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決闘バトルロイヤル part4
876
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/13(金) 21:16:03 ID:xfKg7IJs0
道満、Poh、戒斗、L、ベクター、カイト、ミカン、クレヨン予約します
877
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:42:23 ID:POawdWDU0
投下します
878
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:43:30 ID:POawdWDU0
魔導雑貨商人との交渉だが、
DIOと違ってカイトとミカンは水と食料が必需品になる。
なのでDIOが消費したものから食料をを差し引いたものを消費し、
ほどほどのものを手に入れるが、彼らが欲したのは情報を選ぶことにした。
元々三者はクレヨンが現状かなり苦しい立場にあるのは事実ではあるものの、
カイトもミカンもこれだけの材料で得られる武器で補強できるほどやわでもない。
かといって、クレヨンの腕を治せるような支給品がこの程度では得られないだろう。
「桃やシャミ子の位置を知りたいところだけど……」
「提示しておいてなんですが、アタシはお勧めしやせんぜ?
この程度だとあっちとかこっちとか、指差し程度にしかならないんで。」
そう言いながら複腕であちらこちらを指して見せる魔導雑貨商人。
ミカン達がいる場所は南東。大雑把な方角を示されても、
探せる要素がはっきり言って皆無に等しいものになる状況だ。
元々E-4辺りに向かうつもりだったが、そこで出会わなければまず方角が不明に近い。
「……他の戦闘を要求しないNPCの紹介はできるか?」
「え? 旦那珍しい選択をしやすね。」
『カイト なんで?』
「友好的なNPCならまずこのモンスターと同じで交渉が必要だ。
つまり、出会っても必ずデメリットがある。デメリットのある存在なら、
補正がかかってある程度の位置を示してくれる可能性を考えてみているが……」
「確かに、探してる人でなければ友好的かは選択次第、
支給品や大事な首輪の消費……情報として売ってもいいですぜ。
ただそうですなぁ……どれだけ多くてもこれだと二名が限界ですぜ。」
「ミカン、クレヨン、それでいいか。」
「確かに、カタログを見ても三人共そんなに利益はないし、
かといって大雑把な情報で行けるほど近くもないならそれがいいのかも。」
『カイト まかせた!』
「ほいじゃ一度しか言わないんで聞いといてください。
一人目は『物資調達員』。参加者の中には死体のまま、
放置された参加者がちらほらいらっしゃるみたいでして、
原型が残ってたり首輪や支給品を回収して、ある場所へ運ぶのが仕事のNPCです。
やることはあっしと同じで物資の交換ですが、あっしと違って目新しいもんはございません。
あくまで参加者の支給品等でありますから。」
二人から確認をもらうと、魔導雑貨商人が、
何処から用意したのかホワイトボードと画像を取り出す。
大量の荷物と荷車を運ぶ中年の男性は古くから存在する、
融合関係のモンスターであり、見覚えがあるとアプリで確認すれば、
彼もまた魔導雑貨商人同様デュエルモンスターズの一枚であることが伺えた。
死体や支給品の改修。それを妨害してくるのは事実かもしれないが、
ある場所であれば、一か所に集まりやすくあてどなく探すよりましだろう。
問題は、首輪を手に入れるにしても対価を支払う必要があるのが手痛いので、
なるべく……と言うのも不謹慎だが、死体は自分達で見つけるのが先決だと考えた。
なお死体が残ってると言った情報はいいのかと思ったが「まあサービス程度でいいでしょう」
と軽く受け流されたので、特に何事もなく話が進んでいく。
「そしてもう一人は魔導闇商人(マジカル・ブローカー)。
こちらはあっしと違って何処かのカードショップに常駐していて、
レートも高いですがその分いいものが揃ってて中々便利ですぜ?
あ、流石にどこのエリアにそのショップがあるかまでは教えれませんぜ。
ただ、第一放送が来るまで開店しない決まりがあって時期開店と言ったところでしょうな。
因みに物資調達員の行き先が魔導闇商人になりやすんで、うまく行けば一石二鳥かもしれませんな。」
もう一人の画像は、
マジカルと名がつくだけあって、
魔法使いらしさが全面的に押し出されたデザインだ。
ブローカーらしさは薄いが、それ言えば魔導雑貨商人も似たようなものである。
879
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:44:15 ID:POawdWDU0
地味に物資調達員を追いかけ続ければ、
いずれそのショップに辿り着ける情報も得られた。
もっとも、どちらにせよ見つけなければ何も始まらないが。
「まあ情報はこんなとこですかね。」
安い消耗で得られた情報としては悪くはないだろう。
カードショップに常駐しているということはカードは確定である。
場合によっては今手元にないフォトン、またはギャラクシーもある可能性は高い。
レートについては悩ませることではあるが、優秀なのがあるのは間違いないだろう。
「カードショップか……カードショップだからと言って、
街中にあるとも限らないだろう。だがおおよそ見当はつく。」
『けんとう?』
「少なくとも端にはない。
手間のかかるNPCのことを考えると、
参加者が利用できる機会が少ない場所は選ばない。
参加者が砂漠や雪原を選ばず中央に集まるのを考えると、
ある程度中央のエリアにいるとみていい。その方角で探すのがいいはずだ。」
「そうよね。誰も利用しない施設になったら勿体ないもの。」
『だれもつかわない さみしい』
方針や考えを述べると先のときとは別のモンスター、
光る光子の竜であるフォトン・ワイバーンを召喚する。
先ほどのデルタ・ウィングと違い乗れる場所はあるのか、
そう思う二人ではあったが乗ること自体は問題なく行えた。
魔導雑貨商人と別れると、空へと飛翔して彼方へと消えていく。
「……あ。あんだけ女子がいたならラヴリカ紹介しても……まあいいや。」
いなくなったこと相手のことを考えても仕方ないし、
他に参加者の気配もないとのことで、昆虫族らしく身軽に走り出す。
暫くすると戻ってきて、ホワイトボードを持った状態でその場を去った。
結局は主催のNPCの一体に過ぎない。追いかけてまで教える義理もないのだから。
「ってなんかすごい派手なことになってるんだけど!?」
空中を、しかし高所と言うよりは比較的低空で飛行するカイト達。
だが空中では丁度海馬の猛攻と、それを避けるDIOよの戦いで熾烈を極めている。
遠巻きにも見えるXYZのモンスターの巨大さから相当な戦いだと言うことは伺えた。
「敵か味方か分からないが介入はでできそうにないな。
あれだけ激しい中。空中戦が苦手なお前たちを守りながら、
俺一人でデュエルをするというのは、かなり至難の業になる。」
いくらカイトが強いデュエリストだからと言って
不安定な足場で二人を守りつつのデュエルの経験はない。
全てが自分に依存してる状況であの戦いに介入するのは危険極まりない。
猛烈な攻撃をしてるのが味方でなかった場合、最悪な状況にもなりかねなかった。
その攻撃を受けているのが、彼らの知るDIOであると知れば駆け付けたことだろうが、
残念ながらそれらについては、たらればの結果論に過ぎない。
『御機嫌ようプレイヤー諸君。』
檀黎斗の放送が始まり、移動と哨戒はしつつもモニターを見やる。
倒さなければならない、到達しなければならない存在が姿を見せた。
未だ到達できるだけの材料はないが、必ず行かなければならないだろう。
向こうの戦いがほぼ終わったのか、攻撃音は殆ど鳴りやみ空中は段々と静けさを取り戻す。
『小倉しおん』
『吉田清子』
だがその名前を聞いた瞬間、フォトン・ワイバーンが破壊された。
変な人ではあるが、彼女にとっては大事な学友の一人でもあるし、
もう一人はシャミ子の母親であり、聖母のような優しい人物である。
その彼女達が、開始早々に殺された事実。当然動揺するだろうが、
最初は大丈夫だと思っていたが、そうはならなかった。
DIOの時間停止能力が戻ったように、ウガルルの呪いも戻ってしまった。
その影響か、破壊され墜落する神威の車輪がフォトン・ワイバーンを直撃し、破壊。
全員が突如として空中に身を投げ出すことになってしまう。
幸い高空飛行していたわけではないので、
「クッ、フォトン・デルタ・ウィングを召喚!」
万丈たちと合流する前にやった時と同じだ。
フォトン・デルタ・ウィングを召喚することで、
更に追加で同名モンスターを召喚し、二人を一体に、
もう一体をカイト自身が乗ることで対処しようとするのだが、
召喚と着地と同時に、もう一体の神威の車輪の一頭の牛の遺体がモンスターを破壊する。
「何!?」
880
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:45:00 ID:POawdWDU0
ミカンの呪いは続いている。
学友だけではない。友人の母親である吉田清子までもが死亡した。
ささやかな困難が降り注ぐとは言うが、それは魔法少女基準のものも多い。
情報交換でミカンの呪いについては伺っていたが、実体験で起こるとなると、
予測不能で回避も困難と、中々に厄介であり彼女が気を付けてるのも分かることが伺えた。
幸い、直ぐにデルタ・ウィングが駆けつけてミカンが咄嗟に手を掴んだことで事なきを得る。
「ごめんなさい! 私の呪い、再び発動したみたい……」
「みたいだな。この戦いで要求することじゃないが、
なるべく平静を……いや、長い付き合いなら分かっているか。」
この呪いとは何年も関わっているということが分かっている。
今更出会って六時間程度の人間に言われるまでもないだろう。
そう思うと、今度は自分のことの方へと思考を割く。
落ちてる間にもちゃんと聞こえた。あの男の名前が。
「……」
分かってはいた。
DIOの言葉が真偽は不明にせよ、
遊馬が長生きできるとは思っていなかった。
これは生き残ってる三人の共通認識なのは間違いない。
どうしようもないことだ。デュエルを復讐の道具とするのを善しとせず、
誰とでも手を繋ごうとして、改心させて行くその善性はっこの殺し合いでは無力に近しい。
せめて、誰かがその善性を引き継いでくれるならばいいのだが……などとは思うものの、
そう甘いことを期待することはせず、南東と言う人気のない場所から脱却出たことをよしとする。
「大分距離は稼げたはずだ。
店を探すにしろ、NPCを探すにしろ、
此処からは空よりも地上を優先して移動したい。」
「ええ、そうね。あんな事故二度とごめんだもの。」
「真月さん。死体です。」
「あー……こりゃさっきの奴(MNR)にやられた奴か。」
町に続くアスファルトの道路の上。
惨たらしく、割礼されている少女の遺体。
女性器を切除されて血だまりの死体ならば、
先ほど戦った青年が下手人なのは想像がつく。
ベクターであってもこれについては流石にドン引きである。
精神的に追い詰めることには定評のある男ではあるし、
消滅という形で味方を殆ど殺し回った男ではあるが、
流石にこの光景を前にして平然とするのは無理があった。
裏切りはお手の物だが、猟奇趣味は別に持ち合わせていない。
かっとビングも相まって、善性に寄ったベクターも顰めた顔になる。
「とりあえず、失礼するとして……」
先の四人にも行った首輪のサンプル集め、
或いは今後NPCとの遭遇で交換に必要になるかもしれない。
せめて有効活用させてもらう。それが彼女への鎮魂となると願いたい。
そう思いながら、ホープを使役してその首を切断して首輪を回収していく。
「真月さん。遊星のデッキと、一部のカードを私に譲っていただけませんか?
一部と言うよりは、遊星のデッキから抜いたカードですが。」
Lの体力は大分辛いものになっている。
いくら仮面ライダーになれるとしても限度があるだろう。
一応ある程度カードのルールは頭に入っている。麻耶のように、
シンクロ召喚すらもできずに戦いが終わることはないだろう。
仮面ライダーで防御しつつデュエルモンスターズで戦う。
中々理にかなった行為であると残る二人も理解する。
「レベル4のカードはなるべく残させてもらうぜ。
俺のデッキはホープが出せなきゃ困るからよ。」
「分かってます。」
ジャンク・シンクロンなどのカードをデッキから引き抜いて、
それを遊星のデッキに戻しながら持っていたデュエルディスクをLに渡す。
マックス・ウォリアーなどはベクターとしては残しておきたいカードなので、
できるだけこちらの手元に残しておくのがベストだと思っておきたくもある。
「……何かが追ってきているな。」
空を裂く音が遠くから聞こえる。
移動速度は速い。そして真っすぐ此方へ向かうかのように、
次第に音が大きくなっていくことから対象は自分達だと理解する。
「敵か?」
「さて、どうでしょうね。」
881
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:45:30 ID:POawdWDU0
デュエルディスクを腕に装備し、
更に先にバロンに変身することでLは不意打ちの対策をしておく。
音は陽動であり、既に来ている可能性もあることを視野に入れているからだ。
首輪を回収し、全員が身構えながら相手の到着を待つことにする。
照の遺体についてはどう説明したものかとベクターが内心考えていると、
空飛ぶじゅうたんとともにPoHとキャスター・リンボこと蘆屋道満が到着する。
「おーより取り見取り……って随分悲惨な死に方してる奴がいるな。てめえらがやったのか?」
「違うな。俺達にこういった趣味はない。そしてその趣味の男もこいつが始末している。」
あんな猟奇趣味の奴の罪を着せられる。
同族でもない限り嫌と言うほかないだろう。
特に戒斗はああいう弱者を生まないために行動した男だ。
冤罪をかけられることそのものに嫌気がさしてるかのように顔を顰める。
その視線だけで人を突き貫くのではないかと言う顔つきに口笛を鳴らすPoH。
「ぷー殿。どちらであっても油断はなりませぬぞ。
腕のアレ、でゅえるでぃすくなる式神召喚の類にて間違いないかと。
それと仮面らいだーなる人物を含めた人物相手するというのは、中々骨が折れますなぁ。」
「まーたやべえ奴かよ。此処にはまともな奴はいねえのかよ。」
「殺し合いなんですから当然でしょう。
平和主義者だけで構成されていれば、此処まで40人も死にませんよ。」
「ハッ、ちげえねえ。」
話し合いの内容から恐らく敵なのだということは分かっている。
その割にはLはまるでティータイムの雑談のようにPoHとの会話に参加していた。
こいつの感性はどうなっているんだとベクターが少しばかり呆れ顔をしていると、
「おい、そこのオレンジ頭の奴。」
「あ? 俺か?」
PoHからの直接の指名をされるベクター。
今のところ何か声をかけられるようなことはした覚えはないと思うが、
「お前さん、俺と同類だろ? どうせだ、
そいつらを見限って俺達につく気はねえか?
そいつらと同じ世界で親睦を深めあった親友ってわけじゃねえだろ?」
デュエルディスクの構え方はよくは知らないが、
少なくとも不格好と呼ぶには程遠く様になっている。
何よりも、こいつもあの男、夜神月と同類の人殺しの類の顔だ。
前世でドン・サウザンドによって歪められた王になり果て、
バリアン世界でも仲間を何人も手にかけてきたのでそれは事実だ。
紛れもないろくでなし。それを否定するつもりは彼は余りなかった。
残る二人も大概だが、仮面ライダーとオーバーロードでは表情が読めない。
結果、ベクターだけがそのお眼鏡にかなうこととなる。
「ん-、そうだな。悪かねえ相談だなぁ。」
向こうの二人もこの六時間以上は生き残ってる。
その上デュエリスト二名を相手に警戒はしつつも、
臆することなく対峙している様は、間違いなく強者なのだろう。
オーバーロードとどこまでやりあえるかまでは判断しかねるものの、
何とか仮面ライダーになって取り繕ってるLの体力も無視はできない。
このチームが瓦解するのを考えると、生存率を上げるなら鞍替えもありだ。
「けど、思ってより此処は居心地がいいみてぇだなぁ。
そっちとつるむには、死ぬ前でなきゃありえねえみてえだわ。」
と、もう少し前のベクターであれば考えていたのだろう。
しかし今のベクターはあのベクターから変わりすぎている。
友情ごっこを本物に昇華させ、かっとビングチャレンジをして、
光の希望を手にした今のベクターとしては、その提案は受けいれる気はない。
「その答えの洗礼だ。ヘルウェイ・パトロールを召喚!」
バイクの前面に悪魔の顔が施された、
人型の悪魔が召喚されバイクを走らせていく。
今回は先行からのスタートなので攻撃はできないので、
二人の周囲を走ってただ牽制をするだけにとどまる。
「ああそうかい。そりゃ残念だなぁ!」
パトロールの動きの合間を縫って、肉薄するPoH。
デュエリストなんて本体を狙ってしまえばいいだけの話だ。
いくら集団だとしてもリーダーを失えば後は散り散りになる。
そういうパーティはいくらでもいた。自分達が下そうと下すまいと。
とは言え、そう簡単にいかないのがこのバトル・ロワイアルである。
Lが召喚していた緑色の身体が特徴的な白銀の翼のモンスターが守りに入った。
デュエリストはそんな簡単に倒せるようならば、もっと楽に多くの参加者が倒している。
882
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:46:08 ID:POawdWDU0
「おいおい、エリュシデータで切れねえってなんだよそのモンスター。」
シールド・ウィングは1ターンに2度までバトルで破壊されない。
遊星の使用するモンスターでもとりわけ頑強で多くの守りに使われていた。
三度殴らねばならぬ頑丈なモンスターではあるが、リンボの呪符が叩きつけられると、
血飛沫を上げながら、容易く消滅してしまう。
「札遊びならば、拙僧もお手の物ですぞ?」
(攻撃、と言うよりはカード効果でのようなもの破壊された?
異様な風貌だが。札の形状と服装も合わせ陰陽師……呪いの類か?
私も随分とオカルトに染まってしまったようで……まあ、デスノートがオカルトですが。
どちらにせよ、此処は不動遊星のような最適解は望めないでしょうがやってみましょう。)
一応ベクターを守ることは成功した。
相手の力量もある程度の理解はできたことだ。
此処からやっていくのは予測できる範囲での対応をしつつ、
自分ができる最大限のこの場における貢献、それだけだ。
「真月さんは私の援護を、戒斗さんはそちらの僧侶の相手を。難敵です。」
「あいよ。」
「分かっている。」
言葉は必要なかった。
既に呪符を投げたリンボに戒斗は肉薄していた。
ギリギリ、しかし余裕そうな表情で戒斗の攻撃を避けていく。
リンボの敏捷はサーヴァントとしてのステータス上ではE判定と極めて遅い。
だが敏捷Bが敏捷Aを上回るように、ステータスが全ての決定づけるものにあらず。
事実、リンボの黄緑色の爪が戒斗の攻撃をかいくぐりながらその身を切り刻んでいく。
もっとも、その程度で傷つくようなものでもなく、あららとおどける程度にとどまった。
「ンンン、仮面らいだーなるものではないようですが、
かといって魑魅魍魎の類にも非ず……色々と興味は尽きませぬな。」
「戦極みたいなことを口にするな。」
極めて冷静に、しかし怒りは募っていく。
性格は戦極凌馬、だが強さはオーバーロードに近しい存在。
異星の使途の一人でありハイ・サーヴァントたるアルター・エゴのリンボの存在は、
少なくとも並のアーマードライダーよりもずっと格上なのは間違いなかった。
戒斗の攻撃は当たらず、しかしリンボの物理攻撃は通用することはない。
となれば当然のことだが、キャスター・リンボの名にふさわしく呪符を使う。
空舞う呪符から雷が降り注ぐが、オーバーロード・バロン持つ反射能力で雷を逆に空へと飛ばす。
ンンン? といつもの口癖と疑念、どちらを意味するか不明な言葉を漏らしながらも、
迫りくる夜空の剣の斬撃をのらりくらりと紙一重で躱していく。
オーバーロードと異星の神の使途による、
ハイレベルな戦いの横でも激闘は繰り広げられていく。
ヘルウェイ・パトロールに相乗りしたベクターは、
常人よりもはるかに速い動きで来るPoHの攻撃を躱していく。
露骨に腕を狙ってくるあたり狙い目が分かりやすいのが救いなのだが、
腕をやられればそれだけでデュエリストとしての生命線が失われかねない。
ロボットがデュエリストだったことを考えるとそれほど重要かとも思うが、
やはり回避しておくには越したことはない。
「俺のターン! チューナーモンスターのジュッテ・ナイトを召喚!
レベル4のヘルウェイ・パトロールに、レベル2のジュッテ・ナイトをチューニング!
今度こそミスのないシンクロ召喚だ! 行け、ゴヨウ・ガーディアン!」
バイクで時間を稼ぎながら自分のターンへと持ち込み、
召喚権やカードの発動の準備を整えるという、
生身でのデュエルを経験したベクターだからこその発想での達真理をする。
シンクロ召喚する際にバイクからジャンプで飛び出し、ショットオブザスターを放つ。
もっともやはりエイムは絶望的であり、放たれた光弾は頬をかすめ取るだけにとどまる。
「こいつぁやばそうなのが出てきたなぁ!」
883
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:47:16 ID:POawdWDU0
デモンストレーションでもシンクロ召喚はお披露目された。
そのときのダーク・ダイブ・ボンバーの攻撃力は2600。
それを上回る、2800の攻撃力の表示は警戒に値するものだ。
「カード三枚セットして、ゴヨウ・ガーディアンで攻撃!」
紐のついた十手がPoHを襲う。
首をそらし避けると、後方にあった木を十手が突き貫く。
木が悲鳴を上げながら倒れていく様を見て少しだけだが焦りを見せる。
あんなのが直撃、或いは捕縛されてしまえば、いくらPoHでも抜け出すのは容易ではない。
「なめてかかるとやばいなら、虎の子だなんだ言ってる場合じゃねえなぁ。」
ライダーブレスにカブティックゼクターが装備され、
形状こそ戦極ドライバーとは異なるものではあれども、
仮面ライダーの類のものであると二人は警戒する。
「変身ッ!」
『HEN-SHIN』
『CHANGE BEETLE』
おもちゃを手にしたような最高の笑みと共に、
黄金の仮面ライダーの姿へと変貌していくPoH。
仮面ライダーコーカサスに変身し、ゴヨウ・ガーディアンの十手とエリュシデータがぶつかり合う。
本来ならばカブトとガタック、二人のライダーを徒手空拳のみで優位に立つことができるものだが、
PoHの基本戦術は友切包丁(メイト・チョッパー)を使った剣術がメインとなっているのと、
まだ仮面ライダーとしての初戦闘なのも相まって練度が低いのもことにによりまだ優位に戦えない。
しかしもとより数々の人物をPKしてきたラフィン・コフィンのリーダーであるのは不変の事実。
コーカサスの名に恥じぬ大立ち回りをするのも、いずれ時間の問題なのは、
攻撃力の高いゴヨウ・ガーディアンでタメを張れてることから伺えることだ。
「まあ、こんなところでしょう。」
何処か機械的で無機質な言葉と共に迫る、緑色の人型の拳。
仮面ライダーに変身していなければ頭蓋を破壊されていそうな一撃を受け、吹き飛ばされるPoH。
この程度の不測の事態別に大したものではなく、エリュシデータを地面に突き刺しダウンを回避。
だがそこに高速で迫る赤と白に配色された人型のモンスターの機械的な足が迫り、跳躍して回避。
更にそこへ、白く煌めくドラゴンが宙を舞ってることに気づくも、既に手遅れだった。
ドラゴンから放たれる風のようなブレスを避けられる状況ではなく、直撃。
地面に叩きつけられ、数度バウンドしながら受け身を取ってなんとか立ち上がる。
「おいおい、よそ見してる間に何したらそんなことになるんだよ。」
攻撃力2500、ターボ・ウォリアー。
攻撃力2800、ニトロ・ウォリアー。
攻撃力2500、スターダスト・ドラゴン。
ほんの数分よそ見していただけなのに、Lのフィールドはベクターとは別物の盤面を築いていた。
時は少しばかり遡り、
戒斗がリンボを、ベクターがPoHから逃げ回ってる時。
バロンになったLは盤面と手札を一瞥しながら次の一手を模索する。
(時間がありません。此処はとにかく展開をしなければ。)
ベクターがヘイトを買ってる間に、Lも動かなければならない。
ベクターの使うホープ・ザ・ライトニングは強力ではあるものの、
元々牛尾のデッキはレベル4が多いとはいえシンクロに重きを置いたデッキ。
いくらレベル4モンスターを複数枚積んでも狙って出すには少々厳しくある。
加えて戒斗の方もリンボとは実力伯仲。互いに決定打を与えられてない状況だ。
だからLは両者のサポートをしつつ、遊星のデッキを回さなければならなくなっている。
遊星のデッキは低レベルによるシンクロ召喚の複雑で難解なデッキあり、常人にはまず扱えない。
はっきり言って、流石のLであっても初見のゲームで最適解が何かを見出すことはできなかった。
加えて遊星のデッキはアクセル・シンクロによってさらなる大型モンスターを出すのがセオリーだが、
それらのカードは当然Lは生み出す、基使用することはできない。必然的に単純な効果力を狙うなら、
攻撃力2800のニトロ・ウォリアーか3000のロード・ウォリアーを出すのが吉と判断していた。
「まずはレベル・スティーラーを捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚し、
クイック・シンクロンのレベルを1つ下げ、墓地のレベル・スティーラーを特殊召喚。
レベル1のレベル・スティーラーに、レベル4となったクイック・シンクロンをチューニング。」
884
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:48:56 ID:POawdWDU0
ガンマンのようなモンスターと背中に星のついたてんとう虫。
それらがシンクロ素材となって出てくるのは白いマフラーが目立つ白銀の戦士。
ベクターが出そうとして失敗した、ジャンク・スピーダーを出すこと。これが最善の一手。
ジャンク・スピーダーはシンクロ召喚に成功した場合の効果は余りにも破格の効果を持っており、
デッキからレベルの異なるシンクロンと名のついたチューナーモンスターを、
フィールドを埋め尽くす勢いで特殊召喚でき、これに伴い一気にモンスターが展開されていく。
「ジャンク・スピーダーをシンクロ召喚し、その効果でこれらのモンスターを特殊召喚。」
遊星のDホイールに似た機械を乗りこなすモンスター、レベル5ホイール・シンクロン。
スターダスト・ドラゴンを小型にしたようなモンスター、レベル4スターダスト・シンクロン。
赤い筒に手足やメーターがついた機械のようなモンスター、レベル2ニトロ・シンクロン、
背中にジェットパックのようなものを背負った緑の小型モンスター、レベル1ターボ・シンクロン。
それぞれのモンスターが一気に場に召喚され、リンボはおもむろに呪符を適当に何枚か投げ込むが、
庇うように戒斗の夜空の剣に全てが両断されてしまい、妨害には至らなかった。
因みに、EXモンスターゾーンは遊星のデュエルディスクには当然ないので、
野獣先輩のデュエルディスクと違って、チューナーを五体展開するという行為はできない。
(この辺のルールの違いについては、ベクターの世界にシンクロがないことから察してはいる)
「それほどの強さを持ちながら臆しているのか?」
「ええ、ええ。拙僧、式神召喚は一通りこの通り得手なのですが、
でゅえるもんすたーずとやらは拙僧にとっても未知の代物にて。
使用者を先に仕留めてしまえばそれで済むやもと狙ってみたものの、
いやはや。貴殿は並のサーヴァントかそれ以上の傑物にあられるようで。」
「当たり前だ。その程度の力なくして、世界を作り直そうなどと思わないからな!」
「なんと、世界を作り直すとは。
そういう人物と拙僧は縁があるのやもしれませぬな。
拙僧と貴殿、案外ご友人になれなくはない気がしますぞ?」
異星の神が蘇らせたクリプターは、
己が担当する世界を存続させようと、
汎人類史を白紙化させるにまで至っている。
言うなれば世界を作り変えると同義の行為である。
「黙れ。貴様のような輩と同類とみなされるだけで虫唾が走る!」
人を己の悦楽の為にしか見ていない。
やはり戦極凌馬と同類の類であるのが分かるし、
こんな奴と同類など吐き気すら覚えるぐらいだ。
「スターダスト・シンクロンが特殊召喚されたことで、
デッキからセイヴァー・アブソープションを手札に加え、
レベル5のジャンク・スピーダーにレベル2のニトロ・シンクロンをチューニング。
ニトロ・ウォリアーをシンクロ召喚し、ニトロ・シンクロンの効果でカードを一枚ドロー。
ターボ・シンクロンをリリースしサルベージ・ウォリアーをアドバンス召喚。
アドバンス召喚に成功したサルベージ・ウォリアーの効果で墓地のチューナー、
ターボ・シンクロンを特殊召喚し、レベル5のサルベージ・ウォリアーに、
レベル1のターボ・シンクロンをチューニング。ターボ・ウォリアーをシンクロ召喚。
ホイール・シンクロンの効果で手札のレベル4以下のモンスター、ドリル・シンクロンを通常召喚。
ホイール・シンクロンの効果でこのカードをチューナー以外として扱う効果を適用し、
レベル5のホイール・シンクロンにレベル3のドリル・シンクロンをチューニング。
スターダスト・ドラゴンをシンクロ召喚。更にレベル・スティーラーの効果で、
再びニトロ・ウォリアーのレベルを下げることで復活、墓地のホイール・シンクロンの効果を発動。
このカードを除外しフィールドのモンスターのレベルを4つまで下げる効果を適用することで、
スターダスト・シンクロンのレベルを3に変更し、レベル1のレベル・スティーラーにチューニング。
アームズ・エイドをシンクロ召喚。」
885
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:49:30 ID:POawdWDU0
Lの思考の中をデュエリスト以外が見たら、
脳が焼ききれそうなぐらい意味の分からない展開だろう。
こんなものを一学生である麻耶に支給した、主催者の嫌がらせが伺える。
これでさえも遊星の最適解ではないのだから、末恐ろしいデッキでもあった。
不動遊星はどれだけこのデッキを使いこなし、信頼してきたのかがよく分かる。
同時に、合理的な目線ばかりで見る自分には扱いきれないなともLは思えた。
「アームズ・エイドは……念のため、
此処は戒斗さんに装備させておきましょう。受け取ってください。」
先のように、モンスターではなく他人に装備させることを優先。
夜空の剣を一時的に左手に持ち替えながら、アームズ・エイドを装備。
今度はオーバーロード・バロン・アームズ・エイドスタイルと言ったところだろうか。
攻撃力が上昇したことで拮抗が崩れたのか、リンボが力量を見誤ったのか。
どちらにせよアームズ・エイドの赤い爪が、リンボの露出した肌に複数の裂傷を刻む。
「ンンン? なるほどなるほど。そのような使い方もあるのですなぁ。
ですが!その腕の装飾そのものは貴殿の装甲程のものではないでしょう!」
所詮は外部による援助あっての攻撃である。
今の攻撃も受けこそしたが所詮は掠り傷程度だ。
だから何も問題はなく、爪には爪て対抗せんと、
一度距離を取ってから変わらず敏捷Eらしからぬ速度で肉薄。
獣のような長い爪がアームズ・エイドが装填された右腕を狙う。
それを夜空の剣の斬撃で拮抗に留めるが、生身の腕と拮抗すると言うのは、
相手が規格外な存在であることを示しているかのようでもあった。
「ぷー殿、いささか数の利で不利なご様子。
此処は拙僧の支給品を提供すると致しましょうぞ。」
ゴヨウ、ターボ、ニトロ、スターダスト。
これだけいてはいくらコーカサスであっても限度がある。
クロックアップもあるが、一度使えば暫くは扱えなくなってしまう。
此処にはリンボがいる。つまり、リンボが参加者として許されるだけの強い参加者の可能性。
安易にクロックアップをすることは手の内を晒すことになるし、死に直結しかねない。
それでは『つまらない』。たったそれだけの理由で、この男は奥の手を使わなかった。
リンボから飛ばされたカードを手にし、それを見て下卑た笑みを浮かべながら掲げる。
「だったら、遠慮なく使わせてもらうぜ、来い!」
PoHの眼前に現れたモンスターは、正統派な戦士と呼ぶべきだろう。
青と黄金の鎧を纏った戦士は、少なくともPoHが使うべきカードでも、
ましてやリンボが持つべきものでもなく、ベクター達で正直似合わないだろう。
これを手にするのが相応しいのは、キリトや遊戯と言った人物が持ち主であるべきだ。
そのモンスターの名を───
「カオス・ソルジャー -開闢の使者- 降臨!」
降臨したカオス・ソルジャーはPoHの手足のように、
彼の願った通りにゴヨウ・ガーディアンとニトロ・ウォリアーを切り裂いた。
このカオス・ソルジャーはモンスターを戦闘で破壊した場合、
続けてもう一度だけ攻撃することができる連続攻撃効果を持つ。
そして攻撃力はブルーアイズ同様の3000。その攻撃性能は、
少なくともこの場のどのモンスターよりも高いものだと伺えた。
「そーらもういっちょ!!」
モンスターの力を借りたことで、
手が空いたPoHによるベクターへのダイレクトアタック。
デュエルモンスターズのルールは軽くしか目を通してないとはいえ、
罠カードがあることは分かっている。だから不明瞭なままで置くのは危険だ。
あの中に開闢の使者を倒しうるカードがあってはこちらとしても困りかねる。
「チッ、罠発動! ピンポイント・ガード!
墓地のレベル4以下のヘルウェイ・パトロールを復活させる!」
886
:
無情の抹殺 群雄割拠
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:49:55 ID:POawdWDU0
格下のモンスターを召喚して何になるのか、
そう思っていたところ、パンチを叩き込んでも手ごたえがなさすぎる。
いや、どちらかと言えば硬すぎるに等しく、一度距離を取って様子を伺う。
ピンポイント・ガードには蘇生したモンスターがそのターンバトルで破壊されない効果を持つ。
いくら強くなっても、破壊できないのでは意味がない。
(クソッ、あいつが仮面ライダーの時点で守備力は高いだろうし、開闢も2500もありやがる!
その上これは自他全員だ。ターボもズターダストも守備力が越えられねえ、
だが大損覚悟でこれはやるしかねえ! 開闢を残すのは間違いなくやべえ!)
開闢には攻撃宣言を放棄する代わりに場のモンスターを除外できる。
それで参加者が除外されてしまったらどうなるか分かったものではない。
だから此処は他者を巻き添えにするつもりでも、倒すことが先決だと理解する。
「永続罠リビングデッドの呼び声発動!
俺の墓地のゴヨウ・ガーディアンを特殊召喚する効果にチェーンし、
反転世界(リバーサル・ワールド)を発動! 俺たち全員、攻守が逆転する!」
どの程度の弱体化か、或いは強化が発生するか全くわからない。
ただ言えるのは、開闢の危険性を知ってるのはベクターただ一人のみ。
ターボ・ウォリアーは1500、スターダストは2000、カオス・ソルジャーは2500
しかしその効果を適用後に復活したゴヨウ・ガーディアンにはこの効果は適用されることはない。
つまり、攻撃力は2800。開闢を殴り倒すことができる上に、更なる効果が期待できる。
「おっと。」
何か嫌な予感がしたのもあり、
リンボ達二名は距離を取り反転世界の射程の外へと逃げる。
円形状に色彩が反転するフィールドが広がっており、
何処まで逃げれば射程外かはおおよそ理解できるものになっていたからだ。
無論、避けながらも互いの攻防は続くが、互いに決定打は与えられないままである。
「俺のターン! ゴヨウ・ガーディアンで開闢を攻撃しろ!」
ゴヨウ・ラリアットによる捕縛がカオス・ソルジャーを締め上げる。
破壊されて粒子のように砕け散るも、直ぐにベクターの場へと姿を現す。
ゴヨウ・ガーディアンにはバトルで破壊したモンスターを守備表示で奪う効果を持つ。
その上開闢の使者は反転世界のデメリットが消え、元に戻っている。
あっという間に形勢逆転の状況へと追い込むことに成功し、歓喜の声を上げるベクター。
「うっしゃあ!!」
「何だと!?」
「ゴヨウ・ガーディアンは倒したモンスターを奪えるんだよ!
さて開闢の使者には除外効果がある。これでテメエを除外してやるぜ!!」
回避は不可能ではない。
持っているシフトチェンジにクロックアップと手段はある。
だがそれらは使用制限がある。下手に使えば自分を追い詰める材料になりうる。
自分より格上だと分かっているリンボが実力伯仲であることが揺るがぬ証拠だ。
こんな奴相手に使うには早すぎる。除外する効果を避けることへ専念しよう。
「破滅のフォトン・ストリーム!!」
887
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:50:52 ID:POawdWDU0
光のブレスが、その瞬間カオス・ソルジャーを消し飛ばした。
今の声、今の攻撃。誰で、何が攻撃してきたかをベクターは予想する。
視線の先にいたのはデュエルディスクを構えるカイト、
クロスボウを構えるミカン、片手でナイフを持つクレヨンの三名。
それを見た瞬間『最悪だ』と同じ舞台にいる科学者の口癖のような感想が出てきた。
「まさか貴様と会うことになるとはな、ベクター!」
カイトとベクター因縁的にはあまり縁がない方だ。
バリアン世界の住人とカイトの相手は基本ミザエル一人であり、
あるとするならば父であるDr.フェイカーを乗っ取ったぐらいだ。
しかも、それはベクターが一方的に知っているだけにすぎないことで、
カイトからすれば遊馬を罠に陥れたバリアン以外の感想は出てこない。
元々E-4に向かうところだったが、近くのエリアからスターダスト・ドラゴンが見えた。
他の参加者がいると確定しているならば優先順位はそちらの方だということで北上して今に至る。
「てかこれ、どういう状況!?」
ミカンからすれば、この状況は余りにも異質だった
オーバーロードの戒斗も、リンボもどちらもまぞくに近しいものを感じる。
当然シャミ子のものとは別の意味で比にならないような存在感を放つ。
だからこの場の誰が敵で、誰が味方になりうるのか判断がつかない状況だ。
精々、今目の前にいる男がカイトの言うベクターだということぐらいである。
狡猾で、卑劣な手を使ってくると言うあの町にはいないタイプの、邪悪な存在。
「丁度助かったぜ! こいつらに襲われちまってたところでなぁ!」
「な、てめ……!!」
PoHはそれに便乗してきた。
何か言い返そうとするが、厄介なことに返す言葉がない。
下手に返せば相手のペースに吞まれることを理解してるからだ。
そう、散々自分が敵を煽って利用してきたことが返ってくる。
まさに因果応報を形どった光景とも言えるだろう。
(まずい……此処には彼が味方と証明する材料がない。
真月さんの予想通り天城カイトは彼を敵とみなしている。
セイヴァー・アブソープションの効果で相手のどちらかを装備カード、
もとい拘束させたかったものの、彼方に他に面識のある人物も関係者もいない。
一応手段はあると言えばあるが、ちゃんと機能するかは賭けになってしまうのが厳しいか。)
「ああクソがッ! 月で死んだせいで俺の顛末知らねえのが厄介だな!
信じねえだろうが、俺は殺し合いに乗るつもりなんざはなからねえんだよ!
てめえが死んだあと、こっちもドン・サウザンドに裏切られて吸収されちまったよ!
んであのかっとビング野郎に感化されちまって、今じゃ新たなホープが俺のエースだ!」
進化したホープこと、ホープ・ザ・ライトニングを見せるベクター。
あのベクターが、希望を進化させるなどいくら謎のシステムがあると聞いても、
驚きが隠せなかった。
「ホープが進化だと……? だとして、貴様が乗らない理由は……」
「待ってください。私はL、探偵をやっています。
此処は全員一時休戦として、話を聞いてはもらえないでしょうか。」
これ以上ベクターと会話させると話が拗れかなかった。
遮りつつ、会話の主導権を握ろうとするも、リンボが許さない。
「ンンン、そうはいきませぬぞ。える殿。
申し遅れました。拙僧、名簿上ではキャスター・リンボと申します。
吉田良子殿のことから陽夏木ミカン殿のことは伺っておりまする。
そして、我々は吉田優子殿も近くで保護している……どちらが悪か決まってるのでは?」
「シャミ子達が近くにいるの!?」
知人の二人の訃報はあれど、
此処二きて二人の吉報も来てくれた。
せめて二人を、桃を助けられればいい。
そう願っていたので安堵の表情をするも、Lが水を差す。
「……おかしな話ですね。
あなた方が殺し合いに乗ってないなら、
保護対象は今、何故放置しているんですか?」
「勿論、拙僧の信頼する味方が、最上啓示殿が保護しておりますれば。
と言っても伝わらないかと。知人の方は誰もいないとのことですので。」
「……なるほど。では此方は最後の手段と行きましょう。
ミカンさんとPoHさん、でよろしいでしょうか。名前は。」
「え? 私?」
「あ? 俺?」
「ミカンさん。貴女にまず、ある支給品の説明書を渡します。
そしてその後、PoHさん。貴方にはその支給品であるこの杖を渡します。」
取り出したるは時計のように見えなくもない、形容しがたい杖。
888
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:51:40 ID:POawdWDU0
「……何がしたいんだ?」
展開が全く見えてこなかった。
一触即発のこの状況において、
支給品と説明書を別々に渡してくる。
説明の意図が読めないし、罠の可能性もあると思い怪訝な顔を浮かべた。
それはミカンも同様だ。相手は仮面ライダーであるのでいつでも変身可能だし、
そもそもLがどういう人物かも分からない。桃みたいに生身で怪力の可能性もある。
此処で下手に動いて何かを起こしてしまうわけにはいかず、平常心を保つ。
「それで誰が身の潔白かを証明できます。
武器を持ってない証明として、一応この双眼鏡も捨てますか。
私の支給品はベルトとロックシード、この双眼鏡と言う名の杖、最後がこれです。
ああ、因みに私は一般人ですから生身で絶対に勝てないので、警戒はほどほどでお願いします。」
「……そのデュエルディスクは誰のものだ?」
「槍の男に殺された少女のを回収してお借りしています。
不動遊星のデッキなので、可能なら彼に返したいところですが、
それを今言ったところで、信用を得られるかどうかは怪しいところですね。」
ベルトを外し、不健康そうで同時に疲弊しきった表情を全員に見せるL。
ベルトとデュエルディスクはその場において、あおの杖もベクターに投げ渡す。
「おいおい、何するつもりだよ!?
名探偵様と言えどこの状況の打開なんぞ……」
「すみません。今回真月さんは黙っていてください。
貴方が喋ると今の状況においては話が拗れる可能性が非常に高いので。
まずはミカンさんにこれを。危険物ではないことを証明になるでしょう。」
何も武装してる様子もなく、両手に杖と説明書を持ったまま歩き出す。
先にミカンに来るように言われ、その説明書を手に取り、読み取っていく。
彼が何をしたいのかについて説明書を見て理解し、うんと静かに頷いた。
「……そうね。これは手にしても大丈夫よ。私も保障する。」
「ふーん、それがねえ……」
乗ってない参加者からの信頼を得るため。
そうして身内同士で内輪もめしているのを見届ける。
彼のもっとも楽しい要素でもあり、笑える時の一つだ。
だから早くこんなことを終えてしまえればいいのにと思い受け取る。
Lから杖を受け取った時、カチリと何か鳴った気がしたが気にも留めず。
オーバーロードも異星の使徒も下手に動けばそこで信用の均衡は崩れる。
なので彼らとて動くことはなかった。
「ぷー殿。何か魔術的な要素があるようで。
拙僧の見立てでは少なくともただの杖ではございませぬ。」
「それが分かったところで俺にどうしろって話だがな。」
ゲームの世界と言うのを経験こそしているが、
魔術的とか言われても、オカルト系についてはさっぱりだ。
後に世に出るALOすらも未経験の彼の知るところではないのだから。
「ではPoHさん。貴方、殺し合いに乗ってませんね?」
「あ? 何意味わかんねえことを言ってるんだ。
乗ってるに決まってんだろ。こんな楽しい祭りを楽しまないで一体何を───!?」
ありえない言葉を紡いだことに、
全員が何かしらの反応を示した表情で彼を見やる。
PoHが貰ったものについて、厳密な杖の名前はない。
とりあえず、此処では『マイナスの杖』と言う仮称とする。
デュエルモンスターズの精霊世界にて、猿魔王ゼーマンの軍勢が用いていた杖は、
自分が口にしようとしていた言葉と真逆の言葉が出てしまうと言うものではあるが、
使い方によっては真実を口にしてしまう。事実、そのデュエルモンスターズの精霊世界では、
トルンカと呼ばれる精霊がゼーマンに作戦の全てを暴露してしまう事態が発生してしまっている。
何より、それを笑顔で答えるPoHの表情は、ミカン達からすれば余りにも似合いすぎるものだ。
顔だけの印象で決めるべきものではないが、ミカンだけは説明書を見ていて真実を知っている。
これは彼の本心から出ている言葉なのだと。故に距離を取りながらボウガンを彼へと構えた。
889
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:52:19 ID:POawdWDU0
「ンンン、やはり何かしらの呪物か何かの類と思いましたが、
まさか真意を喋らせる杖とは。中々面白い魔道具の類ですな。」
「ふざけてる場合か! 分かってたなら何故止めなかった!?」
「止めれば疑われるでしょう。それに、拙僧は愉しければよいので。貴殿もそうでしょう?」
そうリンボに言われると、グヌヌと言った顔はするが反論はできなかった。
自分でも分かっていたらやっていたかどうかで言えば、間違いなくやっていただろう。
それを考えれば、リンボの考えや楽しみ方を否定する要素は皆無に等しい。
「チッ……だがバレちまったものは仕方ねえか。
じゃあ仕方ねえ、この場で存分に蹴散らして───」
「ぷー殿。先のお詫びにこれを。」
動き出そうとするPoHの背中に、ぺたりと貼られる何か。
リンボが使う何かで貼られたものなど、想像するに難くない。
思わずそれに対してぞわりと寒気が走るように鳥肌が立つ。
「てめえ! 俺に呪符を……」
「おっと、剥がしてしまうと……どうなっても知りませぬぞ?」
三日月のような裂けた笑み。
散々PKをしてきたPoHですら気圧される雰囲気。
彼は外道ではあるが、所詮は対立煽り大好き人間に過ぎない。
本物の巨悪や邪悪と言った存在とは、次元が違うのだ。
「まずいです。スターダスト・ドラゴン、ターボ・ウォリアー! 攻撃───」
持てる全速力でデュエルディスクを手に取り、
ロックシード付きの戦極ドライバーも装備して変身しつつ、
反転世界でステータスが下がってるとは言え攻撃の優先順位を変更する。
今まで多くの犯罪者と出会ってきたLだから分かる。何かを起こすときの顔だと。
そしてそれは、Lの頭脳を遥かに超えた、史上最悪のものとなって顕現した。
口と無数の瞳が浮かぶ暗黒の太陽。
それを使役するかのように浮かぶ謎の存在。
二つの何かが、リンボの頭上にて鎮座していた。
キャスター・リンボの操る陰陽術の奥義が一つ。
悪辣の極みにして、怖気のする悪逆非道の真骨頂。
問答無用に命を歪める強制変換。同意も拒絶も不可能。
人間を怪物へと書き換えるという、完全なる外道の術。
此処には参加者が、モンスターが集いすぎた。最早、
戦況は圧倒的に不利だ。最悪六対二に加え、三つのデュエルディスク。
デュエルモンスターズによってもっと数を増やすだろうことは明白だ。
ならば、さっさと終わらせるに限る。もっと楽しみたかったという点はあるものの、
此処では異星の使徒と言えども、あくまで一参加者に過ぎないことを、忘れないがために。
「顕光殿、お目覚めを! 来たれ、暗黒の帳! 太陽は此処に生まれ変わる!」
この術の何より恐ろしいのはその悪辣な男の性格を反映させるかの如く、
全ての者にこの効果は作用せず、ある意味公平な確率によって変化していく。
その博打に勝てば今まで通り人の姿を保ち、博打に負ければ悪鬼羅刹の魑魅魍魎と化す。
隣人が、妻が、子が、友が、仲間が、この場で育んだ絆を奪う、最凶最悪の宝具。
「狂 乱 怒 濤 ・ 悪 霊 左 府 ! !」
ただ変わり、ただ置き換わり、そして人を喰らい始める。それを行使するのが頭上に浮かぶ、
藤原道長を呪殺せんとして仕掛けた、都市そのものを殺すに等しい驚天動地なる大呪術の再現。
藤原顕光の怨霊、悪霊左府が黒き太陽から放たれた黒光を、周囲にいた参加者へと降り注いでいく。
あらかじめ呪詛を防ぐ札を渡されたPoHだけはこの術においては一切関わらない。
では、残った者達はどうなったかと言うと。
戒斗はオーバーロードだ。もとより怪物であり、通じることはまずない。
ベクターはバリアンではあるもののおおよそは人に近い。しかし変化はなかった。、
クレヨンはHANOIであるため所謂ロボット。まず人間そのものですらないので無傷。
ミカンは魔法少女だが、ウガルルの呪いの影響か、或いはベクター同様勝ち取ったのか。
そうやって見ていけば、通用していない者達には何も変化がなくて困惑してしまう。
そも、この宝具は『半数程度にしか効かない』呪詛なのである。
それ即ち、全員が全員無事であるわけがなかった。
「さあさあ始まりますぞ! 阿鼻叫喚! 地獄絵図!
陰惨極まれり光景が! 瞬間が! 此処展開されるううううう!!
フハハハハハハハ、フゥーハハハハハハ!!」
890
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:52:50 ID:POawdWDU0
歓喜と狂喜乱舞の表情と笑みを浮かべながら、
目を赤くするほど、怪物のような表情を浮かべるリンボ。
隙を見て斬りかかる戒斗だったが、流石の彼とて隙だらけではない。
彼がいることを忘れてはおらず、避けに徹していると戦況に変化が訪れる。
漆黒の太陽光を浴びたLと、カイトの二名に。
L、と言うよりも仮面ライダーバロンの姿が変わっていく。
ボコボコと筋肉は風船のように膨らみ、ひょろひょろだったとは思えない程に筋肉質に、
細身だったバロンは、最早怪物と言っても差し支えない状態へと至っている。
カイトもバリアンの力を、フォトンを使ってるが根本は人間だ。
だからリンボの呪詛に対して耐性はなく、耐えきれるものではなかった。
カイトもまた最早天城カイトの姿ではなくなってしまっている。
魑魅魍魎───否、これはモンスターと言うべきだろうか。
人の姿ではある。だが、金色だった髪は黒く染まり果て、
光子の翼や変貌したスーツは、最早別人と呼ぶべきである。
もし、今の彼に名前を付けるとするならば───
モンスターカード『ナンバーズハンター』と呼ぶべきだろう。
『カイ、ト?』
「おい名探偵、大丈夫か……」
「近づいちゃダメ!!」
明らかに異質なことが起きているのだけは全員分かる。
特に、呪いと向き合い続けてきたミカンにとってはなおさらだ。
近づこうとした瞬間、バナスピアーを振るい、文字通り殺しにかかった。
咄嗟に躱したことで無傷で済むようになったが、思わぬ行動に冷や汗が飛び出す。
「おい貴様!! 奴らを元に戻せ!!」
「ンンンンンン!! 水道の蛇口をひねった水を戻せとは、
何とも無茶なことを強いてきますなぁ貴殿殿は! あれはもう、
魑魅魍魎のやモンスターの類、もう既に『死んでおります』が故に!
蘇生などと言う奇跡など拙僧にはとてもとても……クハハハ、ハハハハハ!!」
「貴様ああああ!!」
リンボの言う通り、魑魅魍魎に変じた時点で既に死んでいる為、元に戻す手段はない。
なので、殺す以外の選択肢などどこにもないが、当然これは当人しか知らないことだ。
全部私のせいだと言って調子にのる戦極凌馬が可愛く思えるほどの所業に怒りを露わにする。
「畜生、やるしかねえか! 俺のターン! ゴヨウ・ガーディアンで攻撃!」
ベクターもこれは普通の状況ではないと分かっている。
だからゴヨウ・ガーディアンで直接Lを攻撃することを選んだ。
幸い他のモンスターは攻撃力が下回っているので負けることはない。
バナスピアーを振るったことから、デュエルもできない状態だとは分かった。
「俺のターン。手札から魔法カードトレード・インを発動。
手札のフォトン・カイザーを捨て二枚ドローし、手札のフォトン・カイザーを魅せ、
手札から銀河剣聖(ギャラクシー・ブレイバー)を特殊召喚。」
一方で、カイトの方は別だった。
魑魅魍魎と言うよりモンスターに変質したからか、
耐性はなくとも強靭なデュエリストの本能故か。
その状態になってもデュエルは可能だった。
カイトの矛先はクレヨン。
ギャラクシーアイズのブレスや、
青と白銀の剣士の銀河剣聖の斬撃が次々と襲い掛かる。
動き自体はそこまで複雑になってるわけではないので、
クレヨンであっても避けることはそう難しくはなかった。
「カイト、何をしてるのよ!? 敵は向こうで……ッ!」
変質したカイトが死んでいることには気づけず、
ミカンは正気に戻るよう問いかけるものの、
迫りくるエリュシデータの斬撃を華麗によけながら距離を取り、クロスボウを放つ。
しかしミカンは近ければ近いほど矢を当てられないのもあり、エイムが絶望的だ。
「そのクロスボウは飾りか? 武器が泣くぜ?」
891
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:53:54 ID:POawdWDU0
「貴方……ッ。この状況を、何故何とも思わないの?
あの人はその気になれば貴方も何かされてたのかもしれないのよ!?」
「奴は今値踏みをしてるところさ。
俺を使うか捨てるか利用するかの最中。
最初は冷や汗をかいたが今思えば、値踏み中のところを、
なんの理由もなく斬り捨てるほど、考えなしの奴じゃねえのさ。
それに、見てみろよ。この戦場。俺の理想郷はここにあったんだよ!!」
本当のところリンボは考えなしの男な部分もあるのだが、
その部分を露呈させるには相応のモノがなければならないだろう。
と言うより、それが原因で死亡してるので多分懲りてる説すらある。
そしてPoHが見せつける光景は、リンボの言う通り地獄絵図に等しい。
先ほどまで味方同士だったはずのLとベクターがデュエルに近い形で戦い、
戒斗は未だリンボと斬り合いを、カイトは変貌した姿でクレヨンにモンスターを向けて仕掛けていく。
なんだこれは。先ほどまで休戦状態だったはずの戦況は、彼女が望みたくない最悪の状態と化した。
「貴方だって巻き添えになるのかもしれないのよ!?」
「まあそこはいただけないが、此処は特等席じゃあねえか。
味方同士で潰し合い、味方同士で殺し合う。最高以外にねえさ。」
「貴方、狂ってるわ……!!」
その通りさと肯定すると程なくして、
おっと、と口にしながらカイトの動きの隙をついて、
クレヨンが嫌悪を露わにした表情でナイフで斬りかかる。
HANOIにとって悪意のある人間と言うものは嫌と言うほど見てきた。
TOWERにいた誰もが、そう思うだろう。監察官のコーラルだってそうだ。
コーラルはHANOIがどのような経緯でTOWERに召集されたか知っている。
軍事用が現代に不要共なり、ただの古い殺人兵器として見下されるようになったローランド。
人によって使い倒され、犯罪にも手を染め人間を信用しなくなった名もなき男だったナナシ。
仲間が暴力にさらされ、機能停止になるまで殴られたHANOIを知っているキャメロン。
ほかにも様々な人間の悪意や、自身のせいで周囲の人間が狂わされたことにより、
ストレスを抱えた者達が集っていた。だからPoHの言うことを理解したくない。
しかし、いくら戦闘補正があるとはいえ攻撃力の低いペーパーナイフでは、
とてもエリュシデータの相手にはならず、寧ろ損壊しかけてる右腕は一撃を入れるたびに、
ミシミシと歪で嫌な音を立てていく。攻撃する側の方が傷ついてるかのような光景だ。
「その程度じゃまるで足りねえよ。」
これなら月の方がまだましだ。
そう言わんばかりに彼女の左足をエリュシデータが斬り落とす。
血が出ず、明らかに人間の感触ではないそれに少しばかり面食らうも、
そんなことを言ってる場合ではなくなった。
「手札ksts速攻魔法破滅のフォトン・ストリーム発動。
ギャラクシーアイズが存在する場合、相手フィールドのカードを除外する。
除外するのは───貴様だ。」
静かに、死刑宣告のように指されるのはクレヨン。
何故これほどまでに執拗にクレヨンを狙うのかは定かではない。
単に、生前オービタルと言うロボットに縁があったからだけなのかも。
いや、深い理由はないだろう。彼はもう死者だ。宝具を受けた時点で、
彼と言う存在は既に死に絶えている。だから彼の考えを読み取るなど無意味だ。
ギャラクシーアイズの口に光が集っていく。ただの攻撃ではなく専用に近い魔法カードの効果だ。
「カイト! 正気に戻って!!」
攻撃に巻き込まれまいとPoHは距離を取るが、
ミカンはカイトがまだ生きてると思い込み声をかけ続ける。
だがその声は届くことはなく、死へのカウントダウンが迫っていた。
ドン、と突き飛ばされてアスファルトの大地を転がるように倒れるミカン。
片足と右腕だけで何とか立ち上がり、近くにいたミカンをクレヨンは思いきり突き飛ばした。
ギャラクシーアイズの攻撃から、彼女を守るために。
「クレ、ヨン?」
同時に、光のブレスが放たれた。
誰が見てもこれを受ければまず死ぬ。
彼女は、それをミカンから守りたかった。
そして、声の出ないクレヨンはデイバックを彼女に投げ渡しながら口を動かす。
『ごめん えがお できない』
出るはずのない声で、彼女はそう紡いだ。
えがおで できないとは、自分ではなくミカンのことだ
バイバイと手を振りながらもそれが伝わることなく、
光の中へと彼女は飲み込まれ、光が収束すると残されたのは、
彼女が伸ばしたことで偶然にも残された機械の右腕残骸だけだ。
「いや……嘘でしょ? クレヨン!! イヤアアアアアアアアアアアア!!!」」
892
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:54:34 ID:POawdWDU0
そして、大災害がこの場に訪れる。
慟哭するミカンを中心に、凄まじい風が吹きすさぶ。
「な、なんだ!? 何が起き、うおおおおお!!!」
ウガルルの呪い。
それは桃の姉である桜によって鎮静化し、
ささやかな呪い(魔法少女の視点で)にまで下がった。
しかし。リンボの宝具によりウガルルの呪いにも悪影響が発生し、
まるで嘗ての時のような、建物すら破壊しかねない暴風が巻き起こされる。
最も近くにいたPoHはあっという間に巻き込まれ、彼方へと飛ばされていく。
「ンンン!? これは、拙僧に負けず劣らずの呪い!?
これほどまでの呪いを持つとは! これは退避せねば拙僧とてただでは───」
暢気なことを言ってるようでリンボも少しばかり焦り気味だ。
ウガルルは古代メソポタミアのまぞく。英霊で言えば相当な歴史を持つ。
いくら異星の使徒と言えども無事では済まないので逃げを選ぼうとするも、
どさくさに紛れて夜空の剣が、吹き荒ぶ台風の中袈裟斬りをリンボへと刻む。
「カハッ!!」
「チッ、少し浅かったか……これだけの惨状を作り、
背を向けるとは……貴様、どこまでも許さんぞ!!」
「おのれぇ!! 今それどころではないと……」
「おい名探偵! いい加減目を覚まし……やべえ、なんか来るぞ!!」
口論も戦闘もする暇もない。
オーバーロードも、サーヴァントも。
バリアンも、魑魅魍魎も、そして死体も支給品も。
彼女の中心にある右腕と形見の支給品以外は全てが吹き飛んでいく。
まさに、大災害と言うほかなきものが街を包む様に巻き起こされていった。
「クレ、ヨン……」
最後に振った右腕と投げ渡された支給品。
それだけが残された台風の中心地で、彼女は一人孤独に泣いた。
精神を安定させるなどできない。目の前で仲間を喪い、何人も魔族とは違う化け物に変えられた。
もっと早く、リンボの悪辣さに気づいていればと思うが、後悔しても出てくるのは悲しみと、
それに伴う呪いの影響による大雨だけだった。
【D-5/ 大雨の外 /一日目】
【陽夏木ミカン@まちカドまぞく】
[状態]:精神疲労(超極大)、魔法少女モード、ウガルルの呪いの強化或いは暴走
[装備]:クロスボウ、クレヨンの右腕
[道具]:基本支給品×2(自分とクレヨン、食べ物とタブレット以外は売却)、ランダム支給品×1〜5(解毒系のものはなし、自分×0〜2、クレヨン×1〜3)
[思考・状況]基本方針:???
1:???
[備考]
※参戦時期は、原作49話(アニメでは2丁目11話)で呪いが発動し、
シャミ子・桃と別れた後、かつ再会する前からです。
※クレヨンとの会話からこの舞台が仮想世界TOWERの可能性を考えています。
※カイト、クレヨン、海馬(アニメ版)、万丈と情報交換してます。
DIOの時を止める能力も把握してます。
※魔導雑貨商人から物資調達員、魔導闇商人の情報を得ました。
※キャスター・リンボの宝具の影響でウガルルの呪いが強化されています。
普段よりも強い呪いや影響が周囲にかかります。
「空中でもデュエルする気かよ、名探偵様よぉ!?」
台風で運よくか運悪くか、
偶然にも同じ方向へ飛ばされ落下しながらデュエルを、
殺し合いを続けていることになったLとベクターの二人。
元々ライディングデュエルで空中にモンスターは浮くので、
ゴヨウ・ガーディアンも空中を浮いているのは救いではあるが。
「……真月、サン。」
893
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:55:16 ID:POawdWDU0
台風で運よくか運悪くか、
偶然にも同じ方向へ飛ばされ落下しながらデュエルを、
殺し合いを続けていることになったLとベクターの二人。
元々ライディングデュエルで空中にモンスターは浮くので、
ゴヨウ・ガーディアンも空中を浮いているのは救いではあるが。
「……真月、サン。」
「やっと意識を取り戻しやがったか。おせーぞ名探偵……」
ゆっくりと、言葉が紡がれる。
それに安堵の息を吐くベクターだったが、
「イイ、エ 私 限界 ミタイ デス。
仮面 ライダー ノ オ陰 デショウカ。
辛ウジテ 少シダケ 理性 取リ戻セマシタ。」
は? と間抜けな声が出てきた。
助かったんじゃねえのかよ。そう思ったところを、
叩き落とす。これが外道の術。キャスター・リンボの宝具である。
「デスガ モウ自我ハ 時期ニ消エルデショウ。後ハ 頼ミ マシタ。」
後は頼む。殺し合いを打開する。
最初に三人で出会った時のことを思い出す。
ほんの六時間から八時間程度の間柄の関係だ。
仲良しこよしの友情を育んだわけでもない。
けれど、それがどこか彼にとっては居心地がよかったのだ。
九十九遊馬の周りに仲間がいたように、ナッシュの周りに仲間がいたように。
ドン・サウザンドやMr.ハートランドのように打算的な手を組む意味ではなく、
本当の仲間のような関係が、彼とは築けていたような気がしてならなかったのだ。
それこそ、打算目的であろうとヴォルカザウルスからホープを守ってくれたあの時のように。
ベクターは今、それを自分の手ずから失わなければならないことを理解し、歯を食いしばる。
「……ッ!! 俺は!! ヘルウェイ・パトロールとマックス・ウォリアーでオーバーレイ!
希望皇ホープをエクシーズ召喚! そして、そのまま重ねてランクアップ・エクシーズ!
ホープ・ザ・ライトニングを召喚! そして───攻撃だ畜生がああああああああああ!!」
ホープがLの身体を切り裂き、上半身と下半身を稲妻の如く両断する。
同時にデュエルディスクを破壊し、機能を停止させるが同時にカードが大きく散らばっていく。
そのままホープを乗り物として扱いながらLの上半身や壊れたデュエルディスクを回収する。
辛うじてスターダストなどのシンクロモンスターを回収はできたが、全てのカードは不可能だろう。
不動遊星には申し訳なく思うものの、もしLが死んでも命令が機能する可能性を危惧したら、
念のためデュエルディスクを破壊するのが吉だと言うのがベクターの選んだ判断だった。
正解かどうかは分からない。だが、万が一を考えての行動はするべきである。
これは様々な憶測を吟味したうえで行動した名探偵から学んだ教訓である。
「すみ、ません……後を、任せっきりにしてしまって。」
ああ、また私は最後まで辿り着けないのか。
そんな後悔と共にLはゆっくりと瞳を閉じる。
変身が解除されると、そこにはLとは程遠い、
異形の怪物の姿があり、あの男の悪辣さをより思い出し、
ホープの背中を強くたたきつけ、怒りの形相でベクターは誓う。
「名探偵様が、事件解決前に死んでんじゃねえよ……!!」
やってやろうじゃねえか。
嘗ての自分並に腐り切ったあの男をぶっ飛ばして、
ついでと言うレベルではないが、神を倒して目的を果たそうと。
【L@DEATH NOTE 死亡】
【クレヨン@TOWER of HANOI 除外(死亡)】
【天城カイト@遊☆戯☆王ZEXAL 魑魅魍魎化(死亡)】
【???/ 午前 /一日目】
【駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:夜空の剣@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを力で叩き潰す。
1:殺し合いに乗っている参加者は潰す。
2:首輪を外せる参加者を見つける。
3:L、ベクターと共に行動する。
4:槍の男、デェムシュは要警戒。
5:大我、遊星、ジャック、遊戯、海馬かその知人、或いは会った参加者と接触。必要なら知り合いを装う。
6:あの僧侶(リンボ)は絶対に許さん。この俺が叩き潰す。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※クラックを開き、インベスを呼び出すことは禁止されています。
※Lの考察については半信半疑です。
※攻撃の消滅、反射に制限がかかってます。
どの程度の制限かは後続にお任せします。
※ミカンの台風で飛びました。オーバーロードのため死亡することはないでしょうが、
何処へ飛んだかは後続にお任せします
894
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:55:55 ID:POawdWDU0
【真月零(ベクター)@遊戯王ZEXAL】
[状態]:精神疲労(大)、かなりセンチな気分、疲労(中)、ダメージ(中)、ホープ・ザ・ライトニングに乗ってる
[装備]:ショット・オブ・ザ・スター@グランブルーファンタジー、九十九遊馬のデュエルディスク@遊戯王ZEXAL、No.39希望皇ホープ@遊戯王ZEXAL、牛尾デュエルディスクとデッキ@遊戯王5D’s
[道具]:基本支給品一式×4(牛尾、麻耶、自分、L)、不動遊星のデュエルディスクとデッキ@遊戯王5D’s(メインデッキの大半は消失。エクストラデッキはほぼすべて残ってる)、量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武、バナナロックシード@仮面ライダー鎧武、真中あおの杖@きららファンタジア
[思考・状況]基本方針:主催にとって良からぬことを始めようじゃねえか。
1 :……まったく、とんだお人よしだったぜ。てめえはよ。
2 :ナッシュがいることだし少しだけ協力は考えて……いややっぱやめとくか?
3 :帰宅部ねぇ。ま、いたら声はかけるか。
4 :Lに駆紋、アウトローで構成されてるねぇ。ま、俺らしく外道な手段でやってやるさ。
5 :ドン・サウザンドの復活ねぇ……どうだか。
6 :槍の男には要警戒。
7 :大我、遊星、ジャック、遊戯、海馬かその知人、或いは会った参加者と接触。必要なら知り合いを装う。
8 :エクシーズ召喚できるデッキをくれ。と言うかなんだよシンクロって。
9 :ホープ・ザ・ライトニングねぇ……まさか俺が新しいホープを手にするとはな。
10:あばよ、名探偵……これが、仲間って奴か。
11:不動遊星に謝っておく(デッキがほぼなくなってる)
12:あのクソ僧侶(リンボ)だけは許さねえ。
[備考]
※参戦時期はドン・サウザンドに吸収による消滅後。
※ドン・サウザンドの力、及びバリアン態等の行使は現状できません。
力が残っていて、バリアンスフィアキューブがあれば別かも。
※Lの考察については半信半疑です。
※ミカンの台風で飛びました。ホープ・ザ・ライトニングに乗ってるため死亡することはないでしょうが、
何処へ飛んだかは後続にお任せします
※魑魅魍魎と化したLの死体(上半身のみ)を乗せています。
下半身は何処かへと落ちました。
【PoH@ソードアート・オンライン】
[状態]:ダメージ(中)、仮面ライダーコーカサスに変身中
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン、カブティックゼクター(コーカサス)+ライダーブレス@仮面ライダーカブト、シフトチェンジ@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本:この決闘を楽しむ。
1:陰陽師一味に手を組むはずがどうしてこうなった?。
2:あのアジア人(月)は今後どうなるやら。楽しみだ。
3:この剣でキリトだけなくその相棒或いは同行者も殺す。
4:アジア人は優先的に殺すか扇動していく。
5:手を組めた場合はメスガキ(良子)の姉(シャミ子)をレッドプレイヤー側にさせるのも悪くない考えだ。
6:主催も皆殺しにするのも視野に入れる。
7:猿共と手を組むのは癪だが、こいつら(リンボ)は化け物連中で悪くねえな。
[備考]
※参戦時期はラフィン・コフィン討伐戦より後です。
※コーカサスの資格者に選ばれました。
※アニメ版で披露した扇動の心意は問題なく作用します。
※ミカンの台風で飛びました。仮面ライダーなので死亡することはないでしょうが、
何処へ飛んだかは後続にお任せします
895
:
無情の抹殺 陰陽師 蘆屋道満
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:56:45 ID:POawdWDU0
【キャスター・リンボ@Fate/Grand order】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、魔力消費(大)、上機嫌
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×1、ランダム支給品×0〜2(シャミ子の分含む)、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG、空飛ぶじゅうたん@ドラえもん、小倉しおんの首輪、フグ田タラオの首輪
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:最上啓示、悪霊の集合体であろうかの御方の行く末、見届けて差し上げましょう。
2:吉田良子、どう利用してやりましょうか……ンンンンン。
3:里見灯花、まあそちらは式神の方に任せておきましょう。
それはそれとしてでゅえるもんすたーずの情報はありがたや。
4:吉田優子、こちらで目覚めを促してやるのもまた一興。
5:件の生物に乗った参加者に接触、或いは戦闘。
6:ええ、ええ。真に最高にて。
7:ところで拙僧、何処に?
[備考]
※参戦時期は地獄界曼荼羅、退場後
※ミカンの台風で飛びました。サーヴァントなので死亡することはないでしょうが、
何処へ飛んだかは後続にお任せします
※D-5で大規模の台風が発生しました
これはデェムシュ、移動ルート次第で万丈、天津、灯花もこれの巻き添えになります
最上、優子、良子は離れた位置にいるため風が強いぐらいしか感じません。
また、その後にミカンの周囲に大雨が降り注いでいます。
※クレヨンの身体は右腕以外全て除外され(消え)ました。
※天城カイトは死亡してますがナンバーズハンター@遊戯王OCGの姿になって、
参加者を食らうため行動しています。いわゆるゾンビの状態に近いものになります。
ただし、いかなる方法でも元に戻した時点で死亡して、完全に死体になります。
また、デュエルはできます。カイトが所持しているものは以下の通りになります。
デュエルディスクとデッキ(天城カイト)@遊☆戯☆王ZEXAL、NO.107 銀河眼の時空竜@遊☆戯☆王ZEXAL、基本支給品
台風で吹き飛ばされてたため、現在位置は不明です。
※照の死体、及びマイナスの杖@遊戯王5D’sも巻き添えで何処かへ飛んだかもしれません。
もしも何処へ飛んだかは後続の書き手にお任せします。
支給品解説
【カオス・ソルジャー -開闢の使者-(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG】
キャスター・リンボに支給。ゴールドシリーズについては他参照、
テキストは以下の通り。ゴールドシリーズである為召喚条件は無視できるものとされる。
特殊召喚・効果モンスター
星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地から光・闇属性モンスターを1体ずつ除外した場合に特殊召喚できる。
このカードの(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる
(この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない)。
そのモンスターを除外する。
②:このカードの攻撃で相手モンスターを破壊した時に発動できる。
このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる。
【マイナスの杖@遊戯王5D’s】
Lに支給。正式名称は不明なので一先ずこの扱いで行く。
デュエルモンスターズの精霊世界を牛耳っていた猿魔王ゼーマン、
並びにその部下がほぼ常備していた杖。これの光線の効果の影響下に入ると、
言ってることがすべてマイナスになってしまう、聞こえてしまう。
制限として使用した場合対象の状態は一時間後に元に戻る。
896
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/06/15(日) 18:57:14 ID:POawdWDU0
以上で投下終了になります
897
:
◆ytUSxp038U
:2025/06/22(日) 22:09:17 ID:833uIoXI0
投下お疲れ様です
カイザーインサイト、保登心愛(きらファン)、琴岡みかげ、里見灯花、キャスター・リンボ(式神)を予約します
898
:
◆ytUSxp038U
:2025/06/22(日) 22:10:59 ID:833uIoXI0
失礼、
>>897
にキャスター・リンボを追加します
899
:
◆QUsdteUiKY
:2025/06/26(木) 01:21:48 ID:m/NatcQY0
ゲリラ投下します
900
:
溺れるサカナ、水槽(みず)の中の悪夢(ゆめ)
◆QUsdteUiKY
:2025/06/26(木) 01:22:47 ID:m/NatcQY0
マサツグ様はある程度移動すると苛立ちながらも、デイパックを漁っていた。
あまり認めたくないことだが、自分は卑劣な恥知らず共に負けて極めて大きなダメージを受けた。
901
:
溺れるサカナ、水槽(みず)の中の悪夢(ゆめ)
◆QUsdteUiKY
:2025/06/26(木) 01:23:09 ID:m/NatcQY0
ゆえに何らかの手段で回復しなければ非常に危うい状態だ。
もしも直見真嗣が並行世界のマサツグ様だとしたなら、そのスキルも同じ――つまり「守る」スキルを有している可能性がある。
この強さのスキルの利便性や強さはマサツグ様自身が誰より理解している。ゆえに並行世界の自分と出会ったら。もしも虫唾が走るような存在ならば容赦なく殺してやりたいが、もしもスキルが自分と同じならばそれなりに強い可能性がある。
もちろんマサツグ様ほど強いだなんて考えたくもないが、この殺し合いが始まって、偽りのエリンを殺してから連敗続きだ。まるであの偽物が呪っているかのように、忌々しい状況に追いやられている。
ゆえにマサツグ様は慢心を捨て去り、油断もしない。卑劣な輩や気持ち悪い連中に再び遭遇して命を落とすのは勘弁だ。――コレはマサツグ様が無意識的に死への恐怖を抱いているからであるが、そのおかげでマサツグ様は慢心を捨て去り、まずは子の多大なるダメージをどうにかするべきだと冷静に考えることが出来た。
マサツグ様は非常に強力な聖剣――刃王剣十聖刃を持っている。クロスセイバーは途轍もなく強いことはマサツグ様も感じている。
だが並行世界の自分や他の参加者がどんな支給品やあの憎き女――カイザーインサイトのような卑劣な手段を用いてくるかわからない。
それに度重なる傷の痛みも忌々しい。一歩、また一歩と歩くだけで肉体が悲鳴をあげている。
それでもマサツグ様自身が自覚していない無意識の〝恐怖心〟が彼の身体を突き動かしたが、ある程度の距離を開けたら流石に大丈夫だろうとこれまた無意識的に安堵する。
ゆえにデイパックを漁るという行為に出たのだ。
そして目的の物はすぐに見つかった。
「グランポーションか。ふう、まるでゲームのアイテムのような説明文だが本当に効果があるんだろうな」
説明書には大幅にダメージを回復させると書いてあるが、まるでゲームのアイテムのような文章だ。
しかしマサツグ様は数時間前にコロッケパンという食べ物で実際にダメージを回復している。パン如きでもダメージが回復したのだし、説明書をあまり疑う必要はないだろう。
この殺し合いの説明でも何かと〝ゲーム〟という単語を使っていたし、主催者のくだらない趣味だろうと考える。
それにパン如きで体力が回復するより、異世界ではメジャーなアイテムであるポーションで回復する方がよっぽど自然だ。
だからマサツグ様は躊躇なくグランポーションを使う。
「……!は、ははは……!」
みるみるうちにマサツグ様の傷が塞がり、痛みも一気に減った。
不思議と身体が軽くなったような錯覚さえ覚え、マサツグ様は声をあげて笑う。
しかし整った女顔に似合わず、その笑みは邪悪さすら含まれていそうなもの。
「これで今度こそ気持ち悪い奴らや卑劣な輩を蹂躙出来る!!」
死への恐怖も多少はマシになり、脳裏に思い浮かべるのはこれまで戦った者達。
傷が回復したからといって彼らを倒せると考えるのはあまりにも楽観的だが、残念ながらマサツグ様は俺TUEEEのような要素も混ぜ込まれている。ゆえにこれだけのことで楽観的に考えてしまう。
もちろん原因は檀黎斗と茅場晶彦にあるのだが、マサツグ様はそんなこと知らない。
否。主催陣営によって自分がそういうふうに生み出されたとすら気付いてない彼は、さながら哀れな道化(ピエロ)。
このマサツグ様に物語なんてない。
このマサツグ様は神を称すると過去にもデスゲームのゲームマスターを務めたことのある男のただの興味本位によって生み出されたのに、自分が本物のナオミ・マサツグだと思い込む哀れで滑稽な生き物に他ならない。
彼が過去に体験したと思っている苦い記憶の数々も、彼がリュシア達と出会い、トリタやミヤモトに仕返したのも――総て檀黎斗と茅場晶彦に植え付けられた――謂わば捏造された偽りの記憶。
マサツグ様はこのデスゲームのためだけに生み出された主催者の駒。
それこそがマサツグ様本人すら知らない彼の真実だ。
何故、そんな非人道的なことが出来るのか。
名前を剥奪された肉体派おじゃる丸のように、このデスゲームには主催者により酷い仕打ちを受けたプレイヤーもいる。
だがマサツグ様は無から有を生み出し、挙句の果てに苦しくて悲しい記憶を植え付け、都合の良いハーレム要員と共にいじめっ子達に仕返しするという思い出まで捏造した。性格も悪いようにした。
それこそ、他者から嫌われるような。ヘイト役になるような歪んだ性格に。
過去にいじめっ子からイジメを受けてきた。その時、誰も助けてくれなかった、と。マサツグ様はそんな偽りの記憶を捏造されたせいで他者に攻撃的になり、絆や友情を嫌悪する。そして同時に羨ましくもある。
902
:
溺れるサカナ、水槽(みず)の中の悪夢(ゆめ)
◆QUsdteUiKY
:2025/06/26(木) 01:24:09 ID:m/NatcQY0
もしも檀黎斗や茅場晶彦がこんな設定で生み出していなければ。
いや、そもそもマサツグ様を生み出していなければ。
こんなにも哀れな道化は存在しなかったことだろう。
しかし檀黎斗も茅場晶彦も――倫理観が他者よりズレている。というより、あまり無いに等しいと言っても良い。
そんな性格だから彼らは過去に悪辣な行いをしてきたし、それを未だに悪びれていないからまたしてもデスゲームを開いた。
ゆえにマサツグ様を生み出すことに抵抗はなかったし、今も面白い存在としか思われていない。
なんなら彼らの予定では二回目の放送時にマサツグ様の真実を伝えるつもりだ。
もちろん、マサツグ様がどんな反応をするのか見たいという――ただの知的好奇心で。
しかしマサツグ様は未だ真実を知らない。
これから待ち受ける最悪の真実を何も知らないままに自分のダメージが回復して喜ぶ様はあまりにも滑稽極まりない。
そしてそんなマサツグ様の前に全身を真っ黒なローブで包んだ――顔すら見えないNPCが突如として現れた。
コレは檀黎斗と茅場晶彦による細工。つまりマサツグ様はただただ彼らの掌の上で踊っているだけだが、そんなこと知る由もない。
「やれやれ、雑魚NPCか?」
マサツグ様は何も自分の置かれてる状況を理解しないままに、いきなり現れたNPC――異次元への案内人を見下す
しかし次の瞬間――マサツグ様は見知らぬ場所に居た。
異次元への案内人はその名の通り参加者をワープさせるNPCだ。
ゆえにマサツグ様は何も知らないまま、いきなりワープしてしまった。
「やれやれ、なんだこれは?」
流石のマサツグ様も困惑するが、それでも余裕の態度を崩さない。何故なら今のマサツグ様はダメージが回復したし、本人は自覚していないがカイザーインサイトという化け物から距離を更に開けて無意識的に安堵し、恐怖心も消えたからだ。
流石にあんなプレイヤーが何人もいるわけないと思うのは、当然のことだろう。
体力を回復する手段こそ失ったが、これで体調はかなり戻った。
並行世界の自分や他のプレイヤーを殺すため、マサツグ様は我が道を歩む。
そんなマサツグ様が衝撃の真実を知る放送まで、あと数分――
【???/一日目/昼】
【マサツグ様@コピペ】
[状態]:疲労(極大)、憎悪と嫉妬(極大)
[装備]:聖剣ソードライバー&刃王剣十聖刃&ブレイブドラゴンワンダーライドブック(全て複製)@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品一式、タイムコピー(残り使用回数1)@ドラえもん、量産型戦極ドライバー+ヨモツヘグリロックシード@仮面ライダー鎧武
[思考・状況]基本方針:他の参加者を殺して優勝する
1:並行世界の自分は必ず殺す。もし、お仲間だ絆だと抜かす奴なら…
2:何で俺がこんな目に遭わなきゃならない…どいつもこいつも許せない……
[備考]
※ミヤモトやトリタ戦など主にコピペになっている部分が元となって生み出された歪な存在です。
※「守る」スキルは制限により弱体化しています
※聖剣を手にしている時、感情次第では剣の技術が強化されます。
※タイムコピーを使いクロスセイバーの変身ツール一式を複製しました。機能はオリジナルと変わりありません。
※主催者の檀黎斗と茅場晶彦が作った生命体でした。本人はまだその真実に気付いてません。記憶なども全て捏造です
『支給品紹介』
【グランポーション@ソードアート・オンライン】
対象の傷をかなり治すポーション。ただし疲労までは治らない
『NPC紹介』
【異次元への案内人@遊戯王OCG】
ランダムに出現して対象を別の場所へワープさせる役割を担うNPC。どう足掻いても破壊は不可能
903
:
◆QUsdteUiKY
:2025/06/26(木) 01:24:41 ID:m/NatcQY0
投下終了です
904
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:00:13 ID:???0
投下します。
905
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:01:04 ID:???0
「平気か?リリス、キバット」
ユキがある程度は落ち着いた後、歩みを再開し、いい加減にエルキア大図書館に戻らないといけない。
空の此れからの考えはエルキア大図書館で着いてから吐き出すと簡単に話した。
理由としては何時までも外にいたら、危険人物は疎かNPCまで襲撃される可能性が高まってしまうからだ。
エルキア大図書館を調査して、情報も今後の方針も図書館の中で一気に行った方が手っ取り早い。
もしかしたら、誰か訪れているかもしれないので、その機会をあの車のようなチャンスを不意にさせない。
空とキリトの動向もユキの件で話す暇もなく、共有すらしていない。
ユキと尊徳は気を紛らすべく、いつも通りに漫才をしていた。
目的地に到着までの間、ユキと尊徳抜きで片付けるべき問題の解決。
それはリリスとキバットの現状だ。
ユキと尊徳にはリリスとキバットにも家族や仲間、友人が殺し合いに巻き込まれたことも話せていなかった。
それ所か尊徳とユキとは交流すら皆無。
特に放送でリリスの家族の清子、知り合いの小倉が呼ばれてしまったからだ。
それ故、信頼構築済みのキリトと空だけで彼らのフォローに回さないといけなくなった。
「リリス、キバット放っておいて、ごめん」
「俺も悪かった。お前らも辛いのに。っつっても、キバットは通常運転か」
キバットは何も心配はない。
既に渡の死を受け入れて、前に進み続けていて、胆力も戻っている。
キリトと空は仕方なかったとは言え、ユキに気を取られすぎて、二人をほったらかしにしたのを謝罪する。
(俺は原点に帰れたぜ)
言葉は封じられていながらも空黒に渡の死を完全に吹っ切れたのをアピールする。
切っ掛けを作ったのはユキだ。
嘗て深央を誤って自分の手で殺めて絶望に覆われた渡を今のユキの有様と少し似ていた。
過去に行って来た事で渡は立ち直ったが、またあの時の渡のような人が苦しむ姿をキバットも見たくなかった。
だからこそ、ユキのような悲しみを出さない為にも渡の想いや遺志を継いで自分のやるべき事を再確認して、完全に心に熱を再燃した。
黎斗の放送で渡が呼ばれても悲しみを抱かなかったが、黎斗は何時見ても聞いても相変わらずムカつくのは変わらなかった。
しかし、一つ非情に許せない事がある。
(また渡の残した物まで汚すのかよ!!!)
置いて来てしまった渡の遺品が黎斗に場所をバラされた挙句、下手すれば危険人物に渡って悪用される事実を。
キバットはかなり憤慨したが、ユキが取り乱す現状を見て、一旦は冷静になれた。
本当は今直ぐにでも、空達とモーターボート経由でF-7に戻って渡の遺品を危険人物より先に回収したい。
でも、そんな勝手許さないだろうし、独断行動は身を滅ぼす。
渡の遺品は諦めようとした矢先、
「キバットは渡のデイパックを回収したかったんだな」
(どうして!)
「あそこで一瞬の間に怒った表情をしたのを気付かないと思ったのか」
殆どの者がユキを落ち着かせる為に誰もが意識を向く状況ではなかった。
だが、空は一人一人の状況を把握して、キバットとリリスの様子を片隅に置いていた。
キバットの激怒は空以外の者から見れば渡の死を愚弄したと推測していただろう。
空は違った。上記は勿論、黎斗が支給品の放置の情報を口外したタイミングでキバットが滅茶苦茶怒っていた理由を察した。
906
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:01:57 ID:???0
実は空はキバットがどの方角から来たのかとうの昔に確信していた。
南東方面からだと確かな根拠がある。
継国縁壱との鉢合わせしないよう飛行の特権を活かし、海上の移動は不測の事態が起きない限り、デメリットはない。
かと言って最初に行動していた士とレイを闇雲に探し回るよりは北東に移動して来た方がはるかに効率は良い。
最大の理由は余程の物好きでないとこの場所に来ないだろう。
「時間があれば一緒に渡の遺品取りに行ってやるよ」
確かに北東から南東にモーターボートで移動すれば、あるなら渡の支給品の回収が可能だ。
とは言ったが、色々と手いっぱいでそんな暇がない。
近場にあるエルキア大図書館に戻り、中を調査して、情報の整理などすべき事があるし、一番の案件であるユキのメンタルケアを欠かす訳にもいかなくなった。
キバットもその事は理解していて、割り切っている。
「ただなあ、リリスがな」
「無理もない。口封じされただけでなく、家族と知人の名前を出されて平気なはずがない」
キリトと空が知る中では、放送で呼ばれた人はニノンだけでない。
吉田清子と小倉しおんと言う家族と知り合いの名が挙げられてしまった。
リリスの表情を見るにまだ動揺しているのが、見受けられた。
更に一回目の放送後にキバット同様に言語も封じられる理不尽な目に遭っている。
平然としているほうが可笑しい。
(清子、小倉................)
エルキア大図書館に一時、立った際、こんな嫌な胸騒ぎは清子と小倉の死を予感した悪兆だったと認めざるを得なかった。
それも、自分が寝ていた間に殺された現実も知る。
再序盤で呼ばれたのも、キリトと空のような保護してくれる人物にも巡り遭えなかったのが大体は想像が付く。
シャミ子同様に抜けている部分もあれど、テストで学年上位になる辺り、博識である為に察した。
清子は吉田家の母で一番権力を握っていて、自分が調子に乗ったり、小さな事でやらかした時は怒られたり、説教された。
それでもなお、自分やシャミ子、良子にとっては大切な家族の一員で、なくてはならない存在。
家族を支えてくれた大黒柱であった。
小倉はシャミ子達の友人で論理観がぶっ飛んだマッドサイエンテイスト。
シャミ子に対して、良からぬ事を考えるのを除けば有事の際は小倉がいなければ詰んでいた場面もあって、何だかんだで頼りにしていた。
二人はこんな殺し合いで死んでほしくなかった。
何より、自称神は予選落ちした雑魚だと言い放ち、二人の死を侮辱したのを許せない。
(今の余は役立たずで前に逆戻りだ)
本当は声に出して余裕をかましているだろう黎斗に鬱憤を晴らしたかったはずだった。
最悪な事に自称神によって口封じまでされて、キバットと同じ穴の貉となってしまった。
キバットの事情を知った際は他人事ないと思いつつ、ゾッとしていて仕方なかった。
今や全く笑えない現状でキバットの気持ちが分かる気がした。
止めを刺して来たのが、キリト達の手助けも至難の業という現実を突きつける。
遺体を発見する前のキリトと空との談笑でアドバイスくらいは試みようと思ったが、その役目すら叶わない。
そもそも、喋れなくなった時点でよりしろすら誰かのデイパックに入っているか怪しくなっていた。
仮に小倉が生きていたとしても、黎斗に妨害されて、等身大よりしろ作りも骨折り損のくたびれ儲けという結末だろう。
現時点のリリスの境遇はシャミ子がまぞくに覚醒する前のあの頃に戻ったとしか言いようのなさ。
シャミ子と再会出来たとしても、彼女にすら自分の声を聞けないよう余計な細工をしている。
封印空間は真っ暗でない分、幾分まだいい方だ。
907
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:02:48 ID:???0
ユキが馬鹿な事をしでかしかけた出来事で少しは冷静になれた。
参加者を脅してまで清子と小倉を生き返らせる気はこれっぽっちもないし、これからもない。
けれども、清子と小倉を失った喪失感があった。
こんな感情に浸るのは自分にとっての大切な日常だからだ。
だけど、立ち止まらないで突き進む。
停止してしまったら、シャミ子達と再会出来ず、清子と小倉が浮かばれないからだ
これより、どうするべきか。
キバットは飛べるし、偵察や見張りという大きな役割を果たせる。
彼と違って自分はまた役立たずになり、余計に苛立ち、焦りが出てしまう。
「リリス顔に出すぎだ。こんな仕打ちをされて、誰だってやるせないよな」
どうやら、清子と小倉の死を引きずらずに突き進むようだ。
しかし、リリスが無力感を抱き、虚しい気持ちになったのを表情に出しすぎて、二人は理解した。
同時に黎斗が余計な事をしたせいで問題が再浮上してしまった。
「よく聞け、可能性がまだ0じゃない限りはよりしろ探しを諦める気はない。喋れない分、より一層全力でお前をフォローしてやる」
「ひょっとしたら、家族はヴァイスフリューゲルのメンバーと合流出来たかもしれない」
キリトと空は結局、ユキの心を救えず、尊徳に任せっぱなしだった。
せめてリリスだけでもメンタルケアを決して忘れずに行う。
「何度も同じ事を言わせないでくれ。リリスの家族を保護すると約束する」
元々、リリスが封印中のごせん像を支給されたのはキリトである。
ユキ達と接触する前にリリスがあれだけ家族と知人の話題に談笑したと言うのに、故にニノンの死に悔やんでばかりで清子と小倉の死を気にも留めなかったのを反省する。
これをアスナ達が見たら叱責されても文句は言えない。
最低でもまだ生きている家族と知人を会わせる責任を果たす。
「お前がいたから吉田一家と二人の魔法少女を俺達に伝えてくれて、彼女らをより詳しく知った」
「キバットをNPCと誤解しなくて済めたのも、リリスがいたからこそだ」
キリトと空は打算も嘘もない。
キバットもそれに頷き、自分が勘違いしたままにならなかったのはその一つが彼女のお陰でもあるので、感謝している。
(余もまだまだだ)
二人の遺体を発見する前にキリトと空から頭を冷やしたばかりなのに、同じ事を繰り返してしまった。
黎斗のせいで更なる逆境に晒されて、何も出来ないと考えて、もどかしかしかった。
だが、あの二人とキバットに気を静めてくれて、見失いかけた自分を引き留めてくれた。
加えて一つ借りが増えたようだ。
(取り敢えず大丈夫だな)
空達の力強い説得と言葉でどうにかリリスは平常心を保てている。
正直、ユキに比べれば数十倍まだ可愛い方だ。
黎斗はいらない事をしたと空は内心、嫌悪感を抱く。
「話しは終わったようだな」
「美しいボクを差し置くなんてズルいな〜♪」
「聞いてたのか」
「二人の会話が聞こえたら、気にならない訳ないだろ」
908
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:03:48 ID:???0
尊徳とユキはキリト達の話し声が気になって仕方なく、漫才を中断して、キリトと空の会話を耳にする。
内容は意思持ち支給品のメンタルケアだった。
リリスとキバットにも仲間や家族、知人が殺し合いに巻き込まれて、挙句に放送で呼ばれた事実を尊徳は初めて知る。
「悪かったな。お前達だけで彼ら?の面倒を見させて」
「別にいいよ。俺とキリトの方がこいつらの付き合いが長いだけだ」
空はそう言うが、実際は自分にも気を使ってくれたと薄々気付いていた。
自分とユキの為に気を遣わせていた事も含めて。
(俺は彼らについても半分も分かってなかったな)
そういえば、自分はユキにかまけてばかりでリリスとキバットは疎かキリトと空も何一つ理解してない。
これから、殺し合いから脱出して、黎斗の打倒を共にやっていく上で重要な要素を欠けていた。
不本意な行為であるが、キリト達の盗み聞きした中身によるとリリスがその黎斗のせいで会話もままならなくなったらしい。
リリスとは一言も語り合う事なく、今後の彼女との最初の交流も永遠に断ち切られてしまった。
(海斗なら、悔しいがあいつことだから割り切っていただろうな)
おまけに今なお、自分は内心では影山の死に感傷にふけている。
短い付き合いながらもこんな自分なんかの為にホッパーゼクターの力を託してくれて、後を任された。
どうしても吹っ切れない自分が情けなかった。
リリスとキバットは親しい者達の死を伝えられても彼女らですら前を向いているというのに。
(いいなあ。あの二人)
ユキもキリト達の会話を聞き、どうやらリリスとキバットも仲間、友人、家族が来ていたらしい。
放送で告げられてもリリスとキバットは曲げる事はなかった。
参加者を脅し、利用してでも責められないのに、自分と違ってはなから親しい人達を生き返らせる考えも絶無。
ユキは参加者でない彼女らが黎斗の誘惑に負けない心の強さが羨ましかった。
「リリスは意思疎通が困難で折角の紅一点なのに残念だが、仕方あるまい」
話を切り替えて、尊徳は今いる面子の中で女性はリリスだけと思い出した。
憐桜学園に在籍する男子は全員が職業にボディガードを希望する者達が集まっている。
男子は三年間ボディガードを育成する簡単に言えば専門学校みたいな場所。
最初の一年間は実践などをこなし、男子専用の寮で過ごすのが決まり。
故に尊徳は同行者が男だらけでも、気楽で構わなかったが、リリスが喋れずに華がないと物足りなさを感じていた。
「まるでユキが男みたいな言い方じゃないか。尊徳も冗談を言えるんだ」
「そうだった。お前らには話してなかったな」
尊徳はユキのあの事実を話し忘れていた。
色々な出来事があって機会がなかったが、他者に誤解が広まる前に公表するべき。
「伝え損ねたがユキは男だ」
「またまた冗談を」
「タカノリ君の言っている事は本当だよ。生物学上、ボクは男だよ」
「マジ?」
「冗談なんかじゃない。本当だ」
「「ええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
ユキの実情にキリトと空は声をだして驚愕する。
リリスもキバットも声を出さずとも目を洗われる思いだ。
909
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:04:47 ID:???0
「待って、空すら気付かなかったの!?」
「はあああ、言動が強烈すぎて、全くもって盲点だった」
大きく溜め息を吐いて、これしきで見抜けない自分自身にガッカリする。
我が強すぎるのと口調が中性的で胸の膨らみがある事から流石の空も見過ごす要因となった。
後の未来の正史にて、空は吸血種(ダンピール)の全権代理者プラム・ストーカーとのゲームにて、強烈な性癖に目に行きがちで彼が男だと見抜けなかった程。
ただし、プラムが男と先に気付いたのは妹の白である。
「僕も最初は目を疑った」
実は黎斗の最初の放送が始まる以前に尊徳と影山には男と告白された。
当然ながら、二人は信じていなかったが、尊徳には強制的に性別確認して貰い、認めるに至る。
この出来事は黒歴史として葬る事にした。
「男と知っても、この美しいボクの事を守ってくれるよね♪」
「誰がナルシストで変態の貴様なんかに」
そう言いつつ、尊徳はユキが男と知っても、護衛すると誓っている。
ユキも尊徳は本心ではツンデレで優しいと理解しているからこそ、信頼を置いている。
馬鹿げた行動を起こしかけた際は彼が叱責して、止めてくれた。
(多少は明るくなったけど.........)
ユキの秘密に確かに仰天するも、完全とは言えないけどユキが若干落ち着いて来てはいる。
尊徳の説得が功を奏して、仲がいいのは微笑ましいが、前よりも依存気味になっているのが懸念している。
大丈夫だと思いたいが、それでもまだ不安の種が尽きない。
(流石に遅れているし、巻き返さねぇとな)
ユキと尊徳のペースに合わせて来たが、いい加減に移動しないと始まらない。
当初の予定では第一回放送前には、エルキア大図書館に戻って、放送後には調査するはずだった。
放送前にはその二人と接触したが、アユミと影山が殺されて、ユキの精神が参ってしまう寸前もあり、直ぐに行動の足止めを余儀なくされた。
尊徳のお陰で何とかユキが落ち着いたが、予定が大幅に遅滞しまったのは事実だ。
ユキのメンタルケアを欠かせないし、そろそろエルキア大図書館とD-6の狐島の調査を始めなければならない。
空としてはF-7に出向いて、渡の遺品を回収したい。
いつの間にか雁字搦めになってしまった現状では、絶望的で匙を投げるしかなかった。
その渡を実験台にしたであろうテストの謎が不明だったが、先程の放送でそれらしき内容が半分くらい発表されたけど、手掛かりを握るであろう士とレイと接触しないと詳細が判明しない。
肝心な情報戦も依然として出遅れており、これ以上の時間の浪費は良くない。
もし、あの車との合流が遅れていなかったら、役割分担してこんな事にならなかったと確信している。
「戻って来たな」
思考をあれこれ回す内にキリトの一言で空の馴染みのエルキア大図書館に帰って来た。
ユキと尊徳にとっては初めて目にする建物。
「二階堂家の屋敷といい勝負しそうだ」
「普通の図書館とは違うね。けど、ボクの美しさには敵わないけどね」
ユキと尊徳は初めて見るエルキア大図書館の大きさに驚きを露わにする。
金持ちの家柄に生まれた尊徳すら、二階堂彩の護衛役に指名されてからお世話になっている二階堂家の屋敷も負けないくらいの建物だ。
エルキア大図書館は一般の図書館とは入る前から違うと伝わって来る。
910
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:06:14 ID:???0
「ここを知っている俺が案内する」
エルキア大図書館を詳しく知る空を先頭に案内し、三人は付いていく。
中に入ると空間はかなり広く、上も下も無数の本が並べてある。
「普通の図書館とは訳が違うな」
「海斗が見たら夢中になってそうだ」
キリトは本の量に仰天するばかり。
尊徳も殺し合いにいない問題児の彼なら読書が趣味で無限にある本を読みふけるであろう。
三人は内部の空間でも驚きの連続だった。
△
「さて、情報交換や今後の方針について話しを進める。まずは俺達の経緯だ」
「そういえば、キリトと空の動向はまだ語ってなかったな」
4人で円陣を組んで情報の共有や色々な事柄を擦り合わせする。
特にユキは放送をやはり途中から殆ど頭に入って来なかったので、整理するには丁度良かった。
尊徳とユキはキリトと空が接触する前の行動を知らない。
それぞれ自分の事で頭が一杯で肝心の情報の共有も皆無。
黎斗の元に辿り着くには必要な情報も武器で取り入れなければならないのだ。
空はようやく尊徳達と出会う前の経緯は話し出した。
最初の位置が何とD-8の狐島という本島とは言い難い場所に配置された。
これには尊徳もユキも黎斗による嫌がらせ行為だと思う程、全く配慮されない事に同情を禁じ得ない。
偶然、島にいたキリトと遭遇するもこの後、パンツ一丁の露出魔の襲撃に遭うが、空の機転で追い詰める。
しかし、相手が持っていた支給品の効果で逃走した。
空の考えで、ほぼ全裸男は転移効果でほぼ確実に本島の何処かにいるとのこと。
その後、黎斗の放送を聞いた後は救済処置として用意されたモーターボートのお陰で本島に行けるようになった。
その前に海を渡る乗り物があるので地図の外の調査も可能になった。
会場外へ調査に乗り出すが、結果は外に出ると首輪の警告音が鳴った時点で到底出来ないのは想定内。
外の先に何があるかは不明のまま。
「まあ、奴らも普通に対策するよな」
地図外の調査報告を聞いた尊徳とユキはそう簡単に行かない事は想定済み。
それでも、調査をせずに見落としている部分があるのなら洒落にならない。
希望がなくとも確かめないと始まらない。
話しを切り替え、本島の北東に上陸し、参加者の捜索に東から進むと車を見つけてスタンスが不明でも接触出来ると思われたが、来た時には車は既にかなり豆粒みたいな遠い距離にいた故に間に合わなかった。
仮に追いかけても体力が無駄に消耗するだけなので断念した。
「もっと俺達が迅速に動けていれば・・・・・・」
「ごめんユキ。車に乗っている人と合流出来れば、いただろう仲間と再会が叶ったのに」
「美しいボクに免じて許してあげる。それに車に乗っている人がゲームに肯定派だったら、荒事に巻き込まれたくないしね」
スタート地点がD-8の狐島では仕方ない面もあり、責める理由も見当たらない。
万が一、殺し合いに乗っている側だったら、どの道戦闘は避けられなかったであろう。
911
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:07:08 ID:???0
あの後、エルキア大図書館を発見して、まだいるかもしれない参加者の捜索の為に後にする。
進み続けるとその途中でキバットと接触した。
「その後にボクらと遭遇したわけだね♪」
「ああ、それからキバットからの情報もな」
「キバットによるとーーーー」
キリトと空の動向を語り終えた後、直ぐにキバットの経緯を空が補足する。
キバットは最初からキリトと空と行動していたのではないのは情報交換で知った。
元々は渡、士、レイの三人の人物と一緒だったらしい。
しかし、継国縁壱の強襲によって、渡が殺されてしまったが、士とレイの二人は渡のお陰で撤退に成功したらしい。
運良く生き延びたキバットは大きく移動して、キリトと空と合流したとのこと。
「そうか。そんな事が..........」
空経由でキバットの事のあらましを聞いた尊徳は放送の最中に危険人物に襲われる理不尽さを知る。
半分違うがあたかも自分達と同じ立場になった感じがした。
同時に彼は渡と言う人物の想いを継いだだけでなく、前を向いて進み続けている事を再確認する。
「よく、その危険人物の名前を知れたね♪」
「何を言っているんだ?継国縁壱は放送で通達されていたじゃないか」
「そんなのあったか?」
縁壱をまるで存在すら知らない反応をする尊徳とユキ。
アユミが理不尽に殺されたショックで前回もユキがパニックになって頭に入らなかったであろう。
ユキはともかく、尊徳まで超重大な情報を取りこぼすとは思えない。
「うっかり聞き落としたなら、前回と今回の放送の情報を一斉に振り返るぞ」
「俺も賛成だ」
空がそう持ち掛けた直後にアイコンタクトが送られる。
内容は影山の死因の真実。
今回で自分も薄々察しており、ある程度は原因を絞り込んだ。
恐らく、キバットと同様に危険人物の襲撃或いは不快な運試しのどちらかだろう。
自分の場合はまだ確証が得られない故に断定できない。
だが、空は既に解答を導き出したであろう。
後で空と二人きりで順に追って話そう。
それから、影山に関する件はまだ本人達の口から話すのはまだお預けになりそう。
最悪、言いたくないのなら、仕方ない面もある。
(間違いねえ。影山って男が死んだ理由が)
キバットは影山の死の真相に行き着いた。
確実に渡共々、運試しに選ばれてしまい、命を散らした以外考えられない。
それが発端で自分は黎斗の放送の後半の内容を聞き逃している。
尊徳とユキの反応から決定的になった。
同じ目に遭った者同士だからこそ理解してしまったのだ。
ただし、渡と違い、影山は上げて落とされる事はなかっただろう。
この事を空に伝えたいがもどかしいのは言うまでもない。
それでも、空はとっくに真相に行き付いたのを信じている。
「まずは前の放送からだな」
912
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:08:00 ID:???0
空は後半部分の重要な要点を簡単に共有した。
運営のジョーカー的存在の継国縁壱と人質にされた少女の二点を話した。
「縁壱は一二を争う要警戒対象だ。キバットが身をもって俺達に教えてくれた」
「そんな奴らに僕達は勝つしかないか」
縁壱の強さはキリトと空の説明だけで尊徳は戦慄する。
青髪の少女を殺した金髪の男もアプリでの映像越しでは不明瞭だったが、空から絶対に遜色ないと断言された。
上記の二人は別格で、PoHと言う奴やパンツ一丁の全裸男、全貌が不明の気狂いの変態、美遊の関係者とヤバいのがいるのは明らか。
ついでに危険人物の情報も共有した。
憐桜学園では学年首席の肩書きを背負い、武術とパンチポッパーを合わせても決して弱くはないが、この場は一時的に捨てなければならなかった。
尊徳とユキは仲間と協力しないと勝ち目が上がらない猛者がいる。
だからと言って、諦めるのも希望を捨てる気も更々ない。
「こうして見るとボク達かなり出遅れているね」
「俺らも決して多くないけどな」
ユキはここで尊徳共々、情報は膠着状態と現実を知る。
しかしながら、友好的な参加者はヴァイスフリューゲルだけでなく、空達の情報を合わせるとリリスの家族と知り合い、キバットの前の同行者を含めると地味に少なくない。
尊徳は自分達がいかにもたついていたか痛感する。
彼らと合流していなかったら不用意な現状だっただろう。
「次に今回の放送の内容だ」
「ソラ君、ごめんね。ニノンさんが呼ばれてから後半部分を何も聞いてなくて」
「別にいいよ。どっちにしろ重要な情報量が多かったから俺の考えや皆の見解を聞く必要がある」
ユキはニノンの名を死亡者として上げてからの放送の内容を聞き漏らしていた。
何も聞いていない彼の為にも、そして、デスゲームを潰すこれからの事も加えて。
「最初に、死亡者の名を特定の奴だけ感情的に読み上げられた」
「そう言えば様子がおかしかったな。何故だ?」
「違和感を覚えたのは宝条永夢と言う人物だけだった。と言っても答えは一つだけだろうな」
「宝条永夢は檀黎斗を知る人物だったという事か」
空は宝条永夢の名が感情を込めて読み上げた事で一秒も見逃さずに永夢と言う人物は黎斗と深く関わっているのは明白だ。
敵か味方かは不明だが、黎斗に対抗する人物を死んだ事実に衝撃を受ける。
キリトも四十人も犠牲が出たのに気を取られていて、黎斗の引っ掛かりのある言葉を見落としてしまった。
並行して、その人も接触出来ずに目が届かない間に死なせた事に悔いがある。
「それじゃ、手掛かりは差し引きゼロか」
「いや、まだ宛てはある。檀黎斗が運営を仕切っている奴が関係のある人物を数人は招いているだろうな」
「確かにボク達のように関係者が全員来ているかもしれないね♪」
「その人達から洗いざらい聞くしかない」
「よって、檀黎斗の関わりを持つ人物も手当たり次第捜す。もしかするとモニカとクウカも吉田姉妹もそいつらと一緒だといいな」
まだ希望は潰えた訳ではない。
勿論、まだ生きている関係者もスタンスが乗っていないとは一括りにしない。
複数人の内、まともな人物なら黎斗に関する知っている情報を渡してくれる。
黎斗の打倒への足掛かりに諸悪の根源と関わる人物を追加で捜索対象を増やす。
しかし、肝心な居所は不明で今は虱潰しに捜し出して会うしかない。
913
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:08:58 ID:???0
最も、自分のような頭脳派や勘の鋭い人物は今回の件を受けて気付く人も少なくないかもしれない。
悟った者は注視をしているであろう。
それだけかなり目立つヒントを残したのだ。
これを機に優勝狙いの輩が脱出の根を断つべく、黎斗の関係を持つ者を優先して狙われる可能性も有り得る。
この話題が終えた後は特殊なNPCの存在について。
会場に放り出されたNPCはただ単に襲い掛かるだけではないらしい。
アイテムや情報の交易を経営する者も存在するとの事。
お互いそれらしいNPCとは遭遇していない。
他にも特殊なNPCがいるらしいので頭の片隅に入れるだけとなる。
次に放置された支給品の提供。
二つ内F-7にある一つは渡の物でキバットがかなり憤慨した最大の原因。
「本当に取りに行かなくていいのか?」
「今更向かっても、無駄足を踏むだけだしな」
モーターボートで向かえばギリギリ間に合うかもしれないが、ユキ達の事もあって別れて大きく動けないし、幾らエリアの端っこでも支給品を巡る危険人物同士の乱戦に巻き込まれるだけだ。
渡の遺品を取りに行きたいのは山々だが、今からでは無理だろう。
もう一つ放置されたE-5は激戦区となる時間帯で乗っていない参加者なら、まともな判断を下すだろう。
危険人物に戦力を増やしたくないけど、死に行くようなリスクを冒す必要はない。
「次はここからが本題だ」
いよいよ、例の話題に入る。
キバットにも残酷かもしれない事実を伝える必要がある。
あくまで推測だが、それでも、また辛いだろうが受け止めてくれると信じる。
「使えない力やアイテムを手に入れる現象が起こっているらしい。俺らはそういうのには遭遇していない」
「尊徳達は何か知らないのか?」
「僕らも右に同じだ」
参加者との戦闘が少ない4人+リリスはそういった事象が発生するはずがない。
ただ、一匹を除いて。
「ところがキバットはその現象を目撃した証人だ」
「何だと?」
この場にいる全員が驚くべき事実であろう。
確かにキバットの戦闘は縁壱のみで早々に謎の現象を眼前にしたというのか。
空はその事にも見抜いたようだ。
それが本当なら早い所、デスゲームを潰す為にも詳細を聞くべき。しかし・・・・・・
「残念ながら、口封じされて喋るのはままならないからなぁ」
「折角、キバットが重要な情報を持っているのにこれでは.........」
支給品扱いとは言え、この面子で唯一謎のシステムを知るキバットは発声が出来ずに共有が不可能。
またしても、振り出しに戻ってしまった。
しかし、空は二つの妙案を考え付く。
「まだ目当てはある。現象に立ち会っている奴らに聞いてみるか。或いは門矢士と閃刀姫ーレイに詳しく話して貰うしかないな。俺としては聞いて回るより、後者の方がお勧めだけどな」
「その二人がそんなに重大なの?」
914
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:09:53 ID:???0
ユキが疑問の声を上げる。
当然の反応で事の重要さを知らない者にとっては当たり前だ。
これから話す事はキバットとしては残酷で後味が悪い内容だから。
「そうだ。同時に今から話す事は胸糞悪いからだ。キバット辛いが覚悟はいいか」
空が嫌悪感を露わにする程の酷い物なのだろう。
この場にいる全員がこの先が恐いと思わせる不快感ある話なのは想像が付く。
キバットはどんな内容だろうと受け止める覚悟はある。
「最初に言っておくが、渡は運試しに選ばれてしまった」
「ばんなそかな!?」
空から発した事実はキバット以外の全員が衝撃を受けた。
(辻褄が合わないな。ん?待てよ..........)
ただ、キリトは疑問を抱く点がある。
だが、運試しに選ばれたのなら、何故、渡はあの後、縁壱と戦闘を行ったのだろうか?
余りにも矛盾が生じるのだが、考えれば考えるほど縁壱絡みとなると話しは別。
ただ一つだけの理不尽な答えが浮かんだ。
「まさか、選ばれたのは継国縁壱と戦わせる為だというのか」
「その通りだ。大方モルモット扱いとして渡を殺させるよう仕向けたのだろうな。間違いないな、キバット」
(空の言う通りだ)
キバットはそう頷いた。
尊徳とユキはキバットも本当に自分達と同じ目に遭い、ペクトルが違う方向での理不尽に仲間を失ったのを知り、何も言えなくなった。
影山は絶望一直線だったが、渡と言う人は希望から絶望に叩き落とされてしまった。
序列が最上位の者とやらせるなど強すぎて倒すのがほぼ詰みで戦わせた感じにしか見えない。
「ここで矛盾が起きたのは確実に戦闘の真っ只中だ」
「それが例の現象だね♪」
「キバットが見たと思われる現象。あれはただの偶然じゃねえ」
「偶然ではないだと?」
まるで『必然』と言わんばかりにキリトは新たな疑問が生まれた。
縁壱が渡と戦わせたのは間違いなく、必然と言える。
空が言いたいのはそれだけでは片付けられない気がした。
すると、空本人は表情には出さないが口にするのも嫌というくらいが伝わって来る。
「現象を生じたのが渡本人で確信している。しかし、これも全部仕組まれている可能性がかなり高い」
(あの奇跡がまやかしだと言うのか!?)
知らなかった奥底の真実にキバットは動揺を隠せないでいる。
エンペラーフォームへの強化変身は幻だと一ミリも思っていない。
システムによるものと理解しているが、あれは明らかに本物。
根本的な真実がまだ隠されているのか?
「真の目的は渡を利用して、謎のシステムの実験台にはなから故意で決めたのだろう。その上で中身は分からんが、継国縁壱相手に考えられないような大きな実験を行っただろうな。ただし、あの侍が勝つ前提でな」
「嘘だろ!?こんなことって」
(突然、エンペラーフォームに変身出来たのは.........クソッ!!あのヤロー!!!!!)
915
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:10:58 ID:???0
空の導き出された実態に全員が眉間にしわを寄せる。
特にキバットは真相を知り、怒りを露わにする。
全て茶番だったと考えると何もかも笑えない。
尊厳すら通り越して、見世物にしたような感じがして侮辱されていた。
(ぜってえ、許さねえぞ!!!檀黎斗!!!!!!)
渡を弄んだ黎斗の打破をより一層、強くする。
もう仮に奴が命乞いしても許しはしない。元からそのつもりはないが。
キバットは怒りに震えながらも皆の力になり、渡の想いと遺志を忘れないと決意を再確認させた。
全員がキバットを心配していたが、ユキの件を通して、完全に胆力が戻った彼にとってはあっさりすぎた。
尊徳は内心はキバットが受け入れるのが速すぎて困惑気味になったのは内緒だ。
士とレイと再度合流出来た際、空達からあの一連の出来事が意図的にされた物だと伝えられるのは辛い。
それでも、彼らも簡単に折れないと信じているから。
「悪いニュースばかりだったが、良いニュースもある」
先程までスッキリしない不愉快な内容のみで一気に朗報が上がって来る。
「謎の現象は士もレイも目撃者だ。言うまでもなく、二人もシステムの仕組み自体は知らねえ。だが、派手な行為を行ったお陰であの二人には手掛かりが残ったのは救いだ」
「士とレイって人達が例のシステムをよく知らないだろうし、そこはどうなの?」
「彼らが見当付かないのも織り込み済みだ。そうであっても、極僅かな足掛かりでも掴めば自ずと答えは出てくる」
「正にそうだな」
どちらにせよ謎のシステムの解明は士とレイが意図せずに情報を握っている。
彼らを捜して見ないと始まらない。
勿論、色々な人達に聞いて回るのも忘れない。
「聞いて回るのが早いだろうが、現時点での謎のシステムの情報量を一番持っているだろう士とレイの二人組も優先すべき捜索対象に追加。異論はないな」
「俺は空の意見に賛成する」
(俺も当然同じ)
(余もだぞ)
「僕も同意見だ」
「右に同じ♪」
新たに捜し人を増やし、今後の方針に加える。
やる事が山積みになって行くが今は一つ一つをこなすべき。
「キリトとリリスには事前に話してあるが、エルキア大図書館を調査した後にD-6の狐島に向かおうと考えている」
「北辺りじゃなくて?」
空は尊徳とユキには未だに話せていなかったもう一つの指針の話題を出す。
前のリリスと同様に疑問に思うのも当然なので根拠を語る。
「まだ推測にすぎないが、あの島には、主催を打倒に近づく為の何かがあると怪しんでいる」
「こんな小さな島に?そもそも、そんな物があるのか?」
「檀黎斗の最初の放送で『ラスボスとして君臨する』の発言で俺なりに色々と考えた末、カウンター的何かするかもしれねえ」
「俺も信憑性があると思う。檀黎斗もほんのちょっとくらいはハンデを与えてもおかしくない」
キリトは黎斗がヒースクリフこと茅場と同類と見抜いたからこそ言える。
茅場よりタチが悪いのは確実だが、その本質は同じ。
公平にするべく否定派にほんの少しだけ施すであろう。
役割が推定主催への多少のカウンターが本島は兎も角、D-6の狐島くらいに設置しても不思議に思わない。
916
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:12:32 ID:???0
「お前らがそう言うなら」
「それと島に行く目的は別にある。島に留まって拠点にしているだろう、参加者と接触する為だ」
「でも、あの島に行くのは労力がいるよ」
その話が現実なら、向かう価値は大いにある。
同時進行で殺し合いに否定的な者達と出会えれば、目当ての捜し人も見つけたら一石二鳥だ。
難があるとすればD-6の狐島に行くには地図の中央へ経由して、遠回りせざるを得ない。
「その様子を見るとお前らも気付けなかったか」
「地図を見てくれ」
如何やら、尊徳達『も』地図の引っ掛けに嵌っていた。
キリトは地図を取り出し、彼らに見せた。
「何処に見落としがあるんだ。ちゃんと確認したぞ」
「よく見て見ろ。北東からD-6の島に行ける橋がギリギリで描かれている。太い黒線で覆われて気付かないのも仕方ないが」
殺し合いが始まって直ぐに地図の把握は満遍なくした。
どの角度から見ても抜けている点はない。
そしたら、太い黒線で見え辛いが、凝視するとD-6の狐島に足を運ぶもう片方の橋をようやく確認出来た。
「あっ、本当だね♪」
(は、恥ずかしすぎる)
やってはいけない大失態に尊徳は悔いる。
こんな事でも気付けないようでは尊徳の二番目の兄である直人を始めとした兄弟達からまだ甘いと説教は確実にされる。
逆に空達は引っ掛からずに読み取っていた。
「これで理解したな。見落とさなかったのは俺だけか」
「実は俺も気付けなかったんだ」
実はキリトも人のことは言えなかったりする。
D-8の島に離れる以前に当初はキリトも尊徳達と同じミスを犯す。
ゲーマー失格と言葉を浴びせられても仕方なかった。
でも、空からの指摘で遂に北東にもD-6に渡る橋を認識したのだった。
「大多数の参加者は考えが及ばないと思われるので、あの島には数人は残るであろう」
D-6の狐島からのルートが2カ所確認出来ていない参加者が沢山いると完全に理解した。
北東から狐島のルートが地図からは黒線に際どい位置で包み隠されてしまったのだ。
橋が一方しかないと思い込み、拠点にする考え出す人も少なくないだろう。
しょうがない面もある・・・・・かもしれない。
「この話しはさておいて、俺達はもう一つの島で友好的な人達と接触を図ると共に何かの回収も行う」
「檀黎斗のからくりが用意されるだろうが、安全に確保するには苦労しそう」
「万が一、柄の悪い奴らが『あれ』の存在価値を知られたら、悪い方向へと進んでしまう前に先に手にする」
からくりと言っても、隠される程度の物であろうと思いたい。
それなりに工夫を凝らす必要があるが。
難しい問題はまだある。
推定主催のカウンター的な存在が危険人物に渡って、悪用する最悪な事態。
一部のデスゲームの肯定派も否定派でも害悪な連中も喉から手が出るのも言うまでもない。
危険人物が先に手にした場合は何をしでかすにしてもマイナスしか働かないだろう。
917
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:13:17 ID:???0
まあ、島に留まっている奴らが『あれ』を所有しているだろうが、念入りに突き止める」
現在の時刻を想像すると流石に条件を満たして、推定主催のカウンターを掴んでいると確信している。
まだ難航している可能性もあるかもしれないので、自分達も手伝う。
『あれ』が何なのか分からないので判明するまで『あれ』と呼ぶ事にした。
「『あれ』の存在自体が俺の思い違いだったとしても、もう一つの目的さえ達成すればいいんだ」
推測が間違いであっても、本来の目当ての優先捜索対象を見付け出さなければならない。
参加者の接触が叶えばそれはそれで問題ない。
「今後の予定はエルキア大図書館の調査した後は、D-6の島に行く」
「全部話し終わったしな」
先の方針を立てた空達は情報の整理を終える。
ユキが聞いていなかった内容も渡の死の真実もすべて。
更に時間を喰う訳にもいかないので、只今から『二人』だけで本腰の作業に移る。
「俺とキリトは今からエルキア大図書館の調査を始める。ユキと尊徳はその合間に休んで貰う」
「この量だと二人だけで大丈夫なのか?」
「空黒だけで充分。二人には無理はさせられないからな」
あくまでキリトと空だけで調査をすると言い張った。
尊徳はその意味を薄々、理解していた。
ユキは言うまでなく、自分も何時までも感傷に浸るせいで外れたのだと。
このような状態で調査の身に入らないのも頷ける。
「まだ話せていない事がある。確かキリトは剣、空はカードで戦うのだな」
ユキが馬鹿な真似を仕出かしかけた際、二人の武器を見て少しだけ理解している。
尊徳はまだ言いそびれた事があった。
自分の支給品にキリトと空には無くてはならない物だ。
自分では使わない或いは使えないからだ。
彼らなら、巧みに扱える。
「キリトと空に譲る。二人なら使いこなせる」
デイパックから漁り出し、尊徳が握られたのは黒い片手直剣とカードデッキの二つ。
一つ目はブラックプレートと言う剣であった。
元々は旧ALOでのキリトの愛用の剣でアスナを救出するまでも共に戦って来た得物。
二つ目は文字通り、デュエルモンスターズのカードデッキ。
エクストラデッキ付きでカードが紺色という事はリンク入りのデッキらしい。
(また使える日が来るとはな)
旧ALOでオベイロンの悪行を暴くまで使用し、片が付いた後は役目を終えたはずだった。
こんな形で自分の手元に戻るとは思ってもみなかった。
否、ALOアバターがチェンジ出来なかった時点でブラックプレートも誰かに支給された事は想定済み。
まさか、尊徳が所持していたようで彼には感謝しきれない。
「デッキだけなのか?デュエルディスクはないんだな?」
「何度も確認したが、あったのはデッキのみだ」
「そうか」
918
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:14:07 ID:???0
このリンク入りのデッキはデュエルディスクと一緒に渡されなかったらしい。
デュエルディスクとデッキの両方を配布された者は公平として、他の支給品を没収される。
逆に片方のどちらかに配布した場合は論外と見なされている。
現に尊徳の他の支給品は押収されていない。
実は元々はリンク入りの某テーマデッキを真月零に支給する予定だった。
しかし、会場にはリンクを知る決闘者は皆無。
故に真月では使いこなす可能性は不可能に近く、茅場のお情けで某デッキと一式にせずに遊馬のデュエルディスクのみになった原因。
本来であればデッキをセットにしないでデュエルディスクだけの支給は有り得ない話である。
黎斗は勿体ないと考えて、面白半分でこのデッキだけ『唯一』デュエルディスクなしで誰でも良かったのでランダムで配布するようにした。
その結果、尊徳のアプリには試運転も不要と判断されて、一切配られなかったのだ。
そういう事情から尊徳の支給品の没収は免れる。
因みに尊徳とユキもルールの時点で最初から頭がパンクして、お手上げだったのだ。
有効活用できずにそのままにしていくはずだった。
巡り巡って、天才ゲーマーの片割れの空の元に渡る。
「有難うな尊徳」
素直に尊徳に感謝し、彼が所持していたデッキを借りる事を決める。
蟲惑魔と某リンク入りデッキを組み込んで混合デッキにしたい。
キリトと空は尊徳から各々の道具を譲った。
すぐさま調査する者と休息を取る者に分かれて、一旦、解散した。
919
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:14:55 ID:???0
嘗て具象化しりとりと言うゲームを行った空間でキリトと空は立ち入る。
「ここでジブリールとゲームをやったな」
最近までの出来事を想起する。
しかし、思い出にふける場合ではなく、調査の為に訪れたのだ。
「では、あいつらには伏せてた事を話そうか」
その前に場所を移したのは尊徳とユキにはこれから話していない情報ばかり。
二人に会話を聞き耳立てないよう秘かに裏の情報交換してしまおう。
+αのリリスとキバットは同席しても差し障りがない。
キバットは外の入り口の見張りにつく前にしっかりと共有する。
「まず先に影山の事だ」
真っ先に先送りにせざるを得なかった影山の件。
尊徳とユキがいる前では死の真相を口に出せない。
キリトは原因を二つに限定するも裏付けが取れずに後一歩が足りない。
空なら既に真実に辿り着けただろうし、直ぐに聞いてみる。
「分かっているが、影山って人は恐らく・・・・・」
「ああ、影山は確実に運試しのせいで殺された」
空は言葉を発せないキバットの動向を代わりに話し、渡が縁壱に殺されたと語る途中で尊徳とユキは何故か他人事と思えない感情を抱いていたのを察した。
微かな違和感を感じて、気になって仕方なかったが、縁壱を知らない反応で確信した。
影山は渡と異なり、前触れもなく無惨に殺されたと推測する。
空は疎かキバットも察せたらしく、ウインクする仕草でアピールする。
下らない遊戯で仲間を奪われた同じ当事者で被害に遭った者同士だから見抜いたであろう。
920
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:15:52 ID:???0
「酷い!!」
キリトは薄々勘付き、衝撃が少なくて済んだ。
改めて、黎斗の運試しと言う悪辣な行為に憤慨を隠さない。
キバットが、士が、レイが、尊徳が、ユキが、彼らが仲間を殺されてどれだけ心を痛めたか。
茅場が開いたデスゲームが如何に生温いか錯覚したくなる。
「多分、運試しは表向きで本当の目的であるシステムの実験を悟らせないように余興でミスリードを誘っていただろうな」
「本当だとすると流石に尊徳達には言えないよな」
空の見解を聞いたキリトはそれが真実なら、運試しそのものが茶番という事になる。
これに巻き込まれた影山が気の毒すぎる。
いくら推測でも、尊徳達に共有出来る話しではない。
特に後を託された尊徳には伏せるのも無理はない。
「ちょっと待て、システムの取り入れは檀黎斗が出しゃばってからじゃないのか」
「俺もそれは気付いた。もっと前にな」
同時に謎のシステムのテストを行った時間帯が黎斗の放送中としたら、予選は導入していないと結論が出て来る。
渡に関するシステム絡みの時間を整理すると辻褄が合う。
黎斗が初めて姿を現すまでの間だけは自力で生き残れという事だろう。
一回目の放送でヒントを与えたのが切っ掛けで空にとってはキバットが伝えたかった意味も解き明かし始めていた。
「影山と渡の分まで一緒に背負っていくぞ」
「ああ、それも俺らがやれる事だしな」
キリトと空にとっては渡と影山は面識すらないただの赤の他人に過ぎない。
それでも、彼らの無念を絶対に忘れはしない。
渡が残したキバットとは巡りに巡ってゲーマーコンビの空黒と行動を共にしているので尚更。
「そう言えば空はデュエルのどのデッキを貰ったの?」
「リンク入りデッキだ。今はリンクモンスターと縁ができたようだな」
そう言いキリトに見せたのは植物や昆虫、爬虫類のカードデザインだ。
テーマデッキの名は蕾禍。
植物族、昆虫族、爬虫類族の三種族を兼ね備えたテーマのデッキ。
このデッキのもう一つのモチーフは鎧武者と妖怪を合わせ持っている。
共通点はモンスターの肉体が黒い蔓に覆われている。
同時に現在はリンクモンスターに力を貸してくれる事になった。
「蕾禍はリンクだけらしいな」
元から空本人に支給した蟲惑魔は罠カードを使いながらエクシーズとリンクの二つの召喚法を持つ。
逆に蕾禍はリンクモンスターを特化させたデッキだ。
「しっかし、尊徳が持っていたデッキも癖が強すぎる」
「空なら朝飯前だろ」
「説明書を見て、単体の回し方『も』理解した」
921
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:16:38 ID:???0
蟲惑魔は初心者が扱うには非常に難しい。
空のようなそれなりのプレイングが必要になる。
経験者もエクシーズは慣れてもリンクが無知では手に負えないだろう。
蕾禍の方はリンクモンスターを主軸にする展開型デッキ。
空は回し方を完全に理解したが、メインデッキはサポートか補助で展開力が高すぎて初心者では分かりにくいと言える。
加えて、リンクモンスターのみある効果の発動が可能。
その反面、欠点はコストの消費や前述のある効果を含めて三種族の縛りと制約などがある。
欠点を抜きにしても繰り返すが、初心者は勿論のこと経験者もリンクを知らない限り、このデッキを使いこなすのは無理があるだろう。
「蟲惑魔と蕾禍を組ませて混ぜ物デッキにする」
「いいんじゃない。備えあれば憂いなしだね」
D-8の狐島で出発前に空からデュエルの基礎的な要素と重要な五大召喚法+儀式召喚もある程度は叩き込んでいる。
召喚方法までは素人には優しくないが、敵対者がデュエルを使用したら、基礎固め位は覚えていても損はしない。
キリトは基礎知識が限界なのに、空はデュエルのルール等基礎のみならず、経験者も身に付けられないであろう全ての召喚の仕方も把握している。
「唐突に来る戦いに準備しないとな」
空は二つのテーマのデッキを混ぜて次々と組み込んでいく。
蟲惑魔は植物族と昆虫族の二種の種族で蕾禍とは相性も良く、制約のデメリットはない。
それに蟲惑魔は致命的に足りない物があり、それらを蕾禍が全部持っている。
互いを補ってくれて、展開も増えるらしく嚙み合わせも良い。
まるで空白のような関係性だと思った。
ただし、三種族以外を組んで召喚するには縛りの穴を付く上でそれすらも戦略も考えないといけなくなる。
そして、アプリにて試運転で再確認する。
試運転で蟲惑魔と蕾禍の混合デッキの回し方を終えて、準備も整った。
「後は二つのデッキの魂を信じ抜く」
己のカードを選び、信じる心を持つ。
それを一生忘れてはならない。
この地で遅れながら正式に新たなデュエリストが誕生した。
「ついでに空にあげるよ。仮面ライダーの変身装備」
キリトの最後の支給品は仮面ライダーに変身する為の装着アイテム。
その名は飛電ゼロワンドライバーとライジングホッパープログライズキーのセット。
本来は飛電の社長しか変身が許される代物で『ヒューマギアの関連企業の代表取締役』『是之助の持つヒューマギア及びゼロワンシステム関連のテクノロジーの特許権』『衛星ゼアの認証』の三つの条件が厳しく惑人以外は不可能だった。
ところが黎斗と茅場の合同で特別に厳重な使用条件を全て取り除き、他者にも装着可能になった。
空のデュエルでの後衛は有難い。
だが、キリトは此処に来て、今の今まで失念していており、敵はデュエルの攻撃を阻止するべく、狙われてしまうだろう。
リスクをできるだけ減らすためにゼロワンドライバーを空に渡す。
「俺が前衛で何とかするが、入念に身を守る物があれば生身での危険は減るし」
「いや、仮面ライダーらしきアイテムは既に手に入れてある。だよなキバット」
「え?」
922
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:17:30 ID:???0
キリトは間抜けな声を漏らす。
空はとうに仮面ライダーの変身アイテムを確保したらしい。
空の残りの支給品は黎斗によって没収されたのは、この目で確認しており、キリトは訳が分からずにいた。
一緒に行動して、余り参加者と会えず死体を発見しても、荷物は他者に回収されている。
いつ入手したか心当たりが全くない。
(もしや空はここまで知ってやがったのかよ!けどな・・・・・・)
一方のキバットは空に名を呼んだ意味を大体は理解した。
彼は自分が仮面ライダーキバに変身する力を与える事を察している。
キバットとしては少し、複雑な気持ちだ。
キバに変身する恩恵を受けるのはファンガイアのみ。
ところが人間が変身してしまうと疲労が蓄積する。
渡は人間とファンガイアのハーフなのでデメリットはない。
自分の父キバットバット二世よりはマシなのも明白。
ダークキバのマイナス面は上記の疲労に留まらず最悪、死に追いやる。
これが原因で渡の父、紅音也は三度の変身の末に死亡してしまった。
このような事情から渡以外はなるべくキバに変身して欲しくない。
伝えたくても相変わらず声を発せず悔しさしかない。
「どういう意味なんだ。全然分からん」
「キバット自身が他人に変身させる何かの能力を有しているんだ」
「な、なんだって!?」
キリトは驚愕を露わにする。
言われて見ればキバットが只の支給品として巻き込むとは考えにくい。
何かしらの力を貸し与えると考えるのが自然で盲点だった。
「どうしてそう思えたんだ?」
「決定的な根拠が士とレイと一緒に撤退しなかった事だ。あの場に残っても殺されるリスクが高いし、渡の想いと遺志を継いだなら、根負けしてでも二人と撤退する道を選ぶだろうな。しなかった理由は渡が変身を行うにはキバットが欠かせないのは勿論の事と彼の相棒として、最後まで一緒に戦う選択を尊重したからかな」
(全部正解だ)
空がその点を見抜けたのはキバットとの情報交換中。
情報の抜き取りで渡が仲間と行動を共にして、士とレイと違って逃げないで渡と一緒に居残る時点で疑問を抱いた。
よって、不可解な謎の推理は上記の通り、導き出す。
一方で変身する力を偶然で発見したのを意味していた。
「恐らく、予想は仮面ライダーと見ている」
「マジで!?仮面ライダーって、色々なタイプがいるな」
これまたキリトはビックリする。
キリトの中での仮面ライダーのイメージは自身に支給された物、葛葉紘汰が変身した形状、尊徳が所持する機械タイプの生き物と様々な種類があるようで、キバットみたいな力を与える部類も存在すると認識した。
「話しを戻して、今後は仮面ライダーに変身するけど、カードでキリトの援護は変わらない。」
キバットが力を貸し与えてくれるなら、空自身が変身しながら後衛でカードを使って戦う。
それ自体は永遠にブレる事はない。
ただ一つ懸念する問題があった。
「だが、キバットへの変身はリスクがあるらしいんだ」
「不味いじゃないか。じゃあ尚更、俺のあげる」
923
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:18:34 ID:???0
欠点を抱えているなら、メリットがあるゼロワンドライバーを使用した方が安全だ。
戦闘中に暴走などを冒してしまったら只事では済まない。
「キバット。少なくとも暴走や死に至るなんてないよな」
キバットはそう頷く。
キバは鎧の各々にカテナの鎖が絶大な力を抑制しているので、ダークキバと異なり、絶命はない。
疲労の蓄積が免れないのは残念すぎた。
「そうか。そこでだ、キバットへの変身とゼロワンの変身は俺とキリトと交互に使用して互いの負担を減らす。仮面ライダーの装備をもう一つ見つけるまではな。俺からの妥協案だ」
「それなら俺は反対しない。無茶したら承知しないからな」
「そのつもりは鼻からないし」
初めから危険を冒す気はない。
自分が変身すると言い出した際、キバットの羽が一瞬で動揺する瞬間を見逃さない。
始めから落としどころを考えた上で提案を出した。
ただし、自我を失ったり、命の危険がないのを踏まえてキバットに確認を取った。
余りに酷いと分かったら、ゼロワンドライバーを使用し続ける。
デメリットが不明であるが、判明した事は重い物でないだろう。
意見を擦り合わせて、今の案に落ち着いた。
キリトは空が無謀な行為をするのではとヒヤヒヤしたが、最初から危険な橋を渡る気も一切なかった。
確証を得てから案をとっくに考え抜いていただろう。
仮面ライダーの変身も一回ずつ交換しながら互いに軽減するのならあれこれ反論しない。
自分達の負担を引き受けて、より軽減する。
「飛電と言えばゼロワンドライバーの本来の持ち主もいるな」
「そうなの?じゃあ本人と会えたら返さないとね」
空はゼロワンドライバーの本当の所有者の名前を名簿で把握している。
本人の了承も得ずに勝手に使用するのは良くない。
状況が状況で仕方ない部分もある。
殺し合いに乗っていなければ必ず返却しよう。
「変身装備をもう一つ必要か」
いずれゼロワンドライバーを飛電惑人と言う人に返すとなると身を守る変身アイテムをさらに一つ必要になる。
キバットへの変身は負担が掛かるので正直、御免だ。
「それにキリトもあんま思い詰めるなよ。俺もあんなに犠牲が出て悔しいのは同じだ」
四割死者を出してしまう結論が出たとしても無念でならない。
配置場所が最悪でも言い訳していいはずなどない。
キリトが目に届かない場所で犠牲を防げずにかなり悔やんだのを察した。
空はこれ以上犠牲を増やしたくない気持ちはキリトと同等だ。
後の正史の未来では神霊種(オールドデウス)との双六ゲームで誰かが犠牲が出る理不尽さを強いられるが空白は良しとしなかったのは先の話しだ。
「やっぱり空は凄いよ。デュエルも全部把握しているし」
「凄くもないよ。俺はあの時、リリスの気持ちをないがしろにして、失言までした」
キバットと出会う前はあれほどリリスの家族や知り合いがどのような人物か談笑したにも関わらずにだ。
リリスは家族を早く保護したがっていたのに、ユキの心配で頭が一杯だったばかりに、『ユキ以外親しい人はいない』『ヴァイスフリューゲルを優先する』とリリスとの約束を白紙にするような不用意な発言でアウトだ。
924
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:19:29 ID:???0
「我ながら情けねえ」
これが白とステフ辺りだったら、適切な発言をして、上手く全体をフォローしていただろう。
「ごめん。それを言うなら俺もだよ」
もとより、ごせん像=リリスを渡されたのはキリトだ。
リリスがあんなに家族と知り合いの事を語って、空黒はシャミ子達の特徴や性格面などより詳しくなった。
桃とミカン以外は戦える力はなくて、優先的に保護すべきと把握していたはずだった。のに……
「内心はニノンに気を取られて、リリスの家族と知人を無視してしまった。俺って最低だ」
ユキの心配のしすぎでニノンの死だけを悲しんで清子と小倉の死を悔やまなかった。
薄情な自分に恥じる。
視野の狭さに怒りと不甲斐なさを自身に抱く。
渡された持ち主の責務を果たすべきなのに・・・・・
エルキア大図書館に再度、到着する前にもう一度約束を交わした。
だけど、無意識にリリスを傷つけてしまった過去は消えない。
罪悪感を払拭出来ずにお互いに黙ったまま重苦しい雰囲気が流れている。
(しっかりせんかお前らーーー!!)
その時、キバットがキリトと空の頭を体当たりする。
「「何するんだキバット」」
突然、キバットが本気でぶつけた事に困惑しそうになるが、
(リリスを傷付けたのは許されねえ。人として最低だ。既に反省しているなら、どんな理由があろうと反故にしないで義理を通しやがれ)
キバットは二人が他者の死を本気で悲しむ善人で最初に会った時に理解を示してから変わらない。
リリスに対して、悪いと思うなら、最低限の約束は守る。
渡が何度も悩みや苦悩があった時は余り力になれずに他者に解決させっぱなしだ。
せめて、今回こそはキリトと空の力になりたいと思ったのだ。伝わってくれるかは不明だけど。
「キバットしっかりと伝わったよ」
空は言葉を出さずともキバットからの説教を受けたのを見抜いている。
キリトもキバットが言いたい事が何となく伝わる。
彼は本気で叱責を受けて一瞬だけ逆転したように見えて、彼に怒られる日が来るとは。
「「リリスごめん」」
二人は謝罪し、もう一度だけ改めるが吉田姉妹を保護して、守ると心に誓う。
清子と小倉には冥福を祈った。
(もうよい)
リリスはとうの昔に気にはしない。
過ぎてしまつた行為は仕方ないのだ。
けど、二人が本気でシャミ子と良子を守ってくれるのなら、自分は安心するかもしれない。
925
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:20:23 ID:???0
この空間にいる者達の絆を上げながらも次の話題に移った。
「そのリリスを含めた意思を持つ支給品の扱いだ」
「リリスみたいにまだ野放しにする可能性もあるけどな」
これに関しては意思持ち支給品を所持する者に聞いて見るが、優先度はかなり低い。
空でさえ、望みはないだろうと諦めかけている。
喋れる支給品がいたとしても途中からリリスのような苦痛を味わう地獄しかない。
キバット、リリスらの身に起きた理不尽な扱いに同情の意を表した。
あれ以上語る事もなく、打ち切りとなる。
空はキバットの口封じは渡の現象の実験を隠蔽する為と推測していたが、放送で開示したのとリリスがキバットと同じ不遇を煽られた時点でその線はなくなった。
だから、この仮説はキリト達に話す事なく、遥か彼方に忘却する。
どっちしろ運試しで渡を故意で選定した可能性が消えないのは変わる事はない。
「後は・・・・・」
空はデイパックからデュエルディスクと蟲惑魔と蕾禍のデッキ、アプリを取り出す。
まず、アプリを起動して、デュエルのルールの各項目の再確認を行う。
ユキの取り乱しやリリスとキバットのメンタルケアをして、此処に至るまでてんてこ舞いで後回しにしていた。
項目を次々と読み終えたが、すると前に確認した時になかった項目が追加されている。
「なるほどな。そういうことか」
「不自然な点があるの?」
デュエルの再確認の中、キリトはずっと眺めていた。
いつ見ても素人に優しくない。
そしたら、空が違和感を覚えたらしいが、何かを把握したのだろう。
「ペンデュラムとリンク専用のフィールドが救済された。が、ペンデュラムとリンクのカードを片方でも一枚以上持っている奴だけらしい」
「放送で一言も告示していなかったな」
「恐らく、その二種類の召喚方法を経験者は知る奴がいないから伝える気はないだろう。その分、アプリに二種類のフィールドが表記されているが、自称神からの自力で調べろかな」
「檀黎斗らしいというか・・・・・・」
放送でペンデュラムとリンクの言及しない事には理解している。
経験者がそれを把握する者の不在で煽りを受けるのも致し方ない。
空はリンクを所持する故にこの時点ではしっくりしない感じだった。
まさかと一から調べると原因がアプリにある追加の項目で納得する。
最後尾に記載する辺り、意地が悪いのが伝わって来て、両者は呆れ果てた。
本物のデュエリストと接触した際はこの事を警告しないといけない。
大多数の経験者は全て把握した気になっているのだろうから。
「これで全部吐き出したか」
「まだ一つある。ユキの事だ。あれで解決したとは思っていない」
尊徳の説得のお陰で多少は落ち着きを見せた。
ところが不穏さを漂わせているのを察する。
ユキが以前にも増して尊徳に頼り切りになっている。
不都合はないと思われがちになるが、ユキの方が依存して来ているのだ。
空はそれが不気味で仕方ない。
「尊徳への重度のしがみつきを如何にかしたい。キリトもこれでいいと思うのか?」
「言われて見れば。それは・・・・・・・・・・・・良くは、ない」
926
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:21:14 ID:???0
仲が良いのは悪い事ではない。
きちんと考えるとベタベタしているようにも見えた。
空の言う通り、確かに一時凌ぎに過ぎない。
自分達ではユキの説得は不可能だ。
下手するとまだ生きているヴァイスフリューゲルの二人の説得も届かない可能性が高い。
「メンタルケアしてくれる大人と接触するのが第一だな」
「俺達では難しいからな」
精神をケアしてくれる人物を捜し出すしかない。
ユキのメンタルケアを先延ばしにするのもこれ以上は時間を無駄にする訳にもいかない。
参加者の接触も考察もこれ以上は遅らせる訳にはいかない。
動き出さないと本当に悔しいが、この時間帯だと更に十人以上も犠牲が増えてしまうだろう。
キリトと空が言い分を作って引っ張り出さないと現状が進展しないからだ。
裏の方針としてユキを預けてくれる頼れる大人を捜して見る。
キリトと空では入り込む余地がない。
その人物だと何とかしてくれそうだし。尊徳が一緒についていきそうになるが。
「それじゃあ始めようか。この中の調査をな」
裏の情報交換を終えてエルキア大図書館の調査を開始する。
中の空間は結構広いが二人だけで切り盛りしていくしかない。
キリトと空は行動に移し、キバットは外の入り口へと持ち場に行った。
△
あれから中を隈なく探索するも、如何やら仕掛け等はなかった。
次にこのバトルロワイアルに関する資料を見つけるべくあちこちに本を漁っていた。
調べるだけ調べた後は、成果の確認のため二人は集まっている。
「デスゲームに関連した資料はあったの?」
「微妙だ。まず見てくれ」
キリトは手掛かりはないらしい。
一方の空が見せたのは『デュエルモンスターズの歴史』と言う資料だ。
「その本って」
「非常に興味深い内容だ」
デュエルの歴史の資料の中身をキリトに拝見する。
ページを開くと素人の自分でも奥が深い物だ。
1999年2月に初めてデュエルモンスターズのカードが発売し、全てはここから始まった。
当初は公式ルールが整備されておらず、2000年にはチェーンの誕生で、ルールが成立したらしい。
日本での全国大会や国際大会を毎年行われている程、
スマホゲームでもリリースされ、手軽に対戦が可能になった。
2004年辺りから2008年まで融合召喚の全盛期で盛り上がっていたそうだ。
2008年4月以降から3年置きに新たな召喚法が次々と導入する事によってフィールドが何度も整備を変えていった。
2020年4月には追加項目に記載されていたデュエルフィールドに落ち着いたという。
※他にもぎっしりと書かれているが省略するものとする。
927
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:22:10 ID:???0
最後まで読了して、デュエルモンスターズは世界中で人気のカードゲームを知る。
自分が生まれる前から幅広く愛されている。
「この資料の元はカードゲームを利用する争いはなく、純粋にデュエルをする世界線とみた」
「それも奴は・・・・・・」
元からカードゲームを普通の遊戯で楽しむ命のやり取りとは無縁の世界だろう。
空が所持するデュエルディスクとデッキも資料にある世界線の物であろう。
他のデュエルの世界はどうなっているのか不明だけど、命の奪い合いが起きてしまった世界もあるのだろう。
最低でもあの世界だけはカードゲームを兵器に利用されていなかったのに黎斗によって干渉したせいで悪用している。
ゲーマーにとっては汚されているような物。
「カードゲームは本来なら争いに使われる道具じゃねえ。楽しい心と笑顔になれる遊戯だ」
この次元だけは悪い事に運用してほしくなかった。
だからこそ、あの世界のデュエルを汚す黎斗の打倒を強める。
「その資料を持って行くの?」
「当たり前だ。何かしら必要になるかもしれないからな」
例えデュエルモンスターズの別世界線であっても必須になる日が来るかもしれない。
一度拝見したらここに置いておくのは軽率。
続いて空はメモ帳を取り出して、ペンで白い紙に書き始める。
『殺し合いの根源に関わるかもしれないから暫くは筆談な』
『了解』
確実に主催陣営に会話を傍受しているのは確実。
駄々洩れしてしまえば脱出も水の泡になる。
本当に最重要な情報はメモ書きで済ませよう。
『まだ証拠が不十分過ぎるが、美遊についてだ』
『何で彼女が出て来るんだ?』
美遊は主催陣営に人質にされた被害者。
黎斗の最初の放送が原因で関係者が殺し合いに乗っているかもしれない危惧を抱いている。
何故、彼女の話題に筆談なのかキリトは疑問を持つ。
『俺なりに考えて見たんだ。ひょっとしたら、人質だけでは済まないかもしれねえ』
『関係者が全員殺されたら用済みで始末する事態か』
『俺も思案したが、そんな単純な話ではない』
前までは関係者に殺し合いの進行を促すだけと思っていた。
再度、考え出すようになったのはデュエルモンスターズの歴史の資料を拝見したのが切っ掛けで見直してみた。
どういう訳で美遊を公表したか密かに考察を巡らせていた。
何度も追想すると推しているようにも思える。
カードゲームが争いの道具に使われているなら、同じく美遊にも人質以外に利用価値を見出したのではないか。
『大体、放送で明かさずに裏で人質を理由に主催の二枚目のジョーカーに任命するはずだ』
『それが手っ取り早いが、その可能性は・・・』
『ほぼないだろうし、最上位の継国縁壱がいれば足りるしな』
『別の意図があるのか?』
『確証は持てねえ。最低でも良からぬ事は間違いないはず』
928
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:22:59 ID:???0
美遊を明らかにせずに最初から裏で餌を釣ってデスゲームを盛り上げるジョーカーに任名した方が早い。
美遊の関係者が主催陣営のジョーカーに役割を与えられていないのは確実。
最も、途中からの指名も否定できない。
その一方で美遊を利用して、碌でもないことを企んでいるのだろう。
それが何かは不明。
『美遊はデュエルモンスターズと同じかそれ以上の役割があるかもしれない』
『そんな.......ことが..........』
『どうしても、推しているように聞こえてしまう』
これはあくまで仮説だけど、キリトは衝撃を受ける。
空は今更ながら思い返してみるとデュエルモンスターズと同等に彼女にも推す事に引っ掛かっていた。
『美遊の件は尊徳とユキに口外するなよ』
『了解』
真相が見えるようで見えない以上言いふらすべきではない。
美遊の役割が万が一の場合、全体に影響を与える事態が起こったら面倒だ。
キリトもその意図を察して、この空間にいる者だけの機密にする。
『とは言え、あくまで個人的な考察だ。確証も持てないし、全部俺の思い違いかもしれねえからな』
キリトはALOでオベイロンの魔の手によって、アスナを捕らわれていたのを思い出す。
美遊はあの時のアスナの現状より、かなり酷いだろうと考慮する。
空の推測で捕らわれのお姫様では済まない良くない企みが起きてしまう。
依然として確証はなく、ただの人質で済めばいいが。
当然、それも良くないが。
(美遊の関係者から問い詰めたほうが早いか)
真実が本当か否かは関係者と接触すれば自ずと見えて来るかもしれない。
内容によっては取り返しの付かない事態になる前に口を割らないよう釘を刺しておきたい。
殺し合いに肯定或いは否定問わない。
ただの考え違いであればいいが。
『二つ目。このエルキア大図書館は作り物だろう』
『どこに違いがあったの?』
『ここの書物はディス・ボードの世界の文字で記述されている。だが、ここにあるのは全て日本語だ』
空の今いる世界の本は日本語とは別のイマニティ語で統一する。
異世界に召喚した直後の空白が避けて通れない壁が言葉だ。
直ぐに解読して、理解を示したのは白で、空は当初、戸惑うばかりであった。
このバトルロワイアルにあるエルキア大図書館は調べれば調べる程、全部イマニティ語ではない。
『大体、デュエルモンスターズの歴史の資料なんて物も混じっている時点でな』
『そうだね』
大方、黎斗によって面白みを増すべく投入したであろう。
大多数の参加者は日本人なので配慮したのを想像出来る。
『紛れもなく本物ではないが、原理は不明だ』
『もしかすると旧SAOの技術を盗んで一段と応用したとか』
『勿論、考えられる。加えてこの島自体が仮想現実かもな』
929
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:23:46 ID:???0
建物が鷹物なのは前々から認識している。
どのような仕組みで再現しているか現状ははっきりできない。
掠め取った技術を研究して、仮想現実も併せて発展したのを考慮する。
無論、殺し合いと言う悪い方向に向かってしまったが。
『俺はアバターだから納得だけど、空達はどう説明が付くんだ』
キリトはアバターでの参加なので、まだ分かる。
しかし、空達は生身でアバターではないので辻褄が合わない。
『まだはっきりできねえ。もっと情報が必要だ』
情報面が不足して、結論が出なかった。
多くの人達と接触して、一つずつピースを埋めて行こう。
この島の秘密と言い、美遊の件と言い、謎が沢山あるのだ。
『最後に葛葉紘汰の死は無駄じゃない』
『どういう事だ?』
キリトは訳が分からずに首を傾げて、空が続ける。
『葛葉紘汰が乱入して、可笑しいとは思わないか?』
『あっ。管理が徹底してないから何処かに隙があるのか』
空はこの件は最初の黎斗の放送直後に違和感を抱いていた。
キリトは空に言われて真剣に考えると穴があると言えなくもない。
本当の神とは言え、容易く主催のアジト(仮)に侵入していた。
つまり、鉄壁と思われた管理が攻略する希望が残されている。
何処かに脱出する隙が生まれている事を意味する。
『内部に裏切り者が手引きした線もあるだろうが無論、可能性は低い』
『いても派手な動きはできないだろうし』
主催側が一枚岩ではないにしても反逆する人物がいても監視の目もあるかもだし、下手な行動も制限されるだろう。
そもそも、存在するかすら怪しい。
『葛葉紘汰が残した手掛かりはこれだけだな』
『無駄には絶対にしない』
紘汰本人すら意図しない行動で糸口があるかもしれない。
アジトに単身乗り込めたのなら、自分達だって可能のはずだ。
彼の死が無意味ではないかは自分達が証明するしかない。
「一通り、終わったな」
筆談が終わりこれからの行動指針を考える。
エルキア大図書館の調査を終了して、D-6の狐島に直行すべき。
だけど、尊徳とユキの心の整理が着いておらず問題を先送りしっぱなしだ。
エルキア大図書館に誰かいるか僅かな願いも叶えられず仕舞い。
「自称神め。まさかとは思うが、空黒は遊ばれてんじゃねえよな」
「今までを振り返るとね」
930
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:25:16 ID:???0
出発地点が本島ではなくD-8の狐島で最悪の場所に配置され、本島に上陸したが人との接触を間に合わず、尊徳とユキを精神的に追い詰めて自分達が自力で引っ張らせるのもわざと考察や参加者の接触を遅らせる為に嫌がらせではないかと勘繰ってしまう。
悪い方面で想像しても仕方ない。
二人に調査を完了した事を伝えよう。
すると尊徳とユキがやってくる。
丁度いいタイミングで報告しようとした時、
「空とキリト、話しがある」
尊徳が吹っ切れた感じがしたのにキリトと空は察する。
図書館内を調査していた間に何があったのだろうか?
「それはね」
ユキが自慢げにその訳を語る。
△
図書館内を休みながら何時ものようなコントはあるにはある。
肝心の尊徳は少し元気がないのだ。
この場所に来てから様子が可笑しい。
なら、今度はユキが尊徳に叱責、励ます番だ。
「タカノリくんに可愛らしいボクにお悩み相談を受ける気ある〜♪」
「この僕に悩みなんてない」
「ひょっとするとカゲヤマさんかな」
ユキに正解を当てられて、図星だ。
自分の事ばかりで見落としていたが、尊徳も心の整理がついていなかった。
影山から託されてプレッシャーを感じないはずがない。
「貴様にはバレバレか」
「ボクの美しい目に魅了されて、隠し事も気付くよ」
「何処がだ」
漫才をしながらも尊徳は観念した。
ユキと長く行動したからか誤魔化せなくなっていたらしい。
尊徳は胸の内に仕舞っていた本音を語る。
「なるほどね。カゲヤマさんの死を踏ん切りがつかないのね」
「影山は僕なんかを信じて全てを託してくれた」
影山は殺し合いに巻き込まれる前は何をしていたか不明。
あの服装を見るに転落していった人生だったのだろう。
初めて出会った時はまるで禁止区域の住人みたいな印象だった。
話していく内に海斗と同等の問題児で悪人ではないのはよく分かる。
影山も下らない遊戯で死んでいい奴ではない。
後を託されたのは良いが、彼の死に吹っ切れないでいる。
「考え過ぎて、キリトと空に気を遣わせている事も自覚している」
931
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:26:20 ID:???0
図書館の調査から外れたのは自分とユキの配慮してくれたのだと。
二人が自分達のペースを合わせたり、渡の遺品を取りに行かないのも、大きく行動できないのも自分達が足を引っ張っているのも認めている。
事実、六時間以上C-8をウロウロしてしまい、時間を無駄にして人によっては反感を抱いても無理もない。
考え続ける度に時間だけが過ぎて、二人に心配させてしまった。
「キバット方が大人だと気付かされた」
同じような辛さを味わったキバットを見習ってあっさりと受け入れていたら、どれだけ良かったか。
渡と言う人物は影山より理不尽な目に遭われたのにキバットはぐずぐずせずに一歩踏み出している。
「僕は気持ちが晴れるのかな」
(ボクがここで言わないとね)
尊徳の心を晴れやかにするには自分しかない。
先程まで優勝狙いに切り替えようと皆に迷惑を掛けかけた所を尊徳に救われた。
今、ここで言わないと彼を気に入っている自分が困るし、調子が狂う。
「タカノリくんには堅物にならないでボクと一緒に突っ走るしかないね♪」
「え?」
ユキが真っ当な助言を吐く。
尊徳も驚いているが、元気を出させようとしているのが伝わる。
「カゲヤマさんに託されて、想いも継いだのなら、カゲヤマさんの分も背負って皆で突っ走る。そういうことだよ」
アユミ、ニノン、影山の分まで戦うのを決断したのだ。
先程までビンタしてまで叱責した人が、塞いだままでは駄目になってしまう。
ユキなりに一生懸命アドバイスをする。
効果はこの後、直ぐに返って来る。
「影山の分まで背負って皆で突っ走る、か。貴様のようなナルシストがいい言葉を言うとはな」
ユキからの言葉が尊徳の心が軽くなって行く
影山に後を託されたのなら、無駄にせず、全て背負って戦い抜く。
もしも、同期の薫や侑祈、そして、海斗も余計な事は考えずに背負っていくであろう。
ユキが言うまでこんな単純な答えが浮かばなかった。
(影山の意思を継ぐのは変わらないが、突っ走ろうか。気負う必要はない)
ユキに話したら、逆に心の整理が付いた。
相談してしまうだけでこうもあっさり解決した。
お陰で影山の死を引き摺らないで吹っ切れる。
その影山の想いも全て背負いながら主催の打倒を目指す。
(ユキ有難う。影山改めて、力を貸してくれ)
尊徳は内心はユキに感謝する。
口には出さないが、主催を打倒するまでユキを守ると固く誓う。
影山の事は絶対に忘れずに思い出す事もある。
ホッパーゼクターを眺めつつ、彼が託した物を使用するのは変わらない。
ボディーガードとして、落ち込んでいられない。
尊徳は気持ちが晴れて男らしい顔つきになる。
「ユキ。まさか、僕を立ち直らせる日が来るとはな」
932
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:27:00 ID:???0
先程は尊徳がユキの心を救い、立ち直った。
今度はユキが励ます言葉を貰い、引き摺る心を溶かした。
感謝のお返しで何時の間にか立場が逆転している。
「ボクだってタカノリくんの沈んだ心なんて見たくないからね」
「貴様のお陰だ」
「ついでに可愛いボクに今度こそ魅了されたでしょ♪」
「これとこれとは別だ」
ユキは尊徳がいつもの調子を取り戻せて何より。
しかも、気が晴れたからか男前になったように見えた。
中身は全然、変わらないが。
それはそれで良いかもしれない。
ユキは覚醒した姿にも一層気に入る。
「それとキリトと空に影山の死をちゃんと話す」
いい加減に影山の死の真実をキリトと空の前で口にするべきだ。
とは言え、同じ境遇故にキバットは確実に知られているだろう。
キリトと空も気付いても十分あり得る。
否、知っていて自分の口から話すのを待っている。
影山の話題に触れないのも二人の優しさ。
甘えない為にも一歩踏み出さないといけない。
(キックホッパーを使うのは最後の手段だ)
ホッパーゼクターのもう一つの機能が搭載されているキックホッパーの変身も視野に入れ始める。
影山は兄貴と呼ぶ人物を慕っていて多分、キックホッパーの方で使用しているのだろう。
兄貴と呼ぶ男は推測であるが、海斗や影山以上の問題児であるのは容易に想像できた。
仕方ないので影山の為にリスペクトもしてやろう。
それでもなお、基本的にはパンチホッパーの方の使用は永遠に変わる事はない。
(早くモニカさんとクウカさんに会いたい。そしたらタカノリくんを紹介してあげたい)
ユキはヴァイスフリューゲルの二人と合流して、尊徳と引き合わせたい思いがある。
彼に主催を打倒するまでの間だけ一時的にギルドのメンバーに入れていい。
二人なら反対意見はないだろうし、寧ろ賛成してくれる。
「そうと決まれば二人に言わないとな」
尊徳は早速、二人の元へ行く。
ユキからすれば面白い男だけど、前より活き活きしている。
解決して良かったとユキは嬉しく思うのだった。
△
「そうだったのか」
キリトと空はユキから事情を聞き終える。
ユキに悩みを打ち明けた事で尊徳は心の監獄から脱出した。
確かに尊徳は自分から相談を持ち掛けていない。
打ち明けたのは付き合いの長いユキだったからこそ。
933
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:27:49 ID:???0
「影山の事を正直に話そう」
尊徳は素直に影山の死の真相を言う。
予想した通り、影山は運試しの犠牲者になっていた。
若干、辛そうだったが、尊徳はありのままに話した。
「よく話してくれた」
「辛かったな」
尊徳は二人の優しさに身に染みる。
本当は自分が口を開くまで待っていてくれた。
もうキリトと空に気を遣わせないよう尊徳は決意する。
「心配かけてすまない。僕はもう大丈夫だ。影山に託されただけでなく、想いも背負って皆で突っ走る」
尊徳はキリトと空の前で覚悟を固める。
彼の目には辛い気持ちは残っていない。
前に進もうとしている。
(尊徳は安心だな)
空は尊徳の精神が強いものになったのに気付く。
影山の死に気持ちが晴れないままの彼は何処にもいない。
ユキのお陰で尊徳の悩みは解消したようだ。
今度はユキが借りを返して、尊徳を覚醒させる切っ掛けを作った。
「それよりも調査は終わったのか?」
「ああ、残念ながら手掛かりはなしだ」
館内を調査して、仕掛けはないのは本当だ。
ただし、キリトと筆談した情報は信憑性を上げるまで伏せておく。
特に機密情報でデュエルモンスターズ以上の役割の可能性が一段と高くなった美遊の件は言い触らしては駄目な案件だ。
まだメンタルが良くないユキには言うべきではない。
そしたら、見張りと偵察を任せていたキバットが全速力で戻って来た。
慌てた表情を作りながら。
「キバットどうしたんだ?」
(敵だ!あの全裸のムキムキマッチョが来る!)
キバットは外で見張りを任命し、役目をこなしている。
すると遠い距離で戦闘音が聞こえたのだ。
敵か味方か不明で偵察してから空に報告すると決める。
飛翔しながら進んでいくと誰かが近づいて来たので咄嗟に隠れる。
その正体は何と全裸で100%不審者と断定する男。
空達の情報からパンツ一丁の男と戦ったと聞いている。
パンツ一丁の男は何故かイライラしていて、右腕の傷が塞がっていくのを目撃した。
回復能力は二人の情報にない。
数時間で新たに身に付けたと推測するしかなかった。
方向先にこのまま行くとパンツ一丁の男はエルキア大図書館に辿り着いてしまう。
幸い、こちらには気づいていないので人知れずに空に知らせに行く。
例の戦闘音について、今は鳴りやんでいるが緊急事態で向こうに行く余裕はない。
気掛かりを残しつつ、急いで戻り、空に伝えて、今に至る。
934
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:28:34 ID:???0
因みに遠くの戦闘音をキリト達がエルキア大図書館内でも聞こえなかったのにキバットが何故、感知出来たのか?
その理由は両耳に機能するキバットソナーと言う能力で超音波によって相手の接近や周囲の情報を得る事が可能。
キバット族は特に耳が良く、父親のキバットバット二世も言える。
「敵がこっちに来るんだな。」
キバットは頷く。
来るのはパンツ一丁の男で回復能力を手に入れた事実も共有するべきだが、口封じのせいでできないでいた。
空はキバットの焦りから危険人物の接近を察した。
「俺らは急遽、ここを発つ」
「迎撃するんじゃないのか」
尊徳が疑問の声を上げるのも無理はない。
向こうからやってくるなら、放置は出来ないし、危険人物を撃退するチャンスのはずだ。
「迎え撃って戦って勝つだけじゃないぞ。キバットがこんなんでは情報が届かねえし。この場に金髪の男が襲って来たら、俺らは全滅だ」
「あっ、全体の事を考えているのか」
考えなしで逃げる訳ではなかった。
危険人物をどうにかするには情報戦だ。
金髪の男(ポセイドン)のような最強クラス相手に無策で挑んでいたら死は免れない。
力だけで勝利を収めるのは限界が来てしまう。
それを補うには情報戦が如何に重要か尊徳は再度も痛感する。
「無駄な血を流すよりは全員の安全を取る」
相手によっては犠牲が出てしまっては意味がない。
よって、逃げられるならそれに越したことはない。
わざわざ残って危険に晒す行為は言語道断。
「それでも、戦うとしても一切負けねえけどな」
現時点では不十分でも必ず倒す。
空は力強い言葉を断言する。
「逃走ルートは聞くまでもないな」
元からD-6の島に立ち寄る予定なのだ。
加えて、このチームのみ知る北東の橋に渡れる。
尊徳もユキも反対意見はない。
「あの島にもっと楽に行ける方法がある」
「モーターボートだな」
「情報交換の時に言ってたな」
「ボクの美しい顔に汗を流すのは似合わないから、賛成だね」
時間短縮するべく全員一致で歩きではなく、モーターボートで海を渡る最短ルートに決定する。
空の鋭い観察眼で地図の中央経由から行かずに済んで北東の橋の存在を確認できた。
さらにモーターボートの再利用で大幅に短縮するので活きてくる。
「全員、荷物の準備は終わったか?」
「忘れ物はないよ」
935
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:29:25 ID:???0
エルキア大図書館内で荷物をまとめて外に出て集合する。
まだ来訪者が現れる気配はない。
「それじゃ、海まで一直線で行くぞ」
空は内心は鷹物のエルキア大図書館に別れを告げる。
一同、同時に走り出す。
建物から距離が離れていく内に小さく見えていく。
走っている内に危険人物に遭遇せずに順調にD-7の砂浜に辿り着く。
空はモーターボートを海上に用意する。
「人数がピッタリ四人だな」
実は外国製の高級木材のモーターボートの定員は四人まで。
乗れる人数が今いる面子でギリギリ。
キリトと空、キバットは二度目で残りは初の航海である。
「D-6の狐島に直行するぞ」
操縦はキリトに任せて、前の座席に空、後ろに尊徳とユキが座る。
エンジンを掛けるとモーターボートを発進させる。
そのまま大海原に乗り出す。
男達による航海の旅が再び始まる。
【D-7 海上/一日目/午前】
【宮川尊徳@暁の護衛 トリニティ】
[状態]:健康
[装備]:ホッパーゼクター&ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:僕たちがゲームマスターを倒す!
0:D-6の狐島に向かう
1:ユキ、キリト、空と一緒に影山とニノン、影山の仇を取る
2:影山……お前の意志は僕が引き継ぐ
3:モニカ、クウカ、吉田姉妹、士、レイ、宝条永夢の仲間を優先的に探す
4:ウジウジ悩んで全体の足を引っ張る事はもう二度としない
5:ユキのように誰かを生き返らせるのが目的になって優勝狙いになろうとする参加者が増えなければいいが……
[備考]
※パンチホッパーとしての戦い方がわかりました
【ユキ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ボクの美しさをクロトやハ・デスにも知らしめてあげる
0:D-6の狐島に向かう
1:タカノリくんはボクが応援してあげるよ♪
2:モニカさん、クウカさんを優先的に探す……無事でいてね
3:アユミ、ニノンさん、カゲヤマさん……
4:一応、吉田姉妹、士、レイ、宝条永夢の仲間も探して見る
5:ありがとうね、タカノリくん。タカノリくんのこと、気に入ったよ
[備考]
※参戦時期は少なくともイベント『ショーグン道中記 白翼のサムライ』を経験済みです。
936
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:30:17 ID:???0
【キリト@ソードアート・オンライン(アニメ版) 】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ブラックプレート@ソードアート・オンライン、カゲミツG4@ソードアート・オンライン、ごせん像@まちカドまぞく
[道具]:基本支給品、飛電ゼロワンドライバー+ライジングホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン、首輪×2(城之内、達也)
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とハ・デスを倒す
0:D-6の狐島に向かう。ついでに『あれ』の存在を確認する
1:空、尊徳、ユキと共闘する
2:リリスのよりしろ探しと約束の為に吉田姉妹を捜索して必ず保護する
3:モニカ、クウカ、士、レイ、吉田姉妹、宝条永夢の仲間を優先的に探す
4:キバットとゼロワンの変身は空と互いの負担を減らすべく、一回の戦闘ごとに交換しながら装着する
5:ユキを預けてくれる大人を探して見る
6:変なおっさん(肉おじゃ)、PoH、謎の気狂いの変態、念のため美遊の関係者を警戒
7:金髪の男(ポセイドン)、継国縁壱を最大限に警戒
8:美遊の関係者を探しつつ、美遊の件の概要は口外しない
9:俺が探索してるうちに40人も死んだのか……
[備考]
※参戦時期はソードアート・オンライン
アリシゼーション War of Underworld終了後
※遊戯王OCGのルールをだいたい把握しました
※アバターはSAO時代の黒の剣士。
GGOアバターに変身することも出来ます。GGOアバターでは《着弾予測円(バレット・サークル) 》及び《弾道予測線(バレッド・ライン) 》が視認可能。
その他のアバターに変身するためには、そのアバターに縁の深い武器が必要です。SAOのアバターのみキリトを象微するものであるためエリュシデータやダークリバルサー無しでも使用出来ます。SAOアバター時以外は二刀流スキルを発揮出来ません。これらのことはキリトに説明書に記されおり、本人も把握済みです。
※主催陣営はSAO事件を参考にしたと推測しています。また、会場は仮想現実でその技術を発展したと考えています。
※空と空黒というコンビ名を結成しました。
※ブラックプレートが手元に戻ったのでALOアバターに変身が可能になりました。ALOアバターでは魔法スキル、妖精の翅による飛行が使用可能。
【空@ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版) 】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG、デッキ(蕾禍)@遊戯王OCG、キバットバット三世@仮面ライダーキバ
[道具]:基本支給品、高級木材のモーターボート@現実、デュエルモンスターズの歴史の本、首輪×2(御伽、遠野)
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とハ・デスを倒す。あまり人類ナメるんじゃねぇ
0:D-6の狐島に向かう。ついでに『あれ』の存在を確認する
1:キリト、尊徳、ユキと共闘する
2:主催者と関係ある人物と接触する。特に宝条永夢の仲間に会い、檀黎斗の情報を聞き出す
3:リリスのよりしろ探しを手伝う。吉田姉妹も必ず保護する。
4:謎のシステムの正体を探り、渡の殺害の件のきな臭さを解消する。そのためには多くの参加者に聞き込みか士とレイと接触する
5:キバットとゼロワンの変身はキリトと互いの負担を減らすべく、一回の戦闘ごとに交換しながら装着する
6:ユキを預けてくれる大人を探して見る
7:変なおっさん(肉おじゃ)、PoH、謎の気狂いの変態、念のため美遊の関係者を警戒
8:金髪の男(ポセイドン)、継国縁壱を最大限に警戒
9:ユニカ、クウカ、士、レイ、吉田姉妹、宝条永夢の仲間を優先的に探す
10:美遊の関係者に接触し、美遊を推す原因を聞き出しつつ、概要は口外しない
11:二つのデッキの魂を信じ抜く。一応、他のデッキも回収しておきたい
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後
※遊戯王OCGのルール及び蟲惑魔デッキ、蕾禍デッキの回し方を把握しました。
また、蟲惑魔と蕾禍を組み混合デッキの回し方と新旧のフィールドの存在も把握しました。
※主催陣営はSAO事件を参考にしたと推測しています。また、会場は仮想現実でその技術を発展したと考えています。
※キリトと空黒というコンビ名を結成しました。
※デュエルモンスターズの歴史の本を閲覧しました。内容は現実世界(リアル)関連です。
937
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:30:58 ID:???0
【リリス@まちカドまぞく】
[状態]:正常、自身への苛立ち
[思考・状況]基本方針:全員生きて脱出
0:D-6の狐島に向かう
1:空、キリト、尊徳、ユキと行動を共にする
2:吉田姉妹、モニカ、クウカを優先的に探す
3:清子、小倉……
4:桃とミカンの合流は後回し。合流したら挨拶はしたかったが……
5:よりしろを見つけ出す
6:何も出来なくなったことへの苛立ち
[備考]
※参戦時期は4巻(アニメ2期)終了後
※他者との肉体を入れ替える能力と他人の夢に入る能力は制限対象で黎斗によって不可にされています。
※黎斗によってよりしろで活動出来る時間は十分に制限されていて、二時間経過しないと活動出来ません。等身大よりしろも同様です。
※よりしろ状態でも並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すことは可能とします。ただし、少なくともキリトの支給品にきらファンでのリリス専用武器はありません
※主催により口封じされました。今後は何かキッカケがない限り話せません。きらファンで手にした力も主催により剥奪されています。
△
「あのメスガキ共め!!!!!!!」
肉おじゃはマサツグ達から逃走した後、憤慨しっぱなしだ。
其れもその筈、手を組んだメスガキ二人が裏切った挙句、改心までしてしまうという肉おじゃからすれば全く笑えない展開。
おまけにマサツグというハーレム野郎をまた仕留め損なう始末。
あの三人が憎くて機嫌が悪くて仕方ない。
八つ当たりで目先の木々を殴り付ける。
マサツグ達への負の感情からメグとコッコロに負わせた右腕の傷が徐々に回復していく。
原理は不明だが、また願ったり叶ったり。
苛立っては良くないと言い聞かせて頭を冷やし、取り敢えず休むのが第一だ。
ぶっ続けで戦闘をこなして来た。
今後はどうするかは後で考えよう。
今だけは身を潜める場所を探す。
歩き続けると見えて来たのは建物だ。
「丁度いいっすね」
身を隠す最適な建物の発見は朗報だ。
早速、肉おじゃは建物の中に入っていった。
肉おじゃは知る由もないが、最初に対峙した黒の剣士と天才ゲーマーの片割れが数分前に滞在していた事を。
八つ当たりする時間を割かなければ彼らとの再戦が叶っていただろう。
よって、肉おじゃは僅か数分後にエルキア大図書館を発見して、彼らとすれ違う。
「物凄い本の量すね」
938
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:31:46 ID:???0
本に興味のない肉おじゃでも物凄い数の本が置かれていた。
そんな事はどうでもいい。
今は束の間の休息が大事だ。
肉おじゃは元から用意されたコンビニ弁当の豚カツ弁当を頬張り、体力を付ける。
水も飲んで喉もリフレッシュする。
食事を終えた肉おじゃはこれからどう動くか。
「一から立て直しっすね」
一旦、現状をリセットしたい気持ちが強い。
あのメスガキ共のせいで全て台無しにされた。
優勝を目指す為には再度、誰かと組み直したい。
利害関係で結べる者が残っているか怪しいが。
「探して見るっすね」
そう吐いて、デイバックを漁り始める。
中身が乱雑しすぎて確認を怠っていた。
肉おじゃは単独に逆戻りする由々しき事態。
追い詰められた獲物は強力な武器を求める。
すると何かを手に取る。
中身から取り出すと木組みの大きなドアを発見する。
説明書を拝見すると肉おじゃは笑みを浮かべる。
「良い機会すね」
北東に追いやられてしまったのでどこだかドア言う道具で再始動する。
異次元の埋葬は時間制限が解けずに現時点では使用は不可。
ここから行けるルートは北か地図の中心部の二カ所。
また高確率でマサツグ達と遭遇しかねない。
あの集団にはいずれ報復したいがそれは誰かと組んでから。
そうなると一からリスタートするには丁度いいアイテム。
ただし、異次元の埋葬と同様に一度使用すると六時間は待たないといけない。
兎にも角にもこれからの動き方を決める訳で真っ先に思い浮かぶのは憎くて仕方ないあの集団。
「勿論、マサツグとメスガキ共を報復してやるっすよ!!」
いずれマサツグ達は殺すがそれには、誰かと手を組むにしてもメスガキ共みたいな目的が中途半端な奴は御免だ。
優勝狙いに確固たる者が望ましい。
希望としてはマサツグ達に恨みを持つ者同士がいい。
「そんな都合のいい話ないっすね」
一時、組んでいたメグが漏らした情報によるとマサツグを知る参加者はいないらしい。
情報共有していないと言うものあるが、鵜呑みは良くない。
もし、マサツグと敵対する者がいれば暴れ馬でも交渉次第でマサツグを殺すまで一時的に手を組める価値はある。
いないならいないで別の奴で我慢するが。
兎に角、同じ優勝狙いと組むまでは多人数で戦うのは避ける。
939
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:33:04 ID:???0
出発前に武器のおさらいをしておく。
カードが四枚と戦力は微妙と言った所か。
仮面ライダーの装備はベルトしかないが、ホッパーゼクターの脚の欠片を所持している。
何故、肉おじゃの元にホッパーゼクターの脚の部分の欠片がある理由。
実はホッパーゼクターが破壊される際に爆殺した際に一欠けらだけが肉おじゃの髪の中に引っ掛かっていた。
その事に気付いたのは食事をした後に落ち着いてから知った。
一応、ホッパーゼクターの復元できるアイテムを探して見る。
都合よくそう簡単に見つかるとは思っていないが。
ゴット・ハンド・クラッシャーなんてD-8の狐島で黒の剣士とI♥人類の男との対峙以来、かなり前に時間制限が過ぎたのにマサツグ達に使用しなかったのは勿体なかった。
渋る事はせずに思い切るべきだった。
過ぎてしまったのは仕方ないと見るか。
そう考えた後に肉おじゃは目先のドアノブを回す。
【D-7 エルキア大図書館/一日目/午前】
【肉体派おじゃる丸@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、胴体に刺し傷、右胸から左脇腹までの切創、胴体に真横の浅い切創、淫夢ファミリーへの憎悪(極大)、マサツグ、メグ、コッコロへの憎悪
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(一つのタブレット破壊)、ゴット・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG、攻撃誘導アーマー@遊戯王OCG、デス・メテオ@遊☆戯☆王(二時間発動不可)、ZECTバックル、異次元からの埋葬@遊戯王OCG(四時間発動不可)、どこだかドア@ドラえもん、ホッパーゼクターの脚の部分の欠片
[思考・状況]基本方針:優勝して淫夢の歴史から自分の存在を抹消する
1:淫夢ファミリーだけは絶対にこの手で殺す。特に野獣先輩、野獣死すべし
2:黒の剣士とI♥人類の男は次に出会ったら絶対殺してやるっすからね……
3:遊戯王カードはこの決闘で大事すね……
4:できれば他の優勝狙いの参加者と組みたいすね。
5:マサツグも、あのメスガキ共(メグ、コッコロ)も許さないっすからね。
6:ホッパーゼクターを復元する道具を探して見る
[備考]
※遊戯王カードの存在を知っていますが決闘者じゃないのでルールなど詳しくありません
※本来の名前を思い出せません
※心意により憎しみなどの負の感情で身体能力と肉体強度が上がり、その間は自動的に徐々に回復します
『支給品紹介』
【ブラックプレート@ソードアート・オンライン】
宮川尊徳に支給。
旧ALOでキリトが使用していた巨大な片手直剣。
キリトが手にするとALOアバターへのチェンジが可能となる。
【飛電ゼロワンドライバー+ライジングホッパープログライズキー@仮面ライダーゼロワン】
キリトに支給。
プログライズキーとセットで支給。
本来の使用権限は飛電インテリジェンスの社長のみのはずだったが、黎斗と茅場の合同作業で全てを取り払い、誰でも仮面ライダーゼロワンに変身可能。
【蕾禍のデッキ@遊戯王OCG】
宮川尊徳に支給。
属するモンスターは昆虫族、植物族、爬虫類族の三種族に構成されている。
リンクモンスターには自己蘇生が可能。
ただし、上記の効果を使用すれば三種族のみの縛りが課せられる。
唯一、デュエルディスクとセットで支給されなかったデッキ。
【どこだかドア@ドラえもん】
ひでに支給。
あべこべ星の秘密道具でどこでもドアと異なり、ランダムな場所に行ける。
作中では断崖絶壁に出てしまったが、本ロワでは空中や断崖に出ないように調整されている。
一度の使用で六時間は制限される。
940
:
◆2fTKbH9/12
:2025/06/27(金) 01:37:46 ID:???0
投下終了します。
タイトルは
>>905
〜
>>918
まで 涙はみせない(前編)
>>919
〜
>>939
まで 涙はみせない(後編)
とします。
941
:
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:04:49 ID:77dkwOig0
投下お疲れ様です。自分も投下します
942
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:08:24 ID:77dkwOig0
人間、生きていれば嘔吐を覚える程気持ちの悪い光景に出くわす事は多々ある。
乗用車に轢かれ内臓をぶち撒けた、猫の死骸だとか。
生きたまま大量の蟻に群がられ、捕食される哀れな蚯蚓だとか。
やけに凝った特殊メイクでグロテスクさを演出する、スプラッター映画の一場面だとか。
顔を顰め、消化前の飲食物がせり上がった。
そういった経験は誰にでもあるだろうし、かくいうみかげだって覚えがないとは言わない。
では今感じているのもそういった、日常生活で味わう不快感の一種だろうか。
そんな訳が無い。
『普通』じゃない事情を内心抱えていても、こんな『異常』に出くわすなんて有り得ない。
「ンンン、お初にお目にかかります。突然の無礼な訪問は寛大な心でご許し頂きたい。拙僧この通り重体身故に、落ち着ける場所を探し歩き辿り着いただけでして」
鳥肌が立つ程に気持ち悪く、喉が潰れる痛みを錯覚するくらいに恐ろしい男だった。
数千数万数億の毒虫が集まった如き醜悪さ。
異様な長身も、奇抜な衣装も、端正な甘い顔立ちも。
全て人のソレから逸脱していない。
星狩りや上弦の壱、一度見た怪物達と違い異形の特徴はどこにも見当たらない。
なのにこの男を人の枠に当て嵌める事へ、尋常ならざる抵抗感を抱く。
「うぁ……ひっ……」
後退り、目を逸らそうと努めるも出来ない。
脳が、或いは本能が強く訴えている。
コレから目を離したら最後、捕食され骨の髄まで溶かされるだけ。
無慈悲に噛み砕くのではない、時間を掛けてゆっくりと腐り果てる。
死へ希望を見出す程に凄惨な未来が待ち受けていると、みかげ自身の声がそう叫んでいた。
「無礼だって自覚してるなら、さっさと回れ右するべきじゃないかしらね?」
みかげ単独であれば棒立ちで怯えるままだったろうが、生憎そうはならない。
男の存在で蝕まれる空気を断ち切り、冷たく睨み返すは覇瞳皇帝。
ランドソルでの決戦において、王手を掛ける手前まで行った魔人。
得体の知れない侵入者だろうと、たじろぐ軟弱者に非ず。
943
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:09:15 ID:77dkwOig0
見えぬ火花が散り、フェントホープの一室は緊張感の高まりを見せる。
言葉一つ、仕草一つで怒りを煽ればその時は。
夜空色の聖剣が電光石火の速さで以て、首を刎ねるに違いないと確信を抱かせる。
「これは手厳しい。ええ、ええ、確かに確かに最もな御言葉」
なれど、相対する男が浮かべる貌に恐怖は存在せず。
瞳を細め、口の端が弧を描く。
まるで自身の命が危ぶまれるこの状況すら、楽しんでいるかのように。
「ここへは単に一休みで訪れただけのつもりでしたが――やめました」
「やめたのね」
「はい、あなた方を見て。単刀直入に伺いますが、ンン、拙僧を使ってみる気はありませぬか?」
ピクリと、肩眉が動いたのを男は見逃さない。
あえて指摘はせず、誌を詠むようにスラスラ続ける。
「佇まいを見れば、無能な猿でも分かりましょうや。使われるのでなく使う側、従うのでなく従える側、見上げるのでなく見下ろす側。
であるならば対等な同盟などとんでもない!この身を王の駒として捧げるのは、至極当然のこと」
「…そう、流石にそれくらいは理解してるのね」
長ったらしく芝居がかった内容はさておき。
掻い摘んで言えば、部下として己を売り込んでいる。
対等な同盟を持ち掛けて来るだとか、こちらを隷属させようだとか。
そう言い出すのであれば、返答は剣か魔法だった。
だが自ら首を垂れ従うのなら、一旦は耳を傾けるのも吝かではない。
どうせ建前に過ぎないとは分かっている、それを踏まえて見極めるのだ。
利用、静観、排除。
三つの内どれを選ぶかを。
944
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:10:37 ID:77dkwOig0
「ではまず簡単に、拙僧の仕事ぶりをお見せすると致しましょう」
笑みを崩さぬまま、視線は皇帝から傍らに転がる獣へ。
プリンセスナイトの力で召喚・使役した魔獣。
侵入者の男を見付けるや襲い掛かったのが数分前。
引き裂く爪は掠めさせてももらえず、指先一つで躾けられ今や置物同然。
魔獣の額へ指先が当てられ、すぐさま異変は起きた。
山の如く盛り上がる四肢、より鋭利で研ぎ澄まされる爪と牙。
倍にまで膨れた体躯は巌を思わせる、強靭なモノへ変貌を遂げる。
「とまあこのように、少しばかり栄養を与えてやりました。貧相な飢え細った駄犬に、番犬は務まりますまい」
簡単に言ってのけた男が何をやったかは、皇帝にも即座に分かった。
魔力を流し込んだ強化、文字にするならそれだけで済む。
魔法に覚えのある者であれば、誰でも可能。
などと今の光景を見て言葉に出す人間がいたら、皇帝は無能と断じるだろう。
籠められた魔力の何たる邪悪さ、何たるおぞましさ。
栄養だなんてどの口が言える、呪いを掛けたに等しい。
魔獣を蝕み、尚且つ消滅しないギリギリを一瞬で見極めた上での術の行使。
並のギルドの者十数人を、これ一匹で10秒も掛けず餌に変えられる。
複雑な術式も長ったらしい呪文も必要としない、男にとっては会話の片手間で行えるのだ。
「成程ねぇ……」
少なくとも術師として、男の実力は非常に高い。
感心と、それ以上の警戒を密かに宿す。
945
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:11:27 ID:77dkwOig0
「ンンンン、我ながら良き仕事ぶり。如何ですかな?貴殿が望むのであれば、足元へ眠らせた檻の中の獣達にも同様の活力を与えられますが」
「あら、気付いてたのね。いつの間にコソコソ嗅ぎ回ったのかしら」
「少々鼻が利くものでして。どうかお気を悪くせず、拙僧の優れた面の一つと受け入れて頂ければ何より」
一体何を指しての提案か、聞き返す必要も無い。
地下で飼育された複数の異形、魔法少女の成れの果て。
魔女の存在をいつ知ったのかという疑問も、男が秘めた力を考えれば不思議じゃない。
文字通り、感じ取ったのだろう。
分厚い床を幾枚重ねたとて無意味、漏れだす魔力を意図も容易く察知した。
「…一つ聞いても良いかしら。あなた、このゲームで何を望んでるの?」
男が本心から自分に忠誠を誓う気が無いのは、最初から分かり切っている。
それは別に構わない、自分だって信頼だ絆だのという類は求めてない。
こちらを利用し尽くす算段なら、逆に利用し使い潰す。
とはいえ最低限、ゲームにおける基本的なスタンスは把握しておきたい。
生存優先か、自称神の持つ力が望みか、優勝を目指し最終的には自分も手に掛ける気か。
「悪意の行くまま気の向くまま、衝動に逆らわず欲望に身を委ね、この地で産声を上げる地獄を見届けたい。ただそれだけでございます」
「…………」
猫のように細めた瞳、その奥へ爛々と輝く愉びを秘め。
口遊んだ内容に、皇帝は言葉無く理解した。
この男にとって意味があるのはゲームの結果に非ず、過程だ。
生きて帰る、或いは願いを叶えるというゴールを男は見ていない。
結末へ向けて伸びた道、そこでどれだけ悪を為すか。
産み落とした地獄がどこまで広がるか、それこそが望み。
利害で繋がった星狩りとは別の意味で、警戒を抱かざるを得ない男を――
「……良いわ。使われたいなら望み通り、仕事を幾つかあげる。但し、あなたの『お遊び』で思い通りに動かせると考えてるんだったら――言わなくても理解できるでしょう?」
「肝に銘じておきましょう。なに、損はさせませぬ。どうぞ大船に乗ったつもりで、ご期待くだされ」
提示された選択肢の内、選んだのは手を組むこと。
最もハイリスクハイリターンであり、付き纏う危険性を考えなかった訳ではない。
己の腸に毒虫を飼う、いつ中から腐らせられてもおかしくない。
だがそれを踏まえても、得られる旨みは少なくないだろう。
自分を以てして一筋縄でいかないと言える、術師の腕前。
人手不足が否めない現状を鑑みれば、引き入れるのは全くの悪手とも言い切れまい。
使えるものは使う。
心砕かれた人形でも、『普通』になり切れなかった少女でも。
星を喰らう地球外の種族や、辺獄を名乗る悪しき陰陽師だろうと。
食らえると思い込んでいるならば、高を括っていればいい。
愉悦を満たす肴に過ぎないと見下すならば、必ずや後悔を抱く事となる。
懐へ入れた毒虫すらも使い潰し、望みを叶えるまでだ。
946
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:12:07 ID:77dkwOig0
○
大丈夫なのだろうか。
リンボと名乗った男との協力を決定し、粗方の情報を開示し終えた後。
今は別室へいる異様な風体の術師を思い浮かべ、同じ言葉が幾度も頭を掠める。
陛下の判断が間違いだとは思わない。
自分よりもずっと強く、頭も良い。
それでいてこちらを気遣い、『普通』じゃない事情を知っても寄り添ってくれる。
殺し合いで最も信頼を向ける『彼女』が決めた事へ、反対する気は起きない。
下手に異を唱え、落胆や失望を向けられたくないとの思いもあるが。
だとしても、リンボと手を組んで本当に良かったのかとの不安は尽きない。
エボルトの時と同じだ。
我が身で人ならざる存在感を感じ取り、根本的な相容れなさを心の内に抱いた故。
薄っぺらな関係だろうと、繋がりを得てしまったのは。
果たして正しいと言えるのかどうか、みかげは素直に頷けなかった。
(それにあいつ……)
情報開示が済み、去り際に放った一言がいやにへばり付く。
細めた瞳で、墨汁が溜まったように真っ黒な目で射抜き言った。
若人への助言と嘯き、心底楽し気に。
――『何一つ得る事の無い生還を望むなら、それも良いでしょう。ですが取り戻した上で帰還したいのであれば、餓狼の如き飢えを抱きなされ。為さずに帰った先があなたの救いというなら別ですが』
澄んだ水へ毒が垂らされるみたいに。
気味が悪いと感じる程、リンボの言葉が体中へ染みこむ。
このまま陛下に協力して、殺し合いも全部終わり自分の家に帰る。
それから何事も無かったように学校へ行って、退屈な授業を受けて。
新しくアタックしてくる男子と、付き合ってみたりだとか。
悪趣味なゲームなんていずれは忘れるような、変わらない日々を過ごす。
947
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:13:04 ID:77dkwOig0
出来る訳がない、何食わぬ顔で日常に戻れるなんて有り得ない。
自分だけが帰って来て、司はいないのを撫子にどう説明すればいい。
神様が始めた殺し合いに巻き込まれ、運悪く死にました。
そんな説明で納得するか否か、どう考えたって後者だろう。
二度と司が戻らないのを知りながら、彼女の弟が必死に探し回るのを後ろめたい気持ちで見続けるのか。
三人組が最悪の形で壊れ、仕方ないで済ますのか。
司の死を背負って生きていく?
まだ死んでいない人達や、元の世界の家族と友人の事も考えろ?
間違った方法で司が戻って来ても、悲しませるだけ?
「……っ」
若しかしたら、そういうありきたりな説得を受け入れる者もいるのかもしれない。
けどみかげには無理だ、分かりましたとあっさり頷けない。
誰かを殺したり自分が殺されそうにならないだけで、生きて帰った場所も結局は地獄だ。
腹立たしい正論を翳し、永遠に一人が欠けた世界へ帰れと促され。
言った奴は正しさを貫いた気になって満足だろうが、自分にとっては堪ったもんじゃない。
未だ覚悟は決まらない。
騎士の少女と同じ迷いのない言葉など、言えそうもないがしかし。
壊れる前の三人組がずっと続く光景が、先程以上に胸を焦がしていた。
「……」
顔を歪ませるみかげを、光の宿らない瞳でココアは見つめる。
心配する素振りはない、声を掛けようとも思わない。
砕かれた心へ暗示を受けた彼女は、人形も同然。
カイザーインサイトの意のままに動く、都合の良い道具に過ぎない。
しかしほんの僅かに、壊れた心へ異物が触れた。
先の放送で告げられた、二人の友の名前。
暗示の影響下にある以上、特別大きな反応も見せない筈のソレらに瞳が微かに揺れ動いた。
意識を再び取り戻す効果はない、破片となった心を組み立て直すなど以ての外。
なれど大切な友達が自分の知らぬ所で命を落とした事実は、確かにココアへ届けられた。
これが彼女にとって、再起の切っ掛けになるのか。
或いは、同じく耳に残った悪しき陰陽師の言葉が更に彼女を堕とすのか。
太陽の如き煌めきを失った少女自身に、知る術はない。
948
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:13:59 ID:77dkwOig0
○
「ンンン、禍を転じて福と為すとは正にこのこと。いやはや、ここまで運んだミカン殿には感謝してもし切れませぬなあ」
感謝の二文字が微塵も宿らない声色で、くつくつと笑う。
ミカンの呪いが予想以上の効果を発揮し、先のエリアからは大きく離された。
Phoは勿論、最上達との合流もすぐには叶うまい。
とはいえ結果的には良かったと言えるだろう。
また一つ、殺戮遊戯での楽しみが増えたのだから。
カイザーインサイトと手を組んだのに、深い理由はない。
ただ言葉を交わし、立ち振る舞いをこの目で見て。
何よりも、自我らしい自我を奪われ従わされる傀儡へ確信を抱いた。
殺し合いには乗っておらずとも、善意で動く者とは程遠い。
欲する物を手中に収め、自身にとっての望む未来を実現する為の犠牲を厭わない。
通り過ぎた道に無数の屍を転がし、地獄を生み出す者なのだろうと。
それは紛れもない、リンボが求める光景に他ならない。
故に協力を申し出たのだ。
同時にあの手の輩は対等な同盟ではなく、傘下に下った方が話がスムーズにいくと身に染みて理解してある。
下総国や異聞帯で、表向き妖術師や王に仕えた経験が活きた。
尤もカイザーインサイトと繋がりを持ったからといって、最上との関係を白紙に戻すつもりもない。
あの男の『世直し』の行く末はもとより、まぞくの少女が如何なる形で孵化したか。
己が目で見届ける方針は変わらず、頃合いを見て合流に動く気でいる。
「ですが拙僧と言えども、即座の合流はちと難しい。ここは次に備え、身を休めるのが吉と見ました。貴殿もそう思うでしょう?」
にこやかに話しかけられ、相手は無言。
怪しく輝く瞳をぶつけるのみで、一言どころか一文字も口にしない。
仮に口を開いたとて、会話になろう筈もないが。
リンボと同室にいるのは、ココアが召喚した魔獣。
別室にリンボを一人きりにし、よからぬ真似をされるのを防ぐための監視役。
無論、たかが魔獣一匹ではリンボ相手に足止めにすらならない。
カイザーインサイトも承知の上でここに置いた。
異変が起きれば即、召喚者であるココアが魔獣とリンクしている為に気付けるのだから。
949
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:15:50 ID:77dkwOig0
魔獣との一方的な会話は早々に打ち切り、床へ手早く陣を描き座り込む。
フェントホープを訪れたのは興味本位だけでなく、傷を癒すのに最適な場所も理由の一つ。
施設そのものが一つの巨大なウワサな特性上、ホテル内部へ漂う魔力は少なくない。
加えて地下に飼育された魔女の存在もまた、非常に都合が良い。
ケージ越しに垂れ流す嘗て魔法少女だった者達の怨嗟、苦痛、絶望。
負の感情を煮詰めた瘴気とも言う力は、健常な感性を持つ人間からすれば毒。
しかし外法を以て悪を為す、辺獄を名乗る陰陽師には実に相性が良い。
陣が起動し瘴気を吸収、自らの魔力に変え消費した分を回復。
更には治癒の術式を己へ施し、深く裂かれた箇所を塞ぐ。
傷と魔力、両方を纏めて回復出来るのだから一石二鳥だ。
魔女を始め内部の仕組みも中々どうして悪くない、先に見付けていれば恰好の拠点になった。
「……ま、流石に何もかもとんとん拍子とはいきませんか」
傷を癒しながら自身の異変に肩を竦める。
治ってはいるがやけに遅い、本来に比べ術の効きが微妙に悪い。
ついでに言うと、消費される魔力が普段より幾分多いのも気のせいではあるまい。
異星の神との接続が断たれたと言っても、リンボは三体の悪神を喰らったハイサーヴァント。
内へ秘めた魔力の総量は、並のサーヴァントと一線を画す程に膨大。
複数の術の行使に宝具解放加えたとて、十分余裕があったろうに。
難しく頭を捻るまでもない。
式神に大きく制限を施されたのと同じ、いらぬ枷を付けられたということか。
余計な真似をと思わないでもないが、長々と引き摺っても仕方ない。
今は次なる舞台が始まるまでの準備期間、待ちに入り回復に専念すべきだろう。
ゲームにおいて、リンボは上位に食い込む強者であるが唯一無二の最強に非ず。
例えば、傀儡と成り果てた日輪。
例えば、人の身ながらオーバーロードへ進化した強者。
例えば、可能性を引き寄せ盤面を大きく覆す決闘者。
例えば、創世の剣士の力を得た覇瞳皇帝。
例えば、新たな絆を得て、守りたい者を守らんとする少年。
リンボであっても相応に手を焼き、二度目の敗北を刻み付けられる者が複数存在する。
950
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:16:35 ID:77dkwOig0
しかし、だ。
そういった者達ならリンボを容易く倒せると断言するのは、否と言わざるを得ない。
アルターエゴ・リンボ…蘆屋道満を甘く見過ぎた、無知蒙昧の戯言に他ならない。
誇りを穢し、
信念を砕き、
慈愛を嗤い、
絆を陵辱し、
魂を堕とす。
下総国に血の河を流し、剣鬼荒ぶる地獄へ変えたのは誰か。
創世と滅亡の担い手を唆し、インド異聞帯を正しさを突き詰めたディストピアに変えたのは誰か。
事、内より蝕み腐らせるのにかけてリンボは随一。
逸る衝動を抑え、静かにその時を待つ。
新たな地獄が顕現する、遠くない昏き未来を。
【C-1 ホテルフェントホープ/一日目/昼】
【カイザーインサイト@プリンセスコネクトRe:Dive!】
[状態]:健康
[装備]:聖剣ソードライバー&刃王剣十聖刃&ブレイブドラゴンワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品一式×2、シュークリームケーキ(少量消費)@ななしのアステリズム、キノコカンセット(キノコカン、スーパー、ウルトラ)@スーパーペーパーマリオ、ランダム支給品×0〜3
[思考]
基本:あの神を名乗る男は気に入らない、出し抜く手段を考える
1:壊れたこの子(保登心愛)は使い物にならなくなるまで利用する。
2:みかげも駒として利用。どこまで使い物になるかしらね。
3:なるべく使える駒を集める。
4:あの子(キャル)も連れ戻すべきか。
5:この忌々しい首輪もなんとかしたい。エボルトの同行者には期待し過ぎず、こっちでも解除方法を調べる。
6:エボルトを利用。2回目の放送後に桜ノ館中学校で合流。
7:リンボを利用。害になると判断したら排除。
8:美遊・エーデルフェルトを知る参加者を探してみるか否か。
9:フェントホープの地下にあったモノの使い道も考えておく。
[備考]
※参戦時期は第一部第13章第三話以降
※覇瞳天星に関する制限は後続の書き手にお任せします
【保登心愛@きららファンタジア】
[状態]:操り人形、忠誠(カイザーインサイト)、プリンセスナイト(カイザーインサイト)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1、ラーの翼神竜@遊戯王デュエルモンスターズ
[思考]
基本:陛下に従う
1:―――
[備考]
※参戦時期は第二部五章第20節から
※カイザーインサイトによりプリンセスナイトとなりました。魔物の操作能力も使用可能です。
【琴岡みかげ@ななしのアステリズム】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大・暗示の効果である程度緩和)、焦燥、暗示の効果継続中、ニノンの死へ動揺
[装備]:聖剣ソードライバー&雷鳴剣黄雷&ランブドアランジーナワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:
[思考]
基本:早く帰りたかったけど、でも……
1:司を生き返らせる……?。
2:陛下を手伝う。陛下に付いて行けば大丈夫、だよね…?
3:ニノン、本当に死んじゃったんだ……
4:このまま生きて帰ったって……
[備考]
※参戦時期は第五巻、鷲尾と喧嘩別れした後
951
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:17:32 ID:77dkwOig0
【キャスター・リンボ@Fate/Grand Order】
[状態]:ダメージ(大・回復中)、疲労(中)、魔力消費(大・回復中)、上機嫌
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×1、ランダム支給品×0〜2(シャミ子の分含む)、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG、空飛ぶじゅうたん@ドラえもん、小倉しおんの首輪、フグ田タラオの首輪
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:最上啓示、悪霊の集合体であろうかの御方の行く末、見届けて差し上げましょう。
2:吉田良子、どう利用してやりましょうか……ンンンンン。
3:里見灯花、まあそちらは式神の方に任せておきましょう。
それはそれとしてでゅえるもんすたーずの情報はありがたや。
4:吉田優子、こちらで目覚めを促してやるのもまた一興。
5:覇瞳皇帝、はてさて如何程の地獄を生み出すか。
6:ええ、ええ。真に最高にて。
7:果報は寝て待てと言います故、暫し休息に入らせて頂きます。
[備考]
※参戦時期は地獄界曼荼羅、退場後。
◆◆◆
死体一つと散乱した鉄屑。
支給品も首輪も回収済、生きてる参加者は自分達以外に見当たらない。
逃げた連中が戻って来る気配もなく、騒ぎを聞き付けやって来る者も同様。
待っていればその内現れるかもしれないが、限られた時間を浪費してまでやる意味がどこにあるのか。
留まり続ける理由より、さっさと移動する理由の方が遥かに多い。
一度は言葉を交わし、情報交換を行った青年。
自らの手でスクラップへ変えた機械生命体。
そのどちらも、灯花の中では既に気に掛ける価値のない存在。
路傍の小石同然に、視界の端に映ったとて何の反応も見せない。
あってもなくてもどうでもいい、その程度のモノとしれ背を向ける。
「お待ち下され灯花殿。そちらへ向かうのは控えた方がよろしいかと」
「なーに急に?」
移動開始の寸前で出鼻を挫かれた。
小首を傾げ振り返ると、見上げる程の長躯を持つ怪人物が一人。
リンボの瞳は自身の腰よりも低い灯花ではない、遠く離れた何処かへ向けられたまま。
笑みは崩さず、しかし思案を重ねるように顎を擦っている。
いらぬ軽口や揶揄いの類であれば切って捨てるも、様子を見るに違うらしい。
耳を傾ける姿勢になったのを察し、移動を止めた理由を口にする。
952
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:18:21 ID:77dkwOig0
「ここより北上した場所では現在、大災害もかくやの天候となっておりまする。迂闊に近付こうものなら、行き先不明の空の旅を味わう羽目になるでしょう」
「何でそんなことが……あーそっか、『あなた』が直接見たのかにゃー?」
一つ離れたエリアの状況を何故知っているのか。
抱いた疑問は即座に解消され、リンボからも肯定が返って来る。
今この場にいるリンボではない、式神を操る本体のリンボがその大災害とやらに巻き込まれたのだろう。
式神が見聞きした情報は本体に伝わり、その逆もまた然り。
こういった面で非常に便利だと改めて思いつつ、より詳しく事情を聞く。
「幸か不幸か、灯花殿の知己の者はおりませぬ。今現在あの場に留まっているのは、暴風雨を巻き起こした娘が一人。
ンンンンン!何とも恐ろしい!只人の身には有り余る呪いを秘め、災厄を吐き散らす様の何たる痛ましいことか!このリンボをして、憐憫の念を抱く他ありませぬぞ!」
「どうせあなたが原因なんでしょ?」
「まあそれは、はい」
オーバーなリアクションを取ってはいるが、口元には明らかに弧を描いてあった。
聞いてみれば案の定、あっさりと頷いたではないか。
予想できた答えとはいえ呆れ顔を作り、件の娘にご愁傷様とだけ胸中で伝えておく。
灯花も灯花で、心の底から気の毒に思っている訳ではないが。
「で?そのかわいそーな人以外は、あなたの言ったようにお空の旅の真っ最中ってこと?」
「そうなります。生者も死者も関係無く、はてさてどこまで飛ばされたのやら。こればかりは拙僧にも予想が付きませぬので。
ああ、因みに良子殿と最上殿は一時的に別行動中故、心配は不要かと」
「ふーん……」
素っ気ない態度を取るも、内心では良子の無事に安堵が浮かぶ。
流石にいろはやねむとは比べるまでもないが、出来れば死んで欲しくないと思ってるのも本当。
今頃どうなってるか分からないけど、姉との再会が叶っていれば良子にとっても何よりだろう。
肝心の姉との再会が如何なるものか。
既に役目を終えたと見なしている事を、馬鹿正直に術師は教えない。
吉田優子の開花を促す贄に選ばれたなどと、知る由もなく。
わざわざ台風の被害地へ突っ込む物好きでない以上、ここはリンボの警告を素直に受け取る。
式神がこうして存在するのだから、どうせ本体もどこかでピンピンしてるに違いない。
953
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:19:26 ID:77dkwOig0
回れ右して南下、E-5内の住宅地へ移動。
先程は戦闘で気を回す余裕も無かったが、現在位置は放送で未回収の支給品があると伝えられたエリア。
時間を考えると持ち去られた可能性が高いとはいえ、念の為調べても損はない筈。
「まーそこまで都合良くはいかないよねー」
収穫があったかどうかで言えば、つまらなそうに言う灯花の反応が答え。
年季の入ったアパートの前に転がる、首と胴体が泣き別れした死体。
支給品も首輪も見当たらず、先を越されたのは明らか。
殺された青年がどこの誰かとか、そういった情報には一切興味がない。
得る物が何一つ無いなら、留まる理由も皆無。
尤も、もう一人には違うようだった。
「ふぅむ……無駄足と肩を落とすには些か早計やもしれませぬ。この者の亡骸は、我々で有効に使って差し上げましょうぞ」
「えー?もしかしてあなた、死体さんで遊ぶ趣味でもあるのー?」
眉を顰める灯花へ気を悪くした風もなく、何をする気かを説明。
訝し気な顔をされたが、反対は口にしない。
成功すれば自身の役に立つのが事実故、リンボの好きにさせる。
異を唱える者がいないのであれば、躊躇を抱く必要も無し。
指先で五芒星を描き、青年の死体に術式を施す。
更には自身の術のみならず、二つの呪物を使用。
三つを掛け合わせ、死体を泥の孔の如き暗黒へ沈み込ませた。
ややあって闇が晴れ、横たわった死体へ即座に変化が起きる。
とうに命が抜け落ち、抜け殻と果てた筈が何という事か。
掌を地に付け起き上がり、自らの両足で冷えたアスファルトを踏みしめた。
独りでに動いただけでなく、つい数秒前までとは外見も異なっている。
青白い死人の肌はくすんだ灰色へ。
生前に失った左腕が生えるも、人のソレとは到底言い難い。
肉の突起が幾重にも絡み合った、正しく異形の部位。
端正な顔立ちは変わらずとも、空洞の如き瞳に光は永遠に宿らない。
954
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:20:15 ID:77dkwOig0
「ンンンン、もう少し手を加えたかったのですが…今の拙僧ではこれが限界ですか」
「でもわたくし達の言う通りに動くんでしょー?とりあえず、使い物になるなら良いんじゃないの?」
仕上がりへ不満を零すリンボへ言葉を交わし、物言わぬソレを見上げる。
嘗て櫻井戒と呼ばれた青年は、今や忠実な屍兵と化し沈黙を保っていた。
そも、蘆屋道満とは平安の世にて名を知らしめた陰陽師。
多岐に渡り呪術や妖術を使いこなし、その悪辣さでカルデアとも決して浅くない因縁を生み出した。
死者の使役程度朝飯前、欠伸交じりにやってのける。
とは言うものの、異界の殺戮遊戯においては勝手も異なる。
膨大な魔力総量及び、術の出力への制限。
本体でさえこれ程の枷を付けられたなら、式神は更に弱体化が著しい。
死体に術を掛けた所で無意味だったろうが、当然リンボも分からない筈がない。
自分一人の術で足りないのであれば、補強可能な呪物を使えば良いだけのこと。
一つはノロ。
荒魂の正体であり負の神聖を帯びた物質と、リンボの相性は言わずもがな。
もう一つは灯花から譲渡された支給品。
戒の右腕に握られた巨大な戦斧、名を暗黒斬という。
闇に堕ちた魔戒騎士がホラーを喰う際に用いられる得物へ、蓄積された陰我は並大抵の量に非ず。
人間にとっては致死相当の猛毒すら、むしろ好都合と術式へ組み込んだ。
結果生まれたのが目の前にいる屍人。
聖遺物に食われた、櫻井の血筋の成れ果て程の力はない。
まして自我なき骸故に、この地で日輪を相手取った戦闘技術も当然の如く劣化。
なれど不足した分はノロと暗黒斬、それぞれ異なる呪いを授け形となった。
デュエルモンスターズを使う灯花の前衛をこなすくらいなら、問題無いだろう。
手に入れ損ねた支給品と首輪の代わりに、役立つ駒を一つ調達。
得られた成果は悪くない。
名も知らぬ青年の死体を道具同然に扱うのへ、今更罪悪感があろう筈もなし。
戒と殺し合いで縁を結んだ者が見れば何を思うかなど、心底どうでも良かった。
955
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:20:51 ID:77dkwOig0
「ああ所で、ついさっき手に入れたばかりの情報なのですが」
ポンと掌を打ち、わざとらしく思い出したと言わんばかりの態度で告げる。
「いろは殿がどこへ行ったのか分かりました」
「――――――」
世間話でもするかの気軽さで、灯花が絶対に無視できない名前を口に出した。
弾かれたように振り向き、自身を見つめる幼子の瞳。
苛烈と言っても過言じゃあない執着が宿ってるのを、果たして本人は気付いているのか。
成人男性でも怯み兼ねない眼力を、涼しげな表情で受け流す。
自身の態度が灯花を無駄に焦らすと自覚した上で、ゆっくりと口を開いた。
灯花に語った内容は別のエリアで、本体のリンボがカイザーインサイトから聞いた情報。
フェントホープでの争乱と、どうにか逃げ延びた者達。
内の一人の特徴は間違いなく、環いろはと合致する。
マギウスの翼の拠点が施設として再現されたのも驚きだが、それ以上にいろはの行方が灯花の思考を染め上げた。
時間を考えても、フェントホープ周辺のエリアから大きくは離れていない筈。
運が良ければ向かう道中で、ばったり会う可能性だって低くない。
遠のいた再会が再び近付く予感が生まれ、意識せずとも肌が熱を帯び、
「それともう一つ。いろは殿のお傍には六眼の御仁……黒死牟殿もおられたと、そう聞きました」
忌々しい内容へ、自分のどこかが軋む音が聞こえた。
「何でも灯花殿の言う『ふぇんとほおぷ』なる建造物。そこから脱出する際、いろは殿の手を引き去って行ったと。何とも甲斐甲斐しいではありませぬか。灯花殿がご不在の間、かの者がいろは殿を――」
「誰もそこまで聞いてないんだけど」
「これは失礼」
延々と垂れ流される戯言を、温度の失った声で黙らせる。
自分がどう反応するか、分かり切った上でほざいたのは疑う余地がない。
一々本気で捉えるのは無駄、適当に聞き流せばいい。
これまでだってリンボの軽口にはそうして来たし、対応はこの先も変わらない。
956
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:21:58 ID:77dkwOig0
だけど、覆せないその事実は。
今尚いろはの隣に、あの異形の侍が我が物顔で居座るのには。
自分以外の、魔法少女ですらない化け物がそこへ存在するのは。
掻き出したくなる程の不快感が渦巻くのだ。
(早く離れてよ……お姉さまのお傍は――)
お前なんかがいていい場所じゃない。
声に出さずとも、何処かを見据える瞳が強く訴える。
表情の抜け落ちた顔の裏で、淀んだ妬みが炎となって勢いを増す。
ともすれば、灯花自身をも飲み込み兼ねない。
そう気付いているのは、傍らへ佇む術師一人。
嫉妬という名の火炎を鎮火させる気も無く、リンボはただ嗤う。
丹念に薪をくべ、油を注いだ影響は確実に表れている。
なればこのまま突き進ませ、火炎地獄を実現させるのみ。
遠くない内に現実となるだろう地獄絵図を、今か今かと待ち侘び。
辺獄を名乗る男はただ、笑みを浮かべていた。
【E-5/一日目/昼】
【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、あり得ない思考に対する動揺(小)、リンボ(式神)による暗示の影響(中〜大)、嫉妬と不快感(中〜大)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、桜田ネネのランダム支給品×0〜2、首輪(ネネ、承太郎、或人)
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。並行してドッペルに関しても調べる。
3:出来ることならねむと合流。もしねむがわたくしより先にお姉さまと会っていたら……?
4:七海やちよは邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留。
7:六眼の侍(黒死牟)が気に入らない。なんであんな奴がお姉さまのお傍に……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。
※タイムテレビを使い黎明、朝の時間帯にD-6の病院前で起きた戦闘を見ました。
957
:
呪胎戴天
◆ytUSxp038U
:2025/06/28(土) 23:23:05 ID:77dkwOig0
【キャスター・リンボ(式神)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康(本体より弱体化)、魔力消費(中)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、タイムテレビ(残り使用回数3回)@ドラえもん、ノロの入ったアンプル×5@刀使ノ巫女(漫画版)、ポルターガイスト(4時間使用不可)@遊戯王OCG、オーソライズバスター@仮面ライダーゼロワン、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン 令和・ザ・ファーストジェネレーション
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
2:あの侍達(黒死牟、縁壱)は……ンン。
3:飛電或人は少々期待外れでしたな。まあいいでしょう。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。
【櫻井戒@Dies irae Verfaulen segen】
[状態]:屍兵、ノロによる強化及び左腕修復
[装備]:暗黒斬@牙狼 -GARO-シリーズ
[道具]:
[思考・状況]基本方針:リンボに従う
1:……
[備考]
※キャスター・リンボ(式神)の術により屍兵として使役されています。
※生前より劣化した分の力を、ノロで補っています。
『支給品解説』
【暗黒斬@牙狼 -GARO-シリーズ】
桜田ネネに支給。
暗黒騎士呀が使う長得物の戦斧。
ホラーを喰う儀式に用いられる。
958
:
◆ytUSxp038U
:2025/06/29(日) 00:25:16 ID:C9qdr6r60
投下終了宣言を忘れていました、すみません
959
:
◆QUsdteUiKY
:2025/07/03(木) 00:55:13 ID:qSNPbaIQ0
皆さん投下乙です
どれも非常に面白い話で本当にありがたいです。
さて、以下は書き手の皆様にご連絡です
色々と悩んだ末にルールの変更を致します。
遊戯王のデッキですが、今後出せるデッキは初代〜ZEXALまでのOCG化してるデッキ限定とさせていただきます。
OCGのテーマは非常に幅広く、それらを全て把握出来るわけじゃないので参加者が参戦しているZEXALまでに絞らせていただきます
なお、OCGのカード単体支給は今後も支給可能と致します
960
:
◆QUsdteUiKY
:2025/07/29(火) 02:43:51 ID:xBes9EUY0
ゲリラ投下します
961
:
橘ギャレンの困惑
◆QUsdteUiKY
:2025/07/29(火) 02:45:39 ID:xBes9EUY0
橘は結局、悩んだ末にチノを追い掛けることにした。
明石に無事を知らせられないのは悪いと思うが、橘は自分が無事であることなら次の放送で名前を呼ばれなければ明石や海馬ならば察するだろうと考える。
問題はもぐもを追い掛けた大我だ。仮面ライダークロノスに変身する代償は、彼の状態から理解している。ならばより安全に変身出来る仮面ライダースナイプとして戦うのが一番だろう。そしてそのアイテム――バンバンシューティングガシャットは橘が持っている。
ゆえにこれを一刻でも早く渡すべきはずだ。
それに自分も駆け付ければ、より確実にもぐもを取り戻せる。
しかし――
(すまない、大我、もぐも。だが俺はリゼに誓ったんだ――)
橘朔也とは、良くも悪くも何かと感情に突き動かされやすい男だ。
そんな橘だからこそ融合係数が跳ね上がり、強敵を打ち破ってきた。このバトルファイトでも心意を引き起こし最強にして始祖の鬼、鬼舞辻無惨を殺すことが出来た。
そんな橘だからこそ、今はリゼに誓ったことを優先してしまう。
リゼと過ごした時間こそ短いが、彼女が橘に齎したモノは大きい。それは見えるけど、見えないもの。――絆だ。
今、この世にリゼは居ない。彼女は死んでしまったのだから。
だが――その繋がりは、師弟関係は。――絆は、未だに健在。
ならばこそ、そんなリゼに誓ったことは実行したいというのが人情だ。
橘はリゼに守られた。
師匠であるのに、守られた。
ゆえに今の橘に出来ることは、弟子のリゼが果たせなかったことをすること。
それにリゼの話を聞いた限り、彼女の友達はリゼ以上に戦えない、非力な一般人。
イリヤから聞いた話では今は戦う力があるらしいが、それでも所詮は一般人だ。技術面やメンタルなど心配なことに変わりない。
それに対して同じ一般人でも、もぐもは大我が追い掛けているし、海馬から訓練も受けている。……大我には負担を強いるかもしれないが、彼も仮面ライダーだ。ゆえに橘は信じている。
移動場所を決めてからの行動は早かった。
遊戯達に己が意志を告げ、チノを追い掛けると伝えた。
当然、遊戯達もこれを拒否することなく橘を見送る。
それから橘は走っていた。ギャレンと同等のスペックを誇る橘は当然、走力が高い。それでも元の世界でよく使っていた愛車――レッドランバスがないことは少々残念だが、だからといって文句を垂れる気はない。常にギャレンのスペックが宿っているだけでも十分だ。
(チノが移動してなければいいが……)
チノが移動して、場所を見失うことが橘には気掛かりだった。
遊戯達に教えられた場所に留まっていることを橘は願い――必然的に焦りから走る速さが上がる。
しかし一歩、また一歩と走る度に違和感を覚え、どうにも走りづらい。
「スカートは、こんなにも走りづらいのか……」
当然だが橘はスカートを身に着けるが初めてだ。彼に女装趣味はない。
そして初めてスカートを身に着けて感じる、走りづらさ。
これは橘自身がスカートの感覚に慣れてないというのもあるが、元来スカートとはズボンと比較して走りづらいものだ。
ただでさえ走りづらいスカートで、更に慣れてないともなれば必然的にズボン型のスーツであったギャレンよりも多少だが走る速さが落ちる。
ちなみにスカートの長さがロングスカートなので、ミニスカのようなスースーした感覚がない分、まだマシである。
それに加えて、走る度に胸が揺れる。
リゼは胸が豊満な方なのだから、必然的に一歩、また一歩と走る度に揺れてしまう。
そしてブラジャーを着けていることに対する違和感。ブラジャーとは胸にフィットするように身体を締め付けるものであり、否が応でも意識してしまう。これが貧乳で、ブラジャーもスポブラなら話は違ったかもしれないが……。
本当はブラジャーなど外したい気分だが、そんなことをしたら胸の揺れが大きくなることは必然。
それに男としても、師匠としても弟子であり、女の子であるリゼの生乳を見ることには抵抗がある。しかしブラジャーを外せば、生乳が見えてしまうだろう。だから余計に外せない。
その一線だけは、越えてはならない気がした。
962
:
橘ギャレンの困惑
◆QUsdteUiKY
:2025/07/29(火) 02:46:08 ID:xBes9EUY0
「それにしても喉が渇いたな……」
橘はこの殺し合いに巻き込まれてから数時間、まともに水分補給していない。
それに加えてここ数時間は連戦続きだ。喉が渇くのも当然である。
ゆえに橘は一度立ち止まって、デイパックから水を取り出した。
「これ飲んでいいかな?」
当然だがその問いに答えるものはいない。
だがそもそも、殺し合いの主催者がわざわざ水に毒を盛るはずもない。
ゆえにその水を飲むと、数時間ぶりに喉が潤い、蘇った気分だ。
「よし。待ってろよ、チノ」
橘は水を再びデイパックに仕舞い、走り始める。
そうやって走り続けているうちに――
(これは……まずいッ!)
――橘に悲劇が訪れる。
それは、尿意。
水を飲めば当然、小便が近くなる。ゆえに橘を尿意が襲ったのだ。
とはいえ、普段の身体ならそんなに慌てる必要はない。
適当な民家や公衆トイレを探して放尿したら良いだけだ。
だが今は――生憎と弟子である少女、リゼと同じ身体。
もちろん橘に生えていたものは綺麗さっぱり無くなっているし、股間を覆うのはトランクスではない布切れ1枚。
(ギャレンと同スペックになってるから少し特殊な身体だと思っていたが、尿意は催すのか!)
橘は元BORDの研究員で頭が良いはずなのだが、たまに天然なところがある。
喉が渇くのだから尿意だって催す。そもそも喉が渇く時点でこの肉体はギャレンのスペックを秘めていること以外は普通の人間と同等だと考えても良いのに、見落としていた。
もっともチノを探すために急いでいたので冷静な判断力を失っていたのもあるが……。
それから橘は小便を我慢しながら走るが、先程以上に上手く走れない。
当然だ。小便を我慢しながら走っているのだから。
小便を我慢しているゆえに走る脚も少し内股気味になり、なんとも不格好。
(くっ……!ダメだ、このままでは尿意が……!)
必死に尿意と闘いながら、橘は歩き続ける。
まさか弟子の少女の身体で小便するわけにはいかない。パンツを脱ぐわけにはいかない。
そうやって必死に我慢している時――偶然にも民家を発見した。
「アレは……民家か!?」
民家を発見した橘が目を見開く。
当たり前だが、民家にはトイレが設置されているだろう。そもそも殺し合いの最中とはいえ、誰だって尿意や便意は催すものだ。ゆえにトイレがあるのは自然なこと。主催者が悪趣味なスカトロ趣味とかでない限り、トイレは存在するだろう。
しかし橘はリゼの身体で小便をすることに抵抗がある。
弟子の少女のパンツを脱がせて、女体で少女するなんて――師匠として。男としてそれでいいのか?
しかし――
(まずい……ッ!これ以上は我慢が……ッ!)
女性は男性よりも小便を我慢出来ない。
それは当然、リゼと同じ身体になった橘にも適用される。
「すまない、リゼ。だが、漏らすよりは……キミのためだ!」
リゼの身体で漏らすなど、言語道断。
それこそリゼに対する侮辱に他ならないだろう。
ゆえに橘は民家にダッシュで駆け込み、トイレを探す。
「あったぞ!トイレだ!」
トイレの扉を見つけた途端、橘は急いでトイレの部屋に駆け込んだ。そこにあるのは、洋式トイレ。
「……」
パンツが見えないようにロングスカートをたくし上げる――が、長過ぎてトイレがしづらい。
仕方なくスカートの一部をずり下げる。……股間を見るとそこには布切れ1枚――ショーツがあった。
963
:
橘ギャレンの困惑
◆QUsdteUiKY
:2025/07/29(火) 02:48:29 ID:xBes9EUY0
「……すまない、リゼ」
謝罪の言葉と共に、意を決してショーツを下げる。
リゼの女体を見ないように、目を瞑り――ゆっくりと。
しかしショーツが下がる感触が脚を伝い、恥ずかしくて頬を染めてしまう。顔が熱くなり、橘はそんな自分を不甲斐なく思った。
そして――
ちょろ、ちょろろ――
橘の割れ目から。
――否。
リゼの身体の割れ目からちょろちょろと聖水が流れる。
今までに味わったことのない感触に羞恥心を更に煽られ、顔が真っ赤になる。リゼに対して申し訳なく思いながらも、やはり男として少女のこういう場面に何も思わないわけでもないし、女体で初めてするおしっこというだけに恥ずかしさも倍増だ。
橘にとってあまりにも長く感じられた、ほんの僅かな時間が過ぎ――おしっこの音が聞こえなくなった。
「……終わったのか?」
これ以上、小便が出る気配がないことを悟った橘は目を瞑ったままパンツを上げようとする――が、途中でピタリと手を止めた。
「俺も詳しくは知らないが……女が小便をしたら、拭く必要があるんだったな……」
おそるおそる、目を開く。
そこには自分で下げたリゼのショーツと股間が映っていて、思わず目を丸くした。
だが、小便を吹かずリゼの身体をはしたないものにしてはならない。
橘はトイレットペーパーを千切ると、意を決して股間に手を当て――すり、すりと拭き始めた。
どうやって拭けば良いのかもわからず、何回かトイレットペーパーを千切り、股間や割れ目を拭く。
「ん……っ!変な、感触だな」
――こうして橘がリゼの身体になってからの初めてのおしっこは終わった。
「リゼ……本当にすまない……」
そんな言葉を口にしながら、橘が向かったのはリビング。
いざという時のために水道水をペットボトルに補充して確保。
(チノ達も喉が渇いてるかもしれないからな……)
冷蔵庫を覗くと、幸いにも何本か水のペットボトルがあった。
橘はそれらを雑にデイパックに詰め込み、民家を出発。
橘も元BORDの研究員というだけあり、無惨の首輪で色々と試そうと軽く工具を探したが、残念ながら見つらなかった。もっともよく探せばある可能性も存在するが、今はチノが優先だ
今度こそ尿意に惑わされることなく、先程までよりも軽やかな足取りでエーデルフェルト邸に向かう
【D-2/一日目/午前】
【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]:ダメージ(大、包帯やガーゼにより止血済み)、疲労(中)、心意によりリゼの姿・声に変化
[装備]:ギャレンラウザー&ラウズカード@仮面ライダー剣、リゼ専用スピアー@きららファンタジア
[道具]:基本支給品×2、バンバンシューティングガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ハイパームテキガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ランダム支給品×1、無惨の首輪、包帯やガーゼなどの治療道具@現地調達、水が入ったペットボトル複数@現地調達
[思考・状況]基本方針:剣崎とリゼの分まで人々やリゼの友達を助ける。ゲームマスターも倒す
0:チノを追い掛ける
1:ありがとう、リゼ。君は睦月と並んで最高の弟子だ
2:まさか俺自身がリゼになるとはな……
3:リゼの友達を探す。リゼの分まで俺が守る
4:首輪を解除するための道具を探し、化け物(鬼舞辻無惨)の首輪を使って試行錯誤したい
[備考]
※参戦時期は最終回後。
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました
※脚の負傷具合については少なくとも完治してます
※心意により見た目と声がリゼと同じになりました。生身でギャレンのスペックで、融合係数の変動で強さが変わるシステムを常に発揮しています。ギャレンラウザーを用いることでラウズカードやコンボ技も使えます
※リゼの姿になったことでリゼ専用スピアーで変身可能になりました
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◆QUsdteUiKY
:2025/07/29(火) 02:48:58 ID:xBes9EUY0
投下終了です
965
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◆QUsdteUiKY
:2025/07/29(火) 02:59:17 ID:xBes9EUY0
直見真嗣、クウカ、奈津恵、コッコロを予約します
念のために延長もしておきます
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