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真贋バトルロワイヤル part2
その絆、本物?贋物?
※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1723428119/
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前スレでは確実に超過しますので、こちらから投稿させていただきます。
「────熱い」
突如として始まった、生き残るべきたった一つの命を決める戦場の一角で。
黒一色の空をぼんやりと見つめ、生気のない表情で男は小さく呟いた。
住み慣れた我が家で寛ぐかのように、大の字でだらりと寝転がりながら。
外敵への警戒を微塵も感じさせない無防備な有様は、自棄の結果か、はたまた豪胆さ故か。
如何なる理由があろうとも、この男が極めて異質な存在であるのは火を見るよりも明らか。
「熱い…、もう堪らねぇよ…。」
擦り切れた黒のインバネスコートに長い唾をした中折れハット。
まるで寒冷地でも渡り歩くかのような厚手の装い。暑さの一つも訴えよう。
しかし男を蝕む熱源は、別にある。身体の内より来たるぬるま湯じみた仄かな熱。
「慣れねぇなぁ…。"命の熱さ"ってのは…」
現世に存在する全ての生物、誰もが持ち得る命の営み。
全能感にも似た充足を与えた熱に残る煩わしさ。
何十、何百、何千年と、この身に熱など影も形も無かったのだ。
"動く骸"であり続けた生を鑑みれば、異物感は拭えなくて当然。
「何時でも死ねるのはいいが…、やっぱり俺には…あの寒さが心地いい…。」
絢爛の女王と狭間の王。二人の王によって刻み込まれた命の灯。
生なき者に死は訪れない。
限りある命があるからこそ、生命は簡単に病み、朽ち果て、そして死ぬ。
死をこよなく愛しながらも、死から悉く嫌われる。
晴れないジレンマを抱えた生涯に於いて、命とは死へ到達する為の望ましい代物。
だとしても、どうにも気持ち悪い。忌々しい生者と同じ暖かさなど不愉快だ。
命を与えられた当初は、神にでもなったかに等しい高揚感を得たものだが。
時が過ぎ興奮が冷めれば、あちらこちらに不満ばかりが目につく。
やはり愛おしき"死"を身近に感じられる、血の通わない冷たさこそ尊きものだ。
未だ慣れない熱は、心地良い眠りの時はまだ遠いのだと実感させてくる。
「…嗚呼…にしても、五月蠅い…。まだ…終わらないのか…。」
睡眠を妨げる要因は他にも存在する。
威勢の良い掛け声。所々から湧く呻き声。耳を澄まさずとも止まない音、音、音。
静寂とは正反対の乱痴気騒ぎ。乱闘の最中に眠れる程、意に関せずでは居られない。
眉を顰めながら上体を持ち上げ、騒音の発生源を見やる。
「無事カ、アミキササラ」
「うん、大丈夫だよ!マキナちゃんも危なくなったら直ぐに言ってね!」
虚ろ気な視界の先には背中を預け、共にNPCの大群と戦う二人の男女。
否、正確には一体と一人と説明するのが、正しい表現か。
襲い来る怪物を殴り飛ばした男の鉄拳は、比喩ではなく紛れもない鉄の塊。
その全身の隅々に至るまで、鋼鉄で構成したアンドロイド。
背中に搭載されたブースターを吹かせながら、鋼の男は縦横無尽に戦場を駆ける。
今後数百年実現不可能であろうオーバーテクノロジーの産物。
其れだけでも驚きだが、学生服を着た女性もまた、異質と言わざる終えない。
大半が焼き切れたロングスカートに、胸に生き生きと咲き誇る一輪の紅いカンナ。
天女のような羽衣を纏い、無骨な薙刀を握り締め演じる、益荒男も仰天の大立ち回り。
最前線で注意を一心に集め、向かい来る敵の群れを勇猛果敢に薙ぎ払っていく。
彼彼女らは、本来仮想世界リドゥにて争いあった敵同士。
女神が管理する理想郷を守護するオブリガードの楽士、マキナ。
女神の慈悲を拒絶し、現実への帰還を目指す帰宅部、編木ささら。
互いに抱えた後悔と信条からぶつかり合うも、最終的に和解するに至ったが。
正史では終ぞ叶う事のなかった共闘関係。
それは新たな脅威、バトルロワイアル下により実現する形となった。
片や死を恐れる者。片や生を尊ぶ者。
何方もリドゥでの闘いの中、限りある人生の意義を確認し合った間柄。
そんな二人が命を踏み躙る殺し合いに同調する筈も無し。
辛くも輝かしい現実(じごく)へ帰還するべく、両名は迷わず手を取り合った。
協力を結んだ矢先に現れたのが、大量のNPCとそれら従える不吉なオーラを纏った男。
多種多様な昆虫の蛹を集めてヒト型にした様な謎の怪物達。
そのどれもが生気はなく、無軌道な動作を繰り返す生きる屍と化していた。
仮想世界での体験を通じて、非現実的存在への耐性のある二人も。
ホラー映画の世界さながらなその悍ましい光景に、驚愕の色を隠せない。
なにより極めつけは、動く死体の中で平然と闊歩する黒い外套の男性。
死と戯れ、死体を操り、殺し合いの地を渡り歩く様は。
纏う色彩とオーラも相まって、まさに"死神"と表現するに相応しい怪人。
異質な雰囲気に呑まれかけた二人を他所に、無慈悲に掛かるネクロマンサーの号令。
一斉に襲い来るゾンビ兵。黙って殺されてやる道理なしと迎え撃ち、物語は今に至る。
「雑魚ハ片ヅケタ。後ハオマエダケダ」
「はぁ…せっかく手間暇かけて集めたってのに…呆気ねぇもんだよなぁ…。
いつもそうだ…。楽しようとすると…どうにも最後が上手くいかねぇ…。」
NPCを殲滅し、最後に残った襲撃者へマキナは意識を向ける。
手勢を失い孤軍となっても尚、敵意を向けられた男は動揺一つ見せず。
誰に聞かせるでもなくブツブツ愚痴を呟きながら、ゆらりと背の丸まった上体を起こした。
「ねぇあなた。あなたはどうして、誰かを傷つけようとするの?」
不穏さが絶えず滲み出す男に物怖じせず、ささらは一歩前に出て問いかける。
「もし死ぬのが怖くて殺し合いに乗っちゃったんだったら、今からでも一緒にやり直さない?
私やマキナちゃん、宝太郎ちゃんみたいに、一生懸命羂索ちゃん達に立ち向かおうとする人も沢山いる。
私たちも精一杯支えるから、殺し合うんじゃなくて、皆で生かし合うために協力出来ないかな?」
一見血迷ったかにも思える和解の提案は、純粋な善意によるもの。
傍から見れば死体を弄ぶ邪悪としか見えずとも。それだけで全てを断定をしない。
雰囲気や外面の所業だけが、その者の本質でないのは、リドゥでも同じだった。
心の奥へ臆せず踏み込み、対話し向き合って初めて、隠された後悔や理想が見えてくる。
今隣に立つマキナのように、初めは敵対していても同じ人間同士。
相手が何を考えているかを理解する事で、分かり合える道は確かに存在する。
もしも孤独や恐怖が彼を凶行に駆り立てた原因ならば、それを取り除く。
敵であろうと隣人に寄り添う献身こそ、殺し合いを生き抜く鍵だと信じて。
「死が怖い…?生かし合う…?ハ、ハハハ…冗談はよせよ…。」
しかし、そんな少女の慈悲を無下にするかの如く。
見当違いも甚だしいと、乾いた笑いが場に響いた。
死への恐れ。生の享受。実にバカバカしい。
長すぎる生涯において、望む理想は後にも先にもただ一つ。
「俺はなぁ…、今すぐにでも死にたいんだよ…。」
生命の終末──死。
本来誰もが忌避する終わりこそが、男の恋焦がれる理想に他ならない。
「ええ!?死にたいなんてどうして…?
確かに生きてたら辛い事苦しい事も多いけど、それ以上に楽しい事もいーっぱいあるんだよ!?」
「そういうなよ…、死なねぇ身体でもう何千何百と、無駄に生かされてんだぜ…?
生なんざ、ただただ喧しいだけだ…。静かな死が恋しくて仕方ねぇ…。」
「な、何千年…!?」
「フン、出鱈目ヲ言ウナ」
男の自殺願望にあわあわと待ったをかけるささらと対照的に。
それをばっさりと虚言と切り捨てたマキナは、機械仕掛けの眼光で彼を冷たく射貫く。
己の望みを嘘と決めつける不躾なサイボーグへ、男の虚ろな眼がギョロリと向いた。
「ああ…?」
「死ニタイナド所詮口ダケだ。本当ニ死ニタイナラ、ワタシ達ヲ襲ウ理由ガナイ。
ソノ"レジスター"ヲ強引ニデモ破壊シテ、サッサト死ネバ済ムハナシダ。」
本当に自死を求めるならば、手っ取り早い手段が文字通り手元にある。
殺し合い参加者を縛る枷である致死性の感染症、バグスターウイルス。
活性化すれば細胞一つ残らずこの世から消滅し死に至る。その効能は哀れな生贄二人で実証済み。
現在皆が健全に活動出来ているのは運営から装着された腕輪、レジスター内の鎮静剤のお陰。
鎮静剤の供給も停止も、全ては主催者の指先三寸。
絶死の罰が待ち受けているからこそ、誰も表立っては逆らえない。
しかし逆に言えば、ペナルティを一切恐れなければ、レジスターは何の枷にもなりはしない。
寧ろ死にたがりにとっては、最短距離で死ねる最高の報酬。
もし本当に死を望むなら、闘いを強制されている他の参加者と違い、誰かを殺しに掛かる動機など皆無のはず。
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「ああ…そうだな…。オマエの言う通りだ…。死ぬだけなら何時でも死ねる。
長年の悩みのタネが、こんなちんけな腕輪を壊せば終わり。
眩暈がするくらい簡単に、静かな静かな、終わりが来る…。」
男はマキナの指摘を肯定しレジスターへ視線を移す。
現世から消え去る瞬間を想像し、訪れる死に頬を大きく歪ませた恍惚の表情を浮かべ、
「────と思ってたんだ。」
喜色に満ちた表情が死に絶え、一瞬にして"無"に変わる。
「死んだって、変わらなかったんだ。この世も、あの世も。聞くに絶えねぇ雑音が。
何処に行っても…ず〜っと俺にしつこく纏わりつく、喧しい声が…」
耳障りな鼓動も脈動も聞こえない、あらゆる雑音を排した無音の世界。
滅びの先には、快適な眠りが約束されると、そう信じ切っていた。念願の死を経験する前までは。
死後、待っていたのは怨嗟と苦痛に満ちた呻き声が延々と木霊する地獄。
想像と掛け離れた実際の死の世界は、まさに悪夢そのもの。
終わらない責め苦が無限に続くと理解した時の絶望は、今でも鮮明に思い出せる。
「…だから、また死ぬ前に…静寂に満ちた理想の死の世界を、アイツらに願って創ってもらう…。
煩わしい生者も、鬱陶しい亡者も一掃した世界で、誰にも邪魔されずゆっくり熟睡する……」
羂索が提示した皆殺しと引き換えに手に入る理想成就の権利。
地獄に差した一筋の光明を掴む為なら、不快極まる一時の生さえ甘んじて受け入れられる。
忌々しい生者の溢れかえる現世に呼び戻されても、何ら苦ではない。
やる事は創造主の道具だった頃と、何一つとして変わらないのだから。
「──そのために、死ね。くたばれ生者共。死んで全員、生きた屍になれ。」
死を。病を。毒を。腐敗を。穢れを。呪いを。
この宇宙に生きとし生ける全ての存在に等しく与え続ける生体兵器。
それこそが男の──宇蟲五道化、静謐のグローディの存在理由。
「聞クニ堪エン話ダ…。ダガ1ツダケ、ハッキリシタ事ガアル。
オマエハ、コノコロシアイニ於イテ、ワタシガ"最モ倒サネバナラナイ敵"ダト言ウコトダ。」
生を憎み、命を疎み、己が眷属となる骸を欲する悍ましい死神。
"死"───機械の身体を得てまで、遠ざけようとした恐怖の具現。
鼓動が。呼吸が。繰り返される度、勝手に終わりに近づいていく不完全さ。
自分達人間は、ただただ死ぬためだけに生まれて来た呪われた存在なのだと。
拭えない後悔を抱え、理想郷へ現実逃避した嘗ての自分ならば。
戦う選択肢など微塵も考えず、一目散で逃げ出していただろう。
「モウワタシハ、死カラ逃ゲル為ニ闘ウノデハナイ。明日ヲ生キル為ニワタシハ闘ウ。」
命に回数券があるのは誰もが等しく同じ。
死は必ず訪れると知りながら、それでも人が生きるのは。
人生が悔いなき素晴らしいものだったと誇るため。
一秒も無駄に出来ない刹那の刻を、やり残しなく生き切りたいから。
同じ楽士に裏切られ、死へ極限まで近づいた今わの際で。
自分にも人生にやり残しがあるのだと理解して初めて。
"死にたくない"ではなく、"生きたい"と願えるようになった。
"死を忌避する事"と"生を渇望する事"。二つは似て非なるものなのだと気づかされた。
死が怖いなら、限りある日々を我武者羅に走り抜けばいい。
やりたい事と必死に向き合いえば、何時か恐怖を感じる暇さえなくなる。
そう教えてくれた、マイペースながらも何処か一本芯の通った隣に立つ彼女のように。
漫然と死から逃げ続けるのではなく、生きるために前を向いて現実と闘ってみたい。
その為にも殺し合いが齎す耐え難い死の恐怖とも、背を向けず正面から打ち破って見せよう。
「アミキササラ。ワタシ達楽士ノヨウニ、ヤツヲ理解出来ルナドト思ウナ。
アレハ…アマリニモ価値観ガ違イスギル。分カリ合エルトハ、到底思エナイ。」
「…そうだね。」
これ以上の対話は無意味。そう諭すマキナの言葉に、ささらは悲し気に頷いた。
語った言葉全てが真実ならば、彼の思考はもう同じ人間の域に存在しない。
不老不死。
殺し合いの中で誰よりも"長生き"の自負があった自分でさえ、到底想像の及ばない悠久の時。
その中で男は沢山の命を、良心の呵責もなく奪って来たのだろう。
そう確信出来てしまう程に、彼は死を愛し肯定し過ぎている。
どんな人生を歩み、如何なる事情があれど、決して許していい相手ではない。
それでも分かってもらえる。諦めず頑張って声をかけようと。
無謀な説得に死を最も恐れる"少年"を付き合わせ続ける程、彼女は能天気ではない。
「あの人はきっと、長く生き過ぎちゃったんだと思う…
終わりの来ない長過ぎる時間が、死ぬ事の怖さと一緒に、生きる事の大切さも、感じれなくしてしまった。」
生を尊ぶ理由も、死の恐れる瞬間もない無限の命。
永遠の呪いが心を摩耗させ、やがて他者の生命さえ何とも思わない怪物へと変貌させる。
生を忘れ去り、死に慣れ過ぎてしまった命の簒奪者。
その心を変えるだけの、人生の重みをもたない自分では、もうかける言葉や手段は思いつかない。
だからと言って。男に根差す恐ろしい闇に触れた以上、無視する事も当然不可能。
生物へ向けるには危険過ぎる力と悪意で、誰かを傷つけようとするのならば、
この会場に連れてこられているかもしれない、大事な仲間や家族を殺そうとするならば、
「──あの人を止めよう…!私たちで皆を守らないと」
全身全霊を以て守り抜くのみ。
男の掲げる理想を壊してでも、かけがえのない現実へと帰還する。
やり直したい程の後悔を抱えて尚、歯を食い縛って生きようとする素晴らしい命。
彼らの長く眩い未来を守るためにこそ、この力はあるのだから。
「ああ…寒っみ…。そういう寒さは求めちゃねぇんだよ…」
全身に眼が眩む活力を漲らせながら。
うすら寒い言葉を並べ、必定の死へ抗おうとする生者達。
その目障りな輝きに感じた既視感。
それも当然。一度目の命が潰える瞬間に見た光なのだから。
"命の煌めき"、己を滅ぼした王達は確かそう呼んでいたか。
原理こそ今も全く理解出来ないが、その厄介さは己の身で体感済み。
あの不快な光を綺麗さっぱりに消し去るには、NPCの死体程度じゃ実力不足も当たり前。
「結局……死体が欲しけりゃ、俺が気張るしかないって事か…」
心底面倒くさ気にため息を吐き捨て、目を閉じる。
小さく呟いた直後、倒れ込んだ五体を起点に広がり始める影。
底なし沼へ落ちるかの如く、影へとゆっくり沈み込んでいくグローディ。
纏わりつく不浄なる闇が、死神の正体を露わにしようとして──
「────いや」
瞬間、霧散する漆黒。
始まろうとした変態が中断され、浮き上がるように一息で起き上がる。
「折角の機会だ…。アイツらが仕込んだ"玩具"を試すのも悪かねぇか…。」
ふと思いついた、他愛も無い一時の気紛れ。
面倒ながらも本腰を入れる選択は変わりないが、丁度良い強さの相手が現れたのだ。
支給品として宛がわれた玩具の試運転。座興に耽るのも一興だろう。
ごそごそと古ぼけたコートの内側を弄り、取り出されたのは二つのアイテム。
左手にゲームのコントローラーに似た紫のバックル。
右手には往年のゲームカセットの形状をした白のデバイス。
『ガッチョーン!』
説明書の記載に従い、バックルを腰に巻き付けたベルトに装着。
ノイズ混じりの電子音声に続けて、残るデバイス──ガシャットのスイッチを入れる。
『デンジャラスゾンビ…!』
「「────────ッ!!」」
ぞわり。
死神と対峙する二人の全身を強烈な悪寒が駆け巡った。
恐ろしい何かが、今まさに始まろうとしている。
機械であるマキナでさえ、背筋が凍る幻覚を感じる程の悍ましい何かが。
ガシャットを中心に発生した歪な波動が、辺り一帯に伝播していく。
バーチャドールが生み出すフロアのような劇的な環境の変化は齎さない。
だが確実に、自分達の世界が急速に塗り変えられ、侵食されたのを彼らは本能的に理解した。
背後に出現したモニターに映る派手なタイトルロゴと『GAME START』の文字。
カセットを挿入し、コントローラーのボタンを押す。
この一連の動作から始まるのはたった一つ。年端もいかない子供でも分かる簡単な問題。
ゲームだ。ただしただのゲームでは留まらない。
此度のゲームを遊ぶメインプレイヤーは、遍く星に死を振り撒く殺人兵器。
生者の命を刈り取る死神との遊戯は、絶望と恐怖に満ちた命懸けのデスゲームに他ならない。
「………変身」
『ガシャット!バグルアップ!』
『デンジャー!デンジャー!ジェノサイド!』
起動と同時に迸る紫電。ガシャットに刻まれた夥しい"死"が解放。
グローディの身体にノイズが走り、止めどなく湧き出す黒々とした瘴気の波濤に飲み込まれる。
腰のバックル、バグヴァイザー中央の発光パネルの映像が装着者を隠す様に投影。
けたたましい電子音声が、眼の前の脅威を懸命に伝えるが、もう遅い。
命を惜しんで逃げ出すには、警告が聞こえた頃ではとうに時間切れ。
『デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビィ!』
『Woooooo!!』
身の毛もよだつ咆哮をバグヴァイザーから轟かせ、電子のバリケードを突破し現れるモンスター。
黒のボディースーツに骨を模したアーマーが散りばめられた、おどろおどろしい骸骨チックな仮面戦士。
コミカルな眼が覗く頭部のバイザー、空になった体力ゲージを表示する胸部のモニター。
どれも見るも無残に砕け割れ、変身した傍から既に死に体。生きる屍、ゾンビに近しい惨状。
仮面ライダーゲンム、レベルX(エックス)
自称神が作り上げた未知数の称号を冠する死の象徴が、死をこよなく愛する死神の元へと渡った瞬間である。
「騒々しい…。もっと静かに出来ねぇのかよ…。」
未知の兵装、仮面ライダーへの初変身。
五道化が王鎧武装に似た武装を纏う、その構図自体は滑稽であり愉快。
全身を巡る生と相反する、死滅のエネルギーも自分の趣味とあっている。
それだけに変身時に響き渡る一々騒々しい電子音。これは如何にかならないものか。
静謐のせの字もないデスメタル調の騒音が、零距離でダイレクトに耳と脳を震わす。
これを平然と受容しているなら、元の持ち主とは間違いなく反りが合わない。
愚痴も程々に、ゲンムは虚空より現れた凶器を握る。
幾千幾万の生命を死体へと変えた愛用の大鎌、シックルシーカー。
死闘へ赴くとは思えない緩慢な動きで歩み出し、相対する命を狙う。
「…来ルゾ。先ズハワタシガ先行スル。」
「マキナちゃん、無理だけはしちゃダメだからね」
「分カッテイル。何カアレバ、アミキササラは援護ヲ頼ム」
「うん、任せて!マキナちゃんは絶対に私が死なせないから」
本能的な恐怖を刺激する狂気の変身。だが、気圧されている場合ではない。
濃密な死の気配を漂わせる仮面の戦士相手に、一番槍を買って出るマキナ。
戦場での役割は、何方も同じ前衛。
ならば、生身よりも機械の身である自分の方がリカバリーが効きやすい。
背を預けられる仲間の心配と期待を背に、闘志と呼応するようにエンジンが躍動。
ブースターが唸りを上げ瞬く間に距離を詰める。
拳打を口火に眼にも止まらぬ連撃を繰り出す早業、マシンガンラッシュ。
充分過ぎる程の速度と重さを伴った鉄塊が、敵を瞬時に戦闘不能へ追い込む。
「──重ぇな…。初めて使うんだ…、ちょっと手加減してくれよ…」
「ナニ…ッ!」
様子見と言えど手を抜いたつもりは無し。
寧ろこの一撃終わらせる腹積もりで攻撃を繰り出したが。
放たれた拳は、いとも容易くゲンムの手の平へと収まった。
愚鈍に思えた挙動とは裏腹に、的確に初撃を見切り受け止める身体能力。
先のNPCのゾンビ達と同じと舐めてかかれば屍となるのは間違いなく此方。
脅威度を上方修正。速やかに次手へ移ろうとした所で、マキナの身体に異変が起こる。
「グ、ガガッ…!?」
突如挙動に不具合が発生。不自然に生じた謎のバグが肉体の制御を搔き乱す。
直ちに異変の発生元を分析すると、その根源は右腕。
拳を掴むゲンムの掌から噴き出す瘴気が、マキナの体内へと侵食。
悪意に満ちたコンピュータウイルスが、彼を蝕む毒となって襲い来る。
女神リグレットから賜ったアンドロイドとしての理想の姿。
あらゆる死や病を退ける、不滅と不死と強さの象徴。
列車との正面衝突さえ耐え切る、物理的耐久性にも優れた鋼の肉体。
しかし今回に限っては、機械の身体であった事が彼に災いを招いた。
ゲンムの手を覆う強化グローブ、リビングデッドグローブ。
対象のライダーシステムや武器に深刻な被害を齎すウイルスを流し込む悪魔の手。
生身の人間や本来の攻撃対象である仮面ライダーであっても。
大なり小なり実害こそあれ、致命的状況にはなりえないが。
サイボーグ化したマキナにとってそれは、自らの死へ直結する劇薬そのもの。
「ッ…!ハナセ!」
病が駆逐されたリドゥに存在し得ない未知の破壊プログラム。
原因が判明しても大元を断たねば、バグの駆除もままならない。
徐々に内部より破壊されていく恐怖に耐えながら。
猶予が残されている内に腹を全力で蹴り上げ、天敵を強引に引き剝がす。
自由を得たマキナはすかさずバックステップで退避を選択。
しかし、狩りで弱らせた獲物を素直に逃がすハンターはいない。
死神の鎌が振るわれるも、ウイルスにより低下した機動力では躱しきれず。
厄災を齎す不浄の刃がまた一つ、新たな命の根源を断ち切る。
「マキナちゃんから手を放してっ!」
その直前、差し込まれる薙刀の柄。訪れる死に天女が待ったをかける。
すかさず刃を跳ね上げて弾き、大上段からの唐竹割り。
一撃を見舞うのみでは満足せず、攻撃の勢いに乗り技を更に派生。
愛する仲間に近づけさせまいと、少女渾身の薙ぎ払いがゲンムを大きく吹き飛ばす。
実際はインパクトの瞬間に合わせ跳躍され、衝撃こそ殺されたが。
マキナからゲンムを退ける、サポート役の役目は充分成し遂げた。
「大丈夫!?マキナちゃん!」
「モ、ンダイ…ナイ、直グニ、セルフメンテナンス、デ…!?」
ささらの援護で離脱したマキナは即座に自己修復プログラムを起動。
内外問わず破損個所をスキャンし、適切な修復を開始しようとするが一向に検知が始まらない。
仕込まれたウイルスは戦闘力の大幅な低下と共に、搭載されたシステムの正常動作を阻害。
頼みの綱は機能不全。多大なる障害を抱えた状態では戦線復帰は絶望的。
「落ち着いて。ここは私が治してあげるから」
しかしそれは、彼一人であればの話。
感情の発露により発現した編木ささらの異能、カタルシスエフェクト。
通常は薙刀のように攻撃スキルが主だが、彼女の博愛精神が能力に影響を与えたか。
仲間の傷や不調を治療し、戦況を有利に運ばせる、癒しの力も体得している。
帰宅部随一のヒーラーである駒村二胡。彼女がいなかった時期は回復役を一手に担う場面も多かった。
此度もマキナの危機に対し、迷わず回復スキルを発動。
ゲンムのウイルスは弱体化と認識され、彼の動きを阻害するバグが徐々に駆逐されていく。
「あれ…?いつもならもっと軽く治せるはずなんだけど…。」
「恐ラク羂索の言っていた制限ダロウ…。ダガ、此処マデ回復スレバ、後ハ自力デ修復可能ダ。感謝スル。」
本来は弱体化の治療には一回にさした疲労はないはずだが。
まるで複数回余分に使用したかのような疲れを感じ、思わず首を傾げるささら。
羂索の事前説明では強力な能力には制限を課すとあったが、回復能力もまたその対象なのだろう。
致命傷に至る傷もいとも簡単に治せてしまったら、円滑な殺し合いの進行に支障が生じる。
制限が必要なら最初から呼ぶなと、心優しい彼女に代わって文句を言ってやりたいが。
参加していたお陰で生き長らえたの事実。今は思考の片隅に追いやり、恩人への感謝のみを伝える。
「なんだ…機械でも治せちまうのか…。早々楽させてくれねぇなぁ…。」
「アノ腕は厄介ダ。マタ触レラレル前ニ早期決着ヲ付ケルシカナイ」
接触一つで発動する弱体化能力。
簡単な条件で効果が発揮される上に、他にも類似の能力を所持する可能性を考えると。
攻防を長引かせれば長引かせる程、戦況は不利に傾く。
まだ身体が万全に近い内に、渾身の一撃を以て仕留めるのが現状考え得る最善策。
「なら今度は私が前に出てなるべく時間を稼ぐね。
その間にマキナちゃんは、あの人を倒せるくらいすごいのお願いできる?」
「イイノカ。ワタシノ攻撃ニハアル程度ノ時間ヲ要スル。
例エ生身デモ、ヤツニ別ノ弱体化手段ガアレバオマエハ…」
「いいの、本当は私が一番に前に出て、守らなきゃだったんだから。
安心して!こう見えて私、マキナちゃんに負けないくらい頑丈なんだよ。」
火力に乏しいささらが守り、敵の攻撃を対処し辛いマキナが攻める。
構成自体は最適。しかし強敵を仕留める大技発動には一定量のチャージが要求される。
その間未だ未知数の怪人を単独で相手取るなど、その危険度は計り知れない。
死の可能性も充分にある。にも関わらず、平時と変わらない柔らかな笑顔を向けるささら。
興玉駅や学園祭で闘った際に見せた自己犠牲にも似た献身は変わらず。
自らを死に近づけ過ぎる帰来を持つ彼女に、一抹の不安が過ぎるが。
「大丈夫。私はまだまだ死なないよ。だから信じて…ね?」
その不安を感じ取ったかの如く伝えられた生の意志。
自分にあった様にリドゥでの経験を経て起きた心境の変化が、彼女にもまたあったのだろう。
僅かな懸念が杞憂だと分かれば、後は彼女から注がれる全幅の信頼に応えるのみだ。
「…分カッタ。ダガソウ長ク時間ハ掛ケナイ───行クゾ!」
掛け声と共にマキナが両手を前へ翳すと、掌を中心に集約するエネルギー。
瞬間、激しい閃光。ゲンムへ向け、一直線に放たれるレーザー光線。
熱線発射に付随する眩いフラッシュは、闇に慣れ親しんだ目には刺激が強い。
思わず眼が眩むゲンムの状態などお構いなしに、熱線は標的を焼き尽くさんと飛来する。
フラッシュの直前、一瞬見えた弾道からタイミングを予測。
大鎌を振るい、熱線は見事一刀両断。
分かれた光は左右へ綺麗に逸れ、地面を瞬時に焼き切った。
一時の脅威を退け、回復した視界には走り寄って来る小娘一人。
熱線を放ったサイボーグの姿は、何故か忽然と消えていた。
「あなたの相手は私!」
「誰でも変わらねぇよ…。どの道お前らじゃ俺は殺せねぇ…」
視界に映る限りではそれらしき影は無し。
本腰を入れて探そうとするも、それ以上の捜索の暇は与えられない。
先んずれば人を制す、と鋭利な踏み込みで放つ斬撃二閃。
もしも普通の相手ならば充分な腕前だろうが。
全員が百戦錬磨、一騎当千の王。
宇宙の片隅の惑星チキューが誇る守護者、王様戦隊キングオージャー。
彼らを単独であしらう宇蟲五道化を真正面から相手取るには余りにも遅く、そして軽い。
必要最小限の動作で獲物を振るい、脅威と呼ぶにはお粗末な攻撃を捌く。
「まぁ…いいか。どっちかと言えば…殺したかったのはお前だ。」
苦しみ喘ぐ者に活きる力を与え、死の運命から遠ざける癒し手。
死と病を振り撒き、星を弄ぶ殺戮兵器にとって最も不快で邪魔な存在だ。
ささらに向け発せられる、汚泥にも似た重く纏わりつく殺気。
その重圧に汗が滲み、脚が竦むが、どんなものであれ、意識を自分に向けられたなら上々。
仲間の合図が来るまで時間を稼ぐのみと精神を集中させる。
「はああああっ!!」
気合の叫びで己を奮い立たせ、果敢に攻め込むささら。
袈裟切り。一閃突き。回転切り。連続突き。
どれだけ防がれようと。躱されようと。一歩でも前へと踏み出し技を繰り出す。
ゲンムを受けに回らせ、攻めの一手を打たせる暇を与えない縦横無尽の大乱舞。
「無駄に熱くなるなよ…鬱陶しいだけだ。」
決死の覚悟で放つ怒涛の攻めを、溜息混じりに軽く一蹴。
のらりくらりと薙刀を受け流す中で、その激しさにも慣れてしまった。
斬閃の嵐を掻い潜り、漆黒の刃が遂にささらを捉える。
傷は浅い。まだまだ戦えると柄を握る手に力を込めるが。
全身を襲う強烈な痛みと脱力感。耐え難い苦痛に思わず膝を付く。
「俺の武器は触れたものを腐らせる…。まあ…長くは効かんが…。」
無様に首を晒した命を刈り取る猶予は充分。
消えた機械の横槍が入るかも知れないが支障はない。
寧ろ探す手間が省けるというもの。
何一つとて憂いはない。新たな骸を生み出すべく、鎌を振り上げ──
「───まだ…だよ!」
生を諦めない弱者の藻掻きが、驕れる強者を切り裂いた。
普段の淑やかな様子からは想像も出来ない。
鬼人の如き表情で、力強く旋回させた薙刀から放つ無数の斬撃。
「…?どうして動ける…」
シックルシーカーの毒は王鎧武装も貫通する呪毒。
長時間持続しないと分かっているが、幾らなんでも立ち直りが速すぎる。
元々が守りなど不要であったが故に防御が疎かになり、奇襲を受けたのは止む負えないとして。
レジスターの制限だけでは説明が付かない現状に、ゲンムの中の疑問が晴れない。
「え、えへへ…どうしてでしょう…!」
肩で息をしながらも、慣れない不敵な笑みを精一杯浮かべる。
最初の小競り合いでマキナを蝕んだ弱体化をささらは強く警戒。
少しでも異常を感じた瞬間に、回復スキルを発動すると決めていた。
急場の治療では完治には程遠く、何とか身体が動く程度だが問題なし。
窮鼠猫を嚙む。命の危機であればある程に技のキレが増す、起死回生のスキルが真価を発揮。
後は気合と根性だ。持ち前の精神力で苦痛を持ちこたえ、死神から生の権利を勝ち取った。
「無駄だと分かって尚足掻く…。これだから生き物ってのは嫌いだ…。」
足掻いたとて掴み取った時間などほんの僅か。
予定された死が本来より少し先にずれ込んだだけの話。
両者の有利不利は依然崩れず。面倒事がこれ以上、顔を出す前に片づけよう。
沸々と苛立ちが積もる中、強がりな死にぞこないへと向き直り、
「退ケ───ッ!アミキササラ!」
「────!うん!」
遠く彼方から聞こえる叫喚が、二人だけの戦場に割って入った。
見上げるは遥か上空。轟々と燃え盛るオーラを纏う鋼鉄の戦士。
意識が逸れた隙に残る力を振り絞り、この先の大技に巻き込まれない様ささらは飛び退く。
「エネルギー充填100%────滅却する!」
一斉掃射(フルバースト)発動。
指示系統の命令に従い、身体の各所から砲門が展開。
上空から四方八方への爆撃を以て、敵を撃滅するマキナの切り札、メギドバースト改。
女神に仇名す反逆者(バグ)たちを駆逐する裁きの炎。
此度はただ一人の怪人を打ち滅ぼさんが為、天より降り注ぐ。
接近するミサイルの雨嵐。確かに全弾受ければ、ダメージは大きいだろう。
しかしブースターの駆動音で存在を気取られない為か。
飛行の高度を高くしており、着弾までにまだかなり距離がある。
数秒でも猶予があれば退避は可能。真正面から付き合う義理はない。
機械の仲間同様、さっさと飛び退こうとして、その場でストンとしゃがみ込んだ。
「何だ…?」
思考に反して場に留まろうとする不可解な行為。
本気の困惑が過ぎるその足元には、何時の間にか展開された青のネット。
これが原因と瞬時に断定。鎌で電子の網を切断すると拘束が解除されるが既に手遅れ。
逃げ遅れたゲンムにミサイル群が着弾。
戦場に爆音が轟き、多大な熱と衝撃が装甲越しに苦痛を与える。
静寂と寒さを好むグローディにとって最悪に等しい環境下で。
朦々と立ち込める爆煙を切り裂き飛来した───銀色の流星。
「────────────!」
「吹キ飛べ────ッ!」
刹那、炸裂する衝撃。
鋼の肉体が持つ大質量、ブースターの推進力を得た超加速。
加えて、高所からの位置エネルギーが上乗せされた三種混合技。
凄まじい破壊力を伴って放たれた飛び蹴りは、ゲンムの全身を瞬く間に蹂躙。
一切の抵抗の余地さえ許されず、無惨に宙へ吹き飛ばされる。
サッカーボールの様になすがまま転がり、やがて地面に五体を広げて倒れ伏した。
「…対象ノ沈黙ヲ確認。機体ノ冷却作業ヘ移行スル…」
過剰出力によるオーバーヒートを防ぐべくクールダウンを開始。
排熱が順調に進行する最中、聞き慣れた足音を検知。
見れば心配そうに駆け寄ってくるこの闘いの功労者の姿。
自分も疲労と痛みでいっぱいいっぱいだろうに、他人の気遣いを優先しに来るとは。
呆れを通り越して、関心さえ湧く彼女のお人好しっぷりは相変わらずだと苦笑する。
ウイルスの治療に大技までの時間稼ぎ。ささらの助力なしでは何度死んでいた事か。
更には二手に分かれる前、手渡した支給品を適切に活用してくれたのも大きい。
先の一連の戦闘において、ゲンムの身体を釘付けにした正体。
防衛を専門とするエージェントが所有する"グラヴィネット"と呼ばれるアイテムによるもの。
外観は通常のグレネード。殺傷能力こそないが、床などに投げつけ着弾する事で起動。
瞬時に内部のナノワイヤーの網が展開。ネット上にいる敵を一時的に拘束する代物。
平時であれば容易く回避されていたであろう小細工だが。
今まさにミサイルの掃射に晒されんとしている、僅かな猶予もない土壇場。
意識の隙間を縫い、ネットを投下した彼女の功績があってこその勝利。
楽士として単独戦闘に慣れたリドゥでは経験した事のない連携の賜物に、感謝の念が尽きない。
溜まった恩を何処で返そうかと、そこまで考えた所でふと気づく。
何時の間にかささらの足音が止んでいた。
互いの居た場所に大した距離もない。
とうの昔に到着し、甲斐甲斐しく声をかけて来そうなものだが。
彼女の方向へ視線をやると、ささらは少し離れた先で立ち止まっていた。
立ち尽くす彼女は何処か一点を見つめている。
リドゥでも滅多に見せた事もない青ざめた表情を浮かべながら。
その視線の矛先はマキナの後方。
其処にいつも気丈な彼女を怯ませるだけの何があるのか。
冷却を終え、クリーンになった思考回路を以てしても皆目見当が付かなかった。
否、そんな筈がない。
其処にあるものをマキナは知っている。
寧ろ彼だからこそ一番理解してなければおかしい。
ただ"そんな馬鹿な事があって良い訳がない"と都合のいい理想に縋っていただけ。
認めれば心挫けそうになる非情な現実を、無理やりにでも否定したかっただけだ。
「ア──アアア────」
そんな無駄な抵抗を不意にする、亡者の呻き声。
氷柱を体内へ直接捻じ込まれたような、背筋が凍る機械らしからぬ幻覚。
潤滑油が必要になりそうな位に、スムーズとは程遠い速度で首を回す。
意を決して振り返ったその先に待ち構えていた、正真正銘の恐怖。
白の骸から湧き出す黒々とした死の瘴気。
バチバチと迸る紫のスパークが弾け、バキボキと不快な音を立て屍が目を覚ます。
生物の常識を逸脱した、見た者の嫌悪を刺激する不規則な挙動。
幽鬼の如くゆらりと立ち上がると、首をぐるりと大きく一回転。
我が身の健在をみせつけるかの如く、死神の冷めた哄笑が混沌しつつある場に響き出した。
「ハ、ハハハハ──ああそうか…。また同じ事の繰り返しか…羂索も芸の無ぇ事だ…。」
「ドウイウ、事ダ…!?確カニ決マッタハズ…!何故平然トシテイラレル!?」
「あ…?何故も何も…見りゃ分かるだろ。」
先の攻防が夢幻であったかの如く。
何事もなかったかのように悠々と大地に立つゲンム。
視覚センサーから届く視覚情報を疑いたくなる信じたがたい光景。
抑えたくとも、動揺から自然と語気が強まるマキナに対し。
世間知らずに一般常識を告げるような、何処か小馬鹿にした口ぶりで彼は疑問に答えた。
「オレは──コイツは"死体"だ。
なぁ、教えてくれよ。どうやったら死体がもう一度死ぬんだ…?」
死人は病まない。
病むに足る正常な箇所が一つもないから。
死人は苦しまない。
苦痛を感じる肉も心も当の昔に滅んだから。
死人は死なない。
生亡き骸に死を与えるなど、一体誰が出来ようか。
どんな強力な攻撃だろうと、どんな策を弄そうとも。
胸部のモニターが指し示す命の証(ライダーゲージ)は最初から空っぽ。
死にながら生き続ける宇宙のバグを、削除する手段など何処にも存在しない。
「俺は死なない。殺せない。何をしようが…死ぬのはお前ら命ある生者だけだ。」
ゲンムの足元の影が不気味に波打ち、変形を開始。
大きく広がった夜の闇より深い影から伸びる、見覚えのある無数の白い手。
この短時間で耐え難い苦痛を味合わせた、忌まわしき悪魔の手。
脳裏に過ぎった最悪の想像は、今現実と化す。
大地を掴み、闇から這い出たる白き死神、ゾンビゲーマー。
寸分違わぬ姿と武器を携えた動く死体が、一人、また一人とこの世に降り立ち。
最終的に二人の前に並び立つ"五体"の骸。
眼前に突き付けられた抗い難い絶望。最早二の句さえ継ぐ余裕さえ彼らにはない。
「……掴マレ!此処ハ退クゾ!」
正真正銘の不死身の肉体に逆転された人数差。
このまま呆けていれば、待つのは死のみ。
自分達が置かれた絶望的戦況を冷静に見極め、即時撤退を決断。
有無も言わさず同行者の元へ急行。
素早く抱きかかえ飛翔し、全速力で死地からの離脱を試みる。
「…グアッ!?」
「きゃあ!」
直後鳴り響く、甘えた逃走を許さない無情な発砲音。
意識外からの衝撃に苦悶の声を上げるが、一度だけでは留まらない。
駄目押しに二度三度と発砲が繰り返され、機体のあちこちから鮮血代わりの火花が散る。
狙撃により飛行ユニットが破損。飛行状態を維持できず重力に従い急落下。
墜落するマキナの視界には発砲音の出所を示す、硝煙を吹き上げる大鎌の柄。
グローディの武器は鎌であると同時に、遠距離狙撃を可能とする仕込み銃でもある。
状況不利を理由に一目散で逃げだそうとするマキナ達を見て即座に武器を変形。
死から逃れようとする、自然の摂理に反した愚者を撃墜した。
「グッ…!マズイ、アミキササ───」
襲い来る落下の衝撃。蓄積した狙撃の負傷と相まって全身が軋むが構う暇はない。
飛び交う銃弾からは頑強な機械の身体が庇う形となったが。
咄嗟の逃走で体勢がまだ不安定だったが故に押さえがままならず。
ささらを上空で手放し見失う、最大にして最悪の失態を侵してしまった。
カタルシスエフェクトで強化された彼女は最優の守護者だ。
マキナに勝るとも劣らない程に耐久性に優れており、多彩な治療の術も併せ持っている。
多少のダメージも許容出来るが、それでも生身の人間。
落下時に当たり所が悪ければ意識不明…それ以上の最悪のケースも充分考え得る。
逸る気持ちに突き動かされ、一刻も早くささらの元へ向かうべく走り出そうとして。
「逃げようとすんじゃねぇよ…めんどくせぇ…」
マキナの視界を埋め尽くす死神の魔の手。
「まずはお前からだ…、スクラップにでもなってろ…」
顔に。腕に。脚に。全身に組まなく伸びる無数の手。
生き餌に喰らいつくゾンビかの如く群がり、逃げ遅れた犠牲者を抑え付ける。
最初の接触同様、注入された破壊ウイルスがマキナを蝕むが、今回はそれだけに留まらない。
掌を起点に彼の外殻を汚染する痛々しい錆。たちどころに腐っていく。
レベルXへと進化したゲンムが獲得した恐るべき異能。
CRドクターのゲーマドライバーさえ、機能不全に陥らせた強力な腐食能力によるもの。
「オ、オオオオオアああアアああ────ッ!!!」
ノイズに汚染された歪で悲痛な絶叫の声があがる。
凄まじいスピードで錆色に塗り潰される永遠の銀。
Error。Error。Error。Error。Error。
脳内で大量の警告音が鳴り止まないが止める術がない。
侵されていく。壊されていく。無くなっていく。
鋼の肉体に宿る命の灯をじわじわと消される感触が。
鮮明に感じ取れるのが恐ろしくて堪らない。
救いを求め、必死に伸ばした手を掴む者は現れない。
抗う事さえ次第に忘れ、覆いかぶさった死に埋もれていき、
「────その子に触らないで」
煌めく白刃一閃。
マキナの叫びは確かに一人、守護者の元へ届いていた。
一刻を争う仲間の危機に、手の甲の輝きを一画、躊躇いなく力へと変換。
纏わりつく死人の群れを、蜘蛛の子を散らすように薙ぎ払う。
「さ────さ…さら…」
「ごめんね…。私が守らなきゃなのに、こんなにもボロボロにさせちゃって…」
見るも無残な鉄屑と化したマキナの手をそっと取る。
癒しの波動が、表面を覆い尽くす錆を急速に取り除いていく。
令呪による一時的制限の撤廃が、ささら本来の回復力を取り戻し。
闇に沈みかけていたマキナの意識を再び現世へと引き上げた。
「眠らせときゃいいのに無駄に叩き起こしやがって…。いい加減学べよ…。」
ささらの治療も令呪の効力を受けた一撃さえ全て無意味と嘲笑い。
死した状態でなおも平然と起き上がる死神達。
本体と同一の力を保持しているのか、分身も堪えた様子もなく健在。
生へと続く未来が見えない現状は何一つとして変わっていないまま。
「これ以上時間を掛けるのも億劫だ…。もうとっとと逝っちまえ…。」
そう言い放つゲンムが赤と青のボタンを同時に押し込むと同時。
エネルギーを充填するような待機音が戦場に木霊する。
仮面ライダーのシステムを理解せずとも直感的に理解した。
闘いを速やかな終幕へと導く、死神にとっての必殺の一撃が放たれようとしていると。
絶望の来訪を告げる音は、一度だけでは終わらなかった。
本体の意志に従い、分身も一斉にバグヴァイザーのボタンを操作。
重なり合う待機音声が不快な死の音色を奏で。
ちっぽけな命に喰らいつく瞬間を今か今かと待っていた。
「死ぬのか…"僕"たちは…。」
刻々と近づく可視化された死。
身体自体は正常に回復したとしても所詮一時の延命。
心までは癒せず、蹂躙され尽くした胸中は黒一色に塗り潰されたまま。
何をやっても退けられない。どう足掻いても避けられない。
唐突に現れた理不尽な終わりに、命の回数券など関係ない。
生命皆等しく訪れる絶対の運命を具現化したかの如き災厄が。
前を向こうと固く誓った理想郷での決意を塵へと還す。
「嫌だ…死にたくない…!」
心を強く保つ為に演じていた仮面が剥がれる。
日常以上に死と隣合わせな世界に於いて。
理不尽と戦うための支えであった楽士マキナとしての理想(ロール)。
幼心であっても怯える彼に勇気と力をくれた不滅の象徴。
しかしそんな憧れは真の不死者により徹底的に凌辱され。
残っているのは、間近に迫った死に怯える哀れな少年。
限りある命の減少に無意味な抵抗を繰り返していた頃の嘗ての現実。
「死にたくない…死にたくない…死にたくない…!」
収縮する筋肉もないのに、震えが止まらない。
酸素の要らない肉体に呼吸が蘇り、速まる呼吸に悶え苦しむ。
同じフレーズを延々と繰り返す様はまさに壊れた機械そのもの。
光さえ届かない孤独な夜に死んでいくのだと絶望した時
「死なないよ」
壊れかけた少年の心を天女が優しく繋ぎ止めた。
「怖くない怖くない。大丈夫、マキナちゃんはもう絶対に私が傷つけさせないから。」
強く、それでいて思いやりに溢れた慈愛の抱擁。
体温など感じない鉄の身体に確かに伝わる、陽だまりに抱かれているような温もり。
仄かな人の暖かさが、決して孤独ではないのだと懸命に訴えかけてくる。
その訴えが芯に響いたのか、次第に震えも呼吸も収まっていく。
ささらは安定したのを確認すると、そっと呆ける少年に顔を合わせ。
親が子へ、祖父母が孫へ向ける愛しさに満ちた和やかな笑みを浮かべた。
「────────」
「え…?」
囁かれた声に応える前に、気が付くとマキナは空を舞っていた。
己の意志とは関係なく、飛翔の勢いを受け一直線にグングンと加速。
遠ざかっていく戦場をただ黙って見過ごすしか出来ず。
少年を襲おうとした死は、彼を伝う温もりと共に遠ざけられた。
「良かった。どう使うかよく分からなかったけど…あれで合ってたみたい」
マキナが無事飛び立ったのを見送り、ほっと息をつくささら。
彼女が使ったのは、対象者を戦闘から瞬時に離脱させる罠カード、緊急脱出装置。
頭が悪いせいで説明を読んでもいまいち使い方がピンと来なかったが
彼を逃がしたい気持ちに応えてくれたのか、上手く機能してくれたらしい。
先行き短い老兵と未来溢れる若者。
命の優先順位を見誤るほどまだ老いさらばえていない。
死ぬのは人生の列の先頭に立つ自分から。意図しない横入りは絶対に防いで見せる。
若人の幸多き現実を守る。その為なら命を捨てる事さえ厭わない。
と、かつての自分ならば捨て鉢になっていただろうと過去を振り返り、ささらは己を取り囲む死と対峙した。
「おいおい…勘弁しろよ…。追う手間が増えちまった…。」
「あの子は追わせない。私がいる限り、ここから先は通さないから!」
「そうか。────じゃあ、さっさと死ね」
『『『『『クリティカルエンド!』』』』』
放たれた五重の死の宣告。
一斉に飛び上がり、禍々しい黒と白のエネルギーを帯びながら縦に高速回転。
晴れない永遠の闇へとプレイヤーを追放する、荒れ狂う紫電迸る回転蹴り。
一発でもゲームエンドを齎すに足るゲンムの切り札。
それが五発同時ともなれば終わりは必定。
「ううん、死なないよ。だってみんなと約束したんだもん。
元の世界に帰って、やらなきゃいけない事がいっぱいあるんだから!」
全身全霊を以て挑む一世一代の大勝負。
決して朽ちる事のない決意を力に変え、薙刀を構え一息に一回転。
刃先で地面に大きく円を描き、その軌跡から溢れ出す光の壁。
全ての傷を癒し、遍く不幸を退ける編木ささらの奥義(オーバードーズスキル)。
限界を引き出す令呪のアシストを得て、如何なる不浄の侵入をも許さない絶対の障壁と化した。
「はああああああああああ────ッ!!」
ぶつかり合う光と闇。凄まじい衝撃が前後左右より襲う。
一瞬でも力を緩めれば、忽ち壁は砕け散り簡単に圧し潰される。
それでも持てる力、命の限りを絞り尽くし極光を維持。
徐々に亀裂が入るも懸命に歯を食い縛り、迫る死を寄せ付けない。
「吹けば飛ぶ命一つ…どうしてこうも生き足掻ける…。」
不死を滅ぶす力はおろか、五道化と真面に渡り合う力すら持ち得ない只の人間。
そんなちっぽけな命一つの全力など、令呪込みでも虫けら同然に容易く踏み潰せる。
己を葬った王達の様に群れを成している訳でも無し。
なのにどうして、死を待つだけだった生者が、未だに立っているのか。
定められた理を覆す、認めがたい事実に苛立ちと疑問が尽きない。
「一人だけど…一人じゃないからだよ…!」
「あぁ…?」
「どんなに離れていても、色んな人と出会って、触れ合って、出来た沢山の繋がりがある。
だからそんな大切な皆との絆を守りたいって、一生懸命頑張りたいって思えるようになるの…!」
死ぬなんて言っちゃ駄目だと泣いてくれた、ヒトの心を学び始めた少女のために。
まだまだ死なないと殺し合いで約束した、自分の後悔と向き合い始めた少年のために。
死んでほしくないと怒ってくれた、見ず知らずの命を惜しんでくれる新たな家族のために。
偽物と本物、理想と現実。短くも長い生涯で出会った様々な顔が浮かぶ。
二つの世界で得た枚挙に暇がない位の沢山の繋がりが、老いた心と若い体に希望をくれる。
現実を知って尚生きて欲しいと願ってくれる、こんなにも素敵な出会いをくれた素晴らしき人生だ。
終活(トゥルーエンド)を迎えるその時まで自分勝手に死ぬ訳にはいかない。
例え命を擲つのが合理だとしても、我儘に生きて行こうと足掻く力を与えるのだ。
「…意味が分からねぇ…もういい。さっさと逝け。」
命の意味を理解出来ないよう作られた死神に、生を尊ぶ言葉は何一つとして響かない。
他人など耳障りな雑音を立てるだけの醜悪な存在。
其処に尊ぶべき繋がりなどありはしない。寧ろただ断ち切るのみだ。
答えを聞いても思考は晴れず、ただ苛立ちが増しただけ。
感情に呼応するように障壁を押し込むパワーが更に一段階上がる。
令呪なしでまだこの余力。
眼前に突きつけられる埋め難い生物としての純然たる格差。
ブーストのタイムリミットも近い。このままでは押し切られるのは自明。
令呪一画では逆転は程遠い。ならば、話は簡単だ。
手に宿した神秘の輝きが更に一つ消え、全身へと還元。
二画による強化が相成った数秒に、この命が持てる限りを全て出し尽くせばいい──!
「やあああああああ────っ!!」
腹の奥から轟く戦士の裂帛の叫び
突如爆発的に激しさを増した生命の奔流。
優勢を保ち続けた骸達が初めて劣勢へと追い込まれる。
限界の更に一歩先を行く力を以てして、まだ競り合える死神を恐れるべきか。
惑星を滅ぼし、宇宙を弄ぶ怪物を並び越さんとする人間の爆発力に瞠目すべきか。
異常同士が拮抗する勝負の数秒、決着は唐突に訪れた。
「────ッ!熱ぃ…!この熱さは────」
恐れ知らずの死神を襲う致命的なイレギュラー。
死の淵に立つ者さえ癒す浄化の光が、全身に纏う膨大な死を遂に上回る。
急速に穢れを駆逐する不快で心地よいそれは、この身にも巡る命の熱。
その熱さに搔き乱された死の群れを、光は一気に呑み込み、
溢れんばかりの命の煌めきが世界を照らした
◆◆◆
「はぁ…はぁ…!」
疲弊した肉体が、酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。
本来持ち得る力量以上の力を無理やりに出し尽くし、身体は限界ギリギリ。
薙刀を杖代わりに立っているのがやっと──それでも編木ささらは此処に立っている。
文字通りの必殺技を受けて生き延びた。死の運命に打ち勝って見せた。
でもまだ終わりではない。
ささらは自分と同じく苦し気に胸を抑える死神へ視線を向ける。
「…力が、抜ける…!なんだ…こりゃ…?」
一度目の生で味わった忌々しくも神々しい命の熱が、再びゲンムを焼き焦がす。
彼の身に起きているのは、令呪二画分の奇跡が引き起こしたバグ。
死と相反する膨大な生のエネルギーがガシャットに蓄積された死のデータを中和。
結果、ゲンムはレベルX(エックス)を維持出来ず。その前段階、レベルX(テン)へと強制的にグレードダウン。
一時は不滅にも思えたゾンビゲーマーの分身達は、退化を経て跡形もなく消滅。
測定不能の力を奪われた本体だけが一人取り残されていた。
「もう終わりにしましょう?これ以上闘ってもあなたは…」
「終わり…?ああ、そうだな…。これで終わりだ…」
『ガッシューン!』
呼びかけに応じた結果か。グローディは変身を解き、白の装甲から黒の外套に身を包んだ姿へと戻る。
分かってくれたか、とそう思えたのはほんの一瞬だけ。
死神と見紛う男から漂う殺気は殺し合いが始まる前と一つとて変わらず。
やがて生気のない人肌がボロボロと崩れ落ち、怪人の化けの皮が剥がれた。
人間態時の服装と酷似した黒の出で立ちから無数に生えた寄生虫のような触角。
腐乱した死体に蛆が湧いたかの如き禍々しい様相は、先の変身以上に死を連想させる。
病を慕い、腐れに焦がれ、死を愛す。屍の友を携え生なき世界を渡り歩く死神の真の姿。
「…そう。まだ、終わらないんだね…、なら私は──」
人の身さえ脱ぎ捨てて尚も死を求め続ける怪物。
場を支配し始めた一層濃い死の気配が、新たな闘いの幕開けを告げる。
既に満身創痍。まともに闘う力など最早ささらには残されていない。
だが、諦めない。生きて帰るという大勢と交わした破れない誓いがあるのだから。
そうして心に希望を灯し、生と死が鎬を削る闘いの第二幕へと一歩踏み出し
「────言ったろ…。これで終わりだってよ…。」
嘘のようにあっさりと決着が着いた。
死神の大鎌がゆらりと揺らめいた。
最期に彼女が理解出来たのはそれだけ。
直後、学生服に一本の線が引かれ、鮮血が弾け出す。
胸に気高く咲いた、檀特が夜風に舞い散っていった。
昆虫最終奥義、グローディバイド
神速の一太刀で敵の命を刈り取るグローディ本来の必殺技。
今まで奥義を使用しなかったのは、彼女らが支給品の性能を試す試金石でしかなかったから。
気張るといいながらも、何時でも気軽に死体へと変えられると高を括っていた。
しかし結果として、ささらは幾度も死を切り抜け、此処まで生き延びた。
生蔓延る世界で最も忌み嫌う癒し手を、王様戦隊以外で技を使うに値する敵と認識したのだ。
(ああ…駄目だなぁ…。立たなきゃなのに動けないや…)
宣言通りの一瞬の終幕。悔しかろうと身体は全くいう事を聞かない。
決定的な何かが抜け出てしまった感覚に、鎌に付着した腐毒のオマケ付き。
精魂使い果たした今では回復はおろか攻撃スキルの一つも使えない。
ぼんやりとしていく思考の中、ささらは静かに終わりを悟る。
死なないと約束したのに、結局破ってしまった。
大切な家族たちの泣き顔や怒り顔が目に浮かび、申し訳なさで胸がいっぱいだ。
いざ終わりが近づくと、色々な思考が目まぐるしく浮かんでは消えていく。
マキナは今後、無事に生き残れるだろうか。彼はもう充分死に悩み苦しんできた。
これから先、味わった恐怖に負けないだけの良い巡り合わせがある事を祈る。
帰宅部の皆は巻き込まれてはいないだろうか。自分だけなら何よりだが、そう都合よくもいかない。
でもあの若人たちなら必ず生きて現実へ戻れると信じている。出来ればマキナの事も支えてあげて欲しい。
まだまだ心残りが沢山あるのに、残された時間はもう長くない。
人生の最期に、自分は何を考えるべきか。
謝罪、感謝、後悔、どれも正しい気がするがやはり答えは一つしかない。
(────────負けないでね)
何処までも遠くに届くよう、万巻の思いを込めて。
少年にも送った精一杯の声援(エール)
振りかかる死や恐怖に負けず、無限に広がる未来を歩めると信じ。
幸福な人生の不幸な死に屈せず、老婆は微笑んで永久の眠りに落ちた。
「────────起きろ」
幸福を祈る生者の心中など知る由も無く。
安らかな眠りを妨げる、無情なる死神の一声。
「何が面白いのか知らねぇが…寝るにはまだ早えだろ…。」
死に顔を覗き込む瞳に映る、青く渦巻いた螺旋。
その渦が怪しく輝くと今まさに終わりを迎えた骸が眼を見開き立ち上がる。
全ての生を尊び謳歌し、活力に満ち溢れた天女はもう此処にはいない。
胸の傷口から凝固し切らない赤黒い血液がドロドロと流れ出し。
主と生気に欠けた肌と同じ螺旋を眼に宿した歩く死人となった。
「ああ…ようやく。また静かになった。でも所詮は一時だけ…」
騒々しかった戦場も屍だけとなれば、心地よい静謐さに包まれる。
しかし、少しでも遠くへ耳を澄ましてみれば。
うんざりする程聞こえてくる活気に満ちた忌々しい生者の声。
幸いこの地は死と争いには事欠かない。殺して増やしてを繰り返し理想の死の世界を創り出す。
久々にやりがいに満ちた大仕事。その為にも人手は必要だ。
新たに誕生した同胞へギョロリと目をむけ、グローディはじわりと頬を歪ませた。
「これも一つの"繋がり"だ。手伝ってくれるよ…なぁ?」
生きた骸だけを唯一の友とし、静寂を求め彷徨い歩く亡霊。
死を愛しながらも、死者の尊厳を踏み躙る静謐のグローディ。
この世に命ある限り、死神の行進は終わる事を知らない。
【編木ささら@Caligula2 死亡】
【グローディ・ロイコディウム@王様戦隊キングオージャ―】
状態:正常
服装:いつもの服装
装備:シックルシーカー(自前)@王様戦隊キングオージャ―、ガシャコンバグヴァイザー@仮面ライダーエグゼイド、バグスターバックル@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、デンジャラスゾンビガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ホットライン
思考
基本:静寂に満ちた理想の死の世界へ
01:生者を全て生きた骸に変える
02:逃げた機械も殺す。操れるかは死ねば分かるか。
参戦時期:47話死亡後
備考
※操れる死体は本人が直接殺害した物に限ります。また異常成虫による巨大化は出来ません。
※NPCで操れる数は生物系は無制限。機械系もシュゴッドソウルのように魂があれば可能です。
参加者の死体に関しては採用時、後続の書き手様にお任せします(人数制限や意識の有無など)
※死のデータが中和され、レベルテンに戻りました。分身、強力な腐食能力は使えません。
再び死を繰り返せば、レベルエックスに戻る可能性があります。
【ガシャコンバグヴァイザー+バグスターバックル@仮面ライダーエグゼイド】
グローディ・ロイコディウムに支給。
檀黎斗がゲームパッド型の可変型武器。
ボタン操作でビームガンエリミネーター、チェーンソーエリミネーターに変形する。
付属のバグスターバックルを利用する事で変身ベルト、バグルドライバーとしての機能を果たす
【デンジャラスゾンビガシャット@仮面ライダーエグゼイド】
グローディ・ロイコディウムに支給。
ガシャコンバグヴァイザー+バグスターバックルの付属として支給されている。
檀黎斗が自身の死のデータを元に完成させた十一本目のガシャット。
バグルドライバーに使用する事で仮面ライダーゲンムゾンビゲーマーレベルX(テン)に変身。
ライダーゲージが0になった瞬間の一時的な無敵状態を維持し続け、疑似的な不死性を有する。
今ロワでは不死性に制限が掛けられており、変身毎の許容量を超えると強制的に変身が解除される。
また、その状態で致命傷レベルのダメージを負い続ける事で死のデータが蓄積し、レベルX(エックス)に進化。
外見は変わらないが、大幅なステータス増加に加え、同一能力を有した分身・腐食能力を会得する。
【グラヴィネット@VALORANT】
マキナに支給。
ノルウェーの工作員デッドロックが使用する最先端のナノワイヤー技術を駆使した特殊なグレネード。
着弾すると起爆しネットが展開。範囲内にいる敵を強制的に拘束し、移動速度を低下させる。
【強制脱出装置@遊戯王OCG】
編木ささらに支給。通常罠(トラップ)カード
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に戻す。
今ロワではカード使用者が対象に選んだ相手一人を会場の何処かへと飛ばす
◆◆◆
少年が降り立ったその先に彼を脅かす死は何処にもなかった。
其処にあるは暗闇と静寂。
喧騒なき架空の街に一時の孤独な夜だけが広がっていた。
少年は、夜が怖くて堪らなかった。
誰もが皆ふとした瞬間に、前触れもなく消える可能性を抱えている。
身内や親友といった身の回りの命も、自分自身も例外なく。
もしも眠りに付き眼を閉じれば、もう二度と開かないのではと。
この闇に包まれたまま、もう朝日を拝む事は叶わないのではないかと。
絶えず発作を起こし眠れぬ夜を、部屋の四隅で震えながら一人耐え忍んだ。
現実で生と向き合う勇気を得た矢先に始まった非日常。
恐怖心に執り憑かれた妄想や幻覚へなく、明確な現実として存在する死。
皆が限りある命を奪い合い、そうでなくとも刻一刻と命のカウントダウンは進む。
理想郷での出来事を経てもなお、先の見えない殺し合いの夜は絶望しかなく。
それでも彼が闘おうと思えたのは、その日の夜は孤独ではなかったからだろう。
しかし少年に希望を齎した繋がりは、その希望自身を死へと誘った。
「どうしてなんだよ…あんなのがあったなら…とっくに…」
見知らぬ地に取り残され、膝から崩れ落ちる少年マキナ。
死から逃れられたにも関わらずその表情は重く、そして険しい。
本来生き残るのは自分ではなかった。生存の権利は彼女にあった。
自らに配布された支給品で、逃げられる筈だったのに。
そのたった一つの席を自分は奪った。誰よりも優しい彼女に譲らせてしまったのだ。
「死なないんじゃ…なかったのかよ…!」
確定した訳では無くとも、あの死地を乗り越えられる保証は皆無。
何より最後に見た微笑み。其処に滲ませた死への覚悟が、その後の結末を悟らせる。
生きると宣言したばかりで、早々に命を投げ捨てて。
舌の根も乾かぬ内に約束を違えた裏切者への怒りがこみ上げる。
否、その怒りの矛先は誓いを破らせてしまった他ならぬ己自身に対して。
もしこの身が涙を流せたならば。
内に溢れる悲しみや後悔を少しは吐き出せたのだろうか。
澱んだ心を洗い流せない不完全さに、初めて己の理想の身体を疎ましく思った。
機械の身体に宿る人の心が完全でないのだけだというのに。
死の順番を譲らせてしまった罪悪感が、心の摩耗に拍車を掛ける。
寄り添い支えてくれた命の消失。その重さは15歳の少年には余りにも重すぎた。
これから先、マキナは向き合わなければならない。
一筋の光明さえ見えない死と絶望だけが蔓延する正真正銘の地獄とたった一人で。
「生きなきゃ……負けちゃ駄目なんだ…でも────」
怖い。どうしようもなく怖くて仕方ない。
死神に克明に刻み込まれたトラウマが忘れられない。
暖かな光さえ容易く吞み込んだ、この世界の闇に勝てる気さえ起らない。
この造られた世界で、許された時間はもう幾ばくもないのだと思うと。
取り囲む全てが自分を取り殺す為、今か今かを待ち構えてる様に見えて。
「また、震えが…止まれよ…頼む、止まってくれ…!」
温もりに止めてもらった機体のバグが再発する。
逃げずに生きたいと彼女に語った決意は何処へ行ったのか。
これではリドゥへ逃げた頃と何も変わらない。
一人小さく蹲り、がたつくボディをガンガンと叩き続ける。
機械を叩けば直るなど昭和の迷信でもあるまいし。
非合理だと頭では理解しながら、振るう拳を止められない。
鉄拳で何度も自分を殴りつけるその様は、自罰のようにも見えた。
「頼む、頼む頼む頼む────!」
切なる祈りは聞き届けられず、震えと拳は激しさを増すばかり。
真に壊れているのは、体か心か。
何方であろうとも、かつて少年に寄り添った天女は既に死神に刈り取られた。
死と呪いに満ちた戦場で、病に囚われた見ず知らずの命一つの為に。
奉仕と献身を尽くす奇特者が、一体何処にいるという。
「やめなさい」
錯乱しつつマキナの耳に、行為を制す女性の声が届く。
殴打を繰り返す両の腕が真っ新な手袋に覆われた細腕に掴まれ。
それ以降、前にも後ろにもピクリとも動かなくなる。
機械由来の高馬力をして抗えない膂力に驚愕する間も与えられず。
その剛力を以て強引に身体を引き上げ起立、混乱冷めやらぬ少年の顔を緋色の瞳が覗き込んだ。
「反自保護的な自傷行為。心的外傷による精神疾患の兆候が見られます。
本来機械修繕はメカニックの領分なのでしょうが、関係ありません。
人と同じく心の病に蝕まれるならば、医療的アプローチからでも救える命の筈です。」
清潔さが保たれた赤と黒を基調とした英国風の軍服。
一本に結わえた淡い桃色髪を棚引かせ、背筋を整え凛と立つ淑女。
表情の変わらない鉄仮面めいた相貌は、マキナ以上に機械然とした印象を持たせるが。
揺らがぬ信念を宿す狂気と激情に燃え滾る瞳が、鉄の女を人たらしめている。
「問診の後、可及的速やかに治療へ移ります。ご安心を。
例え貴方を破壊してでも、必ず貴方に巣くう病魔を破壊し尽くすと約束しましょう。」
「は、破壊…!?何言ってるんだよお前…!治したいのか殺したいのかどっちなんだよ!」
「…?医療従事者へ向けて、その質問は侮辱と捉えられても仕方ない程にナンセンスなものです。
以後他のメディックに会う様な事があれば、そのような発言は慎むように。」
目的と結果が破綻した矛盾しきった狂気の言動に困惑しかないマキナ。
言葉が通じているのに対話の通らない。違うベクトルの恐怖が湧いて来そうになる。
そんな彼の状態など気にも留めず、鉄の女は孤独に震える患者へ淡々と告げた。
「生を求める患者がいる限り命を賭してそれを救う。それが我々医療に携わる者の使命。
苦悶し、それでもなお生きると貴方が道を選ぶなら───私は必ず貴方を救います。」
後悔蔓延る現実に奇跡を齎す神などおらず。
生死を握られた殺し合いという地獄で、善意で誰かに手を差し伸べるなど。
正気の沙汰では成し得ない所業。ならば、狂気を以て不条理を制そう。
殺してでも救う。決して砕けぬ不屈の信念(しめい)を携えて。
死を恐れる鋼の命を救済すべく、鋼鉄の白衣を纏った天使が戦場へと舞い降りる。
【マキナ@Caligula2】
状態:健康、死や殺し合いへの恐怖(極大)
服装:リドゥでのアバター(機械化)
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
思考
基本:生きるために現実と戦う
01:目の前の女性(ナイチンゲール)に対処…?
02:ささらを死なせた事への強い後悔
負けるなって言われても、僕は無理だ…
03:不死の男(グローディ)に最大級の警戒。
参戦時期:最終章後
備考
※
【フローレンス・ナイチンゲール@Fate/Grand Order】
状態:健康
服装:いつもの軍服(第一再臨)
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:戦場にいる全患者の救済。そして、殺し合いという病巣の根絶。
01:目の前の患者の問診後、即時心的外傷の治療へ
参戦時期:少なくともカルデア召喚後(1部5章以降)
備考
※
投下終了です。
投下します
「うおおおおおおお!!」
夜の闇に揺らめく炎の剣。
それを豪快に振り回す屈強な男がいた。
長いリーゼントが目立ち、凛々しい顔つきは人を惹きつけるだろう。
剣を振るう男の名前はブラート。帝都に安寧を齎すべく戦う暗殺集団、ナイトレイドが一人。
彼の強さはナイトレイドでもアカメと並んで主力となる実力を持っている一人ではあるのだが、
その彼の攻撃を受けながら、それを意に介さず蹴りや拳を叩き込まんとする相手に苦戦を強いられる。
(喉に剣を突き刺したってのになぜ平然と動ける!?
ただの剣ならまだしも火炎の剣だ。喉が焼き切れてもおかしくないはずだ……)
「どうした? この程度の傷で俺を倒せると思っているのかぁ〜〜〜?」
喉に穴が開いていたはずの相手は、傷がふさがっている。
肩当や胸当てを自身の肌へと直接縫い込んだ異様な出で立ち。
ブラートに負けず劣らずの鍛え抜かれた筋肉を惜しみなく露出しており、
外見にたがわぬスピードとパワーを持つ攻撃を避けつつ警戒心を強めていく。
(いくら傷をつけても再生しやがる!
レオーネのライオネルの奥の手を常時発動してるみてえだ!)
得物の切れ味は十分だ。
少なくとも無数の傷をつけているしこちらの剣は燃えている。
斬ると焼くを同時に与えているというのに、出血はせずすぐに塞がっていく。
小競り合いのような戦い方では消耗をしていくだけだ。
(一撃で首を持っていくかレジスターを破壊するしかねえ。
だができるか? 弱点がわかってるから奴は俺の攻撃を防がず受けている。
でなけりゃ、喉と言う急所に刃を突き刺すことがすんなりできるはずがねえ。)
いや、よくないなとブラートは思った。
やれるかどうかではない。やり遂げるだけだ。
どんな任務もこなしてきた。今もそうするだけだ。
距離をとりながら火炎の剣を構えなおし、全力で肉薄する。
スタートダッシュから持てる最高速度で迫るブラートの動き。
相手の男もその速度に目を張るものがあり、刃は首元を狙う。
(勝ったと思うな! そう思う時は大抵やれてねえ!)
油断も警戒もしない疾風の一撃。
攻撃は躱された。しかしその回避の方法は異常なものだ。
首が後ろに伸びたのだ。人間の体の構造ではありえない首のずらし方で躱された。
攻撃が失敗した時の立ち回りは無論考えてはいたが、この回避方法では続けての攻撃などできない。
その一瞬の隙を突かれ、屈強な回し蹴りが脇腹へと叩き込まれた。
「ガッ、ッ……!!」
見た目通りと言うべきか、丸太を叩きつけられたような一撃に苦悶の声をあげながら大地を転がっていく。
警戒はしていた為咄嗟に距離をとって威力を抑えたが、それでも骨が数本折れるような音がミシミシと耳に届いた。
「波紋使いでもない人間に、このエシディシが倒せると思っていたのか?
貴様ごとき人間に流法(モード)を使うまでもない! 異なる世界と聞いて、
好敵手となりうるものがいるのかとちょいとばかり期待していたが、こんなものか。
ナイトメアフレームやモビルスーツ、御刀と言った方に期待するべきだったか?
いやしかし、名前だけでは皆目見当もつかん代物であることには……」
「勝手に値踏みしてんじゃあねえ!!」
そう言って立ち上がろうとするブラートだったが、
腕を軽く踏みつけられて動きを止められる。
先の威力を考えれば、完全に遊ばれてる威力の踏み付けだ。
「貴様の剣技、優れていること自体は認めよう。
だが! 俺を殺すにはちょいとばかし足りんなぁ〜〜〜ッ!!」
腕を踏まれ逃げることはできない。
次の一撃でとどめを刺されてしまう。
限りある時間の中必死に手段を巡らせていると、
「ハァッ!!」
ブラートに負けず劣らずの速度で物陰から姿を見せる、一人の少女。
黒い髪を束ね、黒い装束に身を包んだ少女はどこか仲間のアカメを思い出す風貌だ。
緋色の剣を手にエシディシへと迫るものの、相手の得物はたかが剣だ。
その程度ならば受ければいい。そんな風に思って左手で受け止めるが、
「な、なにいいいい───ッ!?」
ビリビリと電気のようなものが走り、
肉体が解けるような感覚には覚えがある。
闇の一族が唯一とされる天敵、太陽の力と同等の力。
「こ、この音は波紋ッ!? ば、莫迦な!?」
波紋は水や油など、液体に伝導することは長年生きたエシディシも知っている。
しかし、今のはどう見ても剣であり、液体を塗られた風にはとても見えなかった。
どんなに優れた波紋使いであったとしても、剣に液体もなしに波紋を伝達させることは不可能な芸当だ。
それを彼女は突然現れて、やってのけたのだ。
(何だこの剣は……? 弱点を突けると書いてあったが、
人間を切ったとは思えないような光が迸ったように見えたぞ。)
もっとも、彼女こと恵羽千は波紋使いではなく、
辺獄を駆け抜ける代行者の一人なのだが。
あくまで波紋の効果を出せたのは彼女が持つ剣、緋想の剣によるものだ。
『気質を見極める程度の能力』を宿した剣は、必ず相手の弱点を突くことができる。
だからエシディシを斬った際は、波紋や太陽の力と同じ気質になって斬れたのだ。
(ま、まずい!)
波紋の力を直接叩き込まれたレベルの威力だ。
このままでは波紋が全身に伝わり、全身を溶かしかねない。
その危機を察知したエシディシは、すぐに距離をとりながら右手で左手首を切断する。
いきなり自分の手を切断するという行為に二人は戸惑うも、
切断された左手が骨だけになっていくのを確認すると何となくだが察する。
「咄嗟に助けてしまったが、お前はこの殺し合いに乗ってるのか?」
「殺し屋で一度死んじまってる身だが、
そこまで人間腐ってるつもりはないぜ?
因みに俺の言葉を信じるなら、襲ってきたのは向こうだ。」
「殺し屋……正直な辺り、今は信じさせてもらう。あたしは恵羽千。」
態々人に疑われるような職業を口にする。
下手をすれば信用を失うかもしれない可能性がある殺し屋だ。
千の父は実直な検事であり、それに伴って彼女は生真面目に育っている。
だから殺し屋と言うワードについて引っかかる部分があるのは否めないものの、
正直に答えた部分でひとまず信用することにする。
積もる話は後にするとして、相手の様子をうかがう。
「ブラートだ。ハンサムって呼んでくれても……ってそういうのは通じなさそうだな。
だが気をつけろよ。あいつの身体はすぐに再生してくるはずだ。」
そう言って様子を見るが、唸るエシディシの腕は一向に生えてこない。
喉を突いても元に戻るだけの再生力を誇りながら、何も起きなかった。
「……何もないが?」
「おかしいな。あいつには少なくとも五十は傷をつけた。
全部が回復してるし、急所の喉を突いても無事だったんだ。
左手の一本ぐらい植物みたいに生えたって───」
「う〜〜〜うううあんまりだ…」
「え?」
二人して注意深く見ていると、
エシディシの瞳からは涙が零れだす。
「HEEEEYYYY あァァァんまりだァァアァ!!」
自分で切断したとはいえ、
骨だけになった左手を見て泣きわめきだす。
普通に怒ったり敵意を向けたりするのが当たり前なのに、
大の大人がみっともなく泣きわめくという行為に二人は思わず戸惑ってしまう。
「すまないが、そっちの方が殺し合いに乗ってたのか?」
「AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」
「ひょっとして、腕試し程度の奴だったのかもしれねえ。だとしたら悪いことをしちまったな……」
「おおおおおおれェェェェェのォォォォォひだりてェェェェェがァァァァァ〜〜〜〜!!
「777(ナナナ)みたいな愉快犯と言うことなのか……?
だとしたら手の溶解はやりすぎたかもしれない。とにかく様子を……」
どうするべきか戸惑っていると、
いつの間にか泣き崩れていたエシディシの声が消える。
二人して静寂になった空気に警戒心を強めると、エシディシは振り返り、
「フー、スッとしたぜ。」
何事もなかったかのような爽やかな顔になっていた。
怒ったり。泣き喚いたり、ケロっとしたり、相手の行動が読めない。
二人にはエシディシが何者なのかがわからなくなってくる。
「いや悪かったな。俺はチと荒っぽい性格でな〜〜〜〜〜。
激昂して トチ狂いそうになると、泣きわめいて頭を冷静にすることにしているのだ。
何、波紋使いでもない人間に俺の手を消される羽目になるとは思わなくてなぁ。」
「……波紋使いとはなんだ?」
「やはり今の反応、そこの小娘……確か千と言ったな。貴様は波紋戦士ではないようだな。
その剣か、或いは羂索の言ったソードスキルや魔法と言った類で付与された効果の副産物か。
だが千よ! 貴様を賛美しよう。この俺から腕を奪ったのが、波紋戦士でもない人間であるということを誇るがいい!」
千にはエシディシの言ってることが理解できなかった。
波紋戦士と言った固有名詞が何かとかではない。左手を失ったのは自分の刃が原因である。
再生するとブラートは言っていたが再生もしていない。つまり欠損した手は元に戻らない。
人体にとって手は大切な部位だ。それを人の手によって失って賛美する相手など普通はいない。
異様、或いは異質。幽鬼や幽者のような異様な相手に思わず武器を構えてしまう。
「久しく好敵手と出会えたこと! 羂索に感謝するほかないな!」
「あのような外道に賛辞を贈るお前は。殺し合いに乗っているとみていいのか?」
「エイジャの赤石の情報も手に入ったことだったところを邪魔をされて、
確かに思うところはあるが……まあ、殺し合いなぞ正直どうでもいいな。」
「なら───」
「だが! 人間と共存はできんなぁ〜〜〜。
俺は偉大な生き物だ! 人間なんぞに協力する理由もないッ!
その存在と対等にあるにはどうしたらいいかわかるな?」
協力してはもらえないだろうか。
777のように話せばわかるタイプならば、
味方にできる可能性があると思って千は提案しようとするも、
言い切る前に一蹴されてしまう。
「なるほど、力を示せってことだろ?」
「そういうことだ。貴様らが俺を止めうるだけの力を示すならば、
このエシディシ、組むのも考えてやらんこともないが……そうだな。
俺の左腕か足を一本斬り落とせたら、貴様らの仲間になってやる。だが!
どちらかがこの戦いで死ぬようなことになれば、その時は好きにさせてもらうぞ。」
相手は脅威の再生力を持った存在だ。
味方にできるのであれば心強くあったが、
そうはならないのであれば仕方ないとあきらめる。
「このおっさんには俺のこの火炎の剣じゃ通じねえ。
となると警戒するのは千。お前のその剣だけになるはずだ。」
「この剣で斬れば波紋とやらの力になるのか……剣には心得がある。援護を頼めるかブラートさん。」
「ああ、わかったぜ!」
得物を構えると、互いに肉薄。
先陣を切るのは千で、エシディシも同時に迫る。
横薙ぎの一閃をジャンプする形で躱し、その背を回し蹴りで蹴り飛ばそうとするが、
エシディシに合わせて同じくジャンプしていたブラートの刃がレジスターへと迫っており、対応はそちらを優先。
手の失った左手を突き出し、触手となる血管針が突き出してブラートを狙う。
当たるわけにはいかないと迫った触手を火炎の剣すべて斬り落とす。
「滅殺!」
緋想の剣ではなく、代行者としての力で生み出した剣で十字の斬撃を飛ばす千。
緋想の剣では十字斬衝と言った魔力で出来た攻撃を扱うことはできないからだ。
それを背中で受け止め、出血こそ成功させるが切断には程遠い結果に終わってしまう。
「!?」
同時に周囲にすさまじい熱気。
血液が掠るだけで焼けるような痛みに、
他に飛沫する血液をよけると、大地で湯気を上げながら乾いていく。
「言ってなかったが俺の血液は最大で500℃にまで上昇させられる。
それは紙や木が燃える温度! もし貴様らが俺の血管を一本でも刺されば、
それだけでグツグツのシチューにされるってことを忘れないことだなぁ〜〜〜!!」
(まずい! 下手に切断をすれば返り血で軽傷じゃすまねえ。
それに今の発言、単なる自慢じゃあねえ。攻撃を躊躇させる為のものだ。
自分の能力を過信していたさっきとは違う。能力を利用した駆け引きをしていやがる。
というかやべえぞ。背中に傷ができたってことは……)
「さっきは流法を使うまでもないと言ったが訂正しよう。
貴様らには使う資格がある! 食らってくたばれ、怪焔王大車獄の流法!」
背中から多数の血管がうねりながら飛び出し、触手を伸ばしていく。
ブラート、千の双方に向かう触手は当たるだけで即死の一途をたどる必殺の一撃。
故に回避以外に選択肢はなく、互いに連携をとることができないほどに距離を離されていく。
「隙だらけだぜブラートォ!」
触手ばかりの回避に専念し続けた結果、
先に着地したエシディシの蹴り上げに対応しきれない。
蹴り上げはブラートの左手をへし折るどころかちぎり飛ばす勢いだ。
「グアアアアアッ!!」
「ブラートさんッ!」
近づこうにも血管針が邪魔してくる。
緋想の剣でも斬れば斬るほど沸騰血が飛び散り近づくことが叶わない。
宙を舞うブラートの左手をキャッチすると、それをエシディシは自分の腕にくっつける。
「結構いい腕をしているじゃあないか。そのうちすぐに一体化して元の太さになれるぞ。」
「人の腕を、勝手にものにしてんじゃねえ!!」
腕をちぎられたというのに闘志は砕けない。
迫る触手を細切れにしつつも、血液を無駄のない動きで回避。
そのままレジスターへの攻撃を狙い続けるが、ダメージはやはり無視できない。
キレのない動きではサンタナ並に異常な骨格の動かし方ができるエシディシに刃は届かなかった。
「せめて相打ちを、か。戦士としてはやるようだが、
残念だが俺はワムウと違ってその程度では尊敬に値せんなぁ〜〜〜ッ!!」
背中の触手がブラートの腕へと数本突き刺さる。
沸騰血が送り込まれた瞬間、湯気と共にぼこぼこと煮立っていく。
内側から焼けるような、感じたこともない感覚がブラートを襲う。
いやでも分からされる。今から火柱のように炎上するのだと。
「俺の熱血を送り込んだ! 貴様は時期にキャンプファイヤーの如く燃えるだろうさ!」
「……だったらなんだってんだよ?」
「何?」
「この身体に流れる熱い血はよ……他人の熱で埋められるモンじゃあねえんだよ!!」
理論もへったくれもないただの根性論。
しかし、その根性論だけで肉体を内側から焼かれながらもエシディシを倒さんとしていた。
ボッ、と自身の身体に火が付き全身を外からも内からも焼かれ始めているというのに、
寧ろ今までよりも動きのキレがよくなっている風にすら二人には見えるほどの剣技だ。
(この男ッ! 線香のように次第に燃え尽きるはずなのにッ!!
それでもなお俺を倒そうと躍起になっている!!)
次第に燃え広がる身体でもなお動こうと、倒さんとするその強い意志。
冷静さを取り戻したエシディシと言えども気圧されるほどの気迫を見せる。
「ソクラテスッ!!」
彼はもう助からないのだろう。
だとしてもエシディシを倒さなければ。
侍のような鎧をまとい、赤黒い刃を握りしめた異形と共に、
やけどを覚悟で血管針を切り裂きながら肉薄する。
「チィ!」
先は左手を捨てたことでダメージを抑えたが、
緋想の剣で背中を切られてしまえば対処は困難を極める。
即座に回避を優先し、ソクラテスの斬撃も一撃一撃が凄まじいものだと察し、回避に専念。
事実上の三対一だというのに、柱の男特有の骨格をバラバラにできる特異な体質と卓越した戦闘技術により、
仕留めることはおろか、勝利条件となる腕や足の一本を奪うことすら困難を極めていた。
いや、柱の男が人間に対して逃げに徹しさせていることそのものについては、
波紋戦士から見れば称賛されるべきレベルの行為だとも思えるが。
(グッ……限界、か……!!)
しかしいくらブラートが強い意志を持っていたとしても身体がついていけるわけではない。
切断された手からの大量出血、エシディシから沸騰血を送り込まれたダメージも限界だった。
そも、人間は体表面の30%以上の熱傷は生命に危機を及ぼすレベルのものとされている。
今までブラートが洗練された攻撃でエシディシを追い詰めていたことの方が奇跡に等しかった。
攻撃を何度も避ければ次第に勢いは落ちていき、彼が倒れてしまえば最早警戒するのは千だけになる。
ソクラテスを呼び続けるのも限界を迎え、消失。数の利は完全に失ってしまう。
「ガッ……!」
剣で直撃を防いだ鋭い蹴りを受けて大地を転がる。
すぐに立ち上がろうとするがエシディシに踏みつけられ動きを封じられてしまう。
緋想の剣も振るおうとしたがその前に先に取り上げられてしまい、絶体絶命となる。
魔力を使えばすぐに剣を生成し飛ばす、或いは令呪を使えばソクラテスは出せるだろうが、
出した瞬間腹に風穴を空けられる。そう確信するだけの力が相手にはあった。
「ふ〜〜〜む。一見すると高価な剣にしか見えんな……」
試し切りとして地面に向けてを放つと、
傷跡こそ綺麗に残るが波紋のようなものはでなかった。
波紋が出せる剣と言うわけではないのを理解すると、それを近くへ放り投げる。
「何故、とどめを刺さない……?」
緋想の剣を奪った後放り投げたことに疑問を持つ千。
あれは天敵となりうる武器のはずだ。奪うに越したことはないだろう。
だというのに、それをしまうことなくただ放り投げるのは奇妙な行動だった。
それに殺さないことにも奇妙だ。殺そうと思えばすぐに殺せるだろう。
ブラートと違ってこちらは鍛えてると言っても華奢な身体だ。
先の踏み付けでとどめを刺すことだってできたはずである。
「何、俺は人間であるお前『達』に敬意を表しているつもりだ。
波紋戦士でもなければ俺に傷などつけられなかったが傷をつけてきた。
俺の熱血を送り込まれてあそこまで戦えたのもブラートだけだろう。
ゆえに! ブラートの根性と千の与えた傷に免じて、貴様は今は殺さないでおいてやる。
今の剣も奪うつもりはない。あの剣がなくては貴様は俺とまともに戦えんだろうからな。
再びあの剣を持って、この殺し合いの中で俺にかかってくるといい。」
「……認めたくないが、今のあたしではお前に勝てない。」
ブラートと二人で挑んで勝てなかった。
そして50時間と言う短時間では、
強くなるだけの時間など残されていない。
「そうだろうな。だが! 逃がすこともせんぞ?」
懐から取り出した指輪を千の喉へと押し当てると、
指が肌をすり抜けるように体内へと入っていき、指輪を埋め込まれる。
「今、何をした……ッ!?」
今指が喉を貫通したはず。
なのに喉に手を当てても穴はない。
柱の男の独自の力だが、当然彼女には知る由もないことだ。
「名付けて死の結婚指輪(ウェディングリング)!
今貴様の体内の喉へと埋め込んだ。リングは三十日後に外殻が溶け始め、
中にある毒によって死ぬ。当然、手術で無理に外そうとしても毒が流れる。
解毒剤は俺の鼻のピアスの中に入っている。つまり! 俺を倒さなければ、
たとえこの殺し合いを生き残ったとしてもお前は死ぬというわけだ!
体調でも人数でも、いかような手段を以ってしてもこのエシディシを倒し、生き延びて見せろ!
それがッ! 数万年以上生きた中で波紋戦士でもない人間が、
俺の左手を奪ったことへ対する、最大の賛辞と思え!
陳sミニ俺は地下か室内のどこかに必ずいる。準備が整い次第、その辺を探すことだな!」
言いたいことを言い終えると、エシディシは千から離れどこかへと走り去っていく。
残されたのは千と緋想の剣、そしてブラートの遺体と火炎の剣だけだ。
人が焦げる異臭に眉をひそめながら、千は彼の死を悼む。
「すまない……ブラートさん。」
恐らくだが本当に殺し屋ではあったのだろう。
零や自分よりも洗練された太刀筋は並の人間ができるものではない。
無論、剣道を嗜んでいた千も軽く凌駕していたので間違いないと確信は持っていた。
少なからず殺し屋と言う字面の悪印象は拭えてないし、まともな会話だってできなかった相手だ。
好みの音楽も知らない相手ではあったが、少なくとも味方だと思えるような真っ直ぐな人だった。
「あの怪物を止めないと……」
エシディシは危険だ。
体調は万全ではし人数もそろえていない。
だからと言って放っておけば殺戮が広がる相手だ。
それだけは避けなければと、エシディシの走った方角へと走り出す。
緋想の剣と、形見となる火炎の剣を手に己の正義に殉じる。
【ブラート@アカメが斬る! 死亡】
【エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険 戦闘潮流】
状態:健康(左手は時期になじむ)
服装:いつもの
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、SA・ホットライン
思考
基本:生存優先。優勝でも脱出でもどちらでもよい。
00:カーズやワムウがいるのであれば合流。
01:興味深い奴がいれば面白いんだがな。
02:千に興味あり。俺を倒せるか?
参戦時期:ジョセフと戦う前
備考
※肉体に触れる形での捕食は瀕死の相手のみ捕食できます
※死の結婚指輪が支給品枠かどうかは採用された場合にお任せします
【恵羽千@CRYSTAR ―クライスタ-】
状態:屈辱、ダメージ(中)、ブラートへの罪悪感
服装:辺獄での服装
装備:死の結婚指輪、火炎の剣@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド、緋想の剣@東方緋想天
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:自分の正義を貫く。
00:エシディシを倒す方法を考える。指輪のためでもあるが、何よりあたしの正義のために。
01:仲間を集めるべきか、支給品を集めて一人で挑むべきか……
参戦時期:一週目、少なくとも777が加入している
備考
※死の結婚指輪を埋め込まれました。
そのままだと三十日後に死亡しますが、
何らかの手段で解毒、或いは進行するかもしれません。
※ブラートの支給品は燃えて消滅しました
・火炎の剣@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
ブラートに支給。デスマウンテンの溶岩で鍛えたという魔法の剣。
刀身が赤い輝きに満たされているとき、振るった軌跡に灼熱の炎を吹き出す。
・緋想の剣@東方緋想天
恵羽千に支給。比那名居天子が使用する本来は天人専用の武器。
気質を見極める程度の能力を持ち、必ず相手の弱点を突くことができるとされる。
また、この剣は相手の気質を霧に変え、霧は最終的に天候へと変える力もあるが、本ロワでは通常では使用不可能。
この剣で周囲の気質を極限まで萃め、ビームのように放つのが全人類の緋想天もあるが、同じく通常では扱えない。
なお東方憑依華では振るうときだけ刃が出るような描写があるが、本ロワでは普通には渡りが長い剣として扱う。
以上で投下終了です
投下します
☆
恐怖を克服せよ。
☆
フ ギ ャ ア ア ア ァ
猛獣の叫びが空に木霊する。
異様に発達した両腕。
逞しい胸筋。
臀部までびっしりと生えた黒色の体毛。
ゴリラ。
霊長類最強のその動物が、地面に仰向きに倒れ泣き叫んでいた。
ゴリラは温厚な生物だ。圧倒的な攻撃力と頑強さを持ちながら、終生その腕力を振るうことが無いという。
故に、この殺し合いという異様な環境に、ゴリラは恐怖したというのか。
いや、違う。
ゴリラは殺し合いに恐怖を抱いているのではない。
彼に泣き叫ぶほどの恐怖を植え付けたのは、悪魔を超えた悪魔と呼ばれた男ーーーその遺伝子を受け継ぎ、『悪魔王子』と名乗る青年だ。
彼の放った『幻魔拳』は肉体ではなく精神に放たれる打撃。筋肉と骨という鎧に包まれていない精神は打撃による破壊の影響をモロに受け、常に激痛や身体の変容を感じながら暮らし続けることになる。悪魔王子は幻魔を解除せずゴリラの前から去った。つまり、ゴリラはずっと幻魔に苛まれ続けていた。
無論、この殺し合いに呼び出される際に、幻魔は取り除かれているがーーーゴリラは未だに苦しんでいる。ただでさえ温厚で愚鈍なゴリラは、早急な変化への対処は間に合わず、幻魔にかかっていないのに幻魔を己で生み出し苛まれているのだ。
痛い。苦しい。怖い。
そんな負の感情がゴリラから引き摺り出されている。
己1人ではもうどうすることもできない。
だが、ゴリラの言葉を解する者がいない以上、彼を癒すことができるものは...
「大丈夫。落ち着いて」
否。ここにいる。
「貴方はいま怯えているだけ。頭はなんともなっていませんよ」
ゴリラよりも遥かに小さく細い手が頭に添えられ、優しく撫でられる。
人だ。それも女ーーーその手が撫でたのだ。
ゴリラにとって不思議な感覚だった。
彼にとっての人間とは己を世話するものか見せ物として観に来る者しかいない。
所詮は違う生物だと見下していると言ってもいい。
だが、いま己を撫でる女は確かに自分を救おうとしている。気遣っている。
なにより。
「私が救ってあげますよーーーだから落ち着いて」
その声を聞いているだけで、気持ちが安らいでいくのがわかる。
まるで本能からそうするべきだと理解しているかのように。
気がつけば、幻魔の幻影までもが消えていた、否。消えていることにようやくきづくことが出来た。
「ホ...」
ゴリラが落ち着きを取り戻すと、女は後光が差すような微笑みを浮かべた。
「申し遅れましたね。私の名はエデン・ワイス。この腐敗した世の救世主です」
☆
ヒトに己の正確な意思が伝わるなど初めてだった。
初めての体験にゴリラは感動するかのように捲し立てた。
いつも通りに動物園で過ごしていたら、妙な男に蹴りを入れられたこと。
その男と"遊んで"いたら、新たな男が乱入し、その男に殴られてから常に頭が破裂しているかのような激痛と幻覚に襲われていたこと。
ゴリラの言葉を、エデンはただ相槌と共に聞いていた。
話し終えるとゴリラはブルル、と大きく息を吐く。慣れないことをしたからだろう、今まで感じたことのない疲労感が彼を襲った。
「...辛かったですね」
エデンはゴリラに寄り添い、労わるようにその大きな頭を撫でた。愛撫にも似たその手つきにゴリラは目を細める。
心地良い温もりに、ゴリラは完膚なきまでに屈する。
重ねていうが、ゴリラは温厚な生き物だ。出会い頭に蹴撃を浴びせるような愚かな真似をしなければ、よほどのことがない限り危害を加えようとはしない。故に、ゴリラが己を理解してくれるエデンに懐くのも無理はなかった。
「ゴリラさん。私は貴方を救いたい...ですが、貴方を危険から遠ざけることはできても、刻まれた恐怖を取り除くことはできません」
ホ?と思わず聞き返すゴリラにも、エデンは微笑みを崩さず言葉を紡ぐ。
「恐怖とは克服すべきもの。ゴリラさん。貴方の恐怖を払拭するには、その手で禊を行う必要があります」
禊。ゴリラはその言葉に首を傾げる。
自分は何をすればいいのだ? 彼女は自分に何を求めているのだ?
そんな疑問が頭をよぎるが、エデンの優しい眼差しと声に思考は中断される。
「簡単なことです。ヒトは愚かにも貴方に暴力を振い恐怖を植え付けた...ならば、貴方も同じことを返してやればいい」
自分が、ヒトに暴力を?
「ゴリラさんの力はヒトには強すぎる。その拳を振るえばきっと相手を破壊してしまうでしょう。ですが、貴方が"遊んで"いた時、どんな気持ちになりましたか?」
ドクン、と鼓動が高鳴るのを感じる。
そうだ。あの蹴りを放ってきた男の腕をへし折り、地面に何度も叩きつけた時。なぜ自分は攻撃を止めなかった。相手が死ぬとわかっていても破壊し続けた。
そうだ。自分は興奮していたのだ。初めて感じた破壊衝動に酔っていたのだ!
「ええ。ええ。大丈夫。貴方のソレは否定されるべきものではない。私たちの領域を穢す者を排除するのは自然のルールなのですから」
自然のルールーーー即ち、弱肉強食。ゴリラは悪魔王子に弱者の烙印という名の恐怖を植え付けられた。ならば、その恐怖を克服するにはーーー言うまでもない。
ホ ギ ャ ア ア ア ァ ァ ァ
ゴリラの雄々しい雄叫びが響き渡る。ソレは恐怖を克服せん、これより自分に襲いかかる者全てを破壊するという闘争の意思。
『死ぬ気で戦ってみろ』、悪魔王子に問われたそのアンサー。
ゴリラの雄叫びを聞いたエデンは、微笑みを崩さず告げた。
「ゴリラさん。どうか貴方に加護があらんことを」
☆
エデン・ワイスは真祖である。
人智を超えた異形『吸血鬼(ヴァンパイア)』。その中でも王に選ばれ、優れた力を有した真祖。
例え人類の叡智である戦車を操ろうが、彼女の前ではブリキ細工に等しい。それほどまでに真祖の力とは強大である。
故に、この殺し合いにおいても勝ち残る自信はあった。
自分を脅かしうる他の真祖は既に全滅し、王(ゴア)でもない限り並び得る者はいないのだから当然だ。
しかし、エデンは敢えてゴリラと共に行動することにした。
何故か。エデンの中で燻り続ける女ーーードミノ・サザーランドならば、1人で優勝を狙うことはしないとわかっているからだ。
尊敬しているわけではない。敬愛しているわけでもない。ただ、あの女を超えた証を打ち立てたい。その一心だった。
エデンの方針は、ここに連れてこられる前と変わらない。
救世救民。
ただし、彼女にとっての『世界』と『民』はヒトの為に非ず。
彼女はかつて動物に育てられ、『ヒト』に全てを奪われた。家族も、住処もだ。
拾われた先でも安寧などなく。金のために芸を仕込まれ、媚びを売らされ続けてきた。そんな彼女にヒトへの愛着などカケラもあるはずがない。
彼女にとっての救世救民とは、彼女に付き従う『獣』たちのためのモノ。故に、彼女が救う優先順位はまず第一に動物達。その後に自分にとって価値のある人間達だ。その理念に従い、エデンは最初に出会えたゴリラを救うと決めたのだ。
ーーー本当は、彼にはもっと優しい言葉をかけてあげたかった。
けれど、幻にうなされるほどの恐怖を拭う術を他に知らなかった。
相手を害することでしか、劣等感を緩和できなかった。
「ホ?」
「...大丈夫。大丈夫ですから。ね?」
心配気に覗き込んできたゴリラを撫でつつ、エデンは思いを馳せる。
(ドミノ。きっと貴女ならこんな状況でも誰も彼もを救おうとするのでしょうね)
いくら態度で悪を気取っていても、結局、自分が関わった者たちを見捨てることが出来ない。それがドミノ・サザーランドという女だ。
(ドミノよ。せいぜい見ていなさい。私がこの灰色の世界で一筋の光となる瞬間をーーーアナタを見下ろす場所にまで昇りつめるその光景を)
(そして認めなさい。私こそが、女王様だと!)
☆
一線を超えろ。
常識を変えろ。
失われた尊厳と誇りを取り戻すために、さあもう一度立ちあがろう
☆
【エデン・ワイス@血と灰の女王】
状態:健康
服装:いつもの服装
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3
思考
基本:殺し合いに生き残りドミノを超える。
01:動物には愛情を。人には恐怖を与えて支配する。
02:あくまでも脱出派だが手段は問わない。逆らう者は動物以外は処刑。
参戦時期:少なくとも160話以降
【ゴリラ@TOUGHー龍を継ぐ男ー】
状態:健康
服装:無し
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3
思考
基本:恐怖を乗り越える。エデンに従う。
01:エデンに従う。
02:全力でヒトをぶち壊したい。悪魔王子に刻まれた恐怖を克服したい。
参戦時期:悪魔王子に幻魔拳を打ち込まれた後。
備考
※主催の手によって幻魔は解除されていますが、トラウマは残っています。
すみません、投下終了宣言忘れてました
投下します。
タイトルは「Don't lose your way」です。
殺し合いの会場のとある場所にて、二人の人物が対峙していた。
一人は巨漢と言ってもいい筋骨隆々な大男。
その悠に2mは超えると思われる背丈に合わせた、白を基調とした黒き三ツ星が刻まれた制服を身に纏っている。
もう一人は大男とは対照的に、背丈が非常に小さい少女だった。
大男と比べると、まさに子供かと見間違えるほどだ。だが、かといってその少女にか弱い印象はなく、その立ち振る舞いと威厳は大男に勝るとも劣らない。
少女は「風紀」と書かれた腕章を巻いた上着をマントのように羽織り巨大な光輪を頭に浮かべながら大男と相対する。
「その腕章……お前も校内の風紀を正す者か?」
「そうね。学園では風紀委員長をやっているわ」
大男の名は、本能字学園風紀部委員長にして生徒会四天王の一人、蟇郡苛。
少女の名は、ゲヘナ学園の風紀委員長にしてキヴォトスの生徒最強の一角とされる、空崎ヒナ。
「ならば問おう。お前はこの殺し合いをどう動く?」
蟇郡がヒナに問う。
既に肌で理解していた。目の前の小学生かとも見紛う程度の身長しかない少女はただの生徒ではない。
頭に浮かぶ光輪や背中の翼はどうなっているのかとか分からないことがあるが、これだけは分かる。
空崎ヒナは、自身が忠誠を誓う鬼龍院皐月のような、とてつもなく大きなモノを背負っていると。
「決まっているわ。風紀委員長として殺し合いを止め、首謀者を捕縛する。アビドスの全生徒会長を騙る相手なら猶更見過ごせない」
ヒナが蟇郡に答える。
ヒナもまた、相手の大男が見た目だけの風格だけではないと見抜いていた。
時折、身体の大きさのスケールが安定しないことは気になっていたが、強面な外見ではあるが殺し合いに乗るような人物ではないことは風紀委員長として一目で分かった。
「……ならばよしッ!」
「まず、私達のするべきことは――」
「――愚かにも俺達に挑もうとする不届き者達を鎮圧することだッ!」
ヒナと蟇郡の周囲には、本能字学園の一ツ星極制服を身に付けた生徒や、頭に光輪を浮かべたスケバンが大量に取り囲んでいた。
しかし、この二人を知る人物であればそんな輩など相手にもならないと断ずるだろう。
ヒナは愛用の銃を携え、蟇郡は拳を鳴らしてNPC達を屠っっていった。
【空崎ヒナ@ブルーアーカイブ】
状態:健康
服装:ゲヘナ学園の制服
装備:終幕:デストロイヤー@ブルーアーカイブ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ゲヘナの風紀委員長としてこの殺し合いを止める
01:まずはこのNPC達を蹴散らす
参戦時期:少なくとも最終章終了後
備考
【蟇郡苛@キルラキル】
状態:健康
服装:三ツ星極制服 縛の装@キルラキル
装備:ころころダンジョくん@Toloveるダークネス
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:本能字学園の風紀部委員長としてこの殺し合いを止める
01:まずはこのNPC達を蹴散らす
参戦時期:23話終了後
備考
【支給品解説】
【終幕:デストロイヤー@ブルーアーカイブ】
ヒナに本人支給。
ヒナがまるで自身の手足のように扱うマシンガン。
校則に違反したり風紀を乱す者は、その無慈悲な破壊力によって吹き飛ばされてしまうことになる。
【三ツ星極制服 縛の装@キルラキル】
蟇郡苛に本人支給。
完全防御の形態である「縛(しばり)の装」と、攻撃特化型の「死縛(しばき)の装」の二段階変形が可能な蟇郡専用の極制服。
この参戦時期の蟇郡の極制服は何度か伊織によってアップデートされているが、原作序盤の三ツ星極制服を支給されている。
【NPC解説】
【スケバン@ブルーアーカイブ】
原作に登場する武装不良集団。
その外見はかつて日本に存在したスケバンそのものだが、銃火器で武装している。
【本能字学園の生徒@キルラキル】
原作に登場する一ツ星極制服を身に付けた生徒。
極制服によって身体能力が強化されており、所属している部活によって能力が異なる。
以上で投下を終了します。
投下します
ーー枯れた花は捨ててしまった方が良い
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「あああああああ!!!」
こうやって切り裂かれて血飛沫を大地に飛び散らせるのは何度目だろう。
一瞬でも気を抜けば殺されかねない精密な攻撃。これ以上の致命傷の連続はもう許されない。
油断のつもりはなかった、話が通じる余地があったのかと考えたのが甘かった。
リーファーー桐ヶ谷直葉には余裕はない。
自分と同じ殺し合いに巻き込まれた誰かだと思った。
それにしては落ち着きすぎていたという疑念はあったけれど。
それでも話が出来るのならまずはそれからとも。
まずは対話から試みようとして、その浅慮を思い知ることになった
その女は、虹色の輝きそのものだった。
その神を幻視させる美貌はつい見とれてもおかしい。
それ以上に、それに人間らしさを感じられない。
顔に浮かぶ感情は分かるのに、それが人間であることを脳内が拒否している。
虹の輝きを放つというのに、どす黒い奈落の闇に飲み込まれそうな。
嫌な予感を感じ、即座に距離を取ったことは正解だった。
「……このまま素直に従わせても良かったが、カンの良さに救われたな」
その言葉を皮切りに、実力行使とばかりに襲いかかった。
支給された陰鉄という刀剣を振るいリーファは抵抗する。
女の方も得物は刀剣。一般的な西洋の片手剣のような形状。
だが真に恐るべきは、その刀身から放たれた文字通りの光条。
初見では視認の余地なく右太腿を撃ち抜かれた。
遠距離では不利だと接近して懐に飛び込んで見れば常人離れした膂力にて迎え撃たれてしまう。
「あ、がぁっ……!」
「多少は出来るらしいが、それだけではなぁ」
鳩尾に拳がめり込み、殴り飛ばされ血を吐く。
乗用車を直接ぶつけられたような痛みで、体の中身が拉げる感覚。
引き裂かれるような痛みに耐え、気を伺いながらも飛び立とうとする。
「ーーただのサンドバッグだぞ」
瞬時に距離を詰め、殴り飛ばしたリーファの腹に向け拳を当てる。
虹色の閃光が弾け、何十もの衝撃を伴いリーファの身体が文字通り血反吐を撒き散らした。
それでも死なないのは、リーファも死線をくぐり抜けた一人であるからか。
まず、あの時に痛みには恐ろしく耐性ができてしまったからか
「もう一度チャンスをやろう。私に従属を誓うのであれば最後の時までは生かしてやる」
服従か死か。選んだ答えの後に自由は無い。
女の従僕として生きるか、個としての死を迎えるか。
その慈悲は女神のごとく寛大で、神のごとく冷酷無比。
「ごめん、被る、わ……!」
それを、当然の如くリーファは断った。
ディー・アイ・エルのような『悪』の形相を浮かべる女に、誰が従うか。
自分の体は見るからにひどい有り様だというのは自覚している。
再生能力が無ければまともに戦えない程の実力者。
だが、この程度の傷で倒れては敬愛する兄に申し訳が絶たない。
兄である桐ヶ谷和人なら、黒の剣士キリトなら、この程度の傷で倒れたりなんてしないから。
「そうか」
そんな少女の信念を嘲笑うかのように、剣を持たぬ手の一刀に首を裁断せしめんと女が近づく。
回避しなければならないけれど、傷だらけの身体では限界だった。
自分は頑張った。傷つきながら頑張って、こうなるのだと。
運が悪かったと割り切れるほどの納得はしていないけれど、人並みに抗って、後悔がないわけではないけれど。
自分の行動に意味とかどうとか求めるつもりもないけれど。
(お兄ちゃん……最後ぐらい)
会いたかったなぁ、と。走馬灯にも等しい感傷を抱き。目を閉じて振るわれる手刀に身を委ねるしかなかった。
「させるかっ!」
鉄と鉄とが打つかる甲高い音が鳴り響くと共に、リーファは自分がまだ生きている事を実感する。
目を開けば、自分を守るように一人の少年が立っており、その姿を見ると同時にリーファの意識が闇に落ちた。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「穂波さん、俺はこいつを足止めします。そのうちに穂波さんはその子を連れて逃げてください」
「でも、学郎くん一人じゃ……!」
望月穂波は、足を震わせながらも殿を務め、自分に傷だらけの少女を連れて逃げるように告げる青年ーー夜島学郎の事が心配でならなかった。
Leo/needのリーダーとして頑張ろうと意気込んだ矢先のこと。事情も理由もわからず恐怖を隠しきれない彼女を不器用ながらも励ましてくれたのが夜島学郎という青年。
穂波が彼のお陰で落ち着いた矢先のことだった。この戦いに気づいたのは。
駆けつけてば妖精みたいな姿の少女が血まみれとなりながら、文字通り虹色に七光りを放つ女と戦いを繰り広げ、とどめを刺されようとしていた光景。
夜島学郎は、その女の実力がどういうものかを知っていた所でそれを放置できなかった。
「これでも荒事には慣れています。それに無事に離脱できたら自分も逃げて合流します」
「……」
身の程知らずだなんて、学郎自身が知っている。
それでも傷ついた人を放っておけるような見知らぬ誰かには到底なれない。
「だから、早く……!」
「……わかり、ましたっ!」
穂波がリュックから取り出した手袋を装着し、リーファの体を持ち上げ先生から離脱する。
離れていく学郎の背を見返しながら、今自分が出来ることを必死にと、穂波は無力な自分を悔やみながらも学郎を信じてこの場から離れることしかできなかった。
【望月穂波@プロジェクトセカイ】
状態:健康、不安
服装:いつもの服装
装備:スーパー手ぶくろ@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻りたい
01:この子(リーファ)を連れて安全な場所に逃げる。今は自分の出来ることをする
02:学郎くん……
参戦時期:「導く勇気、優しさを胸に」後
備考
【リーファ@ソードアート・オンライン】
状態:ALOアバター、気絶、全身に切り傷(大)、火傷(中)、右太腿に貫通痕
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない
01:ーー
参戦時期:アリシゼーション後
備考
※アバターはALOのものとなっています
最初から真っ向から戦うつもりはなく、二人が安全な場所まで逃げられたなら離脱するつもりだった。
逃げることを算段に入れた戦い方で、気を伺い自分も離脱するつもりだった。
夜島学郎は、そのつもりだった。
「これは、まだあの女には見せていなかったな。最も、そう安々と使えん代物ではあるがな」
だが、その見通しは余りにも迂闊だったと学郎は己が身を持って思い知ることになった。
最初こそ相手の影を利用して優位に戦えていた、はずだった。
飽きたと言わんばかりに相手が取り出したもう一本。光線を放つ刀剣とは違う、麗水の如く透き通った氷の刀身の剣。
それを振るったと思えば、学郎の下半身は一瞬にして凍結した。
その気になればすぐにでも殺せる実力差があって、その女は学郎を殺さなかった。
「お前は、何が目的なんだ。あんな事をして、一体何を」
だが、それが余裕からなのか他の理由からなのかはわからない。
凍らされても影はある。そこから吸収して脱出の算段を立てればと、まずは話すことで時間を稼ぐ。
学郎の思惑を知ってか知らないか、女が口を開いた。
「……貴様に話した所で理解できるかどうかは別だぞ?」
「理解できなくても、理由ぐらいは聞きたいです」
理解出来るかどうか、ではなく。その理由を聞きたいのは本心でもある。
戦う理由がないと戦えない、訳では無い。
結局時間稼ぎに過ぎないが、やらないだけましではある。
機嫌を良くした女が、再び口を開く。
「中々に殊勝なガキだ。……気が変わった」
「……がッ!?」
同時に、学郎の中で己の頭がなにかにキツく締め上げられる感覚が襲う。
まるで頭を糸を縫われている感覚。
意識が朦朧としていく。脳に空気が入ってこないように錯覚する
「な゛んだ、ご、れ゛……!?」
「丁度使いしての手駒を繕おうと考えていたところだ。歓迎しよう」
女の指を確認すれば、糸が伸びていた。
赤い糸が、自らの脳に突き刺さって伸びていた。
縫われている。自分の頭の中で、自分の記憶が、人格が、縫われている。
まるで花婿衣装を着させられて、幸せになる、そんな。
「生命戦維にすべてを捧げる歓びを、その身で理解するが良い」
女の言葉の意味はわからない。
だが、これから最悪な事が起ころうとしていることは確実であり。
せめて残った力を振るおうとして、その気すら徐々に失われて。
夜島学郎の意識は、糸のようにか細く縮み闇に沈んだ。
▼
「ガー助!」
「学郎君!」
「夜島!」
「……学郎」
『おめでとう学郎、これが君が着る花婿衣装だ』
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
文字通り全てが白く染まった夜島学郎と、悠然と佇む女の姿。
"精神仮縫い"によってその脳を縫われ、女の傀儡と堕ちた今の夜島学郎に本来の優しさなど残っていない。
あり得ないと思うが、自力で解かれないようにキツくは縛っておいた。
最も、あの時は自分と同じ生命戦維と同化した娘だからこそ為し得た事だ。
特殊な力を持っているようではあるが、ただの人間では自力でこれを解くのは不可能である。
「客人を呼び寄せるには礼儀がなっていないぞ、羂索」
どうして呼び寄せられたのか、無節操もほどほどにしたほうが良いか。
己を無断で呼び出した無礼をどうやって払わせるか。
飼い犬に近い扱いは少々気に入らないではあるけれど。
だが、余興としてはいい暇つぶしになると思いながら。
「だが、異なる世界というのは興味深い」
その事実だけは、女の興味を引く事象だ。
異なる世界へ勢力を広げ、何れは全てを包み込む。
なんとも素晴らしい未来だろう。
「せっかくだ、利用させてもらおうじゃないか。この祭りを。我ら原初生命戦維が為に」
全ては、生命戦維の為。
世界を、惑星を。生命戦維で包み込み、天星繭星(あまつたねのまゆぼし)として数多の異界に生命戦維を広げる始まりとしよう。
女の名は鬼龍院裸暁。
原初生命戦維と同化し、人であることを捨てた、生命戦維の総意の代行者。
ーー正真正銘の、怪物である。
【鬼龍院裸暁@キルラキル】
状態:疲労(小)
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む
01:このガキ(学郎)は使い捨てられる手駒として利用させてもらう
02:娘や皐月がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています
【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:『精神仮縫い』
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:裸暁様……
01:裸暁様に従う
参戦時期:43話より後
備考
【支給品紹介】
【陰鉄@落第騎士の英雄譚】
リーファに支給。伐刀者、黒鉄一輝が所持する固有霊装(デバイス)。
このゲームではこの武器の所有者は「一刀修羅」が使えるようになっている。
ただし一刀修羅は黒鉄一輝同様一日一回の制限、一度使うと止めることもできないというデメリットがある
【スーパー手ぶくろ@ドラえもん】
望月穂波に支給。手ぶくろの形をしたドラえもんのひみつ道具の一つ。
両手にはめると、大木を地面から引き抜いて振り回せることの出来る怪力を発揮する事ができる。
【天穿剣@ソードアート・オンライン】
鬼龍院裸暁に支給。整合騎士ファナティオ・シンセシス・ツーが所有する神器。
最高司祭アドミニストレータがレーザー砲のようなものを制作しようとして失敗した際の粗大ゴミになった大量の鏡を転用して制作された。
武装完全支配術として剣の切っ先から太陽光をレーザーライフルと同じ用途で発射することが出来る。このゲームにおいてはこの武器の所有者もこの武装完全支配術(エンハンス・アーマメント)が使用可能となるが、その際の体力の消耗はは太陽光の出力に比例する。
【青薔薇の剣@ソードアート・オンライン】
鬼龍院裸暁に支給。幼少期にユージオたちが発見して後にユージオが持ち出し保管していた神器。
元々は北の守護竜に認められた者のみに与えられるものであり、北の果ての山脈にある永久氷塊と青い薔薇がもととなっているためか刀身は透き通っている。
武装完全支配術(エンハンス・アーマメント)は任意の対象を氷の棘や青薔薇の蔓による拘束及び凍結。記憶開放術(リリース・リコレクション)は凍結対象から青薔薇を咲かせて天命(生命力のこと)を吸収し、空間リソースとして周囲に放出する。
このゲームにおいては武器の所有者は青薔薇の剣の武装完全支配術及び記憶開放術が使用可能となる。ただし武装完全支配術及び記憶開放術使用の際には消耗が発生する。
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「生徒たちの夢を、それを守るのは、大人の義務だからね」
【先生@ブルーアーカイブ】
状態:健康
服装:いつもの服装
装備:ディケイドドライバー@仮面ライダーディケイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。大人の義務を果たす
01:生徒たちが巻き込まれていないか心配
02:
参戦時期:???
備考
「なんて、な」
【先生@ブルーアーカイブ 死亡】
【エンヴィー@鋼の錬金術師】
状態:先生@ブルーアーカイブに変身
服装:先生の服装
装備:ネオディケイドドライバー@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:
思考
基本:好きにやる
01:この姿でこいつの知り合いに会って色々するのも楽しそうだな
02:
参戦時期:死亡後
備考
【支給品紹介】
【ネオディケイドドライバー@仮面ライダージオウ】
世界の破壊者こと門矢士が仮面ライダーディケイドに変身するのに使うベルト。
元来のディケイドドライバーで可能だったクウガ〜キバまでの仮面ライダーに加え、W〜ビルドそしてジオウを含む平成仮面ライダーにもカメンライド出来るようになっている。
このゲームにおいては「ディケイド・カメンライド」のカードのほか、クウガからジオウまでのカードも付属されているが、後者は力を失っているため紙切れ同然となっている。
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「ファ〜ア」
夜の闇が包む殺し合いの会場の一角の原っぱで、一つの影があくびをする。
その影は人型ではあるが人間ではない。
二メートルの大きさを誇るその影は、近くで見れば頭頂部と首回りが白髪のゴリラを思い起こさせる。
もしポケモンと呼ばれる怪物が存在する世界群の住人ならば、この人型をこう呼ぶだろう。
ケッキングと。
さて、このケッキングからすれば、殺し合いなどはっきり言って知ったことではなかった。
彼、性別が♂なのでこう称する、は野生で生きているポケモン。
なので別に人間がいくら死のうと気にすることはないし、同時にポケモンとして強さにそれなりの自負があるので、恐怖に怯えて行動することも無い。
流石に襲い掛かられれば反撃はするが、参加者を積極的に襲う気にはならなかった。
彼は最初に転移させられたその場に寝ころび、怠惰を極めていた。
一匹のNPCがやって来た。
そのNPCは緑色の丸っこい一頭身に短い手足と、頭に黄色い葉っぱのようなものを付けた四十センチほどの生物。
ケッキングと同じくポケモンの、名前はゴクリンという。
ケッキングはゴクリンがやって来たことに気付いたが、別にどうこうする気はなかった。
何せ、この二匹の間にある力の差は隔絶しており、仮にゴクリンが無策に挑めば無惨に敗北するのはどちらから見ても明白な話。
そんな相手にわざわざ何かするのは、ケッキングからすれば面倒でしかない。
「ゴク〜」
するとゴクリンは何を思ったのかゲロのようなものをケッキングにかけた。
このゲロのようなものはいえき。
これを浴びるとポケモンが持つとくせいが消失する技である。
このゴクリンはNPCとして参加者を襲う使命がある。
だから力の差など理解せずケッキングに襲い掛かり、まずはとくせいを打ち消すいえきを浴びせた。
これを浴びれば装備ではなく己の体質や性質に頼るものはそれを失い、大抵の存在は大なり小なり弱体化するからだ。
しかしゴクリンは知らない。
このケッキングが持つとくせいは、己を無意識に縛る枷でしかないことを。
「ゴガァァァァ!!」
いきなりいえきを浴びせられ怒るケッキング。
その怒りのまま立ち上がり、拳をゴクリンに振り下ろそうとする。
しかしここでゴクリンは口を大きく開けると同時に、そこから紫色の塊をケッキングに浴びせ、逆に怯ませた。
この紫の塊の名前はヘドロこうげき。その名の通りヘドロを浴びせる攻撃だ。
それを浴びせた隙にゴクリンは逃げ出した。
「ゴガァ!?」
怒りながらゴクリンを探すケッキング。
今が昼間ならここは原っぱ。すぐに見つけ出して追いつくこともできただろう。
しかし夜ではゴクリンの姿は良く見えず、どこに行ったかが分からない。
ドスドスドス
だがここで怒りを収める気にはならない。
ならばとばかりにケッキングは大きな足音を立てながらゴクリンを探す。
殺し合いなど知ったことではないが、あのゴクリンには腹が立つ。
故に必ず倒す。邪魔する奴も倒す。
そうケッキングは決意した。
今ここに、枷から解き放たれた一匹の怪物が放たれた。
人間や他の参加者など眼中にないが、同時に勘定することもない。
故に道を阻むならなぎ倒すことに躊躇などない。
この怪物を止めるのは人かそれ以外か。
はたまた最後まで止まらないのか。
それを知るものは、主催者にすらきっといない。
【ケッキング@ポケットモンスターシリーズ】
状態:とくせい『なまけ』消失、怒り(中)、ダメージ(極小)
服装:全裸
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品×1〜3、ホットライン
思考
基本:あのポケモン(ゴクリン)を探して倒す。邪魔する奴も倒す。
参戦時期:不明。
備考
※野生のポケモンです。
※性別は♂です。
※覚えているわざは当選した場合、次の書き手氏にお任せします。
※とくせい『なまけ』消失は殺し合いが終了するか、何らかの参加者、NPCの技・能力が作用しない限り治りません。
自然治癒はしません。
【NPC解説】
・ゴクリン@ポケットモンスターシリーズ
全身のほとんどが胃袋で出来たポケモン。
このロワでは出会った参加者にまずいえきを浴びせて特性を無効化し、それから襲おうとする。
ただし相手が自分より強いと判断すれば、いえきだけ浴びせて逃げることを優先する傾向にある。
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どうだ、そのタマシイの契約書を渡し、ワガハイの部下にならんか?
いいえ はい←
◆
森林の中を、ガスを潜めながら潜伏しているロボットがいた。
「さて…あれは…」
彼の名はスティング・カメリーオ。
元イレギュラーハンター、第9部隊に所属する実力者だ。
あまりも合理的で卑怯などをためらわない性格から、部下の信頼は薄く、隊長には昇格できないでいた。
シグマの反乱にシグマ側に参戦して、エックスにやられた彼であったが…
今は虎視眈々と獲物を狙っていた。
「にににに…あの人間…気づいてないぞ…」
彼が見つけたのは、人の少女。
下劣な彼は、生き残って己の実力を示そうとすることしか考えていない。
「3…2…1…今だ!」
スティングが飛び出した、長い鉄の舌、アイアンタングが少女を貫いた。
しかし、それは、消えた。
「は?」
まるで徒花となって散った彼岸花のように、その場から消えていた。
「…死ね」
「!?」
背後をスティングが取られた。
密林の中の戦闘を得意にして、不意打ち千万の彼が背後を取られたのだ。
それ以上に、純粋な実力でも彼は強い。
しかし、それを覆したのは。
まるでこの世の全てを憎んで、破壊せしめん、6人に分裂した少女であった。
【スティング・カメリーオ@ロックマンX 死亡】
◆
「なるほど…手前、なかなかの実力のようだ」
「…誰よ」
先程の少女がスティングの死骸を鎌で突き刺しながら、現れた大男を睨みつける。
いや、それは正しくいうと人ではない。
悪魔だ、とても狡猾で人を陥れる悪魔だ。
「しかし、珍しい種族だ、顔立ちや上半身は人魚のようだが、下半身はゴマすりのキングダイスやあの優秀な兄弟の用に二足歩行…面白い」
「…何をする気」
少女の殺気が増す。
「まぁ落ち着くといい、ワガハイとの契約に乗らないかと思ってね」
「…契約?」
そして悪魔――デビルは話を切り出した。
「簡単な内容さ――ワガハイと君の二人で他の参加者を殲滅する契約…どうだ、乗るか?」
「…」
少女は思案した。
この殺し合い、自分や目の前の怪物を越す強者もいるだろう。
浅はかか?いや、そうだとしても手数はほしい。
「いいわ…乗るわ」
「いい考えだ…それではこれは…餞別だ」
「…これは?」
渡されたのは紙切れ、一見、なんの効果もないように見えた。
「どうやらそれは自身の力を加速させてくれるらしい…面白いだろう?」
「…貰っとくわ…それじゃ」
「そうか…なら、向かうといい」
少女は手前、素早くその場を後にした。
「…クックックッ、あの小娘は使える…我ながらいい策だった…」
デビルは不気味な笑みを続けていく。
「さて…使えるだけ使い…後は本当のタマシイの契約書にサインしてもらい…この殺し合いから抜け出す…さぁ、行こうか…!」
自身の槍を持ち、デビルは少女と反対の方へ歩いていった。
【デビル@Cuphead】
状態:健康
服装:全裸…?
装備:デビルの槍@Cuphead
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いから抜け出す
01:少女を利用して円滑に進め、羂索を討ち、元の世界に帰る
参戦時期:キングダイスが敗北して、カップヘッドとマグマンが自分たちのもとに来たとこ
◆
別れた少女は、街を目指していた。
今やお役目など等に捨てた、私は全てを滅するために動かん。
私と――私の仲間を汚した全てを!
【郡千景@乃木若葉は勇者である】
状態:健康
服装:勇者の衣装
装備:専用スマートフォン@乃木若葉は勇者である
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)@忍者と極道、ホットライン
思考
基本:皆殺し
01:全てを殲滅する
02:デビルとの契約を活かす
参戦時期:vs若葉前
[備考]
スティングのバックとランダム支給品×1〜3は放置されています
【支給品解説】
【デビルの槍@Cuphead】
デビルに支給
普段のデビルが持ってる三叉槍。
【地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)@忍者と極道】
デビルに支給
5枚1組の紙麻薬(ペーパードラッグ)
超人的な力を得ることができる、制限として、本来は90分の効果時間を
30分に短縮されている。
【専用スマートフォン@乃木若葉は勇者である】
郡千景に支給
勇者になるためのアプリ「NARUKO」が入ったスマートフォン。
これによりいつでも勇者に変身することが可能である。
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「なんだかなぁ…」
頭をガシガシと掻きむしりながら、燻んだ金髪の女が、何とも微妙な表情で呟く。
女の名はボニー・パーカー。1930年代のアメリカで悪名を轟かせ、自由に生き、自由に死んだ。後世に演劇や映画の題材となった連続強盗殺人犯である。
死ぬ間際に、生涯唯一の心残りの為に悪魔女王と契約し、魔女千夜血戦(ワルプルギス)に臨んだ絶世の魔女でもある。
首尾良く一回戦の相手であるモナ・リザを撃破して、一回戦の勝者を招いて行われるお茶会に招待された筈が────。
「いや、何でこんな所に」
何が何やら分からない。あの脳みそ剥き出し女は、どうやら悪魔女王の城から自分を拉致してくれたらしい。
悪魔の女王の君臨する城で、そんな事を行えるというのは、悪魔よりも上の存在ではなかろうか。
「悪魔女王より上ってことか。だったら、彼奴に願いを叶えてもらうってのも良いな」
幸いな事に、支給されたのは拳銃。前世紀に流行したコルト1877『サンダラー』。元々銃使い(ガンスリンガー)の身には、使用する分には丁度良い。
獰猛な笑みを浮かべて歩き出したボニーの鼓膜を、遠くで誰かが上げた悲鳴が震わせた。
◆◆◆
「ギャアアアアアアアアアア!!!一体何がどうなってんのよおおおおお!!!!」
喚きながら全力疾走する、アオザイを着た一人の女。
泣き黒子が目を引く美貌も、必死という言葉を体現したかのような形相で台無しになっている。
脇目も振らずに走る女の後ろからは、凶暴な顔をした無数のゾンビが、女と同じく全力疾走していた。
女には何が何やら分からない。分かっているのは一つだけ。このまま捕まれば死ぬという事だけだ。
「何でゾンビが走ってるのおおおおおお!!?」
出身がFPSなので…。
折悪く直線の道路。左右は全てシャッターが降りたビル街。身を隠せる場所など何処にも無く。
「嫌!死にたく無い!!パリに行って───プギャ!?」
喚きながら走っていたのが災いしたのか、地面に広がっていた血溜まりに足を取られて、女はスッ転んだ。
痛みを意に解する暇も惜しんで立ち上がろうとした女へと、無数のゾンビが襲い掛かる。
「嫌アアアアアアアアアアアアアア!!!!」
無惨にもゾンビに踊り食いされる寸前で、女に最も近づいていたゾンビの頭が消し飛んだ。
呆然となる女の目の前で、ゾンビの頭が次々と消し飛んでいく。
五回、息を吸って吐く間に、溢れかえっていたゾンビは悉く頭部を失い倒れ伏した。
「ハッ!魔力で弾丸が補充されるってのは助かるぜ。装填も銃の交換も必要無え」
HAHAHAと快活に笑ったボニーは、未だへたり込んだままの女を見下ろした。
「此処で会ったのも何かの縁だが…。場合が場合だ。死んでくれ」
一発で頭吹っ飛ばしてやるから痛くねーぞ。心の中でそう思いながら銃口を向ける。ゾンビよりも現実感(リアリティ)の有る“死”の具現に、女の顔から血の気が引いた。
「私…死ぬの?」
「ああ」
「こんな所で、パリにもドバイにも行ってないのに?」
「知るかバカ女」
問答を打ち切って指に力を込める。ミリにも満たない僅かな動きを引き金に与える。それだけでこのバカ女は死ぬ。
「嫌。こんな所で、訳わかんないまま、ナメられて、殺される?絶対嫌!!」
バカ女の絶叫に合わせて、ボニーとバカ女の間に、鋼鉄の威容が現れる。
砲塔を装着した巨人の上半身を思わる姿のそれは、女の感情に合わせるかのように、鋼の拳を振り上げ、ボニーへと振り下ろす。
「!?」
鋼拳に押し出された大気と、鋼拳が路面を穿った轟を浴びながら、咄嗟に後ろへと飛び退いたボニーは、さっきまで自分が立っていた位置に、直径にして5m程のクレーターが出来たのを見て驚愕した。
「織姫並みのパワーが有りやがる!」
驚愕が冷めやらぬうちに、ボニーを追って再度放たれた鋼の拳を地面を転がって回避する。鋼拳が直撃した電柱が、異音と共に粉砕される。
「私は死にたく無い!アツコろ一緒にパリでクロワッサン行きたい!ボン・マルシュにも行きたい!!ドバイにだって、他にも沢山行きたい!!こんなところで死ねない!!」
「訳わかんねぇ事吐かしてんじゃ無ぇ!!!」
轟く銃声。連続して響く音は、あまりにも速い連射のために、音が重なって一つに聞こえる程だったが、放たれた銃弾の悉くが鋼の巨人を貫くことが能わず、命中した銃弾は明後日の方向へと跳ね返った。
「こんなお花畑オツムに、とんでも無えモン渡してんじゃ無えよクソボケがーーーー!!!」
「うるさい!この悪人!!」
それから10分以上、鋼の巨拳が空気を引き裂く音と、大気を震わせる銃声が続いたのだった。
あと女達の罵声も。
◆◆◆
「ゼーっゼーっ」
ボニー・パーカーは両手を膝について、荒い息を吐いていた。
怒鳴り散らしながら走り回り、魔力を銃弾に変えて撃ちまくった所為で滅茶苦茶疲れた。座り込んで休みたかった。
「はあ…はあ…」
バカ女はへたり込んで必死に呼吸を整えている。
此方もまた、怒鳴り散らしながら、不慣れな支給品を駆使して、人を超えた速度で走り回るボニーを追い続けたのだ。疲労しない訳が無かった。
「はあ…はあ…。こんな所で、死んでたまるか。絶対にパリへ行くんだから。ドバイにだって行くんだから」
「…ドバイが何処かは知らねぇけどよ。こんな時にもそんな事言えるなんてのは、大したお花畑だよ」
「何よそれ、バカにしてんの?」
「……褒めてるんだよ」
タイプこそ違うが、こうまで突き抜けたバカは、1人の女を思い出す。
もはや会う事の出来ないバカ女。クソッタレた街で、お花畑な夢を語っていた女。
最高に自由に生きて、最高に自由に死んだ。やり残した事など何も無いボニー・パーカーのたった一つの心残り。
「チッ……」
舌打ちする。目の前のバカ女にタリサの影を見てしまった以上、どうにも殺せない。タリサとは全く違う女なのに。
「ああ…やっぱりヤメだ」
【我 『自由』を欲す】 ボニーが魔法を発動する時の言葉(ワード)。
思い起こせば、自由を欲するこの身が、何故にあんな脳味噌女の言う事聞いて、殺し合いに励まなければならないのか。
悪魔の誘いにのって、魔女千夜血戦(ワルプルギス)に臨むことは、自分の意志で、自分で決めた。
だが、この殺し合いに臨むに際して、ボニーの意志は介在していない。
自由を欲する魔女であるボニーが、その自由を剥奪されて戦う理由は無い。
「だから安心しろよ。お前を殺したりはしないから」
「……本当に?」
「アタシは悪党だが、こんなチンケな嘘は吐いたりしねぇよ」
本当の事を言えば、殺そうと思えば殺せたのだ。魔女としての異能、『魔法』を使えば、このバカ女を確実に殺せた。それをしなかったのは、やはり殺意が足りなかった為か。
「チッ…どうにも調子が狂う」
ポケットに入っていたタバコを取り出して加える。生憎と火が無かった。
「…………………」
次の対戦相手が火を使う奴だったなー。なんて事を考えながら、取り敢えず未だに座り込んだままのバカ女を見下ろした。
「お前、名前は何ていうんだ」
「……人に名前を訊くんなら、まず自分から名乗りなさいよ」
「ボニー・パーカー。只の悪党さ」
「ユリ。只のいい女よ」
「……………オモシレー女」
何処かズレた女だった。全く以って、クソみてェな街で、お花畑な夢を謳っていたタリサのようだった。
殺し合いの只中で、何処か弛緩した空気が流れ、ボニーとユリの身体から張り詰めたものが抜けて行く。
ユリに倣って、ボニーも座り込む。10分も走り続けたのだ、いい加減に足が痛い。
「さっき言っていたけど、アツコって誰だよ」
「腐れ縁の知り合いよ」
何とも無しに会話をする。殺す気が完全に失せたのだ。バカ女相手の会話も、暇潰しには丁度良い。
「なぁ、オイ。ドバイってのはどんな所なんだ」
「バッカねぇ、ドバイも知らないの?ドバイってのは、セレブが集まるリゾートよ」
「訳わかんねぇ」
ふと横を向いたユリが近づいてくる人影に気づいた時、ボニーが全身に戦意を漲らせて立ち上がる。
近づいて来る人影は、悪党として生きて死んだボニーにとって、とても馴染み深い臭いを放っていた。
むせ返るような、血臭を。
◆◆◆
「あら、漸く人に逢えましたわ」
ボニーの視界に映るのは、真紅のボディースーツに身を包んだ銀髪の美女。
ボニーとユリを見て、満足気に微笑んだ女に、ボニーはこの女と殺し合いになる事を確信した。
「お一人は少しばかりお歳を召している様ですが、二人とも見目麗しくて結構な事ですわ」
「歳取ってるって私の事?私まだ現役なんだけど!」
激昂するユリをよそに、ボニーの思考は冷たく冴えて行く。
「テメェは…」
最悪だ。自分が此処に居る以上、他の魔女も居るかの知れないとは思ってはいたが、よりにもよって此奴が居るとは。いや、殺し合いには丁度良すぎるか。だが、今はそんな事よりも。
「何で生きてやがる!テメェ!!」
魔女千夜血戦(ワルプルギス)に於ける最初の敗者。巴御前に敗北し、消滅したエリザベート・バートリーが、なぜ此処に!?
殺し合いには乗らないと決めたのだ、その上で出会うならば、協力する事が可能だろう巴御前や黄月英あたりが望ましかった。
どうせ負けて消えた奴ならば、マリー・アントワネットでも居れば良いものを。
よりにもよって、協力も話し合いも妥協も協調も期待できない殺人鬼とは。
「何故生きている…と言われましても……私は死んでなどいない。それだけですわ」
「いや、お前は巴御前に殺されて消えた筈だ」
「何の事かサッパリ分かりませんわ。まぁ良いですけど。私の一回戦の相手の名を知っているという事は貴女は悪魔か魔女」
エリザベートは白い繊指を形の良い顎に当てた。
「悪魔には見えませんから、魔女ですね。何故私が死んだなどと言うのかは、ゆっくり聞かせて貰います」
言い終わるよりも早く、血笑いを浮かべて、猛速で駆け寄ってくるエリザベートを前に、ボニーは僅かに思考に耽った。
【どうする。此奴置いて逃げるか?そうすれば、エリザベートは此奴を嬲り殺しにするだろうから、アタシは確実に逃げられる】
掌をエリザベートへと向ける。
【ユリがこのクソ女に殺されるのは、気に入らねぇ】
このバカ女が、クソ女(エリザベート)のオモチャにされるのは、酷く気に入らない。
「我 自由を欲す!!!」
今此処でエリザベートと戦うのは愚策。それはボニーも理解している。
疲労している身で“血の魔女”と戦っても勝ち目は薄い。逃げるのが最善手だろう。
だが────。それはボニーの欲する『自由』では無い。
まともに戦っても不利。だが、一回戦で死んだエリザベートは、ボニーの魔法を知らない。ならば魔法を使用って一撃でケリを着ける。
“奪魔法 俺たちに明日はない”
手を伸ばした方向に存在するものを掴み、物理的な障壁を無視して己が手元に引き寄せる魔法。人体に使用すれば、内臓を掴み取ることすら可能な魔法。
モナ・リザの様に、これで心臓を抜き取る。
「あ?」
確かにエリザベートの心臓を掴んだ感触は有った。だが、手元に引き寄せる事が出来ない。
「制限か!!」
脳味噌女が言っていた事を思い出す。確かに出会う相手の心臓悉く抜いて回れば、ボニーは容易く優勝する。
魔女千夜血戦(ワルプルギス)では、他の魔女に戦うところを見られる為に、一度使えばタネが割れる初見殺しだが、此処ではそうでは無い。
使えば相手は心臓抜き取られて死ぬ。そして目撃者は1人も居ない。制限の対象になるのは当然のことと言えた。
「どんな魔法かは知りませんが、使用できなくなっているみたいですわね。お可哀想ですが、私にとっては好都合」
エリザベートの手にいつの間にか握られていたスレッジハンマーが、唸りを上げてボニーの胴へと振われる。
後ろに飛び退って躱したボニーを追って、再度振われるハンマーを再度回避。続いて振われる三撃目を前に出て柄の部分を抑える事で止める。
「いい加減に────」
エリザベートの顔に一発見舞うべく拳を振り上げる。その時、エリザベートの顔が見えた。
厭らしい、悍ましい笑みを湛えた、魔女の顔が。
悪寒が背筋を走る。全力で地面へと倒れ込んだボニーの頭の有った位置を、一筋の針が貫いていた。
位置からして、ボニーがあのまま立って居れば、右目を貫かれていた事だろう。
舌打ちしつつ、サンダラーをエリザベートの脳天目掛け、発泡する。
忽然と現れた石板に、硬い音を立てて銃弾がめり込んだ。
間髪入れず、石板の左右から襲って来る、九尾の猫鞭を転がって躱すと、立ち上がって走り出す。
「逃しません」
エリザベートがボニーへと腕を伸ばすと、巨大な車輪が現れ、自動で回転してボニーを追い出した。
「あんなモン!魔女千夜血戦(ワルプルギス)じゃ使ってなかったぞ!!」
走りながらサンダラーを連射、瞬時に連続して数十発の銃弾が着弾し、車輪が砕けるが、即座に無数の針がボニー目掛けて飛来する。
これに対して、ボニーは身を低くしながら、銃を乱射。攻撃を回避しつつ弾幕を張って、エリザベートの追撃と接近を阻む。
「クソッタレ!」
現状はボニーに不利。エリザベートは遠近両方に対応できる(オールレンジ)のに対して、ボニーは武器も魔法も遠距離用(アウトファイト)だ。
しいあも遠距離戦においても質量のある拷問器具を複数纏めて飛ばせるエリザベートが有利。完全にボニーに不利な状況である。
エリザベートの放つ拷問器具達。杭に釘に針に車輪鉄槌焼きゴテに鎖にその他諸々。その全てが異様な強度を誇り、只の釘がサンダラーの銃弾と相殺する有様。
ボニーの記憶にあるエリザベートの戦いと比較して、明らかに異常だった。この女の拷問器具は、此処まで頑丈では決して無かった。
「魔女千夜血戦(ワルプルギス)に臨んだ同じ魔女。少しは期待していたのですが、これでは愉しめませんね。下の上、といったところでしょうか」
エリザベートの言葉に応えるのは、轟音。連続する銃声が重なり合い、結果として一つの音として奏でられる轟きが、雑多な音を消しとばす。
放たれた銃弾は優に五十を超える。炸薬に黒色火薬を用いた銃弾であっても、これだけの数を撃ち込めば、人体などはボロ切れに等しい態となる。
だが、これの弾雨ですらが届かない。嘲笑を浮かべる余裕すら見せながら、エリザベートが腕を振ると、無数の鎖が現れ、絡み合って壁を形成、銃弾を悉く受けとめ弾き散らす。
ボニーが舌打ちする暇も無く、絡まり合った鎖が解けて、ボニーへと襲いかかる。
「ウオオオオオオオオオ!!!」
絶叫しながら、走り、引き金を引き、四肢や胴や首に絡み付こうとする鎖を回避し、撃ち落とす。
「随分と頑張りましたねご褒美です」
不意に至近から聞こえた声。鎖に気を取られた隙に、エリザベートに接近されていたのだった。
ボニーの視界を、無数の針が付いたモノが埋める。内側に針を植え込んだ上で、犠牲者へ被せる事を目的とした仮面だとは、ボニーには知る由もない。
咄嗟に仰け反って躱したボニーだが、僅かに遅れた為に、顔に無数の細かい傷が穿たれる。
体勢が崩れたのと、痛みに怯んだ事で生じた隙を見逃さず、エリザベートは更に追撃。
ボニーに先刻放った鎖が蛇の様にボニーに絡みつき、全身を拘束した。
「つーかまーえたー」
手を叩くエリザベートを見て、ボニーはこれから嬲り殺しの憂き目にあう自分の姿を幻視した。
「さて、と。じっくりと嬲り殺しにしたい所ですが…。時間も無いですし、手早く片付けましょうか」
エリザベートがボニーの処刑に選んだのは、巨大な車輪。高速回転する車輪を用いて、ボニーを少しづつ削り殺すつもりだった。
「これで少しづつ、少しづつ削って、削いで、丁寧に殺しても差し上げますわ」
地面に転がったままで、ボニーはエリザベートを睨みつける。幾重にも鎖を巻かれ、動きを封じられてもなお、その闘志に些かの怯みも見出せなかった。
「良いですわ、その眼その眼が恐怖と絶望に変わる瞬間。楽しみです」
ボニーの恐怖を煽る為に、緩慢な速度で迫る車輪。
高速で回転する巨大車輪が、ボニーに触れる直前。形容し難い音と共に粉砕された。
「あ〜〜もう!何なのよ!!いきなり湧いてきて、人を年寄り呼ばわりした挙句、勝手に仕切るんじゃ無い!!」
エリザベートが、此処には魔女の他に、もう一人居た事を思い出した時、既に鋼の拳がエリザベートへと放たれていた。
拳に引き裂かれた空気に当たっただけで、直撃すればどうなるかを知らしめる剛拳に、エリザベートの表情が引き攣った。
飛び退ったエリザベートは追い打ちの鋼拳を回避して、複数本の杭を飛ばすも、鋼の威容の装甲は悉くを弾き散らす。
「急かさなくとも、この方を殺した後にゆっくりと嬲って差し上げましたのに」
「ハァ〜!?キモチ悪いこと言わないでよ!!!」
鋼の上半身に据え付けられた砲塔が火を噴いた。実体を持たない、砲弾状の高エネルギーの塊は、エリザベートへと真っ直ぐに飛翔する。
対するエリザベートは、咄嗟に石板を五枚重ねて展開。盾とする事で、砲撃を防御するも、展開した石板が纏めて粉砕されてしまった。
「ガ…ッ!?」
エリザベートが苦鳴を漏らす。大したダメージでは無いが、確かに石板を砕かれた時に苦痛を感じたのだ。
ボニーに車輪を砕かれた時にも感じたが、僅かであった為に、錯覚だろうと思っていたが、拷問器具が破壊されると、どうにもダメージを受けるらしい。
「厄介な」
エリザベートの拷問器具が、ボニーの記憶にあるものよりも遥かに強化され、砕かれるとダメージを受ける様になったのには、無論の事だが訳が有る。
エリザベートに支給された一冊の書。血の伯爵夫人(エリザベート・バートリー)。奇しくもエリザベートの名を冠した支給品。
異なる世界のエリザベート・バートリーの凄惨無比な拷問の記録が綴られた日記。そして、一人で国を揺るがす魔人達の一人が所有する呪具。
この支給品の能力は、『日記に記された拷問器具を顕現し、自在に操る』というもの。
しかして異なる世界の存在ではあるが、本来の所有者であり、魔女でもあるエリザベート・バートリーが持てば話しは別。
エリザベート・バートリーがこの呪書を用いた場合。魔女としてのエリザベートが使用する拷問器具全てに、呪書により顕現する拷問器具と同等の性質を持たせる事が可能となる。
無論の事、加えられた制限により本来の性能をフルに発揮できるわけではないが、それでも武器としての威力と強度が跳ね上がり、手を触れずして操る事が出来、魔術呪術による守護を突破する。
然してその代償として、拷問器具が砕かれれば、エリザベート当人にもフィードバックダメージが入ってしまう。
闘技場の上空を埋める程の膨大な拷問器具を操るエリザベートでは,10を砕かれても些少の傷だが、痛むことは痛むのだ。
振われる鋼拳に対し、拷問器具を用いて防御では無く、脚を駆使しての回避を選択────強いられる。
無力な只人と思って放置したのが仇となった。魔女たるこの身が身の危険を覚える程の武器────というよりも最早兵器に相当するが────を与えられていようとは。
「問題無いですわ」
確かにあの人型は強力だが、操るのはタダの女。制圧する事も殺す事も、悪魔女王アグラット・バット・マハラットに見込まれた絶世の魔女であるエリザベート・バートリーには容易い事だ。
ユリへと向かって複数の杭と釘を飛ばし、ユリが人型を盾にして防いだ事で、エリザベートを視認できなくなった隙に乗じて接近。九尾の猫鞭を振るい、人型の左右からユリへと伸ばす。
この奇襲に、戦闘の経験も、戦う力も無いユリは対応出来ない。迫る鉤がユリを貫き抉る寸前。
轟く銃声。その数は九つ。
砕ける鉤。その数も九つ。
「アタシを忘れんなよ。イカレ女。まだアタシと踊ってる最中だろがよォ」
鎖による戒めを脱したボニーが、サンダラーを構えて立っていた。
「そうでしたわね。貴女を愉しんでから────」「やっちまえ!ユリ!!」
ボニーの声に合わせるかの様に、不意打ちでユリの支給品である鋼の人型の振るう拳がエリザベートへ向けて放たれる。
超重量と剛力の併さった打撃は、防御(うけ)る事など出来はし無い、回避するしか選択肢が無い。
されども、ボニーへと気を取られた隙を突かれたエリザベートは回避など出来る状況には無く。
車輪をぶつけて拳の進行方向を逸らしつつ、石板を複数重ねて盾とし、更に取り出した刺股でガードしながら後ろへと飛ぶ。
ぶつけた車輪が異音と共に跳ね返り、重ねた石板が薄焼の煎餅の如くに砕けるも、刺股で受けることには成功、そして拳の勢いにより飛ばされる。
そして当然、回避して晒されたエリザベートの隙を見逃すボニーでは無く。
「死にやがれええええええ!!!」
放たれるサンダラーの猛速連射。人外の域に達した連射速度は、瞬時に二十の銃弾をエリザベートの身体へと殺到させる。
エリザベートは刺股を路面に突き立てると、柄の部分を握り込んで倒立する事で銃弾を回避、両脚を大きく振って勢いをつけると、その勢いを利用して、素手でボニーへと飛び掛かった。
ボニーは、サンダラーや己が拳脚を用いた迎撃では無く、回避を選択。
エリザベートの攻め手は、何処ぞにある拷問室から取り出す無数の拷問器具。素手で有るとはいえ、接触の際にが必ず何らかの拷問器具を使用する。迂闊に迎撃などせずに、距離を離すのが賢明だった。
「ユリ!」
それにボニーが迎撃せずとも、ユリがいる。ユリの支給品は、魔女であっても受ける事を避ける代物だ。エリザベートがボニーに向かってくるなら、その隙をユリに突かせれば良い。
「掛かり、ましたね」
虚空に鎖が乱舞する。エリザベートは自身へと迫る人型を無視して、路面に複数の鎖を撃ち込むと、思い切り鎖を引く事で一気に移動。人型の背後へと回り込んだ。
「まずは厄介な武器を持つ、殺し易い貴女から」
鋼の人型を操作して、エリザベートへと鋼拳を見舞おうとしたユリへと、エリザベートが迫る。
エリザベートの狙いは、火力が低いが殺しにくいボニーでは無く、己を容易く殺せる攻撃力を持つが、簡単に殺す事も出来るユリだった。
「勿体無いですが、一撃で殺しても差し上げましょう!」
ユリを殺して支給品を奪う。そうすれば後はボニーとの勝利が約束された1on1。好きなだけボニーを嬲って嬲って嬲り抜いて嬲り殺せる。
悍ましい笑みで美貌を歪ませたエリザベートが、取り出したスレッジハンマーをユリの頭へと薙ぎつけようとして────手からハンマーの重量が消失した。
「え?」
不意の事に呆然となるエリザベート。その背中に、凄まじい重さを感じ、直後に生じた激痛。
「ガハッ!!」
背骨こそ砕けなかったものの、痛みと衝撃でエリザベートは仰け反り、よろめいた。
「心臓は盗れなくても、武器には使えるらしいなァ」
獰猛な笑みを浮かべて、エリザベートの背後にたつボニー・パーカー。
“奪魔法 俺たちに明日はない”を行使して、エリザベートの手からスレッジハンマーを奪い、奪い盗ったハンマーをエリザベートへと振るったのだ。
「もう一発!」
再度振われたハンマーがエリザベートのせなかに吸い込まれ、エリザベートは強打者に打たれたボールの様に殴り飛ばされた。
「ヤっちまぇ!!」
鋼の人型の左右の拳に破滅的なエネルギーが生じる。
立ち上がったエリザベートが、血相を変えて阻止しようとするものの、ボニーの放つ弾雨により阻害され、そして審判の刻は訪れた。
鋼の人型の左右の拳から、拳の形をしたエネルギー塊が放たれる。
エリザベートが自身の周囲を、ありったけの拷問器具で覆って身を守る盾とし。
ボニーがユリを抱えて地面に倒れ込み。
エリザベートが拷問器具を展開するのに僅かに遅れて、二つのエネルギー塊が着弾。腹に響く低く重い轟きと、人間程度なら宙に舞い飛ばす爆風が荒れ狂った。
◆◆◆
「あ〜…仕留め損なったかァ」
エリザベートの立っていた場所に発生したクレーターを見て、ボニーはうんざりした声を出す。
あの“血の魔女”は────魔女の全ては兎に角面倒臭いのだ。
己の欲を満たす為に、モナ・リザやマリー・キュリーといった、生前は殺し合いと全く無縁の女達ですらが平然と戦いに身を投じ、腕の一本無くした程度では戦意が衰えることも無い。
ましてやエリザベート・バートリー。悪魔女王から最も人間を壊した女。誰よりも惨たらしい欲を持つと称された魔女。
此処で殺しておけなかったのは痛い。かなりの傷を負っただろうが、その内また襲って来る。
【魔法抜きで、このザマじゃあ…アイツが魔法使ってきたらヤベーな】
エリザベートが魔法を使っていれば、圧倒的な手数で二人とも纏めて殺されていただろう。魔法を使う前に退けられたのは幸いだが、再戦を思うと頭が痛い。
「私…死なずに済んだ?」
「今のところはな」
ズレた事を言い出すユリに、“ヤッパ此奴バカ女だ”と思いながら、一服吸おうとして火が無いことに再度気付くボニーだった。
【ボニー・パーカー@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う】
状態:疲労(中)
服装:魔装:鉛の弾丸をぶちかませ(ボニー・パーカー・ストーリー)
装備:壊音の雷霆(サンダラー) @Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜2
思考
基本:殺し合いには乗らない。何とか帰還して魔女千夜血戦(ワルプルギス)に臨む。
01:他にも魔女が居たら面倒クセェなァ
02:ユリを守護ってやる。この手のバカ女が死ぬところは見たく無いので
03:協力できそうな奴がいて欲しい
参戦時期:一回戦突破後。お茶会に出る前。
備考
※魔女千夜血戦(ワルプルギス)一回戦で負った傷は、完全に治っています。
※“奪魔法 俺たちに明日はない”は参加者に対して使用する事が出来なくなっています。
【ユリ@バカ女26時】
状態:疲労(中)
服装:アオザイ
装備:インディアナの艤装@アズールレーン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜2
思考
基本:生還する
参戦時期:ベトナムに着いて一泊した後。アツコに起こされるまでの間
◆◆◆
「いきなり酷い目に遭いましたが、貴女に出逢えて良かったですわ」
艶然と微笑んで、エリザベートは“上”へと目を向けた。
「貴女のお陰で、昂りも鎮まりました」
エリザベートの目線の先で、首に縄を掛けられた少女が、断末魔の表情も凄まじく死んでいた。
両手の爪を全て剥がされ、全身を打たれ、歯を全て引き抜かれ。最後は首に縄をかけられて、爪先がぎりぎり地面に付く程度に吊り下げられ、力尽きるまで切り刻まれて。
自分の力で立つことすら出来ない程に責め苛まれた少女は力尽き、首が絞まって死んだのだ。
「この様な場合でなければ、もっともっと愉しめましたのに残念です」
歩き去るエリザベート・バートリー。この魔女に出逢ったものがどうなるかは、残された死体が物語っていた。
【サヨ@アカメが斬る! 死亡】
【エリザベート・バートリー@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う】
状態:疲労(中)
服装:魔装:血の伯爵夫人(カウンテス・オブ・ブラッド)
装備:血の伯爵夫人@Dies Irae
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜2
思考
基本:優勝する。愉しめる相手を探す
01:他にも魔女が居るとは思いませんでした
02:愉しめる方がもっともっといらっしゃれば良いのですが
参戦時期:一回戦に臨む直前
備考
※ 壊音の雷霆(サンダラー) @Fate/Grand Order
ボニー・パーカーに支給
ビリー・ザ・キッドの所持するコルトM1877ダブルアクションリボルバー。
銃弾は魔力によって精製される為に、装填の必要が無く、装弾数に関係無く撃ち続けることができる。魔力がない者が使う際には体力を消費する。
※ インディアナの艤装@アズールレーン
ユリに支給
サウスダコタ級二番艦インディアナの艤装。形状としては人型ロボットの上半身が宙に浮いている。両手と両目から青い炎の様なものが噴き出ている。
左右の拳からエネルギー塊を撃ち放つことができる。
KAN-SENが艤装を使用している際には、戦艦の主砲の直撃にも耐え得る頑丈さや、戦艦を近接戦闘で破壊できる身体能力を得るが、KAN-SEN以外が使用しても、能力向上効果は得られない。
砲撃は弾薬の類が無い為に、エネルギー塊を発射するだけに留まる。
血の伯爵夫人@Dies Irae
エリザベート・バートリーに支給
血の伯爵夫人ことエリザベート・バートリー@Dies Irae が獄中で記したとされる拷問日記。
能力は『日記に記された数々の『拷問器具』を何らかの形で現界させ利用する」というもの。
誰が使っても形成位階の事象展開型の性質を発揮する。要はルサルカが使用する形成を誰が使っても使用出来る。
霊的装甲や身体能力や五感の向上といった機能はオミットされている。
エリザベート・バートリー@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う がこの呪書を用いた場合。魔女としてのエリザベートが使用する拷問器具全てに、呪書により顕現する拷問器具と同等の性質を持たせる事が可能となる。
無論の事、加えられた制限により本来の性能をフルに発揮できるわけではないが、それでも武器としての威力と強度が跳ね上がり、手を触れずして操る事が出来、魔術呪術による守護を突破する。
然してその代償として、拷問器具が砕かれれば、エリザベート当人にもフィードバックダメージが入ってしまう。
NPC
感染者@Left 4 Dead
ウィルスに感性した人間達。見た目はゾンビ。生存者プレイヤー)を発見すると、物凄い勢いで走り寄ってきて、死ぬまで殴ってくる。
投下を終了します
拙作「おのれ■■■■■」において、エンヴィーの状態表にミスがあったので修正します
【エンヴィー@鋼の錬金術師】
状態:先生@ブルーアーカイブに変身
服装:先生の服装
装備:ネオディケイドドライバー@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜5、ホットライン
思考
基本:好きにやる
01:この姿でこいつの知り合いに会って色々するのも楽しそうだな
参戦時期:死亡後
備考
※先生の支給品はエンヴィーが回収しました
投下します。
『ここで負けてくれ』
綾小路清隆
「はぁ……はぁ……はぁ」
少女は逃げる。
しかし、その歩みはとても遅い。
それもそのはず。
手に握るは支給品の杖。
本来は、カードの魔力を開放できる杖なのだが、今は歩行手段として使用されている。
少女は先天性の疾患を抱えており激しい運動を禁じられている。
そのため”逃げる”という表現でも兎ではなく亀である。
少女の名は坂柳有栖。
高度育成高等学校2年Aクラスに在籍していた女生徒。
なぜ”在籍していた”なのかは――
「もう、鬼ごっこはお仕舞いか?」
坂柳を追うのは蝙蝠姿の化け物。
名はシュリーカー。
悪霊……虚でかつ生前は連続殺人犯。
「どうした?気合を入れてもっと逃げてみろ。このままだと死ぬだけだぞ?」
坂柳の周囲が爆発する。
その原理はシュリーカーの能力。
シュリーカーは坂柳を奮い立たせようとしているのだ。
勿論、善意なわけがない。
これは自分が愉しむためのゲーム。
必死に逃げる参加者(坂柳有栖)をじっくりと時間をかけて殺す。
それこそが、殺しの醍醐味だからだ。
一方、坂柳はというと……
死にたいか死にたくないかと問われれば、当然死にたくない。
でも……正直、その意思も薄れてきている。
退学を賭けた学年末特別試験の最中で知ってしまったからだ。
想い人の想いを。
『ここで負けてくれ』
それが綾小路からの伝言。
想い人からの残酷な言葉。
そして勝負は決した。
坂柳の退学で。
「もう……いいですわ。それと、殺すのなら一思いにお願いします」
ペタリと地面に座り込む。
諦めながら死を待つ。
そもそもが無理な条件。
運動のハンデを背負う自分が殺し合いに勝ち残れるはずなどないのだから。
もっとも頭脳戦ならいざ知らずだが。
それに、たとえこのゲームに生きて帰れたとしても無色透明な人生をただ過ごすだけ。
どうせ、この先に自分の望んだ景色はこない。
待ち望んでいた綾小路(彼)との本当の戦いという景色は潰えた……
それが坂柳有栖の現実(じごく)
「はぁ……つまらんな。まぁいい。他にも参加者は多くいるみたいだから他のを探すとするか」
元殺人鬼は坂柳有栖の選択に失望しつつも、次への愉しみに想いを馳せる。
次なる玩具で新しいゲームに興じると。
「それじゃあ……死!?」
(ヒッ!?な……なんだ!?)
ゾクリとした寒気。
シュリーカーは命を刈り取る行動を中断すると、視線を泳がす。
すると……
「ッたく胸糞悪い感情を”嗅がせ”やがって」
「ねぇ、そこの人。大丈夫?」
坂柳を救ったのは……
2m以上ある体躯に舐瓜(メロン)色の肌をしたオークと刀を持った金髪の少女だった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……ちっ、面倒なことに巻き込まれちまったみてぇだな」
苛立ちを隠しきれない男……いや蛮族(オーク)。
その名はエルピス。
職業は冒険者。
そして、人間との混血。
「理想が叶う権利……ね」
もし、願いが叶うとしたらエルピスの求めるのはただ一つ。
ウイスキー。
死んだ親友との約束の酒。
エルピスの世界では、”祝福のバラント”と呼ばれる奇跡の水。
誓った。
友が眠る泥炭(ビート)の大地に。
探し出して供えると。
「まっ、ありえねぇな」
そう、初めからその選択はエルピスにはない。
仮に羂索が本当に願いを叶えたとしてもだ。
あんなクソみたいな奴の手で手に入れたウイスキーなんかを親友の墓前にそえたら、殴られちまう。
故にエルピスが歩む道は一つ。
このクソッタレなゲームを打破すること。
そうケツイした頃、タイミングよくエルピスの前に参加者が姿を見せた。
金髪のショートカットの少女が。
「ねぇ、アンタはあの羂索って人のゲームに参加する気?」
「乗る気はねぇ。オレはな」
エルピスはサングラスを外すとそう答える。
そして、金髪の少女に問い返す。
オマエはどうなんだ?と。
赤い斑点のマザリの瞳が少女を見つめる。
「ふぅん……そっかそっか」
エルピスの言葉を聞いた金髪の少女は刀を収める。
「えらく、簡単に信じるんだな」
「別に。人を見かけで判断するようなことを私はしたくないから」
「それと、自己紹介してないよね。私は宮迫切子。そっちは?」
少女の名は宮迫切子。
リドゥから帰還するために結成された帰宅部の一員。
切子はエルピスの目をじっと見据えて答える。
エルピスも同じく切子の目をじっと見据える。
「……」
(その言葉に偽りねぇ……か)
エルピスの鼻は匂い……人の感情を敏感に察することができる。
故に切子の言葉に嘘偽りがないことを理解する。
「……エルピスだ」
偽りなき情報にはこちらも同等に返す。
エルピスも切子に名を名乗る。
「なら、エルピスさんって呼ぶよ」
「別に呼び捨てでも構わねぇが」
「ううん。エルピスさんって私よりも年上だよね?そういうのって大事だから」
「じゃあ、こっちは普通に呼び捨てで呼ぶぞ?」
(外見に似合わず、しっかりしてるな)
「別に構わないよ。よろしくね、エルピスさん」
互いに握手を交わした直後、爆発音が二人の耳に届いた。
「いくぞ」
「行こう」
二人は言葉と同時に走り出す――
☆彡 ☆彡 ☆彡
「誰だ〜〜?お前ら」
シューリーカーは苛立ちを隠しきれない。
せっかくのゲームの邪魔をされたため。
「鼻が曲がりそうな下種の「匂い」……名乗る必要があるか?」
「私もそれに同感。あんたみたいなのに名前を教えたくない」
エルピスの言葉に切子は同意する。
「はっ……その下種にこれから殺されるんだぜ」
緊迫する空気。
戦いは避けられない。
否。互いに避けるつもりはない。
「いくぞ」
「OK!」
エルピスの言葉と同時に切子も動く。
即席のパーティにしては息がピッタリ。
切子は支給品の刀、和道一文字でシュリーカーの身体を斬りつける。
「ほお、やるじゃねぇか」
(この動き……新米(アマチュア)ではないようだな)
切子の動きにエルピスは感心する。
一方、切子も自身の動きから理解した。
リドゥでの戦闘経験がこの殺し合いでも活かされていると。
一方、シュリーカーも退かない。
事前に召喚していた小虚(ミューズ)」に指示を出す。
すると小虚は、蛭を吐き出して飛ばしてきた。
二人は、蛭が体に張り付くのは避けたが……
「死ね!」
言葉と同時に舌を鳴らすと、蛭が爆発する。
周囲を爆風が囲む。
それが先ほどの爆発の仕組み。
遠距離攻撃。
フン…
(まぁ、オーク相手にゃセオリーだな)
直撃こそ避けられているが、威力はあり、エルピスに切子にダメージを与える。
「ねぇ、大丈夫!?」
「ああ。そっちはどうだ。あまり無理するなよ」
(さて……と、どう近づくとするか)
オーク(自分)と違い、切子は人間。
あまり無茶な防御はできない。
「自分は安全な位置で攻撃を続けるってわけか。やはり下種だな」
「挑発には乗らねぇよ。テメェみたいな相手は無理して近づく必要はねぇ」
片やシュリーカーも生前は連続殺人犯。虚になってからは二人の死神を喰らっている。
殺しの経験値は決して少なくない。
「やっぱり、殺しはゾクゾクするぜ」
「はぁ〜〜〜〜〜??人の命を何だと思ってんの!」
シュリーカーの言葉に切子は激怒する。
だが、そんな切子の激怒に油を注ぐかの如くシュリーカーは、悦に浸ったように答える。
「娯楽だよ。娯楽。そうそう、一番ゾクゾクした殺しは、あのガキの母親だったな」
シュリーカーが想起するのは、シバタユウイチの母親殺し。
「ガキを庇う母親をメッタ刺しにした感触……ありゃ、最高だった」
「なのに、あのガキの所為で俺は死ぬ羽目になった。心底、ムカつくぜ」
そう、その殺しが生前、最後の殺し。
だが、虚になっても、その下種な性根は変わらず。
「「……」」
エルピスと切子が抱く感情は一致する。
”許しておけない”と。
切子は、支給品と語るカタルシスエフェクト時での自身の武器である刀……二本を構えると、シュリーカーへ走る。走る。走る。
エルピスも同様であった。
「バカが!そんな直線的な行動。爆殺してくださいっていってるもんだぜ!」
シュリーカーの言葉通り、小虚は切子に向けて蛭を吐き出す。
しかし、蛭が切子とエルピスへたどり着くことはなかった。
「な、何ぃぃぃぃ!!??」
蛭は二人に張り付く前に蹴散らされた。
切子が放った技……
それは、鷹波。
二刀流の技。
勿論、切子は二刀流の心得はない。
答えはソードスキル。
再び、小虚が蛭を生み出すが、衝撃波が小虚もろとも蛭を蹴散らす。
気づけば、シュリーカーの傍にも数匹の蛭がいた。
これでは、爆発に自分も巻き込まれる。
そう判断したシュリーカーは舌で起爆することに臆する。
当然、その隙を二人は見逃さない。
――ザシュッッッ!
ゴァァァぁアアア!!!!!?????
「あし、足がっ、俺の足ィィィ」
刀がシュリーカーの足に楔となる。
シュリーカーは痛みに叫ぶ。
「これで、もうあんたは動くことが出来ないね」
「上々だ」
エルピスはシュリーカーの眼前に移動する。
そして、睨みつける。
「ヒッ……!」
「これで、少しは味わえてるか!?殺される側の気分ってやつを!!」
ブチィッ
判断が早い。
即座に行動する。
生き延びるために。
爪で引き裂く。
自分の足を。
そして、腕の翼で飛翔する。
この場から逃げるため。
「うそ!?足を自分から!?」
切子は驚愕する。
自分の足を切り捨ててでも逃げ出そうとするシュリーカーの行動に。
しかし、エルピスにとってそんな悪あがきはお見通しであった。
「忘れんなよ…その恐怖を!!頭のシンまで叩き込んで消えろ!!!」
エルピスは愛用の武器を構えると、引導を渡すべく攻撃する。
「嘶け 大罪公(オルクス)」
雷がシュリーカーを貫く。
命をも。
オゴァ……オゴァァァァアアアアアアア!!!!!?????
こうしてシュリーカーは、殺される側の恐怖を心の臓まで味わいながら死を迎えた。
【シュリーカー@BLEACH 死亡】
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……チッ」
(威力が相当落とされている……これがあの野郎の言っていた制限ってやつか)
先ほどの大罪公の雷。
並大抵な威力であったが、エルピスにとって到底満足できる威力ではなかった。
そして、理解する。
羂索がいってた制限の強大さを。
「あの……先ほどは助けていただきありがとうございます」
坂柳は、ゆっくりと体を起き上がると、二人に頭を下げる。
「お礼な「お礼ならステバで奢りってのはどう?」
エルピスの言葉を遮ると、切子は坂柳に要求する。
屈託のない笑顔に裏が無い本音の言葉。
クス……
「ええ、わかりましたわ」
切子のさっぱりとした要求にいつの間にか、口元を綻ばると笑顔で答えていた。
「おい……フン」
エルピスはやれやれとしつつも2人を優し気に見つめていた……
【坂柳有栖@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:正常、疲労(中)、
服装:高度育成高等学校の制服
装備:封印の杖@カードキャプターさくら
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:いまだ、定まらず……暗中模索
01:エルピス、宮迫切子と行動を共にする
02:ステバを見かけたらエルピスと切子を奢る
03:綾小路君もいるのかしら?……いえ、いたとしても、もう私は……
参戦時期:12巻最後学年末特別試験の幕が閉じた直後
備考
※会場に堀北がいたことから、綾小路もいるのではと推測しています。
▪ふういんの杖@ カードキャプターさくら
坂柳有栖に支給。
クロウカードを封印・解除するアイテムで、杖の先端にある赤い部分でカードを打つことでカードの魔力を引き出すことができる。
本ゲームではカードキャプターでなくても使用することができる。
「闇の力を秘めし『鍵』よ! 真の姿を我の前に示せ 契約のもとさくらが命じる 『封印解除!!(レリーズ)』by木之本桜
【エルピス@オークの酒杯に祝福を】
状態:正常、疲労(小)、負傷(小)
服装:冒険者の服
装備:大罪公(オルクス)@オークの酒杯に祝福を
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このクソッたれなゲームを打破する
01:宮迫切子、坂柳有栖と行動を共にする
02:バグスターウイルスをどうにかできる参加者を探したい
03;ステバとやらがあったら切子と共に有栖に奢ってもらう
03:マルギットはここにいんのか?
参戦時期:11話マルギットのDランク昇格の祝いを酒場でしていた途中
備考
※令呪の発動で 大罪公の全力が解放されます。
※匂いでなんとなくだが、切子と有栖が現実(じごく)を抱えていることを察しています。
▪大罪公(オルクス)@ オークの酒杯に祝福を
エルピスに支給。
魔匠(ベンケイ)が造りし戦鎚。エルピスの愛用の武器。
雷を発せられるが、本ゲームでは制限され、威力は大幅に落ちている。
令呪を使用することで本来の威力を出すことができる。
酒を一等不味くしちまうもの。それァなー 女の涙だよ byエルピス
【宮迫切子@Caligula2 】
状態:正常、疲労(小)、負傷(小)、カタルシスエフェクト発動中
服装:リドゥでの学生服
装備:和道一文字 @ONE PIECE 、カタルシスエフェクトの刀
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:
01:エルピス、坂柳有栖と行動を共にする
02:ステバがあったら有栖にエルピスと一緒に奢ってもらう
03:部長や帰宅部の皆もいるのかな?
参戦時期:エピメテウスの塔へ突入するより前
備考
※本編中、まだ切子エピソードは最後まで終わっていない状況です。
▪和道一文字 @ONE PIECE
宮迫切子に支給。
刃紋は直刃、造りは白塗鞘太刀拵。大業物21工に数えられる名刀。
世界一の剣豪を野望にもつ海賊狩りのゾロの愛刀。
本ゲームでは、ソードスキルとしてゾロの技を使用することができる。
この刀は…渡せねェんだよ どうあってもな…!! byロロノア・ゾロ
投下終了します。
投下します
どこかの研究所のような、無機質で窓がなく窮屈になりそうな廊下。
自動ドアが開くと同時に全力ダッシュを決める、白いワンピースの衣装の少女。
橙色の髪を揺らしながら全力疾走すると、後方では自動ドアから出てくる複数の鋼鉄の兵士。
名をヘルタースケルター。チャールズ・バベッジの宝具により展開される機械の兵士だ。
一機一機はそこまで強くはないが、残念だが彼女にはそれを倒すだけの力はない。
(NPCにも強弱があるけど、少なくとも私じゃ対処できない強さだよ!)
彼女、藤丸立香は数々の戦いを経験してきた。
何度命がけになったかなどもう数えるのも面倒なぐらいに。
だからこの手の緊急事態には今さら焦ることも驚くこともない。
ユニヴァースといった別の世界にも理解があるし、殺し合いも言い換えれば聖杯戦争の類。
だから行動の方針は今までとほぼ同じ。羂索から殺し合いの根幹に該当するものを処理する。
もしそれが聖杯であるというのならば、人類最後のマスターとしてそれを回収するつもりだ。
(でも同行するサーヴァントがいないのは辛い!)
藤丸は確かに修羅場をくぐってきたが殆どはサーヴァントのおかげだ。
彼女自身は魔術礼装などでごまかしていても、魔術回路を持っていただけの素人にすぎない。
簡易召喚も機能しておらず、状況としては武蔵と出会った下総国に近いだろうか。
いつもならばサーヴァントで蹴散らせる状況も、今は逃げの選択肢しか取れなかった。
(そもそも出口はどっち!?)
地下か地上かもわからない。
下手をすれば行き止まりの袋小路。
急いで脱出ルートを探さなければならない。
しかし地図のようなものもないので、道なりに進むしかなかった。
(とにかくサーヴァントか、味方になれそうな人との合流を……)
思考しながら走っていると、T字路となる別の道からやってくる人の姿。
ぶつかりそうになりブレーキをかけたくなるが、しかしかければ追いつかれてしまう。
なんとか避けることを優先する彼女ではあったのだが、相手は華麗にジャンプしながら宙を舞い、
彼女に一切ぶつかることなく走る経つの隣へ着地し、そのまま並走を始める。
更に彼女を担ぎ上げると同時に、彼女以上の速度でヘルタースケルターから逃げていく。
引き締まった肉体に、優雅な舞踏衣装を纏った中年男性を彼女はよく知っている。
「ドゥリーヨダナ!」
ラーマーヤナと並ぶインドの二大叙事詩、マハーバーラタ叙事詩。
ビーマやアルジュナが語れる物語における悪の花形、ドゥリーヨダナ。
性格はセコいところもあるが、裏表ない性格(と言うより露骨)で、戦闘能力は十分。
何よりありがたいのはバーサーカーにあるまじきE-と言うほどの狂化の低さが助かる。
今後の意思疎通もできるし、暴走の危険も極めて少ない。仮に別行動になったとしても、
自己判断で動くことができるサーヴァントと言うのはとても心強い。
「わし様が参加しておるから、マスターもいるとは思っておったが早々に合流できたか!
いや僥倖だな! わし様がいるからにはもう安心すると言い! なんせ百の分かたれし……」
「それはいいんだけど、何でドゥリーヨダナまで逃げてるの?」
お調子者の彼のあしらい方にはなれたと言った様子だ。
言葉を遮られて不満そうに口を尖らせているが無視。
運よく合流できたはいいが、疑問となることが一つあった。
サーヴァントであればヘルタースケルターは十分蹴散らせるはず。
しかしドゥリーヨダナが真っ先に取った行動は彼女を担いでの逃亡だ。
「……武器がない。」
「へ?」
ためらいがちに呟かれた言葉に、
思わず間の抜けた声で返してしまう。
「ないのだ! わし様の棍棒はおろか、まともな武器すらも!
わし様幸運Aだぞ!? だというのに一本も寄越されてないとは、
あの羂索とかいう小娘、わし様に恐れをなして警戒してるとみていいな!」
「いや、単にランダムなだけだと思うけど……」
「おかげで敵の数の多さに苦戦して逃げる羽目になったわけだ!」
「確かに増えてる。」
後方を見ればぎっちりと隊列を整えて迫るヘルタースケルターの軍勢。
3Wave以上はあるであろう人数。いかに高ステータスのドゥリーヨダナでも、
棒術なしの体術だけであの数の敵を相手するのには問題がないとは言い切れない。
特にドゥリーヨダナには矢避けの加護のような防御に優れたスキルを持ち合わせていない。
ならば逃げるのは必定であり、こうしてマスターを抱えて逃げるのも納得と言うわけだ。
「令呪を使えば恐らく宝具は使えるとは思うが、
こんな狭い場所で弟達を使えば群集事故を起こしかねんし、
何よりわし様が武器を持たず突撃するみっともないところを弟共に見られたくないわ!」
「変なところでプライド持ってる……」
セコいこともよく考えてるのに、
妙なところで高いプライドを発揮していく。
とは言え、こんなところで宝具を使うわけにはいかないのは同意だ。
「そこでマスター。早急に支給品をこのわし様に見せるのだ。
このままでは敵兵の武器を奪って戦う残念な姿しか拝めないぞ?」
「それで普通にいい気がするんだけど……あれ?」
とは言え数の利は向こうにある。
マスターを守りながら戦うのは厳しいことは事実だ。
せめて彼に使いこなせるだけの武器があればいいと願って手に出たものは。
「お、もしかしてあったのか武器が!」
「スマホ。」
「は?」
スマホならば共通で支給されるSA・ホットラインではないのか。
とは思うが、それならば最初に見たホットラインの見本とはデザインが違う。
白を基調としており、青い線が特徴的なスマートフォンには彼女は見覚えがある。
「確かこれ、バレンタインでもらったやつとデザインが同じような……これ起動キーみたい。」
「あれか、ナイトメアフレームだかモビルスーツをパワードスーツに落とし込んだとかいうあれか?」
「ドゥリーヨダナは下がって私の荷物から武器を探して。私はこれで戦ってみる!」
戦えないものにも戦えるように支給されてると羂索は言っていた。
NPCはあくまで舞台装置。本来みたいのは参加者同士の殺し合いのはずだ。
ならばこの起動キーでも十分倒せるぐらいの力はあるはずだと半ば確信を持つ。
「待て待て! ならわし様が使えばいいだけではないか!
マスターであるお前が前線を張ってどうするんだ馬鹿者!」
「戦力が二人になることの方が今は大事だよ。
パワードスーツの類なら今よりは頑丈になれるし、無茶はしないよ。」
「グヌヌ……体術も極めているわし様ではあるが、
体術だけではマスターを守りながら戦うのは難しいのは事実だ。
だが無茶だけはするんじゃないぞ! 逃げるも索の内だからな!」
「わかってる。えっと、これを起動!」
電源を入れると、立香の姿は光に包まれていく。
白を基調とした全身具足に覆われていき、
少女が身に着けるものではない余りにもごつい鎧を纏う。
鎧武者と言うよりは、もはやロボットに等しい姿は紛れもなく、
かの英霊、アーチャー『源為朝』の姿へと変貌を遂げていた。
「待て待て!? 為朝は人間なのだろう!? なぜパワードスーツになっているのだ!?」
「あの人を人間にいれていいのかどうかちょっとわかんない! 人属性ではあるけど!」
「それはそうとマスター! 弓もあるからそれも忘れるな!」
支給品を漁っていたドゥリーヨダナから、
為朝が使っている弓張月を渡され、それを受け取る。
本来ならばこの重量だけでもとても持てるものではないのだろうが、
今は為朝の姿であるからか、すんなりと受け取ることができた。
迫るヘルタースケルターを前に、弓張月を構えながら肉薄する。
「確か、こう!」
為朝が行っていた戦闘を必死に思い出す。
アーチャーではあるのだが白兵戦も十分可能で、
弓張月を二つに分割すると、双剣のように振るう。
手も足も出せなかったヘルタースケルターを破壊するには十分な威力を誇る。
もう弓の使い方がすでに弓ではないなとは、二人して思ったことではあるが、
カルデアにおけるアーチャーのことを考えれば本当に今更な話である。
とは言え数はドゥリーヨダナが引き連れた分も相まってそれなりの数になる。
いくら船を一矢で沈めた英霊の力と言えど、戦闘慣れしてない彼女では分が悪い。
「だめ、数が多い! 矢で一掃したいけど、
チャージする時間がないし……ドゥリーヨダナの方は何か武器は見つかった!?」
「もうないぞ!」
「ええ!?」
「おそらくマスター、貴様の礼装が支給品にカウントされておるのだろう!」
「あ、しまった。そのこと考えてなかった!」
決戦カルデア礼装が半ば普段着になっているが、
これも立派な魔術礼装の一つだ。支給品にカウントされてもおかしくない。
つまりドゥリーヨダナに渡せる武器は何もないということが確定してしまう。
「……ええい! マスターが戦っておきながら、
後方で見届けるなどわし様が許せん! 不釣り合いだがこの際言ってられん!」
立香に両断されて機能停止したヘルタースケルターから、
強引に武器を奪ってそれと体術を振るって敵を蹴散らす。
「私は後退するから、足止めお願い!」
彼女では一体一体を処理し、
鎧の頑丈さに物を言わせて攻撃を耐えていたが、
ドゥリーヨダナの場合は本人も認める華麗な動きで、
即席の武器でありながら次々と敵兵を相手取っていく。
これが英霊だ。人の手では届かず、後方から見守る万夫不当の戦士。
けれど今は違う。人類最後のマスターとして、そして今は戦う手段がある。
弓張月の弦を引き、魔力を込めていく。
何体かドゥリーヨダナで蹴散らしてはいるが、
やはり数が多くて処理するのに手間取ってる様子が伺えた。
「多分チャージできた! 戻って!」
重い弦を引き終えると、恐らく大丈夫だと判断すると立香は叫ぶ。
その言葉を聞くと同時に立香の後方へと下がり、弓の範囲外へと出る。
「違うのは分かってるけど、言ってみようかな……轟沈・弓張月!!」
発射された矢は最早は矢に非ず。
敵を殲滅する閃光のごとき青く輝く一矢が無機質な廊下を、
ヘルタースケルターを射抜きながら光が駆け抜けていく。
一矢と言うよりは、ビームと言った方が正しいレベルだろう。
「凄い威力。一掃できちゃった……」
敵は残骸になってるだけでなく、近くの壁まで突き破っている。
滅多にない自分が前線、しかも自分自身が英霊として戦うなど初めてだ。
これも一種の疑似サーヴァントとかの類なのだろうかと思いながら自分の姿を眺めていると、
「おお、でかしたぞマスター!
こっちにエレベーターがある!
これでこんな窮屈な場所からおさらばするぞ!」
瓦礫の向こうの敵を確認していたところ、
曲がった先にあったエレベーターを見つけたドゥリーヨダナからの歓喜の声でに安堵の息を吐く。
一人だと中々にしんどく感じる状況も、ドゥリーヨダナがいると何処か賑やかだ。
「うん、ドゥリーヨダナもありがとう。」
瓦礫を踏み砕きながらドゥリーヨダナの方へと駆け寄る立香。
重量ある音で今自分が変身していたことを忘れ、武器をしまってすぐに元の姿へと戻る。
この亜種特異点か、亜種平行世界か。定かではないが解決しなければならない。
令呪はドゥリーヨダナと合わせて実質5画。いつもよりも多いが当然その分使う場面は多いのだろう。
いつものような補充は当然ない。安易に使えばたちまち首を絞めるものになるだろう。
(見誤るなよ……私。)
カルデアのサポートもない。
監獄搭のようにすべて自分の判断が委ねている状況だ。
状況やタイミングを見誤らないよう、覚悟を決めて歩き出す。
【藤丸立香(女)@Fate/Grand Order】
状態:健康
服装:決戦礼装カルデア
装備:スマホ変形機能付き小為朝@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:SA・ホットライン、弓張月@Fate/Grand Order
思考
基本:この特異点(?)の解決
00:ドゥリーヨダナと一緒に事態の解決
01:私自身が為朝になるってすごいことになってる。
参戦時期:少なくとも虚数羅針内界ペーパームーンを経験済み
備考
※決戦礼装カルデアで支給品の枠を使ってます。
※性格は漫画版英霊剣豪を参考にしてます。
【ドゥリーヨダナ@Fate/Grand Order】
状態:健康
服装:第二再臨の格好
装備:ヘルタースケルターの武器
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3(武器になるもの一切なし)、SA・ホットライン
思考
基本:マスターに従って事態の収束。
00:武器をよこさないとは羂索め、わし様に恐れをなしたな?
01:でもぶっちゃけ愛用の棍棒が欲しいー!
02:アルジュナやビーマはいてほしくない。色々面倒だから。
参戦時期:少なくともカルデアに召喚されている
備考
※本人は令呪を使えば宝具を使えると思ってますが、
本当に使えるかは分かりません
【藤丸立香(女)@Fate/Grand Order】
状態:健康
服装:決戦礼装カルデア
装備:スマホ変形機能付き小為朝@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:SA・ホットライン、弓張月@Fate/Grand Order
思考
基本:この特異点(?)の解決
00:ドゥリーヨダナと一緒に事態の解決
01:私自身が為朝になるってすごいことになってる。
参戦時期:少なくとも虚数羅針内界ペーパームーンを経験済み
備考
※決戦礼装カルデアで支給品の枠を使ってます。
※性格は漫画版英霊剣豪を参考にしてます。
【ドゥリーヨダナ@Fate/Grand Order】
状態:健康
服装:第二再臨の格好
装備:ヘルタースケルターの武器
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3(武器になるもの一切なし)、SA・ホットライン
思考
基本:マスターに従って事態の収束。
00:武器をよこさないとは羂索め、わし様に恐れをなしたな?
01:でもぶっちゃけ愛用の棍棒が欲しいー!
02:アルジュナやビーマはいてほしくない。色々面倒だから。
参戦時期:少なくともカルデアに召喚されている
備考
※本人は令呪を使えば宝具を使えると思ってますが、
本当に使えるかは分かりません
支給品解説
・スマホ変形機能付き小為朝@Fate/Grand Order
藤丸に支給。為朝からのバレンタインプレゼントで、
元の形状はスマホだが変形して小為朝となって戦うこともできるらしいが、
それらは全て封印されており、源為朝の具足を身にまとうためのキーとして扱われている
なお、為朝の装備には摂津式大具足(金時の宝具)の技術が流用されてるとかなんとか。
・弓張月@Fate/Grand Order
藤丸に支給。源為朝が使用する弓。
大型の弓であるため、まともな人間には扱えない。
NPC解説
・ヘルタースケルター@Fate/Grand Order
チャールズ・バベッジの宝具で召喚される機械兵士。
製造主であるチャールズ・バベッジによく似ている。
個体次第では銃を装備してることもある。
異常で「Fate/Intersect Authenticity」投下終了です
投下します。
先に言っておきますが、今回の話はある登場キャラの原作の文体を再現した話です。
つまり意図してやっているネタということを念頭に置いてください。
参加者サリー
「な、何なのこれ……とにかくまずは武器を手に入れないと」
サリーは背負っているリュックを調べた・・・すると双剣が出てきた
「へえ……良さそうな武器ね」
その短剣はテイルズオブエクシリア2のカストールだ実際強いぞ
「とにかく、まずは知ってる人を探さないと……メイプルが居たりしないでしょうね」
ガサッサリーが友達を心配しているといきなりモンスターが現れた!
「何この、上半身が変な文様の入った裸で下は短パンと靴だけで、手にはハリセンを持った人間みたいだけど、頭は鳥のモンスターは!?」
「待ってくれ! 俺はモンスターじゃねえ!!」
ガポッとモンスターは頭を取った・・・すると人間の顔が出てきた
「それ鳥のマスクだったのね……人間だったんだ」
「まあこの状況なら仕方ないか…俺はサンラク」
「私はサリー、よろしく」
ふと気づくとモンスターじゃなかったサンラクと情報交換
「かく……」
「しか……New World Onlineなんてゲーム、俺は聞いたことないぞ」
「私もシャングリラ・フロンティアなんて聞いたことないわよ……」
「そりゃ俺はクソゲーハンターだから神ゲーにはあんまり詳しくないけど、それでもシャンフロは知ってるレベルなんだけどな」
「私は別にクソゲーハンターじゃないからなおさらおかしいわね……」
そう、実は二人は互いに別の世界の住人なのだ驚きたまえ
「俺はとりあえず情報を集めようと思うけど、サリーはどうする?」
「私も一緒に行くわ。もしかしたら友達も殺し合いに参加させられてるかもしれないし」
そうして二人は出発しようとした・・・すると金色の装束を見に纏った五つ目の老人が現れた!
「地球は悪(あく)かった・・・!」
「何言ってるのこの人……?」
「よっておぬしらも悪・・・!月にまみれて死ね!」
「何なんだお前!?」
「我が名はワンムス・・・ムスシリーズ最強の男じゃ!」
ワンムスが襲い掛かってきた!
「月のソード!月のランス!月のアクス!」
ワンムスは武器を使いこなすぞ更に全ての黒魔法と時空魔法も使えるのだ
「フフフ・・・更にやばくなるとケアルガも使うのじゃ・・・」
「回復までしてくるなんて……!」
「とはいっても攻撃は回避できないわけじゃないな」
サリーとサンラクは自慢の素早さでワンムスの攻撃を全て躱して攻撃をいっぱい叩き込んでナントカ倒した・・・まあ武器が強いし殺し合いの制限もあるし
「くっ・・・こうなったら肉体を捨てて・・・できない!!」
そうワンムスは実は精神体の第二形態オンリームスがあるぞでもこの殺し合いだと制限でなれないから死んだ令呪も使わせなければOK
「なんとか、なったのよね?」
「そうだな、じゃあこいつの支給品を分配しよう」
「そうね」
分配・・・それは分けて配ること・・・
【ワンムス@ファイナルファンタジーS 死亡】
【サリー@痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。(アニメ版)】
状態:正常
服装:New World Onlineアバター
装備:カストール@テイルズオブエクシリア2
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品×0〜2、ホットライン
思考
基本:死にたくない
01:アイテム分配しましょう
参戦時期:2期終了後
【サンラク@シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜(アニメ版)】
状態:正常
服装:シャンフロアバター
装備:ハリセン@テイルズオブシンフォニア
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品×0〜2、ホットライン
思考
基本:現実では死にたくない
01:アイテム分配しよう
参戦時期:少なくとも墓守のウェザエモン戦終了以降
※ワンムスのリュック(ランダム支給品×1〜3、ホットライン)は二人で所有しています
【支給品解説】
・カストール@テイルズオブエクシリア2
サリーに支給。
物理攻撃1014、魔法攻撃1004の双剣。
・ハリセン@テイルズオブシンフォニア
サンラクに支給。
装備すると斬り攻撃力850、突き攻撃力750、命中30、幸運20上がる双剣。
投下終了です
拙作「命ある限り」にてNPC紹介と死亡キャラの支給品の所在が記載漏れしておりましたので、wiki内で追記させていただきました。
大変申し訳ございません。
投下します
流星を切り裂く女剣士、というものを文字通り呆然と、周防七咲は地に伏しながら見守る他なかった。
陰陽師として、羂索という幻妖なのか何なのかわからない人の死体に取り付く存在を退治しようと意気込んだ矢先に出会った、もしくは愛(おそい)に来た狂人(しょうじょ)に文字通りフルボッコにされてしまった。
「貴女も私の「彦星」にしてあげる」とか分けのわからない事を言っていたが、それ以上に理由のわからない強さをその相手は持っていた。
動けたのは一・二撃与えた程度で、相手が結界のようなものを展開して以降は一方的な蹂躙。狂人(しょうじょ)の能力が単純明快な重力操作だと分かった時にはすでに遅く。
愛したいのか殺したいのかどっちなのかツッコミたいと思っていたが、これ以上にここで死んだら学郎がめちゃくちゃ悲しむだろうなぁなどと朦朧と考え込んでいた七咲をーー白いセーラー服に身を包んだ、表現通りの豪傑らしき女性に助けられた。
「誰かな? 私の愛(ラヴ)を邪魔しちゃうのは? もしかして貴女も私に恋しちゃった?」
「誰が貴様みたいな頓痴気に恋をするものか? 痴れ者が、身の程を弁えろ」
そのセーラー服の、陰陽師ではない女性は、その背から放たれる後光を伴って、狂人が降り注がせる流星の塊を文字通り一刀両断した。
それも一度ではなく、二度、三度。しかも踏み込み一つで大地がひび割れたり、刀と流星がぶつかり鍔迫りあった瞬間の衝撃波で思わず七咲が吹き飛ばされそうになったり。
修行で多少は強くなれたなんて思っていた自信が吹き飛びそうになる、そのような光景がそこにあった。
「……ちょっと萎えちゃった」
幕切れは狂人の方から。「萎えた」と言いながらセーラー服の女性へ向ける眼光は恋する乙女そのもの。勿論、七咲も含めて。
恋する乙女に見えて、その瞳の奥そこには凍える程の恐ろしさが垣間見える。
「だから次会う時は、コーディネートを整えてから、貴女たちにアタックしてあげる。貴女たち絶対私に恋させてやるんだから!」
そうして、狂気は流星のごとく去っていき。
残されたのは七咲と、セーラー服の女性だった。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「まあ正義の味方、とは違うけれど悪いやつではないのは保証します!」
「……問いかけの手間が省けたようで助かる、七咲」
周防七咲とセーラー服の女性こと鬼龍院皐月の情報共有はスムーズに進行した。
お互い殺し合いへの反抗は共通認識であり、殺し合いに乗るなんてまっぴらありえない人種。
皐月としては当初は七咲への問いかけをするつもりではあったが、そう名乗られた清々しさ、その瞳の真っ直ぐさは信頼に値すると皐月は判断した。
「望んでもなく無闇に刃を交える事態は私は好まん。だから早々と敵意のない事を表明してくれたのは助かった」
「いやまぁ、こっちもこんなボロボロのまま連戦とか勘弁!って感じだから」
鬼龍院皐月の方針はこの殺し合いへの反抗一択。
羂索の狙いが何であれ、人を容易く畜生へと変える凄惨なこの殺し合いなど認めてはならない。
大文化体育祭の当日が迫る中、このような事に巻き込まれるのは想定外。まさか裸暁に目論見を気づかれて先手を打たれたか、と勘ぐるもそういう事ではないようだ。
七咲も狂人との戦闘の傷が癒えてないのもあり、所々打撲痕のような怪我も目立つ。
「それに、それ以上傷だらけのまま無理しちゃうそうな奴のことあるからさ」
七咲の脳裏に浮かぶ、夜島学郎の姿。
色々抱え込んで、それで無理して傷ついて、そういう奴がもし巻き込まれたら碌な目にあわないだろうだなんて予想できている。そういう所が学郎の魅力であるのは分かっている。
でも、幻妖よりもたちの悪い、先ほどのお相手強制彦星認定狂人女みたいな頭の弾けた、殺し合いに乗っているようなやつがわんさかいるようなこんな場所で。
彼の善意がどういう風に悪意に捻じ曲げられるかなんて、予想すらできない。
「それにさ、ほら」
ただ、それだけでもなく。
周防七咲の夜島学郎への心残りは。
誕生日プレゼントを素直に受け取れなかった自分への。
「リボンのお礼、ちゃんと言えてないから。こんな訳分かんなのでくたばってたまるか! ってね」
「……何の話かは、触れないでおくぞ」
「気を使ってくれてありがと、皐月ちゃん」
どちらも、倒れるわけには行かない理由はある。
悪意に屈してなるものかという決意もある。
誰にも断ち切れぬ、絶ち切られてなるものかと心の内より叫ぶものがある。
「改めて、短い間になるがよろしく頼む、周防七咲」
「こっちこそ、頼りにしちゃうぞ、皐月ちゃん!」
そう周防七咲に告げる鬼龍院皐月の姿は、妙に心強く見えた。
あとまたしても皐月様の背後に後光が輝いていた。
周防七咲は気にしたら負けと思った。
【周防七咲@鵺の陰陽師】
状態:全身に打撲痕、ダメージ(中)、鼻血、疲労(中)
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない
01:皐月ちゃんと一緒に行動する
02:夜島やみんな、もし巻き込まれてたら……あーもうそういうのは今は考えない!
03:……皐月ちゃんの背後がなんか輝いて見えるな……いや私が疲れてるから……?
参戦時期:50話、学郎から誕生日プレゼントをもらった直後
備考
【鬼龍院皐月@キルラキル】
状態:健康、強い決意
服装:白いセーラー服
装備:菊一文字RX-7@銀魂
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜2、ホットライン
思考
基本:この悪意に塗れた殺し合いに反抗する
01:七咲と共に行動しながら、殺し合いに抗う同士を集める
02:殺し合いに乗るような悪人等は倒す
参戦時期:17話、大文化体育祭開催前
備考
▼
「カッコ良かったなぁ、あのセーラー服の人」
『星』の魔女。星の仙女・織姫。眩く輝く「恋欲」の狂人。
焔の魔女に敗れ、文字通り焼け落ちた彼女がこの場所に呼ばれたのは、彼女にとっては星のお告げであった。
「知らなかった、あんなにキラキラした人たちがいっぱいいるだなんて」
あの対戦相手にもそうだったけれど、暗い世界から飛び出してみれば、どこもかしこもキラキラしたものが溢れている。もしかしたら羂索も、自分とは違う意味でキラキラしたものを求めていたのかもしれない。
彼は「可能性」というキラキラを、織姫は「愛」というキラキラを。
「あの黒いオーラの人も、白いセーラー服の人も」
だから、皆に恋して、愛して。
世界中が私に恋すれば良い。
この場所は、それが出来る。
勝ち抜けば、それが実現できる。
魔女千夜血戦(ワルプルギス)ではない第二の道筋、星の導きが織姫に示された。
「そしてみんなにも、私を蘇らせてくれた羂索さんたちにも」
曇りなき感謝の感情。
恋は力。愛は力。かつて自分が相手した燃え盛る彼女も、その心の奥底の原動力は同じだったから。
一方通行の恋もあると彼女は言っていたが、織姫にとってはそれはやっぱり性に合わない。
愛というのは相互にあってこそ必要なものだ。それが例え歪んだ形で為したものだとしても。
「魅せてあげる、そして恋してあげる。私の、みんなハッピーでラヴラヴになれる新世界を!」
『星』の魔女織姫。ーー警察からの通称は少女A。
己の立場を利用し党の幹事長である父を脅すことで、自らのファンを飼育小屋(マンション)に『彦星』として監禁した狂気の地下アイドル。その総数、104名。
ーー我、『恋愛』を欲す。
狂気の星のライブステージが、再び開演する。
【織姫@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う】
状態:健康、期待、疲労(小)
服装:魔装:ぴゅあぴゅあ☆恋愛物語(シリアル・ラバー)@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:みんなにLOVE(ラヴ)を、私の『恋』の力で『彦星』にしてあげる!
01:黒いオーラの人と白いセーラー服の人。次はちゃんとおめかしして立ち会わないと、ね☆!
02:最後にはちゃんと羂索さんたちにもLOVEを届けないと!
参戦時期:死亡後
備考
【支給品紹介】
【菊一文字RX-7@銀魂】
鬼龍院皐月に支給。真選組一番隊隊長沖田総悟の所持刀。
刀としての切れ味もさることながら、一番の特徴は内部に搭載されたデジタル音楽プレイヤーであり、連続再生時間は最大124時間。
刀にそんな機能必要あるのか?というツッコミはお控えください
投下を終了します
投下いたします。
こちらは以前、コンペロワに投下したものを一部手直ししたものになります。
ここは会場内の、無数の廃品が置かれた場所。
そこには、どこか発明家を思わせる出で立ちをした、青い鎧の男がいた。
「主催者とやら!このガミガミ魔王様を意のままに操ろうなど、10000000000(百億)年早ーい!」
「こんなちゃちな会場などさっさと抜け出して、オレ様こそが世界一の悪党であることを証明してみせるわーっ!」
彼の名前はガミガミ魔王、発明とお宝が大好きで、男のロマンを追い求める『自称・悪の魔王』である。
彼は主催者たちに対し、全面的に立ち向かうことを宣言していた。
直ぐにこのデスゲームの会場から抜け出し、そしてお前たちに立ち向かうと見栄を切った彼だったが、実はある懸念があった。
「……しかし、まずはこれをどうにかして解除しねぇとなぁ…こいつがある限りオレ様は首輪をつけられてるようなもんだからな…」
「あとは……道具がないとどうにもできんわな。何かないか確認してみるか」
そう、このレジスターを付けられていることには、主催者を倒すことは愚か脱出するなど夢のまた夢でしかないことだった。
こうして彼は自分に支給されたものがどのようなものなのかを確認し始めた。
「…片手で使える、小型のドリルか……これは使えそうだな」
彼に支給されたもの、それは刀身がドリルになった機械仕掛けの剣だった。
「……なるほど、この道具は『ドリルクラッシャー』という名前なのか…名前といい、ドリルモチーフなのといい、随分と男の浪漫が分かってるやつじゃねぇか…まぁ、このガミガミ魔王様にはちょっと劣るがな!」
そして彼は説明書などからその武器の名前や使い方などを理解し、またこれを作った男に対し『男の浪漫』が分かるやつだと感心していた。
「よし、早速使い心地を試すとするか……っと」
そう言って彼はそれを振るうと、ドリルが勢いよく回転し刃先が高速回転する音と共に、そこから渦巻く光の刃が放たれていく。
「おぉっ!?なんだこりゃ!?さすがドリルだ、こいつは凄ぇ!!」
そして彼がその武器を近くにあったスクラップに叩き付けると、金属が激しく削れていく音と細かい金属の粒が飛び散っていき、そのスクラップが見る見るうちに切り裂かれていった。
「こいつがあれば100人力ってところだな!欲を言えばトンカチや爆弾が欲しかったところだが、このガミガミ魔王様にふさわしい武器だ!」
それを見て彼は自分の手にした武器の性能に満足し、その性能の高さに大喜びする。
「さて、後はオレ様の部下になりそうなヤツや、愛しのナルシアちゃんがいないか探しに行くとするか!」
こうして彼は新たな武器を手にすると、いけすかない主催者たちを打倒するために、そして『愛しのナルシアちゃん』がこの悪趣味なゲームに呼ばれていないことを祈りながら意気揚々と会場内を探し始めるのだった
【ガミガミ魔王@ポポロクロイス物語】
状態:健康
服装:若干すすけた、青い鎧姿
装備:ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2
思考
基本:主催者をぶっ飛ばす。
01:ひとまず、他の人たちを探しに行く。
02:ナルシアちゃんがいればもちろん協力する。あのガキンチョ(ピエトロ王子)がいれば……まあ、協力してやるか。
03:あと、このロマンあふれる武器を作ったやつが何者なのかもすこし気になる。
参戦時期:ポポロクロイス物語(無印)エンディング中、部下のロボットたちと共に"新ガミガミ魔王城"の建設を行っているところ。
備考
【支給品解説】
・ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
…ガミガミ魔王に支給。
仮面ライダービルドが使用するドリル型の武器で、ドリル部分を前後に組み替えることでブレードモードとガンモードに変形する。
フルボトルを装填するソケットが付いており、フォームに関わらず別のフルボトルの能力を使用することができる。
またメーターは内部発動機の稼働状態を示し、針が大きく振れるほど攻撃の威力も上昇するという特徴を持つ。
投下終了です。
以上、ありがとうございました
投下します
どうすれば良かったのだろう。
出口の無い迷路のように、同じ疑問が頭の中を駆け回っている。
どこで間違えてしまったのか。
何をどうするのが正しかったのか。
考えても考えても答えは出ず、誰も正解を教えてくれない。
ヒントも何も与えられない、逃れようの無い現実だけが小さな体を圧し潰す。
美遊・エーデルフェルトという少女を世界は決して逃がさなかった。
朔月家から連れ出され、兄の手で平行世界に飛ばされ、新たな生活を得た。
友を作り、学校に通い、時には魔術絡みの騒動に身を投じる事も有れど、不幸ではない日々を送り、
そうして再び、鳥籠に幽閉された。
広いばかりで冷たい牢獄に、美遊個人の幸福を願う者は誰もいない。
求めるのは世界を救う装置としての役割のみ。
美遊の意識が介入する余地は無い。
当然と言えば当然の話だ、人一人と世界のどちらが重いかなど分かり切っている。
拉致され訳も分からぬ内に殺し合いを命じられたとて、選択の余地すら貰えなかった。
寒空の下、飾り気のないリュックサックと共に放り出された美遊を襲う暴力。
黒一色で身を固めたガスマスクの集団は、対話に興味無しとばかりに拳を振り上げた。
優れた運動神経を持つ美遊だが、人を超えた身体能力の者が10人以上で来ればひとたまりも無い。
まして彼女の手には相棒であるステッキも無く、実質無力に等しい。
殴り飛ばされ、うつ伏せに倒れたところへ次々靴底が降り注ぐ。
幼い肢体を覆うのは薄手のドレス一枚、到底防御機能など期待出来ない。
絶えず感じる痛みをどこか他人事のように感じ、また同じ疑問が湧き出す。
どうすれば良かったのだろうか。
自分を助ける為に、イリヤ達は危険を冒してまでエインズワースの工房に乗り込んで来た。
自分が巻き込んでしまったせいで、生まれた世界から引き離されてしまった。
自分のせいで、イリヤもクロも傷付いている。
世界なんかよりもずっと軽い、自分を助けようとしたばっかりに。
(私は……)
聖杯としての運命に逆らおうとしたこと自体が、間違いだったのか。
誰も答えてくれない。
その通りだとも、違うとも言ってはくれない。
寄り添う友は影も形も見えず、救済を掲げる魔術師達ですら現れない。
怒りも喜びも宿らぬ暴力だけが、酷く乾いた死を齎さんとし、
風が吹いた。
美遊の視界の端を黒が横切り、次の瞬間には自身を取り囲む気配が消失。
油の切れた機械のように顔を上げ、ふと鼻孔を刺激臭が突く。
鉄と、形容し難いナニカが混じり合った悪臭だ。
臭いの出所はそこかしこに染みを作る泡。
今の今まで自分を殺そうとしたガスマスク集団の成れの果てとは露知らず、意識は眼前に立つ存在へ向かう。
黒があった。
虫の息の己とは違う、群れを成して襲った連中とも違う。
鮮烈な存在感を放つ黒に見下ろされる中、徐々に意識が落ちる。
身体的・精神的、両方での負担へ蝕まれながらも黒からは目を逸らさない。
自分を憐れんだ死神か。
自分を弄ぶ悪魔か。
それとも、今以上の地獄へ引き摺り落とす魔王、なのだろうか。
◆
どうしたものかと独り言ちる。
少女の皮を被った異形、平行世界の者達を集めての殺し合い、自分がここにいる意味。
全てが想定外だった。
他者を殺すのに今更躊躇は抱かない。
妹の為に優しい世界を創る、その為だけに魔導へと堕ちた。
未来に自分の居場所が無いのも、自身の幸福が代償だとしても後悔は無い。
魔王となった選択をやり直すつもりは無い。
尤も、今と昔では己の力を行使する理由も大きく異なるが。
魔女との契約を履行し、今度は自分が彼女の跡を継ぐ事となった。
その矢先にどういう訳か、見知らぬ地へ強制招集させられたのである。
殺し合いに乗るのも、自身の使命を考えれば悪い話ではない。
闘争と死、混沌が活性化してこそ世界は停滞を免れる。
だが一方で疑問に思う。
なる者の駒となり殺戮を広げた所で、本当に魔王の使命に繋がるのだろうか。
己が生まれ落ちた世界かどうかも定かではない、狭苦しい箱庭で意味などあるのか。
生じた猜疑心が殺戮を撒き散らす選択へ待ったを掛け、方針を決めあぐねていると少女が襲われる場面へ遭遇。
軽く蹴散らし泡と化した集団には目もくれず、見下ろす先には気を失ったちっぽけな命が一つ。
殺すのは簡単だ、軽く腕を振るうだけでひき肉に変えられる。
が、前述の通り自身はまだ殺し合いに乗るか否かを明確に決められていない。
「話を聞いてからでも遅くはない、か」
特別深い理由は無い、強いて言うなら何となくで助けた相手。
しかし拾った命なのに変わりは無く、言葉を交わしてみるくらいは行うべきか。
二時間後に開示されるホットラインの情報と合わせ、方針を決めても遅くはない筈。
「場合によっては……」
最初の場で羂索に食って掛かった青年。
大胆不敵ながらも情報を引き出し、反逆の意思を見せた白い皇帝。
平行世界の自分とは相容れぬ道を往くかもしれない。
少女を抱きかかえ、泡で汚れた場所へ背を向ける。
取り敢えずは適当な屋内に運び、腰を落ち着け話を聞くか。
言葉には出さずに決め、
「お…兄ちゃん……」
「……」
腕の中から聞こえたか細い呟きに、ほんの一瞬硬直。
数秒と経たず、何事も無かったかのように疾走。
マントを靡かせ駆ける中、仮面の下でどんな顔かは自分でも分からなかった。
【美遊・エーデルフェルト@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ】
状態:疲労(中)、精神的疲労(大)、体中に殴打痕、気絶中、運ばれてる
服装:黒いドレス
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、SA・ホットライン
思考
基本:?????
00:…
01:私は……
参戦時期:3rei!!19話、イリヤの選択を聞く前。
備考
【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
状態:健康、運んでる
服装:いつもの(仮面、マント、装甲服等々)
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、SA・ホットライン
思考
基本:どうするべきか…
01:少女を屋内へ運び、話を聞いてみる
02:殺し合いに乗るかは保留。場合によっては向こうの世界の私と敵対するかもしれん。
参戦時期:LAST CODEでナナリーに別れを告げる前。
備考
※制限によりザ・ゼロでバグスターウイルスを消滅させるのは不可能になっています。
その他に能力が制限されているかは採用された場合、後続の書き手に任せます。
『NPC紹介』
【ショッカー戦闘員@仮面ライダー THE FIRST】
ショッカーの最下層に位置し、集団での戦闘で威力を発揮する、動植物の能力を与えられず、人間能力のアップのみが図られた量産性を重視した改造人間。
常人の3倍の運動能力を持つ。
胸部に肋骨をイメージした骨模様があしらわれた黒ずくめのスーツに顔が防毒マスクのようなプロテクターで覆われている。
大きなダメージを受けると全身が泡となって消滅する。
投下終了です
投下します。
「家事も済んだし、銃(チャカ)でも弾きに行きますか」
何かこう…半魚人のような顔をした、全身卵型のような体格の女性が、そう言った。
その声はどこか、合成のものっぽかった。
彼女は、「あたしンち」の母っぽかった。
けれども、どこか違うような感じもあった。
「何でもいいから撃たせてください」
彼女はこの殺し合いにおいて自らに支給されたリュックの中を探る。
やがて、あるものを取り出した。
彼女がまず取り出したのは、一丁の銃だった。
「これは…」
その銃は、銃としては異様に大きなものだった。
何故なら、その銃は人間相手を想定して作られたものではないからだ。
全長39cm、重量16kgのその銃は、対化物戦闘用の13mm拳銃「ジャッカル」。
化物が扱い、化物を殺すために開発されたその銃は、専用の弾丸しか撃てないようになっている。
「撃ちてぇ〜」
彼女は、この人間には絶対に扱えない銃を撃ちたくなった。
元々彼女の好きな銃であるグロック17の全長は204mm(20.4cm)、重量は705g(0.705kg)、明らかにボリュームが違いすぎる。
それでも、自分に支給されたものの中で唯一銃であるこれを試し撃ちしようとした。
普通なら、こんな銃を彼女が使ってみようと考えることもなかっただろう。
けれども、この殺し合いにおいてはただ一つだけそれを可能にするかもしれない手段があった。
参加者達に配布されている令呪というもの、この殺し合いにおいては一画消費するごとに99.9秒だけ、使用者もしくはそれが扱う道具に「本気」を出させることができるらしい。
つまり、普通の人間でも体のリミッターを外して力を使うことができると考える。
これがあれば、このふざけた銃の反動も自分で抑えることができるかもしれないと彼女は考えた。
そして彼女は早速、令呪を一画分自分の体に向けて使用した。
今後の殺し合いのことを考えれば、試し撃ちで消費するのは悪手であろうが、とにかく彼女は銃を撃ちたかった。
「片手で撃ってこそよね」
彼女は肉体が強化された状態でジャッカルを右手だけで構え、銃口をその辺にあった街路樹くらいの太さの木に向ける。
片手で撃つのは、その方がカッコいいからだ。
そして、指にかけたその引き金を引いた。
『ドンッ!!』
『バキイッ!!』
『グシャッ!!』
普通にダメだった。
いくら肉体を強化しても、ジャッカルの反動には耐えられなかった。
どれだけ令呪の力で潜在能力ギリギリまで筋力を上げても、本来のジャッカルの使用者であるアーカードの力までは届かない。
そればかりか、片手で撃ってしまっては、余計に反動を抑えられない。
本来の彼女がデザートイーグルを持った時にやったことと同じような失敗がここでも繰り返された。
弾丸を発射したと同時に、ジャッカルの本体が跳ねてそれを持っていた彼女の腕ごと彼女の顔面の右側辺りにおもいっきりぶつかる。
これにより、彼女の顔面右側辺りの骨が粉砕され、脳にも大きな衝撃が走る。
勢いよく銃身がぶつかってきたことにより、彼女は後方にも吹き飛ばされる。
そしてその辺にあった岩に背を打ち付けて、そのこで顔から血を流しながらへたり込むことになる。
彼女がジャッカルから撃った弾丸は狙った木の一部に命中し、その幹の半分くらいを抉っていた。
そして、少しした後にバランスが崩れてきたのか、木は幹の抉れている部分とは反対側に傾いていき、やがて弾丸が命中した場所より上の方がへし折れて倒れてしまった。
◇
「そこの方!大丈夫ですか!?」
少しした後に、新たな人物がこの場に現れる。
この人物は、先ほどの銃声音を聞いてこの場にやって来た。
そして岩を背もたれにへたり込んだ状態のあたしンちの母の姿をした者を発見し、心配して駆け寄ってきた。
その人物は、「重傷の吉良吉影に駆け寄ってきた救急隊員の女性」であった。
「どうしましたか!?撃たれたのですか!?」
救急隊員の女性は先ほど銃声が聞こえてきたこともあり、そういった質問を母にした。
「撃った」
「え?」
「撃った」
「とにかく、何か治療できるものが無いか探しますね!」
状況はともかくとして、目の前に重傷を負った人間がいることから女性は自分に出来ることをしようとする。
母の横で自分のリュックを開け、中から何か治療に使えそうなものを探そうとする。
「……で撃ってこそよね」
「はい?」
意識朦朧でまともに思考できないはずの母が、何か言い始めた。
「片手で撃ってこそよね」
『ドンッ!!』
母は、一応まだ手に握ったままの状態だったジャッカルの銃口を、救急隊員の女性に向けた。
その直ぐ後に、引き金を引いた。
前の令呪使用によるパワーアップは既に時間切れになっていた。
けれども、新たに使用することで再び筋力を強化し、今の重態のままでもジャッカルを持ち上げた。
母はジャッカルを横に向けて弾丸を発射する。
勢いよく発射されたその弾丸は、救急隊員の女性の胴体を破壊する。
「がっ…」
まともな言葉を出す暇もなく、その女性はここで無惨に命を奪われた。
胴体に大穴を開けられた死体は、離れた場に吹っ飛んで行く。
そして、これを撃った母自身もただではすまなかった。
横向きに弾丸を発射したジャッカルは、その反動で母の顔面に側頭部から突き刺さる。
これにより、銃身がぶつかった部分から母の顔が大きく凹み歪む。
ただでさえ元から顔の骨が折れていたのに、更にもう一撃加えられればそれはもう致命的だ。
銃身の衝撃はこれで脳をもグシャグシャに破壊した。
こうして、この場に命あるものは1つもなくなった。
『WASTED』
【母@情熱の赤い薔薇。そして、ジェラシー。(揉むな揉ませろの動画) 死亡】
【吉良吉影に駆け寄った救急隊員の女性@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 死亡】
※対化物戦闘用13mm拳銃「ジャッカル」(残り弾数4)@HELLSING、母の支給品(ランダムアイテム×0〜2、ホットライン)、吉良吉影に駆け寄った救急隊員の女性の支給品(ランダムアイテム×1〜3、ホットライン)が周囲に散らばっています。
[支給品紹介]
【対化物戦闘用13mm拳銃「ジャッカル」@HELLSING】
吸血鬼のアーカードが使用する巨大な銃。
製作者はウォルター・C・ドルネーズ。
全長39cm、重量16kg、装弾数6発、専用弾として13mm炸裂徹鋼弾を撃ち出す。
弾殻に純銀製マケドニウム加工弾殻、装薬にマーベルス化学薬筒NNA9、弾頭に法儀式済み水銀弾頭というものを使っているらしい。
その重さ等により、人類には扱えない代物だと言われている。
ここにおいては、弾丸は6発支給されていた。
投下終了です。
一応、別所で仮投下はしましたが、登場人物全滅という展開にやはり問題があれば、この登場話は破棄にしていただいても構いません。
投下します
静まりかえったとあるオフィスに、一人の男がいた。
男の頬はこけ、半端な長さにヒゲが伸びている。
服も新しいものではなく、ぱっと見の印象はくたびれた中年という感じだ。
実際、その印象はさほど間違ってはいない。
男の名は、ショウ・タッカー。
国家資格を持ちながら、それを失うかどうかの瀬戸際に立たされた錬金術師だ。
「素晴らしい……」
タッカーは、笑っていた。
自分が殺し合いの舞台に放り込まれたことは、彼も理解している。
それでもなお、タッカーの心は喜びに満ちていた。
「脳だけで生き、おそらくは死体に寄生して操ることができる生命体……。
いったい、どんな技術で生み出されたんだ!」
ルール説明の中で披露された、羂索の異形。
タッカーは、それに魅了されてしまっていた。
「そして、これ……」
タッカーが見つめるのは、自分に支給された機械仕掛けのベルト。
説明書きによれば、装着者に複数の動物の力を付与する代物だという。
彼自身が生み出す合成獣(キメラ)より、はるか上をいく技術だと認めざるをえない。
「本当に、錬金術以外に未知の技術がいくつもあるとしたら……。
その全てを、殺し合いの主催者が手に入れているのなら……。
優勝すれば、それを私にも分けてもらえる!
そうなれば査定どころの話じゃない!
金も名誉も思いのままだ!」
目を見開き、口を限界まで開いてタッカーは叫ぶ。
その姿を見て彼の正気を信じる者は、誰もいないだろう。
「少し待っててくれよ、ニーナ……。
たくさんお土産を手に入れて、君の所に帰るから……」
粘着質な笑みを浮かべながら、タッカーは殺し合いの舞台へ足を踏み出した。
【ショウ・タッカー@鋼の錬金術師】
状態:狂気
服装:私服
装備:キマイラドライバー&ツインキメラバイスタンプ@仮面ライダーリバイス
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:優勝し、未知の技術を手に入れる
参戦時期:ニーナとアレキサンダーを合成獣にする直前
【支給品解説】
・キマイラドライバー&ツインキメラバイスタンプ@仮面ライダーリバイス
セットで一つの支給品扱い。
キマイラドライバーは、ジョージ・狩崎が「悪魔に頼らない変身システム」を研究する中で開発したベルト。
ツインキメラバイスタンプをセットすると、仮面ライダーキマイラへと変身できる。
だが適合しない者が使えば、自身が悪魔となってしまう可能性がある。
また変身前でも、強力なバリアを張ることが可能。
こちらの機能は、制限によりかなり弱体化されている。
投下終了です
こんばんは。
此方の都合で2話連続投下します。
まず、1話目です。
暗い森の中―
リーゼントの様な特徴的な髪型に背広を着た男がいた。
男の名は扇要。
《黒の騎士団》の副司令・《超合衆国》の事務総長を務め、現在は、神聖ブリタニア帝国から解放された日本で首相の地位にいる人物である。
「折角、平和になったのに、殺し合いなんて…。どうすればいいんだ…。」
突然の出来事に途方にくれる扇。
その時だった。
少し離れた所、空中に金色に輝く物体が見えたのは。
(何だ、アレは?)
その物体はフラフラと浮きながら、移動したかと思うと草むらの方へ消えていった。
気になった扇は後を追う。
「何奴!?うっ…!!!!!!!!」
草むらの向こうにて、何か聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、すぐに静かになる。
扇は恐る恐る草むらを覗く。
そこには囚人服を着た見知った男がうずくまっていた。
「………扇…事務…総長。」
目の前の男は、扇に気付くとゆっくりと立ち上がる。
そこに居たのは黒の騎士団の軍事総責任者。
超合衆国にて統合幕僚長を務めている、
この場で扇が最も会いたかった男―。
藤堂鏡志朗がいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
森の外れにて、ナイトメアフレームの一団、グラスゴーの大群が押し寄せていた。
それに対するのは同じくナイトメアフレーム、青色の機体―《暁‐直参仕様》。
黒の騎士団が保有するエースパイロット用の機体である。
それを操るのは千葉凪沙。
日本の誇るエースパイロットの集団《四聖剣》に籍を置く女性である。
「何だ!ここは!?」
千葉は困惑していた。
千葉の記憶にあるのは富士山での戦い‐
黒の騎士団と神聖ブリタニア帝国の最後の戦いの最中であった。
そこで自らの上司である藤堂が負傷を押して出撃しようとして、止めている時に気づけばこの場にいた。
(騎士団の戦況はどうなった!?
そもそもあの羂索はブリタニアと関係があるのか!?
それに……藤堂さんは…?)
千葉の頭に様々な事が思い浮かぶが、それを掻き消すかのようにグラスゴーはやってくる。
千葉にとって、グラスゴー程度敵ではない。
しかし、数が多過ぎる。
(このままでは…。)
千葉が手をこまねいていると、突如、黒い影が暁の前に降りて来た。
(黒い機体…?まさか藤堂中佐の斬月!?)
しかし、よく見ると斬月ではなく、その前に搭乗していた《指揮官専用の月下》であった。
しかし、それ以上に驚いたのは、
「無事か、千葉。」
月下から聞こえるのは、四聖剣最年長の仙波崚河の声。
「全く…、こんな連中に何を手間取っているのさ。」
黒の機体の後ろから千葉と同じ青い機体―暁‐直参仕様が現れる。
そこから聞こえる声は同じ四聖剣の朝比奈省悟。
千葉は信じられなかった
仙波は《太平洋奇襲作戦》で、朝比奈は《第二次トウキョウ決戦》で共に死亡した筈だった。
それが生きて、助けに来ている。
「話しは後だ。先に小奴らを片付けるとしよう。」
「「…はい!!」」
仙波の声に千葉、朝比奈は従う。
朝比奈は得意の三段突きで手前のグラスゴーを仕留める。
仙波は指揮官専用月下の特徴の《衝撃拡散自在繊維》を使い、相手の攻撃を受け流し、反撃に出る。
千葉は空中より二人の援護に回る。
やがて、グラスゴーの約半数が減り、残ったグラスゴーも撤退の姿勢を見せる。
「一気に片をつける!《旋回活殺自在陣》を仕掛けるぞ!」
「「応!!」」
仙波の号令と共に、月下、暁はグラスゴーの隙間を潜るかのように動く。
彼らが動いた後は、鉄くずの山が出来ていた。
四聖剣の3人が揃って数分後、グラスゴーの一団は殲滅されていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「未だに死んでいたとは信じられんな。
ブリタニアの捕虜になって、奴らに殺し合いに参加させられたと思っていたぞ。」
白髪に恰幅の良い年配の男―仙波崚河が口を聞く。
「まぁでも、こうしてすぐに会えたんだから良かったじゃないですか。」
眼鏡の青年―朝比奈省悟も口を開く。
千葉は黄色いパイロットスーツ。
仙波と朝比奈は、ブラック・リベリオン後に新しくなった四聖剣専用の団服を着ている。
戦いが終わった後、三人はナイトメアから降り、それぞれの話しを聞いていた。
「しかし、わしがいなくってから、随分状況が変わったな。」
中華連邦との同盟、超合衆国の成立、そしてブリタニアとの決戦。
仙波にとっては未来に来たかのような情報だった。
「はい…、しかし、ブリタニアの決戦では、藤堂中佐も負傷され、騎士団も劣勢の兆しが…。」
「………その事は考えるな。今は我らがこの殺し合いから脱出する事を考えよう。
…その為にも仲間を集め、羂索を倒す事を考えなければ。
もしかすると、中佐と卜部もこの場に居るかも知れん。探さなければ。」
「心配しなくても、意外と早く会えると思いますよ。」
「楽観的過ぎるぞ!そんなに話が上手くいくもの…。」
千葉は途中で言葉を飲み込む。
指揮官専用月下ではない黒い機体―《斬月》が近くに来るのが見えたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◇◇◆◆◇◇◇◇◇
「仙波大尉も!こうしてまた会えてよかった。」
「副司令もご無事で、なりより。今は事務総長でしたかな。」
「藤堂さ…、中佐もご無事で。」
「……ああ。」
斬月が見えて数分後、藤堂と扇が中から降りて来て、四聖剣との再会を喜んだ。
話しを聞くと、先程のグラスゴーの大群が殲滅されている光景が遠くから見え、それで駆け付けたとの事だった。
「我々がいるという事は卜部も何処かにいるかも知れんな。」
仙波は期待を口にする。
「ここまで来たら、全員集合まであと一息ですね。」
朝比奈も素直に喜びを口にした。
「待て、扇事務総長のように黒の騎士団の団員も参加させられているかも知れない。」
千葉は皆も窘める言葉を紡ぐ。
「ああ、卜部さんの他にルルーシュも仲間に加えなければ。」
「ルルーシュ!?確かに最初の広間にいたが、どうして敵を仲間に加えなければならない!!」
扇の発言に、千葉は反対し、朝比奈・仙波も訝しげな表情をする。
「ああ、四聖剣の皆は知らないんだな。
俺は日本とブリタニアの戦争が終結した未来から来た。ゼロは…、ルルーシュは俺達を裏切ってなかったんだ。」
扇は《ゼロレクイエム》の事を話した。
扇とて、詳細は分からない部分もあるが、ゼロが味方で皆を助ける為に、自分自身を犠牲にした事を四聖剣らに伝えた。
「…全てはゼロが皆を、世界を纏める為に行った計画だった。彼のお陰で俺は首相になれたんだ。」
「……僕はまだ信じられないけどね。」
複雑そうな顔を見せる朝比奈に対し、仙波はある程度納得した様子を見せる。
「筋は通っているな。そもそも最初からブリタニアに敵対していた男が、安々と皇帝になる事がおかしい。」
「……そう言う理由なら、ルルーシュと手を組むのも必要か…。」
千葉も納得した様子を見せる。
「分かってくれて、ありがとう。
何故、ルルーシュや大尉達が生き返ったのかは分からないけど、藤堂将軍らがいれば殺し合いも切り抜けられそうだ。」
藤堂と四聖剣。
黒の騎士団の主戦力が早くも揃い、扇は安心しきっていた。
故に不用心に、先程気になっていた事を藤堂に話す。
「ところで、藤堂将軍。さっきチラッと見たんだが、何か光っている物を見なかった―、」
扇が藤堂に対して、話し掛けた瞬間。
扇の首は胴体から離れていた。
【扇要@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】
◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◇◇◇◆◆◆◇◇◇◇◆
四聖剣の3人は何が起きたのか理解できなかった。
いや、理解したくなかった。
その為、目の前の光景に目を逸らす。
三人共、長い間ブリタニアと戦い、多くの死を見てきた。
死というものに耐性がある筈だった。
しかし、自分達が慕い、多くの国民の希望である藤堂鏡志朗。
彼が扇要という凡庸だが善良な人間に対して、凶刃を振るったのだ。
それは、藤堂と言う人間を知る者なら、どんな凄惨な場面でも見るに耐えない物だった。
リュックの中のタオルで刀や身体にかかった返り血を藤堂は拭う。
やがて、藤堂は口を開いた。
「…皆、驚かせて済まない。これには理由がある。」
「私は扇の話した未来よりもっと後から来た。
…未来は扇の言う様な良い世界ではない。
死んだと思われたゼロは悪逆皇帝として再び姿を現し、
扇は表では善人を演じ、裏ではルルーシュと手を組み、日本をブリタニアの属国としたのだ。」
「千葉、覚えているだろう。第二次トウキョウ
決戦後、すぐにブリタニアの宰相シュナイゼルが斑鳩に来た事を。
あれは扇が手引きしたからだ。ゼロの追放も全て扇が企んだ事だ。
……そのせいで何故か我々はシュナイゼルの、ブリタニア皇族の手先になってしまった。」
「そう、扇はシュナイゼルと手を組み、黒の騎士団を乗っ取り、いずれは日本までも自らの手中に収めようとしたのだ。」
「しかし、シュナイゼルは富士山での決戦でルルーシュに敗北した。
そこで扇は密かにルルーシュ側に着いた。
そして《ゼロレクイエム》などという茶番を起こし、ゼロは死んだと見せかけ、自らの妹に皇位を継がせたのだ。
…自分の血筋のみを正統な皇帝とする為にな。
そして、ブリタニアの支配を盤石とする為、表向きは日本を解放し、傀儡の扇を首相としたのだ。
…故に、これからの事を考え、この場で処刑をしたのだ。」
そこで藤堂は握り拳を握り、声を震わせる。
「所詮、我々はブリタニア皇族の都合の良い“”操り人形”でしかなかったのだ…。」
「私は弱体化した日本や黒の騎士団を立て直す為に、ゼロをー皇帝ルルーシュを確保しなければならない。そして日本を侵略した罪を然るべき場所で裁くのだ!」
藤堂は握った拳を高く上げて、宣言する。
仙波は扇の話した内容と全く違う藤堂の話しにただ唖然としていた。
藤堂の話を聞き、始めに声を出したのは朝比奈だった。
「…分かりました。皇帝ルルーシュの確保、再優先で実行しましょう。」
「朝比奈!!まずは生き残る事、そして戦えない者の保護が大事だ!
この際、ブリタニアと日本の事等、二の次だろう!!」
年長者の仙波の発言に対し、朝比奈は口を開く。
「仙波大尉…。コレは黒の騎士団の最高軍事責任者の命令ですよ。
何よりも優先される事じゃないですか。」
「朝比奈…、それでいいのか?」
「…前に言ったでしょう?どんなに変わっても藤堂さんの居る所が、俺の居場所なんですから。」
「……私も中佐が言うのなら。」
朝比奈に続いて、千葉も同調する。
難色を示す仙波に対し、藤堂が口を開く。
「仙波…、確かに扇事務総長を殺したのは短絡的な判断かもしれん。
しかし、いずれ日本の為になるだろう。」
そう話すと、扇の側にあるリュックを仙波に向かって投げる。
「私を信用出来ないなら、その荷物は預かっていてくれ。……いずれは疑いも解けるだろう。」
「中佐…。」
「では皆、行くぞ。全ては日本の為に!」
藤堂はそう言うと斬月に乗り込む。
朝比奈、千葉もそれに続き、仙波もそれに従うしかなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
指揮官専用月下の中でも仙波は、疑念を持ち続けていた。
支給品を惜しみなく渡す等、
言葉は振る舞いは、見知った藤堂の物なのだが、何やら違和感を感じる。
扇を殺した事もそうだが、いくら理由があったとしても、あの様に弔いもせず、遺体を野晒しにするのは今までの藤堂らしくはない。
(本当に目の前にいるのは中佐…、藤堂鏡志朗なのか?)
仙波は疑念を晴らせず、皆の後に続くだけだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(…フン、ある程度は騙せたか。)
四聖剣が自分に着いてくるのを見て、
藤堂は―、いや、その皮を被ったモノはほくそ笑む。
仙波が疑った通り、目の前の人物は藤堂鏡志朗ではない。
正確には身体は藤堂本人の物。
しかし、その頭脳には別のモノが潜んでいた。
その名は《ヤドリ天帝》。
ハテノハテ星雲の征服を目論む寄生生物の長である。
彼ら《ヤドリ》は数ミリ程のアメーバ状の生物で、他の生物と比較しても非力な存在である。
しかし、知能は優れており、ボール大の小型の円盤に乗り込み、寄生する人物を探す。
そして、宿主の記憶や知識を読み取り、その人物に成り変わる事が出来るのだ。
彼らはそうやって、ハテノハテ星雲を乗っ取り、やがては全銀河を支配するつもりであった。
しかし、数人の子供と自称ネコのロボットによって、その野望は阻止され、天帝自身も命を奪われたのだった。
だが、この場にて命が戻り、改めて元の世界での銀河征服を誓った。
手始めに近くにいた男の身体を乗っ取ったが、
これが軍人でしかも部下もいるという、中々に良い拾い物だった。
唯一の見当違いは扇要。
あの男に光の件―自分の仮の身体の姿である円盤を見られた事だ。
当初は、潜伏の為に扇も殺すつもりはなかった。
しかし、光の事を話そうとした為、止むなく命を奪ったのだ。
その後は、藤堂の記憶を使い、それらしい作り話をでっち上げたが、
仙波は兎も角、残りの二人は忠誠心が高い為か、何とか誤魔化せたようだ。
疑念を晴らす為に、仙波に扇の支給品を与えたが…、本心では渡したくなかった。
しかし、手元には藤堂の支給品もあるし、四聖剣が着いてくる以上、いつでも取り戻せる。
四聖剣といえばあと一人、卜部という男がいるらしいが…、他の三人の様子を見るに多少の疑いがあっても着いてくるだろう。
仮に他の参加者に殺しがバレたとしても、身体を入れ替えれば、罪は藤堂へと向く。
扇の―死者への事もそこそこにヤドリ天帝は
藤堂の記憶と最初の広間での行動を起こしたルルーシュに興味を移す。
(ルルーシュ…、この小僧の身体は戦闘には向かんが、《ギアス》とやらの特殊能力は気になる。予備の身体として確保しておきたい。)
故に四聖剣には然るべき場にて裁く必要があると称し、確保を命じたのだ。
全てはこの殺し合いから生還し、銀河征服を確実なものとする為に。
(他にも、使えそうな身体があれば、保護の名目で確保するか。
…さて、羂索とやら、同じ寄生生命体として貴様の余興に少しは乗ってやろう…。
だが、最後に笑うのは全ての寄生生命体の王であるこのワシだ…!!)
三人の操り人形を従えた寄生生物の帝王は、決意を新たに戦いの道へ、その歩みを進めた。
【千葉凪沙@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:黄色いパイロットスーツ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:暁‐直参仕様の起動キー、ランダムアイテム0〜2、ホットライン
思考
基本:藤堂鏡志朗に従い、殺し合いからの脱出。
01:ルルーシュを確保する。卜部や他の騎士団員が居れば探す。
02:藤堂の話の内容に疑問。本人かの疑いが中程度。
参戦時期:富士山での決戦時、負傷しながらも出撃しようとする藤堂を止めている所。
備考
※参加時からパイロットスーツを着ています。
※扇より、大まかな《ゼロレクイエム》の内容を聞きました。
【朝比奈省悟@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:新しくなった四聖剣用の団員服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:暁‐直参仕様の起動キー、ランダムアイテム0〜2、ホットライン
思考
基本:藤堂鏡志朗に従い、殺し合いからの脱出。
01:何があっても、藤堂に従う。
02:ルルーシュを確保する。卜部や他の騎士団員が居れば探す。
03:藤堂の話の内容に疑問。本人かの疑いが小程度。
参戦時期:第二次トウキョウ決戦にて、フレイアの爆発に巻き込まれた後。
備考
※参加時は死亡後のパイロットスーツではなく、四聖剣用の団員服を着ています。
※扇より、大まかな《ゼロレクイエム》の内容を聞きました。
【仙波崚河@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:新しくなった四聖剣用の団員服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:月下(指揮官機)の起動キー、ランダムアイテム0〜2、ホットライン
思考
基本:藤堂鏡志朗に従い、殺し合いからの脱出。
01:戦えない民間人が居れば、再優先で保護する。
02:ルルーシュを確保する。卜部や他の騎士団員が居れば探す。
03:藤堂の話の内容に疑問。本人かの疑いが大きい。
参戦時期:太平洋奇襲作戦での死亡後。
備考
※参加時は死亡後のパイロットスーツではなく、四聖剣用の団員服を着ています。
※扇より、大まかな《ゼロレクイエム》の内容を聞きました。
【ヤドリ天帝@ドラえもん のび太の銀河超特急】
状態:正常(寄生中)
服装:なし
装備:藤堂鏡志朗(寄生中の為。)
令呪:残り三画
道具:なし(自分の分は藤堂のリュックに纏めた為。)
思考
基本:元の生物の銀河征服の為、この殺し合いからの脱出、または優勝を狙う。
01:四聖剣を使い、この殺し合いを有利に動く。
02:ルルーシュの持つ《ギアス》に興味があり、手に入れたい。
03:有効な身体があれば、確保又は乗り換えの寄生を行う。
参戦時期:のび太にソープ銃で撃たれた後。
備考
※羂索を自分と同じ寄生生物と思っています。
※藤堂の記憶と四聖剣と扇の話しから、黒の騎士団とブリタニア関連の情報を入手しました。
※彼らの情報からルルーシュは悪逆皇帝ではないと知っていますが、殺し合いを有利にする為にその事は話さないつもりです。
【藤堂鏡志朗@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:気絶(ヤドリ天帝の寄生の為。)
服装:囚人服
装備:藤堂鏡志朗の刀
令呪:残り三画
道具:斬月の起動キー、ランダムアイテム0〜1、ホットライン、ヤドリ天帝のランダムアイテム0〜2、ヤドリ天帝のホットライン
思考
基本:殺し合いからの脱出。仲間が居れば助け、戦えない者を保護したい。
01:ブリタニアの捕虜ではなくなったがこれからどうするか…?(こう思った後、ヤドリ天帝に寄生される。)
参戦時期:ゼロレクイエムにてルルーシュが殺される前のパレードの最中。(囚人服を着せられて、はりつけにされている時。)
備考
※ヤドリ天帝が寄生中は意識がありません。
※ルルーシュが殺される前からの参戦なので、まだ敵と思っています。
【支給品紹介】
【暁‐直参仕様の起動キー@コードギアス反逆のルルーシュR2】
朝比奈省悟・千葉凪沙に支給。
エースパイロット専用の暁。外装色は青。
量産用の暁と比べて、基本性能と通信機能が強化されている。
また《飛翔滑走翼》を搭載し、幅射波動を利用したシールド《幅射障壁》などの武装が装備されている。
【月下(指揮官機)の起動キー@コードギアス反逆のルルーシュ】
仙波崚河に支給。
以前、藤堂が搭乗していた月下の指揮官機。
外装色が黒に変わり、頭部に《衝撃拡散自在繊維》と呼ばれる赤い髪状の装備が存在する。
また、専用装備として《制動刀》が用意されている。
【藤堂鏡志朗の刀@コードギアス反逆のルルーシュR2】
藤堂鏡志朗に支給。
いつも持っている刀。業物。
【斬月の起動キー@コードギアス反逆のルルーシュR2】
藤堂鏡志朗に支給。
月下(指揮官機)から受け継いだ制動刃吶喊衝角刀や衝撃拡散自在繊維、対人用の内蔵型機銃、スラッシュハーケンを備え る。
飛翔滑走翼を標準搭載したことで単独での飛行能力を有し、バリアシステム『輻射障壁』も完備。
【ヤドリ天帝の円盤@ドラえもん のび太の銀河超特急】
ヤドリ天帝に支給。
《ヤドリ》達が宿主を選ぶ前の仮の身体にして移動手段。
手の平に乗るボール大の大きさ。
天帝のは飾りが多い等、特別にあしらっている。
この円盤に乗ったまま、ロボットを操縦する事も可能。
【NPCモンスター紹介】
【グラスゴー@コードギアス反逆のルルーシュ】
神聖ブリタニア帝国の量産型、第四世代ナイトメアフレーム。
アサルトライフルやスラッシュハリケーン、ロケット砲等が装備されている。
投下終了します。
タイトルは「操り人形達」です。
誤字、脱字、設定の誤りがあればご指摘をお願いします。
続いて、2話目を投下します。
木々が生い茂る森の中―。
闇が支配するその空間を灰銀色の機動兵器―ナイトメアフレームが高速で移動していた。
機体の名は月下。
それを操るのは長身の男性―、
名を卜部巧雪。
とある世界にて、超大国・神聖ブリタニア帝国に支配された日本を解放する為に戦う《黒の騎士団》に所属する軍人である。
また彼は旧日本軍出身のエースパイロットの集まりである《四聖剣》の一人でもあった。
月下を操りながら、卜部は追憶する。
最後に記憶にあるのは、《飛燕四号作戦》―バベルタワーでの攻防であった。
その最中、命を狙われた黒の騎士団のリーダーを庇い、刺客と共に自爆した筈だった。
しかし、気が付くと、先程の広間に立っていた。
死んだ筈の自分が何故生きているのか。
疑問を考える間もなく、羂索による殺し合いの説明が始まる。
そこで彼は、知っている人物を見つけたのだった。
「ゼロ…。」
羂索と名乗ったあの少女、もしくは化け物に相対した黒髪の少年―。
あれはルルーシュ・ランペルージ。
自分達の、黒の騎士団のリーダーである《ゼロ》だ。
自分が庇い、守った男が目の前にいる。
しかし、声を掛ける前に卜部は殺し合いの会場に飛ばされてしまったのだった。
卜部の思考は現在に戻る。
あの場でルルーシュが見せた不思議な術。
そして、ランペルージではなくブリタニア皇族の名字を名乗った事―。
いずれも気になる事だが、今はその事は考えない。
今、考える事はルルーシュが、ゼロが殺し合いに巻き込まれている事だ。
(殺し合いだが何だか知らんが、ゼロは日本の解放に必要な男…。このような児戯で失う訳にはいかない。)
仲間である紅月カレンから、自分達のリーダーであるゼロの正体を聞かされた時は、年端もいかない学生だった事に驚いたが、その指揮能力は秀でている。
一刻も早く合流すべきだろう。
それに…、
(紅月、C,C、彼女達もここにいるのか…?いるのなら、無事でいてくれ。)
共に戦う仲間の安否を気に掛け、卜部は先を急ぐ。
しかし、突如、頭上から影が現れ、目の前の道を塞いだ。
現れたのは、月下と同じくナイトメアフレーム。
全身に薄紫色のカラーリング、頭部には紫色の角、両肩にも紫色の鋭利に尖った肩口が見られ、中でも特徴的なのは右腕に巨大な四つの爪が付けられている所だ。
(この機体は…、ナイトオブテンのもの!まさか…!!)
神聖ブリタニア帝国最強の十二人の騎士団、《ナイトオブラウンズ》。
その一角であるナイトオブテンことルキアーノ・ブラッドリーの操る《パーシヴァル》が目の前にいる。
だが、機体から聞こえてくる声は、ルキアーノとは違うものだった。
『そのナイトメアに乗っているのは、四聖剣の卜部か?』
「この声は…、カラレスか!?」
カラレス―。
それは現在、日本を支配するブリタニアの総督の名であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
かつて黒の騎士団の起こした大規模反攻作戦《ブラック・リベリオン》。
しかし、それは失敗に終わり、リーダーのゼロは死亡したとされ、大半の構成員が捕縛されてしまった。
それは、黒の騎士団に籍を置いていた《四聖剣》も同じ。
彼らも卜部を残し、全員ブリタニアの捕虜となっていた
カラレスはそんな《ブラック・リベリオン》以降に選出された新総督であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『クク…、この様な事態になっても私はツイているようだ…。なにせ、この手で最後の四聖剣を狩る事が出来るのだからな…!!』
カラレスのその言葉と同時に、目の前の獲物を八つ裂きにしようとパーシヴァルの右腕が動く。
瞬時に月下は動き、装備されていた《廻転刃刀》で右手の爪を受け止める。
「カラレス!こんな時に何をやっている!
今は争っている場合ではない!皆で力を合わせ、あの羂索とかいう化け物共を倒す事が先だろう!!」
『卜部…、貴様はあの様な茶番をまともに受け取るのか?』
「なに?」
説得を試みた卜部に対し、ブリタニアの総督は語りだす。
『あの三人は飾り物の主催陣よ。
本当の主催は我が神聖ブリタニア帝国のシャルル・ジ・ブリタニア皇帝陛下…。
そしてこの殺し合いの真の目的は、陛下にとって邪魔な日本人―イレヴンと失態を犯したブリタニア軍人を処罰する事よ。
私も貴様ら黒の騎士団の残党によって、バベルタワーの崩壊に巻き込まれてな…。
そこから記憶は無いが…、恐らく軍に助けられたようだ。
しかし、貴様らを殺しそこねた私は処罰の為、この場所に放り込まれてしまった訳だ。』
カラレスの発言を聞き、卜部は思った。
カラレスはこの現実離れした現状に対して、自分の納得のいく話を作り、それを信じようとしていると。
「その様な事を本気で信じているのか…!?」
『ふん…。現在、この様な大規模な殺し合いを行える権力と財力を持っているのは皇帝陛下しかおるまい。
それに、殺し合いの主催者があの様に安々と姿を見せるものか?
まぁ、仮に主催があの様な化け物だったとしても、この《パーシヴァル》に勝てる者などおらんがな!!!!!!!』
カラレスの言葉と共に右腕の爪が回転し、螺旋状の刃ー《ルミナスコーン》を作り出す。
(あれでは、刀が損傷する。機体に当たってもひと溜まりもない。)
卜部は刀で受け止めるのを止め、後ろに後退する。
『貴様のような大きな獲物を私が逃がすと思うのか?』
カラレスはそう言うと左腕のミサイルシールドを作動させさせる。
数発のニードルミサイルが月下目掛けて飛んで来る。
「くっ!!」
卜部は月下を高速で移動させ、急所に当たらないようにするが、左肩や腹部等に着弾してしまう。
「がはぁっ!!!!」
通信越しに卜部が負傷した様子を聞き、カラレスは嗤った。
『私は嬉しいぞ。このラウンズ専用機があれば、敵うものはいまい。ゼロ亡き今、貴様の死で日本の解放は潰え、ブリタニアの支配は盤石のものとなるのだからな。』
「…俺の様な何も取り柄の無い男をそこまで買ってくれるとは嬉しい限りだな。」
何とか体制を立て直した月下だが、数秒の立ち合いで機体の性能差は明らかだった。
(逃げても、すぐに追い付かれる。先に進むにはコイツを倒すしかない。)
卜部は―月下は刀を構え、帝国最強の騎士と対峙する。
しかし…、右腕の攻撃を躱すのがやっとで反撃の糸口が掴めない。
『このままでも、勝てそうだが…。貴様に力の差という物を見せつけてやろう。』
パーシヴァルは空中に浮かぶと両大腿部の部分がスライドし、開く。
『貴様も知っているだろう?我がブリタニアが作り出した究極の兵器“ハドロン砲”だ。』
開いた部分から太く速い赤い光線が発射され、月下を襲う。
「ちぃっ!!」
月下は回避行動を取るが、完全には躱しきれず、左腕が光線により、消失してしまう。
「ぐうっ!!!!」
『クク…、ブラッドリー卿には申し訳ないが…、多くの獲物―、人間を狩ってきた私にこの機体は相応しいようだ。』
カラレスは月下の左腕を無くし、バランスの悪い左側をすかさずニードルミサイルで攻撃する。
今度は前回と同じ様な回避は出来す、多くのミサイルが当たってしまう。
「ぐああああ!!!!」
月下は左側の肩口から火花を散らし、地に倒れる。
『日本のエースパイロットがこの様なザマとは…。どうやら四聖剣の名は虚名だったようだな。』
地に伏した月下に対し、パーシヴァルは右腕の螺旋状の刃を展開し、止めを刺そうとする。
『この圧倒的な性能の差…。卑怯と思うか?差別を感じるか?
だがな、これは仕方のない事なのだ。
これは【差別】ではなく、【区別】なのだ。
我ら、ブリタニアは神より祝福を受けた民族。貴様らの様な下賤な者を支配するのは正当な権利だ。
支配する者が格別の待遇を受けるのは当然の事であろう?』
日本を支配する総督の傲慢な演説を聞きながら、卜部は機体の状態を確認する。
左腕は失ってしまった。
だが、動く事には問題はないようだ。しかし……、あの武装を破る手立てはない。
(皆…、済まない。俺はここまでのようだ。)
卜部が諦めそうになったその時だった。
―パーシヴァルの飛行ユニットに何かが直撃した。
「な、なんだ!?」
カラレスは動揺し、辺りを見渡す。
(援軍か!?)
卜部も辺りを見渡すと、近くの丘に何やら人影があるのを見つけた。
いや、アレは人だろうか。
背丈は子供―小学生くらいの高さで、
頭は大きく、体は小さく見える。
体色は青く、体毛は無い。
鼻は赤く、顔と腹の中心部は白くなっており、目と口の間に六本程の髭が生えていた。
その影の全体的に丸みを帯びた体型を見て、卜部は日本にいるとある動物に似ていると思った。
その妙な動物は、二体のナイトメアフレームに対して、再び呼び掛ける。
「二人共!やめるんだ!!あんな奴の言う通りに戦うな!!!!」
妙な動物は人の言葉を話し、何故か右腕に筒の様な物を付けて此方に戦闘の停止を訴えてくる。
『喋る獣か…。あの様な化け物がいるという事は卜部、貴様の言う通り、主催は皇帝陛下ではなく、あの脳みその化け物かもしれんな。
…しかし、どちらでも構わん。皆殺しにすれば、済む話よ!!』
カラレスは目の前の動物に対し、ミサイル弾を撃ち込む。
しかし、その動物は難なく攻撃を躱す。
(おのれ…、鈍重そうな見た目に寄らず、すばしっこい…!)
その動物は常に背後に回り、右腕に付けた筒の様な物から出る目えない弾で攻撃を続ける。
一つ一つは大した事はないが、続けざまの攻撃は実を結び、遂にパーシヴァルは地に足を付ける。
(飛行ユニットが駄目になったか…。しかし、武装には損傷はない。
奴らを仕留めるにはこれで充分よ。)
カラレスは余裕をかまし、引き続き動物を探す。
と、件の動物は先程とは違い、動き回る事はせず、卜部の目の前、月下を守る様に立っていた。
『お前――、何をやっている!』
卜部は動揺し、動物に声を掛ける。
『……フン。多少驚かされたが…所詮は獣。策など練れず、真正面から挑むしかない能無しよ。』
カラレスは、正体不明の動物に対し、両大腿部のハドロン砲を展開する。
『喜べ、卜部。貴様の黄泉路を共に逝く者が現れたぞ。』
カラレスは好都合と卜部ごと、動物を吹き飛ばすつもりでいた。
『俺はどうなってもいい!早く逃げろ!!』
卜部の説得に構わず、動物はその場を動かない。
『死ねぃ!反逆者共!!』
総督の声と共に、ハドロン砲の赤い光が周囲を包み込んだー。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ば、馬鹿な…。」
赤い光が晴れた時、驚愕の表情を浮かべたのはカラレスだった。
一体、何が起きたのか。
パーシヴァルの、帝国最強の機体の左腕が肩口から吹き飛んでいた。
カラレスは目の前の動物に視線を向ける。
動物は先程の筒とは違い、両手で赤い布を持っていた。
その布が風ではためき、薄っすらとハドロン砲の焦げ目があるのを見て、カラレスは否応も無く理解する。
目の前の動物はあの布一枚で、強力な熱線を跳ね返したのだった。
(あり得ん!あの布は一体どんな構造なのだ!?)
―カラレスは知らなかった。
目の前の動物が自分よりも多くの敵を葬っていた事を。
―卜部も知らなかった。
目の前の動物が地球を、日本を何度も救っていた事を。
思わぬ痛手を受け、カラレスは動物に対し、声を荒げる。
『この獣が…、この…タヌキがぁ!!!!!!』
カラレスの言葉に対し、
目の前の動物は大声を上げる。
「僕は……、僕はタヌキじゃなーい!!!!!!!!!!」
目の前の動物―22世紀からやって来たお世話ロボット、ドラえもんは心からの叫びを上げた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
タヌキの問答後、カラレスはなおも戦闘を続けようとする。
「おのれ…、飛行ユニットと左腕を失ったとて、性能差に勝るわけが…。」
タヌキ―ではなく、ドラえもんは目の前のロボット―パーシヴァルの飛行ユニットと左腕を潰したものの、次の手を打ちあぐねていた。
この殺し合いが始まって間もなく、
二体のロボットが争っている音を聞きつけ、一方的に攻撃を受けている方に加勢に入った。
目にも見えない速さで走る事が出来る《チーターローション》で相手を撹乱し、《空気砲》で相手の翼を奪った。
だが、そこで《チーターローション》の効果が切れてしまった。
そこで、ドラえもんは敢えて負傷したロボットを庇う様に立った。
そうすれば、相手がまとめて攻撃してくると読んだのだ。
結果、《ひらりマント》で紫色のロボットの攻撃を返し、左腕を潰す事が出来た。
が、それだけで戦意を喪失する相手ではなかった。
(まいった…。空気砲だけじゃ、決定打は与えられない…。)
《ひらりマント》でコクピット目掛けて反射させる事も出来たが、あれだけの熱線なら最悪搭乗者が死んでしまう。
それを考え、ミサイルのある左腕を狙ったのだが、裏目に出たようだ。
ドラえもんが困っていると、灰銀色のロボットー月下が起き上がり、中のパイロットが話し掛けて来た。
『そこのタヌキ……じゃない君、助かった。ありがとう。ここからは俺に任せてくれ。
―お陰で俺の戦い方を思い出した。』
そう言うと月下はパーシヴァルに向き合う。
『馬鹿め!死に損ないに何が出来るかー。』
カラレスの言葉が終わらない内に月下は動いた。
脚部のモーターを総動員し、背後への高速移動を行う。
卜部は先程のドラえもんと同様の攻撃方法を選んだのだった。
パーシヴァルは何とか後ろを取られまいと右腕で、月下の刀を牽制する。
しかし、一撃が失敗しても、月下は常に相手の背後に回り、攻撃を加えようとする。
パーシヴァルも月下の斬撃に対し、螺旋状の刃で対抗するが何度も来る攻撃に対し、いつしか防戦一方となっていた。
(た、対応できん…。)
そう、四聖剣の、月下の最大の武器は機動力である。
相手が次の手をうつ前に、仕留める。
ヒットアンドウェイでブリタニアを何度も翻弄してきた。
加えて卜部は判断力にも優れている。
先程の何度も受けた攻撃で、相手の出方は分かった。
時間を止める相手にも、勇敢に立ち向ったのだ。
武装に頼った愚物等、相手にすらない。
(ならば、ハドロン砲を…。)
膝からの砲撃の準備をしようとして、先程のタヌキ……もといドラえもんが視界に入る。
カラレスの頭に先程の光景が頭をよぎる。
―再度、ハドロン砲を返されては、命も危うい。
実際はドラえもんは反射で命を奪う事を躊躇ったのだが、それを知らないカラレスは砲撃を取りやめる。
だがその隙を付いて月下が右腕の肩口に刃を突き入れる。
螺旋状の刃はその威力を無くし、ただの爪と化す。
そして、月下は相手の懐に入った。
(ならば…。)
月下が相手の頭部掛けて刀を下ろそうとした時、
パーシヴァルの頭部の角からワイヤーの付いた刃―スラッシュハリケーンが現れる。
これは近接用の隠し武器である。
(図に乗るなよ、イレヴン!!これで死ね!!!!!!)
だが、月下は難なく刀で弾く。
『な!?』
『これだけの武装を持っているんだ近接戦闘用の隠し刃くらい、想像がつく。』
(脱出を…。)
最後の切り札を失ったカラレスは脱出装置の作動―則ち逃げを考えた。
しかし、戦場においてその思考は命取りであった。
「四聖剣は―」
機械の侍は刃を振り下ろす。
―機械の騎士の頭頂に刃が食い込む。
「虚名に非ず。」
刀を上段から一気に下ろす。
機械の騎士の顔面が裂け、胴の部分も縦に割れ目が入る。
侍は腰まで刀を通すと、一気に引き抜いた。
機械の騎士は破損部分から血液の様に火花を出し、膝から崩れ、地に伏した。
―助力や本来の搭乗者がないといった補助要素があったものの、本来の歴史にはない奇跡。
《四聖剣》が《ナイトオブラウンズ》を破ったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ、何とかな。」
戦闘後、月下から卜部は降りて来たが、あちこち負傷していた。
手当てを行おうとしたドラえもんを制し、卜部は口を開く。
「済まないが、奴も…、カラレスも助けてくれ。」
「え、でも。」
「奴は傲慢だが、羂索に殺し合いを強制された被害者だ。
…出来れば奴らと戦う仲間が少しでも欲しい。」
卜部の言葉に同意したドラえもんは半壊状態なパーシヴァルに近づいた。
だが、パーシヴァルの損傷は酷くハッチが開けられない状態であった。
ドラえもんが困っていると後ろから卜部が話し掛けてきた。
「俺の…支給品の中に、何でも直せると書いてある懐中電灯があった。よかったら使ってくれ。」
卜部は自身のリュックをドラえもんに渡す。
ドラえもんが中を見ると、馴染みのある道具が出できた。
「やった!《復元光線》だ!!これなら開けられる。」
秘密道具《復元光線》によって、飛行ユニットも左腕も直り、パーシヴァルの損傷は何事もなかったかのように修復された。
すぐに、ハッチを開けたドラえもんであったが、中の光景に思わず、目を逸らす。
コクピット内には口髭をたくわえた男―カラレスが居たが月下の一撃により、両足が潰れていた。
「ぐああああ…、この…イレブン共め!!!!」
死に体の総督は喚き声を出すが、その様子を卜部は見つめる。
「済まないな、カラレス。こっちも必死だったんで手加減ができなかった。…治せるか?」
「ここじゃ無理だ。でも僕の道具にはどんな怪我でも治せる物がある。取り敢えず、止血をして、医療施設を探そう。」
カラレスに応急処置を行おうとしたその時、
「治療の必要はないぞ。その前に私の用を済ませて貰おう。」
と、頭上から声が聞こえた。
卜部とドラえもんは驚いて、声の方向を見る。
パーシヴァルの左肩に、赤い大柄な身体に白い髭、カブトムシの様な角のある大きな羽のある異形の存在が立っていた。
ドラえもんは、その異形―ロボットには見覚えがあった。
「お前は《鉄人兵団》の…。」
「名称なら《総司令官》と呼んでもらおうか。
最も名前なぞ、個体を識別する為の番号の様なものでしかないがな。」
《総司令官》―それは機械の星、メカトピアが自国の労働力を補う為、地球人を奴隷として確保する為に送り込んだロボットの軍隊《鉄人兵団》を率いていた司令官であった。
しかし、鉄人兵団は過去に消滅した筈―。
言葉を続けようとしたドラえもんだったが、目の前のロボット―総司令官が先に言葉を続ける。
「間もなく、貴様らを始末し、偽の世界から本来の地球へ攻め込む段取りだというのに…。
勝利を目前にしてのこの様な戯れ…。全く、腹立たしい事だ。あの羂索とかいう寄生生物が近くにいれば、八つ裂きにしている所であった。」
総司令官の言葉に、ドラえもんは気が付いた。
(そうか、コイツは兵団が消滅する前の時間から来たのか。)
未来のロボットであるドラえもんは羂索らが時間を操り、参加者を集めたのだと理解した。
ドラえもんが思考している間、総司令官はパーシヴァルに触れ、眺めていた。
「ロボット同士が戦っていると思い来れば、人間の操り人形だったとはな。
しかし、人間がここまでの技術を持っているとは。迂闊に正面から攻め込んでいれば、多少の苦戦はあったかも知れんな。」
どうやらナイトメアを、元の世界の地球にある技術と思い込んだ様子だった。
「アンタ、何しているんだ!ソイツを早く手当てしないと死んでしまうぞ!!」
突然現れた異形に卜部が声を掛ける。
「……邪魔だ。」
総司令官は手に持った杖から電撃を放ち、卜部とドラえもんをパーシヴァルから引き離す。
「くっ!!」
「地球のロボットよ、今は争うつもりはない。人間よ、死にたくなければ大人しくしておれ。」
総司令官はパーシヴァルの肩から降り、そのままコクピットに乗り込むと負傷し、動けないカラレスに近づいた。
「人間よ…。先程の貴様の言葉、気に入ったぞ。全ての生物や物には上下関係がある。区別があるのは当然の事だ。」
「そ、そうか…。なら……、助けてくれ。そして、そこの……反逆者共を…、一緒に殺してくれ……。」
重症を負ったカラレスは
「そうか、だがな…。」
総司令官は持っていた杖の先をカラレスの首元に当てる。
「気に入らんのは、“神”を支配の口実に使った事だ。
神が祝福を与えたのは、我々メカトピアの民…。ロボットだ!下等な人間共に……神などおらんわ!!!!!!」
総司令官の持つ杖から、電流が迸り、カラレスの身体に高圧電流が流れた。
「ぐああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
重症を負い、更にダメージを受けた身体は限界だった。
ブリタニアの総督は断末魔を上げ、やがてピクリと動かなくなった。
【カラレス@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】
「汚らわしいゴミめが…。神を侮辱しおって!!」
総司令官は意思のなくなったカラレスを地面へ叩きつける。
その際にカラレスのリュックを自分の物に纏めていた。
「貴様…。」
「総司令官、人を殺すのはやめろ!人間がいなくなって困るのはメカトピアだろう!!」
ドラえもんと卜部は突然の凶行に憤りを覚える。
しかし、総司令官は涼しげに答える。
「そうだな、確かに労働力を一つ失う事は惜しい事だ。
だがな、人間等、吐いて捨てる程いるゴミのようなモノだ。私は貴様やリルルと違って、ゴミに情を掛ける異常者ではない。…それを一つ潰した位で悔いる必要はあるまいよ。」
「な!?」
「そういえば、リルルといえば、貴様らに調略されたのであったな。」
総司令官はドラえもんの方を向き、先程とは違う口調で語りかける。
「地球のロボットよ。私は貴様を称賛するぞ。
我が鉄人兵団を一時的とはいえ、少数で追い詰めた事を。」
「貴様は人間を好む異常な考えの持ち主だが、有能な同胞を殺し合いで失うのは惜しい…。
それにリルルを誑し込んだ手立て…。
どうだ、その敵を手懐ける術を私の―鉄人兵団の為に使わんか?」
総司令官は目の前のロボット―ドラえもんに手を差し伸べる。
「何を…、言っているんだ…?」
敵からの思わぬ誘いにドラえもんは動揺する。
「この場に呼ばれ考えたのだが…、地球を支配したとして、人間共を纏める者が必要でな。
貴様が我が鉄人兵団の軍門に下るなら、人間達の管理を任せても良い。
メカトピアへ必要な分の奴隷さえ送れば、地球の民はこれまで通りの生活が出来る事を保証しよう。
……兵団全軍と戦うより、余程、現実的な話であると思うのだが。」
「…そんな話に僕が耳を傾けると思うのか?」
「ふん、直ぐにとは言わん。
この羂索とやらの遊戯に勝ち残れば会うこともあるだろう。返事はその時で良い。
私は奴らと対峙した時の為に、使える“奴隷”を調達しなければなな。」
総司令官はそう言うと右の手の平に何かを握った。
と、誰も操縦していないのに、パーシヴァルは動き出した。
「《サイコントローラー》…。私の支給品だ。念じるだけで思うように動くらしい。
いずれは此奴にも意思を与えて、鉄人兵団の軍門に加えてやろう。」
総司令官はそう言うと、パーシヴァルの左肩に乗った。
パーシヴァルは僅かながらに空に浮く。
総司令官は再びドラえもんへ呼び掛ける。
「我が同胞よ!待っているぞ。貴様にはガキの子守りより我が片腕として働く方が合っている。
そして覚えておけ。“神”が祝福を与えたのは愚かな人間や、羂索の様な醜い寄生生物ではなく、我々ロボットだという事をな!!」
そう言い残すと、総司令官とパーシヴァルは空へと消えていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
総司令官が去った後、ドラえもんは月下を復元光線で修復する。
その後、卜部の手当てをしながら、自分の世界や鉄人兵団の事について話す。
とある科学者が争いを続ける人間に嫌気が差し、とある男女のロボットを作った。
そのロボットは次々と同族を増やし、《メカトピア》という国が出来た。
しかし、ロボット同士でも、貧富の差や、上下の階級の違いが出てくる。
中でも総司令官のような上の階級の者達は、自分らロボットが“神”に選ばれた存在だと信じており、地球での奴隷狩りも神が与えた正しい手段と思い込んでいた。
ドラえもんの話を聞き、卜部は呟く。
「……何処の世界も似たようなもんだな。
ブリタニアも何を勘違いしたんだか、世界の三分の二を支配して、カラレスのような貴族連中が自分達が正しいと日本や他の国に平気で残酷な行為をしてやがる。」
ドラえもんも卜部の話に耳を傾ける。
「だから、ゼロがいるんだ。かつてゼロが出てきた事で皆が立ち上がった。一回失敗しても、もう一度日本の為に戦うんだ。
……でなきゃ、これまで死んだ仲間が浮かばれない。」
お互いの話を聞いて、ドラえもんも卜部も自分達が別の世界から呼ばれたと理解した。
しかし、お互いに殺し合いと言う経験した事もない状況だ。
しかも、他の世界から想像もできないような参加者が集まっている。
生き残る事はできるのだろうか?
ドラえもんが不安そうな様子を見せると、それを感じ取った卜部が話し掛ける。
「さっきのアイツ…総司令官だったか。アイツの率いる鉄人兵団に……一回は勝ったんだろ。」
「それは……。」
正確には計画には無い偶然のような勝利だ。
真正面から戦って勝ったわけではない。
ドラえもんが答えあぐねていると、卜部が先を続ける。
「なら、もう一度勝てばいいだけだ。アイツら―カラレスや総司令官は己の種族のみが祝福を受けていると言ったが、それは違う。
神様は不公平なもので、奇跡を何度でもくれる時があるらしい。
俺達のリーダーは危機的な状況でも何度も奇跡を起こして来た。
今回の殺し合いもアイツがいれば何とかしてくれるさ。」
「卜部さん…。」
「辛気臭い顔をするな。お前がいなければ、俺はカラレスに殺されていた。…あの時に奇跡は起こったんだ。お前が起こしてくれたんだ。」
卜部は改めて、礼をする。
「ありがとう。そして、日本の為にこれからも手を貸してほしい。」
卜部は手を伸ばす。ドラえもんはその手を握った。
ドラえもんは殺し合いという殺伐とした中で、卜部という善人の“祝福”を素直に受けていた。
【卜部巧雪@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:軽度の負傷
服装:旧日本軍(日本解放戦線)の軍服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:月下の起動キー、ランダムアイテム0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いから脱出し、ブリタニアから日本を解放する。
01:ゼロと合流し、脱出や打倒羂索の策を考える。
02:紅月カレンやC,C等の黒の騎士団のメンバーが参加されてないか確かめる。
03:カラレスの様な横暴なブリタニア軍人や総司令官の様な危険人物には警戒する。
参戦時期:《飛燕四号作戦》にてルルーシュを庇っての死亡後。
備考
※ドラえもんから、ドラえもんの世界の事と鉄人兵団の事をある程度聞きました。
【ドラえもん@ドラえもん】
状態:正常
服装:全裸(ロボットなので)
装備:空気砲、ひらりマント
令呪:残り三画
道具:チーターローション、復元光線、ホットライン
思考
基本:皆が殺し合いから脱出出来る様に行動する。
01:卜部さんと一緒に、ゼロを探す。
02:のび太君が巻き込まれていないか不安。
03:総司令官の話には乗らない。
参戦時期:不明。(少なくとも、鉄人兵団の事件の後)
備考
※四次元ポケットは主催側によって没収されています。
※卜部から黒の騎士団やブリタニアの大まかな情報を聞きました。
【総司令官@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜】
状態:正常
服装:ロボットなので服は着ない
装備:総司令官の杖
令呪:残り三画
道具:総司令官の杖、サイコントローラー、ランダムアイテム0〜1、ホットライン、パーシヴァルの起動キー、カラレスの支給品のランダムアイテム0〜2、カラレスのホットライン
思考:元の世界に戻り、地球人の奴隷化計画を進める。
基本:戦力を集め、羂索を打倒する。
01:まずは使える者を集める。人間なら奴隷として使役する。
02:ドラえもんを買っている。出来れば仲間にしたい。
参戦時期:鉄人兵団の援軍が来て、ジュド(ザンダクロス)やドラえもん達を圧倒していた所から。〔消滅前〕
備考
※鉄人兵団が消滅する事は知りません。
※様々な世界から参加者を集めたとは知らず、ナイトメアフレームの事を元々のドラえもん世界の物だと思っています。
※羂索の事を寄生生物と思っています。
支給品説明
【月下の起動キー@コードギアス反逆のルルーシュR2】
卜部巧雪に支給。
『朔型』とも呼ばれ、全体的なカラーリングは灰銀色。
主兵装として《廻転刃刀》という刀が装備され、腕の部分には《ハンドガン》が取り付けられている。
刀を使った接近戦を得意とする機体。
【復元光線@ドラえもん】
卜部巧雪に支給。後にドラえもんに移譲。
壊れた物体にこの道具から発する光線を浴びせると、元の状態に戻してくれる。
見た目は懐中電灯の様。
【パーシヴァルの起動キー@コードギアス反逆のルルーシュR2】
カラレスに支給。後に総司令官が奪取する。
帝国最強騎士《ナイトオブラウンズ》の一人、ナイトオブテンことルキアーノ・ブラッドリーの専用機。
全体的に薄紫色のカラーリングで、角や肩口など鋭利な部分は毒々しい紫色となっている。
武装は豊富で、右腕に4つの爪があり、それらが回転し、螺旋状の刃ー《ルミナスコーン》を作り出す。
また、左腕にはニードルミサイルを撃ち出す《ミサイルシールド》。
両大腿部からは小型の《ハドロン砲》が装備されている。
また両肩と頭部にはワイヤー付きの刃《スラッシュハリケーン》が装備されており、頭部の物は近接戦闘での不意打ちも兼ねている。
【空気砲@ドラえもん】
ドラえもんに支給。
説明のいらない、大長編のメインウェポン。
空気を集め、発射する武器。
大長編【宇宙開拓史】【アニマル惑星】では、大型円盤を落とせる程の威力も発揮する。
【ひらりマント@ドラえもん】
ドラえもんに支給。
相手の攻撃や物体等を跳ね返す道具。
大長編にもよく出て、隕石や光線も跳ね返す。
【チーターローション@ドラえもん のび太の小宇宙戦争】
ドラえもんに支給。
足に塗り込むと、目にも止まらない速さで走る事が出来る道具。
効き目が短いのが欠点。
【総司令官の杖@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜】】
総司令官に支給。
先がさすまたの様にU字形になっている。この部分に棘も付いており、このまま攻撃したり、杖から高圧電流を流して、相手を痛めつける。
【サイコントローラ@ドラえもん のび太と鉄人兵団】
総司令官に支給。
手の平サイズの操縦機。
これを握って好きなように念じただけで、様々な機械を操縦出来る。
投下終了します。
タイトルは「祝福を受ける者」です。
誤字、脱字、設定の誤りがあればご指摘をお願いしますします。
また、最初に言い忘れましたが、ドラえもんが被りました。すみません。
投下します
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
ビルの中に、悲鳴が響き渡る。
「ちっ…見られたか」
舌打ちをした男は、血まみれの少女に馬乗りしている。
「ユ…カ…輩…に…」
「黙りましょうね〜遺言は聞かせない」
男は、少女の喉を簡単に貫いた。
「コユキ…嫌だ…やめて…」
「駄目でーす、お前は今から人生終了でーす」
青色のパワードスーツに身を包んで、泣き叫ぶ少女へと迫る。
「じゃ、しねぇやぁぁぁぁぁ!」
凶刃が振り下ろされる、その時だった。
◆
「危ない!」
「ちぃっ!なんだぁ!」
少女の奥より、男を狙う者がいた。
表れた男は、継ぎ接ぎであった。
一言で言うなら傷跡が体中に見えている。
そして、腰の部分にはおもちゃのようなものがついたベルトが付けられている。
「誰だてめぇぇぇぇぇ!」
「殺し合い乗ってない、殺し屋さ…ヴィータ!」
「了解!」
窓ガラスが割れ、男にハンマーが直撃する。
「ぐぉぉぉぉぉぉ!?」
男は向こう側の窓へと吹き飛ばされる。
男を吹き飛ばしたのは小柄な少女であった。
身の丈に合わないハンマーを持ち、謎の銀色の玉を浮かしている。
「やるなぁオメェら…」
「生きてたか!」
男のほうが、腰からUSBメモリらしい物を取り出す。
CYCLONE!
JOKER!
「なんだぁ…オメェも俺と似たような力か?」
「悪いが話す気はない!」
男は、緑と黒が半身に彩られた姿になる。
しかし、それでも悪魔は笑みをやめない。
「なら、さっさと逃げるか、こい!」
口笛を吹く、そして、周りから脈動が起きる。
「なんだ…まずいぞスキン!」
「おせぇぇぇぇぇぇ!」
窓ガラスを割り、ドラゴンが突き抜ける。
黄色の体色、空の猛者、スカイドラゴンだ。
「まずい!」
「私が狙う!」
反対側の窓を抜け、低空飛行していくスカイドラゴンと男を狙った次の瞬間だった。
「がっ…なんだ…モグラ!?」
白のヘルメットを被った水色の体色のモグラがそこにいた。
「この…ぐっ!」
全力のハンマーを叩きつけるも、バリアが張られており、跳ね返される。
「戻れキャプテンモグー!撤退だぁ!」
「ぐっ!」
「逃げられたか…!」
既に、男は遠くへと向かっていた。
二人、殺し屋スキンとヴィータは遠くに行った後ろ姿を見守るしかなかった。
それに、一番対処しないといけないのが、近くにあった
「もう…怒らないから…だから…戻ってきてよ…コユキ…」
「…」
「…」
血の雨は、深く残る。
【黒崎コユキ@ブルーアーカイブ 死亡】
【早瀬ユウカ@ブルーアーカイブ】
状態:ショック(大)
服装:ミレニアムの制服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。
01:コユキ…!
参戦時期:パヴァーヌ2章後
【スキン@DINER(漫画版)】
状態:失意(大)
服装:いつもの服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ダブルドライバーとガイアメモリ@仮面ライダーW、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いを破壊する
01:…
参戦時期:キッド戦後
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
状態:失意(大)
服装:いつもの服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いを破壊する
01:…
参戦時期:当選した際にお任せします
[備考]
コユキのバックやランダムアイテム×1〜3が放置されています
◆
「なんとか逃げ切ったなぁ…」
邪悪な殺し屋――エイジは笑みを浮かべながら、スカイドラゴンに乗りながら浮遊する。
「コイツがあって助かったぜぇ…」
手に持つのは、桃太郎印のきびだんご。
本来、参加者を襲うNPC達がエイジを手助けするのは、これが原因だった。
「とにかく…金が欲しい、さっさと優勝するぞぉ…」
下衆は、笑った。
【エイジ@ヒューマンバグ大学】
状態:健康
服装:いつも通り
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ガイバー1のユニット@強殖装甲ガイバー、桃太郎印のきびだんご@ドラえもん、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:優勝して大金を得る
01:殺して殺しまくる
参戦時期:イヌワシが拠点に攻めてくる前
【支給品解説】
【ダブルドライバーとガイアメモリ@仮面ライダーW】
スキンに支給
仮面ライダーWに変身するための道具。
ガイアメモリがすべて揃っているが、メタルシャフトとトリガーマグナムは付属していない
【グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's】
ヴィータに支給
ヴィータが普段遣いしているハンマー型の武器。
戦闘する際には魔法を放つ銀の玉も出現させる。
【ガイバー1のユニット@強殖装甲ガイバー】
エイジに支給
ガイバー1に変身するためのユニット。
普段は三角形のような形状になります収まっている。
【桃太郎印のきびだんご@ドラえもん】
エイジに支給
秘密道具の一つ、これを食べさせれた動物は、食べさせた人物に従順になる。
効果時間は30分、50個入り
【NPC解説】
【キャプテン・モグー@にゃんこ大戦争】
スターエイリアン族のモグラのモンスター、ヘルメットを被っている
バリアは誰でも割れるようになり、ワープは使えない。
【スカイドラゴン@ドラゴンクエストIII】
黄色体色のドラゴン。
火の息や氷の息を使い分ける凶悪な存在。
投下終了です
投下します
※このSSには残酷な描写が多々含まれています。
それらが苦手な方には不快となる内容なのでご注意ください。
(あんないろはちゃん初めて見た……どうしたらいいの?)
暗い表情でうつむきながら山道を歩く少女。
猫屋敷まゆは大切な友達の悲しむ姿を思い出して落ち込んでいた。
どうにかして彼女の悲しみを癒やしてあげたい。
誰とも友達が出来なかったまゆに寄り添い、友達になってくれた犬飼いろは。
彼女の悲しむ姿を見た時は自分も胸が張り裂けそうな気持ちになった。
(いろはちゃんを助けたい。でも、今はこの状況を何とかしないと……)
いきなりこんな場所に連れてこられて今は自分の身の安全すらままならない。
(会いたいよ……ユキ……)
不安のあまり、大切な家族である猫のユキを思い出す。
いつも私を守ってくれた強くて優しいユキ
ユキと一緒なら怖くない。何も怖くない。
どんな困難だって立ち向かえる勇気が湧いてくる。
ドドンッと雷鳴の音が響いた。
「キャッ!」
雷鳴の場所は近く、近辺で雷の輝きがまゆの視界に入った。
天候はとても雷が落ちるような曇り空ではない。
明らかに何者かによる人工的な雷鳴だった。
「もしかしたら、誰か戦ってるのかも……」
怖い人がいるかもしれない。
だけど困っている人がいるかもしれないのに放ってなんておけない!
(怖くない……怖くない……)
まゆは震える身体を抑えながら、勇気を振り絞って山道を進んだ。
◇
そこは辺り一面、銀世界の雪山だった。
そんな季節外れの雪山にて跳躍力を活かし、縦横無尽にジャンプを繰り返すNPCがいた。
それこそが先程の雷鳴を起こした者の正体であり。
ヘラジカ型アンデッドのディアーアンデッドだった。
「グルルル!」
ディアーアンデッドは持ち前の跳躍力で山の斜面を駆け巡り、逃げ惑う参加者の青年を追い詰めていた。
雪山の歩きづらい足場なせいもあり、ディアーアンデッドの追跡から振り切れない。
逃走を諦めた青年はディアーアンデッドを睨みつけた。
すると青年の腰からベルトから出現。
ディアーアンデッドを倒すべく変身ポーズを構え……
「変し「させない!!」
怪人から青年を庇うように少女が姿を現した。
ミントグリーンのコスチュームに身を包んだ少女の名はキュアリリアン。
猫屋敷まゆが変身する伝説の戦士、プリキュアである。
「グルル……」
突然現れた二人目の参加者にディアーアンデッドは唸り声を上げながら跳躍し、キュアリリアンへ飛びかかる。
「はぁっ!」
まるでバレェのようにしなやかな動きでディアーアンデッドの攻撃を次々と躱していく。
そのスピードと軽やかさはディアーアンデッドをも上回っていた。
「………ッ!!」
キュアリリアンの身体能力に驚き、自分が戦う必要が無いと察した青年は
変身を解除し、腰に装着されたベルトを消失させた。
「グルルゥ!!」
攻撃が当たらない事に業を煮やしたディアーアンデッドは
角から雷撃を撃ち続け、キュアリリアンへと放たれた。
「リリアンネット!!」
蔦状のネットを展開してバリアの役割を果たし、雷撃を全て受け止める。
「ギギッ!?ギャーギャー!!」
一切の攻撃が通じず、恐怖心に駆られたディアーアンデッドは恐れおののき。
キュアリリアンから一目散に逃げていった。
(こ、怖かった……)
戦いこそ一方的だったものの、ガルガル以外の敵との遭遇で
キュアリリアンの内心は不安で一杯だった。
それでも目の前にいる青年を救う為に必死になって戦うことが出来たのだ。
「ありがとう!君のおかげで助かったよ!」
「いえ、無事で良かったです」
笑顔で礼を言う青年の言葉にキュアリリアンの心は暖かくなる。
◇
その後、二人はここから近くにあった山小屋へ移動すると
お互いに自己紹介や情報のやり取りを行った。
救出した青年の名は小野寺ユウスケ。
彼は山頂から降りようと移動していた所を怪人に襲われていたという。
「それにしてもプリキュアだっけ。こんなに若いのに正義のヒーローとして戦ってるなんてまゆちゃんは立派だよ!」
「正義のヒーローだなんてそんな……私はただ、困っている人達の力になれたらいいなと思って……」
褒められる事に慣れていないのか、頬を赤らめて笑顔になるまゆ。
「それを使ってプリキュアになるんだよね?他の人が使っても変身出来るの?」
「いえ、これは私専用で他の人が使ってもきっとプリキュアになれないと思います」
「そっか。代わりに戦える支給品があればまゆちゃんを助けられるのになぁ」
シャイニーキャッツパクトはまゆ本人への支給として渡された支給品である。
仮に主催者による細工で他の女性参加者が変身出来たとしても同等の力を引き出せる保証は無い。
「とりあえず、この辺りで何か使えるが無いか探してみるよ」
「じゃあユウスケさん、私も一緒に」
「まゆちゃんは休んでてよ。俺が戦えなかった分、他の事で役に立ちたいんだ」
「はい、じゃあお言葉に甘えて」
せっかくのユウスケさんの好意を無駄にしてはならない。
そう思ったまゆはソファーに座ってゆっくりと休憩していた。
それから数分後、まゆはうとうとと眠くなりソファーで横になった。
殺し合いに巻き込まれた不安やNPCとの戦いはまだ幼い少女にとって疲労として蓄積されていた。
ぎし……ぎし……
するとまゆのいるソファーに向かってゆっくりと歩いてくる足音があった。
足音の主はまゆの背後まで近づくと彼女のポケットにへと手を伸ばし
まゆがプリキュアに変身するために必要なシャイニーキャッツパクトを抜き取る。
「……ん?」
側に人がいる気配に気付いたまゆは目を覚ます。
すると彼女の視界からロープが目に入った。
その時だった。
「んぐっ!!」
背後にいた男がロープを使ってまゆの首を絞め上げた。
「ぐ、ぐるじ、やめっ……」
ギリギリと首を絞められ続けるまゆ。
意識が朦朧とする中、彼女は必死にテーブルへ手を伸ばした。
そこにはガラスで出来た灰皿があった。
(私、死にたくない!!ユキに会いたい!!)
灰皿を掴んだまゆは全力で背後にいる男に向かって灰皿を叩きつけた。
「ぐああっ!!」
そこにいるのは額を傷つけられ、血を垂らす小野寺ユウスケの姿だった。
「ゴホッゴホッ!!なんで……?ユウスケさん……ゴホッ!」
「せっかく首吊り自殺に見せかけて殺してやろうと思ったのによぉ」
「ひっ!」
先ほどまで優しかった好青年とは似ても似つかない凶悪な顔付きへと変わっていった。
自分が生き残る為なら、平然と他者の命を奪える冷酷な殺人者。
それが小野寺ユウスケの本当の姿だった。
「まぁ、いいや。これで殺す方が手っ取り早い」
ユウスケの右手にはサバイバルナイフが握られていた。
「い、いや……やめて……」
サバイバルナイフの刃の輝きにまゆは恐怖に怯え、後ずさる。
(そうだ!プリキュアに変身して!)
キュアリリアンになればユウスケから逃げ切ることだって出来る。
(急いで変身しなきゃ……あれ?無い……どうして?)
ポケットに入れたはずのシャイニーキャッツパクトが無くなっていた。
別のポケットも探すかどこにも見つからない・
(どうして!?どうして!?どうして!?)
焦りと恐怖でまゆの顔が青ざめ、涙が溢れてくる。
その姿を見てユウスケは笑いが止まらなかった。
「ハハハハハハハハハッッ!!!お前が探してるのはコレかぁ?」
「そ、それは!?」
シャイニーキャッツパクトは何故かユウスケが所持していた。
眠っている内に奪われた事を知り、血の気が引いていくまゆ。
「コレが無いとプリキュアになれないもんなぁ!ハハハハハ!!」
「か、返して……」
「お前には代わりにコレをやるよ!」
サバイバルナイフがまゆの腹部を突き刺した。
「嫌あああァァァ!!!」
あまりの激痛にまゆは悲鳴を上げ、床をのたうち回った。
「痛い……痛いよぉ……」
苦痛で体をよじりながらもまゆは匍匐前進でユウスケから逃れようとする。
「おい、逃げるな」
「ううっ、やだぁ……もうやめてぇ……」
ユウスケはまゆの髪の毛を掴んで引っ張り上げると
まゆの腹部に刺さったナイフを勢いよく引き抜く。
「きゃあああァァァ!!」
吹き出す血。まゆは苦痛で涙を流した。
「助けてユキ……ユキぃ……うあああ!!」
再び突き刺した。
「あがっ……あっ……」
ユウスケは何度も何度もサバイバルナイフでまゆの腹部を刺し続けた。
もう言葉すらまともに発せなくなったまゆの腹部から血がドクドクと溢れていく。
(痛い、苦しい……私……死ぬの……?)
朦朧とする意識の中、まゆが最後に見たのは、ユキにいろはちゃんにこむぎに悟くん。
大切な仲間達の笑顔だった。
「よし、一人目は終わりっと」
一仕事終えたユウスケは、額の傷の手当てや返り血を洗い流していた。
本当は首吊り自殺に見せかけるつもりだったが抵抗されたから仕方ない。
出来る限り自分が殺害した痕跡を消してさっさと離れるつもりだ。
(それにしてもプリキュアか。ライダー以外にもそんな力を持つ奴がいるとはな)
プリキュアの存在を知ったユウスケはシャイニーキャッツパクトを破壊し処分した。
これでまゆの持つ支給品からプリキュアが現れる事はないだろう。
それと、まゆには秘蔵としていたが、小野寺ユウスケにも特殊な力を持っている。
それは仮面ライダークウガと呼ばれる変身能力だ。
他の参加者の裏を搔く為にも己の情報は出来る限り伏して置きたい。
「何にしろ、生き残るのはこの俺だ」
自分が生き残る為ならいくらでも殺してやる。
女子供だろうと容赦するつもりはない。
俺の邪魔になる者は全て死んでもらう。
ここは特別な場所である。
どこの次元から、どんな奴が来ているかなんて分からない。
【猫屋敷まゆ@わんだふるぷりきゅあ! 死亡】
【小野寺ユウスケ@RIDER TIME 仮面ライダーディケイド VS ジオウ ディケイド館のデス・ゲーム】
状態:ダメージ(微小)
服装:普段の服装
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜4、サバイバルナイフ@現実、SA・ホットライン
思考
基本:優勝して生き残る
01:好青年の振りをしつつ他の参加者を始末する。
参戦時期:本編が始まる前からの参戦です
備考
『仮面ライダーディケイド』に登場した小野寺ユウスケとは別人です
支給品紹介
【シャイニーキャッツパクト@わんだふるぷりきゅあ!】
猫屋敷まゆがキュアリリアンに変身するためのアイテム。
本人以外の女性も変身が可能にされているが人によって素質は異なる。
投下終了です
投下します
羂索たちの仕掛けた殺し合いの会場は広い。
自然環境豊かな場所や、都市部の一角のような場所まで様々なギミックとNPCモンスターが存在する。
中には一部参加者には絶対に単独で倒せないだろうと言いたくなるような存在もいる。
例えばマスカレイド・ドーパントなどの所謂最下級戦闘員級だとしても、少なくとも7歳には負けるわけない程度の脅威ではあるはずだった。
「……」
だが、今事実として7歳の少女にマスカレイド・ドーパントの一団が全滅させられていた。
路地の真ん中に立つ少女、錦木千束は手にした拳銃、ベレッタM9A1のマガジンを抜き取り、ともに支給されていた予備マガジンを装填する。
「これで最後か。
結構使っちゃったな」
そうつぶやくと、ぱっと見では誰も居ない方に銃口を向ける。
「誰?いるんでしょ?」
「ちいさいのにすごいね。
そいつらやっつけた上に、俺のことにも気づくなんて」
出て来たのはすらりと背の高い茶髪の男だった。
拳銃を向けられているはずなのだが、特に動じた様子もなく穏やかな笑みすら浮かべており、両手にも特に何も持っていない。
リュックは背中に背負っているらしい。
「おじさんは?」
「剣崎、剣崎一真。君のお名前は?」
拳銃を構えられたままだが、剣崎はなかなかの胆力の持ち主で近すぎず遠すぎない位置で止まると、千束に視線を合わせる様にかがむ。
「錦木千束」
「千束ちゃんか。素敵なお名前だ」
「どーも。
それで、剣崎おじさんはそんな拳銃もった素敵な千束ちゃんに何の用ですか?」
「千束ちゃんは、ゲーム好き?」
「え?」
30分後、剣崎の隣に座って携帯ゲーム機、グレートワンダースワンXXXを弄る千束の姿があった。
先ほどまでは戦闘後という事もあって、子供とは思えない冷めた表情をしていた千束だが、今はその目に少しだけ幼さ特有の光のような物がうかがえる。
「どうかな?」
「結構難しいね。
初めて触ったけど、やりがいあるかも」
そう言って再び視線を画面に戻し、宇宙艦隊を相手取る千束。
剣崎一真……否、剣崎一真のガワを被った男、檀黎斗はその本性を隠したまま満足げにほほ笑む。
(まずは第一段階クリアだな)
流石に神の才能を持つ自分と言えど、陳腐なことに物理的制約には逆らえない。
彼女に触れさせるゲームが自分の開発した者でないことは至極残念ではあるが、彼女はゲームを、元は黎斗に支給されていたグレートワンダースワンXXXを気に入ってくれたようである。
(ゲームとは、満たされない人々に夢と冒険を与える物。
陳腐な現実を忘れさせ、一時の神の世界へいざなう……ああ!
何と素晴らしいことか!
それだというのに……羂索め!クルーゼめ!茅場め!
いったい何の大義があるか知らないが、この私ふくめ命をなんだと思っているのだ!?
命は大切だからこそ、この私の神の才能により無限とならねばならぬというのに!
なんたる愚か!
なんたるクソゲー!
幸い何やら手を加えているがこのバトルロワイヤルに根底の技術の一つとしてバグスターウイルスが使われている……多少時間はかかるがこの私ならバグスターウイルスが原因で死んだものなら復活させる算段も立てれなくはない……。
となると早急に探さなくてはならないのはゲーム病以外で死んだ人間の蘇生方法、それと瀕死の人間を確実に救うためにプレイヤーの手で腕輪の鎮静剤の供給を断つ方法だな)
「ねえ剣崎おじさん」
「なんだい、千束ちゃん」
「これ以外にも面白いゲームってある?」
「勿論!ゲームはね、満たされない人に夢と冒険を与えてくれるんだよ」
「へー」
これは何としても生き延びてこの子にもっと素晴らしいゲームを遊んでもらわねばならないと、子猫が遊んだ後の毛糸玉みたいな精神構造をしておきながらどこまでも純粋なゲームクリエイターでもある偽神は改めて決意した。
【檀黎斗@仮面戦隊ゴライダー】
状態:健康、剣崎一真に擬態
服装:私服(剣崎一真)
装備:ブレイバックル@仮面ライダーディケイド
ラウズカード一式(♠A〜10)@仮面ライダーディケイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:羂索たちに本当のエンターテイメントという物を教えてやる
00:ゲームで満たされない人々に夢と冒険を与える。
01:錦木千束と行動する。
その過程で彼女をゲームで笑顔にする。
02:最終的に死んでしまったプレイヤーたちをバグスターとして蘇生させる為の方法を模索する。
03:別の世界ではワンダースワンにこんな後継機があったのか。
元持ち主はシューティング系ばかり好んでいたようだな。
参戦時期:少なくとも本物の剣崎一真に出会う前。
備考
※名簿には剣崎一真と表記されます。
【錦木千束@リコリス・リコイル】
状態:正常
服装:ファーストリコリスの制服
装備:ベレッタM9A1@現実
グレードワンダースワンXXX@機動戦士ガンダムSEED
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この事件を解決する。
01:剣崎おじさんと行動する。
02:ゲーム、結構やりがいあるかも。
参戦時期:幼少期
備考
※
【支給品解説】
・ブレイバックル@仮面ライダーディケイド
…檀黎斗@仮面戦隊ゴライダーに支給。
仮面ライダーブレイドへの変身アイテムで、対アンデッド組織BOARDが開発したライダーシステムの一つ。
使用者は剣立カズマ。
♠A〜10のラウズカードが付属する。
・グレードワンダースワンXXX@機動戦士ガンダムSEED
…檀黎斗@仮面戦隊ゴライダーに支給。
ブーステッドマンの一人にしてレイダーガンダムのパイロット、クロト・プエルの私物。
彼は暇な時間は良くこのゲーム機でシューティングゲームを遊んでいた。
・ベレッタM9A1@現実
…錦木千束@リコリス・リコイルに支給。
装弾数15発。ベレッタ社が開発したスライド式拳銃。
ベレッタM92Fをベースに、アメリカ海兵隊のオーダーでピカティニーレールの追加、砂漠地域での運用を前提とした仕様のマガジンへの変更をくわえられた軍用モデル。
予備弾もセットで支給されていたが、予想外に会敵した数が多かったのか、千束は最後のマガジン以外全部使ってしまった。
【NPCモンスター解説】
・マスカレイド・ドーパント@仮面ライダーW
…ミュージアムや財団Xの関係者が使用する量産型メモリ。
頭部以外は大きく人型を逸脱しない。
身体能力は変身前より強化されるが、戦い慣れた者や正規の戦闘訓練を受けた者なら十分対応可能なレベル。
秘密漏洩を防ぐために倒されると爆発して死亡する。
投下終了です。
タイトルは こどもたちの神さま です
投下します
――――彼の地に伝わりし伝説――
かつて勇者によりもたらされた永き平安を約束された地に――
その”光”を奪い世界を再び闇にもたらそうとした魔族がいた
その者の名は――
「フハハハハハハ!どうした?少しは抵抗してみせろ!」
溢れんばかりの邪の波動を携え、ローブで覆った魔族が、少年を襲っていた。
その魔族は、強さを極め魔物の頂点へと君臨した者。
すなわち魔王であった。
「開幕弾幕シューティングってどうなってんだ!マ◯オメーカーの高難度コースかよ!」
ヘッドホンを着けた11歳の少年は迫りくる、魔法の衝撃を命からがら回避した。
少年の名は西京芸麻。プロゲーマーを目指している小学生だ。
「ええい!わからん殺しされてたまるか!」
魔王は一切本気を出していないどころか、遊んでいる。
その気になれば戦いにもならず一瞬で終わるのだが、あえて迫りくる恐怖を演出している。
さながら逃走しかできないホラーゲームの如くだ。
「ギラ!」
「うおおっ、!?」
頭部を狙った灼熱魔法を、着弾前に回避する。
芸麻はゲーマーだ。
だからこそ、相手の視線や腕の動かし方から狙ってくる場所を読み解ける技能がある。
とはいえだ、ずっと逃げ続けさせるほど魔王は甘くはない。
芸麻自体も体育の成績がビリな程に体力が無い。
「遊びは終わりだ、ベギラマ」
手元の灼熱魔法を無数に発生させ、粘土のように一つに纏め上げる。
バチバチと空を鳴らし、威力を高めて行く。
「さあ、苦しませずに終わらせてやろう」
『勝てない敵は逃げるべし』、その言葉を信条とする芸麻ではあれど、もはや足が動かなかった。
魔王からは逃げられない。
ゲームをやり込んでいるからこそ、その言葉の意味を自ずと理解していまう。
こんなものに勝てるわけがない、と。
りゅうおうはベギラマの炎を、更に幾多にも纏め上げる。
何倍にもその火力を高まったその熱は周囲の木へと伝染していき、
灼熱の爆風は、直撃すれば人間程度一瞬で蒸発させる熱量を誇る。
「冥土の土産に見せてやろう!これが『ベギラゴン』だ」
掌の上で、敵全体を纏めて焼き尽くせる程に巨大に膨れ上がった業火は、もはや回避は叶わない。
優れた反射神経も操作技術も意味を成さない。
まだやり残した事は数多くある。
馬鹿にしてきた周囲の人間に見返させてやれなかった事。
親にプロゲーマーとしての自分を認めさせれなかった事。
何より、自分を認めてくれた少女に別れの一つも言えなかった事がなによりも悔しい。
(巫女ッチ、ごめん)
目の前に死が迫る。
今にも閃光が放たれんとしたその瞬間。
オレンジ色に輝く炎が視界を横切った。
「ぐおっッッ!」
それはベギラゴンとは別の、もう一つの輝き。
放たれる前に、一筋の炎が駆け抜けた。
青と黄色の炎(フレア)を思わせる、毛に溢れた獣人が魔王を弾き飛ばしていた。
「君!大丈夫?今のうちに逃げるわよ」
「え、ポ●モン……?」
「ポ●モン……?私はヤリモンだよ」
獣人の名はチケフレア。
ある世界にいつしか現れた、ヤリモンと呼ばれる不思議な生き物の一体である。
ポケモンとは一切関係ない。
「魔王から逃げられると思ったか?」
「くっ!」
逃走経路に閃光が飛んだ。
周囲の木々が崩れ落ち、燃え広がり、逃げ道を封じた。
チケフレアの強烈な一撃を浴びた魔王は、それをものともせず即座に攻撃体制をとった。
「……チートタックルを耐えるなんてね」
チケフレアのチートタックルは威力800000を誇る彼女の最強技だ。
威力150程度で高火力とされる元の世界において、それを上回る技は存在しない。
しかも、どんな相手も絶対先手を取れるという文字通りのチート技である。
「少々痛かったが……まあこの程度問題ない」
あくまで倒す技であり、殺す技ではない。
この技の効果は、相手の魂から放出されるエネルギー流出を一時的にカットさせる事だ。
つまり強制的に気絶させる技である。
ヤリモンバトルのような戦闘不能で敗北扱いとなる試合ならば、有用な技だが、ルール無用の殺し合いにおいてはそうではない。
「それにしても、これは素晴らしい力だ……」
そもそも物理的な威力ではなく、魂的な威力に特化した技である。
そうした属性に耐性があるならば、効果は薄くなる。
魔王に支給された『神鳥の杖』は、世界を支配せんとした暗黒神の魂が封じられており、所持したものに莫大な魔力を与える伝説の杖である。
チートタックルでカットされた魂のエネルギーは杖より即座に送り込まれ、戦闘不能を回避したのだ。
「冥土の土産に教えてやろう。その胸に刻み込め」
魔王の身体が、ゴボゴボと音を立てて膨らんでいく。
次第に、命を刈り取る爪、鱗のような肌を持つ巨体が出来上がっていく。
「私は『りゅうおう』、この世界の覇者!」
ぞくりと、背筋が震える。
幾多の伝説に伝わりし最強の生物、竜。
ゲーマーのみならず、誰しもが知る神話が目の前に現れた。
「今だけは感謝してやるぞケンジャクよ。この私をさらなる領域へと押し上げたのだからな!」
それだけでは終わらない。
魔王とは、絶望を与えるからこその魔王なのだ。
「見るがいい、我が秘法『邪の波動』の力を」
魔物使いとモンスターが手を取り合い共に頂点を目指す世界において、竜の王と暗黒神が掛け合わさった時に産まれる存在がいる。
神鳥の杖が意思を得たように動き、りゅうおうの身体へと入り込んだ。
やがて、胎動のように脈打つと竜の身体が再び変貌する。
鮮鱗肌は見るものに恐怖と神々しさを感じさせる鮮血色へと塗り変わった。
それは、外界との繋がりを経ち、人間の踏み入れぬ領域に生きる、伝承すらも伝わっていない竜神族の長。
それは、神すらも自らを生み出す素材とし、辿り着ける伝説の領域。
それは、ある世界において最強を極めた者達の果て、位階の頂点に位置する者。
狂戦士(バーサーカー)、竜(ドラゴン)
深紅の巨竜 竜神王。
「フハハハ!何たる力か!これが神の領域か!」
「くっ!」
りゅうおうが息を吸うと、『しゃくねつ』の炎が飛び散った。
ほんの少し息を吐いただけで、大爆発が二人を襲った。
災害が起きたかのように、周囲の木々を塵芥の如く軽々しく吹き飛ばし、大地を抉り取った。
たかが、子供と魔物を相手にするにはあまりにオーバーキルすぎる力だった。
「は、ははっ…無理ゲーにも程があるだろ」
吹き飛ばされはしたが、二人は生き延びた。
爆風が当たる瞬間、チケフレアが『魂の盾』を発動。
連発は出来ず、わずか1ターンだけではあるが、攻撃を無効化する障壁を張る技だ。
「……私が隙を作るから君は逃げて」
チケフレアが手渡したのは『キメラのつばさ』。
使うことで瞬時に移動出来るアイテムだ。
「君はどうするんだよ!」
「アイツを迎え撃つ、一か八か相打ちぐらいなら……」
「無茶だ!単騎でラスボスを相手にするようなものだぞ」
チケフレア最強の技であるチートタックルはもう使えない。
その力の代償に、一度の戦闘で一回しか使えないからだ。
初手で切り札を切った以上、チケフレアの敗北はすでに決まっている。
それでもチケフレアは、どこか覚悟を決めた顔で、立ち向かう。
「……アイツが気に食わないのよ」
かつてチケフレアが、フレアという少女だった頃。
自らの力を利用され、『白の神』という存在を生み出された事がある。
再び神を名乗る者に好き放題されることに、かつてのような苛立ちを感じていた。
「それに、ここで逃げたら相棒に会わせる顔が無い!」
「……相棒か」
相棒、それは芸麻にとっても関係深い言葉だ。
かつて芸麻が戦いに巻き込まれるのを、回避するために一人で戦おうとした彼女の事を思い返して。
「って何ゲーム機出してんの!遊んでる場合じゃないでしょ!逃げて!」
――――――――
たたかう
どうぐ
ノマにげる
――――――――
魔王からは逃げられない。
違う、逃げる必要なんてない。
「ははっ、とんだクソゲーだ……!」
主催である羂索はこの殺し合いをゲームと言った。
ゲームであるならば、世界一のプロゲーマーを目指す芸麻が攻略を諦める訳が無い。
「芸麻格言そのひとつ、『ゲームオーバーまで決して諦めるな』!」
――――――――
ノマたたかう
どうぐ
にげる
――――――――
強くゲーム機を握り締めた。
ゲーム機から光が飛び出し、チケフレアを包みこんだ。
「わ、ちょっと、何!?身体が動かなっ……!」
「僕のゲーム機は魂を込めることで、人間を操作することが出来る!」
全ての生物が持っている未知の力『魂』。
その力を道具に込める事で性能を強化する者達がいる。
芸麻の場合は、ゲーム機の強化だ。
任意の相手を選び、ゲームのキャラクターのように意のままに動かす事ができる。
今ここに、チケフレアの身体能力に、芸麻の操作技術が合わさった。
「何だその力は!」
りゅうおうが優れた攻撃力を持とうと、当たらないなら意味はない。
当たれば即死するであろう炎と爪による一撃を次々と回避し、りゅうおうへと肉薄し、殴打を放った。
「小賢しい!」
「私の相棒は一人だけだ……だけど、帰るまでの間、従ってあげる!」
チケフレアは元々フレアという少女の魂が、チケープというヤリモンの身体に宿った姿だ。
チケープは他人の魂のエネルギーを餌にし、さらなる成長を遂げるヤリモンだ。
魂を込められる芸麻の能力とのかみ合わせは抜群に良い。
「「こんなところで終わってたまるか!!!!」」
「喚くな、虫どもがっ!!!!」
絶対にプロゲーマーになるために/チャンピオンになる夢の為に。
なにより、元の世界に残った相棒の、刀道巫女の/フッ太の夢の為に。
こんなところで、終わらせるわけには行かない。
その二人の願いに、令呪が答えた。
チケフレアの毛皮が翼の如く、大きく羽ばたいた。
黄金色の輝きはまさに『未来への翼』。その姿はもはや誰の目にも止まらない。
「見つけたぞ、攻略ルート!」
ゲーマーは、観察力が優れている。
一対一という呪縛から解き放たれ、冷静に場を見渡せるなら、その目を十全に発揮できる。
りゅうおうはまだ自らの力を使いこなせていない。
方や芸麻はステータス画面より、チケフレアのスペックを確認し、攻略手順を構築した。
「おろか者め!思い知るがよいっ!」
りゅうおうは大きく息を吸い込み、勢いよくチケフレアへと吐き出した。
竜から放たれる灼熱のブレスは、生物が食らって生きられるものではない。
当たるだけでも、肉体ごと体液が沸騰し軽々蒸発する。
神の領域に達した事で更に勢いを増している。
「何ッ!」
にも関わらずだ。
直撃したはずのその身体には、火傷の一つすらも浴びていない。
先ほどチケフレアが放った殴打は『天衣無縫』という技だ。
その効果は、先制して攻撃を当てることで、次の相手の攻撃を1度だけ回避することができる。
高く飛び上がり、竜の頭部へと勢いよく一撃を放った。
「いくら小細工を練ろうが、曲芸にすぎんわ!」
会心の一撃ではあった。
だけど倒しきれたわけではない。
依然として勝敗は決していない。
にも関わらず、芸麻は笑っていた。
『ピンチのときこそ、ぶてぶてしく笑うもの』。
そんなゲームの名言が似合うようにニヤリと。
「何勘違いしてるんだ?今のは、攻撃じゃない!」
不意にりゅうおうの身体が光に包まれ、地面から宙に浮いた。
「なんだこれはっ!」
「さっきのは『キメラのつばさ』をお前に結びつけるためだ!」
逃走手段たるアイテムを相手に使う逆転の発想。
とはいえ、圧倒的大きさを誇る巨竜。
それだけの質量を転送するには時間がかかる。
『必殺技 Aボタンを押すたびに威力が向上』
だからこそ狙うなら今だ。
隙の生まれた竜へと追撃の必殺技を放つ。
高ぶった気持ちか、チケフレアのステータスを何倍にも増加させる。
ボタンを連打するたびに、加速する。
片手だけでは足りない。両手を駆使し、さらに連打数を増やす。
両手が悲鳴を上げてもなお、ボタンを押すのをやめない。
「超高速『未来への翼』連打!」
「お、おのれ!くちおしや」
「これがっ!これがプロゲーマーになる男、西京芸麻だ!」
「「そのまま飛んでけっ!」」
二人の令呪が同時に尽きる99.9秒直前。
巨竜が遥か彼方までぶっ飛ばされた。
■■■
「……やったか?」
「ねぇ、それフラグじゃない?分かってて言ってるでしょ」
この場を切り抜けはしたものの、竜王を倒しきれていない事は分かっている。
己の全てを出し尽くし、令呪を犠牲としても勝利には繋がらなかった。
「だからこそ、攻略法を探す」
ゲーマーとは試す生き物だ。
敵わなかった相手でも、何度でも挑戦する。
相手を分析する。弱点を突く。技を変える。仲間を探す。効果的なアイテムを使う。
そうしてボスを倒すに至る。
「そうね、まず協力してくれる人を探そっか」
「ああ!目指すはこのゲームの完全クリアだ!」
この世界には先程の竜のような理不尽ゲーを強いて来る相手が数多くいる。
それでもゲーマーは夢の為に諦める事は無い。
かくして二人のゲーム攻略が始まる。
目指すはノーコンティニュークリア。
「その前にっ、と」
「ちょっ、えっ?何!?」
肉体の操作を奪われ、チケフレアは強制的に手足を高く振り回される。
両手はピースサインを描き、腰つきの動きは可愛らしく、くねくねと。
笑いを誘うようにも、煽っているようにも見える。
どちらにせよ、年頃の少女にとっては羞恥を与えるダンスだ。
「何って……勝利のエモートダンスだが」
ガシッボガッ
「遊んでる場合じゃないでしょ……次やったら本気で怒るからね」
「……ごめんなさい」
※戦闘周辺でりゅうおうの炎による火災が発生しました。
【西京芸麻@ゲーマーが妖怪退治やってみた!】
状態:ダメージ(小)、疲労(小)、指のみ疲労(中)
服装:いつものパーカーとヘッドホン
装備:ゲーム機@ゲーマーが妖怪退治やってみた!
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0~2、SA・ホットライン
思考
基本:このゲームを攻略する
01:しばらくはチケフレアと組む
02:強力してくれる人を探す
参戦時期:弓城姫姫の加入(3巻)以降のどこか。
備考:ゲーム作品への深い知識がありますが、ゲーム出典の参加者へのメタ知識は扱わないものとします。
【チケフレア@ヤリモノ】
状態:ダメージ(小)、次回戦闘までチートタックル使用不可
服装:ワンピースっぽい毛並
装備:なし
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0~2、SA・ホットライン、キメラのつばさ×2@ドラゴンクエスト
思考
基本:主催を倒して帰る
01:しばらくは芸麻と組む……言っとくが私の相棒は一人だけだ
02:竜王は今度こそどうにか倒したい
参戦時期:クリア後。後日談シナリオのアテナ戦は未経験。
備考:
※チートタックルは一戦闘ごとに一回のみ使用可。
※未来への翼は通常使用不可。令呪などのブースト手段が必要。
(※出典名はR18版『ヤリステメスブター ボクだけの謎ルール!女トレーナーに勝つとエッチあたりまえ』でも構いません。
違いはR18なシーンがカットされてるかだけなので今後の企画の方向性に合わせて好きに変更してください。)
【支給品解説】
【ゲーム機@ゲーマーが妖怪退治やってみた!】
芸麻が愛用している某Switchに似たゲーム機。
フォー◯ナイトなどのゲームソフトもセットで支給。
魂を込めることで任意の相手を自由に操作することが出来る。
また、操作の間はモニター越しに姿を確認することができる。
レベル差があまりに離れすぎている相手は操作出来ず、敵対している相手は一度倒さなければ操作できない。
【キメラのつばさ×3@ドラゴンクエスト】
チケフレアに支給。
使うと瞬時に拠点に移動できる、シリーズおなじみのアイテム。
DQ1仕様であり、決められた場所にしかワープできない。
このロワでは会場施設にラダトームがあればそこの入口に飛び、無ければ地図上のどこかの施設に固定で飛ぶものとする。
1度に飛べるのは2名まで。
■■■■■■■■■
【りゅうおうはベホイミをとなえた!】
抉られた肉が、ボコボコと盛り上がっていき、瞬く間に塞がった。
魔法とは唱える者の魔力によって、その力は変わるものだ。
単なる中級回復魔法であれ、魔王が唱えるならば欠損すらも容易に回復させる。
元の世界においては四等分にされてもなお、再生したほどだ。
「1度ならず2度までも……またも忌々しいガキ共がっ!この俺様(りゅうおう)をっ!」
見た目は誇り高き竜族の王。
だけど、その美しき姿に似合わぬ小物口調で激昂する。
「キにサワル、シャクにサワる、ムカツクんだよ!!!」
この『りゅうおう』は本物の竜王ではない。単なる贋作。マガイモノ。
禁忌の術により生み出され、その姿形を与えられただけの脆弱な魔物の集合体。
種族の血に溺れ努力を怠った軟弱者。
“できあい”のもので姿と能力だけ取り繕った人形。
種族名は、確かに『りゅうおう』だ。
個体としての名前は、主からは与えられていない。
贋作として区別する為に、表記上だけ『りゅうおう≒』と呼ばれる者だ。
「……何故だ、なぜ負ける!」
圧倒的な力。技。能力。
邪配合という力を得て強くなった。
魔王という頂点へとたどり着いた……はずだった。
かつて、神竜を喰らって力を得たように、支給された暗黒神の力を取り込み更に力を増した。
それでも、二度目の敗北で届かない領域があると知ってしまった。
元の世界では本物の竜王に容易く喰われその命を終わらせた。
蘇ったこの地においても、虫けら同然のモンスターマスターと魔物に再び敗北するという無様を晒した。
それが、『りゅうおう≒』にとっての現実(じごく)。
「俺とヤツらで何が違う!何が足りんというのか!」
以前、モンスターマスターを名乗るクリオと戦った時を思い出す。
あの時も単なるスライムやスライムベスが本来より高い力や使えない技を引き出していた。
先程も獣人型の魔物が人間により、力を何倍にも増幅させた。
「あの力はなんなのだ!」
どれだけ考えても分かる訳が無い。
りゅうおう≒は実験体。
生み出した主からも名前を与えられない孤独な魔物だ。
その人とモンスターの繋がりを理解することはできない。
「……まあ、良い。あれ以上の強さを身に付ければ良いのだ」
りゅうおう≒にとって、殺し合い自体は興味は無い。
そもそも元の世界において無様な最期を遂げ、一度は無くなった命だ。
邪配合で生み出された魔物は絶命すれば姿形すら残さず消滅する。
そして、かの世界では主から名付けられなかったモンスターの魂は、主の元に帰ることができない。
だからこそ、この地で蘇ったのはチャンスだと思った。
もう一度、より強大な力を身に付け、元の世界へと帰還する。目的はそれだけだ。
「テリー様、待っていてください。貴方の求める究極の魔物になって見せましょう」
名もなき『いつわりの王』は再びやり直し(RE-DO)を求める。
【りゅうおう≒@ドラゴンクエストモンスターズ+】
状態:ダメージ(小)、激怒、変身前の魔族姿
服装:ローブ姿
装備:神鳥の杖(体内に吸収)@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、SA・ホットライン
思考
基本:再びテリー様の元へ。
01:邪配合の元となる素材を見つけ、喰らい、力を付ける
02:あのモンスターマスター(芸麻)は次会ったら殺す
※参戦時期は単行本2巻。本物の竜王に殺された後。
※竜王×ラプソーンの邪配合により『竜神王』に変身できるようになりました。
それに伴いスキル『竜神王』@DQMシリーズを取得しました
【支給品紹介】
【神鳥の杖@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
りゅうおう≒に支給。
暗黒神ラプソーンの魂が封印されており、持ち主を操り、負の感情を増幅させる代わりに強大な魔力を与える。
魔法の才能が無いものや、単なる飼い犬でさえボス級になれるほどの力を秘めている。
なお、他のDQ作品やソシャゲにコラボアイテムで登場する際は、操られる事はなく単純に強い装備品として扱われる。
それでいいのかラスボス。
このロワにおいてもそれに習い、主催陣営が誰でも使えるよう性能を落とし込んだ武器として扱う。
ラプソーンの力自体は再現されているものの、意思は宿っておらず所持しても操られることはないものとする。
ソードスキルとして、作中でラプソーンに操られた者達(ドルマゲス、レオパルド、呪われしゼシカ、マルチェロ)が使っていた技も使えるかは、後続に任せます。
投下終了です
タイトルは『君の側で、魂がここだよって叫ぶ』で。
ss0601氏の代理で投下させていただきます
「ルルが……生きてる?」
そう呟きながら、私は汗を拭うために仮面を外す。
予想外の出来事が起き続けたせいで、冷汗が止まらなかった。
私は……ルルの代わりに"ゼロ"として生きることにした。
だって、彼が作りたかった世界は優しい世界。
それを、私のせいで奪う事は許されない。
そう思ったから。
でも、ルルは生きていた。
生きてたんだ。
それ自体は喜ばしいことだ。
だが……違和感がある。
どうやって生きていた?
あの状況から生き延びるのは……不可能だろう。
なら……いや、そんなことは。
だが、羂索は呪術師と言っていた。それは明らかに私たちの世界には存在しないもの。ならば、その可能性もあり得るのだろうか?
あの《ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア》が私の知るその人とは、違う世界線或いは時間軸の人物という事が。
……まだ、断定は出来ない。
だが、確信に近いものがある。
とりあえず、彼との友好関係は期待しないでおこう。
最悪、私を知らない可能性すらある。
なら、私は変わらず私の世界のゼロとして振る舞おう。
そして、ゼロなら……こんなゲームには反逆しなければならない。
強者が弱者を蹂躙して、願いを叶える。そんなことを許してはならない。
「あら? 変わった服装の人ね〜」
「あっ⁈」
イレギュラーが続きすぎて油断した!
学生服を来た少女が私に話しかけて来た時、私はまだ仮面を外していた。
急いで装着するが、もう遅い。
……まぁ、顔は幸い見られていないが、女だと言うのはバレた。
「顔は隠しちゃうのね、残念。……安心して、アナタの中身については黙っとくわ」
「あの、あなたは?」
「私は、マリヤ・ミハイロヴナ・九条。マーシャ、でいいわよ」
「ハーフ、か。なら良かった。私のことは知ってる?」
「いいえ、そもそも顔が分からなきゃ誰だか分からないもの」
「いや、仮面で分からない」
「……分からない」
「分からない?ホントに?」
「えぇ、ホントに」
ゼロを知らない日本人と西欧人(推定)とのハーフ?
いいや、そんな人がいることはあり得ない。
ゼロの名は海を超えた遥か遠くまで知れ渡っている。
……もしかして。
「あのマーシャさん、お互いの世界について話してみない。多分、私たち……」
「やっぱり、そう言うことなの?」
「えぇ……多分」
ブリタニアがなく、日本が独立している世界……。
そんな世界も……あるんだね。
にしても。
「こんなにも世界がズレていたとはね」
「本当にそうねぇ。にしても、神聖ブリタニア帝国にエリア……ゾッとするわね」
「えぇ、でもあの世界は変わった」
「あなたが変えたのね」
「違う、世界にいる人々が……みんなが望んだのよ。眩しい、明日を」
私は空を見上げて、そう呟いた。
と、空から何かが落ちて来るのが偶然見えた。
あれは……ナイトフレーム、って紅蓮⁈
「マーシャさん!!!」
「あら?どうしたの?」
「良いから走って!」
私はマーシャさんの手を取り、安全な場所まで走る。
そして、紅蓮は勢いよく地面へ着地する。
砂埃が舞い、周りが見えない。
だが、マーシャさんは無事そうだ。
そして砂埃が落ち着くと、金髪の男がこちらへと歩いてくる姿が見える。
あの人は……どっち?
「お前は……誰だ?」
ゼロとして、私は彼に問う。
「驚かせてすまないね、少しこの機体の試運転をしていただけなんだ。私の名は、マクギリス・ファリド。今再び、私の正義を果たすために蘇った」
【ゼロ(シャーリー)@ コードギアスGenesic Re;CODE】
状態:通常
服装:ゼロの服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:この殺し合いを止める
01:強者による弱者の蹂躙は……私が、ゼロが裁く!
02:色々な世界があるのね
03:ルル……でも、あなたは多分
04:マクギリスさん、アナタは味方?
参戦時期:「そして、話し合いのテーブルへ」後から参戦
【マリヤ・ミハイロヴナ・九条@ 時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん】
状態:通常
服装:制服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:生き残る
01:ゼロと出会えたことは幸運だったわ
02:色々な世界があるのね
03:異能力持ちが普通に居るのは脅威ね
04:アーリャちゃんや久世くんも居るのかしら?
参戦時期:後続の方に任せます
【マクギリス・ファリド@ 機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ】
状態:通常
服装:ギャラルホルンの制服
装備:紅蓮聖天八極式の起動鍵@ コードギアス 反逆のルルーシュR2
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:自身の正義を成す
01:蘇ったのだ、これは私に今度こそ成すべきを成せという世界の意思だろう
02:私をわざわざ参加させたのだ、このゲームにはバエルが用意されているだろう。ならば、手に入れなければ
03:借り物の力など不要だ。私の自由は、バエルと純粋な力によってのみ成立する
04:彼らとは協力出来そうだ
参戦時期:死亡後から参戦
代理投下終了です。
タイトルは 祈りの果てに です
いよいよコンペ最終日ですね。書き手の皆さま、投下お疲れ様です。
すみません。これから私も投下させていただきますが、何作か連続で投下しますことお許しください。
0ZMfbjv7Xkさん
謝らなくて大丈夫ですよ。コンペですので、自分が書きたいなと思うキャラを書くのは当然の権利です(●^o^●)
素敵な作品投下お疲れ様です。
それでは、投下させていただきます。
フィクションです。じっさいの人物には、いっさい関係ありません。
【ドソキーユング@スーパーマリオRPG 】
状態:正常、
服装:なし
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:優勝
01:参加者を襲い、優勝を目指す
参戦時期:ハナちゃんの森に生息中
備考
※名前の由来は知りません
真贋……本物とにせ者
男はなぜ博士なのか?
もしくは博士への逆襲なのか?
”なる”ことで権威を汚すことが出来る?
男は邪悪な笑みを浮かべる。
男が思い描くは川柳ではない。
つまるところ、真贋とは表裏一体。
【にせオーキドはかせ@ポケモンカード】
状態:正常、邪悪な笑み
服装:オーキド博士の服装
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:優勝して、権利を手に入れる
01:命、ゲットじゃぞ〜
参戦時期:発明をした頃
備考
※川柳は詠みません
真贋……本物とにせ者
「お、おいおい……マジかよ」
男の名はでろりん。
かつて勇者を名乗りつつも悪事を働いていたニセ勇者。
その後、彼は本物となった。
つまるところ、真贋とは表裏一体。
果たして、この殺し合いにおいて、でろりんがどちらになるか……今は誰もわからない。
【でろりん@ダイの大冒険】
状態:正常、
服装:勇者の服装
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いにはのらない、死にたくない
01:
参戦時期:オーザムで隠れていたところ
備考
※使用できる呪文
火炎呪文(メラ)閃熱呪文(ギラ)、爆裂呪文(イオ、イオラ)、氷呪文(ヒャド、ヒャダルコ)
真贋……本物とにせ者
「ど、どういうことだ……一体?」
困惑するマスクの男。
男の名はマイティマスク。
第25回天下一武闘会の本選出場者の一人。
マスク姿と全身を覆うローブのような服装から、トランクスと悟天により気絶させられ、代わりに出場をされてしまう悲劇の選手。
この出来事によって、カード・フィギュア・ゲームといった媒体の場で彼の出番は、ほぼなくてトランクスと悟天の変装姿が採用されていることが多い。
紛い物が本物であるかのように公式は扱っている。
それは、マイティマスクの現実(じごく)
つまるところ、真贋とは表裏一体。
【マイティマスク@ドラゴンボール】
状態:正常、困惑(大)
服装:天下一武闘会でのコスチューム
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:死にたくない。
01:一体、どういうことなんだ?
参戦時期:トランクスと悟天に気絶させられる直前
備考
※トランクスと悟天が成り代わっているわけではないので、舞空術で空を飛ぶこともスーパーサイヤ人になることもできません。
真贋……本物とにせ者
影武者……それは、古来より存在したといわれる。
特にまだ情報を得る手段が乏しい時代では、特に重用された。
女の役割は”影武者”として存在すること
影武者がその役割を果たせず何が影武者か。
これでは、”あまり役に立たないらしい”という不名誉な贋が真になってしまう。
故に女は戻らなくてはならない。
そうしなければ女王が……ッ!!
つまるところ、真贋とは表裏一体。
【女王の影武者@遊戯王OCG】
状態:正常、焦り(大)
服装:女王の服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:どんな手段でも構わない。女王の元に戻る
01:現状を把握し、行動する
参戦時期:女王の影武者として働いている最中
備考
※ソードスキルで、参加者の防御を通り抜けて攻撃することが可能です。(ソードアート・オンラインでいうエセリアルシフト )
真贋……本物とにせ者
ミカエル……それは天界の天使。
だが、このミカエルはミカエルにあらず。
社長たちを苦しめる貧乏神。
「この殺し合いのゲームに参加している皆さま!欲望を捨ててください!」
ばらまきボンビーは訴える。
身体をガクガクと震わせながら。
世俗にまみれた欲望を捨てることを。
故にボランティア枠として敬虔に働いていたのだ。
それが神の思し召し。
「さすれば、その魂は清められ、死後は天国へと召されることでショウ!」
つまるところ、真贋とは表裏一体。
【ばらまきボンビー@桃太郎電鉄ワールド 〜地球は希望でまわってる!〜】
状態:正常、
服装:ミカエルの服装
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:参加者たちの欲望を捨てさせて、魂を清める
01:出会った参加者の魂を清める
参戦時期:ばらまきボンビーとして活動中
備考
※本ゲームでは、基本姿は固定(ばらまきボンビー)で貧乏神に戻ることはありません。
※命呪を発動することで、キングボンビーになることができます。
真贋……本物とにせ者
男には使命がある。
それは本物の自分を斃すこと。
それがご主人様から与えられた自分の存在意義
男と本物とは幾つかの違いがある。
まず、ソースが違う。
次にめんが違う。
なにより胸のU.F.O.がU.S.O.!
つまるところ、真贋とは表裏一体。
「1コン2コンサンコン!にせヤキソバンでーす。へぇっへぇっへぇっへぇっ」
【にせヤキソバン@UFO仮面ヤキソバン】
状態:正常、
服装:にせヤキソバンの服
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:優勝して、権利を手に入れる
01:参加者たちを斃す
参戦時期:CM冒頭ケトラーから命令を受け、遊園地へ向かった直後
備考
※ギニア出身のタレントであるオスマン・サンコンさんとは何の関係もありません。
※オスマン・サンコンさんではないため6ヶ国語も話せません。
真贋……本物とにせ者
男はなりすまされた。
なんという冷静で的確な判断力の超人に。
その日より男は負け犬となった。
残虐の神の力を貸してもらったのにもかかわらず。
胸に刻まれしAの文字はその証。
男に再び光が浴びせられることはなかった。
故に男は勝利を掴むことができない。
マリポーサにビックボディ。そしてタッグ戦だが、ゼブラといった運命の王子たちは勝利を掴むことができたのに。
今も、男の名の認知度は、なりすました超人の方が圧倒的。
つまるところ、真贋とは表裏一体。
この現状こそ超人凶器 キン肉マンソルジャーの現実(じごく)
【キン肉マン・ソルジャー@キン肉マン】
状態:正常、蘇ったことによる困惑(大)
服装:残虐コスチューム(迷彩服)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:とりあえず、現状把握に努める
01:一体……これはどういう状況なんだ?
参戦時期:入院先の病室で死去した後
備考
※胸にAの文字が刻んであります。
真贋……本物とにせ者
まるまるピンクなボディ。
彼?彼女?性別は不明。
ここでは、彼と扱わせてもらう。
彼についてわかることは、とある星の戦士に似ている外見と歩くことのみ。
つまるところ、真贋とは表裏一体。
【バタモン@星のカービィ3】
状態:正常、無表情
服装:なし
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:あるがままに生きる
01:……
参戦時期:4-3の隠し通路で歩いている最中
備考
※バタモンはただひたすら歩くだけです。
真贋……本物とにせ者
男は革命家ドラゴンの息子……ではない。
男は海軍の英雄ガープの孫……ではない。
男は懸賞金4億……ではない(2600万ベリー)
しかし、男は扇動の才能はあった。
男は邪悪な笑みを浮かべる。
「クズ共がおれに適うわけないだろ?おれは、麦わらのルフィだ!」
つまるところ、真贋とは表裏一体。
【デマロ・ブラック@ONE PIECE】
状態:正常、邪悪な笑み
服装:麦わらのルフィ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:優勝して、権利を手に入れる
01:クズ共が!この麦わらのルフィにひれ伏せ!
参戦時期:シャボンティ諸島で”麦わらのルフィ”を騙っている最中
備考
※常にデマロの周囲にウィーワー!がバックBGMとして流れています。
真贋……本物とにせ者
「ギイ!」
男の名はショッカーライダー。
仮面ライダーとほぼ同等の外見、能力を有する改造人間。
それは、仮面ライダーの未来の一つ。
そう、本来仮面ライダーは秘密結社ショッカーにより生み出された改造人間。
仮面ライダー一号こと本郷猛がショッカーに敵対しているのも脳改造がされる前に恩師である緑川博士によって救出されたからだ。
もし、脳改造が終えられていたら、子供たちのヒーローは誕生しなかった。
つまるところ、真贋とは表裏一体。
ショッカーライダーのやることは、この殺し合いの場においても変わらない。
ゲルショッカーの世界征服の駒として働くことのみ。
それは、ショッカーライダーの現実(じごく)
【ショッカーライダー@仮面ライダー】
状態:正常、
服装:仮面ライダーの姿
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いに生き残り、権利を手にしてゲルショッカーに捧げる
01:出会う参加者を殺す
参戦時期:本編、死後
備考
※参戦しているのはNO1です(マフラーが黄色)
「本物」と「偽物」検索数はどちらが多い?
正解は「本物」 検索数 765HIT
ちなみに「偽物」は 761HIT
Googleサジェストより引用
カ〜チコチカチ♪ カ〜チコチカチ♪ カ〜チコチカチ♪
あ〜んどう ケンサク♪
【安藤ケンサク @安藤ケンサク】
状態:正常
服装:着ていない
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本: ケンサクの知識を増やす
01: 参加者と出会ったらケンサクする
参戦時期:ばくだんサバイバル担当中
備考
※検索データーは最新のになります。(発売時ではない)
真贋……本物とにせ者
「黒竜江省、哈爾浜出身。涼宮哈爾濱。他のオリンピックには興味ありません。この中に、北京オリンピックのことを知らない参加者は私のところへ来なさい!以上」
少女の名は涼宮哈爾濱。
北京オリンピックの紹介をまかされた公式少女。
外見は、どこかのSOS団の団長に似ているが、関係は不明である。
つまるところ、真贋とは表裏一体。
涼宮哈爾濱のやることは、この殺し合いの場においても変わらない。
この殺し合いのゲームの参加者に北京オリンピックの紹介をすること。
たとえ、ネットが炎上しようともその姿勢は変わらない。
それは、涼宮哈爾濱の現実(じごく)
【涼宮哈爾濱@北京オリンピック】
状態:正常、
服装:超越梦想一起の表紙の服装
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:
01:出会う参加者に北京オリンピックの紹介をする
参戦時期:2008年北京オリンピック閉幕後
備考
※外見は某SOS団の団長に類似していますが、関係性はよくわかりません。
真贋……本物とにせ者
「さぁ〜、やってまいりました〜真贋バトルロワイヤル。」
羂索による殺し合いというゲーム。
司会者の如く降り立つのはゴリラ……ではなく格付けマスター。
「今回も一流の参加者の皆さんがずら〜っと勢ぞろいしております」
「勿論、一流の皆さまなら最後まで一流のままでゲーム(番組)を終えられることでしょう」
もし、参加者が一流でなければ、普通、二流、三流のみならずそっくりさんへとランクは落とされる。
そして、最後は映す価値なしの烙印が……
つまるところ、真贋とは表裏一体。
「それでは、運命の結果発表をしてまいりましょう!」
彼の役割は参加者の格付けをすること。
そして移す価値無しと判断した参加者を文字通り消さなければならない。
悲しきゴリラ……
それは、格付けマスターの現実(じごく)
【格付けマスター@芸能人格付けチェック】
状態:正常、
服装:格付けマスターのスーツ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:参加者たちの格付けを見届ける
01:参加者たちに運命の結果発表を行う。
参戦時期:芸能人格付けチェックの収録中
備考
※彼はお笑いコンビダウンタウンの浜田雅功さんとは何の関係もありません。ただの悲しきゴリラです。
※繰り返しますが浜田雅功さんとは何の関係もありません。
はいっ 病理診断医になってきます!
宮崎智尋
「……はい?」
殺し合いのゲームが始まり、一人呆然と立ち尽くす女性。
女性の名は宮崎智尋。
病理診断医になるために試験会場へ向かっていたはずだった。
それなのに宮崎がたどり着いたのは、試験会場ではなく殺し合いゲームの会場。
服装も試験会場へ向かうスーツではなく、勤務先で働く医師としての服。
血の気が引く。
身体がざわつく。
試験は一年に一回。
勿論、落ちたらまた一年後。
だが、今の自分は合格不合格以前にスタート地点にすら立ててない。
「えっ……と、夢?いや、夢じゃない。ということは?……は、はは……」
涙がこぼれる。
理不尽ではないか……
試験を受けることが全てではない。
病理診断医資格がなくてもこれまで通り、病理の一員として働ける。
だが、それではいつまでも見習い。
いつまでたっても……だ。
「その様子。運命に振り回されてるってわけね」
「……え?」
頭上からの声に顔を空に向けると羽根が生えた少女が浮いていた。
永遠に紅い幼き月
---- レミリア・スカーレット ----
☆彡 ☆彡 ☆彡
「そ……、空を飛んでる?」
「ええ、吸血鬼が空を飛べないわけないじゃない」
言葉と同時にレミリアは宮崎の背後にまわると――
――ガブッ
「っ!?」
「ん……んん」
血を吸いだした。
吸血鬼……?私……殺され……?
吸血鬼と名乗る少女に血を吸われるこの現状。
宮崎が想起するのは、吸い尽くされてミイラになる自分。
抵抗したいが、少女の外見に似合わない力。
少女が吸血鬼という証。
”死”を覚悟する。
が……ひとまず宮崎の命が刈られることはなかった。
やがて、満足したのか首筋から口を離す。
「ぷぅ……ふーん。お前、働くのが好きなの?そう……だけど、まだあどけなさが残る少女のソゲ。走り続けることで得られる妖艶な女マグロには行き着いてないわね」
レミリアは、服を宮崎の血でベッタリと汚しつつ、宮崎智尋の血を品評した。
「いや……”自分がどこまでできるか知りたい”ってやつね」
(青臭い……でも、嫌いじゃないわ)
「でも、残念。お前は”ここまで”」
(こんな殺し合いじゃなければ、もう少しこいつの運命を見届けるのも余興だけど……)
ああ……私、ここまでなんだ
少女の宣告が脅しでないことを理解してします。
宮崎の脳裏に浮かぶは共に働く2人……
だが、再び宮崎の命はまだ刈られなかった。
「あら、……自分の運命にひたすら怒りをぶつける人間ね」
レミリアの視線先に宮崎もそこへ向けると、人がいた。
隻眼の男。
男の名は――
20年後のガッチャ
---- 一之瀬宝太郎 ----
☆彡 ☆彡 ☆彡
それから、怒涛の闘いが経過した――
「やっぱり人間って使えないわね」
「ま、死に場所を探している者なんてそんなものか」
言葉に踏まれる失望。
人間と吸血鬼の差だといわんばかりのため息。
一之瀬宝太郎は変身が解かれると、うつ伏せに倒れ込む。
「一之瀬さん!」
宮崎は走ると傍に駆け寄る。
「ここは、俺が時間を稼ぐ。今のうちに逃げろ……」
「な、何をいってるんですか!?そんなことできません!」
「……名前は?」
「宮崎智尋です」
「ならば問う。宮崎智尋。お前の選択肢は2つだけ。逃げて生き延びるか、俺と共に死ぬか……だ」
「!?」
私に選択を迫る一之瀬さんの瞳……
まるで――
――そうだ。私は一之瀬さんの表面しか見てなかった
医者は目で見えることに囚われすぎる
「私としたことが……っ!」
これが、病理としての仕事だったら、許されざる行為。
だから……
レミリアにキッと見つめる宮崎。
「あら、恐怖で怯えていただけの人間に何ができるというの?」
「……ん」
「?」
「もうビビりません!」
宮崎はケツイする
――― 一之瀬宝太郎の心の奥に踏み込みますか…?
はい いいえ
はい
ピキ!ピキキキキ!!!!ガッシャン……!!!!!
――しかし
まだ私は――
「一之瀬さん……ごめんなさい!」
「どうした……急に?」
突然の宮崎の謝罪の言葉と頭を下げる行為に流石の一之瀬宝太郎も少しギョッとした表情で宮崎を見る。
「まだ……私は貴方が抱えていることが何なのか分かっていません」
――そう、私は一之瀬さんの心の奥に踏み込んだはいいが、そこまで。
一之瀬宝太郎(彼)が抱く深い絶望と自分に向けた怒りの根源を診断できていない。
まだ責任を持てる自信はない。
それは『分からない』ということ。
丁半を選んだ鑑別はただの賭け。診断じゃない。
だから、正直に伝えた。
「だから、私の選択は――逃げて生き延びることでも、貴方と共に死ぬことでもなく……このゲームを終わらせること!貴方と!」
そんな宮崎の気持ちは――
「……そうだな。俺たちは殺し合いの場で出会ったばかり。それなのに相手のすべてを分かったような振る舞いする相手がいたとしたら……俺はそいつのことは信じられない」
「だから……今はそれで十分だ。宮崎智尋」
一之瀬宝太郎に届いた。
ここで斃れるわけにはいかない。
顔向けができない。斃れていった仲間たちに……・そして、何より九堂に。
「レミリア・スカーレット!」
「何かしら?」
グググッ……と立ち上がる。
満身創痍――
レミリアは冷めた目で見下ろす。
「確かに俺は死に場所を探している……だが、ここは俺の死に場所じゃない!」
九堂を失って以来、後悔をずっと握りしめている。
その手を開くことはない。
なら――もう片方の手で人々を守る。
そのためには……
「この俺、一之瀬宝太郎の選択肢はただ1つ!」
「それはお前を超えて、運命をこの手で変えて見せることだ!」
ここでレミリア・スカーレットに負けるわけにはいかない!
『ガッチャーイグナイター!』 『ターボオン!』
「変身!」
『ガッチャーンコ!ファイヤー!』 『スチームホッパー!アチーッ!』
「俺は!仮面ライダーガッチャ―ドデイブレイク!」
「……ふん。気合で運命は変えられないよ。お前の運命は変わらない。ここで斃れる」
(この炎……・さしずめ悪魔の舌のような焔ね。くくく、ここまで心躍るのは、いつぶりかしら)
「「令呪!」」
互いに考えていた。
令呪の発動を。
そうでもしなければ勝てないと。
バーニングフィーバー
神槍「スピア・ザ・グングニル」
極大と極大がぶつかり合う。
「……」
宮崎智尋はこの場においてもっとも無力な自分に嫌悪する。
しかし、それも無理はない。
宮崎智尋は博麗の巫女のような異変解決の力を有してない。
仮面ライダーの力を有してないのだから。
私は無力だ――
今、正に一之瀬さんとレミリアさんが雌雄を決しようとしている
だけど、私はそれを傍観者のように見ていることしかできない
本当にこれでいいの――?
何かを始めるのは簡単だ
「ッ!?」
岸……先生……?
喋るのをやめて動き出せばいい
それは、私が病理の道を進むとケツイした出来事のとき
5分だ
私は景山花梨さんの診断に疑問を抱いていた
だけど、カンファでそれをいうことはできなかった。
お前が跳ぶなら手伝ってやる
先輩医師だから言えなかった……違う!
患者じゃなく”自分”が大切だから言えなかった
患者じゃない
やはり彼女は椎間板症じゃなかった
一過性脳虚血発作だった
だけど、それを確定させるのは脳MRlをしなければならない
お前のためにやってやる
私は書き換えた
データを……予約を。それは明確な院内倫理違反
勿論、私の行動は懲戒もの
だけど……そう……私はそのときにケツイしていた
医者なんていつでもやめてやる――と
そして、景山花梨ちゃんは腰のMRlが”偶然”頭まで撮影され塞栓が発見され、すぐにTlAの診断。その後、緊急脳血管造影検査の準備中に強度の頭痛と意識障害が発現。CTで大きな脳出血を確認したためすぐに処置を開始。
何重にも”ラッキー”が重なったケースとなった。
共犯になってやるよ
今度は私が――っ!!
デイブレイクさんの共犯に!!
だって――
――何もわからず
――何もできずに人が死ぬ
――そんなの嫌だ!
「デイブレイクさん!」
―――シュ
金色の羽根が宝太郎へ投げ渡される。
それを握ると――――
パァァァ―――
「!?これは……!!」
「なっ!?」
(威力が増幅した……ですって!?)
宮崎がデイブレイクに投げたのはゴールドフェザー。
それは、聖石が嵌め込まれている金色の羽根。
その効果は、技の威力を上げる。
宮崎智尋がデイブレイクの背中を押す。
同じ土俵に立った瞬間。
「運命を変えてください!!!」
「っ!ああ!!!」
声援が一之瀬宝太郎に力を与える
世界は美しくそして――残酷だ
この世に神も仏もいないのかもしれない
だが、悪に屈せぬ者たちがいる
その者たちは戦う
傷つきながらも
苦しみながらも
悲しみながらも
人々を守る 守り続ける
人は―――
その者たちを―――
仮面ライダーと呼ぶ
「私の……負けね……やるじゃない……仮面ライダ―デイブレイク!」
デイブレイクの蹴りはレミリアの胴体を真っ二つに分けた。
運命を見事蹴り倒した瞬間であった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「はぁ……はぁ……ぐぅ!ううう……」
変身が解除されると宝太郎はふらふらと前のめりに……
それを、宮崎が支える。
「大丈夫ですか!?」
「ああ……そして、ありがとう。俺一人では、レミリア・スカーレットに勝つことはできなかった」
「一之瀬さん……」
宝太郎は宮崎に感謝する。
その表情はかつて進路である”大物錬金術師”にキラキラした瞳で追い求めていた顔だった。
「あら、私を忘れるなんて感心しないわね」
「レミリアッ!?」「レミリアさんっ!?」
レミリアの声に二人は即座に周囲を確認する。
が、そこにいたのは、レミリアではなく一匹の蝙蝠であった。
「えっと……もしかして?」
「ええ、私よ。レミリア・スカーレットよ」
宮崎の疑問に蝙蝠は自らがレミリア・スカーレットであると答える。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「つまり……消耗が激しく、一時的に蝙蝠姿になったということですか」
「ええ。それだけ、一之瀬宝太郎(デイブレイク)のが効いたという証ね。癪だけど」
口では癪だと表現を使っているが、その語りはとても機嫌が悪そうには聞こえない。
むしろ――
「ま、そういうわけだから、当分の時間は元に戻ることはできないから、あなたの肩で休ませてもらうわよ」
「ええ!?」
蝙蝠状態のレミリアは、宮崎の肩に宿り木に寄りかかるように腰を下ろす。
宮崎はオロオロとした様子を隠しきれない。
……が、やがて受け入れるしかないと、ガクリと肩を落とす。
そんなレミリアに一之瀬宝太郎は真っすぐに見つめるとレミリアもその視線に気づく。
「……?何かしら。レディの顔をじろじろと見るのは感心しないわよ」
「レミリア・スカーレット。お前の選択肢は1つだけ。俺たちと共に運命を打破することだ」
一之瀬宝太郎は、レミリアへ宣告する。
仲間になれと。
「ふん。……ま、悪くないわね。いいわ、お前たちの運命。見届けるとしましょうか」
「それでは、3人で頑張っていきましょう!」
(私は医師だ。バグスターウイルスを必ず診断してみせる)
――勤勉たれ
――ただ真っすぐに診断に向き合え
「行こう。宮崎智尋。レミリア・スカーレット。未来を取り戻しに」
「はい!」
宮崎智尋と一之瀬宝太郎の闘いが幕を上げた(+レミリア同行)
【宮崎智尋@フラジャイル 病理医岸京一郎の所見】
状態:正常、疲労(中)、
服装:病理医の服(仕事着)
装備:フェザーセット@ダイの大冒険(現在 ゴールド×4、シルバー×5)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:生きて帰る。そして、
01:一之瀬宝太郎、レミリア・スカーレットと行動を共にする
02:病理の視点でバグスターウイルスを診断する
03:抱えている一之瀬さんのことをもっと知る。そして、
参戦時期:88話最後病理専門医試験会場へ向かうとき
備考
※宝太郎の現実(じごく)の根源が怒りであると何となく感じてますが、まだ診断しきれていません。
▪ フェザーセット@ダイの大冒険
宮崎智尋に支給。
勇者アバンが破邪の洞窟内で作成したアイテムで、ゴールドフェザーは魔法の威力を。シルバーフェザーは魔力を回復させる。
それぞれ、5本ずつ支給されている。
本ゲームでは
「闇の力を秘めし『鍵』よ! 真の姿を我の前に示せ 契約のもとさくらが命じる 『封印解除!!(レリーズ)』by木之本桜
【一之瀬宝太郎(未来)@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク 】
状態:正常、負傷(大)、疲労(大)
服装:未来の一之瀬宝太郎の服
装備:ガッチャードライバー(デイブレイクVer. )@ 仮面ライダーガッチャード
デイブレイクホッパー1、デイブレイクスチームライナー、デイブレイクバレットバーン、デイ
ブレイクスケボーズ、デイブレイクジャングルジャン、デイブレイクライデンジ、デイブレイク
ザ・サン@ 仮面ライダーガッチャード
ガッチャーイグナイター @ 仮面ライダーガッチャード
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索を打倒して、自分の世界へ戻り、未来を取り戻す
01:宮崎千尋、レミリア・スカーレットと行動を共にする
02:一之瀬宝太郎……お前はこのゲームでどう選択する?
参戦時期:映画本編九堂りんねに「あなたも一之瀬宝太郎じゃないんですか?」と投げかけられる前
備考
※デイブレイクザ・サンに九堂りんねの意識が宿っていることに気づいていません。
▪ ガッチャードライバー(デイブレイクVer. )@ 仮面ライダーガッチャード
一之瀬宝太郎(未来)に支給。
仮面ライダーへと変身する変身ベルト。
左右のスロットへ2枚の相性の良いライドケミーカードを装填することで変身する。
本ゲームでは、一之瀬宝太郎に支給されたのは、 デイブレイクホッパー1、デイブレイクスチームライナー、デイブレイクバレットバーン、デイブレイクスケボーズ、デイブレイクジャングルジャン、デイブレイクライデンジ、デイブレイクザ・サン
「お願い……私の声に気づいて!」by■■■■■
▪ ガッチャーイグナイター @ 仮面ライダーガッチャード
一之瀬宝太郎(未来)に支給。
ガッチャードライバー(デイブレイクVer.)にターボオン(装着)することでファイヤーガッチャードデイブレイクへと強化変身することができる。
「いつでもみんなを助けられる、希望を照らすメラメラのガッチャードに俺はなりたい!…いや、なってやる!!」by一之瀬宝太郎
【レミリア・スカーレット@東方project 】
状態:正常、負傷(極大)、疲労(大)、蝙蝠状態
服装:なし
装備:なし
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:このゲームの参加者の運命を見届ける
01:宮崎智尋と一之瀬宝太郎の運命を見届ける。
02:当面は宮崎智尋の血を吸いながら体力・力を取り戻す
参戦時期:少なくとも紅霧異変後
備考
※デイブレイクとの死闘の影響で当分の時間、蝙蝠状態で過ごすこととなります。元に戻る時間は後続の書き手様に委ねます。
投下終了します。
お時間とってしまい申し訳ありませんでした。
投下します
意識を取り戻し、顔を上げたオレの目前にあるのは、転がったレジスターや銃に起動鍵と、血痕の跡に血で染まったオレの手。
浮かぶのは、アイツが結晶になって砕け散った後、破片が消えて『いなくなった』様……。
夢であって欲しいって考えが、消えねえ。けれどこれは…紛れもない現実で。
……オレが、アイツの未来を、命を…奪っちまった、その証明に他ならない。…こんなはずじゃなかったなんて逃避したくても、突き付けられちまってる以上…できなかった。
──ヒーローに憧れて、だから刀使になって、この殺し合いにも抗おうとして……なのに、このザマだ。
オレが弱かったから、気付けなかったから、短慮だったから…だからアイツは…死んだんだ…!!
気付いたら声も涙も、もうオレの意思とは関係なく…零れていた。アイツを刺した時の感触が、アイツの最期がっ、頭ん中から消えない…焼き付いちまったくせに、最期の言葉すら、思い出せねえ。そのせいか、息が苦しくて仕方ない。
NPCが、こっちに来てるみたいだが…動く気力はオレにはもう無かった。
……殺しておきながら、ひとりのうのうと生き残って、それで結局はこれか…。
…悪い、みんな…ねね…■■…オレは……もう──
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時は少し遡る。刀使の少女益子薫は、仲間2人が帰って来なかったという事実に怒りと悲しみを抱いていたまさにその時…殺し合いに巻き込まれた。
「よりにもよって今巻き込むとか、オレが殺し合いに乗るのを期待でもしての…だとしたら宛が外れたな。あのバカヤロウ共を連れ帰ってやりたい気持ちは山々だが…殺し合いに乗って、皆殺しにして…それでアイツらに顔向けが出来るかよ。優勝出来ると思えるほど、オレは強くねえしな」
そう吐き捨てるかのように薫は呟く。
「第一、オレはヒーロー好きなんだ。なのにこんな悪趣味なもんに乗るわけねえだろ。人選は茅場かクルーゼにとか、あの脳みそは言ってたが…人選ミスにも程があるな」
『人選への文句は私じゃなくてクルーゼか茅場に言ってくれ。』などと言っていた羂索の言葉を思い出しつつ、薫は自分が刀使を志した原点(オリジン)を想起。どちらにせよ主催者達には見る目ってもんが無いなと呆れた様子であった。
「…刀使は荒魂絡みの案件以外には関わんなってルールだったっけな。けど状況が状況だ、あの羂索達をしょっ引く為にも自衛の為にも…まあ振るって大丈夫だろ」
過去に起きた一件で定められた決まりを浮かべつつも、んなもんこんな状況で守ってられるかとし主催の打倒の為剣を振るう事を、薫は決める。
そしてリュックの中身を探すが…。
「…ねえ!?祢々切丸どころか…御刀すら、ねえのかよ…」
刀使の使用ツールである御刀は彼女のバッグの中には無く、あったのは西洋剣寄りの大剣に、ろくに説明文のない小刀のようなアイテムとソードスキル。その3つがランダム支給品として薫に配られていた。
「…大剣が有るだけまだマシだが…勝手が違うだろうからなー」
刀使としての能力が使えない現状、自らの筋力を活かせる武器があるのは救いだが…だからといって使ったこと等無い西洋剣寄りの大剣を果たして祢々切丸のように振るえるのだろうか、という不安が彼女の中に生じる。
「こっちは…バリア貼れる事くらいしか書いてねえ、ハズレ…いや、写シを使えない今なら間に合うかは兎も角使い道はあるか。
…こっちのソードスキルは…触って発動で、魔力や体力を吸収……ますますゲームみたいだな。オレにとってはありがたいスキルだが…っと」
ひとまず小刀のような物を手に取れる所へ忍ばせた上で、薫はソードスキルを習得し大剣を手に持つ。
「…祢々切丸か、そうでなくても御刀が見つかるまでは…こいつを振るうしかねえな」
問題無く振るう事は出来たものの、やはり勝手が違うのは否めない。
「とりあえず知り合いが巻き込まれてないか…と、後はあの一ノ瀬宝太郎って奴でも探すか。あの状況であんな啖呵切れる奴なら、殺し合いに乗ってる事はまあ無いだろ。
堀北って奴とルルーシュって奴は…反応からしてあの殺された須藤って奴とニーナって奴の知り合いみたいだからな…。特にルルーシュは…あの異能みたいな力もある、警戒した方が良さそうだな」
(…あのバカ(可奈美)なら、信じてその上で…合流出来ないかとか考えるんだろうけどな…)
帰ってこなかった2人の仲間の内片方の、ドライな面を持ちつつも基本真っ直ぐで底抜けのお人好しの事を浮かべながらも、方針を定めた薫。
すると背後から響いたのは足音。気付いた薫は警戒しつつも、先んじて声を掛ける。
「…なんだ?そこに居るのはわかってるんだぞ」
「えっと、ごめんね!驚かせるつもりじゃなかったんだけど…わたしは宮藤芳佳、殺し合いには乗ってないよ。あなたは…」
「…益子薫。殺し合いに乗る気はね……芳佳っつったか、なんだその格好!?」
自分より一回りは大きいものの、それでも幼げな少女の格好が目に入り、思わず薫はツッコむ。何故なら人懐こそうな少女…宮藤芳佳の下半身は俗に言うスク水のみ、傍から見れば完全に痴女のそれであったからだ。
「ふぇ?これは扶桑国の軍服とズボンだよ、薫ちゃん」
「なるほどズボンか……んなわけねえだろ!?どう見ても下着と言うかパンツだそりゃ!つーか何処だよ扶桑国…」
「…パンツ…?聞いたことないけど、それは…?」
「……マジかよ」
先の羂索の言葉に見知らぬ単語ばかり出ていたのと、元々刀使は異世界である隠世から御刀を通して力を行使しているのもありそんな気はしていたが、目前にいる少女は隠世とはまた別の異世界から来たようだと納得した上で…薫は頭を抑える。
芳佳の居た世界は恐らく、パンツの概念が無くズボンとして認識されている狂った世界だと、彼女は認識したのであった。
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「わたしと同い年だったんだね、薫ちゃん…てっきり12〜13歳くらいかなって」
「…オレもてっきり芳佳は年下だと思ってたけどな、同い年とは思わなかった。
…つーか違い過ぎだろ、オレと芳佳の世界」
「2018年…だったっけ、薫ちゃんの居た世界?の時代」
「ああ、で芳佳が元居た世界と時代が1946年…かなり離れてんな」
「ネウロイやウィッチ、ストライカーユニットとかが無くて、国の名前も違うなんて…」
「オレからしたら、刀使も御刀も無くて荒魂も存在しないって事の方に驚いたな。
…改めて確認するが、本当にお前の世界にはパンツって概念が無いんだよな??」
「うん、パンツにしか見えないって言われても…」
「はぁ。…何か着替えとかあったらズボン以外にも履けよ芳佳」
「なんで?パンツ?じゃないから恥ずかしくないよ?」
「変に誤解されそうで困るんだよオレが!知り合いが巻き込まれてたらって考えると…謂れのない誤解を受けそうで、頭抱えたくなるぞ」
「そう云う物なんだから仕方ないのに…」
「そう言われてはいそうですかって…受け入れる方がおかしいんだからな!」
そこから情報交換がてら互いのここに呼ばれる前の事の話になったものの、芳佳の世界と自らの世界の違いに薫は頭を抱える羽目と相成った。
まず時代が大幅に異なり、国の名前も歴史すらも違う。
荒魂とネウロイで戦っている敵も違えば、時代の差の都合自分達の世界の方が上とはいえ、技術力の進み方が別方向へと伸びているようでもあった。
どちらの世界でも、若い少女が公務員として人ならざる外敵と戦っている事は共通。しかしそれにしたって、刀使とウィッチと全く別種の存在なのだ。
(扶桑皇国とやらはオレ達の世界での日本の事だろうけど、こうも色々違うと、言葉がこうして通じてるのが奇跡みたいな話だな…。
…このレジスターの機能に、そういう代物があるとかも考えれるが…こういう機械系には詳しくない以上、言える事はねえな)
考えを打ち切りつつ、ふと思った事を薫は言葉に出す。
「…なあ芳佳。なんでお前はウィッチってのになろうと思ったんだ?」
完全な思いつき、ヒーローに憧れ刀使となった自分のようになにかきっかけがあってなのかという興味本位での問い。
対し芳佳は、少し考え込んだ後答える。
「…わたし、最初は戦争とか銃とかそういう人を傷つける物は嫌いで…お父さんが戦争絡みのせいで死んじゃって、余計に嫌になったんだ。
でも…ウィッチとして戦う才能があるって分かって……守る為に、ウィッチとして戦うって決めた。生きてた頃のお父さんとね、『その力を、多くの人を守る為に』って約束したから。
…今でも、戦争とかそういう物は嫌いだけど…でも、守る為になら…わたしは戦うよ。
…あんな、理不尽に人を殺せちゃう人達とも……ウィッチとして、戦って…抗う」
「……お、おう。思ってたより…重たい物背負ってんだなお前」
断言する芳佳に、想像よりも重い理由で、ウィッチとして守る為戦う事を決めていたことに薫は面食らう。すると、今度は芳佳が彼女に問いかけた。
「薫ちゃんは、どうなの?」
「…今度はオレが答える番、か。お前みたいに重たい理由は無いが…。
…代々刀使の家系だった…ってのもあるけどな。一番の理由は…憧れたからだよ、ヒーローってのに。人々を守れるそんな存在になりたいって、思ったからだ。
だからあの羂索とかいう脳みそ野郎達に、従うなんてあり得ねえ。殺し合いに乗るとか、ヒーローとして失格だろ」
少しバツが悪そうにしつつも、薫はそう断言する。
その瞳には断固とした…殺し合いに抗うという意思が、決意が宿っていた。
「わたし達、互いに守る為に戦う事を選んだ同士なんだね。…もしよかったら、薫ちゃんと一緒に戦いたいな」
「…ストライカーユニットってのが手元にあるお前と違って御刀が手元に無い以上、何処まで役に立てるかわからんが…それでいいなら大歓迎だ」
こうして2人は共に行動する事を決める。
「とりあえず、互いの知り合いと…後あの一ノ瀬宝太郎って奴でも探すか」
「えっ、堀北さんって人やルルーシュさんって人は?知り合いがあんな事になって…つらくない訳がないのに…」
「生き返らせる為…なんて殺し合いに乗る可能性もあるんだぞ?」
「…その時は、わたしと薫ちゃんでなんとか止めなきゃ」
「…頑固なお人好しめ」
(…あのバカ(可奈美)と会ったら仲良くなりそうだ)
などと思っていた薫だが、こちらへと目掛けて飛んでくる何かに気付く。
(バリア…使ってる暇もねえ、芳佳のシールドって奴も…間に合わねえだろこれ!)
「っ、芳佳伏せろ!」
「う、うん!」
それは斬撃波であり、咄嗟に薫は芳佳を伏せさせ避けた。
「へぇ、避けたんだ。どちらも小学生くらいに見えるけど…人は見かけによらないって事かしら」
「随分なご挨拶だな、いきなり斬撃波ぶっ放してきやがって」
「…乗ってるんですか?この殺し合いに」
声の主は制服を着た高校生くらいの、日本刀を握っている紫とも薄紫とも取れる髪色をしたロングヘアーの少女。
対し薫は殺し合いに乗ってると断定した態度を取り、芳佳は問を投げかけた。
「乗ってるわよ。望みを叶えなきゃ、どうしようもなく詰んでるもの、私」
「…そこまでして、叶えたい望みが…」
「生まれて来た時から何もかも…どういう風に生まれて、いつどこで死ぬのかすら決められて…好きになった人や、たったひとりの守りたい妹と一緒に居ることすら出来ない。
…そんな人生を強いられて…それでも望みに縋る事を、貴女達は悪と断じるのかしら?」
言い放った少女に対し、今度はオレの番だと毅然とした様子で薫は答える。
「……お前が重たいもんを無理矢理背負わされて、雁字搦めの中生きて来たのは…なんとなくだがわかった。
…だとしても、殺し合いに乗るってのなら…オレ達はお前を止める。
……だいたい、殺し合いに乗る以外にも…主催者達の技術を奪うとか狙えるだろ、そしてそれをするなら…斬撃波飛ばしてオレや芳佳の首を狙う真似はしないはずだ。
技術狙いなら、殺し合いに乗ってない相手には猫被った方がやりやすいだろうからな」
「……ははっ、よくわかってるみたいじゃない。
…悪いけど、私は貴女達に…正確に言うと妹と好きな人…後ギリギリ暮人兄さん以外には、価値を見いだせないから。レジスターの解析・解除やバグスターウイルスって物の対処が出来る訳でもなさそうだし」
「…イカれてるな」
「そうなるように造られちゃったのよ」
「…芳佳、覚悟決めろよ。コイツは力づくじゃなきゃ止めれない」
「……うん」
目前の少女は退く気は無いとわかった以上、2人の意思はここで…この少女を止めるという事で一致していた。
それもあってか、芳佳はユニットを装着し…使い魔の耳と尻尾が生える。
「じゃあ、そういう事だから」
少女は再び剣を振るい、斬撃波を放つも、芳佳が発生させた障壁…ウィッチが使うシールドによりそれは防がれる。
「こっちだ!」
(クソっ、やっぱり勝手が違うな…!)
その隙に、薫は支給されてた大剣、防衛隊炎刃型大剣を振りかぶる。しかし本来の武器である祢々切丸とのリーチの違いもあって、思うように使えてるとは言い難く…その一撃も少女の日本刀の元受け止められてしまった。
「あら、不慣れそうなのに私をこれで倒す気なの?」
(…コイツ、強いな…!)
「…これでもヒーローに憧れてんだ、お前みたいな奴放っておく選択肢はねえよ」
「……へえ、そう」
剣戟に発展するものの、押され続ける薫。
本来の武器である祢々切丸ならまだしも、今の大剣では使い慣れてなさもあり目前の少女には攻めあぐねてしまい、ただでさえ不足気味の体力をどんどん消耗させられる。このままでは待つのはいずれ押し切られ、首を跳ね飛ばされる末路だろう。
…しかし、彼女はひとりではない。
「薫ちゃんっ…!」
「助かる、芳佳!」
支給されていた銃、西暦3000年という未来の技術を用い造られたDVディフェンダーを構えストライカーユニット震電を装着した芳佳が援護に入った。
ディフェンダーガンとなっているDVディフェンダーから放たれる高エネルギービームを、少女は日本刀で切り払いながら、薫の振るう大剣を紙一重で避け続ける。
「今度はお前が防戦一方だな」
「…投降して下さい、今ならまだ誰も、あなたは…!」
「…そうね、有難いお誘いだけど…遠慮するわ。……もうとっくに、この手は血で塗れてるのよ。薫ちゃんに、芳佳ちゃんだっけ?他の誰かを守りたいのなら…時には選ばなきゃダメなのよ。敵を殺すって選択肢も…!」
一瞬思うような所を見せながらも、少女はここで距離を取った後、斬撃波を乱発。
芳佳はウィッチが使用可能な攻撃を防ぐ為のシールドを展開し防ぐので手一杯、一方薫はこれを躱すので手一杯となる。
故に…少女の変身を、2人は止めれない。
『オムニフォース!』
「そろそろ、使わせてもらうわね…変身」
リュックから取り出したのだろうベルトを巻き、本のような何かを開きセット。
仰々しい音声が鳴り響く中…少女は姿を変える。
『OPEN THE OMNIBUS
FORCE OF THE GOD!
KAMEN RIDER SOLOMON!!
FEAR IS COMING SOON…!』
「…いかにもヒーロー物の悪者って感じだな」
音声が響くと同時に少女は、仮面ライダーソロモンへと変身していた。その姿に感想を零しながらも警戒を怠らない薫。芳佳も薫が言ってる事はわからなかったが、警戒した方がいいと察し身構える。
「…そういうのは見ないけど、言いたい事はまあ、何となくわかるわ。だからこそ…私に相応しいと言えるけど」
そう少女は語る。妹の為全てを、世界すらも最愛の人すら欺いてでも、どれだけ自分が血で汚れようとも構わないと決めていた彼女からすれば、悪役のようなこの仮面ライダーのデザインは相応しいという認識があった。
「じゃあ試させて貰うわね」
そこから、日本刀を再び回収した少女は斬撃波を放つ。
「変身したと思ったらまたそれ、かよ……っ!?」
「薫ちゃん!?っ…やらせない!」
大剣で再び受け止めにかかった薫だが、先程より威力が増しており危うく受け止めきれず吹っ飛ばされそうになる。変身した事で力が上昇し、またソロモンの纏う甲冑オムニフォースローブが変身者の精神力を糧とし力を与える機能を持つが為であった。
そのまま追撃に移らんとした少女に芳佳はビームを放つも、さしてダメージになった様子は見受けられない。少女は進んで薫に剣を向け…芳佳が割り込む。
斬撃波をシールドで受け止めながらも、ガンモードからビームを放つが変わらず通じず。薫も守られてばかりではなく大剣を振るうが全て日本刀に防がれる。
「全部、通じないなんて…!」
「硬すぎだろコイツ!」
「…思ってた以上に高い防御力で、私の方も驚いてるわよ」
「ぁ、ぁぁあっ!?」
「…芳佳っ!?…お前!!」
「…仮面ライダーって力も、存外使えそうね」
「ぐ、あっ…が、っぁ…!…ふざけん、な…何でもアリ、かよっ…!!」
悪びれもせず言い放ちながら、ここで少女はソロモンの胸部外装であるソロモンキュイラス由来で、ライドブックの力を引き出し本来の変身者が行使したように獄炎を放つ。
芳佳がシールドを展開するもそれでも着弾し爆裂、防ぎ切れなかった芳佳は吹っ飛ばされてしまい、爆裂と衝撃によるものか、装着していたユニットも壊れディフェンダーは手元から離れてしまった。
それを確認する片手間で、怒りのまま斬り掛かった薫の一振りを日本刀で防ぎ、そこから必殺技たるソロモンブレイクを発動。
出現させた無数の隕石を薫目掛けて放ち、彼女もまた吹っ飛ばす。
回避に徹し避け切れこそしなかったが受け身を咄嗟に取り、かつ小刀のようなもの…エボルトラスターによるバリアが間に合ったものの、威力を殺しきれず血を吐く。しかし悪態を吐きつつ、薫は大剣を支えとして立ち上がった。
「…どっちから殺そうかな。レジスターのサンプルは必要になりそうだから…」
「…させ、ない…まだ…わたしは…翼は、無くてもっ…!」
「…芳佳、お前っ、その傷で…!…やめろ、お前だけでも…!」
立ち上がる芳佳だが、全身はボロボロ、四肢が欠けておらず再び立てるのが奇跡と言ってもいい有様。間違いなく自分よりも重傷なのもあって、薫は彼女を逃がそうとするが…。
「…言ったでしょ…薫ちゃん…わたしは…守るために…ウィッチに…なって…戦う…って…だからわたしが…薫ちゃんを…守るん、だぁぁあっ!!」
そう、満身創痍な身体に鞭を打ち…芳佳は支給されていた起動鍵を使用。
その年齢の割に小さな身体をパワードスーツへ落とし込まれた機体、ノートゥングモデルのファフナーが覆っていき…ファフナー・マークツヴォルフを芳佳は身に纏った。
「…頑固な奴だよ、お前は…」
「…へえ、あの羂索が言ってたパワードスーツへと落とし込まれた機体かしら」
「…この力で、あなたを止めて…薫ちゃんを守るっ!」
呆れ半分感心半分と言った様子な薫と、興味を見せる少女。そして芳佳はそう叫ぶやいなや突撃。そのまま三点バースト式のハンドガンデュランダルを放つもソロモンの装甲の前には通じない。
だがこれは陽動で、機動を活かしながらもう片手に取った短刀マインブレードで斬りかかる。
(重傷を負った子の動きじゃない、わね…!)
そう思いつつ少女は日本刀で受け止める。
──芳佳がまるで傷など無いように振る舞えるのは、起動鍵に内蔵されたソードスキル:新同化現象ことSDP「再生(リバース)」による物。デメリットである使用者への同化能力発現が無い代わりに、令呪を用いてもなお、6時間に1回しか使用できない仕様となってる。
その代わりに瀕死の重傷だろうと生きてさえいれば完全回復が可能な異能。
本来の搭乗者である立上芹の発現した能力がソードスキルとして落とし込まれた物なのだ。
「きえぇぇっ!!」
背後からは大剣を振りかぶった薫。挟撃される形になった少女は一瞬の思考の後に、鍔迫り合いをやめて薫の方に向き防ぐ。結果芳佳のマインブレードはソロモンに刺さり、爆発によりダメージが入ったが大剣で斬られるよりは低く済む…そう判断したが為である。
…だが、それが失策であった事を少女は思い知らされた。
大剣と鍔迫り合いになってた筈の日本刀が突如爆発。そのまま明後日の方向へと飛び自身も少なからずダメージを負わされたからである。
(お前が鍔迫り合いに付き合ってくれたおかげだ…!)
「今だ!芳佳っ…!」
「うんっ!!」
薫が持つ防衛隊炎刃型大剣は爆破属性を持ち、同じ部位に何度も当てれば爆発を引き起こせる特殊能力がある。
何度も日本刀で受け、鍔迫り合いを行う形になってたが為に爆発を起こす条件を満たす羽目になってしまったのだ。
それにより出来た隙を、芳佳が見逃す筈も無い。マークツヴォルフの頭部にある特殊装備ショットガンホーンにより、少女を遠くまで吹っ飛ばす。
「…薫ちゃん、今治すからね…!」
少女を引き離したと判断した芳佳は、追撃よりも薫の回復を優先。起動鍵を解除した上で自らのウィッチとしての固有魔法により、彼女の傷を癒した。
「…ありがとな、芳佳」
「ううん、わたしはわたしに出来ることをやっただけだよ、薫ちゃん」
「…それと悪い、体力がそろそろ限界だ……スキル、使わせてもらっていいか…?オレも…オレに出来ること、やらねえと…」
「ドレインタッチってスキル…だっけ?うんっ、いいよ」
「…助かる、ドレインタッチ…!」
了承を得た上で、薫は習得したソードスキルドレインタッチで芳佳から体力をある程度吸収、これにより再度の襲撃等があった際芳佳だけでなく薫も対応出来るようになった。
「これでまた敵が来ても、芳佳に守られっぱなしなんて事は避けれそうだ。
…ところで芳佳。それ……使って大丈夫だったのか…?」
芳佳が先程使った起動鍵の事を考え、薫は心配を向ける。
制限により誰でも使用可能となる代わりに、使用した参加者にファフナーとの一体化の促進の効果があるらしいシナジェティックコードとやらを形成。以降ファフナー系列の起動鍵を使用する毎に一定確率で同化現象が進行し、最終的には『いなくなる』…との旨が説明書に書かれていたと、彼女から聞いたからであった。
「…うん、さっき使ったのが初めてだし、少なくとも今、わたしは大丈夫だよ。わたしはわたしのままだし、ここに居る」
「…なら、とりあえずは安心だな」
安堵した様子であるものの、自分を助ける為にそんな危険物を使わせてしまった事に申し訳無さを抱く薫。
(…めんどくさいが…出来るだけ、コイツにこれを使わせないよう…頑張らなきゃな)
「とりあえず、アイツを──!?」
「…あら、どうしたの?まるで幽霊でも見たみたいな顔して。あれくらいで私が死ぬと思ったのかしら」
「…いつの間に、あなたは…!?」
内心決意を固めていた所に現れたのは、先程芳佳が吹っ飛ばした筈の少女。変身は解除しておらず、いつの間にか日本刀をまた持っているようだが、傷を負ってるような様子は見られない。
そのまま少女は、困惑してる最中の芳佳を刺し貫こうとし──
「させ…ねえっ!!」
その前に薫が、少女目掛けて大剣を振るい……そして、刺さる。
肉を貫く感覚が、大剣越しに薫に伝わった。
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何か嫌な予感はした。でも…あのままじゃ、アイツに芳佳が殺されるって、そう思ったら…気付いたら剣を、アイツに突き刺していた。オレに出来たのは咄嗟に、急所を避ける事くらいで……。
……可奈美や姫和…それに元親衛隊の真希や寿々花辺りなら、こんな事せずとも無力化出来たんだろうか。とまで考え剣を引き抜いた後……異常に気付く。
──アイツは変身してた筈なのに、どうして…簡単にその装甲を、オレの剣で貫けたんだ?
…終始日本刀で防ぐに徹してた辺り、見掛け倒しな可能性も無くはない…が……何故か嫌な予感が、取り返しのつかない何かをしてしまった気がしてならない。
「あーあ、ひどいなぁ薫ちゃん。まんまと引っかかっちゃって」
……背後からアイツの声がした。気付きたくない真実をつきつけられる…そんな気がして。
やめろ……オレは…オレはっ、誰を刺したんだ……!?
「…っ…ぁ……薫、ちゃ…な、ん……で……」
「よし、か…?…っ…違、うっ…オレは…そんな、つもりっ……!!」
必死に現実から目を逸らそうとする中、吐かれた血がオレにかかった。血溜まりが、何よりもオレの犯してしまった罪を指していて、けれど気にする余裕もなくて。
「あなたのせいで、そこの芳佳ちゃんは死ぬんだよ薫ちゃん。あなたが刺したせいで」
──目を逸らせなくなった。……オレが刺したのは、アイツじゃなくて、芳佳だった。そしてアイツの言う通り、そのせいで芳佳は死ぬ。
「…嘘、だ…オレはっ、オレは……ごふ、っ……!!」
言葉が出ないまま、オレはアイツに蹴飛ばされた後、そのまま剣を刺される。
バリアが間に合ったとはいえ、血を吐きながら、転がり立てなくなったオレの目に写ったのは、アイツがさっき持ってた日本刀とは別の、西洋剣めいた大剣を持ってる姿。
「…手、抜いて……やがった…のか…」
「あなた達が思ってたよりやるみたいだから、試したくなったのよ。
ここまでまんまと引っかかったのは嬉しい誤算かな。
…もう一度言ってあげるわ。あなたのせいで芳佳ちゃんは死ぬ。あなたが短慮で無力だったから…ある筈だった未来を断たれて、ここで死ぬんだよ」
アイツの言葉が、オレに突き刺さる。…オレのせいだ。嫌な予感がした段階で、止めてれば気付いてればこうはならなかった…なのに、オレはこの手で、刀使として守る為振るった筈の…剣で……芳佳をっ…!!!
「そしてあなたも、ここで終わりかな。
…ヒーローに憧れてるなんて言ってたけど…同行者を死なせておいて、そんな資格があなたにあると思うのかしら?力が無ければ……何も、為せないのよ」
……なにも、言い返せねえ。…アイツの言葉がまるで、オレの心に…弱い部分に染み込んでいくみたいで。
…刀使…失格だな…オレは。
そんな考えが浮かぶ中……見えたのは、血だらけで、今にも倒れそうで…なのに、立ち上がった芳佳の姿。
「…わかったよ、薫ちゃんが…やりたくて…や、った…わけじゃ…ないの、っ……わるいのは…その人、だって……」
「…まだ立てるんだ、あなたの方がよっぽど、ヒーローって感じわね」
…逆の立場なら、オレは…立ち上がれただろうか?
「…あなたを、倒して…薫ちゃん"だけ"でも、助けるっ!!」
「…まさ、か……やめろっ、やめて…くれ、芳、佳っ……!」
「……ますますヒーローらしいんじゃない?自分が死ぬのも覚悟で、私に立ち向かおうだなんて。
けれど、羂索が言ってた事からして、99.9秒過ぎたらあなたは失格で死ぬのよ?勝てるかしら」
オレの制止の声は届かず…芳佳の手から、令呪が『全部』消えた。……オレが、刺して致命傷を負ったせいでアイツは…自分の命を、未来を…投げ捨てちまった。
「やってみなきゃ、わからない…よっ…!」
起動鍵を再び使った芳佳は、全速力で突っ込んで行って…ショットガンホーンを展開。
…制限を脱してるせいか、ユニット無しでもシールドってのを、バカでかい規模で展開しながら…アイツ目掛けて押しつける。
アイツもさっきの西洋剣の引き鉄みたいな部分を押して、でけえ西洋剣のエネルギーを芳佳目掛けてぶつけてきた。
「…あなたが、ここに…いたら、っ…薫ちゃんを…助けられないんだ、ぁぁあっ!!!」
同時に激突した2人の攻撃は、少しの間拮抗して…やがて相殺されちまったのか爆発を起こす。
女は変身を解除され、芳佳もまた、解除されていた。
「……手負いの獣程…とは言うけれど。…芳佳ちゃんに免じて、ここは退いてあげるわ。
…私の名前は柊真昼。薫ちゃん、あなたがヒーローへの憧れを貫けるか、ここで終わるか…楽しみに待ってるわね」
言いたいことを言うだけ言って、女…真昼はいなくなってた。
それと同時に、血が足りなくなってきたのか、オレの意識はだんだん薄れていって……。
「…ゃ…め、オレのせいで…お前は…だってのに、なんで…っ…!」
「…死なせないよ、薫…ちゃん…あなたの、せいじゃないから…」
芳佳がまた、固有魔法でオレを治す。身体はボロボロで、所々芳佳の身体は結晶になっていた。
…そんな資格、オレにはねえのに。オレのせいで、お前はこんなんになってるのに。
「…わたしの知り合いが、居たら…助けてあげてね、薫…ちゃん、それと……──」
「…待て、よ…芳佳…芳、佳っぁ…!!」
オレを治した直後、芳佳は99.9秒のリミットを過ぎて…結晶になって、オレの目前で砕け散る。その破片も、跡形も無く消え去った。
……『いなくなった』と同時に、オレの意識も闇に落ちた。
【宮藤芳佳@ストライクウィッチーズシリーズ いなくなった(死亡)】
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「…最後の最後に、痛いしっぺ返しをくらっちゃった。
次誰かに会ったら、最初から全力でやってみようかしら」
そう少女…真昼は、日本刀であり鬼呪装備であるノ夜を拾い呟いた。
(…鬼呪装備が制限された上で支給されるなんて……もしかしてこの殺し合い、柊家が噛んでたりする?)
先程まで飄々としていた真昼の表情が自然と強張る。母を実験台とし弄んだ挙げ句殺し、産まれた時から自分にロクでもない運命を押し付け感情が欠けた状態で生まれ落ちるようにし、妹を傷付けさせたロクでもない家。
…これが吸血鬼となり関心を持ってた物以外に興味が薄れた頃からなら、そこまで怒りは燃え上がらなかっただろう。
…ヒーローに憧れていたなんてほざくあの少女を、敢えて見逃す事もしなかっただろう。
(…呪符2枚で、幻覚を見せて精神に作用するようにしたけど…時間経過で解除されるようになってるとか、そういう制限は…まあかかってるでしょうね。
…それまで生き残れるとは思えないけど…また会う時があって、それでも彼女は…ヒーローへの憧れを貫けるかしら)
真昼は根本的にいたずらっ子な一面も持っている。故の戯れ。死んだら所詮はその程度。変質してしまっていれば、最早興味も無い。だが、それでも貫いて自分の前に立つのなら──。
生まれ落ちた時から既に詰んでいた、ヒーローの救いを端から期待出来なかったがために、ひとり妹のために悪である事を選んだ少女は、微かな期待を抱きつつ会場を彷徨うのであった。
【柊真昼@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
状態:ダメージ(中)、柊家への怒り(再燃)、益子薫への微かな期待
服装:普段の学生服
装備:ドゥームズドライバーバックル&オムニフォースワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー、ノ夜@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
令呪:残り三画
道具:精神に作用する呪符×10@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅(残り8枚)、ホットライン
思考
基本:優勝して好きな人(グレン)と妹(シノア)と一緒に、普通の人間として生きれる世界を願う。
01:とりあえず次に会った相手には全力で挑もうかしら。
02:令呪三画…侮れないわね。
03:薫ちゃん、あなたはその憧憬を貫けるかしら?
04:この殺し合いは柊家絡みなのか…それとも…。
05:基本皆殺しだけど、レジスターの解析やバグスターウイルスの対処が出来る人なら話は別かな。
06:…もしグレンやシノアが巻き込まれてたら……その時考えましょう。暮人兄さん?運が無かったと諦めてもらう他ないわね。
07:一ノ瀬宝太郎…一瀬家と何か関係が…いや、気のせいわね。
参戦時期:第一渋谷高校襲撃事件にて離反後、吸血鬼となる前の何処かから。
備考:
【支給品解説】
・ドゥームズドライバーバックル&オムニフォースワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
柊真昼に支給。仮面ライダーソロモンへと変身するためのアイテム。2つで1つの支給品扱い。
主武装であるカラドボルグは変身中のみ取り出し・行使可能となっている。
また能力の内、巨大なる終末の書の投影と、巨大カラドボルグをキングオブソロモンへと変形させ使役する機能、オブスキュアマントの攻撃を別世界に受け流す機能は制限により令呪を使用しないと機能しないようになっている。
他に制限対象になる能力があるかは採用された場合後続にお任せします。
・ノ夜@終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅
柊真昼に支給。真昼自身が作り、一瀬グレンに譲渡した日本刀型の鬼呪装備。これによる攻撃は呪術系統の攻撃に分類される。
斬撃波を放てる他、これを手に取れば身体能力が向上する効果もある。
本来なら内に宿る鬼であるノ夜が持ち主を乗っ取らんと色々干渉するが、この殺し合いでは余程持ち主の精神状態が悪化してない限りは干渉不能という風に制限されている。
・精神に作用する呪符×10@終わりのセラフ 一瀬グレン
柊真昼に支給。作中にて出てきた呪符の内、真昼が使用した物。10枚セットで支給されている。
この殺し合いでは幻覚を見せる効果や対象の心を弱らせたり操らせたりする効果を発揮するが、他者の干渉や自身で打ち破る以外にも、時間経過で解けるようにもなっている。
どれくらいで解除されるかは後続にお任せします。
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そして遡っていた時は現在へと戻る。
NPCが近付きその命を奪おうとしてもなお、益子薫は動けずにいた。
傷は無い、宮藤芳佳が治したからだ。体力はある。ドレインタッチで宮藤芳佳からある程度吸収したからだ。しかし心の傷は、宮藤芳佳が自分のせいで、遺体すら遺らない死に方をしてしまったという現実に抉られ、そのせいで何も出来ずにいる。
そのまま薫の命が刈り取られるかと思われたその時……一瞬の後、NPCが突如『凍った』。
そしてそれらは全て、剣により砕かれる。
少女の前に姿を現したのは、顔に「ライダー」と書かれた珍妙な仮面の戦士。
「…見た所、君は傷を負ってないようだが。何があった?答えてみせるがいい」
「……おま、えは……」
戦士が変身を解いた後、現れたのは…殺し合い開幕時に目立っていた男、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに顔も声も瓜二つな青年だった。
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『ひとつだけ教えてくれ、造られし我が魂でも…エデンバイタルに…楽園に還ることができるのか……?』
『…わからない……』
『ふふ……つくづくあなたは残酷な人だ』
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「…この殺し合いがエデンバイタルで無い事は、私にも理解出来るが…どうするかだ」
そうルルーシュそっくりな男、ロロ・ヴィ・ブリタニアは呟く。
自らが人工的に造られた実験体と知らぬまま、魔王になろうとしその果てに正体に気付き、自らの異能の反作用で果てた青年は、混乱していた。
明らかに死んだ筈の遺体を行使している脳みそに、出てくる見知らぬ単語、それに自分の知るルルーシュ、魔王ゼロとは全く異なるギアスを行使するルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
「…私が知らず聞き覚えのない単語については、別の世界の物とした方がとりあえずは良いだろう。
…羂索とやらも、『本来異能力や異形の存在しない世界の者たちにも』等と口走っていたからな。
……となると、あのルルーシュ「兄さん」も、別の世界の存在か」
一先ず情報を整理したロロの胸中に湧くのは、エデンバイタルへ還れたかもしれなかった所をこんな殺し合いに巻き込まれた事への怒り。
(…還れるかは元から分からなかった。だが…その可能性すらも潰し、私をこうして蘇らせた羂索達主催者には…この手で滅びを与えて後悔させてやろう!…どう動くにせよこれは決定事項だ)
そう主催者の殺害を主目的としたロロ。しかしあくまで決めたのは主催者殺害。
アイデンティティが砕かれた上で一筋の救いを得ただけであり、別に改心した訳でもない以上他の全てを皆殺しとし、優勝した上で主催者たちを引きずり出し鏖殺しても、彼からすれば特に問題は無かった。
(…あのルルーシュ兄さんが私の知る方でない上未知のギアスを使う以上、下手に暗躍し貶めようとするのはリスクが高い。
蘇生されてる以上、ジ・アイスは使用可能だろうが、反作用もおそらくそのままだ。量子シフトは先程試したが使用不能…対応する起動鍵とやらが無ければ不可能と考えるべきだろうな。
…ここは、最初に遭遇した相手に合わせていいか)
悩んだ末、死後からの参加な都合良くも悪くも執着が無い彼が選んだのは受け身の姿勢であった。
その上で、ロロはリュックの中身を見る。
(ヴィンセントの起動鍵があると良いのだが…あれは私の力にダイレクトに反応する、良い機体だったからな)
愛機に思いを馳せながらも、リュックの中には起動鍵はあらず、あったのは自らとある意味では同じ『偽りの魔王』が使う、ドライバーとウォッチ。
(ヴィンセントの起動鍵ではなく、よりにもよってこれを寄越すか…!!
…やはり羂索に茅場にクルーゼ達主催者には…滅びを与える他はあるまい!)
そう思いつつ、元の持ち主である『常磐ソウゴ』…SOUGOの影武者として見出された王に、何処か同情のような何かを抱くも、些事だなとロロは脳裏から忘れ去った。
そしてドライバーを装着した上で行く宛も無く彷徨っていた所、聞こえて来たのは人目も憚らず響く声。
向かってみればそこには血溜まりと転がったレジスターに銃らしき物に鍵、それに血で汚れた制服を着た、妹であるナナリーよりも幼なげに見える少女が慟哭する姿に、その命を刈り取ろうとせんNPC。
それを見たロロは変身を遂げ仮面ライダージオウとなる。
「邪魔だ。心無きNPC共め、失せよ!」
自分と同じ造られし物な事に思う所は少しはあれど、邪魔物である事に変わりはなく…予想通り使用できたジ・アイスで凍らせた後、出現したジオウの武器ジカンギレードであっという間に全てのNPCを屠れてしまった。
そして変身を解いた上で問いかけてみるも、少女は驚いた様子を見せる。
「…ルルーシュにそっくりなのはどういう事だ、と…言いたいんだろう?
…実の所私も驚いていてね。確かに私は彼に…ルルーシュ兄さんの双子の弟として『造られた』。だがあの場で羂索達主催者に啖呵を切った彼は…私の知るルルーシュ兄さんとは異なる力を使った。
…ややこしいが云わば別の世界の兄みたいな物だろうな、彼は。
自己紹介がまだだったね。私はロロ。ロロ・ヴィ・ブリタニア。元エデンバイタル教団の枢機卿にして、異端審問官だ。
……さて、私は話したぞ。今度は君の答える番だ」
偽りの魔王はそう、ヒーローに憧れたものの今にも砕け折れそうな刀使に催促をした。
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ロロと名乗った、ルルーシュそっくりのコイツ。正直オレは怪しいと思ったし、そもそも教団の枢機卿とやらという事はコイツは宗教家の類だろう。従うのは危険…と思っていたんだが、気づけばオレは、堰を切ったように…殺し合いに巻き込まれてからの事を話し出していた。
……誰かに、聞いて欲しいって思ったのもあるのかもなと思いながらも、全部を気付けば吐き出して……。
「…これで、いいんだろ…オレのせいで芳佳は死んだんだ。断罪するってのなら…してくれ。
…このままじゃ…芳佳の知り合いにも、オレの知り合いや仲間にも…合わせる顔がねえんだ…」
「…成程な、事情は大体理解できた。
ひとつ言うと、今の私に君を断罪する権利は無い。人殺しというなら、異端審問官として活動していた私の方が余程君より罪は重くなるだろうな。
それ以上に、あくまで私は元枢機卿兼異端審問官だ。教団も既に壊滅しているだろう。よって君を断罪する事は私には出来ない。
…終わらせてやる事は出来るがな。それが望みなら与えてやっても構わないが…どうする?」
そんな弱音が出ていた。けれどロロはそう言って拒否した上で、選択を投げかけてくる。
『…ヒーローに憧れてるなんて言ってたけど…同行者を死なせておいて、そんな資格があなたにあると思うのかしら?力が無ければ……何も、為せないのよ』
…アイツの、真昼の言う通り客観的に見てオレは…ここで、死ぬべきなんだろう。ヒーローに憧れて、人を守るために刀使になったのに…結果は人殺しに成り下がった。ヒーローに憧れる資格なんて、オレにはもう無いのかもしれない。
……けれど、こうして話してみて…気付いたんだ。…それでも、オレはヒーローへの憧れを捨てれてないって。この憧憬の気持ちは…間違いじゃないって…そう思ってる自分が居たんだ。
「…オレは、オレはっ……!!……悪いな…まだ、終われねえ。…結局、ヒーローへの憧れをどうしても、捨てれねえみたいだ。
……芳佳を殺しておいて、んな事言う資格があるわけないって言われるかもしれない…けど、それでも…諦めれねえ」
『…わたしの知り合いが、居たら…助けてあげてね、薫…ちゃん、それと……──』
『それと……薫ちゃんなら…なれる、よ…ヒーローに。…だから…わたしの、分まで…頑張って、ね…後は…任せた、から……』
──それに、思い出したんだ。アイツの…芳佳の、最期に遺してくれた言葉を。
…だから、オレはこの憧れは捨てねえ。芳佳の分まで…ヒーローとして……戦う、そう決めた。
「芳佳が死んだのは…そうさせたのは真昼で、最期にどう死ぬかを決めたのは芳佳で……でも、オレの責任は、罪は間違いなくある。…それを背負って、憧れを貫いて、この殺し合いを止める。それが……オレの望みだ!」
「…その望み、確かに聞き届けたぞ。益子薫。
…私は最終的に主催者の打倒は決めていたが、手段をどうするかで迷っていてな。その望みを何処まで貫けるか、志半ばで倒れるか…見届けてやるのも悪くはない」
「…真昼みたいな事を言うなよ。あー、本当面倒だ……が、託されちまった上にお前にまでそう言われたら、もう仕方ねえか」
…正直、オレ自身の知り合いや、芳佳の知り合いに遭った時を考えると…不安はまだある。最も、だからって託された以上、簡単に投げ捨てて逃げる気もねえよ。望みも憧れも、オレ自身の命もな。
「…それと、ありがとなロロ」
「…私は何もしてはいない。ただ聞いただけだ。立ち直ったのはあくまで君自身だろう」
「だとしても、NPCに殺されそうだったオレを助けただろ」
「…最初に遭遇した相手を指針としようと考えていた以上、死なれては困るのでね」
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芳佳の遺した支給品を拾った後にかくして、造られし魔王と立ち直った刀使(ヒーローに憧れし少女)はこの殺し合いを止め主催の打倒を目指す運びとなった。
しかし、少女はまだ気付いていない。あくまで託された物を支えに無理矢理立ち上がっただけであり、真の意味で自分が生きる意味や希望を見つけれた訳では無い事に。
そして気絶した夢の中で、遺跡内部に入り安置されたストーンフリューゲルに触れた事で…適能者(デュナミスト)へと選ばれた事に。
少女の戦いはまだまだ、始まったばかりだ。
【益子薫@刀使ノ巫女】
状態:精神的ダメージ(大)、託された想いからの再起、適能者(デュナミスト)に選ばれた
服装:長船女学園の制服(血塗れ)
装備:防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン
令呪:残り三画
道具:エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、DVディフェンダー@未来戦隊タイムレンジャー、マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン×2、宮藤芳佳のレジスター
思考
基本:芳佳の分までこの殺し合いに抗う
01:とりあえずロロと行動する。
02:…芳佳やオレの知り合いに遭ったらと思うと…不安はまだあるな。
03:真昼はオレの手で止める。他に手段がねえのなら…この手で…。
04:…どうであれ、オレの罪は消えねえ。けれど、オレにできることはまだまだある以上…死んでやる気はない。
05:結局オレは、ヒーローへの憧れを捨てれねえみたいだ。
06:…とりあえず一ノ瀬宝太郎って奴はまあ、乗ってないだろ。
07:…それはそれとして、着替えが欲しいな…シャワーも浴びたい。
08:この起動鍵を…オレは、使えるんだろうか…。
09:祢々切丸があって欲しい所…だけどなあ。
参戦時期:第24話「結びの巫女」にて、可奈美と姫和が未帰還な事を知り涙目で祢々切丸をぶん投げた直後から。
備考:※支給されていたソードスキルによりドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!を習得しています。
※適能者(デュナミスト)に選ばれましたが遺跡の夢を思い出せてないので現時点ではウルトラマンネクサスには変身不能です。きっかけがあれば思い出し変身可能となる他、制限によりサイズは等身大限定となります。
※真昼の呪符により精神面に干渉を受けていましたが、取り敢えず立ち直りました。
※ストライクウィッチーズ世界についてある程度把握しました。
【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
状態:主催者たちへの怒り(大)
服装:いつも通りの服装
装備:ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品0〜2、ホットライン
思考
基本:何にせよ…どのような手段であれ主催者達には滅びを与えるまでだ。
01:とりあえず薫の行く末を見届ける。志半ばで斃れるならその時はその時だ。
02:エデンバイタルへ還るチャンスを無為にした主催者達は赦さん。よりにもよって私への当て付けのような支給品をリュックに入れた以上尚更だ。
03:知り合いが…特に私の知るルルーシュ兄さんや、ナナリーが居た場合は…その時に考えよう。
04:私の知らないギアスを使うルルーシュ兄さん、か…積極的に探す気は無いが。
05:ヴィンセントの起動鍵があるなら欲しい所だ。
06:ジ・アイスは使い所を考えるべきだろうな。
参戦時期:死亡後。
備考:※ジ・アイス使用による反作用での肉体崩壊がどれくらいで訪れるかは採用された場合後続にお任せします。
※量子シフトは起動鍵を所持していないと使えないとします。
・防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン
益子薫に支給。ブレイズブレイドに似た色合いの異なる大剣。アイスボーン実装時に追加された装備。
爆破属性を持ち攻撃を当て続けた部位に爆発によるダメージを引き起こす事が可能。
どれくらい当て続ければ発生するかは採用された場合後続にお任せします。
・エボルトラスター@ウルトラマンネクサス
益子薫に支給。ウルトラマンネクサスの適能者(デュナミスト)に選ばれた人間が持つ短刀に似た変身アイテム。適能者(デュナミスト)以外には引き抜けない。
この殺し合いでは当初はバリア機能しか使えないが、所有者が意識を失った際夢の中で遺跡内部のストーンフリューゲルに触れる事で、適能者(デュナミスト)に選ばれネクサスへの変身が可能となる。
適能者(デュナミスト)が生きる意味や希望を見出だせた際、該当人物が無意識下に選択した他の参加者を継承対象とする。それにより光は受け継がれこの支給品も該当参加者へと引き継がれる。
なおこの殺し合いでは適能者(デュナミスト)となってもブラストショットやストーンフリューゲルは使用不能。どちらも他参加者に支給されている可能性はある。
・ソードスキル:ドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!
益子薫に支給。
触れた相手から体力・魔力を吸収し自身に補充したり、逆に自身の魔力・体力を触れた相手に譲渡したり出来るリッチーのスキルが、ソードスキルへと落とし込まれた物。
両手を使って2人に触れれば自身を媒介として即座に渡し手から受け手へ魔力・体力を渡す事も出来る。触れなければ発動出来ない。
・DVディフェンダー@未来戦隊タイムレンジャー
宮藤芳佳に支給。
西暦3000年の技術により造られた、タイムファイヤー専用の武器。
ディフェンダーガンとディフェンダーソードを、DVチェンジという音声コードを入力する事により変形させれる。
ガンは高エネルギービームを放つ他、バルカンモードへ切り替えればDVバルカンを放てる。
ソードはファイナルモードにすればDVリフレイザーを発動出来るが、この殺し合いでは令呪を用いなければ圧縮冷凍効果は発揮出来ない。
・震電@ストライクウィッチーズシリーズ
宮藤芳佳に支給。
彼女の父である故・宮藤一郎博士が遺した設計図により完成した試作型のストライカーユニット。
この殺し合いでは女性であれば誰でも魔法力の行使が可能となっている。
震電自体は破壊された為意味は無いが。
・マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS
宮藤芳佳に支給。
読心と同化を行ってくる地球外生命体であるフェストゥムに対抗し作られたファフナー・ノートゥングモデル。本来なら50m前後とかなりの大型だが、パワードスーツとして落とし込まれている都合等身大サイズとなっている。
武装はショットガンホーンにハンドガンのデュランダル、マインブレードにレージングカッター、ナックルガード。
パワードスーツは作中にてエインヘリアル・モデルに換装される前の状態となっている。
またこの起動鍵には元の搭乗者である立上芹が発現した新同化現象ことSDP「再生(リバース)」がソードスキルとして搭載されている。
たとえ瀕死の重傷だろうと生きてさえいれば完全回復が可能だが、令呪を用いてもなお、6時間に1回しか使用できない仕様となっている。
本来のデメリットである使用者への無差別な同化能力発現は無い。
この殺し合いでは制限により誰でも使用可能となる代わりに、使用した参加者にファフナーとの一体化の促進の効果があるシナジェティックコードを形成するようにされた。
以降ファフナー系列の起動鍵を使用する毎に一定確率で同化現象が進行し、最終的には結晶となって砕け散り『いなくなる』他、本来より同化現象の進行する速度が早くされている。
なおシナジェティックコードが形成された参加者が令呪を全て使い切った場合、効果時間が過ぎた後に結晶となって砕け散り、そのまま破片も遺らず消滅する仕様となっている。
なお令呪による制限突破時に、ショットガンホーンにワームスフィアーが発生可能な機構が生成されるかは採用された場合後続にお任せします。
・ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ
ロロ・ヴィ・ブリタニアに支給。2つで1つの支給品扱い。
仮面ライダージオウに変身するためのアイテム。ジカンギレードは変身後に取り出せるようになっている。
この殺し合いではアイテムさえあれば誰でも変身が可能。
投下終了します。タイトルは「声にならぬ声/2024:再起-スタンド・アップ・ アゲイン-」です
皆さま、投下お疲れ様です。
私も投下いたします。
タイトルは「innocent starter」です。
「とんでもないことに巻き込まれちゃったわね……」
イドラ・アーヴォルンが降り立ったのは、現代の都会を再現したかのような街であった。
「まるで亜人連合みたいな街ね」
ツギハギ博士によって発展していた亜人連合の街の風景を思い起こしながら、イドラは考える。
このような事態は、イドラがいずれ開発しようとしている「異世界転移魔法」に類する能力で参加者が集められていると見ていいだろう。
参加者一同が集められていた空間には、イドラの見たことのない服装をしている者や未知の技術を有している者が大勢いた。
たとえば、ルルーシュと呼ばれる青年が用いていた他人を意のままに操れる能力。
魔王族にも他人の心を操る者がいたが、「正気を保ったまま言葉通りに操る」魔法を再現しようとするとかなりの研究が必要になるだろう。
また、羂索の言葉にあった「変身アイテム」。
おそらく、レッド――浅垣灯悟がキズナレッドに変身する現象のことを言っているのだとしたら、レッドのような珍妙な変身をする者も多く来ていると見るべきか。
「変身するたびに爆発するのはよしてほしいわね……」
苦笑いしながら呟く。
レッド。「魔法の力で世界中の人々を笑顔にする」というイドラの夢を笑わずに受け止めてくれた大切な人。
もしレッドがこの殺し合いに巻き込まれていたとしたら、そんな悪趣味なことは絶対に認めないだろう。
レッドのように変身できる”勇者”《ヒーロー》は、きっと主催を打倒すべく動いているはずだ。
イドラも同じだ。
異世界転移魔法をこんな悪事に利用するなど、「王家の杖」の家系としても絶対に認めることはできない。
「あれ……そういえば」
レッドのことを考えていたイドラはあるモノを思い出し、嫌な予感を感じて自身の懐やリュックを探る。
「ない……やっぱりない!私のエレメンタル絆装甲!」
ガックリを膝をついて落ち込むイドラ。羂索の言葉通り、没収されていた。
イドラが自らのビッグ絆ソウルから作り出した、いわばレッドとの絆の結晶と言えるモノ。
左手薬指に巻かれた絆創膏くらいに大切なものだったはずなのに。
「……やることは山積みね」
エレメンタル絆装甲を取り戻し、この殺し合いから生還する。
イドラにはまだ、やるべきことが沢山あるのだ。魔王族だったシャウハの奴とももう一度会って話をしたいし、いずれ復活する魔王も倒さなければいけないし、何より自分の夢も叶えたい。
バッドエンドを迎えるわけには行かないのだ。
その時、イドラの黒のローブの裾が引っ張られる。
「あら……?」
「あの……っ」
イドラが引っ張られた方を見ると、そこには心細そうにローブを握る、ツインテールの髪をした小さな女の子が見上げていた。
「子供……?」
「もしかして……魔女っ娘ですか!?」
「ま、魔女っ娘……!?」
§
「わぁ、すごい……本当に魔法使えるんだ!」
「まぁね……でも確かに魔女かもしれないけど貴方の思ってる魔女っ娘や魔法少女じゃないわ」
「いいの!本当に魔法が使える人見たの、千佳はじめてだから!」
イドラが魔法を見せてあげると、先ほどの少女、横山千佳は目を輝かせながらイドラを見上げてくる。
先ほどは一人ぼっちで怯えを隠せない様子だったが、イドラの魔法によってそれは晴れたようだった。
「でも、魔法使えるのに魔法少女じゃないってことはその格好は変身した後じゃないの?」
「普段からこの服装よ。変身する奴なら知ってるけどね。こう、こんな感じのポーズとって後ろで爆発して服がピチピチでケツがプリプリになる感じの……」
「あっ、もしかして魔法少女じゃなくって戦隊ヒーローなのかな!?会ってみたいなぁ……光ちゃんなら絶対喜ぶだろうなあ……」
「……通じた」
もしかしたらレッドのいた世界と似たような世界観の出身なのかもしれないとイドラは思った。
「チカちゃんはアイドル……なのよね?」
「うん!あのね、あたしはステージに上がったら魔女っ娘ラブリーチカになって魔法が使えるんだよ!ステージに上がってライブしたりショーしたりするとね、皆笑顔になってくれるの!」
「やるじゃない!素敵な魔法ね」
まるでイドラの夢を体現したかのような魔法を語る千佳に素直に感心しながら、頭を撫でてあげる。
聞いた話によると、この千佳という少女は第三芸能課と呼ばれるグループに所属するアイドルらしい。
イドラはアイドルについてはほとんど知らない……が、キズナレッド・バースにいた浅垣灯子がアイドルだったおかげで名前だけは知っていた。
(こんな、子供が……)
同時に、イドラの心には影が差す。
この横山千佳という少女はステラ孤児院で出会った子供たちとそう変わらない年齢だ。
しかも見たところ、魔法を使えるとは言っているが魔力の類は一切感じられず、レッドやロゥジーと同じく魔力を持たない人間だろう。
しかも魔力がないならないで武器の扱いに長けたようでもなく、完全に一般家庭の子供が殺し合いに放り込まれていると見ていい。
イドラの主催陣営に抱く義憤が、数段階高まった。
「っ……!!」
その時、イドラの肌を複数の魔力が撫でる。
近くで魔力が動いていることを培われた魔導士の感覚が告げていた。
「イドラちゃん、どうしたの……?」
(ちゃん付け……)
「近くで魔力反応があったわ。誰かが魔法を使ったみたい……」
イドラは顔を強張らせながら、魔力反応のあった建物の隙間にある裏路地を睨み、次いで千佳を横目に見る。
魔力の主は危険人物の可能性もあるが、かといって危険だからと千佳を置いていくのも不安が残る。
イドラのいない間にNPCや他の参加者に襲われたらますます危険だ。
「チカ、あなたは私の少し後ろに付いてきて。何かあったらすぐに逃げること。いい?」
「わ、わかった……」
千佳もごくりと喉を鳴らしながら、おそるおそるイドラの後を追う。
自分達がいるのは殺し合いの場であるという緊張感が汗となって現れる。
「……」
そして、先行するイドラが路地裏の角に顔を出すと、そこには。
「アルカイザー、変身!!」
まるでサボテンのように髪の逆立った頭をした青年が、変身している最中だった。
青年の身体が光に包まれて黄金の鎧と空色のマントをはためかせる戦士の姿になる一部始終をイドラは目撃する。
「……あの、何してるんスか?」
「……あっ」
普段の口調も忘れて呆然とするイドラ。
イドラと青年の間に、静寂が訪れる。
一方、千佳の方も。
ふと付近の建物内部から壁越しに何者かの声を聞く。
千佳は興味を惹かれ、室外機によじ登って高窓から室内の様子を窺う。
「変身《トランスマジア》っ!」
「わぁ……!」
そこでは、ピンク色のカールを巻いたツインテールの少女が、可愛らしい衣装を身に纏った魔法少女に変身していたのだ。
「……あっ」
イドラの見た青年と千佳の見た少女。
二人の間に共通していたのは、やってしまったと言わんばかりの諦観だった。
§
「「見られた……」」
付近の公園で、先ほどの青年と少女はベンチで項垂れていた。
「もう終わりだ……ヒーロー委員会にヒーローの力を剥奪される……」
「正体知られちゃったよぉ……小夜ちゃんと薫子ちゃんにどう説明すれば……」
ずーんと言わんばかりの重い空気が辺りを漂っている。
その様子をイドラは何とも言えない目で、千佳は心配そうな目で見ていた。
「あたし、悪いことしちゃったかなぁ……やっぱり魔法少女もヒーローも正体知られたらいけないよね……」
「大丈夫、チカのせいじゃないわ」
泣きそうな声で言う千佳を宥めてから、目の前で落ち込む2人のヒーローと魔法少女に向き直る。
「あの、いつまでも落ち込んでないで事情を説明してくれるかしら。ついでに名前も聞かせてくれる?」
イドラの問いに答えたのは青年からだ。
「オレはレッド。もう正体はバレちまったが、アルカイザーに変身できる」
「れ、レッドぉ!?」
「ああ、本名は小此木烈人だが、周りからはレッドって呼ばれてる。お前達もそう呼んでくれ」
「や、ややこしいわね……」
「どういうことだよ?赤が嫌いなのか?」
「いえ、こっちの話よ。むしろ赤は好きだから」
驚いた。まさかあのヒーロー?に変身する青年がレッドと名乗るとは。
レッドという名はイドラにとっては想い人――浅垣灯悟の名前であり、特別な愛称でもある。
(キズナレッド・バースの一員……ってわけでもなさそうね。髪型も顔も全然似てないし)
その割に変身後の姿はレッドというよりゴールドだし本名がレツトなのにどうしてレッドになるのだとか、聞きたいことは色々あるが些末なことでもあるので今は呑み込んでおく。
「ヒーローには決まり事があってな、その中には正体を知られてはいけないってもんがある。一般人に正体を知られるとヒーローの力を奪われて記憶を消されるんだ」
「……結構重い制約ね」
「まあな。見てない隙に変身したりとかレッドは怪我をしたって仲間に嘘ついて入れ替わったりとか、まぁ大変だった。だけどこうして正体を知られちまった以上、ヒーローではいられなくなる」
「……」
「まあ思い残すことはねぇよ。ブラッククロスもぶっ潰して母さんと妹を助けた。もう思い残すことはないさ。すぐにアルカールがオレのヒーローの力を剥奪しに……」
ふっと笑いながら天を見上げるレッドにイドラはさらに問う。
「で……そのアルカールって人はいつ来るの?というか来れるの?羂索が見逃さないと思うけど」
「……」
「それに、こんな大がかりなことヒーロー委員会とやらが見逃さないと思うんだけど、そこらへんどうなのよ?」
「……確かにそうだ、けど……」
頭をポリポリと掻きながらも締まらないレッドにイドラは溜息をつきつつ、もう一人の少女に目を向ける。
「貴方は?」
「私は……花菱はるか。魔法少女トレスマジアのマジアマゼンタになれるの。魔法少女はレッドさんの世界みたいに委員会もないしそこまで厳格じゃないけど……変身すると認識阻害魔法で正体を隠せるんだ」
少女、はるかは「それもさっきバレちゃって効かなくなっちゃったけど……」と付け加える。
「けど、私達は今、世界征服を狙……っているのかは分からないんだけど、エノルミータっていう悪の組織と戦ってるの。もし、正体が少しでもバレたら変身してない時もナニされるか分かんない……!」
はるかは何かを思い出すしたかのように赤面しながらも、頭を抱えながら怯えた様子を見せる。
「だからお願い!どうかこのことはご内密に……!」
両手を合わせながら、はるかはイドラと千佳、レッドに懇願する。
「それは構わないけど、そもそも生まれた世界の違う私達にバレたくらいで――」
イドラがそう言い切る前に、千佳がはるかの前に飛び出していた。
「大丈夫。あたしは絶対ヒミツを守るから!」
千佳ははるかに向かって、まるでこれから変身するような決めポーズを取っていた。
「あなたは……?」
「あたしは魔女っ娘ラブリーチカ!でも本当の名前は横山千佳っていうの!これであたしの正体もバレちゃったね。これでおあいこだよっ!」
はるかの手を取り、ニカッとはるかに微笑みかける千佳。
それに対してはるかは、突然のラブリーチカの登場にきょとんとしていた。
「まだ元気にならない?なら、ラブリーチカがとっておきの魔法を使ってあげる!ハッピーパワー☆注〜〜〜〜入っ!」
「わわっ……」
そう言うと、千佳はサマーライブの舞台裏で先輩アイドルにやった時のように、はるかに抱きついてぎゅっと抱きしめる。
ぽかぽかとした千佳の体温がはるかの肌に伝わってくる。
ようやく千佳の気持ちを汲み取ったはるかは、微笑ましそうに笑んだ後、「ありがとう」とぼそりと呟いた。
その姿は、まるで杜乃こりすと遊んであげた時の自分と似ているような気がした。
「変身《トランスマジア》っ!!」
そして、千佳が離れた後にはるかはすかさず変身アイテムをかざしてマジアマゼンタに変身する。
「う〜〜〜〜んっ、元気100倍だよぉ!元気を分けてくれてありがとう、ラブリーチカ!」
「うん!ラブリーチカは皆を笑顔にする魔法が使えるんだよ!」
はるかは少し大袈裟な身振り手振りをしながら、千佳に目線を合わせて抱きしめ返してあげて感謝を伝える。
「えへへ……あたし、殺し合いは怖いけど、すっごく嬉しいんだ。だって、本物の魔法少女に出会えたんだもん!」
「千佳ちゃん……」
「ほら、レッドくんも!ハッピーパワー☆注〜〜〜〜入っ!」
「うおっ!?オレもかよ!?」
千佳は、今度はレッドの方へ行って先ほどのはるかのようにぎゅっと抱きしめる。
妹よりも小さい女の子に抱きしめられて、レッドは照れくさそうな、少しむず痒そうな顔をする。
しかし、コホンと咳払いをしつつこっちに視線をよこしてくるイドラを見て、レッドも千佳の想いに応えることにする。
「変身!!アルカイザーッ!!」
レッドがポーズを取ると眩い光に身体が包まれ、そして再び黄金の鎧を身に纏った戦士へと変身した。
「ありがとう、ラブリーチカ!君のおかげで元気が出たぞ!」
アルカイザーへと姿を変えたレッドも、まるでヒーローショーで用いられるような台詞を言ったのだった。
「本当に、魔法が使えるのね。私から見ても素晴らしい魔法だわ、ラブリーチカ」
そんな言葉をイドラが千佳の耳元で囁きつつ、千佳とレッド、はるかの間に割って入ってくる。
「二人とも、元気が出たみたいでよかったわ。話を戻すけど。正体がバレたならバレちゃったで大っぴらに行動できるって思わない?そうすることで救える命もあるはずよ。この殺し合いを認めないなら猶更ね」
イドラの言葉を聞いたレッドとはるかは、互いを見て、そして思い出す。
レッドもはるかも、元はと言えばいつでも皆を助けられるように、変身していたのだった。
「……ああ、お前の言う通りだぜ。まだアルカイザーの戦いが終わってないって言うのなら……この力を正義のために使うまでだ!」
「私も魔法少女として、花菱はるかとしても、頑張っちゃうから!」
命はいつだって尊い。決して失われてはならない。
たとえこんな状況でも、無力な子供ですら気丈に振る舞い、心に光を灯すことができる。
ヒーローも魔法少女も、この異常事態を前にして立ち止まるわけにはいかないのだ。
ゆえに、協力を拒む理由もなかった。
「「「ッ!!!」」」
しかし次の瞬間、イドラ、レッド、はるかの顔が途端に険しくなる。
「え……なになに?三人ともどうしたの?」
唯一、千佳だけが事態を吞み込めずにおろおろと三人を見比べていた。
「……感じた?」
「うん、すっごく強大で……エノルミータの総帥を何倍もドス黒くしたような魔力」
「オレも感じるぜ。コイツは……ヤバい」
そんな殺気を感じた三人に敢えて姿を見せるかのように、足音が近づいてくる。
その足音は、緊張からか三人の耳にはとても大きく聞こえた。
「んも〜、魔力を感じただけでそんなに怖い顔しないでよ〜。お姉さん傷ついちゃう♪」
イドラ達の前に現れたのは、黒を基調としたワンピース風のドレスを着た、長い金髪の女性だった。
その軽薄そうな口調とは裏腹に、漆黒に染まった瞳に宿る星の如き眼光は只者ではないことを示唆していた。
「……」
「……」
「……」
「……やぁねえ。どの世界でも私と会った人ってこうなのかしら。そこにいる子まで私をそんな目で見ちゃって、世知辛いわ」
女性はげんなりとした様子で言う。
女性に視線を向けられた千佳は軽く身体を跳ねさせる。まるで、品定めをするかのようなねちっこい悪寒を肌に感じたからだ。
(ここまでの魔力を漂わせておきながら何が世知辛いよ……!)
魔導師ゆえに魔力を直に感じているイドラも、はるかも、レッドも、冷や汗を浮かべながら千佳の前に並び立って武器を構えている。
正直言って、眼前の女の秘める魔力は規格外と言ってもいい。
魔法を使わずこうして話している今でも、辺りにとてつもない量の魔力が彼女から溢れ出ているのだから。
彼女が本気を出せば災害級の被害は免れないと、容易に想像できた。
(あたしにも分かる……この人、悪い人だ……)
千佳もまた、女の纏う異様な雰囲気を目の当たりにして、警戒心を強めていた。
不安が出てしまっているからか、ぎゅ……とはるかの服を握っている。
「あら、もしかして名乗っていなかったからかしら。これは失礼したわ。私はノワル。よろしくね♪」
にっこりと微笑みかけてくるノワルと名乗る女性。
柔らかい物腰で一礼してくるが、イドラ達は微動だにしない。というよりも、あまりの威圧感により動けない。
「あなたは……」
「ん?」
その時、はるかがおそるおそる口を開く。
「あなたは、この殺し合いに乗っているの?」
「ああ、殺し合い……うん、そんなものに私も参加させられてるのよねぇ」
ノワルはうんうんと何度も咀嚼するように頷きながら、続ける。
「本当に腹立たしいわぁ。まだまだ手に入れたいものが沢山あったのに。元の世界に戻らないとそれもできないわねえ」
「……」
「でも、貴女達に会ってこういうのも悪くないかもって思ったわ。だって――」
ギロリ、とノワルの瞳に宿る不気味な光が強くなる。
「おいしそうな魔力を持つかわいい女の子が二人……いきなり見つかったんですもの」
獲物を見定めたかのようなその視線を、イドラとはるかに送っていたのだ。
「私ね、おいしい魔力源を集めるのが趣味なの。この殺し合いが済んだら是非とも味わってみたいわね――捕まえた子達の、ま・りょ・く♪」
「曇天焦がす炎精の鉄拳!イフリート・ブロウ!!」
即座にイドラは魔力を集中させて、ノワルに向けて魔法を放つ。
炎で構成された巨大な拳がノワル目掛けて飛んでいく。
その様子をノワルは涼しい顔で見守っていた。
「固有魔法”闇檻 収監”――」
しかし、イドラの放った炎の拳はノワルを穿とうかという時に突如として黒い霧に包まれてしまう。
黒い霧に包まれた炎の拳は姿を消し、霧が晴れた頃には跡形もなくなっていた。
ただ一つ、極小サイズの黒い球がコロンと転がっていた。
「魔法が消えた……!?」
「酷いじゃない。私まだ乗るとは一言も言ってないのに」
「……乗ったも同然じゃない。私とマゼンタに向ける下品な目がその証拠よ。少なくとも、人を傷つけようとしていることは確かだわ」
イドラは険しい目でノワルを睨みながら言う。
「どんな方法かは知らないけど、大方元の世界じゃ女の子を誘拐してたんでしょ!?」
「誘拐なんて人聞きが悪いわぁ。ただ気に入った子を持ち帰って気持ちよくして魔力垂れ流しのまま固定してただけじゃない」
「なお悪いわ!!」
吐き捨てるようにイドラは叫ぶ。
「やっぱり私の勘は間違ってはなかったようね……!」
「この人……異常だよぉ……!!」
そう言いつつも、イドラとはるかはぞわぞわとした気色の悪い悪寒に震えながらノワルを見ていた。
聞いた話から察するに、"そういう"性癖持ちだろう。そんな人物が自分を狙っているなど、肝が冷えるどころではない。
「女を攫って好き勝手しようなど……許せん!!二人が狙いならまずはオレが相手をするぜ!」
そう言って、レッドがイドラとはるかの前に立ち、拳から無数の光弾をノワルに投げつけるように発射する。
アルカイザーの必殺技の一つ、アル・ブラスターだ。
しかし、これもノワルの前に昇った黒霧に包まれてしまい、やがて消滅する。
「遠距離が効かないのなら……!」
アルカイザーは懐から淡い青の光を放つ光の剣、レイブレードを手にノワルへと肉薄していく。
「はぁ……そういえばいたわね、男が」
やたらと大きい溜息をつくノワル。
レッドをチラッと目で追ったノワルの声は、先ほどより数段低く、冷たかった。
「テネーブル」
「ぐっ……!?」
ノワルは空間を指で切り裂き、闇の魔力を迸らせる魔法「テネーブル」をレッドに向ける。
それをレッドはどうにかレイブレードで弾くが、ノワルに近づくことは叶わなかった。
「悪いけど私、男には興味ないのよね。不純物には早々に退場してもらわないといけないわ」
そして、ノワルは一人で勝手に納得が行ったように結論を出す。
「うん、そうね。やっぱり私、殺し合いに乗ってると思うわ。だって、いらない奴はみんな死んじゃっていいって思ってるもの。あ、でももし願いが本当に叶うとしたら……その願いで魔力のおいしそうな子だけを生き返らせるのも悪くはないかもね♪」
あっけらかんと、満面の笑みで、ノワルは平然と言い放った。
「最っ低……!」
不快感を顔に滲ませながらも、イドラは先ほどのノワルの魔法を分析する。
ノワルは先ほど、「固有魔法」と言っていた。ノワル自体が規格外の魔法使いであるため特権魔法とは違うだろうが、それが個々人の性質に拠った効果を持つのかもしれない。
そしてイドラのイフリート・ブロウやレッドのアル・ブラスターを無効化した黒い霧。それらが消えた後に黒い玉が残されていたことから、あれは攻撃を「消した」のではなく「閉じ込めた」と理解した方がよさそうだ。
だが、「これだけ」だとはイドラには到底思えなかった。
この現象は、ノワルという魔法使いの固有魔法の応用系の一つでしかないという気がしてならないのだ。
「あら、私の固有魔法についてもっと知りたがっているみたいね」
「っ……!」
「それじゃあここで問題♪魔法使いと戦うときに大切なものってなーんだ?」
「……」
ノワルの問いかけたなぞなぞに答える者はいない。
彼女の飄々とした態度からは手の内を読むことができず、全員がノワルの出方を窺うので精一杯だった。
「はーい時間切れー。正解は……」
ノワルが瞳の輝きを一際大きくすると同時に、突如としてイドラとはるかの口元に黒い霧が現れる。
「みんな気を付けて!何か来――」
「これは――!?」
――ガチッ!
完全に二人の口が覆われた瞬間、そんな鍵をかけるような金属音が二回鳴った。
「むっ!?もごおおおおおおっ!?」
「んむっ!?ん……ぐっ、むうううううう!?」
霧が晴れた瞬間、イドラとはるかのみならず、レッドや千佳の目まで見開かれる。
霧が覆っていた二人の口元には、漆黒の色をした口枷が、イドラとはるかの頬から顎までの顔の下半分全体を覆い、塞いでいたからだ。
「……く・ち・か・せ♪」
「うぐっ、むっ、ぐううううっ!!」
「はうっ、んむ、んううううっ!!」
(いつの間に!?何かが口の中に入って……!?)
(全くしゃべれない……!)
意識の介入を許す間もなく口を塞がれたイドラとはるかは、全身を捩りながら必死になって両手で口から行為束具を剝がそうと試みるが、どんなに力を込めても顔をびっちりと覆った口枷は離れない。
口から吐き出そうにも、口内いっぱいに詰め物が押し込まれており、舌すらも満足に動かせない。
(まずい……っ!これじゃ魔法を詠唱できない……っ!)
深刻な事態にイドラは焦燥を深めていく。
魔法使いは基本的に魔法を使う際には詠唱が必要になる。ニヅベルで捕まった時のように、口を塞がれることは魔法を封じられることと同じなのだ。
((外れないッッッッッ!!))
「イドラちゃん!はるかちゃん!」
悲鳴を上げるかのように千佳が叫ぶ。
「もう沈黙魔法なんて時代遅れよね。魔力で物理的に口封じするに限るわ」
「キサマ!二人に何をした!」
戦力の中で唯一難を逃れているレッドが二人の前に出てくる。
ノワルは、跪いて口枷を剥がすのに必死なイドラとはるかを満足げに見つめながら言う。
「見ての通りよ。これで魔法を唱えられないわね♪これが私の固有魔法"闇檻"……」
「闇檻……だと?」
「けど、口を塞ぐなんてほんの一部分。もうちょっと出力を上げると――」
ノワルが指をクイッと動かした瞬間、レッド達の周囲には無数の黒い霧が立ち上っていた。
それらは一つ一つが先ほどとは比較にならないほど大きく、全身を包めるほどだった。
「……んむっ!!」
嫌な予感を感じ取ったはるかは、咄嗟に槍を薙ぎ払い、自分以外のイドラ、レッド、千佳を黒霧の包囲の外へと弾き飛ばす。
「んぐっ!」
「くっ!」
「きゃっ!」
(はるか……!)
残されたはるかは、為す術もなく黒霧の群れに呑み込まれてしまった。
――ガチガチガチガチッ!!
そして、幾重にも重なるあの不快な拘束音が、絶え間なく連続で鳴り響く。
(は……?)
霧から姿を現したはるかの姿を見て、三人は呆然とした。
「んむうううううううっ!?」
なんと、はるかは口枷と同じ材質の拘束具で口元のみならず首から下の全身を覆われ、さらにベルトを幾重にも巻かれて厳重に拘束されていたのだ。
流石のはるかもここまでの事態は想定していなかったようで、自分の身体を見下ろして口枷の中で悲鳴を上げながら拘束を解こうともがく。
「んむっ!んむぅっ!んんんんんんっ!!」
しかし、はるかはこの厳重な拘束に対して身を捩るのがやっとで、ギチギチと音を立てる拘束具の中では指一本すら動かすことが叶わなかった。
「あはは、無駄無駄。内側で核爆発が起ころうと壊れないわ♪」
まるで直立した芋虫のようにされたはるかを見て、ノワルはより一層気分をよくしたようだった。
「これこそが私の固有魔法"闇檻"。私の"闇檻"に触れたものはすべてが拘束される」
「ん……んむ……!」
イドラは恐怖していた。
拘束や無力化にこの上なく特化した魔法。こんな魔法、聞いたことがない。
あの霧に触れただけで。こんな一瞬で。あんなにもあっけなく。無力化されるなんて。
魔法に明るいから分かる。ここまでの魔力量を有していればさらに大規模な拘束が可能だろう。都市一つを拘束の中に呑み込むどころか、光すらも――。
そして、理解する。
この女は最悪などでは済まされない。最悪な"災厄"なのだと。
実際、イドラの抱いた印象は当たっていた。
ノワルは、元の世界では「13の災害」と呼ばれる、突出した実力を持つ世界の環境を変え得る魔法使いの一人であり、"闇檻"の異名を持っていたトップクラスの危険人物だったのだから。
「さてと、ちょっと味見しちゃおうかしら」
ノワルは全身を拘束されて動けないはるかに近づくと、おもむろにその頬に舌を這わせて、ベロリと舐める。
はるかの魔力が滲んでいる汗を、その舌で味わったのだ。
「ふうううううっ!!むぐうううううっ!!」
あまりの不快感にはるかは涙を浮かべながら悲鳴を上げるが、口枷に塞がれた声はくぐもった声となりノワルの耳には届かない。
「う〜〜〜〜〜ん!おいしい♡」
高級なスイーツを嗜んだかのように幸福で満たされた表情になるノワル。
「やっぱり期待した通りの味ね。気に入ったわ、持ち帰っちゃお」
「ひっ……っ」
無慈悲な所有物宣告に、はるかは顔を青くして怯えることしかできない。
「化け物が……っ!」
もはや男であるはずのレッドすらも、ノワルに対して恐怖に近い感情を有していた。
千佳に至っては、足がすくんで動けず、声を発することすらできなかった。
眼前で行われた女に対する変態的で屈辱的な所業を、現実のものだと思いたくなかった。
「イドラ。ここはオレが時間を稼ぐ。お前は千佳を連れて逃げろ」
「むぅ!?うむむっ!」
引き留めるようなくぐもった声がイドラから発せられるが、レッドは首を振る。
「アイツとまともに戦っても確実に負ける!だからお前と千佳は逃げてヤツの危険性を伝えるんだ!」
「そんなこと言われて逃がすと思う?」
「オレがそうさせるんだよ!……ぉぉぉぉおおおおおおっ!!」
レッドは雄叫びを上げると、全身からエネルギーが迸り、それが炎となってアルカイザーことレッドの全身を覆う。
「あらこの炎は……まるで炎獄を思わせるわね。不快だわ……」
「アルカイザーの最終奥義だ……くらえっ!真アル――」
「はい、残念。悪いけど先に手を打たせてもらったわ」
「何っ!?」
レッドを纏う炎が不死鳥を形成し、アルカイザーの最終奥義、真アル・フェニックスを放とうとした刹那のことだった。
ノワルが素早い動きでレッドに肉薄すると、その炎を"闇檻"の霧で覆って鎮火し、さらに別の"闇檻"でレッドを覆ったのだ。
――ガコンッ!!
すると、先ほどまでレッドのいた場所には、鈍い黒に輝く鉄棺があった。
――ガコンッ!!
拘束する時のような音は鳴らず、代わりに機械が少しずつ駆動するような重い音がなる。
「ぐおおおおおおおっ!!?」
その鉄棺の内部にはレッドが閉じ込められ、少しずつ縮まろうとする鉄棺に圧し潰されようとしていたのだ。
鉄棺の体積が少しずつ狭まるごとに、内部から聞こえるレッドの苦悶の声が大きくなっていく。
「男が拘束されてる姿なんて見たくもないからそうしてあげたわ。そのまま圧死しちゃいなさいな」
ただの無力化するための拘束ではなく、ノワルの殺意の籠った拘束。
それはレッドに最大限の苦痛を与えた上で絞め殺そうと、レッドを少しずつ蝕んでいた。
「さて……時間稼ぎにすらならなかったみたいね?」
「んっ……」
「イドラちゃん……」
レッドが一瞬で無力化されてしまったことで、イドラと千佳は逃げる暇もなく追いつかれてしまう。
残されたイドラは口を塞がれて魔法を封じられ、千佳は言うまでもなく魔女っ娘アイドルであることを除けばただの9歳児でしかない。
万事休すといってもいい状況だった。
そんな状況を鑑みたイドラが、動きを見せる。
「イドラちゃん……?どうしたの?ねぇ、なんでその人の方へ行くの!?」
「あらあら、私の方へ向かってくるなんて。何か秘策を思いついたのかしら?」
なんとイドラは、繋いでいた千佳の手を振り払い、ノワルの方へと近づいていったのだ。
何をするのだろうと、千佳もノワルもイドラの次の行動を待つ。
「ん……」
するとイドラは、両手を広げて何の抵抗もしないという合図を送ったのだ。
そんな姿勢を取りながら、ちらりと背後で自分を案じている千佳を見る。
「んっ……んむっ」
「ふぅん、なるほどねぇ」
イドラは目配せを用いて、千佳のことは見逃して欲しいことをノワルに伝える。
イドラは、自分を犠牲にしたのだ。「皆を笑顔にする魔法」という素晴らしい魔法を持つこの魔女っ娘《アイドル》だけは、犠牲にしてはならないという考えの元の行動だった。
「分かったわ。それじゃ遠慮なく。"闇檻"」
ノワルは理解したような様子で、無抵抗なイドラの全身を霧に包む。
――ガチガチガチガチッ!!
金属のぶつかり合う音が連続でしたと思うと、イドラははるかと同じように、首から下までをびっしりと黒光りする拘束具で覆われていた。
イドラははるかに比べて身体の凹凸が激しいボディをしていたせいか、その女性的な特徴は拘束具に締め上げられたことでさらにくっきりと浮かび上がり、ベルトの間からはその乳房が自己主張をしていた。
「んむ……っ」
不快感と羞恥から身を捩るが、ギシギシという拘束具の擦れる音がなるだけで全く動くことができない。
イドラもまた、長い黒髪と顔の上半分を残して、全身拘束されてしまったのだった。
「じゃあ、味見タイムと行きましょうか♪」
「ひっ……っ」
ノワルに舐められた瞬間、イドラは身を震わせる。
浅垣灯悟にすら許したことのない場所を舐められてしまったことで、身の毛のよだつような悪寒に顔をしかめる。
女性による女性への蹂躙を、拘束されているせいで払いのけることすらできないという屈辱。
その黒髪を拘束具に覆われた肩にかけながら、拘束具の奥でイドラは一筋の涙を流すのだった。
「うん、こっちもはるかちゃんとは違った味だけど美味だわ。貴女もお持ち帰り決定ね♡」
「んっ……!」
人形を愛でるかのように頭を撫でてくるノワルに対し、イドラはキッと睨むことでしか反応を返せない。
「もう、反抗的なんだから。帰ったらちゃんと調教しなきゃ」
「ぐぅっ……」
ノワルはその豊満な乳房を拘束具越しにムニュムニュと揉みながら言う。
恥辱に濡れたイドラの反応をひとしきり堪能したノワルは、残された千佳の方へと向き合う。
「さて、貴女は……」
「あ……あぅ……」
近づいてくる魔女に、思わず後ずさりしてしまう。
足がうまく動かない千佳は、容易にノワルに触れられる距離まで近づかれてしまった。
「どうしようかしら。魔力は確かにないんだけれど……顔は好みなのよね」
「い、嫌……っ!」
くいっと千佳の顎を持ち上げるノワル。
その漆黒の瞳には、心細そうに涙を浮かべる千佳の顔が映っていた。
「むううううっ!!ふぐうううううっ!!」
背後からは、イドラが必死に抗議を口枷の奥で叫んでいる声が聞こえた。
この子は見逃すんじゃなかったのか、だから私が無抵抗で闇檻を受け入れたのに、という怨嗟の声が口枷越しにも聞こえてきたが、ノワルはそれを嘲笑うかのようにわざとらしくとぼける。
「あ、ごめんなさい。やっぱりあなたの言ってることさっぱり分からなかったわ」
「むがああああっ!!ふごおおおおおっ!!」
ふざけるな、と言わんばかりの剣幕で怒り狂うイドラ。
無我夢中で拘束を解いて千佳を助けに行こうとするが、それで闇檻の拘束が解けるはずもなく、もぞもぞとそのシルエットが可愛らしく蠢くだけだった。
イドラの感情に対して無機質に拘束し続ける闇檻の拘束は、イドラの無力感と憤りを何倍にも高める。
「む……むぐううううっ!!」
暴れすぎたからか前のめりに倒れ込んでしまい、その胸が体重に押しつぶされて地面を舐めさせられるも、それでもノワルを見上げる執念を見せる。
口枷に塞がれた口でお願い、やめて、と何度も叫ぶもノワルには届かず、千佳を助けるには至らなかった。
「決めたわ!貴女は――」
「――待ちなさい」
ノワルが千佳の処遇を決めようとしていた時、どこからかミステリアスな声が辺りに静かに響く。
「……誰?」
楽しみを邪魔された不快感を隠すこともなく、ノワルは声の主を探る。
「こちらですよ。勝手ながら一部始終は観察させていただきました」
その声の主は、付近の街灯の上に腰かけていた。
その姿を見たはるかは、拘束された状態のまま驚愕する。
彼女には見覚えがあった。胸にニプレスを貼っただけの露出度の高いコスチュームに、神出鬼没で珍妙奇怪なことをしては去っていく、目的不明の悪の組織の総帥。
(マジアベーゼ……!?)
「……それで、私に何か用?」
街灯から飛び降りたマジアベーゼは、ノワルと対峙する。
両者の魔力の質はどちらも似通っており、似たような性癖の持ち主であることがなんとなくだが理解できてしまう。
「いえ、楽しそうなことをされているな、と思いまして。私も混ぜてくれませんか?」
「悪いけどそれは無理ね。ここにあるモノは全部私のものになったの。何ならあそこで圧死しそうになってる男を上げるから帰って頂戴」
「あ、すみません私もそれいらないです」
ノワルは棺の中にいるレッドを指すが、マジアベーゼは首を振ってここを去ろうとしない。
「それなら、本当に何をするつもりなのかしら?まさか……私のものを横取りしに来たとでも?」
「いえいえまさか。ただ……気に食わないことがありまして」
「へぇ……何に?」
ノワルとマジアベーゼの声が、一段低くなった。
「……あなたのやり方にですよ」
「ふぅん?」
ノワルとマジアベーゼの周囲の気温が数度、下がった。
マジアベーゼは血管を浮かばせながら、「支配の鞭」でぺちぺちと自身の手を叩いている。
ノワルは瞳に浮かぶ光をすべて失い、威圧感を前面に出してマジアベーゼを凝視する。
その表情のまま、ノワルとマジアベーゼは互いに歩み寄る。
「わっ……!?」
さりげなく、すれ違い様にマジアベーゼは、千佳を強引にノワルから引き離して自身の後ろへと退避させる。
「……残念ね、マジアベーゼ。魔力の質を見るに、こんな状況じゃなければ仲良くできたかもしれないのだけれど」
「それはこちらの台詞ですよ。"闇檻"ノワル」
ノワルとマジアベーゼの魔力がぶつかり合い、周囲にいる拘束されたはるかとイドラ、鉄棺に閉じ込められたレッド、尻もちをついている千佳にまでその余波を肌で感じ取られる。
第二ラウンドが、始まろうとしていた。
【イドラ・アーヴォルン@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:”闇檻”による全身拘束、口枷、うつ伏せに倒れている
服装:黒い露出度高めのローブ
装備:”闇檻”による拘束具、口枷
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止めて元の世界へ生還する
01:ノワルをどうにかしないと……!
02:あの子(マジアベーゼ)は……?
参戦時期:フォリング防衛戦(33話)終了後〜35話終了
備考
【花菱はるか@魔法少女にあこがれて】
状態:マジアマゼンタに変身、”闇檻”による全身拘束、口枷
服装:マジアマゼンタのコスチューム
装備:”闇檻”による拘束具、口枷、トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:魔法少女として殺し合いを止める
01:ノワルをどうにかしないと……!
02:どうしてマジアベーゼがここに……!?
参戦時期:少なくともマジアマゼンタ フォールンメディックに覚醒前
備考
【レッド@SaGa Frontier(サガフロンティア)】
状態:アルカイザーに変身、ダメージ(中)、”闇檻”による鉄棺への閉じ込め(圧搾中)
服装:アルカイザーのコスチューム
装備:”闇檻”による拘束具、口枷、トランスアイテム(魔法少女)@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして殺し合いを止める
01:ノワルをどうにかしないと……!
02:ぐおおおおお潰されるっ!!
参戦時期:本編終了後〜アルカールにヒーローの資格を剥奪される前
備考
【横山千佳@アイドルマスターシンデレラガールズ U149(漫画版)】
状態:健康、不安、ノワルへの恐怖(中)
服装:普段着
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:怖いけど、殺し合いになんて負けない!
01:あの人(マジアベーゼ)、悪の組織っぽいけど助けに来てくれたの……?
参戦時期:サマーライブ編(原作14巻)終了後以降
備考
【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:健康、マジアベーゼへの不快感
服装:ノワルのドレス
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:何、コイツ(マジアベーゼ)
01:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃんはかわいくて魔力もおいしいし拘束してお持ち帰りする
02:千佳ちゃんは魔力ないんだけど顔はいいからどうしようかしら
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
【柊うてな@魔法少女にあこがれて】
状態:健康、ノワルへの不快感
服装:マジアベーゼのコスチューム
装備:トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:無益な殺生はしないが、魔法少女の輝くところを見たい
00:とりあえずこの人(ノワル)のやり方が気に入りません
参戦時期:少なくともマジアベーゼ 夜蜘蛛の帳に覚醒後
備考
【支給品解説】
【トランスアイテム(魔法少女)@魔法少女にあこがれて】
花菱はるかに本人支給。
はるかが魔法少女マジアマゼンタに変身するためのハート型のアイテム。
手のひらに収まるサイズであり、これを手にして「トランスマジア」と唱えることで変身が可能になる。
【トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて】
柊うてなに本人支給。
うてながマジアベーゼに変身するための星型のアイテム。
手のひらに収まるサイズであり、これを手にして「トランスマジア」と唱えることで変身が可能になる。
以上で投下を終了します。
皆様お疲れ様です。投下します。
投下します
その景色は荒廃の一言である。
建物はひび割れ、砕かれている。
まるで災害が通り過ぎたかのような戦場の惨禍がそこにある。
かつて都市の形をしていた場所で、ある三人の戦闘によって引き起こされた結果。
三人のその後の事柄を、一人づつ語っていくとしよう。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「全く、蘇って早々、こうにも面倒なのと巡り合ってしまうとはね」
五条袈裟を着込んだ呪術師、夏油傑がやれやれと呟く。
市街地らしき場所で明らかに戦う気があると言わんばかりの連中の戦闘に巻き込まれ、半ば自衛の形で戦うほかなかった。
もっとも、自分の望みの為に殺し合いに乗った自分が言えた立場ではない。
羂索なる呪詛師が「加茂憲倫」と名乗った部分も少々気にはなるが、それは後の話だ。
「……本当に災難だよ。……あの二人人の中、特に彼は厄介だね」
夏油が危惧するのは、あの戦場で見(まみ)えた二人の内の一人、占星術らしきものを利用する異形も恐ろしかった。
だがもうひとりの男、現代風のファッションをした金髪の男、あれが一番恐ろしい。
あんなのが殺し合いにいるとなれば、そう安々と生き残らせてくれないということになる。
「でも、私に巡り合ったこれは中々に有能だ、失った呪霊の代用にもなる」
そう言って取り出したのはしゃれこうべ。
説明によると「狂骨」という妖怪が宿り、それを制御するためのものらしい。
勿論制御機能を兼ねているこのしゃれこうべが破壊されれば狂骨は暴走し、夏油自身も無事では済まない。
その時は呪霊操術の使い所、ということだ。
「ここで失った呪霊を、その代わりとなるものを蒐集出来れば……いや、この催しに勝ち残ったのなら」
夢が叶う。術師だけによる正しい世界が。
猿どもの欲によって術師が食い潰されることがない世界が。
だから殺そう、非術師の猿は全て。そこに例外はない。
でも、悟や、高専のみんなまで憎んだわけじゃない。
あの世界では心の底から、笑えなかっただけだ。
「呪い合おうじゃないか羂索、そしてこの殺し合いにそれぞれの意思を以て挑まんとする者たちよ」
二度目の人生。いや、呪術師としての夏油傑が死んだ日を加えれは三度目の生。
呪い呪われるこの欲望の場所で、青のすみかの片割れだった呪詛師は、純粋な理想たるその大義の為に呪いを振りまかん。
【夏油傑@呪術廻戦0】
状態:健康、疲労(小)
服装:いつもの服装
装備:裏鬼道の髑髏呪具@鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜2、ホットライン
思考
基本:非術師(さる)共の鏖殺を。今度こそ、術師たちの楽園を。
01:狂骨の扱いは慎重に。
02:NPCの呪霊は戦力のため呪霊操術で回収する。
03:協力できそうな術師はなるべくは殺さない。敵対せざる得ないならその時は容赦はしない。
04:占星術を使う異形、金髪の男は特に警戒
参戦時期:死亡後
備考
※死亡後参戦のため、生前に収集した呪霊は全部失っています。
廃墟と化したビル街に、轟音が響く。
その音はコンクリートを潰し、鉄柱をひん曲げ、ビルが砕けていく音だ。
その中で一人の男の叫ぶ声が混ざる。
男は人間ではなく魔人(ヴァンデル)と、人間と自分達が名乗る人類の敵対種である。
その魔人――グリニデは激怒のあまり周囲のビルを殴り、蹴り、倒壊するまで暴れていた。暴れる中、左腕に嵌る珠が光る。
「いたたた……やれやれ、グリニデはおまかいなしだね〜」
両腕で顔を覆い、うつぶせになった男ののんびりした声の中に怒りが混じっていた。
その男の体はグリニデにも勝る巨躯、上半身にレンガのようなブロックがはまり、下半身は帯に腰布を巻き、肩にはマントを羽織っている。両手には盾が装着されていた。
そして左腕の盾にはグリニデの左腕と同様に、星のような珠が七つ嵌っていた。兜のような頭部にはこれまた兜鉢のような角があった。
「ったく、勝手に暴れ狂いやがって……」
こちらは不快感を隠しもせず、半壊した頭部に手を当て、陰気な声を発する。
男は骸骨のような細身の体をしている。
彼らはそれぞれ『深緑の智将』グリニデ、『不動巨人』ガロニュート、『凶刃』ヒスタリオの異名を持つ、魔人の中でも頂点のグループに位置する『七ッ星』の魔人である。
話は少し遡る。
「さっきボクは協力って言ったけど、別に仲良しこよしするってわけじゃない。早い者勝ちさ。誰が一番人間を沢山殺せるか。やることはいつもと一緒だよ」
両腕をヘラりと上げるガロニュート。それをグリニデとヒスタリオはじろりと眺めた。
「……まあ、いいでしょう。お互い好きにやるということで」
「でも、グリニデは大丈夫かな? この中で一番先に死んだわけでしょ?」
ガロニュートの言葉にグリニデは顔に青筋を立てた。
グリニデはこめかみを抑える。
「どうでもいいけど、七ッ星新参者のおまえは足を引っ張るんじゃねえぞ」
そうヒスタリオが言うと、グリニデの体がわなわなと震え始めた。額の角は伸び、固くこぶしを握り締める。
「おまえ……おまえだとぉ……!」
怒鳴るとグリニデは、ヒスタリオの顔を殴りつけた。
一発でヒスタリオの頭蓋は粉砕される。
返す拳でガロニュートに殴り掛かる。ガロニュートはとっさに両腕を上げ、盾で防いだ。
それでもグリニデの拳打の威力の威力に吹き飛ばされた。
グリニデは叫びながら廃ビルに向かい、所かまわず殴りつける。
ビルが崩壊し、頂上から崩れ落ちる光景を眺める立ち上がったガロニュートと粉砕された頭蓋が再生したヒスタリオは互いに顔を向き合わせた。
「じゃあ、これで解散して自由にやろうか」
「オレも自由にする。思うところがあるんでな」
そう二人は言って別れていった。
「いいものよこしてくれたねぇ……」
ガロニュートが支給品をチェックし、思わず顔をほころばせる。
支給されたのは「階級ワッペン」。大将未満の階級のワッペンを張り付けると、大将の命令に絶対に従うというものだ。
「これでモンスターや人間を支配下にして元の世界に戻って……ビィトを殺して八輝星になるとしようか……」
【ガロニュート@冒険王ビィト】
状態:正常
服装:いつもの恰好
装備:階級ワッペン×100
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:優勝し、元の世界に戻る。
01:慎重に拠点を作る
02:そのためにモンスターや人間を配下にする。
参戦時期:死亡後
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「貴様自身の命も掛けているというのは評価に値するぞ羂索。そうだ、神(オレ)を巻き込んだのだから命を使うのは当然だ」
テスカポリトカにとって、この殺し合いは神へ不敬であると同時に、その覚悟を持って開かれた一つの戦争でもある。
羂索が参加者による主催への反抗に言及していたことから、その心持ちの伺い様はこの戦神にも理解できる内容。
「戦いの場とは平等だ、安全な場所で踏ん反り返るやつらはその意識が抜けがちだが。奴らはそれを自覚している。その点は俺も素直に褒めてやろう」
それにしても、神を巻き込む不義は中々に舐めた真似をしてくれる、と愚痴りながら。
テスカポリトカにとってこの催しもまた一つの「戦い」。だと認識している。
人の輝きと愚かさが同時に蔓延るバトル・ロワイアル。この場所では絶えず戦いの種は芽吹き続けるだろう。
正しく、個人の欲望や大義からなる生存競争が本質となるこの場所で。
「ーー神(オレ)のやることは変わらん。せっかく巻き込まれたんだ。見定めぐらいはさせてもおうか」
神は平等である。神は残酷である。神は時に慈悲をもたらすものである。
その凶牙が誰かを殺すのも神の機嫌次第。神は戦士を期待する。
戦いの質も、その価値も問わない。
例え己が嫌う信念であろうとも、その信条で生き延びたのならば戦士として認めよう。
「わざわざ神(オレ)を呼び寄せたんだ。退屈なものは魅せてくれるなよ」
戦いの神。アステカの主神。黒の戦神。テスカポリトカ。
この殺し合いの舞台に、黒き風が吹き荒れる。
【テスカポリトカ@Fate/Grand Order】
状態:健康
服装:第一再臨の姿
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:好きにやる。好きに生かし、好きに殺す。
01:どのような理由であれ、戦いに臨むものをテスカポリトカは歓迎する。
02:売買用の武器を集める。神は平等だ。
03:戦えぬ魂に意味はない
04:神を巻き込む意味を分かっているようで何よりだ、羂索
参戦時期:二部七章終了後
備考
※権能の使用には令呪一画を使用する必要があります
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「これもまた、星の巡りかしらね」
冥黒王の一体たる女性、ガエリアは先の一戦に思いを馳せながら佇んでいた。
妙な亡霊を使いこなす五条袈裟の男と、佇んでいるように見えて底知れない実力を隠しているであろう金髪の男。
羂索がガッチャードの事を知っている素振りをしたが、自らの
「でも、これは面白いことには使えそう」
支給品として自らに手渡された指輪をくるくると回しながら、利用する価値があると見つめ不敵に笑う。
人の心を暴走させる黒い指輪。何かしらに利用できると踏んであの場ではまだ使用しなかった。
自分が使うよりも、誰かに使わせ暴走する様を見て楽しみ嘲笑うのが性に合っている
「全ては星の囁く未来のままに。私も自由気ままに遊ばせてもらいましょう」
ガエリア。三柱の冥黒王が一角。星の導きをもって遍く命とその心を弄ぶ星の錬金術師。
彼女もまた運命という星に縛られるものであり、他者の運命を弄びし占星の怪物。
【冥黒王ガエリヤ@仮面ライダーガッチャード】
状態:健康
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜2、ホットライン、心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY
思考
基本:全ては、星の囁きのままに
01:この指輪で何か面白いことをしたい
02:星が告げる運命、あなたはどう抗うのかしらね、一ノ瀬宝太郎?
参戦時期:45話後
備考
【支給品紹介】
【裏鬼道の髑髏呪具@鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎】
夏油傑に支給。裏鬼道の長田幻治が所有するしゃれこうべの形をした呪具
「怨」の一言で呪具から狂骨を呼び出し、使役することが出来る。
ただし呪具事態が狂骨の制御を兼ねているため、これを破壊されれば狂骨は制御不能となる。
【心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY】
冥黒王ガエリヤに支給。アマラリルクのリーダースティグマが自分の心から生み出す黒い指輪。
装着者の心をエネルギー源として超人的な力や黒い結晶化などの力を与えるもの、装着者の心の闇を強制的に引き出して暴走させる危険な特性を持つ。
基本的に指輪もしくは装着者の肉体を破壊することでしか除去手段は存在しない。
「支給品にお前がいたのは幸いだった」
ヒスタリオが呟くその先には、幽霊のようなモンスターがいた。
そのモンスターは「ドクター・ギリリ」。ヒスタリオの肉体改造用のモンスターである。
「おまえにはライオのようなオレの気に入った人間の改造をしてもらう」
「かしこまりました!」
間髪入れず返答したギリリにヒスタリオはうなずく。
「ビィトのやつに借りを返すのは当然として……それよりオレが欲しいのは仲間だ……」
【ヒスタリオ@冒険王ビィト】
状態:正常、負傷(極大)、疲労(大)、蝙蝠状態
服装:いつもの恰好
装備:仕込み刀リュート
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:優勝し、元の世界に戻る。
01:あの時のライオやビィトのような人間を見つけ、改造し仲間にする
参戦時期:ボルディックアックスの異空間に閉じ込められた後
備考:バグスターウイルスにより、普通に死ぬようになっています。
「何をやっているのだ、私は……。新参者だろうと七ッ星は七ッ星……。最後に八輝星という勝者となって彼らを見下せばそれでいいのだ……。BE COOL…BE COOL…!」
息が切れ、額の角も引っ込んだグリニデがようやく落ち着いた。
「さて……都合よく私の忠誠の腕輪が支給されているようだし、知性をもって優勝するとしようか……」
【グリニデ@冒険王ビィト】
状態:正常
服装:外皮をまとった状態
装備:忠誠の腕輪×3
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:優勝し、元の世界に戻る。
01:モンスターを作るための拠点を作りたい。
02:そのためにこれはと見込んだ相手に腕輪をはめ支配下に置く。
参戦時期:死亡後
【支給品解説】
・階級ワッペン@ドラえもん
ガロニュートに支給。旧日本陸軍の階級章をモデルにした17種類(大将から二等兵まで)、
階級が下のワッペンを貼られた者は、階級が上のワッペンが貼ってある者に絶対に逆らえない。
ワッペンを剥がせるのは大将のみ。
・ドクター・ギリリ@冒険王ビィト
ヒスタリオに支給。拷問ネジというモンスターを医療用に改造された。
治療や肉体改造をメインとした仕事をする。
・忠誠の腕輪@冒険王ビィト
グリニデに支給。グリニデに逆らえば彼の冥力に応じて猛毒が腕輪から注入されるようになっている。
また、このロワでは天力に類似するほかの異能力に対しても反応して毒が注入される。
投下を終了します
◆7q1uGo5q1A氏の投下に割り込む形になってしまい申し訳ございませんでした
投下終了です。割り込んでしまって申し訳ありませんでした。
ヒスタリオの状態表間違えました。
【ヒスタリオ@冒険王ビィト】
状態:正常
服装:いつもの恰好
装備:仕込み刀リュート
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:優勝し、元の世界に戻る。
01:あの時のライオやビィトのような人間を見つけ、改造し仲間にする
参戦時期:ボルディックアックスの異空間に閉じ込められた後
備考:バグスターウイルスにより、普通に死ぬようになっています。
投下します
「ふざけるな」
やっとの思いで倒したはずの元凶が再び別の身体に乗り移り、このようなふざけた真似をしたという事実に、乙骨憂太は怒りを隠せなかった。
羂索ーー1000年前より暗躍し東京渋谷で死滅回遊と言うゲームを開いた、呪詛師。
かつて、乙骨の恩人たる先生の、その友人だった男の死体に乗り移った。その時は、高羽の術式のお陰で不意を打つ形で倒した、そのはずだ。
「乙骨さん……」
「……大丈夫だよ、紅葉山さん。僕は平常です」
今にも震えだしそうな感情を抑えきれない乙骨を、宥めるかのように声を掛けたのは紅葉山輝と言う少女。
本来ならばヒーロー・SHY(シャイ)として人々を救う立場であるが、ヒーローとして戦う力である転身輪は今の彼女は持っていない。
だからといって困っている人は放って置けない、それこそ紅葉山輝としても譲れない信念。
「……紅葉山さんは、あの梔子ユメさんという人も助けたいんですよね」
「はい」
紅葉山輝から溢れた言葉は、乗っ取られた身体の持ち主を助けたいという気持ちから。
彼女がどのような人物だったのかは、紅葉山輝も乙骨憂太も知らない。
でも、それが助けない理由にはならない。
誰かが「余計なお世話はヒーローの本質」と言っていたが、紅葉山輝もまたヒーローの一人。
助けることに、理由はいらない。
「……梔子ユメさんの事は、貴女に任せます。あくまで僕が倒さないといけないのは、あの羂索の本体です」
「……気を使ってくれて、ありがとうございます」
乙骨憂太は、敢えてそう告げた。
羂索が梔子ユメの身体を乗っ取った時点で、梔子ユメは既に手遅れなのだろう。
それでもせめて助けたいというヒーローの気持ち、乙骨憂太はそれ以上野暮なことを言わないとした。
おそらく、手遅れなことぐらい、紅葉山輝も本当は分かっているだろうから。
(羂索。ーーお前は必ず僕がもう一度殺す)
渋谷事変、死滅回遊から続く悪意の宿業。
再びそれを絶たんがため、現代の異能と言われた呪術師は立ち上がる。
【乙骨憂太@呪術廻戦】
状態:健康、羂索に対しての怒り
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:羂索の企みを阻止する
01:羂索、お前は絶対に許さない
02:
参戦時期:羂索撃破後
備考
※リカの顕現及び領域展開発動には令呪一画が必要となります
【紅葉山輝@SHY-シャイ-】
状態:健康
服装:普段着
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。ヒーローとして出来れば誰かを助けたい
01:梔子ユメさんを助けたい。……手遅れなのかも知れないのは分かってる
02:乙骨さんが優しい人で助かります。
参戦時期:76話終了後
備考
投下を終了します
投下します
「へえ〜、ロゼさんとお兄さんでナナシの傭兵なんてやってるんか〜。
まるでハリウッド映画みたいで格好ええなあ〜」
「俺の方こそビックリしたよ。サクラダイトが存在しなくて魔法が存在するなんて。
つまりはやてちゃんは魔法少女ってわけだ」
「いやいや私なんて助けてもらっただけのほぼ素人ですよ〜。すごい魔法少女なんはなのはちゃんとかフェイトちゃんたちやから」
ゲーム開始後、私は自前の持ち物や支給品を確認した直後に日本人の車椅子の少女、八神はやてと出会った。
こんな異様なゲームを開く時点で普通でないのはわかりきったことだったが、自分の足で歩けない少女まで参加者に仕立てる羂索たちの非道さには腸が煮えくり返る。
どう名乗るか一瞬迷ったものの、雑貨扱いされていたためかロゼとして活動するためのカツラやボイスチェンジャーが没収されていなかったので、しばらくロゼで通すことにした。
彼らが私の素性をどこまで掴んでいるかは名簿が公開された時にわかるだろう。もし本名が記載されていたら……その時ははやてちゃんに正直に話して謝るしかない。
考えねばならないことは他にも山ほどある。
さっき羂索たちに消されたのは先日のダモクレス攻略のために危険を冒して手助けに来てくれたニーナ・アインシュタインだった。
しかし……明らかに私の知る彼女よりも若かった。消された方の彼女は服装からして私と同年代と見て良い。
何よりおかしいのは白服の青年、悪逆皇帝と言われたルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。……私の叔父にあたる人だ。
私と同じギアスを持っていたことにも驚いたが、そもそも叔父様は何年も前にゼロに討たれて亡くなっている。
私にギアスを授けたあの人にも似すぎているが……それについては情報が足りないので一旦保留する。
世の中には同一人物としか思えないほど瓜二つな人間だっている。それこそ私にとって最も身近なところにも、だ。
ひとまず幸いなのはいざという時の逃走手段が複数あるということだ。
一つは私のナイトメアであるアルテミスのキー。空へ逃げられれば大抵の相手は撒ける。
ネックは非武装であることと、はやてちゃんを落とさないよう気をつけなければならないことか。
もう一つの方は……ちょっと頭の悪そうなネーミングといい都合の良すぎる性能といい出来ることなら頼りたくはない。
そもそも主催が用意したアイテムの説明書自体全てを鵜呑みにするのは危険な気がする。どんなデメリットが隠されているかわかったものじゃない。
ひとまずは安全な場所を探し、名簿の内容次第で立ち回りを変えることになる。
ロゼでいるべきか、サクヤに戻るべきかはその時に決めるしかない。
【ロゼ(皇サクヤ)@コードギアス 奪還のロゼ】
状態:正常
服装:ロゼの服装(カツラ、ボイスチェンジャー含む)
装備:Zi-アルテミスの起動鍵@コードギアス 奪還のロゼ、ぴょんぴょんワープくんTo LOVEる -とらぶる-
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
令呪:残り三画
思考
基本:仲間を集めて主催者を打倒する。それが相手にとって織り込み済みであっても。
01:自分とはやての安全を確保できる拠点を探しつつ、名簿の内容次第で立ち回りを決める。
02:手に負えない参加者に対しては逃げの一手。
03:消されたニーナと悪逆皇帝の姿のルルーシュが気になるが情報が足りないので一旦保留。
04:叔父様のせいでギアスが使いにくい……。
参戦時期:6話終了後〜7話開始までの間。
備考
※絶対遵守のギアスには制限が掛けられています。
少なくとも自害の命令は令呪なしには発動できないようです。
※カツラとボイスチェンジャーは雑貨扱いでランダムアイテムにカウントされません。
【八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's】
状態:自立歩行不可(デフォルト)
服装:普段着
装備:はやての車椅子@魔法少女リリカルなのはA's
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
令呪:残り三画
思考
基本:殺し合いはあかんよ。乗らん乗らん。
00:最初に会ったのがロゼさんで良かったわあ。
01:私以外誰も巻き込まれてないとええんやけど……。
02:こんな大変なことになっとったら今頃管理局が動いてくれてるんとちゃうかな。
参戦時期:闇の書事件終了後
備考
※車椅子は雑貨扱いでランダムアイテムにはカウントされません。
【支給品解説】
・Zi-アルテミスの起動鍵@コードギアス 奪還のロゼ
黒の騎士団を経由して七煌星団に届けられたナイトメアフレーム。
武装は搭載しておらず、シトゥンペバリア内部での飛行能力確保に特化している。
従来のナイトメアフレームより大型である特性がパワードスーツ化しても残っており、2.5メートルサイズとなっている。
Zi-アポロとの合体機構を有する。
・ぴょんぴょんワープくんTo LOVEる -とらぶる-
ララが開発した発明品の一つ。
短距離の生体ワープを可能とするが行き先を指定できず、衣服がワープできないという欠陥がある。
後に様々な改良型が作られていったが、今回支給されたのは初期型である。
また衣服がワープできないという欠陥については説明書に記載されていない。
投下終了です
投下します
(いやよりによってそのタイミングぅぅぅぅぅ!?)
【坂田銀時@銀魂】
状態:新八のメガネ
服装:なし
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:いやちょっとまってぇぇぇぇ!
参戦時期:新八のメガネと身体が入れ替わった時
備考
投下を終了します
投下します
美しい銀髪が朝焼けを待ち紫色に染まる空に靡く。
風流人でもいたら思わず詩にしそうな場面に思えるかもしれないが、そんな上品な場面ではない。
銀髪の女子高生、アリサ・ミハイロヴナ・九条は今、スカートなのも構わず全力疾走している。
背後に迫るダークグリーンのパワードスーツに追いかけられているからである。
「さっきから言ってるじゃないですか、荷物を全部置いて行ってくれれば怖い思いはさせないって」
その名もGAT-X103AP ヴェルデバスターガンダム。
地球連合軍のアクタイオン・プロジェクトにより再生産されたバスターガンダムを改造した機体……をパワードスーツに落とし込んだものである。
多目的六連装ミサイルポットやガンランチャーに始まり、高エネルギービーム砲、連結可能な二丁のバヨネット装備型ビームライフルなど、単騎で攻城戦でもするかのような火器満載の武装をもってすれば生身のアリサなど一撃で仕留めることもできるが、性能テストと武装の使用感の確認も兼ねてなのか、ヴェルデバスターは何度も警告を挟みながらイチイチ違う武器でアリサを脅すように銃撃してくる。
「顔も見せない相手を信用できないわ!
それに、これだけは、これだけは絶対に渡せない!」
眼には涙を浮かべ、逃げることに精一杯のアリサだが、恐らくパワードスーツの下で加虐心たっぷりの笑みを浮かべているであろう相手に屈するつもりはなかった。
胸元に抱きかかえた黒いアタッシュケースを、子を守る母のように抱きしめ、ヴェルデバスターを睨みつける。
アタッシュケースには
『GD Gamer Driver Software』
と書かれており、中身は11本のゲームカセットが入っている。
仮面ライダーエグゼイドの世界において仮面ライダーとバグスター怪人が死力を尽くして争奪戦を繰り広げたアイテムにして、バグスターウイルスにまつわる災いの元凶、プロトガシャットである。
本当だったら捨ててしまいたいところだが、これをゲームにのっていない技術者、特に医者の誰かや羂索の言っていた仮面ライダーエグゼイドなる人物に託すことが出来れば、このゲームを根底から覆せるかもしれない。
そんなババ札、呪われた宝箱を渡されたアリサは最初戦慄したが、羂索があげていた勝利条件の中に運営の叛逆があったことを思い出した。
(私への、ううん。私たちへの挑戦状という訳ね)
だから決めた。
こんな理不尽なゲームに屈してやらないと。
仮に掌の上だとしても、人間をゲームの駒と侮ったことを後悔させてやろうと。
「そんなに大事そうなものなら、なおさらほしくなっちゃいますね」
そう言ってヴェルデバスター、八神拓也はバヨネッタを構え、自アリサとの距離を詰めていく。
(何が起きるか分からないけど、使うしか……)
どうにか遮蔽物に隠れてガシャットを起動しようと思案したアリサの後方から銃声が響く。
ヴェルデバスターの装甲に紫色のビームが当たって弾けた。
「誰だ!?」
「黙れ、武器ももたない者を追い立てる下衆」
「な!?」
現れたのは茶色いくせっ毛の若い男だった。
どこかの民族衣装のような服を着ており、手にはゲームパットを模した妙な武器が握られている。
「貴様のような者が神聖なる戦場に立つ資格はない。
どこへなりともいって無為な最期の50時間を過ごせ」
「戦う資格がない?
ははは、はっはっはhっはっはっ!
どいつもこいつも舐めやがって!
そんなに俺が弱いってのかよ!
そんなに見下すんならお前は強いのかよぉおおおお!」
絶対に敗北を突きつけたい相手が居た。
会った事もない男だったが、何度も何度も比べられて、蔑まれる理由となっていた男だった。
そして横行一年生にして、その男と戦えるかもしれない瞬間がやってきた。
だが奴は、綾小路清隆は対峙すらしようとすらしなかった。
その果てに誰と戦っているのだかわからないまま、負けた。
撒かれて、敗けた。
「ふざけるなぁあああああああ!」
ミサイルを、ビームを、内蔵されたあらゆる火器をくせ毛の男に乱射する。
資格がない?誰が決めた。
卑怯者?そういうゲームだろう。
神聖なる戦い?そんな御大層なものがあるならばしてみたかった。
あらゆる負の感情を載せて火器を放ち続ける。
地形が変わるのもエネルギーの欠乏でフェイズシフトダウンを起こすのも気にしない。
ただ目の前の敵を亡き者にしたい。
「酷い駄々だな」
不意に背後から声が聞こえた。
殺気のくせ毛の男の声だ。
いつ背後に?と振り向くと、そこに立っていたのは深紅の龍を人型にしたような、怪人だった。
「そうやって醜い貴様自身を観ようとしなかったから、戦うまでもなく敗れるのだ」
背中から腹部にかけて鈍痛が走る。
見ると、怪人、グレングラファイトバグスターの双刃刀が自分の背中を刺し貫いていた。
「紅蓮爆龍剣」
剣からほとばしるエネルギーが機体の中で暴れ狂い八神拓也の肉体を崩壊させた。
【八神拓也@ようこそ実力至上主義の教室へ 敗北】
「女、貴様が戦士としてこのゲームを戦い続けると言うのならば……次こそ敵として相対しよう。
楽しみに待っているぞ」
と、焼け跡の中からリュックを引っ掴むと去って行った。
「……」
別に彼は自分を助けたつもりなどないのだろう。
ただ戦士としてどうしても許せないことをするあの機体の中身に腹が立って仕方なかっただけに違いない。
だけど、いやだから
「Спасибо」
命の恩人への感謝は、ロシア語でボソッと呟くにとどめた。
【グラファイト@仮面ライダーエグゼイド】
状態:正常、アリサへの期待(中)、怪人態(レベルオーバー)
服装:いつもの服装
装備:ガシャコンバグヴァイザー@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
八神のリュック
思考
基本:敵キャラとして戦う。
00:神聖なる戦場に立つ資格のない者たちは排除する。
01:この俺に敵キャラを全うさせてくれる戦士を探す。
02:女(アリサ)、お前の眼は戦士の眼だ。
次に会う時は敵として立ちはだかってくれること期待する。
参戦時期:ゲムデウスウイルスに適合した後
備考
【アリサ・ミハイロヴナ・九条】
状態:疲労(大)、決意(大)
服装:私服
装備:ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド
11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
思考
基本:こんなゲーム屈しない。
00:プロトガシャットをレジスターを解析できる技術を持った人か、仮面ライダーエグゼイドに託す。
01:Спасибо、赤い戦士さん
02:先を急ぎたいけど、少し体力を回復させないと。
参戦時期:少なくともアニメ一期のどこか
備考
※ヴェルデバスターガンダムの起動鍵は爆風で飛んで来たのを拾いました。
投下終了です。
タイトルは 最後にロシア語でボソッと感謝するバトロワのアーリャさん です
申し訳ありません、拙作「innocent starter」ですが、レッドの状態表に誤りがありましたので修正します。
【レッド@SaGa Frontier(サガフロンティア)】
状態:アルカイザーに変身、ダメージ(中)、”闇檻”による鉄棺への閉じ込め(圧搾中)
服装:アルカイザーのコスチューム
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして殺し合いを止める
01:ノワルをどうにかしないと……!
02:ぐおおおおお潰されるっ!!
参戦時期:本編終了後〜アルカールにヒーローの資格を剥奪される前
備考
投下します
「黒鋼スパナ、今度こそ貴様を倒す!!」
【鉛崎ボルト@仮面ライダーガッチャード】
状態:健康
服装:私服
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:生き残る 黒鋼スパナを倒す
01:ガッチャ―ドがいるんだ。お前がいないはずがない!黒鋼スパナ!!!
参戦時期:ガッチャ―ド46話以降(ボルト本人は6話のみの登場だが、消された記憶が復元されているため)
備考 ※本編45〜46話のガエリヤの影響で消去された記憶は復元されています
投下終了します
続けてもう一作投下させていただきます
これは、人間(ヒト)が願いを叶える物語だ。
◆◇◆◇◆
コンビニエンスストアらしき建物にもたれ掛かる形で、ふたりの若者が並んで佇んでいた。
その片割れの青年は、色素の薄い白い肌に中性的で細い体躯をしていた。
支給品である何の変哲もない刀を差した彼は缶コーヒー(同じく支給品だ。微糖だった。)を飲み干すと、隣でうつむく少女に視線を落とした。
「……落ち着いたか?」
「少しだけ。」
声は震えて、酷くうわずっていた。少し落ち着いたというよりも、ようやく喋れるまで回復したと言ったほうが青年には適切に思えた。
それでも、意志のある会話ができる状態になってくれたことは僥倖と言う他ない。
30分ほど前に青年が少女と出会った時、少女はひどく錯乱し会話など成り立たなかったからだ。
「改めて自己紹介をしよう。名前は自己を定義する重要な要素だと教わった。
俺はジーク。少なくとも、君の味方だと思う。」
努めて穏やかに、ゆっくりと話すことを意識してジークは名乗った。
少女はこくりと頷き。ジークに顔を向ける。
錯乱して泣きわめく彼女を必死で抑え込み、その時に殴られた後で頬と肩が酷く痛む。
それでも、青年が少女に怒りの感情を向けてはいない。
自分が彼女でも、きっと同じように困惑し、錯乱し、暴走したことだろう。
「私の名前は……もう知っていますよね。」
「そうだな。この場にいる全員が知っているはずだ。
……”梔子ユメ”。それがあなたの名前だろう?」
見慣れない制服を着て、緑色の髪を床につくほど伸ばしたグラマラスな少女。
額に縫い目のない少女は、行き場のない怒りをぶつけるように両手をぎゅっと握りしめる。
封の開いていない缶コーヒーが音を立ててひしゃげ、僅かに漏れたコーヒーが黒い手袋を濡らしていた。
◆◇◆◇◆
ここの梔子ユメには、欠けているものがあった。
殺し合いの場に来る前数時間の記憶がない。
自分の甘い考えのせいで後輩を怒らせてしまったこと。砂漠に向かったこと。
彼女の記憶はそこまでだ。
少なくとも、死ぬほど苦しんだ記憶もなければ死んだような記憶もない。
もちろん、羂索という人物に体を奪われた記憶もない。
『自分の姿をした何者か』の手で殺し合いに巻き込まれる。
自分の想像力の外側にある異常事態に、梔子ユメの余裕は消し飛んだ。
まず襲ってきたのは、困惑。
何が起こっているのか分からない。どうなっているのか分からない。
ゲームエリアに放り出され、だだっ広い砂漠のど真ん中でさまよう中、困惑は疑問に変わっていく。
頭に縫い目が入り、歯の生えた不気味な脳を収納する箱となった自分の姿。
・・・・・
あれは私だ。
・・・・・・・・・・・
そして、あの私はもう死んでいる。
確信といってよかった。どす黒い笑いを浮かべ2人の人間をあっさり消し去った彼女は。私の死体を使っている。
自分が死んだという事実そのものは、梔子ユメに大きな影響は与えていない。
当然人並みにショックでは受けるだろう。自分の死を理解できず錯乱の1つもするかもしれない。心残りももちろんある。
だが。「あなたはドジ踏んで死にました」と言われたら。梔子ユメは案外あっさり納得できただろう。
梔子ユメは楽観的なところが多い人物だが、だからこその余裕というものを持っていた。
それは紛れもなく、梔子ユメの強みでもあった。
・・・・・・・・・・
ユメが疑問に思った部分は、死んだ自分が目の前にいて、ここに生きている自分がいる。
私が2人いる。ただでさえおかしな事態の上に、その片方は死んでいるのだ。
目の前に死体があるというのは異常事態だ。見知らぬ他人のものでも恐怖と困惑は禁じ得ない。
もしそれが、自分自身の死体ならば恐怖は他人の死体の比ではないだろう。
梔子ユメの場合、その死体は名乗っていたし、笑っていたし、デスゲームの管理者の座についていた。
自分は死んだのか?生きているのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
死んだとしたら、ここに立っている自分はなんだ?
梔子ユメの余裕は、すっかり消し飛んでいた。
ジークと出会ったのは、混乱をしていた矢先のことだった。
◆◇◆◇◆
「ふむ。」
梔子ユメがぽつりぽつりと語りだした苦悩を前に、ジークは顎に手を当て思い悩む。
梔子ユメの錯乱状態は大きく改善傾向にある。
だがそれは彼女が現実を受け入れたからではなく、慣れてしまったことによるものだ。
梔子ユメの表情は変わらず暗い。
キヴォトスでいた陽気で寛大な彼女を知る者が見たら、その全員が何かあったのだと確信できるほどだ。
どう話したものか。
この場に”黒”のライダーがいてくれればなとジークは思う。
陽気で真摯な彼なら、梔子ユメの悩みをうんうんと聞き、前に進むための答えを出してくれるだろう。
彼なら何というだろうか。
そう考えると、いうべき言葉は案外あっさりと思い浮かんだ。
「君はどうしたい。」
ジークの言葉にユメは「ふぇ?」と目を丸くした。
「梔子ユメが生きているのか死んでいるのか、俺には判断はできない。
それを知るのはこの場に君の知り合いがいない限りは羂索だけだろうし。仮にいたとしても正確な情報が得られる確証はない。」
「どうして?」
「君とは時間軸が異なる可能性があるからだ。
端的に言えば、その君の知り合いが”梔子ユメが死んだ後の世界”から来ていれば、ここにいる君の生死にかかわらずその人物にとって梔子ユメとは死んだ存在だ。」
並行世界。ジークの世界の表現を借りれば第二魔法というのが近いだろうか。
ジークの世界ではその実証は既にされていた。
世界を超えることが可能な羂索たちだ。時間遡行(レイシフト)は造作もないというのがジークの考えだ。
下手をすれば、時間軸が異なる同じ参加者が複数いる可能性もある。
「ということは、羂索が使っている私って。未来から来てるってコト?」
「可能性としてはあるだろう。
だから、そうだな。
君の姿をした羂索が君とは無関係とは言い切れないが、ここで生きる君が気にするには少々迂遠だろう。
だから今の君が優先すべきは『今この場の君がなにをしたいか』だ。
俺の友人ならば、きっとそう言うだろう。」
真剣なまなざしを向けるジークを前に、ユメは「ほへ〜」と気の抜けたように返事を返した。
正直、ジークの話は半分も理解できていなかった。
だが、彼なりにユメの状況を考え、言葉を選んでくれていたことは伝わった。
さっきまでの自分の悩みがとても小さいものに思えた。
「私がしたいこと……」
当然、まず思い浮かぶのはアビドスの復興だ。
借金を返し、砂漠を立て直し、アビドス高校にたくさんの生徒が来てほしい。
でもそのために、ジークを含めたくさんの人を殺さなきゃならないというのなら。それは違うだろう。
何かを奪って、人を苦しめて。その先にある勝利では小鳥遊ホシノに胸を張れない。
「殺し合いを止めたい。
私の姿をしてたくさんの人たちを巻き込んだ羂索は許せない。」
梔子ユメは善人だ。
人を助けることに理由を求めない。バカと言われることもあるが根っからのお人よしだ。
そんな彼女にとって、死体とはいえ自分の姿をした相手がする行いは許せない。
「それに……」
ジークが穏やかに見つめる前で、梔子ユメは続けた。
「自分が死ぬかもしれないってことを、私はこれまで考えてこなかった。
死んだらどうなるなんて、考えすらしなかった。
羂索の姿を見て初めて、自分も死ぬんだって分かった。
今の私は、前よりちょっとだけ死にたくないって思ってる。」
死にたくない。
バトルロワイヤルにいる人間のほぼ全員が抱く、根源的な願い。
死が縁遠いキヴォトスに住む梔子ユメもその願いは抱いていたが。
願いの大きさを自覚したのは初めてのことだった。
「我がままかな?」
暗い顔をした問いかけに、ジークは首を横に振る。
「分かるとも、それは俺も抱いた願いだ。」
ジークは人造人間だ。
聖杯戦争の魔力供給のためだけに生み出された十把一絡げの人造生命。
その1つが意思を得て。紆余曲折あり聖杯戦争の勝利にまで届いたのが、今の彼であるが。
その始まりにあった思いは、「生きたい」というただそれだけの願いだった。
そういう意味では、今のユメとよく似ていた。
「俺も死にたくなかった。生きたかった。
魔力の供給源として消費されるまま終わりたくなくて、必死に足掻いた。
英雄に心臓を与えられ、英雄に命を与えられ、令呪を与えられ。
考えて、行動して、足掻いて、戦った。」
「そういえば、ジークさんの令呪って黒いですよね?」
「これは元々俺が持っていたものだ。
既に使い切っていたはずなのだが、3画全て補充されているな。
恐らく三画全て使用できる。俺が聖杯戦争の参加者として判断されたんだろう。」
竜の顎のような形をした黒い令呪。
それはジークが、生きるために足掻いたからこそ得られたものだ。
それを見つめるジークの目は、どこか誇らしげに見えた。
「ユメのように学校に行っていたわけではないし、可愛い後輩がいたわけではないが。悪い人生ではなかった。
死にたくない。その願いに突き動かされていなければ俺の人生は後悔さえ出来ずに終わっていただろう。」
「……ジークさん。」
目の前の人生は自分よりずっと過酷な戦いを生きてきたのではないか。
そのことをおくびにも出さず、優劣をつけることもなく。
ジークはユメの願いを肯定する。
彼を救った英雄たちならきっと同じことをする。微かな笑みを浮かべてジークは言った。
「生きようと願ったのなら、死にたくないと訴えたのなら、やってみればいい。
俺の友人がかつて俺に言った言葉だ。
他者を殺してでも願いを叶えようというのならその時は止めるが、ユメがそのような人間でないことはここまでの会話で分かる。」
空っぽのゴミ箱にコーヒー缶を投げ捨てる。
箱がカランと小気味いい音をたてる。たったそれだけのことが随分幸せなことのように思えた。
「羂索に会うにしろ、仲間を集めるにしろ。暫くは同行しよう。
似たような殺し合いを経験した者として、被害を少なくこの戦いを終わらせたい。それが俺の目的だ。
俺と君の目的は共通する点が多い。」
「いいの!?」
「言ったろう。俺は君の味方だ。」
ジークのルビーのような瞳がにこりと微笑む。
屈託のない純粋な笑顔を前に、「はうっ」と小動物のような声をあげて、ユメの顔が少し赤らんだ。
ユメもジークに続き、潰れた缶の中のコーヒーを一気に飲み干し、ごみ箱の中に投げ捨てた。
微糖とはいえ香ばしい苦みが強い。
好みとはかけ離れた味だったが、そのの刺激が今はとても心地よかった。
「夜明けが近い。そろそろ行こう。」
ジークの言葉に顔をあげ、梔子ユメは空を見上げた。
夜明け前――彼者誰時の空は、誰かが巨大なキャンバスに描いたかのような、オレンジと紫がオーロラのように彩られていて。
殺し合いの場に似つかわしくない美しさに、ユメは目を奪われた。
「綺麗……」
思わず出た言葉に、ユメはまたしも顔を赤らめる。
その光景を目にしたジークも、美しい空を前に笑みをこぼすのだった。
【ジーク@Fate/Apocrypha】
状態:健康
服装:本編の服装
装備:浅打@BLEACH
令呪:残り三画(竜告令呪)
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:可能な限り被害を少なくゲームを終了させる
01:大聖杯はどうなっているのだろうか...
02:ユメと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
参戦時期:本編終了後
備考 ※FGOイベントの記憶も有しています
※時系列的には邪龍の姿が正しいですが、ホムンクルスの姿をしています。本人は羂索の制約によるものだと考えています
【梔子ユメ@ブルーアーカイブ】
状態:健康 困惑(小)
服装:アビドス高校の制服
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:羂索の目的を知る キヴォトスの人間がほかにいないか探す
01:私の姿をした。羂索……
02:ジークと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
参戦時期:行方不明になった後
備考 ※ゲームに参加する前後の記憶が朧気です。 少なくとも自分が死んだような記憶はないです
【支給品一覧】
浅打@BLEACH
・ジークに支給
死神が扱う斬魄刀と呼ばれる刀のうち、原型に位置する刀
死神たちはこの刀を常に帯刀し寝食を共にすることで、己の斬魄刀を磨き上げる
缶コーヒー@現実
・ジークに支給
微糖の缶コーヒー 6本セット それ以上のものではない。味も普通だが女子高生には少し苦い
既に2本は使用済み
投下終了します
投下します
室内に漂う香辛料の匂い。
揃ってテーブルに着いた衛宮士郎と佐倉杏子はシミジミと思った。
【何でこんな事になってるんだ】
『回想シーン突入』
◆◆◆
「やめろ!やめてくれ!さやか!!」
佐倉杏子は混乱の極みに在った。
何故か、死んだ筈の自分が生きていて。
何故か、魔女になって、自分と一緒に死んだ筈の美樹さやかが、魔法少女の姿で人を殺していて。
そして今現在自分を殺そうとしている。
乾き始めた為に、赤黒く変色し始めた返り血で全身を汚したまま、無表情で淡々と自分を殺しにくるさやかの姿は、只々不気味で悍ましかった。
必死の説得も意味を為さず、遂に決意して、柄を伸ばして多節槍とし、さやかを絡め取って拘束した。
「一体。どうなってやがるんだよ!答えろよ!さやか!!」
涙すら流して放たれた杏子の問い掛け。正義の味方になると言っていたさやかが、魔女になって死んだ筈のさやかが、生きていて、殺し合いに乗っていて、そして既に人を殺して。
何もかもが分からなかった。救いなんて何処にも無かった。
「黙ってないで答えろよ!何か言えよ!!さやか!!」
血を吐く様な杏子の声に、さやかは黙して答えない。
暫く小首を傾げて考え込んだ末に、さやかは漸く言葉を紡いだ。
杏子を絶望させる一言を。
「さやかって、誰?」
「…………………は?」
何を言われたのか、佐倉杏子には理解出来なかった。
眼の前に居るのは美樹さやかだ。佐倉杏子と相似であり、相反する魔法少女だ。それが、何を言っている?
涙が溢れる。全身が熱病に罹ったかの様に震え出す。
哀しみが、怒りが、言語化出来ない激情が、佐倉杏子の胸の内で渦を巻いた。
「何言って────」
杏子の背中から胸へと不意に生じた灼熱の痛覚。
「あ……?」
眼線を落とすと、胸元から刀の切先が生えていた。
「“コレ”を制圧するとは中々の使い手の様だが、装束を見るに、君も“魔法少女”というものかね」
杏子の後ろから忍び寄り、背後からの一刺しを加えた男が、突き刺した日本刀捻りを加え、傷口を抉った。
「グアッ…!」
「知り合いの様ではあるし…。ふむ、殺した後は“アレ”と繋げてあげよう。何、例には及ばんよ」
「ガハッ…さやかを……“アレ”なんて…呼ぶんじゃねぇっ!」
さやかの身に何が有ったのかは、全く分からないが、後ろの男が関わっている事は確実。その事実が杏子を激昂させた。
だが、杏子に出来る事は何も無い。槍はさやかの拘束に使ってしまった。後ろから貫かれている状態で、反撃する手段は無い。
「“アレ”は骸だ。人格も記憶も精神も魂も無い。只の“物”だよ」
「ふざけんな!!」
怒りが苦痛を忘れさせ、傷ついた身体を無理矢理駆動させる。
前に飛ぶ事で刀身をぬくと、半回転して男に向き直り、渾身の拳打を放つ。
杏子はこの時、男が長く尖った耳を持つ、所謂エルフだと気が付いた。
嘲笑を浮かべながら躱した男へと、二撃、三撃と拳を繰り出すも、全て届かず、男の足払いを受けて杏子は地面に転がった。
「君も中々に興味深い“素材”だ。死体は“アレ”と同じ様にバイラリナとするとしよう」
邪悪な笑みを浮かべたエルフは、手にした鋸状の刃を持つ日本刀を振り上げて、振り下ろし────鋼の打ち合う凄絶な響き。
「どういう経緯かは知らないけれど。取り敢えず止めさせて貰うぞ」
乱入して来た黒白の双剣を携えた一人の少年。名は衛宮士郎。
士郎は双剣を巧みに操り、芸術の域に達した殺人の業を振るうエルフと渡り合う。
共に長い刻を費やして身体に刻み込んだ技巧を惜し気も無く振るい、一振りの刀と二振りの剣が、刃鳴を響かせ、火花を散らすその様は、洗練の極みにある舞踏の様で、佐倉杏子は傷の痛みも忘れて見入っていた。
切り結ぶ刃の響きは、数度か或いは数十か。士郎を手強しと見たエルフは、技巧でも策でも無く、奸智に依って士郎を殺そうと決意した。
茫然と士郎とエルフの剣舞に見入っていた杏子の脚を、鋭い刃物が貫いた。
いつの間にか拘束を解いたさやかに脚を貫かれ、不意の痛みに叫んだ杏子に気を取られた士郎へと、エルフの鋸刃が襲い掛かり、その身を斬り裂いた。
傷口から炎と鮮血を噴き上げて仰反る士郎へと、血笑浮かべたエルフの追撃。瞬く間に急所を外して身体の10箇所以上を斬り裂かれた士郎が、全身から血と黒煙を噴き上げて倒れ伏す。
エルフは士郎を蹴り飛ばして、生きている事を確認すると、杏子へと歩み寄った。
助けに入った士郎の前で、助けようとした杏子を殺す。悪意に満ちた惨殺劇は、然して遂行される事は無く。
「私の前で、これ以上の無法を働かせる訳にはいかんな」
凛烈と響く女の声。
割って入ったのは、長い金髪を靡かせた、赤い軍服の女。
優雅と強さとを感じさせる紅い瞳が、真っ直ぐエルフを睨み据えていた。
「異なる世界の者で、こうまで邪悪な者は初めてだな…。栄光ある我が女王陛下と、ロイヤルネイビーの名の下に、無法を働く輩を処断する」
女の処刑宣告と共に現れる、雷の威容。甲冑を纏った巨大な雷の武人が、女の背後に現れる。
「武蔵の艤装だが…何、使いこなしてみせるさ」
雷の武人が、その威容に相応しい、巨大な刀を振り上げる。
一目で不利を悟ったのだろう。エルフが女へと杏子を蹴り飛ばし、女が受け止めた隙に脱兎の如く駆け出した。美樹さやかも後に続く。
「これでは撃てんな」
女は、エルフが士郎と女の位置が、直線上に位置する様に駆けて行った事を理解していた。
迂闊に攻撃すれば、士郎が巻き添えになって死ぬ。
「勝利は逃したが、諸君らの身の無事は取ることが出来たな」
◆◆◆
近くに有った中華料理屋で、三人は傷の手当てと、自己紹介とを行なった。
傷の手当ての方は、士郎の支給品の鞘を持っているだけで終わったが。
最初に何方が使うか士郎と杏子が揉めに揉め、結局重傷の士郎が先に傷を癒やし、杏子が続いた。
その間、最後に現れた女。キングジョージ5世と名乗った女は、食事を容易して来ると言って、厨房に行ったきりだった。
その時、何故か士郎が矢鱈と微妙な顔をしていたのはどうでも良い話。
そして今に至る。
「……………」
「……………」
テーブルの上に供された麻婆豆腐を前に、凄まじく微妙な顔になっている士郎を他所に、杏子はひたすらに食べ続けていた。
「美味い。辛いけど美味い!」
「シロウ、どうしたのだ。食べないのか?」
「いや…ウン…まぁ…その」
「東煌の子から習ったこの麻婆豆腐。別に美味しく作っても構わんだろう」
士郎が益々微妙な顔になったのを、杏子は変わった奴を見る目で見ていた。
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ(テレビ版)】
状態:正常、疲労(小) ソウルジェムの濁り(微)
服装:いつもの服。
装備:無し
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本: さやかをゾンビにした奴は許さねぇ
01:士郎やKGⅤと一緒に行動する
02:この麻婆豆腐美味い!
参戦時期:死亡後
【衛宮士郎@Fate/stay night】
状態:正常、疲労(小)
服装:いつもの服。
装備:遥か遠き理想郷(アヴァロン)
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本: 殺し合いを止める
01:さっきの奴は一体?
02:杏子やKGⅤと一緒に行動する
03:麻婆豆腐………
参戦時期:UBWルート終了後です
備考
※投影魔術が装備品と見做されている為に、支給品が一つしか与えられませんでした
【キングジョージ5世(KGⅤ)@アズールレーン】
状態:正常、
服装:いつもの服。
装備:武蔵の艤装(アズールレーン)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本: 殺し合いを止める
01:さっきの奴は一体?
02:士郎や杏子と一緒に行動する
03:士郎は麻婆豆腐嫌いなのか?
参戦時期:本編時空では無く、母港時空からの参戦です
備考
※ ネプテューヌ、うたわれるもの、キズナアイ、ホロライブ、DOAXVV、アイドルマスター、ライザのアトリエ、閃乱カグラの世界と人物についての知識をある程度有しています。
SSSS.GRIDMAN 及びSSSS.DYNAZENONの世界と人物は、コラボイベント『弧光は交わる世界にて』に関わっていないので知りません。関わったKAN–SENから話を聞いたくらいです。
◆◆◆
「あれ程の力を持つ支給品があろうとは」
逃げ延びたエルフ。ラゼィル・ラファルガーは、改めて今回の“神楽”に想いを馳せる。
捧げる供物は上々揃い。しかも最後の女の様に兄弟なモノならば、混沌神もお喜びになるだろう。
「此度の神楽は風変わりなれど、供物は全て上の上なれば、グルガイアよ、笑覧あれかし」
【ラゼィル・ラファルガー@白貌の伝道師】
状態:正常
服装:いつもの服
装備:無限刃@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 操躯兵(美樹さやか)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本: 主催込みで皆殺し
01:此度の神楽は中々に盛大なものになりそうだ
【ヒャッハーって突っ込んですぐにやられるザコキャラ@ TOUGH外伝 龍を継ぐ男 死亡】
投下を終了します
投下します。
俺はあえて逃げ道を作ってやる。そうしてやれば女の子も少しは楽やろ?
店長名言bot
「……どうしてこうなった?」
男は呪う。
この境遇を。
「……一体、俺が何をしたっていうんだ!」
男は、怒りを抑えられない。
真面目に生きてきた自分に対しての仕打ちに。
「俺には、やらなきゃいけない使命があるんだ。こんなこところでグズグズとしてられない」
男には使命がある。
男にしかできない使命が。
幸い店は、新しく入ったアルバイトに任せているから安心だ、
だからこそ、店長としてやらなきゃいけないことが!
「自分自身を大切にするためにも……」
店長はケツイした。
このゲームの参加者たちをぶん殴ると。
「どうせ、こんなゲームの参加者は、うちの店にくる迷惑客みたいな奴らばかりだろ」
チラリと視線を下げるとそこには、死屍累々。
【オープン筋肉@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【料理人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【叫びながら走り回る人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【うるさい人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【くそ兄弟@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【R18@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【キックキャッシュ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【鍵なくした人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【店員生きろ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【みわくの腰使い@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ダイナミック入店@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ヤンキー@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【休憩中@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【万引き@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【下着ドロ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【すみっこ住み@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【寝読み@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【開けられない人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【睡眠@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【どろぼー@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【寄せ書き@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【金庫泥棒@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【おまけの中身が知りたくてーー。@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【トイレでタバコ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ハァ…困ったなァ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【腕立て@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ダンベル@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ベンチプレス@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ぬいぐるみ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【野球少年1@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【野球少年2@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【トイレスマホ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【回転@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【壁走り@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【炎上系2@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【キックキャッシュ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【盗撮犯@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【酔っ払い@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【花火@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ネットで馬鹿にされた人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【キャンプファイヤー@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【股割り@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【自主規制@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【無銭飲食@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【寄せ書き@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【植物を刈り取るもの@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【壁壊しおじさん@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ブロッコリー@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【土うめぇ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ダンス@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ダイナミック入店@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【温めますか?壊しますか?@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【女幽霊さん@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【強老人@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【炎上系1@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【ロボカス@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【別の店からの手先@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【だし汁@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【くそフラッグ@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
【スーパーヒーロー@僕、アルバイトォォ!! 死亡】
「俺が守護(まも)らねばならぬ。まっていてくれ」
【店長(極悪)@僕、アルバイトォォ!!)】
状態:怒り
服装:コンビニの服
装備:バール(極悪)@僕、アルバイトォォ!!
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:生きて帰り、仁菜をストー……守護る
01:参加者たちを全員、ぶん殴る
02:俺が守護(まも)らねば
参戦時期:仁菜のストー……守護(まも)っている最中
備考
※コンビニスキャンを使用すると、遮蔽物を透しすることが出来る、ただし疲労が蓄積する。
投下終了します。
投下します
「……どこかの弾幕ゲーの庭師に似てる」
「はい?」
妖怪退治屋見習い、刀道巫女はついさっき出会った春草のように可愛らしい幼女に開口一番そう告げられた。
どこかのゲームのキャラに自分と似たようなやつがいる。まあそういうのはよくあることなのだが。
巫女にとってはそういう物言いをする彼女が、彼と同じように「ゲーマー」であることを理解した。
「まさか貴女もゲーマー」
「うん。にぃにとネットの世界でぶいぶい言わせてた。今じゃ私に勝てるのなんてにぃにぐらいしかいない」
そんな澄んだ瞳をした白髪の幼女の姿に。巫女は思わず見とれたと共に、彼女のゲーマーとしての腕が彼よりも間違いなく格上であるというのを理解してしまった。
世界には格上なんていくらでもいるのは知っているが、この少女はゲーマーとしてみた場合いる世界からして隔絶しているように思えた。
「大丈夫。私これでもゲーマーの相棒がいるし、それにあいつには色々と助かってる」
だからこそ、信用できる
刀道巫女は落ちこぼれであったが。ゲーマーである西京芸麻と出会った事でその運命は思わぬ方向へと向かった。
つい最近は二人で協力した結果であるが、最強たる兄にようやく認められた。
「だから貴女のそういう観察眼とかは信頼できそうかなって」
「……FPSとかは得意だけど、こういう殺し合いとか、そういうのはにぃにの分野。白はちょっと苦手かも」
最強ゲーマー兄弟「 」の片割れ。白。
その得意分野は心理が関わらないものであり、このような人間の心理が関わるようなのは白は得意ではない。
「でも、にぃにがいなくても。白は大丈夫」
だが、白は一度、兄が自分以外から忘れられた状況を知っている。
寂しさで張り裂けそうになっても、その矜持を以て希望を託した兄の期待に答えた。
「例え白一人でも、「 」に敗北はない。……だから大船に乗ったつもりでいて」
そんな虚勢なのか本当に自信ありげなのか、そんなサムズアップする白の言葉に巫女は信頼と言う名の安堵するのであった。
【刀道巫女@ゲーマーが妖怪退治やってみた!】
状態:健康
服装:いつもの巫女装束
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない
01:白ちゃんのことを信頼してる。あいつと同じゲーマーってことなら悪い気はしない
02:
参戦時期:2巻終了後
備考
【白@ノーゲーム・ノーライフ】
状態:健康
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム0〜3、ホットライン
思考
基本:「 」に敗北はない
01:巫女、よろしく。得意分野は私に任せて
02:にぃにがいなくても、今の白は大丈夫
参戦時期:3巻
備考
投下を終了します
少しオーバーすることなってしまい申し訳ありませんでした
皆さま、たくさんの作品をありがとうございました。
最後にディスコードの方で11時56分にss0601氏が送ってくださった作品を代理投下してこのコンペ期間を終了とさせていただきます
どうして、許すことが出来ようか?
どうして、この憎しみを消すことが出来ようか?
どうして、この世界を呪わずに居られるだろうか?
だが、私には力がない。
想いはある。
しかし、力と想い……両方が無ければ届かない。
否、否、否!
力は手に入った!
狂っているが、なおそれを超えて愛おしいこのセカイが私にそれは授けた。
ならば、行こう……私が、私たちが、家族が幸せに暮らせる世界を創りに。
だが、事は慎重に運んだ方がいい。
仮初の力を得たとて、本質的には無力なのだから。
でも、アナタなら出来るよね?
演じるのは得意だもんね?
ウソは……。
そうだよね? ■■■■■■?
「その性格!その見た目!そのガーターベルト!それでもって所属はテロリスト!あなた、1人で属性何個盛ってるの⁈ 芸能人か!!!」
私の魂の叫びがこだまする。
こうなった経緯は、至ってシンプルである。
私、星野瑠美衣はこの狂った場所に連れてこられたことを恨みながら、とりあえず協力者を探そうとあたりを彷徨っていた。
そしたら軍服を来ていたオジさんと出会い、ソイツが出会い頭に「青き清浄なる世界のために!」と言って、拳銃を向けてきたのだ。
こわっ。
だが、そのオジさんは即座に肉塊となった。
そう、今私の目の前にいる彼女……マーヤ・ガーフィールドの駆るランスロット・アルビオンなる機体によって。
その後、お互いこのゲームに抗うということで協力することに決まり、お互いに情報交換をしたのだが……マーヤさんの情報量が多すぎて、私がこうなったという訳だ。
「えーっと、落ち着いて? あと、ガーターベルトは関係ないような……」
「ハァ……ハァ……異世界、恐ろしい子」
「まぁ、確かに瑠美衣から見た私たちの世界はだいぶ怖いだろうね」
「そりゃそうだよ! 学校の中にテロリストと兵士が普通に居るのは怖すぎる……」
「あれ? これもしかして、私の経歴のせいで怖がってる?」
マーヤ、普通の人は復讐のためにギアス?で命令されてもいいとは思わないよ。
自分が割とぶっ飛んだ存在だと気づいて欲しい、できれば早めに。
「まぁ、それはとりあえず置いといて……瑠美衣は何か今後の方針とかはある?」
「うーん、私はそもそも殺し合いなんてした事ないからなぁ……仲間を集めるくらい?」
「そう。なら、私の方針を優先してもいいかな?」
「良いよ。ただ、一応どんなのかは聞きたいかも」
マーヤ、割とネジが吹っ飛んでるところあるっぽいからね……一応、先に聞いておかないと。
「ルルーシュと合流する、彼なら多分この状況を打開する策を用意しているはずだから」
「ルルーシュさんか……マーヤの話を聞く限り、根はイイ人そうなんだけど、どうしてもここに来てからのムーブしか実際に目にしてないから良い印象はないんだけど」
「大丈夫、ルルーシュが見たいのは明日だから。だからきっと、このゲームを壊してくれる」
「マーヤがそう言うなら……」
私たちが決まって、じゃあ次はどうやってルルーシュさんを探そうか。
その話をしようとしたところで、私たちに近づいてくる足音が聞こえてきた。
即座に、マーヤさんが私を庇うように前に出る。
そして、現れたのは……腰にベルトのような装備をつけている黒髪の少女だった。
「さっきの大声を頼りにして来ました。どうやら、あなた達もこのくだらない催しに抗うようですね。……良ければ、協力しませんか?」
【星野瑠美衣@推しの子】
状態:通常
服装:【Be red】ルビーのアイドル衣装@アイドルマスター シャイニーカラーズ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:???、???、SA・ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う
01:マーヤさんとは協力できそう
02:色々な世界があるんだね
03:私の知り合いは居るかな?
04:???
参戦時期:???
【マーヤ・ガーフィールド@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:通常
服装:制服(アッシュフォード)
装備:ランスロット・アルビオンの起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:ブリタニア(概念)を叩き潰す
01:ルルーシュがいることは幸運だった
02:色々な世界があるのね
03:彼女は味方なの?
04:星野瑠美衣は民間人だから、ちゃんと守らないと
参戦時期:2部13章から
【井ノ上たきな@リコリス・リコイル】
状態:通常
服装:リコリスの制服
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ブーストマークⅡレイズバックル@仮面ライダーギーツ、マグナムレイズバックル@仮面ライダーギーツ、SA・ホットライン
思考
基本:このゲームに抗う
01:千束はいるのでしょうか?
02:彼女たちとは協力出来そうです。
参戦時期:アニメ最終話から
そう、私は欲しい。
私たちが平穏に暮らせる世界を。
だが、同時にそれを成すための犠牲と嘘を嫌う。
やはり私は……あなたには……道化の役が似合う。
そうだよね、天童寺さりな?
誰か……私を止めて。
【星野瑠美衣@推しの子】
状態:狂気
服装:【Be red】ルビーのアイドル衣装@アイドルマスター シャイニーカラーズ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランスロット・コンクエスター(フレイヤ搭載)の起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2、星に願いを@オーバーロード、SA・ホットライン
思考
基本:願いを叶える
参戦時期:連載106話から
備考:フレイヤ使用には令呪二角が必要、星に願いをは一回のみ使用可能
代理投下終了です
タイトルは 死にゆく星の最後の輝き です
皆さま、重ね重ねたくさんの作品をありがとうございます。
これにて真贋ロワのコンペ期間を終了とさせていただきます。
本戦や名簿、地図に関しましては続報をお待ちください。
こんばんは。
皆さん、コンペお疲れ様でした。
wikiにて、自作「操り人形達」「祝福を受ける者」の誤字や行間の修正を行いました。
特に仙波の状態表に扇の支給品の情報を入れたり、
カラレスと総司令官の会話を修正・追加を行っています。
自作を少し修正しました。
“交わる波”に支給品解説を追記しました
wikiで自分が執筆した「マルガムリベンジャー」の誤字や支給品解説等の文章の追記を行いました
皆さま、大変長らくお待たせいたしました。
真贋バトルロワイヤル、本戦スタートです。
真贋入り混じるバトルロワイヤルの開始から二時間が経過した。
プレイヤーの中でも情報の入手を優先した物たちはまず急にホットラインに流れた動画に驚き、場所によっては周囲のラジオやテレビなどに緊急入電が入ったのにも驚いたことだろう。
映像の真ん中には羂索……ではなく仮面で顔を隠し、白い軍服を着た金髪の男が立っている。
『……現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。
おはよう諸君。
一応、はじめましてと言っておこう。
私の名前はラウ・ル・クルーゼ。
ザフト軍クルーゼ隊隊長にして、羂索から君たちプレイヤーの人選に関してかなりの裁量を与えられていた者だ』
笑みを浮かべたままクルーゼは少し左に寄ると空いた画面右側に四つのアイコンが浮かび上がる。
『諸事情あって出演できない彼女に代わって事前に告知していた地図、名簿など説明に加えていくつか実装の間に合ったアプリと、非公開になっていたルールに関して説明させてもらう』
そう言うと、4つの内1つのアプリが少し大きくなり、他3つが小さくなる。
『まず最初に名簿。
今回の我々のゲームに招かせていただいたプレイヤーの名前を羅列している。
顔写真などはなく、本名で表記されていないプレイヤーも多いが、順番などに一応意味はあると言っておこう』
『次に地図アプリ。
会場の全体図と、諸君らの現在地を示すアプリだ。
自分の位置、ホットラインを向けている方向は赤い矢印で表示される』
短く終えると、予告の無かった情報に関しての話になって来る。
『そして名簿とは別に死んでしまったプレイヤーを別個にまとめた墓標アプリ。
仕様は普通の名簿と変わらない。
更新は6時間ごとに行われるので、今はケン・スドウとニーナ・アインシュタインのみ記載されているはずだ。
どうか哀悼の意を捧げてやってほしい』
『最後に視聴アプリ。
今回、そして今後6時間おきの様々な情報更新のたびに行われる定時放送を見返せるアプリだ。
戦闘中、負傷により意識を失っていた場合などに活用してくれたまえ。
そして定時放送で発表される内容だが、その時点までの死者、追加ルールの告知、そして、立ち入り禁止となるエリアの発表だ』
画面が切り替わり、一枚の地図が映し出される。
『今諸君らの画面には地図アプリで視れるのと同じ地図が映し出されている。
区画分けされているのが分かる筈だ。
これらの中からランダムでいくつかが立ち入り禁止になる。
が、我々の拠点に繋がる物のあるエリアが立ち入り禁止に指定されることはない。
諸君らの檻を狭める代わりに我々はダミーの鍵穴はここだと教えていくわけだ。
叛逆を目指す諸君は是非覚えておいてほしい』
再び画面がクルーゼの映像に戻る。
今までも薄く浮かべていた笑みをより深め、クルーゼは宣言した。
『これよりこのバトルロワイヤルはより一層加速していく!
最強のNPCモンスターも投下され、君たちスタンスに関わらずは否が応でも戦わざるを得なくなることだろう!
掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』
そう言って映像は終了した。
「ふう。こんなものかな?」
洗脳したNPCモンスターのスタッフたちが機材のメンテナンスに入るのを観ながら一仕事終えたラウ・ル・クルーゼはポケットに入れていたピルケースとスキットルを取り出し、カプセル状の錠剤をあおる。
体調に問題がないのを確認し、去ろうとした時、拍手と共に入室する人影があった。
「お疲れクルーゼ。いい演説だったよ」
「ありがとう羂索。肉体の調整は済んだかな?」
「ああ。このために態々代わってもらったんだ。
万全にしたとも……ところで、君に任せた名簿の件だが」
「今更ながら、本当に私とカヤバに任せて後悔しているのか?」
「後悔というか……私にとって既知の可能性など見てもつまらないから好きにしてくれていいとは言ったが、中身と外見が一致する方の梔子ユメを呼ぶかい?普通」
「真贋入り混じるこの戦いに相応しいと思ったんだよ」
そう言って相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべたまま流すクルーゼに羂索は溜息を吐いた。
「まあいいさ。
君たちが厳選し、篩にかけられた130人。
一体何を魅せてくれるのか……君のお気に入りにも期待しているよ」
「大いに期待してくれていいとも。
ところでカヤバは?」
「ドゴルドの調整が済んだらしい。
冥黒の五道化、どの程度使い物になるかな?」
「腹立たしい!ああ!腹立たしい!」
羂索たちのいるスタジオとは別の場所にて。
雷神と獅子を模した鎧兜が憤懣やる方ないと言わんばかりに荒れていた。
「その様子だと新しいインナーフレームは気に入ってくれた様だね、激怒戦騎のドゴルド」
そこに神経質な学者のような風体の男が入ってくる。
浮遊城アインクラッドの王にして、血盟騎士団の団長ヒースクリフの正体、茅場晶彦その人である。
「ヒースクリフ!
この女の身体でなら本当に俺の力を従前に発揮できるんだろうな!?」
「逆だよ。
彼女を内に宿すことで君の真価は発揮される」
「ふん!腹立たしい!
貴様らの企なんぞ知らんが、分かってんだろうな?
縛りまで結んだんだ。
十全の空蝉丸との決着、もし叶わなかった時はテメェらのガッチャとやら諸共ここら一帯灰になる」
「分かっているとも。
今から君をゲームエリアに送る。
せいぜい悔いのない様に戦ってくれたまえ」
「ふん!腹立たしい!」
ドゴルドが吐き捨てると、茅場は懐から取り出したガシャコンバグヴァイザーを操作して転送した。
「態々この為に五道化の枠を二つも使って再練成したんだ。
楽しませておくれよ、ドゴルド」
【ドゴルド@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:正常、怒り(大)、戦意(大)
肉体:???(女性なのは確定)
装備:喧嘩上刀@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:なし
基本:十全の状態で空蝉丸と決着を付ける。
01:プレイヤーどもを痛めつけて戦隊どもを引っ張り出す。
02:ヒースクリフ共、縛りを破ったら分かってんだろうな?
参戦時期:死亡後
備考
※単純な復元による復活ではなくヒースクリフたちにより再錬成される形での復活な為、巨大化などのデーボモンスター固有能力を喪失している代わりに呪力、ソードスキル、ブレイブなどを使える様になっています。
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※使ってる肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
【全体備考】
※最強のNPCモンスターとして冥黒の五道化が一人、激怒戦騎のドゴルドが投入されました。
OP2、投下終了です。
タイトルは 掴め!最高のガッチャ! です
採用作、書き手用名簿、キャラ用名簿、地図などwikiの方で公開させていただきました。
こちらからご確認ください。
ttps://w.atwiki.jp/sinjitsurowa/
続きまして、本戦から追加のルールに関して説明させていただきます
【書き手側追加ルール】
・書き手の制限は基本無し。
・投下宣言、投下終了宣言、タイトルの明記もコンペ期間に引き続きお願いします。
・掲示板の書き込み、及びディスコードチャンネルで予約を行ってください。
後者で行った場合、伊勢村が代理で掲示板の方で予約の告知、作品の投下を作者を明記した上で行います。
・文章の上手い下手は小説にさえなっていれば問いません。
・リレー式はみんなで作るss、そして二次創作も立派な創作活動です!
最後まで完成させる事を目標に頑張りましょう!
【状態表について】
・状態表の表記を統一します。
以下、説明とテンプレートです。
【エリア英字-数字/エリア内の現在地/日付と時間】
【名前@出典】
状態:精神、肉体の状態、特記すべき行動など
服装:来ている服。
装備:すぐに使える状態にある道具
令呪:令呪の残り画数
道具:すぐに取り出せる状態にない道具
思考
基本:ロワにおける基本方針
00:細かな思考
01:
02:
03:
参戦時期:キャラクターの参戦時期
備考
※何かあれば記載してください。
なくても構いません
【エリア - //9月 日午 時 分】
【@】
状態:
服装:
装備:
令呪:残り 画
道具:
思考
基本:ロワにおける基本方針
00:細かな思考
01:
02:
03:
参戦時期:
備考
※
【予約について】
・予約の有効期限は一週間とします。
・予約延長の旨を申告すればエピソード一つにつき一回、一週間の期間延長を行えます。
・期限を超過した場合、予約破棄と判断されます。
・あるキャラの予約が行われた時点で、他の書き手はそのキャラを含んだ予約または作品投下が出来なくなります。
・予約は予約期限切れ、予約破棄宣言、対応する作品投下のいずれかを持って解除されます。
・予約期限切れ、予約破棄宣言の場合、その時点を持って予約されていたキャラの予約が可能になります。
・予約の無い投下は、その時点で一切予約されていないキャラのみが登場するエピソードの場合のみ有効とします。
【支給品・NPCモンスターに関して】
・採用話に登場しているキャラ、支給品、NPCモンスターと同一の出典からならば可能。
シリーズ物出典は多少枠をはみ出てもいい(SEEDの無印とFREEDUM以外の機体など)
【禁止事項】
・ストーリーの体をなしていない文章
・原作の設定から考えて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合
・前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
・企画のルールとして定められている事項に反している場合(他の書き手が予約しているキャラの投下等)
・荒し目的の投下は許しません。
・時間の進み方が異常、もしくは時間を遡った話の投下 (回想シーンはそう明言されてれば例外)
・その他、企画の進行を妨げる可能性のある内容
【書き手の判断によるSSの修正について】
・SSの展開が変わってしまうような加筆・削除等は禁じます。
・多少の誤字の修正や支給品やNPCモンスターの解説の追加などは特に問題ありません。
・ただし、リレー小説の性質上、投下後あまりに時間がたってから変更を生じる修正を行うことは極力さけてください。
【原作・続編の扱いについて】
・媒体ごとの設定が異なる場合、矛盾する別媒体の設定を出すことは禁止しますが、矛盾しない範囲で原作の設定を出す場合は、未見の人でも分かるように詳細を付け加えてください。
連絡事項などは、これで以上ななはずです。
なにか確認したい事、抜けなどありましたら遠慮なくご指摘をお願いいたします。
続きまして、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと綾小路清隆で投稿させていただきます。
会場内の様々な電子機器に一斉に配信が入る。
また運営からの通信か?と思われたが画面の真ん中に映るのは梔子ユメでもラウ・ル・クルーゼの姿でもない。
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』
つい数時間前に梔子ユメや堀北鈴音に謎の異能力を行使した貴族服の少年であった。
今は革張りの椅子に偉そうに座っており、口元には不敵な笑みを浮かべている。
『今より我が決定を伝える。
私が羂索たちに代わってこのバトルロワイヤルを支配する。
諸君らには私に膝をつくか、弓を引くか、好きな方を選んでもらう』
そう言ってルルーシュは立ち上がると、腰に装着された黒いドライバーから赤いビームを照射し、蛍光イエローのデータキーを生成した。
『私に従うと言うならばその証としてレジスターのサンプルか、ゼアの身柄、またはシュナイゼルに与する騎士の誇りを忘れし者や黒の騎士団構成員、そして私への忠義の証である仮面ライダーの名を僭称した愚か者の首を持ってくるのだ。
持ってきた者には褒美を下賜する』
ヒュン!とルルーシュが手にしたデータキー、ライジングホッパープログライズキーを投げると画面が切り替わり、赤いブレザータイプの学生服を着た少年が映し出される。
『紹介しよう。彼は綾小路清隆。
このバトルロワイヤルで真っ先に私に忠誠を誓った戦士だ。
清隆!変身せよ!』
『イエス。ユア・マジェスティ』
<ジャンプ!>
受け取ったデータキーのスイッチを押し、腰に巻いた無骨なドライバー、フォースライザーにセット。
『変身。』
<フォースライズ!>
レバーを引くとキーが強制展開され、背後に出現したバッタのライドモデルが無数にばらけ、蝗害のような光景を創る。
それがはれるとそこに立っていたのは
<ライジングホッパー!
A jump to the sky, Turns to a Rider Kick.>
<BREAK DOWN.>
黒いインナースーツにメタルブラックと蛍光イエローのプロテクター、そして六角形の赤い複眼の飛蝗の仮面を装着した異形の戦士の姿だった。
『その力を示せ!我が忠実なる下僕、仮面ライダー001!』
『イエス。ユア・マジェスティ』
001は画面が威から向って来た二体のNPCモンスター、ない止めフレームサザーランドに対して肉弾戦を仕掛けた。
先鋭化された飛蝗の脚力で銃弾を交わし、キックボクシングのようなファイトスタイルで本来ならコックピットの部分を的確にけり抜きたちまち戦闘不能にしてしまった。
『これで私が諸君らに与える力の程を理解できたことだろう。
力ある者よ!我を恐れよ!
力なき者よ!我を求めよ!
このバトルロワイヤルは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが裁定する!
私は会場内のテレビ局で待っている。
諸君らの賢明な決断を期待する』
プツン、と全ての画面が切れる。
その後テレビが映し出すのは砂嵐だけだった。
「ルルーシュ様、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
撮影の終わった後、テレビ局内を変身を解除した清隆とルルーシュが歩いていた。
「ルルーシュ様の目的は羂索たちを倒すことにあると考えていたのですが、何故あんな全てのプレイヤーに喧嘩を売るような真似を?」
「羂索たちに戦うには駒が足りん。
だが数が居ればいいと言う訳でもない。
どうせなら優秀な者……私を悪の王として寄生したり利用したりする連中に負けない強かさと正義を持った者でなければならない」
「それで態々仮面ライダーガッチャードやエグゼイドに試練を与えるような真似を?」
「ああ。
恐らく、穏健なプレイヤーの本音は『殺し合いたくも羂索の言いなりになりたくもないがルルーシュのような胡散臭い力を使う奴もまた信用ならない』だろう」
「だからあえて敵役になり、他が勝手に纏まる事態を望んだ」
「如何にも。
人間ってのは1人悪い奴がいると簡単に纏まるからな」
「魔王たるルルーシュ様に刃向かう正義の勇者たち。
それがあなたの求める駒と?」
「別に。
羂索を倒すのは私とお前の元に集う屑共でも構わない。
ガッチャード達勇者一行の方がうれしくはあるがな」
そう言ってルルーシュはドライバーから延ばした有線ケーブルで襲い掛かってきたマシンタイプのNPCモンスター、カッシーンをハッキングする。
膝をつき、倒れた意志無き怪物たちは、ルルーシュの善意の為の悪意に染まり、再び顔をあげるとルルーシュと清隆に膝を突いた。
「便利な力ですね」
「今のうちにここの要塞化を終わらせるぞ。
弓引く物にも、恭順を示す物にも、手厚い歓迎をしてやらねば皇帝の沽券にかかわる」
「イエス。ユア・マジェスティ。いくぞ」
カッシーンを率いて先を急ぐ清隆をルルーシュは見送る。
そして窓に映る自分の姿を見つめた。
『このバトルロワイヤルでゼロレクイエムの予行演習でもするつもりか?』
鏡に映る清隆の眼は赤く染まり、ルルーシュとはまた別種の邪悪な笑みを浮かべている。
ルルーシュの姿を借りたアークだ。
「いいや。あれは俺とスザクの約束。
これは俺と清隆の契約。
あいつを自由というまだ見ぬ大海に送り出す計画。
そうだな、ゼロダイバーとでも名付けるか」
【エリアD-7/テレビ局/9月2日午前6時】
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
状態:正常
服装:皇帝服
装備:アークドライバーゼロ@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り三画
道具:チェスセット@現実、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:このゲームでゼロダイバーを完遂し、元の世界に戻ってゼロレクイエムを達成する
00:このバトルロワイヤルでゼロダイバーを完遂する
01:映像を観て集まって来る者のために歓迎の用意をする。
02:忠誠を誓う者には仮面ライダーの力を与え、ガッチャード達に自分には向かう勢力を作らせる。
03:アークの力は最大限利用させてもらう。
にしても仮面ライダーアークゼロ、か。偶然とは思えんな。
04:ランペルージ姓とヴィ・ブリタニア姓のロロの名前が二つあるのが気がかり。もし羂索のように弟の死体を利用する何者かだったのなら、容赦はしない。
05:二代目ゼロ?扇め、そこまで準備していたとは。
06:ニーナ……必ず仇は討ってやるぞ。
参戦時期:皇帝位簒奪を宣言した後
備考
※絶対遵守のギアスは制限が駆けられています。
少なくとも自害の命令は令呪なしには発動できないようです。
※堀北鈴音と綾小路清隆にギアスを使いました。
彼女らが能力無効化の異能力をかけられない限り、もう一度ギアスをかけることはできません。
※アークのハッキングの要領でマシンタイプNPCモンスターを支配できます。
【綾小路清隆@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:正常、絶対遵守のギアス(極大)
カッシーンを率いている
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:フォースライザー
ライジングホッパープログライズキー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを利用して自分の夢を掴む
00:『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアへの質問には包み隠さず答える』
01:ルルーシュに仕え、このゲームをひっくり返す。
02:堀北ら知り合いへの対処はその時次第。
03:ルルーシュの仮面ライダーとして戦う。
まずは迎撃の準備を整える。
参戦時期:少なくとも船上試験よりは後
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
異能力を無効化する異能力をかけられない限り、新たにルルーシュのギアスの影響を受けることはない代わりにルルーシュからの質問に包み隠さず答えます。
【NPCモンスター解説】
・サザーランド@コードギアスシリーズ
…神聖ブリタニア帝国が開発したナイトメアフレーム。
皇歴2018年時点での主力量産機。
ルルーシュも黒の騎士団のゼロとして同機を鹵獲し騎乗したことが何度かある。
武器は標準装備のトンファーとナイトメア用銃火器。
今回ルルーシュのアークドライバーゼロによる有線接続により洗脳されたため、身体のどこかに穴が開いている。
投下終了です。
タイトルは 皇帝特権主張しますっ! です。
OP2&参加者名簿作成&投下お疲れ様です。
拙作をいくつか採用いただいたようで、ありがとうございます。
早速ですが、イドラ・アーヴォルン、花菱はるか、レッド、横山千佳、柊うてな、ノワルで予約します。
OP2&名簿作成、本編投下お疲れ様です
益子薫、ロロ・ヴィ・ブリタニア、ジンガを予約します
投下します
「こりゃまた随分と大人数をこさえてきやがったな。」
朝を迎えると共に流れた放送。
名簿に並ぶ総勢149名の名簿に、リュージは軽くため息を吐く。
Dゲームはクラン同士の対決でなければもっと大人数でやるものではあったので、
それと比較すると人数はそこまで多くはないものの、かといって少ないわけではない。
カナメ達の名前はなく、頼れるのは現状隣にいる可奈美だけではあるが、
表情からして知り合いがいるようであり、幸か不幸かは分からなかった。
「仲間、と言うよりは友達か。難儀なことだが、信用できる奴がいるのはいいことだ。
俺の能力を使うまでもなく味方だと断言できる奴ばかりなら、俺の苦労も少しは減るところだが、
豊臣に徳川が同姓同名ではなくマジの過去の人間まで呼べるとなると、一度敵対した奴とは要警戒だな。」
「過去、かぁ……」
過去と言えば糸見紗耶香もまた一度は敵対した間柄だし、
十条姫和についても大荒魂と融合した際は自棄を起こしていた。
そういった時期から呼ばれてるのは、出来ればあってほしくないことだ。
何よりも、タギツヒメとだって最終的には和解した間柄だ。
今更人類を滅ぼしたりだとか、そういうことはしないでほしいと思いたくもあった。
もしそういうことになるのであれば、行方知れずの千鳥も探しておきたい。
今の刀も十分強力だが、やはり刀使としても、母から受け継いだ御刀だからでもある。
「王の奴もいなけりゃカナメ達もいねえ。となりゃクランは継続だがありだな?」
「はい、よろしくお願いします。」
「俺たちは西南のエリアにいるが、はっきり言って人の来る可能性は低いから東に向かう。」
「施設には誰かの家みたいなのもありますけど……名簿にもキリトって人がいますし。」
「確かにそうだが、東の方が施設が多いのと、
租界ってエリアとつながってる橋が二つもある。
此処に来るってことは逃げるとかの特殊な事情を除いてしまえば、
キリトか禪院家、霊園に用のあるだけの人物で人の出入りは少ない。
人の出入りが多い現代都市のエリアを目指す方が施設も多くて移動も効率がいい。」
NPCも跋扈している環境だ。
避難先として特定の施設。とりわけ学校とか広い場所に駆け込むのは予想しやすい。
と言う考えもあるが、リュージとしては早めに可奈美に受け入れる準備をしてもらいたくもあった。
敵になりうる人物もリュージのような考えを見越してその辺を先回りしてる可能性は十分にある。
殺し合いに乗った敵との戦いを経験させる。悪い言い方をすると、彼女に殺しに慣れさせる。
酷なことではあるが、優しさだけで生き残れるようなゲームを経験してないリュージにとって、
可奈美の甘さは戦闘において致命的な欠点となりうるものだと理解しているからだ。
王がいないからと言って、王のような残虐な人物がいないとも限らないだろう。
「東なら、近いのは運転免許試験場ですか?」
「そうなるな。此処からは時間との勝負だ。
NPCとの遭遇はなるべく避ける。ドロップアイテムがあるようだが、
弾と体力は無制限じゃねえ。必要以上の戦いはしない方針で行くぞ。」
「はい!」
どちらも場数を踏んできた人物だ。
慣れた動きで森を抜け出し、NPCとの戦闘も悉く避けていく。
何かのアクシデントとかハプニングと言ったものは立ち回りで避け、
特に何事もないままに、言い換えれば他の参加者とも出会えぬままに、
久留間運転免許試験場へとたどり着いて、リュージが哨戒しつつ中を調べていく。
道中は荒魂と言う怪物と戦ってきた可奈美が先行する形になっていたが、
此処からは対人戦を行っていたリュージが先導する形で動いていく。
そうして食堂へたどり着いた二人だが、音に気付いて二人は頷き武器を構える。
「おいそこの食堂の奥にいる奴! 三秒だけ時間をくれてやる。すぐに顔を出しな!」
警告をすると先に出てきたのはカウンターに手をのせる異形の右腕。
しまった、参加者じゃなくてNPCの方だったか。
そう勘違いしかけるが、すぐに腕から先の姿も晒し、
レジスターが左腕についていることで参加者であることを示唆しているのが分かった。
「警告してくるってことは、お前もしみったれた儀式を止める側か?」
「どうだかな。俺の質問に答えるなら───」
「……姫和、ちゃん?」
声色、顔。それらは知っている。
忘れるはずもない、親友の姿だ。
だが普段の彼女からはかけ離れすぎた格好と口調。
隠世から帰ってきた後のイメチェン、にしては派手すぎるし、
そもそも姫和とは思えないような言動や右腕が違和感を持たせた。
「どうしたのその恰好。」
「ん? ああ、こいつの知り合いか。悪いな。こいつの身体を借りている。」
「……すぐに返してもらうことって、出来る?」
質問に対して素直に答えるアンク。
借りてる、と言う言葉にい印象は持たない。
原因があるとするなら間違いなく異形の右腕だ。
右腕を斬り落とせば恐らく元の姿に戻るのかもしれないが、
「待ちな。こいつは俺が借りる前から右腕を失っている。
外そうと思えば今すぐ外せるが、外したら間違いなくこいつは死ぬぞ。
ついでに言うとこいつの身体の意識も、まだ戻ってねえぞ。」
そう言われ刀から手を放す。
可奈美はリュージを一瞥する。
彼の異能ならば本当か嘘かですぐに見分けがつく。
だが視線を向けられたリュージは特に何も言わない。
相手の話したことは嘘ではなく、事実だということも。
「こいつの記憶だとそっちは衛藤可奈美か。
だったら話は早い。こっちも儀式には手を焼いてる。
と言うよりこっちも色々急いでいるんでな。とっとと武器を下ろせ。」
慇懃無礼な態度や男の口調。
顔や声は同じはずなのに凄く違和感を持つ可奈美。
一先ず話し合いはできる相手であることはリュージも分かり、
ちょうど食堂なので席に座って情報の共有を行う。
「記憶をたどるとこいつの殺し合いはそんなところだ。」
「開幕から聞きたくねえ情報のオンパレードじゃねえか。」
三人の人柄はともかくとして、既に三人死者を出して、
アンクが憑依してる彼女自身も瀕死の重傷を負ったことがわかる。
しかも状況が最悪に等しい。可奈美の千鳥はその男が配下にしたNPCが持っているということ。
御刀は説明の通りならば別にどの種類でもいいかもしれないが、母から受け継いだ刀が敵に使われる。
可奈美としては許せないことであり、何より姫和がこうなったのもその人物によるものだ。
できることならば取り戻したいが、四人で挑んで返り討ちに遭うほどの強さを持っている。
現状の戦力ではとても可奈美とリュージ、それとアンクだけで太刀打ちできる相手ではない。
無策に突っ込めばその三人と同じ末路をたどるということは否が応でも理解させられる。
「姫和ちゃんは無事なの?」
「ああ無事だ。だが俺の憑依がなくなればすぐに死んでもおかしくねえ。」
「そっか……アンク、さん? でいいのかな。ありがとう。」
「別に礼はいらねえ。相互関係みたいなものだからな。」
「……妙だな。」
情報を共有しつつ、
ホットラインでの情報を確認するリュージから声が上がる。
「リュージさん?」
「ホットラインを見てみろよ。お前の名前が載ってるぜ。」
リュージが見せたホットラインには確かにアンクと載っている。
主催は既にこの状況を把握しているということが言いたいのか、
と最初は思っていたがリュージは別の話題を出す。
「ホットラインの名簿は恐らくだが同じ世界の奴は同じ世界の奴で固まってる可能性は高い。
分かりやすい例として二人いるキラ・ヤマトって奴のところは同じ世界の連中だろうな。
だがアンク、お前の名前は可奈美の関係者ばかり、刀使達が集っているところに載っている。」
「何が言いてえんだ?」
「───十条姫和も二人いるんじゃねえのか? これ。」
予想してなかった言葉に可奈美たちは目を見開く。
支給品であり、事故の産物であるアンクが態々名簿に載るとは到底思えない。
仮に載るとしても可奈美たちとは無関係の場所に名前が載るはずだ。
態々タギツヒメとの間に載る名前ではないことを考えると、
此処に載ってたのは本来は姫和なのではないかと推察する。
「確かに同じ名前の奴は何人かいるが、ありえるのか?
アスラン・ザラだって二人いるじゃねえか。まあ片方はなぜか『?』があるし離れてるが。」
「偽物とかクローンの十条姫和の線は?」
「ううん。偽物とかもう一人の自分とか、そういうのはなかったと思う。」
少なくともそう言う線はないはず。
もしかしたら新種の荒魂でそういうのがいる可能性もあるが、
だとしても十条姫和の名前で載るとはあまり思えなかった。
「ま、二人いたところで何がどう変わるかと言われると分からねえがな。
もう一人の十条姫和に会うまでは正解なのかどうかも判断がつきゃしねえ。」
味方が増えたかどうかで言うと、
暴走していた時期がある姫和では少し怪しくもある。
此処にいる彼女はタギツヒメと戦う前の過去のようなので、
そことの差別化で暴走してた時期のを呼んだ、なんて話もありうる。
実際に会ってみなければその辺の答えは出てこないだろう。
「アンクさん。姫和ちゃんが戦ってた場所って覚えてますか?」
「覚えてるが、まさか向かうつもりか?」
「姫和ちゃんの腕、もし繋がるなら回収しておかないと。」
件の危険人物はどこかへ行ったにせよ、
近くにまだいる可能性は否定しきれない。
今のメンツで行くには危険な行動になるだろう。
「腕を回収したところで此処じゃ繋ぎようがねえだろうが。」
「いいや、あるぜ。可能性が。」
この殺し合いには魔法やソードスキルが支給される。
つまり、リュージの使う異能の可能性もあり得る話だ。
王によって一度腕を切断されたことがある彼ではあるが、
別のクランのカエデが持つ異能、薬師恩寵(ヒーリンググレイス)ならば、
切断された肉体であっても損失してない限りは元通りに修復ができる可能性がある。
「敵が持ってたら最悪だが、希望はまだ見いだせる範囲だ。
それに、悪い言い方になるがそこには支給品がたんまり残ってんだろ?
今後のことを考えると向かわないという理由にはならねえからな。」
どれほど長期戦になるか分からないし、
敵に支給品を奪われてはこちらが苦しくなるだけだ。
死体漁りとは趣味が悪いが、今やっておくに越したことはない。
「チッ、アイスは当分お預けか……仕方がねえ、
こっちも体力がねえからな。暫くの間は付き合ってやるよ。
だが時間も経ってる。腕はともかく支給品の期待はそこまでしねえことだな。」
食堂ならばアイスの一本や二本あろうだろうと思ったが、
結局見つからないままアンクは二人と共に先ほどの戦場へと向かう。
最優先のものが腕と言う、傍から見れば奇妙な理由によって。
【エリアE-6/久留間運転免許試験場食堂/9月2日午前6時】
【アンク@仮面ライダーオーズ】
状態:右腕を失った十条姫和に憑依
割れたタカメダル@仮面ライダーオーズ
財団X製の鳥系コアメダル@仮面ライダーオーズ
服装:現地調達
装備:なし
令呪:残り二画(姫和)
道具:ホットライン
思考
基本:この女の身体を使ってこのしみったれた儀式に抗う。
01:もしこの女の知り合いも呼ばれていたら協力させる。
02:映司、アイツまさか下手うったんじゃないだろうな?
03:とりあえずアイスでも探したいが当分お預けか。
04:こいつら(可奈美達)をさっき(姫和に憑依した場所)へ案内する。
参戦時期:本編死亡後
備考
※あくまでアンクはNPCモンスターなので名簿には十条姫和の名前のみが載っています。
※泉信吾の肉体を使っていた時のように怪人態への変身は問題なく可能です。また、姫和と表面的な記憶を共有できます。
なので刀使ノ巫女に関する知識をある程度入手できています。
逆に姫和も仮面ライダーオーズに関する知識は少しは得れているはずです。
※ある程度回復すれば姫和の意識も戻りますが、今は無理なようです。
※元々着ていた服は下着以外は放棄しました。
【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:出血多量(処置済み)、疲労(大)、右腕欠損(肘から下)、気絶
服装:現地調達
装備:なし
令呪:残り二画
道具:なし
思考
基本:このゲームを脱出し、母の敵を討つ。
00:まだ何も成していない。死ぬわけにはいかない。
01:……
参戦時期:少なくとも一期十一話より前
備考
※支給品の入ったリュックを自分で破壊しました。
【前坂隆二(リュージ)@ダーウィンズゲーム】
状態:健康
服装:Dゲーム時のもの、防弾装備@ダーウィンズゲーム(ただし、スカルフェイスはなし)
装備:ブラックテイル(弾数7/9)@バイオハザードRe:4、予備の弾(27発)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3(自分の分0〜1、五大院の分0〜2、五大院の方には確定で武器が一つはある)、SA・ホットライン
思考
基本:Dゲームじゃないみたいだしとりあえず様子見。
00:可奈美とアンクと行動する。
01:薬師恩寵の異能を持った奴を探す。
参戦時期:少なくともエイス壊滅以降〜(ダーウィンズゲームの方における)グリード出現前
備考
【衛藤可奈美@刀使ノ巫女】
状態:迷い、刀傷(軽微)
服装:美濃関学院制服
装備:岡田以蔵の刀@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、富岡義勇の日輪刀@鬼滅の刃、SA・ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。
00:人は斬らない……できるの?
01:リュージさんと行動。
02:仲間やタギツヒメと合流したいけど、姫和ちゃんが二人ってどういうこと?
03:薬師恩寵の異能を持った人を探す。
参戦時期:アニメ本編終了後
備考
※岡田以蔵の刀のソードスキル『始末剣』により、
大半の水の呼吸のソードスキルを覚えています。
以上で投下終了ですが、
候補作時点ではアンクの状態表では
※あくまでアンクはNPCモンスターなので名簿には十条姫和の名前のみが載っています。
と表記されてますがWIKIのキャラクター名簿では
キャラクター側がホットラインのアプリで閲覧できる名簿です。
と書いてありなおかつアンクと書かれているため、アンクとして書いてます。
問題がありましたら修正します。
◆EPyDv9DKJsさん、素敵な作品をありがとうございました。
アンクの名簿dネオ扱いに関しては完全に私のミスですね。
wikiの方で名簿と作中での描写に会う形で修正させていただきます
ロロ・ランペルージ 糸見沙耶香 タギツヒメ 黒崎一護 予約します
投下します
戦国時代より参戦し、その上で常人を超えた体躯を持つ秀吉にとって、
ホットラインの情報解禁は少々操作に手間取ってしまうものではあった。
その気になれば軽く握るだけでホットラインなど破壊できてしまう握力。
こういう時こそ右腕となる半兵衛がいればと願うところもなくはない。
「我の関係者は家康……小僧だけか。」
知己とも呼べる人物。信長や半兵衛を想像していたが、
出てきたのは徳川家康ただ一人であり、その存在に鼻で笑う。
彼の思う家康とは、情を掲げて天下を取ろうと言う甘い『少年』である。
本多忠勝と言う武力は使えるが、本人は余りにも弱い。雑兵よりはよほど強いので、
彼としてはこの舞台においては使える人材、その程度の認識でしかなかった。
無論、彼が天下統一を果たして、
海外まで武力で天下を治めんとした際に立ちはだかったのが、
家康であったという未来など知る由もないことだ。
「学び舎か……我の時代とは比べ物にならぬほどに発達しているな。」
雪原エリアにいた秀吉を待っていたのは、
雪原にて唯一建っている建物、美濃関学院だ。
乱世と比べ、精度の高い技術で建築されている建物であることは、
秀吉の目から見ても分かるぐらいに建築技術の差がある。
『我が名は……』
「む?」
何やら遠くで声が聞こえ、
そちらの方へと歩を進めていく。
向かった先は食堂。窓から覗く形だが、
食堂に置かれているテレビからの放送が耳に届いた。
二メートルの巨躯で体格もがっちりとしている秀吉にとって、
一般的な入口は壊さずに入ることは難儀……などするはずもなく、
「フン!」
ガラス窓を拳から繰り出す風圧だけでぶち破り、破片を散らす。
バラバラになったガラスを踏みながらテレビに映ったものを見やれば、
最初の舞台で羂索へと歯向かった人物が一人、ルルーシュと綾小路が映っている。
テレビが何かは知らないが、遠くの場所を映すものであるということは、
何となくであるが想像はついた。
『これで私が諸君らに与える力の程を理解できたことだろう。
力ある者よ!我を恐れよ!
力なき者よ!我を求めよ!
このバトルロワイヤルは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが裁定する!
私は会場内のテレビ局で待っている。
諸君らの賢明な決断を期待する』
一通りの演説が終わり、画面に映るのは険しい顔の秀吉のみ。
「力ある者は恐れよだと? ルルーシュ……愚かなのは貴様の方だ。」
力を求め、ねねと言う自分にとっての弱点を殺し、
覇道を唱えた秀吉にとって、今や恐れるものなど何一つとして存在しない。
仮にあるとすれば友の半兵衛の死だが、それもここにあらず。
ルルーシュ如きに思うことなど、覇道の邪魔をする敵でしかない。
元居た世界の因縁を消化しつつ、自分に与する者を集める算段。
少なくとも甘美な提案であるとは秀吉も思う。最悪レジスターが一つあれば、
ルルーシュと綾小路、基仮面ライダーの傘下に入れるとアピールは十分な効果だ。
矮小な考えを持った弱者が庇護下に入るのは、想像するに難くないことだろう。
ならばこちらも作るしかない。ルルーシュには大きな先手を取られてしまったが、
この催しを乗っ取った気でいるあの男を含め打破するための軍を築く必要がある。
「問題は奴の命令を順守させる異能の瞳か……」
サザーランドの動きは確かに機敏ではあったが、
類似した姿を持つ戦国最強、本多忠勝には遠く及ばないだろう。
だからと言って仮面ライダーを、異世界の力を侮るつもりはない。
特にルルーシュには視線を向けた相手に命令を順守させる力もある。
羂索には通用しなかったと言えど、その力を防ぐ手段を探すのは必須。
(少なくとも互いに視界に入ることと、遠隔では発動できないことか。)
遠隔で発動できるのであれば、今の画面を見た時点でルルーシュに洗脳されている。
それをしなかったということはできないということだ。できない振りをするにしては、
不特定多数を味方に引き入れるチャンスを不意にしてる以上、できないのが正しいのだろう。
互いに視界に入ることは、最初の二人がどちらも顔を向けていたことによる推測であり、
確信を持っているわけではなかった。
(問題はいかようにして視界に入れぬことか……確か、
堀北と言う小娘と奴の射程は一間(約1.8m)以上はあったはず。
羂索のことだ。命令の度合い以外にも制限はかけているやもしれぬが、
奴の瞳の異能の有効範囲は、相当な距離を見積もった方がいいだろうな。)
いくら兵をそろえたところで瞳を使えば全てが逆転する。
射程、命令の内容、命令できる人数。いずれも不明のままでは、
いかに秀吉と言えど対抗策を出そうにも出せない状況へと陥っていた。
この時半兵衛であれば、妙案を考えていたのかもしれないが、いないのでは栓なき事だ。
(テレビ局が何かは知らぬが、建物にいるのならば都合がいい。
我が剛腕であれば、建物の一つや二つ倒壊させるなど児戯に等しいことだ。)
歓迎の準備をしているとは言っていたが、
そんなもの正面から正直に挑むつもりなどない。
建物を倒壊させれば、それだけで沈められる可能性はある。
もっとも、それで倒せるなどとは微塵も思ってはいなかった。
変身こそしなかったがルルーシュにも綾小路とは別のドライバーがついていたのは確認済み。
あくまで目論見を潰すだけだ。そこからは異能を相手にどう立ち回るべきか。
(ロロもブリタニアの名を持ったな。血縁ならば知ってるやもしれぬ。
或いは、その間に名を連ねている連中も知っている可能性が……)
「あ、おい見ろよスパナ! やっぱ人が……ってでけぇ!?」
どうするかを思案していると、
窓の割れた音に気付いた陽介とスパナがそのまま中へ入り込む。
頭一つは超える体躯を前に、陽介は少々腰が引けた状態になる。
スパナは変わらず仏頂面で、特に動揺と言うものは見受けられなかった。
「……我が名は豊臣秀吉。日本(ひのもと)を統一する者の名だ。」
「豊臣秀吉って、あの秀吉か!? けど歴史の秀吉って確か……」
「ひょうきんで小柄、と言うのが一般的な説だな。
だが、ジョークで言ってるようには見えない覇気だ、この男は。
天下統一を果たした人間、と言う見方をすれば納得の外見ではあるか。」
歴史の授業で学ぶ秀吉とはかけ離れているが、
天下統一を成し遂げた人間、と言われれば納得が行く。
ひょうきんで愛嬌のある人物で猿と呼ばれていた、
なんて想像を丸ごと吹き飛ばすかのような外見ではあるが。
「ほう、我は異なる世界で天下統一を果たせたか……もっとも、
未来が分かったところで驕るつもりなど欠片もないが。
我の未来のことなど些事よ。貴様らに一つ問おうか。
この豊臣秀吉の軍門に下り、羂索を討ち果たす気概はあるか。」
「何か聞こえはいい気がするけど、スパナ……どう思う?」
この体躯と自信を見れば、
虚勢や欺瞞と言ったものは感じられない。
本気で成し遂げるつもりでいるということは分かる。
腕を組んでいるだけなのにその荘厳さ、威厳は損なうことなし。
武帝と呼ぶに相応しい覇気を前に、陽介はわずかばかり悩む。
調子に乗ってると痛い目を見ることについては、割と経験済みだ。
だから冷静な判断ができるスパナがいると、何処か心強くもあった。
「悪い提案ではないが……下らなかった場合はどうするつもりだ?」
「知れたことを。軍門に下らぬのであれば排除するまでよ。
恐怖に屈し、ルルーシュに首を垂れる可能性は排除せねばなるまいからな。」
「ちょ、ちょっと待て。ルルーシュって、最初にいた奴だよな? どういうことだ?」
テレビを見てない陽介たちには分からない情報であり、
物騒な言葉はいったん置いておいて、秀吉からテレビの情報を得る。
ルルーシュと綾小路がテレビ局にて待ち受けていると。
「笑えないジョークだ。」
「ああ、確かに笑えねえな。ルルーシュの奴何考えて……」
味方を増やすにはいいかもしれないが敵も増やしかねない言動。
彼のやりたいことが何なのか理解しかねる陽介とスパナ、
「いいや。俺はどちらも笑えないジョークのつもりで言った。」
ではなかった。少なくともスパナにとっては。
ルルーシュの提案も、秀吉の方針も。どっちも手に取るに値しない。
そうはっきりと告げ、陽介が驚嘆の声を上げる。
「な!? お、おいスパナ!?」
「従わない奴は死ぬ。そんな恐怖政治に誰がついていく。」
秀吉に賛同することも、ルルーシュに賛同することもしない。
どちらもやってることは、ただ力を誇示して屈服させてるだけだ。
力に囚われてケミーを血眼になって探す市民と何が違うのだろうか。
それを受け入れなかったスパナにとって、どちらにつくつもりもなかった。
「それは貴様の死を意味するものになるぞ。
言ったはずだ。ルルーシュの糧になる可能性は摘む。
我が軍門に下らぬと言うことは、それを意味している。」
「断る……鉄鋼。」
『ガキン!』
『ウィール!』
『MADWHEEL! ゴキン!』
『ヴァルバラッシュ!』
『TUNE UP! MADWHEEL…』
「まあ確かに、入らないだけで殺すってんなら、
俺もお断りかねぇ。戦国時代の人間には普通かもしれねえけど、
今は平成の時代だ。今更そういう考え持ち込まれても人はついてこねえぜ。
時代のニーズに適応できなかったら、置いていかれちまうのはいつの時代もあるだろ!」
「俺の時代は平成を超えて令和だがな。」
変身を終えたヴァルバラドの隣で、熟練スパナを両手に構える陽介。
双方ともに秀吉の異を唱える側として認識せざるを得ない状況だ。
だが秀吉はこれを愚かだとは思わない。何故ならば、説得力がないから。
ルルーシュのようなパフォーマンスもせず、口先だけで人は動かせない。
「ならば理解するがいい。我の力をッ!!」
言葉を紡ぐと共に籠手を外し、
支給品の中から金色の籠手を取り出す。
周囲に日輪のような装飾が施された籠手を装備し、
準備万端と言わんばかりに両手をぶつけ合わせる。
その衝撃だけで周囲に影響を及ぼし、ガラス片は舞い、
テレビの画面には亀裂が入り、二人は勢いだけで吹き飛びかねない。
マルガムやシャドウと戦ってきた彼らだが、その強さは間違いなく別格だ。
スパナからすれば、下手をすれば冥黒王に追随できる強さと認識し、先手を取る。
フォトンバレトを連射しながら肉薄。これを秀吉は籠手だけで防ぎ、
ヴァルバラッシャーを振るうも、これもまた籠手で凌ぎ甲高い音だけでびくともしない。
「どうした。その程度では我に傷一つつかんぞ。」
このまま押し返されるだけで吹き飛ばされる。
そう確信せざるを得ない状況に追い込まれたスパナ。
「ペルソナッ!」
無論彼一人でならばの話だ。
ジライヤによるソニックパンチが秀吉の顔面を狙う。
顔面は多数の急所だ。いくら鍛えてしても限度がある。
故にもう片方の籠手で防いでいると、即座にスパナに距離を取られ、反撃に失敗。
「それが貴様の力か。いかようなものか見せてみろ。」
「見せるために使ってんじゃねえけどな!」
翻弄するようにジライヤが上空からのパワースラッシュ。
先ほどの攻撃よりもキレが増しており防ぐより回避を優先し横へ飛ぶ。
回避した先にはスパナが待ち構えており、足元を狙いヴァルバラッシャーを振るう。
着地と同時に跳躍で回避されたが、空中に出たところをフォトンバレトとガルダインが襲い掛かる。
左右からの同時攻撃かつガルダインは風で見づらい。防御するには困難な技ではあったが、
「ふん!」
秀吉は右腕を振るう。
振るうだけで豪風がすべてをはねのける。
フォトンバレトはあらぬ方向へと飛んで天井や壁を破壊し、
ガルダインは風に打ち消されて消滅、二人はその豪風に耐えきれず、
窓ガラスを突き破りながら外へと派手に追い出されてしまう。
他にも食堂にあった椅子や机が乱雑に音を立てながら散乱する。
「なんて風圧だ……!」
変身してるだけダメージは軽微なスパナではあるが、陽介は別だ。
背中に突き刺さった破片と打撲の痛みに耐えながら立ち上がる。
でたらめが過ぎる。攻撃を躱す以上奴にもダメージは与えられるはず。
しかしそれを許さぬ圧倒的な武力。一人で軍と相対できるであろう婆娑羅者。
こんなのが史実の偉人だとすれば一体どんなパワーバランスだったのか。
不思議でしょうがないと内心でごちる陽介。
「よもや守勢に回るつもりか?」
学院のコンクリート壁をスポンジのように破壊し、
そのままコンクリートの散弾として二人に襲い掛かる。
ヴァルバラドでも被弾すればダメージが免れないものだ。
陽介も必死に風の攻撃で攻撃の軌道をそらしつつペルソナでガードし、
何とか肉体へのダメージを避けるが、ペルソナのダメージは持ち主にも伝わる。
先ほどまでの闘志に満ちていた表情は、今や苦悶の表情に満ちていた。
「並の兵士よりもよほど強いらしいな。
連携や判断力も別世界の即席としては悪くない。
我の力を知った今こそ、再び機会を与えてやろう。
我の軍門に下るならば、今までの狼藉は水に流そうぞ。」
力量も、その差もこの短時間で十分示せたはず。
ルルーシュのように大々的なパフォーマンスにはならないが、
十分にこの殺し合いを終わらせる力を示せたはずだと。
後は当人らが屈服すれば、それで済むだけの話である。
……しかし。
「ッ……力に囚われ、溺れ、その力を人へと向ける。俺はそういうやつらを見てきた!
そんな力を肯定する者しか置かないお前の覇道の先にあるのは天下じゃない。ただの破滅だ!!」
立ち上がりながらヴァルバラッシャーを袈裟斬りに振るう。
立ち上がる動作を入れながらにしては素早い動作ではあるものの、
秀吉にとってはその程度は児戯に等しく容易く籠手に阻まれる。
「全く同感だな……こんなやり方じゃなくても、
人はついてくるんだよ。俺はそういう奴を知っている!」
たとえ人を殺した犯罪者であっても、
罪を認めさせるためその命を救いに行く。
彼のおかげで自分と向き合い、助けられてきた。
そんな彼に惹かれて、皆事件に協力した部分もあるだろう。
だからこんなやり方は認めるわけにはいかず、ペルソナを行使する。
「力量の差も理解できぬか。愚かな。」
スパナヘ襲い掛かる右フック。
直撃すればいくらヴァルバラドでも致命傷は免れない。
それを華麗に回転しながら躱し、肩の鎧へとヴァルバラッシャーを叩きつける。
鎧のおかげで鈍痛と火花が散る程度では済んだものの、秀吉には疑問が残った。
先ほどよりも動きがよくなっていると。
「ヘヘ、俺のジライヤが攻撃一辺倒と思うなよ?」
マハスクカジャ。
味方の命中率、回避率を上げるスキル。
これによりスパナは強化されて今の行動に至れた。
とは言え、ダメージとは程遠い攻撃にしかならない。
続けざまに逆袈裟斬りを見舞い、鎧越しに続けて鈍痛を与える。
少しばかり苦悶の声は上がったものの、言い換えればそれぐらいだ。
「多少なりともやるようだが、素直に従うべきだったな。
その程度の小細工では我を倒すなど───」
「へえ。じゃあ俺も参戦していいかな?」
秀吉の言葉を遮るとともに、
校舎の外へ追い出された二人の背後より姿を見せる、一人の参加者。
戦場に似つかわしくない、ヘラヘラとした表情は秀吉の眉間にしわが寄る。
(何となく北上してみたけど面白いことになってるね。)
十代に吹き飛ばされた後、
ちょうど近くに施設があったので雪原までやってきた真人。
名簿には虎杖も漏湖達もいない。伏黒も恵ではないので除外。
つまんねー!! なんてことを内心でごちっていたところ、
何やら戦いの音が聞こえてきたのでやってきたら中々に面白い状況だ。
デカブツ(秀吉)は改造人間にしたら中々強そうな素体に見えるし、
残りの二人も何やら特殊な力を持っていてちょっとした興味が湧く。
「その参戦はどちらを意味する? 恭順か? それとも我に挑むつもりか?」
「んー……じゃあ、此処は後者で。」
人差し指を顎に当てながらも、
下卑た笑みと共に即座に秀吉へと肉薄。
右腕を伸ばしその体に触れようとするも、
「露骨だな。貴様の手押し相撲に付き合うつもりはない。」
武器も何も持たず、ただの素手の張り手。
普段の秀吉であれば受けたかもしれない攻撃だが、
ギアスと言う異能を見たことにより、なんともない攻撃にも警戒心をしっかり強めていた。
「俺術式言ってないのに、そんなばれるもんなの?」
チェ、とアヒルのような口で不満を口にする。
無為転変は当たれば簡単に殺せるのに中々うまくいかない。
今回こそはと思ったのに今度は当てさせてくれそうにもない相手だ。
「術式か。仮面ライダーともペルソナとも違う。
大方素手で触る必要があるのだろうな、その様子では。」
「えー! 術式の開示ぐらいさせてくれよ!
まあいいけどさ。こういう使い道もあるから、ね!」
右手を突き出すと同時に、拳が肥大化。
秀吉の腕どころか秀吉の上半身をも超える質量をぶつけられ、
後方の壁を幾重にも突き破り、地面を削る形で動きを止める。
「そこの二人ー! この筋肉ゴリラ倒すの手伝ってくれない?
あ、俺……先生って名簿に載ってるんだけど名前はあんま気にしないでね。」
「胡散臭い奴だが、秀吉を倒すチャンスだ。行くぞ。」
「お、おう。けど殺しかぁ……あんまり気分よくねえぜ。」
倒したところで覇道の歩みを止めることはないだろう。
となれば殺すしかない。三人になったことで現実味が帯びてきて、
少しばかり不安になりながらも、ちゃんと仕事はこなすことにする陽介。
マハスクカジャで全員の支援を行いながら先行した二人の後を追う。
「ンンン〜〜〜!!」
手を大量の刃に変えながら振り下ろす。
横へと飛ぶことで壁が破壊されるだけにとどまり、
横へ飛べば秀吉は壁を蹴り飛ばし、再び壁の破片を飛ばす。
真人が掌を物理的に大きく広げ、弾丸を防いで上空からスパナの一撃。
それを腕を掲げ防ぐ秀吉だが、真人が破壊した壁から陽介が飛び出しガルーラを放つ。
振り払おうと考えたものの、真人に隙を晒す方が危険だと判断しそれを甘んじて受ける。
疾風を受けて軽く地面を削りながら後退し、此処で初めてダメージらしいダメージを与えた。
無論この程度で喜ぶことなどしない。
「足元注意だよ、筋肉ゴリラ。」
再び壁を破壊しながら、細長いドリルが秀吉の足を襲う。
バックステップで距離をとると同時にそのドリルを踏み潰す。
踏み潰されたことで真人の片足はちぎれるがすぐに再生させ、
破壊した壁から廊下へと立ち、両手を刃へと変えながら肉薄。
彼の斬撃はコンクリートに傷跡を残すぐらいの鋭さを持っており、
秀吉が避けるたびにコンクリートの地面や壁に傷が刻まれていく。
「ふん!」
「ガッ……!」
しかし隙を突いた秀吉のアッパーカットが炸裂。
天井を吹き飛ばし、さらにその上階の天井も突き破る。
「隙だらけだ!」
真人が偶然とはいえ作った隙を見逃さないスパナ。
横薙ぎに振るった刃が秀吉の鎧に火花と共にわずかにヒビを入れた。
直接的な傷ではないにしても、何度も鈍痛を受けたことで秀吉の表情も僅かだが焦りが見受けられる。
「そこのヒーロー、下がった方が安全だよ?」
上階から落ちてきた真人が両手を合わせてから広げる姿を見て、
何かが来ると判断しすぐに後退し範囲外へと出る。
「多重魂 撥体!!」
二つ以上の魂を無理矢理融合させることで発生する拒絶反応を利用。
魂の質量を爆発的に高めて、それを相手に向け解き放つ。
廊下を埋め尽くすような怪物の波が秀吉へと押し寄せる。
「な、なあ……あれ悪役が使う技っぽくねえか?」
「かもしれないが、頼れるのも事実だ。」
明らかに敵が使いそうな技ではあるものの、
戦況を変えてくれたのは彼であることもまた事実だ。
そして当の秀吉はと言うと、
「我に、砕けぬものなし!!」
なんと拳のラッシュで迫る攻撃をすべて蹴散らす。
多重魂撥体の攻撃はノーダメージで終了し、真人は後退し二人と合流する。
「まずいねこれ。あれって早々撃てるもんじゃないんだよ。
あれでちょっとはダメージをと思ったのに、まさか全部殴り飛ばすなんて。」
ちょっと想像はしていなかった。
近くの壁を壊してから迫ってくると思っていたのに、
真正面から対抗してくるとは全く想定できないことだ。
「先生、スパナ。とりあえずもう一回マハスクカジャをかけて……」
「いや、その必要はないさ。」
今にも迫ってきそうな秀吉を前に、
余裕の不敵な笑みを浮かべる真人。
「どういうことだ?」
あれだけ人体を改造できるのだから、
何かしら策があるとしてもおかしくはないとは思う。
「今こそ君の出番だよ、スパナ君。君が動揺を誘って隙を作るんだ。」
「……俺にできるとは思えないがな。」
「いいや、できるさ。だって───こうするから。」
背中をバシッと叩かれる。
一体何事かと思っていたが、
『露骨だな。貴様の手押し相撲に付き合うつもりはない。』
秀吉の言葉を思い出し、そういうことかと離れようとするスパナ。
「遅いよ。無為転変。」
だが既に手遅れだった。
ヴァルバラドの姿がぼこぼこと膨張し、変化を始めていく。
少し薄汚れたヒーローと言う見た目をしていたはずのヴァルバラドが、
今では薄汚れてるせいで、より怪人のような歪な姿へと変貌を遂げていく。
「……スパ、ナ?」
陽介の中で疑問で埋め尽くされる。
何で? このタイミングで? 勝った瞬間の方が効率がいいだろ?
今この場で、秀吉ではなくスパナに術式とやらをやる意味が分からなかった。
秀吉も同様に疑問だった。やるならばスパナだけではなく陽介もだろうと。
態々スパナだけを改造する理由が皆目見当もつかなかった。
「プ、アハハハハハッ!! やっぱ仮面で見えない顔より見える顔だよねぇッ!」
腕と顔を翼へと変えながら真人は嗤う。
陽介に何もしなかったのは単に『その顔が見たかった』だけだ。
スパナを改造人間にした理由なんて、そんな程度でしかない。
二人とも改造人間にしたところで秀吉はただ殺すだけだろう。
そんなのつまらない。どうせなら改造された奴を見た奴の反応が見たい。
目論見は大成功。ついでに無為転変はちゃんと人に通用するところも見れた。
ならもう彼らに用はない。無駄に改造人間を消費するわけにもいかないし、
とっとと退散するに限る。陽介は放っておいても死ぬのが目に見える。
「ほら式神使い。反転術式を使いなよ。
できたらの話だけどね。じゃあ、後はご自由にやりなよ筋肉ゴリラ!」
「な、おい待て!」
静止の声を上げる陽介だが、
スパナが声にもならない声を上げながら陽介へと襲い掛かる。
ヴァルバラッシャーを持っている上に、変身してる時点で人間以上のスペックを持つ。
殴る蹴るを受けるだけでも手痛いダメージになるので、とっさに転がるように回避を行う。
その間に、無言で秀吉が両手に壁のコンクリートをぶち抜いて真人に投げ飛ばすが、
元より変態するのが真人の無為転変。飛ぶことも慣れており、
投石のほとんどは躱されてしまう。
「スパナ!? おい冗談だろ!? おい!! 戻れよ、ディアラマかけてやっから!!」
回復スキルなら元に戻るのではないか、
そう試すものの元に戻る気配はない。
できることは何とかしてヴァルバラッシャーからカードを引き抜き、
変身を無理やり解かせるが、その異形の姿は悍ましいものになっていた。
はっきり言ってみるべきではなかった。そう断言できるような異形に成り下がっている。
最早これは人間ではない。そう認識するまで時間はかかることはなかった。
そんな彼の頭をぐしゃりと、秀吉の拳が叩き潰す。
追いつかない状況に、陽介は思わずへたり込んでしまう。
死んだ。スパナが死んだ。そのはずなのに脳が理解してくれない。
いや、理解したくない。こんな怪物にされて殺されるなんて。
たった二時間の関係だ。彼のことなど仲間と敵以外に知るものはない。
あるとすれば、仏頂面だが悪い奴じゃない。素直じゃない直斗のような。
こんな死に方をしていいはずじゃない人間であるというのは確かだった。
「陽介よ。これが弱き者の末路だ。
よもや今一人で我と戦う気などあるまい。
我に従え。先生を名乗ったあの男も、我が必ず処する。
あのような輩がいるのでは、太平の世など夢のまた夢よ。」
「……クソオオオオオオオオオオッ!!」
秀吉の声など届かず、
ただ仲間を失ったことに慟哭の声を上げる陽介。
どうしようもなかった。トラフーリで逃げることはできただろうが、此処は雪原の上の学園。
屋上から見渡されたら簡単に見つかってしまうし、当然立ち向かえば死ぬしかない。
仲間を殺され、その仇にも満面の笑みで逃げられ、挙句の果てに一度は否定した兵士にならざるを得ない。
魔術師の逆位置。それは「準備不足」「混迷」を意味する。
【黒鋼スパナ@仮面ライダーガッチャード 死亡】
【エリアD-11/美濃関学院/9月2日午前6時】
【花村陽介@ペルソナ4】
状態:疲労(中)、背中にガラス片、ダメージ(大)、精神疲労(特大)
服装:八十神高校制服・冬
装備:熟練スパナ@ペルソナ4
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いはしない
00:???
01:何なんだあのヤベー(ザギ)のは。
02:先生(真人)の野郎は許せねえ。
03:つかなんでペルソナ使えるんだ? テレビの中じゃねえのに。
参戦時期:少なくとも直斗が仲間に加わって以降。
備考
※コミュは採用され次第書き手にお任せしますが、
最後まで行ってません(ペルソナがスサノオではないため)
※スパナと情報交換しました。
【豊臣秀吉@戦国BASARA2】
状態:疲労(小)
服装:いつもの服装(籠手の部分は別)
装備:神旺エクス・アリスタルコス@グランブルーファンタジー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:天下統一の邪魔はさせぬ
01:異界の人材や技術、兵器は出来ることならこの手に収める。
02:あの黒き覇王とは何れ雌雄を決する。
03:陽介、我が軍門に下れ。
04:此処で豊臣軍を築いてテレビ局のルルーシュを倒す。
だがそれには情報を集めねばならぬ。
参戦時期:姉川蹂躙戦の後
備考
※エクス・アリスタルコスによって攻撃力が強化されてます。
【真人@呪術廻戦】
状態:ダメージ(中)、楽しい、両腕を翼に変形
服装:いつもの
装備:改造人間@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:いつも通りにする。呪いらしく、人間らしく狡猾に。
00:さて、どうしようかな。
01:そんなホイホイ宿儺もどきがいても困るんだけどね。
02:やっぱ呪いはこうでなくちゃ。
参戦時期:少なくとも渋谷事変よりも前
備考
※魂の輪郭を知覚していればダメージはより通りますが、
魂の輪郭を知覚してなくてもダメージは通るようになってます。
※改造人間が没収されてない代わりに支給品が1枠減ってます。
※エリアD-11美濃関学院にヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャードマッドウィールのライドケミーカード@仮面ライダーガッチャード、E・HEROネオス@遊戯王OCG、黒鋼スパナのリュック(ランダムアイテム×0〜1、ホットライン)、秀吉の籠手があります
※美濃関学院はかなり破壊されてます。
・神旺エクス・アリスタルコス@グランブルーファンタジー
豊臣秀吉に支給。光輝燦然、秋霜烈日。握りしめた拳に鎧う日輪の輝きは、
遍く闇を照らし罪悪と宿業を光輝の下に曝し給う。罪悪滔天、一罰百戒。
砕き散らすは命に非ず。其を正すために悪心を討つのみ。
光属性の参加者の攻撃力を上昇させる効果を持っている。
スキル2「燦輝煌后の神性」についてはロワ上で再現が難しいため割愛。
なお、豊臣秀吉はゲーム上では光属性。
以上で投下終了です
緑谷出久、キリト、成見亜理紗、軽井沢恵、魔王グリオン 予約します
アリサ・ミハイロヴナ・九条、松阪さとう、勇者アレフ 予約します
投下します
「はぁあああーーーっ!」
亜里紗の大鎌が地面を叩き割る様に振り下ろされ、二体の仮面ライダーを醜悪に歪めた様な怪人たちが飛び退く。
それはつまり、中空で身動きが取れなくなったことを意味する。
「黒鞭!」
デクの両腕から黒いエネルギーで出来た鞭が迫る。
その先端にはエナジーアイテムが掴まれている。
<<混乱!>>
バッドステータスを付与された2体は平衡感覚を失い、まともな着地も出来ずに地面と熱烈な再開を果たした。
「キリト!」
「バーチカル・アーク!」
闇妖精の羽の飛翔の勢いも上乗せしたV字の2連撃が炸裂する。
キリトが再び空に舞うと2体の異形は呻き声を最後に爆散し、そこには色を失った二枚のカードが残された。
「これって……」
「再利用されないための細工、ってことかな?」
カードを回収しながらデクが推測を口にする。
「にしても、結構遠くまで来たわね。
今どの辺なのかしら?」
「そろそろホットライン解禁の時間だからその時にわかるんじゃないか?
てか、このまま協力する気あるのか?」
「え?
……べ、別に!
ただホットライン見てる間の見張ぐらいは手間賃代わりにしてもらうから!」
「……そうかよ」
今のやりとりに説得の光明を見たでくだったが、視界の端に座り込んだ人影を見つけて直ぐに切り替える。
「大丈夫ですか!?
怪我は?自力で立てますか?」
デクたちがたどり着いたのは租界のショッピングセンターの広場、最初の2時間でゼインによる容赦ない正義の行使が行われた場所だった。
「わ、私……」
その場にずっと残っていた少女、軽井沢恵は幸か不幸かNPCモンスターや他の参加者にで会うことなく最初の2時間を終えていた。
『……現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。
おはよう諸君。
一応、はじめましてと言っておこう。
私の名前はラウ・ル・クルーゼ。
ザフト軍クルーゼ隊隊長にして、羂索から君たちプレイヤーの人選に関してかなりの裁量を与えられていた者だ』
だが、その悪運も、人類全てを裁く権利を行使する魔人により終わりを迎える。
今まではプレイヤーの肩慣らしにして、運営側の最後の詰めをする為の前哨戦でしかなかったのだから。
『これよりこのバトルロワイヤルはより一層加速していく!
最強のNPCモンスターも投下され、君たちはスタンスに関わらずは否が応でも戦わざるを得なくなることだろう!
掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』
映像が終了し、ホットラインを確認する前に落ち着ける場所に移動しようと、デクかキリトがどちらともなく提案しようとした時だった。
再び広場真ん中のモニターに映像が流れ出す。
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』
ルルーシュ。
その名を知らない参加者はほぼ居ないだろう。
一番最初に集められた場所で羂索に啖呵を切った1人。
恐らくは洗脳に近い胃能力を持つ少年。
『今より我が決定を伝える。
私が羂索たちに代わってこのバトルロワイヤルを支配する。
諸君らには私に膝をつくか、弓を引くか、好きな方を選んでもらう』
少年は、自分こそがこの場で最も偉いのだと誇示する様に自らに仕える者に与えるという力をひけらかした。
(力を与えて縛り、心酔させて他者の手で邪魔者を始末する……まるでオール・フォー・ワンだ)
ルルーシュのやり口はデクは自分に宿る〃個性〃いずれ撃ち倒すべき存在と宿命づけされたスーパーヴィランの存在を思い出した。
そして軽井沢恵にとってこれは最悪の知らせだった。
なぜなら……
『清隆!変身せよ!』
『イエス。ユア・マジェスティ』
最愛の恋人が、綾小路清隆が真鍋を斬殺した怪人と全く同じ称号を名乗っているのだから。
「いや……いやぁああああああーーーっ!」
「え?ちょ、ちょっと待って!」
すぐさま追いかけるデクだが、火事場の馬鹿力というやつか、軽井沢の足は運動不足の高校生にしては速い。
しかも、軽井沢の悲鳴を聞いて近くにいたNPCモンスターが集まってきてしまった。
「しまった!」
「デク!飛べる俺が行く!」
「分かったお願い!
成見さん!悪いんだけど……」
「朝ごはん奢ってよね!」
「勿論!」
立ち塞がる4体のグレイスにデクと亜里紗はファイティングスタイルをとった。
どうして清隆があのルルーシュってのに従ってるの?
どうして清隆が私を殺そうとした真鍋や、真鍋を殺したゼインとかいう奴みたいな格好になってるの?
なんで?なんで?なんで?
わからない。わからない。わからない。
動揺を消す為だけの衝動的な行動に意味はない。
ただでさえ限界ギリギリだった精神はガリガリと削られていき、仕舞いにはずっとあの場に止まっていた体力すら使い切り
「痛っ!どこ見て走ってんだよ!」
最悪の遭遇に至る。
「ヒッ!あ……子供?」
「その子供にぶつかっといてごめんもナシかよオネエチャあン」
見た目だけは子供だ。
長いピンクの髪に起伏のあまり見られない身体つきと左右色違いの瞳。
学生服を着ていなければ小学生にすら見えるかもしれない。
だがその言葉遣いと態度はどんなにやんわり言っても汚らしいオッサンそのもので、少女も女性もまるで感じられない。
「な、なによ!
そっちこそ汚ないなりで偉そうに!」
「かっ……ちーん。
汚いなり、ねえ?」
そう言って少女(?)は近くにあったビニール傘と傘置きに手を伸ばし
「『万物はこれなる一者(ひとつもの)の改造として生まれうく。』」
呪文を唱えると傘と傘立ては粘土のように変形し、持ち手より先が四角柱になったゲバ棒に再錬成された。
魔王グリオンにより生み出された偽りのホシノを筆頭とする人形たちは高度な錬金術を扱えるのだ。
「オラァッ!」
軽井沢の弁慶の泣き所を狙って角を立てるようにゲバ棒が振るわれる。
中学時代に受けた壮絶なイジメを想起してしまい、動けなくなった軽井沢に次々ゲバ棒が振り下ろされる。
痛覚が鋭敏に反応し、後も痛みも長く残る妙に手慣れた使い方をする。
「たく、ただでさえ殺しはダリィのなつまんねぇなあええ!」
そう言って冥黒のホシノはゲバ棒を金属糸の鞭に変形させ、横腹を割くように打った。
ブレザーとシャツが破け、痛ましい傷跡が露わになる。
「あっれえぇ?
もしかしてオネエチャンお古だったぁ?」
そう言っていやらしく笑うと傷跡を抉る様に鞭を振い続ける。
傷を暴き、痕を抉り、苦痛を刻みつける。
「おい」
意外と楽しんでしまっていたのか、偽りねホシノはキリトの接近に気付けなかった。
「んだよあんちゃん」
「何をしてるか分かってるのか?」
「見ての通り犬の散歩中だよ。
ほらあ!犬らしくワンワン鳴けえ!」
鞭をより細く、長く錬成軽井沢の首に巻きつけ、尻を思い切り蹴飛ばす。
次の瞬間にはホシノの眉間に短い方のシャドーセイバーが突き刺さっていた。
「それでいいのか?遺言は」
「良いわけねえだろうが」
「ぎっ────」
ホシノは額からシャドーセイバーを引き抜くと、リードにしていた鞭を思い切り引く。
ワイヤーはブレードワイヤーだったらしく、軽井沢の首はあまりに簡単に切り飛ばされてしまった。
「お前!」
「次はあんちゃんがこうなる番だぜぇ!」
額から流れ出る血でも脳漿でもない何かを舐め取りながら短い方のシャドーセイバーでホシノはキリトに斬りかかる。
リーチは短いが小柄なホシノはキリトの有利な間合いを潰す様に距離を詰めて詰めて攻撃してくる。
(本当に嫌な連中を思い出す!)
笑う棺桶(ラフィン・コフィン)。
キリト、そしてこの真贋入り混じるバトルロワイヤルを取り仕切る賢者の1人、茅場晶彦にとっても最初のデスゲーム、ソードアート・オンラインにて数々の悲劇を生んだPK集団。
奴らは揃いの黒いポンチョと短刀で武装していた。
丁度目の前のホシノのように。
「ふっ!」
だからこの手の相手は慣れている。
足元を狙って放たれた一撃を羽の力で飛び上がって避けて顔面に多段蹴りを叩き込み、怯んだ所に剣道で言う籠手を斬りつけ、離した武器を拾われるより早くキックを叩き込んで距離を作る。
「オイタはここまでだ」
「ちっ!あんちゃん容赦ねえな」
奪い返したシャドーセイバーを拾うキリトに舌打ちするホシノ。
そこにグレイスを倒し終えたデクと亜里紗も合流する。
「三対一かよ」
「キリト!」
「悪いデク、間に合わなかった」
「そんなっ!」
「アイツ、なんなの?
頭に穴空いてんのに生きてない?」
「NPCにしちゃ頭が回る。
多分、ギギストみたいな力を持った誰かに造られたんじゃないか?」
キリトの出したギギストの名前に一瞬反応したホシノだったが、すぐにいやらしい笑みを浮かべる。
「じゃあこいつもよく知ってるわけだ」
「カード?まさか!」
スカートのポケットから取り出したカードを身体から生やした金色の拘束バンドで包み込む。
仰向けになった魔獣をヒトガタが捕らえた様な歪な怪人、ケルベロスマルガムに変身した。
「自分が変身した!?」
「我が造物主より頂いた力だ!
これでお前らを餌にしてやる!」
ケルベロスマルガムは炎、氷、嵐の属性を司る怪人で、三体に分裂することができる。
数の不利を覆し炎がキリトを、氷がデクを、嵐が亜里紗を相手取る。
「言うだけあって強いな!」
「喰われる覚悟はできそうかぁ!?」
「冗談!」
鋭い爪と牙、そして各属性の特殊攻撃。
地味に単純なパワータイプしかいないこの3人には相性の悪い敵と言えた。
「どうする?
今倒しておきたいがこのままじゃジリ貧だぞ」
「そんなこと言ってもなんか手はあるの?」
「ある」
デクは3人を囲む様に距離を詰めてくるケルベロスマルガムたちをそれぞれ見据えながら答えた。
「本当?」
「うん。
正確には制限があるから可能性が一番あるって感じだけど。
特定の攻撃でないと倒せない場合は無理だけど、『3人まとめて撃破』とかが条件ならこれでいけるはず」
「わかった。俺はお前に賭ける。
何をすれば良い?」
「逃げて」
「「は?」」
「No.6、煙幕全開!」
デクを中心にマゼンタの煙が噴き上がる。
(アイツらの口ぶりから全員特殊能力があっても単純な殴る蹴るかと思ったが、違ったのか?)
だがこの程度の煙錬金術で……そう考えているとケルベロスマルガムを横切ってキリトと亜里紗が走り抜ける。
(三対一でも苦労したのに陰毛頭を1人残して?いや、反対側か?)
デクにとって、そのわずかな動揺があれば十分だったのだ。
「え?」
体を動かす自由は失ったのに無茶苦茶に動き続け、視界は絶えず歪み続ける。
「ぐぅっ!」
そんな中、腹部を思い切り引っ張られる感覚と共に乱高下する視界が収まる。
マトモになった視界が捕らえたのは黒鞭で自分と分身たちを捕まえるデクの姿だった。
慌てて状況を確認する。
足場はない。
全員中空に浮いており、周りの建物は災害にでもあった様に壊れている。
ようやくケルベロスマルガムたちは自分たちが噴き上げられたのだと理解した。
(こ、このガキ!
殺気のは煙じゃなくて霧か!?
だとしたこいつの力は天候操作か!?)
違う。
そんな御大層な物ではない。
だが、積み重ねだ。
シンプルな身体強化、、運動エネルギーを蓄積、放出する〃発勁〃、そしてマッスル化とジャンプ強化のエナジーアイテム。
特別便利な力は使ってない。
単体なら超人社会では別段特別でもなんでもない力、エナジーアイテムもプレイヤーなら誰でも享受できる恩恵だ。
だが、組み合わせて築き上げれば巨悪をも撃ち砕く最強の矛にもなる。
そのためだけに時を超え、人を経て、何度でも受け継がれ、幾重にも積み重ね、『悪を討つ』という一念の為だけに培われて来た。
そんな力が、当てつけの姿と借り物の力で出来た土人形に負ける道理はどこにも無い。
「インパクト調整……」
「ま、待て!」
「擬似100%……」
「よせ!」
「St. Louis……」
「やめろおっ!」
「SMASH!!!!!」
二撃目の破壊の嵐を避けることは構わず、3体の猟犬は今生最後の空の旅を楽しむ羽目になった。
少し離れた場所でキリトと亜里紗はデクの切札を見ていた。
制限をエナジーアイテムで埋めてあの威力。
もし令呪で全開にしたら99.9秒間あの攻撃が襲ってくると考えると思わず敵に同情する。
「お前の力、デクと同じパワー系なんだよな?
あれ、出来るか?」
「無理無理無理。完全に上位互換でしょ。
ビルブチ抜いてなお吹き飛ばすなんて絶対出来ない」
「だよな。あれ倒せてんのか?」
「あれをマトモに受けて生きてられるとは思わないけど……」
「一応死体を確認してくる。
先にデクと合流しててくれ」
「分かった、あとでね!」
キリトが空から向かう先では、かろうじて人の形を保っていたホシノが呻いていた。
直撃を受けた腹部はぐちゃぐちゃに蹴り潰され、円錐状になってしまっており、そこから泥ともタールともつかない黒い何かが溢れている。
「負けたな、ホシノ」
(ぐ、グリオン様……)
そんな彼女を冷ややかに見下ろすのは暁の未来を統べる魔王グリオン。
そして彼がホシノと共に造り出した冥黒のアビドス生が1人、ノノミ。
「あのパワーは流石に予想外だったが、分身があったのにその体たらく。
お前は失敗作だった様だ」
そう言ってグリオンは金色のルービックキューブを弄る。
ホシノの体からヨアケルベロスが強制分離され、グリオンの持つブランクカードに封印された。
かろうじて保っていたホシノの肉体が崩れ始める。
(お、御慈悲を……どうか御慈悲を!)
冷めた視線すらよこさなくなったグリオンに縋る様に手を伸ばす。
しかし無情にも顧みられずそのまま解ける様に崩れ去った。
「お前は……」
キリトが着いたのはまさにその瞬間だった。
「お初にお目にかかる。
私はグリオン。
いずれこのゲームを絶望で彩る者だ。
ホシノを仕留めた者にも伝えておけ。
ノノミ」
「グリオン様の仰せのままに」
ノノミは取り出したワープテラのカードを取り込みプテラノドンマルガムに変身するとグリオン共々姿を消した。
【軽井沢恵@ようこそ実力至上主義の教室へ 死亡】
【エリアG-9/市街地/9月2日午前6時】
【キリト@ソードアート・オンライン】
状態:正常、ALOアバター、疲労(中)
服装:いつもの服装
装備:シャドーセイバー(長)@仮面ライダーBKACK RX
シャドーセイバー(短)@仮面ライダーBKACK RX
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:このゲームを攻略する。
01:態々俺に一対の剣を支給するってことは、間違いなく羂索の言ってた茅場は茅場晶彦だろう。
今回で完全に決着をつけてやる。
02:デクと共にクルーゼや羂索、仮面ライダーを知る者たちを探す。
03:もし呼ばれているならアスナたちやデクの仲間たち、ガッチャードなどの協力できそうな者を探す。
04:グリオン……また厄介そうだな。
05:ごめん、間に合わなかった……。
06:この短剣、もう投げるのはやめとこう。
なんか毎回敵に拾われる。
参戦時期:少なくともマザーズロザリオ編終了後
備考
※アバターはALOの物です。
【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト】
状態:正常
服装:デクのヒーロースーツ@僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト
装備:同上
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
レジェンドライダーケミーカード(ゼロワン、電王。失効状態)
思考
基本:羂索らこのゲームを仕掛けた一味を逮捕する。
01:間に合わなかった!ごめんなさい……。
02:キリト、成見さんと行動する。
もし呼ばれているなら皆やプロヒーロー、キリトの仲間との合流を目指す。
03:落ち着けたら羂索たちの狙いや“個性”についてまとめたい。
04:ギギストやステイン、あのケルベロスのヴィラン(冥黒ホシノ)を造った誰かは要警戒
参戦時期:映画終了直後
備考
※“ワン・フォー・オール”は制限されているがエナジーアイテムや“発頸”を活用すれば瞬間最大威力でなら100%を発揮できるようです。
【成見亜里紗@魔法少女すずね☆マギカ】
状態:切り傷(小)、健康、疲労(中)
服装:魔法少女の服装
装備:大鎌、亜里紗のソウルジェム(穢れ:小)@魔法少女すずね☆マギカ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いにはのらないけど、もし天乃鈴音が来ているなら話は別
01:アイツ、間に合わなかったのね……
02:天乃鈴音が来ているなら見つけ出して必ず殺す。
03:邪魔するならギギストだろうが誰だろうが容赦しない。
参戦時期:詩音千里死亡後〜奏遥香魔女化までの間のどこか
備考
※グリーフシードは支給されていません。
そのかわりに回復のエナジーアイテムでもソウルジェムの穢れを減らせます。
【魔王グリオン@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:正常、冥黒のアビドス対策委員会を率いる
服装:いつもの服装
装備:金色のルービックキューブ@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ホットライン
テラー世界線のシンシアリティ@ブルーアーカイブ
ガッチャードローホルダー@仮面ライダーガッチャード
ライドケミーカード(ヨアケルベロス、エンジェリード)
思考
基本:このゲームを利用して目的を達成する。
01:まずは悪意を振りまき、抗う者たちを蹂躙する。
02:アヤネに黒見セリカとバイクの少女を追わせる。
03:アビドス高校か。別の歴史の一ノ瀬宝太郎共々絶望を見せてやろう。
04:いずれホシノを仕留めた連中もじわじわと嬲り殺す。
参戦時期:少なくとも本編時間軸にドレットルーパー軍式を送り込み始めた後
備考
※■■■の意■に肉体を■■■られています。
※アヤネ(デスマスク)をムーンマルガムに変身させたうえでセリカたちを追わせました。
※ホシノ(デスマスク)を処分しました。
※ノノミ(デスマスク)をプテラノドンマルガム
【NPCモンスター解説】
・グレイス(一般量産機)@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
…ギャラルホルンの主力量産型モビルスーツ。
グレイス・フレームをベースに汎用性を重視しており、出力以外はガンダム・フレームに勝らずとも劣らず。
背部スラスターユニットは重力圏、無重力圏問わず運用可能。
頭部にはエイハブ・ウェーブや赤外線を感知できる球体センサーが組み込まれている。
整備性や運用効率の観点から対モビルスーツ戦闘は想定していない。
武装はライフル、バトルアックス、シールド、バズーカ、バトルブレードなど。
投下終了です。タイトルは 冥黒ホシノ:エンディング です。
皆様投下お疲れ様です。自分も投下します
「は……?」
表示された名前を見て、手に持った機器をよく落とさなかったなと後に薫は思った。
クルーゼなる仮面の男の話が終わり、とことん自分達を舐め腐った主催者への怒りが再熱したのが数分前。
これ程近くにいるのに画面越しでは手が届かない。
仮面を叩き割ってやりたい衝動に駆られるも、その機会は直接対峙するまでお預けだろう。
文句と拳をぶつけるのは当分先、一旦怒りは引っ込め情報を得る方へと切り替える。
自分以外の刀使も巻き込まれている可能性は大いにあり、場合によっては合流を方針へ付け加えねばなるまい。
クルーゼの言葉に嘘は無く、うんともすんとも言わなかったホットラインはこちらの操作を受け付けた。
早速名簿アプリを起動し目を通したところ、案の定知っている名前を複数発見。
舞衣と沙耶香がいてエレンや元親衛隊の二人がいない理由は気に掛かるが、そんなのは些事だと言わんばかりの名が飛び込んで来た。
可奈美と姫和、大荒魂を倒すも隠世から帰れなかった仲間。
タギツヒメ、上記の二人が倒した元凶。
柊篝、姓こそ違うが姫和の実の母にして故人の刀使。
画面上に名が記載されているということはつまり、彼女達も薫と同じ島に連れて来られた。
思いもよらない人選に暫し固まり、金魚のように言葉無く口を開閉するばかり。
「その様子では君の知り合いも参加しているようだな。顔を見る限り、そう単純な話でも無いようだが」
「…あ、お、おう……」
声を掛けられようやく硬直から解かれる。
見れば先程自分を助けた青年、ロロは既にホットラインを仕舞っていた。
呆けている間にテキパキと確認を済ませたらしい。
こちらに向けられる目が説明を求めていると察し、混乱しつつもポツリポツリと話す。
「ふむ、死んだ筈の者達が……」
「可奈美達がしくじるとは思えねぇし、それに姫和の母親は…あーいや、芳佳と似たようなのか?」
死者の蘇生に関してはロロが生き証人である為、有り得ない話ではない。
薫自身の目でタギツヒメが討伐される瞬間を見た訳では無いので、実は生きていたという線も無くは無い。
しかし可奈美と姫和が揃って討ち漏らすとは考え辛く、やはり主催者の手で復活させられた可能性へ傾く。
自分達のこれまでの戦いをあっさり否定するかの所業に、何度目かも分からない怒りが湧くが。
篝についても既に宮藤芳佳という参加者を知っているだけに、疑問はすぐ解消。
平行世界出身であるも、芳佳は1946年から来た少女。
となると世界だけでなく時間も異なる参加者が集められている、そう考える方が自然だ。
豊臣秀吉や徳川家康等の名前も、正真正銘の過去の偉人である可能性を笑えない。
わざわざ旧姓で名簿に載せているのは、刀使として現役の頃から連れて来たのか。
これを知った姫和が困惑し、怒りを抱く姿がありありと目に浮かぶ。
「けど…そっか、あいつらもここにいるんだよな……」
よりにもよって羂索らの手引きで隠世から脱出したのは納得がいかない。
親切心などではなく殺し合いをさせる為とあらば尚更だ。
再会するなら元居た世界の方が良かった。
けれど、もう二度と会えないと思っていた可奈美達の顔をまた見れるのは嬉しくない訳が無い。
散々心配させたのだから、姫和の奴にはこれでもかとナインボディ煽りをしてやろう。
だが一方でこうも思う。
故意で無くとも芳佳を手に掛けた自分が、二人に合わせる顔などあるのだろうか。
いや可奈美達だけではない。
舞衣と沙耶香と再会した時のこと考えると、どうしようもなく心が重くなる。
事情を話せば責める真似はしないだろう、これはあくまで薫の心の問題だ。
手を汚させるよう仕向けた真昼や、根本的な原因を作った羂索達。
悪しき者が誰かと言えば彼らと大多数が口を揃えて言っても、そう簡単に自分は悪くないと割り切れなかった。
(…ま、投げ出す気は更々無いけどよ)
精神的に余裕があるとは口が裂けても言えないが、かといって自暴自棄にもなれない。
ロロに助けられる前はあのまま死んでも良いとさえ思った、だけどもう無理だ。
芳佳の命を奪った挙句、託された想いすらも切り捨てるのは。
ヒーローへの憧れを投げ捨て、最も楽な道に逃げるのは。
自分自身を裏切るという、堕ちる為の一線を超えるのだけは出来そうも無かった。
芳佳との情報交換で聞いた彼女の仲間は名簿に載っていない。
若しかすると名前を挙げなかっただけで、芳佳の仲間が参加してる可能性もある。
そうなると事の顛末を伝えねばならず、罪悪感が抑えられない。
かといって芳佳との約束を破るのもお断りだが。
改めて犯した罪の重さを実感した直後だ。
感傷に浸る時間を木端微塵に砕く、悪逆皇帝の演説が始まったのは。
開けっ放しになった民家の窓から響く声。
リビングに設置されたテレビを通じ、参加者達へ猛烈に己が存在をアピール。
大胆不敵、或いは無謀とも言えるルルーシュに薫はまたもや硬直する羽目になった。
「……いやいや、何考えてんだアイツ」
放送が終わりテレビ画面は黒一色に逆戻り。
今しがたの映像を見た薫の率直な感想としては、あの青年は実はとんでもない馬鹿なんじゃあないのかというもの。
テレビをジャックして仲間を集める作戦は理解出来る。
馬鹿正直に自分達の根城を教えてしまってるが、それくらいはルルーシュも対策を立てているだろう。
元々持つらしい他者を操る異能に加え、仮面ライダーなる戦士へ変身する道具。
早くも自陣営へ引き込み、傍へ控えさせた綾小路清隆。
何より待ち構えるからには当然テレビ局の守りを固め、拠点兼要塞としての運用も考えている筈。
問題は参加者へ語った内容。
単に協力を呼び掛けるならいざ知らず、あれでは悪戯に警戒心を広めるだけじゃないのか。
最初の場での様子から尊大な性格なのはある程度分かったが、度が過ぎれば自分の首を絞める結果に繋がる。
「…成程、あなたはそういう手で来るか」
ルルーシュの真意がイマイチ読めない薫の隣で、感心と呆れ交じりに呟く青年。
放送を行った者と瓜二つの顔を持つロロには、皇帝の狙いが理解できたのか。
「一人で納得すんなよ。ってか、アイツが何考えてんのか分かったのか?自分に酔ってる馬鹿にしか見えなかったぞ?」
「まあ確かに、純粋に協力者を求めるという点では及第点以下の内容だな」
だがロロはルルーシュが己の力に酔い、あのような放送を行ったのではないとすぐに察した。
平行世界の兄は自分の知るゼロと違って、身一つで機動兵器を破壊する魔王の力は持っていない。
宿すギアスも森羅万象を虚無へ還すザ・ゼロに非ず。
なれど同じルルーシュなら、ブリタニアを幾度も追い詰めた知略の持ち主の筈だ。
今の放送も確固とした狙いがあっての内容に違いない。
「薫、君は今の放送を見て彼の軍門に下りたいと思ったか?」
「な訳ねぇだろ。あんな胡散臭い奴に従ったら、刀使の仕事よりもブラック労働間違い無しだ。
それにアイツ、自分のとこに来るなら仮面ライダーの首持って来いって言いやがったしよ…」
これが真昼のような殺し合いに乗った仮面ライダーを殺して来いと言うのなら、納得はしないがまだ分からんでもない。
現実にはそういった条件を一切付けず、全ての仮面ライダーが殺害に当て嵌まると見て良い。
その中には仮面ライダーガッチャードこと一ノ瀬宝太郎も入っている。
羂索へ真っ当な怒りをぶつけ、堀北鈴音を気遣っていた少年だ。
主催者に抗う方針は同じでも、ハッキリ言ってルルーシュよりずっと信用できる。
善良な人間だろう宝太郎までもを、自分の軍団を作る為の犠牲と考えるなど冗談じゃない。
可奈美や芳佳ならそれでもルルーシュを放っては置けないと考えるのだろうけど、あくまで彼の暴挙に等しい行為を止める為。
不要な犠牲を強いるやり方に賛同など出来る筈もなかった。
「そうだな、今の放送を以て兄さ…彼は君のような善良な人物の敵となった。既にある程度の戦力を確保し、放送を真に受けた者がどれだけ集まるかによっては更に巨大な組織と化すかもしれん。
ともすれば、羂索達との直接対決の前に立ち塞がる巨大な壁となるだろう。そんな彼らを倒す為には、他の参加者も共闘を考えねばならなくなる。
狙い通りに、な」
薫や宝太郎のような善良且つ殺し合いに乗っていない参加者達は、ルルーシュを警戒する。
当たり前だ、幾ら打倒主催者を目指していても手段が横暴の極みでは受け入れられない。
放送を見て尚もルルーシュの配下となるのは元々の仲間、恐怖に屈し庇護を求める者、或いは善意では無く利害で動く参加者。
羂索達を倒すためなら過程はどうでもいい、必要ならば犠牲を良しとする危険な軍団が誕生。
結果残るのはルルーシュのやり方を認めない者と、最初から皆殺し以外考えていない危険人物。
それこそルルーシュが望む光景だ。
「膿を絞り出し自らが引き受け使い勝手の良い駒に変え、尚且つ危機感を煽り善良な参加者の一致団結を促す」
「そうやって二つのグループを作って、主催者の連中を潰すのをやり易くするってのか?強引過ぎだろ……」
暴君ルルーシュという悪の存在を利用し反主催者のグループを纏める。
自らを使った策に効果があるかないかで言えば、前者なのだろう。
何せ薫自身、宝太郎に危機が迫っていると分かったら放って置く気は無い。
おまけにロロだって仮面ライダーのベルトが支給されているのだ。
放送を真に受けた者からいつ襲われても不思議は無かった。
「こりゃ、のんびりしてらんなくなったな」
可奈美達や芳佳の捜索だけじゃない、宝太郎を見付けるのも優先的な方針に加える。
既に彼は羂索直々に、仮面ライダーガッチャードと言われてしまっているのだ。
ゼアとかいう正体不明の者や、参加者共通のレジスター等ルルーシュが提示した条件は他にもあるがそれでも狙われる可能性は低くない。
「では、まずは君の仲間や一ノ瀬宝太郎を探しに行くのか?」
「そのつもりだ。あのスカした馬鹿のせいで死なせられるかよ。ロロ、お前も探したい奴がいるなら…」
「気遣いは結構。知っている名はあったが積極的に会いたい者はいない。私の知る者とも限らんのでな」
ナナリーも、アリスも、ゼロも、そしてアーニャも不参加。
知っている名はルルーシュ以外に枢木スザクがあったが、薫へ言ったように会いたいとも思わない。
ただ一人、ロロ・ランペルージという人物は少々気になった。
ルルーシュとナナリーが身分を隠していた時に名乗った姓を、どういう訳か自分と同じ名の参加者も使っている。
名簿の並びから見てもほぼ確実に、ルルーシュの関係者。
言うなれば平行世界のロロ、ということか。
(つくづく趣味が悪いな……)
向こうのルルーシュとどのような関係を結んだのかは知らない。
双子なのかそうでないのか。
血を分けた実の兄弟か、自分と同じクローンか。
ナナリーにしてやったように向こうのロロも愛したのか、そうはならなかったのか。
全く気にならないと言えば嘘になる。
だとしてもピンポイントで自分だけ二つの世界から連れて来るのは、非常に不愉快だった。
(にしても、レジスターや仮面ライダーはともかく自分の部下まで狩りの標的に選ぶとは…兄さん、一体あなたに何があった?)
ルルーシュが求める忠誠の証の一つに、黒の騎士団の団員の首もあった。
ロロの記憶が正しければ、騎士団がゼロを裏切りシュナイゼルの元へ下った覚えは全く無い。
尤も平行世界ではロロが知るのとは異なる展開になったのかもしれないが。
魔王ではなく皇帝を名乗り、更には名簿に二代目ゼロなる者も登録されている。
経緯は不明だが少なくともあちらの世界では、ルルーシュと騎士団が決裂する程の事態が起きたらしい。
興味が無い訳ではない、さりとてそこまで深く知りたい程でもなかった。
「ともかく私の方は気にする必要も無い」
「そうか…おっし!そんじゃあ着替えてからパッパッと――」
出発しようぜと、最後まで言う筈だった言葉が出ない。
唐突に口を噤んだ薫の様子を、ロロもまた不自然には思わなかった。
二人の耳が揃って同じ音を捉えたから。
パチパチパチ、一定の感覚で肌をぶつける乾いた拍手。
心を打たれ感動を伝えるのとは違う、籠められた感情は丸っきり正反対。
「皇帝様の有難いお言葉に、熱血少女の決意表明。無料(タダ)で見せてくれるなんざ、随分太っ腹だな」
隠す気もない嘲りを口に出し、ゆったりとした足取りで近付く。
闇を切り取った色を纏い、輝く銀髪が僅かに揺れる。
大通りを歩けば黄色い歓声を一身に浴びるだろう顔はしかし、友好的とは言い難い笑み。
モデルのような細身ながらも、獣を思わせるしなやかな肉付き。
片手にぶら下げた剣は現代日本なら職務質問確定なれど、生憎男は人の尺度で計れる存在に非ず。
「皇帝様の演説の後に楽しそうなお喋りが聞こえて来たからな、こうしてわざわざ足を運んでやったんだ。俺も仲間に入れてくれよ」
あからさまに他者を見下した言動。
余程のお人好しでも無い限りは不快感と警戒心を抱かせる、尊大な態度。
先のルルーシュのように目的があってではない、本心から自分以外を低く見ている。
殺し合いという状況で初対面の相手に向けるのは間違いなく悪手。
そう分かっていながら行う男へ、薫達の視線が険しさを増す。
「羂索達を討つ為の仲間に入りたいと言うのなら、私では無く彼女に尋ねるといい。君はどう思う?」
「…冗談だろ。好き好んでこんな爆弾みたいなの引き入れられるかよ」
褒められた言動で無くとも殺し合いに乗っていないならともかく、銀髪の男は確実のその枠から外れる。
タギツヒメに騙されノロを集めた嘗ての親衛隊や、殺し合いに乗った柊真昼。
彼女達のように相容れなくとも、譲れないものを秘めた人間とは明らかに違う。
目を見れば、言葉を聞けば、何より全身の毛穴に突き刺さる痛みが伝えて来る。
この男には信念だとかそういったのが無い、あるのは他者を弄ぶ悪意のみ。
悪童が虫を解体するのと同じ感覚で、人の心へ刃を捻じ込み掻き回す。
崇高な目的とは程遠い悦楽で動く、野放しにはできない存在。
「あの脳みそヤローと同じなんだよ、お前。見てるだけでムカムカしてくる」
「随分辛辣だなチビ助。パパとママは礼儀正しい言葉遣いも教えてくれなかったってか?」
羂索と同じ邪悪と断じられ、否定も肯定もしない。
ケラケラと笑い煽り返す姿が、薫の言う通りだと伝えているようだった。
荒魂だからといって問答無用で討伐するのは益子の教えでは無い。
だが、目の前にいるコレは、言葉だけで考えを改めるモノとは違う。
大荒魂と対峙した時にも似た、常に首へ剣を添えられたかの緊張感とおぞましさが自然と手を得物へと伸ばさせた。
戦闘態勢を取る薫をロロは止めない。
彼の目から見ても、銀髪の男と対話を続行するのは愚の骨頂。
姿を見せ言葉を響かせただけで周囲の空気を支配してみせた、尋常ならざるプレッシャーを知っている。
魔王を名乗る兄と同じ、人の道を外れた存在に他ならない。
薫達の警戒心が高まるのを感じ、されど男は余裕の笑みを浮かべたまま。
己の力に絶対的な自信を持つが故か。
異様に喉の乾く空気が、過信した愚か者と断言するのを阻む。
いずれにしろ、戦闘は確実に避けられない。
小柄な体躯で大剣を構えるアンバランスさに、男が失笑を漏らす。
「お喋りよりもチャンバラごっこがしたいのか?生憎、ガキの相手は専門外でな」
「言ってろよ、ぶった斬られてから後悔しても遅ぇぞ!」
荒魂で無くとも人に仇為すならば容赦しない。
刀使の使命に翳りは無く、罪悪感を抱えようと敵を前に己が刃は錆び付かせない。
揺るがぬ正義を籠めた一閃が己を打ち砕かんとする光景に、尚も男は嘲笑を浮かべ続ける。
他者の命を守る、そんなつまらないもので剣を振るう輩は腐る程見て来た。
最期は決まって無駄死に、少なくとも己が認めるただ一人を除いては。
「お前じゃ退屈凌ぎになるかも怪しいが、吠えたからには遊んでやるよ」
正義が悪を滅ぼすのが世の常ならば、悪が正義を踏み躙るのもまた世の理。
嘗て絶望と復讐心から魂を腐らせた魔戒騎士、ジンガが刀使を迎え撃つ。
戦闘開始となれば薫に躊躇は無い。
対象に危険性を感じないなら手は出さず、反対に有りと判断した際には刀で以て対処。
益子家の教えに従うなら、ジンガは確実に武力行使が必要な危険人物。
斬るか否か、決断を下し実行へ移すまで時間を掛けるのは悪手。
余計な抵抗をされる前に片を付けるのは、荒魂相手の時と同じだ。
悠長に相手の出方を窺ってはいいられない。
今更改めて確認するまでもないが、薫は普段通りの戦いが可能とは言い難い。
握る得物は破壊力とリーチに優れてこそいても、使い慣れた本来の武器に非ず。
祢々切丸で無ければ、まして御刀ですらない。
刀使としての術が一切使えずS級装備も支給されなかった為、最初から不利を強いられている。
頼れるのは術を用いない薫自身の剣の技量のみ。
(速攻で決めてやる…!)
駆ける姿は弾丸の如し。
迅移を使った時程の速さは無くとも、小柄な体躯を活かしての疾走。
術に頼り切るだけでは足りない、剣術の基本を学び極限まで高めてこその刀使だ。
二つに結んだ髪が揺れ、顔に風の冷たさを感じつつ接近を果たす。
振り被った剣は薫の背を超える巨大さ。
モンスターの討伐に用いられるハンターの装備だ、決して見せかけの張りぼてではない。
長大な刀身を持つ祢々切丸の使い手だけあって、少女とは思えない膂力を誇る。
使い慣れない武器であっても抜群の威力を引き出すことが可能。
一撃で終わらせるつもりで頭上より叩きつけた。
「おっと、危ない危ない。もう少しで当たるところだったな」
発するのは苦悶の呻きではない、小馬鹿にする意図をこれでもかと籠められた声だ。
一歩真横に動き、それだけであっさりと回避。
数センチあるかないかの位置に鉄塊が振り下ろされた。
だというのに、ジンガは慌てるどころか軽口を叩く余裕すら見せたではないか。
恐怖を押し隠す為のハッタリと断じる、それが出来る程軟な男じゃあない。
広いリーチの武器と言えども剣である以上、一定の距離まで近付かねば攻撃を当てられない。
薫が距離を詰めたのはそのまま敵の狩猟領域へ入り込んだのを意味する。
踏み込むと同時に右手を突き出し、鞘に納めた魔戒剣が腹部を狙う。
刺殺は免れると思うなかれ、人の皮を被ろうとジンガはホラー。
抜き身の刃で無くとも少女の柔肌を貫くのは容易い。
「っ!ク、ソ……!」
迎撃に出るのは間に合わない。
膝を畳んで屈み、ただでさえ低い目線が更に落ちる。
ヒュオンという空気の悲鳴が頭上から聞こえるも、薫自身はノーダメージ。
腕を伸ばした体勢且つ、攻撃を外した瞬間は硬直から逃れられない。
手繰り寄せたチャンスを逃さず、薫は豪快に大剣を振り回す。
肉を断ち骨を砕く嫌な手応えは、無い。
代わりに得物が微かに揺れ、両腕に掛かる重さが増加。
顔を上げると原因が即座に判明、刀身という不安定な足場にジンガが立っていた。
「お前…!」
「心配するな、すぐに降りてやるよ」
但し素直に地面へ足を付けてやる気はないが。
振り落とされるよりも先に駆け、薫の眼前へと到達。
長い脚がブレたかと思えば頬に衝撃が襲い、遅れて鈍痛が走る。
蹴られたと理解したは良いが、脳が揺さぶられ見える景色が二重へと変化。
一時的とはいえ視界が使い物にならず、目で次の攻撃を見極めるのは難しい。
ならばと大剣を滅茶苦茶に振り回し、無理やりにでもジンガを離さんとする。
「おいおいどこを狙ってる?透明人間でも斬るつもりか?」
挑発が聞こえた方へ腕を動かすには遅い。
斬り付けるのもドレインタッチで体力を奪うのも、敵に先手を取られれば無意味。
脇腹に拳が叩き込まれ、唾液と短い悲鳴が吐き出された。
靴底が地から離れ宙へと身を投げ出す薫に、追撃を掛けるべくジンガもまた踏み込み、
「変身」
『RIDER TIME』
『KAMEN RIDER ZI-O!』
鳴り響く電子音声が動きを阻害、薫が立て直す時間を稼いだ。
そういえばいたなと頭の片隅から引っ張り、音の正体を視界に入れる。
腕時計をモチーフにした装甲に、時計針を思わせる形状のアンテナ。
張り付いた「ライダー」の四文字が何よりも特徴的な、偽りの魔王。
本来の変身者とは異なる者、ロロが仮面ライダージオウに姿を変えた。
「彼女だけでは少々手に余るようなのでな、私も参加させてもらう」
行く末を見届けると言った手前、助力に出てやっても問題は無いだろう。
ジオウの力を使いこなしておく良い機会でもあるし、何より今後を考えればジンガは邪魔な存在。
始末しておいて損は無い。
返答を待たずに両手を跳ね上げ、二つの銃口で睨み付ける。
一つはNPC相手にも使ったジオウ専用装備、ジカンギレード。
もう一つは宮藤芳佳の支給品であったDVディフェンダー。
刀使にとって銃は専門外、自分が持つよりはとロロに譲渡していた。
芳佳の遺品ではあるが、立ち直る切っ掛けを作ってくれたロロにならばと考えた結果である。
得物は二つとも遠距離形態に変形。
引き金を引き、供給されたエネルギーがジンガへと放たれる。
高周波エネルギー弾と、高出力のレーザービームが冷えた夜の空気を熱し殺到。
共にアナザーライダーやロンダーズファミリーと言った、人外相手を想定し生み出された武器だ。
人間社会に浸透する銃火器の類とは、威力も連射性能も段違い。
ロロに二丁拳銃を扱うスキルは無いが、そこはジオウの機能が解決済み。
二本のデータ収集装置が敵の回避・攻撃タイミング、間合いや射撃のタイミングを的確に割り出す。
「ハッ、カッコ付けるならもっとしっかり狙えよ」
敵が単なるNPCの群れなら、或いは凡百の力しか持たないなら。
今頃蜂の巣になっただろうがジンガをその枠に収めるのは大間違い。
踊るように動き回り、服の端にすら掠めさせない。
合間を縫って薫が剣を振るえば案の定躱し、刀身を掴んで銃撃に対する盾に使用。
無論、自分の武器を利用されるのを薫が許す筈は無く引き寄せジンガの手を振り払う。
しかしどれだけ引いてもガッチリと掴まれた大剣はビクともせず、反対にジンガへ良いように使われてばかり。
パッと手を離せば唐突な解放によろけ、すかさず蹴りが飛び吹き飛ばされた。
地面を転がる少女には見向きもせず、ここで遊び相手を変更。
吹雪のように叩きつける光線の間を泳ぎ、難なくロロを剣の間合いへ閉じ込めた。
「チッ…!」
銃身を鞘が叩き照準をズラされた。
再度狙いを合わせるのを呑気に待ってやらず、魔戒剣を抜刀。
距離が開いているならまだしも、ここまで近付かれては銃では却って不利。
咄嗟の判断でジカンギレードを変形したのは正解だ。
「ケン」の二文字が刻まれた刀身と、ソウルメタル製の刃が激突。
使い手がホラーに堕ちようとも、魔戒剣は古今東西の名刀が鈍ら同然の強度と切れ味を持つ。
対するジカンギレードもまた高圧エネルギーを送り込み、魔戒剣と渡り合う。
武器の性能が互いに引けを取らないならば、勝敗は使い手の技能によって左右されるだろう。
袈裟斬りを弾いた魔戒剣が返す刀で首を狙い、数歩の後退で回避。
逃しはせぬと踏み込みつつ腹部へ切っ先を走らせるも、間一髪のタイミングでジカンギレードが防ぐ。
刀身から金属同士の衝突を感じたその時より、既にジンガは次なる攻撃へと移行。
宙へと身を乗り上げ一回転、胸部目掛けて蹴りを叩き込んだ。
生身で放ったとは思えない威力だ、靴底が与える衝撃に大きくたたらを踏む。
軽量ながら鋼鉄の200倍の強度を誇るジオウの装甲があったからこそ、この程度で済んだ。
変身していなかったらロロの細い胴体など、枯れ枝よりも簡単に折られた二違いない。
「全く、下賤な輩だ…!」
吐き出されるのは悪態だけではない、左手のDVディフェンダーからレーザーもだ。
下手に二刀流などやったところで技量が追い付かない、故に片方はそのまま銃として使う。
更に先程までと違ってバルカンモードへチェンジさせている。
連射性能を引き上げ、パルス光線が休む間も無く発射された。
「良い玩具だな、誕生日プレゼントで買ってもらったのか?」
尤も命中するかどうかは別。
地面を転がり、時にはジグザグに動き回って躱し続ける。
ロロの銃撃に避けるしか出来ないのではない。
その証拠に見よ、戦闘が始まってから一切変わらない余裕の笑みを。
華麗にステップを踏み、戦場をダンスステージに見立てパルス光線を当てさせない。
跳躍し、銃口が再び捉えるまでの僅かな間にロロの傍らへ降り立つ。
「俺一人に躍らせるなよ。折角だ、お前も踊ってみせろ」
嘲りの言葉へ言い返す暇は無い、視覚装置に煌めく刃が映り込む。
再度剣と剣が奏で合い、苛烈な歌を響かせる。
急所へ迫る魔戒剣を防ぐロロは、自身の圧倒的な不利を嫌と言う程に感じていた。
魔王ゼロのように己が肉体を用いてKMFを相手取った事も無ければ、刀使のように剣術を身に着けてもいない。
武芸に秀でた訳でないロロがこうもジンガと渡り合えるのは、偏にジオウに変身しているからこそ。
何よりも、敵は明らかに本気を出していない。
挑発的な態度を繰り返してはいても、ジンガの剣術は達人の域を凌駕して有り余る。
剣に関して素人のロロですら理解してしまう程に強い。
にも関わらず未だ自分を仕留められないのは、意図的に手を抜いているからだろう。
(屈辱だが、その遊びによって未だ命は繋がっているか…)
ギアスを使えば戦況を変えられるだろうが、ロロにとっての本命は自分をエデンバイタルから引き戻した主催者達。
ジンガ一人の為に全力を出し、結果塵に変えるのは御免だ。
反作用という無視できないリスクが存在する以上、乱発は可能な限り避けたい。
幸いと言うべきか、ジンガと戦うのはロロ一人では無い。
(もらった…!)
ジンガの意識がロロに割かれたタイミングを逃すような素人では無い。
背後からバッサリとは正々堂々と言い難い、しかし拘っている場合でないとは薫にも分かる。
ならば躊躇は放り投げて疾走、がら空きの背中目掛けて大剣が食らい付く。
薫には見えない、しかし真正面のロロにはジンガが失笑を漏らす姿が見えた。
両足を軸に、腰の捻りを加えた回転斬りを繰り出す。
咄嗟の判断で行われたジカンギレードの防御が崩され、胸部を刃が噛み千切った。
大量に散る火花には目もくれず、視界は吹き飛ぶジオウから外れる。
振り返った先で剣を翳し、大剣の一撃を何も無いように防ぐ。
「くっ…動かねぇ…!」
「おいおいまさか、これで踏ん張ってるつもりか?それとも、わざと手を抜いてくれてるのか?」
薫の持つ防衛隊炎型大剣をマトモに受け止めようものなら、大抵の刀剣類は砕け散る。
それ以前に相手が力負けし得物共々吹き飛ばされるだろう。
しかし現実には大剣よりもずっと細い武器に阻まれ、ほんの数ミリすら動かせない。
真昼の時と同じだ、得物と使い手の両方が尋常ならざる脅威。
大きいだけの武器など、玩具同然に見なしているのではないか。
鍔迫り合いを続けても埒が明かない。
一旦剣を離し身を引きかけるも、ジンガに逃がす気は無い。
刀身を踏み付け固定、モデルのような脚にどれ程の力が籠っているのかまるで動かなかった。
「テメ…んなっ…!?」
後頭部に手を回され、強引に顔を近付けられる。
額同士がぶつかり、互いの息が当たる程の至近距離で視線が交差。
いきなりの行動に凍り付き、抗議の声も喉奥で留まったまま。
「……嫌なモンを持ってるな。まぁ、肝心の引き出し方を分かって無いようだが」
僅かに顔を顰めて語った内容は、何のことか薫にはサッパリだ。
困惑は徐々に男への拒否感へと変わり、離れようと藻掻く。
が、後頭部を掴む手は視線を逸らすことをまだ許してはくれない。
紫苑色の瞳を真っ直ぐに射抜かれ、薫の背を言いようの無い感覚が駆け巡る。
「……っ」
抜き身の刃のように鋭い、息が止まる程におぞましい黒が見えた。
珠鋼を奪われ怨嗟に囚われた荒魂よりも激しく、どこまでも広がる暗黒の海。
これを見続けるのは駄目だ、視界に入れるのを止めなくてはマズい。
心の内で叫び声を上げるも逃げられない。
「ああ…感じるぞ。紙切れの鎧で必死に隠したお前の邪心を……」
「…は?急に何言ってんだ…?」
「お仲間を斬られた時、俺に怒りを抱いたな?だがそれだけじゃない、そうだあれは…恐怖だ」
ドクンと、心臓が嫌な音を立てた。
見当違いな戯言、自分を見下す為の言葉遊び。
相手にする必要は無い筈なのに、否定の為の声が上手く出せない。
「俺と会う前に誰を喪った?いや、こう言い換えた方が良いか?」
肌と制服を汚す赤を眺め、ソレを告げる。
「誰を殺した?」
「…っ!!」
脆い鎧を破り捨て、剥き出しの肌に手を当て、胸の奥へと突き刺す。
宝物でも見付けたように、薫の罪を引き摺り出し笑う。
違うとは言えない、言える筈も無い。
宮藤芳佳を手に掛けたのは、若き魔女の未来を奪い去ったのは紛れも無い事実なのだから。
「図星みたいだなぁ?どんな奴を殺したんだ?男か女か、善人か悪人か。お前を、心の底から信頼してた奴か?」
思い出される。
ウィッチになろうと思った理由を語る彼女の姿が。
共に戦いたいと言ってくれた彼女の姿が。
可奈美に負けず劣らずの頑固でお人好しな、芳佳の姿が。
血を吐き出し、真っ赤な水溜まりに沈んだ、自分が殺した少女の最期が。
託された想いを忘れたつもりは無い。
芳佳を裏切らない為に、自分の憧れに背を向けない為に。
まだ戦うと決意したのに嘘は無い。
だけど、犯した罪がどれだけ重いかに改めて向き合わされ、
『FINISH TIME』
『ZI-O!GIRIGIRI SLASH!』
魔王の剣がこれ以上の暴挙を許すまじと叫ぶ。
何やら好き勝手に語っているようだが、ロロからすれば聞く価値の無い戯言。
ダメージはあるが動けない程の重傷でもなく、駆け出すと同時にライドウォッチを装填。
必殺のエネルギーを刀身に纏わせ振り被る。
「空気を読めよ」
気怠く振り返り、わざとらしいくらいに大きなため息を吐く。
ジンガの意識が外れた瞬間、薫も我に返る。
好き勝手されたがここからは自分達が反撃する番だ。
「そっちから近付いたんだ、文句は聞かないからな!」
敵がここまで近くにいる状況はむしろ好都合。
ジンガに掌を押し付けドレインタッチを発動、瞬く間に体力と魔力を奪う。
急な倦怠感にはジンガも顔を顰め、跳び退き薫のスキルを強制的に中断。
しかしこのまま逃がしはしない。
地を蹴りロロが跳躍、ブーツに搭載された反重力ソールの作用でジャンプ力を大幅に引き上げる。
横薙ぎの一撃に合わせ時計の針がエフェクトとして出現。
見せかけでは無い、実態を持ちジカンギレードの一閃同様に敵を切り裂く。
アナザービルドを一度は下した大技だ、並大抵の防御では防げやしない。
「キエエエエエエエッ!!!」
腹の底からの叫びで、敵の言葉に惑わされた己に喝を入れる。
頭上を取った魔王一人には押し付けられないと薫も動いた
写シは使えずとも今の薫が出せる全力の勢いで、ロロ同様に頭上から剣を振り下ろす。
同時に攻撃し逃げ場を封じる。
防衛隊炎型大剣は言わずもがな、ジカンギレードもライドウォッチのエネルギーを纏いリーチが増加。
落下の勢いを乗せた二本の刃はこれまで以上の破壊力を発揮可能。
互いに慣れない武器であり、即席のチームワークながら悪い手では無い。
敵によってはこれで決着が付いただろう。
迫る刃を見上げ、ジンガは目を細める。
自身へ終わりを齎す剣に、感じ入るものがあったのか。
逃れられない最後の瞬間を受け入れ、全てを諦めたのか。
刀使と偽りの魔王が勝利し、ホラーが脱落者に名を連ね幕切れとなるのか。
そんな都合の良い展開が、来る筈も無い。
この程度の児戯で自分を倒せるなどと思い上がった人間へ、呆れから思わず笑みを消しただけだ。
「がぁっ!?」
「うわあああ!?」
何が起きたかをロロも薫も即座に分からなかった。
剣を振り下ろした筈が、何故かジンガの元から吹き飛んでいる。
反撃を受けたとようやく理解したのは、無様に叩きつけられた後のこと。
視界に赤良い異形らしき者が映り込み、次の瞬間にはもうこのザマだ。
ほんの一瞬ホラーの力を解放し、返り討ちにした。
ジンガがやったのはそれだけだ。
「ちくしょ…ぐっ!?」
魔戒剣で刀身を撫でられたに過ぎないとはいえ、ホラー化して行えば薫など木の葉と変わらない。
背中から地面に激突し、間髪入れずに頭部へ痛みが襲った。
何時の間に近付いたのかジンガが髪を掴み、先と同じく至近距離で顔を覗き込む。
「お前……!」
「良いねぇ、お間のその目。お仲間を傷付けた俺を許せない、だがそれ以上に……弱い自分自身が許せないんだろう?」
聞いては駄目だと分かっているのに、ジンガの言葉の侵入を拒めない。
大剣を振るおうにも踏み付けられ動かせない。
ドレインタッチで体力を奪い尽くしてやろうにも、伸ばし掛けた腕を掴まれ阻止された。
「俺好みの美しさだよ、お前の目は!弱い自分が憎い、何も守れない自分が憎い、お仲間を殺してしまった自分が憎い、陰我が溜まってホラーには格好の餌だ」
「…っ!気色悪いんだよ…!」
見当違いも良いところと否定すればいいのに、心の何処かでジンガの言うことに頷く自分がいた。
もっと自分が強ければ真昼を止められた、芳佳を殺すことも無かった。
可奈美と姫和を隠世から引き戻すのだって、出来たかもしれないのに。
なのにどうして、自分はこんなに弱いのか。
こんなに弱い奴が、ヒーローになる資格なんて本当にあるのか。
「役に立たない光なんか捨てて、お前も俺と同じ方に来い。ホラーになれば、罪悪感なんざ馬鹿らしく感じるぞ」
「…意味分かんねぇこと、言ってんじゃねぇ!オレは、お前みたいな奴を倒すヒーローとして戦うってアイツに…!?」
言葉の途中で何かが顔に吹き掛かり、思わず咽る。
何をしたと睨み付けるも、ジンガからの返答は得られなかった。
答える気が無いからではなく、会話を強制的に中断させられたからだ。
猛スピードで迫り来る、鉄の馬を駆る魔王によって。
「空気の読めない男は嫌われるぞ?」
跳び退き呆れ交じりに呟くジンガを無視し、カオルの襟首をむんずと掴み上げる。
素っ頓狂な声を無視しマシンを急発進。
黒いボディに紫炎の意匠が施されたモンスターバイクも、ジオウに変身中なら乗りこなすのも難しくは無い。
けたたましいエンジン音と共にジンガの元を離れて行く。
「お、おいロロ!アイツを無視して逃げんのは…!」
「頭を冷やせ。無茶をすれば勝てる可能性もあるだろうが、君の最終目標はここで果てることでは無いだろう。私に言った決意を嘘にするつもりか?」
「…っ、悪い……」
冷静に窘められ黙り込んだのを確認し、バイクの速度を引き上げる。
ジンガから逃げるのはロロにとっても屈辱だが、撤退の必要性を理解していない訳ではない。
何よりロロもまたジンガ相手に死力を尽くすのが第一目標に非ず。
故にここは退く、主催者達を殺す前に命を投げ出せないのだから。
「……」
俯く薫はただ自分の不甲斐なさを痛感するばかり。
ロロの判断は間違っていない。
放置するには大きな抵抗がある敵であろうと、退き時というものはある。
現状の戦力を考えずに無茶を重ねたとて、待っているのは何も為せない末路。
芳佳に託されておきながらこの始末だ、もし自分一人なら果たしてどうなっていたやら。
(もっと、強ければ……)
ジンガの言葉が棘のように突き刺さって抜けない。
真に受ける必要は無いと分かっているのに。
なのにどうしても、燻るナニカを無視出来なかった。
◆◆◆
逃げて行った二人はもう影も形も見えないが、惜しいとは思わなかった。
既に仕込みは済んだ。
この先薫がどう転ぶか、出来れば自分の望む光景が現実となって欲しい。
同じホラーとして迎え入れるのも良いが、やはり上質な餌として育てるか。
人間をたらふく食ったホラー程、美味いものはない。
望む光景が実現しなかった場合は、つまらないがまあその時はその時だ。
薫自身は気付いていないが内に秘めたあの光、アレは間違いなく自分と対極に位置する者。
力に目覚めた時は本当の意味で、自分の敵となる。
その時に殺し合うの一興ではあるか。
尤も、己の心を激しく焼き潰す光はもう知っている。
案の定と言うべきか、自身を二度打ち負かしたアイツも参加していた。
当たり前だ、自分がいてアイツがいない筈がない。
枷を填め駒扱いするのを許す気は無いが、アイツをこの地に招いたことは評価してやっても良い。
「俺はここにいる、どっかの馬鹿共のせいで死に損なった。俺が何をやるかは今更言うまでもないだろ?それが嫌なら――」
斬ってみろ、黄金騎士。
目の前にいない男への言葉が必ずや届くと、疑いようも無く信じていた。
【エリアG-5/租界/9月2日午前6時】
【益子薫@刀使ノ巫女】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、精神的ダメージ(大)、闇のパルファムの影響(小)、ジンガの言葉への動揺(中)、託された想いからの再起、適能者(デュナミスト)に選ばれた、乗車中
服装:長船女学園の制服(血塗れ)
装備:防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン
令呪:残り三画
道具:エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン×2、宮藤芳佳のレジスター
思考
基本:芳佳の分までこの殺し合いに抗う
01:とりあえずロロと行動する。今は退く。
02:…芳佳やオレの知り合いに遭ったらと思うと…不安はまだあるな。けど可奈美達にはやっぱり会いてぇ…。
03:真昼はオレの手で止める。他に手段がねえのなら…この手で…。
04:…どうであれ、オレの罪は消えねえ。けれど、オレにできることはまだまだある以上…死んでやる気はない。
05:結局オレは、ヒーローへの憧れを捨てれねえみたいだ。
06:一ノ瀬宝太郎って奴はなるべく早めに見付けた方が良いよな。
07:…それはそれとして、着替えが欲しいな…シャワーも浴びたい。
08:この起動鍵を…オレは、使えるんだろうか…。
09:祢々切丸があって欲しい所…だけどなあ。
10:もし、俺にもっと力があれば……
参戦時期:第24話「結びの巫女」にて、可奈美と姫和が未帰還な事を知り涙目で祢々切丸をぶん投げた直後から。
備考:※支給されていたソードスキルによりドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!を習得しています。
※適能者(デュナミスト)に選ばれましたが遺跡の夢を思い出せてないので現時点ではウルトラマンネクサスには変身不能です。きっかけがあれば思い出し変身可能となる他、制限によりサイズは等身大限定となります。
※真昼の呪符により精神面に干渉を受けていましたが、取り敢えず立ち直りました。
※ストライクウィッチーズ世界についてある程度把握しました。
※闇のパルファムの影響により陰我が溜まりやすくなっています。
【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、主催者たちへの怒り(大)、ジオウに変身中、運転中
服装:いつも通りの服装
装備:ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ、DVディフェンダー@未来戦隊タイムレンジャー、ライドチェイサー@仮面ライダードライブ
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品0〜2、ホットライン
思考
基本:何にせよ…どのような手段であれ主催者達には滅びを与えるまでだ。
01:とりあえず薫の行く末を見届ける。志半ばで斃れるならその時はその時だ。
02:エデンバイタルへ還るチャンスを無為にした主催者達は赦さん。よりにもよって私への当て付けのような支給品をリュックに入れた以上尚更だ。
03:私の知るルルーシュ兄さんやナナリーはいないか。枢木スザクは…どっちの場合でも積極的に会いたいとは思わん。
04:私の知らないギアスを使うルルーシュ兄さん、か…積極的に探す気は無いが。随分大胆な手に出たな。
05:ロロ・ランペルージなる者が少々気になる。
06:ヴィンセントの起動鍵があるなら欲しい所だ。
07:ジ・アイスは使い所を考えるべきだろうな。
参戦時期:死亡後。
備考:※ジ・アイス使用による反作用での肉体崩壊がどれくらいで訪れるかは採用された場合後続にお任せします。
※量子シフトは起動鍵を所持していないと使えないとします。
【ジンガ@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-】
状態:疲労(小)
服装:着崩した黒い服(いつもの)
装備:ジンガの魔戒剣@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
令呪:残り三画
道具:闇のパルファム@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者、ランダムアイテム×0〜1、SA・ホットライン
思考
基本:好きにやる
01:やっぱりお前もいるよな?道外……
02:さっきの奴(克己)がどう暴れるか少し期待
03:薫がホラーになるのを期待。
参戦時期:流牙に敗北後〜メシアに挑む前。
備考
【ライドチェイサー@仮面ライダードライブ】
魔進チェイサー専用バイク。
元々プロトドライブ用に製作されたマシンが、プロトゼロとともにロイミュードに改造されたものである。
チェイスが仮面ライダーチェイサーになった後も引き続き使用されており、シンゴウアックスを収納できるように改良された。
【闇のパルファム@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者】
甘い匂いで人間の陰我を増幅させ、闇へ誘う働きを持つ香り。
破滅ノ門の中に隠された禁断の果実が発生源である。
本ロワでは主催者が用意した特注の香水瓶に匂いを封じ込められ支給された。
また参加者の精神状態によっては、陰我の増幅を跳ね除けることも可能になっている。
投下終了です
予約を延長させていただきます。
水神小夜、シェフィ、マイ=ラッセルハート、覇世川左虎、ドゴルド で予約させていただきます
投下します
バルバトスと遭遇するのを避けるように、
同時に色々落ち着いて話がしたいのもあって、
近場に見つけた家、地図で表示される禪院家へと三人は避難していた。
道中にサビルバラが見慣れた魔物、もといNPCはいくらかいたが、
戦闘経験豊富な二人に初心者とは言え堀北が得た多彩なソードスキル。
有象無象程度の魔物に後れを取ることなんてことはなく、
何事もなく荘厳な屋敷、禪院家へと辿り着く三人。
(にしても、徳川家康ね……)
縁側を歩きながら、堀北は前方の男を見やる。
徳川家康。豊臣の後に天下統一を果たした天下人。
江戸幕府の開設など、歴史を大きく動かした存在と言ってもいい。
当然歴史の授業で出ないことはなく、堀北も知ってる存在だ。
なのだが、堀北の目の前にいる青年がそれだとは余り思えなかった。
格好も現代にいてもそこまで違和感のない格好の青年に近しい。
これが狸親父と呼ばれるような人物と言うには中々に無理があるだろう。
三者は一先ず休息を行いつつ、情報を共有していく。
と言っても、二時間経過するまで大体が堀北の話になったのだが。
厳密には堀北ではなく堀北が持っているソーディアン・ディムロスのこと、
それとディムロスの言うバルバトス・ゲーティアと剣が呼んでいた男のことだ。
「喋る剣か。わしのいた団にもおるから別に慣れとるがイエヤス、おんしはどうだ?」
「長年愛用した武器に魂が宿るとは言うが、
それとは異なる、技術によって誕生しているのか。
別の世界の技術には驚かされるな……元親が見たら驚くだろうなぁ。」
思いのほか剣をあっさり受け入れる二人。
理解が速くて助かる一方で、どんな世界で生きてるんだと思いたくなる堀北。
仮にも一人は戦国時代だろう。戦国時代の機械と言えばからくり人形とかその程度のものだ。
現代日本の科学でも追いつかないようなオーバーテクノロジーをそう簡単に受け入れられるのか。
続けてサビルバラと家康の自己紹介も済ませていくと、ラウ・ル・クルーゼの放送が始まった。
情報の解禁、新たなNPC、事実上ここからがスタートなのだということを理解する。
サビルバラは似たようなものを持っていた人物がいたようなのでホットラインは扱えたが、
流石に戦国時代で生きた家康にはうまく扱えず、堀北が教えながら操作を覚えていく。
操作を覚え、リストを眺めていると家康の手が止まり、静かに呟いた。
「秀吉殿……貴方が此処にいるとは。」
今まで快活な青年、と言うイメージが強かった家康が初めて表情に影を落とす。
まるで懐かしむかのような、同時に哀惜のような、複雑な表情で画面を見つめる。
「そのヒデヨシと言う奴とはどんな関係ぜよ。」
「……ワシがこの手で殺めた者の名だ。」
「えっ。」
晩年の秀吉は明(みん)への朝鮮出兵をするなどして最終的に病に伏せて亡くなった。
だが家康が語った話では半兵衛を亡くしたこともあり迷走を始めた秀吉は、
天下統一後海外にもその武力を広げようと朝鮮出兵しようとしたところを、
家康達徳川軍が謀反を起こしてその際に死亡。これにより再び戦国乱世が訪れた。
そして最終的には石田三成率いる西軍と徳川家康率いる東軍による、
関ヶ原の戦いが始まろうとしていた所で、彼は此処に招かれたという。
(頭が痛いわ。)
歴史と近しいように見えて実際の内容が違いすぎる。
秀吉も容姿を聞けば六尺三寸(190cm)以上の巨漢と歴史の印象とは別物だ。
此処まで行くと流石に堀北も、自分とは異なる世界の徳川家康なのだと割り切った。
丁度隣には戦国時代の歴史すら存在しない空の世界の民がいて、
逆に天上人と戦ったとされる喋る剣がいたりもしてただでさえ頭を悩ませる。
これ以上深く考える行為は無駄と割り切り、家康のことについて考えるのはやめた。
問題は秀吉がこの場においては危険人物という点が大事なことである。
力を求めるならば優勝を考えるかもしれないし、そうでなかったとしても、
家康と手を取り合うことは難しい。そうなれば堀北とサビルバラの身柄の安全は保障されない。
かといって家康は謀反した身だし、武力で治めるという秀吉の方針には従えないだろう。
状況は芳しくないとなっているところに、更に悪報がやってくる。
「綾小路君……!?」
近くのテレビが映り、動揺せずにはいられなかった。
自分に謎の力を使った青年、ルルーシュの近くにいたのはあの綾小路清隆。
参加者にいるのは知っていたが、ルルーシュの配下になってることに驚きは隠せない。
綾小路は表立って功績を出さず、主に人知れず盤面をひっくり返す行動が多い人物。
故にクラスでは目立たず、龍園と言った限られた人物のみが彼の実力を理解している
今のようにテレビに出て、右腕を名乗るような行為と言うのには酷く違和感が残るものだった。
「となると、スズネが受けた能力と関係してる可能性は高いぜよ。」
当然、素直に自分が受けた異能を受けた可能性も視野に入れる。
ルルーシュはあの様子だと相当頭の回る人物だということは伺えた。
自分の居場所を大々的に知らせ、敵を無駄に作るように先導する物言い。
無策でやるならば愚かでしかないが、綾小路もいて愚策など考えるはずもなく。
武力、知力、恐らく彼の傘下に入るため人員も今後は増えていくだろう。
ルルーシュの命令を順守させる異能を前に逆らうことは難しい。
そのパフォーマンスは既に最初の時点でやっているし、
堀北は未だギアスの影響を受けていて実証済みだ。
「でも人員が欲しいのはもう一つ理由があるかもしれないわ。」
「理由? なんだスズネ。その理由って。」
「『命令を順守させる力の上限』、それを危惧している……か?」
「ええ、そのとおりよ。」
家康の言葉に頷く。
異能が命令できる内容の上限だけの制限とは思えない。
有効範囲、有効時間、そして使うことのできる回数にも上限があるかもしれない。
彼はそれを理解、或いは警戒している。だから今の放送は異能で傘下を増やすためではなく、
その切り札である異能を保険として残しておくためにやっているようにも伺える。
勿論推測でしかないし、最悪命令の強度だけの可能性なのは気を付けていた。
「しかしルルーシュと言う名に人を操る力か……団長の知り合いにいた気がするが、
わしは会ったことがないし、当人かもわからん。ついでに言い損ねておったが、
わしの知り合いは恐らくおらんから、方針については知り合いのいるおんしらに任せる。」
忘れ形見のガランサラスも、同郷のミリンも、同じ騎空団の団員もいない。
ドラえもんは聞いたことがある気はするが出会ったことがないので除外した。
こんな催しに知り合いがいない方がいいので、いないことは嬉しいところではあるが。
「君のいる組織に僕は甚だ疑問しかでてこないんだけど。」
喋る剣を持った剣士もいるし、ルルーシュと似たような奴が仲間にもいる。
恐らく語ってないだけでもっと特異な人間がいたりするのだろう。
団長はよくそんな人物をまとめられているなと疑問を持たざるを得ない。
どんな団長なのか興味が出てくるが、今聞くべきことではないのでスルーした。
「サビルバラ殿はなく、ワシは秀吉だけだ。堀北は知り合いは何人いるんだ?」
「五人ね……最初に亡くなった須藤君、そしてさっきテレビに映った綾小路君含めて。」
「彼らが行きそうな場所は?」
「ケヤキモールぐらいでしょうけど、
流石にここからだと遠すぎるし、綾小路君がああなってる今、
あまり集合場所としてあてにすることはできないと思っているわ。」
残る知り合いは龍園、軽井沢、一之瀬の三人だが、
龍園は自分達と合流するような性格ではないし、軽井沢も似た性格だ。
よくて一之瀬穂波だが、肝心のケヤキモールはほぼ反対側に位置している。
その一人の為だけに離れた場所へ移動は時間がかかりすぎてしまう。
家康とサビルバラは体力はあるからいいとしても、足並みが揃えられない。
「個人的意見だけど、
僕は今の目的地はアッシュフォード学園にするべきだと思ってるわ。
学園なら食料とか設備も整ってる以上ある程度の拠点として向いているはず。
近くはないけどテレビ局へ向かおうとする参加者を引き留めるにも向いてるわ。」
学園ならばパソコンもあるかもしれない。
パソコンが会場の何処かと繋がっていれば、
距離が離れた相手とも協力することができる。
先手を打ったルルーシュの計画の阻止するには必要な一手だ。
「それに家康さんの武力なら、
近くの橋から来るルルーシュの傘下に入ろうとする人を制圧することだって……」
「いや、ワシは交渉で武力は余り頼らないぞ。」
「え?」
「武力とは、人の絆を断ち切るものだ。ワシはそれを望まない。
できることなら話し合うことで解決させたい。無論、無理な相手がいるのも分かっているさ。
この舞台においてどれだけの人がワシの絆を受け入れてくれるかは分からない。
だが、恐怖や武力で人を抑圧する……それではダメなんだ。」
バルバトスのような存在だっている。
三成のように敵になってはどうにもならない存在だっている。
絆とは、すべての人間と結ぶことができないことぐらいは理解してるつもりだ。
それでも。振りかざす武力だけに頼っていては、信長や秀吉の先へ行くことはできない。
「だからワシは武器を捨てた。そして、これまでに殴った数も忘れることはない。」
堀北は家康を快活な青年と言う認識をしていたが、それは改めた。
この人は異質だと。掲げた絆と言う名目のためだけにそこまでできるのかと。
史実の家康は薄情で、寧ろ絆と言うものとは縁遠い面が強いギャップもあるかもしれない。
信用できる人物なのは間違いない。殺し合いを止める人材としても間違いなく正解だ。
けれど、何かいい得も知れない不気味さ、異質さがそこに見受けられる。
それが何かは分からない。ただ。底知れぬ人物であることだけは分かった。
「イエヤスが言いたいのはつまり、話し合いがしたいと言うことか?」
「ああ。武力で脅すと言ったことはなるべくしたくない。」
「まあこの中で誰よりも強いアンタの言うことだ。わしはそこは気にせんが。」
「それで、アッシュフォード学園に行く方針だけど、
バルバトスを警戒するとなると東の橋を経由した方が……」
『いや、早めにバルバトスを叩くことを勧める。
あの男は闘争を求める。人の通りの多い場所を、
橋に陣取っている可能性は十分にあり得るだろう。
北上して早期に決着をつけるべきだ。』
黙っていたディムロスからの提案。
滝の流れからバルバトスが陣取っている可能性は拭えない。
だから迂回の提案をしたが、逆に直行を推奨してくるとは思わなかった。
バルバトスの攻撃を、家康は籠手で斧を受け止められる頑強さを持つ。
恐らく、一対一で戦えばまずバルバトスには負けないことは予想できる。
令呪など不確定要素があるので絶対とまでは言い切れないが。
「でも、彼は最悪僕たちを利用するでしょうね。」
だが足手まといを二人連れて戦場に向かわせても、利用される可能性の方が高い。
勝つためであれば武士道や騎士道にさほど拘ることはせず、
利用できるものは利用することはあのジェノサイドブレイバーで確認済みだ。
だからこそ戦闘することを避け、迂回することを提案しようとしていた。
「ん? ディムロス殿から話でも聞けたのか?」
「ええ。バルバトスを早めに倒したいって。」
『公私混同しているのは否定しない。
だがあの男を放っておいたまま仲間を増やせば、
それだけ家康にかかる負荷は大きくなるだろう。
人数が少ない今だからこそ実行できる最善策だ。』
ディムロスの言葉に一理はあることだ。
これから何人も抱えていけば、よりバルバトスや他の敵と戦う時の足枷が増えていく。
今しかないと言われれば、そうなのは間違いではないだろう。
「意見が別れるところね……サビルバラさんと家康さんは?」
「わしはディムロスに賛成ぜよ。ルルーシュの甘言で動く人間も多いが、
バルバトスはあっちと違って見境がない。見境ない相手をわしはよう知っとる。
速めに決着つけると言う意見を否定する気はどこにもない。」
あの目は餓えている、そして狂っている。
狂っている奴の目は決して忘れることはない。
妹を殺し、義弟を狂わせたあの男のように。
アレを野放しにするのは、私情含めてもできないことだ。
「ああ、わかっている。ただ堀北の言うように拠点は欲しいところだ。
早急に学園を押さえ、そこを本拠地に活動するのが得策だと思っている。
道中でバルバトスと出会ったならこれを迎え撃つ、いなければ一度学園に行き、
その後でバルバトスの行方を捜索する……それでいいな?」
南西のエリアでは色々手狭であり、参加者の行き来も少ないだろう。
できることなら施設が偏っている、東の現代都市エリアを優先しておきたくもあるのだが、
やはりルルーシュのことを考えるとアッシュフォード学園にしておくのが無難でもある。
H-5の橋を経由してやってくる参加者なら、敵でも味方でも学園に足を休めるか向かうはずだ。
「ところで、すまんが学園とは学び舎のことであってるのか?」
「ええ。戦国時代と比べたら異常なまでの進歩してると言いたいけど、
君の戦国時代は僕のと異なるからちょっと分からないかもしれないわ。」
(しかし、二人とも強いな。)
家康については言うまでもないことだ。
一人では苦戦するバルバトスを相手に果敢に立ち向かい、
東軍の総大将だけあって堀北の提案や意見をすぐに理解している。
堀北は稽古をつけた程度で決して戦いでは強くない。
既に日常とは大きくかけ離れており、学友も失っている。
けれど、その中で自分にできることをしっかりと見据えており、
団長とそう年は変わらないであろうにこの状況でも物事を考える冷静さを持つ。
肉体的な強さは自分が上だとしても、精神的な強さは二人に負けず劣らずだろう。
言うなれば、この中で何もできてないのは自分だけなのだと。
(ワシも、負けてられんぜよ。)
だからと言って卑屈になるような性格はしてない。
堀北の状況判断は優秀だが彼女自身の剣技は初心者だし、
家康は間違いなく強く頼もしいが、何処か甘いきらいがある。
そういった面を自分がカバーすればいい。苦労は絶えないだろうが、
若者ばかりに役割を押し付けてるのだからそれぐらいは受け入れるつもりだ。
「改めて方針を確認しよう。
バルバトスを捜索もかねて橋は北を優先、
見つけた場合は倒すことを第一に、見つからなかった場合、
アッシュフォード学園で一度拠点を構えてから次の行動に出る。それでいいな?」
「ええ。」
「わしも異論はない。」
『我も異論はない』
「では、向かおうか!」
話は纏まり、三者は動き出す。
この暗雲立ち込めるこのゲームにおいて、
全てを照らす光となるために。
【エリアI-3/禪院家/9月2日午前6時】
【堀北鈴音@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:絶対遵守のギアス(極大)
服装:高度育成高校の制服(女子)
装備:ソーディアン・ディムロス@テイルズオブデスティニー(DC版)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(武器以外)、SA・ホットライン
思考
基本:このゲームから生還する。
00:『一人称は僕、二人称は君を使う』
01:須藤君……なんてこと。
02:羂索にルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……。まさか魔法が実在したなんて。
03:戻った時に何て言われるかしら。
04:喋る剣に、小柄な三十代に、徳川家康……頭が痛いわ。
05:アッシュフォード学園を拠点にしたい。
参戦時期:少なくとも髪を切る前
備考
※絶対遵守のギアスをかけられました。
異能力解除の異能力をかけられない限り一人称が僕、二人称が君のままです。
※ソーディアン・ディムロスにスタン・エルロンの術技がソードスキルとして内包されてます。
【徳川家康@戦国BASARA3】
状態:疲労(小)
服装:いつもの(籠手含む)
装備:家康の籠手@戦国BASARA3
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:絆の力でこの戦いを止める。
00:アッシュフォード学園に向かう。
参戦時期:赤ルート、関ケ原前。
備考
※籠手が支給品の代わりとなってます。
【サビルバラ@グランブルーファンタジー】
状態:ダメージ(大)、疲労(小)
服装:いつもの(ゲーム上における火SSRの恰好)
装備:蛍丸@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:汚れ仕事はやる。だが殺し合いには乗らん。
00:アッシュフォード学園へと向かう。
01:バルバトスは早く倒しておきたい。
02:二人のサポートに回る。それがわしの役割ぜよ。
参戦時期:「待雪草祈譚」終了後以降。
備考
※男性のため御刀の力は引き出せません。
※ギアスコラボ、ドラえもんコラボには出てないため、
ルルーシュやドラえもんの名前はうろ覚え程度の扱いになってます。
以上で投下終了です
投下します
「Боже мой(なんてこと)!」
それが、クルーゼの放送を聞き慌てて名簿を確認し、姉であるマリヤ・ミハイロヴナ・九条の名前を見つけたアリサの言葉だった。
正直、名簿を見て最初は面食らった。
何せ、数が多いのだ。
百を遥かに超える人数の中から自分の名前を探すだけでも一苦労である。
これがもし、あいうえお順やアルファベット順ならそこまでの苦労ではなかっただろうが、主催独自の基準により並ぶ名簿だと上から見ていくしかない。
名簿を見ながら途中二つあるキラ・ヤマトの名前や、キズナブラックやキズナレッドなる人というよりコードネームみたいな名前に疑問を覚えたり、豊臣秀吉や徳川家康という名前に驚きつつ、ようやっと自分の名前を見つけた。
そして直後、真上に姉の名前があることも。
その結果、彼女は思わず叫ぶのだった。
「はっ!?」
自らの叫び声を聞き、反射的に口を押えるアリサ。
こんな状況で大声を出すことの愚かさは、成績優秀な彼女には十分に分かっている。
それでも抑えられなかったことを反省しつつ、同時にこの名簿はある程度知人同士で固めているのだろうと推察する。
同時に、自分の知っている参加者は姉のマーニャだけだとも。
自分の名前の下にあるのは渋井丸拓男という名の知らぬ男であり、マーニャの上にあるのは総司令官という、名前と言うか最早役職しか示されていないものだ。
姉に自分の知らない人間関係がないとは思わないが、だからと言って司令官と関係を持つとは考えられないだろう。
ゆえにアリサはこう考えたのだ。
ただ知人同士、あるいは同じ名前同士で集めているのならアスラン・ザラという名前は上の方に一つと、下の方に?を付けてもう一つあるのだが、それについてアリサは一旦考えを放棄した。
現状分からないことが多すぎるので、考えても仕方ないと判断したためだ。
それに彼女には考えることがもう一つある。
「仮面ライダーエグゼイドはいないのかしら?」
アリサが思考するのはエグゼイドという仮面ライダーのこと。
正直、仮面ライダーが現状何なのか分からないが、名簿に仮面ライダーガッチャードやゼインと書かれているのなら、仮面ライダーは元の名前とは別に名簿でこう書かれていると推察できる。
ガッチャードの本名が一ノ瀬宝太郎だとみんな知っているのにそう称しているのだから、きっとそういうルールになのだろう。
もしかしたらあの場でガッチャードの本名が明かされることが想定外だったとしても、殺し合い開始から二時間経っているのだから、修正する機会ぐらいいつでもあっただろう。
にも拘わらずしてないのだからそうに違いない。
それが主催者の仕掛けたブラフというなら話は変わってくるが、現状確かめる術はない。
ならば、ひとまずエグゼイドなる仮面ライダーはいないと考え、プロトガシャットを渡す相手は技術者に絞った方がいいだろう。
そこまで考えたアリサはひとまず名簿を消し、今度は地図アプリを開く。
すると現在地はF-4 租界と出た。
ならば目的地はひとまず、ここからでも見える巨大な城、アプリによると名前はコーカサスカブト城へ行くのが無難だろう。
他の参加者がいるかもしれないし、休めるところもあると思われる。
そう決めた彼女が歩いていると、目の前に一枚のメダルが落ちているのを見つけた。
そのメダルは灰色で、デザインはマッスルポーズ、正確に言うならボディビルのダブルバイセップス・フロントというポーズが描かれたシルエットである。
彼女がそれを拾うとメダルは消失し、代わりに体に変化が現れた。
「な、なにこれ!? 体力が戻って……!?」
なんと、アリサの疲労が回復したのだ。
完全な健康体とは言えないが、さっきまでの休まないと辛いというほどではなくなっていた。
これは、今のアリサが知るところではないがエナジーアイテムの効果である。
さっき拾ったアイテムの効果は回復。その名の通り、取ると体力を回復させる効果を持つ。
そんなことは露とも知らないアリサは、突如回復した現象を気味悪く思いつつも、今は都合がいいと考え目的地を目指す。
そして城の入口が見えてきた頃合いに、唐突に呼び止められこう問われた。
「しおちゃんを知りませんか!?」
どこかの学校の制服を着たピンクの髪色が特徴的な少女が、必死の形相でアリサに向けて尋ねる。
しかしそれに答えるより先にアリサは全く別の事を注意した。
「ま、まずは服を着替えなさい!」
なぜなら、ピンク髪の少女の制服は一部が引き裂かれていたのだから。
◆
時は少し遡る。
「しおちゃん……!!」
ピンク髪の制服の少女、松阪さとうは実装された名簿を確認して戦慄する。
彼女の視線の先にあるのは一つの名前。
神戸しお。
松阪さとうにとってこの世で最も愛する人にして、最も大切な少女。
彼女に比べれば世のほぼすべての人間が有象無象。
友人である飛騨しょうこも、しおとの幸せな生活の為なら、彼女への愛の為ならきっと切り捨てられる。
そんな相手が、殺し合いに参加させられている。
「探さなきゃ」
さとうの思考がしおを探すことのみに染め上がる。
さっきまで抱いていた同じ名前が二つあることや、戦国武将の名前があることへの疑問が全て消えていく。
しおが死んでしまうということに、血と悪意であの甘く優しい少女が汚されてしまうことに、さとうはたまらなく恐怖と嫌悪感を覚えてしまう。
同時に納得もした。
殺し合いに参加させられる直前、さとうはしおがいなくなったことに気付いた。。
なぜいなくなってしまったのかと思ったが、攫われていたというのなら納得だ。
しおちゃんが、自分を捨てるはずないのだから。
だからさとうは走り出す。
ここがどこかも知らず、どこを目指せばいいかも分からないままに。
そして最初に出会った、アタッシュケースを持った銀髪の、自分と同じくらいの少女に、愛しい少女を知らないか尋ねる。
「ま、まずは服を着替えなさい!」
しかし返ってきたのは全然違う言葉だった。
一瞬、あまりにも求めている答えと違う言葉のせいで目の前の少女に殺意すら覚えるさとう。
だがよくよく考えてみれば相手の言い分はもっともだ。
今、さとうの服装は渋井丸拓男と葉多平ツネキチに襲われ、Yシャツの一部が裂けたままの状態だ。
そんな少女が助けを求めるならともかく人探しをしていたら、一言いうのが当たり前である。
最悪、痴女と思われて距離を置かれしおを探すどころじゃなくなることすらありえる。
そう考えれば、目の前の相手の言葉は正論どころか、むしろ感謝すべき内容だろう。
(落ち着かなきゃ)
さとうは一回深呼吸をし、銀髪の少女に頭を下げる。
「ご、ごめんなさい。気が動転してて着替えを探すことも忘れてて……」
「ほら、着替えならあるから」
素直に謝罪するさとうに対し銀髪の少女、アリサは自身のリュックから、赤を基調とした服を取り出した。
それはさとうから見ればどこかの学校の制服の様に見えたが、この際着れるなら別に何でもいい。
アリサが取り出した制服はこの殺し合いにおいては井ノ上たきなしか知らない、ファーストリコリスの証。
彼女の相棒である錦木千束など限られた存在にしか与えられない、エリートの証明である。
とはいえ、この殺し合いにおいては単なる服でしかないが。
それはさておき、制服を受け取ったさとうはアリサと共にコーカサスカブト城の門を潜り抜ける。
元々城を目指していたアリサと違ってさとうに目的地などないが、流石に外で着替えることに躊躇いを覚える羞恥心くらいは存在していた。
城に入った瞬間――
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』
いきなり城内にあるテレビが、最初の場で目立っていた少年の姿を映し出す。
こんな場所にテレビ? と二人が疑問に思う間もなく、ルルーシュのおおよそ真っ当な方法で殺し合いに抗う気がないとしか思えない演説が始まる。
彼の話にアリサはあからさまに嫌悪感を示すが、さとうは何やら考え込む。
そのまま放送が終わり、お互い放送について話そうかと思ったが、それより先に二人はさとうの着替えを優先することにした。
とりあえず移動したコーカサスカブト城城内の一室にて、さとうは着替えを終わらせる。
部屋にあった姿見で軽く確認するが、おかしくはないだろう。
その後で求めるのは、彼女がアリサに出会った時にした質問の答えだ。
とはいえアリサはしおの外見を知らないので、懇切丁寧に説明したうえでだ。
「……ごめんなさい、私は会ってないわ」
「そう……」
アリサの言葉にさとうは、ならば用はないと踵を返す。
それをアリサは引き留め、代わりに自分の姉を見ていないか尋ねた。
「見てないわ」
さとうは一言で切り捨てた。
彼女が出会ったのはアリサを除けば男二人だけ。どうやってもアリサが求める存在のことなど知る術はないのだから。
そんなことよりしおちゃんが心配だ。
なのでもう話すことなどないと、さとうは部屋を出て行こうとする。
「待って!」
だがアリサは部屋の扉の前に立ち、さとうを引き留める。
それにさとうは苛立ち、殺しこそするつもりはないものの無理に振り払う。
「一人じゃ、駄目よ……! それじゃ何もできない……!!」
「……どういう意味?」
しかしアリサの小さく呟いた声がさとうの耳に入り、聞き返す。
彼女は力ずくで振り切るのではなく、言葉で黙らせることにした。
しおが殺し合いの中で生きている限り、さとうに殺し合いに乗る意志はない。
だが場合によっては殺すという選択肢は、彼女の中に常にある。
そんなことは知らないアリサだが、彼女は必死に話を始めた。
「あなた、そのしおって子が凄く大事なのは伝わるけど、どうやって探すつもり?」
「あのルルーシュって奴の所に行くつもりだけど」
「確かに人は集まるかもしれないけど……あんな奴の軍門に下る気!?」
さとうの言葉にアリサは声を荒げる。
確かに彼女の言う通り、ルルーシュの演説はおおよそ人道とは真逆の内容だ。
打倒するならまだしも、あれにわざわざひれ伏しに行こうなど、まともとは言えない。
だがさとうには関係ない。
彼女にとって大事なのは神戸しおのみ。
たった一人の大切な人間が残っているのなら、彼女以外の参加者など死のうが生きようが知ったことじゃない。
彼女を守る為ならどんなことでもする。
誰かの弱みを握って利用することも。
対して知りもしない相手を殺すことも。
それが松阪さとうの愛。
だから場合によってはどんな外道の下にも就く。
何をすることになっても、しおと合流し守り抜くという覚悟がある。
殺しでも、騙しでも、場合によっては死ぬほど嫌だけど抱かれることも。
「アリサだったっけ? あなた、大切な人の為にどこまでできるの?」
「な、何を……」
「私はなんだってできるよ。
騙すことも殺すことも、耐えることも守ることもできる。
人はね、本当の運命の人と出会えたらどんなことだってできるの。
辛いことや苦しいこと、嫌なことがあってもその人と一緒にいるだけで全部どうでもよくなる。
その人と二人でいれば、苦い出来事よりもいっぱいの砂糖菓子みたいな甘い幸せがずっと味わえるの」
さとうの知らず高揚している顔を見て、アリサは一歩下がりそうになる。
彼女は怯えていた。
今まで出会ったことのない異常、常軌を逸脱した精神性の持ち主であるさとうに。
しかしここで怯むわけにはいかない。
あのルルーシュと同じく、人を傷つけることに躊躇のない存在を見過ごすわけにはいかない。
「あなたがそんな危険な人なら、私にも考えがあるわ」
「……どんな?」
アリサの言葉に対し、さとうは狂気の瞳で彼女を睨む。
それに対しアリサは手にあるヴェルデバスターガンダムの起動鍵を使い、力ずくで脅すことを決意する。
使い方自体は移動中に確認したものの、いい気はしない。
力で人を抑えつけるなど、ルルーシュや殺し合いの主催者達と何も変わらない。
だがしかし、その気概で見過ごすには松阪さとうは危険すぎる。
なのでやむなくヴェルデバスターガンダムを起動しようとしたところで――
グサリ!
背後の扉から一本の剣が突如生え、アリサの腹を貫いた。
◆
『掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』
知らない男の声が唐突に聞こえたと思った瞬間、勇者アルフは正気を取り戻した。
一体どれほど呆然としていたのだろう。
僕はどれだけ、あのもう一人の『僕』の言葉にショックを受けていたのだろう。
何も分からない。
自分の心も。自分が行く道も。
進むべき道はある。殺し合いに抗い、罪なき人々を助け、あの羂索という悪を倒すという正義の道が。
だがそれは本当に自分の意志で選んだ道だろうか。
勇者ロトの生まれ変わりという、本当かただの噂かも分からない風評によって押し付けられた勇者の称号がやらせているだけなのか。
「……こんなところにいつまでもいても仕方ない」
それでもアルフは動いた。
これ以上この場にいても意味がないという理性と、これ以上ローラの遺体を見たくないという感情によって。
彼はローラの遺体をそのままに、コーカサスカブト城玉座の間を去っていく。
そして当てもなく彷徨った。
何も考えていなかった。
もう一人の『僕』を探そうとすらしていなかった。
そしてある部屋の前を通りかかった時、中から声が聞こえた。
「あなた、大切な人の為にどこまでできるの?」
聞き覚えのない少女の声。
アルフにとってその声は、ただの市民の声でしかない。
だが――
「私はなんだってできるよ。
騙すことも殺すことも、耐えることも守ることもできる。
人はね、本当の運命の人と出会えたらどんなことだってできるの。
辛いことや苦しいこと、嫌なことがあってもその人と一緒にいるだけで全部どうでもよくなる。
その人と二人でいれば、苦い出来事よりもいっぱいの砂糖菓子みたいな甘い幸せがずっと味わえるの」
不思議なくらいアルフの心を苛む、そんな言葉だった。
この声に彼の心は軋む。
そうだ、僕が本当にローラを愛していたのなら、別の世界の自分の所業にショックを受けたとしても、まずは仇を討つことを最優先にすべきだろう。
愛したはず相手の死すら嘆かないで、何が愛なのだろうか。
それは勇者以前に、人としての心すら持っていないのではないか。
『僕』の言う通り、僕はただ肩書に振り回されただけなのだろうか。
「でも、嫌じゃなかったはずなんだ」
僕が竜王を倒したのち、僕はアレフガルドを出て行った。
その時、ローラも付いてきた。
これを僕はいくらでも拒絶できた筈なのだ。
置いていくことも、説得してアレフガルドに残すこともできた。にも拘わらずしなかった。
一人で行きたかったのなら、彼女といたくなかったのなら、そうしたはずなのだ。
「――確かめたい」
僕の気持ちがどこにあるのか。それはきっと、ローラともう一度離さなければ永遠に分からないだろう。
だけどローラは死んでしまった。
かつての勇者ロトの仲間には死者を生き返らせる呪文の使い手がいたなんて話もあるが、本当かどうか。
第一、それが本当だとして今この場で使える参加者がいる訳もない。
なら答えは一つ。
「だって、仕方ないじゃないか。
姫が死んだら、国が成り立たないじゃないか」
アルフは、殺し合いに乗った。
だがそれはやみのせんしが望んだ決断によってではない。
アルフがしているのはただの責任転嫁だ。
いずれ収める自らの国の為に、ローラが必要だから生き返らせなければならないという強迫概念。
もう勇者ではないのだから、勇者である必要などないのだから、王になるのだから非情な決断も必要なはずという、思考の放棄。
自分の気持ちを確かめたい気持ちもあるが、それだけを理由に罪なき人々を殺すわけにはいかない。
だがこれだけ理由があるなら、殺し合いに乗るのも仕方ない。
もしかしたら自らの意志で竜王に下った男より醜悪かもしれない思考が、ここに生まれる。
グサリ!
思考の果て、殺し合いに乗ったアルフの最初の行動は、部屋の扉に剣を突き刺すことだった。
元々部屋に二人いることも、内一人が扉の前に立っていることも分かっていた。
だから扉を刺せば連鎖して中にいる参加者を最低一人は殺せると判断したのだ。
結果は正解。確かな手ごたえを感じたアレフは剣を引き抜き、そのまま扉を蹴破る。
「なっ……!?」
すると中にいたのは顔を驚愕に染めるピンク髪の少女、松阪さとうの姿だった。
「ギラ」
アレフはさとうを視認した瞬間に呪文を放つ。
目の前の少女は間違いなく一般人。なら弱い呪文でも即座に殺せると判断したためだ。
しかしその判断は裏目に出る。
さとうは咄嗟に地面を転がり呪文を回避。
そしてポケットから青色の小さな正方形の物体を取り出し、姿見にかざしたかと思うと、なんと虚空からベルトが現れ彼女に装着された。
これは参加者で言うなら浅倉威の世界にある、ライダーと呼ばれる存在になる為のカードデッキ。
デッキを鏡など風景を反射する物にかざすとライダーに変身できるようになるのだ。
さとうの手元にあるのはタイガという、元は浅倉威が一時敵視していた男が使っているデッキである。
元々はさとうを襲った男である渋井丸拓男に支給された物。
彼女が返り討ちにした後、何か使えそうなものが無いかとリュックを漁り手に入れたのだ。
そして、彼女がルルーシュの元へ行こうとした理由でもある。
彼が上げた仮面ライダーの首は無理でも、変身アイテムを持っていけば無下にされないだろうと判断したために。
「変身!」
しかしそんなことは今のさとうに関係ない。
彼女が今この場で目の前のアルフを倒すか、あるいは逃げ出せない限り机上の空論でしかない。
なので彼女はデッキをベルトに収め、斧を持つ青と銀色の鎧を纏うライダーへと変身した。
「モンスターになった……!?」
さとう変身を見てライダーを知らないアレフは驚く。
間違いなく一般人だった相手が、恐らく今まで戦ってきた怪物に匹敵する存在となったことに彼は少し戸惑うも、しかしすぐに切り替え戦闘態勢に入った。
「私の、アタッ……シュ……」
そこに、実は扉と共に蹴り飛ばされ下敷きとなっていたアリサが、声も絶え絶えに必死に訴えかける。
アタッシュケースという物を知らないアレフにはただの戯言だが、さとうにはアリサが持つアタッシュケースに何か意味があるのか、と考える。
しかし、その考えもアレフをどうにかしなければ、さとうの算段と同じく机上の空論で終わるだろう。
こうして愛が分からなかった少女と愛が分からなくなった男、
あるいは、鎧を纏う堕ちた英雄と、英雄を目指す男が用いる鎧を纏った少女の戦いが始まる。
【エリアF-4/コーカサスカブト城内部/9月2日午前6時00分】
【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
状態:健康、不安による焦り
服装:ファーストリコリスの制服@リコリス・リコイル
装備:仮面ライダータイガのデッキ@仮面ライダー龍騎
令呪:残り三画
道具:基本支給品 ランダム支給品0〜2(確認済み)、ホットライン、サバイバルナイフ@現実、キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER、さとうの制服(Yシャツの一部が引き裂かれている)
思考
基本方針:しおちゃんと二人で元の世界に戻る
1:アレフに対処する
2:しおちゃんを探す。とりあえずテレビ局に行く。
3:↑に並行してしおちゃんと一緒に元の世界に戻る方法を探す。
4:邪魔をする存在には容赦しない
5:あのアタッシュケース(ライダーガシャットケース)に何かある……?
参戦時期:アニメ3話でしおちゃんが家にいないのを気付いた頃
備考
※神戸しおは自身と同じ時間軸から参戦していると思っています。
【勇者アレフ@ドラゴンクエスト】
状態:絶望、激しい精神的ショック
服装:いつもの格好(デフォルト画面の甲冑姿)
装備:ロトの剣@ドラゴンクエスト
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(確認済み、ロトの防具はなし)、ホットライン
思考
基本:優勝してローラ姫を生き返らせる。仕方ない、そうしなければいけないのだから。
01:少女(さとう)を殺す
参戦時期:本編終了後
備考
※最初の放送(OP2で流れた物)を聞き逃しました。
◆
心臓を貫かれたアリサの意識は落ちていく。
消えていく。
終わっていく。
自分はここで死んでしまうのだと、彼女は理解する。
その中で次々と、出会ってきた人間のことが走馬灯として駆け巡る。
ロシアにいたときの友達。
日本に来てからできた友達。
生徒会の皆。
家族。
殺し合いに参加させられている姉のマーニャは大丈夫だろうか。
私はここで死んでしまうけど、せめてあなただけは生きて欲しい。
次に思い浮かんだのは、殺し合いで出会った名前も知らない龍のような赤い戦士。
彼は私を戦士と言ったが、どうやらそんなことはなかったみたい。
別にあなたの期待に応える義理なんて無いから、謝ったりしないけど。
その次は松阪さとう。
愛の為に生きると公言する、狂っているとしか思えない少女。
だけど、アタッシュケースの中身が殺し合いを打破する希望かもしれないと伝えられたのは彼女だけだ。
殺し合いに乗るつもりはなさそうなので、できれば一人でも多くの参加者を生かして欲しい。
そして最後に思い浮かぶのは、一人の少年。
久世政近。
中学時代に出会った、私の友達。
いつもだらしなくてやる気がなくて成績も赤点ギリギリでおおよそロクでなしだけど、本当は周りをよく見てて寄り添ってくれて自然体でいさせてくれる男の子。
一人でやろうとした私を助けてくれた人。
なんで最期に思い浮かぶ顔がコイツなのか。
いや、分かってる。
私はきっと――
「 」
あなたが好きだった。
せめてロシア語でもいいから、伝えておけばよかった。
それだけは、ちょっと後悔してる。
【アリサ・ミハイロヴナ・九条@時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 死亡】
彼女の最期の思いは日本語でもロシア語でも、その言葉が出てこない。
力尽きた人間の体に、喉を震わす機能など残っているはずもなく。
※会場にある施設には、原作ではTVのない場所にも設置されている場合があります。
※アリサ・ミハイロヴナ・九条の遺体、
ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド、11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド、
ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER、アリサのリュック(ランダムアイテム×0〜1、ホットライン)がF-4 コーカサスカブト城内部に放置されています。
また玉座の間にローラ姫の遺体、ローラ姫のリュック(ランダムアイテム×1〜3、ホットライン)が放置されています。
【支給品解説】
・ファーストリコリスの制服@リコリス・リコイル
アリサ・ミハイロヴナ・九条に支給。
DAの戦闘員リコリスの制服。ファーストはリコリスの中で最も高い階級のこと。
ファーストリコリスは服は赤色で、青色のリボン。
・タイガのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
渋井丸拓男に支給。
鏡に映すことで仮面ライダータイガに変身することが可能となるデッキ。
各種カードも付属されている。
投下終了です
レン、浅倉威で予約します
シノン、黒見セリカ、パラド、ザギ、冥黒王ギギスト、冥黒アヤネで予約させていただきます
遅くなりましたが、真贋ロワ本格スタートおめでとうございます!
また、書き手の皆さま、投下お疲れ様です。
ダークマイト、九堂りんね(ガッチャTFD)で予約します。
一ノ瀬宝太郎、華鳥蘭子、遊城十代(覇王)、PoH、亀井美嘉、藤乃代葉で予約します
予約を延長します
キラ・ヤマト(SEED)、柊篝、聖園ミカ、大道克己を予約します
トランクス、神戸しおで予約します。
予約を延長します
投下します。
────夢中になれるモノが、いつか君をすげぇ奴にするんだ────
トランクスが降りた地は鬱蒼と茂る森の中だった。
不規則なビルの群れが織り成すコンクリートジャングルよりも身を隠すには都合が良い。慎重な手つきで少女を降ろしたトランクスは続いて流れるような一刀で傍らの木を切り伏せた。
「わ、……!」
合わせ鏡のような断面を見せびらかすような切り株。青年は倒れかかる丸太を右手で支え、先ほどまで大木の本体であったそれを発泡スチロールかなにかでも扱うかの如くとさりと地面に下ろす。現実離れしているにも程がある光景に少女──しおは目を丸めた。
「さっき怪我をしていただろう。見せてくれないか?」
「ぁ、…………うん」
どうやら彼曰く座れという意図の行動らしい。
切り株に腰を掛けるしおは右膝を少しだけ上げてみせる。動く分には問題ない程度ではあるが血が滲んでおり、視認したせいか痛みが増したような感覚に思わず目を瞑った。
その間にどうやらトランクスは怪我の程度を確認していたらしい。ビリ、と布が破れる音に再び目を開ける。視線を少し下げればジャケットの一部を自分の右膝に巻き付ける青年の姿が映った。
「応急処置だけど、…………っと、これでどうかな」
「…………ありがとう、えっと……」
「トランクス。君の名前は?」
変わった名前だ。とは口にしない。
そんな余裕がないからというもっともな理由もあるが、余計な会話をする気が起きなかったからというのが本音だ。
「しお。……神戸しお、です」
「そうか、よろしくしおちゃん」
おずおずとした様子のしおとは対照的にトランクスは穏和な笑みを見せる。
一見すれば好青年のそれだがその心中は決して穏やかとはいえない。先の神を名乗る男が気がかりだし、それになによりも名簿だ。情報が足りなさ過ぎる。
「しおちゃんはその、いくつなの?」
「うーんとね、八歳だよ。トランクスくんは?」
「あっ……はは、トランクス〝くん〟か…………ああ、俺は──」
他愛のない会話はまるで頭に入らない。
ホットラインが使用可能になるまで場を持たせようとするための無機質なものだ。それにリソースを割けるほどトランクスは器用ではない。
考えることが多すぎる。
心配ごとが多すぎる。
「……え! トランクスくん、そんなに歳上なんだ」
「あはは……サイヤ人は老化が遅いからね」
「さいや、じん?」
「ああ、なんて言えばいいかな──」
齢八歳の少女の言葉に相槌を返しながら、ただひたすらに時を待つ。
長いとも言えるし、短いとも言える。トランクスにとっては前者でありしおにとっては後者であったようだ。しおが会話を楽しんでいたから時の流れが早く感じた、というよりも情報への欲求に対する心持ちの違いによるものが大きいが。
そんな折で、ようやく待ちわびた時が訪れた。
『──現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。おはよう諸君』
◾︎
「…………は、ぁ……」
長ったらしい名簿に目を通し終えたトランクスは安堵と不安の入り交じった溜息を洩らした。
知人や肉親の名前はない。こんな悪趣味極まりない事態になど巻き込まれないに越したことはないが、それは同時に頼れる存在もいないという事実を突きつけられたことにもなる。弛んだ緊張が途端に引き締まった。
(悟空さんや父さんは頼れない。けど……)
さきほど出会った神を名乗る男──あれは危険だ。
制限の影響という言い訳を抜きにしてもまるで勝機が見えなかった。あのまま戦いを続けていても十中八九自分の体力が先に尽きていたであろう。そういう意味では仕切り直しの場を設けてくれたしおに感謝しなければ。
いや、そうだ。
「しおちゃんは、その……、……知り合いの名前はなかった?」
肝心なことが頭から抜けていた。
自分がそうでなかったからと、自然と考えを除外してしまっていた。
だからといって聞かない訳にもいかない。両手でホットラインをまじまじと見つめる少女へ、頼むから杞憂に終わってくれと願った。
「さとちゃん」
「さと……え?」
「さとちゃんのなまえ、みつけた」
最悪な予想は当たってしまった。
さとちゃん、と呼ぶからには少女とは親しい間柄なのだろう。呼称云々よりも〝さとちゃん〟と口にする時の声色からなんとなくわかる。トランクスはおよそ子供の前で露わにすべきではない感情を押し殺すべく奥歯を強く噛み締めた。
「そう、なのか…………なら、その子も見つけないとな」
「うん、わたしね……さとちゃんに会いたい」
「大丈夫、必ず会わせるよ」
言葉に嘘はない。
己に言い聞かせるような口調で強く、鋭く宣言する。
「そのさとちゃんっていう子のこと、教えてくれるかい?」
だから、と。
トランクスはそう聞いた。
膝を屈めて、視線を合わせて。できるだけ優しい口調で。
こくりと頷くしお。
その様はまるで人形のような愛らしさを持っていて、トランクスは思わず微笑んだ。少女を安心させるためのものではなく自らの意思で。
「さとちゃんはね、わたしの大切な人」
やはり、か。
「とっても優しくて、とっても安心できて、わたしのためならなんでもしてくれるの。しおちゃん、って。呼んでもらえるだけですごくあったかい気持ちになるんだよ」
頷きながらもトランクスは羂索への怒りを募らせる。──そのつもりだった。
けれどなんだか、目の前の少女は心底嬉しそうに見える。普通知り合いがこんな場に連れてこられたらもっと激情を顕にしたり、悲しんだりしてもいいものだと思うが……しおの爛々と光る双眸はどれとも当てはまらない。
「わたしにとってね、さとちゃんは──」
いや、違うか。
(普通、ってのは…………違うよな……)
トランクスは物心ついたころから修行に明け暮れていた。
自分が赤ん坊の頃に生誕した二人の人造人間。圧倒的な力を持つそいつらによってすでに地球は壊滅状態だった。戦える者は自分と師を除いて他におらず、それさえも遊び相手としか認識されていないほどに埋めがたい差があった。
強くなりたい。
こいつらを倒したい。
地球を取り戻したい。
平和な世界に生まれた子供であれば遊びや勉強に尽くした時間の全てを修行に費やした。
ペンではなく拳を握り、ボールではなく気弾を投げる。文字通り血の滲む、気が遠くなりそうな超サイヤ人への渇望の日々はおよそ〝普通〟の枠組みを逸していたのだろう。
────お前はまだ小さいのに大人びてるな。
師である悟飯に何度も言われた言葉だ。
意識なんてしたことなかった。
それが当たり前だと思っていたから。
子供らしい子供なんて彼の知る世界にはいなかったから。
人造人間が殺戮を繰り返す地球では、死に怯え狂気に走る人々しか見てこなかったから。
年相応の遊び相手なんて、いるはずもなかった。
「それでね、さとちゃんは────」
だから、だろうか。
あまりにも楽しそうに〝さとちゃん〟のことを話すしおがとても新鮮で。まるで見たことのない花が荒廃した地に咲いているようで。
その話を邪魔する気なんて微塵も起きなかった。
(──この子の世界ではきっと……学校や仕事があるのが当然で、争いがないのが当たり前なんだろうな……)
なんで俺の世界ではこうならなかったんだろう。と、思わないかと問われればNOになる。
けれどそれが恨み妬みに繋がるかと言われれば──絶対にないと断言できる。
尊敬すべき悟飯は、母親であるブルマもきっとそう答えるだろう。二人に共通して言える点はひとつ、未来に託すという常人では成しえないことをしてみせたのだから。
だからトランクスは耐えられた。
一縷の希望を糧に。亡き父や師たちの無念を晴らすために。
地球を守り続けるという一個人が背負うには途方もない使命を、ただのひとときでさえ手放さずにいられたのだ。
だけど。
「しおちゃんは、本当にさとちゃんが好きなんだね」
「え、へへ…………うん!」
ほんの少しだけ、本音を吐いてもいいのなら。
「すこし、羨ましいな……そんなに大切な〝家族〟がいるなんて」
出会ってから初めて見せる青年の容姿相応な呟きにしおは一瞬目を丸めて、しかしすぐにはにかんだような笑顔に変わる。
「俺は……大切な人を守れなかった。目の前でこぼれ落としてしまったんだ。あの日から毎日、毎日……自分がもっと強ければと思うようになった。悔いたところで仕方ないとはわかってるけど、もしあの時に戻れるのならと何度も考えてしまうんだ」
「…………、……そうなんだ」
「……ごめんね、突然こんな事を言って。大丈夫、君には絶対にそんな思いはさせない。そのために強くなったんだから」
強い子だな、と思う。不安で覆い尽くされても仕方がない状況なのに、この子はまるでそんな気を見せない。それどころか自分を不安にさせまいと受け入れてくれているようにも見える。
──トランクスの背中を決意じみた感情が後押しした。
「しおちゃん、ちょっとごめんね」
「え? ……あ、わ…………!」
やるべきことは決まった。
まずは人通りの多そうな場所へ向かう。隠密行動ではなく人探しを目的としているのだから徒歩で移動するよりも飛行して移動した方が都合がいいだろう。なによりも怪我をした子供の足で歩かせるのは忍びない。
行き先を定めたトランクスは再びしおのからだを抱きかかえる。腕の中で飴を転がすような声が聞こえ、導かれるように視線を合わせた。
「行こう。絶対にさとちゃんを見つけてみせる」
「……トランクスくん」
力強い宣言にしおは安心したように名を呼び、目を閉じる。
天使のようだ、という月並みな感想を抱く。翼を持っているのは自分なのだからそれもおかしいか。なんて場違いな冗談を思えるほどには落ち着いたようだ。
ふわりと地上から足を離す。少女に負担をかけないように出来る限りスピードを落として、いよいよ青い鳥は飛び立った。
「……ふふ、っ」
「? どうかした?」
木々を下に見遣るさなか、ふと少女の笑い声が聞こえてそっちに目線を配る。
慣れない飛行経験にはしゃいでいるのか、信頼出来る大人を見つけられたことに安心したのか。
穢れのない純粋な笑顔を携えて、少女は小さな人差し指を唇にあてがった。
「────ひみつ」
【エリアJ-3/森上空/9月2日午前6時】
【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(中)、飛行中
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:さとちゃんを探す為に人通りの多そうな場所に行く。
02:あの白髪の男(アルジュナオルタ)は必ず倒す。その為には同志を集めないと……。
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、トランクスに抱っこされてる、安心感(大)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:トランクスくんと一緒にさとちゃんを探す。
01:さとちゃんに会いたい。
02:トランクスくん、やさしくてあったかい……。
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考
投下終了です。
投下終◾︎です。
投◾︎終◾︎です。
◾︎◾︎◾︎◾︎です。
◆ ◆ ◆
ここまでが表面上のおはなし。
都合よく解釈したきれいな物語。
一見すれば青年と少女が織り成すボーイミーツガールに見えるだろう。少年誌の一話に載せられていてもさほど疑問に思う者はいないはずだ。
けれどそれは、知らない。
神戸しおという少女をまるで知らない。
もしもほんの少しでも彼女を知るものが上のやり取りを見れば違和感を覚えたはずだ。
トランクスは重大な思い違いをしていた。
神戸しおがただ幸せな日常生活を謳歌していた中で連れてこられた不幸な少女だと、微塵も疑わずに結論づけていた。
ゆえに神戸しおがどのような人生を送ってきたのかなどという考えにはまるで至らず。きっと両親にも恵まれて〝普通〟の生活を送ってきたのだろうと、そう決めつけていたのだ。
少女に興味がなかったわけではない。あまり悠長に話をしている時間はないという戦士たる真っ当な思考が無意識にそういった判断を下していたのだ。
(トランクスくん、やさしいなぁ)
事実、神戸しおから見たトランクスの印象はこうだった。
自分よりもずっと力が強くて、それでいてとても優しい。この男の人なら本当に信頼してもいいかもしれない──そんなふうに思ったことさえある。
その瞬間(とき)までは。
「すこし、羨ましいな……そんなに大切な〝家族〟がいるなんて」
それは。
その言葉は。
トランクスがなにげなくこぼしたたった一言の本音は。
────しおにとって絶対に踏み抜いてはいけない特大級の地雷だった。
(…………ああ、……そうなんだ…………)
あんなに優しく振舞っていたトランクスに裏切られたような、言葉にするには大きすぎる喪失感は一瞬にしてしおに諦観をもたらす。
急速にトランクスという人物が気持ちの悪い存在に思えてきた。表面上は非の打ち所がない好青年なのがことさらにしおにとって受け入れられない。
細胞が、遺伝子が。目の前の存在を拒絶するのだ。
(けっきょく同じなんだね、トランクスくんも)
その理由はただひとつ。
トランクスは自分と〝さとちゃん〟を理解しようとしていないと気づいてしまったからだ。
もしもしおの家庭環境を知っているのなら、彼女たちの関係を間違っても〝家族〟などという安易な言葉で片付けなかっただろう。
もちろん、そんな事情をトランクスが推し量るなんて無理がある。
そもそもの話としてトランクスの世界には同性愛という文化は公には存在しない。極端に人類が減少した世界ではそういった発展もしなかったし、滅亡の危機に瀕した人類にとっての愛とは子孫繁栄に直結していた。
トランクスにもマイという恋人がいる。言うまでもなく女性だ。それも世間一般的な出会い方とは異なるため恋愛と呼べる恋愛ではなかったが。
世界観的にも、経験的にもまるで異なるのに加えてサイヤ人特有の情愛へ対しての疎さもある。
そんなトランクスが、
『可愛くて優しくて』『一緒に暮らしている』『自分のためなら何でもしてくれる女の子』と聞いて、しおの姉と判断してしまったことは──果たして責められるべきことなのか?
もしも、
もしもトランクスがほんの少しでもしおの話を真摯に聞いて掘り下げていれば、結果は違ったのだろうか。
八歳という年齢を考慮せず、対等な会話を経てさとちゃんの詳細を知っていれば、二人は心から信頼し合える関係になっていたのか?
結論からすると、変わらないだろう。
トランクスにとっての幸せとは、生きることだ。
いつ死んでもおかしくない戦場で育ってきた彼だからこそ、ただ生きる意思さえあれば生きていける世界は理想郷に近かった。
一方でしおにとっての幸せとは。
さとちゃんと一緒にいること、だ。聞こえはいいが彼女と一緒にいられるのならそれが例えこの世でなくてもいい。一人でただ生きるくらいなら二人で死んだ方がずっとマシだ。
戦争を知らぬ子供と、平和を知らぬ子供。
価値観の違いだとかそんな生易しいものではない。もっともっと根本的なズレは会話の中で必ず亀裂となる。トランクスがどんな対応をしていたところで遅かれ早かれこうなっていただろう。
断言しよう。
未来永劫、これからどんなことが起こっても。たとえ世界線、時間軸が違ったとしても。
トランクスという青年としおという少女が理解しあえることなど、絶対にない。
◾︎
お世話になっております。
お手数おかけして申し訳ありません。
本作における神戸しおの状態表なのですが、以下に修正して頂きたいです。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、トランクスに抱っこされてる、トランクスへの生理的嫌悪感(大)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:さとちゃんとハッピーシュガーライフを。
01:トランクスくんをつかってさとちゃんのところに行く。
02:そのためにはトランクスくんと一緒にいるのも我慢しなきゃ。
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考
────ご対応、ありがとうございました。
以上で投下終了です。
ややこしくて申し訳ありませんが、>>380 までを本文とさせてください。
東ゆう、ラクス・クライン、ディーヴァ、枢木スザクで予約します。
松阪さとう、勇者アレフ、卜部巧雪、ドラえもん、アルジュナ・オルタを予約します
イザーク・ジュール、大河くるみ、キャル予約します。
延長します
投下します。
タイトルは「魔法少女ラブリーチカの災難 ―闇檻の胎動―」です。
非常に長くなったため、3分割のうちまずは前編を投下します。
また、申し訳ございません。非常にギリギリで脱稿したため、状態表自体は投下後の執筆になりそうです。
予約期間を若干超過してしまいますこと、お詫びいたします。
見ていて、下腹部が熱くなった。
突如襲来した修道服のようなドレスを着た強大な魔女。
黒霧に触れただけでガチガチに拘束する素敵過ぎる魔法。
仲間を逃がして一人全身を拘束されたマジアマゼンタ。
名前は知らないけれど、女の子を庇って自分を犠牲にした魔法使いのお姉さん。
さっきまで戦っていたはずなのに、今となってはあっけなく拘束され、芋虫のようにうねうねと身を捩ることしかできない。
そんな拘束された二人を魔女が"味見"していた時、心がときめいた。
本気で「混ざりたい」と思った。
しかし、そんな魔女を見ていると妙な焦燥感に駆られてしまう自分がいた。
その姿はまるで――。
あの時暴走してしまった"私"の進んだ果てのように思えてならなかったのだ。
§
"闇"と"闇"が、租界の街中でぶつかり合っていた。
悪の組織エノルミータの総帥と13の災害に指定された魔女が空中で相対している。
「メナスヴァルナー!!」
マジアベーゼの鞭から放たれた斬撃が放たれる。
暗黒の光を携えて空間を切り裂きながら、その先にいるノワルに襲い掛かろうとする。
「無駄よ」
しかし、それはノワルの周囲に自動で展開された固有魔法"闇檻 収監"に呑み込まれてしまい、跡形もなく消滅する。
斬撃すらも拘束し、無力化したのだ。
「今度はこちらの番ね♪」
ノワルがそう言うと、マジアベーゼのいる場所に闇檻の黒霧が発生する。
それに触れれば最後、付近に転がっているイドラやマジアマゼンタのように全身を拘束されてノワルに生殺与奪を握られる最悪の固有魔法だ。
マジアベーゼは闇檻が発生する前に飛び退いて回避するも、その動きを読んだかのようにまた別の闇檻が待ち構えていた。
しかし、マジアベーゼはそれすらも読み切り、空中軌道を変えて黒霧に触れることはなかった。
ノワルの瞳に浮かぶ星がふっと消えたのは、思惑が外れた不愉快だからか。
それ以降も飛行軌道の先や不意を突くような場所に配置された闇檻の弾幕がマジアベーゼを襲うも、まるでノワルの考えを読み通しているかのように回避し続ける。
「あら、それを避けられるなんてね」
「避けて安心したところを突こうとしたようですがバレバレですよ」
「ふーん?」
「あなたの立場になればどんなことを考えているかはだいたい分かります。似通った性癖の持ち主ですから」
「……本当に気持ち悪いわね、貴女」
「ふふふ、お互い様ですよぉ」
「それじゃあこれはどう?」
すると、先ほどとは比較にならないほどの大量の黒霧が、マジアベーゼを覆い尽くすようにして球体状になり出現する。
マジアベーゼの姿は見えなくなり、霧の中から拘束具がぶつかり合う音が鳴る。
ノワルは確かな手ごたえを感じて、黒霧の中から姿を現したそれを確認すると、そこには確かにラバー状の拘束具に雁字搦めにされたマジアベーゼの姿があった――が。
「っ!?」
突如、ノワルの背後で闇檻 収監が発動する。
驚き振り返ると、そこには幾重もの茎をハーネスで束ねられた花の魔物の上に乗っているマジアベーゼの姿があったのだ。
「なるほど……デコイを用意していたのね」
拘束具に包まれたマジアベーゼの姿を取っていた蝋人形が崩れ落ちていくのを横目で見て呟くノワル。
あの瞬間、マジアベーゼは闇檻を行使する前に蝋人形を残してその場を脱し、死角で植物を"支配の鞭"で魔物化して攻撃させていたのだ。
「その魔法は自動で仕込まれているのですか。……厄介ですね」
対するマジアベーゼも、汗を浮かべながら花の魔物から跳び上がる。
ノワルに蔦の鞭で襲い掛かった魔物は闇檻 収監に触れてしまい、瞬く間に全身を闇檻の拘束具に覆われていく。
ノワルの周囲に自動展開されている守護魔法”闇檻 収監”。
彼女の固有魔法を応用したそれは、魔法などの遠距離攻撃は無効化、近接攻撃に対しては闇檻によるカウンターを行う鉄壁の守りとなっており、ノワルに傷一つつけることすら容易ではない。
§
「んしょ……んしょ……っ!!」
ノワルがマジアベーゼと戦う傍らで、千佳は黒いラバー状の拘束具に全身を覆われたイドラを、小さな身体で一生懸命に引きずっていた。
ノワルの固有魔法"闇檻"による拘束魔法をまともに受けてしまったイドラは、口を塞がれた挙句全身をミノムシのように捩らせる程度しか動くことができない。
こうしている今も、千佳という非力な子供に引きずられるという形でしか移動できないのだ。
「ごめんねイドラちゃん……もうちょっと我慢して!」
「んむ……」
それに対して、イドラは喋れないなりに首を振りながら千佳に目配せをする。
やがて、千佳が一生懸命引っ張った甲斐もあって、イドラと同じく闇檻の拘束具に包まれて身動きの取れない花菱はるか――マジアマゼンタの元に辿り着く。
「はるかちゃ……マゼンタも大丈夫!?」
「んっ……!」
ラバーに覆われて動かせない口を最大限に動かして、感謝するようにマジアマゼンタは首を縦に振る。
「レッドく……アルカイザーは……」
「ぐ……だいぶキツいが大丈夫だぜ……!コレを止めるので精一杯だけどな……!」
棺の中に埋め込まれながら、レッドことアルカイザーは必死に耐えていた。
口では強がってみせても、少しでも気を抜いたら一気に身体を潰されるほどに鉄棺の圧縮する力は強い。
棺の外にいる千佳にも聞こえるよう、必死に声帯から声を絞り出す。
「千佳……お前だけでも逃げるんだ。こっからは見えないがマジアベーゼって奴が戦ってるんだろ……?ならその隙に逃げられるはずだ……!」
そう促してくるアルカイザーの言葉で、千佳の顔には迷いが浮かぶ。
口枷のせいで話せないが、イドラとマジアマゼンタの顔にもアルカイザーの言葉に頷く様子が見て取れた。
3人共、ノワルに無力化されながらも千佳を守ろうとしてくれていた。
「っ……いや……あたし逃げたくない!」
しかし、千佳はそれを拒否する。
折れそうになる心を抑えて、倒れて自力で立ち上がることすらできないイドラの拘束具を剥がしにかかる。
「むううっ!ふむぅっ!」
「んっ!んーっ!」
慌てるようなくぐもった2人の声が聞こえるが、千佳は聞こえないふりをする。
なぜなら。
「ラブリーチカは、自分の心に嘘はつかないから!」
そう言って、小さな手でイドラの口枷を掴んだり、マジアマゼンタに巻き付くベルトを引っ張ったりする。
厳重な拘束具は外れる気配を見せないが、それでも千佳は”助ける”ことを選択した。
「千佳……そうか。……そうだよな」
きっと同じ立場だとしたら、自分も同じ選択をしたとアルカイザーは思う。
目の前で捕まっている仲間がいる。すぐ近くには超危険な悪がいる。ヒーローも魔法少女も、そんな時に逃げようなどとは思わない。
アルカイザーは、千佳の心を受け入れることにする。
「分かったぜ、千佳。それならリュックを見てみろ!もしかしたら拘束を解くアイテムが入ってるかもしれねえ!」
「っ、分かった!」
「オレも……このままおしまいってわけには行かないぜ……!」
アルカイザーも、徐々に力を強めてくる鉄棺を抑えながら一緒に閉じ込められている自身のリュックを見下ろしていた。
§
「小賢しい真似をしてくれるじゃない……それなら単純な力比べはどうかしら?――ジェノサイド」
ノワルは闇属性の上級魔法を唱える。
彼女から発せられた膨大な闇の魔力が形となり、波状攻撃となってマジアベーゼの身体を削り取ろうと襲い掛かる。
(これは……防ぎきれないっ!)
マジアベーゼは支配の鞭でジェノサイドの第一波をいなすも、それでも打ち消すことができず、傷ついた肩の肌が露になる。
まともに受ければたまらないとばかりに、即座に回避を選ぶマジアベーゼ。
回避した先には闇檻の黒霧が立ち込めていたが、どうにか読んでこれを回避する。
行き先を失ったジェノサイドは漆黒の光を放ちながらマジアベーゼの背後にあった建造物群を代わりに喰らい尽くす。
ノワルの魔法攻撃に直撃した建造物群は中身をそのまま抉られて轟音を立てながら崩れ去り、そこには瓦礫の山が残っていた。
(なんという魔力……。あの余裕の振る舞いも頷けますね……)
冷や汗を浮かべながらノワルを見上げるマジアベーゼ。
エノルミータ総帥となって久しいが、ここまでの魔力を持つ輩は初めてだ。
もし彼女がエノルミータの幹部だとしたら星が何十個になるだろうと思ったところで、それ以上考えるのをやめる。
少しも気の抜けない相手だということは、ノワルの前に出る前から気づいていたはずだ。
「さっきとは打って変わって余裕を失くしたみたいね。誰を相手にしているか分かった?」
「ええ、分かってますよ。ですが私も介入すると決めた以上退くわけにはいきませんので」
「……本当、私の何が気に入らないのかしら?ただかわいくて魔力がおいしい女の子をぐちゃぐちゃにしようとしただけなのに」
肩をすくめながらノワルは言う。
「貴女も興味があるんじゃない?拘束されて動けない女の子が責められる様を」
今も完全に拘束されて動けず、地面でじっとしているままのイドラやマジアマゼンタを見下ろして、思わず恍惚の表情になるノワル。
マジアベーゼも、つい誘われるように無力化された彼女達を見る。
「純真なマジアマゼンタが無様にイキ顔晒すのを。イドラみたいな強気な子が魔力サーバーにされて体液垂れ流しになるのを。私に協力して女の子狩りする道もあったと思うんだけどねぇ?」
「……興味ないわけないじゃないですかぁっ!!」
ノワルの言葉で妄想が掻き立てられたのか、ハァハァと息を荒くしながらマジアベーゼは叫ぶ。
興奮したためか、マジアベーゼの外見は髪と角が伸び、頬に刻まれた漆黒の星は輝きを増し、より攻撃的なデザインへと徐々に変わっていく。
「まずあなたの固有魔法が素晴らし過ぎるんですよ!触れた時点で有無を言わせず拘束とか天才ですか!?術に嵌まった時のマジアマゼンタの表情とか百億点満点あげたいくらいです!」
「あら分かってるじゃない。初めて私の固有魔法を受けた娘の様子を観察するのも乙なものよね♪」
「そのまま無抵抗を強制して責めを入れ放題なのが神ッ!!混ざりたいのはぶっちゃけ割と本心だったんですよ!!」
いつしか、二人の会話は性癖を拗らせたオタクの会話へと発展していく。
「一人ずつ拘束していくのもいいし全員を一気に拘束してあっけなさを演出するのもいい!ラスボスの風格と脅威感も演出できてなお美味しい!!」
「そこまで褒められると流石に照れちゃうわね♪例えばだけど、拘束された子の大切な人を目の前で傷つけたら無駄なのに滅茶苦茶暴れてくれるのよ♡」
「うわーっ!!そうですよね暴れてくれるといいですよね!!」
「……やっぱり、こんな状況でもなければ気が合いそうね、私達」
「あはは、そうみたいですね」
「貴女、見込みあるわ。今からでも一緒に――」
「だが断る」
先ほどまで目を輝かせて独りはしゃいでいたマジアベーゼがマジトーンに戻る。
ノワルから差し出された手を、マジアベーゼは躊躇なく振り払った。
「……一応聞いておくわ。それは何故?」
「私の見たいものが見れなくなるからですよ」
「貴女の見たいものですって?まさか、女の子の抵抗が見れなくなるからとでも――」
マジアベーゼに感じたシンパシーから、ノワルは推測する。
ノワルも、抵抗を諦めない女は嫌いではない。その意志の下で生み出される魔力も、また美味だからだ。
「抵抗なんてものでは括れません。”輝き”ですよ。絶対に諦めない、魔法少女の輝きを」
しかし、マジアベーゼの瞳に映る憧憬はそんなものではない。
追い詰められた時に魔法少女が見せてくれる、不屈の意思、希望を捨てない心、誰も彼もを惹きつけてしまいそうな、輝き。
それは、ノワルの所有物になってしまっては決して生まれないモノ。
「馬鹿馬鹿しいわね。自分の所有物になったからには徹底的に管理しないとでしょう?ゲームという名目で泳がせるくらいでいいじゃない」
「いいえ、彼女達の守るべき自由、日常、そして大切なモノ――それらが健在だからこそそれが生まれるのです。あなたは少女が輝く機会すらも奪っている」
「……」
「だからこそ、私はあなたのやり方が気に食わない」
マジアベーゼとノワル。魔法少女の輝きとただの魔力集め。
その先に見えているモノの些細な違いが、再び両者に敵意を宿らせていく。
「……ええ、分かったわ」
「これではっきりしましたね」
「「やはり、私達は分かり合えない」」
(なんなのよあの変態共ッ!!!)
(和解しそうになったりやっぱり喧嘩したり、本当に何がしたいのマジアベーゼぇ……)
街中に聞こえてくるマジアベーゼとノワルの声を聞いて、イドラとマジアマゼンタは拘束具の内で困惑と悪寒を同時に感じていた。
傍から聞いていれば迷惑な限界オタクが些細な認識の違いから殴り合いに発展しているようにしか見えない。
また、そんな変態に敢えなく拘束され、助けられるのを待つしかできない自分が情けなかった。
(この……やっぱり外れない……!)
(ビクともしないぃ……)
今も全身を絶えず暴れさせてはいるが、拘束具が緩む気配はない。
しばらく拘束されていたことで、この拘束具がノワルの魔力から生成されたものであることは分かったのだが、それが何になろうか。
これまでの知識をフル活用しても、この闇檻の拘束具を解く糸口は掴めていない。
「えっと、これで全部だよね……」
その傍らでは、千佳が自身のものと、イドラとマジアマゼンタの分のリュックを集めてきて支給品を探そうとしていた。
「待っててイドラちゃん、マジアマゼンタ!あたしが助けてあげ――」
「シャインレイン」
「――え?」
その瞬間、千佳の表情が呆けたものに変わる。
千佳の視線の先には、ノワルがマジアベーゼに向けて魔法を唱えていたからだ。
その名はシャインレイン。天から無数の白く輝く光線を雨のごとく降り注がせる、ノワルの世界における光属性の上級魔法だった。
シャインレインによる光線はノワルの周囲に降り注ぎ、街を破壊していく。
そしてその中の一本が、千佳目掛けて飛来していたのだ。
「むぐうううううっ!!」
「ふぐうううううっ!!」
イドラとマジアマゼンタもそれに気づき、口枷の奥で叫びつつ必死に千佳を庇おうとするが全身を拘束されているため一歩も動けず、じたばたとその場で蠢くことしかできない。
千佳を守るものは誰もおらず、そのまま射貫かれる――かと思われた。
「スパークリングロール!!」
しかしその時、必殺技の名前を叫ぶ声が聞こえたかと思うと、千佳達の前に黄金の鎧を纏った戦士――アルカイザーが立ちはだかっていたのだ。
アルカイザーは3人の前に踊り出ると、光線に対して力を込めた裏拳を放ち、受け流す。
強引に軌道を変えられた光線は公園の遊具に着弾し、木っ端微塵に破壊していた。
「アルカイザー!」
「ふぅ、間に合ってよかったぜ。みんな、無事か!?」
「うん、あたし達は大丈夫。アルカイザーはどうやってあそこから……?」
「この輪っかのおかげだ。未来の道具らしいが……これなかったら危なかったな」
アルカイザーの手には、フラフープのようなアイテムが握られていた。
これは、「通り抜けフープ」と呼ばれる22世紀のひみつ道具として知られるアイテムだ。
文字通り、壁に付けるとその壁を通り抜けられるという未来の道具で、アルカイザーはこれを使い間一髪で鉄棺から抜けることができたのだ。
「なるほど……。私の拘束から抜けられるアイテムがあるだなんてね。少し慢心していたわ」
そんなアルカイザー達を、ノワルが上空で見下ろしていた。闇檻で形成された鉄棺から抜けられたことへの不快感を隠そうともしていないようだった。
「くっ、やはりあの弾幕を避けきるには骨が折れますね……!」
同時に、アルカイザー達の付近にマジアベーゼが着地する。
シャインレインをすべて避けきれなかったためか、その衣装の一部が焼け焦げ、肌に傷がついていた。
「さっきは失敗しちまったが、今度はそうはいかないぜ!改めてオレが相手だ!」
「私の拘束を抜けるなんて本当に悪い子……。今度はそのアイテムを使う手も含めて拘束しないとね」
「そうですよ、なんでよりにもよって魔法少女じゃないあなたが先に拘束から脱してるんですか!」
「いやなんでお前までオレに怒るんだよ!?」
理不尽なマジアベーゼの態度を尻目に、アルカイザーは千佳達を庇うように前に立つ。
その様子を、ノワルは面倒そうに溜息混じりに見ていた。
「そろそろ、潮時かしら」
「……何?」
ぼそりと、ノワルが呟く。
そして、ノワルが軽く周囲に魔力を展開すると、まるで星が瞬くように光を纏った何かが形成されていく。
「なに……?今度は何が起こるの!?」
「こいつは……!」
「使い魔ですか……!」
「ええそうよ。マジアベーゼ、貴女が鞭で生み出す魔物と同じ。私の使い魔の中では最低級だけどね」
千佳、アルカイザー、マジアベーゼがその圧倒的な光景に息を呑む。その背後では、イドラとマジアマゼンタが汗を浮かべて見守っていた。
召喚されたのは、天使だ。その外見も一般に想像される天使そのもので、天使の羽を生やした少女が白い布を纏っている。
「魔力おいしそ〜」
「磔にしたいです〜」
「縛るのもいいですね♪」
ただ一つイメージと異なっているのは、その天使一体一体に首輪、両手に前手に拘束する手枷、両足に短い鎖で繋いだ足枷が嵌められており、拘束されていることだ。
何より目を見張るのは、その数だ。悠に見えるだけでも数十体が、ノワルの周囲を飛行していたのだ。
「みんなかわいいです〜」
「魔力サーバーにしたらおいしそ〜」
「でもあのマント羽織ってる人は多分男ですね〜」
「生理的に無理〜」
まるで黙示録の一場面のようなその光景には、どこか神々しさがあった。
「マジアベーゼにも興味があったし、もうちょっと本気を出して付き合ってあげてもよかったんだけれど……まだ殺し合いも序盤だしね。この子達の相手をしてなさい」
ノワルがそう言うと同時に、浮遊していた天使達が一斉に攻撃を開始した。
天使達は魔力を集中させると、光り輝く矢を生成し、アルカイザーとマジアベーゼ目掛けて射出する。
「ちぃっ……!」
アルカイザーとマジアベーゼはそれぞれレイブレードと鞭を幾重にも振るい、集中砲火してきた光の矢を一本残らず撃ち落とす。
「防がれちゃいました〜」
「つよそ〜」
その様子を見た天使達は、間の抜けた声で驚きの声を上げる。
その言葉を皮切りに、今度はアルカイザーとマジアベーゼが跳躍し、天使の集団に突貫していく。
それを迎撃するかのように、天使からは風の初級魔法「ウィンド」が放たれる。
「はぁぁぁぁっ!烈風剣!!」
しかし、アルカイザーの風を纏われた斬撃を周囲一体に飛ばす剣技、烈風剣によりそれは打ち消され、逆に天使の身体が切り裂かれていく。
「メナスヴァルナー!!」
マジアベーゼの方も、鞭による斬撃を飛ばすとその軌道上で飛行していた天使達が蒸発していく。
「ぐはー」
撃破された天使達は、痛いのかよく分からない脱力感のある声で魔力を霧散させ、消滅していく。
「幸い、一体一体はそこまででもなさそうですね……!」
「それでもブラッククロスの怪人級の強さはあるみたいだけどな……!」
(あれのどこが最低級の使い魔よ……!)
天使達との戦闘を見上げながら、イドラは戦慄していた。
ノワルの召喚した使い魔である天使は、それぞれが独立した意思を持っている上に魔法を使える。
拘束具こそ嵌められているが、飛行しているため移動に不自由はなく、むしろ浮いている分厄介だ。
アルカイザーやマジアベーゼが相手だから何とかなってはいるが、あの光の矢は常人がまともに食らえば確実に死は免れないし、そうでなくとも物量で責められれば国レベルの軍隊を総動員しても優勢に立てるだろう。
イドラが見るに、あの天使は一体一体が皇国騎士団の精鋭で相手をするのがやっとのレベルだ。
それを最低級と言い放ち、何十体も平気で召喚してくるノワルには、恐怖を通り越して魔導師として畏怖を感じずにはいられなかった。
「ふぬぬぬぬぬ……!」
その背後では、千佳が動くことのできないイドラとマジアマゼンタを引きずりながら、戦闘に巻き込まれぬよう隠れられる場所へと引きずっていた。
しかし、やはり9歳児の力では14歳と16歳の女性を同時に動かすのは容易ではなく、その足は牛が歩くように遅かった。
「はぁい、先ほどぶりね♪」
「あなたは……!」
そこに、一番来てほしくない者が来てしまう。
13の災害指定の魔女、ノワルだ。
「何をしに来たの!?」
「何をって、決まってるでしょう?あなた達を連れていくのよ」
「ッ……!!」
「私ね、欲しいものは絶対に手に入れる主義なの。せっかく手に入れた女の子を見逃すと思う?」
「ダメ!絶対にここは通さないから!」
千佳は二人の前に立ち、両手を広げて二人を庇う。
しかし、ノワルのみならず背後で地面に転がるイドラとマジアマゼンタにも分かってしまう。
それは何の魔力も力も持たない9歳児の、あまりにも脆すぎる盾であると。
「うふふ……」
ノワルは何かを刺激されたのか、瞳の奥の星を輝かせながら千佳を見る。
性に関する知識の疎い千佳でも、ノワルがよからぬことを考えているのが分かる。
「魔法少女ラブリーチカは……悪い魔女なんかに絶対負けないんだから!」
声を震わせながらも恐怖を抑えて、ランダムアイテムを探ろうと懐のリュックに手を入れようとした。
「あっ……!?」
しかし、その手は止められる。
ガチャリ、という音を立てると共に、千佳の両手は動かなくなった。
「つかまえました〜」
千佳が目を見開いて辺りを見回すと、いつの間にかノワルの召喚した天使の何体かが千佳に密着しており、その両手と両足首に光のリングが現れていたのだ。
「う……動けない……っ!」
千佳は力を込めて四肢を動かそうとするが、天使の魔力の籠った光のリングはその空間に固定され、ビクともしなかった。
「ふふ〜♪」
さらに別の天使が指をパチンと鳴らすと、千佳の光のリングは後ろからの強烈な引力に引っ張られ、それに応じて千佳の四肢も引き寄せられていく。
「っ、くっ……うわぁっ!?」
――ガシャン!
そんな重苦し金属音が鳴ったかと思うと、千佳の背後には光で構成された十字架が形成され、千佳の身体はそれに合わせた十字型に五体を広げた姿勢で十字架にぶつかる。
「こ、これは……!?」
十字架に固定する枷と化した光のリングを見回しながら、千佳は目を見開く。
なんと千佳は罪人であるかのようにそこに磔にされていたのだ。
「やだっ、放して……!」
千佳は一生懸命にもがくが、十字架と一体かした光のリングは彼女の一切の動きを封じていた。
今や千佳に嵌められた光のリングは更に増えており、両手両足だけでなく胴体や太腿、二の腕までもを固定され、身じろぎ一つ取ることすらできなかった。
「ああ、そういえは貴女をどうするか決めてなかったわね」
「っ……」
磔にされた千佳の頬をくすぐるように優しく手を添えて、ノワルは言う。
「喜びなさい、貴女もそこの二人と一緒に持ち帰ることにしたわ。魔力はないけど、無知な子がじっくり開発されていくのも――」
「んむッッッ!!」
ノワルが残酷に千佳のその後を語ろうとした刹那、千佳の背後から何者かが飛び掛かってきた。
その姿は、闇檻の拘束具に首から下を包まれ、口も塞がれたイドラの姿だった。
「え――」
流石のノワルも呆けた顔をする。
闇檻に捕らえられた者がここまで軽快に動けるとは思わなかったからだ。
この現象は、イドラの習得していた魔法に秘密があった。
イドラが用いたのは、太陽の森のエルフとの交流で得た「刻印魔法」と呼ばれるものだ。
物体に魔力を込めた刻印を刻むことで、任意のタイミングで効果を発動する、言わば即席の魔道具を作る術。
イドラは拘束される直前に、もしもの時のためにと闇檻の拘束具に「軽量化」の刻印を施しており、自分を極端に軽くすることで拘束されている中でもノワルに飛び掛かることができていた。
「むぐぅぅぅっ!!」
受け身を取れないことを厭わずに、拘束された姿のままノワルへと突っ込んでいくイドラ。
そしてぶつかろうかという時に、もう一つの刻印を発動させる。
それは、口枷を嵌められた時に刻んでおいた、「爆砕」の刻印。
口枷の刻印から光が発され、天使数体を巻き添えにイドラとノワルを中心に大爆発が起きた。
「な、何だ!?」
「姿が見えないと思えば……そこにいたんですか」
天使と戦っていたアルカイザーとマジアベーゼも、その衝撃でイドラとノワルを中心に起きた異変に気づく。
周囲が固唾を呑んで見守る中、爆発による煙が晴れる。
そこには――。
「はい、残念♪」
傷一つ負っておらず、平然としているノワルと。
「う……ぐうううっ……」
爆発によりダメージを受けたノワルが、ノワルに頭を掴まれて苦悶の声を上げていた。
「イドラちゃんっ!!」
「ぐむぅぅぅぅぅっ!!」
千佳とマジアマゼンタが悲痛な声を上げる。
「詠唱の必要のない魔法を咄嗟に使うという機転は褒めてあげるけど……無駄だったわね。闇檻の守りの前ではあらゆる攻撃が無力よ」
「ぐ……うぐぅっ……!」(この……化け物ッ!)
「さて……そろそろ失礼しようかしら。イドラちゃんが頑張った分……みっちりとお仕置きしてあげないとね♪」
威圧感たっぷりに言い放つノワルに、イドラ、マジアマゼンタ、千佳は悪寒で身を震わせる。
「さあ、この子達を運んで頂戴」
「了解です〜」
ノワルが天使達に命令すると、イドラとマジアマゼンタは拘束具ごと持ち上げられる。
どうにか逃れようと身じろぎするが、それで天使から逃げられるはずもなく、無様に天使に宙づりにされながら飛び立っていく。
「だめ……っ!」
「うごくとあぶないですよ〜」
天使が光の十字架に魔力を込めると、朧げな光だった十字架は瞬時に実体化し、鋼鉄よりも硬い磔台へと変身する。
光の十字架でさえビクともしなかったのに、石のような重々しい外観となった磔台から逃れるはずもなく、千佳も天使に磔台ごと運ばれていく。
「アルカイザー!マジアベーゼ!」
「クソッ……皆を放しやがれっ!」
「行かせませんよ〜」
アルカイザーは飛び立っていく天使の集団に追い縋ろうとするも、残った天使達に行く手を阻まれてそれ以上追うことができない。
「逃げるのですか?ノワル」
「逃げるっていうよりも、もうちょっと味わっておきたいのよね、あの子達の魔力。ちょうど貴女に邪魔されちゃったことだし」
侮蔑の視線を込めて睨んでくるマジアベーゼに、ノワルは不気味な笑みで返す。
「あの子達を助けたいのなら好きにするといいわ。けど、もしその時は……もう少し出力を上げて、私に盾付いたことを後悔したくなるほどに辱めてあげる♪」
そう言い放つと、ノワルは踵を返して千佳達を運んでいく天使の集団に加わり、租界の上空を飛び去って行った。
「……そこの、えっと、どなたでしたっけ」
「アルカイザーだっ!!」
軽く舌打ちしつつ、マジアベーゼはアルカイザーの方を向く。
「今すぐこの使い魔共を片づけますよ」
「言われなくてもそうするつもりだぜ!」
自分達の行く手を阻む天使達を、マジアベーゼとアルカイザーは蹴散らしにかかった。
§
『このバトルロワイヤルは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが裁定する!
私は会場内のテレビ局で待っている。
諸君らの賢明な決断を期待する』
租界、マップにおけるF-7中央に位置するビルの屋上庭園で、ビルのモニターに映るルルーシュの姿を、ノワルは無表情で見守っていた。
「……大して力も無いのに変なことを考えるやつもいるものね」
一連の映像を見た彼女の態度は、冷めたものだった。
ルルーシュが見せつけた力――仮面ライダー001――とやらにもまったく興味が湧かなかった。
ノワルからすれば、固有魔法の闇檻で指先一つで相手を無力化できるからだ。
「とはいえ、ここに来る前にあのルルーシュが見せつけた洗脳魔法のようなもの……あれだけは要警戒、かしら」
油断ならない面持ちで呟く。
洗脳魔法や催眠魔法なら何度か見かけたことがあるが、あの強制力には13の災害指定の魔女ノワルをもってしても目を見張るものがあった。
無論、ノワルも闇檻 収監で敵のすべての攻撃を受けきれるとは思っていない。
同じ13の災害"炎獄"ソールを筆頭に、魔法協会の精鋭にも何人かは闇檻 収監を貫通する手段を持つ輩がいることはノワルも知っている。
(制限もある以上、何かしらの対策は必要そうね……)
何より、この殺し合いにいる間は令呪を使用しない限り能力に制限が課されているのだ。
圧倒的な実力を持ち合わせているノワルとて、とてつもなく重い制約を課されている。
まず、いくつかの闇檻を発展させた魔法の封印だ。”闇檻 無限監獄”はこの地に放たれてすぐに使えないことが直感的に理解できた。
そして、魔力解放形態の封印。魔力解放自体、本気で戦った"炎獄"ソールとの一戦で使用して以来使っていなかったとはいえ、常に手加減した状態で戦うことをノワルは強いられていると言える。
さらに、結界も作れないと来た。魔法使いの常套手段として、結界を展開して自分好みの基地を作り、そこで待ち構えるという戦法があるが、それが使えない。当然、自分の能力を向上させる"魔力の源"も作れない。
つまるところ、ノワルは自分から積極的に出向く必要があるのだ。
また、使い魔に関しても制限が入っていた。本来であれば闇檻六天使という幹部級の使い魔を生み出せるのだが、召喚できるのは最下級の天使αに天使β、そして石化能力を持つ上位種の天使γが関の山だ。
羅列するだけでもこれだけの制限を課されてしまっており、その事実にノワルのこめかみにはうっすらと血管が浮かぶ。
(本当にやってくれるわね……)
ノワル好みの女の子を見つけられたとはいえ、こんな場所にいきなり拉致して制限を課してきた羂索に対して、ノワルは憤っていた。
「あら……?」
ビルの屋上の夜風に拭かれていると、背後から女の嬌声が聞こえてきた。
ノワルは気を取り直し、口角を吊り上げて声のした方へと向かう。
「そろそろ出来上がってきたみたいね♪」
§
その頃、マジアベーゼがノワルの魔力の残滓を辿るのを頼りに、マジアベーゼは飛行、アルカイザーはビル群の合間を跳躍して移動していた。
「おい、本当にこっちの方向で合ってるんだろうなマジアベーゼ!」
「……」
「はr……マジアマゼンタから聞く限り、お前エノルミータの総帥なんだろ?助けてくれるのはありがたいが、なんで敵である魔法少女を助けるんだよ」
「……」
「おい、聞いてるのかよ!?」
「聞こえてますよアルなんとかさん」
「アルカイザーだ!!さっきからオレの扱いそんなんばっかだな!?」
「だって変身する男なんて興味ないんですもん」
「辛辣すぎる!!!!!」
冷めた表情でアルカイザーを見下ろしてくるマジアベーゼ。
どちらかといえば、マジアベーゼが勝手に突っ走るのをアルカイザーが追い縋っているような状況だった。
「で、何か理由があるのかよ?それか、マジアマゼンタは自分の手で倒したいってやつか?」
ブラッククロスの基地で相対したメタルアルカイザーを思い返しながら、アルカイザーは言う。
「勝手に想像してください。ただそうですね……ノワルに囚われたままでは”魔法少女”マジアマゼンタを見れなくなる、とでも答えておきましょうか。一緒に捕まった二人にも興味ありますし」
(案外コイツ、敵の割に魔法少女のファンなのか……?)
「……フッ」
「……何かおかしいことでも?」
「いや……こうしてオレと共に人を助けに行ってるお前も、魔法少女らしいと思ってな」
何とはなしに、アルカイザーがマジアベーゼにかけた優しい言葉。
「はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!?!?!?」
だがそれは逆にマジアベーゼの逆鱗に触れた。
「やめてくださいよせっかく意識しないようにしてたのに!」
「へ?いやオレはただ……」
「私は魔法少女の敵――エノルミータの総帥です!これはあくまでノワルを止めるためであってマジアマゼンタを助けるためでは……あああああこんなの私じゃない!早く元の関係に戻らないと……!!」
「……」
そう言って、マジアベーゼは速度を強めてこのエリアの中でも一際大きいビルの屋上へと向かっていく。
「……やっぱり、悪の組織の連中は本当に何を考えてるか分かんねえ……」
仮面の下でうんざりしたような顔をしながら、アルカイザーはマジアベーゼを追うのだった。
以上で前編を投下終了します。
続いて、中編の投下を開始します。
また、中編以降はソフトな性描写がございますので、閲覧にはご注意ください。
「ふーっ、ふーっ」
「う……うーっ」
口枷を嵌められているため鼻呼吸しかできず、上気する息を整えながら必死に肺の奥へと空気を取り込む。
そうでもしないと、息を詰まらせそうだったから。
「感じてる〜」
「気持ちよさそ〜」
周囲からは天使達が興味津々な様子で見てくる。
しかし、それを気にしている余裕はなかった。
「どうかしら♪私流の刻印魔法――淫紋は。強烈な快楽でしょう?」
屋上庭園の柱に括りつけられたイドラとマジアマゼンタは、下半身からムラムラと上がってくる快楽の波に必死に耐えていた。
唯一外気に晒している顔の上半分からは珠のような汗が流れ落ち、湧き上がる情欲の強さを物語る。
二人の下腹部には、女性の子宮を象るような紋章――淫紋がピンク色の光を放って浮かび上がっていた。
「うっ、くうううう……」
「ふむうううううっ!!」
身体が自由であれば、今すぐにでも胸と股間を掻き毟りたかった。
しかし、黒光りする闇檻の拘束具はそれを許さない。イドラもマジアマゼンタもギチギチに全身を固定され、今にも絶頂に至りそうなのに至れないもどかしさに悶え苦しむ。
絶頂までの「あと一押し」を自分の手でできない切なさに支配されそうになる。
「いいわぁ。全身から体液が噴き出してる。勿論、ここからは特に……♡」
「ふううううっ!!」
「ひやあああっ!!」
ノワルは舌なめずりしながら、両手でイドラとマジアマゼンタの股間に指を沿わせると、二人の叫び声と同時に愛液が外へと滲み出てきた。
「この淫紋は特別製でね。快楽と引き換えに体液と共に魔力を垂れ流すの。だからこうして――」
そう言って、ノワルは闇檻 収監を発動すると、その魔力から発せられる強力な引力によってイドラとマジアマゼンタのそれぞれの肌に付着していた体液だけを吸い取り、闇檻の中へ閉じ込めていく。
「体液を集めるの。闇檻 収監はこんなことにも使えるのよ♪そしてそれを闇檻で凝縮」
イドラとマジアマゼンタの体液を吸い取ったそれぞれの闇檻は徐々に収縮していき、最後には小さなブラックホールのような紫黒の珠が2つ出来上がる。
「これは二人の体液を閉じ込めて何倍にも圧縮したものよ。中にはその濃縮液が多分に含まれてるの」
ノワルは一通り説明すると、イドラとマジアマゼンタから出たそれを口の中に入れて味わうように頬張る。
その様子を、二人は苦虫を嚙み潰したような顔をして見つめることしかできない。
言わば愛液玉ともいえるそれを飴玉を味わうように舌の上で転がすノワルへの嫌悪感が強まっていく。
「やっぱり味見とは比べ物にならない味ね♡おいしいわぁ〜」
極楽とも言える表情を見せながら、ノワルは魔力を味わった分だけ取り込んでいく。
「何味でしたか〜?」
「ピンク色の方がいちご味、黒い方がブラックベリー味ってところかしら」
「ノワル様〜。私達も味見したいです〜」
「ダメよ。私だってまだ満足してないんだから」
ぱたぱたと羽を動かしながらせがんでくる天使達をノワルは退ける。
「だって〜、あの子ほとんど魔力ないんです〜」
「空っぽのペットボトルみたい〜」
天使達は、イドラやマジアマゼンタと対面する位置に置かれている者を見る。
「やめ……てぇ……はむっ……!?」
そこでは、磔台に拘束された千佳が、天使に強引に唇を奪われていた。
「んちゅ……んむあぁ……」
舌を口にねじ込められ、舌同士を絡みあわされた上に口内の唾液を吸い取られる。
「……ぷぁっ」
しばらくして天使から口を解放されるも、その目の焦点は既に合っていなかった。
その口からはだらしなく涎を垂らしており、どこかぐったりして息を荒げていた。
千佳は既に、何体もの天使と口づけを強制されており、そのたびに体内にほとんど残っていない魔力を吸われていたのだ。
「今度は私です〜」
「やだぁ……いやぁ……」
近づいてくる天使を確認して千佳はぷいっと顔を逸らし、弱弱しく抵抗するも、硬化した磔台の拘束をただの9歳児に解けるはずもない。
「逃げちゃダメですぅ〜」
「うむぅ……」
結局、天使からは逃げられず、顔を引き寄せられて再び唇を奪われてしまった。
たとえ相手が子供だとしても、天使は無邪気に、そして残酷にその口を蹂躙する。
「貴女にも見えるでしょう?あの二人の無様な姿」
ノワルは千佳が解放されるタイミングを見計らって彼女に近づき、目の前で快楽に悶えているイドラとマジアマゼンタを見せつける。
「やめて……」
千佳は二人を見て、か細い声で言う。
千佳にはそういった性知識は存在しないが、今も二人が苦しんでいることだけは分かる。
「立ち向かってきた割にはあっけなく拘束されちゃって、しかも貴女みたいな子供一人すら守れないなんて本当に滑稽よね」
「ひっ……」
すると、ノワルの手が千佳の平坦な胸に、そしてスカートの中へと移動する。
磔にされている千佳は、その手を受け入れることしか許されない。
指を沿わされた下腹部を通して貫いてくるような悪寒に、千佳は顔を歪ませる。
「―――――ッッッ!!」
「〜〜〜〜〜ッッッ!!」
声にならない声を上げながら、イドラ、マジアマゼンタはもぞもぞと暴れながら千佳を助けに入ろうとするが、黒く染まった拘束具に縛られているどころか柱に縛り付けられているため、地面を這って移動することすらできない。
それどころか、暴れることで身体の敏感な箇所が擦れることにより、さらに淫紋による快楽が増すばかりだった。
こうも身体ごと固定されてしまっては、イドラが密かに刻んでいたもう一つの軽量化の刻印魔法も無意味だ。飛び掛かるための移動の自由すら、奪われているのだから。
「貴女もいずれああなるのよ。私に盾付いて敗けた者に相応しい姿」
「っ……」
「大丈夫、性教育は開発の過程でみっちりしてあげるわ。怖がらなくても気持ちいいことばかりだから大丈夫――」
「……てない」
「……ん?」
耳元で囁いてくるノワルに、千佳は震えながらも言葉を絞り出す。
それは、恐怖に屈した子供ではなく、不屈の魔法少女としての言葉だった。
「まだ……敗けてないから……!」
目に涙を浮かべながら、キッとノワルを睨み返す。
「マジアマゼンタは自分を犠牲にあたしたちを庇ってくれた……イドラちゃんはあんなに縛られてても諦めてなかった……だからあたしも、諦めたくない!」
「面白いこと言うじゃない。ここには自由に動ける味方なんていない。貴女も、そこの二人も一歩も動けない。拘束も解けない。そんな貴女達に何ができるのかしら」
「魔法少女はね……どんなピンチになっても諦めないんだよ……!」
「魔法少女?貴女はただの人間の子供じゃない」
「あたしは魔法少女ラブリーチカだから!あたしの魔法をイドラちゃんが……みんなが褒めてくれた!」
「……」
「うぐうううううっ!!むがああああああっ!!」
「ぐむうううううっ!!ううぁぁぁぁぁぁっ!!」
千佳の言葉を聞いて奮い立ったのか、イドラもマジアマゼンタも、髪を振り乱して、もぞもぞと芋虫のように拘束された身体を死力を尽くして暴れさせ、拘束具と解こうとする。
ノワルは驚いたのか呆れたのか、それ以降言葉を続けることはなかった。
「ノワル様〜。もうこの子魔力ないし、的当てゲームしていいですか〜」
「……ええ、いいわよ。せっかくだし死にたくなる痛めつけちゃって」
「やった〜」
その時、見計らうように出てきた天使の申し出に、ノワルは満面の笑みで答える。
ノワルから許可をもらえた天使達は、喜びながら千佳の方へと近づいてくる。
「なっ、何するの!?」
「ここをこうして〜」
天使は千佳の服をめくり上げると、露になったそのお腹に赤い二重丸を落書きする。
困惑しながら見守る千佳をよそにお腹に描かれた丸は、まるで的のようだった。
「的当てゲームって、まさか……」
「うん。ここにみんなでセイントアローを撃つんです〜」
「誰が真ん中に当てられるか〜」
「そ、そんなことしたらあたし……!」
「死んじゃうかもしれないけどもう魔力ないし〜」
「せっかくだから楽しめるかなって〜」
いやいやと首を振る千佳。
今すぐにでも逃げようと身体に力を込めるが、磔台は今も拘束を続けており、千佳はお腹の的を露出したまま一歩たりとも動くことはできない。
天使達の背後では、イドラとマジアマゼンタが絶叫を上げながら天使達を阻止しようとしているが、千佳以上に厳重に拘束された身体では助けに来れないだろう。
誰もそれを止めることはできず、天使達が魔力を集中させて光の矢を千佳のお腹に撃ち込もうとしていた、その瞬間のことだった。
「メナスロンド!!」
まるで蔦のように伸びた鞭が、千佳とノワルの周囲を漂っていた天使の身体をことごとく貫いていく。
そして、飛び退いたノワルへの包囲網を崩さずに、鞭が収縮するように飛翔する斬撃の雨をノワルに浴びせる。
が、やはりこれも闇檻 収監ですべて無効化されてノワルにはノーダメージだった。
鞭が襲い来た方角をノワルが見上げると、マジアベーゼが支配の鞭を片手に見下ろしてきていた。
「随分と早かったじゃない、マジアベーゼ」
「少しぶりですね、ノワル」
「そんなにこの子達が大事?」
「いえいえ、独り占めはよくないなって」
「しつこい女は嫌われるわよ?」
「あなたがそれを言いますか」
挨拶代わりに、ノワルはマジアベーゼの元に闇檻の黒霧を発生させる。
しかし、今度はマジアベーゼは避けることはなく、ただ闇檻に呑まれるのを待っているだけのように見えた。
「――カヴェアソンブル」
「ッ!?」
この時、はじめてノワルの顔に動揺の2文字が浮かぶ。
なんと、マジアベーゼが闇檻と似た色の煙を纏わせた鞭で闇檻を払うと、その黒霧が文字通り霧散してしまったのだ。
「私の闇檻を相殺した……!?」
「あなたの魔力の残滓を調べさせてもらいましたよ。やはり似た性癖だからか質も似ているようでして……私も即席ですが作ってみたんですよ。マジアベーゼ流の"闇檻"を」
「……………………………………」
「拘束と拘束の概念がぶつかり合うと互いに拘束し合い対消滅を起こす……やってみるものですね」
「うふふっ……あははっ……」
何か滑稽なものでも見たのか、ノワルはおかしそうに笑いだす。
まさか、この殺し合いにノワルが絶対的な自信を持つ固有魔法”闇檻”を相殺できる者が現れるなんて。
しかしその目は全く笑っていなかった。
「ええ、わかったわ。今までは単なる邪魔者としか見ていなかったけど。敵として認めてあげる」
ゴゴ……と屋上庭園が、ビルごと揺れて小さな地震が起きる。
ノワルの周囲に漏れ出す魔力が、一段と強まりビルの構造を震えさせているのだ。
「あなたの敵は私一人ではありませんよ」
マジアベーゼはそれに動じることなく、ノワルに告げる。
マジアベーゼの言った通り、ノワルの視界外から彼女を狙う者がいたのだ。
「真……アル・フェニックス――――ッ!!」
租界を照らすような煌々と輝く不死鳥の如き炎を纏いながら、アルカイザーはノワルに向けて突進する。
「馬鹿ね。何度やっても無駄――」
ノワルはアルカイザーを嘲りながら、逆に闇檻で拘束してやろうと待ち構えるも、その途中で違和感に気づく。
先ほど見た時とは違い、文字通り"火力"が違った。以前とは比べ物にならない輝きを見せる真アル・フェニックスで突っ込んでくるアルカイザー。
その炎には、以前は見られなかったノワルの膨大な魔力にも比肩し得るとてつもない魔力が含まれているようにも思えた。
「ッ!!」
魔法使いとしての本能が警鐘を鳴らし、ノワルは咄嗟に回避を選択する。
真アル・フェニックスがノワルを掠め、想定通り闇檻 収監は発動する。
しかし――。
「熱っ……」
ノワルの闇檻 収監はアルカイザーの纏う炎に打ち消され、火力は下がったもののノワルの元にその炎が届いていた。
その証拠に、ノワルの髪と、その頬には若干の火傷が残っていた。
「どうやって……!?」
「さっきの戦いで分かった……お前相手に出し惜しみなんてできない!」
「――やってくれたわね。ええと……」
「アルカイザーだ!よく覚えておけ!」
ノワルはアルカイザーの力の正体に気づく。
アルカイザーの鎧越しに浮かんでいる令呪が一画消失していた。
今、アルカイザーは制限を取り払って実力を発揮しているのだ。
(いや違う……あいつが本気を出しているからといって私の闇檻はそんな簡単に破れない……一体何が)
そう、本来であればかの”炎獄”のように、核爆発を超える超高温による魔法で概念ごと蒸発でもさせるような、規格外の魔力による魔法でなければ、闇檻を打ち消すなど不可能なはずだ。
本当ならその炎ごとアルカイザーは闇檻に囚われているだろう。
なのにそうならない理由――。
(まさか……!)
ノワルの脳裏にその可能性が浮かんだ直後、何かが破裂するような音が耳に届く。
そして、その光景を見たノワルの顔がさらに驚愕に彩られる。
「ありがとうアルカイザー……!あなたのおかげでコレを解く方法が分かった……!だいぶリスクがあるし力技だけど……!」
「ハァハァ……やっと出られたよぉ……!」
そこには、黒い拘束具でミノムシのように全身を包まれていたイドラとマジアマゼンタが、自力で拘束を脱していたのだ。
全身に汗という汗を滲ませて服を濡らし、快楽の残滓が残っているからか煽情的な息遣いをしながらも、ノワルを睨んでいた。
「この令呪……それ自体が濃密な魔力の塊みたいなの。それを使って魔力を爆発させるように拘束具にぶつければいい……あれ自体、あんたの魔力の産物だからね。そうでしょノワル」
「ここまでずっと、アルカイザーや千佳ちゃん……それに、マジアベーゼに任せっきりだったけど……私だってまだ戦えるから!」
そう言って、イドラとマジアマゼンタも戦線に加わった。
淫紋は既に拘束具を破壊した余波で消えており、まだ本調子は取り戻せないものの戦えるだけの力は残っていた。
「ふぉおおおお!!コレですよコレコレ!!魔法少女が拘束を解いて反撃に移る時がすごくいいんですよおおおおおっ!!」
「お前なぁ……」
その様子を見て、マジアベーゼは目をときめかせていた。
自分の時との差を思いながら、アルカイザーは呆れ顔でマジアベーゼを見る。
「本当に……退屈しなくて済みそうだわぁ」
これまであしらって来た者達の想定外の奮闘。
不機嫌からかそれすら楽しんでいるのか、ノワルは口角を吊り上げながら、笑っていた。
「けど、忘れてない?貴方達の中で、まだ拘束を解けてない子がいるでしょう?」
「っ、あたしのことは気にしないで!」
ノワルから視線を向けられた、今も磔台に拘束されている千佳は、咄嗟に皆に呼びかける。
「負けないでイドラちゃん!!マジアマゼンタ!!アルカイザー!!それに……マジアベーゼぇぇっ!!」
まるでかつてのショーの観客として参加した時のように、喉が張り裂けんばかりの声で声援を送った。
「うるさいです〜」
「的は的らしくしてください〜」
しかしその時、マジアベーゼが打ち漏らしていた天使達が、千佳のお腹に向けて一斉に光の矢を射出する。
「ぇ……」
呆けた顔で自分に向かってくる矢を見つめる千佳。
イドラは魔法で、マジアマゼンタは槍で、アルカイザーはレイブレードで迫りくる矢を咄嗟に防ぐが、それでも千佳に向かう矢をすべて防ぎきれなかった。
このまま千佳が矢に串刺しにされることを誰もが覚悟したが、結果としてはそうはならなかった。
「――真化《ラ・ヴェリタ》」
そんな声が聞こえたかと同時に、千佳の姿は分厚い漆黒の蜘蛛糸のドームで覆い尽くされ、千佳の姿が見えなくなると共に光の矢が弾かれたのだ。
「何が起きたの……?」
暗闇の中、千佳が不安げにそわそわとしていると、不意に磔台が崩れ落ち、代わりに何者かが千佳の小さな体躯を優しく抱きとめてくる。
「横山千佳、でしたね」
千佳の耳元に、そっと囁いてくる声。
それはマジアベーゼのものだった。
「マジアベーゼ……?」
「私は、魔法少女の敵です。その声援は、魔法少女やヒーローに向けるべきものですよ」
「でも……あなたは私や皆を助けてくれて……」
「悪役を応援してたらいい子になれませんよ?ですが……その「あこがれ」の気持ちは失くさないでくださいね」
マジアベーゼがそう言い終わると、覆っていた蜘蛛糸が解けて周囲の光景が明らかになる。
千佳が振り返ると、目を見開く。そこにはマジアベーゼがより凛々しく、そして過激な姿へと変身していたからだ。
先ほど千佳を守った蜘蛛糸は、マジアベーゼの背中の装飾からマントのように垂れさがっていた。
「ちょっ、何よその格好!?」
「どうしたってんだ!?」
「真化……!」
突如変身したマジアベーゼに困惑の声を上げるイドラ、アルカイザーだったが、マジアマゼンタだけはその正体を知っていた。
真化《ラ・ヴェリタ》。強い想いがオーバーフローすることで会得できる強化形態。
真化したマジアベーゼの名は、「マジアベーゼ 夜蜘蛛の帳」。
「なるほど……それが貴女の魔力を解放した姿というわけね」
「ええ、少し遅れたお披露目になってしまいましたが」
役者は揃ったとばかりに、マジアベーゼは自由の身になった千佳を下げて、堂々とノワルの前に出る。
それをきっかけに、再び戦場は動き出した。
「今よ!アルカイザー!」
イドラが、光の矢を防がれて呆気に取られていた残りの天使達を、一体残らず魔法で氷漬けにする。
「了解だぜ!くらえ、シャイニングキック!!」
そこを、アルカイザーが光を纏った蹴りで天使を氷ごと粉砕し、ノワルを取り巻いていた使い魔は全て粉々に砕け散った。
「あなたなら闇檻を相殺できるでしょうけど……あなた以外ならどうかしら?令呪を使い切ったら脱落な分、無駄遣いさせるのは避けたいでしょう?」
するとノワルが、意地の悪い笑みを作りながらイドラ、マジアマゼンタ、アルカイザー、千佳の元にそれぞれ闇檻の黒霧を発生させようとする。
「ご心配なく。それも対策済みです」
ノワルの思考を読み切ったマジアベーゼは、闇檻が発生する前にマントのような蜘蛛糸をはためかせる。
すると、発生した黒霧はまるでシャボン玉のようにマジアベーゼの生成した糸に包まれてしまい、イドラ達に触れる前に糸により跳ね返される。
物理的な蜘蛛糸で覆うことで、闇檻が触れることを防いだのだ。
「腹立たしいまでに優秀ね。まさかこの短時間でここまでの対策を考えてくれるなんてね」
「あはは、あなたほどの人への対策なんていくらあっても足りないくらいですよぉ」
マジアベーゼは蜘蛛糸を幾層にも重ねてノワルを穿とうとするも、これも闇檻 収監に防がれる。
カウンターにより蜘蛛糸が闇檻に呑み込まれていくが、その前に糸を分離していたためにマジアベーゼが拘束されることはなかった。
「みんな!私の魔法を受け取ってぇ!」
マジアマゼンタが戦いの最中に魔力を送ると、イドラとアルカイザーの負っていた傷がみるみるうちに回復していく。
令呪を使用したことにより制限のない回復だからか、その回復スピードは非常に早い。
「すごい……私でも、ぅんっ、ここまで素早く回復するのは、あんっ、無理かも……」
「なんか結構効くな、コレ……」
「ご、ごめん……解放されたばかりだから制御が効かなくって……!」
マジアマゼンタの回復魔法は、傷の治りも早いが同時に気持ちいいのだ。
アルカイザーはともかく、先ほどまで淫紋をつけられて快楽責めされていたイドラはまだ敏感になっているからか、嬌声を抑えられないようだった。
「おや……私も回復してくれるのですか。エノルミータの総帥である私に」
そして、マジアマゼンタが回復したのはマジアベーゼも例外ではなかった。
「確かに今でもあなたは魔法少女の敵かもしれないよ。でも、私達を助けてくれた事実は変わらない」
「……」
「私個人としてはね、多分同じ巻き込まれた立場なわけだし……もしよければ、一緒に協力できないかなって、思ってるよ……?」
マジアベーゼに思いを語るマジアマゼンタ。その屈託のない眼にマジアベーゼは心を奪われそうになる。
「……」
「あれ、なんで二ヤついているの?」
「へ!?いや全然ニヤついてないですよ!?こんなことくらいで全然嬉しくないですからね!!」
自分でも絵に書いたようなツンデレ悪役になりつつあることを危惧しながらも、マジアベーゼは残された敵、ノワルと向かい合う。
「……そうね。ここまでよくやった、と言ってあげるわ」
ノワルは上空に飛翔し、自分と相対している5人を見下ろす。
「もうちょっと真面目に行ってあげる」
そして、ノワルは闇檻――ではなく、それを発展させた別の固有魔法を発動させる。
「固有魔法”闇檻 監獄教会”」
ビルの屋上庭園を闇の波動が駆け巡ると共に、その空には巨大な鐘が鎮座するようになる。
「なんだあれ……?」
「鐘……だよね?」
「そのわりに何もして来ないよぉ……?」
それはまるで、この世の終焉を告げるような鐘に見えて、ひどく不気味だった。
「マジアベーゼ……あれは」
「イドラさんですよね。ええ、嫌な予感がします」
呆気に取られながらも警戒するアルカイザー、千佳、マジアマゼンタの横で、イドラとマジアベーゼは汗を浮かべながら頭を回転させる。
闇檻の名を冠するからには、何かしらの拘束を施してくる魔法に違いない。
「ここ一帯にノワルの魔力が広がった感覚がしたわ。何かの結界を展開したみたいな……」
「ノワルのことです。きっとより理不尽な拘束魔法を使ってきますよ。私であればこれまで受けた対策の更なる対策を――」
マジアベーゼがそう言いかけた瞬間、目を丸くしてイドラと互いの顔を見合わせる。
”闇檻 監獄教会”の性質を、ほぼ確信に近い形で推測できたからだ。
「みんなッ!今すぐ逃げて!この結界から逃げないと……!」
イドラは3人の方へと大慌てで声を荒げながら駆け出す。
「カヴェアソンブル――!!」
マジアベーゼは再びノワルの闇檻を再現した魔法で闇檻を打ち消そうと試みる。
「だぁめ♡」
しかし、そこにノワルが迫り来て、その魔力を闇檻で打ち消される。
「魔力が……!?」
「あなたに私の闇檻が相殺できるなら、私にだってあなたのカヴェアソンブルを相殺できるわよ」
「……やってくれますね」
「だって、似たもの同士だものね……♪」
イドラとマジアベーゼは気づいた時には、全てが遅かった。
無慈悲にも、上空に佇む鐘は揺れ、その音を轟かせる。
――ガチッ!!
再び、あの拘束する音があちこちから響いてきた。
「!!!むっ……ぐっ……」
(また……!)
イドラは再び口枷に口を覆われていた。
「ふぇええええっ!?」
「やだっ、いつの間に!?」
マジアマゼンタと千佳は、両手を後ろ手に手枷で拘束され、胴体には胸の上下にベルトを巻き付けられていた。
「クソッ、足が……!」
アルカイザーは、下半身を両足で頑丈な黒いワイヤーに覆われ、移動を封じられている。
「本当なら男以外は私の闇檻 無限監獄で永遠に拘束して辱めてあげたいところだけど。制限で使えないのよねえ」
「……」
「だからといって私に拘束できないものが出てくると言われるとそんなことはないのよね。分かった?マジアベーゼ」
(してやられましたね……!)
マジアベーゼもまた、首輪を嵌められ、両手を胸の前に束ねた状態で首輪と連結した手枷を嵌められていた。
ノワルは気分をよくしながらマジアベーゼの胸を揉みながら解説する。
「これが"闇檻 監獄教会"。この結界の中すべてが闇檻の範囲内。私以外のすべてが呑み込まれる監獄。どんなにすばしっこくてもどんなに小細工を弄しても拘束から逃れる術はない」
「……」
「あの鐘が鳴る度に少しずつ拘束されていくのよ?一気に拘束するのもいいけどこういうのも良いわよね。マジアベーゼ、貴女ならこの良さが分かるでしょう?」
「ええ……それは分かります。もしよければそれを楽しむ側に回りたかったのですが……」
「ダメよ。私の邪魔をしてくれたからにはちゃんと罰を受けなきゃ♪このまま全員絡めとってあげる♪」
「そうは行くかよ!」
そこに、アルカイザーが声を上げる。
脚に巻き付いていたワイヤーの拘束は、いつの間にか解けていた。
まだ令呪の持続時間は続いており、その魔力によって拘束具を打ち消していたのだ。
「話してる時間はないわ!早く退避しないと!」
「でも、マジアベーゼはどうするの!?」
その背後では、イドラとマジアマゼンタも拘束を解いており、イドラの両手には令呪を使用していない千佳が拘束されたまま抱えられていた。
「あら、逃げるつもり?ならやってみなさいな。できるものならね」
すると、上空の鐘が再び音を鳴らす。
――ガチッ!
「ま、また!?」
「ぐっ……」
そんな音が鳴ると、令呪を使った者達の身体には再び先ほどと同じ拘束が施されていたのだ。
「そんな、足まで……!」
千佳に至っては、さらに厳重な拘束が為され、両足までもがベルトに巻かれて完全に四肢を封じられていた。
それはマジアベーゼも同様で、この鐘の音によりマジアベーゼの口はラバー状の物質で覆われてしまい、両足には短い鎖で繋がれた足枷が嵌められていた。
「解きたいのなら好きなだけ解きなさいな。あの鐘が鳴ったらまた拘束されるけどね」
そうして、鐘が鳴る度にイドラ達は拘束具を打ち消しては拘束され、打ち消しては拘束されを繰り返す。
どうにか結界の外へは向かっているのだが、鐘の音の合間が数秒しか空かないため、イタチごっこの様相を呈していた。
以上で中編の投下を終了します。
これより後編を投下いたします。
「もしインチキじみた能力で拘束を解かれたらどうすればいいか……私、答えを知ってるの」
「それはね……拘束を抜けられたのなら拘束し直せばいいのよ♪」
ノワルは倒れ伏す者達に対して平然と言い放つ。
しばらくして、とっくに令呪の効果が切れた後、そこに残されていたのは、まさに絶望的な光景だった。
「……う、うぐ……」
「ふふぉお……」
「……くっ」
「む……ぐ……」
イドラとマジアマゼンタは、あの黒く輝く拘束具に全身を包まれて再び拘束されていた。
その口は、しっかりと口枷で覆われており、くぐもった声しか出せない。
先ほどと違うのは、そこにマジアベーゼも加えられているということだ。
また、アルカイザーはというと、全身をワイヤーで巻かれてしまい、ミイラのようになっていた。
これでは、通り抜けフープを使うどころではない。
「みんな……」
そして千佳もまた、首から下をラバー状の物質で覆われた上で、ベルトを巻かれた闇檻の拘束具に囚われていた。
口枷こそされていないものの、イドラ達と同じ拘束具を使われており、僅かに身を捩ることくらいしかできない。
未成熟な肢体であっても、きつく締め上げられたそれは千佳の幼いボディラインをくっきりと浮かび上がらせる。
「ここまでみたいね」
そんな千佳を侍らせながら、倒れ伏しているイドラ達を見下しながらノワルは言う。
「これで正真正銘全滅。拘束を解いてくれる人がいなければずっとそのまま。そのくらいは分かるわよね?ああ、令呪を使うなら使ってくれてもいいわよ?また拘束すればいいだけだから」
その問いに答える者はいない。千佳を覗いて、全員が口を塞がれているからだ。
「さて……これは殺し合い。このままお気に入りだけを残して後は殺しちゃってもいいんだけど、せっかくだし……この子を使ってちょっとしたショーをしようと思うの」
無言のまま、ノワルと、その懐にいる千佳を険しい表情で見上げるイドラ、マジアマゼンタに、マジアベーゼ。
「何するの……?」
「それはね……貴女を絞め殺すの」
「ッ!!!!!」
「貴女かわいいし、私だって勿体ないと思ってるわよ?でもこれから出会う女の子達のことを考えたら、多少は捨てることも許容しないとね」
千佳は顔を青くしながら、ノワルを見上げる。
それに抗議するかのように地に伏した者達は暴れるも、その声は届かない。
「ここまで手こずらせてくれたんだもの。お礼にこの子の断末魔をじっくりと聞かせてあげる――闇檻 凝縮!!」
「やめ……ぐ……ぐあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
千佳の制止する声も聞かずにノワルが固有魔法を発動すると、千佳の身体を覆う拘束具が収縮して、千佳の身体を締め上げ始めたのだ。
収縮する拘束具はまだ子供の千佳であろうと容赦なく締め上げ、内臓と骨を少しずつ圧迫していく。
千佳は息苦しそうな苦悶の声を上げた後、想像を絶する痛みによる絶叫が響き渡った。
「本当ならブラックホールに吸い込まれるようにミンチになるまで圧縮できるんだけど、今回は特別。少しずつ締め上げて少しでも長く断末魔を奏でてもらうから」
「いやあああああああああああああああああああああっ!!!!!」
千佳を締め上げる力は徐々に増していき、彼女の中から骨の軋む音が少しずつ聞こえてくる。
守ろうとした子供が傷ついていく様を、倒れている者達は耳も塞ぐことができずに、否応なしに見せつけられる。
「さあもっと鳴きなさい。この子達にちゃんと聞こえるようにね」
「うわあああああああああああああああっ!!!!!」
千佳は目を見開き、涙を滝のように流しながら必死に首をぶんぶんを振るも、指の一本すら動かないほどに拘束されている状態ではこの苦痛からは逃れられない。
「痛い……いた、痛い……痛いよぉぉお……!!」
「それとも、『まだラブリーチカは諦めない!』とでも言うのかしら。貴女を助けてくれる人なんてもういない。貴女自身の魔力もほとんどない。魔法を使えるなら使ってみなさいな、魔法少女ラブリーチカ」
ここぞとばかりに、ノワルは千佳の耳元で煽るように囁く。
それが聞こえているのか聞こえていないのか、息も絶え絶えになって千佳は締め上げに耐え続ける。
§
(痛い……痛い……!あたし、死ぬの……?このまま、誰も助けられずに……?もう、あたしの魔法で誰も笑顔にできないの……?)
視界が暗くなっていく。ノワルの言葉も、耳が遠くなって何を言っているか分からなくなってくる。
それに代わって、走馬灯のようにここに来る前の思い出が脳裏に浮かび上がってくる。
大好きだった魔法少女。第三芸能課に入ってからの日々。厳しいこともあったけど、楽しいことも沢山あった。サマーライブも大成功して、これからもっとラブリーチカの魔法を沢山の人に伝えてあげたいと思った。
――千佳ちゃんが動いたから、今日のこのステージは動いたんだよ!
――きっかけはアニメだったとしても、沢山の人を笑顔にしたいって気持ちは、誰の真似でもない横山さん自身の心だ。
アミューズメントパークのキャラクターショーでかけてくれた、光ちゃんやプロデューサーくんの言葉。
皆がいたから、あたしはステージの上で魔法少女になれた。
――人助けに大きいも小さいもないんだよ!大切なのは、みんなをスマイルにしたいって心なんだから!
憧れていてた魔法少女のアニメのセリフ。
でも……こんなに追い詰められて、ちっぽけなあたしにできることなんてあるのかな。
――ねえ、千佳ちゃん。
その時、暗闇に閉ざされた空間に、一人の女の子が現れる。
澄んだ空色の髪をポニーテールに結んだ、白いへそ出しのコスチュームの女の子。
会ったことはないけれど、なんとなくこの子も魔法少女なんだと思った。
――魔法が使えるようになったら……どんな風に使いたい……?
女の子が手を差し出して問いかけてくる。
「……あたしは」
§
「う……うぐぅ……」
「あ……あ……!」
ぐったりとして意識があるかどうかすら怪しくなってしまった千佳を、イドラとマジアマゼンタは涙を流しながら見ていることしかできなかった。
きっと、口が自由であったら血を流すほどに唇を噛んでいたであろう。
「あら、もうおしまいかしら?やっぱり子供だけあってすぐ逝っちゃうわねぇ」
「……ぁ、たしは……」
「ん?」
その時、千佳が息を吹き返し、痙攣しながらも頭を持ち上げてどうにか言葉を紡ぐ。
「みんなを助けたい……」
「一体何を……?」
突然決意を語り出した千佳に、ノワルは怪訝な顔をする。
「うふふふ……むふはははははは……!」
「……何がおかしいのかしら、マジアベーゼ」
そんな中、いきなり笑い出す者がいた。
地面に転がりながら、口枷の奥で笑いをこらえきれず、ガクガクと上半身を揺らしながらずっと笑い声を上げている。
気でも狂ったか。ノワルのみならず、イドラやマジアマゼンタも奇特な目でマジアベーゼを見ていた。
「あはははははは……!」
くぐもった声で笑い続けるマジアベーゼ。
実際、おかしくってたまらなかった。
何故なら、あの時渡したモノがまさか役に立つとは思わなかったからだ。
ノワル戦の切り札として取っておいた、支給品。
しかし、自分にさえも声援を送ってくる千佳に”輝き”を見出し、光の矢から彼女を守った時にその場のノリで託してしまった、あの魔法が。
「あたしはみんなのために魔法を使いたい!!」
その魔法の名は。
――固有魔法”イノセンス”
千佳がマジアベーゼから託された魔法を発動すると、ノワルの展開した結界全域にその魔法の効果が広がっていく。
固有魔法”イノセンス”。それはノワルのいた世界に住む、自由気ままな魔法少女ルナの固有魔法。
その効果は――あらゆる束縛からの解放。
「拘束が……闇檻が全部消えた……?」
ノワルは呆気に取られていた。まさか、千佳が本当にここまでのことをするとは思っていなかったからだ。
「お見事ですラブリーチカ!!メナスヴァルナー!!」
闇檻の拘束具から解放されたマジアベーゼが、すかさず鞭から斬撃を放つ。
土壇場で発動した千佳のイノセンスによって、マジアベーゼのみならず、千佳自身やイドラ、アルカイザー、マジアマゼンタの拘束もすべて解除されていた。
「がっ……!?」
(闇檻の守りが発動しない……!?)
イノセンスの効果はノワル自身にも及び、闇檻の守りが一時的に無効化され、マジアベーゼの斬撃をモロに食らってしまう。
「本当にすごい魔法よね……!光求め道を成せ!地精の進撃!!トリルノーム・ダイバー!!」
「ぐふっ……!?」
ノワルが吹き飛んだところを、イドラが周囲のコンクリートを集めて構成したドリルでノワルの土手腹を穿ち、突き上げる。
「今度は私達が頑張る番……てぇぇぇぇいっ!!」
「こんなことが……!」
マジアマゼンタが、浮き上がったノワルの身体に槍を叩きつけ、地面へと突き落す。
「今度こそ当ててやる!!真――アル・フェニックス――――ッ!!」
そしてアルカイザーが不死鳥となり、落ちてきたノワルに激突する。
ついにアルカイザーの必殺技が直撃したノワルは、そのまま横方向に吹き飛ばされ、屋上庭園の柱に激突する。
その衝撃で柱は崩れ落ち、ノワルの身体は瓦礫の中に消えていった。
「はぁはぁ……本当にヤバい相手だったわね」
「……多分、今まで戦ってきた奴らとは比べ物にならねぇだろうな」
「あれに比べたら魔王族なんてかわいいものよ……」
ノワルが消えた先を見届けると、すべてが終わったかのように息をつくイドラとアルカイザー。
辛くも勝利したとはいえ、その恐怖はトラウマとなってその身に刻み付けられていた。
「そうだ、千佳!」
イドラは振り返り、この勝利の立役者である子供の元に急行する。
千佳はマジアマゼンタに介抱されており、目を閉じたまま動かなかった。
「千佳は……!」
「大丈夫。傷ついてはいるけど命に別状はないってマジアベーゼが……」
「もう……本当に、無理してくれちゃって……!」
「うええぇぇぇん!!本当にもうダメかと思ったよぉ〜〜〜〜〜!!」
イドラは目元に溜まった涙を拭い、マジアマゼンタはわんわんと声を上げて泣き続ける。
全員のリュックを拾い、遅れてやってきたアルカイザーも胸を撫でおろし、その奮闘を労うようにそっと頭を撫でた。
そのまま、イドラとマジアマゼンタは回復魔法を使い、傷ついた千佳の身体を治しはじめる。
「……」
その頃、マジアベーゼはノワルが埋まっている瓦礫の山を注意深く観察していた。
勝利に浮かれず、油断ならない表情のままノワルが埋まっているであろう場所を睨む。
なぜなら、自分であればあんな終わり方は認めないと執念で生き延びようとするからだ。
あのマジアベーゼよりも遥かに強大な強欲の魔女が、こんなところで簡単にくたばるとは思っていなかった。
「……ッ!」
ガラ、と瓦礫の破片の一部が動く。
「皆さん!まだ終わっていませんよ!!」
マジアベーゼがイドラ達に呼びかける。
すると、瓦礫の山が木っ端微塵に吹き飛び――ダメージは負ったもののまだ健在のノワルが現れたのだ。
「ッ……」
イドラ達は目を見開いたまま固まる。
あそこまで死力を尽くしても尚、討ち取れないというのか。
「化け物が……ッ」
吐き捨てるように言ったアルカイザーの言葉に、イドラとマジアマゼンタは頷くしかなかった。
「ふ……ふふふふ……」
マジアベーゼの元にイドラ達が並び立つ。
再び姿を現したノワルには、これまで見せなかった感情があった。
それは、”怒り”だ。
「やはり……まだ生きていましたか」
「お前、アイツが生きてるんなら早くそれを――」
「確信がなかったから言わなかっただけですよアル……カイザー。それに、闇檻がなくなって以降のノワルの耐久も未知数でしたので……結果は見ての通りですが」
「いいわ……本当にすごいじゃない」
パチパチ、と乾いた拍手をしながらマジアベーゼ達を讃えるノワル。
「守護魔法を使ったのなんて、炎獄と戦った時以来ね……」
感慨に耽るようにノワルは語る。
ノワルは闇檻の守りが効かないことを悟ると同時に、咄嗟に絶対障壁を展開していたのだ。
物理、魔法に対する守りを強め、さらに大幅に自動回復もついてくる魔法だ。
この魔法を張ったおかげで、ノワルに入ったダメージは中程度に収まっていたのだ。
「私の顔に傷をつけてくれた褒美よ――今できる最大限の力で相手してあげる!!!」
ノワルが手を掲げると、ドスン!という地響きが一定周期で何度もビルの屋上庭園を襲う。
マジアベーゼ達は四方を背中合わせになりながら、身構える。その中央には、気絶している千佳がまだ眠っていた。
「今度は何するつもりよアイツ!?」
「まだ隠し玉を用意していたようですね。あの様子だとまだ変身を1回くらいは残してそうです」
「ふざけんじゃないわよ!出し惜しみするにしてもやりすぎでしょう!?」
「それだけ強力な相手なのでしょう」
マジアベーゼとイドラは注意深くノワルの様子を窺う。
すると、ノワルの掲げた掌の上には漆黒の珠が形成され、それは見る見るうちに大きくなっていく。
ようやく、二人はその珠と地響きの正体に勘づく。
ノワルのあまりに膨大な魔力量ゆえにそれが結晶化した珠が視認できるレベルで確認できるようになっていること。
そして、この地響きは魔力の結晶に引き寄せられる強烈な引力により、このビルが崩壊しかかっているということだ。
いつしか引き寄せる力は強大になっていき、マジアベーゼ達は引きずりこまれないよう踏ん張るのがやっとの状態だった。
「ね、ねえ、あれ!」
すると、マジアマゼンタからも声が上がる。
マジアマゼンタの指差した方向には、おそらくエリアとエリアの境界線にあたる場所から、漆黒の影が立ち上っていた。
「なんだありゃ……!?ここ一帯を包み込むつもりか!?」
その反対方向を見張るアルカイザーの目からも、同じ影がこのエリアを取り囲もうとしているのが見て取れた。
「まさかあんた……」
「エリアごと闇檻に……!」
「ええそうよ。私のとっておきを見せてあげる」
そう言って、ノワルは温めている切り札の一つを切った。
――固有魔法"闇檻 ラストレクイエム"
かつてベルフェルトという名の都市国家を飲み込み、地図上からその存在を消した大魔法を、ノワルは発動した。
今もこのF-7の縁から立ち昇る闇檻の魔力による影は、今にもこのエリア全体を半球状に覆い尽くさんとしていた。
「直上ッ!!今すぐ退避してッ!!」
これから起こることを悟ったイドラは、大急ぎで全員に上空へ飛び立つように指示した。
それを受けて、イドラはアルカイザーの手を掴んで飛行、その後を追ってマジアベーゼと、マ千佳を背負ったマジアマゼンタが飛んでいく。
ノワルの闇檻 ラストレクイエムがこのエリアを覆い切るまでまだ猶予がある。しかし、それに間に合わなければここにいる全員が闇檻の餌食になってしまう。
「あははははははっ!!逃げられるものなら逃げてみなさい!!誰も闇檻からは逃れられない!!」
背後からはノワルの恐ろしい高笑いが聞こえてくる。
ここまで大それたことをやってのける彼女ならそれも不可能ではないと思えてしまうほどだった。
「早くこの魔法が及ばない高度へ逃げないと……!」
イドラが高速で飛行している今も、闇檻 ラストレクイエムによる浸食は進んでいる。
少しずつ、闇檻によるドームが完成しつつあった。
空が顔を覗いている天井の大穴は少しずつ狭まっている。急がなければ、間に合わない。
「ねぇマジアベーゼ、あなた闇檻を相殺してたでしょ!?この魔法をどうにか相殺できないかなぁ!?」
「できるわけないでしょう!?ここまで大がかりな魔法、私が100人いても相殺しきれませんよ!」
「そ、そんなぁ!?」
マジアマゼンタが縋るようにマジアベーゼに聞くも、その返答は無情なものだった。
いきなりノワルに出くわしてしまった自分達も大概だが、マジアベーゼ自身もどれだけ無理をしてノワルと渡り合っていたか分かるというものだ。
「イドラ、間に合いそうか!?」
「ダメ、このままじゃ突破できない……!」
「ならオレがアル・フェニックスでお前達を押し上げる!お前達だけでも――」
「馬鹿!仲間を見捨てたらもう一人の”レッド”に顔向けできないわよ!」
アルカイザーの申し出を却下しつつ、イドラは必死に考えを巡らせる。
このままでは、全員が闇檻 ラストレクイエムに飲み込まれてしまう。
元の世界でも、知恵と機転を”レッド”や仲間達に頼られてきた。今、ここで一番頑張るべきは自分ではないのか。
「せめて、何か私達を押し上げるアイテムがあれば――そうだ!」
ここで、イドラははじめて自分のリュックを漁る。
これまで目まぐるしい状況の変化や拘束されたりで確認を失念していたが、役に立つアイテムが入っていることを祈りながら探る。
すると、見覚えのある物があった。
「これは……!」
「なんだそのデカい大砲!?」
それは、ビクトリー・キズナバスター。
"レッド"との冒険で何度も助けになってくれた、絆を力にしてくれる大砲。
イドラはアルカイザーと共にそれを手に取り、これならいけるという会心の笑みを作る。
「みんな聞いて!一か八か、賭けに出るわ!」
イドラはマジアベーゼ達に即席で立てた計画を説明する。
「これをロケット代わりにするのぉ!?」
「分の悪そうな賭けだが……それに頼るしかなさそうだな……!」
マジアマゼンタとアルカイザーは驚きつつも、イドラの提案を受け入れる。
要するに、ビクトリー・キズナバスターを下方向に発射し、その反動で闇檻 ラストレクイエムの範囲外に脱出するというものだった。
ぶっつけ本番で上手く行くかどうかも分からないが、闇檻の天井の穴は今にも閉じてしまいそうなほどに収縮している。
皆が脱出できるかどうかは、これに掛かっているといっても過言ではなかった。
「けど、これには弱点があるの。それは――」
そう、イドラが言った通りビクトリー・キズナバスターは絆エネルギーという心の繋がりをエネルギー源としており、互いにわだかまりがあれば威力は大幅に落ちてしまうのだ。
つまり、これを用いる者達の心が一つになる必要がある。
しかしそうなると、一番の懸念事項があった。
「マジアベーゼ。あなたの協力も必要になる」
「やはり、私が加わる前提ですか。魔法少女の敵である私に」
そう、マジアベーゼだ。
悪の組織エノルミータの総帥である彼女が、魔法少女であるマジアマゼンタと共にビクトリー・キズナバスターの砲手が務まるかという問題があったのだ。
しかし、難色を示すそぶりを見せるマジアベーゼを、アルカイザーとマジアマゼンタは即座に否定する。
「何を今更言ってる!普段は違うかもしれねぇが、今は共にイドラ達を助けに行った仲じゃねぇか!そこに正義も悪も関係ないぜ!」
「そうだよ!マジアベーゼがいなかったら、多分私達はノワルに滅茶苦茶にされてたし……多分、千佳ちゃんの命もなかった」
マジアマゼンタはマジアベーゼに近づいて、その手を取る。
「それにね……さっきも言ったけど一緒に協力できないかって思ってるし……。私は、マジアベーゼが殺し合いに立ち向かう仲間になってくれるって信じてる!」
「ほへ……」
マジアマゼンタのマジアベーゼに向けられた言葉に、思わず呆けた言葉が出てしまう。
その瞳の光は、その胸に秘める信じる心は。マジアベーゼ――否、柊うてなが渇望してた魔法少女の輝きそのものだったのだ。
「ししし、仕方ないですねぇ……!ですが、勘違いしないでくださいね!これは一時的な協力ですから!」
「大丈夫、それでも構わないよ!」
「心は決まったみたいね……さあ、時間がないわ!!」
イドラ、アルカイザー、マジアマゼンタ、マジアベーゼは、ビクトリー・キズナバスターを構える。
無論、今も眠っている千佳もマジアマゼンタが身体を支えながら、その砲手に加わっている。
5人の絆が合わさったことで、ビクトリー・キズナバスターはエネルギーのフルチャージが完了する。
「行くわよ、みんな!」
「おう!」
「うん!」
「ええ!」
「今こそ貫け!!共に勝利へと突き進む熱き絆の力!!」
「「「「真・ビクトリー・キズナバスターッ!!!!!」」」」
心を一つにしたビクトリー・キズナバスターは、ロケット噴射のごとく5人を上空へとこれまでとは比べ物にならないほどの速度で運んでいく。
そして、F-7が闇檻 ラストレクイエムに覆われようかという刹那。
針の穴程度に残されていた小さな隙間から、ビクトリー・キズナバスターに捕まる5人が空を舞っていた。
「やった……やったぁ……!空だ!」
完全に呑まれてしまったF-7の上空で、マジアマゼンタが歓喜の声を上げる。
「なんとか……なったみたいね……」
イドラがホッとしたように呟く。
どうにか苦難を乗り越えた分、疲労がどっと押し寄せて来た様子だった。
「だがまだ終わってねえ。ノワルは生きてるし、殺し合いは続いてる」
アルカイザーの言葉に皆が頷く。
「これからどうしようかしら。多分これ、もしかしなくても滅茶苦茶目立ってるわよね……」
「それは間違いないですね。同時にこれくらいのことをしでかす参加者がいる、という宣伝にもなったはずです」
イドラが真下を見下ろすと、あまりの光景に圧倒される。
エリア一帯が、丸々黒い半球状の影に飲み込まれてしまったのだ。
おそらく、興味を惹かれた参加者が大勢寄ってくるに違いない。
「とにかく、ここから離れましょう。行くとした――」
イドラがマップを確認し、これからの目的地を話そうとした、その時だった。
突然、ビクトリー・キズナバスターが爆発四散したのだ。
事実、5人はビクトリー・キズナバスターにかなり無理のある運用をしていた。
敵を倒すためでなくジェット噴射として使い、人間5人を乗せて長時間ビームを出し続けて空を飛ぶなんて運用をすれば、負荷が許容量を超えて暴発するというのも必然である。
「――らあああああああっ!?!?!?」
租界上空には、イドラの情けない悲鳴が木霊していた。
こうして、固い絆を結んだ5人は離れ離れになっていく。
イドラとアルカイザー。マジアマゼンタと横山千佳。そして、マジアベーゼ。
三方向に分かれる参加者の落下軌道が、空に描かれていた。
「はああああああ……!!」
マジアベーゼは、吹っ飛ばされている最中で、うっとりとした顔をしながら肌に艶がかかっていた。
一連の戦いで、色んなものを見ることができた。
魔法少女マジアマゼンタの輝き。イドラという女性の、変身ヒロインではない女性の奮闘。そして柊うてなと同じく魔法少女に憧れる者である横山千佳が秘めていた、魔法少女の資質。
ノワルを打ち漏らしてしまったことには悔いが残るも、リスクを押して乱入した甲斐があった。
「それに……魔法少女に諭されてデレる悪役ムーブも、わ、悪くなかったかも……!」
自身の両腕を抱きながら、満足げにハァハァ言っていた。
これまでに起こった怒涛の展開を思い返しながら、マジアベーゼはセルフバーニングしていた。
「けどできるなら……マジアマゼンタの真化……見たかったなぁ」
口惜しそうに呟くマジアベーゼこと柊うてな。
この時点の彼女は知らない。いずれ、自分が原因となってマジアマゼンタの真化がとんでもなく歪になってしまうということを。
§
しばらくして、F-7にできあがった漆黒のドームは地面に沈んでいき、その姿を消す。
ドームが消えたそこは、建造物も舗装された道路もすべて消失し、巨大なクレーターが残るだけの大惨事となっていた。
「う〜ん、流石にムキになりすぎちゃったかしら。……まぁいいわ」
その中央には、魔女ノワルが独り佇んでいた。
これまでの被害を出しながら、ノワルは肩をすくめながらケロリとしていた。
「それにしてもあそこまで食い下がってくる連中がいるなんて……もっと警戒してかかるべきだったわね」
ノワルは反省しながら自身の回復魔法をかけつつ今後のことを考える。
「あの5人にはいずれ報いを受けてもらうとして……やっぱり自分から行かないといけないのが厄介ね……」
あの5人とは、言うまでもなくマジアベーゼを筆頭とした、マジアマゼンタ、イドラ・アーヴォルン、横山千佳、アルカイザーのことである。
「男はどうでもいいとして、殺し合いで生き残るとなったらかわいい女の子も間引かないといけないのがネックよねぇ」
うんうんと唸りながらノワルは考える。
あの時味わったイドラやマジアマゼンタの魔力の味は中々に魅力的だった。そんな女の子達を永久に自分のものにできるのなら、是非したい。
「けど、あの主催陣営がどこまで願いを叶えるつもりなのか分からないし、何なら本当に叶えるつもりもあるのか分からないし……」
と言ったところで、ノワルの頭の上に電球が生える。
「――そうだわ!」
ノワルはあのルルーシュの放送を思い出して、何かを閃く。
しかし、彼女は13の災害に指定されている魔女ノワル。そのアイデアが碌でもないことは明白だし、実際碌でもなかった。
(あのルルーシュみたく私がこの殺し合いを乗っ取って――私好みに改造しちゃいましょうか♪)
名案が生まれたからか、ノワルは無邪気に機嫌をよくしながら今後の野望を企てる。
(それでこの会場を私の結界として再利用して――あらゆる世界の女の子を集めて私のものにするの♡)
自分の欲望に正直な魔女ノワル。
いつしか、彼女はいずれこの地を理想のマイホームとして組み立てることを夢見ていた。
常人がそんなことを言い出せば世迷言と切り捨てられるだろう。
しかし、彼女はノワルだ。それを可能にするだけの知識、魔力、技術――そして実力は備えていた。
「そのためにも――まずは女の子の選別ね。本当にお気に入りの子だけは残して……残りは消えてもらわなくちゃ」
そう言いながら、ノワルは掌サイズとなった黒い珠を取り出す。
この中に、闇檻に呑み込んだ街の全てが、閉じ込められている。
「――凝縮」
その珠はノワルの掌に握られると瞬く間にそのサイズが小さく圧縮されていく。
珠の中では轟音を立てながら、街ごと水圧に押しつぶされるかのように質量をそのままに圧し潰されていく。
やがてそれが限界まで圧縮されると消えてなくなり、"無"となった。
本当なら結界の一部として再構築してもいいのだが、今のノワルは自身の陣地である結界を作る力を制限されている。
ならば、捨てるしかない。
「さて、先は長いわね……」
F-7のすべてが消失したのを確認すると、ノワルはその場から去っていく。
ノワルの姿は土煙に紛れ、見えなくなっていった。
以上で投下を終了します。
後ほど、状態表も投下いたします。
遅れて申し訳ありません。
状態表を投下いたします。
【エリアF-7/上空/9月2日午前6時】
【イドラ・アーヴォルン@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:落下中、疲労(大)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)、快楽の残滓
服装:黒い露出度高めのローブ
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止めて元の世界へ生還する
01:ビクトリー・キズナバスターに無理させすぎた……!
02:ノワルに対して最大限警戒
03:ひとまずどうにかなったけど……
04:マジアベーゼは仲間になってくれると思ってるわ
参戦時期:フォリング防衛戦(33話)終了後〜35話終了
備考
※ビクトリー・キズナバスターはF-7空中で大破しました。
【レッド@SaGa Frontier(サガフロンティア)】
状態:アルカイザーに変身、落下中、疲労(大)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)
服装:アルカイザーのコスチューム
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、通り抜けフープ@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして殺し合いを止める
01:なんか爆発した!?
02:ノワルに対して最大限警戒
03:ひとまずどうにかなったが……
04:マジアベーゼはきっと仲間になってくれる!
参戦時期:本編終了後〜アルカールにヒーローの資格を剥奪される前
備考
【花菱はるか@魔法少女にあこがれて】
状態:マジアマゼンタに変身、落下中、疲労(大)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)
服装:マジアマゼンタのコスチューム
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:魔法少女として殺し合いを止める
01:爆発しちゃった!?
02:ノワルに対して最大限警戒
03:ひとまずどうにかなったけど……
04:マジアベーゼはいつか仲間になってくれると思ってるよ!
05:千佳ちゃんは放さないようにしないと……!
参戦時期:少なくともマジアマゼンタ フォールンメディックに覚醒前
備考
【横山千佳@アイドルマスターシンデレラガールズ U149(漫画版)】
状態:気絶中、落下中、疲労(大)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)(回復処置済み)
服装:普段着
装備:イノセンス@魔法少女ルナの災難
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:怖いけど、殺し合いになんて負けない!
01:……。
参戦時期:サマーライブ編(原作14巻)終了後以降
備考
【柊うてな@魔法少女にあこがれて】
状態:落下中、疲労(大)、ダメージ(中)、セルフバーニング
服装:マジアベーゼのコスチューム
装備:トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:無益な殺生はしないが、魔法少女の輝くところを見たい
01:ノワルは恐ろしい奴だったけどそれ以上にいいもの見れてよかった♡
02:魔法少女にデレる悪役ムーブ……悪くないかも
参戦時期:少なくともマジアベーゼ 夜蜘蛛の帳に覚醒後
備考
支給されたイノセンスは横山千佳に譲渡しました。
【エリアF-7/跡地/9月2日午前6時】
【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)(回復中)
服装:ノワルのドレス
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:アイツら(マジアベーゼを、マジアマゼンタ、イドラ、千佳、アルカイザー)にはいずれ報いを受けさせる
01:この殺し合いを乗っ取って、自分好みに改造してあらゆる世界から集めた女の子を愛でる
02:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃんの魔力はおいしかったわね。
03:まだ見ぬ異世界のかわいい女の子に会うのが楽しみ
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
※ノワルに課された制限は以下の通りです。
・闇檻 無限監獄の封印
・魔力解放形態の封印
・結界による陣地の作成不可
・召喚できる使い魔は天使α、天使β、天使γ程度
・闇檻 ラストレクイエムで呑み込める範囲を1/10未満に
※会場備考
ノワルの闇檻 ラストレクイエムによって、F-7一帯はクレーターを残して更地になりました。
【支給品解説】
【通り抜けフープ@ドラえもん】
レッドに支給。
22世紀の未来のひみつ道具。
フラフープ型の道具で、これを取り付けた壁には穴が直線状に開き、壁の向こう側まで貫通する。
壁を物理的に破壊している訳ではない為、穴をあけても壁自体の強度は変わらず、外せば元通りになる。
【ビクトリー・キズナバスター@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
イドラ・アーヴォルンに支給。
キズナレッドの所有する武器。
仲間の心を一つにすることで、絆エネルギーを収束させ放つ大砲で非常に火力が高い。
心にわだかまりがある者がいた場合、絆エネルギーが反発し、威力が大幅に減衰する弱点がある。
逆に、逆にわだかまりが消えて絆が芽生えた状態で放った際は、技名に真がつくようになる。
【イノセンス@魔法少女ルナの災難】
柊うてなに支給。
自由気ままな魔法少女ルナの固有魔法。
装備すると、あらゆる拘束から解放する魔法「イノセンス」が使える。
以上で投下を終了します。
重ねてすみません。
状態表執筆時に入れ忘れがありました。
イドラ・アーヴォルン、花菱はるか、レッド、横山千佳の状態欄に「ノワル戦のトラウマ(極大)」を追加しました。
また、拙作「innocent starter」に、マジアベーゼが名乗っていないのにも関わらずノワルがマジアベーゼの名を呼んでいるというミスがありましたので、
マジアベーゼが名乗る台詞を一文だけ追加させていただきました。
>>383 の予約にノワルを追加して延長もしておきます
予約延長させていただきます
また冥黒王ギギスト、パラド、冥黒アヤネを予約から破棄いたします
長期間のキャラ拘束大変申し訳ありません
予約延長します
投下します
「上手いね。彼。
一見全参加者を敵に回すような放送だったけど、考えた上での発言だね。
たったあれだけの放送と演出で、100を超える参加者の思考を誘導している。」
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの放送が終わり、マイは満足げな声を上げる。
マイの発言に、隣で佇む覇世川左虎は「成程」と顎に手を当てた。
「確かに、彼奴の放送は困惑(パニック)だった一般人(パンピー)達には選択肢となったはず。
”ルルーシュの側に就く”か”ルルーシュと対立する”かの二者択一。
無軌道(バラバラ)に動くはずだった大半の参加者は、そのどちらかを選ぶようになる。それがルルーシュの狙いだと?」
「アタシはそう思うよ。彼は意図的に参加者に徒党を組ませようとしている。
バラバラに動いちゃ。羂索の目論見通り殺し合いになる。
彼はそうなることを嫌ったんだろうねぇ〜。
目の前に分かりやすい目的や択があることは、先の見えない目標よりずっと人の行動に影響を与えるからね。」
「”信ルルーシュ”と”反ルルーシュ”。どちらだろうと思想の一致する者たちで集えば、殺し合いの場であろうと生存率は格段に上がる。
――成程、そう考えるとあの喧嘩腰(イキ)った発言もパフォーマンスとして有効に働く。奇策の類だが、妙手ではあるな。」
理知的(きれもの)な彼はすぐさまマイの発言の意図を、ひいてはルルーシュの目的の大枠を掴み。彼なりに噛み砕く。
マイにとって100点に限りなく近い回答であることに。「その通り! c'est exact(シットイグザクト)!」と上機嫌な笑顔を浮かべた。
この推測が確実である保証はない。
だが、マイ=ラッセルハートは人間の脳に造詣が深く。並び立つ左虎も超一流(ゴッドハンド)の名医だ。
人間についての理解も知力も一流の2人が出した推測は、ルルーシュ・ランペルージの目的と大きくは外れていなかった。
「流石左虎っちは理解が早いね。」
「これでも聖帝大卒の優等生(エリート)ぞ。
・・・・・・・・・・・・・・
だが、マイ先生に褒められるとなれば、流石の左虎も頬が緩む。」
左虎が醸し出していた張りつめる空気が、マイを前に大きく萎む。
普段の左虎であれば絶対にしないであろう油断(フヌケ)た態度。東京忍の長たる神賽惨蔵が居れば激怒していただろう。
そんな態度が許してしまうほどに、覇世川左虎はマイ=ラッセルハートを信用しているし信頼していた。
植え付けられた贋(いつわり)の思い出、それがある限り左虎がマイを疑うことはあり得ない。
(さて、アタシはどう動こうかな。
繰田孔富は兎も角、邪樹右龍がルルーシュの放送を見て動かないとは考えにくいし……)
一方のマイは強張った額に皴を寄せていた。
最初の動きは成功した。覇世川左虎という強力な手駒を手に入れた。
忍者としての高い身体能力(フィジカル)に技術(テクニック)。おまけに頭もキレるとあっては、手駒として最上(トップレア)ともいえる。
それゆえに、マイにとって最も恐れるべきことは覇世川左虎の記憶が復元(もど)ることだ。
(削除(デリート)と編集(エディット)は完璧に馴染んでる。
左虎っち本来の能力はそのままに、アタシへの恩義を疑いもしていないこの状態は最高に近い。
今の左虎っちは、私が頼めば令呪だろうと切ってくれる。
――でもそれも、編集(エディット)の効果が生きている限り。)
平時であればマイによって編集(エディット)された記憶を戻すには彼女の持つ時計型タイムマシンを破壊する他にない。
自力で記憶が戻る確率は1000万分の1にも満たない。
本来ならば気にもとめない確率だが、バトルロワイヤルではその能力が弱体化していることは実証済み。
記憶を刺激するような外的要因で戻る確率もずっと高いだろう。
マイは手元の名簿に視線を落とした。
邪樹右龍。そして繰田孔富。
参加者の中にマイが知る名前は(初めに羂索に言いかかった数人と、豊臣秀吉などあまりにも一般的に知られた名前を除くと)いなかったが。
覇世川左虎にゆかりある人間が二人いることを、左虎の記憶を読んだマイは知っている。
かたや彼と血を分けた弟。
かたや彼が最も尊敬した医師にして最後に闘った極道。
念のため両名の記憶を左虎からは削除(うば)うという形で対策を取ったが。リスクは依然残り続けている。
左虎が述べたように、そしておそらくルルーシュ・ランペルージが望んでいるように。思想や目的が一致する者たちが集えば生存率は大きく上がる。
だが逆に言えば、編集(エディット)が切れマイと左虎の思想が一致しなければ。左虎はマイの敵でしかない。
自分を洗脳した相手など生かしておく理由は欠片もない。少なくともマイが左虎なら即座に殺す。
覇世川左虎ならばバグスターウイルスの弱体を考慮に入れてもマイを殺すのに数秒とかからないだろう。
覇世川左虎の記憶が戻ることは、そのままマイ=ラッセルハートの敗北を意味していた。
そのためにも、トリガーになりうる邪樹右龍(にんじゃ)と繰田孔富(ごくどう)には出会わないこと。それがマイ=ラッセルハートの攻略未来(クリアルート)。
同時に左虎を利用して他の参加者を殺していき、あわよくば他にも何人か編集(エディット)と消去(デリート)を用いて手駒にする。
そのためには、右龍や孔富の行きそうな場所――ルルーシュのいるテレビ局くらいしかあては無いが――には近づくべきではないだろう。
「それじゃぁアタシたちは……」
テレビ局からは離れよう。
そう告げようとしたマイの耳に、稲妻が落ちるような音が轟いた。
隣で佇む左虎の耳にも届いたようで、揃って背後を振り返る。
「「何!?」」
背後にある森林から、轟音と共に固い何かがぶつかり合うような戦闘音が不快な音を立て続ける。
日は昇り始めているが、それでも森の中はまだまだ暗い。
その中を一瞬迸った黄色い稲妻は、マイの見間違いではないだろう。
「マイ先生はここで待機(ま)て。
左虎が様子を見よう。もし戻らなければ渡している支給品(アイテム)にて撤退(に)げよ。」
マイが何か言う前に勢いよく左虎は駆けだした。
獅子の仮面をつけた何者かが、電を纏った刀を振り回している姿。
そして、仮面の剣士から逃げ続けるフリフリの服装をした少女と、さらに後ろでおぼつかない足取りで逃げる小さな翼を持った少女が左虎には見えていた。
「ちょっと待って!!」
本能のままに動く忍者を、マイは追いかける。
覇世川左虎が心配だから――ではない。
覇世川左虎から離れる自分の事が心配だから――それはある。
だが、そんなことよりもっと重大な理由が、マイ=ラッセルハートの足を動かした。
(雷はまずい!!!雷を出せる参加者なんてそう何人もいるとは思えない!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの先にいるのが邪樹右龍だったら、アタシの攻略(ルート)は瓦解する! )
覇世川左虎の弟『邪樹右龍』。超人的な骨密度が生み出す圧電により、電気を用いて戦う忍者。
森の中で戦っている仮面の姿をマイの目は捉えていない。
そのため稲妻の正体が邪樹右龍である可能性を、彼女は捨てきれない。
右龍と出会うことで覇世川左虎の記憶が戻るかもしれない。
兄弟揃い危険人物たるマイをブッ殺すかもしれない。そうなっては攻略不能(ゲームオーバー)だ。
(絶対に嫌だ!!アタシはアタシの目的のために!!
タイムマシンが、巻戻士が生み出す不平等な世界を変えなきゃいけないんだ!)
歯を食いしばりマイは走り出す。
すぐそこにある戦場に、マイは生きるために飛び込んだ。
◆◇◆◇◆
森の中、マジアアズールは獅子の仮面をした怪物に追われていた。
雷を纏って振り下ろされる七支刀を躱すたび、アズールの柔肌のすぐそばを鋭い熱と痛みが体を掠める。
直撃していないにも関わらず神経に障る痛み。
マジアベーゼの折檻をアズールの体は思い出し、未だ残るあの時の恐怖に肌が怖気立つ。
「よそ見すんなぁ!」
「っ!!」
いつの間に距離を詰められたのか、頭上に振り下ろされた刃をステッキに氷の刀を生成し直前で抑え込む。
背丈では遥かに上回られるドゴルドに上から鍔迫り合いで押し込まれ、バチバチと音を立てる稲妻がアズールの目前で火花をたてた。
「腹立たしいぜ!ようやく出てこれたと思ったら最初の相手がこんな小娘とは!」
「甘く……見ないでっ!!」
歯を食いしばり、アズールは両腕で刃を押し込んだ。
刀ごとドゴルドを弾き飛ばし、反動を利用して体を数メートル後ろに飛ばす。
対するドゴルドも想定外の反撃にバランスを崩しよろけて片膝をつく。
仮面の中で表情は見えないが、「ほう。」と感心したような声はわずかに楽しげだ。
「お前はなかなか悪くねえ。空蝉丸の前の肩慣らし程度にはなりそうだ!」
キョウリュウジャーでもない小娘にしては随分戦えるものだと、ドゴルドは高揚する。
剣技という意味では空蝉丸に遠く及ばないが、魔法少女である彼女の戦闘力は並の少女とは一線を画す。
マジアアズールの実力は警戒に値すると、彼は認識を改めた。
――あくまで、マジアアズールに対しては。
「だが腹立たしいのはテメェだドラゴン娘!!
テメエも参加者なら戦いやがれ!!」
獅子の視線が背後に向けられ、アズールは焦りと共に振り返る。
アズールの後方20mほど。
木陰から見える水晶のような羽を標的にして、ドゴルドの剣先から稲妻が迸る。
文字通り雷を浴びた木は爆ぜるように裂け、急激に熱せられた水分が煙を上げた。
そのすぐ後ろ。アズールから離れていたシェフィは傷こそなかったが、目の前の爆発に頭は真っ白になってしまう。
「びえぇぇぇぇん!!!!」
「なんだ?ガキみたいに泣きやがってよ!!」
「シェフィちゃん!!」
シェフィは記憶を失い、情緒は赤ん坊と変わらない。
足がすくみ動けないシェフィは、ドゴルドにとって敵でさえない。
ただただイラつかせるだけのクソガキに、怒りの戦騎は容赦をしない。
「いや……いやっ!!!!」
荒々しく刀を振り回し、稲妻を撒き散らしながらシェフィに突撃していく。
その様はさながら子供に近づくなまはげのようだが、殺意を込めて迫る相手はそんな優しい存在ではない。
無機質な仮面から溢れ出る憤怒と殺意がシェフィの恐怖をかきたてていく。
「させない!」
「チィッ!!」
動けないシェフィに振り上げられた獅子の刃が、ガチンと何かに当たり抑え込まれる。
刃が届くほどに距離を詰めた2人。
その間に割って入った魔法少女が、氷の太刀をドゴルドに振り下ろしていた。
その刃は先ほどよりさらに長く鋭い。
腕で受けるにはただでは済まない鋭い一閃に、喧嘩上刀を横向きに構えドゴルドは防ぐ。
くしくも先ほどとは攻守が逆転し、必死に歯を食いしばるアズールの刃がじりじりとドゴルドを押し込んでいた。
「あじゅーる!!」
目の前に現れた魔法少女に、泣き出しそうな顔の少女は希望に満ちた笑顔を向ける。
ヒーローを応援する子供さながらに、その眼差しはキラキラと輝いていた。
少女の声援を背に、魔法少女は戦騎に立ち向かう。
「お前はやってくると思ったぜ。お優しい魔法少女ちゃんよぉ!!」
「私は、そんな立派な人間じゃない!!」
どこか懺悔にも似た、血反吐を吐くような叫びだった。
一度は負けそうになった。グシャグシャに割れた心に呑み込まれて。取り返しのつかない過ちを犯した。
優しい魔法少女。以前はまだしも今の私には余りある称号だ。
マジアアズールは自嘲気味に吐き捨てながらも、相対するドゴルドへの闘志は揺らいでいない。
「でも!」
マジアアズールは一度は折れかけた。正義とは程通い堕落した魔女になり果てかけた。
マジアベーゼに完膚なきまでに凌辱され、ヒロインとしての矜持を見失っていた。
それを思い出させてくれたのは、平和の象徴たる最高のヒーロー。そしてその魂を教えられた竜の少女。
2人のヒーローに報いるため。取り戻した種火を絶やさぬために。
「だからせめて、あの子だけは……。シェフィちゃんだけは守らなきゃいけないの!!
私はマジアアズール!!正義のヒロイン!!
その誇りだけは、もう二度と失わない!!」
「いいねぇ。武人の誇りってやつか!!
因縁深い面を思い出させるじゃねえか!!気に入ったぜマジアアズール!!!」
誇りを失う強さ。それを取り戻す難しさ。その先に至る輝かしさ。
ドゴルドはその全てを知っている。
怨みの戦騎エンドルフの従僕に下り、己の強さに対する自信さえ失った頃。
それを取り戻したのは他でもない、最大の宿敵にして今の彼の目的である空蝉丸だった。
目の前の少女の姿が黄金の侍に重なり。腹立たしいと同時に面白くて仕方がない。
無数の世界から茅場とクルーゼがチョイスした参加者たち。
彼らの実力をドゴルドは考慮していなかった。考えさえしなかったと言ったほうが正確だろう。
見知った戦士はキョウリュウゴールドとキョウリュウグリーンだけ。
それ以外は十把一絡げな雑魚だと考えていた甘さが、さっきまでのドゴルドにはあった。
今はもうない。
眼前の魔法少女は、紛れもなくブレイブを秘めた戦士だ。
腹立たしいが、認めてやる。
「だが、足りねえ!!」
「っ!!」
瞬間。アズールの腹に雷が落ちた。
腹部の衣装が破け、爆弾が爆発したようにお腹が熱く痛い。
嵐に巻き込まれたかのようにアズールの全身が浮きあがる。
弾ける痛みが内臓にまで響き、ぐるぐると脳を揺らす回転もあって意識が飛びそうだ。
喉を逆流する酸と鉄を飲み干しながら。揺れる意識の中アズールはドゴルドを見下ろした。
先ほどまで刀に添えていたはずのドゴルドの右手が、バチバチと音を立てながら強く握りしめられていた。
刀に意識が向いた隙をつかれ、アッパーカットの要領でボディーブローを叩きこまれたのだと。
理解するとともに視界がぐらつき、握りしめていたステッキがポトリと落ちた。
水神小夜は背が高く、腕も足もすらりと長い抜群のスタイルを誇る。
ただしそれも14歳の少女基準ではの話だ。
ドゴルドは2mを超えた体躯と180㎏を超えた重量を誇る剛者(タフガイ)。
中身が女性だろうと関係ない。腕のリーチも一撃に込められた膂力もマジアアズールとは質が異なる。
少女とは比較にならない基礎ステータスに加え、参加者であるアズールにだけバグスターウイルスの弱体(デバフ)が重ねられる。
両者の明暗を分けた理由は、酷く単純で覆しようのない事実でしかなかった。
「惜しかったな!
令呪を使ってりゃあまだ勝負は分からなかったが、今のテメエじゃ足りねえ!」
口調こそ荒々しいが、ある種の賞賛とも取れる言葉。
もしバグスターウイルスによる弱体がなければ。 マジアアズールが未来で掴んだ力をこの場で手にしていたら。
勝負は分からなかった。目の前の少女は怒りの戦騎にとっても掛け値なしの勇者であった。
「あばよ魔法少女!!」
――だからこそ、ここで殺す。
その思考がNPCモンスターとしての義務感からくるものか、1人の戦士が持つ闘志からくるものなのかは分からない。
考えるだけ無駄だろうし。どちらにせよ羂索らの目論見通り動いているだろう。
それが途方もなく腹立たしいが、振るう刃を止める気にはどうしてもならなかった。
アズールは大きくバランスを崩し、風を失った凧のように力なく落下していく。
彼女を喧嘩上刀で真っ二つに切り裂き、ついでにびゃんびゃん泣いてるドラゴン娘を叩きのめす。
冥黒の五道化としての最初の仕事を、哀れな参加者の殺戮という形でドゴルドは成し遂げ――
「危機的(ギリギリ)のところだったが……間に合ったな。」
――てはいなかった。
マジアアズールとの間に割って入る形で、和装の青年がドゴルドの前に立ちふさがる。
アズールの首を狙った刀は無数の糸で絡めとられ。少女の肉を傷つけることさえ叶わない。
「なにぃ!!」
思わず錯乱したようなドゴルドの目の前では、落下するアズールの体を颯爽と現れた青年が優しく抱え込んでいた。
「大丈夫か?」
透き通るような男の声に、マジアアズールの揺れた脳が感覚を取り戻す。
目に飛び込んだのは自分より一回り上の美青年(ハンサム)。
そんな相手に両腕を肩と膝裏から持ち上げられている。いわゆるお姫様抱っこの状態だ。
「はっ、はいっ。らいじょうぶれす!!!」
「呂律は怪しいが、左虎が診(み)る限り無事のようだな。
彼奴の打撃(ハラパン)も軽くはないはず。見目(ビジュアル)に反してなかなか剛毅(タフ)な少女よ。」
真っ赤になった顔のままアズールを下ろし。覇世川左虎は眼前の敵に向き直る。
稲妻を纏った七支刀。獅子の仮面に巨躯。
この相手が八極道に匹敵する危険人物であることを忍者の感覚(カン)が告げていた。
「貴様何者だ?令呪やレジスターは見えないようだが。」
「当然だ。俺はお前たちのような哀れな参加者じゃねえからなぁ!
俺様はドゴルド!
冥黒の五道化が一人、激怒戦騎のドゴルド!!
クルーゼの奴が言ってた最強のNPCモンスターってやつよ!」
「何?」
「なっ……参加者じゃないですって!?」
マジアアズールにとって、その情報はまさに青天の霹靂だ。
マジアベーゼの影響で心が折れていたアズールは、このバトルロワイヤルのルールの多くを知らないままだ。
令呪やレジスターについても十分な知識を持っておらず、NPCモンスターの存在をどこまではっきり知覚しているかアズール自身にも定かではない。
目の前の相手が殺し合いの参加者ではないなど考えてもいなかった。
「ということは、貴様はマイ先生の敵か。」
目を丸くしたアズールとは対照的に、変わらぬ鉄面皮で左虎は構える。
左虎にとっても衝撃の事実であることに変わりはないが、さして重要な事項でもない。
”今の左虎”にとって、眼前の相手が敵か味方か。量る質問は1つでいい。
「あ?誰だか知らねえが、参加者だというのならそういうことになるな。」
「作用か。」
答えを聞くや否や、左虎の足が大地を蹴り上げドゴルドとの距離を一気に詰める。
マイ先生の敵である以上、左虎はドゴルドをブッ殺さねばならない。
高速で動かす毛髪をにて周囲を凍らせ切り裂く、覇世川左虎の暗刃『凍剣執刀』。
ドゴルドに近づくと同時に舞い踊る刃が、彼の全身をわずかに切り裂いていく。
「痛てえじゃねえか!!」
「その装甲!てっきり木製だと思ったが……。」
ドゴルドは闖入者が扱う無数の糸の切れ味に。
覇世川左虎はドゴルド”そのもの”というべき装甲の硬さにそれぞれ驚愕の色を染めた。
それでも、両雄の手は止まらない。
無数の髪がドゴルドを斬りつけ、ドゴルドはそれらを喧嘩上刀で跳ね除けながら、左虎を斬らんと暴れ続ける。
「わたしだってまだ……戦える!!」
その光景をひとり見ていた水神小夜はステッキを拾い上げると、己を鼓舞するようにそう力強く言い放つ。
戦騎と忍者が起こす嵐のような戦いの渦。
水神小夜も――魔法少女マジアアズールも、その渦に身を投じる。
二度と、正義を失わないように。
守るべき人を、守るために。
◆◇◆◇◆
息を切らせて左虎を追いかけたマイ=ラッセルハートは、目の前で繰り広げられる戦いに目を奪われた。
超人的な強さを誇る覇世川左虎の髪と手刀を織り交ぜた攻撃に、稲妻の主であった獅子の仮面は見事に渡り合っていた。
首や関節といった致命的な箇所への攻撃を獅子の仮面は回避し、腕や体の鎧を傷つけながら電撃を帯びた七支刀を振るう。
その刃は木々を一撃で斬り飛ばす。
強靭な肉体を誇る左虎でさえ本気の防御を要する攻撃だ、一般人に当たれば即死級の代物であることに間違いはない。
同じく戦場を駆ける、フリフリの服を着た少女もまた手練れ。
獅子の仮面が隙を見せれば氷の刃を突き付け、その体を切り落とさんと迫りくる。
か細い髪が作り出す僅かな冷気。光の屈折からそのありかを見極めた少女は、攻撃の合間を縫うように氷の刃を生み出しミサイルのように獅子の仮面に叩きつける。
マイより一回り年下だろうに、あの戦いについてこれるとは大した少女だ。
「マジか……、ここまでの戦いになるんだね。」
電撃の主が左虎の弟ではなく、消した記憶の引き金になる可能性が低いことに一先ずマイは胸をなでおろす。
その上で異世界の超人たちの戦いを前に、早々に干渉することを諦めた。
マジアアズールがドゴルドと左虎の戦いについてこれるのは、ひとえに彼女が経験ある実力者ゆえの事。
専用武器の『究極腕(アルティメットアーム)』があれば兎も角、ほとんど生身のマイでは参戦どころか声をかけることさえ難しかった。
(それにあの獅子仮面……ドゴルドって言ったっけ?
NPCモンスターってのが本当に厄介だなぁ。)
NPCモンスター……ドゴルドは確かに自分の事をそう言った。
その言葉が真実ならば、ドゴルドを殺したところでマイ=ラッセルハートの勝利にはつながらない。
その打算が、マイ=ラッセルハートの思考を狭める。
マイが見る限り、目の前の戦況は五分だ。
戦況は拮抗している。だが逆に言えばドゴルドを押し切るには今の2人では一手足りない。
マイ=ラッセルハートには、その一手を与える力がある。
今の覇世川左虎はマイの言うことには従順だ。
『令呪を使え。』そう言えばすぐにでも覇世川左虎は令呪を使い、ドゴルドを撃退するだろう。
(本当に良いの?こんな序盤、それも参加者でもない相手に貴重な令呪を使っちゃって。)
マイ=ラッセルハートは殺し合いを忌避する参加者ではない。
むしろ積極的にゲームの勝利を狙いたい人間だ。
参加者を狙うドゴルドを、コストを払いリスクを冒してまで倒す理由(メリット)は無い。
ここでドゴルドを倒すこと自体は、マイに対する脅威が1つ減る結果を生む。
だが、そのために貴重な令呪を支払うことは採算が合わない。
・・・・・・・・・・
――左虎の令呪は使えない。
撃退するにしろ逃走するにしろ。マイ=ラッセルハートの思考にその一点は揺るがない。
(このまま倒せるのならそれでよし。
もし無理なら左虎っちから預かった支給品で無理にでも逃げる!
あの魔法少女ちゃんも回収して編集(エディット)できれば御の字だけど……それは高望みかな?)
一歩引いた視線で周囲を見やる。
その時マイは初めて気づく。この場にはもう一人参加者がいた。
最強のNPC。手駒となった忍者。勇敢な魔法少女。
その遥か後ろ。へし折れた巨木の影で悔しそうに歯を食いしばる少女には、水晶のような角と羽が生えていた。
いそいそと少女に近づいたが、マイには気づく様子もなく。
焼け焦げへし折れた木をぎゅっと握りしめ、マジアアズールの戦いを見つめている。
ヒーローを見つめる目。というよりは、ヒーローを助けられないことを歯痒く思うような、純粋なまなざしを向けていた。
「大丈夫?」
「びゃぁっ!?」
後ろから声をかけたマイに、羽を生やした少女は虫でも見たように声を上げた。
年はあの魔法少女と同じくらいだろうか?
その割には挙動が幼いようにマイには見えた。
木陰に隠れプルプル震える姿は、小学生どころか幼稚園児のようだ。
「……だれ?」
「ああ、ごめんごめん。アタシはマイ。あのお兄さんの仲間だよ。」
『お兄さんの仲間』という言葉が効いたのだろう。
少女がマイに向ける目は、疑ぐり深いものからキラキラしたものに変わる。
「じゃあおねえさんもアズールをたすけてくれるの?」
「アズールって、あの戦っている女の子のこと?」
マイが乱戦の渦中を指さすと、少女はこくりと頷いた。
左虎が彼女と共闘したことから、左虎の仲間だと名乗ったマイもそうだと思ったのだろう。
「ごめんね、アタシはアズールやあのお兄さんほど強くないんだ。
あそこに割り込んでアズールを助けるのは……」
「……そっか。」
「でも、アタシたちにだってできることはあるよ!」
マイの言葉に肩を落とした少女は、「なに?」と、期待を込めてマイを見た。
相手を疑うことを知らず、コロコロと表情が変わる。
たどたどしい言葉も相まって見た目よりずいぶん幼く感じるが、利用するつもりのマイには都合がいいため気に留めなかった。
「あの3人の戦いは今拮抗している。
逆に言えば一瞬でもドゴルドの動きを止めたら、きっとアズールたちは勝てる。」
マイは令呪を使わない。
だが、拮抗した戦況を変える方法は何も令呪だけではない。
羂索らがバランス調整のために与えた支給品やソードスキルだってある。
生憎今のマイが取れる手立ては、リスクが高い物しかなかったが。
戦況を左虎とアズールに傾けるための何かを、この少女が持っている可能性は低くない。
「何かリュックに入ってなかった?
あの怖い仮面の注意を向けたり、動きを止めたりする道具とかさ。」
「んー?」
シェフィは首をかしげ、僅かにうなる。
行動も幼いが、もしかしたら理解力も幼いのだろうか。
心当たりがないというより、何を言っているか分からないという反応だった。
もう少し具体的に尋ねられないか?そう考えたマイの目に、きらりと光る何かが映る。
シェフィの手元、ドゴルドによってへし折られた木の幹が、僅かに凍っていた。
「例えば、あいつを凍らせたりって。できないかな?」
シェフィと視線が合うように腰を落とし、ドゴルドを指さしてマイは尋ねる。
うんうんと難しそうな顔をしていたシェフィだったが、マイの質問ににこにこと自慢話をする子供のように顔を緩ませた。
「できるよ!」
竜の少女の明るい返事に、マイは小さくガッツポーズをとった。
◆◇◆◇◆
覇世川左虎の手刀を喧嘩上刀でドゴルドはいなす。
当然、意識は右腕の防御に傾く。
その隙をついて無数の髪と氷の刃がドゴルドを襲う。
急速に熱を奪い鋭利な刃物のように切れる髪。
負傷も厭わず左腕で握り、向かってくる氷の刃に向けて鞭のように震わせる。
マジアアズールの生み出した刃が左虎の髪に両断されるが、その推進力は死んでいない。
質量が半減した刃が肩と左腕に刺さり、左虎の髪を握ったことで左の掌が切れた。
「左虎の髪を掴むか。
随分その堅牢(ガチガチ)な鎧に自信があるようだな。」
「うるせえ!」
体を流れる稲妻の熱で刺さった氷を溶かしながら、ドゴルドは苛立ちを示すように地団駄を踏む。
マジアアズールのダメージや両参加者の弱体化を加味しても、戦局は五分だ。
NPCモンスターという有利な地位に居ながらも、ドゴルドは勝ちきれないでいた。
(どうなってんだ!ヒースクリフの話と違うじゃねえか!!)
覇世川左虎の実力がマジアアズールと並ぶ、むしろ単純なフィジカルではアズールを遥かに上回るであろうことは理解できる。
事実として支給品やソードスキルを考慮しない戦闘能力で言えば、この2人は間違いなく上位に位置する参加者。
だとしても、今のドゴルドが優位にさえ立てない事実には全く納得がいっていない。
ヒースクリフは言った。ドゴルドに与えた体は彼の真価を引き出すものだと。
クルーゼは言った。彼は最強のNPCモンスターなのだと。
それが令呪も使っていない、万全とは程遠い参加者2人に勝利どころか拮抗するのが精いっぱいなど、名前負けもいいところではないか。
「まだ終わってないわ!!」
「てめえもしつけえなマジアアズール!!」
腹部にダメージを受けただけでなく、その純白の衣装はドゴルドの稲妻でところどころ焼け焦げ破れている。
それでも、マジアアズールの闘志を宿した目は変わらない。
その事実もまた、ドゴルドを苛立たせる。
「雷電残光!!!」
右腕で喧嘩上刀を振り回し、溜まりに溜まった稲妻を一閃として打ち出す剛剣の奥義。
かつて体に取り込んだ因縁の剣士が扱う剣技も、ヒースクリフの手でブレイブを付与された彼なら使用できる。
直線上に向かうアズールに向かって、殺意と怒りを乗せてドゴルドは打ち出す。
それでも、魔法少女と忍者の心は折れない。
「そんな焦(テンパ)った一撃ごとき!!」
「何も怖くないわよ!!!」
黄金色に光る斬撃を前に戦士たちは冷静に構える。
アズールの周囲に無数の氷が刃として浮かび、
カバーに入る左虎も、網状に伸ばした髪を動かし周囲に無数の氷柱を生成していた。
「左虎さん!合わせますよ!!」
「凍剣執刀・異型 雹穿雨脚!!」
氷点下の刃と氷柱が、雷電残光に向けて散弾のように打ち出される。
勢いは目に見えて減衰していくが、起こる現象はそれだけではない。
金属の刃が生み出した3万度にも達する雷撃に、固体となった水が果てしない量打ち付けられ急速に熱せられる。
その結果生み出されるのは、水蒸気の膨張。
ドゴルドの必殺剣のエネルギーの大部分を奪い、急速に膨らんだ水蒸気が小規模な爆発を起こし。
生み出された雲と突風が、3人を大きく吹き飛ばした。
周囲の木々を吹き飛ばし後方にもいたシェフィとマイにも風は及ぶ。
閉じた目を見開くと、左虎とアズールは片膝をつきつつも大したダメージを受けてはいないようだった。
対してドゴルドも、必殺剣を使った影響か体の力がかすかに抜け、心なしか息遣いも荒い。
ずっと近接戦闘を続けていた両者の距離は、雷電残光と爆発で大きく放されている。
その隙を、小さな竜は狙っていた。
「今だよ!!」
「うん!」
ドゴルドと2人が距離を取る瞬間、それがシェフィに与えられたソードスキルの使用タイミングだとマイは定めていた。
ちょうど今この時が、ドンピシャの千載一遇。
マイの合図に合わせ、シェフィは両腕から無数の氷を吐き出し、空気が一瞬にして寒空のように冷え切った。
状況を理解する前に、ドゴルドの全身を氷の波が飲み込んだ。
「なんだこいつは!?」
両腕を動かし少しでも氷を振り払おうともがくが、既に左虎とアズールにより浅くない傷を負った体に残った髪が動きを阻む。
気が付くとドゴルドの腰より下は完全に氷に覆われ、鋭く伸びた氷塊が手にした武器ごと右腕を封じていた。
「あんのドラゴン娘!!!!」
範囲が広かったからか、直接的なダメージは薄い。
だが、氷凝呪法と呼ばれるそのソードスキルが生み出すものは呪力を込めた特殊な氷だ。
マジアアズールや覇世川左虎が生み出したものより、頑丈さでいえば上回る。
木陰に隠れていたはずのドラゴン娘の仕業だとドゴルドが気づいたときには遅かった。
視線を向けた先にシェフィはもういない、白衣の女がドラゴン娘を抱えとっくに距離を取っていた。
「シェフィちゃん!?」
「有効打(ファインプレー)ぞ。竜の少女!!」
シェフィの力に驚いたのはアズールと左虎も同じ。
だがそれ以上に難敵ドゴルドが無力化されたチャンスを、黙って見ている両雄ではない。
握りしめた氷の刃を鋭く構え刺突を狙うマジアアズールが突っ込んでくる。
左虎の動きはそれよりなお早い、髪よりもよほど鋭い手刀を首に叩き込むつもりだろう。
ドゴルドの敗北は目前だった。
油断のない強者2人が、ドゴルドを砕かんと迫りくる。
腰より下と右腕は氷の波に封じられ、動くことさえままならない。
このまま敗れては、空蝉丸とは再戦どころか対峙することさえ叶わない。
「ふざけんじゃねえ!!!!」
氷に閉ざされながらも、獅子は吠えた。
こんな腹立たしいことはない。
何のために蘇ったのか。羂索らの口車にのったのか、これでは分からないではないか。
敗北を目の前に突き付けられ、ドゴルドが怒れば怒るほど、腹の底から何ががドロドロと溶岩が如く溢れ出す。
溢れ出す何かは全身を巡り、ドゴルドの力を今まで以上に高めていく。
喧嘩上刀を握る右腕が、今まで以上の握力を生み出し。
流れる電流も先ほどより高い熱を帯びていた。
「こんなチャチな氷で……このドゴルド様の怒りが冷えるかよ!!!!」
腹の底から湧き上がる力――呪力を宿した刃を振るい、強引に氷の呪縛から抜け出した。
その代償は決して少なくない。何せ封じた氷もまた呪力を帯びているのだ。
氷の破片が全身に刺さり、左虎とアズールの戦いで受けた四肢の傷が凍傷になったように焼けていた。
だが、今更多少の傷などどうでもいい。
己が傷つくことも厭わず武器を振るう。バチバチと弾ける刃が接近していた左虎を射程に収めた。
「砕いたか!だが!!!」
完全に抑えたと思った一瞬。砕き脱出することも左虎の想定にはあった。
力任せに振るわれた喧嘩上刀による一閃を、覇世川左虎は強靭な毛髪(かみ)で防ぐ。
これまで何度も行われた攻防。髪で絡めとり抑え込めばこちらの攻撃(ターン)に持ち込める。
既に近接攻撃の射程内、手にする暗刃で首を飛ばせば左虎の勝利。
そう確信していた。
ドゴルドの刃を受ける、その瞬間までは。
――この時点では誰も知りえなかったことであるが。この場にいるNPCモンスター。激怒戦騎のドゴルドは万全の状態ではなかった。
稀代の天才茅場晶彦による調整は完璧と言う他ない。
だがいかに調整が万全だろうと、使用者がそのスペックを十全に発揮するには多少の時間がかかるものだ。
今までのドゴルドはまさしくその状態だった。
新たに与えられた力を使わず、怒りの戦騎と変わらぬ戦闘法を取っていた理由がその証拠である。
きっかけとなったのはシェフィが放った氷凝呪法。
シェフィがわずかに秘めた純粋な憤慨や敵意を元に放たれたソードスキルは、運営の1人である羂索と同じ世界に蔓延る呪いの産物だ。
呪力を持つドゴルド相手にも有効に働く力であり、事実として彼は無視できないダメージを追うことになる。
そのダメージが僅かなきっかけとなり、ドゴルドの中に眠っていた新しい力を引き出した。
名を、『呪力』とする異世界の力。
その力を茅場や羂索からの『情報』ではなく『自身の力』としてドゴルドが認識したのは、今この時が初めてだった。
覇世川左虎の背に氷を差し込まれたような怖気が走る。
ドゴルドの刃には、今までになかった何かが流れている。
左虎は見た。
迫る七支刀から溢れる稲妻が。
――見慣れた黄色から、何かに塗り替えらたように黒く染まった。
それは、怒りの戦騎が扱う電撃とは全く異なる能力。
激怒戦騎となり与えられた、負の感情を母体とする呪いの力。
怒りを扱う彼とその力は極めて相性がいい。
莫大な経験も相まって彼は早々にその力の核心に触れたが、その事実にはまだ気づいていない。
――その現象に『黒閃』という名があることさえ。この場に知る者はいなかった。
前半投下終了です
このまま後半も投下いたします
「ずいぶんやられちまったようだなオニイチャン。
テメエは後だ。他の連中もどんな力を持ってるか分かったもんじゃねえからな。」
黒い稲妻を帯びた一撃を受け倒れこんだ左虎。
強敵が重症であることを確認し、ドゴルドは悠々と忍者に背を向けた。
刃を毛髪(かみ)で防いだにも関わらず、呪力の混ざり合う衝撃は左虎の臓腑にまで衝撃(ダメージ)を与えていた。
吐き出した血を飲み込みながら、先ほどまでとは鋭さが段違いの一撃に左虎の顔がわずかに青ざめる。
防御に用いた左腕の骨にヒビが入っていた。髪で防御していなければ骨折どころか腕そのものが切断されていたかもしれない。
忍者の耐久力でこのダメージ。
左虎はまだしもマジアアズールでは、黒い稲妻が迸る攻撃には耐えられない。
黒い稲妻が偶発的に起きた現象であることを、ドゴルドは感覚的に理解していた。
狙って出すことは出来ないだろう。あの場で一番強い左虎にぶつけられたのは幸運と言う他ない。
だが同時に、今まで感じていなかった力が体の中を流れていることに気づいていた。
茅場晶彦の調整により与えられた技能技術の数々がこの体には流れている。
事実として、黒閃の効果で今のドゴルドは潜在能力を120%引き出された状態だ。
羂索が選定した冥黒の五道化を体に取り込み。後天的にチューニングされた複数の能力。
それらを十全に引き出せるようになったのが今の激怒戦騎のドゴルドだ。
重傷を負った忍者と魔法少女含む4名が勝つ可能性は、主観的にも客観的にも限りなく0にまで落ちていた。
ふらつきながら左虎が駆けだすが、ドゴルドの動きはそれよりも早い。
呪力を知覚できるようになった今のドゴルドが最も警戒するのは、同じく術式を有するドラゴン少女。
「今度こそあばよドラゴン娘!!
文句はテメエにその力を与えやがった羂索に言え!!」
「ひっ……!!」
距離を取ったマイ=ラッセルハートの努力も空しく、数秒の加速で激怒戦騎は2人のすぐそばまで追いついた。
喧嘩上刀に呪力を纏わせ、迸る稲妻もその熱が高まっていく。
シェフィにとっての死が、すぐそばまでに迫ってくる。
その光景は何かに覆われて見えなくなった。
穏やかな温かさの中。マイ=ラッセルハートが自分をかばうように抱きしめているのだと。シェフィは気づいた。
(――なんで?なんでわたしはこんなことを?)
対するマイは、自分の行動が理解できずにいた。
ドゴルドの殺意は本物だ。左虎でさえ耐えられない一撃、マイごとシェフィを両断しておしまいだろう。
自分の願いのため戦うマイ=ラッセルハートに、シェフィをかばう理由は無い。
他の参加者を生かす理由も、助ける理由も、守る理由も存在しないはずだ。
今まさに命を奪われそうなドラゴン娘をマイは見る。
目前に迫る絶望を前に、光も色も失った顔。
いつかの過去、最愛の両親を巻戻士たちに見捨てられた少女の顔と、その顔はよく似ていた。
ひょっとしたら、マイはシェフィのことを救世主たちを恨んだ誰かと重ねたのかもしれないが。
今のマイには関係のないことだった。
分かることは、ここでマイ=ラッセルハートは死ぬということ。
何かが切り裂かれたぐじゅりという音が、マイの耳に届く。
――刃が背中を切り裂き、骨を砕き、血が流れる。
――心をへし折る激痛と、焼かれたような熱が背中を襲い、苦しみの中マイ=ラッセルハートの命は消える。
――見ず知らずの少女を殺すついでに、彼女の復讐は終わる。
「あれ?」
そんな未来が、いつまでたってもやってこない。
音は聞こえた。呪いの籠る戦騎の刃は確かに何かを斬ったはずだ。
嫌な予感とともにマイ=ラッセルハートは振り返る。
「だい……じょうぶ……ですか?」
そこには、魔法少女(ヒーロー)が立っていた。
ドゴルドと2人の間に仁王立ちするように少女が立ちはだかっていて。
すぐそばの草むらに攻撃を受け止めてくれたのだろう氷の刀が、ぽっきりとへし折れ落ちていた。
少女は振り向いて、マイとシェフィに笑顔を向ける。
――もう大丈夫だよ。
幼さの残る少女のあどけない、それでいてとても綺麗な笑顔に、そんな言葉をかけられた気がした。
愛らしい白い衣装はばっさりと切られ、胸から腹にかけてできた痛々しい傷からごぽごぽと赤い気泡が立ち上っている。
茫然として、言葉がでない。
マイの腕から顔を出したシェフィの顔がアズールの存在にわずかにほころび。
流れ出る鮮血を見て一瞬で青ざめた。
「あじゅーる!!!!」
「2人とも……無事……ですね。
よか……っ……た。
こんど……こそ、わたし……は……」
それ以上の言葉は、マイとシェフィの耳には届かなかった。
微笑から色と光が失われ、魔法少女は力なく大地に倒れこむ。
胸から深々と斬り降ろされた傷から、夥しい鮮血が朝焼けの森を染めていった。
「マジアアズール。お前はよくやったよ。」
ドゴルドの言葉が、どこか悲し気に聞こえる。
NPCと銘打たれているが、おそらくこいつは運営側。鎧の中には人間が入っているのだろう。
その人物から見ても、マジアアズールという少女は勇敢な戦士だったのか。失うのは惜しいと思わせるほどの人物だったのか。
尋ねることは出来なかった。
どこか吹っ切れたように戦騎は刃を振り上る。
未だマイとシェフィに迫る死は、終わってなどいないのだ。
「だが、テメエの犠牲はただの犬死だ!!!
腹立たしいがこれが俺の役目なんでな!!」
刃が迫る。
稲妻が落ちる。
今度こそ殺さんと迫る『死』に、抵抗の意思と共にマイ=ラッセルハートは懐中時計を向けて叫んだ。
「編集(エディット)!!!!」
赤黒い稲妻が時計から溢れ、ドゴルドの脳を書き換える。
マイ=ラッセルハートの能力はアンドロイドのレモンにさえ有効だ。相手が人間であるかどうかは全く関係がない。
マイ自身が知らなくとも、鎧であるドゴルドにも問題なく編集は出来た。
編集(エディット)を選んだことに、明確な理由は無い。
削除(デリート)では覇世川左虎に抵抗された。刃を振り下ろす数秒を稼げるか分からない。
だから逆を選んだ。
ただそれだけのことが、ここで戦う4人の未来を変えた。
どうでもいい記憶。限りなく無害でくだらない記憶。
誰かの日常。ありふれた会話。意味のない情報。
激流のように流し込まれる記憶を前に、ドゴルドは振り上げた剣を落とし。頭を抱えてもがきだした。
「効いてるじゃんドゴルドっち!!」
「俺の脳にゴミのような情報を流すんじゃねえ!!!」
何を流したのか、マイ自身にもよく分からない。
どこかで拾ったつまらない記憶だろうか。
キバクの奴が長々と爆弾トークをした時か?
それとも3時(スリーオクロック)に育児の愚痴を聞かされたときか?
あるいは、マイ=ラッセルハートの思い出か?
どれでもよかった。
どうでもよかった。
「左虎っち!5秒足止めしてこっちに来て!支給品(カード)を使う!
お嬢ちゃんはさっきの氷!彼女の傷口を塞いで!!できる!?」
編集は数秒しか持たないだろう。だがそれで十分だ。
こちらに駆け寄る覇世川左虎と、手元で必死に少女に呼びかけ続けるシェフィに、マイは叫ぶ。
「うん……やる!!!」
マイの言葉に、シェフィは力強く頷いた。
怖い。悲しい。辛い。どうして。助けて。
言いたい言葉はいくらでもあった。
――アズールを助けたい。
その思いは、シェフィの中にあるどの感情よりも強かった。
シェフィが本来持つ氷の魔力はまだうまく使えない。
それでも必死に出したソードスキルの扱い方を、シェフィの体が覚えていた。
氷凝呪法。本気を出せば建物1つ凍結できる呪いが、勇敢な少女の傷を優しく塞いだ。
「左虎は……承知した!」
マイの言葉に、左虎は足を強く踏み出した。
本来、あの場所でマイを守るのは自分がすべきはずだった。
左虎が不甲斐ないばかりに、少女に苦痛を背負わせた。
その怒りが、責任が、自責の念が。忍者に倒れることを許さない。
口から漏れ出そうな弱気(ネガ)に憤慨(ヘイト)。
忍者は全てを飲み込み、髪を振るう。
左虎の髪が周囲を冷却し、多湿の地面から無数の氷柱をせりあがらせる。
「暗刃・異型!逆垂氷」
「絶好調の俺に、こんな氷が効くかよ!!!」
ドゴルドと参加者を分断する防護壁(バリケード)。
憤怒の稲妻はその全てを、クッキーを割るかのようにバリバリと破壊しつづける。
本来は怪獣(ごくどう)の炎すら耐えられる氷柱も、こちらが弱体(デバフ)り相手が黒閃(キマ)っていては有効打にはならない。
それでも、左虎がマイ達に合流する時間を稼ぐことには成功した。
マイ=ラッセルハートはシェフィと左虎がそばにいることを確認し、倒れる魔法少女を右手でしっかり抱きかかえる。
残った左手でポケットからカードを一枚取り出し、天高く掲げた。
「同行(アカンパニー)オン!蛇腔病院!」
マイの呪文(スペル)に反応し、光を帯びたカードが4人を包み込む。
流星が逆転するように地から天に星が飛び。氷柱を砕き切ったドゴルドの前には誰も残っていなかった。
今更の話だが、四人が居た場所はゲームエリアの南西部分。ちょうど禪院家やキリトの家のそばであった。
そこから北側の施設である蛇腔病院にまで飛んだのだ。その光は多くの参加者の目に留まったことだろう。
ドゴルドの目にもその光ははっきりと映っている。
「ちっ、逃げやがったか。
この俺様がガキの1人も倒せねえとはな。腹立たしい!!」
苛立たしく木を蹴り飛ばすと、爆発したようにばっくりと木は裂け倒れる。
遠雷のように轟いた破壊の振動は、一体何人の耳に届いただろうか。
ドゴルドにとっては、空蝉丸に届いていればいい。
あの黒い稲妻。あの力をもう一度出せれば、空蝉丸だろうと敗けやしない。
沸き上がる闘志が、止めどなく溢れる怒りが。
呪力という形を成して、無いはずの臓腑を煮えたぎらせていた。
【ドゴルド@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:ダメージ(中) 全身に浅い裂傷と凍傷 正常、怒り(大)、戦意(大) 黒閃と自身の力に対する高揚と困惑(大)
肉体:???(女性なのは確定)
装備:喧嘩上刀@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:NPCモンスター扱いの為無し
道具:なし
基本:十全の状態で空蝉丸と決着を付ける。
01:プレイヤーどもを痛めつけて戦隊どもを引っ張り出す。
02:ヒースクリフ共、縛りを破ったら分かってんだろうな?
03:あの4人(小夜・シェフィ・マイ・左虎)を相手に1人も倒せねえとは、腹立たしい!
04:マジアアズール……覇世川左虎……、中々の相手だな。
05:あの黒い稲妻は一体なんだ?
参戦時期:死亡後
備考
※単純な復元による復活ではなくヒースクリフたちにより再錬成される形での復活な為、巨大化などのデーボモンスター固有能力を喪失している代わりに呪力、ソードスキル、ブレイブなどを使える様になっています。
※NPCモンスター扱いの為、令呪無し、名簿に記載無し、支給品無しです。
※使ってる肉体が女性の為、魔戒剣をはじめとした生物的に男性であることが前提条件の武器や能力を使えません。
※黒閃を決めたことにより一時的に能力が向上しています。いつまで有効かは後続の書き手様にお任せします なお本人詳しい効果については気づいていません
◆◇◆◆◇◆
蛇腔病院の手術室。
そのベッドの上に、水神小夜の姿はあった。
マジアアズールの姿を保ち続けているのは、ヒーローとしての決意の表れか。
発育の良い身体は凍り付いたように色を失いはじめ、血管から零れる赤血球が増えるにつれ呼吸がとぎれとぎれになっていく。
服には無数の焼け焦げで穴があき、右肩からその細い体を裂くようにドゴルドに与えられた傷が深々と残る。
左虎とシェフィによって冷やされ止血されているが、数分と経たずに彼女が死ぬことはマイどころかシェフィから見ても明らかだった。
「たしゅけて!!!あじゅーるをたすけて!!!」
マイの白衣を掴み、赤子のように泣きじゃくるシェフィをどうにかマイはなだめすかす。
この場で助けられる可能性がある人物は一人しかいない。
その一人である左虎は寄せ集めた医療器具で応急処置を繰り返しながら、苛立たし気に顔を歪めている。
「どう、左虎っち。」
「……手は尽くす。だがバグスターウイルスで弱体(デバフ)った今の左虎では死を遠ざけるが手一杯。
なんと、なんと無力(ヤブ)か。すまぬマイ先生。」
腹の傷は深いが、早々に凍結させたことで流れ出た血液は少ない。
それでも、傷は内臓にまで達し骨も血管もどれだけ切れたか分からない。
幸い蛇腔病院は非常に大きな施設だ。
オペ室の設備も必要な消耗品も、ここには一通りそろっている。
足りないのは時間と技量。
今の覇世川左虎では、この重症患者を短時間で救うのは――――
「……令呪を使ったら。」
驚愕と共に覇世川左虎はマイを見る。
マイ=ラッセルハートの口から告げられた言葉に、左虎は心臓を鷲掴みにされたような気持になった。
「マイ先生。しかし……」
「どうなの左虎っち。”今の左虎では”って言ったよね。
本気の左虎っちなら。あの子を救済(すく)えるの!?ねえどうなの!!」
左虎の胸倉をつかみ、マイは叫ぶ。
泣いているのか怒っているのか、どちらとも取れない表情をしていた。
「……可能性は格段に上がる。
だが、良いのか?左虎はマイ先生のために戦うと決めた。使うのが左虎の令呪とはいえここで消費(つか)うのは……」
「じゃあアンタは!いま救済(すく)える命をここで見捨てるのかよ!!」
視界の片隅でシェフィが「ひっ!」と怯えた声を上げた。
左虎自身、マイがこれほど前に声を荒げるとは思っていなかった。
マイ=ラッセルハートの慟哭のようなその言葉。
絶対に許せない誰かに向けるような目を前にして、否定も反論も左虎にはできない。
胸倉をつかむ手を優しく重ね、医者は恩師に優しく視線を落とした。
「不甲斐無(ダサ)い真似をさせてすまぬ。マイ先生。」
必死の形相をした『恩人』を前に、左虎は己を恥じる。
救える命を救う前に諦めるなど、自分はどうにかしてしまったのだろうか。
そのような決断、普段の左虎ならば絶対にしなかっただろう。
「聖帝大学医学部付属病院の医師として……この魔法少女の命は必ず救済(すく)うと約束する。
……すぐにでも手術を行う。マイ先生はその娘を連れて退室願いたい。
それと、マイ先生の支給品にある箱を借りたい。許容(よ)いか?」
「いいよ。その代わり。
その子は、必ず助けて。」
「必ず。」
泣きじゃくるシェフィを連れて、マイ=ラッセルハートは退室する。
退室する直前に、左虎は恩師を一瞥する。
一瞬だけ見せた顔は今にも泣きだしそうな弱弱しいもので。
なぜだか左虎は、その顔が頭から離れなかった。
◆◇◆◇◆
ドアの閉まる音と共に、部屋に残ったのは医者と患者だけ。
目の前にいる勇気ある患者(まほうしょうじょ)。
今の彼の使命は、彼女の命を救済(すく)うこと。
「魔法少女の手術(オペ)を開始する。
意識はないだろうが針麻酔を行う、変身は解除(と)かぬように頼む。」
左虎が息を整えると同時に、左手の痣がわずかに光り、花弁が落ちるように外側が欠けた。
全身を包んでいた倦怠感が消え。99.9秒間だけ覇世川左虎は忍者として全霊の力を発揮できる。
・・・・・・・・・・・・・・
忍者としてではなく医者として。全てをマジアアズールの治療に捧げる。
「いざ。」
右胸にある麻酔のツボを素早く刺し。鋭き髪でアズールの傷跡を切開。
傷口を凍らせた氷を削り取り、一滴も体内に零れないように細心の注意を払う。
あふれた血をガーゼでふき取って、左虎の卓越した目が傷口を余さず捉える。
雷を帯びた喧嘩上刀で斬られた傷は、致命傷には相違ないが予想していたより浅かった。
魔法少女の肌は鞭で尻をシバかれようと傷が残らず、溶けたロウを垂らされても跡が残らない。
常人より数段強度な肌が、ドゴルドの剛剣にも防御として機能していた。
それでも腹の中の惨状に、左虎の手はコンマ数秒だけ止まる。
肋骨が4本折れその全てに焼け焦げた跡がある。肺や心臓を貫かなかったのは幸運と言う他ない。
胃、十二指腸、肝臓、上行結腸。
主な臓器は痛々しく血に染まり、その全てに抉るような裂傷が残る。電熱のせいか一部分は焼け焦げていた。
常人なら死んでいた。覇世川左虎が居なければ水神小夜も同じ末路を辿っていただろう。
だが、左虎が驚嘆(ビビ)ったのは水神小夜の精神力(ガッツ)だ。
腹を断裂(き)られ、燃焼(や)かれる。それはいったいどれほどの激痛か。痛みだけで死んでしまっても不思議ではない。
忍者である己ならともかく僅か14の少女が耐えきり。あまつさえシェフィとマイを安心させる言葉を投げかけた。
同じことが出来る人間が、この会場にいったい何人いることだろう。
「この傷を受けてあの不敵(ヒロイック)な笑みを……。
なんという強靭(つよ)き娘よ。
お前のような者を救済(すく)えねば、医者としても忍者としても左虎は左虎を許さんだろう。」
炭化(し)んだ骨を削り、肋骨をしっかりと繋ぎとめる。
素早く焼け焦げた部分を切り取り臓器を縫合。周囲にある大きな血管も縫い合わせ出血を抑えた。
それでも輸血は必要になる。腹をさばいているのだから当たり前だ。
血液型が分からないので専門の検査機――マイ先生から借り受けたオコノミボックスが元だ――で調べている。
幸い蛇腔病院はそう小さな病院ではない。保管してある血液製剤くらいはあるはずだ。
1分経過。
臓器、骨の処置はほぼ完了し皮膚の縫合に移る。
焼け焦げた切り口をそのままにしては跡が残るし感染症の原因にもなる。
処置のできない箇所は切開し消毒を行う。
幸いアズールは14歳の少女。
皮膚の再生力に関しては大人よりずっと高く、このままの縫合でも十分治る見込みはある。
術式が完了する頃には、アズールの呼吸はかなり落ち着いた状態だった。
「お前の勇気の勝利。左虎は心より賞賛(リスペクト)しようぞ。マジアアズール。
しばし昏睡(ゆめごこち)だろうが、お前の強さを左虎は……我ら3人は知っている。
何よりこの左虎が治療したのだ。すぐに目覚める。」
最終の確認を終え、胸を切り裂く傷を左虎は髪で縫い合わせる。
覇世川の髪は秘薬により無菌。如何なるものより人体に馴染む優秀な縫合糸。
抜糸の必要さえなくマジアアズールは戦線復帰できる。
それが名医 覇世川左虎の無手の手術だ。
手術開始から99秒。
マジアアズールが傷を負ってから、約5分。
彼女はそれだけの時間耐え抜き、今なお生き続けてくれている。
弟弟子よりなお若く、それでいて勇敢なる患者に微笑みかけて左虎は告げる。
医者の勝利を。魔法少女の勝利を。
「施術(オペ)完了。」
◆◇◆◇◆
「あじゅーる助かる?助かるかな?」
「助かると思うよ。」
手術室前の長椅子に2人は腰を下ろす。
マイの服をぎゅっと掴みシェフィはプルプルと震えている。
森の中でも思っていたが、水神小夜と変わらない年頃にしては情緒が幼すぎる。
エピソード記憶どころか意味記憶さえ失っているのだろうか。
自分ならシェフィの記憶を戻せるかもしれないが、どうするべきか。
「マイ。」
「ん?」
マイの耳に入るシェフィの声は、妙に落ち着いていた。
年相応とまではいかないたどたどしい発音だが、先ほどまでよりはっきりと意思の込められた声で。
「マイは、たすけてほしかったの?」
核心をついたような言葉を、竜の少女は投げかけた。
シェフィを前に見せた緩い表情が、少し崩れそうになる。
「どうして、そう思ったの?」
「だってさっきのマイ。さいしょにであったアズールとおなじかおしてる。」
「どんな顔よ。」
思わずツッコんでしまった。中身幼稚園児なのに。
マイの知るアズールは勇敢に立ち向かう正義の使者だ。
その顔が今のマイと同じとは、イメージが出来ない。
第一、今のマイの感情の変化を情緒が幼いシェフィは理解できるのだろうか?
「こわいかおしてた。
ぐしゃぐしゃなかおしてた、わらってたけどたのしくなさそうだった。
このこのって。たたいてきたけど、いたくなかった。
いたがってたのはアズールのほう。
たすけてって。たすけてって。いってないけどずっといってた。」
「……」
よく見ている子だなと、マイは目の前の少女の評価を改める。
要領を得ない言葉ながら、何が言いたいのかは見えた気がした。
マジアアズールはきっと、このゲームに来る直前になにか心が折れるような経験をしたのだ。
自分の正義を失うような。
心の平穏を奪われるような。
信じていたものが砕け散るような、マイには想像もつかない。壮絶な何かを。
彼女だって年若い少女だ。中学生か高校生くらいだろうか。
精神だって未熟だし不安を抱える多感な時期。簡単に心が割れてしまう青い世代だ。
覇世川左虎の記憶の中に似たような子供たちがいたことを、マイは思い出していた。
顔にガムテープを巻いた殺し屋集団。
割れた子供達(グラス・チルドレン)と名乗っていたか。
夢を失い、未来を失い。人を殺さなければ生きていけない子供達。
一手間違っていれば、アズールの顔にもガムテープが貼られていたかもしれなかった。
記憶の中で見たグラス・チルドレンは、左虎ら忍者にに本気の殺意をぶつけ続けた。
泣きそうな顔で。怒りをむき出しにした顔で。この世全てを恨んでいるような気味の悪い笑みを浮かべて。
シェフィが見たアズールも、そんな顔をしていたのだろうか。
――今のマイ=ラッセルハートも、そんな顔をしているのだろうか。
そうだと言われたら、何も言い返せない自分がいた。
「私はもう助けられてるんだよ。
だから、ええと……シェフィでいいのかな?
うん、シェフィっちが気にするようなことじゃない。」
マイ=ラッセルハートだって、心が割れるような経験を経てここにいる。
マイを含んで400人が死ぬはずだった事故に、巻戻士達は派遣され不慮の事故で死ぬ者たちの命を救った。
400人の犠牲のうち、398人を救い、彼らは姿を消した。
失われた命は、マイの両親だけだった。
彼らは失われてもいい命として、マイの両親を選んだ。
少なくともマイにはそれ以外の認知は出来なかった。
その不平等が、許せない。
正義の顔をして命を選ぶ彼らが許せない。
孤独になり、絶望に落ちた彼女はクロックハンズのリーダー1時(ワンオクロック)に救済(すく)われ時空犯罪者(クロックハンズ)になった。
「さっきは怒鳴ってごめんね。びっくりさせたよね。」
――「じゃあアンタは!いま救済(すく)える命をここで見捨てるのかよ!!」
自分でもあんな荒々しい言葉が出るとは驚きだった。
バグスターウイルスにより低下した左虎の技術を取り戻す方法は、令呪を使うしかない。
左虎の令呪の使用権は、編集(エディット)によりほとんどマイが握っている状態だ。
・・・・・・・・・・
マイ=ラッセルハートにはアズールを救うか否か。命を選ぶことができた。
その立場に立った時、『救わない』という選択肢はマイから消えた。
誰かを見殺しにする道を選んで、大嫌いな巻戻士と同じ偽善者には死んでもなりたくなかった。
「左虎っちなら、きっとアズールを助けてくれる。だから――」
シェフィっちも心配しないで。
そう言いかけようとしたマイの肩に手を伸ばし、シェフィがマイを抱きしめた。
ちらっとシェフィの顔が見えた。
純真な幼子がするとは思えない、陰を帯びた顔だった。
「……シェフィっち?どうしたの?」
「マイのうそつき。
だったらなんで、くちからちをはいてるの?
マイ、すごくいたそう。」
言われたマイが唇に手を当てると、指先がかすかに赤く染まる。
唇を嚙み切るほど歯を食いしばっていたことに、今の今まで気づかなかった。
いったい今の私は、どんな表情(かお)をしていたの?
ここには仮面は無い。シェフィは私の顔をずっと見ていた。
少なくとも、救われた人間がする顔じゃないことは確かだった。
とんとんと。シェフィの腕がマイの背中を叩いている。
マイを抱きしめる腕は、アズールよりも、左虎よりも、マイ本人よりもずっと細い。
それでも抱きとめられる優しい力に、暖かな温もりに、ずっと揺らがなかった何かが、揺らぎかけてしまう。
「だいじょうぶ。」
幼子とは思えない。残酷なほどやさしい声がした。
記憶が断片的に戻ってきているのだろうか?
だとしたら、シェフィはきっと『救う側』の人間なのだろう。
マジアアズールや覇世川左虎と同じ。
マイ=ラッセルハートとは道を違える。そんな存在なのだろう。
「な……。」
何を言おうとしたのかは、自分にもわからなかった。
言葉が出てこない。
喉の奥まで出かかった何かが、呼吸と共にぬけていく。
「私が来たから、大丈夫。」
「!!!」
シェフィの言葉が、ある世界のNo1ヒーローから与えられたものだと、マイは知らない。
それでも、その根拠のない言葉が。何の保証もない言葉が。マイの胸の何かに強く刺さった。
それは、誰かを安心させる言葉。
救いを求める誰かに、平穏を与える福音。
その言葉を受けたマイの頬を温かな何かが静かに伝った。
「大丈夫……か。」
誰かにそう言ってほしかったのかもなと、マイは思う。
シェフィでも、アズールでも、左虎でも、巻戻士でもいい。
森の中で、どうして自分がシェフィをかばったのか。マイは初めて自覚した。
死を前に絶望した少女の姿を、両親を失い心を壊した己と重ねたのだ。
あの時マイ=ラッセルハートは、確かにシェフィを救いたいと思ったのではないだろうか。
マイ=ラッセルハートは心のどこかで、全てを救うヒーローを求めていたかもしれない。
自分を助けた巻戻士を、一度はヒーローだと思った。
そのヒーローが、ただ二人マイの両親だけを見殺しにした。
だから、全部救えるヒーローなんていないんだ。いるはずがないんだ。
あの日のマイの心を割った、ただ1つの絶望だった。
あの時、大丈夫と言ってくれたら。
そう力強く言える誰かと出会えれば。
あの日の誰かは、パパとママも救ってくれたはずだ。
だったら、私は今も、大好きなパパとママと一緒に暮らせて。
だったら私は、時空犯罪者になんかならないで。
誰かを殺してまで『平等』を求めるような人間にはならなかったかもしれない。
そう認めたい幼いマイはいた。
今も心の中にいるかもしれない。
もしどこか、本当に全てを救おうとがむしゃらに頑張る誰かに出会えれば。
その誰かを認めたい思いは、マイの中にも確かにある。
「遅いよ。」
――――だが、それだけだ。
全てを救おうとする巻戻士と、ここにいるマイは出会っていない。
自分が救われたいと。救われていないという考えを、マイは肯定出来なかった。
全てを救うヒーローは、マイの元には現れなかった。
マイの両親は死んだ。
巻戻士(ヒーロー)はただの偽善者だ。
傲慢に命を選ぶ、不平等の象徴だ。
救われたいと願った情景を、マイはかき消した。
全て終わった話だと。いまさら何をしても遅いんだと。
一抹の希望を消し去った心の中に、仮面をつけた誰かが立ってるのが見えた。
時計のような仮面は、ちょうど11時を指していた。
「もう終わったことなんだよ。
全部全部。終わったんだ。
進んだ時間はもう戻らない!戻っちゃいけないんだ!!!」
お前の言葉に何の意味もない。
私は救われたいなど思っていない。
そんな上っ面な叫びをヒステリックにあげて、マイはシェフィを突き飛ばした。
「きゃっ!!!」
ビニル床の廊下にシェフィは背中から叩きつけられる。
背中の痛みに怯むシェフィに、衝動的に時計を取り出し、マイは叫ぶ。
シェフィに向ける血走った眼は、泣きはらしたように真っ赤に腫れていた。
「削除(デリート)!」
マイ=ラッセルハートが呟くと、懐中時計が赤黒く光る。
ドゴルドが出した黒い火花とはまた異なる、乾いた血のような悍ましい光。
人の記憶を改竄(かきかえ)る。人の人生を愚弄(もてあそ)ぶ。
『救う側』の人間とはかけ離れた光が、シェフィの中にわずかに残る記憶を焼き尽くす。
「マイ……」
薄れゆく意識の中、シェフィの目にマイの顔が映る。
唇をぎゅっと結んだその表情は、公園で泣いていたアズールとよく似ていて。
たすけをもとめる、かおをしていた。
◆◇◆◇◆
左虎の手術は無事に完了した。
「魔法少女の姿のままであったから成功した。変身を解除(と)かなんだ彼女の功績ぞ。」
左虎はそう言っていたが、腹を切り内臓を縫い合わせる手術を令呪の有効時間内に終わらせた覇世川左虎の超絶(チート)な技術があってこその結果なのは間違いなかった。
『己の心臓を抜き取り弟に移植する』という、異次元(バグワザ)めいた術式をこなした彼の記憶も、まぎれもない事実なのだろうなとマイは思った。
アズールの輸血を終えた左虎に周囲を見回らせながら、少女達の記憶をマイ=ラッセルハートは編集していく。
ベッドの上で昏睡(ねむ)りつづける水神小夜は改竄をすんなり受け入れる。
トレスマジアとして悪の組織と戦った彼女の人生。
マジアベーゼによる屈辱に屈しそうになった彼女の姿は、やはりマイの前で勇敢に闘った少女の姿とは重ならない。
今の勇敢な姿こそ、本来の彼女なのだろう。
小夜に寄り添うように眠るシェフィには、マイが弄るまでもなくほとんどの記憶がなかった。
脳はブラックボックスだ。下手に弄って元々喪失していたシェフィの記憶が蘇っては本末転倒。
シェフィの他人を気遣える精神性に、アズールや左虎と同じものをマイは見ていた。
シェフィの記憶がよみがえれば、高い確率でマイの敵になるだろう。
だから彼女の戻らない記憶には手を付けず、名簿と一致した”キャル”という名前を中心に削除(デリート)したうえで軽い記憶を植え付けるに留めた。
作業を進めながら、マイ=ラッセルハートは考える。
覚悟は揺らいでいない。マイの目的は依然変わらずバトルロワイヤルに勝利すること。
そのために左虎を、今はシェフィとアズールも利用して。他の参加者を皆殺しにする。
邪樹右龍どころかトレスマジアやキャルまでもが出会ってはいけない相手になってしまったが、それに見合った戦力は手に入った。
ドゴルドを放置したことも、結果としては他の陣営の戦力を削ぐ結果になる。これでいい。
水神小夜に令呪を使ったことも、マイは後悔していない。
マイ=ラッセルハート。クロックハンズ11時(イレブンオクロック)の原点。
マイを含んだ400人が死ぬはずだった事故で、マイの両親だけを救わなかった不平等な巻戻士への憎悪。
そんなマイだから、救える命を救わないという選択は出来なかった。
それはマイにとって、誰かを殺すよりずっとずっと許せないこと。
「アタシはあいつらとは違う。
だから、これでいいんだよ。」
巻戻士はヒーローじゃない。
全てを救うヒーローはいない。
怨みは消えない。
過去は変わらない。
マイ=ラッセルハートの未来も、変わらない。
腹の中に渦巻く泥が漏れ出たかのような。冷たい声をひとり零す。
頭の中で囁く声は、すでに消えてしまっていた。
代わりに、ベッドの上から「んん……」と幼げな声が漏れる。
「起こしちゃったかな?」
努めて穏やかな言葉で寝起きの少女に相対する。
一瞬焦ったが、ほとんど削除(デリート)の必要がないシェフィの編集は殆ど完了していた。
彼女の記憶は戻っていない。
最初に会った時と同じ、情緒の幼い空虚な少女のままだ。
シェフィは母親を見るかのように緩んだ笑顔をマイに向ける。
マイも負けじと丸眼鏡をつけ、にっこりと緩んだ笑顔をシェフィに返す。
先ほどまで暗い眼をして2人の脳を改竄(いじ)くっていた人物だとは、とてもじゃないが思えないほどに、その表情(かお)は明るかった。
「マイてんてー。」
「そう、アタシはマイ=ラッセルハート。
あなた達の先生だよ。シェフィっち。」
【エリアB-6/蛇腔病院内部/9月2日午前6時】
【水神小夜@魔法少女にあこがれて】
状態:ダメージ(極大・治療済み) 意識不明
"削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下
服装:学生服(ボロボロ)
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う。
01:ドゴルド……あの強さで参加者じゃないなんて。
02:シェフィちゃんとメガネのお姉さん 2人を守れたのなら良かった
参戦時期:アニメ7話、原作2巻Episode10の終盤
備考
※マイの編集(エディット)により、バトルロワイヤルのルールを把握しました
※現在意識不明となっています。左虎の治療のため胸に大きな縫い傷が出来ています。今後意識が戻るかどうかは後述の書き手様にお任せします
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、トレスマジアを含む一部記憶が欠損しています。強い衝撃等があれば蘇るかもしれません
【シェフィ@プリンセスコネクト!Re:Dive】
状態:幼児退行(小) ドゴルドへの恐怖(中)"削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下
服装:いつもの服
装備:雄英ヒーローズ・バトル@僕のヒーローアカデミア
ソードスキル:氷凝呪法@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01:オールマイト、ありがと!
02:アズール、もうだいじょうぶだからね。
03:ケンジャクっておねーたん、こわい
04?:マイてんてー。だいすき
参戦時期:幼児退行が治って無かったころのどこか
備考
※具体的な参戦時期は後の書き手様にお任せします。
※精神状態が精神状態なので、このバトルロワイヤルについて色々とよくわかっていないと思われます。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為キャルを含む一部記憶が欠損しています。強い衝撃等があれば蘇るかもしれません
【覇世川左虎@忍者と極道】
状態:ダメージ(大) "削除(デリート)"により一部記憶欠損、"編集(エディット)"影響下(マイ先生)
服装:忍者衣装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:マイに従う
01?:マイ先生の懇願(たのみ)を断る左虎ではない
02:あの少女 峠は超えたが目覚めるかどうかは精神(ガッツ)次第か
参戦時期:死亡後
備考
マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響の為、邪樹右龍・繰田孔富含む一部記憶が欠損しています。強い衝撃等があれば蘇るかもしれません。
【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:健康
服装:白衣
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士、オコノミボックス@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:左虎っち・小夜っち・シェフィっちを利用する。優勝したら左虎っちの両親を蘇らせてもいい
02:タイムマシンの使用は慎重に。削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。その意思は揺るがない
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』の世界についてのある程度の知識を得ました
【支給品紹介】
ソードスキル:氷凝呪法@呪術廻戦
・シェフィに支給
氷を生成する術式
幼児化している現時点のシェフィでは断片を凍り付かせる程度の出力が限界だが、本来ならば巨大な氷塊を生み出すくらいは軽々行える強力な術式
同行(アカンパニー)@HUNTER×HUNTER
・覇世川左虎に支給
念能力者専用ゲーム、グリードアイランドで使用されていたスペルカード。
呪文と名前を宣言する事で、自身を含んだ数名の人間を指定した場所に移動させる
投下終了します
皆さま投下お疲れ様です!
投下します。
作品名は長すぎるとでましたので、最後に記載します。
注意 本作品はガッチャではなくダークマイトです。
Q20.本邦初公開!なオールマイトの秘密を教えてください
女性経験
なし。
あれからそう時間がたたずに絆創膏による拘束が解除された。
解放さると同時に九堂りんねは選択を迫られる。
宝太郎を探すか、彼(キズナブラック)を追うか。
「……うん、彼を追おう」
りんねが選択したのは、宝太郎を探すことではなくキズナブラックを追うことだった。
勿論、りんねにとって苦渋の決断でもある。
本来、死を迎えるはずの自分。
この状況が死の間際に見せた幻覚かどうかは今もわからない。
だが、自分がまだ何かできるのであれば、真っ先にするべきことは、宝太郎を独りにさせないこと。
たとえ、会場に居た宝太郎が自分の知る宝太郎でなくても。
そこまで、宝太郎のことを対等の相棒として接していながらも、りんねは彼を追うことを選択した。
ではなぜ、りんねは、そちらの選択をしたのか――
「違う。俺はもう誰とも絆を結べない。俺は…独りで闘い続けなきゃいけないんだ。」
決め手はやはり、自分との共闘を拒絶した際に彼が呟いた言葉と表情。
彼の表情と後悔の声色は、宝太郎に少し似ていた。
宝太郎は、仲間を次々と失うたびに自分を責めた。怒りをぶつけた。
一人、またひとりと失うたびに眉間に皺が刻まれる鬼気迫る表情と守れなかった自分への怒りを隠しきれない声色は、”大物錬金術師になる”と口にしていたときの宝太郎とは似ても似つかなくなっていた。
そんな苦しむ宝太郎の姿に私は、隣に立って戦わなければと勘違いした。
だって対等の相棒として接したいから。
だが、私は最大の失敗を選択してしまった。
希望に繋ぐ自らの死は、宝太郎を独りにしてしまうだけであったということ。
私がしたことは宝太郎を”孤独”にさせた。
きっと、彼……キズナブラックもそうなのだろう。
彼とは出会ったばかり。
秘めたる想いはまだ分からない。もしかしたら自分が勝手に思い込んでいるだけかもしれない。
だけど、彼も宝太郎のように仲間を……守るべき人を失い、自分を責め続けているに違いない。
このままでは、小さく見えた彼の背中はさらに小さくなるだろう。そして、最後は……
ならば、自分がその背中を……絆をとりんねは選択したのだ。
しかし、それは叶わない。
1つはケツイを決めた直後、参加者に通達されたラウ・ル・クルーゼによる放送。
そしてもう一つは――
「え!?ドラゴン……!?」
りんねの前に立ちふさがるはドラゴン。
NPCダースドラゴン。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「ふむ……どうやらここに部下達はいないみたいだな」
「しかし、俺の名がないだと?どういうことだ……?」
放送が終えると、男は名簿を確認する。
名簿には部下であるファミリ―の名前はなく、さらに男の名も記されてなかった。
見間違いかともう一度確認をする。
「名簿には本名で表記されていない者もいると言っていたが……ん!?んんん〜〜〜?ダークマイト……?」
男はある参加者の名に目線を留める。
”ダークマイト”
名簿に表記されるは象徴をもじった名前。
「もしや、俺の名か……?」
確信はない。だが、その名に体の芯から滾ってくる。
そう、これから象徴を継ぐ者として日本へ向かっていた。
「次は、――――君だ」
オールマイトから自分へ向けた引継ぎの言葉。
英雄生誕の国で華々しく後を継ぐ。
意志を引き継ぎ、混乱した日本を平定することで世界は俺を認める。
オールマイトの次は俺の時代だと。
最高の演出だ。
しかし、一つ問題があった。
それは、次の象徴の名だ。
まぁ、そのままオールマイトでも構わないが、その名は先代だからこそという思いもある。
そんなときに目にした”ダークマイト”という名前。
「……・いい」
「いいじゃないか!”ダークマイト”気に入ったぞ!」
男はその名を気に入る。
「オールマイトを光とするなら、その跡を継ぐのは闇……ッ!」
「ならば、俺はオールマイトではなく《ダークマイト》と言ったところか!……いいね、いいひびきだ!ダークマイト!」
それは天啓。
ダークマイト誕生の瞬間であった。
「……ん?」
耳に聴こえるは戦闘音。
見えるは、ドラゴンとそれに立ち向かう黒髪の少女。
そして、少女は唱える。
万1者
物はこれなるノ
造 まれ
改と生
して生くう
「ほう、あれはもしや錬金か!……ふむ、あの少女……使えるなぁ」
見知らぬ少女が使用する錬金に関心すると同時に抱くのは、”使える”
上手く扱えばアンナのように戦力となる。手に入れたい。
ダークマイトはケツイする。
「1つ問おう!ヴィラン共の企みを阻止する次代の象徴には何が必要だと思うかね?そう……ヒロインだ!」
言葉と同時にダークマイトは走り出す。
竜から姫を救うべく行動を開始した――
☆彡 ☆彡 ☆彡
「万物はこれなる一者(ひとつもの)の改造として生まれうく」
地面の土が土塁にように盛り上がると、ダースドラゴンのひのいきを防ぐ。
――ズキ
「いたっ……」
先ほど、彼には命呪も体力も全て出し切らずにすんだと言ったが、メラとの戦闘の余波は思った以上に大きかった。
NPCとはいえ、連続の戦闘は、疲労がさらに蓄積されてくる。
「無理でもやらなくちゃ。それが私の!錬金術師の使命だから」
身体が悲鳴を上げているがそんなの関係ない。
ここで、自分が斃れたら宝太郎を独りにさせてしまう。
同じ過ちは繰り返したくない!
「今!」
ひのいきが弱まるタイミングで素早く土塁の横から飛び出すと、錬金術で攻撃しようとする。
すると、りんねは見てしまう。
「え……」
――涙?
ドラゴンは涙を流していた。
りんねは攻撃の手を止めてしまう。
しかし、それはつうこんのいちげきであった。
ドラゴンの爪がりんねの命を刈り取ろうと振るわれる。
「しまっ!?」
(ごめん、宝太郎……!!)
りんねは目を一瞬瞑る。
しかし、いつまでたっても切り裂かれる感触が無い。
恐る恐る目を開くと、目の前に男が立っていて、ドラゴンの爪を掴み押さえていた。
「FUFUFU……」
太くひびく笑い声。
自分に絶対的な自信を持つ声。
「麗しきお嬢さん。もう大丈夫だ……なぜって……」
りんねを守った男は筋骨隆々とした体つき。
頭には二本の長い触角がピョンと勢いよく立ち上がっている。
「俺が来た!」
それは、一ノ瀬宝太郎ともキズナブラックとも異なる――全方位迷惑場違い英雄気取りの男。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「FUFUFU……サイモンの奴が喜びそうな造形だな」
ダークマイトが言うサイモンとはファミリーの一員のこと。
ファミリーで一番のエンターテイメントのサイモンの個性は”怪物召喚”(モンスターサモン)
様々な怪物を召喚できるサイモンにとってもダースドラゴンは歓喜するデザインであることからダークマイトはつい口に出した。
「っと、いけないいけない。今は気をとられている場合じゃないな」
チラリと背後にいるりんねに視線を送る。
りんねは、突如現れた男に若干困惑したような表情を見せるが、その場を離れずにいた。
りんねがきちんとその場にいることを確認終えると、ドラゴンへ視線を戻す。
そして、掴んでいた爪をそのまま強引に振り放す。
「麗しき少女を守るべく俺が退治するはドラゴン……決めた!」
「さしずめ”ドラゴンクエスト”とでも名付けようか!」
ダークマイトは目を輝かせながら名づける。
目の前のドラゴンがNPCとはいえ、竜退治は伝説の幕開けに相応しいと。
バッ――とスーツを脱ぎ捨てると下に着ていたヒーローコスチュームが現れる。
そう、オールマイトがシルバーエイジのときに着ていたコスチュームそっくりのが。
錬金で生成したエネルギーを勢いよく練り上げると――
「ダークマイト伝説の幕開けだぁぁぁぁぁ!!!!!」
巨大な黄金の手がダースドラゴンを叩き潰す。
竜は斃れる。
流した涙を拭うことなく。
勿論、このダースドラゴンはNPC。
だがその涙は視た者につい感じさせてしまう。
ついぞ、己の後悔が雪がれぬことはなかった……と。
人の想いを感じ取れぬ男は当然感じない。
「……」
この場で感じるのは、ただ一人の若き錬金術師の少女のみ。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「そうか、君はりんねというのか!いい名ではないか!」
「……どうも」
「ああ、感謝しなくていい。あのドラゴンはこの俺に楯を突いたんだ。平和の象徴となる、この俺にな」
感謝は無用だとダークマイトはHAHAHAと白い歯を見せながら笑う。
だが、りんねはうかない表情。
男はそんなりんねの微妙な反応に気にも留めない。
「……」
助けてもらってなんだが、苦手なタイプだ。
九堂りんねがダークマイトに対して抱く感情は好印象ではない。
それもそのはず、このダークマイトは粗暴、ナルシスト、傍若無人といった自己中な男。はっきり言って所謂、優等生の一面をもつりんねと相性が悪い組み合わせだ。
もし、このダークマイトが敗北を知り、新しい自分を目指そうと再起をはかる男であったら違う未来が待ち受けていただろう。
しかし、たらればをここで論じても栓無き事。
このダークマイトは敵”ヴィラン”と何一つ変わりない男なのだから。
「それでは、りんね。君は今から俺の同志だ!俺とともに歴史をつくろう!」
「は?」
突然のダークマイトの同志認定にりんねは首を傾げる。
女性の心を何一つ理解できていない、その強引な物言いもマイナスポイント。
疑いたくなる。本当に憧れらしいヒーローになろうとしているのかと。
「いえ、悪いけど遠慮します」
「何故だ!?象徴の俺がいれば羂索共の企みなんか蹴散らすことが容易に可能だと言うのに!?」
「……じゃあ尋ねるけど、貴方は先ほどのドラゴンの涙に気づいた?」
りんねは問いかける。
ドラゴンが斃れる前に流していた涙の存在に。
それが、ダークマイトと行動を共にできない理由だといわんばかりに。
「んん?涙……?FUFUFU、りんね、あれは参加者ではなく羂索が用意したNPCモンスターだよ。つまるところゲームの雑魚キャラだ。そんな雑魚が涙を流すはずがないじゃないか。……ま、もしもりんねが言う通り涙を流していたなら、それはバグだろ。ゲームにバグはつきものさ」
りんねの問いかけにダークマイトはバグだと断じる。
気にすることはない現象だと。
その答えは、ダークマイトと九堂りんねを決定的に壁を築き上げた。
「……やっぱり私は貴方に協力できない。あの涙に気づけない貴方はグリオンと変わらない。ヒーローなんかではない!人々を悲劇へと陥れる闇よ!」
りんねはケツイする。
その答えは自分の直感通り、ダークマイトとは協力できない証だと。
NPCモンスターとはいえ、あの涙に気づけない者がヒーローなわけがない。
宝太郎なら気づく。そして、寄り添う。NPCだろうと。ケミーたちのように。
用意されたキャラクターだとしても、流した涙をバグと断じる者と行動を共にすることはできない。
ダークマイトと共闘してもケミーと人が共生する世界を思い描けないからだ。
「……仕方がない。では、強情な君にはこれをプレゼントするしかない」
ダークマイトはやれやれとため息をつくと、支給品を手に持つ。
強情なのは構わない。気の強い女は好きだ。
だが、象徴を引き継ぐ自分を否定することは許されない。
故にダークマイトはケツイした。
暴力と恐怖で九堂りんねを従わせることに。
「それは……?」
「これかい?これは”■■爆弾”だよ」
「……は?」
それは……女性を著しく冒涜する爆弾であった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
注意 これから行われる行為は絶対に真似をしないでください
☆彡 ☆彡 ☆彡
「なに……?■■爆弾?」
目の前の英雄気取りの男の言葉にりんねはつい聞き返してしまう。
無理もない。ダークマイトが口にしたのはただの爆弾ではない。”■■”爆弾と口にしたのだから。
「ああ、そうともりんね」
「この説明書によると、この爆弾は■■に埋め込んでも平気な爆弾だそうだ。異世界の技術も凄いものだな、りんね〜」
ダークマイトは狂気のような笑みを浮かべつつりんねに語りかける。
そして、りんねは理解する。
目の前の男は自分の■■にその爆弾を仕込もうとすることに。
「狂ってる……!!」
もう、言葉を交わすことさえしたくないほど、りんねはダークマイトに嫌悪感を抱く。
そして、構える。
仮面ライダーマジェードに変身するため。
だが、それよりも早くダークマイトは移動し、りんねの指を掴むと、ハイアルケミニストリングを取り上げる。
「なっ……!?」
「世界は違えど、同じ錬金術を嗜む者。”それ”に気づかないと思ったかな?」
「くっ……」
ダークマイトの個性《錬金》は、触媒を利用して物質を創造する。
不運にも、りんねが扱う錬金術に類似していた。
故にダークマイトはりんねの錬金術の源となるハイアルケミニストリングが媒介となるのを見抜いたのだ。
「それじゃあ、ショーの始まりといこうか!」
りんねは地面に組み伏せられる。
黒のショートパンツがずり下される。
そして、ショーツの上からぐにぐにと触られる。
「痛ッ!?いや!やめて……ッ!」
ショーツの上からとはいえ、乱暴に触られたことで生じた痛みにりんねは、顔を歪ませると同時に拒絶しようと体を動かすが、ダークマイトのがっしりとした筋骨隆々の拘束に抗う術はない。
「む!?その反応……もしやりんね、君はvergineなのか!?」
「……」
ダークマイトの質問にりんねは頬を赤らめながらも無言で返す。
しかし、その反応が、処女であると答えているのも同じであった。
「それはいけないなぁ〜、よし!ではこの俺がりんねを大人にしてやらなければ!」
りんねが処女であると確信すると、それが己の使命感だといわんばかりに男は決定する。
性を知らないまま爆弾を■■に仕込むのは忍びないと。
まさにダークマイト。
傍若無人さがここに極まる。
ちなみにダークマイトが敬愛するオールマイトは童貞。
どこまでもオールマイトを理解できていない男である。
「さて、りんね。今から君の初めてを俺が頂くが、何か言うことはあるかね?」
りんねを錬金で生成した光の矢で拘束しつつショーツもずり下げると、ダークマイトはその己の英雄棒をピタピタと当てながら訊ねる。
「……人が、嫌がることはしない。小学生でも知ってる」
「FUFUFU、いい回答だよりんね……ふんっ!!!」
僅かに処女膜の抵抗を感じ取るが、問題なしと一気に力を込め奥までズンッと突き入れる。
前戯もなしに。
九堂りんねとダークマイトがガーチャンコ!
「――――っ!」
りんねの処女が失われた。
その証に赤い血が流れる……それはまるで血涙のようにタラリと流れ落ちる。
だが、これはまだ序の口である。
せめてもの抵抗か、りんねは唇を噛み殺し、声を上げまいとしている。
だが――
ボコッ
「!?」
ダークマイトの巨根がりんねの子宮を叩く
りんねは困惑する。
性行為は知識として知っている。
勿論、それを行う男性の性器についても多少は……
だが、まさかここまでとはりんねも予想外であった。
狭いりんねの膣が押し広がる。
パンパンパンとリズミカルに上下に腰を打ち当てる。
一突き一突き深く。りんねの膣に、所有者だと認識させるために。
「あぐぅっ……!?」
身体が染め上げられる。
九堂りんねの膣内が刻み込まれる。
ダークマイトが基準だと。
「がはっ!?……んぐぅっ!?ふっ――っ!!??あっ……ぐぅ」
「りんねぇ〜〜いい締まりだぞ!」
膣全体がダークマイトの一物を締め上げる。強烈に。
もちろん、これは肉体構造上起こり得ること。
りんねが決してダークマイトを受け入れているわけではない。
「それ……は、女性が……んっ……体を守る……あっ……ための自衛の反応……」
「FUFUFU……」
りんねの否定な物言いにダークマイトは可愛いなとほくそ笑む。
英雄、色を好む。
それから、ダークマイトは九堂りんねの肉体を存分に味わい尽くす。
「あっ……あが!?かっ……はぐっ!?」
「っ……そろそろ出すぞ!」
「出すって……まさかっ―――!!」
その意味を悟ると、りんねの顔はみるみると蒼白へと変わる。
「FUFUFU、聡明な君なら意味は分かるだろう?」
「嫌っ……やめて!」
「悪いが……無理だ!」
SMAAASH!!!
SMAAASH!!!
ドクッ……ドククッ!!
「いやっ――……んぐぅ!?」
(さ……最悪!)
種付けプレスに強制キス。
逃がさないとガッチリとりんねを押さえ込んで離さない。
ドクドクと何度も一物が脈動を繰り返し子宮に精液が注がれ、唇まで奪われる。
ズルリと男根を引き抜く。それと同時に白濁液がゴポリと零れ落ちる。
りんねがダークマイトに染め上げられた証であった。
「どうだいりんね?女になった気分は?」
「はぁ――……はっぁ……はっぁ」
(き……気持ち悪い……)
穢された。汚された。
子宮へと大量の精液が注ぎ込まれた。
ふと、最悪なことをよぎってしまう。
こんな目に合うなら、あのとき、そのまま死ねばよかったのではと……
ううん――負けない
キッとダークマイトを睨みつける。
が、りんねは失念していた。
そもそもこのダークマイト(男)の始めの目的を。
「さて、りんね。ここからが本番だよ?」
そう、りんねを処女から大人にしたのはただの通過儀礼。
ダークマイトの本来の目的はここからである。
ダークマイトは爆弾を握りしめると、りんねの膣……正確には目的である子宮に目がけて――
「SMAAASH!!!」
爆弾を握りしめた拳ごとりんねの膣内へぶち込んだ。
「ーーーーーーーーーーっ、ああああああああああっ!?」
絶叫。
つんざくほどの絶叫。
ビクンビクンと身体をビクんと痙攣させながら壮絶な絶叫を上げる。
「いっ!痛いっ!?痛いぃ――!ぬ……・抜いてっ……抜いてぇ、ぐっ!?いやぁっ――」
犯されている最中、必死に声を殺していたりんねだが、流石に”これ”には声を殺しきれない。
普段のクールさは消し飛び、年相応の反応が現れる。
「んぐぅ!?……おぐっ!?む……無理っ……こ……壊れるぅぅぅぅ!!??」
「大丈夫だ!子供をひねり出すことができるのだからそう簡単に壊れはしない」
ダークマイトのいう通り、女性の膣は命を生み出すための性器であるため伸びるようにできている。
つまり、人為的に拡張することは可能。
だが、痛みは当然する。するに決まっている。
ちなみにフィストファックはハードなSM行為だ。興味半分で行うものではない。
愛するパートナーにそうしたプレイは正直おすすめはできない。
いくらパートナーがいいよといってくれたとしてもだ。
ほぼ間違いなく関係に歪さが生じる。
後悔してからでは遅い。
こうしたつよつよプレイは妄想だけにして控えましょう。
「は――っ、は――っ!?」
秘部を守るための愛液が滲みだし、拳を動かすたびに淫乱な音が鳴り始めていた。
気絶は許されないといわんばかりにぐりぐりと腕をさらに深く押し入れる。
激痛はりんねの意識を無理やり引き戻す。
そしてついに――
「んぅっぐぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!?????」
獣のような叫び声をあげつつ、りんねの我慢の壁が決壊した。
ブッシャアアアアアァァァァァ――
りんねの黄金水が噴水のようにまき散らされる。
ジョバジョバと飛び散る黄金水は、水溜りが出来るほどだった。
徐々に勢いがなくなると、りんねははっぁぁはっぁぁと吐息を漏らしながら放尿を終える。
「……よし!子宮内にしっかりとねじ込んだ!!」
りんねの子宮にしっかりと定着させるよう爆弾を埋め込めると、ズボッ!と腕を引き抜く。
始めこそ目を白黒とさせていたが――
意識は途切れ、頭の中は真っ白となった。
ガクリとりんねは気絶する。
「ふぅ……象徴に相応しいヒロインを手に入れた。FUFUFU、やはり次は俺だな」
自身の白濁液とりんねの黄金水で汚れた己の腕をりんねの錬金術師の服で拭く。
そして気絶したりんねの胸を揉みながらダークマイトは確信すると、ニヤリと口角を上げる。
りんねは使える。自分の個性である《錬金術》とは少し違うが、俺の同志として合格だ。
俺に対する反抗心も調教と子宮の爆弾で従わせられる。
それに”いざ”というときは子宮に仕込んだ爆弾を爆発させればいい。
こうして九堂りんねは人間爆弾とされた。
一度は希望(ヒーロー)を見出した。
バッドエンドの先に光が見えた。
だが――
九堂りんねにHappyendは訪れない。
バッドエンドの先はバッドエンドでしかない。
【エリアA-8/草原/9月2日午前6時】
【ダークマイト@僕のヒーローアカデミア】
状態:正常,
服装:オールマイトのシルバーエイジ時代のコス
装備:金の指輪と金貨@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(りんね)、浅垣灯悟のランダムアイテム×1 、ケミーカード(ザ・サン、ユニコン)@仮面ライダーガッチャード 、ハイアルケミストリング@仮面ライダーガッチャード 、ホットライン
思考
基本:象徴を引き継ぐ者として、このゲームを破壊して優勝する
01:りんねをヒロインとして引き連れる
02:象徴として参加者を導く
03:いざというとkはりんねを人間爆弾として使用する
参戦時期:本編、日本に襲来する前
備考
※本編での敗北前なので粗暴、ナルシスト、傍若無人の3つが合わさった自己顕示欲の塊かつオールマイトとは似ても似つかない全方位に迷惑しかかけていない秀逸な場違い野郎です。
※名簿のダークマイトを気に入り、名乗ることとしました。
※ルルーシュの演説は耳にしていません。
※■■爆弾を九堂りんねの子宮に深く仕込みました。ダークマイトの意思でいつでも爆破可能です。爆弾のタイムリミットはロワ終了と同じ時刻です。
■■爆弾@メタルギアソリッドシリーズ
ダークマイトに支給。
”悲運な運命を辿るパスと因縁がある爆弾。パスは二か所爆弾を体内に仕込まれる。1つは腹の中もう一つは彼女の絶対に見つからない場所”に仕込まれた。場所の名言はされていないが状況的に彼女の■■だろう。余りにも外道かつ女性の尊厳を損なうため、支給品の枠を2つ分と扱われた。
【九堂りんね@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:気絶、ダメージ(大)、処女喪失、子宮に爆弾
服装:錬金アカデミーの制服(ボロボロと汚れ)
装備:
令呪:残り三画
道具:
思考
基本:今度こそ宝太郎と一緒に戦い抜く……?????
01:……
参戦時期:冥黒王に殺害された後、意識をザ・サンへ移す直前
備考
※ ダークマイトにより処女を失い、子宮に爆弾を仕込まれました。
※ラウ・ル・クルーゼの放送と同時にNPCモンスターに襲われたため、名簿などチェックはできておりません。
※ルルーシュの通信演説も同様に耳にしていません。
NPCモンスター
ダースドラゴン@ドラゴンクエスト
竜王の城を徘徊するオレンジ色のドラゴン。
炎(ひのいき)だけでなく《ラリホー》《マホトーン》を使用することが出来る
りんねの前に現れたダースドラゴンはもしかしたら生前、勇者との戦闘に心残りがあったのかもしれない……
投下終了します。
タイトル名は↓です
1つ問おう!ヴィラン共の企みを阻止する次代の象徴には何が必要だと思うかね?そう……ヒロインだ!
s5t氏さん、真贋ロワの企画主です。
本編でも作品の投下をありがとうございます。
ただ今回かなり人を選ぶ描写があり、企画主といたしましては
仮面ライダーなどの特撮はナマモノに片足を突っ込んでいるジャンルでもあるので過激な性描写が後々問題になりかねない点
ダークマイトは間違いなく悪役であるのですが、マフィアとは言え仮にもオールマイトの後釜を名乗るからには拉致、監禁ぐらいまではしても強姦まがいの事をするかと言われると微妙なラインである点
などを鑑みまして修正をお願いしたく存じます。
諸々のボーダーを儲けず企画を進行させてしまった手前、非常に勝手なお願いだとは分かっているのですが、どうか真贋ロワの今後の為にもよろしくお願い申し上げます
企画主であるDrj5wz7hS2さん
まずは返答が遅れましたこと申し訳ありません。
いえいえ、非常に勝手なお願いとは思いません。真贋ロワの今後の方が大切でありますので。
修正の件、承知いたしました。
後半並びに後半の変更により冒頭の2点を修正いたします。
冒頭の
注意 本作品はガッチャではなくダークマイトです。
Q20.本邦初公開!なオールマイトの秘密を教えてください
女性経験
なし。を↓
苦痛には限度あれども恐怖には限度なし。
プリニウスニ世
とします。後半は次のレスでいたします。
後半ですが、462スレの
「それは……?」
「これかい?これは”■■爆弾”だよ」
「……は?」
それは……女性を著しく冒涜する爆弾であった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
↑部分から修正します。
「それは……?」
「これかい?未来の道具だそうだ」
「……は?」
それは……22世紀の未来道具であった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「拳銃……?」
(一見、普通に見えるけど、この拳銃が未来の道具?いけない……油断しては!)
一見、玩具の拳銃
だが、りんねは油断しない。
この出来事事態が、普通じゃない。ダークマイトが言うように未来の道具が支給されていてもおかしくない。
「ああ、そうともりんね」
「だが……強力すぎる故、弾丸は一発のみなのが、欠点だがね」
ダークマイトは残念そうにりんねに語りかける。
できるならここで使用したくなかったと。
そして、りんねは理解する。
よくわからないが、目の前の男は自分にその銃を使用して弾を撃ち込もうとすることに。
「……!!」
もう、言葉を交わすことさえしたくないほど、りんねはダークマイトに嫌悪感を抱く。
そして、構える。
仮面ライダーマジェードに変身するため。
だが、それよりも早くダークマイトは移動し、りんねの指を掴むと、ハイアルケミニストリングを取り上げる。
「なっ……!?」
「世界は違えど、同じ錬金術を嗜む者。”それ”に気づかないと思ったかな?」
「くっ……」
ダークマイトの個性《錬金》は、触媒を利用して物質を創造する。
不運にも、りんねが扱う錬金術に類似していた。
故にダークマイトはりんねの錬金術の源となるハイアルケミニストリングが媒介となるのを見抜いたのだ。
「それじゃあ、ショーの始まりといこうか!」
りんねは地面に組み伏せられる。
そして、銃をりんねの腹に強く押し付ける。
「痛ッ!?いや!やめて……ッ!」
(これじゃあ……避けられない!?)
服の上からとはいえ、乱暴に銃を押し付けられたことで生じた痛みにりんねは、顔を歪ませると同時に拒絶しようと体を動かすが、ダークマイトのがっしりとした筋骨隆々の拘束に抗う術はない。
「りんね。これが最後だ。俺の同志となれ。君の錬金術は必ず俺の役に立つ」
「……」
この期に及んでダークマイトはりんねを勧誘しようとする。
だが、当然ながらりんねは頷かない。
りんねはダークマイトのある言葉を聞き逃さなかった。
”俺の役に立つ”
傍若無人さがここに極まる。
どこまでもオールマイトを理解できていない男である。
ダークマイトの質問にりんねは睨みつつ無言で返す。
その反応が、りんねの答えだ。
「残念だ……りんね。最後に何か言うことはあるかね?」
念には念を。りんねを錬金で生成した光の矢で拘束しつつ最後通達で訊ねる。
「……人が、嫌がることはしない。小学生でも知ってる」
(ごめん……宝太郎)
「FUFUFU、いい回答だよりんね……っ!!!」
拘束されつつも僅かに抵抗を感じ取るが、問題なしと一気に力を込め奥までズンッと弾を打つべく引き金を引く。
九堂りんねにガーチャンコ!
――ズドン
☆彡 ☆彡 ☆彡
「――――え?」
りんねは生きていた。
正直、死を覚悟していた。
だが、これは幻覚でもない。現実。
だが――
「りんね。両手を頭の後ろに組んで立ちなさい」
「!?」
撃たれた影響は確かにあった。
「あぐぅっ……!?」
肉体の変化を感じる。
抵抗しようともできない。
ダークマイトの言う通りに両手を頭の後ろに組む
まるで、捕虜のように。
身体が染め上げられている。
九堂りんねの肉体が刻み込まれた。
「ど……どういう……こと」
(体がいうことをきかない……っ!?)
もちろん、これはダークマイトが使用した銃の効果。
りんねが決してダークマイトを受け入れているわけではない。
「FUFUFU……」
りんねの振る舞いにダークマイトは可愛いなとほくそ笑む。
「ふむ!どうやら説明書どおりのようだな!この”命れいじゅう”は!」
「っ!まさかっ―――!!」
ダークマイトが口にした命れいじゅう。
その名前から意味を悟ると、りんねの顔はみるみると蒼白へと変わる。
「FUFUFU、聡明な君なら意味は分かるだろう?」
そして、ダークマイトは聞き手を握りしめると――
「嫌っ……やめて!」
「悪いが……無理だ!」
SMAAASH!!!
「んぐぅぅぅぅぅ!?」
容赦なく、ダークマイトはりんねの腹を殴りつけた。
そして理解した。自分はこのダークマイト(男)に逆らえなくなったことに。
「どうだいりんね?生まれ変わった気分は?」
「はぁ――……はっぁ……はっぁ」
(さ……最悪!)
最悪だ。この先のことを考えると。
ふと、よぎってしまう。
こんな目に合うなら、あのとき、そのまま死ねばよかったのではと……
ううん――負けない
キッとダークマイトを睨みつける。
「いい目だ、りんね。それでこそ俺が見定めた女だ」
そう、言いながらダークマイトはりんねのツヤがある黒髪を撫でる。
植物を愛でるかのように。
連続の戦闘に洗礼として腹に受けた一撃もあり、りんねは、ガクリと意識を落とす。
「ふっ……象徴に相応しいヒロインを手に入れた。FUFUFU、やはり次は俺だな」
ダークマイトは気絶したりんねの肩を抱くと、ニヤリと口角を上げる。
りんねは使える。自分の個性である《錬金術》とは少し違うが、俺の同志として合格だ。
俺に対する反抗心もこうして眺めるのは可愛いものだ。
それに”いざ”というときは■■すればいい。
こうして九堂りんねは従う。
一度は希望(ヒーロー)を見出した。
バッドエンドの先に光が見えた。
だが――
九堂りんねにHappyendは訪れない。
バッドエンドの先はバッドエンドでしかない。
【エリアA-8/草原/9月2日午前6時】
【ダークマイト@僕のヒーローアカデミア】
状態:正常,
服装:オールマイトのシルバーエイジ時代のコス
装備:金の指輪と金貨@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(りんね)、浅垣灯悟のランダムアイテム×1 、ケミーカード(ザ・サン、ユニコン)@仮面ライダーガッチャード 、ハイアルケミストリング@仮面ライダーガッチャード 、ホットライン
思考
基本:象徴を引き継ぐ者として、このゲームを破壊して優勝する
01:りんねをヒロインとして引き連れる
02:象徴として参加者を導く
03:いざというとkはりんねを――■■する
参戦時期:本編、日本に襲来する前
備考
※本編での敗北前なので粗暴、ナルシスト、傍若無人の3つが合わさった自己顕示欲の塊かつオールマイトとは似ても似つかない全方位に迷惑しかかけていない秀逸な場違い野郎です。
※名簿のダークマイトを気に入り、名乗ることとしました。
※ルルーシュの演説は耳にしていません。
命れいじゅう@ドラえもん
ダークマイトに支給。
相手にさせたい事を命令として紙に書いたのを詰め込んだ弾丸で撃つ。撃たれた相手は意思に反してその命令通りに体が動く。 ダークマイトが書いたのは《これから先、自分の全てを捧げてダークマイトに従い尽くす》余りにも強力な秘密道具なため、支給品の枠を2つ分と扱われた。
バルド……力のみによる支配は恐怖しか生み出さないby先代ゴリーニ
【九堂りんね@映画 仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク】
状態:気絶、ダメージ(大)、この先、全てを捧げてダークマイトに従い尽くす
服装:錬金アカデミーの制服(ボロボロ)
装備:
令呪:残り三画
道具:
思考
基本:今後ダークマイトに従い尽くす。全てを捧げながら
01:……
参戦時期:冥黒王に殺害された後、意識をザ・サンへ移す直前
備考
※ 命れいじゅうの弾により、意識がある中、ダークマイトに全てを捧げて従い尽くします。
※ラウ・ル・クルーゼの放送と同時にNPCモンスターに襲われたため、名簿などチェックはできておりません。
※ルルーシュの通信演説も同様に耳にしていません。
NPCモンスター
ダースドラゴン@ドラゴンクエスト
竜王の城を徘徊するオレンジ色のドラゴン。
炎(ひのいき)だけでなく《ラリホー》《マホトーン》を使用することが出来る
りんねの前に現れたダースドラゴンはもしかしたら生前、勇者との戦闘に心残りがあったのかもしれない……
後半の展開を上記のように修正をいたしました。
ご確認お願いします。
早速ご対応ありがとうございます!
wikiでは修正後の方を採用して収録させていただきます。
今後とも、どうかよろしくお願いいたします。
激怒戦騎のドゴルドの現在地を記載していなかったため修正しました
Drj5wz7hS2さん
すみません。仕事の関係で遅くなりました。
いえいえ、こちらこそアクセル全開で申し訳ございませんでした。
修正の採用ありがとうございます。
それと、後ほど作品の誤字脱字などありましたので修正します。
サチ、鳩野ちひろ 、ニコル・アマルフィで予約します。
皆様、お疲れ様です。
遅くなりましたが、本企画での拙作の採用、ありがとうございます。
また、 ◆ytUSxp038U様も卜部・ドラえもんの予約、ありがとうございます。
自分も企画に参加したいと考え、総司令官で予約します。
1名だけですが、NPCモンスター等を出す予定です。
ギラ・ハスティー、ユフィリア・マゼンタ、朝比奈まふゆで予約します。
投下します
エリアA-12、冬地帯。
ロロは沙耶香と二人で紅茶を飲み終えた後、民家に留まる選択をした。
気温の低い外を安全に進むために、防寒用の上着を探そうとロロから提案したのだ。
「じゃあ、沙耶香は上の部屋を頼むよ」
こくりと頷いて二階へ向かう沙耶香を確認すると、ロロは密かに玄関から屋外へと出た。
家の探索は沙耶香から少しの時間だけ離れる口実で、本当の目的はクラスカードで作り出した分身を回収すること。
沙耶香を襲わせるために出した命令は「白い髪の少女を襲え」なので、まだ近くで機会をうかがっていると予想していた。
「……クソッ、どこまで行ったんだ?」
しかし、その予想に反して、周囲に分身の姿は見当たらなかった。
ロロは焦燥感に駆られた。もしも他の参加者に分身を目撃されたら?
沙耶香の信頼を勝ち取るという目論見が、露見してしまうかもしれない。
「いや、まだ大丈夫だ」
焦燥を内心へと押し込めるように、ロロは努めて冷静に思考した。
分身を目撃されることを心配するのなら、言い訳を用意しておけばいい。
策略家の兄ならば確実にそうするだろうと考えながら、ロロは民家へと戻る。
そして玄関の扉を開けたところで、二階から降りてきた沙耶香と鉢合わせた。
「どこへ行ってたの?」
「ああ、物音が聞こえたんだよ。あいにく気のせい――」
『……現在この世界の標準時刻で9月2日の午前5時15分。おはよう諸君』
(助かった……けど、もう二時間なのか)
ちょうど居間から音声が流れてきたことで、沙耶香との会話は途切れた。
思わぬ助け舟に胸をなでおろしながら、ロロは沙耶香と居間のテレビの前へと移動した。
そのままラウ・ル・クルーゼと名乗る人物による放送を見終えたロロは、内心で毒づいた。
(なにが『叛逆を目指す諸君は是非覚えておいてほしい』だ……上から目線も大概にしろ!)
軽薄な笑みを浮かべた仮面の男の言葉は、ロロの精神を逆撫でした。
その余裕綽々な態度と発言は、まるで参加者の叛逆を織り込み済みであるかのようだ。
沙耶香の前でなければ、苛立ちに任せてテレビを殴りつけていただろうとロロは自己分析する。
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』
「兄さん!」
ロロの苛立ちを抑えたのは、間隔を空けずにテレビ画面に現れた兄の姿だった。
ラウ・ル・クルーゼの放送とは異なる感情から、ロロは画面を食い入るように見つめる。
皇族の威厳を感じさせる立ち振る舞いに惚れ惚れとしながら、滔滔と紡がれる言葉をすべて頭に入れた。
そして放送が終わると、ホットラインを見つめる沙耶香にこう告げた。
「テレビ局に行こう」
ロロにとって兄のルルーシュは法にして正義である。
そのルルーシュから「テレビ局で待つ」と伝えられたのだから、自分はそれに従うのみ。
恭順を示す証こそまだ得ていないが、何かしらを道中で確保すればよい。
(そうだ。まずはテレビ局へ急がないと。
綾小路だか何だか知らないけど、兄さんを任せておけない)
忠実なる下僕だと紹介されていた綾小路清隆。あのポジションにいるべきは自分なのだ。
(兄さんのため、到着するまでにこの娘を懐柔してみせる……!)
寡黙な沙耶香の信頼を得て、都合のいい手駒にする。
それによって自分の、ひいてはルルーシュの生存確率を上げる。
「兄さんのため」と自分自身に言い聞かせると、自然と沙耶香への罪悪感は薄れていくように思えた。
○
「わかった。だけど、途中で美濃関学院に寄らせて欲しい」
ロロから「テレビ局に行こう」と言われた沙耶香は、わずかに考えてからこう答えた。
地図にある美濃関学院が、沙耶香の知る施設と同じなら、刀使で知らない者はまずいない。
それに加えて柳瀬舞衣や衛藤可奈美にとっては出身校なので、高確率で目的地にすると予想される。
そのことを沙耶香なりに説明すると、ロロは微笑んで頷いた。
「そうだね。途中で美濃関学院に寄ろう」
「うん」
提案を受け入れられて、沙耶香は安堵した。
名簿で舞衣の名前を見た瞬間、すぐにその姿が思い浮かんだ。
自分のことを、研究成果ではなく対等な人間として接してくれた友達。
すぐにでも会いたいと考えたからこそ、沙耶香にしては珍しく他者に提案したのだ。
(きっと、ロロもそう)
ルルーシュの姿を目の当たりにして、ロロは気が急いているように見えた。
ホットラインを確認するより先に荷物をまとめだしたとき、それは確信に変わる。
しかし、沙耶香はそれを制止しなかった。大切な人に会いたいのは、沙耶香も同じだから。
「よし、それじゃあ出発だ」
民家で見つけた黒いパーカーを羽織ると、沙耶香たちは外へ出た。
地図アプリを見ながら冬地帯を南下し始めると、すぐに異変を発見した。
「これ、血の痕」
「向こうの角まで続いているみたいだ」
「追いかける?」
「……うん。ただし、いざというときは戦う用意をしておいて」
ポケットから起動鍵を出して注意を促すロロに、沙耶香は頷いて返した。
舞衣の御刀である孫六兼元を握りしめる。舞衣に返すまでは、この刀に力を貸してもらう。
曲がり角の先を覗いたロロがハッと息を呑んだのを感じ取ると、沙耶香は自分もと頭を出した。
そこには、二つの人影が倒れていた。
(舞衣じゃない。知らない人だけど、あれって……?)
オレンジの髪色をした青年と、全身白色の少女。
沙耶香の関心を引いたのは後者だ。それは刀使の直感である。
(荒魂……?)
人々に災いをもたらす異形こと“荒魂”に似た雰囲気を、わずかに感じた。
そんな直感など知り得ないロロは、周囲を警戒しながら倒れている二人へと近づいていく。
(いや、そんなはずない)
沙耶香はそれを制止しようとしたものの、躊躇してしまう。
二人の容体は不明。もし人間なら、すぐに救助するべき対象だ。
ゆえに二人の側へと近づいたロロに「容体はどう?」と問いかけた。
「……」
「ロロ?」
「う、うん……近くの家に運ぼう!」
沙耶香はどこか動揺した様子のロロと共に、倒れていた二人を手近な民家に運び込んだ。
玄関から近い居間の床に毛布を並べて敷いて、そこに二人を寝かせた。
「どうすればいい?」
「身体が冷えているから、お湯とタオルを用意して欲しい。
僕は彼らの容体を見つつ、支給品で使えそうなアイテムがないか、チェックしておくよ」
ロロの指示に従い、沙耶香はやかんを火にかけて、沸騰するまでの間にタオルを探した。
その間、脳内では白色の少女のことばかり考えていた。
(人型の荒魂……そんなのいる?)
荒魂は、鳥獣や虫に近しい形を取るのが常である。
これほど人間の形に似た荒魂は、学校で教えられたことなどない。
その一方で、少女から人ならざる雰囲気を感じ取っているのも事実。
既存の知識と現在の直感、どちらを信じればいいのか。沙耶香には判断がつかない。
ピイーッ!
やかんの笛の音で、沙耶香は思考をかき消された。
まずは与えられた指示をこなそうと、タオルとやかんを居間へと運ぶ。
「二人は大丈夫そう?」
「……女の子は、しばらく休んだら大丈夫だと思う」
「“女の子は”って、それじゃあ……」
目を伏せて頷くロロ。それを見た沙耶香は、思わずタオルを落とした。
少女の隣にいるオレンジヘアの青年は、ただ寝ているだけにしか見えない。
しかし、その胸は一ミリたりとも上下していない。呼吸を停止しているのだ。
【黒崎一護@BLEACH 死亡】
「これを見て。さっき沙耶香を襲っていた鎧武者のベルト。
二人の倒れていた場所から数メートル離れて落ちていた。
たぶん、二人とも鎧武者に襲われて、痛み分けになったんだ」
「傷の具合から見ても、かなり激しい戦闘だったみたいだね。
とりわけオレンジヘアの彼は、よく持ちこたえていたと思うよ」
「彼の倒れた姿は、この子を守ろうと腕を伸ばしていたように見えた。
もともと知り合いなのか、それとも……とにかく、起きたら話を聞いてみよう」
淡淡と状況を告げるロロに、沙耶香は「そう」とだけ返した。
荒魂による被害の中で、幾人もの死傷者が出ていることは事実として知っている。
しかし、こうして救えたかもしれない人の遺体を前にして動じないほど、沙耶香は冷徹ではなかった。
少なくとも、ロロのポケットから端だけ覗いて見えたカードのことなど、とても質問する気にはなれなかった。
○
ロロ・ランペルージは、任務を一つこなした心地だった。
殺害したオレンジヘアの青年の腕を、レジスターごと切断したのだ。
暗殺者として数多くの人間を手にかけてきたロロにとっては、造作もない作業である。
(これで兄さんへの手土産は用意できた)
切り落とした腕は、毛布に包んでデイパックにしまってある。
不慮の事故で戦極ドライバーを失った代わりに、青年の支給品を手に入れた。
ルルーシュの求めていたレジスターのサンプルと合わせて、差し引きプラスだ。
(あとはこの子をどうするか。すぐに殺すと沙耶香に怪しまれる。
だけど、もし変身の解けた後の分身を見ていたとしたら、殺さないと)
分身を見られている可能性が高い以上、本来は二人とも口封じするのがベストだ。
もともとロロは倒れた二人と、落ちていた戦極ドライバーを見た時点で、口封じを実行する気でいた。
そして実際、オレンジヘアの青年については、沙耶香の前でギアスを使用して、落ちていた妙法村正で頸動脈を切り裂いた。
しかし、続けざまに少女を殺害することはできなかった。ギアスの使用時に違和感を抱いて、咄嗟にギアスを解除してしまったのだ。
(……これが“制限”なのか?)
羂索は「全員の能力に制限を課した」と説明していた。
その制限への怒りはさておき、事実として少女の口封じは失敗した。
あの場で再度ギアスを発動してしまえば、沙耶香に違和感を持たれる可能性が高かった。
そこで方針を変えて、少女を沙耶香の信頼を得る目論見に利用することにしたというわけだった。
(とにかく、この子が目覚めるまでに対処を考えておこう)
壁の時計を見ると、既にラウ・ル・クルーゼの放送から一時間近く経過していた。
横たわる少女を見つめて、ロロは息をついた。あまり悠長にはしていられないとはいえ、目覚めるタイミングは操作できない。
(まあいい……ひとまず待とう。そういえば、まだホットラインを確認していなかったっけ)
ロロは行動を急くあまり、冷静さを欠いていた己を自覚して恥じた。
そうしてようやくホットラインの名簿アプリを開いて、スクロールし始めるのだった。
【エリアA-12/南部の民家/9月2日午前7時】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:正常、罪悪感(小)、羂索たちへの殺意(大、今は冷静)
服装:アッシュフォード学園の制服(男子用)、フードパーカー
装備:零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner、ランダムアイテム×0〜2(一護)、一護の腕
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:少女(タギツヒメ)の回復を待つ間に、ホットラインを確認する。
02:もし少女(タギツヒメ)がロロの分身を目撃していたら、口封じ等の対処を行う。
03:美濃関学院に寄りつつ、兄さんのいるテレビ局へと向かう。
04:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
05:もし他の黒の騎士団や邪魔者が居れば、殺す。
06:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香最大限利用するために『兄』を演じる。その時が来たら使い捨てる。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続の書き手に一任します。
【糸見沙耶香@刀使の巫女】
状態:健康、疲労(小)
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:孫六兼元@刀使の巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:少女(タギツヒメ)の回復を待つ。
02:舞衣たちのいるかもしれない美濃関学院に寄りつつ、テレビ局へと向かう。
03:ロロのこと、多分羨ましい。
04:舞衣や可奈美と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロから少しだけコードギアス世界に関する情報を得ました。
【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(大)、疲労(極大)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)を失った悲しみ(小程度?)、リボンズへの怒り(大)
服装:いつもの服装
装備:なし
令呪:残り二画
道具:なし
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:一護を休ませれる場所を探す。出来れば我も休みたい所ではあるが…。
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……刀使も招かれていると、見た方がいいだろうな。
03:…ソランの事を我は一護に…どう伝えれば、いい…?
04:ソラン…お前のようにやれるとは思わぬが、出来る事はしてみせよう。
05:刀使とは極力会いたくない。乗ってないと言って、奴等が信じるとは思えん。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのあの異能…我にも通じるのだろうか。
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
また他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。インターバルが必要になる回数やインターバル期間は採用された場合後続にお任せします。
全体備考
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続の書き手にお任せします。
※戦極ドライバー(斬月)+メロンロックシード@仮面ライダー鎧武は破壊されました。
※一護の遺体とタギツヒメが寝かされている居間に、一護のリュック(中身:天鎖斬月@BLEACH、ホットライン)とタギツヒメのリュック(中身:妙法村正@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン)があります。
投下終了です
◆Drj5wz7hS2氏、お世話になっております。
一つ質問したいことがあります。
昨晩投下した拙作「会いたい気持」で、ロロは黒崎一護の腕を斬り落としました。
これによってレジスターは身体から離れたことになりますが、一護の遺体は残ったままでよいでしょうか?
遺体が残っている話は他にもありますが、拙作のようにレジスターと身体が離れた場合は「肉体にウイルスの鎮静剤が回らなくなり消失する」のかもしれないと思い、解釈をお聞きしたいと思います。
もし消失する場合には、描写を修正します。
また、それとは別に、拙作には描写不足や状態表の不足がありましたので、以下の追加&修正を考えています。
・沙耶香が一護の遺体を見た後に、居間から出る描写を追加
・沙耶香及びタギツヒメの状態表の修正(前者はタギツヒメへの思考、後者は気絶している点)
・全体備考に“「タギツヒメと一護に何が起きたのか、またそれを描写するかどうか」は後続にお任せします。”の一文を追加
最初にした質問の返答を頂いた後に、修正した文章を投下しようと考えています。
お手数おかけしますが、返答お待ちしてます。
◆07JJdXWj.M氏、連絡をありがとうございます。
真贋ロワの企画主です。
質問に関しましては、そもそも原作仮面ライダーエグゼイドの時点で九条貴利矢の友人の藍原がバグスターウイルスに感染している状態で交通事故で死亡した際に遺体は残っていたので、一護の首を切って殺害→その後に腕部ごとレジスターを切断というプロセスを経ているので遺体が残っていても不自然や矛盾はないと思われます。
みなさん投下乙です
>>368 の予約のキャラにリボンズ・アルマークを追加し、また予約を延長させていただきます
マジアベーゼ 梔子ユメ ジーク メラで予約します
>>493 の予約ですが マジアベーゼ→柊うてなに訂正お願いします。
イザーク・ジュール、大河くるみ、キャルの予約、延長します
>>491
返答ありがとうございます。では、一護の死体に関しては特に修正いたしません。
その上で、前述していたとおり修正させてもらいます。
>>487 >>488
以上の2レスとそのまま挿げ替える形で、修正した分を投下します。
目を伏せて頷くロロ。それを見た沙耶香は、思わずタオルを落とした。
少女の隣にいるオレンジヘアの青年は、ただ寝ているだけにしか見えない。
しかし、その胸は一ミリたりとも上下していない。呼吸を停止しているのだ。
【黒崎一護@BLEACH 死亡】
「これを見て。さっき沙耶香を襲っていた鎧武者のベルト。
二人の倒れていた場所から数メートル離れて落ちていた。
たぶん、二人とも鎧武者に襲われて、痛み分けになったんだ」
「傷の具合から見ても、かなり激しい戦闘だったみたいだね。
とりわけオレンジヘアの彼は、よく持ちこたえていたと思うよ」
「彼の倒れた姿は、この子を守ろうと腕を伸ばしていたように見えた。
もともと知り合いなのか、それとも……とにかく、起きたら話を聞いてみよう」
淡淡と状況を告げるロロに、沙耶香は「そう」とだけ返して居間を出た。
荒魂による被害の中で、幾人もの死傷者が出ていることは事実として知っている。
しかし、救えたかもしれない遺体を前にして平静を保てるほど、沙耶香は冷徹ではなかった。
ロロのポケットから端だけ覗いて見えたカードのことなんて、質問する気も起きないくらいに、動揺していた。
○
ロロは居間から出ていく沙耶香を見送ると、妙法村正で青年の腕を切断した。
数多くの人間を手にかけてきた暗殺者のロロにしてみれば、造作もない作業である。
(よし、兄さんへの手土産は用意できた)
切断した青年の腕を、毛布に包んでリュックにしまう。
これでルルーシュの求めていた、レジスターのサンプルは確保できた。
戦極ドライバーを破壊された代わりに青年の支給品を手に入れて、差し引きはプラスだ。
(あとはこの子だけど、すぐに殺すと沙耶香に怪しまれるか。
だけど、もし変身の解けた後の分身を見ていたのなら、殺さないと)
分身を見られている可能性がある以上、本来は二人とも口封じするのがベストだ。
もともとロロは倒れた二人と、落ちていたクラスカード及び戦極ドライバーを見た時点で、そう判断していた。
そして実際、オレンジヘアの青年については、沙耶香の前でギアスを使用して、落ちていた妙法村正で頸動脈を切り裂いた。
しかし、続けざまに少女を殺すことは叶わなかった。
ギアスの使用時に違和感を抱いて、咄嗟にギアスを解除してしまったのだ。
(……あれが“制限”なのか?)
羂索は「全員の能力に制限を課した」と説明していた。
その対象となる能力には、ロロのギアスも含まれていたということだ。
制限されたことへの怒りはさておき、事実として少女の口封じは失敗した。
あの場で再度ギアスを発動してしまえば、沙耶香に違和感を持たれる可能性が高かった。
そこで方針を変えて、沙耶香の信頼を得る目論見に、少女を利用することにしたのである。
(とにかく、この子が目覚めるまでに対処を考えておこう)
壁の時計を見ると、既にラウ・ル・クルーゼの放送から一時間近く経過していた。
あまり悠長にはしていられない。その一方で、少女の目覚めるタイミングまでは操作できない。
横たわる少女を見つめて、ロロは溜息をついた。
(……ひとまず待とう。そういえば、まだホットラインを確認していなかったっけ)
ロロは、行動を急くあまり冷静さを欠いていた己を自覚して恥じた。
そうしてようやくホットラインの名簿アプリを開いて、スクロールし始めるのだった。
【エリアA-12/南部/9月2日午前7時】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:正常、罪悪感(小)、羂索たちへの殺意(大)
服装:アッシュフォード学園の制服(男子用)、フードパーカー
装備:零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner、ランダムアイテム×0〜2(一護)、一護の腕
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:少女(タギツヒメ)の回復を待つ間に、ホットラインを確認する。
02:もし少女(タギツヒメ)が分身を目撃していたら、口封じ等の対処を行う。
03:美濃関学院に寄りつつ、兄さんのいるテレビ局へと向かう。
04:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
05:もし他の黒の騎士団や邪魔者が居れば、殺す。
06:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。その時が来たら使い捨てる。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続にお任せします。
【糸見沙耶香@刀使の巫女】
状態:健康、疲労(小)、動揺
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:孫六兼元@刀使の巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:少女(タギツヒメ)の回復を待つ。もしかして、荒魂……?
02:舞衣たちのいるかもしれない美濃関学院に寄りつつ、テレビ局へと向かう。
03:ロロのこと、多分羨ましい。
04:舞衣や可奈美と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロから少しだけコードギアス世界に関する情報を得ました。
【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:気絶、ダメージ(大)、疲労(極大)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)を失った悲しみ(小程度?)、リボンズへの怒り(大)
服装:いつもの服装
装備:なし
令呪:残り二画
道具:なし
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:(気絶中)
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……刀使も招かれていると、見た方がいいだろうな。
03:…ソランの事を我は一護に…どう伝えれば、いい…?
04:ソラン…お前のようにやれるとは思わぬが、出来る事はしてみせよう。
05:刀使とは極力会いたくない。乗ってないと言って、奴等が信じるとは思えん。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのあの異能…我にも通じるのだろうか。
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
また他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。インターバルが必要になる回数やインターバル期間は採用された場合後続にお任せします。
全体備考
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。
※戦極ドライバー(斬月)+メロンロックシード@仮面ライダー鎧武は破壊されました。
※一護の遺体とタギツヒメが寝かされている居間に、一護のリュック(中身:天鎖斬月@BLEACH、ホットライン)とタギツヒメのリュック(中身:妙法村正@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン)があります。
※「タギツヒメと一護に何が起きたのか、またそれを描写するかどうか」は後続にお任せします。
修正は以上です。お手数おかけしました!
今後もますますの盛り上がりを祈っております。
修正版の投下、ありがとうございました。
私も投下します。
タイトルは 回り道こそ最短の道かもしれない です
〇
「どいつもこちつも頭イカレてんじゃないの?」
美食殿の一員にして悪辣極まるバトルロワイヤルの参加者の一人にされてしまった猫獣人の少女、キャルは落ち着いて解禁される情報を確認しようと考え、最初にグリムバーストをぶっ放してしまった場所からそれなりに離れた民家にとどまっていた。
朝食でも済ませながらホットラインを眺めようと考えていたのだが、テレビに立て続けに流れた映像に思わず毒を吐く。
最初に梔子ユメの代打で出て来たラウ・ル・クルーゼはまだ分かる。
今確認した名簿に梔子ユメの名前があったことからも、大方実際に表舞台に出てきてプレイヤーを嬲りたくなったから進行役が変わったんだろう。
だが次いで出て来たるルルーシュという男は本当に分からない。
「あんなん自分とアヤノコウジだけで他の全員に喧嘩吹っ掛けるようなもんじゃない。
しかも、あいつの魔法の種も割れてるし」
今回の通信魔法越しに何もしてこなかった当たり、有効射程距離は特別長くない。
さらに言えば命令は肉声で伝えなければならないみたいな条件もあるのかもしれない。
(でもって一人称変えろみたいなどうでもいい命令は問題なさそうだけど、態々魔法使わないでああやって物で釣って自分の軍団整えようとしてる辺り、『死ね』とか『従え』みたいなあんまりにも直接的に自分の利益に直結するような命令も無理っぽいわよね)
近づくな、声を聴くな。
ここまで自分の能力を開示してなおあの余裕、綾小路清隆は奇妙なベルトで仮面ライダーなる戦士に変身していたが、ルルーシュのベルトも同じような機能があり、尚且つ綾小路の001以上の戦士に変身できるということなのだろうか?
「そうじゃなかったらマジで面だけのスかしたアホね」
『ホパ?』
なんて考えていると、上着のポケットにしまったケミーカードがもぞもぞと動いてホッパー1が顔を出す。
「ちょ、ちょっと!くすぐったいから急に動くな!」
『ホパホ……ホッパー!』
ホッパー1はケミーカードのまま飛び出ると、ドアのスキマを通って外に出て行ったしまった。
「あんの怪物バッタッ……待ちなさい!」
ケミーライザーを装備しながら飛び出すと、ホッパー1は本物の飛蝗のようにカードごとぴょんぴょん跳ねながら移動していた。
「あーもー、アンタら止めなさいよ!」
手元に残ったまんまの3枚のカードの中からスケボーズのカードを選んでセットする。
<ケミーライズ!スケボーズ>
ビークル属性のレベルナンバー2、スケボーズが実体化する。
キャルはその背中に乗るとすぐさまケミーライザーのモードを切り替える。
<サーチモード!>
「追いかけて!」
『スケボーズ!』
キャルを乗せたスケボーズはホッパー1を追って走り出した。
〇
「あのルルーシュという男のことはひとまず置いておくとして、クルーゼ隊長……なぜ?」
量産型ヴァルバラドの仮面越しで直接その表情をうかがうことはできないが、困惑と怒りの入り混じった複雑な顔をしていることぐらい声で分かる。
かつてはクルーゼの指揮下の一人であったイザーク・ジュールと、そんなイザークに助けられたロボット大好き女子高生にして元アイドルの大河くるみは先刻NPCモンスターの残骸を組み上げて完成させたロボット、CODE:01と共に居た。
屋内ではなく武装して野外に居るのは、CODE:01の太陽電池の充電を待つ為である。
「知り合いなの?」
「俺は元々クルーゼ隊に所属していた。
色は違うが、この軍服だって同じデザインだろ?」
そう言ってイザークは鉄鋼を解除した。
確かに言われてみればクルーゼの着ている軍服の白い部分を赤色に変えたらイザークが今着ている軍服になるだろう。
「なんか、最初に脳味噌むき出しにしてた梔子って人は自分は偽物、みたいなこと言ってたけど……」
「見る限り立ち振る舞いは俺の知るクルーゼ隊長その物だ。
つまりどんな理由があるかは知らんが、あの人は自らの意志でケンジャクに協力しているっ!
自らの意志で……ニコルを、戦死したはずの部下を!俺たちの戦友を弄んでいる!
お前けに一度軍を抜けているディアッカは兎も角アスランやラクス様まで!」
クルーゼの演説を自分のホットラインで確認しながら、イザークは公開された情報もくるみのホットラインを使って確認していた。
本名で載っていない参加者もいると前置きされてはいたし、いけ好かない隊長殿だったアスラン・ザラの名前が二つもある(しかも片方は最後に?がついている。?はこっちの台詞である)など不自然な部分は最初からあったが、イザークが一番驚き怒ったのが死んだはずの戦友、ニコル・アマルフィの名前が載っていたことだ。
「もし、このニコルがクチナシのように外側だけの利用されている状態にあると言うなら!
俺は、俺はクルーゼ隊長と言えど許せないっ!
それにそもそもこんな野蛮な催しに加担するなど軍法会議物だ!」
ルルーシュ個人の事はほぼ知らないので態々100人以上を敵に回してなお尊大な阿呆か、何か考えや狙いがあってあんなパフォーマンスをした鬼才かは知らない。
だが、ラウ・ル・クルーゼは時に命すら預けた指揮官でパイロット。
裏切られた怒りが先走っているのもあるが、人となりをある程度知っていると思っていただけにショックは大きい。
その勢いのまま、イザークはガン!とそこにあった電柱に量産型ヴァルバラッシャーを叩きつける。
だがイザークはビクッ!と震え上がるくるみを観てすぐに冷静さを取り戻した。
「すまん。取り乱した」
「ううん、大丈夫。
私も、皆がどこかで危ない目にあってるかもって思うと、冷静じゃないし」
「確かお前の所は3人だったか?」
東ゆう、華鳥蘭子、亀井美嘉。
色々あったし、今はぎくしゃくしてしまってるけど、出会えたお陰で広い世界を観ることが出来た大切な友達だ。
死んだらきっと二週間は泣き暮らすと思う。
「イチローが起きたらどうしたらいいと思う?」
「そうだな……ディアッカたちが行きそうな場所に当てはないし、テレビ局だな」
「え?ルルーシュって人の仲間になりに行くの?」
「いいや。
いくらクルーゼ隊長たちに反発する側とは言え、あんな暴君は願い下げってのが普通だろう。
だがルルーシュに反発する連中も今の奴の居城がどんな物か気になりはするだ。
偵察に着た連中と接触して、可能なら反ゲーム派として協力したい」
なるほど、確かにあれだけのパフォーマンスを行っておいて完全に無視する者は放送を聞き逃した者以外そう居ないだろう。
ただでさえルルーシュは他人に命令を聞かせる異能力を披露しているのだから、人によっては最初から警戒対象でもある。
『太陽エネルギー、充電完了。
CODE:01、起動します』
そんなことを話し合っていると、耳なじみのない電子合成の声がする。
ゲーム開始から二時間が経過し、夜明けを迎えたことによりついに太陽電池で動く01が動き出した。
修理した上でキカイソダテールを投与したとは言え、どう動くか分からない。
量産型ヴァルバラッシャーを構え、いつでも戦える状態になるイザーク。
くるみはその後ろの少し離れた場所に位置取り様子をうかがる。
01は目の前のイザークではなくその奥のくるみを見つめ、
『造物主(マスター)、ご命令を。
当機は貴女に従います』
「……一応、大丈夫そうだが?」
敵対行動を取りすぎてまた銃を向けられては困ると思ったイザークは武器を降ろした。
「う、うん。
えっと、どこか身体におかしなところはない?」
少しおっかなっビックリではあるが、くるみもイザークと01の方に近寄って行った。
『修復された機能に問題はありません。
増量されたナノスキン、増設スラスターも理論上問題なく使用可能です。
次のご命令を』
「……なんだか調子の狂う喋り方だな。
おい!もっと普通にしゃべれないのか?」
『会話データが不足しています。
その要望を叶えるためには更なる会話によるラーニングが必要です』
「つまり会話を続けて行けば少しはマシになると?」
『肯定します』
「じゃあまずその肯定しますってのを辞めろ。
そんな返事する奴今日日軍隊でも居ないぞ。
せめて了解とか承知とかにしておけ」
『了解しました』
頭空っぽのロボットと会話するなど初めての経験だが、悪くない滑り出しなのではないだろうか?
だが口調は固いし、フレンドリーとも言えない気がする。
くるみはもう少し、踏み込んでみることにした。
「ねえ、一個良いかな?
あなたの名前なんだけど……」
「名前?01じゃないのか?」
「それじゃあ他のNPCと区別できないじゃん。
さっきルルーシュって人の部下も001って呼ばれてたし。
安直なんだけどさ、イチローなんてどうかな?」
「イチロー?」
「ちょっとペットみたいだし、嫌だったら別の呼び名とか考えるけど……」
『了解しました。
当機はこれより識別固有名を「イチロー」と定義します』
「いいのか?」
『造物主の決定に依存はありません。
また、固有の名称を定義しておくことは団体行動において合理的でもあります』
「よろしくイチロー!私は大河くるみ!
こっちが……」
「イザーク・ジュールだ」
『了解しました。
以後、お二人を「大河くるみ」「イザーク・ジュール」と呼称します』
「イザークでいい」
「私もくるみでいいよ」
『了解しました。以後、お二人を……』
「いちいち言わんでも分かる事を言わんでいい!
ったく!まああの無口共よりかは幾分マシだが……」
俺はこの先このロボットの育児とクルミの護衛を同時にこなさなければならないのか?
と、イザークが少し遠い眼をした瞬間だった。
『警告。こちらに接近する人影を確認。
回避、又は隠れてやり過ごすことを推奨します』
「人影?」
イチローが視線を向けている方を振り向くと、確かに何かが近づいてきていた。
だが、何かが変だ。
ハ〇ー・ポッターにでも出てきそうなマントチックな学生服という恰好には、まあ目をつぶるとして動きが妙なのだ。
(走っていないように見えるが乗り物に乗ってるふうでもないな?)
強いて近い状態をあげるならスケートボードだが、それにしたって一度も地面を蹴っていないというのはおかしい。
なにか特殊な支給品でも渡されているのだろうか?
「クルミ、下がっていろ。
俺とイチローで対処する」
そう言うとイザークは量産型ヴァルバラッシャーのスロットを開く。
イチローも右手首を折り畳んで腕部マシンガンの銃口を露出させる。
基になった量産型01は手首事パージさせないと使えなかったが、くるみによる修理の際に180度折り曲げることでいちいち後から手首を回収しなくてもいい様に改造したのだ。
「!」
向こうもこちらの存在に気づいたらしく、乗っていた変なスケートボードを降りる。
『ホッパー!』
そして小さすぎて近づくまでイザークたちには気付けなかったが、妙なボードの少女は勝手に動くカードを追いかけていたようだった。
「こいつは……」
思わずイザークはいつでも鉄鋼出来る様に持っていたレプリケミーカードと見比べる。
「あれ?あんたも似たようなの持ってるわね」
<ケミーイン!>
スケートボードの少女は左手に持っていた奇妙な機械を操作してスケートボードをカードに収納した。
「あんた、あたしをこいつらのところに連れてきたかったの?」
『ホパホー』
ぴょん、とカードの身体で器用に飛び上がったホッパー1が少女の、キャルの手元に戻る。
「……出会い頭に悪いんだけどさ、あんたの服、クルーゼって仮面野郎のに似てない?
そっちの二色塗はNPCっぽいし、もしかしてだけどあんたクルーゼの手下?」
ケミーライザーからスケボーズのカードを抜き取り、かわってアッパレブシドーのカードを装填する。
イザークも鉄鋼しようか一瞬迷ったが、逆にカードを収納すると
「……かつて指揮下にあったことは確かだし、軍人である以上命令に従い人を殺したこともある。
だが、誓ってこんな悪趣味な催しに加担したことはない」
ろ、宣言した。
しばらくはイザークのスカーフェイスとイチローの顔を見つめていたキャルだったが、ホッパー1をポケットにしまってケミーライザーのグリップを折り畳む。
「いいわ、こいつらもマルガムになってないし信じてあげる。
あたしはキャル。
アンブローズ魔法学園が誇る優秀な魔法使いよ」
そう言ってキャルは誇らしげに制服の校章を指さした。
「ほう、奇遇だな。
俺はイザーク・ジュール。
ザフト軍士官学校を次席卒業し、赤服を着る栄誉を許されたエリートだ」
「赤服?」
「ザフト軍には階級がない。
立場は色で表され、緑、赤、黒、白の順になる」
「じゃああの仮面野郎は一応限りなく偉いのね」
「白服を穢したツケは必ず払ってもらうさ。
で、こっちのザフト軍だったらイマイチ立場の分からない色合いをしてるのがイチローだ」
『当機は個体識別名「イチロー」と申します。
こちらが我が造物主のくるみです』
「大河くるみ、よろしくね」
「クルミね、よろしく」
〇
変な奴らに出くわした。
というのがキャルの正直な感想だった。
同い年ぐらいの袖がだぼだぼのだらしないカッコの奴にスカーフェイスの赤づくめ。
そして正中線から右を赤、左を青に塗り分けたカラクリ人形。
いったい何の因果で結びついたトリオなのだろう?
(ま、美食殿も他人のこと言えないけど)
幸か不幸か、キャルにとって直接の知り合いはシェフィしか呼ばれていない。
シェフィとの共通点は美食殿で同じ14歳ということ程度だが、何か意味があるのだろうか?
(それにしても、ナチュラルにコーディネイターか。
ランドソルの人族と獣人族の問題の焼き直しみたいなこと、星の向こうに行ってまでやってんのね)
いい意味で島村卯月たちや菜月昴たちと分かり合えた経験もあるキャルだが、悪い意味の話を聞いても住んでる世界は違ってもヒトの本質なんてそう変わるモノではないのではないか?と、思えてくる。
「ねえキャル」
「どうしたの、クルミ」
「キャルって、魔法使いなんだよね?」
「ええ。あんたの世界には居ないみたいだけど。それがどうしたの?」
「魔法って、あんなことできるの?」
そう言ってくるみが指さす先を見ると、進行方向であるエリアF-7が黒いドームに覆われていた。
ドームは徐々に収縮していき、見えなくなっていく。
「できなくはないと思うけど、ここからじゃ何が起こってるか分かんないわね」
「ならば最悪を想定するべきだろうな。
キャル、お前が今まで出会った魔法使いの中に、さっきのドームぐらいの範囲を破壊できる魔法はあるか?」
「あるわ。
陛下の魔法なら、時間はかかっても出来るはず」
「よし、ならあのドームの下手人、そしてドームに追い散らされたNPCや危険な参加者を避けて空から行くぞ。
出来れば発電所にもよりたかったが、アビドス砂漠の方の橋を使ってテレビ局を目指す。
イチロー、人ひとり抱えたまま飛べるか?」
『増加スラスターの理論出力に問題はありません』
「キャル、自前で飛べるか?」
「当たり前よ」
「良し、行くぞ!」
『TUNE UP! GEKIOCOPTER!』
量産型ヴァルバラドレプリゲキオコプターカスタムに鉄鋼したイザークを先頭にキャル、イチローに背負われたくるみと続く。
慎重を期したその判断は正しかったのか?
それは、闇檻の魔女の気分次第だろう。
【エリアF-10/住宅街/9月2日午前6時】
【イザーク・ジュール@機動戦士ガンダムSEED】
状態:健康、顔に大きな傷跡、量産型ヴァルバラドに鉄鋼中
服装:ザフトの赤服
装備:量産型ヴァルバラッシャー@仮面ライダーガッチャード
レプリケミーカード(マッドウィール、ゲキオコプター)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いから脱出する。
01:死んだ部下を弄び、こんな殺し合いに加担して白服を穢したクルーゼ隊長は許せない。
02:クルミたちと共にテレビ局を目指し、反ルルーシュ派のゲームにのってない連中と合流する。
地球連合の連中が居るなら出方次第だが協力してやらんこともない。
03:ニコル……お前がもしクチナシのように体を利用されてるだけだとすれば俺は!
04:この武器といいクルミの手袋といい、かなり良い物だなな。
持ち帰って我がザフト軍で使えないか?
05:アスラン、ラクス様……ディアッカ。死ぬなよ
06:なぜアスランやキラとか言う奴の名前が二つも?
07:俺はこのロボットとクルミの御守をしながら行かなきゃならんのか?
08:あの黒いドーム……避けた方がよさそうだな。
参戦時期:第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦でディアッカと再会した後
備考
※量産型ヴァルバラッシャーは錬金術師でなくともある程度以上の戦闘技能があれば誰でも使えるようです。
※『トラぺジウム』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』に関する知識を得ました。
※ニコルが羂索のような何者かに死体を利用されているだけの可能性を考慮しています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
具体的に何が起こった釜では分かっていません。
【大河くるみ@トラぺジウム】
状態:健康、不安(大)、イチローに背負われている。
服装:いつもの私服
装備:技術手袋@ドラえもん
キカイソダテール(残り4/5回)@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:死にたくはない。
01:怖いけど、何もしない訳にはいかない。
02:イザーク、イチロー、キャルと一緒に行く。
03:みんなにはどうか無事でいて欲しい。
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※01をイチローと名付けました。
イチローが今後どのように変化していくか、キカイソダテールを投与されてどうなるかなどは後の書き手様にお任せします。
現時点では少なくとも本来なかった発声機能、会話機能を習得しています。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『プリンセスコネクト!Re:DIVE』に関する知識を得ました。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
具体的に何が起こった釜では分かっていません。
【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
状態:健康
服装:アンブローズ魔法学園の制服(女子生徒用)
装備:ブラスティングスタッフ@オーバーロード
令呪:残り三画
道具:ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード
ライドケミーカード(ホッパー1、スチームライナー、スケボーズ、アッパレブシドー)@仮面ライダーガッチャード
ホットライン
思考
基本:このゲームをぶっ潰すわよ!
01:誕生日ケーキとか嫌がらせでしょ。
あいつらからだったら、まあ悪くなかったでしょうけど
02:イザークたちと協力する。
03:反ルルーシュ派の連中と合流するためにテレビ局を目指す。
04:シェフィ、無事でいなさいよ
05:
参戦時期:少なくともシェフィが仲間になった後
備考
※令呪を使用することでプリンセスフォームやオーバーロードの力を99.9秒間だけ使う事が出来ます。
※少なくともウィザーディング・アオハル・デイズ〜魔法学園と奇跡の鐘〜、デレマスコラボイベント、リゼロコラボイベント第一弾は経験済みです。
※『機動戦士ガンダムSEED』、『トラぺジウム』に関する知識を得ました。
※名簿の梔子ユメを羂索のことだと勘違いしています。
※ノワルがエリアF-7を更地にするのを遠目に目撃しました。
具体的に何が起こった釜では分かっていません。
投下終了です。
伏黒、龍園、十条予約します
予約を延長願います。
本編未登場キャラまとめ
★は予約されているキャラ
○は予約されていないキャラ
間違いあったらスマソ
★キラ・ヤマト/○ディアッカ・エルスマン/★ニコル・アマルフィ/○キラ・ヤマト准将/○アスラン・ザラ/★ラクス・クライン
○アスナ/★サチ/○リーファ/★シノン/★レン/○ユージオ/★PoH
★伏黒甚爾/○レジィ・スター
★仮面ライダーガッチャード(一ノ瀬宝太郎)/○冥黒王ギギスト/★浅倉威/★大道克己/○チェイス/○パラド/○グラファイト/★メラ/○仮面ライダーゼイン
○小鳥遊ホシノ/★黒見セリカ/★梔子ユメ/○鬼方カヨコ/★聖園ミカ
○二代目ゼロ(シャーリー)/★卜部巧雪/○マーヤ・ディゼル/★枢木スザク
★龍園翔/○一之瀬帆波
○柳瀬舞衣/★十条姫和/★柊篝
○切島鋭児郎(烈怒頼雄斗)/○赤黒血染(ステイン)
★東ゆう/★華鳥蘭子/★亀井美嘉
○キズナレッド/○キズナブラック
○藤丸立香/○マシュ・キリエライト/★アルジュナ・オルタ
★柊うてな/○天川薫子
○邪樹右龍/○繰田孔富
○やみのせんし
○纏流子/○満艦飾マコ/○鬼龍院裸暁
★ザギ/○バルバトス・ゲーティア
★リボンズ・アルマーク
★ギラ・ハスティー/○宇蟲王ギラ
○立風館ソウジ/○空蝉丸
○道外流牙
○小宮果穂
○遊城十代/★覇王十代
★朝比奈まふゆ/○望月穂波
★藤乃代葉/○夜島学郎
★ドラえもん/★総司令官
○マリヤ・ミハイロヴナ・九条
★ディーヴァ
○秋山小兵衛
○セレブロ
★鳩野ちひろ
○アスラン・ザラ?
★ユフィリア・マゼンタ
○ビルツ・デュナン
○エンヴィー
○マクギリス・ファリド
○柊真昼
★ジーク
○井ノ上たきな
○星野瑠美衣
投下します
「一体なんなの!?あのルルーシュって人は!!」
電化製品店に置かれたTVの放送を見てレンは
ルルーシュの力を誇示した横暴な振る舞いに怒りを覚えた。
「仲間になりたければ仮面ライダーの首を持って来いだなんて、これはゲームじゃないんだよ……」
GGOでのレンは『ピンクの悪魔』と呼ばれ恐れられる程のPKプレイヤーである。
だけどそれはゲーム世界での話だ。
現実で人を殺すだなんて恐ろしいことなんて出来るわけが無い。
ルルーシュの演説を聞いたレンは彼に従う選択肢をすぐに放棄した。
むしろ、それとは真逆に争わない為の協力者を探す意識が更に強まった。
「とにかく、急いで味方を増やさないと」
名簿リストにはレンの知り合いは一人もいなかった。
ピトさんやエムさんが巻き込まれずに済んだのは不幸中の幸い。
だけど逆に言えば頼れる知り合いが誰もいない状況。
「ソードアート・オンライン事件、まさか私まで似たような事件に巻き込まれるなんて」
殺されるなんてごめんだし、殺すのもごめん。
そして自分以外が殺されるのも真っ平ごめんだ。
決意を固めたレンは高速で走り出す。
持ち味の脚力を活かして猛スピードで会場内を駆け抜けるのだった。
◇
「そんな……そんなことって……」
道端で放置されている渋井丸拓男と葉多平ツネキチの遺体を発見したのは
走り出してから、わずか5分後のことだった。
既に各エリアで殺し合いが始まってる事実を否応にも分からされる。
遺体は二つ、二人とも男で死因は両方とも刃物で喉を切り裂かれていた。
明らかに同一人物による犯行だった。
(遅かった?間に合わなかった?)
もし自分がもっと早く向かっていれば二人は死なずに済んだのか?と自負の念がレンの心を蝕む。
そんな彼女に現状を後悔する時間など与えてはくれない。
何故なら彼女の身にも危険がすぐそこまで迫っているのだから。
「なんだァ、またガキか」
「あなたは……」
蛇柄のジャケットを着た人相の悪い男、浅倉威がレンの前に現れた。
浅倉はレンの瞳や手に持っている銃を見つめてニヤリと笑う。
「ガキにしてはいい目をしているな。それなりに楽しめそうだ」
彼女の瞳からこの殺し合いを抗おうとする強い意思を感じ取れた浅倉は
レンを次の標的として目を付けた。
「……もしかして、あなたがこの二人を?」
「知らねえな、ここには今来た所だ」
浅倉は否定するが真偽はともかく、その剥き出しの殺意はとても穏やかではない。
レンは臨戦態勢を取って浅倉を警戒する。
「ハハハハハッ!!ガキの癖に闘い慣れしてるようだな」
「さっきからガキ、ガキって私にはレンという名前があります!」
「レン?レンだと……」
「そうですけど、何か?」
「ああ、レンと言えば俺の知り合いを思い出すぜ」
ここに来る前に行われてたライダーバトルには秋山蓮という名の装着者が参加していた。
似た名前の参加者が存在してる偶然の一致に浅倉は懐かしむ様に笑みを浮かべる。
「仲が良かったんですか?」
「ああ、とても仲良しだったぜ。殺し合うほどになァ!変身!」
「ッ!?」
ポケットから龍騎のカードデッキを取り出した浅倉は
カーブミラーにデッキを翳し、その姿を仮面ライダー龍騎へと変身させた。
(これってルルーシュが言ってた仮面ライダー!?)
ルルーシュの放送で流れた仮面ライダーの存在を思い出す。
NPCを容易く屠る仮面ライダーの強さを思い出し、龍騎へ銃口を向ける。
「あなたも仮面ライダーだったんですね!」
「ああ、ライダーはいいぜェ、戦えばイライラが消える!」
『SWORD VENT』
カードをバイザーに装填し、ドラグセイバーを装備すると
レンに向かって龍騎は駆け出した。
「くっ!」
殺し合いなんてしたくなかった。
ゲームの中だから、誰も死なない仮想世界だからこそ楽しく引き金を引けた。
でも、この世界でキルされた人間は現実で死ぬことになる。
人を殺せば殺人の十字架を背負うんだ。
命の重さがレンの引き金を引く力を鈍らせた。
「ハァッ!」
龍騎がドラグセイバーを振り下ろす。
レンは後方に飛ぶことで斬撃を避ける。
「痛っ」
レンの柔らかな頬にドラグセイバーの先端を掠めた。
かすり傷だが、その痛みは現実と何も変わらない同じ痛みだった。
もし、今の斬撃で胴体を切り裂かれたらと思うと、その痛みは計り知れない。
(ここで死んだら、本当に死んじゃう)
GGOとは違う命のやり取り。
死への不安と恐怖がレンの足を竦ませる。
「どうしたァ?遠慮無く撃ってこい。俺を楽しませろォ!!」
「うわぁぁぁぁっ!!」
P90の弾丸が龍騎へ向かってバラ撒かれる。
恐怖に駆られて放たれた弾丸の狙いは正確ではなく龍騎から外れ、明後日の方向へ飛んでいく。
「ハハハハハ!!どこを狙っている、もっとよく狙え!」
普段通りの調子が出ない。
怖いんだ。
今まで普通に生きてきた私が初めて体験する殺し合い。
GGOとはここまで感覚が違うんだ。
(一旦落ち着かないと、今は距離を取りながらって、え?)
引き撃ちの要領で龍騎から下がりながら銃弾を撃ち続けた時だった。
龍騎は何かを拾い上げて、それを盾に使った。
(それって……まさか!)
それは第一回スクワットジャムに参加した際にもレンが使った手だった。
破壊不可能オブジェクトとなる性質を利用し盾として利用した戦法。
「近くにあったから使わせてもらうぜ」
「なんてことを!」
渋井丸拓男の遺体を盾代わりに利用し、銃弾を受け止めさせていた。
レンが利用したのはあくまでアバターである。
それを現実の死体でも同じ様に用いようなどとは考えても実行できる筈がない。
「フンッ」
龍騎は勢いよく振りかぶり
銃弾で穴だらけになったシブタクの死体をレンに向かって投げつけた。
「キャア!!」
予想だにしない行動の数々にレンは回避するのが遅れてシブタクの遺体と衝突した。
遺体がレンの体に覆い被さるように倒れる。
「ひぃっ」
銃弾を何度も浴び続け、穴だらけになったシブタクの顔がレンの視界に入り、短い悲鳴を上げる。
それも束の間、シブタクの背後でレンに向かって跳躍する龍騎が迫っていた。
「危ない!」
地面を転がって回避運動を取るレン。
それとほぼ同時にレンのいた場所を龍騎が斬りつけ
シブタクの胴体が右肩から左腰にかけて斜めに両断される。
「中々すばしっこいじゃねえか。面白ぇ」
「何が面白いっていうの!あんたのやっていることはただの人殺しよ!」
「だから面白いんだ。殺すか殺されるかの闘い、これほど楽しめることはない」
「あんた……イカれてるよ!!」
一つ、分かったことがあった。
目の前にいる男はピトさんよりずっとイカれてる人間だった。
こんな人を相手に躊躇なんてしたら駄目だ。
「ククッ、ようやく本気でやる気になったか」
「悪いけど、あんたには少し、痛い目に遭ってもらうから」
「ほう、やれるものなら……やってみろォ!」
シブタクの頭を掴んた龍騎は切断された上半身をレンに向かって投げつける。
(また死体をそんな事に使って!!)
姿勢を低くしたレンは飛んでくるシブタクの上半身をくぐって回避する。
切断面から溢れるシブタクの血がレンの体にかかり
デザートピンクの迷彩服の一部を赤く染めるも意に介さず龍騎へ接近する。
(今までの闘いで分かった事がある。スピードならあのライダーよりも私の方が上。それなら)
「いいぞ。俺を殺しに来い!」
高笑いと共に放たれるドラグセイバーの斬撃を寸前の所で回避行動を取って躱すレン。
まるで一瞬でレンが消えたかのような錯覚に龍騎は陥る。
「ぬおっ!?」
龍騎の背後から大量の火花が散らされる。
ドラグセイバーを躱し、龍騎の背後を取ったレンが至近距離で龍騎の背中に銃弾を浴びせたのだ。
P90の銃弾では龍騎に致命傷を与えられないのは理解した。
だけども無傷という訳ではない。
シブタクを盾にしたこともあり、僅かながらでもダメージは蓄積している。
ならば接近して一気に銃弾を撃ち込めば仮面ライダー相手でも勝利することは出来るはず。
「貴様ァ!」
龍騎が振り返りざまに斬撃を放つも、動きに合わせてレンも回避行動を取り
更に銃撃を龍騎へと浴びせ続ける。
(見た目通りで流石に硬い、だけど繰り返し撃ち続ければそのうち力尽きるはず!)
「ぐぅぅ……フフフフフ、俺をここまで手こずらせるとはやるじゃないか」
「降参するなら今の内だよ」
「もっともっと楽しもうぜ。今度は俺の番だ」
そう言うと浅倉は目の前にあったファミリーレストランの窓に向かって駆け出して跳躍した。
レストランの室内へと逃げ込むのかと考えたレンは後を追う。
すると龍騎の体が窓ガラスの中に沈み込んで消えていった。
「嘘?どうして?」
まるで童話の世界みたいな状況にレンは呆気に取られる。
キィーン…… キィーン……
「なんなの、この音……」
突如、レンの脳内に響き渡る金属音のような音の耳鳴り。
それと同時に別の窓で反射された景色に映り込む龍騎の姿を見つけた。
「はぁっ」
それと同時にその窓ガラスから龍騎が飛び出し、レンに襲いかかる。
予想外の場所から出現した龍騎の攻撃にレンの対応が遅れる。
「あぐぅっ」
ドラグセイバーの斬撃で左肩が切り裂かれ、傷口から鮮血が垂れ落ちる。
すぐさま反撃に転じ、P90で応戦するも再び窓ガラスへと飛び込む。
「このぉぉぉぉ!!」
レストランの窓ガラスを片っ端から撃ち抜き、細かく砕く。
そして周辺の建物にあるガラスに対しても撃ち続け、破壊し続けた。
(原理はよく分からないけど、ガラスの中を移動しているならこれで行動を制限出来ると思う)
『ハハハハハ!!この辺り全てのガラスでも破壊してみるか?』
「細かく砕いた窓からは出てこられないんだね」
『フフフフフ、それを知ったところでお前にはどうすることも出来まい』
ガラスの破片越しでレンに語りかけてくる龍騎。
ライダーバトルのある世界ではミラーワールドと呼ばれる鏡の中の世界で殺し合いが行われていた。
龍騎だけでなくライダーバトルの為に作られたライダーは全てミラーワールドに入れる機能を所持している。
(ここで戦うのは私にとって不利、今はガラスから離れないと)
ガラスの中を移動して出現する仮面ライダー。
近隣一体全てのガラスを破壊するのは不可能なのは考えるまでもない。
それならガラスの無いエリアまで移動すればいい。
『逃げても無駄だ!どこへ行こうが必ずお前を追い詰める!』
「ガラスの中に入れるなんて反則過ぎるよ!!」
ガラスの破片の向こうでは龍騎が高笑いを上げながらレンを追跡する。
レンはAGI特化型のプレイヤーであり彼女の移動速度は仮面ライダーを相手にしても引けを取らない。
まともに追いかけた所で龍騎がレンに追いつくことは不可能。
(ガラスから距離を取って、あの仮面ライダーが出てきた所を狙えばまだチャンスはある!)
殺し合いへの恐怖は依然として拭えていない。
それでもあの仮面ライダーを放っておけば罪の無い人間達の命を次々に奪っていくだろう。
それを見過ごして逃げるほど薄情な彼女ではなかった。
【ADVENT】
「な、なにアレ!?」
電子音声が響き渡る。と同時にショッピングセンターの窓から巨大な赤い竜が出現。
次々と火球を吐き出しながらレンに向かって接近する。
「きゃあああっ!!」
爆炎の衝撃がレンを襲い、発せられた風圧が彼女の華奢な体を軽々と持ち上げ、勢いよく吹き飛ばす。
「あうっ!」
吹き飛ばされた先には黒い乗用車が放置されており、ガシャン!と大きな音を立てて衝突した。
大きく凹んだ後部座席のドアの側でレンは激痛でうずくまっていた。
(痛い、痛い……痛いよぉ……)
GGOで感じる肉体的痛みはせいぜいツボを押した程度の軽い痛みしか感じない。
だが、この世界では現実と何も変わらない。
全身を叩きつけられたダメージがダイレクトにレンの肉体に苦痛を与えている。
(さっきのドラゴンはNPCモンスター?それとも……)
「よぉ、ウサギちゃん。会いたかったぜェ」
「ど、どうして……?」
乗用車の車体から龍騎が出現し、戸惑うレンを見下ろす。
素顔は見えなくても声を聞くだけで仮面の下では浅倉のニヤケ顔が想像付く。
「フフフ、反射するものなら何でも移動出来るんだよ」
「くっ!」
ミラーワールドから行き来可能なのはガラスに限ったことじゃない。
光を反射するものなら水たまりや川、金属からでも入ることが出来る。
それをレンに気付かせないように龍騎は今まで窓ガラスからしか移動して来なかったのだ。
「オラァ!」
振り返りざまにP90を構えようとするレンだったが。
その行動を予測していた龍騎の蹴りが彼女の腹部に突き刺さる。
「かはぁっ!うぐっ、ゲホッゲホッ!」
もう一度、乗用車に叩きつけられるレン。
衝撃でレンの手元からP90が零れ落ちる。
腹部へ受けたダメージによって肺の中の空気は吐き出され、咳き込むレン。
「ハァ、ハァ……」
腹部の激痛に耐えながら、レンは落としたP90を拾おうとするが
それより早く龍騎にP90を蹴り飛ばされてしまう。
「……ッ!!」
「おっとぉ、残念だったなァ。レン」
銃を失い、絶望するレン。
それを愉悦に満ちた声で語りかけながらレンの頭をがしっと鷲掴みにした。
「いやぁ!離してっ!ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァ!!!!」
「ククク……そのまま握り潰せそうだなぁ」
龍騎の右手に力が込められ、ミシミシと頭蓋骨を軋ませる。
あまりの激痛に断末魔の悲鳴を上げて泣き叫ぶレン。
龍騎はジタバタと藻掻き苦しむレンを楽しそうに眺めた後に
145cmの小さな体を軽々と高く持ち上げた。
これから悪魔や邪神に捧げる貢物の様だった。
「どうしたぁ?もっとだ、もっと足掻いて見せろォ!!」
「んぐぅっ!」
レンを鷲掴みにした右腕を勢いよく振り下ろし、車に向かって叩きつけた。
ガンッ!と鈍い音が響く。
バスケットゴールへダンクシュートするかのようにレンの頭を車にぶつけたのだ。
「んんんっ!!んんんんんっ!!」
「ハハハハハ!!お前の力はそんな物かァ?」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
「あぅっ!かはっ!いぎっ!、あぐぅっ!!」
何度も何度も車に向かって叩きつけられる。
その度に車に凹みが増え、ガラスが割れて破片が飛び散っていく。
レンの体は激しく跳ね、衝撃が彼女の体に響き渡る。
レンの愛らしい少女の顔がどんどん傷ついていく。
顔だけではない、それ以上にレンの精神が追い詰められ悲鳴を上げた。
「もうやめてぇぇ!!降参します!!降参しますからぁぁ!!もう酷いことしないでくださいぃぃ!!」
ポロポロと大粒の涙を流して許しを懇願するレン。
龍騎から与え続けられた苦痛と恐怖が、彼女の心をへし折ってしまった。
その姿を見て龍騎の動きは止まった。
「もう終わりか、つまらねぇ」
「ううっ……」
抵抗する意思の無くなったレンの姿に龍騎は落胆した。
するとレンを掴んでいない方の手でドラグセイバーを持ち上げた。
ドラグセイバーの刃がレンの胸元へと近づく。
「え?……なんで?どうして!?」
「戦えない奴に用はねえ。死ね」
龍騎にとって他者は己の闘争心を満たすために存在しているに過ぎない。
故に戦えなくなったレンにはもはや生かすだけの価値は無い。
「やだ……やめて。死にたくない、死にたくないよぉ……」
「じゃあな」
大粒の涙をポロポロと零しながら懇願するレンの言葉は龍騎には届かない。
レンの体を串刺しにするべくドラグセイバーを握る手に力を込めた。
ドンッ!!
「うぉっ?」
「きゃっ!」
何かが龍騎に衝突し、掴んでいたレンを手放し、吹き飛ばされる。
目の前には無人のバイクがエンジン音を蒸して立ち塞がっていた。
「誰だ?貴様ァ……」
『間に合ったようだね。さぁ、乗るんだレンくん』
「貴方は?」
『話はあとだ。今は仮面ライダーから逃げるのが先だ』
「は、はい!」
誰も乗っていないのにも関わらず声が聞こえるバイクにレンは困惑するが
何者かが語りかける声に急かされる様に、そのバイクに跨った。
「どこへ行くつもりだ!?そらぁっ!!」
「っ!?」
逃がすまいとバイクに向かって走り出す龍騎。
レンを両断するべくドラグセイバーを振り下ろした。
その瞬間だった。
「うおおおおおおおおお!!」
龍騎とレンの間を遮る様にバリアが出現し、ドラグセイバーの斬撃を受け止める。
それだけじゃなくバリアに押し込まれることで龍騎の体を弾き飛ばし、転倒させた。
『今がチャンスだ、ハンドルに捕まるんだレンくん』
「はい!」
バイクに言われるがままにハンドルを握ると
1人でにバイクは走り出し龍騎の元から素早く去っていった。
龍騎が慌てて追跡しようとするも既にバイクの姿は無く
ボディから粒子が舞い上がり、変身が強制解除された。
「ふざけやがって……戻ってこい!!戻って俺と殺し合え!!うがあああぁぁぁぁ!!!!」
レンを殺害する寸前で横槍を入れられ、獲物を仕留め損ねた欲求不満が苛つきを増幅させる。
欲求不満を抱えているのは浅倉だけではない。
『グルルルルルッ!!』
ミラーワールドではドラグレッダーが浅倉に対し、唸り声を上げていた。
契約さえ切れればいつでもお前を喰い殺してやると言いたげな瞳で睨んでいる。
巨大なモンスターに睨まれ、普通の人間なら気が気でなくなるだろうが、浅倉は意にも介さず。
あるものを取りに行くために先程まで来た道をマイペースで戻っていく。
「喰いたければこれでも喰いな」
浅倉が取りに行ったのは葉多平ツネキチの死体だった。
シブタクとは違い比較的損傷が少なく、ドラグレッダーの餌にするには丁度良かった。
本当はレンもぶち殺してから食わせるつもりだったが
足りなければ他の獲物を探して食わせればいい。
『ガウッ!!』
パクンと一口でツネキチの死体は捕食され、この世界から消滅した。
その様子を眺めてから浅倉も休息を取ることにした。
チェイスに続いてレンとの連戦によって浅倉の疲労も蓄積している。
闘争を楽しむにはコンディションを整える必要があった。
「次はどこへ行くかな」
この後、どこへ向かうかゆっくりと思考を張り巡らせる。
次の闘争のために、次の殺し合いのために。
戦って、戦って、戦い続ける。
浅倉の戦いはいつまでも、いつまでも、無限に終わらない。
【エリアE-4/市街地/9月2日午前6時00分】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
状態:疲労(大)、ダメージ(中)、イライラ
服装:蛇柄のジャケット(いつもの)
装備:龍騎のカードデッキ&サバイブ『烈火』@仮面ライダー龍騎
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗る
01:誰でもいいから探して戦う
02:一息付いた後はどこへ向かうか
参戦時期:佐野殺害以降〜死亡前。
◇
その頃、レンは突如現れたバイクに乗って西の方向へと走り続けていた
『どうやら逃げ切れたようだね』
よく見るとバイクに固定される形でタブレットが備え付けられており
そのタブレットがバイクを遠隔操作し、レンに話しかけていたのだ。
「あの、貴方は?」
『初めまして、私の名前は蛮野天十郎。参加者をサポートするために用意された支給品だ』
「支給品?じゃあ蛮野さんの持ち主は?」
『そうだね。それを説明するには少し長くなるがこのゲームが始まった所から語らねばなるまい』
タブレットの中にいる蛮野は語った。
殺し合いが始まって何があったのかを
どうしてレンを助けるために行動したのかを
私は参加者の一人である渋井丸拓男の支給品としてバッグに入れられていた。
彼はゲームが始まってまもなく出会ったもう一人の参加者、葉多平ツネキチと意気投合し
己の欲望の赴くままに好き勝手に行動に移った。
幸いにして渋井丸拓男はバイク以外の支給品には特に関心が無く
私は彼に悪用されずに済んだのだが
彼らは一人の女性を見つけると男二人は乱暴を働くべく、凶行に走った。
何とかして止めたかったが私は持ち主に逆らう事が出来ないように制限を受けている。
故に、私は見ていることしか出来なかった。
そこで意外な事が起こった。
襲われた女性はなんと男二人を返り討ちにして殺害してしまったのだ。
一見、正当防衛と思われる話だが、気掛かりな点がある。
あまりにもその女性は殺人が手慣れていた。
普通の女性なら殺人を行うとしたらもっと感情を露わにするはずだ。
なのにあの女性は動揺も躊躇も無く、淡々と喉元を掻っ切って始末していた。
私は彼女が危険人物と判断し、彼女の手に渡らないよう姿を隠した。
そして私は渋井丸拓男のバイクを修理しながら新たな参加者が通るのを待っていたのだ。
殺し合いを止めるべく行動する善の心を持った参加者をね。
そしてレンくん、君なら殺し合いを止めるために私を使ってくれると確信を持った。
悪の仮面ライダーに立ち向かう君の勇姿に心を打たれてね。
それが蛮野天十郎がレンを助けた理由だった。
レンもそれを聞いて蛮野の行動に納得する。
「その渋井丸拓男さんを殺した女性は一体誰なんです?」
『おそらく松坂さとうという名前だろう。彼女は愛おしそうに『しおちゃん』と呟いているのが聞こえたのでね。
しおと言えば『神戸しお』という名前が名簿に乗っていた。その隣にある松阪さとうが彼女の名前の可能性が高い』
神戸しおの隣にいる松阪さとうとザギなら容姿的にさとうと見るのが妥当だろうと蛮野は判断した。
『そしてレンくん、彼女に対してもう一つ警戒しなくてはいけないことがある』
「何ですか?」
『彼女は渋井丸拓男のバッグから中身を漁り、カードデッキを持っていった。
それは先ほど君が戦った男が仮面ライダーに変身する際に使った道具と瓜二つだった』
「じゃあ、そのさとうって人も……」
『ああ、彼と同じように仮面ライダーの力を手にしたと見ていいだろう』
「ッ!?」
あんな恐ろしい力を持ったライダーが他にもいるなんて。
蛮野の語られた事実に、レンは動揺と共に恐怖が蘇った。
「ううっ!」あああああっっ!い、痛い!痛いよぉ!!」
戦闘が終わり、興奮状態が覚めたせいなのか。
龍騎に襲われた場面が次々とフラッシュバッグし、痛覚が過敏になる。
顔面を何度も車に叩き付けられた痛みが
ドラグセイバーでその身を串刺しにされそうになった恐怖がレンを蝕む
『気をしっかりするんだレンくん』
「だ、大丈夫……これがあるから……」
レンの3つ目の支給品として医療キットが渡されていた。
これは1本に付き、180秒で30%のHPを回復させる効果がある。
バッグから急いで医療キットを取り出すとすぐさま自分の肉体に使用した。
『済まないレンくん。肉体を持たない私ではサポートしか出来ない』
「いえ、蛮野さんがいなければ私は今頃……」
二本目の医療キットを使用しながらレンは涙を流した。
回復アイテムのおかげで肉体の傷は癒え、顔も元通りに治ったが心の傷は全く塞がらない。
SAO事件では4000人も死者を出した。
生き残った6000人の生還者の中にもPTSDを発症して治療中の生還者も少なくない。
その人達も今の自分のような苦しみを受けてきたのだと実感する。
スクワッド・ジャムで優勝した私だったら必死に頑張ればどうにかなると思ってた。
それは全くの思い上がりだったんだ。
この世界では自分は特別でも何でも無い、普通の女の子でしかないんだ。
命をかけた本当の殺し合いはこんなにも恐ろしいんだ。
私は何も分かってなかった。
「ごめんなさい、蛮野さん。私、震えが止まらないの……」
あの仮面ライダーの声が耳から離れない。
本気で私を殺そうとした。
戦いを、殺し合いを、心の底から楽しんで嗤っていた。
また出会ったら、私はきっと戦えないと思う。
全身の震えが止まらない。
歯をカタカタと鳴らし、涙が溢れ続ける。
龍騎の高笑いが今でもレンの耳にこびり付く。
仮面ライダーとの戦いはレンの心に恐怖という名の深い傷を残した。
『まずはゆっくりと休むといい、そのあとで今後の方針を考えよう』
「はい……」
力なく返答するレン。
果たして彼女はこの恐怖に打ち勝ち、乗り越えることが出来るのだろうか。
【エリアE-3/市街地/9月2日午前6時00分】
【レン@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
状態:疲労(中)、ダメージ(微小)、精神疲労(大)、戦いへの恐怖心(極大)
服装:デザートピンクの迷彩服
装備:無限バンダナ@メタルギアソリッドシリーズ
令呪:残り三画
道具:治療キット×3@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン、ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ、ホットライン
思考
基本:生き残ることを優先
01:殺し合いに乗っていない参加者と合流したい
02:蛮野さんと共に行動する
03:松坂さとうと出会ったら警戒する
04:怖い……怖いよ……
参戦時期:第一回スクワットジャム終了以降
備考
※GGOのシステム(バレット・サークル、バレット・ライン)は制限なく使用できます。
※仮面ライダーとの戦いで強いトラウマを植え付けられました。
※松坂さとうを危険人物として認識しました。また仮面ライダーへの変身能力を持っている可能性があると判断しています。
※ブレンのタブレットの所有者になりました。ブレンのタブレットはレンに危害を加えることはありません。
※P90はE-4のエリアに放置されています。
【治療キット@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
レンに支給
使用するとリジェネ式に、1本に付き180秒で30%回復する。
【渋井丸拓男のバイク@@DEATH NOTE】
渋井丸拓男に支給
一般的に販売されているごく普通のバイク。
現在は蛮野によって修理、改造され性能が向上し
蛮野による遠隔操縦が可能となっている。
【ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ】
渋井丸拓男に支給
タブレットの中には蛮野天十郎の人格が宿っている。
制限としてタブレットの持ち主に危害を加える行動が出来ないようにプログラムされている。
所有者の権限は死亡するか、他の参加者に権限を譲渡することによって失われる。
蛮野天十郎の人格は詩島剛と戦い、死亡した時期からの記憶を宿しています。
投下終了です
皆様投下お疲れ様です
自分も投下します
――震えてる体包む足跡
――信じてる理由は日々に連ねた
◆
松阪さとうが襲い掛かって来た青年に思うことは多くない。
何故殺し合いに乗っているのか、今さっきまで言葉を交わしていたアーリャを殺した理由は何か。
そういった善良な参加者なら考えて然るべきものを、一つとして抱かなかった。
自分を襲ってしおの捜索を邪魔する男、放って置いたらしおに危害が及ぶかもしれない。
その二点のみで思考が排除へ切り替わる。
両手で握り締めた得物を、頭部目掛けて振り下ろす。
脳を潰されて生きていられる人間はいない、なれど敵は兜を装着済み。
振動により視界を揺さぶる程度はできても、金属を叩き壊すのは少女の身では不可能。
尤も今のさとうを見て、すぐに10代の女子高生と分かる者が果たしているのやら。
白銀の装甲が胸元の膨らみを覆い、細い四肢をボディスーツが隠す。
異性を惹き付ける容姿もそこには無く、代わりに騎士を思わせるフェイスシールド。
仮面ライダータイガという名の力が、さとうに与えられた凶器だった。
神崎士郎の開発したライダーシステムに共通して言えることだが、デッキを使った変身者の身体機能は人の限界を優に超える。
ミラーモンスター及び他ライダーとの戦闘を大前提にしている以上、多少運動能力が上がる程度では到底足りない。
従って、各々が振るう武器も並大抵の性能に非ず。
タイガが持つ大斧型召喚機、デストバイザーもその例に漏れずライダーの強固な装甲越しにダメージを与える威力だ。
兜を被っていようと紙切れ同然、脳みそと共に地面へ散らばるだけ。
一度障害と見定めたなら、躊躇は微塵も抱かない。
今更になって思い止まる展開が起ころう筈も無く、分厚い刃が頭部目掛け急降下。
トマトが潰れたみたいな赤が広がる、誰しも予想するだろう光景はしかし現実にならず。
刃を阻むは同じく刃、選ばれし勇者だけに持つことを許された剣。
最初の一撃で仕留める算段が呆気なく崩れ、口の中へ不快な味が滲み出す。
(重いな……)
少女の細腕から繰り出されたとは思えない重さ。
華奢な体格で暴れ回られたとて、こっちは片腕で捻じ伏せられる筈なのに。
剣の柄を両手でしっかりと握り締めねば、防御を崩され真っ二つにされ兼ねない。
ただの少女がここまでの力を発揮したのは、やはり腹部の奇妙な小箱が原因か。
あれを使って纏った鎧は頑丈なだけではない、身体能力を大幅に引き上げるらしい。
鎧の力も警戒して然るべきだが、少女自身の迷いの無さも油断ならない。
偶然聞いた彼女の愛に対するスタンスは口先だけではない。
愛の為なら人の命すら平然と奪える。
覚悟の程は分かった、だからといって殺されてやる気は無い。
死ねない理由なら自分にだってある。
愛が噓か真か知る為に、勇者ではないただのアレフとして血の雨を降らせよう。
腹に力を入れ踏ん張り、得物に殺意が漲る。
剣共々粉砕するつもりだろうがそうはいくか。
斧を徐々に自身の頭部から遠ざけ、遂には完全に押し返す。
己の意思に反して両手が引き戻され、体勢を維持していられない。
再度構え直すまでに時間は掛からずとも、生まれた隙をアレフは見逃さなかった。
真っ直ぐに剣を突き出し突進。
どうのつるぎでは鎧を貫けず、反対に折れてしまうだろう。
なれど握る武器はロトの剣、竜王ですら切り裂いた刃を防げるものは無いと知れ。
タイミングは完璧だ、抵抗しようにも間に合わない。
尤も、そんな不可能を可能にするのが仮面ライダー。
マスクの奥に隠れた目が、迫るアレフの一挙一動を捉える。
さとうの肉体では対処は出来ずとも、タイガならば問題無い。
切っ先が腹部を突く寸前、斜め下から妨害に遭った。
跳ね上げたタイガの腕には当然の如くデストバイザー。
刀身を叩き狙いが逸れた瞬間、身を捻って剣を躱す。
遠ざかった死への安堵より、アレフ殺害を優先。
横薙ぎに振るった斧が狙うのは首、胴体と泣き別れすれば勇者も死体へ早変わりだ。
「ギラ!」
攻撃が失敗に終わろうと動揺は見せず、片手を翳し対処へ動く。
偶然にも彼らがいる城、コーカサスカブト城の王と同じ名前の呪文。
放たれた炎は仮面越しにさとうの顔を炙る。
ダメージが最低限に抑えられるも、感じた熱さへ僅かなりとも怯めば敵の攻撃を許すも同然。
胸部へ刃が走り、遅れて痛みが情報として伝わって来た。
「…っ」
タイガの全身で最も強固な胸部装甲故、致命傷には程遠い。
だが二撃三撃と立て続けに斬られればどうなるか。
これ以上のアレフの好き勝手を許可した覚えはない。
片手持ちに変えたデストバイザーをやったらめったらに振り回す。
狙いが付いていない為に却って読み辛く、アレフも剣を止め数歩後退。
再度距離を詰めるのは容易いだろうがしかし、タイガが次の手に出る為の時間は稼いだ。
『STRIKE VENT』
馬鹿の一つ覚えで斧を叩きつけても、勝てる相手でないとは分かった。
望みのカードを引き抜き召喚機へ装填、電子音声に告げられ新たな武器が出現。
熊の爪を思わせる形状のソレは、契約モンスターの両腕を模したデストクローだ。
片方だけでも相当な重量であるが、タイガの膂力を以てすれば筆のように軽い。
軽く腕を動かし支障がないと分かれば、後は直接相手を殺すだけ。
「そんなことまで……」
動きのキレを引き上げるのみならず、武器の召喚も可能とは。
立ち寄った町で手持ちの金銭と相談しながら、装備の売買を行うよりもずっと手っ取り早い。
少々場違いなことを考える間にもタイガは既に動き出し、接近と同時に斬り掛かる。
デストバイザー同様、強度と切れ味は脅威と言う他ない。
右腕の斬撃を防げば今度は反対の腕が迫る。
防御よりは回避に動いた方が良いと跳び退き、爪は虚しく空気を切り裂く。
チラと着込んだ鎧を見やれば、爪がほんの少し掠った箇所に傷。
先端が僅かに触れた程度でもこれだ、直撃すればどうなるかを考えるまでも無い。
ロトの鎧ならまだしも、現状の耐久性は布の服と大して変わらないだろう。
距離が開こうと5秒も掛からずに、再び眼前へ移動可能だ。
ボディスーツ型の強化皮膚が、変身者の能力を常人以上に引き上げる。
駆け出し心臓目掛け腕を伸ばすタイガは、弾丸と見紛う速さ。
しかし素早さに優れるのはアレフだって変わらない。
旅に出た直後はスライムベス一匹にすら梃子摺ったが、最早過去の話。
魔物退治を重ねた経験は、アレフを真に勇者と呼べるまでに強くした。
両腕のデストクローで攻め立てるタイガへ、アレフは剣一本で凌ぎ切る。
得物の数では敵が有利であり、一見すれば防戦一方に追いつめられた状態だ。
見方を変えれば武器二つを用いても、未だタイガはアレフに傷一つ付けられていない。
弾き、防ぎ、躱し、また躱し、二本纏めて防ぎ、豪快に押し返す。
どう対処するのが正解を瞬時に弾き出す冷静さと観察眼。
何より実行へ移せるだけの実力が、タイガに勝機の片鱗をまるで与えない。
剣を振るいながらアレフは敵の力量を見極める。
鎧の力や殺害への躊躇の無さは警戒するべき、ただ本人の能力はそこまでじゃない。
奇妙な道具を使い身体機能こそ劇的に上昇しているも、動き自体は良く見れば素人。
当然と言えば当然の話だ。
さとうは殺人の経験こそあれど、魔物の討伐やライダーバトル等とは無縁の少女。
武器を使って戦うこと自体、アレフ相手が初めてなのだから。
アレフもまたフローラ姫救出に旅立った当初こそ、お世辞にも強いとは言えなかった。
だが苦戦しつつも勝利を治め、覚えた呪文を使いこなし、実戦を経て着実に力を付けた結果。
遂には元凶である大魔王を倒し、故郷アレフガルドを救うに至った。
力のゴリ押しがいつまでも通じる軟な男ではない。
それを証明するかのように、ロトの剣は猛攻をすり抜けタイガの胴体を疾走。
動作一つを誤れば爪の餌食と化すも、既に見切った動き故恐怖は無い。
痛みと共に地面を転がり、衝撃で変身解除されるもどうにか立ち上がる。
憎々し気に睨みつけるも相手は不動、敵意など襲い掛かって来た魔物の相手で飽きるくらいに味わった。
装甲で防がれたとはいえ斬られた感触は不快の一言に尽きる。
なれど痛みはさとうに、このままマトモにぶつかっても勝ち目は薄いと告げる役目を果たす。
形勢逆転出来るかもしれないカードなら持っている。
或いはここは撤退を選び、しおの捜索やルルーシュの下へ向かうのを優先するべきか。
どれを選ぶにしても自身が動きを見せた途端、アレフが瞬く間に仕留めに来る筈。
自分を簡単に殺せる相手と見ていた最初と違い、変身する暇も与えてくれないに違いない。
(…仕方ないか)
時間を無駄にさせるアレフを苦々しく思いつつ、次なる行動を決定。
隙が見当たらないなら作ればいい。
「ねぇ、そんなに強いのにどうして殺し合いに乗ったの?」
落としたデッキを意識しつつ、アレフ相手に初めて口を開く。
無論、本気で相手が殺し合いに乗る道を選んだ理由を知りたいとは思っていない。
対話で少しでも動揺を引き出し、そこからどうにか現状を切り抜けられないか。
そう考えただけに過ぎないのだから。
「……」
問い掛けられたアレフはすぐに答えられない。
会話へ応じる理由は無く、言葉の代わりに剣を振るうのが殺し合いを肯定した者としての正解。
けれど、剣を持つ手の力がほんの少し揺らいだのが自分でも分かり、
「…………僕には、もう一度会わなきゃならない人がいるんだ」
沈黙を挟んだ後、絞り出すように告げた。
何故わざわざ答えてやったのか、正確な理由はアレフ自身にも分からない。
気まぐれかと言われたら頷くかもしれないし、違うと返すかもしれない。
死ぬ前に話くらいは聞いてやろうという、寛容と傲慢をはき違えた判断か。
ひょっとすると、自身の胸の内を吐き出したかったのだろうか。
もう一人の自分と会ってからずっと渦巻き続ける恐怖から、少しでも解放されたい。
そんな理由があったとしても否定は出来ず、ポツポツと話す。
殺し合いが始まってすぐに殺されてしまった彼女、ローラ姫の蘇生。
最後の一人に勝ち残り叶える、死者の蘇生という願いを。
だからさっきのアリサとか言う少女を殺した。
「そのローラって人を愛してるから、生き返らせたいってこと?」
話を聞き終えたさとうの質問には、本当だったらそうだと答えるべきだ。
今の話を聞けば大半の人間はこう思う。
アレフにとってローラは他の誰よりも大事で、どんな手を使ってでも取り戻したいのだろうと。
でなければ善良な人達に犠牲を強いる理由にはならない。
「それは……分からないんだ…」
だがアレフの答えは大多数の予想とはかけ離れた内容。
ローラに悪感情は抱いていなかった、でも愛に繋がるかは自分でも判断が付かない。
肝心の彼女が死んでしまっては確かめられない、だから生き返らせるしかない。
何よりローラは、いずれ自分が治める国に必要不可欠な人間。
国の運営に姫がいなくては、国家として成り立たない。
将来的には国民の為にも生きてもらわねばならないからと、捲し立てる。
「……」
さとうが自分をどんな目で見ているかも気付かず。
「…あのさ、本当はその人のこと別に愛してないよね」
何かが軋む音が聞こえた。
周りを見ても壊れた物は一つもない。
アレフ自身の内側が発した音と気付く前に、さとうが色を削いだ声で言う。
「ローラって人に旅に同行したいって言われた時、嫌じゃ無かったらしいけど。それ、ただ単にどうでも良かったからでしょ?」
「え……」
「気付いてないの?嫌じゃ無かったとか不快には感じなかったって言うだけで、あなたは一度も嬉しかったとは言ってない。
あなたにとってローラは別にいてもいなくても、どっちでもいい人でしかない。だから特に拒もうともしなかった、それだけの話だよ」
心臓が痛いくらいに跳ね上がった。
違うと、たった二文字を返せばいいのにどうしてか言葉が出ない。
代わりに考える、さとうの言葉に考え込んでしまう。
ローラを助けた時、城まで抱き上げてくれるよう頼まれ承諾した。
想っているかと問われた時、頷きローラの心をときめかせた。
旅への同行を申し出た彼女を拒まず、いずれは二人で新たな国を治める筈だった。
全てローラが嫌いではない、自分が気付かないだけで愛していたから。
けど本当は違う、ローラに特別関心を抱いて無かっただけなのでは?
受け入れようが拒絶しようがどちらでも良く、さりとて嫌う理由も無かった。
だから流されるまま彼女の要求を呑んだという、酷くつまらないそれが真実。
「ち、が……」
「でも、自分がそんな無関心な人間だって認めるのが嫌だ。それで国の為っていう理由を他に作った。良かったね、便利な言い訳が見付かって」
ローラを愛しているから殺し合いに乗った、そう言うのなら分かる。
政治的なでローラを蘇生させるしかない、それもまだ分かる。
しかし実際には好嫌ハッキリしないあやふやな理由と、自分を無理やり納得させる国の将来。
さとうの質問に答えながらも、仕方ないと自分へ言い聞かせる姿を見れば瞭然だ。
「あなた、本当は誰も愛してないんでしょ?」
目に見えないその刃は、どんな呪文よりもアレフを痛め付けた。
「う……るさいっ!」
叫ぶ声は大きさの割に迫力が欠けている。
戯言を一笑に付すのではない、やめてくれという懇願にも似た悲痛さがあった。
対話に応じるべきじゃ無かったと、今更後悔しても遅い。
ただもうこれ以上、さとうの言葉を耳に入れたくなくて。
自分の大事な部分が砕けるのを防ぐべく剣を振り被り、
「何してるんだ!やめろーっ!!」
勇者の暴挙を止める者達が現れた。
◆◆◆
森を抜け租界エリアに出た丁度のそのタイミングだ。
卜部とドラえもんが主催者の放送を見たのは。
クルーゼと名乗った白い仮面の男は、羂索同様殺し合いに何の抵抗も抱いていない。
参加者達を焚き付ける内容に怒りを抱くも、画面越しの相手には睨む以外にできることもなく。
ガッチャという言葉を最後に放送は終了、何とも言えぬ後味の悪さだけだ残る。
「な、なんて奴だ…!」
「連中への怒りは直接会う時まで取っておこう。今はまず、目先の問題から片付けるしかない」
憤るドラえもんの怒りを否定はせず、かといって感情に身を任せもしない。
冷静さの欠如が如何に危険かは、ブリタニアとの戦争で嫌という程に知った。
正論と気遣いを織り交ぜた言葉を投げられれば、ドラえもんも幾分落ち着きを取り戻す。
大事件の際に自分がのび太達を宥める立場になることが多いが、今回はその逆。
卜部に感謝しつつ言われた通り、出来る範囲から始める。
その卜部も、間髪入れずに始まった悪逆皇帝の演説に動揺を抱くのだが。
「ゼロ…!?一体何を……」
ルルーシュが島中のテレビをジャックし、参加者達の注目を集めた。
しかも内容は自身への隷属か敵対の二択を突き付けるという、余りにも挑戦的な内容。
いや、それだけなら驚きはしてもまだ受け入れられた。
単に力を誇示するだけじゃない、ルルーシュなりの狙いがあっての事だと考えられる。
今までも大胆な策に打って出たが、全て黒の騎士団の勝利へ繋げられたのだから。
ブリタニアへ王手(チェックメイト)掛ける手前まで行った手腕を、今更疑うつもりはない。
卜部が理解できないのは、ルルーシュが提示した自陣営に付くための条件。
黒の騎士団の構成員の首を持って来いと、ハッキリ参加者達に伝えた。
全く持って意味が分からない。
騎士団の者に召集を掛けるならまだしも、よりにもよって他の参加者の標的(ターゲット)にするなんて。
玉城ならこれも作戦の一つと楽観的に考えるかもしれないが、到底そうは思えない。
何故自分達を狩りの獲物に選んだのか、問い質したいが当人が傍にいないのがもどかしかった。
「卜部さん大丈夫?あのルルーシュくんって、卜部さんが言ってたゼロって人だよね?」
「あ、ああ。その筈、なんだが……」
困惑を隠せない様子を心配するドラえもんに、何とか思考を落ち着かせながら事情を話す。
どういう訳か、味方である自分達を敵として扱っていると。
説明を聞いたドラえもんは難しい顔で暫し唸り、一つの仮説を弾き出した。
22世紀のロボットだからこその考えだ。
あのルルーシュは卜部が知らない未来から来たルルーシュである。
放送前に出くわした総司令官が分かり易い例だ。
リルルとピッポの献身により3万年前に歴史改変が発生、メカトピアのロボット兵が一体残らず消滅したのは覚えている。
だが言動から察するに、総司令官は歴史改変により存在が消える前の時間から招かれたに違いない。
同様にルルーシュと卜部もまた、それぞれ異なる時間から呼ばれたのだろう。
「だから卜部さんが知らない未来で、ルルーシュくんと卜部さんの仲間の人達に何かあったってことなんだろうけど…」
「その何かが原因で、ゼロは騎士団と敵対したのか…?」
カラレスのように、殺し合いがブリタニアの仕組んだものと都合良く考える真似はしない。
明らかな異常事態だからこそ、ドラえもんの言う仮説も受け入れられる。
が、ルルーシュの言葉を信じるなら騎士団はゼロを裏切りシュナイゼルの傘下に付いた。
日本解放の要である自分達のトップを切り捨て、よりにもよってブリタニア皇族に首を垂れるとは。
何故そのような事態に陥った、裏切りを主導したのは一体誰だ。
藤堂や四聖剣の者達までもが加担し、ルルーシュが言ったように誇りを捨ててしまったのか。
(捕虜として捕まっている時に、何か唆されることを言われた…?いやそもそも、あのゼロが誰かに洗脳されてるって可能性も…)
どちらも無いとは言い切れない。
ギアスという超常の力を持つ者がルルーシュ以外にもいて、そいつの手で記憶を書き換えられたのか。
何故かブリタニア姓の皇帝を名乗り騎士団を敵視するのも、未来でゼロはブリタニアに洗脳されたからじゃあないのか。
可能性の話なら幾らでも出来るが、どれが正解かは卜部にも分からない。
「……会って話を聞くしかないな」
やはり手っ取り早い方法は、ルルーシュ本人の下へ赴くこと。
直接顔を合わせ言葉を交わし見極めるのだ。
ルルーシュが語ったのは真実か否かを。
幸い居場所なら本人から知らされた。
堂々と自分達の拠点を教えるくらいだ、厳重な守りを固めているに違いない。
不用意に近付くのは危険、それでも卜部は自身の考えを曲げるつもりは無かった。
ゼロに希望を託し散った一人の軍人として、彼の真意を確かめたい。
「すまんドラえもん。我儘に聞こえるかもしれないが、俺はゼロに会わなきゃならない」
「うん、ぼくもルルーシュくんは放って置けない。でもいきなり会うのは危ないんじゃないかなぁ…」
心配は尤もだ。
前述の通りルルーシュも無策で待ち構えてはいない。
参加者が集まるまでの時間を活用し、テレビ局を要塞化してもおかしくはない。
対話だけで済むとは限らず、何が起こるか分からない以上相応の準備は必須。
少なくとも自分達二人だけで突っ込むのは、流石に無謀である。
となるとまずは仲間を集めるのが先決。
羂索に食って掛かった『仮面ライダーガッチャード』なる者のように、打倒主催者を目指す者も一定数参加している筈。
無論、殺し合いに巻き込まれた時点で参加者全員が被害者だ。
カラレスの時のように言葉で止まらない場合は、武力を行使する他ないが。
「ぼくはのび太くん達もいないから大丈夫だけど、卜部さんはルルーシュくん以外に会いたい人はいないの?」
「紅月とC.C.は巻き込まれていないし、知ってる奴もいるにはいるが…話せば分かる相手だとは思うがな」
ドラえもんの関係者は総司令官のみ、のび太達は参加を免れている。
様々な大事件に巻き込まれたとはいえ、まだ小学生の子ども。
殺し合いなんて凄惨な場にいないのには内心ホッとした。
卜部の知っている者はルルーシュを除くと枢木スザク一人。
名誉ブリタニア人の軍人で、白兜ことランスロットを駆る凄腕の騎士。
立場的には卜部と敵対しており、会えば警戒されるに違いない。
ただカラレスよりはまだ話の通じる相手だ、一時的な協力くらいは望めるかもしれない。
他に面識は無いがブリタニア姓のロロなる人物や、二代目ゼロと記載された者も気にはなる。
(まさかとは思うが、この二代目ゼロが裏切りに関係してるのか?)
ゼロというコードネーム自体そう珍しくもないので、無関係の線も十分にある。
これについてはルルーシュ同様、直接会う以外に確認方法は現状無し。
ともかく方針の決まった二人は近場で最も目を引く施設、コーカサスカブト城へ移動。
もしかしたら友好的な参加者が既に訪れているかもしれないと、一抹の期待を籠めて探索開始。
警戒しつつ進んだ先で聞こえて来たのは、何者かが争う穏やかじゃない音。
卜部の先導に従い駆け付けた先で、少女が殺される寸前の場面に出くわしたのだった。
◆
一足遅かったと、卜部は悔しさを表情に滲ませる。
桃色の髪の少女の危機には間に合った、しかしもう一人は違う。
扉の下敷きになりピクリとも動かない、カレンと同年代と思われる別の少女。
血だまりに浸した銀髪は乾き、二度と元の艶やかさを取り戻せない。
またしても、無益な殺し合いの犠牲者が生まれるのを防げなかった。
「どうしてあんな奴の言うことに従うんだ…!」
悔しいのは卜部だけではない、ドラえもんもやるせなさを声に乗せ叫ぶ。
恐竜ハンターや魔界の王、怪魚族など多くの敵と戦って来た。
でもこれは、羂索が自分達にやらせているのは友だちを守る為の戦いなんかじゃあない。
誰かの大切な人を奪うことを強要する最悪の所業。
死んでしまってはそこで終わりだ、緑の星のシラーのように過ちに気付く機会すら得られない。
殺し合いなんかしたって、最後に残るのが良いものな訳ないのに。
自分達が間に合わなかった事実を噛み締め、もうこれ以上は好きにさせないと構える。
決意を固め直す乱入者達を横目で見つつ、極めて冷静に頭を回すのはさとうだ。
こういった展開もあり得るとは思っていたが、本当に起こるとは。
片方は青いタヌキだか達磨だかよく分からない見た目だけど、何にせよ好都合。
今正に殺されそうになっている自分と、物言わぬ屍を利用しない手はない。
「ふ、二人とも気を付けてください!この人がいきなり襲って来て、アリサちゃんも……」
卜部達に警戒を促し、怯えと悲しみの混じった仮面を装着。
倒れ伏す少女へ視線を向ける姿は、善良な参加者の同情を誘うだろう。
別に嘘は言ってない。
アーリャを殺したのは自分では無くアレフだし、突然隣の部屋から剣を突き刺したのも本当。
正直言って、もしアレフが現れずアーリャが自分を行かせまいと邪魔を続けたら。
こっちだって実力行使も辞さないし、その結果殺すことになっても構わなかった。
現実にはそうならず、アーリャとは別の相手にいらぬ時間を食わされたが。
しかし乱入者達の存在が現状を変える良い切っ掛けとなる。
さとうの忠告を受け、卜部達の視線は自然とアレフに向かう。
特に目を引くのは両手に持ったロトの剣。
刀身には未だアーリャの血液が付着しており、動かぬ証拠となる。
尤も、卜部の方はさとうが全くのシロだとは思っていない。
実は彼女こそがアーリャを殺し、罪をアレフに擦り付けた可能性とて現段階で否定材料は無い。
「彼女が言っているのは事実なのか?」
「…ああそうだよ。僕が、そこに転がってる女の子を刺した」
といっても、犯人がアッサリ自供し杞憂で済んだ。
アレフからすれば殺し合いに乗ってるのは本当のこと、アーリャ殺害を誤魔化す理由も無し。
もし狡猾に動くタイプならさとうこそが犯人と罪をでっち上げたかもしれないが、精神的な余裕の無さから目を背け殺し合いに乗った。
だから問いかけにもどこか投げやり気味に頷いたのである。
そして割って入ったなら卜部達を見逃す気も無い。
さとうが原因で大いに揺さぶられたものの、優勝を目指すという方針は変わらない。
仕掛ける前にこっちから先手を打つ。
剣を持つのとは反対の手を翳し、呪文を唱えた。
「ドカン!」
「ぐっ!?」
掌に収束した炎は敵を炙る前に霧散。
肩を襲った鈍痛に攻撃が阻止され、咄嗟に退きながら警戒を強める。
竜王討伐の旅では見かけなかった青い魔物が、筒のような物を向けていた。
のび太程の天才的な射撃センスは無い、しかしドラえもんだって多くの戦いを経験し悪を打ち倒したロボット。
使い慣れたひみつ道具が手にあるのなら、先手を取るのも決して不可能じゃあない。
ドラえもんだけに戦闘を押し付けはしないと、卜部も起動鍵を使用。
ナイトメアフレーム・月下をパワードスーツとして装着、愛刀片手に斬り込む。
脚部に取り付けられたホイール、ランドスピナーが高速回転し移動速度を爆発的に引き上げる。
等身大のサイズに落とし込まれても、機動性の高さは健在だ。
タイガ以上の重厚な鎧でありながら、名馬よりも速い。
突進の勢いを乗せた剣の前に生半可な防御は無意味、綿埃のように散らされるだけ。
なれど此度の敵は世界を救ってみせた勇者。
真っ向から叩きつけられた刀を受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。
刃同士が噛み付き合い、牙を突き立てキリキリと不快な音を鳴らす。
腕の力を抜かないままグリップ部分を操作、卜部の得物の刀身が回転。
無頼・改の頃より使い続けた装備、廻転刃刀はチェンソーのように削り取る攻撃も可能。
武器を破壊し敵の戦力低下、及び戦意喪失を狙う。
だが卜部の予想を裏切り、火花を散らすばかりで一向に武器は壊れない。
小さな亀裂すら付けられないが、それも当然である。
アレフが振るうのはロトの剣、竜王の強固な鱗すら切り裂く勇者の証。
そこいらの道具屋で手に入る武器とは、一線を画す強度と切れ味を誇る。
武器は壊れず、互いに剣を押し込めず拮抗。
膠着状態はどちらにとっても望む所ではなく、先に動いたのはアレフ。
自分から腕の力を緩め真横に倒れ、床を転がって死角へ回り込む。
一方力の当て所を急に失った卜部は前のめりになり、対処に遅れが生じる。
立て直される前に仕留めるべく、無防備な背に刃が振るわれた。
「ドカン!ドカン!ドカン!」
阻止に動いたのはアレフには無く、卜部にはある存在。
志を共にする仲間、ドラえもんが空気砲で援護射撃を行う。
刀身が弾かれるや否や即座に跳び退く。
見えない何かが命中し、痛い思いをするのは最初の一発で十分だ。
(聞いた事のない呪文だけど、衝撃波を放っているのか?)
攻撃の際に必ず「ドカン」と口にしている為、自分の知らない呪文の類かと警戒。
実際には魔法と無関係の科学技術の産物だが、少なくとも今のアレフが知る由は無かった。
「ギラ!」
呪文には呪文とばかりに詠唱、ドラえもん目掛けて火球が放たれる。
22世紀のロボットだけあって人間よりは頑丈なれど、ダメージにならない訳ではない。
普通であれば回避一択であるもドラえもんには好都合だ。
ひらりマントを取り出し、闘牛士を思わせるフォームで振るう。
跳ね返った火球は呪文を唱えたアレフの元へと逆戻り。
そんな道具までと驚くのは一瞬に留め、次の瞬間にはドラえもんを標的に疾走。
眼前へ迫った火球を斬り落とし、青い体を細切れにすべく斬り掛かる。
「させるか…!」
ピンチの場面を仲間に救われたなら、今度は自分の番だ。
ランドスピナーが床を削り取り、ロトの剣の前に己が身を割り込ませる。
斜め下からの斬り上げが剣を弾き、がら空きの胴体が完成。
再度振り下ろすまでに数秒あるかも不明な猶予を無駄にせず、脚部を唸らせ蹴り付けた。
無論死なないように加減をした上で、だ。
そうでなければ鎧が砕かれるのみならず、骨も内臓も豆腐のように飛び散ってしまう。
「なに!?」
そんな懸念も無意味となるが。
足底が叩きつけられる寸前で跳躍、伸ばされた右脚を踏み付け更に高く跳ぶ。
卜部の頭上を跳び越えたアレフが睨む先にはドラえもん。
強張った顔で右手を向けるも遅い、横薙ぎの一閃で真っ二つに切り裂く。
「うわああああっ!?」
吹き飛ぶ青い体を視界に捉え、仕留められなかったと奥歯を嚙み締める。
咄嗟に右腕を盾にし、両断を防いだのだろう。
今度こそと追いかけようにも、もう一人が許さない。
振り返るや否や接近する気配に剣を突き出せば、敵も刀を以て迎え撃つ。
「いたたた…」
数度のバウンドを経てようやく止まり、ドラえもんは頭部をさする。
空気砲を撃つのは間に合わないと察し、急所を庇った為助かった。
人間だったら地面に叩きつけられた時点で負傷は軽くないだろうけど、ロボット故に稼働への支障も無い。
と言っても、流石に何の代償も払わずに済んだとはいかないが。
「あ、く、空気砲が…!」
勇者の繰り出す一撃を防ぎ、右手の筒は最早使い物にならない。
破損個所から落ちた部品がそこらへ散らばり、これで撃っても暴発間違いなしだ。
武器を一つ失ったが、幸い卜部から譲ってもらった復元光線がある。
急いで取り出し光を当て、三つ目の支給品も使う。
「よーし!待ってて卜部さん!」
チータローションはまだまだ残量に余裕があった。
両足に塗りたくって駆け出せば、名前の通りチーターにも引けを取らないスピードを発揮。
効果時間が短い為、速いからといって1秒も無駄には出来ない。
卜部と剣戟を繰り広げる真っ最中のアレフが気付いた時には、もう間近へ迫った後。
何故これ程の速さをと驚愕しながらも、体は対処に動く。
剣を振るう手は止めず、反対の手で呪文を放とうと翳し、
(駄目だ!速過ぎる…!)
これは間に合わないと急遽回避へ変更。
攻撃が外れれば無駄にMPを消費するばかりか、敵へむざむざ隙を晒すのに繋がる。
後方へと大きく身を躍らせ、一手遅れて聞こえた「ドカン」という声。
またもや呪文を唱えた、そう脳が認識する前に体が防御の体勢を取った。
棍棒で叩かれたのにも似た衝撃が刀身を襲い、間髪入れず背後へと剣を翳す。
敵は尋常ならざる速さを駆使し、一瞬で自分の後ろを取ったのだと肌を突き刺す敵意が教える。
目だけに頼ってはいられない、魔物との戦いで磨かれた感覚を総動員させねば。
背後の次は真横、その次は右斜め上、今度は頭上と位置を変えて衝撃波が襲い掛かった。
「良い援護だ…!」
アレフが相手取るのはドラえもんのみに非ず。
的確な援護を感謝し卜部も突撃、空気砲を防いだ直後を狙う。
忌々しいタイミングでの攻撃をどうにか躱し、間を置かずに別方向から空気砲が発射。
それを凌げばまた違う位置から卜部、次は空気砲と絶え間なく攻め立てる。
カラレス相手にもやった、機動力を活かした単純ながら効果的な戦法だ。
「ぐ…う…!」
刃と空気砲の連撃に堪らず、防御を取ったまま吹き飛ばされる。
みっともなく地面を転がる前に受け身を取り、素早く剣を構え直し敵と睨み合う。
チータローションの効果が切れ、卜部の横にドラえもんが並ぶ。
互いに仕切り直す時間が生まれると、見計らってか卜部は問い掛ける。
「今からでも殺し合いに乗るのを止めて、共に羂索達と戦う気はないか?」
「…なんだって?」
予想だにしなかった提案へ思わず聞き返す。
自分が既に一人殺したのは彼だって分かってるだろうに。
本気で殺そうと襲い掛かった相手を、今更言葉でどうにかできると本気で考えているのか。
馬鹿げてるとし言いようがない。
「確かにあの娘を殺した件は許されないが、俺にはお前が、好き好んで殺し合いに乗ったとは思えないんだ」
羂索の言い成りになり、参加者を殺して回る危険な者。
カラレスや総司令官と同じと言われれば否定できないが、彼らとは異なる点がアレフには見られた。
彼は気付いているのか、戦っている最中ずっと自分がどんな顔をしていたかを。
目を見張る強さとは裏腹に酷く弱々しい、絶望を味わった表情だ。
イレブンと蔑まれ、差別と暴力に晒され、終わりの見えない悪夢の日々に怯える日本人達とよく似ている。
「何がそこまでお前を追い詰めたのか、俺には分からない。だがお前にはきっと、助けが必要な筈だ」
「……はは」
顔は見えずとも声で真剣なのだと分かり、アレフはつい乾いた笑いを漏らす。
別に相手を馬鹿にする意図があったのではない。
ただ、アレフにとっては初めての経験なのだ。
国民は自分に助けを乞うばかりで、協力を申し出る者は一人もいなかった。
王は姫の救出や魔王討伐を急かし、ロクな支援をしてくれなかった。
ローラは自分を愛してくれたけど、共に戦う仲間とは到底言い難い。
だから卜部のように、助けを求めるのでなく助けようとする人間に会ったのは殺し合いが最初。
もし、もしもの話になるが。
嘗ての旅でたった一人でも仲間と呼べる者がいたら。
肩を並べて戦い、共に勝利を分かち合い、時には弱音を吐き合える存在がいたら。
竜王に選択を迫られた時も勇者としての使命ではなく、仲間を裏切りたくないという、もっと人間らしい考えで「いいえ」と答えられたのか。
自分が人として何処か欠如していると、思わずに済んだのだろうか。
「でも、もう遅いんだ」
そんな仲間はいなかった。
自分は既に選んでしまった。
別の選択をしていたらとどれだけ思っても、過ぎた時は戻せない。
一度選べば選ばなかったもう一つの道は可能性に留まり、二度とそちらには行けない。
だから、今更引き返せない。
例え目を逸らす為だとしても、選んだ答えを無かったことには出来ない。
優勝してローラを生き返らせる、アレフ自身がそう決めたのだから。
○
二人と一体の戦闘に巻き込まれないようにしつつ、さとうはアーリャの死体へ近付く。
後で弔おうだとかそんな無駄なことの為ではない。
アーリャは死んだが彼女の支給品は手付かずで放置されたまま。
自分から意識が外れた今こそ、回収する絶好のチャンス。
死に際にアタッシュがどうのと呟いたのは確かに聞いた。
わざわざあの状況で、「助けて」や「死にたくない」よりも優先して言い残したのだ。
何らかの役立つ支給品である可能性は高い。
(私に必要かは知らないけど)
アーリャの最期に思うものは無く、けれど残った道具は有効に使わせてもらう。
ついでに装着されたままのレジスター、これも手に入れておけばルルーシュへの献上品になるだろう。
アレフの相手は乱入して来た男と青いタヌキに任せ、さっさと城を出れば良い。
さとうは殺し合いに乗っていない。
少なくともしおの生存が確認されている間は、優勝の選択を選ばない。
しかし他の参加者と協力し、羂索達を倒すつもりも皆無。
自分としお、二人揃っての生還さえ叶えれば良いのだから。
かといって自分一人の力でしおを探し出し、脱出方法を見付けるのが如何に困難かも理解している。
となれば他の参加者との協力も要所要所で求められるに違いない。
尤も、手を組むのが誰でも良いのかと言われれば否。
卜部やドラえもん、先のアーリャのような真っ当な倫理観の善良な参加者では駄目だ。
さとうにとっての最優先はしおの安全確保。
その為なら殺しを始めどんな手を使うのにも抵抗は無い。
当然、幾らしおを守る為とはいえそのような手に出るのを誰もが良しとはしない。
アーリャと同じく馬鹿な真似はさせないとでも言いた気に、邪魔をするのが目に見えている。
危険な参加者の相手を押し付けるだけならまだしも、こちらの障害にもなり兼ねないのだ。
だからこそルルーシュは都合の良い相手だった。
殺し合いに乗っておらず、尚且つ勝利の為には手段を選ばない。
しおとの生活を守る為に異常性癖の男を利用していたが、ルルーシュの危険性はその比ではない。
同時にあの手のタイプは、結果を出せばとやかく文句を言わない筈。
しおと二人での生還に向けてルルーシュやルルーシュの勢力を利用し、向こうも向こうで打倒羂索の駒に自分を利用する。
だから加入の条件とは少々違うもカードデッキと、アーリャの残したアタッシュケース。
それともう一つ、彼女のレジスターを持って行けば功績が認められ幾らか融通が利くかもしれない。
卜部達が戦闘に集中しており、こっちへ気を回す素振りも無い。
早急に手首を斬り落として、彼らとはおさらばしようとし――
「はーい、そこまで♪」
全身を虫が這いずり回るような、寒気のする声で囁かれた。
◆◆◆
「やっぱり私の趣味じゃないのよねぇ」
落胆気味に呟くノワルに見上げられ、ソレは唸り声を一つ返す。
胴体も、頭部も、首も、翼も、尾に至るまで全てが白。
唯一ダイヤモンドを填め込んだと思わせる瞳は青く輝き、自らの召喚者を射抜く。
会場に放たれたNPCのモンスターとは一線を画す存在感。
青目の白竜(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)、ある世界において知らぬ者はいないとされる伝説のドラゴンであった。
クレーターに変えたF-7に背を向け暫く経ってからのこと。
このまま徒歩で進むより、支給品を使った方が体力と時間の節約になると考えた。
マジアベーゼ達との戦闘では、自身の魔法のみで十分有利に戦況を運べた為使用の機会は訪れず。
しかし戦い以外の方法でも役立てられるなら、使わないで腐らせるのも勿体ない。
そう考えて取り出したのが一枚のカード。
遊戯十代に支給されたエルドリッチと同じ、モンスターを現実へ召喚可能に細工された代物だ。
現れたブルーアイズに触れてみると、本物の生物としか思えない感触があった。
説明書の内容に嘘は無く、取り敢えず使い物にはなるらしい。
とはいえ、ノワル自身はこういった巨大なドラゴンに胸を躍らせる趣味は持ち合わせていない。
ブラックマジシャンガール等ならばまた違ったろうが、支給されたカードはこれ一枚。
海馬瀬人のエースモンスターも、能力はともかく外見はお眼鏡に叶わなかった。
「ま、しょうがないか」
召喚可能な使い魔にも制限が施されており、元の世界に比べて手数が足りないのは事実。
不満ではあるも今の自分が使える手札の一つ。
ため息をつきながら跳躍、巨躯へ腰を下ろす。
召喚者の命令は絶対とプログラムされているのだろう、指示を出せば翼を広げ上昇。
ここから北上すると、ルルーシュのいるテレビ局に着く。
少女ならまだしも男であれば食指も動かず、邪魔なのでさっさと殺しておきたい。
が、洗脳魔法への対策が不完全な現状で突っ込む気は皆無。
よってテレビ局は後回し、悪逆皇帝の根城からは遠く離れて行った。
マジアベーゼや千佳にしてやられた苛立ち、イドラとマジアマゼンタを逃した悔しさ、あの場で唯一の男のアルカイザーを仕留め損ねた不快感。
まだ見ぬ美少女達への期待の裏で、自分をコケにした連中への怒りは健在。
燻る負の感情は空のドライブ中、撫でる風により火照り気味の頭が冷やされ落ち着いて考えられるようになった。
二度目の再会時にしっかり報いを受けさせるのは変わらないが。
西へ進み目を引いた巨大な施設、コーカサスカブト城を次の探索場所として降り立った。
よくまあこんな城をわざわざ殺し合いの為に建てたものだと、呆れとも感心とも付かない顔で見やる。
貧相な家々が並ぶ租界エリアには不釣り合いな程に荘厳だ。
本来の立地場所であるシュゴッダムのような煌びやかさは、敗戦国として追いやられた日本人の住処には存在しない。
所々に歯車が組み込まれた内装の廊下を進んで行く。
結界が使えたら拠点候補の一つに数えたが、封じられている為実現はしない。
「あら?」
やがて辿り着いた一際広大な空間、玉座の間に異物を見付けた。
大層金と手間を掛けたドレスは赤く汚れ、纏う者の肌は色白を通り越して死人のよう。
いや、これは本当に死んでいる。
先客が現れ既に一人殺したのか、それにしては周囲に血痕が見当たらない。
偶然外で見付けた死体を野晒しにするのも忍びなく、場内へ運んだといった所か。
死体の傍には支給品袋があり、中を見ると道具を取り出した形跡は無し。
(ここまで運んだ誰かさんは、荷物を持ち去る余裕も無かったってこと?)
死体とは顔見知りの何者かが運んで来たものの、支給品の回収も忘れる程に動揺していた。
或いは回収する前にアクシデントに見舞われ、放置せざるを得なかった。
理由が何にしろ、ノワルにとっては苦も無く道具が手に入るのだから運が良い。
ついでに指先へ薄っすらと魔力を通し、死体の手首を斬り落とす。
念の為レジスターも手に入れて損はないだろう。
残った死体には興味も湧かず、玉座の間を後にする。
城内の探索を続け、やがて騒がしさが耳へ届いた。
先客はまだ城の中に留まっていたらしい。
男か女か、殺害か確保か。
どっちにしろ見逃す気は無い、軽い足取りで戦場へと足を運んだ。
◆◆◆
「残念、外れを掴まされちゃったわ」
あからさまに肩を落とし、部屋に集まった面々を見回す。
装甲を纏った者と青いタヌキのような生物、そいつらと戦闘中の剣士。
前者二名は言わずもがな、剣士も魔力は感じるが男。
魔力サーバーに変える気は微塵も起きず、萎えた気分が抑えられない。
「どうせ楽しむなら、やっぱりこっちよね♪」
シラケた顔から一転、妖しく微笑み足元の少女を見下ろす。
両手両足を黒い革ベルトで拘束されたさとうだ。
見付けるとパパっと闇檻で動きを封じ、抵抗出来なくしてやった。
千佳と同様に魔力を感じないのが残念だが、顔は文句なしの美少女。
最初に会った一団といい、女性参加者達は揃って容姿のレベルが高いのかもしれない。
(だから余計に勿体ないのだけどねぇ)
惜しいと言わんばかりにため息を零す理由は、ドアの下敷きとなった少女の死体。
玉座の間で見付けた参加者…ローラもそうだけど、自分と会う前に死んでしまったのは残念でならない。
選別で殺すにしても、生きてる内に会いたかった。
決して善意からではない口惜しさを感じるノワルを睨みながら、さとうはどうにか抜け出せないかと考える。
耳元で囁かれたと思えば黒い霧が見え、あっという間にこの状態だ。
どうしてこうも邪魔者ばかりが現れるのか。
「な、何をしてるんだ!?」
異変に気付いたドラえもん達も、意識がノワルへと移る。
どこからともなく現れ、有無を言わさずにさとうを捕らえた。
到底友好的な人物とは思えず、警戒を抱くのは当然。
一方ノワルはぶつけられる敵意へ、侮蔑を籠めて睨み返す。
殺し合いたければ勝手に三人でやってれば良いだろうに、全く鬱陶しい限りだ。
「その女の子を放し――」
「っ!ドラえもん離れろ!」
ドラえもんが最後まで言い切るのを待たず、彼らの周囲へ黒い霧が出現。
真っ先に反応できたのはアレフだ。
魔物や呪文が当たり前に存在する世界の住人だからこそ、接触は危険と即座に察し回避。
次に動けたのは卜部。
ブリタニアとの戦争で培った危機察知能力は健在、咄嗟に躱そうと動く。
反応が最も遅れたのはドラえもん。
二人に比べて劣っている訳ではない、しかし常日頃から戦いの中に身を置いてる訳でも無い。
僅かな差が影響しあわや闇檻の餌食に、となる寸前で卜部がどうにか突き飛ばす。
「う、卜部さん!?」
「何だこれは…!」
身代わりとなった卜部は一瞬で鉄棺に閉じ込められた。
アルカイザーの時と同じだ、男の拘束姿など見たくも無い。
当然これだけでは済まず、機械の稼働音と共に棺は少しずつ狭まる。
放って置けば圧し潰されて、絨毯のようになった死体の完成だ。
「っ!ドカン!ドカン!」
空気砲を放つも鉄棺はビクともせず、ほんの少しの傷も付かない。
内部からは卜部が破壊を試みるも無駄な抵抗だ。
アルカイザーですら正攻法では破れなかった魔法には、月下のパワーでもどうにもならない。
圧し潰されるまでの時間を、ほんの少し延長するのが限界だ。
焦る卜部達を尻目に、アレフはノワル目掛けて掌を翳す。
初めて見る強力な魔法に加え、鳥肌が立つ魔力。
竜王と戦った時にも引けを取らない緊張感に、最優先で殺すべき危険人物と認識。
まずは厄介な魔法を封じるべく、マホトーンを唱える。
そこから速攻で斬り掛かるまで。
「なあっ!?」
組み立てた戦法は実行に移す前に潰された。
壁をぶち破って現れた巨竜が、アレフを喰い殺さんと大口を開けて迫る。
これには呪文詠唱も中断せざるを得ず、急遽回避行動へと移行。
「適当に殺しておきなさい。私は忙しいの」
仮の従僕であるブルーアイズへの指示もそこそこに、ノワルの興味はさとうのみに向けられる。
まずは軽く味見から始めよう。
頬に手を添え、固く結んだ唇に自分のを重ねる。
「……っ」
逸らそうと藻掻く顔を固定し、ニュルリと舌を侵入。
歯の一本一本を舌先で突き、裏側までもを舐め取る。
それが済んだら頬の内側、続いて歯茎をなぞりべっとり這わせた。
子供がアイスキャンディーを味わうような丹念さで。
「……っ!」
最後は自分とさとうの舌を鎖のように絡ませる。
拒絶のつもりか必死に奥へと引っ込めるも、実に無駄な抵抗だ。
根元を舌先でくすぐってやれば動きが止まり、すかさず畳みかける。
ゴクリゴクリと、わざと音を立ててさとうの唾液を飲み干してからようやく解放。
「ん〜、やっぱり魔力は期待できそうもないわね。空のペットボトルって表現、この子にもしっくり来るわ」
イドラとマジアマゼンタという甘美な魔力を味わった後では、常温の水のような味気無さだ。
魔力が無いなら無いで楽しみ方はあるのだが。
(気持ち悪い…苦い…苦い苦い苦い…!)
身勝手な評価を下されたさとうからすれば堪ったものじゃない。
チョコレートよりも滑らかで、アイスクリームよりも蕩け、どんな菓子よりも甘いしおとは大違い。
流し込まれた唾液は泥水にように不快で、絡めた舌はナメクジのように気持ち悪い。
愛が分からず男遊びを繰り返した時なら、ディープキス程度何とも思わなかったろう。
けれどもう違う、耐え難い苦みが胸の内から広がり体中を蝕む。
四肢が自由なら今すぐにでも口を塩水で濯ぎたかった。
口内に溜まった不快感を少しでも誤魔化したくて、歯をキツく噛み締める。
抵抗と拒絶を籠めた態度は当然目の前の魔女にも見えた。
「ふうん……」
それを子供の可愛らしい抵抗と、大目に見てはやらない。
どう遊んでやろうか長々と考える必要も無くなった。
「うふふ♪決めたわ、あなたをどんな風に可愛がってあげるか。聞きたい?」
「そんな訳ないでしょ…」
「まあそう言わずに、ね?えっちなことをなーんにも知らない子を、ちょっとずつ開発してあげるのも良いけど…」
顔を近付け笑う。
三日月のような裂けんばかりの口は、魔女と呼ぶに相応しい残酷な喜びが宿っている。
「生意気な女の尊厳を徹底的に踏み躙ってあげるのも、大好きなの♪魔力サーバーに出来ないのは残念だけどね」
闇檻を使いさとうの拘束具を増やす。
革ベルト二本が巻き付き、意識せずとも胸を突き出す体勢になる。
ファーストリコリスの制服越しに強調される膨らみ。
更には顔の下半分を覆う口枷を装着。
本来は魔法使いの呪文詠唱を封じるのに使うが、趣味の面でも使用頻度は高い。
目隠しはあえて無しだ、今回は目が見えた方がこっちも楽しめるのだから。
単に動きを封じるだけでは無い、見る者の性欲を掻き立てる為の拘束。
不快感と嫌悪が増し、唯一自由に動かせる両目で最大限の侮蔑をぶつける。
これが単なる変質者の類なら、眼光に怯んだかもしれないがノワルには却って「その気」にさせるだけだ。
そしてさとうが強気な態度を取れたのは、この瞬間に終わりを告げる。
「………っ!!!??!」
ビクンと、全身を跳ね上げる。
両手両足を動かせず、声も出せないまるでまな板の上の魚のよう。
それを人間、しかも10代の少女が行うのは酷く滑稽だ。
だがさとうだって好きでこんな動きをした訳じゃない。
(胸が……)
熱くて、ビリビリする。
いきなり右胸に未知の刺激が走ったかと思えば、全身へ伝達。
縛られた体ではおかしな動きでしか、奇怪な感覚に抵抗できない。
「まだ付けたばっかりよ?この程度で驚いてたら、この先どうなっちゃうのかしら?」
原因を作ったのは案の定ノワルだ。
さとうの右胸、制服に隠れた桃色の突起部分へ装着されたピアス。
ただのアクセサリーではない、感度上昇の効果を秘めた一種の魔具である。
ノワルが本来辿る筈の未来において、炎獄の名を持つ魔法使いの調教に使った物。
魔法とは無縁の少女をへし折る為に出番が回って来た。
「最初はちょっと痛いけど大丈夫。だってすぐに…」
人差し指を見せ付けるように伸ばし、ゆっくりとさとうの体をなぞる。
たったそれだけで体の奥から熱が溢れ出す。
直接触れられていない、制服の上からだというのに。
「気持ち良くなるわ♪」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ピンッと、指で軽く弾く。
ピアスが金属音を鳴らし、当然振動は装着された乳首にも走る。
やったのはそれだけ、なのにさとうは意識が数秒吹き飛ぶ快感を覚えた。
何も考えられない時頭が真っ白になるとは喩えられるが、正にその通り。
考え続けねばならない全てが、一瞬で塗り替えられる。
「ふーっ…!ふーっ…!」
口枷を自身の唾液で濡らし、興奮で息が上がる。
ほんの僅かな間でも、自分の頭からしおのことを追い出そうとしたのだ。
湧き上がる殺意が快感を塗り潰す。
「あら、耐えるの?それじゃあ、もっと必死になってみせなさい♪」
「…っ!?」
制服の上からピアスを摘まみ、軽く引っ張り上げる。
再び全身が鯉のように跳ね、負けじと両手をキツく握り締めた。
爪が食い込む程の力で痛みを引き出し、少しでも正気を保つ為に。
「えい♪えい♪」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?!う゛…!う゛ー…!!」
一度だけなら、ギリギリの所で凌げただろう。
でも二回三回四回と、繰り返し引っ張られれば。
ピアスを無理やりに装着された挙句、ゴムのように乳首を摘ままれる。
普通なら痛いだけなのに、今のさとうにはその痛みすらも快楽に変換されてしまう。
口枷を噛む力を強めるも、絶えず襲う刺激に顎の力も抜けていく。
「ほらほら♪頑張れ♪頑張れ♪」
「う゛う゛う゛……!…っ!!」
ピアスを掴んだまま、上へ右へ左へ異なる方向へと引っ張る。
少女の胸を愛撫するとは思えない、まるで玩具のような扱い。
それすら気持ち良いと思ってしまう己への嫌悪を抱くも、快楽の二文字に洗い流される。
胸の奥にはずっと苦さが広がり続け、一方で体は飴玉のように溶かされていった。
「はいお終い♪」
上へ上へと引っ張り、合図と同時に放す。
乳房全体へ行き渡る振動は、体中のまさぐられているのにも等しい。
一際大きく跳ね、パチパチと火花が散る感覚を覚えた。
「よく頑張ったわね、偉い偉い♪」
自身の胸に抱き寄せ、優しく頭を撫でられた。
我が子を愛する母のようだと、台詞だけなら勘違いされるだろう。
実際には唾棄すべき毒婦であり、さとうの神経をこれでもかと逆撫でする。
両手が使えたら顔に押し付けられる胸を、裁断ハサミで引き裂いてやりたい。
怒りとは裏腹に未だ体の自由は利かず、どうにか息を整えるのが精一杯だ。
「そんなに頑張れるなら〜…」
ほんの僅かな休憩時間は終わり、地獄が再開される。
「もう一個追加してあげる♪」
「ぅ゛お゛っ!!!??!」
女子高生とは思えない声が出た。
獣か、或いは浅ましい家畜のような鳴き声。
左の乳首にピアスが装着され、痛みとも快楽とも判断の付かない感覚が襲う。
白目を剥きそうになり、意識が飛び退く。
「よーいスタート♪」
「んんんんん…!!!ん゛ん゛っ!!?!」
気絶は許されない。
意識を落とせば楽になれるが、ノワルの手で無理やり現実へ引き戻される。
左右のピアスを摘まみ交互に動かす。
両手がリズミカルな動きを行う度に、乳房が揺れ再び何も考えられなくなった。
先程からずっと弄られてるのは胸だけ、だがここで攻める箇所を増やす。
「こっちはどうかしらね」
「ふううううううう!!」
「うん、ちゃんと感じてるみたい♪」
顔を近付けるや否や、伸ばした舌を耳の中へ潜り込ませる。
耳掃除で綿棒を入れるのとはまるで違う。
生暖かく濡れたモノが内側を舐め回し、途端に鳥肌が立つ。
こんな事をされても、単に気持ち悪いだけ。
「でも気持ち良いのよね?」
「んんんんん!!ん゛ん゛う゛う゛っ!?」
最早脳まで舐めしゃぶられてるのではと錯覚する気持ち良さに、思考は崩壊寸前だった。
いっそこのまま身を委ねれば楽になれるのだろう。
その選択を絶対に取らないからこそ、さとうは苦しみ続けているが。
思い出されるのは松阪さとうを形作った、忌々しい部屋。
血と暴力と、むせ返る性の臭いで満ちたあの人の城。
本当の愛を知っても切り離せない毒が、ポタリポタリと垂らされる。
(しお…ちゃ……しおちゃん……)
空っぽの瓶を満たすあの娘の為になら、どんなことだって出来る。
心にもない愛を嘯くのも、肌を晒すのも、口付けするのも。
じぶんとしお、二人だけのハッピーシュガーライフを守れるなら。
どんな地獄にも耐えられる。
体を弄ばれたって、心は絶対にこんな変態女の玩具にはならない。
望まない快楽の波が押し寄せる中、さとうは負けてたまるかと口枷を噛み、
目も空けられない光に焼かれ、後には消し炭すら残らなかった。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
何が起きたのか理解が出来ない。
右を向く、自分としおの部屋では無い床が見えた。
左を向く、乾いた血の上に横たわる銀髪の少女が見えた。
下を向く、黒い革ベルトで身動きの取れない自分の体が見えた。
ああつまり、ここはさっきまでと同じ殺し合いの舞台。
変化は何も起きていない。
違う、自分は今確かに死んだ。
光に焼き潰されて消えてしまった筈なのに。
一体どうなっているのか分からない。
いつの間にか、自分を蝕む快楽すらも抜け落ちたと気付く事も出来なかった。
「なん…だと……」
混乱に陥っているのはアレフ達もだ。
今の今まで白い巨竜を相手取っていたのが、気付けば自分は死んだ。
いや、現実にはまだ生きている。
ローラと同じあの世には、行っていないのが正しい。
だけど確かに、自分が死ぬ感覚を味わった。
ドラえもんと卜部も同様である。
スクラップなど生易しい終わりを与えられた。
鉄棺に潰される方が遥かにマシな死が訪れた。
生きているにも関わらず、ハッキリと己の終焉を見たのだ。
ただ一人、ノワルだけは表情を消し一点を睨む。
さとう達に起こった現象が何なのか、彼女には分かった。
誰が信じられようか、圧倒的な存在を感じ取っただけで、自分達の死をイメージしてしまったなど。
馬鹿げている、しかしそれが答えと即座に思い知るだろう。
彼らの目に、ソレはどう映ったか。
ソレは、創世と滅亡の担い手である。
ソレは、完全なる世界を目指す希望である。
ソレは、滅罪の洪水で以て邪悪を断つ善である。
ソレは、授かりの英雄“だった”男である。
だが結局のところ、ソレを表す為に言葉は一文字で事足りる。
ソレは、神である。
「あなたは、なに?」
魔女の問いに神は答えを返さない。
返す必要も無い。
神は彼らを「視た」、それが全てなのだから。
◆◆◆
時が止まったかの光景だった。
コーカサスカブト城に集まった5人の参加者。
ほんの数分前まで争い、己が欲を発散していた彼らは現在、たった一人の登場に動きを止めていた。
若しくは動けないと言うべきか。
人の形をしていながら、人では無いと生まれたばかりの赤子ですら理解せざるを得ない男。
黒く輝く神の名を知る者は城の中におらず。
なれど、空想の根を断つ異聞帯の破壊者、カルデア所属の二人がいれば口にしただろう。
アルジュナ、と。
永遠の静寂は神の求める所に非ず。
一歩、また一歩と歩み凍結された時が徐々に熱を取り戻す。
ス、と。
速くも無ければ遅くも無い、取り立て注目する必要も無い腕を上げるという動作。
その一つをアルジュナが行えば、大きな意味が生まれる。
「…あっ」
呆けた声が自分の口から出たと、卜部は気付けただろうか。
自分を圧し潰す黒以外何も見えなかった筈が、いつの間にやら瞳は元の光景を映し出す。
仲間がいる、敵がいる、そして、神がいる。
恐れにも似た不可解な衝動に、卜部は堪らず眩暈がした。
ゼロの放つカリスマとはまた違う、しかし惹き付けられてやまない存在感。
頭の中からはもう、自分を閉じ込めた鉄棺など霞のように消え去った。
「……」
一方でノワルは表情を変えないまま、警戒度を一気に引き上げる。
腕を上げ掌を翳した、アルジュナがやったのはその一つのみ。
たったそれだけで闇檻を消し去ったと、数分前の自分に言っても絶対に信じやしない。
ここからどうするべきか。
好みの少女以外の参加者は余程の事が無い限り、排除一択。
スタンスを今更変えるつもりはない。
しかし、自分達の前に現れたこの男に迂闊な真似は禁物。
久しく味わう緊張感を気の迷いと切り捨てはせず、相手の出方を見極める。
全員の意識を一身に集め、神はゆっくりと口を開く。
人間達を『視た』時点で既に、やるべき事は決まった。
己が創る世界へ存在する資格は――
「………武具を持ち……血を流し……戦の火種となる不出来……」
感情を母の子宮に置き忘れたが如き声。
到底生物から発せられるとは思えぬ程に、籠められたモノを感じられない。
怒りはない、嫌悪もない、憎しみも無ければ蔑みも皆無。
面と向かって敵意を向けられたのでは無い筈。
なのにどうしてか、卜部は冷や汗が止まらなかった。
神が自分の方を見る。
続く言葉は紡がれず、されどこれはマズいと理解した。
頭で考えたのではない、陳腐な言い方だが直感で分かったというべきか。
カラレスに襲われた時の比で無い、正真正銘の地獄が始まろうとしている。
「――――ッ!!!!!!」
最初に動いたのは誰か、互いの様子を確認する余裕は爪の先程もない。
アルジュナの周囲に浮遊する光球が熱を帯び、存在を認めぬ罪人達への裁きを下す。
ランドスピナーの回転数を最大まで速め回避。
複数機からスラッシュハーケンを伸ばされようとも、掠らせずに躱せるスピードだ。
「ぐ…!」
だが遅い、神罰を遠ざけるには速さが足りない。
熱線が脚部を焼き、瞬く間に使い物へならなくなった。
月下の外部装甲が解け落ち、内部パーツは機能停止。
僅かに掠めただけでこの被害なら、直撃すればどうなるか想像に難くない。
「チッ…」
離れた位置ではノワルも卜部同様回避へ動く。
横目で右肩を見やれば衣服が焦げ、その下の白い肌に傷が生まれている。
闇檻の脅威を知る者が見たら目を剥くだろう。
ノワル自身、薄々こうなる予感はしていたが、いざ本当になると知らず知らずの内に表情が険しさを増す。
一度避けて終わりに非ず、光球が再度魔力を収束。
またもや狙われた卜部を庇い、ドラえもんが前に出た。
ロボット故の打たれ強さも神の放つ光には無力、そんなのは百も承知。
無策で飛び出したつもりはない、闘牛士のように真紅のマントを構える。
矢や魔法、24世紀の技術で生み出された兵器すら跳ね返すひみつ道具だ。
殺し合いでハドロン砲を防いだ時同様、敵の攻撃を利用し光球を破壊せんとし、
「ひら――!?」
無駄に終わる。
単純な話だ、熱線の発射速度がひらりマントを振るう速さを上回った。
目論見は崩れ、哀れな機械人形が脱落者に名を連ねる。
驚く程でも無い、神を前にすれば当然の結末。
「っあああああああああああ!!」
否を唱えるは彼の仲間。
もう片方のランドスピナーを走らせ、不格好な体勢ながらドラえもんを突き飛ばす。
顔面間近を光が通り過ぎるも、青い体のどこも焼かれずに済んだ。
二度目の神罰回避に成功、とはいえ代償は決して軽くない。
「う、卜部さん…!そんな……」
「ぐ…し、心配するな。生きてるだけ、儲けもんだ…」
顔は見えずとも、苦悶に歪んでいるのが分かる。
当たり前だ、先程まで当然のようにあった部位。
左腕が月下の腕部諸共焼き切られ、肉を焦がした臭いが立ち込めていた。
ラウンズ専用の機体程で無いとはいえ、月下の耐久性は低くない。
しかしアルジュナ相手には紙人形とさして変わらないのが現実だ。
傷口が焼かれ失血は免れたと言っても、何の慰めにもならない。
「ベギラマ!」
負傷が重い者がいる一方で、未だ戦闘継続が可能な者は反撃に出る。
驚異的な威力の魔法は竜王相手で経験済み。
避けた際幾らかの火傷こそ負ったが、戦意喪失には程遠い。
掌に魔力を掻き集め、光の竜へと変化。
魔王にも深手を負わせたアレフの呪文が、神相手に牙を剥く。
輝きに飲み込まれ骨まで溶かされる。
という野良モンスターと同じ末路が訪れる筈も無く、牙が突き立てられる寸前でアルジュナは消失。
より正確に言うなら、消えたとしか思えない速度で動いた。
何処へ逃げたと探す猶予はアレフに与えられない。
「なにっ!?」
数分前までアレフを襲っていた巨竜、ブルーアイズを蹴り飛ばす。
悲鳴を上げ自身へ迫る巨大生物は、さしものアレフも顔を引き攣らせる。
サッカボールのように雑に扱われたが、人間一人を圧し潰すには過剰な重さだ。
しかも細い脚にどれ程の力が籠められているのやら、馬鹿にできない勢い。
アルジュナへの攻撃は中断し、急ぎブルーアイズから距離を取った。
泡を食う者達から不意に視線を外し、残る一人の下へ降り立つ。
自由を封じられ、なれど生きる意志は未だ健在。
芋虫のように滑稽で見苦しく足掻く少女を、神の瞳が捉えた。
「……っ」
視線を合わされ、さとうを絶大な恐怖が包み込む。
さとうにとっての恐怖とは、しおを喪うこと。
しおとの生活が消えてしまう以上の恐怖は無い。
だというのに、一向に神への恐れは消えてくれなかった。
他の四人と違って危害は加えられていない。
見られた以上の事は何もされていないのに、体中が震え出す。
動悸が激しさを増し、息苦しくて仕方ない。
口枷を填められたままなのだけが、理由では無いだろう。
「……え、あ……」
唐突に息苦しさが僅かながら薄れた。
どうして急にと不可思議に思い、口が動かせると気付く。
まさかと頬を触ってみれば案の定、忌々しい口枷が消えている。
と、遅れて両手の自由も取り戻せたのを頭が理解。
散々弄んだ感度上昇の魔具も含め、拘束具は綺麗さっぱり無くなった。
何故急にと考えるまでもない。
いとも簡単にやってのけた男へ恐る恐る視線を戻し、
「神将には…至らずとも……兵にはなる……それも手か………」
「なに言って…!?」
疑問への答えは返されず、代わりに頭部を掴まれた。
アルジュナが思い出すのは、自身が君臨した異聞帯での記憶。
異星の使徒から助言と称し齎された内の一つ。
神の加護を宿した英霊達を、神将(ローカパーラ)として使っていた。
辺獄を名乗る術者が不在の地で、新たな神将の召喚は不可能。
だが召喚術式が無くとも、代用品なら手に入る。
「汝を…突き動かす……その不出来は……私の兵に不要だ…………」
神性を貸し与えるだけでは駄目だ。
仮にも神の配下として動かすならば、不出来を取り除かねばならない。
医神は己を身籠った母の記憶を奪われた。
老年の英雄は自身が理不尽から救った息子の記憶を奪われた。
そして砂糖少女からは、空の瓶に詰め込まれた愛を奪う。
「っ!いや…離して…!離せ…!!」
拒絶の言葉は神の耳に入らない。
さとうがどう思おうが、神の決定の前には無関係。
最初から応じるか否かは求めておらず、聞き入れる気など無かった。
(なにこれ…!いや…いやいやいや!入って来ないで…!私としおちゃんの間に…駄目…こんなの駄目…!しおちゃんが消えて――)
消えていく。
彼女の笑顔が、彼女の匂いが、彼女の温かさが、彼女への愛が、彼女との記憶全てが。
雨の日に見付けた、去って行く誰かの背をじっと見つめる彼女を。
他人の為に初めて必死になれたあの日。
自分に愛が何なのかを教えてくれた、自分だけの天使が。
砂糖菓子の詰まった瓶は引っ繰り返された。
コロコロコロと落ちていく愛を、拾ってくれる彼女はいない。
閉める筈の蓋も見当たらず、一つまた一つと失われる。
神戸しおとのハッピーシュガーライフは、神の兵には不要だ。
満ち溢れる筈だった瓶は再び空へ――
「私のモノに勝手なことしないでくれる?」
カチリと、聞こえない筈の音が聞こえた。
逆さまに振っても、もう砂糖菓子は零れ落ちない。
失くさないようにと蓋をしたのは、誰よりも甘い彼女ではない。
急に手を離され尻もちを付き、さとうは青褪めた顔で視線を動かし、
「ちょぉーっと向こうに行っててね♪」」
「え、あぐっ!?」
襟首を掴まれ投げ飛ばされた。
遠ざかる景色の中に、黒い霧が男を包むのを確かに見て。
「全く…私を差し置いてふざけた真似するじゃない」
表情こそ笑みを作っているが、目は全く笑っていない。
見る者に寒気を抱かせる顔で、ノワルは神と対峙する。
しおの記憶消失を防ぎ、さとうを助ける形となったが勿論善意からな筈も無く。
マジアマゼンタたち正義側の少女を思い出し今更心を動かされた、などと有り得ない。
あっさり考え方を変えるようなら、今頃はマジアベーゼと魔法少女の堕とし方談義で盛り上がっていただろう。
さとうは自分が先に手を付けたのだ。
後から現れ勝手に上書き調教を始めるのを、許可した覚えは全く無い。
生かすも殺すも、所有者である自分一人の特権。
横取りしようとは笑止千万。
汚らわしい不届き者に罰を与えるべく、固有魔法の餌食にしてやった。
神の全身を覆った霧は晴れ、下賤な男を閉じ込める鉄製の棺が出現。
そして至極当然の如く棺は消失し、傷一つ無い神が現れた。
「……まあ、そうなるわよねぇ」
心底うんざりしたように吐き捨てる。
卜部やさとうの拘束具を消し去り、自身の周囲に配置した“闇檻収監”発動用の霧を突破。
固有魔法を二度も打ち破られれば、流石に三度目も想定内。
ついでに相手がどうやって闇檻を無効化したのかにも、見当は付く。
イドラのように令呪を使った痕跡はない。
アルカイザーのように支給品の力を借りたのではない。
マジアベーゼのように拘束の概念同士をぶつけ相殺してもいない。
ラブリーチカのように土壇場で使えるようになった固有魔法な訳もない。
答えはもっと単純。
アルジュナの内包する魔力、或いは神性とも呼ぶべき力がノワルの魔法を上回るレベルで桁外れ。
だから闇檻でも捕らえられないのだ。
俄かには信じ難い、だが実物を見れば納得するしかなく。
全く持って腹立たしい限りであり、同時にノワルをして非常に危険な相手と認識せざるを得なかった。
厳密に言うと、固有魔法が完全に無効化されているのとは違う。
インド異聞帯の王とて、殺し合いの一参加者。
当たり前だが元の状態で放り込んではパワーバランスがあっさり崩壊し、それ以前にバグスターウイルスで縛り付けるのも不可能。
主催者達の手で厳重な制限を施され、ようやくプレイヤーに落とし込んだ。
今のアルジュナは異聞帯に君臨した頃よりも弱体化を余儀なくされている。
現に闇檻で囚われた際も、指二本で数えられるかも怪しい時間のみだが効果はあった。
加えてノワルも制限の対象に選ばれたが、闇檻自体滅多なことでは破れない強力な魔法。
神が力を削がれた現状、全く効かないとはならない。
カルデアの関係者達や、神将にとってはこれだけでも驚くべき光景だろう。
ノワル本人にしてみれば、大した慰めになるかも怪しいが。
「……」
眉を顰める理由は固有魔法が破られたからだけではない。
男が絶大な力の持ち主なのは察せられる。
だから余計に分からない。
これ程の力を我が物にしておきながら、異様なまで男の欲が希薄な訳が。
力を振るう、或いは言葉を紡ぐ場面を見れば大抵の相手の性質は察しが付く。
他者への献身を第一に考える者、暑苦しい正義に燃える者、自分に近しい者等々。
しかし男からは何も感じられない。
強大な力を行使しても、誇示する意図や暴虐な振る舞いへの快感はゼロ。
蹴散らされた連中を見下ろす瞳に、蔑みや嘲笑はまるで宿っていない。
さとうを望むままに作り替えようとした時だってそう。
仮にノワルが男の立場なら、趣味嗜好を果たせるのだし楽しいに決まってる。
けど相手は醜い男の支配欲はおろか、その他に僅かなりとも感じるだろうものが一つも無かった。
「どうして殺し合いに乗ったの?まさか、何の理由も無いってことじゃないでしょう?」
男の参加者のスタンスなど、本来はどうだっていい。
しかし自分でも目を見張る強者とあれば、全く興味が湧かないとは言い切れず。
返答には期待しないで、問い掛けた。
どうせ素直に答えはしないだろうに何を言ってるのやらと、内心で自分に呆れつつ耳を傾ける。
「愚問……私の望みは……世界の救済のみ……」
「……………は?」
「ユガを繰り返し……果てに全ての邪悪は断たれ……真に善なる者のみが残る世界の……創造が叶う……」
「あなた…」
「戦に身を委ねる者……争いを強いる者……等しく不要だ……」
自我が存在するのかも定かではない、機械の読み上げ染みた言葉の羅列。
話した全てが答えだと黙り込む神に、ノワルも暫し言葉が出ない。
のっぺりと張り付けた笑みを向け、再び口を開くまでに数秒を要した。
「それ何かの悪ふざ――ああ待って、今のなし。どう考えても冗談言うタイプじゃないもの」
自分で言ってて可笑しかったのか、薄っすら笑いが漏れた。
答えは聞けた、その上で断言しよう。
この男はどうしようもなく壊れている。
世界平和を臆面も無く口にする輩は、魔法使いにも珍しくない。
大抵は口先だけの偽善者か、信念があっても力が足りない半端者だが。
では男もそういったタイプかと言うと全く違う。
先程自分達を攻撃した際の言葉を思い出す。
武器を持って争うから、生かす価値は無いと取れた。
もし、もしこの場に現れたのが争いを快く思わない、例を挙げるとすればマジアマゼンタ達か。
彼女達なら警戒しつつも状況の把握に努め、戦うべき相手を見極めるだろう。
何せ卜部と呼ばれた男やドラえもんなる青タヌキは、興味無さげにチラ見した自分でも殺し合いに乗っていないと分かる。
だが男は戦っているという理由のみで、殺し合いでの明確な方針関係無く殲滅へ動いた。
正しさを突き詰め過ぎた結果、致命的に間違えている。
そのような男が創る世界がマトモかどうかなんて、自分じゃ無くても分かる。
単なる独善的な馬鹿であればまだマシだ。
質の悪いことに、男の力なら本当に理想を叶え兼ねないのが笑えない。
「…私にも叶えたい願いがあるのよ。勝手にこんな場所に連れて来て、余計な枷を付けたのは許せないけど…色んな世界から参加者を集めるっていうのは、悪くないわぁ」
ノワルが自分以外の参加者に対するスタンスは、今更長々と説明するまでもない。
特に気に入った少女は魔力サーバーに変え、絶対に持ち帰る。
好みではあるけど上記の存在に及ばない少女は、残念だが間引く。
男は一切必要無い。早急に殺すか、アルカイザーのように余計な真似に出た者は苦しめて殺す。
「だからね?ここを私好みに作り替えて、色んな世界の女の子を集めた私だけの楽園(パラダイス)にするの♪」
しかし今、新たにもう一つ付け加えねばなるまい。
同じくこの瞬間、己に課した枷を外す。
主催者に施された制限では無い。
先の戦いで、ノワルはマジアベーゼ達を殺そうと思えば即座に殺す事も出来た。
闇檻で捕らえた後、凝縮をすれば一瞬だ。
抵抗どころかロクに悲鳴を上げるのも許さず、圧縮してしまえば良い。
そうしなかった理由は複数ある。
イドラやマジアマゼンタ等、魔力サーバーとして目を付けた者達を殺す訳にはいかないから。
マジアベーゼや千佳等、自分を苛立たせた者達には相応の苦しみを与えたかったから。
同様にアルカイザーもすぐに殺すよりは、可能な限りの苦痛を与えてから殺そうとした。
生来の加虐気質も影響しており、だからこそ付け入る隙にも繋がったが。
「その為にも――あなたは邪魔よ」
だが今回に限り、ノワルは遊びを完全に捨てる。
力を感じ、言葉を交わし、確信を抱いた。
コイツは確実に排除しなければならない敵だ。
屈辱を与えて殺す?可能な限り苦痛を長引かせる?そこいらの目障りな男のように蹴散らす?
馬鹿を言うな、そんな生温いやり方が通じるものか。
部屋中が、いやコーカサスカブト城内の空気が軋み出す。
苛立ちに非ず、不快感に非ず、加虐心に非ず。
純然たる殺意に支配され、ひれ伏すべき存在が誰かを叩きつけた。
13の災害が一人、闇檻のノワル。
人類の敵と恐れられた正真正銘の魔女である。
「汝は……不要……私の世界に……存在することは……認めない……」
魔女の殺気を浴び、尚も神は不動。
恐れる理由が、神が怯え首を差し出す道理がどこにある。
互いを視る。
完全なる世界から消し去るべき悪を。
自分だけの理想郷を破壊する敵を。
最早彼らの間に言葉は無用。
互いの死だけを望む、神と魔女の闘争が幕を開けた。
◆
チータローションを出してくれ。
血相を変えた卜部の言葉に、どうして聞き返す事もせず言われた通りにしたのか。
後になっても、正確な理由はドラえもんに分からなかった。
大人の男性、それも彼にしては珍しい強い命令口調だからつい体が反応を見せた。
それとも彼と同じものを自分も感じ取ったからか。
神と魔女が睨み合い、意識を保つだけで精一杯の空間で。
このまま突っ立っていてはきっと、マズいことになる。
小難しく考えるまでもなく、分かってしまったから。
瓶の中身をぶち撒ける勢いで、自分と卜部の両足に振り掛けた。
短時間のみ爆発的なスピードを発揮し、卜部は少し離れた位置の少女を回収。
抵抗はされない、彼女もまたこの空気の中で凍り付いたように動けずにいた。
もう一人の剣士はどこへ行ったかなど、探す余裕は最初から無い。
ドラえもん達より一足先に動いたと、少なくとも現段階では確認出来ず。
急げ急げと繰り返される脳内の警鐘に従い駆けた。
どの部屋に行くか、どこまで向かえば良いかなんて考えていない。
ただ少しでも、ほんの一歩分でも構わないから遠ざからねばと。
それだけを考えて走り続ける。
背を向け、一度も振り返らず走り。
結果背後で何が起きたかは、四人共視界の端にすら収めず走り続け。
直後に響いた轟音が、否応なしに知らせて来た。
最早、人が立ち入れる領域に非ずと。
○
5秒保ったか、満たなかったか。
コーカサスカブト城の一室が消し飛ぶまでの時間を、正確に把握した者はいない。
片手で数えられる程度でも、数秒は形を維持できた城の強度を誇る者もいない。
事実としてあるのは、神と魔女の闘争の場には狭すぎる一点のみ。
藁の檻で怪物を閉じ込められる筈は無く、至極当然の結果。
必然的に両者が雌雄を決する戦場は、城の外へと移った。
城壁を駆け、租界へ降り立ってからも脚は止めない。
移動中の妨害を禁ずるルールは無し。
スポーツマンシップに乗っ取った試合ではない、勝つ為にあらゆる手段が許された殺し合いだ。
城を飛び出し現在に至るまで、常に彼らは攻撃に出ていた。
ノワルの取った手は複雑な術式を必要しない、極めてシンプルな魔法。
魔力を固めて光弾に変え、標的へ撃つ。
ノワルに限らず魔法に心得のある者ならば出来て当然な、初歩的な術。
魔法使いならば出来て当然、しかし扱う者によっては大きく化ける。
アルジュナを殺すにあたってノワルが不利な要素の一つに、本気を出せないというものがある。
嘗てはソールとの一戦で、正史においてはルナとの決戦で使った魔力解放形態。
ゲームバランスを崩壊させない為に、殺し合い中は封印されているのは既に把握済みだ。
改めて不愉快でしかないが、文句をぶつけた所で制限解除の兆しは見られない。
並の魔法使いを凌駕する魔力の持ち主ではあるも、やはり本気を出した時よりは出力が落ちる。
だが魔力解放形態に近付ける事は、支給品の使ってクリアした。
胸元に隠した真紅の物体、名を賢者の石という。
人間の魂を高度な錬金術によって抜き出し、凝縮加工を経て生み出される術法増幅器。
内包されたエネルギーを自身の魔力に上乗せ、魔力解放形態とほとんど謙遜ない出力を発揮している。
更にノワルが発射する光弾は、一発一発に籠められた魔力の密度が非常に高い。
力を引き出しただぶつけても、アルジュナ相手には何の効果も齎さない。
だから威力と貫通力の両方を最大まで高めた上で、今も放ち続けていた。
と、言うだけなら簡単だが誰しも実行に移せるとは限らない。
魔力が少なすぎれば敵に届かず、逆に多過ぎれば暴発し自身が傷を負う。
とはいえ、ノワルにはいらぬ心配だが。
光弾の生成から照準を合わせる一連の流れを、コンマ数秒で完了。
ガトリングのように絶えず光弾を放ち、当然の如く生成失敗は起きない。
固有魔法の凶悪な性能のみではない、魔力の扱いも含めた天才的なセンスがノワルにはあった。
銃火器を用いず、最も信頼を置く自身の魔法で弾幕を張る。
敵が並大抵の力しか持たなければ、殺された回数は既に百を超えただろう。
なれど相手はその枠に収まらない例外中の例外、黒き最後の神。
神の齎す死を受け入れぬばかりか、小癪にも牙を剥く不出来へくれてやる情けは無し。
城内での衝突時から常に光球が熱線を放ち、魔女の生を否定せんとする。
光弾が熱線を迎え撃ち、ノワルへ火傷の一つも負わせない。
反対に熱線は光弾を掻き消し、アルジュナにいらぬ血を流させない。
互いが撃ち漏らした数はゼロ、当てた回数も未だカウントされていなかった。
神と魔女が無傷の代わりとでも言うのか、被害は彼らの周囲が一身に受ける羽目となる。
熱線と光弾は衝突とほぼ同時のタイミングで霧散。
籠められた高密度の魔力は空しくも宙に溶け、消えるまでのほんの僅かな間で租界エリアに破壊を齎す。
弾けた魔力は立ち並んだ家々を吹き飛ばし、瓦礫すらも粉へ変える。
その粉も次に起きた魔力の衝突で完全に消え、追い打ちの如く辛うじて無事な建造物が倒壊。
双方移動しながら爆弾を投げ合っているのと同じだ。
もし住民である日本人がいたならば、今頃は死体すら残ってはいまい。
共に自らが破壊した光景を気にも留めない。
視界に入れるのは眼前の邪悪/障害ただ一人、他に意識を割く意味がどこにある。
光弾を撃ちっ放しで、ノワルは次にうつ手を速攻弾き出す。
賢者の石が秘めるエネルギーは莫大であれど、決して無限ではない。
己の魔力とて限界はあり、敵も同じだろうが底が見えない相手に持久戦は悪手中の悪手。
悠長に変わり映えのしない攻防を継続し、果てに待っているのはこっちのガス欠に他ならない。
「シャインレイン」
そろそろ流れを変える頃合いだ。
習得済の光魔法の一つを使い、上空から光線を発射。
マジアベーゼとの戦闘でも使ったが、威力はあの時の比で無い。
賢者の石によるブーストに加え、遊びを完全に排除している。
光線の量は更に増大、標的を絞りアルジュナのみを対象にした集中豪雨を降らせる。
シャインレイン発動中も、両手から光弾を撃つおまけ付きだ。
魔法を複数同時発動は強力であれど、リスクも付き纏う。
術式の組み立てを一工程間違えるだけで、魔力は即座に暴発してしまう。
ノワルが如何に並外れた魔法の使い手かが分かるだろう。
三方向からの集中砲火へ、アルジュナも攻撃方法を変えて対処。
土星の輪のように自身の周囲へ光球を配置。
意思一つで回転と魔力の放出を行い、光刃を生み出す。
色とりどりの煌びやかさが全てでは無い、神の身を守護する盾にして矛だ。
光魔法の豪雨が霞む程の輝きで、頭上よりの脅威は消滅。
連射中の光弾を斬り落とす最中にも刃は範囲を広げ、あっという間に魔女へ届いた。
「テネーブル」
両断され、血の一滴すら流れずに蒸発。
惨たらしくも邪悪な魔女には相応しい末路を、受け入れる気は更々無い。
指先で空間を削り闇を奔らせる。
こちらもシャインレイン同様、魔力増幅と加減抜きの影響下にあった。
範囲を狭めた代わりに魔力の密度を高め、魔刃と化し光刃と激突。
砕け散った刃が飛び散り、遠くの方で倒壊の音がするも無視。
次なる手に出た敵以外に、見るものなど無い。
光球を操作し獣の姿へと変化。
全身が蒼く燃え盛った、いや蒼炎が馬の形を作り突進。
蹄がアスファルトを溶かし、嘶きが大気に亀裂を生む。
直接触れずとも灼熱地獄へ包み込まれる、膨大な熱量。
己が身を頭部で突かれた時の苦痛が如何程か、想像すらも憚れるだろう。
神の遣わした獣も、ノワルにとっては目障りな害獣に過ぎず。
自身に触れる許可をした覚えは無く、近付く事すら許してはいない。
愚かな獣には相応の罰を与えてやらねば。
「ペットの躾がなってないわね」
デイパックより取り出すは二つ目の支給品。
殺し合いにて齎された、ノワルが本来持ち得ない手札。
細くも頑丈な鎖は、攻撃・防御・拘束と用途多様の便利な道具だ。
と言ってもこのまま使うのでは心許ない。
魔力を流し込みコーティング、端に至るまで黒い稲妻が迸る。
鬣を揺らした蒼炎が目前に迫り、ふっと煙のように消滅。
何が起きたと問われれば、鎖を振るって撃退したのが正解。
常人では目視不可能な速さで以て、1秒経過時に25を超える数を叩き付けたと加える必要があるが。
「次は飼い主さんの番よ?」
獣同様の最期を神にも与えてやる。
魔力を纏わせた上に、これは単なる鉄の鞭に非ず。
万里ノ鎖、伏黒甚爾が若き日の五条悟相手に使った特級呪具の一つ。
一端が観測されなければ鎖部分を無限に伸ばす特性は、ノワルも確認済みだ。
端部分のみをデイパックに入れ口を閉じ、術式効果が発動。
蒼炎を蹴散らした時以上の長さで振るう。
得物のリーチが長ければ標的から距離を取れる分、振るう際に必要な力も増す。
であればこそ、ノワルはやはり規格外なのだろう。
力を持たぬ只人は当然、動体視力に優れた達人ですら鎖を振ります腕を見れない。
腕が掻き消え、周囲一帯に何かがぶつかる男が木霊する。
理解不能な現象を正しく認識するのはノワル本人と、対峙中の神だけ。
安易に立ち入れば己の死すらも理解出来ずに命を落とす、苛烈極まる空間だった。
鎖を振るう中で、ノワルもまたアルジュナの動きをしかと捉える。
黒く輝く宝石の如き肉体は裂け、体中に真紅を塗りたくった。
と、そのような理想とは裏腹に相も変わらず神はノーダメージ。
黒き裸身を汚す赤は一つも刻まれず、呪具は拒まれる。
ノワルが武器を手にしたのに合わせてか、アルジュナも無手ではない。
背後へ浮遊させた廻剣を組み替えた弓で以て、魔女の猛攻を拒絶。
矢を放つ本来の役目とは違うも、破壊不可能と言っても過言ではない強度だ。
人の領域で数える事が間違いの膂力と合わせ、得物の打ち合いもやってのける。
魔力と魔力、神具と呪具の衝突が起こり無事なのは二人だけだ。
ぶつかる度に起こる衝撃は、不可視の刃となって四方八方へ飛び散る。
どこまで飛んだか、何を切り刻んだには興味を抱かず。
片方が動きの速さを一段引き上げれば、さも当然のようにもう片方があっさり追い付く。
僅かに手を抜けば即死へ繋がる攻防に身を投じ、魔女は神の姿に考え込む。
(防いでるってことは、向こうも命中は避けたい筈よね)
闇檻に閉じ込めた時、アルジュナは避ける素振りも見せなかった。
最初から通用しないと分かっていたからこそ、何もしなかったとは察しが付く。
対して現在は弓で万里ノ鎖を弾き、己に当たらないよう努めている。
ということはつまり、今の自分の攻撃は敵にとってもダメージになり得るのか。
闇檻とて一定以上の魔力相手には突破される。
ソールとの一戦や、先のイドラ達の令呪を使った戦法が良い例だ。
敵の強さは本物、しかし絶対に殺せないとも限らない。
自分と同じく、敵も何らかの制限を施され絶対無敵の座からは引き摺り下ろされている筈。
(…ま、先にこっちがダメになりそうだけど)
チラリと視線を自分の手に移す。
鎖を握り締めた箇所から血が垂れ、意識しないだけで痛みも無い訳じゃない。
魔女ならではの人外染みた身体能力があれど、肉体の強度はやはりアルジュナが勝る。
いつ入るかも不明な一撃に賭けて、このまま鎖を振り回すか。
冗談じゃない、片腕が使い物にならなくなるリスクと微塵も釣り合ってないだろうに。
得物を用いた応酬もここらが潮時。
鎖で地面に真一文字を描き、大量の土砂がアルジュナを襲う。
随分と拙い目晦ましだ、腕の一振りで薙ぎ払う。
即座に戻った視界に、後方へと大きく退がったノワルを閉じ込める。
勝てないと諦め逃げを選んだか?
違う、肌が掻き毟られん程に張り詰めた空気に大技を確信。
「ジェノサイド」
胸元の賢者の石が輝きを増し、上位魔法を数段階上の脅威へと変える。
石の錬成に使われた悲鳴すらも飲み込む闇が顕現。
マジアベーゼ相手の時でさえ、威力を削られた尚建造物群を倒壊させたのだ。
此度は正に絶望的と言う他ない、地獄絵図が現実となる。
神と魔女以外の誰かが見たら、津波と言っただろう。
民家複数の被害では到底済まない大災害が巻き起こる。
未だ破壊を免れた建造物も、瓦礫の山ですら無い欠片も、土が剥き出しの地面も全て飲み込む。
日本人達に唯一許された居場所を奪い、尚も闇に勢いが衰える気配は無い。
神を食わせろとの進撃を見上げ、アルジュナはこれまでと一切変わらぬ顔のまま。
しかし滅びを受け入れる奇異な性質は持ち合わせず、己が力で跳ね除ける。
廻剣を背に戻し、入れ替わりに光球を展開。
伸ばした腕の先で全ての光球に魔力が収束、一斉に熱線を放った。
複数本の光は瞬く間に一本の帯と化し、真正面から上級魔法と激突。
焼き払われ勢いが多少落ちるも、全てを消すには至らない。
闇は未だ健在、神の喰らうことだけを目指し進み続ける。
アレに飲まれればどうなるかは、被害に遭った哀れな家々が答え。
回避必至の暗黒を見つめ、しかし神に後退という選択は無い。
籠められた魔力は疑いようのない邪悪、不出来の許容等起こり得なかった。
「崩壊……」
打ち砕く手は一言で足りる。
綿毛でも吹くかのように光球を飛ばし、一ヶ所に固まる。
次いで魔力が急激に上昇、漏れ出たエネルギーが戦場を広く照らす。
溜まりに溜まった力の使い道は単純、故に下手な技よりも強力。
光球の輝きが最大に達し魔力を一斉に開放した。
地上に太陽が落ちた。
或いは罪深き人間を断罪する、天よりの罰が降り注いだ。
天災を打ち砕くには、より脅威となる天災をぶつけるまで。
解き放たれた光は一瞬で闇を追い抜く規模となり、逆に喰らい尽くす。
腹を満たしてもまだ足りない、闇の生み落とした張本人がまだ残っている。
破壊を更なる破壊で塗り替え、租界エリアを光が侵食。
眩しさへ鬱陶し気に目を細めたノワルは、誰に向けてか口を開く。
「来なさい」
魔女の命令に応じ、白き巨体が参戦を果たす。
今は遠くのコーカサスカブト城付近より、流星の如き勢いで以てやって来た。
ある世界において、伝説の決闘者が操る切り札。
古代エジプトから続く、断ち切れぬ絆の証明。
青目の白竜(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。
だが見よ、ドス黒く濁り切った瞳を。
涎を垂れ流し、狂ったように牙を打ち鳴らす醜悪さを。
全身各部を汚す、おぞましき魔力の痕を。
殺し合いではデュエルモンスターズのカードは単なる紙でなく、モンスターを実体化させられる。
ソリットビジョンシステムとは違い、現実への干渉が可能なのである。
モンスターに触れれば本物の生物と大差ない感触があり、攻撃を受ければ傷が付く。
だったら参加者の方から、何らかの干渉を行えるんじゃないか。
物は試しとノワルがやったのは、ブルーアイズの核とも言えるカードを通じての魔力付与。
自分の魔法を使っての強化と言えば聞こえは良いが、実際はドーピングに近い。
魔法カード等デュエルによる正規の強化方法では無く、しかもやったのはノワルという邪悪な魔女。
いつ暴走してもおかしくないが、御せる自信が勿論あってのこと。
第一アルジュナ相手には、ブルーアイズと言えども素の状態では力不足は否めなかった。
「可愛くないけど良い子ね」
辛辣な評価もそこそこに飛び乗り、ブルーアイズが急上昇。
最初に移動に使った時以上の速度だ、強化受けた恩恵が如実に表れている。
光が届く範囲の外へと退避し、無論このまま逃げに徹しはしない。
何よりも向こうが逃がしてはくれない。
見下ろす瞳に映り込んだ、地上より向かって来る黒い神を。
「お空のデートなんて素敵だわ♪相手があなたじゃ無かったらだけど」
軽口を叩きつつ攻撃の準備は忘れない。
翳した両手から光弾を連射、敵もまた熱線を放ち迎え撃つ。
同じ位置に留まり続け、固定砲台になるだけでは足りない。
ブルーアイズに指示を出し、縦横無尽に飛び回る。
飛行はドラゴンのみの専売特許に非ず、神もまた地上だけに縛られない。
異聞帯で己を運んだヴィマーナが無くとも問題無い。
インドの神性を全て取り込んだアルジュナにとって、空を飛ぶくらい造作も無かった。
時に距離を放し、時には間近に近付き撃つ。
場所が空中に変わろうと互いの命中精度に低下は起こらず、全てを防ぎ防がれの攻防が継続。
どちらか一方が速度を引き上げ、もう一方が一瞬で並ぶ。
大量の発光体と奇怪な飛行物体が、下から目撃されるだろう
大地を揺さぶるのは地震に非ず、彼らの高速飛行が起こす衝撃波が原因だ。
馬鹿げたジョークの類にしか思えないだろう。
ジェット機でもない、生身で起こせるような現象ではない。
常識の二文字が当て嵌まらない二名の内、より速度を上げたのは魔女。
爆発的な加速により、今のブルーアイズには触れるだけでも即死は免れない。
狙いはそれだ、アルジュナ目掛けて突き進む。
白竜の巨体を直接叩き付け、血肉の雨を降らせてやるのだ。
頭部がアルジュナを粉砕する寸前で、反対方向へと巨体が吹き飛ぶ。
敵が真っ向より来るなら、神もそれに合わせて迎撃しただけのこと。
おおよそ生物に触れたとは思えない破裂音を響かせ、ブルーアイズを蹴り飛ばした。
遥か彼方へ流れる星になるものかと宙で留まり、己を取り囲む殺意をノワルは目にする。
アルジュナとて強制的に戦線離脱させる終わりを望んでいない。
不出来には死を、それ以外の結末が入り込む余地は無い。
ブルーアイズが制止するだろう位置を予測し、光球を転移させての包囲。
頭上前方後方左右、逃げ場を塞いだ上での一斉放射だ。
一つ二つを防いだ所で残りが魔女と竜を貫く。
地へ落ちることも叶わず、狭苦しい箱庭の空で果てる。
無論、終焉を退ける手段ならノワルにもある。
魔女の意思に従いブルーアイズは翼を大きく展開。
飛んで逃げる為では無く、そもそも逃げ道は塞がれていた。
その場で駒のように回転、全方向からの熱線を刃に見立てた翼が薙ぎ払う。
先程アルジュナが光の豪雨に襲われた際と似た方法だ。
熱線を凌ぎ光球も叩き落とさんとし、その前にアルジュナが手元に引き寄せた。
距離を取ったなら自分の方から近付けば良い。
数メートルの距離を即座に詰め、ブルーアイズが尾を振り回す。
破壊力とスピード、共に高水準の鞭へ拳を叩き付け相殺。
揃って後退し次の手に出る中、魔女が一手早く神を絡め取る。
「ちょっとだけ待ってなさい、すぐに終わらせてあげるから♪」
黒い霧が覆うのも束の間、アルジュナの全身をワイヤーが巻き取る。
ほんの少しの隙間も見えず、黒い肌は完全に隠れた。
長続きしないとは百も承知だ、しかし僅かな猶予を得られたのは確か。
魔力を急速で充填し、ブルーアイズもまた口内にエネルギーを掻き集める。
本来の輝きは失われ黒々とした力が解放の時を待つ。
神を縛る下賤な道具は存在自体許されない。
ワイヤーが吹き飛ぶも予想した通り故驚きは無く、固有魔法がロクに効かない苛立ちも今更。
こちらの準備は整っている、神を撃ち落とす瞬間はすぐそこだ。
「これで――」
一瞬、本当に一瞬。
ノワル自身も認識出来ない程に短く、されど確実に気を緩めた。
絶大な力を持つ敵を仕留められるとの期待が、勝利の天秤から重しを取り外す。
神を前に犯してはならない失敗であると、すぐに我が身で思い知る。
「な――」
神が視界から消えた。
この手で殺す筈の標的を見失い、猛烈な悪寒に襲われる暇すら与えられない。
代わりに来たのは腹部への衝撃と、遠ざかる中で見えた黒い腕。
殴り飛ばされた、そう分かったのは背中から城の壁をぶち破った後だった。
◆◆◆
神と魔女、二人だけの戦争が繰り広げられている間のこと。
城の片隅で小さくも苛烈な屠り合いがあった。
チータローションを使い全速力で逃げた甲斐もあり、巻き添えにならずに済んだのも束の間。
ドラえもんとさとうの無事を確認した卜部を刃が襲った。
誰がやったと問うまでも無い、あの場にいたもう一人の参加者。
人ならざる存在の脅威を他の三人以上に知っているが故に、いち早く動けた男。
勇者アレフの繰り出す一撃を、卜部も愛刀で受け止める。
「ぬ…ぐ…!」
刀身へ掛かる重さに苦し気な声が漏れる。
大魔王を倒した剣を、両手で振り下ろす渾身の斬撃だ。
卜部も優れた剣術の使い手だが、片腕で防ぐには荷が重い。
こちらも両手持ちに構え直し押し返すのがセオリー。
尤ももう片方の腕が存在しない以上、対抗手段には入らなかった。
「ドカン!ドカン!ドカン!」
左腕の代わりは自分が務めると、仲間のロボットが援護に出た。
のび太と違って天性の射撃スキルが無い分は、過去の戦いで培った経験で補う。
間違っても誤射を引き起こさないよう狙い、不可視の空気弾三発がアレフへと発射。
死にはしないが相応の痛みと共に吹き飛び、宙で不格好に踊る羽目になるだろう。
「その呪文はもう効かない…!」
卜部を押し返し体勢を崩してやり、月下の装甲を袈裟斬りし更に怯ませた。
アルジュナの熱線と違い一撃破壊には至らずとも、ダメージにはなる。
呻く月下から視線を外し、もう一体へ標的を変更。
言ってのけた内容は強がりで無く、事実空気弾はアレフの髪を撫でる事すら出来ない。
強張る顔で連射するドラえもんとは反対に、勇者は焦らず距離を詰めた。
見えない攻撃は厄介であるが、対処不可能かと言えば違う。
ひみつ道具を四次元ポケット諸共没収されたドラえもんにとって、必然的に空気砲をメイン武装として使った。
アレフ相手に撃ったのも今に始まったものではない。
最初こそ未知の呪文化と驚いたとはいえ、時間経過で警戒度は下がって行く。
アレフからすれば、最早恐れるに足りない武器だ。
見えない衝撃を放つ際、敵は必ず右手の筒を向けて来る。
加えて発射する時には「ドカン」と口にする工程を挟む。
22世紀の科学技術の産物とまでは分からなくとも、自分が呪文を唱えるのと大体同じと見た。
であれば対処は難しくない。
筒が狙った先に放たれるのだから、そこへ剣を叩き付ければ霧散するし、射線から外れるように駆ければ良い。
慣れれば対処は難しく無く、竜王の炎に比べればどうということはない。
空気弾を掻い潜り、ドラえもんを剣の間合いに閉じ込めた。
次の弾も呪文を跳ね返す不思議な布も使わせない。
鈴をぶら下げた首目掛け刃が走り、金属同士の衝突で甲高い音が鳴る。
機械の体を破壊したのではない、回転刃の得物に阻まれた。
片足だけでは機動力低下は免れずとも、近い距離なら問題無し。
ランドスピナーを高速稼働させた卜部が間に合った。
「こんなことをしてる場合か…!?あの二人が戻って来れば、俺達全員殺されるかもしれないんだぞ!?協力して城を出るのを優先するのが――」
「…っ!僕には…関係無い!」
尚も説得を試みる卜部の言葉を振り払うように襲う、横薙ぎの一閃。
防御こそ間に合ったが片腕の欠損と、片脚の機能故障では力が足りない。
足元がよろけた瞬間を狙い、ロト剣による猛攻で追い詰められた。
万全の状態ならともかく、軽くない負傷と月下の故障が足を引っ張る。
目まぐるしく変わる状況のせいで、ドラえもんに復元光線を使ってもらう余裕が無かったのが痛い。
致命傷になり得る斬撃こそ防ぐも全身に刻まれる傷は増え、破壊されるのも時間の問題。
させじとドラえもんが加勢に出るのを許しはしない。
渾身の一撃を卜部に叩き付け、ドラえもんを巻き込み吹き飛ばす。
追い打ちを掛けようとし、視界の端に蠢く者が見えた。
覚束ない足取りでアレフ達から遠ざかる、桃色の髪の少女が。
(体が…まだ痺れ…っ)
闇檻から解放されても、さとうの体には快楽の余韻が残っていた。
感度上昇の魔具は二つとも無く、あの不愉快な刺激とはおさらば出来た筈なのに。
半端な形で終わったとはいえノワルの調教は後を引き、こうして逃走防止に一役買っていた。
動く度に服が擦れ、散々弄ばれた乳房が疼き出す。
意識しないよう努めても、ショーツの奥で溢れる熱がまだ消えない。
どこまでも忌々しい女だと苛立ちを募らせながら、これでは埒が明かないと噛み締める。
だったら少しでも移動速度を上げるべく、カードデッキを取り出す。
「変身…。…っ!?」
タイガに変身した直後、強化感覚器官が接近する気配を察知。
疼きが残る体で咄嗟に己を振るえたのは、ライダーの身体機能の恩恵だろう。
分厚い刃が剣と衝突、だが二撃目にさとうが備えるよりアレフの方が速い。
防御をあっさりすり抜け胸部を切り裂いた。
血飛沫代わりの火花が大量に散り、床に転がるさとうを見下ろしトドメを刺す。
逆手持ちに変え、切っ先が睨む先は腹部の小箱。
これを使って鎧を纏ったのなら、破壊されれば力は全て消滅するに違いない。
小箱諸共腹部を串刺しにする勢いで振り下ろす。
「本当にしつこい…!」
『AD VENT』
優勝しなければならない理由をアレフが持つなら、さとうにだって死ねない理由がある。
倒れながらもカードを引き抜き、デストバイザーに装填。
さとうの怒りに応え、彼女の従僕が契約主の敵に襲い掛かった。
「ぐあっ!?」
切っ先がカードデッキを突く寸前、背後からの殺意がアレフを貫く。
卜部やドラえもんではない、血を吐きながら振り返り襲撃者を捉える。
白い体に青のラインが入った、どこかタイガに似た生物。
旅の中で見たどの魔物とも一致しない、未知の存在が爪を突き刺していた。
白虎型ミラーモンスター・デストワイルダーは、アレフの疑問へ懇切丁寧に答える真似はしない。
本来の契約者とは違うも、現在デッキを所持しているのはさとうだ。
彼女がアレフの殺害を望むなら逆らう理由は無く、自分にとっては餌に有り付けるチャンス。
ミラーモンスターや仮面ライダー達にやったのと、同じ方法で殺すだけ。
『FINAL VENT』
ミラーワールドからの奇襲は成功、このまま片付けるのは容易い。
確実に敵を仕留めるべく、タイガが使い最大威力の技を発動。
突き刺したままでアレフを押し倒すと、デストワイルダーが疾走。
鎧が床と擦れ摩擦を起こし、ギャリギャリという音と共に爪がより深く抉る。
仮面ライダー相手でも体力を大きく削り取る技だ。
ロトの鎧を装備してるならまだしも、今のアレフには耐え難い激痛だろう。
「があああああ…っ!!ラリ…ホーマ…!」
痛みを塗り替えるのはローラ蘇生の執念。
生き返らせて彼女への愛を確かめねば、自分は欠落などしてないと証明しなくては。
強迫観念にも似た衝動が決死の抵抗を可能とし、駆け回るモンスターへ呪文を発動。
魔物を眠りに落とす力はミラーモンスターにも有効だった。
見た目からは分からないが足を止め動かなくなった、とっくに夢の世界へ旅立ったらしい。
爪を引き抜くと血が滝のように流れるも、すかさずベホイミを複数回唱える。
MP消費を気にするのは後回しだ、死んでしまっては元も子もない。
回復魔法で止血を終えるや否や、棒立ちのデストワイルダーを叩っ斬ってやった。
暴力的な目覚ましに大きく怯み、これはマズいと来た道を逆戻り。
ガラス窓の中へ消えるのを見送ってる場合ではない、モンスターを操る張本人を片付ける。
「ベキラマ!」
掌に光を収束し放つ、アレフが使える最大呪文。
魔力を龍に変え、さとうを喰らい千切ろうと突進。
変身中であっても直撃は絶対に避けるべきだが、此度はさとうが避けるまでもなかった。
「ひらりマント!」
目の前で誰かが死ぬのはもう真っ平だ。
自らさとうの盾となったドラえもんの手には、ハドロン砲すら跳ね返したひらりマント。
叩き付ける勢いで振るい、光竜を自分達の元から拒絶する。
呪文を唱えたアレフ本人を襲う脅威となるが、この現象も一度見たもの。
とはいえ流石にベギラマすら跳ね返すのは驚きであった。
再度同じ呪文を唱え相殺する時間は無い。
真横へ跳躍、床へ自ら倒れ込み転がって回避。
通り過ぎた光竜が背後で塵になったのは、見るまでも無い。
視線を向けねばならないのは未だに死を逃れ続ける標的だ。
剣を握る手に今一度力を籠め、
壁をぶち破って魔女がダイナミックな入室を果たした。
「っ……これかだから男は野蛮で嫌なのよ…!」
頬を擦りながら、心底うんざりしたように言う。
狭っ苦しい城を飛び出し殺し合っていたが、強制的に戻る羽目になった。
青空を突っ切る生きたミサイルにされ、尚もノワルが致命傷を負った形跡は無い。
自分じゃ無ければ全身ジャムになってたろうと呟き、強大な気配の急接近を察知。
今しがた開けた大穴からは外の景色が丸見えだ、ふざけた真似をしてくれた神を睨む。
数秒と経たず顔を引き攣らせたのは、自分でも当然の反応だろうと思考の隅で呟いた。
城内にいた面々も同じような顔で外を光景を目に焼き付けている。
ノワルを殴り飛ばし即座に追いかけたアルジュナが、片手でブルーアイズの尾を掴み。
幼児がぬいぐるみで遊ぶかのように、豪快に振り回すという正常とはかけ離れた絵面だった。
カードから召喚されたと言っても、ブルーアイズの重量は大人数人でも全く届かない程。
少なくとも人力で持つのは有り得ない。
神に人の常識を当て嵌める方が間違いというなら、全くその通りであるが。
「あなた、幾ら何でもやりたい放題過ぎじゃない?」
自分を棚に上げた発言がノワルから飛び出すも、アルジュナからの返答は無い。
僅かな表情筋も動かさず、腕の回転数を速める。
悲鳴にしか聞こえないブルーアイズの鳴き声も無視し、ノワルを含めた不出来な者達目掛け投擲。
大型トラックなど目では無い物量に勢いを加えればどうなるか。
出来上がったばかりの大穴がちっぽけに見えるレベルの破壊が巻き起こった。
我に返った者から退避するも、知ったことかと瓦礫が飛来。
それ以前にブルーアイズの直撃を受ければ、マトモな死体が残るかも怪しい。
故に卜部とドラえもんはまだ運が良かったのだろう。
白竜をどうにか躱し、余波で吹き飛ばされ壁に叩き付けられるだけで済んだのだから。
「ぐ……」
なれど無事かどうかはまた別の話。
全身のそこかしこが激痛を訴え、却って左腕の欠損箇所の痛みが気にならない。
すぐ傍ではドラえもんがうつ伏せに倒れており、まさかと嫌な予感が去来。
油の切れた機械のように緩慢な動作で立ち上がった為、最悪の事態は訪れなかった。
顔を動かし周囲を確認。
アレフもさとうも見当たらない、逃げられなかったのか。
若しくは姿が見えないだけで逃げるのには成功したか。
安否不明の二人はいないが、破壊の原因の内の一体は見付かった。
瓦礫のベッドの上に横たわり、小さなく呻き声らしきものを上げる。
伝説の竜とは思えない、虫の息の三文字が似合うくらいには弱々しい。
味方でないが卜部もつい同情を抱いてしまう。
「誰が休んで良いって言ったのかしら?」
当の召喚者は労るどころか、更にこき使う気満々だった。
瓦礫の山を魔法で吹き飛ばし、当然のように魔女が生還。
目が据わった貼り付けた笑顔を浮かべ、ブルーアイズへ腕を振るう。
万里ノ鎖を太い首に巻き付け、強引に頭上を向かせた。
元々召喚者には従うよう設定されており、抵抗の素振りも見せずに為すがまま。
何故そんな真似をと口を挟むまでもない。
つられて卜部も天井を見上げ、嫌でも理解させられる。
「立つことも……ままならぬ不出来……やはり……私の世界には不要……」
神が、視ていた。
青空を背に、存在を認めぬ邪悪を見下ろす。
天井は吹き飛び空の色がよく見える、アルジュナという災厄もだ。
廻剣を組み立て、万里ノ鎖と打ち合った黄金の弓を再生成。
自らの魔力こそが番える矢、光球全ての発光と共に一点へ収束。
神の下す罰を受け、そこに死体は残らない。
完全なる世界に屍は不必要、髪の毛一本服の切れ端すらあってはならないのだから。
天より降り注ぐ輝きも、卜部には美しさや感動の前に恐怖しか抱けない。
戦場で命の危機に幾度も陥り、一度は死した身なれど、ここまでの悪夢染みた光景は初だ。
「見下ろされるのって不愉快ねぇ、引き摺り落としてあげる♪」
人間が慄く一方で魔女は殺意を煮え滾らせる。
弾む口調とは裏腹に、内心はアルジュナへの不快感で染まり切っていた。
強大な力を持っていようと、己を天高くから見下すのは許せない。
プライドの高さは実力に裏打ちされたが故、なれば選ぶ道は一つだけ。
口にした通りだ、神を地へ叩き落としてやる。
今のブルーアイズに求める役目は多くない、だが使わない選択も無い。
頭部をアルジュナの方へ固定し、魔力を充填して流し込む。
先の空中戦では不発に終わったが、二度も同じミスは犯さない。
機動力がアテにならないのであれば、砲台として役に立ってもらう。
ノワルの魔力とブルーアイズ自身の力が、口内に収束し発射の瞬間へ備える。
「う…卜部さん…ぼくが運ぶから……」
双方の激突が起きてしまえば、自分達は確実に巻き込まれて死ぬ。
ロボットのドラえもんにだって分かった。
ひらりマントを振るったとて、彼らが放つだろう力に通用する気がまるでしない。
廃棄品どころか、ネジ一本も残らない末路が待ち受けている。
だからここは逃げるしかない。
どこでもドアが無い以上、自分達の足が唯一の頼りだ。
自分以上に負傷の大きい卜部を置いて行くのは以ての外、一緒に生きねば意味が無い。
「……ドラえもん。仲間を集めてゼロの所へ行け。正直、まだ騎士団がゼロを裏切ったなんて信じられないが……だがゼロならきっと殺し合いを終わらせられる」
「な、何言ってるのさ!?卜部さんも一緒に…」
「そしてお前も、きっと殺し合いを止める皆に必要だ。初対面の俺ののことも助けてくれたお前だからこそ、皆信じてくれる筈だ」
「卜部さ――」
何をする気か察したのだろう、必死に手を伸ばすも届かない。
卜部の目の前に、青い猫型ロボットはもうどこにもいなかった。
消えた原因を作ったのは他ならぬ卜部だ。
彼に支給された最後のアイテム、ブルーアイズと同じデュエルモンスターズを使った。
強制脱出装置という、対象に選んだ者をランダムに転移させる罠カード。
本当なら二人揃って逃げるのが一番なのは、卜部とて分かってる。
だが意地の悪いことに転移可能なのは一人だけ、どちらか片方はこの場に残らねばならない。
そして卜部は現実的に物事を考える軍人であれど、仲間へ犠牲を強いる冷血漢では無かった。
(すまないドラえもん…けどな、お前に言ったのは本心だ)
この地で出会った仲間に内心で謝る。
カラレス相手に一歩も引かず立ち向かう勇敢さ、会ったばかりの自分を助けてくれた優しさ。
何より、殺し合いを強いる主催者への正しき怒り。
虐げられた多くの日本人を見た卜部だからこそ、理不尽へ憤る姿には共感を覚えた。
自分の選択が影を落とすかもしれないが、どうか引き摺ら撫で欲しい。
ドラえもんを生かした事を、後悔なんてしてないのだから。
「さて……最後に残った大仕事を片付けないとな……」
カラレスや、下手をすれば総司令官以上に危険な神と魔女。
一時的にでも協力、となるのは無理だとは流石に分かる。
だから被害が広がる前に、せめて片方だけでも自分がここで仕留めるのだ。
刀を握り締める右手、そこへ刻まれた令呪が一画消失。
只の人間である卜部が令呪を使った所で、劇的な変化は起きない。
肉体のリミッターを外し、無茶な動きが多少可能という程度。
(はっ……十分だ……)
「標的確認……」
「時間を食わされたけど、いい加減終わりにしてあげる!」
強大な力を支配下に置く両者には、卜部が何をしようと虫けらの抵抗以下。
舐められたものだと思うも、今はそれで都合が良い。
口の端から垂れた血を拭わず、不敵に笑う卜部を無視し状況は動いた。
神が視下ろす、魔女が見上げる、そして人間が立つ。
見えない弦を引く工程を終え、アルジュナは魔力を解き放つ。
同時にノワルも限界まで充填完了だ、鎖を引きブルーアイズに最後の仕事を果たさせる。
「炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)……」
「滅びの爆裂疾風弾(バースト・ストリーム)!!」
それを見て誰が矢と言えよう。
幾度も放った熱線を超える、特大のレーザーであった。
ノワルが放つはブルーアイズの代名詞と呼ぶべき光弾に、自身の魔力をたっぷりとブレンドしたモノ。
光と闇、相反する力を一つに纏め上げ神を撃ち落とす魔弾としてぶつける。
勝者はどちらか、敗北者は誰か。
結末を見届ける為に残ったのではない、ちっぽけな人間の牙を突き立てる為だ。
駆ける、駆ける、駆ける。
死が避けられないならば恐れる理由は無い、本当に恐いのは何も出来ずに朽ち果てることなのだから。
(そこだ――――!)
腕を真っ直ぐに伸ばす、片脚が完全に壊れても構わないと跳ぶ。
切っ先が狙う先には、白竜へ跨る魔女の姿があった。
ただ単に斬った突き刺したでは届かない。
一点を除いて。
「――――っ!」
ノワルが卜部に気付く。
ガラクタ同然の刀で、無駄な足掻きに出るつもりか?
いいや違う、こいつがどこを狙っているかが分かった。
手首に装着されたレジスターだ。
如何に桁外れの力を持っていようと、参加者であるならバグスターウイルスに感染済み。
レジスターが破壊されれば、鎮静剤の投与も強制的にストップ。
結果どうなるかは全ての参加者が知っている。
須藤とニーナ、身を以て教えてくれた彼らと同じになるだけ。
「こ…いつ……!!!」
卜部如きの突進などで自分を倒せるものか。
闇檻に囚われ、ミンチになるまで凝縮されるのがオチ。
だが、だがしかしこのタイミングは。
魔力も意識もアルジュナ撃破に割いていた、最悪のタイミングでよりにもよって――!
その瞬間、拮抗が崩れる。
光が闇を喰らう、神罰が暗黒を打ち消す。
たった数秒、されど隙が生まれた事実に変わりは無く。
『―――――――――――――――――』
神も、魔女も、人間も。
誰もが等しく光に呑まれ、そして
「あとは、頼む」
命が潰える音がした。
◆
「危なかった…!」
どっしりと地面に座り込み、アレフは深く息を吐く。
魔物と戦い、二つのほこらを目指し、果てに待ち受けた大魔王との決戦。
嘗ての旅でも度々命の危機はあったが、今回は本当に肝を冷やした。
何をどうしようとブルーアイズの直撃は避けられない。
そう分かったからこそ、呪文の使用に躊躇は無かった。
リレミト、唱えるとダンジョンから一瞬で脱出できる。
覚えておいて良かったと心底思う。
コーカサスカブト城を抜け出し、可能な限り離れた甲斐はあった。
今の所アルジュナやノワルが追って来る気配は感じられず、取り敢えずは死を免れたと見て良い。
「あ…ローラ、は……」
ふと、城に残して来た彼女を思い出す。
戦場となったあの場所が今も残っているのか、そうだとして玉座の間は無事なのか。
戻って確かめるには大きな危険が付き纏い、でなくとも彼女の顔を見る気になれない。
瓦礫の下敷きはまだマシ、髪の毛一本も残さず消し飛ばされたって不思議は無かった。
「……」
もし本当に彼女を愛しているなら、ローラに他の人とは違う特別なものを抱いてるなら。
危険を承知で、今からでも城に戻るのが普通なんじゃあないか。
彼女の死後も惨い扱いをした者達へ、怒りをぶつけるべきではないのか。
現実にはそういった気は全く起きない。
これでは本当に、あの女の子が言った通り無関心な人間ではないか。
人として当たり前の部分が欠けていると、突き付けらたようだ。
「いや違う、まだそうとは限らない…だから僕はローラを…」
生き返らせて、自分の気持ちがどこにあるかを知らなければならない。
そうしないと永遠に分からないまま。
だけど、僕を否定したあの女の子は。
不思議なくらいに心を軋ませた、愛を語った女のすら。
魔女の前には何も出来ず、弄ばれるだけだった。
どれだけ愛を口にしようと、力が足りないならあんなものなのかと。
どこか冷めた風に考えている自分がいた。
なら果たして、人を殺してまでローラへの気持ちに愛があるかどうかを確かめることに、意味なんて――
「…やめよう。今はもう少し離れないと」
思考を打ち切ったのは、考えるだけ無駄と悟ったからか。
直視したくない現実から、目を背ける為か。
どちらにせよ、引き返す道は無い。
彼は殺し合いに乗る道を、既に選んでしまったのだから。
【エリアF-4/租界跡地/9月2日午前7時30分】
【勇者アレフ@ドラゴンクエスト】
状態:疲労(大)、ダメージ(中)、絶望、激しい精神的ショック、さとうの言葉に動揺(大)
服装:いつもの格好(デフォルト画面の甲冑姿)
装備:ロトの剣@ドラゴンクエスト
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2(確認済み、ロトの防具はなし)、ホットライン
思考
基本:優勝してローラ姫を生き返らせる。仕方ない、そうしなければいけないのだから。
01:参加者を探して殺す
02:僕は本当にローラ姫のことを……?
参戦時期:本編終了後
備考
※最初の放送(OP2で流れた物)を聞き逃しました。
◆◆◆
「はぁ…!はぁ…!」
機能を失った租界エリアを背に、さとうは息を切らせて走る。
彼女が無事だったのは偏に、タイガへ変身していたからだ。
ミラーワールドというデッキ所持者のみが通行可能な世界。
咄嗟にガラス窓へ入り、ミラーワールドを通って城の外へ脱出。
同じデッキ所持者の浅倉威は同エリアにおらず、ライダー世界の法則を無視できる門矢士は不参加。
よってさとうの逃走を阻む者は現れず、地獄のような場から生き延びられた。
「しおちゃん…しおちゃん…!どこなの……」
最愛の少女の名を何度口にしても、姿を見せてくれない。
巻き込まれた当初と同じか、それ以上に憔悴ししおを求め続ける。
黒い男と女、神と魔女の姿が脳裏に焼き付いて離れない。
殺し合いという現状も常識から外れているが、先の二人は最早完全に理解の範疇外だ。
あんな化け物達がいる島で、しおが生き残れる確率などゼロに等しい。
運良く善良な参加者に保護されたとて、一体何の慰めになるという。
先程の連中に見付かったら、肉盾になるかすら怪しい。
加えて奇妙な拘束具を操る女なら、しおまで唾棄すべき欲望の餌食にするだろう。
天使同然の愛らしさのしおが、醜悪極まる方法で汚されてしまう。
許さない、断じてそのような真似をさせるものか。
そしてもう一人、あの男は――
「いや……いやいやいやいやいやいやいやいや!苦い…苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦いにが…う…うぅぅぅ…!」
恐ろしかった。
馬鹿げた力を持っているだけでは無い。
もう少しで自分は、しおへの愛を完全に消されていた。
唯一無二の、初めて好きだと思えたしおの記憶を奪われた。
どうにか助かったけど、次に会った時にも逃げられるとは限らない。
今度こそしおへの愛を失くし、男の命令を聞く人形にされてしまうんじゃないか。
「しおちゃん…しおちゃん……!会いたいよぉ……!」
砂糖少女を救う天使は、まだ現れない。
【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
状態:疲労(大)、ダメージ(中)、ノワルへの嫌悪(大)、アルジュナへの恐怖(大)、不安による焦り(極大)
服装:ファーストリコリスの制服@リコリス・リコイル
装備:仮面ライダータイガのデッキ@仮面ライダー龍騎
令呪:残り三画
道具:ランダム支給品0〜3(確認済み・アーリャの分含む)、ホットライン×2、サバイバルナイフ@現実、キルアのスタンガン@HUNTER×HUNTER、ライダーガシャットケース@仮面ライダーエグゼイド、11本のプロトガシャット@仮面ライダーエグゼイド、 ヴェルデバスターガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER、さとうの制服(Yシャツの一部が引き裂かれている)
思考
基本方針:しおちゃんと二人で元の世界に戻る
01:しおちゃんを探す
02:テレビ局に行きルルーシュの部下になることも検討。
03:↑に並行してしおちゃんと一緒に元の世界に戻る方法を探す。
04:邪魔をする存在には容赦しない
05:アタッシュケース(ライダーガシャットケース)に何かある……?
参戦時期:アニメ3話でしおちゃんが家にいないのを気付いた頃
備考
※神戸しおは自身と同じ時間軸から参戦していると思っています。
◆◆◆
「卜部さん…!」
涙を流しても、彼には届かない。
ひょっこり現れ、「心配かけたな」なんて言ってくれはしない。
運良く助かったという奇跡を信じたいけど、無理なのはドラえもんにも分かる。
この地で出会った最初の仲間は死んでしまった。
自分を逃がした彼とは、もう二度と会えない。
ピー助のようにあるべき場所へ帰ったのではない。
美代子のように覚えておらずとも、同じ世界で生きているのではない。
ロップルとモリーナや、キー坊とリーレのように住まう星が違う故の別れとは違う。
リルルとピッポのように、新たな生を受けることだって――
死という、22世紀の技術でさえ覆せない終わり。
過ごした時間は短くても、仲間を喪った傷はどんな工具を使ったって修復できそうもない。
「……っ!行かないと……!」
拭っても拭っても涙は止まらない。
だから流したままで、それでもしっかりとした足取りで進む。
卜部に託されたのは自分だけ、なのにいつまでも落ち込んでいては卜部は何の為に自分を逃がしたのか。
「ルルーシュくんに会うんだ…!」
仲間を集め、卜部が信じようとした少年の元に行く。
彼は本当に、放送で見せたのが本性の悪人なのか。
卜部のことを何とも思っていないのか。
殺し合いに巻き込まれる前のルルーシュを、卜部の話でしか知らないドラえもんには分からない。
直に会って、確かめたい。
何より卜部の最期を伝えねばならない。
喪失という大きな痛みを抱え、彼の新たな冒険はここから真のスタートを切る。
【?????/9月2日午前7時30分】
【ドラえもん@ドラえもん】
状態:ダメージ(中)、悲しみと決意
服装:全裸(ロボットなので)
装備:空気砲@ドラえもん、ひらりマント@ドラえもん
令呪:残り三画
道具:ホットライン、チーターローション@ドラえもん、復元光線@ドラえもん
思考
基本:皆が殺し合いから脱出出来る様に行動する。
01:卜部さん……
02:仲間を集めてルルーシュくんの所へ行く。
03:総司令官の話には乗らない。
参戦時期:不明。(少なくとも、鉄人兵団の事件の後)
備考
※四次元ポケットは主催側によって没収されています。
※卜部から黒の騎士団やブリタニアの大まかな情報を聞きました。
※強制脱出装置@遊戯王OCGで転移しました。どのエリアにいるかは後続の書き手に任せます。
◆◆◆
「痛いわねぇもう……」
傷を負った箇所を擦りながら回復魔法を掛ける。
マジアベーゼ達との戦い以上にダメージは大きい。
魔法を使えば治せるが、毎回毎回では魔力の無駄だ。
とはいえ負傷をわざわざ残し続け、コンディションを悪化させたいとも思わない。
はあっとため息を零し、ノワルは先の戦闘を振り返った。
卜部の刀がノワルに届かなかった理由を説明するなら、複雑な内容では無い。
レジスターを壊す前に、卜部自身に限界が来た。
アルジュナとの高威力の技のぶつけ合いに介入し、ナイトメアフレームを纏っただけの人間が無事でいられる訳が無い。
塵すら残らず消失、魔女を道連れには出来なかった。
レジスターを破壊される危機を脱したは良いものの、既に撃ち合いはアルジュナが優勢になった後。
押し返すのは無理と分かれば、結界を展開し防ぐ方へと急遽変更。
ブルーアイズの砲撃で幾分かは威力が削がれたのも影響し、こうして命は繋がったまま。
尤も、城からは大きく吹き飛ばされた挙句防ぎ切れなかった魔力に肌を焼かれる羽目になったが。
ラストレクイエムを使いエリア毎閉じ込めようかとも思ったが、あの男なら平然と脱出しそうなのが笑えない。
今回得られた収穫は然程多くない。
ローラ姫の持っていた支給品とレジスター。
卜部とか何とか呼ばれていた、邪魔な男の退場。
負った傷や消費した魔力を思えば、リターンが見合ってないのではと考えなくも無い。
せめてイドラ達のように、魔力サーバーの有力候補の一人でも見付けられてれば話は別だが。
「まあでも、必要な経験だったのは否定できないわね」
あっけらかんと笑うも、殺し合いスタート時と比べ真剣さが宿っている。
ノワルから見た殺し合いとは、手を焼く部分もあるが自身の絶対的な優位は簡単に揺るがない、というものだった。
マジアベーゼ達から予想以上の抵抗をされ、もっと警戒するべきと反省したのは事実。
だが自分の絶対的な優位が大きく揺らいだ訳ではない。
闇檻への対抗策を生み出されたとはいえ、全体的に見れば常に追い詰められたのは向こうの方。
運良く脱出に使える支給品が無かったら、今頃はF-7エリア共々自分の手の中。
参加者に知っている者が一人もいなかったのも影響している。
因縁深い炎獄が参加していれば、また違ったかもしれないが彼女は不参加。
強く警戒すべき相手は羂索達主催者くらいと思っていた。
あの男が現れるまでは。
「そうよねぇ…“殺し合い”だもの。むしろいなきゃおかしいわよねぇ」
羂索達は参加者に殺し合いを強要している。
であれば、何もおかしくはない。
一方的な蹂躙ではなく、戦闘が成り立つ為に余計な枷を施すのも。
闇檻対策として複数の支給品を配るのも。
自分に匹敵、下手をすれば凌駕し兼ねない怪物を参加させるのも。
気を引き締めるという点において、アルジュナとの戦闘はプラスになった。
同時に殺し合いへの見方も幾らか変わる。
参加者全員が、とは違いだろうがしかし。
アルジュナ同様に桁外れな力の持ち主が、他にも複数人いると考えても決して大袈裟ではない。
「うーん…焦りは禁物だけど、あんまりのんびりもしてられないわ」
性的嗜好以外でも、魔力サーバーの確保は必須だ。
賢者の石は強力な分、使用の度にエネルギーを消費する。
魂が底を突けば当然使い物にならない。
安定して魔力を供給できる美女・美少女が、今後間違いなく必要となる。
何より発見と確保が遅れれば、折角の優秀な魔力サーバーがアルジュナに殺される可能性だってゼロではない。
イドラとマジアマゼンタ含め、確実に捕らえねばなるまい。
最終的な目的は変わらない。
理想の楽園を作る為、この先も多くの少女を毒牙に掛けるだろう。
しかし、理想郷を脅かす神の存在を知り、魔女の意識も切り替わった。
前哨戦は終わりだ、更なる脅威となって魔女が殺し合いを練り歩く。
【ノワル@魔法少女ルナの災難】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)(回復中)
服装:ノワルのドレス
装備:賢者の石@鋼の錬金術師、万里ノ鎖@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3(ローラ姫のもの)、青目の白竜(12時間使用不可)@遊戯王OCG、ホットライン、レジスター(ローラ姫)
思考
基本:お気に入りの子は残しつつ、いらない奴は消していく
00:アイツら(マジアベーゼを、マジアマゼンタ、イドラ、千佳、アルカイザー)にはいずれ報いを受けさせる
01:この殺し合いを乗っ取って、自分好みに改造してあらゆる世界から集めた女の子を愛でる
02:黒い男(アルジュナ)を強く警戒。気を引き締めないとねぇ
03:イドラちゃんとマジアマゼンタちゃんの魔力はおいしかったわね。
04:まだ見ぬ異世界のかわいい女の子に会うのが楽しみ。今度は殺される前に会いたいわ
05:ルルーシュって奴の能力も対策を考えておく
参戦時期:ルナに目を付けて以降(原作1章終了以降)
備考
※ノワルに課された制限は以下の通りです。
闇檻 無限監獄の封印
魔力解放形態の封印
結界による陣地の作成不可
召喚できる使い魔は天使α、天使β、天使γ程度
闇檻 ラストレクイエムで呑み込める範囲を1/10未満に
◆◆◆
勇者は己が感情の行く末が見付からず惑う。
砂糖少女は自身の愛を脅かす存在に慄く。
猫型ロボットは託された者として前へ進む。
魔女は理想実現を夢見て笑う。
なれど神は何も変わらない。
悪を憎み、
不出来と断じ、
善なる世界の完成を目指す。
神の不出来を炙り出す日輪は、この世界にはいないのだから。
【卜部巧雪@コードギアス反逆のルルーシュR2 死亡】
【エリアF-4/コーカサスカブト城/9月2日午前7時30分】
【アルジュナ・オルタ@Fate/Grand Oreder】
状態:疲労(小)、ダメージ(超々軽微)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜3、ホットライン
思考
基本:一切の邪悪を断ち、世界を救う
01:全て些末……
02:兵を作る……それも手か……
参戦時期:創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ、19節でカルナと相対する前。
備考
※殺し合いが破綻しない程度に能力を制限されています。
※F-4及び近隣エリアで大規模な戦闘が起きました。近くの参加者に目撃されたかもしれません。
※少なくともF-4は壊滅しました。コーカサスカブト城及び近隣エリアの被害規模は後続の書き手に任せます。
※月下の機動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュ、強制脱出装置@遊戯王OCGは消滅しました。
【青目の白竜@遊戯王OCG】
通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。
どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。
召喚されれば破壊されるまで共に戦ってくれる。
破壊後は12時間使用不可能。
【賢者の石@鋼の錬金術師】
「等価交換」の原則などを無視した錬成が可能になる幻の術法増幅器。
その正体は複数の生きた人間を対価に錬成される、魂が凝縮された高密度のエネルギー体。
使用すればその分だけ内包される魂(エネルギー)は減り、最後には壊れてしまう。
【万里ノ鎖@呪術廻戦】
特級呪具の一つ。
片方の端を観測されなければ際限なく伸び続ける不思議な鎖。
【強制脱出装置@遊戯王OCG】
通常罠
(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に戻す。
本ロワでは対象をランダムに他のエリアへ転移させる。
投下終了です
皆様、お疲れ様です。
◆ytUSxp038U様、昨夜のお話が面白く、何度も読み返しました。
また卜部さんについて、長生きしてほしかったですが、格好良い最期で良かったと思います。
自分もあの様な作品が作れる様に精進したいと思います。
では、投下します。
殺し合いが始まって、間もなく二時間――
殺伐とした会場の中で、赤子の鳴き声の様な場違いな足音が響く。
そこには、黒と白の模様をした大きな丸い顔と身体を持つ動物が歩いていた。
遠目から見たそれは誰もがパンダだと言うだろう。
しかし、近くに寄ればそれが愛らしい動物ではないとすぐに気付く。
――その動物の左目が人間の顔となっており、左手にはシャチの頭が付いている事に。
「あ〜。」
その動物の名は、《シャチパンダヤミー》。
《ヤミー》と呼ばれる人間の欲望から生まれた怪物で、この場では参加者を襲うNPCモンスターの一体である。
怪物――シャチパンダヤミーは地面に鼻を擦り付けると、何かを見つけたかの様に、その場を離れていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ここらでよかろう。」
ブリタニア帝国最強の騎士の一角であるパーシヴァルを従えた総司令官は、地に足を付ける。
そこはドラえもんらとの邂逅の場所から、距離を置いた湖のほとりだった。
そろそろ放送が始まる時間の為、総司令官は一旦腰を下ろす事にしたのだった。
あの場所からは近くに洋風の城の様な建物があり、総司令官も気にしたが、この場では何処で敵が潜んでいるか分からない。
故に城から離れた所で休息を取る事にした。
パーシヴァルを元の起動キーに戻し、リュックの中に仕舞うと、ホットラインを取り出す。
(さて…、この羂索の遊戯の参加者はどれ程いるのか…。それによって戦況は変わってくる…。)
機械の軍隊の長は放送が始まるのを静かに待った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◇
クルーゼの話が終わり、総司令官は続いて名簿と地図を確認する。
「予想はしていたが…、副司令官も我が鉄人兵団の精鋭らも居らんか……。」
総司令官にとって、名簿に幾つか同じ名前がある事や、スパイから仕入れた地球の過去の武将の名前がある事や、はたまた男性用下着の名称が混じっている事は気にならなかった。
気にしたのは、自分にとって有益な存在か居るかどうかだけ。
しかも、この場にいる参加者は百五十人近くもいる。
幾ら戦闘の心得のある総司令官でも、この人数を全て殺す事も、奴隷として従える事も、難しいだろう。
サイコントローラを使ってのパーシヴァルの遠隔操作も限度がある。
乱戦では此方の思考が纏まらず、上手くコントロールは出来ないだろう。
(やはり、信頼できる配下を集めなければならんな。始めの広間で人間が多かったが、奴らを上手く取り込めなくてはならんか。
出来れば、同族であるロボットが何体かいると助かるのだが…。)
先程のカラレスも、五体満足なら取り敢えず奴隷として配下に加えただろう。
しかし、戦闘の末、重症を負い、あまつさえ“神”を都合の言い様に解釈したのだ。
総司令官にとって、生かす必要はなかった。
死者の事を振り返った後、総司令官の思考は現在に戻る。
名簿と地図の確認を終えた総司令官は、カラレスのリュックに手を伸ばす。
パーシヴァル以外の支給品を確認する為である。
と、指先に何やら大きな物があると感じると、リュックの中から思わぬ物が出て来た。
――それは少女であった。
リュックの中から透明な棺桶の様なケースが出てきて、その中に少女が眠っていた。
「なんだ、コレは?」
総司令官はケースに付属された説明書を開く。
出だしには《トモダチロボット ロボ子》と大きく書かれてあり、頭のリボンがスイッチになっており、起動後初めて見た人物と親しくなると書かれてあった。
(フン、地球人が人間関係が上手くいってない者の為に作った愛玩用のロボットか。殺し合いでは役に立つまい。)
恐らくカラレスも使えないと判断し、ケースを開けなかったのだろう。
(だが、私だけでは手が足りんのも事実だ。
荷物運びでも手伝わせよう。必要ないと判断すれば盾として使えばよい。)
総司令官はケースを開き、頭のスイッチを押す。
やがてケースの中の少女は目を開いた。
「初めまして、私はロボ子と申します。」
髪色は違うが、纏めた長髪に丁寧な口調――、
その姿に総司令官はかつて自身を裏切った少女型ロボットを思い出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「総司令官さん。」
「敬称なら総司令官“様”と呼べ。我々の関係は主人と従僕なのだからな。」
「では、総司令官様。特技や好きな物はございますか?」
起動させたばかりのロボットは質問を繰り返す。
主の事を理解する為に、そうプログラムされているのだろうと総司令官は思った。
「…下らぬ事を聞くのだな。私は母星の――メカトピアの崇高な使命の為に、働いているのだ。個人的な好み等、私には許されていない。」
「では、メカトピアの使命が終われば、貴方は自由になれるのですね。」
「ああ、しかしそれは無理な話だ。
此度の任務である地球征服と人間狩りが終われば、人間をどう活用するかの問題がある。
また、他の人間型の宇宙人を狩りに行くかも知れん。
私が自由になるのは、この身体が老朽化し、総司令官を退官する時だろう。
…そしてそれは、私の役目が終わり、廃棄される――つまり“死”を意味する。」
「……貴方様はその様な生き方で宜しいのですか?」
「構わん。私はメカトピアに尽くす為に作られたのだ。
“神”とその末裔であるロボット達に作られたこの星を永く発展させるのであれば、如何なる事も、
例えばこの場にいる参加者共の皆殺しも喜んで行おう。」
「…しかし、実際はこの殺し合いは羂索とか言う寄生生物の遊びだ。
何を考えているのかは知らんが、これで地球征服の任務は大幅に遅れる。
奴らは我が鉄人兵団の――メカトピアの国是を汚したのだ。
この代償……羂索とその一味には死をもって、償う他はない。」
「…分かりました。貴方様にとって、メカトピアとはそれ程の価値があるものなのですね。」
そう話した後、ロボ子は、総司令官の前に跪く。
「メカトピアの事は分かりませんが、貴方様がその国を大切して、生涯を尽くす程の熱意は伝わりました。
貴方様の熱意には劣るかもしれませんが、どうか私も貴方様に尽くさせて下さい。」
その様子を見て、総司令官は考える。
(人間の愛玩物が私にここまで忠誠の礼をとるものか?
或いは主人に従う様にプログラムされている為か?)
「どうしましたか、総司令官様?」
「貴様は―――」
総司令官が答えようとした時、
突如、空中から回転した鋭い刃が降り注いだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「何奴!?」
総司令官は自身の杖から電撃を放ち、空中の刃を撃ち落とす、或いは違う方向へ向かわせる。
しかし、完全には、防げずに幾つかの刃を受けてしまう。
「総司令官様!!大丈夫ですか!?」
「案ずる事はない。かすり傷だ。」
ボディを引っ掻いたぐらいの傷を気にせず、ロボ子に答えながら、総司令官は下手人を探す。
そして、少し離れた木々の中にそれを見つけた。
黒と白のパンダの様な化け物――、シャチパンダヤミーの姿を。
「あ〜。」
総司令官は相手を観察する。
リュックも所持しておらず、意思の疎通も難しい怪物。
すぐに目の前のモノが参加者ではなく、NPCモンスターだと気が付いた。
(これが、羂索の手駒の一体か。
外見は地球のクマ科の動物に似ているが、左手が海中に住む肉食の哺乳類の顔があるな。また左目に人間の顔も見える。
……あるいはそれらを掛け合わせた合成生物か?
羂索め、悪趣味な物を作りおるな。)
NPCは各世界の参加者らの記憶から作られたものなのだが、総司令官は羂索が1から作った物と思い込んだ。
(兎に角、コイツをどうにかしなければ。
あの飛ぶ刃は厄介だが、パーシヴァルとかいう機動兵器を使えば、何とかなるか…?)
総司令官が思考を巡らせる中、目の前の化け物は飛ぶような速さで距離を縮めて来た。
(来るか…。考える暇はないな。)
リュックの中から起動キーを取り出す。
たちまち総司令官の身体に機械類が付いてまわり、パーシヴァルを構成する。
人間の作った機械に乗っているという若干の不快感を感じながら、右腕の螺旋状の刃―ルミナスコーンを可動させる。
そして、それと同時にパンダ型の怪物はパーシヴァルに襲いかかる――
――と思いきや、怪物は隣のロボ子に向かっていった。
「え!?きゃっ!!!!」
そして、怪物はロボ子を抱き締めた。
「あぁー。」
しかし、愛情表現の為の行為ではない。
シャチパンダヤミーは万力の力でロボ子を抱き締め始めたのだった。
「ゔぅっ……。」
痛みに声を上げるロボ子。
その身体はミシミシと音を立てる。
「あぁ〜。」
哀れな犠牲者を抱き締めながら、パンダの怪物は喜びの声を上げていた。
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―――先にいった通り、《シャチパンダヤミー》は《ヤミー》と呼ばれる人間の欲望から生まれた怪物である。
つまり、行動原理には元の人間の欲望が要因となる。
この怪物の元となったのは、《真木清人》という科学者だった。
彼は幼い頃、優しい姉を深く愛していた。
真木博士は、自身から生まれたシャチパンダヤミーが女性を襲うのを見て、その欲望は『慈愛、母性への欲求』と考えた。
しかし、彼の姉は結婚したのを機に、真木に対し、辛くあたるようになる。
女性を襲うのはもしかしたら、姉への恨みのようなものがあったのかも知れない。
長くなったが、つまりこの怪物は、優先的に女性を抱き締めて殺すという特性があるのだ。
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(勝てんと踏んで、弱者の方を狙うか。賢い判断だ。)
シャチパンダヤミーの特性を知らない総司令官は、ロボ子を襲ったのを見て、勘違いをしていた。
総司令官は苦しむロボ子を尻目にそのままシャチパンダヤミーから距離を取り、ハドロン砲の発射準備をする。
(だが、その判断が命取りだ。あのロボットには悪いが、まとめて吹き飛ばしてもらうぞ。)
しかし、総司令官は発射前に思わぬものを目にする。
目の前の非力と思ったトモダチロボット――
ロボ子がシャチパンダヤミーの万力の抱き締めに対し、力づくで対抗していた。
「あ!?あー、あー!」
元の世界で戦った仮面ライダーバース/伊達明も抱き締めから逃れられず、ドリルアームでダメージを与えてから、脱出したのだ。
それをロボ子は自身の腕力のみで、脱出しようとしている。
「私は兎も角…、総司令官様の……、お身体に傷を付けるなんて……、許しません!!!!!!!!!」
やがて、シャチパンダヤミーの腕を解くと、右腕を掴み、そのまま地面に叩き付ける。
「あー!あー!」
叩き付られたシャチパンダヤミーは声を上げ、身体から多量のメダルを放出する。
――《ヤミー》は皆、セルメダルという物で構成されている。
負傷時に、セルメダルが出て来るのは生物の出血にあたる。
「あー。」
しかし、負傷に関わらずシャチパンダヤミーは左腕のシャチの頭をロボ子に向ける。
すると、二人の間にシャチのヒレの様な物が現れる。
それはそのまま回転し、鋭い刃となって、ロボ子を襲う。
「そんな攻撃当たるものですか!!!!」
ロボ子は首を捻り、間一髪、回転する刃を躱す。
しかし、ヒレの刃はブーメランの様に戻り、再びロボ子に向かう。
「ホントに…、しつこいわよ!!」
ロボ子はシャチパンダヤミーの右腕を離し、相手から出来るだけ離れる。
刃からは何とか逃げられたものの、相手を自由にさせてしまった。
「あ〜。」
怪力から解放されたシャチパンダヤミーは立ち上がり、ロボ子に笑い掛けると、再び、空中に回転するヒレの刃を召喚する。
戦闘は遠距離の攻撃が出来ないロボ子に圧倒的に不利であった。
「ロボ子よ!」
その時、総司令官がカラレスのリュックから何かを取り出し、ロボ子の前に投げる。
「私からの施しだ。その忠誠心、偽りでは無い事をこの場で見せて貰おう。
…それを腰に付けて、カードキーを入れろ。」
ロボ子は言われた通りに目の前の物を腰に付け、付属のカード状のキーを差し込む。
その瞬間、ロボ子の周りに光が走った。
「あー?あー?」
眩しさにシャチパンダヤミーは目を瞑る。
再びパンダの怪物が顔を上げた時、ロボ子が立っていた位置に、違うものが立っていた。
天に向かって伸びる長い耳、赤く光る目をした猫の様な顔、膨らんだ胸部に前垂れ、灰色の身体に全身を覆う黒い装束。その外見はエジプトのアヌビス神を思い起こさせる。
それはとある世界にて《レイダー》と呼ばれる怪人の一体だった。
先程、総司令官が投げたのは、
《レイドライザーとファイティングジャッカルプログライズキー。》
人間が(今、使ったのはロボットだが)、《レイダー》と呼ばれる怪人に変身する為の道具である。
宙より、身の丈程の大鎌が生成され、ロボ子―ファイティングジャッカルレイダーはそれを掴むとパンダの怪物の方を向く。
「目標を……、破壊する!!」
大鎌を構えた女豹は、敵に向かって駆け出した。
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「あぁ〜!」
シャチパンダヤミーは、先程と同じく、空中に5、6個のヒレを出し、一斉にロボ子に向かって発射する。
しかし、ロボ子―ファイティングジャッカルレイダーは大鎌を振るい、ヒレを叩き落とす。
しかし、中には回転し、背後に回る物もあった。
その中の一つがジャッカルレイダーを捕らえ、見事に命中する。
しかし、命中と同時に霧の様に消えてしまう。
「あ!?」
「残念ね、残像よ。」
いつの間にかシャチパンダヤミーの目の前に身体を低くしたファイティングジャッカルレイダーの姿があった。
その体勢から身体を起こしながら、下から大鎌の刃を相手の顔面目掛けて、突き出す。
しかし、シャチパンダヤミーも右手から爪を伸ばし、刃を弾き返す。
パンダの怪物は距離を取ろうとヒレを連続して発射するが、全て大鎌に弾かれてしまう。
ファイティングジャッカルレイダーには遠距離攻撃はない。
しかし、それを補う程の俊敏性がある。
また長いリーチの鎌が、相手の攻撃を悉く封じる。
「はあっ!!!!」
「あー!!」
遠距離や獲物での戦いでは決着が付かないと悟った両者は、肉弾戦に入る。
中国拳法の様な構えを取るシャチパンダヤミー。
そこから拳と見せかけて、足技を放つ。
あるいは、右手の爪で引っ掻くと見せかけ、足払いをする。
読みにくいトリッキーな攻撃を繰り出すシャチパンダヤミー。
その動きは素人なら捉えられないだろう。
対するロボ子も拳と足技で応対する。
相手の攻撃が読めない所もあるが、持ち前の俊敏性で何とか躱す。
幾度かの組み手の後、ロボ子が右手の爪を受け止めた時に、相手は左手のシャチで噛み付こうとする。
しかし、ロボ子は大鎌の刃をシャチに噛ませ、その柄から手を離す。
そして相手の右手を蹴りで払い除けた後、空いた腹部に何度も拳を突き入れる。
「あー!あー!」
殴る度にジャラジャラと、シャチパンダヤミーの身体からメダルの様な物がこぼれ落ちる。
―先程、シャチパンダヤミーの拘束を振り払った様にロボ子には百万馬力の力が備わっている。
ジャッカルレイダーの俊敏性とロボ子の腕力。
武術の心得がなくとも、この二つの組み合わせが上手く重なり、怪物を押していく。
やがて、シャチパンダヤミーの腹に強烈な一撃が入る。
「あ―……。」
パンダの怪物は、声にならない声をあげると、大の字に倒れた。
「とどめよ!!」
ロボ子はシャチの口から大鎌を取り返す。
そして、その大鎌を地に伏したシャチパンダヤミーに振り下ろ――、
「待て。」
――そうとした所を総司令官が止める。
「何故です!この獣は総司令官様に傷を負わせようと……。」
「試したい事がある。」
そう言うと総司令官は自身のリュックから何やら丸い食物――団子の様な物を取り出す。
そして、それを倒れているシャチパンダヤミーの口に押し込む。
「あー…。」
団子の様な物は怪物に咀嚼される。
と、シャチパンダヤミーは負傷しているのにも関わらず、ゆっくりと立ち上がる。
ロボ子は、総司令官を守る様に前に立ち、大鎌を構える。
しかし、パンダの怪物は、総司令官の前に来ると、そのまま、両膝を付き、頭を下げる。
その様子に、もはや敵意はない。
「総司令官様、これは…。」
「《桃太郎印のきびだんご》。これを食べると、食べさせた者に忠実になるそうだ。
効果の時間切れや数に限りがあるが、取り敢えずはこれで手駒を増やせる。
……これで此奴は我が鉄人兵団の忠実な下僕よ。」
総司令官はシャチパンダヤミーに近づく。
すると、目の前の怪物は嬉しそうに、顔を綻ばせる。
その様子に安心したのかロボ子は大鎌を地面に置き、相手の頭を撫でる。
「貴方の不敬は許してくれるそうよ。良かったわね、パンダさん。」
「あ〜。」
しかし、特性までは変わってなかったので、近付いて来たロボ子を、シャチパンダヤミーは先程と同じく強い力で抱き締める。
「……可愛いからってふざけないでね。」
ロボ子も強い力で―百万馬力の怪力で抱き返す。
「あー!あー!」
痛みに声を上げるパンダの怪物。
そんな微笑ましい?光景を総司令官は眺めていた。
(トモダチロボット…、主に忠実なのはプログラムされたものだとしても、先程の戦闘は中々のものであった。…これは使えるな。)
総司令官はロボ子の肩に手をかける。
「ロボ子よ…、此度の働き見事であった。ここまで動けるとは思いもよらなんだわ。
…貴様を鉄人兵団の一員として認めよう。これからは我が手足となって働くが良い。」
「はい!!」
ファイティングジャッカルレイダーの中で、ロボ子は外見にあった少女らしい満面の笑顔を見せた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
パンダの怪物の怪我が、先程より回復していた。
これは、ロボ子を再度抱いた為、体内のセルメダルが増えたからなのだが、二人は気付かなかった。
二人―いや、二体のロボットはそれぞれの武装を解除し、向き合っていた。
「では、これまでの事とこれからの方針と話そう。」
総司令官は、部下となったロボ子に最初の広間の出来事や、
“神”に対し、不敬を働いた人間を殺した事とそれと戦った人間の軍人、そして地球にて自分と――《鉄人兵団》と戦った名前の分からない地球のロボットの事を話した。
話しの最後に改めて羂索の打倒の為、《鉄人兵団》に加わる配下及び奴隷を集める事を伝えた。
また、地球のロボットの方は仲間に加えたい為、危機的状況に会っていたら助ける事を伝えた。
最後にもしはぐれた時の為に、カラレスのリュックを渡す。
中にはカラレスのホットライン、シャチパンダヤミーの身体から出たセルメダルが50枚程、そして桃太郎印のきびだんごが5つ入っていた。
「人間の使用する硬貨の様な物はどう使うか分からんが、この丸い食物の方は使えると思った者に喰わせろ。貴様の配下となるが、我が鉄人兵団の一員なら上手く使いこなせよ。」
リュックを受け取ったロボ子はレイドライザーを持ち、総司令官に跪く。
「総司令官様、私の為に支給品を分けて下さった事、またこの様な素晴らしいお力を授けて下さり、大変感謝致します。必ずや、この殺し合いを勝ち残り、羂索らの首を貴方様に献上致します。」
「頼もしい言葉だな。貴様を初めて見た時はリルルを思い起こしたが、どうやら杞憂だったようだ。」
「リルル?」
「かつて鉄人兵団に仕えていた人間の少女に似せたロボットよ。
地球でのスパイ活動や、兵団本隊の宿舎や拠点となる基地の設営等を任せていたが、先の地球のロボットの策略に嵌り、私を―、我が鉄人兵団を裏切ったのだ。」
「なんという事を…。」
驚愕の表情の後、ロボ子はその顔を怒りで歪ませる。
「私は許せません!そのリルルという女が!!
どのように誑かせれたのかは知りませんが、大恩ある総司令官様を裏切る等と!!!!!この場にいたら八つ裂きにしてくれたのに!!!!!!!!」
先程までの大人しい姿とは違い、鬼の様な顔を見せる少女。
流石の総司令官も眉を(ロボットなので無いが)ひそめる。
「…そういきり立つな。その怒りは我等の邪魔をする参加者や羂索に向けてもらおう。」
総司令官はロボ子をなだめる。
「も、申し訳ございません。遂、頭に血が昇って…。」
ロボ子の余りの剣幕に不穏なものを感じたが、これも忠誠心が高い故の事だろう。
寧ろ頼もしさを総司令官は感じた。
「では、羂索を倒す為に動くぞ。奴らに目にものを見せてやらねばな。」
「はい!」「あ〜。」
ロボットの軍隊の長の後ろに続く、少女とパンダの怪物。
3体だけとはいえ、新しい《鉄人兵団》の結成であった。
【E‐4/湖のほとり/ 9月2日午前6時 】
【総司令官@ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜】
状態:正常
服装:ロボットなので服は着ない
装備:総司令官の杖
令呪:残り三画
道具:パーシヴァルの起動キー、サイコントローラー、桃太郎印のきびだんご〔50個入り〕(残り44個)、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻り、地球人の奴隷化計画を進める。
00:戦力を集め、羂索を打倒する。
01:ロボ子と共に使える者を探す。他の参加者に配下に加わらないか交渉する。人間なら奴隷として使役する。
02:交渉が決裂、もしくは出来ない場合、きびだんごを食べさせ、洗脳する。NPCモンスターでも使えそうならきびだんごを食べさせる。
03:地球のロボット(ドラえもん)の腕を買っている。出来れば仲間にしたい。
04:ロボ子の忠誠心が高い事を気に入る。これからの働きに期待する。
参戦時期:鉄人兵団の援軍が来て、ジュド(ザンダクロス)やドラえもん達を圧倒していた所から。〔消滅前〕
備考
※将来、鉄人兵団が消滅する事は知りません。
※様々な世界から参加者を集めたとは知らず、ナイトメアフレームの事を元々のドラえもん世界の物だと思っています。
※ロボ子に自分が見た殺し合いの開幕から、カラレスを殺した事までを話しました。
※ドラえもんの名前を知りません。
※ロボ子の本性を知りません。
※シャチパンダヤミーの特性を知りません。
また、羂索が作ったものと勘違いしています。
※羂索の事を寄生生物と思っています。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
(総司令官様には悪いけど、女性の方を奴隷にする事は賛成出来ないわ。だっていつ総司令官様の御心を掠め取るか分からないんだもの。)
総司令官の後ろでロボ子は考える。
(…そもそも、女なんて媚びた声で助けを求めるだけで、何の役にも立たないわ。
奴隷にするのは男性だけで充分。
リルルとかいう女の様に、これ以上総司令官様を煩わせる事はさせたくないしね。)
トモダチロボットのロボ子には、大きな欠点があった。
(可哀想な総司令官様、裏切られたのがよほどショックだったのね。顔には出さないけど、あの女の事を話すという事は、まだ立ち直れてないのね。)
(でも、大丈夫。これからは私が貴方を支えるわ。薄情なクソ女の開けた心の穴は私が埋めてみせる。)
(他にクソ女を裏切らせたロボットにも気を付けなきゃ。総司令官様は仲間にしたいと仰られたけど、場合によっては排除しなければ。
……会った事はないけれど、総司令官様の話を聞く限り、人を騙す事に長けているからタヌキみたいな外見をしているみたいね。)
ロボ子の欠点――、
それは嫉妬深い為、他の女性や動物等が自身の主人に好意を向ける事を許さない事である。
また、主人の方から女性に好意を向ける事も許さず、
更に主人の為と思い込み、人に危害を加える事も厭わない。
ロボ子は隣のシャチパンダヤミーに目をやる。
(…総司令官様の為にも、この会場にいる女性は全て排除――殺すわ。幸い、パンダさんも女性に興味があるようだし、上手く使わせて貰うわ。)
シャチパンダヤミーの特性は知らないが、自分を2度抱き締めた様子といい、女性に執着があるのは明らかだった。
(総司令官様、ロボ子はずっとお支えします…。羂索とかいう女装癖の狂人やクルーゼとかいう変態仮面をぶち殺した後も末永くお仕えさせて下さいね。)
ロボ子は慕う。
例え、その道が血で汚れようとも。
[トモダチロボット ロボ子(意志持ち支給品)@ドラえもん]
状態:正常
服装:ワンピース
装備:レイドライザー&ファイティングジャッカルプログライズキー@仮面ライダーゼロワン
道具:カラレスのホットライン、セルメダル約50枚(シャチパンダヤミーの身体から出た物)、桃太郎印のきびだんご(5つ)
思考
基本:総司令官に従い、配下を集め、羂索率いる変態軍団を討伐する。
00:総司令官様を慕う。どんな事でも従う。
01:総司令官の指示ではないが、女性の参加者を排除する。
02:地球のロボット(ドラえもん)を警戒。人を騙すんだから、タヌキみたいな外見をしていると評しています。
03:リルルへの怒り。総司令官様を裏切ったクソ女を八つ裂きにしたい。
参戦時期:ドラえもんがロボ子をレンタルする前。
備考
※総司令官から、殺し合いの開幕から、カラレスを殺した事までの話しを聞きました。
※また名前は知りませんが、ドラえもんと卜部巧雪の外見の情報を総司令官から教わりました。
※総司令官はリルルの裏切りでのショックを引きづっていると思い込みました。
※思い込みで勝手な行動を取る事があります。
※シャチパンダヤミーの特性は知りませんが、女性に執着がある事は、気付きました。
〈シャチパンダヤミー(洗脳されたNPCモンスター)@仮面ライダーオーズ/OOO〉
状態:中度の負傷(ロボ子を抱き締めた事により、少し回復)、きびだんごによる洗脳(洗脳解除まで、残り12時間)
服装:裸
思考(自我はなく、欲望で動く。)
基本:女性を抱き締める。総司令官に従う。
00:あー
01:あ〜
02:あぁ―
備考
※「あ〜」しか喋れません。
※欲望を満たす(〔殺すまでいかなくとも〕女性を抱く)と、身体を構成するセルメダルが増え、怪我の修復や、技の強化に繋がります。
【地図情報】
※【E‐4/湖のほとり】に回収しきれなかったシャチパンダヤミーのセルメダルが何枚か落ちているかもしれません。
【支給品紹介】
【トモダチロボット ロボ子@ドラえもん】
カラレスに支給。後に総司令官が奪取。
コミックス2巻、「ロボ子が恋してる」に登場。
某漫画雑誌のキャラではない。
クラスの女性陣に邪険に扱われたのび太の為に、ドラえもんが未来の世界からレンタルして連れてきた。
見た目は可愛い少女で振る舞いも可憐で活発。主人に忠実で、どんな事でも褒めてくれる。
しかし百万馬力の腕力と、嫉妬深い性格で周りに被害をもたらす。
劇中では、可愛いロボ子を連れたのび太への嫌がらせで石を投げたスネ夫とジャイアンの襟首を掴み、強力な腕力で何度も地面に叩き付ける。
また犬を撫でただけののび太を折檻し、しずかに嫉妬し、のび太を叱責したのび太の母、玉子に手を出そうとした事も。
原作ではコミックス2巻と初期に登場しているので、元祖ヤンデレロボットと呼ばれる事も。
本性が発覚した後、のび太はドラえもんに「もっといいロボットはないの?」と尋ねたが、「いいものは借り賃が高いんだよ。」と言われる。
(借り賃が安い高いに関わらず、周りに暴力を振るう時点で欠陥品である。)
本ロワでは、頭のリボンが起動・停止スイッチになっており、一旦停止させるとそれまでの記憶がリセットされ、再度起動後、初めて見た者を新しい主人と認識する。
【レイドライザー&ファイティングジャッカルプログライズキー@仮面ライダーゼロワン】
カラレスに支給。後に総司令官が奪取。
レイドライザーはプログライズキーと呼ばれるカードキーを装填する事で、擬似オーソライズを実行し、装着者を《ライダモデル》の能力を持った怪人《レイダー》へと変貌させる。
さらに人間の負の感情や悪意を増幅し、暴走させる事で恐怖心等、戦闘の障害となる要素を軽減し、限界以上の力と破壊衝動を引き出す事が出来る。(訓練を積んだ人間なら、負の感情や悪意に振り回される事はない。またロボ子のようなロボットに、その様な効果はない。)
ファイティングジャッカルレイダーはレイドライザーにファイティングジャッカルプログライズキーを差し込んだ者が変身した姿。
天に向かって伸びた長い耳と赤く輝く目が特徴。
灰色の身体に黒い衣装。元の変身者が女性な為か胸部は膨らみ、腰には前垂れもある。
戦闘では、元の変身者、刃唯阿が変身していた仮面ライダーバルキリーのデータが反映されており、高い俊敏性と残像を伴うほどのスピードを誇る。これにより敵の死角に素早く回り込んで一撃を喰らわせる近接格闘術を得意とする。
また変身時には自身の身の丈の大きさもある大鎌《テリトリーサイズ》が生成される。
そのリーチは長く、半径3.2m以内を自身の支配圏としている。
【桃太郎印のきびだんご@ドラえもん】
総司令官に支給。
網状の袋に『日本一のももたろう』と書かれ、文字の下に桃の絵が描いてある表紙が目印。その袋にきび団子がまとめてある。
『のび太の恐竜』『竜の騎士』など大長編にも登場する等比較的、知名度が高い道具。
このきび団子を食べさせると食べさせた者に忠実になる。
本来は懐かない動物や凶暴な獣と仲良くなる為の道具であるが、《人間》も動物に入るので、効果がある。(ロボットは食べられないので効果がない。)
また所有者本人が食べても効果がなく、ただの美味い団子でしかない。
本ロワでは、50個入りとなっており、効果の持続時間は参加者が6時間、NPCモンスター・その他の動物が12時間となっている。
また、効果が切れる前に再度食べると、効果が持続される。
(効果が切れる1時間前に食べても、そこから継続時間がプラスされる。
他に時間内に違う人物が食べさせた場合。最初の持続時間が切れてから、その人物に従う。)
洗脳系の道具ではあるが、『相手にきび団子を食べさせる。』『効果の持続時間がある。』等の条件がある為、支給品枠は一つである。
因みにドラえもんの道具には意外と洗脳系の物が多く、未来の治安が心配である。
【支給品追記】
【サイコントローラ@ドラえもん】
念じるだけで様々な機械を操れる装置だが、操る対象に触れた事がある事と、その機械の構造を知らないと、使用する事が出来ない。
【NPCモンスター紹介】
【シャチパンダヤミー@仮面ライダーオーズ/OOO】
第29話「姉と博士(ドクター)とアンクの真実」
第30話「王とパンダと炎の記憶」に登場。
水棲系と猫系の合成系成長ヤミー。
左手がシャチの頭、左耳がシャチのヒレとなっており、最も目立つのは左目が人の顔になっている所。
《ヤミー》は人の欲望から生まれる為、身体の一部に人面があるのが特徴である。
身体はゆいぐるみのように黒と白の模様の境目等にツギハギがあり、頭も右側にやや傾いてる。(丁度、左目の顔が身体の正中線上に来るようになっている。)
基本的に「あー。」としか喋れない。(と思えば、仮面ライダーバース/伊達明から逃げる時に、「バーイ。」と言っている。)
意外と感情が豊かであり、上記の伊達から逃げる時や、回転するヒレでパトカーを八つ裂きにした時等、拍手をして喜んでいた。
空中でシャチのヒレを複数召喚・生成し、それを回転させ、相手を切り刻む攻撃や、右手の爪を伸ばしての引っ掻き攻撃、中国拳法の様な体術、抱き締め攻撃(場合によっては男性にも行う)等、多彩な技を使う。
宿主の《真木清人》の隠された欲望で、女性に執着し、抱き締めて殺して、欲望を満たそうとする。
(真木博士本人は、《世界を美しいまま終わらせる事》を望んでいたが、姉の事もあり、女性らを攻撃する事はしなかった。)
本ロワでは、欲望を満たす(〔殺すまでいかなくとも〕女性を抱く)と、身体を構成するセルメダルが増え、怪我の修復や、技の強化に繋がる。
投下終了します。
タイトルは『アイのカタチ』でお願いします。
誤字・脱字、またはキャラの描写についておかしい所がありましたら、ご指摘をお願いします。
またロボ子について問題がありましたら、報告をお願い致します。
投下します
「ウォーミングアップなら別にいらねえんだけどな。」
あれから一時間の間租界を走り回されるという、
端から聞けば何をしているんだと言える行動に出ていた伏黒。
それも仕方のないことだ。本来ならば、姫和にも最初の時自衛の手段があったのだ。
しかし武器ではなくスキルの類であり、気づくのが遅れたのが戦えなかった原因でもある。
条件も元の条件から大分緩和、もとい調整されてるとは言え一時間の時間を要求するもの。
この舞台において時間の価値はいつもよりも圧倒的に重いのだから更に厄介と来ていた。
もっとも、伏黒からすればこの程度のことなど大したことでもないので特別気にしないが。
やることを終え、租界の貧民街に相応しい古いアパートに二人が待機してるため戻ってみれば、
絶句する二人の姿があった。
なんだこれは。
姫和と龍園の二人は同時に思った。
姫和も知り合いがいることぐらいは想定していたことだが、
まさか隠世で別れた母である柊篝、そしてあのタギツヒメまでもが参加している。
相手は元より異なる世界を干渉しているので決してありえないという話ではない。
それでも想定するのは無理と言うものだ。六人の中で唯一古波蔵エレンがいないこと、
これが少々謎ではあるものの、その二人のインパクトの方が強くて薄れてしまう程だ。
「何をやってやがるんだあいつは!」
もう一方、龍園の方は租界の民家におかれたテレビ。
そのテレビから流れた映像について憤りを隠すことなく壁を叩きつける。
あいつは、綾小路清隆はこのような目立つ行動をするはずがないのだから。
誰がそうさせたかなど、語るまでもないことだ。
「大方、ルルーシュの術式だか何かにやられたんだろうな。」
一応走り回ってるときも天与呪縛で強化された五感のおかげで、
ルルーシュの放送自体があったのは聞こえていたが全容は知らず、
話を聞いてみれば、大方の予想はつくことではあった。
「堀北もやられてるからわかっている。だがそれ抜きにしても何をやってやがる!」
堀北がアレを受けた時点でルルーシュの存在は、多くから警戒対象とされていただろう。
当然綾小路だって警戒するべきはずだ。だと言うのにこの結果を引き起こしている。
別に心配や仲間意識、或いはライバル意識から来るものではなかった。
その程度の奴に負けた自分の不甲斐なさに憤ってると言うのが正しい。
あの時自分に唯一の恐怖を植え付けた男が、この程度のものなのかと。
「まさか、安易に突入するつもりじゃないだろうな?」
彼の反応から察するに、
浅からぬ関係であることは察する姫和。
となれば今すぐにでもテレビ局に向かってしまうのではないか。
そう思えるぐらいに彼が持つ怒りの感情は外に溢れ出ている。
いくら伏黒のおかげで戦う手段は確立できたと言っても心許ない。
最悪の場合の手段もあるが、本当に最悪の場合の最後の手段に近い代物だ。
「いや。無策の状態で行けば間違いなくこの男以外は死ぬぜ。
最悪の場合、こいつが寝返る可能性の方が高いかもしれねえ。」
彼を知るものであれば意外というほどでもないが、
思いのほか彼は冷静に物事を見据えている。
この殺し合いにおいて伏黒を雇うことはできた。
しかし仮面ライダーのベルトは映像を見たが最早並の兵器ではない。
軍や売るべき相手に売れば、億単位だってあり得ない話ではないだろう。
報酬としてそれを差し出すともなってしまえば、この男は簡単に寝返るはず。
敵に寝返ること。それだけは避けなければならなかった。
「賢明な判断だ。お前達がするべきことは殺し合いを止める以外に、
百万に上乗せできるだけの代物を用意して俺をキープしておくことが必要だ。」
「一つ尋ねるが、そんなに金が必要なのか?」
「俺はとっくに死んで未練は……まあ、五条悟が何とかするだろ。
呪術界の汚点でもあった加茂の奴が俺を生き返らせた意味も不明。
此処に知り合いもいないなら、いつも通り金で雇われる身でいるだけだ。」
未練について一瞬言い淀んだのは引っかかるが、
姫和としてはやはりこの二人、特に伏黒甚爾は監視すべきだ。
此方には金目のものはなく、彼を抑制させることはできない。
三者共に武器はあれども御刀はない。誰かの御刀が一振りでもあれば、
安定して戦うことができるのに、それができないことに歯がゆさを感じる。
「ま、うまく参加者と交渉するこったな。
ああ、言っておくが他の奴が金があるからと言って、
交渉もせず鞍替えするほどじゃないからそこは安心しておきな。」
別に支給品が外ればかりとかではない。しかし双方が戦うには不足している。
(あくまで基準が伏黒甚爾なだけで、戦おうと思えば戦えるレベルではある。)
結果的に、金で雇われてる伏黒の言葉を信用するしか選択肢は残されていなかった。
二人のスタートはこの危ない橋を渡る羽目になったものの、敵に回ってた可能性を考えると。
彼を一時的であったとしても味方に引き入れたことは大きな一歩と受け取ることもできる。
とは言え今後、参加者との接触の際は気を付けなければならない厄介なところだろうか。
もしスパイのように潜り込んでるやつに鞍替えされたときは最悪の状況に陥る。
この男には過剰なほど警戒するに越したことはないと二人は思いながら、
放送が終わったこともあり、三人は外へ出て租界のエリアを動き出すことにする。
スラム街、貧民街、廃墟。そういう住みにくい場所が広がっている光景が多いが、
三人は租界を知らないのもあり特段気にすることなく話し合う。
「それで龍園、どこへ向かうつもりだ?」
「ああ、それだが……」
「おいおい、もう次の仕事かよ。」
姫和も龍園も伏黒が言ったからと言うわけではないが、相手の気配を感じて構える。
出てきたのは伏黒の言うようにNPCの怪人と見紛う外見ではあるものの、
腕についているレジスターを見るに、この姿であったとしても参加者のようだ。
「呪霊……ってわけではなさそうだな。お前さんはどっち側だ?」
「俺の名はグラファイト。この舞台においては、戦士となる者全てを敵と認識する戦士だ。」
同じバグスターであるパラドがいることは名簿にて確認済み。
道こそ違えたものの、生涯の友もまたこの舞台に招かれている。
だが自分はグラファイト。ドラゴナイトハンターZの龍戦士グラファイト。
敵キャラとして、同時に戦士としてその役目を全うするだけである。
「先に言っておくぜ後ろの二人。
こいつ一人の時点で既に百万以上払ってもらいたい気分だが、特別に待ってやるよ。」
そう言いながらリュックから赤い片太刀のハサミを引き抜くと、
狂気じみた笑みと共に地面を蹴り飛ばすと同時に、グラファイトに膝蹴りをかます。
グラファイトの敵は常に仮面ライダーであり、二時間前に出会った下衆も恐らく変身していた。
だからその猶予を待っていたが、伏黒甚爾と言う男にはそんなものは関係ない。
天与呪縛によるフィジカルギフテッドは常人をはるかに超えたスペックを有する。
容易に膝蹴りが顔面へと叩き込まれ、近くの廃ビルの壁を幾重にも突き破っていく。
先のNPCの撃破の際にもそうだが、異常な強さに二人は見てることしかできない。
彼ほどの強さについていくなど、夢のまた夢に近しいものだからだ。
「……侮っていたようだな。俺の知らない世界には、
仮面ライダーにならずともバグスターと戦えるらしいな。
その考えを改めねばならないな……戦士よ、貴様の名はなんだ?」
蹴り飛ばした後追いついてみれば、
廃ビルの中で瓦礫を払いのけながら立ち上がるグラファイト。
呪力を持ってないので呪力によるガードは当然なし。
NPCだろうとミンチになるであろう一撃は効いてはいるようだが微々たるもの。
本当に百万と言う値段に釣り合わない仕事をさせられそうだと、ポリポリと後頭部を掻く。
「生憎俺は戦士って柄じゃねえが……まあ、名乗るぐらいはしておくか。伏黒甚爾。」
名乗ったのは単なる気まぐれだ。
亡霊が今更名前を覚えてもらう理由もない。
なんとなく、そんな程度のものである。
「伏黒甚爾か。ならばその強さ、この俺に魅せて見るがいい!!」
双刃のグレングラファイトファングが豪風と共に伏黒へと迫り、
それを片太刀バサミを振るって防ぐと、衝撃で周囲の瓦礫が弾け飛ぶ。
続けざまに迫る刃を難なく防ぐ伏黒ではあるが、あくまで彼だからの話。
互いの剣戟は並の物ではなく、周囲に衝撃波が飛び交うほどの威力を誇る。
様子を見に来た龍園達が様子を見ることも満足に叶わないほどのものだ。
別に二人は伏黒の強さを知らないわけではないが、目の前に起きている光景は異次元の領域だろう。
退学と隣り合わせの学園生活は当然として、時に命懸けになる刀使と荒魂のやり取りですらも生温い。
もし彼が仮に全力の可奈美と戦っても、果たして可奈美は勝てるのだろうかと答えが出せないほどだ。
今の剣戟では埒が明かないと判断した伏黒は後方へ距離を取り、
近くにあった柱をラリアットでへし折ると同時に、それを投げ飛ばす。
飛来するそれを両断するグラファイトだが、両断と同時に二本目の柱が飛来する。
続けざまにくる柱に対応できず鳩尾に被弾。その勢いのまま吹き飛ぶところだが、
「とりあえず、一回圧殺してみるか。」
いつの間にか背後へと回り込んでいた伏黒が彼を受け止め同時に地面に叩きつける。
叩きつけるとただでさえ廃墟のビルは支柱を失って悲鳴を上げながら倒壊を始めており、
グラファイトを叩きつけたことで更に加速、当然のことではあるが伏黒はすぐに壁を蹴破り脱出。
様子見などしてる暇がない二人もまた退避する形で廃ビルから急いで離れると、
間もなく廃ビルが崩落していき、グラファイトを生き埋めにする。
「知ってはいたが無茶苦茶だな、てめえ。」
「百万がどれだけ安いか分かっただろ。早めに上乗せの準備を……っと、
まあこの程度でやられるような奴じゃねえことは分かってはいたけどな。」
倒壊し終えたビルから瓦礫を飛ばしながら飛び出すグラファイト。
安いとは言いつつもちゃんと雇用主となる龍園を巻き添えにしない配慮はあるようで、
肉薄してきた彼へと片太刀バサミで再び剣戟を始めながら二人から距離を取る。
「龍園。態々様子を見に行くような行為から察するに、お前にも戦う気か?」
アルベルトを下すぐらいの我流の腕っぷしを持つが、あくまで龍園は一般人の範疇。
にも関わらず今も動こうとしている。常人が関わっていい戦いではなく、物見遊山の観戦は自殺行為だ。
だというのに今もこうして付かず離れず程度には彼の下へと走り出そうとしている。
「だが十条も隙あらば介入する気だろ。」
リュックに手を添えることなく、常に両手を何か構えている様子。
支給されたスキルを把握してる龍園には、それが今の彼女の武器だとわかっている。
「当然……と言いたいが、役立つかは怪しいとは思っている。
しかし何もしないで傍観しているよりはましだろう。」
「ま、俺のスキルの方よりずっとましだろうが。
俺の方はどっちかというと自衛しかできねえしな。」
二人が会話をしているその頃。
次々と租界の建物が崩れていく。
グレングラファイトファングも片太刀バサミも、
使用者の手にかかればコンクリートの壁など豆腐やクッキーに等しい。
廃墟で今にも崩れそうな建物が多い租界であれば、猶更脆いものだ。
彼らが移動し戦う。それだけで脆い建物は倒壊していくばかりである。
もっとも、脆くなかろうと簡単に破壊されているのだが。
「にしてもかてえなぁ、おい。」
片太刀バサミで背中をバッサリと袈裟斬りにするも、
血の代わりに火花が飛び散るだけで斬撃を与えども傷になったか怪しい。
これがダメージとして通ってるのかどうかも、その表情からは読み取れない。
怯んでいるのでとりあえず無傷ではないのだろうが、所詮はその程度の物。
性格に反して一切の油断がないのが伏黒甚爾と言う男の強さでもある。
少なくとも現状のままでは倒しきるだけに時間がかかりすぎる、と言うのが結論だ。
「黒龍剣ッ!!」
振り向きながらグレングラファイトファングを振り回すと、
黒いカッターが連続で飛び交い、それを伏黒は高速で走りながら躱していく。
避けたことで後方の廃墟が壁が崩れ、崩落を始めるが彼らには些細な事。
跳躍してグラファイトの頭部へと片太刀バサミを突き立てるが、これも刃を通さず。
ならば急所で脆いと予測できる眼(?)に狙いを定めるが、さすがにこれは妨害されて弾かれる。
「お前さん、少し硬すぎやしねえか?」
「弱点や攻略法など自分で見つけることだ。
それがバグスターウイルスである俺の役割であり、
それを攻略するのが貴様たち戦士の、プレイヤーの役割だ。」
「まあ、そりゃそうだよな……ところでさっきもバグスターと言ってたな。
俺たちの生殺与奪の権利もバグスターウイルスみてえだが、羂索と何か関係があるのか?」
「俺と奴にそんなものはない。だがもしもこの俺に勝利するのならば、
貴様ら人間と共に戦うであろう友の名を伝えよう。もっとも、絶対に有益かは保障できんが。」
人間と共闘の道を選んだパラドであれば。
恐らくこの状況でも何かしらの手段を考えてるだろう。
それが勝者へと贈る報酬。この殺し合いの舞台を終わらせるキーになりえる可能性の一つ。
自分は人間に協力することはないが、勝者に報酬あってこそゲームの醍醐味でもある。
命尽きるその最期の瞬間まで敵としてあり続ける。それがグラファイトの矜持だ。
「そいつはありがたいこって。値千金の情報なら、手に入れるだけの価値はあるってことだな。」
嵐のように迫りくる刃を躱しつつ問答をする二人。
常人でなくても躱すのが困難を極めるグレングラファイトファングも、
伏黒にとって躱すこと自体はそう難しいことではなかった。
報酬はとても魅力的ではあるものの現状ではやりづらい相手だ。
一応打開策がないわけではない。令呪を使ってしまえばそれで化ける。
ただ事実上二回しか使えないそれを窮地に陥ってるわけでもないのに使う。
後々に響いてくるかもしれないので使うのは早計が過ぎると思っていた。
回数制限かあるからこそ強みもある。術式における縛りと似たようなものだ。
(スペックだけ見れば負けちゃあいねえ。
現状まともに相手の攻撃が当たってないのが証拠だ。
ただ、得物がどうにも足りねえと言ったところだな。)
片太刀バサミも悪くはない。
普通だったらとうに折れてるだろうに、
これだけ粗雑に扱っても全く折れる気配がない。
しかし生前では硬度を一切無視できる釈魂刀を用いており、
それと比べてしまえば殆どの刃物の価値など低くなるのも当然だ。
特にあれは五億円に相当するほどの価値のある刀なので、なおさらである。
(いっそ逃げちまうか?
いや、流石に防御が疎かになるのはまずいな。
いくら龍園があのスキルを持ってると言っても───)
龍園の依頼は敵を倒すことではなくあくまで護衛だ。
此処で千日手にも等しい戦いを優先をするべきではない。
あとは逃げる算段だが、どちらも見捨てれば後が困るのは間違いない。
一応姫和には逃げる手段はあるし、彼女の適正に賭けるしかないか。
どうしたものかと考えていると、破壊の音と共に二人の間を割って入る様に何かが飛来する。
何が飛んできたのか、近くの建物へと叩きつけられたそれを二人は見やる。
瓦礫に埋もれていたのは、
「ガ、グッ……クソ、硬くなってこれかよ……!!」
叩きつけられたのは龍園だった。
しかし先ほどまでの龍園と違い、肌は全身光沢に輝いており、
まるで鉄そのものになったかのような姿をしている。
スティール。全身を鉄にする個性であり、龍園に支給されたスキル。
だから様子を見に行ける程度には自衛の手段は持ち合わせてはいた。
一方でこの力では二人の戦いに介入などできはしない。
今しがた受けた男のタックルですらこの体たらくなのだから。
認めたくはないが、悲しいほどに自分が一番非力だと実感させられる。
「どうした、この程度か?」
龍園がぶち破った穴から出てくるは筋骨隆々の男。
英雄なき戦場に現れる、英雄殺しバルバトス・ゲーティアだ。
此処にはカイル達もいなければスタン達もいない。興味があるとすれば、
精々あの黄色の男(家康)ぐらいなものその上名前も知らないのもあり、
特にあてもなく北上しながらバルバトスは彷徨っていた。
そんな折、伏黒とグラファイトの戦いは熾烈を極め、どうあがいても耳に届く。
故に歩を進めていけば姫和と龍園に遭遇し、邪魔だと言わんばかりに文字通りタックルで退かした。
ただのタックル。されどバルバトスのタックル。人が受けるには生半可な防御では足り得ない。
咄嗟に龍園が個性と彼女を突き飛ばしたおかげで姫和にはダメージはなかったものの、
龍園の方は立ち上がるだけでも一苦労するほどのダメージを負う羽目になっている。
庇ったのは彼女の自衛手段が、彼の攻撃に耐えきれる自信がないと判断したが故のもの。
出会ってたかだか二時間だ。仲間意識というよりは、適材適所で行動しただけに過ぎない。
「貴様……戦士でもない者を狙うとはどういうことだ!」
「邪魔だったから退かしたまでだ。
それに戦士でないだと? 貴様の目は節穴か?
あの全身を覆う鉄の塊と、何者にも屈することなどない屈強な眼差し。
あれを見たうえで貴様は奴を戦士として認識できないとでも言うのか?」
「玉犬!」
問答をさせないかのように、
バルバトスの背後より襲い掛かる白い犬。
鋭利な爪は並の刃物を凌駕する切れ味であると見抜き、
生身で受けることなくバックステップで距離を取る。
「龍園! 生きているか!?」
「勝手に殺してんじゃ、ねえ……!!」
玉犬を相手してる隙をついて、
バルバトスが出てきた廃墟の脇道から姫和が飛び出し龍園の様子を伺う。
体全体にひびが入ってるので無事ではないようだが、骨とかがやられたわけではない。
とはいえ無傷では済まされない。喧嘩ではまずないであろう痛みにふらつく。
(にしても、まさか十種影法術を見ることになるとはな。)
十種影法術。禪院家の相伝の術式の一つ。
あれもスキルに支給されているのかと。
魔法などもスキルとして支給されたのは言っていたが、
術式も呪力がない参加者へ支給できるよう調整してると言うのは、
一体どうやったかは未知の領域ではあるものの、
此処でそれが見えるとは思いもしなかった。
「戻ってこい!」
バルバトスの攻撃を身軽さから何とか躱し、
陽動の役割を終えた玉犬を戻し状況を伺う。
状況は悪い方だ。先ほどまでは戦士として認識されてなかった。
しかし互いに個性、術式を持っていることを明かしてしまったことになる。
龍園は防御に回っただけなのでまだわからないが、姫和は玉犬ではあるが戦った以上、
「奴の言う通り、貴様達も戦士だったか。」
もうグラファイトには戦士として認識されてしまったということだ。
達と言ってることから、龍園も完全にターゲットと認識されているようであり舌打ちする。
「龍園を抱えて逃げるぞ。」
伏黒が与えたダメージは微々たるものだ。
ここは態勢を整えることの方が大事である。
今はないが、もし伏黒がこの状態で仮面ライダーにでもなれば、
でたらめな強さを発揮するというのはすでに分かり切っている。
今は準備が足りない。彼女が得た十種影法術も調整されており、
調伏の儀は倒さずとも調伏扱いにしてくれるとだいぶ緩和されたものだ。
それでも準備が足りない。使役できるのも玉犬含めても僅か二種類しかない。
本来ならば十種の式神を使役できることを考えれば、まるで足りない代物だ。
「逃げるのはさすがに状況が許さねえだろ。」
それを許さないようにバルバトスが迫り斧を軽々と振るう。
一撃で上半身と下半身が泣き別れるであろう一撃は片太刀バサミで防ぐ。
一瞬そのまま押し切られそうになるが、宝具を相手に拮抗勝負へと持ち込む。
恐るべき怪力と得物ではあるものの、伏黒が劣ってるかというとそういうわけでもなく。
「クライアントとの話の途中だ。邪魔しないでくれるか?」
「此処はすべてが戦場だ。ならば誰を狙おうと俺の勝手だろう。」
「そうだな。それには俺も賛成だ。」
互いを割って入るように飛来する黒いカッターに二人は飛びのく。
貴様もそうだろう? そう言わんばかりにバルバトスがグラファイトを見やる。
「その通りだ。だが貴様は戦意なき者を狙った先の下衆と変わらん。
そこまでの強さを持ちながら、戦士としての誇りすら失った貴様から叩き潰してくれる!」
「鵺!」
言い争ってる今こそチャンス。
影から飛び出すのは茶色の毛並みと、仮面をつけた怪鳥。
伏黒が最初に一時間逃げ回って何とか調伏ことができた唯一の式神だ。
彼女を足で掴むと、そのまま二人から離れるように飛んでいく。
「向こうと違って手段は選ばねえようだしな。」
此処で戦えば二対一、最悪四対一も狙えるところ。
敵を減らすと言うチャンスではあるが、人格はグラファイトとは別。
相手は必要に迫られれば、狡猾な手段を平然と取ってくるだろう存在。
出てきてからしてくる行動の大体が同意できる程度に、恐らくは同類の類だ。
別に伏黒は人質や卑劣な手段などに怯むことなどないが、他の二人にとっては話が別になる。
先ほども思ったことだがあくまで仕事は護衛。ふらつく龍園を抱えて走り出すことが最優先事項だ。
「神聖な勝負に泥を塗る行為、その血で贖うがいい!」
「神聖? 戦場に神聖も何もあるまい! あるのは勝者と敗者だけだ!!」
戦士の誇りを最後まで重んじ続けた龍戦士と、
戦士の誇りなどとうに捨ててしまった狂戦士。
グレングラファイトファングと黄金喰いがぶつかり合い、
再び、周囲を破壊するような衝撃が広がり始めていく。
【エリアF-3/9月2日午前6時】
【グラファイト@仮面ライダーエグゼイド】
状態:正常、アリサへの期待(中)、怪人態(レベルオーバー)、伏黒甚爾への期待(大)、バルバトスへの怒り(特大)
服装:いつもの服装
装備:ガシャコンバグヴァイザー@仮面ライダーエグゼイド
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
八神のリュック(ランダム×0〜2、SA・ホットライン)
思考
基本:敵キャラとして戦う。
00:神聖なる戦場に立つ資格のない者たちは排除する。
01:この俺に敵キャラを全うさせてくれる戦士を探す。
02:女(アリサ)、お前の眼は戦士の眼だ。
次に会う時は敵として立ちはだかってくれること期待する。
03:伏黒とは決着をつけたいがまずは貴様(バルバトス)だ。
参戦時期:ゲムデウスウイルスに適合した後
備考
【バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニー2】
状態:疲労(小)
服装:いつもの
装備:黄金喰い(ゴールデンイーター)@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、SA・ホットライン
思考
基本:優勝して英雄になる(英雄になるのはついでで戦いたいだけ)
00:あの男(家康)と決着をつける。
01:目の前のこいつ(グラファイト)を叩き潰す。
参戦時期:死亡(二回目)後
備考
※黄金喰いに黄金大両断のソードスキルが内包されてます。
「どうする? 三体目の調伏でも考えるか?」
後方から轟く轟音。
恐らくバルバトスたちが戦っているのだろう。
姫和の思惑通りの結果になり、次の行動を考える。
「いや……テレビ局に、向かうぞ。」
個性を解除し、頭を押さえながら龍園が呟く。
外見上怪我は負ってないが、ダメージは少なくない。
少し弱弱しい声色になっているのがその証左だ。
「龍園、お前さっきは自殺行為と……」
「無策で行ったら、だ。
何もテレビ局に突入するんじゃねえ。
テレビ局に集まろうとする奴らを狙う。」
そいつらはレジスター、仮面ライダーの変身用のベルト。
今後の戦いや交渉において有利になるアイテムを持ってる可能性が高い。
もしルルーシュの傘下になろうとしてる敵がいるならばそれを止めつつ、伏黒の上乗せも考慮できる。
鵺と伏黒という移動手段があれば、周囲を回るのにもそう時間はかからないだろう。
「確率は低いが、ルルーシュを説得しに行くお人好しもいるかもしれねえ。
一之瀬の奴とかならやりかねねえしな。そういう連中も集めれば味方も増やせる。」
確かに一理あると姫和は思った。
テレビ局に向かう。リスクがあるばかりだと思っていたが、
ルルーシュはその目的の都合動かない。そういう意味だと都合がいい。
「ついでにグラファイトの言う友ってやつだが、
名簿の法則を考えれば、パラドかチェイスかメラの可能性が高い。
こっちは見つけられれば儲けもの程度だが、頭の隅にとどめておけ。」
名簿のリストはおおよそ知り合いが固められてるのは龍園や姫和でわかることだ。
無論、これはアンクと言った彼女も知らない名前もあればキラとアスランは二人いるのに、
もう一人の『?』がついたアスランは極端に離れているなど100%の信頼はできないものの、
もし友が同じバグスターウイルスであるならば、流石に日本人の名である淺利の可能性は低いだろう。
先ほどのアパートでもそうだが、龍園は粗暴そうに見えてちゃんと盤面やあるもので状況を考えている。
柳瀬舞衣のように、状況判断に優れている男だと言うことが伺えた。
「にしても十条。てめえの術式だっけか、もう少しなんとかならねえのか。」
「私が式神を倒すか、一時間生き延びるか。その二つだけで抜け道はないだろう。
鵺の調伏も彼が一時間引き受けたことで調伏の扱いになっただけ有情な方だと思うが。」
めんどくせえな。
言葉にせずとも顔に出るような表情になる。
「次は何の式神に追い回されるのやら。」
すでに一時間鵺に追い回された身だ。
次の式神も頼まれるとなると先が思いやられる。
別に負ける気はしない。ただし、最後の式神を除いてだが。
「攻撃性が低い脱兎や蝦蟇なら、今の式神を得た私でも対抗できるかもしれない。」
「やる暇をどこで確保するかだがな。」
テレビ局に向かうという方針も決まっているし、
仲間もいる上に同じように御刀がない可能性もある。
悠長に式神と鬼ごっこを続けていては状況は悪化していくだろう。
こうして移動しながらやるというのも一つの手かもしれないが、
その場合巻き添えになった参加者と揉めることにもなりかねない。
「戦う手段は確立すれども、ままならないものだな……」
「あるだけいいだろうが。こっちは死なないだけで精一杯だ。」
スティールも本来ならば十分に強いのだろう。
コンクリートを幾重にも突き破りながら生き延びている。
これならば攻めにも使えはするが、敵が格上すぎてまず当たらない。
令呪を使ったとしてもバルバトスたちに対抗できたかは怪しくはあった。
「大変だなアンタらも。」
グラファイトは伏黒に関心を寄せていたが、
彼は別に武人と言った柄ではないのでどうでもいいことだ。
敵同士向こうで潰しあってくれればそれで万々歳なのだから。
今後の方針を考え込む二人に対し、他人事のように二人を見やった。
【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:疲労(小)
服装:平城学園の制服
装備:十種影法術@呪術廻戦
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る。
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため。
02:可奈美や皆のことが心配。
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
04:テレビ局、その周辺へ向かう。
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
※十種影法術は現在玉犬、鵺が調伏済みです。
【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:ダメージ(大)、綾小路への怒り
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
02:テレビ局周辺で参加者を探していく。敵でも味方でも構わねえ。
03:綾小路の野郎、何をやってやがる。
04:他の同じ学園の連中は……まあ、合流する必要もねえか。
05:グラファイトの言う友を探してみる。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
※個性『スティール』により肉体を鉄のコーティングが可能になりました。
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:健康
服装:仕事用の私服
装備:片太刀バサミ@キルラキル
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、100万が入ったトランクケース@現実
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働くが、まあ上乗せは欲しいところ。
02:加茂憲倫、と来たか。
03:まさかこんなところで禪院家の術式が見れるとはな。
参戦時期:死亡後
備考
支給品解説
【片太刀バサミ@キルラキル】
伏黒甚爾に支給。
纏一身が開発した、生命戦維の生命そのものを断つとされる断ち斬りバサミの片刃。
赤いので纏流子が用いてる方。主に刃物だがテニスラケットやこん棒にもなれたりするので結構謎。
神衣「鮮血」と完全に人衣一体する場合、刀身がさらに長く変形した武滾流猛怒にもなれる。
【個性『スティール』@僕のヒーローアカデミア】
龍園翔に支給されたスキル。元々は鉄哲徹鐵が持つ個性。
肉体の一部や全身を金属化する事ができ、切島の『硬化』とよく似た変形型個性。
長時間使用すると鉄分不足で個性の発動を維持できなくなるので鉄分補給が必須となる。
低温や高温の中も行動が可能であるため、炎や氷を相手にしても強い。
【十種影法術@呪術廻戦】
十条姫和に支給されたスキル。元々は伏黒恵の生得術式で、禪院家相伝の術式の一つ。
動物を模した手影絵を作ることで対応する式神を召喚することができ、種類は十種存在する。
本来ならば調伏の儀、要するに自力で倒さなければ使役することはできないのだが本ロワでは調整により、
一時間調伏の儀を生き残れば自動的に調伏した扱いになる(つまり逃げ回っても他人を囮にしてもいい)。
ただし、八握剣異戒神将魔虚羅だけは倒さなければ調伏した扱いにはならない。
また影を媒介しており、影の中に物を収納すると言った応用性もある(ただし重量などの制限はある)。
領域展開『嵌合暗翳庭』は素養次第だが、少なくとも今は使用できない。
呪力がない十条姫和は代わりに体力を消耗する。
投下終了です
黒龍剣を使うなど問題がありましたら修正します
失礼、エリアの場所間違えてました
【エリアF-2/9月2日午前6時】
>>493 の予約ですが 延長します
投下します。
また、本予約からザギを外させていただきます。
長期間の無為な拘束申し訳ございません。
少女を甚振る三人の魔女とそれを従える魔王からの決死の逃走劇の最中。
弱った同行者を連れ添いながら、シノンは適当な一軒家へと足を踏み入れた。
アクセル全開でバイクをかっ飛ばし相当数距離を稼いだが油断は出来ない。
追手や他の敵対的参加者を考慮すると、エンジン音は返って位置の特定に繋がる。
闘う手段はあるにはあるが、怪我人連れでの戦闘はなるべく避けるべき。
故にバトルホッパーをリュックへと仕舞い、途中から徒歩に切り替えて潜伏を選んだ。
夜明けの朝日が徐々に顔を見せ出した早朝。
家主がいれば未だに寝静まっている頃だろうが、侵入した家は幸いにも留守。
不用心にも鍵は開けっぱなし。もしもケチな泥棒であったなら取り放題だと喜んだろうか。
この一軒家のみならず、立ち並ぶ家々からは何れからも人の気配は皆無。
これらは全て必然の幸運。殺し合いの為だけに造られた街に元からの住民など要る筈がない。
廊下を抜けて最初に飛び込んだのは、雑貨が疎らに置かれた団らん用のテーブル。
テーブルを挟んでリビングに置かれた大き目のソファーと液晶テレビ。
どれもパッと見は綺麗だが、テレビの裏のケーブルや積まれたチラシの上など。
細かい部分に若干埃が残っていたりと妙に生々しいリアリティがあった。
生活感ある無人の風景。架空の街に感じる言い知れぬ不気味さ。
外観だけに留まらず、本来不必要なディテールにも徹底的にリアルを追求するその無駄に律儀な姿勢。
黒幕にあの天才ゲームクリエイター、茅場晶彦がいるのだとすれば、幾らか納得がいくものがある。
この殺し合いに彼のどういった思惑が介在しているかは不明だが、ある物は有難く利用させてもらう。
座り心地の良さそうなソファーへと同じ猫耳の少女、黒見セリカをゆっくりと座らせた。
致命傷こそないが、華奢な身体のあちこちから血を滲ませる重傷患者。
腰を落ち着けた今こそ手当をしたい所だが、支給品は武器やバイクを除けば既に空。
ダメ元で家中の引き出しを漁ってみると、消毒液や包帯などが入った救急箱を発見。
普通の家庭であれば医療品もまたあって当然。人々の営みを忠実に再現した奇妙な環境に救われた。
量も質も傷全てに対応するには心もとないが、少しでもと応急処置を施して行く。
「…ごめんなさい。アスナみたいに回復魔法が使えれば良かったのだけれど」
ALOでのシノンの種族は猫妖精族(ケットシー)。
敏捷性や動体視力、モンスターの使役(テイム)に長けたアバターだが。
治癒に長けた水妖精族(ウンディーネ)の親友とは違い回復の術に乏しい。
説明にあったエナジーアイテムがあれば良かったが、目当ての種類である"回復"は道中発見できず。
積極的なPKが推奨されている状況下。良質な回復物資が手に入るチャンスは早々あるまい。
愛らしい少女の顔を台無しにする酷い傷を見て、シノンは謝罪の言葉を口にする。
「…平気よ。このくらいの怪我、キヴォトスじゃ日常茶飯事なんだから」
「…本当?無理してない?強がってるだけなら逆に困るからはっきり言ってほしいんだけど」
「ホントに大丈夫だから!あんなのより、対空砲喰らった時の方がよっぽどだったっての!」
「た、対空砲…?」
突拍子もない単語が飛び出し思わず目を丸くするが、セリカの言葉は嘘や誤魔化しなどではない。
キヴォトスに在籍する学生は皆高い身体能力と銃撃、殴打への強い耐性を持つ。
スナイパーライフルや巡航ミサイルの直撃を受けて尚、平然と活動可能な異次元の耐久性を有する者もいる。
セリカも規格外ではなくともキヴォトスの住民。顔や手足に刻まれた傷こそ痛々しいが、少し休めば戦闘も可能。
「ほんと…大して怪我は酷くないの。
多分アイツら、体のいいオモチャが壊れないよう調節してたんでしょうね。」
シノンの横槍で中断されたのもあるが、セリカの身体には欠損も機能不全な部位もなく。
4対1で一方的な集団暴行に晒されていたにしては傷が浅い。
やろうと思えば一息で殺せただろうに。連中は生かさず殺さず楽しむ事を選んだ。
加虐心の赴くまま。出来るだけ長く深く心身を弄び。
大切な仲間に見下され、嬲られる。惨めな人間へ、濃密な絶望を味合わせる為に。
「…そういや、まだお礼も名前も言えてなかったわよね。
さっきは…本当にありがと。私は黒見セリカ。…今更なんだけど、味方…でいいのよね?」
「ええ、あなたがこのゲームに乗り気なら別だけど。」
「乗る訳ないでしょ!?誰がこんなくっだらない殺し合いなんか…!」
「そう…良かった。助けに入ったのは間違いじゃなかったみたいね」
甚振られる参加者の窮地を目の当たりにして咄嗟に救出こそしたが、
殺し合い肯定派同士の潰し合いの可能性もなくはなかった。
が、間髪入れずにデスゲームへの怒りを露わにするセリカの反応に嘘は感じられない。
少なくとも恩を仇で返すつもりはないと見える。
決死の覚悟で修羅場へ突入した自分の選択は正しかったとシノンは薄く微笑んだ。
「私はシノン。嫌な事思い出させて悪いけど、いろいろと聞かせてもらってもいい?
襲っていた連中やあなたと同じ環を浮かべていたあの"梔子ユメ"の事も含めて」
対応しなくてはならない敵の詳細。黒幕の一人と同じ共通点を持つ所以。
この殺し合いでセリカが持つであろう情報はシノンにとって貴重だ。
聞きたい事は山ほどある。残りの猶予が不明な以上、時間が許す限り情報共有はしておきたい。
トラウマを抱えた者として、不快な記憶を掘り返すのは心苦しいが、彼女の心中を慮る時間的余裕はない。
「…分かったわ」
余裕のない現状は理解出来ている。主催者の肉体と同じ制服を着た自分の微妙な立場も。
辛くて思い出したくない。などと我儘を言ってる場合ではない。
険しい表情で俯きつつもセリカはポツポツと此処までの事を語り始めた。
セリカが所属する学園、アビドス高校とその最後の生徒会長に纏わる知りうる限りの情報。
ヘイローと羂索の説明を起点に、シノンとセリカの記憶のズレから判明した別世界の存在。
目下最大の脅威、錬金術師グリオンが行った語るも悍ましき遊戯の内容。
幸いにも外部から邪魔は入らず、手当を進めながら一しきりの情報交換は終了。
梔子ユメの詳細はセリカが入学時には既に彼女は不在だったため、
殆ど分からず終いだったが、代わりに鮮明になった自分達を取り巻く世界観の違い。
仕切りに別世界を示唆する文言が散見された羂索の説明。
当時はあくまで比喩と認識していたが、こうも住む世界の違いを目の当たりにすると改めるしかない。
死亡が確認された茅場昌彦がいる謎。羂索が扱う呪術なる肉体に乗り移る異能。
流血する現実の肉体とゲームアバターが混在する環境。シノンとセリカの間にある齟齬塗れの常識。
それらは別世界や時間より人や技術を引っ張って来た。などという世迷言を信じれば解決する。
その説を補強する様に、別時間軸から現れた人物──もう一人の砂狼シロコを知るセリカの証言も得られた。
あらゆる時間と世界を巻き込んだ殺し合い。巻き込まれた事件の壮大な規模を思い知らされる。
しかし、何よりも心が揺り動いたのは黒スーツの男、グリオンの悪行について。
シノンもまた心を許していた親友、新川恭二に裏切られ、殺されかけた経験はある。
ぶつけられる歪な愛情と殺意。今なお忘れられない、認めがたい現実に心が凍てつく感覚。
贋物と言えど仲間に傷つけられる苦痛は理解出来る。セリカの場合、仲間との絆は本物であるから猶更質が悪い。
純粋な殺害のみが目的ならば、絶対に不要な愉悦を主とした悪意に満ちた行い。
かつて氷の狙撃手と呼ばれた少女の心に、憤怒と言う名の激しい熱が灯る。
凡そ直ぐには吞み込み切れない現実と悪辣極まる鬼畜の所業を共有した直後だった。
話の終わるタイミングを見計らったかの様に。ゲームを大きく揺り動かす、二つの放送が始まった。
◆◆◆
「…状況は最悪ね…。」
仮面の男クルーゼ、悪逆皇帝ルルーシュ。
双方の放送を聞き終えたシノンは一人、眉を顰めながら呟いた。
大胆にもデスゲームの支配を宣言した不遜なる青年が、忠誠の証として求める狩りのターゲット。
実際に乗る者がどれだけ現れるか不明だが、仮面ライダーの装備を持つ自分も討伐対象に成りうる。
ただでさえ厄介な相手に目を付けられたばかりだというのに脅威ばかりが追加されていく。
クルーゼが語る最強のNPCを含め、増え続ける敵の対処や主催の目的など課題は山済み。
ともあれ今は目先の情報が最優先。今後の方針の為にも追加されたアプリの確認が必要不可欠。
ルルーシュの放送で水を差されてしまった知人の有無を確認すべく、解禁された参加者名簿を開く。
(…キリト、アスナ。想像はしていたけど、やっぱりあなた達も来ていたのね)
忌むべき名を耳にした瞬間から、脳裏に浮かんでいた悪い予感は的中。
黒の剣士キリト、閃光のアスナ。
茅場明彦が仕掛けたデスゲーム、SAO(ソードアート・オンライン)に勝利した生還者達。
最も信における仲間の存在に仄かな喜びを覚えると同時、ホットラインを握る手に力が籠る。
(────ふざけないで。またあの二人に誰かを殺させようっていうの…!?)
殺さなければ自分や大切な仲間が死ぬ。
そうした命懸けの闘いの中で、背負う事となった"殺人"と言う名の罪の十字架。
奪ってしまった命の意味と重さ。それと向き合いながら、懸命に現実を生きる彼らの手を。
また他人の血で染めさせ、消えぬ苦悩をその心に刻もうというのか。
シノンも殺人を犯し、逃れようのない地獄を長年味わったからこそ。
悪意溢れる戦場に招き、再び罪へと誘う過去の亡霊。その歪んだ執念に憤りを抑えられない。
殺し合いを打破しうる希望と共に、それと相反する絶望も同時に存在した。
PK集団『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』の頭目とされる男、Poh。
シノンと因縁深い死銃を含め、多くのプレイヤーを凶行に導いた最悪のレッドプレイヤー
自らが創り上げた箱庭で、最も命を救った英雄達と最も命を奪った悪鬼。
茅場がこの殺し合いの選定に携わったならば、これ以上の参加者チョイスはないだろう。
(なら、私達は?私やリーファは一体どういう理由で…?)
残る知り合いはキリトの妹であるリーファのみ。しかし、彼女も自分もSAOのプレイ経験はない。
生還者のキリトやアスナと深い交流はあるが、それだけの理由では動機が薄過ぎる。
主催者陣営にあるだろう選定基準、大掛かりなデスゲームへ招くに足る共通項が見えて来ない。
(いや、一つある。直接的でなくてもいいんだとしたら…私たちにも目を付けられる理由が)
シノンは笑う棺桶残党が起こした殺人事件のターゲットであり、その討伐・逮捕に貢献。
リーファも大まかな流れしか知らないが、ALOに囚われたSAOプレイヤーの精神解放の助力をしたと聞く。
少なくとも5名はSAO生還者、或いは事件終結後、SAOに起因する事件関係者。
既知の名前の間にいるレン、サチ、ウンベール、ユージオの四名は詳細不明だが。
直接的・間接的問わず、自身のゲームに深く関与したVRMMOプレイヤー。
茅場昌彦はそれを自分の世界の選定基準として定めた可能性は高い。
何処まで仮説が正しいか。真相は未だ闇の中だが。
もしも死銃の標的にされなければ。それ以前にGGOを始めさえしなければ。
黒幕達の御眼鏡に敵わず、理不尽に命の危機に晒される事は無かったのかもしれない。
そうだったとしても、後悔はない。
弱い自分を変えるべく、もう一つの現実に飛び込まなければ。
犯した罪の幻影に一生怯えて過ごし、何時かその罪悪感に完全に圧し潰されていただろう。
死銃事件に巻き込まれ、その渦中でキリトと出会えなければ。
本当の強さの意味を履き違えたまま、小さな一歩さえ踏み出せず命を落としていた。
選択の結果、訪れた結果論の不幸を嘆くつもりはない。
それを上回るだけの幸福が、温もりが、確かにそこにあった事をシノンは理解しているから。
真に憎むべきは、自分たちの選択を悪意を以て悲劇と結びつけようとする非道な輩だ。
繋がりを通じて得た仲間のためにも、命懸けのゲームに抗ってみせると改めて誓う。
「────どこまで馬鹿にすれば気が済むのよっ!」
直後、部屋中に響き渡る怒声と激しい破砕音が、シノンの意識を現実へと引き戻した。
いくら室内と言えど、大きな物音を出せば敵に居場所を特定される危険がある。
そうやって同行者を咎める気にはなれなかった。
ひび割れた木製のテーブルの上に、血が滲む程拳を握りしめた彼女は。
思わず目を背けたくなる位の悲痛な表情で満ちていたから。
「落ち着いてセリカ。何があったの」
「…私たちの先輩と先生と学校。その全部、殺し合いに来てるのよ…!」
アビドス高校唯一の三年生、小鳥遊ホシノ。
超法規的機関、シャーレから対策委員会の顧問として赴任した先生。
本名ではない為本人かどうかは不確かだが。
腐れ縁の便利屋の参謀、鬼方カヨコや主催に肉体を奪われた筈のアビドス生徒会長、梔子ユメ。
自分達を含めたキヴォトス生の近くにいる先生ならば、彼以外に考えられない。
セリカの視界が捉えた、決して見逃す筈のない二つの名前。
贋物の仲間に甚振られ、本物の仲間に会いたいと胸中で願ったのは事実だ。
しかし、殺し合いに巻き込まれて欲しいなどと願った覚えは断じてない。
善意など欠片も感じない、皮肉の籠った残酷な願望成就が、傷心の彼女の傷跡に塩水を塗りたくる。
「私たちだけじゃなく、アビドスそのものまで勝手に…もういい加減にしてよ!」
殺し合いが呼びよせた掛け替えのない存在は人だけに留まらなかった。
地図に記載された北西のアビドス砂漠。
母校のアビドス高校に始まり、厚意にしてもらっているバイト先の紫関ラーメンまで。
大切な故郷や施設が悪趣味なゲームの単なる一エリアとして配置されている。
廃校を食い止めようと積み重ねた対策委員会の努力を。
砂だらけの学び舎で笑いあった青春の日々を。
何も知らない者達が、土足で踏み荒らし、争い合って、血で穢す。
例えそれが精巧なイミテーションだったとしても、断じて認められる話ではない。
「なんで!?私たちがなにをしたって言うのよ!?
自分達の学校と街を守りたくって毎日必死に頑張って来ただけだってのに!」
大好きな幼馴染と一緒にアビドスの門を叩いたあの日から。
生まれ育った街のために何かがしたくて、一生懸命に取り組み続けて来た。
借金返済のためにひたむきに努力しようと現実は残酷で。
コツコツバイトや貯金をやっても、法外な利子を払うだけで精一杯。
だけど、自分達の努力を認め、支えてくれる頼りになる先生が加わってから。
一人で何でも抱え込もうとする先輩を助けて、守られるだけの存在じゃないと示して。
何も出来ない愚かな子どもと侮った、憎たらしい悪党どもの鼻を明かしてやった。
とても順風満帆な道のりとは言い難い学園生活。
膨大な借金は健在で、余裕なんて何処にもない。
それでも、五里霧中だった頃とは違い、着実に良い方向に進んでいる確信があった。
なのに。
「私は、私達は───こんな目に合う為に今まで努力してきたわけじゃない!」
本来負う必要のない学校の負債を抱えながら、大人の理不尽に抗ったのも。
キヴォトス終焉の危機なんて馬鹿げた規模の問題に立ち向かえたのも。
全ては大好きな皆のたった一つの居場所を守るために乗り越えて来た。
だが、懸命な努力で守った人と街がふざけたゲームの一部として使い潰され。
幼馴染と先輩の上っ面を真似ただけの化け物が悠々と跋扈する。
無知蒙昧な子どもの努力や足掻きなど最初からないに等しいと言わんばかりに。
身勝手な大人の醜い悪意一つで、積み上げた幸福は崩れ落ちていく。
可能性に溢れた学園と青春の物語、その終着点が捻れて歪んだ形で幕を閉じる。
怒りや悲しみよりも、今はただただ自分の無力さが悔しくて堪らなかった。
「……こうしちゃいらんない…!」
「ちょっと…!何処へ行くつもり?」
堰から決壊した激情を原動力に、傍らに置いてあったリュックを掴み上げる。
そのまま足早にリビングを去ろうとする背に待ったを掛けたシノンの手を振り払い。
零れる涙で赤色の瞳を潤ませながら、セリカは叫ぶ。
「決まってるでしょ!あのふざけた贋物共のところよ!
先生やホシノ先輩がアイツらに会う前に、一片残さずぶっ潰してやるんだから…!」
その見た目や猿芝居に動揺して、いい様にやられてしまったが今は違う。
自分の為ではない。先輩や先生の為と思えば、闘う勇気と覚悟が湧いて来る。
逃がさないと追跡してきたなら迎え撃つ。取るに足らぬと放置したなら此方から打って出る。
前回使えなかった支給品や令呪を総動員してでも、仲間を穢す魔女たちを完全に葬り去る。
そんなセリカの決意に少女は静かに首を振った。
「無理よ。今の私達じゃグリオンには勝てない。だから私たちは逃げを選んだ。
無鉄砲に飛び出しても殺されに行くだけ。それはあなたも分かっているはずよ」
現在持ち得るリソースを駆使すれば、贋物の対策委員会"は"討伐出来るかもしれない。
しかし、グリオンと呼ばれた、贋物を創造した張本人たる錬金術師だけは別だ。
何の変哲もない武器や土くれから、意思を持った凶悪な怪物を生み出す反則級の異能。
奴が生きている限り、苦労して倒そうとその奮闘を嘲笑いながら贋物を復活させる恐れがある。
シノンの心に死の恐怖を深く刻み込んだ、ラフィン・コフィン残党──死銃。
奴が取るに足らない他愛の無い小物だと錯覚する程の身の毛がよだつプレッシャー。
愛銃が無ければ、一歩すら踏み出せなかった弱い頃の自分ならば、突入する事さえ叶わない別格の怪物。
常軌を逸した魔人相手に無策で挑んだとて、その先に未来はない。
「分かってる…、そんなの分かってるわよ!
でも私は…あんな贋物を先輩や先生に死んでも見せたくないの!」
言ってる事の無謀さは頭では理解しているが、心が逃避を認めようとしない。
セリカが今何より慮るのはこの地にいる本物の仲間達。小鳥遊ホシノと先生の安否。
生徒会長とホシノが過ごした二人だけのアビドス生徒会。
その詳細をセリカは知らない。彼女は過去の詳細をあまり語ろうとしないから。
いざ話しても自身を含めた生徒会を卑下した物言いをするばかり。
だが二人で過ごした時間が、対策委員会での時間と同じ位大切な時間だったのは分かる。
そんな大事な人が黒幕に利用されたと知った時の先輩の苦しみは計り知れない。
其処に追い打ちをかけるかのように、後輩や自分の贋物の存在を知ればどうなるか。
その事実を受け入れるだけの心の余裕などない。今の自分がそうであるように。
ユメ会長の件で手一杯であろう先輩の心を抉る真似など絶対に阻止しなくてはならない。
更に心配なのは先生だ。
誰よりも生徒思いな彼が、外見だけとは言え、贋物の対策委員会に攻撃出来るはずがない。
キヴォトスの外から来た先生はセリカ達とは肉体強度が違う。
銃弾一発で容易く死に至る。どれだけ心が強くとも力なき弱者に世界は厳しい。
キヴォトス以上に死と隣合わせな殺し合いなら尚の事。
肉体的にも精神的にも抵抗は困難。ホシノ以上に会わせられない理由は大きい。
「元はと言えば私のせいで作られたのよ、なら、私が蹴りをつけなくちゃ…!」
安易な理由で得体の知れない男に接触してしまったのが全ての発端。
人の心を弄ぶ事を趣味とした外道に情報を与えてしまった結果、誕生したのがあの贋物だ。
ホシノが、ノノミが、そしてアヤネが、残虐な悪魔として、参加者達の記憶に刻まれる。
アビドスの制服を着て、委員会の名を振りかざし、今も嗤いながらのうのうと誰かに悪意を振り撒く。
他ならぬ自分の短慮のせいで。そう考えるだけでこの身が張り裂けそうになる。
頼るべき仲間は傍におらず、いたとしても絶対に訳にはいかない。
果たさねばならない責任と義務が自分にはある。
不可能に等しい無理無謀だろうと、一人で片をつけなければならない。
魔王の所業を思い出し、震えが蘇ろうと立ち止まる理由にはなりはしない。
「あれはあなたのせいじゃない。全部グリオンの仕業。負わなくていい責任で自棄を起こさないで」
「だからって、あんな贋物!放っておくなんて私には無理…!」
「無理でもお願い。今は耐えて。」
「出来ないわよ!あんただって自分の大事な人が良い様にされてたら黙ってらんないでしょ…!?」
掛け替えのないもの全てを醜いエゴに利用されたこの怒りが分かる筈もない。
そうでないから冷静でいられるのだと暗に揶揄する物言いにシノンは言葉を返す。
「…ええ、そうね。もしもキリトやアスナ達の姿だけ真似た贋物がいたとして。
そいつらが彼らの尊厳を傷つけて回っていたなら、絶対に許してはおけない。
例え刺し違えてでも連中を止めに行こうと、私は考えるでしょうね。」
「…ほら、やっぱりそうじゃない!」
「──でもそうすれば、私は大事な人の中にいる"私"を殺す事になる。
だから死ねない。もう一人で自分勝手に死ねる命じゃないから。」
人は一人で完結することはない。
どれだけ身軽を気取ろうと生きる限り、他者とのつながりは切っても切れない。
関わった分だけ他人の中に縁や想い出と言う形で自分を残す。
そして自分が死ぬ時、誰かの中に遺した自分も同時に死んでしまう。
命懸けで守ろうとした相手ならば、決して埋まる事のない空白を植え付ける。
それは全てが終わった後では、命を失ってしまった後では決して償えない罪深き行為。
「一人で勝手に生きて、一人で死ぬ。そんな事が出来る位あなたは孤独なの?」
「それは…。」
そんな筈はない。
自分以外の理由で怒り泣ける者が孤独であろうものか。
自罰に等しい程に己を蔑ろにしてしまうのは、他者への愛情の裏返し。
自らの死を覚悟する程に、死なせたくないと切に願う人達が。
セリカの心深くに息づいているからに他ならない。
彼女の脳裏に思い起こされる、心に焼き付いた青春の風景。
物騒な提案をするシロコ先輩がいて。
悪乗りで便乗するノノミ先輩やホシノ先輩がいて。
変な方向に進む議論を諫めるアヤネちゃんや先生がいて。
踊れど進まない議論の中、笑い合う皆の瞳には。
釣られて笑う自分の姿も、例外なく存在していた。
対策委員会は、6人全員揃って初めて対策委員会足りうる。
一人でも欠けてしまえば、自分達の愛したアビドスは永遠に戻らない。
だから闘わなければと思った。命を賭してでも野放しの贋物から守らなくてはと。
だが、皆からすれば、セリカもまた失ってはならない青春の一ピース。
仲間から大切な命を奪うなど、自分でも──否、自分だからこそ許す訳にはいかない。
「闇雲に闘うだけが全てじゃない。守りたい誰かの為に生き抜く事も一緒に考えて。
生きる為だったら、バケモノ相手だっていくらでも手を貸してあげるから」
感情の波に震えるセリカの握り拳へ腕を伸ばし包む。
ひやりと冷たい狙撃手の手が、彼女を支配する熱を緩やかに冷まして行く。
「…どうして?さっき会ったばっかりの他人じゃない。そこまでする義理なんて…」
「もうこうして関わり合ってる。私の中にもあなたがいるから…かしら。」
「なにそれ…答えになってない。ばっかじゃないの…。」
泣きながら憎まれ口を叩く少女に確かにねと優しく微笑む。
一日さえ共に過ごしていない相手の為に身体を張るなど、実に馬鹿らしい。
だがたったそれだけの理由で。人殺しの手を握ってくれたお人よしの剣士のように。
震える誰かの手を支えたい。そう願う事はきっと間違いなんかじゃないから。
◆◆◆
「それで、闘わないならどうすんのよ…?ただ逃げっぱなし…って訳にもいかないでしょ。」
「今、私たちに必要なのはグリオンを倒せるだけの仲間。
それと並行して、このデスゲーム攻略の手がかりも探して行きたいわね」
「手がかり?」
「ええ、クルーゼが禁止エリアについて言及した時に言ってたでしょう。
『我々の拠点に繋がる物のあるエリアは立ち入り禁止エリアには指定しない』って。
この会場の何処かには主催者自身が用意した攻略の鍵が存在する。」
ルルーシュ、Poh、贋物の対策委員会、グリオン。
エリアに犇めくマーダー達を倒したとて、それで万事解決には至らない。
最終的にバグスターウイルスを治療し、ラスボスである主催者達を倒せなければゲームオーバー。
目先の脅威の対処も重要だが、先を見据えた対抗手段も集めて行かねば殺し合い攻略は叶わず。
禁止エリアの説明中さらりと流す形で話していたが、運営直々の手がかりは聞き逃せない項目だ。
普通は生殺与奪を握っておいて、優位性が揺らぐ真似など普通はしない。
だが、令呪やレジスターによるバランス調整や一発逆転のエナジーアイテムの配置など。
無軌道な虐殺ではなく、公平なゲームとして成り立たせようとする意志を感じる。
そんな運営自らが叛逆をクリア条件に含んだ以上、彼らに不利な内容にも恐らく嘘はない。
最も重要な勝利条件に繋がる物が出鱈目ならば、それはもうゲームとして成立しなくなってしまう。
「そして私は、その手がかりがアビドス砂漠にあると思ってる。
仮になくても、あそこはテレビ局と同じ位良くも悪くも人を集める。
セリカの知り合いを探しつつ、仲間を集めるなら最善じゃないかしら。」
進行役を務めた羂索が器として選び、参加者としても放り込まれたアビドス生徒会長。
アビドスに比重を置いた人選といい、殺し合いから伝わる彼女に対する強い執着。
故に、ゲーム攻略のヒントを残す重要スポットとして。
主催が梔子ユメに纏わるエリア、アビドス関連の施設を指定する可能性は高い。
例え検討違いだったとしても、黒幕の一人が名乗った肩書と同一らしき学校が実際に存在するのだ。
見知った施設の無い参加者が、手がかり探索の足掛かりに選ぶ候補に挙がりやすい。
加えて、対グリオンを想定する場合でも速めに抑えておきたい。
彼がセリカのみならず、他のアビドス生にも危害を及ぼそうとするならば。
その母校にも目を付ける恐れがある。彼女の大切な居場所を守る意味でもアビドス行きは外せない。
「だから今の内に聞いておきたいんだけど…あの砂漠には何があるか知ってる?
たしか生まれ故郷だから、それなり詳しいはずわよね?」
「此処のアビドスが、私の記憶そのままだとしても特別なものは何もないわよ?
無事な自治区も至って普通だし、後は砂に埋もれて放置された街があるだけで────あ。」
「あるの?」
「一応、だけどあったわ。ただ…うーん。」
心当たりがある様子のセリカだが、どうにも歯切れが悪い。
とりあえず言うだけ言ってとシノンが促すと、モジモジしながらも意を決して口にした。
「…話しても何言ってんのコイツって思わないでよ…?
最近だけどアビドスで見つかったのよ………………超古代兵器が。」
「…あなたの言葉聞いてると、たまに頭を銃身で思いっきりぶん殴られた気分になるんだけど」
「ほらー!絶対そういう反応になると思った!でも本当にあったんだから!」
情報交換でも話題に上がった別の時間軸から存在、色彩が齎す終焉から世界を救うべく。
切り札として利用したのが、超古代兵器ウトナピシュティムの本船。
セリカ達対策委員会と因縁深い企業、カイザーPMCが軍事目的で発掘し、地下施設に保管したオーパーツ。
宇宙戦艦とも呼べる船にキヴォトスの精鋭達と共に乗り込み、天空にある敵の本拠地へと突入した。
ざっくりとした話だけでも、自身がプレイしたゲームのストーリーよりもゲームらしい展開。
頭に詰め込むには大容量の別世界のスケール感に思わず眩暈がする。
「でも、結局宇宙戦艦も爆散しちゃったし、起動する為の施設もない。
そもそもあんなもんまで一々忠実に再現してるとは到底思えないし…。」
本舟があったカイザーPMCの駐屯地や起動に必要とされるサンクトゥムタワーは会場には存在せず。
先生が別の鍵で起動したらしいが、詳細は本人から聞いてみないと分からない。
そもそも現物自体が敵のハッキングによる自爆シークエンスで爆破され消失済み。
挙げはしたが、わざわざ復元して置いておくしては規模がデカすぎる。というのがセリカが出した結論。
「けど、アビドス砂漠には地下があったのは確かなのよね?
ゲームの隠し要素として利用するには、打ってつけだと思う。
本船そのものは無くても、別のものを隠しておけばいいわけだし。」
地図に載ってない為、現地を知るキヴォトスからの参加者のみが知る秘密の場所。
戦闘の余波で表層の施設が倒壊しても、地下施設ならば鍵と一緒に埋没する心配も少ない。
隠す側の目線で考えれば都合のよい環境。
元々セリカの情報頼りで何もかもが手探り状態だ、望み薄でも探してみるのも悪くない。
凡その探索の目星が立ち、態勢を整えられた以上、何時までも隠れ続ける理由は薄い。
セリカの支給品を確認した後、世話になった民家を抜け、仕舞い込んだバトルホッパーを再び取り出す。
慎重に外へ繰り出し、様子を伺うが敵襲の気配はなし。
潜伏中に追手を振り切れたか、そもそも逃げた獲物に興味はなかったか。
或いは既に発見されており、影で此方を監視して泳がせているのか。
いずれにせよ心身共に迎撃の準備は出来ている。
今後訪れるであろう闘いへの覚悟に火をつける様にシノンはアクセルを回した。
「その…シノンはよかったの?自分の仲間と合流しなくても。
私たちみたいに馴染みの建物とか無かった?」
吹きすさぶ風に猫耳を揺らしながら、ハンドルを握るシノンにセリカは尋ねた。
既に決定した事とは言え、思えば此方の事情ばかりを優先させている。
気丈な彼女もまたアビドスの様に見知った場所があるのなら、其方に行きたかったのではないか。
泣き喚いて醜態を晒した結果、優遇するよう気を遣わせたなら申し訳がたたない。
「あったわよ一つだけ」
アビドス砂漠と反対方向にあったキリトの家。
現実かVRか。何方であっても自分達の中心人物の名が記された施設だ。
その名を目印にきっと仲間が集まるだろう。合流しなくてもいいと言えば、嘘になる。
PK上等のGGOの猛者だろうと殺意をぶつけ合う殺し合いは初経験。
キリトやアスナの様にデスゲームを生き抜いた経験はない。
命を守る為にまた自分は命を奪う引き金を引けるのか。
死と隣り合わせの環境から来る恐怖。
表面上では冷静に振る舞えても、少しでも気を抜けば取り殺されそうになる。
今すぐにでも親友達の無事を確かめたい。彼らが齎す希望にもたれかかりたい。
死銃事件を通じて少しは強くなれたつもりでも、弱い自分は直ぐに顔を出す。
「でもいいの、気にしないで。私がそうしたいって決めたから。
それにうちの連中お人よしばっかりだから。行っても会えるか分かったもんじゃない」
見ず知らずの女を信じて命を張る男とそれに看過された者達の集まりだ。
罪の意識に囚われた自分に聞くべき言葉(感謝)を聞かせる為に。
街を駆け回って、何年も前の強盗事件の当事者を見つけ出すなど普通はしない。
此処でもよそ様の事情に首を突っ込んで、世話を焼いている事だろう。
そんな中自分だけ弱っている人を見捨て、私情優先で家に向かい。
一人待ちぼうけを食らう等、恥ずかしいなんてもんじゃない。
シノンは信じている。
キリトと彼の背を見て、共に戦った仲間達の強さを。
その強さを習い、自分のしたい事を──手を差し伸べる事を優先する。
後は恐怖を乗り越えて、再会の時までひたすら生き続けるだけだ。
「このゲーム、必ず生き抜きましょ。頼りにしてるわセリカ。」
片腕でバランスを取りながら、前を向いたまま差し出した拳。
これからの長旅に相乗りする相棒に向けた、生の意思の確認作業。
「シノン…」
残忍な大人に全てを奪われた壮絶極まる悪夢の数時間。
自分の周りには何も残されていない。一人でも理不尽な現実と戦うしかない。
半ば諦念に近い感情を抱えたまま、簒奪者達への憤怒と復讐心に身を焦がす。
そうするしか道はないのだと、思い込んでいた。
だがそんな自分に、一人ではないと教えてくれたものがいた。
やけっぱちだった自分に手を差し伸べてくれた別世界の弓兵と。
贋物も含めこの地にいない、最後の対策委員会メンバーを思わす支給品。
見慣れぬ形状のハンドガンと狼の力を宿すと言う青のカードキー。
絶望の冥黒に閉ざされて尚光る、目に見えない繋がりがまだ傍には残されている。
「ええ、任せときなさい!どんな奴が相手でもぶっ潰してやるんだから!」
拳をこつりと合わせ、注がれた信頼に応えるセリカ。
抗う牙を携えた二人の獣は、仲間と鍵を求め砂漠を目指す。
皆の生を勝ち取らんが為、奪われた全てを取り戻す叛逆の旅が始まった。
【エリアG-11/住宅街/9月2日午前6時】
【シノン@SAOシリーズ】
状態:正常、ALOアバター
服装:いつもの服装
装備:バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
カリスラウザー@仮面ライダーディケイド
ラウズカード一式(♡A〜10)@仮面ライダーディケイド
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:このゲームに抗う。
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:グリオンからは今は逃げる
追ってくるならカリスの力で迎え撃つ。
03:キリト達と合流したいけど…今は彼らを信じる
参戦時期:少なくとも死銃事件解決後
備考
※バトルホッパーの意志は精々便利なオート操縦機能程度に思ってます。
※グレネードランチャーM32@現実は弾切れになったので放棄しました。
※『ブルーアーカイブ』の世界観を共有しました。
【黒見セリカ@ブルーアーカイブ】
状態:心身ともにダメージ(中)(怪我は処置済み)、魔王グリオンへの怒り(大)
服装:アビドス高校の制服(リンチにあったため汚れ 大)
装備:エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1〜2、ホットライン
思考
基本:こんな殺し合いにはのってやらない
01:アビドス砂漠で仲間と攻略の手がかりを探す。
02:本物の皆に会いたい。そのためにも生き抜く。
03:グリオンにバケモンども……覚えてなさい!
参戦時期:少なくとも遍く奇跡の始発点編終了後
備考
※『SAOシリーズ』の世界観を共有しました。
【エイムズショットライザー&シューティングウルフプログライズキー@劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME】
黒見セリカに支給
A.I.M.S.が所有するベルト型の変身ツール。
付属のプログライズキーを装填し、認証(オーソライズ)とショットライズを行う事で
装着者を仮面ライダーバルカン シューティングウルフに変身させる。
また、変身せずとも50口径対ヒューマギア徹甲弾を射出する拳銃としても運用可能。
投下終了です
延長します
空蝉丸、藤丸立香、マシュ・キリエライト、小鳥遊ホシノ、ディアッカ・エルスマン、予約します。
皆さま投下お疲れ様です!
すみません。延長をいたします。
ギリギリになって申し訳ございません。
投下します
前回までの仮面ライダーガッチャードは!
大物錬金術師を目指す少年、一ノ瀬宝太郎は!
南こと華鳥蘭子を助けるためにレジェンドライダーケミーとガッチャーン!
宝太郎の姿にアイドルを目指す友人を幻視した南であったが、突然の宝太郎の思いつきから立ち寄ったレストランでオムライスを作ることに!
果たして無事オムライスは美味しく完成するのか!? そして宝太郎の夢の行方は!?
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
「……なるほどな」
更新されたホットライン映る名簿に記された、2つもある己の名前。
ただ覇王十代と記されているとなれば、己でもあるこの遊城十代の名前はどういうことか。
覇王である自分が目覚めた以上、「遊城十代」という人格は心の奥底に封じられているはず。
「オレの中は……そのままか。ならば、他の次元すらも容易く干渉し巻き込む力を奴らは持つようだ」
本来、覇王十代とは遊城十代の心の闇より生じた幻影。暴走した正しき闇の力が今の覇王という人格を形成している。
同じく同姓同名が2つある参加者や、そして主催側の羂索がボディとして使用しているはずの梔子ユメの名前もまた名簿にある。
キラ・ヤマト。アスラン・ザラ。ロロ・ランペルージとロロ・ヴィ・ブリタニア。梔子ユメ。そして遊城十代。
破滅の光が統一しようとした十二次元宇宙の、さらに外側の次元。その概念や住人をも呼び込む羂索らは、超融合神をはるかに超える何かを保有しているのだろうか。
「超融合さえ取り返せれば、等と楽観視は出来なくなったようだな」
十二の次元を統合ごうするための超融合神の復活。そのために超融合を取り返さなかければならないのは必須。だが相手が相手であり、超融合を取り戻して勝てる相手、ということではない。
レジスターが無くとも超融合に対抗しうる力を相手が所持している可能性が出来た以上、さらなる力を手に入れなければならないのは定石。
「GRUUUU……」
「……どうやら雑魚を探す手間は省けたようだ」
唸る獣のうめき声。目を向けば狼のような風貌のNPCの群れ。
この程度、異世界に雑多といるモンスターと対して変わらない。
数体が群となって己を餌と見え据えて覇王を狙う。
「度胸は認めよう。だが、牙を剥く相手を間違えたようだな」
獣ゆえの無知であるが、心意気はよし。
覇王の命を狙うならばそれ相応の代償は分かっているだろうか。
最も、獣の頭でそれを考える知能はあるかどうか。
「……来い、貴様らが誰を相手にしたか、その無謀に恐怖を絶対的実力差を刻み込んでやる」
奥もせず、覇王は剣を抜く。
手にした支給品の切れ味を試すにはいい機会だと。
決着は数分も掛からなかった。
NPCモンスター、ガットゥーゾの死体を覇王は冷酷に見下ろす。
切ったのは2体。残り3体は覇王の王威に怯み、恭順の態度。
「この程度か」
その手で振るったのは偽剣デインノモス。
アレクセイ・ディノイアが宙の戒典を再現として部下に開発させたそれは、今や覇王の得物として馴染む。
従うガットゥーゾ3体を引き連れ、覇王の道は止まらない。
恐怖と圧倒的な力を持って従わせる。やることは何も変わらない。
兵の利点は数ぐらい。強者相手には消耗させる程度が御の字。
兵がいるならば将もまた必要だ。それも手に入れなければ数の暴力もうまく扱うことは出来ない。
「……さっきから覗いていたのだろう。出てこい」
最も、将に相応しい誰かの目処はついていた。
覇王がガットゥーゾと交戦した際に感じたギラついた視線。
覇王の言葉と共に物陰から現れる黒装束の剣士。
好青年にも見えるその風貌だが、その中身から発せられるどす黒い感情はまるで別物だ。
下卑た笑みを浮かべる青年に対して、その素性を見破った覇王はただ一言返す。
「……なるほど、変装か?」
「オイオイ、一目見ただけで見破られるとは流石に手厳しいぜ」
あっけからんもなく、剣士は開き直って手を上げた。
交戦の意思はないが、その悪意から滲み出る実力は覇王に及ばずとも及第点。
「こうも容易く顔を晒し非戦の意思を示したのだ。……提案ぐらいは聞いてやろう」
素直に姿を見せた理由はそれだけではないだろう。
将としては十分、恐らくこの剣士の目論見は下卑た代物であるが、こちらに不利益がないならばその戯言ぐらいは聞いてもいい。
「だったらお言葉に甘えて。ーーーってわけだ、どうだ?」
剣士の言葉に、覇王は興味を引いた事を示すように小さく頷く。
その思考こそ醜悪だ。吐瀉物の掃き溜めのように心の奥に巣食う憤怒と快楽が粘つく蜘蛛糸の駕籠。
「ーー悪くはない。オレに害を及ぼさない限りは、お前個人の目的には目を瞑ってやる」
「へっ、話が早くて助かるぜ」
ーーだからこそその醜悪さは、いずれ役に立つ。
心の闇を、超融合のために。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
料理自体の味の感想は敢えてノーコメントであった。
わかめご飯の和風オムライス、と聞けば斬新そうに聞こえるがその実ネット上では既レシピ自体は出回っている。
宝太郎自体創作料理のアイデアは斬新なものの、試食者の感想は総じて微妙だったり、挙げ句ケミーにすら美味しくないモノ扱いである。
だが、それでも自分のために出された料理、なのだから責任を持って完食をした。でも本当の所美味しかったのだから、ふと出た笑顔を見て宝太郎が喜んだのだからそれでいいと、華鳥蘭子は思った。
羂索からの放送が流れたのはその直後だった。
「……こんなことで、再会の機会が来るとは思いませんでした」
名簿に載っている見知った名前。いや、二度と集まるかどうかわからないはずの3人の名前。
亀井美嘉、大河くるみ。ーー東ゆう。
ギクシャクして別れた運命がこうして集う機会が訪れることになるとは、こういう事でなければ嬉しさが勝ったはず。
少なくとも、自分という星を見つけてくれた東ゆうには、感謝の気持が沢山ある。
あんな別れ方になってしまい、何も言えずにいたという感情が燻っていたのも事実。
「まさかギギストだけじゃなくてグリオンまで……」
一方、らしくもない宝太郎の険しい顔の視線の先、倒されたはずのグリオンの名前。
世界全てを黄金狂(エルドラド)へと変えようした男は、あの時報いを受けるかのように暗黒の扉に引きずり込まれたはず。同じく名簿にある冥黒王のギギストもまた倒されたはずの存在。
羂索は宝太郎の存在を知っており、呪詛師を名乗った彼もしくはその協力者がまた何かしらの錬金術、もしくは錬金術以外の力を使ってなのか。
九堂りんねと黒鋼スパナの名前があったのは不幸中の幸い。
先ほど宝太郎のケミーガッチャの経緯を軽く聞いていた蘭子もグリオンとギギストが危険人物であるという説明を受けている。
「東さんにみんなは、無事でしょうか……」
「大丈夫だよ南さん、もしかしたら九堂やスパナに出会えてるかも知れないし、それに南さんが信じなかったら何も始まらないよ?」
「……そう、ですね」
信じることには始まらない。
自分というちょっと伸びただけの雑草に純金の価値を見出してくれた東ゆう。
アイドルという星に目を焼かれ、己お夢に対してどこまでも真っ直ぐすぎて傲慢だけれど、それでも自分たちという星に意味を見出してくれた彼女には。
彼女はこんな所で終わるような星であってはならない。
東西南北として皆と活動したあの時間は、華鳥蘭子にとってかけがえの無い色彩だから。
「……ありがとうございます。それに……」
「……うん。あのルルーシュって人のことも気になるよ」
食事中、レストランのテレビから流れた、皇帝を名乗るルルーシュの宣言。
「羂索に変わって」という文言、ただ殺し合いに従うというよりも、殺し合いの元凶にすら牙を剥くかのような言い振り。逆らうものには容赦なくその牙を剥くであろう傲慢不遜の悪なる反逆者。
「あの人が変身した仮面ライダーとは、戦ったことがあんだる」
「なんですって?」
「うん。カグヤを狙ってたやつらの、そこの強そうなやつがあのアークワンって仮面ライダーに変身していたんだ。……もしかして羂索、ハンドレットの……?」
かつてカグヤを狙っていた謎の組織ミレニアム、その幹部の一人であるサイゲツが使用していたライダーベルトと同じもの。
ハンドレッドなら、何かしらの手段で仮面ライダーのベルトを増やすことが出来るだろう。先ほど蘭子を助けた際に交戦したカッシーンもハンドレッドの手兵。
裏にハンドレッドが関わっているとは考えてみるも、そうだとしたら目的は一体何なのか。
「でも、わからないこと考えすぎても何も変わらないから、一旦は九堂やスパナを探さないと。それに南さんの友達も」
兎に角、優先するべきは仲間たちの捜索。そして南の親友である三人を見つけること。その方針に蘭子も異論はない。
寄り道と言う形にはなったが、腹拵えも済んだこともあり、二人はレストランから出ようとする。
自動ドアが開き、二人の前に再び静寂に満ちた都市の姿が映り込む。
「手間が省けたようだ」
正しき邪悪が二人の前に立ちはだかった。
蘭子ですら視認出来る程の黒の放流が突風となり吹き荒ぶ。
そこにいるだけで押し潰されれそうな重圧。
間違いなく只者ではない。等という言葉ですら生温い。
「なん、ですの。これ……」
「……まるで……」
冥黒王みたいだ、宝太郎が言葉にする事もなく理解できる邪悪の瘴気。
蘭子に至っては耐えきれず膝をつくほど。
人間味を感じない、闇そのものが人間に張り付いている。
「……十代。遊城十代」
「……どちらの、かな?」
重圧と共に、放たれた言葉は、ただの名乗り。
食い気味に宝太郎が反応する。
十代という名前は2つあった。他にも同じ名前が2つある参加者が見受けられたのだから、気になるのは当然のこと。
「…………………覇王、十代」
「意外と普通に答えてくれた!?」
長い沈黙の後に、覇王であるという答えが出た。
覇王の表情は変わらず鉄面皮のように無感情。
何を考えているのか、その答えは次の覇王の言葉に出た。
「俺は、羂索なる奴らの行いを放置するつもりはない。奴らを倒す為の力を俺は求めている。それが何であろうともな」
「……俺だってあいつらのやってることは止めたいとは思ってる」
覇王の目的は、羂索らの打倒でもあった。
ゲームの破壊という点では宝太郎たちとは目的は共通している。
だが、覇王の凍えるような瞳は、その先すらも。
「俺に従うがいい。命は保証してやる。それに奴らも必ず仕留め、この下らない催しを終わらせてやる。無論、逆らうのなら容赦はしないがな」
それが自分のやり方だと、異論は認めないと言わんばかりに。
怒りなのか、哀しみなのか。無感情でありながら感情の籠もったような。
まるで機構だ。覇王を名乗るそれは、まるでシステムの一つかのように言葉を込めて、告げる。
それが使命だと言わんばかり。それが正しいことだと。
「……残念だけど、俺はお前の提案には乗れないよ」
だからこそ、一ノ瀬宝太郎は覇王の誘いを拒絶する。
「確かにお前のあいつらを倒すって言葉、嘘はついていないと思う」
「そうだ。どんな手段であろうと、奴らに勝ち、取り戻すべきものを取り戻せば全ては済む」
「そのどんな手段で、弱い人まで踏みつけにすることを肯定するのか」
「そうだ」
「だったら尚更、認められない」
ケミーとわかり合う事を信条とする一ノ瀬宝太郎にとって、弱者を容赦なく踏みつけにする覇王の方針は到底認められない。
時には厳しい現実に打ちひしがれそうになる時もあった。でも、どんな時でも自分の信念だけは曲げるようなことだけはしたくない。
「世の中が綺麗事だけで進まないのなんて俺自身がわかってる。それでも俺は、俺の信じるガッチャで、この殺し合いをぶっ壊す! どんなに苦しくたって、必ず!」
「世迷言、世迷言で綺麗事以下の妄言か。……ガッチャなどと、下らない」
宝太郎の言葉を、覇王は切り捨てた。
かつての己の口癖に思うところはあるとしても、それ以上に宝太郎の語る理想などただの戯言に過ぎないと。
その無軌道な理想で突き進んだ結末が、残酷なものであることを。
「下らなくなんてありません」
続けて、立ち上がった蘭子の言葉。
一心不乱に夢見た星に手を伸ばそうとした少女(とも)を知っている。
他人を巻き込む箒星であろうと、その我武者羅によって掬われたことを知っている。
自分という無色に色と輝きをくれた、誰よりもアイドルになることを願った友達を知っている。
「一ノ瀬さんは、自分の貫く願いがどれだけ困難なのかを知っています」
一ノ瀬宝太郎の事を、華鳥蘭子は断片的に知らないとしても。
その願いを諦めない心意気に共感してしまった。
あの東星(あずまぼし)もそうだったから。
自分にはアイドルというものを彼女のように楽しいものだと思えないけれど。
彼女の熱意が自分たちに星を与えてくれたことを。
「それでも、諦めない思いだけは、誰にも否定出来ないから。憧れは、夢は止められないものだから」
東ゆうがどこまでもアイドルという願いに真摯であるように。
一ノ瀬宝太郎がどこまでも自分のガッチャに純粋であるように。
間違えることもあるだろう、困難にぶち当たることもあるだろう。
それを知ってなお、最後まで諦めないものが最後によく笑うもの。
東の彼女には女神は微笑まず、東西南北は分かたれてしまったけれど。
「それに、あなたは、まるで……」
「もういい。これ以上の言葉は無意味だ」
「ゆう」零した言葉を遮るように、覇王が剣を構える。
言葉を交わす時間は切り上げられた。
構える二人に対し、ただ覇王は一言。
「ーー構えるが良い。お前たちが戦士であればあがいてみせろ」
戦いの火蓋は、その言葉だけで十分だった。
【エリアE-11/レストラン内/9月2日午前6時】
【遊城十代@遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX】
状態:覇王
服装:覇王の装束
装備:偽剣デインノモス@テイルズオブヴェスペリア
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ただ勝利し、支配する
01:超融合は必ず取り返す
02:足がかりとなる兵や将を集め、勢力を作る
02:あの赤き覇王とは何れ雌雄を決する
03:お前たち(宝太郎、蘭子)が戦士であるなら足掻いてみせろ
04:地獄の王子よ、俺に服従している内は好きにするが良い。お前もまた超融合の糧に相応しい
参戦時期:ジムに勝利した後
備考
※ガットゥーゾ3体を従わせました
【一ノ瀬宝太郎@仮面ライダーガッチャード】
状態:正常
服装:錬金アカデミーの制服(青、マント無し)
エプロン(現地調達)
装備:ガッチャードライバー@仮面ライダーガッチャード
レジェンドライダーケミーカード(クウガ。ファイズ、ダブル、オーズ、フォーゼ、ビルド)@仮面ライダーガッチャード
令呪:残り三画
道具:ホットライン
ガッチャートルネード@仮面ライダーガッチャード
ガッチャージガン@仮面ライダーガッチャード
制服のマント@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:このゲームを俺のガッチャでぶっ壊す。
01:自分や南の仲間を探す。
02:よろしくな、南!
03:呪詛師ってなんだ?ルルーシュのも錬金術じゃないのか?
04:奪われケミー達を取り返す。
カグヤのカードも本人に返したい。
05:目の前の状況をなんとかする
参戦時期:101体のケミーフルガッチャを達成した直後
備考
※レジェンドライダーのカードはそれぞれの武器に二枚づつセットで支給されています。
【華鳥蘭子@トラぺジウム】
状態:健康
服装:テネリタスの制服、
装備:スタームルガーP100@現実
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、現地調達のエプロン
思考
基本:私自身のガッチャを掴むために、必ず生きて帰りますわ!
01:一ノ瀬さん、どうぞよろしくお願いいたします。
02:皆さん……どうかご無事で
03:一ノ瀬さん、あなたはきっと本当にガッチャを掴むんでしょうね。
04:覇王、あなたはまるで……
05:オムライス、美味しかったですわ
参戦時期:東西南北(仮)が一度解散した直後
備考
※仮面ライダーガッチャードの101体のケミーフルガッチャまでの流れを大体把握しました。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
覇王に命じられたことと言えば、このガットゥーゾを率いて参加者を見つけること。
出来ることな適当なNPCモンスターを軍勢に加えて勢力を増やすこと。
そしてなるべくは「キリト」の姿で「覇王軍の黒の剣士キリト」として振る舞うこと。
その方針自体にPoHとしては異論はないどころか持って来いの内容。
「……あのガキ」
ヴァサゴ・カザルスとして。レッドプレイヤーPohとして。
今まで数十年生きてきたが、あんな凄みを見せるガキは初めて見た。
地獄を知っている者の渇いた瞳ではなく、どこまでも冷めた、冷めきった者の瞳。
そう振る舞わなければ心が保たなかったのか、そも心が壊れてしまったのか。
だが、まともな生き方であのような境地に達することなど本来ありえないはず。
「一周回って気に入っちまったじゃねぇか」
東洋のサル共は嫌いだ。だが嫌いなクソッタレの中で唯一愛にも近い感情を抱いたのが黒の剣士キリトぐらいで。
だが、そんな彼ですら覇王のカリスマは理解できる。
この男と一緒ならば、面白いことが出来る。
この男と一緒ならば、いつか自分の願いも叶う。
この男と一緒ならば、いつかキリトと再開できる。
期待にも似た高揚感と、その高ぶりに。
地獄の王子は、覇王のカリスマに当てられた。
「だがな、俺の初恋はブラッキー一筋だ。いくら覇王サマでも譲らねぇよ」
だが、この狂気(あい)だけは覇王だろうと譲らない。
覇王に従うことを決めたとしても、己の願いだけは譲らない。
あいつに牙を剥くなら、たとえ覇王だろうと容赦しない。
そんな自分の欲望を、覇王が既に知っていたとしても。
最後には全部切り捨てて己の欲望の為に。
「っと、どうやらカモ共があっちからやってきた見てぇだな」
物思いにふけていれば、向こう側から2つの人影。
両方とも女子であるが、そのどちらも厄介だとPoHは判断。
クールビューティの方はどっちの意味でも手強そうだが、もう片方の無力そうな女から感じる何かに脳内で警鐘を鳴らす。
遠耳で会話を聞くに誰かのことを話しているよ。「東ちゃん」やら「夜島くん」やら断片的なものは聞こえてきた。
少なくとも真正面からぶつかるような真似はしない。
最悪「キリト」として接触する手段もありだ。
「さてと、お手並み拝見だ、お嬢さんたち?」
どう転ぼうと、最後に自分たちの得になればそれでいい。
キリトを追い詰め、自分の下へ追い込む一手にさえなれば。
手を上げ、3体のガットゥーゾのうち2体を二人の背後へと回り込ませる。
ガットゥーゾが他のNPCを煽って彼女たちにぶつける形になるようにもと指示はしている。
狂宴のデモンストレーションと、覇王の眷属となった地獄の王子はほくそ笑んだ。
▼
「……美嘉、気を付けて」
「代葉さん?」
気配は分かっていた。近づく気配は幻妖とは違うもの。
恐らく獣の類であるが、その獣に誘われて他の敵意あるNPCの気配もある。
このまま戦闘は避けられないだろう。
ちょっと前に更新されたホットラインから名簿を確認し、夜島学郎の名が載っているのを藤乃代葉は確認した。
不安はないが、自分の時や美執村の時のそうであるように無茶をする彼は放っては置けない。
自分を闇の底から引き上げてくれた彼を、見殺しなんて出来ない。
亀井美嘉の方といえば、動揺の方が強い。彼女が名簿を見て最初に口に出た「東ちゃん」に込められたものがどういうものなのか。
いや、亀井美嘉にとって東ゆうがどれだけ大切なものなのか、東ゆうという人間を知らずとも、それだけは分かった。
美嘉の保有する支給品はどれも強力ではあるものの、そう安々と切れる札ではない。
NPCらしき獣は、間違いなく誰かの意図が関わっている。
それが、どの参加者が仕組んだことなのか、それは依然不明。
ただ、まずはこの状況をどう乗り越えるか、まず考えるべきはそれだった。
【エリアE-12/街中/9月2日午前6時】
【Poh@SAOシリーズ】
状態:楽しい
服装:SAOのアバター(ただし今はSAOのキリトの恰好)
装備:マクアフィテル@SAOシリーズ、変身の指輪@Fate/Grand Order、純粋な魔力の塊@黒い砂漠
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:殺し合いを楽しむ
00:キリトもいるんだろ?
01:変身の指輪を使って対立煽りをする
02:味方を増やして戦わせるのも面白いな
03:覇王に従いながらも楽しむ。だが覇王であろうとキリトに手を出すなら容赦はしない
04:嬢ちゃん二人のお手並み拝見。最悪「キリト」として接触して仕込んでおくのも悪くはない
参戦時期:少なくともラフィン・コフィン討伐戦以降。
備考
※変身の指輪は純粋な魔力の塊で賄ってます
※従えたガットゥーゾ3体のうち1体を隣に置いています。2体は美嘉と代葉の背後に回らせています。
【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:動揺(中)、レジィに対する恐怖(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅@ダークギャザリング
令呪:残り三画
道具:究極メカ丸 絶対形態@呪術廻戦
香水@ダークギャザリング ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:生きて帰る 東ゆうと再会する
01:本当に殺し合いなんだ……
02:東ちゃんも、巻き込まれて……? それに大河さんに華鳥さんも……?
03:(黒阿修羅に対して)ごめんね。そんなボロボロなのに戦わせて。
04:代葉さん。同い年くらいなのにすごいなぁ。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
【藤乃代葉@鵺の陰陽師】
状態:ダメージ(小) 軽いやけど(両腕)
服装:普段の制服/霊衣
装備:自身の霊衣 盡器:染離(ぜんり)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める 彼ならきっとそうする
01:美嘉を助けられてよかった。
02:あのドローンとロボットの主、多分同業者かな。危険かも。
03:この状況、どうやって乗り越えるか
04:夜島くん、また無茶してないか少し心配
参戦時期:美執村から戻った後
備考 ※霊衣状態でも誰でも姿が見えるようになっています。
【支給品紹介】
【偽剣デインノモス@テイルズオブヴェスペリア】
覇王十代に支給。宙の戒典を再現しようとした研究の副産物にて生まれた、アレクセイの保有する剣。
これの所有者は、本来の持ち主であるアレクセイ・ディノイアの術や技を使用することが出来る。
ただし閃覇嵐星塵は発動3回ごとに強制的に疲労状態になり一定時間動けなくなる
【NPC紹介】
【ガットゥーゾ@テイルズオブヴェスペリア】
灰色の大きな狼型の魔物。素早い動きを生かしたヒット&アウェイ戦法と毒の爪を得意とする。弱点は火属性。
投下を終了します
投下します。
先の戦いの後、キラ・ヤマトと柊篝は互いの支給品を確認した後
(キラは開始早々アスランのニセモノに殴られ、確認出来たのは先程使用したイモータルジャスティスの起動鍵のみ、篝はその現場に急行した為最後の支給品を確認出来てなかった)
、休息を取れる場所の捜索と、居た場合先のアスラン・ザラのニセモノに狙われるだろう本物のアスラン・ザラを筆頭とした、互いの知り合いを探していた。
ニセモノのアスラン・ザラを追うという選択も浮かんだものの、今から追うには時間が経ちすぎており起動鍵により纏ったMSの事も考えると、何処に行っていてもおかしくない為先に知り合い・顔見知りを探すのを優先という結論へと至ったのである。
…その最中、ホットラインから鳴り響いたのはクルーゼによる放送。
「……随分と、好き勝手言ってくれますね」
「…ラウ・ル・クルーゼ…あなたは…!」
放送が終わった後、篝は静かに怒りを込めた様子でそう呟き、キラは怒りを見せつつも何故・何のためクルーゼが主催に居るのかが分からず困惑を隠せない状態になっていた。
「とりあえず、名簿を見てみましょうか」
「…はい」
とはいえまずは互いの知り合いが巻き込まれてないか確認する為、2人はホットラインから名簿を見る事に。
「…姫和にタギツヒメ、可奈美さんまで…!…キラくんの方は…」
「…僕の知ってるアスランと、さっきのアスランが名簿に…片方は?ってなってます。それに何故か、僕以外にもキラ・ヤマトが…准将名義で。
…後は…ラクスにディアッカ、それにイザークに……ニコルって、人まで…」
「…何と言いますか、混迷としてますね…」
複雑そうな表情の篝に対し、キラは先のクルーゼの件といい混乱を隠せない様子であった。
とりあえず、篝は巻き込まれていた自分の知り合いについて話す事とする。
「姫和は…先程話した、隠世で出会った私の娘で、可奈美さんは美奈都先輩の娘です。
タギツヒメは…かつて私が討とうとし、出来なかったけれど…最後に姫和達と和解を果たした、と。
後……可奈美さんと姫和の間にある柳瀬舞衣さんに、姫和とタギツヒメの間にある糸見沙耶香さんに益子薫さんは…姫和が出来たと言っていた仲間で…友達です。
彼女達の間に有るアンクという名前の方だけ浮いている気はしますが…クルーゼは名簿の順番には一応意味があると言っていました。
…私の巻き込まれている知り合いやそれに類しそうな方は、これくらいですね」
「…じゃあ、僕も。
アスランは…さっきの僕の知らない…ミームがどうとか言ってたのが多分、アスラン・ザラ?って付いてる方だと思う」
「…?が付いてない方が、本物のアスランさんという事でしょうね。結果的にあのアスランさんが言ってた通りになってしまっているとは…」
「それで、僕の名前が2つ…それもアスラン2人みたいに離れてる訳でもないんです」
「…たしかキラくんは少尉…でしたっけ」
「はい、連合に居た頃は一応少尉でした。死にかけた時、MIA…作戦行動中行方不明になってたらしいから、2階級特進扱いになってるかもしれないけど…それなら准将なんて階級になるのはおかしい」
「…名簿の順番を考えると…キラくんの間にイザークさん、ディアッカさん、ニコルさん、その後キラ・ヤマト准将に、本物のアスランさんにラクスさんって並びになる訳で」
「アスランやラクスがキラ・ヤマト准将の後ろで、僕の知らないアスランは…僕の知ってるアスランより年上に見えました。
僕の気のせいかもしれないし、何処まで、彼の言ってる事を真実としていいかはわからないけど…それを考えたら、准将は……未来の僕だったりするのかもしれません」
「…そんなことが…と言いたいですが、そもそも消える筈だった私がこうなっている時点で、何が起きてもおかしくはないですね」
(…現世の私か、隠世と現世で分たれる前の私なら…信じなさそうですけども)
隠世の存在であり、本来諸共に消え行く所だった篝がここにこうして存在を保ってられる時点で、大概異常と言えるだろう。故に本来生真面目な篝でも、不思議と今目前に居るキラ以外にももうひとりキラが居る可能性を信じられた。
「…別の時代のキラくんをわざわざあのクルーゼと茅場が、今居るキラくんと一緒に選んだとしたら…意図が読めないですね」
「…准将って載ってる方の僕と今の僕自身で、何か差別化出来る事があるのかも。例えば…准将の方が殺し合いに乗りうる何かを経験した、とか」
(…先程の話からして、そういう意味だと今のキラくん自体、大概だと思いますけどね…)
「…もしそうなら、止めないと」
「はい。例え未来の僕が相手でも、殺し合いに乗ってるのなら…止めます」
決意を新たにしつつ、キラは他の知り合いについても話す。
「ラクスは自分の身も顧みず、僕に戦う為の、守る為の力を託してくれた恩人で…僕を支えてくれた人です。
ディアッカは…元々敵同士だったけど、味方になってくれて、イザークは……守ろうとした人達を、僕の目の前で……でも、最後のヤキン・ドゥーエの戦いでは、ディアッカ達に加勢してくれたと聞きました。
……そして、ニコルって人は…僕が、っ…僕が…殺してしまった……はずの……」
「…それ以上は、無理に言わなくていいんですよキラくん」
「…すみません、柊さん。…どうしても…思い出してしまって…」
簡潔に述べつつ、イザークの事を話す際何かを思い出すかのように辛そうな表情を浮かべ、ニコルの事になると今にも泣き出しそうな表情になっていたキラに、そっと諭すかのように篝は語りかけた。キラが話を止め悲しみに飲まれず済んだのに一安心し、篝は話を再開させる。
「…死んだ筈のニコルさんがこの場に…私のように終わる直前から呼び出したのか、それとも…」
「…主催の手によって生き返らせられたかもしれないって、事ですか?」
「その可能性もあり得そうだと、私は考えています…。
…蘇生した上で巻き込ませた上で、他の参加者達と接触させるようにしておけば、最初羂索が言っていた理想を叶える権利云々の話の信憑性が上がり、殺し合いに乗る参加者が増えるかもしれませんし。
…そのニコルさんという方にもし出会ったら、キラくんはどうしたいんですか?」
推論しながらも、篝はキラに問いかける。
暫し考え込んだ後、キラは口を開いた。
「…もし、彼に会ったら……謝りたい。戦争だから仕方ない、なんて…済ませちゃダメだと思うから。
その上で、殺し合いに乗ってたら…僕が止めたいとも、思ってます」
「分かりました。ですが…"僕が"ではなく"僕達が"…でしょう?そうなったら当然、私も協力しますから。
…言いましたよね?共に戦いましょう、と」
「そうでしたね…ありがとう、ございます…柊さん」
暗に背負い込まないよう篝に諭され、キラはそれを受け入れる。
そして知り合い以外の部分の名簿にも目を向けたキラはある事に気付いた。
「…僕やアスランとは違って、下の名前が同じ物が2つ、名簿に並んでる人が居ます。
「ギラ・ハスティー」に「宇蟲王ギラ」、「遊城十代」に「覇王十代」…」
「名簿の並びに意味があるとすれば、キラくんのように同一人物…とまでは断定出来なくても、関係者の可能性が高いとは思いますね。
…一ノ瀬宝太郎さんが「仮面ライダーガッチャード」名義になってる上に、本名で表記されてないプレイヤーも多いとクルーゼが言っていたのもあって、本名かは怪しいところですが」
(…ますます意図が読めない。何を考えて、あの人たち(クルーゼと茅場)はこの面々とこの表記に…?)
名簿にて隣り合う2人のギラに2人の十代、名前ではなくライダー名で表記された一ノ瀬宝太郎に疑問を抱き考え込んでいたキラ。
一方、今度は篝がある事に気付く。
「…ここを見てくださいキラくん、先程あの羂索が肉体として使っていると言っていた身体…梔子ユメの名前があります」
「…さっき放送で、あの人(クルーゼ)が羂索は諸事情があって出演出来ないと言ってた…もしかして、主催をしながら自分も参加者として…?」
「その可能性もあり得ますね。ただそれなら、名簿の表記が本名である羂索や、かつて使ったと言っていた加茂憲倫になってもおかしくはない…んですが…」
「…そこで宝太郎さんがガッチャード表記な事や、あの人(クルーゼ)の言った事が不安要素になる、と」
「偽ってる可能性を捨て切れないので……仮に参加者として名簿に書かれている梔子ユメが羂索だとすれば、頭の縫い目があるか否かで区別は簡単ではあるんですけれど…隠そうとしない訳もない」
「…出会ってみなければわからない以上、疑念を捨て切れない…それがあの人たちの狙いなのかも」
「…梔子ユメさんについては一旦保留にしましょう。ただ…名簿の並びで彼女の付近に居て、下の名前が漢字じゃなくカタカナ表記という共通項がある小鳥遊ホシノさんから聖園ミカさんまでは彼女の知り合いの可能性がありそうなので…出会ったら聞いてみるのが良さそうですね」
「聖園ミカって人の下に居る先生って人は…?」
「アンクという方同様、周辺の方と比べて名前が浮いているのがネックになります」
推測を重ねる2人であったが、あくまで確定した情報ではなく仮定に過ぎず、行き詰りを感じる。
2人とも少なくとも短絡的ではないお陰で、様々な推論は出来る。しかしそれ故、浮かぶ推論を確定した物へ変える事へ二の足を踏んでしまい、とりあえず一旦考えを止めるしか、確定させれない状況から抜け出せずにいた。
そもそもここまでの両名の名簿についての考えは、放送でクルーゼの言った事が真実だという前提ありきである。嘘であった場合、その時点で何もかもが瓦解する以上、それを考慮せずには居られないのであった。
「…ところで柊さん、柊さん以外にも名簿に柊性の人が2人…どちらも名前からして女の人みたいですが…知り合いなんです?」
「…いえ、うてなさんと真昼さん…どちらも聞いた事は無いですね。…先の名簿の順番の意味を考えると、おそらく名字が同じだけの無関係だと思います」
「そうなんですか…」
「もっとも、あのラウ・ル・クルーゼが嘘を吐いてた場合だと、これまでの色々な前提が崩壊するんですけどね…。
…それとキラくん、これからは私の事は下の名前で呼んでくれませんか?」
「えっ?…どうしてです?」
「柊性が私以外にも2人居る以上、名字呼びだとややこしくなりそうですし…」
「…わかり、ました…えっと、篝…さん」
(…この呼び方だとどうしても妹の…カガリの事が浮かぶ。…慣れれるのかな…僕は)
(私と同じ名前の、妹の事が浮かんでいるんでしょうか…)
目前の年上の少女と同じ名前の読みを持つ、殺し合いに巻き込まれていない姉ぶってくる妹の事を浮かべながらも、キラは篝の頼みを聞き入れる。
「ありがとうございます、聞いてくれて。
…一先ず、互いの知り合いを…特に?が付いてる方に狙われている本物のアスランさんと、姫和や可奈美さんを探しましょうか。
…先程の、もうひとりの准将の方のキラくんが違う時代から巻き込まれた可能性を考えると…ひとりしか名簿に居ないとはいえ、私やキラくんと同じ時間から巻き込まれているとは限らないので、盲信は出来ませんが」
「さっき…篝、さんが言ってたその御刀って物の持ち主、可奈美さんについての説明文が気がかりなんです?」
「…はい。私の知っている可奈美さんは、姫和と一緒に現世へ帰還出来た…筈で。
なのにこんな、出奔したなんて書かれてる文を付属させたのには何かあるんじゃないかと」
「…その辺りは僕も不安はあります。
僕の知ってる方のアスランが、僕を殺して…仇を、討とうとしてる時から巻き込まれてたり、ディアッカやイザークが、敵の時から巻き込まれてるかも…って。
でも…例えそうだとしても、出来る限り僕は…殺さずに済む道を、諦めたくない」
『君が僕の知ってるアスランや、柊さんを殺すって云うのなら…僕が、君を討つ…!!』
「…あの人(クルーゼ)や、僕の知らない方のアスランみたいに、他にどうしようも無いのなら…覚悟はある。…あの時、決めたから」
先程の見知らぬ方のアスランの襲撃時、彼を討つと宣言した事を思い返しつつ、そうキラは改めて…決意を固めた。
対し篝は悲しげに、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
(…キラくんのような、既に十分つらい思いをして…心の傷も癒えきってない人に…本物でないとはいえ友達を殺してでも止めるなんて、酷な決意をさせて……不甲斐なさで胸が押し潰されそうになります。
…せめて、彼ひとりに背負わせるなんて事は、させちゃいけない…させない…!)
「…あなたひとりに、背負わせませんよ。キラくん」
優しさ故に自分ひとりで抱え込み、心配をかけさせまいと苦しみを、悲しみを堪えてしまうタイプだろう彼だけに、手を汚させるつもりは篝にはなかった。そんな事、出来る訳が無かった。
故に真っ直ぐ見据えた上で、篝はそうキラへと告げる。
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』
──その時だった。付近の民家から、羂索や堀北鈴音に異能を行使した青年、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの音声が流れ初めたのは。
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民家の中へ入り、ルルーシュの演説をTV越しに聞き終えたキラと篝。
「…篝、さん。あの人の…ルルーシュの言葉を聞いてどう思いましたか?」
「……率直に言わせて貰うと、傲慢で横暴にも程があると、思いました。
いくら主催者に反抗しようとしているとはいえ、あんな内容…!…少なくとも私は、賛同する気には一切なれません」
「…彼の語った通りだと、主張と要求はこうなります。
・今からこのバトルロワイヤル…殺し合いを羂索達主催に変わって支配する。
・他参加者に求めるのは服従か反逆の2択。
・服従するのなら証としてレジスターのサンプル、ゼアの身柄、シュナイゼルに与する騎士や黒の騎士団の団員や仮面ライダーの首を持ってくること。
・以上の物を持ってきた者には褒美を与える。
・会場内のテレビ局にて自分と綾小路は待っている。
それと、堀北って人の喋り方とかを変えさせたあの能力は…少なくとも通信越しじゃ使えないと思います。使えてたら僕も篝…さんも、術中にかかってそうですから。
…名簿にはゼアやシュナイゼルなんて記載は無かったとはいえ、さっき話した通り本名が載ってない可能性もあるからとりあえずこの2つは置いておくとして。
文言からすると、殺し合いに乗ってないのは明らかな宝太郎さんの首まであの人は狙ってる。その時点で僕も…彼に賛同する気にはなれない。
わざわざあんな放送を、居場所を晒す形でした以上…考えがあっての事、だろうけど」
「…確かに、打って出るだけの何かを持っての行動とはわかりますが…」
「…いくら殺し合いに抗うつもりとはいえ、確実に殺し合いに乗らないのが目に見えてる相手まで踏み台にしようと見境無しに命を狙わせる…そんなの、篝さんが言う通り…傲慢だよ」
篝もキラも、主催者に勝るとも劣らない傲慢っぷりを見せつけたルルーシュに従うつもりは毛頭なく。
「それに、ライダーに変身出来る相手は皆対象だとするなら…宝太郎さんだけでなく姫和さんや可奈美さん、それに僕が知ってる方のアスランとの合流も尚更急いだ方がいいと思います。
…言い方から考えると、仮面ライダー…っての変身アイテムがある人は、皆命を狙われる対象になるだろうから」
「そうですね…急いで探しに行きましょう、キラくん」
結論を纏め、大切な相手や顔見知り、それに一ノ瀬宝太郎ら主催に抗おうとする仮面ライダーとの合流を最優先とする事とした2人。
地図にて付近にある建物である天ノ川学園高校に、他参加者が集まってないか、中に何か無いのかを調べに行く事となった。
…そして学園が目前に見えており、先程何処ぞの参加者のせいで崩壊した体育館が視界に入りそうな段階で──2人の耳元に聴こえてきたのは、不穏さを感じさせられ警戒心を掻き立てられる歪なメロディー。
「キラくん!避けてっ…!」
「はい…此処で敵襲だなんて!」
直後、キラと篝が咄嗟に離れた箇所をエネルギー刃が通り抜けた。そのまま刃は進み学園にダメージを与える。
「へぇー…2人共今のを避けるんだ」
「…警戒しての一撃…と言うには、随分と殺意の高い攻撃のようですが」
「…殺し合いに乗ってるのか、君は…?」
「─…うん、そうだよ。わかりやすく簡単に言うと、悪役の魔女登場☆って…ところかな!」
どうにか回避した2人を見据えた、頭の上に何か輪のような物を浮かべ、白き翼を生やしたピンク髪の少女はそう言いながら──先程まで剣として使っていた武器をブーメランとし、それをキラめがけて超スピードで投擲した!
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「…ナギちゃんもセイアちゃんも…錠前サオリどころかアリウススクワッドすら誰ひとりいない。
…よりにもよって知り合いが…先生だけなんて」
ひたすらに己が魔笛の効力を以て、我が道を行きつつ過程で遭遇したNPCの内、生物型の物を操る事による同士討ちをさせ屍を造り続けていた少女聖園ミカは名簿を確認したのち、呟く。
『“もちろん、ミカの味方でもあるよ。”』
脳裏に浮かぶはかつて言われた、嬉しかった言葉。
…これならいっそ、先生すら居らず誰も知り合いが居ない方が良かったと思うも、ミカは改めて方針を決めた。
「あのアビドスの人…の身体使ってる羂索は確か、『本来異能力や異形の存在しない世界の者たち』とか言ってたっけ。なら優勝して私が元居た世界に戻って、それで錠前サオリに突きつけてやるじゃんね☆。
…あなたのせいで、みんな死んだんだって。安穏に過ごす資格はあなたにも私にもないんだって…じゃなきゃ、不公平でしょ」
自分の味方でもあると言ってくれた先生を殺めなければいけない事に対し、未だに胸の内に痛みと迷いと罪悪感を感じながらも…それでも抱いている煮え滾った復讐心を止めるには至らない。復讐の為全てを踏み躙る魔女で在ると、在らねばならないと聖園ミカは決めてしまっている。
故に引き続き魔女らしく優勝を狙う方針は変わらず、他参加者を探し、付近の建物である天ノ川学園高校に集まっている…もしくは確認しに行く可能性を考え向かうと決めた。
「…『理想を叶える権利かけて』、かぁ」
先の羂索が言っていた事を改めて脳裏に浮かべる。
…優勝を目指す以上、果たせた場合に叶える理想について考えた際、己の罪を、裏切りを無かった事にするという思いがミカの頭に浮かばなかったと言えば嘘であり。しかし…ミカの中での結論はやはり変わらない。
「…それこそ、不公平で不平等だよね。復讐の意味が無くなっちゃうし☆」
復讐を掲げた手前その原動力と、動機となる自分の罪を無かった事にして、逃げるなんて選択は…聖園ミカには出来なかった。おどけてみせるも、もし目視したものがいればその顔の笑みが張り付いたかのように見えるだろう。
望みはその時考えると保留にしたそんな最中、ミカはルルーシュの放送を聞く事となった。
「…とりあえず、出来てるならそういう風に命じそうなのにしなかった辺り…あの堀北ちゃんって子の喋り方とかを変えた力は放送とか映像越しじゃ、無理そうかなぁ」
演説を聞き終えたミカは呟くと、ルルーシュの述べた内容について考える。
(まず、あの放送によって…ルルーシュに付く人達と付かない人達に二分されるよね。
付く人達の内訳は庇護を求める人に利用しようと考える人、打倒のために手段を選ばない人に元々ルルーシュの仲間だった人、敢えてルルーシュを討つか止める為に入り込む人も…居そうかな。内部分裂が起きないとも限らなさそう。
…それで付かない人達の内訳は、優勝狙いの悪い子に、首を要求されてる宝太郎くん達仮面ライダー、同じく首を要求されてる黒の騎士団?って人達にシュナイゼル?って人に仕えてる騎士達、後は話の通じない人達に、首を要求とかそういうやり方が気に食わない良い子達、単純にルルーシュが気に食わない人に人の下に付かない上に立ってるタイプの人、漁夫の利を得ようと静観に回る人達…って所だと思う。
付かない人達はルルーシュに抗い殺し合いにも抗うってのと、ルルーシュには与さないけど殺し合いには乗るの大体二通りに分かれそうで…多分それが彼の狙い…かなあ。
自分達を捨て石として、対抗勢力を纏めるのを推し進めながら、羂索達主催者を打倒するに値するのかを見極め選別する…的な?)
「序盤もいい所なこんな早いタイミングで放送出来たのも大きそうだけど、ルルーシュって人もなかなかやるじゃんね」
内心でルルーシュの真意について考察したミカは、感心したかのように言う。
性格上政治の類には向いてない上、あんまり頭が良いわけじゃないと自負しているが…実際は頭が回らない訳ではなく寧ろ回る方なのと、ルルーシュが自分と同じ『悪い子』だと直感的に判断したのもあり、自分ならどうするかという思考で推測した事で、確定こそさせていないが彼の真意にかなり近付きつつあった。
「…まあ、私はあなたに付く気は一切無いんだけどさ☆」
その上でミカはそう言ってのける。
そもそも優勝を狙っているのも理由としてはあるのだが…何より、聖園ミカという少女は先の殺し合いの宣言の際の振る舞いと今回での演説から、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという青年は自分にとっては気に食わず合わない相手だと判断したからだ。例え自分が殺し合いに反抗する側だとしても、その結論は変わらなかっただろう。
良くも悪くもわがままかつ感情的で不安定な性格、彼女が政治の類に向いてない所以である。
「…放送聞いた人達は、まあ合流を急ぐ人が多そうだよね。なら行き先は変わらないや」
歪な悪のキリエのメロディーを垂れ流し響かせながら、向かう先は天ノ川学園高校から変わらず。そんな中…ここにきて他参加者をようやくミカは見つけた。
どちらもキヴォトス人ではなく、片方は自分と同じくらいか少し幼い少年、もう片方は自分と同じくらいの少女。どちらも制服らしき服装だ。
(ようやく他の参加者を見つけれた、じゃ早速…やってみようかなっと!)
そのままミカは、フルートバスターでキリエを奏でるのをやめ、剣状態へと変えた上で小手調べとばかりにエネルギーの斬撃波を放つ。
…結果は斬撃波に気付いた少女により、少年も斬撃波を回避。奇襲に失敗した為に、ミカは2人と対峙…直接戦闘を行う事になり…ブーメランにしたフルートバスターを少年目掛けてミカは投擲する。
(先に気付いた、少しアズサちゃんに似た声の子より…キラくんって呼ばれてた、言われて避けた男の子の方を狙ってみよっか)
男の子の方単体なら避けれないよね?と言わんばかりの投擲攻撃だったが…少年へと届く寸前、ミカと少女には一瞬ブーメランの勢いが弱まったのが見えた。
「疾風(シュトゥルム)っ!これなら…!」
呟くや否や、少年は懐から鍵を取り出し展開。──少年はモビルスーツ、イモータルジャスティスをパワードスーツとしてその身に纏い、シールドによってブーメランの一撃を受け止め切った。
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少年ことキラがブーメランの勢いを弱めれたのは、習得したソードスキル:疾風(シュトゥルム)による物。
黒い悪魔と称されたある魔女(ウィッチ)の、応用性の高い固有魔法により攻撃の勢いを殺そうとしまた隙を作り起動鍵を再び使用したのだ。
ニセモノのアスラン戦では時間的猶予の都合起動鍵を取り出すので手一杯だった為、習得も使用も出来なかったスキルを、先程の支給品確認の際覚えた形となる。
「それが羂索の言ってた、パワードスーツに落とし込まれた…ってやつだね☆形的に…モビルスーツかなっ!」
「…君はモビルスーツを知ってるのか!?」
「どうかなぁ、ただの勘…当てずっぽうかもしれないよ?」
懐をほんの一瞬だけ一瞥した後、ミカはフルートバスターを剣形態へと再び変え振りかぶって斬撃波を放った。
対しキラはシールドによりこれを受けながら進みビームサーベル代わりにしたヴィーゼルナーゲル ビームブーメランで斬りかかり、会話を交わしつつミカと斬り合いとなる。
(っ…剣が…重い…力強いのか、この子は!)
(落とし込む前のモビルスーツのパイロット…って所かな?慣れてそうな動きの中に、どこかぎこちなさみたいなのがあるね…そこを突いて…)
「私も忘れて貰っては…困りますよ!」
「忘れてるわけないじゃんね☆」
推測をしつつ剣を振るった経験こそ無くとも、身体能力と筋力任せの重たい一撃を何度も見舞うミカ。対し食い下がるキラだが、重たさとそこから来る衝撃に防戦に回らざるを得ない…といった所で加勢に入るのは御刀・千鳥を持った篝。
奇襲する形となったものの、見越していたのかミカは対応し防御してみせた。
(素人の振り方、流派も何もあったものじゃないのに…力任せでこれですか…!)
「そっちの男の子の方よりは、戦い慣れてるって感じするじゃん…!」
「かつて折神家に仕えた、神薙ぎの刃…それが私なので」
「ふーん?…大層な通り名だねっ」
「篝さんっ…させ、るかぁっ!」
「わーお、随分足癖が悪いじゃん☆」
「っ、ぐぅ…!」
(VPS装甲があるのに、こんなに衝撃が伝わってくる…!)
「へぇ〜、名簿の柊篝って、あなただったんだね」
(で、この子が2人名簿に載ってたキラ・ヤマトのどちらかって感じかぁ)
内心驚く篝を他所に、余裕を持ち見せながら2対1でも互角にやりあって見せるミカ。
篝を庇う為カルキトラビーム重斬脚による蹴りを見舞ったキラに対し、ミカはフルートバスターで受け止めた上で、装甲めがけて拳を振りかぶりぶち当てた。
VPS装甲によりダメージ自体は防ぐも、伝わって来た衝撃と痛そうにする素振りを見せないミカにキラは驚愕を隠せない。
「…どうして、君は…君は一体…!」
「あー…そういや名乗って無かったね、篝ちゃんにキラくん。
今際の際だし名乗ってあげる、私は聖園ミカ。復讐の為にこの殺し合いに乗った魔女で…2人を殺す相手だよ☆」
「っ…魔女…だって…?」
(ミカは僕が覚えた、ソードスキルの魔法の持ち主と同じ世界出身…?)
「…復讐の為…なら何故、殺し合いに乗っているんですか?ミカさん…!」
キラの疑問に対し、ブーメラン型へと変形させたフルートバスターを投擲しながらあっけらかんとミカは言ってのける。
それをキラがフラッシュエッジ4 シールドブーメランで迎撃する間、今度は篝が問いかける。
復讐が動機、かつ話自体は聞いた上で答えている姿勢からして…少なくともあの何もかもが自己完結しきったニセモノのアスラン・ザラよりはまだ対話の余地があるとの判断故であった。
「なんでって…復讐したい相手がこの場に居ないから、まずは生き残らなきゃだし」
「…生き残りたいだけなら、殺し合いに乗る以外にもっ…道は在る筈だ!なのに君は…!」
「単に復讐したいだけじゃないよ、復讐相手に突き付けなくちゃ…私にもあなたにも安穏と過ごす資格なんてないんだって、全部あなたのせいなんだって…!!だから……だからね、全員殺さなきゃ、ダメなんだよ」
「…ミカさん、貴女は…!」
「…ちょっとお喋りが過ぎたかな、じゃそろそろ…終わらせよっか」
ブーメラン同士が激突し、膠着の末互いの元へと帰ってくる最中。
憎悪に溢れた声をミカは零す。しかしキラと篝には、恨みの中に何処か躊躇を抱えたような、そして自分に言い聞かせてるような風に聞こえた。
そんな中、ミカはお喋りはここでおしまい☆と言わんばかりに、フルートバスターに獣電池を装填。必殺技たる魔楽章デーボスフィニッシュを発動させて、トバスピノの頭部を模したような邪悪なエネルギー弾を二人めがけて打ち出す。
「キラくん…!」
「くっ…疾風(シュトゥルム)!」
咄嗟にキラはソードスキルにより風を発生・操作。風の刃を生成してぶつけ威力を殺しにかかる…も、減衰こそすれどエネルギー弾を雲散させるには至らなかった為、シールドブーメランを盾として使い受け止めにかかる。
その間を縫って、迅移で加速し御刀による突きの一撃を篝は放った。
(作ってくれた隙を、逃すわけには……この、手応えは…!?)
「うーん…数秒遅かったかな☆」
一撃は届かなかった。魔楽章デーボスフィニッシュを陽動とし、その間に自らに支給されていた起動鍵をミカは使用。狼の王の名を冠するモビルスーツをパワードスーツとして纏ったからだ。
「ガンダムバルバトスルプスレクス。聖園ミカ、魔女らしく荒れるよー、止めてみれば?☆」
「ガンダム…!?…その機体も、ガンダムなのか…!?」
御刀の一撃を受け止めたのは超大型メイス。そこからミカは振り下ろし、篝に御刀を引っ込めさせ避ける以外の選択肢を無くさせた。
篝が回避する中、ガンダム呼称に驚きつつイモータルジャスティスをモビルスーツと見抜いたのが、起動鍵により存在を知っていたからだと気付いたキラ。
先の一撃を少なからずダメージを受けつつもどうにか防ぎ切った上で、高エネルギービームライフルを放つ、対しミカは避けようともせずに…。
「そうみたい。…あはっ、ビームは余程高出力じゃなきゃ効かないよ☆掠り傷にもならないねっ…!」
言葉通り、掠り傷ひとつ付かず避けようともしない。そしてミカは…尾を、テイルブレードを行使した。
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「キラくんのモビルスーツは随分硬いじゃんね☆でもいつまで保つかなぁ」
「君も大概だろ、っ…せめてフリーダムみたいに、レールガンがあれば…!!」
戦況はルプスレクスがナノラミネートアーマーによりビームを減衰させれるのと、イモータルジャスティスのVPS装甲がエネルギーを消費する装甲なのと、武装がビーム寄りなのもあり、キラと篝2人がかりにも関わらずミカひとりに押されつつあった。
「篝さん!」
「わかっています、キラくん…彼女はここで、なんとしてでも…!」
「はい…止めないと、僕や…アスランみたいになる前に…!」
遠距離からはテイルブレードによる無軌道で予測困難な攻撃を、中近距離からは両腕のレクスネイルに腕部200mm砲、ヒールバンカーやメイスに格闘攻撃を放つミカ、対してVPS装甲を活かし主にキラが防御、篝は回避に徹する。その最中、先程ミカが告げた殺し合いに乗った動機…復讐の為皆殺しから生還を果たすという物に、両者は止めるという決意を抱いた。
『お前がニコルを!!!ニコルを殺したぁぁあ!!!』
『よくもトールを!!!』
『アァァスラァァン!!!!』
『キラァァァァ!!!!』
キラからすれば、目前の少女はかつてニコルを誤って殺してしまった時のアスランや、そのアスランにトールを殺された時の自らのように憎しみに囚われてしまっているように思えた。
その経験もあり復讐自体を否定する気は無いが、無関係な相手まで巻き込むやり方を見過ごす事は出来ない。それにただでさえ危ういのに、このまま誰かを殺させてしまえば、後戻り出来なくなってしまうかもしれないと…そうさせてはいけないんだという想いから、なんとしてでもこの場で止めるとキラは決意する。
一方篝からすれば、かつて自分の仇を討つ為折神紫とその中に憑依していたタギツヒメを殺そうとしていた我が子である姫和の件もあり、復讐を否定するつもりは無かった。
…しかしだからこそ、復讐に取り憑かれ取り返しのつかない方向へ進んでいる彼女を放って置く事は出来ない。
何か違えば姫和もそうなってしまっていたかもしれないと思ったからこそ、破滅へ突き進んでいる彼女を止めなければならないと篝は決めたのであった。
「…諦めて殺されてくれる……ってわけでもなさそうだね」
それと同時に、2人の眼からハイライトが消失する。ここで力付くでもミカを止めるという強い感情…想いにより、SEEDが発動した。
一瞬ミカは戸惑うも、パワードスーツとしてモビルスーツを纏っているキラは兎も角、篝の赤眼から光が消えた事、そしてその途端2人の動きが良くなり始めた所から何かしらの能力による物と把握、それが自分を止めるという強い想いから発動した物だとは気付かぬまま…迎撃へと移る。
サーベル代わりのブーメランで斬りかかるキラに、ビームは余程出力高くないと効かないってさっき言ったでしょ?と言わんばかりにミカはレクスメイルをイモータルジャスティスにぶつけ刺そうと試みた。だがこれを迅移を使い加速した篝がインターセプト、八幡力を行使し千鳥で防ぐ。
金属同士がぶつかる鈍い音を響かせ、火花が散る中…隙を縫ったキラはバルバトスルプスレクスめがけてブーメランで斬りかかった。
「さっきも言ったよね?ビームは効かな……えっ?」
「ビームだけなら、そうだけどっ…今の僕にはこの力があるんだ!」
効かない以上避ける必要も無いとして受けたミカだったが、伝わってくるのは接触の感触だけではなく…痛みである。
ソードスキル:疾風(シュトゥルム)を応用し、ブーメランの周囲に風を纏わせた上で斬りつける事で多少ながらダメージを与える事が出来たというわけだ。
元の使い手であるエーリカ・ハルトマンは意識を集中させる事でカマイタチのような風の斬撃を対象に見舞う事が出来た。SEEDの発動により集中力が上昇したのもあり、キラも同じようにブーメランの周囲に意識を集中した結果この芸当が可能となったのである。
(風の魔法…って感じかな?私より魔女っぽい事するなんて…やってくれるじゃん。
…でも、ここまで使わなかったのにこのタイミングでって事は…)
「…キラくんのそれ、頻発出来ない何かがあるんでしょ?同じ手はそう食わないよ〜☆」
それでも直ぐ様、ミカは頭を回し推測した上でカマをかけた。
だがキラは答えず今度は風による加速を行いながら、機関砲で近距離攻撃を行う。
ミカはそれを紙一重で避け或いは装甲で受けた上で、またもやテイルブレードを振り刺突しようと試みた……その時だった。
「…すっかりキラくんに気を取られてましたね、ミカさん!」
「…そうみたい、だね。気付かなかったよ篝ちゃん、いつの間にか服まで変えちゃってさ☆」
二段階の迅移による加速をしながら篝が、御刀である千鳥による一撃をミカに加えんとする。その服装はさながら巫女の装束のような物へと変わっていた。
咄嗟に対応しようとするミカだが、不意を打たれたのもあって間に合わず…ダメージを負ってしまう。
「なんとしてでも、貴女はここで止めます!」
篝の服装が変わったのは、支給されていた起動鍵…に落とし込まれていた祭祀礼装・禊を使用したからだ。
この殺し合いでは着た者の能力が1.2倍になるようになっているものの、常時展開しておけばいいのでは?となるのを避ける為のバランス調整からか、使用後解除されると1時間使用不能になるという枷が付けられていた。
しかしそのデメリットを承知の上で、篝はミカを止める為ここで使用に踏み切ったのである。
「篝ちゃんもキラくんも、本気みたいだね。じゃあ私も…ちょっと気合い、入れ直させてもらうから☆」
戦況が不利になりつつあると悟ったミカはここまで使ってきたルプスレクスの武装だけではなく、ブーメランへと変形させたフルートバスターを投擲し、同時にテイルブレードを操作しながら自らもメイスを振り回す。
対し篝は、フルートバスターを千鳥で切り払わんとしまたキラはテイルブレードをシールドで受けつつ、シールドをブーメランとして射出。メイスを振るうミカにぶつけた上で先程やったように疾風をビームブーメランに纏わせ斬りかかる。
最もミカもそれは想定済みで、ダメージを負いつつブーメランを耐え、メイスをビームブーメランと打合わせた。
ミカの筋力・身体能力、更にルプスレクスの性能もありキラは押されるも…引かない。そのまま数撃を交わした上で──彼は問いかける。
「…君は、君は本当に悪役なの?」
「──えっ。…言ったでしょ、最初に襲った時に悪役の魔女登場って。聞こえてなかったのかな?」
「聞いてたよ。…ミカ、君が魔女かどうかは…わからないけど、でも…最初からこんなにやれるなら、君なら僕も篝さんも殺せた筈だ」
「…へぇー、それで?」
武器を打合い、ミカの方はテイルブレードを篝の迎撃に使いながらも…2人は会話を交わしていた。
「…乗ってる動機を話してくれた時、皆殺ししなきゃダメだって時に…言い淀んでただろ。
それに、起動鍵を使った時も…止めてみればって…君は本当は…!!」
「……何も知らないくせにさ、わかったようなこと…言わないでよキラくん。
…大切なものを全部奪われて、悪党の人殺しに成り下がった私の事なんて、あなたにわかるわけがないんだから…!!
──うしなったことがないから!!だからあなたは…わかったようなことが言えるんだよ!!取り返しなんてもう、つかないのに!!」
説得を試みたキラだが、返って来たのは拒絶と怒り。このまま手詰りか…否、彼はひとりでは無い。
「…ミカさんが、何をしてそうなったかは私には…わかりませんが。…悪党かは兎も角、人殺しという点では…私もキラくんも、経験はあります。
…荒魂化してしまった人間は、人格や記憶が消え去って変質してしまうか、残っていたとしても…救うには諸共に斬って祓うしか、無いんです。
これ以上被害を出させない為、刀使として神薙の刃として──何回も、何度も私は斬って。…人殺しと、罵られた事も一度や二度ではありません。実際、どうであれ命を奪ったのは……事実ですから」
「そしてキラくんは…コーディネイター、遺伝子操作という技術を受けて生まれて来た子でありながら…友達の為、そうでないナチュラルの側に付かされ戦争で戦ってきました。
味方には疎まれ裏切り者のコーディネイターだからと言われ、守ろうとしたものを…何度も失って、目の前で奪われて……それでも、彼は……!」
(…あなたも、裏切り者で、糾弾される側…だったんだ…)
裏切り者という言葉が耳に入り、思わずミカはメイスを振るう手が震え、またテイルブレードの勢いも落ちる。
(…やっぱりさっきの、?が付いてる方のアスランさんとは違って…対話の余地はあるとみてよさそうですね)
「…やっぱり、僕には君が…魔女ってのや、悪役には見えないよ。ミカ。そしてごめん。何も知らないのに、分かったように言って。
…まずは君の事情を、聞かせて欲しい。…知らないからこそ、知って…その上で、理解したいんだ」
「──なに、それ。……もう、手遅れだよ。間に合わないよ。救われていいわけが…ない…私がバカだったから、あの女(錠前サオリ)にっ…利用されて…みんな傷ついて……裏切りの魔女にそんな資格があるわけないよ、わたしに…あるわけっ…!!」
篝とキラの言葉を聞き、感情を揺さぶられるミカ。良くも悪くも感情的になりやすいが為の動揺であった。
心の何処かで微かに抱いていた、救いと赦しを求める思いと…今更もう戻れない、止まっちゃいけないという思いがぶつかり、内心の吐露を彼女は抑えきれずにいた。
「騒がしいから来てみれば、ルルーシュといい君達といい…この殺し合いに呼ばれたのは傲慢な人間ばかりなのかい?
人殺しに救われる権利なんて無いんだよ。そしてその罪は…救世主たる僕が裁く!」
そんな時だった──校舎の入口から現れた少年が、引き連れ空中に浮遊させた大量の剣をキラ達目掛けて降り注がせたのは。
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クルーゼの放送とルルーシュの放送を経た上で、校舎内のNPCを片っ端から殺害しソードスキルにより剣に変えながら探索をし終えた所外で聞こえた戦闘音に反応し、リボンズ・アルマークはそこへと向かう。
結果3人の参加者が居た為に剣による迎撃を開始。自らも起動鍵でダブルオークアンタフルセイバーへと変じた。
その上でGNソードVを振るい、ソードビットによる攻撃を放つ。
「傲慢なのはあなたの方だ!」
「…救世主を自称する貴方の方が、大概傲慢そうに見えますが…!」
「…わ〜お、剣の雨霰じゃんね☆…なんて、言ってる場合じゃなさそうかな」
各々そうリアクションを取りつつも、降り注ぐ剣やソードビットに対応。結果ミカはキラと篝との共闘を選ぶ事となった。
とはいえリボンズが行使するのは直線的な剣の軌道の中に、降り混ざっているのは自在に動く上にビームも放つソードビット。
剣自体はVPS装甲のあるイモータルジャスティスを纏ったキラが、ビームはナノラミネートアーマーのあるバルバトスルプスレクスを纏ったミカが減衰出来るものの…リボンズ自身もGNソードVやフルセイバーを振るって攻撃を加えてくるのもあって、3人は消耗もあり苦戦を強いられていた。
「中々派手にやってるみたいだな、なら全員纏めて…地獄に行かせてやるよ!」
「また新手ですか…!?」
「あの人(リボンズ)だけで手一杯だって言うのに…!」
「…えっ、あれって…私が倒したNPC…!?」
そんな中、またもや闖入者が現れた。
黒ジャケットの男は、何処かしら欠け、また斃れていなくてはおかしいはずの傷があるNPC達を背後にしながら変身を遂げる。
「いきなり誰だい?君は」
「俺か?俺の名は仮面ライダーエターナル、さあ…地獄を楽しみな!」
黒いローブに白い身体の、仮面ライダーエターナルと名乗った男…大道克己は、NPC達が無差別に参加者に襲いかかる様を横目にしながら、変身と同時に現れたエターナルエッジを手に取りリボンズ目掛けて斬りかかる。
「あのNPC達は君の能力で従えた物かな?随分と多いようだけど…僕の剣と君の配下、併せれば残りの3人は殺せるんじゃないかい?」
「ハッ、白々しいな。大方あの3人を殺したら背後から殺しにかかる…辺りが狙いなんだろ?」
「人間風情の割にはよくわかってるじゃないか」
「俺は人間じゃない、NEVER…死人だ」
「死体人形というわけだね」
キラや篝、ミカが支配下のNPC達とリボンズの剣の相手で手一杯な中、イノベイドとNEVER…2人の人ならざるものは激突する。
エターナルエッジによる斬撃に対し、リボンズはキラ達に向けていたソードビットを全てエターナルに集中させつつ、ガンブレイドやカタールを投擲しフルセイバーにより迎え撃ち剣戟が巻き起こる。
身体能力差でエターナルが優勢かと思いきや、差し向けていた剣までもエターナル相手に惜しみなく使用して行き、折れた側から破片をビームとして放ち手数を以て押し潰さんとするリボンズも食い下がる。
「…なかなかやるな、ならコイツを試してみるとしようか」
「何をするつもりか知らないけど、死体人形が救世主たる僕に何が出来るって言うんだい?」
「お前諸共、纏めて地獄に送る手を見せてやろう。さあ、死神のパーティータイムだ!」
エターナルがそう言うや否や、天ノ川学園高校には新たなるNPCが現れる。
背中に機械の砲身を背負った、参加者達よりは大きな竜(ドラゴン)。外宇宙からの侵略者…帝竜ジゴワット。大道克己に支給されていたソードスキルである、第5真竜フォーマルハウトの蘇生能力により蘇生召喚・使役される物だ。
召喚されたジゴワットは、両肩の砲台からの一斉掃射を行いNPC達諸共、リボンズやキラ達を狙った。
その上で、ジゴワットはチャージ行動を起こす。
「ずいぶんデカいペットじゃないか」
「余裕そうだがいいのか?今から数分で、奴の一撃でこの高校は崩壊する、生きていてもまともに戦えるのかは保証出来ないぞ」
「…ブラフのつもりかい?」
「だがお前はその可能性を捨て切れない…違うか?」
「…忌々しいな、死人風情が…!!」
「自称救世主なんぞよりは、まだマシだろうさ」
ジゴワットが2度目のチャージ行動を行う最中
、リボンズは剣を使い潰しながらも、速攻で距離を取る。根の小物さ・慎重さ故…内心煮えたぎりながらも撤退を選んだ。
令呪を使う事まで検討する程だったが…貴重かつ生命線な令呪を使う事は良しと出来なかった。
やがて、2度のチャージを終えたジゴワットは、砲身から超電磁砲を発射。
──結果、先にリボンズに語った通り、射線上にいたNPC達諸共巻き込む形で…天ノ川学園高校は呆気なく、瓦礫と灰になり崩壊した。
「令呪での制限解放がコイツに作用するかは分からない上、2回もチャージを待たなければ撃てず一度撃ったら暫くは使えない…が、作用せずともこの威力なら使えるな。
建物を壊して行けば、自然と人数は減らせれるだろう」
言いながら変身を解除したエターナル…大道克己は、風都タワーのある方角を見据えた。
(何処まで主催者達が再現してるかは知らんが、もしエクスビッカーまで在るのなら…行ってみる価値はあると見るべきか)
かくして死人は竜と共に死を振りまく。
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周囲のNPCをどうにかする中、2度目のチャージ行動に気付いたキラと篝。
何かを放とうとしている事を察し、イモータルジャスティスの変形形態に、上から乗る事で離れようと2人は考えた。
「あーもう、倒しても倒しても出て来るんだけどー」
「…ミカさん、この場を離れましょう。あの人の剣が無くなったのは、多分離れたからで──」
「…うん、今は…そうさせてもらうね」
「2人共、早く乗って!」
色々と思う所がありげにしつつ、今は彼女達の提案に乗る事とミカはした。
そしてキラは変形し、令呪を切ってまで全速力で移動。篝は八幡力で必死にしがみつき、ミカは持ち前の腕力でどうにか落ちず堪える事に成功したのであった。
…もっとも、2人上に乗せ全力飛行したせいとそれまでの疲労もあり、着地には失敗しキラはまたダメージを負う羽目になったが。
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「キラくんと篝ちゃんは…なんで助けてくれたの?
さっきは横入りされて、ムカついたから協力したけど。復讐の為優勝する気は変わってないよ私。
ついでに言うと、あのNPC達…ぜんぶ私が倒した奴だし」
「…似てるんだ、君は昔の僕やアスランに。それ以上に…あそこで放って置いたら、この殺し合いを乗り切れても、後悔し続ける事がまたひとつ、増えてたと思うから」
「…何か違えば、私の娘…姫和もミカさんみたいな方向に行ってたかも、知れないので。…放っておけませんよ」
「…わーお。そんな若く見えるのに娘さんが居て、しかも巻き込まれてるんだ。
…魔女な私なんか助けちゃって、2人共きっと後悔するよ?…特に篝ちゃん、娘さんが巻き込まれちゃってる以上…会えないままサヨナラも、あり得ると思うけど」
「…わかってます。それでも…たとえそうなったとしても…私は、神薙の刃として、最期まで主催達に足掻きます」
『うん、分かってる。それでも私は最後まで足掻いてみせる、最後のその時まで。』
「……うん、そっか。そんな感じの事、言うのが似合う声だと思ってたよ、篝ちゃん」
「…は、はあ」
「…助けてくれたし、2人の事は、今は見逃してあげるね☆」
和解の象徴としてかつて送り出した少女の事を想起しつつ、ミカはそう言う。
良くも悪くも感情的で情緒のまま動くのが聖園ミカという少女だ。だから、復讐の為殺し合いに乗るという決心が変わらない事と、生命線である令呪を切ってまで自分を助けてくれた2人を今は殺したくないとする事は普通に両立するのであった。
以上で本編の投下を終了します、書き上がるのがギリギリになってしまった為、状態表の投下は後ほどとなります。
期間を超過する形となってしまい申し訳ありません。
遅れてしまい申し訳ありません、拙作のタイトルを忘れていたのと、本文の一部箇所の修正と、状態表を投下させて貰います。
タイトルは「言葉が人を結いつけるように/天・高・崩・壊」です。
ニセモノのアスラン戦では時間的猶予の都合起動鍵を取り出すので手一杯だった為、習得も使用も出来なかったスキルを、先程の支給品確認の際覚えた形となる。→ニセモノのアスラン戦では、時間的猶予の都合ソードスキルの取得も、もう一つの支給品である金色の物を確認する間もなく起動鍵を取り出すので手一杯だった為、習得も使用も出来なかったスキルを、先程の支給品確認の際覚えた形となる。
だから、復讐の為殺し合いに乗るという決心が変わらない事と→だから、復讐の為殺し合いに乗るという決心が揺らぎこそすれ変わらない事と
【エリアG-7/川の上を飛行中/9月2日午前7時】
【リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)】
状態:ダメージ(小)、疲労(大)、主催やルルーシュ、仮面ライダーエターナル(大道克己)への苛立ち(中)
服装:普段の服装
装備:刹那・F・セイエイの遺体が変化した剣、NPCの遺体が変化した剣(最低10本はある)
令呪:残り三画
道具:ダブルオークアンタ・フルセイバーの起動鍵@機動戦士ガンダム00V戦記、0ガンダム(実戦配備型)の起動鍵(真っ二つ、現状起動不能)@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン×2、刹那・F・セイエイのレジスター
思考
基本:恭順を望む参加者以外の全てを皆殺しにする。
01:やってくれたね、死体人形(大道克己)風情が…!!
02:ソードスキルを用いて剣を増やして行くとしよう。
03:あの2人(黒崎一護、タギツヒメ)は次は確実に殺す。その時はこの剣を見せてあげよう。
04:…僕は用済みの、純粋種の踏み台なんかじゃない…!!
05:使える物は何だって使うさ。
06:ルルーシュといい彼女(聖園ミカ)達といい、傲慢な人間しかこの殺し合いには居ないのかい?
07:とはいえ、レジスターは手元にある…向かってみるのも一興かもね。
参戦時期:第25話「再生」にて、刹那に肉体を討たれた後から。
備考:※支給されていたソードスキルにより、上位竜ランサーの異能@月が導く異世界道中を習得しています。
※イノベイドを脳量子波で操る能力は制限されています。至近距離でないと発動しません。※脳量子波による思考読み取りも至近距離でないと発揮されません。
※天ノ川学園高校内にて何を発見したか等については後続にお任せします。
【エリアH-7/天ノ川学園高校跡地/9月2日午前7時】
【大道克己@仮面ライダーW】
状態:疲労(中)
服装:NEVERのジャケット
装備:ロストドライバー&T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
令呪:残り三画
道具:細胞維持酵素×5@仮面ライダーW、包丁や果物ナイフ数本(現地調達)、ホットライン
思考
基本:優勝し、風都を始め世界を地獄に叩き落とす
01:参加者を探して殺す。
02:さっきの奴(ジンガ)とは…次に会った時に殺せばいいか。
03:左翔太郎もフィリップも居ないのならば、風が再び吹いても負けるまい。
04:風都タワーに行ってみる価値はあるか。
05:自称救世主(リボンズ・アルマーク)は次に会った時に殺すか。
06:あの群れてる連中(キラ・ヤマト、柊篝、聖園ミカ)は…コイツ(ジゴワット)の一撃で死んでいれば話が早いが。
07:殺して手駒を増やしつつ、いずれはルルーシュ達を狙いに行く。今はまだ早いか。
参戦時期:『AtoZ 運命のガイアメモリ』で死亡後。
備考
※NEVERの肉体は映画本編と同じく、定期的に細胞維持酵素を投与しなければ崩壊します。
※支給されていたソードスキルを使用し、第5真竜フォーマルハウトの蘇生能力を習得しました。現在帝竜ジゴワットを蘇生させ配下においています。
・エリア全体の備考
※天ノ川高校学園@仮面ライダーフォーゼは崩壊しました。
【エリアH-8/9月2日午前7時】
【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、動揺による情緒不安定気味、魔女
服装:いつもの制服
装備:フルートバスター@獣電戦隊キョウリュウジャー
Dの獣電池×3(1つ空になった)@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ、ランダムアイテム×1、ホットライン
思考
基本:魔女らしく荒れる。…それは変わらないよ、止めてみれば?
01:錠前サオリへの復讐の為にも他参加者は皆殺しにして生還する。そしてあなたのせいだって突きつけてあげる。
02:…先生…。
03:…今はキラくんや篝ちゃんは見逃してあげる。次に会ったらその時は……。
04:邪魔したあの救世主名乗った人(リボンズ・アルマーク)と仮面ライダーエターナル(大道克己)は、次会ったらただじゃ済まさないじゃんよ☆
05:ルルーシュには付きたくないかなぁ、合わなさそうだし。
参戦時期:錠前サオリに復讐を決意した瞬間
備考
※Dの獣電池の起動にブレイブは必要ありません。
一定以上の邪悪な感情があればだれでも起動できます。
※キラと篝からは離れました。その前に他にやり取りや、情報交換等をしていたかは後続にお任せします。
※キラや篝とのやりとりでコーディネイターとナチュラルや荒魂についてある程度把握しました。
【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED】
状態:ダメージ(大)、疲労(大)、内に秘めた悲しみ(大)
服装:SEEDでの連合の軍服
装備:
令呪:残り三画
道具:イモータルジャスティスガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM、王印@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止めてみせる!
01:何か出来るかも知れないのに、何もしないのが…一番、嫌なんだ…!
02:アスラン…。
03:未来の僕が、どんな想いでシンって人にこの機体を任せたのかはわからないけど…今は僕が…!
04:ラウ・ル・クルーゼ…貴方は、なにを…!
05:…篝さんにああ言って貰えて、僕は…それだけで…。
06:僕より年上な「篝(カガリ)」…不思議な気分だ。
07:レジスターは、僕が解析出来るか試してみたい所だけど。
08:ミカ…君はっ…。
09:エターナル(大道克己)にあの自称救世主(リボンズ・アルマーク)…倒すしか、ないのなら…!
10:篝さんを、姫和さんに会わせてあげたい。
11:殺し合いに乗るのなら、たとえ未来の僕自身でも…!
12:ルルーシュには従えない。
参戦時期:SEEDの本編終了後、AFTER-PHASE「星のはざまで」及びDESTINY以降よりは前。
備考
※篝との会話で隠世についてや可奈美達の話についてある程度は聞きました。
※支給されていたソードスキル:疾風(シュトゥルム)@ストライクウィッチーズシリーズを習得しました。
【柊篝@刀使ノ巫女】
状態:ダメージ(中)、疲労(大)
服装:鎌府高等学校の制服
装備:千鳥(Another可奈美)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火(7時に使用、1時間使用不能)、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める、それがきっと、隠世と一緒に消える筈だった私の役目…!
01:…キラくん…無理して背負わなきゃいいのですが…。
02:可奈美さんに、何が…?
03:SEED…これがソードスキルですね、使いこなせる気がします。
04:姫和や可奈美さん…どうか、ご無事で…。
05:キラくんの妹の名前は「カガリ」なんですね…何かの縁を感じます。
06:タギツヒメは…まあ大丈夫でしょう。
07:ニセモノのアスランさん…討つしかないと云うのなら…!
08:ルルーシュといい自称救世主(リボンズ・アルマーク)といい仮面ライダーエターナル(大道克己)といい…傲慢な強敵ばかりですね…。
09:ミカさん…貴女は…。
10:不甲斐ないばかりです…しかし…!
参戦時期:本編終了後。
備考
※支給されていたソードスキル:SEED@機動戦士ガンダムSEEDシリーズを習得しました。
※隠世の方です、刀使としての力は発揮できるとします。
※キラとの会話でクルーゼについての話やキラの出自等を大まかに聞いています。
※迅移については四段階目を使用すると昏倒する仕様のまま、また五段階目は制限により使用不能となっています。
【支給品紹介】
・ソードスキル:第5真竜フォーマルハウトの蘇生能力@セブンスドラゴン2020-Ⅱ
大道克己に支給。
2021年に地球に飛来した第5真竜フォーマルハウトの蘇生能力がソードスキルに落とし込まれた物。
これを用いフォーマルハウトは作中にて、前作であるセブンスドラゴン2020時点で主人公達13班に討たれた帝竜であるジゴワット、トリニトロ、スリーピーホロウを蘇生し手駒として行使している。
この内トリニトロは色が赤に変色しており、ジゴワットとスリーピーホロウはボロボロな状態となっていた。
(にも関わらずジゴワットは戦う時期の都合もあってか前作よりステータス等は上昇している)
作中では帝竜の蘇生にしか用いて無かったが、この殺し合いでは帝竜を蘇生召喚する他にも、NPCや参加者を蘇生し手駒にする事も可能となっている。
帝竜については作中でフォーマルハウトが手駒として使った前記した3体と、ティアマット、オケアヌス、ジャバウォック、インソムニアの中からランダムに蘇生召喚可能。
ただしサイズは相応に縮小される他、オケアヌスは召喚したそのエリアから離れられず移動不能となる。また蘇生を行うと相応に疲労し、制限により6時間に1回しか蘇生不能となっている。
各自の能力の内、空間歪曲による自らの根城作成(わかりやすく言うとダンジョン化)は不可能とされている。
他の能力の制限についてや2020時点で討たれ蘇生されてないウォークライ、ロア=ア=ルア、ザ・スカヴァー、ゼロ=ブルーも蘇生召喚可能かは後続にお任せします。
参加者については死体がない状態だと4時間に1回しか蘇生不能、かつ誰を死体として行使できるかはランダムで、相応に疲労する。
また殺し合い開始から4時間経過(候補作時点からカウントする為午前8時に使用可能となる)するまでこの能力は使用不能。
死体を見つけた場合は上記の制限を無視して行えるが、損壊具合次第ではボロボロの遺体を動かしている形になる。
自我の有無や生前の技能・能力・装備の再現が成されるかは後続にお任せします。
NPCについては死体が残っていれば疲労せず蘇生し行使が可能となっている。その代わり死体が無いと蘇生召喚が不能とされた。
・ガンダムバルバトスルプスレクスの起動鍵@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
聖園ミカに支給。
阿頼耶識システムを搭載した300年前の機体の大規模改修型。
主な変更点はハシュマルの武装だったワイヤーブレードを改修によりテイルブレードとして使用可能とし、また全体的に近接戦闘に特化した武器構成となっている。
このロワでは阿頼耶識のリミッター解除を行うには令呪が必要となった。
・王印@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸
キラ・ヤマト(SEED)に支給。
この殺し合いでは斬魄刀の一撃をこれに当てる事で、作中草冠宗次郎が変じた二足の氷竜へと変身が可能な仕様となっている。
斬魄刀でさえあればどれでも可能かつ、どの斬魄刀の一撃だろうと変じるのは二足の氷竜固定の仕様となっている。
ただしこの殺し合いでは使用者が精神を強く保てない或いは保てなくなった場合、王印の暴走により力に飲まれ制御出来なくなってしまうデメリットも主催側によって設定された。卍解を会得してる斬魄刀の一撃で変じた場合でもこれは変わらない。
(作中にてそれまでは喋っていたにも関わらず、王印の暴走が起こったとマユリに言われて以降、ダメージにより氷竜状態を解除されるまで宗次郎は一言も喋っていなかったりする)
また本来の王印の力(一定範囲の時間・空間・次元の自在な操作可能)はこの殺し合いでは発揮不能とされている。
以下は原作にて氷竜に変じた宗次郎がやった事。
・飛行可能
・触れた物及び付近の物を凍結
・再生能力
・配下としていたイン、ヤンを氷結させそこから異形の砲台へ強化もしくは再構築
・更木剣八に重傷を負わせれる程の威力の手刀を放つ
・口から氷をマシンガンのように放つ
・凍結能力により氷の樹木のような物を自身を中心に形成し、そこから氷の枝を伸ばし刺突
・氷を生やして盾代わりにした
・手を振るうだけで黄色の光の柱と突風、衝撃波を発生
・範囲内の全てを滅却するドームを発生
(滅却までにはタイムラグあり、作中では総隊長らが外側からドームの膨張を押し留められてたのもあって発動せず)
・虚や大虚を発生させ操れる
(発生させた虚や大虚も再生能力持ち、氷竜が撃破されると動きが止まり、その後画面に写ってない為消滅したと思われる)
・氷の竜を3つ、自らから生やし突撃させる
・口から黄色の破壊光線を放つ
とりあえずこの殺し合いだと上記の内、滅却ドームと虚や大虚の発生は令呪を使わないと使用不可となっている他、凍結能力と再生能力は制限により本来の性能は出せず、強化もしくは再構築は令呪を使っても使用不可な仕様となっている。
他がどうなるかは後続にお任せします。
・ソードスキル:疾風(シュトゥルム)@ストライクウィッチーズシリーズ
キラ・ヤマト(SEED)に支給。
黒い悪魔との通り名を持つウィッチであるエーリカ・ハルトマンの固有魔法がソードスキルとして落とし込まれた物。
この殺し合いでは魔力を持たない者が使用すると体力を変わりに使う事で行使が可能な仕様となっている。
移動の補助が基本となるが、応用して攻撃手段にする事も可能。
・祭祀礼装・禊の起動鍵@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
柊篝に支給。珠鋼を使った礼装が起動鍵へと落とし込まれた物。
この殺し合いでは起動すると能力が1.2倍に上昇する効果があるが、解除すると使用から1時間は起動不可能となるようになっている。
なおこの効果は刀使以外でも発揮可能。
以上で投下を終了します。改めて申し訳ありません。
投下します。
「華鳥さん、くるみちゃん、美嘉ちゃん、みんな……」
ゆうは放送後に提示された名簿を見て顔を青ざめていた。
別れてしまったが、アイドル東西南北として活動していた全員が殺し合いの舞台に呼ばれていたことは、ゆうにとってショックだった。
「東、ゆっくりと深呼吸をしてください」
体が震えるゆうにディーヴァが背中をさする。
「何を言っても慰めにはなりませんわね……私も愛する人がこの殺し合いの場に呼ばれています」
キラ・ヤマトの名があることにラクスも動揺を隠せなかった。なぜアスランと合わせて二人の名が記されているのかは不明だったが。
「ですが、せめて信じましょう。殺し合いに乗っていないことを。そんな人たちに巡り合えていることを」
「……信じるって……そんな神頼みな……」
「ええ、今の私たちには祈ることしかできません。だから……信じましょう」
無言のまま数分。ようやく息が整ったゆうが口を開いた。
「……そうだね。いくら何でもこんなインチキじみた殺し合いに乗った人ばかりってわけじゃないと思う。そう信じよう」
ゆうが微笑み、ラクスとディーヴァもまた微笑む。
その最中、ビルのガラスを割り、闖入者が現れた。
全身が黒い甲冑に覆われた漆黒の戦士。枢木スザクが変身したブジンソードだ。
その身から漂う気配は一般人のゆうには息が詰まりそうだ。
「お前たちには全員死んでもらう」
殺気に満ちた声でブジンソードは死刑宣告をした。
「――どうして⁉ なんでこんな殺し合いに乗るの⁉ それで願いが叶うって本気で信じてるの⁉」
「うるさい! 俺は俺の理想の世界を手に入れるため、ここにいる全員を殺すんだ!」
必死で投げかけるゆうの疑問に、ブジンソードは怒声で返す。
「そうしなければ、俺は……何のために……」
だが、唐突にブジンソードの語尾が弱まった。手もわななき今にもうなだれそうだ。
「貴方は優しく、そして悲しい人ですね」
ラクスがそんなブジンソードの姿を見ていった。
「優しすぎて、自分の犯してきた罪に押しつぶされて、それを償うためあえて狂気の道を行こうというのですね……」
憐れむラクスの瞳を見たスザクは脳裏に連想する。ユーフェミアの姿を――
「そんな目で俺を見るなッ‼」
激高したブジンソードの投げつけられた剣が、ラクスの胸に吸い込まれ――
――戦闘プログラム・ON
ディーヴァはエイムズショットライザーを三連射。剣を弾き飛ばした。
ディーヴァの体から紫電が走る。戦闘プログラム、それは躯体性能以上の数値を発揮し、人間を攻撃できるようになるプログラムだ。
「ラクス、東。二人とも下がっていてください」
二人を手で遮ったディーヴァは腰にベルトを巻き、エイムズショットライザーを腹の部分に差し込み、クリアオレンジの板――サーバルタイガーゼツメライズキーをエイムズショットライザーに差し入れた。
Warning!
Kamen Rider…Kamen Rider…Warning!
「変身」
警告音が鳴る中、ディーヴァはそのままエイムズショットライザーの引き金を引く。
ショットライズ!
発射された弾丸が分散され広がり、アーマーを構築していく。
サーバルタイガー!
Blade spun by justice that protects lives.
音声の終了と同時に、白のインナースーツの上からオレンジの装甲がディーヴァの全身に張り巡らされていた。両腕には長い爪、クローがある。
これぞ仮面ライダーバルキリー・ジャスティスサーバルの変身形態だ。AI……ヒューマギアと人間の交流の末生まれた姿である。
変身と同時にバルキりーは一足飛びでブジンソードの懐に入り込む。
『速い!』
ブジンソードが認識したその時には、バルキりーがクローをブジンソードバックルに叩きつけていた。思わずよろめくブシンソード。
さらにバルキりーはクローを続けざまにバックルへと切りつける。そのたびに火花が散る。
「調子に……乗るなッ!」
ブシンソードが攻撃の切れ目に肩からぶちかまし、バルキりーを強引につき放す。
地面を滑るバルキりーはショットライザーを構え、ブシンソードを連射、狙い撃つ。
『バックルと間接だけを狙って……!』
流石のブシンソードも動きが止まる。
その間にバルキりーは背後のガラスにショットを放ち、破壊。ラクスとゆうを両脇に抱え、外へと飛び出した。
慌ててブシンソードも後を追おうとしたが、ビルの外へ出た時点で、すでに三人の姿は消えていた。
ラクスとゆうを抱えたまま疾走するディーヴァ。ブジンソードがおってこないとわかると、停止し、二人を立たせた。ゼツメライズキーをショットライザーから抜き変身を解く。
「二人とも大丈夫ですか?」
「うん」
「ありがとうございます」
ディーヴァに対し二人は返答した。
「先ほどのビルは地図より283プロと推測されます。今北方向に走りましたからケヤキモールでいったん休憩し、スタジアムへと向かいましょう」
「スタジアムで何する気?」
ゆうが尋ねると、ラクスがバッグから一つの鏡を取り出した。
「これを使って私たちは参加者の皆さんに歌と思いを届けようと思います」
それは遠写鏡。ホットラインや鏡、水たまりなど光を反射するものならどんなものにでも映像を投影できる道具だ。
「ルルーシュという人に先を越されてしまいましたが、もともと私たちは歌で皆さんに殺し合いにあらがう勇気と共に助け合う愛情を届け、この殺し合いを少しでも抑制することが目的でしたから」
「……うらやましいな」
ゆうは思う。アイドルを目指していた自分が、ここまで人を動かすことを信じられただろうか。
少なくとも今は無理だ。自分勝手に行動して皆を傷つけてしまった。
だから……改めて謝りたい。この場で届ける方法があるのなら、それを使って。
「……私も一緒に歌っていいかな……?」
ラクスとディーヴァは目を見合わせて、ゆうに向かって言った。
『喜んで!』
【エリアH-10/街中/9月2日午前6時】
【東ゆう@トラペジウム】
状態:精神的疲労(小)、動揺(大)、覚悟(大)
服装:制服(城州東高校)
装備:デスティニーの起動鍵@ 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:元の世界へと帰る
01:ラクスさんとディーヴァさん、この人たちと協力したい。
02:結果が全てじゃない。だから、このゲームに乗ってアイドルになっても意味がないんだ!
03:みんなに会ってごめんと謝れる自分に
04:今度こそ、人を笑顔にできるアイドルに!
参戦時期:東西南北崩壊後
備考
特になし。
【ラクス・クライン@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
状態:通常
服装:和服?(戦艦乗艦時のあれ)
装備:なし
令呪:残り三画
道具:遠写鏡@ドラえもん、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:ラウ・ル・クルーゼ…亡霊が今生きる人に干渉してはなりません!
02:キラとアスランが二人ずつ……?
03:歌で皆を止めるためにコロシアムに向かう。
参戦時期:ファウンデーションがやらかす前
【ディーヴァ@Vivy -Fluorite Eye's Song-】
状態:システムは正常に作動中
服装:軍服
装備:エイムズショットライザー&サーバルタイガーゼツメライズキー@ゼロワンOthers 仮面ライダーバルカン&バルキリー
令呪:残り三画
道具:iPod@現実、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いに抗う。
01:もうシンギュラリティ計画は終わった。だから、今の私はただのディーヴァ。
02:マツモトはいないみたい……
03:歌で皆を幸せにするために戦いを止める。
04:そのためにコロシアムへ向かう。
参戦時期:アーカイブからの課題をクリアした直後
備考:プロローグのショート髪の方ではないです。ロングの方のヴィヴィです。
スザクはブジンソードバックルをベルトから引き抜き、変身を解いた。
ブジンソードバックルにはいくらかの傷があるが、本体は無事だ。
「ルルーシュ……君が何を企んでいようと変わらない……俺は俺の理想のために君を含めた全てを殺す」
スザクはつぶやき、いずことなく歩んでいった。
【エリアI-10/283プロ/9月2日午前6時】
【枢木スザク@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:狂気
服装:軍服(ナイトオブラウンズ)
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ、ブジンソードバックル@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:この殺し合いにのる
01:ルルーシュ...君が悪いんだ。
02:みんな、みんな殺すんだ。
03:これが僕の...オレの選んだ道だ。
参戦時期:フレイヤ射撃後
備考
※業スザクではないです。
【支給品解説】
エイムズショットライザー&サーバルタイガーゼツメライズキー@ゼロワンOthers 仮面ライダーバルカン&バルキリー
ディーヴァに支給
A.I.M.S.が所有するベルト型の変身ツール。
ゼツメライズキーを装填し、認証(オーソライズ)とショットライズを行う事で
装着者を仮面ライダーバルキリー・ジャスティスサーバルに変身させる。
また、変身せずとも50口径対ヒューマギア徹甲弾を射出する拳銃としても運用可能。
遠写鏡@ドラえもん
ラクスに支給
この鏡に何かを映すと、近くにある鏡などにも同じ物が映し出される。窓ガラス、ピカピカの床、水たまりなど、反射する物なら何でも映る。
音声も伝達可能で、鏡が写しだす範囲は、家の中だけから町中まで調節可能。
以上、投下終了です。
小宮果穂、チェイス、エンヴィーを予約します
タギツヒメ、ロロ・ランペルージ、糸見沙耶香、それと回想にて登場する為アスラン・ザラ?を予約します
投下します
ある男は『命』が有限であることに憤った。
生きた肉体にしか『命』が宿らないという法則が存在する現実世界を陳腐と唾棄さえした。
そこからあらゆるモノにライフという形で命を付与できるゲームを神の領域とし、それで現実世界を上塗りしてしまおうなどという発想に至ったのはあまりにコペルニクス的に過ぎるが、彼なりに真剣に命と向き合った末の結論ではあったはずだ。
当然ながら万人に受け入れられる発想ではない。
男の実の父親すら、後に和解したが一度は男を産み落としたことが自分の罪であると考え、妻の命を弄んだとして本気で殺そうとした。
この例からも分かる様に、奇跡のような大復活!で、一度失われたはずの命が戻ってきたように見えても受け入れられる人間は早々居ないだろう。
そんな事態そのものも早々訪れる物ではないが、ここは真贋入り混じった挙句に条理と奇跡もあいまいになったバトルロワイヤル。
死体を乗っ取る魔人が生者も死者も首輪を着けて放り込んだ空虚な実験箱。
そこでは『命』はあまりに軽い。
だが、放つ輝きの眩さは何処であろうと変わらない。
だからこうして弄ぶように掌で転がしてみると、鈴のような音がして面白いのだろう。
ラウ・ル・クルーゼによるゲームの真のスタート、皇帝ルルーシュの傲慢極まる宣言から約30分が経過したころ。
エリアC-5に獣電戦隊キョウリュウジャーが一人、空蝉丸の姿があった。
最初は名簿に見つけた宇蟲王ギラの名前に一通り狼狽し、後悔し、不甲斐ない自分を呪い、続けてルルーシュの放送からかつてスペースショッカーを倒すべく共闘したビーストたち仮面ライダーが傲慢な王の尖兵である世界線もあるのか!?と驚愕した。
そしてこんな自分が何かしてもまた別の面倒な事態を引き起こすだけなのではないだろうか?
と、負のスパイラルに陥りかけた彼だったが……
ピキィイイイイイイイイイイイン!
(この気配は……まさか!)
頭部に白い電流が一瞬走り抜ける様な、10年ぶりの懐かしくも忌まわしい気配を感じ取った瞬間、ネガティブな思考は全て彼方に吹き飛んだ。
その気配の主とは他でもない。
かつてこの身を支配し、蛮行を重ねた外道にして、最期には武人の誇りを取り戻したはず因縁の宿敵。
デーボス軍の戦騎の一角、怒りの戦騎ドゴルド。
「なるほど。
クルーゼの言っていた最強のNPCモンスターとは、うぬのことであったか」
死人を乗っ取り、操る魔人が主催の宴だ。
かつて人類を苦しめ怒らせた怪人を黄泉路から連れ出して手ゴマに仕立て上げてもなんら不思議はあるまい。
むしろ、自分とソウジが呼ばれたことに納得すら感じる。
(ならば、腐っている暇はないでござる!)
ドゴルドを止める。
別の時間か、分裂したのかは知らないが王様戦隊のレッド、ギラ・ハスティーを助け、宇蟲王ギラを討つ。
牙狼剣を道外流牙に届ける。
全部成し遂げなければならないのは中々に骨だが、空蝉丸は戦隊だ。
決めたからには成し遂げる。
手始めに漸く解禁されたホットラインの地図を頼りに空蝉丸はナハトベースと名付けられたランドマークに向かった。
「氷結城に勝らずとも劣らずな禍々しい城でござる……」
入るのをためらう不気味な外観の建物に行きついてしまったが、態々名指しで地図に表記される場所なのだ。
何か意味はあるはずだし、もし近くに居ればだが、ソウジや道外流牙が訪れるかもしれない。
(それにそうでなくとも、ここはルルーシュ殿の陣取るテレビ局まで湖を挟んですぐ。
エリアにして僅か二マスしか離れていないでござる。
ルルーシュ殿に与する者も止めんとする者も北西から来るのであれば寄ってもおかしくは……)
等と考えていると、建物の中から砲声に似た轟音が響き、次いで相互に撃ち合う形の銃声が聞こえて来た。
しばらく様子をうかがっていると、入口の方から一組の男女が走りながら逃げて来た。
男の方は空蝉丸にとって見慣れた日本人の風貌で、奇妙な白い全身タイツ(?)を着ている。
女の方はどこか浮世離れした風貌で、薄紫の短い髪に白すぎるほど白い肌、黒いピッチりした服の上に妙な鎧を装備し大楯を持っている。
「そちらのお二人!拙者、空蝉丸と申す者でござる!
幾つか尋ねたいことが……」
「「ふせて(ください)!」」
二人、藤丸立香とマシュ・キリエライトが同時に叫ぶと、二人が出て来た入口が吹き飛び、中から防弾ベストにショットガンと盾を構えた少女と、トリコロールカラーのボディーを持つモビルスーツが飛び出て来た。
「ちょろちょろしやがって!とっとと落ちろチビ女ぁ!」
エールストライカーの高機動で散弾を躱しながらビームライフルを撃つのはエールストライクガンダムを纏うディアッカ・エルスマン。
「さっきから黙って聞いてれば誰がチビだ!
自己紹介、したよねぇ!
日焼けサロンに行き過ぎて脳まで焼かれちゃった!?」
防弾ベストに黒い盾、そして青いショットガンを片手に人間サイズにスケールダウンしているとはいえストライク相手に立ち回る少女はアビドス生徒会の小鳥遊ホシノ。
「はっ!胸もねえし背丈も足りねぇ!
オマケに気は短いし器はバストに正比例!
長いのは踏んずけそうなポニーテールぐらい!
テメェなんざ万年チビで十二分なんだよ!」
「随分大口叩くね〜。
何時もよりかは小さいみたいだけど玩具で着飾ってるからかな!?」
「ガラスの靴がお似合いなのはどっちだよ!?
プラスチックのティアラでも買ってやろうか永年シンデレラバスト!」
「殺す!」
バレルが逝かれるのも構うものかと撃ち続けながら子供の喧嘩じみた罵倒の応酬にひきつった笑みを浮かべるしかない。
「えっと、その、あれは一体どうゆう状況なのでござるか?」
以外にも冷静なのか、互いしか見えてない以上、互いの正面にしか撃たないからなのか、流れ弾の心配が少ないと判断した空蝉丸はとりあえず事情を知ってそうな藤丸とマシュに尋ねるしかなかった。
「話すと本当にしょうもない事なんですが……」
最初の二時間を終え、ルルーシュの居城であるテレビ局と同じ租界エリアに存在するランドマーク、ナハトベースにたどり着いた藤丸たち4人はそこで二つの放送を聞いた。
なぜこんな不気味な城に居たかと言えば、建物自体に結構な高さがあり、ディアッカのストライクガンダムの長距離射撃用装備なら、遠視で状況を探れると判断したからだ。
「それじゃあお願い」
「オーライ。任せときな」
エールストライクで一気に外から上階まで上がり、上階の足場に座ると、一度解除してランチャーストライクを再装備。
遠視機能でテレビ局の様子を確認するとソードストライクのロケットアンカーで下階に戻る。
「どうだった?」
「テレビ局その物にはもうOSでも書き換えたらしいジンやさっき戦ったデュエル擬きが警備してた。
空には羽の生えたストライク擬きやSFS装備したジンハイマニューバ。
地上は既にトラックやコンテナで道塞いで防衛線が二重に作ってあって、その間さっきの放送で001がボコってた車輪付きやバクゥみたいな脚が速いので埋めてる。
実にグゥレイトな守りだ。
真正面から攻めようと思ったら城攻め用の装備が要るぜ」
そう言ってディアッカはストライクを解除しながら肩をすくめた。
味方を募るのと同時に喧嘩まで吹っ掛けているのだから相応の備えはしているとは考えていたが、短時間でここまで出来るとは思っていなかったからだ。
「近くに他のプレイヤーの姿はありましたか?」
「居なかった。
てか、あれだけの警備だ。
居ても早々近づけないし、居たら多分もう捕まってるだろうな」
「撃って出てくる様子は?」
「……いいや。
もしかしたら『ハッキング出来そうなMSやナイトメアフレームを捕まえて連れて来い』ぐらいは命令されてるかもしれないけど、特別何かを探してる感じはなかったな。
正に巡回中、って感じだったぜ」
確かないやな予感を感じながらもディアッカはホシノの問いに答えた。
答えてしまった。
「そう。じゃあ素通りできそうな感じなんだね」
そう言ってホシノは武器を装備し直すと下階に続く階段の方に向かい始めた。
「待てよチビ!
確かに今真正面からぶつかる訳にはいかないし、アイツらとその味方になりそうな連中以外を探すってのはそうだがどこ行く気だ!?」
ホシノは振り返りもせずディアッカに吐き捨てた。
「言っても分かんないでしょ?」
その言葉には、誰もが彼女の後を追うのを躊躇するだけのモノが込められていた。
アビドスとは、ホシノにとっての世界そのものであり、アビドスに属さない者を断絶するバックリ裂けたクレバスにして天をも覆う長大な壁なのかもしれない。
「……え?」
ホシノの背を見つめるディアッカの顔を見た瞬間、立香は固まってしまった。
この時のことを、後にこう語る。
「爆弾って、爆発する時一瞬静かになるって、本当なんだね」
と。
真顔、無言のままディアッカはランチャーストライクを再装備した。
後にマシュ。キリエライトは語る。
「爆弾が爆発したのは、あの時ですね」
と。
ディアッカは……切れた。
本来のサイズならスペースコロニーの外壁すら打ち抜くアグニをその無防備な背中に躊躇なく撃ち込んだ。
ディアッカは別にホシノのことを嫌ってまではいない。
良くは思っていないが、戦場でピリつくのは自分自身も経験があるし、自分より苛立ちにせかされてしまう相棒イザーク・ジュールを諫めたのも何度あったか分からない。
だが、それでも彼は10代の少年なのだ。
正規の軍事訓練を受けていようと、戦場で主級を挙げていようと(これは藤丸立香やマシュ・キリエライト、そして小鳥遊ホシノにも言えることだが)スーパーであったもヒーローではない。
そんな中でも、ディアッカは過去に地球連合軍の捕虜になった際にどうせ銃殺刑だからと開き直って悪態ツキまくった末に相手の逆鱗に触れてしまい死にかけた経験から限りなく不安定なホシノを刺激しない様に務めてきたつもりだった。
だがホシノから見たディアッカは違ったようだ。
ユメ先輩のように死んだはずの仲間が名簿にあっても微かな怒りすら見出さない姿に不信感を。
袂を分かってしまったイザークや母国の国民的アイドルラクスも呼ばれていると知っても二人とも大丈夫だろうと軽く言ってのける姿に不快感を。
なぜか色々あって本当の意味で仲間になれたアスラン・ザラとキラ・ヤマトの名前が二つあるのに考えても仕方ないと言った姿に不真面目を感じ取ってしまった。
ユメ先輩の死体を弄ぶ羂索と元上司のラウ・ル・クルーゼが手を組んでいると言うだけでもホシノにとっては絶大なマイナス要素だったのだが、ディアッカなりの強がりはホシノには悉く逆鱗だったのだ。
しかし生まれた世界は違っても同じコーディナイターであるマシュや、そんなマシュに恐らく仲間以上の親愛を抱いてるだろう立香を帰してやるためにも、生きて仲間たちに再開するためにも、と自分を律して来たのに遠回しにお前なんざに何が分かると言われてしまえばディアッカが切れるのも無理はない。
ましてディアッカの眼から見ればホシノは自分の都合だけを押し通し何を聞いてもユメ先輩アビドスユメ先輩アビドスユメ先輩アビドス。
それは何よりも小鳥遊ホシノの意識が梔子ユメと彼女が愛した故郷を穢した悪魔たちへの怒りに寄ってしまっていることの表れでもある。
彼女もディアッカ同様普段は同じ廃校対策委員会の過激な行動を押さえる側だし、なんだかんだ自転車操業もいい所のアビドス高校をどうにか維持している辺り、決して協調性や能力が劣っている訳ではないのだが、黒見セリカ同様、真贋入り混じるこのバトルロワイヤルはあまりにも小鳥遊ホシノの逆鱗を狙い撃ちにしたような要素がてんこ盛りなのだ。
自分は故郷の一部、母校を、先輩の亡骸を質の悪い劣化複製品だろうと利用されてる事を看過できない。
自分は可愛い後輩や信頼できる先生が巻き込まれていると知った以上真っ先に助けに向かわないなんて選択肢はない。
自分は元仲間だろうと、自分たちを裏切った者を許さないなんて選択肢はない。
そんな刺々しいまでの一念がホシノの視界を狭め、耳を遠ざけ、考えを絞ってしまっていた。
初対面の少年のバックボーンに施行を巡らせる余裕もない程に。
(伊達に赤を着てないとか言うだけあって感が良い!
こっちの攻撃も全然当たんない!)
(強いし速い!……多分盾を捨てて突っ込まれた方が面倒だな。だったら!)
ストライクが盾の裏に隠し持っていたビームサーベルを起動しないままに投擲する。
意図が読めずホシノが一瞬その用途にし王を裂かれる間にビームライフルによって正確に撃ち抜かれる。
爆発し即席の閃光弾兼破砕弾と化したビームサーベルは身長150㎝台のホシノの身体を大きくよろけさせる。
眼を開けてられない間に盾越しに衝撃が伝わる。
衝撃はそのまま重みになって、続いていつも銃撃戦で感じるダメージとは違った熱を帯びた衝撃が連続で襲ってくる。
どうやら目を開けてられない間に蹴り、踏みつけ、近距離射撃と繋げたらしい。
「パワーとタフさは大したもんだが、体重だけはどうしようもねえな!
盾ごと吹き飛ばしてやるよォオ!」
最悪と最悪のガッチャンコは、アグニの砲火に始まる同士討ちという形で結実した。
ディアッカからすればこちらは自分の都合や心配を後回しにしてまで大局の為に動こうとしているのに理由も話さず自分の都合を通そうとするホシノは腕っぷしばっかで可愛げのないクソガキにしか思えず、まるで心配なんて全くしてないように振る舞いお茶らけた態度も崩していないようにも見えるディアッカはホシノに言わせれば不真面目な上に仲間に対する情も薄い嫌な男にしか見えないのだ。
「それでこの戦いになってしまったと?」
「止めようとはしたんですが、お互い全く聴く耳持たずで……」
始まってしまったその場に居たのがマシュだけなら止めれたカモシレナイガ、本来非戦闘要員の立香まで居たのだ。
マスターを守って脱出できたマシュをほめるべきだろう。
「とは言えあそこまで互いに熱くなっては無理矢理止める以外に手は無さそうでござるな」
ストライクは二本目のビームサーベルでめった刺し、なんてことこそしてないが、それでもなお激しく攻め立てており、このままディアッカ優位に進んでも、ホシノが逆転しても、二人が拮抗しても続いていては無為なことこの上ない。
「立香殿、マシュ殿、御二方の支給品にこれと同じ物が配られてはござらんか?」
空蝉丸は自分の獣電池を二人に見せた。
「これって、マシュのアタッシュケースに入ってた奴じゃない?」
「はい。空蝉丸さんのと同じ6番の物はなかったと思いますが……」
そう言ってマシュがリュックから茶色のアタッシュケースを取り出す。
そのアイテムの名前は獣電ブレイブボックス。
獣電池を複数運搬する際に使われるアイテムである。
中には2,3,5番、そしてガーディアンズと呼ばれる11から25までの獣電池が一本ずつ入っていた。
「マシュ殿、これを拙者に譲ってくださらぬか!?
これがあればあの二人の喧嘩もきっと止めることが出来るでござる!」
「本当ですか!?ぜひお願いします!」
「心得た!
立香殿、しばしこの剣を持っっていて欲しいでござる」
そう言って空蝉丸は牙狼剣を立香に手渡した。
「はいって重っ!」
「せ、先輩大丈夫ですか?」
「う、うん。持ち上げれなしないけど、持ってるだけなら」
牙狼剣、もっと言えば魔戒剣はソウルメタルで出来ている。
ソウルメタルは武器に加工されると、一定以上の精神力を持たない者には持ち上げられなくなる性質を持つ。
これを振るえないまでも保持できる立香はこの殺し合いに抗う気骨を持った戦士なのだろう。
頼もしい資質を確かめた空蝉丸は、マシュが広げて見せる形で差し出したボックスの中から二本の獣電池を選び取る。
「獣電池15番、20番、ブレイブイン!」
起動させた二本を背中に挿していた愛刀ザンダーサンダーのスロットに装填。
金色の雷と螺旋に渦巻く炎が刃に宿る。
「雷電……火炎渦巻!」
<ザンダー!>
文字通りの烈火の嵐が盾ごとストライクを蹴とばして飛び上がったホシノと、崩されたバタンスをエールや内臓スラスターで戻そうとするストライクを真横から襲う形で吹き飛ばした。
「うわぁああああ!?」
「────ッ!?何だってんだ!?」
「双方武器を納めよ!
生まれた時代や世界が異なろうと、我らは羂索らの蛮行を止めんと立ち上がったブレイブな勇者であろう!
それがこんな序盤も序盤で仲間割れなど、パーフェクトからほど遠い!
離れた場所で今も抗っている見知った仲間や、これから仲間になる名も声も知らぬ同士に恥ずかしくないでござるか!?」
急に現れていきなりなんだ!?と思わなくもない二人だったが、言ってることはぐうの音も出ない正論なのでホシノは武器をその場に捨て、ディアッカは尻もちをついたままの姿勢でモビルスーツの装着を解除する。
(確かに言われてみりゃあ今のオッサンの炎以外全部俺とチビでやったと思うと、ひでぇざまだな……ん?)
吹き飛んだ扉に始まりあちこちに弾痕と焦げ抉れた地面を観れば殺し合っていたと思われても仕方ない。
落ちていた物を拾いながらディアッカはズボンの泥を落とす。
「……悪いなマシュ、リツカ。
ガラにもなく熱くなっちまった。
オッサンも手間かけさせちまったな」
「お、オッサ……うう、拙者も数えで39という事実を痛感するでござるぅ」
満年齢だと38歳である。
一応、ドゴルドの中に封印されてた400年間はカウントしていない。
「んっ!挨拶がまだでござったな。
拙者、空蝉丸と申す」
「ディアッカ・エルスマンだ。
なんつーか、助かったぜ。
ほらチビ、お前もオッサンたちに頭下げろよ」
「……その前に私に言うことないの?」
「お前がその真面に連帯とる気無いクソみたいな態度改めない限り無いね!」
「はっ?」
「お前が暴れるぐらいでどうにかなるんだったらもうとっくにルルーシュとか他の連中がやってるっての。
そんな事も理解できない役立たずのまんまだってんなら、あんまりにも可哀そうだから……お前の先輩の仇も故郷を荒らされた礼も俺が討ってやるよ」
「故郷?」
「地図の右上にアビドス高校とかアビドス砂漠ってところがあるだろ?
お前の地元とか言ってたよな」
そう言ってディアッカは戦闘の最中に落としたらしいホシノの学生証を手渡した。
立香、マシュ、そして空蝉丸は彼女が有れていた理由の一端を察した。
「……そこまで分かってて背中撃ったの?」
「これとお前のチビ相応の器は別問題だ!
俺がクルーゼ隊長やニコルのことで応えてねえとでも思ってんのかよ」
そう吐き捨てたディアッカの眼は、少なくとも、同じ痛みを持つ小鳥遊ホシノには口調や態度と裏腹に本気で悲しそうに見えた。
「それは……ごめんなさい」
「え?お、おう。
分かりゃい良いんだよ……怪我とかねえか?」
「大丈夫。
最初の一発は堪えたけどそれ以外はちょっと熱かったぐらい」
「なら良かった。って、なんだよお前らその眼」
「別に―。ディアッカってなんだかんだ気遣い上手だなって」
「そーかよ。とりあえずセミのおっさんも交えて今後のこと話そうぜ」
「せ、セミのオッサン……」
それなりに荒れてよりホラーテイストになってしまったナハトベースにて5人はそれぞれの住まう世界や、手持ちの道具などに関しての情報を交換し、名簿の確認に移る。
「俺の知り合いは元クルーゼ隊のイザーク、ニコル、アスランと今所属してる艦隊のトップのラクス様。
それからキラ、なんだけどなぜかキラとアスランの名前が二つあるんだよな。
一応、准将とケツに?がついてる奴ら以外は全員いきなり撃ち合いになるようなことはないと思うけど、お前らは?」
「アルジュナ・オルタだけかな?
あとは、もしかしたら豊臣秀吉や徳川家康、あとジークは僕らが一方的に知ってる形だけど、知らない人じゃないかも」
「そのアルジュナ・オルタさんも異文帯の王だった場合、武器を持っているだけで殺そうとして来るタイプなので対話不能と思われます。
オマケに、この5人で令呪や支給品などの後のことを考えないでなりふり構わず束になって戦っても勝てるかどうかはかなりの賭けです」
「マジかよ……チビ、お前はどうなんだ?」
「私は後輩のセリカちゃんと、知り合いの鬼方カヨコ。
あと、名前の並び的にこの先生は廃校対策委員会の顧問をしてくれてるシャーレの先生かな?
それから一番気になってると思う梔子ユメは、私の先輩。
でももう死んじゃったはずの人で、死体も……羂索に今奪われてるっ!」
バキっ!とヒットラインの画面にひびが入る。
その表情は悔しさと怒りに歪んでおり、彼女の中の梔子ユメの大きさを再認識する。
「この聖園ミカさんという方は?」
「ルルーシュってやつは明らかにキヴォトスの人じゃないし、名簿の並びに意味があるって言葉を信じるならキヴォトスの人だとはお思うよ?」
「梔子ユメの関係者って線は?」
「さあ?ユメ先輩の知り合いとかだと流石に分かんないけど……先生はユメ先輩が死んでから着任した人だから、名前の並び的にそう考えたら不自然かな」
「なるほど。
ケンジャクが体として使ってる件とか、クルーゼ隊長が会場のどこかに自分らに通じる何かがあるって話も併せて考えると、アビドスは行っといて損は無さそうだな」
「では最後に拙者の番でござるな。
一番かかわりが深いのはこの立風館ソウジ殿。
次いで関りがあるのはギラ・ハスティー殿と宇蟲王ギラでござる。
ソウジ殿は共にドゴルドらデーボス軍と戦った戦隊で、ギラ殿ははるか遠い星チキューのシュゴッタムという国を治める王にして王様戦隊のレッドで……かつて拙者のせいで宇蟲王ギラにしてしまった御仁でござる……」
「えっと、どうゆうこと?」
「一言でいうとタイムパラドックスという奴で……」
あの時の空蝉丸は、コメディーリリーフにして大戦犯だったと言っていい。
宇蟲王ダグデドの襲来と、ダグデドにさらわれたキョウリュウレッドこと桐生ダイゴを助けるために何度も時間を超えた末に親切心からギラに過剰な力を与えた結果、全宇宙を支配する最低最悪な邪悪の王を誕生させ、王様戦隊たちの運命を滅茶苦茶にしてしまったのだから。
「つまり、マシュたちの言う所の異文帯だっけ?
みたいな事態を引き起こしちまったって訳か」
「何やってるの……」
「あの後過去の自分を殴って止めたり色々あって宇蟲王は倒しきったはずなのでござるが……今のこの状況も拙者のせいか?と問われると肯定も否定も出来ないでござる……。
しかし!拙者も侍、そして何より戦隊の端くれ!
この殺し合いも、どこかにいるだろう怒りの戦騎ドゴルドも止めて見せるでござる!」
「怒りの戦騎ドゴルド?」
「そんな名前あったっけ?」
「彼奴の気配を感じたのはクルーゼやルルーシュの放送が終わった後。
恐らく、運営の用意した最強のNPCモンスターのことでござる」
「場所は分るんですか?」
「かつて奴の姦計に嵌り、400年間生きた鎧である奴の部品として封印されてきた故、拙者は奴を感じ取れるのでござる。
10年前はもう少し具体的な位置まで分かったのでござるが、今は大分南の方としか」
ディアッカ、そして立香たちに関係がありそうな施設やエリアも見当たらないこともあって4人は東側のアビドス砂漠に向おうとしていたので全然違う方向になってしまう。
「空蝉丸さんはそっちに向かうの?」
「無論。一体何ゆえかは知らぬが、蘇ったのならもう一度黄泉路に送り返すが我が務め!」
「ならしっかりやってもらわねえとな」
そう言ってディアッカは最後の支給品、ロックビークル01サクラハリケーンを投げ渡す。
「これは……」
「その錠前、変形してバイクになるんだってさ。
俺にはストライクがあるし、一人で動くならオッサンが持ってけよ」
「ディアッカ殿、、かたじけない!」
「その代わり、マジにそのドゴルドってやつが最強のNPCモンスターだった時は頼むぜ?」
そう言ってディアッカはリュックを背負い直し、空蝉丸も支度を始めようとする。
「待って。その前にこの5人でB-6の病院に寄ってかない?」
「病院?ああ、確かに態々イミテーションの民家にソファーや観葉植物置いてあるような凝り性どもが作ったんなら、普通の病院に置いてある物も大体置いてあるか」
「なるほど、ドゴルドや最終勝利を目指す参加者に襲われた者を助ける為にも必要でござるな!」
「弱った人や、弱った人を狙う人も近くに居るなら集まることも予想されます。
十分な注意が必要ですが、行く価値はあると考えます」
「あまり下手に探りを入れ過ぎて余計な者まで探し当てたら嫌だけどね」
「そこはほら、クルーゼ隊長の言う所の鍵穴探しってことで」
「私としては一秒でも早くアビドスに生きたいんだけど……」
「再開した時にカワイイ後輩ちゃんが死にかけてたら後悔するのはお前だぜ?」
「行こう」
なんだかホシノの扱いを心得つつあるディアッカであった。
【エリアC-5/ナハトベース/9月2日午前6時】
【空蝉丸@獣電戦隊キョウリュウジャー】
状態:決意と罪の意識(大)、ドゴルドを察知
服装:いつもの服装
装備:牙狼剣@牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者
ガブリチェンジャー@獣電戦隊キョウリュウジャー
ザンダーサンダー@獣電戦隊キョウリュウジャー
6番の獣電池×6@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:獣電ブレイブボックス@獣電戦隊キョウリュウジャー、2、3、5、11〜25の獣電池(15、20は使用済み)@獣電戦隊キョウリュウジャー、サクラハリケーン@仮面ライダー鎧武、ホットライン
思考
基本:このバトルロワイヤルを止めるでござる
01:この気配、ドゴルドの!
最強のNPCモンスターとはうぬであったか!
02:大分獣電池に余裕が出来たし、脚も手に入ったでござる。
マシュ殿、ディアッカ殿、かたじけない!
03:ディアッカ殿とホシノ殿は喧嘩するほど仲が良いでござるな
04:一度4人と共に病院に寄ってからドゴルドを探すでござる。
05:ソウジ殿もギラ殿も無事だと良いが……
06:宇蟲王ギラはやはり拙者のせいで?
07:流牙殿にこの剣を届けるでござる。
参戦時期:宇蟲王イーヴィルキングを倒した後
備考
※このバトルロワイヤルがまた自分が引き起こしたタイムパラドックスのせいなのでは?と思っています。
※400年間ドゴルドに封じられていた影響でドゴルドの気配を感知できます。
少なくとも大雑把な方角ぐらいは分かります。
【ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEED】
状態:正常、ダメージ(小)
服装:錬金アカデミーの制服(赤)@仮面ライダーガッチャード
装備:ストライクガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED
令呪:残り三画
道具:ホットライン、私服、錬金アカデミーの制服(青、黒)@仮面ライダーガッチャード
思考
基本:あの脳味噌女をとっちめる。
01:イザークに、死んだはずのニコルまで!
なんでキラとアスランは名前が二つも?
02:クルーゼ隊長、マジにあの脳味噌女と組んでんのか……。
03:リツカ、マシュ、チビ、セミのオッサンと病院に向かい、その後アビドス砂漠の方に向かう。
04:少しはこのチビともうまくやんねえとな。
05:学園都市の癖に物騒すぎだろキヴォトス。
06:人理再編ねぇ。戦争とどっちがクソなんだか。
07:ルルーシュの野郎、準備万端じゃねえか
08:ムウのオッサンとラスティの分も暴れてやるぜ
参戦時期:少なくとも第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦開始後
備考
※ストライクは起動時にパックなし、エール、ソード、ランチャーを選択できます。
※マシュ、立香、ホシノと情報交換しました。
【小鳥遊ホシノ@ブルーアーカイブ】
状態:健康、ユメ先輩の死体を利用されている現状への怒り(極大)、羂索、茅場、クルーゼへの殺意(極大)、一応今は冷静
服装:臨戦
装備:アタッシュショットガン@仮面ライダーアウトサイダーズ
折り畳み式の盾@ブルーアーカイブ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン(画面にヒビ有)
思考
基本:羂索たちを殺す
01:羂索たちに関する情報を集める。
02:こいつ(ディアッカ)、リツカ君、マシュちゃん、空蝉丸さんと病院に寄ってからアビドスを目指す。多分セリカちゃんや先生も行くだろうし
03:最強のNPCモンスタードゴルド……もしセリカちゃんや先生に手を出すなら空蝉丸さんより先に殺す。
最悪、中身ごとになっても。
04:クルーゼの部下だったらしいけど、そりゃあキツイか
参戦時期:対策委員会編第三章にて空崎ヒナと会敵するより前
備考
※ディアッカ、マシュ、立香、空蝉丸と情報交換しました。
しかし本人がいっぱいいっぱいなのでどの程度理解できてるか分かりません。
【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
状態:正常
服装:いつもの服装
装備:霊基外骨骼オルテナウス改修型@Fate/Grand Order
令呪:マスター持ちサーヴァントの為なし
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:羂索の企みを阻止する。
01:先輩、ディアッカさん、ホシノさん、空蝉丸さんと病院に向かい、その後アビドス方面に向かう。
02:C.Eにキヴォトス……特異点や異分帯、先輩がレムレムしている様子やぐだぐだな感じはしませんね。
03:羂索たちの用意した令呪は預託令呪に近いようですね。
04:ディアッカさんからすれば私のような存在は珍しくないのでしょうか?
05:ホシノさん……ひとまずは安心なのでしょうか?
06:アルジュナ・オルタやドゴルドには要警戒。
参戦時期:少なくとも二部第五章後半より後
備考
※ディアッカ、ホシノと情報交換しました。
※少しだけディアッカとホシノの令呪を調べカルデアの物とは違い預託令呪に近い物であると考えています。
※ストライクのビームサーベルを一本喪失しました。
【藤丸立香(男)@Fate/Grand Order】
状態:正常
服装:カルデア戦闘服@Fate/Grand Order
装備:カルデア戦闘服@Fate/Grand Order
令呪:残り三画(マシュ、ブラックバレル以外に使用不可)
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:羂索の企みを阻止する。
01:マシュ、ディアッカ、ホシノ、空蝉丸さんと病院に向かい、その後アビドスの方に向かう。
02:マシュ以外のサーヴァントと繋がってない……。
いつも通りと言えばいつもも通りだけど
03:ホシノ……ひとまず大丈夫かな?
04:かっこよかったなぁ、ガンダム。
キョウリュウジャーも回数制限なかったら変身を観たかった。
参戦時期:少なくとも二部第五章後半より後
備考
※ディアッカ、ホシノ、空蝉丸と情報交換しました。
【支給品解説】
・獣電ブレイブボックス@獣電戦隊キョウリュウジャー
…マシュ・キリエライト@Fate/Grand/Orderに支給。
獣電池を持ち運ぶためのアタッシュケース。
獣電戦隊はパートナー獣電竜の獣電池を大体個人で所有していたので、主に獣電池の性能テストをする際に用いられた。
2、3、5、11〜25の充電池が一本ずつ入っている。
・サクラハリケーン@仮面ライダー鎧武
…ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEEDに支給。
ユグドラシルが開発したロックビークルの一種。
解錠して投げることで錠前形態からその名の通り桜花の装飾がされたオートバイに変形する。
錠前形態で破損するとバイク形態に変形できなくなる。
本来は一定以上のスピードに達するとヘルヘイムの森に突入するが、当ロワではその機能は封印されている。
【NPCモンスター解説】
・105ダガー@機動戦士ガンダムSEED
…地球連合軍がストライクガンダムの各種機能を盛り込んで開発した量産機。
ストライカーパックにも対応しており、今回ディアッカが遠目に確認した機体はエールストライカーを装備していた。
・ジンハイマニューバ@機動戦士ガンダムSEED
…ザフト軍が次期量産機ゲイツ配備までの間に合わせとして既存機のジンを回収した機体。
革新的な機能が追加された訳ではないが、今までとほぼ同じ使用感、共通パーツの多い上位機体ということで現場から絶大な支持を受け、地球連合軍からすら優先捕獲対象に選ばれたほど。
今回ディアッカが遠目に確認した機体はサブフライトシステムを装備している。
・バクゥ@機動戦士ガンダムSEED
…ザフト軍が重力圏の局地戦用機体として開発した四足獣型モビルスーツ。
四足歩行とキャタピラ装甲を使い分け、武装も選択式ミサイルポットとレールガンに加えてビームサーベルと遠近対応。
非常に完成度が高く、機体の刷新が速いコズミック・イラにおいてマイナーチェンジこそあるが主力地上戦機の座を退いていない非常に完成度の高い機体。
地上じゃこのバクゥが王者とすら評される。
投下終了です。タイトルは 命に使い道 です
投稿します。
澄んだ空にひとつふたつ
光る星たちが駆け出す
何を望み どこへ行くの
ねぇ 聞かせて
『これよりこのバトルロワイヤルはより一層加速していく!
最強のNPCモンスターも投下され、君たちスタンスに関わらずは否が応でも戦わざるを得なくなることだろう!
掴め!最高のガッチャ!
6時間後にまた会おう!』
「…分かってはいましたが、本当に…本当に酷い人達ですね」
「僕もそう思う…けど、この怒りはアイツらの望み通り返してやりましょう、この催しに叛逆する事で」
砂地獄から離れて、近くの家で情報交換をしようとした3人が聴かされた放送はギラとユフィリアの心中に激しい怒りが沸かせていた…
自ら消滅させた2人に消滅させた奴らが抜け抜けと哀悼の意を捧げて欲しいと言った事が大きな理由だ。
放送前から決意していたが、彼らは改めて決意する。絶対に許してはならない、必ずこの殺し合いを起こした奴らを倒すと
そしてホットラインにある名簿を見て…ギラは驚嘆の表情を描いていた
「…私の知り合いはいませんでしたが…2人はどうでしたか?」
「私はいなかったよ…ギラおにいちゃんどうしたの?」
「…何で…何で此奴が今の僕と同じ世界にいるんだ!?」
「…以上が、最近倒していたはずの正真正銘の邪悪の王…宇蟲王ギラについてです」
「そ、それほどまでに強い敵がこの会場にいるのですか…!?」
かつて自分が仲間の空蝉丸による不本意な…歴史改編の結果自分が変貌してしまった姿、圧倒的な暴力で自分の世界の全てを支配し続けていた…らしいという事をギラから語られた
「僕も全てが終わった後に仲間から何があったのかを聞いただけだから具体的なアイツの強さは知らないけど…紛れもない脅威である事は伝えられてる、一刻も早く対処しなくちゃ多くの人達が犠牲になる!!」
「成程…分かりました、私も共に戦わせてください!!」
「ギラおにいちゃん、ユフィリアおねえちゃん!!何かテレビついてる!?」
「「…!?」」
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』
「…切れちゃった…なんかすごいこと言ってたね」
dxXqzZbxPYさんすみません!割り込んでしまって!
投下のあと、自分も投下させていただきます!
「…今の放送、貴女はどう思いました?」
「…底知れなさを感じました、私も王がどういうものなのか、一応は知ってはいましたが…これ程威圧を感じさせられたのは初めてです、あ、後テレビという物はこのような事が出来るのですね…初めて知りました」
「え?おねえちゃんテレビを知らないの?」
「…もしかして」
ギラは他にも様々な質問をした…その結果
「やはり…僕達はそれぞれ違う世界からここに集められている気がする、それぞれの文化や国が違いすぎる…」
「そうですか…貴方とは同じ世界の住民だと思っていました…」
「多分他の人達も皆世界は違うんじゃないかな、どうやって世界が違う人達を集めたのかは分からないけど…」
「どういう技術なのか…底知れない相手ですね…」
「…話を元に戻そう、あの放送について、僕は何か…自分に似ているものを感じた」
「というと?」
「僕や僕の兄に似た力強さを感じたんだ、だから…僕は何か裏を感じてる」
「裏とは…?」
「…本当に支配とかを望んでいるのかなって…詳しく話してみなくちゃ分からないけど…」
「そうですか…」
「だから…僕の今後の方針を聞いて欲しいけどいい?」
名簿を見ながら色々考えていたギラは…俯いていた顔を上げた
「僕達はこれから多くの人達と話をする必要があると思うけど…その中で特に接触したい人達がいる、ケンジャクがいっていたクルーゼ、カモ、アヤバと、ルルーシュ、綾小路を知っている人物と、僕の知りあい、そして…梔子ユメ、遊城十代、キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、仮面ライダーガッチャードの5名だ」
「沢山の人達に話を聞かせてもらう必要がありそうですね…主催達やルルーシュ一派については彼らの情報を聞かせてもらう為ですよね?貴方の知り合いというのは?」
「空蝉丸と立風館ソウジという人達、彼らとは何度か共闘した事があるし、宇蟲王ギラについても知ってる、協力をしていきたい人達だ」
「…最後の5人は?ユメはケンジャクの今持ち得る力について話を聞くためだというのは予想できますが」
「まず前の3人から理由を説明するけど、僕と同じパターンと考えてみると…彼らは味方になってくれる気がするんだ、そして…覇王十代、アスラン・ザラ?との対策も練れるかもしれない」
「成程、貴方と宇蟲王ギラが相反する同士だったように、似た名前同士が敵対している可能性を考えたのですね、ですが何故敵味方まで予測できるんですか?」
「まふゆちゃん、遊戯と覇王だとどっちが名前としておかしいと思う?深く考えないで答えていいから」
「う〜ん…覇王って名前の方が…おかしいと思う」
「というように、似た名前同士のどちらかは何らかの違和感がある、だから違和感がある人の方は僕と同じように何かを歪められた存在だと僕は思う、僕も遊戯の方が名前としては正しい気がするし、アスラン・ザラについては名前の後ろに?なんて普通はつかないと思う、だから違和感のない方に接触する事は、敵かもしれない相手の情報を知る事に繋がると考えたんだ」
「…キラ・ヤマトについては?」
「…彼の場合は立場が違うだけで大した違いはないかもしれないけど、念の為に話を聞いたほうが良いかなって、そして最後の仮面ライダーガッチャードについてだけど、彼は色々と重要だと思ったんだ、アイツらは最高の『ガッチャ』って言っていたし、仮面ライダーの意味がルルーシュの言葉通りなのかも知りたい、あの時の様子を見るに、僕達と同じ殺し合いに反逆する側みたいだし…どうかな?」
「…接触の意図については分かりました、私達は知り合いがいないようですし、ギラ国王について行きたいと思います。ですがまずどこに向かうのでしょうか?」
「…それを話す前に少し忘れ物を取りに行っていいかな?砂地獄のある所に先程倒した男の支給品があるかもしれなかったのを今思い出したんだ」
「分かりました、まふゆちゃんは私がしっかり様子を見ています、後、自分の持ち物について改めて確認しておきます」
「ギラおにいちゃんどこ行くの?」
「ちょっとそこまで、大丈夫、すぐここに…君のいる所に戻ってくるから、約束だ!!」
「…うん!!」
(…本当に子供の扱いがうまいのですね、貴方は…)
(…やっぱり、か)
…ギラの離れた理由に嘘は無い、支給品の回収の為というのは、だがそれだけではない…確認したかったのだ
…自分が人を殺したという事を
あの時、あの怪物を倒し、2人を抱えて上に上がった時…見てしまったのだ、爆発した後に両断された怪物が人の身体に戻っていたのを
それを見間違いだと信じたかったが…砂地獄にははっきりと飛び散ってしまっていた、決して黒くない、人間の証である赤い血を
「………僕は人を殺してしまったという事になるな………」
例え正当防衛だろうとしても、どうしようもない悪党だとしても、人だと気づきにくい存在だったとしても、殺してしまった真実は消えない、罪悪感は拭い取れない、何故タチの悪さだけで、食人と言う事を言い出しただけで、宇蟲王と同じような怪人と決めつけてしまったのか、もしリタがこの場にいたらこの罪をどう言っただろうか…などをギラは考えていた
(…難しいかな…自分だけでこの罪悪感をどうすればいいのか考えるのは…)
…そう、この邪悪な殺し合いの舞台に自分と深い仲間だった人達は…誰1人いないのだ、共闘したソウジさんと空蝉丸さんは確かに信用出来る仲間だ、でも、それでも長い間、時には国王として競い、時には一致団結して支えあった5人の王様達がそばにいてくれた方が、この気持ちによりケジメをつけやすかったのではと思う気持ちは嘘じゃない…仲間との絆に優劣をつけているわけではない、だがそれでも時間の差は大きかったのだ…こんな殺し合いに兄や王様達が巻き込まれる事なんてないほうが良いのは分かっているのだが
いや、他にもそばにいて欲しかった人は…
(お兄ちゃんなら…割り切れたのかもしれないな…)
自分以上の『邪悪の王』になれて、人の事を想えて、そしてその為に手を血で汚しても進む事が出来た兄ならば…きっと前に進めたのかもしれない…こんな事に囚われかけている自分をより情けなく思ってしまうくらいに
…ここまで見れば分かるだろう、実は、今のギラはネガティブな感情に飲まれそうになっているのだ、2人から離れたのはそういう理由もあった
…こうなった理由は今まで述べられた理由だけでは無い
まず、そもそも人同士の殺し合いというのは彼にはあまり縁がない、偉大な兄、ラクレスとの一騎打ち以外は経験がないため不安に想う気持ちも強くなりやすかった
次に、宇蟲王ギラに対抗する事についてである。そもそもアイツから分離した存在…イーヴィルキングを倒す為に…かなり多くの仲間との協力が必要だった。それが今はまだ期待できないまま、倒しに行った所で本当に倒せるだろうかと思ってしまっていた、だがらと言って仲間を集める事に時間をかけていたら宇蟲王ギラはその間に多くの犠牲を出すのではないか、そうなる前に倒すべきでは…というジレンマにも悩まされていたのだ。
そして最後にもう一つ、ギラはこの殺し合いに叛逆するつもりなのは確かに決めているだが
『叛逆を目指す諸君は是非覚えておいてほしい』
『我々を倒せるものなら倒してみると良い。
それこそが我々の観たいガッチャでもある!』
奴らは叛逆さえも肯定しているのだ、つまり奴らにとって叛逆は邪道ではない事を示されてしまった
敵の邪道を往く事こそがギラの戦い…そういう意味では既に先手を打たれてしまった事にもなる…その結果、本当の意味で邪道を往く為にどうすればいいのか分からなくなってしまった
…以上の理由がギラをネガティブにしてしまっていた
「…僕は本当の意味でこの殺し合いを破壊したい…でも本当にそんな事出来るのかな…その為の1番の方法も分かっていないのに」
ヤンマなら分かったのかな…そう思いながら彼は無意識に自身の持つオージャカリバーの青い羽根を押した
『Tone boy!』
「…ってえ?」
…不意になった変身音と現在鳴り響いている待機音は彼にとって予想外のものであった。変身するつもりは全くなかったのだから
(…まさか)
入れ替わり事件の時以外、彼はクワガタオージャーにしか変化はした事がない、当然だ、初めてこの剣を持った時から直感が変化するべき姿を感じ取っていたから
だから…これから住宅の鏡の前で試すのは未知の変化だ
『You are the KING, You are the You are the KING!トンボオージャー!!』
…現れた姿はトンボオージャー、ヤンマガストが日頃から変身していた姿だ
今までクワガタオージャー以外には変化した事がなかったのだが…ケンジャクがこの剣を弄ったのか、それか元々出来たのか…それは分からないが今は変身できたのが事実であった
(もしかして…)
右手で引き抜き肩にかけ、突き出した左手で挑発的なポーズをぎこちなくやっていたギラは他の姿を試してみる事にした。
『パピヨンオージャー!』
『ハチオージャー!』
『カマキリオージャー!』
次々と仲間の姿に変化し、彼らのポーズを取っていく…最後にヒメノが変身しているカマキリオージャーで止まった
(やっぱり全てのキングオージャーになれるんだな…)
スパイダークモノスとオオクワガタオージャー以外の、そう思いながら思わず優雅なポーズをした時に…ふと彼は思った、この姿になった自分を見たらヒメノはどう思うだろうか
『私の美しい王としての姿を勝手に使うなんて誰が良いって言ったかしら?』
「…というだろうなぁ、他の3人も…」
『俺の…俺達の誇りある姿に何勝手になってんだスカポンタヌキ!!』
『その姿…意匠権違反で重罪になりたいか?』
『おーうおうおうおう、よもやよもやギラ殿が私の姿を勝手に使われるとは、私の姿はギラ殿には似合う事などないでしょう』
…ギラは変身解除をした、恥ずかしくなったのだ、彼らの誇りを盗んでしまっている気がしたから
…そして、彼らの言葉は終わらなかった
『どんな場所でも、貴方は貴方らしく…ギラらしくありなさい、それこそが貴方の我儘、美しさだと私は思うわ』
『この世界には少なくてもお前を含めて3…いや、5はあるんだ、それだけじゃクソ野郎共には届かねぇだろうけど…そっから沢山の1をお前らしく集めてよぉ…色んな事をよーく考えながら…お前が取りたいテッペンを取ってやれ!!』
『…先程はあのような事を言ったが、お前がいる世界には罪を適用する為の裁く存在が私を含めていない…だからお前が私の代わりに…法の代わりに人々を守れ…私の事を考えるな、私が信じているお前らしくあればいい…頼んだぞ』
『ギラ殿の王としてのあり方は真っ直ぐあり続ける事でしょう、ならばこの世界でもそれを貫いてくだされ、沢山の悪意と嘘がこの世界では渦巻くかもしれませんが…このカグラギの嘘を知っているギラ殿ならば乗り越えられると私も信じますぞ』
言葉は4つだけでは収まらない
『お前さんの物語はここで終わる事はない…と、俺も信じている、そして主催達の、ルルーシュ達の行間を読む事は難しそうだが…それについても沢山の仲間と力を合わせればきっと…いや、間違いなくお前さんならば読めるだろうねぇ』
『ギラお兄ちゃん…負けないで!!』
『ギラ様…貴方がいる場所に私達がいない事、誠に申し訳ございません!!どうか…どうか負けないでくだされ!!』
『ギラさんなら…優しい邪悪な王様なら…蝉のオジキと、師匠と一緒なら…きっと大丈夫だよ』
『すまないな、ギラ…この残酷であろう世界で…兄としてお前を直接助ける事が出来ない事を本当は悔しく思う…だが私はお前が私の力がなくとも人々の為に戦え続ける事が出来る事を知っている、だから…頑張れよ、ギラ…そして負けるな、最強にして始まりの国、シュゴッダムの王、ギラ・ハスティー!!』
「………」
『Qua God!!』
目を閉じていたギラは自分の王としての証…赤いクワガタのスイッチを押した
目を閉じればそこにあったのは無限に等き数の様々な色達
何故その色がしっかり浮かんできたのか、それは今までの様々な戦いを乗り越えてきた事で得てきた思い出のお陰か
『Tone boy!』
『Come and kick it!』
『Pop it on!』
『Hatch it!』
その思い出を噛み締めるように、青を、黄色を、紫を、黒を次々と押していく
そしてもう一度…自分の王としての証に手をかける
「…王鎧武装!!」
『You are the KING, You are the You are the KING!!』
身に纏うは長年纏い続けた赤き王としての姿
『クワガタオージャー!!』
「ナーッハッハッハッハッハッハァッ!!!ケンジャク達…よく聞くがいい!!」
変身した彼は高らかに…叫んだ、どこかで見ているであろう殺し合いを仕組んだ者達へ
「貴様らがこの殺し合いで何を考えているのかは分からんが…どんな目的を抱いていようともぉ!!多くの人の命を危険に晒さなければいけない目的など…気に喰わん!!!つまらん!!!許されん!!!
貴様らにとって異世界の人達を犠牲にすることを正義と見なすのならば…俺様は!!!貴様らへの叛逆の道を往きながら、服従、叛逆でも無い第三の道を必ず見つけて…真の意味で貴様らの全てを滅する邪悪の王になってやる!!!
恐怖しろ!!!そして慄け!!!一切の情け容赦なく!!!俺様が、この世界を支配する!!!」
それはケンジャク達への宣戦布告と…自分への激励を込めた叫びだった。
罪悪感が全くなくなった訳ではないし、ケンジャク達の詳しい目的等はまだ把握していない、仲間集めもまだ2人では足りない
だが、それでも前に進める気がしてきていた。
気づいたからだ
自分は1人でも独りじゃない、
王達の、誇り高き叛逆者達の心をそばにおきながら
前に向かって進んでいこう、きっとその先に光はあるはずだから、ダグデドを倒した時のように!!
限りなく伸びていく未来へ
たどり着きたい世界を拓こう
「私はここでみんなを感じて飛びたい」
…心身共に奮い立たせた後、ギラは蟻地獄の隣にあったアントライオンの男の支給品を回収する事にした。
幸い、彼が背負ってたバックは爆発と同時にその爆風で吹き飛んでいた為に蟻地獄に呑まれなかったのだ、しかも両断もされていなかった
その支給品バックの中にあったのはホットラインと食料…そして
「まさかこれがあの男に支給されているなんて…」
…その支給されていた物はドンブラスターという『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』にへと変身の為の銃であった
「タロウさん…」
彼もまた縁を結んだ1人、些かカオスすぎる流れではあったが…最後には共におでんを食べて和解までしたのだ
故に彼の力の強さは知っている、頼りにはしていきたいが…ギラは既にシュゴッダムの王としてこの殺し合いの打倒を決めている。
だから名乗っていたドンモモタロウになるつもりはない、が…詳しくはこの支給品を調べてからだ
「…タロウさん他にもこんな力があったんだ…」
調べてみて分かった事、それはドンブラスターにはなんと他の戦隊にも変身できるという事だ
付属されていた変身の為のアイテムは6つのギア、そしてそれを使えばそれぞれの戦士に変身が可能になるらしい
だが制限とデメリットも記載はされていた
① 最初は必ず暴太郎戦隊ドンブラザーズのギアを使わなければいけない
② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体は男になる
③ それ以外の4人のドンブラザーズのギアを使った場合は変身者の性別に左右される
④ そして他の4人のギアとドンモモタロウのギアを使った後に他の戦隊のギアを使った場合、その4人の色と同じ色を持つ他の戦隊の戦士になる、肉体はその戦士の性別に左右される
という物らしい
(…何で肉体が必ず男になるのかはよく分からない…タロウ…太郎だから?)
…とりあえずこのルールの細かい事は置いておこう、今ギラが悩ませているのは
(…この力…彼女、使うかな…?)
そう、自分はこの力を使わない、となるとユフィリア達に渡した方がいいのだが…その代わりに強制性転換される憂い目に合うことになるのだ。
まずまふゆについて、あの子は戦闘について全く知らない子供…ギラ達が必ず守らなければいけない存在だ、そんな彼女が最前線に立たせる事はあってはいけないはずだ、防護服として渡す…のはいいかもしれないが、恐らく変身した姿は今の彼女より大きくなっているだろうと予測する、キジブラザーは普通の身長の人だったのが急にかなりの長身になっていた。つまり変身前がどんな姿だろうと、変身した姿は共通だと考えるべきだ…そうなるとまふゆはやはり変身しない方が良いかもしれない、的は大きくなればなる程当たりやすくなってしまう
次にユフィリアさんだが…彼女はそもそも戦闘手段は既に持っているようだ、だからあの時持ちこたえる事が出来ていたのだろう…となると彼女はこの力を使う必要があるのかと疑問を抱いてしまう
…やはり自分が銃による攻撃手段として使うか…?いや、自分は銃による戦いは不慣れだ、牽制には使えるかもしれないが
(…とりあえずユフィリアさんに相談してからこの力をどうするか決めよう)
そう言って去ろうとした時、ギラは真っ赤に染まっているアリジゴクの先を見つめた
「…アントライオンの人、貴方が邪悪な人であった事は確かだ、それでも、命を奪う必要はなかったと、今は後悔している…本当にごめんなさい」
そう詫びをした後、彼は2人の元へ戻っていた
「ただいま!!」
「おかえり、ギラおにいちゃん!!」
「おかえりなさいギラ国王…聞こえてましたよ、貴方の口上を」
「あっ……!?ごめん、つい色々と叫びたくなって…」
「大丈夫です、それはきっと貴方に取って必要な事だったのでしょう?」
「は、はい…」
「ならば気にしないでください、それでは何処に向かいますか?」
地図を開きながらギラは話し出す。
「…最終目標はコーカサスカブト城に向かってからテレビ局に行く事にしたいと思ってる、恐らくテレビ局ではかなりの戦いが起こると僕は思う…多くの思想が交わる場所はどうしても平和に纏まるのって難しいんだ…そこに行く前にキョウリュウジャーの皆が集まるかもしれないコーカサスカブト城に行ってから、テレビ局に行きたい、もしかしたら僕が使える何かがあるかもしれないし、でも恐らくその城には宇蟲王も向かっている、だからその城に行く前に、道中の施設に寄って周りの人達と会って協力してくれるように頼みたい」
「…つまり旧幻夢本社に行って、それから天ノ川学園高校か、久溜間運転免許試験場に向かうのですね」
「うん、それでいいかな?」
「分かりました、共に行きましょう!!」
「おにいちゃん達についていく!!」
「キシャキシャー!!」
こうして3人と1匹は安息の家から離れる事にした…その先を行った果てに希望が…それぞれの本来いるべき世界がある事を信じて
明日もあなたが
笑顔でありますように
【エリアD-7、現代都市 9月2日午前6時】
【邪悪なるギラ軍団】
【ギラ・ハスティー@王様戦隊キングオージャ―】
状態:正常
服装:いつもの服装(第二部)
装備:オ―ジャカリバー@王様戦隊キングオージャ―
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン×2、ドンブラスター+アバタロウギア×6@王様戦隊キングオージャ―VSドンブラザーズ
思考
基本:ケンジャクたちザコどもを悉く滅ぼし、邪悪の王としてこのゲームの真の邪道を見つけて見せる。
01:民は守る。この場にいない王様戦隊の仲間の分まで
ゲームに乗った者たちも極力無力化、撃退にとどめたい。
02:テレビ局に行く過程でケンジャクたちに反逆する仲間を集める。そしてケンジャク達の目的を探る。
まずは恐竜戦隊の仲間と合流したい。
03:ケンジャク、ルルーシュ、綾小路、ケンジャクの言っていたクルーゼ、カヤバ、クチナシ、カモ、ルルーシュが言っていたマリアンヌ・ランペルージ、ゼア、シュナイゼルについて知る者を探す。
04:宇蟲王ギラに最大級の警戒、どうにか打倒するための方法を見つける
05:覇王十代、アスラン・ザラ?にも警戒、名前が近い遊戯十代とアスラン・ザラと接触してどういう存在なのかを聞いておく
06:アントライオンの男を殺した罪は背負いながら前に進んで見せる
07:このドンブラスター…タロウさんの力、ユフィリアさん使うかな…?アリジゴクの前で考えたことも含めて歩きながら相談しよう
08:梔子ユメと二人のキラ・ヤマトにも一応話は聞いておきたい
参戦時期:VSキョウリュウジャー終了後
備考
※不死性はある程度削がれています。
※シュゴットは令呪を使わなければ呼び出せません。
また、呼び出せたとしても大幅にスケールダウンしています。
※VSキョウリュウジャー終了後なので他のスーパー戦隊に関する知識も少しはあります。
【ユフィリア・マゼンタ@転生王女と天才令嬢の魔法革命】
状態:正常、ダメージ(小)
服装:いつもの服装
装備:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:このゲームに反逆する
01:いざとなれば自国民が最優先だが民は守る。今は近くにいる朝比奈まふゆさんをしっかり守る
02:ケンジャクたちに反逆する仲間を集める。
03:ギラ国王と共に歩む、彼は信用出来ます。
04:ケンジャク、ルルーシュ、綾小路、ケンジャクの言っていたクルーゼ、カヤバ、クチナシ、カモ、ルルーシュが言っていたマリアンヌ・ランペルージ、ゼア、シュナイゼルについて知る者や医者を探す。
05:参加者が異世界から集められているとは…勘違いをしてしまっていました
06:周りは見たことがないものばかりです…この世界の文明器具について詳しく知っている人に教えてもらいたいですね
参戦時期:少なくともまだナチュラルな人間だったころ
備考
※制限の詳細は後の書き手様にお任せします。
※シュゴッタム王国をパレッティア王国が認知してない程遠方の王国であると当たらずとも遠からずな勘違いをしていましたが、誤解は解けました。
【朝比奈まふゆ@プロジェクトセカイ】
状態:正常、不安(中)
服装:私服(家である程度汚れを落としました)
装備:ミニティラ@獣電戦隊キョウリュウジャー
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:おうちにかえりたい
01:おかあさん、おとうさん……。
02:ギラおにいちゃん、ユフィリアおねえちゃんといっしょにいく。
03:ありがとう、ギラおにいちゃん、ユフィリアおねえちゃん、ミニティラちゃん。
04:ユフィリアおねえちゃんはやさしいけどちょっとこわい
05:だれもしってる人がいない…こわいよう…
参戦時期:幼少期
備考
※元の戦闘力がほぼ無いので特に制限はされていません。
まふゆとユフィリアは待機中に互いのランダムアイテムを確認しました。食事もとっています
周辺地域にギラの宣戦布告が響いている可能性があります
【支給品解説】
ドンブラスター+アバタロウギア×6(ドンモモタロウ、マジレンジャー、キョウリュウジャー、ゴーカイジャー、タイムレンジャー、他にレジェンド戦隊のアバタロウギア1枚)@王様戦隊キングオージャ―VSドンブラザーズ
…非リア充の男@風都探偵に支給。
暴太郎戦隊ドンブラザーズの変身道具兼銃武器、暴太郎戦隊ドンブラザーズの戦士や様々な他の戦隊への変身を可能にする。
① 最初は必ず暴太郎戦隊ドンブラザーズのギアを使わなければいけない
② その時にドンモモタロウのギアを使った場合のみ、変身時は必ず肉体は男になる
という制限がされている。
投下終了です。タイトルは
Stellar Stream/PHOENIX
です。投下時間をギリギリ過ぎてしまい、本当に申し訳ございません。
後、ss内の歌詞について、個人で調べてみたのですが、少しの行ならば商売に使わなければ問題は無いと言う情報の元載せました。
ですが、私もグレーゾーンだというのは分かっていますので、Drj5wz7hS2さん全部削るべきだと判断したのならば全撤去でも問題はないです。
Drj5wz7hS2さん全部→Drj5wz7hS2さんが全部
です、失礼しました
dxXqzZbxPYさん 素敵な作品投下お疲れ様です!
私も投下いたします。
真の友情は、前と後ろ、どちらから見ても同じもの。
前から見ればバラ、後ろから見ればトゲなどというものではない。
リュッカート
「綺麗……」
「うん……綺麗だね」
目の前に映るは水槽。
きらめく水槽。
そしてその中をクラゲたちがふわふわと佇んでいる。
ここはアクアリウム。
海の命が集まる場所。
二人は息をのみ込みながら眺めていた。
☆彡 ☆彡 ☆彡
時は少し戻り――――
あれから、放送が流れると3人は耳を傾けた。
重要な情報を聞き漏らさないために。
そして、放送が終わると同時に動いた。
各自、名簿の確認をするため。
「……」
(良かった……どうやらここにはモモちゃんに厘ちゃん・……それに矢賀ちゃんもいないようだ)
ちひろはホッとする。
バンドメンバーやクラスメイトの友人といった知り合いの名が記載されていないことに。
(だけど……なら、なぜ私一人だけ!?なぜなんだ……!!)
と同時に自分一人この殺し合いの参加者にされたことに困惑。そして嘆く。
「……」
(何となくいるかなと思っていたけど、やっぱりいるんだね。キリト……)
サチは自分の予想が当たりながらもその表情は喜べないといった風であった。
そして、その原因は名簿にあった。
「アスナ……」
名簿に記載されている一人の女性。
私とキリトの間にいる女性。
貴方はダレ?
どうして私とキリトの間にいるの?
先ほどの放送通りなら順番には意味があるそうだ。
なら、キリトと私の間にいる”アスナ”には意味がある。
キリト、サチ、アスナの並びではなく、キリト、アスナ、サチの並びに意味が。
私の知り合いではないということは、おそらくキリトの知り合いだよね?
貴方はキリトと……どういう関係の女性(ひと)?
ズキン。私の心がチクリと痛む……
「……」
(サッちゃん……よし!)
ちひろは憂鬱そうなサチを見て一人ケツイをした。
「……」
(アスランだけでなくイザークにディアッカまでいるなんて……人選にクルーゼ隊長が関わっているのは間違いないみたいだ)
死んだ自分が参加者としていることからアスランはいるだろうと予測はできていたが、まさかイザークにディアッカまでいることには驚いた。
そして、放送で名乗ったのもあるが、この名簿が、自分が知っているラウ・ル・クルーゼ本人がこの殺し合いに関わっていることを確定させる。
(だけど、クルーゼ隊長は何を企んでいるのだろう?)
隊に所属していただけに疑問が生じる。
クルーゼ隊長は意味もなくこのようなことをしでかすような人ではなかったと。
それと、今回のこれはザフトは関与しておらず明らかに隊長の独断行動だろう。
理由は明白。
曲がりなりにも地球連合と戦争をしている最中、同じコーディネーター同士での殺し合いなんて評議会が了承するはずがないからだ。
(それに……)
疑問はまだある。
それは名簿に記載されている参加者の一人”アスラン?”
?って何だろう。同姓同名のそっくりさんという意味の?なのかな。
クルーゼ隊長は順番に一応意味があると言っていたことから、名簿から一人離れているこのアスラン?は自分たちとは枠が違うという意味ととらえて良いだろう。
とりあえず、要注意人物と想定しておこう……
(今のところ一つわかるのは、クルーゼ隊長はアスランに対して何か含みがある……かな)
アスラン本人にアスラン隊である二人に死んだ自分……駄目押しとばかりにアスランの婚約者であるラクス・クラインまでいることには正直脱帽といわざるをえない。
(さらに付け加えるなら、名簿の先頭のキラ・ヤマト……名前からしておそらく僕たちと同じ世界の住人だろう。そしてこの人も准将の階級つきで二人記載されている……アスラン?と離れていないことから、同一人物?まさかね……)
アスラン?と違い名簿からそう離れていないことから、同一人物かと一瞬、頭をよぎるが、そんなわけないと一旦、保留する。
そしてニコルはまだ知らない。
キラ・ヤマトが自分を殺したストライクの操縦者であることに。
各自、一旦、情報を交流しようと思った瞬間。
『我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。 亡き皇妃、マリアンヌ・ランペルージが息子。 神聖ブリタニア帝国第99代皇帝である!』
同じ参加者からの演説が突如流れ出した――
☆彡 ☆彡 ☆彡
「とりあえず、キリトの家へ向かう前に水族館に向かおうか」
「水族館に?」
ルルーシュの演説を聞き終えると、ニコルは提案する。
ニコルの提案は水族館であった。
ちひろは、てっきりそのままキリトの家へ向かうと思っていたから、ニコルの提案に首を傾げる。
「うん。地図を見ると、僕たちは今、地図の端にあるI1にいるね。なら、すぐ近くにある水族館へ寄るなら今しかないと思うんだ。だから、キリトの家に向かう前に寄っておきたいなと」
「……そうだね。うん、ニコル君の言う通り私は賛成するよ。サッちゃんはどう?」
確かにI4のキリトの家へ向かってから、またI1の水族館へ寄るのは時間がかかるし、面倒だ。
なら先に近くの水族館へ行くのは悪手ではない。
ゆえにちひろはニコルの提案に笑顔で答える。
「……」
「サッちゃん?」
「……え?あ、うん。私もいいと思うわ」
上の空の様子であったサチは、ちひろの言葉に我を取り戻すと、流されるままにニコルの提案に同意する。
「……」
その様子をちひろは黙って見ていた。
「それじゃあ、さっそく向かおうか」
こうして、3人は水族館へ立ち寄るために歩く。歩く。歩いた。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「着いたね」
「随分、大きい水族館だ……」
「……」
目的地の水族館にたどり着くと、ちひろはその大きさに圧倒される。
それもそのはず。
パンフレットによると、ただの水族館ではなく、海の神秘と冒険が交差する夢の複合エンターテインメントらしい。
片やサチは、まだ心ここにあらずといった様子。
「それじゃあ、二手に分かれようか」
「え?」
「……」
(サチのことたのんだよ)
「……!!」
(うん!まされた!)
ニコルの提案にちひろは戸惑うが、直ぐにニコルの意図を読み取った。
そしてニコルにサムズアップをすると、サチと二人で水族館内を見て回るのであった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「あ!このカクレクマノミって魚。映画でみたことあるよ」
「うん……」
「ほら!この魚、口をパクパクさせているよ!呼吸しているのかな」
「うん……」
「このチンアナゴって全長が30㎝から40㎝もあるんだって!凄いね」
「うん……」
「……」
「不安だよね」
「うん……え?」
「よかった。ようやくサッちゃんこっちを見てくれた」
サチが顔を向けてくれたことにちひろは喜びを隠しきれない。
「キリトくんとサッちゃんの間にいたアスナさんって女性が気になっているんでしょ?」
「!?え……ええ」
ちひろの指摘にサチはドキリとする。
「本当、気になるよね。好きな人の後が自分ではなく違う人の名前が載っているんだから。だけど……会ってみなきゃ始まらないよ。ほら、案外ただの友達だったてオチもあるし!……ね」
「はとっち……」
――ツゥ
涙が流れる。
だが、この涙は哀しみの涙ではない。
喜びの涙。
この殺し合いで初めて出会えた参加者がちひろで良かったことに対する。
「ごめん。はとっち……私」
「気にしないで。だって私達、友達でしょ!」
「ほら!金魚の竹林に回廊もあるよ!クラゲエリアにも寄ってみようよ」
「ええ!行きましょう!」
女二人の友情は確かにここにあった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
冒頭に戻る――――
「クラゲっていいね」
「ええ。うっすら輝いているのが綺麗」
水族館だけあって様々なクラゲが展示されていた。
ミズクラゲにアカクラゲ、シロクラゲ。
タコクラゲにパシフィックシーネットル、サムクラゲ、アマクサクラゲ、ウラシマクラゲ。
正に多種多様。
「へぇ〜……このクラゲ。しびれくらげだって」
「何だか、他のクラゲとは違うみたい……」
(そう、まるでSAOのモンスターみたい)
サチの予想はほぼ当たっていた。
なぜなら”しびれくらげ”はSAOのモンスターではないが、人を襲うモンスターには変わりないからだ。
ガッシャン!
水槽が割れると、しびれくらげたちが二人に襲い掛かる!!
「「!」」
☆彡 ☆彡 ☆彡
「はとっち!気を付けて!一匹そっちに向かった!」
「う……うん!」
(ひえ〜〜、と、とりあえずさっきのようにギターを鳴らしてみよう)
ギュイ――――ン!
ギターから放たれた音符の矢が次々にヒットするとしびれくらげを斃す。
戦闘の素人とはいえ、相手がNPCのため、何とかちひろでも問題なく撃退できている。
これは1つの幸運。
「もしかして、私、強い?」←強くない。
だが、戦闘経験は確実に積みあがっている。
「やぁ――――!」
片やサチも戦闘は苦手であるが、支給品の鎧の魔槍の力もあるため難なく斃せている。
ちひろだけでなくサチも戦闘経験を深めているのだ。
☆彡 ☆彡 ☆彡
一方、ニコルは―――
「はっはっはっはっ!無限回転寿司戦隊・カイテンジャー参上!」
ニコルはニコルでNPCと対峙していた。
「……ッ!」
ニコルはすぐさま愛機の起動鍵を発動するとモビルアーマーを身に纏う。
「ふっ、モビルアーマーに最適な存在!そう、我々がいるではないか!」
「ふん、まったく。そういうことなら仕方がない。全力を尽くしてやろう」
「承知しました。そういうことでしたら、特別にサービス料金で承りましょう!」
「これはやるしかないね」
「よし!それではあの台詞を頼むぞ!参加者!!」
「え?僕が!?」
まさかの無茶ぶり。
「行くぞ!!無限回転寿司戦隊・カイテンジャー究極体のスーパーロボット!!」
「言わなくてもいいんだね……」
どうやら言わなくても問題ないようだ。
「カイテンFXMk.∞、出動!!」
カイテンジャーの言葉に応じて、カイテンジャー達は合体ロボットに乗り込む。
モビルアーマーより多少大きいサイズ。
ヒーロー好きな参加者が目にしたら目を輝かせそうだ。
「ここで、僕は死ぬわけにはいかない!」
しかし、ニコルはひるまない。
約束した。軍人として2人を守ると。
それに、もう一度叶うならアスランに会いたい。
隊の隊長としてじゃない。友人としてだ。
電撃の異名は伊達じゃない。
攻撃を躱すと、ビームサーベルで一刀両断する。
哀れ、寿司ロボットは爆発四散し、カイテンジャー達は消え去った。
そこは悲しきNPC。日曜の約束された勝利の時間ではないのだ。
なお、あくまで彼らはNPCのため、どこかでまた参加者と対峙するかもしれないが、それは別の話になるだろう。
「ふぅ……二人は大丈夫かな?」
モビルアーマーを解除すると、ニコルは二人の安否を心配しつつ、調査を開始した。
☆彡 ☆彡 ☆彡
それから、少し時がたち、三人は合流した。
「そっか……ニコルくんも特に参加者には出会わなかったんだね」
「うん。それに見たところ、何か特別な仕掛けなども見当たらなかった……ごめん無駄足で終わったね」
「ううん。そんなことないよ!こう言うのは不謹慎かもしれないけど……水族館の生き物たちを見て回れたのはラッキーだったかな……て私、思うんだ」
「うん。ここに立ち寄って私も良かったと思う」
ニコルの謝罪に二人はフォローする。
そう、確かに意味はあった。
「……どうやら、いい思い出ができたみたいだね」
「うん」「ええ」
二人の笑顔が答えだった。
「じゃあ、次は……」
「キリトの家……だね」
「大丈夫……ね!」
震えるサチの手をちひろは握りしめると笑顔で応える。
「うん。そうだね」
サチは安堵する。
「それじゃあ、行こうか」
二人のやり取りを微笑ましくニコルは見ていると、やがて移動を促す。
「うん」「ええ」
「……」
チラリと振り向く
見えるは、きらめく水槽の中に住む住人たち
ありがとう
本格的に殺し合いが始まる前に貴方たちを視ることができた私達は幸せだと思う
願わくば、貴方たちが無事のままでいることを願うね
さよならアクアリウム
【エリアl-1/水族館/9月2日午前7時】
【サチ@ソードアート・オンライン 】
状態:正常、疲労(小)、負傷(小)、キリトへの恋へのケツイ、アスナという女性が気になる
服装:SAOのアバター
装備:鎧の魔槍@ダイの大冒険
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗らない、キリトに会って気づいた自分の気持ちを伝える(恋)
01:鳩野(はとっち)・ニコルと行動を共にする
02:キリトの家へ向かう
03:もう、私は逃げない。この世界で頑張る
04:キリト……君に伝えるね。私の気持ち
05:アスナ……キリトとどんな関係の女性(ひと)なのかな……
参戦時期:迷宮区のダンジョン中、トラップに引っかかる前
備考
※鳩野ちひろの演奏によりキリトへの想いは”恋”であると位置づけました。
※ニコルとの会話からSeedの世界のことについて簡単に理解しました。
※名簿に記載されているアスナはキリトとなにかしら関係があるのではと推測しています。
【鳩野ちひろ@ふつうの軽音部 】
状態:正常、疲労(小)、自意識アニマル(大)
服装:谷九高等学校の制服
装備:ラブギターロッド @スイートプリキュア♪
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ゲームには乗らず、生きて帰る
01:サチ(サッちゃん)・ニコルと行動を共にする
02:キリトの家へ向かう
02: サッちゃん……キリト君に告白できるといいね
03:バンドメンバーがいないのはよかったけど、どうして私だけ……
参戦時期:20〜21話の間
備考
※ニコルとの会話からSeedの世界のことについて簡単に理解しました。
※サチとの会話からSAOについて簡単な知識を得ました。
【ニコル・アマルフィ @機動戦士ガンダムSEEDシリーズ 】
状態:正常 疲労(小)
服装:ザフト軍の赤服
装備:ブリッツガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEEDシリーズ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ゲームには乗らず、生きて帰る
01:サチ・鳩野と行動を共にしつつ二人を守る
02: バグスターウイルスへの対処方法を探る
03:キリトの家へ向かう
04:隊長……なぜ、こんなことを?
05:アスラン?には警戒しておく
参戦時期:本編死後より
備考
※情報交換から、異なる世界があることを推測しました。
※サチとの会話からSAOについて簡単な知識を得ました。
※名簿に記載されているアスラン?についてはとりあえず、同性同名の別人ではないかと推測しています。
NPCモンスター
しびれくらげ@ダイの大冒険
その名の通り、攻撃するときに相手を麻痺させるのが得意な海の魔物。
なお新江の島水族館には幻想的なクラゲプラネットがある。クラゲサイエンスもおすすめだ。
へらへらへらbyしびれくらげ
カイテンジャー@ブルーアーカイブ
頭に寿司ネタを載せているどこかの日曜日の戦隊ヒーローみたいな恰好をした5人組。
なお、寿司ネタである”えんがわ”を初めて食べたときの美味しさの衝撃は今でも忘れられない。
ちなみにカイテンジャーはえんがわを載せていない。
”カッコイイから大丈夫”by先生
投下終了します。
結果として日付をまたいでしまったこと申し訳ありません。
投下します
本投下の登場人物にイドラ・アーヴォルンを追加します
「いったたた....。流石に無茶しすぎましたかね。」
ノワルとの激闘の末ビクトリー・キズナバスターの暴発により飛ばされたマジアベーゼは、瓦礫の山に大の字になって倒れていた。
爆発で吹っ飛ばされることはトレスマジアと戦いで何度も経験している。
それでもマジアベーゼの息はわずかに荒く、四肢に力が入らない。
制約がかかった上で消耗の激しい真化を使った。
その上ビクトリー・キズナバスターに許容量を上回るエネルギーを注ぎ込んだのだ。
落下のダメージを気にならないほど、ノワルとの戦いによる消耗は大きかった。
ふらふらとした足取りで立ち上がる少女の姿は、破廉恥な悪の女幹部ではなく、どこにでもいそうな女学生のものであった。
「変身も解けてますか。周りにも人はいないようですし。皆さん別方向に飛ばされたようですね。」
ビクトリー・キズナバスターの爆発によってバラバラに飛ばされた中、逆方向に飛んでいく影が2つ見えた。
あの影が自分以外の4人だろう。見渡しても周りには誰もいなかった。
「まあ、お三方なら問題ないでしょう。
千佳さんは少し不安ですが、マジアマゼンタなら何とかするでしょうし。」
ノワルとの戦いを通じ、4者4様に共に戦った戦士にうてなは信頼を置いていた。
他の皆は大丈夫。胸をなでおろしたうてなであったが、問題は消耗した上に孤立したうてな自身だ。
そもそもここはどこだ?
さっきまでいた街はまがりなりにもうてなのいた街と同等、なんならそれ以上の発展を遂げていた近未来的な空間だった。
だが今いる場所は人気のない裏通りがずっと続いているように、ひび割れたコンクリートがむき出しになった建物ばかりだった。
少しでも体を休めようと壁にもたれ掛かったが、背中からじゃりじゃりと不快な音が混ざる。
壁をよく見ると黄土色の砂がびっしりとこびりついていて、ガラスに映るうてなの背中も砂で汚れてしまっていた。
砂を払いつつ遠くに目をやると、荒廃した都市の奥には無限に広がる砂の大地。
アビドス砂漠が人間を拒むように熱気を立ち上らせていた。
「……砂漠?
あんな近代都市のすぐそばに砂漠ですか!?」
先ほどまでうてながいたF-7エリアは、ゲームエリア的には『租界』と呼ばれる位置に属する。
現在うてながいるのはE-8エリアとE-9エリアの境目だ。
租界の外周部は元となった『トウキョウ租界』からみると『ゲットー』と呼ばれるスラム街が形成されている場所である。ゲームエリアではアビドス砂漠と都市との境目でもある。
彼女のいる空間はちょうど『ゲットー』と『アビドス自治区』が混在した、砂に塗れた活気のない都市の様相を呈していた。
あまりに生活感のない世界にしばし立ち尽くしていたうてなだが、じゃりじゃりと砂の混じった足跡が背後から聞こえ勢いよく振り返る。
「ほら!こっちだよジークくん!!何か落ちてきたところ!」
息を切らせながら走る少女の声が聞こえる。
落下してきた何か――おそらくうてなのことだろう――を探してここまで走ってきたのだろうか。
「ほら!多分このあたり!誰かいる!」
「待ってくれユメ!危険な参加者の可能性もあるんだからそう不用意に近づいては……。」
男の叫びも虚しく、勢いよく十字路を曲がった少女とうてなの目が合った。
エメラルド色の髪をして凹凸の強調された恵体の少女、頭上には太陽を思わせる光輪が浮かんでいた。
その”見覚えのある”姿を前に、うてなは悲鳴をあげトランスアイテムを構えた。
「おあぁぁぁぁぁ!!!!羂索!!」
「ひぃん。ち、違うよぉ!!!」
絶叫と共に、この殺し合いの主催と瓜二つの顔を指さすうてな。
女もまた泣き出しそうな声でパニックを起こしていた。
遅れて走ってきたホムンクルスの青年が両者をなだめるまでの間、文字通り姦しいやりとりが租界の端で続いていた。
◆◇◆◇◆
午前7時の紫関ラーメンに、ラーメン屋特有の油の交じり合った濃厚な空気はなかった。
年季の入った木造建築は最低限の清掃こそされているが、逆に言えばそれだけ。
営業どころか仕込みさえしている様子はなく。
厨房の奥には法被のような制服を着た柴犬型の獣人が、そんな店の状態を気にするそぶりもなく新聞を読んでいた。
「邪魔をする。何か飲み物があれば頂きたいのだが。」
「…………」
ジークがそう挨拶しても、店主は返事どころか視線さえ向けない。
何が面白いのかニヤリと笑う姿がどうにも不気味で、3人は自然と柴犬店主から最も離れた席に腰を下ろした。
ユメの姿もあって一悶着ありそうな出会いになってしまったが、ジークのとりなしで梔子ユメが羂索ではない正真正銘の本人だとうてなも理解した。
熱気と乾燥が厳しい砂漠での立ち話ではなく柴関ラーメンで腰を落ち着けて話そうとユメが提案し、疲労の色が濃いうてなも賛同したのだ。
「改めて自己紹介をさせてくれ、俺はジーク。」
「梔子ユメだよ。さっきはごめんね。驚かせちゃったよね。」
「いえ、いいんです。こっちこそ大声出してすいませんでした。柊うてなです。」
ぺこりと頭を下ろし、うてなは向かいに座る二人をうてなはまじまじと見つめる。
線が細く見るからに無害なジークはまだしも、羂索の姿もあって梔子ユメには無意識に警戒してしまう。
見定めるようなうてなの視線を前に、ニコニコと朗らかな笑顔を梔子ユメは崩さない。
「この奥の砂漠に行きたい場所があってね。ジーク君と一緒に向かっていたの。
そしたら街の方に黒いドームが見えて、その方角から落下してきた何かが見えたから追いかけたんだ。」
「それが私だったんですね。
それでも、わざわざ追いかけてくることなんてなかったんじゃ……。」
ノワルのラストレクイエムが覆いつくした魔力の影が目についたのは分かる。
だが、その区画から飛んできた人間を助けに向かう理由は無いはずだ。
「だって、心配じゃない。」
うてなの問いに、梔子ユメはあっけらかんとそう言い切った。
その姿は、壇上で嬉々として殺し合いのルールを説明していた人物と、全くといっていいほど結びつかない。
真剣な眼差しを向ける少女に、うてなは呆れたような安心したようなため息をついた。
(……本心で言ってますね。この人。)
マジアマゼンタや横山千佳と同じ、純粋で善性の人物。
額に縫い目がないこと以上に、その言動が彼女が羂索ではない証明に思えた。
「あのドーム、消えたと思ったら中にあった建物もすっかりなくなっちゃってたんだよ!」
「ああ、遠くに見えたビル群やハイウェイがすっぽりなくなるというのはなかなか衝撃だった。
何があったか、知ってる限りでいいから聞かせてくれないか。」
「いいですよ。あのエリアで何があったか、その一部始終をお話ししますよ。」
「そんなことがあったなんて……」
話を聞いたユメの顔は青ざめ、ジークは難しそうに顔をしかめる。
マジアベーゼとなったうてなやアルカイザーの奮戦、マジアマゼンタやイドラの捨て身の抵抗。
特攻ともいえる魔法を得た千佳の勇気に、五人の絆を重ねての脱出劇。
それだけの相手がそろっても、F-7エリアを破壊するノワルに令呪さえ使わせることが出来ていない。
嗜虐的な性癖に噛み合った拘束魔法は文字通り無敵。 高い殺傷力を持つ天使のような使い魔の群れも危険に過ぎる。
”とっておき”と称した魔法を前に、決して弱くない参加者たちでさえ命からがら脱出することが限界だった。
「脱出した後闇檻の内部がどうなったかはわかりませんが。話を聞く限り大規模な破壊があったようですね。
ノワルの魔力を考えれば区画1つを破壊することは十分に可能でしょう。」
うてなの断言に、ユメは息を呑んだ。
F-7エリアを包み空間にある建物すべてを破壊した闇檻のドームは、遥か遠くにいたジークとユメさえ目にとまるものだ。
災害と言える現象がただ一人の参加者が令呪も用いずに起こしていたとは思いもよらなかった。
「……俺とユメは、見知った参加者が少ない。
少しでも情報が得られたらと思っていたが……想像以上だな。
今聞いた名前を確認したい、名簿を出すから少し待ってくれ。」
ジークは名簿アプリを開き。うてなが上げた名前を指さした。
ノワル。イドラ・アーヴォルン。横山千佳。
うてなが出会った名前のうち、見つかった名前は3人だけだった。
「ノワルの名前は確認した。
うてなが言っていたイドラと千佳も見つかった。
だが『アルカイザー』と『マジアマゼンタ』という名前はないな。」
「本名で入っているのかな?変身ヒーローみたいな名前だし。」
「確かに、ルルーシュの放送を聴く限り仮面ライダーガッチャ―ドと仮面ライダーゼイン以外にも”仮面ライダー”なる存在はいるようだし、それと同じだろう。
デクや烈怒頼雄斗のように、本名とコードネームのようなものが並列されている参加者との違いは依然不明だが……。
俺が思っていたより、複数の名前を持つ参加者は多いのかもしれないな。」
考察を重ねるジークとユメをよそに、ノワルとの戦いもあって名簿を確認できていなかったうてなは、自分の名前を探していた。
「あ、あった。」
『マジアベーゼ』ではなく『柊うてな』の名前を無事に見つける。
だがその顔は下にある名前を見て一気に青ざめた。
花菱はるか。水神小夜。天川薫子。
うてなのクラスメイトであり、関わりのある友人の名前が並べられていた。
「うてなちゃんの友達もいたんだ……3人も。」
「ノワルとの戦いで名簿を確認する余裕なんてなかったですからね。気づくのが遅れました。
しかしどうして……彼女たちはただの一般人ですよ。」
ギリギリと歯ぎしりをたて、うてなは名簿を睨みつける。
魔法少女イミタシオの策略に彼女たちが巻き込まれたことを思い出す。
だがマジアベーゼへの復讐の巻き添えになったあの時と違い、彼女たちも正規の参加者として殺し合いに巻き込まれていた。
うてなは知らない。ここに名前がある3人がずっと戦いつづけている”トレスマジア”であることを。
3人の知人はうてなにとって、殺し合いには似つかわしくない優しく善良な一般人でしかないのだ。
「心配だよね。……分かるよ。
私も、後輩がこの殺し合いに参加させられているから。」
梔子ユメは、この場で最も特異な立場にいる人物だ。
何せ、肉体を主催者に使用されている。名簿のユメの名前を見て羂索と誤認し敵意を向けている参加者だって少なくない。
だがそう言った事情を抜きにした彼女は、後輩ともども殺し合いに巻き込まれただけの少女でしかない。
同じ立場にいるのだと、うてなはハッと顔を上げた。
「ユメさんもですか。」
「うん、小鳥遊ホシノって名前が、私の後輩。
とっても強くてとっても頼りになるけれど、無茶しちゃうところがあるからさ、心配だよ。
どうにか合流したくて動いているんだけど、そんな怖い人がいる場所で大丈夫かな……。」
小鳥遊ホシノ。梔子ユメが唯一この殺し合いに来る前から知っていた名前だ。
似た命名法則の名前は何人かいたが、その人たちは知らない子だという。
ただ一人の後輩の無事に心を痛める姿は、やはり羂索とは全く一致しなかった。
「……そういえば、行きたい場所があるんでしたよね。」
「うん、この砂漠の奥にアビドス高校っていう場所があるんだけど。
……私たちの学校なんだ。
といっても、生徒は私とホシノちゃんだけなんだけどね。」
困り顔を浮かべたユメが地図アプリを開くと。ちょうど紫関ラーメンの北にある区画にアビドス高校と名前がある。
学校と全校生徒が殺し合いに巻き込まれているなんて、人数が少ないとはいえどんな確率だとうてなは内心毒づいた。
羂索がユメの姿をしていることと言い、梔子ユメに怨みでもあるんじゃないかと言いたくなる。
「ホシノちゃんは、きっとここに向かうだろうなと思ってさ。
……甘い考えかな?ノワルみたいな怖い参加者もいるのに。」
「そんなことないと思いますよ。
ユメさんが唯一の先輩で、お二人にとってアビドス高校は大切なものなんでしょう?」
柊うてなは自分の通う学校に特別な思い入れがあるわけではない。
友達もいるし、花壇に水をやるような何気ない日常もまあ悪くない。
好きか嫌いかなら好きなのだろうが。それ以上のものかと問われたならばはいと即答は出来ないだろう。
同じ質問をしたとして梔子ユメはきっと即答できるのだろう。
先輩と後輩 ただ2人だけの学校。
それがどんなものかうてなには想像さえできないが。
とても大切なものだということは、ユメの太陽のような笑顔から伝わってくる。
「私が小鳥遊ホシノならアビドス高校に向かうと思いますよ。
たどり着けるかは分からないので何とも言えないですが。」
「あはは。実はジーク君もそう言ってたんだぁ。」
そうはにかむ姿は、紛れもなく梔子ユメのもので。
その姿に羂索のイメージは全く残っていなかった。
◆◇◆◇◆
「俺からも言っておきたいことがある。
ノワルは危険だ。どこかで無力化する必要が出てくるだろう。
大規模な破壊を巻き起こし、数人がかりでも討伐しきれない参加者をだ。」
ジークの言葉に、うてなは強くブンブンと頷いた。
性癖の不一致もあり、ノワルを倒す必要があると一番強く思っているのはうてなだった。
「その上で聞いてほしいんだが。
参加者の中に一人、ノワルに並ぶ実力者がいる。」
名簿を動かし、ジークはある一人の名前を指さした。
ちょうどうてなの真上にある名前には『アルジュナ・オルタ』と書かれている。
「ジークくんの見知った参加者って、この人の事?」
「いやそうじゃない。
すまないが、俺は彼のことを何も知らないし、会ったこともない。
だが、その強さだけなら断言できる。」
「……言ってることが矛盾してませんか?」
首をかしげる少女達に、「少し、込み入った説明をするぞ。」と肩の力抜き息を整えた。
「……2人は、アルジュナという人物についてどこまで知っている?」
「「聞いたこともないです。」」
「インドの叙事詩、マハーバーラタにその名を記された大英雄だ。
そして彼の宿敵に、カルナという男がいる。
アルジュナに比肩する力を持つとされる、施しの英雄と呼ばれる男だ。
そのカルナと、俺は戦ったことがある。」
思わず告げられたカミングアウトに、うてなとユメの「はぁ!?」という素っ頓狂な声が店内に響いた。
「アルジュナとカルナは物語に出てくる英雄だって言いましたよね!?」
「より正確には神話だな。当然、俺自身がその神話の時代を生きた存在という訳ではない。
だが願望器を巡って相争う魔術儀式において、その折に歴史上の偉人や神話の存在をサーヴァントとして従えるんだ。
その儀式のことを、『聖杯戦争』と言う。
羂索も言っていたが覚えているか?令呪も元は聖杯戦争に用いられるものだ。」
「そういえばそんなことを言っていたような……。」
ユメはそれどころではなかったし、うてなもほとんどうろ覚えではあったのだが。
羂索はそんなことを言っていた気がするなとこくこくと頷いた。
「つまりジークさんはその聖杯戦争の経験者で、サーヴァントになったカルナと戦ったってことですか?」
「その通りだ。
カルナの強さをうてなにも分かるように言えば……拘束魔法や使い魔の代わりに太陽の熱量と極限に高められた武力を持つノワルと言ったところか。
人格という意味では天と地ほども差があるようだが……。少なくとも出力の面は話を聞く限り大差はないな。」
「さらっとノワル並とかいってますけど、本当に化け物じみた強さなんですよ!?」
ノワルの強さを肌で知っているうてなが顔をしかめた。
あの場にいたマジアマゼンタやアルカイザーも決して弱くない。それでも束になってなおノワルには届かなかった。
自分と同系統だからこそ、ノワルの規格外な力をうてなが一番感じ取っていた。
「並の強さじゃないことはカルナと戦った俺も身をもって知っている。
……アルジュナに話を戻すが、少なくともカルナと肩を並べた彼の強さも両者と同等レベルはあると見るのが自然だ。」
ジークの憶測にうてなの顔は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
あまり会いたいとは思えなかった。
味方になってくれれば頼もしいことこの上ないが、殺し合う可能性がある以上楽観的な考えではいられない。
その上ノワルと違い男となれば、いよいよもって食指も好奇心も働かなかった。
せめて話の通じる相手であってほしいとうてなは思う。
「ジークくん。サーヴァントは歴史上の偉人もなるんだよね。
ということは。この豊臣秀吉や徳川家康もサーヴァントってことなの?」
「それは分からない。
だが、アルジュナに関しては間違いなくサーヴァントだ。」
ユメの問いに、ジークは指を2つ立てる。
「根拠は2つ。1つはこのオルタという名前。
異霊(オルタ)というのはサーヴァントの中でも特殊な存在だ。
本来の属性と反転した者や、その英雄の核となる要素が裏返った者たちのことだ。」
「成程……そういう存在ですか。」
「反転?裏返った?」とユメはクエスチョンを浮かべたが。うてなにはどことなくジークの言ったことが分かった気がした。
うてなの頭に浮かんだ姿は、かつて暴走した己自身。
矜持を失い。美学を失い。誇りを失い。その果てに至る異端の英雄像。
醜く咲いた欲望の華は、いわばマジアベーゼ・オルタとでも言えるものだろうか。
そう称するのは、なぜだかとてもしっくりきた。
「だとすると、アルジュナ・オルタは”英雄”としてのアルジュナとは別の性質を持った人物になるのでは?」
「さっきも言ったが俺はアルジュナ・オルタ本人については全くの無知だ。
どう反転しどういた性質を持つ英霊なのか。憶測で言うの難しい。」
「だとしたら、味方になってくれる可能性は低そうですね。」
内心、ノワルを倒す戦力として期待していたのだが。反転した存在などと聞かされては望み薄。
自分が似たような状態になったことを思い返せば、共闘は期待できないなと失望したように肩を落とした。
「似たような経験をしているから分かりますが、核が歪み反転した存在なんて碌なものじゃないですからね。」
「うてなちゃん。なんだかすごく大人っぽいね。」
「魔力の量や質といい一般人ではないと思っていたが。何者なんだ?」
「また余裕があればお話ししますよ。
それで、もう1つの根拠とは何ですか?」
「名簿の並びだ。
クルーゼの放送を信じるなら、名簿の並び順には意味がある。
うてなと友人が並んで記載されていたことや、ユメと小鳥遊ホシノが近しい位置にあることも恐らく偶然ではないだろう。
そして、アルジュナ・オルタの少し上にはこの名前がある。」
ホットラインをのぞき込むうてなとユメ。
ジークの指さしたのは見覚えのない日本人の名前だ。
「藤丸立香?」
「この殺し合いに招かれた中で俺が唯一知ってる相手だ。
下にいるマシュ・キリエライトも話には聞いているが……今回は置いておく。
彼はサーヴァントと深い関係を築いているマスターだ。並んで名前があるアルジュナ・オルタはサーヴァントとみて間違いない。
それに、この殺し合いの場においてアルジュナ・オルタについて詳しい知識を有する人間は彼をおいてほかにいないだろう。」
「つまり、これ以上アルジュナ・オルタについて知るには、彼を頼るしかないと。
――ノワル並の強さがあるというのは分かりましたが。裏を返せばノワルと同等の脅威になる可能性だってありますよね。」
「反転したアルジュナがこちらと対話の通じることを願うしかないな。」
投げやりにも思える結論に、3人の面持ちも暗くなる。
「…………。」
その様子を柴犬店主はじっと見つめている。
期待以上の何かを得たかのように、獣の口角は上がっていた。
◆◇◆◇◆
「というのが、私がジークさんと梔子ユメさんから聞いた情報です。」
『遠くに行ったと思ったら、とんでもない話してくるわね……。』
紫関ラーメンから少し離れたビル沿いで、マジアベーゼの姿になった柊うてな。
その手にはタロットのようなカードの中には、黒いローブを纏う美女が描かれている。
うてなが聴いた梔子ユメやジークの情報。
特にアルジュナ・オルタの存在に対し、描かれた美女――イドラ・アーヴォルンのため息交じりの声が、うてなの持つカードから溢れた。
「やっぱりとんでもないですか?」
『ノワル並の相手がもう一人いて、ベーゼの予想じゃ味方にはならなそうなんでしょ。余裕で最悪の類よ。
……まあアルジュナについては置いておいて。梔子ユメが本人だって知れたのは嬉しい情報ね。
今連絡してるこのカードも梔子ユメのものなんでしょ?』
「ええ。1枚頂きました。」
うてなの持つカードは、梔子ユメに支給された『お助けカード』というアイテムだ。
本来は藤丸立香の令呪と簡易召喚をベースに、契約したサーヴァントからアドバイスがもらえるものだが。
うてなが持つカードはバトルロワイヤル用に調整が施され、使用者と面識がある参加者をカードに呼び出し会話ができるのだ。
『思ったんだけど、さっさとこのカードで小鳥遊ホシノや藤丸立香と連絡を取ったほうがよかったんじゃない?
特に藤丸立香ならアルジュナ・オルタについて詳しく知ってるんでしょ?』
「この会場で出会った人じゃないと呼び出せないらしいです。
それにこのカード使い捨てで3枚しかないんですよ。」
うてなの説明に『便利なのか不便なのかわかんないわね』とイドラは残念そうに返した。
『それで、ベーゼはどうする?
こっちはアルカイザーと一緒にいて。千佳とマゼンタを探そうと思っているんだけど。合流する?』
イドラの提案に、ベーゼは「いいえ。」と首を横に振る。
「貴方達とはノワル打倒のために手を貸したに過ぎません。
まあノワルが健在である以上協力関係を維持できるのは好都合ではありますし。合流するのも1つの手ではありますが。」
『だったら!』
「ただ、私としては少し思うところがありましてね。
このままジークさんとユメさんと共にアビドス高校に向かいますよ。」
”魔法少女の敵”のスタンスを崩さない彼女が、マジアマゼンタのいる自分たちの仲間になるとは――イドラ含む4人にとってはほぼ仲間のような扱いだとしても――言わないだろう。
だからベーゼの答えに特別の驚きはない。
だが”思うところ”というもって回った言い回しが、微かに震えて聞こえたことがイドラには気になった。
『……何かあった?』
「この殺し合いに友人が巻き込まれていると知りましてね。私の正体も知らない子たちです。」
『それは、なんていえばいいのかしら。』
「お気遣いはいいですよ。
……魔法少女の戦いならともかく。戦う力のない一般人を巻き込むのは私の流儀に反します。
貴女やアルカイザーはまだしも、あの場に千佳さんがいることにも内心ムカついていたんですよ。
アビドス高校に向かうであろう小鳥遊ホシノを筆頭に、ノワルを倒すための戦力を集めることが一番の理由ではありますが。
……その子たちを見つけて危険域から遠ざけたいというのも、正直なところです。」
戦いの間は猛々しく見えたマジアベーゼの姿だが、正面から見ると年相応(流石に自分より年下だろう。)だなとイドラは思う。
一般人を巻き込むのが流儀に反するというのも事実だろうが、危険に巻き込まれた友人を不安に思う姿もマジアベーゼの――その奥にいる変身者の本音だろう。
ノワルと波長が合う――趣味は合わない――変態ではあるが、イドラや他の面々が彼女のことを仲間だと思っている理由には、マジアベーゼの端々からノワルにはない人としての優しさが見え隠れするからだ。
そう気づいてイドラは微笑んだ。ベーゼ本人は気づいているのだろうか?
『つまり友達を助けたいってことでしょ。
ひょっとしてマゼンタじゃなくて私に連絡したのもそれが理由?』
「私はマジアマゼンタの……魔法少女の敵ですからね。
協力することはまだしも彼女達にこういった話はできません。」
『難儀な奴。』
「それに、言われるまでもなく彼女なら困っている人たちを見捨てませんから。」
力強く断言するマジアベーゼの姿からは、魔法少女マジアマゼンタへの無尽の信頼が垣間見える。
他者をどこまでも信じるその姿はイドラの知る男と少し似ていた。
『ちょうどいいし伝えておくわ。
名簿にあるキズナレッド……浅垣灯悟ってのが本名なんだけど。
もし出会ったら私の名前を出しなさい。絶対に力になってくれるから。
……ベーゼはちょっと苦手かもしれないけど。アイツほど頼りになる人はいなし、困っている人たちを見捨てるやつじゃないからね。』
「並びから薄々思っていましたが。やはりあなたの縁者でしたか。
信頼できる相手は1人でも欲しいですし、ありがたく頼りにさせてもらいますよ。」
イドラのすぐ上に並んでいた特徴的な名前。
名簿の名前には意味があるとクルーゼが言っていた(マジアベーゼは放送を聞いていないので、ジークからの又聞きだ。)からイドラと面識があるだろうと考えていたが。予想は当たっていたようだ。
「ということはキズナブラックという方もお知り合いで?
名前を見る限りではキズナレッドの仲間でしょうか。」
『…………いえ。キズナブラックはキズナレッドの形態の1つよ。使うと暴走状態になる危険なものだったけど。
私の知らない世界(バース)の存在じゃない限り、その参加者も浅垣灯悟。
ギラや十代と同じようなものね。』
『ただ……』 そう言いよどむイドラの神妙な面持ちが、声だけでベーゼにも伝わってくる。
キズナブラックは本来キズナレッドの暴走形態。
それがわざわざ別の参加者として登録されているのであれば。覇王十代や宇蟲王ギラのように明確な別存在なのだろう。
キズナレッドとは別存在で”キズナブラック”と言える人物に、イドラは心当たりがあった。
『おそらくキズナブラックは、私やキズナレッドとは別の世界線の浅垣灯悟。
キズナシルバーと出会わず。絆を喪い。仲間を失い。並行世界の私も死んだ。そんな世界の存在よ。
私たちは”バッドエンド”と呼んでいたけれど、話題に合わせるならさしずめ”キズナレッド・オルタ”ってところかしらね。』
「別の世界線ですか。この殺し合いの主催者ならやりかねないのが恐ろしいところです。」
冷静に返してはいるが、ベーゼの頬に冷や汗が垂れた。
イドラがああも力強く『頼りになる』と言い切る人間の、”バッドエンド”とまで称される姿(まつろ)。
いったいその人物に何があったのか。イドラの神妙な声も相まってとても聴く気にはなれなかった。
「……キズナブラックにはイドラさんの名前は出さないほうがいいですかね?
聞いた限りでは激昂させてしまうと言いますか。火に油を注いでしまう印象なのですが。」
『いいえ。出していいわ。
彼の知るイドラじゃないけれど。彼が『イドラ』を愛してくれたことは知っているもの。本質は変わっていないはず。
それにバッドエンドの彼は失った絆への執着で戦い続けてる。あんな痛々しい姿、見てられないし見捨てられない!
私とレッドは彼も救うって決めてるの!!』
キラキラとした声で言い放つイドラ。
力強く煌めく魔導士の言葉に、ベーゼは内心感動で飛び上がりそうになっていた。
カードを介した通信でなく目の前で見ていたら多分とんでもない顔をしていただろう。
イドラ・アーヴォルンが魔法少女でないことが、何かしらの損失に思えてならない。
「やはり貴女は私が期待した通りの人間です。
魔法少女じゃないのが実に惜しい。」
『あいにく大魔導士でやらせてもらってるからね。
それにマゼンタみたいなフリフリは似合わないし。年も貴女たちより上よ。』
「おや。興味あります?衣装でしたらイドラさんなら余裕で似合いますよ。
ちなみにイドラさんおいくつです?」
『16よ』
「20で魔法少女やってる人知ってるので全然大丈夫ですね。」
『ほんとに大丈夫かしらそれ!?』
そうこう会話を続けていると、カードが光だしサラサラと粒子になって消えていく。
どうやらお助けカードには時間制限があったようだ。
「そろそろカードも時間切れらしいです。
……花菱はるか。水神小夜。天川薫子。
この3人を見かけたら。保護をお願いします。
あのヒーローにもそう伝えておいてくださいね。」
静かな声で”柊うてな”はそう言った。
使い終えたカードを投げ捨て路地裏から駆け出すマジアベーゼの姿を、消えゆくカードを通じてイドラは見つめる。
ノワルとの戦いで見せた威厳や偏執をほとんど見せない姿が年相応に小さく見えた。
『わかったわ。必ず助け……え?花菱はるか?ちょっとその名前って――――』
イドラが何か言い終わる前にカードは光の粒子となって空気に溶ける。
イドラが気づいた真実は、マジアベーゼには届かなかった。
「終わったのか?」
「ええ、1人で話したいという我儘に答えていただき。感謝します。」
「気にしないでいいよ〜。
こっちこそうてなちゃんが一緒に来てくれて嬉しいもん。」
変身を解いた柊うてなが砂漠の入り口で待つジークとユメに手を振ると、ユメが大きくはしゃいだ様子で両手を振り返す。
マジアベーゼであることを明かしてない都合、マジアベーゼとしてしか接していないイドラとは2人の見えないところで話したかった。
変身する場所を選んでいられるような環境ではないので2人に正体を隠すのは難しい。
頭では分かっているのだが、日ごろの癖というのは抜けないなとうてなは思う。
「おかげさまで、イドラさんとアルカイザーの無事は確認できました。
マジアマゼンタは問題ないでしょうし、千佳さんもマゼンタがどうにかするはずです。
またイドラさんの知り合いであるキズナレッド。浅垣灯悟さんは信頼できる人物だそうです。
もう一人のキズナブラックについては、少々特殊なので後ほどお話ししますが。こちらも浅垣灯悟という名前です。会えれば協力できるかもしれません。」
「キズナレッドとキズナブラックって、名簿でイドラさんの近くにあった人だよね。
私とホシノちゃんみたいに、やっぱり知った人たちが固まってるんだね。」
「ありがたいな。ノワルのような参加者がいると聞き内心警戒していたのだが。
信頼に足る参加者も相応にいるようで一安心だ。」
ほっと3人が安堵の息をつく。
常人とはかけ離れた経験をしている3人ではあるが。その一瞬は愉快な学生の語らいのように見えた。
「うてな。1つ思ったのだが、いいだろうか。」
「はい、なんでしょうか?」
緩んだ空気に感化されたのか、ジークは軽い気持ちで質問を投げかける。
浅垣灯悟のことを聞いてから。
なんなら名簿を見た時から気になっていた質問であった。
「君とマジアマゼンタは元の世界でも知り合いだ。
名簿には名前がなかったが、参加者である以上浅垣灯悟のように別の名で名簿に記載があるはずだ。」
「……何が言いたいんです?」
「君と同じ世界から来ていることを考えれば、マジアマゼンタの正体は君のゆう「あーーーーーーーーーーーーーーーーあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」 」
うてなのあげた奇声にジークとユメは思わずかがんで耳を塞ぎ、申し訳なさそうにうてなの顔を見あげた。
今にも誰かを殺しそうな殺伐とした目つきは、ジークの発言が柊うてなの地雷だと嫌でも読み取れた。
柊うてな。
エノルミータ総帥。マジアベーゼ。
彼女は、魔法少女の正体には触れない主義であった。
「……それ以上言うと本気で叩き潰しますよ。」
「よく分かんないけれど、多分これはジークくんが悪い。」
「……すまない。以後気を付ける。」
マジアベーゼであることさえ知らないジークがそれをくみ取るのは酷ではあるが。
うてなにとっては死活問題でもある問いかけに、ジークはただ謝ることしかできなかった。
【エリアD-9/アビドス砂漠/9月2日午前7時】
【ジーク@Fate/Apocrypha】
状態:健康
服装:本編の服装
装備:浅打@BLEACH
令呪:残り三画(竜告令呪)
道具:缶コーヒー@現実(残数2本)
ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:可能な限り被害を少なくゲームを終了させる
01:大聖杯はどうなっているのだろうか...
02:ユメと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
03:ノワルはどこかで倒しておく必要があるだろうな
04:アビドス高校に向かう。可能なら小鳥遊ホシノと合流する
05:すまないうてな……。マジアマゼンタの正体については考えないことにする。
参戦時期:本編終了後
備考 ※FGOコラボイベントのイベントの記憶も有しています
※時系列的には邪竜の姿が正しいですが、ホムンクルスの姿をしています。本人は羂索の制約によるものだと考えています
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています
【梔子ユメ@ブルーアーカイブ】
状態:健康
服装:アビドス高校の制服
装備:
令呪:残り三画
道具:お助けカード@Fate/Grand Order
ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:羂索の目的を知る
01:私の姿をした。羂索……
02:ジークと協力 殺し合いに乗り気でない参加者を探す
03:ホシノちゃんもいるんだ……
04:アビドス高校に向かう、可能ならホシノと合流する
05:ノワルとアルジュナ・オルタは要警戒。
参戦時期:行方不明になった後
備考 ※ゲームに参加する前後の記憶が朧気です。 少なくとも自分が死んだような記憶はないです
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています
※お助けカードは残り2枚です
【柊うてな@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(小)、ダメージ(中)
服装:学生服/マジアベーゼのコスチューム
装備:トランスアイテム(エノルミータ)@魔法少女にあこがれて、支配の鞭@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:無益な殺生はしないが、魔法少女の輝くところを見たい
01:ノワルは恐ろしい奴だったけどそれ以上にいいもの見れてよかった♡
02:魔法少女にデレる悪役ムーブ……悪くないかも
03:どうしてあの3人が……。
04:アルジュナ・オルタ……。あまり味方になってくれそうな予感はしませんね。
05:ネタバレ。やめてください。
参戦時期:少なくともマジアベーゼ 夜蜘蛛の帳に覚醒後
備考
支給されたイノセンスは横山千佳に譲渡しました。
【エリア???/???/9月2日午前7時】
【イドラ・アーヴォルン@戦隊レッド 異世界で冒険者になる】
状態:疲労(大)、精神的疲労(中)、ダメージ(中)、ノワル戦のトラウマ(極大)、快楽の残滓
服装:黒い露出度高めのローブ
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止めて元の世界へ生還する
01:ビクトリー・キズナバスターに無理させすぎた……!
02:ノワルに対して最大限警戒
03:マジアベーゼは仲間になってくれると思ってるわ
04:キズナブラックには思うところがある。助けたい。
05:アルジュナ・オルタ……ノワル並の強さなんてあまり考えたくないわね
06:はるかと千佳を探す。……ベーゼの言ってた花菱はるかって、マゼンタのことよね?
参戦時期:フォリング防衛戦(33話)終了後〜35話終了
備考
※うてなと情報共有し、アルジュナ・オルタやアビドス高校に関する情報を得ました
※少なくともアルカイザーと同じ場所にいます
◆◇◆◇◆
「いやぁ。随分面白い話聞けちゃったねぇ。」
1人残った店内で。柴大将は歪んだ笑顔を浮かべた。
「うてなとかいう嬢ちゃんの話なら、あの飛んでた金髪魔女ちゃんがノワル。
となると...”アレ”がアルジュナ・オルタってやつかな?」
新聞に隠れていた男の左目に、紫関ラーメンよりずっと遠くの王城が映る。
コーカサスカブト城にて激突したノワルとアルジュナ・オルタ。
危険人物2人が起こした破壊の跡が、支給されたアイテム『魔界の凝視虫(イビルフライデー)』を通じて男の視界に届く。
忌々し気に飛び去る金髪の魔女に、感情薄く移動を続ける褐色の青年。
両者戦いの余波で、シュゴッダムの王城は半壊状態だ。
その惨劇が、その破壊が、その強さが。
虫越しに映るたびに口角があがり、脳がアドレナリンで満ちていく。
コーカサスカブト城にいた他の人間についても視界の端には映ってはいた。
仮面ライダーに軍人、22世紀型の古めかしいロボットに勇者然としたイカれた男。
粒ぞろいと言っていい、茅場とクルーゼの人選もなかなかのものだ。
それでも、彼の興味を引いた参加者はノワルとアルジュナ・オルタの2名だけだ。
特に、アルジュナ・オルタにはこの男の血を騒がせるものがある。
肉食獣のような笑顔を男は――『神殺し』のメラは無表情に移動する神に向けていた。
「アルジュナと言えばインドラの息子だっけ?
パーンダヴァ5兄弟の三男。マハーバーラタの英雄か。
だがそれでも『神の子』止まり。
『神殺し』の俺の獲物としては格落ちだと思っていたが……」
厭世的ともいえる神秘を身に纏う青年を前に、メラは楽しそうに舌なめずりをした。
「このメラ様の目はごまかせねえぜ〜。
マジモンの『神』だ。それもただの神でおさまる器じゃねえな。
サーヴァントとやらになった影響か?いくつかの神性が混ざってるんじゃねえか?
まあ、攻略できれば同じだけど!」
椅子から立ち上がり、体を伸ばす。
みるみるうちに柴犬の姿が、道化師のような派手な男に変わっていった。
彼がかつて『神殺し』を成した際に得た戦利品。狡知の神が持つ変身能力で店主のNPCに化けていたのだ。
本物の柴大将は既にメラの手で殺され、蠅のたかる死肉となっているだろう。
「さてと、こいつらの攻略法を探りつつ。バトルロワイヤルをエンジョイしますか。
この調子ならノワルとアルジュナ・オルタに並ぶ獲物も、もう1,2人くらい用意されてそうだしな。」
期待に胸を膨らませ高笑いをあげつつも、メラの目は獲物を追い続ける。
本来低コストで無数に飛ばせる魔界の凝視虫(イビルフライデー)だが、その力は大きく制限され自分とは違うエリアには2〜3匹しか飛ばせない。
そのわずかな虫を、ノワルとアルジュナ・オルタの監視に利用していた。
メラは人間としては短絡的で享楽的だが。ゲーマーとしては相手を見極めきちんと対策を練るタイプだ。
コーカサスカブト城の戦いを見守るために、人のいない紫関ラーメンに潜んでいたのも。
メラにとって弱者ともいえる少年少女を見逃したのも。
この痛快な怪物たちを殺す『攻略情報』を得るためだ。
普段世界を滅ぼすように。動きは最短で最速を狙おう。
創世の神にそうしたように。獲物の攻略法を見つけ出し、魔女狩りを/神殺しを成し遂げよう。
藤丸立香なる人物と出会えれば最高だ。少年の話では奴が何か知っていることは間違いないのだ。
「じゃあいきますかぁ!!」
魔女と神を殺すため。ついでに人を殺すため。
神殺しによるバトルロワイヤル最速クリアが、この瞬間本格的に始動した。
【エリアD-8/紫関ラーメン/9月2日午前7時】
【メラ@仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐】
状態:正常、ダメージ(小)、ノワル・アルジュナオルタに対する期待(大)
服装:いつもの服装
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐
Ⅹギーツレイズバックル@仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐
令呪:残り三画
道具:魔界の凝視虫@魔人探偵脳噛ネウロ
ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:愉快に楽しくバトルロワイアル
01:狙うは優勝。派手にカッコよく決められれば更によし。
02:次キズナブラックに会えば、サクッと殺す。
03:錬金術使いの仮面ライダー(りんね)に若干の不快感。
04:ノワルとアルジュナ・オルタを本ゲームにおける標的に、同等の実力者がもう1・2人はいると予想
05:ノワルとアルジュナ・オルタを観察 藤丸立香に会えば聞き出す
参戦時期:クロスギーツビクトリーで世界を滅亡させ帰還した直後
備考
※ロキの変身能力が使用可能ですが、一度使用すると暫く使用できず、見た目以外は変身できないです。レジスター・令呪を隠すこともできません。
クロスギーツに変身する場合はメラ本来の姿である必要があります
【支給品紹介】
お助けカード@Fate/Grand Order
・梔子ユメに支給
妖精双六虫籠遊戯において、妖精王の介入により味方サーヴァントを呼び出し助言ができるようになったテコ入れアイテム
本ロワにおいては「バトルロワイヤル会場内で面識がある」「相手の顔と名前を知っている」相手をカードの中に呼び出すという形で連絡を取れるアイテム。
カルデア式簡易召喚の応用であり元ネタでは呼び出された相手の描写は無いが、本ロワでは呼び出された相手にも会話の内容は記憶され、呼び出されている間動けなくなるなどの制限もない。
魔界の凝視虫@魔人探偵脳噛ネウロ
・メラに支給
謎を喰う魔人が扱う777の能力(どうぐ)の1つ 読みは『イビルフライデー』
眼球に昆虫のような羽と足が生えた形状をしており、飛び回っては使用者と視界を共有し細かな雑用もこなす
無数に存在し本来は消耗の少ないアイテムであるが、本ロワでは制限として同時に展開できるのは『使用者と同一エリア内で20匹ほど』『使用者と別エリアでは2〜3匹』が上限となっている
メラは別エリアに飛ばしている虫のうち2匹を『ノワル』『アルジュナ・オルタ』の監視のため使用している
【NPC紹介】
柴大将@ブルーアーカイブ
柴関ラーメンの店主である柴犬型の獣人
キヴォトスでは珍しい人情味溢れる大人であり、生徒からの信頼も厚い人格者
――なお、本編で登場した柴大将は全てメラの変身であり、本物は既にメラの手で殺されている
別固体が存在するかどうかは後述の書き手様にお任せします
投下終了します
タイトルは『閑話F:魔女狩りクエスト/神殺しゲーム』です
皆様投下お疲れ様です
自分も投下します
アッシュフォード学園。
日本人への差別意識が世間では横行する中、ブリタニア人とイレブンを区別せず受け入れる私立学校。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアや枢木スザク達の母校であり、もう二度と戻れない青春の日々を送った場所。
と言っても、訪れた二人にとっては馴染みの無い一施設に過ぎない。
互いの持つ情報を明かし、一先ずは友好的な参加者との接触に動くこと数十分。
果穂とチェイスが辿り着いたのがここ、アッシュフォード学園であった。
「す、凄いです……」
自分の通う小学校よりも広大で、外国の映画に登場しそうな佇まいに圧倒される。
白い外観も綺麗だったが、中の装飾も負けていない。
呑気に見物してられる状況で無いとは分かっているも、ついあっちこっちへ目を向けてしまう。
同行者の様子を咎めはせず、チェイスは周囲への警戒を怠らず進む。
もし先客がいる場合、これだけの広さなら隠れる場所には困らない。
悪意を持った参加者が襲撃の機会を窺っている、といった展開も有り得なくはない。
重加速に制限こそあれど、ロイミュードとしての機能は正常に稼働中。
何が来ても即座に対処可能だ。
無人の廊下を進み、やって来たのは生徒会室。
何らかの反応を見せる元生徒会メンバーが不在な為、双方これと言って注視する点も無く。
だが念の為にと足を踏み入れ、偶然か狙ってか時間を置いて二つの放送が始まった。
主催者のラウ・ル・クルーゼ、参加者の皇帝ルルーシュ。
少々オーバー気味な仕草を交えながらの演説を聞き終え、生徒会室には暫し何とも言えぬ沈黙が広まる。
「どうして……」
普段の快活な果穂らしからぬ、か細い声。
冷え冷えとした早朝の空気に溶け込み兼ねない小さな訴えを、彼女と共にいる男は聞き逃さない。
視線を向け、話を聞く体勢を取る。
急かしはしない、彼女が伝えたい事を自分の中で纏められるまで待つ。
「どうして、あのルルーシュさんは…自分を悪い人に見せようとしたんでしょうか?」
「お前は今の放送を見ても奴は悪人ではないと、そう思うのか?」
「えっと……ルルーシュさんが仮面ライダーガッチャードさんとか、ゼアさん?って人を襲わせようとしてるのは、良くないことだって思います」
後者は名前だけで具体的な人物像は知らないが、前者は果穂のみならず大半の参加者が姿を見ている。
最初に集められた場で、羂索に食って掛かった少年だ。
何故か名簿にも仮面ライダーとしての名前で記載されていたがそれはさておき。
打倒主催者を掲げる善の心を持つ彼は、殺し合いを良しとしない者の心強い味方だろう。
しかしルルーシュは羂索に反抗する姿勢でありながら、真っ当に皆と協力する方法を取らなかった。
隷属か敵対の二択を突き付け、ガッチャードを始めとする複数人の参加者を殺すよう煽る。
そうして出来上がった軍団は善から程遠い、目的達成の為に生じる犠牲で屍の山を積み上げる危険な陣営。
お世辞にも今の放送を見て、ルルーシュが良い人だと言える者はまずいない。
「でもルルーシュさんは、何だか…自分のことをわざと恐くて悪い人に見せてるっていうか、そんな気がして……」
アイドルの世界はいつもキラキラ輝いている訳ではない。
ドラマ出演が決まった、CMの仕事が来た、W.I.N.G.で勝ち残った。
目覚ましい活躍をし脚光を浴びる者がいれば、そうなれず影になる者も少なくない。
輝ける舞台を奪われ、悔し涙を流したアイドルだって存在する。
おめでとうと言って祝福してくれる、そんな同業者のみでは構成されていない。
私だって頑張った、私の方がずっと努力した、何であの娘なのという妬み恨みが渦巻くのもアイドルの世界の常。
果穂もまた幼いながらに、自身が飛び込んだ世界の光と影は理解していた。
悪意が無くとも、人気を集めれば誰かにとっての悪者になる。
分かった上でアイドルを選んだ果穂に、今更後悔は無いが。
けれどルルーシュは意識せずではなく、明確な己の意思で自分を悪者に見せている気がしてならない。
あれが彼の素だから、特撮番組に出て来るような根っからの悪党だと。
そう断じる事が出来ないのはきっと、最初の場で彼の別の顔を見たからだ。
ニーナと呼ばれた、樹里や智世子と同い年くらいの少女。
体中にノイズが走り苦悶の顔で消えた際、彼女の名を呼んだルルーシュの姿は覚えている。
先の放送や羂索相手に舌戦を繰り広げた時の不敵さは無く、喪失を悲しみ怒る一人の少年の顔だった。
それがあるから、善人かどうかは分からないけど根っからの悪者とは違う気がして。
「…奴にとっては、あれが最も慣れたやり方なのかもしれん」
「慣れた…?自分を悪い人に見せることがですか?」
「ああ。似た男を一人知っている」
チェイスが思い出すのは同胞だったロイミュード、ブレン。
真影や仁良と手を組み、表向きは正義を騙りつつ進ノ介達を追い詰めた。
一方で蛮野に尻尾を振りハートを裏切った素振りを見せ、その実メディックを救う為に我が身を犠牲にした男でもある。
羂索から情報を引き出した時も、参加者へ向けての放送も。
どこか芝居がかった演説はやけに手慣れており、少なくとも今日初めてやった事ではない。
恐らくルルーシュは、自身へ注目を惹き付けるやり方を殺し合いの前から熟知している。
大胆不敵なパフォーマンスにより印象を植え付け、己が真意を仮面の裏に隠す。
時には善、時には悪の顔を使いこなし自分の望む結果を手に入れる。
ルルーシュにとって一番効率の良いやり方であり、悪を為してでもやり遂げねばならない何かを抱えているのだろう。
「でも、苦しいなってならないんでしょうか…」
必要なことだとしても、慣れているにしても。
大勢から敵意を向けられ、警戒され、嫌われる。
ファンの皆から応援や感謝の言葉を向けられるのとは反対の、心を引っ掻く痛み。
ルルーシュにとっては、それすら慣れてしまった一部に過ぎないのか。
僅かな情報でしか彼を知らない果穂には分からない。
「奴の狙いが何処にあるにしろ、危険が増したのに変わりは無い」
「あ、そ、そうです…!あたしも今は、仮面ライダーなんですよね…!」
腹部に手を当てると、硬い感触があった。
装着したままのデザイアドライバーが、先程の変身は嘘じゃ無いと教えて来る。
となれば自分もルルーシュが言った標的の一人。
放送を真に受けた参加者から襲われる可能性がグンと上がった。
変身した事に後悔は無いし、今になって捨てる気も無い。
しかし自分がターゲットに加わったとなれば、やはり緊張を感じずにはいられない。
「もし不安なら俺がベルトを預かっておこう。少なくとも、初見で仮面ライダーとは思われない筈だ」
「い、いえ!大丈夫ですっ!チェイスさんと一緒に戦うって、決めましたから!」
少しでも危険から遠ざけようという提案は善意から。
当然果穂も理解しおり感謝するも、受け入れずに断る。
全く恐くないと言えば嘘になるけど、ヒーローとして殺し合いを止めると決めたのだ。
チェイスだけに押し付けず、自分にも出来ることをしたい。
だからデザイアドライバーはこのまま手元に置く。
本人が強く望むならチェイスも無理強いはせず、なれど今後は一層の警戒が必要と方針を固める。
龍騎との戦闘では果穂の援護もあって敵を退けるに至ったが、それでも彼女は元々一般人。
特状課の面々のように荒事に慣れた人間で無い以上、本来なら戦闘に巻き込むべきでは無いのだろう。
とはいえ状況が状況だ、自衛の手段を強引に奪うつもりはない。
その自衛手段のせいで危険が付き纏うのは皮肉だが、自分がこれまで以上に気を引き締め果穂を守るだけだ。
「……」
ピクリと、こめかみを僅かに動かし出入り口を睨む。
傍らの果穂は突然の行動に首を傾げるも、すぐに理由が分かった。
足音が近付いて来る。
ロイミュードの聴覚機能が常人よりも一早く、他の参加者の存在を感知したのだ。
敵か味方か、願うのは後者だが必ずしもそうなるとは限らない。
いつでも得物を取り出せるよう意識し、果穂もレイズバックルをぎゅっと掴む。
緊張で手が汗ばんでいるとは、自分でも気付いていた。
やがて足音は生徒会室の前で止まり、ゆっくりと扉が開かれる。
相手の出方を慎重に窺い、
「やあ、初めまして。…って言うのはちょっと呑気かな?安心して、私に君達を襲う気は無いよ」
両手を上げながら入って来たのは、温厚な雰囲気の男だった。
○
先生と、現れた男はそう名乗った。
本名でないことは初対面のチェイス達にも分かり、少々不審に感じたのも無理はない。
どうして名前ではなく役職を告げたのだろうか。
至極当然の疑問に対する先生の答えは曖昧なもの。
曰く、「生徒を始め周囲の者から常にそう呼ばれているので、半ばそれが自分を表す名前として定着してしまったのだろう」。
実際名簿にも今名乗った二文字が記載されていた。
主催者までもが本名を載せなかった理由は不明なれど、先生がこちらを襲う様子は現状見られない。
龍騎と違って悪戯に喧嘩を売るのはチェイス達の望む所ではなく、敵対の意思が無いならむしろ願ったり叶ったりだ。
取り敢えずはそれぞれの得物から手を放す。
屋内というのもあって、腰を落ち着け話をするのには丁度良い。
互いの簡単な自己紹介が済むと、早速先生の方から自身の探し人の名前が出た。
「その人達は先生の…」
「うん、全員私の大切な生徒達だよ。本当にどうしてこんな物騒なものに巻き込まれたのか……」
悲痛な顔で5人の少女達の無事を祈る。
複数人の生徒が巻き込まれた挙句、内の一人はなんと羂索に体を奪われた者とのこと。
どうして彼女が参加者にも登録されているのか。
これについては先生も分からず、余りにも不憫な扱いを強いる主催者への怒りを言葉の節々に滲ませた。
「場所が変わろうと、私はあの子達の先生だ。すぐにでも守ってあげなければならない。だから頼む、些細な事でも情報があれば教えて欲しい」
深々と頭を下げられ、果穂は堪らず表情を曇らせた。
短いやり取りで相手がどれだけ生徒思いの人間かは理解出来たが、生憎自分達は彼の探す者達と会っていない。
殺し合いで遭遇したのと言えば、いきなり襲って来た蛇柄の服の男だけ。
危険人物一人への警戒を促すことは可能でも、先生が一番欲しがってる情報は与えられない。
悪いことをしてはいなくても申し訳なさを覚える。
それにもう一つ、果穂の奥底でほんの少し奇妙な感覚があった。
(どうしてなんだろ…先生の力になりたいって思うのに、でも……)
言動や態度を見ても、先生が悪人とは思えない。
生徒から慕われる優しい人、まるで283プロのアイドル達に信頼されるプロデューサーのような大人。
そんな風に重ねようとすると、何故か言いようの無い違和感を覚えた。
当然先生とプロデューサーは別人だ、同じ大人の男性でもタイプが違う。
だけどそうじゃない、もっと異なる部分で先生とプロデューサーを重ねるのに抵抗に似たものがある。
理由は上手く口に出来ないし、強いて言うなら勘だろうか。
初対面の相手に失礼だと内心で己を咎めるも、先生への違和感は依然として消えない。
「すまないが、俺達はお前の言う生徒とは会っていない」
言葉に詰まった果穂に代わり、チェイスが質問の答えを返す。
嘘は言ってないし言う必要も無い。
自分も果穂も互いの仲間は参加しておらず、出会った参加者は赤い仮面ライダーのみ。
提供できる情報は、危険人物一人について以外に持っていない。
そう伝えると先生は残念そうにしながらも礼を口にした。
「そうか…いや、ありがとう。この辺りに生徒達が来てないと分かっただけでも収穫だ。二人共時間を取らせてごめんね」
「あの!良かったらあたし達と一緒に来ませんか?生徒さん達を探すなら、何か――」
お手伝いをと言いかけた果穂を手で制し、最後まで言わせない。
同行の申し出を受ける気は無いからか、困ったような笑みを浮かべる。
「折角のお誘いだけど、私は一人で行くよ」
頬を掻きつつ言う先生に、反射的にどうしてですかと聞き返そうと唇が動く。
が、言葉が出はしなかった。
「君達みたいな役立たずは、殺しておくに限るからねぇ!」
何が起きたかを果穂はすぐに理解出来ない。
それまでの様子からは想像も付かない、悪意を籠めた言葉が先生の口から吐き出され。
思わず凍り付いた時には既に、自分の体が宙に浮いた後。
腰に回された腕と紫色の袖が見え、同行者に抱き上げられたとは辛うじて分かった。
「なん――」
驚愕と疑問を声に出して言う機会は訪れない。
果穂の声を掻き消す音が間近で聞こえたから。
ジェットコースターのように目まぐるしく変化する視界で、辛うじて見えたのは二つ。
優しそうな雰囲気は微塵も無い、下卑た笑みを貼り付けた先生の顔と。
彼が手に持った四角い銃らしき物体。
撃たれたと分かったのは、ようやく視界が落ち着いてから。
両脚は未だ床に着いておらず、彼の腕も腰に回されたまま
自分を運び弾丸を躱したチェイスを見上げれば、反対の手で銃を構えている。
銃口が睨み付ける先に誰がいるか、最早考えるまでも無い。
「ハッ、お優しい騎士様が守ってくださったってか?果穂ちゃんは運が良いねぇ、最初に消された馬鹿な二人と違ってさぁ!」
生徒思いの優しい大人は一体どこに行ってしまったのか。
嘲りをたっぷりと含んだ言葉を垂れ流し、邪悪に笑う彼は本当にさっきまでの先生と同一人物なのか。
愕然と目を見開く果穂だが、同時に内心では違和感が薄れていた。
先生の本性が今見ている通りなら、今まで見せていたのが偽りの仮面なら。
成程、どうしてプロデューサーと重ねる事に抵抗を感じたのかも納得だ。
「それがお前の本性か。赤いライダーと同じ、殺し合いに乗っているようだな」
「逆に聞くけど、乗らない理由があるのかい?折角の機会に楽しまない方が馬鹿ってもんだろ?」
罪悪感も躊躇も無い、むしろ嬉々として殺し合いを肯定する。
止むにやまれぬ事情、例えば生徒を守る為にあえて修羅の道を往くだとかではない。
どこまでも自身の歪んだ悦楽が理由の悪党。
それこそ、先生という男が仮面の奥に隠した本当の顔か。
「そんな…生徒さん達を守りたいっていうのも、嘘だったんですか!?」
「皆なら私が守るまでも無いよ。今頃は私と同じように、殺し合いを楽しんでるだろうからねぇ…!」
「っ!?」
「ははっ、流石は私の生徒だろ?ああでも、早く見つけたいってのは本当かな。好き勝手暴れられて、私の狩る獲物が減るのは由々しき事態だ」
「お前の教え子も、人間の言葉で言う同じ穴の狢か」
聞く限りでは生徒達も先生と同じような性根の持ち主らしい。
そのような危険人物が5人も会場に解き放たれている。
当初は羂索の最大の被害者としての面が強かった少女も、これではどっこいどっこいだろう。
学園都市キヴォトス、そこに所属する者には警戒が必要だ。
(だが、この男の話が全て事実と決まった訳でも無い)
印象操作で善人を悪と言い張り、偽りの情報を拡散する。
特状課を陥れる為に仁良が使ったのと同じ手を、先生もやっている可能性はゼロじゃない。
真実しか口にしていないとも十分考えられるので、当然キヴォトスの生徒達へ警戒しないつもりは無いが。
「ま、生徒達は私の方で探すとしてだ。その前に君達で遊ばせてもらうよ。大人として、殺し合いの手本を見せてあげなきゃいけないからね」
本性を露わにして尚も、自身の立場を意識した内容。
聞く者の嫌悪を掻き立てるソレを口にしながら、体は次の行動へ移る。
片脚を跳ね上げ手前の机を蹴り飛ばす。
一体どれ程の力が籠められたのか、爪先が当たった箇所を凹ませチェイス達へと飛来。
横に跳んで躱し、標的を見失った机はガラス窓を粉々に砕く。
戦うにしてもここでは狭い、出来上がったばかりの出入り口を使って屋外へ飛び出す。
果穂を庇うように抱きしめながら着地、先生へと再度銃口を向けた。
「変身」
『KAMEN RIDE DECADE!』
最も敵は既に戦闘準備を全て終えた後。
取り出したバックルを腰に巻き、銃身から抜き取ったカードを装填。
シャーレの先生だけに許されたカードではない、殺し合いで新たに得た武器だ。
両サイドのハンドルを操作し、電子音声と共に装甲を纏う。
マゼンタ色のアーマーに、目を引く十字の意匠。
プレートが突き刺さった仮面はバーコードを思わせ、緑のカメラアイが発光。
数多のライダー世界を通りすがった破壊者、仮面ライダーディケイド。
門矢士が不在の舞台において降臨を果たした。
「チェイスさん、あれってもしかして…!」
「ああ。ドライブシステムとは違うが、奴も仮面ライダーの力を手に入れたのか」
無表情ながら声にはやるせなさと怒りが含まれていると、少なくとも果穂にはそう感じた。
先の龍騎に始まりルルーシュと綾小路、そして此度の先生。
果穂のように善性の強い参加者だけではない、人間性を問わずライダーへの変身ツールが支給されている。
自身の知る二人の戦士のように、人々を守る為に戦うのとは正反対。
仮面ライダーを単なる争いの道具として利用するのは、何度見ても気分の良いものでは無かった。
『BREAK UP』
口で言って戦闘を止める相手でないのは明白。
襲って来るなら相応の対処を取るまでと、ブレイクガンナーの銃口を押し込む。
仮面ライダーになれなくとも、戦う為の力ならば持っている。
タイヤ状の圧縮されたエネルギーが複数重なり、人間の擬態から機械の戦士へと変身。
嘗てはロイミュードの番人にして死神、しかし今は人間の守護者として魔進チェイサーが姿を現した。
「あたしも…戦いますっ!先生が誰かを傷付ける前に、ここで止めないと…!」
戦意に溢れるのは果穂も同じだ。
もし先生が譲れぬ願いや生徒への想いで殺し合いに乗ったなら、その心を否定出来なかった。
倫理的に間違ったやり方だとしても、突き動かす理由が相手にとって譲れないのであれば。
そこはきっと、自分の思う正義を無理やり当て嵌めて良いものではない。
だが実際には龍騎同様、悪意で彩られた欲望のままに暴力を振るおうとしている。
だったら暴力の矛先が他の誰かに向かう前に、ヒーローとして阻止するだけだ。
『SET』
「変身っ!」
『BEAT』
二回目の変身だけど緊張感と興奮は消えず、されど戦うべき相手へ集中。
レイズバックルの鍵盤を操作し、上半身に装甲を纏う。
エントリーフォームからビートフォームへ、仮面ライダーナーゴに変身。
片手には変身と同時に拡張武装が握られていた。
デザイアグランプリの正式参加者では無く、元のIDコアの持ち主である鞍馬祢音でもない。
殺し合いでは果穂の力としてディケイドに対峙する。
『READY FIGHT』
理想の世界を創る為ではない、譲れぬ正義が悪意を打ち砕く戦い。
闘争開幕の合図が流れ、ライダー達が得物を持つ手を跳ね上げた。
トレーニングでも無ければ、ルールの制定されたスポーツでもない。
拳を振るえば傷付き、武器を用いれば死へと追いやり、果てに二度と覚めない眠りが待つ。
命を懸けた正真正銘の殺し合いだ、次があるから大丈夫等という楽観は持ち込めない。
仮面ライダーとの、そして嘗ての同胞を相手取った時と同じ。
守る為の戦いへと身を投じ、ブレイクガンナーの引き金を引く。
『GUN』
遠距離形態に変えてから照準を合わせ、トリガーに掛けた指へ力を籠める。
ほんの僅かに手間取るだけで大きな隙へ繋がり兼ねない、故に一連の動作から無駄な挙動を一切合切排除。
初めて扱う得物ならいざ知らず、手に馴染む銃でミスする素人ではない。
魔進チェイサーにとって最も使い慣れた武器、それがブレイクガンナーだ。
内部機能がエネルギーの生成と圧縮を行い、標的を貫く弾を発射。
一発二発では到底倒せないと分かっている為、十数発を連射した。
不良ロイミュードの粛清及び仮面ライダーの抹殺。
その両方を使命として帯び生まれたのが魔進チェイサーならば、扱う武器も相応のスペックを兼ね備えている。
発射速度と威力、両方が既存の自動拳銃を凌駕する性能。
加えて使い手自身の戦闘技能と搭載装置が、共に人間以上の射撃能力を引き出す。
荒事に慣れた警官や犯罪者であっても、一度狙われれば蜂の巣になる末路からは逃れられない。
だが魔進チェイサー同様に、常人を超えた力の持ち主ならば別。
エネルギー弾に狙われたディケイドに焦りは無く、軽やかな動きで回避へ動く。
一般人の8倍はあろう無数の視細胞が、自身へ迫る敵意を余す事無く識別。
躱せるか否か、当然前者である。
真横へ跳びながら、こちらも魔進チェイサーに銃口を向ける。
立っていた場所を通過し、背後の校舎を破壊するエネルギー弾には目もくれない。
可変型武器、ライドブッカーはガンモードに変形済みだ。
発射された50口径の光弾はブレイクガンナー同様、ライダーや怪人相手を想定した威力。
大ショッカー製の武器はロイミュードの技術にも引けを取らない。
通りすがった世界を守って来た銃は今、悪意を宿した破壊目的で使われる。
撃たれる前ならともかく、撃たれた後で人間にできる事は多くない。
なれど魔進チェイサーならば、自身を狙う光弾を正確に捉え回避が可能。
射線から外れるよう地面を転がり、再びディケイドに照準を合わせる。
しかし魔進チェイサーの視覚センサーが、自身へ迫る脅威を察知。
敵が新たに放ったのではなく、今さっき回避した筈の光弾がこちらを追い掛けて来る。
意思を持ったような動きは通常の銃火器では有り得ない。
箱状の銃身部のポインダー、ライドマーカーと呼ばれるライドブッカーに搭載された機能が理由だ。
マーキングした標的に誘導路を引き、どこへ逃げても光弾が追跡可能となる。
「そらそら鬼ごっこだ!必死こいて逃げて、私を笑わせてくれ!」
嘲笑は無視し、敵の銃は追尾弾を発射すると理解。
裂けても無意味なら別の方法で対処すれば良いだけだ。
ブレイクガンナーで光弾を撃ち霧散、残る数発には左腕を叩き付けた。
金属装甲のガントレットならばダメージを受けずに、エネルギー攻撃を掻き消せる。
ディケイドから舌打ちが聞こえるも知ったことではない、再度引き金が引かれる前にこっちから撃つ。
攻撃を防がれたのに多少苛立つも、ディケイドとてあっさり決着が付くとは思っていない。
殺到するエネルギー弾を躱し、時には手刀で叩き落とす。
魔進チェイサーでやれる動きはディケイドにだって可能。
向こうが一発も命中させてくれないなら、こっちだって食らうものか。
先程よりも脚に力を籠めて跳躍、足底が地面を再び踏みしめるまで時間を延長する。
足場が無いにも関わらず、ディケイドは空中に留まった。
これは四肢に装着されたバンドからマイクロ波を飛ばし、共振を利用して空中浮遊を行うディケイドの機能の一つ。
見えない羽を動かすように宙を移動しながら、地上目掛けて光弾を連射。
敵には無いアドバンテージを活かしての銃撃だ、ルール無用の殺し合いならば卑怯でも何でもない。
が、魔進チェイサーには仲間というディケイドにはない存在がいる。
戦場へ響き渡るのは銃声のみに非ず。
ギターが掻き鳴らすサウンドが、何の曲かを知る者はこの場にただ一人。
BGMのようにライダー達の耳へ届く、放課後クライマックスガールズの楽曲。
一瞬で場をライブステージに変えた音は、ナーゴが手にしたエレキギターから発生。
龍騎相手にビートフォームの戦い方は把握している、専用装備のビートアックスが齎す効果もだ。
胸部装甲が音を増幅し、腕部の装置が音に特殊効果を付与。
味方を鼓舞する音楽は、対象がデザグラの参加者で無くとも有効。
動作のキレが格段に増した上に、集中力を強化。
頭上からの銃撃へ、薙ぎ払うように腕を振るいエネルギー弾を放つ。
一見出鱈目な撃ち方に見えるも、その実ライドマーカーの光弾を的確に撃ち落とす。
『BREAK』
着地の瞬間に合わせて魔進チェイサーが接近、得物を近距離形態に変え殴り掛かる。
ナーゴの支援の恩恵を受け、懐に潜り込む速さは本来の走力以上。
スパイク部分が破壊力を引き上げ腹部を叩き、堪らずディケイドは呻いて後退。
二撃目を頭部へ放つも、敵のやりたい放題を容認した覚えはない。
至近距離でライドブッカーを向けて撃つが、発射寸前で銃身を裏拳が叩き狙いを逸らされた。
苛立ち蹴り付けると魔進チェイサーもまた蹴りを放ち、互いの脚をぶつけ合い揃って距離を取る。
「喧しいガキを躾けてやるのも、大人の義務だよねぇ!」
味方にとっては心強い音楽も、敵からすればストレス上昇の元。
龍騎の時と同じく、ディケイドもまた冷静さの欠如が表れ始めている。
言葉では無く力で黙らせるべく、ナーゴへと銃を突き付けた。
魔進チェイサーが黙って見ている訳が無い、光弾が放たれるより先に銃身を蹴り上げ阻止。
頭上の空気が熱せられるのは気に留めず、ディケド目掛けて踵を振り下ろす。
頭に血が昇ってはいるが、ディケイド自身の身体スペックは低下していない。
舌打ちを一つ零し後方へと跳躍、踵落としは地面を削っただけで命中せず。
距離を取る間にもディケイドの手はライドブッカーに伸び、新たなカードを取り出す。
大半の力を使用不可能にされたとて、破壊者が元々持つカードまでは失わずに済んだ。
『ATTACK RIDE BLAST!』
ディケイドライバーがカードを読み込み解放。
構えたライドブッカーの銃身が複数に分裂、一斉に光弾を放つ。
目の錯覚でも幻でも無い、実態を伴っており発射した弾も本物だ。
元々の高い連射性に加えて、光弾の数を大幅に増やす。
単純ながら効果的なダメージを与えるカード相手に、魔進チェイサーも取る手を即座に選び抜く。
『TUNE CHASER SPIDER』
魔進チェイサーの意思に従い、銀色のミニカーが掌に収まる。
ディケイドがカードを使って技を繰り出すなら、こちらも武装拡張機能を使うまで。
チェイサーバイラルコアを装填、超硬化金属が蜘蛛の足をモチーフにしたファングスパイディーへ変化。
背部コネクターとパイプで繋げば装着完了だ、真正面へ盾のように翳し疾走。
同じ近接戦闘用武器でも、ドライブが使うハンドル剣より幅広なのが幸いした。
光弾の掃射を真正面から防ぎ、尚且つナーゴの演奏で走力が強化。
瞬く間に間合いを詰め、次弾は撃たせぬと刃で斬り付ける。
至近距離で光弾を撃とうとも纏めて薙ぎ払う勢いに、ディケイドも引き金から指を放す。
代わりにライドブッカーを変形、銃以外の武器を持つのは魔進チェイサー一体だけではない。
迫る斬撃を防ぎ、目と鼻の先近さで睨み合う。
「撃たれるより斬られるのが好みだったかい?悪くないねぇ、そっちのが苦痛もデカいしなぁ!」
「お前の趣味など聞いていない」
ソードモードのライドブッカーが向かう先には、魔進チェイサーのカメラアイ。
頑強な追加装甲で守られた右目と違い、剥き出しの左目は最も脆い箇所。
強化レンズで加工済みとはいえ、ディケイドの武器を前に安堵は抱けまい。
ディヴァインオレという未知の鉱石で出来た刃は、数多の怪人を斬り伏せて来た実績を持つ。
直撃を避ける為の装備は既に右手にある。
刃には刃だ、クローが刀身部分を防ぎ押し返す。
「一々防ぐなよウザったい!」
ライドブッカーの大振りながら素早い一撃に、クローを叩き付ける。
あらぬ方へと右腕諸共弾くつもりだったが、思いの外手元へ戻す動きは俊敏だ。
言動に苛立ちを滲ませながらもディケイドは的確に急所を狙い、切っ先が次々襲い来る。
狙いの正確性なら魔進チェイサーも負けてはいない、ファングスパイディーが刀身を叩き防御。
時には空いた左手で拳を放つも、敵ももう片方の手で防いだ。
(重い、だが剣の扱いに慣れた動きではないな)
防ぎ、弾き、鍔迫り合いを繰り返し。
絶え間ない攻防の最中にあっても、魔進チェイサーは敵の力量を冷静に見極める。
ナーゴの演奏の影響は互いに受けており、動きの精細さで言えば間違いなくこちらが上。
しかし打撃の威力や基本的な身体スペックに関しては、恐らく敵が勝るだろうと確信を抱く。
武器を叩きつけ合う毎に感じる重みは気のせいじゃない。
先生に与えられたライダーシステムの詳細は分からずとも、基本性能は自分以上だろう。
スーパーショッカーとの決着後も門矢士は旅を続け、更に多くのライダー世界を通りすがった。
時には地下帝国BADANの野望を挫き、時には仮面ライダー1号らと争う羽目になり、時には後にレジェンドの名を冠する少年の危機に駆け付けた。
旅路を経てアップデートされたベルトこそ、先生が持つネオディケイドライバー。
ライダーへ変身するカードの力こそ失われているが、基礎能力は嘗てのライダー大戦時より大幅に強化されている。
数値上の強さだけで言えば、変身者が違えどディケイドの方が魔進チェイサーより上だ。
尤も、スペック差など勝負を左右する内のほんの一つに過ぎない。
それを証明するかの如く、ライドブッカーの猛攻をすり抜け胸部装甲をクローが突く。
火花を散らし短い悲鳴を上げるも、攻撃の勢いは緩めない。
魔進チェイサーの蹴りが飛び、脚部アーマーが脇腹へヒット。
一方的な殴打はディケイドから冷静さを更に奪い、剣を振るう動きにも支障が生じる。
武器を握るのが初めてではないだろうが、剣術に優れたとも言えない。
であればやりようは幾らでもある、龍騎の時と同じくクローで刀身を挟み込む。
武器を手放し後退を選ぼうとするも、一瞬の躊躇が敵に表れた。
あくまでカードで召喚しただけの龍騎と違い、ライドブッカーはカード収納も兼ね備えたディケイドに必要不可欠の武器。
自ら戦闘を不利にする訳にはいかないとの迷いが隙を生む。
掴んだチャンスは見逃さない、ブレイクガンナーの銃口を押し込む。
『EXECUTION SPIDER』
背部コネクターから供給されるエネルギーが増大し、ファングスパイディーの先端へ収束。
敵が仮面の下で顔色を変えたと雰囲気で察するが、今更遅い。
豪快に振るったのと同じタイミングで、ディケイドも回避へ動く。
僅かに直撃こそ免れても発せられるエネルギー量は少なくない、マゼンタ色の装甲部から火花が散った。
「チィッ…!ふざけるなよ…!」
殺気立った視線を緑のレンズ越しにぶつけられて尚、魔進チェイサーに反応を見せる素振りは無い。
ナーゴの演奏は効果覿面、このまま一気に畳みかけるのも難しくない。
反撃の機会はくれてやらない、斬り掛かるべく距離を詰めようとし、
「…っ!?この反応は……」
アッシュフォード学園内に生体反応を捉えた。
よもや騒ぎを聞きつけた他の参加者かと思うも、それにしては何かおかしい。
生物なのには違いないが、出会った参加者の反応とは別物。
何が起こっているという魔進チェイサーの疑問は、現れた者を見て即座に解決。
こちらへ駆けて来るのはどう見ても参加者では無かった。
衣服こそ着ているが頭部は人間と別物。
食虫植物のウツボカズラに似た頭部、右肩には青々とした蔓を巻きつけた異形。
斧を持ち振り回す腕のどこにも、参加者共通のレジスターが見当たらない。
それも当然、この異形の名は頭領ジャマト。
元々はデザイアグランプリの宝探しゲームで出現した個体。
殺し合いでは数あるNPCの一体として、主催者の手で用意されていた。
「きゃあっ!?」
頭領ジャマトが真っ先に狙ったのはナーゴ。
無防備な背中へ斧を振り下ろし、強制的に演奏を中断。
唐突に走った痛みへ悲鳴を上げ地面に倒れ込み、顔を上げようやっとNPCに気付いた。
ビートフォームのナーゴには自身の演奏を響かせる為に、補助機能も複数搭載済み。
内の一つが肩部のスピーカーであり、これは周囲の騒音を打ち消す効果を持つ。
龍騎との戦闘で浅倉が苛立ち混じりの咆哮を上げた時も、この装置で楽曲の質低下を防いだ。
しかし今回は頭領ジャマトの足音も、警戒を促した魔進チェイサーの声も消してしまった。
その為接近に気付かず斬られる羽目になったのである。
「だ、誰で…ひゃあっ!?」
ナーゴの言葉に聞く耳持たずで斧を振り下ろす。
殺し合いで頭領ジャマトに与えられた命令は、参加者を見つけ次第襲うことのみ。
ジャマーガーデンの管理者アルキメデルや、ジャマトの遺伝子を取り込んだ五十鈴大智ならともかく。
れっきとした人間であり、そもそもジャマトの存在自体を知らなかった果穂の言葉が届く筈もない。
咄嗟にビートアックスで防いだが、頭領ジャマトは戦闘力の高い個体。
両腕へ圧し掛かる重さに、自然と苦し気な声が漏れる。
「果穂……!」
守ると決めた少女の危機に、駆け付けないようでは人間の守護者失格だ。
急ぎ頭領ジャマトを退けようとするも、眼前へ立ちはだかるはマゼンタ色の装甲。
行かせはしまいと振るわれた剣を防いだ魔進チェイサーへ、弾むような声が掛かった。
「勝手に一抜けなんてよしてくれ。君の遊び相手は私だろう?向こうは向こうで遊ばせれば良いじゃないか。無事かどうかは保障できないけどねぇ?」
「貴様…退け!」
ニヤニヤと笑う様が仮面越しでも分かる、嘲りを籠めた言葉。
先程まで魔進チェイサーの猛攻を受け、頭を沸騰させていたとは思えない余裕の表れがあった。
ナーゴの演奏が止まった影響で、本来の冷静さを取り戻したのだろう。
ついでに今の今まで自身が不利に陥った原因が、あの耳障りな音にあったと理解。
なれば降って湧いた好機を活かさない手はない、今度はこっちの番だ。
『ATTACK RIDE ILLUSION!』
電子音声が告げるは、散々好き勝手やった礼をしてやる合図。
ディケイドの姿が一瞬ブレたかと思えば、複数に増えた。
目の錯覚では無い、これもまたディケイドライバーが解放したカードの力。
アタックライド・イリュージョン。
耐久性以外は本体と同スペックの分身を生み出す、ディケイドが持つカードの中でも高性能な一枚。
4体の分身が出現した。
魔進チェイサーを仲間の救助には向かわせない。
本体も含めた5人のディケイドがそれぞれ武器を構え、標的を取り囲む。
優勢を保っていた筈が、圧倒的に不利な状況へと早変わり。
感情の無い機械であっても、不味い事になったのは分かる。
破壊者達に手心等最初から期待していない、無意識の内にブレイクガンナーを握る手が強張った。
「さぁて、獲物は獲物らしく無様に踊れ!」
まず動いたのは本体と分身2体。
ライドブッカーの刀身を見せ付けるように撫で、魔進チェイサーへと疾走。
剣の間合いに閉じ込め一人が斬り掛かる。
バイラルコアの武装を装着したままなのは幸いだ、前方に翳し防ぐ。
敵が一人だけならこのまま剣戟に持ち込めるが、分身はただのお飾りではない。
左から横薙ぎに剣が振るわれ、右からは切っ先が真っ直ぐに突き進む。
得物が幅広なのを活用し片方を防御、もう片方はどうにか身を捩って躱す。
ノーダメージで済んだと一息つく余裕は無い、敵は全員休まず斬り付けて来るのだから。
視覚センサーが三方向からの攻撃を全て察知。
後は対処するのみだが、ナーゴの演奏が止まりディケイドの動作は先程よりも無駄が無い。
されど多対一の状況はこれが初めてでもないのだ。
額部分の複合モジュールが最適解の戦闘パターンを提案し、逆らわずに実行。
ファングスパイディーと腕部アーマーで斬撃を防ぎながら、どうにか包囲を突破する機会を窺う。
「良いのかい?目の前の私達にだけ気を取られて」
惑わす為の戯言、ではない。
接近戦を仕掛けたのは3体、残る2体も見物に徹するつもりは皆無。
共に武器をガンモードに変え、魔進チェイサーへと光弾を浴びせる。
ディケイドの機能を用いれば誤射を防ぐのは容易い、銃口が吐き出した殺意は一発残らず標的へ命中。
右腕の武装を盾に使い防ぐも、他のディケイドがそれを許さない。
死角へ移動しライドブッカーを振り下ろされれば、対処が間に合わず遂に一撃をもらった。
『ATTACK RIDE SLASH!』
『ATTACK RIDE SLASH!』
体勢が崩れたこのタイミングこそ、総攻撃のまたとないチャンス。
2体共に同名のカードをドライバーに装填、刀身に次元エネルギーが付与されたのを感じ取り振るう。
複数の刀身が現れマシンボディを走り、視界を大量の火花で埋める。
斬撃強化を施した双剣に怯むもまだ終わりではない、本体のディケイドが蹴りを放った。
「ぐっ…!」
靴底が腹部を叩き、地面へ背中から倒れる。
ダメージを知らせる音声よりも、魔進チェイサーを焦らせるのはナーゴの安否だ。
今も頭領ジャマト相手に単独での戦闘を強いられており、視界に映る様子からも苦戦している様子。
ディケイドの相手を長々と続けている場合じゃない、一刻も早く包囲を突破せねば。
コアドライビアの出力を上げ重加速を発生、周囲一帯がロイミュードの支配下に置かれる。
スローモーションのような鈍重な動作しか出来ない今なら、ディケイドだろうと手も足も出ない。
『ATTACK RIDE BLAST!』
『ATTACK RIDE BLAST!』
「なんだと…!?」
だというのに、一体何が起こっているのか。
鈍重どころかこれまでと全く変わらない動きでカードを装填し、銃口を向けて来た。
銃撃強化により通常時以上の弾がばら撒かれ、咄嗟に腕を翳すも何発かは被弾。
更には残りのディケイドも斬り掛かり、斬撃の嵐を己が身一つで味合わされる。
三本同時に急所へ突きを見舞うが、そういつまでも斬られ続けるのは御免だ。
チェイサーバイラルコアを二つ放ると、宙を駆けながら刀身を弾き返す。
「向こうを頼む…」
シフトカーやシグナルバイク同様、変身者の命令に従うようインプットされている。
魔進チェイサーの指示通り、ディケイドの間を猛スピードで走り抜けナーゴの元へ向かう。
急場しのぎだが彼女へ援護は送れた。
(どういうことだ…?何故重加速の中で動ける……?)
疑問は尤もだ。
重加速の中で動けるのはコアドライビアを持つ者のみ。
ロイミュードやドライブシステムの仮面ライダーではない相手が、自由に動き回れるのは有り得ない。
発生装置に不調は無い、では一体どうして。
訳を述べるならば、それは此度の敵がディケイドだからで説明が付く。
何故ディケイドが世界の破壊者と呼ばれるのか、理由の一つにその世界の法則を破壊するからというものがある。
カードデッキ所持者以外は通れないミラーワールドへの侵入、不死の生物アンデットを封印では無く爆殺する等々。
嘗て士が複数の世界を通りすがった時と同じ現象が、殺し合いでも起きた。
コアドライビアを持つ者しか重加速の中で動けないという、謂わば「ドライブの世界の法則」を破壊したのだ。
「何だか知らないけど残念だったね。やっぱり幸運の女神は君のようなガラクタではなく、私みたいなキヴォトスの選ばれた者に微笑むってことさ!」
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
本来の変身者ではない為、ディケイドが持つ破壊の力を詳しくは分かっていない。
ただ敵が何らかの小細工をしたが失敗に終わったのは分かる。
無駄な抵抗に過ぎなかったと笑い、より高威力の技を引き出すカードを選択。
銃口と標的との間に、カード状のエネルギーが道のように複数出現。
対抗すべく魔進チェイサーも得物の銃口を押し込む。
『EXECUTION SPIDER』
先端部部にエネルギーを収束し、光弾に変えて発射。
ディケイドも引き金を引き、ライドブッカーから放たれた弾が道を通過して行く。
一枚通り抜ける度に変化が起こり、遂には極太のレーザーと化し光弾と衝突。
どちらも一般怪人なら複数体纏めて葬る威力だ、互いを飲み込み、食い千切りながら消滅。
飛び散ったエネルギーの残骸が双方を襲うも、ディケイドはライドブッカーを撃った時点で既に分身を動かしていた。
背後から急接近する気配を察知し回避、だが援護射撃に出た分身がそれを妨害。
光弾が殺到し強引に動きを止められ、すかさず残る全員が剣を振り下ろす。
一撃二撃と食らう度に動きは鈍り、ディケイドの猛攻に為す術なく斬られ続ける。
不可視のシールド発生装置がダメージを最小限に抑え、更にメカ救急箱で施した処置の効果が継続中なのが幸いした。
大きな損傷こそ逃れてはいる、しかし長続きはしない。
「ぐぁ……」
「思ったよりも頑丈だね、君は。生徒達へのプレゼントで持ち帰るのも良いかもね。壊れにくい的なら、皆大喜びで蜂の巣にしてくれるだろうからさぁ!」
膝を付いた魔進チェイサーの首へ、複数本の剣が添えられた。
敗者と勝者の分かり易い構図を生み出し、ディケイドは機嫌良く口を開く。
「君はアレだよね、確か…ロイミュードだかっていう人間じゃないやつでしょ?」
「っ!?何故、それを知っている…」
生徒会室での情報交換で自分の正体は明かしていない。
殺し合いに自分の知る者は参加しておらず、唯一正体を明かした果穂もロイミュードのことは先生に言っていない。
なのに一体どこからその情報を手に入れたのか。
「さあ?そんなことよりさ、わざわざ自分の同族でもない人間を守るだなんて、君も良くやるよ」
仮面で顔こそ見えないが、声色から決して労りの類が含まれていないのは明らか。
単に殺すだけでは飽き足らない。
一度は劣勢に追い込まれた事への意趣返しもあるのか、言葉で揺さぶりを掛けてからトドメを刺す気か。
「向こうにいるあのガキ、随分君に懐いてるみたいだね。いやいや、仲が良くて私も羨ましいよ。いつまで続くかも分からないのに、さ」
「…何が言いたい」
「惚けるなよ、君だって分かるだろ?どれだけ正義の味方っぽく振舞ったって君は所詮化け物。人間との仲良しごっこにも限界がある」
嘲り交じりで遠回しに告げているが、理解できない話でもない。
特状課のメンバーのようにロイミュードを受け入れる者はいても、人間全てがそうではない。
むしろ恐怖と嫌悪を向ける方が一般的だろう。
グローバルフリーズに始まり、ロイミュードが人間社会に与えた被害は少なくない。
中には人間との間に友情を築いた個体も存在はした。
だが人類全体がロイミュードに抱く感情は、正より負の方が勝る。
チェイスのみならず、他のロイミュード達だって同じ結論に至る筈。
人間を守るという自分の使命を失くしてはいない。
しかし守った人間が自分を常に、仮面ライダーという正義の使者と見てくれるとは限らない。
感謝されず、それどころか同じロイミュードだろうと拒絶するのも有り得る。
仮面ライダーであっても、進ノ介や剛と違い人では無いのだから。
「あのガキだってその内君に怯えて、化け物だなんだと言い出すかもしれない。私はそれを憂いているよ」
「……」
「馬鹿らしくなるだろう?でもそれが人間だ。同じ人間同士でも平気で殺し合うくらいだ、そもそも人じゃない奴なんて存在自体認めちゃくれないさ」
己の言葉こそが真理だとでも言いた気に、ハッキリと告げる。
相手が口を噤むのは、痛い所を突かれたからだろう。
破壊者の仮面の下で醜悪な笑みを浮かべ、
「それがどうした」
望んだのとは全く異なる答えを返された。
◆
自身の挑発が答えた様子は全く無い。
無骨な機械人形の仮面で覆われているも、動揺や強がりの類が浮かんでいないのは察しが付く。
ガチリと、左手がディヴァインオレ製の刀身を掴んだ。
引き抜こうにもどれ程の力が籠められているのか、びくともしない。
純粋なパワーなら今の自分の方が上な筈なのに。
上機嫌へ水を差され顔を顰めるディケイドに気付いてかいないのか、構うものかと続ける。
「人が俺を愛さなくとも、称賛しなくても、認めなくても構わない」
見返りが欲しいから戦っているのではない。
大勢に愛されたいから守っているのではない。
共に生きることを許されたいから、仮面ライダーになったのではない。
拒絶され、恐怖されようと、そんなものは戦いを放棄する理由にならない。
「俺が人を愛し、守れれば、それでいい」
人を守る正義のロボットであれという、000だった頃に与えられた存在意義が根付いている。
共に肩を並べて戦ってくれる、人間の戦友達がいた。
敵だった自分を救い、失恋の誇らしい痛みを自分に教えてくれた女がいた。
ダチにはなれなかったが、命を捨ててでも守りたいと思った男がいた。
幼き心に正義を宿し、自分を助けた少女がいる。
戦う理由はそれで十分だ。
「……つまんないな、お前」
ボソっと呟かれた言葉は、これまでの先生とはどこか違うものに聞こえた。
それこそ先生が真に隠し続けている本当の顔、とでも言うべきか。
籠められた感情は苛立ちだけでない、だがそれについて深堀する場合じゃない。
「チッ!また邪魔か…!」
魔進チェイサーの戦意に呼応し、デイパックから大型の物体が飛び出す。
シフトカーにしてドライブ専用装備の一つ、トレーラー砲だ。
他のシフトカー同様に自律行動が可能であり、泊進ノ介の戦友を助けるべく参戦。
運転席部分よりビームを連射し、分身達を引き離す。
「ガラクタがぁっ!」
スクラップにしようと引き金に指を掛けるが、今度は魔進チェイサーが一手早い。
ブレイクガンナーのエネルギー弾で妨害、この隙に突破を試みるが本体と残りの分身が許さなかった。
四方八方より襲い来る刃を凌ぎ、金属同士の衝突音が木霊する。
トレーラー砲にも斬撃が襲い、頑強な車体を動かし弾き返す。
「……っ!」
戦う姿と、魔進チェイサーの声はナーゴにも届いた。
頭領ジャマトが振り回す斧をどうにか防ぎ、時には躱す。
忍者バックル使用時程でないとはいえ、高い俊敏性を持つビートフォームなのも影響したのだろう。
致命的となる一撃だけは回避に成功し続けている。
ライダーとしての戦闘経験はチェイスやデザグラの参加者に大きく劣るも、運動能力は同年代の少女と比べても高い。
加えて指示を受けたチェイサーバイラルコア二台が、小さな車体で共に戦ってくれるのも大きい。
しかしあくまで死をギリギリ遠ざけているに過ぎず、このままではジリ貧だ。
まして頭領ジャマトは戦闘能力の高い個体、本当ならば今のナーゴ単独で相手取れる敵ではない。
(チェイスさん……!)
だがナーゴの戦意は揺らがない。
ヒーローとして怪人と戦うのは、想像していた以上に恐い。
テレビの中の物語では無い、現実に攻撃されれば痛いし、死んでも不思議は無い。
後ろから斧で斬られた時の痛みはフィクションじゃない、もし変身してなかったら命を落としていた。
改めて自分が殺し合いに巻き込まれたと実感を抱き、最初に感じたのと同じ恐怖がぶり返す。
だけど、恐い以上に今自分はチェイスに言葉を届けたい。
彼が何を思って戦っているのかを、彼自身の口か聞いた。
多くは語られなくても、籠められた想いが嘘じゃないとは分かる。
「だから……あなたに勝ちます…!」
伝えたい言葉を届かせるには、立ち塞がる壁を突き破るしかない。
これまでのように演奏だけでは倒せず、敵の力は自分よりも上。
故に思い出す、自分の大好きなヒーロー達ならこんな時どう戦うか。
多くの技を持っていても毎回同じ攻撃をしているのではない、時には工夫を凝らして勝利を掴むのも重要。
考える間にも頭領ジャマトは止まらない。
銀色のミニカー達を蹴散らし、ナーゴ目掛けて斧を投擲。
持ち主の意思一つで爆発させる事も可能な武器だ。
嘗ての宝探しゲームで脱落となったライダーと同じ末路が、幼い少女にも降り掛かろうとしていた。
『FUNK BLIZZARD』
終われない理由があるから、己に迫る死を自力で跳ね除ける。
ビートアックスの調律装置を操作し、弦を掻き鳴らす。
激しい音を出すだけがこの武器の全てでは無い。
調律装置によって音にそれぞれ異なる属性を付与し、攻撃に利用出来るのだ。
ギターの音色と共に冷気が放射、斧を凍結させ爆発を防いだ。
「やった…!」
目論見が上手くいったのを喜ぶのも束の間、頭領ジャマトが怒りの声を上げ突進。
得物を失おうと素手で十分、未だ健在の脅威にナーゴも急ぎ腹部へ手を伸ばす。
『REVOLVE ON』
時計回りにドライバーを回転し、レイズバックルの位置を反転。
するとナーゴ本体にも変化が起きる。
全身が宙へ浮かび、可動フィギュアのように変形。
上半身から下半身へと装甲の部位を変え降り立った。
デザイアドライバー共通の機能を使い、脚部に拡張装備を展開。
頭領ジャマトが突き出す拳へ合わせ、ナーゴも蹴りを放つ。
打撃同士の衝突に打ち勝ったのはナーゴ。
蹴りと同時に脚部のスピーカーから大音量を放ち、音圧を乗せて頭領ジャマトを吹き飛ばした。
反撃を受けジャマト語の悲鳴を上げる敵から視線を外し、自分の体を見下ろす。
「え、あ、あたし今なんか凄いことになった気が…あっ、それよりも…!」
装甲部位を変えた時、どう考えても人がやっていい動きじゃなかったと思うがそれどころではない。
頭領ジャマトが何かを叫びながら立ち上がり、こちらに再度襲い掛かって来た。
聞いた事の無い言語だけど、恨み言の類だろうとは流石に分かる。
敵の接近を阻もうと二台のチェイサーバイラルコアが突進。
援護へお礼を言いながら再び腹部へ手を伸ばす、ここが決着のタイミングだ。
『REVOLVE ON』
『BEAT STRIKE』
装甲を上半身に戻し、変形と同時にレイズバックルを操作。
鍵盤のを弾いた後、ディスクのスクラッチを経て必要なエネルギーを充填。
胸部スピーカーから大量の音波状エネルギーを発生させ、ビートアックスに纏わせる。
切れ味の強化が済んだら直接ぶつけるのみ。
疾走するナーゴに敵が気付いた時にはもう遅い、煌びやかな刃が胴体を駆け抜けた。
「はぁ…はぁ…か、勝てました…!…あれ?」
ジャマトの言語で絶叫し爆発。
肩で息をしながら勝利を噛み締め、ふと地面へ奇妙な物が落ちているのが見えた。
こんなものはさっきまで無かった筈、不思議に思い拾い上げる。
が、これについて深々と考えるのは後。
優先するべきは今も戦っている彼の方である。
『METAL THUNDER』
駆け出しながらビートアックスを掻き鳴らす。
先程とは違うエレメンタルを付与し、電撃を伴った音を放つ。
冷気よりも範囲が広く、複数人のディケイドを巻き込み痺れさせる。
憎たらし気に睨みつつ距離を取った破壊者達に怯まず、仲間の元へ駆け寄った。
「チェイスさん!大丈夫ですか!?」
「果穂…すまない、助かった」
「いえ!チェイスさんがミニカーさん達を送ってくれたおかげで、あたしも勝てましたから!ありがとうございます!」
少々苦し気だがチェイスは無事。
礼を口にすると、彼が寄越した二台のミニカーも持ち主の元へ戻る。
だがまだ一番言わなきゃいけなことを伝えていない。
「さっき、チェイスさんが言ったこと…あたしにも聞こえました」
たとえ人から拒絶されようと構わない。
人からの愛を得られずとも、自分は人を愛し守る。
大声で叫んだのではない、悲痛な声色でもない。
だけどこれまでに話したどの言葉よりも、譲れないものが秘められてると思えた。
「チェイスさんにとって一番大事なことなんだなって、そう思ったから、だから…」
悲しい決意だと思わなかった訳ではない。
けれど彼を突き動かす最も大きな理由なら、チェイスという存在を形作る信念なら。
それは間違ってる、もっと違う考え方はできないのかなんて言いたくない。
彼にとって譲れないその正義を、自分の正義で否定したくなかった。
「だからあたしはっ!チェイスさんが一人で頑張り過ぎて倒れないように、傍で支えたいって思いますっ!」
彼がヒーローとして人を守るのなら。
自分もヒーローとして、何よりアイドルとして彼を助ける側になりたい。
ヒーローを応援する側から、応援されるアイドルになった。
ヒーローに勇気をもらう側から、ファンに勇気を与えるアイドルになった。
ライブで、ショーのステージで、或いはファミレスに立ち寄った日常でも。
果穂ちゃんのおかげで元気がもらえたと、そう言ってくれる人達がいたから。
苦労も辛い記憶も時にはあるけど、全部背負って選んだ道を突っ走ろうと心から思えた。
ヒーローとしてもアイドルとしても、まだまだ駆け出しなのは否定できない。
けど、手を伸ばしたいと思った気持ちはきっと嘘じゃない。
だから大変な道を進む彼の心に、少しでも元気をあげられるのなら。
恐怖を乗り越えてでも戦おうと、強く決意できた。
そして、まるで少女の宣言に呼応するかのように、一つの力がロイミュードの掌に収まった。
これはチェイスに与えられた最後の支給品。
見覚えがあるがしかし、自分が使う機会は生前一度も訪れなかった代物。
自分に今以上の力を齎す、なのに龍騎の時も今も使用を渋った理由は一つ。
敵味方関係無く猛威を振るうリスクの存在、守るべき人間を逆に傷付けるなどあってはならない。
「……果穂」
だがそのリスクは、使用者の精神次第で乗りこなせるものでもあった。
先程までのチェイスなら使うのに大きな抵抗を感じただろう。
「先に謝らせてくれ。俺は、お前の強さを見誤っていた」
なれど考えを変えたのは、彼が守ると決めた幼い少女の言葉。
今でも守るべき対象と見ているのは変わらないが、もうそれだけじゃない。
破壊者を前にして怯まず、守られるだけではいられないという覚悟。
自分の知る人間達と同じ強さを間近で見せられた以上、もう臆してなどいられない。
果穂は誰かに言われてでは無い、れっきとした己の意思で戦うと決めた。
ならば次は自分の番だ、自分を支えると言ってくれた彼女に恥じない戦いをするまで。
「……変身!」
『NEXT DRIVE SYSTEM DEAD HEAT』
仮面ライダーにではない、彼女の仲間としての変身を行う。
赤い車と白いバイク、二つが一つになったシフトカーを装填する。
ブレイクガンナーの機能は、魔進チェイサーへの変身や武装の展開だけではない。
プロトドライブのシステムを組み込まれている為、シフトカーやシグナルバイクの情報も読み込める。
故に、此度はドライブとマッハの力を魔進チェイサーの新たな能力として行使。
電子音声が告げるは、正史では存在しなかった戦士の名。
紫のボディを染め上げる、炎の如き真紅。
魔進チェイサー・デッドヒート。
ロイミュードの王、ハートへ対抗すべく開発されたシフトデッドヒートの力を引き出した形態。
仮面ライダーではなくとも、人類の守護者として破壊者を打ち倒すべくここに変身を果たす。
「チェイスさんそれって…凄いです!パワーアップして、カッコイイですっ!」
目を星のように輝かせる少女を見る。
自分の心を強く動かした、もう一人のヒーローを。
「果穂、お前の覚悟は確かに聞き届けた。ここからは――」
無茶をするな?それは間違っていない。
改めて守らせて欲しい?それも正解。
しかし今本当に言わねばならないのは違う。
彼女の決意に応える為の言葉は――
「一緒に、戦ってくれ」
「――はいっ!」
『SET』
頭領ジャマトが落としただろう、赤いレイズバックルを装着。
会場に配置されたNPCは稀に倒すと、何らかのアイテムを落とす。
まるでゲームのようなルールが今回は果穂の助けとなり、見事引き当てた。
バイクのパーツを思わせるハンドルを捻り、炎を噴出させナーゴの姿が変化する。
「もう一度、変身っ!」
『DUAL ON』
『BEAT&BOOST』
下半身へ纏う新たな装甲。
膝、足首、大腿に装備されたアーマーから伸びるは、バイクのマフラー。
デザグラで数多くあるアイテムの中でも、特にレアなブーストレイズバックルだ。
これも主催者の狙い通りか、或いは果穂の持つナニカが引き寄せたのかはさておき。
『READY FIGHT』
反撃の用意は整った。
ヒーロー達と破壊者、相容れぬ善と悪の最終ラウンドが幕を開ける。
「…っとにつまんないなぁ!お前らは!!」
粗暴な口調は自身が隠した■■を引き摺り出されたが故か。
本体の合図と同時に分身達が殺到。
標的が多少姿を変えて二人に増えただけ、正義だなんだと馬鹿げたものをいつまで口にできるのか。
余裕を口にしようとするも、ささくれ立った内心までは誤魔化せない。
「ここからは、あたし達で先生を止めてみせます!」
『BOOST TIME』
ハンドル部分を二度捻り、変身時以上の火炎を噴射。
全身に力が漲ったのは気にせいじゃない、変身中の能力を大幅に強化する破格の機能だ。
敵が真正面から来るなら、こちらも真っ向勝負で勝ってみせる。
脚部のマフラーが炎を吐き出し、ナーゴの走力が爆発的に増加。
ディケイドの元へあっという間に到達、懐へ潜りこむや否や両手を振り被った。
「テメ…!」
横薙ぎの刃はエレキギター型の拡張武装、ビートアックスによるもの。
胸部を走った斬撃に遅れて痛みが追い付き、堪らず呻くディケイドへ今更動揺はしない。
続けてビートアックスを振るうも、そう何度も食らいはしないと敵も反撃。
刃同士の激突に打ち勝ったのはディケイド、やはりパワーではナーゴが劣る。
たたらを踏んだナーゴの立て直しは待ってやらない。
このまま斬り刻んでやろうとし、だが剣を振るった先に敵の姿は見当たらない。
どこへ行ったと周囲へ視線を向けるより早く、死角からの敵意に肌が泡立つ。
慌てて飛び退くも完全には避けられず、左肩を痛みが襲った。
小娘如きが自分に傷を付けるなど、全く持って気に入らない。
他の分身をこちらに向かわせ、複数同時に刃がナーゴへと襲来。
「させん…!」
「ごが…っ!?」
凶刃を届かせまいと、守りし者の拳が叩き込まれた。
顔面直撃のストレートは本体のみならず、分身数体を纏めて殴り飛ばす。
小賢しい真似に出た相手への怒りは刃に乗せ、無事だった分身3体が斬り掛かった。
これを魔進チェイサー、ブレイクガンナーと左拳の打撃で迎え撃つ。
スパイクが刀身を叩き、拳が斬撃を押し返す。
互いの得物をぶつけ合いすぐにディケイドは気付いた、先程よりも一撃が重いと。
数で勝るのは自分の方だが、魔進チェイサーは拳を突き出す度に威力が上昇。
遂にはライドブッカーで防いで尚も殺し切れない衝撃と、装甲越しに炙られるような熱が叩き付ける。
一度怯めば立て直される前に隙へ入り込み、三体の破壊者へ殴打の嵐を放つ。
ライドブッカーを使い防ぐも拳は重く、体勢が崩れるのを抑えられない。
真紅の光が迸った鉄拳が直撃し、とうとう分身の1体が消滅へ追いやられた。
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
たかが一体倒した程度、何の痛手にもならない。
しかし不快感は感じているのか、2体同時にカードを乱雑に叩き込む。
次元エネルギーが解放され、小癪なヒーロー気取り共を殺す道を形成。
レーザーを放った時と同じだ、一枚一枚を駆け抜ける度に威力を強化し必殺の技へと昇華。
分身達がカード状の道を疾走し刃の到達まで後僅か。
『FUNK BLIZZARD』
『TACTICAL BLIZZARD』
そのほんの少しの猶予さえあれば反撃は可能だ。
インプットトリガーを押し、音に宿ったエネルギーを刃に掻き集める。
頭領ジャマトを凍らせた時以上の力で以て、破壊者を迎え撃つ。
ビートアックスを豪快に振り回し、より広範囲へ冷気を撒き散らす。
ナーゴへ刃が届く寸前、分身は両方共に凍結し奇怪なポーズの氷像へと早変わり。
「もう一度いきます!」
『ROCK FIRE』
『TACTICAL FIRE』
動きを止めたなら、次に何をするかは決まっている。
付与するエレメントを氷から炎に変更。
火炎を纏った刃が氷像を叩っ斬り、一瞬で溶かし消滅。
「ク…ソが!」
『ATTACK RIDE BLAST!』
短時間で分身を半数消され、残るディケイドは3体。
怒りを隠そうともせずに、銃撃強化のカードを勢い良く装填。
複数に増えた銃口が睨み付けるのは当然ナーゴ。
しかし肝心の光弾が発射される機会は訪れなかった。
『TUNE CHASER BAT』
『GUN』
『EXACTLY!』
重低音が二つと陽気な声が一つ。
電子音声が告げたのは、魔進チェイサーが重武装を行ったこと。
右手にはブレイクガンナー、右腕にはレーザーニードル発射武器ウィングスナイパー。
そして左手には沢神りんなの発明品の一つ、トレーラー砲を装備。
本来は両手持ちを想定しているが、現在の魔進チェイサーなら片手で扱える。
ディケイドの光弾を超える数のエネルギー弾が殺到、マゼンタ色を覆い隠す。
ただでさえ本体よりも耐久性が低い分身に、これ程の銃撃を耐える手立てはない。
為す術なく弾幕の餌食と化し、一斉掃射が止んだ時にはもう影も形も見当たらなかった。
分身は残り1体、流れは確実に自分達が掴んでいると実感を抱く。
「っ……!」
が、突如として魔進チェイサーの動きが止まる。
苦し気に短く呻き、自分の体でありながら別の何者かに支配権を奪われた感覚。
全身に走る熱も急上昇し、思考が焼き切れん程の熱さが襲う。
異変は彼の仲間と敵、両方の目にもしかと見えた。
「ハッ!何だよ、カッコ付けといてもう限界か!?」
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
敵にとってのアクシデントは自分にとっての朗報。
大口叩いておきながら結局はこうなる。
嘲笑を聞かせながらライドブッカーに次元エネルギーを収束、数度目になるカード状の道を出現させた。
もう一人のガキが何か言ってるが聞く価値もない戯言だ。
心配で駆け寄るつもりなら、二人纏めて馬鹿な的にしてやる。
「チェイスさん…!」
「っ!問題…ない…お前の覚悟を聞いたなら…俺も乗りこなすだけだ…!」
膨大な熱が支配せんと侵食する。
壊せ、目に映る者全てを壊せ、ただ殺し尽くせ。
己に宿った信念とは真逆の破壊衝動が蝕み――鋼の如き意思で捻じ伏せる。
通常形態の仮面ライダードライブを上回る攻撃性能を発揮する強化形態、それがシフトデッドヒートの力だ。
反面、一定時間が経過すると制御不能な状態に陥り、周囲へ無差別に襲い掛かる欠点を持つ。
しかしこの大きなリスクは決して乗り越えらえない壁に非ず。
一度は迷走から喪失した自信を取り戻し、デッドヒートを完全に乗りこなした詩島剛のように。
チェイスもまた、自分を支えると誓った少女の決意に恥じぬよう、果穂の覚悟に応えるべく己が試練を突破。
剛に続きデッドヒートの力を我が物へ変えたのである。
『EXECUTION BAT』
こうなれば最早恐れるものはない、怯み後退する理由はどこにもない。
ウィングスナイパーを飛行形態に変え、背部へと装着。
自信を狙うレーザー相手に逃げも隠れもしない、真っ向より蹴りを放つ。
加速の勢いに加えデッドヒートの影響もあり、破壊者の光線を掻き消し突き進む。
強化ブーツが装甲を貫き、遂に全ての分身が消滅。
「クソがっ!お前らは本当に…!!」
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
本体の苛立ちは最高潮に達する。
戦闘を有利に進めていたのは自分、なのにこれは何だ。
ヒーローだ正義だと、殺し合いを理解できてないような戯言に追い詰められている。
人と化け物が手を取り合い、自分はそんな三流芝居の踏み台か?
冗談じゃない、こんなものは望んだ光景に掠りもしない。
ディケイドライバーが最後のカードを解放し、再び破壊の為の道を生みだす。
ディメンションキック、威力を高めた蹴りを放つシンプルながらディケイドを代表する技。
他のライダーの力は用いないが、現在使えるカードの中では最も強力。
嘗てのライダー大戦時の数倍のキック力を、必殺の技に昇華し叩き込むのだ。
小娘一人と機械人形一体を破壊するのに、十分な凶器だろう。
「チェイスさん!あたし達も一緒に…!」
「ああ…!」
なれど退かない、悪が目の前にいるのならヒーローは逃げない。
破壊者の強さは身に染みて理解している。
しかし肩を並べて戦う者が、住まう世界も種族も何もかもが違おうと。
断ち切れない信頼を結んだ仲間がいるから、負ける気がしない。
『BEAT BOOST GRAND VICTORY』
『フルフルデッドヒート大砲!』
二つの炎が迸る。
邪悪を断つ刃へ、邪悪を撃ち抜く弾丸へ。
善を踏み躙る破壊者を決して逃さぬ、英雄達の正義が力となる。
視界を焼き、胸の奥へ奥へと閉じ込めた感情を炙り出す熱さ。
それがどうしようもない程に心を掻き毟る。
ディケイド、否、先生、否否、■■■■■を苦しめたあの焔とは違う。
復讐よりずっと熱い、人の持つ輝きが『嫉妬』すらも焼き潰した。
「がああああああああああああっ!!!」
吹き飛び、地面へ叩き付けられても終わりじゃない。
数度のバウンドを経て後者の壁をぶち破り、それでようやく止まった。
衝撃で外れたベルトが足元に転がるのも、気にする余裕が無い。
ディヴァインオレの装甲でも防げない痛みに苛まれる。
いいや痛みはどうでもいい、どうせすぐに治る。
たった一つしかない命を後生大事にする、ちっぽけな虫けらとは違うのだ。
体の痛み以上に、精神を焼く熱さの方が余程忌々しい。
『先生』の姿を使って遊ぶ気だったが、こうも舐められては予定変更。
怒りが冷静な判断を奪い去り、目の前の連中に借りを返す方を優先しろと叫ぶ。
その為に変身するのはディケイドじゃない、自分の本来の力であり嫌悪する姿。
アレにならねばならないストレスも纏めてぶつけようとし、
「――あ?」
目の前に現れたカードに意識を割かれた。
ディケイドライバー共々足元に落ちたライドブッカーから、見慣れぬ数枚が飛び出たらしい。
反射的に掴んだカードを眺め、訝しく思うのも数秒。
ややあってこの不可思議な現象の理由を思い出す。
(ああそういや……こいつの力を取り戻す方法だかってのが書いてたっけ)
ディケイドライバーの説明書をペラペラ捲った際、失われたライダーの力を使う方法も記されていた。
正直意味不明の単語も多かった為流し読みだったが、見事に一つを取り戻したということか。
「チッ、まあいいや。何かシラケちゃったし」
いざ殺すタイミングで水を差され、怒りを削がれてしまった。
ただここで『あの姿』になるのは早計と考え直す程度には頭も冷え、一旦は殺意も引っ込める。
何より仕込みは済んだ、後は連中が勝手に踊って混乱を引き起こすのみ。
高みの見物と洒落込むか、もう少し色々と爆弾を投げ込むか。
自分がどう動くかはその時の状況次第。
この場で戦闘を続ける気も薄れており、長居する理由も見当たらない。
「はあ、ダッル…変身」
『KAMEN RIDE KUUGA!』
『FORM RIDE KUUGA DRAGON!』
萎えた気分を前面に出し、手に入れたばかりのカードを二枚続けて読み込む。
纏うのはマゼンタ色の装甲ではない。
赤い鎧から青へ、頭部にはクワガタを思わせる角。
両目も鎧に合わせて変色した戦士の名は仮面ライダークウガ。
ディケイドを象徴する能力、他世界のライダーへの変身を行いこの姿になった。
瓦礫を蹴飛ばしながら外へ戻ると、案の定ナーゴ達は驚きを隠せない。
「さっきと全然違う見た目です…!あれも、先生が持ってるベルトの力なんですか!?」
「分からん、あんなライダーは俺も初めて見る」
シフトカーを使うドライブや、ロックシードなる錠前を使うアーマードライダー。
記憶にある戦士達は専用の装備を使って強化形態になったが、敵はベルト以外丸っきり別のライダーになっている。
ディケイドが持つ力は未だ未知数、ここから先は更なる激戦になってもおかしくはない。
と、すっかりやる気になっている二人を鼻で笑う。
「熱くなってるとこ悪いけど、私はここらで退かせてもらうよ。君達も覚悟しておくと良い。私に手を出したと知れば、生徒達も黙っていない。
アハハハハハハ!キヴォトスを敵に回して、無事で済むとは思わないことだ!」
「待て…!」
制止の声を振り切り跳躍、校舎の屋根へ飛び乗り続けて付近の建造物へと移動。
先生が変身中のクウガは別名ドラゴンフォームと呼ばれる、スピードとジャンプ力に特化した形態。
耐久力を削ぎ落とし抜群の身軽さを発揮、屋根から屋根へと跳びあっという間に遠ざかる。
愛用のバイクがあれば追跡も可能だが、無い物ねだりに過ぎず。
結局ディケイドの逃走を見送るしかなかった。
「先生…行っちゃいました……」
ここで止めるつもりで戦ったのに、当の相手には逃げられる始末。
苦い終わりだが切り替えるしかない、戦うべき相手は先生一人ではないのだから。
相手の話が真実なら、自分達はキヴォトスの関係者を敵に回したらしい。
先生同様の性根の持ち主達なら、確実に戦闘は避けられないだろう。
ともかく無事生き延びたのなら、これからどうするかを考えねばなるまい。
変身を解いたチェイスに倣い、果穂も生身へと戻る。
そこでようやく、見慣れないバックルを使っているのへ首を傾げた。
「お前の支給品には無かった筈だが、どこから出て来た?」
「これはさっきの…頭がこう!なってる怪人さんが落としたみたいです!」
頭領ジャマトの頭部の形状をジェスチャーで伝え、改めてブーストレイズバックルを見やる。
あの時はチェイスと共に戦うことで頭がいっぱいだったけど、これを使った時は自分の体とは思えないくらい速く動けた。
ヒーローのパワーアップアイテム、というやつだろうか、さっきの赤い装甲になったチェイスと並んだのを思い出す
「カッコよかったなぁ」と仲間の姿にまたもや胸が熱くなり、無意識の内にかハンドルを持つ手に力が籠る。
『BOOSTRIKER』
「ひゃっ!?な、何か出ました!」
偶然の操作で現れたのはブーストレイズバックルの拡張武装。
バックルと同じ色が特徴のバイク、ブーストライカーに驚くのは一瞬のこと。
思いもよらぬギミックへ興奮が高まる。
「か、カッコいいですっ!ジャスティスレッドと同じ、ヒーローの赤です!」
「そうか?……そうか」
考えてみればドライブの装甲も赤なので、ヒーロー=赤の図式は間違っていないのかもしれない。
ふと呑気なことを考えつつ、バイクが手に入ったのは好都合だ。
移動時間を短縮できるし、追跡や撤退時の足にも使える。
何より機械の自分と違い果穂は疲労も溜まる、徒歩以外の移動手段はあって困らない。
「だがこれには問題がある。ヘルメットが一つしかない」
「…あっ!た、確かにそうです…これだとあたし達二人でバイクに乗れません……」
「ああ、ノーヘルは人間の定めたルールに違反している。恐らく霧子達がいても同じ事を言う筈だ」
「えっ?どうして霧子さんが…あ、チェイスさんの仲間の霧子さんですね!」
一瞬アンティーカの幽谷霧子が婦警姿になっている絵面が浮かんだが、すぐ同名の別人と勘違いに気付く。
他の者がいればそんな場合かよと言われるだろうけれど、二人にとっては大真面目だ。
果穂の好きな特撮ヒーロー達だって、変身前はヘルメットを被ってバイクに乗っている。
ヒーローを目指す者として自分だけルールから外れて良いものか。
「そういえば、チェイスさんって免許は…」
「免許は既に習得している」
免許はあった。
その後、悩みはしたが非常事態なのもあって仕方ないという事で話は落ち着いた。
人間以上の耐久力を持つ自分よりはと、ヘルメットは果穂が被ることに。
アッシュフォード学園に留まり、参加者の来訪を待つのも一つの手。
しかしやって来るのが友好的な者のみとは限らず、今の戦闘を聞きつけ危険人物が訪れるのも考えられる。
よってここを離れるのを選択、問題はどこへ向かうかだがチェイスには気になる施設があった。
久留間運転免許試験所。
特状課のオフィスの設置場所兼、仮面ライダードライブの活動拠点。
主催者がどこまで内部を再現してるかは不明だが、地下にドライブピットがあるのか確かめておきたい。
流石にトライドロンは無いだろうがしかし、念の為にも見ておきたい。
果穂の知る施設としては、自身の所属する283プロの事務所がある。
気にはなるし、偽物と分かっていても殺し合いで利用され良い気分にはならない。
もし自分以外のアイドルやプロデューサーも巻き込まれていたら、彼女達が行くかもしれないと目的地に希望しただろう。
とはいえ実際には283プロの関係者は自分一人、その為現状の優先度はそこまで高く無かった。
目的地は決まり、後は道中で協力できる参加者の捜索も並行し行う。
現状の最優先は仮面ライダーガッチャード。
人柄については最初のやり取りを見る限り信用出来る。
加えて彼はルルーシュから提示されたターゲットの一人、最悪の事態になる前に見付けておきたい。
バイクに乗り込み、果穂が自分の腰に手を回すのを確認しエンジンを吹かす。
ライドチェイサーではないマシンだ、独自のクセには早急に慣れておかねば。
マフラーが火を吹き発進、闘争の場となった学園を後にした。
運転に集中しつつも、チェイスには先の戦闘でずっと疑問があった。
何故先生は自分がロイミュードだと知っていたのか。
特状課や警察関係者は一人も参加しておらず、ロイミュードは自分しかいない。
一体どこから情報を手に入れた。
(……まさか。いや、有り得なくはないのか?)
可能性の一つとしてふと思い浮かぶ。
参加者にチェイスを知る者はゼロ、だが他の方法で殺し合いに関われる存在に心当たりがある。
それは仮面ライダーとロイミュード共通の宿敵、蛮野天十郎が参加者の支給品という形で島のどこかにいる可能性。
クリム・スタインベルト同様、蛮野は人間の肉体を失いデータ化した意識のみの存在だ。
チェイスの記憶通りならブレンが管理していたタブレットから、ゴルドドライブのドライバーへ意識を転送している。
つまりブレイクガンナーや果穂のデザイアドライバーのような変身道具として扱われ、誰かに支給されたんじゃあないか。
先生が自分の正体を知っていたのも、どこかで蛮野が支給された人物と遭遇し話を聞いたから。
或いは先生に実は蛮野が支給されていたとも考えられる。
確実にそうだとは言えない。
しかし消滅した自分のコアを復活できるなら、蛮野の意識を復元するのだって不可能ではない筈。
仮に本当に蛮野がいるならば苦戦は免れないだろう。
ゴルドドライブの力はもとより、あの男の悪辣さはよく知っている。
龍騎や先生、そして因縁深い狂気の科学者。
主催者以外にも立ちはだかる壁は多く、自分達が巻き込まれた事件の重大さに改めて身が引き締まる思いだった。
【エリアG-4/アッシュフォード学園近辺/9月2日午前6時00分】
【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
状態:疲労(中)、ダメージ(小)、乗車中
服装:私服(いつもの)
装備:デザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル(2時間使用不可)@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして皆を助けますっ!
01:新米ヒーローですが、チェイスさんと一緒に戦いますっ!
02:先生は本当は殺し合いに乗ってる人だったんですか…?
03:仮面ライダー…本当にヒーローがいたなんて凄いです…!
04:どうして283プロの事務所まであるんでしょうか…
参戦時期:不明。少なくともW.I.N.G.の優勝経験あり。
備考
【チェイス@仮面ライダードライブ】
状態:ダメージ(中・メカ救急箱の効果で回復中)、運転中
服装:紫のライダースジャケット(いつもの)
装備:ブレイクガンナー&チェイサーバイラルコア@仮面ライダードライブ、シフトデッドヒート@仮面ライダードライブ、ブーストライカー@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:トレーラー砲@仮面ライダードライブ、メカ救急箱(使用回数4/5)@ドラえもん、ホットライン
思考
基本:人を守り、殺し合いを止める
01:守るべき人間として、共に戦う仲間として果穂と行動。
02:久留間運転免許試験所へ向かう傍ら、協力可能な参加者を探す。
03:先生や学園都市キヴォトスの関係者を警戒。
04:蛮野もこの島にいるのか?
参戦時期:死亡後。
備考
※制限により重加速は短時間で強制的に解除。連続使用は不可。
◆◆◆
「ったく、いきなり萎えさせてくれるよアイツら……」
ビルの屋上にて悪態を吐くのは、破壊者の仮面を脱ぎ捨てた参加者。
自らを先生と名乗りチェイス達と一戦交えた男。
だがその情報は誤っており、ここにいるのはそもそも先生ではない。
確かに羂索達が始めた殺し合いに、先生と呼ばれる参加者はいた。
外の世界からキヴォトスにやって来た大人。
生徒たちの間で起こる様々なトラブルを解決した、シャーレの先生が。
尤も、先生はラウ・ル・クルーゼの放送を聞く前に殺し合いから脱落。
本来であればチェイス達と会える訳が無い、何より本物の先生なら彼らと戦闘に発展もしなかった。
殺し合いに抗う者同士、心強い仲間になれただろうが所詮はたらればだ。
大人の義務を果たそうとした『彼』は、嫉妬の罪を冠する怪物の手で葬られた。
「ま、すっかり騙されてたのは笑えるけどさぁ」
くつくつと笑いを漏らす、先生の皮を被った別のナニカ。
フラスコの中の小人が創った四番目のホムンクルス、エンヴィー
それこそがチェイス達を襲った先生の正体である。
「アンタも運が悪いよなぁ先生?大事な生徒達のことはなーんにも教えなかったってのに、全部無駄になっちまったよ!」
最初に先生を見付けた時の印象は、如何にもチョロそうなお人好し。
別にいきなり殺しても良かったが、ある程度情報を引き出せば後々の遊びに使えるだろうと考えた。
そこで自分の知る人間、リザ・ホークアイ中尉に変身し接触。
以前ラストがマスタングの部下相手にやったのと同じ、女相手なら相手の口も幾らか緩むだろうというのが理由の一つ。
後は因縁のある人間への嫌がらせもそれなりにあった。
と、お互い名乗り情報の開示に持ち込めたまでは良かった。
問題はエンヴィーの予想と異なり、先生は強かさと鋭い観察眼を持ったかなりのやり手だったこと。
昼行燈のような雰囲気の癖して生徒に関する情報はロクに明かさず、却ってこちらがボロを出しそうになった。
その内エンヴィーの方が先に面倒になり殺害を決行。
先生も当然黙って殺されるつもりは無く、ディケイドライバーを使い抵抗を試みた。
なれど今回は相手が悪かったのだろう。
お父様と呼ぶ創造主の下で、百年以上もの間汚れ仕事を担当して来たのがエンヴィーだ。
剣に変えた腕に貫かれ、一手遅れたと先生が理解した時には全てが後の祭り。
『――――』
彼が最期に何と言ったのか。
生徒に向けてか、だとすれば特定の個人か、それとも関わった生徒全員にか。
何であれ伝えたかった相手には届かず、耳へ入れたのは殺害者であるエンヴィーのみ。
「しっかし羂索だかクルーゼだか、どっちでも良いけど意地が悪いよねぇ」
取り出したホットラインを起動し、表示された名簿に目を通す。
同じ世界出身で並べた名前が載っている、他の参加者の名簿はそうだがエンヴィーは違う。
名前をタッチすると、その参加者に関するプロフィールページに切り替わったではないか。
何故エンヴィーは、先生が明かさなかったキヴォトスの生徒達の情報を持っていたのか。
何故チェイスの正体が人では無くロイミュードだと知っているのか。
その答えこそ、支給品の一つとしてダウンロードされた特殊名簿。
参加者全員の簡易なプロフィールが見れる機能が、手元にあったから。
学園都市キヴォトスのどの学校所属かまで、ご丁寧に書かれてあるのを見た時はつい吹き出したものだ。
生徒の名前を迂闊に出さないよう先生は気を付けたのだろうが、しかし、
「全くの無駄な努力ご苦労さんってね」
一足先に脱落となった先生を鼻で笑うエンヴィーだが、簡易プロフィールだけでは把握出来なかった情報もゼロではない。
例えば先の情報交換の際、捜索中の人物として名前を出した梔子ユメ。
名簿によれば彼女もキヴォトスの学生らしく、なら先生とも浅くない関係の持ち主だろうと判断した。
だが事実は少々異なり、先生がシャーレに赴任した時には既に故人となっている。
名簿にはそれらの旨は書かれていなかった為、勘違いも無理はなかった。
「行き先は…結構離れてるじゃん。次の放送までに間に合うのかよこれ」
先生の姿で暴れてキヴォトス関係者の悪評を流すのは楽しい。
同じく先生に変身したまま、生徒達に会って遊んでみるのも悪くない。
彼女達が集まりそうな場所と言えば、ここから北東にあるアビドス砂漠だろうか。
特に小鳥遊ホシノや黒見セリカ、梔子ユメにとっては出身校がある。
高確率で向かうだろうが、次の放送が始まる前に彼女達と接触できるかが問題。
定時放送で先生の死が発表されれば、その時点でエンヴィーの変身は意味が無くなる。
放送後に生徒達と会ったとて、動揺は誘えるにしても偽物だとすぐに見破られるのは間違いない。
先生の姿で遊べるのはこの6時間限定だった。
(こいつを使うのも手か?)
支給品袋の中を覗き込み、先生に与えられたアイテムを瞳に映す。
ピンク色に塗りたくったドアは、22世紀のひみつ道具。
参加者でもあるドラえもんが、タケコプターと並んで使用頻度の高いどこでもドアだ。
これを使えば行きたい場所名や、会いたい人物のいる所と言うだけで即座に移動可能。
但しドラえもんが元々使っていた時と違い、一度の使用毎に時間を置かねばならない制限が付けられている。
それに好きな場所へ一瞬で行けるというのは、エンヴィーからしても相当な利便性。
使うタイミングはもう少し考えてからでも損は無いと、そう思わなくも無かった。
一先ず目的地はアビドス砂漠で決まった。
道中で先生と、ついでに仮面ライダーの悪評も振り撒いておく。
ディケイドに変身し被害を出していけば、参加者間で仮面ライダー=危険の図式が自ずと完成。
ガッチャードや先程の二人組など、善側のライダーにとっては望ましくない光景が出来上がる。
一応もう一つのメリットとして、戦闘を重ねればその分ディケイドの力も増していく。
クウガのカードが良い例だ、チェイス達との戦闘は意味があったと言えるだろう。
「なーんでこんなめんどい仕様にするかねぇ…」
最初から全部のカードを使わせても良いだろうにと、姿の見えない主催者へ愚痴を零す。
通りすがった世界のライダーと絆を結ぶ、門矢士の時とは全く異なる方法。
殺し合いを加速させる効果も期待出来ると、ライダーカードの仕組みに手を加えたのかもしれない。
不満は消えないがメリットゼロでもない。
正義を気取った連中が徐々に追い詰められ、守ろうとする相手に狙われる。
そんな愉快極まる光景が見られるならば、多少の重労働も許容してやってもいい。
さっきの二人組もいずれは――
「……」
想像した傑作と言える光景から一転、つまらない三文芝居を思い出す。
現実を見れていない、鋼の錬金術師のような甘ったるい戯言を吐くガキ。
自分と同じ怪物のくせに、人を守るとほざいた機械人形。
互いへの敵意も無ければ嫌悪も、恐怖だってない。
抱くのは心を許し合い、背中を預けられる信頼感。
絆と、そう呼べるモノ。
「はぁ……」
人だけが持つ忌々しい輝きを、人ならざる者と分かち合ったあの場面は。
「ほんっとに……つまんないな」
一度滅んで尚も燻り続ける嫉妬/羨望を、腹立たしい程に意識させた。
【エリアF-5/租界エリア/9月2日午前6時00分】
【エンヴィー@鋼の錬金術師】
状態:先生@ブルーアーカイブに変身、疲労(中)、苛立ち(中)
服装:先生の服装
装備:ネオディケイドドライバー@仮面ライダージオウ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、どこでもドア@ドラえもん、ホットライン(簡易プロフィール付き名簿@オリジナルがインストール)
思考
基本:好きにやる
01:アビドス砂漠方面に向かい、この姿でこいつの生徒に会って遊ぶ。
02:先生と仮面ライダーの悪評を広める。
参戦時期:死亡後
備考
※先生の支給品はエンヴィーが回収しました。
※ネオディケイドライバーは戦闘を重ねる毎に、一枚ずつライダーカードが解禁されるよう細工されています。
現在クウガのカードが使用可能です。
【ブーストレイズバックル@仮面ライダーギーツ】
デザイアグランプリの参加者が使用するレイズバックルの一つ。
ドライバーにセットしブーストフォームへ変身可能。
またハンドル部分を二回捻るとブーストタイムが発動し、各種アビリティを数倍強化する。
ブーストタイム発動後はバックルが火を噴き飛び去ってしまう欠点がある。
但し今回はデザグラと大きく形式の異なる殺し合いの為、上記のリスクは発動しない。
その代わりブーストタイム発動後は、2時間変身不可能となるよう制限されている。
拡張武装ブーストライカーの召喚は変身前後で可能であり、こちらに制限は無い。
【ブーストライカー@仮面ライダーギーツ】
上記のブーストレイズバックルの操作で召喚可能なバイク。
戦闘時には召喚したライダーのモチーフに対応した姿へ変形する。
水素を動力源にしており、車体は高い耐久性と運転時の安定性を両立。
【シフトデッドヒート@仮面ライダードライブ】
仮面ライダードライブ及びマッハが使うシフトカーの一種。
ハートに対抗する為に開発された。
変身者の攻撃性能を高めた形態、タイプデッドヒートに変身可能。
一定時間経過で暴走するリスクがあるが、詩島剛のように自力での克服した例もある。
【どこでもドア@ドラえもん】
22世紀のひみつ道具の一つ。
行き先を告げドアを開けると望んだ場所へ行ける。
本ロワでは一度の使用後、6時間使用不可能。
【簡易プロフィール付き名簿@オリジナル】
クルーゼの放送後、エンヴィーのホットラインにインストールされた特殊名簿。支給品枠を一つ消費。
名前欄をタッチすると該当人物の簡単なプロフィールが見れる。
(例:元の世界での所属、種族、どの仮面ライダーや魔法少女・他該当する戦士に変身するか等)。
顔写真などはない。
『NPC紹介』
【頭領ジャマト@仮面ライダーギーツ】
宝探しゲームに現れたルークジャマトの一種。
盗賊ジャマトを率いており、部下想いな一面を持つ。
爆発する手斧が武器。
投下終了です
自投下作の時系列が既に投下されていた作品と矛盾していたため、時間を午前7時→午前7時30分にwikiにて修正を行いました
大変申し訳ございません、私が執筆した『 Stellar Stream/PHOENIX』について少し追記をしたいのですが宜しいでしょうか?
ギラ達3人に影響は何も生じません。
企画主です。
大丈夫です。お願いします
…お久しぶりと言っておこう
私は前に一度会ったことがある人はある者だ…因みに前の時から口調は変える事にした。自分でも少し挑発的だったのではと後悔しているからだ
というのは置いといて…本題に入ろう
この話はまだ終わってはいないという事を伝えに来た
…さて、ギラ達が去り、家にあるものは何もない…
そして近くにあったアリジゴクは中心部に多くの血を滲ませている
…以上だ
本当に以上か?
君達はいつから
いつからアントライオンのメモリがメモリブレイクされていると錯覚していた?
すみません、続きの投下開始を言うのを忘れていました。
続きを投下します。
さて、この殺し合いで既に脱落している男…アントライオンの男の行動を最初から教えよう。
彼は殺し合いの場に放り込まれてすぐにバックから愛用のアントライオンのメモリを使ってドーパントに変身して…少し歩いた先で見つけたまふゆを襲った
ガイアドライバーrexを使用した上で
そう、言及はされていなかったが彼の腰にはドライバーが巻かれていたのだ。
もしあの時、ギラの助けがほんの少し遅かったら、ユフィリアは腰のドライバーの破壊を思いついていただろう
何故直で使っていたはずのメモリを今回は使用したのかは分からない、とりあえず愛用のメモリを使えたら何でも良かったのかもしれない
さて、問題はここからだ
ギラの不死身の肉体の異常さに気づいて、そして相手が必殺技をしようとしている事を察した彼は堪らず恐怖し背を向けながら逃げ出したのだ、もっとも、結局爆散して終わってしまったが
…この時ドライバーはどうなっていたか?
これがギラ達にとって…運が良かったのか、良くなかったのか、それはこの先の戦いで明らかになるだろう
背を向けながら逃げられた結果、クワガタオージャーの剣はベルトの帯を斬っただけで…ドライバー自体は壊れていなかったのだ
そして爆発と同時にアリジゴクへと排出され…ドライバーを使用されて、ドライバー自体は攻撃されなかった結果、メモリブレイクはされなかったアントライオンメモリと共にドライバーは突っ込んでいき…ギラが確認しに行った時も砂の中にあったドライバーには見つける事は出来なかった。
…そしてもう1つ、追記しておく事がある。
実はアントライオンの男は逃げながら別のメモリを取り出していた。
どこから取りだしたのか疑問に思う人がいるかもしれないが特撮、もしくは特撮に準ずる漫画においてそれをつっこむのは野暮というものだろう
何故あのタイミングで取り出したのか?…もしかしたら一旦逃げた後に別の手段でクワガタオージャーに対抗しようとしたのかもしれない、もっとも手遅れだったが
そしてそのメモリは爆発した肉体から、かなり小さい上に軽かった為に勢いよく離れて…公園のどこかに…少なくともアリジゴクから離れた所にすっ飛んでいった。
そのとても小さい石ころ(メモリ)に秘められているのは…切り札(ジョーカー)
周辺の公園の何処かにT2ジョーカーメモリが転がっています。
蟻地獄の中にガイアドライバーrexとアントライオンメモリが沈んでいます。少し掘れば露出します。
最後に1つ言っておこう
羂索達はアントライオンの男にジョーカードーパントに変身する為の道具として渡した。
だが裏風都の守護神と呼ばれた魔女はT2のメモリは使った事は全くない
…羂索達はドーパントだけしかなれないのをつまらなく思ったのかもしれないし…「彼」へ気を利かせたのかもしれない…もっとも彼にとってそれが必要となるかは甚だ疑問だが、運命のメモリの方を使い続けた方が強いに決まっているからだ
理由はともあれ、メモリはドーパントのメモリではなく、仮面ライダーの力にもなりうるメモリとしてこの殺し合いの舞台に解き放たれた。
この殺し合いにおいて、切り札はどう生かされるのか?そもそも誰にもガイアウィスパーを鳴らされる事なく終わるのか?それは誰にも分からない
【支給品解説その2】
ジョーカードーパント変身セット@オリジナル
…非リア充の男@風都探偵に支給。
T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーWとガイアドライバーrex@風都探偵が同梱されている物です。ジョーカードーパントに変身出来ます。
投下終了です。強調する為の点等が何故か消えてしまったので、後で微修正を行うつもりです。
後、タイトル表記を正しく表示していただけるようにして欲しいです。何故かタイトル表記がスラッシュの後に描いてある後半の部分だけになっているので
更に追記です。配置場所の名前を間違えました、D-7ではなく、J-7です。後で修正しておきます。他にも微修正をします。本当にすみません。
タイトルの件は/を/に変更して解決しました。
不快でしたら申し訳ありません。
また、上記の変更に伴いwikiにて色々と修正しておきましたが、私だけでは恐らく手が回っていない部分があるかと思われますので、◆dxXqzZbxPY さんには確認と、必要でしたら修正お願いいたします。
マーヤ・ガーフィールド、星野瑠美衣、井ノ上たきな、ユージオで予約します。
>>787
タイトルの修正&追記の投下をありがとうございました。
修正については今の所大丈夫です。後で強調したい文章については自分で修正します。
お疲れ様です
自分の投下作についても◆dxXqzZbxPY様と同様の状態でしたので
wikiにて/を半角から全角の/に修正いたしました
ss内の歌詞等の強調、文間の調整、誤字の修正を行いました。
皆さま投下お疲れ様です!
アスナ、秋山小兵衛で予約します。
自己リレーを含みますが問題なければ
衛藤可奈美、前坂隆二(リュージ)、アンク、十条姫和、益子薫、ロロ・ヴィ・ブリタニア、花菱はるか、横山千佳、小宮果穂、チェイス、ジンガ、宇蟲王ギラを予約し先に延長もしておきます
すみません、>>793 の予約にトランクス(未来)、神戸しおを予約します
>>683 の予約を延長させてもらいます
投下します
エリアI-12のオシリスレッド寮内の一際豪華な部屋にて。
三人の少女がテレビで予告されていた運営からの放送と、誰も予想だにしなかった悪逆皇帝の放送を観ていた。
『力ある者よ!我を恐れよ!
力なき者よ!我を求めよ!
このバトルロワイヤルは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが裁定する!
私は会場内のテレビ局で待っている。
諸君らの賢明な決断を期待する』
プツン!という音を最後にテレビは沈黙し、仮面の男クルーゼの姿も悪逆皇帝ルルーシュの姿も映さなくなる。
「一応、尊大な性格だとはなんとなく察していましたが、前評判とだいぶ違うのですが?」
画面を観ていた三人の少女のうち一人、井ノ上たきなが隣にいるマーヤ・ガーフィールドに問いかける。
最初は互いに疑念もあったが、共に羂索たちに叛逆する側であると知って協力を申し出たが、マーヤが信用できる、切れ者であると太鼓判を押したルルーシュが全ての参加者を敵に回しかねない行動を起こしたことで、早速たきなは疑念を抱いてしまっていた。
「ルルーシュは意味もなくこんなことをする人じゃない。
彼なりの考えがあって、それがあの綾小路って人にとっても悪くない提案だったからこうして実行しているはず」
「その考えって?
少なくとも私とたきなちゃんには羂索含めた全員に喧嘩売ってるようにしか見えなかったんだけど?」
そう言われてマーヤは少し考えるようなそぶりをしたが
「確かにルルーシュは大勢の参加者を敵に回して、羂索を倒す為なら小数を切り捨てることも止む無しと考える連中だけを味方につけようとしてるようにも見える」
これは否定できないだろう。
なにせ仲間になるための条件としてレジスターのサンプル……プレイヤーの生命線たるバグスターウイルスの抑制剤とそれを管理する機械を奪う事を提示しているのだ。
これでは最低一人は死んでもらわないと困ると言っているようなものだ。
本当に最悪の最悪だが、殺人を躊躇しない参加者の物を使うという手もあるが、心情的に受け入れらるかと言われれば、否だろう。
「その上で、黒の騎士団にシュナイゼルという人たち、更には最初の場で羂索に食って掛かった仮面ライダーガッチャードまで排除するように要求しています。
必然的に、私のような仮面ライダーの装備をこの場で渡されただけの人も危険にさらされます」
それにマーヤの話を聞けば、神聖ブリタニア帝国に貴族制度や、ナイト・オブ・ラウンズや皇族専属騎士などの貴族階級とはやや外れた位置にある戦士のポストは有っても、仮面ライダーという皇帝直属の称号はないと言う。
ならルルーシュは綾小路や自分に支給された力と同等のそれを持ちうるガッチャードを排除しようとしているととれる。
「なんかこうして聞いてると、あれだけのことをしたのに味方より敵の方を創ってる気が……」
「多分瑠美衣の言う通りだと思う。
だって、それこそがルルーシュの狙いの一端だから」
「え?」
本人は何げなく言ったつもりだったが、暗に正解だと言われて思わず素で困惑した。
たきなは無言で続きを促す。
「羂索は、この殺し合いをゲームと言った。
そしてさっきのクルーゼって男の発表は、確認出来る限り隠し事はあるかもしれないけど、今のところ矛盾はない。
つまり連中はこの名簿に名前の載った全員にこのゲームの勝ち筋を用意している」
「なんで羂索たちの話になるの?」
「とても逆らえそうにない羂索によって自分たちと同じ首輪をはめられている奴相手になら、訳の分からない黒幕より『勝てそう』って思わない?」
「……つまりルルーシュはゲームには反対だけど、羂索たちと積極的に戦う気が起きない人たちを自分と対立させようとしてるってことですか?」
「そうなれば仮面ライダー001や配下にしたナイトメアフレームのNPCモンスターに対応するために戦力集めが、プレイヤー同士の接触がより活発になる。
自分への手土産に黒の騎士団や仮面ライダーガッチャードを指名したのは、自分だけじゃなくて羂索にも逆らう人たちと消極的なゲーム否定派を接触させたいからかな?
そうして最終的にゲームその物に反逆する大規模な集団をつくるのが目的なんだと思う」
「嫌われるのもスターの甲斐性、って訳か〜。
意外とルルーシュはアイドルに向いてるかもね」
瑠美衣はなんだか納得した様子だが、たきなはまだ飲み込みきれてないようだ。
「……こんな場所で始めて会った男の提案、それも最悪100人以上から命を狙われるようになるような提案を飲み込みますかね?」
「あの堀北って子みたいに、ルルーシュにギアスをかけられたことにするんじゃないかな?」
「ギアス?」
「あの『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!』って奴?」
微妙に似てない瑠美衣のモノマネは半分スルーしながらマーヤは今まで自分の生きる皇歴の世界観に説明を裂いていた為、出来ていなかった説明をする。
曰く、ギアスとは王の力である。
ユーザーによって能力の詳細は異なり、ルルーシュの物は他者に一度だけ自身の命令を実行させる絶対遵守の力である。
「つまり洗脳されているだけで部下は悪くないと?」
「解除不能の魔法の力と言われちゃったら疑うも何もないからね」
「なるほど、ルルーシュはそう言う人なのか」
「「「!」」」
棒立ちのルビーを背に守り、マーヤは起動鍵を使ってランスロット・アルビオンを装着。
マーヤが変身では間に合わないと判断したのかサイドバックルにマウントしたマグナムレイズバックルを操作してマグナムシューター40Xを実体化させ、構える。
声が、男の声がした方には誰も居ないように見える。
だが、次の瞬間家具の影であるはずの黒色が蠢き、その中から金髪碧眼の青少年が現れた。
少年は手にしていたガントレット型の武器、ケミーライザーから潜伏に使っていたマックラーケンのケミーカードを引き抜き、両手を挙げる。
「驚かせてしまってすまない。
僕はユージオ。この殺し合いには反対の立場だ」
リュックと武器をすべて預けること。
それがたきながユージオに提示した同じテーブルに座る為の条件だった。
瑠美衣は難色を示したが、ルルーシュのような自前で魔法のような力を持つ者もいるのだからこれでも警戒が緩いぐらいだといって要求を変えることはなった。
もっとも、そんなたきなも少しはごねられると思っていたのか、二つ返事で了承された時は目を丸くしていたが。
「キリトって、確か地図に彼の家があったね」
「最も、君たちの話から考えると、僕の知ってるキリトの家かどうかわからないけど」
ユージオ曰く、名簿に載ってる自分とキリトの共通の知人は運ベールという男のみ。
しかもこの男も貴族の立場をかさに着て横柄に振る舞う人間らしい。
「ブリタニアの貴族にも似たような人がかなりいる。
お互い、偉くないのに偉いのを相手にしなきゃいけないのって大変だね」
「ははは。世界は違っても、苦労はあんまり変わらないのかもね」
「最後のPoH……読み方はプーで良いんでしょうか?
は、あなた方の知り合いとも以下の伏黒って人からの並びとも浮いてるので何ともですけど
他の名前はアスナからレンまでの名前に心当たりは?
カタカナでファーストネームらしき部分のみという点から同じ括りだとは思いますが」
「残念ながら僕にはわからないね。
もしかしたら、キリトにとって僕は、マーヤさんにとってのロロ・ヴィ・ブリタニアの立ち位置なのかも」
つまり自分はキリトからすれば知り合いの並行同位体かもしれないということだ。
「でも、ルルーシュはマーヤが考えた通りなら最終的に羂索たちを倒すためにあんなパフォーマンスをしてたわけだし、きっと名簿のキリトって人も、ユージオのことは知らないかもだけど、きっとユージオが知ってるキリトと同じような人だよ!」
「ルビー……うん、ありがとう。
僕は、キリトを信じることにする」
そう言ってユージオは柔らかに笑った。
「まあ、キリトって人は一応信用していいということですが、今の問題はどれだけ予測を重ねても真意を聞かなければいけない人間がいることです」
「ルルーシュのことなら一つ考えがある」
そう言ってマーヤはたきなに自分の起動鍵を差し出した。
「たきな、あなたの仮面ライダーの装備と私のランスロットを交換して欲しい」
「何するつもり?」
「たきなたち三人で私を、仮面ライダーを生け捕りにしたことにしてほしい。
そうすればルルーシュと直接会って話せるかもしれない」
確かにルルーシュは仮面ライダーを欲しているが、厳密には自分の配下でない仮面ライダーの主級だ。
最悪ルルーシュに情報が行く前に配下のNPCモンスターか綾小路に殺される可能性がある。
それにルルーシュに会えるにしても、ルルーシュがマーヤと出会わなかった世界のルルーシュだった場合黒の騎士団の団員として処刑、という線もあり得る。
『「それならば問題ありません」』
「え?」
「ユージオ?」
そんな話をしていると。一瞬でユージオの雰囲気がガラリと変わった。
さわやかな青年、といった雰囲気だったのがどこか中性的な、超然的な穏やかな微笑を浮かべる姿は別人だ。
「……どうゆうこと?」
『「私がルルーシュ、いえ、アークが身柄を要求したゼアです。
私を差し出す形を取れば、あなた方が誰かを殺すことも、味方を差し出すことなくルルーシュと接触を果たせます」』
「アーク?」
『「ルルーシュが装着していたドライバーに宿る意志です。
ユージオやキリト、そしてあなた方とも違う仮面ライダーの世界の産物です。
説明を、させていただけますか?」』
そしてユージオ、否、ユージオの身体を借りたゼアは語り始めた。
夢に向かって飛んだ、仮面ライダーたちの戦いを。
【エリアI-12/オシリスレッド寮/9月2日午前6時】
【ユージオ@SAOシリーズ】
状態:正常、ゼアを許容
服装:いつもの服装
装備:なし
令呪:残り三画
道具:なし
思考
基本:この狂った儀式を止める(ユージオ)
下した結論に基づきこのゲームをクリアする。(ゼア)
01:可能ならばキリトと合流したい。
02:前提を確定させるために羂索、クルーゼ、茅場に関する情報を集める。
また、アークの思考を読み解くためにルルーシュに関しても情報をもっと集める。
03:この3人とルルーシュの元に向かう。
04:ウンベールは一応警戒。
キリトやその知り合いと思しきプレイヤーたちに関しては並行世界の別人という線も視野に入れておく。
参戦時期:死亡直後(ユージオ)
アークと同じ結論に至った後(ゼア)
備考
※ユージオがゼアを許容した為、ドライバーを装着している間はゼアが肉体の主動権を握れます。
ドライバーかキーが近くにあれば、遠隔でも可能なようです。
【マーヤ・ガーフィールド@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:通常
服装:制服(アッシュフォード)
装備:ランスロット・アルビオンの起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:ブリタニア(概念)を叩き潰す
01:ルルーシュの真意を確かめるためにたきなたちとテレビ局に向かう。
02:色々な世界があるってことは、あのルルーシュが私を知るルルーシュとは限らないか。
03:ロロも卜部さんも死んだはずなのに名前がある。
死ななかった世界の2人って事かな?
04:二代目ゼロに……ロロ・ヴィ・ブリタニア?
05:星野瑠美衣は民間人だから、ちゃんと守らないと
参戦時期:2部13章から
【井ノ上たきな@リコリス・リコイル】
状態:通常
服装:リコリスの制服
装備:デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ブーストマークⅡレイズバックル@仮面ライダーギーツ、マグナムレイズバックル@仮面ライダーギーツ、たきなのホットライン、ユージオのランダムアイテム×0〜1(刀剣類ではない)、ユージオのホットライン、ケミーライザー@仮面ライダーガッチャード
ライドケミーカード(パイレッツ、バンバンブー、マックラーケン)@仮面ライダーガッチャード
飛電ゼロツードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ
ゼロツープログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ
思考
基本:このゲームに抗う
01:知り合いが誰も呼ばれてないのは……まあ、良かったです。
02:マーヤ、瑠美衣、ゼア(ユージオ)と共にテレビ局に向かう。
03:並行世界にギアス……このベルトを手にしたときから薄々感じてましたが、本当にいよいよファンタジーですね
参戦時期:アニメ最終話から
……そっか、このままだとマーヤもたきなも誰も殺さないかもしれないんだ。
それは困るな。
フレイヤは令呪を実質全部使っちゃうし、撃った後は私じゃ満足に戦えるかも怪しい。
私もかなちゃんやあかねちゃんみたいに多少は殺陣(タテ)も出来る様になった方がいいかな?
ま、兎に角。
何があったかは分からないけど、ルルーシュはゼアだけは生きたまま来てもらわないと困るんだよね。
だったら、ゼアにもしものことがあれば、守れなかった私たちも、ゼアを傷付けた人も、あなたの敵だよね?ルルーシュ。
【星野瑠美衣@推しの子】
状態:狂気
服装:【Be red】ルビーのアイドル衣装@アイドルマスター シャイニーカラーズ
装備:なし
令呪:残り三画
道具:ランスロット・コンクエスター(フレイヤ搭載)の起動鍵@コードギアス 反逆のルルーシュR2、星に願いを@オーバーロード、ホットライン
思考
基本:願いを叶える
00:しばらくはマーヤたちを隠れ蓑に穏健な参加者のふりをする。
01:ユージオを、ゼアを排除することでマーヤたちとルルーシュに決定的な亀裂を創り殺し合わせる。
02:知り合いは誰も居ないか。ま、都合がいいね。
03:私は絶対に……。
参戦時期:連載106話から
備考
※フレイヤを使用するには令呪二角が必要です。
※星に願いをは一回のみ使用可能な使い切りです。
※キリトの事でユージオを励ましたのは、雨宮吾郎が例え並行同位体だろうと、自分からアイを奪った者と同類のなにかであってほしくないと言う感情からです。
また、そのことにまったく無自覚です。
投下終了です。
タイトルは 隠した秘密は■の味 です。
PoH、亀井美嘉、藤乃代葉、夜島学郎、鬼龍院裸暁、鬼方カヨコ、セレブロ、冥黒ノノミで予約します
同時に延長もさせていただきます
仮面ライダーゼイン、パラドで予約します。
皆さま投下お疲れ様です ^^) _旦~~
すみません。延長をさせていただきます。
ギリギリになってしまいましたが投下します。
(マーヤの名前がある、心強いけど……枢木スザクやビスマルク…ナイトオブワンまで居るなんて。
…それに二代目ゼロに、僕と同じロロの名前を持ってるのに…ヴィ・ブリタニアだって……!?)
今更ながらにホットラインから名簿を確認したロロ・ランペルージは、困惑を隠せない様子であった。
兄を最期に託した相手で味方であるマーヤは兎も角として、問題は他の4名。
枢木スザクもビスマルクも、兄たるルルーシュとは敵対している。例え主催者達に反抗しようと考えていても、ルルーシュが先程行った放送の都合どうやっても対立する事になるだろう。
どちらもブリタニア帝国のラウンズ…皇帝に仕える騎士ではあれど、それまでゼロであったにも関わらず、いきなりブリタニアの皇帝を名乗った形になるルルーシュに迎合するとはロロには思えなかった。
強敵となりうる存在な為、警戒心をロロは抱く。
(…そして二代目ゼロ。大方、兄さんを追放した黒の騎士団が据えた後釜…って所か。
だとすれば…正体が誰であれ兄さんの…僕の敵だ。警戒しておこう)
兄を追放した黒の騎士団が用意した後釜だと判断したロロは、一先ず二代目ゼロは敵と認識した。
そして彼は一番目を惹かれ、今も困惑している名前…ロロ・ヴィ・ブリタニアについて思考する。
(…兄さんと同じ、ブリタニア姓…どういう事だ…?)
まさか自分と同じような境遇の相手を弟として…!?
等という考えが一瞬浮かんでしまう程度に、ロロの心は混乱の渦中にあった。
そんなバカな考えを浮かべてしまった事を恥じて脳内から振り払いつつ、思考を切り替えようとする最中…聞こえてきたのは少女の声。
「…どう?ロロ」
「…まだ起きそうにない…かな」
声をかけてきたのはこちらへ戻って来た沙耶香。
動揺を内心に潜め、見せないようにしてロロは彼女の問に答える。
「…ルルーシュって人以外に、知り合いは居た?」
「名簿は見たけど…兄さん以外は、味方と断言出来るのが1人、敵と断言出来るのが3人、それと…よくわからないのが1人…って感じだったよ」
そう言い、ロロは沙耶香にマーヤが味方である事、枢木スザクとビスマルク・ヴァルトシュタイン、二代目ゼロとやらが敵、ロロ・ヴィ・ブリタニアだけがよくわからないという事を簡潔に伝えた。
「…もしかしてロロ、双子なの…?」
「…『一応』妹は居たけど、弟は僕には居ないよ。
僕がこうしてここに居る以上、妹も…ナナリーももしかしたらとは考えたけど……」
一度は殺そうとし、フレイヤに巻き込まれ死亡したと思われるルルーシュの実の妹ナナリーの事を想起しつつそう言うロロ。
一応とはいいつつ妹として認めているのは、沙耶香が居る手前信用を得てかつそれを損なわない為なのもある。
それと、先程の沙耶香がロシア紅茶を飲んだ際、その仕草からほんのちょっととはいえルルーシュがナナリーを可愛がる気持ちが理解出来たのも理由としてはあった。
(兄さんがあの内容の演説をした以上、ナナリーが巻き込まれてない事は想定できたけどね。
…巻き込まれていたら、兄さんがそれを考慮しないとは思えない。最悪殺し合いに乗る事すら考えてたかも)
「……でもよく考えたら兄さんは、妹想いだったから。居たら凄い複雑な様子になってたと思うし、あんな迅速に、演説を行えるか怪しいと思う」
「演説するまでの早さはそうだけど…ロロの名前を見ても、そんな様子になったんじゃって」
「…どうして?」
「…命がけでそのルルーシュって人を助けて想ってて…この殺し合いでも、危険を顧みないで私を助けてくれたロロが…好かれてないとは思えない、から」
少なくともロロは、誰かの為に命を賭けれてるし、優しいと沙耶香は思っていた。
…そんな彼を羨ましいと思ってしまう、何も無い空っぽの自分なんかよりずっと。
…だからだろうか、ロロが少し寂しげな表情をした時、彼の目から光が薄れたように見えて……自然と彼女の口から言葉が溢れていたのは。
「──そう、かな。……そうだといいな。…気遣ってくれてありがとう、沙耶香」
対しロロは、本心からそう思い、柔和な笑みを浮かべつつ言う。
最も笑顔の裏には、そんな気遣いを向けてくれる程度には沙耶香は自分に信頼を寄せていてくれている、つまりは今の所計画通りに『兄』を演じれているという事への安堵を覚えていたのもあったのだが。
「…ううん、思った事を言っただけ、だから。
…それと、もう一人のロロについてだけど…隣り合ってて、名前部分が同じ人が2組、少し離れてるけど肩書があるかどうかな人が1組、かなり離れてて……なぜか片方だけ、?が付いてるのが1組いた」
一方困っているような顔のまま、沙耶香は名簿の配置について話した。
「…?(クエスチョンマーク)が?」
「…うん。なんでなのかは…わからない」
(名簿の順番には意味があると、ラウ・ル・クルーゼは言ってた。
…アスラン・ザラ?とアスラン・ザラだけやたら離れているのがノイズになるけど、他は関係人物か何かと考えていいだろう。
…キラ・ヤマトとキラ・ヤマト准将、ギラ・ハスティーと宇蟲王ギラ、遊城十代と覇王十代からするに…ロロ・ヴィ・ブリタニアは、僕の知らない僕自身……なのか?)
?マークの付いたアスラン・ザラという順番に意味が在るなら配置が意味不明になるノイズを除き今は考えない事としつつ、ロロは他の名簿の順で近い似た名前を比べた末、限りなく正解に近い答えを出していた。
だがロロはブリタニアの姓を持ち自身と同じ名を持つ彼が並行世界の自分だとは気付かない。まだ沙耶香との齟齬…互いに違う世界から巻き込まれたという事にすら気付けずにいる以上仕方の無い事だが。
(…兄さんの味方なら……『この状況なら』心強い、けど…ならわざわざ、僕と一緒にこの殺し合いに呼び込むか?
彼が兄さんの敵かつ、殺し合いに乗っていた場合…必然的に名が同じ僕に悪評は向いてしまう…主催者達からすればそっちの方が都合が良さそうに考えれるけど……)
知らないもう一人の自分について計りかねているロロ。
味方であるなら心強くとも、それは同時に自らの、ルルーシュ・ランペルージの弟ロロ・ランペルージの居場所を脅かす存在になるのと同義であり…複雑な心情で在った。敵であってくれるなら、脅威だが自らの居場所は、立ち位置は脅かされない…。
(…さっきといい、何を馬鹿な事を考えているんだ僕は。言ってくれたじゃないか兄さんは…僕の事を、『弟』だって!)
よろしくない考えを振り払い、一先ず保留としようとするロロだったが…ここで聞こえたのは呻き声のような物。
見ると、先程まで眠っていた少女が目覚めようとしていた。
またロロが考えている最中に動いてたのか、何処か警戒を隠せない様子で、隣に沙耶香が移動している。
「…ぅ…どこだ、ここ、は……?」
やがて少女は目を開き、現状を理解出来ないといった様子で、説明を求めたのかロロへ問いかけ──そして、隣にいた沙耶香の顔が目に入った。
「……糸見、沙耶香……!?」
「…どうして、私の名前を?……あなたは…?」
少女は驚愕を隠せない様子で、一方沙耶香も驚いた様子を見せながら問う。目前の少女から感じ続けている荒魂に似た雰囲気…それについても何か、答えてくれるんじゃないかという気持ちもあり、沙耶香は聞く事とした。
そして沙耶香に続けて、目前の少女が自分の分身…の変身が解けた姿を見ているかどうかを知りたいのと、沙耶香と何の関係があるのかも気になったロロが、少女が名乗りやすくする為に名乗る。
「僕はロロ。ロロ・ランペルージ…沙耶香の知り合い…みたいだけど…君は?」
「……我は。我は……タギツヒメ。大荒魂だ」
「…大、荒魂……ロロっ、下がって!!刀使として…私が」
「…待って沙耶香。言いたい事は分かるけど、話を全部聞いてからでも遅くはないと思う。何が起こったのか、聞きたいから」
目前の少女…タギツヒメが大荒魂だと名乗った瞬間、反射的に帯刀していた御刀を抜こうとした沙耶香だが、それを制止するのはロロ。
利用すると決めた以上何も聞けてない今殺されてしまっては困る為、止めて続きを促す。
「すまないな、ロロとやら。……だから名乗りたくなかったのだ。刀使が我の事を信用等、あり得ぬ話だと言うのに。
…だがそもそも何故我の事を知らない?大荒魂だと知った途端に斬ろうとするなら何故運び込むような真似をした?糸見沙耶香。
お前は同じ刀使として、衛藤可奈美や十条姫和、柳瀬舞衣や古波蔵エレン、益子薫と共に我と戦っていた筈だが……もしや、記憶喪失にでもなったのか?」
「…私が、可奈美や舞衣、十条姫和と…??…それに、益子薫に古波蔵エレン…??」
(…この女が、タギツヒメが嘘の事を言ってるようには思えない…けど、沙耶香の反応も嘘には思えない…とりあえず彼女が名簿を見れていないのはわかったけど、これは…?)
沙耶香の元からの困り気味の顔が、理解出来ない物に対して宇宙を感じとった猫のような様になったのを見つつ、自身も内心困惑を隠せないロロ。
その反応を見たタギツヒメは、呆れ気味な様子で言葉を発する。
「…お前達は、開幕で羂索が言ってた言葉を覚えていないのか?
…奴は『本来異能力や異形の存在しない世界の者たち』と言っていた。その上で、先の糸見沙耶香の反応。
…隠世は現世とは異なる世界、かつ時間の流れが異なる層が有ることを考えると…我と沙耶香は異なる時間からこの殺し合いに巻き込まれ、我らとロロは異なる世界から巻き込まれた…という所だろう。
倒れる前、それらしき例に我は出くわしていたのもあってな」
「……たしかに、それなら…ありえるかも」
「…てっきり同じ世界だと思ってたけど、異なる、世界から…」
(イレヴンや名誉ブリタニア人とかの単語を、沙耶香に言ってなくて助かった。
…じゃあ名簿に載っている、ロロ・ヴィ・ブリタニアは別の世界の僕…と考えた方がいいか。僕の知らない僕自身ってのは、大体合ってた事になる。
それに異なる時間から、なら…マーヤや、僕や兄さんの敵達も違う時間から来ててもおかしくはなさそうだけど……。そうだ、まずこれを聞いておかなきゃ)
彼女の考えを聞き、齟齬が解消されとりあえず落ち着いた沙耶香。対しロロは自らの考えが殆ど合ってた事を確信しつつ、聞き忘れていた事を思い出し切り出す事とした。
分身の件については彼女の話から判断出来るが、それ以前に聞いておかなければいけない事があったからである。
「…聞き忘れていたけど、君は殺し合いに乗って居ない…でいいのかな、タギツヒメ」
「乗っては居ない。……今はな」
「…今は…?」
再び御刀を抜刀しようとする沙耶香に、そんな反応にもなるだろうと諦めたような様子をしながらも、タギツヒメは続けた。
「…当初は主催者も含めた全てを殺そうと考えていた。
だが……我の抱えた、埋まらぬ孤独に気付いて、対話のために生命線である令呪を1画使ってしまったお人好しの馬鹿共2人のせいで……もう、そんな気にはなれん」
「…荒魂と、わかり合うために令呪を…?」
(お人好しの馬鹿共2人…もしかして、片方は……)
「…つまり今は抗うつもりという事で…いいかな?」
タギツヒメの言う事に理解が出来ない様子な沙耶香。そしてロロは、目前の少女が言うお人好しの馬鹿2人の内片方は先程自分が殺したオレンジ色の髪の男なのでは?という疑念を浮かべるも、態度には出さず平静を装う。
「そう考えてもらって構わん。…信用出来ないと言われると、全くもってその通りとしか言えんがな……そうだ、我からもひとつ聞いていいか?」
「…知ってる限りの事なら、答える」
「……一護…黒崎一護は何処に居る?まさか我だけを助けた筈もあるまい。…一護はオレンジ髪の男で…無愛想に見えるが──」
そこまで口に出したタギツヒメだったが、二人が浮かべた表情に思わず、言葉を失ってしまった。
…困りげだった顔が、申し訳なさげに俯く沙耶香。…俯き、どう言うべきか迷う素振りを見せたロロ。
「…何故、そんな顔を……まさか、何かあったのか?一護に……奴は我よりも強い、そう簡単に死ぬなどあり得ない…あり得ない筈だ……!」
口ではその可能性を必死に否定するも、自らの声が震えてる事にタギツヒメは気付かず、また気付けない。
「……タギツヒメ。あなたの言う…黒崎一護って……人は」
「……一護は……僕達が見つけた時にはもう、手遅れだった」
沈黙に耐えれなくなったのか、苦しそうな表情をしつつ言おうとした沙耶香を制し、途中から引き継ぐ形で…ロロは一護の死を伝えた。
「……──は?…今、なんと……そんな、そんな筈があるか。奴の強さは、直接対決して、肩を並べ戦った我が…大荒魂たる我がよく知っている。
…確かにあの狂人は厄介な強敵ではあったが…敗死など…あり得ない…!!」
「……君にとっては、酷だろうけど……付いてきて欲しい、タギツヒメ」
(…荒魂なのに、まるで人みたいに取り乱して……それに、ロロも…苦しそう…)
目に見えて動揺するタギツヒメに、ロロは告げ、彼女が着いてきてる事を確認しつつ一護の亡骸を安置した部屋へ向かう。
先の疑念とはまた異なる、胸中に浮かんだある疑問が、現実なのではという思いが強まるが…それを隠そうと、彼はどうにか取り繕おうとした。
そのロロの姿とタギツヒメの有様に困惑をまた浮かべるも、男を…一護を助けるのに間に合わなかった事へ申し訳なさを抱きながら、タギツヒメのバッグを念の為持った上で沙耶香も後を追う。
やがて、血を止めようと試みたのかタオルが下に敷かれた状態でうつ伏せで安置されていたそれを見たタギツヒメは…呆然と、言葉が出ない様子であった。
「……君には悪いけど、彼のレジスターは回収させて貰った。君の話からしても彼……一護は、それを……望みそう、な気がしたから」
そう声を掛けるロロ。黙っていても流石に気付かれるだろうと、可能なら利用したいと考えたが為ここで開示したのだが…その言葉はタギツヒメの耳を通り抜け、頭に入った様子は無かった。
「……起きろ、起きろっ…一護…言っていただろう!?…山程の人を、護りたいと…お前はっ……こんな所で寝ている場合か!?」
(……冷たい…ヒトにあるべき温もりが…無い……だと……)
暫しの沈黙の後、座り込んだタギツヒメはそう、亡骸を揺さぶり言い放つ。
しかしその際触れた感覚から…もう一護が絶えてしまった事を、否が応でもタギツヒメは理解させられてしまった。
「……馬鹿が。ソランといい、お前といい……2人揃って阿呆共め……どうして、どうして我を…置いて逝く!?
……我など放っておけば良かった、ひとり逃げれば良かったというのに……我を孤独から解き放つだけ放って、何も返せぬまま先に死ぬなどっ…!!
……こんな事になると分かっていれば……孤独からの解放など、我は望まなかった…。
解放されて、与えられて……そこからまた奪われる事がこんなにもっ……こんなにも、苦しく辛い事だったとは……知っていれば、求めなどしなかったというのに!!」
理解させられてしまったせいか、押し留めていた理性の枷が決壊し、縋るかのようにしながらタギツヒメは零し溢れさせ続ける。
その有様は、罪悪感を滲ませているロロにも申し訳なさでいっぱいになっている沙耶香にも…彼女が外見相応の少女だという風にしか見えないくらいであった。
「…こんなにも我の言葉は溢れそうだというのに、それを向けるべきお前は…おまえはもう、現世(ここ)にはいない…など……っ!!
……なぜ、我が……生きるべきは我ではなく、お前だっただろう……。
散々に人に仇をなしてきた我ではなく、どうしようもないくらいのお人好しでっ、人々を護ろうとしていたお前が生きるべきだった……終わるべきは我の方だったというのにっ!…どうして…どうして!!!」
少女はそんな理不尽があるかと嘆き、喚く。自分なんかよりもよっぽど、生きるべき存在だった青年の死を突き付けられて……自分を救ってくれた片割れを失い、もう片方まで失ってしまった事を否が応でも理解してしまった。
孤独から解き放たれた筈なのに、彼女はまた、ひとりぼっちになっていた。
……一度繋がりを得れたにも関わらず、それを奪われてしまう形となった少女の悲しみと絶望は…痛みは計り知れない。
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慟哭してる彼女は…タギツヒメは、荒魂だというのに…空っぽな私なんかよりも、よっぽど人間らしく見えて。
……こんなこと、思っちゃいけないのに……彼女のことを…ロロと最初に出会った時と同じように、羨ましく思ってしまった。
…今の、悲しみに打ちひしがれた彼女のようになりたい…なんて思うことはないけど。……私に温かさをくれた舞衣や可奈美が、死んでしまったとして…彼女のように…私は悲しめるのかって…そう思うと、怖くなる……。
「…倒れてたのを見つけた、時……彼は君に手を伸ばす形で、倒れてた。
……きっと、君を最期まで……護ろうとしたんだと……思う。……だから、だからそんな事を…自分が死ねば良かったなんて…言うんじゃない、言っちゃダメだ…!!
……それは、他でもない彼の…一護の想いを裏切る事に……なる」
…私がそんな事を考えてる最中、ロロは振り絞るかのように、タギツヒメに声をかけてた。
顔を覗いてみると、強く悔いているように見えて…気のせいかもしれないけど、どこか蒼白にも見えた。
……やっぱり彼は、ロロは優しいんだと思う。それだけ、助けられなかった事を悔やんで…それでも、彼の…一護の護ろうとした想いを汲んで、彼女を…タギツヒメを繋ぎ止めようとしているから。
「……すまない、ロロに…沙耶香。
…一護だけではない、我はソランにも……託されたというのに。……危うく全てを投げ出して、何もかもを裏切る所だった。
……生き延びた以上、我が代わりに…この身に代えてでも…戦わねば。…でなければ……2人が我を生かした意味が…救った意味が無くなってしまう。
……それでロロ、何が起こったのか聞きたかったのだろう?」
「……うん」
「…戦闘の途中で気絶してしまったが、それまででよければ…話させてもらうぞ」
そしてタギツヒメは、私とロロに向けて話し始めた。
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我が最初に話したのは、十条姫和を衛藤可奈美らから奪還され一時退却された後に、この殺し合いに巻き込まれたという事。
そこから、支給品を確認した後殺し合いに乗ると決め…黒崎一護と戦いになり、奴に我が抱えていた孤独を言い当てられた事に、学校の体育館に戦いの舞台を移し…その際ソラン…刹那・F・セイエイとも対峙した事。
そして令呪を切った2人により……長年感じ続けていた孤独を埋められ、殺し合いに乗るのが馬鹿らしくなった事と、そこからリボンズ・アルマークの奇襲に遭いソランが我を庇い致命傷を負い、戦いの果て一護が気絶し…我と一護はソランに逃された事……そこまでをとりあえず話した。
「…その学校って、まさか美濃関学院……?」
と、憂いを感じさせる顔で糸見沙耶香が聞いてきたので、折神紫を乗っ取っていた際美濃関学院についても把握していたのもあり、そこでは無いだろうという事を告げておく。
「……リボンズは、そこに留まっているって考えていい…のかな」
そう言うのはロロ。対し我は少し考えた後…可能性としての話だがと前置きし、主催が放送─もっとも我も一護も戦闘中で内容は聞けていないが─を入れる前の激突だったのもあって、学校内を調べ終えて何処かへ去っているかも知れないという旨の事を言った。
そして我は逃された後の事を話していく。
……満身創痍で気絶した一護を休ませれる場所を探している中、民家を見つけ一先ずそこのベッドに寝かせ、我自身も疲労からそのまま寝てしまった。
しばらくして、たしか放送が入ったのが……。
「6時丁度に、放送は入った」
6時か、その数十分ほど前に目覚めた所…起きていた一護に説明を我は求められた。
「…ここは…いや、そんな事より刹那は、リボンズの奴はどうなった!?」とな。
…気絶していたのだ、無理もない。
我は、ソラン…刹那が我と一護を逃がしたと、安否不明だと話した。
「……既に殺されてる可能性が高いのに、君は……その一護って人に言わなかったのか?タギツヒメ」
……言おうとはした。…だが、我のような相手とすら対話をしようとするお人好しのあの馬鹿が…可能性の段階とは言えそれを知ってしまえばどうなると思う?
「…自分で、自分が許せなく…なる…?」
それを我は危惧したのと、一応ソランが死んだ瞬間を見た訳じゃない以上は…今は伏せた方が良いと、思ったからな。
……だが結局、その事を言えぬまま……一護はっ……。
……話を続けなければな。その事と、刹那の本名がソランだという事を告げた所…奴は悔やんでいた。
「俺があの時、無理にでも…それこそ令呪でも使っていれば…!!」とな。
…「山程の人を護る為、戦ってきたってのに…仲間ひとり護れねぇのかよ…!!」とも、奴は言っていて。
…ソランが我を庇った結果、こうなったにも関わらず……奴は…一護は一言も、我を責めなかった。
寧ろ我が無事な事に、ホッとした様子で……責められる事は覚悟していたというのにな。
そこから、とりあえず互いの世界について話している最中だったな。
──自分をアスラン・ザラのおもちゃ(ミーム)と名乗る頭のおかしい狂人が、レジェンドガンダムとやらの起動鍵を使用して強襲して来たのは。
「頭のおかしい狂人……?」
「…もしかして、?って付いてる方のアスラン・ザラに襲われたの?」
…そうか、名簿にはそういう表記で載っているのか。…おそらくはそいつだろう。
そのアスラン?は奇声を挙げながらいきなり民家に突入して来て、ドラグーンとやらの熱線で内部ごと我と一護を焼き払おうと試みていた。
最も、不意を打たれたとはいえ一護も我もそれは回避出来たがな。民家は大破したが…やむを得まい。あらかた主催者側が用意した物だろう。
それはそうと、一護は奴に「いきなりなんなんだよ!てめえ…!!」と怒りを見せ、一方我は冷静に目的を問いただす。
…だが返ってきた答えは「うるさい!!!!この…アウル野郎!!!お前よりも俺の方が強い!!!!声が紛らわしいぞバカ野郎!!!!」
…我の問いには完全無視を決め込んだ挙句、一護に理不尽かつ誰かと混合したかのような罵倒を浴びせながら奴は、ライフルとドラグーンとやらからビームを乱射してきた。
「…アスラン・ザラ?が話し合いする余地もない、頭のおかしな狂人だって事は…もう理解出来たよ」
「アウルなんて名前、名簿にはなかった……紛らわしいって、どういう…?」
だろう?ロロ。…それと沙耶香、それについては我に聞かれても困る。ヒトならざる狂人の思考等、無理に理解しようとするものではない。
…人間じゃないのはあなたも…と、そう言いたそうだな糸見沙耶香。まあそう言われてしまうと…返す言葉も無いが。
とにかく、そんな暴言を吐いた奴に我は、ビームを躱しつつも煩いのは貴様だと言ってやった。
そして一護も斬魄刀…奴の世界に属する死神が持つ刀、天鎖斬月とやらでビームを切り払ったり月牙や月牙天衝という技で打ち消したりしながら「うるせえのはてめえの方だろ!大体誰だよアウルって!?」…と言っていたな。思う所は我と同じだったようだ。
…そこからは本格的な戦闘となった。四方八方からのビームの掃射を、一護が瞬歩…死神の高速移動の技術を用いて避け、我が迅移を用いて回避する中…それを見た奴は突如声を荒げる。
「その加速方法は…!!…さてはお前も!!篝と同じ刀使か!!刀使は敵だ!!!!」
…いきなり看破されたのもそうだが、我が驚いたのは奴が明示した名前だ。
篝…十条篝がこの殺し合いに巻き込まれていて、目前の喧しい事この上ない気狂いと交戦したという事になる。
「…十条…十条姫和の、お母さん…になるの?でも…」
「…名簿に載ってる篝って人は、柊篝だけだった」
…そこが、先に言ったそれらしき例だ。
十条篝の旧姓は柊。刀使としての力を持ち、神薙の刃として折神家に仕えていたのは旧姓の頃だった。そこから考えるとまだ刀使の力を持っていた頃から、柊篝を殺し合いに巻き込んだのでは…という考えが浮かんでいたわけだ。
…最も発言者がアレでは……とも思っていたが、名簿に載っているのならおそらくは真実なのだろう。少なくとも我とそこの糸見沙耶香と柊篝は、別々の時間から殺し合いに呼び込まれたと見ていい。
兎も角、刀使の異能が相手に割れている事が我にとっては不味かった。写シを張ろうにも、種が割れていれば最悪、張ったはいいものの達磨にされた挙句胸に突き刺されて…詰みの状態に持って行かれかねない。
写シを解除しなければ動けず、解除すれは突き刺さった傷が肉体にそのまま残るのでな。
…それもあり、写シには迂闊に頼れず八幡力と迅移による加速をしながら御刀と妖刀烈風丸の二刀で攻めたのだが……我や一護の、刀による直接的な攻撃は有効打にはならなかった。
奴はそれについて「物理攻撃を無効軽減化するVPS装甲なら!!お前を討つ!!!」などとほざいていたが…実際手応えこそあれど、相手にダメージを与えれた様子はほぼ感じれなかったな。
「…物理攻撃が効かないモビルスーツなんて…刀使にとって、天敵と言えたり…しそうで…どうしたら」
「…起動鍵を使っても、僕が今使える零陽炎のような、ビーム兵器とかが無い機体の物だと…厳しいと思う。君はどうやって突破したんだ?」
…我も当初は戸惑い、こちらも起動鍵を使うか悩んだのだが…それならと月牙を纏わせて斬り掛かった一護が、あっさり奴に有効打を与えていた。
あくまで減衰は直接的な物理攻撃だけ、何かしらを纏わせた物理攻撃は通用するらしい。…それと、これは感じた手応えと、我の演算による未来予測で導き出した解だが…物理攻撃を減衰は出来ても、その際の衝撃までは無効には出来ぬようだ。
…刀使が御刀のみで相手をする場合は、迅移と八幡力を併用して突きを放ち衝撃を何度も与え続けるのが最適解…だろうか。同じ所を狙って放てるなら、装甲の劣化も狙えるやもしれん。
話を戻すと、一護の様を見た我は烈風丸により、体力を引き換えに魔力の斬撃を放って…奴へと有効打を与える事に成功した。
そこからは我も一護も、通常の物理的な攻撃ではない攻めをし続け…気付くと奴は起動鍵を解除されていた。
……奴の顔は真っ赤に染まっていて、怒りを抱いているのが、憎悪に狂っているのが目に見えてわかる程だったな。気狂いに相応しい顔とも言えるだろう。
すると奴は「レジェンドだけではお前達には勝てないという事か!!!ならばこの2つの力で!!トゥ!!へァー!!!!」などと、意味不明な叫びをあげながら新たな起動鍵を使って姿を変えてきた。
更に、何かしらの支給品を使用していたようで……我や一護の放った斬撃が、全て「捻じ曲げられて」あらぬ方向に飛んで行った。
「…刀使の力や、最初ルルーシュって人が使ったのとはまた違う…なにか…?」
「…起動鍵に落とし込まれた、兵器の能力って可能性は?」
異能の類だろう事は、間違いないだろう。
…我も当時はその可能性が頭に浮かんでいたが、あの人格破綻者がソードスキルがどうの、聖文字とやらがどうのと言っていた。何処まで鵜呑みにしていいかという点は不安だが、おそらくはスキルにより習得した物だろう。
「ソードスキルでWの聖文字を習得し発動させる!!!✝虚無の申し子✝(マークニヒト)の力を持ってすれば!!!基本はジャスティスやレジェンドと一緒だ!!使いこなしてみせる!!!一緒なハズが無いだろうこの!!馬鹿野郎!!!!同化現象は俺を殺そうとしている!!!!」
…そんな支離滅裂な発言をしながら、紫色で禍々しさを感じられる機体・マークニヒトとやらを、?アスランは纏っていた。
しかもタイミングの悪い事に、そこで白緑の鎧武者が現れ…我と一護、アスランもどきの双方に攻撃を仕掛けて来よった。
「…それって…!」
「…私を襲った、あの鎧武者…タギツヒメ達とも、戦ってたなんて…」
…お前達も鎧武者と戦っていたとはな。…更にそこに、NPCの大群まで現れたのだが……我と一護がNPCや鎧武者の相手をする中…マークニヒトがケーブルを挿したと同時に、挿されたNPCがニヒトへと吸収され出す。
その上奴が「ワームスフィアーをこのエリアで発動させる!!!!」と言いながら黒い球体の何かを形成し…放った。
…演算により未来予測を行った結果、巻き込まれれば間違いなくそこで終わりだと判断した我は咄嗟に八幡力と迅移を発動、一護を掴み無理矢理引き寄せ退避して……範囲から逃れる事は出来た。逃れれずに巻き込まれたNPC共は…跡形も無く消え去っていた。
「…何も残らず、なんて…」
「….令呪も無しに、そんな事が」
そこからは、一護と我はワームスフィアーとやらを回避していた鎧武者への対処と、ニヒト自体への対処に追われていた。
当たればそこで死がほぼ確定するワームスフィアーだけでなく、追尾してくるレーザーや、着弾した地点からワームスフィアーを発生させる、刀身が開閉し射撃も可能な槍の投擲に、挿されば死がほぼ確定するケーブルからの吸収。
救いなのは制限のせいか、ワームスフィアー系の攻撃はそこまで連射が効かない事くらいか。
ひたすらに回避に徹しながら、一護は月牙天衝を、我は烈風丸から烈風斬を放つが…先程のようにこちらの攻撃は捻じ曲げられ、更にはその捻じ曲げを攻撃に転用し切断攻撃まで放ってくる始末。
隙あらば狙って来る鎧武者の存在に、先の戦いでの消耗もあって我と一護は劣勢に追い込まれていた。
途中で放送が流れたが…聞いてる余裕など、少なくとも我には無かった。
…ここで我は、ソランから託された起動鍵を用いてダブルオーライザーを身に纏う。少なくとも、未来予測で視た限りでは外部装甲さえあればある程度は耐えれるので、一護の盾となりつつ攻撃を行っていこうとしたのだが……使い慣れてないのもあり、我の見通しは甘かった。
「…気絶して、そこからは覚えてない…ってこと?」
……そう、なるな。集中砲火を食らって、真・烈風斬を撃ったと同時に……未来予測のツケも来たんだろう。
体力の限界を迎えて起動鍵が解除されて、雪のひんやりとした感触と冷たさが我の身体に来て…一護が我の名を呼んだのが……最後に我が聞いた、奴の声だった。
「……その状況から、彼は……一護は、戦況をひっくり返したと……?」
「…タギツヒメが生きてたのは、命に代えてでも…敵を撤退させれたから?」
……おそらくはな。
…あの気狂いは我が、一護が必死に抗う最中、こう言っていた。
「本物のアスラン・ザラは何処だ!?!?知っているなら教えろ!!!見つけ出して俺の手で討つ!!知らないと言いながらなんだお前は!!!!
知らないならここでお前達を討つ!!!クッキー↑!のように粉々にしてレジスターを強奪する!!!!強奪じゃない!!!!」
と。…それに、レジェンドガンダムを纏っていた際、奴と剣を合わせた一護は……「殺すしか、ねえの…かよっ…!!」と、悲痛な表情を浮かべていた。
…我ですら対話しようとしたあのお人好しの一護が、そんな決断を下し、分かり合えないとする程のイカれた男が我をみすみす見逃すとは思えん。…信じがたいが、令呪でも行使して打ち破ったのだろう。最も一護が奴を……殺したのなら、レジスターでも転がっている筈だが……違うという事か。
…そうだ、我が倒れる寸前、鎧武者も倒れていたが……。
「……変身者が誰か、とか…確認…出来たかな?タギツヒメ」
倒れる寸前と言っただろう。顔等を見る間もなく…我は倒れ伏していた。
…見えたかもしれないが、そうだとしても覚えてはいない。……破損したベルトだけが遺っていたのなら、逃げおおせた可能性が高いと、我は思う。
「…?が付いたアスラン・ザラ共々……警戒しないといけない、か」
…アスラン・ザラ?とやら共々、この周辺に居る可能性は普通にありえる。ついでに言っておくが、我の未来予測は先の戦いで何度も連発した結果、制限のせいでしばらく使い物にならん。慎重に動くべきだろうな。
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僕が今目前に居る、見るからに人間離れした白い少女…タギツヒメではなく、オレンジ髪の男…黒崎一護を先に殺した理由。
…発見した時点で、血こそ何故か出ていなかったけど、彼の身体には孔が空いていて、致命傷を負っていた。にも関わらずまだ息があって……どうせどちらも殺すなら、どのみち助からず、今にも死にそうな方を先に介錯してやった方がいい…そう思って僕は行動を起こした。
……けれど、タギツヒメを制限のせいで殺しそびれて、そこから目覚めた彼女の取り乱した様に、彼女が話した内容を聞けば聞くほど…もしかしたらと思っていた懸念が、どんどん膨らんでいった。
平静を保とうとするので必死だったけど、耳を傾けず防ぐ事は出来なくて。
……彼女は、タギツヒメは…沙耶香や、僕と同じだった。
殺し合いの中で、彼女は一護やソランという男と出会い…温もりを得る事が出来て変われたんだろう。そして死に別れたソランはともかく…彼女にとって一護は、僕にとっての兄さんや、沙耶香にとって姉さんになり得る舞衣と同じ存在だったんだ。
……だというのに、僕は……僕は、それを奪った。彼女から……奪ってしまったんだ。
もしも、もし兄さんが殺されたら……僕は下手人を絶対に許さないけど、それ以上に…悲しみに打ちひしがれるだろう。…僕の過失が原因でそうなったとしたら、自分で自分をずっと、許せなくなるかも知れない。
それなのに僕は……取り返しのつかない事を……!!
…それに、話を聞いていた限りでは、一護は超が付くほどのお人好しらしく、それでいてタギツヒメよりも強かったようで。
最初から殺すつもりだったから、確認しなかったけれど…諦めずに、沙耶香の支給品に治せる類の物が無いかを見て、尽力していれば、助けようとしていれば……彼は兄さんに協力してくれたかも知れない。生きていれば、タギツヒメが不安定になる事も無く、2人揃って安定した戦力として仲間…そうでなくても味方に出来たかも知れない。
……よく考えれば、僕の分身を目撃していたとしても、異なる時間・世界から巻き込まれるような事態が起こってる上に、マークニヒトとか言うモビルスーツでもナイトメアフレームでも、仮面ライダーでもなさそうな兵器や聖文字とかいうギアスとは異なる力が存在してるんだ。
何が起こっても不思議じゃないこの殺し合いの場なら…いくらでも言い訳しようはあった、筈なのに……何をやってるんだ、僕は!!
…僕の、そして何より兄さんにとっての心強い味方になり得た彼を……僕は殺めてしまった。
……なら、こうなったのならせめて……タギツヒメを最大限に、利用するしか、ない。それが……兄さんにとっても、一護にとっても…せめてものっ…!!
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かくしてロロは、偶然にもかつて兄ルルーシュがユーフェミアを殺めた際と同様、せめて最大限に利用するという気持ちを固めた。
そんな中3人は、ひとまず支給品についての話に移る。
タギツヒメが使っていた、妙法村正はそのまま元の持ち主である沙耶香に渡す事となった。
「制限やらがあるとはいえ、本来の持ち主であるお前が持つべきだろう」と、タギツヒメは沙耶香に言う。
そしてその代わりにと言わんばかりに、彼女は刀使の技能を行使する為に孫六兼元を要求。帯刀さえ出来ていれば刀使としての力を使えるが為である。
彼女としてはダメ元ではあったが…意外にもこれは通った。
「…我から言っておいて何だが、良いのか?」
「…あなたをまだ、完全に信じたわけじゃない。けど…一護って人が、ああなって…悲しんでる姿は…嘘じゃないって、思ったから」
そして一護の支給品については…天鎖斬月以外の2つはロロが持つ事となる。天鎖斬月もロロが持つ流れになりそうであったが…彼はこれを固辞。
「…斬魄刀には意思があるんだっけ…彼を助けれなかった僕が持つよりは、彼に救われたタギツヒメ…君が持った方がいい筈だ」
大凡本心からの言葉ではあるが、万一殺害を実行した当人であるロロが用いようとした結果、その斬魄刀を介して犯行がバレるなんて事態が起これば、計画は全て水泡と化すというのも理由ではあった。
「…さて、どうするロロ、沙耶香。
先程言った通り、近くにあの鎧武者の変身者や、あの復讐を遂げんとばかりの憎悪に狂ったアスラン・ザラ擬きが居る可能性があり、我の演算による未来予測は暫くは機能しない。
このままここで情報を交換するか…移動しながら行うかだ」
「…私は、ロロに任せる」
「……なら、僕は──」
果たしてタギツヒメの出した2つの案から、ロロが選択した答えや如何に。
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(…我は知りたい。真実を…奴の、黒崎一護の死の真相を)
…そもそも、この殺し合いに巻き込まれているタギツヒメは、刀使ノ巫女本編の胎動編最後にて思考矛盾から大荒魂が3人に分裂した内のひとりという存在である。
彼女の中には、自分を拾ってくれたロロを信じたいという気持ちと、完全に勘でしか無いのだが…ロロが怪しいという気持ちの2つがあった。制限がなければ、一護までもを喪ったショックから物理的にまたもや分裂していた可能性もある。
信じたいと思う心の部分は悲しみながらも、本当にそれが真実かと、真実を求める心の部分は冷静に思考していた。
(…もしも、一護が誰かに…謀殺されていたとしたら。その時我は…どうなるのだろうな)
己の事ながら、その時にならないとどうするかすらわからない有様を自嘲しつつ…思考を切り替え彼女は決意する。
(……ソランも、一護も、我を救うだけ救って、何も返せない内に逝ってしまった。
……過去に何があろうと、我より生きるべきだっただろう事は、変わらぬだろうに……だから、奴らの死を無駄にせぬ為にも……どうであれ主催者達は叩き潰す。我が命に代えてでも)
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ここまでがロロ・ランペルージに糸見沙耶香、それにタギツヒメの話。ロロの決断次第で、今後の未来は左右されるが…それはまた別の物語で。
ここからは短いながらも、タギツヒメが倒れた後、黒崎一護とアスラン・ザラ?の戦い…そして、一護の今際についての話だ。
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雪原で向かい合う、人間と機械。
方や、紫色の兵器マークニヒトを纏いし男、アスラン・ザラ(?)。もう方や、死神代行の男黒崎一護。
戦況は、圧倒的に一護が不利であった。
共に戦い、未来予測によるサポートや起動鍵の装甲による盾役もしていたタギツヒメが倒れ伏し、自らもワームスフィアーと同化は回避し続けてたもののレーザー等で削られボロボロ。
卍解すら解除されてしまう有様である。
対しニヒトを纏ったアスラン(偽)は、ダメージや疲労こそあれど未だ健在。
誰がどう見ても、勝つのはイツワリのアスラン・ザラの方だと言うだろう。
しかし……一護の目からは、戦意も光も、消えて無かった。
「…いい加減諦めたらどうだ?…今のお前は見るに堪えない。俺の方が強いのは身を以て思い知っただろう?」
ここまで支離滅裂意味不明、会話も碌に出来ない様子を保ち続けて来た贋作のアスランが、急に素面に戻ったかのように落ち着いた声をかける。
それに虚を突かれたような表情を一瞬浮かべた一護だが、すぐに言葉を放つ。
「…確かにてめえは、強えよ…だけどな、ここで俺が諦めちまえば…タギツヒメはどうなんだ。狙ってるんだろ?レジスターを……刹那、いや…ソランだっけ、あいつが命がけで助けた命を…みすみす死なせるわけにはいかねえ。
それに……てめえが強いからって、だからって……俺が諦める理由には、ならねえんだよ……卍!解っ!──天鎖斬月!」
令呪を切った一護は、そう叫び再び卍解を発動。そして令呪による制限突破により月牙天衝を…『護る』為の戦いなおかげか、先のタギツヒメとの戦いよりも出力の上昇した一撃を放たんとする。
対し、アスラン・ザラ(ニセ)はワームスフィアーを球体状にし、迎え撃たんとした。
「月牙!!天…衝っ!!!」
「ウオオオォォッ!!!!」
特大のワームスフィアーと、月牙天衝がぶつかり合う。余波で周囲が破壊散乱される中…最終的には月牙天衝の一撃でアスラン(ニセモノ)がマークニヒトを解除され「ヌオォォォォ!!!」とふっ飛ばされて行くのと、悪足掻きで放ったホーミングレーザーで限界を超えた一護の胸に孔が空き、倒れるのは同時であった。
タギツヒメへと手を伸ばすも届かず、本来なら一護はそのまま死ぬ所だったが、斬魄刀側の斬月のおっさんが剣八戦よろしく血を止めた事と、制限突破により完全虚化が徐々に発動しようとしたのもあり辛うじて虫の息ながら生きていた。
しかし一護自身の意志は内なる虚ホワイトに飲まれていこうとしており、このまま放置すれば生存はしても、完全虚化状態で一護の生存の為暴れまわる無差別マーダーが誕生していただろう。タギツヒメは間違いなく殺され、ロロや沙耶香も生き残れたかは怪しい。
他の戦場や対主催・マーダーの集団目掛けて襲撃して来た可能性も高かった。
……だが、その未来はロロ・ランペルージにより閉ざされた。
護ろうとしたタギツヒメを、自らの手で殺めてしまう結末を…黒崎一護は回避出来たのだ。
故に、意識が途切れるまでの、最期のほんの一瞬…一護がロロに抱いたのは、謝罪と、感謝の気持ちだった。
(…悪い……でも、ありがとうな)
…余談だが、もしもロロ達の所に道外流牙が居たのならば、天鎖斬月から一護の最期の想いを『声』として聴き取っていただろう。
その場合は、伝えられたと同時に、ロロは嬉々として自己正当化に走っている可能性があるが。
……兎に角傍から見ればロロは、少なくともこの時この場では正解の選択肢を選んでいたのである。
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一方、ダメージを負いつつ受け身を取り重傷を回避したアスランモドキ。
(…体力の消耗が…激しい……こんなピーキーな起動鍵を渡すとはやはり議長は俺を殺そうとしている!!!!)
内心全く以て無関係なデュランダル議長への怒りを煮えたぎらせながらも、マークニヒトの同化能力をここで使い思い付いた事を考える。
ちなみにニヒトの鍵と聖文字のソードスキルをキラと篝戦で使用しなかったのは、開始早々にキラを見つけひたすら殴る蹴るする事に夢中になっていたからであった。
撤退後ようやく他の支給品への思考が回った形である。
「…同化の能力で、レジェンドの起動鍵を同化すれば……いや、よく考えろ俺!!俺が欲しかったのは本当にそんなドラグーンか!?!?
第一、ニヒトの消耗の重さを考えれば…レジェンドは残しておくべきだろう!!本当に使えないな俺は!!!!」
自虐しつつ、アスランはまた思考を切り替る。
(起動鍵等の支給品の制限が、レジスター依存なら…レジスターの解析さえ行えれば制限を無視して力を行使する事も可能かも知れないと!!!何故わからないシン!!!!
レジスターを手に入れる事で俺は!!解析し他者のレジスターを核爆発させてバグスターウイルスで消滅させる!!!
その為にはまだ、本物の俺を含めた他の参加者を襲い殺さなきゃいけないんだ俺は!!!)
途中から思考が飛躍し支離滅裂になりながらも、確かにある疲労とダメージを押してでもレジスターを手に入れる為…アスランは他参加者を探す事とした。
【エリアA-11、B-11、C-11、C-12、D-12、E-10、E-13のいずれか/??/9月2日午前6時】
【アスラン・ザラ@ネットミーム】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、自らの存在抹消を願う思い(極大)、シナジェティックコードを形成
服装:SEED DESTINYでのザフトの軍服(赤)
装備:
令呪:残り三画
道具:レジェンドガンダムの起動鍵@機動戦士ガンダムSEED DESTINY、マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS、ホットライン
思考
基本:まずは本物のアスラン・ザラを殺す!!!それで俺が消えないならば優勝して望みを叶える。縋るしか無いんだ俺は!!!!
00:今はレジスターの確保が先だ!!!!本物の俺が居たら始末しレジスターを手に入れてみせる!!!!
01:羂索達の裏に居る議長は俺を殺そうとしている!!!!!
02:キラは敵だ!!!!!篝!!!この…甘ちゃん野郎!!!!!
03:シン!!!!!居ないだとシン!!!!????何度でも殴ってやるぞシン!!!!語感が似た名前だったり名前にシンが入っていればお前もシンだ!!!!!バカヤロウ!!!!
04:トゥ!ヘァー!
05:望みを叶えるなら他を殺すしかないんだ…何故わからない!?!?!?
06:わかった…。
07:おもちゃだったんだ、俺は…!!!!
08:レジスターの解除方法を探り残存参加者のレジスターを核爆発させる!!!!
参戦時期:無し。(知識的にはこのロワが始まった2024年8月22日以前までのSEEDシリーズの展開やSEED関連のネットミームについては知っています)
備考
※ギルバート・デュランダル@機動戦士ガンダムSEED DESTINYが羂索達の裏に居ると勝手に決めつけています。また梔子ユメも羂索の協力者だと勝手に決めつけています。
※このアスランが抱いている自分の存在抹消を願う思いが彼自身の物か、それとも主催側が何かしらの干渉を行った事による物なのかは採用された場合、後続にお任せします。
※支給されていたソードスキル:Wの聖文字@BLEACHを習得しました。
※詳細な位置は後続にお任せします。
【支給品解説】
・マークニヒトの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS
アスラン・ザラ?に支給。
読心と同化を行ってくる地球外生命体であるフェストゥムに対抗し作られたファフナー・ザルヴァトーレモデル。本来なら50m前後とかなりの大型だが、パワードスーツとして落とし込まれている都合等身大サイズとなっている。
出展の都合上今回はEXODUS仕様となる。その為EXODUSの続編BEYONDで可能になったあれこれは今のところは不可能。
武装はホーミングレーザーに同化用のケーブル、ワームスフィアーにルガーランスに、紫電のようなビーム。
またワームスフィアーは凍結や炎の属性付与も可能。
ただし制限により、ワームスフィアーは連射はあまり出来ずかつ、仮面ライダーやパワードスーツに落とし込まれた機体の装甲には一撃で致命打にする事が出来ないようになっている。
他に制限がかかっているかは後続にお任せします。
この殺し合いでは制限により誰でも使用可能となる代わりに、使用した参加者にファフナーとの一体化の促進の効果があるシナジェティックコードを形成するようにされた。
以降ファフナー系列の起動鍵を使用する毎に一定確率で同化現象が進行し、最終的には結晶となって砕け散り『いなくなる』他、本来より同化現象の進行する速度が早くされている。
なおシナジェティックコードが形成された参加者が令呪を全て使い切った場合、効果時間が過ぎた後に結晶となって砕け散り、そのまま破片も遺らず消滅する仕様となっている。
またこの殺し合いでは同じ仕様であるマークツヴォルフよりも同化現象の進行する確率と、使用後消費する体力が多くされている。
・ソードスキル:Wの聖文字@BLEACH
アスラン・ザラ?に支給。
聖十字騎士団所属の滅却師、ニャンゾル・ワイゾルがユーハバッハに与えられた聖文字がソードスキルに落とし込まれた物。
認識した敵の攻撃を捻じ曲げ回避する事が可能な他、攻撃へ転用する事も可能。
この殺し合いでは制限で、本来なら使用者が本能で察知した攻撃全てが対象な所を、認識した攻撃のみが対象となるようにされている。
【エリアA-12/南部/9月2日午前8時】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ】
状態:正常、罪悪感(大)、羂索たちへの殺意(大)
服装:アッシュフォード学園の制服(男子用)、フードパーカー
装備:零陽炎の起動鍵@コードギアス反逆のルルーシュ ロストストーリーズ
令呪:残り三画
道具:ホットライン、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner、ランダムアイテム×0〜2(一護)、一護の腕(レジスター付き)、一護のホットライン
思考
基本:兄さんを生還させる。
01:この場に留まるか、外に出るか…。
02:美濃関学院に寄りつつ、兄さんのいるテレビ局へと向かう。マーヤと合流したい所だけど…。
03:兄さんをこんなことに巻き込んだ連中は皆殺しにする。
04:枢木スザクとビスマルク・ヴァルトシュタイン、二代目ゼロはとりあえず殺す。
05:沙耶香にも舞衣にも悪いが、沙耶香を最大限利用するために『兄』を演じる。その時が来たら使い捨てる。
06:……こうなってしまった以上、タギツヒメも最大限に利用する。それが…せめてもの。
07:違う世界の、ブリタニア姓の僕…か。
08:…色んな意味で、天鎖斬月を使う気にはなれない。
09:リボンズやアスラン・ザラ?を警戒。
参戦時期:死亡後
備考
※沙耶香から「刀使ノ巫女」世界に関する情報を得ました。
※自身のギアスへの制限を自覚しました。具体的な制限は後続にお任せします。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
※クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid linerで作った分身は消滅しました。再使用できるか否かは後続にお任せします。
【糸見沙耶香@刀使の巫女】
状態:健康、疲労(小)、動揺と困惑
服装:鎌府女学院の制服、フードパーカー
装備:妙法村正@刀使ノ巫女
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:未定。でも人を斬るつもりはない。
01:タギツヒメ……荒魂を、完全に信じようとはまだ思えない。でも…あの悲しむ様は……。
02:舞衣たちのいるかもしれない美濃関学院に寄りつつ、テレビ局へと向かう。
03:ロロのこと、多分羨ましい。タギツヒメのことも…きっと…。
04:舞衣や可奈美と合流したい。ちゃんと友達になりたい。
05:私が…可奈美や舞衣、十条姫和達と一緒に……?
参戦時期:高津雪那に冥加刀使にされかけて脱走した後
備考
※ロロから少しだけコードギアス世界に関する情報を得ました。
※タギツヒメから、黒崎一護越しではありますが「BLEACH」世界に関する情報を得ました。
【タギツヒメ@刀使ノ巫女】
状態:健康、ダメージ(大)、疲労(極大)、孤独感から解放された喜び(大)、ソラン(刹那)と一護を失った悲しみ(大)、リボンズへの怒り(大)
服装:いつもの服装
装備:天鎖斬月@BLEACH、
令呪:残り二画
道具:孫六兼元@刀使ノ巫女、烈風丸@ストライクウィッチーズ2、ダブルオーライザー(最終決戦仕様)の起動鍵@機動戦士ガンダム00(2ndSeason)、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:殺し合いに乗ろうと考えていたが…やめだ。抗おう。人の世を滅ぼす気も失せた。
01:さて、ロロはどうする…?
02:皐月夜見に似た声をした梔子ユメの身体を使っている羂索が、わざわざ御刀に触れたという事は……やはり招かれていたか刀使も。
03:ソラン…一護…お前達が生かしたこの我の命、殺し合いの打倒の為…全力を尽くさせてもらおう。
04:……阿呆共め……。
05:刀使とは極力会いたくない。とりあえず糸見沙耶香には乗ってない事は信じてもらえたようだが…よりにもよって柊篝が巻き込まれているとは……。
06:リボンズ…憎しみに囚われないで欲しいとは言われたとはいえ…貴様は…!
07:ルルーシュのあの異能…我にも通じるのだろうか。
08:ロロの事は信じたい、だが…一護の死は本当に、奴の言った通りなのか…??
参戦時期:アニメ版の第22話「隠世の門」にて、取り込んでいた姫和を可奈美達に救出され撤退されてから。
備考:
※少なくとも残ったランダム支給品は回復系の物ではありません。
※他者への憑依或いは融合は制限により不可能となっている他、演算による未来予測は何度も使用していると暫く使用不能となります。現在使用不能となっていますが、詳細なインターバルが必要になる回数やインターバル期間は後続にお任せします。
※黒崎一護から、「BLEACH」世界に関する情報をある程度得ました。
投下終了します、タイトルは「痛み が 重なったら/闇に光を、罪に罰を」です。
指摘等があれば随時修正や追記を行わせてもらう所存です。
皆様投下お疲れ様です
自分も投下します
早朝の冷えた空気が徐々に熱を増し、素肌を適度に暖めてくれるだろう頃。
大小様々な建造物が並び立つエリアに広まるのは、行き交う人々の喧騒。
ではなく、風の音一つしない静寂。
遅刻回避をすべく息を切らせて走る学生はいない。
退勤時刻までの数時間に憂鬱さを隠せない、社会人もいない。
交通ルール等知った事かと自転車を乗り回す若者や、苛立たし気にクラクションを鳴らすドライバーだって皆無。
大都会を大都会たらしめる筈の人々がおらず、物言わぬビル群だけが墓標のように建てられた場所。
嘗ては最強の片割れの、今はアビドス生徒会会長の肉体を器とする怪物、羂索が用意した箱庭の一画にて。
エンジン音を唸らせながら、二人の犠牲者(プレイヤー)が現れた。
世界の破壊者との戦闘を、相手の撤退という形で終わらせたチェイスと果穂。
道中で新たなトラブルに遭遇、といった展開も起こりはせず。
精々がNPCとすれ違った程度であり、それについてもバイクには追い付けず撒かれた為戦闘にはならない。
アッシュフォード学園が遠くの景色の一部になって、早数十分。
ちょっとした朝のドライブを味わっていた。
(悪くない性能だな)
運転に集中する傍ら、己が動かす機体に感心を抱く。
プロトドライブ時代からの愛機程では無いが、乗り心地は悪くない。
人であれば苦戦するだろうじゃじゃ馬も、ロイミュードの身体能力を活かせば無問題。
慣れない機体とハンドルの感触に最初こそ違和感を抱くも、乗りこなすのに時間は掛からなかった。
渋滞とは無縁の道路を突っ切り、歩道橋の真下を潜り抜ける。
人が住まう街なのに、肝心の人が存在しない。
殺し合いに巻き込まれなければ一生見なかった筈の光景を、不思議な気持ちで果穂は見やる。
日常から連れ出された世界がヘルメット越しに映り、自分が異様な催しに巻き込まれたと強く意識させた。
首謀者達を止める決意に偽りは無く、しかし恐怖は完全に消えない。
意識してか或いは無意識の内にか、彼の腰に回した腕に少しだけ力が籠る。
父や兄、プロデューサーといった者達よりも共にした時間は短い。
けれど心からの信頼を、互いに向け合える彼が傍にいてくれる。
その事実が恐怖心を和らげてくれた。
「む…?」
進路を変えずに南下し、探索を決めた目的地に到着。
といった当初の予定はどうやら、ここに来て変更となるかもしれない。
チェイスの内部センサーがこちらへ迫る存在を探知。
バイクを止め周囲を見渡すも、人が隠れている気配は無し。
ではどこからと、首を捻るまでもなく向こうから答えが返って来た。
「――――!!――――!」
声らしき、甲高い音が聞こえた。
発生源は即座に特定、太陽と雲が居座る天へと視線を移動
チェイスのみならず果穂も同じようで、ギョッとし頭上を見やる。
「ピンクの鳥…ですか?」
「いや違う、あれは……」
何かが飛んでいる。
鳥かと思ったが羽は無い、NPCのモンスターかとも思ったがどこかおかしい。
というかアレは飛んでいるんじゃなく、落ちていると言った方が正しい。
「そこの二人ーっ!!お願い避けてぇええええええええええっ!!!」
人が落ちて来た。
高層ビルよりも遥かに高い位置から、ロケットもかくやの急降下。
下にあるのは水を張った広いプールではなく、赤い花を咲かせる為に無慈悲なアスファルト。
声の主を瞳が映し出し、5秒と掛けずに情報を割り出す。
ピンク色の衣装を着た少女と、彼女に抱きしめられたもう一人の少女。
後者は身動ぎせず、だが生体反応はあり。
一方前者は涙目で大慌てしながらも、腕の力を緩める気配は見られない。
むしろどうにか体勢を変えて、少女を激突から守ろうと奮戦の真っ最中。
ダイナミックな自殺を決行したのではない、そこまで分かれば何をやるかは決まった。
「チェイスさ――」
後部座席の少女が言い切るより早く跳躍。
魔進チェイサーに変身時程ではないが、ただの人間では発揮不可能な運動能力だ。
避けてと言ったのに自分からぶつかりに来た相手へ、ピンク少女の混乱が増す。
激突は最早避けられない、とはならずに済むのだが。
「ひゃっ!?」
耐え難い激痛への悲鳴や、肉が潰れる生々しい音に非ず。
素っ頓狂な声がピンク少女の口から飛び出る。
驚きと、快楽の残滓によるものとは本人以外知らない。
容赦なく待ち構える灰色の地面は見えず、代わりに視界を覆うは紫色。
こちらへ自ら突っ込んで来た青年に受け止められた、そう遅れて気付いた。
人間に擬態中とはいえ、ロイミュードのマシンボディならこれくらいはやってのけられる。
中々に勢いがあり着地の際に少々よろけたが、受けた被害はその程度のもの。
ピンク少女も、彼女が抱きしめて離さないもう一人も無事。
降ろしてやると緊張から解放されたが故か、ペタンと尻もちを付いた。
「無事か。傷を負わないようこちらも加減はしたが」
「え…えっと…あ、はい!良かったぁ…千佳ちゃん、大丈夫だったよぉ……」
淡々とした問いかけに我を取り戻し、真っ先に腕の中の少女の様子を確認。
チェイスの言葉に嘘はなく、意識は無いが今の落下による負傷はゼロ。
安堵の息を深く吐き、先程とは別の理由で目尻に涙を浮かべた。
唐突な事態に目を白黒させていた果穂も、相手の無事には喜びを抱く。
自身の体よりも同行者を心配するピンク少女を見て、
「あ!服が変わりました!?」
「えっ?」
ヘルメットを被った相手の言葉に、つられて自分の体を見下ろす。
袖は白に、ブーツはソックスに、ピンクのスカートは学校指定の制服に。
休日以外は毎朝袖を通している服。
どうして急にこの恰好になったのか、理由は難しく考えるまでもない。
魔女の手下の天使達に散々弄ばれ、体液と共に魔力を奪われた。
エリアを丸ごと飲み込む災害から逃れるべく、許容量を上回るエネルギーを注ぎ込んだ。
消耗の大きさを考えればこうなって当然。
尤も事情を知らない二人は、訳も分からず顔を見合わせた。
○
何が何やら分からないが、とにかくおろおろし続けても話は進まない。
気を失った少女をこのままにも出来ないし、一度場所を変えてから事情を聞きかせて欲しい。
チェイスの冷静な言葉は十分な効果があったようで、向こうは間髪入れずに承諾。
自身の正体を知られたのも本来なら一大事だが、今優先するべきは眠りから覚めない少女だ。
二人しか乗れないバイクを仕舞い、屋内へと移動。
近場のアパートの一室に腰を下ろし、自分達を助けてくれた礼を告げるのに始まり、互いの身分を明かす。
「じゃ、じゃあ!はるかさん達トレスマジアの皆さんが、エノルミータって組織の人達から世界を守ってるんですか!?」
「う、うん。世界征服…かどうかは分かんないけど」
瞳を星のように輝かせる果穂に頷き返す。
変身が解ける瞬間を見られた以上、トレスマジアについても教える流れとなった。
二度も正体がバレてしまい、小夜と薫子に知られたらと思うと今から震えが走るもそれはともかく。
こうもストレートに羨望や尊敬の眼差しをぶつけられるのは、嬉しくはあるが同時に照れくさい。
トレスマジアが大人気なのは今に始まったことで無くとも、正体を知られた上でこういう反応は殺し合いで二度目。
思わず頬が熱くなった。
果穂が興奮する一方、極めて冷静に話を聞いたチェイスから質問が飛ぶ。
「もしこの島にエノルミータの人間がいれば、殺し合いに乗っている可能性が高いのか?」
「あ、それは違うよ!確かにエノルミータとは敵同士だけど、でも、今は協力するって約束してくれたから!」
真っ直ぐな目で違うと返し、流れでこれまでの経緯を話すことになる。
今も眠り続ける少女…横山千佳を始めとする者達との出会い。
強大な魔力を持つ魔女と、助けに来てくれた宿敵との共闘、そして脱出激を経てチェイス達のもとへ落ちて来るまでを。
「そんなことが…ヒーローの皆さんをそこまで苦戦させる相手が……」
「うん…情けないけど、皆がいてくれなかったらあのまま…う…うぅ…」
「体温が急激に上昇しているが、何があった?」
「え!?そ、それは……えと…」
言葉を詰まらせ、顔を赤くしたり青くしたりと忙しい。
はるかの様子に余り深くは聞かない方が良いと判断し、得られた情報に考え込む。
聞く限りはるか達が交戦した相手、ノワルの危険度は相当だ。
ロクな抵抗を許さないばかりか、エリア一つを破壊してみせる力。
加えて、相手が幼い少女だろうと見せしめのように殺そうとする残虐性。
仮に遭遇したらば苦戦は免れない、下手をすればあっという間に捕らえられ詰みとなってもおかしくない。
脅威の度合いで言えば、この地で戦った二人のライダー以上だろう。
果穂もまた暗い顔で戦慄を抱く。
はるかだけでなく、アルカイザーなるヒーローやイドラという魔法使い。
話を聞いただけでも心強いと思われる人達がいて尚も、最終的には撤退するしかなかった相手。
殺し合いを止めようとする人がいる一方で、誰かを平然と傷付ける人も決して少なくない。
道が相容れない以上、ノワルともいずれ戦わねばならない時が来る。
逃げ出すつもりはなくとも、その瞬間を思えば緊張で体中が強張るのを抑えられなかった。
思いもよらぬ強敵の出現を知らされ、室内の空気が重くなる。
だが悪いことばかりでもない。
思考を一旦中断させるかのように、三人がいる部屋の襖が開いた。
侵入者では無い、魔女との戦いで起死回生の一手を打った魔法少女が目覚めたのだ。
「はるかちゃん……?」
起きたら知らない部屋の、知らない布団に寝かされていて。
訳も分からず寝惚け半分のまま立ち上がり、ふと今までのは夢だったのかと思い。
隣の部屋からの聞き覚えのある声が現実だと告げた。
心身共に疲弊しフラ付きながらも、そっと隙間から覗けば憧れの魔法少女の姿。
服装は違うけど顔は同じ、認識阻害の魔法も一度正体がバレれば効果は無い。
それはともかく、はるかを見付けて思わず襖を一気に開いた。
「千佳ちゃん!?もう起きて大丈夫なの?まだ痛いとこがあるなら私が…」
「う、うん。あんまり痛くないから…あ!はるかちゃんは大丈夫!?それに皆は…」
「今は一緒にいないけど、でも皆絶対無事だよ!イドラさんもアルカイザーも、それにマジアベーゼも!私達みんな、千佳ちゃんのおかげで助かったんだ!」
抱きしめられながら自身の記憶を手繰り寄せる。
お芝居やテレビの中の出来事なんかじゃない、本当に殺される恐怖。
同じくらい、何も出来ず誰も助けられずに死ぬ絶望。
大好きな魔法少女と、第三芸能課での日々という自分を形作る思い出が駆け巡り、
「そっか……」
自分の背中を押してくれた、空色の髪の女の子。
皆を苦しめる黒の束縛を打ち消す奇跡を、他でもない自分自身が実現させた。
夢でも都合の良い幻でも無い、本当のことだったと噛み締める。
「あたしの魔法…ちゃんと届いたんだぁ…!」
顔を綻ばせ、思わず一筋の涙が流れる。
魔女への恐怖や、自身の終わりを突き付けられたが故の悲痛な雫ではない。
嬉しさと安堵が込み上げ、堪らずはるかを抱き返す。
小さな体で恐い思いをして尚も戦った千佳を、拒絶する理由はどこにもない。
「あはは…私今変な顔しちゃってるね…」
「千佳もおんなじだよ!」
抱きしめ合って互いを見つめれば、共に目が赤くなっている。
二人して笑い合い、間近で伝わる温もりが生きていることを教えてくれた。
○
「すっごーい!果穂ちゃん、同じアイドルってだけでも嬉しいのに、ヒーローもやってるんだ!」
「千佳ちゃんだって凄いですよ!皆を笑顔にして、皆の笑顔を守る魔女っ娘…!とってもキラキラってしてます!」
「えへへ…ありがと!嬉しいからお礼に、ハッピパワー☆い〜〜〜〜っぱい注〜〜〜入っ!」
「わわっ!千佳ちゃんのポカポカする魔法、たくさんもらっちゃいました!」
アパートの一室にて、今が殺し合いであることを忘れさせるような光景があった。
あの後、千佳も交え改めて自己紹介をし互いのこれまでの経緯を話した。
話せることを全て語り、一段落着いて間もない頃。
消耗の大きいはるかと千佳を休ませる為にも、暫くはアパートに留まる事となった。
チェイスと果穂の二人だけで先に移動する、という案も勿論ある。
しかし残されたはるか達の元へ危険人物が襲って来ないとも限らず、ましてまだ万全ではない。
よってチェイス達も護衛を兼ねて休憩に入った後、移動を行おうと話が纏まったのである。
「チェイスさん達は良かったの?行きたい場所があったのに…」
「構わない、調査よりもお前達の安全の方が優先度は上だ。それに、俺は果穂に少し気を張り詰めさせ過ぎたかもしれなかった」
「そっか…うん、果穂ちゃんも千佳ちゃんもすぐに仲良くなってて、私も嬉しくなっちゃうなぁ」
片や真顔、片や満面の笑みで見つめる先にはアイドル達の微笑ましいやり取り。
事務所こそ違えど同じアイドルなら、互いに興味が無い訳が無い。
抱きつかれていれる果穂は、チェイスの話で目を輝かせた時とは違う理由で嬉しそうだ。
283プロでは最年少、家族構成も兄は持つが下の子はいない。
それもあってか年下の千佳に懐かれくすぐったそうにしつつ、決して拒絶感は無かった。
殺し合いでの緊張感を忘れたつもりはない。
ただチェイスの言うようにずっと張り詰めさせるのも、幼い少女達には負担を強いる事へ繋がる。
であればきっと、今この時間は千佳と果穂にとって大切なものの筈。
(皆…大丈夫かな……)
ふと、表情を曇らせ思うのは仲間の安否。
ノワルとの戦闘後、別行動を余儀なくされた三人は勿論。
大切な友人まで巻き込まれたと知れば、大丈夫だと信じてはいるがそれでも不安が完全に消える訳じゃない。
主催側からの放送中はイドラ共々拘束中で、とてもじゃないがホットラインの確認など不可能。
千佳も交えた先の情報交換の際、視聴アプリを使いようやっと内容を把握。
それから名簿を見たが、記載されていた名前ははるかを揺さぶるのに十分な内容だった。
小夜と薫子はまだ分からんでもない。
彼女達まで巻き込まれたのには当然怒っている。
しかしトレスマジアを狙い三人纏めて拉致したと言うのなら、一応は理解出来なくもない。
だが柊うてなは違う、彼女は魔法少女と悪の組織の戦いに関係の無い一般人。
マジアマゼンタではなく花菱はるかとしての友達だ。
戦える力を持つトレスマジアはまだしも、何故うてなまで参加させたのか。
心配と、どこまでも非道を強いる羂索達への怒りが湧く。
殺し合いに乗っていない者と会えてれば良いが、残念ながら善人だけが参加者ではないのが現実。
ノワルは勿論、チェイス達が戦った者達にも注意が必要だ。
いきなり果穂を殴り殺そうとした蛇柄の服の男、善人の皮で邪悪な本性を隠す先生。
そして彼の生徒である学園都市キヴォトスの少女達。
全員がノワル並の力を持っているのでなくとも、うてなのような一般人には大きな脅威である。
「はるか、少し気になったことがある」
と、意識を引き戻され顔を上げる。
声を掛けた本人はホットラインで名簿を開き、並んだ名前に視線を落としていた。
「お前の元々の敵であるマジアベーゼについてだ」
「う、うん。でもマジアベーゼは一緒に戦ってくれるって約束したよ?」
「ああ、それは聞いた。俺も特に異論は挟まない」
前からの因縁はあるが、向こうは殺し合いに乗っておらずノワルから助けてくれた。
あくまで一時的な協力と念を押してたけど、はるかにとってはそれでも構わない。
殺し合いへ立ち向かう仲間だと自信を持って言えるし、チェイスもその点にあれこれ文句を付ける気は無かった。
蛮野相手にハート・メディックの両名と共闘した経験を思えば、マジアベーゼとの協力に問題は無い。
「俺が気になったのはマジアベーゼの正体についてだ。ガッチャードのように変身した後の名前が無いなら、恐らく本名が記載されている」
「それは…そうだよね」
「だが、誰がマジアベーゼなのかを絞り込むのは難しくない」
クルーゼが含みを持たせたように、名簿の順には意味がある。
例えばキヴォトス関係者は小鳥遊ホシノから先生までの6人が並んでおり、関係の深い者同士を纏めたと考えられるだろう。
チェイスの方は知っている者がおらずとも、ガッチャードとゼインという二人のライダーの間に名前があった。
であれば、所謂仮面ライダーの変身者又は関係者で固めたと推測は可能。
果穂と千佳についても、アイドルという共通点が見出せる。
はるかの場合はキヴォトスの者同様、元々の知り合い同士で名前を順に並べている。
そしてマジアベーゼは殺し合いの前からはるかと、より正確に言うとマジアマゼンタとの面識持ち。
名簿の法則に計れば、一体誰がマジアベーゼなのかは自ずと見えて来る。
「ちょ、ちょっと待って!それじゃあまさか、マジアベーゼって……」
トレスマジアの小夜と薫子は当然除外。
残る名前に目を見開き、わなわなと震え出す。
悪の組織エノルミータの総帥であり、自分達を幾度も辱めた宿敵。
共に殺し合いに立ち向かう、今この時は信頼を寄せる彼女の正体は――
「外人さんだったの!?」
「……」
驚きを露わに『アルジュナ・オルタ』を指差すはるかへ、チェイスは言葉に困った。
確かに彼女達の真上に名前はあるが、そうじゃない。
「でも日本語ペラペラだったし…頑張って勉強したのかな?やっぱり悪の組織を率いるくらいだし、凄い努力家なのかも…」
「……」
「マジアベーゼ、ううん、アルジュナちゃん。こんな形で正体を知るとは思わなかったけど、でも今は仲間だもんね。このことは秘密に――」
「違う、その下の名前だ」
放って置くと無関係の参加者がマジアベーゼ認定され兼ねないので、口を挟み軌道修正。
下と言われて自身の勘違いを悟り、早合点したと反省。
恥ずかしそうにしつつ違う名前を見て、またもや驚愕の表情を作った。
「邪樹右龍ちゃん…マジアベーゼってこんなに強そうな本名だったんだ」
「…………」
下に行き過ぎである。
いい加減埒が明かないので直接言おうと思ったが、それより速く会話に割って入る者がいた。
「ダメだよチェイスくん!魔女っ娘もヒーローも正体はヒミツにしてるんだから。マジアベーゼだって、バレたらきっと困るよ!」
二人の話が聞こえて来たのか、頬を膨らませて千佳は言う。
変身する場面を見られたレッドとはるかが大層落ち込んだのは記憶に新しい。
あの時は千佳の魔法とイドラの言葉もあって立ち直ったが、それでも彼らにとっては本来秘匿すべき情報。
ならマジアベーゼだって正体発覚は防ぎたい筈。
彼女は正義と対を為す悪、魔法少女やヒーローとは相容れない存在。
けど千佳にとっては自分達を助け、「あこがれ」の気持ちを肯定してくれた人だ。
チェイスが悪意で正体を探ったのでないとは分かる。
それでも、マジアベーゼを傷付けることへ繋がり兼ねないなら黙っていられなかった。
「…うん、そうだね。マジアベーゼの正体が誰だったとしても、一緒に殺し合いを止める仲間だもの」
千佳の言葉を聞き、はるかも名簿から視線を外す。
マジアベーゼが誰なのか気にはなる。
元々の因縁を考えると、正体を知っておくのはトレスマジアとして正しいのかもしれない。
しかしそれは、協力すると言ってくれたマジアベーゼへの裏切りになるんじゃないか。
一時的なものに過ぎなくとも彼女は志を共にする仲間、だから正体を探るのはフェアとは言い難い。
「よしっ!マジアベーゼが誰なのかは探さないことにする!」
「そうか…お前が決めたなら俺もこれ以上は何も言わん」
警察直々に公表される前は、進ノ介も仮面ライダードライブであることを関係者以外には隠し続けていた。
ヒーローと悪という明確な違いこそあれど、はるか達の信頼を得ている者なら。
これ以上口を挟むべきではないだろう。
「マジアベーゼさん…不思議だけとってもカッコいい人です!悪の組織だけど、譲れないものの為に戦ってるんですね!」
「…う、うん!そうだね!」
頷くのに数秒の時間を要した理由は、マジアベーゼとノワルによる語らいの場面を思い出したから。
趣味の面で盛り上がったと思いきや最終的に求めるもの違いから、互いへ敵意をぶつけ合った光景。
解釈違いで火花を散らす様子を説明するのは憚れるので、その部分は適当にボカしておいた。
譲れないものがマジアベーゼにあるのは本当の事だろうし、そこは間違ってない。
「……っ!」
「この反応って…!」
狙ったのか偶然か、和やかな空気は終わりを告げる。
ロイミュードのセンサーが戦闘音を拾い、魔法少女は反応を捉えた。
戦いに身を置く者達の警戒に、アイドルの少女達も察しが付く。
既に危険人物に襲われ、命の危機も味わっているのだ。
いつ新しい戦いが起きても不思議は無く、互いに身を強張らせる。
「魔力…とは違う力?でも、誰かが戦ってる…」
「3、いやもっと多い。騒ぎを聞いた者達が更に集まる可能性もある」
現在いるアパートから距離はそこまで離れていない。
急げば介入は可能であり、さてここからどう動くか。
感じた力ははるかの知らないもの、つまり仲間達でもないしノワルが暴れているのとも違う。
かといってこのままアパート内に身を潜めているのは御免だ。
誰かが危険人物に襲われているかもしれないのに、知らんぷりを決め込むような性根なら、はるかは最初から魔法少女になっていない。
休んだおかげで体力もある程度戻った、戦うのに支障はない。
「あたしも、一緒に行く!皆みたいに強くはないけど、恐がってるだけなのはラブリーチカじゃないから!」
ノワルに植え付けられたトラウマは深い。
魔法が使えるようになっても、恐怖を完全には拭い切れない。
まして千佳はまだ9歳の小学生、怯えて泣きじゃくっても無理はない。
けれど助けたい心に蓋をして逃げるのだけは、絶対にやりたくなかった。
「なら、全員で向かうぞ。だが無理はするな」
「はい!あたしも千佳ちゃんの魔法のおかげで元気をもらいました!皆と一緒に戦えます!」
放って置く気が無いのはチェイス達も同様だ。
それに別行動を取って片方が襲われるよりは、4人で固まった方がまだ対処に動きやすい。
先生との戦いでの消耗も幾らか消え、体力的にも問題無し。
全員が同じ想いなら口論の必要も無く、外へ出てそれぞれ戦闘の準備に入った。
「変身《トランスマジア》!!」
「変身っ!」
『BEAT』
制服が弾け、素肌の上からピンク色を纏う。
可愛らしさを前面に押し出した、王道の魔法少女衣装こそマジアマゼンタの証。
横ではデザイアドライバーを操作し、果穂がナーゴへ変身。
煌びやかな装甲と猫をモチーフにした頭部は、彼女にとって最早お馴染みとなった。
『BREAK UP』
少女達が姿を変えた隣では、機械の戦士ももう一つの顔へ変わる。
バイクパーツを人型に組み立てた装甲の、魔進チェイサーが殺し合いで三度目の変身を果たす。
仮面ライダーとは違う魔法少女への変身。
仲間であるアルカイザーとは別のヒーローの姿。
互いに興味はあるが今は胸の内に秘めておき、騒ぎの場へ向かう方が先だ。
変身した今なら常人を遥かに超える走力を発揮出来る。
千佳をマジアマゼンタがおんぶし、残る問題は間に合うかどうかだけ。
覚悟はとっくに出来てる、頷き合い駆け出した。
◆◆◆
「ああそういや、一応教えといた方が良いか」
ふと思い出したように言った彼女(彼)に、後方の二人は揃って首を傾げた。
支給品及び十条姫和の右腕回収を目的とし、市街地を移動中の可奈美一行。
イレギュラーな形で急遽参加登録されたアンクに案内される道中でのこと。
警戒を怠らず、尚且つ息を切らさない程度に早歩きで進み到着までもうまもなくといった時だ。
無駄口を嫌うのか単に急いで目的地に着きたいのか不明だが、これまで口を閉ざしていたアンクから言葉が出たのは。
「お前ら、俺と会う前は森にいたってことはあの放送も知らねぇだろ?」
「放送?クルーゼだかって変態仮面のじゃなくてか?」
「そいつの後にもう一人、派手な真似した奴がいるんだよ」
五大院との戦闘に始まる可奈美とリュージの出会いは、全て森林エリアで起こったこと。
クルーゼの放送が終わってからも、暫くは森を抜けるのに時間を費やした。
よって必然的にもう一つの放送は、テレビの類が無い場所では見れない。
アンクの場合は免許試験所の食堂でアイスを探していた際、設置されたテレビで把握している。
主催側からの通達程ではないが殺し合いの盤面を変える内容だ、情報は共有した方が良いだろう。
アンクの口から語られたのは、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアによる演説。
最初の場で参加者全員の注目を集めた彼は、殺し合い開始直後にまたもや波乱の種を蒔いたらしい。
「何だそりゃ…王様気取るにしてもやり過ぎだろ」
「でも、ルルーシュさんの言うことを真に受けちゃう人もやっぱり出てきますよね…」
大々的に己の存在を知らせ、力を誇示と傲慢な命令により参加者の危機感を煽る。
決して褒められた方法ではない、しかし馬鹿げた戯言と全ての参加者が一蹴するとも限らない。
恐怖に屈した者や手っ取り早く数を揃えたい者は、ルルーシュ陣営に着くことを決めるだろう。
可奈美とて覚えが無い話ではない。
タギツヒメと高津学長がメディアを使って、折神紫にヘイトが集まるよう仕向けたのは覚えている。
放送を使った戦略と言うのであれば、全く効果がないとは言い切れなかった。
「まあ状況が状況だ、あいつの言う通りにする奴もゼロじゃあないわな」
力と安全の保障でプレイヤーを釣ってクランを結成すると言った所か。
信頼関係では無く利用される駒と利用する王(キング)。
参加者の中には元々荒事に慣れた訳ではない、つい昨日まで平穏に過ごしていただけの奴だっているかもしれない。
ダーウィンズゲームだって、プレイヤー全員が事前にルールを知っていたのではない。
カナメのように、訳も分からぬ内に命懸けの遊戯を強制された者がいるのは殺し合いも同じ筈。
戸惑いから抜け出せない内に隷属と敵対の二択を突き付ける。
気に入らないやり方ではあるが、可奈美の言うように効果はあるだろうから質が悪い。
「で、アンク。お前は皇帝陛下の飼い犬になる気か?」
「ハッ!笑えねぇな。あんな奴に使われるのは御免だ」
鼻で笑いそう返すアンクの言葉が嘘でないと、自身のシギルで確認。
どうやらルルーシュの持つ、堀北鈴音の様子から察するに洗脳の類の異能は画面越しでは使えないようだ。
直接相手に命令しなければ効果が無い、それが分かれば対策の幅も広まる。
敵のシギルがどういったものかを知るのは、ダーウィンズゲームの時から必須。
一応殺し合いには乗っていないようだが、かと言って協力できるかは現状否寄り。
気付かぬ内に異能の餌食となり、あっさり捨て駒にされましたは御免被る。
「取り敢えずルルーシュの奴は一旦後回しで良いだろ。今の俺らじゃ装備も人数も足りてない」
「はい、それに姫和ちゃんの腕も急いで見付けないと…」
支給品と違い切断された右腕を好んで持ち帰る参加者は、『そういう趣味嗜好』の持ち主くらいだろうがしかし。
NPCのモンスターが拾い食いする、という可能性も十分にある。
ルルーシュと今後敵対するにしても、準備不足のまま向かうのは悪手以外の何物でもない。
宝探しゲームで花屋がホテルを要塞化したように、ルルーシュもテレビ局の守りを固めているのは確実。
あの時と違って今回は突入準備が可能であるが、やはり急ぐべきは姫和の腕を含めた物資の回収。
そうこう話している内に目的地へと到着。
人の気配が無い街中で、思わず鼻の摘まみたくなる悪臭が漂った。
「っ……」
「こりゃ酷ぇな…」
息を呑む可奈美に並び、リュージも顔を顰める。
三人分の死体、とも呼べぬ肉の破片が散らばっていた。
斬り殺されただろう死体はまだマシ。
相当に嬲られた、というよりはあちこちを食い千切られた二人はもっと悲惨だ。
片方に至っては顔の皮まで食われ、赤いマスクを被ったようにも見える有様。
そんな状態であっても、苦痛と絶望をこれでもかと味わっただろう表情で事切れている。
大荒魂を巡る一連の事件を経て今更大抵の事には動じないが、ここまでグロテスクな死体を見る機会も無い。
悲鳴を上げたりはせずとも、顔色が良いとは言えなかった。
リュージもまた、ダーウィンズゲームで人が死ぬ瞬間は腐る程見て来た。
特にエイスによる被害者は弟を含め凄惨を極めている。
だからといって死体を見て喜ぶような性質で無い以上、当然気分爽快になろう筈もない。
「吐きたいなら後にしとけ。どうやら俺ら以外の漁り屋はいなかったらしい」
唯一平然としているのはアンクだ。
800年前、彼が生まれた時代にはこういった死体を見る機会も少なく無かった。
死んだ連中に思う事は特に無く、それより支給品が手付かずな方が重要。
姫和の右腕以外の収穫無しも考えただけに、取り敢えず時間の無駄とはならずに済む。
アンクの言う通りここまで来た目的を忘れ立ち尽くしてもいられない。
切り替えてリュックサックに手を伸ばすリュージに倣い、可奈美も付近を見回す。
「あっ、あれって…」
血に汚れてはいるも、見覚えのある緑色の制服。
袖から覗く細い指、駆け寄り間違いないと確信を抱く。
姫和の右腕を拾い上げ、可奈美はズキリと胸に痛みを感じる。
同じ刀使として、姫和がどれ程大荒魂の討伐に執念を燃やしていたかを隣で見て来ただけに。
利き腕の喪失が彼女へ与えた心身の痛みに、悲しみが溢れるのは無理もないこと。
なれど、同時に彼女の強さも知っているから。
満身創痍になろうと生にしがみ付いたとアンクから聞き、姫和ならそうするだろうなと納得したから。
たとえ時間が違おうと、彼女を死なせたくない自身の決意に嘘はない。
後は腕の治療が可能な者を探し、並行して腐敗を防ぐ為に氷も手に入れておきたかった。
腕が見付かった以上は屋外でウロウロしていても悪目立ちするだけだ。
手招きするリュージに従い、近くの書店に入りスタッフルームに身を隠す。
「使った形跡が無い…取り出す暇もなく喰われちまったってとこか」
三人分のリュックサックの中身から手付かずの道具を複数発見。
アンクの話では相当な強さの男と、複数のNPCに襲われたとのこと。
起死回生の一手を打つ余裕すら与えられず、揃ってあの世行きになったのだろう。
人間性に関しては聞く限り褒められたものではなく、王に近いロクデナシのようだが。
「おっと、こいつは…」
馴染みのある金属の感触に取り出してみれば案の定銃、それもアサルトライフル。
弾倉から一発も減っておらず、予備の弾もたっぷり見付かった。
個人用にカスタムされているが悪くない、このまま使わせてもらう。
死んだ連中はご愁傷様だがこっちにとっては運が良い。
「姫和ちゃんの腕は見付かりましたけど、リュージさんの方はどうですか?」
「おう、こっちも幾つかは使えそうだぜ。ただ…こりゃダメだな」
武器が手に入ったのは良いが、全て問題無く使えるとはならない。
死体の傍らに落ちたカバンらしき物。
説明書によるとお医者さんカバンという、子供の玩具のような名前。
しかし実際には怪我や病気の回復には持って来いの、今の姫和に必要な道具だ。
但しそれは使えたらの話。
戦闘の際に支給品袋から弾みで飛び出たのか、所々が破損し部品が丸見え。
恐らくはNPCに踏み潰されでもしたのだろう、試しに開いてもうんともすんとも言わない。
残念ながらこれではただのガラクタ、そう都合良くはならず可奈美もガックリと肩を落とす。
「ま、まあそんな落ち込むなって。腕は今すぐ無理でも、傷は幾らか治せる筈だ」
そう言って見せたのは布製の袋。
口を開けると緑色のモノがぎっしり詰まっていた。
「草、ですか?」
「薬草らしい。食うと傷が治るんだとよ」
「そんなゲームみたいなことが…?」
世に溢れる剣と魔法の物語ではお馴染みだが、現実に草を食べて瞬時に回復は起こらない。
だが此度はそういった常識を鼻で笑う殺し合い。
過去の日本の偉人すら呼び寄せる技術があるのだから、薬草が本物なくらい別に不思議ではない。
「つー訳だからアンク、一枚ガブっといけば姫和って奴も少しは良くなるだろ」
「あぁ?ふざけんな、俺がこいつに憑いてればその内治んだよ」
泉信吾のように重症の怪我人だろうと、アンクが憑依している間は高い身体能力付きで動ける。
加えてグリードの生命力故か、わざわざ医療機関に赴かずとも自然治癒力も増す。
確かに何らかの道具を使って傷を治せば、姫和の意識が戻るのも早まる。
しかしアイスでもない、百歩譲ってクスクシエで提供される料理ならまだしも、見るからに苦みしかないものを口に入れる気はない。
吐き捨てた内容に嘘は無いと分かるが、ここでリュージが自身のリュックサックからある物を出した。
「お前それ…」
「何考えてこんなもん支給したのか知らねぇが、物は使いようってか。好きなんだろ?アイス」
「チッ…隠してやがったのか」
クーラーボックスいっぱいに詰められた、色とりどりのアイスキャンディー。
人間に憑依して初めて口にし、以来すっかり好物となったソレが大量に目の前に。
欲しければ黙って薬草を食えと言いたいのか、全く腹立たしい。
わざと大きく舌打ちをし、口に放り込んで噛む。
案の定苦みというかエグみが広まり、同じくして姫和の負傷が多少は治ったと分かった。
ぶっきらぼうに効果はあったと伝えれば、ソーダ味のアイスを一本寄越される。
「あ゛!?一本だけかよ!」
「そりゃ全部やるとは一言も言ってねぇからな」
あっけらかんと返されもう一度舌打ちをし、だが口直しをやめる気は無い。
シャリッとした食感と爽やかな甘みは、映司と出会ってから幾度となく味わったのと同じ。
よもやこういった形でまた食べるとは思わなかったが。
姫和の好きな味とは違うも、アンクにとってはこっちの方が好みだ。
ついでに念の為にと可奈美にも薬草を何枚か渡しておく。
「ありがとうございます、でも良かったんですか?」
「薬草のことならまだ残ってるし別に良い、アイスの方も使い道に困ってたしな」
礼を言って頭を下げる可奈美へ、何でも無いように返す。
善意が微塵も無かったとは言わないが、さりとて恩を売っておく意図がゼロだったとも言えない。
現状殺し合いはダーウィンズゲームとは無関係な上に、サンセットレーベンズのメンバーは自分だけ。
というか知ってる範囲だが、ダーウィンズゲームのプレイヤーが他に誰もいない。
何故ピンポイントで自分だけを巻き込んだのか、どうせロクでもない理由だろうとは察せられる。
今の所殺し合いに乗って勝ち残る気は無い、但し今後の状況次第では方針をガラリと変える必要も出て来るだろう。
カナメ達との出会いとクラン加入を経て以前より仲間意識はあるものの、リュージは基本的にリアリスト。
元々のクランの面々が不在な以上、優勝を目指す選択も考えざるを得なくなるかもしれない。
優勝、脱出、打倒主催者。
いずれ決めねばならない時に備えて、信頼とまではいかなくとも信用は得ておくに限る。
宝探しゲームの時同様、自分一人でどうにかするには相当骨が折れるのだから。
(ま、胡散臭さはダーウィンズゲームとどっこいどっこいだけどよ)
当たり前だが主催者のことは一切信じていない。
優勝したって本当に帰してくれるのか、望みを叶えてくれるのか。
どういう訳か羂索相手には自身のシギルが通用せず、真か嘘か判別不能だった。
ともかく今はまだ殺し合いの序盤。
さっき言った武器と人でのみならず、情報が圧倒的に足りない。
レインならばもっと頭を回せるのだろうけど、いない者を頼っても仕方ない。
最終的にどうするにしても、まずは可奈美とアンクの両名と行動。
前者は早目に覚悟を決められるよう働きかけ、後者は油断せずに接する。
根っからの善人だろう可奈美と違い、アンクは損得を勘定に入れて動く面を持つ。
まさか本当にアイスが交渉道具に使えるとは思わなかったが。
「…おい」
「分かってる」
苛立たし気な表情から一変、アンクは猛禽類のように鋭く睨む。
同じ方へリュージが手に入れたばかりの銃を構え、後ろでは可奈美もいつでも抜刀できる準備は整った。
全員の鼓膜を震わせるのは、バイクが発する低いエンジン音。
マフラーが火を吹き駆ける姿は大都会ではありふれた光景なれど、殺し合いでは別。
新たな参加者が敵か味方か、どちらだろうと即座の対処が可能にしておく。
そっと外の様子を窺うと、音の正体がハッキリ見えるようになった。
案の定バイクに乗った何者かがこちらに近付いて来る。
髑髏のレリーフが特徴のイカしたマシンを乗りこなすのは、何とも珍妙な見た目の人物。
カタカナ四文字を貼り付けた仮面に、どういう趣味だよと内心で零すのはリュージ。
球団マスコットの着ぐるみで新人狩りをしたプレイヤーをふと思い出す。
バイクは市街地で今最も目立つ場所、三人分の死体が転がる前で停車。
仮面の人物が降りた際、もう一人乗っていたと気付いた。
小柄な為走行中は見えなかったが、ツインテールの少女である。
死体を目撃しあからさまに顔を歪めており、当然の反応と言えるだろう。
「あれって…!」
「な、おいまだ行くな…!」
「心配すんな。あっちのライダーはともかく、もう一人のガキは問題ねぇ」
飛び出す可奈美に焦るも、アンクからは冷静な声が飛ぶ。
直接の面識はない、しかし宿主の記憶の中で見た顔。
時折見せるやる気のなさ気な顔や、身体の一部をちょくちょくいじられ怒らせる相手。
ただ殺し合いに乗る性根の持ち主では無い。
見れば可奈美の姿を向こうも捉え、驚きがこちらにも伝わって来る。
「薫ちゃーんっ!」
「おまっ、か、可奈美!?」
手を振って駆け寄る相手は見間違える筈も無い、刀使の仲間であり友の一人。
隠世に行ったまま帰って来なかった二人の片割れ。
信じられないものを見たように、薫は目をパチクリさせるばかり。
名簿を見た時から姫和共々参加しているとは知っていた。
だけどこんなに早く、しかもあっさり再会が叶うとは完全に予想外。
しかも偶然見知った顔を見付けたような気安さで駆けて来るものだから、段々と眉間に皺が寄り出す。
こっちは帰って来れなかったと聞かされた時、御刀を放り投げるくらいショックだったというのに。
「……ふんっ」
「あたっ!?」
能天気なに近付いて来た所へ、不機嫌なまま頭突きを繰り出す。
頭部への鈍い痛みに思わず呻き、「いたた…」と擦るもお構いなしだ。
散々心配させておいたのだからこれくらい安いものだろう。
もう二発くらいどすどすと頭突きを食らわせてやる。
「いたっ!?薫ちゃんストップストップ!」
「るっせー、お前ならこんぐらい平気だろ。金剛身使ったみたいな腹しやがって」
「うええ!?わ、私のお腹そんなに硬いの!?」
信じられないとでも言いた気に腹部を擦る様子は、記憶にある可奈美と全く同じ。
殺し合いという最悪の状況なのは気に食わないけど、それでもまた可奈美に会えたのは疑いようのない事実。
悪趣味な幻の類で無い、れっきとした本物だと分かったら不機嫌さも薄れ出す。
ぽすりと、間の抜けた音の頭突きと同時に鼻の奥がツンとしてきた。
こういうのは自分でも柄じゃないし、何より人殺しになった身で会って良いのか悩んでいたけど。
本人を見たら感情が溢れるのを我慢できない。
「大丈夫なら…もっと早く帰って来いよバカ……」
「……うん、ごめんね。あとただいま!」
俯き鼻声になっている薫に、おずおずと手を伸ばす。
言動から彼女も姫和と同じく、呼ばれた時間が違うと察した。
自分達が隠世から帰って来る前に、殺し合いに巻き込まれたのだろう。
一々指摘するのは無粋であり、何より自身の選択に後悔が無くとも友を悲しませたのに変わりは無い。
頭を撫でてやると僅かに震えられたが、拒絶はせずに受け入れた。
「ガキ扱いすんなっての…」
「本当は嫌じゃないくせにー」
「うるせーバーカ……このモヤモヤした分は、もう一人のペッタン女にぶつけてやる」
それが誰を指しているのかすぐに分かり、困ったように目を泳がせる。
自分が会った方の姫和の現状も説明せねばなるまい。
時間軸が違うが、彼女だって自分達の知る姫和なのだから。
可奈美の様子が変わったのを感じ取ったのか、訝し気に顔を上げた。
薫の目にまたもや見覚えのある顔が映り込んだのは、その時である。
「…って、いるじゃねえか!」
見知らぬ茶髪の青年と並んでやって来るのは、紛れも無い十条姫和だ。
着ているのは平城学館の制服ではないし、髪も珍しく編んでいる。
おおよそ姫和らしくないファッションであるも、間違いなく本人。
可奈美とは早々に会えていたのか、この分では舞衣と沙耶香とも案外早く合流が叶うのでは。
少々楽観的に考えつつも、可奈美同様心配させた友へ声を掛ける。
「出やがったなエターナル胸ぺったん女。その恰好どうしたんだよ?帰って来る前にイメチェンでもしたのか?」
「チッ、こいつにも説明がいるか…おい可奈美、お前の方から言っとけ。それと、そっちのライダーも話聞かせてもらうぞ」
面倒とばかりに舌打ちを零した挙句、飛び出したのは粗暴な男口調の数々。
幾ら何でもキャラが変わり過ぎており、あんぐりと口を開ける。
隠世に長くいると人格にも変化が起きてしまうのか。
その割に可奈美は至って前と変わらないが。
「……ひよよんの奴どうしちまったんだ?胸の成長性が絶望的な余りグレたのか?不良になっても育たないもんは育たないだろ…」
「それ、姫和ちゃんが起きても言わないであげてね。色々複雑なんだけど実は…」
軽く引いてる薫を宥めながら、姫和に起こった経緯を話す。
刀使達を横目にアンクもまたリュージと共に、もう一人へと対応。
薫はともかく、こっちは明確な味方かどうかはまだ不明。
何よりも、聞き覚えのあり過ぎる声を発したのはどういうことかをハッキリしなくては。
「薫の友人の同行者なら、こちらと敵対する意思は無いと見て良いのかな?」
「そいつはお前次第だ。変身しても声は誤魔化せねぇ。何でお前はルルーシュと同じ声をしてやがんだ?」
最初の場で、そしてアンクはテレビに映った演説で二度ルルーシュの声を聞いている。
ライダーの四文字を貼り付けた男は顔こそ見えないが、声はルルーシュと全く同じ。
一体全体どういうことなのかと説明を求める。
無論、嘘は許さないと鋭い瞳で訴えて。
「お、おい待てって!こいつはルルーシュじゃねぇ!」
「落ち着け薫。こうなる事態は私も予測していた、今更焦らなくても問題無い」
剣呑な空気を察したのだろう、弁明しようとする薫を制する。
ルルーシュと間違われるのは既に分かり切っていた故、別段動揺もない。
下手に言い訳を重ねるよりも、事実を口にした方がこの場合は正解。
ベルトを操作し偽りの魔王の鎧を脱ぐ。
現れたのはこの場の全員が知っている悪逆皇帝の顔、但し全くの別人と知るのは薫だけだ。
「まずは自己紹介させてくれ。私はロロ・ヴィ・ブリタニア、ルルーシュとは双子の兄弟…と、少し前まではそう思わされていたよ」
実の妹のナナリーですら、ルルーシュ本人の声と思ったくらいだ。
当然顔もルルーシュと瓜二つ、だが名乗ったのは全く異なる名前。
ブリタニア姓に強く反応する者はおらず、代わりにアンクが険しい表情を崩さずに問い質す。
「含みのある言い方だが、正確には双子じゃないって事か」
「まぁ、余り大っぴらに話したい内容でもないが。母の腹から産み落とされたのではなく、人工的に造られたルルーシュの弟。それが私だ」
「放送で自信満々に恐れよだの言ってた奴とは別人か?」
「その時間私はテレビ局から離れた場所にいた。証人となるのは薫と、どこぞの下賤な剣士のみだが」
チラと薫を見ればその通りだと言うように頷いている。
可奈美と目を合わせたリュージも小さく頷き、嘘は言ってないと合図。
名前も経歴も、シギルの判断は両方嘘では無いということか。
「…ま、わざわざテメェの城を抜け出して熱心に勧誘するタイプでもないか」
テレビ局で待つと言っておきながら、こうも早くに自ら動くのは流石に不自然だ。
ここにいるのはルルーシュとは別人、そう考えて問題無いだろう。
中々に複雑な境遇の持ち主らしいがともかく、敵対の意思が無いなら構わない。
「薫ちゃんその服の血って怪我…だったらこんな風に話せてないよね」
「あぁ、これ、な……」
当然の指摘に声が硬くなるのが自分でも分かった。
見知った顔が返り血で汚れていたら、気にならない訳が無い。
可奈美の同行者達も口に出さないだけで、事情の説明を求めているだろう。
その点も含め書店の奥に戻ってこの二人からも話を引き出す。
といきたい所だが予定通りにはいかなかった。
「話の続きは後回しだな。呼んでもいない連中が来やがった」
リュージの言う通り、ゾロゾロと現れる影が全員に見えた。
二足歩行ではあるも人の姿からはかけ離れた異形達。
黄金の胴体とカマキリの鋭利な腕を持つ者。
女性を思わせる口元と体付きを持つが、同様に昆虫の特徴が混ざった者。
緑の瞳をあっちこっちにせわしなく向け、6枚の羽根をダランと垂らした者。
上からマンティスマルガム、女王蜂のイリアン、トンボアマゾン。
それぞれ異なる世界で、仮面ライダーやスーパー戦隊と戦った怪人である。
レジスターを持たないことからNPCだとは一目で分かった。
「アイツらは……」
姫和と共有した記憶が正しければ、彼女の腕を落とした男が引き連れていた怪人と同じ。
まさか戻って来たのかと焦り周囲を見回すが、件の男はどこにもいない。
偶々同種のNPCが現われた、或いは男が配下に別行動を取らせ参加者を狩るよう命じたか。
どっちにしろあの男が万が一戻って来る前に片を付けねば。
見付かってしまった以上は、倒して切り抜けるしかあるまい。
既に刀使の二人は得物を構えており、リュージも引き金を引く準備は万端。
彼らに倣ってロロも再度変身を行う。
ギアス抜きで切り抜けられるならそれに越したことはない。
「変身」
『RIDER TIME』
『KAMEN RIDER ZI-O!』
腕時計モチーフの装甲と、特徴的な四文字を貼り付けた仮面。
仮面ライダージオウへの変身に、リュージはつい呆れ顔を作る。
「仮面なんたらってのは毎回こんなうるせぇのか?」
「音楽は気にするな。今は便利な装甲服とでも思っときゃ良い」
仮にオーズの変身を見たらどう反応するのか。
どうでもいいことを一瞬浮かべ、アンクも自らの姿を変える。
獲物を捉えて離さない鷹の頭部に、孔雀のような派手な色彩の胴体、更にはコンドルの爪を生やした脚部。
三種類の鳥の特徴を持ち合わせた赤い怪人。
グリードとしてのアンク本来の姿だ。
「ひよよんの奴本当に大丈夫なのかよ?元に戻ってもあのまま、とかじゃねぇだろうな?」
「アンクさんが離れれば元の姫和ちゃんに戻るみたい。嘘は言ってない…と思う」
リュージが何も言わなかったのでアンクの言葉に嘘はないと知ってるが、実際に姫和の体で人外に変身すると流石に驚きはする。
いきなり危険な輩に腕を斬られ、今は荒魂とは別の存在が憑依し、当の本人は重傷で意識が無い。
自分が言えたものではないが巻き込まれて早々、とんでもない目に遭ったらしい。
姫和に関する話は他にもあるようだったが、詳しく聞くのは邪魔な連中を蹴散らした後。
同じく、犯した罪を可奈美に告げねばならない時も来る。
気は重いが誤魔化す真似はしたくない、芳佳の件は必ず伝えなければ。
お喋りは終わりだ。
異形達の絶叫に似た声を合図に、狩りが始まる。
◆
得物は刀剣、なれど刀使としての戦法は発揮不可能。
武器の質が高くても、御刀でなければ写シを始め多くの技は使えない。
なれば頼れるは可奈美自身の腕と、この地で得た呼吸法。
鬼滅を為さんとする剣士の技で以て、此度の敵を屠るまで。
振るう得物は帝都のアサシン、岡田以蔵の愛刀。
守る剣の使い手が、よりにもよって人斬りの武器を支給されるとは皮肉だろう。
とはいえ千鳥が手元に無い可奈美にとっては、無くてはならない代わりの刀。
写シ抜きの高い運動能力、嘗ての糸見沙耶香やこの地での五大院相手にやった無刀取りの技術があると言っても。
やはり剣が無ければできることは大きく減る。
人を殺す事に迷いは多い、しかし人ならざる者の脅威を退けるとあらば話は別。
姫和と二人で逃避行をしていた時でさえ、荒魂を放置しなかった少女だ。
鉄器がマルガムという錬金術の産物に変わったとて、守りたい想いに揺らぎは無し。
水の呼吸の型と同じく覚えた全集中の呼吸を発動、身体能力を底上げし疾走。
抜き放った一刀の元に斬り伏せ、早々に決着を付ける。
早く終わらせられればその分、他の者の加勢へ向かえるのだから。
だが現実の光景となるかは別であり、可奈美の剣は敵の刃に防がれた。
ノコギリ状の刃が付いた緑の両腕こそ、マンティスマルガムの武器。
急所への一撃は届かず、ならば押し切るまでと両腕に体重を掛ける。
(…っ!重い…!)
しかし敵は微塵も微動だにせず、僅かに体を揺らせもしない。
そればかりか反対に押し返されて、腕へ負担が一気に襲う。
このままでは刀諸共真っ二つにされ兼ねない。
「オレを忘れんな虫野郎!」
仲間の危機に駆け付けるは可奈美と同じ刀使。
小柄な体躯と不釣り合いな大剣を振り被って、薫が距離を詰める。
写シは勿論、呼吸法も使えずそもそも存在自体知らない為身体強化は無く。
鍛え上げた素の能力を最大に発揮し駆け、マンティスマルガムへと振り下ろす。
大太刀の祢々切丸を自身の御刀にしているだけあって、膂力は同年代の刀使と比べても非常に高い。
叩っ斬るべく迫る刃へマンティスマルガムの意識も移る。
片腕で可奈美を押し飛ばし、次いで両腕を大剣に叩き付けた。
甲高い衝突音が響き、両者の得物が互いを破壊せんと鎬を削る。
腕に力を籠め押し切らんとするも、敵もまたNPCながら馬鹿に出来ない力強さだ。
錬金術師グリオンが冥黒の力を使い生み出したのが、このマンティスマルガム。
冥黒の三姉妹が一人、クロトーがケミーを取り込んだ時以上の力を発揮する強力な個体である。
写シを使った上で八幡力による強化を行ったならまだしも、素の薫では防御を崩せない。
体力をじわじわ削られ、逆に大剣をすり抜け一撃を食らう羽目になってもおかしくはなかった。
――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
尤も、そうさせない為にもう一人がいるのだが。
口での合図はいらない、背後からの気配で即座に意図を察する。
薫が真横へ跳ぶや否やマンティスマルガムの目の前には可奈美の姿が。
疾走と同時に刀を水平に振る、水の呼吸の基本となる技を放つ。
複雑な動作を必要としない分、安定した威力と速度を誇る。
これをマンティスマルガム、両腕の交差で防ぐも先の一撃よりも重く速い。
防御を取ったまま足底がアスファルトから離れ、後方へと引っ張られるように飛ぶ。
遠く吹き飛ぶのを悠長に見送らず、次の型へと即座に移行。
――水の呼吸 弐ノ型 横水車
疾走の勢いを殺さず水平方向に回転。
本来は垂直に回転するがこういった使い方もあり、今はこちらを選択。
威力のみならず攻撃範囲も壱の型より上。
吹き飛ぶマンティスマルガムへすぐに追い付き、刃の範囲内へと封じ込めた。
刃が当たった箇所は両腕、胴体他急所へのダメージにはならず。
しかしこれで良い、回転斬りを叩き付けられては平然としてられなかったのだろう。
両腕の防御は崩れて無防備な体を晒した。
試合ならばともかく荒魂退治と大体同じ状況で、再度構え直すまでの猶予を与える気は無い。
踏み込み決着の為の剣を振るった。
(っ!駄目だ…!)
が、マンティスマルガムの両腕が突如発光し急遽行動を変える。
攻撃では無く回避へ、防ぎ切れるか不明な以上は安易に受けの姿勢を取れない。
判断は間違っておらず、可奈美目掛けて三重の斬撃が飛来。
思った以上に範囲の広い攻撃だ、飛び退いた先で地面を転がりどうにか躱す。
意識が片方の刀使へ移ったなら、もう片方が叩くチャンスだ。
死角に入り込んだ薫が跳躍、マンティスマルガムの頭上を取る。
両腕の強度は高いようだが流石に頭部は幾分脆い筈。
可奈美へ続けて斬撃を放つより先に仕留めようとし、だが敵は弾かれたようにこちらを見上げた。
「クソッ!勘のいい奴…!」
毒づくも既に大剣を振り下ろした後。
今更中断は出来ず、マンティスマルガムが振り回す腕とぶつかり合う。
得物が弾かれた際の衝撃を利用し一旦距離を取る。
離れた相手には斬撃を飛ばそうとするも、その前に動くのは可奈美だ。
刀を使う者として距離を詰めるのは慣れた動作。
迅移が使えない分は呼吸により走力を上げ、刀の届く位置へと移動。
振り被った気配で気付いたのか、マンティスマルガムも腕を駆使し己へ刃を届かせない。
刀と両腕が幾度も衝突する中で、敵の力を見極める。
人でない故か腕力は呼吸を使った自分や、五大院よりも高い。
打ち合いを続けても腕に負担を強いり、自分で不利な状況を作るだけ。
よって得物をぶつけるのではなく回避を取り、合間を縫って斬り付ける。
と言っても肉体の強度も高い以上、水の呼吸の型をしっかり当てねば倒せない。
参加者相手で無い分、一切容赦なく斬れるのはやりやすい。
但しマンティスマルガムも簡単に自身の命をくれてやりはしない。
仮面ライダーマジェードを相手取れるだけの戦闘力を持つマルガムだ。
主催者の手で再現されたNPCだろうと、強さ自体は一切低下していない。
右腕を躱した可奈美に蹴りが放たれ、これを後方に跳んでやり過ごす。
再度接近に動く気なのは明白、だから近付けないようにするまでのこと。
両腕に掻き集めたエネルギー量は、クロトーが姿を変えた時の数倍。
暗黒の波動の過剰摂取により基礎能力のみならず、斬撃を飛ばす技も強化済み。
わざわざ近寄らずとも離れた位置から腕を振るうだけでいい。
獲物二人を切り刻む刃が次から次へと放たれる。
周囲の建造物や電柱が呆気なく破壊され、隠れ潜むのは無味と伝える。
言われなくてもコソコソ隠れるつもりはない、互いに身を捩って回避に動く。
「セコくてめんどい攻撃すんなよ…!」
「でも、倒せない相手じゃない…!」
大剣を盾に使う薫と、駆け回って躱す可奈美。
人でない者の相手はこれが初めてでは無いが、御刀無しの戦闘は滅多に経験するものでない。
しかし薫の言うように面倒な攻撃をするだけで、決して倒せない敵に非ず。
斬撃の範囲と数は厄介、しかし他に目立って脅威と思える点は無い。
となればそろそろ避けているだけが終わりにし、反撃に移る頃合いだ。
両の瞳に敵をしかと捉え大きく踏み込み、
握り締めた刀が絡め取られた。
○
拳と拳、蹴りと蹴りの衝突はこれで十数度目。
互いに何発放ったかを一々数えてはいない。
片や意味の無い事柄へ思考を割く程呑気で無く、片や自我があるかも怪しいNPC。
グリードとアマゾン、彼らの拳を常人が受け止めようものなら二度とマトモに物を掴めはしない。
共に人を超えた者同士、打撃の威力も肉体の強度も既存の生物を超える。
攻撃を当てた回数ではアンクが勝るも、トンボアマゾンが受けた傷は微々たるもの。
只の人間なら数発でも死は免れない。
だがトンボアマゾンは未だ健在、タフという言葉が見る者の頭に浮かぶだろう。
「チッ…」
舌打ち一つを零す間にも、敵は何度目になるかの蹴りを放つ。
鋭く、それでいて重い一撃だ。
肘を叩き付け防ぎ、反対にアンクも拳を叩き付ける。
狙うは顔面、アマゾンだろうと脆い箇所は一部の個体を除き人間と変わらない。
命中し怯めば一気に畳みかけるチャンス、但し当たらなければ代わり映えのしない攻防の繰り返し。
頭部を下げ回避し、屈んだ体勢のまま拳を突き出す。
当たってやらないのはアンクとて同じ、腕を振るって払い落とす。
(分かっちゃいたが前より力が落ちてやがるな…)
姫和に憑依した時から薄々察してはいたが、トンボアマゾンを相手にし確信を抱く。
今のアンクのコアとなるのは割れたタカメダルと、財団X製のメダルの計二枚。
元々会場に解き放たれていたNPCはそれなりに力のある個体はいても、倒すのが非常に困難な程の強さでは無い。
放送後に会場へ送られたドゴルドならともかく、基本的には戦闘が不得意な参加者でも支給品や工夫次第で撃破可能。
アンクもその例外では無く本人が思ったように、嘗てのコアメダルを巡った戦いの時よりも弱体化している。
少なくとも、恐竜グリードと化した火野映司と戦った時程の力は現状発揮不可能だ。
コアメダルも二枚のみであり、しかも片方は割れて力の半減は免れない。
事ある毎にメダルメダルと繰り返す同胞に嫌気が差したというに、今はメダルが不足するせいで頭を痛める羽目になるとは。
もう一度舌打ちを零しトンボアマゾンの蹴りを躱す。
だが自分の力が足りない力を補う方法はある。
前の戦いに時と同じ、人間の協力者を使って切り抜けるのみ。
タンタンタンという小気味良い音を立てて銃弾が発射。
離れた位置からトンボアマゾンを狙い撃つのはリュージ、手には先程回収したばかりのアサルトライフル。
アリウススクワッドのリーダー、錠前サオリが効率重視でカスタマイズを施した愛銃だ。
元はセッコに支給された銃も、スタンド使いである為か使わず仕舞われたままとなり、こうしてリュージの手に渡った。
銃火器の扱いにはダーウィンズゲームで慣れており、自動小銃でも問題無い。
前衛として戦うアンクがいる以上、こっちは後衛で援護射撃に徹せる。
幸い予備の弾も大量に手に入り、すぐに弾切れを起こす事態にはまずならない。
とはいえ無駄に撃つつもりはなく、トンボアマゾンを正確に狙って引き金を引く。
熱を帯びた銃口が弾丸を吐き出し標的の肉を食い千切る。
「ウロチョロしやがって…」
悪態を口にしたように成果は良いとは言えない。
弾は腕を貫き、流れ落ちたドス黒い体液が地面を汚す。
命中したのはその一発だけだ、残りは建造物の壁に傷を付けて終わった。
人であれば銃弾一発当たれば十分コンディションの低下に繋がる。
痛みは余裕を、流れる血は体力を削りやがては死へとご招待。
しかしアマゾンであればダメージにはなっても致命傷にはならず、まして怯ませる事も出来やしない。
リュージの射撃スキルが低いのではなく、トンボアマゾンの俊敏性が高いのが原因だ。
元々の身体能力に加え、数時間前にエンシンとついでにセッコを捕食。
強化に磨きを掛け、おまけに前原敦を食らって高めた戦闘能力まで再現している。
銃で撃たれ標的をアンクからリュージへ変更。
元々アマゾンは生まれつき人のタンパク質を強く求める生物。
見るからに異形のアンクよりは、人間のリュージの方がご馳走に見えても不思議は無い。
顎をカチカチと慣らし、涎を垂らしながら襲い掛かった。
生憎朝食として身を差し出す気は微塵も無い、ヒラリと躱し食われるのを防ぐ。
「悪食過ぎんだろ、腹壊しても知らねぇぞ」
丁度リュージの背後にあった電柱へトンボアマゾンは激突。
そのまま顔でも潰れてくたばれば御の字だが、そんな間の抜けた最期にはならない。
電柱を噛み砕き、パラパラと破片が零れ落ちる。
鉄骨すらも煎餅のように噛み砕く強靭な顎もトンボアマゾンの武器だ、人相手ならどうなるか言うまで無い。
栄養分の無い無機物を齧ったとて腹は膨れない、狙うは顔を引き攣らせたリュージだ。
簡単には諦めてくれない獣から距離を取りつつトリガーを引く、動きながらでも銃口は正確に敵を捉える。
これをトンボアマゾン、ジグザグに駆けて躱す。
時折四肢や脇腹を掠めるも動きを止めるだけの効果は無く、徐々に接近を許してしまう。
「そいつはまだアイスを持ってんだ。勝手に殺そうとしてんじゃねぇ」
「助けた理由アイスかよ…」
「支給品の総取りも許した覚えはねぇぞ。後で俺にも中身見せろ」
随分とまぁ上から目線だと呆れるも、死なせるつもりが無いのは嘘じゃない。
横合いから放った蹴りがトンボアマゾンの腹部を叩き、強制的に距離を取らされた。
再び迫るのを待って殴り合いを続けるより、この位置からでも倒す方法はある。
片手にコアメダルのエネルギーを収束、火炎を球状に変化し発射。
この力も映司と戦った時程の威力は出せないが、だからといって致命的に弱い程でも無い。
虫一匹を焼き潰すくらい訳ない、ウヴァのようにしぶとくない限りはジ・エンドだ。
なれどアマゾンの生を欲する衝動はNPCになっても健在なのか、敏捷性を活かして躱す。
火球の餌食となったのは背後の建造物。
姫和達を返り討ちにした男の刻んだ破壊痕へ追い打ちを掛ける。
狙いは外れたがアンクに悔しさは無い。
避ける所まで織り込み済だ、もう一人も指を咥え見てるだけでなく排除の一手を差した。
アサルトライフルと入れ替わりに取り出すは、元々自身に支給された武器。
外しはしない、アマゾンの駆除を完了すべく引き金に指を掛け、
その動きを強制的に止められた。
○
残弾に気を配る者がいる一方で、弾切れなど知ったことでは無いとばかりに引き金を引く者もいる。
ロロが変身したジオウも該当者の一人。
右手の得物はジカンギレード、左手の得物はDVディフェンダー。
内部に生成装置でも搭載されているのか、アナザーライダーやロンダーズファミリーとの戦闘で弾切れを起こした事象は無く。
使い手が変わっても機能面での不調は見られず、エネルギー弾とレーザービームを放ち続ける。
ジオウに搭載された機能が位置の補足と反動の緩和を行い、射撃能力を高める。
銃を使った経験は有れど、百発百中の腕前を誇る訳ではない。
まして二丁拳銃など殺し合いに巻き込まれてから初めてやった。
単に手数が増えて強力とはならない、標的を見極めつつどちらの銃で撃つかをすぐに決める必要がある。
創作に登場するガンマンのような立ち回りは、本当なら一生縁の無いもの。
「実際に出来たからと言って、都合良く的にはなってくれないか」
独り言ちた内容は銃声に消え、誰の耳にも届かず消えて去る。
別に聞かせたくて言ったのではない為、意識は即座に標的の排除へと戻った。
人間の女性と蜂、両方の特徴を持ったNPC。
女王蜂のイリアンは時に遮蔽物に身を隠し、時には舞うような動作で銃撃を凌いでいる。
但し全てを防ぐ事は叶っていないようで、時折被弾しては火花が散るのが見えた。
であるならこのまま撃ち続けていれば、いずれ向こうの体力に限界が訪れるだろう。
だがイリアンとてNPCだが、抵抗をしないとはプログラムされていない。
オリジナルはゴセイジャーと戦った実力を持つブスワ星人。
参加者を襲うだけの模造品であろうと、簡単に仕留められるとは限らなかった。
逃げ続けるだけが能ではない、左腕の鞭を振るって標的に巻き付ける。
狙われたのはジオウに非ず、エリアに設置された自動販売機。
草でも毟るようにアスファルトから引き剥がし、ジオウ目掛けて投擲。
命中した所で即死は免れるだろうが、イリアンの腕力で投げられたのを食らえばダメージは避けられない。
よって一度銃撃を中断して回避、背後で窓ガラスとその他諸々が砕ける音は無視。
鬱陶しいエネルギー弾の嵐が一時的にでも止んだなら、今度はイリアンが攻撃に移る番だ。
右腕から噴射した青い液体がジオウへと飛来。
腕を向けられた時点で既に地面を転がり、自販機同様直撃を裂ける。
壁に付着した液体は泡が弾け、聞いているだけで不安になる音を発した。
溶解液か、はたまた良からぬ効果を齎す毒の類か。
いずれにしても当たって良い事にならないのは確実だ、ジオウに変身しているからと言って油断は出来ない。
ロロが危機感を抱いたのは間違った判断では無い。
イリアンが放ったのは生物を麻痺させる強力な毒液。
正史においてイリアンと戦ったゴセイジャーの男性陣は、ゴセイクロス越しにも関わらず毒液を浴び戦闘不能に追い込まれた。
この力を使って男性を捕らえ家具に作り替えており、NPCのイリアンも同様の趣味を持っているかはともかく。
鋼鉄の200倍の強度を誇るジオウの装甲とて、ゴセイジャーの例があるだけに完全に防げるとは限らない
命中は避けるべきとの判断が大正解だとは知らず、しかし自身の判断を信じて戦闘を続ける。
再度発射された毒液を躱し、ジオウも銃撃を再開。
対するイリアンも毒液噴射のみに頼らず、もう一つの武器で迎撃。
鞭を振り回し、時にはまだ無事な自販機や放置された自転車を引き寄せ投擲。
互いに移動しながらの攻防は目立ったダメージを与えず、埒が明かなかった。
戦況を変えるべく別の手に出たのはジオウ。
遮蔽物に隠れ、ドライバーからライドウォッチを外す。
イリアンの鞭捌きなら壁程度切り裂かれるだろうが、毒液を防ぐのには使える。
何より時間を掛ける気は無い、ライドウォッチを武器のスロットに填め込み、
突如動きを封じられた。
「なんだと…!?」
奇怪な現象に困惑する間も、敵は待ってくれない。
壁が破壊され、ダメ押しとばかりに鞭で拘束された。
だが急に動けなくなった原因はイリアンではなく、別の存在によるものだ。
顔を上げジオウが見たのは、オフィスビルのガラス窓から伸びた白い糸らしき物体。
それが自分と、辺りを見回せば他の面々の武器や体に絡み付いている。
一体何が起こったかを説明されずとも、全員の視線に釣られて原因が自ら姿を見せた。
糸が放たれた窓に水面のように揺らぎが生じ、新たな異形が現われる。
人型の上半身と、六本脚の下半身を持った怪物。
臀部と思われる箇所から糸が伸びており、市街地に集まった者達を捕らえたのはこれだろう。
怪物名はディスパイダー・リ・ボーン。
ミラーワールドに生息するモンスターが独自の進化を遂げた個体。
仮面ライダー龍騎の本来の変身者、城戸真司の手で倒されたこのモンスターもNPCに選ばれた。
一般人を捕食するのに使った糸の粘着性は強いが、ここに集まったのは戦う力を持った殺し合いのプレイヤー。
何らかの方法で拘束を脱するのはそこまで難しくない筈。
「可奈美!」
「っ!」
糸を断ち切ろうとするも、薫の声で咄嗟に手放し飛び退く。
僅かに遅れて立っていた場所が切り裂かれたが、これはマンティスマルガムの攻撃ではない。
灰色の肉体を持つ異形が背後から近づき、可奈美へ剣を振り下ろしたのだ。
四肢を覆う毛皮と昆虫のような肩部装甲を持つ、スカラベオルフェノクである。
スマートブレイン社の手駒だったがそれは元の世界での話、NPCの役目を果たすべく可奈美へ牙を剥く。
手放した刀に代わりリュックサックから日輪刀を取り出したいが、敵は待ってくれない。
「待ってろオレが…くっ!いい加減にしろよお前…!」
助けに向かおうとするのをマンティスマルガムが許さない。
斬撃の対処に動かざるを得ず、そうこうしてる間も可奈美はスカラベオルフェノクの剣を避けるので手一杯。
こうなれば他の者に救援を頼みたいがそれも上手くはいかない。
何せ他の面々も同じような状態なのだから。
「クッソ!離れねぇ…!」
片腕を武器共々絡め取られ、引き金を引くこともままならない。
何度引っ張ってもリュージの腕は拘束から脱せられなかった。
もう片方の腕は自由に動かせる、武器を使って糸をどうにかするなりしたいが阻む者がこちらにも出現。
緑の頭部と両腕を持ち、左右に出っ張った目をギョロリと動かす化物だ。
溶原性細胞の感染者が変異した個体、カマキリアマゾンはマンティスマルガム程の戦闘能力は持たない。
しかし人間にとって脅威なのに変わりはなく、両腕の鎌を振るえば人体など紙切れ同然。
スライスされた体はそのままカマキリアマゾンの食事になるだけ。
「いつまで邪魔しやがんだお前は!」
手を貸そうと動き掛けたアンクへ飛ぶ蹴りは、トンボアマゾンが放ったもの。
苛立ちを露わに叫んでも怯む様子は見せず、聞こえてるのかも怪しい。
奇声を放って飛び掛かるトンボアマゾンへ、邪魔だと言葉では無く拳で伝える。
力が落ちているとはいえ、NPC如きの好き勝手を許す自分自身にも腹が立つ。
(これはマズいか……)
薫達も手が離せない様子であり、救援は期待出来そうも無い。
かくいうロロ自身も拘束を解かなければ、今度こそ毒液の餌食となる。
こうなればいよいよギアスの仕様も考えねばならない。
叶うならば主催者を殺す時まで温存したかったが、そうなる前に死んでは元も子もないだろう。
後でC.C.細胞の抑制剤が見付かる事を祈るしかあるまい。
イレギュラーズのギアスユーザー達が血眼になって求めた薬を、今度は自分が欲する羽目になるとは。
長々と躊躇して、取り返しの付かない事態になるのだけは避けねば。
ジ・アイスを使いNPCを纏めて凍り付かせようとする。
「もう一回届いて!あたしの魔法!」
響く少女の声と共に、戦場が塗り替えられる。
自由を愛する魔法少女は、悪しき束縛を決して認めない。
絡め取っていた糸が消失し、三人共に元の動きを取り戻す。
突然拘束が切れたからか困惑した様子を見せるNPC達だが、戦場の変化はまだ続く。
『GUN』
幼い少女の声とは似ても似つかない、重低音の電子音声をロロの耳が拾う。
どこからか飛来した光弾がイリアンを狙い撃ち、出血代わりに火花が散った。
立ち上がって振り返ると、瞳に飛び込んだのは紫のマシンボディの戦士。
新手の敵でないことを願いつつ口を開く。
「救援には感謝するが、よもや君も羂索の飼い犬になった者ではあるまいな?」
「違う、俺は人を守る為にここに来た。お前の方こそ、何故ルルーシュと同じ声をしている?」
「それについては後で説明すると約束しよう。一先ずこの連中を片付けるのに、手を貸してもらいたい」
どうやら乱入者もルルーシュの放送を見た者であり、案の定疑わし気に尋ねられた。
世界が違うとはいえ、我が兄ながら面倒なことをしてくれる内心で苦笑い。
完全に納得はしていないがNPCを放置する気もないらしく、今は引き下がった。
ジオウと魔進チェイサー。
常磐ソウゴの王道においては矛を交えた両者が肩を並べる。
蜘蛛の糸が消え、地面に落ちた刀へと可奈美が駆け寄る。
当然スカラベオルフェノクが妨害に動くも、それを阻止すべく槍が突き出された。
足止めを食らった隙に再び刀を手にし、マンティスマルガムへと斬り掛かる。
今度は咄嗟の防御も間に合わずに刃が胴を走り、くぐもった悲鳴を上げ後退。
距離が離れたのを見計らってか、薫と手助けを行った少女が寄って来た。
「ありがとう助かったよ!ところで、どちら様?」
「どういたしまして!私はマジアマゼンタ、トレスマジアの魔法少女で…って、説明は後でいいか」
「魔法…お前も魔女…じゃないよな。下半身丸出しじゃねぇし」
「何の話!?ちゃんと履いてるよ!?」
芳佳の言う魔女(ウィッチ)と同じようなものかとも考えたが、彼女と違ってスカートは着用済み。
魔法は使うけど魔女とは無関係なのだろう。
唐突に下半身の露出で魔女かどうかを確かめられ、マジアマゼンタことはるかは案の定困惑。
下を履いてない云々で、以前ネロアリスのドールハウスに閉じ込められた時の事を思い出す。
色々と大変な目に遭った記憶が蘇り頬が赤く染まるも、頭をブンブンと振って気を取り直した。
「っていうかその怪我…待ってて、今治すから!」
「あー…いや大丈夫だ。その、オレの血じゃない、から」
赤く染まった制服に重傷と思ったのだろう、回復魔法を掛けようとするはるかを制する。
歯切れの悪さと曇った顔色に、複雑な事情があるとは流石に分かった。
それを詳しく説明している余裕はないが。
「薫ちゃん、マジアマゼンタ…ちゃん?あっちのカマキリみたいなNPCは私に任せて。多分いけると思う」
「お前がそう言うなら良いけどよ、無茶すんなよ」
「じゃあ私達は向こうの怪人だね。任せておいて!えっと…」
そういえばまだ名乗っていなかったと、それぞれ名前をはるかに教える。
もっと詳しい自己紹介は場を切り抜けてからだ。
「騒がしくし過ぎたな、どんどん集まって来やがる」
「ま、こっちを狙って来ないならまだ良いだろ」
糸が消えるや間髪入れずに銃弾を叩き込み、カマキリアマゾンを怯ませた。
ついでにトンボアマゾンの方にも撃って牽制、アンクと言葉を交わす。
銃声やら何やらを聞いた者が集まって来るのは、リュージとて予想の範疇。
今の所はこちらに協力する気らしく、完全に気は許せないが真意を見極めるのは後。
二体のアマゾンは未だに腹を空かせているのだから。
(にしてもまぁ、運営のクソっぷりはどこも同じか)
チラと視線を向けた先には二人の少女。
厳密に言うと片方は全身装甲姿なので声でしか判断できないが、もう一人は違う。
レインやスイよりも小柄な体躯で、どう見ても年齢が一桁台の小学生。
老若男女問わず参加させられるのは、殺し合いもダーウィンズゲームも同じ。
改めてロクなもんじゃあないと呟く。
「今のが千佳ちゃんの魔法…!蜘蛛の怪人さんの糸が全部消えちゃいました!?」
「うん…!マジアベーゼと、あの子があたしに託してくれたんだ……果穂ちゃん、あたし達も一緒に…!」
「勿論です!あたしと千佳ちゃん、ううん、ラブリーチカで頑張ります!」
マジアベーゼから渡された固有魔法、イノセンスの効果は健在。
凶悪な性能の闇檻ですら無効化したのだ、ミラーモンスターの拘束を打ち消すのは容易い。
二人共見ているだけでなく、ヒーローと魔女っ娘ラブリーチカとして既に戦う決意を固めてある。
果穂はビートアックスを千佳はこれまで使う機会の無かった杖を構えた。
ギターが掻き鳴らされ、響くハイスピードな音楽が戦闘再開の合図となる。
○
魔力で編んだ槍はマジアマゼンタにとって最も使い慣れた武器。
トレスマジアのメンバーとして経験を積み、手に馴染む得物があれば大抵の相手に遅れは取らない。
それは敵が人類の進化系、オルフェノクであっても例外ではない。
屈強な体躯とは裏腹の素早い動きでサーベルを繰り出されれば、槍を翳し防御。
自身の武器よりも細い刀身だが強度は高い、数度打ち合っても壊れる気配は無し。
サーベルを壊して戦力低下を狙うのは時間の無駄と早々に切り捨て、相手を直接叩く方へシフト。
オルフェノクはいずれも人間を遥かに超えた能力を有し、生身で太刀打ちできる相手では無い。
スマートブレイン製のベルト無しに戦うのは無謀であれど、立ち向かう者もまた常人以上の力の持ち主。
繰り出す突きを最小限の動きで躱し、時には槍で受け流し体勢を崩しにいく。
動作が大きい程次の動きに遅れが生じて、致命的な隙に繋がる。
命の危険以上に羞恥的な意味で気の抜けない、エノルミータとの戦闘経験。
加えてノワルという最上級の危険人物に遭遇した事が、マジアマゼンタの神経をより尖らせる。
「そこっ!」
首元へ一直線に突き進む剣を避け、反対に槍がスカラベオルフェノクの腹部へ命中。
敵は参加者では無くNPC、加減抜きで放つも敵が崩れ落ちる様子はない。
呻き声こそ上げたが致命傷には程遠い、目障りとばかりに剣を振るう。
身を捻って回避、次の剣が迫るより一手早く斬り付ける。
刃が走るは脇腹だ、人間であれば臓物がビチャビチャと音を立て垂れ落ちるのは確実。
しかし敵はオルフェノク、多少の火花は散ったが未だ倒れない。
合間を縫っての攻撃を続けすぐに分かったのは、敵の異様な硬さ。
スカラベオルフェノクの全身を覆う皮膚は鎧に似た形状をしており、決して見せかけでは無い。
オリジナルの個体同様の高い耐久性を有している為、撃破には手を焼いていた。
速さと手数には優れるも、僅かに威力が足りない。
「ラブリ〜〜〜☆ルカニ!」
ならば攻撃が確実に通じるようにすればいい。
杖を掲げポーズと共に千佳が魔法の言葉を唱えた途端、スカラベオルフェノクに異変が生じる。
本人がそれを正しく認識する前に、マジアマゼンタが攻撃を再開。
切っ先は胸部へ吸い込まれ、これまで以上の火花を散らし敵を大きく後退させた。
「ありがとうラブリーチカ!これならいけるよ!」
急にダメージが通るようになったのは、千佳が唱えた呪文が理由と直ぐに分かった。
実際間違っていない。
千佳に支給されたのはまどうしのつえと言い、大魔王ゾーマを倒した勇者一行が使った武器の一つ。
本来魔法使いや賢者ではない千佳では呪文を放つのは不可能だが、殺し合いでは主催者の手で細工が施されている。
日輪刀や岡田以蔵の刀、ソーディアンのディムロスにソードスキルが搭載してあるのと同じだ。
所持しているだけで参加者は複数の呪文が唱えられるのである。
スカラベオルフェノクに向けて放ったのはルカニ、対象の防御力を下げる呪文。
強固な皮膚も耐久性を削ぎ落とされれば無意味だ。
「まだまだいくよ!ラブリ〜〜☆ピオリム!」
続けて唱える呪文、ピオリムの効果でマジアマゼンタ達のすばやさが上昇。
ビートフォームのナーゴの演奏効果と合わせて、動きのキレが格段に増す。
「こんだけ速く動けんなら…!」
「うん!このまま一気にやっつけられる!」
ピオリムのナーゴの演奏も、対象となるのは一人だけではない。
味方全員に効果が及び、マジアマゼンタだけでなく薫の敏捷性も上がった。
これなら写シを使った時と謙遜ない速さで剣を振るえる。
大剣と槍、どちらも少女の細腕で振り回すのは困難な得物。
なのにどうだ、羽を持っているような軽やかさで敵を苛烈に攻め立てる。
対するスカラベオルフェノクも迎撃に移る。
だが速さで圧倒的に後れを取り、頼りの耐久性も見る影が無い。
何度剣を突き刺した所で掠りもせず、反対に少女達の斬撃が次から次へと命中。
体力を根こそぎ削り取られ、破れかぶれで剣を振るうも大剣が腹部を撫でるのが速い。
刀身が駆けると同時に爆発が発生、訳も分からぬ内に吹き飛ばされた。
同じ箇所を斬り続け、薫の持つ防衛隊炎刃型大剣の効果が発動されたのだ。
立ち上がってもう一度剣を振り回すのを、マジアマゼンタは許さない。
大きく踏み込み槍で胸部を一突き。
渾身の一撃を受け、スカラベオルフェノクにも限界が訪れる。
全身各所を青く燃え上がらせ、後には灰の山だけが残った。
仲間の退場に何かを思う素振りも見せず、マンティスマルガムは斬撃を放つ。
一振りで三重の刃が飛来し、しかも一度で終わらず次から次へと襲うのだから相対者には悪夢としか映らないだろう。
生憎可奈美は真剣な顔付きなれど焦りは微塵も浮かべず、己が身に一撃だろうと当てさせない。
斬撃の群れの隙間を泳ぎながら標的との距離を着実に縮める。
(数は多いけど、でも見切るのは難しくない…!)
薫に言ったのは強がりに非ず、実際に可奈美は既にマンティスマルガムの斬撃を見切っていた。
膂力は高く刃を飛ばす力も厄介だが、放つのは参加者を襲うようプログラムされたNPC。
これが冥黒の三姉妹の一人クロトーであれば、鍛えた格闘術やその場その場での臨機応変な対応も行っただろう。
だが殺し合いでも元の世界でも、自我が無く暴れ回るだけでは攻撃もパターン化を免れない。
力任せな動きしか出来ないのなら、初撃で可奈美を倒せなかった以上末路は決まったも同然。
――水の呼吸 弐ノ型 水車
アイドル達の支援を受け走力を劇的に強化。
刃の間合いへ近付き放つは悪鬼滅殺の刃、全身を垂直に回転しての斬り上げ。
今度は防御も回避も間に合わせない、股から頭頂部までを刀が駆け上がった。
これまでで一番のダメージだが暗黒の波動を過剰摂取した影響か、まだ倒れる気配は無い。
――水の呼吸 捌ノ型 滝壷
尤もトドメの一手までを既に構築済み。
岩山を叩く水流の如き勢いで、頭部目掛けての振り下ろし。
フラついたままのマンティスマルガムに避けるだけの時間は無く、渾身の一撃を身に受けた。
脳漿代わりの火花が飛び散り、急所を叩っ斬られれば最早ここまで。
仰向けに倒れ、マジェードに撃破された時同様に爆散という最期を迎える。
(成程、こいつはあいつらの仕業か)
自身に起きた変化に最初こそ戸惑うも、冷静に受け入れるまでに時間は掛からない。
元々運動能力は高い方だが、今は自分の体なのに別人のような軽さだ。
リュージがチラと見た先にはナーゴと千佳。
演奏と、何とも気の抜ける呪文で味方の強化をするシギル(厳密には違うが)といった所か。
大したお姫様方だと独り言ち、振り下ろされた鎌をヒラリと躱す。
上がったのは素早さだけでなく、射撃の腕も同様だ。
ディケイドの銃撃へ対処してみせたチェイスのように、リュージも精密性と集中力が底上げされている。
カマキリアマゾンの鎌は当たらず、反対に撃った銃弾は全て命中。
そこら中に血が飛び散り、カマキリアマゾンは体力の低下と共に動きも鈍くなり出す。
カナメやシュカがこの場にいたら、それはもう強化された力でいつも以上に暴れ回ったことだろう。
何て呑気な想像は一瞬に留め、アサルトライフルを一旦下げる。
相手に情けを掛けたのではない、より威力の高い一撃を食らわす為だ。
先程は糸に捕えられたが今度は邪魔する者もいない。
取り出し照準を合わせ、カマキリアマゾンの腹部へと放たれる魔弾。
突き刺さったソレに短く悲鳴を上げ、忌々しそうに叩き落とそうと腕を伸ばし、
直後、爆発が巻き起こり上半身が千切れ飛んだ。
リュージに支給されたこの武器の名はボルトスロワー。
銃弾の代わりに矢を放つ他、時間差で爆発するマイン(鉄矢)を撃てる。
大統領令嬢救出の任を負ったエージェントを、度々助けた威力はアマゾン相手にも有効。
僅かに蠢く頭部へ数発銃弾を叩き込み、今度こそ完全に沈黙。
マガジンを替えつつもう一体のアマゾンへと、ボルトスロワーを構える。
「アンク!右にソイツを蹴り飛ばせ!」
「命令すんな!」
反抗的な言葉を返されるも意図は察したのだろう。
敏捷性の上がったアンクの蹴りはトンボアマゾンにも避けられず、胴体を足底が叩く。
蹴り飛ばされアスファルトへ身を投げる羽目になるも、これが終わりの始まりだ。
倒れた箇所には既にリュージがボルトマインを設置済み、爆発で更に吹き飛ばされる。
再度地面に叩き付けるのを待たずに、激突地点で待ち構えるのは赤いグリード。
「いい加減寝てろ!」
手刀が心臓を貫き、カマキリアマゾンと同じ場所へと旅立った。
引き抜いた手にはドス黒い体液がべっとり付着しており、舌打ちと共に振るい落とす。
グリードやヤミーなら肉体を構成するセルメダルを落とすのだが、今回はそういった旨みになる物は無し。
メダルを執拗に求める同胞へうんざりしたものの、今後の戦いを考えれば必要ないとは言い切れなかった。
余計な手間を取らせやがってと吐き捨てる間、残る戦いにも終わりが近付く。
四方八方から襲い来る鞭を、魔進チェイサーも己の得物で弾き返す。
人体を切り裂くイリアンの武器も、ロイミュードの技術で作られたブレイクガンナーは破壊できない。
おまけに相手は強化の恩恵を受けたのもあって、まるで鞭が当たる気配が見当たらない。
ならばと放つのは右腕の毒液。
鞭を弾いた直後に跳ね上げ発射、これを魔進チェイサーは片腕を翳し防御。
もしここにいるのがイリアン本人だったら高笑いし、敵のミスを毒舌と共に指摘しただろう。
当たってしまえば嘗てのゴセイジャー同様、身動きは取れずあっという間に変身解除となる。
『TUNE CHASER SPIDER』
といった展開は起きず、魔進チェイサーは平然とチェイサーバイラルコアを装填。
蜘蛛の足をモチーフにしたクローが鞭を断ち切り、イリアンにも切っ先が命中。
よろけた隙を見逃さずに蹴り飛ばし、地面へ倒れると銃口を押し込む。
戦闘を長々と引き延ばしはしない、早々にケリを付ける。
確かにイリアンの毒は人間は勿論、天装を行ったゴセイジャーにも効いた。
しかし彼らと違い、魔進チェイサーは機械生命体ロイミュード。
生物を麻痺させる猛毒も、血の流れない鋼鉄の体には無意味。
ただ付着箇所を解析し麻痺毒だとすぐに分かった為、自分はともかく他の者達にとっては脅威と認識。
仲間へ被害が及ぶ前に仕留めると判断を下した。
『EXECUTION SPIDER』
背部コネクターから供給されるエネルギーが上昇。
二本のクロー部分へ収束し、必殺の刃がイリアンを切り裂く。
人間の男を材料に家具を作る外道な趣味が殺し合いで起こる前に、他のNPC同様爆散。
絶叫を上げた際、赤いグリードが聞き覚えのある声だと首を傾げたのはさておき。
これで残るは鏡の世界に住まう怪物一体のみ。
胸部からマシンガンのように針を連射し、真下のジオウを蜂の巣に変えようとする。
一発一発にイリアンにも劣らない麻痺毒が仕込まれており、ライダーだからといって当たれば無事で済む保障は無い。
だがジオウにしてみれば今更恐れ慄く攻撃ではない。
二丁の銃がエネルギー弾とレーザービームを発射、針を粉砕しディスパイダー・リ・ボーンをも銃撃の嵐に巻き込む。
高火力の連射をモロに受け、堪らず落下したのが運の尽きだ。
「DVチェンジ」
音声入力で銃形態からディフェンダーソードに変え、ジカンギレードも同様に剣へと変形。
巨大な下半身の足を振るわれるも跳躍したジオウには当たらない。
上半身へと双剣で斬り掛かり、針を放つ隙を与えぬ勢いの猛攻を繰り出す。
薫や一戦交えた銀髪の剣士に比べれば技術は大きく劣るが、相手がNPCのミラーモンスターならこれで十分だ。
一際強烈な斬撃を、交差させた得物により刻まれる。
敵はもう虫の息、慈悲は無いが無意味に長生きさせる趣味も無い為終わらせに掛かった。
『FINISH TIME』
『ZI-O!GIRIGIRI SLASH!』
数時間前の戦闘では返り討ちにされたが今回は違う。
ジカンギレードを用いた横薙ぎの一閃は、時計の針状のエフェクトと共に相手を葬る技。
抵抗するだけの体力は残っていない、エネルギー刃の餌食となり数多のミラーモンスター同様の末路となった。
エリア内にカードデッキ所持者がいたなら、彼らの契約モンスターが我先にと餌に食い付いただろう。
生憎ライダーはいても、神崎士郎の開発したシステムとは無関係の戦士ばかり。
ディスパイダー・リ・ボーンのコアは暫し宙に留まった後、煙のように消え誰の目にも映らなくなる。
「終わったか…」
「そのようだな、協力に改めて感謝しよう」
イリアンを片付けたチェイスに返しつつ、辺りを見れば自然と参加者達が集まって来る。
ナーゴの演奏も止まり、市街地は冷たい空気へと逆戻り。
NPCとの戦闘で重傷を負った者は一人もおらず、流石にこの程度は切り抜けられるらしい。
「取り敢えず先に聞いておきてぇんだが、お前らは殺し合いに乗ってないんだよな?」
集合し早々に口火を切ったのはリュージ。
駆け付けた4人に助けられたのは事実だが、かといって本当に殺し合いに否定的かは不明。
友好的な振りをして実は…なんてことが無いとも言い切れないし、それが実際にあるのがダーウィンズゲーム。
故にまずはシギルを使ってハッキリさせておかねばならない。
向こうは小学生の千佳がいるとはいえ、スイの例を知ってるだけに子供だからと警戒は疎かに出来なかった。
「は、はい!あたし達は羂索さんを止めようって思ってますっ!」
年上の男性と話すのはプロデューサーやアイドルの仕事で慣れているが、相手は銃を持った青年。
少々緊張しつつもハッキリと答えた果穂に続き、残りの3人も乗っていなと伝える。
言葉を聞けば嘘を言ってるか分かるシギルは、ロイミュードや魔法少女にも効果を発揮。
結果、4人共に本心からの言葉と分かり警戒を解く。
「俺からも先に尋ねたい。お前達の中にキヴォトスの名を聞いた者はいるか?」
「オレは知らねぇ。可奈美とひよよ…じゃなくてアンコだっけか?そっちは?」
「伊達みたいな間違えしてんじゃねぇよ。それが何かあるのか」
少女の姿もチラホラあったので、先生の言う生徒達が本性を隠しているとも考えた。
言葉を聞く限りでは無関係らしく、容姿の特徴などは先生も話さなかったので確かめる術は無し。
危険な集団の可能性がると伝えるも、もっと詳しい説明をするのは場所を変えてからで良いだろう。
同じことをアンクも考えたのか、全員へ向けて言う。
「お喋りの続きならここを離れてからにするぞ。さっきの連中が同じ個体とは限らないが、アイツが戻って来たら――」
「誰に断って勝手に立ち去ろうとしている?」
その瞬間を、何と形容すべきか。
全員の耳に声が聞こえた。
叫んではいない、平坦な声色を放っただけ。
男がやったのはその一つに過ぎず、誰も危害を加えられていない。
では何故、これ程までに息苦しいのか。
呼吸一つを行うだけでも命懸けに感じるくらい、空気が異様な重さへ変化。
どうして一度の瞬きすらも行えず、誰もが両目を限界までこじ開けているのか。
理由を伝えるのは彼ら自身の本能。
繰り返し叫ぶ、コレから決して目を逸らすなと。
視線を外した時が最後、己の死すらも理解できない終わりが来る。
血よりも濃く、炎よりも鮮烈な赤が見えた。
真紅を纏う男が一歩、また一歩と進むに連れてエリア一帯が軋みを上げる。
住まう人々を排除した街へ吹く風は、男を迎え入れる祝福か。
或いは、最悪を招き入れてしまった嘆きか。
「俺を前にしていつまで呆ける気だ。王に首を垂れろ、ゴミどもが」
NPCとの戦闘など児戯に過ぎない。
これより始まるのは善が手を取り合い、勝利を掴む物語に非ず。
星はガラクタ、命は塵。宇宙を蹂躙し、万物を踏み躙る。
宇蟲王による地獄が始まる。
◆
リュージにとって死の疑似体験はこれが初めてではない。
ダーウィンズゲームのトップランカー、劉雪蘭にカナメが攫われた時のことはよく覚えている。
強烈な殺気を当てられレイン共々意識を失った。
シギルではない、武を鍛えて我が物とした技術である。
では今現在起こったこれも、雪蘭がやったような古武術の一種なのか。
そんな訳が無いと断言出来る。
武道に精通していないリュージにだって、自分達が何をされたのか。
いきなり現れた男が何をやってくれたのかが分かる、分かってしまう。
真紅を纏ったこの男は何も特別な事をしていない。
偉そうな態度で自分達の前に堂々と姿を見せた。
首を落とされてはいない、心臓を貫かれてもいない、全身を裁断機に掛けたように細切れにされてだっていない。
血の一滴はおろか、髪の毛一本すら地面には落ちていなかった。
ただそこにいるだけで、自分達はもう死んだ気になってしまっている。
この男が現れた時点でもう、自分達の死は確定なのだと。
小難しく考えるまでも無く、己の内が悲観するかのように告げて来た。
(笑えねぇ…冗談にしたって気が利き過ぎだぜ……)
苦笑いを浮かべようとするも、頬が強張り歪な表情しか作れない。
アンクの話では殺された連中の内の一人は、先に男へ突っかかって殺そうとしたとのこと。
よくまあこんな相手に喧嘩を売ろうなどと考えられたものだ。
恐怖を誤魔化す為の強がりだったのか、或いは頭が鈍過ぎたのかは知る由も無いし興味も無い。
最優先で頭を回し、答えを弾き出さねばならないのはたった一つ。
ここからどうやって生き延びるか。
大変困ったことに、何をやろうと無事で済む予感がまるでしなかった。
「……果穂、お前達は――」
「…だっ、大丈夫、ですっ!」
自分の言葉を遮った声には明らかな怯えが混じっていた。
無理もないだろうと思いつつ、チェイスは男から視線を外せない。
人では無い、人のような感情を持たない自分でさえ男が紛れも無い特大の脅威と分かる。
殺し合いで戦って来たとはいえ、元々一般人の果穂には相当な恐怖の筈。
怯えを直接口に出さないのはチェイスに誓った決意があるから。
もう一つ、自分が恐怖する様を晒して仲間を不安にさせたくないからか。
「な…に……この、人……」
「はる、マジアマゼンタ…?だ、大丈夫…?」
「…え、あ、だ、勿論!全っ然大丈夫だよ!」
千佳の不安気な様子にはるかは笑みを返すも、顔色の悪さだけは誤魔化せない。
魔法少女である彼女は魔力感知が可能。
男の外見や存在感ではなく、秘めた力をダイレクトに感じ取った。
(魔力…とはちょっと違うかもだけど……こんな力、信じられない……)
嫌でも脳裏に浮かぶ、闇檻を操る魔女と同じ。
余りに邪悪、余りに暴力的、余りにおぞましい。
こんな力を人間が持てる筈が無い、持っているなんて有り得ない。
人の形をしていても、人の枠に収めるのは大間違いの怪物。
せり上がる嘔吐感を必死に堪え、千佳を背に庇い意識を保つ。
「アンクさん、もしかしてあの人が……」
「もしかしなくてもそうだ。本当に戻って来やがった…!」
心底忌々しいとばかりに吐き捨て、可奈美達も理解せざるを得ない。
三人の男を返り討ちにした挙句、姫和の右腕を奪った張本人。
姫和の実力は可奈美も薫も、肩を並べて戦っただけあってよく知っている。
小烏丸が手元に無くても御刀を持った彼女が負ける程の相手。
剣を合わせる前から納得を抱き兼ねない、強烈なプレッシャーに冷汗が止まらなかった。
「あの時のクズか。野垂れ死んだと思っていたが…別のクズに寄生され生き延びるとは、全く見るに堪えん生き汚さだな」
「はっ、お前の目が節穴なのをカッコ付けて言い訳すんなよ。こいつの欲望は中々のもんだぞ?」
姫和の生存を知っても態度が特別変わりはしない。
どうせ先は長くないと捨て置いた、男にとっては有象無象の内の一人。
何やら違う生命体が憑いてはいるが、さして興味も抱かない。
憑りついた存在共々殺せば済むだけのことだ。
「わざわざ戻って来たってことは、こいつが生きて復讐するかもしれない事にビビりでもしたか?」
「ほざくな寄生虫め。卑しくも群がったクズどもを、手ずから始末に来たに過ぎん」
挑発へ激昂する様子も無く、どこまでも尊大に切り捨てる。
暴君の如き振る舞いの男へ従うかのように、背後へ二匹の異形が現れた。
片方は可奈美の御刀を持ったバタフライオルフェノク、もう一匹はスズムシを彷彿とさせる茶褐色の体躯の蟲。
名をノビスタドール、プラーガと呼ばれる寄生生物によって生み出された生物兵器の一種。
浅利切人達を殺害後、一旦はエリアを去った男だが移動先でノビスタドールを配下に加えふと思い付いた。
放置された支給品目当てで集まった参加者を纏めて葬れば、少しは手間が減るだろうと。
擬態能力を持ったノビスタドールを死体が転がる場所へ向かわせ、誰か来たならばこっちに伝えるよう命令。
後は控えさせた一体を除き、下僕のNPC達を使って排除。
ついでに自身に支給された玩具のテストも兼ねて、NPC達を対象に効果を発動。
使ったのはランドソルのギルド、美食殿のユウキが所持する剣。
例の如く主催者の手が加えられており、ユウキが持つプリンセスナイトの力を使用可能だった。
NPC達が妙に手強かったのは、プリンセスナイトの力による強化を受けた為である。
尤も、使い捨ての道具としか見ていない男ではユウキ程の効果は表れなかったが。
「少なくともあの連中よりはマシか。だが所詮雑魚は雑魚。雁首揃えてこの程度とは、つくづく俺をコケにした罪は重いぞ」
個々の能力や連携の上手さもあり、強化を受けたNPC数体程度敵じゃない。
かと言って自分には遠く及ばず、男の中で参加者への評価が変わりはしない。
このような児戯にも劣る茶番に自分を招き、あまつさえ殺戮を強要する愚行。
羂索一派への殺意を煮え滾らせるが、まずは目の前の連中の掃除から始める。
邪魔なので退がっていろと下僕に命じ一同を睨み付ければ、最早戦闘は絶対に避けられないと思い知らされる。
他者を傷付ける事を好まない者も。
命を奪う事を良しとしない者も。
殺す為ではなく守る為に剣を振るう者も。
皆等しく、死に物狂いで抗った果てにしか生は掴めないと、闘争心を根こそぎ引き摺り出した。
戦意なき者、覚悟なき者、生を求めぬ者。
いずれもこの場に存在する資格なし。
最強にして最凶、たった一つの善意が歴史を狂わせ生んだ怪物。
宇蟲王ギラが、塵芥どもの生に幕を引く。
「ピ、ピオリム…!」
言葉を交わせる段階が終わりを告げ、真っ先に呪文を唱えたのは千佳。
何故自分でもこれ程素早く判断を下せたのか。
詳細な理由はハッキリせず、ただ何かしなくてはという衝動に駆られるがまま叫ぶ。
呪文の効果で味方全員のすばやさが再度上昇。
千佳の行動が決して間違いで無いと、すぐに知る事となった。
「先に俺を潰そうってか…!」
最初のターゲットは赤のコアメダルの王、アンク。
敏捷性が上がり、間を置かず眼前へとギラが急接近。
それなりの距離はあっただろうに、何をどうすればこうも異様な走力を出せるのか。
ラトラーターコンボのオーズや、黄色のコアメダルの王カザリ等高い敏捷性を持つ者は知っている。
しかし記憶にある者達と違い、ギラは生身にも関わらずアンクですら目を剥く速度で迫った。
人の見た目をしているのに、グリードと並ぶかそれ以上の化け物だ。
驚き続けている暇はない、後方へと大きく跳ぶ。
「グッ…!?」
距離を大きく開いて剣の間合いから逃れた。
クジャクの胴体を黄金色の切っ先が掠め、鋭い痛みが襲う。
掠めただけでこれだ、直撃したらどうなるかは宿主の少女が証明済み。
ピオリムを唱えた千佳に今だけは感謝してやってもいいと、上から目線で思うのは一瞬に留める。
離した距離を10歩と駆けずに詰め、黄金の剣が首目掛けて走った。
――水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き
斬首を阻むは人斬り岡田以蔵の愛刀。
繰り出すは水の呼吸の使い手が継承する漆の型。
斬るのではなく突く技故に鬼の頸を落とすには不向きだが、最も速度に優れている。
切っ先が剣の腹を叩き、首への狙いが逸らされた。
剣を弾けば得物を握る腕もあらぬ方へと跳ね、結果体勢にも揺らぎが生じる。
晒す隙が僅かであろうと、反撃の機会を逃す手はない。
アンクが両手から火球を連射、ギラから離れながらも攻撃の手は止めない。
しかし届かない、強欲の齎す火炎など宇蟲王には目障りな小蝿に等しい。
一振りで数十発の火球を掻き消し、黒と赤の混じり合った刃が飛来。
上体を捩って回避するも刃の到達には間に合わず、その身へ斬傷を新たに生んだ。
――水の…
「横槍を入れるな、身の程知らずめ」
アンク一人で済ませてやりはしない。
構えた刀目掛けて踵落としが炸裂、上方からの衝撃で右腕に痺れが来た。
柄から手を放さなかったのは流石の判断と、褒める性質の王に非ず。
迫りくる横薙ぎに、技を放つのに拘れば首が落ちると理解。
全集中の呼吸で身体能力こそ上がっても、写シを張っていない以上は死の身代わりは不可能。
回避を選ぶまでに時間は掛からず、姿勢を低くしやり過ごす。
頭上で吹いた死の風に何か思うより早く、目の前の赤を見失った。
(うし――)
「ノロマが、その鈍重さで俺の前に立つとは笑わせる」
可奈美が回避へ動きを見せた時にはもう、次の手を構築し実行。
跳躍し背後を取ってからの一撃。
振り返るのも必死こいて対処に動くのも、悠長に待ってやらない。
黄金が白い首へ食い込むまで残り数秒の猶予も無し。
「きええええええええっ!!」
『BREAK』
その死刑執行へ待ったを掛けるは、もう一人の刀使とロイミュード。
大剣によるものとは思えないスピードで、ギラに鉄塊を叩き付ける。
別方向から放たれるは破壊力を増加した打撃。
ブレイクガンナーを生身相手に使うのは前代未聞なれど、呑気な危惧が通用する相手では無い。
両名共に敏捷性が上がった勢いを味方に付け、悪しき王を粉砕せんとした。
薫にも魔進チェイサーにも、ギラの視線が寄越されはしない。
剣の標的は可奈美から移り大剣にぶつけた。
得物の大きさで言ったら薫の持つ大剣が上、しかし敵は膂力と剣の強度の両方で遥かに勝る。
ワイヤーで急速に巻き取られるように、薫は後方へと吹き飛ぶ。
当然もう一体の打撃でギラに傷が生まれるのも有り得ない。
反対の手で魔進チェイサーの腕を掴み引き寄せ、膝蹴りを腹部に見舞う。
自ら膝の骨を砕きにいく愚行とは言えない、現に外部装甲越しへ襲うダメージに呻き声が漏れた。
「鉄屑にしては頑丈だな。ンコパソの負け犬共ならさぞ欲しがるだろうよ」
「知るか…!」
ぶつけられた冷笑を切って捨て、こちらも武器を持つのとは反対の手で拳を放つ。
顔色一つ変えずに紙一重で回避し、魔進チェイサーを掴んだ方の腕を跳ね上げた。
112kgの機械戦士を空き缶のように放り投げ、激突まで待たずに跳躍。
振り被った剣が部品の雨を散らすのも時間の問題。
『TIME CHARGE!5・4・3・2・1…ZERO TIME!』
とはいえ他の者も見物に徹する気は毛頭なく、ここまで立っているだけの案山子になってもいない。
戦闘開始から間を置かずに、ジオウは自身の得物を操作。
ジカンギレード上部のスイッチを押しエネルギーを充填、ライドウォッチを装填せずとも技は放てる。
カウントダウン終了を聞きトリガーを引くと、『ジュウ』の文字型の弾が連続で発射。
的が地上から宙に変わった所で外さない、三文字が群れを成してギラへ襲い掛かった。
数が増えたとて脅威にはなり得ない。
アンクの火球同様に一振りで霧散、再度魔進チェイサーを見下ろすも妨害に出たのはジオウ一人に非ず。
――水の呼吸 肆ノ型 打ち潮・乱
地面を離れ範囲を広げた斬撃を繰り出す可奈美へ、ギラも無言のまま剣を振るう。
四方八方よりの刃を打ち伏せ、一足早く着地。
視線をわざわざ向けるまでも無い、次の斬撃が迫りつつあった。
――水の呼吸 捌ノ型 滝壷
範囲は真下のみだが威力は絶大。
岩石を叩き割らん滝の勢いを以て急降下。
狙いを付けたのは肩、剣を振るう者にとって負傷は致命的。
「ゴミの遊戯が通用するのは、トウフの八百長試合くらいだろう」
落下の勢いを乗せた剣も、ギラから見れば綿埃が舞い落ちるのと変わらぬ遅さ。
斬り上げにより弾かれた可奈美があらぬ方へと吹き飛び、先に待つのはコンクリートの壁。
体勢を変えて激突回避に動こうとするも、ギラの接近の方が遥かに速い。
突き出した剣は吸い込まれるように左胸へと迫る。
白い制服が可奈美自身が流す赤で汚れるのを、ギラ以外の誰も望んではいない。
「させない!」
割り込んだ槍が剣をこれ以上進ませまいとし、またもや可奈美は死から遠ざかった。
入れ替わりに攻撃を放つのはマジアマゼンタだ、身の丈程もある槍を豪快且つスピーディーに振り回す。
リーチの差を活かしギラを攻め立て、反撃に移る隙を与えまいとする。
槍を振るう間にもマジアマゼンタの額には汗が浮かび、腕には鈍い痛みが走った。
こっちは両手で武器を握っているのに、向こうは片腕持ちで難なく対処。
やはり純粋な力一つ取っても敵が上回るらしい。
代わりに自分達が勝っているのは仲間の数。
マジアマゼンタの槍を弾いてすぐに、死角から銃弾が殺到。
得物を使った応酬の間、位置が固定されるのまで狙い通りか。
リュージが狙い撃つのに躊躇はない、銃口から吐き出された弾は全てギラへ向けたもの。
間違ってマジアマゼンタに被弾、などと凡ミスは犯さない。
剣で斬り落とし、僅かな動きで躱す。
銃弾と槍の両方を己から遠ざけ、掠らせもしない。
斬り合う相手はマジアマゼンタ一人に留まらない。
復帰を果たした薫が頭上から、背後からは手刀を突き出したアンクが接近。
銃弾を斬りながら真横へ跳ぶも、二方向よりのエネルギー弾に狙われる。
二丁拳銃の手数を活かすジオウと持ち前の射撃能力を魔進チェイサー発揮し、ギラから攻撃の機会を少しでも削ぎ落とす。
そこへリュージがアサルトライフルを連射し加われば、三方向からの掃射を剣一本で凌ぐ。
埒が明かないと思ったのか、ギラが片脚を軸に一回転し刃を飛ばす。
魔進チェイサーとジオウはともかく、リュージは敏捷性が上がったとて確実に躱せるかは不明。
となると他の者が助けに動くのは自然な流れだ。
アンクが翼を広げアスファルトを撫でるように飛行、リュージの襟首を掴んで刃から遠ざかる。
地面へ雑に降ろす場面を眺めてはいられない、銃撃が止んだなら至近距離での戦闘へ臨む。
可奈美、薫、マジアマゼンタ。
少女達の刃が闘争の熱を加速させ、宇蟲王へ届かせるべく牙を突き立てる。
防ぎ、躱し、弾き、距離を取れば銃弾が飛び、また接近し、斬り合う。
7対1の構図が生まれ、一見すれば後者が圧倒的に不利。
前者の連携は数時間か数十分の付き合いが大半でありながら、綻びが見当たらない。
殺し合いに巻き込まれる前から戦いの渦中に身を置き、培ったスキルと経験をここぞとばかりに活かしている。
だというのに全員顔へ余裕の二文字が全く浮かんではいなかった。
7人全員が苛烈に攻め立て、敵に斬られてはいない。
だがそこより先に進めない。
7人掛かりで倒せないばかりか、敵はたった一人にも関わらず猛攻を平然と凌いでいた。
加えて、自分達の助けとなっている強化も長続きはしない。
限界が来る前に倒さねば、マズい状態に陥るのは二人のアイドルの方なのだから。
「スクルト…!ピオリム…!」
呪文を唱え千佳は仲間達の能力を引き上げる。
前者は防御力、後者はすばやさを強化するが共に時間経過で解けてしまう。
故に一定の感覚で唱え効果時間を延長、途切れて仲間達が不利にならないよう気を張っていた。
彼女を守るように傍らで演奏を続けるのはナーゴ。
ビートフォームの能力による影響は今更言うまでもない。
演奏が止まれば味方への強化が消える、ディケイドとの戦闘で把握している。
故にギターから決して手を放さず、ただの一度も休憩を挟まない。
曲の停止が仲間達のピンチに繋がると思えば、絶対に止めるつもりはなかった。
「ハァ…ハァ……」
まどうしのつえを構える千佳の頬を汗が伝い、苦し気な吐息が疲労の蓄積を伝えて来る。
魔法使いや賢者でなくとも呪文が使えると言えば聞こえは良いが、制約が無い訳では無い。
魔力や類する力を持つ者以外、魔力に乏しかったり或いは魔力の概念自体が存在しない世界の参加者。
そういった者がまどうしのつえを使う場合、魔力の代わりに体力を消費する。
主催者が施した細工によって、ノワルから魔力は期待出来ないと評されたにも関わらず千佳は複数回呪文を唱えられた。
だが勇者一行のMPが常に無限だったのとは違うように、千佳とて無制限に呪文は使えない。
アイドルとしてのレッスンをこなし、同年代の少女より体力は多いと言っても。
唱える度に容赦なく削られれば、動かなくても息が上がるのは必然だった。
(指が痛くなってきたけど…止めちゃダメだ…!)
果穂もまた演奏の継続で消耗に襲われている。
ビートフォームの機能ならば完璧ギターを弾けるとはいえ、変身者が永遠にその状態を保てるかは別。
NPCとの戦闘から間を置かずに再度演奏し、変身中だが指に負担が掛かる。
ましてギター演奏などナーゴになって初めての経験。
一流のバンドマンとて曲の合間には手を止めるが、果穂には許されない。
止めてしまえばその時はどうなるか言うまでもない。
「果穂ちゃん大丈夫…?」
「はいっ!これくらいへっちゃらです!千佳ちゃんこそ大丈夫ですか…?」
「えへへ…ラブリーチカは、まだまだぜーんぜん…元気だよ…!」
汗を拭ってニッカリと笑い、平気なことを伝える。
仮面で顔が隠れているけど、でも苦しい顔は作らずに大丈夫だと返す。
表面上で取り繕っても消耗は時間経過で膨らみ、着実に二人を蝕む。
だけど弱音は吐かない、強くて恐い相手と誰もが戦い続けているのだ。
彼と、彼女と、皆と一緒に頑張ろうと決めたのに、自分で自分の言葉を嘘にはしたくない。
仲間達の力となるべく口を開き、仲間達の支えとなるべく指の動きを速める。
圧し掛かる疲れなんかに負けてたまるかと奮い立たせ、仲間達の姿を両目に映した。
剣と銃弾が絶えず飛び交う光景が飛び込み、
『――――――っ』
ゾワリと、尋常ならざる恐怖に身を包まれた。
斬り結びながら弾を躱す、真紅を纏し王。
自分達のプロデューサーのように、信頼出来るものを只の一つも宿していない男が。
一瞬、瞳を衣服と同じかそれ以上に色濃い赤いに染めて。
ハッキリと、こちらを見た。
「フン、そうか」
汗の一滴も掻かない、戦闘が始まって常に維持し続けた余裕の表情で呟く。
ゴッカンの愚衆どもが好むような音楽と、横でキャンキャン吠える小娘。
クズどもの中でも取り分けくだらない、ちっぽけな連中と思っていたが成程。
あの二人の騒音がクズどもにチマチマ力を与えているらしい。
そう分かった所で、ギラの思考に大きな変化は訪れない。
むしろ益々落胆が広まるばかり。
小娘どもの力を頼って尚、発揮出来る力はこの程度。
今更思う事ではないが、つくづく羂索が始めた殺し合いには腹が立ってしょうがない。
せめて強き竜の者…桐生ダイゴでもいれば話は別だったが。
ダイゴはおらず、代わりに名簿に載っていたのはハスティー姓を名乗る自分。
大方別の次元のギラなのだとすぐに察しは付き、だからといって自分同士仲良くする気も起きない。
むしろ己でありながら狭っ苦しい国の王程度に収まる矮小さが、非常に気に食わない。
ギラと言う名の王は一人で良い、雑魚の王など別次元の自分であっても存在する価値は無い。
矮小な力を振るうだけの雑魚を、延々と調子付かせてやる奇異な趣味は持ち合わせていない。
茶番は早々に終わらせるに限る。
ギラの放つ殺気が数段階上の重圧となり、マズいほうへ状況が傾いたと理解した。
「――っ!?ぃぁ……」
だが分かった時にはもう手遅れだ。
雫波紋突き、水の呼吸最速の一撃がするりと躱され、頭が空振りを認識するより早く。
可奈美を灼熱が襲い、視界いっぱいに赤い雫が煌めいた。
斬られた、写シを使っていない生身の肉体に駆け巡る熱い感触。
スクルトの効果で即死には至らずとも、軽傷で済む程の脆い剣ではない。
動かなければ、刀を振るわねばと必至に名に体が反応を見せ、無駄と言わんばかりに蹴飛ばされた。
「可奈美!?」
「待って!今私が――」
顔色を変えた薫を制し、マジアマゼンタが回復へ急ぐ。
まだ死んでいないなら自身の魔法で助けられる。
意識が眼前の敵から重傷の仲間へ移り、大きなミスだと体に直接叩き込まれた。
「ごっ……」
腹部に拳が捻じ込まれ、発せられたのは人体から出るとは思えない軋む音。
呼吸が止まったその一瞬で、可奈美同様弾丸の勢いで吹き飛ぶ。
携帯ショップの自動ドアに頭から突っ込み、激突したカウンターを破壊しようやくストップ。
「貴様もうろちょろと目障りだ、小蝿が」
「がっ!?テメ…はな…!?」
顔面を鷲掴みにされ、素手でありながら万力もかくやの握力で締め付けられた。
頭蓋骨が砕かれ兼ねない痛みに焦りが急激に湧き出す。。
だったら向こうから放したくなるようにするだけと、空いた手でギラの腕を掴んだ。
ドレインタッチで体力も魔力も根こそぎ奪えば、あっという間に崩れ落ちるに違いない。
「向こうのゴミ共々這い蹲るがいい」
薫の目論見は魔力を奪う前にギラが投げ飛ばしたことで、呆気なく失敗に終わる。
小柄とはいえ10代の少女が、ロクに体勢を立て直すことも叶わない速度で宙を泳ぐ。
遠ざかる真紅すらも霞む加速へと囚われ、
「い゛っ!?」
「がぁ…!」
援護射撃の為に離れた位置で銃を構えていたリュージへ命中。
頭部が胴体を直撃し、共に衝突箇所への痛みに短い悲鳴が漏れるも災難は続く。
二人揃って錐もみ回転し壁に叩き付けられ、地面へ転がった時には痛みに声も出せなかった。
纏わり付く小娘三人と、離れてコソコソ動くネズミ一匹が一瞬でダウン。
次は人ならざる二体を標的に定め、紫のボディを視界に閉じ込める。
ブレイクガンナーが圧縮生成したエネルギー弾を連射、照準は一発残らずギラへ合わせてあった。
しかし無意味だ、剣を軽く振るって叩き落とし急接近。
魔進チェイサーの視覚センサーを以てしても、一歩踏み込んだ瞬間以外まともに捉えられない。
目と鼻の先へ現れたギラに、複合モジュールが最適解を弾き出す暇すら無く。
防御、迎撃、回避、重加速の発動と複数ある選択も、本人が追い付かなければ無意味だ。
真一文字を胸部へ刻まれ、紙風船のように宙へと呆気なく斬り飛ばされる。
火花の雨を降らす魔進チェイサーから視線を外し、もう一体の元へ疾走。
標的は地上では無く空中に陣取り、火球を放ち続けている。
何の脅威にもならない、斬り落とし跳躍すればあっという間に目の前へ到達。
「羽虫如きが王を見下ろすな」
「お前…!ぐあっ…!」
突き出した手刀を素手で受け止め、脇腹を蹴りが叩く。
両の翼で踏み止まろうにも、一体脚へどれ程の力が籠められているのか。
アスファルトを砕き叩き付けられたアンクへ、着地前に剣を振るって刃を飛ばす。
黒と赤、二つの輝きが抵抗の隙を与えずにグリードの肉体を焼いた。
苦悶の声と共に、出血代わりでセルメダルが撒き散らされる。
「……矮小なゴミめ、つまらん真似に出たな」
地へ足を付けた途端に動きを止めた。
より正確に言うなら、両足が凍り付き動けなくなる。
誰の仕業かを考えるまでも無い。
『FINISH TIME』
『ZI-O!SURESURE SHOOTING!』
共闘相手が次々に倒れる場面を見せ付けられ、ジオウの中から躊躇は即座に消え去った。
温存していたギアス、ジ・アイスを発動しギラを凍結。
動きを止めた程度でどうにかなる相手では無い、むしろ己のギアスとて苦も無く打ち破られる予感がしてならない。
流れる動作でライドウォッチを装填し、先の文字型エネルギーを超える火力を叩き込むべくトリガーを引いた。
「なっ――」
狙いはズレていない、巨大な光弾はギラ目掛けて真っ直ぐに突き進む。
なれど、瞳を焼き潰す輝きが迫ろうと焦りは欠片も抱かない。
偽りの魔王の輝きなど、宇蟲王の足元にも及ばず。
アンクへ放った時以上の規模と威力で斬撃を放てば、光弾共々ジオウを飲み込んだ。
装甲越しとは思えない激痛に悲鳴が上がり、どちらが王に相応しいかを思い知らされる。
「え……」
起きた全てを瞳が映し出し、だが千佳には未だ理解が追い付かない。
マジアマゼンタが、魔進チェイサーが、戦っていた皆が。
闇檻の魔女にも並ぶ恐ろしさの王相手に、奮戦していた誰も彼もが。
地に体を横たえ呻き声を発し、或いはピクリとも動かない。
「っ!千佳ちゃ――」
「囀るな煩わしい、騒音ならゴッカンの罪人どもに聞かせていろ」
仲間が倒れ、呆然とする間に敵は自分達の目の前にいた。
衝撃を受けたのはナーゴも同じだが、後ろに庇った千佳の存在が一足先に意識を取り戻させる。
レイズバックルに手を伸ばし技の発動に必須の操作を実行。
と、頭で考えたは良いもののギラを前にしては余りにも遅い。
黄金の刀身が胴体を撫で、決死の抵抗も無に帰す。
最初、自分に何が起こったのかを果穂は正しく認識出来なかった。
千佳を守ろうとナーゴの技を使おうとし、次の瞬間には体が宙へ浮かんでいた。
目まぐるしく通り過ぎ、変化し続ける光景はまるで絶叫マシンに乗っているかのよう。
アッシュフォード学園で、チェイスが先生から自分を守ってくれた時みたいだと。
思考の片隅に浮かんだソレは、背中への衝撃で砂のように霧散。
「……ぃうっ!?う…あ……」
続けて襲ったのは頭を働かせるのを大きく阻む、猛烈な痛み。
転んで擦りむいただとか、日常で起こる怪我とは訳が違う。
スクルトで防御力が強化されていた為、浅利のように装甲ごと骨まで斬られてはいない。
命が繋がっている現状は幸運と言えるのかもしれないが、本人に喜べる余裕はゼロ。
「はっ……ああっ…!い、た……」
激突した背中以上に、胸とお腹が裂かれるように痛む。
エントリーフォーム以上の耐久性があるビートフォームであっても、大ダメージは免れないギラの剣。
まして果穂は元々争いとは一切無縁の小学生。
本来の世界では生涯味わう事の無かっただろう激痛に呼吸は乱れ、望まなくとも涙が零れる。
「あ、か、果穂ちゃん…!」
この地で出会った同じアイドルの仲間の痛ましい姿に、千佳も我に返った。
いつまでもぼうっと突っ立っている場合じゃない。
血相を変えて駆け寄ろうとし、
「ひっ…!」
その眼前に真紅が立ち塞がり、凍てつく瞳で射抜かれた。
足が竦んで動けない、押し退ける為の手も動かせない。
退いてと言う為の口は自分でもみっともない程に震え、カチカチと歯が鳴る音が出るだけ。
腰を抜かさないだけでも大したものだと、誰もが口を揃えて言うだろう。
見下ろす瞳の邪悪さはノワルに負けず劣らず、しかし明確に違う。
あの魔女は自分を一時は玩具として生かし、殺そうとした時も苦痛が長続きする方法を取った。
しかし王にはそのような遊びが毛先程も無い。
本当に、自分が生きることへ全く価値を見出しておらず、地面へ転がる塵に視線を落としているに過ぎなかった。
「花を愛で一生を終えるイシャバーナのカスどもと同じ、全く下らん小娘だな。奴め、俺をこのゴミと同列に数えるつもりか?」
奇怪な術も支給品の力によるもの、今しがた蹴散らした連中のように戦いを経験してる風でもない。
殺し合いに有無を言わせず招いておきながら、用意されたのは呆れるくらいにちっぽけな少女。
宇蟲王たる己を悉く舐め腐った怒りは、この手で羂索達を処さねば消えそうもなかった。
膨れ上がる殺気は千佳に向けられたのでなくとも、間近で受ければ一層の恐怖を煽る。
「待っていろ。群がるゴミを片付けたら次は貴様らだ」
瞳は千佳を射抜いてはいるが、その実千佳を見ていない。
現在最も殺意を抱く羂索一派にであり、参加者など踏み潰す為に集められたゴミ。
齢9歳の少女だろうと認識は変わらない。
「あ――」
迫る終わりに悲観する暇は与えられず、人生を彩った思い出の数々が頭に浮かぶ時間も無い。
死にかけの蟻がいたから踏み潰す気軽さで剣を振るう。
チキューを支配したギラにとっては、今更感じ入ることも無い作業の一環。
しかし忘れてはならない、ありふれた悲劇を決して望まない者がいることを。
ガキンという音は、少女の首へ刃を食いこませたのとは異なる。
視線の先には数秒前と違い、ゴミがもう一匹増えていた。
翳した得物は光り輝く魔力の槍、正しき心の少女が得意とする守る為の力。
「ゴミじゃ…ない……」
口の端から血を垂らし、痛みと疲労で息は上がっている。
防ぐだけでも意識が飛びそうな力を真っ向から受け止め、両腕に掛かる負担は軽くない。
それでも毅然と王を睨み返し、マジアマゼンタは一歩も退かない。
「千佳ちゃんも…皆も……ゴミなんかじゃ、ない……!」
自分が何を言っても、ギラには届かないのかもしれない。
聞く価値のない戯言と、数秒後にはアッサリ忘れられるのだとしても。
黙ってはいられない、真正面から否定せずにはいられなかった。
この目で全部見たから知っている。
ノワルとの戦いで誰よりも恐怖を味わい、苦痛をその身に受けたのだ誰かを。
逃げ出したって誰も責めない状況で、ただの一度も自分達を置いて行こうとはしなかったのが誰かを。
小さな体に収まりきらない程の勇気で自分達を助けてくれた、魔法少女が誰なのかを。
近くでずっと見たからこそ、恐怖を凌駕する怒りを王にぶつける。
「知るか」
尤も、王が何を思ったかは言い放った三文字が全て。
ギラはノワルとの戦いを知らない、知った所で千佳へ思う事は変わらない。
故に仲間への…友への想いに突き動かされた怒りは一つとして響かず。
「――――」
僅かに力を籠め、王を象徴する色彩の斬撃を放った。
優しさと気高さの宿った魔力は簡単に食らい尽くされ、おぞましい赤はマジアマゼンタをも蝕む。
「千佳…ちゃ……」
ピンク色の衣装が汚されるのに時間は掛からず、意識が途切れるまでの猶予も無い。
痛いのかどうかすら曖昧になりながらも、背中に庇った小さな友へと振り返る。
「逃げ……――――」
言葉がそれ以上口から出ることはなく、代わりにゴボリと血を吐き出す。
トレスマジアの衣装が花弁のように散り、制服もすぐに赤で汚れた。
うつ伏せに倒れ、そっれきり糸の切れた人形のように動かない。
流れ続ける大量の血は、花菱はるかの終わりが時間の問題と知らしめていた。
「はるか…ちゃ……やだ…やだやだやだ…!」
自らが作った血溜まりに横たわるはるかに、千佳は泣き叫ぶしかできない。
何度声を掛けても黙ったまま、こっちを向いてくれない。
待ち受けるのが何か分からない程無知では無く、だからこそその結末は認められなかった。
「あ、つえ、つえ、となえない、と…!」
顔をくしゃくしゃに歪めしゃくりあげつつも、はるかを助ける選択を諦めない。
治す為の力が今の自分にはある。
齎したのが殺し合いの主催者達だという事実を気にしてなどいられず、両手でまどうしのつえを強く握った。
どうか助けてと懇願するように、小さな手が白ばむ程の力を籠めて。
「ゴミが足掻くな見苦しい」
千佳の献身もギラには憐憫一つを抱かせる効果がなかった。
たかが命一つ、踏み躙った大勢に加わるだけでしかない。
纏めて葬り、見るに堪えない三文芝居も終いにしてやる。
『NEXT DRIVE SYSTEM DEAD HEAT』
振り被った剣は千佳ではなく、背後からの拳を防ぐのに使われた。
真紅の装甲を纏った魔進チェイサーが、全身から赤い稲妻を迸らせる。
デッドヒートは既に乗りこなしている、時間経過で暴走のリスクは存在しない。
戦線復帰が遅れたばかりにこの様だ、下手人と不甲斐ない己への怒りに呼応しパワーが急激に上昇。
「急くなガラクタ。そこの死にぞこない共を片付けたら、すぐに貴様も殺してやったというのに」
「ふざけるな…!」
両の拳に赤を纏い、真紅の王へと殴打の嵐が炸裂。
同じ王であってもハートとは違う、同胞への愛すらこの男からは感じられない。
これ以上は誰も殺させまいと己が正義を宿す拳を幾度も放ち、ギラは涼しい顔で捌く。
一発一発の威力は通常の魔進チェイサー以上、なれどギラの体勢が崩れる様子はまるでない。
ディケイドを退けた力も宇蟲王には及ばないのが現実、だからといって退く訳にもいかない。
「いつまで好き勝手やってやがんだ!」
苛立ちを叫び加勢に入ったのはもう一体の赤い王。
火球を放ちつつ接近し、魔進チェイサーとは別方向からの打撃を繰り出した。
グリードの腕力も恐れるには足りず、剣を持つのと反対の手で受け止めいなす。
「こっちはいい加減お前の相手は飽きてんだよ…!」
「ならば早々に死ね。貴様らこそ俺の手を煩わせていると自覚しろ」
毒舌の応酬を挟みながらも、双方攻撃の手は止まらない。
胸部へ突き出した拳を受け止め、ギラの蹴りが胴を叩く。
片方が呻くももう片方には意識を向ける余裕も非ず、魔進チェイサーが拳速を引き上げる。
数十か所へ一遍に拳が叩き込まれるかの如き勢い、だが速さも威力もギラという壁を超えるにはまるで足りない。
視覚センサーが敵の剣を捉えんと働きかけるが、映し出されるのは黄金の影のみ。
ロイミュードの技術を以てしても、時間経過で追い付くのが困難になる。
剣の腹で拳を打ち返し、肘が手刀の狙いを逸らす。
共に片腕があらぬ方へ動き、引き戻すまでの1秒にも満たない時間ですらギラには十分過ぎた。
大振りながら鈍重とは程遠い速さで薙ぎ払い、二体共に大きく怯ませる。
余裕綽々の態度で追撃に歩き、脚へ猛烈な冷たさを感じた。
凍結し動けなくなった現象はさっきと同じ。
懲りずに小細工を繰り返そうと、王の歩みを止めるのは無駄だと教えねばなるまい。
内から力をほんの少し放って粉砕、すると間髪入れずに四肢が再度凍り付く。
『TUNE CHASER COBRA』
『BOOST』
何度拘束を重ねた所で無力化は叶わないが、数秒だけでも動きを止めるだけでも大きな意味はあった。
武装展開した魔進チェイサーが鋼鉄の蛇をギラに巻き付け、二重の拘束を行う。
同時に動くのはブーストフォームに再変身した果穂。
ブーストレイズバックルの時間制限は解除されている、脚部から火を吹き猛加速で接近を果たす。
狙いは千佳とはるかの救出だ、両脇に二人を抱えギラから遠ざかる。
「すまない果穂、無理をさせた…」
「あたしなら…大丈夫です!まだ…頑張れますからっ!」
痛みを押し殺し、途切れ途切れながらも声を張り上げて返す。
はるかが負った傷に比べれば、まだまだ自分は動ける。
皆それぞれの形で戦っているのに、休んではいられないと奮い立たせた。
千佳は今も泣き腫らした顔で、はるかの瞼は閉じられたまま。
しかし青白かった肌には少しずつ熱が戻り、溢れる血もいつの間にか止まっていた。
「はるかちゃん…お願い…死んじゃやだよぉ……」
千佳が唱えたのはホイミ、回復系の基本となる呪文。
効果は然程大きく無いが複数回唱え、結果出血は止まり一命は取り留めた。
但し完全に危機を脱していないのは、ギラが健在なのを見れば明らか。
「小賢しい!」
両腕に力を張り、鋼鉄の蛇が砕け散った。
四肢を覆う氷も同様に粉砕、取り戻した自由で真っ先に何をするか。
決まっている、王の歩みを邪魔したゴミどもへ制裁を下す。
睨みつけた先とは別方向より、またもや目障りな妨害が向かって来る。
一々視界に入れる必要などない、剣を数回振るえばパラパラと落ちたのは金属片。
「笑えねえ…チートも大概にしろよ…!」
「文句言ってもどうにもならねぇって。気持ちは分かるけどな!」
愚痴を吐き捨てながらリュージは引き金に掛けた力を抜かず、アサルトライフルの銃身は一向に冷たさを取り戻さない。
大量の予備弾倉があって助かったと思う反面、全弾使っても倒せる相手じゃ無いだろうと言いたかった。
文句を叫びたい気持ちには同意し、薫も頭を抑えて立ち上がる。
ぶつかった箇所の鈍痛は互いに響いているが、休んでいられる相手では無い。
大剣片手に突進という、最早何度目になるかも分からない戦法。
御刀も無しにどうこう出来る相手じゃないだろと、これまで戦った面々を脳裏に浮かべつつ振るう威力に翳りは無し。
鉄塊の如き大剣に続きギラへ斬り掛かるのは、魔進チェイサーが展開する武装。
デッドヒートとなった今なら、ファングスパイディーの斬撃も強化されている。
しかし届くかどうかは別、此度の敵はデッドヒートだろうとまるで勝機が見出せない。
薫の大剣を掴むや地面に彼女を叩き付け、振り返り様魔進チェイサーに切っ先を突き出す。
ファングスパイディーで咄嗟の防御が間に合ったものの、暴風へ揉みくちゃにされる木の葉のように宙で踊る羽目となった。
ついでとばかりに距離を詰めて蹴りを叩き込むと、ジオウの元へ突っ込み揃って地面を転がる。
復帰などさせたやりはしない、刃が飛び追い打ちに大量の花を散らす。
絶えず発砲するリュージには視線一つくれてやらずに、片手を振り回して防御。
軽く斬撃を放つだけで潰えるちっぽけな命だろうと、王と同じ舞台に立った以上死は絶対。
ある意味ではダーウィンズゲーム以上に理不尽極まる存在と、会ってしまったのが運の尽き。
何千回と繰り返した刑を執行すべく腕を上げ、
「駄目だよ、あなたには誰も殺させない」
王の前に立つ者が一人。
滅ぼす剣と守る剣、揺るがぬ邪悪と砕けぬ信念が対峙する。
◆
衛藤可奈美について語るなら、剣術は欠かす事の出来ない要素である。
剣術バカとの評に間違いは無く、一度実技となれば正に水を得た魚。
鍛えた己の力をぶつけ、相手の妙技に高揚する。
どんなイベントよりも試合が心を大きく滾らせ、テーマパークを訪れた子供のような心境になるのは友人達からすれば日常茶飯事。
全力で戦い楽しむ姿勢を忘れない。
かといって、誰彼構わず剣を振るう状況を求めているのとは違う。
荒魂の被害には胸を痛め、姫和と二人で逃亡の最中にも討伐へ赴いた。
試合や立ち合いを通じ斬り結ぶことを好んではいても、闘争そのものを欲している訳ではない。
可奈美にとって剣術とは、相手とのコミュニケーションの一つでもあった。
言葉巧みに真意を隠し、或いは自覚しないまま口を動かそうとも。
刃に乗せた想いは誤魔化せない。
剣を通して相手を見る事で、言葉を交わす以上に理解する。
得物を用いた命の取り合いではなく、剣による対話が大荒魂を巡る一連の事件を終息へと導いた。
だからこそ、彼女は――
◆
口の中を苦みでいっぱいにしただけの意味はあった。
リュージから貰った薬草を全て食し、斬られた傷を回復。
治療行為を受けずとも止血が済み、全快にはならないが戦闘の継続は可能。
事前に渡してくれた彼への感謝を胸中で伝え、刀を構える。
姫和との逃亡に端を発した大事件を経て、他者の追随を許さない程の力を得るに至った。
だが最強であっても万能ではない、自分一人だけで何でもこなせる訳でないのは元の世界でも、殺し合いでも同じ。
些細な事もそうでなう事も、全部含めて自分を支えてくれるのだと改めて噛み締める。
故に仲間やまだ見ぬ人の命を無為に奪う輩を、見逃す訳にはいかない。
得物を握る手に籠った力は溢れる戦意のみならず、纏う鎧によってより強くなっている。
四肢と胸部を覆う橙色はS装備、正式名称ストームアーマー。
稼働時間の短さと言う欠点こそあるも、身体能力と防御力の飛躍的な上昇を装着者に齎す。
写シを使えない今の可奈美には有難い支給品だ。
千鳥はおろか御刀ですらない、だが代わりとなる刀は両手にあった。
人斬り、岡田以蔵。
水柱、冨岡義勇。
相反する理由を刃に乗せて振るった剣士の得物。
本来の使い手無き戦場に置いて、両の刀は刀使の手に渡った。
「数を増やせば勝てると思ったのか?浅過ぎるぞクズめ」
「本当に浅いかどうか、今から見せてあげるよ」
緊張に一筋の汗を流しながらも不敵に笑う。
安い挑発と分かり切っており、激昂するのも馬鹿らしい。
それはそれとして、自分に不遜な態度を取ったのを大目に見てはやらない。
数十歩分の距離を詰めた姿を、常人が捉えるのは断じて不可能。
赤い王が死を運び、黄金が刑を執行すべく可奈美の首へ駆ける。
「……っ!」
敵の強さは今に始まったことではないが、やはり目を見張る速さ。
動作一つを間違えるだけで即、死に繋がるのは確実。
双剣を交差させた防御では押し切られる、故に力へ逆らわず受け流す。
刀身が首を逸れ、身を捻りながら斬り付ける。
刃の向かう先へ剣が戻るまでの猶予は、コンマ数秒あるかないか。
突き出す速度は弾丸と見紛う程、加速の勢いが乗り威力も上昇。
しかし切っ先が貫くのは肉に非ず、闘争の熱気が漂う宙。
外れたと感触で理解し、もう片方の刀を動かす。
次の次の次の、更に先までを考えどのタイミングでどちらの得物を使うかを構築。
一瞬の硬直とて命取りだ、時間を無駄に出来るような相手では無い。
刀身同士がぶつかり、可奈美の腕を振るわせる衝撃。
S装備と呼吸込みで殺し切れない重さなれど、刀を落とす真似だけはしない。
「ふっ…!」
強く吐いた息が合図となり、双剣を操る速度を一段階引き上げた。
そうしなければギラの剣には追い付けない。
黄金が噛み砕かんとし、白銀がさせじと爪を振るう。
奏でられる剣戟の音が鳴り止む気配は無く、止めれば死ぬと可奈美へプレッシャーを襲う。
常に首元へ刃を添えられるような圧迫感、だが後一歩の所で死は跳ね除けられる。
王の制裁を阻むのは、可奈美の脳裏に焼き付いた二刀流の技。
折神紫とタギツヒメ。
己が目で強さを捉えた彼女達の技を模倣し、ギラ相手に食らい付く。
ずば抜けた観察眼の鋭さと、相手の強さへ敬意を払いつつも自身の技へ加えるという謙虚さと好奇心。
隠世で剣を用い語り合った大荒魂との同調(トレース)が、二刀流を初の実戦で発揮可能とした。
だが届かない。
聳え立つ壁の名は宇蟲王、容易く跳び越えられる小石に非ず。
千鳥よりも刀身が長い得物の使いにくさや、刀使本来の戦闘が不可能。
そういった理由以上に、敵が呆れかえる程に強いという一点が可奈美へ決して勝機を齎さない。
(方法は……ある…!)
確実とは言えなくとも、取れる手はゼロでない。
御刀が手元から失われた反面、この地で手に入った力があった。
水の呼吸、悪鬼滅殺を為さんとする剣士達が代々受け継いだ技。
日輪刀を握っているからだろう、五大院が見せなかった型までも使い方が分かる。
問題があるとすれば、現在の可奈美は得物が二本だということ。
水の呼吸の型は、刀一本で放つのを大前提として編み出された。
冨岡義勇も竈門炭治郎も、鬼との戦いで振るった日輪刀の数は常に同じ。
音の呼吸や獣の呼吸ならまだしも、五大院に支給された日輪刀に組み込まれたソードスキルは水の呼吸のみ。
本来刀一本で放つ技にもう一本を加えれば威力と範囲が増す、などと単純な話では無い。
完成された型に異物を挟み、精度を著しく低下させるだけだ。
悪手中の悪手に他ならないだろう。
可奈美以外がやれば、だが。
刀の勢いは緩めずに、思考は焼き切れんばかりに働く。
双剣使いであるタギツヒメ達の技、水の呼吸の全て。
必要な情報は全て頭に存在している、後は自分がやれるかどうか次第。
異なる世界の強者が編み出した絶技を、反発させずに組み立てる。
どの位置へ構えれば、威力の低下を防げるか。
どのタイミングで放てば、精度はそのままにより強力な一撃となるか。
僅かなズレが一つでもあれば自身の首を絞める、だから妥協は一切許さない。
尤も、剣術に関して可奈美が手を抜くのは有り得ない話だ。
(この人は……私のことを見てない)
殺し合いに乗ったことを正しいと言う気は一切無い。
けど彼の持つ、圧倒的以外に言葉の見付からない強さを刀越しに叩き付けられ。
心が滾らないと言ったら嘘になる。
同時に、彼が剣に乗せたのは徹底的に自分達を見下す傲慢さと、落胆の混じった退屈さ。
敵として見ていない、そんな感情を向けてやる価値もない。
黄金の剣が運んで来たのは死以外に、どこか渇いた声。
正直に言って、頭に来た。
ただでさえ姫和の腕を斬り落とした件は怒っているのに、ここまで低く見られては。
こっちは食らい付くだけでも精一杯なのに、ロクに見ようともしないなんて。
昂る心は思考の加速を最大へと押し上げ、そして、
――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
刃が奔る。
迫る黄金を弾くは人を斬る為の刀と、鬼を斬る為の刀。
相容れない筈の両者は寸分の狂いなく交差。
十字を刻んだ刃が黄金と激突、ギラの剣をほんの少しとはいえ弾き返す。
タギツヒメ達の技でなければ、義勇や炭治郎の剣とも異なる。
可奈美だけが編み出した剣で以て、闘争の流れを変えに出た。
剣を手元に戻し可奈美へ斬るまでに、膨大な時間はいらない。
技の完成へ喜ぶ余裕は最初から捨て、思考のリソース全てを戦いの為に注ぐ。
――水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き
こちらも時間を掛けてはいられない。
最速の突き技を放ち、二つの切っ先が剣の腹へ命中。
瞬間的な威力は他の型以上、鬼の頸を落とせなくても使い道は多々ある。
先程よりも強い衝撃で剣を弾き、より多くの猶予を得た。
――水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦
上半身と下半身を反対に捩じり、回転の勢いを上乗せ。
双剣を豪快に振り回し、竜巻の如き斬撃が巻き起こる。
本来は水中でこそ最大限の活きる技だが、地上で使った場合でも非常に高い効果を齎す。
渦上の刃を前に、ギラが選ぶのは後退ではなく迎撃。
剣一本を振り回す動作は一見乱雑、その実己へ当たる攻撃のみを的確に防ぐ。
無意味な動作が多ければ多い程、生じる隙が大きいとはギラとて理解していた。
可奈美の好き勝手をいつまでも許可した覚えはない。
竜巻を捻じ伏せ、発生させた当人も剣の餌食にせんと振り被る。
――水の呼吸 参ノ型 流流舞い
ならばこちらが取る手は回避と攻撃、共に可能な技。
流水の如き軽やかな足運びにより、紙一重で躱す。
顔の真横を剣が通り抜けるも、焦りは面に出さず視線はギラへ固定。
舞うように描いた斬撃を、ギラもまた涼しい表情で難なく避けた。
外れた所まで予測済だ、次の手は勿論考えてある。
――水の呼吸 弐ノ型 横水車
水平回転を行っての斬り付け。
威力のみならず範囲も広い剣技に、ギラも真正面から迎え撃つ。
垂直に剣を叩き付け回転を強制的に中断、次は心臓を貫き永遠に動きを止める。
一直線に突き進む魔弾を思わせる脅威へ、双剣を敵の刀身に添える事で対処。
滑らせ狙いをほんの数ミリズラし、上体を捻りノーダメージでやり過ごす。
腕部の装甲が微かに削られたが動作に影響は無い。
だが剣だけが敵の得物ではない、四肢を用いた打撃も立派な可奈美を追い詰める。
双剣の交差で蹴りを防ぐも、体が浮くのまではどうしようもない。
S装備を纏っているにも関わらず、枯れ葉が舞うように宙へ吹き飛ばされた。
すかさず跳躍し接近、振り下ろす刃へ迎え撃つ準備は出来てる。
――水の呼吸 肆ノ型 打ち潮・乱
ギラが幾度も斬り付けるなら、対応する斬撃を可奈美も放つ。
澱みの無い刃が王の剣を寄せ付けまいとし、空中で剣戟を展開。
しかし膂力の差ではギラが上、弾き返され地面へ叩き落とされる。
――水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱
激突を防ぎ尚且つ、勝負を望む方へ持って行く。
アスファルトを蹴り、近場の建造物の壁に足を付ける。
再度蹴って別の壁へ向かえば、今度は電柱を蹴ってまた別の方へ。
縦横無尽に跳ね回って翻弄する、のではなくギラから大きく距離を取った。
逃げる為ではない、次の型を決める為に必要な動作だ。
距離が近くては余りに脆い刃しか放てず、敗北へ自ら踏み入れるも同然。
一旦離れ、しかしギラの方から仕掛けて来るのを待たない。
迅移が使えない分、現在出せる最大の走力を引き出し疾走。
間近へ到達し間髪入れずに振るった剣は、案の定敵の得物に防がれるもこれで良い。
「はああああっ!!」
斬る、斬る、斬る、斬る。
その全てが黄金の刀身を叩き、砕けんばかりの音が広まる。
後ろは見ない、前だけに目を向けて斬撃を重ねた。
双剣の勢いは低下どころか上昇し留まる所を知らない。
十を超え、二十を超え、ついに放つべき時が来たと確信。
――水の呼吸 拾ノ型 生生流転
二本の刀は双竜と化し、王を噛み砕かんと咆える。
水の呼吸の中でも随一の威力を誇る反面、十分な数の連撃が必須となるのがこの型だ。
炭治郎をして水の呼吸最強と評した斬撃が、此度は双剣により更なる威力を叩き出す。
剣を弾き飛ばすには至らない、しかし真っ向から受け止め体勢が崩れる。
(来た…!)
見せた隙は間違いなくこれまで以上に大きい。
ここしかない、勝負を決めるにはこの瞬間を置いて他に無い。
逃せぬ瞬間を前に可奈美もまた、取るべき手を一つに絞る。
――水の呼吸
日輪刀を握りソードスキルが脳内に浮かんだ中に、この時の為に使おうと決めた技があった。
五大院も存在は把握していたが、可奈美相手には終ぞ見せぬまま。
使わなかった理由にも察しは付く。
――拾壱ノ型
正確には使えなかったと言うのが正しい。
元々の高い身体能力に加え、ソードスキルによる呼吸の使用。
超人と呼ぶに相応しい力があって尚、使いこなすのは非常に困難な技。
友を喪い、己が柱であることへ悩み続け、それでも鬼を斬り続けた男の歩みの証。
技が生まれた経緯も、鬼殺隊の長きに渡る戦いだって可奈美は知らない。
けれど、同じ剣を振るう者として技を編み出した者には尊敬の念を抱く。
修練と実戦の果てに生み出した顔も知らぬ男へ、心中で一礼。
あなたの剣を、あなたの技を、守る為に使わせて欲しいと。
呼吸とS装備に加えもう一つ、令呪を使い技を引き出せるコンディションへと近付ける。
肉体が出せる限界の、ほんの少しだけ先へ。
体中の血液が煮え滾り、内より溢れた熱が指先まで行き渡る。
鬼を狩り人を守った男の技が、荒魂を狩り人を守る少女へと継がれた。
――凪
双剣が咆える、剣士の戦意に呼応し煌めく。
可奈美が閉じ込めた範囲全てが、双剣の支配下に置かれる。
刀の届く範囲全てに縦横無尽の斬撃が襲う、攻防一体にして水の呼吸の奥義。
狩り場にして絶対の領域へ、王が侵入した時が決着の時だ。
終わらせる、これ以上誰も殺させない為の剣が迫り――
首に食い込んだ刃が真横へ動き、可奈美は呆気なく死んだ。
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!!!!」
見えた光景は、己の死は現実では無い。
だがもう間もなく起こる、覆せない未来。
(ダメ、だ…!)
構築した戦闘図式へ新たに書き込まれる己の死。
妄想では無い。
凪を使う為極限まで張り詰めた神経が、この戦闘中もずっとギラの剣を目に焼きつ桁けた観察眼が。
宇蟲王の殺気を叩き付けられた心が、結末を知らせたのだ。
組み替える、組み替える、組み替える、組み替える、組み替える。
持ち前の臨機応変さが別の戦術を再構築。
回避に動く――――死。
別の方法で攻撃――――死。
双剣を翳して防御――――死。
残っている令呪を使う――――死。
壱ノ型――死。
弐ノ型――死。
参ノ型――死。
肆ノ型――死。
伍ノ死。
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
死
「ゴミが」
.
○
膝を付き、可奈美は自分の体が妙に軽いと気付いた。
ずっと持っていた大事なものを落としてしまったような、そんな不安に駆られて。
視線を左右に動かし、すぐに納得する。
見るんじゃなかったと、心の底からの後悔も抱く羽目になったが。
地面を転がるのは刀身の長さが異なる二本の刀。
他にも見覚えがある、白と橙色と、その先の肌色。
剣士に無くてはならない体の部位、刀使としても一人の少女としても可奈美と共にあったモノ。
両腕がS装備諸共斬り落とされ、地面を汚す血の上に浸していた。
遅れて体に熱さを覚え、それも急速に薄れていく。
見下ろせば美濃関学院の制服は、元の色が分からない程に真っ赤。
骨まで断たれ皮数枚で繋がるだけの腹部から、血と無くしたらいけないものが溢れ出す。
元に戻そうにも、そうする為の手が自分にはもう存在しない。
視界に一瞬、血とは別の赤が映り込んだ。
顔を上げる動作をやけに億劫に感じながら、眼前に立つ王を見る。
「殺意なき剣で俺に歯向かうとは笑止千万。あのゴミ(羂索)といい貴様といい、どこまで俺を不愉快にさせれば気が済む」
斬り合いを続け、刃の檻に閉じ込められた時もずっと気付いていた。
可奈美の猛攻に自分を殺す為の刃は無い。
あの手この手で攻め立て、技を次から次に繰り出しても。
急所を狙った一撃はただの一つも無く、命を奪わずに無力化し戦いを終わらせる算段。
本来であれば範囲内の標的を細切れにするのだろう檻すら、ものの見事に即死には至らぬ箇所のみを襲って来た。
雑魚相手には通用するだろう。
だが忘れるなかれ、ここに立つのは宇蟲王。
黒き最後の神や13の災害の魔女に並ぶ、絶対的な強者。
急所を外す為に生まれる針の穴程の綻びをも見逃さず、己が剣で檻を完全に破壊。
殺意の宿らぬ刀が届くなど有り得ないと、そう思い知らせるかのように終焉を与えた。
所詮はゴミの児戯と下に見るのは変わらないが、しかし、しかしだ。
自らの刃を腐らせるが如き愚行に出るなど、宇蟲王へ剣を向けておきながら許し難い。
立ち塞がり啖呵を切ってみせたのなら、相応に全てを出し切るのが道理だろうに。
些事に過ぎなくとも、妙な苛立ちが僅かにあった。
「そっか……負け…ちゃった……んだ……」
敗北と、待ち受ける末路を噛み締めるように呟く。
悔しいと思わない筈が無い。
悲しみが無いなんて有り得ない。
それでも、どうしても相手を殺す為の剣は振るえなかった。
試合だったら負けて悔しいけど、そこが終わりじゃない。
もっと鍛えて強くなって、今度は勝てるようになろうという。
次があるから、終わりにはならない。
けど死んだらもうそこで最後。
次の為に頑張れはしない、だってその『次』が無いのだから。
一人の女の子を思い出す。
強くて、時間が無くて、誰よりも焦っていた少女。
最期を直接見てはいないけど、納得できなかったろうとは流石に分かる。
あの時は時間が無かったのもあって、自分達を先に行かせた仲間の判断を責めはしない。
だけど、無念と悔しさに蝕まれながら逝ったのは自分が考えるよりずっと悲しくて。
守る為の剣ではない、誰かの次を奪う、死を与える剣を振るうのは。
リュージから忠告を受けて尚も、やっぱり出来なかった。
口元が動き、血の塊を吐き出す。
幽世から帰ってきた世界で待っていてくれた皆。
殺し合いに巻き込まれてしまった友達。
そして、何でも一人で抱え込んでばかりだったあの子。
この先もずっと一緒にいられて、決勝戦の続きをする筈だった――
「ごめん、ね……」
涙と共に紡がれた言葉は、届くことなく霞のように消える。
あの日、二人で見た桜はもう、どこにもなかった。
◆
「―――――お前ぇええええええええええええええええええええええええっ!!!!!」
それを見た時、薫を突き動かしたのはヒーローとは程遠い衝動。
怒り、いや憎しみだ。
可奈美が死んだ、目の前で殺された。
腕を奪われ、命を奪われ、なのに自分は一体何をしていた。
痛みに呻き藻掻く以外に何もやれなかった数分前の己を、気が済むまで殴り付けてやりたい。
爆発する感情は薫の中にあった躊躇を取り払い、マークツヴォルフの機動鍵を使用。
芳佳にも降り掛かったリスクを知っている為使えずにいたが、もう関係無い。
重装甲とは裏腹の機動力で突進、振り被った大剣を叩き付けてやる。
生身の時よりも遥かに上がったパワーを乗せた一撃に、命が無事でいられる保障は無い。
構うものかと憤怒に支配されるがまま鉄塊を振るった。
「ゴミを踏み潰しただけだろう、喚くな鬱陶しい」
薫の激情をそよ風同然にさらりと受け流し、空いた手を翳す。
それで防いでいるつもりか、手諸共潰してやろうと大剣が迫る。
が、ほんの数ミリ手前で止まりそれ以上進めない。
どれだけ踏ん張っても掌に切り傷一つ付けられず、見えない壁に邪魔されているようだった。
軽く手を押し返す動作をすると、纏った装甲が火花を吹き背中から倒れる。
入れ替わりに仕掛けたのはアンクだ。
正体不明の攻撃をされる前に拳を突き出すも、薫同様ギラに触れることなく動きを止められた。
「貴様もか。あのゴミにそこまで入れ込んでいたのか?」
「そんな訳あるか…!勝手に殺したお前が気に食わないだけだ…!」
強気な言葉とは裏腹に詰めの先すら届かない。
押し返され薫の横に転がると、共に痛みを噛み殺して立ち上がろうと藻掻く。
それを見て何もしないギラではない、翳した手はそのままに無駄な抵抗を封じる。
「ぎっ…!?」
「がああああああっ…!」
頭上から不可視の力が降り注ぎ、這い蹲った体勢を強制的に維持させられた。
力場の形成による防御や攻撃、これは正しい歴史を歩んだギラ・ハスティーには無かった力。
前宇蟲王ダグデド・ドゥジャルダンの持つ力の一つだ。
但し、正史とは全く異なる方法で王になったこのギラは違う。
ダグデドに創られた生命が、幼少時にゴッドクワガタのシュゴッドソウルを大量摂取し一気に覚醒を果たした存在。
肉体に宿るダグデドの力が活性化され、結果同じ能力を使えるに至ったのである。
埃でも払う仕草で手を振れば、二人共にうつ伏せのまま後方へ引き摺られた。
体が地面と擦れ合う度にガリガリと削られ、装甲と肉体に両方にダメージがいく。
どうにか抜け出そうと試みるも無駄だ、頭上から掛かる重圧が増し呻き声すら出せない。
プレスされるのは時間の問題、だがそうなる前に響いた銃声が二人を救った。
(可奈美…クソッ…!)
動かなくなった少女を視界に入れ、リュージは思わず奥歯を噛み締める。
数時間前に会ったばかりの相手の死に大きな悲しみは、正直言って抱けない。
付き合いの長さで言ったらまだサンセットレーベンズの方が長く、クランだって仮に過ぎなかった。
だからといって、何一つ感じるものが無い程冷徹な人間では無い。
弟を殺した外道とは趣味嗜好が違うだけで、リュージから見ればギラもまた生かすべきではない男。
ささくれ立つ心のままにトリガーを引き続け、蜂の巣にせんと銃弾が群れを成して襲う。
だが殺意が本物でろうとギラを殺せるとは限らない。
チラと横目で見ただけですぐに興味も失せたのか、薫達の方へ戻し剣を振り回す。
我先にと威勢よく突き進んだ弾丸は、一発残らず剣の餌食となった。
だったらと武器をボルトスロワーに持ち替え、爆弾付きの鉄矢を発射。
プラーガに寄生された生物兵器にも、有効なダメージを与える威力だ。
力場を発生させる手を雑に払うと、薫達も不可視の手で殴り飛ばされた。
ようやっとリュージの方へ視線を向け、己を射抜く矢を目視。
命中の寸前で二本指を用い挟み阻止、紙飛行機を投げる気安さでリュージへ投げ返す。
慌てて避けるもこれは爆破機能付きの矢だ。
爆風に吹き飛び地面を転がったリュージを冷めた目で見下ろし、瞬間己の身に異変を感じた。
四肢と胴の体温が急激に下がり動きを封じられる。
凍結を使った拘束が誰の仕業かは分かり切っており、またもや無意味な真似に出たらしい。
しかし今回は己を縛り付ける力が幾分か増している上に、全身が凍り付くスピードも速くなっていた。
ジ・アイスを解禁しても効果は薄い、だから令呪を使って出力を元の世界での時並に引き上げたのだ。
ナイトメアフレームですら凍り付かせる事が可能なギアスで動きを止め、反対にこちらが攻める番。
ドライバーを操作するジオウに並び、魔進チェイサーも銃口を押し込む。
『FINISH TIME』
『TIME BREAK!』
『EXECUTION BAT』
ライドウォッチとチェイサーバイラルコア、それぞれからエネルギーを流し込み必殺の技を発動。
『キック』の三文字が複数出現しギラを包囲、拘束をより強める。
長くは止められないと双方承知の上だ、抜け出される前に倒すべく跳躍。
エネルギーを収束させた靴底と飛行ユニットで加速させた蹴り。
仮面ライダーとアナザーライダーを打ち破った力を前に、王は藻掻きもせず見据える。
「本気を出してこの程度とは、どこまでもいっても児戯に過ぎんな」
己を倒すには程遠いと分かっているなら、焦る必要がどこにある。
ギラの背後が水面のように揺らめき、十数本の光剣が顔を出す。
どこか紙飛行機に似た形状の宇蟲剣・ブラッドフォークの生成と射出。
ダグデドが使った能力の一つで迎撃に出た。
馬鹿正直に突っ込んで来るならむしろ好都合。
自ら罠にかかったも同然、ブラッドフォークの一斉射出で全身を痛め付ける。
何本かは蹴り砕くが数は圧倒的にギラが勝る、瞬く間に勢いは落ち空中で狙い撃ちだ。
拘束を抜け出した頃にはどちらも地面を転がっており、ジオウに至っては変身解除される始末。
苦し気に顔を歪め落ちたドライバーに伸ばした手目掛け、黄金の切っ先が突き刺さった。
「がぁ…っ!」
「どこかで見た顔だと思ったが…ルルーシュとかいうクズか。俺を差し置いて王を名乗るとは度し難いぞ貴様」
剣を動かす度に貫かれた傷口が広がり、焼ける痛みが襲う。
どうやらこの男もテレビ局からの放送は確認していたらしい。
我が兄ながら本当に面倒な真似をしてくれたなと、苦笑いを浮かべ見上げる。
「生憎だが…彼とは別人だよ…向こうと違って偽りの王、と言うのなら合っているがな……」
「笑わせてくれる。俺以外の王など等しく偽りに過ぎん。生きた全て、取り巻く一切合切が俺に踏み潰されるだけの塵でしかない」
軽く片手を上げ、新たに数十本のブラッドフォークを生成。
指を鳴らしたのを合図に、みっともなく足掻く者達へと放たれる。
息も絶え絶えに得物を振るう薫や、悪態をを吐きながら火球を撃ち出すアンク。
狙われたのは他にもいる、離れた位置へ千佳達を運んだナーゴにもだ。
『METAL THUNDER』
『TACTICAL THUNDER』
ビートアックスを操作しエレメンタルを付与。
掻き鳴らされた音は雷撃に代わり宇蟲剣を打ち砕く。
ビートレイズバックルを使用中なのもあり、高威力・広範囲の雷が降り注ぐ。
しかしギラの力はビートフォームを上回る脅威。
防がれた分以上の数を瞬時に射出し、ナーゴへと光剣の雨を降らせた。
「うぅ…!」
「果穂ちゃん…!」
「大丈夫、です…!千佳ちゃんは、隠れていてください…!」
はるかと共に匿われていた千佳だが、果穂の悲鳴に堪らず飛び出そうとする。
呪文を使って助けるつもりの彼女を制し、ナーゴはふらつく体をどうにか支えた。
戦闘時での援護に加え、はるかの傷を癒す為に繰り返し呪文を唱え千佳の体力は大幅に削られている。
これ以上は彼女の体が危険、無理はさせられない。
果穂自身もまた軽くない苦痛に苛まれながらも、決して倒れまいと踏ん張った。
「何度足掻こうと無駄だ。口で言っても分からぬゴミには、これが相応しいだろう」
指を鳴らし生成された宇蟲剣は先の数倍。
地上で蠢く蟻を徹底的に捻じ伏せる、悪夢の如き豪雨を降らせる。
這い蹲った偽りの魔王とて死からは逃れられない。
玩具を使って奇怪な鎧を纏わせる暇など与えるものか、首元へ剣を添えた。
ゴミの分際で王を名乗った恥知らずに、相応の罰を与えるのだ。
「やめ…ろ……!」
大剣を杖にしてよろよろと立ち上がった薫の言葉を、王は聞き入れない。
有象無象の願いを叶えてやる義理は微塵も無い。
刀身を罪人達の血で染める瞬間を、王の振るう剣が待ち侘びている。
展開された宇蟲剣の大群が、早く蟻共を食い千切らせろと涎を垂らす。
「死ね、死んで俺の為の道を開けろ」
告げられたのは慈悲の宿らぬ刑の執行。
正義や信念、譲れぬ願いではどうにもならない王の判決。
絶望の二文字が支配する場へ、とうとう幕を引く時が来た。
王が勝ち、他は全て死に絶える。
最初から決まっていた結末が――
宇蟲剣が木っ端微塵に砕かれ、覆された。
「なに……?」
初めて、ギラの顔に驚愕が浮かぶ。
自分が何かやったのではない、今更になって刑の執行を取りやめたのでは断じてない。
では一体何がと、疑問が浮かぶも答えはすぐに目の前へ現れた。
「何をしている…!」
鼓膜を震わせたのは、憤怒一色に染まった男の声。
瞳が映し出したのは、己の剣に負けず劣らずの輝きを放つ白銀。
振り被ったソレが迫り来る中、咄嗟に得物を防御に翳す。
「――――っ!」
体に傷は付けられていない、だが踏み止まれない。
刀身越しに襲った衝撃は想像以上の強さ、両足が地を離れ宙へと投げ出される。
後方へと見えない手に引っ張られている感覚、しかし無様に地面を転がるのはプライドが許さない。
瞬時に体勢を整え難なく着地。
何事も無かったように、なれど僅かな心のざわめきを意識しながら見据える。
上空を支配する宇蟲剣の大群を、剣一本で薙ぎ払った相手を。
王の判決に異を唱えた、許し難き大罪人を。
「お前は一体、何をしているんだ!!!」
青い風が吹き荒れる。
希望と言う名の嵐で以て、絶望を消し飛ばす風が。
誇り高きサイヤの血を引く戦士、トランクスが宇蟲王と対峙する。
◆
森を抜け市街地の上空から探索を行っていた時だ。
あるエリアの境目に差し掛かったタイミングで、尋常ならざる程に膨大で、邪悪な気を感じ取ったのは。
空中で思わず動きを止め、気の主がいるだろう方を睨む。
緊張で顔を強張らせ、ゴクリと生唾を飲み込むのも当然の反応だろう。
一戦交えた神を名乗る黒い男、奴にも並ぶ程の絶大な力を放っているのだから。
(他にも何人かの気を感じるが……ダメだ、やっぱりこれ以上は上手く探れない)
大き過ぎる存在に隠れてはいるが、他にも複数人の気があった。
しかしレジスターの機能で能力を制限されてるのもあって、具体的に何人がいるかは分からない。
そもそもここまで強い気の持ち主なら、もっと遠くからでも探知出来た筈だろうに。
単純な戦闘力のみならず、こういった参加者の探索に役立つ力も元のままでは不公平と判断されたのか。
余計な事ばかりされて不快に思わないでも無いが、今考えるべきはそれじゃない。
「トランクスくん?どうかしたの?」
腕の中からぴょこりと顔を出し、小首を傾げて同行者が尋ねる。
小動物を思わせる可愛らしい仕草へ、和んでいる場合では無い。
一旦地上に降り、物陰に隠れながらしおに説明を行う。
街の離れた方に危険な参加者がいて、他にも何人かの者が恐らく戦っていると。
(どうする…?)
説明を聞き両目をパチクリさせるしおの真正面で、トランクスは考え込む。
高確率で殺し合いに乗った者が暴れており、乗っていない者が襲われているとすれば。
助けに行かないという非情な決断に出る気は無い。
だがその場合、しおをどうするかが問題だ。
事が済むまでどこかに隠れていてもらおうにも、自分が戻るまでの間にトラブルが起きないとも限らない。
善良な参加者に見付かるのならともかく、その反対だってあるだろう。
黒い男程の力を持たなくとも、しおのような幼子からすれば大抵の相手が脅威。
それならトランクスと共に戦場へ行く手もあるが、そっちも問題が無い訳では無い。
直接姿を見てはいないが、相手は黒い男と同レベルと考えて良い程の気の持ち主。
いざ戦闘になった時、万が一しおを巻き込む事になったら目も当てられない。
連れて行くか隠しておくか、どちらを選んでもリスクは付き纏う。
「トランクスくん」
悩む姿に察しが付いたのか、それともただ励ましたいだけなのか。
丸い瞳で真っ直ぐに見つめ口を開く。
「私は隠れて待ってるから、トランクスくんは行って大丈夫だよ」
「しおちゃん…?いやけど、それは…」
思わぬ提案に口籠る。
齢一桁の少女に気を遣われる程、自分は分かり易く顔に出していたのか。
行って良いとは言うけど、うん分かったとあっさり頷けはしない。
しおを残して本当に大丈夫かという危惧は、簡単に拭えないのだから。
決心の付かないトランクスを見て、ニッコリと笑みを浮かべる。
年上の彼が悩む様を馬鹿にしているからではない。
安心させる為の、慈愛に満ちた母のような笑みだった。
「あのね、トランクスくん本当は色んな人を助けたいのかなあって、思ったの。だからもし、ここで行かなかったら、こうかいしちゃうんじゃないかなって」
「……っ」
違う、とは言えない。
生きて来た中で助けられた者とられなかった者、多いのは圧倒的に後者だ。
戦う為の力ならあった、強くならねばと己を追い詰め鍛え続けた。
そこまでしても人造人間の暴虐には手も足も出ず、遊び半分で街が破壊されるのを見せ付けられたのは一度や二度では済まない。
ザマスの時だってそう。
やっと得られた世界の平和が呆気なく崩れ去り、またしても自分は取り零し続けた。
助けられなかった、失った痛みは今も忘れられない。
だからこそ救える命があるのなら、後々後悔を抱く真似はしたくない。
「それに、ね」
笑みから一転、眉尻を下げ不安気な表情を作る。
「向こうにさとちゃんがいるかもしれないから…助けて欲しいから…だから、おねがいします」
「っ!」
切実な想いをぶつけられ、ハッと己の判断の遅さを悔やむ。
しおの言う通りだ、彼女の探し人である松坂さとうがいる可能性はゼロじゃない。
こうして迷っている間にも、事態どんどん動き続け手遅れになったとておかしくない。
必ずしおをさとうと再会させると約束しておきながら、何をやっているのか。
己を叱咤する言葉は幾らでも出て来るが、今やるべきはそんな事ではないだろう。
「分かったよしおちゃん。さとちゃんがいたら、絶対に君の所に連れて戻って来る」
安心させるように、自分の迷いを断ち切ってくれた礼を籠めて頭を撫でる。
民家の奥へとしおを隠し、万が一の時の為にどうするかも決めておく。
幸い自分がいない間に身を守り、尚且つ逃げる為の方法はあった。
しおの支給品の一つ、破壊神ビルスの従者のウイスが使う杖。
殺し合いの為に細工されたのか、誰でもウイスと同じ力を使えるとの旨が説明書には書かれていた。
何かあればこれを使って逃げ、自身の居場所をトランクスに通信で伝えるということで話は纏まる。
神々の道具まで奪われ利用されている事実に、主催者達の得体の知れなさが改めて圧し掛かる。
ただ深く考え込むのは後回しだ、一刻も早く向かわねばならない。
しおを置いて行く事へ迷い全部が無くなってはいないが、ここでまごついていても時間が無意味に過ぎていくだけだ。
「なるべく急いで戻って来る。けどもしもの時はすぐに杖を使って逃げるんだ」
「うん。トランクスくんも、きをつけてね」
心配してくれる彼女をもう一度撫でてやり、今も尚揺るがない気の持ち主の所へ急ぐ。
その背を見送る少女の視線は、あっという間に届かなくなった。
○
「気持ち悪いなぁ…」
トランクスが去り、民家の奥に隠れポツリと呟く。
本心から吐き捨てた声は誰の耳にも入らない。
家の中にいるしお以外に聞く者はおらず、咎められもしない。
撫でられた頭部を擦り、僅かに眉を顰めた。
トランクスが善人か悪人かと問われれば、前者だとはしおにも分かる。
初対面の自分を助け、怪我の手当てをしてくれて。
さとうを探すのを手伝うと言い、足手纏いの自分を守ろうとしてくれる。
強さと優しさの両方を兼ね備えた男の人。
幼いしおにとって化け物みたいな父、父のせいで壊れて自分を捨てた母。
二人だけの部屋に来る前に見た人達とも、外の世界へ飛び出した時に見た人達ともまるで違う。
だからこそ、さとう程ではないけどトランクスの事も最初は好意的に思えた。
一度は心を許し掛けたから、余計に失望と嫌悪も大きい。
自分一人の価値観に当て嵌めて、勝手にさとうとの愛を理解した風になって。
いっそトランクスが悪い人ならまだマシだった。
危ない時の盾に使う気で自分を生かすような人であれば、何を言われようと「こういう人だから」で割り切れたろうに。
トランクスが一時的でも自分の元を離れ、危険だとは承知している。
もし誰かが襲って来くればしお自身の判断と支給品以外に、頼れるものは何も無い。
それでも送り出したのは口に出した通り、襲われてる中にさとうがいた場合を考えてのこと。
悔しいけど、自分が参加している中で弱い方だとはしおも自覚してる。
だからもしさとうが危機に陥ってるなら、トランクスを使うしかない。
仮にさとうがいない場合でも、彼女を襲う可能性の高い者をトランクスが消してくれるのだからこっちにとっては都合が良かった。
その為に、トランクスに決心を付けさせる言葉を紡ぎ態度を取った。
トランクスのことを考えて、尚且つやる気を出させるような「良い子」を演じた。
好意なんて微塵も抱いていない、こんな状況でなかったら二度と関わりたくない。
しおにとって特大の地雷を踏んだ相手でも、今は必要不可欠な存在。
自分とさとう、二人のハッピーシュガーライフの為には嫌悪を飲み込んででも、相手の好むだろう顔をする必要がある。
「さとちゃんも、こんな気持ちだったのかな」
しお以外の相手に好きと言い、愛を嘯いたことでさとうは強く後悔していた。
ハッピーシュガーライフを守る為とはいえ、しおへの裏切りに等しいと。
今の自分と同じ気持ちだったのだろうか。
そう考えると、心がほわほわしてくる。
こんなに嫌で嫌で、苦い思いになってでも自分との生活を守ってくれた。
それくらいさとうが自分を好きでいてくれた、さとうからの愛がこんなにも大きいと改めて実感する。
「私も頑張らないと」
さとうがずっと大変な戦いをして来たのに、自分一人へこたれてる訳にはいかない。
今はここでトランクスを待ち、万が一が起きた時も考えて杖をぎゅっと握る。
自分の体より長いせいで抱きしめてるような体勢になり、ふとこれを使えば離れた場所の景色も見れるのを思い出す。
じゃあ使ってみようとするも、音が出るから隠れてるのもバレると思い直す。
「さとちゃん…はやく会いたいな……」
だからトランクスくんには頑張って欲しいな、と。
送り出した時と全く異なる声色の呟きは、一人ぼっちの部屋に小さく溶けていった。
【エリアH-6とI-6の境界/現代都市 民家内/9月2日午前8時00分】
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷(処置済み)、トランクスへの生理的嫌悪感(大)
服装:いつもの
装備:天使の杖@ドラゴンボール超
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:さとちゃんとハッピーシュガーライフを。
01:トランクスくんをつかってさとちゃんのところに行く。
02:そのためにはトランクスくんと一緒にいるのも我慢しなきゃ。
03:トランクスくんが戻って来るのを待つ。
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考
◆◆◆
一足遅かったことをトランクスは嫌でも理解させられた。
呻き倒れる者達が複数、だが彼らはまだ生きている。
両腕を失い、生きる為に必要なモノが体外へ零れ落ちた少女。
どうしようもないくらいに手遅れだと、一目で分かってしまう。
知らず知らずの内に強く握られる拳は、己への不甲斐なさと下手人への怒りが強まる証拠。
世界が違おうと結局守れない者は現れる、現実を突き付けられるも膝を折って屈するにはまだ早い。
「お前は…羂索の言う事を真に受けるのか!?」
何せ危機は去っていないのだ。
姿を見て確信を抱いた、強大な気の気配を誰が放っていたのかを。
真紅を纏い、黄金の剣を手にした王。
黒い神とはまた別ベクトルの危険性を孕んだ相手への問い掛けに、鼻で笑われ返答があった。
「世迷言を抜かすな、歓迎もなっていないあのゴミどもはいずれ殺す。その前に有象無象を掃除するだけだ」
「…そうか、分かったもういい。お前を倒さない理由は無くなった」
今の言葉で十分、嫌と言う程に理解した。
人を人とも思わない、命を玩具かそれ以下にしか見ていない。
自分の世界を崩壊へと追いやった宿敵達と、この男は何ら変わらないのだ。
柄を握る手に力が籠る、今から男を斬るのに何一つ躊躇は抱かない。
絶対に相容れないと分かった以上、最早対話の余地は双方必要無し。
ならばここからどうするか。
決まっている、思考の沼に沈まずとも答えは出ている。
敵を倒す、その一つだけで良い。
青い弾丸が発射されたようだと、陳腐な喩えだがそう言うのが相応しい。
激情を含んだ言葉を言い終えた次の瞬間、ギラの目と鼻の先の距離まで接近。
いつ動いた、足を一歩踏み出す動きすら捉えられない。
ヤードラット星に伝わる瞬間移動に非ず、目視不可能なスピードで距離を詰めただけのこと。
次いで起こるは破裂するのにも似た、金属同士の衝突音。
ただ近付いて終わりじゃない、間合いへ入り即座に剣を振るった。
頭頂部から股までを切り裂き真っ二つ、改造されたフリーザ同様の末路を与える一撃。
その惨めな終わりを実力で以て跳ね除けるのが宇蟲王。
トランクスの動きを一挙一動しかと捉え、同じく剣を振るい防御。
鍔迫り合い、互いの得物を挟んで睨み合う。
押し込み無様によろけさせ、生まれた隙に切り刻む。
そういった流れにはどちらも持って行けない。
片方が力を籠めればもう片方も負けじと押し返す、互いに一歩も後退せず拮抗。
代わり映えのしない膠着は共に望む所に非ず。
弾かれたように後方へ下がるのは断じて押し負けたからではない。
同じタイミングで仕切り直しを選び、1秒の経過も待たずに再度激突。
白銀と黄金が咆哮を上げ、食らい尽くさんと牙を突き立て合う。
王の為の剣に宿す殺意を共に叩き付ける。
ギラが狙うは首、王へ歯向かう罪人には斬首刑が相応しい。
横薙ぎの一閃が空気を引き裂き、直接触れずとも空気の振動で肉を斬られ兼ねない。
罪人の血を求める黄金を、逆に砕き散らす勢いで白銀が阻む。
自身を殺す刃を弾き返したなら、今度はこっちが斬り伏せる番だ。
斜め上からの振り下ろし、袈裟斬りにギラは防御では無く回避を選ぶ。
ぐるりと上体を捻りつつ真横へ移動、敵の視線が捉えるのを待たず斬り付ける。
何百何千と感じた命を奪う手応えは無く、翳された白銀に己の姿が反射。
トランクスが味わって来たのは、視界のみに頼っていて勝てる戦いではない。
五感全て、時には己の直感すらも総動員させねば明日を拝めない死闘。
絶望と悲しみに蝕まれようと折れぬ心が、今この瞬間までトランクスを強くさせた。
守らねばならない命がある、果たせねばならない約束がある、帰らねばならない人が待っている。
邪悪に捧げる命など、最初から持ち合わせていない。
腹部目掛けて剣を突き出すも、掬い上げた黄金が王の死を遠ざける。
がら空きの胴体が生まれた、とはならず電光石火の勢いで振り下ろす。
僅かに身を引き切っ先が顎先スレスレを通過、反対に顔面へ刃を奔らせるも白銀がそれを許さない。
狙うは急所、お互い殺すのに微塵の戸惑いも持たない。
だが未だ一滴の血も流れず、与える死は常に拒絶される。
「ハアアアアアアッ!!」
怒号一閃、腹の底からの叫びも剣に乗せての一撃。
速さも威力も申し分ないが、気合一つで倒せる程宇蟲王は甘くない。
同等のスピードで剣を叩き付け、弾かれるや否や次なる剣をトランクスが振るう。
地獄へ叩き落とさんとするのを敵が受け入れる事は無い。
またもや弾かれ、なれば次だと振るい、再び躱され、今度は自分だと斬り付けられる。
斬り結ぶ敵の動き全てを瞳が捉え、空気の揺れを肌で感じ、遥か先まで互いの手を読む。
積み上げた経験と我が物にした絶技、可能とするだけの身体能力、揺らぐことのない心意気。
全てを持ち合わせた二人だからこそ成立する剣戟。
「そこだ!」
「小賢しい…!」
心臓へ一直線に駆ける黄金を弾き、トランクスが翳したのは左手。
武器の類は握られていないが問題ない、既に攻撃の準備は完了済み。
収束させた気弾を至近距離で放ち、ギラは跳躍しやり過ごす。
剣以外の使用禁止というルールはない、倒す為に技の全てをぶつけてこその殺し合いだ。
その点はギラも文句を付ける気は無く、小細工諸共捻じ伏せる気でいた。
頭上を取ったこの機会を利用しない手はない、剣に己の力を流し込み振り下ろす。
赤と黒が混じり合った斬撃の襲来を受け、トランクスが取る手は迎撃。
同じ技をこっちが使えないと侮ってもらっては困る、気をコントロールし刀身へ沿うように纏わせた。
斬り上げにより放たれるは青い刃、王の刃と激突し消滅。
エネルギーの余波を突っ切りトランクスも飛ぶ、待ち構える王もまた剣で以て応えた。
交差は一瞬、離れた距離で背を向け着地。
振り返った時、ハラリと落ちたのは青い数本の髪の毛。
一手届かなかった己の剣よりも、ギラが意識を向けたのは自分の頬。
刻まれたのは薄い一本線、涙のように一滴の血が垂れる。
「成程……」
ほんのちっぽけとはいえ、王の顔に傷を付けられた。
怒るのが正しい反応だろうし、全く不愉快でないと言えば嘘になる。
しかしそれ以上に湧き上がる思いが、静かな呟きとして外に漏れた。
宇蟲剣を細切れにし、自身を吹き飛ばした時から薄々予感はしていた。
実際に剣を交えれば間違いでは無かったと確信する。
秘めた力、編み上げた技、ブレることのない殺意。
こうも見せられては今更疑う余地も無い。
羂索は児戯に自分を招いたとばかり思っていたが、丸っきりそういう訳でもない。
少しだけ、本当に少しは考えている。
頬を吊り上げ、獰猛な笑みを浮かべる。
ブチリブチリと踏み潰す掃除に過ぎない、僅かな期待を抱く価値もない。
その認識は少々変えねばなるまい。
どうやらやっと、やっと!
「やっと歯応えのある獲物が現われたようだな!」
トリガーを引く。
この男相手ならば、見せてやっても良い。
宇蟲王の本当の力を、数多の星を滅ぼした支配者の姿を。
そうして、絶望の果てに殺してやろう。
「王骸武装!」
『Lord of the Lord of the Lord of the Shugod』
黄金が、オージャカリバーZEROが奏でる。
新たに王の為の鎧を纏い、天を突きさす黒い仮面を装着。
豪奢でありながら禍々しさを放つ盾を装備。
ギラ・ハスティーが変身するクワガタオージャーの面影を残しつつ、決定的に異なる存在。
イーヴィルキングの降臨に、誰もが言葉を出せない。
突然現れギラと渡り合った青年へ呆気に取られ、次の瞬間には強大な敵がより絶望的な存在感を放つ。
自身が生きた世界に蔓延したのと同じ空気を感じ、トランクスは静かに告げる。
「全員、今すぐ逃げてくれ」
退避を指示するのは自分でも勝てない相手と悟ったからか。
いいや違う、緊張こそしていてもトランクスに闘争を投げ出す意思はない。
ただ周りの者達には逃げて貰わないと困る。
何せここからは――
「ここから先、あなた達を巻き込まない自信がない…!!」
気の爆発が巻き起こる。
トランクス中心に光の柱が出現し、戦場を蝕む絶望を消し飛ばす。
超サイヤ人、たった一人の師の喪失と引き換えに得た力。
イーヴィルキングを前にトランクスも分かったのだ、周囲に気を遣っていられる相手ではないと。
強大という言葉ですら足りない、希望の戦士と絶望の王が睨み合う。
立ち入ることの許されない空間が形成され、周りの者達も我に返った順に動き出す。
呆けた者は強引にでも引っ張り、言われた通り離れて行く。
警告は間違いじゃあない、それだけ王の相手を引き受けた青年も余裕がないと理解した。
蜘蛛の子を散らしたような者達へ、ギラもまた然したる関心は向けない。
それより今は忌々しくも強烈な輝きを放つ、眼前の標的から目を外せなかった。
一瞬で決着が付く肩透かしな展開にはならないだろう。
そうでなければ、わざわざこの姿になってやった甲斐もない。
「精々足掻け、王の期待を裏切るな!」
「お前の道楽の為に、戦っているんじゃない!」
狂喜と憤怒を剣に乗せ、勝利を譲らぬと刃が駆ける。
こいつは倒す、こいつは殺す、こいつには負けられない。
内から溢れ続ける衝動が動作全てを加速、苛烈な斬り合いへと発展。
常人は勿論、達人や魔人の域に足を踏み入れた者でさえ、剣がぶつかっているとは分からないだろう。
手元も握った得物も捉えられない、見えるのは黄金と白銀の輝きのみ。
共にパワーやスピード、動体視力等全ての基本的な能力が爆発的に上昇。
振るう得物もまた、耐えられるだけの強度を誇る王の剣。
使い手の力が強過ぎる余り、最早武器では無く兵器と化す。
刃が喰らい合う毎に発生する衝撃は、不可視の刃となって二人を取り囲む者を切り刻む。
民家や商店は勿論、聳え立つビルとて原型を留められない。
「せりゃああああああああああっ!!!」
腰に捻りを加えての回転斬りへ、しゃらくさいとギラも一文字斬りを繰り出す。
両者共に刃は掠らず、有り余る力の余波がエリアの破壊へ拍車を掛ける。
通行人がいれば、今頃は辺り一面血の海となっていたのは確実。
つまらないIFの光景を頭に入れる余裕は無い、アスファルトを踏みしめ真正面へ突きを放つ。
背後で地面が砕け散るのを気に止めず、魔弾と化したトランクスが駆け抜ける。
「その程度が届くと思うなっ!!!」
分厚いコンクリートの壁を百枚並べたとて、5秒と持ち堪えられないだろう威力。
なれどギラを突き破るには足りない。
放つのは同じく突き、踏み込みの強さに陥没する地面は無視。
切っ先同士が敵を一歩も進ませまいとし、されど両者の力は拮抗。
ややあってどちらも後方へと弾かれ、視線を僅かなりとも外さないまま着地。
「中々やるが…まだ足りん。喜べ、俺が直々にお前の力をもっと引き出してやろう」
異形の顔となったせいで表情は変わらないが、声色から漂うのは残酷な喜び。
星を滅ぼす中で正義感が強い者とも多々出会った。
そういった連中は何をされれば特に怒りを露わにするか、限界以上の力を引き出すか。
当然知っており、此度も同じようにしてやる。
逃げたゴミを纏めて片付ける事も出来て手間が省ける、やらない理由は無い。
「なに、を……」
頭上に剣を突き上げ、己が持つ力を更に解放。
ダグデドに出来て、より強大な宇蟲王である自分に出来ないなんてのは有り得ない。
太陽が照らし雲が浮かぶ空へ異物が多数出現。
ただ留まるだけならどれ程良かったか。
「何をしているんだお前は……っ!!!」
地上目掛けて無数の隕石が降り注ぐ。
制限の影響により範囲と威力は大幅に縮小しているが、参加者達にとっての脅威である事に変わりはない。
戦場となったエリア一帯を襲う悪夢の集中豪雨に、トランクスの焦りも加速。
大虐殺を引き起こす気だろうがそうはさせない、させてたまるか。
舞空術で飛行し隕石を片っ端から斬り裂く。
一つ一つをチマチマ対処しては間に合わない、空いた手で気弾を連射。
破壊が中途半端では破片で被害が及ぶ、故に徹底して壊す。
尤も、つまらない作業をギラが認める筈が無かった。
跳躍し斬り掛かられ、有無を言わせず再戦開始だ。
○
トランクスとギラの剣戟による巻き添えは免れた。
しかし降り注ぐ隕石は別、破壊の規模が余りに広過ぎる。
各々が全速で逃げ、意識の無い者や走れぬ者は抱えて足を止めない。
誰も見捨てず全員で逃げようとするも、自我を持たぬ岩の雨は容赦が無かった。
「ちっくしょ…!」
固まって逃げてはいたが、隕石の直撃を受けたビル群の崩壊によって分断を余儀なくされた。
真っ先に被害から脱せられたのはアンクとリュージ。
グリードとしての怪人態になり飛行、リュージの腕を掴んで瓦礫の雨の中を突っ切った。
次いで逃げられたのは果穂、千佳の二人。
果穂がブーストフォームに変身中だったのが幸いし、逃げる際にブーストライカーを召喚。
バイクの運転は出来ないが無問題、ブーストライカーはライダーへ変身時に召喚した場合、ライダーのモチーフになった動物形態へと姿を変える。
自律行動が可能となったブーストライカーに二人で跨り移動していた為、機動力を駆使しどうにか逃れられた。
同時にチェイスとロロもそれぞれの能力を駆使し、圧死を回避。
ジ・アイスで少しでも崩落を急き止め、それでも飛来する物はトレーラー砲で撃ち落とす。
機械生命体なので疲労とは無縁のチェイスと違い、元々運動能力に秀でてもいないロロは息が上がっていたが。
未だ意識を落としたままのはるかをチェイスが運び、庇いながら進む。
無事とは言え単独になってしまったのは薫。
マークツヴォルフの機動力で駆け、時にはエボルトラスターを使いシールドを展開。
助かりはしてもビルの崩壊と絶えずあっちこっちへ降り注ぐ隕石に、仲間の元へ近付くことすら許されなかった。
「おいロロ!皆!」
「先に行け…!今は自分を優先しろ!」
咄嗟に手を伸ばそうとしたが、頭上から襲い来る脅威に腕を引っ込めざるを得ず。
ロロの叫びもすぐに齎せられる破壊の音に掻き消え、これ以上近付く事もままならない。
動き続けねば自分も死ぬ。
「クソ…っ!」
芳佳が死に、可奈美が死に、そのくせ自分はまだ生にしがみついている。
みっともなくて情けなくて、だけど投げ出せない理由もあるから。
託された想いを無視する人でなしには、どうしたってなれないから。
「ちくしょぉ…!!」
悔しさを籠めた自分の声が、やけに大きく聞こえた。
「果穂!お前達も先に逃げろ!」
「チェイスさん…でも……!」
瓦礫の山の向こうから聞こえた声に、果穂は即答できない。
一緒に逃げられるよう何とかするべきじゃないのか。
揺れる心を引き戻し、迷っている暇は無いと決断させたのは苦し気な声。
顔色を悪くし自分にしがみ付く千佳。
自分が迷えば迷っただけ、彼女にまで被害が及んでしまう。
「…っ!分かりましたっ!絶対…後で会いましょうっ!」
震えを誤魔化すように精一杯の大声で返し、エリア外へブーストライカーを走らせる。
このまま二度と会えなかったらどうしようと顔を出す不安を、無理やりに押し隠す。
チェイスなら、悲しいけど譲れない正義を秘めた彼ならきっと大丈夫。
はるか達を連れて戻って来ると信じ、果穂も振り落とされないよう集中。
崩れた建造物の合間を駆け、隕石をどうにか躱して進み続ける。
だが逃げ道を塞ぐ壁は無くならない。
ここで死ねとでも言いた気に、崩壊した建造物が降って来る。
避けても避けても隕石は執拗に襲い続ける。
「あたしは……」
この世の終わりを描いたような空を見上げ、されど千佳の瞳に絶望はない。
果穂が自分を守る為に戦っている。
ならば千佳自身はどうする?守られるだけで満足か?
違う、そうじゃない、それで良い筈が無い。
「あたしの…ラブリーチカの魔法は……」
空色の女の子は問い掛けた。
魔法が使えたら何をしたい、と。
答えはあの時と同じ、きっとこの先も変わらない。
アイドルとして皆笑顔にする魔法を掛けた時みたいに。
「みんなを…守る為に使いたい…!」
掲げた手から溢れる光は、宇蟲王の下す刑すら拒絶する。
イノセンス、本来はルナが使う固有魔法。
あらゆる束縛からの解放を可能とするが、この魔法にはまだ先がある。
魔女達との戦いで新たな力に目覚めたルナのように、千佳もまたイノセンスの持つ可能性を広げてみせた。
イノセンスドライブ。
力を直接叩き込むシンプルな攻撃にして、防御やカウンターを無効にする貫通魔法。
隕石複数個と瓦礫を消し飛ばし、自ら道を切り開いた。
「おいリュージ!自分で走るか銃全部捨てるかしろ!」
「無茶苦茶言うんじゃねぇ!遠回しに死ねって言ってるもんだろそれ!?」
防弾服と銃火器を装備した男一人を運ぶくらい、グリードの身体能力なら容易い。
しかしこの状況では片手が塞がったうえ、機動力も落ちるのは軽くない問題。
かといって人力で走り抜けるのも流石に無茶であり、アンクが運ぶしかなかった。
「…いや待て。一旦降ろせ!支給品に足が入ってる!」
回収したリュックサックの一つに、車が入っていたのを思い出す。
何で入るんだよとのツッコミはこの際無視、脱出に使えれば文句は無い。
火球を必死に連射する背後で、急ぎ目当ての物を取り出す。
引っ張り出したソレはオープンカー。
派手なピンクの車体と、デカデカと貼り付けられた初心者マークが異様な存在感を放っていた。
「おい!そのふざけたモンで本当に走れるんだろうな!?」
「俺だって知りてぇよ!とにかく乗れ!」
キーを回しエンジンを掛けて急発進。
見た目に文句を言ったアンクも後部座席に立ち、火球を撃ち続けて瓦礫や隕石を少しでも近寄らせまいとする。
法定速度を完全に無視したスピードを叩き出し市街地を疾走。
外見の珍妙さはともかくこれなら脱出の大きな助けになるのは間違いない。
「もっとスピード出せ!」
「言われなくても、もう出してるんだよ!」
無茶な運転も横からのかっ飛んだ指示もこれが初めてじゃない。
カナメを奪還するべく、雪蘭と繰り広げたカーチェイスは覚えている。
あの時と今と一体どっちがマシかという、どうでもいい疑問は即座に投げ捨て。
アクセルを踏みっ放しで速度を引き上げた。
重加速はどうしても避けられない隕石に対しもう使った。
余計な時間制限のせいで暫くの間は機能せず、他の方法に頼るしかないのが現状。
ロロもまた二丁拳銃の乱射を行っているが、右手の負傷が響き狙いが拙い。
「くっ、またか…!」
連射しているだけでは対処が追い付かない、またもや隕石を撃ち漏らしてしまう。
衝突を覚悟し、せめてロロだけでも逃がそうと手を伸ばす。
その寸前で、彼らの頭上の隕石が凍り付いた。
「やれやれ……とんだ重労働だな……」
二画目の令呪を使いジ・アイスの出力を上昇。
少しの間だが余裕が生まれ、この隙に急がねば。
はるかを落とさないよう掴み駆け出そうとし、ポスリとリュックサックを投げ付けられた。
「中にバイクが入ってる。それを使って逃げろ。彼女を振り落とさないようにな」
「何を、言っている…?」
突然の譲渡と言葉に理解が追い付かない。
疑問への答えを返すようにロロは変身を解き、自身の袖を捲った。
下にあったのは細い腕、ではない。
腫瘍のように膨れ上がり、所々に亀裂の入ったナニカ。
「それは……」
「時間が無いから手短に済ませよう。私はもう助からん。これは普通の治療でどうにかできるものじゃないし、正直に言って限界が近い」
だから自分を置いて行けと、そう言いたいのだろう。
理屈としては分からんでもない。
先の長くないロロにかまけるより、はるかを連れて急ぎ脱出する方が合理的。
それにバイクはどう頑張っても二人乗り、どの道一人は置いて行くしかない。
「だが…!」
だからといって、そんな簡単に割り切れはしない。
互いを深く知らなくとも、チェイスにとってはロロも守るべき人間。
はいそうですかと置き去りになど、決断を下すには迷いが生じる。
「判断を見誤るな。君が間違えればとばっちりを受けるのは彼女だろう。君が今抱いている迷いは彼女を殺し、君が逃がした少女との約束を破る以上に重要なのか?」
「…っ!」
迷いが生み出す被害はチェイス一人では済まない。
それは決断するのに十分な効果を秘めていた。
人間を守るという己のアイデンティティに軋む、だが決めなければより多くの傷を自分が生み出す。
人であれば苦悶の表情を浮かべたろう場面でも、機械のチェイスは仮面の下で真顔のまま。
しかし体では無い、心へ目に見えない痛みが襲う。
「……すまない」
「気にする必要はない。…薫に会ったら、最後まで足掻いてみろと伝えてくれ。見届けると言っておきながら、朽ち果てるのは私の方が先らしい」
それでも彼女の望みを聞いた者として、何か言葉を遺しておきたかった。
単なる我儘かもしれないし、薫の精神に余計負担を掛けるだけかもしれないが。
あの時言ってみせた言葉が嘘じゃないなら、歯を食い縛ってでも乗り越えられるだろう。
ソレを見れずに一足先に退場は、我ながら情けないと苦笑いを浮かべる。
「さあ行け。このままでは本当に全部無駄になるぞ」
ジ・アイスの効果も永遠には続かない。
一刻の猶予も無いと分かっているが故に、チェイスももう迷いは抱かなかった。
リュックサックから自分の愛車が出て来た驚きさえも、今は感じる余裕がない。
武装展開し鋼鉄の蛇、テイルウィッパーをはるかと自分に巻き付け固定。
これで気絶中の彼女が振り落とされる心配はない。
マフラーが火を吹きエリア外を目指してバイクを走らせた。
後ろはもう、一切振り向かずに。
「行ってくれたか…」
チェイスが去るのを最後まで見送らず、ロロは再びジオウに変身。
遺された時間は残り僅かだ。
短時間でジ・アイスの連続使用に加え、令呪を使って本来の出力を放ったのも効いたのだろう。
反作用が自分を蝕み、嫌でも一度迎えた最期の時を思い出させる。
C.C.細胞の抑制剤が都合良く見つかるとは思っていない。
だからといってこのまま隕石に潰され、二度目の死を迎えるのも御免だった。
「さて、こちらも精々足掻くか」
終わりが避けられないにしても、やれる事が一つある。
他人から見れば馬鹿馬鹿しいと見える、自分でもそう思う。
けれどどうしても譲れない、ちっぽけな意地を通しに。
◆◆◆
「くっ…!」
焦りを隠さずに歯噛みし、トランクスはギラと斬り結ぶ。
地を駆け、空を駆け、移動しながらも攻撃の手が休まることはない。
頭部へ突き出した剣が弾かれ、逆に首を狙った一撃を躱す。
脇腹目掛け走らせた刃を防ぎ、心臓を貫かんとする切っ先を叩き落とした。
とうに原型を留めていない地面を蹴り付け、跳躍したギラが垂直に回転。
勢いを乗せ範囲を広げた斬撃へ、トランクスも腰の捻りを加えた斬り付けで応戦。
刀身同士の衝突で互いに腕が跳ね、すかさずギラが斜め下へと蹴りを入れる。
イーヴィルキングになり四肢もより太くなった。
威力は当然のように上がり、一方で巨体とは裏腹の俊敏な動きも可能。
砲撃に等しい蹴りを真横へ跳んで躱し、目に付いた電柱を切断。
転がり落ちる前に掴んで投擲、トランクスの腕力を乗せた魔槍と化す。
「しゃらくさい!」
剣を真正面へと振るい刃を放つ。
電柱など小枝同然にポッキリと断たれ、背後の標的へと大口を開けて迫る。
対するトランクスも横薙ぎに振り払い刃を掻き消す。
飛び散った赤いエネルギーが線香花火のように儚く消えるも、幻想的な光景と心和ませる状況ではない。
ギラが指を鳴らし、合図とともに宇蟲剣が展開。
トランクスを包囲するかのように配置された、百に届くだろう膨大な数。
一斉射出により歪な剣山を作り上げる気だろうが、現実の光景にはならず。
全方位へと剣を豪快且つ精密に振り回し、自らを守護する結界を生成。
串刺しにする為の宇蟲剣は、自分から砕けに顔を出した間抜けな獲物へと早変わり。
皮一枚すら切れずに破壊され、次から次へと役目を果たせずに消滅。
残る10本を纏めて細切れにし、間髪入れずに息が止まる程の力が襲い来る。
エネルギーの力場を掌型に形成し、蝿でも始末するように叩き付ける。
咄嗟に剣を両手持ちに変え、頭上に掲げ防御。
圧し潰されまいと踏ん張る最中も、敵は真正面から接近し斬り掛かった。
両手が塞がりがら空きの胴体を斬られ決着、そんな最期へ否と唱えるのが超サイヤ人の力。
カッと目を見開き腕の力を漲らせ、押さえ付ける掌を両断。
切り裂いた勢いを殺さずギラを迎え撃ち、何度目か数えるのも馬鹿らしくなった剣戟が再開となった。
隕石群により破壊が止まらないエリアの中で唯一、二人の周囲にだけ隕石の被害はゼロ。
剣を振るい、打撃を叩きつけ合い、技の応酬を繰り返し起こる衝撃。
二人だけの戦争とも言うべき苛烈極まる闘争へ近付いた途端、小石程の欠片も残さず消失しているのだ。
今もまた、互いに一振りで街路樹数本を一気に切り刻む。
(クソッ!こいつは…!)
一見互角に渡り合っていると思わせ、トランクスには余裕が無い。
エリアの破壊は一向に止まらず、逃げた者達の安否が危ぶまれる。
ギラの能力なら本人を倒せば止まるのかもしれないが、簡単に勝てる相手でないのは明白。
加えて超サイヤ人に掛けられた制限も非常に厄介だ。
黒い神との戦闘時の時と同じ、本来よりも力が出ず消耗が激しい。
急いで決着を付けなければいけないのに、余計な枷のせいで勝機を掴めずにいる。
焦りが徐々に加速すると同時に、攻撃の激しさも更に増す。
このまま力で押し切ればどうにか――
――馬鹿野郎!何を寝惚けた戦い方をしてやがる!
「っ!!」
聞こえない筈の声が聞こえ、ハッと我に返る。
茹った思考は急速に冷えていき、危うく間違う所だったと己を戒めた。
ここにはいない父の声が、幻聴なのかどうかは定かじゃない。
答えが何であろうと、己へ喝を入れてくれたのは確か。
セルとの戦いを思い出せ。
あの時も自分はとにかくパワーが上がれば良いと、とんだ思い違いをしていた。
しかしベジータや悟空はそういった戦法を早々に切り捨て、スタミナを重視した修行をしたのである。
現在、超サイヤ人の消耗は普段以上に激しいが工夫次第で無駄な体力消費を抑え、尚且つ決着を速める事も不可能じゃない。
焦り力に任せれば、本当に取り返しの付かない失敗へ繋がるだけだ。
意識を今一度引き締め、ギラへと剣を振り上げる。
股から頭頂部までを両断する斬撃へ、左腕をぶつけて相殺。
王達の装備、キングズウェポンと近い形状の盾の破壊は困難だ。
標的へ近付く為の道を強引に外され、剣が切り裂いたのは舞い上がったアスファルトの欠片。
空振り直後の硬直は致命的な隙だ、急ぎ剣を引き戻すも一手遅い。
先程とは反対にギラが斬り上げを繰り出し、真上へと剣を弾き飛ばす。
トランクスの手から武器が離れ無手に、取りに行くのを待ってやる程優しくない。
間抜けにも得物を失った相手を仕留めるのに、何の躊躇もいらない。
「っ!?」
斬首刑にすべく振り被った時、ギラとトランクスの視線が交差。
瞳に宿ったのは己の失態を呪う無様さでも、避けられない死への恐怖でもない。
淀みなく眼前の敵を見据えた瞳はまだ死んでいない。
もしや、思惑通りに動いているのは相手では無く――
「太陽拳!」
「ぐおおおっ!?」
顔の真横に両手を翳したトランクスから、視界を全て覆い隠す光が放たれた。
目が焼かれ兼ねない眩しさに、さしものギラも堪らず怯む。
殺傷能力は皆無だが視界を奪う使い勝手の良い鶴仙流の技。
天津飯から悟空やクリリンへ、そして悟飯からトランクスへと継がれ殺し合いでも日の目を見た。
斬る筈だった剣は止まり、攻め込むのにまたとないチャンスが訪れる。
「せりゃあああっ!!」
「チィ…!」
四肢を用いた打撃もトランクスが得意とする戦法だ。
ギラの頬を拳が捉え、頑強なイーヴィルキングの皮膚越しにも脳を揺さぶられる。
但し食らったのは一発だけ、二撃目からは盾を翳し防御。
拳の連打が粉砕せんと衝撃を与え続けるが、亀裂一つ付かない。
貧弱な拳を腕ごと斬り落とそうとし、
「っ!小癪な真似を…!」
防御へ翳した直後、後方へと大きく距離を取らされる。
拳の連打は囮、頭上に弾かれた後重力に従い落ちて来た自身の剣。
ギラの意識が拳へ割かれたタイミングでキャッチし斬り付けた。
傷こそ負っていないが、不意を突いた一撃を防ぐのに力が足りず弾き飛ばされたのだ。
「はあああああああ…!」
手元に戻した剣を地面に突き刺し、再び無手へ戻る。
独自の構えを取り気をコントロール、トランクスの全身を膜のように光が覆う。
手の甲を合わせエネルギーを限界まで溜め、放つ瞬間を見極める。
より高威力の技を使う気と即座に察し、望む所とギラも己が剣を操作。
トリガーを引き、オージャカリバーZEROが禍々しいエネルギーを帯びた。
真っ向から打ち破り、どちらが上かを思い知らせる時だ。
『Lord Finish』
「ギャリック砲――――――っ!!!!」
ハスティー家の力を邪悪で塗り替え放つ、世界を滅ぼす刃。
誇り高きサイヤ人の父から子へと継がれた、世界を背負った光。
ゴーストタウンを照らす両者の激突は、拮抗しそれ以上先へと進ませない。
己の勝利を譲る気は無い。
王としてのプライドが、守るべき者の重さが。
敗北の二文字を叩き潰し、勝つのは俺だと雄叫びを上げる。
ならば勝負を決めるのは、双方にとって予期せぬ存在。
「なに…?」
腕に異物が当たった感触を覚え、ギラは訝しく横目を動かす。
ほんの数センチ、左腕に剣が刺さっている。
誰がやったかもすぐに分かった。
離れた場所で壁にもたれ掛かる仮面の男。
『ライダー』の四文字を貼り付けた、偽りの魔王。
この期に及んで無駄な動きに出て、しかも王の殺し合いに横槍を入れるとは度し難い。
トランクスの次はあのゴミを殺してやろうと決める。
「…!?」
殺意は突如起こった異変に打ち消された。
体が凍り付いたように動かない。
自身の肉体が内側から縮むような、不可思議極まりない感覚に襲われる。
圧縮冷凍。
30世紀の犯罪者集団、ロンダーズファミリー相手にタイムレンジャーが用いる逮捕手段。
ギラの腕に突き刺さった剣、ディフェンダーソードにも同様の機能が搭載済み。
斬り付けダメージを与えたので無い為、本来よりも発揮される効果は低い。
現にディフェンダーソードを振り払った事で、ギラを蝕む冷凍から解放された。
だが今このタイミングは、ギラにとって致命的と言う他ない。
片手で数えられる程度の時間。
たった数秒、されど数秒。
トランクスに勝利が傾くには、これ以上ないくらいに十分な隙だ。
「っあああああああああああああああ!!!」
「お…のれぇぇぇ……!!!!」
藤色の輝きが刃を飲み込む。
邪悪な王の剣で斬ることを、何一つ許さないと噛み砕く。
星を滅ぼす赤は掻き消され、絶望はその存在を薄れさせた。
「終わらんぞ…!この程度で俺を滅ぼすなど…!!」
己に打ち勝った希望に焼かれて尚も、宇蟲王は死を拒絶する。
光に飲み込まれ、王の肉体を焼かれながら彼方へ吹き飛ばされようと。
その瞳は常に、青き戦士を射抜き続けていた。
◆
バックミラーを見るといつの間にか隕石は止まっていた。
地獄絵図さながらの光景も、終わってしまえば通夜のように静かなものだ。
物陰に移動してから車を止め、後部座席へ視線をやるが特に何も言われない。
取り敢えず逃げるのは終わりで良いらしく、リュージは溜まったもの全部をため息に乗せて吐き出した。
「生き残ったんだよな、俺達…」
「当たり前だ、こっちはお前と心中なんざする気ねぇよ」
俺だってそう思ってんだよと、呆れたように笑う。
生き残った、他に逃げた連中は知らないが自分とこの上から目線な怪物は死んでいない。
街を訪れた時よりも、一人減ってしまったが。
(覚悟決めさせるどうこうの話じゃなくなっちまった、か……)
深く悲しむ程に関係が深かった少女では無い。
しかし紛れもない善人で、協力関係を結んだ相手だった。
あのような惨い最期を見せ付けられ、気分が良くなる訳がない。
もしもっと早くに、可奈美が人を殺す覚悟を決められていたら。
強引な方法を取ってでも、殺し合いという現実を理解できるようにしていれば。
ほんの少しでも何か変わったのかと考えるが、結局は意味の無いIFの妄想。
死んでしまったらそこで終わりなのは、ダーウィンズゲームの時から同じだ。
「…ちゃっかり拾ってたのかよ」
「あのまま置いてくよりはマシだろ。こいつの腕も入ってんだ」
アンクの手には血の付着したリュックサックが一つ。
可奈美の支給品を二本の刀共々、逃げる際のどさくさで回収したらしい。
目敏い奴だと思わないでも無いが、残して他の奴、特に赤い化け物染みた男に拾われるよりは確かにマシか。
(主催者の連中、揃いも揃ってイカレてんのか?あんな奴らぶち込んで、まともに殺し合いが成り立つ訳ないだろ…)
思い出したくなくても、脳裏に焼き付いてしまっている真紅の王。
強力なシギルを持ってるだとか、情報戦を制してるだとか、武術に精通してるとか。
そういう次元に括って良い参加者じゃない。
カブトムシとクワガタの対決に、突如怪獣が乱入して来た気分だった。
アレを相手にどう優勝を目指せと言うのか、悪い冗談の類と思いたい。
おまけにその化け物と互角に渡り合う、青い剣士まで現れるのだから勘弁して欲しい。
ただ青い剣士の方は殺し合いに否定的な様だった。
でなければ初対面の自分達を助ける為に、わざわざあの化け物の相手を引き受けたりしない。
戦いの結果がどうなったにしろ、青い剣士と次に会えたら話くらいは問題無いだろう。
「おい、アイス一本寄越せ」
「こんな時にもアイスかよ、もうちょい食い意地抑えられないのか?」
「知るか。…頭冷やしてぇんだよ」
「…そうかい」
苛立たし気に吐き捨てた顔に自分でも思う所があったのか、一本投げ渡してやる。
乱暴に放送を剥がし、アンクはアイスキャンディーに齧り付いた。
可奈美とは数時間前に会った協力者、姫和はともかくアンクから見ればその程度の間柄。
死んだことを多少惜しいとは思うも、喪失を嘆くような相手じゃない。
火野映司や泉比奈に比べれば、薄い関係性でしかない。
「チッ……」
なのにどうしてか、妙に苛立ちが抑えられない。
涙を流し、血の海に沈んだ最期を思い出し不機嫌になる。
大好物のアイスの味ですら、この時だけはどこか苦く感じた。
【エリアH-7/現代都市/9月2日午前8時】
【アンク@仮面ライダーオーズ】
状態:右腕を失った十条姫和に憑依
割れたタカメダル@仮面ライダーオーズ
財団X製の鳥系コアメダル@仮面ライダーオーズ
服装:現地調達
装備:なし
令呪:残り二画(姫和)
道具:岡田以蔵の刀@Fate/Grand Order、富岡義勇の日輪刀@鬼滅の刃、ランダムアイテム×0〜1、姫和の右腕、ホットライン
思考
基本:この女の身体を使ってこのしみったれた儀式に抗う。
01:もしこの女の知り合いも呼ばれていたら協力させる。
02:映司、アイツまさか下手うったんじゃないだろうな?
03:アイスを持ってるのでリュージとは今の所縁を切るつもりはない。
04:可奈美の死に妙な苛立ち。
参戦時期:本編死亡後
※泉信吾の肉体を使っていた時のように怪人態への変身は問題なく可能です。また、姫和と表面的な記憶を共有できます。
なので刀使ノ巫女に関する知識をある程度入手できています。
逆に姫和も仮面ライダーオーズに関する知識は少しは得れているはずです。
※ある程度回復すれば姫和の意識も戻りますが、今は無理なようです。
※元々着ていた服は下着以外は放棄しました。
【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:出血多量(処置済み・薬草の効果で多少回復)、疲労(大)、右腕欠損(肘から下)、気絶
服装:現地調達
装備:なし
令呪:残り二画
道具:なし
思考
基本:このゲームを脱出し、母の敵を討つ。
00:まだ何も成していない。死ぬわけにはいかない。
01:……
参戦時期:少なくとも一期十一話より前
備考
※支給品の入ったリュックを自分で破壊しました。
【前坂隆二(リュージ)@ダーウィンズゲーム】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)
服装:Dゲーム時のもの、防弾装備@ダーウィンズゲーム(ただし、スカルフェイスはなし)
装備:ブラックテイル(弾数7/9)@バイオハザードRe:4、予備の弾(27発)、アリウス製アサルトライフル(9/15)@ブルーアーカイブ、蟇群苛の車@キルラキル
令呪:残り三画
道具:ボルトスロワー(予備マイン×30、ボルトマイン×17)@バイオハザードRe:4、大量のアイスキャンディー@現実、薬草×11@ドラゴンクエスト、お医者さんカバン(故障)@ドラえもん、アサルトライフルの予備マガジン×66、ランダムアイテム×0〜5(五大院の方には確定で武器が一つはある)、ホットライン
思考
基本:Dゲームじゃないみたいだしとりあえず様子見。
00:可奈美に覚悟を決めさせる…つもりだったんだがな…。
01;とりあえずアンクと行動。
02:薬師恩寵の異能を持った奴を探す。
03:優勝させる気ないだろこれ…。
参戦時期:少なくともエイス壊滅以降〜(ダーウィンズゲームの方における)グリード出現前
備考
※お医者さんカバンは故障しており、修理しなければ使えません。
◆◆◆
崩壊の音がしなくなり、ようやくブーストライカーを停止。
周囲に並ぶ建造物は、さっきまでの光景とは全く異なる。
エリアを抜けて、自分達が助かったのを噛み締めた。
「千佳ちゃん?」
同乗者へ声を掛けるも反応は無い。
まさかと嫌な予感に心臓が跳ね、振り返った先に想像した悪夢は無い。
瞼を閉じた千佳は顔色が良いとは言えないけど、小さく呼吸の音が聞こえる。
呪文の連発に加え、トドメとばかりにイノセンスドライブで隕石を破壊。
負傷はゼロでも、体力が限界を迎えるのは必然の流れだ。
意識を手放しただけで死んではいない。
安堵と共にどっと疲れが襲って来た感覚を覚え、果穂も深く息を吐く。
「……バイクの、音?」
ナーゴの聴覚機能が低いエンジン音を拾い上げた。
ブーストライカーは猫のように喉を鳴らしており、音を発しているのは別。
まさか他の参加者か、殺し合いに乗っている人かもしれない。
もしそうなら、自分が千佳を守らなければ。
疲れた体に喝を入れている間にも音はどんどん近付き、やがて果穂にも正体が見えた。
「チェイスさん…!」
髑髏の意匠が目を引くバイクを走らせるのは、この数時間で信頼関係を結んだ仲間。
後部にははるかがもたれ掛かっており、千佳同様に瞳は閉じられたまま。
けど死んではいない、崩壊地獄の中から無事に脱出出来たのだ。
「お前達も無事か」
「はい!千佳ちゃんは疲れて眠ってるから、はるかさんも一緒に休ませて……」
と、一人足りないことに気付く。
チェイスと共に逃げていた筈の男、顔は見てないけど仮面ライダー。
彼の姿が見えない。
遅れて来るのかとも思ったが、一向に現れる様子はない。
「あの仮面ライダーさんは……?」
「……」
問い掛けに無言で首を横に振られ、詳しく説明されるまでもなく分かった。
仮面の下で顔がくしゃりと歪み俯く。
お互いのことをちゃんと知った訳ではない、しかし一緒に戦った人だった。
可奈美と呼ばれていた人だってそう。
生きてまた会えればもっと多くを話せたけど、そんな機会はもう来ない。
悲しみと、これが殺し合いだと無情なまでに突き付けられる。
「…今は移動した方が良い。千佳もはるかも、お前も休む時間が必要だ」
「……分かり、ました」
正論に頷くも声に覇気は無い。
千佳達を休ませてあげたいのは分かるし、自分も同じ気持ちだ。
けれどさっきまで一緒に戦った人が死んでしまった事を、簡単に切り替えられない。
力無くブーストフォームへ跨る果穂へ、赤い瞳を向けチェイスが口を開く。
「…よく、頑張った」
「え…?」
「お前達三人が互いを守ったから、今こうしていられる」
ギラの剣から千佳をはるかが庇った。
重傷のはるかを千佳が治療した。
千佳を連れて果穂が脱出した。
誰か一人欠けていれば助からなかったが、誰もが諦めなかったから三人共に生きている。
可奈美もロロも助けられなかった自分とは違う。
ダメージの重さにみっともなく倒れ、結果手遅れになるのを防げなかった。
戦う力があってこの様とは、こんなにも己は弱かったのか。
それに死が避けられないとしても、ロロ自身が決めたことだとしても。
他にやれることはなかったのかと、繰り返し己へ問い掛ける。
正しい答えは見付からないし、そもそも答えがあるのか不明。
(チェイスさん……)
それっきり押し黙った彼に、果穂は何と言葉を掛けて良いのか分からない。
冷たい機械の背中が酷く悲し気で、悔やんでいると伝わるのに。
彼へ届ける言葉が見付からず、ジクリと見えない傷が痛んだ気がした
【エリアI-7/現代都市/9月2日午前8時】
【花菱はるか@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(大)、精神的疲労(中)、ダメージ(大・回復処置済み)、ノワル戦のトラウマ(極大)、気絶中、乗車中
服装:学生服/マジアマゼンタのコスチューム
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:魔法少女として殺し合いを止める
00:……
01:千佳ちゃん達と行動。
02:トレスマジアの二人とうてなちゃんを探す。どうしてうてなちゃんまで…
03:↑に並行しイドラさん達とも合流したい。
04:ノワル、赤い服の男の人(宇蟲王ギラ)に対して最大限警戒
05:マジアベーゼはいつか仲間になってくれると思ってるよ!ここで正体は探らないって約束する!
参戦時期:少なくともマジアマゼンタ フォールンメディックに覚醒前
備考
【横山千佳@アイドルマスターシンデレラガールズ U149(漫画版)】
状態:疲労(極大)、精神的疲労(大)、ダメージ(中)(回復処置済み)、ノワル戦のトラウマ(極大)、気絶中、乗車中
服装:普段着
装備:イノセンス@魔法少女ルナの災難、まどうしのつえ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:怖いけど、殺し合いになんて負けない!
00:……
01:はるかちゃん達と一緒にいる。
02:イドラちゃんとレッドくん、どこにいるのかな?
03:マジアベーゼのこと、あたしは信じたい。
参戦時期:サマーライブ編(原作14巻)終了後以降
備考
※まどうしのつえでスクルト、ピオリム、ルカニ、ホイミが使用可能なようです。
他にどの呪文が使えるかは後続の書き手に任せます。
【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)、悲しみ、乗車中、ナーゴに変身中
服装:私服(いつもの)
装備:デザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル@仮面ライダーギーツ、、ブーストライカー(変形済み)@仮面ライダーギーツ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:ヒーローとして皆を助けますっ!
00:千佳ちゃん達を休ませられる場所へ行かないと…
01:新米ヒーローですが、チェイスさんと一緒に戦いますっ!
02:先生は本当は殺し合いに乗ってる人だったんですか…?
03:仮面ライダー…本当にヒーローがいたなんて凄いです…!
04:どうして283プロの事務所まであるんでしょうか…
参戦時期:不明。少なくともW.I.N.G.の優勝経験あり。
備考
【チェイス@仮面ライダードライブ】
状態:ダメージ(大)、無力感、運転中、魔進チェイサーに変身中
服装:紫のライダースジャケット(いつもの)
装備:ブレイクガンナー&チェイサーバイラルコア@仮面ライダードライブ、シフトデッドヒート@仮面ライダードライブ、ライドチェイサー@仮面ライダードライブ
令呪:残り三画
道具:トレーラー砲@仮面ライダードライブ、メカ救急箱(使用回数4/5)@ドラえもん、ランダム支給品0〜1(ロロ@ナイトメア・オブ・ナナリーの分)、ホットライン
思考
基本:人を守り、殺し合いを止める
00:移動し3人をどこかで休ませる。
01:守るべき人間として、共に戦う仲間として果穂と行動。
02:久留間運転免許試験所へ向かう傍ら、協力可能な参加者を探す。
03:先生や学園都市キヴォトスの関係者を警戒。
04:蛮野もこの島にいるのか?
参戦時期:死亡後。
備考
※制限により重加速は短時間で強制的に解除。連続使用は不可。
◆◆◆
(最後の最後で外さずに済んだか……)
負傷した利き腕では不安が残る為、左手を使ってディフェンダーソードを投げ付けた。
狙いを定めたが外れる可能性もゼロではなく、もしそうなったら余りの情けなさに自嘲すら出なかったろう。
そうならずに済み、多少の慰めと共に最期を迎えられるようだ。
三つ目の令呪を使った圧縮冷凍の代償として、自分は殺し合いからの脱落が確定。
とは言っても、ここに来るまでにジ・アイスを連発したツケを支払う方が先。
反作用は全身に広まり、僅かな身動ぎだけで崩れ落ちる。
99.9秒の経過を待つ必要は無い、その前に終わるのは確実だろう。
主催者を殺せず、薫の戦いを見届けられず。
気にはなっていた並行世界の兄や自分とも会うことなく。
何もかも中途半端な形で、二度目の死を迎える。
一体何の為に生き返らせたのやらと、早過ぎる脱落につい苦笑いが浮かぶ。
(我ながら…ムキになったものだ…)
ギラに見下され言われた。
偽り、全てが塵。
ああ全くその通り、悔しいが全て事実。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの双子の弟で、ナナリーのもう一人の兄。
日陰者の人生を強いられた枢機卿という、嘘っぱちの人生。
だけど、それでもたった一つだけ。
偽りだらけの中で、嘘じゃ無かったと言えるものがあった。
ずっと自分を見守ってくれていたアーニャ、彼女の事まで塵と言われるのは。
嘘と断じられるのだけは、どうしても我慢がならなかった。
この地で死んで行けるのがエデンバイタルかどうか分からない。
救い無き地獄であったとしても、生前の行いを考えれば無理もなかった。
本当にふざけた真似をしてくれると、死の間際になっても主催者達への怒りは消えない。
「薫…君は――」
最後に浮かんだ少女へ向けて、ポツリと呟く。
生きながらに地獄を味わい絶望して、それでも戦おうとした人間。
魔王という道に逃げた自分と異なり、彼女なら輝きで舗装された道を突っ走れるのか。
伝えたい言葉はロロ自身にも聞き取れないまま、全ては塵へと還る。
偽りの魔王は、この地で誰かの仲間だったという「本物」だけを残して。
◆
トランクスが近付いた時、そこにはもう人間はいなかった。
ジクウドライバーとレジスターが転がっているだけ。
死体はどこにも見当たらない、けれど何が起きたかは察しが付く。
自分はまた間に合わなかった。
宇蟲王相手に一矢報いた名も知らぬ参加者は、一度も言葉を交わす事無く旅立ったのだろう。
「……」
守れないのも取り零すのも、昔から繰り返して来た。
だけど慣れない、喪失の痛みだけは幾度味わったとて慣れることは出来ない。
「すみません、持って行きます」
届かないと理解した上で断りを入れ、二つの遺品を回収。
自分で使うかどうかはともかく、殺し合いに乗った者の手に渡るよりは良い。
それにレジスターはバグスターウイルスをどうにかする為に、今後必要となる可能性が高い。
逃げて行った他の者達は無事だろうか。
自分が来た時既に殺された少女の遺体がまだあるなら、野晒しにするのは憚れる。
ギャリック砲が当たったとて、あの男も倒す事が出来たかは分からない。
むしろ敵の強さを思えばまだ生きてる方が不自然ではない。
気に掛かるのは複数あれど、やはりまずはしおの元へ戻るのが最優先だろう。
通信機に連絡は来ていないが、大丈夫だと楽観的には考えられない。
しおから聞いた松坂さとうの容姿と合致する者は、逃げた者達の中にはいなかった。
奇妙な鎧を纏った内の一人がそうだという可能性も、なくはないが。
しおを一人待たせてある民家へ向けて飛び立つ。
その前にもう一度振り返り、もう何も無い場所を見つめ、
「…ありがとうございます」
最後まで戦った戦士に、深々と頭を下げた。
【エリアH-6/現代都市/9月2日午前8時】
【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(大)
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order、通信機@ドラゴンボール超
令呪:残り三画
道具:ジクウドライバー&ジオウライドウォッチ@仮面ライダージオウ、DVディフェンダー@未来戦隊タイムレンジャー、ランダムアイテム×0〜2、ホットライン、レジスター(ロロ@ナイトメア・オブ・ナナリー)
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
00:一旦しおちゃんの所へ戻る。
01:さとちゃんを探す為に人通りの多そうな場所に行く。
02:あの白髪の男(アルジュナ・オルタ)は必ず倒す。その為には同志を集めないと……。
03:赤い服の男(宇蟲王ギラ)にも要警戒。
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。
◆◆◆
パチパチパチパチ。
乾いた拍手が響き渡る。
感動など宿っていない、あるのは他者への嘲りのみ。
聞く者は誰もいない冷えた大地にて、とびっきりの見世物へと礼代わりに手を鳴らす。
「良いもん見れたよ。魔界でもここまで派手なイベントはそうないだろうからなぁ」
オーバーなリアクションを取りながら、誰にも聞こえぬ言葉を紡ぐ。
輝く銀髪を風に靡かせ、不敵な笑みを崩さぬ男。
ホラー喰いのホラー、ジンガ。
宇蟲王が生み出した地獄にこの男は関わっていない、しかし何が起きたかは分かっている。
あれだけの派手な戦いだ、隣接するエリアにいても強大な力を感じ、破壊が広がる様は確認出来た。
「しっかしまぁ、羂索達も随分気合れて参加者集めに精を出したらしい。どっからその情熱が湧いて来るんだか」
肩を竦め言うジンガが思い出すのは、先の大規模な『二つ』の戦闘。
ロロ達に逃げられた後、気ままにぶら付いていた時だ。
租界エリアで巻き起こった、神話の如き闘争を遠目に目撃したのは。
常に高速で移動していた為が見間違えはしない。
黒い男と、黒い女。
他に誰も無い、たった二人の激突で街は壊滅状態。
上位ホラーのジンガをして、絶大な力の持ち主達と認めざるを得ない本物の怪物達だ。
平時のジンガであれば相手がどれ程強大であっても、自身のプライドに懸けて挑んだだろう。
力の差を理解して尚も、メシア相手に退かなかった時のように。
しかしだ、それから程なく今度は川を挟んだ反対側で同じような戦闘が発生。
生身でラダン並の破壊を巻き起こす奴が三人、渡り合える奴が一人。
こうも立て続けに究極のホラーもかくやの連中が現れては、さしものジンガも冷静になる他なかった。
人間としてもホラーとしても、本来ならば既に滅んだ身。
今更死ぬのを恐れてはいないが、道外流牙の顔も見ないまま退場するのはつまらない。
いずれあの4人とぶつかるのなら、こっちもこっちで色々考えておかねばなるまい。
「それはそれとして、思わぬ拾い物をしたのは運が良いって言うべきか?」
小馬鹿にしたような笑いへ、足元の少女は何も返さない。
意識を失っているのだから当然か。
宇蟲王が暴れるエリアに隕石が降る中を、魔戒騎士の鎧とは異なる装甲姿で突っ切って来た。
機動力と、自分とは相容れない光の力で結界を張り死から逃れ続け。
彼女にとっては運悪く、脱出した先で心身の疲労で膝を付いた所をジンガに見付かった。
向こうがこっちの姿を捉える前に、意識を奪うのは難しくない。
余程精神的に追い詰めらる目に遭ったのか、彼女と共にいた四文字仮面がいないのと関係あるのか。
余程ショッキングな出来事があったのはほぼ確定だ、短時間で陰我が少なくない量蓄積している。
「暫く泳がせておいても良かったが。ま、見付けちまったならしょうがない」
どう転がすかを思案するジンガの足元で、薫の意識は奥底へ沈んだまま。
カビのように広まるのは、無力感と力への渇望。
もっと自分が強かったら、芳佳を殺すような事態にはならなかった。
もっと自分が強かったら、真昼を止める事も出来た。
もっと自分が強かったら、可奈美が殺されるのも防げた。
もっと自分が強かったら、ロロを連れて脱出するのも不可能じゃなかった。
御刀が手元にないからと言い訳する気は無い。
自分に力が足りないから、誰も助けられない。
ヒーローにはなれない。
だから力を求める。
守る為の、助ける為の、後悔しない為の、償いを果たせるだけの。
強くなりたいと、ひたすらに思う。
この先得られる力が光(ネクサス)か闇(ホラー)か。
今はまだ誰にも分からないが、仮に前者だったとしても正しい道を歩めるとは限らない。
嘗て、ンコパソの国王ヤンマ・ガストはラクレス・ハスティーに問うた。
玉座に座り、見下ろす側になり、頂点(テッペン)に立ってどう思ったかを。
ラクレスの答えは一言、「気持ち良かった」。
神の怒りを見せ付けられ、邪悪に身を堕としてでもダグデドを討つと決意した日以来。
民を道具と言い切る冷徹な王として振舞い続けた中で、圧倒的な力を振るい敵対者を跪かせた事へ快感を覚えた。
力とは、罪悪感すらも薄れさせる甘美な毒。
決して折れぬ使命感を秘めたラクレスですら、力への誘惑には心を腐らせた。
荒魂を退治し人々を守る、刀使にも同じ事が起きないとどうして言えようか。
己の行く末を知らぬまま、刀使は眠り続ける。
見届けると言った魔王の喪失すらも、気付かずに。
【エリアG-6/現代都市/9月2日午前8時】
【益子薫@刀使ノ巫女】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)、精神的ダメージ(極大)、闇のパルファムの影響(中)、ジンガの言葉への動揺(中)、無力感と力への渇望、託された想いからの再起、適能者(デュナミスト)に選ばれた、気絶中、マークツヴォルフの使用回数『1』
服装:長船女学園の制服(血塗れ)
装備:防衛隊炎刃型大剣@モンスターハンターワールド:アイスボーン、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、マークツヴォルフの起動鍵@蒼穹のファフナーEXODUS
令呪:残り三画
道具:ホットライン×2、宮藤芳佳のレジスター
思考
基本:芳佳の分までこの殺し合いに抗う
00:……
01:可奈美……。
02:…今のオレに、ひよよん達と会える資格なんてあるのか…?
03:ロロ、アイツ本当に大丈夫だよな…?
04:真昼はオレの手で止める。他に手段がねえのなら…この手で…。
05:…どうであれ、オレの罪は消えねえ。けれど、オレにできることはまだまだある以上…死んでやる気はない。
06:結局オレは、ヒーローへの憧れを捨てれねえみたいだ。
07:一ノ瀬宝太郎って奴はなるべく早めに見付けた方が良いよな。
08:…それはそれとして、着替えが欲しいな…シャワーも浴びたい。
09:この起動鍵を使っちまったけど…。
10:祢々切丸があって欲しい所…だけどなあ。
11:もし、俺にもっと力があれば……
参戦時期:第24話「結びの巫女」にて、可奈美と姫和が未帰還な事を知り涙目で祢々切丸をぶん投げた直後から。
備考:※支給されていたソードスキルによりドレインタッチ@この素晴らしい世界に祝福を!を習得しています。
※適能者(デュナミスト)に選ばれましたが遺跡の夢を思い出せてないので現時点ではウルトラマンネクサスには変身不能です。きっかけがあれば思い出し変身可能となる他、制限によりサイズは等身大限定となります。
※真昼の呪符により精神面に干渉を受けていましたが、取り敢えず立ち直りました。
※ストライクウィッチーズ世界についてある程度把握しました。
※闇のパルファムの影響により陰我が溜まりやすくなっています。
【ジンガ@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-】
状態:健康
服装:着崩した黒い服(いつもの)
装備:ジンガの魔戒剣@牙狼-GARO- 神ノ牙-KAMINOKIBA-
令呪:残り三画
道具:闇のパルファム@牙狼-GARO- ハガネを継ぐ者、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:好きにやる
01:やっぱりお前もいるよな?道外……
02:さっきの奴(克己)がどう暴れるか少し期待
03:薫がホラーになるのを期待。さぁてどうするか
04:思った以上にぶっ飛んだ連中がいるってことか
参戦時期:流牙に敗北後〜メシアに挑む前。
備考
◆◆◆
「やってくれたな……」
地に背を付け、ギラは天を射殺さんばかりに睨む。
闘争の舞台から引き離され、こうして無様に横たわる羽目になった。
傷まで負わされたが、完全な滅びを迎えるには足りない。
制限されていようとこの身は宇蟲王、簡単に死ぬと思ったら大間違いだ。
ダグデドを殺しチキューの支配者になってから、味わう事の無かった屈辱感。
怒りに顔を歪ませるも、どこか楽し気な色が瞳へ宿る。
殺し合いと謳っておきながら、どいつもこいつも雑魚ばかり。
そう落胆していたが此度の相手は違った。
己と渡り合い、あまつさえこのような王らしからぬ無様を晒させるとは。
茶番以下と思っていたこの催し、どうやら認識を少々変える必要があるらしい。
同時に思うのは、あの男の存在に他の雑魚どもは何を感じるか。
絶対的な存在であるこの自分を、もしかしたら倒せるかもと淡い期待を抱くのだろう。
力無き愚衆らしい、他人任せの惨めな考え。
であれば余計に、あの男が負けた時の絶望はより巨大なものとなる。
「青い戦士、貴様を俺の敵と認めてやろう。貴様を殺し、雑魚どもの希望(ブレイブ)を根こそぎ枯らしてくれるわ」
王は笑う。
自らの敵を定め、更なる災厄を齎す為に。
【?????/?????/9月2日午前8時】
【宇蟲王ギラ@王様戦隊キングオージャー】
状態:疲労(中)、ダメージ(中)、トランクスへの怒りと期待、人間態
服装:王の装い
装備:オージャカリバーZERO@王様戦隊キングオージャー
令呪:残り三画
道具:ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:塵芥ども悉く捻り潰し最後の勝者となる。
01:青い戦士(トランクス)を敵と認め殺す。
02:他の雑魚共は殲滅する。
03:別次元の自分も殺す。ギラという名の王は一人でいい。
04:最後の勝者の証を得たらゴミ(羂索)とカス(クルーゼ)とチリ(茅場)も片付ける。
05:代わりの下僕共は歩けば幾らでも付いて来るだろう。
参戦時期:ヤンマたちを処刑しようとしてキョウリュウレッドと戦闘になった直後。
備考
※あらゆる昆虫生命体を支配する力はある程度制限されていますが、発動自体は問題なく行えます。
※奪取した千鳥@刀使ノ巫女をバタフライオルフェノクに持たせました。
※どこまで吹き飛ばされたかは後続の書き手に任せます。
※千鳥を持ったバタフライオルフェノクとノビスタドールがギラとの合流に動いているか、戦闘に巻き込まれ死亡したかは後続の書き手に任せます。
◆
≪BRルール≫
勝者だけが、正義である。
【衛藤可奈美@刀使ノ巫女 死亡】
【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡】
【全体備考】
※エリアH-6で大規模な戦闘が発生しました。エリア内は壊滅状態となっています。
※S装備@刀使ノ巫女は破壊されたまま衛藤可奈美の死体に装着されています。
【S装備@刀使ノ巫女】
正式名称「ストームアーマー」。
荒魂殲滅用の強襲装備。
装着することで身体能力及び防御力が飛躍的に向上するが、稼働時間が短いという最大の欠点を持つ。
【アリウス製アサルトライフル@ブルーアーカイブ】
錠前サオリが使用するアサルトライフル。
徹底的に効率を追求して、サオリが独自にカスタムしたもの。
予備のマガジン70個とセット。
【ボルトスロワー@バイオハザードRe:4】
武器商人から買える武器の一つ。
ボルト(鉄矢)を放てる他、時間差で爆発するボルト用マインも撃てる。
ボルトは回収し再利用が可能。
【大量のアイスキャンディー@現実】
色とりどりのアイスキャンディー。
味の種類も豊富で、クーラーボックスに大量に入った状態で支給。
【薬草@ドラゴンクエスト】
HPを30前後回復する冒険のお供。
15枚セットが袋に入って支給。
【お医者さんカバン@ドラえもん】
22世紀のひみつ道具の一つ。
聴診器を当てるだけでどんな病気や怪我でも一発で正確に診断し、治療する為の薬や器具を出してくれる。
【蟇群苛の車@キルラキル】
本能寺学園四天王兼風紀部委員長の蟇群苛の愛車。
ピンクの車体とドデカい初心者マークが特徴のオープンカー。
【まどうしのつえ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ】
魔法使いと賢者が装備可能な武器。
道具で使うとメラを放つ。
本ロワでは装備すれば、ゲーム中に登場した幾つかの呪文を誰でも使える。
魔力を持たない参加者の場合は体力を消費する。
【天使の杖@ドラゴンボール超】
破壊神の従者である天使達が所持している杖。
専用の通信機とセットで支給。
バリアを貼れる他にも複数の機能があるが本ロワでは制限されており、
○同エリア内のみリアルタイムの覗き見可能。
○惑星間の移動は会場内で所持者が指定したエリアへのワープに留まり、一度使えば6時間使用不可能。
○過去を映し出す機能は同エリア内でのみ可能。一度使えば6時間使用不可。
【ユウキの剣@プリンセスコネクト!Re:Dive】
主人公(ユウキ)が持っている剣。
本ロワでは装備するとユウキが持つプリンセスナイトの力を使用可能。
自身以外への強化を行う。
強化の振れ幅は剣の所持者の精神性に左右される。
『NPC紹介』
【ディスパイダー・リ・ボーン@仮面ライダー龍騎】
ディスパイダーというミラーモンスターが再生、進化した姿。
頭部付近から人型の上半身が出現し、半獣半人の外見になっている。
胸部から当たった相手を麻痺させるトゲを連続で発射する他、強靭な糸を出す能力もある。
【スカラベオルフェノク@仮面ライダー555】
コガネムシの特性を備えたオルフェノク。
全身が鎧のような皮膚で覆われており、剣技にも長ける。
【カマキリアマゾン@仮面ライダーアマゾンズ】
溶原性細胞の感染者が変化した姿。
両手に鋭利な鎌を持ち、標的を引き裂く。
【ノビスタドール@バイオハザードRe:4】
不完全な人の身を虫の高みへ至らせる研究で生まれたクリーチャー。
体色を変化させて周囲の風景に溶け込む擬態能力を持つ。
投下終了です
延長します。
投下します。
一度だけ、本物の流れ星を見たことがある
キリト
「42……43……44」
ソードスキル”リニア―”で突き刺す。突き刺す。突き刺す。
「45……46……47」
剣を体を中心に構え、敵の攻撃を避けては突き刺す。
「48……49……50!」
己の能力全てを振り絞り、戦う。
この世界(殺し合い)でがむしゃらに前へ進み死ぬために
☆彡 ☆彡 ☆彡
時は少し戻り――――
「それにしても、権現様(家康)に太閤様(秀吉)までいるとはのう」
「……ま、今は置いておくとしよう」
放送が終わり、なれぬアプリの操作に四苦八苦するが、アスナの手助けを借りつつ名簿とやらを小兵衛は確認する。
確認し終えると、小兵衛は名簿に記載されている徳川家康と豊臣秀吉がいることに驚きを隠しきれない。
普段なら、記載されている両人を名を騙っていると斬り捨てるが、この状況では荒唐無稽と言えないためだ。
徳川家康も豊臣秀吉も小兵衛から見たら既に故人。とはいえ、アスナから見れば自身も過去の人物……故人にあたることから、小兵衛はひとまず、真偽の方は脇に置くことに決めた。
「幸いにも儂の身内に知り合いは一人もおらぬが、お主はどうだ?」
「……私もいませんでした」
アスナも名簿を確認終える。
その表情はどこか憂いが見える。
「……」
(ミト……)
アスナは親友の名前がないことに、嬉しいはずだが、素直に喜べない。
”なぜ、自分だけ……”と思わなくはないためだ。
そもそもSAOにはそんなに乗り気ではなかった。
たまたまミトに誘われたゲーム名がSAOだった。
たまたま兄の部屋の机上ににナーヴギアが置かれていた。
そんなたまたまな偶然が偶然を重ねた結果、この悪夢に囚われることになったのだから。
「ふむ。ただ、一つ気がかりは、クルーゼなる男が申していた名簿の並びだが、アスナと同じ仮名文字で記載されている者たちは、その……ゲーム?とやらの参加者と関係があるやもしれぬな」
「はい。おそらくキリトからユージオまではおそらくSAOのプレーヤーかと思います」
オンラインゲームの知識は深くないアスナだが、ミトもそうだがSAOのプレイヤー名は苗字はなく、カタカナの名前ばかりであった。
たまたまなのかもしれないが、ウンベールと名乗った参加者は、苗字のある貴族でかつ、発言からSAOとは無関係そうだった。キリトの上にあるラクス・クラインも苗字があるため、キリトからユージオまでSAOの参加者だとアスナも小兵衛同様推測する。
厳密にはユージオはSAOではないのだが、参戦時期の影響もあり、アスナが勘違いするのは無理もない。
「それにしても、名の順じゃが、アスナが先頭ではなくキリトが先頭となっておるのは気になるの」
「地図にはキリトの家と書かれていますしね」
「うむ……わざわざ地図に記載されている程。奴らと関係は深そうじゃが……」
キリト……
聞いたことない名前。ミトなら知っているかもしれないけど……
アスナは自身の記憶を辿るが、やはりその名が出てくることはなかった。
「ま、それもおいおいでよかろう。……さて、アスナよ。剣術ではなくこの殺し合い。お前は人体のどこを狙う?」
小兵衛は弟子としてアスナに問いかける。
「……首ですか」
「うむ。確実に命を奪うなら”目”か”首”じゃ」
小兵衛はアスナの返答に満足げに両手で己の目と首を指す。
人間の骨は意外と頑丈だ。
簡単に刃は通らない。
ならば、斬る場所として大量出血を狙える首は狙い場所となる。
現に小兵衛がウンベールなる貴族と名乗った異国の公方らしき男を仕留めたのも首元だった。
そして、首元以外を狙うなら眼窩。
眼窩とは眼球が入っている頭骨前面の穴のこと。
眼窩の入り口は丈夫だが、その奥にある眼窩壁は薄くて刺せば脳まで痛みを達する。
つまり相手の”即死”を狙える。
「それにしてもかつて、倅に十日で強くしてほしいといってきた男がおったが……それ以上の条件で鍛えなければならぬ者が現れるとはな」
「アスナよ、剣術というのは先ず十年。それほどやることで俺は強いという自信(こころ)になる」
「……」
「十年やってまた十年やると今度は相手の強さが分かるようになる。それから十年やるとな…今度はおのれがいかに弱いかということがわかる」
「……え?」
「四十年やるともう何が何だがわからなくなる」
「それが剣術というやつだ」
「……では、先生はどうして私を弟子にすることを承諾したのですか?」
小兵衛の言葉をそのまま受け取るなら、この殺し合いが定められているデッドラインである50時間では無理だと言っているようなもの。
アスナが不安がるのも当然。
「不安か?ふふ・・・…・ま、普段なら無理だが、この環境なら可能かもしれぬ」
「……?」
「だが……その前に今一度尋ねる。本当にお主はその道を選ぶのじゃな?それ相応の覚悟をして来ているだろうな?」
「……はい」
「どんなことでも耐えるかえ?」
「はい!」
「なら……その上半身のみ肌身になりなさい」
「え!?」
まさかの小兵衛の言葉に流石のアスナも驚愕の声を出した。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「どうした?先ほど、どんなことでも耐えるかと尋ねたら耐えると答えただろう」
「は、はい……ですが……」
まさかの小兵衛にアスナは困惑する。
いくら、年が離れていると言っても異性相手に肌身を見せるのは年頃の乙女には堪える。
(でも、先生の眼差し……真剣だわ)
小兵衛の眼差しは好色のそれではなく、剣客そのもの。
決して先ほどのウンベールのような下種な思惑ではないと理解できる。
「わ……わかりました」
アスナは意を決する。
胸のプレートを脱ぎ、上半身の衣類を脱ぐ。
「……」
それはなんとも美しい肌であった。
小兵衛は黙ってそれを見つめると、刀を構え――
「鋭!」
――スス
「うッ!」
アスナの雪のような白い肌に一線。また一線と薄皮一枚斬られる。
アスナも女だ。
肌に傷が残るのは想像を絶する苦しみであろう。
それでもアスナは耐え抜いた。
気も失わず。
「鋭!」
今度は眼前すれすれに剣先が交差する。
これらの行為が何度か続いた――――
☆彡 ☆彡 ☆彡
「よくぞ、耐えた」
行為を終えると、小兵衛は傷の手当てを行う。
「痛むか?」
「……ちくちくするだけです」
アスナは顔を赤らみつつも気丈に見せる。
そう、傷が残るといってもこれはデータ上の身体。偽りの身体。
本当の自分の身体は傷一つない。
そうアスナは言い聞かせ立ち上がる。
「だが、これで仕舞ではないぞ?おぬしに今から課題を命ずる」
「……はい」
服を着直し、小兵衛の課題という言葉にアスナは身構える。
「今から化生共を50匹斬りなさい。全て”眼窩への突き”でだ」
想像以上の課題であった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「眼窩への突きだけですか?」
「そうだ。例外は認めない。全て”それ”でやりなさい」
「……仮面ライダー対策でしょうか?」
「そうだ」
アスナは小兵衛の意図に気づく。
そう、ルルーシュなる者の放送で見せた従者の”力”
仮面ライダーの力
「あれらの他にも仮面ライダーと呼ばれる者もしくは、その力を有している参加者はおそらく多い。なら、敵として対峙する対策も練っておかなければの」
ニヤリと小兵衛は話し続ける。
「あの仮面ライダーなる者の鎧は見たところ頑丈じゃ。並の剣技では、傷一つ与えられぬだろう……だが、先ほども申したが、首と眼窩なら話は別。いかに強固でもそこをつら貫けば斃すことができるだろう」
「儂の見立てでは、お主のその刀(ウインド・フルーレ)とソードスキルは”突き”に特化している。なら……極めるは眼窩への突きよ」
異国の剣(ウインド・フルーレ)は見たところ、日本刀とは扱いが違う。
”袈裟斬り”より”突き”が適しているだろう。
故に小兵衛はアスナに突きのみの50匹斬りを命じた。
「分かりました……やります!」
小兵衛の説明にアスナは納得するとその課題に取り組む。
「うむ。それでは……始め!」
小兵衛の合図とともにアスナはNPCモンスターと立ち会う。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……」
(ふむ……なかなか”すじ”がよい)
小兵衛はアスナのNPC50匹斬りの様子から評する。
リニア―なる突きは見事。
準備動作と技後の動きに速さ。
所作の美しさも兼ねている。
「道場主をしていた頃を思い出すわい」
かつて小兵衛は四谷の仲町に道場を構え、門人も数多くいた。
後に大名となる”若様”や”滋野忠四郎”もいれば、”黒田精太郎”に”川越中納言”といった輩も含め、門人たちは清濁ある者たち。
「……」
(水は器によっていかようにも姿を変える。さてアスナはこの殺し合いという器でどのようになるか)
初めは正直、アスナを弟子とすることに乗り気ではなかった。
既に道場は閉じ、余生を送る身。
倅に嫁ができ、孫もできた。
だが……アスナの目。
始めは異国の者かと思えた薄い茶色の目に宿る信念。
流れ星のような儚さに鋼鉄の鋭さが同居するその佇まいに小兵衛の剣客としての血が滾ったのだ。
(今や刀に何を求めるかは人それぞれだが……斬るも斬らざるも人が為す業(わざ)じゃ)
聞けば、アスナが住む日本では、もはや武士も居らず、刀を持ち歩く者はいないらしい。
斬らぬのならそれにこしたことはない。
だが、アスナは斬ることを選んだ。
なら、自分は手を貸すのみ。
その道の果てが散る花だとしても。
老剣客はそうケツイしたのだ。
「さて……儂もやるとするか」
小兵衛の前に現れしは幻妖。
もっともそれはNPC。
贋でしかない存在。
それでもレベル3と称されるそれは、容易ならざる化生。
(ふふ…血がおどるわい)
幻妖を前にした小兵衛が抱くのは恐怖ではなく期待。
江戸の一剣客では、一生対峙することもない者達がこの殺し合いにいる。
なら剣客として剣を交えてみたい。
刀を納刀せし構える。
正座するそれは”居合い”
――ギュル
瞬時に危険性を認識したレベル3は淤刀を吐き出し活性化した脳を更にしばいて勝機を絞り出す。
全力で避ける
小兵衛(ジジイ)はその刀で斬りかかってくるだろう。
それを避けた上で渾身の一撃をお見舞いする。
体勢は小兵衛(ジジイ)に攻撃をしかけているが、考えていることは避けることだけ。
どんな攻撃が来ても避けられる。
レベル3の目と洞察力は極限迄集中していた。
「円」
小兵衛はただ一言”それ”を口にした。
”円”それは念の応用技。
小兵衛に支給された”円”は、ゼノ=ゾルディックのように300メートルもの円を張ることもネフェルピトーのようにアメーバ状に自由自在に形を変えることはできない。
せいぜい元の使用者と同じ刀の間合い程度。
しかし、小兵衛にとってそれで”十分”
剣士に必要な間合いがあれば。
正に鬼に金棒。
秋山小兵衛は、今は亡き嶋岡礼蔵と共に”竜虎”もしくは”双璧”と称された程。
たとえ、レベル3の幻妖とはいえNPCなど問題なし。
「あ…あい……」
小兵衛の一刀のもと、幻妖は斬り捨てられ再生する暇もなく絶命した。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「ふう……」
(この円とやら……強力ではあるが、過信しすぎるのはいかんの)
自身に支給されしソードスキル:円を試した小兵衛はそう結論した。
円を発動すると体力の消耗する。
若い頃の自分ならいざ知らず、老齢となった身では、そう頻繁に使用するのは控えた方がよいと。
――バササッ!
「?」
「それにしては流石は秋山殿でございますな。陰陽師でもない人の身で、幻妖を一刀のもと斬り伏せるとは天晴れでございます」
(それも……贋とはいえ、レベル3の幻妖を)
「烏天狗に褒められるとは、恐縮じゃな」
小兵衛の肩に止まり話しかけるは烏天狗。
鵺とも面識ある烏天狗は、素直に小兵衛を褒めたたえる。
ウンベールに支給されていた幻妖。
元の所持者が死んだため、烏天狗の契約者は現在小兵衛となっている。
「それで、どうなさりますか?」
烏天狗の尋ねに小兵衛はアスナへ視線を移す。
「はぁぁぁああ!!」
アスナは小兵衛の言いつけどり、NPCのモンスターを貫いている。
その高い集中力は小兵衛の視線に目もくれていない。
「ふむ。一度異国の居酒屋(タイガーボーイ)へ戻るとするか」
「アスナ殿を待たなくてよろしいので?」
「なあに。アスナも一端の剣士。お守は必要あるまい」
そういうと小兵衛と烏天狗はタイガーボーイへ一足早く戻るため足を動かした。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……50!!!」
アスナは再び50匹を全て眼窩への突きで仕留め終えた
「ふぅ……」
汗をぬぐう。
「先生は……?」
いつの間にか、師がいないことに気づいたアスナ。
それと同時に……
ぐぅ〜〜……
「……一度、戻ろうかしら」
腹の虫も鳴り、アスナは小兵衛が向かったであろうタイガーボーイへ足を進める。
花が見事に散るかは今はまだ誰も分からない。
【エリアB-3/タイガーボーイ周辺/9月2日午前7時】
【アスナ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)】
状態:正常 死に方を選びたい 乳房上に無数の刀傷(止血済み)、疲労(中)
服装:SAOでのアバター(服装は劇場版星なき夜のアリア)
装備:ウインド・フルーレ@SAO プログレッシブ 星なき夜のアリア (映画)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:死に方を選ぶ、負けたくないため
01:先生(小兵衛)に師事しつつ強くなる
02:タイガーボーイへ向かう
03:茅場って……あの茅場よね?
04:どういうこと?これはSAOとはどう関係しているの?
05:キリト……同じSAOのプレーヤー?
参戦時期:ミトにパーティを解消され、ジャイアントアンスロソーに殺される寸前
備考
※キリトに助けられる前ですのでキリトとの面識はありません。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
※小兵衛との会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※名簿の並びからキリト〜ユージオまでをSAOのプレーヤーではないかと推測しています
【秋山小兵衛@剣客商売(漫画)】
状態:正常、疲労(小)
服装:剣客
装備:陽竜刀@ソードアートオンラインシリーズ 烏天狗@鵺の陰陽師
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、 ラランダムアイテム×0〜1(ウンベール)、アニールブレード@ソードアートオンラインシリーズ、 ホットライン
思考
基本:オールマイトの後継者としてゲーム運営への叛逆
01:タイガーボーイを拠点に情報収集する
02:アスナに手ほどきをする
03:アスナに手ほどきをする
参戦時期:少なくとも第1話女武芸者以降
備考
※アスナとの会話から時代を超えた人物が集められていることを理解しました。
※アスナを門下としました。
※ウンベールが仮想世界の住人とは気づいていません。(別世界の人間だと思っている)
ソードスキル:ノブナガ=ハザマの円@HUNTER×HUNTER
秋山小兵衛に支給。
念能力者ではないため、体力を消費しなければ使用することはできないが、無外流の達人である小兵衛との相性は抜群であり、気配を絶ち、音を消して近づこうともこの中(円)に入り込めば即座に形と動きを感知し斬ることができる。
また、円を張ったまま会話や移動を行うこともできる。
オレは太刀の間合い(半径4m)までで十分…!!(つーか これが限界)byノブナガ
烏天狗@鵺の陰陽師
ウンベールに支給されていた幻妖。
代々、鍔女山の美執村に住みつき、村の防守をに務めていた。本来は村及び山一帯の幻妖の侵入を防ぐほどの結界を張ることが出来るが、支給品としてされているため、契約者現在は秋山小兵衛と契約している。契約者は周囲一帯の様子(自身がいるエリア内のみ)を把握できる。また15秒程度契約者の気配を消すことができるが、一度使用すると6時間使用不可能。
NPCモンスター
レベル3@鵺の陰陽師
本名は不明。一応、”つっちー”とよばれていた幻妖。
その幻妖は、夜島学郎と四衲と因縁部深く人質を使うなど狡猾な性格だが、そこはNPC
真贋でいえば、贋でしかない存在。
投下終了します。
投下します
時計は七時を指していた。
今の亀井美嘉に、それを確認するすべはない。
戦いが始まって何分経ったのか、時間の感覚がまるでない。
「グルォォォォォ!!!」
背後から迫ってきた巨大な狼――ガットゥーゾの、首元から紫色の飾りがついた姿が嫌に目についた。
走るというより飛び回るという言葉がよく似合う素早い動きながらも、体高は美嘉より高い。メカ丸を起動してようやく並ぶだろう。
鋭い牙、耳障りな遠吠え、鼻につく獣臭。
全てが不快だ。五感が恐怖で粟立つのを感じる。
それでも、震えて立ち止まっていては死ぬだけだと亀井美嘉は知っている。
「逃げないと……」
震える足を動かしながら、一戸建ての屋根の上でもう一匹の狼と戦う藤乃代葉とは反対方向に足を動かす。
レジィ・スターに早々に襲われ。自分と変わらぬ年で戦場に身を置く藤乃代葉の存在を知った。
2つの出会いが亀井美嘉の意識を変えた。自分は戦場にいる。夢でも幻でもない以上、生きるためには足掻かなければならない。
「……あの場所には、近づけないようにしないと。」
少し離れた先、赤い屋根の上で戦う代葉をちらりと見る。
爪を振り下ろす狼の攻撃を烏の式神で誘導し、その隙に背後から右足に槍を突き刺していた。
代葉が相手する狼は前足や背中が赤く染まっている。素人目から見ても代葉が優勢に見えたし、遠からず代葉が勝つだろう。
事実レベル2幻妖のような巨大な相手との戦いに慣れ、狼の速度も烏の群れや位置替えで対応できる代葉にとって、ガットゥーゾを倒すことは危険であっても難しいことではない。
一対一なら代葉が勝つ。
だからこそ美嘉は逃げた。
二匹で襲い掛かった狼の一匹が、自分を狙うと気づいていたから。
無傷の狼に代葉の邪魔をさせないことが、美嘉が考えた最善の手だった。
「グルアゥ!!」
追いついた狼が美嘉にとびかかり、紫に染まった爪を振り下ろす。
頭を守ろうととっさに両腕を交差させると、鈍色の装甲がガリガリと音を立てて削れていった。
音を立てる装甲を前に、六つに光る赤い眼の下で美嘉は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「しまった……あの爪は避けなきゃダメだったんだ。」
ガットゥーゾの爪、ポイズンクロウには文字通り毒がある。爪撃の巻き添えで変色した外壁やコンクリートを何度も見てきた。
紫色に変色した爪痕を前に、反射的にガードを取ったことを歯痒く思う。
恐らく美嘉は生身でも同じことをしただろうし、メカ丸の装甲がなければ両腕がへし折れていただろう。
美嘉は戦闘のド素人だ。
代葉のように戦術や経験からなる動きなど知らないし、知っていても考えた通りに体など動かない。
だから自分のミスを自覚した瞬間。美嘉は反射的に足を止めた。
その数秒は学生の喧嘩ならともかく、命の取り合いでは致命的な隙に他ならない。
「グルァァァ!!」
動きが止まった瞬間を見逃さず、ガットゥーゾは美嘉の肩に噛みついた。
バキバキと砕ける音が装甲の内側に響き、耳にこびりつく。
装甲のおかげで無傷のはずなのに、噛まれた場所に痛みが走った気がしたて美嘉は苦悶の声を上げた。
その反応に、ガットゥーゾは嬉しそうに目を細める。
より強い力で肩の装甲を噛み砕き、牙から垂れた生温かな唾液が、べとりと中にいる美嘉に滴り落ちた。
「いい加減に……して!!!」
美嘉は左肩に噛みつくガットゥーゾの顎をぶん殴る。
何かを殴った経験さえない拳はあまりに弱弱しい。メカ丸を装着したとはいえ大したダメージにはならないだろう。
それでも突然の反撃に驚いたのか、「キャオン!!」と情けない声で吠えたガットゥーゾが肩から顎を放した。
肩には深々と穴があき、ヒビが広がっている。ちょっと叩くだけで簡単に砕けてしまいそうな装甲が、美嘉の顔を青ざめさせた。
「今のうちに逃げないと……。」
ガットゥーゾに背を向けて、美嘉は走る。
初志を貫徹していると言えば聞こえはいい。
だがガットゥーゾに走力で負けている以上、いずれ破綻する作戦に違いない。
美嘉を動かしているのは使命感もあるが、ガットゥーゾに対する恐怖が明らかに上回っていた。
逃げないと。逃げないと。逃げないと。
足を動かし、おぼつかない姿勢で逃げる美嘉の耳に。烏が羽ばたいた。
「ギャオン!!!」
美嘉が振り向いた先で、ガットゥーゾの周囲に無数の烏が羽ばたいている。
代葉の式神だ。
目を塞ぎ、耳を塞ぎ、鼻を塞ぎ。ガットゥーゾが滅茶苦茶に振り回す爪を烏が軽やかに避けていた。
代葉が戦っていた場所を見ると、ガットゥーゾが一匹血まみれになって横たわっている。
「代葉さん!勝ったんだ!!」
鈍色の装甲の中、美嘉は目を輝かせた。抱いていた不安がどんどんと消えていく。
代葉の姿は見えないが、烏をこちらに差し向ける余裕がある。そう分かれば十分だ。
さっきまでは怪物にしか見えなかったガットゥーゾも、烏の群れに翻弄されている姿を見ていると派手な大型犬のようだ。
初めて余裕が生まれた美嘉は、両手を広げてガットゥーゾに向けた。
「今なら……倒せる!」
胸に赤色のエネルギーが集まり、両腕から紫色の光線が射出される。
「二重大祓砲(ミラクルキャノン)!」
赤熱を秘めた光線がガットゥーゾに直撃し、煙と共に肉の焼けた生臭い匂いが辺り一帯に広がった。
顔の半分が焼け焦たガットゥーゾはぐったりと倒れこむ。全身の毛皮に火が付き右前足に至っては完全に炭化していた。
ガットゥーゾの弱点は火属性。美嘉の攻撃はこれ以上ない有効打となって獣を焼いた。
「……勝った。」
胸の中から熱い何かがこみ上げる。
代葉の足手まといだと思っていた自分でも、獣を相手とはいえ勝てた。
脱力感と安堵と共に、高揚感が全身を駆け巡り亀井美嘉の本能を刺激した。
思わず叫びたくなる思いを堪えつつ、元来た道を引き返す。
式神を派遣する余裕があった代葉が来なかったことに、何か理由があると思ったのだ。
美嘉の考えは的中した。
烏を連れて走る美嘉の視線の先で、4階立てのマンションの一角で何かが落ちた。
烏の群れと飛び散るガラス片の中、槍を構えた代葉がベランダから投げ出されていた。
「代葉さん!!」
叫ぶ美嘉の前で、遠目に移る代葉は黒い影と戦っていた。
先ほどまで戦った狼と同種のようだ、まさか三匹目がいたのか。
だがそれにしては様子がおかしいと美嘉は目を凝らす。
代葉と共に空中に飛び出したガットゥーゾの背には、醜悪な笑みを浮かべた黒い剣士が乗っていたのだ。
◇◆◇◆◇
「美嘉は無事かな。」
ガットゥーゾの首に槍を突き刺し、呼吸をしなくなったことを確認して代葉は周囲を見渡した。
背後からいきなり化け物狼に襲われ亀井美嘉と分断されてしまったが、遠くでメカ丸の装甲を起動した美嘉がガットゥーゾから逃げている姿が確認できた。
その姿に代葉が失望したりはしない。
代葉のように戦闘経験があるわけではない、ボランティアとアイドル経験があるだけの少女が無事であるだけでも素晴らしいことだろう。
「すぐにでも合流したいけど……」
代葉の式神が持つ、自身との場所替え能力。その力を使えば美嘉の合流は数秒で済む。
だが代葉は動かず、周囲を見渡し逡巡する。
「そもそも、都市部なのに狼型のNPCモンスターっていうのがおかしい。幻妖か、そうでなくとも機械や人型の方がずっと自然。
誰かが持ち込んできたのは間違いない。理由は……考えても仕方ないか。」
残った式神のうち半分を美嘉の援護に飛ばした代葉は、近くにあるマンションを睨む。
ガットゥーゾとの戦いの中、ベランダにわずかな影が見えたことを、代葉は見逃していなかった。
「マジかよ。2m近い狼を単独撃破か。
あのクールビューティちゃん。場慣れしてやがるな。」
マンションの四階。ベランダから戦場を眺めていたPoHは藤乃代葉の戦いに認識を改める。
口笛をならし飄々とした態度を取りながら、侮っていた少女の芯の入った強さに警戒を強めた。
ガットゥーゾは2m近いサイズの狼だ。魔法もスキルもなしに1人で倒すには危険な相手だが。代葉の動きは手慣れたものだった。
烏を呼び出して攻撃力を上げて、攪乱した上で急所を貫く。バーチャルでもないというのに殺すことに一切のためらいを感じなかった。
「あのお嬢ちゃん。殺すことに慣れてやがるな。人間以外相手の戦いに関しちゃベテランだろう。
ALOあたりをやりこんでる……という感じでもねえな。ポリゴンでしか殺しのできない人間特有の甘さがねえ。」
銃社会育ちで、プロの暗殺者であるPoHの視点は実戦的だ。
だからこそ代葉の動きは戦いが電脳(ゲーム)ではなく実戦(げんじつ)に組み込まれた人間のものだとわかる。ライフゲージなどを意識しない、確実に無力化するための動きだ。
『この殺し合いの参加者は、異なる次元・異なる世界から集められている可能性が高い。』
覇王がそのような考察をしていたことを、ふと彼は思い出す。
羂索の発言を元に、異世界の存在を知る覇王だからこそ辿り着いた憶測。
事実、覇王の放つデュエルモンスターズの知識はPoHにはなかったし、あれほど騒ぎになったSAO事件も日本人の覇王十代は知らなかった。
フルダイブ型のゲームさえ覇王十代は知らなかったのだ。至極真面目な顔で「ふるだいぶとは何だ?」と質問された時はさしものPoHも答えに困った。
「ジョークセンスのねえ覇王サマだと思ったが……ありゃマジかもな。」
藤乃代葉を前に、覇王の憶測が現実味を帯びてきた。
覇王の冷酷で恐ろしく暗い眼。自分の知らない世界で想像もしない経験を積んできただろうことは明白だ。
あのクールビューティちゃんも覇王のように、別の世界で想像もしない経験を積んできたかもしれない。
「まあどうでもいいな。覇王サマに差し出すには十分か。」
覇王の命はNPCの軍勢を連れて来いということだったが、要は戦力になればいい。
もう一人の小娘を脅して、クールビューティちゃんも言うことを聞かせ。適当なところで殺せばいい。
そんな下卑た考えを浮かべたPoHの喉元に、漆黒の槍が突き立てられる。
PoHが見上げた先、ベランダの手すりの上に藤乃代葉が鋭い視線を向けていた。
「成程、烏との位置替えで飛んできたのか。
仮にも地上四階だ、羽でもなきゃこんなとこにはこれやしねえ。」
「貴方があの狼を放った犯人?」
「なんのことだ?
俺はキリト。殺し合いに乗ってないからこんなとこで引きこもってる、善良な市民だとも。」
「嘘。」
間を置かず返された言葉に、空気が一気に張り詰める。首元に当たった槍から血が滴り落ちた。
「おいおい、初対面の相手を嘘つき呼ばわりかよ。
親の顔が見てみたいぜ。」
「家の方針に楯突いてとっくの昔に殺されてる。
それにあなたは本当に噓をついている。私、人の感情が読めるから。」
「……本気で言ってやがんな。
何だその眼は?覇王サマといい別世界の日本はスラムにでもなったのか?だとしたら傑作だが。」
藤乃代葉の目は、覇王十代ほどではないが冷たく重苦しいものをたたえていた。
藤乃代葉の言葉に嘘はない。
PoHの嘘を見抜いていることも。両親が殺されていることも。ロクでもない家でロクでもない人生を歩んできたことも。
髪色こそ透明感あるシルバーだが、顔立ちは日本人のもの。
それなのに、浮きあがる憎悪や侮蔑はいつもより薄かった。
「普通の人にとっては、至って平和。」
「そりゃ残念だ。普通じゃねえお嬢ちゃん。」
至って平和な日本なら、覇王といいこのお嬢ちゃんといいなんでそんな眼が出来るんだ。
出かかった言葉をPoHは静かに飲み込んだ。
あるいは、自分は彼女に相手に幾ばくかのシンパシーを抱いていたのだろうか。
覇王ほど引き付けるものはないが、その希望が欠けたような目はかつてのPoH――ヴァサゴ・カザルスに少し似ていた。
「……残念だな。
お前が日本人じゃなく、ここが殺し合いじゃなかったら。ちょっとは仲良くできたかもしれねえのによぉ。」
代葉の耳に、初めて嘘以外の言葉が届く。
それでも粘りつくような敵意や悪意は全く隠れていない。否、隠していない。
互いに武器を握る手に力が籠る。
張りつめた空気の中代葉は笑顔を向けた。
「悪いけど、こっちから願い下げ。
今の私には、仲間も友達もいる。」
朝日に照らされ、藤乃代葉の瞳が光る。
欠けた心を希望で埋めたような光が、ヴァサゴの心をざわつかせた。
「そうかい。じゃあ死ね。」
PoHの体は、言葉が終わるより早く動いた。
代葉が気づいたときにはキリトとしての薄ら笑いは見る影もなく、荒々しい蹴りが代葉をベランダから叩き落とした。
「そっちが本性か。もう手加減はしない。」
抵抗もせず背中から落ちる代葉が指を動かすと、周囲の烏が集まり支えていく。
烏をクッションすることも、位置替えで逃げることも可能。
万全の布陣を整える代葉に向かい、キリトと名乗った男は黒曜の剣を抜きベランダから身を投げた。
「来いクソ犬!」
PoHも無策で飛び降りたりはしない。
落ちる風と飛び立つ烏の中、甲高い音を立て指笛を鳴らした。
「グルァァァ!!!」
屋上から遠吠えが響き、待機していたガットゥーゾが駆け下りていく。
ガットゥーゾはエフミドの丘でユーリ・ローウェルらの前に姿を見せた際、見上げるほどの高い崖の上に姿を見せた。
ベランダを伝えばマンションの四階程度、駆け下りるのは難しくない。
ガットゥーゾがPoHを捕らえ、PoHもまたガットゥーゾの首に手を回しその背に乗り込む。
「よーしいい子だ。」
「やっぱり貴方がその狼を使っていた。
どうやって操ってるの。何かの支給品?」
「教えるかバーカ!」
実際は覇王への恐怖で傅いているにすぎないが、PoHの指示に従う以上代葉にもPoHにも関係のない話だ。
下卑た笑みを浮かべ、マクアフィテルを水平に構える。
同時に二階のベランダに足を置いたガットゥーゾが、空中で身動きが取れない代葉に突進を仕掛けた。
「もうその動きは何度も見てる!」
狼の速度は時速70kmに及ぶ。魔獣であるガットゥーゾならそれさえ超えるだろう。
目の前でアクセル全開の車が走るようなものだが、ガットゥーゾを一体倒している代葉には、その経験から足を蹴り上げる予備動作を予測できる。
無論速度ではかなわない、だが代葉なら周囲の烏――眇の鴉合(すがめのあごう)との位置替えで対処が可能だ。
蹴り上げる直前、背後の位置を取るように烏と入れ替え、大鎌のように変化させた槍を叩きこんだ――
「背後……だよなぁ!」
――はずだった。
三日月状に曲がった刃は、黒曜の剣とぶつかり火花が散った。
「俺がただのお荷物として乗ってると思ってんのか?
お前がこの駄犬の動きに慣れてんなら、その戦いを見てた俺もお前の動きくらい読めるんだぜ。」
口角を無理やり引っ張りあげるような、酷く不快な笑みを浮かべて剣士が叫んだ。
剣と槍のぶつかり合いは剣に分があり、ジリジリと代葉は押されていく。
体格差や性別さが原因ではない。空中に浮く代葉に対し、ガットゥーゾを踏みつけるPoHの方が力が強いだけのことだ。
「キリト!あなたは何を考えているの!」
「考え!?ハッ。せっかくの殺し合いを楽しみてえ以外の考えがあるか!
名簿見たかテメエ!半分以上が日本人だ。こいつらをぶっ殺し放題!殺し合いさせ放題!
バーゲンセールじゃねえか!テンション上がるなぁ!!」
ああ、この男はとっくに壊れているんだな。
噓偽りのない男の言葉に、代葉はキリトと名乗った男への共感を閉ざした。
押し切られる前に距離を取り、 傾斜の屋根の上で槍を突き刺し姿勢を保つ。
ガットゥーゾをとの戦いもあり消耗がある、荒くなりそうな息を静かに整えた。
対するPoHも、ガットゥーゾを器用に乗りこなし代葉と同じ屋根に立つ。
指輪を嵌めた左腕でガットゥーゾの鬣を乱暴に引っ張る様は、馬を乗りこなす騎兵にもペットを虐待してる飼い主にも見えた。
「おっなんだなんだ。熱烈なアプローチは止めちゃったのかつまんねえなぁ!
それじゃ、ゲストでも招待しちまうか!」
懐から一枚の札を取り出し、ひらひらと見せびらかす。
この場所に来るまでの間、配下に加えるまでもない雑魚NPCをPoHは倒してきたが、そのうちの一匹がドロップしたものだ。
「禍ツキの霊符……」
「知ってんなら話が早え!」
PoHが投げた霊符は、シュルシュルとおどろおどろしい空気に変わり渦を巻く。
その効果は、近隣にいる幻妖を呼び寄せること。
夜島学郎や藤乃代葉がいる以上。NPCモンスターに幻妖がいるのは当然といえた。
「覇王サマに命じられたのは、NPCモンスターどもの軍勢を集めろってもんだ。
俺もこのワンちゃんたちにそう言ったんだが……どうやらそいつは不可能らしい。」
代葉とPoHが立つ屋根の東西から、突き刺すような冷たい気配が立ち上る。
PoHの背後に現れた存在に、藤乃代葉の額から冷汗が垂れた。
見た目だけならボロ切れを被った四足獣のよう。
だがその顔はひきつった笑みを浮かべた人間そのもの、四肢も形は人のそれだ。
ガットゥーゾに乗ったPoHよりも高く、見えているだけで3つある左目で代葉を見下ろしていた。
「レベル3……!!」
驚愕を隠せない。代葉のよく知る怪物の姿がそこにあった。
代葉ら陰陽師の大敵である幻妖。その中でも7人以上の一旗隊員のチームか特旗隊員でなければ戦えない怪物中の怪物。
まさかこんな場所で見ることになるとは、警戒はしていても想像はしていなかった。
「見つけた時は驚いたぜ。ワンチャンどもがキャンキャン吼えるから何かと思ったらこれだよ。笑っちまう!
ああそうだ、”軍勢”なんざここじゃ集まらねえ!
・・・・
他のNPCモンスターは逃げたか、ほとんどこいつらが食っちまってんだからなぁ!」
「……貴方今なんて言った?」
――こいつら。
PoHは確かにそう言った。
PoHにもレベル3にも隙を見せないように屋根を駆けあがり、飛び移りつつもう1つの気配に視線を向ける。
「なに……あれ。」
黒いフードを全身に被った巨人。
そうとしか形容できない悪霊は、レベル3幻妖よりさらに巨大だ。
2階建ての屋根にいる代葉が見上げた先、巨人の胸にぽっかりと穴が開いている。
鼻の尖った白い仮面をつけたその存在からは、生気も思考もまるで感じない。
レベル3の幻妖に勝るとも劣らない威圧感だけが、見てくれだけの存在でないことを告げていた。
禍ツキの霊符は周囲の幻妖を呼び寄せる。
だが、本バトルロワイヤルにおいては呼び寄せるのは幻妖のみではない。
このNPCモンスターの名は最下級大虚(ギリアン)。
虚(ホロウ)と呼ばれる悪霊の中でも、ひと際巨大で危険な大虚(メノスグランデ)と呼ばれる個体。
レベル3の幻妖と共に、ここら一帯の霊的NPCを喰いつくした怪物だった。
「イッツ・ショー・タァーイム」
号令と共に腹を蹴られたガットゥーゾが、代葉と反対側に屋根を飛び越えた。
禍ツキの霊符で呼び出した二匹の怪物がいる以上、PoHが前に出る必要はない。
レベル3とギリアンを代葉にぶつけ、自身はガットゥーゾの走力を生かしヒットアンドアウェイで追い詰める。それだけで勝てるとふんだのだ。
遠くに逃げた剣士には興味を無くし、代葉に狙いを定めた二匹の悪意。
大敵を前に、瞳の奥が熱く燃える。
仮面の巨人もまた、美嘉の持つ悪霊同様幻妖に近い負の感情をもった魂だ。
陰陽師の敵であり、人間の敵。
美嘉のように善良な人間の影響下にあるならまだしも、キリトのような危険な相手に手綱を握らせるわけにはいかない。
(夜島くんなら、絶対に逃げない。)
右手を握りしめ、刻まれた刻印を赤く光らせた。
令呪を一画。腕の光を失うことにためらいはない。
3匹の怪物と危険人物。すべて倒すには安い対価だ。
代葉に縛られた枷が外れ、足元の影から烏が大群となって溢れ出す。
「マジかよ!まだあの烏出せるのか!!」
ガス爆発のように噴き出る羽音に、幻妖と虚のみならずPoHもまた気圧される。
隙を見てもう一人のガキを殺そうなどと考えていたが、それだけでは甘いようだ。
(これでいい。)
剣士の視線が自分に向いたことに、代葉は内心安堵していた。
美嘉にあの狼を一匹任せたままなことさえ心残りなのだ。これ以上危険にさらしては、夜島くんに合わせる顔がない。
「よし、いける。」
代葉はこの会場に呼ばれるに伴い、契約している幻妖『狂骨』を呼び出す術を失っている。
それは成長という意味では令呪による制約より遥かに重い。
美執村での戦いの後修行を重ねたが、普通に戦っていては狂骨なき今はレベル3か大虚を片方倒すのがやっとだろう。
決めるべきは速攻。初めから無茶をする覚悟が、今の代葉には必要だ。
覚悟は既にできていた。
狂骨がいないことそのものが制約になるためか、代葉自身の身体能力はさしたる低下を受けていない。
令呪にて解き放った枷は、式神の数。
淵廟より呼び出す烏を限界まで呼び出し、上限を上回る烏を使役する槍――染離にて取り込む。
消耗が激しい奥の手をさらに突き詰めた、今の代葉の全力に応えんと黒い螺旋状の槍が形を変える。
――染離改 重炸炎烈撃墜槍。
長い帯を有した巨大なランスの穂先が朝日を浴びて黒く艶やかに光る。
嗤いを浮かべた黒の剣士に、覚悟を決めて少女は槍を向け吼えた。
「貴方は、ここで必ず倒す!!」
【エリアE-12/市外/9月2日午前7時】
【Poh@SAOシリーズ】
状態:楽しい ガットゥーゾに騎乗
服装:SAOのアバター(ただし今はSAOのキリトの恰好)
装備:マクアフィテル@SAOシリーズ、変身の指輪@Fate/Grand Order、純粋な魔力の塊@黒い砂漠
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:殺し合いを楽しむ
00:キリトもいるんだろ?
01:変身の指輪を使って対立煽りをする
02:味方を増やして戦わせるのも面白いな
03:覇王に従いながらも楽しむ。だが覇王であろうとキリトに手を出すなら容赦はしない
04:嬢ちゃんは思いのほか強かった。だがこうなっちまったらもう敵だよな?
参戦時期:少なくともラフィン・コフィン討伐戦以降。
備考
※変身の指輪は純粋な魔力の塊で賄ってます
※従えたガットゥーゾは残り1匹です
※レベル3幻妖・最下級大虚を従えましたが、完全に指示できているわけではありません
【藤乃代葉@鵺の陰陽師】
状態:ダメージ(小) 軽いやけど(両腕)
服装:普段の制服/霊衣
装備:自身の霊衣 盡器:染離改 重炸炎烈撃墜槍
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める 彼ならきっとそうする
01:美嘉を助けられてよかった。
02:あのドローンとロボットの主、多分同業者かな。危険かも。
03:夜島くん、また無茶してないか少し心配
04:キリト(PoH)はここで倒す。こいつは危険すぎる
参戦時期:美執村帰還〜白澤戦までのどこか
備考 ※霊衣状態でも誰でも姿が見えるようになっています。
◇◆◇◆◇
「なにあれ……」
目の前に現れた二体の怪物を見て、亀井美嘉はへたり込んだ。
屋根に這いずる人面の怪物に、家をそのまま引きぬけそうな白い仮面の巨人。
認識さえされていないのに、墓場にいるような冷たい威圧感から鳥肌が立つ。失禁していないことが奇跡のようにさえ思えた。
「あんなの……どうやって……」
勝つ。とは言えない。
戦う。とも言えない。
さっき倒したガットゥーゾだって、美嘉にとっては弱くなかった。
集団で街を襲うような猛獣だ。一般の女学生にとっては一生ものの戦果に違いない。
だがあの生き物は獣だ。狼の変種のようなもの。怖くはあるが理解はできた。
だから遠慮なく戦えた。だから倒せた。そういう精神的な理由が大きい。
「怖い……怖いよ。ゆうちゃん。」
理解できない。あんなものは知らない。これまで見たどんな存在とも違う。
美嘉の体を震わせる恐れは、ひとえにその無知。あるいは異質さによるものだ。
レベル3幻妖も大虚も、亀井美嘉の人生では一生あっても出会うはずのないものだ。
あんな恐ろしい怪物がいるなんて。知りたくなかったと嘆きそうになる。
「おっ……おっお……」
美嘉の体を震わせる恐怖はそれだけにとどまらない。
美嘉に向かってのたりのたりと近づいてくる怪物が、もう一匹出現していたのだ。
6本の足の生えた魚のような、ノミを3mほどにまで膨らませたような。
ひたひたと近づく青銅色の怪物は、美嘉の言葉で言い表せばそんな姿をしていた。
PoHの使った禍ツキの霊符により呼び寄せられた、捕食者たちの難を逃れていた生き残り。
羂索の言うところの、2級呪霊といわれるNPC(あくりょう)がもう一匹。迫っている。
亀井美嘉の装備、究極メカ丸絶対形態は元々対呪霊のための傀儡だ。それも最上位の特級と戦えるほどの機能を備えている。
適切な使用者――例えば本来の使用者である与幸吉が扱えば2級呪霊程度瞬殺できるし、レベル3幻妖や大虚とも十分やり逢える。
だがガットゥーゾとの戦いで損傷した上、今の搭乗者は呪力を持たず恐怖に震えた亀井美嘉。
2級呪霊を倒すための強さは散弾銃があってようやくだ。
今の美嘉が発揮できるメカ丸の機能(パフォーマンス)は、そのレベルには遠く及ばなかった。
「おぁぁぁぁぁ!!!」
美嘉が戦えないと気づいたのだろう、呪霊の速度が目に見えて跳ね上がる。
アスファルトを砕きながら接近した怪物が、美嘉を握りつぶさんと迫りくる。
瓦礫が体にかかった。吐瀉物を拭いた雑巾のような匂いがした。
それでも体は動かない。美嘉は逃げようと、立ち上がろうとしているが。足が言うことを聞かない。
美嘉よりも巨大な掌が美嘉を握り潰そうと迫り、思わず少女は目を閉じて。
「柱刀骸街(ゼノブレード)」
呪霊の悲鳴と焼け消えるような音の中響く、無機質で虚ろな声に目を開いた。
縦に両断された呪霊の前に、一人の少年が立っていた。
「その恰好は……」
黄緑色の髪をした、美嘉と都市の変わらない青年。
槍と剣という違いはあれど、黒を基調とした独特の衣装は藤乃代葉のものと似ていた。
事前に聞いていた特徴から、彼が夜島学郎だと気づくのに時間はかからなかった。
ありがとう。というべきなのだろう。
貴方が夜島くん?そう尋ねるべきなのだろう。
代葉から聞いた特徴は、不器用なところはあってもお人好しで頼りになる人だという。
「……この人が?本当に夜島くん?」
特徴こそ一致しているが、目の前の相手が代葉の言う人物だとは美嘉には思えない。
白目をむいて歯を食いしばり、何に怒っているのかしかめっ面をしているのに何の感情も伝わってこない。
その全身は色を忘れたように白んでみえた。
助けられたはずなのに、呪霊はもういないはずなのに。美嘉の震えが止まる気配はなかった。
今の夜島学郎は、精神仮縫いによって脳が縛られている状態だ。
思考はしない。感情もない。ただただ主の名に従う操り人形。
「イカナキャ――」
「待って!!」
美嘉を無視して駆けだそうとした学郎を慌てて止める。
今の夜島学郎を藤乃代葉に会わせてはいけない。
藤乃代葉が今の夜島学郎を見て、平静のままいられるだろうか。
漠然とした思いが、わななく少女から震えた声を絞り出させた。
夜島学郎は振り返らない。
進もうとした足を止めたことから声が聞こえているのだと淡い期待を抱くが。続く言葉が出てこない。
なんといえばいい?何があったか聞けばいい?彼を正気に戻すには?今の彼は味方なのか?
言葉を選ぼうと脳の全部が熱を放ち動き続ける。
「どうしたのだ学郎。何か目的があってここまで走ってきたのではないのかぁ?」
一瞬にも、数分にも思える逡巡は、亀井美嘉が何か言う前に終わりを迎えた。
わずかな言葉が異常な存在感を放っていたのは、その主が怪物ゆえだろうか。
かつかつと足音を立てて歩く、二振りの剣を握った女性。
パーティーにでも出るのかという薄く派手な白いドレスが霞むほどの存在感。
背後には虹がかかっているかのようなド派手な光が女の後ろから溢れているようだ。
女は美嘉や死んだ呪霊には目もくれず、遠くで戦う代葉と黒い剣士。その周囲に現れた2匹の悪霊を前に「ほぉう。」と興味深そうに笑みを浮かべた。
「羅暁サマ。」
「慌てて走るから何事かと思ったが。なかなか面白いことになっているみたいじゃないか。
いいだろう。1つお前も遊んでおいで。」
「アリガトウゴザイマス」
羅暁の言葉を受け飛び出す学郎は、檻から出た猟犬のように見えた。
学郎の後ろ姿と遠くの戦場を忌々しそうに羅暁は見つめる。
「あの娘。学郎と同じ世界の人間かな。おそらくあれが藤乃代葉。
学郎は平然と知覚しているな。本来なら生命繊維の統制で、余計な情報は入らないはずなのだがなぁ。
これもゲームの制約とやらか。精神仮縫いの効きも想定未満だ。忌々しい。
生命繊維に介入する傲岸不遜。運営どもも残らず仕付けなおしてやる必要があるが。」
羅暁が言い終わると同時に、美嘉の腹に爆発したような衝撃が襲い掛かった。
メカ丸の装甲は音を立てて砕け、美嘉の体が宙を舞う。
塀を砕き、家の壁を砕き、リビングにあるテレビをへし折ってようやく止まり。ここで初めて自分が蹴り飛ばされたのだと美嘉は気づいた。
ガットゥーゾとの戦闘で損傷している鎧が音を立てて砕け。顔を左半分と左腕以外が残骸となって散らばった。
「あっ……あああああああ!!!」
「なんだ女だったのか。それもその顔。流子や皐月と変わらん年か。
だめじゃないか、嫁入り前の娘がそんな武骨な格好をしては。」
かつかつと足音を立て女が近づいてくる。
一見するとただの人間だ。牙もない。巨大でもない。目も2つだし手足も2つ。
それなのに美嘉には、目の前の女が、狼よりも怪物よりも。
ずっとずっと恐ろしく見えた。
「あ……あ……」
この数分の間に、人生最大の恐怖はいったい何度塗り替えられただろう。
声が出ない。
衝撃と恐怖で止めどなく気持ち悪いものが沸き上がり、砕け剥がれた装甲の上に胃の中身が溢れ出た。
「惜しいなぁ。顔立ちは悪くない。
ここが殺し合いでなければ、カバーズの餌とし生命戦維にその身を捧げさせてやれたのに。」
鬼龍院羅暁に亀井美嘉を殺す理由はない。
蹴り飛ばしたのも、目の前にへたり込んでいた武骨な鎧が邪魔だっただけ。埃を払うのと同じことだ。
だがそれ以上に。殺さない理由がない。
使い捨ての露払いなら夜島学郎だけで十分。一般人の域を出ない小娘など百人いても羅暁にとっては襤褸切れ同然だ。
羅暁が青薔薇の剣を掲げる。
砕けた壁から差し込む光が、朝日なのか後光なのか分からない。
光に照らされた水色の剣は残酷なほど綺麗だった。
辞世の句を残させてくれる慈悲もない。防衛反応が美嘉の意思とは裏腹に両目を閉ざす。
壁にいた虫を潰すように、亀井美嘉は終わる――ことはなかった。
「ここからが楽しいところなんだ。邪魔をするな。」
何かがぶつかり合う音が、美嘉の目の前で響いた。
目を開いた先では、パーカーを着た黒白の少女が水色のデバイスを手に青薔薇の剣を押しとどめている。
美嘉をかばうように立つ少女の頭上には灰色の五角形のような環が浮かぶ。
羅暁にも想定外の相手だったのだろう。蠢いた害虫を見るような苛立たし気な視線を少女に向けていた。
「……なんだ貴様?」
「邪魔をしに来ただけだ。気にしないでいい。」
『Onikata Access Granted.』
淡々とした動きでカードとメダルがデバイスに装填されていく。
羅暁と美嘉が静まり返る中、鬼方カヨコの持つウルトラゼットライザーの電子音だけが冷たく響いた。
美嘉と同年代ほどの少女の姿が、メダルの力を受け黄金の装甲を纏った黒い怪物へと変わっていく。
『Pedanium Zetton.』
「場所を変えよう。」
羅暁が反応するよりも早く怪物は両腕で羅暁を抑え、テレポートで美嘉の視界から消え去った。
突然の事態に何が起きたのか分からない。
茫然と座り込む美嘉の肩に、トントンと手が置かれる。
振り替える先にはベージュ色の髪をした美嘉と同年代の少女がいた。
鬼方カヨコ――セレブロと共に現れたノノミ。
その頭上にカヨコのようなヘイローは無いが。それで真贋を区別できるほど美嘉はキヴォトス人を知らない。
むしろヘイローがないことで梔子ユメ――羂索とは無関係であるように見え、美嘉にとっては安心できる。
その正体が冥黒に魅入られた錬金術師が生み出した、見てくれだけの化け物であることも。美嘉は知らない。
「立てますか?」
「あ、ありがとう……。」
差し出された手を、美嘉は縋るように握りしめる。
どこから現れた――そのことを考えるほど今の亀井美嘉に余裕はない。
貴方達は何者なのか――それを聞けるほど今の亀井美嘉は平静ではない。
ガットゥーゾに襲われ。巨大な虚や幻妖を目撃し。
信じられると聞いていた夜島学郎は正気を失い。鬼龍院羅暁に殺されかけた。
カヨコとノノミの出現が数秒遅ければ死んでいた。立ち上がる足の感覚に現実感がまるでない。
既に美嘉の精神は限界だ。
「どうしました?」
そんな中現れたノノミの柔和な笑みは、吹雪の中に仄かに光る陽だまりのように彼女を安心させ。
「――私は、助かったんですか?」
ノノミの手をぎゅっと握りしめながら、震えた声がポロリと零れた。
ボロボロと溢れる涙が、止まることなく流れ続ける。
「どうしてこんなことになったんですか。」
怖かった。助かった。代葉を助けて。家に帰して。
華鳥蘭子に会いたい。大河くるみに会いたい。東ゆうに会いたい。
言葉にならない思いが堰を切ったように溢れ出る。
「落ち着いてください美嘉さん。
貴方に1つ、大事な話があるんです。」
とんとんと肩を叩き、美嘉の呼吸がゆっくり落ち着いたものになってくる。
少しずつ、ノノミの声がはっきり聞こえ。「はい。」と震えが残る声で応えた。
恐怖からの安堵で緩んだ美嘉の脳が、『大事な話』がなんであるのか考えることさえしなかった。
もし、亀井美嘉がもう少し冷静なら。ノノミという名前が名簿になかったことに気づけただろう。
もし、亀井美嘉がもう少し疑り深ければ。彼女が尋ねもせず自分の名前を呼んだことを疑えただろう。
もし、亀井美嘉がもう少しだけ周囲に敏感だったら。自分をなだめたノノミの声が煩わしさと嘲笑で震えていることに気づいただろう。
もし、亀井美嘉がもう少しだけノノミのことを見ていたら――――
「単刀直入に言います。この場をどうにか切り抜けたい。
貴方を助けるために、私を助けるための。
何より、貴女の友達を助けるために。力を貸してくれませんか?」
自分に向けられた冥黒の人形の笑顔が
贋(いつわり)であることに、気づけたはずだったのに。
【エリアE-12/市外/9月2日午前7時】
【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:ダメージ(中)動揺(極大)、レジィに対する恐怖(大)幻妖・虚・羅暁に対する恐怖(極大)黒の剣士・学郎に対する恐怖(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅@ダークギャザリング
令呪:残り三画
道具:香水@ダークギャザリング ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:生きて帰る 東ゆうと再会する
01:本当に殺し合いなんだ……
02:東ちゃんも、巻き込まれて……? それに大河さんに華鳥さんも……?
03:(黒阿修羅に対して)ごめんね。そんなボロボロなのに戦わせて。
04:代葉さん。同い年くらいなのにすごいなぁ。
05:あれが……代葉さんのいってた夜島くん?
06:たすけて。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考
※究極メカ丸 絶対形態@呪術廻戦は破壊されました。
【夜島学郎@鵺の陰陽師】
状態:『精神仮縫い』
服装:いつもの服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:羅暁様……
01:羅暁様に従う
参戦時期:43話より後
備考
【鬼龍院羅暁@キルラキル】
状態:健康
服装:いつものドレス姿
装備:天穿剣@ソードアート・オンライン、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:勝ち抜き、異世界全てを全てを生命戦維で包み込む
01:このガキ(学郎)は使い捨てられる手駒として利用させてもらう
02:娘や皐月がいるならもっと面白くなるかもなぁ?
03:精神仮縫いの効きが思ったより弱いな。運営どもめ
04:なんだこいつは?
参戦時期:流子が娘だと知った後
備考
※生命戦維による耐久力等に多少は制限が掛けられています
※『精神仮縫い』を含む洗脳・情報統制能力に制限が掛かっています。
【セレブロ@ウルトラマンZ】
状態:興奮(大) ノノミへの警戒(大)羅暁への警戒(大)
服装:鬼方カヨコと同一
装備:鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ
ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:このゲームを楽しむ
01:キヴォトスの神秘、頑強で面白い
02:羂索たちのゲームは実にいい 俺がもっと盛り上げてやる
参戦時期:ウルトラマントリガー・エピソードZ終了後
備考
※冥黒ノノミと協力関係のようです。
【鬼方カヨコ@ブルーアーカイブ】
状態:セレブロにより意識不明・洗脳状態 ダメージ(中)
服装:普段の服装
装備:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ ベリアルメダル・ゼットンメダル・キングジョーメダル@ウルトラマンZ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1 ホットライン
思考
基本:キヴォトスの生徒が参加していないか探す。現在はセレブロにより自意識が封じられている
01:キエテ カレカレータ…
参戦時期:対策委員会編2章終了後
備考 各イベント・便利屋日誌における出来事をどこまで経験しているかは、後述の書き手様にお任せします
【ドロップ品一覧】
禍ツキの霊符@鵺の陰陽師
・PoHが入手していたドロップ品
幻妖を呼び寄せる効果のある札
本ロワにおいては虚・呪霊などの霊的な存在には効果がある。
【NPCモンスター一覧】
レベル3幻妖@鵺の陰陽師
・怒りや悲しみといった人の負の感情に反応して集まる性質を持つ怪異
その内突然変異種が一定以上同族や人間を喰うことで進化する姿
陰陽師のうち最上位の特旗か専用の訓練を受けた上位の1旗7名以上のチームでないと討伐許可が下りない危険な個体
最下級大虚(ギリアン)@BLEACH
・人間が死後霊体になったもののうち、悪霊と呼ばれる存在『虚(ホロウ)』
虚が同族同士の共食いを数百度繰り返した果てに、巨大な個体となった姿
戦闘能力は通常の虚よりも遥かに高い。並の死神では戦う事すら不可能
2級呪霊@呪術廻戦
・呪いとも呼ばれる人間の負の感情が具現化し意思を持った存在
2級は一定以上の危険度を持つ存在だが、術式は使えない。
通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、「散弾銃でギリ」らしい
投下終了します
キラ・ヤマト准将、一之瀬帆波、冥黒アヤネ、予約します
投下します。
後、先に報告しますが、正式にwikiにssが投稿された後に、どうしても直接投稿する時に出来なかった表現を加えた文章に修正する予定ではあります。
その時の方がより楽しめるようにするつもりですので、見に来てくださった方はそちらを初見にした方がより楽しめると思われます。
改めて投稿します。
さささ始まる今世紀最大のゲーム
出会って信じ合って作る最強のチーム
WINNERorLOOSER 神のみぞ知るジャッジ
紙一重で決めろ運命&FUTURE!!!
『アノっ!?』
『アノォォッ!!』
『アノニ!!』
F-9の森の中、パラドは主催への怒りを滾らせた後、近くにいたNPC…沢山のアノーニ達…正確に言うとアノーニ×20をノックアウトファイターでボコボコにし続けていた…怒りを発散するという目的も次いでに兼ねている。
『アノニィィィ!!』
「…とりあえず身体は温まったな…」
最後の1体を殴り倒し、変身解除したタイミングで…ホットラインからは主催からの放送が流れ始めた。
「心が滾る…!!クルーゼ、羂索、茅野…今に見ていろ、ノーコンティニューでお前らの元に行ってゲームオーバーにしてやる…!!」
放送を経て発散していた怒りが再び湧き上がる…!!
もう1回NPCを倒して冷静になるか?とは思ったが、今後の事を考えると体力温存が必要だ
今はこの会場に誰がいるかを知る事を優先した。
「⋯お前も来てたのか」
名簿のグラファイトの文字を見て、思わず笑みを浮かべた、今のパラドにとって1番の仲間はグラファイトだ、とりあえずはアイツと合流する事を一番優先した方がいいな、とパラドは考えた。
「永夢やブレイブ、スナイプはいないのか…アイツらとなら組みやすかったんだがな…」
平時の場合、仮面ライダー達は相容れない敵だが…今は羂索達打倒の為に共闘する事は出来たはずだ。スナイプはそれでも無理だったかもしれないが
因みにゲンム⋯新檀黎斗の事は実は一瞬だけ主催の中にいるんじゃないかと考えたが、アイツは現在CRと手を組んでいるはずだと思い、考える事をやめた
…とりあえずこれからどうするか、パラドは既に攻略法を決めていた。
まず話が出来て、それなりに強く、手が組めそうな奴に会えたら、共にとりあえず行動する。その条件次第では同盟維持の為に人間を守らなくちゃいけないだろう、手段を選ばない奴だったら好都合、好き勝手やりながら共闘ができる。
次に弱くて足手まといになるような人間がいたら、周囲を見渡して誰もいない事を確認し、即座にゲームオーバーにして支給品を回収する。手を組んでも意味が無い奴を守る気は無いからだ。
そして話が通じないマーダーは⋯このエリアに誘導してからゲームオーバーにする。散策の中でこのエリアのエナジーアイテムは既に把握している。把握しているエナジーアイテムはパズルゲーマーで使いこなせる⋯NPCとの戦いで掌握済みだ。但し同時使用は2個しか出来ないようだが
そして今からどこに行くのか?⋯J-7の近くの住宅街だ
1つ目の理由は旧幻夢会社があるからだ、あそこは自分もゲンムと手を組んでいた時によく利用していた、もしかしたら役に立つ物…例えばレベル99になる為のゲーマドライバー等が置いてあるかもしれないし、グラファイトもそこに行くかもしれない⋯と考えたのだ
二つ目の理由、奴らの本拠地は住宅街の中に紛れている可能性があると考えたからだ
あの放送を聞いて、普通の人ならば特別な所が本拠地に繋がっていると考えるだろう
パラドは普遍的な場所の中で特殊な条件を満たした時に道は開けるのではと考えたのだ、例えば住宅街の中にあるほんの少し妙に変わっている特殊な場所で86秒待って、元来た道を戻ってみる等の
特殊な場所にあるというのは誰でも思い浮かびやすい、だがそんな簡単に連想出来る場所に奴らは繋がるようにはしない可能性が高いと踏んだようだ。
バグスターの瞬間移動で行けたら良かったが…どうやら制限がかかっているようで瞬間移動はできなくなってしまっているようだ、だから足になるものを探すか、足で歩いて行くしかなく…とりあえず歩くしか方法はないようだった。
こうして、行動方針も決めて、暫く歩き…いよいよ市街地に入ろうとした瞬間だった。
「パラド…貴方の悪意は私が排除する」
鋭い殺意を含めた視線が彼を刺したのを
少し時は遡る。
「本当に多くのNPCを用意したようですね、主催達は」
同じくF-9のパラドがいた場所から遠かった森の中、ゼインは6体のNPCと遭遇していた。
プテラノドンヤミー、バイソンヤミー×2、リクガメヤミー、屑ヤミー×2
である。
ゼインはコイツら相手にゼインカードを…使わない
NPC相手にゼインカードを使うのをもったいないと思ったからというのも理由の一つだ、NPCには悪意が殆ど感じられない、故に全てがグレアのような偽物だと感じ取っていた。そんな怪物の為に本気を出す必要がないと思ったのだ。駆逐するべき悪意はあのアバドン以外にも沢山いるに違いないから
この世界に招かれる前にゼロツーの力を無駄使いしてしまった戦闘を経験していたのもあるのかもしれない。
つまり話をまとめると、従来のゼインよりはカードの温存を少しは考えるようになっていたのだ、あくまでも少しだけだが…少なくとも弱い相手に最強フォームの技をぶつけるような事はもうしないと決めていた。(アバドンに対しては技の出力を確かめるためにお試しでストロンガーのゼインカードを使用したが)
その為、彼はまだカードを使う選択を取らず…
『ジャスティスパニッシュメント!!』
ただただシンプルな必殺技でNPCを仕留める事を決めていた。
白く光る拳を前に1体のバイソンは地面に拳を叩きつける
それと同時にリクガメは鉄球を、プテラノドンはメダル型の光弾を発射する。
その2つは重力操作と合わさり加速する。並の相手では直撃も免れない
だがゼインはあのゼロツーを超える仮面ライダーと渡り合える格闘技術も備えている。軽やかに左右に回避しながらバイソンに拳を叩き込む
叩き込まれたバイソンは後ろにいたもう一体と衝突しながら爆発していった。
…もう一体のバイソン、いくらなんでも弱すぎると考えたが仕方がない事だ、そのバイソンはただの女性…の範疇に収めていいのかは分からないがとにかく一般人に殴り飛ばされるくらい弱いのだから
リクガメは再び鉄球を発射してくる。ゼインはそれを受け止めると同時に逆に投げ返す。
上半身当たったリクガメは仰向けに倒れてしまう、これで回転は出来ない
『ジャスティスパニッシュメント!!』
起き上がれないリクガメの腹を歩きながら必殺技を発動し腹を踏みつける。ゼインがリクガメを踏み越えた時には爆散していた。
プテラノドンは空を飛び攻撃をする事を決めた。空から黒い霧を吐いてくる。
勿論回避するが、黒い霧は屑ヤミー達にぶつかる。すると屑ヤミーは一瞬で消失していた。
空からの攻撃、生命体を消失させる黒い霧、厄介なNPCだとゼインは認識し、ゼインカードの使用を決めた。
『ゴースト オレ魂 執行!!ジャスティスオーダー!!』
ゼインドライバーから15体のゴーストパーカーが飛び出してくる。15体のゴーストパーカー達は黒い霧とメダル型の光弾を回避しながらプテラノドンに接近、赤いパーカーゴーストは両翼を斬り裂き、黄色は痺れさせて、他のゴーストパーカーは嘴を抑えつけて一切の攻撃を封じる。
『ダイカイガン!!オレ!!オオメダマ!!』
巨大なゴーストアイコン型エネルギー体を足元に生み出した後にそれを蹴り飛ばし、ゴーストパーカー毎撃墜しプテラノドンは爆散していった。そしてこのタイミングでホットラインに放送が流れた。
「⋯羂索、クルーゼ、茅場、貴方達は私が裁きましょう」
主催からの放送を聞いてもゼインは考えを変える事などしない、全ての悪意の殲滅、絶対無二の結論である。
ホットラインの名簿を利用し、今倒すべき悪意を探る⋯そしてゼインは決めた
パラド、グラファイトを滅ぼす事を
⋯これにはゼインがどういう存在なのかが深く関わっている
仮面ライダーゼインは橘朔也とジョージ狩崎がラウズカードやライダーカード等の様々な技術を結集して作った存在である。
その技術の1つに⋯仮面ライダークロニクルのデータも利用されていた。
さて、仮面ライダークロニクルのデータの中には様々な情報が蓄積されている、その中には⋯パラド達バグスターがどういう存在なのかも乗ってしまっていた。
バグスターとはウイルスであり、人間に感染し、やがてその人間を消滅させてから現実世界に存在を確立させる者
それを知った時点でゼインはバグスターを滅ぼす以外の結論はなかった、傍から見れば悪意殲滅の為に自分の世界の人々を管理しようとしているお前も同じ穴の狢と言いたいだろうが、彼は決して聞かないだろう。
その為に何の偶然かパラドと同じタイミングで市街地に行こうとした時⋯仮面ライダークロニクルのデータと一致する人物を見つけた
彼は歩き始める、例え相手が自分と同じ敵が主催である人物だったとしても、結論の赴くままに
迫りくるゼインを前に、パラドは対話を即座に放棄した。間違いない、何で自分の事を知っているのかはわからないが、コイツに話は通じないと本能で、殺気を感じた事で察したからだ⋯!!
「変身!!」
『KNOCKOUT FIGHTER!』
『The strongest fist! "Round 1" Rock & Fire!』
仮面ライダーパラドクスレベル50 ノックアウトファイターゲーマー
まずは様子見⋯エナジーアイテムにも限りはある為に肉弾戦で戦う事にした。
さて、現在の彼らのスペックは以下の通りだ
ファイターゲーマー
パンチ力 64.0t
キック力 68.5t
ジャンプ力 62.0m
走力 1.9秒(100m)
ゼイン
パンチ力 51.2t
キック力 109.0t
ジャンプ力 77.3m(ひと跳び)
走力 0.5秒(100m)
これを念頭にこれからの戦いを見て欲しい
パラドクスとゼイン、2人の仮面ライダーの拳が力強くぶつかり⋯競り勝ったのは
「オラァッ!!」
「くっ」
パラドクスだ
「まだまだぁ!!」
競り勝った勢いのままファイターゲーマーお得意の怒涛の様々なうち方を織り交ぜたラッシュをパラドクスはしかける
ゼインは防戦一方、このまま決めきったら白けるなとパラドは考えた瞬間⋯ゼインは戦い方を変えだした
先程説明したように少しカードを温存していく方針にしている彼はカードをまだ使わない、故に今の戦い方の変更はシンプルだ
手から脚へ変えるだけである
防御し続けた中でパラドクスのラッシュを見切ったゼインはパラドクスの腕を右手の掌底で強く弾く、その結果それた拳をしっかりよけると同時に踏み込み、渾身の右脚による回しけりを叩き込む
「ぐっ!?」
蹴りを受けて怯んだパラドクスに、もう片方の脚で蹴った場所とは逆の場所を蹴る。
ダメージを受けながらパラドクスは再び殴ろうと踏み込む。
ゼインは踏み込まれた瞬間間合いを取った、拳の攻撃を当らないようにするためである。そして脚による蹴りの攻撃を再びし始めた。
蹴りの突きの攻撃を避け続けながらパラドクスは思考する。
(そういう事かよ…!!拳による戦いは分が悪いって考えたんだな、だったら!!)
炎の球を飛ばす中距離攻撃を発動する、ゼインの不意を突く形になった攻撃はゼインをノックバックさせる。
その隙を狙い、渾身のストレートを食らわせるべく一気に距離を詰める。
それに対しゼインは
「!?」
今のストレートは確かに決まった…そう確信していたが、避けられてしまっていた
(羂索…やはり枷を仕掛けましたか)
ゼイン自前の特殊能力、フリーズ、仮面ライダークロニクル…クロノスのデータを継承した故の力である。
時間停止という能力は強力だ、どんなに不利な状況であろうと一回行使すればすべてをひっくり返しかねない、故に主催達は時間停止できる時間を1秒限定としたのだ。
とても短いと思う人物がいるかもしれないが、そもそも彼は本編でもこの力をあまり使いこなせていない、もし使いこなせていたのならば、第3のシンギュラリティ相手にも行使できていたはずだからだ。
それを踏まえれば1秒だけの時間停止が出来るだけでも十分と言えるだろう。ストレートパンチ等の攻撃を避ける為には問題ないからだ。
そしてゼインは避けられて隙だらけのパラドクスにお返しのカウンターパンチを叩き込んだ。
「ぐああああっ!?」
たまらず吹き飛んだパラドクスを追撃するべく
『ジャスティスパニッシュメント!!』
必殺技を叩き込もうとする、白く輝く脚がパラドクスを狙う
「くっ!!」
『キメワザ!!ノックアウトクリティカルスマッシュ!!』
迎え撃つは炎を纏いし拳
激突すると同時に激しい爆発が起こる…競り負けたのはパラドクスだった
「ぐあっ!!」
それなりに吹き飛ばされて転がりながら立ち上がる…と同時に湧き上がる思考、何でアイツはストレートを避ける事が出来た?という考えだ
もし時間停止中にパラドクスが一方的に攻撃を加えられていたら彼は即座にクロノスと同じ能力を使っていたと気づいていただろう、だが制限をかけられていた時間停止の利用の結果、そこまでの考えにはならなかったのだ
⋯考えても今は意味が無いと思考を切替え、現状の対処を考えると同時にこの姿での限界を悟る。
今までは小手調べ、ここからが俺のターンだとガシャットを手に持った。
『PERFECT PUZZLE!!』
「大変身」
『DUAL UP!』
『Get the glory in the chain!! PUZZLE!!』
《挑発!!》
フォームチェンジするや即座に挑発を発動、森林の内部まで一旦逃げる⋯このエリアから奴が離れるのを防ぐ為だ
ゼインはそれを追う、パラドクスは知らなかっただろうが、仮に挑発を使わなくても彼は追いかけていただろう、悪意を排除する為に
森を抜けて、野原の中心部に辿り着いた、逃げるのは終わりだ
《マッスル化!!伸縮化!!》
仕掛けるはしなやかに伸びて迫りくる拳、ゼインはダメージを受けて後ろに下がる。
《暗黒!!》
続いて発動するのは相手の周囲を暗く染める力、ゼインの視界は闇に覆われる。
ゼインが何か対処をする前にパラドクスは次のエナジーアイテムを使用する
《発光!!》
暗闇に慣れてきたゼインに突き刺さる光、暗闇は如何なるものも見えなくさせるが、発光の光の強さは闇をも凌駕する。
この結果ゼインは目に多大なダメージを受けて、立ち直るために動きが封じられる。
パラドクスのエナジーアイテムの使用については自由に使用された場合の公平性を考慮し、操るれるのは自分が入っているエリア内のみ、そして先程説明したように、この姿では同時使用は2個のみという制限がされている。
故にパラドクスはその制限の中で打てる最大限の手段を使い…動きが封じられているゼインを倒しにかかる。
《マッスル化!!分身!!》
『ガッシャト!!キメワザ!!パーフェクトクリティカルコンボ!!』
分身し、ゼインを前後で挟む形で拳を握り…同時に拳を両面から叩き込む
「…ぐあっ!!」
たまらずダメージで動けないゼインを相手に畳みかけるべく、もう一度ゲーマードライバーに手をかけた瞬間だった
『ダブル サイクロンジョーカー』
見知らぬ仮面ライダーの名前がドライバーからなったのは
ゼインは様々なエナジーアイテムを自由自在に利用しているのを見て、相手が様々な攻撃手段を持つ仮面ライダーであると確信したのだ。それに応じる為には⋯ゼインカードを使うしかないと決めたようだ。
『執行!!ジャスティスオーダー!!』
荒れ狂う紫と緑の台風が2人のパラドクスを吹き飛ばす。分身は時間切れのようで消えてしまったようだ
「くっ⋯もう少しで⋯!!」
決めれたのかもしれないが、現実は決めきれなかったという事だ。そしてそんなパラドクスを風に乗ったまま上空にあがった半分に分割されているゼインが襲いかかる
ジョーカーエクストリーム、仮面ライダーWの必殺技が無言のまま風に踏ん張っていた結果動きが止まっていたパラドクスに炸裂する。
「ぐっ!!」
ある程度ダメージを受けたパラドクスは流れがゼインに移っている気がしていた。流れを取り戻すべくエナジーアイテムを使う
《高速化!!高速化!!》
その瞬間パラドクスはかなりのスピードで体当たりをし始めた、1回、2回と当たったタイミングで
『カブト ライダーフォーム、執行!!ジャスティスオーダー!!』
「クロックアップ!!」
突如同じスピードの次元に入り込んできた
青と白の光が何度も何度も交差する。そして互いに拳が頬に当たったタイミングで⋯高速移動の時間が切れたようだ。
《透明化!!縮小化!!》
間合いをとったパラドクスは透明になった上で小さくなる、これによりパラドクスは多くの人達からこのエリアから消えているように見えるだろう
だが
『スーパー1 執行!!ジャスティスオーダー!!』
「チェンジ、レーダーハンド!!仮面ライダーパラドクスを破壊せよ!!」
黄金の右手から放たれるロケット、レーダーアイは⋯何と透明になったパラドクスをも空間の流れの変化等から察知し、しっかりと狙ったのだ。
「嘘だろ!?があぁっ!!」
後ろに回っていたパラドクスに直撃し、元の大きさに戻ってしまっていた
『チェーンジ!!エレキハンド!!』
青くなった腕から発するはエレキ光線、バグスターウイルスを浄化する勢いで放たれる光線はパラドクスの体力を徐々に削っていく
「ぐうぅぅぅ⋯!!」
パラドクスは体力が極限まで0になりつつあった、光線をくらいながらも
《回復!!回復!!》
どうにか持ちこたえようと藻掻く、だが光線を放ち終わったゼインが使った手段は
「あなたに相応しい技で終わらせてあげましょう」
『エグゼイド アクションゲーマー』
自分の一番の遊び相手の力だった。
『執行!!ジャスティスオーダー!!』
(クソ⋯!!このままだと不味いな⋯!!)
体力が回復しても痺れは抜ききっていない、その結果動くのは難しそうだが、このままあの攻撃を受けたら大ダメージは間違いない⋯かつて味わった死の恐怖が少しぶり返しつつあった、もしムテキゲーマーの力を使われていたら本気で恐怖に飲まれていただろう。
だがまだ少しだ、少し故に冷静に行動はまだ出来る。
『マイティクリティカルストライク!!』
(⋯使うしかない!!)
何度も見てきたサイケデリックな色のエネルギーが込められている脚が迫る。
エグゼイドの力はバグスターウイルスに対しては高い威力を発揮する。だからこそここは
《鋼鉄化!!鋼鉄化!!》
鋼鉄のような硬さで防御を固める、その時だった。
(⋯お前も⋯!?)
《マッスル化!!》
ゼインがエナジーアイテムを使ったのは
ゼインがエグゼイドの力を使った瞬間、エナジーアイテムが追加で展開されたのだ、その1つをゼインは使用し、目の前の悪意を駆逐しようとする
『HIT!!HIT!!HIT!!GREAT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!GREAT!!GREAT!!HIT!!⋯』
「ぐあっ⋯!!」
何度も何度も何度も⋯エグゼイドより執拗に蹴りを重ねられる⋯それ所か
『HIT!!HIT!!GREAT!!HIT!!GREAT!!HIT!!⋯』
(お、終わらない⋯!?)
背後には⋯木があったのである。ゼインは蹴る方向を調整してパラドクスの背後に木があるようにしたのだ⋯つまり蹴り続ける事で身動きを取れなくする事が可能になっていた
その意図はただ1つ
(こ、コイツ⋯!!ハメ殺すつもりか⋯?俺の体力が0になるまで蹴り続けるのか!?)
レベル2 の技がレベル50には大したダメージにはならないのがゲームの常だ、ましてや鋼鉄化で防御力も高くなっている、大多数の人が倒すのを諦めるだろう
だが⋯その技を2回、3回、10回、20回、50回、100回と目の前の命を殺す為に行使し続けたら?
『HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!』
「う⋯うおおおおおおお!?」
パラドクスは死にものぐるいでエナジーアイテムを痛みに耐えながらかき集める。このままゲームオーバーになるのを防ぐ為に
《反射!!》
『GREAT!!』
『GREAT!!』
「⋯!?」
ゼインの蹴りをどうにか反射バリアを展開する事で次にくる蹴りと相殺して一瞬動きが止まった隙に無限ループから抜け出す事が出来た。
《回復!!》
「っはぁ⋯!!はぁ⋯!!はぁ⋯!!」
間違いない、コイツの容赦のなさは今まで会った仮面ライダーの中で1番だ⋯!!つまりこのまま負ける運命に流されていると確実に殺される⋯!!
どうにか突破口を⋯だけどエナジーアイテムに頼る戦法もこのままだとジリ貧だ⋯とか言ってファイターゲーマーで真っ向勝負をやっても絡め手を使われて負ける⋯どうしたら⋯!?せめてあのカードの力をうばえれば⋯!?
(待てよ⋯あのカードのデータを元に様々な力を使ってるようだな…?もしかしたら⋯!!)
天才ゲーマーM故の直感による奇跡の閃きが起きた
《伸縮化!!》
パラドクスはゼインを殴ると見せかけて地面にバラバラになったあるカードを拾う。
ゼインはそれを掴み取るつもりだったので目前で避けた腕を掴む事に失敗してしまった。
「⋯何をするつもりですか?」
掴み取ったカードは
「⋯コイツに入ってるんだろ?永夢の力が、それはバラバラになって変わらない⋯そう読ませてもらったぜ!!」
そういって変身解除したパラドは⋯
バラバラになったエグゼイドのカードを身体に取り込んだ。
ゼインカード、それは仮面ライダーの様々な力の結晶である。
それをゼインドライバーに通して使う事で様々な仮面ライダーの力の使用を可能にする。
だが実はもう1つ力を使う方法がある
それはガシャコンバグヴァイザーによる吸収である。吸収された力次第では新たな仮面ライダーを作る事も可能になるのだ。
⋯妙だと思わないだろうか
ガシャコンバグヴァイザーはバグスターウイルスを吸収して閉じ込める為の物である。それなのに何故ゼインカードの力まで吸収出来るのか
これに対する解、それは『ゼインカードのデータはバグスターウイルスで構成されている物である』という事である。
仮面ライダークロニクルのデータを介してゼインカードの力は再現されている以上、この考察は的外れとは言いにくいだろう。故にガシャコンバグヴァイザーで吸収出来たのである。
⋯だとしたらそのデータをもしバグスターがしかもそのデータの大元の存在が取り入れる事が出来たら何が起こるのか?
それはこれから明らかになるだろう。
「くううううううう⋯!!」
取り入れたのはデータだけじゃない、ラウズカードとライダーカードの要素も取り込んでしまっている。発生する拒絶反応⋯それにパラドは耐える、そうしなければ敗者に相応しいエンディングしか残されていないから
ゼインは様子を見ていた、もしかしたらこの苦しみを味わいながら結局何も出来ず消滅するだろうと考えたからかもしれない
⋯そう、つまり侮っていた、パラドを、人類に最初に感染した原初のバグスターを
「⋯っハァっ!!」
腹に現れたのはゲーマードライバーと⋯それに装填されていたマイティアクションXガシャット⋯!!
マイティアクションXガシャットは変身には使わない、これはあくまでも永夢の力だ
「それは⋯!?」
「エグゼイドの…永夢の力をくれてありがとよ、お礼に見せてやる、俺の本当の力をな!!」
『デュアルガシャット!!』
『The strongest fist!』『What's the next stage?』
「MAX大変身」
『ガッチャーン!!マザルアーップ!!』
『赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアーウト!』
仮面ライダーパラドクスパーフェクトノックアウトレベル99
本来はゲーマードライバーを没収されていた為になれなかったはずの姿を⋯イレギュラーな形で取り戻した。
さぁ、本当のゲームを始めよう
《透明化!!鋼鉄化!!分身!!》
「…!?」
ゼインは身構えるが⋯次の瞬間
『HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!HIT!!…』
「ぐっ、ぐっ、ぐがぁぁぁ!?」
いつの間にかに肉体から火花が散ってダメージを受けていた⋯まだパラドクスは近づいてなんかないのに、ゼインは驚きを隠せなかった。
暫く蜂の巣にされた後に⋯エナジーアイテムの効果が切れたようで、その攻撃の正体を顕した。
現れた武器はガシャコンパラブレイガン、種明かしをすればパラドクスは武器を出した瞬間に透明にすると同時に、鋼鉄化で鋼鉄の硬さを秘めた弾丸を撃つようにして、それを更に分身で2つに数を増やして撃ちまくったのだ。
強化されたパーフェクトノックアウトならば3つのエナジーアイテムを同時使用が出来る。
「くっ!!」
『スカイライダー、執行!!ジャスティスオーダー!!』
「セイリングジャンプ!!」
ゼインは明らかに強さが増したパラドクスに対して、空から攻撃する事で対抗しようとする。
「叩き落としてやるよ!!」
このまま勝ち切る。その勢いでパラドクスはエナジーアイテムを使う
《モノマネ!!ジャンプ強化!!》
パラドクスはモノマネで今のゼインと同じく空を飛べるようになった上で⋯ジャンプ強化の結果、更に先へ高く飛ぶ。
「オラァッッ!!」
「⋯スカイスクリューキック!!」
きりもみ回転を重ねて勢いを増した回転キックが下から迫り来るが、パラドクスは冷静に迎え撃つ
『ズ・ゴーン!!1!2!3!4!4連打!!』
《マッスル化!!伸縮化!!》
伸縮化で肉体を動かして回転キックを回避、それと同時に4回Bボタンを押したアックスモードのブレイガンでゼインを地へ落としながら着地する
「ぐおおおっ!!」
地面に落ちたゼインに対してパラドクスは
『ズガーン!!デュアルガッシャット!!キメワザ!!パーフェクトクリティカルフィニッシュ!!』
ガシャットを挿した必殺技で狙う⋯!!
『龍騎、執行!!ジャスティスオーダー!!』
ゼインの手に現れたのはドラグクロー、更に傍にドラグレッダーも現れる。
2つの龍の頭から放たれるは炎、その炎は赤と青に点滅する光弾に
《分身!!》
当たる直前に二つに分かれて回避されてしまった。
天才ゲーマーMとしての才能はエナジーアイテムの付与を動いている光弾に当てる事も可能にしたのだ。
「があああああっ!!」
片方はドラグレッダーが身代わりになってくれたがもう片方はゼインに直撃していた。堪らず吹き飛んでいくゼイン、今度はゼインが木を背後にする番だったようだ
「終わりだ!!」
《ジャンプ強化!!》
高く飛ぶパラドクスに付与される3つのエナジーアイテム
《マッスル化!!鋼鉄化!!高速化!!》
『ウラワザ!!パーフェクトノックアウトクリティカルボンバー!!』
両足を揃えたライダーキック、それをより硬くした上で加速による威力増加と攻撃のパフを加えた凄まじい威力を秘めた必ず殺す技だ。もしカードを使用されたとしても防ぎきれないようにする為に今できる最大限のパフを加えたのだ。
「オラァァァァァァァァ!!」
全力のライダーキックが…ゼインに直撃しようとした瞬間
(⋯は?)
ありのまま起こった事を話そう
彼はライダーキックをしていたはずだがいつの間にかに逆に凄まじい攻撃でぶっ飛ばされていた
ゼインは認めた…パラドクスがかなりの強さを秘めている悪意を持つ存在だと
ならばこちらも全力で応えるしか…パラドクスは裁けない…!!
…その瞬間、ゼインの令呪が一つ消えていた。
即座にフリーズを発動、ゼインだけの時間にする。
停止時間は10秒に延びた上、先程使用したばかりなのに再び使用可能になっていた。その10秒で射程外に逃れた後、カードを確認…やはり平成ライダーと令和ライダーの力は本来の力を取り戻していた。
そのまま昭和ライダーのカードの中から1枚選んでカードを使用する。
『2号…執行!!ジャスティスオーダー!!』
「ライダーパンチ」
始まりのライダーの相棒たる2号の力がゼインの拳に集まる
そのパンチを食らわせると同時に…時は動き始める
「ぐあああああああああああ!?」
高速化で勢いづいていたパラドクスに対しての強烈なカウンター、パラドクスは今まで以上のダメージを受けながら吹き飛ぶ。
(⋯令呪を使うと昭和ライダーの力も上がるみたいですね)
2号の力を使った時、スカイライダー、ストロンガー、スーパー1の時以上の力の上昇を感じ取れた⋯つまり昭和ライダーの力は令呪の時は使わないで強化されている平成、令和ライダーの力を使った方がいいと思ったがそれは間違いとみていいようだとゼインは理解した。
「ぐっ⋯うううぅぅぅ⋯!!」
一方でパラドは痛みに悶えながら考える⋯そしてこの結論に至った。
まず1つ、ゼインはクロノスと同じく時間停止を使える。
だから最初のストレートも避ける事が出来たと今なら推測出来るし、今も強烈なカウンターを食らったのだと分かる、ただそれには制限がかかっていて、無限には止めれない、そうでなければ今頃自分は既にゲームオーバーだろう
⋯そしてもう1つ分かる事
奴は令呪を使ったという事だ
理由は一回目の時間停止の時より停止時間が長かった事を…一回目と違って、カウンター攻撃までされた事、今の攻撃の強さから推測できるからだ。
(…となると、今から…俺は…!!)
どう動くべきか…
1つはとっておきを使う事、ただ、アレは一回きり…もし外れたらと思うと…
…もう一つのとっておきは…使っても意味があるのか…?相手は令呪を使ってるんだぞ?
(分かってる、俺はどうするべきなのか、ああ、分かっている⋯仕方がないだろ、使うしかない、俺も、た、例え…令呪を3回使う死ぬと…して…も…)
既にパラドは分かっていた、最適解を
そう、こちらも令呪を使う必要があるという事を、そうしなければ互角にはなれない
⋯だが、令呪を使う事は死のカウントダウンが近づく事を意味していた。
死の恐怖を知っているパラドクスは⋯それの使用をどうしても躊躇ってしまっていた
その一瞬は、この場では致命的過ぎたのである。
『ウィザード、インフィニティースタイル』
取り出されていたカードに写っていたのは白銀の魔法使い
『執行!!ジャスティスオーダー!!』
現れたのはカリバーモードのアックスカリバーと白銀の指輪
震えていたパラドクスも本能で危機を察し、一瞬遅れてまた行動に移る
『インフィニティー!!』
『⋯っ!!』
《高速化!!高速化!!高速化!!》
回避する意図も兼ねて超加速する予定だったパラドクス、だが相手も超加速でパラドクスを倒そうとする者だった。
再び白と赤青の光がぶつかり合う、だが
「うぐっ!!」「ぐあっ!!」「がぁっ!!」「ごふっ!!」
⋯どうしてもパラドクスの方が少しずつ斬られるダメージを負ってしまう。
理由はインフィニティースタイルの加速はエナジーアイテム×3以上の速さを持っていたからというのもあるが、もう1つの理由としてはやはり一手遅れた事による焦りと死の恐怖によって身体の動きが本調子にならなかったからである。その差はそう簡単に埋める事は出来なかった。
ある程度斬られてしまったパラドクス、だが攻撃は終わらない
「ハイハイハイハイハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!」
アックスモードに変更し、指輪をかざす、その瞬間、アックスカリバーはゼインの手元を離れて動き始めた。
「当たるかよ⋯!!」
《伸縮化!!》
高速移動+変幻自在な動きが出来る肉体でどうにかアックスカリバーを避け続ける。だが忘れてはいけない、敵はアックスカリバーだけではないという事を
ゼインは避ける事に気を取られていている隙をついて一瞬で肉薄⋯そして胸の⋯普通の人間ならば心臓にあたる位置に
深く拳を叩き込んだ
「ごはぁぁぁ!!」
アックスカリバーの側面に叩きつける、そしてゼインが始めたのは
「ぐっ!?」
ストレート
アッパー
「がふっ!?」
フック
ジャブ
「い"っ!?」
⋯そしてここからは苦悶の声は上がらない、何故ならこの瞬間から始まる
神速のラッシュが⋯パラドクスの声を上げる暇を与えないからだ
インフィニティースタイルの神速が全て拳をぶつける為に使われる。指輪に衝撃が伝わった結果粉々になろうとゼインにとってはどうでもいい事だ、ただただただ殴り続ければ良かったのだから
約30秒間、アックスカリバーが消滅するまで彼は殴られ続け、吹っ飛んで解放されたパラドクスに植え付けられたのは
「はぁ⋯⋯⋯!!はぁ⋯⋯⋯!!」
ゼインへの恐怖心、沢山の痛み、そして肉体の不調である。
これらの3つから彼は解放されてすぐに逃走の準備をしようとする。…その結果、彼は把握しているエナジーアイテムを思い出して絶望してしまう事になる。
《回復!!》
⋯そう、今手に入れる事が出来たのは1つだけだった
単純な理由だ、彼はエリア内のエナジーアイテムを使いすぎていたのである。勿論それに気を配ってはいたが、勝つことを優先していた結果、足りなくなってしまっていた。
「くそっ…!!」
それでも…かろうじて回復した体力でどうにか逃げようとする。
『オーズ プトティラコンボ』
だがゼインは、善意の執行者は定めた悪意を決して逃がさない
『執行!!ジャスティスオーダー!!』
「なっ…!!」
その瞬間、パラドの足元が氷に閉ざされる…パラドの頭以外ほぼ全身が氷に包まれて動きが取れなくなる、不幸にもゼインの様子を見ながら逃げようとした為にゼインの方を向きながら
ゼインは地面から取り出すのはメダガブリュー、NPC…プテラノドンヤミーから回収したセルメダルを取り込ませる。
『ガブッ ゴックン!!プ・ト・ティラーノ・ヒッサ〜ツ!!』
構えられる紫色の重砲、狙うはパラドクスただ1人
「⋯使うしか⋯使うしかない⋯!!」
パラドクスは⋯令呪の使用を決めるしかなかった
こんな序盤に⋯使いたくなんかなかった、使うとしても後半の時であって欲しかった
令呪の力でエリア外からありったけの鋼鉄化、もしくは反射を集めるしか死を逃れる道は無い
そう覚悟を決めた時だった
『ビルド ジーニアスフォーム』
冗談と信じたい音声が聞こえたのは
ゼインは予測していた、こうして動かなくなった相手は令呪を使って対抗してくるであろう事を
因みにもし完全に全てが氷で覆われていたとしてもゼインの行動は変わらなかっただろう、凍っているのはスーツだけで、意識はまだ残っていて令呪を使える可能性は十分あったのだから
そしてゼインはこの戦いで、相手の戦い方からラーニングしたのだ、力の重ねがけは大いに意味がある事を
そうして使う事にした力はビルド、ジーニアスフォーム、時間的に令呪の効果が適用される最後のカードだ
取り出したのはフルボトルバスター、キャノンモード…それにジーニアスフォーム特有の全てのフルボトルを使える力を使い、ボトルの力をボトルを使わずに装填していく。
それに込められていくのは愛と平和への思いでは決してなく、ベストマッチでもなんでもないでもなんでもない無限の殺意だった(タンク、ロケット、ジェット、ガトリング、電車、バイク、海賊、忍者、ライオン、トラ、ウルフ、シカ、クマ、ハチ、サメ)
そしてその殺意は容易く増えてしまう(ニンジャ)、1人から4人へと
60本のフルボトルの力と紫の破壊の力がパラドクスに向けられた。
(嘘…だろ…)
パラドクスは呆然としてしまっていた、5つの巨砲が自分に向けられているという現実に対して
「ハァ、ハァ………ハァ、ハァ………!!」
息が乱れる、氷に囚われていてほとんど動かない身体が震える、頭の中が真っ白になる
(死ぬ…死ぬのか?このまま…!!)
破壊の濁流に呑まれて…自分の何もかもが消し去られる…令呪等意味が無い気がして仕方がなくなってくる。異次元の力が向けられている事を分からされてしまっているから
「やめろ…」
震えながら心の奥底から出た言葉は
「やめろ…!!やめてくれ…!!頼む!!」
見逃して欲しい、今すぐその銃をおろして欲しいという嘆願
本当は分かってはいた…ゼイン相手にそれは意味が無いという事を
決して辞めようとはしない、無慈悲にもエネルギーの高まりは加速していく
「嫌だ…嫌だ!!嫌だぁぁぁあ!!」
パラドクスは仮面の裏で恐怖の涙を流しながら令呪を消費、意味が無いかもしれない事を分かってはいながらも生存本能は止められなかった、我武者羅に近くの別のエリアのエナジーアイテムをかき集める。
そして…銃撃…否、破壊光線と言える物はパラドクスを、いや、その射程方向にあるもの全てを呑み込んだ—
1人になったゼインは焼け野原になった一面をじっと眺める…パラドクスがどうなったのかを知る為に
パラドクスは…
《回復!!》
「…まさか生きているとは思いませんでした」
「く、くうううぅぅ…!!」
そう…ゼインの想定を超えて、変身解除したとは言え、パラドクス…パラドは生き残ってゼインを倒れながら睨みつけていたのだ。
それは令呪を解放して描き寄せたF-9の周辺のエリアのエナジーアイテムによる物
集まったのは??、鋼鉄化×3、ランダム(鋼鉄化)×2、回復、??の8つである。
これらのうち??と鋼鉄化×3、ランダム(鋼鉄化)×2を使う事で派手に吹き飛びながらもどうにか耐えきったのだ、令呪はエナジーアイテムの同時利用個数の制限の撤廃も可能にしていたのだ。
「まぁいいでしょう、ならばこの手で砕くのみ」
『ジャスティスパニッシュメント!!』
白く輝く拳がパラドを破壊する為にゆっくりと迫る
「くっ…!!」
パラドは震えている、そして立つ事が出来ていない…その為の力がもう残っていないようだ。
ゼインは目前に立ち…拳を振り下ろした
≪混乱!!≫
「………!?」
その瞬間、ゼインは錯乱状態に追い込まれる
(え、エナジーアイテムがまだ残っていた…!?)
慌てて体勢を整えようとする。その瞬間
『…スキャニングチャージ!!』
パラドは立つ事が、再変身する事が出来ない…そうする気力が残っていないからではない
確かに身体中が痛い、回復でも治しきれないくらい全身がボロボロになってしまったのを感じる。普通ならば先程回復を使ったがそれでも再変身が可能にはなってはいないだろう
だが令呪の時間はまだ切れてはいない、故にまだ1分ぐらいなら再変身は可能だ
それでも敢えてしない、死に近くなってしまう生身の姿である事に恐怖は当然感じている、今も震えっぱなしだが、無理やり腕を握りしめる事で震えを少しでも抑えて…生身であり続ける
この一手しか最後の手段が残されていないのだから
ゆっくりと迫ってくるゼイン…明らかに油断しているそいつに向かって、パラドは
「くらえっ!!」
《混乱!!》
集めたエナジーアイテムの1つ、混乱をぶん投げる。これが弾かれるかどうかは賭けだったが…幸運にも成功、もっとも、パラドは自分の運を信じていたが
そしてパラドはデイバッグからとある物と3枚のメダルを取り出す。
混乱と言っても少し衝撃があればすぐ目覚めてしまうのはパラドも知っている。故に一撃必殺で仕留める必要があった。
そしてそれが可能なとっておきをパラドは所持していた
ソレにパラドはエナジーアイテムではない別のメダル…セルメダルを装填し…技を繰り出した。
『トリプル・スキャニングチャージ!!』
「オラァァッ!!」
その技の名前はオーズバッシュ、使った剣はメダジャリバー、たった3枚のセルメダルで…空間を両断し、どんなに堅い相手だろうと、どんなに破れない防御のバリアを張ろうと問答無用にそれ毎切り裂ける、欲望の王の武器である。
迫り来る斬撃に対してゼインは何も出来ない、混乱状態は治まらない、故に訪れるのは胸から上が両断されるという結末…中にいる桜井侑斗も当然同じく両断される。
己の世界救済も、取り戻せるかもしれなかった大切な人との愛を胸に秘めて戦う事も、彼は二度と為す事は出来ない
彼が奪われた意識は奪われたまま、彼の時間は終わった、奪われた原因であるベルトを残したまま
【桜井侑斗@仮面ライダーアウトサイダーズ 死亡】
「ハァァァァァァ…………何とか倒せた……」
パラドは大きく深呼吸して…落ち着きを取り戻す。震えも大分治まってきた…未だに恐怖は祓い切れていないが
「本当に俺…運が良かったな…あのレアエナジーアイテムを手に入れる事が出来たのは…」
そう、最初に令呪の効果で手に入れたエナジーアイテムの名前は…幸運だったのだ、お陰でランダムでも鋼鉄化が出てくれて、ゼインの超超超火力に耐えうる防御を得る事が出来て、その上奇跡的に耐えれて、そして混乱のエナジーアイテムがゼインに当たってくれたのだ
「それに、本当にコイツ空間をぶった斬れる物だったのかよ…チートにも程があるだろ」
そう言いながら自分の命を助けた剣を見た。
彼が最後の最後までこの武器を使おうとしなかった理由は3つある。
1つ目はパラドクスとしての武器で最後まで戦いたかったから、メダジャリバーは仮面ライダーオーズの武器で、パラドクスの武器では無いし、ましてやシステムが根本から違う、ゲームで例えるなら違法データのインストールみたいで気に食わなかったのだ
2つ目は一撃必殺の武器を気に入らなかったから、メダジャリバーは確かに協力だが、パラドにとってゲームは道筋をしっかり整えてクリアする物、それを一撃必殺のチートでクリアするなんて…白けるにも程がある。だから使いたくなかったのである。
そして3つ目、あの空間の両断の為に必要なメダルが3枚なのは先程言った通りだが、戦いを始めた時、パラドの手元には丁度3枚しかない、つまり1度しか使えなかったのである。外したら終わりな以上、使うタイミングは考えなければいけなかった。
その3枚のメダルは支給品としてセットでついていた、いわゆるお試しを可能にする為に3枚だけセルメダルをつけてくれていたのだろう。もしパラドクスがヤミーに会えていたら早めにメダジャリバーを使っていたかもしれない
以上の理由から最後までメダジャリバーを使おうとはしなかった、だが流石に追い込まれてしまった以上、使わない手はなく、混乱で行動不能にした後に発動した訳だ。
「いきなりこんなに強い敵に会うとはな…羂索達が参加者間のパワーバランス調整をしているのか疑わしくなってくるな」
先行きに不安を…死の恐怖をまだ感じながらも…とりあえずエナジーアイテムがスッカラカンになったF-9を離れるべくゼインの支給品を回収しようとする。
「コイツが変身していたのか…仮面ライダーゼインって名前で名簿にのってたから人間が変身していない仮面ライダーだと思っていたけどな…」
目を瞑っている男を見て、そういう感想を抱いていた…
胸から下を…真っ赤に染まった服と身体を見るまでは
「………」
その姿を見て、パラドは思ってしまった。
…死体ってこんなにグロかったのか?
パラドにとっての死はゲーム病による消滅が大半であった、そしてパラドにとってそれは利益ある物だ、仲間が増えるのだから
だがこの死因はゲーム病によるものでは無い、故に死体は残る、死んだ人の様子も見る事が出来てしまう、そして仲間は生まれない
顔面蒼白で血の気がなく、戦いで得てしまっていた傷が痛々しく、斬られた内蔵が露出し、赤い血が服を染め続ける、そして肉体はとても冷たい…さっきまで生きていたとは思えない程に
パラドはそれが薄気味悪く、怖い物に思えて仕方がなかった、初めて知ったのだから、斬られて死んだ死体という者…いいや物を
パラドはデイバッグと腰のベルトを取ると即座に逃げるように離れた
道中の凄まじい破壊光線による焼け跡を辿りながら辿り着いたのはF-9とF-10の境目すぐ近くの破壊光線の被害を免れた市街地の1部だった
市街地の家の中に入り椅子に座ると同時に…再び…再びぶり返し始める死への恐怖、ゼインに死の直前まで追い込まれてしまった事は、自分もあの死体と同じようになってしまう可能性を否定出来なくなってしまっていた。身体の震えが止まらない、何時から自分はこんなに臆病になったんだろうか
(しっかりしろよ俺…!!羂索達を倒すんだろ…!?このままだとアイツら相手に何も出来ない雑魚になる上、グラファイトにも愛想尽かされる!!しっかりしろっ!!)
どうにか奮い立たせようと、恐怖を克服しようとする…だがそう簡単に抜けるものではない事は自覚してしまっている。
こうなったら…!!
取り出すのはメダジャリバー、パラドは利き手じゃない手の親指を…敢えて刃に近づける
「ーーーーーッ!!」
自傷行為で恐怖を吹き飛ばす、シンプルだが痛みを伴う強引なやり方だ
「…少しはマシになったか」
家を出た時には震えは収まっていた…またぶり返しそうな予感はしてしまっているが、今度から相手をゲームオーバーにする時は必ずレジスターを外すやり方でする事にしよう。
「支給品は…このベルトとカード…とセルメダル3枚か、何処で手に入れていたんだ?」
それ以外は基本的に自分に配られた物と同じだった
「まぁいいか、さて、ここから…」
その瞬間、後ろから気配を感じた…後ろを見て、気配の正体の容姿に対する嫌悪感で顔を歪めた。
その気配の正体は脳がむき出しでそれに単眼がくっついていて、歯茎が露出している人型の怪物だった
名は量産型脳無が5体…OFAとドクターによって死体から作り出された怪物達
量産型というだけあり、強さとしては脳無の中では最下層、だがそれでも侮れる強さではなく、その上数の多さは厄介だ
「このタイミングでNPCくるのかよ…!!」
パラドは思わず舌打ちした、万全の状態なら問題はなかった、だが今パラドクスに変身しても…肉体はボロボロでゲージ残量は殆どない、その上エナジーアイテムもない為、下手するとやられてしまう
つまりパラドクスに変身した場合、やられるリスクが高い、そして逃げ道も数によって封じられている、その為、どう対処するべきなのか…考えなければいけなかった。
【午前7時 F-9とF-10の境目の市街地】
【パラド@仮面ライダーエグゼイド】
状態:死の恐怖(大)、主催者への怒り、体力残り1〜2割、ダメージ大
服装:人間体での服装
装備:
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×1、ホットライン
思考、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド、ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、メダジャリバー+オースキャナー+セルメダル×3@仮面ライダーオーズ、ゼインドライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインプログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインカード一式@仮面ライダーアウトサイダーズ
基本:主催者打倒。同胞やウイルスを奪われているなら取り戻す
01:目の前のNPCを倒す
02:まずはグラファイトと合流する、そのために旧幻夢会社に行くか
03:他にも協力プレイできる奴を探す
04:その前に身体をどこかで休ませたい
05:いきなり強い奴に遭遇したな…
06:俺も下手したらあんな死体のようになるのか…?
07:永夢達はいないのか…この場なら協力出来ただろうから少し残念かもな
08:何でこのタイミングで来るんだよ…でも丁度良かったかもな、コイツの使い心地を確かめられる
参戦時期:33話あたり
備考
※主催者が自分たちバグスターを捕らえているか、あるいはバグスターの肉体をウイルスから分離して、自分がウイルス感染しているのは後者により人間に近い身体にされたからではと考えています。
上記考察が事実でなかったとしても、どっちみちこんなことに巻き込んだ主催陣を許す気はありません。
F-9の森の中の野原に裁断された仮面ライダー2号、仮面ライダースーパー1、スカイライダー、仮面ライダー龍騎、仮面ライダーカブト、仮面ライダーダブル、仮面ライダーオーズプトティラコンボ、仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル、仮面ライダービルドジーニアスフォーム、少し離れたF-8に近いF-9の森の所に仮面ライダーゴーストオレ魂のゼインカードが放置されています。
回収すればライダーのデータを得ることができるかもしれません。
裁断された仮面ライダーエグゼイドのカードはパラドの肉体のデータと混じった結果、ゲーマドライバーとマイティアクションXガシャットになりました。
F-9のエリアのエナジーアイテムは0になりました。
全身を真っ二つに切断された桜井侑斗の死体がF-9の野原の右の位置の元森林であった焼け野原に放置されています。
ゼインが放った巨大な威力を持つ破壊光線がF-10の方向の1部市街地とその方向にある森林を焼け野原にしました。
【NPCモンスター解説】
量産型脳無×5@僕のヒーローアカデミア
脳無の中では強さは下層レベル、神野区の悪夢で出た個体達である。
アノーニ×20@暴太郎戦隊ドンブラザーズ
暴太郎戦隊ドンブラザーズの戦闘員キャラ、人に擬態する力はオミットされている。
プテラノドンヤミー、バイソンヤミー×2、リクガメヤミー、屑ヤミー×2@仮面ライダーオーズ
屑ヤミー以外のヤミー達からはそれぞれ倒すと1枚ずつセルメダルが手に入る。因みに今回のプテラノドンヤミーは雄の方である。そしてバイソンヤミーの弱かった方はオーズのHBVで登場したバイソンヤミーである。
【支給品解説】
メダジャリバー+オースキャナー+セルメダル×3@仮面ライダーオーズ
セルメダル3枚でオーズバッシュという空間の両断も可能にする仮面ライダーオーズの基本武器、スキャニングする為のオースキャナーもセットで支給、セルメダルはオーズバッシュを1回だけ使用出来るようにする為についていた。
ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド
仮面ライダーエグゼイドへ変身する為のベルト、ゼインカードのデータから入手した。
※パラドに付与されていたエナジーアイテムの効果が発揮されている時間は既に過ぎています。つまり、パラドの幸運の効果は切れています。
パラドの幸運の効果は切れています。
脳無達は本能のまま彼に襲いかかった。
だが全て避けられる、いなされる、パラドが変身した…『仮面ライダーゼイン』の前では野蛮な攻撃など痴戯に過ぎなかった。
彼は器用に身体を動かしながらメダジャリバーにセルメダルを装填していく
『トリプル・スキャニングチャージ!!』
近くで固まっていた3体の脳無をわざと少し距離を置いて、遠くから斬る、すると3体のいた空間はズレ、同時に爆発した。
彼は更にプログライズキーを押し込む。
『ジャスティスパニッシュメント!!』
その瞬間、エネルギーが拳から刃まで伝わり、刃は白く染まる、今度は一体に向かって白い飛ぶ斬撃を飛ばす。斜めにぶった斬られた脳無は何も出来ず爆散した
最後の脳無は恐怖を感じ、逃げようとする。だが彼は足を引っ掛け、仰向きに倒す。すると彼は…何とゲーマドライバーを取り出し、脳無の腰に付けたのだ。
脳無は完全に怪物である。だが形だけ見たら人間ではある、元々人間だから当然であるが
そしてこの世界のゲーマドライバーは制限がない、故に誰でも使用出来る…それはNPCも例外では無い、そして彼はとあるガシャットを取り出す。
そのガシャットは橙色と水色が合わさった…パラドのとっておきのガシャットだった。
『マイティブラザーズ XX!!』
『ダブルガシャット!!レベルアップ!!マイティ!!ブラザーズ!!二人で一人!!マイティ!!ブラザーズ!!二人でビクトリー!!X!!』
ダブルアクションゲーマーレベルX…人に害を加える死体の怪人が人を救う医者の仮面ライダーに変身…いや、変貌させられた姿である。
彼はここでは終わらせない、強引に体重を乗せて動きを封じながらレバーをもう1回閉じて開かせる。
『ダブルアップ!!俺がお前で!!お前が俺で!!マイティ!!マイティ!!ブラザーズXX!!』
そのゲーマーは2体に分裂させられる、名前はダブルアクションゲーマーレベルXX
すると彼は何故か背を向けて逃げ始める
脳無の知能故に獣のような動きをしながらエグゼイドも追いかけ始めた。
そしてたどり着いたのはF-9エリアとF-10エリアの境界線だった。それを渡り、暫く走って少し遠くの方に黄色いエナジーアイテムと赤いエナジーアイテムがあるのを見つけた彼は…デュアルガシャットを取り出す。
『PERFECT PUZZLE!!』
かつて、開発者の檀黎斗は別のガシャットデュアルギアでゲーマを召喚した事があった。つまり、ガシャットデュアルギアは単体でも使用出来るものだと推測出来る。それで彼はパーフェクトパズルの効果を使用したのだ。
そうして彼は少し遠くのエナジーアイテムを引き寄せる…但し赤いエナジーアイテムは集める事は出来なかった事から、単体では1個が限界のようだ。
《高速化!!》
『ジャスティスパニッシュメント!!』
…その瞬間、2体のエグゼイドは何かをする暇もなく、同時に何度も白く染まった刃で斬られていた。
限界までダメージを受けたエグゼイドは爆散し…1枚のカードに纏まる。そのカードには2体のエグゼイドが片面ずつ映っていた。
何故パラドがゼインに変身したのか、理由は複数あった。
1つ目は先程説明したように、ライダーゲージが切れそうかつ、エナジーアイテムが周囲にないことを把握していたから
2つ目はもしガシャットデュアルギアがなくなった場合の事を考えたから、戦闘手段は多く把握しておいた方が言いに決まっている、たとえ使え慣れないものだったとしてもだ
3つ目は…時間停止の感覚を知りたかったから、元の世界でクロノスを倒して、自分の仲間…バグスターの為に仮面ライダークロニクルを取り戻す為のヒントになるかもしれないと考えたから
決して何となく変身した訳では無い、しっかり考えた上で彼は仮面ライダーゼインになった
変身解除した仮面ライダーゼインはパラドの肉体に戻っていた
「成程、確かにこの剣ならば私の鎧を無視して斬る事が出来たのにも筋が通りますね」
…目を青く光らせながら
そう、彼は変身した瞬間から…既にゼインに乗っ取られてしまっていた。
パラドは知らなかった、戦っていた相手は人ではない、そのドライバーに宿る存在である事を
そしてそのドライバーを使った者はソレに…ゼインに乗っ取られてしまう事を
実を言うとその可能性をパラドは確かに考えていた。
理由は名簿の表記にある。ゼインを倒した後に名簿でどのような存在なのか確認した時、ゼインの存在を名簿は【仮面ライダーゼイン】と表記していた。
この時パラドはこう考えたのだ、変身者は見た目から日本人の可能性が高い…つまり日本語で表示される方が筋なのにそう表示されていないのは、変身者が別…コイツを操っている存在が変身しているからだと、つまり仮面ライダーゼインが肉体を利用して参加しているから名簿に仮面ライダーゼインと書かれていると
そういう考えにはなった、なったのだが…それを否定する存在がいてしまった。
それが【仮面ライダーガッチャード】、本名一ノ瀬宝太郎である。
羂索達に意見していた彼の事はパラドも認識はしていた、そして彼も恐らく日本人、仮面ライダーガッチャードという名前の人ではないだろう事は明らかだ。
だが名簿には仮面ライダーとしての名前で乗っている、この時点で自分のゼインの存在についての推測を放棄してしまっていたのだった
乗っ取ってすぐゼインは行動を開始、まずは目の前の脳無を利用する事にした。
3体を利用し、自分を倒した攻撃を試し、1体を利用し、メダジャリバーの応用をしてみて、最後の1体でゲーマドライバーとガシャットデュアルギアとダブルガシャットを効率よく利用し、カードを得ると同時にパラドクスの弱体化を狙ったのだ
ガシャットデュアルギアの単体利用についてはパラドの記憶からラーニングした物であった、ここでもし利用する意味がないと判断した場合はガシャットデュアルギアをゲーマドライバーに挿し直し…てはいない
…何故か?
ガシャットデュアルギアはベルトを使う必要のない変身アイテムである。
…もう意味が分かっただろう、そう使う機会があるかどうかは分からないが
「まずはカードの回収をしましょうか」
そう言って彼はパラドと戦った場所に戻って行った
何故ゼインは今まで切り捨てていたカードの回収を決めたのか、それは単純な理由だ。切り捨てられたカードを利用される事が2回目だったからだ、流石にラーニングをしたようだ。切り捨てたカードをそのままにしていくと予想外の事が起こるという事を、ゴーストとストロンガーのカードは距離があるために諦めたようだが
(次にこの傷付いた身体の回復…それから私の力を使うに相応しい人を探しましょう)
回収が終わった後、ゼインは真っ二つにされたままの元ゼインドライバーの使い手を放置し、行動に移り始める。まずはF-9エリアの住宅街で身を休める。回復のエナジーアイテムを探すのはいいかもしれないがどこにあるのかわからないものを探し回るのはリスクがあると考えたようだ。
そしてその後、裁くべき対象であるグラファイトを探す…そのためには旧幻夢会社に行った方がいいとパラドの記憶から結論を立てる、その道中で彼は自分の力を使うべき人を探す事にしたのだ、何故なら今自分が使っているパラドはゼインが悪と見定めた者、このままだと裁く事は出来ない、だから新たな資格者を探した後に…『自分』がパラドを滅ぼすのだ。
絶対無二の善意は終わらない、仮面ライダークロニクルを縁として衝突した2人は1人となった。王の剣とエナジーアイテムを支配する力を得て、暫しの休憩を挟んだ後に正義は動き出すであろう、全ての悪意を排除する為に
そしてゼインは気づいていない、2つの真実に
1つ目、ゼインはセレブロやアンクとは違い、正式なバトルロワイヤルの参加者、そして本来なら殺し合いから脱落しているべき存在だ、何故なら1度パラドに殺されたのは事実なのだから、ベルトに意識を内包しているが故に生き延びたにすぎない
主催はこれを一応は許したようだ、だがこれはベルトを破壊されない限りゼインは参加者であり続ける事を意味する。そんな不公平を主催達は許さない、故にゼインドライバーに細工はしてある…仮面ライダーゼインの変身者が死んだ後に、新しい変身者を決めるという過程を繰り返せば繰り返す程支配する事は難しくなるという細工を…つまり変身者が死ねば死ぬ程ゼインは参加者として脱落していく、その果てにはゼインドライバーはただの支給品になるだろう。
2つ目、ゼインは新しい資格者でパラドを滅ぼすと言った、だがそれをその新しい資格者とその仲間は許すだろうか?まず許さないだろう、その結果どうなるか?…言わなくても多くの人々ならばゼインがどうするかは察するだろう、でなければ桜井侑斗の許可なしに意識を乗っ取るような事はしなかったはずだ
正義が所持しているメダジャリバーを使う仮面ライダーオーズの変身者、火野映司はこんな言葉を残している。
誰が正しくて誰が間違ってるって、とっても難しいことだと思います
自分が正しいと思うと、周りが見えなくなって……正義のためなら何をしてもいいと思ったり
きっと、戦争もそうやって起こっていくんです
【午前7:30 F-9 焼け野原のすぐ近くの野原】
【仮面ライダーゼイン@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:体力残り1〜2割、ダメージ大
服装:パラドと同一
装備:ゼインドライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ
ゼインプログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズ
ゼインカード一式@仮面ライダーアウトサイダーズ
令呪:残り二画
道具:ホットライン
思考
基本:悪意に満ちたこのゲームを破壊する。
01:このゲームの運営についての情報を集める。だがその前にこの身体を回復させる為に動く。
02:邪魔する者は排除する。
03:悪意に満ちた参加者は見つけ次第排除、まずはバグスターであるグラファイトを排除する、その為に旧幻夢会社へ向かう
04:パラドを滅ぼす為に他のゼインドライバーの資格者を探す。
05:エナジーアイテムの詳しい効果はこの男(パラド)からラーニング出来ました。今後も利用させて頂きましょう
06:このメダジャリバーを使う為にセルメダルを排出するNPCと戦いたいですね
07:今後エナジーアイテムが多くあるエリアに入り、そこで戦闘をする必要があったのならば…
08:何か声が聞こえるような…気のせいですね
09:????????????
10:????????????
11:??????????????????????????????????
参戦時期:仮面ライダーゼロスリーと対峙するよりは前
道具:ホットライン×2
思考、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、メダジャリバー+オースキャナー@仮面ライダーオーズ
裁断されたゼインカード@仮面ライダーアウトサイダーズ(ストロンガー、アバドン、ゴースト除く)
※パラド@仮面ライダーエグゼイドの肉体を乗っ取りました。常に装着する必要のあるゼインドライバーを破壊、もしくは取り上げない限りパラドは解放されません。
また、変身者が死ぬ→新しい変身者を乗っ取るを繰り返す度にゼインの干渉は難しくなります。完全にできなくなった場合、ゼインの参加者としての資格はなくなります。
裁断された仮面ライダー2号、仮面ライダースーパー1、スカイライダー、仮面ライダー龍騎、仮面ライダーカブト、仮面ライダーダブル、仮面ライダーオーズプトティラコンボ、仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル、仮面ライダービルドジーニアスフォームのゼインカードは回収されました。
ゲーマドライバーとランダムアイテム=マイティブラザーズXXガシャットは『ゼインカード(仮面ライダーエグゼイド ダブルアクションゲーマーレベルXX(量産型脳無))@オリジナル』になりました。
主催達が行った細工、それは干渉の難易度だけでは無い、もう1つは乗っ取られた側の精神は目覚めたままにする事だ。
最初の変身者だった桜井侑斗の意識は完全に閉ざされていた、だがパラドは目覚めたままになっている。
事実上1度脱落したゼインへのペナルティと言った所だろう、この結果パラドの心の持ちようによってはゼインの動きに干渉出来るかもしれないのだ。そしてその干渉はゼインの変身者が死んで乗り換える程しやすくなっていく。
…もっとも、それが乗っ取られた側にとって幸せか不幸かは分からないが
何故なら…自分の身体で行った所業を…見せつけられる事になるからだ
クソォ……クソォッ!!返せよ俺の身体ぁぁぁぁ!!
何でだよ…何でこうなるんだよ…!!あんなに戦ったのに…お前に抗ったのに…結局こんなエンディングになるのかよ…!!
こんな事になるならもう1回メダジャリバーの必殺技を使って逃げ道を作れば…俺の勘を信じておけば良かった…!!
俺は…俺はお前に使われる道具なんかじゃないのに…クソォォォォッ!!
グラファイト…いや誰でもいい…誰でもいいから…お願いだ…コイツを…ゼインを止めて…
俺を…助けて……
10:何でこうなるんだよ…!!
11:誰でもいい、助けてくれ…
12:完全に意識を乗っ取られたら…俺の心…消えるのか…?嫌だそんなの…!!
※何れ完全に自分が消滅するのではと推測し、恐怖しています
投下終了です、修正した時、再び報告します。
すみません、タイトルは991まで、『使いこなすCard&Energy!!』で、
992からは『ザ!!因果応報だぜ』です。何故因果応報という言葉をタイトルに採用したのかはエグゼイドの物語を知っている方なら意味が伝わると思います。
wikiサイトでの文章の修正が終わりました。ついでに『Stellar Stream/PHOENIX』の修正もしました。
何方とも付属している歌詞との組み合わせがよりssを面白くする事が出来たと考えていますので、是非そういう1面からssを楽しんで頂けると幸いです。
皆様投下乙です!
未登場のキャラをまとめてみました。抜け漏れあったらスマソ
★は予約されているキャラ
○は予約されていないキャラ
★キラ・ヤマト准将/○アスラン・ザラ
○リーファ
○レジィ・スター
○冥黒王ギギスト
○二代目ゼロ(シャーリー)
★一之瀬帆波
○柳瀬舞衣
○切島鋭児郎(烈怒頼雄斗)/○赤黒血染(ステイン)
○キズナレッド/○キズナブラック
○天川薫子
○邪樹右龍/○繰田孔富
○やみのせんし
○纏流子/○満艦飾マコ
○ザギ
○立風館ソウジ
○道外流牙
○遊城十代
○望月穂波
○マリヤ・ミハイロヴナ・九条
○ビルツ・デュナン
○マクギリス・ファリド
○柊真昼
これを候補話において同行しているメンバーでまとめると以下の通り。
他は単独行動だけど、同じ候補作かつ本編登場済のキャラの位置から、だいたい地図のこの辺にいるだろう、というのはある状態。
キラ・ヤマト准将&切島鋭児郎(烈怒頼雄斗)
アスラン・ザラ&一之瀬帆波
リーファ&望月穂波
柳瀬舞衣&立風館ソウジ&道外流牙
キズナレッド&満艦飾マコ
天川薫子&邪樹右龍
繰田孔富&纏流子&ビルツ・デュナン
二代目ゼロ(シャーリー)&マリヤ・ミハイロヴナ・九条&マクギリス・ファリド
皆さん投下お疲れ様です。どの作品も楽しく拝見しています。
中でも、一護の激闘を補完してくれた◆8eumUP9W6s氏には感謝です!
意欲が湧いたので、以下のメンバーで予約します。
マーヤ・ガーフィールド、井ノ上たきな、星野瑠美衣、ユージオ、望月穂波、リーファ、レジィ・スター
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