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決闘バトルロイヤル part4

1 ◆QUsdteUiKY:2024/07/30(火) 04:00:15 ID:G/9ouSvI0
※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1655738773/

936◆2fTKbH9/12:2025/06/27(金) 01:30:17 ID:???0
【キリト@ソードアート・オンライン(アニメ版) 】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ブラックプレート@ソードアート・オンライン、カゲミツG4@ソードアート・オンライン、ごせん像@まちカドまぞく
[道具]:基本支給品、飛電ゼロワンドライバー+ライジングホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン、首輪×2(城之内、達也)
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とハ・デスを倒す
0:D-6の狐島に向かう。ついでに『あれ』の存在を確認する
1:空、尊徳、ユキと共闘する
2:リリスのよりしろ探しと約束の為に吉田姉妹を捜索して必ず保護する
3:モニカ、クウカ、士、レイ、吉田姉妹、宝条永夢の仲間を優先的に探す
4:キバットとゼロワンの変身は空と互いの負担を減らすべく、一回の戦闘ごとに交換しながら装着する
5:ユキを預けてくれる大人を探して見る
6:変なおっさん(肉おじゃ)、PoH、謎の気狂いの変態、念のため美遊の関係者を警戒
7:金髪の男(ポセイドン)、継国縁壱を最大限に警戒
8:美遊の関係者を探しつつ、美遊の件の概要は口外しない
9:俺が探索してるうちに40人も死んだのか……
[備考]
※参戦時期はソードアート・オンライン
アリシゼーション War of Underworld終了後
※遊戯王OCGのルールをだいたい把握しました
※アバターはSAO時代の黒の剣士。
GGOアバターに変身することも出来ます。GGOアバターでは《着弾予測円(バレット・サークル) 》及び《弾道予測線(バレッド・ライン) 》が視認可能。
その他のアバターに変身するためには、そのアバターに縁の深い武器が必要です。SAOのアバターのみキリトを象微するものであるためエリュシデータやダークリバルサー無しでも使用出来ます。SAOアバター時以外は二刀流スキルを発揮出来ません。これらのことはキリトに説明書に記されおり、本人も把握済みです。
※主催陣営はSAO事件を参考にしたと推測しています。また、会場は仮想現実でその技術を発展したと考えています。
※空と空黒というコンビ名を結成しました。
※ブラックプレートが手元に戻ったのでALOアバターに変身が可能になりました。ALOアバターでは魔法スキル、妖精の翅による飛行が使用可能。

【空@ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版) 】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG、デッキ(蕾禍)@遊戯王OCG、キバットバット三世@仮面ライダーキバ
[道具]:基本支給品、高級木材のモーターボート@現実、デュエルモンスターズの歴史の本、首輪×2(御伽、遠野)
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とハ・デスを倒す。あまり人類ナメるんじゃねぇ
0:D-6の狐島に向かう。ついでに『あれ』の存在を確認する
1:キリト、尊徳、ユキと共闘する
2:主催者と関係ある人物と接触する。特に宝条永夢の仲間に会い、檀黎斗の情報を聞き出す
3:リリスのよりしろ探しを手伝う。吉田姉妹も必ず保護する。
4:謎のシステムの正体を探り、渡の殺害の件のきな臭さを解消する。そのためには多くの参加者に聞き込みか士とレイと接触する
5:キバットとゼロワンの変身はキリトと互いの負担を減らすべく、一回の戦闘ごとに交換しながら装着する
6:ユキを預けてくれる大人を探して見る
7:変なおっさん(肉おじゃ)、PoH、謎の気狂いの変態、念のため美遊の関係者を警戒
8:金髪の男(ポセイドン)、継国縁壱を最大限に警戒
9:ユニカ、クウカ、士、レイ、吉田姉妹、宝条永夢の仲間を優先的に探す
10:美遊の関係者に接触し、美遊を推す原因を聞き出しつつ、概要は口外しない
11:二つのデッキの魂を信じ抜く。一応、他のデッキも回収しておきたい
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後
※遊戯王OCGのルール及び蟲惑魔デッキ、蕾禍デッキの回し方を把握しました。
 また、蟲惑魔と蕾禍を組み混合デッキの回し方と新旧のフィールドの存在も把握しました。
※主催陣営はSAO事件を参考にしたと推測しています。また、会場は仮想現実でその技術を発展したと考えています。
※キリトと空黒というコンビ名を結成しました。
※デュエルモンスターズの歴史の本を閲覧しました。内容は現実世界(リアル)関連です。

937◆2fTKbH9/12:2025/06/27(金) 01:30:58 ID:???0
【リリス@まちカドまぞく】
[状態]:正常、自身への苛立ち
[思考・状況]基本方針:全員生きて脱出
0:D-6の狐島に向かう
1:空、キリト、尊徳、ユキと行動を共にする
2:吉田姉妹、モニカ、クウカを優先的に探す
3:清子、小倉……
4:桃とミカンの合流は後回し。合流したら挨拶はしたかったが……
5:よりしろを見つけ出す
6:何も出来なくなったことへの苛立ち
[備考]
※参戦時期は4巻(アニメ2期)終了後
※他者との肉体を入れ替える能力と他人の夢に入る能力は制限対象で黎斗によって不可にされています。
※黎斗によってよりしろで活動出来る時間は十分に制限されていて、二時間経過しないと活動出来ません。等身大よりしろも同様です。
※よりしろ状態でも並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すことは可能とします。ただし、少なくともキリトの支給品にきらファンでのリリス専用武器はありません
※主催により口封じされました。今後は何かキッカケがない限り話せません。きらファンで手にした力も主催により剥奪されています。





「あのメスガキ共め!!!!!!!」

肉おじゃはマサツグ達から逃走した後、憤慨しっぱなしだ。
其れもその筈、手を組んだメスガキ二人が裏切った挙句、改心までしてしまうという肉おじゃからすれば全く笑えない展開。
おまけにマサツグというハーレム野郎をまた仕留め損なう始末。
あの三人が憎くて機嫌が悪くて仕方ない。

八つ当たりで目先の木々を殴り付ける。
マサツグ達への負の感情からメグとコッコロに負わせた右腕の傷が徐々に回復していく。
原理は不明だが、また願ったり叶ったり。

苛立っては良くないと言い聞かせて頭を冷やし、取り敢えず休むのが第一だ。
ぶっ続けで戦闘をこなして来た。
今後はどうするかは後で考えよう。
今だけは身を潜める場所を探す。

歩き続けると見えて来たのは建物だ。

「丁度いいっすね」

身を隠す最適な建物の発見は朗報だ。
早速、肉おじゃは建物の中に入っていった。

肉おじゃは知る由もないが、最初に対峙した黒の剣士と天才ゲーマーの片割れが数分前に滞在していた事を。
八つ当たりする時間を割かなければ彼らとの再戦が叶っていただろう。
よって、肉おじゃは僅か数分後にエルキア大図書館を発見して、彼らとすれ違う。

「物凄い本の量すね」

938◆2fTKbH9/12:2025/06/27(金) 01:31:46 ID:???0
本に興味のない肉おじゃでも物凄い数の本が置かれていた。
そんな事はどうでもいい。
今は束の間の休息が大事だ。

肉おじゃは元から用意されたコンビニ弁当の豚カツ弁当を頬張り、体力を付ける。
水も飲んで喉もリフレッシュする。
食事を終えた肉おじゃはこれからどう動くか。

「一から立て直しっすね」

一旦、現状をリセットしたい気持ちが強い。
あのメスガキ共のせいで全て台無しにされた。
優勝を目指す為には再度、誰かと組み直したい。
利害関係で結べる者が残っているか怪しいが。

「探して見るっすね」

そう吐いて、デイバックを漁り始める。
中身が乱雑しすぎて確認を怠っていた。
肉おじゃは単独に逆戻りする由々しき事態。
追い詰められた獲物は強力な武器を求める。
すると何かを手に取る。
中身から取り出すと木組みの大きなドアを発見する。
説明書を拝見すると肉おじゃは笑みを浮かべる。

「良い機会すね」

北東に追いやられてしまったのでどこだかドア言う道具で再始動する。
異次元の埋葬は時間制限が解けずに現時点では使用は不可。
ここから行けるルートは北か地図の中心部の二カ所。
また高確率でマサツグ達と遭遇しかねない。
あの集団にはいずれ報復したいがそれは誰かと組んでから。
そうなると一からリスタートするには丁度いいアイテム。
ただし、異次元の埋葬と同様に一度使用すると六時間は待たないといけない。

兎にも角にもこれからの動き方を決める訳で真っ先に思い浮かぶのは憎くて仕方ないあの集団。

「勿論、マサツグとメスガキ共を報復してやるっすよ!!」

いずれマサツグ達は殺すがそれには、誰かと手を組むにしてもメスガキ共みたいな目的が中途半端な奴は御免だ。
優勝狙いに確固たる者が望ましい。
希望としてはマサツグ達に恨みを持つ者同士がいい。

「そんな都合のいい話ないっすね」

一時、組んでいたメグが漏らした情報によるとマサツグを知る参加者はいないらしい。
情報共有していないと言うものあるが、鵜呑みは良くない。
もし、マサツグと敵対する者がいれば暴れ馬でも交渉次第でマサツグを殺すまで一時的に手を組める価値はある。
いないならいないで別の奴で我慢するが。
兎に角、同じ優勝狙いと組むまでは多人数で戦うのは避ける。

939◆2fTKbH9/12:2025/06/27(金) 01:33:04 ID:???0
出発前に武器のおさらいをしておく。
カードが四枚と戦力は微妙と言った所か。
仮面ライダーの装備はベルトしかないが、ホッパーゼクターの脚の欠片を所持している。
何故、肉おじゃの元にホッパーゼクターの脚の部分の欠片がある理由。
実はホッパーゼクターが破壊される際に爆殺した際に一欠けらだけが肉おじゃの髪の中に引っ掛かっていた。
その事に気付いたのは食事をした後に落ち着いてから知った。
一応、ホッパーゼクターの復元できるアイテムを探して見る。
都合よくそう簡単に見つかるとは思っていないが。
ゴット・ハンド・クラッシャーなんてD-8の狐島で黒の剣士とI♥人類の男との対峙以来、かなり前に時間制限が過ぎたのにマサツグ達に使用しなかったのは勿体なかった。
渋る事はせずに思い切るべきだった。
過ぎてしまったのは仕方ないと見るか。

そう考えた後に肉おじゃは目先のドアノブを回す。



【D-7 エルキア大図書館/一日目/午前】

【肉体派おじゃる丸@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、胴体に刺し傷、右胸から左脇腹までの切創、胴体に真横の浅い切創、淫夢ファミリーへの憎悪(極大)、マサツグ、メグ、コッコロへの憎悪
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(一つのタブレット破壊)、ゴット・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG、攻撃誘導アーマー@遊戯王OCG、デス・メテオ@遊☆戯☆王(二時間発動不可)、ZECTバックル、異次元からの埋葬@遊戯王OCG(四時間発動不可)、どこだかドア@ドラえもん、ホッパーゼクターの脚の部分の欠片
[思考・状況]基本方針:優勝して淫夢の歴史から自分の存在を抹消する
1:淫夢ファミリーだけは絶対にこの手で殺す。特に野獣先輩、野獣死すべし
2:黒の剣士とI♥人類の男は次に出会ったら絶対殺してやるっすからね……
3:遊戯王カードはこの決闘で大事すね……
4:できれば他の優勝狙いの参加者と組みたいすね。
5:マサツグも、あのメスガキ共(メグ、コッコロ)も許さないっすからね。
6:ホッパーゼクターを復元する道具を探して見る
[備考]
※遊戯王カードの存在を知っていますが決闘者じゃないのでルールなど詳しくありません
※本来の名前を思い出せません
※心意により憎しみなどの負の感情で身体能力と肉体強度が上がり、その間は自動的に徐々に回復します



『支給品紹介』

【ブラックプレート@ソードアート・オンライン】
宮川尊徳に支給。
旧ALOでキリトが使用していた巨大な片手直剣。
キリトが手にするとALOアバターへのチェンジが可能となる。

【飛電ゼロワンドライバー+ライジングホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン】
キリトに支給。
プログライズキーとセットで支給。
本来の使用権限は飛電インテリジェンスの社長のみのはずだったが、黎斗と茅場の合同作業で全てを取り払い、誰でも仮面ライダーゼロワンに変身可能。

【蕾禍のデッキ@遊戯王OCG】
宮川尊徳に支給。
属するモンスターは昆虫族、植物族、爬虫類族の三種族に構成されている。
リンクモンスターには自己蘇生が可能。
ただし、上記の効果を使用すれば三種族のみの縛りが課せられる。
唯一、デュエルディスクとセットで支給されなかったデッキ。

【どこだかドア@ドラえもん】
ひでに支給。
あべこべ星の秘密道具でどこでもドアと異なり、ランダムな場所に行ける。
作中では断崖絶壁に出てしまったが、本ロワでは空中や断崖に出ないように調整されている。
一度の使用で六時間は制限される。

940◆2fTKbH9/12:2025/06/27(金) 01:37:46 ID:???0
投下終了します。
タイトルは>>905>>918まで 涙はみせない(前編)
     >>919>>939まで 涙はみせない(後編)
とします。

941 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:04:49 ID:77dkwOig0
投下お疲れ様です。自分も投下します

942呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:08:24 ID:77dkwOig0
人間、生きていれば嘔吐を覚える程気持ちの悪い光景に出くわす事は多々ある。
乗用車に轢かれ内臓をぶち撒けた、猫の死骸だとか。
生きたまま大量の蟻に群がられ、捕食される哀れな蚯蚓だとか。
やけに凝った特殊メイクでグロテスクさを演出する、スプラッター映画の一場面だとか。
顔を顰め、消化前の飲食物がせり上がった。
そういった経験は誰にでもあるだろうし、かくいうみかげだって覚えがないとは言わない。

では今感じているのもそういった、日常生活で味わう不快感の一種だろうか。
そんな訳が無い。
『普通』じゃない事情を内心抱えていても、こんな『異常』に出くわすなんて有り得ない。

「ンンン、お初にお目にかかります。突然の無礼な訪問は寛大な心でご許し頂きたい。拙僧この通り重体身故に、落ち着ける場所を探し歩き辿り着いただけでして」

鳥肌が立つ程に気持ち悪く、喉が潰れる痛みを錯覚するくらいに恐ろしい男だった。
数千数万数億の毒虫が集まった如き醜悪さ。
異様な長身も、奇抜な衣装も、端正な甘い顔立ちも。
全て人のソレから逸脱していない。
星狩りや上弦の壱、一度見た怪物達と違い異形の特徴はどこにも見当たらない。
なのにこの男を人の枠に当て嵌める事へ、尋常ならざる抵抗感を抱く。

「うぁ……ひっ……」

後退り、目を逸らそうと努めるも出来ない。
脳が、或いは本能が強く訴えている。
コレから目を離したら最後、捕食され骨の髄まで溶かされるだけ。
無慈悲に噛み砕くのではない、時間を掛けてゆっくりと腐り果てる。
死へ希望を見出す程に凄惨な未来が待ち受けていると、みかげ自身の声がそう叫んでいた。

「無礼だって自覚してるなら、さっさと回れ右するべきじゃないかしらね?」

みかげ単独であれば棒立ちで怯えるままだったろうが、生憎そうはならない。
男の存在で蝕まれる空気を断ち切り、冷たく睨み返すは覇瞳皇帝。
ランドソルでの決戦において、王手を掛ける手前まで行った魔人。
得体の知れない侵入者だろうと、たじろぐ軟弱者に非ず。

943呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:09:15 ID:77dkwOig0
見えぬ火花が散り、フェントホープの一室は緊張感の高まりを見せる。
言葉一つ、仕草一つで怒りを煽ればその時は。
夜空色の聖剣が電光石火の速さで以て、首を刎ねるに違いないと確信を抱かせる。

「これは手厳しい。ええ、ええ、確かに確かに最もな御言葉」

なれど、相対する男が浮かべる貌に恐怖は存在せず。
瞳を細め、口の端が弧を描く。
まるで自身の命が危ぶまれるこの状況すら、楽しんでいるかのように。

「ここへは単に一休みで訪れただけのつもりでしたが――やめました」
「やめたのね」
「はい、あなた方を見て。単刀直入に伺いますが、ンン、拙僧を使ってみる気はありませぬか?」

ピクリと、肩眉が動いたのを男は見逃さない。
あえて指摘はせず、誌を詠むようにスラスラ続ける。

「佇まいを見れば、無能な猿でも分かりましょうや。使われるのでなく使う側、従うのでなく従える側、見上げるのでなく見下ろす側。
 であるならば対等な同盟などとんでもない!この身を王の駒として捧げるのは、至極当然のこと」
「…そう、流石にそれくらいは理解してるのね」

長ったらしく芝居がかった内容はさておき。
掻い摘んで言えば、部下として己を売り込んでいる。
対等な同盟を持ち掛けて来るだとか、こちらを隷属させようだとか。
そう言い出すのであれば、返答は剣か魔法だった。
だが自ら首を垂れ従うのなら、一旦は耳を傾けるのも吝かではない。
どうせ建前に過ぎないとは分かっている、それを踏まえて見極めるのだ。
利用、静観、排除。
三つの内どれを選ぶかを。

944呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:10:37 ID:77dkwOig0
「ではまず簡単に、拙僧の仕事ぶりをお見せすると致しましょう」

笑みを崩さぬまま、視線は皇帝から傍らに転がる獣へ。
プリンセスナイトの力で召喚・使役した魔獣。
侵入者の男を見付けるや襲い掛かったのが数分前。
引き裂く爪は掠めさせてももらえず、指先一つで躾けられ今や置物同然。
魔獣の額へ指先が当てられ、すぐさま異変は起きた。
山の如く盛り上がる四肢、より鋭利で研ぎ澄まされる爪と牙。
倍にまで膨れた体躯は巌を思わせる、強靭なモノへ変貌を遂げる。

「とまあこのように、少しばかり栄養を与えてやりました。貧相な飢え細った駄犬に、番犬は務まりますまい」

簡単に言ってのけた男が何をやったかは、皇帝にも即座に分かった。
魔力を流し込んだ強化、文字にするならそれだけで済む。
魔法に覚えのある者であれば、誰でも可能。
などと今の光景を見て言葉に出す人間がいたら、皇帝は無能と断じるだろう。

籠められた魔力の何たる邪悪さ、何たるおぞましさ。
栄養だなんてどの口が言える、呪いを掛けたに等しい。
魔獣を蝕み、尚且つ消滅しないギリギリを一瞬で見極めた上での術の行使。
並のギルドの者十数人を、これ一匹で10秒も掛けず餌に変えられる。
複雑な術式も長ったらしい呪文も必要としない、男にとっては会話の片手間で行えるのだ。

「成程ねぇ……」

少なくとも術師として、男の実力は非常に高い。
感心と、それ以上の警戒を密かに宿す。

945呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:11:27 ID:77dkwOig0
「ンンンン、我ながら良き仕事ぶり。如何ですかな?貴殿が望むのであれば、足元へ眠らせた檻の中の獣達にも同様の活力を与えられますが」
「あら、気付いてたのね。いつの間にコソコソ嗅ぎ回ったのかしら」
「少々鼻が利くものでして。どうかお気を悪くせず、拙僧の優れた面の一つと受け入れて頂ければ何より」

一体何を指しての提案か、聞き返す必要も無い。
地下で飼育された複数の異形、魔法少女の成れの果て。
魔女の存在をいつ知ったのかという疑問も、男が秘めた力を考えれば不思議じゃない。
文字通り、感じ取ったのだろう。
分厚い床を幾枚重ねたとて無意味、漏れだす魔力を意図も容易く察知した。

「…一つ聞いても良いかしら。あなた、このゲームで何を望んでるの?」

男が本心から自分に忠誠を誓う気が無いのは、最初から分かり切っている。
それは別に構わない、自分だって信頼だ絆だのという類は求めてない。
こちらを利用し尽くす算段なら、逆に利用し使い潰す。
とはいえ最低限、ゲームにおける基本的なスタンスは把握しておきたい。
生存優先か、自称神の持つ力が望みか、優勝を目指し最終的には自分も手に掛ける気か。

「悪意の行くまま気の向くまま、衝動に逆らわず欲望に身を委ね、この地で産声を上げる地獄を見届けたい。ただそれだけでございます」
「…………」

猫のように細めた瞳、その奥へ爛々と輝く愉びを秘め。
口遊んだ内容に、皇帝は言葉無く理解した。
この男にとって意味があるのはゲームの結果に非ず、過程だ。
生きて帰る、或いは願いを叶えるというゴールを男は見ていない。
結末へ向けて伸びた道、そこでどれだけ悪を為すか。
産み落とした地獄がどこまで広がるか、それこそが望み。
利害で繋がった星狩りとは別の意味で、警戒を抱かざるを得ない男を――

「……良いわ。使われたいなら望み通り、仕事を幾つかあげる。但し、あなたの『お遊び』で思い通りに動かせると考えてるんだったら――言わなくても理解できるでしょう?」
「肝に銘じておきましょう。なに、損はさせませぬ。どうぞ大船に乗ったつもりで、ご期待くだされ」

提示された選択肢の内、選んだのは手を組むこと。
最もハイリスクハイリターンであり、付き纏う危険性を考えなかった訳ではない。
己の腸に毒虫を飼う、いつ中から腐らせられてもおかしくない。

だがそれを踏まえても、得られる旨みは少なくないだろう。
自分を以てして一筋縄でいかないと言える、術師の腕前。
人手不足が否めない現状を鑑みれば、引き入れるのは全くの悪手とも言い切れまい。
使えるものは使う。
心砕かれた人形でも、『普通』になり切れなかった少女でも。
星を喰らう地球外の種族や、辺獄を名乗る悪しき陰陽師だろうと。

食らえると思い込んでいるならば、高を括っていればいい。
愉悦を満たす肴に過ぎないと見下すならば、必ずや後悔を抱く事となる。
懐へ入れた毒虫すらも使い潰し、望みを叶えるまでだ。

946呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:12:07 ID:77dkwOig0



大丈夫なのだろうか。
リンボと名乗った男との協力を決定し、粗方の情報を開示し終えた後。
今は別室へいる異様な風体の術師を思い浮かべ、同じ言葉が幾度も頭を掠める。

陛下の判断が間違いだとは思わない。
自分よりもずっと強く、頭も良い。
それでいてこちらを気遣い、『普通』じゃない事情を知っても寄り添ってくれる。
殺し合いで最も信頼を向ける『彼女』が決めた事へ、反対する気は起きない。
下手に異を唱え、落胆や失望を向けられたくないとの思いもあるが。

だとしても、リンボと手を組んで本当に良かったのかとの不安は尽きない。
エボルトの時と同じだ。
我が身で人ならざる存在感を感じ取り、根本的な相容れなさを心の内に抱いた故。
薄っぺらな関係だろうと、繋がりを得てしまったのは。
果たして正しいと言えるのかどうか、みかげは素直に頷けなかった。

(それにあいつ……)

情報開示が済み、去り際に放った一言がいやにへばり付く。
細めた瞳で、墨汁が溜まったように真っ黒な目で射抜き言った。
若人への助言と嘯き、心底楽し気に。

――『何一つ得る事の無い生還を望むなら、それも良いでしょう。ですが取り戻した上で帰還したいのであれば、餓狼の如き飢えを抱きなされ。為さずに帰った先があなたの救いというなら別ですが』

澄んだ水へ毒が垂らされるみたいに。
気味が悪いと感じる程、リンボの言葉が体中へ染みこむ。

このまま陛下に協力して、殺し合いも全部終わり自分の家に帰る。
それから何事も無かったように学校へ行って、退屈な授業を受けて。
新しくアタックしてくる男子と、付き合ってみたりだとか。
悪趣味なゲームなんていずれは忘れるような、変わらない日々を過ごす。

947呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:13:04 ID:77dkwOig0
出来る訳がない、何食わぬ顔で日常に戻れるなんて有り得ない。
自分だけが帰って来て、司はいないのを撫子にどう説明すればいい。
神様が始めた殺し合いに巻き込まれ、運悪く死にました。
そんな説明で納得するか否か、どう考えたって後者だろう。
二度と司が戻らないのを知りながら、彼女の弟が必死に探し回るのを後ろめたい気持ちで見続けるのか。
三人組が最悪の形で壊れ、仕方ないで済ますのか。

司の死を背負って生きていく?
まだ死んでいない人達や、元の世界の家族と友人の事も考えろ?
間違った方法で司が戻って来ても、悲しませるだけ?

「……っ」

若しかしたら、そういうありきたりな説得を受け入れる者もいるのかもしれない。
けどみかげには無理だ、分かりましたとあっさり頷けない。
誰かを殺したり自分が殺されそうにならないだけで、生きて帰った場所も結局は地獄だ。
腹立たしい正論を翳し、永遠に一人が欠けた世界へ帰れと促され。
言った奴は正しさを貫いた気になって満足だろうが、自分にとっては堪ったもんじゃない。

未だ覚悟は決まらない。
騎士の少女と同じ迷いのない言葉など、言えそうもないがしかし。

壊れる前の三人組がずっと続く光景が、先程以上に胸を焦がしていた。

「……」

顔を歪ませるみかげを、光の宿らない瞳でココアは見つめる。
心配する素振りはない、声を掛けようとも思わない。
砕かれた心へ暗示を受けた彼女は、人形も同然。
カイザーインサイトの意のままに動く、都合の良い道具に過ぎない。

しかしほんの僅かに、壊れた心へ異物が触れた。
先の放送で告げられた、二人の友の名前。
暗示の影響下にある以上、特別大きな反応も見せない筈のソレらに瞳が微かに揺れ動いた。
意識を再び取り戻す効果はない、破片となった心を組み立て直すなど以ての外。
なれど大切な友達が自分の知らぬ所で命を落とした事実は、確かにココアへ届けられた。

これが彼女にとって、再起の切っ掛けになるのか。
或いは、同じく耳に残った悪しき陰陽師の言葉が更に彼女を堕とすのか。
太陽の如き煌めきを失った少女自身に、知る術はない。

948呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:13:59 ID:77dkwOig0



「ンンン、禍を転じて福と為すとは正にこのこと。いやはや、ここまで運んだミカン殿には感謝してもし切れませぬなあ」

感謝の二文字が微塵も宿らない声色で、くつくつと笑う。
ミカンの呪いが予想以上の効果を発揮し、先のエリアからは大きく離された。
Phoは勿論、最上達との合流もすぐには叶うまい。
とはいえ結果的には良かったと言えるだろう。
また一つ、殺戮遊戯での楽しみが増えたのだから。

カイザーインサイトと手を組んだのに、深い理由はない。
ただ言葉を交わし、立ち振る舞いをこの目で見て。
何よりも、自我らしい自我を奪われ従わされる傀儡へ確信を抱いた。
殺し合いには乗っておらずとも、善意で動く者とは程遠い。
欲する物を手中に収め、自身にとっての望む未来を実現する為の犠牲を厭わない。
通り過ぎた道に無数の屍を転がし、地獄を生み出す者なのだろうと。

それは紛れもない、リンボが求める光景に他ならない。
故に協力を申し出たのだ。
同時にあの手の輩は対等な同盟ではなく、傘下に下った方が話がスムーズにいくと身に染みて理解してある。
下総国や異聞帯で、表向き妖術師や王に仕えた経験が活きた。

尤もカイザーインサイトと繋がりを持ったからといって、最上との関係を白紙に戻すつもりもない。
あの男の『世直し』の行く末はもとより、まぞくの少女が如何なる形で孵化したか。
己が目で見届ける方針は変わらず、頃合いを見て合流に動く気でいる。

「ですが拙僧と言えども、即座の合流はちと難しい。ここは次に備え、身を休めるのが吉と見ました。貴殿もそう思うでしょう?」

にこやかに話しかけられ、相手は無言。
怪しく輝く瞳をぶつけるのみで、一言どころか一文字も口にしない。
仮に口を開いたとて、会話になろう筈もないが。
リンボと同室にいるのは、ココアが召喚した魔獣。
別室にリンボを一人きりにし、よからぬ真似をされるのを防ぐための監視役。
無論、たかが魔獣一匹ではリンボ相手に足止めにすらならない。
カイザーインサイトも承知の上でここに置いた。
異変が起きれば即、召喚者であるココアが魔獣とリンクしている為に気付けるのだから。

949呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:15:50 ID:77dkwOig0
魔獣との一方的な会話は早々に打ち切り、床へ手早く陣を描き座り込む。
フェントホープを訪れたのは興味本位だけでなく、傷を癒すのに最適な場所も理由の一つ。
施設そのものが一つの巨大なウワサな特性上、ホテル内部へ漂う魔力は少なくない。
加えて地下に飼育された魔女の存在もまた、非常に都合が良い。
ケージ越しに垂れ流す嘗て魔法少女だった者達の怨嗟、苦痛、絶望。
負の感情を煮詰めた瘴気とも言う力は、健常な感性を持つ人間からすれば毒。
しかし外法を以て悪を為す、辺獄を名乗る陰陽師には実に相性が良い。
陣が起動し瘴気を吸収、自らの魔力に変え消費した分を回復。
更には治癒の術式を己へ施し、深く裂かれた箇所を塞ぐ。

傷と魔力、両方を纏めて回復出来るのだから一石二鳥だ。
魔女を始め内部の仕組みも中々どうして悪くない、先に見付けていれば恰好の拠点になった。

「……ま、流石に何もかもとんとん拍子とはいきませんか」

傷を癒しながら自身の異変に肩を竦める。
治ってはいるがやけに遅い、本来に比べ術の効きが微妙に悪い。
ついでに言うと、消費される魔力が普段より幾分多いのも気のせいではあるまい。
異星の神との接続が断たれたと言っても、リンボは三体の悪神を喰らったハイサーヴァント。
内へ秘めた魔力の総量は、並のサーヴァントと一線を画す程に膨大。
複数の術の行使に宝具解放加えたとて、十分余裕があったろうに。

難しく頭を捻るまでもない。
式神に大きく制限を施されたのと同じ、いらぬ枷を付けられたということか。
余計な真似をと思わないでもないが、長々と引き摺っても仕方ない。
今は次なる舞台が始まるまでの準備期間、待ちに入り回復に専念すべきだろう。

ゲームにおいて、リンボは上位に食い込む強者であるが唯一無二の最強に非ず。
例えば、傀儡と成り果てた日輪。
例えば、人の身ながらオーバーロードへ進化した強者。
例えば、可能性を引き寄せ盤面を大きく覆す決闘者。
例えば、創世の剣士の力を得た覇瞳皇帝。
例えば、新たな絆を得て、守りたい者を守らんとする少年。

リンボであっても相応に手を焼き、二度目の敗北を刻み付けられる者が複数存在する。

950呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:16:35 ID:77dkwOig0
しかし、だ。
そういった者達ならリンボを容易く倒せると断言するのは、否と言わざるを得ない。
アルターエゴ・リンボ…蘆屋道満を甘く見過ぎた、無知蒙昧の戯言に他ならない。

誇りを穢し、
信念を砕き、
慈愛を嗤い、
絆を陵辱し、
魂を堕とす。

下総国に血の河を流し、剣鬼荒ぶる地獄へ変えたのは誰か。
創世と滅亡の担い手を唆し、インド異聞帯を正しさを突き詰めたディストピアに変えたのは誰か。

事、内より蝕み腐らせるのにかけてリンボは随一。
逸る衝動を抑え、静かにその時を待つ。
新たな地獄が顕現する、遠くない昏き未来を。


【C-1 ホテルフェントホープ/一日目/昼】

【カイザーインサイト@プリンセスコネクトRe:Dive!】
[状態]:健康
[装備]:聖剣ソードライバー&刃王剣十聖刃&ブレイブドラゴンワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品一式×2、シュークリームケーキ(少量消費)@ななしのアステリズム、キノコカンセット(キノコカン、スーパー、ウルトラ)@スーパーペーパーマリオ、ランダム支給品×0〜3
[思考]
基本:あの神を名乗る男は気に入らない、出し抜く手段を考える
1:壊れたこの子(保登心愛)は使い物にならなくなるまで利用する。
2:みかげも駒として利用。どこまで使い物になるかしらね。
3:なるべく使える駒を集める。
4:あの子(キャル)も連れ戻すべきか。
5:この忌々しい首輪もなんとかしたい。エボルトの同行者には期待し過ぎず、こっちでも解除方法を調べる。
6:エボルトを利用。2回目の放送後に桜ノ館中学校で合流。
7:リンボを利用。害になると判断したら排除。
8:美遊・エーデルフェルトを知る参加者を探してみるか否か。
9:フェントホープの地下にあったモノの使い道も考えておく。
[備考]
※参戦時期は第一部第13章第三話以降
※覇瞳天星に関する制限は後続の書き手にお任せします

【保登心愛@きららファンタジア】
[状態]:操り人形、忠誠(カイザーインサイト)、プリンセスナイト(カイザーインサイト)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1、ラーの翼神竜@遊戯王デュエルモンスターズ
[思考]
基本:陛下に従う
1:―――
[備考]
※参戦時期は第二部五章第20節から
※カイザーインサイトによりプリンセスナイトとなりました。魔物の操作能力も使用可能です。

【琴岡みかげ@ななしのアステリズム】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大・暗示の効果である程度緩和)、焦燥、暗示の効果継続中、ニノンの死へ動揺
[装備]:聖剣ソードライバー&雷鳴剣黄雷&ランブドアランジーナワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:
[思考]
基本:早く帰りたかったけど、でも……
1:司を生き返らせる……?。
2:陛下を手伝う。陛下に付いて行けば大丈夫、だよね…?
3:ニノン、本当に死んじゃったんだ……
4:このまま生きて帰ったって……
[備考]
※参戦時期は第五巻、鷲尾と喧嘩別れした後

951呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:17:32 ID:77dkwOig0
【キャスター・リンボ@Fate/Grand Order】
[状態]:ダメージ(大・回復中)、疲労(中)、魔力消費(大・回復中)、上機嫌
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×1、ランダム支給品×0〜2(シャミ子の分含む)、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG、空飛ぶじゅうたん@ドラえもん、小倉しおんの首輪、フグ田タラオの首輪
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:最上啓示、悪霊の集合体であろうかの御方の行く末、見届けて差し上げましょう。
2:吉田良子、どう利用してやりましょうか……ンンンンン。
3:里見灯花、まあそちらは式神の方に任せておきましょう。
  それはそれとしてでゅえるもんすたーずの情報はありがたや。
4:吉田優子、こちらで目覚めを促してやるのもまた一興。
5:覇瞳皇帝、はてさて如何程の地獄を生み出すか。
6:ええ、ええ。真に最高にて。
7:果報は寝て待てと言います故、暫し休息に入らせて頂きます。
[備考]
※参戦時期は地獄界曼荼羅、退場後。


◆◆◆


死体一つと散乱した鉄屑。
支給品も首輪も回収済、生きてる参加者は自分達以外に見当たらない。
逃げた連中が戻って来る気配もなく、騒ぎを聞き付けやって来る者も同様。
待っていればその内現れるかもしれないが、限られた時間を浪費してまでやる意味がどこにあるのか。
留まり続ける理由より、さっさと移動する理由の方が遥かに多い。

一度は言葉を交わし、情報交換を行った青年。
自らの手でスクラップへ変えた機械生命体。
そのどちらも、灯花の中では既に気に掛ける価値のない存在。
路傍の小石同然に、視界の端に映ったとて何の反応も見せない。
あってもなくてもどうでもいい、その程度のモノとしれ背を向ける。

「お待ち下され灯花殿。そちらへ向かうのは控えた方がよろしいかと」
「なーに急に?」

移動開始の寸前で出鼻を挫かれた。
小首を傾げ振り返ると、見上げる程の長躯を持つ怪人物が一人。
リンボの瞳は自身の腰よりも低い灯花ではない、遠く離れた何処かへ向けられたまま。
笑みは崩さず、しかし思案を重ねるように顎を擦っている。
いらぬ軽口や揶揄いの類であれば切って捨てるも、様子を見るに違うらしい。
耳を傾ける姿勢になったのを察し、移動を止めた理由を口にする。

952呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:18:21 ID:77dkwOig0
「ここより北上した場所では現在、大災害もかくやの天候となっておりまする。迂闊に近付こうものなら、行き先不明の空の旅を味わう羽目になるでしょう」
「何でそんなことが……あーそっか、『あなた』が直接見たのかにゃー?」

一つ離れたエリアの状況を何故知っているのか。
抱いた疑問は即座に解消され、リンボからも肯定が返って来る。
今この場にいるリンボではない、式神を操る本体のリンボがその大災害とやらに巻き込まれたのだろう。
式神が見聞きした情報は本体に伝わり、その逆もまた然り。
こういった面で非常に便利だと改めて思いつつ、より詳しく事情を聞く。

「幸か不幸か、灯花殿の知己の者はおりませぬ。今現在あの場に留まっているのは、暴風雨を巻き起こした娘が一人。
 ンンンンン!何とも恐ろしい!只人の身には有り余る呪いを秘め、災厄を吐き散らす様の何たる痛ましいことか!このリンボをして、憐憫の念を抱く他ありませぬぞ!」
「どうせあなたが原因なんでしょ?」
「まあそれは、はい」

オーバーなリアクションを取ってはいるが、口元には明らかに弧を描いてあった。
聞いてみれば案の定、あっさりと頷いたではないか。
予想できた答えとはいえ呆れ顔を作り、件の娘にご愁傷様とだけ胸中で伝えておく。
灯花も灯花で、心の底から気の毒に思っている訳ではないが。

「で?そのかわいそーな人以外は、あなたの言ったようにお空の旅の真っ最中ってこと?」
「そうなります。生者も死者も関係無く、はてさてどこまで飛ばされたのやら。こればかりは拙僧にも予想が付きませぬので。
 ああ、因みに良子殿と最上殿は一時的に別行動中故、心配は不要かと」
「ふーん……」

素っ気ない態度を取るも、内心では良子の無事に安堵が浮かぶ。
流石にいろはやねむとは比べるまでもないが、出来れば死んで欲しくないと思ってるのも本当。
今頃どうなってるか分からないけど、姉との再会が叶っていれば良子にとっても何よりだろう。

肝心の姉との再会が如何なるものか。
既に役目を終えたと見なしている事を、馬鹿正直に術師は教えない。
吉田優子の開花を促す贄に選ばれたなどと、知る由もなく。
わざわざ台風の被害地へ突っ込む物好きでない以上、ここはリンボの警告を素直に受け取る。
式神がこうして存在するのだから、どうせ本体もどこかでピンピンしてるに違いない。

953呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:19:26 ID:77dkwOig0
回れ右して南下、E-5内の住宅地へ移動。
先程は戦闘で気を回す余裕も無かったが、現在位置は放送で未回収の支給品があると伝えられたエリア。
時間を考えると持ち去られた可能性が高いとはいえ、念の為調べても損はない筈。

「まーそこまで都合良くはいかないよねー」

収穫があったかどうかで言えば、つまらなそうに言う灯花の反応が答え。
年季の入ったアパートの前に転がる、首と胴体が泣き別れした死体。
支給品も首輪も見当たらず、先を越されたのは明らか。
殺された青年がどこの誰かとか、そういった情報には一切興味がない。
得る物が何一つ無いなら、留まる理由も皆無。

尤も、もう一人には違うようだった。

「ふぅむ……無駄足と肩を落とすには些か早計やもしれませぬ。この者の亡骸は、我々で有効に使って差し上げましょうぞ」
「えー?もしかしてあなた、死体さんで遊ぶ趣味でもあるのー?」

眉を顰める灯花へ気を悪くした風もなく、何をする気かを説明。
訝し気な顔をされたが、反対は口にしない。
成功すれば自身の役に立つのが事実故、リンボの好きにさせる。

異を唱える者がいないのであれば、躊躇を抱く必要も無し。
指先で五芒星を描き、青年の死体に術式を施す。
更には自身の術のみならず、二つの呪物を使用。
三つを掛け合わせ、死体を泥の孔の如き暗黒へ沈み込ませた。

ややあって闇が晴れ、横たわった死体へ即座に変化が起きる。
とうに命が抜け落ち、抜け殻と果てた筈が何という事か。
掌を地に付け起き上がり、自らの両足で冷えたアスファルトを踏みしめた。

独りでに動いただけでなく、つい数秒前までとは外見も異なっている。
青白い死人の肌はくすんだ灰色へ。
生前に失った左腕が生えるも、人のソレとは到底言い難い。
肉の突起が幾重にも絡み合った、正しく異形の部位。
端正な顔立ちは変わらずとも、空洞の如き瞳に光は永遠に宿らない。

954呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:20:15 ID:77dkwOig0
「ンンンン、もう少し手を加えたかったのですが…今の拙僧ではこれが限界ですか」
「でもわたくし達の言う通りに動くんでしょー?とりあえず、使い物になるなら良いんじゃないの?」

仕上がりへ不満を零すリンボへ言葉を交わし、物言わぬソレを見上げる。
嘗て櫻井戒と呼ばれた青年は、今や忠実な屍兵と化し沈黙を保っていた。

そも、蘆屋道満とは平安の世にて名を知らしめた陰陽師。
多岐に渡り呪術や妖術を使いこなし、その悪辣さでカルデアとも決して浅くない因縁を生み出した。
死者の使役程度朝飯前、欠伸交じりにやってのける。

とは言うものの、異界の殺戮遊戯においては勝手も異なる。
膨大な魔力総量及び、術の出力への制限。
本体でさえこれ程の枷を付けられたなら、式神は更に弱体化が著しい。
死体に術を掛けた所で無意味だったろうが、当然リンボも分からない筈がない。
自分一人の術で足りないのであれば、補強可能な呪物を使えば良いだけのこと。

一つはノロ。
荒魂の正体であり負の神聖を帯びた物質と、リンボの相性は言わずもがな。
もう一つは灯花から譲渡された支給品。
戒の右腕に握られた巨大な戦斧、名を暗黒斬という。
闇に堕ちた魔戒騎士がホラーを喰う際に用いられる得物へ、蓄積された陰我は並大抵の量に非ず。
人間にとっては致死相当の猛毒すら、むしろ好都合と術式へ組み込んだ。

結果生まれたのが目の前にいる屍人。
聖遺物に食われた、櫻井の血筋の成れ果て程の力はない。
まして自我なき骸故に、この地で日輪を相手取った戦闘技術も当然の如く劣化。
なれど不足した分はノロと暗黒斬、それぞれ異なる呪いを授け形となった。
デュエルモンスターズを使う灯花の前衛をこなすくらいなら、問題無いだろう。

手に入れ損ねた支給品と首輪の代わりに、役立つ駒を一つ調達。
得られた成果は悪くない。
名も知らぬ青年の死体を道具同然に扱うのへ、今更罪悪感があろう筈もなし。
戒と殺し合いで縁を結んだ者が見れば何を思うかなど、心底どうでも良かった。

955呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:20:51 ID:77dkwOig0
「ああ所で、ついさっき手に入れたばかりの情報なのですが」

ポンと掌を打ち、わざとらしく思い出したと言わんばかりの態度で告げる。

「いろは殿がどこへ行ったのか分かりました」
「――――――」

世間話でもするかの気軽さで、灯花が絶対に無視できない名前を口に出した。
弾かれたように振り向き、自身を見つめる幼子の瞳。
苛烈と言っても過言じゃあない執着が宿ってるのを、果たして本人は気付いているのか。
成人男性でも怯み兼ねない眼力を、涼しげな表情で受け流す。
自身の態度が灯花を無駄に焦らすと自覚した上で、ゆっくりと口を開いた。

灯花に語った内容は別のエリアで、本体のリンボがカイザーインサイトから聞いた情報。
フェントホープでの争乱と、どうにか逃げ延びた者達。
内の一人の特徴は間違いなく、環いろはと合致する。
マギウスの翼の拠点が施設として再現されたのも驚きだが、それ以上にいろはの行方が灯花の思考を染め上げた。
時間を考えても、フェントホープ周辺のエリアから大きくは離れていない筈。
運が良ければ向かう道中で、ばったり会う可能性だって低くない。
遠のいた再会が再び近付く予感が生まれ、意識せずとも肌が熱を帯び、

「それともう一つ。いろは殿のお傍には六眼の御仁……黒死牟殿もおられたと、そう聞きました」

忌々しい内容へ、自分のどこかが軋む音が聞こえた。

「何でも灯花殿の言う『ふぇんとほおぷ』なる建造物。そこから脱出する際、いろは殿の手を引き去って行ったと。何とも甲斐甲斐しいではありませぬか。灯花殿がご不在の間、かの者がいろは殿を――」
「誰もそこまで聞いてないんだけど」
「これは失礼」

延々と垂れ流される戯言を、温度の失った声で黙らせる。
自分がどう反応するか、分かり切った上でほざいたのは疑う余地がない。
一々本気で捉えるのは無駄、適当に聞き流せばいい。
これまでだってリンボの軽口にはそうして来たし、対応はこの先も変わらない。

956呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:21:58 ID:77dkwOig0
だけど、覆せないその事実は。
今尚いろはの隣に、あの異形の侍が我が物顔で居座るのには。
自分以外の、魔法少女ですらない化け物がそこへ存在するのは。
掻き出したくなる程の不快感が渦巻くのだ。

(早く離れてよ……お姉さまのお傍は――)

お前なんかがいていい場所じゃない。
声に出さずとも、何処かを見据える瞳が強く訴える。
表情の抜け落ちた顔の裏で、淀んだ妬みが炎となって勢いを増す。
ともすれば、灯花自身をも飲み込み兼ねない。
そう気付いているのは、傍らへ佇む術師一人。

嫉妬という名の火炎を鎮火させる気も無く、リンボはただ嗤う。
丹念に薪をくべ、油を注いだ影響は確実に表れている。
なればこのまま突き進ませ、火炎地獄を実現させるのみ。

遠くない内に現実となるだろう地獄絵図を、今か今かと待ち侘び。
辺獄を名乗る男はただ、笑みを浮かべていた。


【E-5/一日目/昼】

【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、あり得ない思考に対する動揺(小)、リンボ(式神)による暗示の影響(中〜大)、嫉妬と不快感(中〜大)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、桜田ネネのランダム支給品×0〜2、首輪(ネネ、承太郎、或人)
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。並行してドッペルに関しても調べる。
3:出来ることならねむと合流。もしねむがわたくしより先にお姉さまと会っていたら……?
4:七海やちよは邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留。
7:六眼の侍(黒死牟)が気に入らない。なんであんな奴がお姉さまのお傍に……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。
※タイムテレビを使い黎明、朝の時間帯にD-6の病院前で起きた戦闘を見ました。

957呪胎戴天 ◆ytUSxp038U:2025/06/28(土) 23:23:05 ID:77dkwOig0
【キャスター・リンボ(式神)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康(本体より弱体化)、魔力消費(中)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、タイムテレビ(残り使用回数3回)@ドラえもん、ノロの入ったアンプル×5@刀使ノ巫女(漫画版)、ポルターガイスト(4時間使用不可)@遊戯王OCG、オーソライズバスター@仮面ライダーゼロワン、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン 令和・ザ・ファーストジェネレーション
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
2:あの侍達(黒死牟、縁壱)は……ンン。
3:飛電或人は少々期待外れでしたな。まあいいでしょう。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。

【櫻井戒@Dies irae Verfaulen segen】
[状態]:屍兵、ノロによる強化及び左腕修復
[装備]:暗黒斬@牙狼 -GARO-シリーズ
[道具]:
[思考・状況]基本方針:リンボに従う
1:……
[備考]
※キャスター・リンボ(式神)の術により屍兵として使役されています。
※生前より劣化した分の力を、ノロで補っています。

『支給品解説』

【暗黒斬@牙狼 -GARO-シリーズ】
桜田ネネに支給。
暗黒騎士呀が使う長得物の戦斧。
ホラーを喰う儀式に用いられる。

958 ◆ytUSxp038U:2025/06/29(日) 00:25:16 ID:C9qdr6r60
投下終了宣言を忘れていました、すみません

959 ◆QUsdteUiKY:2025/07/03(木) 00:55:13 ID:qSNPbaIQ0
皆さん投下乙です
どれも非常に面白い話で本当にありがたいです。
さて、以下は書き手の皆様にご連絡です

色々と悩んだ末にルールの変更を致します。
遊戯王のデッキですが、今後出せるデッキは初代〜ZEXALまでのOCG化してるデッキ限定とさせていただきます。
OCGのテーマは非常に幅広く、それらを全て把握出来るわけじゃないので参加者が参戦しているZEXALまでに絞らせていただきます
なお、OCGのカード単体支給は今後も支給可能と致します

960 ◆QUsdteUiKY:2025/07/29(火) 02:43:51 ID:xBes9EUY0
ゲリラ投下します

961橘ギャレンの困惑 ◆QUsdteUiKY:2025/07/29(火) 02:45:39 ID:xBes9EUY0
橘は結局、悩んだ末にチノを追い掛けることにした。
 明石に無事を知らせられないのは悪いと思うが、橘は自分が無事であることなら次の放送で名前を呼ばれなければ明石や海馬ならば察するだろうと考える。
 問題はもぐもを追い掛けた大我だ。仮面ライダークロノスに変身する代償は、彼の状態から理解している。ならばより安全に変身出来る仮面ライダースナイプとして戦うのが一番だろう。そしてそのアイテム――バンバンシューティングガシャットは橘が持っている。
 ゆえにこれを一刻でも早く渡すべきはずだ。
 それに自分も駆け付ければ、より確実にもぐもを取り戻せる。
 しかし――

 (すまない、大我、もぐも。だが俺はリゼに誓ったんだ――)

 橘朔也とは、良くも悪くも何かと感情に突き動かされやすい男だ。
 そんな橘だからこそ融合係数が跳ね上がり、強敵を打ち破ってきた。このバトルファイトでも心意を引き起こし最強にして始祖の鬼、鬼舞辻無惨を殺すことが出来た。

 そんな橘だからこそ、今はリゼに誓ったことを優先してしまう。
 リゼと過ごした時間こそ短いが、彼女が橘に齎したモノは大きい。それは見えるけど、見えないもの。――絆だ。
 今、この世にリゼは居ない。彼女は死んでしまったのだから。
 だが――その繋がりは、師弟関係は。――絆は、未だに健在。

 ならばこそ、そんなリゼに誓ったことは実行したいというのが人情だ。
 橘はリゼに守られた。
 師匠であるのに、守られた。
 ゆえに今の橘に出来ることは、弟子のリゼが果たせなかったことをすること。
 
 それにリゼの話を聞いた限り、彼女の友達はリゼ以上に戦えない、非力な一般人。
 イリヤから聞いた話では今は戦う力があるらしいが、それでも所詮は一般人だ。技術面やメンタルなど心配なことに変わりない。

 それに対して同じ一般人でも、もぐもは大我が追い掛けているし、海馬から訓練も受けている。……大我には負担を強いるかもしれないが、彼も仮面ライダーだ。ゆえに橘は信じている。

 移動場所を決めてからの行動は早かった。
 遊戯達に己が意志を告げ、チノを追い掛けると伝えた。
 当然、遊戯達もこれを拒否することなく橘を見送る。

 それから橘は走っていた。ギャレンと同等のスペックを誇る橘は当然、走力が高い。それでも元の世界でよく使っていた愛車――レッドランバスがないことは少々残念だが、だからといって文句を垂れる気はない。常にギャレンのスペックが宿っているだけでも十分だ。

 (チノが移動してなければいいが……)

 チノが移動して、場所を見失うことが橘には気掛かりだった。
 遊戯達に教えられた場所に留まっていることを橘は願い――必然的に焦りから走る速さが上がる。

 しかし一歩、また一歩と走る度に違和感を覚え、どうにも走りづらい。

「スカートは、こんなにも走りづらいのか……」

 当然だが橘はスカートを身に着けるが初めてだ。彼に女装趣味はない。
 そして初めてスカートを身に着けて感じる、走りづらさ。
 これは橘自身がスカートの感覚に慣れてないというのもあるが、元来スカートとはズボンと比較して走りづらいものだ。
 ただでさえ走りづらいスカートで、更に慣れてないともなれば必然的にズボン型のスーツであったギャレンよりも多少だが走る速さが落ちる。
 ちなみにスカートの長さがロングスカートなので、ミニスカのようなスースーした感覚がない分、まだマシである。

 それに加えて、走る度に胸が揺れる。
 リゼは胸が豊満な方なのだから、必然的に一歩、また一歩と走る度に揺れてしまう。
 そしてブラジャーを着けていることに対する違和感。ブラジャーとは胸にフィットするように身体を締め付けるものであり、否が応でも意識してしまう。これが貧乳で、ブラジャーもスポブラなら話は違ったかもしれないが……。
 本当はブラジャーなど外したい気分だが、そんなことをしたら胸の揺れが大きくなることは必然。
 それに男としても、師匠としても弟子であり、女の子であるリゼの生乳を見ることには抵抗がある。しかしブラジャーを外せば、生乳が見えてしまうだろう。だから余計に外せない。
 その一線だけは、越えてはならない気がした。

962橘ギャレンの困惑 ◆QUsdteUiKY:2025/07/29(火) 02:46:08 ID:xBes9EUY0

「それにしても喉が渇いたな……」

 橘はこの殺し合いに巻き込まれてから数時間、まともに水分補給していない。
 それに加えてここ数時間は連戦続きだ。喉が渇くのも当然である。
 ゆえに橘は一度立ち止まって、デイパックから水を取り出した。

「これ飲んでいいかな?」

 当然だがその問いに答えるものはいない。
 だがそもそも、殺し合いの主催者がわざわざ水に毒を盛るはずもない。
 ゆえにその水を飲むと、数時間ぶりに喉が潤い、蘇った気分だ。

「よし。待ってろよ、チノ」

 橘は水を再びデイパックに仕舞い、走り始める。
 そうやって走り続けているうちに――

 (これは……まずいッ!)

 ――橘に悲劇が訪れる。
 それは、尿意。
 水を飲めば当然、小便が近くなる。ゆえに橘を尿意が襲ったのだ。

 とはいえ、普段の身体ならそんなに慌てる必要はない。
 適当な民家や公衆トイレを探して放尿したら良いだけだ。
 だが今は――生憎と弟子である少女、リゼと同じ身体。
 もちろん橘に生えていたものは綺麗さっぱり無くなっているし、股間を覆うのはトランクスではない布切れ1枚。

 (ギャレンと同スペックになってるから少し特殊な身体だと思っていたが、尿意は催すのか!)

 橘は元BORDの研究員で頭が良いはずなのだが、たまに天然なところがある。
 喉が渇くのだから尿意だって催す。そもそも喉が渇く時点でこの肉体はギャレンのスペックを秘めていること以外は普通の人間と同等だと考えても良いのに、見落としていた。
 もっともチノを探すために急いでいたので冷静な判断力を失っていたのもあるが……。

 それから橘は小便を我慢しながら走るが、先程以上に上手く走れない。
 当然だ。小便を我慢しながら走っているのだから。
 小便を我慢しているゆえに走る脚も少し内股気味になり、なんとも不格好。

 (くっ……!ダメだ、このままでは尿意が……!)

 必死に尿意と闘いながら、橘は歩き続ける。
 まさか弟子の少女の身体で小便するわけにはいかない。パンツを脱ぐわけにはいかない。
 そうやって必死に我慢している時――偶然にも民家を発見した。

「アレは……民家か!?」

 民家を発見した橘が目を見開く。
 当たり前だが、民家にはトイレが設置されているだろう。そもそも殺し合いの最中とはいえ、誰だって尿意や便意は催すものだ。ゆえにトイレがあるのは自然なこと。主催者が悪趣味なスカトロ趣味とかでない限り、トイレは存在するだろう。

 しかし橘はリゼの身体で小便をすることに抵抗がある。
 弟子の少女のパンツを脱がせて、女体で少女するなんて――師匠として。男としてそれでいいのか?

 しかし――

 (まずい……ッ!これ以上は我慢が……ッ!)

 女性は男性よりも小便を我慢出来ない。
 それは当然、リゼと同じ身体になった橘にも適用される。

「すまない、リゼ。だが、漏らすよりは……キミのためだ!」

 リゼの身体で漏らすなど、言語道断。
 それこそリゼに対する侮辱に他ならないだろう。
 ゆえに橘は民家にダッシュで駆け込み、トイレを探す。

「あったぞ!トイレだ!」

 トイレの扉を見つけた途端、橘は急いでトイレの部屋に駆け込んだ。そこにあるのは、洋式トイレ。

「……」

 パンツが見えないようにロングスカートをたくし上げる――が、長過ぎてトイレがしづらい。
 仕方なくスカートの一部をずり下げる。……股間を見るとそこには布切れ1枚――ショーツがあった。

963橘ギャレンの困惑 ◆QUsdteUiKY:2025/07/29(火) 02:48:29 ID:xBes9EUY0

「……すまない、リゼ」

 謝罪の言葉と共に、意を決してショーツを下げる。
 リゼの女体を見ないように、目を瞑り――ゆっくりと。
 しかしショーツが下がる感触が脚を伝い、恥ずかしくて頬を染めてしまう。顔が熱くなり、橘はそんな自分を不甲斐なく思った。

 そして――

 ちょろ、ちょろろ――

 橘の割れ目から。
 ――否。
 リゼの身体の割れ目からちょろちょろと聖水が流れる。
 今までに味わったことのない感触に羞恥心を更に煽られ、顔が真っ赤になる。リゼに対して申し訳なく思いながらも、やはり男として少女のこういう場面に何も思わないわけでもないし、女体で初めてするおしっこというだけに恥ずかしさも倍増だ。

橘にとってあまりにも長く感じられた、ほんの僅かな時間が過ぎ――おしっこの音が聞こえなくなった。

「……終わったのか?」

 これ以上、小便が出る気配がないことを悟った橘は目を瞑ったままパンツを上げようとする――が、途中でピタリと手を止めた。

「俺も詳しくは知らないが……女が小便をしたら、拭く必要があるんだったな……」

 おそるおそる、目を開く。
 そこには自分で下げたリゼのショーツと股間が映っていて、思わず目を丸くした。

 だが、小便を吹かずリゼの身体をはしたないものにしてはならない。
 橘はトイレットペーパーを千切ると、意を決して股間に手を当て――すり、すりと拭き始めた。
 どうやって拭けば良いのかもわからず、何回かトイレットペーパーを千切り、股間や割れ目を拭く。

「ん……っ!変な、感触だな」

 ――こうして橘がリゼの身体になってからの初めてのおしっこは終わった。

「リゼ……本当にすまない……」

 そんな言葉を口にしながら、橘が向かったのはリビング。
 いざという時のために水道水をペットボトルに補充して確保。

 (チノ達も喉が渇いてるかもしれないからな……)

 冷蔵庫を覗くと、幸いにも何本か水のペットボトルがあった。
 橘はそれらを雑にデイパックに詰め込み、民家を出発。
 橘も元BORDの研究員というだけあり、無惨の首輪で色々と試そうと軽く工具を探したが、残念ながら見つらなかった。もっともよく探せばある可能性も存在するが、今はチノが優先だ

 今度こそ尿意に惑わされることなく、先程までよりも軽やかな足取りでエーデルフェルト邸に向かう

【D-2/一日目/午前】
【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]:ダメージ(大、包帯やガーゼにより止血済み)、疲労(中)、心意によりリゼの姿・声に変化
[装備]:ギャレンラウザー&ラウズカード@仮面ライダー剣、リゼ専用スピアー@きららファンタジア
[道具]:基本支給品×2、バンバンシューティングガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ハイパームテキガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ランダム支給品×1、無惨の首輪、包帯やガーゼなどの治療道具@現地調達、水が入ったペットボトル複数@現地調達
[思考・状況]基本方針:剣崎とリゼの分まで人々やリゼの友達を助ける。ゲームマスターも倒す
0:チノを追い掛ける
1:ありがとう、リゼ。君は睦月と並んで最高の弟子だ
2:まさか俺自身がリゼになるとはな……
3:リゼの友達を探す。リゼの分まで俺が守る
4:首輪を解除するための道具を探し、化け物(鬼舞辻無惨)の首輪を使って試行錯誤したい
[備考]
※参戦時期は最終回後。
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました
※脚の負傷具合については少なくとも完治してます
※心意により見た目と声がリゼと同じになりました。生身でギャレンのスペックで、融合係数の変動で強さが変わるシステムを常に発揮しています。ギャレンラウザーを用いることでラウズカードやコンボ技も使えます
※リゼの姿になったことでリゼ専用スピアーで変身可能になりました

964 ◆QUsdteUiKY:2025/07/29(火) 02:48:58 ID:xBes9EUY0
投下終了です

965 ◆QUsdteUiKY:2025/07/29(火) 02:59:17 ID:xBes9EUY0
直見真嗣、クウカ、奈津恵、コッコロを予約します
念のために延長もしておきます


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