砕く。
 べきべきと響く不快な音に顔を歪ませるサルファを見て、ザギはパチパチと手を叩きじっとりとした笑みを向けた。
 
「速いじゃないか。
 女と侮っていた訳ではないが、期待以上にイイぞサルファ!」
「アンタに褒められてもちーっとも嬉しないんやけど!」
 ストレスをぶつけるように飛び掛かり殴りこむサルファの拳が先ほどより大きく熱く燃え上がり、点火したブースターのように加速する。
 ミサイルを思わせる魔法少女の拳を前に、血のように赤い双剣でザギは斜めに衝撃を会与え拳をそらす。
 殴る、反らす、後退。壁や椅子の残骸を生み出しながら、攻防は続けられる。
 鐚で活性化されたザギの身体(フィジカル)は、サルファのそれを凌駕していた。
 
「だが足りねえなぁ!  ・・
 サルファ!お前の拳には殺意が足りねえ!
 もっとだ!もっとアガる戦いをしようぜぇ!」
「お前を気持ちよくするために闘っとるんちゃうねん気色悪い!!!」
 弾き合った衝突のリコイルで互いに大きく後退しながらも。ザギは期待外れだと言いたげに叫ぶ。
 サルファにしてみれば理解できない理屈ばかり並べられ辟易する。
 もはやザギの言葉を正面から受け取るだけ時間と脳の無駄だろう。
 高揚と嫌悪、落胆と憤怒。相反する感情をむき出しにしながら空中に吹き飛ばされていた暗殺者と魔法少女の足は地面を捉える。
 
 「おいおいおい、そういう言い回しじゃ女受(モテ)ねえぜ!」
 その動作の間にも、邪樹右龍は動いていた。
 着地の瞬間の隙を曝したコンマ数秒、ザギの首をめがけて手刀を襲撃(カマ)す。
 忍手、暗刃。
 それはサルファの”倒すための拳”とは異なる、”殺すための技巧(スキル)”。
 言葉よりも早く防御に動いたザギだったが、刀で防ぐには間に合わず。魔導器(ブラスティア)での防御に徹する。
 ザギの魔導器はザギの無茶苦茶な戦闘にも耐えうる程度には頑強だ。
 
 「良い気迫だ。
 だが、素手で俺に傷をつけられると思っているのか?」
 素手で向かってくる相手に対し、疑問半分挑発半分でザギは問う。
 右龍は返事もせずにっと白い歯を向けながら、指先を一点に集約させた手刀を魔導器にぶつけ。
 瞬間、バチリとした音がザギの耳に届いた。
 なんだ今の音は。
 そう頭を働かせるよりも早く、ザギの全身に稲妻が迸った。
 右龍の特異体質、常人の数万倍の骨密度が生み出す圧電の稲妻。
 常人ならば全身丸焦げになってもおかしくない技を受けて、ザギはニタリと歪んだ笑みを右龍に向けた。
 
「感電(しびれ)たか?」
「興奮(しびれ)たぜぇウリュウ!
 当たったのが魔導器(ブラスティア)じゃなけりゃあ、死んでたかもなぁ。」
 掛け値なしの強者の存在。
 ザギという男にとって、これ以上の喜びはない。
 スパナや陽介と出会えた時も悪くはなかったが、このウリュウという男への期待はそれを上回る。
 腕の魔導器(ブラスティア)にしていなければ、鐚を使用していなければ。今の攻防で勝敗は決していたかもしれない。

 追撃を避けるため距離をとりつつ、ザギは見定めるように二人を視界に捉え呟く。
 マジアサルファと邪樹右龍。
 その闘志、戦闘力、ともに申し分のない強敵だ。
 強者との戦闘を生きがいとするザギにとって、食い逃した黒鋼スパナや花村陽介のことを考えてもおつりがくる。
 しかも彼らとは違い、こちらを明確に倒しに来ている。
 邂逅した時の名乗り――100%ブッ殺すと決めた相手には堂々名乗る裏礼儀(マナー)。
 ザギはその本質を知らぬまでも、スパナや陽介のように簡単に逃げる相手ではないことは肌感覚で理解していた。


626 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:41:02 EtfBAALk0

 (さて……どう動くか。)
 痺れるような闘志を前に、ザギは考える。
 おそらく現在の戦闘能力は、ウリュウとほぼ互角。サルファには一歩勝るが楽観視できるほどの差ではない。
 ウリュウの手刀もサルファの拳も、正面から喰らっては大ダメージは避けられない。
 そんな二人が連携(く)んでいる以上、この場を楽しむためには鐚による増強(ドーピング)のみでは不足だ。
 敗けるつもりも毛頭ないが、もっと楽しめる何かがあるような気がしてならない。
ザギの本能が、何かを見逃しているような気持の悪さをプッシュしていた。

 互いに様子を探り合っている最中、突如としてザギの左腕が赤く光る。
 黒鋼スパナや花村陽介との戦いでも発生した、磨導器の暴走だ。
 おそらく右龍の暗刃を受けたことで、魔導器が良くないかかり方をしてしまったのだろう。

「いいぞ魔導器!なんども俺様の足を引っ張ってくれたが!今はそれでいい!!」
 普段のザギならば、魔導器風情が己の邪魔をしたことに激怒して撤退したことだろう。
 魔導器の暴走はザギ程度で制御できるものではない――普段ならば。
 
 血でも流れているかのように赤く輝く魔導器。
 その異様な動きに警戒をしていた右龍とサルファにザギは魔導器を向けた。
 鐚による肉体活性により、筋力も耐久力も反応速度も増大している今のザギならば。
 魔導器の暴走は”制御困難”ではあれ、”制御不能”なレベルではなく。

 「お前たちならこの程度でくたばったりはしないよなぁ!」
 赤く光る魔導器から放たれる火球は、空ではなく忍者と魔法少女に向けられた。
 とっさにサルファがバリアを展開し火球そのものは弾かれたが、火球と煙が消えた先にはザギの姿は見えない。

 逃走した? 右龍とサルファの頭に真っ先によぎるのはその可能性だ。
 ザギは未だ戦闘不能には程遠い。
 ここで逃がしては他の参加者に危害が及ぶ。
 2人の思考が追跡に切り替わろうとした時だ。
 
「「うわあああああああ!!!」」
 
 若々しい叫び声がスタジアム中に響き渡った。
 叫び声の主は若干機械化しているペガサスに乗ってスタジアムの1階に突っ込んでくる。
 ペガサスに乗った学生服の少女――華鳥蘭子。
 そして同じくローブのような水色の制服に身を包む少年――一ノ瀬宝太郎。
 何かから逃げるようにスタジアムの奥へと走る若い二人。
「「「「待てゴラァァァァ!!!!」」」」
 その背後から極道のような叫び声が、くぐもった声で響いている。
 どたどたと足音を立てて入り込む極道は、明らかに骨がむき出しになった死体だったし、その体は一部分が機械化していた。

 何が起きたのか右龍とサルファには分からないが。
 ろくでもない事態に巻き込まれていることは、考えるまでもなく明らかだった。
 
「混沌(カオス)なことになってんなぁオイ!」
「何がどうなったらそんな事態になんねん!!」
 状況が分からず叫ぶ二人だったが、大量の極道ゾンビに追われる二人を無視はできず。行方知れずのザギを放置して忍者と魔法少女は一階へと飛び降りた。
 
「あの極道(ザコ)どもは・・・」
 端から事態を見下ろすザギはその姿に何かを思い出し、下の階へと駆け出した。
 
 ◆◇◆◇◆

 スタジアムの内部は乾き始めていた血液に彩られ、鉄のような死臭に満ちていた。
 だが、目と耳に入る不快感に華鳥蘭子と一ノ瀬宝太郎は反応する余裕はない。
 2人をスタジアムの中央まで運んだサファイア・ペガサスだったが、羽の端からひびが入り飛行を続けられず地面に倒れこむ。
 消えゆく羽でどうにかバランスを保ち、蘭子と宝太郎を地面に着地させると安堵したような笑顔を2人に向けた。
 
 「頑張れよ、2人とも。」
 贋作の精霊は最後にそう言い残し、粉々に砕けて消えた。

「ペガサス!!」
「ペガサスさん!!」
 叫んでも答える声はなく。代わりのように巨大なサファイアが2人の足元に生み出された。
 リミッター解除の効果を受けたモンスターはそのエンドフェイズに破壊される。
 宝玉獣サファイア・ペガサスが破壊されて、砕けたサファイアの宝石だけが後に残った。

「……でも、ここで止まっている場合じゃないよね。」
「……そうね。」
 自分のために動いてくれたNPCが消滅する光景は堪えるが、それでも進まねばならない。
 それがバトルロワイヤルだ。
 決意を胸に、宝太郎たちはスタジアムの奥に向けて走り出す。
 クロック・ワーク・ナイトの効果で攻撃力が下がっているしサファイア・ペガサスの献身で大きく引き剝がせはしたが、振り返ると数人のゾンビがスタジアム内部に入り込み始めていた。


627 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:42:16 EtfBAALk0

 「「「「待てゴラァァァァ!!!!」」」」
 ザギが虐殺し、覇王の持つぎんのたてごとにより復活し、クロック・ワーク・ナイトの効果で機械化したがいこつやくさったしたいたち。
 元が極道である彼らの威圧的な叫びがスタジアム内に響きわたる。
 ガッチャ―ドであれば鎧袖一触で蹴散らせたであろう存在だが、ない物ねだりをしても仕方がない。
 
 サファイア・ペガサスのおかげで距離はある。
 2人は顔を見合わせ、ガッチャ―ジガンとガッチャ―トルネードをスタジアムの入り口に向かって構えた。
 距離があるうちに最大火力でゾンビたちを焼き払い、その間に逃げる。可能なら殺し合いに乗っていない他の参加者と合流する。
 そう考えてケミーをスキャンしようとしたその時、声は上から響いた。
 
「そこの2人!今すぐ跳躍(ジャンプ)しろ!!」
 力強い男の声だが、2人に対する敵意のような物は一切感じない。
 どこか急かすような、それでいて安心感を与えるような声に。宝太郎と蘭子は思いっきり跳躍する。
 飛び上がった距離は変身もしていないので50㎝を大きくは超えなかったが、最高到達点に達すると同時に誰かが宝太郎と蘭子の腕を上から掴んだ。
 両足が地面から引きはがされた2人が見上げると、金色の髪をしたフリフリの服の少女が、にっこりと満足げに微笑みかけていた。

「えっ……と。貴方はいったい。」
「あー、自己紹介はちょっと待ってくれんか?」
 金色の少女――マジアサルファは微笑みかけると、地面にいる長髪の青年に向けて叫ぶ。
 
「オッサン!こっちはOKや!
 ・・・・・・・・・・・・・
 アンタの巻き添えにはならん!」
「了解(りょ)だぜ薫子っち!」
 親指を上にあげて合図を送った屈強な青年は、どこから現れたのか入り込んだ極道ゾンビたちの前に立ちふさがるように構え、右腕の手刀を地面に叩きこむ。
 スタジアム内部は、ザギの残虐行為によって血だまりが無数に生じている。
 そして、血液というのは、――電気をよく通すものである。
 
「暗刃 不死身の電撃漢!」
 右龍の暗刃により生じた膨大な電気が、無数の血だまりを伝って極道ゾンビたちに襲い掛かる。
 バチリバチリと上空に逃げた宝太郎や蘭子にも目視できるレベルで地面に電撃が迸る。
 もし右龍の言葉に反応せずサルファが自分たちを掴んでいなければ、あの電流の巻き添えになっていたことだろう。
 
 目視できるほどの電撃だ。
 クロック・ワーク・ナイトにより機械化した極道ゾンビたちには、これ以上なく覿面に効いた。
 目に見える範囲のゾンビが、そしておそらくスタジアムの入り口付近に控えていたゾンビたちも含めて、右龍の暗刃を受け内部からぶっ壊れて2度目の死を迎えた。
 
 ◆◇◆◇◆

 簡単な自己紹介を済ませ、4人はスタジアムの中央で顔を見合わせた。
 右龍・サルファは、全員の前で羂索に食って掛かった仮面ライダーガッチャ―ドこと一ノ瀬宝太郎は信頼できる側だと知っている事から。
 宝太郎・蘭子は右龍の暗刃が2人を巻き込まなかったことから。互いに信用できる相手だと判断したため話はスムーズだった。

「つまり状況を整理すると。スタジアムの中にはザギっていうNPC虐殺しおったクソヤバ男がおる。
 外には覇王十代っていういかにも力で全部を支配しようって言う魔王みたいなことほざいとるアホが来た。っていうことでええか?」
「まあ、大体そんな感じだと思う。」
 サルファが簡潔にまとめた状態に、4人は顔を見合わせる。
 今後のために右龍とサルファとしてはザギをブッ殺しておきたいが、覇王はただでさえ厄介なうえに仮面ライダーガッチャ―ドの力を奪っているのだという。
 こうなっては下手に戦闘を続けても、余計な被害が出るだけだ。
 それは右龍もサルファも望むところではない。
 
「オッサン。」
「ああ、こうなっちゃ仕方ねえが。最優先はここ脱出(で)ることになるな。
 ザギをブッ殺せても宝太郎と蘭子の嬢ちゃんが敗死(くたば)っちまったら何の意味もねえ。
 俺と薫子っちで覇王とザギを抑え込みながら、どうにか……」
 「何言ってるんだよ。俺だって戦うよ!!」
 自分たちを戦力外だという前提で話を進められていることに気づいたのだろう。
 サルファと右龍の会話に食って掛かるように入った宝太郎だが、その反応は渋い。
 今の一ノ瀬宝太郎は仮面ライダーガッチャ―ドではない。
 戦力としては華鳥蘭子に毛が生えた程度のものでしかないのだ。


628 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:44:21 EtfBAALk0
 
 「気持ちは分かるで。
 でも宝太郎は仮面ライダーガッチャ―ドには変身(な)れへんのやろ?
 言っちゃ悪いけど起動キーの類もない以上、雑魚はともかくザギや覇王相手に2人を戦力として扱うんは難しいと思うけど……」
 「……これは使えませんか?」
 3人が向いた先で、蘭子は焼け焦げた極道ゾンビの懐から紙の束を取り出した。
 大部分は右龍の電撃により燃え尽きていたが、一部残った紙は焦げているわけでもないのに墨に浸したように黒く染まっていた。
 
「さっきのゾンビさんたちがしきりに「麻薬(ヤク)をキメる」と言っていたのは恐らくこれでしょう。
 もしかしたら人間を強化する効果があるのかも……」
「地獄への回数券(ヘルズクーポン)。
 あの極道どもからの回収(ドロップ)……。
 確かに使えないことはないが、立場(メンツ)としてはなぁ……」
 難しそうに顔を歪める右龍は、唯一この場でその効果を知っている。
 極道の使う麻薬(ヤク)の効能(あじ)など、いたいけな青少年に教えたくはないのだが、背に腹は代えられないと効果を説明する。
 
 地獄への回数券。忍者の天敵である極道が有する紙製の麻薬。
 1切れ服用することで体を活性化させ、身体能力や再生力を極限(カンスト)まで引き上げる。
 その効果は実に鼠が羆を殺せるほど。
 その説明を聞いて宝太郎の目が輝く。
 無力だと思っていた自分に活路が見えたような、そんな気がした。

「じゃあこれを使えば俺たちも戦えるって事じゃん!」
「仮にも麻薬(ヤク)だぜ。副作用(デメリット)や依存性(リスク)の類は不明だしよ。」
 気が咎めるという本音をさらけ出しつつも、積極的に反対する要素が右龍にはなかった。
 この麻薬の力は身をもって知っている。
 右龍の知る時間軸で帝都8忍が3人も敗北(くたば)ったのは、この麻薬で強化された極道の手によるものだからだ。
 結局、宝太郎と蘭子は一切れずつ地獄への回数券をちぎりとった。
 その光景を苦々しく見つめながらも、右龍が思い出したように念押しする。

 「まあ、持っていてもいいしここぞって時に使うのはいいが。使うのは絶対(ぜってー)に1枚だけにしろよ!」
 「なんで?2枚3枚まとめて使ったほうが強くなるんじゃ……」
 宝太郎の疑問はある意味当然だろう。
 だがこの麻薬の2枚服用(ギメ)にはリスクがある。
 
「俺の弟弟子からの話だが、2枚服用した奴はバケモンじみた強さ(フィジカル)を持つらしい。
 目がコーラみてえにどす黒くなるが、砲弾より早く動き頑強さも反応速度も段違いに跳ね上がる。
 その代わりに……5分で力尽きる。らしいぜ。」
「力尽きるって……。」
 言葉を選んでくれたのだろうと、生死をかけた環境に疎い3人は思う。
 1枚で鼠を羆並みに強くできる薬を2枚使う過剰服用(オーバードーズ)。
 その行為は、命の前借に他ならない。
 
 「……それだけの対価を払って、ほんの一瞬強くなって。何の意味があるのでしょう。」
 ぽつりと、蘭子が問いかける。
 右龍もサルファも宝太郎も。その問いには答えられない。
 命を守るために闘う者たちは、命を捨ててでも強くなる理由に、語る言葉を持たなかった。

 
 誰も答えられない質問を受け、静寂に包まれたスタジアム。
 その静寂を破ったのは、空から降り注ぐ咆哮だった。
 
「ギシャァァァァ!!!!」
 
 スタジアムの上空、開けた天井に映る青空が陰りだす。
 上から入り込んだ巨大な黒龍――鎧獄竜-サイバー・ダークネス・ドラゴンが地面まで迫ると、その長い尾を4人めがけて叩きこむ。
 爆発したような暴風がスタジアムの中央に巻き起こり、とっさに近くにいた相手を――右龍は蘭子を、サルファは宝太郎をかばい、左右逆方向に吹き飛ばされる。
 サイバー・ダークネス・ドラゴンもまた地面に降り周囲を警戒するように叫ぶと、その背から黒い鎧を纏った青年が覇気を纏って飛び降りた。
 壁を背中に打ち付けたサルファが近づく影を見つけ。
 誰だか予測はつくと睨みつけながら立ち上がった。


629 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:45:14 EtfBAALk0
 
「……アンタが覇王か?」
 宝太郎を抱えながら、立ち上がり問いかけるサルファ。
 覇王は宝太郎の姿を見つけ、「なるほど」と何かを察したように冷たい眼をサルファに向けた。
 
「そうだ。
 その男と行動を共にしているということは、既に俺のことは聞いているのだろう。」
「せやな、力で何でもかんでも支配しようとしてる。アホやってな。
 その鎧はなんや?似おとらんで自分。」
 軽口をはたきながらも、サルファの額には冷汗が垂れていた。
 ザギのような目に見える狂気とはまた違う。
 鬼方カヨコが見せた無機質な異様さとも微妙に異なる。
 揺れ動くものなどないような、分厚く冷たい黒い闇。それが形を成したような威圧感と存在感。
 見た目は自分より年上くらい。宝太郎や蘭子と変わらない年だろうに、一体何があればあんな冷たい眼が出来るのか。

「お前も俺に従う気はないようだな。」
「答えるまでもあらへんわ。」
「そうか。なら問答は不要。」
 覇王はその手にアナザーガッチャ―ドウォッチと偽剣デインノモスを構え、サルファと宝太郎に向ける。
 淡々と、機械的のように無感情に進む会話が、覇王の不気味さを際立たせていた。
 
「覇王。返してもらうぞ、ガッチャ―ドの力!」 
 サルファの隣で一ノ瀬宝太郎もまた立ち上がり、ふらつく頭でガッチャ―トルネードを構えようとしている。
 その目元にはヒビが入ったような模様が浮かび、地獄への回数券を服用していることを示していた。
 逃げろと伝えようとしたサルファだが、既にやる気になっている宝太郎を止めることは出来ないなと言葉を下げる。
 自分が逆の立場なら、這ってでも戦場に立とうとしただろう。

「いくで、宝太郎!」
「ああ、サルファ!!」
「雰囲気が変わったか。小僧。
 返してほしくば力づくで取り戻して見せろ。」
 
『ガッチャ―ド!!』
 アナザーガッチャ―ドウォッチより字が告げられ、覇王十代の体は贋りの仮面ライダー。アナザーガッチャ―ドへと変貌を遂げる。
 ただでさえ禍々しかった覇王の存在感が、錬成されたかのように一層鋭く、冷たくなる様を肌で感じ。
 自分を奮い立たせるように、サルファの魔力がバチリと音を立てて迸った。



「大丈夫か。蘭子っち。」
「ええ……おかげさまで助かりました。右龍さん。」
 サルファと宝太郎とは逆方向に吹き飛ばされた2人だが、右龍が庇ったことで壁に叩きつけられることなく、蘭子は怪我もなく立ちあがる。
 中央に視線を向けると、サイバー・ダークネス・ドラゴンが蘭子と右龍に視線を向けて、威嚇するように吼えた。
 右龍を警戒しているのか、スタジアムの中央から動かない。
 そのせいでドラゴンよりむこう側の景色は、随分隠れてしまっていたが。
 ドラゴンよりむこうからは、バチバチと響く音や破壊音が、断続的に聞こえてきていた。

「あの機龍(ドラゴン)が、覇王が乗ってたって奴か?」
「そうです。
 覇王の姿がないところ見ると覇王は宝太郎さんとサルファさんの方に向かったのでしょうか。」
「聞こえる音の感じ戦闘中(やりあって)るな!
 だったらすぐに合流して討伐(フクロ)だぜ!
 蘭子っちも何があるか分かんねえ!俺から離れるなよ!」
「はい!」
 駆けだした右龍に対し、蘭子はためらいなく地獄への回数券を舌にのせる。
 足に、目に、腕に、体に。閉じていた回路が開かれたようにエネルギーが流れ込み。右龍に振り落とされない速度で走る自分が、別人になったかのようだ。
 エナジードリンクを飲み続けると寿命が削れるとは言うが、この活性化度合いはその比ではないだろう。
 その様子に複雑そうな表情ながら、右龍は達人(ベテラン)として行動を指示していく。
 
「蘭子っちは回避(よけ)ることに全力だ!
 瞬殺(ソク)でこの機龍(デカブツ)始末して、覇王のところに……」

 蘭子が答えるよりも早く、2人の背後から声が届いた。
 
「待てよウリュウ。」
 
 腹の底から響く声に、右龍と蘭子の意識が引き戻される。
 奇抜な髪色に血のように赤い双刀。
 左腕に取り付けられた機械の義手がアラートのように赤く発光し続け、その心臓部には黄金の苦無が稲妻を纏い輝いていた。
 スタジアムを血だまりに変えた狂人、ザギだとすぐにわかった。
 だがと、蘭子は1つ全く聞いていない情報に気づく。
              ・・・・・・・・・・・・・・
 ザギという男の眼は、あんな墨で潰したようにどす黒いものだったのか?
 
「オイちょっと待てよ。なんだその眼はよぉ」

 蘭子の疑問に反応するように右龍が質問を投げかける。
 その困惑した表情が面白かったのか、愉快そうに大きく口を開けて答えた。
 大きく開けた口内に、黒い紙片が2枚重なった舌が見えた。
 
 ――ザギはすでに、地獄への回数券を 2枚服用(キメ)ていた。


630 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:46:37 EtfBAALk0

「何、雑魚どもから奪った麻薬(ヤク)とやらを使っただけだ!
 こいつはいい……腕を魔導器(ブラスティア)に変えた時、そして胸にこの刀を差した時。
 それ以上に力が沸き上がるのを感じるぜぇ!」
「こんの、戦闘狂(イカレ)野郎!!」
「良いぞ!その顔だ……。
 さっきまではあったわずかな余裕が消え去ったなウリュウ!
 サルファも呼んで来い!2人まとめてぶっ殺してやる!」
 
 警戒心を強め手刀を構える右龍を見て、ザギもまた双剣を構える。
 ただそれだけの動作が、蘭子には酷く歪に思えた。
 喜怒哀楽全てがごたまぜになったような。心の中の大事な何かが壊れてしまっているような。
 ケタケタと嗤い、殺意をむき出しにした初対面の男が、なぜだかどこか儚げに見えて。

「どうして、そのような真似をしたのですか。」
 気が付くと、華鳥蘭子は尋ねていた。
 その様子に、ザギは初めて蘭子の存在に気づいたように首を傾げた。

「どういう意味だ女。
 出来ると思ったから。出来たからやった。それだけだが?」
「私も1枚服用したので分かります。この麻薬を2つ併用するなど自殺行為!
 貴方もそんなことは分かるでしょう!」
「だろうな。1枚服用(キメ)た時点で肉体も精神も極限に活性化されたことは分かる。
            ・・
 魔導器の体ならまだしも生身なら過剰な強化は10分と持たねえだろうな。」
 どこか含みのあるいい回しに、華鳥蘭子は青ざめる。
 数分で死ぬリスクのある超強化を、分かったうえでやっていた。
 
「強くなるためには、そこまでしなければいけなかったのですか?」
 5分間の制限時間を削るための時間稼ぎ――ということなど考えてはいなかった。
 覇王十代の過去を聞いたときから、胸に刺さった棘のような何か。
 あるいはもっと前、東西南北が解散したときの、アイドルへの執念を持ち続けた東ゆうの姿を見た時の。後悔に似た思い。
 
 自分を削り、命を削り、存在を削り。
 それでもなお何かを追い続ける様を、華鳥蘭子は知っている。
 それは一ノ瀬宝太郎が理想を願って困難な道を歩むことと、似てるようでどこまでも遠い。
 何かを求め続けたものは、それ以外をないがしろにして壊れていく。
 東ゆうがアイドルになるために邁進し、誰も笑顔に出来なくなっていたように。
 遊城十代が仲間を失ってもなお進み続け、覇王へと落ちたように。

 今のザギからは、そんな者たちと似た痛々しさがあった。
 そんな存在を知っているから、問わずにはいられなかった。
 
「ああそうだ!必要ならあったとも!
 ユーリ・ローウェルを殺すためなら!俺は何処までも強くなる!強くなれる!
 腕だってそのために魔導器に変えた!
 あいつのためだ、あいつのせいだ!
 そのためなら体を魔導器に変えようと、命をかけようと惜しくはねえ!!」
 回答になっているようで何も答えていない。そんな答えをザギは嬉々として返した。
 ただ分かることは、ザギの妄執の正体はユーリ・ローウェルという人物だということだが。蘭子にも右龍にもまるで心当たりがない名前だ。
 
「ユーリ・ローウェル……そんな名前の方は名簿には……」
「いなくともいい!!
 この場にいるあまねく者を殺しつくし!ユーリに突き付ける。
 お前がいなかったからこいつらは死んだ!奴はきっと怒り、憎み!俺を見る!!
 その上で奴を殺す!そのための選択だ。そのための行動だ!」
 
 それはただの八つ当たりではないのか?
 自分の感情とは思えないほど、黒く醜い何かがそう口をつきそうになる。
 知らない誰かへの見せしめのために殺されることも理解できないし、虐殺の理由にさせられるユーリという人物には心底同情する。
 あるいは、ザギをそこまで狂わせられるほど、ユーリ・ローウェルという男は”輝いて”いたのだろうか。
 ユーリ・ローウェルを殺すためなら。体だって捨てられる。命だってかけられる。
 それがザギの答え。


631 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:47:42 EtfBAALk0

「それが貴方の……心の闇。ですか。」
「心の闇。か。
 なかなかいい表現だ。気に入ったぞ。
 ああそうだ!ユーリを思うこの心が闇だというのならば!俺はその闇さえも喰らい尽くそう!」
 
 蘭子の口から出た言葉に、ザギは一瞬目を丸くして、にたりと凶悪な笑みを浮かべた。
 どこか満足そうにも見えたその笑みは、ユーリを追うこと以外の幸福を全て捨て去っているような。そんな物悲しさが垣間見えて。
 
 ――アイドルって大勢の人たちを笑顔に出来るんだよ?こんなすてきな職業無いよ!
 
 狂気的に眼を見開いたザギの顔が、一瞬だけ別れた友人と重なった。
 一途に、狂気的に、1つの光を追うその姿は。宝太郎や覇王とはまた違った形で華鳥蘭子に東ゆうを思い出させる。

 彼女は今、何をしているのだろうか。
 命がかかった只中ながら、ふとそんなことを思う。
 一ノ瀬宝太郎が彼女と同じように、純粋な夢を追うものだとすれば。
 覇王が彼女と同じように、困難を前に傷ついてしまったものだとすれば。
 ザギの姿はまるで、純粋で孤独な道を歩み続け、戻れなくなってしまった果てのようだった。

 「さて質問はもういいか。
 もう限界だ!!そろそろお楽しみに入ろうぜウリュウ!」
 我慢の限界だったのだろう。
 思いっきり足を折り曲げザギが飛び掛かる、その視線の先には右龍がいた。
「こんの……!!」
 罵倒と共に突っ込んだザギの刃を、割って入った右龍の手刀が受け止める。
 ザギがさっきまでいた場所は、全力でとびっかかったことにより地面が爆発したように爆ぜ、2人がぶつかり合うと同時にやっと爆発音がスタジアム内にこだました。

「なんですか……いまの。」
「一瞬の距離とはいえ、音速(おと)より早く動きやがったのかこいつ!」
 目の前で起こる唾競り合いに反射的に身をひるがえしつつ。今の光景に震えが走った。
 地獄への回数券を服用し常人を遥かに上回る動体視力を得た蘭子だったが、ザギの動きはまるで見えなかった。
 一瞬の攻防でド素人の蘭子にも、ザギの身体能力は右龍のそれを数段上回っていると分かる。 
 ザギがその気になれば、路傍の小石を蹴飛ばすように蘭子の命を奪えるのだろうと、確信できる。

「オラァ!!」
 右龍と唾競り合いながら、ザギは空中で体を大きくねじり脇腹をめがけて蹴り飛ばす。
 右龍の体がダイナマイトでも爆発したかのような爆音と共に吹き飛ばされ、その巨体が野球ボールのように地面に投げ出され数回跳ねた。
 
 「スゲェ!これが麻薬(ヤク)の・・・
 いや、魔導器に鐚に、その全てを扱いこなす今の俺の力だ!!!!!」
 「右龍さん!!」
 想像以上の力に高揚感を隠せないザギを無視して、蘭子は右龍の元に駆ける。
 
「大丈夫だ。無傷(ノーダメ)ってわけには……いかねえが。
 それよりもだ、蘭子っち。俺から1つ忠言(つた)えとくぜ。」
 脇腹に焼け焦げたような傷を残しながらも、蘭子に気づいた右龍は苦悶の表情さえ見せない。
 がっしりと大木のように安心感のある立ち上がりを見せると、蘭子に視線を落とした。


632 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:48:34 EtfBAALk0

「アイツはもう、取り返しのつかないところまで来ちまってる。
 何があったのかは知らねえが、ユーリとかいう野郎を殺すことしか残ってねえ。
 ユーリを殺すためなら、奴は文字通り何でもするだろうよ。
 空だって飛んじまいそうだ。
 それがアイツが選んだことなのか、なっちまったことなのかは部外者(トザマ)の俺らが言えるもんじゃねえ。」
「そう……ですよね。」
 「だからまあ、1つ指導(い)えることはな。
 蘭子っちがどんな選択をしようと、ザギのようにはならねえし。
 ――アンタのダチもそうはならねえ。」
 
 想定していなかった言葉に「え?」と蘭子は顔を上げた。
 東ゆうのことは邪樹右龍に話してはいない。
 それでも、蘭子の内心など見透かしているように、右龍は白い歯を見せて微笑みかける。
 
「感(き)づいてねえと思ったか?アンタはずっとザギと話しながら別の誰かを想起(み)てた。
 これでもホストやってっからよぉ。女性(レディ)の苦悩(なやみ)くらい美顔(ツラ)みりゃ分かる。
 ザギを見て思い出すような、自分を見失い捻じ曲げそうになった馬鹿野郎(ダチ)でもいるんじゃねえのか?」
 思い出す顔は、もはや言うまでもない。
 華鳥蘭子最初の友人で、彼女の人生に色を与えてくれた少女。

「何故そう言い切れるのですか。」
「おっ、否定しなかったな。」
 悪戯っぽい笑みを浮かべた相手に、こくりと頷く蘭子。
 
「ならその答えは決まってる。アンタらの運がいいから。だな。
 蘭子っちたちは心が捻曲がる前に、引っ張り出せる友人(ダチ)に出会えた。
 ……そうじゃなかった奴らを見てきたばかりだからな。その尊(すご)さも身に染みてる。」

 殺し合いに来る前に闘った、子供(ガキ)の殺し屋。割れた子供達(グラスチルドレン)。
 その実態は人を殺さないと生きていけない。そう”なってしまった”子どもたちの集まりだった。
 悲惨な境遇から殺人以外の生き方を失い、ブッ殺して否定しなきゃ正気を保てない存在だった。
 彼らの今の在り方に共感することは決してないが、理解をすることはできるのだ。
 
 父が死に、その遺産目当てで家族が殺し合った冬の夜。
 邪樹右龍とその兄は、自分たちを殺そうと迫る叔父を殺す寸前だった。
 あの時にもう一人の父が間に合っていなければ、殺人(ヒトゴロシ)として捻じ曲がった人生を歩んでいたかもしれない。
 ザギもきっとそうだったのだろう。ユーリを追う事しかできない、捻じ曲がった人生を歩んだ果てが、体を改造(いじく)ってでも人を殺す生き様だ。

 捻じ曲がり、凶行に走らないことだけが偉く正しいと、少なくとも右龍には言えない。
『もっと辛い人生でも真っ当に生きている人はいる。』などということは、運がよかった奴の戯言だ。
 取り返しのつかなくなる前に”何か”に出会えた、そんな運がいい奴らの戯言だ。

 右龍とザギの。あるいは、東ゆうとザギの明確な違いは。
 その”何か”と出会えたこと。
 ユーリを追うことに囚われるなとザギに言ってくれる相手は、きっと一人もいなかったのだろう。

「友人に出会えた……。」
「俺も、覇王も、ザギも、蘭子っちのダチも。多分他のやつらも。
 平和で安寧だけじゃすまない。辛く苦しくて、どうしようもねえ不条理(コト)に世界は満ちているし。自分を狂(イカ)れさせる何かを見ちまうこともある。
 それを理由に悪事(わるさ)かますのなら、俺はそいつをブッ殺さなきゃならねえ。
 だが、そんな糞みてえな運命にも立ち向かう。自分を狂(イカ)れさせるだけじゃない何かが隣にある。それに以上の幸運はねえ。
 考えてもみろよ、そいつには蘭子っちっていうこんな死地(ころしあい)に巻き込まれても、思ってくれるようなダチがいるんだぜ。
 そういうヤツなら、捻じ曲がらずに胸張って自分の人生を生きてけるんだ。」
 
 今までの自分を肯定してくれるような。強くて優しい言葉に、蘭子の目頭が熱くなる。
 サファイア・ペガサスから聞いた、覇王十代を助けるために奮闘した彼の友のことを蘭子は思い出す。
 彼らを立派だと思った。とても強い人たちだと思った。
 自分は、そんな存在になれていないと思っていた。

 アイドルとしての自分は、彼女の期待に応えられなかった。
 覚悟もなく信念もなく。熱意を持った少女の隣にはいられなかった。
 東ゆうが傷つくさまも。
 大河くるみが苦しむさまも。
 亀井美嘉が悲しむさまも。
 東西南北(ほし)が分かたれるその時まで、止めることも諫めることもできなかった。
 悔いのある別れになってしまったことが、ずっと心に刺さっていた。


633 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:50:58 EtfBAALk0

「彼女たちも、この殺し合いに巻き込まれています。
 微力でも、無茶苦茶でも。彼女たちを助けられる私でいたい。」
 最悪に近い別れ方をした。
 それでも自分は彼女たちの友達でいたい。
 右龍が幸運と言ってくれた出会いをした、かけがえのない3人の星(とも)を思う。
 
 胸を張って彼女たちに会いたい。
 もし道を違えそうなら、止めてあげたい。
 ――そのために、強くなりたい。

 覇王となった十代は、友人たちの命がけの戦いで元に戻ったという。
 敗ければ死ぬかもしれないデュエルを挑み。相打ちとなってでも闇に落ちた友人(とも)をとりもどした。
 彼の友人(ダチ)もきっと、このような心境だったのだろう。
 自分でも彼らのように強くなれるのなら――これほど嬉しいことはない。
 
「右龍さん。
 ザギさんのこと、お任せしても大丈夫でしょうか。
 お恥ずかしい話ですが、私がいても確実に足手まといですし。」 
「巻き込まねえで戦うつもりだが・・・。
 覇王の方に加勢(い)くのか?
 サルファも強靭(つえ)え。麻薬(ヤク)を決めたとはいえ無理に戦うことはねえんじゃねえのか?」
 
 立ち上がった蘭子は、 ザギに背を向ける。右龍に背を預ける。
 右龍の言葉は最もだが、蘭子ははっきりと首を横に振った。
 羂索は言った。覚悟さえあれば、戦えないことはないと。
 その覚悟は、華鳥蘭子には、もう覚悟はできていた。

「私、思い出しました。
 ”誰かに喜びを与えられる人になりたい”。そう思うきっかけをくれたのも大切な友達からでした。
 胸を張って彼女たちに会うために、闘争(い)くんです。」

 東ゆうと出会い、アイドルやボランティアを続けていく中で見つけられた。彼女の夢。
 隣で戦う錬金術師(あいぼう)さえ笑顔に出来ずに。そんな夢がかなうことはないだろう。
 忍者も、魔法少女も、錬金術師も戦っている中。1人逃げるだけの女が、光ることなどないのだろうと。
 呆れたようにも誇らしげにも見える表情で、右龍は「そうかい。」と蘭子の背を押した。
 地獄への回数券でひびが生じている目元でも、その眼は綺麗に煌めいていた。

「そうか。なら俺に制止(とめ)る権利はねえわな。
 ただ、これだけは約束してくれ。
 ――絶対(ぜってー)死ぬなよ。
 ザギも覇王もぶっ飛ばして、全員無事にここを脱出(で)る! 宝太郎も、サルファも、揃ってな。」
「はい!」

 強く答え、闘争に赴く少女を見送りだす。その背中はこのわずかな間に大きくなったように見えた。
 ただのド素人を戦いに送り出し、あまつさえその背を押すような真似をして。
 こりゃ後でお兄ちゃんに大目玉(セッキョウ)だなぁと、からからと笑って背後を睨む。
 待ちわびたように刃を研ぐザギの姿が、そこにあった。


634 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:51:54 EtfBAALk0

「なんだ?待機(ま)っててくれたのか?」
「俺とのお楽しみを邪魔する女がいなくなるならそれでいい。雑魚の血を浴びても萎えるだけだ。」
 
 ザギとて、雑魚との戦いは己を萎えさせるだけだ。
 右龍のような手練れと本気でやり逢えるのならば、わずかに待つなど些事だ。

 ――時間なら、まだまだたっぷりあるのだから。
 
「さて、邪魔な女も消えたことだし、1つ教えてやるぜウリュウ!
 お前は俺が5分で力尽きると言ったが
 ――俺がこの麻薬(ヤク)をキメてから、とっくに5分経ってるぜぇ!!!」
「……んなこったろうと思ったよ。」

 既に右龍の身体能力を凌駕している。
 唯一の欠点の時間制限だが、既に超過しており。地獄への回数券のデメリットをザギは完全に打ち消していた。
 絶望的なニュースだが、右龍はなぜだか納得できていた。
 当然の話だ、ユーリ・ローウェルとの戦いに全てを注ぐような男が、ユーリのいない場で無計画に命をかけたりはしないだろう。
 寿命を延長できる勝算(ギミック)あってこその無茶だということは、当然の帰結だ。

 先に答えを言ってしまうと。その理由はザギの胸に刺さった悪刀『鐚』によるものだ。
 地獄への回数券と酷似したその刀だが。その本質は強化ではなく活性化。
 使用者を死なせない。死ぬことすら許さない刀。
 2枚服用(ギメ)をして5分でザギは1度死ねたはずの救済(すくい)も、鐚はそれさえ許さない。
 
 その正体は右龍には分からないが、絡繰りがあることは一目瞭然。
 どちらにせよ、首を飛ばせば鐚だろうと地獄への回数券だろうと生命を維持することは出来ない。
 
「大方その左腕か苦無だろ!
 どっちかぶっ壊すか首落としてブッ殺す!それだけだ!」
「言ったはずだぞウリュウ。俺はこんなところで死ぬ気はねえと!
 お前も、サルファも!スパナも陽介もこの場にいる全員も!俺が殺してやるよ!!」 
 示し合わせたかのように達人たちは飛び上がり、目に見えぬ速さで刃を振るう。
 ゴングもなく、観客もなく、ルールさえないデスマッチ。
 そこでしか生きられぬ悪魔を前に、雷鳴纏う龍は腹を括った。
 


 ずっと考えていたことがある。
 
 華鳥蘭子に支給されていたソードスキル。
 その存在を蘭子は一ノ瀬宝太郎に言っていなかった。
 その理由は酷くシンプル。
 相性が宝太郎と最悪に近いほど悪いためだ。
 
 「ギシャァァァァ!!!」
 
 スタジアムを分断するサイバー・ダークネス・ドラゴンは接近する蘭子を見て吠える。
 華鳥蘭子が覇王たちの戦いに参加するには、こいつを乗り越える必要がある。
 その体はただでさえ人間を乗せられるほど巨大なサイバー・ダークが5体合体しているのだ。避けるのは不可能に近いほど大きい。
 ガッチャ―トルネードで武装し地獄への回数券で強化しているとはいえ、宝太郎やザギのように戦いなれた人物ならまだしも喧嘩もろくにしたことがない蘭子では、それだけで勝てるほど甘い相手ではない。

「やるしか……ないわよね。」
 ソードスキルを使うしかない。
 居たたまれない思いと共に、ポケットに収まったケミーカードたちを取り出した。
 
「ごめんなさい。きっと負担をかけてしまうけれど……」
 蘭子の問いかけに、カードの中の赤いクワガタはブンブンと羽ばたき、赤いガラケーはピポポと静かな音を立てた。
 ただそれだけだったのに、クワガタはサムズアップをしてくれたように見え、ガラケーは「気にすんな」と言ってくれたように見えるのは、蘭子の気のせいだろうか。
 
 蘭子をロックオンしたサイバー・ダークネス・ドラゴンは、その尾をしならせ背中にある砲身を蘭子に向ける。
 敵意に震えそうになる足を抑え、蘭子は己のソードスキルを起動した。

 ――呪術高専京都校の教師が持つ術式 単独禁区(ソロソロキンク)。
 自分を含む周囲の呪力を底上げする能力であり、ソードスキルと化したことで呪力を除いたエネルギーも上昇させることが可能となっている。
 だがその真価は、呪霊がいない世界に育ち呪力を持たないはずの蘭子にでも、術式使用中は”呪力を得られる”点にある。

 蘭子の体を黒い墨で縁取られたような青いオーラが包み込む。
 これが呪力なのだと、感覚で理解させられたが。異変はすぐに起きた。
 ポケットの中に納まっていたクウガケミーとファイズケミー。
 彼らがカードから出てきたかと思うと、蘭子が纏う呪力の流れにすっぽりと収まったのだ。


635 : more<STRONGLY/ケモノミチ ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:52:52 EtfBAALk0

 「……やっぱり、こうなると思いました。」
 己の呪力に捕らわれるケミーを見て。自分の懸念が当たっていたとは奥歯を噛み締める。
 
 こうなった原因は呪力の性質にある。
 呪力とは、人間の負の感情が生み出すエネルギーだ。
 怒りや悲しみといった悪感情から生まれるそれは、ケミーをマルガムに変える悪意と非常に近い。
 そして呪力のコントロールとは、非常に難しいものだ。
 わずかな感情で呪力を生み出すトレーニングなど蘭子は積んでおらず、必然単独禁区により溢れ出る呪力は最大出力で駄々洩れになる。
 仮に真人やレジィ・スターが同じことをしてもこのような結果は生まないだろう。蛇口の栓を全開にしているような未熟な行いだ。

 溢れ出る負の感情――悪意にケミーをぶつけたらどうなるか。
 その結果はケミーの掟にある、『ケミーを悪意に触れさせてはならない』という一文が全てを示している。
 ソードスキル:単独禁区は、これ以上なくケミーと相性が悪いスキルであったのだ。
 
「ごめんなさい。でも今は、私に力を貸してください!
 私に!戦うための力を。みんなに喜びを与えられる力を!貸してください!!」
 
 クウガケミーとファイズケミーは、顔を見合わせたように頷き、抵抗せずに取り込まれていく。
 蘭子がケミーを悪用するような人間ではないと知っているからか。
 それとも、仮面ライダーの力の現身として、蘭子の心に応えようとしているのか。
 ケミーとの会話が出来ない蘭子には知りようがないが。
 ケミー2体から流れ込んでくる力は、とても力強く、温かい。夢と冒険の香りがした。

 すっぽりとケミーたちが胸に収まり、蘭子の周囲に溢れる呪力が装甲を生み出すように渦を巻いた。
 銀色のミイラのように変化した呪力のベールは、その全体に赤いラインが差し込まれている。
 頭部から生えた金色の角と赤い瞳、そして赤い装甲は確かにカードに映る仮面ライダークウガに酷似していたが。
 肩に止まった巨大な赤いクワガタは銀色の帯で縛られているような、マルガムらしい歪な印象を与えていた。
 そのところどころに走る赤色のラインと銀色のプロテクターが、ファイズの意匠を残していた。

 その怪人の名を名付けるならば。
 ――クウガマルガム ファイズミクスタス  といったところだろう。

「ありがとうございます。クワガタちゃん。ケータイちゃん。
――クウガさん。ファイズさん。」
 姿を変えた蘭子へと、サイバー・ダークネス・ドラゴンは動いた。
 牙をいからせ蘭子に突撃し、背中の砲弾は赤色のエネルギーのチャージを開始してる。
 蘭子の変貌に異様なものを感じ取ったのか、取るに足らないと思った小娘の強さを本能で認識したのか。
 
 迫りくるドラゴンを前に、クウガマルガムの右足に流れる赤いラインが光る。
 まるで蘭子の中のケミーが、どうすればいいか教えてくれるようであった。
 大きく息を吸い、呼吸を整えて左足で飛び上がる。
 地獄への回数券で強化された肉体に、2体のレジェンドライダーの力を得てた蘭子の体は自分の身長以上に飛び上がる。

 「はあああああああ!!!!!」
 どこか気の抜ける掛け声とともに放たれた右足のキックは、炎にも緋色のエネルギーにも見える呪力のを噴き出しながらサイバー・ダークネス・ドラゴンの頸を捉える。
 機械がエラーを吐き出したようなつんざく悲鳴を上げたサイバー・ダークネス・ドラゴンは、その巨体を大きく吹き飛ばし観客席の大部分を破壊して倒れこむ。
 備え付けられた椅子や柵が砕け散り、どしんという大きな音がスタジアム中に響き渡った。
 
 勝負自体は、あっさりと決着がついた。
 どこか見掛け倒しだったなと思いながらも、蘭子は宝太郎とサルファの元に走り出す。
 
 見掛け倒しだったことには理由がある。
 サイバー・ダークネス・ドラゴンには3つの効果と致命的な弱点がある。
 墓地のドラゴン族か機械族を装備する効果。
 自身の効果で装備しているモンスターの攻撃力分攻撃力がアップする効果
 装備しているカードを墓地に送ることで相手の発動した効果を無効にする効果だ。
 うまく使えば非常に強力なカードだが、反面元の攻撃力は2000と低い。

 残念ながらいまのサイバー・ダークネス・ドラゴンは何のモンスターも装備しておらず。
 今の蘭子の攻撃に正面から耐えられるほどの攻撃力を持ち合わせてはいなかった。


636 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:53:54 EtfBAALk0
 ◆◇◆◇◆

 スタジアムの中央に鎮座するサイバー・ダークネス・ドラゴンが倒れる音を聞き、マジアサルファと一ノ瀬宝太郎はこの場の誰よりも警戒心を強めていた。
 
 前提として、あのドラゴンは何かを装備している状態ならまだしも、素の状態であれば華鳥蘭子を除く全員が対処可能ではあった。
 仮面ライダーガッチャ―ドでなくなった一ノ瀬宝太郎だろうと、戦闘経験とレジェンドライダーケミーの力を駆使すれば倒すことは出来る。
 邪樹右龍がその動きをしない理由は、2枚服用(ギメ)をしたザギを前にそんな余裕が存在しないためだ。

 では、覇王と交戦している2人がサイバー・ダークネス・ドラゴンを倒さなかったのはなぜか。
 ドラゴンを挟んで反対側で、右龍がザギと交戦していることはザギの耳障りな声で気づいている。
 右龍との共闘どころか、ザギに覇王をぶつけ共倒れにさせることだってできたかもしれない。
 ハイリスクではあるがメリットも大きい。その選択をしない理由は右龍と同じ。
 ――覇王を前に、そんな余裕は何処にもなかったのだ。

「誰や!右龍のオッサンか?」
 客席から巻き上げられた埃が立ち上る叫んだ声には、わずかな期待が込められていた。
 サイバー・ダークネス・ドラゴンを倒せるのがザギか右龍である以上、右龍がザギを瞬殺しこちらに駆けつけてくれるというのが最善の流れだ。
 反対にザギが倒したのであれば、最悪の場合既に右龍と蘭子は死んでいるかもしれない。

 「よそ見している暇があるのか。」
 逡巡する脳に覇王の声が氷の針のように刺さり、周囲全てから殺意が向けられる。
 サイバー・ダークネス・ドラゴンが破壊した観客席から暴風と共に飛び散る、金網や椅子の破片たち。
 覇王が手をかざすとその全てが針のように変化し、一斉にマジアサルファに向けて降り注ぐ。
 無論、錬金術による攻撃だ。

「考える余裕さえ与えへんってか!
 宝太郎!なんとか避けや!」
 後方で援護する錬金術師にそう叫ぶが、粉塵で視界は随分悪い。
 届いているか届いてないかは分からないが、届いていることを信じて周囲にバリアを張り身を守る。
 黄色のバリアに無数の針が刺さり、小さなひびがそこかしこに生じていた。
 針の雨が止むと同時に、マジアサルファは勢いよく飛翔する。
 狙いは決めている。
 覇王が錬金術を使う度に、指輪でもつけているかのように一点がわずかに光る。その場所だ。
 
「見つけたで!」
 怒気と共に拳を炎のような巨大なナックルに変化し、覇王の影を捉える。
 メキリと嫌な音をたて、確かな手ごたえがあったが。命中したはずのサルファの表情は芳しくない。

「やはり妙な感覚だ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 衝撃は響いているのに、不思議なほどダメージが少ない。」
「……またかいな!!
 何度殴ってもその調子か!」
 アナザーガッチャ―ドが頑丈というよりは、何らかの力でダメージを半減されているような。そんな手ごたえの無さがある。
 サルファのパンチはマジアベーゼの生み出した巨大な怪物を瞬殺できる威力を誇るが。わずかなダメージこそあれ身じろぎもしないアナザーガッチャ―ドの存在は、変身者が覇王ということもあり見た目以上に恐ろしく見える。

 この耐久の原因はアナザーライダーの性質にある。
 アナザーライダーには、同じライダーの力でないと倒すことが出来ない。
 これはディケイドのカメンライドやジオウのアーマータイム。本バトルロイヤルの関係者ならゼインカードなどの同じライダーの力ならば問題なく倒せるが。それ以外の相手では倒すに至らず、中の変身者が破壊される様なケースでもなければ変身解除が関の山だ。
 
 この戦場にその性質を知るものなど当然ながら一人もいない。
 サルファに分かることは何故だかマジアサルファの攻撃はアナザーガッチャ―ドに効果が薄いということだけで。
 覇王に分かる事実は、この女の攻撃は大して警戒する必要がないというただそれだけのことだ。


637 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:56:34 EtfBAALk0

「それよりもいいのか。
 効かない拳を構え続けても、がら空きだぞ。」
 右手に構えたデインノモスを振るうアナザーガッチャ―ドのスペックは、スチームホッパーのガッチャ―ドと同等だ。
 属性もなく純粋に攻撃力が高い剣である偽剣デインノモスの威力は、覇王十代として振るった時とは比べ物にならないほど増大していた。
 とっさに拳で防ぐサルファの体が剣戟に弾かれ地面を転がる。血に濡れたスタジアムを転がりまわったサルファの体は、砂利と血でどろどろに汚れててしまっていた。
 ガードした腕がその衝撃で痺れている。どうにか立ち上がるが両腕はだらりと力なく垂れたままだ。
 
「これは……ちょっとヤバいかもなぁ。」
 疲労の色を隠せなくなってきたと、額の汗をぬぐう。
 鬼方カヨコとの戦闘の消耗もそこそこに、ザギとの戦闘。そして覇王との戦いを連戦だ。
 おまけに相手はこちらの攻撃は効果が薄い。
 ――宝太郎と蘭子を連れて逃げるか?
 ――誰か知らんが覇王が乗ってきた黒龍はぶっ飛ばされとる。うちが全力で逃がしたら追いつけんのちゃうか?
 疲労からか思考が”逃走”へと切り替わる。
 
 サイバー・ダークネス・ドラゴンが巻き上げた粉塵が覇王の剣圧で吹き飛ばされた、視界が戻ったのはその時だ。
 悠然と佇むアナザーガッチャ―ドの体に、目立った傷は見られない。
 サルファの目に留まったのは、その怪物を狙う2つの影。

『オーズ!フォーゼ!ビルド!』
『ガガガガッチャージバスター!』
「いっけぇ!!!!」

 ハイテンションな電子音と一ノ瀬宝太郎の叫びが聞こえる。
 柱の陰に隠れていた一ノ瀬宝太郎が、ガッチャージガンの引き金を引いた。
 矢印のようなエネルギーが激流のようにアナザーガッチャ―ドを襲うが。
 不意打ちとするにはフェイントが足りない、その銃撃に気づいた覇王が回避に転ずるが、その移動先がまずかった。

「そこです!!!!」
 上空から矢のように降ってきた赤いクワガタのような怪物が、赤い炎のようなオーラを纏ったキックを覇王にめがけて叩き込んだ。
 胸部に命中した蹴りにのけ反るアナザーガッチャ―ドに、怪物は両足で地団太を踏むようにキックが連続して覇王を襲う。
 動きはド素人のそれだが、必死に撃ち込まれるそのキックの威力は随分なもの。
 場所を考えると、サイバー・ダークネス・ドラゴンを倒したのもこの怪物だろう。
 その声は間違いなく、華鳥蘭子のものだった。
 
「お前……あの小娘か!」
 両腕で蹴りを弾き落とし、反動でアナザーガッチャ―ドは膝をつく。
 覇王を蹴り飛ばした怪物は着地に失敗して尻餅をつき、駆け寄った一ノ瀬宝太郎の頭にはクエスチョンを浮かんでいた。
 
「えっと……南さんだよね?なんでマルガムに!?」
「ごめんなさい。宝太郎さん。
 ソードスキルを使うとこうなってしまって!
 ケミーのみなさんは無事です!」
 マルガムに変身しているということは、悪意に吞まれてしまったのだろうか。
 そう疑いを抱くことが馬鹿らしくなるほど、蘭子の言動は普段と変わらない。
 真っ先にケミーの無事を報告するところなど、実に彼女らしかった。
 
「疑うのは分かります。
 でも今は私を信じてください。」
「……分かった。信じるよ。
 南さんが悪い人じゃないことは、俺もケミーの皆も知っているから。」
 宝太郎の返事に合わせ。手元にあるレジェンドケミーたちも思い思いに音を鳴らす。
 声がはっきりと聞こえるわけじゃないが、蘭子を非難する意図はなさそうに見えた。

「ところで宝太郎さん。
 さっきのキックですが、妙に手ごたえがないような気がしたのですが分かります?」
「そっか……。
 なんでかわかんないけどサルファのパンチも効いてない。
 錬金術で防いでいるようにも見えないし、多分何かしらのカラクリがあるんだと思う。」
 ケミーの力を有するマルガムとは言え、クウガマルガムは仮面ライダーガッチャ―ドではない。
 アナザーガッチャ―ドの特性に阻まれ、そのキックは十全の威力を発揮せず、致命傷には程遠かった。


638 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 22:58:56 EtfBAALk0

「『万物はこれなる一者の改造として生まれうく』。」
 次に動いたのは覇王だった。
 近くの柱からコンクリの塊が伸びたかと思えば、巨大な鞭のようにしなり宝太郎とクウガマルガムを襲う。
 その先端は槍のように尖っている、刺さった地面に拳大の穴が開き、直撃すれば穴の開き場所は自分の胸になるだろう。
 地獄への回数券を服用している二人でも、もし臓器まで穴が達したら流石に死ぬことは想像に難くなかった。

「ここは私が!」
 宝太郎の前に躍り出るクウガマルガムが、直撃する柱を拳で砕く。
 構えもない。握り方も甘い。格闘の基礎の基礎さえなっていないへなへなとしたラッシュだが、地獄への回数券の強化と仮面ライダークウガの持つフィジカルがそのパンチを防御として一線級のものへと昇華させていた。
 
「様変わりしたのは姿だけではないということか。
 だが、遅い。」
 だがその間にも、覇王の錬金術は継続している。
 スタジアムのコンクリなどそれこそ無尽蔵と言っていい。
 蘭子が1本砕く間に覇王は槍を3本は生み出せる。
 砕き、躱し。砕き、躱し。わずかに掠る攻撃を何とかしのぐ。
 体力も動体視力も問題ないが、覇王は自分に近づけないよう2人の動作を誘導しており。槍を避けるたびにどんどん距離が遠のいている。
 宝太郎も強化した動体視力とガッチャージガンで捌いてはいるが、捌ききれなくなるのは時間の問題のように思えた。

 それでも、クウガマルガムは――蘭子は拳を振るうことを止めない。
 宝太郎も逃げるではなく、蘭子の負担を減らそうと回避と迎撃に努める。
 砕く、避ける。砕く、避ける。砕く、砕く。掠める。
 無限に続きそうな作業の中、2人の目に諦めの色は欠片も見えない。
 
 

 
「……うちは何をしとるんや。」
 その様子を、ただ一人見つめていたマジアサルファ。
 血と砂で汚れたの体で立ち上がり、戦場に向き直る。
 
 目の前で戦っているのは、変身できなくなった男と戦う力も無いはずの女だ。
 本来ならば、正義のヒロインが身を挺して守るべきはずの相手だ。
 彼らが、必死に戦っている。
 得体の知れない麻薬(ヤク)を口にし、どういう理屈か怪人になってまでも。
 力で支配しようとするクソッタレ相手に、なれない拳を振るい何度も引き金を引いている。

 今の自分は何だ?
 ザギとの戦いは今は右龍に任せっきりだ。
 乱入してきた覇王との戦いも、パンチが効かないくらいで逃げ腰になっていた。
 血だまりの中で薄汚れて、無様な姿を晒しているだけの女。

「……そうやないやろ。」
 不甲斐ない自分への怒り。
 誰かに闘わせて諦めようとした自分への怒り。
 言葉に出来ない思いが胸の中でマグマのように煮えたぎる。嵐のように荒れ狂う。

「それでもトレスマジアかいな。笑わせるわ。」
 はるかも。小夜も戦ってる。
 この会場にいる以上、自分の知らない場所で戦い続けているに違いない。
 自分たちの知らない誰かを、覇王やザギのような未知の強敵を相手に守って戦っているはずだ。
 
 今の自分はあいつらに顔向けできるのか?
 正義のヒロインとしてあいつらと肩を並べられると、胸を張って言えるのか?
 必死こいて闘っているものの前で、ただそれを見てるだけの女が、そんな名前を背負って?

 言えないだろう。
 言えないだろう。
 言えないことが――言えると胸を張れないことが、許せない。
 
 正義のヒロインは最後に勝つものだ。
 この場における勝利とは何か?
 決まっている。
 ザギも覇王もぶっ潰して、笑ってこのスタジアムから出てやることだ。
 
 そんな最高の勝利を諦めようとして。
 ヒロインしての矜持を忘れそうになって。
 
 
 ――どの面下げて正義のヒロインを名乗っている?天川薫子!!!
 

 
 感情に呼応するように、サルファの思いを形にしたように。
 ――光が、溢れた。
 なんて唱えるかは、なぜだかはっきりとわかっていた。


「真化(ラ・ヴェリタ)」


639 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:00:12 EtfBAALk0

 星が瞬き、世界が優しく強い光に包まれる。
 無数の星がサルファを照らし、その姿を次のステージへと変えていく。
 この場のサルファは、未だ至っていなかったはずの”あこがれ”の結晶。
 正史とは異なる場ではあるが、マジアサルファもとうとうそこへと至った。
 
「綺麗……」
「もしかして、サルファ?」
 その光は、宝太郎と蘭子にも届く。
 温かく、優しく、それでいて強い光。

「何が……」
 覇王十代をもってしても、その変化を単なるこけおどしとは言い切ることは出来ない。
 ガッチャ―ドの力を奪った時と同じようなエネルギーの奔流が、あの少女一人に起こっている。
 なぜだか攻撃が効かなかったので捨て置いた相手だが、そう悠長なことは言ってられないと槍を生み出していた腕をサルファに向ける。

「遅いわ。」
 
 バチリ。
 空気中に走る電流を最初に感じたのは、覇王十代だった。
 光が消え、腕を向けたその時には、マジアサルファの姿は見えない。
 
 奴が浮遊能力を持っているのはこれまでの攻防で分かっている。
 速度の上昇……その程度は起きていると見るべきだろう。
 覇王からしても見るべき場所は限られる。

「上か!」
「正解や!」
 見上げるアナザーガッチャ―ド。
 想像通り、マジアサルファはそこにいた。
 だが次の瞬間、視界にうつるニヤリと笑うサルファの顔がどんどん陰に隠れていく。
 自分の顔が何かに覆われつつあると気づくには、少し遅かった。

「雷霆掌 重(かさね)!」
 上空から叩きこまれた稲妻の拳。
 不意を突かれたアナザーガッチャ―ドが地面に叩きこまれ、錬金術で操っていたコンクリートの塊もその操作を失い元に戻る。
 一息つく宝太郎とクウガマルガムの前に、さっそうと姿を見せたマジアサルファはさっきまでとは別人のような格好をしていた。 

 フリフリのいかにもな魔法少女衣装は、シニョンキャップとチャイナドレスからなる中華風の衣装に。
 その腕には左右3つずつ6つのリングが備わっており、サルファの意思で自由に動くリングから稲妻で出来た拳が生成されていく。
 超攻撃的な彼女の性格がよく表れた、サルファの真化。
 ――マジアサルファ・電撃天使(ブリッツエンジェル)
 その姿に宝太郎と蘭子が目を輝かせるのは、仕方のないことだろう。

「かっこいいわサルファさん!!」
「変身したの!!すっげぇ!
 これがサルファのガッチャ!!」
「変身しとったんは元からや。
 というか蘭子はん。そっちこそどないなっとんねん!」
「ちょっとソードスキルを使うとこうなってしまって。」
「どんなスキルや!」
 きゃぴきゃぴと戦場らしからぬ――年相応に騒ぐ彼らを前に。地面にめり込んだアナザーガッチャ―ドは一定のペースでのそりと起き上がる。
 サルファのパンチによるダメージは薄いが、地面に叩きつけられたことは堪えたようで。どことなしか警戒と敵意が強まって見えた。

「それがお前の本気か、魔法少女。」
「おっ、その言い方似合わんなぁ。
 ――マジアサルファや。よろしゅうな覇王はん。」
「マジアサルファ……。」
 ここぞとばかりに魔法少女はその名を告げた。
 自分の誇りだと。胸を張って告げた字(あざな)は輝いていた。
 
「お前たちは。」
「え?」
「お前たちの名は何だ。」
 アナザーガッチャ―ドの視線は、サルファの後ろにいる2人に向いていた。
 一度相対した時は、結局名前を聞けずじまい。
 何度か呼んでいたかもしれないが、記憶するほどのことではないと切り捨てていた。
 
 今の2人はそうではない。
 仮面ライダーでなくなっても闘志を燃やし。
 戦えないはずなのに覇王から逃げおおせ。
 今も本気で殺そうと錬金術を振るっても不遜な強い眼を向け続けている。

「一ノ瀬宝太郎。未来の大物錬金術師!」
「華鳥蘭子。
 ……”東西南北”の、華鳥蘭子です!」

 「一ノ瀬宝太郎。華鳥蘭子。」
 刻み込むように2人の名前を呟くアナザーガッチャ―ド――覇王十代。
 贋りの仮面の奥で、覇王は三人の敵の顔を見た。

「マジアサルファ。一ノ瀬宝太郎。華鳥蘭子。
 お前たちを戦士と認め、本気で潰すことにする。」
 
 重く冷たく、どこか熱さを秘めた言葉が、戦闘行動(バトルフェイズ)の開始を告げる。
 臨戦態勢に入り錬金術を発動しようと構える覇王の目に映ったのは。
 加速した拳を顔面へとねじ込みに迫る。マジアサルファの姿だった。


640 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:01:28 EtfBAALk0

「は?お前のターンなんか二度とこんわ!」
 電撃天使(ブリッツエンジェル)が得た新たな武装、腕に備わる六つのリング。
 その内4つを両足へと仕込みロケットエンジンのように突っ込んできたサルファの拳が、覇王の眼前にまで迫る。
 とっさにデインノモスで防御に入るが。サルファ本人の拳を防ぐと同時に、脇腹を抉りこむ鋭い拳が覇王を襲う。

「ぐっ!!」
 とっさに体をねじり衝撃を逃がす、アナザーガッチャ―ドの耐性もあって致命的なダメージには至らない。
 それでも、明らかにこれまで振るっていた拳とはその鋭さが段違いだ。
 サルファを見やるとしてやったりとにやけ面のチャイナ娘の周囲には、6つのリングがふわふわと浮かびその全てに電撃が形を成したような拳が浮かび上がっていた。

「遅いで覇王。
 手数が違うわ。文字通りな!」
「1つ1つが光――電撃属性の拳か。
 厄介だな。」

 追撃に動いたサルファの拳3つ。
 その内1つを手刀で弾き、アナザーガッチャ―ドは跳躍して拳を躱す。
 落下地点を予測し駆けだしたサルファだったが。アナザーガッチャ―ドは壁面にあるコンクリートや鉄を錬金術で動かし足場としていた。
 うねうねと動く灰色の蛇のような足場に立つアナザーガッチャ―ドを前にサルファは指をボキボキと鳴らす。

「うちに空中戦で挑む気か?10年早いわ!」
 空中は魔法少女の独壇場(ホーム)。
 電撃天使の名に違わぬ光の羽を広げて、覇王を睨む。
 浮かぶ途中、蘭子の姿が視界に映る。
 マルガムとなっているためその眼は仮面を被ったように赤いものだったが、指をさすサルファの眼差しはその奥にある蘭子の瞳を確かにとらえていた。
       ・・・・・・・・
 「蘭子はん!うちをよう見とき!!」
 稲妻のように飛び上がりアナザーガッチャ―ドに殴りかかるマジアサルファ。
 その戦いを、その動きを、言われた通りに蘭子は目に焼き付ける。
 
 うねうねと巨大な蛇のように動くコンクリの足場に立つアナザーガッチャ―ドが、サルファの拳を弾く。
 時折正面に立ち、時には背後を取り。覇王の刃や錬金術を躱して果敢に攻める。
 無傷ではない、デインノモスや錬金術による攻撃で、サルファの体はジワリと傷が増えていく。
 それでも果敢に攻めるサルファに対し、蘭子が見ていたのはその『動き』だ。
 
 拳の握り方。殴りこむ前の姿勢。足の踏み込み方。
 サルファも正当な武術とは程遠い喧嘩殺法に近いが、それでもトレスマジアとしての戦闘経験からか拳のやり取りには一日の長がある。
 地獄への回数券で強化された動体視力は、完璧とは言えなくともサルファの動きを捉えられた。
 他人の動きを見て真似は学ぶことは。
 ――アイドルだった頃に、何度もやってきたことだ。

「分かった。分かりましたサルファさん!」
 マジアサルファは伝えようとしている。
 戦うための術を。力を正しく使う姿を。
 アンタもうちみたいになれる。戦える。
 そう認められたようで、無性にやる気がわいてくる。

「私も行きます!
 宝太郎さん。援護をお願いします!」
「分かった!」
 宝太郎にサムズアップを返し、蘭子が――クウガマルガムファイズミクスタスが動く。
 右足に重心を乗せるように深く腰を溜めて――仮面ライダーファイズのポーズとよく似ていることは、偶然の一致ではないだろう――、サルファと覇王のいる場所に向かい思いっきり飛び上がった。
 行動を予測するなど上等な真似は出来はしない。
 ただがむしゃらに突っ込む。
 それだけの行為が地獄への回数券と呪力、ケミーたちの助力を受けた今の蘭子の最大最高の攻撃だった。
 
 「最高速度だけならサルファを超えるか。だが見切った。」
 弾丸のような突撃を躱し、アナザーガッチャ―ドは蘭子の着地地点であるフェンスを錬金術で針山に変える。
 自分の加速で致命傷を負う。
 蘭子だけなら起きていたかもしれないミスは、サルファの目が黒いうちは起こらない。

「はぁあああああ!!!!」
 華鳥蘭子のどこか緩く、それでも確かな気迫を感じる掛け声はいまだ健在だ。
 飛び掛かり殴りかかる拳をかろうじて左腕で防ぐが、その衝撃はアナザーライダーの耐性があっても防ぎきれない威力。
 串刺しにならなかったのか。そう視線をおとした先で浮かび上がる稲妻の拳が覇王に中指を立てていた。
 不遜な態度を前に、覇王は理解する。
 針山に変えたフェンスに刺さる前に、サルファの拳をクウガマルガムは踏み台とし飛び掛かることでダメージを避けていたのだ


641 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:02:05 EtfBAALk0

「ありがとうございます!サルファさん!」
「気にすんな!畳みかけるで!!」
 魔法少女と怪人が織りなす、無数のラッシュ。
 デインノモスで弾き。錬金術で防ぎ。拳で防ぐ。
 隙を見つけて反撃に転じ。サルファの腹部を蹴り飛ばし、蘭子の腕をヘしおれんばかりに蹴り上げ。その対価として脇腹に抉るような拳を受ける。
 
 特に厄介なのはクウガマルガム――華鳥蘭子。
 サルファの動きを学んだド素人、クウガマルガムの動きは見る見るうちに上達していく。
 手数と速さではサルファが上だが、呪力やケミーの下駄をはいた蘭子のほうが一撃一撃の威力は高かった。

「こいつら……」
 さしもの覇王もわずかに疲弊の色が見える。
 その意識は少女たちの高速の拳に捕らわれていて。

 『ビルド!』
 『ガッチャージバスター!』
 一ノ瀬宝太郎の存在を、この一瞬覇王は失念していた。
 
 浮かび上がる拳の合間を縫って、矢印のようなエネルギーがスタジアムの空を駆ける。

「がぁっ!!!」
 虚を突かれた覇王は正面からガッチャージバスターを浴び、空中から観客席に叩き落とされる。
 
「何だ今のダメージは……」
 宝太郎の一撃に体の芯から痺れるような痛みを受ける。
 マジアサルファの拳より。
 クウガマルガムのキックより。
 一ノ瀬宝太郎の放つ銃撃の方が――アナザーガッチャ―ドには効いていた。

 アナザーガッチャ―ドを倒せるのは仮面ライダーガッチャ―ドの力だけ。
 今の一ノ瀬宝太郎は仮面ライダーガッチャ―ドではないが。
 ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・
 ガッチャージガンは紛れもなく、ガッチャ―ドの力の一部である。
 
「目に見えて効いとるやないか!」
 だだでさえ鉄面皮の覇王がアナザーガッチャ―ドの仮面を被っている。目に見えて痛がるそぶりがあったわけではない。
 だが客席に落下するアナザーガッチャ―ドの戸惑いは、3人に今の攻撃が効いていたことを示していた。
 無論、宝太郎も蘭子もサルファもその理屈など分からないが。利用しない手もない。
 
「なら作戦変更や!蘭子!!うちの腕に捕まれ!
 うちらで隙を作って宝太郎の銃を叩きこむ、露払い行けるか!?」
「ええ!
 問題ないわ!」

 錬金術の操作を失い崩れる足場から飛び降りながら、覇王に追撃を図るマジアサルファとクウガマルガム。
 必中(ドンピシャ)で当たるかと思った攻撃に、巨大な影が割ってはいる。
 自分たちより一回り大きい機械にも龍にも見える2匹の怪物が覇王を守るように立ちふさがった。
 
「「ギシャァァァァ!!」」
「こいつらは!」
「あのドラゴンさんの……」
「……サイバー・ダークネス・ドラゴンの融合を一部解除した。
 奴らは元は5体のモンスター。それを束ねていたのは俺の錬金術によるものだからな。」
 
 覇王が乗りこなし、蘭子が倒した黒龍。
 鎧獄竜-サイバー・ダークネス・ドラゴンを生んだのは、アナザーガッチャ―ドとしての錬金術。それを応用したNPCモンスター同士の融合だった。
 その一部分を解除したことで、分離した2匹のモンスターは覇王に従い敵を襲う。

「行け。サイバー・ダーク・カノン。サイバー・ダーク・クロー。」
 覇王の合図とともに、サイバー・ダーク・カノンから緋色のエネルギーがサルファと蘭子に向けて放たれる。
 浮かばせた拳でガードするサルファだが、とっさのことに受け流しきれずクウガマルガムともども大きく吹き飛ばされ、その全身を焼き焦がす。

「当然のことだが、こいつらは俺の錬金術で強化されている。心してかかれ。」
「その錬金術は、お前の力じゃないだろ!」
「もう宝太郎さんい任せっきりの私じゃない!」
「雑魚よぶまで臆(ビビ)っとる覇王になんざ、負けるかぁ!!!」
 
 サイバー・ダーク・クローは覇王を守るように6つの刃を輝かせ、サイバー・ダーク・カノンは再び砲身を3人に向ける。
 それでも膝をつかず、諦めず。
 少年少女は不敵に笑い。王へと挑む。


642 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:03:01 EtfBAALk0
 ◆◇◆◇◆

 一挙手一投足がまさに砲弾(ミサイル)。
 二枚服用(ギメ)をしたザギの挙動は、百戦錬磨の忍者邪樹右龍をもってしてもそう形容できるものだった。

 スタジアムのコートから廊下に映った戦場には、無数の極道の骸が転がる。
 覇王のぎんのたてごとに引き寄せられていたNPCが、ザギが動く”ついで”に惨殺された。
 獣道ならぬ、極道道。血だまりに彩られた最悪のレッドカーペットだ。

 「暗刃!不死身の電撃漢(エレキマン)!」
 そんな血だまりを見過ごす邪樹右龍ではない。
 地面に向けて叩き込んだ手刀から雷が走り、極道の骸が焼け焦げる。
 だがザギまるで効いていないかのように極道の骸を踏み潰し、漆黒の目を右龍に向けた。

「どうしたどうしたぁ!
 お前はそんなもんだったのかウリュウ!俺をブッ殺すんじゃなかったのか!!」
「騒音(うるせえ)よ!」
 挑発とともにザギが飛び掛かる。
 振り上げた刃を小手で反らし、首元を狙って暗刃を叩きこむ。
 
「それは効かねえ!」
 ザギの反応も早い。
 わずかに姿勢をそらし、首を狙う暗刃は頬に命中した。
 それでも常人なら手刀の威力と圧電による放電で致命傷になるはずだが、2枚の麻薬と鐚により強化された今のザギにダメージらしいダメージは見られない。
 当たっても効かないし、効いてもすぐに治るのだ。

「今度はこっちから逝くぜぇ!!」
 双刀を1点に集中重ね合わせ、ザギ自身が一本の矢のように右龍の心臓めがけて迫ってくる。
 空破特効弾と呼ばれる技だが、2枚服用と鐚で限界以上に強化されたその攻撃は目で追い避けられるようなものではなかった。
 両腕を交差させ心臓への傷は防いだが、腕に食い込むその刃により常人の数万倍の骨密度をもつ右龍の橈骨と尺骨がクッキーのようにヒビ割れていく。

 「そんなに近づいていいのかよ」
 やられた。とは思わなかった。
 無傷で倒せるなどという侮(ナメ)た考えはとうにない。
 手首を曲げ、両の指を腕に刺さった刃に押し当てる。
 あんな魔法じみた義手野郎が使う武器が鉄なのかどうかは分からないが、電気くらいは流れるだろう。

「暗刃 不死身の電撃漢――」
「おせぇ!」
 バチリと刃に電流が走る。
 だがザギの腕は既に刃を握っていなかった。

 右龍の腹を蹴り飛ばしたザギは、赤く光る魔導器(ブラスティア)を右龍へ向け口角を上げた。
 暴走状態の魔導器――今のザギにとってそのじゃじゃ馬を手なずけることは、何も難しいことではない。
 開かれた掌からエアル――厳密にはエアルではない何かが逆流し、緋色の光線となって右龍を襲う。
 多くの魔物を閉じ込める結界魔導器(シルトブラスティア)を破壊するほどの暴走が、右龍一人に注がれ、雄たけびとともに忍者は大きく吹き飛ばされる。
 
 「激(イ)ッ痛(テ)ぇ〜〜!!」
 廊下から2階の観客席まで押し流され、壁にめり込んだ右龍は既にボロボロだ。
 彼の着ていたジャケットもそこらじゅうが焦げた暴力的(ワイルド)
 流石の忍者の耐久と回復力でも今の一撃は言い逃れ用のないダメージだ。

 正直、かなり苦戦(マズ)い。
 電流も暗刃も効果が薄い。首を刎ねるか奴の命を長らえさせる絡繰りを壊すか、あるいはレジスターを破壊するか。
 どの方法も現実的ではないように思えた。

 流血か、それとも魔導器の熱を受けてぼうっとしたか。思考が止まりそうになった右龍。
 どうにか目を覚まそうと意識を強く持つと、階下のコートの戦況が見えた。
 うねうねと動くコンクリの足場に乗った水色のバッタ怪人――アナザーガッチャ―ドと2匹のNPC(モンスター)
 一ノ瀬宝太郎と蘭子の変身したクワガタ怪人、そしておそらくサルファだろう中華風の少女が懸命に戦いを続けていた。
 
 「やってんな少年少女(あいつら)。」
 
 蘭子が黒龍を吹っ飛ばした様子は、視界の端に見えていた。痛快だった。
 薫子が覚醒した光は見逃したが、何かあったことは見えてなくても伝わった。
 自分より年若く、経験も浅い(宝太郎や薫子はまだしも、蘭子に至っては戦闘経験さえ皆無なはずだ。)彼らのひたむきな戦いぶりに、若いころを思い出した。
 2人の父が死んだときのことを、柄にもなく思い出していた。


643 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:04:00 EtfBAALk0

「お前、どうしてそのユーリ・ローウェルとかいう野郎をブッ殺したいんだ?」
 かつかつと自分を誇示するかのように足音を立てるザギに、右龍は尋ねた。
 その手に持つ武器は右龍や極道の血でべっとりと汚れ、煤とも返り血ともつかない汚れで手は真っ黒だった。

「それを知って何になる。」
「別に?ただの興味だ。
 答えねえんならそれでいい。」
「いや答えるぜ。奴が俺に殺されるために生きているからだ!
 奴を殺すことこそが俺の使命だからだ!それ以外の理由など邪魔なだけ!」

 なんでそう考えるに行き着いたかを聞いているのだが。
 そう尋ねようとしてやめた、おそらく意味などないのだろう。
 筋肉を盛り上がらせ、めり込んだ壁から脱出する。
 第二ラウンドを待ち構えるように武器を構えたザギが、何故だかちっとも怖くなかった。
 
 ブッ殺さなきゃいけない相手なら、右龍にもいる。
 忍殺番長 砕涛 華虎。2人の父を2度殺した極道。
 一般人(パンピー)に理不尽な暴力を与える極道を狩るという帝都八忍としての責務。
 2度も家族を殺した相手に対する恩讐。
 
 誰かをブッ殺すという同じ結論でこうも違うものだろうか。
 その思いで強さや貴賤を問うことは出来ないが。
 右龍に向かうザギの殺意は、強く鋭いが空っぽだった。

「俺はよぉ。お前の使ってる麻薬(ヤク)を使う極道を何人もブッ殺してきた。
 だけど、俺が一番殺さなきゃいけねえ相手は、その麻薬(ヤク)を使ってねえんだ。」

 ザギや宝太郎や蘭子……もっといえばこの場に飛び散る極道たちが使う地獄への回数券(ヘルズクーポン)は、右龍の世界で生まれたものだ。
 極道が天敵たる忍者を殺すために生み出した最悪の麻薬(ヤク)。
 だが、右龍の仇が彼ら兄弟の『ふたりの父』を殺したのはそれよりも前のこと。
 純粋な肉体の強さだけで、身体能力を極限(カンスト)させた忍者を殺しうる相手だ。

「俺の強さが不純だとでも言いたいのか?
 お前の仇は俺より強いと?」
「そういうんじゃねえんだ。どっちが強いかなんざ知らん。どっちにしてもブッ殺すだけだ。
 ただ
 ――テメエくらいブッ殺せないと、あの華虎はブッ殺せねえと思っただけだ。」

 どこか遠い眼をした動作が気に障ったのだろうか、
 地面がえぐれるほどの踏み込みで、ザギが動いた。

「俺の前で別の男の話をするとは、余裕じゃないか!」
「テメエにだけは言われたかねえ!!」

 刃を正面から暗刃で弾く――強化された肉体よりはねらい目であった。
 壁を足場に方向を変え、上を取ったザギが刃を振り下ろす。
 刻印十字斬。続けて魔導炎柱昇。
 Xの字に胸が右龍の胸の表面が斬られ、そのままの勢いで地面から突き立てられた刃から炎の柱が燃え上がる。

「ならば!暗刃!」
 火柱が右龍に迫るが熱量というのなら雷も負けていない。
 両腕を指先でぶつけ生じた電撃で炎を弾く。
 電撃と火柱が相殺し、互いに弾けた熱風に吹き飛ばされる。
 目にもとまらぬ攻防の中で起きたやり取りということもあり、両者の距離が引き剥がされる。
 それでもザギの脚力なら1秒足らずで接近できる程度のものだが、時間が出来たことは確かだ。
 スタジアム越しの荷物置き場に突っ込んだ右龍は周囲を見渡しあるものを見つけニッと笑った。
 
「何を笑っている!」
 1秒後、追いついたザギが再び弾丸のように突っ込んできた。
 空破特効弾の狙いは右龍の腰だ。
 バランスを崩したところを飛び上がりながらの回転切り――閃空裂破で滅多裂きにする。
 それがザギの狙いだった。

 突撃するザギを前にして、右龍は足元に転がる何かを蹴り上げる。
 それは、巨大な銀色のメダルの形をしていた。
 
「こいつを見つけて発案(おもい)ついたぜ。
 無敵のお前をブッ殺す方法をよぉ!」
『鋼鉄化!』
 そんなゲームのような音声と共に、右龍の体が鋼鉄に姿を変える。
 ザギはその姿を見て、苛立たし気に舌打ちした。


644 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:06:23 EtfBAALk0

「おいおいウリュウ。流石に俺もお前をそんな過小評価してはいない!
                               ・・・・・・・・
 お前の体を鋼鉄化させる?バグスターの影響があろうとお前の体が鋼鉄ごときに劣るなら、俺がとっくに殺している!」
「まあな。これでもトラックから女を守護(まも)ったこともあるんでな。耐久(タフネス)には自信あるぜ。
 だから、俺が欲しかったのは防御力(タフ)さなんかじゃねえ。
 それに、俺の切り札はまだ残ってるからよ!」

 手刀を構えるその手から、赤い光が溢れ出す。
 右龍は令呪を起動する。
 これから自分が言う事に、確信があるかのように。
 
       ・・・・・・・・・・・・・・・・
「鉄ってよぉ。電気をよく通すんじゃァなかったか?」
 
 導電率 というものがある。
 物質中における電気伝導のしやすさを表し、高ければ高いほど電気が流れやすくなる。
 人体全身が均一な導電率を持つと仮定する簡易なモデルでは0.2S/m(ジーメンス毎メートル)とされている。
 人間が電気を通すのは体内にある水分が影響しており、人体そのものの電気抵抗は導体と呼べるレベルではないのだ。

 一方、鉄の導電率は約10×10⁶S/mである。
 鋼鉄化したプレイヤーは一瞬だけだが鋼のような姿になる。
 万が一その導電率が鉄や鋼と同等であるのならば、電流の流れやすさはおおよそ5千万倍にまで膨らむ計算になるのではないか。
 
 無論、鋼鉄化したプレイヤーの導電率が鋼と同等という保証はない。
 大事なことは、ザギがその可能性を信じたことだ。
 令呪まで使った強化で鋼鉄化による導電率の上昇をザギは思い描き。
 続けて飛び掛かる自分の左肘……魔導器と生身の境目を右龍の手刀が狙ったことで、疑いを確信へと変えた。
 
「こいつ!」
 腰へと向けた空破特効弾を振り下ろされる暗刃への防御へと回し、正面からぶつかり合った剣戟でザギの勢いは完全に殺される。
 右龍の発言を受け、ザギの思考はどうしようもなく防御に寄ってしまっていた。
 もしここでザギも令呪を使っていれば、結果は変わっていたかもしれない。
 だがザギの頭にその思考は無かった。
 万が一この場にユーリがいればそいつに令呪を切らねばならない――例えば仮面ライダーゼインなど明らか人間ではない名前がユーリだという可能性がある。
 そう考えるとユーリ以外に令呪を切ることは出来ない。
 その空っぽの妄執が、ザギの運命を分けた。
 
 にっと笑顔を向けて掲げた腕から令呪の光が収まるのを待たず、右龍の丸太のような足がザギの腹を蹴り飛ばした。
 鋼鉄化した拳でも令呪を起動した全力でも今のザギに大したダメージは与えられない。
 だが令呪のおかげで速度と反応は完全に全盛(フルスペック)を取り戻している。
 痛みは大したことはないが体格の差にわずかに浮きあがるザギの体。
 すかさず右龍は暗刃を両腕に構え、ザギを上から抑えにかかる。
 狙いは心臓の鐚、そして左腕の魔導器。

「キサマァァァァ!」
 鋼鉄の姿をした右龍の威圧感は、その巨躯もあって計り知れない。
 とっさに危機を感じ取ったザギは右龍を蹴り飛ばす。浮きあがる体でスタジアムの1階に落ちるよう計算したうえでだ。
 ザギの踏みしめた先で爆発が起こり、右龍は吹き飛ばされるもすぐさま体勢を立て直し飛び掛かる。
 
 令呪の効果時間は短い。エナジーアイテムの効果時間も長くはない。
 長く見積もっても1分程度。
 自分が1階に落ちればガキどもを守るため、あるいはバッタ怪人の襲撃を受けて右龍の時間は奪える。
 空中での攻防も1度や2度なら防げるはずだ。俺の力は微塵も衰えてはいない。
 だから、右龍の強化を失わせればいい。
 
 令呪と鋼鉄化の効果が――万が一にも鋼鉄化により電流の威力が上がっていたら。
 その考えがザギの思考を後ろ向きにした。
 ザギにとってらしくないと思えるその行動は――
 
「捕まえたで。」
 
 空中に浮く自分の両足を捉える。電撃でできた2つの拳に阻まれた。
 何なのか分からずどよめくザギの耳に、急速に近づいてくる風切り音が聞こえた。
 ザギの視線の先で、光の翼を持つ魔法少女が拳を構えて迫っていた。


645 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:07:19 EtfBAALk0

「サルファァァァ!!!!」
「言ったやろ!
 お前はうちらがブッ潰すってなぁ!!」

 ザギの足を抑えた腕がサルファの右腕に宿り、元々あったものも含め3つのリングがサルファの腕を稲妻に変える。
 大きく、速く、鋭い拳が、ザギの首めがけて放たれる。
 その形は――右龍の暗刃とそっくりだった。

 ――雷霆掌 貫(つらぬき)。
 本来知るはずのない忍び技術を強引に再現したこの技のことを、のちに彼女はそう名付けた。
 
「こいつは……」
 とっさに両腕をサルファに対するガードに使う。
――殺気が足りない。
 ザギはサルファをそう評していた。
 右龍と違い倒すことはできても殺すことは出来ない女だと思っていた。

 だが発光する拳からはザギへの殺意がこれでもかと向けられている。
 もし命中すれば首を飛ばすだろう。そう確信させるほどの凄味がある技を両腕で弾き飛ばし。
 
「最高だぜサルファ!。
 だが、殺人(そいつ)は俺の担当(やくめ)だぜ。」

 故に、本命の攻撃への対応が、ワンテンポ遅れた。
 鋼の雷人の刃を避けるすべは、ザギにはもはや残っていない。

 「暗刃異形!鋼鉄の電撃漢(はがねのエレキマン)!!」
 鋼鉄と化した右龍の拳が、ザギの心臓に刺さる鐚を抉り、内側から爆発するような電撃が迸る。
 心臓が筋肉が血管が魔導器(ブラスティア)が。弾け飛ぶような雷に悲鳴をあげる。
 致命傷という言葉さえ生ぬるい。砕けた鐚では生かせないほどにその一撃はザギを破壊した。

「ユー……」
 何か言おうとした言葉は、喉から吐き出す血で塞がれた。
 心臓に刺さる鐚を失ったことで、2枚服用の代償(リスク)を背負う。
 黒かった瞳は白く染まり。
 使い果たした命が、灯火を消したように消え去った。

 内臓(モツ)を焼いた。服用(ドーピング)は切れた。生命(イノチ)は終わる。
 それでも、確実に相手を殺すのが忍者の流儀だ。
 だから右龍はその言葉を吐く前に首を刎ね飛ばす。

「ブッ殺した。」

 誰かの写し鏡のようで、誰でもない男の物語は、こうして終わった。

【ザギ@テイルズオブヴェスペリア 死亡】


 ザギの首が地面に落下するより早く、マジアサルファの変身が解ける。
 真化(ラ・ヴェリタ) の欠点は、絶望的なほど悪い燃費だ。
 それを初変身で非常に長い時間使い続けた。
 そんな芸当が可能だった理由は蘭子の術式、呪力を――ソードスキルとなった今は魔力も――増強できる単独禁区(ソロソロキンク)の恩恵があったからということには薫子も蘭子も気づいていない。
 
「おっ……と。
 大丈夫か、薫子っち。」
 落下する薫子を右龍は両腕で支え――いわゆるお姫様抱っこの状態でコート上に着地した。
 
「かなんなぁ……。ヘロヘロや。」
 お姫様抱っこなどされ普段なら色々言い返すだろう天川薫子も、既に体力は限界だ。
 立ち上がるも両足をふらつかせるその様子から、覇王との戦いも随分激闘だったと分かる。
 
「覇王(あっち)はどうだった。
 随分ド派手に闘争(や)りあってたみてえだが。」
「ああ、それなんやけどな……」
 覇王との戦いの顛末を右龍に伝えようとしたその時だ。

「キシャァァァ!!!!」
 スタジアム中を揺るがす振動が、咆哮と共に響き渡った。
 見ると、蘭子に倒されパーツが分離した黒龍――鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンが動きを取り戻し飛び上がる。
 そのまま宝太郎と蘭子が覇王と戦う戦場にもぐりこんだかと思えば、スタジアムの空からどこかに姿を消した。

「なんだったんだ今の……」
 右龍が宝太郎たちのところに向かおうとしたその足を、薫子が止める。
 彼女の視線の先は、サイバー・ダーク・ドラゴンの消えた観客席。
 そこには白い何かが倒れていた。右龍には遠目からは少女であることしか分からない。
 
「おい、なんでこいつがここにおんねん!!」
 その姿に見覚えがある薫子の額に血管が浮き、苛立たし気に睨みつける。
 サイバー・ダーク・ドラゴンの消えた場所で倒れていたのは、怪獣と化し2人を襲った少女。
 鬼方カヨコであった。


646 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:08:47 EtfBAALk0
◆◇◆◇◆

 時間は少し巻き戻る。
 一ノ瀬宝太郎 クウガマルガム マジアサルファ
 アナザーガッチャ―ド サイバー・ダーク・カノン サイバー・ダーク・クロー
 事実上の3対3にもつれ込んだことで、趨勢は若干覇王に傾きつつあった。
 
 サイバー・ダーク・カノンが頭上から放つレーザーを、一ノ瀬宝太郎と華鳥蘭子は必死に避けていた。
 走る彼らに向けて注がれる光線は、スタジアムの血に濡れた地面を焼け焦げに変えていく。
 だがサイバー・ダークネス・ドラゴンだったときに蘭子から受けたダメージが残っているのか、カノン本体の動きはかなり遅い。
 それだけが唯一の救いだったが、その状態を面白いと思わなかったのだろう。

「ふん。」
 背後に佇むアナザーガッチャ―ドが手をかざし、錬金術師の指輪のように怪物の指が光る。
 それにともないカノンの砲身が6つに分かれ、極太のレーザー1本が全方位に向けられる6つの光線へと様変わりする。
 一本一本は細くなったが、範囲は六倍、攻撃力は据え置きだ。

「嘘……」
「それずるじゃん!!」
 光線が細くなる代わりに観客席や壁どころか、宝太郎たちの行く先にまでレーザーが及ぶ。
 言ってる傍からすぐ目の前にレーザーが迫り、宝太郎を抱きかかえてクウガマルガムが飛んだ。
 反応が遅れ、わずかに肩をレーザーが掠め、ジジジと嫌な音と焼けた匂いが宝太郎に届く。

「南さん!」
「大丈夫です……かすり傷ですから。
 ケミーの皆さんが守ってくださっているので……」
 ケミーと一体化し怪人化したとはいえ、蘭子がまともに他人と戦うのは今日が初めてだ。
 地獄への回数券の活性化やソードスキルによる呪力の増幅、クウガケミーとファイズケミーの支援を受けてももはや体力が底をつきかけていた。
 
 「雷霆掌 連(つらね)!」
 宝太郎と蘭子の目の前で、もう一体のモンスター、サイバー・ダーク・クローと戦っていたサルファが浮遊する拳を4度クローにぶつけて吹き飛ばす。
 吹き飛んだ先はカノンのレーザーの斜線上だ、クローの体が焼け焦げギチギチと悲鳴のような異音をあげた。

「……」
 クローとカノンの背後に佇むアナザーガッチャ―ドは、集中するように腕を組み3人を見つめている。
 こちらを品定めするような雰囲気にサルファの苛立ちを募らせた。

「雑魚を盾にするようになってイキイキしおって……」
「多分、それは違う。
 この戦い方が、覇王の一番得意なフィールドなんだ。
 カードゲームでもするみたいに、戦場を俯瞰してとらえて仲間を動かす。
 遊城十代はカードゲームがとても上手いらしいから。覇王もそうなんだと思う。」
 
 吐き捨てるサルファに対し、宝太郎は覇王の強さを理解した。
 覇王十代はそもそもの話決闘者(デュエリスト)だ。
 決闘者(デュエリスト)である以上体は鍛えられているが――カードゲームしかしてないのに何をと思うかもしれないが、決闘者(デュエリスト)とはそういうものだ――、その本領はモンスターを扱い、戦略を読み、盤上の優位を取り勝利を収める戦術(タクティクス)にある。
 他のモンスターを支配し使役する戦い方。覇王の攻撃的な戦術(タクティクス)がカードゲームではなく命の奪い合いでいかんなく発揮されていた。
 
「ということは、あの雑魚ども無視して覇王を倒すことはできんちゅーことやな。
 だけど別々に倒す時間はもう残っとらん。」
 確かめるように腕を握る。
 電撃天使の維持時間はもはや残りわずかだ。
 むしろ真化(ラ・ヴェリタ)の燃費の悪さを考えれば破格と言える維持時間だが、その理由が蘭子のソードスキルにあることは前述のとおり誰も気づいていなかった。

「令呪なりなんなりで、勝負を決めるしかないな。
 一応聞くけど、宝太郎はんのケミーってのをもっと蘭子はんに取り込ませてパワーアップとかはできんのか?
 あるいは、うちが今からマルガムになるってのは。」
「できるとは思うけど。
 本音を言うとやりたくない。」
「私も同感です。
 本来この変身はケミーを悪意に晒す危険なもの。自分で怪人になってみてそのおぞましさが分かります。」
 ケミーをマルガムにとりこませるとは、本来悪意に晒しケミーの意思をないがしろにする行為だ。
 蘭子とて戦いながら申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 重ねて言えば多重錬成となるその手法は、蘭子の負担もケミーの負担も相応に大きくなるものだ。
 知らないとはいえ提案したサルファも無理に推し進める気にはなれない。
 
 ならばどうする。
 短い時間のなか、頭を突き合わせるサルファ達。
 彼らの意識を引き戻したのは、サイバー・ダークの咆哮でも覇王の攻撃でもなかった。


647 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:10:43 EtfBAALk0

 「ならば!暗刃!」
 二階の観客席が目にもとまらぬ速度で刃を振るうザギの攻撃で、音を立てて破壊されていく。
 その合間を飛び交い電撃を打ち、神速の攻防で暗刃を振るう邪樹右龍の姿だった。
 
「ザギ……」
 忌々し気に睨みつける。
 ブッ潰すと啖呵を切っても、結局最後はオッサンに任せっきりかいな。
 誰のせいでもない(しいて言えば乱入した上サイバー・ダークで分断しやがった覇王のせいだ)ことではあるが、どこか心残りのようなものは確かにあった。

「行ってください。」
 そんなサルファの背を押すように、声をかけたのは蘭子だった。
 
「行ってくださいって……なんのことや?」
「私も恐らく戦えるのはもう数分も持ちません。
 ですが、ザギを倒してくださればサルファさんと私の代わりに右龍さんがこちらに加勢できる……そうすれば覇王をどうにかできる確率は上がるはずです。
 それが最善です。違いますか?」
 下手くそにごまかしても意味は無いようで。
 心残りがあることが顔に出ていたのか、隠しきれていなかったのか。
 マルガムになっているのに蘭子の顔は分かりやすかった。

 「……あんた、ええ人やなぁ。」
 気を使われたのが見え見えで、このままいくのはどうにも歯痒い。
 気恥ずかしそうに頭をかくサルファだが、思いついたとばかりに周囲に浮くリングを2つ手に取った。
 
「それやったら、代わりにこいつを貸したるわ。」
 言葉と共に、手に取ったリングをクウガマルガムに貸し出す。
 ふわふわと浮くリングが、クウガマルガムの両腕に左右対となって差し込まれた。
 
「何を……」
「ケミーを混ぜたらあかんのは、出来んのじゃなくてやりたないんやろ。
 ほな宝太郎の錬金術で、うちの力を蘭子はんに貸すんはできるか?」
「多分……ケミーたちの力を借りればできると思う。
 でも大丈夫?その腕輪が無くなったらサルファだって厳しいんじゃ。」

 意識の外の発想だったが、ダブルにオーズ、フォーゼにビルド。
 "解析"や”合体”に一家言あるライダーたちの力を借りれば、出来ないことはないだろう。
 だがそれはサルファの戦力を拳だけで3割――サルファ自身の魔力を加味しても、ゆうに2割は削る選択だ。
 そう指摘され、サルファは強気な笑顔を2人に向けた。
 
「ウチの我儘で戦場離れるんやで。
 自分の体くらいいくらでも削ったるわ。
     ・・・
 その分、奥の手もあるしな。」
 奥の手――ザギに本気の警戒を抱かせた一撃のことは詳しくは語らず。
 それでも何の心配はいらないと信じられる安心感は、流石は現役の魔法少女といったところだ。
 
「それにあくまで貸すだけや。ちゃんと返してくれるやろ。」
「勿論です。
        ・・・
 それに、私にも奥の手がありますから!」
 張り合うというよりも、姉が妹と同じノリで話すような。
 そんな雰囲気に悪くないなとサルファは頬をほころばせ。
 クウガマルガムの仮面の奥で、蘭子も同じ顔をしていた。

「後頼むで」
「「任せて!!」」
 その一言を合図に、サルファは飛ぶ。
 宝太郎が四枚のケミーカードを取り出し、蘭子の周囲に浮かばせたのはそれと同時だった。

「みんなお願い!」
 4匹のケミー……4人の仮面ライダーが宝太郎の声に合わせ蘭子を中心に、虹色の力場を形成する。
 力場に反応し、
 この場の宝太郎は知らないことだが、それは未来へと向かうためスチームライナーをギガントライナーへ再錬成する流れとよく似ていた。
 中央に立つクウガマルガム――蘭子の腕でサルファのリングが回転し放電を続ける。
 温かく、痺れるような強さが両腕に伝わりながら。蘭子はその呪い起動した。
 
「『令呪を持って、命じます!』」
 華鳥蘭子には、バグスターにより弱体化するような身体能力も超能力も存在しない。
 故に、ここが切り時だ。そう決意してから早かった。行動力には自信があった。
 令呪のエネルギーで四人のライダーから生まれる力場が一点に集い、サルファのリングがクウガマルガムの中に入り込む。


648 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:11:26 EtfBAALk0

 奔流が収まる頃には、その姿は確かに変わっていた。
 クウガを思わせる赤色の装甲は金色で縁取られ。
 全身に走るファイズの赤いラインがシルバーになる代わりに、銀色の素体はサルファのイメージカラーに近い、金に近いイエローへと変化していた。
 グリオンの生み出す黄金のマルガムとは違う。
 薄汚い金メッキではなく、雷を宿した奇跡の結晶。
 通常あり得ない変異種の多重錬成。錬金術と魔力と呪力の融合体。
 
 仮に名を与えるなら
 ――クウガマルガムファイズミクスタス ライジングアクセル

「令呪をつかったから99秒しか持たない。一気に決めるよ!」
「任せてください!」
 令呪の光が収まり、カウントダウンが開始される。
 蘭子の動きは早かった。

 怯みから起き上がったサイバー・ダーク・クローの光る刃を足場にクローの背中に回り込む。
 先ほどカノンのレーザーで焼かれた部位は、当然ながら装甲が薄い。
 自分の中に宿る力に導かれているような思いと共に、サルファから学んだ握り方で思いっきり傷をぶん殴る。
 
「せい!!!」
 巨大なヒビがはいり、クローの背中の装甲が3割近く砕け散る。
 当然狙うはその装甲の中身だ。
 飛び上がり、砕けた装甲めがけて足を思いっきり延ばして加速を続けた。

 当然、相方がやられて黙っているサイバー・ダーク・カノンではない。
 飛び上がって避けられないクウガマルガムを狙い、体全身を振るい鞭のようにしならせ叩きつけるようとする。
 体をまっすぐに、思いっきり延ばして。
 
『ガッチャージバスター!』
「俺もいるんだよ!」
 顎に喰らったガッチャージバスターに動きが怯み、反撃が失敗。
 同時に蘭子の蹴りがクローの装甲の内側に届き、体を貫通し大穴が開いた。
 ジジジと音を立てて動きを止めたクローが倒れこみ、その動きに巻き込まれカノンも動けなくなる。
 
「これでおしまいです!」
 カノンの砲身に向けて全力でパンチを振るう。
 呪力とも魔力とも分からないエネルギーがカノンの体に逆流し、ブスンという音を立ててその動きを止めた。
 
「こいつらを倒し、返す刀で俺を狙うか。」
 二体のサイバー・ダークを撃破。残り34秒。
 勢いをそのままに、覇王に向けて殴りかかる。
 まだ効果は残っている。アナザーライダーの耐性があろうと当たればただでは済まない拳だ。

「だが、甘い!」
 覇王が腕を動かすと、ぐねぐねと黒い金属が覇王の周囲を覆うシェルターとなる。
 拳を当てて理解する。これは先ほど倒したサイバー・ダーク・カノンの骸を錬金術で再利用しているものだ。

 残り25秒
 もはや四の五の言っている時間は無くなった。
 サイバー・ダーク・カノンの装甲に向けて、蘭子は無我夢中にラッシュを続けた。
 タイムリミットが迫る中、ラッシュを叩きこむごとにヒビがどんどん大きくなる。
 
 「決めます!」
 残り5秒。
 いったん距離を取り、走りこむとともに勢いをつける。
 空中で一回転し、引き絞った矢のような蹴りを覇王を守る装甲に叩き込んだ。
 この蹴りがとどめとなり装甲は粉々に砕かれる。
 アナザーガッチャ―ドの姿がむき出しになるさなか、反動で蘭子の体は宙に浮かび上がる。
 令呪の効果が終了、サルファの力が混ざりこんだブーストタイムが終わる。
 ――同時に、単独禁区(ソロソロキンク)の効果が切れ。クウガマルガムが華鳥蘭子へと戻った。

「ここまでだな。」
 怪物が少女へと戻る様を見て、どこか落胆したように覇王は言う。
 曲がりなりにもここまで持ちこたえられていたのは、真化したマジアサルファとマルガムとなった蘭子が前線を張っていたことが大きい。
 自身に有効打を与えられる危険な存在こそ一ノ瀬宝太郎だが、この前衛2人を失っては覇王を倒すには至らない。

 勝利の理由はもう1つ。
 蘭子が砕いたのはサイバー・ダーク・カノンの装甲だが、アナザーガッチャ―ドはいつでもサイバー・ダーク・クローを同じように装甲として動かせるのだ。
 破れかぶれに一ノ瀬宝太郎が必殺技を使おうと防ぎきれる。
 ライフが100にまで減少し、手札もなければモンスターもない。おまけにこちらの場には罠カードが伏せられている。
 デュエルで言えばそんな状況に陥っていると覇王は見ていたが。


649 : more<STRONGLY/ヤンキーボーイ・ヤンキーガール ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:12:30 EtfBAALk0
「それはどうかな!」
「それはどうかしら!」

 逆転の秘策がある。
 変身する力も持たない少年少女は高らかに告げ。構えた。
 一ノ瀬宝太郎は銃を。

 ――華鳥蘭子は、弓を。
 
 今まで見せなかった、しかし間違いなく見覚えのある武器に、仮面の奥の覇王の目がわずかに見開いた。

「その武器は……一ノ瀬宝太郎の!」
「初めて、驚いてくれたわね!」
 一ノ瀬宝太郎から華鳥蘭子が受け取っていた武器、ガッチャ―トルネード。
 所持するケミーをマルガム化に利用していたので使う機会がなかったが、ガッチャージガンが覇王に有効だと知ってからはわざとその武器を使わなかった。
 アナザーライダーの法則を華鳥蘭子は知らないが。
 自分が持つこの武器も、今の覇王には有効だと。なぜだか確信が出来ていた。
 
「それが貴様の真の切り札か!」
「ええ!そうよ!」
 
『ケミーセット』
 蘭子の体から排出されたファイズケミーが、ガッチャ―トルネードのスロットにひとりでに収まった。
 術式は切れ、変身もできないが。地獄への回数券が有効であり、その眼も腕もまだ動く。
 
 ガッチャ―トルネードを構え、何度も弓を弾く。
 本体部のカードスロット、「ガッチャースピン」が文字通り高速で回転し。ファイズのフォトンブラッドを思わせる緋色のエネルギーが充填される。

「いきます!」
『トルネードアロー!!』
 
 着地と同時に放たれた半月状のエネルギーが何度も何度も連なって覇王を襲う。
 覇王には分かる。あの武器もまた仮面ライダーガッチャ―ドの力だと。
 一ノ瀬宝太郎の銃と同じ、アナザーガッチャ―ドの耐性を貫通できる道具であると。

 錬金術を起動し、サイバー・ダーク・クローの骸を引き延ばす。
 トルネードアローが二撃、三撃と届くにつれ、べきべきと音を立て破壊されていく。
 最後のエネルギーが届くと同時に、クローの装甲は弾けとび。
 
「これで終わりだ!覇王!」

 その合間に、狙いを定める一ノ瀬宝太郎の姿があった。
 
 『ダブル!オーズ!フォーゼ!』
 『ガガガガッチャージバスター!』
 
 3つのライダーの力を重ねた仮面ライダーガッチャ―ドの力が確かに撃ち込まれ。
 虹のように輝く奔流がアナザーガッチャ―ドに……覇王十代に確かに届いた。

「見事だ。」

 サイバー・ダークの残骸を吹き飛ばすほどの大爆発が起こる寸前。
 宝太郎と蘭子の耳には、そんな言葉が聞こえた気がした。


650 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:15:14 EtfBAALk0
◆◇◆◇◆
 
 爆発が収まった先で、覇王十代の変身は溶けていた。
 地面に刺さったデインノモスを支えに片膝をつき、顔は見えない。
 その周囲だけ、何故だかわずかに光っているようで。異様な不気味さは健在だが少なくともアナザーガッチャ―ドではいられないようだ。

「宝太郎さん!やりまし……」
 宝太郎に駆け寄ろうとする蘭子の足が止まる。
 正確には、動かない。
 これは何らかの妨害を受けたわけではなく、クウガマルガムとしての活動で体力が底を尽きただけだ。
 倒れこみそうになる宝太郎が何とか駆け寄り、肩を貸す。
 地獄への回数券の効果も切れ、もはや蘭子の体は一歩たりとも動けない。回復には数分時間が必要だろう。
 
「南さん!」
「大丈夫よ。
 ……それより覇王は。」
 宝太郎は精神的にはともかく肉体的な疲労は相対的にはまだ軽い。
 ガッチャージガンを構え、蘭子を肩に支えて覇王の元に向かう。
 動けない蘭子を置いておくわけにもいかなかった。

 片膝をついたまま動かない覇王。
 殺すつもりは宝太郎にも蘭子にもない。
 まず、仮面ライダーガッチャ―ドの力を取り返すこと。
 そしてできれば、覇王が力ですべてを支配するでなく、ともにこのゲームから脱出する道を見つけられるように。
 サファイア・ペガサスとの会話で説得が難しいことは分かっていたが。今ならば――

 淡い期待を抱いた宝太郎へと向けて。
 ――偽剣デインノモスが向けられた。

 言葉を失う宝太郎と蘭子の目の前で、覇王十代は立ち上がる。
 疲労の色は濃く、体力こそ大幅に消耗しているが、倒しきれてはいなかった。

「なん……」
「偽剣デインノモスの守護の力だ。
 俺を倒しきるには1手、足りなかったな。」
 デインノモスの持つ守護のスキルにより、覇王は守護方陣を習得していた。
 剣を突き刺して魔法陣を展開し、攻撃をしながら体力を回復させる技。
 ガッチャージバスターと相殺する形でその技をぶつけたことで、覇王を倒しきることは出来なかった。
 右手にはデインノモスが構えられ、左腕には不気味に笑う時計が健在だった。
 
「アナザーウォッチもこの通り俺の手にある。
 俺の勝ちだ。」
「そんな……」
 思わず膝から崩れ落ちそうになる。
 あんなに頑張ったのに、倒しきれていなかったなんて。
 絶望の中、どっとわきあがる徒労感に足の感覚がなくなっていく。
 『死』の二文字が否応なく脳裏をよぎりだす。
 青ざめる2人を前に覇王は続けた。
 
「2分だ。」
「何が?」
「俺が動ける程度に回復するまで――あと2分はかかる。
 その間に逃げるのなら、奮闘に免じてこれ以上は追わん。再開すればその時は殺すがな。
 ガッチャ―ドの力を力づくで取り戻すのもいいだろう、その場合華鳥は間違いなくここで死ぬぞ。」
「……っ。」
 高慢で高圧的だが、語り自体は願ってもないものだ。
 見逃してくれるというのなら、それでいい。覇王ならこういっただまし討ちはしないだろうと宝太郎も蘭子も思っていた。
 内心もやもやするが、南さんが動けない今下手な行動をとって被害に巻き込ませるわけにはいかないと宝太郎は踵を返す。
 その姿に、動けないまま覇王は投げかける。
 
「お前たちは強い。サルファともども今からでも俺の軍門に欲しいくらいにな。」
「……それだけは、絶対に呑めない。」
「……私もです。」
「だろうな。
 ならばこれ以上話すことはない。
 次は殺す。それだけだ。」
 語りは終わる。対話も終わる。
 覇王の友でなく、心の闇を祓えない宝太郎と蘭子ではこれ以上のことはできなかった。
 立ち去る2人の背を、覇王はどんな顔で見ていたのか。
 
「キシャァァァ!!!!」
 そんな雄たけびと共にサイバー・ダーク・ドラゴンが飛び上がったのは、その矢先のことだった。
 飛び上がるサイバー・ダークは上空で試すように何度か体を動かすと、一点を見つめて飛び掛かる。
 サイバー・ダークの視線の先には、覇王十代の姿があった。


651 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:16:13 EtfBAALk0


『見つけた。』


 くぐもった機械音とも、ノイズが激しいラジオを通した声ともとれる無機質な言葉が、宝太郎と蘭子そして覇王にははっきり聞こえた。
 宝太郎と蘭子が振り返ると、地面まで大きく体をそらせたサイバー・ダークは覇王十代を加えどこかへ飛び去って行く。
 覇王も動けないのか動かないのか、抵抗するそぶりもなくサイバー・ダークとともに空へと姿を消し。
 スタジアムのど真ん中では呆然と立ち尽くす宝太郎と蘭子だけが残された。

「あのドラゴンさん。まだ動けたんですね。」
「それにしては変だったけど、NPCを呼ぶたてごとも使ってなかったし……。
 ひとまずサルファと合流しよう。まだザギって人と戦ってたらちょっと怖いけど……」
 言ってはみたが、右龍とザギが響かせていた戦闘音は聞こえない。
 決着はついたのだろうと周囲を見渡すと、さっきまでサイバー・ダークが倒れていた場所に右龍の姿はあった。
 その隣には金髪の宝太郎より少し下くらいの女の子、天川薫子の姿があった。
 マジアサルファの認識阻害でその少女が誰なのかは分からない。
 普段ならこの場にいる知らない人物のことは真っ先に気になるもので、2人も真っ先に右龍にそれを尋ねようと思ったが。
 
「おい!おきんかいボケ!何してくさったんやおまえ!!」
 近づくにつれ聞こえる叫びに、そんなことを聞いている余裕は消し飛んだ。
 知らない金髪の少女がこれまた初見の頭に輪っかをつけた女の子を起こそうと揺すっていた。
 より厳密には、難波のヤクザのような荒々しい言葉を叫び、胸倉を掴んで首が取れそうなくらいブンブンと荒々しく揺すっていた。
 傍から見れば恫喝にしか見えない様に、宝太郎と蘭子の思考は一瞬止まり。
 なだめすかしていた右龍のヘルプを受け、ようやっと彼らは合流を果たせた。
 
 


 目を覚ました鬼方カヨコは、周囲の状況を見渡し、虫でも見るかのような天川薫子の苦々しい視線をみて現状を察した。
 
「あの……」
「なにもすんな。
 あの水色のデバイスやメダルをだしたらその瞬間にブン殴る。」
 起き上がり口を開くと同時に薫子がトランスアイテムを構える。
 その周囲では右龍が腕を組みこちらを見つめ。上品そうな少女がその陰からこちらを睨み。仮面ライダーガッチャ―ドと羂索に呼ばれた青年がオレンジ色の銃に手をかけつつあった。
 実質初対面の相手にそこまで警戒されるのはいい気はしなかったが、事情が事情だから仕方ないとカヨコ自身も思っていた。

「わかった、何もしない。
 というか今はもう何もできない。
 アンタが気になってるのは怪獣への変身でしょ?あの支給品はもう手元にないから。」
 諦めたように両手を上げるカヨコの姿には、潔ささえ感じられた。
 思った以上にあっさりと駆け引きが終わり、会話がスムーズに通じることに右龍と薫子は困惑気味に顔を見合わせた。

 「……なあ、薫子っち。本当にこいつがあの怪獣(デカブツ)なのか?」
 「そのはずやけど……」
 見た目は同じだ。ペダニウムゼットンへと変身し薫子を襲った少女のものだ。
 だが、一度戦った怪獣とは明らかに雰囲気が違う。
 表情こそ怖く不機嫌そうに見えるが、あの無機質で無感情な存在感は見られない。
 宝太郎と蘭子も眠っている間に彼女が危険人物だと聞いていて、警戒心をむき出しにしていたが。
 申し訳なさそうに手を上げる姿を見ると、理不尽に疑っているこちらが悪者になったとさえ思えてくる。

「なんか、憑き物でも落ちたみたいに雰囲気がちゃうやんけ。」
「憑き物が落ちたというか、本当に取りつかれてた。
 信じられないと思うけど……」
 まずそこの説明から必要だろうと、セレブロのことを4人に伝える。
 自分がこの場所に来て、何が起こったのかにも関わることだったからだ。


652 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:20:33 EtfBAALk0

「……他人に取り付くことが出来る参加者!?」
「しかもそいつが、他人のソードスキルを奪うスキルが支給されてるやと!?」
 カヨコの話を聞き、4人はセレブロの存在を知る。
 反応こそ思い思いだが、あまりに無法な存在だということに真っ先に驚かされた。
 何せ、他の参加者の肉体を奪い自分のもののように扱える。
 仲間や友達が知らないところで乗っ取られているとなれば、それだけで混乱が起こるだろう。考えたくない話だった。
 
「信じるんだ。」
「別にアンタのことを信じとるんちゃうわ。
 そのセレブロってのが名簿にある以上、警戒は必要ってだけやさかいな。」
 きっぱりと言い切り、天川薫子はホットラインの名簿やメモに顔を突き合せた。
 カヨコの話をすべて信じたわけではないが、鬼方カヨコとは別の場所にセレブロの名前を確認できたのは事実。
 改めて調べたカヨコのデイパック内に、共通支給品以外確認できなかったことも一概に切り捨てなかった理由足りえた。
 
「ではもしかして貴女。えっと……」
「カヨコ。鬼方カヨコ。」
「鬼方さんの支給品やソードスキルは……」
「お察しの通り素寒貧だよ。」
 隠すものなどないと、両手をひらひらと広げる。
 ここにいる鬼方カヨコはセレブロの支配を脱していた。
 ソードスキルもなく知り合いが特別多いわけでもない彼女を奪う価値が、セレブロ側から見てなくなったと言ったほうが正しかった。
 彼女に支給されたウルトラゼットライザーと数枚のメダル。それらはセレブロの手中に収まったまま。
 ソードスキルである星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)も『ソードスキルを奪い与えるソードスキル』となった個性オール・フォー・ワンを有するセレブロによりカヨコの中から消えていた。
 
 「私の支給品は全部セレブロに取られて。
 ソードスキルは美嘉って子に流れてった。」
 事実だけを告げる。
 だがその言葉に小さなどよめきが走る。
 その名前を知る一ノ瀬宝太郎は顔を青ざめ。
 友人の名前が不意打ちのように出てきた華鳥蘭子に至っては泣き出しそうにくしゃくしゃの顔でカヨコの肩を抑えた。
 
「美嘉さん。美嘉さんに何かあったんですか!?」
「……あの子の知り合い?
 一応確認するけど、聖園ミカじゃなくて亀井美嘉の。」
「友達です!」
 その言葉を聞き、右龍も薫子もカヨコも暗い顔をする。
 他人に寄生する危険な存在と友達が関わったとなっては、冷静でいろという方が難しいだろう。
 
「……そっか。」
 努めて表情を変えず、それでも内心申し訳なさそうに眉をひそめた。
 亀井美嘉の状況はかなり複雑で、その上最悪に近かった。
 錬金術と念能力と陰陽師の力と悪霊のハイブリッドをその身に受け、キリトへの殺意をむき出しになった冥黒の魔女とでも呼ぶべき存在へと姿を変えている。
 その片棒を洗脳されていたとはいえ担いでいた罪悪感もあるし、説明するには厳しい情報が多すぎた。

「気がかりなのはわかる。
 でもいろいろ複雑で話すのに時間かかるからちょっと待ってほしい。
 死んではいないよ。それだけは先行っておく。」
「そう……ですか。」
「それにその辺言い出すと、鬼龍院羅暁やグリオンの話もしないといけないし……」
「グリオン!?」
 蘭子に続いて見知った名……それもあまり聞きたくない名を聞かされた宝太郎が詰め寄る。
「今度はそっちが知り合いかぁ……」と困り顔を浮かべたカヨコだったが。
「これ以上やってても話が進まん。」と薫子が進行を促したためいったん落ち着いた。

「それで、セレブロの話やったな、続けな。」
「セレブロは、より強い誰かに取り付こうとしている。
 キリトって奴に言われて目をつけたのが覇王だった。
 本当はすぐにでも覇王の体を奪いたかったんだと思うけど、その前に用済みになった私の体を機動力のある別の体に変えたがったんだと思う。」
 鬼方カヨコの体はキヴォトスの神秘が内包されている分聖園ミカや小鳥遊ホシノには劣るとはいえ頑強だ。
 だが、逆に言えばカヨコの体を使う価値はそれしかない。
 そんな矢先に覇王との合流を目指し足跡をだどっている中で、辿り着いたのがこのスタジアムであり。
 見出したのがサイバー・ダーク・ドラゴンだったという訳だ。


653 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:22:58 EtfBAALk0
 
「さっきまでここに居た黒龍。
 ・・・・・・ ・・・・・・・・・
 セレブロは今、そいつを乗っ取った。
 あいつは今、覇王を探して飛び回っているはず。」
 話を聞いて宝太郎と蘭子は顔を見合わせる。
 同時に『見つけた』というサイバー・ダークの言葉の意味を理解した。
 
 この建物にセレブロとカヨコが入ったのは戦闘中のことだ。
 その時点では覇王はアナザーガッチャ―ドの姿をしていた。
 だからカヨコはアナザーガッチャ―ドと覇王の関係に気づかなかったし、セレブロがそれに気づいたのはサイバー・ダークの姿になってからだったのだ。
 
「覇王は、さっきまでここに居ました……それで……」
「あの……言いにくいんだけどさ。
 覇王、連れてかれちゃった…………セレブロに。」
「……そっかぁ」
 申し訳なさそうな顔をした宝太郎を見て、鬼方カヨコは天を仰ぐ。
 カヨコから見て悪い方に状況は転がっていた。
 ここからさらに亀井美嘉やグリオンの話をする必要があることなど、流石の彼女も気が滅入った。
 
 頭上から太陽の光が、カヨコの目に入る。
 贋りの太陽が人の気も知らないで輝いていた。

 【エリアG-11とG12の境目/スタジアム/9月2日午前10時00分】
【一ノ瀬宝太郎@仮面ライダーガッチャード】
状態:ダメージ(中)疲労(大)ガッチャ―ドの力を失ったことによる喪失感(小)
服装:錬金アカデミーの制服(青、マント無し)
   エプロン(現地調達)
装備:レジェンドライダーケミーカード(ダブル、オーズ、フォーゼ、ビルド)@仮面ライダーガッチャード
 ガッチャージガン@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ホットライン
   制服のマント@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:このゲームを俺のガッチャでぶっ壊す。
01:自分や南、右龍やサルファの仲間を探す。あと覇王じゃない十代も探す
02:よろしくな、南!
03:呪詛師ってなんだ?ルルーシュのも錬金術じゃないのか?
04:奪われたケミー達を取り返す。
  カグヤのカードも本人に返したい。
05:覇王を止めてガッチャ―ドの力を取り戻す
06:グリオン……いったい何を
参戦時期:101体のケミーフルガッチャを達成した直後
備考
※レジェンドライダーのカードはそれぞれの武器に二枚づつセットで支給されています。

【華鳥蘭子@トラぺジウム】
状態:疲労(絶大) ダメージ(大) ケミーへの申し訳なさ(大) 美嘉への心配(大)
服装:テネリタスの制服
装備:スタームルガーP100@現実 ガッチャートルネード@仮面ライダーガッチャード レジェンドライダーケミーカード(クウガ、ファイズ)@仮面ライダーガッチャード
 ソードスキル:単独禁区(ソロソロキンク)@呪術廻戦
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、現地調達のエプロン
 
思考
基本:友達を助ける。
01:一ノ瀬さん、どうぞよろしくお願いいたします。
02:皆さん……どうかご無事で
03:一ノ瀬さん、あなたはきっと本当にガッチャを掴むんでしょうね。
04:覇王、あなたはまるで……
05:オムライス、美味しかったですわ
06:ケミーの皆さん。ありがとうございます。
07:サルファさん。右龍さん。よろしくお願いします。
08:鬼方さんから美嘉さんについて聞く
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※仮面ライダーガッチャードの101体のケミーフルガッチャまでの流れを大体把握しました。


654 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:27:53 EtfBAALk0

【天川薫子@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(極大) ダメージ(大) 魔力の消耗(大) カヨコへの警戒(中) 
服装:学生服
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて 泥の指輪@魔人探偵脳嚙ネウロ 
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに巻き込んだクソッタレをぶん殴る
01:病院へ向かい、制圧しておく。マゼンタらはおったらラッキー位やな
02:頭に輪っかつけてる連中にはロクなのがおらんな
03:知り合いとの合流。優先はうてな(一般人)>トレスマジア。なんでうてなはんだけおんねや?
04:洗脳されててアイテムも奪われて、散々やなアンタ(カヨコ)
05:殺しとなったら専門家(オッサン)に任せる。その分ウチは敵をぶちのめすだけや。
06:騒がしいオッサンやけど強いな。これで変身しとらんのやから恐れ入るわ
07:他人を乗っ取れる参加者って、ヤバすぎるやろ
参戦時期:アニメ13話以降 おおむね原作24話以降
 備考
 ※真化を会得しました

【邪樹右龍@忍者と極道】
状態:疲労(大)ダメージ(大)カヨコへの警戒(小)セレブロへの警戒(中)
服装:私服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを終わらせる デカブツ=セレブロは倒す
01:孔富より先に病院へ向かい、制圧しておく。お兄ちゃんが先にいるといいけどな。
02:薫子っちには殺しはやらせねー。それは忍者の仕事だ。忍っちの好きなプリンセスみてーな嬢ちゃんだが 見た目以上に気骨(ガッツ)があるな!
03:ルルーシュ・怪獣(デカブツ)対策に洗脳や転移を特攻(メタ)れるもんを探す。
04:女の子が怪獣みてーになっちまうとは。
05:宝太郎っちに蘭子っち。やるじゃねえか。
06:鬼方カヨコの話がマジなら、セレブロってのは危機(やべ)えなそりゃ
参戦時期:幼狂死亡友戯終了後から極契大壊嘯までの間 原作82話〜87話のいずれか
備考
 
 【鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(中) 美嘉・学郎・代葉に対する申し訳なさ(大) セレブロへの警戒心(極大) 
服装:普段の服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:キヴォトスの生徒が参加していないか探す。
01:セレブロがいなくなったはいいけど……
02:怪獣になって暴れたから信用がないのは仕方ない
03:亀井美嘉の友達……なんて伝えよう
04:セレブロと覇王が合流してる……
参戦時期:対策委員会編2章終了後
備考  各イベント・便利屋日誌における出来事をどこまで経験しているかは、後述の書き手様にお任せします

※ザギの双剣@テイルズオブヴェスペリア、魔導器@テイルズオブヴェスペリアがスタジアム内に残っています
 具体的な状態については後述の書き手様にお任せします
 

◆◇◆◇◆
 
「無様だな覇王。
 あのキリトの奴が言っていた男だと期待したが……あの程度の地球人相手に随分てこずっていたようじゃないか。
 少々期待外れなことは否めない。」
 戦場を連れ出された覇王の耳元に、くぐもった機械のような声が響く。
 自身をスタジアムから連れ出したサイバー・ダーク・ドラゴンの声だが、サファイア・ペガサスのような精霊モチーフのNPCではない以上喋ることは無い。
 今喋っているのは鬼方カヨコの言った通り、サイバー・ダークを乗っ取ったセレブロの意思だった。
 厭味ったらしい言葉は無視して、覇王は聞き覚えある名前について尋ねる。
 
「キリト?
 あの地獄の王子の使いか。奴はどうした。」
「死んだ。」
「そうか。」
 キリトと名乗った男、Pohは夜島学郎の手で既に殺されている。
 醜悪な思想を持ち、超融合を生み出すに足る心の闇があると期待していたが、あっさりと脱落。
 その事実に失望するわけでもなく覇王は返した。


655 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:28:53 EtfBAALk0

「それで、何の用だ寄生生物。
 わざわざNPCを乗っ取らずとも、お前が連れてきたあの女の姿で会えばよかったはずだ」
「あの女の支給品は全部奪った。キヴォトスの神秘とやらがあるとはいえ出涸らしだ。NPCモンスターの方が都合がいい。
 それに、あの場で下手に動けばお前を含む全員を敵に回していたはずだ。俺にとっても都合が悪い。」
「打算的な奴だ。
 手負いの獅子の強さを知るようには見えんが。」
 あの場の者たちは覇王を含めても揃って満身創痍。おそらくセレブロが本気でかかれば全滅は無理でも1人か2人は殺せただろう。
 そんな皮肉を込めた発言だが、セレブロにとっては自分の目的の方が優先だった。

「それで、貴様の目的は俺――。いや、お前の性質を考えれば俺の体か。
 どうする、今すぐにでも奪うか?」
 ぎろりとサイバー・ダークを睨みつける。
 こちらの思惑も意思も分かっている、その上でお前を抑え込む。そう告げるような眼だ。
 目的を看破するだけはあり、覇王には隙が無い。
 そしてその心の中は、分厚い壁のような物で覆われているようにセレブロには見えた。
 
「今は止めておこう。
 あんな小僧どもに敗北同然だとはいえ、今のお前を奪うのは骨が折れそうだ。
 同行したほうが面白い。」
「賢明な判断だ。
 自分の悪意を隠しもしないところも含めてな。」
「それで、どこに向かう。」
 スタジアムから出た後、特に方向も決めずに飛んでいる。
 ランドマークを目指すにしても、セレブロにとってはどこでもよかった。
 
 覇王としても知っているランドマークなどオシリスレッドくらいで。合流したいような仲間もいない。
 どこでもいいと言えばどこでもいいが、その前に判断材料くらいは集めるべきだろう。
 
「その前に、貴様が知る情報を全てよこせ。
 話はそれからだ。」
「ならお前もすべて話せ。ギブアンドテイクって奴だ。」

 こちらを敬うような意思も恐れる意思もない。
 そんな感情を持っているのかさえ怪しい相手だ。
 互いにナイフを持ちながら握手するような関係のまま、空の旅は続いていく。
 
 
 【?????/?????/9月2日午前10時00分】
 
 【遊城十代@遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX】
状態:覇王 ダメージ(大) 疲労(大) セレブロへの警戒(大)
服装:覇王の装束
装備:偽剣デインノモス@テイルズオブヴェスペリア アナザーガッチャ―ドウォッチ@オリジナル(仮面ライダージオウ)
 ぎんのたてごと@ドラゴンクエストⅠ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:ただ勝利し、支配する
01:超融合は必ず取り返す
02:足がかりとなる兵や将を集め、勢力を作る
02:あの赤き覇王とは何れ雌雄を決する
03:一ノ瀬宝太郎、華鳥蘭子、マジアサルファ 覚えたぞ お前たちは強い
04:仮面ライダーガッチャ―ドの力 なかなか悪くない。取り返したくば奪って見せろ
05:俺を奪いたければ好きにしろ寄生生物 奪えるものならな
参戦時期:ジムに勝利した後
備考

 【セレブロ@ウルトラマンZ】
状態:興奮(小) 疲労(中)ダメージ(中) 覇王の体への興味(中)
服装:なし
装備:鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン@遊戯王OCG
   ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
   オール・フォー・ワン(個性)@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームを楽しむ
01:キヴォトスの神秘、頑強で面白い
02:羂索たちのゲームは実にいい 俺がもっと盛り上げてやる
03:ノノミの計画はなかなか楽しかった。いい気分だ。今度俺もやってみようか。
04:鬼方カヨコはもう出涸らしだ。不要だな
05:覇王 期待していたほどではないが悪くはなさそうだ。
参戦時期:ウルトラマントリガー・エピソードZ終了後 
備考


656 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:29:44 EtfBAALk0

 【支給品一覧】

 ブランクライドウォッチ@仮面ライダージオウ→アナザーガッチャ―ドウォッチ@オリジナル(仮面ライダージオウ)
 ・覇王十代に支給
 ライダーの力を宿す前のライドウォッチ
 ライダーの力を宿すことでライドウォッチ/アナザーウォッチへと変化する
 仮面ライダーガッチャ―ド/一ノ瀬宝太郎の力を奪ったことにより、現在はアナザーガッチャ―ドウォッチとして使用者をアナザーガッチャ―ドに変身させることが出来るようになった
 変身した者は錬金術を扱うことが出来る。

 アナザーガッチャ―ドを倒すには仮面ライダーガッチャ―ドの力を用いるか変身者を破壊するほどの攻撃をぶつける必要がある。
 そのためガッチャ―ドの武器であるガッチャージガンやガッチャ―トルネードはそれなりに有効。

 ぎんのたてごと@ドラゴンクエストⅠ
 ・覇王十代に支給
 奏でると周囲の魔物を呼び寄せる楽器。
 本ロワでは少なくともNPCモンスターは全員対象となっており、竪琴の音色を聞くと一部の例外を除けば音のするほうに集まるようになる
 また本ロワにおいては、NPCの死体がゾンビ系モンスターとして動くようになる現象も確認している
 
 ソードスキル:単独禁区(ソロソロキンク)@呪術廻戦
 ・華鳥蘭子に支給
 術式範囲内の本人を含む任意の術師の呪力総量・出力を一時的に増幅させる術式
 本来の使用者は通常省略される呪詞、手印、舞などを省略せず運用することで120%の出力で運用していた。
 それらの手順を省略しても運用は可能、ただしその分出力は落ちる。
 本ロワにおいては呪力に関わらず魔力などの別種のエネルギーも増幅可能。
 また華鳥蘭子は呪力を持たないが、この術式使用中は呪力を得ることが出来る。ただし細かなコントロールまではまだできない。

【ドロップ品一覧】

 治療の神 ディアン・ケト@遊戯王OCG
 通常魔法
(1):自分は1000LP回復する。
 ライフ回復の効果を持つ魔法カード
 1度使用するごとに6時間ほどのインターバルが生じる
 
 レッド・ポーション@遊戯王OCG
 通常魔法
自分は500ライフポイント回復する。
ライフ回復の効果を持つ魔法カード
1度使用するごとに3時間ほどのインターバルが生じる

 機械仕掛の夜-クロック・ワーク・ナイト-@遊戯王OCG
 永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できず、
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドの表側表示モンスターは機械族になる。
(2):自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500アップし、
相手フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。
(3):墓地のこのカードを除外し、手札を1枚捨てて発動できる。
デッキから機械族・地属性モンスター1体を手札に加える。

 リミッター解除@遊戯王OCG
 速攻魔法
(1):自分フィールドの全ての機械族モンスターの攻撃力は、ターン終了時まで倍になる。
このターンのエンドフェイズに、この効果が適用されているモンスターは破壊される。
 
 
 地獄への回数券@忍者と極道
 ザギが倒した極道たちより回収した 人間の身体能力・生命量を高める麻薬
 1枚を舌下に服用することで90分前後使用者の身体を極限(カンスト)まで高める麻薬
 向上させるのは基本的には身体能力や治癒能力、感覚のほか、固有の技術の精度なども向上させることが出来る
 2枚を同時に服用した場合、常人なら過回復で肉体が弾け飛び、卓越した身体能力を持っているものでも5分で死亡する
 その代わりに極限の身体能力を持つ忍者が「怪物(バケモン)」と形容するほどの尋常ならざる能力を得ることが出来る

 本ロワにおいては参加者固有の能力のほか、異能や支給されたソードスキルの出力も向上される
 ただし身体能力が元から上限に達している存在には効果がない


657 : more<STRONGLY/コンパスソング ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:31:21 EtfBAALk0

【NPCモンスター一覧】
 
 サイバー・ドラゴン@遊戯王OCG
 効果モンスター
 星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
 (1):相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 
 宝玉獣サファイア・ペガサス@遊戯王GX
 ヨハン・アンデルセンが使用する『宝玉獣』に属するカード
 精霊の宿った存在であり、遊戯王GXにおける断片的な知識を有している
 通常NPCモンスターは死後も死体が残るが、彼の場合は宝玉獣の性質で巨大なサファイアが遺される。
 
 サイバー・ダーク・ホーン@遊戯王OCG
 サイバー・ダーク・エッジ@遊戯王OCG
 サイバー・ダーク・キール@遊戯王OCG
 ヘルカイザーとなった丸藤亮が使用する『裏サイバー流』に連なるモンスター
 共通効果として墓地のレベル3以下のドラゴン族を装備しその数値分攻撃力をアップできる
 固有効果としてホーンは貫通、エッジはダイレクトアタック、キールは300のバーンダメージを与えられる
 融合して鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンとなる
 
 サイバー・ダーク・カノン@遊戯王OCG
 サイバー・ダーク・クロー@遊戯王OCG
 OCGオリジナルでサイバー・ダークに属するカードたち。
 手札から捨てることでカノンはサイバー・ダークモンスターを、クローはサイバー・ダーク魔法罠を手札に加えることが出来る
 またこのカードを装備したモンスターの攻撃時、装備カードとなったこのカードが墓地に送られた時にそれぞれ強力な効果を発動できる
 登場したのは2017年のため十代たちはこのカードのことを知らない
 
 鎧獄竜-サイバー・ダークネス・ドラゴン@遊戯王OCG
「サイバー・ダーク」効果モンスター×5 を素材に融合される融合モンスター
 サイバー・ダーク・ドラゴンを強化したような効果を持ち、機械族も装備できるようになったほか、装備カードをコストに相手カードの発動を無効にして破壊することが出来る
 
 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン@遊戯王OCG
 ホーン、エッジ、キール 三体のサイバー・ダークが融合した姿
 装備したドラゴン族の攻撃力分及び墓地のモンスターの数だけ攻撃力がアップし、戦闘で破壊される場合代わりに装備カードを破壊できる。
 
 がいこつ@ドラゴンクエストⅠ
 戦士の屍がモンスターとなったもの
 通常は剣を持っているが、今回は素体が素体のため持っているとしたらナイフか銃である
 
 くさったしたい@ドラゴンクエストIII そして伝説へ
 腐敗の進んだ死体に悪霊が宿り、独りでに動いて人を襲うようになったもの
 HPや攻撃力が高い


658 : ◆kLJfcedqlU :2025/02/11(火) 23:31:52 EtfBAALk0
投下終了します


659 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/12(水) 09:39:57 wGuwcyOY0
おはようございます。
当ロワの企画主です。
去年の夏から驚異的なペースと圧倒的クオリティでssを投下し続けてくださる書き手の皆さまにも、当ロワを楽しんでくださっている読み手の皆さまにも感謝の絶えない日々を送っております。
本日は一つ、皆様にお伝えしたい事があって書き込ませていただきます。
ご存じの方もおられるかと思いますが、私はかつてロワ企画を一つ打ち切りにしており、この真贋ロワではそんなことはさせまいと本編始まってからの後だしのルール変更などしないつもりでした。
しかし、パロロワとはあくまで趣味。
書き手の皆さまの生活を圧迫しては本末転倒とも考えております。
多数の書き手様が放送前から大長編をとんでもないペースで投げてくださるこの状況は、延長込の2週間は短すぎるでしょう。
そこで、皆さまのss、そして生活のクオリティを守るための措置としてキャラクターを10名以上予約した場合に限り、予約期限と予約延長を一週間から10日に延長、最長20日のキャラ拘束を可能にするルールを儲けさせていただきます。
今後とも真贋バトルロワイヤルをよろしくお願い申し上げます。


660 : ◆ytUSxp038U :2025/02/13(木) 00:09:29 EvBWZI5U0
投下お疲れ様です

浅垣灯悟、満艦飾マコ、バッタヤミー(NPC)、龍園翔、十条姫和、伏黒甚爾、松阪さとう、エンヴィーを予約し先に延長もしておきます


661 : ◆ytUSxp038U :2025/02/13(木) 00:12:25 EvBWZI5U0
失礼、>>660にアルジュナ・オルタを追加します


662 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/19(水) 16:08:16 i85ItHKA0
キリト、緑谷出久(デク)、成見亜里紗、リボンズ・アルマーク、イドラ・アーヴォルン、レッドで予約します。


663 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 17:58:01 okguXYWI0
>>662 の予約に綾小路清隆を追加します


664 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:00:15 okguXYWI0
投下します


665 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:01:22 okguXYWI0
「もう入ってきていいわよ」

ドア越しに聞こえた亜理紗の声にデクこと緑谷出久とキリトこと桐ケ谷和人が入室する。
一見、ただの落ち着いた雰囲気の部屋だが入口から見て左側、窓に頭を向ける形で設置されたベッドには布団が掛けられているが枕が外されている。

「悪いな、一番嫌な役割頼んじまって」

「仕方ないわよ。
この子もいくら死んだ後だからって、彼氏でもない男にべたべた触られたくないでしょ」

何故ならここには軽井沢恵の、首を斬られた死体が安置されているからだ。
枕も使っては、流石につながっていない首がおかしなことになってしまう。

(ごめんなさい。
僕たちが、もう少し早く駆けつけていれば……)

氷を詰めた袋や保冷剤などはデクとキリトで運び、最後の仕上げだけは亜理紗にやってもらった形になる。

「……」

それぞれが遺体の前でそれぞれの方法でその死を悼み、部屋を出る。

「それで、どうする?
アタシは例のグリオンって手下にやらせて高みの踏ん反り決め込んでるオッサン気に食わないし、協力してあげてもいいけど」

「飯おごれとか言ってなかったか?」

「あんなの見た後で食べる気にならないわよ!」

「じゃあこれぐらいは飲んどけ」

そう言ってキリトは亜理紗にさっき氷や保冷剤を確保した時に冷蔵庫から失敬したゼリー飲料を手渡した。

「これって……」

「長時間のゲームのお供だ」

「……ありがと」

「どういたしまして」

そんな二人の様子を見て少しだけ気分を持ち直したデクが話を切り出した。


666 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:01:44 okguXYWI0
「これからどこに向かうにしても、最初は彼女が座り込んでいた場所に行きたいと思う」

「あのルルーシュってやつの放送見た所?
なんか変な物とかあったっけ?」

「最初はあの人と放送、それからすぐに戦闘になって碌な現場検証も出来ていないから彼女が急に錯乱した理由とかを知っておきたいんだ。
多分理由の半分ぐらいは、放送でルルーシュの部下と紹介されてた同じ制服の人だと思うけど」

「なるほど。
なら彼女の支給品を確認してから出発だな」

そう言ってキリトが持っていた軽井沢のリュックを開ける。

「ええ……なんか死体漁りみたいでいやなんだけど」

「PK上等の悪意を持った連中に使われるよりいいだろ。
それに合流出来て協力できそうだったら知り合いや元持ち主に返せばいい」

そう言ってキリトはリュックの中から支給品を取り出して並べた。

「取り出された形跡が全くない……」

「錯乱して一目散に逃げちゃうような状態だったし、戦うことすら頭に浮かばなかったみたいね」

「内容的には一応戦わせる気は……最低限ゲームとして成立させる気はあったみたいだな」

それぞれが一つづつ支給品をもらい受け、その性能や能力を確認する。
幸い柳瀬舞衣に支給されたソードスキルの様な極端すぎるデメリットを持ったものはなく(そもそも一般人も一般人の軽井沢が使う前提だったので当然と言えば当然だが)休憩もそこそこに三人は最初に軽井沢に出会った広場に戻った。

「NPCモンスターはもういないみたいね」

地面に刺さったままだったグレイスのバトルアックスを蹴とばしながら亜理紗が言った。

「あんまデカい音出すなよ……。
今のうちに調べるもの調べて離れよう」

「そうね。
あんまり休めてはない上に、さっきの戦闘で使ちゃったせいでここらのエナジーアイテムはもうしょっぱいのしか残ってないし」

亜理紗の言葉に二人が頷くと、それぞれ調査を始めた。
一見すればただの大型ショッピングセンターだ。
日常とかけ離れた戦闘の痕跡こそあるが特段変わった物は置かれていない様に見える。

「これは……」

だが変わった物は落ちていた。
元々は一枚のカードだったらしい細切れにされた何かだ。


667 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:02:10 okguXYWI0
「何かあったのか?」

「うん!ちょっとこっちに来て!」

三人は風の入ってこない屋内に移動し、無人の百円ショップかたテープとノート、筆記用具を失敬する。

「その細切れの、アタシも見つけたわ」

「ぱっと見同じ種類の物みたいだな」

「並べてみよう」

裏表を確認し、パズルのように並べていくと裁断されたゼインカードが元の姿を取り戻した。

「カメンライダーストロンガーと、カメンライダーアバドン?」

「仮面ライダーって、さっきルルーシュが放送で言ってたあのパワードスーツか?」

「一番最初に羂索に突っかかってた彼や、名簿にももう1人ゼインって人もそうだって書かれてる」

「デクみたいなコードネームか?」

「そうだとしたら、ヒーローのカードにどうしてこんなひどいことを……」

そう言って目を伏せるデクの姿は今だけはトレーディンググッズの開封に一喜一憂するファンボーイのそれだった。


「多分ギギストのアレみたいに拾われて使われない為じゃない?
こんだけバラバラにするのは念入りすぎる気もするけど」

そう言われてデクはギギストの錬成した怪人からドロップした二枚のカードを取り出した。
彩を失ったそのカードの名前の部分を見ると、仮面ライダー電王、仮面ライダーゼロワンと書かれている。

「ストロンガー、アバドン、ゼロワン、電王、ガッチャードにゼインか」

「イマイチ名前の法則性が分かんないな」

「顔はなんか昆虫っぽいって思ったけど、そうなると電王が変な顔してんのよね」

「ま、そこは考えても仕方ない。
結局この場で起こったことは、ギギストみたいに仮面ライダーの力を使い捨てにして暴れる誰かに出くわしちまって運よく見つからなかったけど……ってところか」

「だね。
出来るなら、もう少し情報が欲しかったけど」

そう言ってデクはテープで繋げた二枚のカードをノートに挟む。

「『将来の為のヒーロー分析ノート』?
いつタイトル何て付けたの?」

「今回はヒーローだけじゃなくてヴィランもだけどね。
やっぱり羂索やクルーゼたちの“個性”や能力はしっかり分析した上で対応策を練っておきたいからね。例えば羂索の場合脳だけで身体を渡り歩く『術式』って言葉を使っていたよね?この時点で僕の知る“個性”や成見さんの言う『魔法』とはそもそもの原理からして違う力の可能性があって」

そう言ってブツブツ呟きながらものすごいスピードでノートを書き上げるデク。
ドン引きして思わず一歩引いてしまった亜理紗の代わりにキリトがノートを取りあげた。

「分かった!お前が筆まめよくわかったから一旦落ち着けって、もうこんなに……」

左ページにはややデフォルメの効いた羂索のイラストと服装や能力に関する考察が書かれており、右ページにはより踏み込んだ内容が書かれている。

「『ver.バトルロワイヤル』って書かれてるけど、もしかして日常的に?」

「うん。けどいつもはNo.って感じのナンバリング」

「じゃあなんでこれだけ違うの?」

「この一冊っきりで、終わらせるため」

「なるほど、いいじゃないか。それで次はどこに行く?」

ノートを返しながらキリトが尋ねると亜理紗が首を傾げた。

「どこって、アンタの家はいかなくていいの?」

「行きたくないって言ったら嘘になるけど、さっきのクルーゼの放送で言ってた鍵穴がどうのって、覚えてるか?」

「そんなことも言ってたわね」

「もし主催者が茅場や須郷みたいな俺の世界の関係者ばかりって言うんならその鍵穴の候補として迷わず向かってもいいんだけど、そうじゃないからな。
羂索やクルーゼ、あと梔子ユメに関係のある場所も調べておきたい。
そう考えると今いる位置的に後回しにしないとアビドスやテレビ局に行けない。
それに、皆そう簡単にゲームオーバーになる程軟じゃないからな」

「そっか。その、ごめん」

「謝らないでくれ。
ここからなら発電所、テレビ局、アビドス砂漠の順番で行けば無理なく回れるはずだ」

そう言って歩き出したキリトに続く形で二人も歩みを進める。
闇檻の魔女の大破壊の後に到達したのは丁度午前七時だった。
時間は少し進み午前七時三十分。
さえぎる物の無いまっさらなエリアを突っ切る事を嫌って河を伝って北上した者がいた。
仮面ライダーエターナルこと大道克己の造り上げた死者兵団の主力、ジゴワットの破壊の閃光を生き延びた者の一人、イノベイドどころか純粋種のイノベイターすら超えたと豪語するイオリア計画の簒奪者、リボンズ・アルマークである。
いくら肉体が器に過ぎないとはいえ、ベーダと意識データをリンクさせることができない今は肉体の死がリボンズという存在の消滅に他ならない。
それを十分に理解しているからこそリボンズは目いっぱいクアンタ・フルセイバーを飛ばして安全圏まで逃げ延びることを選んだのだ。


668 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:03:10 okguXYWI0
そしてエリアE-8の民家にたどり着くと、そこでしばらく休むことにした。
と言っても最低限の警戒は欠かすことはなく、食事をとってソファーに座っていただけだが。

「一応、次いつ確保できるかもわからないし水と保存食ぐらいは持っていくべきかな」

リュックにいくつかビスケットの缶や水のペットボトルを放り込み、壁に掛けてあった時計を見ると、時刻は午前八時になろうとしている。
そろそろ動くべきかとホットラインのマップから現在地を確認する。

「ここからだと発電所が一番近いか」

テレビ局との位置を考えると先ほど放送を行った自称皇帝ルルーシュに反発する者たちが拠点に選ぶ可能性も低くない。
何よりもしこの発電所が張りぼてではなくこの島全体のシステム運営を司る場所だとすればここを掌握することで特定の……までは細かすぎるが指定は無理でも一定範囲のレジスター停止させて一網打尽、なんてことは出来るかもしれない。

(これは恐らく電波受信で動いているだろうし、電力供給を止めて電波の発信装置を停止させれば……)

そう考えたリボンズは飾りだに引っ掛けて会った鍵を使ってガレージの止めてあった車を普通に解錠すると乗り込んだ。

「リボンズ・アルマーク、行く」

モビルスーツに比べればあまりにも素直な地上用車を北西に向けて30分ほど飛ばすと目当ての施設が見えて来た。

「発電所にしては建物が少ないな。
設備は地下に集約されているのか?」

まさか場所を間違えたか?とも思ったが往く手を阻むように無数のティエレンが出て来たのを見てここには何かがあると確信する。

「ガンダムでないMS、それも所詮再現体の贋物で僕を止めようなんてね」

あまり戦闘を想定していないにも関わらず現行エース専用量産機を凌駕するダブルオークアンタの殲滅専用兵装装着形態であるフルセイバー相手に一対一では第三世代ガンダム相手にすら手も足も出ないティエレンごときに負けはしない。
いくら戦闘のダメージや疲労が尾を引いていたとはいえ第四世代のガンダムマイスターを全員一度に相手取っても勝ち得る装着者の腕もあってあっと言う間に無数の機体を廃品屋送りにしたリボンズは装着を解除し施設内に入る。

(本当に重要な設備は管理施設と作業用エレベーターだけじゃないか。
ここが発電所だと言う体裁を整える為だけに職員用宿舎や食堂なんて恐らくは誰も立ち寄らないだろう張りぼてまでセットで建設したのか?
奇怪なことを!)

呆れ半分、驚き半分のリボンズは管理設備へと入った。
どうやら地下設備のメンテナンスは全てドロイドにより行われているようで、ここからは指示出しとエレベーターの操作によるドロイドの回収しか行っていないようである。

「どれ、この簡素な設備でどうやってこの島の電力を賄っているか見せてもらおうじゃないか」

一流ピアニストが百万回弾いた曲を寝ててでも奏でられるように迷いない指捌きでコンソールを叩くリボンズ。
次々とセキュリティを突破し、部屋のメインモニターに映し出されたこの施設の『心臓』のsy型に先ほどの呆れが全て驚愕に塗り替えられる事となった。

「太陽路!?
それもこのGN粒子の色は……まさか!」

鮮やかな緑色のGN粒子をコーン型スラスターから放出するシリンダー型の動力炉はGNドライヴに違いない。

「この地下全てがGN粒子遮断防壁だとでも言うのか!?」

だが同時に納得もある。
パワードスーツに落とし込まれたチェスナット型、人間大にあわせたサイズの物程度なら兎も角、モビルスーツに搭載可能なサイズのGNドライヴから生成されるGN粒子を垂れ流しにしてしまえばその副作用で電波で動くレジスターはたちまち機能を停止し、鎮静剤の投与がストップしてしまう。
そうなればプレイヤーは勝手に全滅してゲームセットだ。

「いや!それよりもこの粒子の色はオリジナルの太陽炉でなければあり得ない!
周波数は……馬鹿な!ナドレのだと!?
ナドレの太陽炉はティエリア・アーデのガンダムに搭載されたはずだ!
そしてそのガンダムも僕がリボーンズキャノンで破壊した!
だ言うのになぜ……」

オリジナルのGNドライヴは擬似太陽炉と違い変調できず固有の量子波を持つ。
そのせいでツインドライヴシステムの実現という一点を見ればオリジナルのGNドライヴよりも擬似太陽炉の方がやりやすいまであるのだ。

(いや、いやそんなはずはない。
大方パワードスーツに超小型化したGNドライヴの搭載を実現しているようにGNドライヴの製造工程を何らかの方法で短縮することに成功したんだろう。
そうして造ったこのGNドライヴがたまたまナドレの物と同じ周波数になった。
そうに違いない)

そもそものGNドライヴの技術はほかならぬリボンズ自身がアレハンドロ・コーナーたちをそそのかして全人類に行き渡っている。
羂索たちがそれを入手できたとしてもなにも不思議はない。


669 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:03:31 okguXYWI0
「やれやれ。君たちを野放しにできなくなってしまったじゃないか、ケンジャク」

最初っから許しておくつもりなどまるでなかった。
上位種たる自分を畜類如きと同列に扱った時点で罪人である。
だがGNドライヴの製造能力を持つと確信を得た今、明確にリボンズ・アルマークという神の座を脅かす存在であると認識せざるを得ない。

「さて、では一刻も早く君たちの元に行かなければならないね。
おや?」

出発前に周囲の状況を確認しようとモニターに監視カメラの映像を映しているとリボンズの入ってきたあたり、ティエレンの残骸が転がる一帯を慎重に歩く五人組の姿が見える。

「……ルルーシュとの交渉の手札は、少しでも多い方が良いかな?」

従わぬものは支配するスタンスであるなら、他の雑多な人間よりかは会話が成り立つと考えているリボンズは席を立つとクアンタ・フルセイバーを装着し迎撃に向かった。




時間は少し戻り、エリアE-7にて。

「認識阻害の魔法があるとは言え同じ学校に通っててほぼ毎日会ってるのに気付かないなんてことがあるの!?
うちのレッドなんて一週間で正体バレたのよ!?」

「それはヒーローとしてどうなんだよ……」

一方的にかかってきた通信を終えた大魔導士イドラ・アーヴォルンとスーパーヒーローアルカイザーことレッドの2人は頭を抱えていた。
成り行き上共闘し、絆を結んだマジアベーゼの正体がアルカイザーの最初の同行者であるマジアマゼンタこと花菱はるかの級友、柊うてなだと発覚したからだ。

「名簿の並び的に不自然もないし、ほぼ間違いないよな」

「はぁ……こっちから連絡できる手段はないし、教えたくても教えられないわね」

「教えたところで聞く耳もつかも微妙だけどな」

何故だか知らんがああまで『魔法少女の敵』であることに固執するマジアベーゼだ。
数時間ちょっとの極めて短い付き合いだが、多分魔法少女たちの正体に関しては何を言ったところで聞き入れないだろうという確信がある。

「後々不和の種にならないかだけが心配ね」

「ノワルとかそのアルジュナ・オルタだっけ?
あのレベルやそれに準ずる連中とやり合ってる間にそーゆー問題でごたついたら最悪だしな」

流石にあのレベルがそうぽんぽん出てくるとは思いたくないが、あのノワルとの闘いというには綱渡りが過ぎるバトルを経てイドラとアルカイザーはここではどんな最悪も起きうるという共通認識が出来上がっていた。

「あと問題と言えばルルーシュだな。
お前とマゼンタはその……捕まってたから知らないだろうし、俺もベーゼと一緒に追いかけてる途中だったから話半分も聞けてないけど一番最初に羂索に命令してたルルーシュってやつも多分ここのテレビ局の設備を使って呼びかけてた」

「そうだったの……。
だとするとこのE-7って位置がどうにも微妙よね」

今二人のいる場所はノワルの大破壊が行われた場所からも悪逆皇帝の拠点からも近くも遠くもない絶妙な位置なのだ。

「一応、最短距離で一番近いのは発電所か?」

「ハツデンショって?」

「ああ、そっか。知らなくて当たり前か。
なんて言ったらいいかな。
えーっと、魔力の代わりに色んな道具を動かす為の電気をつくる場所、かなぁ?」

「つまりキズナファイブにおける絆エネルギーや私たちの言う魔力を造ってる場所って事ね」

「そうそう!吞み込み速くて助かるぜ!」

「これでも大魔導士、研究職よ?
うちのレッドみたいな根本も根本からしっちゃかめっちゃかな奴よりかは理解しやすいわ」

思えば最初であったばかりの頃は頭の中で延々と突っ込み続けていた物だとしみじみ懐かしく思いながら移動する。

「なんか。一周回って穏やかね。
気の抜けない殺し合いの筈なのにノワルが居ないってだけで気が抜けちゃいそう」

「気持ちはわかるけど、どうやら早速気を引き締めなきゃいけないみたいだぜ!」

前方で薄桃色の閃光が光るのが見えた。
まさかマジアマゼンタの変身の光か?と思たがそれが散発しているのを見て戦闘の光と判断し駆け付けるそこで見たのは。

「こんのぉおおおお!」

「SMASH!!!!!」


670 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:04:06 okguXYWI0
マゼンタとはまた別の魔法少女が大鎌をぶん回して雑にNPCモンスターを薙ぎ払い、残った敵を緑色のコスチュームを纏った少年が見た目からは想像もつかないパワーで殴るか蹴るかして吹き飛ばす姿だった。
それでも残った絶妙な距離にいた敵には二人の後方から飛んでくる高エネルギービームが対応している。

「……やっぱりシノンのようにはいかないか」

グレネード弾装備の高エネルギービームライフルのスコープ越しに3発撃ってようやく命中し沈んだ敵を見て呟くのはデュエルガンダム。
軽井沢の支給品の一つである起動鍵を使ってキリトが装着している。
このデュエルガンダムのパワードスーツはこのゲームの為に特別な仕様となっており、核動力仕様の上に装着時にアーマー無し、アサルトシュラウド装備、デュエルブリッツを選択できる。
今回キリトはなにも装備していない素のデュエルを選択した。

「あとはそこか!」

右のサイドスカートに銃をマウントし、スラスターを目いっぱい吹かせて飛び上がる。
核エンジンに換装されたゆえの高出力で向かった先はイドラとアルカイザーの方だ。

「まさか俺たち!?」

「いえ、違うわ!」

迎撃態勢をとるアルカイザーをも飛び越えてデュエルは高速で二人に迫っていたユニオンフラッグに肉薄する。
飛行形態のままリニアライフルを撃つフラッグだが悉くフェイズシフト装甲に弾かれ、バックパックから引き抜かれたビームサーベルで一刀の元に斬り捨てた。

「やっぱりこっちの方が性に合ってるな」

刀身をオフにしたサーベルを基の位置に戻し、装着を解除する。

「あなたたちは……」

「仮免ヒーローと、その臨時サイドキックかな?」

「ヒーロー?あの魔法少女か?」

「いや、あっちの緑の方だ。
2人は魔法使いと、変身ヒーローさんでいいのかな?」

周囲にもう新たなNPCモンスターが居ないことを確認した五人はドロップアイテムのカンドロイドに周囲の警戒を任せ、歩きながら話すことにした。
勿論このままテレビ局方面に向かう訳にはいかなかったので発電所の方に向かいながらである。

「ギギストにグリオンだけでもお腹いっぱいだってのにないよノワルって!
アタシら魔法少女の天敵じゃない!」

「PoHとかダークマイトとは別ベクトルで危険すぎるだろ。
ギリギリ会話が出来そうなステインのがまだマシだな……」

背筋にぞくぞくと冷たい物が走るのを感じながら亜理紗が思わず悲鳴に近い声を上げた。
横を歩くキリトもげんなりとした表情で肩を落とす。

「そのステインすら殺人に躊躇ない奴って、お前らの出会った連中ヤバすぎないか?」

質は兎も角ギギスト、ステイン、そしてグリオンとその配下たち(ノノミにホシノと呼ばれていた)

「拘束の魔法一本で国土を攻撃できるレベルの敵(ヴィラン)と遭遇したお二人には負けますよ……。
イドラさん、ノワルの見た目ってこんな感じであってますか?」

フルカウルなら全身にエネルギーを張り巡らせて拘束された傍から弾き飛ばして対応できるだろうが、都合よくそんな異能を持っている者が果たしてこのゲームに何人呼ばれているだろうか?
なんて考えながらデクは歩きながらまとめていたノートをイドラに渡した。

「歩きながら書いてたの?
……上手いじゃない。
魔法も効果含めてよくまとめられている。
異世界人じゃなかったら是非助手になって欲しいわね」

「いやいや!こんなの趣味の延長みたいなもので……」

「御謙遜を。イドラ、一ページ前も見てみてくださいよ」

「これってルルーシュ?
すごいわね。遠目に一回と放送来ただけだろうにこんなに詳しく……」

「え?もうアイツの分も書いてたの?」

「あ、そうだ!ルルーシュと言えば俺たちノワルと戦ってた時に丁度アイツの放送がやってたタイミングだったせいで内容全然知らないんだよ。
教えてくれないか?」

まあ、そりゃあ下手したらダークマイト以上のスーパーヴィランと戦っていたのだからそんなこと気にしている余裕もなかったか、と納得し3人は放送の詳しい内容を説明した。

「何考えてんだよルルーシュの奴!
羂索に逆らうどころか殺し合いを加速させてんじゃねえか!」

「しかも特権魔法じみた洗脳能力にキズナレッドやアメンみたいな変身アイテムを造る魔導具持ちって厄介過ぎるでしょ」

ノワルとは別ベクトルの脅威なりえるルルーシュに二人はそれぞれの形で難色を示した。

「実際あの放送を見て錯乱した挙句に殺されたプレイヤーも居た。
このデュエルも、そのプレイヤーの遺したアイテムなんだ」

「そうだったのね」

「一応聞くけど今からテレビ局に向かうとしてルルーシュに協力する気は……」

「「ないわ(ねえよ)」」

異口同音に応えた二人に分かってはいたが安堵する亜理紗。
対してキリトは考えるような仕草をする。


671 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:04:42 okguXYWI0
「どうしたんだ?」

「アルカイザー、なんでルルーシュは普通に考えたら敵ばかり増やすような放送をしたと思う?」

「そうかな?自分の持つ力、そして自分が与えうる力を餌に従順な配下を増やすのは僕の知ってるヴィランもやってたことだけど……」

「いや、今回の場合ルルーシュの目視だが肉声だかで相手を操る能力が露見している以上、綾小路を配下として紹介する行為は自分の能力に警戒を抱かせるだけだろう?」

「確かに。
比べるのもなんだけど、発動までの手間を考えるとノワルの闇檻ほど万能でもないのに自分の弱点ばかりを晒しているような気が……」

「じゃあなに?
自分の命を危険にさらしてまで悪ぶってまでしたい事があるって言いたいの?」

「それがなんなのかまでは分からないけどな」

「もしかしたら、ルルーシュの今出来るだろう事を洗い出して行ったらなにか見えてくるかも」

そう言ってデクは分析ノートのルルーシュのページを開く。

「ルルーシュ個人の異能は心操君の『洗脳』と似て非なる能力。映像越しに僕らが操られていないのを察するに映像越しや電話越しでは効果が出ない。そのかわりに堀北さんの口調みたいに特定の行動を本人の意志とは無関係に継続させることが可能。有効範囲は少なくともルルーシュ本人が対象の位置を把握できる範囲と予想できる。一度に操れる人の数は不明。腰に巻いたベルトは仮面ライダーの素日を製造するサポートアイテム。これにも綾小路君の物のように仮面ライダーのコスチュームを装着する機能があるかは不明。だがルルーシュの能力の特性上……」

「まーた始まったよデクのブツブツモード……」

「おーいデク、そろそろ戻ってこーい」

「いや、構わないよ。続けてくれたまえ」

全員が一斉に飛びのき、それぞれ戦闘態勢を取る。
見上げた先にいたのは、光り輝く緑の粒子を翼の代わりに広げた白い機体……全てを睥睨する死の天使が如き魔人が居た。

「あなたは……」

「僕はリボンズ・アルマーク。
人類を導く神、『ガンダム』だ」

「神?がんだむ?」

「人類を導くって……ルルーシュみたいに力で従わせて、刃向かう奴には噛みつくつもり?」

ガンダムフェイス越しにもこちらを見下す酷薄な笑みが透けて見える声に嫌なものを感じながら亜理紗が問うた。

「噛みつく?品性を疑う表現だね。
従わない者を粛清するのは上位種たる僕の義務さ」

「……その義務の果てに、何をする気だ?」

確かな怒気をにじませながらデクが尋ねると至極当然のようにリボンズは答えた。

「来る対話のためにいつまでたっても相争うことを辞めない劣った人類を統治する。
今のままでは外宇宙、そして今回の件で証明された異世界からの未知の脅威に一丸となって対応するには人類はまだ幼過ぎるの。
僕という圧倒的個により統治され纏まらなければ滅びてしまう」

「その為に自分が生まれたとでも言うつもりかよ?」

「生まれたんじゃない。
人類を救う者であれと生み出されたのだよ。
そんな僕を神と呼ばずして何と呼ぶんだい?」

「それは!……お前とお前の野望の為に都合のいい奴隷を造ってるだけじゃないのか?」

リボンズの物言いから連想するのは、師であるオールマイトどころか全人類を苦しめかねない圧倒的巨悪。
どこまでも自分の都合でこの世は自分のおもちゃ箱とばかりに他人の人生も大切な者も磨り潰す厄災の権化、オール・フォー・ワン。
このガンダムには、それとよく似た『邪悪』を感じる。

「そうだとも。
この僕こそが、世界を支配し、遍く人間を管理する。
純粋種のイノベイターすら超えた……最強のイノベイターたるこの僕が!
それで、君たち三人はどうする?
ピンクの彼女と緑の彼にその気はないようだけど……」

「悪いけど、あんたのその一切合切ガッチガチに管理しようって考えは受け入れられないわ!」

「俺もだ!ヒーローみたいなカッコして魔王みたいなこと言いやがって!」

キリトが無言で起動鍵を構えたのを見てリボンズは無数の武器の中から特に行為威力の物を選ぶ。

「デク、下がってろ!」

「キリト!?」

クアンタ・フルセイバーのGNガンブレイドが火を噴く。
デクの前に出たキリトにGN粒子のビームが炸裂する。
粉塵が晴れるとそこにいたのは

「ガンダムだと?」

再びデュエルを纏ったキリトの姿だった。
使い物にならなくなった対ビームシールドを投げ捨て元々の手持ち武器である長い方のシャドーセイバーを装備する。

「GNドライヴの反応はないが、その機体もあの少女のと同じガンダムタイプか。
だと言うなら僕が戦うには十分な理由になる」

「いいかデク、下がってろ。
下がってるんだぞ?
コイツは全力全開でないとどうにもできそうにないんだからな!」

「っ!……分かった」

デクが後方に走って行くのを見送ったキリトはバックパックからビームサーベルを一本抜いて二刀流で構える。


672 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:05:22 okguXYWI0
「待っててくれたんだな?」

「どうせなら悔いなく、そしてその行動が無意味だと痛感するように殺してあげようと思ってね。
リボンズ・アルマーク……ダブルオークアンタ・フルセイバー、行く!」

「……桐ケ谷和人、デュエルガンダム、往くぞ!」

GNソードVとシャドーセイバーが火花を散らす。
その隙に変身を遂げたアルカイザーはイドラを抱えて退避。
見ると亜理紗も変身して武器を構えていた。

「デク!私はあっち探すから向こうお願い!」

「分かった!」

二手に分かれた亜理紗とデクに

「ちょ、ちょっと待って!
流石にあんな武器全部の背みたいなやつにあんなこざっぱりした最低限の武器しかないキリト一人で戦わせる気かよ!?」

慌ててデクと追いかけるアルカイザー。
デクは走りながら返答する。

「だからありったけ回復のエナジーアイテムを!
この作戦、どれくらいキリトが耐えてくれるかと、僕にかかってます!」


<幸運!>

エナジーアイテムを獲得し幸運値を上昇させた亜理紗が走る。
最初はそんなビデオゲームじゃあるまいしと思っていたギミックだが、先のキリトたちとの戦いでその効果は既に実感している。
思った通り適当に足を向けると目当ての物が落ちていた。

「ジャンプ強化、これもジャンプ強化……あった回復!」

落ちていたエナジーアイテムを拾い集め元からストックしていたアイテムと合わせて種類を確認する。

「回復はこれ一枚だけか。
ソウルジェムに使う分は残したかったけど、あんなビームばかすか撃てるガンダム相手にそんなこと言ってらんないわよね」

「アリサ!あんた達一体どうゆうつもりよ!
仲間置いて逃げるとか本当にヒーロー?」

アルカイザーよりも少し遅れて追いついたイドラが走り寄る。

「どう考えても最初から全員で戦うべきだったでしょ!?」

「別に逃げ出したつもりなんてないわよ。
イドラは実際に見てないから信じられないだろうけど、デクの本気のキックなら相手を建物ごと吹き飛ばしてなお吹っ飛ばせるだけのパワーがあるのよ。
多分キリトは真面目に全員出かかるよりリボンズが油断したタイミングでデクの必殺技を叩きこむのが一番いいって判断したんだと思う」

そう言って亜里紗は手持ちのエナジーアイテムを一枚除いてイドラに全て渡した。

「これは?」

「羂索が最初に言ってたエナジーアイテム。
これでデクを思いっきりパワーアップして叩きこむ!
戻ったらこっちはデクに渡して。
で、この回復の奴だけはキリトにあげて」

そう言って最後の一枚もイドラの手に置いた。

「それは良いけど、あなたはどうするの?」

「もうちょっとだけあっちの建物の方を探して集める物集めておくわ。
まだ幸運値の上昇は終わってないみたいだし、後でリボンズ使われて逆転されたとか笑えないし」

「……分かった。
そのかわり絶対無事に戻ってきなさいよ」

「当然。あとでね!」


673 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:05:50 okguXYWI0
五枚のエナジーアイテムを受け取ったイドラを見送り、亜理紗も反対に走りだす。

「あった!マッスル化に……混乱だっけ?」

自販機の上や階段の踊り場などを巡りながらエナジーアイテムを集めていく。

「七枚か。これだけあれば……っ!」

幸運血の上昇もそろそろ切れそうだったこともあり、戻ろうと走ろうとした亜里紗は何げなく横を見て

「っ!」

こちらに銃口を向けるNPCモンスターの存在に気付けた。
手元にあった一枚のエナジーアイテムを投げながら身をかがめる。
バララララと戦争映画でしか聞いたことのない銃声と同時にさっきまで亜里紗の頭の有った場所を銃弾が通り過ぎて壁に穴をあける。

「だったら!」

<高速化!>

スピード値を上昇させて遮蔽物から飛び出し、持ち前のパワーで思い切り地面を踏みしめ飛び上がる。
こちらに気付いたNPCモンスター、ジン長距離強行偵察複座型が銃口を向け直すがもう遅い。
すくい上げる様に放たれた斬撃で逆袈裟に斬られたジンは、亜理紗に踏み台にされ蹴とばされると同時に爆散した。

(よし!一体だけだったみたいだしさっさと合流を……)

そんなことを考えながら着地に意識を裂いた瞬間、亜理紗の背中から腹を貫く様に紫色の光矢が貫いた。



【成見亜里紗@魔法少女すずね☆マギカ 死亡】



桃色の光と共に変身解除され、異能どころか肉体を支える力さえを失い真っ逆さまに落ちる亜里紗を仮面ライダー001こと綾小路清隆が見送った。
そしておかしなポーズで地面に横たわる亜里紗の頭にもう一射光の矢を撃ち込む。
灰色の脳漿ぶちまけながらねじ切れた頭がツーバウンドほど転がって動かなくなった。

(有効射程距離ギリギリからだったとは言え、背骨を射抜いた上に落下時に受け身を取れた様子もなかったから十中八九死んでるとは思っていたが、間違いないな)

実は清隆はルルーシュより言い渡された偵察任務の一環でこの発電所にリボンズより早く来ていた。
そしてティエレンとの戦闘の光でリボンズの存在に気付いた彼は1人でダブルオークアンタ・フルセイバーに喧嘩を売るような真似はせず、仕留めるならば確実な暗殺を決めるべきと判断。
様子をうかがっていた所デクたちがやってきたという訳なのだ。

(しかし全員分かれてくれたのは行幸だったな。
ステルスジン経由で知れた会話内容から推察するに特にルルーシュ様と相いれないだろうこいつを始末できた上にレジスターと令呪のサンプルを確保できたのも大きい)

亜里紗の令呪の宿る手の手首で切断し、レジスターは肩から腕を切断して抜き取る。
支給品を自分のリュックに移し替え、亜理紗のリュックに彼女の手とレジスターを入れ、さらに自分のリュックに仕舞うと清隆はその場を後にすることを選んだ。
会話を至近距離で聞かせる必要が合った都合上、ステルスジンはフルセイバーとデュエルの戦闘に巻き込まれて破壊されており、これ以上は捨て札に使える駒が居ない。

「……思ったより、あっけなく死ぬんだな」

数時間前にルルーシュにその気が有ったら情報を抜き取るだけ抜き取られて殺されてたかもしれない自分も、割と簡単にこうなるかもしれない。
と、どこか他人事のように思いながら最後にもう一度だけ死体を一瞥し、清隆はテレビ局に戻った。


674 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:06:09 okguXYWI0
【エリアE-7/発電所 職員用宿舎付近/9月2日午前9時】

【綾小路清隆@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:正常、絶対遵守のギアス(極大)
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:フォースライザー
   ライジングホッパープログライズキー
   ザイアスペック
   アタッシュアロー
令呪:残り三画
道具:ホットライン、成見亜理紗のランダム支給品×0〜2
   軽井沢恵のランダム支給品×1、成見亜理紗のレジスター
   成見亜理紗のリュック、エナジーアイテム×5(種類不明)
思考
基本:ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを利用して自分の夢を掴む
00:『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアへの質問には包み隠さず答える』
01:ルルーシュに仕え、このゲームをひっくり返す。
02:堀北ら知り合いへの対処はその時次第。
03:ルルーシュの仮面ライダーとして諜報活動を行う。
04:ドラえもんの持つ情報がルルーシュ様にとって有益だといいんだがな
05:人って思ったよりあっさり死ぬんだな……。
06:令呪とレジスターのサンプルを持ち帰る為に一度テレビ局に帰投する。
参戦時期:少なくとも船上試験よりは後
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力を無効化する異能力をかけられない限り、新たにルルーシュのギアスの影響を受けることはない代わりにルルーシュからの質問に包み隠さず答えます。
※ザイアスペックでの通信はルーター無しでの場合同エリア内に居なければ不可能なようです。
※成見亜理紗のリュックには成見亜理紗の手首(令呪付)と成見亜理紗のホットラインが入っています。
※エナジーアイテムの種類に関しては後の書き手様にお任せします。


675 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:06:33 okguXYWI0
縦横無尽に宙を駆けるソードビットを二振りの剣で弾きながら本体の振るうGNソードVやビームにも対応し食らいつく。
だがリボンズが纏うのは片や外宇宙より這い出ずる未知の脅威を殲滅すべく開発された現行最強のガンダムを超えたガンダムであるクアンタ・フルセイバー。
対してキリトが纏うのはいくら各動力仕様に換装されているとはいえコズミック・イラのファーストガンダム、つまりリボンズの世界での0ガンダムに相当するデュエルガンダムだ。
あまりにも根本から差がありすぎる。
それをどうにかSAOから培ってきた剣技と反射神経だけで捌いているのだからキリトも一角の戦士と言えよう。

「実に惜しいね。
ただの人間にしては随分と良く動く。
今からでも気が変わったと言うなら僕の下で働かないかい?」

「なに勝った気でいるんだよ!」

再び武器を握り直して駆けるデュエルに大剣モードに合体させたGNソードⅣフルセイバーが一刀の元に斬り捨てた。

「がっ……!」

光と共にアーマーが解除され膝をつくキリト。
リボンズの口角がガンダムを下したという優越感で吊り上がる。

「キリガヤカズト、身をもって理解しただろう?
僕が一番ガンダムを使えるんだよ。
まだ気が変わらないと言うなら、仕方ない。覚悟!」

生身のキリトにGNソードⅣフルセイバーが振るわれる。

「光求め道を成せ!地精の進撃!!トリルノーム・ダイバー!!」

コンクリートを固めて生成されたドリルが迫る。
リボンズはGNドライヴ搭載機特有の浮遊機動でこれを簡単に避けると剣を振るってドリルを破壊。
だがイドラにとって一瞬でも狙いをキリトから逸らせれば十分だった。

「月夜も閉ざす!安静の外套!!オーバー・シェイド!!」

黒い六角形のエネルギーが組みあがりキリト、そして呪文を唱えながら滑り込んで来たイドラを包んだ。

「無駄なことを!」

GNガンブレイドで粒子ビームを撃ち込むリボンズ。
だが闇色の結界は悉くそれを弾き飛ばした。

「なんだと?」

これはリボンズ、そしてそれどころか呪文を唱えたイドラにすら知り得ぬことだがこのゲームでは刀使の中では最も未来から呼び出された十条姫和に支給された術式のように本来の物とは違う燃料でもオリジナル同様に動かせるケースがある。
これは一見元々なんの異能ももたない華鳥蘭子が術式と同時に呪力を得ていたケースと矛盾するように思えるが、蘭子の場合デクの世界で言う所の“無個性”だからこそ異能を許容するキャパシティが元々御刀が必要とは言え幽世に干渉する力を持っている姫和よりはあると言うことなのだろう。
さて、少し話がそれてしまったが何が言いたいかというと、様々な能力や道具が必要に応じて規格を合わせられており、オーバー・シェイドも魔力を断絶する結界から異能や異形の力の源を断絶する結界に結果的にチューンナップされているのだ。
その為、GN粒子での攻撃は(イドラの根性次第で)大体弾くことができる。

「00ガンダム……もっと言えばエクシアを源流に持つこの機体を前にGNフィールドモドキで守勢に回ろうとは。
身の程知らずめ!」

もう一度武器をGNソードⅣフルセイバーに切り替え斬りかかる。
じわじわと両面を削られ終に中まで刃が達した時、結界が勝手に消えた。
同時に無数のミサイルがリボンズに殺到する。
GNソードⅣフルセイバーの刀身を盾代わりに全弾受け止めながら距離を取る。
見ると少し息は上がっているがまだ余力のあるイドラと、先ほどとは違う姿になったデュエルガンダムが居た。


676 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:07:27 okguXYWI0
「その姿は……」

「デュエルガンダム・アサルトシュラウドっ!
初戦は俺のワン・ダウンだが……ここあらはラウンド2(ツー)だ!」

「無駄なことを。
そんなぺら布一枚着こんだ程度、ツインドライヴの前には何の足しにもなりはしない!」

「どうかな!?」

イドラから受け取った回復のエナジーアイテムで体力の戻ったキリトは五連装ミサイルポット、固定式レールガン、そしてビームライフルとグレネードランチャーの一斉射撃をつゆ払いに接近し切り結ぶ。

「結局近接一辺倒じゃないか!」

「覚えが悪いんでね!」

シャドーセイバーとGNソードⅣフルセイバーによる斬撃の応酬が始まる。
出来ればソードビットで増加装甲や増設スラスターを早々に剥いてやりたいところだが、そちらは新たにやってきたイドラに回す。
目の前の敵と白兵戦を行いながらビットを操り銃御無人の攻撃を仕掛ける。
最強のマイスタータイプであるリボンズだからこそ出来る芸当だ。

「君もあきらめが悪いね!」

「待たせてる人たちが居るからな!」

「良いコトを聞いた。
君も殺して僕の武器にしてあげよう!
コイツのように!」

そう言って武器をGNソードⅣフルセイバーから刹那の遺体を変化させた剣に切り替える。

「武器にするって、まさか特権魔法がソードスキルに!?」

「人類にしては理解が速いじゃないか。
そうとも。
これが救世主である僕に逆らった者への罰だよ!
僕の武器として、かつての仲間の生き血を啜る!」

「悪趣味野郎が!」

至近距離で放たれたレールガンを首をかしげて避けたリボンズはそのまま身を捻って大ぶりの斬撃を放つ。
キリトも身を捻って増加装甲の部分で刀身を受け止めダメージを抑えた。

「やるね!」

「何のためのフルアーマーかって話だよ!」

もう使い物にならなくなった装甲を捨て、更に肉薄する。
だがソードビットをイドラが引き受けてくれているとはいえ相手は百戦錬磨のリボンズ・アルマーク。

刃が振るわれるたびに装甲をはがされ、不意打ち気味に放つミサイルやレールガンも悉く対応される。

「こんのぉ!」

「無駄なあがきはっ!やめたらどうだい!?」

GNガンブレイドに装備を切り替え逆手刃の連続攻撃がキリトを襲う。

(クソ!残りエネルギーが!)

デュエルを始めとしたGAT-Xシリーズに採用されるフェイズシフト装甲、そしてその発展形であるTP装甲やVPS装甲は相転移の意地の為に電力供給が必須となる。
つまり増加装甲をはがされ連続攻撃を叩きこまれているこの状態はいくら核動力とは言え一時的なエネルギーの枯渇を起こしかねない。

「キリト!」

「よそ見!」

「しまった!」

デュエルのフェイズシフトダウンに気を取られたイドラに牽制攻撃をさせながら引き戻したソードビットとGNソードⅣを合体させGNランチャーモードへ移行。

「諸共に吹き飛ぶと良い!」

こんなものでもないよりましと判断したのか最初に投げ捨てた対ビームシールドを構え直す。
イドラもオーバー・シェイドをもう一度唱えるが、数秒と持たずに突破され、踏ん張るのもやっとなデュエルに盾越しとは言え粒子ビームが炸裂した。
木っ端みじんに吹き飛んだシールドの残骸が雨のように降る中、膝をついたキリトのアーマーが解除される。

(削ってやっていたとはいえ増加装甲に救われたか。
だがもう一撃で仕留める!)

再び粒子をチャージしようとした時、リボンズの頭上に影が差す。

「真――アル・フェニックス――――ッ!!」

不死鳥と化したアルカイザーが迫っていた。

「無駄なことを!ソードビット!」

GNランチャーから分離したビットがアルカイザーを達磨にせんとあ駆け抜ける。
だがデュエルの装甲すらアバンギャルドに引き裂く刃は悉く弾かれた。

「なんだと!?」

「鋼鉄化二枚重ね掛けだぜ!」

「ふん!一回凌いだ程度で!」


GNソードⅣフルセイバーに再度合体させ今度こそ貫こうとするが、いつの間にか下から迫る人影があった。


677 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:08:31 okguXYWI0
(こいつは確かデクと呼ばれていた……真っ先に逃がされていたはずなのになぜ?
いや、まさか!)

デュエルガンダムが解除されたキリトの方を見る。
気絶寸前のその顔はしてやったり、とでも言いたげな薄い笑みが浮かんでいる。

(格ゲーには、ストライカーが付き物だろ?)

(あの啖呵はブラフか!
コイツこそが切り札だから温存した!
むしろエナジーアイテムでの強化まで!)

「デク!受け取って!」

<マッスル化!マッスル化!>

今しがたイドラが投げ渡した分も含めて8重の強化。
デクが見つけた分の回復は既にアルカイザーに託している。
あとは、限界まで練り上げた最強の矛を不遜にも全ての刃(フルセイバー)を名乗る救世主に叩きこむだけ!

「擬似500%……DELAWARE!!!!!」

風圧だけでソードビットが、それどころか手持ちの武器も吹き飛ばされ、体の方も崩しを入れられ構えも解かれる。

(マズイ!GNフィールドを!)

「DETROIT SMAAAAAAAAAASH‼‼‼‼‼‼‼」

どんな曇り空も吹き飛ばす最強の拳が振り抜かれる。
対話を拒絶する偽りの救世主が、最強から受け継ぎ最高を目指す未熟ながら本物のヒーローに打ちのめされた。

「がっ!ああああ────っ!」

はるか彼方に吹っ飛ぶリボンズを見送りながら着地した瞬間デクは崩れ落ちた。

(こ、これはっ!まさか羂索、“ワン・フォー・オール”に制限を!?
腕が痛いっ!痛すぎて、立って、られない……っ!)

いくらエナジーアイテムで底上げして極力負担を削った上で瞬の間最大火力とは言え、500%だ。
本来のデクなら“OFA”とそれに蓄積した個性の併用、そしてそれらの本来のポテンシャルを発揮すれば一撃ぐらいならどうにかなるかもしれないが流石にこの場ではどうしても代償は避けられなかったようだ。

「お、おいデク!?大丈夫か!?」


「全く、異世界人の男ってなんでどいつもこいつも無茶ばかりするのかしら!?」

傍で倒れるキリトに回復魔法をかけながらイドラは思わず愚痴った。

「アルカイザー、そっちの方は?」

「気絶してるだけだ。
パワードスーツが有ったとは言え一人で粘ってくれてたキリトほどじゃないと思うぜ」

「そっか。
ひとまず屋内に移動しましょう。
アリサがエナジーアイテム集めてくれてるはずだから、後のことは合流してから考えましょう」

そう言ってどうにかデクを背負ったイドラとキリトに肩を貸すアルカイザーは移動を始めた。
亜里紗の死体がある方に。


678 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:09:23 okguXYWI0
【エリアE-7/発電所/9月2日午前9時15分】

【キリト@ソードアート・オンライン】
状態:気絶、ALOアバター、疲労(大)、ダメ―ジ(大)
服装:いつもの服装
装備:シャドーセイバー(長)@仮面ライダーBKACK RX
   デュエルガンダム(核動力型)の起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
   シャドーセイバー(短)@仮面ライダーBKACK RX
思考
基本:このゲームを攻略する。
00:……ラウンド2、『俺たちが』貰ったぞリボンズ
01:態々俺に一対の剣を支給するってことは、間違いなく羂索の言ってた茅場は茅場晶彦だろう。今回で完全に決着をつけてやる。
02:デクたちと共にクルーゼや羂索、仮面ライダーを知る者たちを探す。
03:アスナたちやデクたちの仲間、ガッチャードなどの協力できそうな者を探す。
04:PoHやギギストにダークマイトだけでも厄介なのにグリオンにノワルにアルジュナ・オルタ……休む暇なしかもな。
05:ごめん、間に合わなかった……。
06:この短剣、もう投げるのはやめとこう。
  なんか毎回敵に拾われる。
参戦時期:少なくともマザーズロザリオ編終了後
備考
※アバターはALOの物です。

【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト】
状態:気絶、制限によるOFAの反動(大)
服装:デクのヒーロースーツ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト
装備:同上
令呪:残り三画
道具:デクのランダムアイテム×1〜2、ホットライン
   将来の為のヒーロー分析ノート(現地調達)
   筆記用具(現地調達)、軽井沢恵のランダム支給品×1
   失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ゼロワン、電王)
   裁断済みのゼインカード(ストロンガー、アバドン)
思考
基本:羂索らこのゲームを仕掛けた一味を逮捕する。
00:羂索め、“OFA”に制限を……
01:間に合わなかった!ごめんなさい……。
02:キリト、成見さんと行動する。
  切島君やキリトやイドラさんの仲間との合流を目指す。
03:イドラさんたちから得られた情報も元に考察を進めたい。
04:ギギストやステイン、ダークマイト、グリオンに翼竜のヴィラン(冥黒ノノミ)、そしてノワル達は要警戒
参戦時期:映画終了直後
備考
※“ワン・フォー・オール”は制限されているがエナジーアイテムや“発頸”を活用すれば瞬間最大威力でなら100%を発揮できるようです。
ただ500%ともなると相応の『反動』を受けてしまいます。


679 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:09:40 okguXYWI0
【イドラ・アーヴォルン@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:疲労(中)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)、ノワル戦のトラウマ(極大)、快楽の残滓
服装:黒い露出度高めのローブ
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
   エナジーアイテム×2
思考
基本:殺し合いを止めて元の世界へ生還する
01:ビクトリー・キズナバスターに無理させすぎた……!
02:ノワルとアルジュナ・オルタに対して最大限警戒。
  今戦ったリボンズやダークマイトとかも十分注意ね。
03:ひとまずデクたちを休ませてあげないとね
04:アリサとも速く合流しないと。
05:マジアベーゼは仲間になってくれると思ってるわ。
  ただなんで同じ学校に通てって気づかないのよ!
  うちのレッドなんて一週間でバレたのよ!?
参戦時期:フォリング防衛戦(33話)終了後〜35話終了
備考
※ビクトリー・キズナバスターはF-7空中で大破しました。
※主催者による調整により一部魔法の能力が魔力への干渉が各世界における魔力に相当する物への干渉になっている場合があるようです。
※エナジーアイテムの種類は後の買い手様にお任せします。

【レッド@SaGa Frontier(サガフロンティア)】
状態:アルカイザーに変身、疲労(中)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)、ノワル戦のトラウマ(極大)
服装:アルカイザーのコスチューム
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、通り抜けフープ@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして殺し合いを止める
01:ひとまずデクたちを休められる場所に向かう。
02:ノワル、アルジュナ・オルタに対して最大限警戒。
03:PoHにダークマイトにギギストとかノワルに及ばないだけで普通にヤバい連中もまあまあ居るとか最悪だろ。
04:マジアベーゼはきっと仲間になってくれる!
  ただトレスマジアの正体に関してで一悶着ありそうだな……。
参戦時期:本編終了後〜アルカールにヒーローの資格を剥奪される前
備考

【支給品解説】
・デュエルガンダム(核動力型)の起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
…軽井沢恵@ようこそ実力至上主義の教室へに支給。
地球連合軍が開発した試作機の一機で、全てのGATシリーズのたたき台となったコズミック・イラのファーストガンダムとでも呼ぶべきガンダム。
カラーリングはグレーとブルー。
決闘の名の通り白兵戦に特化した対MS装備が目を引く機体。
だが機体その物の汎用性と装備のバランスが重点を置かれているだけあって装備はグレネード付きビームライフルにビームサーベルが二本、対ビームシールドに頭部内臓のバルカン砲のみと手数が少ない。
その為、ザフト軍に鹵獲された後は肩部にミサイルポットとレールガンを追加すべくアサルトシュラウドによるフルアーマー化が行われた。
第二次ヤキンの戦いの後はしばらく日の目を見ることはなかったがファウンデーション事変にて核動力と兄弟機のブリッツの武装データをフィードバックした新型アサルトシュラウドにミーティアを引っ提げたデュエルブリッツガンダムとして再び戦場を駆けた。
この時型式番号がGAT-X102からZGMF-1027Mに改めている。
当ロワではパワードスーツ化に当たって装着時にノーマルのデュエル、アサルトシュラウド、デュエルブリッツのどれを装着するか選択できるようになっている。


680 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:09:57 okguXYWI0
「ぐっ……うぅうう……人間がぁ……っ!
人間如きがこの僕をっ!」

建物を貫通し、なおも吹き飛ばされたリボンズは残っていたGN粒子を慣性緩和に回し、どうにかブレーキを踏むことが出来た。
だが機体ダメージ、何よりリボンズ本人のダメージは無視できず、しばらく動くことはできないだろう。

「はぁ……はぁ……いや、考えてみればこれは殺し合いだ。
ならば刹那・F・セイエイ以外にも居なければおかしい。
あの死体人形のように支給品で下駄をはかずともこの僕に対抗可能な……純粋種のイノベイターに勝らずとも劣らずの力を持った者が。
でなければこの僕の独走になる」

ならばルルーシュに関しても最大限の警戒が必要ではないだろうか?

「仕方ない。このダメージのこともある。
もう少し見に回らせてもらうしかないか……」

そうつぶやくとリボンズはもう一度休める場所を探して歩き始めた。


681 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:10:14 okguXYWI0
【エリア?-?/市街地/9月2日午前9時15分】

【リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、主催やルルーシュ、仮面ライダーエターナル(大道克己)、デクへの苛立ち(中)
服装:普段の服装
装備:ダブルオークアンタ・フルセイバーの起動鍵@機動戦士ガンダム00V戦記
令呪:残り三画
道具:刹那・F・セイエイの遺体が変化した剣、NPCの遺体が変化した剣(最低10本はある)、0ガンダム(実戦配備型)の起動鍵(真っ二つ、現状起動不能)@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン×2、刹那・F・セイエイのレジスター
思考
基本:恭順を望む参加者以外の全てを皆殺しにする。
01:あの死体人形(大道克己)といい、緑の少年といいやってくれる!
02:ソードスキルを用いて剣を増やして行くとしよう。
03:あの2人(黒崎一護、タギツヒメ)は次は確実に殺す。
  その時はこの剣を見せてあげよう。
04:…僕は用済みの、純粋種の踏み台なんかじゃない…!!
05:これは殺し合い……ならば刹那・F・セイエイに勝らずとも劣らない者も参加していて当然か。
06:ルルーシュといい彼女(聖園ミカ)達といい、傲慢な人間しかこの殺し合いには居ないのかい?
07:発電所のGNドライヴは、一から造った物か?
  だとすれば君たち(主催者陣営)を生かしておけないね。
08:レジスターは手元にあるが……このダメージだ。
  今回は見に回るしかなさそうだね。
参戦時期:第25話「再生」にて、刹那に肉体を討たれた後から。
備考
※支給されていたソードスキルにより、上位竜ランサーの異能@月が導く異世界道中を習得しています。
※イノベイドを脳量子波で操る能力は制限されています。
 至近距離でないと発動しません。
※脳量子波による思考読み取りも至近距離でないと発揮されません。
※天ノ川学園高校内にて何を発見したか等については後続にお任せします。
※デクの疑似500%DELAWARE DETROIT SMASHを喰らって大きく吹き飛ばされました。租界エリア内のどこかではあるようです。

【全体備考】
※エリアE-8の発電所はガンダムナドレのGNドライヴで発電しています。
この発電所の地下施設が一気にぶち抜かれてGN粒子が漏れ出ようものならレジスターが電波障害により機能停止し全滅。
ゲームオーバーとなります。

【NPCモンスター解説】
・ティエレン
…旧共産圏を中心に構成される国家群、人類革新連盟が開発した主力量産型モビルスーツ。
Eカーボン製の重装甲と大型火器で武装した重量機でその名は鉄人を意味する。
基本武装は長滑腔砲と6連砲身式機銃、カーボンブレイド。
その他作戦やバリエーションに応じたオプション装備がある。

・UNIONフラッグ
…新大陸やオセアニア、日本などで構成される国家群、太陽エネルギーと自由国家の連合(通称UNION)が開発した次世代型可変MSの一種。
飛行形態を持つとあってかなり細身だがカスタマイズと武装lそしてパイロット次第ではガンダムタイプを相手に戦えるポテンシャルを秘めている。
001stシーズン時点でのUNIONの最新鋭機とあって配備数は少なく、これを駆るパイロットはフラッグファイターと呼ばれる。
基本武装はリニアライフル、ソニックブレイド、ディフェンスロッド、対人機銃、ミサイルなど。


682 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/25(火) 18:11:02 okguXYWI0
投下終了です。
タイトルは C#0 です。
こう書いてケースナンバーゼロと読みます。


683 : ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 18:56:44 LC6n0g5M0
投下お疲れ様です。自分も投下します


684 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 18:59:22 LC6n0g5M0
「拙者が死んでも豊臣は不滅なり……!」
「わぁーったわぁーった。良いから死んどけって」

時代錯誤な相討ち覚悟を鼻で笑い、無慈悲な刃を振り下ろす。
見上げる程の大男と言えども肉体構造は人間のソレに変わりない。
首を刎ねれば生命活動も停止。
崩れ落ちた標的から興味無さ気に視線を外し、ざっと見回すと死体が複数転がっている。
軽量の鎧に刀や槍、時代劇の撮影現場でしかお目にかかれない恰好の骸だった。
これらもまたNPCの一種。
覇王率いる豊臣軍、或いは覇王亡き後に凶王が率いた石田軍の兵。
参加者として登録済の秀吉ならともかく、他の参加者は等しく敵。
女子供だろうと見境なく襲う、まるでかの第六天魔王の軍勢の如き暴挙へ出た。
と言っても襲った相手は術師殺しの魔人。
文字通り千切っては投げであっさり全滅に追いやられ、残ったのは物言わぬ肉袋と粉砕された得物の数々。
その中で唯一、他とは明らかに違う長刀のみ。

「終わったか?」
「おう。この程度の連中相手なら追加料金は取らないでやるよ」

軽薄な笑みと共に言われた龍園は、不機嫌そうに舌打ちを一つ返す。
むせ返るような死臭が立ち込めており、意識せずとも険しい顔付きとなった。
NPCとはいえ見た目は人間。
カラスに突かれたゴミ袋の中身のように、血やら内臓やらが散乱していれば笑顔になろう筈もない。
今更この程度で怖気づく男でもないが。

レン達との情報交換を終えテレビ局に向かう道中、NPCの一団に襲われた。
起きたことを説明するならそれが全て、肝心の結果は見ての通り。
数だけ揃えた所でグラファイトやかの呪霊操術使い、若き最強に遠く及ばない連中へ遅れを取る訳がなく。
名だたる一騎当千の武将にも劣らぬ豪快さで、全滅へ追いやったのである。


685 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:00:07 LC6n0g5M0
「二人共ちょっといい、か……」

龍園に遅れる形で顔を出し、目に入った惨状へ姫和も顔を顰める。
刀使の活動を続ける中で時には「間に合わなかった」事態も無いとは言えず、凄惨な光景を見るのが初めてとは言わない。
しかし、進んで見たいかどうかは別。
死体へ興奮を覚える趣味は持ち合わせておらず、NPCだと分かっても良い気分にはならなかった。

「偵察に向かわせた玉犬が戻って来た。参加者を見付けたらしい」

今日初めて戦いの場に駆り出された少女でない以上、動揺も長続きはしない。
あくまでNPCと割り切り、途切れた内容の続きを伝える。
機動力を活かし攻撃へ用いる以外にも、玉犬の使い道は多い。
甚爾がNPCを蹴散らす最中、エリア内の探索を頼んでおいた。

「数は?」
「一人らしい。間違いないか?」

確認を取ると黒い毛並みを揺らし、肯定するように吠える。
働きへの労りを籠めて姫和に撫でられる式神を横目に、龍園は次の動きを即座に決定。
情報や交渉次第では武器の入手、若しくは相手との協力。
参加者との接触により得られるメリットは大きい。
「乗っている」側の可能性も考慮しつつ、無視する選択は最初からない。

「ああ待った、先にこいつを持っとけ」

出発前に甚爾から長刀を投げ渡され、チラと死体の山を見やる。
ルールにもあったドロップアイテムとやらか。

「お前の言う御刀とかってのじゃないようだがな。気に入らないなら突っ撥ねても良いぜ?」
「…いや、慣れた得物があるのは有難い。受け取っておこう」

鞘から抜き軽く振るうと、写シとは違うも力が漲る感覚があった。
加えて見覚えの無い技の出し方が次々に浮かび、ソードスキルの一種と驚かずに受け入れる。
刀使の術は使えずとも、やはり刀剣類が手元にあればやれることも多い。
これなら調伏の難易度もある程度下がり、時間を見付けて一気に手数を増やせるかもしれない。
慣れた得物を姫和が持つのには龍園からも反論はない。

劇的と言うには大袈裟だが戦力強化は叶った。
後はこれから会う参加者がどう出るか。
式神の案内に従い、三人は骸にせを向け歩き始めた。


686 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:01:42 LC6n0g5M0
◆◆◆


どれくらい走ったか、城を逃げ出しどれ程経ったか。
そういったものを考える余裕は微塵もなく、焦りと恐怖に手を引かれさとうは駆ける。
持ち得る走力とスタミナの限界を超え尚も止まらない。
少しでも遠ざからなくては、一刻も早く見付けなくては。
逸る感情がさとうの中から疲労の二文字を消し去り、油をたっぷり差した歯車の如く動かす。

「……あっ!」

とはいえ、肉体的にさとうはどこまで言っても常識の範囲内を出ない。
誤魔化しは長続きせず、足がもつれアスファルトと顔が一気に接近。
咄嗟に手を突き出し転倒は防ぐも、思い出したように全身が重くなる。
制服の下に汗が浮かび、ベタつく感触が気持ち悪い。
はっはっと犬のような荒い呼吸を繰り返せば、喉の渇き水分不足を訴えて来た。

(落ち着かないと……)

突き付けられた疲労は無視できず、逸る心を幾分鎮める。
駆けずり回ってでもしおを見付けたいのに変わりはない、しかし体が使い物にならなくなっては元も子もない。
思うようにいかない現状へ苛立っても、しおがひょっこり顔を出す展開にはならない。
少しの間だけでも休み、息を整えねば。

民家の一つへ足を踏み入れ、無人なのを確認。
外から見られない位置へ腰を下ろし、ふっと息を吐く。
動悸の激しさも徐々に治まり、ややあって台所へ移動。
適当なコップに水を汲み口を付けると、一気に飲み干した。
自分で思ってた以上に喉が渇いていたらしく、二杯目も同様に流し込む。

「ふぅ……」

潤いを取り戻し小さく息を零す。
そのまま床に座り込んで、ぼんやり天井を見上げる。
ゆっくり自分の胸に手を当てると、一定の感覚で伝わる鼓動。
大丈夫、まだ生きている、しおを残して死んだりなんかしていない。
死んでもおかしくない目に遭ったが、そうはならなかった。
唯一無二の愛を奪われそうになった恐怖は、忘れたくても忘れられない。
けれど未遂に終わり、自分の瓶には甘い砂糖菓子が詰まったまま。
体だって散々弄ばれたけど、心は微塵も――


687 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:02:28 LC6n0g5M0
「……っ」

魔女の憎たらしい笑みが浮かび、歯をキツく噛み締める。
あの女はここにいない、自分の体に触れていない。
しかし一度与えられた快楽は、心で拒否しても体には染み付いてしまった。
既に感度上昇の魔具は取り除かれたというのに、下着で隠した箇所が疼く。
胸の突起は硬く尖り、内から熱が漏れショーツの色を濃くする。

「最悪……」

吐き捨てても快楽の残滓は纏わり付き消えない。
羽毛で優しく撫でられるような、絶頂には程遠くもどかしい感覚。
自分で慰め達すればマシになるかと考えるも、すぐに嫌悪が滲み出す。
家主不在の家なら文句は言われまい、乱暴に冷蔵庫を開けて物色。
カップアイスを頂戴し、スプーンで掬い無言で口へ。
ミントの爽やかさとチョコチップの甘さ、それに冷たさが今は有難い。
体を苛む熱を少しでも誤魔化すのに丁度良い。
最後の一口を舌で溶かし、唇に残る甘さをチロリと舐め取り、

「おやつタイムに邪魔しちまったか?」
「っ!?」

聞こえる筈のない声に両肩が跳ね上がる。
バッと見上げれば一体全体いつからそこにいたのか、知らない男が一人。
長身なうえに服越しでも分かる逞しい肉体。
その気になればさとうなど容易く押さえ付けられるだろう男は、何をするでもなく見下ろしている。
いつ入って来た、ここまで近付かれるまでどうして気付けなかった。
湧き出す疑問への答えはなく、代わりに聞こえたのは眼前の男とは別の声。

「こいつは…当たりを引いたってとこか?」

男の後ろから顔を出す、これまたさとうの知らない参加者。
不良染みた外見の少年と、ロングの黒髪が特徴的な年下の少女。
こちらを見つめる二人の顔には、驚きが表れていた。

ポケットのデッキを意識しつつ身構えるさとうへ、瞳を細め少年が口を開く。
少なくとも、今はまだ事を荒立てるつもりはない。

「まずは座ってから始めようや。誰彼構わず喧嘩売るのが、賢くないってくらいは分かるだろ?松阪さとう」


688 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:03:36 LC6n0g5M0



息が詰まりそうな光景だった。
家族団欒の食卓の場である筈の、キッチンテーブルを挟んで睨み合う男女。
さとうの赤い瞳に射抜かれても動じた様子はなく、龍園はリラックスした体勢。
隣では姿勢を正す姫和、唯一立ったままの甚爾は他人事のように壁へ寄り掛かっている。

「……」

貝の如く口を閉じ、湧き上がる苦みと疑問へ頭を悩ませる。
さとうは目の前の連中と一切面識がない、にも関わらず向こうは初対面でこちらの名前を言い当てた。
唯一名乗ったアーリャはとっくに死んでおり、聞き出すのは不可能。
では誰から聞いた、思い当たる節は一つ。
自分の探し人であり、失われるなどあってはならない唯一無二のあの子。
しおと接触しこちらの情報を聞き出したのか。

「そう睨むなよ。別にお前を襲おうって訳じゃねぇんだ。最初の二人と違ってな」
「……」

ピクリと、ほんの僅かに肩が揺れ動く。
最初の二人が指すのは須藤とニーナ、見せしめに選ばれた不幸な少年と少女。ではない。
「襲おうとした」、そんな言い方をされては流石に分かる。
会場に解き放たれて間もない頃、性欲の捌け口で自分を狙った男達。

(見られてた……?)

排除を決めるまでに時間は掛からなかったが、あの時周囲に他の参加者はいなかった筈。
どちらか片方が生き残ってあれこれ言い触らしたならまだしも、両方死んだ以上有り得ない。
ならどうやって、と考えるも自分がこれまで会って来た常識外れの者達を思い出す。
超人、或いは化け物と呼ぶほかない参加者。
カードデッキや起動鍵など未知の技術が組み込まれた支給品。
そういったモノが存在する以上、姿や気配を隠し殺害現場を見ていた者がいても不思議はない。


689 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:04:32 LC6n0g5M0
「あそこにいたの?」
「さあな、ひょっとすりゃ透明人間に教えてもらったのかもな?」

ふざけた言葉ではぐらかされ、瞳が鋭さを増す。
気弱な相手ならこれだけで縮み上がるものだが、生憎龍園はこの程度で動じない。
殺気だった視線を受け流し、直球で本題に移る。

「重要なのは、お前が二人参加者を殺したって俺らが知ってることだ。まあこんな状況でテメェの性欲を優先する奴らは、どの道長生き出来なかったろうけどよ」
「…それで?私への脅しに使うつもり?」
「交渉の材料には使うつもりだな。まどろっこしいの抜きで言うが、俺らと手を組む気はあるか?」

共闘の提案に口を噤む。
手を組んで他の参加者を殺して回る、ということではないだろう。

「こんなふざけた場所で死ぬ気はないが、脱出しようにも一人でやるのは現実的じゃねぇ。それくらいはお前も分かってんだろ?」
「だから私を引き入れたいってこと?」
「嫌なら断っても構わねぇがな。ただ――」

一旦区切ってホットラインを取り出す。
手早く操作し望みの画面を表示、一点を指でコツコツと叩く。
人差し指の先にある名前に、ギシリとさとうは奥歯を噛み締める。

「相手の男どもがクソだったとしても、速攻で殺せる奴は警戒されて当然だ。他の参加者にも知られたらこう思うんじゃねぇのか?
 『こんなヤバい女が探してるしおちゃんも、危険な奴に違いない』ってな」
「…………」
「それか、運良く保護されたとしてもお前の話を聞いたら『松坂さとうのような危険人物にしおちゃんは会わせられない』ってなるかもな」

くだらない戯言とはあしらえない。
さとうは愛の為ならあらゆる手を使うのに躊躇はないが、自身の行いが世間一般の倫理から外れているのも自覚している。
例えば先のアーリャが運良く生き延びしおを見付けた場合、素直にさとうと引き合わせようとするだろうか。
そんなのは有り得ない、むしろさとうから保護しようとするに違いない。


690 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:05:54 LC6n0g5M0
自分が脅しを掛けられる場面は殺し合いの前からあった。
そういった時は社会的制裁を盾に優位へ立ち回ったが、ここは法もなにもない殺し合いの場。
情報面と暴力、その両方でさとうは相手に後れを取っている。
しおとの再会を阻む龍園達へ向ける瞳は、抜き身の刃のように鋭い。
当の相手は至って涼しい顔のまま、片方へ不利な交渉を続ける。

「こっちに手を貸すなら、少なくとも俺らからは大っぴらに言い触らさねぇよ。他の参加者に警戒されても、ある程度は擁護してやる」
「……あなた達も賛成なの?」

龍園から視線を外し、ここまで口を挟まなかった二人へ問う。

「手を組むこと自体は構わない。お前が無暗に人を殺さないよう、近くで監視もできる」
「俺はあくまで雇われてる身だ、依頼人(クライアント)の方針にケチは付けねぇさ」

片や少々複雑そうに、片や軽い調子を崩さずに言う。
さとうを襲おうとした二人組を庇う気は姫和にもない。
ただ些細な切っ掛けで殺しのスイッチが入るだろう少女だ、下手をすれば善人にまで凶行が及ぶかもしれない。
それならいっそ監視の為に引き入れるのも、悪い手ではない。

甚爾の方は言った内容が全て。
話が纏まるにしろ決裂するにしろ、どちらだろうと構わなかった。

(さて、どう出る?)

再び黙り込んださとうを前に、龍園も答えを待つ。
同行が無理なら、カードデッキをこちらへ譲渡出来ないかに切り替え再度交渉に臨む。
もし自分達三人を力で退けようとするなら、それでもいい。
むしろ力づくで装備を全て奪えるチャンスなのだから。
とはいえこちらに人手が足りないのもまた事実、リスクはあるが協力者を得られるならそれに越したことはない。

急かさず答えを待ち、ややって言うべき内容が組み上がったのだろう。
さとうの口がゆっくりと動き、





「――――――――――――え」





体が凍り付いたように動かなくなった。


691 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:06:41 LC6n0g5M0
おかしい、自分は今龍園に提案への返答を言おうとしたのに。
なのに言葉らしい言葉が出ず、代わりに漏れるのは震える吐息のみ。
急に何故こうなったのか、もしや龍園達が何かしでかしたのか。

「おい……こいつ、は……」

疑いはすぐに晴れた。
龍園もまた顔を強張らせ、まともに動けずにいる。
声を絞り出すのにも一苦労し、まるで病弱な老人のよう。

何が起きているのか分からない、正体不明の現象が自分達を襲う。

「うそ…………なん、で……また……」

違う、さとうは知っている。
知らない筈がない、忘れるなんて不可能。
言葉一つ紡ぐことすら困難を極める、圧倒的な存在感。
コレの正体を、消えることのない恐怖(トラウマ)を刻み付けたモノを、さとうは知っていた。

いる。
姿は見えなくとも、気配だけで理解せざるを得ない。
自分からしおの記憶を奪おうとした男が、魔女との闘争で地獄もかくやの光景を生み出した男が。

神がいる。
自分達をハッキリと視ている。

四人のいる民家が吹き飛んだのは、そう理解した直後だった。


692 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:07:56 LC6n0g5M0



気が付けば体が宙に浮いていて。
気が付けば来る衝撃に備え、体を鉄に変えて。
気が付けば背中から地面に倒れ、少女が自分に覆い被さっていた。

頭でどう動こうと考える前に、体の方が勝手に動きを見せたというのか。
民家が吹き飛び、ほぼ同じタイミングで龍園はさとう共々屋外へと投げ出された。
背を鉄に変え激突のダメージを軽減し、遅れて落ちて来た少女を受け止めた。
助けた理由に思いやりだのは一切含まれていない。
平田や一ノ瀬ならともかく、そういったお優しい行動を期待されても困る。
さとうからはまだ交渉の答えを聞いていない、協力か拒絶か、若しくは異なる形での妥協すら不明。
まだ自分にとっては生かす価値があると、そう判断しただけのこと。

「……」

やや雑に彼女をどかすも、さとうから抗議の類は聞こえて来ない。
へたり込んだまま呆然と龍園の背後を見つめ、声を掛けるも返答なしだ。

その顔が徐々に青褪めていくのが何故かは、聞かなくても分かる。
振り返らなくとも気配で理解せざるを得ない。
唾を飲み込むことすら憚れる程の、絶大なプレッシャー。
後ろを見る、それだけの行為にこうも勇気がいるなど初めて。
自分が今どのような顔なのかを、龍園は知りたくなかった。

「――――っ」

男が、そこにいた。
黒い裸身を晒し、色を失って尚輝く髪が揺れる。
地上へ降り立ち、少年少女を見下ろしている。
神に「視られた」ことがどれ程の意味を持つか、詳細に知るカルデアの二人はいない。

神の名がアルジュナと知る由もなく、龍園に出来るのは歯が砕けんばかりに噛み締めるだけ。
そうしなければ、体中の震えを誤魔化せない。
嘗て恐怖を刻んだ綾小路の暴力が霞む程に、目の前の男は恐ろしい。
人の形をしていながら到底人とは呼べぬ、魂を掌握されるが如き恐怖。
今の自分は蛇を殺した恐いもの知らずのガキじゃあない。
あの時周りで慄いていた他の大子ども達と、同じにまで成り下がった。


693 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:09:30 LC6n0g5M0
(ふ――ざけんじゃねぇ……!)

だが龍園は、恐怖への完全な屈服だけは断じて受け入れない。
コレがどう足掻いても、自分が太刀打ちできる相手でないのは分かる。
そもそも人間の領域でどうこうする自体が間違いだろう。

それでも、自分が俺て再起不能になる末路だけは認められない。
ちっぽけでつまらないプライドと言われれば、良い訳のしようもない。
しかし龍園にとっては、自分が自分である為の譲れないもの。
己を支える柱に亀裂が入ろうと、決して砕けさせはしないと神を睨み返す。

「う……あ……」

最後の一線だけは譲らない龍園を余所に、さとうは恐ろしさで言葉らしい言葉も出せない。
自分としおの生還を阻み、ハッピーシュガーライフを破壊せんとする敵。
敵意を、嫌悪を、殺意をぶつけるのが正しい。
しおとの愛を引き裂く存在なのだから、許しておける存在に非ず。

だというのに、抱く感情は恐怖一つだけ。
既に一度己が目で見、己が身で味わってしまったのだ。
自らの愛を壊される感覚を、自らの愛では届かない絶望的な力を。

(逃げ、なきゃ……)

城から脱出した時と同じく、ミラーワールドへ入れば良い。
カードデッキを翳し、鎧を纏ってガラスの中へ飛び込む。
難しい手順ではないのだ、躊躇を感じる理由はない。

それができない。
神の目に射抜かれ、取るべき行動へ何一つとして移れない。

ポケットからデッキを取り出す為の手は、脳の命令を受け付けず固まったまま。
逃げる為の足は立ち上がれず、地面に根を張り微動だにしない。
このままでは神の命じるまま動く人形にされると、分からない筈がないのに。
恐怖がこの世のどんなものより強固な鎖と化し、絡み付いて逃がさなかった。


694 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:10:42 LC6n0g5M0
「ガキをビビらせるのがそんなに面白いか?もっとマシな趣味見付けろよ」

神の支配下に置かれた空気を切り裂く、不遜な人間の声。
放つ蹴りは顔面を麩菓子より簡単に砕くも、当たればの話。
靴底が頬へ触れる寸前で、標的の姿が一瞬で消失。
あっちこっちへ目をやり探すのは、どうぞ好きにしてくださいと隙を見せる愚行に他ならない。
何より、わざわざ視界に頼るまでもなく敵の位置は判明。
隠す気の無い強大な気配が間近に迫れば、猿でも気付く。

「随分速ぇのな」

死角から攻撃すれば仕留められると、そう高を括る馬鹿の相手なら楽だ。
先手を打たれたとて何ら問題にはならない。
裏拳一発で敵の得物を砕き、ついでに命も頂戴する。
なれど今回、甚爾が取る手は回避一択。
理由は至ってシンプル、甚爾をしても避けるのに意識を割かねば死は免れない速さだから。
下手に迎撃を選択したが最後、呆気なく散らされる。
宙を泳ぐように跳び間合いから離れ、神の突き出した手刀は空振りで終わった。

どうせすぐに追い付かれるだろうが、一先ずはこれでいい。
第一優先は依頼人の安全確保。
アルジュナを引き付けるという最もリスクの高い役目を甚爾が行い、その隙にもう一人が動く。
式神の怪鳥が龍園を、召喚主の少女がさとうを運びアルジュナから遠ざける。
適材適所を姫和も甚爾も見誤らない。

「無事、かは聞くまでもないか」
「当たり前だ。個性が使えなけりゃ骨の一本はイってたかもしれねぇがな」

咄嗟に甚爾が龍園とさとうを投げ飛ばした為、民家共々吹き飛ばずに済んだ。
姫和の方は甚爾程ではないが、長刀の効果で身体能力強化の恩恵を受けた身。
自分一人くらいならどうにか逃げられた為、こうして生きていられる。

「なっ、待て!」

自分を運んだ姫和の手を振り解き、さとうは逃げるように駆け出す。
背に掛かる声も動きを止めるだけの効果は発揮されない。
アルジュナの視線が外れ、ようやっと震えたままでも動けるようになった。
ここから協力し神を打ち倒す、なんて命知らずな真似に出る気はなし。
暴れたいなら勝手にやっていればいい。

死ねばしおには二度と会えない。
彼女をこんな異常極まる島から連れ出せない、自分達二人だけの部屋には帰れない。
ここでアルジュナを倒せばしおとの生還が即座に叶うならまだしも、そうじゃないなら命を張る理由にはならなかった。
近場の民家に駆け寄り、ガラス窓から逃げるべくカードデッキに手を伸ばし――


695 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:11:19 LC6n0g5M0
「ごふっ…!?」

腹部に衝撃が走ったと思えば、直ぐ近くに膨大な熱が放たれる。
神が周囲へ漂わせた光球を一つ飛ばし、熱線により民家共々消し飛ばそうとした。
そう分かったのは玉犬を使って強引にさとうを逃がし、更には龍園を抱え再度飛び退いた姫和のみ。
機動力に優れた式神だからギリギリ逃れられたのだ、さとう一人の足では今頃死体も残ってはいまい。

「散れっ!」

抜き放った長刀を振るい、闇を纏った斬撃を飛ばす。
光球を切り裂く寸前で対象が消失、神の元へと一瞬で戻る。
仮に当たった所で破壊出来たかは怪しいが、僅かながら危機は遠ざけた。
次の手に出るなら今しかない。

「こいつは……」

運ばれた先でさとうを見れば、頭でも打ったのか気を失っている。
だが龍園の視線が向かうのは傍に転がった赤い機械。
衝撃でリュックサックの口が開いたのか、支給品の一つが落ちてあった。
気絶中の持ち主へ構わず拾い、姫和に投げ渡す。

「おいこれは彼女の……」
「起きたら詫びの一つくらいしてやるよ。むしろ面倒掛けさせられてんだから、礼代わりに貰っても文句言われねぇだろ」

悪びれず言う協力者に呆れるも、道徳的観念を持ち出す余裕はない。
仕方ないかと自分を納得させる刀使を尻目に、龍園はここからの最適解を急ぎ弾き出す。
率直に言って、アルジュナとこのまま戦うのは分が悪過ぎる。
撃破でなく撤退がベスト、自分でさえこう考えるのだから甚爾はとっくに辿り着いてるだろう。
が、簡単に逃がしてくれる相手でないのも事実。
背を向けようものなら再び光球が現れ、丸焦げになるまで熱線を放つに違いない。
どうにかしてアルジュナを怯ませ、逃げれるだけの隙を作り出す。
恐怖は完全に無くなっていないが腹を括り、やれる事を全力でやるまでだ。


696 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:12:36 LC6n0g5M0
「十条、お前はソレを伏黒に渡せ。俺らの中で一番に力付けさすならアイツだ」
「異論はないが…お前はどうする?私か式神が護りに付くか?」
「いらねぇ、こっちはアレを使って何とかする。テメェの力の使い所はテメェ自身で判断しとけ」

戦闘に関しての判断は刀使である姫和の方が上。
なら自分へ縛り付けるのは悪手だ、幸い最後の支給品を使えば機動力と火力は手に入る。
こちらのお守りへ意識を割かずに済むなら、姫和もアルジュナ相手に集中出来る筈。
有無を言わせぬ口調で伝えれば、迷う素振りを一瞬見せるも首を縦に振った。
いらぬ口論に発展するのは自分達全員の死に繋がり兼ねない。

二人が話す間も絶えず動き続けるのは甚爾。
そこかしこから襲う熱線を躱す度に、付近の建造物が消し飛び地面が溶ける。
発揮する運動機能のみならず、肉体の強度も甚爾は常人と比べものにならない。
なれどコレは無理だ、掠めるだけでもこちらの力を大きく削ぐ。
そこらの一般人(パンピー)が銃弾一発で重傷を負うように、アルジュナの攻撃に対しては甚爾ですら同じ。
故に当てさせない、動きを止めれば死へ直結。

言うだけなら簡単でも実行に移せる者は一握りあるかどうかも怪しいが、その枠に入るのが甚爾だ。
真横を通り過ぎた熱線には目もくれず、真正面の神へ距離を詰める。
手には対生命繊維の得物、片断ちハサミ。
強度と切れ味は既に把握済み、持ち前の膂力を乗せ神の脳天を叩き割るべく振り下ろす。

「マジかよ」

思わず呆れ笑いを零すも、眼前の光景は全く笑えない類。
片太刀バサミの刀身が素手で受け止められ、それ以上動かせない。
引っこ抜こうにもビクともせず、アルジュナの褐色の肌には赤い線一本見当たらなかった。
刀剣類の性質上当然だが、攻撃を確実に当てるには必要な距離を詰める必要がある。
仕留められるなら問題無しでも、失敗したら自ら敵の間合いへ飛び込んだ状況へと一変。
武器一つに拘れば死ぬ、それが分からない男ではない。
柄から手を離し大きく後退、己が心臓を射抜く拳が放たれたのは直後のこと。
一安心するには気が早過ぎる、赤い影が一直線に向かうのを瞳が捉えた。


697 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:13:23 LC6n0g5M0
「おっと…!」

得物を投げ返され、身を捩って串刺しを回避。
再び柄を掴むも後方へ引っ張られ体がよろける。
自分の力を以てしてもこれだ、あの細い腕にどれ程のパワーがあるのやら。
とんだ外れを掴まされたと、改めて苦笑いが浮かぶ。

「話もしないでいきなり襲うなんざ、人間様の言葉で常識知らずって言うって知ってたか?」
「生まれながらに……戦火を引き寄せ……死を招く肉体……汝もまた……私の世界に存在してはならない…………」
「会話くらいしろよ。生憎望んでこういう体になったんじゃねぇ、文句は猿に素敵なプレゼントをくださった神様に言っとけ」

皮肉に返答らしい返答はなく、代わりに周囲の光球が熱を帯びる。
お喋りに興じる時間もくれないらしい。
30秒にも満たない休憩時間を終え再び脚に力を籠めた時、自分を呼ぶ声を耳が拾う。
姫和の方を見ないまま、投げ渡された機械をキャッチ。
赤い見慣れぬ道具と、同じ色のUSBメモリ。
使い方を詳しく聞いてる暇はなく、とにもかくにも試すしかあるまい。

「シッ――!」

その為の猶予を稼ぐのは、機械を届けた刀使が請け負う。
数十歩は必要な距離を瞬時に詰め、アルジュナへと長刀が奔る。
西軍総大将にして凶王の異名を持つ戦国武将、石田三成の得物こそ姫和が持つ刀。
三成へ近付けるように敏捷性を大きく引き上げ、ソードスキルとして複数の技を使用可能。
今やったのは三成が最も得意とする移動方法、刹那。
瞬間移動と見紛う速度で敵の懐に潜り込み、反撃を許さず斬滅する。

骨まで軋ませるプレッシャーを受け、姫和も敵が人ならざる者ととっくに理解している。
敵対の意志が無いのであれば刀は抜かないが、現実にはこの通り。
であれば斬るのに躊躇を持ち込んではいられない。
迷えば死ぬ、故に迷わず刃を突き立てる。
合戦場へ数百数千の血を流した刀が、今宵は神の血肉を貪り尽くす。

「なっ……!?」

といった展開にならなかったのは、姫和が息を呑んだ事からも明白。
刀身は黒い胴体へ当たった、しかしそれだけ。
剥き出しの肌へ傷は微塵も付いていない。
自身へ迫る刃はアルジュナもしかと認識し、防ぐのも躱すのも容易い。
にも関わらず何故そうしなかったか答えは単純。
姫和の刀では殺す所か、そもそも神の肉体に傷を付けるのすら不可能。
そう分かっていたからこそ、何の動きも見せなかった。

(まずい――――!)

一瞬の硬直すらアルジュナ相手には致命的だ。
急ぎ離れようとするも、喉を食い千切る手刀が間近へ迫りつつある。
写シ使用中にも劣らぬ能力があろうと、アルジュナの速さを追い越すには至らない。


698 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:14:04 LC6n0g5M0
『ACCEL!』

「変身、ってな」

『ACCEL!』

だが姫和が稼いだほんの数秒で、甚爾も必要な強化を終えた。
バイクのハンドルを思わせる機械、『アクセルドライバー』を装着。
けたたましく名を叫ぶのは、加速の記憶が封じられたガイアメモリ。
ドライバーへ装填するやグリップを捻り、エネルギーを全身に纏わせる。
タコメーター状のエフェクトが浮かび、必要な工程を終え変身が完了。

屈強な術師殺しの肉体は、赤いスーツと装甲へと早変わり。
頭部もまた人間のソレと異なり、ブレードの突き出たヘルメットに。
青い複眼が光を発し、重低音のエンジンが鳴り響く。
名は仮面ライダーアクセル、復讐心を振り切り風の都を守った戦士。
いずれ父なる若き刑事の変身ツールは、何の因果か父だった男の元へ渡った。

元はアーリャに支給されたものの、取り出す暇もなく八神に襲われリュックサックの奥深くへ眠ったまま。
残念ながら彼女が使う機会は終ぞ訪れなかったが、所持者を変え日の目を見た。

元は誰の物かは甚爾の知った事でなく、早速アクセルの力を使わせてもらう。
足首の増幅器官が走力を爆発的に引き上げ、間合いを詰めるや蹴りを見舞った。
常人には赤い影がほんの一瞬映ったとしか分からないだろう、脅威的な速度。
加速を乗せた蹴りの威力も最早、打撃どころか砲撃と言っても過言ではない。
尤も、神の腕を破壊する程ではないが。
なれど衝撃を与える事には成功、手刀が僅かに止まり姫和が離れる時間は作れた。
チラ、と横目で赤い戦士を見やり熱線を発射。
そう来るのは予想出来たことだ、地を蹴り焼かれる前に後退。


699 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:15:29 LC6n0g5M0
「ヒーローごっこはとっくに卒業したつもりなんだけどな」

軽口を叩きつつも感心が声色に含まれていた。
使用者の肉体をドーパントに変化させるガイアメモリの性質は、仮面ライダーにも適用される。
ボディースーツや装甲に見えるアクセルの姿も、実際は変身者の体が変化したもの。
自分の体が人とかけ離れた状態になったにも関わらず、何ら違和感を感じない。
元の肉体を動かすのと同じ感覚で戦える。

加えて、アクセルに変身するに辺りベースとなったのは天与呪縛を受けた甚爾の体。
呪力と引き換えに得た力は生前から変わっておらず、生身のままでもグラファイトとの戦闘を可能にする程。
開発者が設定した基本スペックを遥かに超え、照井竜の変身時以上の能力を持つ。
それが今の仮面ライダーアクセルだった。

自分でなくともお手軽に超人になれるのだ。
確かに表裏問わずどこの組織も、喉から手が出る程欲しがるだろう。
禪院の連中が知ったらどう思うやら、といったどうでもいい雑念は切り捨て戦闘へ集中。
アクセルになったからと言って、容易く打ち破れる相手ではない。

アスファルトが砕け散る程に踏みしめ疾走、熱線を紙一重で躱しつつ接近。
持ち前の腕力に加え、アクセルの増幅器官もプラス。
以上二つを乗せた片太刀バサミの威力たるや、本来の使い手である纏流子にも一切引けを取らない。
ただの一振りでありながら必殺の刃と化す。

しかし届かない。
あっさりと乗り越えられる壁でないから、神は神なのだ。
廻剣を組み替え弓を装備、片断ちハサミを弾き返す。
両手で握り渾身の力を籠めるまでもない、ただ小蝿を振り払うような仕草。
それ一つで斬撃を防がれ、だが甚爾も一々動揺を抱きはしない。
この程度で倒せる相手でない事くらい、遠目に見た時から分かり切っている。


700 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:16:33 LC6n0g5M0
「チャンバラがしたいんなら、もっと良い相手紹介するぜ?」

数時間前に会った戦闘狂(バトルジャンキー)共を思い浮かべつつ、得物を振るう手は休めない。
剛腕により暴風が巻き起こり、弓との衝突で周囲に振動が走る。
なれど神には未だ一撃も届かない、掠めさせてももらえず常に弾かれる。
威力と速度、その両方がアクセルに変身中の甚爾でも超えられない。

更に甚爾を狙うのは浮遊させた複数の光球。
元から高い魔力が高まりを見せ、熱線の発射まで間もないと知らせる。
アクセルに変身してるのだから当たっても大丈夫、などと楽観的には考えない。
当たれば死ぬ、その認識は変えず回避へと移行。
打ち合いを中断し真横へ跳び、着地したを読んでいたのか二つの光球が待ち構えていた。

「させるか!」

戦闘を甚爾のみに任せる気はなく、姫和が技を放つ。
前方広範囲を薙ぎ払う斬撃が光球に命中。
破壊は出来ずとも、弾いて狙いを外すくらいは不可能じゃあない。

そこへ加わるのは重く響く銃撃音。
鋼鉄が群れを成して、全身ミンチにすべく神へ殺到。
等身大の標的一人を仕留めるには過剰威力でも、神からすれば砂埃と変わらない。
弾は当たるも黒い肉体には傷一つ付かず、視線すら寄越されなかった。
ただ完全に無視を決め込む気もないらしく、光球一つから熱線が襲い来る。

「っぶねぇ…!」

冷や汗を掻きながらハンドルレバーを操作し、機体の速度を上げる。
乗り込んだ支給品がこのまま鉄の棺になる末路は避け、一息吐く間もなく銃口を合わせた。
狭いコックピット内には龍園と、意識を失ったままのさとう。
本来は一人乗りの場所へ無理やりもう一人を乗せたのだ、必然的に密着した体勢となる。
元Dクラスの山内なら鼻の下を伸ばすだろうが、そんな能天気な愚行に出る気は龍園に一切ない。


701 : ファントムパレード(前編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:17:18 LC6n0g5M0
龍園に与えられた三つの目の支給品こそ搭乗中の機体、モビルワーカー。
参加者の一人、マクギリス・ファリドの出身世界で製造された車両型マシン。
主に鉄華団が運用した機体は旧型だが機動性に優れ、おまけに主催者の手で操作システムをある程度簡易に調整済みだ。
エリア移動中のちょっとした練習で龍園も動かせるようになり、攻撃を避けつつの援護を行えていた。

「人の見た目してんなら、ちったあ人らしい反応しろよ…!」

大口径のマシンガンの直撃を受けて無反応。
化け物なのは分かり切っているが、いざ目の当たりにすると悪態の一つや二つでは言い足りない。
背後から放たれた熱線を辛くも躱しつつ、効かないと分かってもトリガーを引き続ける。

(マズい状況だな……)

鞘に納めた長刀を口に加え疾走、という独自の技で戦場を駆ける。
見た目の奇抜さはともかく発揮する走力は迅移にも引けを取らず、熱線を避けるのに持って来いだ。
すぐ横の建造物が吹き飛ばされ、冷や汗を掻きながら姫和は現状に眉を顰める。

甚爾はアクセルで強化を果たし、自分は長刀の恩恵で元々に近い戦いが可能になり、龍園はモビルワーカーを操縦。
ここまでやっても事態は一向に改善の兆しを見せず、逃げる隙を作れない。
さとうが起きてライダーに変身し加勢、に期待するのは無理だ。
そもそも彼女の助けがあっても、良い方向に向かうとは限らない。

野獣が爪で獲物を引き裂くように刀を振るうも、アルジュナには当たらず一瞬で背後を取られた。
割って入った甚爾の妨害もあり呆気なく終わりにはならず、短く礼を告げ距離を取る。
光球を斬り弾いて熱線の狙いを逸らしながら、再び疾走。
自分や龍園よりも実力が上の甚爾に対しては攻撃の勢いもそれだけ大きい。
だからこそ自分達へ放たれる熱線の数は減り、危うい所で死から遠ざかっているのだが。
しかしこのまま甚爾へ負担が向くのも良いとは言えず、あと一つでも現状を変えるナニカがあれば――



「その戦い、ちょっと待った!!!」



加速の戦士とは違う赤が現れたのは、正にその瞬間だった。


702 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:18:24 LC6n0g5M0



「確かに見た目も凄いピシッとしてて正に先生って感じだよ!乳首もピンクじゃなく金色に輝いてそうだね!」
「えっと…ありがとう、なのかな?」
「そもそも乳首は輝いたりしないんじゃないか?」
「悪い奴は許さない」
「ううん!乳首だけじゃなく全部がピカーって輝きそうだよ!はっ!まさか先生も美木杉先生みたく露出狂!?瞬きを終えたらそこにはすっぽんぽんな先生が!?」
「発想が飛躍し過ぎだぜ!?」
「悪い奴は許さない」

元気いっぱいな少女の声に、何とも言えぬ反応を見せる男。
思わずツッコミを入れる少女(実際は男)と、答えになっていない言葉を繰り返す異形。
移動しながら情報交換を行う一団の姿がそこにあった。

「じゃあ先生もどうして梔子ユメの体が利用されたのか、理由は分からないんだな…」
「うん。もっと言うなら私や生徒達が殺し合いに巻き込まれたこと自体、正直理解出来ないよ」

すぐ傍にはいない少女達を想ってか、暗い顔で頭を振る男。
ユメ同様、キヴォトスなる場所に関わる人間は主催者に利用された被害者。
少なくとも目の前の『先生』を見る限り、灯悟達にもそう思えた。

総司令官達との戦闘後、灯悟が意気消沈するトラブルこそあったものの持ち直し、改めて移動再開となった。
民家で見付けた救急箱を使い、傷への処置も済んでいる。
万全とはいかずとも戦闘を行うのに問題はなく、道中何が来ても良いように構えた。
とはいえ出会ったのは殺し合いに乗っておらず、温厚な雰囲気の男。
相手が対話を望むなら断る理由を探す方が難しい、いざこざには発展せずお互いの情報を明かし今に至る。

「でも酷い奴だよそのチョイスって男!女の子を誑かして先生を襲わせるなんて!どっかのタヌキといい勝負だよ!」
『タヌキの方は総司令官の主観も入ってる可能性があるから、確定は出来んがな』
「因みにチョイスじゃなくてチェイスだよ、マコちゃん」

どこからか取り出した紫の服とカツラを装着し、如何にもあくどい笑みを浮かべる。
かと思えば青いほっかむりを被り、これまたゲスの二文字が合う表情へ変化。
話で聞いたロクでもない性根の者達になり切るマコの奇行は、鮮血からすれば今に始まったものでもない。
一方で初見の先生は反応に困りつつ、取り敢えず言い間違えをやんわり指摘。


703 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:19:31 LC6n0g5M0
ぷんすかの擬音が付きそうな、というか何故か目に見えて浮かび上がらせるマコはさておき。
先生が出会った二人組が危険なのに間違いはない。
曰く、チェイスと名乗った男は果穂という少女を言葉巧みに騙し自分を襲わせたとのこと。
しかも共に仮面ライダーなる戦士の力を持っており、危うく殺される所だった。
幸い先生にも仮面ライダーへの変身アイテムが支給された為、何と切り抜けられたらしい。

『小宮果穂は騙されてるだけだが、男の方は明確な自分の意志で殺し合いに乗った、か』
「だとしたら放って置けないぜ。その娘が本当に手を汚す前に止めなきゃダメだ!」

アカリナの街の反抗軍に粗悪品の魔力の種を渡し、暴走態へ変貌させたアブダビ。
ククジャの街で暴動を促し、領主のアジールを利用したヴィダン。
善良な人々を悲劇へ誘った魔王族を、何度も目の当たりにして来た。
連中と同じように誰かの絆を踏み躙る行為は、灯悟が最も許せない悪行。
被害が大きくなる前に、何としてもチェイス達を止めねばならない。

「私も灯悟ちゃ…くんに賛成だ。それに彼らは仮面ライダーの力を悪用している。放って置けばガッチャード君や、こっちのオーズくん達が誤解されるかもしれない」
「悪い奴は許さない」

同じ言葉を口にするオーズ(バッタヤミー)が同意してるのかは不明だが、先生の言うことは最もだ。
何故かヒーロー名で名簿に記載されたガッチャード、彼が善人なのは最初の場での姿を見れば明らか。
初対面の少女を気遣い、尚且つ主催者へ真っ当な怒りをぶつける。
灯悟としても出会った際には心強い仲間として、絆を結びたいと思っていた少年。
そんなガッチャードが悪評の煽りを受け、いらぬ敵意を向けられるのは望む所ではないのだから。

「先生みたいな良い人だけが、仮面ライダーになれる訳じゃないのかぁ」
『どう扱うかは変身者次第、ということか』

使い方一つで善にも悪にもなる。
仮に鬼龍院皐月が本当に羅暁の命を忠実に守る者だったなら、極制服を着た生徒達とて暴虐の悪となっていただろう。
彼女の真意を知った今では、鮮血も違うと分かっているが。


704 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:20:06 LC6n0g5M0
「灯悟君達が会ったロボットの一団、何より城を破壊した参加者にも注意が必要だね」
「ああ。…せめて、他には誰も巻き添えになってないなら良いんだけどな……」

神妙な顔で言う先生に、灯悟も顔を曇らせ頷く。
廃墟同然の民家で休んだ後、城を調べに行きたいとマコ達に言った。
総司令官は仮に生存者がいてもマトモに動けないと指摘したが、灯悟からすれば逆に行く理由になる。
身動きが取れず助けが必要な参加者がいるのに、無視するなど御免だ。
無論、倒壊の原因となった参加者とぶつかる可能性も低くはない。
自分達のいたエリアに現れなかったからと言って、絶対に遭遇しないとも言い切れなかった。

危険を承知で我儘を言っている自覚はあったが、マコ達は灯悟の判断を責めず同意してくれた。
仲間達へ感謝を伝えて城に赴き、結果を言うなら生存者はゼロ。
瓦礫の山が高く積み重なり、生存者も死体も本当にあるのか分からない。
そんな状態で唯一見付けたのは、隙間から僅かに覗く銀髪と乾いた血。
これでまだ無事だとは幾ら灯悟でも口に出来ず、遅かった事実を噛み締めた。

「…ところで、これからどうするかだけど――!?」

重くなった空気を察してか、先生が口を開くも最後まで続かない。
爆音と建造物の倒壊する音が聞こえ、振動がこっちまで伝わって来た。

「な、なに!?戦争!?襲撃!?大怪獣日本上陸!?」
『そう遠くない場所で戦闘が起きたのか?どうする灯悟?』
「勿論放って置けないぜ!先生、話は後回しになっちまうけど…」
「皆まで言わなくても構わないよ。若しかしたら生徒がいるかもしれない、急ごう!」

自販機へ詰めて座り空から移動。
ある程度近付くと一旦降り、適当な民家の前で額を突き合わせる。
このまま全員で突撃、と行くには抵抗が灯悟や鮮血には生まれたのだ。


705 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:21:18 LC6n0g5M0
「マコ、オーズ。二人はここに隠れて待っててくれ」
「うええっ!?何で!?私達だけお留守番!?ここ私の家じゃないけど!私の家ってこんなに綺麗じゃないもん!」

てっきり皆で一緒に行くと思っていた為、予想外の言葉に疑問を返す。
だがマコとオーズが民家で身を隠すのには灯悟のみならず、彼(彼女)の胸元からも同意があった。

『マコ、今回は私も灯悟に賛成だ。これだけ距離があっても感じる気配だ、暴れているのは並大抵の存在ではない…!』
「ああ、まるで絶縁王と対峙した時みたいだぜ……」

姿を見ていないにも関わらず、気配だけで戦慄を抱かざるを得ない。
今自分達が向かう先には生半可な力では叶わない強敵がいる。
ゼツエンダーや魔王族、極制服の着用者達との死闘を経験して来た灯悟と鮮血だからこそ分かった。
NPCのリメインズ・ドラゴン、先のロボ子やシャチパンダヤミー。
この数時間で戦った者達とは余りにも違う、下手をすればマコを巻き込む可能性も大いに有る。
かといってマコ一人を残し、自分達がいない間に危機に陥らないとも限らない。
だからNPCではあるも、信頼の置ける仲間にマコを任せるのだ。

「うー…で、でも……」
「私も彼らと同意見だよ、マコちゃん。この異様なプレッシャーに充てられて、今の君は大分顔色も悪い。無理はさせられないよ」

普段通りに振舞っているつもりでも、やはり尋常ならざる威圧感の影響はマコと言えども避けれていない。
命令口調ではなく、あくまで気遣いとして二人と一着から言われては食い下がれない。
修学旅行の時には流子の傍が一番安全だと、彼女が皐月と戦う場へ赴いた。
しかし叩きのめしはしても命までは奪わない本能寺学園の生徒達と違い、この島は正真正銘の殺し合いの会場。
総司令官達のように人質として捕まえるだけでない参加者だって、当然いるだろう。

「う〜〜〜…分かった!じゃあオーズさんと二人で待ってるよ!でも!皆ちゃんと戻って来てね!」
「おう!約束だ!先生、あんたは……」
「勿論私も灯悟くんと一緒に行くよ。仮に生徒達がいないとしても、君だけに戦わせるのは大人のやることじゃないからね」

頼もしい言葉を受け、燃える心のままに戦場へ赴く姿へ変わる。
隣では灯悟に倣ってか、先生もマゼンタ色のドライバーを装着。

「人心絆装――神衣鮮血!!!!!」

「変身」

『KAMEN RIDE DEACDE!』

豊満な肢体を包み込む、過激ながら力強さも覚える戦闘形態。
鮮血の力を最大限に引き出す姿となる。
先生も同様にドライバーと同色の装甲を纏い、複数のプレートが突き刺さった仮面を被った。
何故か灯悟の背後で爆発が起きた上に、デカデカと「人心絆創」「神衣鮮血」の文字が浮かんでるのに思わず二度見。
灯悟もマコも平然としており、困惑するもそれどころでないと深く考えないことにする。

「気を付けてねー!」
「悪い奴は許さない」

仲間達の声を背に受け、二人の戦士は闘争の真っ只中へと飛び込んで行った。


706 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:21:56 LC6n0g5M0



きっとここが、分岐点だったのだろう。
とある世界ではキズナファイブに6人目の戦士がおらず、廻り廻って異世界にて浅垣灯悟がバットエンドを迎えたように。
切っ掛け一つで物語は大きく変わる。

もしも灯悟達が危険は承知の上で、マコを戦場へ連れて行ったら。
目が届く距離に、手が届く範囲に彼女を置いていれば。

或いは、違った結末を迎えられたかもしれない。


707 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:22:54 LC6n0g5M0



強大な力を我が物にする敵はこれが初めてではない。
キズナファイブの宿敵絶縁王、ニヅベルでの事件の際に一度だけ見た四本腕の魔王族。
地球上で最も生命繊維に魅せられた人間(バケモノ)、鬼龍院羅暁。
そういった者達を前にし、心の底からの戦慄を覚えた。

そして此度も彼らは、神を前に恐怖を味わう事となる。
未だ戦闘には至っていない。
乱入し視線をぶつけ合った、ただそれだけだというのに。
目の前の男に勝てる未来(ヴィジョン)が、全くと言って良い程見えなかった。

「どうしてアンタは戦ってる!?こいつらを襲う理由は何だ!?」

だからといって、怖気づき逃げ出す気は毛頭ない。
敵の強さに怯えて、尻尾を巻いて背を向けるようなら最初からキズナレッドになってなどいない。
恐れを自覚し、尚且つ呑まれずに自らの正義感を奮い立たせる。
声を張り上げた問い掛けに、神は無機質な瞳を向けるだけ。
超常の存在に見極められても臆さず見つめ返すヒーローへ、熱を宿さず口を開く。

「戦火の元となる不出来は……争いなき世界に不要……理由は他に必要ない……」
『つまり…………争いの元になるから殺す、と言いたいのか?』
「それなら一番に倒さなきゃいけないのは、殺し合いをさせるクルーゼ達だろ!?」

返って来た答えは到底納得のいく類ではなく、当たり前の反論を叫ぶ。
しかし神が考えを変える展開は決して起きない。
何より、既に灯悟達も「視」られてしまった。


708 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:23:56 LC6n0g5M0
「異星より来る者……汝も私の世界へ……存在すべきではない邪悪……」
『なっ……』

自分の指しての宣言と鮮血が鼻白み、神から発せられる威圧感が上昇。
排除対象に選ばれた、誰に説明されるまでもなく理解。
神の意志に応じ光球は熱を帯び、悪を焼き払う輝きを放たんとする。

『ACCEL!MAXIMAM DRIVE!』

その間、周囲の者が指を咥え見物に徹するルールは存在せず。
メモリから引き出したエネルギーが炎となって、アクセルの右脚へ付与。
灯悟へ意識を向け、がら空きの背中へ蹴りが叩き込まれる。
正々堂々の勝負でないなら、文句を言われる筋合いもない。

「うおっ…と!」

尤もアルジュナからすれば、何ら脅威になり得なかった。
目だけを動かし赤い戦士を捉え、蹴りに合わせて拳一発を叩き付ける。
甚爾が変身したアクセルのマキシマムドライブだ、ミサイルの直撃に等しい威力を弾き出す。
なれど相手が神である以上、倒せる道理は微塵も無し。
アクセルメモリのエネルギーは呆気なく霧散、殴り飛ばされ不格好に宙を泳ぐ。
地面への激突を律儀に見届けはしない、光球を操作し熱線を発射。

「はあっ!」

寸前で邪魔に出たのは姫和、刹那で距離を詰め斬り上げを放つ。
何のダメージにもならないのは承知の上、意識を少しでも自分へ向けられれば構わない。
発射のタイミングが僅かに遅れ、体勢を直しアクセルが着地。
先程と違って姫和も不要な動揺は抱かず、迅速に距離を取る。

「説得でどうにか出来んなら任せても良いけどよ、ありゃ無理だろ」

灯悟の隣に並んだアクセルが淡々と現実を告げる。
言葉だけで矛を収める性質なら、最初からこんな戦いは起きていない。
不要な争いを灯悟は求めない、だが戦わねば切り抜けられない状況で意固地になる気もなかった。


709 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:24:54 LC6n0g5M0
「分かったぜ、こっからは俺達も一緒に戦わせてくれ。浅垣灯悟と鮮血だ。あっちにいるのは…」
「長い自己紹介なら生き残ってからな、ねえちゃん。…一応言っとくか。伏黒甚爾だ、よろしく頼むわ」

この場にいる全員の名前をやら何やらは、生き延びられれば後で幾らでも聞ける。
切り替え戦闘に集中、キズナブレスへ手を伸ばす。
出し惜しみは抜きで最初から全力行使させてもらう。

『ぺっTURN!』

「絆装チェンジ!」

鮮血を纏った状態からの二重変身。
四肢は真紅のスーツを装甲に覆われ、頭部にはフルフェイスのヘルメット。
正史においては実現が有り得なかった、異なる世界の絆を結んだ証。

「燃え盛る熱き友情のおおおおおおおおお!?」

堂々と名乗りを上げる途中で襲い来る複数の熱線。
自前で起こした爆発すらも上回る熱が襲い、これには灯悟も最後まで言い切る余裕はない。
横へ跳んで躱し、間髪入れずに次の攻撃が来る。
向こうはとっくに会話を続ける気が失せたらしく、攻撃にも一切の容赦が見られない。
地を蹴り、死を運ぶ輝きを我が身に当てさせないように避ける。

「悪いけど、私も手加減無しでいかせてもらうよ」

戦闘へ新たに加わったのは灯悟だけではない。
ライドブッカーを連射し姫和の援護に出ていたディケイドも、チマチマ撃つだけでは無意味と理解。
素早くカードを抜き取りドライバーへ装填、高出力の次元エネルギーを銃口に送り込む。

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』

銃口を向けたアルジュナとの間に、カード状のエネルギーを複数枚展開。
発射された光弾が潜り抜ける度に威力が上昇、最終的には一本のレーザーへと収束。
ネオディケイドライバーにアップデートした影響で、技の威力も9つのライダー世界を旅した時以上。
怪人複数体だろうと纏めて葬る光線に照らされ、神は言葉無く光球を操作。
展開し一斉に熱線を発射、帯状に変化を見せディメンションブラストを迎え撃つ。


710 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:25:58 LC6n0g5M0
「なにっ!?」

ほんの数秒の拮抗すら許さず、世界の破壊者の光線は掻き消された。
撃った本人を飲み込み骨まで溶かす光が目前に迫り、ディケイドも慌てて動く。
全身が装甲に覆われてるから大丈夫など、楽観的に思える相手じゃない。
掠めたスーツ越しに猛烈な熱を感じ、仮面の下で顔が歪む。
超鉱石ディヴァインオレ製のスーツは、6000℃のマグマの中でも活動を可能にする。
しかし神の攻撃を前に、そういった機能やスペック云々はまるで当てにならない。
生きたまま焼かれる、生前のトラウマにもなった屈辱を思い出すが無理やり捻じ伏せた。
そんなものに気を取られていては、それこそ嘗ての焼き直しで消し炭だろう。

「鮮血疾風!」

幸い、敵意を多少なりとも逸らせる者達がここにはいる。
灯悟の脚部へブースターが増設、機動力を大幅に強化。
空を駆け熱線の雨を躱しながらアルジュナへと迫る。
気が抜けないのは灯悟と鮮血も同じだ、頑強となった今の状態でも熱線一発を受ければ無事で済むとは思えない。
なれど及び腰になっては敵の好き放題を許すだけ、慎重且つ大胆な行動に出なくては勝てない。

「ダーボ円陣フォーメーションγ!」

神衣鮮血とキズナレッド、異なる力を同時に使える強みを活かす。
右拳に展開したターボ円陣が火を吹き、拳速を爆発的に引き上げる。
既に鮮血疾風で猛加速中なのも合わさり、ロケットもかくやの勢いだ。
強固なシールドを数百枚重ねたとて、貫き拳を確実に届かせる威力。
過剰攻撃とは思わない、むしろこれくらいやらねば倒どうこう出来る相手ではない。

「『バーニングアンビグアスパンチ!ターボスマッ――ッ!?」』

その考えは間違っていない。
何せ『この程度』はアルジュナにしてみれば、幼子の戯れに過ぎないのだから。


711 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:26:36 LC6n0g5M0
「がっ……」

パシリという音と共に拳を容易く受け止められ、抜け出す間もなく胴へ衝撃が走った。
殴られたと、辛うじて感覚だけで理解する。
敵が腕を動かし己に打撃を当てた瞬間を、今の灯悟の動体視力でさえも捉えられない。

『灯悟!』
「っ!!!」

鮮血に言われるまでもなく、間近の危機は灯悟にも分かった。
殴り飛ばされた先へには一瞬で移動した神が待ち構えており、手刀が振り落とされる。
無手でありながら罪人を裁くギロチンにも等しい、ヒーローの首なし死体の完成まで一刻の猶予もない。

「ほいさっと」

熱線を駆け回って凌ぎながら、アクセルが得物を投擲。
軽い口調とは裏腹の馬鹿げた威力だ、これ一本で民家十数軒の壁を一気に突き破れる。
灯悟を断罪するつもりだったが狙いを変更、手刀が真紅の刃を弾く。
相変わらず手の皮一枚すら裂けていないのは、最早今更なので一々反応しない。

『灯悟!アレを掴め!』
「分かったぜ!」

共闘相手が作ってくれたチャンスを無駄にはしない。
処刑台を抜け出し、地面へ突き刺さった真紅の元へ疾走。
アルジュナが視線を戻すも間髪入れず殺到する、鋼鉄の群れ。
モビルワーカーの銃撃程度、痒いとすら思えないが動きを少しでも止めれば上出来だ。
柄を掴んで引き抜き、アクセルの隣へと一旦後退。

『まさかここで取り戻せるとは……』

灯悟の手に渡った武器は、鮮血にとって馴染み深い物。
纏一身が遺した片太刀バサミもまた、流子の手を離れていたらしい。
自分も片太刀バサミも奪われた流子がどうなっているのか不安を覚えるも、今は敵に集中しなくては。
それにコレが灯悟の所へ来たのは悪くない流れだ。


712 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:27:25 LC6n0g5M0
『片太刀バサミは今の私達の大きな力になる。いずれ流子に返す為にも、伏黒甚爾から譲ってもうべきだ』
「……ってことなんだけど、やっぱり武器を手放すのは難しいか?」

元々の所有者が流子とはいえ、支給されたのは甚爾。
この状況で得物を失うのには難色を示されてもおかしくない。

「くれてやっても良いが、その分しっかり働いてこっちを楽させてくれよ?」
「良いのか!?」

灯悟の予想に反し、甚爾からは実にあっさりと快諾。
使い慣れた得物が戻れば戦力も多少は上がり、その分こっちの生存率を僅かでもマシに出来る。
ストリップショーにでも出そうな見た目に反し、実力は中々に高いと見た。
善意とは異なる考え故の譲渡だが、何にせよ灯悟達には有難い。
それに、武器がゼロになったと言った覚えもない。

「そんじゃ、新顔の出番といきますかね」

剣ならもう一本支給されている。
真紅の片太刀バサミとは違う、銀に輝く大剣。
刀剣類を使い慣れた姫和に譲ってやらなかった理由は一つ、重過ぎて素の彼女では到底扱えないから。

「しっかし、どこの物好きが作ったんだこりゃ。ターミネーターにでもぶん回させる気か?」

呆れ笑いを浮かべつつ、20kgを超える重量の大剣を軽く振り回す。
エンジンブレード、奇しくも仮面ライダーアクセル専用の武器こそ甚爾の二つ目の支給品。
常人では持ち上げるのも一苦労だが、甚爾には鉛筆のように軽い。
釈迦刀程の魅力は感じなくとも、破壊力と強度には期待できそうだ。


713 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:28:04 LC6n0g5M0
そこから先、言葉は不要。
熱線の発射と同時に真紅のヒーローと術師殺しが駆ける。
踏み込みの強さにアスファルトが豆腐のように崩れ、宙へ舞った破片は神の光に焼かれて消滅。
当たれば死ぬ、止まれば死ぬ、戦わねば死ぬ。
神と対峙する全員の共通認識だ、故に熱線の直撃だけは何としても防ぐ。

左右両方から距離を詰め斬り掛かった。
得物は高性能、使い手もまた参加者の中でも屈指の実力者。
高レベルの魔物や階位が上の呪霊だろうと、一刀の元に命を絶つ。
生を刈り取った感覚は灯悟とアクセル、両名共に感じ取れない。
神の手に握られた黄金の得物、廻剣を組み替えた弓が死を決して寄せ付けない。

「オオオオオオオオッ!!」

気合の叫びすらも得物の勢いに乗せ、片太刀バサミを振るう。
感化されてはいないが、アクセルも剣の速度を一段階上げる。
だが神の身に触れることは許されない。
得物二本に対し弓一つで打ち合い、弾き、両名を大きく怯ませた。
腕の太さで言ったら甚爾や元の体の灯悟が上、なのに得物越しに振動が走り手が痺れる。

馬鹿正直に叩きつけ合ったところで、腕に負担を強いるだけ。
一度離れるべきかと考える間にも神は次の手を実行。
光球を全て己の元に戻し、急速に魔力を充填。
間近で大技の予兆を感じたなら、いつまでも剣を振るってる場合じゃない。
地を蹴り付け大きく後退、悪夢同然の光景が広がったのは直後のこと。

土星の輪のように配置された光球が輝きを放つ。
あっという間に回転光刃を作り上げ、範囲を広げ人間達を焼き斬らんと迫る。
後ろへ後ろへと退がっても、光刃の勢いは一向に衰えない。
粉すら残らず消えた去った家々が待ち受ける末路。
何もしなければそうなる、だからどうにか生き延びる術を弾き出す。


714 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:29:06 LC6n0g5M0
『ENGINE!MAXIMAM DRIVE!』

『FINAL ATTACK RIDE!DE・DE・DE DECADE!』

『灯悟!片太刀バサミを構えろ!』
「おう!って、うお!?物凄いことになったぜ!?」

エンジンブレードとライドブッカーにエネルギーを流し込む。
鮮血に言われるがまま灯悟も武器を構えれば、片太刀バサミは長大化。
女体化し鮮血を着こなし、更に総司令官達との一件を経て僅かに燻っていた女であることへの羞恥を捨てた。
それらを受け完全なる人衣一体を果たした灯悟だからこそ可能になった、武滾流猛怒(ぶった切るモード)。
殺し合いで出会った仲間との絆が齎す力に、驚きを引っ込め戦意を燃え上がらせる。
キズナレッドの力の象徴、火炎を刃に纏わせ必殺の技を放つ時だ。

「後ろに来いお二人さん!死にたいなら別だがな!」

依頼人と協力者に移動を促し、アクセルが剣を振り下ろす。
同じタイミングで灯悟とディケイドも、光刃を叩き割るべく動いた。
闇雲に逃げ回るより言われた通りにすべきと、龍園達も従う。
三本の高威力の剣ですら即座に打ち勝てず、ほんのちょっぴり気を抜けば確実に押し負けて全滅だろう。

「バーニング…ッ!キズナスラアアアアアアアッシュ!!!」

自らへの鼓舞も籠めて技名を叫び、とうとう光刃に穴が生まれた。
灯悟達が集まった箇所のみ被害を避け、やがて魔力も収まる。
周囲は原型を保っている建造物を探す方が困難な有様。
エリアの破壊へ息を呑む、などの無駄な行動に今更出る者は一人もいない。
神が動き出す前に、今度はこっちが仕掛ける番だ。


715 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:30:07 LC6n0g5M0
『KAMEN RIDE FAIZ!』

マゼンタ色の装甲から一転、赤いラインを走らせた銀の胸部装甲に変身。
ディケイドが持つ他ライダーへのカメンライドは、制限によりいきなり全ての力は使用不可能。
しかし灯悟達と会う前に先生もNPCに遭遇し、戦闘を重ねて来た。
ドロップ品は一つも手に入らなかったが、ディケイドの力を取り戻す為の条件はクリア。
クウガ以外にも複数のライダーへ変身可能となり、内の一つがこの姿。
人類の進化系オルフェノクと戦った夢の守り人、仮面ライダーファイズである。

『FINAL ATTACK RIDE FA・FA・FA FAIZ!』

「絆創拘束(バンソウバインド)!超重ね張り!」

ファイズの片脚部分に装着したポインダーから、光線を発射。
標的を捉えるマーカーだけでなく、動きを止める拘束具にもなる。
畳みかけるように灯悟が大量の巨大絆創膏を出現させ、アルジュナへ重ねて貼り付けた。
バイオライダーのゲル化能力をも封じたファイズの技。
アジールの特権魔法相手に活用されたキズナレッドの技。
二つに捕らえられた神目掛け、ファイズが跳躍し蹴りを放つ。
フォトンブラッドを一点集中し叩き込み、数多のオルフェノクを灰の山へ変えた一撃だ。
直撃し無事で済む者はそうそういない。

「があっ!?」

その例外に含まれるのがアルジュナである。
二重拘束が消し飛び、自ら飛び込んで来たファイズへ拳を放つ。
狙ったのは胸部の装甲、戦車の主砲をも跳ね返す最も強固な箇所。
打撃一つで凹み、変身者へ軽くないダメージが襲う。
仮面の下で血を吐き出すもまだ終わりじゃあない。
紙切れのように遥か彼方へと吹き飛び、あっという間に見えなくなった。

「先せっ!?」

言い切る前に駆け出せば、立っていた所を焼き払う熱線。
追い掛けて無事を確認する余裕があろう筈もなく、襲い来る死への対処で手一杯だ。
だが灯悟へ視線が向いた隙に、他の者が攻めに出る。
刹那を使いアルジュナの懐へ潜り込み、姫和が放つは居合による無数の斬撃。
数十もの刃が纏めて放たれたと錯覚せん技なれど、肉を斬り裂く音も手ごたえもなし。
黄金に輝く弓が一つとして打ち漏らさず、技を不発に終わらせる。
振るう瞬間を両の瞳でも捉えられなかった事へ、改めて敵の異常さが身に染みる。

「くっ…!」

頭上へ配置した光球が熱を発し、歯噛みしつつ飛び退く。
が、それより早くに姫和を掻っ攫う赤い影があった。
背後で焼かれる地面には目もくれず、アクセルは姫和を神から引き離す。
手頃な場所で降ろすと、途端に響くは銃撃音。

「いい加減にしろよテメェ!」

言っても意味が無いと分かってはいるが、口に出さずにはいられない。
幾らトリガーを引き絞っても神は無傷。
その癖レジスターに当たるだろう弾は的確に叩き落とすのだから、全く始末に負えない。

一向に終わりの見えない戦いへ焦りを覚えつつも、モビルワーカーを走らせる。
密着した少女の目が薄っすら開いたとは気付かずに。


716 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:30:52 LC6n0g5M0
◆◆◆


「うっひゃあ!?」

突如民家内へ激しい物音と振動が走り、マコは素っ頓狂な声を出す。
全身をバネのように震えさせ、何事かと辺りを見回すも自分いる部屋に異常は無し。
ならばどこからだと考えるより早く、共にいた異形が音の方向へと向かった。

「置いてかないでー!」

まるでギャグ漫画の表現のように足をバタつかせ、オーズを追い掛ける。
もしや悪い人がやって来たのか、さっき会った総司令官達ならどうしよう。
不安に急かされながら音の発生源が待つだろう部屋へ到着、見るも無残なドアの残骸を避けて正体を見た。

砕けた床の上に座り込み、痛がる素振りを見せるマゼンタ色の怪人物。
バーコードを思わせる意匠の仮面にも、目に優しくない色の装甲にも覚えがある。
まさかこんなに早く戻って来るとは思わなかった。

「あやや!そのシマシマ仮面は先生じゃないですかー!?」
「やあマコちゃん…痛つつ……カッコ悪いところを見せちゃったね」

怪我でもしたのだろうか、胸を擦りつつ立ち上がる。
無事に危ない参加者をやっつけて帰って来た、訳ではない様子。
ダイナミックな帰宅は先生とて望まないものであり、何よりいるのは彼一人のみ。
灯悟と鮮血の姿がどこにも見当たらない。
首を傾げていると疑問を察したのか、神妙な雰囲気を出し先生が口を開く。

「マコちゃん、私はすぐに灯悟くんの元へ戻るよ。彼はまだ戦っているからね」
「えぇ!?じゃあ先生はもしかして、危ない人にグワーンってやられてお星さまになっちゃったんですか!?」
「うん、まあ、間違ってはいないけどね」

微妙に緊張感を削ぐ言い方へ少々空気が緩くなるも、気を取り直す。
状況は一つも笑えるようなものじゃあない。


717 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:31:53 LC6n0g5M0
「隠してもしょうがないからハッキリ言うよ。正直に言って、私達じゃ今戦ってる敵には勝てない」
「え……」
「だからマコちゃん、君はオーズくんと一緒に逃げるんだ。もし私達が全滅すれば、奴は君達の方へやって来る可能性が高い」

告げられた内容に、暫し返す言葉が出て来ない。
またまたそんな大袈裟な、なんて調子で朗らかに言えない。
先生の言葉はやけに重苦しく、決して誇張を混ぜてるのではないとマコにも分かる。

灯悟と先生が協力しても勝てない相手なら、マコがどうこう出来る訳がない。
オーズの助けを借りたとて、生き残るのは不可能なのだろう。
でなければ逃げろとは言わないのだから。
それ程の敵を相手に彼らは戦っている。

「ま、待って!えっと、じゃあ今からオーズさんにも一緒に戦ってもらう、とか……」
「彼の助けがあるのは有難いよ。けれどあの男相手にはまだ……せめてもう一人、いやこんな期待をしても無意味か」

アナザーウォッチを使ったオーズの戦いぶりはマコも見た。
一抹の望みに賭けて提案してみるが、反応は芳しくない。
既に先生の中では、マコはオーズ共々逃げるべきだとほぼ決定らしい。
だが、素直に頷けない。

「先生!私も先生みたいな、仮面ライダーになれる道具とかないかな!?」
「…なんだって?」
「オーズさんと後もう一人いれば、レッドさん達は助かるかもしれないんでしょ!?だったら私がその一人になるよ!改造手術だろうとバッチ来い!」

いつの間にか手術台に横たわり、グルグル巻きでなり言う構造は実にシュールである。
しかしマコは冗談やふざけてるのではなく、本気で共に戦う気だ。
素の自分は打たれ強いだけの劣等生でも、変身する為の力があれば。
レッド達と助けになれるナニカを強く求める。


718 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:33:35 LC6n0g5M0
「流子ちゃんだったら…こんな時絶対に逃げないよ!仲間を、ううん、友達を置いていったりしないから!」

口が悪くて、ぶっきらぼうで、でも心から大好きだと言える親友。
会って間もない自分を助ける為に、ボクシング部と対決した。
贅沢暮らしに目が眩み酷い仕打ちをしたのに、自分を見限らず引き戻してくれた。
そんな流子を知っているから、胸を張って自分は流子の友達だと言えるから。
彼女の大切な相棒の危機に何もしない自分でいたくない。
この地で絆を結んだヒーローを、今度は自分が助ける番になりたい。

「だから、もし私にも戦える力があったら貸してください!」

勢い良く上半身を下げ、精一杯のお辞儀を行う。
戦って欲しくないと言ってくれた鮮血達は、良い顔をしないかもしれない。
でも彼らが死んでしまうのに比べたら、自分が後で文句を言われるくらい屁でもなかった。

「……分かったよ、マコちゃん」

沈黙を破った第一声にバッと顔を上げれば、緑色のレンズで射抜かれる。
仮面で見えないけどさぞ真剣な顔だと、纏う雰囲気で察した。

「正直君を戦わせるのは私も素直に頷けないけど、でも、そこまで本気で頼まれたら無下には出来ないからね」
「じゃ、じゃあ…!」
「私の支給品にもう一つ、仮面ライダーになれるベルトが入ってる。それを君に託そう」

言って渡されたのはディケイドライバーとは異なる形状のアイテム。
慎重に受け取り、輝く瞳で手の中の二つを見つめた。
喧嘩部の極制服とは違うも、自分も流子やレッドのように戦える力。
大事な友達を守れる力を本当に譲ってもらい、鼻の奥がツンとなる。


719 : ファントムパレード(中編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:34:56 LC6n0g5M0
「ありがとうございます先生!この御恩は一生忘れません!もし怪我したら、父ちゃんにタダで治療してもらえるよう私から言っとくね!闇医者の腕はピカイチなんだから!」
「う、うん、ちょっと遠慮しておこうかな」

サラッと後ろ暗い家庭事情が明かされたが、ともかく。
今から三人で灯悟と鮮血を助けに行く。
ライドウォッチを起動しオーズに埋め込むと、三つの獣の力が混ぜ合わさった異形へ変身。
アナザーオーズになった仲間に倣い、マコもベルトを装着。
いよいよ戦士になる時だ。

「よーっし!やるぞー!」

手元の機械のスイッチを押すと、電子音声が鳴る。
後はコレを腹部のベルトに装填すれば、必要な工程は全て完了。
高揚感を抑えず、勢い良くスロットへ叩き込んだ。

「へーんしんっ!」


そして










『Secret material!HIDEN-METAL!』

『METAL CLUSTER HOPPER』










それが終わりの合図となった。


720 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:35:55 LC6n0g5M0



一撃受ければ自分達はアウト、向こうは何度攻撃しても届かない。
理不尽極まる戦闘の打開策を見付けられないまま、しかし死を受け入れる気には断じてならず。
神が下す裁きを寸での所で躱し一体どれくらい経ったか。
変化を齎す存在が転がり込んで来た。

「先生!?オーズまで!?」

但し灯悟が望むのとは全く違う形でだ。
吹き飛びアスファルトを転がるのは、知らない筈がない二人の仲間。
マゼンタ色のライダーと、三色で構成された体の異形。
苦し気に呻き声を上げる彼らに何が起きたのか、残念だが詳しく聞く暇はない。

というより聞くまでもなく、原因が向こうからやって来た。
耳に入れるだけで寒気の走る、無数の羽音を響かせて。

『何だ…?虫が飛ぶ音か…?』

鮮血の呟きへ応えるように現れる、大量の蟲。
羽音を一斉に響かせ飛び回る飛蝗の群れ。
農作物を食い荒らす害虫、だがその姿は地球上に存在するどの個体とも一致しない銀色。
羽虫の軍勢を操るソレもまた、全身を銀で覆っていた。
燦燦と照らす太陽光を浴び輝きをより際立たせる、白銀の装甲。
頭部や肩のパーツはブレード状に伸び、触れる者全てを傷付ける。
蛍光イエローの瞳が戦場に立つ者達を言葉なく睨む。

正体不明の銀色の怪人、この者こそが先生達を痛め付けた張本人か。
警戒を強める灯悟の耳に、仲間の苦し気な声が届く。

「気を付けてくれ灯悟くん……奴は……」

何故か、言い淀んだ理由は灯悟に分からない。
ただドクンと、心臓が嫌な跳ね方をした。
先生がとオーズがいて、残るもう一人の仲間がいない。
その理由が、最も望まない答えが齎される。


721 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:36:30 LC6n0g5M0
「奴はマコちゃんを殺した……!」

「―――――――――――――――――――は?」

何を言われたのか分からない、分かりたくない。
脳が理解を拒み、だが一方で有り得ない事態ではないと受け入れる自分も確かにいた。
喪失の痛みを、絆を奪われる絶望を灯悟は知っている。
二度と繰り返したくない、どんなものよりも耐え難い苦痛がじわりと顔を出す。

硬直したヒーローを嘲笑うでもなく、銀色の怪人は一歩また一歩と近付く。
同時に無数の害虫が蠢き、仕留め損ねた連中を喰らおうと襲い掛かった。

一ヶ所に固まるや否や、銀に輝く剣へ変化。
横たわったままの標的を貫き殺すべく、刀身が射出。
地面を転がり躱す先生と、跳躍力を活かし上空へ逃れるオーズ。
バッタの力を使えるのは敵だけじゃない、しかしその程度では逃げられない。
オーズよりも更に上へ害虫が集まり再び剣へ変化、真下目掛け切っ先が突き出された。

「悪い奴は…許さない……!」

両腕のクローを交差し咄嗟の盾に使う。
常磐ソウゴを相手取ったアナザーライダーの能力だ、簡単には砕けない。
しかし勢いはまるで殺せず地面へ叩き付けられ、出血代わりにセルメダルが散らばった。

「ぐあ…!」

怪人が降り立つと同時に、蟲達は地を這い回る。
銀色の水溜まりが独りでに動くかの奇怪さは、複数本の剣が飛び出す攻撃の合図。
身を捩って躱すも如何せん非常に速く、おまけに先生が動く先を読んでいたとばかりに先回って斬り付けた。
火花を散らしてよろけるも敵は一切の容赦がない、次から次へと銀色の剣が襲来。


722 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:37:14 LC6n0g5M0
「や…めろおおおおおおお!!」

仲間達の苦悶の声で我に返り、怪人目掛け灯悟が拳を叩き込む。
火炎を纏った鉄拳は特権魔法の使い手も、一撃でノックダウンさせる威力だ。
装甲を叩き割る一撃は、バッタが集まり銀の盾へ変わった事で届かない。
ならば次だと蹴りを繰り出し、それも無理なら得物を振るう。
生半可な抵抗を許さぬ勢いの連打も、銀の盾が全て的確に防ぐ。
怪人は一歩も動いていない、操る蟲が己が身へ傷を付けさせなかった。

防御だけが蟲の全てでないことは、痛め付けられた先生達を見れば明白。
怪人が纏う装甲が蠢き、更に追加でバッタが出現。
灯悟を取り囲むように飛び回り、やがて固まり複数本の剣を生成。
数ヵ所からの同時攻撃に万事休す、と諦める気は当たり前だが皆無。

「鮮血閃刃!」

キズナレッドのスーツが無数の刺突剣に変わり、真紅の爪も生やす。
全方位からの攻撃にも対抗可能となった姿で、銀の剣を弾き返した。
鈍らならば一本残らず砕いてやったが、強度もそこいらの刃物とは比べものにならない。
刃同士が喧しく擦れ合う音が鼓膜を痛めるも、灯悟を止める効果は発揮されない。
蟲を操る張本人を直接叩くべく、ひたすら前進。
それを無駄な足掻きとでも言わんばかりに、銀の盾がより数を増し灯悟を阻む。

「愚かな……」

重ねた守りが全くの無駄と、直後に怪人は思い知る。
正体が何であれ戦場に顔を出し、あまつさえ武力を行使した時点で邪悪の一人と神に見なされた。
手元に呼び寄せた光球が魔力を放出、蒼炎が地を駆け天をも駆ける馬と化す。
鬣を激しく揺らし突進する神獣へ、灯悟に使った以上の盾を展開。
だが無意味だ、真っ向から粉砕し怪人本人も枯れ葉のように吹き飛ぶ。


723 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:37:48 LC6n0g5M0
「ぜりゃああああああアアアアアアアアッ!!!」

直撃を受けた怪人を待ち受けるのは、片太刀バサミを振り被った赤い戦士。
バッタを操り迎え撃つか、どうにか身を捩って躱すか、或いはこの勢いを利用し蹴り付けるか。
選択肢は複数あれど、実行へ移すには体が思うように動かない。
神の下す蒼炎の裁きを身に受けた以上、軽い傷の筈もなかった。

「マコを…お前は…!!」

何より、仲間を手に掛けた者を灯悟は決して逃しはしない。
受け入れ難い現実が浸透し、湧き上がる怒りとなって刃に宿す。
仲間達を鼓舞し絶望を打ち消す、赤い炎はそこにない。
希望の色など失った黒炎が怪人を焼き潰す。

『この力は…灯悟、お前は……』

鮮血が漏らす驚愕の呟きも、今の灯悟には届かない。
耳が拾うのは敵を斬った音、目が映すのは斬ったばかりの敵の姿。
強固な装甲を纏っていようと、神の裁きを受けた直後に強力無比な斬撃を浴びせたのだ。
大量の火花を散らしながら宙を回転、数度のバウンドを経てようやっと止まる。
幾度も衝撃を受けた影響で緩んだのだろう、ベルトが外れ離れた場所へ投げ出された。
どんな名前かは不明だが仮面ライダーらしく、銀の装甲は消失し元の姿を灯悟の目に晒す。

「え……?」
『なんだと……!?』

信じられないものを、彼らの目は映し出す。
許し難い敵への怒りも、仲間が使った力への疑問も。
今の今まで抱いていた筈の全てが、驚く程簡単に熱が引く。

地面に横たわる、銀色のライダーに変身した者。
痛みへ苦し気に呻く声も、身動ぎの度に揺れるおかっぱ頭も。
汚れてはいるが会った時から変わらない制服も。
何もかも全部、知らない訳がない。


724 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:38:42 LC6n0g5M0
「マコ…………?」

どうして彼女があそこにいる。
殺されたんじゃないのか、何故殺したというライダーの正体が彼女なんだ。
次から次へと疑問が浮かび、焦りに変わってドッと冷や汗が流れる。
マコが殺されたと、そう言った男を探すのすら今は後回し。
脚は彼女の元へと駆け出していた。

「やめろ……」

見てしまったのだ、動けない彼女を静かに視る神を。
次に何が起きるのかを、分かってしまった。

「やめろ……!」

誰もが彼女の元へ行けない。
あらゆる場所から放たれる熱線が、地面を溶かしながら駆ける神獣が。
皆をその場に固定し、マコの方へと向かわせようとしない。
だから唯一、自分だけが手を伸ばせる。
彼女を助けられる、その筈なのに。

「やめてくれ……!!」

どうしてこんなにも、遠くに感じてしまうのか。
どうしてこんなにも、彼女の存在を引き戻せないのか。

どうして、間に合わないと理解してしまうのか。

「マコオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

ほんの少し先で。
伸ばした手は何一つ掴めないまま。

マコの胸を、光が貫いた。


725 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:39:44 LC6n0g5M0
○○○


自他ともに認める劣等生のマコも、流石に理解せざるを得ない。
これは無理だ、自分はもう助からない。

危ない目や痛い目に遭ったのは初めてではない。
特に流子が本能寺学園に来て以降は、ほぼ毎日が騒動と戦いの連続。
マコ自身、ひやひやする場面は一度や二度で済まなかった。
しかし今回ばかりは駄目だ、自分が死ぬのを分かってしまう。

家族の元へ帰りたかった。
皐月や四天王達が大変な戦いをしてるのに、自分だけこんな場所で死ぬのは嫌だ。
流子と会えないまま、さよならも言えずお別れで悲しくないなんてありえない。

(良かったぁ……)

だけど、マコが真っ先に感じたのは安堵。
先生からもらったベルトで変身した直後、体が言うことを全く受け付けなくなった。
意識はハッキリしてるのに、まるで体は別の誰かが動かしてるよう。
止まってと何度思っても効果はなく、暴れ回ってオーズや灯悟をも傷付けた。

あのまま変身解除されなかったらきっと、もっと多くの人を襲ったかもしれない。
灯悟や、流子を殺してしまった可能性だって否定できない。
そうならずに済み、もうすぐ死ぬというのにホッとしている。


726 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:40:55 LC6n0g5M0
「レッドさん……」

こちらへ駆け寄り、必死に自分を抱き起すヒーローが見えた。
悲しませるつもりはなかったけど、このまま自分が死んだらきっと心に傷を付ける。
そんな真似したくない、でも終わりを無かったことには出来ない。
だから少しでも自分の言葉を伝えようと、口を動かす。

「流子ちゃんを……おねがい……」

自分が死んだと知ったら、きっと流子は物凄く怒る。
怒って、悲しんで、暴れて、自分自身を大きく傷付けてしまう。
大切な友達を任せられるのは、鮮血と絆を結んだヒーローだけだ。

灯悟だって辛いだろうに押し付けてしまうようで、申し訳ないと思う。
でも、二人が協力すればどんな強い敵にだって負けない。
恐い殺し合いなんて終わらせられる。
灯悟と流子の間に生まれるだろう、絆(なんだかよくわからないもの)の強さを信じたい。

「二人なら絶対に…………」

皆を助けて、美味しいコロッケを食べながら笑い合う。
そんな未来を現実の光景にすると信じ、それっきりマコは動かなかった。



【満艦飾マコ@キルラキル 死亡】


727 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:42:24 LC6n0g5M0



「マコ…?マコ!マコ!!」

何度揺さぶっても、二度と瞳は開かない。
声が紡がれる機会は永遠にやって来ない。
生ける者ならば必ず訪れる終焉、それを過ぎれば最早残るのは魂なき空の器。

「マコ……っ」

喪失という、灯悟を最も苦しめる痛みが蝕む。
幼い自分を残して逝った両親の顔が浮かぶ。
自分を救って死ぬ予知から、逃れられなかった彼女の最期が思い出される。
癒せない傷口が広がり、何重にも貼り付けた絆創膏へ血が滲む。
ふやけて使い物にならなくった絆創膏は落ち、止められない出血に気が狂いそうだった。

「あっはっはっはっはっ!いやぁ傑作だったね!」

耳障りで、いっそ殺意すら覚える笑い声が聞こえた。
わざとらしく腹を抱えるマゼンタ色の装甲から、出会った時の温厚な雰囲気は微塵もない。
自分と、動かなくなったマコをどんな顔で見ているか。
仮面で素顔が隠れてるのに、醜悪な表情をしてるのが嫌でも分かる。

「変身した彼女をオーズくん共々、ここまで誘導するのは大変だったよ。私の演技も中々だったろう。生徒達にも自慢したいよ、きっと私を見習って馬鹿な連中を上手く騙そうとするからねぇ」
『何だと…!?貴様はやはり、最初から我々を騙していたのか!』
「おいおい、恨むなら騙された間抜けな自分達と、それにチェイスくんを恨んで欲しいね。善人の仮面を被り、頭の悪い連中を弄ぶ悪魔。それこそが仮面ライダーの在り方って教えてくれたのは、彼なんだからさ」
「先生……アンタは…お前はァッ!!」

激昂し斬り掛からんとする灯悟だが、背後から迫る猛烈な死の気配へ飛び退く羽目になる。
先生も同じで舌打ち交じりに地面を転がり、神の放った熱線を避けた。


728 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:43:40 LC6n0g5M0
「もう少し遊んでも良いけど、流石にあの黒い彼相手はキツそうだ。今回はお開きにさせてもらうよ」

先生が悪人か善人かはアルジュナに関係無い。
武具(ディケイドライバー)を装備し現れた時点で。
否、もっと根本的な部分で生を認めない。

「無数の魂を贄に……生まれ落ちし造物……汝もまた……不出来……」
「……勝手にベラベラ喋んなよ」

知らぬ者には意味不明な内容、されど「先生」には違う。
何を意味するのか分かるが故に、小声で悪態を吐き捨てる。
とはいえ今言った通り、長居する気はない。

『ATTACK RIDE ILLUSION!』

ディケイドライバーがカードを読み取り、3体の分身を生み出す。
耐久力以外は本体と同スペックのディケイド達は、揃って同じカードを続けて装填。
ただ武器を振り回すだけではない、分身達も本体と同じくライダーカードを使える。
アッシュフォード学園での戦闘と違うのは、複数のライダーの力を取り戻したこと。
カードに秘められた力が解放され、本体を含めた4体のディケイドが姿を変えた。

『KAMEN RIDE RYUUKI!』

『ATTACK RIDE AD VENT!』

殺し合いでは浅倉威も変身したライダー、龍騎の力を使用。
4体全員が同名カードを装填し、契約モンスターのドラグレッダーを呼び出す。
あくまでカード効果による再現だが、力はオリジナルと同等。
分身の龍騎共々襲い掛かり、本体に近付けさせない。


729 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:45:01 LC6n0g5M0
「それじゃ、機会があったらまた玩具にしてあげるよ!私の生徒達にもよろしく言っておいてくれ!」
「なっ、待て…!」

斬り掛かって来た分身を力任せに押し退けるも、先生は追跡の手をするりと抜けた。
地面へ落ちた、元は民家の一部だった窓ガラス。
ミラーワールドへ入り込み、そのまま戦場から遠ざかる。
カードデッキを持たない灯悟では、追い掛けたくとも不可能だった。

「失墜せよ……」
「っ!?ぐああああ!」

何より、先生からは強制的に意識を外すしかなくなる。
いつの間にやら足元へ配置された光球から、天目掛け柱が生成。
分身数体とドラグレッダーを飲み込み、灯悟をも灼熱の餌食にせんと牙を剥く。
辛くも直撃は避けるが完全には避け切れず、四肢と剥き出しの胴へ熱が襲う。
本当に防御機能が生きているのか疑う程の熱量へ、苦悶の叫びを抑えられない。

「悪い奴は、許さない!」
「オ、オーズ!?待ってくれまだ――!?」

膝を付きそうになった灯悟を支え、腰をガッチリとホールド。
何のつもりかを尋ねる前に、視界が地上を遥かに見下ろす位置へ移った。
抜け出そうにも直前に受けた負傷が響き、運ばれるがままを許してしまう。
アナザーオーズが持つバッタのコアメダル由来の脚力、加えてバッタヤミー本来の能力。
それら二つが組み合わさった影響により、一度の跳躍で戦場からは大きく遠ざかった。

「クソッ!どうなってんだこりゃ!?」

熱線のみならず赤龍の吐く炎にも狙われる羽目になり、意識せずとも操縦桿を握る力が強まる。
悪態の原因は終わらない攻撃のみならず、乱入者達が状況を悪い方へ転がしていったのも含まれていた。
詳しい事情はともかく先生とか何とか呼ばれてた奴が、ロクでもない真似をしでかし勝手に逃走。
状況を考えろと怒鳴り付けてやりたい気分の龍園は、


730 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:46:09 LC6n0g5M0
「があああっ!?」

突如襲った猛烈な痺れに悲鳴を上げ、急激に意識が遠のく。
モビルワーカーが自身の意志とは無関係に止まり、ハッチが開かれる。
薄れる視界で見えたのは、気を失っていた筈の少女。
スタンガンを手に、こちらへ一瞥もくれることなく逃げ出す後ろ姿。

(ロクでもない奴しかいねぇのかよ……)

至極真っ当な嘆きを最後に意識を手放す龍園を、さとうは最早見向きもしない。
密着した状態でスタンガンに手を伸ばせば流石に気付かれると思ったが、モビルワーカーを運転中なのが幸いだった。
破壊され凸凹の地面を走っていれば振動でコックピットも揺れ、さとうが密かに動いてるのも分からない。
龍園から離れるのに見事成功、廃車同然の車へ駆け寄り窓ガラスへカードデッキを翳す。

「変身」

バックルへ素早く装填、タイガの装甲を纏うやミラーワールドへと飛び込む。
その際、自身の契約モンスターにある命令を下して。

「龍園!?」

モビルワーカーに起きた異変は姫和にも確認出来た。
ハッチが開き、ぐったりとしたまま動かない龍園が見える。
まさかこんなタイミングで、さとうが暴挙とも取れる行動に移るとは。
驚きは一瞬に留め、急ぎ駆け付けねばならない。
気を失った今の龍園は、モビルワーカー共々ただの的。

「こりゃマズいか」

状況は甚爾も把握し、簡潔にマズい事になったとため息と共に漏らす。
加勢に来た連中は各々裏切ったり何だりで、全員退散。
さとうも逃げ龍園は気絶、動けるのは自分と姫和の二人だけ。
敵の脅威は呆れ返る程に変わっておらず、最初の時よりも悪くなった。


731 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:46:59 LC6n0g5M0
「ならこっちも、手段は選んでられねぇな…」

唯一残された、安全とは程遠い逃走方法を使うしかなくなった。
自分一人ならともかく、龍園達には危険を強いるので積極的に用いる気は無かった手段だ。
まずは龍園達の元へ行く為に、アルジュナから離れる必要がある。

ドラグレッダー二体の尾を片手ずつに掴み、豪快に振り回す目の前の神からだ。

「おいおい可哀想だろ?動物愛護の精神はどこいった?」

最早何でもありな神には笑うしかなく、エンジンブレードを巧みに操り打ち合う。
即席の鞭に使われた挙句、機械仕掛けの大剣で胴を削られ二体の龍からは悲鳴が鳴り止まない。
ご愁傷様と心にもない同情を軽口交じりに叩き、片脚を軸に回転。
サイズが圧倒的に上だろうと関係無い、腰の捻りを加えた斬撃が片方の首を落とす。
使い物にならなくなった赤龍を捨て、神はもう片方を振り下ろした。

「どっかの呪霊操術使いのガキのが、まだマシな扱いだったな」

アッパーカットでドラグレッダーの顎を打ち、頭部諸共粉砕。
これで両方の得物を失った訳だが、アルジュナには何の痛手にもなってない。
廻剣を組み替えた弓による一閃を走らせ、甚爾もまた大剣で迎撃。

「チッ……」

振るわれた得物は弓だけでなく、舌打ちを零し後退。
光球から魔力を放出し薙ぎ払えば、斬撃となって迫り来る。

『ENGINE!MAXIMAM DRIVE!』

弓を持つのとは反対の手に、光球を確認出来た瞬間よりこっちも対抗策へ出た。
メモリを装填しエンジンブレードの破壊力を上昇。
灼熱のエネルギーを纏わせ、Aの形に斬撃を放つ。
アクセル単体ならばまだしも、甚爾の力が加わった事で神の刃の勢いを削ぐ。
だが完全に打ち消したかと言えば、残念ながら違う。
未だ健在の魔力が強化皮膚越しに焼き、甚爾をして痛みを感じざるを得なかった。


732 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:47:45 LC6n0g5M0
「くっ…!まだ来るのか!?」

神の標的は依然として変わらず、姫和と龍園も入ったまま。
光球が取り囲み魔力を充填、熱線の檻を生み出し纏めて葬る。
甚爾は足止めを受ける最中で助けは期待できない、つまり切り抜ける方法は一つ。

「はああああああああああっ!!!」

迷う暇はない、躊躇を抱けば揃って死ぬ。
ならば切るべき手札を、姫和は見誤らない。
令呪一画が消費され、全身から放出された力が原型を留めていない地面を更に捲り上げた。
戦極ドライブ、一時的に全能力を爆発的に高める戦国武将達の切り札。
得物の本来の使い手、石田三成も数々の戦場で使用し危機を脱した能力だ。
写シを張った時をも超える力が湧き上がるも、高揚感に身を委ねてはいられない。
自分達を滅ぼす輝きが迫りつつあった。

「死色の翅羽(はね)よ――」

であるならば、

「――私を抉れ!!」

こちらも現状出せる、最大の技で以て防ぐまで。

繰り出すは太刀筋すら目視不可能な、高速かつ無数の斬撃。
敵兵に悲鳴すらも許さず、数百数千の斬滅を果たした三成の奥義。
合戦場へ赤い雨を降らし血の海を作り上げた刃は今、神の裁きを阻む守護の役割を果たす。


733 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:48:28 LC6n0g5M0
『ACCEL!MAXIMAM DRIVE!』

「向こうは向こうで張り切ってんだ。こっちもいい加減、依頼人の護衛をキッチリ果たさねぇとな」

アクセルメモリのエネルギーを右脚に付与。
本来ならば直接的に蹴りを叩き込むが、甚爾が蹴り付けたのは地面。
アスファルトと土が大量に巻き上がり神の視界を一時奪う。
どうせすぐに薙ぎ払われるのは承知の上、ほんの僅かでも隙が作れれば問題無い。

地を蹴り一跳びで龍園達の元へ降り立つ。
熱線が止んだ時、そこには五体満足の姫和の姿があった。
令呪一画は安くないが惜しんで死ぬよりは遥かにマシ。
流石にあの熱線を刀一本で凌ぐのは相当に神経を張り詰め、前髪が張り付く程に汗を浮かべていたが。

「おーし、とっととズラかんぞ。死ぬ気で掴まっとけ、安全は保障出来ないからよ」
「あ、ああ分かった…」

言われるがまま姫和がモビルワーカーにしがみ付くと、ハッチを閉めモビルワーカーに飛び乗る。
リュックサックから迅速に取り出したのは、ダイヤルらしき部品が付いた緑の葉っぱ。
珍妙な見た目の道具の名はバショー扇、22世紀のひみつ道具の一つ。
ダイヤルの調整により様々な種類の風を吹かせる他、扇を振るう強さによって風の強弱を操れる。

天与呪縛によりフィジカルギフテッドを得た甚爾が、仮面ライダーアクセルのパワーをプラスし、全力で降ればどうなるか。

「―――――――っ!!!!??!!」

姫和の分かり易い反応がその答え。
エリア全域に及び兼ねない暴風が発生。
瓦礫の山も、運良く破壊を免れた建造物も等しく餌食となり舞い上がる。
災害を巻き起こした本人はモビルワーカー共々風に押し出され、遥か彼方へ吹き飛ばされて行った。


734 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:49:07 LC6n0g5M0
上空へ舞い上がった瓦礫や建造物はやがて重力に従い、地上へ引き戻される。
落下と破壊の音がそこかしこで響く中、神は表情を変えずに佇む。
排除した悪は一人、残りは各々異なる方法で逃げた。
事実へ悔やむ態度も、積極的に追って殺す気概も見せない。
今殺すか後で殺すか、順序が入れ替わっただけで結局は些事に過ぎないのだから。

「……」

暫し空を見つめるも、ややあって無感情に視線を外す。
方針は変わらない、心は依然として波立たない。
絶望の未来から来たZ戦士、13の災害の魔女、術師殺し、二つの世界で奔走した絆の英雄。
実力者達が幾度ぶつかった所で、神に変化は齎さない。

邪悪を滅ぼした先に、望みの世界があると信じて一人往く。
これまでも、これからも。


【エリアE-6/租界/9月2日午前9時30分】

【アルジュナ・オルタ@Fate/Grand Oreder】
状態:疲労(小)、ダメージ(超々軽微)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:一切の邪悪を断ち、世界を救う
01:全て些末……
02:兵を作る……それも手か……
参戦時期:創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ、19節でカルナと相対する前。
備考
※殺し合いが破綻しない程度に能力を制限されています。


735 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:49:55 LC6n0g5M0
◆◆◆


『……灯悟、オーズ、今はとにかくあの男から遠ざかり、少しでも休むべきだ』

鮮血の言葉に灯悟は力なく頷く。
言っていることは何も間違っていない。
傷も疲労も無視するには大きく、このまま戦いを続けてはどこかで力尽きるのがオチ。
並外れた体力を持つ灯悟とて、無茶を繰り返せば無事では済まない。

オーズの驚異的な脚力のお陰で戦場からは大分遠ざかったが、敵の異常な強さを思えばいつ追い付かれても不思議はなかった。
無論負けるつもりは灯悟も鮮血もないとはいえ、やる気だけでどうにかなる相手じゃないのは事実。
故に可能な限り距離を取ってから、体力回復に努める。
取り敢えずの方針は決まった。

『済まない灯悟、もっと落ち着いてからの方が良いとは分かっているが……』
「いや、鮮血の言うことは正しいぜ。いざって時戦えるようにしておかないと、本当に何も守れなくなるからさ……」

冷徹な判断を促してしまった謝罪へ、どこか弱々しく笑いながら気にしなくて良いと返す。
戦いはまだ何も終わっていない、自分の力が必要な場面はこの先何度もやって来る。
そうなった時疲れてマトモに動けませんでは、自分で自分を許せないだろう。

(俺はまだ、折れる訳にはいかない……)

先生やキヴォトスの生徒達、総司令官らの陣営、それにチェイスなる男など倒さなくてはならない敵は多い。
加えて先生の言葉がどこまで本当かは分からないが、仮面ライダーが正義のヒーローとは正反対の存在というなら。
ガッチャードですら最初に見せた姿は参加者を欺く演技だったんじゃないかと、疑いを抱きそうになる。
そんな連中が蔓延る島で、マコから託された流子を、自分の助けが必要な人達を、
何よりも、イドラを放って置く選択など最初から取る気はない。
だからひたすら前へ進む。
傷口から血が溢れて止まらない、絆創膏を張っても血が滲めば濡れて簡単に剥がれる。
苦痛に苛まれたままで、それでも残る絆を奪わせない為に戦う。


736 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:50:32 LC6n0g5M0
(灯悟……)

明らかに無理をしている灯悟へ、もっと気の利いた慰めを言えれば良かったのかもしれない。
総司令官達との一件で打ちのめされた時に立ち直らせてくれた、大切な仲間はどこにもいない。
しかも騙されていたとはいえ、自分の手でマコを斬ったのだ。
悔やんでいない筈がない、立ち止まって悲しみに死んでも責められないだろう。

しかし鮮血もまた、マコの死には動揺を隠せなかった。
流子とマコが友情を結び、二人の間に「なんだかよくわからないもの」が生まれる場面を一番近くで見て来たから。
そんな自分の本来の相棒が友の死を知った時どうなるか。
遠くない内に必ず来るその瞬間へ自分でもよく分からない痛みを感じ、灯悟へ掛けるべき言葉を上手く思い付けなかった。

「オーズもありがとうな。お前には助けられてばっかりだぜ」
「悪い奴は許さない」

灯悟を戦場から連れ出し、助けてくれた異形は同じ言葉を繰り返す。
未だ失われていない絆に安堵の想いを抱くが、大きな間違いだ。
オーズ…バッタヤミーが灯悟を連れて逃げたのは絆や友情などではない。
圧倒的な力を振るうアルジュナより、灯悟と共に戦場を離脱する方がリスクが低い。
自分が死なずに欲望を満たせる正義を選んだだけで、心から灯悟を思っての行動ではない。

正義を果たし欲望のメダルが増え続けるのも、己の信じる絆が一方通行に過ぎないことも。
灯悟には気付けるだけの余裕がまるでなかった。


【エリアF-6/租界/9月2日午前9時30分】

【浅垣灯悟@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:女体化、疲労(大)、ダメージ(大)、精神的なダメージ(極大)、右乳首欠損(処置済み)、若干の火傷(処置済み)
服装:鮮血@キルラキル
装備:キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる、片太刀バサミ@キルラキル
令呪:残り三画
道具:ころころダンジョくん@Toloveるダークネス、ライドベンダー@仮面ライダーオーズ/OOO、なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)@ドラえもん、セルメダル数枚@仮面ライダーオーズ/OOO、ホットライン
思考
基本:皆の絆を断とうとする主催陣営を倒し、殺し合いを止める
00:マコ……
01:移動し休める場所を探す。
02:鮮血や《仮面ライダーオーズ》と共に行動する。彼等との“絆”を深めたい。
03:イドラやマコの仲間と合流する。または、殺し合いに反対する者達と“絆”を紡ぐ。
04:絆を奪う者達は許さない。特に『先生』には最大限警戒。
05:衣類には拘らない。俺はヒーローとして、《鮮血》と絆を深める為に、女子高生になる!
06:もしイドラが自分の知らない場所で死んでしまった時は……
07:纏流子と会ったら、マコのことを……
参戦時期:少なくともキズナレッド・バースとの交戦前
備考
※女体化した後の外見はキズナレッド・バースの一人である浅垣灯子と酷似しています。
※元着ていた服はドラゴンに燃やされました。
※女体化している時のみ、鮮血を装備できます。
※情報交換し、キルラキル世界の事を多少知りました。
※纏流子を味方で、鬼龍院羅暁を危険人物と認識しています。
※総司令官と配下のロボ(ロボ子)、パンダの怪物を危険人物と認識し、警戒。
※ロボ子はファイティングジャッカルレイダーに変身していたので、外見を知りません。
※総司令官の語る“英雄”は、ずる賢いタヌキで『子供を駒にする危険人物』と思っています。


737 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:51:25 LC6n0g5M0
[鮮血(意志持ち支給品)@キルラキル]
状態:軽度の損傷(再生中)
思考
基本:仲間と共に殺し合いの打破。
00:マコの死に動揺、流子がこのことを知ったら…
01:灯悟を導き、共に戦う。
02:流子と合流したい。
03:総司令官の世界の“英雄”は本当に危険人物か?
04:《仮面ライダーオーズ》…。信用出来るのか?
※キズナレッドの世界の事や転生した異世界の事を灯悟から教えて貰いました。
※総司令官と配下のロボ(ロボ子)、パンダの怪物を危険人物と認識し、警戒。
※ロボ子はファイティングジャッカルレイダーに変身していたので、外見を知りません。
※総司令官の語る“英雄”の『危険人物』と言う話を疑問視しています。

〈バッタヤミー(NPCモンスター)@仮面ライダーオーズ/OOO〉
状態:中度の負傷、セルメダル増加中
服装:裸
装備:アナザーオーズウォッチ@仮面ライダージオウ
思考(自我はなく、欲望で動く。)
基本:“正義”を行う。
00:悪い奴は許さない。
01:悪い奴は、許さない。
02:わるいやつはゆるさない。
備考
※「悪い奴は許さない。」としか喋れません。
(「トゥ!!」は掛け声です。)
※欲望を満たすと、身体を構成するセルメダルが増え、怪我の修復や、技の強化に繋がります。
※行う“正義”は主観による物で、それが本当に正しい事かは考えません。
※場合によっては度が過ぎた“正義”(暴力)を行う事があります。


738 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:52:14 LC6n0g5M0
◆◆◆


「あっぶなかったァ…あんな化け物までいるなんざ聞いてないっつーの」

ミラーワールドを経由して適当な民家へ到着。
ソファへだらしなく腰を下ろし、エンヴィーは大きく息を吐いた。

雑魚ばかりが参加してるとは思っていなかったが、先の黒い男は強いを通り越して異常。
プライドの高いエンヴィーを以てしてアレとまともな戦いが出来るとは、口が裂けても言えない。
ファイズに変身中キツいのを一発もらい、心臓まで潰れた感覚はハッキリ思い出せる。
もし賢者の石のストックが切れていれば確実に死んでいた。
単独であそこまでの力を持つ存在など、それこそ自分達の創造主くらいだろうに。
あんな奴を参加させて優勝どうのと、一体どの口が言えるのだろうか。

「ま、面白いもんが見れたから良いけどね」

ヒーロー気取りの暑苦しい男と、能天気な小娘。
自分の嘘に引っ掛かってお仲間同士傷つけ合い、挙句小娘は死亡。
何回思い出しても傑作だ、どうせなら灯悟の手でしっかり殺していればもっと面白かったが。

仮面ライダーに変身可能な道具、その言葉に嘘はない。
重大な欠陥が存在する事を、意図的に黙っていただけだ。

仮面ライダーゼロワン・メタルクラスタホッパー。
それこそがマコが変身したライダー。
特殊金属・飛電メタル製の装甲を持ち、無数の金属製バッタを使役し操るゼロワンの強化形態。
本体のスペックは勿論、攻防一体の固有能力はあらゆるマギアやレイダーを寄せ付けない。

但し、変身者の意識が悪意へ幽閉され、自我を保ったまま体のコントロールを失うというデメリットがある。
嘗てゼロワンの元々の変身者である飛電或人も、制御不能へ陥り幾度も苦しんだ。
マコもまたメタルクラスタホッパーに変身中は自らの意志で体を動かせず、目に入る者達へ襲い掛かる暴走状態に追いやられた。


739 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:53:05 LC6n0g5M0
もしほんの少しでも何かが違ったら、灯悟達はマコを助けられたかもしれない。
エンヴィーの嘘を見抜き、善が勝って悪が負ける結末を掴めた可能性はゼロじゃない。
ただ致命的に、状況が悪過ぎた。
アルジュナ・オルタという特大の厄ネタと対峙し、誰もが余裕を削り取られた。
違和感に気付く暇も、冷静に見極める観察眼も奪われ、嫉妬のホムンクルスが主催の人形劇は見事に完成。

「アンタも酷い奴だよなぁ先生?このエンヴィーに殺されちまったせいで、アンタは今じゃ立派な悪人。大好きな生徒達もさぞ迷惑してるだろうねぇ」

今頃は先生に怒りを燃やしてるだろう灯悟を思い浮かべ、堪え切れずに吹き出す。
とっくに死んだ、しかも善人の男へあらぬ恨みをぶつける様のなんと滑稽な事か。
おまけで自分を不愉快にさせたチェイスと果穂も、徐々に追い詰められる筈。
正義のヒーローが同じヒーローの手で殺される。
人間達には最悪の悲劇であり、エンヴィーには最高の喜劇だ。

「放送までは先生の見た目で遊ぶとして、後はこいつに会ってみるのも良いかもな」

プロフィール付きの名簿を開き、画面越しに名前をコツコツと叩く。
纏流子、マコの友人であり人ならざる存在。
生命繊維なる化け物としての本性を、マコが死んだ事実を使って突いてみようか。

楽しみが広がり、玩具となるだろう者達を嘲笑う。
胸の奥へ隠す自らを象徴する感情には、目を背けて。
流子、マコ、鮮血、灯悟、チェイス、果穂。
人間と怪物が手を取り合い絆を結ぶ、その事実へ掻き毟られる感覚を覚えたと、そう認めないように。


【エリアD-6とF-6の境界/租界/9月2日午前9時30分】

【エンヴィー@鋼の錬金術師】
状態:先生@ブルーアーカイブに変身、疲労(大)、苛立ち(中・少し解消)
服装:先生の服装
装備:ネオディケイドドライバー@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、どこでもドア@ドラえもん、ホットライン(簡易プロフィール付き名簿@オリジナルがインストール)
思考
基本:好きにやる
01:アビドス砂漠方面に向かい、この姿でこいつの生徒に会って遊ぶ。
02:先生と仮面ライダーの悪評を広める。
03:纏流子に会ったらお友達の最期を伝えてやるのも良いかもな。
参戦時期:死亡後
備考
※先生の支給品はエンヴィーが回収しました。
※ネオディケイドライバーは戦闘を重ねる毎に、一枚ずつライダーカードが解禁されるよう細工されています。
 現在クウガ〜ファイズのカードが使用可能です。


740 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:53:57 LC6n0g5M0
◆◆◆


「……っ」

節々の痛みに顔を顰めながら目を開ける。
気分爽快な目覚めとは到底言い難い。
寮の自室のベッドにあるまじき硬さが背中に伝わり、軽く動かせば関節がパキパキと鳴る。
同じ体勢でいたから、そもそもここか見慣れた自分の部屋ですらない。
チラと背後を見やれば冷たい鉄の壁があり、どうやらそこへ寄りかかって座らせられていたと分かった。

「起きたか」

声は頭上から聞こえ、首を解すようにガクンと見上げる。
この数時間で見飽きた顔が、背を預ける鉄の上に突っ立っていた。
より正確に言うなら、モビルワーカーのハッチ上部へ周囲へ視線を向けている。
長刀を腰に下げ油断なく見据える姿は様になっているが、向こうは気付いてるのだろうか。
極端な短さでないとはいえ、平城学館の制服も当然スカート。
こっちが顔を上げねばならない場所へ立ってれば、ストッキング越しに履いた色も見える。

「見えてんぞ」
「…?……っ!!」

慌ててスカートに手をやり隠す。
出会った時から気難しい表情だったが、流石に羞恥はあるらしく頬が赤い。
恨みがましく睨む姫和に、こいつでもこんな顔するのかと至極どうでもいい事を思った。

「色気のない中坊の下着に食いつく程餓えてねぇよ」
「何だその言い草は!?」

見たくて見た訳でないにしても、あんまりな言い方だった。
飛び降り食って掛かるが、当の龍園は気怠そうに立ち上がり頭を掻く。
先程からもう一人の姿が見当たらないが、まさか黒い男相手に下手を打ったのではあるまいか。


741 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:55:03 LC6n0g5M0
「起きて早々、ガキのラブコメやれる元気はあるみてぇだな」

浮かんだ悪い予感は本人がアッサリ顔を出し、ただの杞憂で済む。
三人共に生き延びたと分かり、モビルワーカーをリュックサックへ収納。
近場の民家へ移動し腰を下ろした。

快適の二文字が明後日の方向へすっ飛んだ空の旅を経て、モビルワーカーは無事着地。
というよりは地面が近くなった頃合いを見て甚爾が先に降り、両手でモビルワーカーを受け止めたのである。
刀使でもここまで出鱈目な動きには出ず、どこか疲れた目を姫和に向けられたがともかく。
ホットラインを使い現在地を見れば、アルジュナとぶつかった場所からおよそ2エリア分離れていた。
油断はしないが幾ら何でもまたすぐ遭遇はないだろうと考え、空気を読まずにNPCの集団が出現。
掃除を甚爾に任せ、姫和は気絶中の龍園の元へ残ったのだった。

「ほらよ、起きたならそろそろ腹になんか入れとけ」
「どっから持って来やがった?」
「わらわら湧く連中を潰したご褒美、ってとこかね」

渡されたのは熱々の丼と箸。
蓋を開けば、大盛りの白米の上から濃い目の味付けの肉がギッシリ。
天辺の卵をどのタイミングで崩すかは自由、付け合わせで漬物も二つ添えて。
ドロップ品で手に入った中華料理店愛家の看板メニュー、それが見事に三個。
ついでにそこらの販売機を軽く(甚爾基準)小突き、手に入れたミネラルウォーターを渡してやる。

「…やけに気遣いしやがるが、どういう風の吹き回しだ?」
「素直に親切心だって受け取れよ。まあ、追加報酬分で少しくらいサービスしてやっただけだ」

ヒラヒラと動かす手には赤いメモリ。
手に入れた過程はどうあれ、仮面ライダーアクセルに変身する道具だ。
100万ぽっちじゃ遠くない内に雇用へ限界が来たが、これで暫くは延長決定。
言い終えると肉丼に口を付け、腹の中へ搔っ込む。
雇い主が食べ始めるまで待つつもりはないらしかった。


742 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:56:09 LC6n0g5M0
貰った物を突っ撥ねる気はなく、食って体力を付けるのも間違いではない。
龍園もまた口へ肉丼を運び租借、時折水で喉を潤しながら食べ進める。

挨拶も言わずに食べる男二人へ呆れつつ、食事の必要性は姫和とて分からんでもない。
腹が減っては戦は出来ぬとは、逃避行中の可奈美の言葉だったか。
ただついさっき死者が出たのを思うと、食欲が湧こう筈もなく。
一度も会話しておらず、マコという名前なのを知った程度。
それでも灯悟が嘆く姿を見ただけに、あんな死に方をしていい人間でないのは察しが付く。
救えたかもしれない命を取り零し、何も感じない程冷徹じゃあない。

(だとしても、立ち竦む理由にはならないか……)

心にモヤは掛かるが、蹲って戦いを放り投げるような傷に非ず。
もう一度会いたい者達に会うまで、止まれと言われても突き進んでやる。
いただきますと小さく口にし、箸へ手を伸ばす。
ボリューム満点の肉丼へ苦戦しつつも、今後の戦いの為の糧にしておく。

(収穫はあったが、満足のいく結果とは言えねぇな)

黄身を絡めた肉を米と共に味わいながら、今回の戦闘を龍園は振り返る。
アクセルドライバーを手に入れ、甚爾への報酬上乗せと戦力強化が叶った。
それは良い、これで少なくとも即座に手を切られはしない筈。
同時にもし甚爾が他者に引き抜かれ敵に回った場合、脅威の度合いが増す事にも繋がる。
契約継続の為には今後も仮面ライダーの変身道具や起動鍵、その他報酬になり得るアイテムの確保は必須。
甚爾に渡す報酬だけでなく、龍園自身が使う武器としても多く手に入れ損は無い。

(あの女から根こそぎ奪っとけば良かったか?)

多少の苛立ち交じりにさとうの顔を頭に浮かべる。
別に、あの場で保身を優先したのを強く詰る気は毛頭ない。
何だかんだ自分の命が一番、共倒れは御免。
といった考えを理解不能と言うつもりはなく、まあそういう奴だっているだろうとは分かる。
だからといってスタンガンを食らわせた件については、流石に腹の虫が据えかねる部分がない訳ではなかった。
とはいえ自分の油断があったのもまた否定出来ず、そこは反省点として受け止める。


743 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:56:59 LC6n0g5M0
(後はアイツらか……)

途中から現れ協力し戦ったが、よく分からない裏切りだ何だが起きて散り散りになった連中。
少なくとも灯悟という女(実際は男)は、話が通じるし次に会っての共闘は不可能じゃない。
如何にもな正義感の強さは龍園と相性が良いとは言えない。
それでもいきなり電撃を浴びせる女よりは、遥かにマシな参加者だろう。
一方で先生と呼ばれた男には警戒が必要。
あんな緊迫した状況で場を引っ掻き回す性根だ、放って置けば今後も何をしでかすやら。

(で、一番頭が痛くなるのがあの色黒野郎だな)

正直思い出すだけでうんざりするが、考えない訳にもいかない。
甚爾やグラファイト、斧を持った乱入者も化け物染みた強さである。
しかし黒い男は天災が人間に近い形を取ったような存在。
参加者である以上は自分達と同じく、バグスターウイルスに感染してるのは間違いない。
だったらレジスターの破壊で消滅へ追いやれる、と言うだけなら簡単だが実行に移せるかは全く別の話。
しかも甚爾の話では、あの男と渡り合える女もいたとのこと。
主催者が何を考えて連中を参加させたのか、理解できないししたくもなかった。

頭を働かせる間も箸は止めず、やがて三人共に食事を終える。
先程の戦いで散々走らせた甲斐もあって、モビルワーカーの操縦にも大分慣れた。
コックピットに龍園が乗り込み運転を担当、指揮官用に取り付けた座席には姫和が立つ。
閉めたハッチの上には甚爾が寝そべり、出発準備完了。
緊張感の無いリラックスした体勢であっても、奇襲や狙撃があれば即座に対処可能なのが伏黒甚爾という男。
能力の高さには今更ケチを付ける気はなく、呆れつつも文句は飛ばない。

「龍園、ここからどう動く?」
「そうだな……」

地図を睨みながら考え込む。
他参加者との接触に動くか、だとすればどこへ向かうか。
或いはいっそ残りの数時間を姫和の調伏に使い、手札を増やしておくか。


744 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:57:35 LC6n0g5M0
「ああそういや、お前を守る為に十条のお嬢ちゃんは令呪を使ったらしいぜ」

思い出したように欠伸交じりに告げられ、思わず彼女を見上げた。
ハッチが閉まっており顔は見えないが、向こうの声は聞こえる。

「監視対象とはいえ死んで欲しいと思ってなかっただけだ。それにお前には一度助けられた借りもある、恩着せがましくするつもりはない」
「そうかよ。まあ礼は言っとく」

暑苦しい友情を築くつもりはなくとも、令呪を切らせたのは事実。
互いにアッサリとしたやり取りだが、特に問題もない。
少なくとも変に畏まられるよりは余程接し易かった。


【エリアC-7/租界/9月2日午前9時30分】

【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:疲労(大)
服装:平城学園の制服
装備:十種影法術@呪術廻戦、無銘刀・白@戦国BASARA3
令呪:残り二画
道具:治療キット@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る。
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため。
02:可奈美や皆のことが心配。
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
04:テレビ局周辺で参加者を探すか、調伏で手札を増やすか…
05:レンのことが気掛かり。残して良かったのだろうか。
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
※十種影法術は現在玉犬、鵺が調伏済みです。


745 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:58:16 LC6n0g5M0
【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(大)、体に若干の痺れ(時間経過で回復)、精神的疲労(小)、綾小路への怒り
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア、モビルワーカー(オルガ機)@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
02:テレビ局周辺で参加者を探していく。それか、先に十条の調伏に付き合うか?
03:綾小路の野郎、何をやってやがる。
04:他の同じ学園の連中は……まあ、合流する必要もねえか。
05:グラファイトの言う友を探してみる。
06:仮面ライダーに変身する道具や起動鍵を、なるべく多めに手に入れておきたい。
07:蛮野はイマイチ信用出来ないが、レンのお守をする気も無い。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
※個性『スティール』により肉体を鉄のコーティングが可能になりました。

【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:疲労(中)、軽度〜中度の火傷
服装:仕事用の私服
装備:アクセルドライバー&T2アクセルメモリ@仮面ライダーW、エンジンブレード&エンジンメモリ@仮面ライダーW
令呪:残り三画
道具:100万が入ったトランクケース@現実、バショー扇@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働くが、まあ上乗せは欲しいところ。取り敢えず追加分で契約更新。
02:加茂憲倫、と来たか。
03:まさかこんなところで禪院家の術式が見れるとはな。
04:あんな化け物まで参加させたのか?イカレてんな。
参戦時期:死亡後
備考


746 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:58:51 LC6n0g5M0
◆◆◆


逃げ延びた先でさとうは、リュックサックへ新たに手に入れた道具を仕舞う。
飛電ゼロワンドライバーとメタルクラスタホッパープログライズキー。
更には参加者共通で装着されたレジスターもだ。
これらの回収を成し遂げたのは、契約モンスターのデストワイルダー。
ミラーワールドを行き来可能なのはライダーだけじゃない。
元々住まうミラーモンスターも当然の如く、反射物を使って自由に入れる。
地面へ落ちた変身ツールに加え、マコの死体を主の元まで運んで来た。

レジスターを切り離された少女の死体を、ご馳走にありついたように貪るモンスターから目を外す。
あの場に残って龍園達に手を貸し、生き延びられるかどうかも分からない戦いを続ける。
さとうからすれば全く価値の見出せない自殺行為だ。
連中と共倒れし、しおとの元の生活が永遠に叶わなくなるなど冗談ではない。

必要な物は手に入った。
ライダーに変身する道具とレジスター。
これらに加えてアーリャが持っていたアタッシュケース。
以上を持参すればルルーシュとて邪険には扱わず、融通を利かせてもらえる可能性は低くない。
しおの捜索及び二人揃っての脱出、絶対に譲れない目的の為には自分一人の力では非常に難しい。
都合が良い利用相手であるルルーシュの元へ急いで向かう。
道中、しおが見付かるのが最も良い展開だが。

「……」

チラとガラスの向こうを見れば食事を終えたのか、そこにもう少女は残骸一つ残っていない。
今更罪悪感は湧かない、名前は知らないし会話だって一度もしなかった。
愛の為に必要だからやった、それだけ。
しおと会ったあの日から何も変わらない、愛の為なら自分は何だって出来る。


747 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 19:59:35 LC6n0g5M0





本当にそうか?





先の場に残って龍園達に手を貸すのは、悪手とも言い切れなかったんじゃないか。
タイガへ変身し戦うか、或いは支給品を貸し出し向こうの戦力に充てるだけでも状況が変わった可能性はある。
そうやって恩を売っておけば、向こうもある程度は自分に手を貸したかもしれない。
最初に会った男二人を殺した件で他参加者に警戒されても、場を取りなしたり。
或いはしおの捜索だって、龍園と甚爾はともかく姫和は恐らく引き受けたのではないか。
彼らに借りを作り損はなかったかもしれないと、さとうが気付かない筈がない。
にも関わらず逃げたのは、全滅するリスクを背負いたくなかったから?
それもあるだろうがしかし、本当の理由はもっと別。

黒い神が恐ろしかったから。
一秒でも早くあの場から逃げ出したかったから。
だからしおを見付ける為の先を見据えた方針を無視してまで、逃走を選んだんじゃあないか。

「違うっ!!」

自分で浮かんだ考えを強く否定する。
そんなことある訳ない、あっていい筈がない。
初めて、初めて本気で好きになった女の子。
自分に本当の愛を教えてくれた、甘くて心をふわふわに満たしてくれるさとうだけの天使。
しおよりも、自身に巣食う恐怖が上だなんて絶対に認めない。

馬鹿げた妄想を振り払うように、皇帝の根城と化したテレビ局へ足早に向かう。
空っぽだった瓶の中へ、蕩けそうな砂糖菓子とは別に、黒い輝きが生まれたと気付こうともせず。


【エリアE-6とE-7の境界/租界/9月2日午前9時30分】

【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
状態:疲労(大)、ダメージ(中)、ノワルへの嫌悪(大)、アルジュナへの恐怖(大)、不安による焦り(極大)
服装:ファーストリコリスの制服@リコリス・リコイル
装備:仮面ライダータイガのデッキ@仮面ライダー龍騎、キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品0〜2(確認済み)、ホットライン×2、サバイバルナイフ@現実、ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド、11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER、飛電ゼロワンドライバー&メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン、さとうの制服(Yシャツの一部が引き裂かれている)、レジスター(マコ)
思考
基本方針:しおちゃんと二人で元の世界に戻る
00:私はしおちゃんとの愛を裏切ってなんかない……
01:しおちゃんを探す
02:テレビ局に行きルルーシュの部下になることも検討。
03:↑に並行してしおちゃんと一緒に元の世界に戻る方法を探す
04:邪魔をする存在には容赦しない
05:アタッシュケース(ライダーガシャットケース)に何かある……?
参戦時期:アニメ3話でしおちゃんが家にいないのを気付いた頃
備考
※神戸しおは自身と同じ時間軸から参戦していると思っています。


748 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 20:00:20 LC6n0g5M0
『支給品紹介』

【モビルワーカー(オルガ機)@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ】
…龍園翔に支給。
厄祭戦後の世界における主要兵器および作業機械。
装甲戦闘車両の延長上にあるメカで、水素エンジンを動力源とする。
CGS乗っ取り後も鉄華団が引き続き使用。両サイドに30mm機銃を装備。
団長のオルガ・イツカが乗る指揮官機であり、後部に搭乗ブロックが設けられ、センサー類が追加されている。
本ロワでは操縦システムがある程度簡易化された状態で支給。

【アクセルドライバー@仮面ライダーW】
…アリサ・ミハイロヴナ・九条に支給。
シュラウドが開発した仮面ライダーアクセルの変身ベルト。外見はバイクのスロットルを模している。
ダブルドライバーと同様に普段はバックルの状態で携帯、腹部に当てることで自動的にベルトが伸長して装着される。
バックル中央のモノスロットにアクセルメモリを装填し、パワースロットルを捻ることで装着者をアクセルに変身させる。

【T2アクセルメモリ@仮面ライダーW】
アクセルドライバーとセットで支給。
加速の記憶を宿したガイアメモリ。
身体能力を強化し、熱風が生まれるほどの超加速力とオートバイのような形態への変形能力を与える。
T2ガイアメモリ共通の特徴として、人体に直接挿入しドーパントにも変身が可能。

【エンジンブレード@仮面ライダーW】
…伏黒甚爾に支給。
仮面ライダーアクセル専用の対ドーパント用多機能型大型剣。
20kgもの総重量があり、生身の人間の腕力ではその重さ故に戦闘はおろか携行すらままならない。
鋭利なグランチタン製の刀身・ガイアブレードとその重量により、単体でも相当なダメージを与える斬撃を放つ。
メモリスロットに前述のエンジンメモリを装填しトリガーを引くことで、エンジンパワーを付加した攻撃を繰り出す。
シュラウドが設計した為、Wのガイアメモリとある程度の互換性がある。

【エンジンメモリ@仮面ライダーW】
エンジンブレードとセットで支給。
エンジンブレード専用の多機能型ギジメモリ。
アクセルメモリの触媒としての役割を果たし、ジェット、エレクトリック、スチームの3種類のパワーを引き出す。


749 : ファントムパレード(後編) ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 20:01:00 LC6n0g5M0
【バショー扇@ドラえもん】
…伏黒甚爾に支給。
22世紀のひみつ道具の一つで、どんな種類の風でもだすことのできる扇。
握りの部分のダイヤルで風の吹き続ける時間、マイクで香りなどの風の種類、扇の振り方で風向きや強さを自在に操ることができる。

【飛電ゼロワンドライバー@仮面ライダーゼロワン】
…エンヴィーに支給。
飛電或人が仮面ライダーゼロワンへの変身時に使用するドライバー。
プログライズキーを読み込ませ装填することで、各形態に変身が可能。
飛電インテリジェンス及び飛電製作所社長の或人以外には使えないが、殺し合いでは全参加者が使用可能に調整されている。

【メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン】
飛電ゼロワンドライバーとセットで支給。
アークの技術を用いて天津垓が構築した、メタルクラスタホッパーに変身するためのプログライズキー。
一度読み込めば拡張ユニットーに内蔵されているプログラムによって、他のプログライズキーの読み込みを阻害する。
この為メタルクラスタホッパー以外の形態への変身が不可能となる。
更に変身者の意識を悪意に満ちたデータ空間に幽閉し、本人の意識はあるものの制御不能になり、敵味方の見境なく強力な攻撃を加える。


『ドロップアイテム紹介』

【無銘刀・白@戦国BASARA3】
…伏黒甚爾が入手。
西軍総大将・石田三成の愛刀。
装備するとソードスキルとして三成の使う固有技、固有奥義が使用可能になる他、敏捷性が大幅に強化される。
縦横無尽の斬撃を繰り出すバサラ技も使えるが、連続使用はできない。
また令呪一画を使うことで、全能力を爆発的に引き上げる戦極ドライブを発動可能。

【肉丼@ペルソナ4】
…伏黒甚爾が入手。
稲羽市中央通り商店街にある定食屋「中華料理店 愛家」にあるメニューのひとつ。
値段は一杯800円で、主人公は金曜日〜日曜日の間に食べることが出来る。
とにかくボリューム満点で、主人公は食べると「寛容さ」が上がるほどだが、肉好きの里中千枝は捜査のついでにペロっと食べてしまう。


『NPC紹介』

【豊臣軍の兵士@戦国BASARA2】
豊臣秀吉が率いる豊臣軍の兵士。
刀や槍を装備した足軽の他、弓や鉄砲で遠距離から仕掛ける者、鉄球を振り回す巨漢もいる。


750 : ◆ytUSxp038U :2025/02/27(木) 20:04:13 LC6n0g5M0
投下終了です


751 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/02/28(金) 14:02:10 Fo/VTD/o0
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、綾小路清隆、ドラえもん、松坂さとう、大道克己で予約します。


752 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/02(日) 00:46:51 W45bDoTs0
ジンガ、益子薫、柊真昼、小鳥遊ホシノ、ディアッカ・エルスマンで予約&延長を行います


753 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/03(月) 00:15:03 16baBLeo0
夜島学郎、豊臣秀吉、柊うてな、梔子ユメ、ジーク、シノン、黒見セリカ、魔王グリオン、亀井美嘉、冥黒ノノミ、冥黒アヤネ、ダークマイト、九堂りんね、宇蟲王ギラ で予約し同時に延長いたします。
またキラ・ヤマト准将、一之瀬帆波の午前9時時点の位置情報について言及します


754 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/03(月) 15:44:12 2DDyBOuM0
>>751
の予約に仮面ライダーゼインと小宮果穂を追加予約します。


755 : ◆TruULbUYro :2025/03/04(火) 00:28:49 S.F.4u3E0
空蝉丸、藤丸立香、マシュ・キリエライト、メラ、キズナブラック、立風館ソウジで予約・延長させていただきます。


756 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:29:09 3Fict2NU0
投下します


757 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:29:59 3Fict2NU0
時刻は8時30分。
案内役のNPCモンスターにバリケードの内側の配置やNPCモンスターの修理施設、生物タイプのNPCモンスターの死体の焼却処分場にテレビ局内部と一通りの施設を案内されたドラえもんは最後の場所まで連れてこられた。

「到着しました、ドラえもん様。
我らが主はこの扉の奥でお待ちです」

局長室と書かれたドアの前にはライトブルーのカラーリングのGN-XⅢが二機門番のように立っている。
そのドアを刀使がノックする。

「ルルーシュ陛下、お客人をお連れしました」

「良し、そのまま入っていただくんだ。
お前は持ち場に戻れ」

「イエス。ユア・マジェスティ」

恭しく頭を下げた刀使が下がって行くとGN-XⅢがドアを開けた。
お邪魔します、と言って室内に入ると二機のグロースターを背後に控えさせた放送通りの白い貴族服の少年が居た。

「ルルーシュ……さん」

(ロボットと言っていたからてっきりKMやMSのような見た目を想像していたが……なんだコイツは?
アザラシか?だがそうなると家猫のような首輪は……って、今はそんなことはどうでもいい)

不敬無礼と武器を向けられては敵わないとドラえもんが慎重に言葉を選んでる間にルルーシュはちょっと混乱していた。
あまりにも清隆がドラえもんの容姿に対して説明不足だったからである。

「こほん。改めて、ようこそドラえもん
我が居城の社会科見学は楽しんでいただけたかな?」

「なんで態々連れ回したん……ですか?」

「私なりの誠意として少し手の内を明かした……と、言ったところだな」

そう言ってルルーシュはテーブルに用意されたティーセットを慣れた手つきで操り紅茶を注ぐ。

「果たしてロボットの君の口に合うかどうかはわからないが、どうにも激戦だったのだろう?
之でも飲んで少し緊張をほぐすと良い」

そう言ってルルーシュは向かいの席にティーカップを置いた。

「お、お構いなく……」

ドラえもんが座ったのを確認すると自分も上座に腰掛け両手を組んだ。


「卜部から話を聞いているとの事だったが、この名簿の表記に従うならば初代ゼロが誰だったかはもう知っているのか?」

「うん。だからこそ、もうこんなことはやめて欲しい!
あんな放送で敵を作るような方法でなくても、羂索たちを倒してここから帰る方法はきっとある!」

「だろうな。
だがこのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがそれを選ぶわけにはいかない」

「どうして!?」

「それを語るにはまずは卜部では知りえるはずもない俺の出生、そして奴の死後について語らねばならない。
少し長くなるが、このバトルロワイヤルでの出来事も含めて互いの知識の欠落を埋めるとしよう」



同じ頃、エリアF-9の川沿いにて二つの人影があった。

「あの可奈美とか言うのを拾ってからのつもりだったが……案外お前でも良さそうだな」

1人はNEVERの頭目にして風都の新たなる希望を称する生ける屍大道克己。
そしてもう一人は、本来ならば仮面ライダーゼインとしてねじれ狂った正義を執行しうていたはずの男……可奈美同様シビトと化した桜井侑斗である。
可奈美の遺した支給品が十条姫和に憑依したアンクに回収されながらも、シビトの可奈美の両の手には日輪刀と人斬りの刃が握られていたように、桜井侑斗のシビトの腰にもゼインドライバーが巻かれている。
最もこのドライバーも装着者同様に中身空っぽの純粋な暴力装置に過ぎないが。
……自分の身勝手な正義に従い自分は所詮魔女だからと心の内で泣きじゃくる女の子を救おうとした心優しき神薙の巫女を無慈悲に葬った正義の仮面をかぶった何かに成り果てた本家ゼインと、目に移れば正義も悪も味噌も糞も何もかも屠るこのゼインと一体どちらが他のプレイヤーにとって迷惑な存在かは今後次第であろう。


758 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:30:51 3Fict2NU0
「ここらのNPCモンスターは岩の巨人や機械ばっかりだ。
もう移動するぞ」

<ZEIN>

克民の命令を受けゼインプログライズキーを起動したシビト侑斗はドライバーにキーを装填。
偽りの仮面ライダーゼインに変身を遂げると、ベルトやキーと同じように複製されたゼインカードを取り出す。

<ウィザード!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

スロットに装填されたカードが裁断され、ゼインの手にウィザーソードガンとウィザードリングが出現する。

<テレポート!プリーズ!>

二つの人影は青い光に包まれて一瞬で向こう岸まで移動した。

「現在位置はエリアE-8、悪くない進みだな。
ん?ジゴワットが居ない?
……流石に全員は連れてこれなかったか。
まあ、可奈美みたいに放っておいても勝手に殺して回るか」

確認したホットラインを収納し、武器を構えた克己は早速隊列を組んで向かってくる平城学館の制服の刀使たちを見据える。

「構え、写シ!」

剣を抜き、写シを張る少女たちに変身すらせず現地調達のナイフの身を構える。
シビトゼインも変身したままウィザーソードガンを構えた。

「さあ、地獄を楽しみな!」



「……つまりその黒い肌の魔神と黒衣の魔女の喧嘩と呼ぶのも生ぬるい破壊の嵐から卜部に庇われ飛ばされた先がこのテレビ局の近辺だったと?」

時刻はもうすぐ9時30分。
偏頭痛と腹痛が同時に来たかのような顔をしながらルルーシュは頭を抱えた。
理由はもちろんドラえもんより伝え聞く『特記戦力』の規格外極まる力である。

「その通りだよ……だからルルーシュ君!
今からでも他の人たちを脅すようなやり方じゃなくて、ちゃんと協力し合うやり方を考えて!
このまま争い合っていたら2日なんてあっと言う間に……」

(ええい羂索め!
その他人の頭にぎっしり詰まった脳味噌は飾りか!?
大怪獣バトルが観たいならジャパニメーションでも漁れ!
おかしいだろ!?
どれぐらいおかしいって生身に果物ナイフを武器にナイトメアフレームと戦うレベルにおかしいぞ!)

ルルーシュはこのバトルロワイヤルが殺し合いでゲームと言われた時点で自分と同等の、かつて対峙したマオと同じぐらいに厄介なギアスユーザーに匹敵する存在が居ることは覚悟していた。
ギアスがNPCモンスター相手ならばほぼ制限なく使える時点で綾小路清隆どころか枢木スザク以上の戦闘性能を持った強者が居る可能性も考慮で来ていた。
だがドラえもんによって知らされた特記戦力二人の情報はルルーシュの想定を大幅に超えていた。

(卜部への武器を持っているから、争いをするかもしれないからというだけの理由で襲い掛かった所から察するに嘘のない世界と同等かそれ以上の欺瞞だらけの世界を世界を削ぎ落してでもかなえようとしているらしいな。
しかもそれを実現するだけの異能を持ち合わせている?
使い古しのスポンジ程度の中身ももたない空っぽな男がデウス・エクス・マキナの成り損ない風情が面倒な!
……いや、だからこそか)

『正義』や『悪性』なんてモノは心より生ずる物。
それを唾棄し排除しようとするなんて『人間臭い』ことをしている時点でデウス・エクス・マキナには程遠い。
人間だからこそ思いつく事ではないか。

(一体何がどうしてそんなモノに成り果てたかは知らんが……まず黒衣の魔女の方を上手く倒せないようでは黒い魔人と対峙する権利すらないと考えていいな)

ドラえもんたちに使役する竜をけしかけ、自分は拘束した少女を弄ぶことを優先した辺り色欲という悪意を有するならアークである程度は対抗できるかもしれない。
付け入るスキにもなるだろう。
今集め続けているNPCモンスターの軍勢も本体は無理だが使役するドラゴンの足止めぐらいには役に立てる。
……色んな意味で刀使のNPCたちは使えないが。

(それは『契約』もあるから別に良いのだが……このアザラシの持つ情報だけでは足りないな)

戦力分析も出来ずに突っ込むなど下も下も良い所。
せめてもう一人か二人その化物共の大喧嘩を生き残った者がいれば幸いなのだが、などと考えていると扉がノックされた。

「入れ」

「失礼いたします」

入った来たのは綾小路武芸学舎の制服に袖を通した眼鏡に長い銀髪の刀使だ。
レジスターも令呪も見当たらないので彼女もまたNPCモンスターである。
しかし柊シノア程ではないにしろ元になった人物の要素が強く出ているのか、率いていた他のNPCモンスターの無事を保証する代わりにルルーシュの臣下に加わるという選択をし、興味を覚えたルルーシュから『私に従え』ではなく『私を裏切るな』というある程度柔軟な思考が出来る余地を残す命令を与えられたのだ。

「二つほど報告がございます」

「緊急の案件はどっちだ?」

「一件目は清隆殿の帰還、もう一件は陛下の提示した条件を満たしたプレイヤーです。
どちらも同等に需要な案件かと愚考します」


759 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:31:31 3Fict2NU0
「そうか……すまないドラえもん。
君とはもう少し話をしたかったところだが、臣下をねぎらうのも皇帝の務め。
少々席を外させていただく」

席を立ち、一礼したルルーシュは部屋を後にしようとする。
止めようとするドラえもんだったが、眼鏡の刀使に御刀を突きつけられて止められた。

「悪いことは申しません。
この部屋にてお待ちください」

「どうしてルルーシュ君の言うことを聞くんですか!?
このままだとあなたも!」

「私は所詮NPCモンスター。
あなたと違い真っ当な仮想生命ですらありません。
その上でルルーシュ様に『裏切るな』とまで命じられてしまえばどうすることもできませんよ」

そう言って御刀を納めるとルルーシュに続いて部屋を後にした。
廊下を歩きながら二人は事務的に言葉を交わす。

「清隆は?」

「放送の間で待機しております」

「褒美を希望する者は?」

「第二控室に通してあります」

「良し。ではまず清隆の方だ」

階段とエレベーターを乗り継いで最初にプレイヤーたちに向けた放送を取ったスタジオに入る。

「ルルーシュ様」

「形式ばった挨拶は良い。
よく戻ったな清隆、その様子だと収穫はあったようだな」

「はっ、こちらを」

清隆からの報告と共に入手した品々を並べられルルーシュは再び偏頭痛に似た感覚を味わうことになった。

(リボンズ・アルマーク……こちらが最初に想定していたレベルの『特記戦力』だな。
やはりおかしい。どうしてこのレベルの参加者が良い所上の中でしかない魔境が出来上がる!?)

幸いにしてデク(恐らく緑谷と名簿にある彼だろう)や持久戦とは言えリボンズ相手に粘れたらしいキリトなど支給品やエナジーアイテムの助けを借りれば上の中レベルまでその能力を引き上げられるプレイヤーはそれなりに居るようだ。

「ガンダムやGNドライヴなど聞きなれない言葉は恐らくリボンズの世界に由来する何かか……」

「はい。発電所もそのGNドライヴなる物で動いているとの事でしたので、何らかの特殊な条件を満たす動力炉ではないかと愚考します」

淡々と調べ上げた事実と述べる清隆をルルーシュは内心

(目下最大の問題はこちらのバックアップと戦力供与があればリボンズと同等ぐらいの戦力に勝ちえるデク陣営と対立する理由があるということだ!)

ルルーシュは綾小路清隆という少年を少しばかり見誤っていた。
彼は個の能力としては完成されている部分があり、仲間を増やす為の手段に勧誘ではなく選定を用いてしまっている。
その果てに成見亜里紗を限りなく暗殺に近い方法で殺して支給品を奪っているのだ。

(たった150人しかいないこの狭い島の中で役に立たないと判断すれば斬り捨てる者の評判が良くなるはずもない!
今ならまだリボンズに罪を擦り付けられるか?
いや、支給品に関する情報交換をデクたちとしていないはずもない。
少しは清隆と会話して決裂の末の戦闘だったことにするか?
駄目だ。話を聞いている限りその桃髪の女は即死している。
抵抗の形跡が一切ない戦闘などありえん!)

一応清隆を接触させなければいいか?とも思ったが支給品を三つも死蔵するなど下も下の選択だ。

「デクとその同行者たちはその後どうなった?」

「はっ、恐らくリボンズの撃退には成功したようですが、消耗は大きく発電所にとどまったようです」

「……ならその消耗を補うものを提供できればどうにか協力は出来るか」

亜里紗のことを上手く隠し通せるという前提であれば、だが。

「では清隆、新たに得た支給品を見せてくれるか?」

「イエス。ユア・マジェスティ」

並べられた三つの支給品とレジスター、そして亜里紗の手首にルルーシュは極力顔に出さないようにしながらも内心では大いに顔をしかめた。

(こいつをドラえもんやもう一人に会わせないで正解だった……下手すればこれぐらいで来てもらわなければ困るとかいってこの手首を見せかねない)

「この手首を腐らない様に、そして普通客を招き入れないような場所に保管して来い」

清隆の側に控えていたグロースターにリュックごと手首を渡し、残りの支給品は全て自分の懐に入れる。

「清隆、これは俺からお前への褒美だ。
受け取ってくれ」

そう言ってルルーシュはドライバーから二つのプログライズキーを生成する。

「有難き幸せ」

それを恭しく受け取った清隆にしばらく自分の代わりにNPCモンスターたちの指揮を執るように命じると今度はもう一人の来客の待つ部屋に向かった。


760 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:32:51 3Fict2NU0
「神聖ブリタニア帝国第99代皇帝!
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様!御入来!」

「っ!?」

少し大げさなほど扉が開かれ、中に控えていた黒いセーラー服姿に小銃を携えたトリニティが正義実現委員会の構成員たちが神聖ブリタニア帝国式の敬礼で迎え入れた。

「……ご苦労、本来の持ち場に戻ってもらって結構だ」

「「「イエス!ユア・マジェスティ!」」」

部屋を出ていく正実モブを苦笑で見送り、部屋に残ったのはルルーシュと眼鏡の刀使、そして出されたお茶に砂糖を入れる姿勢のまま固まった少女だけとなる。


「部下が少し驚かせてしまったようで申し訳ない。
紹介預かったルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」

「……松坂さとう」

「口当たりの良さそうな名前だな。
よろしく頼む。
それで、私の欲していた物を持ってきてくれたと聞いているが本当か?」

「ええ。これと、貴方の言う所の仮面ライダーを僭称した人を殺した証拠もある」

そう言ってさとうはテーブルにレジスターと飛電ゼロワンドライバーを並べた。

「これは……」

「知ってるベルトなんですか?」

「ああ。   
まさかこうしてまた私の手元にやって来るとは思っていなかった」

ゼロワンドライバーを手に懐かしい物を見る様に目を細めるルルーシュに最初の掴みとしては悪くないのではないか?と考え、さとうは畳みかけた。

「実は、私がこうしてあなたの元を訪ねたのはどうしてもお願いしたいことがあったからなんです」

「このベルト程度の頼みは聞いてやろう」

「ありがとうございます。
私には、誰よりも愛している人がいて、その子もこの殺し合いに巻き込まれているんです。
どうか、その子を、しおちゃんを探してくれませんか?」

「いいだろう。見つければ人語を喋れるNPCモンスターも使って保護にも動こう」

この殺し合いに呼ばれてからようやく聞けた嬉しい知らせに思わずさとうが顔を上げた瞬間、ルルーシュの紫色の瞳に赤い不死鳥の紋様が浮かび上がった。

「だから『このバトルロワイヤルに巻き込まれてから今までのことを全て話せ』」

あの城でアルジュナ・オルタにされたのと同じような頭をかき乱される感覚に思わず恐怖が先行する。
またあの恐怖を思い出して身体が縮みあがり動けなくなる……なんてことはなかった。
同時に頭に霞がかかったように思考が鈍くなり、さとうの意志とは裏腹につややかな唇は淡々と事実を列挙する。

ルルーシュのギアスは『絶対遵守』。
異能破りの異能を使わない限り1人につき一度だけどんな命令にも従わせるルルーシュ自身が何より忌み嫌った理不尽な支配の体現に心の隙を自分から作ったさとうが抗えるはずもなかった。
しかもルルーシュはさとうの探索と保護の条件としてこの命令を下している。
清隆にチェス勝負という制約を着けた上での命令が通ったようにこの命令も問題なく履行された。

「ふふふふふ……はっはっはっはっ!」

「!?」

我に返ったさとうは思わず自分の口を抑えて、椅子から飛びのいていた。
意識が曖昧になっていた間何を口走った?
まさかこの男の機嫌を損ねたのか?

「ん?ああ、誤解しないでくれ松坂さとう。
君は私が求めていた物を提供してくれた。
素晴らしい働きだよ」

そう言ってルルーシュはその血のように真赤な瞳を開き、右手を伸ばす。

「例のアタッシュケースをこちらに渡してくれ。
そうしてくれれば神戸しおを必ず幸福にすると約束しよう」

「本当に、本当にそうすると約束してくれますか?」

「無論だ」

そう言ってほほ笑んだルルーシュにさとうはリュックから取り出したアタッシュケースを開いて見せ、ルルーシュの手に渡した。

「どうかしたの?……なんですって!?」

その瞬間眼鏡の刀使のザイアスペックに通信が入ったようだった。

「何があった?」

「外側のバリケードが破られました。
二人の白い仮面ライダーに率いられた人間型、非人間型を中心とした生物タイプのNPCモンスターの軍勢との事です。
規模はこちらの迎撃用戦力と同程度。
南方から上昇するように進軍してきています。
また、倒された味方が敵になった、殺しても死ななかったと不可解な報告もあります」

「クリーチャータイプというより元クリーチャータイプのアンデッドタイプか?
最悪を想定し参加者の死体も同じようになると思っておくべきだな」

「っ!」


761 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:34:07 3Fict2NU0
ルルーシュの考察を聞いてさとうは思わず立ち上がった。
死体を利用され、中から脳だけの怪物に好き勝手に動かされる梔子ユメの姿を思い出したからだ。
愛しくて仕方のないしおがもしそのような姿にされたら……そう想像するだけでどす黒い感情が滾々と湧き上がってくる。

「待てどこに行く?」

「放っておけない!もしそのままにしてしおちゃんを襲うなんてことがあったら!」

未来の無い腐っていくだけの死人共なんぞにハッピーシュガーライフを邪魔されてなる物か。
久方ぶりにまともに点火した黒炎のままにリュックを引っ掴んださとうの行く手を眼鏡の刀使が阻む。

「どいて!」

「行くなら我が軍勢を連れていけ」

「!?」

「バリケードを突破している時点で間違いなくこのテレビ局を陥落させるための進軍とみていい。
ならばここで撃退する以外の選択肢はない」

そう言ってルルーシュは立ち上がる。

「意外そうな顔だな。
だがこちらの約束は神戸しおの幸福だ。
報告通りの危険な連中を野放しにしてはその約束を果たせない。
それだけのことだ」

ルルーシュはそのまままっすぐ清隆の待つスタジオまで向かい、眼鏡の刀使とさとうもそれに続く。

「清隆、外側のバリケードが破られた。
敵はアンデッドタイプのNPCモンスターを率いる二人の仮面ライダー……つまり私たちと奴らの戦争だ!」

「遂に来ましたか」

「ああ。敵戦力を上方修正したパターンθで対応する。
お前は内側のバリケードで指揮を取れ」

「イエス。ユア・マジェスティ」

「くれぐれもお客人を部屋から出すな。
それからさとう、お前には迎撃部隊を率いてもらう」

「兵隊は当てにできるんですよね?」

「ああ、存分にお前の『ハッピーシュガーライフ』とやらの障害を排除してくると良い。
後から増援で航空戦力も出そう」

「……本当に本当でしょうね?」

「あれほどの物を貰ったのだ。
裏切るなどと恥知らずな真似はしない」

そう言ってルルーシュは連絡用にとザイアスペックを手渡した。
眼鏡の刀使をまねて耳に装着し、念押しするような視線を部屋を出る最後のタイミングまで逸らさないままさとうは敵を倒すべく向かった。

「『魔剣』を使う。
護衛でコルベットブースター全機、後詰でイナクト戦隊もすべて出す」

「よろしいのですか?
現状最高火力に航空戦力の半分を出撃させてしまうことになりますが……」

「どうせ例の黒い魔女や魔神には通じん。
ならば通用する奴相手に景気よく使ってしまうのが日本人の言う『もったいない』の精神だろう?
対応は今この場で決めた通りだ。
慎ましく、だが盛大にもてなすぞ!行動開始!」

「イエス。ユア・マジェスティ」




途中合流した清隆と共に内側のバリケードに到着したさとうはそこに集まった戦力を率いることになった。
赤いマッシブなMS、アヘッドに4機の無骨なMS、ティエレンの発展形の一つであるティエレンタオツーの部隊が二つ。
ヴィンセントをリーダーにグロースターが4機の部隊が8つである。

「これだけしかいないの?」

「現状質はこれらの部隊が一番上だ。文句を言うな」

「……あなたはなんでルルーシュに従ってるの?」

「ルルーシュ様と呼べ。
オレはあの方が一番の勝ち馬だと思ったからだ。
喋っている暇が有ったら行け」

「ふんっ。変身」

タイガに変身したさとうは迫る死者兵士の軍の方へと走り出す。

『さとう、聞こえているか?』

ザイアスペックからの無線通信が入る。
ルルーシュの声だ。


762 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:34:51 3Fict2NU0
「ええ、これからどうすればいい?」

『増援は航空戦力……空からの攻撃だ。
作戦成功の是非はいかに地上戦力に敵を釘付けにするかにかかっている。
まずはお前が連れてきた部隊を盾に内側のバリケードに残存戦力を下がらせてくれ。
守りが確かなものとなったら陸からも増援を出す』

「了解」

アヘッド二機を斬り込み役にテレビ局前で両軍が激突した。

「おおおりゃああああああ──────っ!!!!!!」

アヘッドがGNブーメランを結合し、その剛腕でもって思い切り振り投げる。
途中再び二つに分かれたブーメランは死体人形と化した敵NPCモンスター斬り裂き血の雨を降らす。
戻ってきたブーメランをキャッチし近接戦に移行する。
……アヘッドにこんな武装があったっけ?と思ったそこのあなた。
その疑問は正しい。
どうやらルルーシュが確保に成功したアヘッドはどうやらリボンズ・アルマークの尖兵として刹那・F・セイエイと戦ったアヘッドではなく、地球連邦のプロパガンダ特撮映画『ソレスタルビーイング』内にてマモー・ミヤノ演じる主人公たちと対峙した方のアヘッドである。
特撮映画出典の為か妙に動きも人間的で他のマシンタイプよりは結果的に柔軟な動きが出来るとか言う何とも言えない利点を得ている。

そんなあアヘッドたちが切り開いた道をティエレンが進んでいく。
Eカーボンの重装甲に物を言わせ爪や牙を弾き返す刀のカーボンブレイドで急所をえぐる。
だが死体人形相手ではそれに意味はなく腹部や胸部をえぐられてもシビトはうごき続けタオツーのアーマーを攻撃し続ける。
だが倒しきれずとも両脚や両腕の破壊で無力化は出来ており、グロースターも大型ランスや銃の距離的アドバンテージもあり対応できている。

「はっ!機械人形なら俺の手ゴマにはされないってか?
皇帝様もちょっとは考えたみたいだな!」

残る仮面ライダーに関しては二機目のアヘッドがエターナルを、ヴィンセント全機が残るシビトゼインの相手をする。


763 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:35:40 3Fict2NU0
<スラッシュストライク!ヒ・ヒ・ヒ!>

無数の炎刃を回避、又は手にしたランスタイプのMVSで弾きながら進み、肉薄しては白兵戦を挑む。
この人数でようやく抑えられていることは理解しているのか、射撃とスラッシュハーケンでの牽制で隙を作りスイッチを繰り返し釘付けにする。

「はっ!」

「墳っ!」

エターナルエッジとGNブーメランが鎬を削る。
ティエレンの重装甲機構を引き継ぎ、ガンダムキュリオスのデータを基に開発されたアヘッドは第三世代ガンダムをも超える性能を誇る。
ファングジョーカーをも下す仮面ライダーエターナル相手にもある程度以上に戦えている。
先ほども言ったとおりに人間に近い動きの出来るアヘッドという事も大きい。

「ちょっとはやるな!ならこれだ!」

そう言ってエターナルは先ほど兵隊を揃える過程でNPCモンスターとして出て来たT2ドーパントを倒して手に入れたT2ガイアメモリをエターナルエッジに装填する。

<ICEAGE! MAXIMAM DRIVE!>

氷の刃が放たれ、アヘッドの脚部に直撃。
瞬間その脚を地面に氷で縫い付けられる。

「なんのぉおおおお!」

アヘッドはコーンスラスターから目いっぱいの粒子を吹き出し足をちぎってでも飛び上がるが、エターナルはさらにその上を取る。

「その程度ぉ!」

四つのカメラアイの突いた顔面にエターナルのキックが突き刺さる。

「がぶぅうううっ!ぶっ───」

仰向けに倒れ伏しアヘッドの喉元にエターナルエッジを突き立てると今度こそ動かなくなった。

「さて、残りは……」

<カブト!>

<執行!ジャスティスオーダー!>

アックスモードのカブトクナイガンを装備したシビトゼインはクロックアップを発動しヴィンセントを達磨にする。

「クソっ!だったら!」

御刀やカメラアイのレンズを入口にミラーワールドからの奇襲で敵の数を削っていたさとうはデスとバイザーのカバーを開く。

<AD VENT>

これで少しは穴埋めをとデストワイルダーを召喚。
残る一機目のアヘッドと二人が駆りで敵を食い止める。

「ルルーシュ!増援はまだなの!?」

『ご苦労だった松坂さとう。
既にお前たちの上空にはついている』

「だったら早く兵隊を回して!
こっちはもう隊長格の赤いのが一機と取り巻きしか残ってない!」

『状況は把握している。
精鋭とは言え少数でよくぞ戦域をその範囲に維持したまま持ちこたえてくれた。
これで心置きなくお前たちを耕せる』

「お前たち?」

空を見上げるとホバーリングして待機するコルベットブースターが15機とそれよりも上空に無数のAEUイナクトが旋回して待機していた。

「嘘……約束とっ!
約束ろ違うぞルルーシュ・ヴィ・ブリタニアっ!」

『約束も何も、九条アリサを見殺しにして九条マリヤから「ハッピーシュガーライフ」を奪ったお前がなぜ信用されると思った?
それ以前に、狂ってると自覚しながら幸せになろうとしているくせに何故破滅もせずにそれを成し得るなどと甘えたことを考えられる?』

本来なら昨日今日どころか出会って数時間もたっていない男の言葉をそう簡単に信じれる程松坂さとうという女は甘くなかったはずだ。
だが、アルジュナ・オルタやノワルと言った圧倒的存在との接触が、その衝撃が彼女の判断力を大きく欠かせていた。

「さっきから何を一人でブツブツ……まさか!」

エターナルが天を仰ぐと同時にコルベットブースターから13機のシュヴァルベ・グレイスが覗き込んでいるのが見えた。
その手には身の丈ほどもある大筒が装備されている。

『ダインスレイヴ、全弾発射』

デンマーク王ヘグニが用いた魔剣と同じ名前を冠するその武器は一言で言えば電磁投射砲。
本来モビルスーツを超える厄祭、モビルアーマー仕留める為に生み出された圧倒的貫通力と破壊力は地形すら変えるP.D.世界最強の純物理兵器である。
耳を劈く轟音と同時にとんでもない振動と砂埃が駆け抜ける。
建物は悉く崩れ去り、破壊された車両が爆発してそこらじゅうで火の手が上がっている。

「全く……これが通じない相手が2人以上いるなどどういうことだ?」

僅かな戦闘領域を包囲殲滅するにはあまりにも過剰な大破壊がもたらされた。
だがこれと同じことを呼吸する間にやってのける怪人共の存在に改めてため息が出る。


764 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:36:02 3Fict2NU0
「イナクト戦隊、追撃で爆撃開始!
終了後はスタンド・マニューバに移行し散会!
掃討作戦に移行する!各機ぬかるな!」

ルルーシュの号令に増設ユニットから雨霰とミサイルをまき散らしてから変形したAEUイナクトが降下していく。
続いてコルベットブースターから空になった大筒を捨てたシュバルベ・グレイスと胸部アーマー部分を合体させたジム改も降下。
地上で合流したグレイスにビームサーベルを投げ渡し下半身をもがれてなお動く死体の群れを破壊していく。

「よし、後は……」

撤退しようとしたルルーシュの背後から何かが遅れて誘爆したのとは違う粉塵の柱が立つ。

「怪物め」

そこには馬乗りになってジムの頭をめった刺しにする白い死神が居た。
あらゆる打撃を無力化できるエターナルローブのおかげで左腕一本の犠牲でダインスレイヴを凌ぎ切った仮面ライダーエターナルである。

「仕方ない。清隆!
お前はまた別の存在の介入があった場合の対処に残れ。
あれには俺が!」

「イエス。ユア・マジェスティ」

敵をだますにはまず味方からということでさとうには嘘をついて連れてきていた清隆を万が一……いや、何でもありのこのバトルロワイヤルにおいては十が一くらいの確立に備えて残し、自分が降下する。
死神と最期のダンスを踊ってやるために。



「ぶっ……ううぅ」

背中に激痛を感じて松坂さとうは目覚めた。
粉塵が目に入って痛い。
どうやらオーバーダメージで変身が解除されてしまったらしい。

(確か、ルルーシュに裏切られて……)

痛みのせいなのか、それとも確認したくもない事実として瓦礫が背中を貫通しているのか知らないが仰向けに倒れたまま起き上がれそうにない。
どうにか頭を持ち上げると白い死神が居た。
片腕だけになり、仮面に盛大なヒビを作ながらも狂ったように指の欠けた手で握ったナイフで襲い来るMSたちを切り伏せ、蹴りつけスクラップに変えていく。
ありえないだろ。同じ攻撃を受けた自分はこんなザマなのになんでまだ暴れられる元気がある?
いや、こんな怪物が居たとしてどうしてこれより強い奴が平然と表を歩いてるんだ?
おかしい。おかしくなきゃいけない。
などと呆然と考えていると、さとうの這いつくばる地面に暗黒色の水たまりが広がって行く。

「ようやく来たな皇帝陛下!」

「生憎最初からコルベットブースターの上に居たさ。
キングが動かないまま部下が動くなどありえないからな」

いかなる原理か黒い水たまりに触れたNPCモンスターの残骸は融解するように沈んでいく。
そして暗黒色の水たまりに静謐が戻るとルルーシュの足元に集まり始めた。

「ラーニング完了」

そうつぶやいたルルーシュの眼が血のような赤い色に光る。
同期するように腰に装着したドライバーの中央部分も怪しく輝く。
ルルーシュは左手の親指をドライバー上部のスイッチにかけ、ギアスを発動させるときと同じポーズをとる。

「『変身』」

スイッチが押し込まれるとアークドライバーゼロのリアクターとギアスの瞳が同期するように怪しく赤く輝き、出現した無数のライダモデルとロストモデルが対消滅させられ、残った純粋なエネルギーのみがアーマーを形成。
ルルーシュの姿を白い皇帝衣から漆黒の装甲に変えた。

「貴様も仮面ライダーに……」

「『仮面ライダーアークゼロ。
全ての仮面ライダー統べる者だ』」

「面白い!さあ!地獄を楽しみな!」

残った腕でエターナルエッジを振るう大道。
その一撃一撃が人体を用意に斬り裂く必殺の刃であり、傭兵として肉体に染み付いた経験に基づく超絶の技巧だ。
だが、その悉くが全くアークゼロに当たらない。
マントで予備動作を完全に隠したうえでの高速の突きからの切り上げすらかすりもしない。

「なんだ?動きが……」

「『当然だ。
今の我々は先ほど取り込んだ松坂さとうの仮面ライダーやモビルスーツの残骸から得た戦闘データを基にチューンナップした対エターナル用アークゼロ。
その上でラーニングと超予測で更なるアップデートの余地を残している。
進歩なく魂まで腐り逝くだけの死体に負ける理由はない』」

そう言ってエターナルの腕を遊び取り、太刀盗りの要領でエターナルエッジを奪い取り、清隆から献上されたばかりの支給品を取り出した。

「『お前にもう勝ち目はない。
死人は死人らしくダインスレイヴで耕してやった土の下に還るが良い』」

<UNICORN!>

元々はガイアメモリ強化アダプターと共に亜里紗に支給されていたT2ユニコーンメモリだ。


765 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:36:59 3Fict2NU0
恐らく、回復のエナジーアイテムを想うように入手できず、魔法少女の力を使えなくなる場合を考慮した主催者の誰かが支給したアイテムでT2なのはアクセルやジョーカーと同じ理由であろう。
それをエターナルエッジに装填する。

<UNICORN!MAXIMAM DRIVE!>

「どうかな?
態々墓所を整地してもらって悪いがお前がシビトになるかもだぞ?」

<ETERNAL! MAXIMAM DRIVE!>

ドライバーのスロットにメモリを差し込み、必殺キックの構えを取って駆けだすエターナル。
アークゼロも同じように駆けだす。

「はぁああああああっ!」

得意の回転回し蹴りが繰り出される。
まともに食らわせればアークゼロと言えどただでは済まない。

<オールエクスティンクション!>

そしてそれを許すアークゼロではない。
エターナルエッジを左手に持ち替え右下段払いで受け止めるとがら空きのボディにユニコーンヘルスタップを叩きこんだ。
そして刺さったままのエターナルエッジから手を放し、自由落下するエターナルの首を掴んで捕まる。

「『技の手数が違ったな』」

そう言ってアークゼロはドライバーを強引に外して克己を強制変身解除させた。

「それを、言われる側になるとはな……。
今回はお前に風が吹いたか」

「『違うな。風向きは戦術と戦略でこちら側に吹かせる物だ』」

「……そうかい」

砂とも錆とも分からぬ何かになって崩れる大道克己を見送ると、ルルーシュは変身を解除した。

「あは……あっはっはっはっははぁ───あっははははははっははははっははははっはははははっははははあっはh!あーーーっははっはははははっははははっははっははっははっはっははっははは!」

不意に聞こえた狂ったような笑い声に思わず拾ったエターナルエッジを向けるルルーシュ。
だがそこに居たのが落ちてきた土砂と瓦礫に下半身を潰され、背中を鉄骨が貫いている松坂さとうだと分かるとすぐに刃を降ろした。

「驚いたな。まだ生きていたとは」

「おまえはぁあ!ぜったいにいきのこれないぃいい!
あのくろいののひざ下レベルのこいつらにここまでしないと勝てないお前なんかじゃあ逆立ちしたってあいつにはかてないっ!
死体も残らずむごたらしく殺されるんだぁあ……ざまあみろぉ……ざまあああああああみろぉおおおおおお!」

「はぁ……」

松坂さとうにルルーシュは嫌悪感を抱いていた。
九条マリヤの妹を見殺しにして彼女の言う『ハッピーシュガーライフ』奪ったくせして自分は幸せになる権利を主張し、何でもやる等と言いながら黒き神に恐怖し破滅する覚悟すら持ち合わせていない。
まるで第一次ブラックリベリオンの際義妹の死を利用しそのくせ自分は破滅もしないまま幸福をかなえようとしてスザクと対峙した自分の様で、第二次ブラックリベリオンでもコーネリアの姿すら利用しシャーリーの仇とは言え本当の兄のようにロロを利用してナナリーを奪い返そうとした自分のようでもあったからだ。

だが今、狂ったように笑い続ける彼女には同族嫌悪より憐れみが勝る。

(そうじゃないだろう)

肉声では届かないと判断したルルーシュはアークの脳波にハッキングする機能を応用したテレパシーで話しかける。

(本当に愛しているなら今際に願うべきは神戸しおの幸福だろう?
何故最期の最期で俺のことなど考える?)

(え?────────────あっ)

(お前は神戸しおと幸福になりたかったのか?
それとも神戸しおで幸福になりたかったのか?
もし後者だとするならば、お前が最初に殺した二人と何が違う?)

お前の愛も身勝手だ。
そう言われたに等しいルルーシュの憐れみに満ちた瞳と言葉をさとうが受け取ったかは分からない。
だがその最期は間違いなくしおへの懺悔と愛に報いきれなかったことへの後悔に満ちていただろうことはその表情から見てとれた。



【大道克己@仮面ライダーW 死亡】
【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ 死亡】



流石はあらゆる衝撃に強いと説明されていただけあって肩紐こそ壊れていたが無事だったさとうのリュックを回収する。
人員を集めは流石にそろそろ焦った方がいいがアイテムには大分余裕が出来た。
このままテレビ局に戻り第一回放送後にもう一度放送を行うべきだろう。
コルベットブースターの方に戻りながら次の放送の内容について考えていると

「残念です、ルルーシュさん。
やっぱりアークのせいで悪者になっちゃってたんですね」

不意に本当に残念そうな声が聞こえて来た。
見上げるとスタイルの良い、だがどこかあどけなさも残る美少女がそこに居た。

『そのドライバー……今度のインナーフレームは随分と可愛らしいな、ゼイン』

『インナーフレームなどとは実に悪意に満ちた物言いですね、アーク。
彼女は私の正義の賛同者にしてあなた方のような悪意を駆逐する同志です』


766 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:37:21 3Fict2NU0
「同志?ああ、なるほど。
大方そちらの少女に私の放送の内容を聞いて私がアークに掌握されていると勘ぐって確かめに来たといったところか……」

大体はルルーシュの想像通りで道中回復のエナジーアイテムを複数獲得できたことで大幅に回復の時間を短縮できた果穂からルルーシュの放送について聞いたゼインはアークが仮面ライダーゼロワンの世界にて積み重ねてきた所業を果穂に伝え、その排除に動くように誘導したのだ。

「改めて、宣言しよう。
我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝!
亡き皇妃マリアンヌ・ランペルージが息子!
アークの力すら利用し、このバトルロワイヤルを支配し裁定する絶対の王である!」

「そうですか。
だったらもう、これ以上ルルーシュさんのせいで傷つく人が増える前に、やっつけさせてもらいます!」

そう言って果穂がプログライズキーを起動、ルルーシュがドライバーのスタータースイッチを押し込もうとしたタイミングだった。

<ライジングユートピア!>

蛍光イエローのエネルギー波に吹き飛ばされて、果穂がここにいる以上存在するはずのない戦士が吹き飛んで来た。

「え!?」

『馬鹿な……ゼインだと?』

「清隆か!」

シビトゼインが飛んで来た方向からアタッシュアローを構えた001がやってきた。

「申し訳ありませんルルーシュ様。
ルルーシュ様より預かったイナクト戦隊は奴の為に全滅してしまいました」

「いや、むしろよくやってくれたぞ清隆。
駄目じゃあないかゼイン!
ちゃんとゴミはきっちり処分しないと!
こうして思わぬ形で再利用されてしまうんだからな!」

あたかもシビトゼインは自分が造ったかのような物言いで捨て台詞を吐きながらルルーシュはドライバーから悪意の波動を放ち、その隙に清隆と共に撤退する。

『仕方ありませんね。
果穂、この贋物のゼインも放っておけば多くの善意を持った者にとっての脅威になる。
分かったいますね?』

「はい!贋物ヒーローを倒すのは定番中の定番です!変身!」

二人のゼインの拳が激突する。
真贋どちらもロクでもない仮面ライダー同士の対決が始まってしまった。


767 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:37:42 3Fict2NU0
【エリアD-7/現代都市/9月2日午前11時】

【仮面ライダーゼイン@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:果穂へ憑依中
服装:果穂と同一(装備〜道具まで同様)
装備:
令呪:
道具:
思考
基本:悪意に満ちたこのゲームを破壊する。
01:このゲームの運営についての情報を集める。
02:邪魔する者は排除する。
03:悪意に満ちた参加者は見つけ次第排除。
  まずはバグスター、そしてアークとアークに同調するルルーシュ、そして目の前の偽のゼインを倒す。
その為に旧幻夢会社へ向かう
04:小宮果穂を資格者として行動。
  今度は余計な抵抗をされないようにしなくては
05:次にチェイスと会った時、私の善意を理解するならば良し。
  そうでなければ排除する。
06:メダジャリバーを使う為にセルメダルを排出するNPCと戦いたいですね
07:ゼインカードの再使用可能となる方法を探す。
参戦時期:仮面ライダーゼロスリーと対峙するよりは前
備考
※小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズの肉体を乗っ取りました。常に装着する必要のあるゼインドライバーを破壊、もしくは取り上げない限り解放されません。
また、変身者が死ぬ→新しい変身者を乗っ取るを繰り返す度にゼインの干渉は難しくなります。完全にできなくなった場合、ゼインの参加者としての資格はなくなります。
※時間停止は1秒のみ、そして3回使用すると次の放送が流れるまで使用できません、ゼインはこのことを把握しています。
※令呪を使った場合、昭和ライダーの力の場合はシンプルに威力増加、平成、令和ライダーの場合は最強フォームにカードが戻るようです。また、時間停止も再度可能になります
※裁断された仮面ライダー2号、仮面ライダースーパー1、スカイライダー、仮面ライダー龍騎、仮面ライダーカブト、仮面ライダーダブル、仮面ライダーオーズプトティラコンボ、仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル、仮面ライダービルドジーニアスフォームのゼインカードは回収されました。
ゲーマドライバーとランダムアイテム=マイティブラザーズXXガシャットは『ゼインカード(仮面ライダーエグゼイド ダブルアクションゲーマーレベルXX(量産型脳無))@オリジナル』になりました。

【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、フェザーサーキットによる侵食、ゼインの資格者
服装:私服(いつもの)
装備:ゼインドライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインプログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインカード一式@仮面ライダーアウトサイダーズ、フェザーサーキット@仮面ライダードライブ
令呪:残り三画
道具:デザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル(2時間使用不可能)@仮面ライダーギーツ、強制退出装置@遊戯王OCG(6時間使用不可能)、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、メダジャリバー+オースキャナー@仮面ライダーオーズ、裁断されたゼインカード@仮面ライダーアウトサイダーズ、檜佐木修兵のバイク@BLEACH、桜井侑斗のレジスター、ホットライン×3
思考
基本:ゼインさんの言う通りにします!
   何も間違ってないですよね?
01:残念ですルルーシュさん。
  でもこれ以上あなたの隙に刺せるわけにはいきません!
  だから倒します!
02:こんなに幸せな気持ち初めてです……
参戦時期:不明。少なくともW.I.N.G.の優勝経験あり。
備考
※ゼインの資格者に選ばれました。
※フェザーサーキットの影響で思考が汚染されいます。

【桜井侑斗(シビト・非参加者)@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:ダメージ(大)、仮面ライダーゼインに変身中
服装:私服
装備:ゼインドライバー(複製)
   ゼインプログライズキー(複製)
   ゼインカード一式(複製、ウィザードとカブトは使用済)
道具:なし
基本:目に移る参加者を殺す
00:……
備考
※ドライバーにゼインの意志までは複製されていません。


768 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:38:32 3Fict2NU0
テレビ局に戻ったルルーシュと清隆は早速放送の間に向かった。
間も無くゲームの本格始動から6時間、クルーゼの予告した定時放送の時間である。

「我々ももう一度プレイヤーに呼びかけを行う!機材の準備急げ!」

「「「イエス!ユア・マジェスティ!」」」

「ルルーシュ様」

「ああ、清隆。お前の褒美だったな。受け取れ」

そう言ってルルーシュは新しいプログライズキーを渡す。

「有難うございます。
このような過分な褒美をいただいた直後でも酸いわけないのですが、一つ悪い報告が」

「ドラえもんか?」

「はい。恐らくこの混乱の最中に抜け出し令呪のサンプルを発見してしまったようなのです」

「それは面倒だな……仕方ない。
殺害以外のあらゆる手段を許可する。
彼をテレビ局から出すな」

「イエス。ユア・マジェスティ」

最初の放送でそうだったように椅子に腰かけルルーシュは自分からしか見えないように設定したテレビ画面を睨む。
果たして運営の次の一手は何か、後攻ゆえに待つ黒の指し手は運営の、白の指し手の次の一手を待った。


769 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:38:53 3Fict2NU0
【エリアD-7/テレビ局/9月2日午前11時10分】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常、疲労(小)
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実
   ランダムアイテム×0〜1(ルル)
   ランダムアイテム×0〜2(清隆)
   ランダムアイテム×0〜1(軽井沢)
   ランダムアイテム×0〜1(亜里紗)
   ランダムアイテム×0〜2(さとう)
   ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
   T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
   レイスの短刀@魔法少女ルナの災難
   キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER
   ホットライン×4
   サバイバルナイフ@現実
   ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
   11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
   ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
   飛電ゼロワンドライバー&メタルクラスタホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン
   ロストドライバー&T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
   T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
   細胞維持酵素×5@仮面ライダーW
   包丁や果物ナイフ数本(現地調達)
   成見亜理紗のレジスター
   満艦飾マコのレジスター
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:まさか『特記戦力』があそこまで規格外だったとは。
  盤面を見直そう必要があるな。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、
  ガッチャード達に自分に刃向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
  ゼインを倒す為にもこれは必要不可欠だ。
04:ランペルージ姓とヴィ・ブリタニア姓のロロの名前が二つあるのが気がかり。
  もし羂索のように弟の死体を利用する何者かだったのなら、容赦はしない。
05:二代目ゼロ?扇め、そこまで準備していたとは。
06:地下の『アレ』については調べたいが、いなくなったドラえもんの件もあるし藪蛇になりかねんか。
07:特記戦力に関する情報はもっと欲しい。
  プロトガシャットを餌にもっと人を募るか?
08:白のキングは魔神で確定か。
  なら色欲の魔女程度倒せん用では挑戦権すらないな。
09:他に有用なコマが居ないとは言え、もう少し清隆の行動に注意を払うべきか?
10:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
 少なくともプレイヤー相手に自害、服従の命令は令呪なしには発動できないようです。
 NPCモンスター相手には乱発さえしなければ問題ない上に、乱発も連続三回までなら多少目が痛い程度で済むようです。
※堀北鈴音、綾小路清隆、松坂さとうにギアスを使いました。
 彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
※大道克己の死に引きずられてソードスキルは消滅しましたが既に蘇生されたシビトやジゴワットは倒されていません。
近くに居るプレイヤーにランダムに襲い掛かります。


770 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:39:12 3Fict2NU0
【綾小路清隆@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:絶対遵守のギアス(極大)、疲労(中)、ダメージ(小)
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:フォースライザー
   ライジングホッパープログライズキー
   ザイアスペック
   アタッシュアロー
   プログライズキー×3(種類不明)
令呪:残り三画
道具:ホットライン、エナジーアイテム×5(種類不明)
思考
基本:ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを利用して自分の夢を掴む
00:『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアへの質問には包み隠さず答える』
01:ルルーシュに仕え、このゲームをひっくり返す。
02:堀北ら知り合いへの対処はその時次第。
03:ルルーシュの仮面ライダーとして諜報活動を行う。
04:ドラえもんがテレビ局の外に出ないうちに捕まえる。
05:人って思ったよりあっさり死ぬんだな……。
06:あの白いライダーどもはまた戦力が整ってからか。
参戦時期:少なくとも船上試験よりは後
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力を無効化する異能力をかけられない限り、新たにルルーシュのギアスの影響を受けることはない代わりにルルーシュからの質問に包み隠さず答えます。
※ザイアスペックでの通信はルーター無しでの場合同エリア内に居なければ不可能なようです。
※テレビ局内のどこかに成見亜理紗の手首(令呪付)と成見亜理紗のホットラインが保管されています。
※エナジーアイテム、ルルーシュより下賜されたプログライズキーの種類に関しては後の書き手様にお任せします。


771 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:39:28 3Fict2NU0
(どうしよう……思わず逃げちゃったけど)

ルルーシュと会って話して彼なりに考えがあって、その上で最善であると判断したことをしていると思えた矢先だった。
トイレに立ち寄った先で血だらけのリュックを運ぶNPCモンスターの少女と出会ったのは。
しかも転んだ彼女が落したリュックの中身は令呪の刻まれた手首だった。
悲鳴こそ上げなかったが、パニックになって逃げ回って気付けば見知らぬ場所に来てしまった。

「今からでも戻るべきなのかな」

そんな風に思っていると、近くのモニターに砂嵐が走る。
そう言えばもう少しで放送だったなと思い出し、とりあえずそれを見てから考えようとモニターを見つめた。



【エリアD-7/テレビ局/9月2日午前11時10分】

【ドラえもん@ドラえもん】
状態:ダメージ(中)、悲しみと決意
服装:全裸(ロボットなので)
装備:空気砲@ドラえもん、ひらりマント@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ホットライン、チーターローション@ドラえもん、復元光線@ドラえもん
思考
基本:皆が殺し合いから脱出出来る様に行動する。
01:卜部さん……
02:ルルーシュ君も清隆君も一体何を考えてるんだ?
03:さっきのあわただしかったのはなんなんだろう?
04:なんであんなところに手が?
  しかも、令呪があったってことは……。
05:総司令官の話には乗らない。
参戦時期:不明。(少なくとも、鉄人兵団の事件の後)
備考
※四次元ポケットは主催側によって没収されています。
※卜部とルルーシュから『反逆のルルーシュ』に関する大まかな流れを知りました。
※ルルーシュの計らいによりテレビ局内を蚊来る案内されています。


772 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:40:57 3Fict2NU0
【NPCモンスター解説】
・平城学館の制服の刀使
…刀使養成学校・伍箇伝の一角、平城学館の制服を着た刀使。
恐らく刀使として基本的な技能を平均的な出力で発揮する。

・眼鏡の刀使
…綾小路武芸学舎の制服に袖を通した眼鏡に長い銀髪の刀使。
柊シノア程ではないが元になった人物をかなり正確に再現しており普通のNPCモンスターより明らかに賢い。
ルルーシュもこれをただの手ゴマにするのはもったいないと感じたのか取引を申し出てきたことも有り『私を裏切るな』というある程度柔軟な思考が出来る余地を残す命令を与えて配下にしている。

・正義実現委員会の構成員
…トリニティ総合学園の治安維持組織、正義実現委員会の構成員。
ヘイロー持ちなので物理銃撃には多少頑丈。

・ティエレンタオツー@機動戦士ガンダム00
…ティエレンのバリエーション機の一つで全領域に対応するティエレンの完成形。
武装はティエレンと同じ物を使えるほか、GNコンデンサーを内蔵すればビーム兵装も搭載可能。

・AEUイナクト@機動戦士ガンダム00
…モスクワやヨーロッパを中心に構成される国家群、AEUが開発した可変MS。
UNIONフラッグと似ていると指摘されることが多いが高い集音性にビーム兵器搭載を見越したエネルギーシステムなどフラッグにない強みは当然ある。
ルルーシュの配下になった機体はイナクト戦隊として運用され、増設ユニットで搭載ミサイル数を増やしている。

・アヘッド@機動戦士ガンダム00
…独立治安維持部隊アロウズの高級量産機。
人類革新連盟軍が鹵獲したガンダムキュリオスのデータとティエレン系列で培ってきた技術を基に開発した機体……なのだが今回ルルーシュが虎の子として投入した二機はGNブーメランを装備しており、掛け声程度とは言え人語を話していたので劇中劇ソレスタルビーイングに登場した機体と思われる。

・シュヴァルベ・グレイス@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ
…ギャラルホルンの主力量産型モビルスーツであるグレイスの上位モデル。
主に指揮官クラスのパイロットが搭乗する。
ルルーシュが配下に置いた機体はなんとダインスレイヴを装備していた。

・ジム改@機動戦士ガンダムサンダーボルト
…地球連邦軍が南洋同盟の実態調査のために派遣したペガサス級強襲揚陸艦スパルタンの艦載機と愛て配備された量産機。
コルベットブースターを装備している。

・シビト(死人)桜井侑斗@仮面ライダーアウトサイダーズ+本ロワオリジナル
…扱い的にはNPCとなる為とりあえずここに記載。
大道克己に支給されたソードスキル:フォーマルハウトの蘇生能力により蘇生された桜井侑斗。
シビトに関してはシビト(死人)可奈美の項目を参照のこと


773 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:41:13 3Fict2NU0
【支給品解説】
・T2ユニコーンメモリ+ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW
…成見亜里紗@魔法少女すずね☆マギカに支給。
次世代型ガイアメモリであるユニコーンメモリと、原点ではT1のユニコーンメモリに装着された強化アダプターのセット。
恐らくソウルジェムの濁りを浄化できなくなった際の救済措置として支給されたと思われる。

【ドロップアイテム解説】
・T2アイスエイジメモリ@仮面ライダーW
…大道克己@仮面ライダーWが入手。
T2ドーパントを倒して手に入れた氷河期の記憶を内包する次世代ガイアメモリ。


774 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/04(火) 01:41:45 3Fict2NU0
投下終了です。
タイトルは そうじゃないだろ です


775 : ◆s5tC4j7VZY :2025/03/05(水) 00:57:28 CG1yacXA0
皆さま投下お疲れ様です!
ピルツ・デュナン、纏流子、繰田孔富、柊シノア(NPC)
サチ、鳩野ちひろ 、ニコル・アマルフィ、堀北鈴音、徳川家康、サビルバラ、レンで予約します。
なお、全員の参加者が一堂に絡むわけではなくAグループとBグループそれぞれの動向の話の予定です。


776 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:44:49 TinAdQ5A0
皆様投下お疲れ様です
特定の時間のみ参照する参加者がいますので、前半部分のみになりますが投下いたします


777 : 幕間:やがて冥黒という名の雨 ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:47:49 TinAdQ5A0

 アビドス高校。
 梔子ユメ、小鳥遊ホシノ、黒見セリカの母校にして、多くの参加者がテレビ局と並んで台風の目と認識している場所である。
 テレビ局の注目はルルーシュ・ランペルージの策略によるものだが。アビドス高校のそれは主催者の羂索が梔子ユメの姿をしていたことであり、『アビドス高校生徒会長の肉体』だと全参加者の前で零したためだ。
 それが意図的な情報開示か、羂索がうっかり口を滑らせただけなのかは羂索本人以外には分からない。
 そもそも多くの参加者にとって「梔子ユメがアビドス高校の生徒会長である」ことそのものに、大した意味はない。
 むしろ多くの参加者にとって重要なのは、クルーゼが告げた『我々の拠点に繋がる物のあるエリア』という文言だ。
 ランドマークのいずれかに運営へとつながる糸口がある。となれば、その場所は運営のいずれかとかかわりがある場所だと考えるのはいたって自然なこと。
 アビドス高校を真っ先に思い浮かべる参加者は、少なくなかった。

 キラ・ヤマト――氷竜になっていない、准将のほうのキラ・ヤマトもまた、アビドス高校には何かあるだろうという認識を持っていた。
 同行する一之瀬帆波のこともあり目的地こそ綾小路清隆のいるテレビ局だが、この考えから最短経路ではなく一度アビドス砂漠を通過して進もうと考えており。
 必然、彼らを追跡していた冥黒アヤネもまたアビドス高校に向かう形になっていた。
 
(時刻は……そろそろ9時か。)
 建物の影に潜みながら、アヤネはビルに掲示されたデジタルウォッチに視線を移す。
 ホットラインのないアヤネには逐次時刻を知る術がない。
 思ったより時間が経っているなというのが正直な感想であった。
 
 アヤネがいる場所、ひいてはキラ・ヤマトと一之瀬帆波がいる場所は2時間前と変わらず現代都市エリアである。
 地図上で言えばEかFの10か11あたりだろうか、これもまたホットラインのないアヤネには正確な位置は分からなかった。
 2人がよほどの方向音痴なら北にあるアビドス高校ではなく南や西側に逆走しているかもしれないが、キラ・ヤマトと一之瀬帆波は人間として相当優秀な部類に入る。
 そんな凡ミスを犯していると考えるほどアヤネは短慮ではない。

(だから2人がこんな場所で道草を食っているのも、あの二人が無能だからという訳ではないだろうな。運のない奴らだ。)
 
 アヤネの視線の先ではキラ・ヤマトと一之瀬帆波が周囲を警戒しつつ、腰を落ち着ける場所を探して歩いている。
 他の参加者こそ出会っていないが、数度のNPCモンスターの襲撃を受け迂回や戦闘、休息のために時間をかけざるを得なかったのだ。

 では、彼らが数度の襲撃を受けたことが単なる偶然かと問われれば当然違う。
 大道克己とジゴワットによる天ノ川学園高校の崩壊。もう一人のキラ・ヤマトが変貌するに至った風都タワーの乱戦。
 覇王十代が銀の竪琴で呼び寄せたNPCによる混乱。鬼龍院羅暁やセレブロが関わる闘争の余波。レジィ・スターと望月穂波による他の参加者への襲撃。
 地形の一部が崩壊している租界、あるいは半壊状態の美濃関学院やコーカサスカブト城とはまた違う形で、現代都市エリアは混沌を極めていた。
 その余波により、戦場から逃げあるいは気がたったNPCモンスターと何度も出会ってしまったのが2人の不運だ。
 同じくNPCモンスターのターゲットたりうるアヤネが期せずして引き寄せたモンスターを相手する羽目になったことも含めて、不運だ。

 (・・・アビドス砂漠には十分近づいている。
 グリオン様の命は黒見セリカらを追うことだ。十中八九アビドスに向かうであろう奴らを追うのならば、奴らの追跡を止め独自にアビドスを向かうか?
 キラ・ヤマトと一之瀬帆波の世界について粗方聞けたし追う理由も薄い。参加者の情報がそれなりに手に入ったのは僥倖だったな。)
 
 遠くに2人の背を見ながらも、アヤネはひとりごちる。
 キラ・ヤマト、一之瀬帆波。ともに顔見知りの参加者が多い。
 両者の会話からコズミック・イラや高度育成高等学校に関わる参加者の情報を掴んでいたことは、黒見セリカとシノンを見失ったアヤネにとってグリオンへの良い手土産だ。
 折を見て二人を殺し支給品も奪えれば最高だったのだが、キラ・ヤマトが戦闘中に見せる感覚を前に下手に近づくことをアヤネは早々に諦めざるを得なかった。

(コーディネーターがもつ才覚か?キラ・ヤマトが戦闘時に見せる勘の良さ――空間認知能力は警戒に値する。
 影に入っているとはいえ私の存在に気づいている可能性だってあるだろう。
 キラ・ヤマトの話ではコーディネイターの参加者は、2人いるキラ・ヤマトとアスラン・ザラを含め8人……全員が相応の感知能力を有するとすれば脅威だな。)
 
 面倒な相手だと苛立つ彼女の肩を誰かが叩き、甘ったるい声がアヤネの耳に入り込んだ。


778 : 幕間:やがて冥黒という名の雨 ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:49:55 TinAdQ5A0
 
「やあ。順調?」 
「ノノミか。何の用だ。」
「グリオン様からのお呼び出し。一端戻って来いってさ。
 ところで……なんでこんな場所で油売ってるの?」
 人の嫌なところを踏み荒らすような気取ったセリフにアヤネは舌打ちで返し、何も言い返せないその姿にノノミはニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
 嘲笑と嫌悪に塗れたやり取りに、本物の十六夜ノノミと奥空アヤネの面影は何処にもない。
 
「もしかして……セリカちゃん見失いましたぁ?
『少なくとも二人よりは確実に仕事を全うしますよ。キリッ』な〜んて言ってたのにですかぁ?」
「……見失ったのは事実だが、奴らの行先は分かっている。
 それに手土産になる情報やドロップ品はある。無駄に時間を浪費している貴様とは違う。」
「ざ〜んねん。こっちはちゃんとグリオン様のオーダーをこなしてまーす。
 ……なんて、こんなこと言ってる暇はないですね。グリオン様が待ってますし、会わせたい子もいますしね。」
「会わせたい子……?」

 妙な言い回しが気になったアヤネをよそに、プテラノドンマルガムに姿を変えたノノミがワープゲートを開く。
 先んじて潜ろうとしたノノミだったが、入り口で思い出したように振り返った。
 
「あ、そうだ。ホシノは死にましたよ。
 あの愚図。貴女が行ってからすぐにくたばりました。無様でしたねぇ。」
「そうか。」
 酷く乾いた返事に、ノノミは思わず噴き出した。
 本物のアビドス生徒会が同じことを聞けばこんな淡白な言葉は返ってこないだろう。
 信じないと叫び。錯乱の上泣き喚き。黒い感情に心蝕まれ発狂することだろう。
 この場に本物の奥空アヤネがいないことが残念でならない。
 本物の小鳥遊ホシノをブチ殺して同じことを伝えれば、目の前のクソメガネと同じ顔で絶望に染まった顔を見せてくれただろうに。
 舌なめずりをするノノミをアヤネは白けた眼で見つめ、はぁと怠そうにため息をついた。
 
「どうせ力量も分からず参加者に突っかかったんだろう。グリオン様から力を賜りながら情けない。」
 その言葉には悲しみも義憤もない。あるのはグリオン様の役に立てないことへの失望だけだ。
 ケルベロスマルガムの力があれば、並大抵の人間なら抵抗さえ許さず殺せるはずだったし。ガッチャ―ドやマジェード、ガンダムに乗ったキラ・ヤマトクラスの相手でも分裂などを使えば十分戦えたはずだ。
 
「だが、逆に言えば事前の準備もなくホシノを潰せるレベルの参加者がいるという訳だ。
 ……この殺し合い。警戒すべき参加者は仮面ライダーだけではないようだな。」
「その点では気が合いますね。お互い情報という意味では良いものを得ているようで。
 グリオン様への報告が楽しみです。」
 ひらひらと手を振って、ノノミは上機嫌にワープホールに潜る。
 消える寸前を見計らって、ひと際楽しそうな声がワープホール越しに聞こえてきた。

「子ネコ二匹見失った貴女へのお仕置きも、含めてですけど。」
「死ね。悪趣味女。」
 吐き捨てた言葉がノノミに聞こえているのかいないのか。
 キラ・ヤマトや一之瀬帆波よりも前にこいつから殺したいとちょっと本気で思いながら、アヤネの体はワープゲートに吸い込まれ消えた。
 
【???(E〜F,10〜11周辺)/現代都市北部/9月2日午前9時】

【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:精神的疲労(大)、決意(大)
服装:コンパスの制服
装備:ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ……分かった。
  今度も示すよ。僕の守りたい世界を。
02:ホナミさんとアビドス砂漠を経由してテレビ局を目指す。
03:ビスマルク・ヴァルトシュタイン……中々の強敵だった
04:ラクス、アスラン……イザークにディアッカに、ニコル?
05:どうして僕やアスランの名前が二つも?
  多分僕が准将の方だろうけど……
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
備考
※ダブルオークアンタの起動鍵@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-には英文が刻まれています。
帆波は『世界はこんなにも簡単だと示してください』と訳しました。
※帆波と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。
 アヤネの追跡に気づいていたかどうかは後続の書き手様にお任せいたします。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。


779 : 幕間:やがて冥黒という名の雨 ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:51:11 TinAdQ5A0
【一之瀬帆波@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:疲労(小)、精神的疲労(中)、綾小路清隆への……(大)
服装:高度育成高校の制服(女子)
装備:ガンダム・バエルの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン、ビスマルクのリュック
思考
基本:このゲームから生還する。
00:私は……また失敗した。
01:綾小路くん……人が苦しんでる間に楽しそうだね?
  一言いいに行くから待っててよ?
02:とりあえず荷物を検めてからアビドス砂漠、そしてテレビ局を目指す。
03:ラウ・ル・クルーゼ。あなたも裏切られたの?
04:立場も違い過ぎるし、彼女持ちに親しくし過ぎるのも問題だし、ヤマト准将呼びってことで。
05:ラクスさん、ちょっと苦労してそうかも
参戦時期:2年生編12巻終了後から
備考
※バエルの起動鍵はビスマルクが爆散したあと、帆波が回収しました。
※キラ准将と情報交換を行いました。
 また、その内容を冥黒アヤネに聞かれて追跡されています。
※ドロップアイテムを回収している可能性があります 個数、内容については後続の書き手様にお任せいたします。
 
 ◆◇◆◇◆
 
 現代都市エリア 泊まるものなどいるはずのないホテルの最上階にグリオンの姿はあった。
 金色の装飾に縁どられた椅子に腰を落ち着け、黄金色のルービックキューブを手慰みに弄る。カチャカチャという音がスイートルームに響いていた。
 グリオンの視線の先で3人の少女は男の返事を待っている。
 うち一人、アヤネは神妙な面持ちでカーペットの上で片膝をつき。
 うち一人、ノノミは柔和ながら人間味のない冷たい笑顔でグリオンの向かいの椅子に両腕を乗せてもたれ掛かり。
 うち一人、ホシノの後任たる少女――亀井美嘉はノノミのもたれ掛かる椅子に暗い面持ちで腰かけていた。
 
 声をかける者はいない。 声をかけられるような男ではない。
 その全身には黒く冷たい風格というものが宿っている。威圧感と言い換えてもいいかもしれない。
 この男の周りだけ空気が冷たくなったような。この男の周囲では人が幸福でいることは許されないような。そんな奇妙な感覚があった。

「ノノミ、アヤネ。報告は受け取った。」
 成績表に目を向ける父親のような満足と失望が入り混じった声に、アヤネの体が思わずびくりと震えた。
 グリオンを失望させるもの。それはアヤネに与えられた『黒見セリカの追跡』という任務の事実上の失敗に他ならない。

「も……申し訳ございません。グリオン様の期待にお応えできず……。」
「びくつかなくていいぞアヤネ。
 確かにお前は失敗した。だがお前が持ち返った情報には利用価値がある。
 ドロップ品も含めて差し引きはプラスと言ったところだ。その成果を尊重できないほど狭量ではないよ私は。」
 テーブルに置かれた3つのドロップ品(キラ・ヤマトと一之瀬帆波が倒したNPCのものを回収した)のうちの1つ、真っ直ぐに打たれた日本刀に視線を落としにやりと微笑んだ。
 『心刀・無垢』。戦争無き世界でそう呼ばれる、正しき心を伝える刀が拒絶するように震えていた。
 
「キラ・ヤマトと一之瀬帆波に友達が多くて幸運だったな。」
「……。」
 ――もしその2人が参加者の情報を持っていなければ、お前を生かす理由もなかったな。 
 グリオンが言葉に込めた悪意を、3人の少女にははっきりと聞こえた。
 この3時間弱でアヤネが得た情報は、10人以上の参加者を含むコズミック・イラや高度育成高等学校にまつわる大まかな情報。
 参加者の1割近くを知れたと言えば聞こえはいいが、キラや帆波が知り合いのいない参加者ならばランドマーク1つの情報さえ得られなかったことだろう。
 そんな愚にもつかない成果を出したその先は、デクに敗北したホシノと同じ末路だ。
 確信と共に震えるアヤネの姿をノノミはけたけたと嗤い、処罰がないことをつまらなそうに眺めていた。
 
「グリオン様〜アヤネへのお仕置きはなしですかぁ?」 
「言っただろう。成果は尊重するべきだ。
 それに遊んでいる余裕も無さそうだしな。」
「余裕ですか。」
「コーディネイター。キヴォトスや高度育成高等学校の学生。セレブロ。鬼龍院羅暁。藤乃代葉や夜島学郎などの陰陽師。
 私が出会った剣士や未知の仮面ライダー、ギギストに加えキラ・ヤマトが暴走した氷竜。
 僅か数時間の探索でもこれだけの存在がいることが分かった。この意味が分かるね。ノノミ、アヤネ。」


780 : 幕間:やがて冥黒という名の雨 ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:53:30 TinAdQ5A0
 グリオンは当初、この殺し合いを侮っていた。
 彼はたった20年で地球を滅亡寸前まで追いやった魔王だ。たった150人の殺し合いなど、悪意と絶望を振りまくのは容易い。己の野望の足掛かりにできるだろうと高をくくっていた。
 グリオンの想定外はこの場にいる人間の能力が想定以上であったこと。
 風都タワーの一戦では白い仮面ライダーや暴走したキラを前にギギストでさえ逃走を選んだ。同じ選択を取りながらもこの事実はグリオンにとっても衝撃であった。
 この会場は冥黒王さえ圧倒的強者ではない。
 グリオンもギギストもルルーシュに言わせれば『特記戦力』の側であるが、彼らでさえ無策で挑めば一片の勝機もない魔境。
 未来無き者の無駄な抵抗を楽しむには、情報も戦力も不足というのがグリオンの見解だった。
 
「綾小路清隆や一之瀬帆波のように性能は高いが戦闘力のない相手には仮面ライダーの力や起動キーがある。マルガム並みの殺傷力はほぼ全ての参加者が持つはずだ。
 無論、鬼龍院羅暁やデクのような仮面ライダー以上の力を持つ者の力はそれ以上。
 ホシノを倒したことをまぐれと切り捨てる段階はとうに過ぎ去ったと私は理解したよ。警戒対象は多いようだ。」
 
 「君も含めてね。」そう告げられた言葉と共に、グリオンは初めて美嘉に視線を合わせた。
 人が持つ優しさや温かさを排したようなその眼差しは、都市部での邂逅し文字通り異彩を放っていた怪物、鬼龍院羅暁を思い出す。
 本来の人生で出会うはずのなかった人外の存在という意味では、2人に差はない。
 差があるとすれば羅暁は敵として向かい合ったが、グリオンとは味方として顔をつきあわせているというところだ。

「君が亀井美嘉か。
 歓迎したいところだが1つ尋ねたい。その眼帯は君の支給品か?」
 コツコツと左目を指さし、グリオンは尋ねた。
 ただの一瞥。ただの質問。
 それだけの行為に美嘉には蛇に睨まれた蛙どころか、首元に牙を突き付けられたような感覚があった。
 本来の美嘉ならば震え、怯え、悲鳴の1つでもあげたかもしれないが。
 この場にいる美嘉は、人の死を知った。抗えないほどの殺意を知った。ただの小娘でいられる段階はとうに終わりかけていた。
 
「そうです。」
 恐怖もなく、困惑もない。
 美嘉の答えは酷く凪いだものだった。
 なんで自分がこんな冷静にいられるのか、美嘉自身が一番分からなかった。
 その答えでは不十分だと思ったのか、もたれ掛かっていたノノミが付け加える。
 
「彼女は鬼龍院羅暁との戦いで左目を損傷しています。ちょうどいいと思い装着を許しましたが、不快なら別のもので代用させましょうか?
 布や包帯なら、このホテルを探せば見つかるでしょうし。」
「その必要はないよノノミ。少々面白いと思っただけだ。
 その眼帯本来の所有者はずっと私に歯向かう子ネズミだった。この会場にいるのは別の時間軸の奴だろうがな。
 名簿に仮面ライダーガッチャ―ドとある男だ。……そうそう、奇遇なことにアヤネが付け回した挙句殺し損ねた小娘と名が似ているな。『いちのせ』だったかな。」
「……ッ。」
 わざわざ伝えられた名前にアヤネの額に汗が浮かぶ。
 屈辱を思い出し歯を噛み締める姿にグリオンはにたりと頬を歪めた。
 いじめっこの挙動だと美嘉は思った。こんな状況でもなければ仲良くなれはしないだろう。
 
「ところでノノミから聞いたが、君には友達が3人いるのだったね。」
「はい。……こんな場所で再会するなんて、思わなかったです。」

 東ゆう。大河くるみ。華鳥蘭子。
 憧れもあり、信頼もあり、思い出もある大切な友達。
 美嘉がグリオンとの協力関係――実態としては彼の配下に加わるという意味だと、グリオンどころか美嘉も分かってはいるが――を結んだ理由は2つある。
 その内1つは彼女たちを助けること。
 誰も死なさずこの殺し合いから帰すためには、力ある協力者が必要だった。

「確認だが、その3人は地球連邦なりザフトなりの軍人だったり、頭にヘイローを浮かべていたり、仮面ライダーだったりするのかね?
 或いは生命繊維とやらと一体化していたり、陰陽師だの刀使だのいう物騒な連中だったりは?」
「いいえ。どれでもないはずです。
 私たちにはそんな特別な力なんて……」

 ノノミやアヤネの情報も含め、思いつく限りの異能異才の類を並べたグリオンに、美嘉は首を横に振る。
 美嘉を含めた4人の少女は、アイドルというちょっと普通じゃない経験を積んだだけのどこにでもいる女子高生だ。
 事実の話をするのなら、ゆうとくるみはそれぞれザフト軍とかかわりの深いラクス・クラインやイザーク・ジュールと行動を共にしており。
 蘭子に至ってはグリオンと因縁深い一ノ瀬宝太郎と協力関係にあり。各々の異なった形で戦場に立っているのだが。そんなことは今の美嘉には知る由もない。


781 : 幕間:やがて冥黒という名の雨 ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:54:25 TinAdQ5A0

 亀井美嘉にとって3人は、戦場など不似合いな優しい少女で。
 グリオンにとって3人は、十把一絡げに殺せる砂利も同然の存在で。
 対極な価値観ながら無力な存在という意味で、少女たちに対する2人の認識は一致していた。

「いいだろう。たった3人。それも戦う力を持たぬ小娘。
 助ける義理はないが、こちらから積極的には襲わないくらいは約束しよう。
 支給品なりスキルなりで相応の力は与えられているはずだし、それこそギギストのような存在の手勢になって襲いくるかもしれない。故に不戦までは約束できないが、構わないね。」
「……はい、ありがとうございます。」
 
 あえて誤解を避けるような注釈を入れたグリオンに、仕方がないと俯きながら美嘉は答えた。
 完全な不戦と庇護までできれば最高であったが、グリオンが言う通りゆうたちにも力は与えられ。仮面ライダーやモビルスーツなどを扱うかもしれない。
 妥当な落としどころには違いない。グリオンの冷徹さを考えればこれ以上ない好条件だろう。
 交渉がまとまった様子をノノミはニコニコと笑顔を向け、アヤネは美嘉を見定めるような鋭い目つきで見つめていた。
 
「さて、改めて美嘉も加わったことだしこれからの話をしよう。
 目下の目的はギギストの持つ賢者の石とアビドスだ。」
「ギギストを追う側とアビドスに向かう側に分かれる、ということでしょうか。」
 アヤネの言葉に「そうだな」とグリオンはあごひげを弄る。
 ”今のグリオン”とギギストの思考は極めて近い。であるのなら奴も協力者なり配下を生み出すなり戦力を整えに動く可能性は十分ある。
 ギギストを強襲するなら早いほうがいいだろうが。”アビドス高校”というランドマークの特異性にグリオンは大きく興味を抱いていた。

「二手に分かれるのはいいが、アビドスに向かう人数は減らすべきではないな。
 アビドスには参加者が集うだろうというキラ・ヤマトの推測は私も同意だ。
 羂索が梔子ユメの姿をしている以上、ルルーシュや綾小路清隆の知人はともかく多くの参加者はアビドスに向かうはずだ。
 我々が最優先すべきは情報であり戦力だ。であれば参加者が集うアビドスほど最適な場所は無い。
 二手に分かれアビドスに入り、他の参加者の支給品などの戦力あるいは手勢を集めた上でギギストを追う。」
「了解しました。グリオン様。」
「分かりました。グリオン様。」

 アヤネは規律の取れた礼とともに、ノノミは恭しい礼とともに、グリオンの言葉を拝聴する。
 答えあぐねた美嘉はわずかに頷くことしかできなかったが、アヤネが叱責するように睨みつけてきたので「分かりました。」と力なく答えた。
 
「ですが私の目的は……」
「聞いているとも、キリトだろう。奴を殺すためにノノミと……ひいてはこの私と手を組んだと。
 ・・・・・・・・
 君の仲間を殺した黒い剣士。奴の仲間に私たちも手勢を失っていてね。互いの敵は同じという訳だ。
 その行方は知れないが、アビドスにはキリトもくるかもしれない。それでなくともキリトの仲間の1人か2人はいる確率が高い。」
「キリトの……仲間……?」
 言葉を詰まらせた美嘉に、グリオンはホットラインから名簿を見せ、何人かの名前を指さした。
 
「キラ・ヤマト准将や一之瀬帆波の名は名簿の上位にあり、その周囲にある名前が知人であることはアヤネの情報で分かっている。
 黒見セリカも同様。そしてこの私の名も錬金術師どもやギギストと連なっている。」
「ということは、キリトの下にある何人かの名前は……」
「キリトの知人。と考えるのが自然だな。
 敵か味方かまでは預かり知らない話だが。」

 ラウ・ル・クルーゼは言った。名簿の並びには意味があると。
 キラ・ヤマトや一之瀬帆波の周囲には両者が話していたとアヤネから聞く名前がズラリと並んでいる。
 美嘉の名前も東ゆう達との並びにあり。美嘉が行動を共にしていた少女、藤乃代葉もその仲間である夜島学郎と並んで記載されている。
 グリオンの推測は正しかった。キリトの下にある名前は一部の例外はあれキリトの関係者が多い。
 アスナ。サチ。リーファ。シノン。レン。ユージオ。ウンベール・ジーゼック。
 キリトに連なるそれらしいカタカナの名前(PoHがその仲間なのかは分からない)に、わなわなと震え冷たい視線を向ける美嘉。
 このうちレンは殆どキリトとは無関係であるとか、ウンベールはとうに死亡しているだとか。そんな事実は美嘉には分からない。
 美嘉にとって確かなことは、この名前しか知らぬ者たちは”敵”であるということだ。


782 : 幕間:やがて冥黒という名の雨 ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:55:13 TinAdQ5A0
               ・・・・・・・・・
「ひょっとしたらこの人たちもキリトと同じように他の参加者を傷つける、危険な人かもしれませんね。
 東ゆうさんたちとアスナやサチ、リーファと言った面々が出会えばどんな残酷な目に合うか……」
「……ゆるさない。」
 
 手榴弾のピンを抜くようなノノミの言葉に。頭の中で何かが切れた音がした。
 美嘉の右目からどろりと黒い血液のような涙が流れ、足元からシュルシュルと音を立て黒い腕が無数に生えた。
 ノノミの奸計の果てに美嘉が取り込んだ悪霊、月蝕尽絶黒阿修羅の性質も相まって、その殺意は美嘉の中でマグマのようにとめどなく湧き上がる。

「ゆるさない。」
 
 自分の喉が響かせたとは思えない黒く冷たい言葉に、驚きはなかった。
 キリトへの殺意だけが言霊全てを満たしている。そんな感覚を自然と受け入れていた。
 
 美嘉にとってキリトは平気で他人を殺し嘲笑う危険な存在だ。
 美嘉の仲間であった藤乃代葉を殺し、その様を嘲笑った男。
 その人物がPoHと呼ばれた男が化けた偽物であることも、既にこの世にいないことも美嘉は知らない。
 美嘉が抱く嫌悪と殺意が、贋りのものであることを知らない。
 
 だが、代葉を殺したキリトへ芽生えた殺意は紛れもない本物だ。
 その果てが、掴むもの全てを消し去り喰い荒らす霊体の腕。
 美嘉の全身から沸き上がる腕が鎌首もたげる蛇のように自分たちを見下ろす様に、グリオン達は感心するように笑みを浮かべた。
 
「これは……。」
「成程、ノノミが気に入るだけはある。
 純粋で無差別な憎悪の発露。とても一個人が所有するとは思えない、凄まじい力だ。
 この力をただのぬいぐるみに抑え込んでいた本来の所有者にも非常に興味がわくが……ともあれ我々の味方となってくれるなら心強い。」
「ご満足いただけたようで何よりです、グリオン様。」

 先ほどまで友の身を案じていたとは思えない変貌だった。
 冥黒の悪意をその身に宿すグリオン達には分かる。己の錬金術とはまた異なる悪意のエネルギー。その凶暴さ。
 敵対するならキラ・ヤマトの氷竜と並び厄介極まる相手だが、味方となれば頼もしい。
 他意のない関心と共にグリオンは美嘉に一枚のカードを差し出す。
 グリオンの有する四枚のケミーのうち一枚、エンジェリードのカードだった。

「私の配下としての証だ。今後とも仲良くやろうじゃないか。亀井美嘉。」
「はい、ありがとうございます。グリオンさん。」

 震えもなく、怯えもなく。錯乱もなく、叛意もない。
 悪魔に魂を売ったのだと。亀井美嘉には分かっていたが。
 そのカードを受け取ることに、なぜだか抵抗はまるでなかった。


783 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/09(日) 22:59:24 TinAdQ5A0
投下終了します。後半も期日内に投下いたします
また本投下をもちまして、キラ・ヤマト准将及び一之瀬帆波への言及分は終了となります。


784 : ◆s5tC4j7VZY :2025/03/15(土) 07:38:18 .6M8luO.0
投下お疲れ様です。 現在の予約ですが、延長をさせてください。


785 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/16(日) 23:59:25 nWRxTLSk0
投下します。


786 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:01:50 Olt2heVE0
オレがヒーローに憧れたきっかけは、物心ついた時目に入った特撮番組の再放送をそのまま視た事だ。
…大量の敵達を相手に、満身創痍でもなお、諦めずみんなを護ろうと足掻いて…全部倒しちまったその姿が、オレの脳に焼き付いちまった。
──かっけぇって、心の底から思ったんだ。

そこからは、その特撮番組の他の回も観て、他の特撮の番組も観て、アニメとかも観て……カッコいいだけじゃねぇのは、なんとなくだがわかって、それでも…ヒーローへの憧憬の気持ちが消える事は無かった。
それで…代々刀使の家系だって事を知って……刀使についても知った事で…ヒーローになれるんじゃって、そうオレは思ったんだ。
人々を護る為、荒魂を斬って祓う。刀使としての使命は、オレの憧れたヒーローそのものだった。

…勿論、んな甘くねぇ事は…画面の中のヒーローを視てきて、刀使について学んでく中でわかってた…つもりだったんだけど……な。ブラック労働の連続なのもそうだが──。
……オレに力があれば、二段階目以降の迅移が出来れば…可奈美も姫和も隠世から引き戻せたかもしれねぇのに。
オレに力があれば、あいつを…芳佳を殺さずに済んだ筈なのに。真昼も止めれた筈なのに。
オレに力が、力があればっ……可奈美を死なせずに済んだ筈なのに。そうでなくても…オレが代わりに……っ!
…オレに力があればっ…!…ロロを置いていかず、一緒に逃げれたかも、しれねぇのに…!!
……芳佳も、可奈美も…あんな所で、あんな終わり方していいわけが、ねえんだ…なかったんだ!!なのにオレは……オレはぁっ!!!!

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「さて、まだ起きないようだな。
叩き起こしてやろうかとも思ったが……折角だ。この玩具を試してみるのも悪くはない」

午前8時45分、MSの残骸を背景にし、ホラー喰いのホラージンガは横たわり眠る益子薫を嗤いながら呟いた。

少し時は戻り8時5分頃、薫を確保した後どうしてやるか考える中、ふとMAPを確認すると川の向こう側に浄水場があるのを認識。案が浮かばないのもあり、行ってみるのも一興かと、人間態のまま翼を生やして川を渡る。

(戻って来て起きていれば、専門外だがガキ相手らしく追いかけっこでもしてやるか?逃げ切れるのが先か、耐えれずホラーになるのが先か…試してみるのも面白い。負ける気は一切しないがな。
戻って来てなお寝てるようなら、叩き起こして質問タイムと行こうじゃないか)

等と考えつつ浄水場へと乗り込み、NPC達を倒しながら探索を終え、帰ってみれば別のNPCが『視える範囲では』2体のお出まし。
ライトブルーの色をした機体、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの元に居たGN-XⅢ…の別個体に、その後継機であるGN-XⅣ。


787 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:04:31 Olt2heVE0
「おいおい、人の玩具に勝手に手を出してもらっちゃ困るなぁ」

嘲るように言いながら、薫をこれ幸いと屠ろうとしていた2機の内ライトブルーの方の機体を真っ先に魔戒剣を振るって始末。残ったGN-XⅣが振るうGNビームサーベルを一歩動くだけで容易く回避してみせる。
危機感を抱いたのかGN-XⅣはトランザムを発動、赤くなり機動力を上昇させた上で、距離を取りながらビームライフルを乱射。

「動きと反応速度は良くなったみたいだが、如何せん単調なんだよ。これならそこのガキの方がよっぽどマシだ」

対しジンガは、紙一重に見えてその実余裕を以て回避をし続ける。
当たりそうな一撃もあったが、これは魔戒剣により切り払った。

「隠れてないで、お前も踊れよ」

隙を見て接近していた、もう一体のNPC…光学迷彩であるミラージュコロイドステルスにより姿を消していたNダガーNを、直感か或いは魔戒騎士としてホラーとして重ねた戦闘経験による物か、あっさりと見破りパンチを見舞う。
鉄の感触が拳に伝わるも、何の痛みにもならずそこから貫手にしてやった上で、袈裟斬りにしGN-XⅣ目掛け蹴り飛ばした。
NダガーNは完全に沈黙しスクラップに、GN-XⅣは直撃は避けたものの…戯れるにも値しないNPCが晒した隙を見逃すジンガではない。

「…結界の類とはなぁ。ぶっ壊してやってもいいが…お前とも遊んでやるよ」

魔戒剣を突き立て、ついぞ人間態のまま3体のMSを撃破してしまったジンガ。しかしその直後、彼と寝たままの薫はクリスタルにより閉じ込められる。
目前へと現れたのは、今のジンガより少し大きめの白き怪人。ンの名を冠するグロンギの頂点、ン・ダグバ・ゼバだった。
本来なら今のジンガとは方向性が異なるものの巨悪同士の筈だが、出典故にただ敵を倒すだけの存在に成り果てている相手に対し、エターナルに抱いたような道から外れ進み続ける者同士嫌いではないという感情を決して向ける事は無く。


788 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:08:44 Olt2heVE0
「おおっと…当たれば流石にこの姿じゃ不味いな。…もっとも、当てれないなら何の意味も無いが、なぁ」

超自然発火能力を回避しつつ、ダグバが拳を向ける前にテコンドーの動きも交えた徒手空拳による攻撃をジンガは見舞う。
アクションを起こさせる前に連撃を加えるも、出典もあり弱体化甚だしいとはいえ腐ってもンのグロンギ、その程度では倒せなかった。
拳を向け殴り抜けてくるダグバを見据え、目を閉じた後……ホラー態である神牙となり、躱しながらすれ違いざまに剣を一閃。
そのまま殴り飛ばし、投擲した剣でトドメを刺してみせた。

「少しばかりでけえ図体だったから警戒したが…呆気ないもんだな」
(…レジスターの制限ってやつはどうやら、全力から大体1割から3割程度の力を削いでいるらしい。…俺がそうなら、道外もそれくらいと見た方がいいか)

ダグバ共々クリスタルが消えていく様を見て嗤ったジンガは、これまでのエターナルや薫にロロ、それに今のNPCとの戦いから自らに課せられた制限の働き具合を判断しつつ、薫のリュックの中を探り始める。

(…こいつがさっきこのチビ助がなってた姿になる為の起動鍵ってのか。
…ラダンがこの類に落とし込まれてるって可能性も無くはない…が)
「有り難くこいつは貰ってくぜ」

ラダン並みの破壊を行え或いは対抗出来るだろう参加者とぶつかる事を考慮するならば、そのラダンそのものを探し見つけて行使するのが一番手っ取り早いだろう。ひとつの可能性として考慮しつつ、今はとりあえずとレジスターをしれっと取り上げた上で、ジンガは薫の他の支給品には手を付けなかった。
先の戦いで大凡の実力は測り終えており、たとえ起動鍵とやらを使った状態で来ようと薫は自分には適うまいと認識しているが為である。
レジスターについては自らの、そして宿敵たる道外流牙の枷になっているが為…煩わしいそれをどうにか出来、駒から脱却した上で、再び全力で好きにやり合えればそれが一番だとジンガは考えているが故、確保するという行動に出た。
…どうであれ主催を許す気は、彼には皆無である。


789 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:13:15 Olt2heVE0

(起動鍵の性能込みで俺に勝てるくらい強えなら…あんな満身創痍で逃げては来ないだろ。力の引き出し方を理解できた…って訳でも無さそうだったからなぁ)

そして今度こそと言わんばかりに、ジンガは自らの最後のランダム支給品を取り出す。
ここで時刻は今の8時45分に戻るというわけであった。

「説明書が何処まで信用出来るかは知らねえが、その通りならこいつをこうしてやれば…視れるはずだ」
(直接対峙した筈のこのチビ助の記憶を覗けば、遠巻きに見ただけのままよりはどれ程の脅威かわかり易いだろうよ。…ついでにひとつ、弄ってやる。これでもなお、お前はくだらないヒーローへの憧れとやらを保てるかなぁ?)

ニヤニヤしながらジンガは手にしたディスクを薫の頭めがけて投げつけ、それを回収。
プレイヤーにディスクを入れて彼は偉そうに座り、それを重要そうな場面に絞り見始める。

そこに映されたのは、益子薫がこの殺し合いに巻き込まれる前、タギツヒメとの決戦時からであった。

(…可奈美に姫和、舞衣に沙耶香、タギツヒメに……あのチビ助…益子薫。
…エレンとやら以外はこの殺し合いに巻き込まれた可哀想な連中と同じ名前がここにあるなあ)

心にも無い事を内心で吐き嘲りつつ、次に映ったのは殺し合いが始まってから、ジンガがエターナルこと大道克己とやり合ってるその頃からの薫の姿。
自らの武器、御刀とやらが無いと気落ちする姿を見せられ、ジンガはある可能性に思い至った。

(このガキが本来の武器を支給されて無かったという事はだ、道外に牙狼剣が支給されてるとも限らない事になるな。
…持ってる奴が居たらそいつの首とレジスターと一緒に届けてやるよ、魔戒騎士…)


790 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:18:45 Olt2heVE0
宿敵たる黄金騎士、道外流牙とやり合うのならば互いに全力の状況で戦いたいと思っているジンガはそう決めた上で、続きを見ていく。

(このガキが、チビ助が殺したお仲間って事か…おいおい、それはどう見てもパンツだろ。奇天烈な世界もあったもんだなぁ…)

現れた少女宮藤芳佳が、薫が殺してしまった仲間だと察しつつその格好とそれが当たり前な世界に、呆れたような様子でジンガは思考を回した。

『…代々刀使の家系だった…ってのもあるけどな。一番の理由は…憧れたからだよ、ヒーローってのに。人々を守れるそんな存在になりたいって、思ったからだ。
だからあの羂索とかいう脳みそ野郎達に、従うなんてあり得ねえ。殺し合いに乗るとか、ヒーローとして失格だ』
「……へぇ。ご苦労なこった…にも関わらず、お前はコイツをその手で殺すわけだ…」

少女がヒーローに憧れる動機を聞き、一瞬の沈黙の後、ジンガはそれを笑い飛ばし意識の無い薫当人に当てつけのように呼びかける。
最も、ディスクを抜かれているのもあり彼女が目覚める様子は見られなかったが。
そして話は、現れた乱入者との戦いへと移る。

(…『そうなるように造られた』、ねぇ…最初からそうだったにせよ、途中で転がり落ちたにせよ…堕ちた以上は同じ事だろ)

乱入者たる柊真昼にそう乾いた感想を嘲笑と共に向けつつ、彼は戦況を観る形となった。

(『KAMEN RIDER SOLOMON』…仮面ライダー…あのエターナルって奴の同類か??…いや、それにしては音声の喧しさも、変身の仕方やアイテムもかなり違う。ガキ二人の世界云々の話からするに、アレはエターナルとは別の世界の仮面ライダーだろうなあ。
…そして口ぶりからして、あの柊真昼はソロモンとやらの本来の変身者という訳ではなさそうだが…)


791 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:22:18 Olt2heVE0
変身音声ひとつで、最初に戦った死体人形の死神との共通点と相違点の比較等を考えながら、おそらくそう遠くない内に訪れるだろう瞬間を青年は心待ちとする。

(随分と多機能なんだな…だが妙だ、さっきまであのチビ助その2…宮藤芳佳だったか?アイツは重傷だった筈だ…起動鍵に治癒機能でも存在してると、考えるとするか。
…治癒魔法をあのタイミングで、チビ助その1にだけ使ったのは…自分を治すには使えねぇって所だろう。…リスクの事も考えるとそれで殆ど確定と見れる。…そろそろだなぁ…!)

思考を回転させながら、その瞬間が近付いてきた事に対し、ホラー喰いのホラーは下衆の笑みを見せながら、心を躍らせていた。

『…っ…ぁ……薫、ちゃ…な、ん……で……』
『よし、か…?…っ…違、うっ…オレは…そんな、つもりっ……!!』
「……フフ、ハハハハハッ!!」

……そしてその時は訪れる。真昼の誘導にまんまと嵌り、仲間である宮藤芳佳の胸をその大剣で貫いた薫が、絶望を浮かべる瞬間が。
思わず笑みが口から溢れるも、薫当人は起きる素振りが無い。


792 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:25:29 Olt2heVE0
『…ヒーローに憧れてるなんて言ってたけど…同行者を死なせておいて、そんな資格があなたにあると思うのかしら?力が無ければ……何も、為せないのよ』
「ハッ、気が合うなぁ…力が足りねぇくせに、仲間ひとり護れず、自分の手でまんまと殺しちまう奴に、ヒーローなんてもんに憧れる資格があるとは思えねぇ」

同意を見せながらも、未来をプチッと切られるその様を、愉しみにしジンガは嗤った。
…ところが、少女は、宮藤芳佳は…己の未来が断ち切られる事になってでも薫を救う選択を選んだ。

(柊真昼も本気では無かっただろうとはいえ、令呪を三画も使えば、これ程の抵抗が出来るとはな…だが、使ってしまった以上…未来はもう訪れない…。…物理的に砕け散る音が出るとは驚きだ…あの起動鍵のデメリット、令呪を全て切ったらああなる、って所だろうな。
……感謝するぜ宮藤芳佳ぁ…お前が命を投げ捨て無駄死してくれたおかげで、俺はこのチビを使ってやれるんだからなぁ…)

感謝と言いながら、砕け散り『いなくなった』少女を、手を伸ばすも届かず、血溜まりに崩れ落ち意識を失う少女を最大限に嘲笑し、人間の命が亡くなる音を楽しむ。

(…こいつに触れた結果、あの忌々しい光の力を手に入れたって事か。…面白えもんが見れた、磨いておけば無意識下の行動等も見れるとあったが…念の為やっておいて正解だったな)

意識が無い中、夢の中で遺跡内部に安置された石…ストーンサークルに触れた事で薫が適能者(デュナミスト)となったのも把握して見せたジンガ。
そして目覚めた後、自らの罪を思い返し声にもならぬ慟哭を響かせる少女の有様も樂しむ中…その場に現れたのは見覚えのある珍妙な四文字仮面。


793 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:29:27 Olt2heVE0
(なるほど、こうして益子薫は…たしかロロとか呼んでたなぁ、奴と一緒に居た訳だ。
…あの四文字仮面も仮面ライダーってのの一種だったって事か)
「……んなもん捨てちまえば、堕ちてしまえば楽なのになぁ」

2人との戦いを思い浮かべながら、合点が行った様子を見せつつ呟く。

(確か…この少し後に遭遇だったな。その辺りまで飛ばしてやるか……っと。柊篝ってのも、刀使共の関係者か)

少し時を飛ばし、全て聞いていた皇帝陛下ことルルーシュの狙いについては兎も角、聞けていなかった刀使絡みの関係者についても把握。
そこからの戦闘は飛ばし、陰我が溜まるきっかけとなっただろう戦闘付近まで早送りする。

(あのガキは確か、衛藤可奈美…だったか。……おいおい、エターナル胸ぺったん女だの不良になっても育たないもんは育たないだの…随分辛辣じゃあないか。どっからどう見てもチビ助な、成長性皆無なお前が言える口かよ??
…にしても、アンクがもうひとりの十条姫和とはな。NPCが自我を得る…偶発的にしては、名簿の表記がアンクな辺り何かしらの作為も感じる所だが…)


794 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:34:26 Olt2heVE0
呆れと嘲りが交じった思考を切り替えて、ジンガは再び頭を回していく。
宮藤芳佳の件を話そうとして出来ないまま、NPC達と戦う事になった薫を内心嘲りながら。
そしてその場の面々が追い詰められる中…救援に現れた新たな者達により戦局は一転する。

『マジアマゼンタ…だっけ?こっちのが可奈美…衛藤可奈美に、あっちで戦ってるのがリュージにアンコだ』
『アンコじゃなくてアンクさんだよ薫ちゃん!…こっちが薫ちゃんで、あっちの四文字の仮面になってるのがロロさんだよ』
『よろしく可奈美ちゃんに薫ちゃんっ、あの変身してるのがチェイスさんで、あっちの変身してる子が果穂ちゃん、もう一人の子が千佳ちゃん…ラブリーチカ!』
『果穂ちゃんにラブリーチカちゃん、チェイスさん…うん、覚えたよ…マジアマゼンタちゃん』
(…壮観だなぁ。全員で9人…いや、意識のねぇもうひとりの十条姫和含めて10人だろ?それでなお、陰我が少なくない量溜まるレベルの激戦と悲劇が起きる…さて、どれだけの強さか見せてくれよ)

自分達や共闘相手の名前をそれぞれ教え合った後戦いへと戻り、NPC達を蹴散らす様を横目で見ながらその時を愉しそうに待つ。
そして──地獄の幕を告げる声が響いた。

『誰に断って勝手に立ち去ろうとしている?』
『俺を前にしていつまで呆ける気だ。王に首を垂れろ、ゴミどもが』


795 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:37:32 Olt2heVE0
(…おいおい、記憶の、映像越しだってのにコイツは……メシアと同等か、それ以上さえあり得そうだなぁ。コイツとやり合うならラダン級の戦力か、最低でもアミリの魔鏡程度は欲しい所だ。今挑めば……令呪無しじゃ保って数分って所だろうか。神牙になる前に潰される可能性も高い…コイツには遊びってもんがねぇ)

薫の記憶越しだと云うにも関わらず冷や汗をかきながらも、冷静に繰り広げられる宇蟲王の蹂躙光景を見据えるジンガ。

(ゴミだのクズだの、随分と口の悪い王様だなぁコイツは)

等と思いつつ、視点となっている薫はまともに動けず悶えたまま、宇蟲王と刀使の少女…衛藤可奈美の一騎打ちに場面は動く。

(…俺や道外には及ばねぇが…年の割にはやるのは認めてやるよ。だがあのバケモノ相手にそんな甘っちょろい、殺す気のねぇ剣じゃあなぁ……当然の帰結だろうよ。
最も、本来の武器があろうと…おそらく結末は変わらなかっただろうがなぁ)

不殺の刃による檻を力業で破壊、そのまま斬られ両腕と臓物を落とし息絶えた可奈美の顛末を、ホラー喰いのホラーは嘲り笑いそう称した。

(……そうだよなぁ、憎いよなぁ、何も出来ずみすみす仲間を、会えなくなった筈の相手を見殺しにした自分自身が!!)

怒りと憎しみのまま、起動鍵を纏って突撃するも呆気なく返り討ちに遭い、満身創痍となった薫にほくそ笑みつつ顛末までを青年は視ようとする……そんな時だった、青き戦士が介入を果たしたのは。


796 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:44:12 Olt2heVE0
「…すっげーな!ラダン級って見立ては間違いでも過大評価でも無かったのがよく分かるぜ…しかも今まで変身を温存してあんなに暴れ散らかしてたわけだ」
(…案外あの赤い暴君にとってあの青い戦士は、俺にとっての道外のような存在…になるかもなぁ。
……なっちまえよ、どうせ仲間ひとり護れない人殺しだぁお前は…)

怪獣バトルとでも言わんばかりのハチャメチャな攻防を繰り広げる2人に、かつて魔戒法師莉杏がビルごとホラーを魔界へ送還した様を見た時のように驚きと高揚を見せつつ、芳佳の想いを捨てれず人でなしになれない気でいる薫をジンガはそう内心詰る。

「…コイツの記憶な以上はここで終わりか。…青い戦士も赤い暴君も、どちらもまあくたばってはねぇだろ。
…さて、消すか書き換えるか……決めたぜ、書き換えてやるよ。お前の記憶を、なぁ…」

再生を終えた上で、ジンガはディスクを自分の頭に乗せ、自分好みに堕ちやすくするように書き換え、それを在るべき所へと戻してやる。


797 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:48:26 Olt2heVE0
「…もう1時間以上は経ってるってのに、まだ起きねぇか。今度こそ叩き起こしてやって……おっと、いきなり仕掛けてくるとは随分乱暴な来客が来たもんだ」
(…ソロモン…柊真昼か)
「あら、私はその子に用があるんだけど…貴方より先約よ??」

飛んできた斬撃波を避け方向を見据えると、現れたのは仮面ライダーソロモン、どういうわけか配下として2人の鎧を纏ったライダーを従えている。

「悪いなぁ、柊真昼…コイツは俺が使ってやるって決めたんだよ」
「…貴方みたいな知り合いを持った覚えは無いのだけれど」
「そこのチビ助の記憶をな、覗かせてもらったのさ」
「…そう。貴方みたいな軽薄な男に横やりを入れられるのは御免だわ。それに…試したい事もあるから、ね…!」

言いながら真昼は、配下としている2人のライダーを差し向けた上で──令呪を行使した!

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時間を再び遡ろう。先程まで戦っていた相手である舞衣の悲痛な声を背にしつつ、先の戦いの戦場から離れる為、一旦止まった後発見したエナジーアイテムである高速化を使用、そこから運よくもう一つ高速化を手に入れ使用し結果、効果が切れる頃にはジンガと薫の居るエリア付近へと真昼は到着していた。


798 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:50:46 Olt2heVE0
(…流石に、ソロモンの力に頼りすぎたわね。呪符も使っておけば、ひとりくらいは殺せたかしら。
…そういえば今まで試しては無かったけれども……ダメ元とはいえいい機会、みたいね)

4対1対1対1とNPC複数体という乱戦極まった状況だったとはいえ、自身の手では誰も殺せなかったのもありここで真昼は、本来ならワンダーライドブックを使用する相手にのみ効く、ソロモンの洗脳能力を試してみるのもありとする。
展開されるクリスタルと、大量の雑魚であるサナギ体のワームに少し大きめな闇のキバの鎧、仮面ライダーダークキバと王にして処刑人たる仮面ライダーサガを目にし、再び真昼は変身を遂げた上で…行使した。

普通ならワンダーライドブックを使わないライダーである2体を洗脳する事は不可能だ。だがイドラ・アーヴォルンのオーバー・シェイドがそうだったように、ソロモンのこの能力も殺し合いに併せてチューンナップされていたのだ。
最も、仮面ライダー以外に効くかは現状不明かつ、対象に出来るのは2体まで、解除しない限り新たに洗脳は不能、かつ精神状態次第で跳ね除けれる上にインターバルもそれなりに必要という仕様になっているが。


799 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:53:40 Olt2heVE0
故に、NPCだったダークキバとサガはあっさりと支配下に収まる。後に巻き起こるは雑魚共が蹂躙されクリスタルが消え失せる光景のみだ。
真昼自身が手を出さずとも、ダークキバの紋章による広範囲攻撃にサガのジャコーダーを振るう攻撃、それらの連発で呆気なく、サナギワームの軍団は散った。
そして残るはひとつのドロップアイテム。変身を解除しても従い続けてくれるか彼女視点だと現状不明(元の変身者であるイザクは変身前からこの能力を行使していた為従い続けれると思われる)な都合、解除しないままそれを真昼は拾う。
浅倉威がドロップアイテムとして手に入れた亜空間物質転送装置のように、説明書までもがご丁寧にも落ちていた。

「…さっきよりもずっと楽だったのに、その割にドロップアイテムは当たり…完全にランダムなのかしら」

説明書を読んだ上でそう独りごちりつつ、アイテムであるフエルミラーを、使い切りの呪符を対象に使用。
8枚を16枚にした事で、ある程度同時に使用する余裕があるようにしてみせた。
その上でフエルミラーを仕舞った上で他参加者を探して歩いていると、発見したのはぱっと見軽薄そうな明らかに危険な男と、横たわる薫の姿。


800 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:54:16 Olt2heVE0
(…次に会った時なお、憧憬を貫けるかどうかは気になってるけれども…横取りとは感心しないわね。それに…さっき出来なかった令呪の行使には、丁度良さそうな相手に思える。…と言うか、使わなきゃ勝ち目は無さそうね流石に。リミットは99.9秒…芳佳ちゃんが私にやった時とは逆に、今度は私がリミット以内にどうにかする番が来るなんて)

思考しつつ、真昼はノ夜から斬撃波を放ち…今へと至る。

「ハッ、最初っから本気ってわけか…生憎と令呪は使ってやれねぇが…ならこっちも相応に、もてなしてやるよ!」

最初からホラー態たる神牙の姿となり、魔戒剣を振るうジンガ。そして二者の剣は激突を果たした。

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魔戒剣による攻撃に対し、真昼はノ夜とカラドボルグで受ける。しかし両者の剣は拮抗し……やがて打ち勝ったのはジンガだった。
ノ夜もカラドボルグも打ち払い剣でソロモンの装甲を捉えようとする…も、身体に巻かれるは鞭形態のジャコーダー。そこから空中に展開され迫りくる紋章に対し、ジンガはジャコーダーを力付くで振り払ってから、紋章を避けにかかる。

(片方はさっきの奴(ダグバ)と同サイズ…の割には柔軟に動くな。…魔戒法師みてぇな真似を…!)

洗脳により支配下に置いたが故か、ダークキバもサガも行動パターンが他のNPC程度には柔軟になっていた。
攻撃力はそのままパターンが増えたのもあり、厄介と察し避けた形となる。しかしジンガが回避優先に動いた結果、札を取り出し行使した真昼の行動を妨害するには間に合わなかった。
──瞬間、ジンガの目前に広がるはかつて人間だった頃、妻アミリと息子ユウトと共にあり魔戒騎士として人々を護っていた頃の光景。
呪符を3枚行使し、精神干渉を過去を再現する方向性で行ったのだ。

「……くだらねぇもん見せやがって。人間としての記憶こそあれど、今の俺はホラーだ…人間だった頃の事など、もうどうでもいいんだよ」


801 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:54:56 Olt2heVE0
しかしジンガはすぐさまこれを振り払う。ホラーへと堕ちる前なら兎も角、ホラーと化し精神が変質してしまった以上、僅かな時間稼ぎにしかならなかった。そのまま魔戒剣を勢い良く投げ、ジャコーダーを再び使い捕縛しようとしていたサガを貫き撃破してやる。
…だが、それだけの時間があれば、柊真昼にとっては十分であった。

「そう。造られたとはいえ、生物学上は多分一応私も人間だから…人を捨てれば貴方みたいになるのかしら?…だとしたら、そんなのごめんだわ」

柊家の仕組んだ計画の為には、真昼が吸血鬼となるのは…種としてすら人から外れるのは確定した未来であった。しかし人という種から逸脱する事により目前の男のように自らも、情を抱ける数少ない相手を…最愛の人を、たったひとりの妹のことすらどうでもよくなってしまうのなら…そんな物は願い下げだと思う心は真昼にもある。
故に言い放ちながら、令呪を切ったが為行使可能となっている巨大カラドボルグ(本来よりサイズは落ちているが)を出現、そのままキングオブソロモンとして迎撃させる。

「手数を増やしたってわけかぁ…。…連れないねぇ、大切な物を捨てて、お前もそこのチビと一緒にこっちへ堕ちて来いよ。楽になれる…ぜ!」

キングオブソロモンやダークキバ相手に斬撃や徒手空拳で迎撃をしつつ、飛翔体へと変化し光弾を発射、真昼めがけてそれを何発もぶち当たるも……通じない。


802 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:55:35 Olt2heVE0
「便利なものね、このマントは…令呪と引き換えに使用可能って制限が付くのも、納得するわ」

オブスキュアマントにより、自分に対する攻撃を別の世界へと受け流す事で空間系や概念系以外の攻撃を無効化状態にあるからだ。
そのまま真昼は、撃破時にサガがドロップしたのだろうジャコーダーを拾い、鞭状態で巻き付ける。そして出来た隙で今度は巨大なる終末の書(これまた本来よりサイズは落ちている)を投影、キングオブソロモンを数体程巻き込みながらエリアの殆どをその力によって消し去り砂漠状態へと変えてしまった。
防御と回避に動いたさしものジンガも、ダメージは避けれず、しかしそれでも紋章拘束を試みていたダークキバや、キングオブソロモンを盾にし爆散させ戦力を減らす。

「馬鹿みてぇな事やりやがって、だがお前の時間が保つかなぁ?」

令呪の有効時間、タイムリミットが近付きつつある真昼はしれっとジャコーダーを回収しつつ、ここでノ夜とカラドボルグの二刀流で攻め、残った1体のキングオブソロモンにも迎撃をさせた。
オブスキュアマントによりダメージをほぼ無効化しているものの余裕が無い真昼と、それなりにダメージを負い疲労しつつもどこか余裕がまだあるジンガ。剣戟が再び始まる。
リミットの都合上キングオブソロモンの召喚や巨大なる終末の書の投影は使えばそれで行動が終わり、その隙をジンガは逃さないだろう以上もう使う事は出来なかったが為、斬撃波も交えた剣での斬り合いへとなった。


803 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:56:24 Olt2heVE0
光弾と斬撃波でキングオブソロモンを撃破しつつ、ここでジンガは猛攻を仕掛ける真昼を凌ぎにかかる。
今度は真昼だけでなく、互いの剣が吹っ飛ぶ中徒手空拳での戦いとなるその最中、真昼はジャコーダーを取り出しその柄の部分であるコブラハンマーを用いて振りかぶりジンガを屠ろうとする。

「…残念だったな…時間切れだ」

しかし……その寸前、タイムリミットは無情にも訪れた。能力等が元に戻りマントの効果も無くなった真昼を、ジンガは足で踏み付けて嘲笑う。
そして魔戒剣を振るおうとする最中……ここで真昼は時間稼ぎのつもりなのか、一言を告げた。

「…貴方の持ってる、その剣…あの魔戒騎士に似ている、わね…お仲間か…何かかしら?」
「──…お仲間?俺とアイツが…道外がか??…フフ、ハハハハッ!!俺は同類だと思っちゃあいるが…それを道外が聞いたら間違いなく怒るだろうなあ。断じて仲間なんかじゃあない、互いにとっての宿敵…と言うべきか?
しかしなるほど?お前…道外と会ったみたいだなぁ…詳しく聞かせろよ。言っておくが…拒否権は無いぞ??」
「…素直に言えば、見逃してくれるかしら?…」
「ジンガだ。見逃すかどうかは…さあなぁ、そこはお前次第さ」

一瞬虚を突かれたような様子の後、腹を抱えて笑いおどけた様子を見せながら、ジンガは剣の切っ先を向けて真昼から情報を聞き出そうと試みる。
宿敵と遭遇したという事は近くに居てもおかしくはないだろうが為、このような行動に彼は出た。


804 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:56:50 Olt2heVE0
(他に選択肢は無い…みたいね。信用は全く出来ないけれど……ここは乗るしかない)

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「彼…道外流牙は、ジンガ…貴方のいう黄金の鎧は着ていなかったわ。ハガネとやらを着ようとはしていたけれど」
「…やっぱり牙狼剣は道外の手元にはねぇみたいだな。しかしハガネか…」
(全ての魔戒騎士の鎧の原型、それを道外が…。まあ大方、俺を倒した後に前任の使い手に認められ、行使出来るような何かしらがあったんだろうな)
「…それと、どうも貴方と私は…アスラン・ザラ?に『シン野郎』と見なされて、命を狙われてるみたいだけれど。貴方に至っては『ザブト野郎』なんて呼ばれてたけど…一応聞くわ、心当たりはある?」
「…恨みならそりゃあ、腐る程勝ってるだろうけどなぁ……そんな頭のおかしい意味不明な理由で、言いがかりをつけてくるような気狂いと知り合いなら…何度死んで蘇っても、忘れ去れる気がしない。
しかも強敵なんだろ?そのアスラン・ザラ?とかいうパチモンみてぇな奴は。…同情するぜ、そんな奴に命を狙われるなんてなぁ」
「心にも無い事を言ってるのが丸わかりよ?一周回って親切にすら思えるくらいには」
「そりゃどうも、だが人の心が無いのはお前も同じだろ?」
「……否定はしないわ、どうせ薫ちゃんの記憶から知ったんでしょうし」

情報を真昼から聞き出す最中アスラン・ザラ擬きの話へとなり、さしものジンガも面識すらない所から謂れのなさすぎる言いがかりで抹殺対象にされている事実には困惑と呆れを隠せずにいた。
そして話は、真昼と戦った刀使であり薫とも縁深い舞衣や、死体として操られている可奈美へと移る。


805 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:58:07 Olt2heVE0
「死体を操って殺させるとは、良い趣味をしてる奴も居るんだなぁこの殺し合いには。それも、よりにもよってそこのチビが助けられなかったお仲間の、友達の刀使と来たとは」
「撤退する中声だけが聞こえたんだけど、ライオットと言ったかしら?あの自称ヒーローが、おそらく可奈美ちゃんから舞衣ちゃんを庇って…その瞬間だけ、圧倒的な威圧感を感じたわ」

(…わざわざ言いはしないけれど、まるで上位始祖の吸血鬼と出くわした時のような威圧感だった…スキルによる能力上昇による物あたりかしらね)
(…あの赤い暴君が現れた時みてぇな事が起こった…ってことか?だとすれば上手いことぶつければ……いや、道外と一緒に行動している時点で無理な話なのもそうだが。
…コイツの口ぶりからすると、一瞬だけそうなった以上スキルか何かによる物だろう。そうだと仮定して、あの暴君を前に行使する余裕があるとは……俺には思えねぇな。使う前に殺されて、お仲間の後を追わされるか、お仲間の犠牲と引き換えに発動出来るかの二択じゃ、使い物にはなりそうにない)


806 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:58:57 Olt2heVE0
「…それで?あるんだろ?続きが…」
「それを感じた直後、あの喧しいアスラン・ザラ?の声が響いたわ。
『舞衣!!お前がライオットを!!ライオットを殺したあああっ!!!!』『今だ!!』
…とね。舞衣ちゃんも薫ちゃんと同じ、人殺しに成り下がったという事でしょうね…可哀想に」
「…言いがかりの可能性もあるが…状況からして、下手人は衛藤可奈美の死体、柳瀬舞衣を庇ったせいでそのライオットって奴が殺された事への糾弾…って所か。…アスラン擬きの異常者は兎も角としてだ、こいつは面白くなって来たじゃねぇか…!死体をとっ捕まえて、益子薫に見せつけてやるのも悪くない…」

会話を交わす中、柳瀬舞衣まで今の薫のような『自分のせいで仲間が死んだ』罪人になったと考え邪悪な笑みを見せるジンガ。
対し真昼は何とも言えない表情を浮かべていた……そんな時であった。

「……何を、何を言ってるんだよお前はああああ"っ!!!!」

いつの間にか目覚めていたのだろう、益子薫がマークツヴォルフの起動鍵を用いた上でジンガ目掛けて突っ込んで来た!

----

ほんとうは、もう少し寝たふりしてもいいかと思った。寝ちまう前になにがあったかロクに思い出せないのもあって、アイツ(ジンガ)がよりにもよって真昼と手を組んでやがるのもあって。
…でも、聞き捨てならねえ言葉が聞こえた。
……舞衣が、オレと同じ人殺しに成り下がったって、それに……可奈美の死体、が……─??

……起動鍵を使って、再使用可能になっていたSDPとやらを使って全回復した上で…身体は勝手に動いていた、けれど……剣はあっさりと、アイツに防がれちまった。

「お目覚めのようだなぁ、益子薫…」

…なんでテメェが、オレの名前を知ってるんだよ…どういうことだよ、可奈美が…舞衣がっ…!!


807 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:59:24 Olt2heVE0
「おいおい、どうやら目覚める前何があったか、覚えてないらしいな…思い出せよ。お前のせいでみんな死んで、ひとり無様に生き延びた。衛藤可奈美も、十条姫和もロロ・ヴィ・ブリタニアも、他の連中も…みんなお前のせいで死んだ。お前が……殺したんだ」

────は?
…目前のヤツがなにをいってるか、わからなくて…その瞬間、オレの頭に記憶がなだれ込んでくる。

あの赤い王を名乗る男に、可奈美が目の前で殺された所が、そこから、リュージも、アンクとひよよんも、マジアマゼンタも、ラブリーチカってのも果穂って奴も、チェイスって奴も…ロロもっ……目の前で殺されて、助けに入ったあの青い戦士すら……勝てなかった。
オレだけが……なにも、できねぇままっ…生き残っちまった……!!

「ああ……あああああ───!」

声にもならねえ叫びが、オレの喉奥からでていた。
オレのせいだ、オレがいなければ……あのとき可奈美の代わりに死んでれば、芳佳の代わりに死んでればっ……こうはならなかったかもしれねぇのに!!!!

「そう言えば…お前、言ってたよなぁ…ヒーローに憧れて、刀使になったって。
……仲間ひとり護れず皆死なせて、何が刀使だよ。
折角だから先達として、ひとつ言っておいてやるよ。
…ざぁんねん…益子薫、お前はぁ……ヒーローには、なれなぁい…」

されるがまま、あたまをつかまれたおれはかおをちかづけたあいつにそういわれた。
……あいつのいうとおりだ。おれは、ひーろーにはなれなかった。どだいむりなはなしだったんだ。だれもまもれないおれに、なかまをみすみすしなせたくずのおれに、むりょくなおれに…ひーろーなんて……。

「っ、ぁあ…ゔぁぁぁああ"ぁあぁ……!!」


808 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 00:59:50 Olt2heVE0
----

「…えげつない事をするわね」
「お前には言われたくねぇなぁ…さて、次はお前の番じゃないのか?柊真昼。さっき俺にしたみたいにやってみろよ」
「勿論、忘れてないわよ」

嗚咽を漏らし泣き叫び、陰我を増大させていく薫を見据えながらジンガはここで一旦引き、真昼に任せてみることとした。

(さて……やれるだけの事はやってみて…後は委ねる他無いわね)

思考しつつ真昼は、呪符を5枚用いて、崩れ落ち喚いている薫の精神へと、悪夢を見せるという方向性で介入を果たす。

----

……あの後ろ姿は…可奈美?…おい、まてよ可奈美!可奈美っ…!!

「その血だらけの手を離してよ、人殺し」
「っ…ぁ…」

手を握った途端、そう言いながら振り返った可奈美は…無残な姿に成り果てていた。
おれの、せいだ。ぜんぶおれの…せいで、こんなことにっ…

「わたしを殺して、それで最期に願ったことすら投げ捨てるんだね薫ちゃんは…」
「こんな終わり方を君が迎えるのなら、最初に出会った時に終わらせておくべきだったな」

芳佳の、ロロのこえがきこえる。
…おれはっ、おれは……いきてちゃ、いけなかったんだ……!!……おれじゃなくて、芳佳なら…それか、エレンだったら…もっと、うまく……可奈美たちをしなせることも……!!

「──そうやって、ヒーローへの憧れも投げ捨てて…楽な方に逃げて…あのジンガって人の同類になるんだね、薫ちゃん」

……あいつと、同じ同類に……?

「あの下賤な剣士は言っていただろう、対峙した際に『ホラーになれば、罪悪感なんざ馬鹿らしく感じるぞ』と」
「それに、さっきだって自分の事を先達だって」
「それを聞いてどう感じたのか、それもわからないなら…思い出せないなら薫ちゃんなんて、もうしらない。人殺しのホラーになっちゃえばいいんだ」


809 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:00:15 Olt2heVE0
……アイツの、ジンガの言葉は殆ど全部から、嘲りと悪意を感じた。けれど……けれど、その2つだけは……他と比べて妙に実感が籠もってた気がする。
……もしかしてアイツは、ヒーローだったのに…なにかがあって堕ちちまった、成れの果てなのかもしれねえ。だからオレに、同じ道を行かせようとしているのかもな…って。
だとしたら……なって、たまるか。アイツみたいにっ…逃げて身も心もバケモノに、なってたまるかよ。

そう思うと、胸の苦しさが少しだけマシになった気がして、視野も少しだけ広くなった気がする。
…バカだなぁ…オレは。
オレのせいでみんながしんだ、その事実はかわらない。オレにはもう、ヒーローや刀使を名乗る資格なんざ無い。けれど…けれどな、少なくとも可奈美や芳佳やロロが…そんな事言うわけ無いって、のに…!!
……言うようなやつじゃないって、わかってるから…だから余計にオレは…みすみす罠に引っかかって、芳佳を死なせて…可奈美達の時なにもできず、のうのうと生き残ったオレ自身を……赦せねえんだ、だからホラーって、楽な道に逃げるわけには……行かねえんだよ!!!!

そう思った瞬間、オレの頭にはもうひとつ忘れきってた…遺跡の中に入って、石に触れた夢の事も浮かんだ。
…アイツが、ジンガが言ってた光ってのはこれだったのか。……もっと早く、気付けてれば……ちくしょう…!!

……ごめんな、可奈美、芳佳、ロロ……オレはもう、ヒーローにはなれねぇけど、だけどどうやっても、オレがオレである限り……この憧憬は捨てれねえみたいだ。


810 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:00:45 Olt2heVE0
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「コイツまで羂索達が再現してるとはな…丁度いい、このチビ助に憑依してみろ」

現れた素体ホラーを薫に憑依させようとほくそ笑むジンガに、何かを見守るような様子を見せる真昼。
そんな中……目を閉じていた薫がそれを見開き、防衛隊炎刃型大剣を以て血は浴びないままホラーを斬り殺した。

「憑依を拒んだどころか…陰我がある程度減っている?これも制限って奴のせいか……しかも、役に立たねぇ中途半端とはいえ、その力に目覚めやがったとは」
「……ジンガ。そうなる前のテメェになにがあったかはオレにはわからねぇ、けどな……オレはっ…この憧憬を捨てない限り、オレはテメェのようには絶対ならねえ。──なって……たまるかぁっ!!!!」

ジンガと真昼を見据え、薫は喉が枯れんばかりに叫びながら…エボルトラスターを引き抜く。動作を終えた瞬間…薫が居た場所には、等身大サイズの戦士…ウルトラマンネクサスが立っていた。
…最も、陰我の影響のせいかその姿はアンファンスのそれではない。
黒を基調にしており、血色の赤がラインなどに入っていた。まるでその様は、血を被り目から血涙を流してるかのように見えるだろう。 
…もしネクサスの、いや本来の姿であるノアの宿敵たるダークザギの存在を知っている者が、このネクサスを見れば想起したかも知れなかった。

「…ダークヒーローって感じわね」
「中途半端な光の力で、俺に勝てると思うのか?益子薫…!その有様じゃあ、いつホラーへ堕ちてもおかしくはないだろうに」
「…テメェみたいになるのだけはごめんだ。そうなる前に……全部終わらせれるように動く」
「…そうかよ、じゃあここで死ぬんだな」
「ジンガ、ここは私に任せて貰うわよ」
「勝手にしろ」


811 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:01:14 Olt2heVE0
ソロモンへと変身した真昼が、ノ夜とカラドボルグを用いて薫目掛けて斬撃波を飛ばす…も、ボードレイ・フェザーを放ち斬撃波を押し留めた。

「っ、早くなってるわね…!」
「今はお前よりそこのジンガだ、真昼っ!!」

曲がりなりにも誰かの為に殺し合いに乗った真昼より、かつては兎も角今はただ悦楽の為全てを好きなように踏み躙る存在となってしまったジンガの方が倒すべき敵だと、彼女は認識していた。
そして双剣を保持したままの大剣を振りかぶる事で押し切る。力も防御力も速度も、全てが向上状態にある上、既にかなり疲弊している真昼のもあり圧倒的に薫が優勢となっていた。
その勢いのまま、大剣の一振りで真昼を打ち上げた後ネクサスハリケーンを発動、彼方まで飛ばして墜落させた。

「わざわざご指名とはなぁ。なら…折角だ、遊んでやるよ」
「ここでテメェは……終わらせてやるよ、ジンガァッ!!」

神牙飛翔体になった上で、挑発するジンガ。
対し激情の叫びを上げながら薫は剣を振るう。
──本来、たとえネクサスとなろうと中途半端な状態な現状、益子薫がジンガに勝てる余地は単体では殆ど無い。
だが確かに存在していた侮りに、真昼戦での消耗、また薫自身が良く言えば果敢に、悪く言えば自らを顧みず攻め続けるスタイルを取った事もあって…現状ジンガが押される形となっていた。


812 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:01:40 Olt2heVE0
「なりふり構わねぇってか?だが…何時まで持つか、見物だなぁ…!」
「それまでに、テメェを倒すっ…きえぇぇ"ぇっ!!」
「ぐ、があぁっ…!!」

大剣と魔戒剣がぶつかり合う最中、ジンガは魔戒剣により薫の、ネクサスの大剣を落とさせる事に成功。だが臆さない様子で彼女はポーズをし、エネルギーを生成する。
本来の歴史にてジュネッスブルーがアローモードを形成したように、このネクサスは大剣をエネルギーにより形成。そのまま猿叫と共に闇混じりの光の大剣をぶつけた。
対するジンガも、自らの魔戒剣にてそれを迎え撃ちながら掌から赤い光球を何発も放つ。そしてぶつかり合い……両者ともにふっ飛ばされる。
僅かに立て直しが早かった薫が、ジンガに再びドレインタッチを見舞い体力を吸収。そのまま今度はクロスレイシュトロームを放とうとしたその時──邪魔者が現れる。
突如現れた蠢いている銀色の金属生命体が、ジンガ目掛けてタックルを仕掛けようとしたのだ。
咄嗟に回避するも、姿を変えた金属生命体…ELSガデラーザが飛翔体のジンガ目掛けてGNブラスターをぶち当てる。ふっ飛ばされていくも墜落は避けたが、既に薫との距離は離れてしまっていた。


813 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:02:15 Olt2heVE0
「NPCの癖に横入りとは空気を読めねぇ奴だな、ぁっ!!」

射出されたGNファングを切り裂きながら、魔戒剣を以てあっという間に解体してみせた上で、ひとまずとジンガは着陸を試み……地面に着いた瞬間、展開されるはクリスタル。

「…またか!だが、こいつから奪えるか試すのもいいなぁ」

目の前に現れた、追尾攻撃を仕掛けてくる少し大きめなマゼンダの戦士に対応し、追いつかれる前に何度も切り裂き、最後にベルトを奪ってしまった。
かくして、かつて激情故に妻共々ホラーへと身を堕とした男は、世界の破壊者という役割を受け入れた激情の姿へ変身出来るようになる。

「…さて、ここからだとアビドス高校か、道外達が居る病院か…テレビ局まで行って皇帝陛下に挨拶しに行ってやってもいいが…悩みどころだなぁ」

ホラーはそう、邪悪な笑みを浮かべ嗤った。

----

「…どうにか上手くいった方、かしらね」

墜落したものの変身していた為死は回避し、回復のエナジーアイテムを手に入れた事もありある程度立て直せた真昼。

(…あのままジンガの元に居れば、間違いなく彼は約束を守らず良くて私を捨て駒に、最悪その場で殺されていたかも知れなかったから。…薫ちゃんがホラーにならないかは賭けだったけれど…)

故に呪符を使った上で、方向性を操作する事でこの状況からの打開を試みた形である。
結果、とりあえずの危機は脱する事は出来た。

(…さて、貴女はどうするのかしら、薫ちゃん。憧憬を貫けなければ、待つのはあのジンガと同じ穴の狢に成り果てるだけ…また会う時どうなってるか、楽しみわね)

思考を留めつつ、真昼は歩き出した。


814 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:02:46 Olt2heVE0
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『ほんとうにその道を行くの?堕ちた方が楽になれるのに』
「……黙れよ!…可奈美はそんな事、言わねぇ…本物の可奈美が…最期まで殺さないまま進んだみてぇに…オレはオレのまま、戦って…死ぬのは全部終わってからだ」

視えた幻覚に対し、壁を殴り付けた上で…薫はジンガが消えた方向へと飛翔した。

(令呪を切ってれば、あの場で倒せたかもしれねぇのに…クソッ!!)

…今の益子薫の状態は、何時破綻しても可笑しくない有様だ。
自分の犯した罪から逃げず、決して己を赦さないという決心と、ヒーローにはなれないと悟ってなお捨てれない憧憬、ジンガの同類になり下がるのはゴメンだという反骨心のおかげでギリギリ堕ちず踏み止まれているが…何処まで続くかはわからない。
来るかもしれない終わりのその時まで、彼女が彼女のまま、有り続けれるかは…不透明だ。

----

──悪い、芳佳。オレはもう……ヒーローにはなれそうにもねぇ。たとえどれだけ力を手に入れたとしても…人でなしのオレに、なにかを守ることなんて最初っから無理だったんだよ。できることなんて、人殺しぐらいしか…ねえみてえだ。

----

一方、場所は代わりアビドス学園の目前。
マイ=ラッセルハート達一行や、藤丸立香やマシュ・キリエライトに空蝉丸と別れたディアッカ・エルスマンと小鳥遊ホシノは途中まではNPCを倒しつつ順調に進めていた。しかし現在、学園を目前として足止めを食らってしまっている。

「ディアッカ!コイツどうにか出来ない!?」
「無茶言うなよ!クソッすばしっこくなりやがって…!」
「コイツさえ倒せれば…目の前なのにっ…!」

2人が戦っている相手は銀色のダブルオーライザー、ELSに同化された個体であった。
この個体は最初はELSの状態で現れ、既にスクラップとなっているMAユークリッド共々2人を襲ったものの、凌がれた所変化して見せたという訳だ。
ちなみにユークリッドは陽電子リフレクター発生装置をディアッカが破壊し、その隙を付いたホシノがショットガンで射撃を行いシールドをぶつける事で撃破を果たしている。


815 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:03:33 Olt2heVE0
しかしトランザムを使用した上でミサイルやビームライフルを撃ちつつ、GNソードⅢを振るうダブルオーライザー相手には速度の差もあって手こずらさせられていた。
しかもここで、2機の新たなる機影が現れる。

「…おいおい嘘だろ!?核ミサイル装備のメビウスとか正気か!?」
「…核ミサイルって?」
「お前の世界にはねえんだな。…わかりやすく言うとやべー爆弾だ!撃ち落とさねえとっ…最悪学園が吹っ飛んじまうぜ!
(流石に放射能は再現されてねえと思いたいが…!アスランが見たらブチギレそうだ…)
(…先生やセリカちゃんが向かってるかも知れないのに…!)
「そんな事、させない!!」
投下されたミサイル2発の内、1発はランチャーストライクとなっているディアッカとホシノの射撃により撃ち落とせたものの、ELSダブルオーライザーの妨害もありもう1発の迎撃を出来ずに居た。

──このまま、ミサイルによりアビドス学園は崩壊してしまうのかと思われたその時……黒い流星と見紛う戦士が舞い降り、ミサイルをすれ違いざまに斬り捨て空中で爆発を起こした。

そのまま戦士は、ELSダブルオーライザー目掛けて光線を放ち、GNフィールドをぶち抜いて消し飛ばす。
呆気にとられる2人に、戦士は話しかけて来た。

「……聞きてえ事がある、お前らは殺し合いには乗ってない…でいいのか?」

「…ああ、俺もコイツも乗ってない」
「…そういう貴女は?」

姿に見合わない幼気な少女の声が聞こえてきたのに面食らいつつ、核ミサイルの危機を阻止した形になるとはいえ、ショットガンを向けながら警戒はするホシノ。ディアッカもまた、警戒を怠らない。


816 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:04:12 Olt2heVE0
「…乗ってねぇよ、オレも。
…それでだ、銀髪のやべー男を見なかったか?」
「…見てないけれど…貴女の知り合い?」
「…そうか。そいつはジンガ…殺し合いに乗って好き放題しようとしてる危険人物だ。気をつけてくれ…アイツはオレがこの手で終わらせる。
…それと、赤い男に出くわしたら…無理だとは思うが直ぐに逃げろ、二人だけで勝てる相手じゃ絶対ねぇ」
「…赤い男…まさかセミのオッサンが言ってた」
「…宇蟲王…ギラと戦ったって事でいい?」
「…多分そいつだ。だが……戦えてなんていねぇ。オレはっ……オレは、なにも……だから…少人数で出会っちまったら…戦おうなんて…思うな…11人でかかって……なのに、オレひとりだけがっ……!!」

二の句を継ごうとした戦士は倒れかけ、大剣を支えにして倒れ込むのは防いだものの、変身を解いてしまう形になる。

「……お前よりチビじゃねえか、こいつ」とついディアッカが漏らした言葉にうっさいと返しつつ、ホシノが引き付けられたのは目前の少女の雰囲気。

(…なんでだろ、マイさんと何処となく…この子が重なる気がする)

病院で出会った彼女、マイ=ラッセルハートのように…目前のこの少女もまた、言葉の節々から、態度から…もう自分には誰もいない、誰かと共に進む資格はないから、せめてそうなって欲しくないと言ってるように、そうホシノには聞こえたのだ。


817 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:04:47 Olt2heVE0
「…お、おう。俺達二人だけで出会っちまったら…そうさせてもらうぜ」
「…そうか。…じゃあな。オレはジンガを…追わねえ、と……」
「…ねぇ、貴女の名前は?」

ふらつきながら、肉体は兎も角体力面が誰がどう見ても満身創痍な状態にも関わらず、少女は向かおうとする。
対し、ホシノは彼女を咄嗟に呼び止めた。

「…薫。益子…薫だ…じゃあ……」
「…やっぱり。そんな状態で行っても、乗ってる奴等に殺されるだけだよ、薫ちゃん。ほらディアッカ、背負ってあげて」
「…分かったよ。っと…このチビの言う通りだぜ、チビ2号」
「…やめ…離せ、よ…オレなんかと…一緒に、いたら…お前らまで……」

学園から離れようとするも、そのまま倒れた為ディアッカに背負われる形で少女…薫は運ばれる。

「…いいのかよホシノ。お前ならてっきり、当人が付いてくる気が無い以上、放っておけって言いそうだと思ってたんだが」
「…色々知ってそうだったから、放り出すにしても、聞き出してからでも遅くはないかなぁ…って」
「放り出すのは規定路線かよ」

学園内に入り、意識を失った薫を寝かせてやった上で2人は会話を交わし、薫が話していた言葉についてや、起きるまで待つか片方が探索を行うかを考える事となった。
爆弾を抱え込んでしまう形となった事に、2人はまだ気付いていない。


818 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:08:32 Olt2heVE0
…ホシノが薫を放置しなかったのは、ディアッカに言った通りの理由もあるが…空蝉丸らとの関わりと、マイとの関わりもあり多少落ち着いた上で、薫自身が死んで勝つと言わんばかりの戦闘スタイルを見せたのもある。
…刺し違えてでもユメ先輩の遺体を弄んだ羂索らを倒すという気持ちはホシノにもあるが、あくまで死んでも勝つの範疇、自らを最初から考慮に入れてない有様と、そこからの満身創痍っぷりを見て頭が冷えつつあったのもその一因なのであった。
とはいえ、これがどう転ぶかはまだ分からない。
薫の中にある力の渇望は、記憶を書き換えられた事により更に強まった。力にかまけて腐ろうにも、彼女が見た力は宇蟲王の圧倒的な暴虐。
自己評価が底辺となった都合その心配は無くなったものの、力の渇望と無力感が悪い方向に向かう可能性は十二分に存在している。
そしてマーダーや危険人物が付近に複数居る以上、このアビドス学園で大乱が勃発するのは避けられないだろう。


819 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 01:09:35 Olt2heVE0
本文を投下し終えました。
タイトルや状態表等は後ほど投下させていただきます、申し訳ありません


820 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:20:45 Olt2heVE0
状態表とタイトルの投下…の前に、まずは誤字を発見した為該当箇所を変更します
>場所は代わりアビドス学園の目前。→場所は代わりアビドス高校の目前。

>学園を目前として足止めを食らってしまっている。→高校を目前として足止めを食らってしまっている。

> 撃ち落とさねえとっ…最悪学園が吹っ飛んじまうぜ!→撃ち落とさねえとっ…最悪高校が吹っ飛んじまうぜ!

> ミサイルによりアビドス学園は崩壊してしまうのかと思われたその時……→ミサイルによりアビドス高校は崩壊してしまうのかと思われたその時……

>学園から離れようとするも、→高校から離れようとするも、

>学園内に入り、→高校内に入り、

>このアビドス学園で大乱が勃発するのは避けられないだろう。→このアビドス高校で大乱が勃発するのは避けられないだろう。

修正箇所は以上です


821 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:21:18 Olt2heVE0
【エリア全体の備考】
※G-6の浄水場がない方の部分はほぼ壊滅し砂漠化状態となっています。

【エリア???/アビドス高校・病院・テレビ局のいずれか付近/9月2日午前10時15分】

【ジンガ@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)
服装:着崩した黒い服(いつもの)
装備:ジンガの魔戒剣@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
令呪:残り三画
道具:闇のパルファム@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者、メモリーディスク&専用プレイヤー&ペン@ドラえもん(午前8時45分に使用、午後2時45分まで使用不能)、ホットライン、宮藤芳佳のレジスター、ディケイドライバー&カード一式(激情態)@仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010
思考
基本:好きにやる
00:さぁてどうする…?何処に向かってもいいが…
01:やっぱりお前もいるよな?道外……柊真昼の話じゃ病院手前に居たらしいが…移動してないとも限らねぇからなぁ
02:さっきの奴(克己)がどう暴れるか少し期待
03:薫がホラーになるのを期待。光の力に覚醒しやがったが…中途半端な上にまだ堕ちる可能性はある。さぁてどうするか
04:思った以上にぶっ飛んだ連中がいるってこととは思っていたが…ラダン級ばかりじゃねぇか
05:ラダンか、せめて魔鏡が手元に欲しい所だなぁ
06:薫や柳瀬舞衣が人殺しに成り下がっちまった事や、衛藤可奈美が死体を使われている事をお仲間達に伝えてやろう
07:牙狼剣を持ってる奴を見つけたら、そいつの首ごと道外にプレゼントしてやる
08:コイツ(激情態仕様のディケイドライバー)で遊んでやるのも悪くはねぇ
09:レジスターは…どうにかしておきたいところだが
参戦時期:流牙に敗北後〜メシアに挑む前。
備考
※-GOLD STORM- 翔の作中にて、アミリの魔鏡の力による強化後に使用した能力(ワープゲートらしきものを生成し行う転移攻撃等)は魔鏡が無ければ使えないものとします。
※益子薫の記憶を覗いた事により、刀使ノ巫女世界についての知識をある程度把握しました。

【エリア???/???/9月2日午前10時15分】

【柊真昼@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、柊家への怒り(再燃)、益子薫への微かな期待
服装:普段の学生服
装備:ドゥームズドライバーバックル&オムニフォースワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー、ノ夜@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
令呪:残り二画
道具:精神に作用する呪符×10@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅(残り8枚)、ホットライン、どこだかドア@ドラえもん(午前7時に使用、午後1時まで使用不能)、クリスマスケーキに付属していたフォーク@仮面ライダーエグゼイド、ギガント@劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4(残弾数不明、1発消費)、フエルミラー@ドラえもん(午前9時55分に使用、午後3時55分まで使用不能)、ジャコーダー@仮面ライダーキバ
思考
基本:優勝して好きな人(グレン)と妹(シノア)と一緒に、普通の人間として生きれる世界を願う。
01:今はとりあえず他参加者を探してみよう。
02:令呪三画…侮れないわね。
03:薫ちゃん、あなたはその憧憬を貫けるかしら?ついでに名簿で薫ちゃんや舞衣ちゃんの近くにいる知り合いっぽい子達に会ったら、2人が人殺しになっちゃった事を伝えてみる。
04:主催者達が柊家絡みの線は薄くなったけど…今は情報が足りないわね。
05:基本皆殺しだけど、レジスターの解析やバグスターウイルスの対処が出来る人なら話は別かな。
06:こんな状況じゃなかったら、ルルーシュとは1回話してみたかったな。
07:羂索に一ノ瀬宝太郎くんにラウ・ル・クルーゼ…『ガッチャ』に何の意味があるのかしら??
08:ダメ元でも使ってみるものね。
09:ジンガには…出来れば出くわしたくないわね。
参戦時期:第一渋谷高校襲撃事件にて離反後、吸血鬼となる前の何処かから。
少なくとも漫画版7巻のInterlude〜生きる意味〜(第27話と第28話の間)よりは後。
備考
※詳細な位置は後続にお任せします。
※ソロモンによる洗脳能力は一度に2体までかつ一度解除しないと新たな洗脳は不能、ライダー以外に使用可能か現状不明、相手の精神状態次第では無効、一度使うとインターバルが必要、真昼当人は変身前でも使える事を未把握となっています。詳細なインターバルは後続にお任せします。
※令呪行使時に使用可能な巨大カラドボルグをキングオブソロモンへと変形させ行使する能力や、巨大なる終末の書の投影はどちらもサイズ及び有効範囲が落ちています。


822 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:22:12 Olt2heVE0
【エリアC-9/アビドス高校内部/9月2日午前10時15分】

【益子薫@刀使ノ巫女】
状態:疲労(大)、ダメージ(小)、精神的ダメージ(極大)、闇のパルファムの影響(中)、無力感と力への渇望、ジンガの支給品であるドリームディスクによる記憶改竄、適能者(デュナミスト)に選ばれた、気絶中、マークツヴォルフの使用回数『2』、罪から逃げず自分を決して赦さないという思い(極大)、底辺な自己評価、サバイバーズ・ギルト
服装:長船女学園の制服(血塗れ)
装備:防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS
令呪:残り三画
道具:ホットライン×2
思考
基本:この殺し合いを終わらせた上で、最期には…
00:……
01:…可奈美…芳佳…ロロ…ひよよん…ごめんな…みんな…オレなんかのせいで……
02:…今のオレに、ひよよん達と会える資格なんてねえ。
03:ジンガと、次会ったら真昼はオレの手で殺す。…オレにできることなんて、人殺しくらいみてぇだからな…。
04:ヒーローにはなれねえのに、そんな資格ねぇのに…結局オレは、ヒーローへの憧れを捨てれねえみたいだ。
05:一ノ瀬宝太郎って奴は…なるべく早めに見付けた方が良いよな。
06:…オレみたいな仲間を護れなかったクズなんて、放っておいてくれよ…お前ら(ホシノ、ディアッカ)まで…死んじまう…。
07:祢々切丸があったとして…もうオレに、刀使を名乗る資格なんざねえ。
08:オレがみんなのかわりに死んでればよかったのに…オレだけが生き延びてっ……なんで、だよぉ…!!
09:もし、オレにもっと力があれば……力があって…それで結局、護れなきゃ意味ねぇんだよ…っ!!
参戦時期:第24話「結びの巫女」にて、可奈美と姫和が未帰還な事を知り涙目で祢々切丸をぶん投げた直後から。
備考:
※支給されていたソードスキルによりドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!を習得しています。
※適能者(デュナミスト)に選ばれました、黒色基調で、血色の赤がライン等に入った配色のウルトラマンネクサスに変身可能です。制限によりサイズは等身大限定となる他、何かきっかけがあれば色が変わるかもしれません。技はアンファンスやジュネッス、ジュネッスブルーの物も使えます。
※ストライクウィッチーズ世界についてある程度把握しました。
※闇のパルファムの影響により陰我が溜まりやすくなっています。
※ジンガのドリームディスクにより記憶を改竄されました、それにより宇蟲王との戦いで自分ひとりだけが生き延びてしまったと勘違いしています。
※マークツヴォルフのSDPを午前10時に使用しました、次に使用可能になるのは午後4時となります。


【ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEED】
状態:正常、ダメージ(小)、疲労(小)
服装:錬金アカデミーの制服(赤)@仮面ライダーガッチャード
装備:ストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED
令呪:残り三画
道具:ホットライン、私服、錬金アカデミーの制服(青、黒)@仮面ライダーガッチャード、簡易救急キット@オリジナル
思考
基本:あの脳味噌女をとっちめる。
01:イザークに、死んだはずのニコルまで!
  なんでキラとアスランは名前が二つも?
02:クルーゼ隊長、マジにあの脳味噌女と組んでんのか……しかも核ミサイル搭載メビウスをNPCにとか、いよいよ正気を疑いたくなってくるな…。
03:少しはこのチビともうまくやんねえとな…とか思ってたら、チビがもうひとり増えやがった。とりあえず起きるまで待つか、どっちかがチビ2号を見てどっちかが校内を探すか…。
04:学園都市の癖に物騒すぎだろキヴォトス。
05:人理再編ねぇ。戦争とどっちがクソなんだか。
06:ルルーシュの野郎、準備万端じゃねえか
07:ムウのオッサンとラスティの分も暴れてやるぜ
08:装備も無しにヤバい手合いはいるみたいだな。気を付けねえと。
09:ホシノのやつ。なんか落ち着いたか?
10:あのチビ2号(薫)、思い詰めすぎて錯乱してるようにも見えたが…大丈夫か?
参戦時期:少なくとも第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦開始後、核ミサイル搭載型メビウスの存在を知ってから。
備考
※ストライクは起動時にパックなし、エール、ソード、ランチャーを選択できます。
※マシュ、立香、ホシノと情報交換しました。
※ストライクのビームサーベルを一本喪失しました。
※マイ、小夜、左虎、シェフィ組の事情を把握しています
 マイがルルーシュのギアスに近い能力を持っていると考えています


823 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:22:37 Olt2heVE0
【小鳥遊ホシノ@ブルーアーカイブ】
状態:健康、ユメ先輩の死体を利用されている現状への怒り(極大)、羂索、茅場、クルーゼへの殺意(極大)、一応今は冷静
服装:臨戦
装備:アタッシュショットガン@仮面ライダーアウトサイダーズ
   折り畳み式の盾@ブルーアーカイブ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン(画面にヒビ有)、簡易救急キット@オリジナル
思考
基本:羂索たちを殺す
01:羂索たちに関する情報を集める。
02:こいつと、ディアッカと一緒に、カオルちゃんの事どうするかとか探索をどうするかとかを決める。
…多分セリカちゃんや先生も、本物ならユメ先輩も来るだろうし
03:最強のNPCモンスタードゴルド……もしセリカちゃんや先生に手を出すなら空蝉丸さんより先に殺す。
最悪、中身ごとになっても。
04:クルーゼの部下だったらしいけど、そりゃあキツイか
05:マイ=ラッセルハート。どこか胡散臭いし信用はしないけど。悪いだけの人じゃないのかも
06:先輩と後輩をばらけさせるわけにはいかないもんね。
07:…マイさんも、カオルちゃんも…大切なヒトを、喪ったのかな。
08:…カオルちゃんの有様見ると、もしかしてディアッカやリツカくん、マシュちゃんや空蝉丸さんには最初の私も…ああ云う風に見えてたのかも…。あそこまで…酷くはなかったハズだけど。
09:…そういえば、たとえニセモノでも、先生達が来るかもしれないこの高校をカオルちゃんは守ってくれたのに…お礼とか言えてないなって。
参戦時期:対策委員会編第三章にて空崎ヒナと会敵するより前
備考
※ディアッカ、マシュ、立香、空蝉丸と情報交換しました。
 しかし本人がいっぱいいっぱいなのでどの程度理解できてるか分かりません。

【NPC紹介】
・GN-XⅢ@機動戦士ガンダム00
2ndシーズンから登場する、GN-Xの後継機にして連邦軍及びアロウズの主力量産機。この個体やルルーシュの元に居た個体は連邦軍仕様のライトブルーカラーである。
アロウズ所属の機体とは異なり擬似太陽炉のリミッターがかかったままな為出力はあちらより落ちるが、限界稼働時間はこちらの方が勝っている。
GN-Xやその性能向上型であるGN-XⅡと比べると、量産を前提としている為基礎性能は若干落ちてるがGN粒子絡みの機器性能は向上しているのもあり総合性能は引けを取らない。

・GN-XⅣ@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
GN-XⅢの後継にして作中の時代においての連邦軍の主力量産機。世論を意識する必要が無くなった為外見がガンダム寄りになり、ガンダムタイプとも呼称されるようになっている。
この個体は指揮官仕様ではない緑色の一般機かつ、トランザムがオミットされておらずコアファイターが無いタイプの物。
性能はケルディムガンダムら第3.5世代のガンダム達を凌駕し、第5世代に当るガンダムサバーニャらと同等かそれ以上のスペックを誇る。
また連邦軍の量産機では初めてトランザム機能を搭載しており、擬似太陽炉を臨界突破させれば自爆も可能。


824 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:23:17 Olt2heVE0
・NダガーN@機動戦士ガンダムSEED DESTINY MSV
連合軍の非正規戦等で主に運用されたMS。ユニウスセブン条約で禁止されているNJCによる核エンジンの動力化と、ミラージュコロイドステルスを並立させている存在自体がアンタッチャブルな機体。
ダガー系列のMSであり、ダガーを素体にブリッツガンダムのデータを含めた形である為か、顔は諸にブリッツのそれで見た目はガンダムのそれである。
ちなみにほぼ常時ステルスが発動していてレーダーによる感知はおろか目視すら出来ず位置の特定がまず不可能なこの機体を、シン・アスカは直感で察知し一撃で撃ち抜くという芸当をやってのけていたりする。

・ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダーサモンライド!
・ワーム(サナギ体)@仮面ライダーサモンライド!
・仮面ライダーダークキバ@仮面ライダーサモンライド!
・仮面ライダーサガ@仮面ライダーサモンライド!
・仮面ライダーディケイド(激情態)@仮面ライダーサモンライド!
全員サモンライドの連中。サナギ体ワームとサガは雑魚敵として複数同時に出現し、他3体は中ボスとして出てくる。
中ボスな為通常の敵より少し大きくなっている他、攻撃パターンが複数存在している。

・素体ホラー@牙狼<GARO>シリーズ
魔獣であるホラーが人間に憑依する前の姿。基本的に魔界に住んでいるホラーはこの形態であり、憑依した人間が抱いていた邪心によって能力や姿が変わってくる。
作中では雑兵として登場する事が多く戦闘力自体は魔戒騎士には遠く及ばないが、多数で現れると鎧の装着時間制限もあり驚異となり得る。
憑依されるとその時点で肉体は滅び人間としては死亡する。
憑依を果たしたホラーには元の人間としての記憶こそあれど、精神が歪んでバケモノへ成り果てている事が殆どだが、猪狩重蔵のように人間としての魂を保ったままホラーの自我を凌駕していた者も居る。
この殺し合いでは、参加者の精神状態や耐性次第では憑依を跳ね除けることも可能となっている。
またホラーの返り血を浴びた人間は寿命が100日となり極上の餌としてホラーに狙われるようになる「血塗られし者」になり、条件を満たさねば苦痛の果てに死ぬ運命となるが、浴びた場合この殺し合いでどうなるかは後続にお任せします。


825 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:23:55 Olt2heVE0
・中型ELS@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
地球外から襲来した金属生命体の中型サイズ…だが本来よりサイズは縮小されており15m程となっている。
なおこの殺し合いではELSの特徴は以下の通りとなる。

・主催の手により参加者を優先して同化しにかかるようにされている。
・参加者の遺体やNPCの遺体・残骸等を同化した状態で出現したELSには接触による同化能力は発動不能。
・参加者の遺体を同化出来るのは5体まで、それ以降は遺体を見つけても同化しに行かないようになっている。生きた状態で同化される場合はこの制限の対象外となる。
・本編や派生作品で同化した存在(後記のELSガデラーザやELSダブルオーライザー等)へと変化する個体と、変化せずそのまま同化しにかかる個体に分けられるようにされた。
変化個体とそうでない個体は双方とも参加者を見つけるとまず同化しにかかるが、変化個体は避けられるか防がれると変化していくようになっている。
・遺体を同化した場合、同化元の戦闘力や能力を再現するようになっている。ただし自我は一切再現されない。
・接触から同化に至るまでの速度が本来よりは低下している。実弾兵器は基本通じないままなものの、接射や徒手空拳、実体剣等は同化される前にアクションを行い離れれればダメージを与えつつ同化を回避可能。
・脳粒子波に引き寄せられる性質は未再現。

なお学習能力による他個体が同化した存在への変化が可能か否か、生物との同化時活動に必要な容積が原作通り成人女性の半分か、読心や記憶への干渉等を行った場合多量の情報量が押し寄せるか等については後続にお任せします。

・ELSガデラーザ@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
ELSが同化したMAガデラーザを再現した物。
サイズは本来より大幅に縮小され20m程になっている他相応に能力も落ちているものの、遠隔攻撃手段の豊富さ故に余程強い相手でもない限りは参加者の脅威になりうる。
映画本編では姿は映らないものの最終防衛ラインに出現したという設定がある他、漫画版では描かれまたゲームであるロストヒーローズ2では敵として登場する。

・ELSダブルオーライザー(粒子貯蔵タンク型)@劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
ELSが同化したMSダブルオーライザーの粒子貯蔵タンク型を再現した物。
この殺し合いではトランザムは可能だが量子化やライザーソード、トランザムバーストは不可能となっている。
なお映画本編では登場しないが、漫画版ではガデラーザ共々登場する。

・ユークリッド@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
地球連合軍が開発した、ザムザザーゲルズゲーに続く制式量産用の大型MA。
巨大化したメビウスと行った様子の外見であり、実際メビウスの設計思想が取り入れられている。
本来なら50m以上のサイズだが10m程に縮小されている。機動力はサイズに見合わず高い他、陽電子リフレクターも搭載しており火力も高く、出番の少なさ地味さの割に性能自体は高い。

・メビウス(核ミサイル搭載型)@機動戦士ガンダムSEED
地球連合軍のMAに、ニュートロンジャマーキャンセラーにより使用可能となったMk5核弾頭ミサイルをリニアガンの代わりに装備させた物。血のバレンタインの発端となりニュートロンジャマーが地球に埋め込まれる羽目になった原因の機体でもある。
核ミサイルは主催側により威力が大幅に制限で弱体化している他、放射能はオミットされており、かつ1体につき1発しか核ミサイルは撃てない仕様。
また、発射前に倒せれば低確率で核弾頭ミサイルをドロップするようになっている。


826 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:25:13 Olt2heVE0
【支給品紹介】
・メモリーディスク&専用プレイヤー&ペン@ドラえもん
ジンガに支給。ドラえもんのひみつ道具の内の一つ。
ディスクを対象の頭に放り投げる事で記憶を吸い取り、プレイヤーによって再生する事で、対象の記憶を映像として閲覧する事が可能。
作中では1日分の記憶を吸い取っている。ディスクを再び頭に投げれば吸った記憶を対象に戻せる。
意識が無い頃の行動、無意識の内に取った物はぼやけるがよくディスクを磨いておけば映す事が可能。
ペンは吸い取った記憶の中に消したい物がある場合、ディスクの表面の一部を塗り潰す事で消してしまう事が可能。
また、抜き取ったディスクを自分の頭に乗せれば考えた事を書き込んでしまう事も可能。これを用いれば偽りの記憶を植え付けられる。

この殺し合いでは、ペンによる記憶の抹消や記憶の植え付けはどちらかを使うと令呪を切らない限り使用から6時間は使用不能となり、ディスクを挿入出来る対象は意識の無い相手に限られる他、記憶喪失や偽りの記憶植え付けは何かしらきっかけがあれば回復もあり得るようになっています。
また記憶を植え付け改変可能な出来事は一度につき1つまでで、かつ弄った記憶が反映されるには目覚めてから若干のタイムラグがあります。

【ドロップアイテム紹介】
・ジャコーダー@仮面ライダーキバ
柊真昼が入手。リコーダーのような形をした仮面ライダーサガのメインウェポンであり変身に使用するアイテムの一つでもある。
単体では変身不能な代わりに武器としては使用可能。
剣形態であるジャコーダーロッドと鞭形態であるジャコーダービュートを使い分けれる他、柄の部分はコブラハンマーとして打撃が可能。

・ディケイドライバー&カード一式(激情態)@仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010
ジンガが入手。激情態の仮面ライダーディケイドに変身可能なベルトと使用可能なカードが一式揃っている。
ただしディケイド当人のカード以外は現状使用不能であり、既にエンヴィーに支給されてるネオディケイドライバー付属のカードのように戦闘によりカードが解禁されるようになっていく。
ファイナルフォームライド等他の制限については後続にお任せします。

・フエルミラー@ドラえもん
柊真昼が入手。ドラえもんのひみつ道具の内の一つ。
小型の鏡台型であり、手を鏡へと入れると、鏡へ映した物のコピーを取り出せる道具…だがこの殺し合いではコピー出来るのは消耗品の類のみ、かつ一度行うと6時間使用不能となるようにされている。
意志を持つ機械や生物のコピーも不可能。


827 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/17(月) 03:30:14 Olt2heVE0
投下は以下で終了します。
タイトルは、>>786から>>806の薫が目を覚まし突っ込むまでが
「plazma/ヘミソフィア─崖っぷちに立たされた時苦難がオレの腕を掴み─」
>>806の薫視点から最後までが
「plazma/ヘミソフィア─目の前をぶち抜くプラズマ─」
となります。
申し訳ありませんでした。


828 : ◆TruULbUYro :2025/03/18(火) 09:23:59 kpmDjy9U0
申し訳ございません
現予約を破棄させていただきます


829 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/18(火) 10:03:29 QLjMeN3E0
グラファイト、バルバトス・ゲーティア、遊城十代で予約します


830 : ◆mAd.sCEKiM :2025/03/19(水) 00:14:03 ???0
ノワルで予約します


831 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/21(金) 22:14:46 Z4oUrZHk0
投下します


832 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/21(金) 22:16:05 Z4oUrZHk0
グレングラファイトバグスターVSバルバトス・ゲーティア。
流石に単騎で国土を蹂躙できる四凶同士の対決には劣るが、ルルーシュの言う所の『特記戦力』同士の対決である。
方やレベルの概念が法則として存在するゲームキャラクターでありながらその上限を突破した深紅の龍戦士。
方や身勝手極まる憎悪と憤怒から蘇り英雄という英雄を狩る卑劣漢。
闘いに対するスタンスは真逆だがどちらも最優と評しても過言ではない戦士である。
遂に一時間が経とうとしているこの戦闘の最期は壮絶なものになるだろうと、オーディエンスがいたなら疑わない好カード。
だがその幕切れはあまりにもあっさりと訪れた。

「ザコが邪魔をするなぁ!」

互いの技を弾き、距離が出来たタイミングでNPCモンスターが乱入して来たのだ。
当然バルバトスは顔の前に飛んで来た蝿を追っ払う様に黄金喰いで横凪に斬り裂いて撃破する。
そして他のNPCモンスターでもそうなる様に一定確率でのアイテムドロップが起こった。
ドロップしたのはスペルカード、離脱(リープ)。
気にも止めずにバルバトスが踏みつけたそのカードの効果は対象を島の外まで飛ばすこと。
流石にこのバトルロワイヤルではいきなり場外に吹き飛ばされることはないが、それでも会場内にランダムで飛ばされてしまう。
今回の場合、邪魔者の置き土産を拾う気も起きなかったのか気付いていなかったのか定かではないが、カードを踏んづけたバルバトスが敵意を抱いていた相手、グラファイトが対象となる。

「なにぃ!?」

不意に消えた獲物に思考が止まるが、それも一瞬のこと。
グラファイトに何か絡め手を使う様子がなかったことから自分がNPCモンスターを倒したこと、否、自分が倒したNPCモンスターが何かしたせいであると結論づけただでさえ戦闘の余波でめちゃくちゃになったイミテーションの街に黄金喰いを振り下ろす。

「ふざけるなぁあああーーーっ!!!」

ただ1人残された誇りなき戦士の絶叫が響いた。



【エリアF-3/9月2日午前7時】
【バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニー2】
状態:疲労(小)
服装:いつもの
装備:黄金喰い(ゴールデンイーター)@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:優勝して英雄になる(英雄になるのはついでで戦いたいだけ)
00:あの男(家康)と決着をつける。
01:次こそあいつ(グラファイト)を叩き潰す。
02:こんなところで水入りとはっ!
参戦時期:死亡(二回目)後
備考
※黄金喰いに黄金大両断のソードスキルが内包されています。


833 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/21(金) 22:16:39 Z4oUrZHk0
「何が起こった……」

罠や不意打ちを警戒してしばらく臨戦態勢を解かなかったグラファイトだが、どうにもこの状況が偶発的な事故らしいことを察すると人間態に戻る。

「まさか一時間近く戦って決着が着かんとは……」

渋面で搾り出す様に呟くグラファイト。
彼にとって戦いとは、敵であることは存在意義其の物。
敗けてもそれがプレイヤーに対する敵キャラを全う出来た末なら後悔はないが、この様な不完全燃焼は誇りなき戦士が相手だったとは言えあまりに失礼であると言わざるを得ない。

「しかし戻ろうにも遠いな」

もといたF-3からH-11とかなりの距離を離されてしまった。
真反対と言っても良い位置関係だ。
ただ戦うだけなら付近のランドマークを巡ったほうが高確率で会敵出来るだろう。

(何にせよ動かなければ始まらないか)

そう思い移動しようとした時だった。

「やっと見つけた!おーい、そこの癖毛の人!」

赤い制服を着た栗色の髪の青年が話しかけて来た。
反射的にバグヴァイザーを向けると青年、遊城十代は慌てて両手を上げた。

「ちょっと待ってくれ!
俺は殺し合う為に話しかけたんじゃないんだ!
どうしてもお前に頼みたいことがあって……」

「頼みたい事?」

確かに戦意はない。
だがこうして駆け寄って来られている辺り怪我をしているようではない。
顔色も良く病気の身体で呼び出された訳でも、毒に侵されている訳でもなさそうである。

「頼む!ちょっとだけでいいからお前のホットラインを見せてくれ!」

「なんだと?」

ホットライン。
それは羂索らゲームマスターたちからプレイヤー全員に支給されたはずのアイテム。
地図、名簿、エトセトラ……プレイヤーにとって必要不可欠な情報を受け取れることのできる電子端末だ。
態々他人の物を見る必要などないはずだ。

「……まさかたった3時間で失くしたのか?」

「失くしたというか失くなったというか……兎に角他に知り合いが呼ばれてるかすら分かんない状態なんだ!
お礼もするから頼む!」

「……ひとまず移動するぞ」

グラファイトはゲーム、ドラゴナイトハンターZの敵キャラにして人類に有害なウイルスである。
遍く人類は敵であるし、目の前の青年も例外ではない。
だが彼は例え己の身が滅びる敗北であろうとそれが戦いの果ての結果であるならば悔いなく受け入れ、例え敗れて命の危機に瀕する自分を助ける為だったとしても神聖な戦いに泥を塗る行為には怒る誇り高き戦士である。
自分でスキップしたわけでもないのにチュートリアルを終えていない者を斬る等という恥知らずな真似は出来なかった。
グラファイトはそこにあった喫茶店に入った。
ショーケースの中に並んだ色とりどりのケーキの中からチーズタルトの上にたっぷりのクリームの乗った物を選び、席に着く。


834 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/21(金) 22:17:33 Z4oUrZHk0
「どうした?お前も取らないのか?」

「いやそれ、普通に泥棒なんじゃ……」

「ステージ内のアイテムをどう使おうとプレイヤーの自由だろう?」

そう言ってグラファイトはフォークでケーキを切り分けて口に運ぶ。
ねっとりしたコクのあるチーズと、サクサクの生地、そしてウィスキーのよく聞いた濃厚なクリームが様々な触感に品のある香り、そして腹にたまる確かな満足感をくれる中々の一品だ。

(すげー美味そうに食うな)

これは十代のあずかり知らぬことだがバグスター怪人にはいくつか種類があり、グラファイトはその中でも人間態を持つ完全なバグスター。
感染した人間の存在を乗っ取り一度撃破されても特殊な状況下で倒さなければ復活可能な彼らは乗っ取った人間の記憶(セーブデータ)とでも呼ぶべき物を有しており、どうやらグラファイトはその影響が食の趣向に反映されているようなのだ。

「それで、お前はこのゲームが始まってからどう過ごせばまともなチュートリアルも済ませられないままなんて事態になったんだ?」

十代は真人の接触に始まる今までのいきさつをあらかた話した。

「なるほど……アイテムの解説すら読む暇もないエンカウントだった訳か」

「そうなんだよ。
で、まともに強力出来そうなやつも最初に羂索と話してたガッチャードと堀北ぐらいしか分かんなかったからこのステッキで仮面ライダーへの変身アイテムのある方を調べながら進んでたらグラファイトに会ったんだ」

「確かにこれも仮面ライダーへの変身アイテムではあるな」

一度グラファイトが撃破された後、檀黎斗は人として死を迎えるまでもっぱらこのガシャコンバグヴァイザーとバグスターバックル、そしてデンジャラスゾンビガシャットを使って変身していたので仮面ライダーの変身アイテム『でも』あると言った方が正確だろう。

「ホットラインなら丁度一機余っている。
欲しければくれてやる」

そう言ってグラファイトはリュックの中から煤汚れの酷いもう一つのリュックを取り出して最初の二時間で撃破した八神に支給されたホットラインを手渡す。

「マジか!助か……いや待て。お前、これどうやって手に入れたんだ?」

「武器ももたない者を追い立てる神聖な戦いに相応しくない下衆を倒して手に入れた」

思い出すだけ忌々しいと言う様にグラファイトはケーキを大きめに切って口に運ぶ。
その様子に十代は一瞬何とも言えない表情を浮かべたが、すぐに立ち上がり言った。

「確かにデュエルはルールを守って楽しくが一番だ!
けどいくら礼儀やルールに反することをしたからって殺すなんて!」

「これはそうゆうゲームで、俺はもとより敵キャラだ」

そう言ってグラファイトは立ち上がるとバグヴァイザーのボタンを押し、待機音を待ってグリップを装着する。

「培養!」

<Infection!
レッツゲーム!バッドゲーム!デッドゲーム!ワッチャネーム!?
THE BUGSTER!>

グレングラファイトバグスター(レベルオーバー)に変身を遂げた。

「モンスターになった!?」

「俺はドラゴナイトハンターZの龍戦士グラファイト。
敵キャラとして生み出され、敵キャラとして生き、敵キャラを全うする者。
遊城十代、ホットラインの礼の件だが……俺は全力のお前との勝負を所望する!」

「俺とデュエルしたいってことか?」

「ああ。俺にチュートリアルすら終えていない者を斬る趣味はない。
それに今のお前の装備はお前本来の全力を出し得る物ではないのだろう?
だからこの次だ。
その時こそ、神聖にして尋常な決闘をしてもらいたい!」

決して褒められた者ではないだろう。
覇王十代ほど極端ではないが、決して受け入れられる考え方ではなく、善か悪かで言えば悪なのだろう。
だが目の前の深紅の魔人は悪なりにまっすぐな信念を持ったデュエリストなのだ。
そう気付いてしまえば十代の返事は一つしかない。

「ガッチャ!その時は楽しいデュエルをしようぜ!」

「それでいい」

どこか満足げに呟くとグラファイトは店の外に出ると持ち前の跳躍力で屋根から屋根を飛び移り去って行った。


835 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/21(金) 22:21:27 Z4oUrZHk0
【エリアH-11/どこかの喫茶店/9月2日午前7時】

【遊城十代@遊戯王GX】
状態:健康
服装:オシリスレッドの制服
装備:黄金卿エルドリッチ@遊戯王OCG
たずね人ステッキ@ドラえもん、八神のホットライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1(確認済み)
思考
基本:あいつ(真人)も羂索も倒す。
00:継ぎ接ぎの男(真人)を何とかする手段を探す。
01:ルルーシュとはできれば話し合いたいが、
   あの能力はさすがに俺とユベルが融合していても無効にできないよな?
02:グラファイト……ヤバい奴には違いないけど、
お前も決闘者だって言うなら、そのデュエル、受けたぜ!
03:地図や名簿を確認する。
参戦時期:超融合!時空を超えた絆の本編終了後
備考
※ラウ・ル・クルーゼの放送を聞けていません



【エリアH-11/どこかの喫茶店付近/9月2日午前7時】

【グラファイト@仮面ライダーエグゼイド】
状態:正常、アリサと十代への期待(中)、伏黒甚爾への期待(大)
怪人態(レベルオーバー)、バルバトスへの怒り(特大)、腹八分目
服装:いつもの服装(人間態時)
装備:ガシャコンバグヴァイザー@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
   八神のリュック(ランダム×0〜2)
思考
基本:敵キャラとして戦う。
00:神聖なる戦場に立つ資格のない者たちは排除する。
01:この俺に敵キャラを全うさせてくれる戦士を探す。
02:女(アリサ)、お前の眼は戦士の眼だ。
   次に会う時は敵として立ちはだかってくれること期待する。
03:伏黒、そして十代とは次会う時に決着をつける。
04:奴(バルバトス)は今度会ったら必ず倒す。
参戦時期:ゲムデウスウイルスに適合した後
備考
※リュックの中に別のリュックを収納することも可能なようです。



【ドロップアイテム解説】
・スペルカード『離脱』
…バルバトス・ゲーティアが使用、、というか偶発的に発動させた。
グリードアイランドに存在するスペルカードの一種で、能力は対象プレイヤー1名を島の外へ飛ばすという物。
当ロワでは対象者をランダムで会場内のどこかに飛ばすという全く関係ない能力に変えられてしまっている。
折角呼びつけたのに家に帰してしまっては意味がないと言われればそれまでなのだがほかにもっとなにかなかったのだろうか?


836 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/21(金) 22:21:50 Z4oUrZHk0
投下終了です。
タイトルは『再戦の誓い』です


837 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:39:18 mut33abI0
ゲリラで投下します


838 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:39:57 mut33abI0
こつん、こつんと高い靴音だけが響く廊下をロロ・ランペルージは歩いていた。
もう随分と歩いたはずだが、一向に出口は見えない。

(あれ?そもそも僕はどうしてこんなところに居るんだっけ?)

そう疑問には思うのだが、自分一人が通れる細い廊下は一切分かれ道が見えず、自分の平衡感覚を信じるならば廊下が円形に繋がっている訳でもなさそうだ。
故に本当に仕方なく足が棒になっても歩いて、歩いて、歩いて進んでいく。

(……まだ出口じゃないのか)

無限に見えた奥行きが見え、ドアか何かと期待して進むと見えて来たのは左向きの曲がり角だった。
行き止まりよりはマシだがまだ進むのかと内心うんざりしながら何かの液体が水溜りをつくっている方に曲がる。

「え?」

曲がった先にあったのは最悪の、血液を流し赤黒いシミをつくる死屍累々の光景であった。
倒れている死体は三体。
どの死体も見覚えがあった。
否、見違えるはずが無かった。
一番手前の車いすから放り出されたままの姿勢で物言わぬ彼女は何度も妬み憎んだ長い癖毛に華奢な少女で、その奥の2人はそれぞれ兄が自分にしてくれたように接した刀使と言葉を交わすことすらせずに殺してしまった死神代行なのだから。

「なんでナナリーまでここに!?
それに、なんで沙耶香まで死んでるんだ!?
僕の殺した一護だって……あ」

なぜ今まで気付かなかったのだろう?
一護の亡骸の側には血涙を流し憎悪に顔を歪ませる大荒魂がいる。
その身に余りある憎悪と殺意に後ずさるが、何故か背中が柔らかい壁に触れた。
振り向くといつの間にか戻る道がなくなっている。
どうにか壁をどかせないかとあたふたしている内に荒魂、タギツヒメは大切な人の血で汚れたままの姿で迫って来る。

「嘘だろ……ま、待て!待ってくれタギツヒメ!」

問答無用と言う代わりに剣を抜くタギツヒメ。
こうも狭くてはロロのギアスも意味を成さない。
それに、仮に上手くその横を抜けられたとしてすぐさま迅移で追いつかれ背後からバッサリ斬られるのがオチだろう。

(どうにか、どうにかしてこの場を……)

「ロロ」

「兄さん?」

姿は見えないが、兄の声が聞こえてきた。
だが全く安心はできない。
何故ならその声色には明らかな怒りの感情が滲んでいるのだから。

「お前なんかが……お前なんかがナナリーの代わりになるものか!この偽物め!」

「違う!違うんだ兄さん!僕は!僕は兄さんの役に立ちたくて!」

あの日と、かつて死を迎えたあの日と全く同じ侮蔑の言葉にどこにいるかもわからぬ兄に叫ぶ。
だが聞き入れられることはなかった。
あの日と全く同じ言葉が繰り返される。

「2度と目の前に姿を見せるな!出ていけーっ!」

「やだ……いやだぁあああああ!待って!待ってくれ兄さん!」


839 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:40:22 mut33abI0
布団を蹴り上げ飛び起きた。
好きではないベッドで眠っていた感覚に嫌な感触を拭えないまま部屋を見渡すと、最初に沙耶香と共に入った家とはまた違った家らしく、見覚えのない調度品とあまり整頓されているとは言い難い雑におかれた衣類やリュックが目に付く。
一般的なブリタニア人の大学生の私室、と言った感じだ。
起き出したロロはどうにか呼吸を整えると枕元に置かれていた荷物を取ると部屋の外に出た。
廊下も覚えがなく、どうやら戦闘中に気を失いここまで連れてこられたらしい。

(……ようやく頭が冷静になってきた。
確か、多分洗脳系の異能力にやられた沙耶香が急に裏切って、僕は気を失った)

一応警戒しながら下の階に降りると、沙耶香とは違う白い髪の異形の少女が座っていた。

「起きたか、ロロ」

「ッ……タギツヒメ、沙耶香は?」

一瞬あの悪夢と一護を暗殺した事実を思い出し固まってしまったが、自分が眠っている間に殺されていない辺りクラスカードの説明書を見られた訳ではないと判断したロロはなるべく変わらない調子で続けた。

「分からん。
あの継ぎ接ぎの男と共に飛び去ったが……」

(最悪、消されてるか)

あの少し困った様な顔付きの大人しい少女の顔を思い出し、顔を顰める。
大切な親友になれたかもしれない衛藤可奈美を殺された挙句にその死体を使役され、『姉』になれたかもしれない柳瀬舞衣との再会も叶わぬまま弄ばれて殺されているかもしれない。
あの継ぎ接ぎの性格の悪さを考えると夢で見たあの血濡れの姿より酷い殺され方をされている可能性すらある。

(何だそれ……あんまりにあんまりじゃないか!)

かつてのロロならルルーシュ相手以外にこんな事は考えなかったかもしれない。
考えるだけの余裕がなかったとも言える。
たが、他人にも大切な物があると知ってしまったことにより今までになかった心の機微が生まれているのだ。

「あの戦闘からどのくらい経ってる?」

「もう間も無く放送だ。
冷たく聞こえるかもしれないが探すのは……」

と、タギツヒメが言いかけた所で汽笛の音が響いた。
ロロは身をかがめるとホットラインを取り出して地図アプリを開く。
確認するが駅や線路の様な目立つ設備を用意しているなら地図に描かれていない。

(エリア11の田舎にあるって言う路面電車ってやつじゃないなら今の音は間違いなく支給品かNPCモンスターってことになる)

一応タギツヒメの方を見ると、同じように屈んでいた彼女はそんな物を見た覚えはないと言う代わりに首を横に振った。
ロロはフードパーカーのポケットから起動鍵を取り出し、零陽炎を装着して駆け出す。
タギツヒメも刀を両手につづいて外に飛び出す。
そこに来ていたのは金色のXの意匠が目を引く鋼鉄の機関車だった。


840 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:41:01 mut33abI0
「テンライナー!」

「機関車が喋ってる……」

「ということはNPCか?」

「いや違う。誰か乗ってる!」

既にファクトスピアで探索をかけていたロロは中にいる3人に気付いていた。
場所は機関室ではなく客室車両の様で、三人が降りて来るだろうドアを睨む。
警戒の瞳は降りて来た者たちの中に見知った姿を見つけたことで驚きに塗り替わった。

「沙耶香!?」

「零陽炎……ロロ!それにタギツヒメ!」

「そこで止まれ!」

ロロは腕部グレネードランチャーを構え警告する。
肉体を変形させるのがあの継ぎ接ぎの能力なら、目の前の沙耶香が本物である保証も、仮に沙耶香が本物であったとしても、残る二人の誰かが継ぎ接ぎ本人や奴の仕込んだ傀儡の擬態でもおかしくはないからだ。

「あ……」

沙耶香は一瞬ショックを受けた様な顔をしたが、すぐに帯刀していた妙法村正をロロの方に放り投げ、両手を挙げた。
共に降りて来たキャルと花村陽介もテンライナーをケミーカードに戻すと同じように両手を挙げた。
ロロとタギツヒメを見つめる沙耶香の眼はまっすぐで、敵意はない。

「沙耶香……まさか本当に継ぎ接ぎの洗脳が解けたのかい?」

「うん。簡単には信じられないかもだけど」

「……いや、無事でなによりだよ。
君たちが助けてくれたのかい?」

ロロは零陽炎こそ解除しないが武器は下げた。
流石に信じなければ文字通り話にならない。

「いや、俺らはほぼ見てただけって言うか……」

「やったのはほぼイチローよ」

(イチロー?そんな名前名簿になかったと思うけど、愛称かな?
いや、そんな事よりも……)

「色々と話を聞かせて欲しいんだけど、構わないかい?」

「それはいいんだけど、先にこっちの質問に答えてくれる?」

そう言ってキャルは沙耶香にクラスカードを取り出すように促し、沙耶香もためらいなくスカートのポケットからブツを取り出す。

(あのカードは!)

ロロは今更ながら先の戦いのどさくさで真人に一番奪われてはならない支給品を奪われていた事に気付いた。
触れるだけで勝ちを決められる真人の手元に気配遮断が可能になるアサシンのクラスカードが残らなかったのは不幸中の幸いであるが、3人の反応から察するにあのカードがただのカードではないことは流石に知られているだろう。

(マズイ!
説明書の内容が本当なら使える英雄の力は歴代の『山の翁』の中からランダムだけど気配遮断や暗殺技能は一律使えるはずだ!
もし真人か操られていた間の沙耶香が使ってそれを知られていた場合……)

ロロはKMFがパワードスーツ化していることによって顔を隠せている事実に感謝した。
でなければ焦りに焦った今の顔を全員に見られ、疑惑が確信に変わっていただろう。

「あんたはどうしてそのゴーレムの鎧だけじゃなくてこのカードも支給されてるのに黙ってたわけ?
態々あのケンジャク共が起動鍵と一緒に支給してるんだからただのぺら紙一枚だなんてことはないわよね?」

「ロロ、どうゆうことだ?」

背後にいるタギツヒメの声と視線が鋭くなる。
ただでさえ一護の件で下手にブラックを踏み抜く訳には行かない彼女相手にも器用に嘘をつきとおす必要も出てきてしまった。


841 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:41:34 mut33abI0
(どうする?
どうすればいい?
この人数相手に制限下にある今ギアスは使えない……と言うか使ったが最後僕への疑惑が確信に変わって切り抜けられてもこの先ずっとお尋ね者だ!
考えろ!こうゆう時兄さんなら、兄さんなら……)

「イザークはルル―シュみたいな洗脳の力で私がああなったみたいに急に寝返られることを警戒したからって言ってたけどどうなの?」

沙耶香の言葉は正にロロにとって天啓であった。
グルグルと袋小路を堂々巡りするばかりだった思考に一本の光の筋が見えた様にすら感じる。

「ああ、そうだよ沙耶香。
兄さんの能力……僕らがギアスや王の力と呼んでいる異能力はすごいんだ。
1人に対し1回だけしか使えないとはいえ、どんな命令も最終的には実行させることができる。
無敵ではないかもしれないけど、決まれば必殺にして絶対の能力だよ」

ロロはそのわずかな光明に向かって少しずつ思考を肉付けしながら進んでいく。

「兄さんは実際敵に秘密を喋らせる目的で使った事もあるって言っていた。
そんな兄さんが殺し合いの場に呼ばれている以上似たような能力やジェレミア卿のギアスキャンセラーみたいな異能力破りもあるんじゃないかと思って、言い出せなかったんだ」

そう言って肩を落とすロロを少し気の毒に思いながらも引っ掛かったことを無視できず陽介が尋ねる。

「お前の兄貴のことは分かったけどさ。
だとしてもバレたらバレたで信用されなくなるとか思わなかったのかよ?」

ロロは内心陽介に舌打ちしながらも言葉を紡ぎ続ける。
それしかこの状況を切り抜ける術はない。

「……そんなの目じゃないぐらいの秘密を僕が常に抱えているとしたら?」

「秘密?」

「どうゆう意味だ?」

「沙耶香には話したよね、僕は最初兄さんを監視するために送り込まれた存在だって」

「そうなのか?」

タギツヒメの質問に頷く沙耶香。
ロロはパワードスーツを解除して続ける。

「僕にとって実は兄さんの監視みたいな仕事は本来の仕事じゃないんだ。
僕の本来の仕事は、僕のギアス……兄さんのギアスが『絶対遵守』とでも呼ぶべき物なら僕のギアスは相手の体感時間を止める『絶対停止』とでも言うべき対人無敵のギアスを使った暗殺だったんだ」

ロロの右目にルルーシュの物と同じ不死鳥の紋様が浮かび上がる。
4人の自分を見る目が確かに変わったのをロロは感じた。
これこそロロの求めていた展開だ。

「ほら、その反応だよ。
言えば絶対そうなると思った。
だからこんな僕におあつらえ向きの暗殺者の英霊の力を引き出すカードなんて渡された時に思ったのさ!
いつ誰に寝首を掻き切られるか分からないこの状況下で!
僕みたいな汚れ仕事で使われてきた人間がまともな信頼なんてされるはずがないってね!
こんな僕の素性や能力を知っても!
記憶を書き換えるギアスを利用して本来の妹の立場を勝手に使ってるだけに過ぎなかった僕をまともな人間扱いして!弟だと言ってくれたのは兄さんだけだった!
だから僕は黙ってたんだ!
こんな思いもそんな視線も!
もう散々だったから!
僕のせいで同じギアスを持ってる兄さんまで悪い目で見られると思ったから!
だから!」

限りなく真実のみを話して本当に隠したい事を隠し通す。
兄ならばそうすると思って本気で叫ぶように吐き出したロロだが、本人にすらどこからどこまでが嘘で喋っているか本音で喋っているか分からなくなっていく感覚があった。
これだけ本当のことだけで誤魔化せたんだから十分だと冷静に考える自分と、今にも泣きそうな自分が確かにいるのだ。


842 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:42:15 mut33abI0
「ロロ」

剣持たないままの沙耶香がロロに近づき、クラスカードを差し出す。

「操られてたとは言え、傷付けてごめんなさい。
それに、嫌なこと喋らせてごめんなさい」

「沙耶香……気にしてないよ。
悪いのはあの継ぎ接ぎや僕を使って兄さんを利用しようとした嚮団だ。
沙耶香じゃない」

カードを受け取り、今度はロロが地面に落ちたままだった妙法村正を拾い上げて沙耶香に渡す。

「どう思う?」

「まあ、聞いてる限り矛盾は無いように聞こえるわね」

和解の様子を見ても半信半疑と言った様子のキャルが最後にと前置きした上でロロに問うた。

「あんたの『絶対停止のギアス』とあんたの大事な兄貴の『絶対遵守のギアス』についてもっと詳しく教えなさい。
そしたらあんたも、あんたの兄貴のことも一応信用してやるわ」

「分かった。あとでちゃんと教えるよ」

すんなりオーケーを出したロロに少し驚いたが、理性的に会話する余地があるならそれに越したことはないとキャルは条件をのんだ。

「えーっと、タギツヒメだっけ?
あんたはどうなんだ?」

「我はどちらかと言うと他人を良い様に使った側でな。
偉そうなことを言える立場ではない」

少しバツが悪そうに肩をすくめるタギツヒメに陽介はそう言えばコイツも他人に憑依できたりノロを投与して操れたりするんだっけ?と思い出した。

「こんな寒い外でこれ以上立ち話をするのもなんだし、そろそろ情報更新と放送がある時間だ。
まだ話さないといけないこともあるし、一回中に入らない?」

「仕方ねえけど何回もその……同じこと喋んの嫌だな」

「あたしだってあの継ぎ接ぎとかイザークの腕のこととか何回も喋りたくて喋ってないわよ!」

「……今直ぐにが嫌なら先に食事にでもする?
電気も水も通ってるし冷蔵庫も生きてるから簡単なのなら作れるよ?」

「そうね……いい加減なんか食べたいしそうしましょうか」

早速役割分担を済ませてキャルは冷蔵庫から失敬したレタスの葉を千切ってボウルにためる。
蛇口を捻って水を出し、葉を洗い、水を切る。
冒険だったり美食探求だったりで狩った獲物、採った野菜を一から調理する経験はかなりあるキャルにとって21世紀の基準のキッチンでの調理など実に楽な物だ。
脇見をしながらでも容易い。

「こっち終わったぜって、キャルちゃんどうしたの?」

テーブルの方の片付けを終わらせてきた花村陽介の視線の先には野菜の皮むきをしているロロ・ランペルージと糸見沙耶香の姿があった

「沙耶香、その持ち方じゃ怪我しちゃうよ。
ちょっと貸してごらん。こうやってね……」

かつて文化祭で兄に教えてもらったように沙耶香に教える

「ひと悶着あるかもって身構えたけど、案外あっさり仲直りできてよかったな」

「まあね。
最悪こっちが継ぎ接ぎの手下と思われて戦闘ぐらいは覚悟してたし。
丸く収まったんなら何よりよ。
流石にルルーシュと会う前にイザークたちと合流したいけど」

いくら沙耶香が信頼しているとは言え、流石に断片的な情報だけでも一撃必殺に等しいルルーシュを前に思いっきりルルーシュ寄りのロロの手引きだけで行くのは不安が残る。

「不安と言えば、あっちは大丈夫なの?」

「あっち?ああ……」

「くっ!このっ!どうにも上手くいかん!」

振り向くとそこには卵一個割るにも四苦八苦してボウルのからか一生懸命からの欠片を取りながら助けを求める様にチラチラこちらを見てくるタギツヒメが居た。


843 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:43:06 mut33abI0
「まさかロロやヨウスケより出来ないとは予想外だったわ」

「家庭科の授業の域を出ない俺以下って……」

「仕方なかろう!本来我ら荒魂には食事なんぞ不要なのだから!」

「ムキになってる荒魂初めて見た……」

「沙耶香よりタギツヒメ手伝うべきだったかな?」

「ふん。人が気を利かせて沙耶香の隣を譲ってやったというのに……」

若干拗ねているタギツヒメに苦笑をこぼしながらも短く穏やかな時間が過ぎていく。
既に突きつけられた仲間の死を検めて突きつけられ、否応なしに次なる嵐に放り込まれる瞬間は確かに迫っている。

(ルルーシュを想い、皆に信じられたいと言ったロロの姿に嘘はないはずだ。
なのに、我はまだ一護の死に何かあると思わずにはいられない……。
ソラン、これを捨てることが対話なのか?)

(僕への疑惑は大分薄れさせることが出来たけど、まだ一先ずは大丈夫ってレベルの段階だ。
ここからキャルたちの信頼を稼いで兄さんにも快く協力してくれるようにしないと。
その為にはこれ以上失態を重ねる訳にはいかない……)

(舞衣、無事かな……どうか、あの可奈美や継ぎ接ぎみたいな人に会っていませんように)

(こいつらを、いいや他の誰ももうこれ以上スパナみたいな目に合わせるわけにはいかねえ!
その為にも、今度こそ情けない俺には戻らない!)

(そっちは頼んだわよイザーク。こっちはあたしが何とかする。
シェフィ……あんたも無事でいなさいよ)

それぞれがそれぞれの想いを抱えたまま、三人の悪しき賢者たちが望んだとおりに真贋入り混じるバトルロワイヤルは加速し続けていく。
坂道を転がり出したボールのように、そう簡単には止められない。
下手をすれば、賢者達含むこの場に集った誰にも阻止することはできないだろう。



【エリアB-12/民家/9月2日午前11時】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:ダメージ(小)、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)
服装:アッシュフォード学園の制服(男子用)、フードパーカー
装備:零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、ランダムアイテム×0〜2(一護)、
一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン
クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:イザークたちと合流し、兄さんのいるテレビ局へと向かう。
マーヤと合流したい所だけど…。
02:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
03:沙耶香……元に戻ってよかった。
04:枢木スザクとビスマルク・ヴァルトシュタイン、二代目ゼロはとりあえず殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。
その時が来たら……。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。
それが…せめてもの。
07:違う世界の、ブリタニア姓の僕…か。
08:色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
09:リボンズやアスラン・ザラ?、継ぎ接ぎの男(真人)を警戒。
10:キャルと陽介もとりあえずは信じてくれたようだし、このまま信頼を稼ぐ。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続にお任せします。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。


844 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:44:40 mut33abI0
【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)、孤独感から解放された喜び(大)
ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)
可奈美の死に複雑な想い、ロロへの複雑な感情(中)
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:ロロの事は信じたい、だが…一護の死は本当に、奴の言った通りなのか…??
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたようだが…よりにもよって柊篝が巻き込まれているとは……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのあの異能…我にも通じるのだろうか。
08:沙耶香は戻ったようでなによりだ。しかし継ぎ接ぎの男(真人)、荒魂より質が悪いな。
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。

【糸見沙耶香@刀使ノ巫女】
状態:肉体的疲労(小)、精神的疲労(中)、真人への嫌悪(大)
   可奈美の死に動揺、ロロやイザークたちへの罪悪感(中)
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(沙耶香)、ランダムアイテム×1(真人)
ホットライン、ブラックコンドルのレンジャーキー@海賊戦隊ゴーカイジャー
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:ロロのこと、ちゃんと信じてあげたい。
02:可奈美は……私が止める。
03:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。
  でも…あの悲しむ様は……。
04:あの継ぎ接ぎの人、すごい嫌だ。
05:ロロのこと、多分羨ましい。タギツヒメのことも…きっと…。
06:舞衣と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
07:私が…可奈美や舞衣、十条姫和達と一緒に……?それに薫って人とも……?
08:恋とかはまだよくわからないけど、ありがとう、キャル。
09:大丈夫、もう利用させないよ
10:大荒魂もムキになるんだ……
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロからコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※ジュール隊のメンバーからコズミックイラ、アストルム、東西南北(仮)、自称特別捜査隊などの情報を得ました。
※Lの聖文字の影響を脱しました。


845 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:45:22 mut33abI0
【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:健康
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り三画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード、ホットライン
   ライドケミーカード(ホッパー1、テンライナー、スケボーズ、アッパレブシドー)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
  あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザーク、クルミ、イチロー、シェフィ……無事でいなさいよ
03:ロロのことはひとまず信用してやるわ。
04:今度継ぎ接ぎ(真人)に会ったらイザークの右手の礼もサヤカの乙女心を傷付けたツケも全部払ってもらうわ
05:今回の件でサヤカが恋愛にビビりすぎちゃわないかが心配。
  本当の恋って、すごくいい物なのよ。
06:流石にルルーシュに会うより前にイザークと合流したいわね。
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』、『刀使ノ巫女』、『ペルソナ4』などに関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※スチームライナーはテンライナーへの再錬成、テンライナーからスチームライナーへの再錬成は自在に行えますが、ケミーライズにより大型状態で召喚、プレイヤーの運搬を行ったので9月2日の午後2時まで再度の大型状態での運用は不可能です。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
 具体的に何が起こったかまでは分かっていません。

【花村陽介@ペルソナ4】
状態:肉体的疲労(小)、背中にガラス片(治療済み)、ダメージ(小)、精神疲労(中)
服装:八十神高校制服(冬服)
装備:熟練スパナ@ペルソナ4
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、サイドバッシャー@仮面ライダー555
   E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのランダムアイテム×0〜1
思考
基本:殺し合いはしない
01:何なんだあのヤベー(ザギ)のは。
02:継ぎ接ぎ(真人)の野郎は許せねえ。
   けどカッとなったまんまじゃアイツとはまともに戦えねえ……
03:ロロの奴はとりあえず信用しておく。
04:すまねえイザーク。その右手……
05:ロロには悪いけど、ルルーシュに会いに行く前にイザークたちとは合流しときたいぜ
06:もし、また他に死体や戦う姿をだけを利用されてる連中に会ったら、許しておける自信がねえ
07:つかなんでペルソナ使えるんだ? テレビの中じゃねえのに。
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは最後まで行っていません(ペルソナがスサノオではないため)
※黒鋼スパナ、ジュール隊と情報交換しました。
※エリアD-11美濃関学院に黒鋼スパナの死体を安置しました。
 彼のホットラインもそこに残されています。
※美濃関学院はかなり破壊されています。

【チーム備考】
※ジュール隊キャル班は食事を済ませたら定時放送、及び情報整理を終えるまでその場にとどまり、終了後にイザーク班との合流とルルーシュへの接触のためにテレビ局を目指します。


846 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/22(土) 23:45:45 mut33abI0
投下終了です。
タイトルは『Marionetteは眠れない』です


847 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:48:07 9MqVanPk0
皆様投下お疲れ様です
現在予約分の後半を投下させていただきます


848 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:49:54 9MqVanPk0


 「こっちも終わりました、ジークさん今何時ですかね。」
 「午前10時24分だ。」
 「もうそんな時間ですか。やたらとNPCモンスターが出てきて時間がかかりましたね。」
 
 巨大なサソリのNPCを撃ち倒したうてなの質問に、同じNPCを切り捨てたジークは浅打を鞘に納め答えた。
 2人が倒したのはアレフガルドに出てくるおおさそりというモンスター。
 砂漠のエリアであることを思えば納得がいく相手ではあるが、単体としての力はそう強くない。うてなとジークだけで十分対処できる。
 だからこの戦いにどこか心ここにあらずと言った梔子ユメの出番なく。彼女は一人愁いを帯びた眼で周囲の景色を見つめていた。
 
「……やっぱり、寂しいな。誰もいないアビドスは。」
「ユメさんの元居た場所なんでしたっけ?」

 うてなの質問に頷くユメ。日本の都心を思わせる砂漠の都市は記憶と同じく広大で、記憶と同じく砂に埋もれていた。
 解け残った雪のように黄色い砂が積み重なる場所もあれば、一面の砂漠アスファルトに咲くタンポポのように電柱や民家が残っているような場所もあった。
 黄ばんだ建物が墓標のように聳え立つ砂だらけの世界。
 刺すような青空の下にあったはずの梔子ユメの青春が、3人を拒絶するように広がっていた。

「砂漠の街とは聞いてましたけど、思ったより都会というか。
 日本にあるような大きな都市が、そのまま砂に呑み込まれたって感じがしますね。」
「見識が広いとはお世辞にも言えないが、もう少し砂漠地方の民族的な都市を想像していたな。」

 じゃりじゃりと足音を立てて進みながらアビドスを眺めるジークとうてなが抱いた感想はそのようなものだ。
 砂漠の街、砂漠の学園。そう聞いてゲームの砂漠エリアにあるような砂壁で固められた街をイメージしていたが、街並みは租界や現代都市エリアとも引けを取らない。
 違いがあるとすれば衰退の一途をたどっている点だろう。
 シャッターの閉まった店や一棟全てテナント募集中のビルが目立つ。さびれた田舎町を前にしたような物悲しさは、無人と言う事だけが理由ではないだろう。
 掠れたイラストの描かれたシャッターが見える中、カイザーと名前の付く店は妙に看板が真新しく何らかの企業の影が透けて見えた。
 その様子に顎に手を当て考え込むジークの隣で、うてなの視線の先では文房具屋や電気屋と同じように銃火器の販売や銃整備の店舗が並んでいた。
 あまりに平然と並ぶ『激安銃整備』の胡散臭い看板を二度見して、ちょんちょんと前を歩くユメの肩を叩く。

「なんでこう当たり前のように銃火器のお店があるんですか!?」
「うてなちゃんの街にはなかったの?銃整備のお店とか……」
「ありませんけど!?」
「えぇ!?そうなの!?」
 本気の驚愕を見せるユメに、うてなは思わず頭を抱えた。
 超のつく銃社会のキヴォトスらしいといえばらしいのだが、その瞬間柊うてなの中で異文化に対する衝撃が寂寥感を上回る。
 アビドスってもしかしてヤバいところなんじゃ……と苦い顔をうかべるうてなの隣で、そのやり取りを眺めるジークはどこか納得したように足を止めた。
 
「どうしたのジークくん?」
「疑っていたわけではないが、この街は本当に人が住んでいた場所なんだな。
 銃火器の店が当たり前のように並ぶということは、それだけ需要があり、この街の生活に銃の類が根付いているということだろう。
 キヴォトスで銃撃戦は日常らしいからな。」
「そういうものですか。」
「うてなの住む街には魔法少女のグッズを売る店があるそうだが、それもうてなの街に魔法少女の存在が根付いているからこそ展開される施設だろう。それと同じだ。」
「なるほど。ものすっごくわかりました。」
 
 都市というものは住む地域や住む人々によって毛色が変わり、需要があるからこそ物品やサービスを供給する存在が出てくる。
 上流階級が住む住宅街とならず者がたむろする市街地では、モラルや治安のみならず求められる需要も差が生じ、必然企業が展開する施設もまるで異なるもの。
 トレスマジアの需要があるから、うてなの街にはトレスマジアのフィギュアを売る店がある。
 同じように銃火器の需要が極めて高いキヴォトスでは銃火器の店が立ち並び、その地域の利権を有するカイザーという企業が幅を利かせる。
 
 ただ出鱈目に建物を並べただけでは絶対に見られない。意図と需要が建物として立ち並びそれを奪った災害があった。
 アビドスの遺物全てがここが人の営みのあった場所であることを示している。
 ああ、ここにあるのは本当にアビドスの街並みなんだなと。ジークとうてなの会話を聞きながらユメの胸に懐かしさがこみあげてきて。

 「……2人には、もっと元気な姿でアビドスを見てもらいたかったな。」 
 だからこそやるせない。アビドス生徒会長は心の底からそう思った。


849 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:52:02 9MqVanPk0
多くの参加者にとって、アビドスの注目度は高い。
 運営の1人、羂索が梔子ユメの姿をとったことが1つ。
 そこにラウ・ル・クルーゼの発言にあった『我々の拠点に繋がる物のあるエリア』という情報が加わり、当面の目的地をアビドスと定めた参加者は少なくない。

 ではアビドスに向かう面々の中に『アビドスという街』に意識を向けた人物は何人いるだろうか。
 断言しよう。アビドス高校の関係者を除いて、そんな人物は一人もいない。
 
 140余名の参加者が薄情だといっているのではない。
 ごくごく当たり前な話として、参加者にとって自分に縁がないランドマークはただの施設であり情報でしかない。
 刀使でない者が美濃関学院に殊更意識を向けることもないだろうし、関係者がいない以上天ノ川学園高校の崩壊に義憤や悲嘆を感じるものはおそらく一人もいないだろう。
 アビドスに向かう参加者たちだって、アビドスを調べて何1つ情報が手に入らなければ、無駄足だったと毒づきながら別の施設に移動するだけだろう。
 
 それが仕方のないことだと梔子ユメには分かっている。
 前触れなく殺し合いに巻き込まれてみんな自分が生き残るのに精いっぱい。ただのランドマークに気を遣う余裕など誰にもない。
 うてなとジークがアビドスという街を自然とみてくれているのは、ユメからアビドスの話を聞いていて、単なるランドマーク以上のものだと思ってくれているからだ。
 アビドスを知らない者たちは違う。彼らが欲しいのは『運営の拠点につながる情報』、あるいは『施設に残る何らかのアイテム』。それだけだ。
 彼らが胸に抱くのは運営への憤慨か。蜘蛛の糸に縋るような懇願か。他者を害してでも生き残りたいという悪意か。
 その全ての詳細な事象を、把握する者はいないだろう。
 ユメが分かることはただ一つ。彼らの目的がなんであろうとも、その胸中にどんな思いを抱こうと。

 「楽しい体験もキラキラした思い出もない。アビドスが辛くて苦しいだけの場所だって思われちゃうのは……いやだな。」
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 彼らにとって、アビドスという場所が楽しい記憶となることは、絶対にないということだ。
 それが梔子ユメには、どうしようもなくやるせない。
 
 俯きながら漏れた言葉が、不快な渇きと共に風に溶けていく。
 いつの間にか三人とも足を止めていて、乾ききったように不思議と涙は流れなかった。
 そんなユメの言葉にジークとうてなは顔を見合わせ、互いに何かを思いついたとユメの肩をポンと叩いた。
 
 「あと1時間もたたずに羂索なりクルーゼなりの放送がある。
 アビドス学園に着くのは放送後でも問題ないだろうし、道すがらにアビドスを見て回るのはどうだ?
 体を休めたり、何かしらのアイテムが回収できるかもしれない。」
「私も賛成です。正直砂漠を歩きっぱなしでかなり疲れていたんですよ。
 ひょっとしたらイドラさんや千佳さんがこっちに来てるかもしれませんし、合流するならアビドス高校に行く前の方がいい気がしませんか。」
「ジークくん……うてなちゃん……。」
 
 アイテムが見つかるかもしれないというのも体を休めたいというのもジークとうてなの本心だろう。
 それでも、少しでもアビドスを見ていきたいというユメへの気遣いが確かにあった。
 2人から穏やかな笑顔で告げられる提案に、ユメの目が思わず潤む。
 言葉に出来ないほどの感謝を胸に、アビドスの思い出を紐解き少しでも2人に見てもらいたい場所をユメは思い出そうとして。
 そういえばあっちにホシノちゃんとよく行った喫茶店があったなぁなんてことを考えていたところに、その声は響いた。

「なんなのよアンタ!!!」
「シノン!!」
「イマ、オマエナンて言ったァ!」

 アビドス高校から吹く風に乗って聞こえる、剣戟音と発砲音の合間に困惑の入り混じる少女の声とどこか痛々しく響く少年の叫び。
 ただの痴話喧嘩というにはあまりに真に迫っていたし、ここが殺し合いである以上ただの喧嘩ではすまないだろう。
 
 声を聴くと同時に、梔子ユメは駆けだしていた。
 迷いはなかった。アビドスに帰ってきたことでどこか気が大きくなっていたかもしれないが。それでも梔子ユメは何処であろうと同じことをするだろう。
 静止するジークとうてなの言葉に振り返り、わずかな申し訳なさと折れる気のない決意を秘めて答えた。

「困ってる子がいたなら、助けないと!」
 
 アビドス生徒会会長として、困っている人が居たら助けたい。
 利用されようと、騙されようと、人を助けることを止めたくない。
 それを馬鹿だと笑う人が居るかもしれないが、梔子ユメという人物の本質は何があっても変わらない。
 
 困っている人はほおっておけない。底抜けに明るい底なしのお人よし。
 アビドス高校生徒会長 梔子ユメとはそういう人なのだ。


850 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:53:10 9MqVanPk0
 ◆
 
 アビドス高等学校の立地はお世辞にも優れているとはいいがたい。
 学校前のバス停こそあれ、周辺にあるのは住宅地かほとんど砂漠の廃墟だ。
 身を隠す場所も音を遮る場所も、現代都市や租界に比べて少ない。
 だからアビドス学園を目前としてギインとカリスアローの刃が黒い剣とぶつかりあう音が、黒見セリカには随分はっきりと聞こえた。
 
 事の次第など大したものではない。アビドス高校へまっすぐ向かっていた2人に黒い影が強襲してきた。
 その影にキリトを想像したシノンだったが。目の前に姿を見せたのは2人と同い年くらいの緑の髪をした黒い服を着た剣士の青年だ。
 一瞬シノンの知る黒い剣士を期待したが、その姿は別人であり、その精神は明らかにまともではなかった。
 色を失ったように白目をむき、獣のような歯ぎしりと共に青年――夜島学郎はマクアフィテルを振るう。
 自身に向けられた刃をとっさに仮面ライダーカリスに変身することで凌いだシノンだったが、見ず知らずの相手に強襲されて仮面の奥には苛立ちと困惑が渦巻いていた。
 
「なんなのよアンタ!!!」
「シノン!!」

 学郎を弾き片膝をつくシノンを前に、黒見セリカは不安気な声を上げつつも相応の経験を積んだ体は自然と引き金を引いていた。
 エイムズショットライザーから放たれる50口径対ヒューマギア徹甲弾。
 堅固なヒューマギアを破壊できる銃弾はキヴォトス人であろうとダメージが期待できる代物で、必然学郎にとっては致命傷になりかねない一撃だが。
 夜島学郎は銃弾どころかセリカのことを見向きもせずに、シノンめがけて飛び掛かった。

「イマ、オマエナンて言ったァ!」
「なんのことよ!」

 なぜそれほどまでにこの青年に敵意を向けられるのか。
 学郎の体から外れた銃弾が民家の壁面を貫き、学郎の振るうマクアフィテルが目の前に迫ってもなお、その理由はシノンにもセリカにも分からない。
 普段ならばそんな狂人の戯言は切り捨てただろう。
 理解できない相手、理解してはいけない相手がいることは身に染みて知っている。ましてやここは殺し合いの只中だ。
 適当に戦闘不能にしたのち、立ち去るだけでよかったはずだ。
 
 シノンにとって一番の不幸は、夜島学郎が弱すぎたことだ。
 ぶんぶんと振り回される刃。剣術に明るいわけではないが、荒々しいを通り越し粗雑と言える動きの精度はキリトやアスナに比べれば数段劣る。
 だが彼らの卓越した剣術技巧(ソードスキル)を知るからこそ、学郎の動きが素人のそれとも違うことがわかる。
 品性の欠片もない蛮人というよりは、正気を失っていると言ったほうが近いだろう。
 白目をむき本能のままに動く彼は、本来の実力の半分も出せてはいないはずだ。
 生身の朝田詩乃ならともかく、ALOのアバターであるうえに仮面ライダーカリスの身体能力も上乗せされているシノンなら、攻撃を避けることは難しくない。
 
 「アンタ、何をそんなに怒っているのよ。」
 
 その余裕が、シノンに思考する時間を与えてしまった。
 強襲を受けた焦りと怒りの狭間から、『なぜ』という疑問がドンドン顔を見せ始める。
 この青年のことをシノンは知らない。反応がない以上セリカも知らないだろう。
 自分たちを見て襲ってきた?それにしては妙だとシノンの中で何かが後ろ髪を引く。
 この青年は「なんて言った」 と言ったのだ。
 自分の発言が何かしらの地雷を踏んだのではないか。学郎の弱さはそう考える余裕をシノンに与えてしまっていた。
 
 記憶を辿る。
 アビドスが近づいたこともあり、シノンはセリカと情報交換がてら談笑しながら進んでいた。
 バトルホッパーで進むには砂まみれの道は1人はともかく2人乗りは厳しく思え、どこか悲しそうなホッパーはデイパックの中でお留守番だ。
 アビドスのことや小鳥遊ホシノのことを聞く代わりに、キリトたちとのことをかいつまんで説明していたはずだ。
 そしてさっきまで死銃の一件について……キリトと出会った時の話をしていたのはないか。
 
「キリトが、どうかしたの。」

 なぜそんな質問をしてしまったのか。シノンはそのことを深く後悔することになる。
 キリト という言葉に目の前の青年は明らかに動揺し、殺意と憎悪がむせ返るほどに満ち満ちた銅のような色の目を向けた。
 
「キリトは、藤乃さんヲ殺しタ!!」
「なっ・・・!」

 シノンの一番聞きたくない言葉が、青年の口から嗚咽のように吐き出された。


851 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:53:50 9MqVanPk0

 殺し合いの只中。それも仮面ライダーのような殺傷力の高い支給品にグリオンのような危険人物もいる状態。殺しを好まなくとも戦いに巻き込まれ人を殺した参加者は何人もいる。
 問題があるとするならば、夜島学郎の見たキリトはPohの化けた贋者であるのだが。それを知る人物は生存者では覇王十代のみだ。
 シノンどころか学郎でさえ、その真実を知る由はなく。
 嘘には聞こえない言葉を、真実だと認めることはシノンの心が許さない。
 冷静だった心と頭が急激に煮えたぎる感覚の中、シノンはカリスアローを構えた。
 
「アイツが……キリトがそんなことするわけないでしょう!!!!!」

 認められない。納得できない。
 そんな思いを吐露しながら、ラウズカードをスキャンする。
 
 この襲撃者はキリトを知らない。知っていればたとえ嘘でもそんなことは言わないはずだ。
 名簿にあったレンやユージオといった人物かもなどと考えたが、キリトを知る者なら彼が間違っても人を殺したりはしないと知っているはずだ。
 SAO。こことは異なる電脳世界のデスゲームを経験し、望まない形で命を奪ったこと。
 キリトの背負う十字架は、他人が語れるほど軽くはない。
 仮初の命を奪い合うゲーマーだからこそ、命の重さを知る彼がそのような選択をすることはあり得ない。
 
『トルネード』『チョップ』
 激情に駆られる心とは裏腹に、カリスアローから響くのは抑揚のない電子音。
 黒衣の剣士の刃の合間を縫って、鳩尾めがけて風を纏ったチョップを叩きこんだ。
 
『スピニングウェーブ』
 アビドスの砂を纏った風が、猫妖精族(ケットシー)の敏捷力と仮面ライダーカリスの攻撃力(フィジカル)を受けて学郎の体を花火のように打ち上げる。
 獣のように唾液を撒き散らしながら最後の一撃と言わんばかりに学郎が刃を振るう。
 手刀が当たる距離だ、カリスの装甲があるので致命傷にはならなくとも袈裟切りにするには十分だろう。
 フェイントもなければ特殊なスキルも起動していない、普段なら回避は難しくないが頭に血が上ったシノンでは回避や防御への判断は遅れが生じる。
 むしろ追撃のため次なるカードをカリスアローにスキャンして、今度こそとどめを刺そうとさえしていた。
 捨て身の攻勢と理性の縛られた黒い刃。互いが互いの黒い装甲に迫らんとしたその時。
 
「メナスヴァルナ―!!」
「我が英雄よ、力をお借りする!!」
 
 3人の背後からそんな叫びと共に、三日月のような衝撃がシノンと学郎に向けて放たれた。
 漆黒の衝撃はシノンの腕に命中し、カリスアローとラウズカードをシノンの手から弾き飛ばし。
 月光のような青白い衝撃が、スピニングウェーブで打ち上げられた黒衣の剣士をアビドス高校側へと大きく吹き飛ばした。

「どっちが悪いか分からなかったから両方とも攻撃しちゃいましたけど、これ絶対あの仮面ライダー被害者ですよね!?」
「だろうな。あちらの剣士はどうも正気には見えなかった。
 剣士には俺が話を聞こう。ユメとうてなはあの二人に話を聞いてくれ。」
                             ・・・・・・ 
 振り返るセリカの先には、破廉恥な姿をした小悪魔風の少女と鈍色の西洋剣を構えた白い肌の少年。
 少女はシノンの元に、少年はわずかな会釈をして校門まで吹っ飛ばされたあの剣士のほうに向かったらしい。

 「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
 「あなた……いえ、大丈夫。私も頭に血が上ってたわ。」

 少女とシノンのそんなやりとりを茫然と見つめる。
 敵ではなさそうだが、その正体が分からない。睨むような目つきを向けてセリカだったが、柔らかいものが背中に当たった感触に思わず振り返る。

 「大丈夫!?」
 見覚えのあるヘイローを浮かべた女が、心配そうにこちらを見つめていた。
 敵意も悪意も感じられない、気の抜けるような温和な声。
 豊満な胸元を支えるベルトからぶら下げられたタグには、セリカが胸につけているものと同じ、馴染み深いアビドスの校章が記されている。

「その校章、もしかしてアビドスの……」
 女もアビドスの校章に気づいたようだった。
 なんどもなんどもセリカの顔と校章を見て、感極まった声ように目が潤みだす。
 そんな女に反して、黒見セリカの体からはどんどんと血の気が引いていく。
 目の前でこちらを心配しアビドスを特別なもののように見つめるその姿は、自分たちを悪趣味なゲームに巻き込んだ元凶のものだ。
 抱きつこうとしたのか、何か尋ねようとしたのか。女がわずかに手を離したその瞬間めがけて、セリカはエイムズショットライザーを引き抜き構えた。

「あんた、羂索!」
 鬱憤をぶつけるように睨みつけたその先で、羂索?こと梔子ユメは「ひぃん。また言われたよぉ。」と情けない声を上げた。


852 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:54:26 9MqVanPk0
◆◇◆◇◆

 「つまり、彼女は本物の梔子ユメ。ということでいいのよね。」
 「一応、私とジークさん……もう一人いた男の人はその前提で行動してます。
 額に縫い目もないでしょうし、本物ならば貴方達を助ける理由はないでしょう。」

 互いに自己紹介と最低限の知識の共有を済ませ、シノンはうてなから他の参加者について聞いていた。
 残念ながら2人にもあの黒い剣士の正体は分からないらしく、うてなが共闘したという何人かの参加者の中にもシノンの知った名前はない。
 セリカと同じアビドスの人間であるユメは当然としても、うてなもSAO事件やキリトたちのことを知らなかったのはシノンにとって残念だった。
 1つの懸念点だった梔子ユメに関して、羂索ではなく本物の彼女だと分かったことは1つの収穫だろうか。

「それは分かったけどさ、ちょっとこの先輩をどうにかしてよ!」
「先輩……!!」
「何嬉しそうにしてんのよ!」
 
 シノンとうてなの前では、卵を温める親鳥のようにユメがセリカを背中から抱きしめていた。
 合流してからずっとあの調子だ、先輩と呼ばれるたびに「嬉しいよぉ。アビドスにこんなかわいい後輩が入ってくれて!」と感極まって涙声をあげるのだ。
 豊満な胸の下では、セリカが「はーなーせー!!!」と反抗期の子どものようにじたばたしている。

「アビドスの後輩が可愛くて仕方ないんでしょう。
 小鳥遊ホシノと彼女しかいない学校だと聞いていたので。」
「そうね、せっかくの再会なんだしもう少しそのままでいてあげたら?」
「初対面なんだけど!!!」
 
 抵抗しながらもセリカはどこかまんざらでもないように見える。自己主張のできるセリカなら、本当に嫌ならショットライザーを引き抜いてでも抵抗するだろう。
 ちょっとめんどくさい絡みをするところはホシノ先輩と似ているなと思っていたし、内心悪い気はしていなかった。
 アビドスの生徒が少ないことやその仲間内の関係の深さはシノンもうてなも知っている、2人はこの光景を微笑ましげに眺めていた。
 
「じゃあもうこのまま話すけど、結局さっきの男はなんだったのよ。」
 このままではらちが明かないと、話を進めたのはセリカだった。
 
「詳しいことはジークさんが話を聞いてこないことには分かりませんが。推測ならできます。」
 うてなはホットラインを取り出し、名簿の一画を指さした。
 藤乃代葉。その名前は黒い剣士が叫んだ名前と一致する。
 
「”藤乃さん”は恐らくこの人のことでしょう。
 あの黒い剣士はこの人と同行していたか、あるいはもともと知り合いだった。ですが……」
「藤乃代葉はもう死亡していて、さっきの男はその犯人をキリトだと思っている。そういうことよね。」

 自分で言いながら、先ほどの剣士の腹に据えかねるとシノンは奥歯を強く噛み締めた。
 キリトが人を殺す。
 信じることなどできない話でも、真正面からその可能性を告げられてしまい心の中で何かが揺らいでいることは確かで。
 自分を奮い立たせるようにシノンは続けた。
 
「キリトは、絶対に殺し合いに乗るような人間じゃない。
 あの男が藤乃代葉殺害の犯人をキリトだと断じたのには、何か理由があるはずよ。」
「遠目から見てもあの襲撃者は正気には見えませんでした。
 錯乱して幻覚を見たり、誰かに出鱈目を吹き込まれたのかもしれませんね。」
「アヤネやノノミ先輩と同じように、グリオンの作った偽者かもしれないわ。
 キリト本人が居なくても、武器でも何でも手に入れてたらあいつは偽物を作れる!」
「もしかしたらそのキリトって人、誰かに体を乗っ取られちゃったのかも!」
「ユメさんが言うと説得力が違うわね……」

 笑えない事態なのにこの人が言うとどこか緩く聞こえるのは、そのおおらかさ故だろうか。
 あげられた推測はどれ1つとっても笑えない内容だが、キリト本人が殺し合いに乗っているよりは可能性がある。
 どれにせよこれ以上の話はあの黒い剣士に尋ねないことには始まらない。
 剣士とジークを追いアビドス高校に向かおうとした4人の目の前で。

「面白い話をしていますね?」

 ぶうんという音と共に赤黒い穴が空間に空き。
 中から黄金色の帯に翼竜を捉えたような怪人と、天使のような人形を捉えた怪人が姿を見せた。
 翼竜の怪人――プテラノドンマルガムから響く神経を逆撫でするような甘い声に、セリカは覚えがある。
 自分が慕う先輩と同じ声。しかしその正体は悪の錬金術師の傀儡。
 反射的にエイムズショットライザーを構え、その名を呼んだ。


853 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:56:58 9MqVanPk0
「偽ノノミ……!」
「あれぇ。私のことは”先輩”とは呼んでくれないんですか?寂しいです。」
 
 変身を解き、嘲るような飄々とした笑顔をノノミは見せる。
 アビドスの制服にユメは思わず目を見開いたが、彼女はセリカとは違いグリオンの生んだ偽者だ。
 後輩であるはずの少女の面影を、ユメは物悲し気に見つめていた。

「……貴方とはこんな形で会いたくなかったな。」
「私もですよ梔子ユメ。
    ・・・・・          ・・・・
 こんな余裕のない状況じゃなく、もっと楽しめる場所で会いたかった。」

 どこか通じているようで、全く別の景色を見た会話。
 相手を思いやるようなユメと反して、悪趣味な遊びを楽しみ切れないと言わんばかりの顔をしていた。
 剣呑な空気が漂う中、嫌なものがこみ上げる感覚の中シノンは切り出す。
 
「貴女、あの黒い剣士について何か知っているの。」
「黒い剣士……それはキリトのことですか?それとも夜島学郎のことでしょうか?」
「夜島学郎……それが私達を襲った人の名前ね。」
「あら、これはうっかり。口が軽いのが私の欠点ですねぇ。
 まあ、彼も私達と同じくキリトには随分煮え湯を飲まされているので、同情ということにしておいてください。」

 ノノミが笑顔を向け言葉を発するたびに、溌溂な美女の皮を剝いで汚泥の塊である化け物に被せたかのような、強烈な不快感と違和感が全身を襲う。
 視界の端ではセリカが憎々し気に睨みつけていた。ノノミを先輩と慕う彼女の不快感はシノンのそれとは比べ物にならないだろう。
 セリカのことを思うのなら、今すぐにでもこいつを倒すべきだ。
  
「やっぱりアンタキリトのことを知っているのね。
 教えて、彼に何があったの?」
 
 そんなことは分かっていても、シノンにはここで彼女を倒すという選択はなかった。
 彼女はシノンの知らない”何か”を知っているのだから。
 うっかり漏らしたなど嘘だろうし、こいつは学郎に同情などしていない。明らかにシノンに聞かせるためにあのようなことを言ったのだ。
 シノンが期待どおりの反応を示したことが嬉しいのかノノミは口角を大きく上げる。
 十六夜ノノミであれば華のある笑顔だったろう顔の歪みが、吐き気がするほど不快に見えた。
 
「質問の仕方が違いますね。聞くべきは『彼に何があったか』ではなく『彼が何をしたか』ですよ。
 それについては私より、彼女から話を聞いたほうがいいかもしれませんね。」
 
 強張った空気の中、ノノミは隣にいた天使の怪人――エンジェルマルガムに発言を促し。デッサン人形のような天使の怪物がどこか悲し気に変身を解いた。
 姿を見せた少女にはヘイローがなく、整った顔ながら怪我でもしているのか左目を眼帯で覆っていた。
 その少女――亀井美嘉の姿はセリカには見覚えがない。
 てっきり偽者のホシノ先輩かアヤネだと思っていたため瞠目して気づく。彼女の腕にはノノミと異なりレジスターと令呪があった。
 それはつまり、この少女はグリオンの人形ではなく参加者だということだ。
 その事実に気づいたセリカは糾弾するよう美嘉を指さした。
 
「まさか、グリオンと協力してる参加者!?
 あんた、こいつが何者なのか知っているんでしょうね!!」
「黒見セリカちゃんよね。貴女の事情は聞いていますし個人的には申し訳ないと思っています。」
 全ての動作にこちらを嘲笑うようなノノミとは異なり、陰の帯びた顔でまっすぐな謝意を美嘉は向けた。
 友人と同じ姿の怪人が動いている。そんな現状に苛立つ黒見セリカのことをノノミやアヤネに聞かされ、美嘉が抱いたのは同情と共感だった。
 てっきりノノミと同じく嫌味の1つでもぶつけられると思っていたセリカは予想だにしない態度に黙りこみ、そのまま美嘉の視線はシノンへと向けられる。
 
「質問ですが。貴女はキリトの仲間でいいんでしょうか。
 アスナ?サチ?リーファ?シノン?レン? もしくは別の人ですか?」
「シノンよ。」
 キリトに連なる名前を順番に読み上げると、当然シノンの名前も挙がってくる。
 シノンのの名乗りに美嘉は一瞬おどろおどろしい殺気を込めた眼で睨みつけたが、いつの間にか美嘉の目はシノンを品定めするような物へと変わっていた。


854 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:57:54 9MqVanPk0

「……正直、驚いています。
 あのキリトの仲間なのに、すごく普通に良い人に見える。」
「……ッ!!」
「私の知っているキリトはNPCモンスターを従え私達を襲い、学郎さんを止めようと必死に抗う代葉さんを背後から突き刺し笑うような男です。」
「何を言っているのよ!」

 困惑と殺意の入り混じった言葉に、今度はシノンが美嘉を睨みセリカから奪ったショットライザーを突き付けた。
 恩人でもあり愛する友でもある男を愚弄されたから。反射的にしてしまったことだといえばそれまでだ。
 だが一番の理由は、亀井美嘉がすべて真実を話していると直感として理解できてしまったことだ。
 続く言葉にも嘘はないのだろうと何故だか分かる。
 銃を向ける側のシノンの顔がそのことに怯えたように青ざめ、向けられている美嘉は怯えや恐怖が別の何かに塗りつぶされた昏い顔のまま続けた。
 
 「夜島学郎の言葉は本当です。
 藤乃代葉を殺したのはキリトです。」
「嘘よ!」
 「この場所以外でキリトと縁がない私や学郎さんが、嘘をつく理由がありますか?」

 その問いが止めだった。亀井美嘉は死銃のようなSAOサバイバーでもなければ、話に聞く須郷のようなキリトやアスナと因縁ある人物ではない。
 デタラメで知らない人間を恨めるほど情報が集まる環境でもないし、出鱈目を吹き込まれたにしては美嘉の言葉は真に迫るものがあった。
 嘘だ。嘘だ。嘘だ。
 シノンの中で何かがそう叫び続けていた。そうしないとこの少女の言葉が真実だと脳が受け入れてしまいそうだから。
 
 改めてシノンは目の前の少女を見る。
 セリカのように戦場に慣れてはいない。
 シノンのように戦場に立つためのアバターが与えられているわけでもない。
 修羅場を経験した朝田詩乃よりもなお平穏な、そんな世界で生きてきたのだろう。
 日常的な殺意や敵意を持ち合わせた人間ではない。
 だからこそ、彼女の殺意は本物で。キリトへの敵意は本物だ。
 
「短い付き合いですが、代葉さんは私の仲間でもありました。
 だから私はグリオンさんについた。
 彼がこれ以上私の友達を殺す前に、私が彼を殺すために。」
 
 告げられた言葉にシノンは膝から崩れ落ちる。
 キリトが人を殺した。
 考えたくなかったし考えられない可能性に、頭にもやがかかったように重くなる。
 そんなシノンの心情を察してかセリカが叫ぶ。
 
 「どうせ出鱈目よ!グリオンが作った贋者の自作自演でしょ!!」
 「だったら彼女は私と組んではいませんよ。
 それに、そんな面倒なことをグリオン様はなさりませんよ。」

 シノンの心情を代弁するようなセリカの叫びに美嘉は悲し気なままで、一方のノノミは出し物を前にした子供のように無邪気に歪んだ笑顔を浮かべた。
 アヤネから逃げおおせ厄介だと思われていたシノンやセリカが、キリトの殺人1つで顔を歪ませ悲嘆にくれる様が楽しくて仕方がない。
 冷静に努めながら胸の奥ではキリトへの殺意が蠢いている、それが漏れ出さないように蓋をしている美嘉の姿もまた素晴らしい。
 この場で唯一、話題に上がったキリトを偽者だと感づいている(本物であるのならば代葉の死んだ場にデクや亜理紗がいないことがおかしいからだ。)ノノミは内心満足げにほくそ笑む。
 
「でも、そのキリトが偽物でないとも限らないでしょう。」
 
 トランスマジア。
 ノノミの興奮に冷や水をかけるように柊うてながそう呟き、その姿を破廉恥な小悪魔――マジアベーゼのものに変える。
 いきなり何をと周囲の視線が集まる中で、マジアベーゼは手にした鞭を近くにあった瓦礫に叩きつける。
 数秒もたたずに瓦礫がむくむくと動き出し、不格好な人形となってその場でてくてくと動き出した。

 マジアベーゼの能力。支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)。
 錬金術とはまた異なるが、配下を生み出す能力ならこの女も有している。
 
「今回は石なのでこんな姿ですが、それこそキリトの姿をした人形でもあればそのままの偽キリトを動かすことが出来ます。
 私やグリオンの能力に大した制約がない以上、他にも似たことが出来る参加者や支給品はあると思いますが。どうでしょうか。」
「うてな……。」
「今はマジアベーゼと呼んでください。」

 美嘉の言うキリトが偽物である可能性を提示され、どこか救われたような面持ちをシノンは浮かべた。
 話していた美嘉も一理あると思ったのだろう、自分の話を否定されたことへの憤慨などはまるで浮かべず、興味深そうに人形とうてなを交互に眺めていた。


855 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:58:43 9MqVanPk0

「そちらの天使さん。貴女はどう思います?」
「否定することは……できませんね。
 仮面ライダーや怪人を初め変身能力のある支給品だって沢山ありますし。
 キリトが本物だという証明が私にはできません。」

 亀井美嘉は本来友情や敬愛を重んじる、グリオンとは真逆の人間である。
 偽キリトによる代葉殺害を目撃し、殺意の塊である黒阿修羅を取り込んだことでその精神は歪み始めてはいるが。
 基本的な思考は変わらない。話せばわかるしキリトでなければ対話ができるし、自分の思想や行動とは真逆の意見も聞き入れられる程度には思慮深い。
 シノンやセリカがもっとキリトをかばうような言動をすれば殺意と敵意に取り込まれ戦闘することになったかもしれないが、先に夜島学郎と出会っていたこともありキリトのことを無根拠に信じず美嘉やノノミと会話することを選んだためその可能性も無くなった。
 
(……少々遊びすぎましたね。これではアヤネのことを言えませんか。
 警戒すべきはこの少女でしたか。)

 変身前の少女の時とは似ても似つかない、グリオンとは別種の覇気を宿す悪の華。
 実演も兼ねたその言葉には確かな説得力がある。                ・・
 美嘉が話せば勝手にシノンの心は折れてくれるだろう、そうでなくても美嘉が暴走し奴らへの対処も楽になるだろう。
 そう高をくくっていたノノミの計略に期せずしてベーゼは一石を投じることになった。
 警戒すべきはこいつだったかと、ノノミは苛立ち半分興味半分といった風体でベーゼに微笑み、ベーゼもまた微笑みを返した。

「ですが、同じように贋物だという証明も出来ません。
 シノンさんには悪いですが、違う可能性があるとしても私はキリトを許せません。」
「……まあ、そう言うでしょうね。
 今の貴女、私の知り合いにそっくりですもの。」

 どうしてそうなるのよと言いたげなセリカとシノンをよそに、美嘉とマジアベーゼは続ける。
 敵意や殺意とはそれだけで大きく人を歪める感情だ。
 例えばルルーシュ・ランペルージ。 母を失い友と生き別れたことを契機に人生そのものをブリタニアへの憎悪と復讐に捧げ、適当に使えばいくらでも幸せに生きられるだろうギアスの力も復讐に捧げた。
 例えばキズナブラック。他者との関係性を尊ぶからこそその喪失を何より恐れる青年が、全てを失った末路の姿。他の絆を踏みにじってでも最愛の人が死ぬ未来を拒み妨げる全てを殺そうとした。
 マジアベーゼの言う知り合いとは魔法少女イミタシオのこと。
 最終的には真に魔法少女となった彼女と和解に近い形で敵対し続けているが、そうなる前の彼女はマジアベーゼへの復讐に染まり魔法少女らしからぬ手口まで用いていた。

 亀井美嘉の中にある感情もイミタシオと類似したものだろう。そうマジアベーゼは推測する。
 外見こそ温和な少女のままだが、その中身は曲がりなりにも殺戮にまでは至らなかったイミタシオとは比にならないほどの悪意と憎悪が蠢いている。
 悪意を隠しもしないノノミよりも、何をするか分からないという意味でこちらの方が危険でさえあった。
 話の運び方を間違えればこの場で本気の戦闘をする羽目になる。ベーゼとしてはそれは避けたいところだった。

(ジークさんを呼びに行く余裕はありませんね。となると実質4対2。
 シノンさんが仮面ライダーになれることやユメさんの支給品を考えれば勝率は高いですが。他に何人も参加者が来るであろうこのアビドスで、無計画な戦闘は避けたい……。
 最悪、グリオンどころかノワル級の相手と連戦するかもしれません。そうすれば全滅は必至……)

 マジアベーゼは続く発言に苦心する。そしてそれはノノミも同じ、自分に都合がいいようにイニシアチブを得るために思考を働かせていた。
 マジアベーゼが可能性を示してもなお敵対を口にした美嘉にシノンやセリカは感情の落としどころを見つけ出せないでいた。
 美嘉もまた申し訳なさげな顔はそのままに、だんだんとシノンを見る目が険しくなる。
 剣呑を通り越し一手のミスが戦闘に繋がるような険悪な雰囲気がたちのぼっていた。


856 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 20:59:13 9MqVanPk0

「でも今は私達が戦う理由はないんでしょ。よかったぁ。」
 
 そんな空気の中、これまで会話に入れなかったユメの緩んだ声が沈黙を破る。
 一触即発だった者たちの空気がどっと緩み、全員から『何言ってんだこいつ』と言いたげな視線が梔子ユメに向けられた。

「……なんでそうなるんですか?」
「え、だってキリトが本当に悪いか分かんないんでしょう。
 じゃあキリトを恨んでるノノミちゃん達とキリトの味方をしたいシノンちゃん達が争う理由は、少なくとも今はない。違うの?」
「いえ……今はその証明ができないって話をしてまして……。
 というか証明したところであの2人がに敵であることは変わらないと思うのですが。」
「そもそもこんな贋者とそいつの手を貸す奴と仲良くなんてしたくないわよ!
 どう考えても殺し合いに乗ってる側でしょ!」

 うてなとセリカから各々の言い分を聞かされてもユメの漂わせる空気はどこか緩い。
 危機感が薄いというのもあるのだろうが、それ以上にノノミと美嘉のことをセリカが言うほど悪い人だと思っていないのかもしれない。
 
「でも2人が本当に悪い人なら、とっくに私達を殺そうと襲ってきてるんじゃないの?
 殺し合いに乗っているかもしれなくても、話をしなくていい理由にはならないよ。
 というか、この状況ってキヴォトスだったらとっくにマシンガンくらい撃たれてるでしょ?」
「それはそうだけど!」
「ずっと気になってましたけどキヴォトス治安悪すぎじゃないです?」
「GGOのPK連中でももう少し民度あるわよ。」
「もしかしてキヴォトスって怖い場所?」

 ユメとセリカのキヴォトスあるあるに、うてな・シノン・美嘉が揃って難色を示す。
 「そんなに怖いところじゃないよ〜」とユメは反論するも、定期的に武装集団が学校を襲うような街なので説得力は欠片もなかった。
 
 「それに本心から私達が許せないならさ」
 コホンと咳払いをして、ユメは美嘉を見つめる。
 鮮やかながら優しい色合いの黄色の瞳に、美嘉はなぜだか太陽を想起していた。

「貴女はどうして、ずっとそんな泣きそうな顔をしているの?」
「!?」

 言葉こそおおらかながらしっかりと目を見て告げられた言葉は、先ほどと違い確かな重さと温かさと共に美嘉の胸に深くしみ込んだ。

 美嘉の憎悪は本物だ。
 藤乃代葉を殺されたキリトを許せない。その事実がある以上、美嘉とシノンらが仲間になる未来は存在しない。
 ユメが気になったのは美嘉の表情だ。
 怒っているだろうし、恨んでいる。だったらもっと怒りや憎しみを表に出してもいいだろう。
 だけど美嘉は贋者のアビドスに怒るセリカに謝り、憎むキリトを信じるシノンには事実のみを伝え、己の殺意に反論するうてなの言葉に納得していた。
 頭の中にある本来の感情と、無限に湧き上がるキリトへの殺意がせめぎ合っているような、矛盾した心が見え隠れする。

 シノンはその矛盾故に美嘉の言葉を信じた。その矛盾はシノンにとって断絶だ。
 うてなはその矛盾故に美嘉を警戒した。その矛盾はマジアベーゼにとってある種の地雷だ。
 ユメにとってはその矛盾は悲鳴だった。亀井美嘉あるいはその中にいる誰かの。助けてほしいという声だった。

 どこまでも他人のために動ける。本来の美嘉と同じ善を為す女。
 
(これが本物の梔子ユメ……ですか。
 十六夜ノノミの記録……本物の小鳥遊ホシノからの情報では底抜けのお人よしと言う事でしたが、この場でもその在りようを続けられると逆に脅威ですね。
 グリオン様の望む悪意の伝染において、マジアベーゼ以上の脅威かもしれません。)

 その在り方を目の当たりにして、ノノミはユメへの警戒をマジアベーゼ以上に強める。
 悪意の対極にあるような善性はどれだけ嘲笑されても変わらない。そんな手合いが一番厄介なのだ。
 そして美嘉は突き付けられた自分の矛盾に言葉を失っていた。

「私は……」

 キリトが許せない。キリトを殺す。その思いは今なお途切れない。無くならない。
 だけど私はキリトを知らない。”殺したい”ほどキリトを知らない。
 代葉を殺したキリトと同じ屑だと思っていたシノンは、思ったより普通に話せる人だった。他の人たちはどうなのだろうか。
 キリトは偽物かもしれない。その可能性を理解してもなおそれでも消えない殺意を自然と受け入れている自分が、いったい誰なのか分からなくなる。
 何か大事なものが欠落しているような感覚に、何かを言おうとしたその瞬間。
 
「探したぞアビドスのヴィラン諸君!!」

 金メッキのように痛々しいギラギラした声が、ヒロインを携え最悪の邪魔をしにやってきた。


857 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:01:27 9MqVanPk0
◆◇◆◇◆

「……ここ……は。」
 
 消え入りそうな声をどうにか絞り出しながら夜島学郎は目を覚ます。
 既に霊衣ではなく普段通りの学生服だ、真っ白のシャツは砂でどろどろに汚れていた。
 石壁か何かに勢いよく全身をぶつけたのかじんじんと痺れるように痛む、額からはぼたぼたと血が垂れているようで周囲の気温もあっていやに熱い。
 流れる血液に赤い糸のようなきれっぱじが見えたのは気のせいだろうか。
 何があったのか記憶を辿るが、くしゃくしゃに折り曲げられた新聞を読むかのようにぼやけて上手く思い出せない。
 揺らぐ意識と力が入らない足腰をどうにか動かし立ち上がり、ふと持たれた先に手をやると石に彫り込まれた施設の名前が見えた。
 アビドス高等学校。どこか聞き覚えがある気がしたが、どこだったか。
 
「……どうやら、今は正気のようだな。」   ・・・
 ふいに投げかけられた言葉に目を向けると、日本刀を構えた色白い青年がわずかな汗をかいて立っていた。
 いきなりの武装した相手に手にした西洋剣を握る手が強張る。
 そこで初めて学郎は手にした剣、マクアフィテルの存在に気づいた。

「――俺はいつの間に、こんな剣を持っていたんだ?」
「それは俺に聞かれても分からないが……いったいどこまで覚えている?
 2人の少女に襲い掛かったことは、記憶にあるか?」
「俺がそんなことを……」

 してない……と言おうとしたが、猫のような耳をした青い少女と黒い学生服の少女を襲った記憶が確かにある。
 その記憶を皮切りに、学郎の脳内に溢れ出す存在する記憶。

 既に夜島学郎は精神仮縫いから解放されている。
 代葉の行ったバーサーカーの夢幻召喚(インストール)でズタズタになった生命繊維はシノンとジークが与えたダメージにより期せずしてとどめを刺されている。
 彼の脳を縛る糸もうない、赤い糸に縛られた記憶が解け堰を切ったように溢れ出る。
 
 鬼龍院羅暁に襲われた少女たちを助けようとして、逆に羅暁の傀儡にされたこと。
 おぼろげな意識の中、藤乃代葉の奮闘でわずかに意識を取り戻したこと。
 目の前で黒い剣士に藤乃代葉を殺されたこと。
 そしてその黒い剣士を、本能のままに殺したこと。
 
「あ……ああ……。」

 心に入ったヒビから溢れる濁流が嗚咽となって溢れ出る。
 人を守るために、人のために闘う。彼の存在意義を揺るがす事実がナイフのように胸を刺す。
 不甲斐なさ、罪悪感、後悔。そんな感情がぐちゃぐちゃになった瞳から涙を流す様を、ジークは黙って見つめていた。
 
「悪いが、俺は君から話を聞かなければならない。
 何があったのか、なぜあの少女たちを襲ったのか。それを知るために俺はここに来ている。」
「……。」
「だが、今の君にそれを聞くのは酷だ。
 幸い時間はある、話せるようになるまで俺もここで待つ。」
 
 わずか数時間の間にただならぬ事態に巻き込まれ大きなものを失ったことが学郎の悲痛な眼差しが訴えている。
 経験上こうした人間から話を聞くのは難しい。より正確には時間が必要になる。
 特にキリトの仲間らしい青い髪の少女との会話など、どうあがいても為せないだろう。
 だからいったん女性陣との合流を諦め、青年の隣に座り込む。

 「少なくとも、俺は君の味方で居たいと思っている。」
 
 その一言に学郎は初めてジークの顔へと向き直った。
 中性的な顔立ちに、ルビーのような瞳が静かな決意をたたえてそこにある。
 その対応はジークなりに考えてかつて会った聖女や英雄ならどうしただろうか考えた結果の答えだったが、あながち間違いではなかったようだ。
 数分経つ頃には、ぽつりぽつりと学郎は一部始終を語りだしていた。

(無理にユメやうてなと合流させなくて正解だったな……。
 恐らく襲われていた少女……青髪の少女はキリトの友人だろうし。間違いなく対立が起こっただろう。)
 
 学郎の話にジークは頭を抱え、女性陣と合流しなくて正解だったと数分前の自分を評価する。
 『藤乃さん』こと藤乃代葉は、間違いなくすでに死亡している。
 そしてその犯人であるキリトを、学郎はめった刺しにする形で殺害していた。
 決着は既についていた、ついてしまっていた。
 少なくとも、夜島学郎の中においては。

 明確にしておくが、藤乃代葉を殺害したのはキリトではない。
 代葉と美嘉を襲ったのはキリトの姿をしたPohであり、夜島学郎が殺したのもまたPohである。
 だが、その事実を夜島学郎が知る方法はない。参加者の中で知っているのはPohと組んでいた覇王十代とセレブロくらいだ。
 彼がその認識違いに気づくのは30分後の放送においてキリトの名前が呼ばれないその時になるだろう。無論、キリトが放送まで生きていられたらの話だが。


858 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:03:22 9MqVanPk0
「俺はどうすればいい。」

 赤く腫らした目をした学郎の言葉は、ジークに向けられたものなのか、学郎自身に向けられたものなのか。
 守れなかった。人を殺した。
 他人のために闘う彼の在り方を穢す愚行を、夜島学郎は2つも犯してしまった。

「その質問に対して、俺は答えることが出来ない。
 答えられるほどのものを持っていない。というべきか。
 君のような戦いをした覚えはあるが、君と俺とはきっと事情が大きく違うだろう。」
 
 激情を抱いたこと。誰かに恨みを抱いたこと。ジークにも経験がある。
 その身を炎に捧げた聖女を失ったことで、全ての人類を救おうとした――限りなく誤った形でとの注釈が付くが――救世主相手に戦いを挑んだ。
 あの時のジークはその戦いを使命だと思った。数多の英霊や魔術師が戦い紡いだ聖杯戦争の果ての戦い。
 残されるものがなくとも挑んだその戦いに後悔はない。

 夜島学郎には後悔が山のようにあるだろう。
 望月穂波と早々に分かれてしまった。
 鬼龍院羅暁に意識を縫い合わされ傀儡となった。
 藤乃代葉を助けられなかった。
 悲壮と決意を抱いた復讐ではなく、獣のような害意と共に復讐を為した。
 誇れるものは1つもなく。得た物はせいぜい回収していた藤乃代葉の支給品くらいのものだ。

「君が襲った少女は恐らくキリトの知己だ。彼女はきっと君を許さない。
 君が死のうと、どれだけこれから償おうと。それはきっと変わらない。」

 キリトの知り合い。その言葉に学郎の肩に何かが重くのしかかる。
 仲間だったかもしれないし、家族だったかもしれないし、恋人だったかもしれない。
 彼女がその何者かと出会う未来を奪う。殺すというのはそういうことだ。
 奪った命を背負うというのは、高校生の青年には余りある重責だった。
 糾弾されても仕方がないと、学郎の瞳が淀む。
 ここは殺し合いの只中だ。平気で人を殺す人間だと思われ逆に殺される可能性だって十分あるし、そうした判断を非難する気にはなれなかった。
 
「その上で君がどうすべきか。それは君自身が見つけるしかないだろう。
 それを見つけるために、君は生きるべきだ。俺から言えるのはそれだけだ。」
 
 その上で投げかけられた言葉が自身の生を求めるものであることに、学郎は目を見開いて。
 ああと、ジークは目の前の青年の憔悴した顔にかつての自分を重ねていた。
 言葉には次第に熱がこもり、血が通いだす。その熱さは学郎にとって救いでもあり後悔でもある。

「なんのために。」
「あえて理由をつけるなら藤乃代葉のためだ。」
 
 吐き捨てるような問いかけにしばし考えた末に、ジークの口から出たのはそんな言葉だった。

「君が鬼龍院羅暁の呪縛から解放されたのは彼女の献身によるものだ。そう言ったのは君だ。
 もし君が死んでしまえばその献身は無となり、藤乃代葉という名は多くの参加者にとって『早々に脱落し何者残せない、取るに足らない者』として刻まれるだろう。
 俺の個人的な願望もあるが……そのような未来は避けたい。」
「そういう考えも……あるんですね。」

 ジークの言葉に自分をかばって死んだ父、夜島拓郎のことを思い出していた。
 幼いころレベル3の幻妖に、学郎の目の前で殺された父。
 その敵はここに来る前に妹と共に倒しているが、惨劇の記憶は今なお鮮明に思い出せた。
 目の前の年が変わらなく見える青年が、何故だかあの時の父と重なった。

「なぜこうも俺のことを気にしてくれるんですか?」
「俺も託された側だからだ。
 俺の心臓は俺のものではない。
 かつて何の役割もなく死ぬはずだったところを英雄たちによって救い出され、その心臓を与えられた。
 それだけではない、俺はこの身に余る多くのものを多くの者たちに与えられた。」

 黒のライダーに生きろと言われ、黒のセイバーの心臓を受け継いだ。
 理由もなく名もなきホムンクルスとして終わるはずの命が、生きるための理由と鼓動を得た。
 ジークという個体は多くの奇跡と英雄に支えられ、ここに居る。
 そんな過去を持つからこそ、与えられた彼だからこそ。
 夜島学郎のことを助けたいと、ジークは心からそう思う。

「俺もせめてその英雄たちに恥じないよう生きたいと思った。
 そう考えると、同じ託された者でありどこかかつての俺に似ている君を見捨てる選択肢は無くなっていた。」
 
 どこか誇らしげに告げるジークに学郎がまず思ったことは、俺もこうなりたいという尊敬の念だった。
 父に命を、鵺に力を与えられ。さらに藤乃さんに正しい心を与えられた。
 それが今の学郎なんだと、すっと受け入れられていた。
 いつの間にか視界は随分クリアになった気がした。
 藤乃さんを守れなかった咎も、キリトを殺した罪も背負う。
 それでも生きることが今の俺のできる贖いなのだと。そう思うと、次にすべきことが見えた気がした。


859 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(前編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:03:41 9MqVanPk0
 
「俺が襲った女の子に、会わせてくれませんか?」
「ああ、今俺の仲間が話を聞いている。無事には違いないが……」

 きっとその少女――シノンは君を許さない。
 本当に良いのか。問うようなジークの視線に学郎は強く首を振る。
 学郎は既に背負うと決めた。

 ならば分かったと、決断を尊重するようにジークは手を伸ばし。その手を取った学郎は立ち上がる。
 決意を秘めた男の体は鍛えているのか見た目よりも随分重く感じられた。
 ユメやうてな合流し、キリトに関する軋轢を執り成し。アビドスを調べる。
 ジークが思索した今後の選択が。



 
「ここがアビドス高校か。」



 底冷えするような言葉に、一瞬にして塗り替えられた。

 同行者と合流するためにアビドス高校に背を向けていた2人は、全く同じタイミングで振り返りその男を見た。
 アビドス高等学校の校庭。捻じ曲がったような空間を通り現れた、2人よりも数歳年上の青年。
 荘厳な緋色のマントを羽織り、並々ならぬ威圧感を放つその姿に2人の本能がかつてないほどの警鐘を鳴らしていた。
 
 その男はこの悪鬼羅刹が集う殺し合いの中で、指折りの怪物に他ならない。
 学郎が垣間見た幻妖の祖の本領だとか、ジークが対峙した神霊に分類されるサーヴァントだとか。
 彼らと同格、下手すればそれ以上の怪物。

 その男が、ぐるりと首を傾け学郎とジークを見た。
 人を見るような敬意も、虫を見るような嫌悪もない。
 これから払う煤を視界に入れたかのような、無感情な視線だった。

「チリが2つか。
 学園の中にもいくつかありそうだが、まずは貴様らからだな。」
 
 その男。名を宇蟲王ギラと言った。


860 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:06:37 9MqVanPk0
◆◇◆◇◆

「uno、due、tre……これは驚いた。
 2体だと思ったヴィランが実に6体も!
 ダークマイト伝説の始まりには実に相応しい舞台じゃないか。そうは思わないかりんね。」
 
 ハッハッハとけたたましい騒音と共に、ダークマイトは目を輝かせる。
 隣の少女。九堂りんねはダークマイトの同意に無言を貫く。
 命れいじゅうの効果で逆らえないりんね必死の抵抗だが、これはこれで絵になるとダークマイトは上機嫌だ。
 
 困惑の混ざった白けた視線を6つも浴びながら、自称象徴はアビドスの大地を踏み荒らしていく。
 マントを羽織った赤く派手な巨漢――オールマイトの姿。
 本来ならば見た者に安心感を与えるその姿は、学郎とジークの前に姿を見せた宇蟲王とは違う意味でこの場の空気を一変させた。
 マジアベーゼや梔子ユメを前にした時以上の忌々しさを込めて、口を開いたのはノノミだった。
 
 「もう追いついたんですか。」
 「君のおかげだともアビドスのヴィランよ。
 りんねに似た錬金術の使い手だろう?怪物に姿を変えワープした時は驚いたが、多少の力の流れを追うことなど俺にはそう難しくない。」

 ダークマイトに尊大な態度にノノミは舌打ちし眉を顰める。
 元々グリオンの命でアビドス入りしていた美嘉とノノミはふいにダークマイトと接触し交戦していた。
 こちらを『ダークマイト伝説の肥やし』『俺に倒されるべきヴィラン』だと有無を言わさぬ図々しい態度に嫌気がさし、ノノミのワープテラの能力で逃げていた。
 2人がシノンたちと出会ったのは、その矢先の出来事であった。
 そのことに気づきシノン・セリカ・マジアベーゼは青ざめた顔でノノミと美嘉に責めるような視線を向けた。
 
「まさか……アンタたち、こいつから逃げてきてたの!?」
「そうです。まさかノノミさんがこんな他の参加者のど真ん中に逃げるとは思わなかったですが。」
「どう考えても潰し合わせる気満々じゃないですか!」
「そんなことないですよ〜。」
「嘘よねそれ!せめて連れの奴みたいにもう少し申し訳なさそうにしなさいよ!!!」

 ノノミの言葉はもちろん大噓であり、巻き込む前提でこの場にワープした。(半分くらいはキリトの件でギスギスしているシノンたちを虐めたかったというのもあるが)。
 その目論見通りに事が運びニコニコとした面持ちだったノノミだが、ダークマイトに関してだけは神妙な顔つきを浮かべた。

「ですが気を付けてください。
 私が言うのもなんですが。あの男は話が通じません。
 それに、あの男はどうせアビドス高校に向かっていました。どちらにせよ貴方達は彼と戦うことになってましたよ。」
 ノノミらしからぬ言葉に皆の顔つきが変わる。
 そんな中ダークマイトの言葉が気になったユメは疑問を問いかけた。
 
「アビドスのヴィランって、どういう意味……」
「お前は羂索!
 そうか、羂索がいるということはやはりこのアビドス高等学校こそ諸悪の根源ということだな!」
 
 質問には答えず、ユメの姿を前にさらにテンションを上げるダークマイト。
 額に縫い目もなく言葉も雰囲気も大きく異なる梔子ユメが羂索でないことはわずかでも関われば分かりそうなものだが、ダークマイトにとってそんなものはどうでもいい。
 NPCのダースドラゴンの涙に気づかない男だ。どうせ倒すヴィランの仔細を気にする甲斐性など欠片も持ち合わせていなかった。
 その態度にユメの声が張りあがる。
 冥黒ノノミを前にしたセリカやキリトの凶行(冤罪)を聞かされたシノンと同様。アビドスに関わる話は彼女にとって無視できないことだった。

「答えて!
 ヴィランって悪い人のことでしょ!どうしてそんなことを言うの!」
「何を言っているんだい?
 悪い人なら俺の目の前に3人もいるじゃないか。」
 
 ダークマイトが指さす先には梔子ユメ、黒見セリカ、冥黒ノノミ。
 ヘイローの有無による真贋も、レジスターや令呪の有無もこの男には関係ない。


861 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:09:26 9MqVanPk0

「羂索などというヴィランを生みだした罪深き土地!
 そして同じような者が後2人!悪しきヴィランの因子は駆逐してこその象徴!
 羂索の謀りを潰すため!このゲームに巻き込まれた全てのものの思いを背負い!このダークマイトが綺麗に整地してあげようじゃないか!」
「……は?」

 あまりに身勝手な理屈を前に、ユメは馬鹿みたいに大口を開けて固まるしかなかった。
 もしここに居たのが本物のオールマイトであれば、会長の体を殺し合いの主催に利用されたアビドスの者たちのことを慮ることくらいはしたはずだ。
 だがオールマイトの精神性ではなく暴力を尊ぶダークマイトに、そんな真っ当な思想は持ち合わせていない。

 ノノミの言葉が文字通りの意味であることを、この場の全員が理解した。
 よくわかんないが羂索が梔子ユメの姿をしているのでアビドスを潰そう。
 短慮を通り越して身勝手極まる理屈を勝手に代弁された他の参加者はたまったものではない。

 「人の大切な場所を、馬鹿にすんじゃないわよ!!」
 シノンや美嘉が不快感をあらわにする中、頭の血管がブチブチ切れる音をさせながら黒見セリカが飛び掛かる。
 猫のように鋭い瞳孔で、狼のように少女は牙をむく。
 拾い上げたエイムズショットライザーにシューティングウルフプロフライズキ―を装填し引き金を引く。
 放たれた弾丸は大きく弧を描きセリカの元に舞い戻り、その弾丸を怒りと共に思いっきり殴りつけた。

「変身!!」
 『ショットライズ!シューティングウルフ!
"The elevation increases as the bullet is fired."』
  
 鳴り響く電子音と共にセリカの体に仮面ライダーバルカンの狼を模した装甲が纏われる。
 少女の変化に「ほほう。」と面白そうに声を上げたダークマイトだが、すぐさま隣の少女に命令を下した。

「それは仮面ライダーの力だね!
 ならばこちらもだ。りんね!変身せよ!」
「いや……嫌!!」

 言葉は拒絶しているのに、体は変身のプロセスを刻む。
 命れいじゅうによるダークマイトへの忠誠は、継続中だ。
 
『UNICON!』『THE SUN!』
『プロミネンスホーン! サンユニコーン!』
 
 ルルーシュが綾小路清隆に変身を促すのと同じ構図。しかし変身者の心情は真逆の状態で。
 意思に反してりんねの体が純白の錬金術師――仮面ライダーマジェードへと変わる。
 白い狼と白い一角獣。2体の仮面ライダーが真正面から拳をぶつけ合うが、その感情は対極の位置にあった。

「アンタもアビドスを潰そうっていうの!」
「違う……私は……!!」

 命れいじゅうでダークマイトに逆らえないりんねの言葉に力はない。
 どれほど弁明しようとも、彼女はアビドスにとって敵(ヴィラン)でしかない。

 激情を向けるセリカと言葉に詰まるりんねをよそに、同じく敵(ヴィラン)であるダークマイトは残る3人を誘い込む。
 自分の思い通りにいかない可能性を微塵も考えてない。
 傲岸不遜な顔が腹立たしいと、3人の意見が一致していた。

「そこの3人!君たちはどうやらアビドスのものではないようだ!
 このりんねのように私と共にダークマイト伝説を歩もうじゃないか!」
「え?無理ですが。」
「遠慮します。」
「自分の都合しか話さない貴方のような人、私は一番嫌い。」

 取り付く島もないと言わんばかりに、うてなも美嘉もシノンも異口同音に拒絶の意思を示す。
 3人ともこういう自分本位な男は相性が悪いのだ。ダークマイトと相性がいい人間がそもそも何人いるのかという疑問もあるが。
 眉間にしわを寄せシノンはカリスラウザーにAのカードをスキャンする。

「変身」
『Change』
「君も仮面ライダーかね。
 りんねといい仮面ライダーは強情な少女ばかりのようだな。」
 
 心底呆れたような態度。そんなダークマイトの一挙手一投足が癪に障った。
 複雑な感情を覆い隠すようにシノンの体が漆黒のカマキリを思わせる装甲に包まれる。
 同時に美嘉がエンジェリードのケミーカードを手にエンジェルマルガムへとその姿を変えた。
 既に変身していたマジアベーゼも含め、三者三葉に臨戦態勢。
 呉越同舟。というよりはたまたまやってきたカスのチンピラをぶちのめすことが優先したほうがいいという共通認識。
 異色の顔ぶれに同じくプテラノドンマルガムへと変身したノノミがニヤニヤとシノンに笑いかける。


862 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:10:20 9MqVanPk0

「なんだかんだ戦ってくれるんですねぇ。ありがとうございます。」
「別にアンタのためじゃない。
 セリカの味方になるって約束したから、アビドスを壊すなんて馬鹿なことを実行させるわけにはいかないのよ。」

 黒見セリカを助けたい。
 この殺し合いの指針を、シノンはそのように定めた。
 セリカにとって大切なアビドスは、シノンにとっても大切な場所。
 だが、今の彼女の感情はそれだけではない。
 
「それに……、ちょっと今は、何も考えずに戦いたい気分なの。」

 キリトが人を殺した。藤乃代葉という明確な犠牲者と3人の目撃者がいる以上、この事実は覆らない。
 キリトが偽物である可能性こそ示唆されたものの、ダークマイトの乱入で感情の置き所が見つからないままに戦いが始まってしまった。
 はっきり決着がつく前にエセヒーロー野郎が乱入したと言ったほうが正しいか。
 
 シノンはキリトを信じてる。
 だからといって心が平静を保てているわけではなく、かき乱された胸中は未だ収まらない。
 少しでも頭が動く状況になれば、キリトが凶行を成したという万が一を考えてしまう。本能が違うと叫んでいたし、本心から嫌だと拒絶していた。
 シノンの中の闘争心には、八つ当たりに近い苛立ちも多分に含まれていた。
 
「私も同感です。
 少し……心がざわついて仕方がないので。」

 そしてそれは美嘉も同じだと、シノンの隣に並びマルガムの顔の奥からダークマイトを睨む。
 シノンの人格が想像よりずいぶんと違い、マジアベーゼやユメとの会話で彼女の中に何か矛盾が見えてきた。
 殺意が消えない。そのことを自分は受け入れている。その2つを繋げる何かがあまりに美嘉には欠落していた。
 何かが間違っている。でもその何かを見つけ出すには、ダークマイトという男はあまりにも邪魔だった。
 ただそれ以上に、彼女の中の何かがここで戦うべきと叫んでいた。

「貴方、キリトの仲間の私と戦うことに抵抗は無いの?」
「ありますけれど。貴女と同じですよ。
 あの男はどちらにせよノノミさんを狙う。彼女には恩があるので、守るという形で私はそれを返したい。
 それが理由では、不足でしょうか。」

 もしかしたらそれはシノンと同じ。アビドスにいる誰かに対する仲間意識からなるものだろうか。
 ここに居るのは十六夜ノノミではないが、美嘉にとっては彼女こそがノノミなのだ。
 その言葉に仮面の奥でシノンは目を丸くし、思いもよらない発言にわずかに噴き出し。つられて美嘉も微かに声に出して笑う。
 互いに素顔が見えないままなのに、どこか拒絶していた相手の顔が初めてはっきり見えた気がした。
 
「充分ね。いつかは敵になるんでしょうけど、貴女のこと少しだけ好きになれそうよ。
 こんな形じゃなかったら、仲良くなれていたかもしれないのに。」
「私も同じ気持ちです。」
「涙ぐましい友情だが、ヴィランの企みを叩き潰してこその象徴!」
 
 そんな感情も、ダークマイトにはどうでもいい。
 右腕を黄金に光らせ少女たちに向かって殴りかかる。
 錬金の個性により肥大化した拳は、マルガムや仮面ライダーでさえ十分斃しうるものだ。
 
「させない!!」
 その言葉と共に、拳の前に躍り出たのは。
 仮面ライダーカリスでも、マジアベーゼでも、エンジェルマルガムでも、もちろんプテラノドンマルガムでもない。
 
 梔子ユメ。アビドス高等学校生徒会長。
 古代エジプトのような意匠の肩掛けバッグを背負い込み、その手にはスフィンクスのような模様の書かれた手のひら大のメダルを握りこんでいた。


863 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:11:37 9MqVanPk0
「殊勝なことだ、羂索自らその身を差し出しダークマイト伝説の一ページとなることを選ぶか!
 アビドスの大地ともども消し飛ぶがいい!」
「アビドスを酷い場所だと思われているのが私のせいなら謝る。
 私だってこんな殺し合いは止めたい!羂索のことは許せない!
 でも私の大切な後輩と、仲間と、学園を傷つけようとするのなら!」

 ジンガと同じ顔の写真家やこの場ではエンヴィーが用いる変身ベルト。
 それによく似た音声が、ユメの決意に呼応するようにメダルから響いた。

『スフィスフィ スフィンクス!!』
「貴方達は、私が止める!」
  
 しかしそれは仮面ライダーの力にあらず。
 キズナレッドと同じ世界から異世界に伝わり、エルフの守護者として伝えられる力。
 ユメに与えられたカバンの名を、アメンバッグルといった。

「戴天身!!」
『PATCH UP!!』

 変身のプロセスと同時に、周囲から無数のレンガがピラミッドのようにユメを囲う。
 ダークマイトのパンチはそのブロックに阻まれ、少女たちを傷つけることはかなわない。
 訝し気に見つめるダークマイトの前で、ピラミッドは解かれスフィンクスを思わせる装甲を纏う梔子ユメ――アメンがその姿を現した。
 太陽の森の守護者が、太陽の学園を守るために。
 その変身をもって役者は出そろった。

「変身するような輩ばかりじゃないか。ヒーロー気取りかい?
 まあいいさ、君たちを打ち倒すことで輝かしいダークマイト伝説の幕開けとしよう!」
 
 アビドス自治区、アビドス高校前の戦い。
 その耳ざわりな言葉が、幕開けの合図となった。
 誰がヒーローで誰がヴィランか分からぬままに、少女達と勘違い野郎の戦いの火ぶたは切って落とされた。


864 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:12:52 9MqVanPk0

 【エリアC-9/アビドス高校前/9月2日午前10時45分】

【シノン@SAOシリーズ】
状態:動揺(中)、冥黒ノノミへの警戒(中) 美嘉への警戒(小)ALOアバター
服装:いつもの服装
装備:バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
   カリスラウザー@仮面ライダーディケイド
   ラウズカード一式(♡A〜10)@仮面ライダーディケイド
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:このゲームに抗う。
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:グリオンからは今は逃げる
  追ってくるならカリスの力で迎え撃つ。
03:キリト…信じてるからね 
04:ノノミと美嘉を警戒
05:アンタはなんなのよ(ダークマイトに対して)
参戦時期:少なくとも死銃事件解決後
備考
※バトルホッパーの意志は精々便利なオート操縦機能程度に思ってます。
※グレネードランチャーM32@現実は弾切れになったので放棄しました。
※『ブルーアーカイブ』の世界観を共有しました。
※夜島学郎・亀井美嘉から聞いたキリトの行為は贋者だろうと考えています

【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:心身ともにダメージ(中)(怪我は処置済み)、魔王グリオンへの怒り(大)ダークマイト・九堂りんねへの怒り(大)
服装:アビドス高校の制服(リンチにあったため汚れ 大)
装備:エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
思考
基本:こんな殺し合いにはのってやらない
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
04:梔子ユメ……この人が……
05:シノンの仲間が人を殺すなんて、贋者に決まってる!
06:アビドスを潰すなんて、絶対に許さない!
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
 
 【梔子ユメ@ブルーアーカイブ】
状態:ダークマイト・九堂りんねへの怒り(中) 黒見セリカへの興味(大)
服装:アビドス高校の制服
装備:
令呪:残り三画
道具:お助けカード@Fate/Grand Order アメンバッグル&レリーフグリフバッジ(10種)@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
 ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索の目的を知る
01:私の姿をした。羂索……
02:ジークと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
03:ホシノちゃんもいるんだ……
04:アビドス高校に向かう、可能ならホシノと合流する
05:ノワルとアルジュナ・オルタは要警戒。
06:セリカちゃんアビドスの後輩なんだ!嬉しいな!
07:アビドスを傷つけるのなら、絶対に止める!
参戦時期:行方不明になった後
備考 ※ゲームに参加する前後の記憶が朧気です。 少なくとも自分が死んだような記憶はないです
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています
※お助けカードは残り2枚です

【柊うてな@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(小)、ダメージ(中) 美嘉・ノノミへの警戒(小)
服装:学生服/マジアベーゼのコスチューム
装備:トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:無益な殺生はしないが、魔法少女の輝くところを見たい
01:ノワルは恐ろしい奴だったけどそれ以上にいいもの見れてよかった♡
02:魔法少女にデレる悪役ムーブ……悪くないかも
03:どうしてあの3人が……。
04:アルジュナ・オルタ……。あまり味方になってくれそうな予感はしませんね。
05:ネタバレ。やめてください。
06:キリトの話、どうにも贋者っぽいんですよね
07:(ダークマイトに対して)なんですかアレは・・・
参戦時期:少なくともマジアベーゼ 夜蜘蛛の帳に覚醒後
備考
支給されたイノセンスは横山千佳に譲渡しました。


865 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:13:12 9MqVanPk0
【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:疲労(大) キリトに対する殺意(極大)左目損傷(眼帯装着) 自分の中の感情に対する困惑(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅(契約状態)@ダークギャザリング
 ソードスキル:星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)@HUNTER×HUNTER
 (継承スキル):幻妖と契約して力を得る能力@鵺の陰陽師
 未来の宝太郎の眼帯@仮面ライダーガッチャ―ド
 エンジェリードケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
令呪:残り二画
道具:香水@ダークギャザリング 、ホットライン
思考
基本:生きて帰る。黒の剣士を殺す。
01:あの黒い剣士は許さない。必ず殺す。
02:ゆうちゃん・・・・
03:ノノミと協力する。グリオンにつきキリトを殺す。
04:グリオンさん。羅暁みたいに怖い人のはずなのに……なんで怖くないんだろう。
05:キリトの仲間……思ったよりは良い人だけど。やっぱりキリトは許さない……なんで許せないのかな。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
 ※究極メカ丸 絶対形態は破壊されました
 ※月蝕尽絶黒阿修羅の呪いを体内に宿しています。普段は通常通りの思考・会話が可能ですが、キリトの姿を見たり激昂すると暴走し、気を抜くと他者が全てがキリトに見える状態です。
 ※左眼を開くことが出来ません。失明したのか時間経過で回復すのかなど具体的な状態については後述の書き手様にお任せします。
 ※代葉を殺したキリトが贋者である可能性に行き着きましたが、現状方針は変わりません
 
 【冥黒ノノミ(非参加者)@ブルーアーカイブ+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:享楽 グリオンへの信望(絶大)
服装:アビドス高校の制服
装備:
道具:ワープテラケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド
 ステータスタグ@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:頑張ってくださいね、美嘉さん
02:マジアベーゼに梔子ユメ……警戒すべき相手は多いですね
03:あのダークマイトって輩は何なんですか
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です

【ダークマイト@僕のヒーローアカデミア】
状態:正常
服装:オールマイトのシルバーエイジ時代のコス
装備:金の指輪と金貨@僕のヒーローアカデミア 
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(りんね)、浅垣灯悟のランダムアイテム×1 、ケミーカード(ザ・サン、ユニコン)@仮面ライダーガッチャード 、ハイアルケミストリング@仮面ライダーガッチャード 、ホットライン
思考
基本:象徴を引き継ぐ者として、このゲームを破壊して優勝する
01:りんねをヒロインとして引き連れる
02:象徴として参加者を導く
03:いざという時はりんねを――■■する
04:羂索を生み出した悪しき土地アビドスを破壊することで、ダークマイトの伝説の第一歩としよう!
05:抵抗する者が多い、致し方ないが象徴の力をもって倒すとしよう
参戦時期:本編、日本に襲来する前
備考
※本編での敗北前なので粗暴、ナルシスト、傍若無人の3つが合わさった自己顕示欲の塊かつオールマイトとは似ても似つかない全方位に迷惑しかかけていない秀逸な場違い野郎です。
※名簿のダークマイトを気に入り、名乗ることとしました。
※ルルーシュの演説は耳にしていません。
 
【九堂りんね@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:この先、全てを捧げてダークマイトに従い尽くす 動揺(大)拒絶(極大)
服装:錬金アカデミーの制服(ボロボロ)
装備:
令呪:残り三画
道具:
思考
基本:今後ダークマイトに従い尽くす。全てを捧げながら
01:いやだ。こんなのはいやだ。
参戦時期:冥黒王に殺害された後、意識をザ・サンへ移す直前
備考
※ 命れいじゅうの弾により、意識がある中、ダークマイトに全てを捧げて従い尽くします。
※ラウ・ル・クルーゼの放送と同時にNPCモンスターに襲われたため、名簿などチェックはできておりません。
※ルルーシュの通信演説も同様に耳にしていません。


866 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:13:48 9MqVanPk0
◆◇◆◇◆

 宇蟲王ギラを前に逃げるという選択肢は、学郎にもジークにもなかった。
 そもそも逃げられる未来が見えない。腰に携えた刃を数度振るうだけでアビドス高校ごとこちらを皆殺しにできそうだ。
 それほどまでに、その男の周囲には濃密な”死”があった。

 その姿に、 学郎は藤乃 双斧を相手に全霊の力を振るった鵺の様子を思い出し。
 ジークは過去最強の相手であった赤のランサーことカルナを思い出していた。
 前坂隆二や小宮果穂と比べ彼らが冷静でいられた理由は、限りなく近い相手を知っているという経験によるものが大きい。
 だからと言って2人だけでどうにかなる相手では断じてない。

「……貴方の仲間は、アビドス高校の外にいるんですよね。」
「……ああ。ここから10分とかからない場所にいる。」
「合流して全員で叩けば倒せますか?」
「この殺し合いが羂索の言うフェアな勝負なら、0ではないだろう。レジスターを狙うくらいしか俺には思いつかないが。
 だが最大限こちらに都合よく見積もっても、半分が死に残り半分が命からがらといった具合だろう。9割方全滅と見たほうがいい。」
「なら撤退はなしですね。隠れられるとも思いませんし。」

 ジークの推測に2人はうてなやユメとの合流を即座に放棄する。
 柊うてなの言うノワル級の怪物ならまだしも、彼女たちが加わったところで状況が改善されるわけはないだろう。
 外には手立てがない、となるの残された場所は1つしかなかった。

「アビドス高校に突入し、中にあるであろう”何か”で起死回生のチャンスを狙う。どうでしょうか。」
「俺も他に手が無いように思う。
 クルーゼの話をどこまで信じられるかはわからない、アビドス高校に運営へとつながる”何か”があるかさえ不明だが。何かがあるのなら武器や護衛するNPCなどがいるかもしれない。
 博打になるがそれしかない。そもそも視界が広すぎるこの場所では俺たちがあまりに不利だ。」

 アビドス高校には”何か”がある。
 羂索が梔子ユメの姿をしたという一点の理由で多くのプレイヤーが思い浮かべた可能性が、この状況を有利にする何かである可能性。
 蜘蛛の糸のような可能性だが、2人が生き延びるには他に方法がない。
 そしてその程度の可能性に縋るゴミを、宇蟲王ギラは認めない。
  
 「囀るな。
 貴様らごときが策を立てようと、俺を楽しませるには足りぬことなど既に知れている。」
 
 宇蟲王ギラにとって様子見の段階はとうに過ぎた。
 10人以上の参加者と相対したが、見どころがあるのは青い戦士ことトランクスくらいのもの。
 奴レベルの参加者は恐らく全体の1割にも満たない。残る9割は見る価値もないゴミ。
 期待もなく価値もなく、ゴミを見るような目でギラは刃を構えた。
 
 ぶん。という音と共にオージャカリバーが空を切る。
 赤黒い斬撃が水平に2人に向けて飛び掛かり、とっさにかがむことでどうにか避ける。
 斬撃の余波をもろにくらったアビドス高校の正門に深々と斬りこみが入り、道向かいの電柱や家屋まで真っ二つに裂けていた。
 邪悪の王からは逃げられない。背を向けようものなら真っ二つになるのは彼らの体だ。

 「俺が陽動をして20秒稼ぐ。
 その間に学園に入り傷を癒してくれ。回復のエナジーアイテムくらいあるだろう。」
 「回復できる支給品があります。
 10秒稼いでください。その後は俺が陽動を担当します。
 霊衣になれる俺のなら、致命傷じゃなければ一回は耐えられます。その方が生存率は高いはず。」
 
 時間がないと学郎の案に乗ることにして、ジークは刀を、学郎はデイパックから支給品をそれぞれ取り出す。
 正義実現委員会の自称エリートが使う味方だけを回復させる手榴弾。
 学郎がピンを抜き足元に転がすと同時に、ジークは足早に駆けだした。
 
「10秒だと?
 貴様らにそのような時間が遺されているわけがあるまい?」
 
 羽音を立てる虫見るような苛立ちを浮かべ、再度大きく斬撃を飛ばす。
 その斜線上、ホムンクルスは支給された日本刀を構える。それはジークの支給品であった。


867 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:15:01 9MqVanPk0
ジークに支給された斬魄刀 名を浅打。
 尸魂界に属する全ての死神が最初に手にし、己が魂を写し取ることで固有の斬魄刀へと姿を変える。
 支給品となっている千本桜も氷輪丸も、始まりはこの浅打から。
 本来長く寝食を共にする必要があるその工程は、支給品して調整されているためか馴染むまでの時間が格段に速い。
 ジークの浅打は、既に次の段階へ至っていた。

「洛陽へ至れ」

 解号 そう呼ばれる解放のための記号は自然に浮かび上がっていた。
 日本刀が光に包まれ、だんだんと鈍色の西洋剣へと変わる。
 その斬魄刀の名も、まるで初めから決まっていたかのようにジークには思えた。
 ジークの中で鼓動を続ける心臓。その所有者が持つ黄昏の聖剣。
 すなわち――
  
「幻想大剣(バルムンク)!」

 始解を果たした刃を振るい、ギラの斬撃とジークの斬撃が正面からぶつかり合う。
 本来の龍殺しの大剣ならば大軍宝具に分類されるが、写し見の斬魄刀であり令呪もないので威力は半分にも満たない。
        ・・・
 それでもギラのジャブを抑え込める程度には魔力が宿る斬撃でもあった。
 夜島学郎を吹き飛ばした斬撃も、その状態で放った魔力を帯びた一撃だ。

 両者の斬撃が空中でけたたましい金属音を奏で、対消滅する。
 同時に駆けだした学郎が、追撃を撃たんとその身を漆黒の霊衣へと切り替える。
 マクアフィテルに令力を乗せ放とうとしたその時だ。
 
「強い気配を感じて見てみれば、我が相手するに相応しい力の持ち主と見える。」
 アビドスの外壁を突き破り、天を衝く赤い巨体が校庭に突っ込んだ。
 闖入者に視線が集まる数秒のうちに、男の剛腕がギラにめがけて放たれる。
 男――豊臣秀吉は理解していた。
 黒き覇王――覇王十代とはまた違う、異質なほどに強き者。
 この男は秀吉でさえ警戒すべき、強者であると。

 並大抵の人間をちり紙のように吹き飛ばせる拳でも、ギラ相手には少々強力なパンチでしかない。
 だが逆に言えば、ギラをもってしても”強力”だと思える程度には、その拳は重く、熱く、強い。

「あの青い戦士ほどではないにせよ相応に手こずる手合いのようだ。石くれ程度の価値はある」
「この我を石呼ばわりか。
 不遜極まるその態度、命をもって贖うと知れ!」
「その言葉、そのまま返すぞ!」
 オージャカリバーで防いだ拳を強引に振り払い、三度ギラの刃が赤き斬撃を飛ばす。
 建物を切り飛ばせる斬撃を前に秀吉は回避するそぶりも見せず、堂々たる動作で拳を構え。殴り飛ばした。
 
「ふん!」
 エクス・アリスタルコスにて強化された拳にて秀吉は斬撃を弾き飛ばし、舞い散る砂埃を払いのけ、背後に視線を向ける。

「そこの童(わっぱ)どもよ。逃げるならば今のうちよ。
 貴様らではこの男の足元にも及ぶまい。」

 秀吉の言葉にジークと学郎は各々顔を見合わせ、示し合わせたように秀吉の傍に並び立つ。
 乱入もあって時間は数十秒稼げており、学郎の傷は戦えるレベルにまで癒えていた。
 それでも、2人は秀吉からしては弱きものだ。どう見積もっても陽介やスパナと実力そのものは大差ないだろう。

「なぜ逃げぬ。」 
「正面から勝てる相手ではないことは分かっている。
 だがこの男はあまりにも強すぎる、150人程度の死まで逃げたところで余命が数時間延びるだけだ。
 何よりこの男はいきなり学園に現れた、おそらく転移のような力がある。」
「ならば如何とする。」
「初めはアビドスに入りあるかもしれないアイテムなりNPCなりを利用して撃退するつもりだった。
 だが、貴方が居れば話が変わる。奴と正面から戦える参加者はこの場において貴方だけだ。
 足を引っ張るつもりは俺も彼もない、貴方も奴と戦うというのなら悪い話ではないはずだ。」

 恐れ知らずにも告げられる提案。己の武力を利用するなどいう不届き物は普段ならば先に叩きのめしていただろうが。
 今回は相手が相手だ、秀吉にしても少しでも戦力を確保しておきたい。
 将来的な話でも黒鋼スパナや花村陽介は手勢に加えられなかった分、2人を引き込める可能性があるのは秀吉にとって好都合だった。


868 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:15:40 9MqVanPk0

「そちらの小僧も同じ意見か?」
「俺はまだそこまで考える余裕はありません。
 ですが……」

 夜島学郎には、ジークのように打算あっての行動とはまた違う感情が渦巻いていた。
 1人殺して1人失った、その事実をまだ完全には飲み込み切れておらず、体以上に心の傷は深刻だ。
 だからこそ、そのような傷を誰かに与えるような無秩序な殺戮を、許せないという思いが胸の内に煮えたぎる。
 一挙手一投足で人を殺し悍ましいほどの死を撒き散らす目の前の男は、キリトとは比にならないほどに危険な男と学郎は見ていた。
  
「あの男はいるだけ他の参加者を危険にさらす。そういう相手ということは分かります。
 あいつはここで倒さなきゃいけない。その一点は彼と同じです。」

 その答えに満足したのか、「ふむ」と納得したように秀吉は頷いた。
 スパナの死を受け入れられない陽介と比べ、己が手勢としての見どころはあるだろうと。
 
「名を聞いておこう。我が豊臣軍の新たなる家臣たちよ。」
「貴方の家臣になった覚えはないが……。」
「豊臣……って貴方が豊臣秀吉!?イメージと全然違う!」

 予想外のビッグネームに学郎は思わず2度見する。
 スパナや陽介相手にも似たようなことがあったなと、いったい彼らの世界で自分がどのように伝わっているのか秀吉は少し気になったが。
 それを聞く余裕が今この時点の彼らにはない。
 
「ジーク。」
「夜島学郎です!」
「ジーク!そして学郎!
 足を引っ張るようであれば遠慮なく切り捨てる!
 この覇王に肩を並べるというのなら相応の覚悟を持ち、己が身は己で守ってみせよ!良いな!」
「了解した!」「はい!」
 
 バルムンクとマクアフィテルをそれぞれ構えたジークと学郎。
 その矢面に立ち豊臣秀吉はその覇気を溢れ出す。
 黒き覇王とはまた異なる強者を相手に王の腕がはちきれんばかりに膨れ上がった。
 
 「石くれ1つに塵2つか。」
 対するギラも改めて刃を構える。
 塵がどれだけ蛮勇を示そうが、わずかばかりにマシな石くれが加わろうと己が勝利に変わりはない。

「俺はギラ。宇蟲王ギラ。
 この場にいる他の塵ともども、この俺手づから掃除してやろう。」

 アビドス高校 その校庭。
 災害にも等しい戦いの幕開けは、そうして静かに立ち上がった。
 
 【エリアC-9/アビドス学園内部/9月2日午前10時45分】

【豊臣秀吉@戦国BASARA2】
状態:健康
服装:いつもの服装(籠手の部分は別)
装備:神旺エクス・アリスタルコス@グランブルーファンタジー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:天下統一の邪魔はさせぬ
01:異界の人材や技術、兵器は出来ることならこの手に収める。
02:あの黒き覇王とは何れ雌雄を決する。
03:陽介、我が軍門に下るというなら拒みはせん。
   だがいつまでも奴(スパナ)の死に、弱さに執心するなら要らぬ。
04:此処で豊臣軍を築いてテレビ局のルルーシュを倒す。
   だがそれには情報を集めねばならぬ。
05:あの光(サン・ライズ・ビーム)のような超遠距離攻撃も警戒はしておくか
06:赤き邪悪の王。これほどまでの手合いがいるとはな
参戦時期:姉川蹂躙戦の後
備考
※エクス・アリスタルコスによって攻撃力が強化されてます。
※イチローのサン・ライズ・ビームは周囲一マス分ぐらいには目視できるようです。

【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:疲労(大)ダメージ(小)代葉の死・キリト(Poh)を殺したことへの動揺(中)
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:クラスカード(バーサーカー)@Fate/kaleid liner
 マクアフィテル@SAOシリーズ
 魔女箒@転生王女と天才令嬢の魔法革命 セイなる手榴弾×2@ブルーアーカイブ ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:生きる 生きて自分のすべきことを為す
01:キリトを殺したこと、藤乃さんを死なせたこと。俺が全部背負うよ
02:キリトの仲間には会わなきゃ
03:宇蟲王ギラはここで倒す
参戦時期:43話より後
備考
 ※精神仮縫いは解除されました。
 ※藤乃代葉の支給品を回収しています。


869 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:16:04 9MqVanPk0
【ジーク@Fate/Apocrypha】
状態:健康
服装:本編の服装
装備:浅打@BLEACH→幻想大剣(バルムンク)@ロワオリジナル(BLEACH+Fateシリーズ)
令呪:残り三画(竜告令呪)
道具:缶コーヒー@現実(残数2本)
 ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:可能な限り被害を少なくゲームを終了させる
01:大聖杯はどうなっているのだろうか...
02:ユメと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
03:ノワルはどこかで倒しておく必要があるだろうな
04:アビドス高校に向かう。可能なら小鳥遊ホシノと合流する
05:すまないうてな……。マジアマゼンタの正体については考えないことにする。
06:宇蟲王ギラは秀吉がいるうちにここで倒す
参戦時期:本編終了後 
備考 ※FGOコラボイベントのイベントの記憶も有しています
 ※時系列的には邪竜の姿が正しいですが、ホムンクルスの姿をしています。本人は羂索の制約によるものだと考えています
 ※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています

【宇蟲王ギラ@王様戦隊キングオージャー】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、トランクスへの怒りと期待、人間態
服装:王の装い
装備:オージャカリバーZERO@王様戦隊キングオージャー
令呪:残り三画
道具:ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:塵芥ども悉く捻り潰し最後の勝者となる。
01:青い戦士(トランクス)を敵と認め殺す。
02:他の雑魚共は殲滅する。
03:別次元の自分も殺す。ギラという名の王は一人でいい。
04:最後の勝者の証を得たらゴミ(羂索)とカス(クルーゼ)とチリ(茅場)も片付ける。
05:代わりの下僕共は歩けば幾らでも付いて来るだろう。
06:赤き王か、青い戦士ほどではないがただの塵ではなさそうだ
参戦時期:ヤンマたちを処刑しようとしてキョウリュウレッドと戦闘になった直後。
備考
※あらゆる昆虫生命体を支配する力はある程度制限されていますが、発動自体は問題なく行えます。
※奪取した千鳥@刀使ノ巫女をバタフライオルフェノクに持たせました。
※宇蟲王の転移能力で短距離であればワープ可能です 距離や回数には制限があります。

◆◇◆◇◆

「これはこれは、面白いことになったな。」

 アビドス学区、アビドス高校すぐそばの民家。
 砂だらけのサッシがある窓から入る昼日中の明かりにグリオンの姿が照らされている。
 古びた木製の椅子に腰かけ隣に立つアヤネが注いだ紅茶をすする。どこか優雅ささえ見える所作にて、双眼鏡でグリオンは2つの戦場を見つめていた。

 「アビドス高校の側に現れたあの赤い青年。流石の私も無策で奴と戦う気にはなれない。
 魂の質……いや、密度とでもいうべきか。ただの人間とは決定的に違う。人の身に何を取り込めばああなるのか興味が尽きないね。」

 追い回した黒見セリカや因縁ある九堂りんねよりも、グリオンの興味は宇蟲王ギラへと向いていた。
 錬金術師としての血が騒ぐのか、人間を捨て力を得た者としての興味だろうか。
 未知との遭遇を楽しむグリオンに「失礼ながら」と前置きしたうえでアヤネは尋ねた。
 
「学園外の戦場ではノノミ及び亀井美嘉が交戦していますが、加勢いたしますか?」
「その必要はないが、このままただ見ているというのも面白みに欠ける。
 折を見て私も出るが、その前に1つ君に仕事を頼みたい。
 大丈夫、子ネコ2匹追いかけるより簡単だとも。」
「……。」
 
 嫌がらせのようにほじくり返される失態にセリカとシノンを取り逃がしたことを否応なく思い出し胸がかき乱されるも、もはや彼女らに手を出す余裕は無い。
 屈辱に身を焦がされるアヤネの前で、グリオンは続けた。
 
「これほどの顔ぶれが揃ったんだ。死者の1人や2人出て当然。
 君には可能な限りその死骸を回収してほしい。」
「かしこまりました。
 優先する者はおられますか?」
「あの異質な赤い青年は最優先だが……それ以外ならばそうだな。」
 
 顎髭に手を当て、ゲージに並ぶ宝石を見つめるように2つの戦場を眺める。
 彼が本来の世界で錬金術師たちを元に冥黒のデスマスクを生み出したように、人の骸は彼にとって素材の1つ。
 ただの人間どころか錬金術師さえ上回る素体が、この場にはいくらでも転がっているのだ。


870 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:16:23 9MqVanPk0

 「学園側なら夜島学郎、刀持つ白い少年。ノノミたちの側なら破廉恥な小娘とあの口うるさい男。
 あの4人は私の力と親和性が高そうだ。あらゆる意味でいい素材になる。
 当然、他のものでも問題ない。アヤネが手づから始末したっていいが、あくまで目立たないように。」

 幻妖の祖の力を宿す陰陽師 夜島学郎。
 魔術により生み出されたホムンクルス ジーク。
 錬金術とは別種の異能で怪物を使役する魔女 マジアベーゼ。
 九堂りんねを手玉に取るほどの力を持つ個性社会の錬金術師 ダークマイト。
 
 グリオンの指定した面々は、参加者の中でも殊更一癖ある異能を持つ者。
 グリオンがその力を取り込めば、殺し合いを抜ける大きな助力になるはずだ。
 それを求めるということは、グリオンは今以上の力を欲しているという事だろうか。
 
(グリオン様が成長を望まれている。
 ならば私も、その誇りに傷をつけるような真似は見せられん。)
 
 無様に死んだホシノの後追いにはならないと、己の気を引き締めムーンマルガムへと姿を変えるアヤネ。
 影に溶け込み立ち去ろうとしたアヤネに、グリオンは思い出したように告げた。
 
「そうだアヤネ。1つ言い忘れていた。
 九堂りんねだけは殺すな。」
「分かりましたが。理由を伺っても?」

 九堂りんねはグリオンにとって因縁ある相手の1人だが、一ノ瀬宝太郎やギギストの方がよほど警戒すべき相手だし。あの場においては群を抜いた強者という訳でもない。
 それでも興味を持つのはなぜだろうか。
 影の中から響く問いに、グリオンはアヤネに向けたよりもなお悪意ある顔を浮かべた。
 
「彼女の顔が苦痛に歪む様を、また見たくてね。」

 溺れた子犬でも見るような憐憫と嘲笑だけが、魔王の答えには宿っていた。
 
 【エリアC-9/アビドス高校前/9月2日午前10時45分】

【魔王グリオン@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、冥黒のアビドス対策委員会を率いる
服装:いつもの服装
装備:金色のルービックキューブ@仮面ライダーガッチャード 心刀・無垢@SHY-シャイ- ドロップ品1つ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、テラー世界線のシンシアリティ@ブルーアーカイブ、ガッチャードローホルダー@仮面ライダーガッチャード、ライドケミーカード(ヨアケルベロス)、双眼鏡@現実
思考
基本:このゲームを利用して目的を達成する。
01:まずは悪意を振りまき、抗う者たちを蹂躙する。
02:アビドス高校か。別の歴史の一ノ瀬宝太郎共々絶望を見せてやろう。
03:いずれホシノを仕留めた連中もじわじわと嬲り殺す。
04:キラ・ヤマト…惜しかったが、絶望と悪意を振り撒いてくれるだろうと期待。
05:ギギストの賢者の石を手に入れ、さらなる力を手に収めたいところだ。
06:一先ずはアビドスへ、向かう参加者も多いだろうしな。
07:亀井美嘉、ノノミが言うだけはあるな。私の役に立つのなら歓迎しよう。
08:アビドスも随分混迷を極めているな、どう立ち回るか
参戦時期:少なくとも本編時間軸にドレットルーパー軍式を送り込み始めた後
備考
※■■■の意■に肉体を■■■られています。
※アヤネ(デスマスク)をムーンマルガムに変身させたうえでセリカたちを追わせました。
※ホシノ(デスマスク)を処分しました。
※ノノミ(デスマスク)をプテラノドンマルガムに変身させました

【冥黒アヤネ(非参加者)@ブルーアーカイブ+仮面ライダーガッチャ―ド+ロワオリジナル】
状態:任務失敗による屈辱 グリオンへの信望(絶大)
服装:アビドス高校の制服
装備:
道具:ネミネムーンケミーカード@仮面ライダーガッチャ―ド 
思考
基本:グリオンの望みを叶える
00:グリオンと共に悪意を振りまく
01:黒見セリカと水色の女を見逃した失態は必ず挽回する
02:亀井美嘉、グリオン様の役に立つことを期待する
03:骸の回収……今度こそ不備なく成し遂げねば
備考
※魔王グリオンが生み出した錬金人形です


871 : 幕間:かつて生徒だった英雄たちへ(後編) ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:16:42 9MqVanPk0
【NPC紹介】

 おおさそり@ドラゴンクエストⅠ
 黄色いサソリのモンスター 通常攻撃しか攻撃パターンがないがそれなりに固い

【支給品紹介】

 アメンバッグル&レリーフグリフバッジ(10種)@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
 ・梔子ユメに支給
 太陽の森に伝わる伝説の戦士、アメンへと変身するカバン型の変身デバイスとメダル
 メダルごとにレリーフ(=フォーム)が変わり、その能力が変化する
 異世界の変身アイテムの例にもれず騒がしい

 セイなる手榴弾@ブルーアーカイブ
 ・夜島学郎に支給
 ちょっとエッチな補修授業部の学生が使用する手榴弾で、味方だけ回復できるという優れもの
 1つの支給品枠に3つ用意されており、うち一つ使用済み。制限により回復量は全快にまでは至らないが戦える程度には回復できる

 浅打@BLEACH→幻想大剣(バルムンク)@ロワオリジナル(BLEACH+Fateシリーズ)
 ・ジークに支給された浅打が始解へと至ったもの
 性能としてはFateシリーズの幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)の出力を落とした代わりに魔力消費が少なくなったようなもの。
 バルムンクが持つ竜の性質を持つ相手に対する特攻も有している。
 令呪使用時は本来の幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)に限りなく近い威力を持つようになるほか、あくまで斬魄刀であるため虚など霊的な相手にも有効な武器となる。


872 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 21:16:57 9MqVanPk0
投下終了します


873 : ◆mAd.sCEKiM :2025/03/23(日) 22:47:48 ???0
皆さま投下お疲れ様です!
>>830の予約にアスナ、秋山小兵衛を追加して延長します。


874 : ◆ytUSxp038U :2025/03/23(日) 23:00:34 aGOZGimU0
皆様投下お疲れ様です

アンク、十条姫和、前坂隆二(リュージ)、トランクス(未来)、神戸しおを予約します


875 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/23(日) 23:31:49 9MqVanPk0
wikiにて記入し忘れていたアイテムの情報を修正しました


876 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/25(火) 23:57:50 bDWO3lhU0
皆さま投下お疲れ様です!
投下します。


877 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/25(火) 23:58:12 bDWO3lhU0
ほどほどに愛しなさい。長続きする恋はそういう恋だよ
ウィリアム・シェイクスピア










禪院家。
優秀な呪術師を多数輩出している名門かつ呪術界御三家のひとつ。
その実家がこのI-3に設置されている。もっともこの禪院家は真贋どちらに属するかは分からないが。
徳川家康達がバルバトス討伐も兼ねて北上した後、再び無人となっていた屋敷に二つのグループが集結した。

☆彡 ☆彡 ☆彡


878 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/25(火) 23:59:25 bDWO3lhU0
禪院家 〜廊下〜

「それにしても……立派な日本屋敷だね」
「そうね……」
「ッ!?二人とも、人の気配がする。気をつけて!」 「!!??」

水族館を後にした3人は、当初の予定通り、キリトの家へ足を運んでいた。
その道中、【禪院家】なる家の記載がされていたため、水族館のように探索の意味も込めて立ち寄ったのだ。
庭つきの大きい禪院家の日本屋敷に圧倒されつつ、内見のように探索していると、ニコルは自分達以外の気配に気づき、二人に忠告する。
サチとちひろもニコルのただことではない口調から女子モードから一気に戦闘スタイルへ構える。
結果として戦闘にはならなかったが。

「安心して。私達は乗ってないわ」
「そうです。シノアちゃんと愉快な仲間達です」
「おい、勝手にテメーがトップになってんじゃねぇよ」
「そうね〜〜、名乗るならネビュラマン(ヒーロー)ご一行よ♪」

ニコル達とヒーローご一行が邂逅した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

禪院家 〜大広間〜

ニコル達とピルツ達。幸いにも互いに対主催側だった。
そこで自己紹介も兼ねて情報を交わし合った。

「ピルツさんたちの話を総合するとどうやら、相当な数の世界が巻き込まれているようですね」
「そうね〜〜。だけどネビュラマンを知らない世界があるなんてほざく患者がいたら生前の私だったら、え?もしかして薬中(ラリってる)?と診断をくだしてしまうわ」
「でもこの状況は薬中(ラリってる)ではありませんよ」
「ええ。悪夢ではなく現実。私達がやることは一つだわ」
「ああ!羂索達をぶっ飛ばす!……だな」

「な……何だかスケールが大きくて実感がわかないね」
(まるで、ヨンスとかが好きそうな設定みたいな状況だ……)

「うん……そうだね」
(早くキリトに……会いたい)

「安心しなさい。アタシは命を諦め……」
 「安心しなさいな、ネビュラマン(ヒーロー)の名にかけて、貴方たちを……」

「「……」」

「あ、あの……どうかしましたか?」

二人を安心させようとヒーローとして声をかけていたが、サチをじっと見つめるピルツと孔富。
視線に困惑するサチ。

「……いいえ。高校生(コーボー)の青春に呆気にとられただけよ♪」
「ええ。眩しいわ」

ニコリと笑顔で応えるヒーロー二人。

「「……?」」

サチとちひろは?といった風に互いに顔を見合す。

「……くす」

それをNPC柊シノアは意味深に笑みを浮かべた……

☆彡 ☆彡 ☆彡


879 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:01:12 UgzA29aw0
禪院家 〜居間〜

「少し探検しませんか?」
「「「探検?」」」

シノアの提案にサチとちひろと流子は首を傾げる。

「はい。どうやら3人の話し合いはまだ時間がかかるみたいですし」

あれから、ニコルとピルツ、孔富の三人は今後について話し合いを始めた。
その間暇を持て余す4人(一人はNPCだが)
せっかくなので、待っている間、親睦を深めようとサチ・ちひろ・流子・シノアは居間にて場所を移動して女子会を開いていた。

女子が集まって話すトークと言ったら恋バナ。
サチのキリトトークを中心に親睦を深めた。(他にはちひろの歴史トークに流子のタイマントーク)
やがて、話が一段落つくと、シノアが3人に提案したのであった。
シノア曰くこの禪院家は広めの日本屋敷。こういう場所は大抵何か隠し部屋などがあるのが定番。
もしかしたら、お宝があるかもしれないと。

「……おい。なんか企んでねぇよな?」
「何も企んでなんかいませんよ?」

突然のシノアからの提案。
流子の疑念にシノアは顔色替えずに答える。

「うん。探検してみよっか!」「そうだね。何か見つかるかもしれないし」

サチとちひろはシノアの提案に乗った。
ニコル達はまだ情報交換や考察で話し合っている。
確かに恋バナも一段落したし、自分達も何かできることをしたいと。

「まぁ……ただ待ってるのも私の趣味じゃねぇしな」

シノアに依然として睨みつけるが、現状、出来ることはほかにない。故にシノアの提案に乗った。

「それじゃあ、探検しよっか!流ちゃんにシノアちゃん」
「おう」「ええ」

※ちなみに女子会を経て
        ちひろ    サチ     流子      シノア
ちひろ    私      サッちゃん  流ちゃん シノアちゃん
サチ     はとっち     私     流ちゃん シノアちゃん
流子     ちひろ     サチ     私      ガキ
シノア    はとっちさん サチさん  貴方    シノアちゃん

☆彡 ☆彡 ☆彡


880 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:01:23 UgzA29aw0
禪院家 〜禪院家忌庫〜

「それじゃあ、開けるですよ?」

あれから屋敷を改めて探索した4人は、物々しい通路を発見し、奥へ歩みを進めた。
すると、他の場所とは明らかに異質な扉がそびえ立っていた。
扉に錠がかけられていると、シノアは言葉と同時に鍵を四鎌童子で破壊する。

ゴゴゴゴゴ

重い鉄扉が開く。
通路を歩く。歩く。歩く。
するとやがて人影が見えた。
片膝を立てて座っている人影が。
人影の正体はNPC。

禪院扇。

禪院家26代当主になれなかった男。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ちさと!サチ!逃げろ!!」

目の前の男の存在を察した瞬間、流子はすぐさま2人に逃げるよう声掛けをした。
しかし、それは一歩遅かった……

――ドサッ…!!

「サ……サッちゃん!?」

地に伏し、血を流すサチ。
ちひろは顔面蒼白になりつつサチの身体を揺らす。

「はとっち……逃げて……」

その言葉を最後にサチの意識は落ちる。

「はとっちさん。逃げないと死にますよ?」
「うるせぇ、ガキは黙ってろ!」

この期におよんで、態度が変わらぬシノアに流子は怒り怒鳴りつける。
だが、今はシノアではなく扇(男)
すぐさま視線を変える流子。

「何故参加者が私ではなく貴様らだったのか知っているか?」

「知らねぇよ!」

流子はサチを切り捨てた扇へエクスタスで対処しようとする。
……が

「それは、貴様らが数合わせの贋物だからよ」

「ち……くしょう」
(鮮血があれば……・あんな男に私が!)

扇の言葉と同時に流子も斬り捨てられる。

「ひっ!」

ちひろは逃げ出してしまう。
だが、そんなちひろを誰も責めはしない。
それが、なおさら、ちひろを責め立てる。

☆彡 ☆彡 ☆彡


881 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:02:59 UgzA29aw0
はぁ……はぁ……いった!

足がもつれて転ぶ。
膝から血が流れる……

「痛い……」
(痛いなんて言っていられないよ!早く、ニコル君やピルツさんたちに知らせないと!!)

そう、ちひろは焦っていた。
このままだと、サチと流子が■されてしまうと。
だが、足は痛みと恐怖のためか動かない。

「ど……どうして!?」

どどどどどど、どうしよう。
ちひろは困惑する。
しかし同時に別の感情が大きく膨れ上がる。

というか、何だかムカついてきたな……

何だよ、数合わせの贋物って……

そもそも勝手にこんな殺し合いにまきこまれて迷惑にもほどがあるよ
9月の演奏会に向けてこっちは夏休みを練習に捧げていたんだよ!!
ムカムカしてきたな……

「……よし」

ちひろは意を決すると支給品を取り出す。
このままでは、助けを求めても間に合わないだろう。
なら、支給品に賭けてみる。
根拠はないが、この支給品にシンパシーを感じたからだ。
自由というロック魂が。
そして、口にする。
不思議と言葉はスラスラと出た。
夏休みの自主練の効果だろうか。
それともこんな理不尽な目の元凶となる羂索達への怒りか
鳩野ちひろのロック精神が輝きを増す!


882 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:03:30 UgzA29aw0
素に銀と鉄
  礎に石と契約の大公
        降り立つ風には壁を
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)
 閉じよ(みたせ)
  閉じよ(みたせ)
    閉じよ(みたせ)
      閉じよ(みたせ)
繰り返すつどに五度 ただ、満たされる刻を破却する ――――告げる
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ 誓いを此処に 我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

うう……やっぱり無茶しちゃったな。
気持ち悪い……だめだ、ここで気を失っちゃ!
伝えないと……

「た……すけて」

魔力を宿さぬ体。
必死に唱えていたためかその言葉を最後にちひろも意識を落とす。
その言葉に――

「うん、わかった!」

二コリと承諾した。
そう、ちひろの支給品により英雄がこの場に顕在した。


883 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:03:57 UgzA29aw0

                   . . : '''""´ ̄ ̄ ~"'' : 、
                   . . : : : : : : __ : : : : : : : : : \_
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       /:i:i:i/: : :.|.:/: : : : : : : :\ : : :\ : : \  \: ⌒\: : \:i:i:\
       `¨⌒ア: : : :.|: : : : : : : : : :. :./⌒`\_;,,;_\⌒\: : : :. :.|:`、 ̄
       //: : : :..:|: : |: : |:\:. :. :. :.| \xや苅^ト \、 : : : ト |: 丶
      /:i:i:|:. :. :. :..|: : | ''´⌒ \: : :.| ノ 癶Jvリ |:. :. :. \: : :|: :|: : :`、
     /⌒\|:. :. :. :..|: : : :yセ灯沁\ |     '"´ |: : : : |: : \|: : : : : :`、
           |: /.:. :...|: : |:. :.|  Jツ        |/|: : 八: : : : :.Λ|\ `、
           |/ .| : :|\|\ト、    、        |: |: / : : : : : :/:ハ  \:、_
          |   | : :|: : : : : :Λ     -  '’   /ハ:|/ : : : :/ :/|Λ|"´ ̄/
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.         __|/レ: : :|: |: : Λ| \(ニニ〕_,斗>  |: : /|/ :|′:|    ⌒>
          ⌒/ |: : : |: |: / \  「二二二>厂|: /: : : : :/   、 <´"''   、
          <   |Λ: |/|/  ┌ <ニニニニ<|:..:.|/ : : : イ  \_\⌒`  / 丶
          / >  |: 厂   ノ ノ   `¨´   /|: : : .{:. :/  ト-\     /  |
.         〈    ̄ノ |/     く         |:..:|: /⌒:〉    |      /   |
          \  ̄⌒\   <\__,、ィi八: : : : :./^\\|           |__
          \   ア    (////////{: :\:/∨   \ ___,、彡          /!
           「^  \イ⌒ヽ| ///////Λ : : |: : : |__ /   ̄         Λ|
         __ノ_,.     \/ ///////// |~^'ヽ: : : : :K               \
            }         /ニ\////////|_: : :\_/: :\--、    ___         \
          /      /ニニ//>、////////{__: : : : }: : |--、 /:i:i:i:i:i\      \
        /        /{ニニニ{//ニニニニニニニニ{: : : 二=- r-- /i:i:/⌒^           \

ロック(自由)を愛する者の前に大空(自由)を愛する英雄が。

☆彡 ☆彡 ☆彡


884 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:04:29 UgzA29aw0
!!

何だ…?

体が覚えている
正確には元である体だが
忘れるよう努めたあの

恐怖

術式開放 「 焦眉之赳 」

いいだろう!!この手で 骨の髄まで 焼き尽くしてくれる!!

来い!!! 数合わせの出来そこない!!!

それが、NPC禪院扇の最後であった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


885 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:06:53 UgzA29aw0
禪院家 〜座敷〜

「というわけでボクの名前はアストルフォ!シャルルマーニュ十二勇士が一人。クラスはライダー!よろしくね♪」

「「「「……」」」」

突如現れた英雄に3人は唖然とする。
が、サチと流子にちひろの様子をみると、ピルツと孔富はすぐさま3人を治療しようと動く。
そこは流石、ヒーローと世界的名医。適切な処理で最悪の事態は免れた様子だ。

「サチとチヒロはどうですか?」
「大丈夫。チヒロは貧血を起こしただけ。そしてサチだけど、この子が着ていた鎧が致命傷を防いでくれたわ」
「不良少女(レディース)の方も無事よ。このスキル……私と相性抜群ね♪」
(むしろ、傷より……やっかいなのを負ったかもしれないわね……)

「……よかった」

ピルツの診断にホッとするニコル。

「ん……」

ちょうど、タイミングよく目覚めたちひろ。

「あ……貴方は…」
「よかったーー!生きてるよーー!!」
「ちょ!?」

アストルフォはちひろを生きていることに安堵すると勢いよく抱きつく。
ちひろは!?!?といった様子。

「そうだ!サッちゃんと流ちゃん。それとシノアちゃんは!?」
「ちょっ!?まずは落ち着きなさい!」

かくかくしかじか

「よかった……二人とも本当に無事で」

ちひろは顛末を知ると、心の底から安堵した。

「えっと……2人を助けてくれてありがとうございました」
「ううん!マスターを守るのがサーヴァントの役目だからね」
「よろしくね!マスター!」
「う…うん!よろしくライダー!」

ここに自由を愛するマスターと同じく自由を愛するサーヴァントのペアができた。

一方……

「おい、ガキ」
「?なんですか」
「お前……あのNPCを使って私達を殺そうとしたんじゃねぇよな?」
「……そういうの下種の勘繰りというそうですよ?」
「ッ!!」

結果的に今回の戦闘はシノアの探検の提案から始まった。
故に流子の疑念は当然、NPCである柊シノアに向けられる。
だが、シノアは流子の問いの真意に気づいているのかいないのか、相も変わらずといった返答。そんなシノアののらりくらりといった返答に流子はシノアの襟首を掴み、持ち上げる、

「そうやって、子どもに対して恥ずかしくないんですか?」
「あ゛あ゛あ゛!?」
「確かにシノアちゃんの提案で命の危険がありました。ですが、ちひろは結果的にサーヴァントを手にしました。あの羂索が口にしたサーヴァントを」
「本来、シノアちゃんの世界にはサーヴァントはいないので、その強さを知る由もありませんが、このシノアちゃんはNPCです。なので、多少は情報を持ってます。サーヴァントは仮面ライダーに匹敵する戦力です」
「つまり、この集団で貴方は下から2番目でしょう」
「流子。落ち着きなさい」
「シノアも挑発と受け取られても仕方がないわよ?」
「そうですね。大人げなかったです。苛つかせてごめんなさい」
「……チっ!」

ペコリとシノアは流子に頭を下げる。
流子はいまだ苛ついた様子だが、シノアを地面へ下す。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「それじゃあ、出発しましょうか」

一悶着があったが、無事に禪院家を後にすると、一行は隣のエリアI-4へ足を運ぶ。

キリトの家まで後少し。


886 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:07:41 UgzA29aw0
【エリアI-3/禪院家/9月2日午前9時】

【ピルツ・デュナン@SHY-シャイ-】
状態:疲労(極小)
服装:ヒーロー姿
装備:転心輪@SHY-シャイ- 、斬魄刀:肉雫唼@BLEACH
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。ヒーローとして手の届く人たちを助ける。それを終えたら、
   柊の闇を治療する。
01:怪獣医(孔富)の更生の行く末を見守る、更生させる。相棒としても先輩としても頼りにしてる。
02:病院へ向かいつつヒーローとして行動する
03:柊真昼に出会ったら救済(すく)う
04;当面の間だけニコル達と同行する
05:不良少女(レディース)大丈夫かしらね……
参戦時期:74話
備考
互いの世界について簡単に知りました(キルラキル、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました
ニコル達と互いの情報を交わしました。
サチの精神的不安定に気づきました。


887 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:07:55 UgzA29aw0
【纏流子@キルラキル】
状態:疲労(極小)、負傷(中)、苛立ち(小)
服装:赤いジャージ
装備:万物切断エクスタス@アカメが斬る!
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らねぇし、あの羂索とかいうやつはぶっ飛ばす
01:鮮血がいてくれたら探すのは楽なんだが……
02:鬼龍院皐月と決着をつけるのは元の世界に戻ってからだな
03:マコ……私と再会するまで死ぬんじゃねぇぞ
04:病院へ向かうか
05:柊真昼……ったく、どんなつらしてるか会うのが楽しみだぜ
06:くそっ!私は……弱い!!
07:当面の間だけニコル達と同行する
参戦時期:14話、鮮血の断片を取り戻しに大阪に向かう最中
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、忍極)
シノアから柊家について簡単に知りました
ニコル達と互いに情報を交わしました。

【繰田孔富@忍者と極道】
状態:疲労(極小)
服装:医師の服装
装備: ウルトラメダル@ウルトラマンZ、 ソードスキル:マチ=コマチネの念糸@HUNTER×HUNTER
   ソードスキル:ウルトラマンゼット@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:救済(すく)う。お兄ちゃんに怪獣役譲っちゃったから、今度は私がヒーロー役ね
   そして、これの後は、柊家に襲撃(カチコミ)
01:短い間だけれどよろしく頼むわね、レディに不良少女にシノア
02:あの兄弟もいるのね……今回の私はネビュラマン(ヒーロー)役だから共闘したいわね
03:柊真昼にであったら救済(すく)う
04:当面の間だけニコル達と同行する
参戦時期:死亡後
備考
互いの世界について簡単に知りました(SHY、キルラキル)
シノアから柊家について簡単に知りました
ニコル達と互いに情報を交わしました。
サチの精神的不安定に気づきました。


888 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:08:14 UgzA29aw0
【サチ@ソードアート・オンライン 】
状態:正常、疲労(小)、負傷(中)、キリトへの恋へのケツイ、アスナという女性が気になる
服装:SAOのアバター
装備:鎧の魔槍@ダイの大冒険
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗らない、キリトに会って気づいた自分の気持ちを伝える(恋)
01:鳩野(はとっち)・ニコルと行動を共にする
02:キリトの家へ向かう
03:もう、私は逃げない。この世界で頑張る
04:キリト……君に伝えるね。私の気持ち
05:アスナ……キリトとどんな関係の女性(ひと)なのかな……
参戦時期:迷宮区のダンジョン中、トラップに引っかかる前
備考
※鳩野ちひろの演奏によりキリトへの想いは”恋”であると位置づけました。
※ニコルとの会話からSeedの世界のことについて簡単に理解しました。
※名簿に記載されているアスナはキリトとなにかしら関係があるのではと推測しています。
※ピルツ達と情報を交わしました。

【鳩野ちひろ@ふつうの軽音部 】
状態:正常、疲労(小)、負傷(小)、自意識アニマル(小)
服装:谷九高等学校の制服
装備:ラブギターロッド @スイートプリキュア♪ 
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1ホットライン
思考
基本:ゲームには乗らず、生きて帰る
01:サチ(サッちゃん)・ニコルと行動を共にする
02:キリトの家へ向かう
02: サッちゃん……キリト君に告白できるといいね
03:バンドメンバーがいないのはよかったけど、どうして私だけ……
05:よろしくね!ライダー!
時期:20〜21話の間
備考
※ニコルとの会話からSeedの世界のことについて簡単に理解しました。
※サチとの会話からSAOについて簡単な知識を得ました。
※ライダーのマスターになりました
※ピルツ達と情報を交わしました。

ライダーの触媒@Fate/Apocrypha
鳩野ちひろに支給。
大空(自由)を愛するライダーゆえにロック(自由)を愛するちひろに支給されたのは必然なのかもしれない。
当然、ちひろに魔力はないが、【呪力の最適化】を目指す羂索の仕業かわからないが、この殺し合いにおいてはマスターとして問題なくやっていける。


889 : sideA Puppets Can't Control You ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:08:38 UgzA29aw0
【ニコル・アマルフィ @機動戦士ガンダムSEEDシリーズ 】
状態:正常 疲労(小)
服装:ザフト軍の赤服
装備:ブリッツガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ  
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ゲームには乗らず、生きて帰る
01:サチ・鳩野と行動を共にしつつ二人を守る
02: バグスターウイルスへの対処方法を探る
03:キリトの家へ向かう
04:隊長……なぜ、こんなことを?
05:アスラン?には警戒しておく
参戦時期:本編死後より
備考
※情報交換から、異なる世界があることを推測しました。
※サチとの会話からSAOについて簡単な知識を得ました。
※名簿に記載されているアスラン?についてはとりあえず、同性同名の別人ではないかと推測しています。
※ピルツ達と情報を交わしました。

〈柊シノア@終わりのセラフ一瀬グレン、16歳の破滅〉
状態:健康
服装:私服
思考(参加者と会話ができ、自我があるように見えるがあくまでモデルのように動く設定。)
基本:“柊シノア”として行う。
01:柊シノアとして動く
備考
※柊真昼の妹。たくさんいるのではなく一体のみのNPC。あるていどとの再現とはいえ記憶や記録が用いられているため、積極的に襲撃はしない。ただし、NPCモンスターであることは変わりないので、モンスターとして行動するときは躊躇なく四鎌童子で参加者を襲う。

〈ライダー@Fate/Apocrypha 〉
状態:健康
服装:騎士姿
思考
基本:英雄としてマスターを守る
01:鳩野ちひろのサーヴァントとして行動する
備考
※真明は【アストルフォ】クラスは:ライダー
支給品としてマスターに従い守る。現マスターは鳩野ちひろ
ちひろは生粋の魔術師ではないため、基礎パラメーターなど本来より能力は多少低下している。
Fate/Apocrypha内での記憶があるかどうかは他の書き手にゆだねます。


890 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:09:39 UgzA29aw0
人は負けることを知りて、人より勝れり 徳川家康

「…へっくし!」
「どうしたイエヤス?もしや風邪か?」
「いや、いたって健康だよ。はは…もしかしたら、誰かがワシのことを噂をしておるやもな」
「君のことだから否定できないわね……」

徳川家康。
おそらく、名前だけの知名度においては豊臣秀吉と双璧をなす者。
故に他の参加者の話題になりそうなのはといったら否定できないと堀北はあきれながら言う。

「さて、橋にたどり着いたが……」
「ふむ……しかし、バルバトスはおらぬようぜよ」
「そうね……」

バルバトスの探索を兼ねて禪院家から北を目指した。
H2の橋にたどり着くと、弁慶の如くバルバトスが鎮座しているかと構えたが、実際にはおらず肩透かしに終わった。

「どうする?橋の北上を少し探索するかの?」
「いや……闇雲に時間を消費してしまう恐れがある。当初の予定G-4のアッシュフォード学園に向かおう。皆、それで構わないか?」
「そうね……それがいいわ。僕は異論ないわよ」
『うむ……バルバトスの動向が気にはなるが、我も異論ない』

バルバトスを放置するわけにはいかない。
それは全員の共通認識。しかし、敵はバルバトスだけではないのも事実。
時間を無為にしないためにも家康達は、アッシュフォード学園の方角へ足を運ぶこととした。

一行は歩く。歩く。歩く。

☆彡 ☆彡 ☆彡


891 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:09:54 UgzA29aw0
「イエヤス、スズネ、ちょいと足を止めよ」
「?どうした敵か?」
「敵かどうかは分からんが、人の気配がするぜよ」

サビルバラが指し示す先にあるのは、どこにでもありそうな普通の民家だった。

「待ち伏せかしら……」
「よし、ワシが先頭で行こう」
「承知した」

相手が分からぬ以上、気を抜くことはできない。
家康を先頭にサビルバラが指摘した民家の扉を開ける。

ギィィィ……

「居間と言った場所にはいないようだが……」
「ぬぅ、確かに気配を感じたんだが……」
「残りの場所……この民家の特徴から車庫じゃないかしら?」
「シャコ?」「車庫?」
「車……えーと、君のいる時代だと馬ね。それが置いてある場所」
「ほう!現代の御厩か。それは楽しみだな」

堀北の予想する車庫へ足を運ぶ。
すると、3人の耳に機械音が聞こえた。

『来訪者かな?』

「誰ぜよ」

声は聞こえど、姿が見えぬためいつでも迎撃できるよう蛍丸を構えるサビルバラ。

『そう警戒しないでもらえると助かる。私は蛮野天十郎。君たち参加者をサポートするために用意された支給品だ。そして、傍で寝ている少女はレンくん。私達はゲームに乗っていないが、君たちはどうなのかな?』

3人の前にいたのは、寝てる少女と意思があるデバイスだった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


892 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:10:30 UgzA29aw0
「う……ん」
『おはよう。ちょうどいいタイミングだレンくん』
「ば……んのさん?私、どれくらい寝ていました?」
『ざっと20分。仮眠をとるにはベストな時間だ』

寝起きのレンの質問に蛮野は答える。
仮眠をするベストの時間は一般的に20分から30分と言われている。
この時間帯は、脳がリフレッシュされ、集中力や生産性を向上させるのに効果的であるからだ。
現にこの殺し合いで生じたレンの精神的負担は多少軽減された。

「おお!目覚めたか!」

レンの起床に気づいたのか、3人はレンに近づく。

「だ、誰!?」

一方、レンは体を硬直させる。
やはりまだ戦いの恐怖が残っているのか、姫和より譲ってもらったVz.83を構えるのも忘れている。

(怖い……怖い、怖い怖い!!!)

黄色いパーカーのような服装の男性は快活に近寄ってくるが、残りの二人は歓迎するような雰囲気を身に纏ってはいない。むしろ警戒している。
見知らぬ3人。
先ほどの3人(龍園くん達)とは、いくぶんか物腰も穏やかそうだ。
だが、どうしても最初に遭遇したあの人相の悪い男のことを想起してしまう。
悪い想像をしてしまう。実は、殺し合いに乗っているんじゃないかと。

『安心したまえレンくん。彼らは敵じゃない』

そんなレンのことを察したのだろう。
蛮野はレンの緊張を解すため、目の前の3人は敵ではないことを伝える。

「ああ、それがし徳川家康と申す」
「えええ!?と…徳川家康!?」
(でも、確か徳川家康ってもっとこう……まん丸とした体形なんじゃ?)

若干寝ぼけていた顔は驚きに瞬時に変化する。
日本人ならその名は知る偉人の名だからだ。
家康と名乗る青年にレンは、本当に目の前の人が徳川家康なのか疑問に感じる。

『私もその名を耳にしたときは耳を疑ったよ』

流石の蛮野もその歴史的偉人に驚きを隠しきれなかったようだ。

「その様子だと、レンの知るワシはスズネの知っているワシに近いようだな」

家康はレンの反応からポリポリと顎をかく。

「まぁよい。さっそくだがレン。よければワシ達と行動をともにせんか?」
「え?」

それは家康からの提案。
しかし、いまだレンの心の傷は……

「無論、レンが仮面ライダーとの戦で心身深く気づいたことは蛮野殿から耳にしておる」
「……」

仮面ライダー。
その名はレンに深く傷を残した。
今も震えは止まらず。レンの顔は顔面蒼白となる。

「されど、恐怖から逃げていても光は訪れん」
「で……でも、足手まといになるんじゃ」

「弱者を足手まといと切り捨てる者が羂索達に対抗することなんかできぬし、 天下は治められぬ。それにワシはみんなを護り、導きたい…この心だけは偽りもないさ」
「だから、ワシはこの肩に、レンの恐怖も乗せて歩もう」

打算なき曇りなき瞳で家康はレンに問いかける。

「さぁ返事を聞かせてくれ!レン!」


893 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:10:49 UgzA29aw0
「……分かりました。私も一緒に連れて行ってください」

レンも心のどこかで理解していた。引きこもっていても解決はしないと。
スクワットジャムだってそうだ。
もし、前に進まなければ、開始直後でプロチームにやられていただろう。
決勝を争ったSHINCに勝てなかった。
そうだ!生きるのなら後方じゃない……前方だ!

それと、どことなくMさんのような心強さをレンは感じた。
故にレンは家康達と行動を共にすることをケツイした。

「ありがとう。まずは感謝を。レンとワシ達を繋ぐ絆に」
「は、はい!こちらこそ。よ、よろしくお願いします」

握手を交わそうと手を差し出す家康にレンはおそるおそるといった様子で手を差し出し、両者は握手を交わした。

そんな家康とレンの握手を見届けた蛮野はというと……

(ふふふ……)

ほくそ笑んでいた。
機械の顔でも伝わるとても邪悪で醜悪に。

(結果としてこの展開は悪くない)

最初、あの徳川家康だと名乗られたときは流石の私も驚きを隠しきれなかった。
が、家康といっても所詮は過去の人間。
未来の人間よりも知恵は劣るし、何より龍園達よりもこいつらのほうが御しやすい。

龍園達もバカではあるが、あれは、人の下にじっとしていられず無駄に策を弄するバカ。
しかし、家康は歴史で伝わっていたような老獪の狸親父ではなく青臭い直情のバカ。
同じバカ達でも、同行するなら家康達の方がよい。

(確実に流れが私に味方している。ふはははは!)


894 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:11:03 UgzA29aw0
【エリアG-3/租界/9月2日午前8時30分】

【徳川家康@戦国BASARA3】
状態:疲労(小)
服装:いつもの(籠手含む)
装備:家康の籠手@戦国BASARA3
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:絆の力でこの戦いを止める。
00:アッシュフォード学園に向かう。
01:レンのように絆の力を説いて羂索達に対抗する
参戦時期:赤ルート、関ケ原前。
備考
※籠手が支給品の代わりとなってます。
※蛮野と情報を交換しました。

【レン@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
状態:疲労(小)、ダメージ(微小)、精神疲労(中)、戦いへの恐怖心(極大)、蛮野に若干依存
服装:デザートピンクの迷彩服
装備:無限バンダナ@メタルギアソリッドシリーズ、Vz.83@メタルギアソリッドシリーズ、ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ+渋井丸拓男のバイク@@DEATH NOTE
令呪:残り三画
道具:治療キット×2@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、予備マガジン×30、ホットライン
思考
基本:生き残ることを優先
00:怖いけど逃げない。生きるために。
00:家康さんたち。蛮野さんと共に行動する
01:松坂さとうと出会ったら警戒する
02:怖い……怖いよ……
03:私本当に生きて帰れるのかな……
参戦時期:第一回スクワットジャム終了以降
備考
※GGOのシステム(バレット・サークル、バレット・ライン)は制限なく使用できます。
※仮面ライダーとの戦いで強いトラウマを植え付けられました。
※松坂さとうを危険人物として認識しました。また仮面ライダーへの変身能力を持っている可能性があると判断しています。
※ブレンのタブレットの所有者になりました。ブレンのタブレットはレンに危害を加えることはありません。
※家康が自分の知っている歴史の家康とは別人だと理解しました。


895 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:11:20 UgzA29aw0
(……のう、あのバンノ?とかいう機械信用できるか?)
(……正直、怪しいわ)

一方、列の後方でサビルバラと堀北はひっそりと意見を交わす。
結論、蛮野は怪しい。信用ならないだった。
サビルバラは、バンノから、かつて団長の優しさを踏みにじった山賊のような人柄を。
堀北は所謂、女の勘。すくなくとも現状蛮野が怪しいと断定できる判断材料はない。だけど、苦手に感じてしまう。相手が機械だとしても生理的嫌悪を感じる。
鳥肌がたってしまう。こればっかりは理屈じゃない。
好意を抱けない。ただそれだけ。
故に2人は蛮野に対して疑念を抱く。
レンが感じた警戒はレンではなく蛮野に向けてのだったのだ。

こうして家康一行に新たな同行者が増えた。
一人はいまだ仮面ライダー及び戦いへの恐怖心を拭えないレン。
そしてもう一人は支給品の分際でありながら、いまだ自らに価値があると勘違いしている頭脳データ。

一行はアッシュフォード学園へ足を運ぶ。

【堀北鈴音@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:絶対遵守のギアス(極大) 蛮野に対する嫌悪
服装:高度育成高校の制服(女子)
装備:ソーディアン・ディムロス@テイルズオブデスティニー(DC版)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(武器以外)、SA・ホットライン
思考
基本:このゲームから生還する。
00:『一人称は僕、二人称は君を使う』
01:須藤君……なんてこと。
02:羂索にルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……。まさか魔法が実在したなんて。
03:戻った時に何て言われるかしら。
04:喋る剣に、小柄な三十代に、徳川家康……頭が痛いわ。
05:アッシュフォード学園を拠点にしたい。
06;あの蛮野とかいう機械……なんだろう、生理的悪寒がするわ
参戦時期:少なくとも髪を切る前
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力解除の異能力をかけられない限り一人称が僕、二人称が君のままです。
※ソーディアン・ディムロスにスタン・エルロンの術技がソードスキルとして内包されてます。
※蛮野と情報を交換しましたが、蛮野に対して生理的悪寒を抱いています。

【サビルバラ@グランブルーファンタジー】
状態:ダメージ(大)、疲労(小)、蛮野に対する警戒
服装:いつもの(ゲーム上における火SSRの恰好)
装備:蛍丸@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:汚れ仕事はやる。だが殺し合いには乗らん。
00:アッシュフォード学園へと向かう。
01:バルバトスは早く倒しておきたい。
02:三人のサポートに回る。それがわしの役割ぜよ。
03:バンノは信用ならぬ……場合によってはわしの役割ぜよ。
参戦時期:「待雪草祈譚」終了後以降。
備考
※男性のため御刀の力は引き出せません。
※ギアスコラボ、ドラえもんコラボ、ヒロアカコラボ、プリコネコラボには出てないため、
 ルルーシュやドラえもんの名前はうろ覚え程度の扱いになってます。
※蛮野と情報を交換しましたが、信用ならぬと感じています。


896 : sideB 叛逆の街角 ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 00:12:14 UgzA29aw0
投下終了します。

sideAが前編でsideBが後編です。よろしくお願いします。


897 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/26(水) 00:37:19 ZQCLa6PY0
◆s5tC4j7VZY氏、こんばんは。
企画主に伊勢村誠三です。
どちらのチームにも恐怖の足音が迫っていると確かに感じさせる正に山場の前奏曲と言った感じの良いssをありがとうございます。
ただ一点だけ、鳩野の令呪に関してなのですが、
同じく羂索が最初の時点で
『プレイヤー用の令呪はゲーム内の物、それこそ他のプレイヤー相手にも使えるが、サーヴァントを持ってるプレイヤーの令呪はこの限りではない』
と言った趣旨の説明をしていたと思うので、
鳩野の令呪の仕様がプレイヤー用からマスター用になっている様に
そもそも鳩野が魔術師でないのでFateルートのセイバーやZeroのライダーみたいな自前の魔力で補ってなきゃいけない状態でかなりステータスは低下、と言うふうにしていただきたく思います。
また、これは◆s5tC4j7VZY氏に限らず、今後はサーヴァント召喚による実質的プレイヤーの増加を把握難易度上昇を防ぐため禁止したいと思っております。
皆様のご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。


898 : ◆s5tC4j7VZY :2025/03/26(水) 06:13:04 UgzA29aw0
伊勢村誠三さん
企画主様自らの感想ありがとうございます。
sideA Puppets Can't Control You
いまだ楽観てきな部分があったひちろを柱に、変奏曲に繋がるような展開にしました。
また、圧倒的戦闘力がないため、ちひろのロック(自由)と理性が蒸発している(自由)アストルフォは相性いいのではと思い今回、召喚いたしました。
ただ、今後の扱いについては後述にも書きましたが、理解並びに協力いたします。
sideB 叛逆の街角
いまだ恐怖にかられているレンを家康の絆の力で今後、変われるのかいなかという意味合いで書きました。
どちらのチームもまだ始まったばかり。今後、スーパーヴィランや四凶といった参加者と邂逅することもあると思いますので、楽しみと怖さがありますね。

鳩野の令呪及び、サーヴァント召喚の今後のことですが、承知いたしました。


899 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/03/27(木) 23:04:06 W3HDkYCA0
マイ=ラッセルハート、覇世川左虎、水神小夜、シェフィ、茅場晶彦、羂索、予約&延長します


900 : ◆ytUSxp038U :2025/03/29(土) 12:51:50 O8WLGNqM0
投下お疲れ様です
>>874の予約を延長します


901 : ◆kLJfcedqlU :2025/03/31(月) 00:13:55 mQKq47tQ0
真人、柊真昼、梔子ユメ、柊うてな、黒見セリカ、シノン、ダークマイト、九堂りんね、亀井美嘉、グリオン、冥黒ノノミ、冥黒アヤネ
予約&延長します


902 : ◆8eumUP9W6s :2025/03/31(月) 05:56:16 jRkuVHQg0
やみのせんし、衛藤可奈美(シビト)、帝竜ジゴワット(NPC)、冥黒王ギギストで予約&延長します


903 : ◆mAd.sCEKiM :2025/03/31(月) 22:29:13 ???0
長期間のキャラ拘束申し訳ございません。
予約を破棄します。


904 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:25:15 QS.PU8DE0
投下します


905 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:26:44 QS.PU8DE0
真贋入り混じるこのバトルロワイヤルは三人の悪しき賢者によって運営されている。
1人は人類を裁く権利を有すると宣う仮面の男、ラウ・ル・クルーゼ。
そしてもう1人は

「茅場!なあ観たか!?観たよね!?観てないはずないよね!?」

このお気に入りのアニメが今週も神回だった時のオタク張りにはしゃぐ女子高生……の見た目をした呪詛師、羂索である。
他人の研究スぺ―スにノックもせずに上がり込み、面白くって仕方ないといった様子である。

「……なんの話だ?」

そしてモニターから視線を外さないままコンソールを叩き続ける如何にも研究職と言った風貌の男、茅場晶彦である。

「なにって二時間前の禪院家だよ!
いや確かにあの家ならイミテーションながらそれなりに霊格のある場所として設定したさ!
とは言えまさかサーヴァントが召喚されるとは!
禪院扇も冥黒の五道化の成りぞ来ないの再利用にしていい働きしてくれたよ!」

「人類最後のマスターの危機と言う人理の悲鳴と重なり本来アラヤの介在が不可能なこのゲーム空間に彼を出現させるに至ったのだろう。
藤丸立香と彼のデミ・サーヴァントに加えてあのホムンクルスまで居たことにより強い縁となったのも大きい。
他のルーマニア聖杯大戦に参戦したサーヴァントが呼ばれなかったのは不幸中の幸いだ」

興奮しっぱなしの羂索に茅場はあくまで冷静に分析を語った。

「はぁ……」

「なんだい茅場、こんなに面白いことが起こったというのに随分疲れてるね」

「当たり前だろう。
大なるは霊脈の調整に始まる各種霊的システム周りの再チェックにセキュリティの強化、小なるは鳩野ちひろの令呪の仕様変更と次の放送までのアップデートに加えてこれだけ仕事が増えたのだから。
……というか、なぜ本来このロワではなんの役にも立たないはずの英霊の触媒が支給品に?」

「ああ、クルーゼだよ。
前に彼が『狩る者』について聞いて来た時に今の君と同じ質問をしたら、『ジーク君関連の品だよ、深い意味はない』って言ってた」

流石にクルーゼの想定した使われ方はアストルフォの存在を懐かしんだジークが本来戦いとは無縁の鳩野を守ろうとする流れだろうと茅場は思った。
そうだと思うことにしたと言った方が正確かもしれない。

「……支給品と言えば、お前はなぜ柳瀬舞衣に『狩る者』を?」

「柳瀬舞衣の適性は集団戦における指揮役だろ?
十条姫和などに比べて直接戦闘能力はやや見劣りするからね。
私の見立てでは狩る者に適合できれば彼女は一流の魔戒騎士と同等の戦闘能力は間違いなく得られるはずだ」

「だから魔導輪も支給したのか……」

「番狂わせはどんとこいだけど最低限公平にするようにはしてるさ」

「冥黒の五道化なぞ用意した奴がどの口で……」

「仕方ないだろう?
クルーゼがアルジュナ・オルタだの宇蟲王ギラだのと無茶苦茶なの出場させるって言って聞かなかったんだから。
いざという時アイツらを倒せる存在は必要さ」

「その五道化だが、ドゴルド以外がようやく動いたぞ」

「マジ?どこの誰?」

「病院地下の彼女と、アビドスの彼女だ」

そう言われて羂索は緑色の長い髪を指先で弄びながら数秒考えこみ

「ああ!死告邪眼と魔獣装甲か。
確か対ノワル用と対メラ用で造った奴だったね」

「仮にも連中が本当にアンコントローラブルになった時を想定して造ったにしては微妙な性能だがね」

「絶対に倒せない敵を造るなって口酸っぱく言ってたのは君が文句言うのかい?
それに本格始動もしてないのに株を下げる様な事を言うなよ、それなりに良い素材使ってまあまあ苦労して造ったんだから」

やれやれまったく何を言ってるのかな?
とでも言いたげに肩をすくめる羂索に茅場はため息をついた。

「……ノワルとメラはそれでもどうにかなるだろうが、何度も言っている様に対アルジュナ・オルタがドゴルドとその中身では些か以上には不安が残る」

「アレの中身ほどの素材を手に入れようと思ったら一苦労どころじゃないよ?」

「分かっている。
あれほどの素材を使ってもアルジュナ・オルタに届いていないと思っているからこそ問題視してるんだ」

「全く、あんまりつまらないこと言わないでくれよ茅場」

「羂索?」

「世界、呪力……他の世界も含めれば異能。
そして私たちが世界をつなげたことで起こった純然たる無能力者と異能の出会い。
これだけで本来の枠を大きくはみ出した可能性を広げることが出来た。
その結果鳩野ちひろは祈りを天に届かせ、華鳥蘭子は英雄たちの力を借りてとは言え霊石の恵とオルフェノクの記号を同時に扱って見せた。
ならば人、或いはその模造品が神ぐらい撃ち滅ぼすのもあり得ない話じゃない。
君の用意したそれも、もしかすれば神にも届く刃になりえる物だろう?」


906 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:27:13 QS.PU8DE0
振り向いた茅場の視線の先、殺し合いの現状を映すのとは別の画面には『心意システム』の実装準備が完了したことを示すデータが映し出されていた。

──────

「左虎っち、様子はどう?」

「灯(ライト)が少なく足元が少し不安だが罠の類は無さそうだ。
だがあくまでここから観える限りの話。
もし何かあれば先行して左虎が切除(つぶ)して道を確保する。
皆も厳に警戒を頼むぞ」

忍者としてこの中で最も戦闘力の高い左虎、マイにシェフィ、そしてアズールに変身した小夜が支給品やスキルを除けば直接戦闘能力の乏しいマイとシェフィを挟む形で4人は病院地下へと進んでいった。
その他のランドマークの例にもれず、本来“個性”社会となった世界に存在する蛇腔病院を忠実に再現している。
地上部分に凡そ警察に見られて困る物は置かれていないし、明示されている通りなら何も法に触れている所はない物しか置いていない。
だが地下施設は別だ。
AFOに協力する狂気の医学者、氏子達磨の研究、改人脳無製造に必要な資料と設備が揃っている。
・・・・・・・・・・・・・・
そのまま再現されているならば

「これはっ!先生!シェフィ後輩の目を塞げっ!速く!」

あまりの気迫にマイは言われたとおりにシェフィの背後に回って目を塞ぐ。
次の瞬間、マイも目をつぶるべきだったと後悔した。
長く緩い下り坂の廊下を抜けた先は円形のホールのような空間で、そこには所狭しと四肢のどれかが欠けたり、皮膚がケロイド状になったり頭部や手首より先と言った身元が分かりそうな部分だけを綺麗に外されたりした痛ましい死体の数々が円柱状の水槽に入った標本にされていたからだ。

「な、なにこれ……これ、全部……」

アズールはあまりの光景に絶句し、胃の中身をぶちまけそうになるのを必死にこらえながら震える事しか出来なかった。

「……水神後輩、無理はしなくていい」

一応、小夜を気遣う言葉こそ言えているが、その語気には明らかに余裕がない。
しかしそれも無理のないことだろう。
なにせ覇世川左虎は外科医である。
鍛えに鍛えた医術と忍者の技で命を救い、どうしようもなく堕ちた悪事(ワルさ)する極道(ごみ)をブッ切除(つぶ)して帝都(まち)の平穏を守る者だ。
そもそも霊安室に入口が隠されていた時点で良い物が待っているとは全く思っていなかったが想像をはるかに超える凡そ法に触れるモノの見本市(バーゲンセール)……死者の尊厳を踏みにじるを超えて死その物を道具、あるいは結果としか見ていない悪魔の所業を前に覇世川左虎は今にも激怒(いかり)で頭が沸騰(にえたち)そうな状態なのだ。

(いや、少し考えれば理解(わか)ったことのはずだ。
如何にシェフィ後輩に支給(わた)された氷の異能(ちから)のような呪術を用いているにしても脳の移植などという本調子の左虎をもってしても不可能(むりゲー)に近い手術(オペ)を成功させているのだ。
成功するまでに難易度(むずさ)相応の失敗もあったはずだと!)

もし思考の幾らかがマイ=ラッセルハートの指示に傾いていなければ割と最初の段階で思い至ったかもしれないが、削除(デリート)と編集(エディット)の影響かでは不可能な話である。

「マイ先生、もしかしたらマイ先生の睨んだ通りこの場ではバグスターウイルス関係の何かも実験(ため)していたやもしれん。
後輩たちと廊下の方で待っていてはくれぬか?」

「うん……分かった。でも何かあったら悲鳴でもなんでも出して知らせるからすぐ戻ってきてね」

「承知した」

そう短く言うと左虎だけが奥へと進んでいった。
標本の林を抜けると金属の扉が見える。
左虎はドアを開けると氷でドアストッパーを作ってから中に入る。
その先にあったのは作業部屋のような空間であり、前面のマジックミラーの大窓から奥の手術室……否、実験室の様子が見える。

(あれは……検死台だと?
人体実験が上手くいかなかったらいかなかった即(すぐ)に遺体の解剖まで連続(シームレス)に行っていたとでも言うのか!?)

今すぐにでもこの穢れに満ちた人を治療(なお)す場所に似た人を改造(いじ)る場所をを二度と使い物にならなくしたい衝動をどうにか抑え、左虎はデスクに置かれていたパソコンを起動する。
ロックはかかっていなかった上にファイルは整理されていたが、どのファイルも数字しか振られておらず、何についてか全く分からない。

(羂索が見返すことしか想定していないのならこれでも問題ないか)

左虎は早速『00』と題されたファイルを開いた。

『ただいま(削除済み)年12月25日。
これよりキヴォトス人を使った人体強化プランに基づく実験を開始する』


907 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:27:40 QS.PU8DE0
ファイルは全て音声による記録であり、一部が削除されていたが内容としてはおおむねキヴォトス人なる人種を使った人体実験の数々だった。
膨大な数全てを見るわけにはいかないのでかなり飛ばし飛ばしでファイルを確認していく。
どのファイルも凄惨な人体改造と人体実験の過程を克明に記録しており、改めて羂索が人を人とも思っていないことが見て取れた。

『……同日17時39分、検体192のヘイロー消失、及び生命活動の停止を確認。
ファイル093、108の実験の結果と合わせてキヴォトス人の頑強さをもってしても術式の刻印では身体的負荷があまりに強すぎると判断せざるを得ない。
当初の予定通りプレイヤーへの異能力の支給はエナジーアイテムシステムとソードスキルシステムを応用したデータ付与型の採用を強く支持する。
また、今回は前述二件の実験に比較し検体が長時間生命活動を維持した。
これは恐らく今回の実験では本来術式の原動力となる呪力付与を行わなかったことが原因と思われる。
よって、元々何かしらの異能力を有するプレイヤーに対しては後天的に獲得する異能の燃料となる要素を体力や元々持つ異能力の燃料で代用可能な仕様に調整することで負担を軽減できる可能性が高く、この点に関しては更なる実験と検証が必要であると言える。
使用済み検体は手順に従いデータ収集後保存。
ファイルナンバーを117に設定、セッション終了』

「なんと……血塗られた遊戯(ゲーム)だっ!」

まさか実質的に自分たちの命を繋いだ要因であるシェフィのソードスキルすらこれほどの死体を重ねた上に成り立っていたとは。
尽きぬ義憤に身を震わしていると、極道たちとの戦いで何度も耳にした銃声が聞こえた。
左虎は今はもう忘れさせられてしまった弟の様な電光石火でマイたちの元に戻った。

──────

「小夜っち、ちょっとは落ち着いた?」

「はい……まだちょっと気分悪いですけど、なんとか。
……情けないです。
左虎先輩はアレの奥まで調べに行ってるって言うのに」

「アズール……」

「情けなくなんかないよ。
むしろあんな酷いもの見て眉一つ動かさない奴なんか居残りでお説教なんだから」

あんな見た目分かりやすくなっただけで巻戻士の不平等な救済に勝らずとも劣らぬ所業、嫌悪を抱くか義憤を感じるかしない方がおかしいのだ。

(私の願う平等な世界なら、こんなことはもう起こらない。
誰もが必ず平等に助かる世界なら……)

改めて黒い決意を固めるマイの横で未だ顔色優れぬアズールはシェフィに気遣われながら負の思考のドツボに嵌りかけていた。

(私が今までマジアアズールとしてやってきた戦いは全部、遊びだったんじゃないかしら?)

優劣や貴賤をつける訳ではないが、街は直せるし、人も心も大変ではあるが治すことは不可能ではない。
だがいくらエノルミータであったとしてもこれほどの外道じみた所業をしたことはなかったはずだ。
特にマジア■■■は……。

(あれ?なんで敵なのにマジアって名前なの?
と言うか、敵なのにってまるで味方ならそんな名前が居たみたいな……)

確かにヴァ―ツの支援の下活動している魔法少女は自分だけではない。
だが今まで特に交流もなかったはずだ。
なのに頭の奥で何かが引っかかる。

「ちょっと小夜っち!
本当に具合悪そうだよ、戻った方が良いんじゃない?」

「マイ先生……」

昔と同じように心配してくれるマイの顔に視線を向ける。
その後ろからこちらに銃口を向ける人影があった。

「マイ先生!」

グン!と思い切りマイの腕を引っ張っていつの間にかそこに居た歪な光輪(ヘイロー)を後頭部に浮かべ、黒いローブを身にまとう誰かに武器を生成しながら迫る。

「マイ先生!シェフィちゃんをお願いします!」

相手の武器は拳銃。
映画で見た程度の知識だが、この距離なら不意打ちでなければ当たらないのは拳銃の方だ。
そして銃を持つ腕には指ぬきのグローブしかつけておらず、令呪もレジスターもないなら問題ない。
もしかしたらドゴルドのような参加者でない存在なのかもしれない。
仮にプレイヤーであったとしても断面さえ汚さなければ左虎先輩が確実に繋げてくれる。
偽りの記憶と共に植え付けられた信頼を理由にアズールは氷の刃で手首を掬う様に斬りつける。

「『死告邪眼』」

襲撃者が呟くと彼女の後頭部のヘイローが消えた。
同時にローブの中に隠れた右目に刻まれた逆さの不死鳥の紋様が青い光を纏って浮かび上がる。

「え?」

アズールの剣からステッキだけが消えて手から実質すっぽ抜けた。
間を置かずアズールの変身も解除され小夜の姿に戻ってしまう。
呆ける小夜の眉間にスタームルガーLCRの銃口が触れる距離まで近づく。

「さよなら」


908 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:28:20 QS.PU8DE0
死告邪眼。
それは羂索らがギアスキャンセラーをベースに開発した異能力破りの異能力。
発動中は自身の異能力も封じてしまうという欠点(というか意地でも絶対に倒せない敵を用意したくなかった茅場の最後の抵抗)があるのだが、彼女自身にそんなことが何の問題にもならないだけの戦闘性能が与えられている。
魔法を封じて頑強さだけが取り柄になったノワルをキヴォトス人の喧嘩の要領で無力化するために用意された五道化なのだから当然と言えば当然だが、一対一なら魔法少女であるアズールに勝ち目はない。
だが今回は多対一。
凶弾がアズールの脳漿をぶちまけることはなかった。
それよりも早くシェフィの呪術が拳銃を凍らせて動作不良を起こさせたからだ。

「ナイスよシェフィっち!」

「えへへー」

マイに頭を撫でられ目を細めるシェフィの姿に死告邪眼が思わずつぶやく。

「なぜその状態の0005bが異能を?」

「ほう?貴様、シェフィ後輩について何か知っているようだな」

左虎の指先を一点に揃えた独特の手刀による反撃が繰り出される。
だがザラサリキエルはこれを簡単に避けると凍り付いた拳銃を投げ捨て、武器を白い119A1に切り替えながら体制を立て直す。

「中々できる様だが、今の左虎は激怒(おこ)っている。
そちらの返答次第では一切容赦(かげん)できんぞ」

「……流石は呪血の双子の片割れ、と言ったところか。
だが羂索様たちによって造られた私に敗北はない」

「貴様、ドゴルドの同類(るいとも)か!」

「ああ、あの鎧に先に会ってるのか。ならば話は速い。
私は冥黒の五道化の一人にしてこの『接木の庭園』の守護者。
死告邪眼のザラサリキエルだ」

「庭園?血肉の吹き溜まりの間違いだろうに!」

義憤を乗せた絶凍の髪の毛とザラサリキエルの髪の毛が火花を散らす。
その間にマイとシェフィは変身解除されたまま呆けて棒立ちになる小夜の元に向かう。

「アズール!」

「小夜っち大丈夫?」

「っ……変身(トランスマジア)!」

マイに肩を叩かれた瞬間、小夜は弾かれたように変身し、右手で制度生成した氷の剣を、左手でシェフィの手を取り、刃をマイの首に向けた。

「え?」

「あ、アズールなんで!?」

「水神後輩!?死告邪眼(ザラサリキエル)!
貴様、水神後輩に何をした!?」

「?……ああ、なるほど。
あの女がクロックハンズのハッカーか」

一人得心がいった様子のザラサリキエルは構わず左虎と戦闘を継続する。

(まさかアイツの力は能力のリセット!?)

と言う事は、少なくとも元の記憶は復活してしまっているのだろう。
片手が開いていれば文字通り頭を抱えていただろう苦悶の表情を浮かべるアズールが全ての答えだ。

「アズール!けんかはめっ!だよ!
マイてんてーにごめんなさいしよ、ね?」

「駄目だよシェフィちゃん!
この人は私たちの先生なんかじゃない!」

(クソッ!問題が本調子とは程遠いアズールだけなら氷で無力化してまた編集(エディット)すればなんの問題もないけど……)

マイの視線の先には異次元の肉弾戦を続ける忍者と魔人が居る。

(さっきの小夜っちの変身が解除された時の情報と合わせて考えて多分頭に光の輪が浮かんでいる間はあのキャンセル能力は使えない。
きっとあの光の輪は身体強化の魔法かスキルだから、自分で自分の能力をキャンセルしちゃうんだろうね。
だから武器は離れてても一撃で勝負を決められる銃。
そして氷の刃がそのまま残った所から考えるに異能で作った物であっても物理現象の結果なら消せない。
だから今のあいつを左虎っちが抑えてくれてるのは実にありがたい状況なんだんけど……)

もしもっと追い詰められて破れかぶれになったザラサリキエルが左虎に死告邪眼を使った瞬間、勝負は決まってしまう。
正気に戻った左虎が自分を活かす理由がないのだから。

「私とシェフィちゃんに何をしたの!?
左虎さんに令呪を使わせてまで私を助けた貴女を悪人とは思いたくないけど、それでもはるかたちの記憶を消した貴女を信じることはできない!」

「え?ええぇ?」

「あーあ、藪をつついて蛇を出しちゃったかな」

もう仕方ない。
こうなってしまったら小夜をシェフィごと拘束してもう一度編集(エディット)して配下に戻す。
そう決めたマイは指輪の力を使おうとした時、アズールがシェフィ突き飛ばした。
2人が立っていた場所を細身の両刃剣が通り過ぎる。
見る者が見ればそれが魔戒剣だと気付けただろう。

「ここに来て新手ですって!?」

「マイ先生!」


909 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:29:11 QS.PU8DE0
左虎がザラサリキエルを蹴とばしてマイの元に戻る。
それを見て新たな乱入者もマイを斬ろうと思えば斬れたがザラサリキエルの元までジャンプで移動した。

「……何の用だ魔獣装甲」

闖入者の姿はそう呼ばれた通りに金属の魔獣がそのまま鎧になったような装甲を纏っていた。
魔戒剣を持たない反対の手には日本刀、本来なら十条姫和、そしてその母柊篝の愛刀である御刀小烏丸を握っている。

「もー、エルちゃんたら相変わらず硬ーい。
アタシのことは可愛くキスちゃんって呼んでって言ってるじゃん」

襲撃者の声は明らかに女の物だった。
よく見ると全身を覆う鎧も女性らしいシルエットをしている。
羂索らにより両腕に魔戒騎士の遺骨を埋め込むことで本来生物学的に男性である必要がある魔戒剣と生物学的に女性である必要のある御刀の両方を使えるようになっているのだろう。

「誰がエルちゃんだ……。
それより何故私の守護領域に来た?
お前の担当はアビドス地下だろう?」

「それがクルーゼ様情報で宇蟲王の方のギラとかヤバい方の冥黒王とか来ちゃったからさあ。
いざとなったらエルちゃんの死告邪眼の出番ってワケ♪」

「だからエルちゃん呼ぶな……。
そう言うことならいいだろう。この場は任せたぞ」

「ラジャー」

ザラサリキエルはまるで蛇のように4人の間を抜けるとアズールとシェフィの背後を取る。
当然アズールはザラサリキエルに向って刃を振るうが

「『劣化複製(デッドコピー):跳躍王(キングリープ)』」

ザラサリキエルの方がワンモーション速かった。
赤黒い光に包まれるとその姿が掻き消えてしまった。

「貴様っ!魔獣装甲とか言ったな!?
彼奴は後輩たちを何処に転移(とば)した!?」

繰り出される暗刃を二本の剣で斬り伏せながら

「ん〜〜……アタシの守護領域じゃない?
誰もいないのもまずいし。
てか、アンタまで可愛くない呼び方しないでよ〜」

全く分かって無いなぁとでも言いたげに、そして同時に心底嘲る様に襲撃者は名乗った。

「アタシは冥黒の五道化が一人、魔獣装甲のエケラレンキス♪
いつまでもママのおっぱいにパパのちんぽが忘れられないままごと遊びの先生ごっこも、滑稽極まるお医者さん人形もちゃんと可愛くキスちゃんって呼んでね♪」

──────

「うん?」

エケラレンキスの守護領域に転移したのはザラサリキエルだけだった。
何かがおかしいと振り返ると、『第二回放送終了までプレイヤー進入禁止』と立体映像のアナウンスが出ている。

「はぁ……だからあいつ、普通にここを空けて私の守護領域に来たのか。
いや、それ以上に私があの場を任せる以上二人は受け持つことも織り込み済みだったんだろうな」

造物主はなぜあの奔放なエケラレンキスにここを任せたのだろう?と思わずにはいられないザラサリキエル。
一瞬、このルールがあるなら自分もここを抜けてアズールとシェフィを回収するなど行動をしていいような気もしたのだが、流石に守護領域を無人にするわけにはいかないとその場に止まる事を選んだ。

「どの道、ここに眠ってる物は最終的に生き残ったプレイヤーには絶対に必要だからな」

そんなザラサリキエルの性格まで読んでエケラレンキスが動いていたことを彼女が知るのは取り返しがつかなくなってからのことだった。



【エリアC-9/アビドス高校地下 エケラレンキスの守護領域/9月2日午前8時30分】

【死告邪眼のザラサリキエル】
状態:疲労(極小)
肉体:???(女性なのは確定)
装備:フード付きローブ、
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:多数の銃火器@???
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:魔獣装甲に代わりこの守護領域に留まる。
02:0005bとマジアアズールは……まあ仕方ないか
03:もし上の宇蟲王などがこちらに来てしまうことになれば撃退する。
04:魔獣装甲の奴、遊びすぎなければいいんだが。
05:誰がエルちゃんだ、誰が
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※ヘイローを有しています。銃撃などに足して異様なタフネスを発揮します。
※肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※死告邪眼はギアスキャンセラーをベースにした彼女の固有能力です。
 発動すると有効範囲内の異能力を無効化できますが、その有効範囲に常に自分が含まれます。
※アストルムの七冠の権能@プリンセスコネクト!Re:DIVEを模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。


910 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:29:46 QS.PU8DE0
【全体備考】
・劣化複製権能(デッドコピースキル)
…ドゴルドとその中身以外の3人の五道化に与えられた特権的ソードスキル。
その名の通りオリジナルのそれには何らかの部分で一歩劣る。
基本は一度に一つしか使えない上に長距離転移以外はリキャストタイムが実質使い捨てレベルで長い。
但し単騎で国土を蹂躙可能な実力を有するプレイヤーとの戦闘ではこの限りではない。

──────

「ここは、学校?」

アズールとシェフィが飛ばされたのは掃除が行き届いてるとは言い難い砂が入ってきてしまっているが、廃校になっているわけでもなさそうな奇妙な学園、アビドス高校だった。

「アズールぅ……マイてんてーとサコはぁ?」

コスチュームの袖を掴んで涙ぐむシェフィの頭を撫でてやりながら周囲を見渡す。
人影も人の気配も少なくともこの階には無い様だ。

「この辺には、居ないみたい……」

「ううぅ……」

不安をごまかす様にますますアズールのコスチュームの裾を強くつかむシェフィの姿にアズールは改めて守らなければと決意した。
本音を言えばアズールも不安だ。
ザラサリキエルの死告邪眼のせいで削除(デリート)で消された記憶は戻ったが編集(エディット)により植え付けられた記憶は確信をもって本来のそれではないとは言え残ったまま。
なによりシェフィは洗脳されたままだ。
もしまたマイに出会ってしまえば損得勘定に基づく行為だったとしても貴重な令呪を使ってまで自分の命を繋いでくれた相手であることも手伝って簡単にもう一度都合の良い生徒にされてしまわないとも限らない。
だが、それは抗うのをやめる理由にならない。

「大丈夫よ、シェフィちゃん」

「アズール?」

「なぜって私が、マジアアズールがついてるのよ!」

「ッ!──うん!」

何よりマイに洗脳されてなお消えなかったこの想いが、もう一度立ち上がったことで失くさないと決めた矜持がそれを許さない。
11時を割り振られた復讐魔に撃ち込まれた楔を抱えながらも二人の氷のヒロインは進んだ。
彼女たちの居るアビドス高校であの波瀾に勝らずとも劣らずの衝撃が来るまで、後わずか。



【エリアC-9/アビドス高校内部/9月2日午前8時30分】

【水神小夜@魔法少女にあこがれて】
状態:ダメージ(中・治療済み)、洗脳は脱した。
   マジアアズールに変身中。
服装:アズールのコスチューム(変身解除するとボロボロの制服に戻る)
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:今度こそ『マジアアズール』の矜持を貫く。
01:冥黒の五道化……あれだけ強くて参加者じゃないなんて。
02:今となってもシェフィちゃんと一緒にマイさんを庇ったのは間違ってないと思う。
03:シェフィちゃんは必ず守る。
04:左虎さんもシェフィちゃんもこの様子だと操られたままなのよね?
05:もしまたマイさんに会ったら……。
参戦時期:アニメ7話、原作2巻Episode10の終盤
備考
※マイの編集(エディット)により、バトルロワイヤルのルールを把握しました
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響で欠落した記憶が回復しました。
 植え付けられた偽の記憶も残っていますが偽の記憶と理解しています。

【シェフィ@プリンセスコネクト!Re:Dive】
状態:幼児退行(小)、不安(中)、ドゴルドへの恐怖(中)
   "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下
服装:いつもの服
装備:雄英ヒーローズ・バトル@僕のヒーローアカデミア 
   ソードスキル:氷凝呪法@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01:オールマイト、ありがと!
02:アズールといっしょならだいじょうぶ!
03:ケンジャクっておねーたん、こわい
04:マイてんてー!サコー!どこー?
05:ドゴルドもあのおねーたんもこわい……
06:アズール、ちゃんとマイてんてーにごめんんさいしようね
07?:マイてんてー。だいすき
参戦時期:幼児退行が治って無かったころのどこか
備考
※具体的な参戦時期は後の書き手様にお任せします。
※精神状態が精神状態なので、このバトルロワイヤルについて色々とよくわかっていないと思われます。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、キャルを含む一部記憶が欠損しています。
 強い衝撃等があれば蘇るかもしれません

──────


911 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:30:12 QS.PU8DE0
閃光が走り、一拍遅れて派手な金属音が響く。
冒涜的な水槽の林を二つの人影が互いを殺さんと翔る。
追いかけるは遍く極道から蛇蝎のごとく恐れ嫌われる呪血の忍者■■、覇世川左虎。
あしらうは的確に弱点を突く形とは言え単騎で国土を蹂躙可能な厄祭級のプレイヤーを狩るべく生み出された冥黒の五道化が一人、エケラレンキス。
そんな規格外の戦いの様子をマイ=ラッセルハートは悔し気に睨むことしか出来なかった。
ドゴルド戦の時も思った事だが、帝都八忍と冥黒の五道化の次元が違い過ぎる。
まず根本の肉体からして違う、生物として極限まで鍛えた人体凶器と徹底的なチューンナップを施された生体兵器。
肉体的には常人の枠をでないマイには眼で追うのもやっとだ。

「一つ問うぞ。
貴様(おまえ)もドゴルドの様な中身が本体でない生きた鎧か?」

「今まで散々良い奴悪い奴決めつけて救って殺して来た奴が何いっちゃってるわけ?
あ、逆かぁ。
何時も通り好き勝手どっちか決めてから殺したいんでしょ!?」

「戯言(ほざ)け!」

暗刃や氷の攻撃を時に避け、時に鎧の防御に物を言わせて突破し徹底的に近接戦を仕掛けてくる。

(武器が両刃剣(ナガモノ)に日本刀(ヤッパ)故に間合(レンジ)が近接一辺倒なのは分かり切っていたが、こうも徹底的かつ鎧に振動を通すような攻撃も恐るべき感(さっし)の良さで避けている……ドゴルドの様な仕組(からくり)は無さそうと言えば無さそうだが……)

「『劣化複製:超力噴出(バルザック)』!
かーらーのー!二天一流乱れ切り!」

ドゴルド、そしてザラサリキエル同様エケラレンキスにも劣化複製(デッドコピースキル)にソードスキルが与えられていた。
彼女に与えられたのは纏流子に支給された万物両断エクスタスなどの超兵器、帝具の力を再現した者。
オリジナルに比べいくらか劣る上に48個全てを網羅している訳ではないがそれでも強力かつ凶悪な能力が揃っている。

「膂力(パワー)が上がった……否、潜在能力(ポテンシャル)を余さず引き出してると言ったところか」

「正解♪
オツムをかき混ぜぐーるぐるされた割には冴えてるねぇ。
やっぱり高給取りのお医者さん人形はお勉強得意!?」

「さっきから何を理解不能(わけわかめ)なことを!」

(こいつ全部わかってっ!)

エケラレンキスの攻撃の先には常にマイ=ラッセルハートが居た。
僅かでもマイに危険が及ぶかもしれないならば左虎は自分で自分の動きを制限してしまい、いくら互角の戦いを演じようとエケラレンキスへトドメを刺すには至らない。
その膠着状態の中、エケラレンキスは左虎を煽りながらマイのメンタルを確実に削る言葉を選んでぶつけてくるのだ。

(どうしてこうも五道化に、運営の手下に邪魔されるの!?
アタシは、アタシは不平等な世界を……)

「ん〜〜いいカンジ!
でもそろそろ一回退いとこっかな?」

「撤退(ひく)?
そんなことをこの左虎が実行(させ)るとでも?」

「勿論♪」

そう言ってエケラレンキスは近くの実験台の死体が入った水槽に触れる。

「『劣化複製:死者行軍(やつふさ)』♪」

振れていた物に限らず、その部屋にあった全ての水槽が割れて、中に入っていた死体たちが動き始めた。
光の無い濁った瞳をここではないどこかに向けながら緩慢な動きで左虎とマイに襲い掛かる。

「貴様らっ!何処までも人間(ひと)の尊厳を踏みにじるか!」

「アンタらと同じ人形遊びのおままごとだよーだ!
あっはっはっは!そんじゃまたねー♪
『劣化複製:次元方陣(シャンバラ)』!」

心底愉快そうに笑ってエケラレンキスもザラサリキエルの時のように消えてしまった。

「マイ先生!左虎の側を離れるな!」

「……ええ。この子たち全員、今度こそちゃんと眠らせてあげて」

「承知!」

死体人形を偽りの恩師の人形になっている事も気付かない忍者が倒していく。
彼の守るマイの顔にはただひたすらに苦々しさと憎悪が浮かんでいた。


912 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:30:37 QS.PU8DE0
【エリアB-6/蛇腔病院地下 『接木の庭園』/9月2日午前9時】

【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(中) "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下 マイ=ラッセルハートへの信頼(大?)
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01?:マイ先生の懇願(たのみ)を断る左虎ではない
02:水神後輩に一体何が?
03:空蝉丸……ドゴルドと因縁がある参加者か。
04:よもや病院の地下にこれほど悍ましい物が眠っていたとは。
05:冥黒の五道化……マイ先生の為にも必ずブッ切除(つぶ)さねばなるまい。
06:まずはこの死体人形をすべて倒す。
参戦時期:死亡後
備考
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、邪樹右龍・繰田孔富含む一部記憶が欠損しています。
強い衝撃等があれば蘇るかもしれません。

【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:健康 小鳥遊ホシノへの興味(中)、苦々しい感情(大)
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士
   オコノミボックス@ドラえもん
   ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:左虎っちを利用する。優勝したら左虎っちの両親を蘇らせてもいい
02:タイムマシンの使用は慎重に。
  削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
  どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』の世界についてのある程度の知識を得ました。

──────

「とうちゃーく♪
ただいま〜我が守護領域アビドス!」

エケラレンキスが転移した先はアビドス砂漠だった。
ザラサリキエルに感知されない為に少し離れたエリアC-10に出たが、元々病院地下に干渉したのはただでさえカオス渦巻くアビドス高校周辺をもっともっと面白おかしくするために他ならない。

「だってアタシは可愛いエルちゃん♪
強いも弱いもビターもシュガーも手取り足取り弄ぶ……」

二本の剣で頭上に縁を書くと、短く鋭い金属音と共に装備としての魔獣装甲が解除される。

「冥黒の五道化の一員なんだから♪」

そう言って嗤う彼女の顔は本来この場に居ない刀使、古波蔵エレンその物だった。




【エリアC-10/9月2日午前9時】

【魔獣装甲のエケラレンキス】
状態:疲労(極小)
肉体:古波蔵エレン@刀使ノ巫女
装備:魔獣装甲エケラレンキス
   小烏丸@刀使ノ巫女
   ???の魔戒剣@牙狼<GARO>シリーズ
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:なし
基本:冥黒の五道化として行動する。
01:思うままに楽しむ。
02:エルちゃんの連れてった二人もあの辺に居るだろうし遊んであげよっかな
03:さーて、アタシが戻るまでに何人集まるかな?
04:ママっ子先生とお医者さん人形は生きてたら相手をしてあげる。
05:エルちゃんったら、真面目が過ぎるから騙されるんだよ♪
参戦時期:なし
備考
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※刀使としての能力を概ね高い水準で発揮できます。
※肉体が女性ですが両腕に魔戒騎士の遺骨を埋め込まれているので魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器は使えます。
※魔獣装甲は魔戒の鎧を召喚出来ない彼女の為の固有武装です。
 冴島鋼牙シリーズに登場した魔獣装甲コダマ同様自由に脱着できます。
※帝具@アカメが斬る!の能力を模した劣化複製権能(デッドコピースキル)を持たされています。


913 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/01(火) 23:32:09 QS.PU8DE0
投下終了です。
タイトルは『戦慄のプレリュード』です


914 : ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 14:54:39 zuUDbGRM0
投下お疲れ様です。自分も投下します


915 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 14:56:44 zuUDbGRM0
「私も、殺し合いなんてしないよ。さとちゃんを、それに…トランクスくんも傷付けたりしたくないもん」
「……」

その答えを聞き、またもや厄ネタに出会ってしまったのだとリュージは嫌でも理解せざるを得なかった。





エリア一つに隕石が振り注ぐ地獄をどうにか生き延び、次に考えたのはこれからどうするか。
可奈美の死はどうやっても覆せないが、他の者は違う。
軽い自己紹介しかしていない連中であれど、少なくともシギルで殺し合いに乗ってないのは確認済み。
自分達のように脱出に成功したのか否か、前者であるなら早目に合流はしておきたい。
アンクに意見を求めれば、不機嫌そうにしつつも反対はされなかった。

真紅の王がまだ付近をウロついてるのに警戒を払い、車を走らせどれくらい経ったか。
最初にアンクと会ったエリアと、先程戦場になったエリア。
丁度境目となる位置の民家で、出発寸前の二人組を発見したのだった。

「あなた達は……」
「おう、さっきは助かったぜ。あー、一応言っとくが俺らは乗ってねぇ」

少女を腕に抱き上げた青年へ向け、両手を上げ戦闘の意志はないと伝える。
相手は颯爽と戦闘に介入し、化け物染みた王と互角に渡り合った強者。
不要な争いを発展させないよう、少々緊張しつつ対話を試みた。

「時間は取らせねぇから一旦家に戻れ。こっちも情報を明かしてやる、お前らも知ってる事を教えろ」
「コイツの口の悪さは気にしないでくれや。まあ…ちょっと色々あってピリ付いてるだけだ」
「話でしたら俺も構いませんけど……」

アンクの態度へフォローを入れ、相手の反応を窺う。
向こうも話自体は特に問題ないらしく、抱えた少女と視線を合わせた。
自分一人で全部決めるのではない、同行者の意見も無視はしない。
たとえそれが齢一桁だろう子供であってもだ。

「うん、私もいいよ。もしかしたらさとちゃんのこと知ってるかもしれないし」
「…ありがとうしおちゃん。じゃあ、お二人共こちらへどうぞ」

同意は得られたので、リュージ達を民家に招き入れる。
デタラメな強さの持ち主でありながら、随分と礼儀正しい態度。
ギャップに少々戸惑いつつ、屋内へ足を踏み入れた。

居間に腰掛け、互いの自己紹介を済ませた後、リュージの方から先に質問が飛んだ。
殺し合いに乗ってるか否か、念の為にハッキリ聞かせて欲しいと。
わざわざ初対面の自分達を助けに現れ、真紅の王の相手を引き受けたのだ。
聞くまでもないとは十分承知なれど、嘘か真か確かめて損はない。
状況が状況なのもあり、向こうも機嫌を悪くはせず返答。


916 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 14:57:30 zuUDbGRM0
そうして話は冒頭へ戻る。

「……」

青年…トランクスの方は問題無い。
しかしもう一人、しおと呼ばれた幼女は違う。
今の返答に明確な嘘が混じってるのを、リュージの異能(シギル)が反応を見せた。

「そうか。そのさとちゃんって奴だけじゃなく、トランクスの事も大事に思ってんだな」
「えへへ…トランクスくんは友だちだから」

屈託なく笑う姿は年相応の愛らしさに溢れている。
見る者の警戒を解きほぐし、心を許す強い効果を発揮するだろう。
現にトランクスは少々照れくさそうにしながらも、彼女からの信頼に感謝する様子が見て取れた。

それが全くの嘘であると知るリュージは、内心で警戒を強める。
子供だからと油断出来ないのはDゲームの時からそうな為、今更大きな驚きはない。
スイよりも年下の少女が、息をするようにこちらを欺く。
警戒心の薄い相手であればコロッと騙されただろう。
チラと横目でアンクを見やれば、こちらへ見つめ瞳を細める。

「……」

対し、ほんの小さく首を横に振って返す。
しおの言葉に嘘があったのは事実だが、話した全てが偽りではない。
少なくとも、殺し合いに乗っていないのは本当。
実は密かに優勝を狙ってるだとか、そういったこちらを害する意図は現状なし。
であれば、今はまだ自分達で大きなリアクションを取るべきじゃあない。

「悪かったな、いきなり不躾なもんを聞いちまって」
「いえ、こんな状況ですし警戒は当然ですから」
「そう言ってくれんなら有難てぇ」

なので取り敢えず、何も気付いてない風を装って情報交換を続ける。
幸いトランクスの方は不信感を抱いておらず、変に話が拗れる心配はなさそうだ。


917 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 14:58:15 zuUDbGRM0
しお以外は元々の知り合いが不参加であり、必然的に会場で出会った者の話がメインとなる。
可奈美から聞いた刀使の関係者や、先程共闘した面々。
全員が信用しても一先ず問題無い参加者であるも、内の一人は残念ながら二度と再会は叶わない。

「そうか…アイツは助からなかったか……」
「はい…あの人のお陰で赤い男を撃退出来たんですが……」

表情を曇らせ思い出すのは、王に一矢報いた一人の戦士。
ロロとリュージ達に名乗った彼は既に命を落としたらしい。
彼と行動を共にしていた薫が知ったら、果たしてどう反応するのやら。
付き合いの短さ故大きな悲しみや喪失感は抱けないが、トランクス共々王相手に奮戦した男だ。
内心で感謝を告げると、見計らったように支給品が差し出された。

「こいつは…あの四文字のライダーのベルトか?」
「俺が持ってるよりは、ロロさんと付き合いのあったお二人が持ってる方が良いと思います」

ジオウなるライダーの変身ツールは他の者に奪われる前に、トランクスが回収済だ。
持ち主は既にこの世にいないが、ロロの仲間だった者達に託すのであれば問題ない筈。
受け取らず突っ撥ねる理由もない。
ヒョイと手を伸ばし、アンクがベルトとウォッチを自身の支給品袋に仕舞う。

支給品の譲渡が済むと情報の開示が再開。
殺し合いにいるのは友好的な参加者のみならず、敵対不可避の危険な連中もだ。
真紅の王はもとより、トランクスとしおは他にも脅威となる存在と遭遇している。

神を名乗る黒い男。
殺し合い開始早々、トランクスがバッタリぶつかり戦闘へ発展した者。
容易く倒せる相手とは口が裂けても言えない。
超サイヤ人を解禁して尚も、底がまるで見えなかった程の怪物なのだから。


918 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 14:58:54 zuUDbGRM0
「自分で神様なんざ名乗る奴がマトモな訳ねぇが、そいつは飛び抜けてイカレてやがるな」
「ですが強さは本物です。最低でも赤い男と同格の力は確実にあるかと……」
「勘弁しろよ……」

得られた情報は有用な反面、正直に言って頭を抱えたい内容。
赤い王だけでも冗談だと思いたいのに、同レベルの力を持ち尚且つ殺し合いに乗った者が他にも参加してるとは。
一体全体あと何人化け物染みた連中が現れるのだろうか。
最悪、友好的な参加者はトランクス一人で打ち止めの可能性とてゼロではない。
そう考えると、早い段階でコンタクトを取れたのは運が良いのかもしれなかった。
それはそれとして、赤い野郎と自称神様で勝手に潰し合って欲しいものだが。

「ああそれと、キヴォトスだかってとこの女どもにも一応警戒しとけ」
「あー…そういやそんなことも言ってたな」

アンクの言葉でリュージも思い出したが、確かに共闘相手の一人が警戒を促していた。
直後に真紅の王が襲って来たせいで、具体的に何があったのかは不明。
ただキヴォトス人と言えば、最初の場で主催者も口にしていた固有名詞。
自分の器に選ぶくらいなのだから、何かしらの危険要素があっても不思議はない。

ついでにアンクの方から、トランクス達にもルルーシュの放送内容を伝えておく。
スタート地点が森林エリアだったと聞き、もしやと思えば案の定。
リュージと可奈美同様、放送があったこと自体初耳の様子。
一応殺し合いに反対とはいえ、真っ当なやり方とは言い難い。
万が一ルルーシュの異能でトランクスが操られでもすれば、アンク達にとっても非常にマズい展開だ。
予め警戒を促しておくに限る。


919 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 14:59:39 zuUDbGRM0
「話は大体こんなもんで良いとして、だ。悪いトランクス、ちょっと付き合っちゃくれねぇか?」
「俺、ですか?」
「おう。長話してたら一服入れたくなっちまってよ」

スパーと煙を吐く仕草を取り、喫煙を求めてるとリュージが伝える。
ただ幼いしおがいる空間でニコチンを撒き散らすのは、流石に避けたい。
だから外で一本吸いたいのだが、ほんの少しの間でも単独行動を取るのはリスクが高い。
赤い王や黒い神の存在を知ってしまえば尚更だ。

「って事だから、一応近くで見張ってて欲しいんだよ」
「は、はあ。でもその間しおちゃん達は…」

何か言いた気に見やるも、当の本人はケロッとした表情。
大丈夫だよ、と伝えて来るのがよく分かる。
もう一人、少女の肉体を借りたグリードは面倒そうに舌打ちを零す。

「タダでガキのお守りしてやる気はねぇぞ」
「っとに現金な野郎だな。ほらよ。しお、お前にもやるよ」
「いいの?」
「おう、少しの間この無愛想なねえちゃんと待っててくれ」

「早めに済ませろ」と言いつつ、包装を手早く破るアンクへ呆れ笑いを一つ。
しおもアイスキャンディーを貰えたのは素直に嬉しいのか、小さな舌先でチロチロと舐める。
アンクに言われるまでもなく、時間を掛けるつもりはない。
トランクスを伴い外へ出ると、玄関ドアをしっかり閉めた。

間違っても、自分達の会話が中へ聞こえないように。


920 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:00:22 zuUDbGRM0



「悪い、一服入れたいってのは嘘だ」

外へ出たは良いものの、振り返り告げられトランクスは困惑を隠せない。
当然の反応を見せる相手に、まどろっこしいのは抜きで本題に入る。

「実はさっきの話で言ってない事があってな。まあいきなり言われても意味が分からねぇと思うかもだが、取り敢えず聞いてくれ。
 俺に向けて嘘を交えて自己紹介してみろ」
「あの、言ってる意味が…?」
「そういう反応は当然だが、今は一旦言われた通りにやってみてくれ」

意図の読めない要求へトランクスの疑問は益々深まるばかり。
ただリュージの顔はふざけてるのではなく、至って真剣そのもの。
なら彼にとって重要なものなのだとは察せられる。
基本的に真面目な性分である為か、冗談とは受け取らず言われた通りに答えた。

「名前はトランクス。家族構成は両親と、兄が一人。母さんの影響で機械いじりが趣味です」
「兄貴がいるってのが嘘だな」

悩む素振りもなく、一発で嘘を言い当てた。
驚くトランクスへ可奈美の時と同じく、ざっと自身の能力を明かす。
嘘発見器(トゥルーオアライ)。
ダーウィンズゲームの参加者に与えられる異能の一つであり、本人は度々クソシギルと吐き捨てるも効果は本物。
殺し合いが始まった直後も、五大院の嘘を看破したのは記憶に新しい。

「こいつは相手の言葉で嘘を言ってるかどうかが分かる。ガキだろうが年寄りだろうが関係無しにな。
 で、だ。変に取り乱さないで聞いて欲しいんだが…」

一旦区切って、トランクスをきっちり真正面から見据える。
伝え方を間違え敵対すれば、無事でいられる保障はほぼゼロの相手だ。
これでも幾分緊張はある。


921 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:01:30 zuUDbGRM0
「しおの言葉に嘘があった」
「なっ……」
「待った、全部嘘を言ってるんじゃねぇ。殺し合いに乗ってないのと、さとちゃんって女を探したいのは本当だ。
 ただ、お前を傷付けたくないってのや友達と思ってるのは嘘だった」

見開いた瞳が揺れ動くのが、リュージにもよく分かった。
当たり前の反応だ、ああも純粋な好意を向けていたのが実は嘘。
そう伝えられ動揺しない訳がない。

正直、黙っている選択もあるにはあった。
殺し合いに乗っているならまだしも、そうでないならトランクスとしおの間に不和を進んで作りたいとも思わない。
しかし放置したせいで、後々になって取り返しのつかない事態にならないとも限らない。
ましてリュージはDゲームの経験から、たとえ相手が子供であっても油断を持ち込むのは危険と身に染みて理解している。
トランクスの強さを思えば、大抵の敵が正面からやって来ても容易く返り討ちに出来るだろう。
だが思いもよらぬ所から、それも保護対象に牙を剥かれ完璧に対応可能なのか。

(余り考えたくはないが……)

しおを盲目的に信じる余り、彼女にとって都合良く動かされないかという懸念もある。
打算的な事を言うなら、トランクスは現状赤い王のような桁外れな存在と唯一真っ向勝負が可能な人材。
しおに良からぬ真似をされ自分達の敵に回ったり、或いは赤い王への対抗策も見付からぬ内に脱落となるのは避けたい。
だから念の為、しおにある程度の警戒は払えるようこっちで働きかけた。

「しおちゃんが……」

驚いたし、少なからずショックもあった。
これまでの態度を見る限り、彼女なりに心を開いてくれたと思っていたのだ。
けど実は、心の底ではまだ自分を信じてはいないらしい。
どうしてなんだという怒りは、抱いてない。
代わりに自分への不甲斐なさが湧く。
何か、会話の中で彼女を怒らせるような事を言ってしまったのだろうか。
彼女をさとちゃんと再会させたい気持ちに嘘はないが、本気と受け取ってもらえなかったのか。
女の子一人を安心させられないのが、どうにも歯痒い。


922 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:03:49 zuUDbGRM0
(それに……)

リュージがわざわざ外に連れ出してまで事を伝えた意味を、理解してない訳ではない。
きっと彼は、しおが自分を騙してる可能性もあると言いたいのだろう。
そんな馬鹿なとか、相手はまだ子供だぞと言った反論は出ない。
幼い子供と言う括りなら、悟飯はまだ一桁の年齢の時にサイヤ人やフリーザ軍との戦闘を経験している。
自分だって人造人間の脅威に対抗するべく、しおと同じ年の頃から修行に明け暮れた。
サイヤの血を引く自分達とは事情が大きく異なるだけで、実はしおも幼いながらに何らかの平穏とは言い難い背景がある。
という可能性も否定は出来ない。

だけど

――『さとちゃんはね、私の大切な人』

彼女の『嘘』ではない、『本当』を自分は既に知っている。

リュージは言った。
殺し合いに乗っていないことや、『さとちゃん』に関してしおは嘘をついていないと。
自分に向けて一生懸命、心から嬉しそうに『さとちゃん』の事を教えてくれた彼女は。
決して嘘なんかじゃないと、そう分かったから。

(そうだ、俺は――)

そんなあの娘を守りたいと、必ずや『さとちゃん』に会わせてあげたいと心から思ったんじゃないか。
大切な人を取り零し、後悔ばかりの自分と同じ目には絶対に遭わせない。
抱いた決意はあの場限りの気の迷いなどではない。

「忠告ありがとうございます。しおちゃんがどうして嘘を吐いたのか、俺の方でもちゃんと考えてみます。
 けど、あの娘を守ってさとちゃんの所に連れて行くのをやめる気はありません」
「……そうかい。まあ、一応警戒はしとけ。状況が状況だ、気を張り過ぎて損はねぇ」

力強い返答に何かを言いたげにするも、返って来たのは無難な内容。
折角忠告してくれて申し訳ないが、トランクスはしおに関する方針を曲げるつもりはない。

殺し合いに乗ってるならともかく、乗ってないのはシギルでも明らか。
探し人の『さとちゃん』がいる以上、殺し合いを肯定する訳がないのだろうが。
ともかく明確に危険な少女だと断定出来る材料が無いのに、頑なにしおへの警戒を強く促せば却って自分の方が信用を失う。
しおは絶対に信用できないと強く説き、結果トランクスの怒りを買えば命の保障だってない
念の為に気を付けるよう伝え、この話はこれで終わりにする他なかった。


923 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:04:32 zuUDbGRM0
◆◆◆


「おねえさん、お願いしたいことがあるの」

半分程まで齧ったアイスキャンディーから、視線を声の主へ移す。
ソーダ味の氷菓子を舌先で溶かす作業に夢中になってた筈が、いつの間にやらこちらをじっと見つめていた。
甘いものだけ与えておけばガキは大人しくなる。
といった展開にはならなかったらしい。

「アイスがもっと欲しいならリュージに言え」
「ちがうよ。そこまで食いしん坊じゃないもん」

なん何だと、訝しく視線で問い掛ける。
憑依中の肉体はまだ10代の少女だが、しおから見れば中学生であってもずっと年上。
おまけにアンクの性格が表情にも表れ、どこか近寄りがたいガラの悪さがあった。
小学校低学年程度の子供からすれば十分恐怖の対象。
けれどしおは怯えを微塵も顔に出さず、ハッキリと自身の要求を口に出す。

「えっとね、おねえさんがトランクスくんからもらったベルト、譲って欲しいなって」
「あぁ?」

いきなり何を言うのか、片眉を吊り上げ聞き返す。

「ガキの玩具じゃねぇんだぞ」
「知ってるよ、さっきのお話ちゃんと聞いてたから」

ルルーシュの放送をリュージが説明した時、流れで仮面ライダーにも軽く言及しておいた。
と言っても、一口にライダーと言ってもその在り方は千差万別。
自分達グリードと密接に関わるオーズを始め、それぞれ生まれた背景は大きく異なる。
なので簡潔に『ベルトや必要な道具を使い、人間以上の強さを持った戦士に変身する者』と、ざっくり纏めておいた。
既にジオウに変身したロロを見たのもあってか、トランクスも納得がいった様子なのは記憶に新しい。

といった話の内容を理解してるのなら、しおだってライダーがただの玩具でないのは分かってるだろうに。
アンク自身が使うかはともかく、貴重な武器の一つだ。
はいどうぞと軽々しく渡すようなお人好しになったつもりはない。


924 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:05:24 zuUDbGRM0
「代わりに、コレと交換じゃダメかな?」

にべもなく断ろうとした言葉は、しおが取り出した物に目を奪われ喉奥で消えた。
ジャラリと、小さな掌の上で鳴る金属の音。
それぞれに水棲系の生物が描かれたソレを、アンクが見間違える筈もない。
青のコアメダルが三枚、しおの支給品にあった。

「おねえさん、グリード?っていうのなんだよね。このメダルのせつめいしょにも書いてたから、おねえさん欲しいのかもって思ったの」

自己紹介の際、軽く自身の事情にも触れはした。
姫和なる重症の女の体を借りてるが、元々己は人間でないと。
憑依を解けば姫和は確実に死ぬ為、確実な治療手段も見付からな以上はこの状態を継続する。
そう説明されトランクスは多少困惑したものの、悪意で乗っ取った訳でないと分からないのではなく。
ピッコロのように人間でなくとも味方である存在を知っているのもあり、強く警戒を抱きはしなかった。

「…コアメダルを持ってるならもっと早くに出せば良かったろうが。隠す気でいたのか?」
「だいじなお話のじゃましちゃダメって思ったから、言い出せなくて…ごめんなさい」

申し訳なさそうに頭を下げる姿は、大抵の人間なら怒りを引っ込めるのだろう。
しかしアンクはそんな能天気に考えるのは無理。
内心で舌を打ち吐き捨てる、「このガキ、最初から取引に使うつもりで黙ってやがったな」と。

腹立たしいことに、交渉材料としてコアメダルは少なくない価値を持つ。
自身を構成する赤のメダルでない以上、完全復活は不可能。
なれど元々グリードの核となる錬金術の産物だ、色違いであっても大幅な強化は叶う。
事ある毎にメダルを求めた同胞達には辟易したが、実際問題コアメダル一枚増えるだけでも出せる力は変わる。
まして真紅の王相手に力不足を痛感しており、コアメダル確保は悪い話とは言い難い。

取引なんざ知った事かと、力づくで奪い取るのは容易い。
但し強引な手に出た代償は、しおを保護するトランクスに悪印象を植え付けるのへ繋がる。
アンクとて力の差が理解出来ない訳ではない。
もしトランクスの怒りを買い本気で潰しに来られれば、少なくとも今の自分ではリュージとの協力込みでも生き延びられるかは非常に怪しい。

「……何でライダーのベルトを欲しがる?トランクスが一緒にいれば、わざわざテメェが戦う必要もないだろ」
「トランクスくん一人で頑張るのはたいへんだから、私もおてつだいできればって思って…それに――」

猛禽類の如き瞳で射抜くグリードと、幼い瞳が交差する。
そこへ宿るモノの正体に、アンクは嫌と言う程覚えがあった。

「さとちゃんに何かあった時、今度は私のほうから守ってあげたいから」
「…………」

800年前と現代で、幾度も見て来た欲望の顕れ。
人間ならば誰しもが持ち合わせるソレが、愛という名に形を変えてアンクの目の前で熱を帯びていた。


925 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:06:14 zuUDbGRM0



数分後、戻って来たトランクスとリュージを交え改めて方針を固める。
アンクとリュージは現代都市エリアを、トランクスとしおは北上し租界エリアをそれぞれ探索。
安全面を考慮するなら、殺し合いに抗う者の中でトップクラスの戦闘力を持つトランクスと別れるのは悪手だ。
だが仲間との合流が優先のリュージ達と、『さとちゃん』の発見が優先のトランクス達では行動を共にしても足並みが揃うかは微妙。
なので一旦別行動を取り、二回目の放送を目安に合流という事で話は纏まった。

「色々ありがとうございました。お二人共気を付けてください」
「そっちもな。お前なら大抵の相手は大丈夫だろうけどよ」

しおを抱きかかえあっという間に飛び去る背中を見送り、残ったのは男一人と少女の体を乗っ取った怪物一体。
今更ながら、平然と空を飛んで行ったのは普通ならもっと驚くべきなのではないか。
トランクスのデタラメな強さを思えば、飛べるくらいは然したる衝撃でないのだろうけど。

「……で、あのガキの事で警戒するよう言ったのか?」
「取り敢えずは、な」

トランクス達の姿が完全に見えなくなったタイミングで問う。
一服する、などと嘘を言って外へ連れ出した理由はアンクにも薄々察しは付く。
相手の嘘を判別するシギルが無くとも、最初からしおにはどこか油断ならないものを感じていた。
人間の欲望を常に目の当たりにして来た、グリード故の直感と言うべきか。
だからリュージのシギルに反応があっても驚かず、むしろ納得さえした。

「お前の方はどうだ?トランクスがいない間、しおに何か吹き込まれでもしたか?」
「ロロが持ってたベルトをアイツに渡した」
「おいおい……」

何をしてるのかと呆れるリュージの方は見ず、右手で三枚のメダルを鳴らす。
結果を言うなら交渉は成立。
先のことを考えればコアメダル確保の話を蹴るのはやはり躊躇が生じ、結局交換条件を飲んだ。
人間に取引の主導権を握られるのは今に始まったものでなくとも、良い気分はしない。
とは言うものの、三枚を自分の中へ放りこれで戦力強化は叶った。
少なくとも先のNPC程度ならもっと苦も無く蹴散らせるだろう。
ついでに自身の力が増せば、その分姫和の回復も早められる。
それを聞いて喜んだだろう刀使がもういないのについては、訳も分からず苛立つので深々とは考えない。


926 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:06:44 zuUDbGRM0
(あのガキ……)

尤も、リュージが懸念を抱く気持ちも分かる。
あんな幼い子供がライダーになったとて、トランクスや真紅の王の脅威を知っていれば恐れる程では無い。
そう断言出来ないのは、しおが秘めた欲望の大きさを目の当たりにしたから。
映司のようにどこまでも無限に伸びる手は求めていない、しおの欲望の対象は『さとちゃん』たった一人に向けられたもの。
しかし己を射抜いた瞳に宿る欲望は、幼女一人が持つ愛にしては苛烈極まる程。
ある意味、メズールのコアメダルが支給されたのも頷ける。
そのような相手に仮面ライダーという凶器が渡り、絶対に大丈夫だと楽観視は不可能。

「俺らの方でも松阪さとうを探して見付けりゃ、牽制にはなるか」
「そのさとちゃんって女が生きてる内は、殺し合いする気はねぇだろうからな」

どの道、何処へ逃げたか分からない薫達との合流で街を動いて回るつもりなのだ。
道中さとうが見付かるかもしれず、予め自分達で確保しても問題ない。
しおに負けず劣らずの厄ネタ、との可能性があるのは悩みの種だが。

さとうとは別にトランクスから有益な情報を手に入れている。
何でも仙豆なるアイテムなら、姫和の欠損も治せるのだという。
神々の道具である天使の杖が支給品で存在しており、仙豆が参加者の手に渡ってないとも限らない。
探してみるだけの価値は低くないだろう。

激戦を生き延びたからと言って、ダラダラと休む暇はない。
エンジンを吹かし、リュージ達も民家を背に走り去って行った。


【エリアH-6とI-6の境界/現代都市/9月2日午前9時00分】

【アンク@仮面ライダーオーズ】
状態:右腕を失った十条姫和に憑依
   割れたタカメダル@仮面ライダーオーズ
   財団X製の鳥系コアメダル@仮面ライダーオーズ
服装:現地調達
装備:青のコアメダル×3@仮面ライダーオーズ
令呪:残り二画(姫和)
道具:岡田以蔵の刀@Fate/Grand Order、富岡義勇の日輪刀@鬼滅の刃、DVディフェンダー@未来戦隊タイムレンジャー、ランダムアイテム×0〜1、姫和の右腕、ホットライン
思考
基本:この女の身体を使ってこのしみったれた儀式に抗う。
01:この女の知り合いの刀使に会ったら協力させる。
02:映司、アイツまさか下手打ったんじゃないだろうな?
03:アイスを持ってるのでリュージとは今の所縁を切るつもりはない。
04:可奈美の死に妙な苛立ち。
05:神戸しおに警戒。ガキにしちゃ随分デカい欲望を持ってやがる。
参戦時期:本編死亡後
※泉信吾の肉体を使っていた時のように怪人態への変身は問題なく可能です。また、姫和と表面的な記憶を共有できます。
 なので刀使ノ巫女に関する知識をある程度入手できています。
 逆に姫和も仮面ライダーオーズに関する知識は少しは得れているはずです。
※ある程度回復すれば姫和の意識も戻りますが、今は無理なようです。
※元々着ていた服は下着以外は放棄しました。

【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:出血多量(処置済み・薬草の効果で多少回復)、疲労(大)、右腕欠損(肘から下)、気絶
服装:現地調達
装備:なし
令呪:残り二画
道具:なし
思考
基本:このゲームを脱出し、母の敵を討つ。
00:まだ何も成していない。死ぬわけにはいかない。
01:……
参戦時期:少なくとも一期十一話より前
備考
※支給品の入ったリュックを自分で破壊しました。

【前坂隆二(リュージ)@ダーウィンズゲーム】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)、運転中
服装:Dゲーム時のもの、防弾装備@ダーウィンズゲーム(ただし、スカルフェイスはなし)
装備:ブラックテイル(弾数7/9)@バイオハザードRe:4、予備の弾(27発)、アリウス製アサルトライフル(9/15)@ブルーアーカイブ、蟇群苛の車@キルラキル
令呪:残り三画
道具:ボルトスロワー(予備マイン×30、ボルトマイン×17)@バイオハザードRe:4、大量のアイスキャンディー@現実、薬草×11@ドラゴンクエスト、お医者さんカバン(故障)@ドラえもん、アサルトライフルの予備マガジン×66、ランダムアイテム×0〜6(五大院の方には確定で武器が一つはある)、ホットライン
思考
基本:Dゲームじゃないみたいだしとりあえず様子見。
01;とりあえずアンクと行動。逃げた連中と合流。
02:薬師恩寵の異能を持った奴か、仙豆を探す。
03:一応こっちでも松阪さとうを探してみる。
04:優勝させる気ないだろこれ…。
参戦時期:少なくともエイス壊滅以降〜(ダーウィンズゲームの方における)グリード出現前
備考
※お医者さんカバンは故障しており、修理しなければ使えません。


927 : 神様より理解者でいたい ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:08:18 zuUDbGRM0



ジクウドライバーの本来の持ち主である青年は、世界を良くする王様になりたいと願った。
予め定められた偽りの王道を自らの手で討ち破り、真に最高最善の王として覚醒を果たした。
しかし王の力は今、青年とは本来全く縁のない少女の手にある。
青年が民の為に世界を変える決意を宿すならば、少女は愛するたった一人の為に世界を捻じ曲げる覚悟を宿す。
ベクトルは違えど、世界の在り方を変える意志は少女にもあった。

使い手を変え、ジオウの力は沈黙を保つ。
遠くない未来、新たな魔王の誕生を祝福する瞬間を待ちながら。


【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(中)、飛行中
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order、通信機@ドラゴンボール超
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、レジスター(ロロ@ナイトメア・オブ・ナナリー)
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:北上し租界エリアでさとちゃんを探す
02:あの白髪の男(アルジュナ・オルタ)は必ず倒す。その為には同志を集めないと……。
03:赤い服の男(宇蟲王ギラ)やキヴォトスの関係者にも要警戒。
04:しおちゃんを怒らせるような事を俺はしてしまったのか…?
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。

【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、トランクスへの生理的嫌悪感(大)、トランクスに抱っこされてる
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、天使の杖@ドラゴンボール超、ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ、ホットライン
思考
基本:さとちゃんとハッピーシュガーライフを。
01:トランクスくんをつかってさとちゃんのところに行く。
02:そのためにはトランクスくんと一緒にいるのも我慢しなきゃ。
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考

『支給品解説』

【青のコアメダル@仮面ライダーオーズ】
…神戸しおに支給。
800年以上前に当時の錬金術師達が、人間の欲望を元に地球に生息する様々な生物種の特性を凝縮して作った神秘のメダル。
グリードの身体を構成する細胞の役目を果たす。
青は水棲系の生物が描かれており、作中ではメズールの核となった。
シャチ・ウナギ・タコの三枚セット。オーズドライバーと組み合わせれば仮面ライダーオーズ・シャウタコンボに変身可能。


928 : ◆ytUSxp038U :2025/04/03(木) 15:08:50 zuUDbGRM0
投下終了です


929 : ◆kLJfcedqlU :2025/04/03(木) 23:01:23 TYlpOGjI0
皆様投下お疲れ様です!
>>901 の予約に魔獣装甲のエケラレンキスを追加します


930 : ◆s5tC4j7VZY :2025/04/07(月) 05:53:28 H3A/B/II0
皆さま投下お疲れ様です!
東ゆう、ラクス・クライン、ディーヴァで予約します。


931 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/09(水) 00:12:11 tKQ/XjBs0
水神小夜、シェフィ、ディアッカ・エルスマン、小鳥遊ホシノ、益子薫、豊臣秀吉、夜島学郎、ジーク、宇蟲王ギラ、ミームアスランで予約&延長します。


932 : ◆EPyDv9DKJs :2025/04/13(日) 21:07:12 CjeRF2dA0
アレフ、家康、堀北、サビルバラ、レン予約します


933 : ◆mAd.sCEKiM :2025/04/14(月) 00:04:28 ???0
秋山小兵衛、アスナ、ノワルで再予約させていただきます


934 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 02:59:34 Bb.HyndE0
投下します。


935 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:00:44 Bb.HyndE0
益子薫を介抱する。
アビドス高校内部を探索する。
このどちらもこなさなければならない。
これは小鳥遊ホシノとディアッカ・エルスマンの共通見解だが、どちらがアビドス高校の内部を探索するかと言う事で少しばかり揉めた。
アビドスのことは誰よりも自分が詳しいと譲らないホシノだったが、最終的にはチビ二号も女なんだから手当とは言え俺がやったらまずいことも多いだろうという至極真っ当なディアッカの意見に折れる形でホシノが薫と共に残った。

「で、探索とは言ったが……堂々とハジキが置いてあるぐらいで意外と普通のスクールだな」

道中見つけた防災バックを回収しながらディアッカは適当にアビドス高校内を見て回っていた。

(拍子抜けするぐらいなにも無ぇ……ここでは戦闘行為がご法度なのか?
いや、だとしたらあのクソメビウスがそこらをうろうろしているのは変だな。
いや、待てよ?
と言う事は普通に戦闘しといて直撃がありそうな場所に核心に迫れるような物はないってことか?
だったらなんで態々アビドス生徒会長なんて脳味噌女は口走ったんだ?
ミスリードか、それともなにか見落としがあったか?)

等と思いながら歩いているとホシノから絶対に確認するように頼まれていたアビドス廃校対策委員会の部屋に辿り着いた。
念のためにストライカーパック無しのストライクを装着し、アーマーシュナイダーを構えながら室内に入る。
相変わらず9億の借金とテーブルに無造作に置かれた銃火器に目をつぶればなんてことない。
プラントでも地球でも一定以上に裕福な国ならどこででも見かける普段授業で使わないタイプの教室だ。
入って右手にホワイトボード、左手に備品棚、正面には会議用の机、奥の窓には座った時に外を向く形になる様に机といすが配置されている。

(学校か……思えば同期も随分減っちまったな)

それは人にとっては輝かしい青春の象徴、或いは忌むべき過ちや地獄の象徴。
ディアッカにとっては、そう悪い記憶ではない。
イザークが、アスランが、ニコルが、ラスティが、ミゲルが居て自分たちの命と権利と財産とを奪いに来る悪しきナチュラルたちに思い知らせてやるのだと互いを時に励まし、煽り合いながら切磋琢磨した場所だったのだから。

(あのチビ共が普通に学生やってる姿は初対面が初対面のせいで全くイメージできねぇけど。ん?)

等と考えながら部屋を探っていると微かな足音が聞こえて来た。
恐らく二人、足取りから考えるにそれなりに警戒しながら進んでいるようだ。

(エールに切り替えるか?
いや、こんな狭い中ではストライカーパックは邪魔にしかならねぇ。
このまま……いや、もし来たのがセリカとかだったら後でチビ1号に文句言われんな)

ガコン!と魔戒騎士の鎧が解除のような音と共にストライクガンダムが解除される。
ディアッカは壁立てかけてあったアサルトライフルを手に取り弾を込め、入口に向けて構えた。

「居るんだろう?入って来いよ。
事と次第によっちゃあ再起不能になってもらうが、その気がないなら武器を捨ててやってもいい!」

一瞬、静寂の後、部屋に二人の青い髪の少女が入ってきた。

────

水神小夜にとって教室は、今となってはどちらとも言えない場所になっていた。
同じトレスマジアである花菱はるかや天川薫子、そして特殊な力を持っていないはずなのにこの殺し合いに巻き込まれた柊うてなたちとの毎日を思い出す一方で、マイ=ラッセルハートの記憶改ざんにより割り込まれた偽りの幼少期の記憶……小学校で『マイ先生』にとても良くしてもらったという記憶がどうしても想起されるのだ。

(マイさんとは何でこんなことをしたのかちゃんと一度話したい。
……勿論シェフィちゃんに左虎さんが居ないところで)

ザラサリキエルの死告邪眼は確かに異能力を解除するモノだが、小夜への影響は偽の記憶と本当の記憶の区別がつく様になり、封印されていた記憶が復活するという形で発揮されたおかげで洗脳から復帰した直後にしては冷静な判断力を持ったまま行動が出来ていた。

(それにマイさんにこのバトルロワイヤルのルールを植え付けられたお陰でもう迷う事もない)

マイは羂索に説明を受けた時の記憶を多少加工して小夜に与える形でルールを理解させようで、小夜には確かに『羂索が自分の身体である梔子ユメをアビドス生徒会長だと言った』という記憶を有している。


936 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:01:41 Bb.HyndE0
その為、この場所に何があるにせよ、人が集まると確信した小夜は本音を言えば今すぐ移動したかった。
だが洗脳から脱したとはいえ、こんがらがった頭のまま動き回りたくなかったのと、シェフィを一度落ち着かせたかったので一時間近く休憩と情報を整理する時間に使い、それが終わると本当に今更ながら服がボロボロなことに気付き、着替えを探すのでさらに時間をかけてしまった。
そんな事情があって氷の2人組はアビドスに留まっていたのだ。

「随分と目に良い格好してるな」

ヘイローが頭に浮かんでないのを確認したディアッカはアサルトライフルを構えたままつい思ったままを口にした。
小夜の服装が校内のどこかで見つけたらしいアビドス高校指定のブルマタイプの体操着だったからだ。

「───ッ!これしかなかったんだから仕方ないでしょう!?」

「?」

羞恥心は感じてたらしく、思わず下半身を抑えるアズール。
シェフィは良く分かっていないのか首を傾げる。

「悪かったからそう睨むなよ。ほら」

そう言ってディアッカは銃を小夜に、背負っていたリュックをシェフィに差し出した。

「え?」

「言ったろ?その気がないなら武器は捨ててやるって」

困惑しながらも武器と荷物を受け取る二人。
小夜はいつでも変身できるように構えながらさらに問う。

「あなたは、この殺し合いに逆らう気なの?」

「ああ。俺もクルーゼ隊長に一言言ってやりたいしな」

「クルーゼ隊長って……」

「あのかめんのこわいひと?」

「色々と事情が複雑なんだけど、一言で言うと元上官だ」

「そのいろいろな事情も含めて、話してくれますか?」

「当然だな。
仲間と途中で拾った怪我人が下の階で待ってるから、そっちで話す」

────

夢を見ていた。
皆が居る夢だ。
見覚えのある長船のどこかの教室での光景。
可奈美がまた好きだったアニメガ打ち切りになったとぼやいていて、それを姫和が夜更かししなくてよくなったなと斬り捨てて、その様子を少し離れたところで舞衣と沙耶香が見守っていて、遅れて入ってきたエレンが騒ぎ出して……そんなありえなくなってしまった日常。
壊した者が居るとすれば、それはきっと……

「似合ってるじゃねえか」

「ん……」

女子高の筈の長船でめったに聞こえない男性の声に顔を上げると、見知らぬ4人の少年少女がそこに居た。

「お、起きたなチビ2号。ちょっとは休めたか?」

「……確か、ディアッカだったか?ここは?」

「アビドス高校の中だよ。
本当だったら保健室まで行った方がよかったんだろうけど、医療キットは手持ちにあったからさ。
床に転がしちゃってごめんね?」

ホシノに言われて今まで寝ころんでいた場所を見ると、確かに自分は寝袋が敷かれただけの床に寝かされていた。

「そっちの2人は?」

次いで薫は見慣れぬ青い制服……ディアッカに支給されてから今までリュックの肥やしになっていた錬金アカデミーの制服に着替えた小夜とシェフィは見る。

「青いマントの方がサヨ、チビ三号がシェフィだ」

「水神小夜です」

「シェフィ!よろしくね、カオル」

「そっか……そいつらから聞いてるかもだけど、お前らも宇蟲王やジンガたちに気を付けろよ。
じゃあな」

そう言って薫は足元のッデイパックを掴んで部屋を出ようとする。

「おいおい余韻もクソもねえな」

それより早くディアッカはソードストライクガンダムを装着し、ロケットアンカーで薫のデイパックを引っ手繰る。

「返せよ。寝かしてくれた礼なら後でいくらでも……」

「これでも軍属なんでな。
今のテメェみたいな面の奴が出撃して帰ってきたところ観たことないから言ってんだよ。
しばらく休んでから……」

「オレはもう大丈夫だ!休めるだけ休めた!
だったらもうこれ以上ジンガや真昼……宇蟲王のせいで誰かが死ぬ前に行かないといけないんだよ!」


937 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:02:31 Bb.HyndE0
あまりの剣幕にホシノや小夜も動けないでいる中、ストライクの横を抜けてシェフィが一歩前に出る。

「だいじょうぶなら、なんでカオルはわらえてないの?」

こういう時は子供の言葉選びの方が的確だな、と変なところ感心しつつ、様子をうかがうディアッカ。
薫の表情は先ほどよりも酷い。
唇をかみしめ、涙が出てないのが不思議なほど沈んだ目で何かを睨んでいる。
シェフィはそのまま歩みを止めず、10センチ近く背の低い薫を自分の胸元に抱きしめた。

「もうだいじょうぶって、そういってだれかをたすけられるのはだいじょうぶなひとだけだよ」

薫は困惑しているからか、それとももっと違う理由からか、シェフィを突き飛ばす様なことはしない。

「オレは……オレは大丈夫じゃないといけないんだよ。
オレのせいで勢死んだんだあっ!
可奈美も!姫和も!ロロも!他の連中も皆!
それなのにどうして休めるんだよ!
無理だ!
戦わないと!戦ってないと!オレは……オレは舞衣たちだけでも生かしてエレンの所に返さねえとダメなんだっ!
じゃないと……じゃないと……」

「あの、マイさんって……」

「名簿の並び的に、多分マイ・ヤナセってやつのことだろ。
お前の知ってる偽先生じゃないと思うぜ」

「そうですか……」

薫が目覚めるまでの間にマイ=ラッセルハートについて聞かされ、飛び出そうとしたホシノが先ほどの薫のリュックの様にロケットアンカーで首根っこを掴まれたのは完全な余談である。
そしてそんなことがあったと感じさせない程度には冷静になったホシノがシェフィの胸元の薫に語り掛ける。

「それはそうかもしれないけど、そのマイちゃんたちはカオルちゃんが死んで喜ぶの?」

自分の方が死ねばよかったと何度思ったか分からないが、

「それは……」

「だいじょうぶ」

シェフィの言葉に顔を上げると、彼女はまるで母か姉の様な優しい笑みを浮かべていた。

「わたしたちがきたから、だいじょうぶ」

駄目だ。自分にこんな都合のいい展開は許されない。

「うぅうう……」

歯を食いしばれ。甘えるな。
楽になるのが許される瞬間はないはずだ。
死ぬまで戦ったって払拭できない罪がこの双肩にのしかかっている。
自分に、益子薫にヒーローがやって来るなんてありえない。

「あああーーーっ!
うわぁああああああーーーーーーっ!!!」

どれだけそう思っていても、彼女も10代の少女だ。
たった数時間で濃密にぶつけられた絶望をいきなり真正面から受け止められるほど丈夫ではない。
たまっていた悲しみと絶望を吐き出すように泣いた。

「シェフィちゃん……」

泣き崩れる薫を精一杯抱きしめるシェフィの姿に小夜はなんだか誇らしい気持ちを、ホシノとディアッカは少し恥ずかしい気持ちを抱いた。

(なんかいつの間にか頭数に入ってる……とか言ったら大顰蹙だよな、これ)

(あーあ。最初から放り出す気だったとか言ったらこっちが悪者かなー?)

ソードストライクを解除し、後頭部を掻くディアッカ。

「チビ三号はカッコいいな。
どっかの別の誰かに見習って欲しいぜ」

「誰の事言ってるの?」

「……どっかのチビに言い直してやろうか?」

「うるさい」

などと話していると2人の耳に空気を読まない何かが風を切り迫る音が聞こえてきた。
銃弾飛び交うキヴォトスや冥府魔導のコズミックイラの戦場では聞きなれてしまったそれなりの質量の物がかなりの速度をもって飛んでくる音だ。

「来るよ!」

「俺たちの後ろに!」

肩にかけていた盾を展開したホシノとエールストライクガンダムを装着して対ビームシールドを構えたディアッカが3人を守って立ち塞がった。
直後に窓を壁ごと破壊するレーザーの雨が殺到する。

「イミテーションとは言えよくもアビドス高校を!」

「クッソ!一体誰だ!?」


938 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:03:26 Bb.HyndE0
「その声はディアッカ!?!?!!
なぜ三人も身長150㎝以下の女子を侍らせている!!!
この……ロリコン野郎!!!
ミリアリアが泣いてるぞ!!!
そうゆうのはいつも読んでるエロ本程度にしておけ!!!
チャーハンで胃袋でも掴んだか!?!?!!」

煙の向こうから見えた背中に円形の何かを背負ったガンダムのシルエットが喧しく叫んだ。

「はぁっ!?誤解だ誤解!
誰がこんな起伏の無ぇチビ共に興奮すんだよ!
完全に犯罪だろうが!
俺の好みはもっと凹凸はっきりした……痛っ!痛い!
こんな時に脛蹴るなチビ1号!」

「うっさい褐色助平!」

「2人ともやってる場合じゃないですよ!
変身(トランスマジア)!」

マジアアズールに変身した小夜が飛び出ると、ディアッカもエールストライクガンダムを装着して続く。

「チビ1号は他のチビ共連れて下がれ!殿は俺とアズールが!」

「っ!──了解!」

「ま、待てよ!戦うんならオレたちも……」

「餅は餅屋!ガンダムはガンダムだよ!」

「ケンカしてないでさっさと行けチビトリオ!」

ディアッカの叫び声にホシノは盾を畳んで担ぎ、フリーになった手で薫の手を掴んで走り出す。
シェフィも薫の手をつないだままだったので3人は数珠繋ぎのようになって部屋を出て行った。

「よく見るとストライク!?!?!!
どうしてお前がストライクのパワードスーツを纏っているんだ!?!?!!
キラにイモータルジャスティスが渡されていた件と言い、議長はパイロットとガンダムを入れ替えて俺を困惑させようとしている!!!!!!!」

滅茶苦茶に喚きながらも的確に二人を狙って放たれるドラグーンの熱光線をアズールとストライクは背中合わせになって守り合いながら作戦と現状把握を始める。

「なんか妙にディアッカさんのこと知ってるかのような口調ですけど知り合いですか!?」

「聞き覚えのある声だけど言ってる事滅茶苦茶だし多分?がケツに付いてる方のアスランだ!」

「他に根拠は?」

「強いて言えば今の議長はアスランの親父のはずだ。
公の場でもねえのに自分の親父の事議長何て呼ばないだろ、普通!
俺も俺の親父の事をプライベートで議員とは呼ばねえよ」

「何ィ!?パトリック・ザラが議長だと!?!?!!
と言う事はお前はまだSEED無印の時間軸のディアッカということか!!!!!!
続編でお前は緑服だぞ!!!!!!」

「ぞ、続編?一体何の話を……」

「俺だって何がどうなってああなるのか知りてぇよ!
とにかく今はアイツをチビ共のとこに行かせないことだけ考えるぞ!
ディアッカ・エルスマン、エールストライク!発進する!」

「水神小夜、マジアアズール!行きます!」

「戦いはヒーローごっこじゃない!!!!!!
気合だけでどうにもならないことを教えてやるぞ!!!!!!
アスラン・ザラ、レジェンド出る!」

────

背後から聞こえる熱光線の破壊音と、爆発音に何度も振り返りながらも薫はホシノとシェフィに挟まれて進んでいた。

「なあ、本当にあの二人は大丈夫なのか?
今からお前だけでも行った方が……」

「カオルちゃんとシェフィちゃんだけ置いて行けって?
冗談。そんなことしたらなんで戻ってきたんだ、脳味噌までチビなのかってディアッカにおじさんが怒られちゃうよ」

「だからって逃げ回ったところでどうしよもないだろ?」

「でもカオルまだだいじょうぶじゃないよ?」

「それは……」

確かに一度安心してしまったせいか、武器を持つ手が嫌な汗で湿るのが分かる。
怖いと、嫌だと素直に思ってしまった。
心の働きとしては健康な動きだが、満足に戦えない現状に繋がってると思うとシェフィが悪くないと分かっていても恨めしい。

(とは言えこの辺りに安全な場所なんて……)

全くない。
3人はその確かな革新を抱く羽目になった。

「はぁ……はぁ……」

「カオルちゃん?」

「くるちーの?」


939 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:03:52 Bb.HyndE0
急に薫が胸に手を当てて蹲った。
呼吸も荒く、汗も止まらない。
視野が見たくない者を全力で追い出そうと狭まり、両足に力を籠めることすら辞める様に脳が絶叫を上げる。

「本当にどうしたの?
まさか前戦った時に変な物吸っちゃってたとか……」

「……がう。違う!奴だ……奴が!
あのバケモノが……宇蟲王がここに来てる!」

ホシノとシェフィの腕が乱雑に掴まれ地面に引っ張られた。
二人の頭上を、黒紫色の斬撃波が通り過ぎて破壊していく。
着弾先が燃料満載のドラム缶にでも引火したような大爆発を起こした。

「ふぇええ……」

「嘘でしょ……ここまで規格外なの?」

辛うじて立ち上がる事で来たホシノが観たのは、息も絶え絶えに膝をつく覇王と、覇王程度ではいいとこ腰までの高さしか届いていないと確信させるだけの圧倒的力と邪悪の体現とでも呼ぶべき宇宙の王の姿だった。

────

「まだ他にも塵芥どもが居たか」

アビドス高校の内部にもプレイヤーが居るのを確認し、心底愚かしい物に対する侮蔑を向ける宇蟲王ギラ。

「宇蟲王よ、まさかこの豊臣秀吉を無視するつもりか?」

そのわずかな間に息を整えファイティングスタイルを取り直す秀吉。
だが宇蟲王はその様子を鼻で嗤う。

「路肩の石風情がこの宇蟲王ギラを下に見るのも大概にしろ。
貴様以下の価値しか持たぬ者などこの俺が直接手を下す必要もない」

彼が合図を出すと、その背後から4体の怪人が出現する。
千鳥を持たせたバタフライオルフェノク、スペードのAやKのアンデッドとよく似た姿と同形状の武器を持つボスローチ、冥府の斧と盾を装備した使徒スコーピオンロード、トッケリク星出身のミューズィックのマズアータ。
遍く昆虫生命体を支配する能力で呼び寄せたNPCモンスターたちだ。

「石ころ以外の雑魚を掃除しろ」

王命を受けた怪人たちはアビドス高校の内部に向かって走り出す。

「行かせない!」

「学郎!」

秀吉に宇蟲王が敵意を向けている間とNPCモンスターが集結する間に息を整えた学郎とジークが走り出すが、それを見越してマズアータが胸部の羽を激しく振動させて無茶苦茶な怪騒音を発生させ、ひるんだすきに両腕のシンバルの意匠から光線弾を発射した。
遮二無二とんで避ける学郎だったが、結局マズアータたち宇蟲王の配下を止めることは出来なかった。

「大丈夫か?」

「はいっ……でも、耳がっ!」

耳を塞ぎながらどうにか転がって避けるも、音波攻撃に巻き込まれるどころかむしろ戦意を向上させて3体の怪人がそれぞれの獲物を狙って進み始める。

「これしきの雑音で我が覇道への歩みは止まらん!」

「貴様だけで何ができる?」

オージャカリバーZEROと覇王の拳が火花を散らす。
護星天使すら膝をつく怪音波を浴びて動きの切れが全く変わらないのは驚嘆に値するが、秀吉単体では宇蟲王に拮抗は出来ても凌駕は出来ない。
結局寿命と言う概念を有する秀吉の方が先に限界が来る。

「……二人ともここを動かないで」

「ホシノ?」

「これでもアビドス生徒会の生き残りなんでね。
贋物とは言えアビドスで好き勝手させるわけにはいかない!」

先ほどの一撃、そして校舎内から校門までのそれなりの距離であっても感じる圧倒的王気(オーラ)のおかげで確信した。
もうここら辺一体に安全な場所はないことを。
宇蟲王の視界には入る全てが奴の破壊対象であり有効射程距離。
奴を相手に装備体調共に最高の状態のアビドス対策委員会、ディアッカたちザラ隊のトップガン全員とそれぞれの徹底的にチューンナップされた愛機、そしてトレスマジア全員が束になって戦っても、全滅するか、勝てても一人か二人しか生き残れない未来しか見えない。
それ程に隔絶した実力差がある。
ならば今、豊臣秀吉が宇蟲王を抑えている間にその取り巻きを倒して迅速に逃げるのが一番賢い選択に違いない。

(まあ、正直きついにもほどがあるけどやるしかないよね)

失礼ながら宇蟲王相手にジークや学郎は物の数に入らない。
実際今も(ホシノより怪音波の音源の近くに居るせいもあるが)ボスローチ一体相手に二人がかりと言った有様だ。
つまりタイムリミットは宇蟲王が秀吉の相手にしている間。
その間に迫りくる昆虫怪人共を最低限追跡不能の状態にして逃げなければならない。
その上で秀吉もそのうち殺して追いかけてくるだろう宇蟲王本人はディアッカたちが抑えているあのガンダムに擦り付けて逃げる。
自分で言っておいてなんだが、こんなのは作戦とも呼べない出たとこ勝負だ。


940 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:04:11 Bb.HyndE0
ホシノにとって地の利……というか土地勘のあるアビドス以外では思いついても実行しようなどとは到底思えない。
だがやらなければ確実に殺される。

<チャージライズ!フルチャージ!>

<カバンショット!>

散弾で目くらましをしてから懐に飛び込み、盾でバタフライオルフェノクが振り下ろした千鳥を受け止め、横から来たスコーピオンロードを横蹴りで怯ませる。
盾を思いきり振り回してバタフライオルフェノクの体勢を崩すと復帰して来たスコーピオンロードの攻撃も躱して二体ともに近距離で銃弾を叩きこむ。
流れる様に二体の怪人を捌くホシノだが、何時もに比べて動きの切れがやはり悪い。

(あの胸がギターみたいになってるのを先に潰したいけど、これ以上近付いたら流石にいつもの動きが出来なくなるし、そうでなくともそんなことしてる余裕はない!)

気を良くしたのかますますノリノリで不快な音波をバラまくマズアータ。
こめかみに頭痛を感じ始めて集中力が切れかかるホシノに対して怪人たちはどんどん動きが良くなっていく。
宇蟲王の方を見ると、秀吉は相変わらずどうにか対抗できているが(繰り返しになるがそれだけでも驚嘆に値する)そこまで長く持ちこたえられるとは思えなず、ジークと学郎もボスローチに邪魔されてマズアータにまで辿り着けていない。

(このままだと本当に全滅する!)

分の悪すぎる賭けだが今からでも4人を拾って逃げるか?
その方が生き残れる公算が高い気がしてきたその時だった。

『このシン野郎!!!!!!このシン野郎!!!!!!』

「え?シェフィちゃん?」

隠れているはずの少女がかなりの声量で叫んだと思った。
目を向けると、そこは戦闘と戦闘の間、丁度誰もいないはずの場所で人影はない。
だがホシノはそこにさっきまで居なかった緑色の奇妙なガジェットが居るのに気付いた。

(カエル?)

「何ィ!?!?!!
シン野郎だろぉ!!!!!!
何処だシン!!!!!!
何処に居ようと殴ってステラの所に送ってやるぞ!!!!!!
さもなくばクッキー↑!のように粉々にしてやるぞ!!!!!!
己の不出来を呪うが良い!!!!!!」

敵味方関係なく無数の熱戦が降り注ぐ。
とっさに頭上に盾を構えたホシノやボスローチにスコーピオンロード、そして元々生物として規格外の肉体を持つ宇蟲王ギラや秀吉も問題なかったが、バタフライオルフェノクは写シをはがされてなおビームの雨を受けて青い炎を噴き上げ爆散。
マズアータもビームを避け切れず爆散した。

「学郎大丈夫か!?」

「は、はい!でもなんで……」

「ギリギリだがエナジーアイテムが間に合ってくれたようだな」

学郎とジークはジークが戦闘中に拾っていたらしい鋼鉄化のエナジーアイテムで辛うじて耐えていた。
だがこれで終わりではない。

「どいつだシン野郎!!!!!!
いや、どっちにしろここに居る全員には死んでもらうぞ!!!!!!
俺が願いをかなえるために!!!!!!」

全員の頭上を取ったレジェンドガンダム……ミームの方のアスラン・ザラが急降下攻撃を仕掛けてくる。

「もう何が何だか……」

「行くぞチビ!」

「ぐえっ!」

ついさっきも感じた首が閉まる感覚と共に引っ張られる。
思った通りディアッカことソードストライクガンダムの手の中に納まった。

「ディアッカ!これって……」

「チビ2号と3号の大手柄だよ!」

────

話はホシノが飛び出した直後に遡る。
最初は彼女に続いて飛び出そうとした薫だったが、涙目のシェフィに裾を掴まれ引き止められた。

「行かせてくれ!
あの人数であいつに挑む何て自殺行為どころの話じゃ無いんだ!」

「だめ!まだカオルだいじょうぶじゃない!
ふるえてるしないてる!」

確かにその通りだった。
今だって助けてくれたホシノを死なせたくないという一心で動けているだけであって、本当だったら一目散に逃げ出したい自分に逆らえているのが奇跡だ。

「んなこと言ったって……じゃあ代わりに何かできることないのかよ!
例えばディアッカと小夜を呼びに行くとか!
あの喚き散らしてた甲羅付きガンダムがまだ居るなら加勢に行くとか!」

何もしないなんてことが出来ずにそう言うと、これには流石にシェフィも一度アズールを大怪我させている負い目と後悔から賛同する。

「ん〜〜……」

シェフィは自分のリュックを漁り始めた。
ゲームボードに、専用のカード、そして最後の支給品を取り出す。


941 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:04:47 Bb.HyndE0
「それは?」

「なんだろ?」

「今まで見てなかったのか?
ちょっとそれと説明書貸してみろ」

シェフィから受け取った薫がそのアイテム、メモリガジェットフロッグポットの説明書を読んだ感想はこんな子供用のおもちゃが何の役に立つ?だった。
このサイズのガジェットがビル9階分の高さをジャンプ出来たり、録音した音声を多少編集できるなど機能自体は手のひらサイズの機械にしては規格外だが、こいつ一機行かせたところで宇蟲王相手mには気を引くこともできるか怪しい。
仮に出来ても煩い鉄屑の一言と共に一刀両断される見たいが目に見えていると感じた。
あのよくわからない喚き散らしているガンダムが相手でもジンガとは別ベクトルだが同等に厄介そうなアイツが素直に気を引かれてくれるだろうか?
とは言え対処すべき脅威には違いないし、宇蟲王を相手にするよりかはマシだろうと判断して二人は荷物を纏めてディアッカたちが戦う方に戻った。

「あっち!」

「なんだこんな移動しながら戦っているだ?」

その疑問は無数のドラグーンを避けながら高速移動するエールストライクガンダムを見て納得した。

「とっとと倒されろこのロリコン野郎!!!!!!
俺はさっさと本物の俺を倒し!!!!!!
シン野郎どもをステラの所に送ってバトルロワイヤルを勝ち抜き願いを叶えないといけないんだ!!!!!!
何故それが分からない!?!?!!
どうしても邪魔をするというならチャーハンの様に炒めてやる!!!!!!
それはお前の得意料理だろ!!!!!!」

「本当に何なんですかこの人!」

「知らねえよ!
少なくとも俺は本物のアスランと料理の話なんかしたことねぇ!」

大分アバンギャルドな形にボロボロになったビームシールドでビームジャベリンを防ぎながら思わず叫ぶディアッカ。
その様子を遠目に眺めながら薫はシェフィと顔を見合わせた。

「……おいシェフィ、もしかしたら大金星かもしれないぞ」

「どうゆうこと?」

「要はこうゆうことだよ。耳貸せ」

シェフィに作戦を伝えた薫はマークツヴォルフを装着する。

「ばっちり小夜たちに伝えてくれよ!」

「わかった!」

飛び出した薫はこちらに注意を引かせるように三点バースト式ハンドガンのデュランダルを腕部から引き抜きレジェンドに放つ。
武器の名前を言っていたらもっと確実に注意を引けたが、これだけでも十分だったようだ。
VPS装甲に弾かれノーダメージだったが、闖入者を経過して、視線が薫の方を向く。

「やい甲羅付きガンダム!シン野郎が何だって!?」

「急に現れて何だお前は!?!?!!
……よく見るとファフナー!!!!!!!
なのにシン野郎を知らないだと!?!?!!
さてはお前の出典はスパロボシリーズじゃなくて本家のほうか!!!!!!
シン野郎とは名前にシンが付くか入ってるかシン読み出来るかジン野郎か語感が似てるか!!ウジウジしたり悩んだりする奴の事だぞ!!!!
そんな奴らは何発でも殴ってステラの所に送ってやる!!!!!!」

「そうかよ良いコト聞かせてもらったぜ!」

擬似メモリで録音を済ませた薫はエボルトラスターでバリアを張りながら建物に入って行く。

「待てこの…角野郎!!!!!!
聞くだけ聞いておいてなんだというんだお前は!!!!!!
何がしたいんだアンタはぁあああああ!!!!!!
俺の台詞じゃないぞ!!!!!!」

建物に入り、パワードスーツを解除。
録音した音声を説明書の手順通りに編集していく。

「あとは声をあいつのじゃないのにして……よし!」

<フロッグ!>

メモリを装填してガジェットを起動させた。

「大変だと思うけど、宇蟲王たちの居る方まで行ってくれ。
後はお前に託したぞ!」


942 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:05:39 Bb.HyndE0
薫は廊下にフロッグポットだけを残すと横の教室に入る。
録音した音声を発し続けるフロッグポットを追ってレジェンドが通り過ぎて行った。

────

「もう他の三人は合流してる!あとはこのまま……」

「このままなんだ?」

一閃。
反射で盾を構えることが出来たのは奇跡だ。
出なければ吹き飛ばされるだけでは済まなかった。

「ぐぁあああああああーーーっ!」

「痛ったぁ……」

オーバーダメージでパワードスーツの解除されたディアッカが肉まで抉れた左手を抑えて天を仰ぐ。

「俺の前によくもこのような掃き溜めの生塵を引きずり出したな?
この罪、万死でも足りんぞ?」

(くっそ……骨はやられてねえが、何時も通りにはいかねえな)

どうにか腕を抑えながらディアッカは首を持ち上げ周囲を見渡す。
それなりに薫が苦労して誘導した偽アスランは一撃でフェイズシフトダウンまで追い込まれ、ディアクティブモードに戻ったレジェンドの姿のまま「オ、オレヴァ……」などと意味不明なうめき声をあげている。

(ちっ!本物の100倍使えねえ!
チビと一緒に今まで戦ってた連中は……俺ほどじゃねえけど消耗してるか。
反撃できそうなのはそこのゴリマッチョだけってところだな)

「うそ……ディアッカ!血が……腕が!」

「死んでは、ねえよ!いつつ……」

涙目になって触ってもいい物かと傷の上で両手をうろうろさせるホシノの肩に掴まりどうにか上体を起こすディアッカ。
その様子をゴミ袋の山が崩れたのを見るような目で見る宇蟲王ギラ。

「ホシノ!ディアッカ!」

「2人とも大丈夫ですかって、ディアッカさん腕が!」

「皆どうして?」

「たすけにきた!」

「来ちゃったのかよ……」

あまりに遅いと感じた3人が来てしまった。
完全なる善意とこちらを心配してのことなのは仕方ないのだが、それでも今はさっさと逃げて欲しかった。

「屑に滓に塵が雁首揃えてぞろぞろと……ゴミには別のゴミを引き寄せる習性でもあるのか?」

そう言って宇蟲王は紫色のオーラと共に無数のサナギムの再現体を召喚する。

「マジアベーゼみたいに媒介を使ってるわけでもないのにこんな数を!?
こんな反則級の技を令呪無しでなんて……」

「何度も言わせるな。
貴様ら如きとは格が違うのだ」

そう言って宇蟲王がオージャカリバーZEROを振り上げる。
生き残っていたボスローチにスコーピオンロードに率いられ、サナギムの軍勢が一斉にかかる。

「✝虚無の申し子✝の起動鍵を使って!!殴るっ!!!!
どいつがシン野郎か判然としないがどっちにしろ俺の願いをかなえるために死んでもらうぞ!!!!!!!」

いつの間にか起動鍵を変えた偽アスランが復活していた。
無数のワームスフィアを展開して地面や建物ごと召喚されたNPCモンスターの軍勢とプレイヤーたちに攻撃を加える。

「なんだよあのファフナーは!?」

「むっ!これは……」

「ジークさん!これ多分当たったらまずいです!」

「分かっている!」

「仕方、ねえか!」

ディアッカはどうにかもう一度エールストライクを装着し、無事な右腕でホシノを抱えるとスラスターを吹かして回避行動を始めた。

「お前らもどうにか躱せ!じゃないと死ぬぞ!」

アズールもシェフィを抱え、薫もマークツヴォルフを装着して走り出す。
右に避けても左に避けても不気味な正円に抉られていく。

「これは、ワームホールか?」

確かにこのレベルの攻撃ならば彼であってもダメージにはなる。
飛んでくるアンカーユニットも同化という特性を持つ以上下手をすればワームスフィア以上に厄介だ。
しかしそんな攻撃の中にあっても宇蟲王ギラだけは何の焦りも感じていなかった。


943 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:06:21 Bb.HyndE0
「本気でこの程度とは。
いい加減にその喧しい口を閉じろ掃き溜めのカス」

宇蟲王ギラが吐き捨てたのと、急にマークニヒトの身体が彼の方に吸い寄せられるように引っ張られる。
彼にとって多少引力を操作するなど造作もない。

「だったらこの勢いを利用して貴様を串刺しにする!!!!!!
この場で一番強いのはお前の筈だ!!!!!!
そんなお前を同化吸収して残りももれなく殺してやるぞ!!!!!!」

そう言ってミームの怪物はアンカーユニットを全機展開して宇蟲王に攻撃を仕掛ける。

「べたべた触るな気色悪い」

しかし宇蟲王はワープゲートを展開し、アンカーユニットをそのままニヒトの背中に返した。
急に襲って来た背中の衝撃につんのめるミームハゲを宇蟲王は剣圧だけで吹き飛ばして見せた。

「ヌオォォォォ!!!」

遠ざかって行く喧しい叫び声に光刃を放つ。
炸裂した斬撃で火花が爆ぜて更に偽アスランが遠方に吹き飛ぶのを確認すると、宇蟲王は改めて足元のゴミに視線を寄越す。
その背後には生き残ったボスローチにスコーピオンロード、そしてまだまだ大軍と呼んで良い数の残ったサナギムの群れが集う。
状況は何一つ好転していない。

────

「本当に危なかったッ……!
同化したライオットの安無嶺過武瑠を令呪で全力全開にしなければ間違いなく殺されていたッ!」

しぶとくこのミーム野郎は生きていた。
少し前に殺した切島の“個性”が回り回ってこのハゲ疑惑を助けるとはなんたる皮肉だろうか。
だがそれでも二回しか使えない切り札を五十時間の内十時間が経過しないうちに使い切ってしまったのも事実。
このネットのおもちゃは命を拾ったが良いががけっぷちの状態なのだ。

「あんなのジェネシスでもない限りどうにかできるわけがないだろう!!!!!!
やはり議長はこのゲームバランスの狂った殺し合いを利用して俺を殺そうとしている!!!!!!」

当たらずも遠からずなのかもしれないがこびりつくギルバード・デュランダルの影のせいで全てを台無しにしながら立ち上がる偽アスランは更に喚きたてる。

「こうなったらこの前の俺のノンデリ発言のせいでシン野郎並みにウジウジなやんでるだろう舞衣を殺してレジスターを奪う!!!!!!
ついでにあのドウガイとかいうのと本物の俺も殺す!!!!!!
あの赤い服の男はどうにかレジスターを核爆発させて殺すことにするぞ!!!!!!」

どこからどう聞いても最低最悪の発言と発想の元、ネットの生んだ怪物は再びレジェンドガンダムを装着。
鬼の成り損いと死体兵器と化した親友の介入もあったとはいえ、心身共に蹂躙したに等しい相手をさらに鞭打つという本物のアスランならば絶対にやらない行為を平然と口にしながらそこらのNPCモンスターを同化して損耗を補うとミームアスランは再び飛翔した。


944 : 俺がいる-お前じゃねえ座ってろ- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:06:35 Bb.HyndE0
【エリア???/租界エリアのどこか/9月2日午前10時45分】

【アスラン・ザラ@ネットミーム】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、自らの存在抹消を願う思い(極大)
   マークニヒトの使用回数『4』、シン野郎を殴りステラの所へ向かわせたい気持ち(大)
   シビト可奈美及びそれを操る相手への嫌悪と怒り(大)、マークニヒトを装着中、無自覚の焦り(大)
服装:SEED DESTINYでのザフトの軍服(赤)
装備:
令呪:残り一画
道具:レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
   マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン
   切島鋭児郎のレジスター、サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
思考
基本:まずは本物のアスラン・ザラを殺す!!!それで俺が消えないならば優勝して望みを叶える。縋るしか無いんだ俺は!!!!
00:今はレジスターの確保が先だ!!!!本物の俺が居たら始末しレジスターを手に入れてみせる!!!!レジスターは手に入れたぞ!!!!もう何個か欲しいからもう一度舞衣を殺しに向かう!!!!
01:羂索達の裏に居る議長は俺を殺そうとしている!!!!!
02:キラは敵だ!!!!!篝!!!この…甘ちゃん野郎!!!!!
03:シン!!!!!居ないだとシン!!!!????何度でも殴ってやるぞシン!!!!語感が似た名前だったり名前にシンが入っていればお前もシンだ!!!!!バカヤロウ!!!
04:トゥ!ヘァー!
05:望みを叶えるなら他を殺すしかないんだ…何故わからない!?!?!?
06:わかった…。
07:おもちゃだったんだ、俺は…!!!!
08:レジスターの解除方法を探り残存参加者、特にあの男(宇蟲王)のレジスターを核爆発させて確実に倒す!!!!
09:あのキノコは何だったんだ!?!?!?!?
参戦時期:無し。(知識的にはこのロワが始まった2024年8月22日以前までのSEEDシリーズの展開やSEED関連のネットミームについては知っています)
備考
※ギルバート・デュランダル@機動戦士ガンダムSEED DESTINYが羂索達の裏に居ると勝手に決めつけています。
 また梔子ユメも羂索の協力者だと勝手に決めつけています。
※このアスランが抱いている自分の存在抹消を願う思いが彼自身の物か、それとも主催側が何かしらの干渉を行った事による物なのかは採用された場合、後続にお任せします。
※支給されていたソードスキル:Wの聖文字@BLEACHを習得しました。
※詳細な位置は後続にお任せしま。
※真人、真昼、真鍋、レン、ジンガ、エンシンをシン野郎としました。
 今後シン野郎と見なした相手は増えます。
※チェンジアタックは一度使用すると6時間使用不能となります。
 (9月2日の午後3時45分に再使用可能)また起動鍵を使用した状態では使用できません。
※ジャスティスを核爆発させる為にはジャスティスガンダムの起動鍵が必要です。
 他参加者に支給されているかドロップアイテムとして存在しているか、会場内に存在しているかは後続にお任せします。
※切島を同化した為、ニヒト使用時は彼の“個性”が使える様になりました。


945 : 俺がいる-ディアッカ・エルスマン:ライジング- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:07:31 Bb.HyndE0

覇王の拳が振るわれる度に潰れた頭が宙を舞う。
痛みに顔をしかめながらも放たれるストライクガンダムのビームライフルが的確に胴体を撃ち抜く。
ホシノが盾で殴り飛ばした個体がアズールの刃に貫かれ、銃撃にはシェフィの作る氷の壁が防ぐ。
ボスローチの大剣オールオーバー相手に同じ大剣で切り結ぶジーク。
スコーピオンロードのブーメラン攻撃や盾打撃による近接攻撃を柱刀骸街で弾きながら近接戦を展開する学郎。
それぞれがそれぞれの方法で目の前の脅威に対抗する中、益子薫はうごけなかった。

「カオル!だいじょうぶ、だいじょうぶだから!」

シェフィが造った氷の防壁の中から出られない。
遠距離攻撃に終始するディアッカと共にマークツヴォルフで共に援護する事すらできずにいた。
現状は最悪だ。
宇蟲王の居る戦場であるというのももちろんそうだが、この状況があの時の、何もできずに自分だけ生き残った数時間前の再現だからだ。

(動け……動けよっ!頼むから動いてくれよ!
これ以上駄目だろうが!どうにかしてあいつを倒さないとロロたちの似の野間いだろうがよぉ!)
(動くな動くなうごくなうごくな。
勝てる勝てない以前の問題だ死にたくない死にたくないいやだいやだ吐き気がする吐き気がする)

最初は絶望や自分への失望がそれを乗り越えた。
だが一度安堵してしまった心は再び折れるだけの余地を取り戻している。
つまり再び絶望に打ち震えてしまえるだけの状態になっているのだ。

(マズイな……流石にこの状態で非戦闘員抱えたまま飛び出しても多分速攻で背中から斬られるだけだ)

ディアッカはマントを千切って止血しただけの左腕の鈍痛をこらえながらも冷静に思考を巡らせる。
非情に残念ながらこの場で宇蟲王を倒して勝つことは不可能だ。
唯一あの破壊の嵐に真正面からぶつかれる豊臣秀吉も披露を無視できなくなっている様子だし、他の面子も見事に火力不足。
そもそもルルーシュの持つアークゼロやユージオの持つゼロツ―級の出力があってはじめて対抗できるレベルなのでない物ねだりもいいところなのだが。

「チクショウ……結局こんなことしか思いつかねえ!
おいチビ3号!そいつのことしばらく頼んだぞ!」

氷のバリケードを飛び出したディアッカは真っ先に学郎とジークの所に向かった。

「なあ、お前ら!
どっちかここからどうにか大人数連れて逃げれる方法持ってないか?」

「えっと、ディアッカさんでしたか?
すいません、俺の手持ちじゃ無理です!」

「……全員ではないが、互いに引き合うような状態に出来るのならある。だが何をするつもりだ?」

「俺が一人残ってここに居る全員の相手をする。
ストライクのとっておきは対多数最強だからな。残るなら俺が適任だ」

「そんな無茶な!」

「無茶でも何でもやるしかねえだろ!
このままだと確実に殲滅されるぞ!」

「だが!」

「だがもクソもねえだろ!やるしかないんだよ!
本当に全員あの赤いのに殺される前に!」

そう言ってディアッカはビームライフルを撃ちながら再び氷のバリケードに戻って行った。

「……学郎、少しだけこの場を頼む」

「ジークさん?まさか……」

「彼は俺たちに譲ると決めた。
ならばもう、止めれないだろう」

そう言ってジークは自分の心臓に手を当てながら言った。

「ディアッカ!」

「大丈夫だったかチビ共?」

「なにか、あったんの?」

「たく……ガキってのは鋭いな。
シェフィ、お前を未来のヒーローと見込んで頼みがある」

「なに!?」

「このチビ2号と、あと百パー荒れるだろうチビ1号のことを頼む」

「おい……それって」

「なんだチビ2号、こっちの声聞こえるだけの余裕あったのかよ」

「ふざけんなよ。なんだよその遺言みたいなの!
お前、まさか……死ぬつもりか!!?」

薫は縋りつく様にストライクに詰め寄った。

「オレも、オレも残る!残してくれ!」

「馬鹿言うんじゃねえよ、なんのために俺が貧乏くじ引いてやろうとしてると思ってやがる」

「お前が死ぬ程度でどうにかなる相手じゃないんだ!!!
分かってるだろう!!?なあ!!!」

「いい加減にしやがれチビ2号!」


946 : 俺がいる-ディアッカ・エルスマン:ライジング- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:08:19 Bb.HyndE0
パワードスーツを解除して吹き飛ばした薫の頭に怪我をしているはずの左腕でディアッカはゲンコツを振り下ろした。

「あのなあ、俺だって好きでやる訳ないだろ?
ニコルが本物かどうかも確かめられてねえし、セミのオッサンやマシュたちとももっと話したかったし、口煩い親父やイザークたちにももう一回と言わず会いたいさ。
ラスティやミゲルたちに速すぎるって詰められるのも請け負いだし、何よりまだ俺17歳だぜ?
理屈抜きに死にたくねえよ」

「じゃあなんで……」

「なんでって、そりゃ腐っても俺はザフトの軍人を選んだんだ。
こうしないと、ここに居る俺がディアッカ・エルスマンじゃなくなっちまうんだよ」

そう何時もの軽い調子で答えたディアッカは尻もちをついた薫の目の高さに屈む。

「なんだよそれ……」

「カオル、お前死にたいっつーか消えたがってただろ?
けどシェフィに安心させられちまって、それも怖くなった。
でもって、そんな自分を嫌いになってる」

ズバリ言い当てられた薫の顔にどうして?とでも書いてあったかのようにディアッカは続けた。

「俺も割と最近自分見つめ直す機会あってさ。
お前とはちょっと事情違うけど、考えたんだよ。
生き残った意味ってやつを」

今までは考えもしなかったことが起こり続けた。
その結果ナチュラルにも大切な人や大事な物があって、コーディネイターもそれは当然で、人間は素晴らしくも愚かだと知った。

「だからお前みたいな自分や自分を大切に思ってる奴を無視しちまってるバカは放っておけないんだよ」

ちゃんと泣けなきゃ、ちゃんと吐き出せなきゃ人は次に進むことが出来ない。
捕虜になった際のディアッカの行為を正当化するわけではないが、ミリアリア・ハウに殺されかけたあの経験は二人にとって必要なことだったのだろう。
それが欠けてしまっている今の薫は、ディアッカには良くない物に映っているのだろう。

「ざけんなよ……オレはッ!
オレはもう誰にも死んでほしくないんだよ!
お前だって死にたくない!誰だって死にたくない!
でも、でも……どうして誰にもどうにかできる力がないんだよぉ!
おかしいだろっ!オレたちが、なにしたってんだよ……」

「たく、そのチビっちゃい身体で担い過ぎだ」

ぐずぐずと泣きながらまた蹲ってしまった薫の頭をくしゃくしゃと撫でるディアッカ。

「短い付き合いながらお前がめんどくさいチビなのは十分以上に分かっちまったからさ。
もう何言っても重荷になっちまいそうだけど、お前らは俺が命張って守るだけのやつらだ。
マイ・ヤナセとかにとってもきっと。
だからもう俺なんかとか言うなよ。
これから命張る俺がバカみたいじゃねえか」

「ディアッカ……」

氷のバリケードが破壊される。
変身解除されたアズールとどうにか盾を構えて直撃は防いだが気絶したホシノが吹き飛ばされてきた。

「アズール!ホシノ!」

「あ……」

「どうやら潮時みたいだな」

遂に大きく下がらされた秀吉、そしてジークと学郎も下がってきた。

「準備は?」

「……残る一人以外がこのワッペンを着ければ準備が終わる」

「ジークよ、まさか策とは、この我に敵に背を見せ逃げろということか?」

「悪いけど筋肉達磨のオッサン、この期に及んで議論なんかしてやらないぜ」

ただ一人前に出るディアッカ。
令呪を介抱し、ストライクガンダムの起動鍵を構える。
それも二画だ。
一つはパワードスーツに、もう一つはディアッカ自身に使う。


947 : 俺がいる-ディアッカ・エルスマン:ライジング- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:08:40 Bb.HyndE0
「ディアッカ・エルスマン!
パーフェクトストライクガンダム、発進!」

エール、ソード、そしてランチャー。
三大ストライカーパックの特性を併せ持つフル装備のストライクガンダムへをディアッカは装着した。

「まさか宇蟲王ともあろう者が挑戦者を無視するなんて無粋なことをしないよな!」

ストライクのカメラ越しに宇蟲王の眉間がピクリと動くのが分かった。
理由は何であれ、ターゲットはこちらに映った。
後は仲間が上手くやるだけ。

「すまないディアッカ。
うてな、君たちのアイデアを借りる!」

再び西洋大剣に変形した斬魄刀に令呪の輝きを宿す。
行使する力は、当然彼の英雄が誇る最大火力に他ならない。

「――幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

本来は邪悪なる竜を落陽へと至らせる一撃だが、今回は切っ先を地面に向けてエネルギーを放出し、ジェット噴射の要領で使う。
止めようと駆けつけて来たボスローチとスコーピオンロードを爆散させながらジークの身体は宙へと撃ちあがり、彼の最後の支給品、N・Sワッペンの磁力に惹かれた残る全員がそれに続く様に撃ちあがる。
当然宇蟲王はそれにミームアスランに使ったのと同じ光刃を放つが、アグニの業火がそれを阻んだ。
続けて放たれた二撃目でパーフェクトストライクと宇蟲王の直線状に居たすべてのサナギムが爆散する。

「無駄な足掻きを!」

「そいつはどうかな!?」

まだまだ大量にいるサナギムにうんざりしながらアグニを撃ち続け、事実上の弾倉である予備バッテリーを使い切った為、デッドウェイトになったアグニをパージして対艦刀を引き抜く。

(ナチュラルのムウのオッサンにも出来たんだ。
赤服の俺が出来ない道理はないぜ!)

頭部と肩部の牽制バルカンを撃ちながら敵に肉薄する。

「近接はイザークとアスランの仕事なんだけどなぁ!」

刃を振るう。
頭や道が斬り飛ばされたサナギムが宙を舞う。
肩部に装着されたビームブーメランを投げる。
途中で撃ち落とされてしまったが、それなりの数を倒せたので構わない。

「こんのおおおおおおーーー!!!」

左小楯に内蔵されたロケットアンカーを放つ。
サナギムのこめかみ部分をつかんで思い切り振り回す。
抉られた左手で振るう都合上とんでもない激痛が襲うが関係ない。

「これでラストォ!」

アンカーで拘束し、まとめたサナギムを纏めて対艦刀で刺し抜く。
これでサナギムはほぼ全滅。

「残りはこいつでぇえええ!」

令呪使用により復活したエールストライカーのビームサーベルを二本引き抜き、デッドウェイトになった背部ユニット全てをパージ。
まっすぐに宇蟲王に走り出す。
そうすれば残るサナギムは王を守ろうと勝手に集まって来る。
それを斬って斬って斬り倒し迫る。

「こんのおおおおおおおおお!!!!!!!」

「その程度か」

オージャカリバーZEROの金色の刃がストライクの装甲を袈裟に斬り裂いた。
そうなるのが当然化のように装甲は裂け、皮膚は切れ、骨は断たれて鮮血が噴出した。

「使える令呪全てを使ってその程度の貴様ごときが宇蟲王ギラに挑む資格など……」

ディアクティブモードになって膝をつくストライクガンダムの首を跳ねようとも一歩近づく宇蟲王。
ストライクが僅かに顔を上げる。

(その薄着同然の装甲を最期の最期まで維持して令呪の効力時間まで生き残ろうというハラか?浅ましい……)

それは平時なら何の影響もない一瞬の無駄な思考だった。
だが宇蟲王と言えど、今このゲームにおいては少なからずバグスターウイルスによって弱体化している。
本来なら等身大のMS、それも使い慣れたバスターガンダムに乗れていたとしても、ディアッカ・エルスマンが宇蟲王ギラにとってわき見運転のついでに殺せる程度の存在でしかないのは変わらない。


948 : 俺がいる-ディアッカ・エルスマン:ライジング- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:09:14 Bb.HyndE0
だが、そのわずかな隙は最期の意地を挟み込む程度の余地にはなる。

「っ!」

慌てて踏み込んだ脚をひっこめるがもう遅い。
気合一つと令呪で強引に保持したストライクガンダムとその代名詞、アーマーシュナイダーが宇蟲王ギラの服を斬り、脛に僅かなひっかき傷をつけた。

「──────へっ」

ストライクガンダムのパワードスーツが解除される。
遂に令呪の効力も身体を支える力も尽きたディアッカは力なく笑いながら地面に倒れ伏した。



【ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEED 死亡】



「……。」

ディアッカの死体を見下ろす宇蟲王の顔は、強いて言えば憤怒であった。
だがただの憤怒ではない。
下手をすれば羂索たちに感じている物をはるかに上回る特級の憤怒だ。
宇蟲王にとって歩けば勝手に死ぬ程度の命が最期のあがきでこの脚に刃を突き立てたのだ。
許せない。許しておけるはずがない。
今直ぐに出身惑星諸共破壊しなければ気が済まない。
だが、この男は戦士なのだ。
戦士を前に、戦いの場で芥子粒程度の誤差とは言え、相手の戦力を見誤ったのは他でもない宇蟲王ギラだ。
ここでその事を棚に上げて怒り狂っては宇宙唯一の王である宇蟲王の沽券にかかわるのだ

「おい」

地獄から絞り出したような声で後ろに話しかけると、既に昆虫型のNPCモンスターが集まっていた。
高圧電流を操るレディバグファンガイア、人間を溶かす猛毒を持つツチノコのト稀ヅ、広い視界と鈍器のような左手が特徴のスネイルオルフェノク、そして30体程の兵隊アリアマゾンだ。
     ・・
「……この小石の死体に群がる雑魚を掃除しておけ」

そう言って宇蟲王ギラは振り返りもせず去って行った。


【エリアC-9/アビドス高校校庭/9月2日午前11時10分】

【宇蟲王ギラ@王様戦隊キングオージャー】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、脛に引っかき傷
   トランクスへの怒りと期待、???(大)、人間態
服装:王の装い
装備:オージャカリバーZERO@王様戦隊キングオージャー
令呪:残り三画
道具:ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:塵芥ども悉く捻り潰し最後の勝者となる。
01:青い戦士(トランクス)を敵と認め殺す。
02:他の雑魚共は殲滅する。
03:別次元の自分も殺す。ギラという名の王は一人でいい。
04:最後の勝者の証を得たらゴミ(羂索)とカス(クルーゼ)とチリ(茅場)も片付ける。
05:下僕共など歩けば幾らでも付いて来るだろう。
06:所詮赤い王も逃げ蟲。
  やはり期待できるのは青い戦士ぐらいか。
07:……小石風情が
参戦時期:ヤンマたちを処刑しようとしてキョウリュウレッドと戦闘になった直後。
備考
※あらゆる昆虫生命体を支配する力はある程度制限されていますが、発動自体は問題なく行えます。
※宇蟲王の転移能力で短距離であればワープ可能です。
 距離や回数には制限があります。
※アビドス高校のディアッカの死体の周辺に配下を待機させました。
※ディアッカの死体はストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED、ディアッカのホットライン、私服、錬金アカデミーの制服(黒)@仮面ライダーガッチャード、簡易救急キット@オリジナルを持ったままです。


949 : 俺がいる-ディアッカ・エルスマン:ライジング- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:09:25 Bb.HyndE0
【NPCモンスター解説】
・ボスローチ@仮面ライダーディケイド
…ディエンドの世界にて、14の配下として人間を取り締まる怪人の一種。
その名の通りダークローチの行動隊長としての役割を与えられており、仮面ライダー剣の世界で言う所のスペードのAやKのアンデッドとよく似た姿と同形状の武器を持つ。

・スコーピオンロード@仮面ライダーアギト
…冥府の斧と盾を装備した蠍型超越生命体。
頭部の触手にある毒針をターゲットに突き刺し体内に注入した金属片から体温を奪いつくして凍死させる。

・ミューズィックのマズアータ@天装戦隊ゴセイジャー
…宇宙虐滅軍団ウォースターに所属する戦士。
トッケリク星出身。
胸部の怪音波を発する羽と両腕のシンバルから光輪を放つ。
人間が爆音に苦しみ、のたうち回るのを楽しむ。

・サナギム@王様戦隊キングオージャー
…さなぎの特性を備えた地帝国バグナラクの下級戦闘員。
シャベルと銃が一体化したような武器を持っており、たまに片言程度なら人語を話せる個体もいる。

・レディバグファンガイア@仮面ライダーキバ
…テントウムシの特徴とコンドルの意匠を持つファンガイア。
120万ボルトの高圧電流とホバリング飛行を得意とする。

・ツチノコのト稀ヅ@天装戦隊ゴセイジャー
…地球犠獄集団幽魔獣の一員。
ツチノコ伝説の正体とされており、蛇とダンゴムシの特性を持つ。
人間を溶かすヘドロ状の猛毒と戦車形態が武器。

・スネイルオルフェノク@仮面ライダー555
…カタツムリの特性を持つオルフェノク。
別に何か特殊な能力はなく、ただただ広い視野と発達した左腕を持つだけのオルフェノク。

・兵隊アリアマゾン@仮面ライダーアマゾンズ
…Eランクアマゾンの一種で、硬質化した表皮と口の牙が武器。
動きは鈍いし頭も良くない。
挙句動きも鈍く戦闘能力に長けた人間にも倒せるほど弱い。
しかしそれを補う様に兎に角数が多い。


950 : 俺がいる-プロヒーロー 益子薫の負けっぷり- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:10:17 Bb.HyndE0
エリアD-8の大型立体駐車場の屋上に巨大な氷のオブジェが出来上がっていた。
真上から見ると中央に向けて渦を巻いている様なデザインで、蟻地獄にも滑り台にも見える。
地獄のアビドス高校から命からがら逃げ出したジークたちを無事着地させるべく、強引に再変身したアズールとシェフィが氷のパワーを全開にして作った着地の為の装置だ。
それぞれホシノ盾やシェフィ達が造った氷のソリでどうにか着地することが出来た。

「私たち、助かったの?」

「うん……みんないきてる」

「……まって。ディアッカは?ディアッカが居ない!」

「それは……」

言い淀む学郎にホシノのオッドアイの動向が縮まる。
続けて聞こえた鈍い音が自分がショックのあまり盾を落した音だと気付くのに酷く時間がかかった。

「あの南蛮人は確かな気骨を持っていたが、弱かった」

「……は?」

唯一自力で着地した男の言っている意味が分からない。
弱い?ディアッカが?ストライクの力があったとはいえ、キヴォトス最高の神秘を相手に一度は優勢に立ったディアッカが弱い?
あの宇蟲王相手にこれだけの数を逃がして見せたディアッカが弱い?

「そしてお前たちも仲間の死に執着し、弱さを抱えたままでは奴の二の舞となるだけ。
それが嫌ならば我に従え。
さすれば我が必ず……」

今にも爆発寸前のホシノを押しのけ、大技の反動が残っていたジークと共に一言も言葉を発していなかった少女が、益子薫が前に出る。
彼女は自分の服につけられたひみつ道具のワッペンをはがし

「断る」

まるで決闘で手袋を投げ捨てる様に秀吉の方に向けて放り投げた。

「己の実力が分からぬわけではなかろう?
弱さに執着すればあの褐色の小僧のように意地を通す事すらできぬまま縊り殺されるだけよ。
宇蟲王どころか他の雑兵相手にも届かぬぞ?」

「確かにオレには何もかも足りねえ。
力もなくて、想いも届かない。
挙句ジンガだの真昼だのに絡まれたりと絶望的に運もない」

言っていて悲しくなってくる段階など遠に過ぎ去った。
真昼に踏みにじられ、ジンガに唾を吐かれ、宇蟲王戦に始まる度重なる敗北で一度は自分すら勘定から外して、実質全てを捨てようともした。
けど、嫌だと言いながら絶対に譲れないモノの為に全てをもって戦うあの背中をもう一度見てしまっては、もうあんな連中の玩具になってやるわけにはいかない。

「そんなオレでも、まだここにいるんだ。
どれだけ情けなくてもカッコ悪くても生き恥晒しててもここにいるのは『益子薫』なんだよ。
断じてお前の手ゴマでもあいつらの玩具でもない……結局あこがれを忘れられないオレなんだ。
お前の手を取ったら、アイツらにもあそこに残ってくれたディアッカ・エルスマンってヒーローにも胸を張れない」

「虚勢だな」

「それは結局宇蟲王に殴り勝てなかったお前だろ?」

一瞬だけ秀吉の肉体から今まで感じた闘気や戦意とは別物の黒い感情が噴き出る。
それはあまりにも永く圧縮された一瞬で、その後しばらく嫌な余韻として痛いほどの沈黙が流れた。
双方一切目をそらさず、どちらも一歩も引かない。
宇蟲王ギラの暴虐を真正面から二度も受け止めた薫からすれば秀吉のそれなど涼風に等しい。

「落ち着けよ、どの道もうすぐ放送だ。
今やり合っても仕方ないんじゃないか?」

そう言われてホットラインで時計を確認すると、既に11時を過ぎていた。
額に青筋を浮かべたまま秀吉はドスリとその場に腰を下ろす。
誰も何も言えずどこにも動けぬまま、放送までただ休まらない時間が過ぎた。


951 : 俺がいる-プロヒーロー 益子薫の負けっぷり- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:10:33 Bb.HyndE0
【エリアD-8/大型立体駐車場の奥上階/9月2日午前11時】

【益子薫@刀使ノ巫女】
状態:疲労(大)、ダメージ(小)、死や圧倒的存在への恐怖(極大)、闇のパルファムの影響(小)
   無力感と力への渇望、メモリーディスクによる記憶改竄、適能者(デュナミスト)に選ばれた
   マークツヴォルフの使用回数『4』、罪から逃げず自分を決して赦さないという思い(極大)
   サバイバーズ・ギルト、こんな自分でもなりたいものになりたい気持ち(極大)
服装:長船女学園の制服(血塗れ)
装備:防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS
令呪:残り三画
道具:ホットライン×2
思考
基本:この殺し合いを終わらせる。
00:……結局どこまで行ってもここに居るオレは『益子薫』なんだな。
01:ごめんなみんな…。やっぱオレなりたいものになりてぇや。
02:ひよよん達と会ったら全部話す。
03:ジンガと、次会ったら真昼はオレの手で倒す。
  他の殺し合いに乗ってる連中も同様。
04:ガッチャードの奴はなるべく早めに見付けた方が良いよな。
05:ディアッカ……本当にごめんなさい。
  そんで、本当にありがとう。
06:祢々切丸があったとして…流石に刀使は名乗れねえな。
07:オレが死ねばよかった……でも、やっぱり死にたくないなぁ、怖いなぁ……。
08:もし、オレにもっと力があっても、護れなきゃ意味ねぇんし、生き残れなかったら最悪だよな。
09:……可奈美の死体を見つけたら、その時はオレが終わらせる。
  ひよよんや舞衣、沙耶香に…背負わせる訳にはいかねえ。
11:……舞衣が誰かを殺したりっするはずない。そうだよな?
参戦時期:第24話「結びの巫女」にて、可奈美と姫和が未帰還な事を知り涙目で祢々切丸をぶん投げた直後から。
備考:
※支給されていたソードスキルによりドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!を習得しています。
※適能者(デュナミスト)に選ばれました。
 黒色基調で、血色の赤がライン等に入った配色のウルトラマンネクサスに変身可能……でしたが今はどうか分かりません。
 制限によりサイズは等身大限定となる他、何かきっかけがあれば色が変わるかもしれません。
 技はアンファンスやジュネッス、ジュネッスブルーの物も使えます。
※ストライクウィッチーズ世界についてある程度把握しました。
※闇のパルファムの影響により陰我が溜まりやすくなっています。
※ジンガのメモリーディスクにより記憶を改竄されました。
 それにより宇蟲王との戦いで自分ひとりだけが生き延びてしまったと勘違いしています。
※マークツヴォルフのSDPを9月2日午前10時に使用しました。
 次に使用可能になるのは9月2日午後4時となります。

【小鳥遊ホシノ@ブルーアーカイブ】
状態:疲労(大)、ユメ先輩の死体を利用されている現状への怒り(極大)、羂索、茅場、クルーゼへの殺意(極大)、宇蟲王と秀吉への怒り(極大)
服装:臨戦
装備:アタッシュショットガン@仮面ライダーアウトサイダーズ
   折り畳み式の盾@ブルーアーカイブ、N・Sワッペン(S)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン(画面にヒビ有)、簡易救急キット@オリジナル
思考
基本:羂索たちを殺す
01:ディアッカが、死んだ?
02:こいつ(秀吉)は何を言ってる?
03:最強のNPCモンスタードゴルド……もしセリカちゃんや先生に手を出すなら空蝉丸さんより先に殺す。
最悪、中身ごとになっても。
04:クルーゼの部下だったらしいけど、そりゃあキツイか
05:マイ=ラッセルハート……もしその能力をセリカちゃんたちに向けるなら……
06:先輩と後輩をばらけさせるわけにはいかないもんね。
07:……また、喪った。
08:…カオルちゃんの有様見ると、もしかしてディアッカやリツカくん、マシュちゃんや空蝉丸さんには最初の私も…ああ云う風に見えてたのかも…。あそこまで…酷くはなかったハズだけど。
09:…そういえば、たとえニセモノでも、先生達が来るかもしれないこの高校をカオルちゃんは守ってくれたのに…お礼とか言えてないなって。
10:あんなNPC(ELS)もいるんだね。
参戦時期:対策委員会編第三章にて空崎ヒナと会敵するより前
備考
※ディアッカ、マシュ、立香、空蝉丸と情報交換しました。
 しかし本人がいっぱいいっぱいなのでどの程度理解できてるか分かりません。


952 : 俺がいる-プロヒーロー 益子薫の負けっぷり- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:10:57 Bb.HyndE0
【水神小夜@魔法少女にあこがれて】
状態:ダメージ(中・最初の傷は治療済み)、疲労(大)
服装:錬金アカデミーの制服(青)@仮面ライダーガッチャード
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて、N・Sワッペン(S)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、アビドス高校の体操服
思考
基本:今度こそ『マジアアズール』の矜持を貫く。
01:冥黒の五道化……あれだけ強くて参加者じゃないなんて。
02:今となってもシェフィちゃんと一緒にマイさんを庇ったのは間違ってないと思う。
03:シェフィちゃんは必ず守る。
04:左虎さんもシェフィちゃんもこの様子だと操られたままなのよね?
05:もしまたマイさんに会ったら……。
06:ディアッカさん……そんな!
参戦時期:アニメ7話、原作2巻Episode10の終盤
備考
※マイの編集(エディット)により、バトルロワイヤルのルールを把握しました
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響で欠落した記憶が回復しました。
 植え付けられた偽の記憶も残っていますが偽の記憶と理解しています。

【シェフィ@プリンセスコネクト!Re:Dive】
状態:幼児退行(小)、疲労(大)、ドゴルドへの恐怖(中)
   "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下
服装:いつもの服
装備:雄英ヒーローズ・バトル@僕のヒーローアカデミア 
   ソードスキル:氷凝呪法@呪術廻戦、N・Sワッペン(S)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:フラッグポット+フロッグギジメモリ@仮面ライダーW、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01:オールマイト、ありがと!
02:ディアッカ……。
03:ケンジャクっておねーたん、こわい
04:マイてんてー!サコー!どこー?
05:ドゴルドもあのおねーたんもこわい……
06:アズール、ちゃんとマイてんてーにごめんんさいしようね
07:シェフィが、みんなをまかされた
08?:マイてんてー。だいすき
参戦時期:幼児退行が治って無かったころのどこか
備考
※具体的な参戦時期は後の書き手様にお任せします。
※精神状態が精神状態なので、このバトルロワイヤルについて色々とよくわかっていないと思われます。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、キャルを含む一部記憶が欠損しています。
 強い衝撃等があれば蘇るかもしれません

【豊臣秀吉@戦国BASARA2】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、益子薫への……(大)
服装:いつもの服装(籠手の部分は別)
装備:神旺エクス・アリスタルコス@グランブルーファンタジー、N・Sワッペン(S)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:天下統一の邪魔はさせぬ
01:異界の人材や技術、兵器は出来ることならこの手に収める。
02:あの黒き覇王とは何れ雌雄を決する。
03:陽介、我が軍門に下るというなら拒みはせん。
   だがいつまでも奴(スパナ)の死に、弱さに執心するなら要らぬ。
04:此処で豊臣軍を築いてテレビ局のルルーシュを倒す。
   だがそれには情報を集めねばならぬ。
05:あの光(サン・ライズ・ビーム)のような超遠距離攻撃も警戒はしておくか
06:赤き邪悪の王。これほどまでの手合いがいるとはな
07:……小娘共の処遇は放送の後、決める。
参戦時期:姉川蹂躙戦の後
備考
※エクス・アリスタルコスによって攻撃力が強化されてます。
※イチローのサン・ライズ・ビームは周囲一マス分ぐらいには目視できるようです。


953 : 俺がいる-プロヒーロー 益子薫の負けっぷり- ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:11:19 Bb.HyndE0
【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:疲労(大)ダメージ(小)
   代葉の死・キリト(Poh)を殺したことへの動揺(中)
服装:いつもの服装
装備:N・Sワッペン(S)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:クラスカード(バーサーカー)@Fate/kaleid liner
 マクアフィテル@SAOシリーズ
 魔女箒@転生王女と天才令嬢の魔法革命 セイなる手榴弾×2@ブルーアーカイブ ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:生きる 生きて自分のすべきことを為す
01:キリトを殺したこと、藤乃さんを死なせたこと。俺が全部背負うよ
02:キリトの仲間には会わなきゃ
03:ディアッカさん……本当にごめんなさい。
04:宇蟲王ギラは絶対に倒さないといけない。
  けど今はそれより……。
参戦時期:43話より後
備考
 ※精神仮縫いは解除されました。
 ※藤乃代葉の支給品を回収しています。

【ジーク@Fate/Apocrypha】
状態:疲労(大)
服装:本編の服装
装備:浅打@BLEACH→幻想大剣(バルムンク)@ロワオリジナル(BLEACH+Fateシリーズ)、N・Sワッペン(N)@ドラえもん
令呪:残り二画(竜告令呪)
道具:缶コーヒー@現実(残数2本)
   N・Sワッペン(N×9、S×4)@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:可能な限り被害を少なくゲームを終了させる
01:大聖杯はどうなっているのだろうか...
02:ユメたちは無事だろうか?
03:ノワルに宇蟲王はどこかで倒しておかなくては。
04:図らずも小鳥遊ホシノと合流出来たがこれは……
05:すまないうてな……。
  マジアマゼンタの正体については考えないことにする。
06:ディアッカ、本当にすまない。
参戦時期:本編終了後 
備考
※FGOコラボイベントのイベントの記憶も有しています
※時系列的には邪竜の姿が正しいですが、ホムンクルスの姿をしています。本人は羂索の制約によるものだと考えています
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています




【支給品解説】
・フラッグポット+フロッグギジメモリ@仮面ライダーW
…フィリップこと園咲来人がフロッグギジメモリと共に郵送されてきた設計図を基に他のメモリガジェットのジャンクパーツを使って開発した鳴海探偵事務所所有の4機目のメモリガジェット。
唯一メモリを装填しないと何の役にも立たないガジェット。
攻撃力は絶無だがビル9階分にも届くジャンプ力と後述の機能から捜査や攪乱には使える。
水陸両用で、録音した音声を任意に編集(録音した声を別人の声に出来るレベル)可能。

・N・Sワッペン@ドラえもん
…ジーク@Fate/Apocryphaに支給。
NとS各10枚づつセットで支給させる。
貼り付けた者同士に磁石のような特性を与え、同じ種類のワッペンを着けられた者同士は反発し合い、違う種類のワッペンを着けられた者同士は引き合う。
当ロワでは剥がそうと思えば簡単にはがせる仕様になっている。


954 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/14(月) 03:11:37 Bb.HyndE0
投下終了です


955 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:51:48 qxeIfP5M0
投下します


956 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:52:29 qxeIfP5M0
 家康一行は参加者に遭遇することもなく、アッシュフォード学園へとたどり着いた。
 道中にNPCがいたもののレンは精神的都合で戦うことに対して恐怖心があったがものの、
 完全とまではいかないが銃器に慣れるためNPCと相対しており、調子は多少取り戻している。
 四人、とりわけサビルバラと家康は慣れたものであり、特にさしたる問題は起きていない。
 ドロップアイテムが仮にあっても殆どが食料品だったりと、他の参加者の特定の武器などを鑑みると、
 当たりとはいえず、しかし残ることもない代物で誤って取り出すこともないものをドロップしていた。
 まあ、基本支給品を無駄に消費することなく食料にありつけれると思えばありがたいことなのだが。
 堀北も戦闘に慣れてきたお陰で多少技の範囲を広めることを考え、所謂奥義にも手を出すほどになった。
 そうした四人と一機は無事アッシュフォード学園へとたどり着いたわけだが、全員がすぐに身構える。
 いくらか損壊の跡が見受けられる。先客がいたのか、未だ潜んでいるのか、敵か味方か定かではないが、
 時間は有限だ。警戒しつつも、戦闘中や移動中ではできなかった情報交換をしていく。
 出会い頭に情報交換はしておいたが、此処での出来事で来る前の情報はまだしてない。
 先頭を家康、堀北、レン、最後尾はサビルバラと言った順番で廊下を歩きだす。
 広大な学園は散策するだけでも一苦労であり、見学するだけでも一苦労だ。

「なるほど。チェイス殿はその恋女房と言う機械、絡繰りの類で頼れる味方なのだな?」

「ロイミュードです。横文字が苦手なのは分からなくはないですがその間違え方はどうかと。」

「いや、南蛮言葉にはザビ―教という宗教があって多少だが言葉は慣れている。」

「え、ザビー教? あのフランシスコ・ザビエルじゃなくて……?」

「ああ。何でも世界平和のため愛を広めるべく……」

 三者の世界での人物関係や世界を知った後、今は最も長くなるであろう家康の番だ。
 日本の偉人からの、間違ってもノートに書き写せないぶっ飛んだ歴史の授業。
 それを聞いて、精神的にレンの心はよりどこかだが平常心に戻りつつあった。
 恐らくではあるがリアルでなら同年代の青年にしか見えない姿で、
 歴史とは全然違う狸じじいなんてものとは一切無縁であり、まるで太陽のような男。
 レンが通うのはお嬢様学校である以上、仮に同じ現代人でも一緒に通うことはないだろうが
 その性格や容姿を考えると、目が肥えている生徒達から見てもそれなりにモテるだろう。
 戦国乱世である以上は、当人らにとっての命の奪い合いの場ではあるので不謹慎とは思うも、
 六本の刀を使う伊達政宗、明らかに現代兵器を使う雑賀孫市、海賊の長曾我部元親といった面々。
 そのうえフランシスコ・ザビエルと思しき謎の新興宗教まで存在していると言うカオスな有様だ。
 何とも不思議極まりない日本であり、面白おかしく感じてしまうのは無理もないことである。
 堀北はそれに頭痛を、蛮野は(意味が分からん)と内心毒づき、まっとうに聞いてるのは、
 日本ではなく空の世界で生き、覇空戦争や嘗てのエルステ帝国の圧政を知るサビルバラぐらいなものだ。

「おんし程の強者がゴロゴロおるとは、まるで十天衆の安売りぜよ。」

 一個人でとてつもない戦闘能力を有する猛者たちと言えば、
 やはり全空において最強の集団とされる十天衆が思い浮かぶ。
 特に話に聞く豊臣秀吉は規格外だ。言うなればエルステ帝国がファータ・グランデを制圧した、
 それを成し遂げるだけの手腕、戦力、そして当人の強さやカリスマには圧倒されてしまう。


957 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:52:59 qxeIfP5M0
 そんな傑物を相手に立ち向かい、勝利した家康もまたここでは相当な強者になるのだろうが、
 言い換えれば家康がいても問題ない存在がいる可能性。例えるならばサビルバラはよく知らないが、
 団長が戦ったとされるベルゼバブやルシファーと言った、世界を滅ぼしかねないような力を持った存在。
 こればかりはいくら家康でも厳しい戦いになるだろうし、これを考えると早急に何かしらの対策、
 或いは支給品の確保……つまるところ参加者を殺すことが必要になるのは必然的なことだった。
 ドロップアイテムもありだろうが、ドロップアイテムにそんな参加者を殺せるような、
 バランスブレイカーなアイテムがドロップできるとはとても思えない。或いは確率が絶望的に低い。
 無論、サビルバラは善性の人間だ。汚れ仕事はするが、早々に誰かを見捨てるなんてこともしない。
 狙うのは敵だけだ。特に、家康は信頼しきってる蛮野は大丈夫なのかと堀北と話し合ったのもある。
 本当に信頼できる相手なのか。彼が信頼を置いているチェイスがいかような人物なのかで判断が必要だ。
 チェイスが危険人物ならば、今の得物である蛍丸で遠慮なくそのタブレットを両断してしまうだろう。
 もっとも、チェイスが仮に危険でなかったとしても安易な信用は禁物だ。何せ相手はタブレットの機械。
 表情で心境を読む、と言ったことで相手の考えを読み取ることはできず、声だけで判断しろなのだ。
 真偽が判明できるとするならば、それこそ言葉であれば嘘かどうかわかるリュージぐらいだろう。
 蛮野を信じ切る家康とレン、二人は信じ切れない蛮野、このアンバランスさが後でどうなるのか。
 最悪の場合、家康の許容範囲は凄まじく広い。バルバトスを前に嫌悪感もなく真っ直ぐに立ち向かった。
 あの様子を見るに、もしかしたら正体が危険人物でも『わしが何とかしよう』とかで許容しかねない。
 危険な芽は早めに摘む。サビルバラの方針とは違う方向を向いているのでどうにも相性が悪い。

(年を取りすぎるとか保護になるといったところか。)

 同じ東国で育った異国の少女、ミリンを思い出す。
 元気で快活で、時に心配になるちょっと世間知らずの侍を目指す少女。
 彼女のことをよく知っており、時折面倒を見ていたのもいい思い出だ。
 侍ではないと一度ある人物にバッサリ言われ、自分の中の侍を見出して、
 成長していった彼女は今では嘗て以上に頼もしい団員となっているだろう。
 とは言え心配事はまだある。妹と義弟の忘れ形見を放って死ぬつもりもない。
 そんな風に覚悟を決めていると、事態はすぐに急変していく。

 堀北とレンが通り過ぎようとした窓をぶち破り、二人を中心に襲い掛かる刃とガラス片。
 家康が咄嗟に動き、二人を庇うように両手をクロスさせ籠手で迫りくる剣の一撃を防ぐ。
 パワーだけならばバルバトスほどではないが、技量は彼以上のものを感じる一撃と、
 飛来するガラス片が頬を掠めたりすることで、赤い筋をいくつか刻んでいく。
 これはレンや堀北も同じで、流石に無数に飛来するガラス片による怪我は防げない。
 急所だけは守ろうと、全員が目をつむるのが共通しているところだろうか。

「家康さ───」

 レンが言葉を紡ぐ前に、ほぼ同時に動いたサビルバラの抜刀。
 蛍丸は一メートルを超える大太刀。多少離れていても切っ先は首を躊躇なく狙う。
 奇襲に失敗したと分かると蛍丸と切り結び、その反動で廊下の上へと立つ闖入者。

(RPGの勇者みたい……アバターなのかな。)

 見た雰囲気はザ・ファンタジーなALOとかでありそうな、RPGの主人公の姿だ。
 自分と同じでアバターかと思うも、すぐそばにはサビルバラのように、
 アバターじゃなくて本来の身体でこういう姿の人間(ハーヴィン)もいることだ。
 絶対かどうかは分からないし、そもそもそれが今のこの状況において関係ないことである。

「某! 徳川家康! わしの首を取りに来たのか? それとも、何かを守るために来たのか!」

「……僕は、アレフ……亡きローラ姫を生き返らせ、国を再興する。」

 違う。それはいいわけだ。責任転嫁だ。
 さとうにも愛してなんかいなかったと言われた。
 けれど、それを原動力としなければ。彼は何者にもなれないのだ。
 世界を救った勇者としても、世界の半分を受け取ったやみのせんしにも。
 自分で選んだ道だ。はいかいいえではない、そう言い訳するように虚空へ向けて呪文を唱える。

「ギラ。」

 虚空、と言ったが厳密には違う。
 空へ向けた手から放たれる火球は天井の蛍光灯を破壊し、
 破片と共に炎を爆散させることで、四人一度に攻撃を仕掛ける。
 普通のギラだったら此処までの威力はでないだろう。できるのは、
 りゅうおうを倒し世界を救った勇者アレフだからこそのギラだからだ。


958 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:54:14 qxeIfP5M0
「させん!」

 サビルバラの蛍丸が虚空で振るわれる。
 振るわれた刃は風を放ち蛍光灯の破片を吹き飛ばし、
 更に爆散した火を纏わせて、炎属性を付与した剣のようにそのまま振るいにかかる。
 サビルバラは風、光、火の三つの力に長けており、その影響で火の扱いに長けてる方だ。
 迫る刃をロトの剣で難なく防ぎ、即席で作られた炎の刀は霧散して元の蛍丸へと戻る。

「魔人剣!」

 バルバトスの時とは違う。今度は逃がしてくれる相手ではないと察し、
 戦場と言う初めて味わう空気に気圧されながらも家康の脇から飛び出しながら剣を振るう。
 衝撃波は迫るも、サビルバラの一刀を難なく振り払うと軽い凪払いで攻撃を容易くかき消す。

(この人……強い。NPCで戦闘経験は積んでいるし、
 NPCには人もいたから対人経験もそれなりにあると自負してる。
 でも、だから分かる。この人は強い。この程度の経験じゃまるで足りない!)

「魔神剣・双牙!」

 当然と言えば当然の話だ。
 世界を救った勇者とソーディアンと言う便利な武器を手にしたと言えども、
 ほんの数時間程度しか振るったことのない少女のレベル差は歴然だろう。
 されども、此処で引き下がったりしてしまえば家康に必要以上の負担をかける。
 現状彼女の認識では家康が最高戦力。大富豪のように強いカードを再序盤で切るべきではない。
 素人と言えども経験者。家康の邪魔にならない程度に続けざまに二連続の魔神剣を振るう。
 それと同時に駆ける家康。軽快な動きながらその動きはアレフから見ても速いものだ。
 ロトの剣と言う業物を使っての奇襲を防いでくるその反応速度と判断力を見るに、
 既に彼の中では家康>サビルバラ>堀北>レンの順で戦力になってると判断。
 故に最優先は家康、

「ベギラマ。」

「え?」

 ではなく、レンだ。
 迫る衝撃波を容易くサイドステップしながら回避し、
 先ほどよりも遥かに強い火力の呪文、ベギラマを放つ。
 いつも一人で彼は戦い続けた。ゴーストも、ゴーレムも、がいこつも。
 だから常に数の利と言うものを理解している。常に不利な状況で戦ってきた。
 一番弱ってる魔物、或いは一番弱い魔物から倒して数の利をまず減らしていく。
 だがそうはいかないのは分かっている。相手は魔物ではない。れっきとした人間だ。
 そして、殺し合いを打破しようとする人間がどう動くかもおおよその予想がついている。

「危ない!!」

 GGOが本来銃器で戦うのもあって、
 ALOのような魔法攻撃にレンは一度見ても反応が遅れた。
 せっかく調子を取り戻しつつあったのに迫る危機に目を閉じるが、
 家康が再び腕を交差させて炎を受けると、その攻撃と同時に籠手に大きな亀裂が入った。
 元々家康が使ってるとは言え特別な頑強さや特別な力が備わっているわけではない普通の籠手だ。
 ……あの戦国乱世の籠手の時点で別物では? そうかもしれないが、今まで受けてきたダメージもある。
 そも、最初はバルバトスの武器は坂田金時の宝具であり、威力も並の斧とは桁違いのものを防いでいた。
 更にNPCとの連戦……については、まあ家康の強さを考えれば大した消耗ではないかもしれないが、
 そこにロトの剣と言う、その世界におけるトップクラスの業物の奇襲を受けたダメージは安くなく、
 更にベギラマを直に受けた籠手は亀裂が広がっていき、やがて砕けて廊下へと散らばってしまう。

「家康さん!? ごめんなさい、私のせいで……」

「いや、大丈夫だ! 寧ろ火傷を回避できたと思えばまだ安いものさ。」

 そう言って微笑みながら後方を見やるが、
 アチチと手を軽く振るってるためダメージにはなってる。
 魔物を一撃で葬ることもある一撃を籠手一つで凌がれたが、
 武器を持たない姿を見るにゴーレムやリカントマンと同じ近接タイプだ。
 籠手の防具と武具を同時に失ったことは少なくとも大きな利益に繋がっている。

(私も戦わなきゃいけない、けど……)


959 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:55:19 qxeIfP5M0
 自分も戦わないといけないのに、
 浅倉との戦いのせいで震えてしまうが、ある程度はましになった。
 だが戦えない。いや、戦うわけにはいかないと言う状況に不甲斐なさを感じずにはいられない。
 自分より小さいサビルバラも、自分より年下の堀北ですら剣を取って戦っているのに。
 それらの自責の念はあるかもしれないが、問題はどちらかと言えば集団戦の方が問題なのだ。
 スクワッドジャムの時はエムとのペアであり、しかもその多くはエムが狙撃を行いつつ、
 自身が囮や接近なりなんなりして銃撃をかましていく、というのが彼女の基本戦術になる。
 つまり、こうも近接攻撃が主体のメンバーと銃器の相性が最悪に近いのが足を引っ張っていた。
 下手をすれば仲間にもあたってしまう。速射性が普段のピーちゃんより低いのは救いではあるが、
 いくら家康が並々ならぬ強さをしていても背後から銃撃を受ければ致命的な隙になりかねない。
 しかもGGOで多くのメインとなる広大なフィールドではなく、学園の廊下という狭い場所だ。
 アッシュフォード学園が広大な学園で廊下も十分な広さを持っていると言えども、外と比べれば狭い。
 結果、レンは浅倉との戦闘の恐怖の有無関係なしに、戦闘に参加するわけにはいかなかった。
 人数が多ければ多いほど、フレンドリーファイアの確率が跳ね上がってしまうこの状況ゆえに。

「紅蓮剣!」

「ギラ。」

 空を飛びあがりながら飛来する炎の塊を火球で打ち消す。
 その隙にサビルバラが回り込み蛍丸を振るうがサビルバラの背後を取るように跳躍と着地。
 ロトの剣が襲い掛かるが勢いをつけたまま刀を振るうことで辛うじて相殺してダメージを防ぐ。
 続けざまに家康の拳が襲い掛かるが剣を軽く振るえば、籠手がない以上距離を取らざるを得ない。
 彼に限らず人間にとって腕を喪うのは危険だ。特に殺し合い、しかもまだ放送すら迎えてないなら猶更。

「サビルバラ殿、堀北殿、レン殿! わしから離れるんだ!」

 両手を構えると同時に、彼の足場から広がりだす、葵の紋を模した黄金色の輝き。
 範囲はどんどん地面から広がっていき、敵味方含め全員がやばいと察知し距離を取る。
 距離を取るがアレフには呪文がある。ギラで妨害することは容易だったが、

「ファイアーボール!」

 そうすると先に読んだ堀北が先手を取る。
 確かに経験は素人だ。勇者の戦闘の経験値には劣るかもしれない。
 しかし、A組に匹敵する頭脳が此処にある。行動の一手を考えるのは不得手でではない。
 魔神剣ではなくファイアーボールなのは、自身が呪文使いだと意識づけるためのものでもある。
 単なる攻撃では意識は向けられない。『こいつ、俺と同じで呪文も使えるのか』と言う強い意識が必要だ。
 呪文を唱える前に剣で全て両断し、周囲へと火球は散っていくが、準備は既に万端だ。

「フンッ!!」

 天高くこぶしを突き上げると同時に地面に広がる黄金色の葵の紋は、
 膨大な光となって彼の周囲をから溢れ出るように飛び出す。
 だが方角的には葵の紋の中、即ち全員射程の外なので無関係だ。
 あくまで、参加者に関しては。

「何!」

 突き上げた光の奔流は天井にまで届き、天井を崩す。
 視界を塞ぐように瓦礫が砕け、相手の様子を伺えない。
 暗くなってるわけではないのでレミーラで明るくする意味もなく。
 後方に下がり煙の中から出てくるのを警戒するが、煙が張れると彼らの姿は遥か前方。
 逃走用のための攻撃だったと言うことが分かり、長い旅路で得た健脚ですぐに追走する。

「すまん! 誰か籠手は持ってないだろうか!」

 葵の極みを放った後、一目散に家康がアレフから逃走。
 レンを抱えて走り出し、その意図に気づいて二人も走り出す。
 槍と言う武器を捨て、己の拳で戦うのが家康の選んだ絆の道。
 しかしやはり防具にもなる籠手なしで戦うのは厳しいものがある。

「わ、私はもう支給品が……」

「僕の方には武器はないって言ったはずよ!」

「なら丁度わしの中にええのがある!
 団長も使とった武器だから性能の保障はする……が、
 問題はわしと家康が武器を譲渡してる間、スズネとレンだけでは厳しいぜよ!」


960 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:56:05 qxeIfP5M0
 三対一。連携も悪くはなかった。
 しかしそれでも彼にまだ一撃も浴びせられてない。
 此方は致命傷は避けてはいるが少なからず疲労や消耗をしている。
 相手の息切れした姿や汚れから疲労しているはずなのにも関わらずこの差だ。
 家康一人だったなら恐らく大した問題ではない、というのは三人の共通認識である。
 あれだけ優れた剣技や魔法を使う相手でも、十分に一人で戦うことができるだろう。
 だが家康はどうしても守ってしまう。此処で結んだ絆を断ち切らないために全力で。
 全員が揃って足を引っ張っていると言う感覚に、三者揃って苦い顔せざるをえない。
 サビルバラの得物が両手で握らないといけない蛍丸なのが災いして、片手間さえもできない。

「それに向こうは確実に経験者よ!
 僕だけで何とかするしかないわ!
 僕達が走って時間を距離を稼いではいるけれど、
 確実に追いつかれる! 時間がないから選択肢がほぼ……」

 ディムロスは認めないだろうけれど、
 選択肢がそもそも残されてない以上自分達、
 いやレンの精神状態を考えると自分一人だけで戦うことになるだろう。
 はっきり言って怖い。バルバトスの時は見逃してもらえたのもあるが、
 こうも本当の殺意を向けられる恐怖があるかどうかで言えば普通にある。
 これが殺し合い。学校では社会的な死よりも恐ろしい、人生の終点。
 無論こんなところで終わりたいとは思わない。それでも、やるしかない。
 何とか自分にやるしかないと言い聞かせようとしてると、

「え?」

 家康に抱えられていたレンが身をよじらせ、強引に離れて着地。
 すると逆方向、つまりアレフのいる方角へと凄まじいスピードで走り出す。

「レン殿!?」

「何しとるぜよ!?」

 全員が困惑せざるを得ない。
 この場で戦うことに恐怖感を覚えていたはずの彼女が、
 いきなり無言でそのまま敵陣に飛び込む行動をするなんて。
 彼女の実力も能力もある程度は聞いているが、それでも一人では無謀だ。
 家康達もと言いたいところだが、サビルバラからの武器の譲渡がまず優先であり、
 堀北が追いかけはするものの、レンのアバターはAGI(アジリティ)、スピード特化だ。
 スクワッドジャムに参加していた自衛隊を以てして『人間の動きじゃない』と評される速さに、
 一介の女子高生が追い付けるはずもなかった。

「何?」

 追っていたアレフも反応を隠せない。
 一番優先順位として狙っていた相手が自らやってくる。
 楽勝だとは思わない。向かってくる敵は魔物ではなく思考する人だ。
 しかもその素早さだけで言えば、万全な状態の自分でも追いつくか怪しいぐらいのもの。
 故に警戒は怠らない。来るのは得物を使っての接近したところを迎撃することだけ。
 そう思ったが、彼女の武器を見て思い出すのはドラえもんの空気砲。

(まさか。)

 そう思って回避行動と同時に、甲高い音と共に胸の辺りに衝撃が走る。
 彼の世界には銃がない。剣や斧、遠距離攻撃は魔法がお約束の世界なのだから。
 もし此処でレンが所持していたのがいつもの銃であればその連射性、速射性も相まって、
 この時点でアレフの顔面をハチの巣にできていたのは間違いないだろう。
 使い慣れてない銃で、走りながらという悪条件下で当てたレンの腕は十分褒められるべきだ。

(ああ、もう……)

 堀北が自分から殿を言い出した時のことだ。
 自分は何て不甲斐ないのだろうかと。そんな風に思った。
 外見は145cmとサビルバラよりかは大きいが一般的に比べれば小柄だが、
 中身は大学生だ。年下の子が命を張って、頑張ろうとしているのに自分はできない。
 まだ一歩踏み出せない。浅倉に対する恐怖でがんじがらめにされて、うまく動けない。
 そんな自分の不甲斐なさに、

「こんの、やろおおおおおおおおおお!!」


961 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:56:53 qxeIfP5M0
 レンはキレた。自分に対してぶちぎれたのだ。
 それは自棄かもしれない。蛮勇かもしれない。
 しかし、キレた時のレンは───

「更に速く───ガッアアアアアッ!?」

 戦い方が、銃撃戦の筈のGGOからかけ離れた行動に出ることがある。
 更に加速するようにスピードを上げたレンは、アレフを銃で撃たなかった。
 だから身構えていたアレフに迎撃の暇を与えることを許さない行動に出れる。
 代わりに、突貫してアレフの鼻を歯で噛みちぎると言うとんでもない行為に出ていた。

(なんだこいつ!? 何をしてくるか全くわからない!?)

 てっきり空気砲のようなもので頭を狙うと思って迎撃の用意はしていた。
 しかしそれは銃での話で、生身で突然魔物、しかもリカントやドラゴンがやりそうな噛み付きだ。
 ペッと吐き捨てられる自分の鼻を見ながら、咄嗟にベホイミでとりあえず元には戻しておく。
 恐怖は抱かない。スライムを筆頭にモンスターが跋扈する世界を旅してきたのだから。
 しかし驚嘆はする。人間がこんな原始的な方法で、しかも便利な武器を使えるのにだ。

「鳳凰天駆!」

 予想外の行動に戸惑ったその隙は決して小さいとは言い切れない。
 炎の鳥を纏ったとも言うべき堀北が空中から急降下してくる。
 迎撃は容易だ。しかし鎧越しでもひるませる銃撃を一発受けた。
 この状態で無防備な後頭部をレンに晒して大丈夫だとは思わない。
 走りながらで胸を狙ってきたのだ。この距離で外すはまずありえない。
 前方にジャンプして、レンを飛び越すように跳躍すると同時に、

「ベギラマ!」

 再度彼女に向けて業火の炎が放たれる。
 今度は家康もいなければ間に合うこともない。
 彼女に直撃し、小柄なのが災いし全身を燃やすように全身に燃え広がっていく。

「グッ、ア〝ア〝ア〝ア〝ア〝!!!」

 全身が焼ける痛みは想像を絶する。
 幸いアッシュフォード学園は外には中庭の池があるのを見た。
 そこに飛び込めばまだ間に合うと、近くの窓ガラスをぶち破り、
 全身が焼ける痛みの中何とか走り出す。

「レン!?」

 間違いなく軽傷ではない。
 だが心配している余裕は彼女にはなく、
 着地した後そのまま振り向きざまにロトの剣が振るわれる。

「爪竜連牙斬───!」

 威力のぶつけ合いでは絶対に負ける。
 その判断から手数による連続で攻撃できるスキル、
 爪竜連牙斬を選ぶも一撃目ですぐにディムロスが弾き飛ぶ。
 二回目の斬撃。これを間違いなく受ければ上半身と下半身が別れる。
 迫る死の攻撃。一瞬すぎて目を閉じるだの、恐怖の行動すらとれない。
 刹那の一撃が叩き込まれる、

「スズネエエエエエッ!!」

 死の一撃の直前、
 サビルバラが彼女の首根っこを掴んで引く。
 小柄な少年のような外見のどこにあるのかと思うぐらいの膂力で、
 死の一撃は回避できたものの、あくまで死だ。彼女の腹部に横一線の赤い筋と血が噴き出す。
 決して浅い傷ではない。早急に止血や回復アイテムなどを使わなければ命に係わるレベルのものだ。
 ならばやはり目の前の敵を撃退、ないし討伐して応急処置だけでも済ませなければならないと。

「悪縁、この刃で断つ……!」

 乱雑で申し訳ないとは思いつつも堀北を投げ捨てるように置いて、
 蛍丸に黄緑色の雷光を奔らせながら全力で走り出す。
 AGI特化のレンほどではないにせよ、そのスピードはハーヴィンが出せるものではない。
 ミリンにも剣豪と謳われるだけの実力に至るだけの鍛え方をしたからこそでもある。

「清華転生!!」

 飛翔し、全体重と重力、剣技を乗せた一刀を叩き込む。
 その威力はその小柄さで大地を砕く程の一撃を誇るサビルバラの奥義。
 だが、相手してるのはただの存在ではない。りゅうおうを倒している勇者。
 ロトの剣で防がれ、鍔迫り合いに持ち込まれ、防がれる形で留まる。

「何も知らんわしが言う権利なんぞ言うものでもないが、
 そんなやり方で復興した国で、姫さんが喜ぶとおもっちょるんか!」

『死んだ人は生き返らない。そうでしょ?』

 サビルバラには嘗て義弟のカラクラキルが暴走し、
 生き返らせようと躍起になっていたことがある。
 サビルバラ自身も、二人を生き返らせようと自分を捧げようと考えた程だ。
 だが妹は生きたかったとは言え、他人を犠牲にしてまで生き返りたいとは思わなかった。
 死者である存在からもそう言われた彼には、その姫さんがそう思えてならない。
 だからこそ、二人の忘れ形見であるガランサラスを大事にすると決めている。

「ああ、そうさ……だが勇者が、国を、死んだ姫を捨て置けるか!!」


962 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:57:41 qxeIfP5M0
 心にもない言葉だと内心乾いた笑いが出る。
 分かっている。姫もきっとそんなこと望んでないのだとと。
 分かっている。国なんてもう自分にはどうでもいいのだと。
 分かっている。自分はもう、勇者なんて器ではないのだと。
 何もかも捨てきったアイツ、自分(やみのせんし)になれない。
 あんな風に自由に、先へ進んでいったアイツのようにはなれないと。
 どうでもいい。だと言うのにその為に優勝しようと考えてるのだから。

「ハアアアアアッ!!」

 渾身の一撃を以てしても勇者には届かない。
 アレフの迎撃に打ち上げられ、宙を舞う。
 とどめをささんと空中に飛び出そうとするも、

「やらせはせんぞぉ!!」

 家康が戻ってきて、その一撃を剣で受け止める。
 サビルバラから譲渡された支給品のサイバーチックな籠手。
 先ほどのよりもずっと優れた防御力を有していることはアレフでもわかり、
 刀を手放して無防備になったサビルバラよりも武器を得た家康の方が最優先となる。
 剣と拳がぶつかり合い、周囲へ衝撃波をばらまくような剣劇が始まった。
 雑兵では近づくことすら許されない、強者同士による剣劇の戦いの幕が開く。

「死ごときで潰えるほどやわな縁ではない。
 しかし、此処で結んだ絆、絶対に奪わせはしない!!」

「絆、だと? 貴様にはそういうのがあるのだろうがな!
 僕には何もない! 民も、王も、仲間はいなければ当然絆も何もない!」

 ローラとはあったかもしれないが、その絆も自分自身に奪われた。
 仮に生き返らせたところで、愛などないとさとうに断言された今、
 そんな相手に絆など果たしてあるのだろうか。不確かな絆に彼は揺らいでいる。

「……そうか……お前も……全ての絆を奪われたのだな……」

 壁を、ガラスを、床を砕きながら行われる剣劇の中の会話。
 アレフの独白に、何処か思い詰めたような顔をする家康。
 今まで誰もを導く、それこそ希望の象徴のような男だったのに、
 なんだその顔は。何故お前がそんな顔をする。そんな風に問いたくなる。
 けれど、アレフにそんな余裕は残されていなかった。

(さっきよりもパワーが上がっている……!!)

 家康が装備した籠手はギガントナックル。
 この舞台では秀吉の籠手ほどではないにせよ、光の力を持つものを強化する効果を持つ。。
 東を照らす権現である家康にとって、光の力の強化はこれ以上ないものだ。
 だから先ほどよりも遥かに強くなった剣劇に押され気味になっていく。

「お前は何なんだ! これだけ仲間が傷ついて、
 なおもそうして正道を歩もうとできるのは一体なぜだ!」

「……それがわしの決意だ! わしの姿で、一人でも多く勇気づけて見せる!」

「何故それができる! それをやったところで、
 お前を理解する奴は誰一人としていないだろう!」

 どれだけ絆を結んだところで、
 どれだけ強固な軍勢を築いたところで、
 それは家康のカリスマや手腕の評価であり、家康個人を見ていない。
 先に待っている結果はただの孤独だ。自分と何も変わりはしない。

「言ったはずだ! それがわしの決意だ!」

 それで構わない。自分は孤独でいい。つまりはそう言うことだ。
 自分には何もなかった。けれど、この男はそれを受け入れてしまっていた。
 『自分以外を助けるから、誰か自分を助けてくれ』と、言わない男なのだと。
 アレフには家康が眩く見えた。まさに、太陽の如き眩い光の存在が。

 その眩さに気を取られたか、或いは一瞬の隙か。
 剣劇を制して、アレフの頬に一発拳が叩き込まれる。
 その後は二発、三発、四発五発六発……家康の拳のラッシュが叩き込まれていく。
 かの豊臣秀吉を討ち取った家康の攻撃だ。それを何十発も受けて、無事で済むわけがない。
 防具はひしゃげ、身体から体力がどんどん失われ行くのがゆっくりと実感できるぐらいだ。
 とどめの一発をとなる右ストレートを鳩尾に受け、大きく吹き飛ばされていくアレフ。
 壁をぶち破り、天井を突き破り、学園の鐘に衝突し、鐘が鳴り響く。
 この鐘は何の鐘だろうか。勝利と言う祝福の鐘……とはあまり思えなかった。

「……三成……」

 思い出すのは関ケ原、石田三成との決戦が始まる前。
 家康は秀吉を討った。それは戦火を海外にまで広げんとしたから。
 しかし、その行為は即ち嘗ての友である三成から秀吉との絆を奪い、
 彼にとっては(気づいてない絆もあるのだが)全ての絆を奪ってしまったことを。
 人の絆を奪い、一方で絆を説く。この矛盾は、未来永劫解決することはない。
 アレフにも似たものを感じた。彼には絆を結べる仲間がいなかったか、いなくなってしまったか。
 何処か重なり、複雑な心境を浮かべる家康だが、彼はまだギガントナックルを。拳を構えた。

「まだ……だ、ベホイミ。」


963 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 13:59:30 qxeIfP5M0
 あれだけの攻撃を受けてもなお、アレフは鐘に手をついて立ち上がった。
 ベホイミで回復はしているが、ベギラマも何度か使用しベホイミも此処で何度も使っている。
 学園までに休憩を挟んだとはいえMPはほぼ枯渇しており、体力も万全と言い難い。
 それでも家康に挑まなければならない。自分の全てを否定するような存在を、
 勇者や希望の象徴のような男を置いて逃げれば、全てを喪ってしまう気がするからだ。
 もう、何もないと分かっていてもその歩みを決して止めることはできない。
 地面を蹴り、ロトの剣を構えながら高速で肉薄して刃を向ける。

「令呪よ! 力を貸せ!!」

 頼れる仲間はいない。だが、手段ならある。
 令呪によるブーストで畳みかけることを選択した。
 ギガントナックルの左フックとロトの剣が火花を散らす。
 続けざまの突きもサイドステップで躱し、アッパーカットを繰り出す。
 一挙手一投足が風圧を込めたパンチだ。当たれば先ほどの焼き直しになる。
 だが凄まじい猛攻が、先のような剣劇すら許さぬほどの刃が振るわれていく。
 一撃でも掠れば死が見える。それぐらいの気迫と怒涛の攻めを仕掛けていた。
 死に物狂いで攻撃を防ぐ、避ける。負けられない。負けてたまるかと。
 死にゆくその寸前まで、一人で戦い、勝って、ローラ姫を生き返らせ、世界を救うと。










 だから、負けるのだと。

「……真剣勝負が好みだったら、悪いなイエヤス。」

 ザシュ、と首筋を貫く刃があった。
 家康に集中するあまり、完全に失念していた。
 彼がこの舞台で築いた絆を、仲間と言うものを。
 仲間の連携。モンスターでもあったが、人はより複雑になる。
 感情、または心情、或いは優先順位。人によって大きく変わるのだから。
 背後からサビルバラが、不意打ちのように蛍丸を突き刺していた。
 自分が出遅れたせいで堀北は瀕死、レンはやけどで現状が不明だ。
 汚れ仕事を一身に受ける身としては、責任を果たさなければならない。
 たとえ家康や他の人物から侮蔑されようとも、必要な悪としてその役割に。

「……いや、責めはしない。これは、わし一人の戦いではないのだからな。」

 必要とあらば影武者を使ったり、
 というより徳川軍最大戦力である本多忠勝の存在が大概無法だ。
 だから家康はサビルバラの行為を否定したりすることはしない。

「……そんな風に、なれなかったって、ことか……僕は……」

 アレフもまた、サビルバラの行為は否定しなかった。
 モンスターが眠ってるところを叩くし、魔法も利用し反射する。
 使えるものは何でもやってきた自分だ。そもそもここでも不意打ちで一人殺した。
 だからされても仕方がないと思い、最期に眩い太陽を見上げるアレフ。
 彼の敗因があるとするなら。もう一人の自分と違って芯を、
 オリジンを見出すことができなかったことにあるだろうか。
 オリジンを見出した男は更にその先へ、プルスルトラができた。
 けれど、彼にはない。迷いに迷い、立ち止まり続け、何もできず。
 自分を否定できず、さとうの言葉を否定できず、家康の存在を否定できず。
 一歩を踏み出せなかった。言ってしまえば、それだけの話なのかもしれない。

【勇者アレフ@ドラゴンクエスト 死亡】

「……後で彼を弔おう。サビルバラ殿、堀北の応急処置を!
 レンが持っていた治療キットと言うので傷を治せるやもしれぬ!」

「承知!」

 此処からは時間との勝負だ。
 レンが向かったであろう水辺のある中庭に、
 サビルバラは乱雑に投げ捨てたせいで倒れている堀北へと駆け寄っていく。




 結論から言えば、全員一命はとりとめている。
 レンは早急な行動で全身をすぐに水に漬かったことで、
 焼け死ぬと言う最悪の死に方とされる一つを回避できた。
 そしてレンの治療キットを応急処置した堀北に施せば、
 全員完全とまではいかないが、十分ましな状態には戻れた。

「クッ……互いに酷い怪我ぜよ。
 わしは打撲とかで傷らしい傷はないが……」

「相手が相手よ。仕方ないわ……それよりも、レンは大丈夫なの?
 全身が僕と違って敵によって燃えてたみたいだけど……」

「左目、見えなくなったみたいです。
 多分、治療キット程度じゃ回復は……」


964 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 14:01:10 qxeIfP5M0
 そう、完全とまではいかない。
 包帯を左目に巻かれたレンは見るからに表情に影を落とす。
 この身体はゲームでのアバターだ。でもこの傷が現実に戻ったら?
 片目を喪うなんて悲惨な結果、受け入れられるわけがなかった。
 今にも泣きだしたくなるが、堀北も腹を斬られて脂汗は酷いが、
 涙をこらえているのだ。自分がみっともなくなくなんてことできない。

「……褒めてるように聞こえないかもしれないけれど、礼を言うわ。」

「え?」

「君が勇気を出さなかったら、僕一人で挑んでいた。
 僕はサビルバラさんがいなかったら確実に殺されていた。
 今こうして命を繋ぎ止めているのは、君のお陰でもあるのよ。」

 サビルバラが間に合ったのは、
 ひとえにレンが先行してアレフを妨害したからだ。
 それがなければ、支給品の譲渡で間に合わなかっただろう。

「確かに、アレフは鼻を嚙み千切られた時に傷を治していた。
 あの一回が、サビルバラ殿がとどめをさした要因になれたかもしれない。
 負けるつもりはなかったにせよ、被害を大きく減らせたのは君のお陰だ、レン。」

「何か、照れくさいですね……」

 左目を喪った痛みは物理的にも精神的にも大きい。
 しかし、こうもMVPだと持ち上げられるのは嬉しいことだ。
 スクワッドジャムを戦い抜いたときよりも、嬉しいかもしれない。

「それに、まだ希望はあるぜよ。わしの世界には、
 エリクシールっちゅー傷を全快にする薬もあるぜよ。
 それに限らず、他の世界の回復する道具が目ぇ治してくれるかもしれん。」

 希望を捨てることはしない。
 この世界は数多の世界が混在する舞台だ。
 良い意味でも悪い意味でも何が起きるか分からない。
 希望を捨てるには、絶望を捨てるにはまだ早いとサビルバラが諭す。

「あ、でも服が……」

 ベギラマを受けたことで全身の服が燃え、
 身体のいたるところに穴が空いた状態になっている。
 ファッションと言えば通じるレベルかもしれないものの、
 ロリっ子とも言えるビジュアルのレンでやると、犯罪や事案にしか見えない。

「確かに、見えてないと言っても余り人に見せられる格好ではないわ。
 少しでも派手に動くだけで、見えてしまうのは流石に困り物ね。」

「なんならスズネが白制服の女子を倒した時のドロップ品、
 確かあれ服じゃったろ。スズネに着替えさせてもらえばええ。」

「小柄なこの子に合うのかしら……とりあえず着替えさせてくるわ。待ってて。」

 そしてしばらくの時間が経過し、二人は戻ってくる。
 レンは白を基調としたスカートの制服に身を包んでおり、
 やけどで燃えて縮れた髪を切って整えれば、ただの中学生でも通りそうだ。

「おー、整然とした服ぜよ。」

「サイズぴったり……でも白かぁ。仕方ないけどサヨナラ私の服……」

 ピンク色の服装、結構気に入ってたんだけどなぁ。
 そう思うものの背に腹は代えられない。それに、
 どこか学生気分に戻れたような気がしてr悪くない。
 今も大学生ではあるのだが。

「……彼の遺体は?」

 戻ってみればアレフの遺体はない。
 流石に生きてるとは思いたくないが、
 何が起きるか分からず少しばかり不安になる。

「わしが腕切り落としてレジスターを回収、
 その後の遺体は家康が埋葬してくれちょる。」

「敵にも情けをかけるのね。」

「殴った相手の数は忘れてない、と言うぐらい真面目ぜよあの男は。」

「……強くて頼もしいけれど、何処か恐ろしいわね、彼。」

 堀北には理解しがたい面が全体的に強い。
 そもそもあの学校、特にD組の初期のころは連携は最悪だったし、
 自分本位で行動する面々も多かったり、もっと言えば堀北も我が強い。
 だからA組に匹敵する能力を持ちながらD組に編入されたところもある。
 相手はこちらを殺そうとしてきたのもあるが、戦国時代としてはかなり変わった価値観だ。
 敵を殺すのは当たり前の世界に生きていて、そう言ってのける人間はまずいない。
 彼が一体人としての格がどこか分からなくなる。彼は本当に人なのかと。
 まるで、菩薩か神様のような。そういう意味で人ではない何かに感じる。

「情けがないよりも、情けなくていい。わしはそう思うぐらいだからな。」

 埋葬を終えた家康が戻ってくる。
 手の土とパンパンと払い、手が洗える場所を探すように辺りを見渡す。

「……失言だったわね。ごめんなさい。」

「いやいい。わしは気にしてない。
 それより、堀北の傷の方は大丈夫か?
 レンほどではないにせよ、傷は浅くないのだろう?」


965 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 14:01:37 qxeIfP5M0
「サビルバラさんの応急処置が早くて助かったわ。」

 駆けつけた時には妹のクラーバラが殺されていた。
 その時の絶望が、堀北の応急処置の際によぎったことだ。
 だから迅速に、男女の関係も気にする暇なく応急処置に臨んでいた。

「緊急事態とは言え女子(おなご)の服を脱がせかけたのは事実ぜよ。
 一発、引っぱたくぐらいされてもわしゃ文句は言わんが……せんのか?」

「緊急避難と同じよ。どうしても必要なことで。
 命がかかってる中、一々セクハラだなんだと叫ばないわ。」

「強いのぉ、おんしは。」

「君達には劣るけど、多少は強い精神は持ってるつもりよ。」

 戦いに身を置くわけではないにしても、
 常に退学と隣り合わせの学校のことを考えれば、
 少なくとも並の人間よりかは精神面はずっと強いものだ。

「さて、負傷したのもある。
 当初の予定通り此処を拠点とするのもあるが、
 まずは休養として、飯を食おうではないか!」

「ええ……こんな時に飯ですか?」

 殺し合いの中で飯を食う。
 浅倉の時の渋井丸拓男の遺体を思い出すと、
 げんなりとして食欲が薄れていくレン。

「今だからこそ、ぜよ。
 レンの言うような好戦的な男を考えれば、
 今後凄惨な死体でまともに食欲なんぞわかなくなる。
 死体を見つけて吐く可能性があるとしても、食事は抜くことはできん。」

「腹が減っては戦はできぬ……そのとおりね。
 問題はお腹が違う意味で痛いから、食べて大丈夫かしら……」

「あ、置いていかないでください! 蛮野さんを忘れてるんで!」

 三者が校舎へ戻る間、
 燃えて壊れる前に手放した蛮野のタブレットを回収。
 そのまま三人を追うように高速で駆けて追いついていく。

 かくして、眩き太陽に挑んだ勇者は倒された。
 それはまるで、物語のバッドエンドのようなものだ。
 されど、物語は続く。東を照らす、権現の絆の下に。










(とてつもない男だ、徳川家康。)

 画面から見えるギリギリの範囲ではあるが、
 アレフとの戦闘のほとんどを見届けていた蛮野。
 あれは凄まじい。並の仮面ライダーなど敵ではない。
 下手をすればゴルドドライブとすら負けることはないにしても、
 多少はドライブ達のように殴り合えるのではないか。そんな可能性を感じるほどに。
 これは行幸だ。青二才の上にこの強さ。自分が安全圏にいることが改めて伺えた。
 特にレンはうまいこと家康達と仲良くなっている。これならばより安全になれるし、

(チェイスのことも安全な参加者と言って正解だったな。)

 今の蛮野にとっては何とかしてタブレットから復活することが目的だ。
 チェイスを敵だと吹聴すれば、いつかチェイスとぶちあたって破壊されかねない。
 特に家康はいい。敵にも情けをかける。反省している、更正していると言えば、
 彼は確実に庇ってくれる。実に都合のいい存在だ。何処までも運が味方してくれている。
 堀北とサビルバラにはもしかしたら疑われてるかもしれないが、レンが自分に対する依存も考えれば、
 チェイスの方がアウェーになるのは間違いない。たとえ善良な参加者と徒党を組んでいたとしても、
 同じ志のものが大切にしてるものを壊そう、などと軽々しく発言できるものではないのだから。

(人に寄り添いすぎたことを後悔するがいい、チェイスよ……)

 誰にも悟られることも、気づかれることなく画策する蛮野。
 レンも、家康も利用するだけ利用してやる。すべては自分のために。

【エリアG-4/租界 アッシュフォード学園/9月2日午前10時時20分】

【徳川家康@戦国BASARA3】
状態:疲労(中)、軽度の火傷
服装:いつもの
装備:ギガントナックル@グランブルーファンタジー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:絆の力でこの戦いを止める。
00:アッシュフォード学園にてまずは食事を摂ろう!
01:レンのように絆の力を説いて羂索達に対抗する。
参戦時期:赤ルート、関ケ原前
備考
※籠手が支給品の代わりとなってました。
※蛮野と情報を交換しました。


966 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 14:02:04 qxeIfP5M0
【レン@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)、精神疲労(小)、戦いへの恐怖心(ほぼなくなった)、蛮野に若干依存、全身に軽度の火傷、左目失明、左目や至る所に包帯、髪がそこそこ焦げてる、ずぶぬれ
服装:綾小路武芸学者の制服@刀使ノ巫女
装備:無限バンダナ@メタルギアソリッドシリーズ、Vz.83@メタルギアソリッドシリーズ、ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ+渋井丸拓男のバイク@DEATH NOTE
令呪:残り三画
道具:治療キット×1@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、予備マガジン×30、ホットライン
思考
基本:生き残ることを優先
00:怖いけど逃げない。生きるために。
01:家康さんたち。蛮野さんと共に行動する
02:松坂さとうと出会ったら警戒する
03:怖いけど、自分の不甲斐なさの方がよっぽど許せなくなった。
04:私本当に生きて帰れるのかな……左目、治るかなぁ……
05:え、今食べるんですか?
参戦時期:第一回スクワットジャム終了以降
備考
※GGOのシステム(バレット・サークル、バレット・ライン)は制限なく使用できます。
※仮面ライダーとの戦いで強いトラウマを植え付けられました。
※松坂さとうを危険人物として認識しました。また仮面ライダーへの変身能力を持っている可能性があると判断しています。
※ブレンのタブレットの所有者になりました。ブレンのタブレットはレンに危害を加えることはありません。
※家康が自分の知っている歴史の家康とは別人だと理解しました。
※自分の不甲斐なさにキレたことで浅倉に対する恐怖はほぼなくなりました。
 が、常時キレてるわけではないので噛み千切ったりとかをいきなりはしません。

【堀北鈴音@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:絶対遵守のギアス(極大) 蛮野に対する嫌悪、腹に傷(処置済み)
服装:高度育成高校の制服(女子)(腹部に横一文字の切れ込みあり)
装備:ソーディアン・ディムロス@テイルズオブデスティニー(DC版)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(武器以外)、SA・ホットライン
思考
基本:このゲームから生還する。
00:『一人称は僕、二人称は君を使う』
01:須藤君……なんてこと。
02:羂索にルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……。まさか魔法が実在したなんて。
03:戻った時に何て言われるかしら。
04:喋る剣に、小柄な三十代に、徳川家康……頭が痛いわ。
05:アッシュフォード学園を拠点にできた。後はどうするか。
06;あの蛮野とかいう機械……なんだろう、生理的悪寒がするわ。
07:お腹の傷が痛い……食事、できるのかしら。
参戦時期:少なくとも髪を切る前
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
 異能力解除の異能力をかけられない限り一人称が僕、二人称が君のままです。
※ソーディアン・ディムロスにスタン・エルロンの術技がソードスキルとして内包されてます。
※蛮野と情報を交換しましたが、蛮野に対して生理的悪寒を抱いています。

【サビルバラ@グランブルーファンタジー】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、蛮野に対する警戒
服装:いつもの(ゲーム上における火SSRの恰好)
装備:蛍丸@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3(ロトの防具なし)、ロトの剣@ドラゴンクエスト、SA・ホットライン、アレフのレジスター
思考
基本:汚れ仕事はやる。だが殺し合いには乗らん。
00:アッシュフォード学園へと向かう。
01:バルバトスは早く倒しておきたい。
02:三人のサポートに回る。それがわしの役割ぜよ。
03:バンノは信用ならぬ……場合によってはわしの役割ぜよ。
04:腹が減っては戦はできんからのう。
参戦時期:「待雪草祈譚」終了後以降。
備考
※男性のため御刀の力は引き出せません。
※ギアスコラボ、ドラえもんコラボ、ヒロアカコラボ、プリコネコラボには出てないため、
 ルルーシュやドラえもんの名前はうろ覚え程度の扱いになってます。
※蛮野と情報を交換しましたが、信用ならぬと感じています。

※四人は道中でNPCとの戦闘で、
 食料に足りうるものをドロップしています。
 どのような食料や食品をドロップしたかは後続にお任せします
 少なくとも一食は賄える程度には集まってます。


967 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 14:02:16 qxeIfP5M0
【綾小路武芸学者の制服@刀使ノ巫女】
堀北によるドロップ品。糸見紗耶香の学校の制服。
白を基調とした制服で、少し黒や灰色が混ざったタイプのもの
余談だがソシャゲ版に登場する綾小路の生徒山城由依と、レンの身長は同じ145cm

【ギガントナックル@グランブルーファンタジー】
サビルバラの支給品。
古の技術は遥か時を越えた正義の輝きと共に甦る。
拳に走る蒼き光はその威力と想いを増幅し、高まる正義は咆哮をもって太古の獣をも叩き伏せる。
とされる、空の世界と言うファンタジーな世界にしてはかなりサイバー的な籠手と言う名の拳武器。
(グラブルでは別に珍しいことではない。あの世界タブレットも普通に存在している)
装備すると光属性の攻撃力を強化することができる。ゲーム上での家康は光属性


968 : これが正しいって ◆EPyDv9DKJs :2025/04/14(月) 14:02:35 qxeIfP5M0
以上で投下終了です


969 : ◆s5tC4j7VZY :2025/04/14(月) 20:58:56 eJ9OBLfs0
投下お疲れ様です。すみません。予約の延長を申請します。


970 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:45:42 nzQtjS4o0
投下します


971 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:46:32 nzQtjS4o0
「ふむ。ここは美濃関学園にでも向かってみるとしよう」

付近の捜索がてら、先の戦闘により失効状態と化したケミーカードを回収した冥黒王ギギスト。
現在位置であるE-10付近で一番近いだろうランドマークたる美濃関学園になら、敵ながら目をかけている黒鋼スパナが居てもおかしくなさそうとした彼は、NPCを蹴散らしつつ向かう事とした。

「…貴様は、エターナルを模したNPCか。理解したぞ」

ギギストがD-11へと足を踏み入れんとしたその時、彼の周辺を取り囲むはクリスタル。そして現れるは仮面ライダーエターナル……大道克己では無く、怨念の集合体により蘇らされたNPCであった。
最もギギストでなくとも、通常よりも少し大きなそのサイズ故に参加者の方のエターナルと別物な事は一目瞭然だっただろうが。
ともかく相手は、敵対者を視認したと同時にエターナルエッジから斬撃波を放ち、そこからユニコーンメモリのマキシマムドライブを行使。

「…所詮はNPC、奴に勝るは大きさと、行使可能な技のみか」

だが飛んできた斬撃波を容易く回避し、マキシマムドライブをも空間転移で避けたギギストは背後を取る。
次のアクションに動こうとしたエターナルを空間転移により隔離してしまい、脱出される前にそのまま千本桜による斬撃と超重力での押し潰しによって、あっという間に撃破してしまった。
何の感慨も持たずにドロップしたアイテムを回収した後、エリアに入り歩を進めるギギスト……しかし、彼の足は止まる。

「……──これは」

彼には理解できた。目前に遺された血痕が、頭部を砕かれた結果の産物だという事、おそらく死体が持ち去られたという事も。

「……理解したぞ、美濃関学園の内部に持ち去られた、辺りだろう」

胸に生じた何かから目を背けた事に気づかぬまま、冥黒王は校舎内へと足を踏み入れ……その少し後に、美濃関学園は崩壊した。

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一方時刻は少々進む。
キメラのつばさにより別エリアまで飛ばされたシビト・衛藤可奈美は、現在クリスタルゲージの内部にて仮面ライダージョーカーの大群に囲まれていた。
\ジョーカー!マキシマムドライブ!/
と音声をひっきりなしに響かせながら、何発も放たれるライダーパンチの雨あられ。
蘇生させた主たる大道克己が見たら困惑と失笑を憶えそうな光景に対して可奈美は、迅移を以て避けつつさっそく覚えた「金翅鳥王旋風」を行使。
威力は届かず蒼炎も付与できず、しかし振るい方は完全に再現を果たせている回転斬りを以てして大半のジョーカーを薙ぎ払い消滅させた。
それでも残った個体は馬鹿の一つ覚えかのようにパンチを放つも…数の利を失った以上此等に待つは各個撃破される末路のみだ。
シビト故そこに何の感慨も無く、両手が塞がっているのもあって倒す前にドライバーをもぎ取るという発想も無いまま…ゲージからの脱出を果たした彼女は進んでいった。
…ペラッペラに薄くしかし強烈な毒性を持つキノコにより齎された綻びに、まだ気づかないまま。

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972 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:47:02 nzQtjS4o0
今度は時を少し遡る。
ホットラインから地図を確認したやみのせんしは、ランドマークの何処へ向かうかを思案していた。

(今居るのが…F-9だな。病院からかなり離されてしまっていたワケだ。
…建物からは遠めだが近いのは野比家か美濃関学園……拠点とする事を考えれば、参加者と縁があるわけでもなさそうな上その辺りの民家と変わらなさそうな家よりは、学園とやらの方がそれっぽいか?)

北東へ進むか南東に進むかを考えた末、拠点として使う点を考慮し北東へと向かう事を彼は定める。
そうと決まればと進み…早速敵対者と出くわした。

(…結界とかそういう類か?大量の同じNPCとやらに、1体だけ違う相手……どちらもアイツが、ステインが変身してたこのデザストとやらと同じ仮面ライダーとやらみてぇだが)

目前に展開されるはクリスタルの障壁。立ちはだかるはトリックベントでもつかったのかと言いたくなる大量の仮面ライダーナイトに、この殺し合いに招かれた世界線のグリオンが運用する自立稼働型ライダーシステムドレッドルーパー弐式。

「…コイツを試すにはちょうどいいか」
(ステインならきっと、言わないだろうな。ここは……俺も倣うとするか)

『骸骨忍者伝!!』

思考しつつ、やみのせんしはソードライバーを腰に付け本を開き…変身とは言わず、聖剣を抜き仮面ライダーデザストへとその姿を変え迎撃を行う。

(ソードと言いながら使うのは槍かよ。
…他のNPCよりも単調な分、攻撃力は馬鹿にならねぇな…結界で狭められてるのもあるが、数の多さと単調じゃねぇ動きをしてくるあのライダーが合わさって厄介だ。
ここは…!)

\ソードベント/と音声を何度も鳴らしひたすら攻撃をするナイト軍団が振るう槍を聖剣やはかいの剣で受け止め重さを、通常よりも高くなった威力を察しつつ、その合間を縫って金棒のブラッディーDOによる攻撃や徒手空拳を放つドレッドルーパー弐式へと対応するやみのせんし。
ナイトの集団か弐式のどちらかを排除しない限り、クリスタルに囲まれているのもありその内ジリ貧になりかねないと悟った彼は攻めに打って出る。

『かつての神獣!ジャックと豆の木!ピーターファン!なるほどなるほど!習得三閃!!』

聖剣の刀身に手持ちのワンダーライドブック全てを読み取らせた上でベルトに戻し、技を発動。
3冊分の力を以て火力だけはある集団を蹴散らしていく…も、全ては倒せずドレッドルーパー弐式も健在。だがあり得るかもとした範囲内だったようで、間髪入れずに彼は唱える。

「ギラ!」
(…この姿でも呪文は使えるみたいだ)

ライダーとなってからも問題なく呪文が使用可能な事を確認しつつ、閃光と熱を纏いし火球によりナイト軍団を一掃してみせた。
その勢いのままやみのせんしは攻め立て、必殺技を行使しようとする。
もっともドレッドルーパー弐式もただで倒れるつもりはなく、ブラッディーDOに炎を纏わせる方のドレッドブレイキングを発動し熱と殴打で殺さんとする。


973 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:48:05 nzQtjS4o0
(…アイツはこう言ってたな)
「カラミティストライク!」

迫るブラッディーDOに対し彼は、緑と紫の風を纏った回転を行いながら斬撃をぶつけ続けた。
炎と風が、打撃と斬撃がぶつかり…爆炎の後、クリスタルは消えていく。やみのせんしの勝ちだ。

(落とした道具は…と。…回復薬のようだが、ベホイミに使う分のMPが浮く以上ここは…飲むか)

変身を一旦解いたやみのせんしはドロップアイテムである強力傷薬を飲み、少なからず負っていた傷を癒した。
疲労やMPはそのままだが、傷を癒せただけでも有り難いと思うべきなのだろう。

(…呪文は変身後にも使えるが、問題はあの姿だと片手ずつで剣を振るうか、聖剣とやらとはかいの剣を持ち替えて戦う必要が出てくる事だ。
デメリットは無効化出来ているとはいえ、いちいち持ち替えていればそれを隙として狙う奴も居るだろ。そもそもその暇を与えさせない相手とぶつかる可能性だってある。
片手ずつにはまだ慣れているとは言い難い。状況にもよるが変身せずはかいの剣1本で戦った方がいい時もあるだろうな……頼りすぎれば、ステインが言っていたように不覚を取る、過信は出来ねぇ)

そう思考し本格的にこの仮面ライダー、デザストを運用するにはまだ慣れなどが足りていないという結論を出すやみのせんし。
暫くはNPC相手に慣れる為の戦いをしつつ、プレイヤー相手なら今は基本変身せず戦うとここで決めたのであった。

「トヘロスを使う機会はもう暫くは無さそうだな」

弱いモンスターとのエンカウントを防ぐ呪文だが、今欲しいのは慣れ使いこなす為の戦闘機会。封じてしまえばその分遅れると判断したのである。
兎も角彼は再び変身を行い、先に進みながら出くわしたNPC相手の戦闘に危なげなく勝利を重ねていた……そんな時だった。

(ッ……殺気を感じたと思ったらもう仕掛けてきやがった、呪文か特技…いや、ステインみてぇに俺の知らない何かしらの力って線も…ありそうだが!)

感じ取ったと同時に咄嗟に剣を向け防ぎにかかった事で、やみのせんしは加速から放たれた不意打ちを凌ぐ。
数秒ズレていれば初手でもう不利な状況へ追い込まれていただろう。


974 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:49:10 nzQtjS4o0
「…さしずめうごくしたい…ってか?
…動くガイコツの類なら嫌という程倒してきたけどよ。……笑えねぇな」

目前に現れた二刀を振るう血塗れ、かつ胸元が破け破廉恥な有様の少女を見据え、仮面の下でそうごちる。
少女がとうに命を落としている事は、破けた服から視える切断した所を無理くり縫ったような線に虚ろな目、人形のような無表情から察する事は出来た。

こうして、自らの意思で堕ちた元勇者やみのせんしと、死後意思無き殺戮人形に否応なしに貶められた刀使衛藤可奈美の戦いが──幕を開けた。

----

ステイン戦を終えた後覚えた特技である「しっぷうづき」を用い、先手を取ってやみのせんしは攻撃を仕掛ける。
目にも留まらぬ速さで放たれた突きに対し、可奈美は水の呼吸壱拾壱ノ型【凪】を行使して対応。
水の呼吸を刀に内蔵されているソードスキルという形で使えるが為習得している全集中の呼吸と御刀のお陰で使用可能となっている八幡力による身体能力上昇、迅移の加速や更に習得したソードスキルである勝利のルーンによる威力の上昇した剣を防御に回す事で…彼女は攻撃を防ぎ切った。

(うごくしたいな以上、ラリホーは効かねぇだろうな。レミーラも効くかは怪しい…一閃する暇もあるかどうか…って所か!)

思考を回しながら即座に彼は特技である「はやぶさ斬り」を発動。威力を多少犠牲にしつつ連続攻撃を行う。しかしこれは【凪】を使わずとも二振りの日本刀にて防御されてしまった。

「剣術特化型かよ…ッ、ぐぅっ!?」
(コイツ、俺の覚えた特技を真似やがったのか!…ならこの技なら…!)

咄嗟に防ぎにかかったやみのせんしに対し可奈美が使ったのは先程『視た』特技しっぷうづき。
岡田以蔵の刀に内蔵されたソードスキル始末剣に、可奈美自身の剣術を模倣する技能が合わさった事によって出来る芸当だった。
そんな事は露知らず、動揺と混乱を隠せないながらも次なる一手を彼は打つ。


975 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:49:40 nzQtjS4o0
(風を纏う都合、完全に真似れるとは思えねぇが…!)
「カラミティストライク!」

デザストの必殺技であるカラミティストライクを躊躇わず切り、目掛けて攻撃する…も、回転斬りには回転斬りと言わんばかりに可奈美は「金翅鳥王旋風」を行使。
ぶつかり合い互いにふっ飛ばされるも、距離を詰め斬り合いとなる。
鍔迫り合いの最中、可奈美はまたも模倣しはやぶさ斬りを放った。

「…死体が向けていい殺意かよ…ッ…!」

ぼやくかのように言いつつ二刀流による連続攻撃をはかいの剣によりどうにかやみのせんしは受け流す。
だが今度は可奈美の方が早かった。風こそ纏わないものの、回転しながら斬撃を放ち続ける。

(呪文の類は真似できねぇ代わりに、寸分変わらず再現してきやがる…ッ!)

避けまた剣で受け流しながらも全てをそう出来るわけではなく、ダメージを少しずつ受けていく。

「…危うく不覚を取る所だった、けれどな…勝負は此処から…だッ!!」

そのままでは遠からずやみのせんしは敗死の結末を迎えていただろう。
だがここで彼は、その結末を覆さんと剣を振るいながら呪文を唱える。

「──ベギラマッ!!」

使える呪文の中で最大火力を、大蛇或いは竜を想起させる炎と閃光を放つ……も、迅移と八幡力、全集中の呼吸を併せ可奈美はこれをどうにか回避。
尤もこれは想定の内…彼の狙いはそこでは無かった。

「…やっぱりこっちの方が動き易い、なぁッ!」

回避に徹したが為に出来た隙を利用して、やみのせんしが取った行動は追撃では無く変身の解除。
より良い動きが出来、不覚を取る確率を極限まで減らす為、彼は解き戦い慣れた姿へとなったのだ。


976 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:50:03 nzQtjS4o0
「確かにお前の、アンタの剣に籠もった殺意は、研ぎ澄まされてると言っていいだろうさ。
…けどな…それ『しか』ねぇんだよ…アイツとは違って」

脳裏に浮かぶは斃したヒーロー殺しの姿。
……目前の敵を殺すため『だけ』の為振るわれる剣に、負ける気はしなかった。

(それに…そろそろ読めてきたぜ、アンタの動きが!)

勇者として戦い続けてきた、蓄積された経験もあってか…彼は殺意のみの剣術を見切り始めていた。

----

日本刀と西洋剣がぶつかり合う。鈍い金属音が何度も響く中、2人の剣戟は続いていた。
戦況は…現状互角。やみのせんしは着々と、動きに対応しつつある代わりに【凪】を突破出来ず、張ってある写シを剥がす事も出来ないという状況にあった。

(相手が死体なのを考えると、このままじゃ負けはしなくても勝てねぇ…ならこれで、一か八かって奴だッ!)

思考を回した彼は鍔迫り合いした瞬間──刀身に纏わせるかのようにベギラマを放つ。
閃と熱を纏いし剣相手に、回避が間に合わないと悟ったのか可奈美は写シを犠牲にし耐える。
当然やみのせんし自身にもそれらは伝わりダメージになりかねない…が、はかいの剣を一時的に手放し最小限に抑える。
そして可奈美が立て直しを図る際、黒嵐剣漆黒を変身しないまま使う事とし…三度剣戟は行われた。

(…さっきまでの、殺意だけの剣じゃねぇ…厄介になってきやがった…ッ!)

変化したのは可奈美の剣の振り方。
ひたすらに【凪】で封殺し多種多様な、学んだ技で押し潰すかのようなスタイルから…防御はそこそこに、何処か楽しむかのようなそれに変わっていきつつあるのだ。
殺意自体も残っているが為、やみのせんしにとってはとても厄介と感じれる状態となっているのだが。
右左甲段から放つタイ捨流の袈裟斬りや、天然理心流の三段突き、更には水の呼吸参ノ型【流流舞い】等、異界の剣術までが入り混じったキメラのような複雑怪奇な剣の動き。
先程まで対応出来ていた半ばパターン化したいたそれとは大幅に異なるせいで、迎撃に精一杯になりつつある。


977 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:50:34 nzQtjS4o0
(……コイツくらい、剣の技量が高い相手は…俺の知る限り居なかった。
…こんなに楽しいんだな、自分と同じ、いやそれ以上の相手と…斬り合う事は)

だがやみのせんしの脳裏に浮かんだのは、そんな考えだった。
もし目前の少女のような剣の使い手が居たのなら──

「…俺は、俺自身の意思でこの道を進むって決めてるんでな。
…死体相手に言うのもなんだが、名残惜しくはあるけどよ……そろそろケリを、付けようぜッ!」

既に覚悟は定まっていたが故、死体を操り、自由を奪うような類の者への怒りやら気に食わなさやらを抱きつつも元勇者は感傷を振り払い、この結論に至った。
鍔迫り合いをやめ、距離を一旦取ってからはかいの剣を回収。持ち替える。
何故か相手はそれを待つかのようにした上で、見知らぬ構えを行った。

(……斬り合ってる中で、使えるかもしれねぇって技が…呪文が、特技が浮かんだ。ぶっつけ本番になるが…アイツも知らねぇ技を使おうとしている以上、迎え撃つにはやるしかねぇ、だろ!!)

「──バイキルト!」

彼とは別の世界の勇者や、彼の居た世界と限りなく近く、しかし差異のある世界での勇者が覚える攻撃力を倍加させる呪文。
これにより威力を上げながらやみのせんしは、相手が放とうとしている斬撃の嵐を迎え撃たんとしていた。
そして、刀身が稲妻を纏う。
これもまた、別の世界の勇者や限りなく近くしかし差異のある世界での、やみのせんしやアレフの並行同位体といえる存在の勇者が習得する特技。
故に、この世界線の(元)勇者に覚えられない道理は無かった。

雨霰と見間違うような連撃と、雷を纏いし斬撃がぶつかり合う。

「ぐぅ…はぁあ"ッ!!」
(──今、アイツ……!?)

一瞬、剣をぶつけ合う相手の、能面だったそれが崩れたような……そんな時だった。錯覚か否かを確認する暇もなく、突如現れた闖入者がバルカンとライフルを放って来たのは。


978 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:51:02 nzQtjS4o0
----

「…うごくしたいの次は動く鋼鉄の鎧、とでも言う気かよ」

シールドバスターライフルとブレストバルカンを放つMS・ガンダムXの攻撃を、可奈美共々回避する形となるやみのせんし。
急な乱入者に苛立ちと辟易を感じながら、迎撃を試みる彼。可奈美もまた、MSへと攻撃を試みようとする……も。邪魔者はそれだけでは無い。

「…コイツも、仮面ライダーって奴か…次から次に邪魔ばかりしやがって…!」

いつの間にか現れた仮面の戦士が、棍棒型の巨大なオーラを三者にぶつけようとしていた。
苛立ちが口に出てしまいつつも、食らうと不味いと判断し回避に動く。
……そしてそれだけでは無い。砲撃が降り注ぎ避けつつも方向を視ると、其処に居たのは砲台を付けた竜(ドラゴン)。

「おいおい…ッ、ドラゴンまで出てきやがるとはな…そんなに邪魔がしてぇのかよ…!!」

毒付きつつ攻撃を避け切り払い、形態を変えた仮面の戦士と戦闘する最中、竜はエネルギーをチャージし、またMSも天空からエネルギーのような物を受信する。

『あなたに、力を……』
「ッ!?あの動く鋼鉄の鎧か…!?」

何故か突如響いた少女の声に、困惑を隠せないやみのせんし。
もしや戦っていたあのシビトが喋りだしたのでは?と思いそちらを視ると、能面だが心なしかきょとんとした顔を浮かべておりそうで無い事は明白であった。
なんだったんだと疑念を浮かべつつ、即座に気を取り直し仮面の戦士に対応し、竜とMSを警戒する。

────やがて、強大なビーム同士の激突が起きた。サテライト・キャノンと超電磁砲がぶつかり合い爆発が発生しエリアは壊滅状態と化す。
姿を頻繁に変え不定形な…スライムか何かか?と言いたくなるレジスターを付けた仮面の戦士とやり合っていたやみのせんしは咄嗟にその場から離れ間一髪難を逃れた。相手も撤退を選んだ為退避は容易だったのが功を奏した形となる。

「…NPC、だよな?アイツら」
(……それでこの惨状を引き起こす程の攻撃力となると…これ以上を引き出せる参加者も居てもおかしくは無さそうだが…)
「…一つ問わせて貰おう」
「……誰だ?アンタ」

思案に浸ってる最中、突如として声をかけられ警戒心を最大にまで持ち、はかいの剣から手を離さず呪文を唱えれるようにして応対する。

「我は冥黒王ギギスト。理解したぞ。貴様は殺し合いに乗っている側の存在だと」
「…ならどうするって言うんだよ?悪の王様」
「…問わせて貰うと言ったぞ、堕ちた元勇者よ。その後どうするかは返答次第だ」
「…とっとと用件を言ってくれ」

互いが悪の存在だという事を悟った上で、ひとまず話を聞こうという形となる。
尤も対応次第ならやみのせんしは即座に相手を殺そうと考えているが、強敵である事も理解しているが為今は聞く事とした。


979 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:51:22 nzQtjS4o0
「…レジスターを身に着けた、変形する仮面ライダーを見なかったか?」
「見なかったかも何も、さっきまでソイツと戦ってた所だ、逃げた方向はあっちだぜ」
「……そうか。……ひとつ、提案がある」
「…なんだよ」
「…魔王グリオンを討伐するまでは、我と一時休戦と行こうではないか」
「…元勇者だってわかっていて、俺に魔王を討てと?」
「奴は自由を、尊厳を踏み躙る類の…今のお前が怒りを抱く類の存在だ」
「……提案って言うなら、対価があるんだろ?それ次第だ」
「呑むと言うのなら、我の力をお前に分け与えてやろう」
「……」

沈黙し考え込むやみのせんしの脳裏に映るは、先程のビーム同士の激突とそれにより壊滅したエリア。

(NPCですらアレがやれる以上、参加者にはそれ以上が出来る化物が大勢居てもおかしくはねぇ……優勝を狙うなら、悪くは無いだろう。
…利用できるものは、なんだって使うべき、か)
「……ギギストだっけか?アンタの提案、受け入れてやるよ」
「…フッ、ならば我の力、耐えてみせるがいい」

決断を果たしたやみのせんしに、ギギストは自らの力を分け与える。

(…グリオンが居なければ成功していたキラ・ヤマト同様、耐えてみせたか)
「成功したようだな、では我は……」
「待った、休戦するって言うなら情報くらい共有しても罰は当たらねぇだろうよ」
「……ふむ。一理はある、か」

かくして2人は情報を交換、シビトの名が衛藤可奈美だという事や、美濃関学園がジゴワットにより崩壊した事、黒鋼スパナの遺体を金属が取り込んだ結果、あの仮面ライダーになった事等を知るやみのせんしや、その場から離れた後ステインがやみのせんしに討たれた事を知るギギスト等といった事が起こった末……2人はひとまず別れた。


980 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:51:49 nzQtjS4o0
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ギギストが去った後、クリスタル毎立ちはだかった相手である仮面ライダーカリスに対し、覚えたバイキルトとはやぶさ斬りを併用し大ダメージを与えたやみのせんし。
その結果カリスは姿を変えジョーカーとなるも…ここでやみのせんしが目を向けたのは色のみが変わったバックル。
激しくなった攻撃を避けつつもそれを剥ぎ取ると……ジョーカーは消滅、そして剥ぎ取った筈のバックルは消え、カードが残されていた。

「……コイツだけでどうしろって言うんだよ、使い道が浮かばねぇ…まあ持っておくか」

そう呟き、彼はカードを拾う。
カードに描かれていたのはJOKERであった。

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一方、ギギストはやみのせんしに教えられた方向へと向かう。

(──あの金属生命体に取り込まれた黒鋼スパナの亡骸…レジスター毎取り込まれている以上、回収せねばな)

回収した後どうするか、という所まで考えが回らない。
自らの後継者と成り得た、事実本来の歴史では自らを超えし後継者となった男の無惨な亡骸を目撃し、しかもそれが目前で取り込まれた事に対しギギストが感じた感情は……欠落か、空虚か、綯い交ぜにした物か別の何かか……彼自身も理解していないだろう。

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一方、シビトと化した可奈美はどさくさに紛れて「金翅鳥王旋風」によりガンダムXを撃破。
ドロップアイテムを拾った後そこから立ち去ろうとして……襲ってきた鬼殺隊の隊士を、鎌府女学院の刀使をこともなげに斬殺死体へと変えてしまう。
……鬼を狩り竜を狩り荒魂を祓いモンスターを狩る、その為の剣術を持ってNPCとはいえ人を残虐に殺める。
そして歩みを進める彼女の瞳からは……当人も気付かぬ内に、一筋の涙が溢れていた。

キノコをきっかけとし精神に起きた綻びが、広がりつつある彼女。
だが主催者からすれは想定内の事態であり、万一自我が戻った時に備えて2つの枷を施していた。
…自我が戻ると同時にそれまでの全ての記憶が流れ込む処置に、それと同タイミングで身体が自壊するまでのカウントダウンが始まるように仕掛けておいたのである。これらが作動するまで、おそらくそう時間はかからないだろう。

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一方、ジゴワットは電磁砲を設置しつつ、可奈美とは別の方向へ進む。
破壊を振りまく事が、己を蘇らせた主の望みであるが為。
自我も何もあったものではない有様であった。


981 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:52:15 nzQtjS4o0
【エリア全体の備考】
※E-10は超電磁砲とサテライトキャノンにより壊滅状態となっています。またエリア内の何処か4箇所に1体ずつ、NPCモンスターである電磁砲が設置されています。
※D-11の美濃関学園@刀使ノ巫女は崩壊しました。
※黒鋼スパナの遺体をELSが取り込みました、ELSが取り込む事が可能な参加者の遺体は残り4体です。またレジスターごと遺体を取り込んでいますが撃破時ドロップするか等は後続にお任せします。

【エリアE-10/9月2日午前10時20分】
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、MP消費(中)、『忍者』『刀使』に興味(小)、決意、シビト及び『魔王』グリオンのような自由意思を奪う類・死者を辱める相手への嫌悪感(大)、斬り合いへの高揚(小)、可奈美に対して若干の哀れみ
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー、ジョーカーのラウズカード@仮面ライダー剣
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。
1:二度と迷わない。方針は変わらない。だが使えるものは使い、ギギストの云うエターナルや魔王グリオン、ルルーシュのような、俺の掲げた『自由』を奪う力を持つ連中相手なら──
2:過去との決別を証明するため、アスラン・ザラは何も起きなければ次会った時に殺す。紛らわしいから?の方もだ。そして休戦したとはいえいずれギギスト…アンタも殺す。
3:拠点を探す。病院をそうするつもりだったが…離れてしまっている以上野比家に向かうか?橋を渡って目指す事も考えれるが…或いはルーラを使ってみるのも…。
4:もう一人の俺(アレフ)についてはどうするか。
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
6:エトウカナミ……だったか。次にあのシビトや、ついでにあのドラゴン(ジゴワット)、それにキラ・ヤマトとやらを見つけたらその時は終わらせてやる。しかし刀使か。他の連中もアイツと同じ事がやれるのか?
7:俺自身の自由の為に、願いを叶えた後主催者共も殺す。特にケンジャクは。
8:あのドラゴンといいモビルスーツといい、NPCでもバカみてぇな火力してるな。…しかしなんだったんださっき聞こえた幻聴は。
9:……初めてだな。ああして斬り合う事を、楽しいと思ったことは。
10:ライダーの力については過信しない。不覚を取るのはゴメンだ。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後
※ステインとの戦闘を経てはやぶさ斬り、しっぷうづきを習得しました。
またシビトと化した衛藤可奈美との戦闘を経てバイキルト(リメイク版ドラクエⅦや剣神ドラゴンクエスト等で習得可能)、いなずま斬り(ドラクエⅢ等で習得可能)、大ぼうぎょ(ドラクエⅢにて勇者職で習得可能)を習得しました。今後も戦闘の度に新たなる特技や呪文を習得するかもしれません。
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。
※冥黒王ギギストにより力を付与され更に全ステータスが向上しています。
※シビトと化した衛藤可奈美の剣術を一通り視ました。再現可能かは後続にお任せします。


982 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:53:03 nzQtjS4o0
【冥黒王ギギスト@仮面ライダーガッチャード】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、賢者の石の49.5%を保有、スパナの死に言いようもない感情(無自覚)。
服装:なし(多分あれで全裸)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(全て錬金術に関係する物)、ホットライン、ゴージャスカグヤファイル@仮面ライダーガッチャード、レジェンドライダーケミーカード(アギト、龍騎、ゴースト)、失効状態のレジェンドライダーケミーカード(ブレイド)、千本桜@BLEACH、ドロップアイテム×1
思考
基本:異世界の力をも取り込み真の王座を得る……と考えていたが、どうする?
00:我は羂索を理解した。このままでいい……と思っていたが…。
01:異界の能力…どれも興味深い物ばかりだ。我の力とするにふさわしき力を選定するには丁度いい。
02:あの三人(デク、キリト、亜理紗)はマルガム共に任せた…が、撃破されていると考えた方が良いか。
03:魔王グリオン…我の知るグリオンとは違うようだが…とりあえず我を狙う事は間違いないだろう。
04:我が同胞、黒鋼スパナ……遺体を取り込んだ奴(ELSスパナ)は確保するとして──
05:キラ・ヤマトは今は関わらないでおきたい。理解した筈だったが…何故ああなった??
06:やみのせんしに我の力を与えてはみたが、やはり耐えてみせるか。さて……考えねばな。
07:所詮はNPC、参加者のエターナル程ではなかったな。
参戦時期:ガエリアの力を取り込んだ直後
備考
※羂索を本人なりに理解したと思っていましたが、理解し直す必要が出てきたと考えています。
※ゴージャスカグヤファイルにはブレイドと電王とゼロワンのカードも付属していましたが、マルガムのような異形へと変化させ撃破されました。
※制限などがどうされてるかは後続にお任せします。
※ELSスパナを追う方向に行きました。
※手に入れたドロップアイテムについては後続にお任せします。

【エリア???/9月2日午前10時20分】
【衛藤可奈美(シビト・非参加者)@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、返り血、精神に生じた綻び(中)、無自覚な動揺(小)
服装:美農関学院の制服(両腕、腹部、胸元に破損)
装備:岡田以蔵の刀(複製)、冨岡義勇の日輪刀(複製)、御刀・千鳥(複製)
道具:不明支給品の複製×1(オリジナルは現在アンクが所持)、アスラソキノコ@ネットミーム×1、ドロップアイテム×1
思考
基本:大道克己との合流及び参加者の殲滅。
00:……????
01:────
備考
※以下の技を「視て」覚えています。
・宇蟲王ギラが放った連撃(ただし自我のない現状では使いこなせません)
・氷竜と化したキラ・ヤマトの高速での突き上げ
・柳瀬舞衣が使った「金翅鳥王旋風」 (ただし威力や蒼炎の再現は出来ません)
・やみのせんしが使った特技「はやぶさ斬り」「しっぷうづき」、彼が変身した仮面ライダーデザストの技「カラミティストライク」(ただしカラミティストライクは紫緑の風の再現は出来ません)
※アスラソキノコを採取しました。現在精神面に影響が出始めています。
この影響により蘇生主に従い殺戮を繰り広げるシビトの在り方に綻びが生じています。
綻びが大きくなればなるほど自我を取り戻す可能性が出てきますが、もし自我を取り戻した場合運営側が行った対策によりそれまでの記憶が流れ込む+その瞬間から暫く後に自壊するようにされています。
※ソードスキル:勝利のルーン@サガフロンティアを習得しました。
※手に入れたドロップアイテムについてや、詳細な位置は後続にお任せします。位置については少なくともジゴワットやELSスパナとは一緒ではありません。
※撃破や自壊時、複製されてるレジスターをドロップするか否かは後続にお任せします。


983 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:53:34 nzQtjS4o0
【帝竜ジゴワット(NPC)@セブンスドラゴン2020-Ⅱ】
状態:ダメージ(中)疲労(中)
服装:なし
装備:背中の大型電磁砲、両肩部の砲台
道具:なし
思考
基本:大道克己との合流及び参加者・周辺の建物の殲滅。
備考
※エリアH-7/天ノ川学園高校跡地に電磁砲@セブンスドラゴン2020を4台設置しました。
またE-10にも4台設置しています。
※シビトを始めとした同じ大道克己に操られたモノだろうと、射線に居るなら巻き込む形で射撃を行うようになっています。
※詳細な位置は後続にお任せします。少なくともシビト可奈美やELSスパナとは一緒ではありません。

【ELSスパナ(黒鋼スパナに擬態したELS・非参加者)@本ロワオリジナル(仮面ライダーガッチャード+劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-)】
状態:健康
服装:黒鋼スパナのそれと同じ
装備:ヴァルバラド及び仮面ライダーヴァルバラドの装備・使用アイテム一式を逐次再現、黒鋼スパナのレジスター
道具:なし
思考
基本:NPCとして参加者を襲う。
備考
※レジスターをドロップするか否か、また元の黒鋼スパナの参戦時期的にはまだなれない、仮面ライダーヴァルバラドの形態である黒鋼やGTへの変身も可能になってるかどうかは後続にお任せします。
※詳細な位置は後続にお任せします。少なくともシビト可奈美やジゴワットとは一緒ではありません。

【NPCモンスター解説】
・仮面ライダーエターナル@仮面ライダー サモンライド!
・仮面ライダージョーカー@仮面ライダー サモンライド!
・仮面ライダーナイト@仮面ライダー サモンライド!
・仮面ライダーカリス/ジョーカー@仮面ライダー サモンライド!
サモンライドの連中。エターナルとカリス/ジョーカーは中ボス仕様な為少し大きく、ジョーカーとナイトは雑魚敵としてわらわら出てくる。
またカリスはダメージを与え体力を残り僅かにするとジョーカーへと変化する。

・ドレッドルーパー弐式@仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク
魔王グリオンが運用するドレッドルーパーの弐式。
基になったドレッド弐式と同性能である。

・ELSスパナ@本ロワオリジナル
黒鋼スパナの遺体をレジスター諸共ELSが取り込み再現した個体。
生前無為転変による改造人間化と頭部を砕かれる末路を迎えたが故にスパナの遺体は悲惨な有様となっていたが、このロワでは取り込んだ場合損傷等は元に治されるようである。
またヴァルバラドやロワ本編では終ぞ変身できなかった仮面ライダーヴァルバラドへの変身も再現している。人格・性格面の再現は一切せず喋る事も無い。
なお参戦時期的にはまだなれない仮面ライダーヴァルバラドの形態である黒鋼やGTへの変身まで可能になってるかどうかは後続にお任せします。

・ガンダムX@ネットミーム(カオスパロボシリーズ)
フラッシュシステムに対応しているガンダムタイプのMS。超火力超射程を誇るサテライトキャノンが当機の大きな特徴。大元の出典は機動新世紀ガンダムX。
また、カテゴリーFではないニュータイプならフラッシュシステムを用いてビットMSを遠隔操作し攻撃する事も可能。
本来の仕様とは異なり、カオスパロボでの仕様に併せて会場内に月が視えるように出てようが出ていまいがサテライトキャノンは発射可能となっている。
当然連射は不能、威力射程も本来より大幅に下げられてはいるものの大半の参加者にとっては脅威となる。

なおカオスパロボ仕様故か、サテライトキャノンを発射する為マイクロウェーブを受信する際、周囲に「あなたに、力を…」とティファ・アディール@機動新世紀ガンダムXの声が聴こえるようになっている。
別に彼女を中に着込んでいるとかではなく、あくまでただの幻聴である。
また原典においてはこのMSは複数機開発されていたりする。

【鬼殺隊の隊士@鬼滅の刃】
鬼を狩り悪鬼滅殺を果たす為剣を振るう組織、異常者の集まりこと鬼殺隊に所属する平隊士。
このロワでは誰彼構わずプレイヤーやプレイヤーに従属するNPC等を鬼と認識するようにされており、何が何でも殺そうとするようになっている。

【鎌府女学院の刀使@刀使ノ巫女】
刀使養成学校・伍箇伝の一角、鎌府女学院の制服を着た刀使。
恐らく刀使として基本的な技能を平均的な出力で発揮する。


984 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:54:11 nzQtjS4o0
【ドロップアイテムの解説】
・ジョーカーのラウズカード@仮面ライダー
ジョーカーからバックルを無理矢理奪い取るとバックルの代わりにドロップするアイテム。
ジョーカーが封印されたカード。
効果はラウズカードアーカイブス』に付属のブックレット曰く、
「ジョーカーを封印したカード。あらゆるカードの能力を得ることができるバトルファイトの切札。」
とあり、また『ラウズカード DXトランプボックス』に付属する解説書には
「あらゆるカードの能力を得ることができるバトルファイトの切り札、ジョーカーを封印したカード。」
ともある。能力については詳細な効果は不明だが、少なくともこれ単体で持っているだけでは何の意味も無いだろう。

・強力傷薬@サガフロンティア
使用するとメカ以外のHPを400回復する薬。原作では戦闘中にしか使えないが本ロワでは戦闘せずとも使用可能となっている。


985 : ◆8eumUP9W6s :2025/04/14(月) 23:56:49 nzQtjS4o0
投下終了します、タイトルは「確立したモノ、揺らぐモノ、変わらぬモノ」です


986 : ◆7PJBZrstcc :2025/04/16(水) 22:46:09 BwyQQEts0
ゲリラ投下します。短いです


987 : ”今”は過去と未来の先にあるのか? ◆7PJBZrstcc :2025/04/16(水) 22:46:31 BwyQQEts0
 グラファイトと別れた十代は喫茶店内で早速ホットラインを起動する。
 まず確認するのは地図。
 自分がどこにいるのか、それにルルーシュがいるであろうテレビ局がどこにあるのかを知らなければ何をするにも話にならない。

「まいったな……テレビ局、大分遠いぞ」
『あのルルーシュとかいうのと話すのは骨が折れそうだね、十代』

 その結果分かったのは、自分がいる場所が地理的に大分不利なことと、目的地であるテレビ局が遠いことだ。
 十代の現在地はH-11。会場のかなり隅の方である。
 そしてテレビ局はD-7。ここから行くにはしばらく北西に進んでから橋を渡り、そこから北へ進まなければならない。

 だが十代にはテレビ局とは別に、目を向けないわけにはいかない施設がある。

「オリシスレッド寮だって!?」

 それは十代にとって、三年間寝食を過ごした思い出の地。
 デュエルアカデミアの学生寮。オリシスレッド寮。
 だが思い入れを抜きにすればはっきり言ってオンボロな、海沿いのアパートのような趣の建物でしかないはずだ。

「なんでオシリスレッド寮が?」
『キミの他にもデュエルアカデミアの生徒がいるのかもね』
「俺、卒業してんだけどな……」

 ユベルの言葉にぼやきつつも、もし同窓の翔や万丈目達、あるいは後輩の剣山やレイ達のいずれかがいるのではと気が気ではなくなった十代は慌てて名簿を確認する。
 しかし懸念とは裏腹にデュエルアカデミアの同窓生も後輩もいない。
 代わりに十代が注目するのは一つの名前。

 覇王十代

「参加者が俺とは別に覇王がいるのか……? どういうことだ?」
『君の中に覇王はいるんだろう?』
「ああ」

 ユベルの言葉に対し、確認しながら答える十代。
 そもそも覇王とは十代の一部。もう一つの人格。
 心の奥底に押し込めることはできても、引きはがすなどできる筈がない。
 にも拘わらず名前が別に名簿にある。
 もしこれが真実なら、考えられる可能性はこうだ。

『となるともしかしたら、この覇王は君の過去かもしれないね。
 黒き鎧で身を覆い、君を心の奥底に押し込め、異世界を力で支配しようとしたあの頃の君が』
「お前がそれ言うのかよ……」

 ユベルの言葉に呆れた様子の十代。
 なにせ言葉こそ真実なものの、そうなった原因を突き詰めればユベルにあるのだから。
 だがもしあの頃の覇王が居るのなら、おおよそ善良な振る舞いはしないだろう。
 殺し合いに乗ることはないだろうが、だからと言って今の自分と同じことはしない。
 ルルーシュと同じか、それ以上に苛烈な手を以て主催に抗うに違いない。その過程でどれほどの犠牲を出したとしても。

 しかしそれを深堀する気は今の所ない。今考えるのは別の事。

「それはともかく、時間を超えたってことはまさか遊星が何かされたのか!?」

 十代が思い至った可能性は、一度共闘した未来の決闘者、不動遊星が関わっていること。
 とはいえ遊星が殺し合いの主催になるような人間とは思っていないので、無理矢理囚われているなどだが。
 しかしそれに対しユベルは反論する。


988 : ”今”は過去と未来の先にあるのか? ◆7PJBZrstcc :2025/04/16(水) 22:46:52 BwyQQEts0

『いや、羂索は仮面ライダーだのキヴォトスだの色々と未知の内容を言っていただろう。
 なら時間移動はそれを使ったのかもしれないよ。遊星が関わっているとは限らないさ』
「ならいいんだけど……」

 ユベルの言葉を聞き、ひとまずは遊星が関わっている可能性を脇に置く十代。
 そうして改めて名簿を見直すと、おかしな部分が多々目立つことに気付く。
 豊臣秀吉や徳川家康と言った二人の戦国武将は時間移動が関わっている以上驚くほどではないが、よく見ると同じ名前が二つあることが多い。

「このキラ・ヤマトって奴、下にもあるけど准将って確か、軍隊の階級だよな? 大佐みたいな」
『そうだね。ちなみに准将は大佐の一つ上だよ』
「へー」

 ユベルの解説に生返事を返す十代。
 ちなみにユベルが軍隊の階級に詳しいのは、デュエルモンスターズの中に機械軍曹など階級が入った名前のモンスターがいるからだ。
 その知識のついで、副産物のようなものである。

「このギラって奴の二人目、宇蟲王ってなんだろうな」
『昆虫族使いかもね』
「あの遊戯さんと戦ったことのある、インセクター羽蛾みたいな?」

 宇蟲王当人がインセクター羽蛾の人となりを知ったうえで聞けば赫怒しそうな会話をする二人。
 そのうち、話はまた別の相手に移る。

「このユメって確か、羂索が体にしてる女の子だよな?」
『まあ主催者がわざわざ参加者になるとは思えないから、こっちは正真正銘梔子ユメ本人なんだろうさ』
「体だけとはいえ、この子も二人いるのか」

 梔子ユメについて思考する二人。
 なぜここまで同じ存在を二人用意する必要があるのか、十代にもユベルにも理解できない。
 これは現状の情報不足が足を引っ張っていると考えているので、二人とも現状ではそこまで深く考えはしない。

 だがこれだけは気になった。

「何でこのアスランだけ、えらく離れてるんだ?」
『もしかしたらだけど、この下の?が付いている方は名前こそ同じでも本人ではないのかもしれないね。
 単なる偽物か、デュエルモンスターズで例えるならクローン複製で作られたトークンのようなものか知らないけどさ』

 ユベルの言葉に頭をひねる十代。
 偽物ならともかく、最早参加者のトークンなどどうやって作ったというのだろうか。

 とはいえここでこれ以上考えても仕方ない。
 元々十代は頭を捻り考えるよりも、行動して何かを手に入れるタイプ。
 ならばとばかりに十代は再びたずね人ステッキを取り出す。

『また仮面ライダーを探すのかい?』
「いや、今度はこうするのさ。
 俺がたずね人ステッキに宣言するのは、三人以上の集団だ!」

 十代がこう宣言したのには訳がある。
 まずさっきと同じ様に仮面ライダーの変身アイテムを持つ者を指定した場合、ともすればグラファイトと再会するかもしれない。
 そうでなくとも殺し合いに乗った者、それもグラファイトのように正々堂々とせず卑怯上等の相手だった場合、命を落とす可能性すらある。

 しかし三人以上の集団をつくるような参加者なら、おそらく殺し合いに乗ることはまずない。
 二人ならまだ殺し合いに乗った参加者が一時的にコンビを組むことはあり得るかもしれないが、三人以上のチームは最終的に殺し合いをする以上優勝狙いなら組み辛いだろう。

 三人以上の集団はこの殺し合いに現状いくつかある。
 たずね人ステッキがそのいずれを指すのか、あるいは30%の可能性で外れるのか。

 杖が倒れた先は――


【エリアH-11/どこかの喫茶店/9月2日午前7時30分】

【遊城十代@遊戯王GX】
状態:健康
服装:オシリスレッドの制服
装備:黄金卿エルドリッチ@遊戯王OCG、
たずね人ステッキ@ドラえもん、八神のホットライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1(確認済み)
思考
基本:あいつ(真人)も羂索も倒す。覇王である俺も止める
00:継ぎ接ぎの男(真人)を何とかする手段を探す。
01:ルルーシュとはできれば話し合いたいが、
   あの能力はさすがに俺とユベルが融合していても無効にできないよな?
02:グラファイト……ヤバい奴には違いないけど、
   お前も決闘者だって言うなら、そのデュエル、受けたぜ!
03:こんなに同一人物を集めて、一体何を考えてるんだ?
04:さて、どこへ連れてってくれるんだ? たずね人ステッキ!
参戦時期:超融合!時空を超えた絆の本編終了後
備考
※ラウ・ル・クルーゼの放送を聞けていません


989 : ◆7PJBZrstcc :2025/04/16(水) 22:47:09 BwyQQEts0
投下終了です


990 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/27(日) 00:22:21 GsLf7Y0s0
皆さまこんばんは。
真贋バロるロワイヤルの企画主です。
素晴らしいssをとんでもない頻度とクオリティーで投下してくださる書き手の皆様、このパロロワを楽しみにしてくださる読み手の皆さまのお陰で真贋ロワは大盛況です。
厚く御礼申し上げます。
そんなとんでもないペースのお陰でそろそろ第一回放送を迎えても良いと考えております。
ですが、そこまで行くには十分に動けていないキャラクターがいるのも事実でありますので、全てのキャラクターが作中時間の午前9時以降になったタイミングで第一回放送を投下したいと考えております。
それに際して、放送投下後に投下以前の話を書かれる場合、矛盾の無いように第一回放送が投下された後に作中時間の9月2日午前11時15分までのタイミングで死者の出るssの投下を禁止したいと思います。
皆様、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。


991 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/27(日) 00:25:19 GsLf7Y0s0
以下、参考までに現在生き残っているキャラクターの現在地です。
*9月2日午前6時
・C-8/雄英高校本校舎
ソウジ、キズナブラック

・C-2/路上
シャーリー、マーシャ、マッキー

*9月2日午前7時
・B-3/タイガーボーイ周辺
…アスナ、秋山

・H-11
グラファイト

F-3
バルバトス

・???
ノワル

・D-8/紫関ラーメン
メラ

・G-12/雑居ビル周辺
マーヤ、たきな、瑠美衣、ユージオ、望月、レジィ

・G-12/診療所
リーファ

・H-11/どこかの喫茶店
二十代

*9月2日午前8時
・E-12/市街地
羅暁

・H-9/風都タワー頂上
氷竜キラ


I-3/禪院家
ピルツ、流子、孔富、サチ、鳩野 、ニコル


992 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/04/27(日) 00:25:31 GsLf7Y0s0
*9月2日午前9時
・???(E〜F,10〜11周辺)
キラ准将、帆波

・B-6/蛇腔病院
マイ、左虎

・H-6とI-6の境界/現代都市
アンク&姫和、リュージ、トランクス、しお


・H-10/ケヤキモール2Fカフェ
ゆう、ラクス、ディーヴァ

・E-7/発電所
デク、キリト、イドラ、レッド

・?-?/市街地
リボンズ・アルマーク

・C-7/租界
伏黒、龍園、姫和

・E-6/租界
アルジュナ・オルタ

・D-6とF-6の境界/租界
エンヴィー

・B-8
舞衣、流牙、本物アスラン




*9月2日午前10時
・G-11とG12の境目/スタジアム
宝太郎、蘭子、薫子、右龍、カヨコ

・???
覇王十代、セレブロ

・???
ジンガ、

・G-4/租界 アッシュフォード学園
家康、堀北、サビルバラ、レン

・E-10
やみのせんし、ギギスト

・F-6
総司令官
キズナレッド

・G-6
空蝉丸、藤丸、マシュ

・C-11/市街地
イザーク、くるみ

・I-8/現代都市
はるか、千佳、チェイス、ギラ、ユフィリア、まふゆ、パラド
ミカ
スザク


*9月2日午前11時(第一回放送まで)
・B-12/民家
ロロ、タギツヒメ、沙耶香、キャル、陽介

・D-7/テレビ局及びその近辺
ルルーシュ、清隆、ドラえもん、果穂&ゼイン

・D-8/大型立体駐車場の奥上
小夜、シェフィ、ホシノ、薫、秀吉、学郎、ジーク

・C-9/アビドス高校校庭
宇蟲王ギラ

・???/租界エリアのどこか
アスラン・ザラ?

・D-9アビドス自治区
真人、真昼

・???
ユメ、セリカ、シノン、りんね、美嘉

・C-9アビドス自治区
魔王グリオン


993 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/06(火) 13:36:31 UUXxostY0
ゲリラ投下します


994 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/06(火) 13:37:01 UUXxostY0
時間帯としては薫たちが来るよりも前、立風館ソウジとキズナブラックは立体駐車場に立ち寄っていた。

「よし、こんなもんで良いかな」

管理人室兼休憩室と思われる部屋のホワイトボード……この駐車場が真っ当に運用されているならばシフト表でも書いてあるのだろう場所には『ただいま2日の午前7時半、斬撃の勇者は黒と共にメラを追う』というメッセージが書き記されている。

「何をしてるんですか?」

「もしウッチーやギラたちがここに来た時にと思ってね。
この書き方なら2人と流牙や舞衣ちゃんにしか伝わらないし」

「そうですか」

と、そっけなく返すとキズナブラックは外に出て行った。

「全く……」

なんのための休憩だかわからないな、とソウジはため息をついた。
幸か不幸か雄英高校を出発してから好戦的なプレイヤーやNPCモンスターに出くわすこともないままここまでこれたが、進展があったとは言い難い。

(確信は出来たけどね)

恐らく、キズナブラックはとてつもなく巨大なトラウマを抱えている。
それこそ自分以外の全員が全滅するレベルのそれだろう。

(彼の眼や態度は昔のみんなに似ていて、それ以上だ)

自分が狙い撃てなかった故に親友をアイガロンに殺され、その事から飄々とした態度を崩さず正体を明かすのも5人の中では一番最後だったキョウリュウブラック、イアン・ヨークランド。
怒りの戦騎ドゴルドの姦計により怒りにとらわれる程追いつめられる過程で主君や仲間を殺され、その事と生来の不器用さから最初は現代のキョウリュウジャーと中々打ち解けられなかった空蝉丸。
今となっては無二の友と言える同じ戦隊の仲間たちの痛ましい姿を見て来ただけにキズナブラックは放っておけない。

「十分休めた?」

「はい。だから行きましょう。
ただでさえ時間がないんですから、メラだけにもかまってられません」

そう言って一人歩きだすキズナブラックにソウジは待ったをかける。

「ご丁寧に駐車場に車まで用意されている訳だしさ、足に使えそうなものがないか調べてからでも遅くはないんじゃない?」

「しかし……」

「気軽に変身出来ない僕の都合だけど、流石に逃げ足位保険がないのは少し困るんだ」

「わかり、ました」

一体どんな気持ちで今生きているんだろうか?
そう思わずにはいられない程に彼の喋る言葉一つ一つにどうしようもない重みがある様に感じて成らない。

「む!貴様はキョウリュウグリーン!」

等と考えているとあまりいい思い出とは言い難い出来事に紐づいた声が聞こえて来た。

「お前は、デーボ・ジャキリーン!」

想像通りの白い切り紙と刃物で出来た人型とでも言うべき怪人がいた。

「知ってるんですか?」

「あの関係断ち鋏で人の絆を断ち切り、それを喪う恐怖感に支配させるデーボモンスターだ」

「その通り!お前たちの友情の矢印を断ち切ってやる!」

そう言ってジャキリーンは右目のモノクルのようなパーツを動かす。
ジャキリーンの視界にはソウジとキズナブラックの互いに向く矢印が可視化される。

「おお!
会って数時間だろうにそっちの黒っぽい方の矢印結構太いな!
ジャキリーン!」

そう言ってジャキリーンは懐に飛び込み、鋏を使う。
それぞれ横に跳んで避けたソウジとキズナブラックには虚空を切ったようにしか見えなかったが、確かに絆の矢印は断ち切られる。

「よーし!これでもうそっちの黒いのは戦えな<ぺっDOWN>……ってあら?」

「絆創チェンジ」

低く呟いた彼の姿が黒い無数の絆創膏状の装甲が体中に巻き付き、黒の中で赤黒く光る恐怖と殺意の権化が現れる。

「そ、その姿は……ううっ!」

鋏を持つ腕を捻り上げられるジャキリーン。
関節からは火花が散り、尋常ならざる力でねじ切る勢いで掴まれているのが分かる。
思わず鋏を落したジャキリーンは半ばすがる様に相手を見るが、彼に『絆を断ち切る者への慈悲』などあろうはずもない。

「焼き尽くす……深き執着の戦士、キズナブラック!」

空いていた片方の腕が拳を振るう。
赤黒いエネルギーが貫かれた腹部から全身を伝い、ジャキリーンは有無を言わさずその場で爆散させられてしまった。
ドロップアイテムとしてか、残った関係断ち鋏も縁結ビームガンで破壊され、デーボ・ジャキリーンが存在した痕跡はこの世から消し去られてしまった。


995 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/06(火) 13:37:21 UUXxostY0
「行きましょうソウジさん」

「……ああ、そうだね」

変身を解除し、もう見るべき物もないと言いたげに歩き出すキズナブラックにソウジは続くしかなかった。

(ジャキリーンに絆を断ち切られた人は大なり小なり錯乱して断ち切られた相手との絆への執心を見せる……けど、キズナブラックにはそれが無かった。
ジャキリーンがああいっていた以上、短いながらも彼が俺に向える矢印は切っていいと思える程度には太かったはず。
なのに彼は、敵を殺すことを優先した)

この戦士の傷は、下手をすればこの真贋入り混じるバトルロワイヤルの中で一番深いかもしれない
そう思わずにはいられないソウジだった。
それから一時間半、紫関ラーメンに着くまで二人に会話は無かった。



【エリアD-9/紫関ラーメン/9月2日午前9時】

【浅垣灯悟(バッドエンド)@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:正常、精神的ダメージ(中)
服装:いつもの服装
装備:キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる、ブラック絆装甲@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:バッドエンドに導く存在は全て消す。
   自分自身も例外なく。
01:メラやジンガを探し出し殺す。
02:イドラと似た夢を持つりんねには生きていて欲しい。
03:自分の中の悪意を抑えきれなくなれば、誰かの絆を奪う前に自害する。
04:ソウジさんは……こうなった以上命に代えても守り抜く
05:舞衣、ごめん。俺に君と絆を紡ぐ資格はない……
06:あんなNPCモンスターも居るのか。全部倒さないとな
参戦時期:ウラギリスの封印を破り、灯悟たちと対峙する前
備考
※キズナブラックの装備は採用時後続の書き手様にお任せしますが、最低限握手カリバー、縁結ビームガンは召喚可能です。

【立風館ソウジ@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:健康、疲労(小)
服装:私服
装備:ガブリカリバー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   ガブリボルバー@獣電戦隊キョウリュウジャー
   4番の獣電池×6@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、舞衣の手作りクッキー×2
思考
基本:この殺し合いを止める
01:キズナブラックと行動する。
02:レジスターに削がれた力は全体で1〜3割減、ってところかな。
03:空蝉丸やギラ、流牙や舞衣ちゃんたちの仲間を探す。
  戦えない人が来ているなら助ける。
04:羂索や名前だけ出たクルーゼや茅場に関して知ってる人も探す。
05:宇蟲王ギラやメラを警戒。
06:キズナブラック……ブラックはそんなブレイブを履き違えた者の色じゃない。
07:君の傷は一体……
参戦時期:キングオージャ―VSキョウリュウジャー終了後
備考
※エリアD-8の大型立体駐車場の一室にメッセージを残しました。
内容は以下の通りです。
『ただいま2日の午前7時半、斬撃の勇者は黒と共にメラを追う』


996 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/06(火) 13:37:43 UUXxostY0
投下終了です。
タイトルは『戦隊グリーンと闇落ちブラック』です


997 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/06(火) 13:57:24 UUXxostY0
拙作、戦隊グリーンと闇落ちブラックをwiki収録に当たってNPCモンスター解説などを加筆、信-Lost Essence-の一部誤字の修正などをさせていただきました。


998 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/10(土) 10:12:23 I2HDZwqw0
ゼロシャーリー、マーシャ、マッキーで予約します。
投下はどう楽観視してもレスが足りないのpart4の方に投下します。


999 : ◆Drj5wz7hS2 :2025/05/10(土) 14:26:47 I2HDZwqw0
拙作、へぼ監督のやっつけ映画をwikiに収録する際にNPCモンスター解説と誤字の修正をさせていただきました。


1000 : 名無しさん :2025/05/10(土) 14:29:53 22Lj9P720
分かった


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