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シン・チェンジロワイアル part2
1
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 19:02:04 ID:lzNpjCwQ0
【当企画について】
・様々なキャラに別のキャラの体を与えてバトロワをする、という企画の第二弾です。
・コンペ形式で参加者の登場話を募集します。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎します。
【参加者について】
・このロワの参加者は皆、自分の体とは別人の体で戦うことになります。
・参加者として扱われるのは体を動かす精神の方のキャラクターです。
・精神と体の元になるキャラの組み合わせは自由です。
・ロワでは意思持ち支給品として登場することが多いキャラや、多重人格キャラの副人格に相当するキャラを、身体の主人格に当てはめて参加者とすることもこのロワでは可能となります。
【参加者用ルール】
「基本ルール」
・参加者全員で殺し合い、最後に生き残った1人が優勝者となる。
・制限時間は3日。
・地図で記された場所の範囲外は見えない壁により立ち入りは不可能である。この見えない壁は何人たりとも通り抜けはできないものとする。
・参加者は最初、会場のどこかにランダムにテレポートさせられている。
「優勝者が持つ権利等について」
・優勝者はどんな願いでも叶える権利と元の体に戻れる権利を得る。
・それぞれの権利を使用するか否かは優勝者の判断にゆだねられる。
・優勝者の本来の身体が、別の参加者のものとなっていたために殺し合いの過程で死亡した場合、その身体は優勝者が元の身体に戻るのを望むのならば蘇生される。
・参加者以外で身体が元のものとは別の存在になっている者達は、優勝者が許可するならば元の身体に戻れる。
・優勝の権利を得ることができる参加者として扱われるのは、精神側の名簿に載っている者達のみである。
「放送・禁止エリアについて」
・ゲームの進行状況等は6時間ごとに行われる定期放送で連絡する。
・定期放送ごとに禁止エリアが3か所発表される。
・3つの禁止エリアが有効となるのはそれぞれ放送から1時間後、3時間後、5時間後とする。
・禁止エリアに指定された場所は、時間になると、地図の範囲外と同じように見えない壁に囲まれる。
・時間になった際に禁止エリア内にいる参加者は必ず消滅・死亡する。
「月について」
・本ロワの舞台には『月@ゼルダの伝説ムジュラの仮面』が空に浮かんでいます。通常の月はありません。
・この月は、制限時間である3日後に落ちてきて、そうすると世界が消滅・参加者全員が死亡するものとします。
・優勝者が出て殺し合いが終了すればこの月は止まるものとします。
【書き手用ルール】
・今回は参加者に首輪は存在しません。
・NPCなどは、虫や魚などといった動物も含め存在しません。
・空に浮かんでいる『月』は「ゼルダの伝説ムジュラの仮面」出典のものです。
・身体側の精神が復活する展開はNGとします。
・そもそもの話として、身体側の精神は元から存在しないものとして扱ってください。
・以下のアイテムの登場を念のため禁止したいと思います。以下のものはこちらで登場させたら都合が悪いかもしれないと判断したものです。今後の進行によっては、他に増える可能性があります。
・スタンド使いを生み出す矢@ジョジョの奇妙な冒険
・天逆鉾@呪術廻戦
・参加者や支給品の力で身体が元に戻る展開もNGとします。
・制限については基本的には書き手ごとにおまかせします。
・なお、精神入れ替え系の能力・アイテムには時間や回数などの制限をつけてください。具体的な制限内容は書き手ごとにおまかせします。
・予約ルールについては現在未定で、本編開始と同時に決定する予定です。
・意思持ち支給品を登場させることができるのは、コンペ時の登場話候補話のみとします。
・仮面ライダーシリーズに登場する変身ベルト・変身アイテムを登場させることができるのも、コンペ時の登場話候補作のみとします。なお、これには怪人・疑似ライダー等への変身アイテムも含まれています。
・スーパー戦隊シリーズ等、他の特撮作品に登場する変身アイテム等についても、登場可能なのはコンペ時のみにしたいと思います。
【その他ルール】
・参加者や、参加者の死体をデイパックに入れることは不可能とします。
2
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 19:02:45 ID:lzNpjCwQ0
【コンペについて】
・期限は2023年7月23日(日)の22:00までを候補作投下のための宣言の期限、23:00までをSS投下期限とします。ただし、こちらの都合によっては変更されることもあるものとしておきます。
・参加者となるキャラの出展元は、ガイドライン上の問題のある出典(例:ウマ娘等)からの登場はできません。該当する前企画の候補作からの流用もできません。
・上記のようなもの、もしくはその他何らかの問題があるもの以外であれば、出典元は基本的には制限はありません。
・候補話は複数人登場するもの、死亡者が出るものなどどんな内容でもOKです。
・投下された候補話の中から
>>1
が選出して参加者を決定、名簿を作成します。
・
>>1
が投下した話は確定枠ではありません。参加者キャラ被り・身体側キャラ被りも気にせずに書いてください。
・参加者人数の上限は生存者が72人までにする予定です。この人数に死亡者・意思持ち支給品・副人格は含まない予定です。
・『チェンジ・ロワイアル』や他のコンペ形式のロワに投下した候補話の文を流用しても構いません。
・『チェンジ・ロワイアル』本編に登場したキャラクターを出すのも可能とします。
・『チェンジ・ロワイアル』本編に採用された精神・身体の組み合わせは、ここでは使えないものとします。精神・身体の組み合わせを逆にするのは可能とします。
・先述した前企画の候補作の内、問題ある出展のキャラが登場する作品は、該当するキャラが登場しない形になるなら文章の流用は可能とします。
・流用する際は、前に投下したロワの名前の記述と、トリップを一致させることをお願いします。
・候補話の時間帯は24〜1時の間の出来事としてください。
・コンペ時においては、【A-1】や【B-2】等といった参加者の詳細な現在位置の記入はしないでください。
・一部を除くポケモンなど、動物などの種族名でキャラ名を表記する時は、精神・身体どちらの場合においてもなるべく性別を備考欄に明記してください。出展元で性別が明らかな特定の個体を指す場合は必要ありません。
・候補作における生存登場人物数は、意思持ち支給品や副人格も含めて4人までとしてください。
・死亡者も4人までとします。こちらも、意思持ち支給品や副人格も含めての人数とします。
・コンペ段階においては、特定の役割や出典を持つ施設は登場させないようお願いします。
・また、こちらで用意した地図に元から存在する施設(地下鉄)も登場させないようお願いします。
【支給品について】
参加者にはデイパックというどんなものでも入る小さなリュックが渡されます。その中身は以下の通りです。
・食料(3日分):ペットボトルの水やお茶、コンビニ弁当など。
・ランダム支給品:現実、フィクション作品などを出展とするアイテム。最大3つまで。
※ランダム支給品の出典元は明確に記載してください。
※本ロワ限定で効果を発揮する支給品の出展元はオリジナルとしてください。
※名簿決定後は、ランダム支給品はそれまでに登場した出展元からのみ登場可能とします。
・コンパス:方位を知るためのアイテム。手持ちサイズの小さなコンパス。赤い針が北を指す。
・懐中電灯:一般的な懐中電灯。単3電池2本入り。
・手鏡:一般的な小さな手鏡。枠はピンク色・プラスチック製。
・タブレット:黒い板状のシンプルなタブレット機器。使い方の説明書が付いているものとする。最初に入っているのはルールと身体のプロフィールについてのファイルのみ。本編開始後に名簿と地図のデータファイルが送られてくる。
「初期状態からタブレット内にあるファイル」
・ルールファイル:殺し合いのルールについて記されている。
・身体の持ち主のプロフィールファイル:このロワで与えられた体の元の持ち主について簡単に記してある。記載事項は名前、顔写真、経歴、技能といったものなど。
「本編開始と同時にタブレットに追加されるファイル」
・名簿:参加者の名前が羅列してある名簿。精神と身体側の名簿はそれぞれ別々のファイルで存在する。どれも五十音順で記されている。
・名簿(精神):精神側の名前が載っている。メインの参加者として扱われるのはこちらに名前が記されている方である。
・名簿(身体):身体側の名前が載っている。
・名簿(その他):意思持ち支給品と、副人格にあてがわれた精神側の人物の名前が載る。
・地図:会場について記されている。施設については位置を表す赤い点と施設名のみ記載される。
3
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 19:03:10 ID:lzNpjCwQ0
【施設について】
・地図上における施設は、名簿決定後に、
>>1
がどのような施設を登場させるか、位置はどこにするのかといったこと等を調整します。
・名簿決定後に、どのような施設を登場させたいかの案を募集する時間を設ける予定です。なお、その時に来る案が必ず採用されるわけではないものとします。
・先述したように、コンペ段階においては、特定の役割や出典を持つ施設は登場させないようお願いします。
・本編中で施設を追加するとした場合、それができるのは定期放送時のみとします。なお、実際に施設を追加することになるかどうかは未定です。
【地図・地形等について】
地図:ttps://w.atwiki.jp/sin-changerowa/pages/10.html
・川・池:水は基本的に綺麗なものとします。川は基本的にマップの範囲外に向かって流れているものとします。
・海:他の地形に面している部分は、砂浜以外は基本的に全て3〜5メートル程の高さの崖になっているものとします。
・森:背の高い木々で埋め尽くされています。常人の肉眼で上空から中の様子を見ることや、奥の方を見ることは難しいものとします。
・草原:草の高さは長くても足首くらいまでのものとします。人体に有害な草花は存在しません。
・雪原:積雪量はおよそ人の足首までが埋もれる程のものとします。ロワ開始時には雪は降っていないものとします。
・橋:基本的にはレンガ製で、丈夫でかなり壊れにくいものとしてください。
・氷の池:氷が厚めで、人が乗っても基本的には割れにくいものとしてください。
・街:現代の都会風の建物が並んでいます。
・村:田舎風の建物が並んでいます。ここにおける村は全て雪原に囲まれているため、村内の建物の屋根や地面・道などにも雪が積もっているものとしてください。
・地図の範囲外のエリアの奥の方は深い霧が立ち込めており見えないものとします。
【地下鉄について】
・地下鉄は現在、下記のように運用する予定でありますが、本編開始の際に変更される可能性もあります。
・少なくとも、コンペ中、登場候補話の段階の時間帯においては全く運行していないものとします。
・下記の時刻表のように早朝4:00から駅①にて初めて運行する予定です。
・また、こちらも先述したように、コンペ中の登場候補作においては地下鉄は登場させないでください。
「地下鉄の運行について」
・線路の数は一つのみ。
・電車は4車両繋がっているものとする。
・運転手はいない。無人・自動で動く。
・次の駅までの移動時間は、片道15分程度とします。
「地下鉄の時刻表」
・駅①→駅②
早朝4:00→4:15
朝6:00→6:15
午前8:00→8:15
昼10:00→10:15
日中12:00→12:15
午後14:00→14:15
夕方16:00→16:15
夜18:00→18:15
夜中20:00→中20:15
・駅②→駅①
早朝5:00→5:15
朝7:00→7:15
午前9:00→9:15
昼11:00→11:15
日中13:00→13:15
午後15:00→15:15
夕方17:00→17:15
夜19:00→19:15
夜中21:00→21:15
【開始時刻について】
・開始時刻は真夜中の24(0)時からです。
【時間表記】
深夜(0〜2)
黎明(2〜4)
早朝(4〜6)
朝 (6〜8)
午前(8〜10)
昼 (10〜12)
日中(12〜14)
午後(14〜16)
夕方(16〜18)
夜 (18〜20)
夜中(20〜22)
真夜中(22〜24)
4
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 19:03:37 ID:lzNpjCwQ0
【状態表について】
・状態表には以下のテンプレート例に示すように[身体]の欄を表記することを必須とします。
【状態表テンプレート例】
【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[身体]:名前@出典
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]
・死亡者が出た時は以下のように表記してください。
【名前@出典(身体:身体の名前@出典) 死亡】
【意思持ち支給品に関するルール】
・意思持ち支給品を登場させる場合は、その支給品に存在する精神・意思も、参加者達のように本来のものとは別のキャラクターのものにしてください。
・意思持ち支給品は参加者として扱いません。
・意思持ち支給品もまた、OPでの主催の説明を聞かされたこととします。
・例えば、『ライダーデッキ@仮面ライダー龍騎』に付属する『契約ミラーモンスター』等のような、特定の支給品に付属する意思ある存在も、精神チェンジの対象の意思持ち支給品とします。
・意思持ち支給品が話の中に出る際は、通常参加者の状態表の下に下記のように専用の状態表を書いてください。
【意思持ち支給品状態表テンプレート】
[意思持ち支給品状態表]
【名前@出典】
[身体]:名前@出典 ※支給品としての名前・出典を記載する
[状態]:
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]
【『チェンジ・ロワイアル』本編ではそのままになっていたが、本ロワにおいては精神チェンジの対象となる意思持ち支給品一覧】
※参考までに記載しておきます。なお、場合によってはここへの記載が無くなる可能性もあるものとしておきます。
※また、ここで挙げた意思持ち支給品を、場合によっては参加者として登場させることも可能としておきます。
※下記に並べたものを意思持ち支給品として扱うことに異議があればお申し付けください。
・ダイアン@こちら葛飾区亀有公園前派出所
・アビスのデッキ(に付属するアビスラッシャーとアビスハンマー)@仮面ライダーディケイド
・トビウオ@ONEPIECE
・ベルデのデッキ(に付属するバイオグリーザ)@仮面ライダー龍騎
・召喚石『ドグー』(が召喚するドグー)@グランブルーファンタジー
・スゲーナ・スゴイデスのトランプ(が召喚するアクション仮面、カンタムロボ、ぶりぶりざえもん)@クレヨンしんちゃん
・シャルティエ@テイルズオブデスティニー
・リュウガのデッキ(に付属するドラグブラッカー)@仮面ライダー龍騎
・賢者の石(グリード)@鋼の錬金術師
「精神チェンジの対象にしてもしなくてもどちらでも可とする支給品」
※簡易的なAI搭載の機械類等がここに該当するとしておきます。
※これらにおいても、ここに当てはまらないと感じる方がいればお申し付けください。
・レイジングハート@魔法少女リリカルなのは
・ハードガーディアン@仮面ライダービルド
・サソードゼクター@仮面ライダーカブト
・カブトゼクター@仮面ライダーカブト
【多重人格系のキャラを身体側にする場合のルール】
・身体側のキャラが人格を2つ以上有していたものの場合、主人格だけでなく副人格のキャラにも別のキャラの精神を当てはめてください。
・副人格のキャラは参加者とは扱いません。
・副人格のキャラもまた、OPでの主催の説明を聞かされたこととします。
・例えば、『泉新一@寄生獣』に付いている『ミギー@寄生獣』等のような、特定参加者の身体の一部が意思を持っている存在も、副人格として扱い精神チェンジの対象とします。
・元から、主人格・副人格の関係にあるキャラ同士の精神を、上記の条件の身体に当てはめることも可能です。
・こちらも、該当するキャラの身体の参加者が話に出る際は、通常参加者の状態表の下に下記のように専用の状態表を書いてください。
【副人格キャラ状態表テンプレート】
[副人格キャラ状態表]
【名前@出典】
[身体]:名前@出典
[状態]:
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]
【『チェンジ・ロワイアル』本編ではそのまま(+封印状態)になっていたが、本ロワにおいては精神チェンジの対象となる副人格一覧】
こちらも参考までに記載しておきます。
・ポチタ@チェンソーマン
・ウィザードラゴン@仮面ライダーウィザード
5
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 19:04:05 ID:lzNpjCwQ0
【精神チェンジの対象にならない存在】
流石に、精神チェンジの対象にしなくても良いと判断したものの例を下記に示します。
※念のため、ここに示されるものは今後増える可能性はあるものとしておきます。
※また、下記のものはここには含まれないのではという異議、もしくはこういったものも含むのではという意見があればお申し付けください。
・新しく生まれた存在
例:「ゴールデンエクスペリエンス@ジョジョの奇妙な冒険」の能力が生み出した生物 等
・ショックや成長などによって新しく増える人格等
例:「ドードー→ドードリオ@ポケットモンスターシリーズ」などといった、進化することにより頭が増えることのある身体
・脳を複数有する身体だが、主人格以外の人格の存在が確認されないもの
例:鬼舞辻無惨の複数の脳@鬼滅の刃 等
・意思を持っていると言われることがあるが、詳細が出展元でもまだ不明瞭で不可解な部分があるもの
例:動物系悪魔の実@ONEPIECE 等
・原作等において精神移動の際に一緒に移動する描写のある別人格の存在。
例:人格のあるスタンド(エコーズやセックス・ピストルズ等)@ジョジョの奇妙な冒険 等
・本編開始後に原作において意思の存在が発覚したもの。
例:令和ジャンプロワに登場したとある支給品 等
・妄想上の幻覚 等
まとめwiki:ttps://w.atwiki.jp/sin-changerowa/
専用したらば:ttps://jbbs.shitaraba.net/otaku/18420/
※専用したらばは『チェンジ・ロワイアル』と共通とします。質問等があればここに書き込んでください。
6
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 19:05:19 ID:lzNpjCwQ0
前のスレが埋まってきたため、とりあえず先に建てておきました。
前のスレが全て埋まりましたら、こちらの方にお願いします。
7
:
◆yy7mpGr1KA
:2023/07/23(日) 21:22:32 ID:hbdzZ0MU0
前スレが残り僅かですのでこちらで投下させていただきます。
8
:
Golden Dark Sun, wherever you shine.
◆yy7mpGr1KA
:2023/07/23(日) 21:23:37 ID:hbdzZ0MU0
ジョルノ・ジョバーナは戸惑っていた。
他人の体に魂を押し込められた。異常事態だが、経験がないではない。
殺し合いに巻き込まれた。これも異常事態だが、悲しいことに殺し殺されに慣れなければやっていられない稼業だ。
一先ず状況を把握しよう、と所持品を検めだすとデイパックから二つのものが飛び出してきた。
一つは子供サイズの大きさのひまわり。ただし花の部分に顔があり、葉で身振り手振りのコミュニケーションができる生き物のようだ。鼻が長い。
もう一つは巨大なけん玉。サイズから類推するにフレイルのような武器になるだろうか。こちらも生きていてよく喋る。玉の部分に顔があり、そして鼻が長い。
二人…二人?が真っ先に喋りはじめ、その会話を小耳にはさむに双方知り合いらしい。
しゃべるひまわりとけん玉が親しい仲というのはさすがに困惑する。
殺し合いの最中という環境ではあるが、だからこそ頼れる存在と合流できたのは一抹の希望となるのだろう。手…手?を取り合い、ひまわりが期待するような視線をジョルノに向けた。
「こうまで知り合いが集められているということは……もしかしてあなたはマイ・トリックスターではありませんか?」
期待を込めた目で問うひまわりに少年はむべなく答える。
「いえ、ぼくはギャング・スターですが」
そう答えるとひまわりは萎れたようにうなだれた。
「…………ええ、わかっています。期待しすぎた私が悪いのです。その若さで魔性の魅力と獅子のごとき胆力を持つ人物がトリックスター以外にそういるものでもないと思ったのですが……」
「一応言っておきますと、この見た目は本来のぼくのものではありませんからね」
まあそれほど歳の差はなさそうですが、と取り出した手鏡を覗きながら呟く。
お二人もご覧になりますか?と差し出すと交互に自身の新たな姿を確かめ始めた。
「ネコだのバスだのの次はけん玉かよ……」
「まあ、綺麗なひまわり。それに先ほどから視界になんとなく入っていましたがなんて長い鼻」
悲喜こもごもの感想を漏らしながらもパニックに陥る様子はない二人を、ジョルノは修羅場をくぐり抜けた強者だろうとあたりをつける。
それこそ自分と同様に肉体が変化する経験まであるかもしれない。
「さて。自己紹介させていただきます。ぼくはジョルノ…いや、この後名簿がダウンロードされると言っていましたね。初流乃・汐華といいますが、イタリア暮らしでして。地元風にジョルノ・ジョバーナと。覚えにくければジョジョ、と呼んでくれても構いませんよ」
「へえ、コードネームみたいでいいじゃねえか。にしても…ジョジョ、か。面白ぇ。ワガハイはモルガナだ、よろしくなジョジョ!モナと呼んでくれていいぜ」
こちらこそ、と返すジョルノにけん玉になったモルガナがひまわりを紹介する。
「こちらはラヴェンツァ殿。ワガハイの…上官というか産みの親というか、そんなお方だ」
「ラヴェンツァです。よろしく、ギャングスター」
首を垂れるひまわりことラヴェンツァ。もし人の身であればさぞ優雅な所作であったろう。
疑問は残るだろうが三者はじめましての挨拶を済ませ、改めて向かい合う。
現状への叛逆の意思を互いに共有し、生還のための協力を約束する。
「取引ってわけだ、ジョジョ。ワガハイたちはこのふざけた催しをぶち壊すために全力を尽くす。その過程でオマエに知恵とできる限りの力を貸すぜ」
「私たちベルベットルームの住人は本来契約者に干渉できないルールですので、私にできることは多くありません。それでもモルガナは規約の外にいますし、降りかかる火の粉の火の元を消し去るくらいは主もお許しになるでしょう」
かつてその身を引き裂かれても自ら武器をとることを選ばなかったラヴェンツァだが、自衛の意思は当然ある。
加えて契約を果たしていない途上で身をくらますなどあってはならない事態だ。なんとしてもトリックスターのもとへ帰還せねばと戦意を示す。
「取引ですか。分かりやすくて好きですよ、そーいうの。ではひとまずぼくらの状況と情報を共有していきましょうか」
と再びデイパックにジョルノが手を伸ばし、目当てのタブレットを引っ張り出す。
自分の知る機器より発展した産物であり多少手こずりはするが若さゆえに適応は早い。
最初に確認した手鏡を小脇において付属の説明書を片手に、目当てのファイルをすぐに見つける。
その様子をひまわりとけん玉も後ろからのぞき込んでいた。
9
:
Golden Dark Sun, wherever you shine.
◆yy7mpGr1KA
:2023/07/23(日) 21:26:26 ID:hbdzZ0MU0
「太陽少年ジャンゴ。この名前に覚えはありますか?」
二人、首を振る。
ジョルノも覚えのない名前で、みんな揃ってなんとなく流し読みをする。
世紀末世界。イモータル。太陽意志。銀河意志。戦いの中で父も伯母も母も兄も手にかけた悲しき戦士。
物語のような英雄にまず息を吞むが、ジョルノはその功績以上に出生に感じ入るものがある。
(ヴァンパイアハンターの父親と、不死種〈イモータル〉の母親の血を引く……か。吸血鬼との繋がり。あいつら、ぼくと父のことも知っているのか?)
石仮面によって吸血鬼になったDIOの血がジョルノには流れている。
ジョルノはそっと自らの首筋に手を伸ばす。
今そこに父から受け継いだ星形の痣はないことをすぐに思い出し、肉体を奪った主催への怒りを増す。
その怒り、興奮にジャンゴの肉体が呼応した。
彼の体は吸血鬼へと堕ちた父リンゴとの戦いで半吸血鬼となってしまっている。それを母から継いだ守りの血で完全な怪物になることをとどめ、戦闘手段へと転じていたのだ。
しかしその肉体に不慣れなジョルノでは制御しきれるものではない。
ダークジャンゴと称される吸血鬼の姿へトランスし、爪と牙を露に吸血衝動がその身を苛む。
幸いだったのは二つ。
一つは同行するモルガナもラヴェンツァも、物理的な意味で血も涙もなさそうな体になっていてこと。
そしてジョルノのスタンド能力がその衝動を解決できるものだったこと。
「ゴールド・エクスペリエンス!」
ジョルノの傍らに立つもの。彼の持つ超能力。スタンドと呼称されるパワーあるヴィジョンが拳を大地に振るった。
その能力は物質に生命を与えること。植物や小動物はもちろんのこと、人体のパーツを作って傷の治療をすることもできる。
彼はその力で土や砂を掌に掬って命を与え、血液にして嚥下する。
「お、オマエ、それ……!」
「失礼、驚かせてしまいましたね。ぼくもかなり驚いてるんですが」
ジョルノが己の口元を汚す血をぬぐう。
正気は取り戻したが、同行者に警戒心を抱かせてはいけないと考える。
この吸血鬼の姿についてはプロフィールに記載があった、リスクはあるようだが自分なら抑えられると言葉を紡ごうとする。
しかしモルガナたちの注目は別にあった。
「驚きました。あなたもペルソナ使いだったのですね」
「ペルソナ?」
モルガナの言葉を継いだラヴェンツァの言及に戸惑う。
「はい。かくいう私たちもペルソナ使いなのですよ」
そんな風に自慢げに胸をそらすラヴェンツァに並んでモルガナも並ぶ。
10
:
Golden Dark Sun, wherever you shine.
◆yy7mpGr1KA
:2023/07/23(日) 21:27:51 ID:hbdzZ0MU0
「見せてやるよ。威を示せ、メルクリウス!」
モルガナのもう一人の自分。叛逆の仮面。ペルソナという力を顕現させんとする。
しかし高らかな呼び声に彼の相棒は応えない。
「…なんでだ!?我が決意の証を見よ!!!」
必死に叫ぶモルガナの声が空しく響く。
それを優しくラヴェンツァが眺めて言う。
「モルガナ。どうやら我々はペルソナを行使できないようです。あくまで主たる参加者ではない支給品が出しゃばるなということでしょう」
私もペルソナ全書を持っていませんし、とあくまで笑顔でつぶやく。
その笑顔にモルガナは空恐ろしいものを覚えつつ、すがるようにジョルノの方を見た。
大丈夫ですよ、というようにジョルノは頷きでそれに答えて話を戻す。
「ペルソナ、というのはいったん置いておきます。それでこの体ですが、プロフィールによると吸血鬼に変身するようです。リスクはありますが……」
じっ、と掌に目を落とす。
その手に再び砂を掬い、血へと転じて口へ運んだ。
「抑える術がぼくにはある。それにコントロールもどうにかできそうだ」
息を吸って吐くように。HBの鉛筆をへし折るように。できて当然と思えばできるようになる。
知ってか知らずか父に送られた言葉をジョルノは再現していた。
ヘビがパンを食うはずないが、美味そうなパンなら食うのだ。ウイルスまみれのレンガから生まれたヘビからは血清が作れるのだ。ピラニアは人の肉を齧って体内を進むのだ。
―――吸血鬼の血を引くジョルノ・ジョバーナならば、半吸血鬼のダークジャンゴを制御できるはずだ。
そんな思いが通じたのか、ジョルノの肉体は人間……太陽少年ジャンゴのそれに戻る。
「…これでいい。それでは改めてペルソナについてですが……見えているんですね?ぼくのゴールド・エクスペリエンスが」
「いい名前ですね、ゴールド・エクスペリエンス。それがあなたのペルソナの名ですか」
ラヴェンツァの感想にジョルノは複雑な顔をして頷く。
スタンドという名称はブチャラティに教わったが、その成り立ちや意味まで詳しく聞いたわけではない。
能力のことをペルソナ、と呼称する集団があってもおかしくはないだろうと互いの認識をすり合わせる。
ジョルノ自身の能力や他にもスタンド使いが知り合いにいることなどは共有する。さすがに仲間の能力までは明かせない。
ラヴェンツァたちもペルソナ能力について多くを明かす。ワイルドという才能や、シャドウという歪んだ心との関係など。
互いの近似点と差異をある程度把握するが、それが100%同一のものかは断言しかねた。
「あなたのスタンドは私の知るシャドウやペルソナと比して個性的ですね。命を産みだす規模となるとよほど強力なペルソナでも難しいでしょう」
「似てはいるようですが、ペルソナの方が体系的な知識が確立している気がしますね。ぼくの知識不足もあるでしょうが。それにしても、仮面〈ペルソナ〉ですか……」
自分が石『仮面』と因縁あるのはもちろんのこと、厭夢に続いて現れた仮面の男の存在まで意味深に思えてくる。
確証など何もないが、仮面にも意味があるのではと疑問に思うが……
一先ず本来の能力についての共有はそのくらいにとどまり、新たに得た能力を互いに知っていくことにする。
特にジョルノの体とラヴェンツァの体について知るのは重要になりそうだった。
「プロフィールと、こちらの支給品を見るにぼくたちの協力は大きな意味があるようですよラヴェンツァ」
支給された喋るひまわり、その名はおてんこさまという超越存在だった。
ジャンゴやその父リンゴを助けた知恵袋で歴戦の戦士。
結界や武器の召還などもできるようだが彼にはさらに特筆する能力があった。
「どうやらジャンゴとおてんこさまは合体して強力な力を発揮するようです」
「合体、ですか」
一歩間違えばセクハラになりそうな発言だが、ひまわりにそれを言うものもそうはいない。
そして合体などと言われて簡単にどうすればいいのか分かるものもそうはいない。
「なるほど。そのためにあなたに私を支給したのですね。方法は書いて……いないようですね」
「ええ。ですので今はそういうものがあると頭の片隅にでも留めておいて―――」
「ではギロチンを探しましょう。合体にはそれが必要不可欠です」
突如飛び出した物騒な単語にジョルノが目を丸くする。
この人正気ですかとモルガナに視線をやると、マジなお人だぜと彼も視線で答えた。
「……ではギロチンのことも覚えておくとして」
「はい。絞首台や電気椅子があればスタンドの強化もできるかもしれませんよ」
「そうですか。それじゃあモナ。君の体の話に移りたいんだが」
11
:
Golden Dark Sun, wherever you shine.
◆yy7mpGr1KA
:2023/07/23(日) 21:28:30 ID:hbdzZ0MU0
これがプロフィールらしい、と支給品の説明書をデイパックから引っ張り出すジョルノ。
「おう、見せてくれ。にしてもなんで紙なんだ、さっきのタブレットに纏めりゃあいいのに」
「こうした協力者とのやり取りを想定しているのでしょう。タブレットのデータに纏めてしまうと道具はともかくその説明書の貸し借りや贈与がしにくくなります。かといって肉体のプロフィールが入ったタブレットを交換するのは妙な誤解を生むかもしれませんし、手放したいものではありませんしね」
なるほどな、ともらすモルガナと共に目を落とす。
彼の体、けん玉の名はバッボというらしい。
魔法の国カルデアで作られたマジックアイテムで、様々な能力と可能性を秘める強力な武装だ。
「平時は鈍器として使えそうですね。ちなみにジャンゴの肉体は槌や斧を振るった経験もあるようです」
「いやいや、お前ワガハイを振り回して武器にする気かよ!?」
「大丈夫ですよ。結構頑丈ですし」
「ええ、大丈夫ですよモルガナ。バスになってシャドウを跳ね飛ばしたこともあるでしょう?」
ジョジョ〜、ラヴェンツァ殿まで〜と嘆くモルガナの声を二人そろって黙殺し、バッボの能力を読み進める。
そこにある、これはこの殺し合い打破に重要であろう一文を咀嚼して。
「ただ振り回すのは拳銃で殴ったり刀で殴ったりするような、できなくはないが効率的ではない手法のようです。本来の力は別にある……ぼくたちにそれは使いこなせなそうですが」
バッボの真価はマジックストーンをはめ込むことで能力を想像し、創造できること。
現在は先代の使い手が創造した、一度だけ使える人格の統合能力がはめ込まれているらしい。
ただし、発動には協力なイマジネーションと魔力を要するとのことで、能力の希少さも相まって今の一行では手を出しにくい。
「モナ。もしもマジックストーンが他の誰かに支給されていて、加えてマジックアイテムの使用に秀でた人物の協力を得られれば。主催の想像の上をいく何かを創造してこの事態を解決できるかもしれない」
過程にあまりにも希望的観測が多すぎるとはジョルノ自身思うが、このバッボというアイテムをみて想像するなという方がカルデアの魔法使いには失礼であろう。
事態の打破までは至らずとも、体を戻せる可能性のあるアイテムは多くの人物にとって魅力的だろう。
「つまり、ふふ。ワガハイがカギというわけか!」
意気込むモルガナにジョルノは期待を込めた頷きで答えた。
その答えでモルガナの体に武者震いが沸き上がった。
「ではこれからの戦いに向けて士気高揚のため……歌いましょう、モルガナ」
そんな緊張交じりのモルガナにヴェンツァが一つ提案をする。
その提案はモルガナの震えの質を変えて、恐る恐るの返答をさせた。
「歌う…とは?」
「言わずとも分るでしょう。肉体の入れ替えというのは少々腹立たしいですが、あなたも私も強そうなよい体です。特にこの鼻が」
あぁやっぱり、とモルガナ納得。
では、と大きく息を吸うラヴェンツァに小さくため息をついてモルガナが従う。
「ではご清聴を、ギャングスター。『長い鼻の歌』」
そして歌い始めた二人を前にジョルノは再び戸惑いの渦に放り込まれる。
大丈夫なんだろうか、この二人と組んで……大丈夫と信じたい。
12
:
Golden Dark Sun, wherever you shine.
◆yy7mpGr1KA
:2023/07/23(日) 21:29:12 ID:hbdzZ0MU0
【ジョルノ・ジョバーナ@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ジャンゴ@新・ボクらの太陽 逆襲のサバタ
[状態]:健康、満腹感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1(バッボのマジックストーンではない)
[思考・状況]基本方針:元の体を取り戻すが、殺し合いに乗りはしない。
0:……まあ僕らのチームもダンスとかしてましたしね。
1:殺し合いを打破する仲間を集める。
2:魔力、ÄRMに秀でた人物を探す。
3:肉体の入れ替わり……ポルナレフさんは関係しているのだろうか。
[備考]
※参戦時期は五部終了後、石仮面とDIOのことを知って以降(恥知らずのパープルヘイズで描写あり)です。
※トランス・ダーク(吸血鬼への変身)を不安定ですが発動できるようになりました。ゴールド・エクスペリエンスで血液を作り飲むことで吸血衝動を抑えるほか回復・食事ができます。
※ペルソナをスタンドと近似するものとして認識しました。
※おてんこさまの体と合身することはまだ上手くできません。ギロチンを使ってまで合体したくはないなと本人は考えています。
[意思持ち支給品状態表]
【モルガナ@ペルソナ5】
[身体]:バッボ@MÄR-メルヘヴン-
[状態]:正常
[思考・状況]基本方針:殺し合いに叛逆する。
0:ええ……べ、ベールベルベル、ベルベット〜💦
1:ペルソナを使えるようになりたい。
2:新たな怪盗団結成だ。よろしくな、ジョジョ。
[備考]
※参戦時期は統制の神撃破以降です。
※制限によりペルソナは使えません。肉体が変われば使えるようになると本人たちは考えています。
※スタンドをペルソナと近似するものとして認識しました。
【ラヴェンツァ@ペルソナ5】
[身体]:おてんこさま@新・ボクらの太陽 逆襲のサバタ
[状態]:正常
[思考・状況]基本方針:契約を果たすためトリックスターの元へ帰還する。
0:我ーがあるじ ながいはなー♪……完璧です。
1:ペルソナおよび処刑器具を扱えるようになりたい。
2:新たな取引の始まりですね。コープ結成、応援していますよギャングスター。
[備考]
※参戦時期は統制の神撃破以降です。
※制限によりペルソナは使えません。肉体が変われば使えるようになると本人たちは考えています。
※スタンドをペルソナと近似するものとして認識しました。
※ジャンゴの体と合身することはまだ上手くできません。ギロチンがあればできるだろうと本人は考えています。
[支給品紹介]
【バッボ@MÄR-メルヘヴン-】
ジョルノ・ジョバーナに支給された。
魔法の国カルデアで作られたマジックアイテムÄRMの一つ。
主な機能は3つ。
一つ目は大きさの変化で、手ごろな鈍器から一帯を押しつぶす巨大なサイズまで使い手の自由自在である。
二つ目は人格をダウンロードすることで、本来はカルデアの長老の人格が入っていたが現在はモルガナの人格が入っている。バッボに触れることで人格をダウンロードできる。制限により最大で2つまでしか人格を保存できない。
三つ目はマジックストーンをはめ込むことで所有者が新たな能力を付与できること。最大で8つのマジックストーンをはめて能力を創造できる。
現在はまっているマジックストーンは1つ。能力は先代の使い手である虎水ギン太が創造した「結合」。バッボの中の人格を1つ別の体に移すことができる。ただし発動できるのは1度だけで、それ以降マジックストーンは力を失う。改めて使いたければ別のマジックストーンで能力を創造しなければならない。
【おてんこさま@新・ボクらの太陽 逆襲のサバタ】
ジョルノ・ジョバーナに支給された。
太陽意思ソルが地上に降臨したもの。地球上の全生命体を根絶やしにせんとする銀河意思ダークに対抗するため、地上の人々の祈りを受けて現れた超越存在。
基本的に戦う力はなく、吸血種を縛る結界や完全に浄化する魔法機械パイルドライバーを召喚するなどサポートに徹する。
ただしジャンゴと合身してソルジャンゴになることで強力な力を持つ戦士となる。
13
:
名無しさん
:2023/07/23(日) 21:31:17 ID:hbdzZ0MU0
投下終了です
14
:
乗る側と乗られる側
◆/dxfYHmcSQ
:2023/07/23(日) 21:32:05 ID:UIEBiKWQ0
投下します
15
:
乗る側と乗られる側
◆/dxfYHmcSQ
:2023/07/23(日) 21:32:27 ID:UIEBiKWQ0
「嘘〜この身体、船長なの」
暢気な声を上げたのは、貴族風の服を着た浅黒い肌の美男子だった。
「今度は私が乗る側になったんだ!ふっふっふっ、人の身体を得るというのは面白くっていいなぁ」
屈託なく笑う男の姿からは、邪気というものが一切感じられない。
他人の身体に容れられて、殺し合いを強要されるこの異常事態にも関わらず、青年────中に容れられた精神は、何らの動揺もしていないようだった。
「やっぱり、この事態を起こしたのはセイレーンなのかなぁ。まぁどうだって良いや。関わってたらアイツらと一緒にまとめてぶっ飛ばせば済むでしょ」
至極あっさりと現状を受け入れて、戦う事を決める青年の中身。
「船長の身体を、傷つけるわけにはいかないしね!!」
青年の名前はバーソロミュー・ロバーツ。18世紀のカリブ海に君臨した大海賊。
青年に容れられた精神の名はロイヤル・フォーチュン。バーソロミュー・ロバーツが駆った船が人の形を得た存在。
「うーん。身体だけとはいえ船長にまた逢えたんだ。今度は本当に船長と再会して、一緒に冒険したいなぁ」
何処までも暢気に、バーソロミュー・ロバーツが駆った船は、嘗ての船長の身体で歩き出した。
◆
????「書き手様の中にアビス・ホライズンをプレイした方はいらっしゃいませんか〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
その頃英霊の座では髭の男が発狂していた。
【ロイヤル・フォーチュン@アズールレーン】
[身体]:バーソロミュー・ロバーツ@Fate/Grand Order
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:この事態の首謀者をブッ飛ばす。殺し合いには乗らない
16
:
乗る側と乗られる側
◆/dxfYHmcSQ
:2023/07/23(日) 21:32:45 ID:UIEBiKWQ0
投下を終了します
17
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:40:25 ID:/NolUbXo0
投下します。
18
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:41:18 ID:/NolUbXo0
〈使命を果たさねば。宇宙を護る為に…。〉
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とある場所に人間とは明らかに違う生命体がいた。
赤い身体に筒の様な両腕―とある世界でメトロン星人と呼ばれた宇宙人は
電源の入ってないタブレットの画面を鏡代わりにして、自分の姿を確かめていた。
この会場では殺し合いの参加者は皆、心と身体が入れ替わっており、外見が人間離れすれば、普通は驚く筈だが…。
「顔の傷がなくなったのは良いが…、元々の顔の方が色男だったな。腕にも変な武器なんか付けて動きにくいったらありゃしない。」
と誰ともなく呟いたものの、声の調子は冷静だった。
そう、彼は心も身体もメトロン星人だった。
正確には、同族と身体が入れ替わっており、
顔や腕に付いている腕輪の様な武器など、細部に違いは有るものの、身体を動かす分には問題はなかった。しかし…
(あの魘夢とかいう少女、いや女装少年も気がきかないな。
私は指がないからタブレットが使えないじゃないか。)
指がないながらも、四苦八苦してデイバッグを開けたが良いが、肝心の情報はこの中と来た。
まぁ、相手の経歴が分からなくても特に問題はなく、両腕に付いていた武器も調べると何となく使い方も分かった。が、問題もある。
(…コイツの身体、変身能力を持ってないな。)
本来の身体と違い、この個体は人間に化ける事が出来ない。
これでは、他の参加者との交流時に不都合が生じる可能性がある。
(まぁ、他の連中も入れ替わっている様だし、案外人間から見てもっとおかしな外見の奴もいるかもしれないな。)
こればかりは、成り行きに任せるしかないなと、取り敢えず移動しようとする。
が、その時、後ろから物音がした。
振り返ると、そこにはモジャモジャとした天然パーマの中年男が立っていた。
「だ、誰だ?!お、お前は宇宙人か!?」
先程考えた通り、この姿を見て動揺しているらしい。
何とか敵意がない事を伝えようと、話を切り出そうとするが…。
「さてはジュラル星人の仲間だな!!
よくもこんなうだつの上がらないクルクルパー
マな男と入れ替えてくれたな!許さないぞ!!」
目の前の男はそう言うやいなや、
「チャージングGOー!!!」
何やら叫ぶと―極めて目に悪い色のタイツを着た
格好になった。
ついでに変態中年は仮装したかと思えば、
レーザー銃をぶっ放して来た。
(うおっ!危なっ!!)
辛うじて避けたが、後ろの木々が蒸発する程の凄まじい熱線だ。
当たったら、ひとたまりもないだろう。
(仕方ない…。)
メトロン星人は初めから両腕に装備していた武器―『ラウンドランチャー』を起動させる。
ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ
両腕に付いた輪の突起部分から発射音より速く、
数十発の光が放たれ、それは瞬く間に相手に着弾する。
それが数秒、いや数分と続いた。
いわば光線の機関銃といっても良いそれは、ウルトラ戦士と同等の魔人を追い詰めた代物だった。
しかし…
(効いていないか…。)
目の前の男には傷一つ付いてない。
「バカめ!そんな豆粒の様な弾が当たるか!」
しっかり当たってたんだが、と突っ込みたい気持ちを抑え、次の攻撃に備える。
―その時だった。
「待て。」
空中から声が聞こえ、二人は思わず上を見上げる。
そこには、一人の人物が空中に浮かんでいた。
その人物は銀色の身体に赤いラインの入った鎧を身に付けており、その胸の中央には一際目立つ円形のランプがあった。
顔はフルフェイスのマスクで隠されており、頭頂部には鶏冠の様な物が見える。
だが、マスクの眼光は鋭く、只者ではない雰囲気を漂わせていた。
やがてその人物がゆっくりと降りて来た。
「な、何だ。お前は」
「相手の話も聞かず、いきなり敵と決め付けるのか…。随分と野蛮なものだ。」
「だ、黙れ!さては、お前もジュラルの仲間か!成敗してやる!!」
メトロン星人は目の前の人物とは初対面だが、
その雰囲気は
地球に初めて来た時―四十年前とこの会場に呼ばれる前に出会った二人の宇宙人とよく似ている事に気が付いた。
そして、この鎧の身体は元の世界ではこう呼ばれていた。
“ウルトラマン”と。
19
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:44:37 ID:/NolUbXo0
〈ジュラル星人め!殲滅してやるぞ!!〉
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
チャージマン研こと泉研は
地球征服を企み暗躍するジュラル星人とその首魁、魔王と日々、戦いを繰り広げていた。
そのせいか、全ての事件にジュラル星人らが関わっていると思うようになり、今回の諍いの原因となった。
研は戦いに慣れているが、鎧の人物はそれ以上の力を持っていた。
しかし…、
鎧の人物が加勢に来て、一分がたった。
結論から言うと、鎧の人物が加勢に現れたものの、男―泉研の身体に傷を付ける事は敵わなかった。
相手はビーム銃を三回発射したが、鎧の人物は難なく躱し、逆に七回の攻撃を喰らわせていた。
拳
連打
蹴り
肘打ち
手からの光線
円盤状の刃の光線
果ては股間の急所攻撃等
―どれも効果がなかった。
メトロン星人も援護したが、全く意味がなかった。
相手の攻撃は直線的で読みやすいが、こちらの攻撃が効かないのでは、攻略しようがなかった。
「ハハハ、お前達の攻撃がこのパパの作ったスーツに効くものか!覚悟しろ、ジュラルの手下共!」
本人は異常な耐久力をあのスーツのお陰と思っているようだ。
鎧の人物はメトロン星人に近付き、耳打ちをする。
(…あの個体を倒す糸口が見つからない。
私がアレを引き付けるから、その間に逃げてくれ。)
(そいつは有り難いね。…問題はお前さん一人の犠牲で逃げ切れるかだけど。)
「何を話している!いい加減にトドメを刺してやる!!」
研は、早く決着を付けようと距離を詰めて、銃撃しようとする。
対する鎧も、相手に対抗し、全身を赤く発光させる。
―赤い異星人を逃がす為、今の身体の最大の攻撃をしようとしていた。
◇
―チャージマン研こと泉研の身体は
ウルトラ・スーパー・デラックスマンこと句楽兼人の身体である。
正義感の強かった句楽は、ある日、突然授かった超人的な力でヒーロー活動を行うも、
その力に溺れ、独善的な行動を取るようになる。
空を自在に飛び、念動力、透視に加え、
力も強く、人体を紙屑の様に千切る事も容易い。
刃を通さず、核攻撃にも耐えうる肉体を持ち、
文字通り、完全無敵だった。
たった一つの弱点を除いて。
20
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:45:42 ID:/NolUbXo0
◇
突然、目の前の男―泉研の動きが止まった。
「ぐ……。が、…はっ!」ゴバァ!!
男は吐血すると、光線銃を取り落とし、その場にうずくまる。
思わぬ事態にメトロン星人らも、驚きを隠せず、動揺する。
「お前達…、何をした!!」
泉研は声を荒げ、鬼のような形相で睨み付ける。
無論、メトロン星人らは何もしていない。
考えられるとすれば、
(あの身体自体の不調か。恐らく、入れ替わる前に毒を喰らうか、病に罹るか、何かがあったんだろう。)
メトロン星人の予想通り、
句楽兼人の身体は末期の胃癌を患っていた。
元の世界では、刃が通らない身体が仇となり、手術が出来ず、命を失ったのだ。
勿論、そんな事はこの場にいる誰もが知らない話ではあるが。
「…今の内に撤退するとしよう。」
「賛成だ。あんな厄介な“正義”に殺される程、馬鹿らしい事はないからな。」
メトロン星人を抱えて、銀色の鎧は空へと飛び上がる。
「ま…、待て……!」
研は呼び止めるが、
瞬く間に、二人の姿は遠くの点となっていた。
「くそう…、許さない。絶対に…許さないぞ。」
泉研は自由の効かない身体と…、逃走を許した二人に対して、苛立ちを募らせる。
やがてそれは怒りに…、殺意へと昇華する。
「殺してやる…。殺してやるぞ…、魔王ォ!!」
一人残された英雄は、首謀者と思い込んだ宿敵に
見当違いの殺意を滾らしていた。
【泉研@チャージマン研】
[身体]:句楽兼人@ウルトラ・スーパー・デラックスマン
[状態]:吐血、末期の胃癌
[装備]:ビジュームベルト@チャージマン研、 アルファガン@チャージマン研
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:ジュラル星人らの殲滅
(自分がジュラル星人及び協力者と思った人物を倒す。)
1:この痛みと苦しみをどうにかしたい。
2:痛みが治まったら、あの二人(メトロン星人と鎧の人物)を追う。
[備考]
※殺し合いの首謀者を【ジュラル星人】・【ジュラルの魔王】と思い込んでいます。
※句楽兼人の身体を只のおじさんと思っています。
※あらゆる攻撃を受け付けない身体を持っていますが、末期癌を患っています。
21
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:46:46 ID:/NolUbXo0
〈もう狙わないよ。地球も、この街も。〉
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ここまで来れば、安全だろう。」
数分、空中を移動した後に、
鎧の人物はメトロン星人を地面へと降ろす。
「有難う。この会場では、すぐに助け合える相手が見つかるとは思わなかったよ。」
「礼を言う必要はない。私も使命の為に協力者が必要だったからな。
…早速だが、改めて協力を頼みたい。」
「協力?この場を切り抜け、生き残る以外に?」
「ああ、まずは私の使命から話そう。それは…。」
「―地球に住む全人類の抹殺だ。」
その場の空気が凍りつく。
メトロン星人も、思わず後ずさりをする。
「お前さん…、何を言っているのか、分かっているのかい?」
「分かっている。私は人類を滅ぼす為に母星より派遣されたのだ。」
と、赤い異星人に表情の見えないマスクを向け、
まるで機械人形のように、無機質に応える。
「私はゾーフィ…。光の星の使者だ。」
22
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:47:42 ID:/NolUbXo0
◆
「事の成り行きから話そう。
地球ではとある外星人の策略で、人間の兵器としての活用が宇宙に広まりつつある。」
「その為、私が派遣されたのだ。…地球を観察し、処分を決める為に。
結果、他の外星人に利用される前に殲滅する旨が、母星から通達された。」
「しかし、この会場に連れて来られ、私は改めて、人類の危険性が極めて高い事を感じている。」
「あの魘夢と名乗った少女も、先程の男も別の方面に進化した人類の一種と見た。
彼らの数が少ない内は良いが、
あのような攻撃的な思考・能力を持った人類が増え続けば、他の惑星に争いを持ち込み…、この宇宙に多大な害を及ぼす事だろう。」
「加えて、この鎧だ…。人類が作った物で、別の次元の私の“同僚”を模した物らしい。」
「人間は技術力も高く、個体の進化も早い…。
宇宙の為に速やかな“駆除”が必要だろう。」
「本来ならば、効率良く殲滅を行う為の“切り札”を持って来たのだが…、恐らく魘夢らに奪われたようだ。」
「仕方なく、私自ら、切り札の奪還と危険人物の排除にあたるつもりだ。
…勿論、彼らの言う優勝に興味はない。
例え、私がこの場で命を落としても、母星から後任が来て、殲滅の任にあたるだろう。」
ゾーフィは同じ宇宙の住人に対し、手を差し伸べる。
「どうだろうか…。私と共に人間を―この宇宙を荒らしかねない害獣共を駆除する事に…、協力してくれないだろうか?
…少なくとも、私と行動を共にするなら、この会場での身の安全は保証しよう。」
その手を赤い異星人は―、掴む事はなかった。
「…残念だけど、それはできない相談だ。
確かに人間の科学は日々、急激な勢いで進歩している…。
が、人間の精神や肉体はそれに追い付かず、
便利なツールで頭脳は退化し、発達しすぎた科学で一部の者は力に溺れる…。
近い未来、地球は何もしなくても、戦争等の種族同士の争いで衰退の道を辿るだろう…。
だが、力を失った人類を我々が支配する事で、地球は新しく生まれ変わる事が出来る筈だ。
お前さんの言う特別な力を持った者が出て来たとしても我々がコントロールし、管理出来る。
あと少し、あと少しで地球は自滅し、我々の手に入る…。
そんな機会を見過ごす訳にはいかないんだよ。」
「…君は人間を、他の外星人のように兵器に使おうとしないのか?」
「…少なくとも、今の段階ではね。
我々は―、私はこの美しい地球も、珍しい文化を持つ人類も等しく手に入れたいんだ。」
「……そんなに地球が、
―人間が好きになったのか、外星人。」
「……。」
光の使者の問いに対し、目の前の侵略者は無言で答える。
決別を感じ取ったゾーフィは差し伸べた手を引っ込める。
「…いいだろう。同じ宇宙に住まう民として、この場は見逃そう。
だが、再び見合う事があれば…、排除すべき障害として…、敵として対峙しよう。」
ゾーフィの身体は宙に浮き始め、高度は段々と高くなっていく。
「さらばだ、外星人。出来れば、再び会う事もなくこの舞台から退場していてくれ。」
ゾーフィはそう言い残すと、空高く上り、その姿はやがて見えなくなった。
「…私はまた会いたいね。お前さんが人間を滅ぼすという“正義”をいつまで持っていられるのかどうか…ね。」
赤い異星人は英雄に似た宇宙人が居た空に向かって、静かに呟いた。
23
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:48:11 ID:/NolUbXo0
【対話宇宙人 メトロン星人@ウルトラマンマックス】
[身体]:メトロン星人タルデ〈ラウンドランチャー〉@ウルトラマンオーブ
[状態]:健康
[装備]:ラウンドランチャー(初めから装備済)@ウルトラマンオーブ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:この殺し合いから生き延び、地球を手に入れる。
1:タブレットを使える者を探す。
2:ゾーフィと泉研(名前は知らない)は警戒。
[備考]
※人間への擬態は出来ませんが、巨大化する事は可能です。
※ラウンドランチャーは入れ替わる前から装備しています。(タブレットを確認してないので、外し方は分かりません。)
※元の身体の方が色男と思っています。(人間に違いは分かりません。)
【ゾーフィ@シン・ウルトラマン】
[身体]:早田進次郎@ULTRAMAN
[状態]:健康
[装備]:ULTRAMANSUIT@ULTRAMAN
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:人類の殲滅
1:“切り札”こと天体制圧用最終兵器(ゼットン)の奪還・回収。
2:優勝を狙うつもりはないが、光の星からの後任の為に、少しでも危険な人間を減らしておきたい。
3:人間以外の協力者を見つけたい。
[備考]
※魘夢(ウタ)と泉研(句楽)を進化した人類と思っています。
24
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 21:49:43 ID:6E7RCPtU0
投下をします。
25
:
私は最強
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 21:50:17 ID:6E7RCPtU0
在る者はこの方の恐ろしい守りを畏怖し、こう呼んだ、
恐怖の激固ネズミと
また在る者は初っぱなからぶちまける
とてつもない攻撃を恐れこう呼んだ、
猛威のなみのりネズミと、
そしてありとあらゆるものは彼をたたえこう呼ぶ、
ナンバーワンポケットモンスターピカ様と、
このピカチュウはパルデア地方におけるテラレイドバトルで
有象無象のポケモントレーナーを蹴散らし、
数あるピカチュウの中でも頂点の実力を持つ。
そんな最強のピカチュウもこの殺し合いに誘われ未知の肉体が与えられた。
その肉体はまさに神そのもの、天よりいでし心を持たぬ存在を追い、
12の武器を持つ勇者たちすら凌ぐ、けっして語りかけてはならぬ存在。
元の世界においてぶっちぎりの強さを有するしんりゅうというドラゴンであった。
巨体を誇るにもかかわらず宝箱に収まる身体の柔軟性、
溢れ出る剛力、目にもとまらぬ俊敏性、攻撃と補助問わずあまりにも多彩な技の数々。
常識に沿って見れば文字通り敗北する要素など
欠片たりとも見当らないまさに最強の化身。
最強のピカチュウはタブレットでこの詳細を閲覧した際戦慄すら覚えた。
この肉体は大アタリどころではない。
優勝確定のチケットみたいなものではないか。
ここから始まるのは殺し合いではなく
神による無双劇しか考えられない。
最強のピカチュウの本来も肉体も文字通り最強№1に相応しかった。
はじまりになみのりで弱気ポケモンたちを瀕死の彼方へ洗い流し、
極限まで高まった猛撃でも無い限り破られぬ究極のバリア。
そしてとっておきの持ち物でんきだまによって破壊力が極まる。
このようにまさしく最強のピカチュウは最強である。
しかしこのしんりゅうのちからはこれすらも超越しているのではないか?
こんな恐ろしすぎる神の肉体を用意した厭夢は神すらも超えているというのか。
…いいだろう厭夢、お前の思惑通り、
この肉体の絶対的な力を存分に振るい
全ての参加者を瀕死へ追い込んでくれよう。
そして証明してやる、
肉体がチェンジされようが
自分こそが最強であることを。
ひとよ、ポケモンよ、そしてあまたの命よ、思い知るがいい
この最強のピカチュウこそが
全て頂点であるという不変の真実を。
【最強のピカチュウ@ポケットモンスター スカーレット・バイオレット】
[身体]:しんりゅう@ファイナルファンタジーⅤ
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:他の参加者を一人残らず瀕死にさせて、自分こそ最強であると証明する。
1:他の参加者を探して倒し、瀕死にする。
26
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/07/23(日) 21:50:27 ID:/NolUbXo0
投下終了します。タイトルは【狙われた侵略者/狙われない人類】です。
度々、不都合があり、すいませんでした。
27
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 21:50:36 ID:6E7RCPtU0
投下は以上です。
28
:
◆QUsdteUiKY
:2023/07/23(日) 21:50:38 ID:JrRzEwbg0
投下します
29
:
あの素晴らしい友達に祝福を!
◆QUsdteUiKY
:2023/07/23(日) 21:51:19 ID:JrRzEwbg0
「殺し合いなんていきなり言われても、実感湧かないなぁ」
如何にも魔法使いといった服装の少女は、呑気にそう呟いていた。
彼女の名はめぐみん。されども入ってる魂の名は――条河麻耶。
今まで殺し合いとは無縁の生活をしていたがゆえに魘夢の言葉にあまりしっくりと来ない。
「そもそも本当に別人に生まれ変わっ――てた!?すごっ!」
試しに手鏡を見るとそこには別人が写っており、自分の肉体が変わっていることを強く実感する。
だがその紅い瞳に眼帯という佇まいは、マヤ的に嫌いじゃない。むしろ好みだとすら思う。
「へー、爆裂魔法なんて使えるんだ!」
タブレットを操作してプロフィールを見ると紅魔族という特殊な一族で、爆裂魔法が得意と書いてある。マヤにとっては思わず心惹かれる単語だ。
しかも支給品にはめぐみんの杖。その典型的な魔法使いっぽい杖を手に取り、マヤは「いいじゃん、これ!」とご機嫌な様子。
「めぐみん!?めぐみんじゃない!」
――と、そんな時だった。
ピンク髪の小さなツインテールが特徴的な少女が駆け寄って来たのは。
「え、誰?」
もちろん相手のことを知らないマヤは首を傾げ、疑問符を浮かべるばかりで。
声を掛けたピンク髪の少女は「あっ、身体が入れ替わってるんだったわね……」と納得した様子で――。
「えっと……私はゆんゆんです」
「私はマヤ!チマメ隊のマヤだよ!」
相手が“めぐみん”ではないと知ると、態度が急変。ゆんゆんと名乗る少女は敬語で自己紹介し、マヤも元気良く名乗った。
「あ、タブレットに書いてあったプロフィール的にはこうかな?」
……名乗り直後、マヤは思い出した。タブレットに書いてあっためぐみんなりの挨拶を。
ゆんゆんは何かを察して「そんなことしなくても――」と言い掛けるがもう遅い。
「我が名はマヤ!チマメ隊の一員にして、えーと……」
「そんなことしなくてもいいのよ、マヤちゃん……」
名乗りが思い浮かばず、言葉に詰まるマヤにゆんゆんは優しく声を掛けた。
30
:
あの素晴らしい友達に祝福を!
◆QUsdteUiKY
:2023/07/23(日) 21:52:00 ID:JrRzEwbg0
○
「改めて……私はゆんゆん。この身体の女の子は“鹿目まどか”ちゃんっていうみたいだけど……私はゆんゆんよ」
その口調や雰囲気からマヤを幼い少女だと感じ取ったゆんゆんは、彼女をちゃん付けして敬語も辞めた。
とはいえ実際の年齢は大して変わらないのだが、何故かチマメ隊はみんな性格も見た目も幼いから仕方ない。ごちうさを見たことない人には小学生だと思われがちでもある。なんで?なんで?中学生!
そんなこんなで二人は互いに自己紹介し、タメ口で話していた。
ゆんゆんでもマヤに接しやすいのは、彼女の人懐っこい性格と身体がめぐみんだったということが大きいだろう。
マヤは明るく、元気だ。その天真爛漫さはこの殺し合いでも遺憾無く発揮され、ゆんゆんに安らぎを与える。
「そういえばゆんゆんって、めぐみんの友達なの?」
マヤはこう見えて地頭が悪いわけじゃない。
めぐみんの身体に惹かれて自分に接触してきたということは――きっと友達なのだろうと推測した。
「私とめぐみんは、ライバルよ!」
マヤの質問に対して――この時ばかりはテンションが上がったのか、少しだけ声高らかに自分達の関係性を教える。
恥はない。だって二人にとって“ライバル”はトクベツな関係だから。
「ライバルか〜。いい関係だね!」
その関係性をマヤは素直に受け取り、賞賛した。
ライバル。その言葉の意味はもちろんマヤも理解している。まあマヤにはライバルなんて言える相手は居ないのだが、漫画や映画で何度も見てきたからよくわかる。
「あ。ライバルってことはゆんゆんも魔法が使えるの?」
「ええ、使えるわ!……まあこの身体だと上級魔法は使えないけど」
あくまで今のゆんゆんは、鹿目まどかの身体だ。魔法少女にこそなれるが、魔法は使えない。
本当は上級魔法を見せてあげたいところだが、それが出来ずに苦笑いして誤魔化す。
「そっか。残念だけど、身体が違うから仕方ないよね〜」
状況が状況だからマヤもそれ以上は深追いせず、諦める。今のマヤが爆裂魔法を使えるように、身体が変わったことで技能を失った者だって存在するわけで。そのうちの一人がゆんゆんというだけだ。
「あっ、でも魔法少女っていうのに“変身”することは出来るみたいよ」
「魔法少女!?いいね、やってみてよっ!」
マヤの食い付きは早かった。
ゆんゆんの方も断る理由がなく、魔法少女に変身する。
ピンク色を基調としたフリルたっぷりの服装は正に“魔法少女”と呼ぶに相応しい。
「本当に変身した……!?すっごいじゃん!!」
「ありがとう、マヤちゃん」
興奮気味に褒めてくるマヤに対して、ゆんゆんは頬を朱にして感謝の言葉を口にする。
31
:
あの素晴らしい友達に祝福を!
◆QUsdteUiKY
:2023/07/23(日) 21:52:37 ID:JrRzEwbg0
○
――あ、あのめぐみんが素直に私を褒めてる!?
いや、違うわ。このめぐみんは――めぐみんの身体だけど、めぐみんじゃなくて。
この子はマヤちゃん。明るくて元気で、ひねくれ者のめぐみんとは違って素直な子。
それはわかってるんだけど――わかってるのに、やっぱりめぐみんにも見えちゃう。
だって声も見た目もめぐみんで――性格や言動は違うけど、マヤちゃんもめぐみんと少し感性が似てて。爆裂魔法にも興味津々だし……。
それに――やっぱり誰かに褒められるって、嬉しいわね。
も、もちろんめぐみんの声で褒められたから嬉しいというわけじゃないわ!マヤちゃんに褒められて嬉しいのよ。
でも――めぐみんは今頃、どこで何をしてるのかな?
マヤちゃんがめぐみんの身体っていうことは――きっとめぐみんも巻き込まれてるんだよね?
それなら私が見付なきゃ……めぐみんだけだと、ちょっと心配ね。
だってめぐみんは私のライバルで。
ライバルなんだけど……一番大事な友達で。
めぐみんがすごいことは――知ってる。
爆裂魔法なんてネタ魔法で色々な困難を乗り越えて――そんなめぐみんはね、すごいと思うよ。
でもね。
これは殺し合い。めぐみんには……ううん、私達には向いてないと思う。
だからめぐみんを見つけ出して――助けたい。もちろんめぐみんの身体のマヤちゃんもね。
大丈夫。きっと私達なら魘夢にも勝てるわ!
――なんて、本当は思ってもないんだけどね。でも私とゆんゆんなら――きっとあの時みたいに、二人で魘夢を倒せるから。
本当は私だけで魘夢を倒したいけど――そうやってあの悪魔に私が立ち向かった時もめぐみんが来てくれて。
だからね。今回はめぐみんと“一緒に”倒そうかなって。紅伝説(あの時)みたいに、二人なら――きっと、出来るよね
32
:
あの素晴らしい友達に祝福を!
◆QUsdteUiKY
:2023/07/23(日) 21:53:08 ID:JrRzEwbg0
○
「ゆんゆん?」
「……はっ!どうしたの?マヤちゃん」
「さっきから何か考えてるみたいだったからさ!悩み事とか?」
「……ううん。大切な友達のことを、思い出してただけだよ」
「へー!やっぱりめぐみんとゆんゆんって友達なんだ!!」
「そうね。――私にとってめぐみんはライバルで、大好きな友達よ!」
「私にも大切な友達がいるんだよ。チノとメグっていうんだけど……」
「うんうん」
「チノと私とメグで、三人揃ってチマメ隊なんだ〜!」
「そうなんだね。……じゃあチノちゃんとメグちゃんも、探さないとね」
「うん!もちろん、めぐみんの魂もね!」
「ありがとう、マヤちゃん。……マヤちゃんも、優しいのね」
「私も?ていうことは、めぐみんも優しいんだ!」
「そっ、そういうことじゃないから……」
「あれ?ゆんゆんの顔、赤くなってるぞ〜!?」
――意気投合した二人は、その後仲良く笑い合った。
ついでに爆裂魔法のデメリットが大きくて使い勝手が悪いことも教えたとか、なんとか
【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[身体]:めぐみん@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ
[状態]:健康
[装備]:めぐみんの杖@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ゆんゆんと一緒に居る。もちろん魘夢も倒さなきゃね!
1:チノとマヤは居るのかな?
2:爆裂魔法を使うタイミングは気を付けよっと
[備考]
【ゆんゆん@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ(アニメ版)】
[身体]:鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]基本方針:めぐみん……また紅伝説(あの時)みたいに、一緒に魘夢を倒さない?
1:マヤちゃんとめぐみんの身体は私が守るわ
2:めぐみん……どこにいるのかな……?
[備考]
※参戦時期は紅伝説終了後です
33
:
◆QUsdteUiKY
:2023/07/23(日) 21:53:24 ID:JrRzEwbg0
投下終了です
34
:
◆8eumUP9W6s
:2023/07/23(日) 21:55:41 ID:y2nLiseo0
投下します!
35
:
◆8eumUP9W6s
:2023/07/23(日) 21:56:12 ID:y2nLiseo0
顔面のある月が見下ろす、会場にて…タブレットを見ていた紫色とも灰色とも見える髪色をした少女…柊シノアの肉体に放り込まれた男・宝生永夢は何とも言えない表情を浮かべていた。
(…心からの笑顔じゃない、張り付いた薄っぺらい笑顔ばかりで…自分の命の価値も他人の命の価値も、重さがわからないまま軽んじて……お姉さんに、心を壊されて…)
説明には他に妹を守る手段が無かったが故に、やむを得ず心を壊す事を選んだと書かれていた。
…専門ではないが医者な以上、心を壊す事は認められる訳がなかった…が、かつて戦った男である南雲影成の件もあり、それでも妹には、幸せに生きれる可能性が少しでも残って欲しかったのだろうと永夢は推測していた。
だからそれもあって、何とも言えない表情を浮かべていたのであった。
しかしプロフィールにはそれだけではなく、少女は、根の優しさを失わず、部下兼仲間のおかげで…そして想い人のお陰で、徐々に変わっていった事も書かれていた。
(…この子は本当の笑顔を取り戻せた、のかな。
……なら、この身体を返してあげないと)
「君の運命は…俺が変える」
殺し合いに抗って、この身体をシノアに返すと…そう永夢は決めていた。
その後バッグの中身を見た永夢は、思わず驚愕する。
「…バグルドライバーⅡに…仮面ライダークロニクルの、マスターガシャット!?」
バッグの中身にあったのは、自分たちCRの宿敵であった男檀正宗が、変身に使っていたアイテム一式だった。
説明には、純粋な人でない身体の参加者なら使用可能となっている。
生まれつき鬼を宿して生まれた上、人工的な実験により生み出された存在であるシノアの身体である今の永夢ならば変身可能だ。
(これを持ち帰れれば…ゲーム病で消えてる人達の治療法まで一気に近付く…盗られたり壊されないように気を付けないと)
ただでさえ重い責任が、更にのしかかって来たような感覚を感じた永夢だが、彼の殺し合いに抗う意思は変わらない。
自由意志を奪われたりしない限り…医者として、かつて自分の命を軽んじてしまった者として、彼は殺し合いに抗うだろう。
【宝生永夢@仮面ライダーエグゼイド】
[身体]:柊シノア@終わりのセラフ
[状態]:健康、深い決意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、バグルドライバーⅡ&仮面ライダークロニクルのマスターガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ツインビームサイズ@新機動戦記ガンダムW
[思考・状況]基本方針:主催を倒して身体をシノアちゃんに返して、マスターガシャットを元の世界に持ち帰る。
1:殺し合いには乗れない。
2:この子は、虚無から変われたんだ……。
3:MS…?
[備考]
※参戦時期は少なくとも「トゥルー・エンディング』よりは後です。
【バグルドライバーⅡ&仮面ライダークロニクルのマスターガシャット@仮面ライダーエグゼイド】
仮面ライダークロノスへの変身を可能とするアイテム一式。
【ツインビームサイズ@新機動戦記ガンダムW】
ガンダムデスサイズヘルの主武装。ビームを纏った鎌。
主催の手により威力を下げられた上で人間が持てるサイズまで縮小されている。
36
:
◆C0c4UtF0b6
:2023/07/23(日) 21:56:39 ID:RZfSqL8c0
投下します
37
:
◆8eumUP9W6s
:2023/07/23(日) 21:56:57 ID:y2nLiseo0
投下終了です、タイトルは「まさかのdiscover」です。
38
:
クレイジー・レディクラウン
◆C0c4UtF0b6
:2023/07/23(日) 21:57:03 ID:RZfSqL8c0
「へえ…機械の身体…面白い!」
【メリーベル・ガジット@∀ガンダム】
[身体]:ハリビューンV6@マジンガーZ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを楽しむ
1:とにかく目に入ったらやつから殺す
39
:
◆C0c4UtF0b6
:2023/07/23(日) 21:57:17 ID:RZfSqL8c0
もう一本投下します
40
:
◆2dNHP51a3Y
:2023/07/23(日) 21:57:19 ID:y3icyW/Q0
投下宣言だけしておきます
41
:
蒼き士
◆C0c4UtF0b6
:2023/07/23(日) 21:57:42 ID:RZfSqL8c0
「…パイロットか…」
【劉邦@スクライド】
[身体]:アサギ・トシカズ@銀河機攻隊マジェスティックプリンス
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:妥当主催
1:この殺し合いを止めて見せる
42
:
◆C0c4UtF0b6
:2023/07/23(日) 21:57:54 ID:RZfSqL8c0
投下終了です
43
:
◆EMaQQEjKTc
:2023/07/23(日) 21:58:18 ID:bWJoO7Bo0
投下します。
44
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 21:58:22 ID:GKnkTFI60
投下します。
45
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 21:58:34 ID:GKnkTFI60
お先にどうぞ。
46
:
◆s5tC4j7VZY
:2023/07/23(日) 21:58:54 ID:HMFBTaKA0
投下します。
47
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 21:59:22 ID:6E7RCPtU0
もう一作投下させていただきますが遅くなります、23時までに投下を終えます。
48
:
◆s5tC4j7VZY
:2023/07/23(日) 21:59:28 ID:HMFBTaKA0
すみません!割り込んでしまって!自分は最後で大丈夫です!
49
:
◆2dNHP51a3Y
:2023/07/23(日) 22:04:10 ID:y3icyW/Q0
出来上がったので投下します
50
:
◆EMaQQEjKTc
:2023/07/23(日) 22:07:51 ID:bWJoO7Bo0
すいませんこちらも投下宣言だけのつもりだったので、
先に投下できる方はお譲りします。
51
:
痛み分け
◆2dNHP51a3Y
:2023/07/23(日) 22:08:20 ID:y3icyW/Q0
「くぅ……!」
漏れる苦悶の呻きと共に、その少女は"敵"を見失った。
軽装の女武者とも言うべき風貌と雪月花の如き青白い髪。
だが、その透き通るような美貌が浮かべる表情は苦痛に歪んでおり。
その証拠に、右肩あたりには先の戦闘で受けた傷を片腕で抑えていた。
「……まさか、あんな面倒なのがいるだなんて。」
経緯を語れば、それは至極簡単な話だ。
神里綾華という身体に押し込められた黒鉄珠雫が運悪く殺し合いに乗った相手と戦った。
それは一見すれば普通の一般人に見えた。その中身が悪意に塗れた呪いであることを除けば。
当初珠雫はこの身体での戦い方に慣れておらず、その結果余計な手傷を負うも、何とか支給品の力を引き出し固有霊装を擬似的に形成できた事で危機を乗り切ることが出来た。
厄介極まりないなんて所じゃない。
そもそも身体を取り替えられるというだけでも異常極まりないというのに。
それ以上に、最後の一人にならないと月が墜ちてきて会場纏めて全滅。
勿論、最後まで生き残ればその褒美として何でも願いを叶えてくれる権利、そして元の体に戻る権利。
「……ええ、そうですね。本当ならば、この私は叶えたい願いがあるはずです。」
黒鉄珠雫にとって、何よりも最優先すべきは愛すべき兄である黒鉄一輝。
彼の幸せの為ならば、優勝を考えるのも吝かではなかった。
「ですが。そのような誘惑は、私には必要ありません。」
いつの間にか、兄の周りには自分以外の理解者が増えた。
気に入らないが、競い合い愛し合うライバルも出来た。
今の兄は、自分が居なくとも幸せになれるだろう。
だから、こんな形での願いのチャンスは要らないのだ。
「待っててくださいお兄様。この珠雫、今すぐお兄様の元へ戻りますから。」
深海の魔女(ローレライ)、黒鉄珠雫。
彼の幸せを願う少女は、その道を間違えない。
【黒鉄珠雫@落第騎士の英雄譚】
[身体]:神里綾華@原神
[状態]:右肩に貫通痕(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、神の目@原神
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。殺し合う以外の方法でお兄様の元へ戻る方法を探す
1:……あの男、強かった
2:お兄様やステラさんが居た場合は合流。
3:この身体と力に早く慣れないといけませんね。
[備考]
※神の目の力を用いて擬似的に固有霊装(デバイス)『宵時雨』の具現化を可能としています
『支給品紹介』
【神の目@原神】
黒鉄珠雫に支給。「テイワット」と呼ばれる異世界において、神に認められたとされる極小数の人間が得た外付けの魔力器官。金属製の外枠に大きな宝玉がはめ込まれた、掌サイズのブローチのような形をしている。
これを所持するものは元素力のどれか一つを感知し引き出せるようになり、身体能力も一般人とは比べ物にならないほど増強される。
所有者が死に残った神の目は、元素力の無い抜け殻となる。極低確率で共鳴し再利用できる人間は存在するが、近寄るだけでも相応の行動が必要とのこと。
●
「いやぁ、まさかこんな事になるだなんて思ってもよらなかったよ。」
別の場所にて、少女が嗤う。
ただの少女と言うには、それは余りにも歪んだ笑顔を浮かべているのだ。
呪術師・釘崎野薔薇の身体を得た呪霊・真人。
それが黒鉄珠雫を襲撃した張本人。
まさか呪術師の身体に閉じ込められるという未知の事態。
無為転変は使えず、使えるのは彼女が使っていた共鳴りの術式。
幸いにも釘だけは大量にあったので攻撃手段には困らないが。
「でも、彼女結構強そうだね。」
そう呟く真人の右腕は軽く赤く爛れている。
先の戦闘にて一矢報われ、見事に凍傷を残されてしまった。
身体が違うため反転術式が使えるかどうかもご覧の有様。
呪術師でも呪詛師でもない人間、全く未知の力を扱う氷の少女。
やはり、興味深い。
呪霊の魂すら容易く別の身体に押し込める魘夢の力が。
だが、こうやって呼ばれたというのなら、やることは全く持って決まっている。
「帰ることは決まってても、それまでにやることは変わらないさ。呪いらしく振る舞おうじゃないか。」
【真人@呪術廻戦】
[身体]:釘崎野薔薇@呪術廻戦
[状態]:右腕に凍傷(小)
[装備]:釘(??/20)@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:呪いらしく狡猾に振る舞う。あとちゃんと元の世界には帰りたいかな?
1:人間の体を充てがわれるのは良いけど、元の術式が使えないのは厄介だなぁ。
2:虎杖とか宿儺とかいたら面白そうかもかな?
[備考]
※参戦時期は最低でも渋谷事変前
※釘の残りストックは後続の書き手にお任せします
52
:
◆2dNHP51a3Y
:2023/07/23(日) 22:08:39 ID:y3icyW/Q0
投下終了します 滑り込みして申し訳ございません
53
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:12:53 ID:GKnkTFI60
では私が先に投下しますね。申し訳ありません。
54
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:13:22 ID:GKnkTFI60
「一体どうなっているのかしら……」
チャットは混乱の真っただ中にいた。
何しろ、時を巻き戻し、その果てに倒したはずのムジュラの仮面がいたのだから。
おまけに悪いことに、あの時消えたはずの巨大な月まであった。
あの時と違う点は、旅の途中のパートナーがいないこと。
そして何より、自分が人間の姿になっていること。
どんな人間なのか分からないので、一先ず鏡と人物紹介の紙を見ることにした。
パッチリした瞳と、くすみのない金髪。そして健康的な小麦色の肌。
妖精であるチャットでさえも、美女であると分かった。
見た目は良いが、どんな人物かはまだ分からない。極悪人ならばあまりよろしくないものだ。
「え?これって……。」
文章を読んでも、途中までは特に違和感を覚えなかった。
何でも彼女の身体の持ち主は、テトラという名前でかつて海賊団の頭だったという。
別にそれがどうしたというわけでもない。彼女も海賊ぐらいはグレートベイで見たことがある。
だが、後半の文章に、どこか引っかかるものがあった。
(あいつが言ってたゼルダって……この人なの?
というか今の私の身体がテトラで、テトラの正体がゼルダ?ややこしいわね……。)
そこに書いてあったのは、旅の仲間から何度も聞いた名前。
そして、彼女の冒険のカギになった、時のオカリナの持ち主の名前。
「ふ〜ん。あいつ、こんな綺麗な人と会っていたんだ……。でも、どこかイメージと違うわね。」
チャットには知る由もないことだが、彼女が相棒から聞いたゼルダと、今の肉体は違う者だ。
尤も、少なくとも今はどうでもいいことだが。
続いて支給品を探るも、武器らしい武器は無かった。
旅仲間が使っていたものが1つだけあったぐらいだ。
(あ〜、人間の身体って、不便なのね!!)
それからすぐに、チャットの目の前に降りかかったのは、疲労だった。
肉体は体力に優れた海賊であるが、、それはそうとして妖精であった彼女は、道を歩くという行為に慣れていない。
何度か石や木の根っこに躓き、道で滑り落ちかけた。
しかも場所は、足場の悪い山道だ。
羽のある生物なら平地も坂道も、全く関係なく進めるが、二本足で歩くとそういうわけにはいかない。
55
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:14:05 ID:GKnkTFI60
とりあえず、山を下りて誰か探そうとした。
リンクやタルミナの住人達も、別の肉体でいるかもしれないと考えて。
身体をあちこちぶつけながらも、山を下りて行くと、その向こうに人が見えた。
「そ、そこに誰かいるの!?」
声の主は、チャットが近づく前に話かけてきた。
暗い中姿を掴むのに手間取ったが、その姿はチャットにとって、奇妙に映った。
姿形は人間のものだが、衣装は完全に異なっている。
袖口がやたら広く、腰の部分にベルト状の布を巻いている。
手足の裾が山を歩くのには向いてないほど長く、歩くたびに装身具がじゃらじゃらと鳴る。
リンク達が来ているのが洋服だとするなら、和服というものに近い。
「ここにいるわ。早速だけど一つ聞きたいことがあるの。」
そして面立ちも人間のものだが、あまりチャットが見たことの無い雰囲気だった。
リンクや多くのタルミナの住人のように眼鼻のくっきりした顔立ちではなく、どちらかというと細い目と平たい顔をしている。
髪はカラスの羽毛のような黒色で、頭上でリボンのような形に結ってあった。
「この私に向かってそんな口の利き方を……いや、いいわ。何でも聞きなさい。」
目の前の女性の正体は、チャットが知っている人では無いことは察しがついた。
彼女はゆっくりとチャットの所に近づいてくる。
「ここに来るまで、誰かに会わなかった?」
「いえ、会ったのはあなただけよ。それよりも……。」
「どうかし……!!」
平たい顔の女性が全て言葉を話し終わる前に、チャットはすぐに飛び退いた。
それは、彼女が冒険で身に着けた、観察力によるものだ。
目の前の相手が、ずっと右腕の先を見せていないことに、違和感を覚えたのだ。
「アンタ…どうして……。」
「私が永遠の命を得るために決まっているじゃないの。」
彼女の表情は、邪悪そのものだった。
4人の巨人に取りついた怪物みたく、この女性の肉体にも悪が宿っているのか。
それとも、元々悪の肉体だったのか。はたまた、肉体精神どちらも悪なのか。
敵が殺し合いに乗っていたことを見破れたのは良い。
だが、その先が問題だ。
観察力だけで相手に勝てるのなら、格闘技の試合を繰り返し見て、寝てれば問題ない。
ザックから道具を取り出すことが出来ず、おまけに慣れない人間の身体。
初動は良くても、第二、第三の動作となると、必然的にボロが出てくる。
56
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:14:30 ID:GKnkTFI60
「きゃっ…」
逃げようとした矢先に、石に躓いて転んでしまった。
妖精というのは、大体足元に気をくばらなくても転ばない生き物だから、そうなるのも仕方がない。
「死ね!!」
「ウソでしょ……リンク…たすけ……。」
手にした包丁で、チャットを刺そうとする。
だが、破裂音が山に響いたと思うと、武器は明後日の方に飛んで行った。
□
「助けてくれたの?」
破裂音の方にいたのは、またもや黒目黒髪の少女だった。
着こなしこそは全く違うものの、同じ国かもしれないとチャットは思う。
「私はただ近くを通っただけだ。」
その手に握られていたのは、長い鉄の棒だった。
いや、その言い方は間違いがある。
鉄の棒ならば破裂音を出したり、煙を吐き出したり、何かを飛ばしたりすることは無い。
チャットも、包丁を持った女性、ヒミコも知らない銃という武器だ。
「私の願いを邪魔するか!!」
口の中の唾をすべて吐き出さんばかりの勢いで、少女目掛けて怒鳴る。
年配の人間に怒鳴られても、少女は慌てず騒がず、じっとその顔を見据えていた。
いや、正確には顔ではない。その後ろだ。
マタギをやっていた少女には、常人には見えない物、業の炎が見えた。
ヒミコを見つけられたのも、その力によるものだ。
それは肉体が変わっても、ずっとそのままだった。
「異形に願いを望むか。」
その声は静かで、それでいて重かった。
いくつ修羅場をくぐれば、刃物を持った人間と面と向かって話せるだろうか。
リンクと同じように冒険をしたチャットでさえ、割り込むことが出来なかった。
「その通りじゃ!ヤマタイ国の女王として、いつまでも若く、美しくあらねばならぬ!!」
「無意味な願いだ。人は死んで、承ったものを土に返さねばならない。」
銃口は、なおもヒミコを狙っていた。
撃つつもりはない。殺す為ではなく、救うための銃だ。
「老いの恐怖すら感じたことの無い餓鬼が!そこまで言うなら食ろうてくれるわ!!」
(業の炎が……!!)
彼女がそう叫ぶと、邪悪な力が集まって行った。
並の人間ならばそれだけで嘔吐してしまうほどの不快な空気を、2人の少女は肌で感じる。
そこにはヒミコの姿はなく、代わりに巨大な怪物が立っていた。
「八岐大蛇……まさか本物に出会うことになるとはな。」
そこにいたのは、日本人なら誰もが知る神話の怪物。
緑色の鱗を持ち、真っ赤に光る10の目と、5つの鎌首をもたげている。
5つの蛇の尾が集まる先に、どっしりとした身体があり、一歩歩いただけで山が揺れた。
「こ、こんなの弱点なんて分からないよ!!」
立ち上がったチャットは、その姿に震える。
かつてリンクと共に戦って来た怪物と酷似しているが、戦いを打破して来たお面もなく、そもそも彼自身がいない。
57
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:15:07 ID:GKnkTFI60
「私がどうにかする!!」
マタギの少女は地面を蹴り、オロチへと向かって行った。
目の前の相手は、山の理を無視した怪物だ。
それがあまつさえ人に害を齎すというのならば、殺さねばならない。
鬼となり、大蛇(おろち)を討つ。それが少女の、椿鬼の役目だ。
銃が再びうなりを上げ、銃弾がオロチの鼻先に命中する。
だが、大してダメージを受けた様子は無い。緑の鱗が僅かながら剥げただけだ。
5つの頭のうち、1つが彼女を噛み砕こうとする。
人間の子供など一飲みに出来る大きさからして、一撃でも食らえば致命傷だ。
直線的な動きしか出来ないことを見破り、すっと横に躱す。
「まだ!次来るよ!!」
チャットが声を出す。
だが、大蛇の恐ろしい所は、人間の5倍の索敵範囲を持つところだ。
続けざまに躱した先から、別の頭が迫り来る。
「顔に銃を撃っても効かない…だが……!!」
二発目に狙ったのは、オロチの舌だ。
先端が大きく裂けた舌を撃たれ、けたたましい悲鳴が上がる。
(口の中が外より柔らかいのは変わらないか……)
椿鬼が撃ったことがあるのは、山に住む動物だけではない。
憎しみに囚われ夜叉になった人間や、山の念が具現化した怪物とも戦ったことがある。
「こ……こむすめぇぇっ!!」
口の先から血を垂らし、怪物は怒る。
だが、5つの頭を振り回した攻撃を、椿鬼は一つ一つ躱していく。
「後ろから来てるよ!!」
「助かる!!」
チャットの助言もあり、未だ傷一つその身に付いていない。
もしもの話、本物のやまたのおろちならば、彼女でも太刀打ち出来なかっただろう。
だが、チャットが人間の身体を動かすのに苦労したのと同様、ヒミコもまた怪物を動かすのに苦労しているのだ。
(しかし……この身体……。)
縦横無尽に迫り来るおろちの攻撃をいなしながら、椿鬼は一つの疑問が浮かんだ。
自分の身体が、異様なほど危機に対して敏感だということだ。
そして、攻撃に対して躊躇いがないということだ。
それがマタギとしての経験ではなく、この少女の経験だとは身体で分かった。
(一体、どんな修羅場を潜って来たんだ?)
見た目は普通の少女だった。だというのに、全く戦うのに苦労がいらない。
脚力こそは劣るが、危機察知能力のおかげで相手の先を読むことが出来る。
椿鬼は自分の肉体の説明書を読んでいない。
読む前にヒミコが出す業の炎を察知し、いち早くその場所へ向かったのだ。
だが、今の肉体の持ち主が、過酷な運命を生きた人間なのは分かった。
58
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:15:28 ID:GKnkTFI60
「上からくるよ!!」
「分かった!!」
頭上から迫るオロチの噛みつきを、地面を転がって躱す。
オロチの牙にかかったのは、人では無く土のみだ。
すかさず片目に、銃弾を撃ち込む。
甲高い悲鳴と共に、血の涙を流した。
(目玉になら通じるか……。)
いくら頑丈な骨や筋肉、鱗を持つ怪物でも、どうしても強化できない部分はある。
全身の全てが石のように硬いのならば、動くことは難しい。
目玉はそのよい例だ。
「こむすめぇ!!よくも私の顔を!!」
10ある目玉の内、1つを潰されたヒミコが、さらなる怒りを燃やす。
再び口を大きく開け、噛みついて来るかと思ったらそれは違った。
「気を付けて!あいつ、火を吐いて来る!!」
チャットはオロチと戦った経験はないが、様々な異形と戦った経験はある。
口元がドドンゴに似ていたから、噛みついて来るだけじゃなく、遠距離から炎を吐いて来るのだと考えた。
事実、彼女の言う通り、オロチは炎を吐いて来た。
椿鬼の見える業の炎ではない。人を焼き殺す本物の炎だ。
チャットの助言があったため、いち早く椿鬼は後方に退き、炎の範囲から逃れた。
「ホホホ……見た目は醜いが凄い力だ……。」
獲物を殺すことこそ出来なかったヒミコだが、悦に浸っている。
炎を吐いたということは、銃を撃てば最悪の場合、暴発も免れないということだ。
だが、問題はそれだけではないことを、2人はすぐに気づいた。
「ちょっと、大丈夫?すごい汗よ!!?」
燃える草や木を見た瞬間か、はたまたパチパチという焼ける音を聞いた瞬間か。
突然、椿鬼の動悸が異様に激しくなった。
息が思うように吸えないし、吐けない。
辺りが炎により熱されたというのに、身体が異様なほど冷え、それでいて汗が噴き出てくる。
そして、今にもオロチを殺さねばならないという衝動に駆られる。
「心配ない……少し疲れただけだ……。」
どうにか心を鎮めようとする。
すぐに分かった。
自分の肉体は、炎に対して特別なトラウマを持っているのだと。
事実、彼女の肉体の野崎春花という少女は、家を家族ごと燃やされた地獄を経験している。
たとえ魂が変わろうと、骨の髄まで刻み込まれた想いは消えない。
やってはいけないと分かっているのに、衝動的に銃の引き金を引こうとする。
「やめて!!」
チャットは銃の仕組みについて知らない。
だが、リンクが持っていた爆弾のように、何らかの破裂を用いた武器なのは分かった。
そして彼が、火が付いた状態で爆弾を間違って出してしまい、自分がその爆発を受けた失敗を目の当たりにしている。
59
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:16:04 ID:GKnkTFI60
「……!!…すまない!!」
耳元で大声を出したため、どうにか我に返ることが出来た。
だが、晒した隙は大きい。正面からオロチの大口が、2人まとめて飲み込もうとしてくる。
「そうだ……これで!!」
チャットはザックから、旅の仲間が持っていた道具を取り出した。
パン、という破裂音と、激しい閃光が走る。
「な……。」
予想通り、オロチは一瞬怯んだ。
チャットが投げたデクの実は、攻撃力こそ無いが、モンスターを怯ませる力がある。
視覚も聴覚も、人間の5倍はあるが、それ故デクの実から受ける影響も大きい。
「逃げるわよ!!」
チャットは椿鬼の上着の袖を掴み、すぐに走り出した。
今の状況では、明らかに自分たちが不利だ。
銃が使えない上に、仲間の精神が不安定な状態だ。
逃げ道はある以上は、逃げた方が良いと判断した。
やはり二本足で走るのは難しい。
何度か地面に躓いて、転びそうになった。
人を引っ張っているのだから猶更である。
「前!!前見ろ!!」
「え?」
だが、今度は足元にばかり注意していたため、前に気を配っていなかった。
椿鬼は冷静さを取り戻すも、時すでに遅し。
2人で崖から、真っ逆さまに落ちていった。
「わああああああああ!!!」
チャットの旅仲間が、高所から落ちていた時のような叫びだ。
椿鬼は叫ばない。重力の言いなりになっている中、カバンに猟銃を持ってない方の手を伸ばした。
出したのは、取っ手の付いた、茶色の布地のようなもの。
これまたチャットが知らぬハイラルで作られたものだ。
「掴まれ!!」
2つある取っ手の内、それぞれ1つずつの手で掴む。
どうにかして、怪我することなく山から出ることに成功した。
(いつもと勝手が違うからといって、あんなことになるとは…自分が嫌になる。まだまだ未熟だ。)
「助かったわ。ありがとうね。」
「礼を言うのは私の方だ。アンタが助けてくれなければ、あの化け物に食われていた。」
互いに感謝を告げると、すぐに椿鬼は山の方に向かって歩き出した。
必死でチャットは引き止める。
「ちょっと待ってよ!?どこに行くの?」
「あの化け物を殺しに行く。世話になった。」
「待って待って!!アンタ一人じゃアイツを倒せないって分かったばかりじゃないの!!」
「だからと言って、山まで傷付ける不浄の者を止めぬわけにはいかない。」
60
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:16:22 ID:GKnkTFI60
あの5つ頭の大蛇は、自然の理を逸したどころか、平然と踏み躙るということが分かった。
普通の動物は飢えを満たす以外には自然を壊さない。
だが怪物が吐く炎は、山を焼き、木々を燃やした。
不死を求めることといい、自然の中で生きる生物ではなく、災害のようなものだ。
「待ってって言ってるでしょ!!」
チャットは頭を痛める。
自分に会う人たちは、なぜこうも向こう見ずばかりなのだろう。
困っている者あれば事あるごとに話しかけ、悪意をばらまいている者あれば退治しに行こうとする、緑帽子の少年を思い出した。
「あのね。協力して欲しいことがあるの。」
チャットは話をつづけた。
「私、2人ほど探している人がいるのよね。1人だけじゃさっきみたいな危ないヤツに襲われるかもしれないし、一緒に探して欲しいの。」
彼女は休むことなく話を続ける。
椿鬼が歩みを止めると、さらに言葉を畳みかけた。
「一人は私の弟で、もう一人は私の……なんというか、その、仲間なのよ!
感謝の気持ちがあるなら、少しぐらい付き合ってくれてもいいんじゃないの?」
(………。)
何処か図々しさを感じたが、悪い気持ちは感じなかった。
かつて罠にかかった時、老婆の一団に助けられたことがあるが、あの時のような不自然な感じはしなかった。
「はい、キマリ!!私チャット。よろしくね!!」
「……仕方がない。探しに行こう。」
「そうと決まったらグズグズしないで、アイツと弟を見つけるわよ!!」
【チャット@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面】
[身体]:テトラ@ゼルダの伝説 風のタクト
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、デクの実×9@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面ランダム支給品0〜2(武器類はない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。どうにかして脱出する。
1:弟(トレイル)や相棒(リンク)もここにいるのかしら?
2:とりあえず椿鬼と共に行動する。
3:白装束と黒髪の女性(ヒミコ)には警戒
[備考]ムジュラの魔神討伐後の参戦です。
【椿鬼@ツバキ】
[身体]:野崎春花@ミスミソウ
[状態]:疲労(中)
[装備]:谷垣源次郎の猟銃@ゴールデンカムイ
[道具]:基本支給品、パラセール@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。人の道を外れる者がいれば救う
1:ひとまずはチャットと行動する
2:この世界は一体?
3:白装束と黒髪の女性(ヒミコ)には警戒
[備考]
少なくとも『一輪花』,『臓腑の檻』の話は経験済みです。
【ヒミコ@火の鳥 黎明編】
[身体]:ヒミコ@ドラゴンクエストIII そして伝説へ
[状態]:健康 愉悦
[装備]:アリシアのナイフ@LIVE A LIVE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、永遠の命を得る
1:オロチに変身するのは醜いが、いざという時は仕方がない
2:あの小娘共。次会えば喰ってやる。
[備考]本編死亡後からの参戦です。
61
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:16:53 ID:GKnkTFI60
【支給品紹介】
【谷垣源次郎の猟銃@ゴールデンカムイ】
椿鬼に支給された猟銃。同じマタギが持っていた武器で、村田銃という種類である。
これは巧妙にコピーされた銃なのか谷垣の物なのかは不明だが、後者ならば彼がドジマタギだったということでいいだろう。
【デクの実×9@ゼルダの伝説シリーズ】
チャットに支給されたアイテム。投げても威力は無いが、大きな音と光を出す為、敵を怯ませる力がある。
【パラセール@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
椿鬼に支給された道具。空中で掲げればたちどころに開き、落下死を防ぐことが出来る。
また、風向きと持ち主の能力次第で、一定時間滑空が可能。
【アリシアのナイフ@LIVE A LIVE】
ヒミコに支給されたナイフ。特に能力は無いが、持ち主はこのナイフで自殺しているが、この世界での新たな持ち主はどうなのだろうか?
62
:
Link between two worlds
◆vV5.jnbCYw
:2023/07/23(日) 22:17:06 ID:GKnkTFI60
投下終了です。申し訳ありません。
63
:
◆EMaQQEjKTc
:2023/07/23(日) 22:27:54 ID:bWJoO7Bo0
遅くなりすいません。投下させていただきます。
64
:
エンバーミング
◆EMaQQEjKTc
:2023/07/23(日) 22:33:06 ID:bWJoO7Bo0
月明かりをスポットライトにして影を伸ばす男が一人。
死人のように青白い肌と、その異常な体躯をもつその肉体は、彼の目から見てもあまりにも異質。
そしてかの男の周囲では、見た目謎よりはるかに異常な現象がおこり始めた。、
おお見よ、月に照らされ男の足元より伸びた影法師が、風船のごとく膨らみ厚みを得たかと思えば、
地面より立ち上がり、人のごとき実体を形成し始めたでは無いか。
かくして、影法師が大地を二本の足で踏みしめるという世にも奇妙な光景が出来たわけだが、
それを作り出した者こそ、冒頭で挙げた男の――特殊なこの舞台に合わせて言うのであれば、
男の身体側となっている者、「ゲッコー・モリア」の持つ能力であった。
カゲカゲの実と呼ばれる悪魔の実を食べたことにより、ゲッコー・モリアは影を実体化し操る能力を持っているのである。
さて、そのような男の肉体に、――これまたこの舞台に合わせて言えば、精神側となっている者は、オマツリ男爵と呼ばれていた。
ゲッコー・モリアと同じ海に、しかし異なる時代に存在した、レッドアローズ海賊団を率いた船長である、。
「ゲッコー・モリア、元ゲッコー海賊団船長、現スリラーバーグ海賊団船長。
ふん、おかしな能力を使得るとは思ったが、やはり海賊だったか。」
自身の能力の確認のため、肉体のプロフィールを確認したが、海賊であることを知り鼻で笑う。
さらには、ゲッコー海賊団は、新世界の航海で全ての仲間を失ったことを知り、ざまあみろ、とまで考えている。
オマツリ男爵は、仲のいい海賊を何よりも嫌う。
かつて自分たち海賊団の仲間たちが、海の藻屑と消えたときから、彼の心は狂い初め、
海賊の仲間割れを何よりも好む狂人と成り果てた。
だが、プロフィールのその先には興味深いことが書かれていた。
カゲカゲの実の力を応用した、不死の軍団を作り上げたという。
「他人の影を切り取り死体に入れることで、ゾンビの軍団を作った?」
死人の蘇生。常識にとらわれない悪魔の実の能力であるがそんな芸当も可能とは!
だが、読み進めていくうちに落胆する。確かに死体はゾンビとして動き出すが、
そこに宿る意思は入れた影の人格になる。
――すなわち、すでに死んだ者の意思をこの世に呼び戻すことはできない。
オマツリ男爵が望むのは、仲間たちの完全なる蘇生。
この場に連れてこられる前は、"死と再生の花"――リリー・カーネーションの力によって、仲間たちを蘇らせていた。
しかしそれには生け贄を捧げる必要があり、果たせなかった瞬間、また彼らは死者へと戻ってしまうだろう。
カゲカゲの実、リリー・カーネーション、どちらの力を利用したとしても、仲間たちを真に蘇らせることは出来ない。
しかしオマツリ男爵は考える。この殺し合いの優勝者に与えられる【どんな願いでも叶えられる権利】とやらは、
仲間たちを完全に蘇らせる手段なのでは無いかと。
「ふん、この力で作り出すゾンビなぞ、蘇生の力としては論外だ。
私にはリリーの力のみで十分。……だが、リリーの力を上回り、皆を"完全に"蘇らせることが可能だとするのなら……」
今のリリーによって維持された生活は、オマツリ男爵には不満は無い。
だがそれ以上の結果を見込めるのであれば……この催しも悪いものでは無い。
「この力を十全に使うのであれば、やはり強者の死体と影を手に入れたいところだ。
見かけ次第襲いかかるより、集団の中に入り不意を突くほうが安全かつ多くの成果を得られそうだが、ふむ……」
失った仲間を取り戻すため、他の命を犠牲に仲間を蘇らせた海賊と。
もう仲間を失わないために、消して死ぬことの無い仲間を作り出した海賊と。
これから自分が歩む血染めの道を考えつつ、ひとりの海賊は歩きはじめた。
【オマツリ男爵@ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島】
[身体]:ゲッコー・モリア@ONE PIECE
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して仲間を生き返らせる。
1:他参加者の影と、死体を集めてゾンビを作る。
2:死体を集めるために、今後の動向を考える
[備考]
※参戦時期は少なくとも麦わらの一味の地獄の試練を始めてからです。
※本ロワではカゲカゲの能力で影を入れて作ったゾンビは、精神側の人格が宿ります。
65
:
◆EMaQQEjKTc
:2023/07/23(日) 22:34:26 ID:bWJoO7Bo0
投下終了です。失礼いたしました。
66
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 22:39:02 ID:6E7RCPtU0
投下します。
67
:
幸せの箱
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 22:41:32 ID:6E7RCPtU0
「よくこんな悪趣味なことができるもんだな。」
口調は呆れ画が込められぶっきらぼうにぼやいている。
しかし内心は主催者の厭夢に向けられた怒りと軽蔑があった。
男の名は加持リョウジ、セカンドインパクトの真実をあばくため
ゼーレとネルフの二つの組織で2重スパイを行い、
その結果元恋人の葛城ミサトに後を託し、ゼーレによって消された男である。
そんな加持は与えられた肉体のプロフィールを見て
自身の弱く罪深い過去を思い出し、陰鬱な心境にならずにはいられなかった。
そして人の過去を弄んでいるかのような厭夢を軽蔑し、
許してはならない非道の存在と固く認識した。
加持に与えられた肉体は獪岳という名前で鬼殺隊という組織に所属する少年の肉体であった。
この獪岳の過去はまさに加持の過去とほぼ同一と言っても差し支えなかった。
加持はかつてセカンドインパクトによって発生した
浮浪の孤児たちで作られたグループの一人であった。
当時のセカンドインパクト発生直後の世界情勢は荒れ果て、
窃盗や強盗にでも手を染めなければ
ロクに食料も入手できないほど陰惨な絶望の時代である。
当番として軍の食料を盗み行った少年期の加持は
ミスで軍に見つかり食料を奪い取る孤児たちの一層を目論んだ軍員に拷問にかけられた。
結果加持は耐えられず孤児の仲間たちは皆、誰も助からず命を奪われた。
その中にはたった一人の肉親であった弟もいた。
それ以来、加持の中にある幸せの箱にぽっかりと穴が開いた。
自分は取り返しの付かない業を背負った、だから幸せにはもうなれない。
だから幸せになるのは許されない、だから幸せを貯める箱に自分から穴を開けた。
そして獪岳も加持と同じ過去を背負っていた。
鬼という人を喰い殺す化け物に襲われ、助かりたいあまりに
恩人とその同じ孤児の命を鬼に明け渡してしまった。
保身のため大切な人たちの命を売る、
加持の過去そのものだ。
(そして…その元凶をどうにかしようとしているのも俺と同じって訳か。)
獪岳はその後鬼殺隊という鬼を葬り、人々の命を守る組織に身を置いた。
自分と、仲間たちを絶望へ追いやった鬼という元凶に今は立ち向かっている。
「獪岳くん…俺と君は同じ穴の狢ってところだな。」
自分はつかみ取ったものを全て託し、やりきって死ぬことができた。
だが獪岳の戦いはまだ終えてないように思える。
殺し合いの舞台で加持の中に再び指名が芽生えた、
この殺し合いの進行を止めて、この体を獪岳に返すのだ。
戦いと償いを終えていない獪岳の命をこんなところで消えさせてはいけない。
人々の命を踏みにじる鬼たちを全て止めるまで彼の戦いは幕を閉じないのだろう。
「待っていてくれ、こんな馬鹿げた茶番を終わらせて、この体を絶対に君に返すからな」
【加持リョウジ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画版)】
[身体]:獪岳@鬼滅の刃
[状態]:健康。
[装備]:鬼殺隊の隊服。
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを終わらせ、この体を獪岳に返す。
1:まずはこの殺し合いに否定的な他の参加者と合流を目指す。
※備考
死亡後からの参戦です。
獪岳の肉体は鬼ではなく人間のとき(鬼殺隊所属時)のものです。
68
:
幸せの箱
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/23(日) 22:41:52 ID:6E7RCPtU0
投下は以上です、投下が遅くなり申し訳ありませんでした。
69
:
◆s5tC4j7VZY
:2023/07/23(日) 22:42:08 ID:HMFBTaKA0
皆さま投下お疲れ様です!
それでは、私も投下させていただきます。
70
:
シン・チェンジだよ!若おかみ!でも実はヴェノム
◆s5tC4j7VZY
:2023/07/23(日) 22:44:16 ID:HMFBTaKA0
「本当なんだ……」
不気味な月が浮かび輝く月下。
少女はこの殺し合いが現実だと受け入れる。
少女の名は関織子。春の屋の若女将。
両親を事故で失った織子はひょんなことから、祖母が経営する旅館『春の屋』で若女将として働くこととなった。
始めは失敗ばかりだったが、へこたれない元気さで接客を続け、立派な若女将として成長することができた。
今日も宿泊客に笑顔でいてもらおうと意気込む織子だったが、突如織子に命じられたのは”殺し合い”
笑顔とは正反対。最悪としかいいようがない。
「だって、あの月にこの身体……これは、どう考えても夢じゃないわ」
普通なら、殺し合いなんてたちの悪い夢だと笑って流せられるが、そうもいかない。
なぜなら、自分の身体は成人男性になっているのだから。
「え〜と……この男の人は『エディ・ロック』さん。アメリカ人の記者さんなのね」
現代っ子ながら機械の操作に疎い織子。しかし幸い、肉体に慣れる時間を与えられたことにより、織子は何とかタブレットから肉体の情報を得ることができた。
織子に与えられた肉体はエディ・ロックという新聞記者の男性。
一見、普通の男性。しかし、織子が与えられたエディ・ロックは”普通の男性”ではない。
「きゃ!?」
突如肉体が蝕み・変化する。
黒きコスチューム……ヴェノムへと。
「驚いた……きっとこれが、ヴェノムって力なのね」
タブレットに記載されているエディ・ロックの肉体情報に”液体型地球外生命体・シンビオート ヴェノム”と、明らかに普通ではない聞きなれない言葉が記載されていた。
織子は、この姿がヴェノム”だと落ち着いて理解する。
幽霊である”ウリ坊に美代”そして魔物である”鈴鬼”といった面々が友達な織子にとって”ヴェノム”も受け入れられるのだ。
”花の湯温泉の湯は全てを受け入れる”
おそらく、ヴェノムをも受け入れることができる織子の若女将精神が、この肉体へのチェンジへと繋がったのだろう。
「よ〜し!いつまでも不安がっていてはいけないわ!ウリ坊!美代ちゃん!鈴鬼くん!わたしを見守っていてね!」
肉体がヴェノムに寄生された肉体でも、若女将のとる行動は変わらない。
【関織子@若おかみは小学生!(映画版)】
[身体]:エディ・ロック@ヴェノム (映画)
[状態]:ヴェノム化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らず、元の身体の持ち主に身体を返す
1:ひとまず、他の参加者と接触する
2:これが……ヴェノムなのね!
3:ウリ坊……美代ちゃん……鈴鬼くん、わたし、絶対に春の屋に帰るから!
[備考]
※本編終了後から参戦とします。
※ヴェノム化できますが(エディ・ロックに寄生しているシンビオート(ヴェノム))の精神はありません
☆彡 ☆彡 ☆彡
71
:
シン・チェンジだよ!若おかみ!でも実はヴェノム
◆s5tC4j7VZY
:2023/07/23(日) 22:44:37 ID:HMFBTaKA0
一方、若女将とは正反対の参加者がいた。
「……ふん。どうやらこの肉体。老人の割に鍛え上げられているようだな」
―――ドン!―――
【後藤 ふたり@ぼっち・ざ・ろっく!(身体:エース(少年期)@ONE PIECE) 死亡】
地に伏せた少年の死体を見下ろす男は、チェンジされた肉体に一定の評価を下した。
身体を慣らすなら、手っ取り早く殺し合うのが一番。男は至極当然に行動指針を定めると、参加者を見つけて試運転を試みた。
目の前の参加者の肉体・精神は、共に子供だと男は理解したが、その情報は、男に戸惑いや躊躇を与えることはなく、男は痛めつけ殺害した。
試運転の結果、覇王色の覇気を問題なく発現できた。
なら問題ない。別の肉体になろうとも男の強さは引き継がれているのだから。
「それに……念能力か。悪魔の実の能力とは異なる力……興味深い」
タブレットに記載されていた人物のプロフィールによると、念能力の達人であると載っていた。
念能力という言葉を男は耳にしたことが無いが、似た言葉なら知っている。
悪魔の実。
そう呼ばれる果実を食べると、体がバラバラになる。雷の力を手に入れるといった、正に『悪魔』といっても差し違えが無い力を手に入れることができる。男は、念能力もこうした能力のことではないかと推測する。
ならば、念能力も早めに試しておかなければ……と男は思案する。
また、自身の盾となる手駒も必要。男がやらなければならないことは沢山ある。
「それにしても…私の『楽器』を勝手に持ち出すとは、レンタル料は高いぞ?」
男は頭上の月を睨みつける。
本来なら、男は楽器『ウタ』を利用して新時代という新たな世界(ステージ)を開演させるはずだった。
「まぁ、いいだろう。久方ぶりに元ロックス海賊団音楽家”魔王”として暴れるとするか」
男は醜悪な笑みを浮かべる。
「ゴーッドッドッドッ!」
【本物ゴードン@ネットミーム】
[身体]:アイザック・ネテロ@HUNTER×HUNTER
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して『新時代』を開演する
1:ひとまず、手駒を得る
2:手駒を探すついでに念能力とやらの力を確かめたい。
3:新時代を開演するのは私だ!ゴーッドッドッドッ!
[備考]
※自分がネットミームの存在だと捉えておりません。
72
:
シン・チェンジだよ!若おかみ!でも実はヴェノム
◆s5tC4j7VZY
:2023/07/23(日) 22:48:40 ID:HMFBTaKA0
投下終了します。
それと、すみませんでした。
書き手ルールにある
・身体側の精神が復活する展開はNGとします。
・天逆鉾@呪術廻戦
と書いてありますがおそらく、チェンジロワでの私の投下内容及び展開が問題で迷惑をおかけしたのだろうなと……
今回のコンペに投下すべきか否か最後まで迷いましたが、投下してしまいました。
ご不快に感じましたら申し訳ございません。
73
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/23(日) 22:59:34 ID:lzNpjCwQ0
投下宣言が出されていた分の投下が終了したことを確認したため、これにてコンペを締め切りとします。
皆さん、たくさんのご応募ありがとうございました。
これより、名簿の調整に入ります。
名簿調整後は施設の調整、その後にOP2を挟んでから本編開始にしたいと考えています。
名簿の調整は遅れる場合、一週間後までには連絡する予定です。
それでは、今後ともシンチェンジロワをよろしくお願いいたします。
74
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/07/24(月) 07:05:38 ID:t3Agmjbk0
失礼いたします、拙作の「私は最強」が
すでに投下されたSSとタイトルがかぶってしまった為、
タイトルを「私こそ最強なのだ」に変更させていただきました。
75
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/27(木) 00:31:08 ID:OsRydrbI0
先に、候補作の感想を書けた分だけ投下します。
>これがそうか、この掌にあるものが───
組み合わせとしてはベストマッチに感じるのに、身体側の名前とタイトルから一行SSに繋がるのがギャグに感じてしまう。
>創世IR:隠す互いのシンイ
けーわぇ…。
理想は大きくても、どうあがいてもろくなことにならない思考になっている感じがします。
>君は不完全で出来損ないのゲッター!
タイトルがネットミームからの改変で笑った。
どうあがいても、ポンコツって感じがしました。
>探偵はGARDENにいる
考察力が凄まじい。
流石名探偵です。
>違う世界の大魔王
マジュニアではない本来のピッコロ大魔王をここで見るのは少し新鮮な気分。
これは確かに大魔王。
>愛憎−−−狂気のシンヤ坊
まあ、この殺し合いに兄さんがいなければ優勝後に元の身体で殺ることはできますね。
>新たなるフェイス
タイトルを見た時、アンパンマンキャラが来たのかと思ってしまった。
ネタっぽい口調になっている安室さんはシュール。
>だって亡霊ですもの
状態表で東方妖々夢のリリース日に触れているので笑った。
状態表の他の部分もバグりまくってて草生える。
>世界のつづき、歌のゆくえ
流石失せろ1本で26年戦い続けた男…。
キングボディのおかげで失せろの効果も倍増?
>ライアー・ゲーム
ここでのエンヴィーの変身は元と違ってアイテム頼りだから、下手に驕ってしまう可能性もありそう。
>トップアイドルを目指す少女とワールドダイスターを目指す少女
互いが互いに入れ替わっているの、何気に今回の企画では初めてですね。
>縁のない人に転生してしまった…
劇中では一言も言ってなくとも、MAD動画からのネタであることを理解できました。
>同じアナのムジナ
伝説系のポケモンがようやく登場。
サカズキの徹底的な正義は、まあロワの環境ではそう簡単に受け入れられる人は少ないかもしれない。
>これはドラマでもメソッドでもない
肉襦袢じゃなくマジの筋肉だから、自分が勝手にケンシロウのメイクをさせられたと考える必要は無さそうですね。
>2019:敗北者のままでは、終われない
加古川くんにエースの能力の実は果たして皮肉なのか、それとも互いのリベンジのチャンスなのか。
>戦争狂の天才
身体が天才だからと言っても、自分もすぐそうなれるようなものではないとも感じます。
>嵐を呼ぶエスパー巫女
今度の3Dモデルでの映画も確か超能力の話だったはずだから、その記念って感じですかね。
>もしも親父ぃが老けたら
語録まみれで笑う。
怪獣をオミット無しでそのままの大きさで出したい気持ちは実はちょっと分かる。
>タコ説
何て美しく見事な証明なんだ…反論のしようがない。
>肉体美・困惑の術師
困惑するのは分かるけど、あまり相手の位置を把握できないところまでは逃げない方が良さような気はします。
>切り裂き――暗黒の少女
どう見ても少女じゃなくてロボ。
他者からは暴走ロボットとして扱われそう。
>クロちゃん、仲良く殺し合いな
ぼっちちゃんとトムのギャグ描写肉体変化が綺麗に噛み合っている。
これでマーダーなもんだからかなりやっかいそう。
>闇の刃はされども情を捨て切れず
これは番組初期の頃のけーわが少しインストールされてる感じ。
身体側がこめっこみたいな感じじゃなければこうはならなかっただろう。
ケケラはこれ見たらどう感じるか。
>もふもふ
チーバグ動画出展なのに思考がまとも。
モフリアスは癒し。
>狂戦士、再び舞台へ
理性は一応あるとはなっていますが、元からある狂気でほとんど無いも同然なような気もします。
喋れないしマーダーだから、結局周りから理性無しと扱われそう。
76
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/28(金) 00:36:00 ID:LnK4Ppx.0
前回に続き、途中までですが候補作の感想を書けた分だけ投下します。
>運動神経抜群オタク(の身体)をなめんな
これを読んで元ネタのPV見ましたが、確かに運動神経抜群だった。
このファミレスバイト君なら逃げ足の速さを活かせそう。
>消せない記憶
自分を倒した相手になっているの、記憶が戻ったら大変なことになりそう。
>キミは淫らな夜のヒーロー
ヤオモモの個性は確か知識もないと使いこなせないから、その点他人に使いこなすのが難しくなる気がします。
>長瀬麻奈
こんな歌姫の悲劇もあったのですね。
その上でこの殺し合いに巻き込まれたのは更なる悲劇的なことだ。
>抜かねば無作法、ヌいたら無法
お労し…お労…お、おい……………………いや兄上何やってんの????????????????????????????????????
実は、この話が投下されていた時は丁度このベオウルフが最初にメインで活躍する話を読んだばかりで自分にとってはタイムリーだった。
>最も信頼された黒兎
可愛い女の子になったことは、信頼強度に影響でますかね。
>兄と姉
家族を害された恨みは、どこでも強くなるものですね。
>変・身
MCチェケラ…人類への悪意に身を任せて車椅子の相手に襲いかかった上にウルトラマンの光線で爆散するのは哀れに感じてしまう。
いきなり色々起きていて裕太と士郎には波乱のスタートですね。
>Unwelcome Battle Royal
マキマさんの胸のことは…まあ、あれは打算ありきで揉まされたものだったな。
ツルギにデンジのノリは似合いそう。
>盲目の剣士
まあ、無印チェンジでもあったみたいな、盲目だったのにいきなり見える状況になる方が、ロワでは意外と不都合が出そうなものではある。
>何やってんだお前ェっ!!!
シャンクス、3人いた!?
本当にタイトル通りです。
これはもはやシャンク。
>今でも青が棲んでいる
真司にデストワイルダーは思い付かなかったが、本来の契約者に対する皮肉みたいにも感じる。
>Darkness And White
ロワ経験者であっても、今回のルールはまあ色々と変則的でしょうね。
>W●RK
人を斬ることが仕事なのは大変ですね。
プロフィール情報から自分の悩み解決の道を探るという方向性もあるのですか。
>この自称ライバルと爆焔を!
爆裂魔法封じはめぐみんにとってはかなり痛そう。
そんな悲劇も、ライバルと一緒なら乗り越えられる?
>悪刀 惡金は忍ばない
このロワで悪夢と書いてクソゲーと読むの、良いですね。
惡金(あかね)もそうですし、忍極的な言葉遊びがとても上手く感じます。
>天贈呪殺
そうだよね、あっち側に行くとしても、それは自分の実力でないと納得はできないものなのでしょうね。
呪霊化後参戦なのも相まって、かなり質の悪い呪いと化している感じ。
>リリィとして生きた少女
リリィとしては生き抜いたようたが、それ以外になっての第二の生は果たして上手くいくのか。
>傲慢〈プライド〉
セリム…赤ん坊からやり直しの方がマシだっただろうに…。
>男の裏技
口調はイキっているけど、本来の名前を思い出せなくなっているのはかなり悲劇に感じる。
イキリトは果たしてキリトとしてイキり生きられるのか。
>変身するわ、変身するの。私は貴方、貴方は私。変身するぞ、変身したぞ。我は汝、汝は我。
主催は船長の幼馴染みが利用されているは、身体側は改造人間にさせられるは、自分の身体は危険人物に扱われた上に勝手にステルスブラックにさせられるは、ステルスマーダーを拾ってしまうは、サンジがかなり虐められているように感じる。
ルリ子がどうにか支えていけるだろうか。
>pray to god before you die
同じ信仰を持っている上で似かよった経歴は共感しやすいでしょうね。
>少女狂乱
遂にアラマキもロワで見ることができたか。
体を植物に変える能力なのに自然系だから、この能力がマーダーになっているのはかなり厄介そう。
>死せる父達
スカルの変身者がマジ骸骨になるとは。
この身体でドーパントになろうとしたら何か見た目への影響はあるだろうか。
>未・完・優・真
実際の弦ちゃんに会えたら、ちゃんと友達になれそう。
フォーゼとしても、戦い抜けそうです。
>取捨蘇生
北岡にフリーザとはその発想はなかった。
角は一応、牛っぽくて合っている?流石にこじつけだろうか?
77
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/29(土) 23:05:45 ID:ji2/xzuw0
書き終わりましたので、残りの候補作の感想を投下します。
>今はただ、この一瞬を。
CMのような渋みを感じる。
くりまんじゅう先輩はこんなところでもカッコイイ。
>未知への大きな大きな思い 〜やはりこの世は美しい〜
いや縁壱も何やってんの????????????????????????????????????????
何にというか、ナニに感動しているんだ縁壱。
>■■■の悪夢
普段はwiki収録時には消しているレス番だけども、今回は演出的に残すべきだと判断。
妖精判定した者を無自覚に無差別に襲う危険性があるのは結構怖い。
>こなたクラブ
貧乳はステータスなのはただのやせ我慢というわけではなかった?
>思うもの、思われる者
大切な人のところに帰れるといいですね。
>DON’T STOP SO “CROSS-Z”
冒頭のシラフになったらのくだりのやり取り、廣井きくりらしさが出ていて良いですね。
何で何でも聞いてくれるアカネちゃんの絵がプロフィールにあるんだ…。
>海勇王
世はまさに、大勇者時代!?
>勇次郎が強すぎるんでしょ
流石にエロ漫画ボディな勇次郎は衝撃的すぎる。
この状態で勝てるのは確かに強すぎるしなかなか信じがたい。
>仮面ライダーアウトサイダーズep.3 2023年7月23日配信開始
やっぱり一流だよなぁ橘さんは。
運良くコンペ企画中にリアル奥さんのコスプレがあって、それに丁度良いと言わんばかりのネタがあって、自分が出演する作品も配信されて、妙に運が一流です。
>ヘイ、オギャーって産まれた時にはもっと光っていたっけな
ねえ、これ本当に望み通りの赤ちゃんになれてるの!?
>時雨
並行世界の知人が身体とは、何だか元々知る方よりもどんな風に感じとればいいのか少し分からなくなりそう。
>偽りの月を斬れ
斬月、なんだかこのロワの環境に合っている感じがする言葉です。
タイトルもそれに合わさってて良い感じがします。
>霞雲のメモリア
無一郎にメス堕ちの兆候あり。
TSものの醍醐味ですね。
>音楽の王、屍の王に
このロワでもブルックは生身の肉体には戻れないか。
>カラ・ダ
円香が乗るという結論を出すまでの過程に、彼女の情動の大きさを感じ取れて良いですね。
語彙力が無くて申し訳ないですが、うひゃーって感じになりました。
>多分これが一番速いと思います
これは速い、絶対に速い。
殺し合いもきっと瞬く間に終わる。
NKT…。
>飛べ飛べ羽蟲、地獄へと
雁夜おじさんは生還しても地獄確定で辛いですね。
>帰ってきたチンポ先生
元から名前に3種の動物の名が入っていたが、そこに山羊の要素もプラス。
話はしんみりした感じがするのに、タイトルはネタ寄りでクスッとなる。
>道化師殺しの混沌
このムスカが来るのは流石に予想外。
台詞が継ぎ接ぎなのも笑う。
それから、遅れて気付いたことで申し訳ないのですが、状態表のムスカの装備欄に使用描写のある銃がないので、どのような銃なのか指定していただければありがたいです。
>酢豚を垂直に切ると砂肝の火力が強くなります。
相変わらずこの辻先生のレシピはツッコミどころ満載。
言動は滅茶苦茶なのに、思考の方は意外と整っている感じがします。
>天涯少女
身体側の過去への共感というのは、やはり決意を固めるための動機として十分なものになりますね。
>お前のようなデカイ兎がいるか!!
この人を出す発想は全く無かったというか、こんなキャラがいたこと自体これを見るまで忘れていた。
こんな戦車がひたすら走りまくっているだけなのは、他から見たら意味不明な光景になりそう。
>私はこの屈辱を一生忘れない
でもタマちゃんはかわいいでしょ。
>一人称がボクでCV:加藤英美里だから
だからってわけがわからないよ。
>しにがみ!
境界のRINNEとは懐かしいものを。
動物?がそのままデイパック内に入っていたらそりゃあびっくりします。
>なでこマンドラ
蛇に縁があるからとはいえ、そんなロボにされたらパニックになるに決まっている。
78
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/29(土) 23:08:21 ID:ji2/xzuw0
>全て壊すんだ
別の機体になっても暴走が継続するのは、もうすっかり染まり切っている感じですね。
>本名晒しには気を付けよう!
そうですね。
顔文字になっているって、どうやって動けばいいのやら。
>大阪の狙撃手
調べたところだと、浪花十三は見た目的にはそこまで子供とは感じなかったが、18歳はまあ確かにまだ子供と言える頃か。
>引くに引けない痛み
言葉を使うという戦い方は、慣れるのも他よりけっこう難しそう。
>ダンスは苦手だな
苦手なものはしょうがない。
>天子と天翅
精神側の性別の件、よく見てなくて後から気付きました。
申し訳ありません。
>灘神陰流の伝承者
あのコラ画像、タフが元ネタだったことをこのSSで知りました。
>我がさだめ
いるべきところとは、あの世のことか?
>禁断の冥王
まあ殺し合いなんて面倒くささの極みでしょうね。
>萌え萌えウォーズ Episode 3 コモドオオトカゲの逆襲 〜バースオブニューキング〜
全治8秒だとか、邦子らしさが出ていて好きです。
一々(○○の姿)と表記するところも笑う。
強マーダーになりそうな奴の名前がコモドオオトカゲなのはここだけか?
>ロマンス小説を舐めんじゃねぇよ
私がTwitterで出した画像名簿、改めて調べたら明らかに俳優が違い、身体側が間違っていることに気付きました。
申し訳ありません。
>望まぬ開花
これはフシギソウの状態をすっ飛ばされたことも気にする余裕はないですね。
>アイツを探せ
コンペが終わってから言うのもアレですが、結局アイツの身体がこなかったから、本当に何の意味もなくなった悲しき存在になってしまっている?
>気をつけて!このアルトリアは猛毒です!
これは確かに猛毒がある。
>嵐を呼ぶ(物理)
回ってて楽しそう?
>いや同じ名前だけど
そうだね。
まだ声についてしか気にすることはないのですか。
>狼
別の自分になってどうする信長?
結局は本能か?
>雷電将軍と勇者侍
死んだ魚の目じゃない銀時、想像でも少し気持ち悪かったけど、後に見たコラもそんな感じだった。
>あなたさえそばにいれば他に何もいらない
あーん!この人が来るなんて思ってなかったー!
二次元相手でも、恋は盲目って感じ。
>小春とギターと偽りの仮面
明らかに殺し合いに合ってない支給品が出てきたのだから、一回くらいはうっかり大きな声を出してしまうくらいは許してあげてください。
>torture negotiator
対主催だけども、拷問マニアで他から信用を得られるだろうか。
>BEYOND THE WORLD
この2人の因縁は、どんな場所でも切れないという感じですね。
>こいつらヤバい
文字がうるさい。
ところどころ!にできず1になっているのもそれに拍車をかけている。
>Golden Dark Sun, wherever you shine.
本物のジョルノも来るとは。(本物ジョルノと書くと少し偽物っぽくなる)
最後シーン、けん玉と花が歌っている光景はなかなかのシュール。
>乗る側と乗られる側
英霊の座から第4の壁を貫通してくるんじゃねえ黒ひー……黒ひーですよね?
バーソロミューは中に入ったロイヤル・フォーチュンが目隠れじゃないらしいことにはどう思うだろうか。
79
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/29(土) 23:09:27 ID:ji2/xzuw0
>⑨
これ以上なく誰が出てくるのか分かりやすいタイトル。
言葉を喋れなくなっている以外は意外と変わらないかも?
>【狙われた侵略者/狙われない人類】
研…これは3日間もつのか?
殺し合いの時間制限より先に病死する可能性のある身体にされたのは流石に可哀想に感じる。
>私こそ最強なのだ
かなり危ないことになっている最強ピカチュウ。
ピカチュウが強マーダーになる光景なんて想像していなかった。
>あの素晴らしい友達に祝福を!
爆裂魔法はまあ使い方が限られて扱いには難しそうだからね、最初にそれを知っている人に出会えたのは幸運だろう。
マヤと早めに仲良くなれて、ゆんゆんも成長しましたね。
>まさかのdiscover
最終的にやらなきゃならないことが多い。
渡されたものがものだから、仕方が無いか。
>クレイジー・レディクラウン
ロボ化をすぐに受け入れられるのは確かにクレイジー。
>蒼き士
パイロットであることの何が気になったのだろうか。
>痛み分け
確か真人は魂の形があってこそ体の形があるという考えもあったようなという記憶があるから、この殺し合いの環境について他に何か感じていることはあるだろうか。
>ユメトユメ
心の声なら本来の身体での声になるというのは、中身が誰であるかの判断には役立ちそうだが、最初に出会った相手の状態は悪かったみたいですね。
>DQM新作発表記念
ポケモンスリープの配信記念でもあるのでしょうか。
疑似的にとはいえグリーン・デイの能力とカビゴンの技を奪えたのはヤバいことになりそう。
>Link between two worlds
ヤマタノオロチの身体は、首一つ一つに別の人格が確認されているわけではなさそうなので、副人格が存在する扱いじゃなくても問題なさそうです。
テトラが実は自分が話に聞いていたゼルダとは別人だとは、流石に分からないでしょうね。
>エンバーミング
以前どこかで、スリラーバーグ編にはオマツリ男爵の影響もあったのではないかみたいな説を見かけたようなことを思い出した。
2人は対照的だが、組み合わせとしてはかなり合っていると感じます。
>幸せの箱
加持さんは人間時代の獪岳の経歴に共感しているが、実際の彼の後の運命を知ったらどう思うだろうか。
>シン・チェンジだよ!若おかみ!でも実はヴェノム
そういえばあったなこんな誤表記のネタ。
本物ゴードンが自分を本物のゴードンだと思い込んでいるのは憐れに感じますね。
なんかこっちの言っていることがややこしくなってますが。
これにて、感想の投下を終了します。
名簿についての続報はお待ちください。
80
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/30(日) 19:25:31 ID:JyFPDsXA0
お待たせしました、こちらで決定した名簿を発表します。
81
:
名簿発表
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/30(日) 19:28:52 ID:JyFPDsXA0
※()内については、身体側の名前となっております。
5/6【呪術廻戦】
〇禪院扇(煉獄杏寿郎@鬼滅の刃)/〇禪院真希(セーニャ@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて)/〇夏油傑(ギラヒム@ゼルダの伝説スカイウォードソード)/〇五条悟(エディータ・ロスマン@ブレイブウィッチーズ)/●禪院甚壱(モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険)/〇禪院直哉(伏黒甚爾@呪術廻戦)
3/4【鬼滅の刃】
●玉壺(雨生龍之介@Fate/zero)/〇佩狼(土方歳三@ゴールデンカムイ)/〇黒死牟(ベオウルフ@ローゼンガーテンサーガ)/〇継国縁壱(キンターマン@キン肉マン)
4/4【ジョジョの奇妙な冒険】
〇虹村形兆(ナナチ@メイドインアビス)/〇東方仗助(アンチョビ(究極体)@コロッケ!)/〇虹村億泰(津上翔一@仮面ライダーアギト)/〇岸辺露伴(鬼頭はるか@暴太郎戦隊ドンブラザーズ)
4/4【ぼっち・ざ・ろっく!】
〇後藤ひとり(三鷹アサ@チェンソーマン)/〇喜多郁代(アドバーグ・エルドル@魔法陣グルグル)/〇伊地知星歌(エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険Part6 ストーンオーシャン)/〇山田リョウ(ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ)
4/4【ONE PIECE】
〇ウタ(リグレット@Caligula2)/〇首領・クリーク(アイゼン・ホノカ@淫獄団地)/〇ヴィンスモーク・サンジ(一文字隼人@シン・仮面ライダー)/〇オマツリ男爵(ゲッコー・モリア@ONE PIECE)
3/3【シン・ウルトラマン】
〇ウルトラマン(本郷猛@シン・仮面ライダー)/〇メフィラス(風祭真@真仮面ライダー・序章)/〇ゾーフィ(早田進次郎@ULTRAMAN)
2/2【【推しの子】】
〇星野愛久愛海(フジキド・ケンジ@ニンジャスレイヤー)/〇リョースケ(バトル・キング@タフ・シリーズ)
2/2【仮面ライダーギーツ】
〇ケケラ(滝和也@仮面ライダーSPIRITS)/〇桜井景和(こめっこ@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ)
2/2【吸血鬼すぐ死ぬ】
〇ロナルド(シャーロック・ホームズ@憂国のモリアーティ)/〇ドラルク(レミリア・スカーレット@東方Project)
2/2【東方project】
〇レミリア・スカーレット(風間トオル@クレヨンしんちゃん)/〇十六夜咲夜(ツクヨミ@仮面ライダージオウ)
2/2【なんか小さくてかわいいやつ】
〇モモンガ(モモンガ@ONE PIECE)/〇ちいかわ(伊地知虹夏@ぼっち・ざ・ろっく!)
1/2【ネットミーム】
●シャンクス(じゃんけんするやつ@なんか小さくてかわいいやつ)/〇シャンクス(鞍馬祢音@仮面ライダーギーツ)
2/2【火の鳥 黎明編】
〇ナギ(西園寺右京@Dr.Stone)/〇ヒミコ(ヒミコ@ドラゴンクエストⅢ)
2/2【HELLSING】
〇少佐(ウォーズマン@キン肉マン)/〇アーカード(ロナルド@吸血鬼すぐ死ぬ)
1/2【魔王城でおやすみ】
●さっきゅん(小悪魔@東方Project)/〇魔王タソガレ(嘴平伊之助@鬼滅の刃)
1/1【UNDERTALE】
〇フラウィ(パックンフラワー@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL)
1/1【うしおととら】
〇斗和子(天城雪子@ペルソナ4)
1/1【ウソツキ!ゴクオーくん】
〇サタン(フランドール・スカーレット@東方project)
1/1【ウルトラ・スーパー・デラックスマン】
〇句楽兼人(堂島正@血と灰の女王)
1/1【ウルトラマンマックス】
〇対話宇宙人 メトロン星人(メトロン星人タルデ〈ラウンドランチャー〉@ウルトラマンオーブ)
1/1【SSSS.GRIDMAN】
〇内海将(内海成彰@仮面ライダービルド)
1/1【カオスバトル】
〇ムスカ(蓬莱山輝夜@東方Project)
1/1【仮面ライダーエグゼイド】
〇鏡飛彩(美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ)
1/1【仮面ライダー鎧武】
〇戦極凌馬(キャル@プリンセスコネクト!Re:Dive)
0/1【仮面ライダー電王】
●クラウンイマジン(きりさきピエロ@ドラゴンクエストⅥ)
1/1【仮面ライダー龍騎】
〇浅倉威(佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ)
1/1【Caligula2】
〇ドクトル(鏡飛彩@仮面ライダーエグゼイド)
1/1【岸辺露伴は動かない】
〇橋本陽馬(ファットガム@僕のヒーローアカデミア)
1/1【クレヨンしんちゃん】
〇風間トオル(十六夜咲夜@東方project)
1/1【この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ】
〇めぐみん(ゆんゆん@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ)
1/1【ゴールデンカムイ】
〇辺見和雄(アーカード@HELLSING)
1/1【涼宮ハルヒの憂鬱】
〇朝倉涼子(浅倉威@仮面ライダー龍騎)
1/1【スーパーマリオシリーズ】
〇ドッスン(タケシ@ポケットモンスターシリーズ)
1/1【ゼルダの伝説ムジュラの仮面】
〇チャット(テトラ@ゼルダの伝説風のタクト)
82
:
名簿発表
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/30(日) 19:30:53 ID:JyFPDsXA0
0/1【TIGER&BUNNY】
●ジェイク・マルチネス(野原ひろし@クレヨンしんちゃん)
1/1【チャージマン研!】
〇泉研(句楽兼人@ウルトラ・スーパー・デラックスマン)
1/1【ツバキ】
〇椿鬼(野崎春花@ミスミソウ)
1/1【テイルズオブヴェスペリア】
〇ユーリ・ローウェル(玉壺@鬼滅の刃)
1/1【天空の城ラピュタ】
〇パズー(モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE)
1/1【ドラゴンボール】
〇ピッコロ大魔王(ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ)
1/1【忍者と極道】
〇神賽惨蔵(黒川あかね@【推しの子】)
1/1【バイオハザードRE:2】
〇タイラント(トーマス@きかんしゃトーマス)
1/1【バケモン混沌のダンジョン 罵愚の探検隊】
〇まろうこん(浮世英寿@仮面ライダーギーツ)
0/1【―パッショーネ24時―】
●涙目のルカ(リョースケ@【推しの子】)
1/1【彼岸島 48日後…】
〇北沢徹(カービィ@星のカービィシリーズ)
1/1【ブラックチャンネル】
〇ブラック(超絶最かわてんしちゃん@NEEDY GIRL OVERDOSE)
1/1【プリンセスコネクト!Re:Dive】
〇キャル(ニャオハ@ポケットモンスター(アニメ))
1/1【ペルソナ4】
〇シャドウ天城雪子(ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE)
1/1【ポプテピピック】
〇ポプ子(レグ@メイドインアビス)
1/1【マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
〇黒江(黒死牟@鬼滅の刃)
0/1【名探偵コナン】
●ウォッカ(島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ)
1/1【Yandere Simulator】
〇アイシ・アヤノ(山岸由花子@ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない)
参加者総数 72/80
[意思持ち支給品枠]
1/1【仮面ライダー龍騎】
〇城戸真司(デストワイルダー@仮面ライダー龍騎)
1/1【シン・仮面ライダー】
〇緑川ルリ子(仮面ライダー第2+1号マスク@シン・仮面ライダー)
1/1【涼宮ハルヒちゃんの憂鬱】
〇あちゃくらさん(ベノスネーカー@仮面ライダー龍騎)
1/1【ゼルダの伝説ムジュラの仮面】
〇リンク(コリンク@ポケットモンスターシリーズ(Pokémon LEGENDS アルセウス))
1/1【ブラックチャンネル】
〇カメラちゃん(ロトム@ポケットモンスターシリーズ)
1/1【ONE PIECE】
〇チャカ(アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険)
合計 6/6
[副人格枠]
1/1【金田一少年の事件簿】
〇高遠遙一(ナラク・ニンジャ@ニンジャスレイヤー)
1/1【ゴールデンカムイ】
〇杉元佐一(ヨル@チェンソーマン)
合計 2/2
合計その他登場人物 8/8
参加者、意思持ち支給品、副人格、合計人数 80/88
83
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/30(日) 19:34:00 ID:JyFPDsXA0
名簿発表はこれで以上となります。
また採用するにあたり、いくつかの採用作について少しだけ気になった点について話させてもらいます。
・「だって「シン」だもの」について
以前はウルトラマンの状態表に変身ベルト、タイフーンが無いことについて、肉体と一体化しているだろうから装備欄に書かなかったと話されていました。
ですがこれについて、他の候補作における似たような状態の参加者の状態表ではそういった一体型の変身ベルトは装備欄にあるため、やはり状態表に記してもらいたいと考えています。
なおこのことについて、変身ベルトを支給品に含むかどうかはお任せします。支給品に含まなくとも特に問題にするつもりはありません。
・「道化師殺しの混沌」について
先日の感想においてもついでで述べましたが、この話の中においてムスカが使用している描写のあるリボルバーが、状態表の装備欄にありません。
この点についてですが、どうか見直し・修正することをお願いしたいです。
それから、念のため自作の一つの支給品説明に追記します。
・「ちゃいかわさま」について
この話内での【サングラス&ドンブラスター&アバタロウギア オニシスター@暴太郎戦隊ドンブラザーズ】の説明について以下の文を追記します。
追記文:基本のオニシスターへの変身用以外のアバタロウギアは付属していません。
84
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/30(日) 19:35:11 ID:JyFPDsXA0
次に、施設の調整と募集について連絡します。
以前からお話していた施設募集についてですが、この後専用したらばに募集専用のスレッドを建てる予定です。
施設案がある場合は、そこに「施設名@出典」という形で書いてください。
施設の詳細についての有無や、トリップの有無はお任せします。
なお、案を出しからといって必ず採用されるわけではありません。
また、施設の位置については指定はできず、全て私の方で決めさせてもらう予定です。
これらの点についてはどうかご了承願います。
また、私の方からもいくつか案を出す予定であります。
募集期限は、一先ずは8/2(水)の23:00までとしておきます。
専用したらばのURLも一応以下に記しておきます。
URL:ttps://jbbs.shitaraba.net/otaku/18420/
期限が過ぎた後に、私の方で登場させる施設の種類・位置を決めさせてもらおうと思います。
また、ついでとなりますが、地図上における森エリアについて、以下の設定を付け加えたいと思います。
・多くの木々の葉に遮られ、日光が中に届きにくいものとします。
今回の連絡はこれで以上となります。
施設募集をお待ちしております。
85
:
◆4u4la75aI.
:2023/07/30(日) 20:26:42 ID:OAZmD17c0
>>83
失礼しました、wikiにて装備欄に【リボルバー@天空の城ラピュタ】を追加させていただきます。
遅くなってしまい申し訳ありません。そして採用ありがとうございました。
86
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/07/30(日) 23:37:59 ID:ckzy5wIU0
>>83
「だって「シン」だもの」をwikiにて修正し、タイフーンを強化服&ヘルメットとセットの支給品として記載しました
87
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/07/31(月) 18:11:24 ID:ypOi.4P.0
専用したらばの方でも連絡しましたが、施設案募集の期限についてなのですが、私の都合により2時間早めて8/2(水)の21:00までに変更したいと思います。
88
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/02(水) 21:02:24 ID:Kqe9de.Y0
期限を過ぎましたので、施設案募集は終了となります。
皆さん、ご応募ありがとうございました。
これから施設の選出を行いますので、もうしばらくお待ちください。
遅れるとしても、一週間以内には次の連絡を行う予定です。
89
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/05(土) 22:41:46 ID:FbNkx/BY0
【採用作追加のお知らせ】
突然ですが、本ロワの本編に採用する登場話候補作を1つ増やしたいと思います。
まだ地図の調整が終わっていないにも関わらず、このような連絡をして誠に申し訳ありません。
ですが、1つほどやはりこの作品も本編に採用したいという気持ちが出てきたものがありまして、今回の連絡に至りました。
該当する作品は以下の通りとなります。
|103|[[再びの戦場]]|ジョン・ジェームズ・ランボー@ランボー|ポプ子@ポプテピピック|◆yy7mpGr1KA|
これにより、生存参加者人数は1人増えて73人となります。
前から言っていたことを覆してしまい申し訳ありませんが、やはりどうしてもこれも追加したいという思いが大きくなりまして、このようなことになりました。
私の勝手でこのような事態になりましたが、どうかご了承願います。
また、これにより登場する出展元が一つ増えたため、施設案募集を再度もう少しだけ行おうと思います。
期限は明日8/5(日)の20:00までにしたいと思います。
この募集もまた、専用したらばの施設募集スレで行います。
なお、この募集において、新しく増えた出展元以外の出展の施設案を出すのも一応可能としておきます。
色々と混乱させてしまうようなことを唐突に言い出したことについては、重ね重ねお詫び申し上げます。
ですがどうか、ご理解の程を何卒よろしくお願いいたします。
90
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/05(土) 22:59:47 ID:FbNkx/BY0
>>89
案募集の期限について微修正です。
8/6(日)の20:00までです。
91
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/06(日) 20:02:54 ID:Bskb/wos0
再度、期限を過ぎましたので、施設案募集はこれで今度こそ終了とします。
地図の調整はもう少しお待ちください。
一応、本来の予定日である、次の水曜日までには次の連絡を行う予定です。
92
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/08(火) 21:31:09 ID:OoHFmVk20
お待たせしました。地図の調整が終了したことを報告します。
地図の画像を載せたまとめwikiのページのURLを以下に記します。
URL:ttps://w.atwiki.jp/sin-changerowa/pages/10.html
また、登場する施設の一部についての備考をここでも述べさせてもらいます。
[施設に関する備考]
・施設案募集にあった「シスカの病室@地と灰の女王」についてですが、本編開始後、地図上にある病院内にあることにするのは可能としておきます。
・施設案募集にあった「超てんちゃんの部屋@NEEDY GIRL OVERDOSE」についてですが、施設案募集での希望通り、住居系施設の一室として登場させるのは可能としておきますが、どの施設の中にあるかについては本編開始後の書き手にお任せします。
・地下鉄については、「キィトレイン@Caligula2」を採用するものとします。
・「ワープ土管@スーパーマリオシリーズ」についてですが、地図上に二つありますが、これらは繋がっていて通ればワープ可能なものとします。
・乗り物系の施設は、もし動かされたとしても地図上での位置は変わらないものとします。
・「ゲームセンター@なんか小さくてかわいいやつ」についてですが、原作通り、中にスロットマシンが存在する場合、あらかじめ本ロワ独自のルールを設けておきます。
・スロットマシンを動かせるのはゲームセンター内に落ちているメダルのみ。
・ゲームセンター内にあるメダルの枚数は、15枚までとする。
・原作通り、矢印のマークを揃えると精神がシャッフルされるが、その対象はゲームセンターの中にいる者達全員としておきます。
・原作においては、スロットマシンの顔のマークを揃えると肉体の状態が精神由来のものになりましたが、ここにおいてはその効果は無く、ただ威風堂々の曲が流れるだけのものとします。
93
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/08(火) 21:36:56 ID:OoHFmVk20
また、ついでになりますが、書き手向けルールについて一部微調整等をさせてもらいます。
【一部ルール変更・追加のお知らせ】
「精神入れ替え系の支給品について」
支給品の力で身体が元に戻る展開はNGとしていましたが、精神入れ替えによって結果的に本来の身体の状態になるのは一応可能としておきます。
その代わりとして、精神入れ替えの力を持つ支給品を出す場合の制限にもう少し条件をつけたいと思います。
制限についてですが、時間制限は無くし、回数制限のみにしたいと思います。
回数制限は、最大5回までとしてください。
意思持ち支給品や副人格も、精神入れ替えの対象にするのは可能としますが、それらの身体が参加者とされているものになっても、参加者として扱われることはありません。
言い換えれば、本来参加者とされる精神の身体が意思持ち支給品のもの等と入れ替わっても、その精神は引き続き参加者として扱われます。
「設置型の機械等の要素について」
前の無印のチェンジロワでの方であった、「モノモノマシーン@ダンガンロンパ」や「公衆電話@キラキラ☆プリキュアアラモード」等、施設とは扱われてないですが出展元のある設置される機械等の要素は、ここにおいては勝手に出すことはできないものとします。
もし、これらのような要素を出すとしても、それは定期放送時のみとします。
なお、実際にそのような要素を入れるとは限りません。
「舞台上のアイテムについて」
施設内においては、何らかのアイテム等が存在する展開は一応可能としておきますが、元の出展においてもその施設の中にあったもののみとしてください。
また、施設外において、出展元のあるアイテムや乗り物等は登場不可としておきます。
今回の連絡はこれで以上となります。
次は、本編開始のためのOP2の執筆に移ります。
今度もまた一週間以内には次の連絡を行う予定ですので、もうしばらくお待ち頂くことをよろしくお願い致します。
94
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/09(水) 19:17:25 ID:3xqNl0qg0
すみません、昨日お伝えした精神入れ替え系支給品の使用回数制限の最大数についてですが、5回から3回に変更したいと思います。
95
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/09(水) 21:09:08 ID:3xqNl0qg0
ルールにある駅の時刻表について、まとめwikiにおいて先日の案募集から決定された施設名を追加してきました。
URL:ttps://w.atwiki.jp/sin-changerowa/pages/28.html
96
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/09(水) 21:11:19 ID:3xqNl0qg0
「地下鉄の時刻表」
・駅①(ナップフォード駅)→駅②(興玉駅)
早朝4:00→4:15
朝6:00→6:15
午前8:00→8:15
昼10:00→10:15
日中12:00→12:15
午後14:00→14:15
夕方16:00→16:15
夜18:00→18:15
夜中20:00→20:15
・駅②(興玉駅)→駅①(ナップフォード駅)
早朝5:00→5:15
朝7:00→7:15
午前9:00→9:15
昼11:00→11:15
日中13:00→13:15
午後15:00→15:15
夕方17:00→17:15
夜19:00→19:15
夜中21:00→21:15
97
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/12(土) 23:00:57 ID:yw4XvOgg0
お待たせしました。OP2を投下します。
98
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/12(土) 23:04:20 ID:yw4XvOgg0
現在時刻は、午前1時。
約束の時間が、来た。
時間が来ると同時に、参加者達全員が持つタブレットからアラームが鳴り響く。
さらには、画面が勝手に点き、または切り替わり、映像が流れ始める。
電源ボタンを押しても、その映像を消すことはできない。
他の操作も受け付けない。
突如流れ出した映像から画面を切り替えることができない。
そんな状態にされていた。
タブレットの映像には、参加者達に見覚えのある人物の姿が映し出される。
紅白の髪の女ウタの姿をした者、最初のルール説明を謎の空間で行った人物、魘夢だ。
その映像の背景は、前に魘夢達が説明していた時との草原とは違い、漆黒の暗闇となっていた。
『やあお前たち、約束の連絡の時間だ』
『そろそろ今の身体にも少しは慣れたかな?』
『まあ、今回の前置きはこれで終わりにして、早速必要な情報を伝えようか』
『前に伝えた通り、お前たちに支給した"タブレット"に名簿と地図の"データファイル"というものを送った』
『名簿についてだが、参加者として扱われる精神側と、身体側とで別々の名簿を配布する』
『これらはどちらも五十音順で名前が並んでいるから、順番が誰が誰の身体になっているかを表しているものじゃないから、その辺りは注意が必要だろうね』
『あと一応、前にも話した「意思持ち支給品」とか「副人格」とかになっている精神についてだけど、こいつら用の名簿も「その他」としてまとめて送ってやったよ』
『こいつらについても一応、身体側の名簿は付けておいた』
『まあ、名簿については自分の知っている名前がないか、確認しておくべきだろうね』
『それから名簿についてはもう一つ、精神と身体の組み合わせ名簿の配布を予定している』
『この名簿には他にはない顔写真も貼られるから、そういった点からも入手できれば殺し合いが有利になるかもしれないね』
『ただし、この名簿の入手には条件がある』
『それは、この殺し合いにおいて他の参加者を一人でも殺害することだ』
『なお、この名簿を配布するのは次の定期放送、午前六時の時だ』
『もう既に条件を満たしている者もいるけれど、今すぐもらえるわけじゃないからその点については気を付けることだ』
『ああ、そうだ。今言った通り、この一時間でもう既に誰かの殺害に成功した者も存在する』
『言い換えればそれは、たった一時間で既に死亡した者達がいることを意味する』
『そんな敗北者達についても、今ここで少し紹介しておこうか』
『今からそいつらの顔写真を二枚ずつ見せながら紹介するけど、左側が精神、右側が身体を表しているからね』
『あと、精神側の名前を基準に五十音順で発表するから、これが死亡した順番ではないということも理解しておくことだね』
『それじゃあ、発表していこうか』
魘夢がそう言うと同時に、映像が切り替わる。
先ほど言われた通り、顔写真が二枚ずつタブレットに次々と映し出されていった。
『ウォッカ…その身体の名は島村卯月』
『玉壺…その身体の名は雨生龍之介』
『クラウンイマジン…その身体の名はきりさきピエロ』
『さっきゅん…その身体の名は小悪魔』
『ジェイク・マルチネス…その身体の名は野原ひろし』
『シャンクス…その身体の名はじゃんけんするやつ』
『禪院甚壱…その身体の名はモハメド・アヴドゥル』
『涙目のルカ…その身体の名はリョースケ』
『以上八名が、この一時間で死亡した者達だ』
映像は再び、魘夢のウタとしての姿を映したものに切り替わる。
『ふふっ、それにしてもまさかあの上弦の伍が………あ、今のは個人的な話だからあまり気にしないでね』
『まあそれはともかくとして…いきなり八人も退場とは、中々良い開幕になったんじゃないかな』
『それから、死亡した者達は、放送ごとに名簿において名前の上に赤線を引くこととする』
『これならば、誰が死亡したかいつでも確認できるだろう』
『それじゃあ次は、ある特殊な施設についての説明を少ししようか』
『お前たちの中には、今の自分の身体に不満がある奴もいるだろう』
『そんな奴らに良い知らせだ。実は、ある施設で身体を取り替えることができるかもしれないんだ』
『その施設は、さっき送った地図に記されている』
『けれども、その施設の名前はここでは教えない』
『たくさんある施設の中から、自分の足で行って確認することだ』
『まあ、そこに行けたからと言って必ずしも取り替えができるわけではないけどね』
『取り替えのための、別の生きた相手だって必要になるからね』
99
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/12(土) 23:05:37 ID:yw4XvOgg0
『……ああ、そう言えば、ここの参加者の中には精神・身体がどちらともある者もいるから、場合によっては取り替えで本来の身体な状態になってしまう可能性もあるのか…』
『まあ、そう簡単にはいかないだろうし、もしそんなことになっても一応見逃しておいてやることにするよ』
『あと、もしも「その他」名簿に名前が載っている奴らが参加者用の身体と入れ替わっても、そいつらは参加者としては扱わないからね』
『今回伝えるべきことはこれで以上かな』
『それじゃあ、次は六時まで待っててもらおうか』
魘夢がそう言うと同時に、映像は切れ、タブレットの状態は元に戻る。
後には、静寂が残されていた。
◆
そこは、この殺し合いにおいて最初の説明が行われた場所。
中央に大木の生えた丘を有する草原。
その木の近くに、黒い影が現れる。
それは、1時間前の参加者達が目覚める直前まで、はるか上空にいた存在。
ダークライの姿をしたそいつが、ここに現れていた。
『……何をしに行っていた?』
また別の者が、そいつに話しかける。
丘の上の樹の根本、ムジュラの仮面を被った子供が、両膝を手で抱えて座っていた。
話しかけられたそいつは、ちらりと後ろを振り返る。
『……この場所では、"光"が見える』
質問されたことで、ダークライの姿をした者は声を発する。
『説明が終わるまで待っていたというわけか』
『ならば、もっと我らに相応しき場所に変えよう』
ムジュラの仮面がそう言うと、周囲の風景が変わる。
明るい草原から、円形の不気味な雰囲気を醸し出す暗い部屋へと変わっていった。
『これでもう、問題はないだろう』
『けれども、お前にはもう少しだけ言わせてもらう』
『あそこでは、参加者達に見られる可能性もあっただろう』
『……その点について、何も問題は無い。奴らが目覚める時間の調整はしていた』
『だがやはり、我らの"ボス"としてそぐわない行動はよすべきだ』
『あの魘夢も、慣れない横文字を発音できるよう訓練している』
『もし我らをないがしろすれば、この殺し合いも成り立たせることができなくなるかもしれん』
『そうだろう、"混沌と闇の化身"ダーズよ』
『………ああ』
会話を終えた、ダーズと呼ばれた存在は、自らの顔を前に向き直した。
同時に、ダーズの目の前にまるで幻のような形で、ぼんやりと映像が現れる。
そこには月の下にある光景が、今もなおバトル・ロワイアルが行われている様子が映し出されていた。
【不明主催陣営:確定】
ダーズ@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL(身体:ダークライ@ポケットモンスターシリーズ)
100
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/12(土) 23:08:54 ID:yw4XvOgg0
OP2の投下を終了します。
つけ忘れていましたが、OP2としてのタイトルは「OP2 -暗闇の星-」とします。
次に、本編における予約ルールについて説明します。
【予約について】
・予約期限は基本は2週間とします。
・延長する場合は本来の予約期限からプラス1週間までとします。
・自己リレーは投下完了から1週間は不可とします。
・なお、コンペ時に投下した登場話からの自己リレーは上記のルールに当てはまらない、すぐに自己リレー可能なものとします。
・予約期限を過ぎた場合、5日間は同じ登場人物の予約は不可とします。なお、これによる予約不可の期間中でも、ゲリラ投下は可能とします。
また、本編開始後配布の名簿について、少しだけ変更があります。
意思持ち支給品・副人格用のその他名簿についてですが、これも精神側だけでなく、身体側の名簿も配布することにします。
死亡者についてですが、放送ごとに名簿上において名前の上に赤線が引かれるものとします。
それから、まだ先のことになりますが、第1回放送時の追加予定の要素についてあらかじめ説明しておきます。
【組み合わせ名簿について】
・精神と身体の組み合わせを記した名簿のデータファイルが、条件を満たした参加者のタブレットに第1回放送時に送られます。
・組み合わせ名簿入手の条件は、参加者の誰かを殺害することとします。
・なお、参加者に含まれない意思持ち支給品を破壊・殺害しても条件を満たしたことにはなりません。
・OP2における放送後においては、たとえ条件を満たしていたとしても組み合わせ名簿はまだ配布されません。
・この名簿は精神側の名前を基準に五十音順で記されます。
・今回は、精神側と身体側の顔写真も添付する予定です。
・意思持ち支給品、副人格といったその他名簿に名前が載っていた者達についても、その他組み合わせ名簿として別に配布する予定です。
最後に本編開始についてですが、今日の日付から切り替わる8/13(日)0:00から投下・予約を開始とします。
それでは、今回の連絡はこれで以上となります。
今後とも本ロワをよろしくお願いいたします。
101
:
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/13(日) 00:00:01 ID:EUEK73fk0
OP2投下乙です
ドラルク、ロナルド、めぐみんで予約します
102
:
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/13(日) 00:08:15 ID:RurGl9Mk0
風間トオル、レミリア・スカーレットで予約します
103
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/13(日) 00:37:21 ID:zmGw4EDQ0
ポプ子で予約します。
104
:
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/13(日) 05:53:12 ID:bnEhNhPE0
OP投下乙です
黒死牟、ウタ、東方仗助、喜多郁代で予約します
105
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/13(日) 10:06:51 ID:W/tPDvjI0
内海将、予約します
106
:
◆TruULbUYro
:2023/08/13(日) 20:29:21 ID:K5YREwbo0
op2投下お疲れ様です。
橋本陽馬、禪院直哉で予約します
107
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/14(月) 17:03:11 ID:Dwzv6hMs0
投下します。
108
:
可愛さ旋風…巻き起こしたりますかァ…
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/14(月) 17:04:12 ID:Dwzv6hMs0
「魘夢ゥァア゛ア゛ーーッ!!」
時刻はおよそ午前1時。
放送直後、ポプ子は配布された名簿を確認した。
その結果、彼女は先ほどよりも更に怒り狂っていた。
八つ当たりに、自分が居た部屋の窓ガラスも叩き割っていた。
「あいつら…よくもナナチとあちしの可愛いボディまでも巻き込みやがったなァアーーッ!!!」
彼女が怒りを感じていた理由は、身体側名簿にあった。
自分は今皆殺しを目論んでいるのに、殺してはいけない名前がそこに載っていたからだ。
まず自分の身体については当然のこと。
いくら優勝すれば蘇生できるらしいとはいえ、自分の可愛い(自画自賛)身体を殺したくない。
そしてナナチについてもそうだ。
ナナチは可愛いことをポプ子は知っている。
別の漫画のキャラではあるが、出版社が同じという縁からそのことを知っている。
自分の漫画でもネタにしている。
加えて言えば自分の今の身体のレグもナナチと同じ漫画のキャラだから、ポプ子は一応知っている。
上手く使えば、殺し合いの優勝も夢ではないかもしれない力を秘めていることも。
レグの火葬砲なら、よっぽどのことが無い限りは全ての参加者を消し飛ばせるはずだ。
もっとも、これを扱う際のデメリットも一応理解している。
一度使えば10分後に2時間ほど眠ってしまうため、火葬砲の使用には注意が必要だ。
回数制限もあるが、これは一応大量の電気エネルギーがあれば回復させることは可能のはずだ。
しかしそれはともかくとして、ナナチを殺したくない気持ちはあった。
やっぱりナナチは可愛いからだ。
自分達のアニメに連れて来ることができれば、覇権だってとれると思っている。
下手に傷つけてしまえば、例え優勝した後の権利で蘇らせたとしても、自分達のアニメに連れて来るのが難しくなるかもしれない。
そもそも優勝後の権利はもっと他の使い方をできるようにしたかった。
だからこそ、ナナチの身体が巻き込まれているのはポプ子にとってとても不都合なことだった。
「どうする…!?身体の取り替えができる施設があることを信じて、そこに連れてって取り替えるか…!?けどそのためにまずその施設を見つけなきゃ…いやでもこんなにたくさんの中から見つけるのはめんどくせー!それにどっちにするか、そもそも取り替えるかどうかも……ヴアアァーーッ!!」
この件についてポプ子は大いに悩まされる。
もちろん一番大事なのは自分だ。
だが可愛いナナチのことも下手な扱いはできない。
レグだってどうすれば殺せるか自分もよく分かっていない分殺し合いには比較的有用な気がする。
いっそ、他参加者の身体側の情報なんて知らないままの方が良かったみたいな気持ちも出てくる。
ここにおける有用な情報なんて、親友のピピ美が心身ともに巻き込まれてないことぐらいだ。
「……ええい!こうなりゃ仕方ねえ!ナナチと私はもし見つけたらとりあえず捕まえる!施設は片っ端から探す!他は全員ぶっ殺す!!!」
結論として、ポプ子は身体の取り替えをするかどうかは保留とした。
結局のところ、取り替えができる施設というのがどこなのかは分かっていない。
けれどももしもの時のため、とりあえずそこは一応探しておくことにした。
自分やナナチの身体については見かけたら捕まえて、取り替えするかどうか選べる状態にしようと考えた。
そしてそれ以外に関しては、方針を変えないこととする。
殺すことに関しては、やっておけば誰が誰になっているかの組み合わせ名簿が、それも顔写真付きで入手できるとのことだ。
どんな奴が自分達になっているか顔ごと分かればある程度はここでどんな行動をとっているかも多少は予測できるだろう。
早めにやっておいて損は無いはずだ。
◇
「とりあえずこのロナなんとか事務所にはそれらしきものはねえ!次だ次!ウラアーーッ!!」
ポプ子はとりあえず、自分がたまたま最初に入っていたロナルド吸血鬼退治事務所の中を探し回り、放送で言われたようなことができそうなものがないことを確認した。
そして次の場所へと急いで行くため、窓ガラスの、先ほど自分が叩き割った方の隣のまだ無事だった方も体当たりでブチ破りながら外に出る。
2階からであったため当然その高さの分落下するが、ロボットのレグの身体ではそれによるダメージは無い。
外に出たポプ子はアスファルトの地面へと着地し、そのまま何処かへと走り去っていった。
109
:
可愛さ旋風…巻き起こしたりますかァ…
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/14(月) 17:05:24 ID:Dwzv6hMs0
【G-7 街 ロナルド吸血鬼退治事務所付近/深夜】
【ポプ子@ポプテピピック】
[身体]:レグ@メイドインアビス
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:皆殺し。もちろん魘夢達も殺す。ただし、自分やナナチの身体については保留。
1:がんばるぞい!
2:自分やナナチの身体についてどうするかは一先ず保留。見つけたら一応捕まえておく。
3:面倒くさいがもしもの時のため取り替えのできる施設を探しておく。
[備考]
※レグの腕は健在です。
※『メイドインアビス』についての知識は一応有しているものとします。
※アニメ版2期の放送より前からの参戦としておきます。
[施設備考]
※ロナルド吸血鬼退治事務所内の2階の外へと繋がる窓ガラスが割られています。
110
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/14(月) 17:05:45 ID:Dwzv6hMs0
投下終了です。
111
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/14(月) 23:45:39 ID:9PvWiivs0
投下します
112
:
ウルトラマニアック
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/14(月) 23:46:47 ID:9PvWiivs0
謎の黒ずくめ男……少佐を見失った内海は、マッドローグの変身を解除して木にもたれかかっていた。
「くっそ……。マジできついな、これ……」
説明書にも書かれていた、エボルドライバーの反動。
それが現在、内海の体を襲っていた。
現在の彼の肉体である内海成彰は変身を繰り返すうちに反動に対して耐性をつけていったが、
主催者が用意した肉体は一度世界が作り直された後のもの。
桐生戦兎に頼み込んでネビュラガスを注入してもらったことで、仮面ライダーへの変身こそ可能になっているものの、
肉体に刻まれた戦闘経験はリセットされてしまっている。
早い話が、単なる一般成人男性とほぼイコールである。
「あんまりゆっくりしてもいられないんだけどな……。
だからといって、こんな状態で動いたところで……」
誰に言うでもなく、愚痴をこぼす内海。
その時、デイパックの中にあったタブレットが大音量のアラームを鳴らし始めた。
「な、なんだぁ!?」
慌てふためきながら、内海はタブレットを取り出す。
その画面には、先ほど夢に出てきた少女の顔が映っていた。
『やあお前たち、約束の連絡の時間だ』
◆ ◆ ◆
「マジかよ……。たった1時間で8人も……」
放送終了後、内海は大きくため息をつく。
おのれの認識が甘かったと、内海は痛感していた。
これだけの人数が死んでいるということは、殺し合いに積極的な参加者は自分の想像以上に多い。
一刻も早く止めなければ、手遅れの事態になってしまう。
「気持ちは焦るけど……。こういうときこそ冷静に、だ……。
まずは与えられた情報を確認しないと」
額の汗を拭いながら、内海はタブレットを操作してタブレットに送信された名簿を確認する。
「ウタ……。あいつが体を使ってた女の子の心も参加させられてるのか……。
その次が俺で……ウルトラマン……え?」
たまらず、内海は名簿を二度見する。
読み間違いではない。
その名前は、たしかに内海の下に記されていた。
「ウルトラマン!?!?!?!?」
内海は、魂の底から湧き上がる叫びを抑えられなかった。
なぜなら、彼はウルトラシリーズの大ファンなのだから。
「いや、なんでウルトラマンが!?
え、これがマルチバース?
ウルトラマンが実在する世界もあるってこと!?」
内海は、世界が自分たちの住むものだけでないことを知っている。
そして先ほど見せられた死者の画像には、自分と同じ世界の住人とは考えづらい異形の生物も混ざっていた。
そもそも宇宙人がもたらしたというエボルドライバーの存在もあり、
このデスゲームには複数の世界の人間が参加させられているのだろうと内海は考えていた。
だが自分の憧れのヒーローが本当に存在する世界があるなど、彼は考えてもいなかった。
「うわ、他にもタイラントとかメフィラスとかメトロン星人とかいる……。
ゾーフィは……誤植か? いや、ゾフィーの異次元同位体かもな。
というか、体の方にもメトロン星人いるじゃん!
ちゃんと人間サイズなんだろうな!」
113
:
ウルトラマニアック
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/14(月) 23:48:16 ID:9PvWiivs0
内海の脳裏に浮かぶのは、数十メートルのメトロン星人がドラゴンや大ダコと殴り合う光景。
そんな地獄絵図が現実にならないことを祈るばかりだ。
「ふう……。いろいろ衝撃的だったけど、知り合いの名前がないのは喜ぶべきか……。
後は……地図かな」
名簿の確認を終えた内海は、続いて地図を開く。
「うおっ、なんかいっぱい書いてある……」
「ハレルヤランド」やら「ペシミズム厭世病院」やら胡乱な施設名が並ぶ中、内海の視線はとある施設に止まる。
「科特隊……日本支部……」
内海は即座に、その施設をめざすことを決意する。
「科特隊」。それはすなわち、ウルトラマンと一心同体であるハヤタ隊員が所属していた防衛組織だ。
ウルトラマンがこの場にいるなら、この場所をとりあえず訪れる可能性が高いと考えたのである。
一介のオタクとして本物のウルトラマンに会いたいという気持ちも、もちろんある。
だがそれ以上に、現実的な考えが内海の中にはあった。
ウルトラマン。それはすなわち、絶対的正義。
洗脳でもされない限り、殺し合いに乗ることなどあり得ない。
知り合いが参加していない内海にとって、この場で最も信頼できる存在がウルトラマンなのだ。
(正直、戦力になるかどうかはどんな体になってるか次第だが……。
たとえ非戦闘員だとしても、精神的支柱としてこれ以上の存在はない!
絶対に合流すべきだ!)
方針が決まれば、やる気も湧いてくる。
まだ反動ダメージが完全に抜けたわけではないが、内海は動き出さずにはいられなかった。
(あの黒いやつを放っておくのは、気が引けるけど……。
俺一人じゃ、見つけるのも一苦労だ。
まずは仲間を増やした方がいい)
迷いを振り切りつつ、内海は両の足で地面を踏みしめる。
「よっしゃ、いくか! 待っててくれよ、ウルトラマン!」
気合いに満ちた表情で、内海は走り出した。
ここにいる「ウルトラマン」が、彼の知る「ウルトラマン」とは別人であるとも知らずに。
【F-4 森/深夜】
【内海将@SSSS.GRIDMAN】
[身体]:内海成彰@仮面ライダービルド
[状態]:変身の反動(ほぼ回復済み)
[装備]:エボルドライバー(複製品)&バットボトル&エンジンボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:一人でも多くの人を守る。
1:ウルトラマンと合流したい。
2:1のために、科特隊日本支部を目指す。
3:黒い男とは、いずれ決着をつける。
4:タイラント、メトロン星人、メフィラスを警戒。
[備考]
※参戦時期は「グリッドマンユニバース」終了後。
※内海成彰の肉体は新世界のものです。そのため、サイボーグ化はされていません。
※2018年までのウルトラシリーズを把握しています。ただしあくまで一般オタクなので、知識が正確である保証はありません。
※タイラントをウルトラ怪獣のタイラントと誤認しています。
114
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/14(月) 23:49:42 ID:9PvWiivs0
投下終了です
問題がありましたら、指摘お願いします
115
:
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 14:57:52 ID:1Rs7t1YA0
投下します
116
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 14:58:53 ID:1Rs7t1YA0
俺の名はロナルド、シンヨコに住むごく普通の吸血鬼ハンターってやつだ。
特技は腕力&腕力。まあ取り敢えず殴っとけばだいたいの吸血鬼は吹っ飛ばせる。偶に腕力ではどうにもならないやつが多々あるが、そこはまあどうでもいいだろ。
俺は何時もの通りうちの事務所に居候しているクソ砂ドラ公と駄弁ったり何回かぶっ殺したりしていたんだが、途中から妙に眠気が酷くなってきてな。
まるで睡眠薬飲まされた時みてぇに意識が曖昧になっちまって……。
眼が覚めたら、魘夢とかいう訳わかんねぇやつの催しに巻き込まれ。
―――俺は超ワイルドイケメン系のボディになっていた!!
真実はいつも腕力! 吸血鬼退治人ロナルド改めて吸血鬼退治探偵シャーロック・ロナルドの華麗なる活躍が―――
「バリツとサッカーボールを両サイドから顔面にぶっこまれそうな案件やめい」
117
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 14:59:26 ID:1Rs7t1YA0
☆ ☆ ☆
「マジかよおい……」
再び流れた魘夢による放送。一時間で犠牲となった参加者の名前が告げられる。
これはもはやポンチ共がトンチキし始めた時とはわけが違う。偶に出てくるシリアスな空気垂れ流し始める感じのやつ。
さしものロナルドもこの事実には冷や汗を隠しきれない。今回もなあなあで終わりそうだなと思っており、挙げ句身体は別だがドラルクとも再開して。
と思いきやこれである、これは間違いなく洒落になっていないやつだ。某不動産きら◯系の作品が突然血みどろシリアスし始めた時レベルの緊張感。
「一体誰だか知らんが、よくもまあ血腥い事をやってくれたものだ、あの魘夢とかいう身体だけ淑女は。せめて私に充てがわれた身体が同族のものだったというのが救いか。」
一方、呑気なのか真剣なのかわからない口調で呟くのはドラルク。
こんな異常事態に置いても如何せん冷静、というよりも殺し合いという状況下において比較的安定していた。
ドラルクに充てがわれた身体は幻想郷に住まう紅魔の吸血鬼、スカーレットデビル。名をレミリア・スカーレット。
「つーかドラルク、てめぇその身体で大丈夫なのか?」
「少なくとも元の体よりも耐久力は間違いなくあるだろうし、まあ足に小指ぶつけた時にスナァ出来なくて悶えそうなのは面倒なぐらいだな。」
「それは心底どうでもいい。そういうことじゃなくて、その身体だと何度も死ねねぇだろ。つーか一回死んだらゲームオーバーだろ俺たちみたいに。」
「……えっ。それつまり、今の私一回でも死んだらマジでヤバいやつ? というかもう何度も死ねないやつ?」
その指摘に、始めてドラルクは青ざめた。
そもそも、ドラルクが悠長に出来たのは何度も死ぬ虚弱体質からなる死と復活のループからだ。
だが、何度も文字通り死ねる元の体と違って、力こそ元の体より強くとも一度死んだらそれっきりであろう今の身体は、肉体の檻は文字通りドラルクに対しての呪縛そのものだ。
少なくとも、耐久力はクソザコナメクジはなくなったのが救いか。
「こうしちゃいられないぞロナルドくん! さっさと元の体に戻る手段を探さなければ、万が一別の誰かが私の身体を使ってる状況続いたら何か元の体に戻った時にバグってそうだ!」
「まあてめぇの身体を元に戻すってのは賛成だ。そもそも俺としちゃ死人が出た以上ハンターとしちゃ黙っちゃいられねぇ。」
心機一転、方針決定。ドラルクの闘志は燃え上がっている。
この身体別に悪くなくない、なんて思っていたのは白紙だ。
さっさと元の体に戻らないといけない、さもないとなんか後々面倒になりそう。
ロナルドとしても、明確な死者が出てしまった以上はもう無視はできない。
もはや、彼らが素直に魘夢に言葉に従うなんて選択肢は存在しなかった。
「それに、このまま元凶とっちめて解決して、俺は吸血鬼退治探偵シャーロック・ホームズ・ロナルドとして一世を風靡するイケメンに……」
「全国のシャーロキアンに嬲り殺しにされても知らんぞアホルドくん。というかもしかしてこの身体のまま帰るつもりなのかね。」
「いや、ぶっちゃけイケメン過ぎるし、もうこのままでいいかなぁってちょっと思った。」
「バーカバーカ! 身体変わった程度で人生変わると思ったら大間違いだ!ていうかシャーロック・ホームと言ったら大英帝国屈指の名探偵ではないか!君みたいな脳みそが腕力とバカとおっぱいで出来た中身にホームズの身体だなんてシャーロック・ホームズに対しての尊厳凌辱甚だしグバァッ!!!」
「うるせぇ真実は何時も腕力じゃあ!!」
なのだが、シリアスが長続きしないのは彼らのスタイルなのか。
いつものしっちゃかめっちゃかな問答の後、ドラルクは案の定ロナルドからきついの一発もらった。
118
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 14:59:45 ID:1Rs7t1YA0
「何時もより痛いぞロナルドくん。」
「我慢しやがれ自業自得だ。」
頭に巨大なたんこぶを作ったロリ吸血鬼(ドラルク)を尻目に、ロナルドは送られてきた名簿と地図のデータファイルを眺めていた。
身体の名簿、精神の名簿。そして副人格や意思持ち支給品等の「その他」にカテゴライズされる名簿。
あと地図に記載されているのは様々な施設。森やら海やら街やら雪原やら。ある意味バイキングみたいな島というか。その中に記されている施設の一つに、「ロナルド吸血鬼探偵事務所」の名も。
「施設の数は結構あるのだな。しかも我が新ドラルク城ゴブッ」
「俺の事務所だ。……が、事務所があるってことはもしかしたらメビヤツや死のゲームもいるのか?」
「もしいたとしても生身は十中八九別物だろう。そもそも名簿に載ってないとなれば居ないだろうな。」
まず、これが自分たちが知っているであろうロナルド吸血鬼探偵事務所なのかも不明であるが。少なからず、参加者に関連した施設は置かれている。
画面の名簿を指でスクロールさせていると、ある名前の羅列を見つけてロナルドの動きが止まった。
「俺の身体ぁぁぁっ!!!」
自分の名前があった。つまりロナルドのボディが誰かの身体として勝手に使われているという。
ちなみに身体の方の名簿にドラルクの名前は無く、そのドラルク当人が背後でナチュラルに笑いをこらえている。レミリア・スカーレットの顔での堪え顔も合わさってただのメスガキにしか見えなかった。
「良かったではないかロナルドくん、この場所の何処かに体を入れ替えれる何があるらしいからそれを使えばもとに戻れるかもしれないぞフフッ。」
「うっせぇメスガキ! 元の身体戻ったら殺すっ!!!! ……こうなっちまったら仕方ねぇ、速急に俺の身体の無事確保だ、あともうキレたから魘夢は後で殴る! 泣くまで殴るの止めねぇからな!」
「兎も角やる気に満ち溢れているようで何よりなのだが、ぶっちゃけ行く当てある? まあロナルドくんのことだろうし適当に探し回るとかそういう感じな気がする。」
もはやこの先の展開を何となく察したドラルクがやる気の上がるロナルドを尻目に地図を閲覧。
事前にドラルクなりに次の行き先を決める、というのだがまあ取り敢えず近くの施設を巡りながら最初の目的地はいつもの事務所、と言う感じに決めようとしてた。
「よし、善は急げ! 行くぞドラルク!」
「はいはい急かさないでくれロナルドくん、あと今の身体だと私のほうが最高速度ずば抜けて早いから私についてい―――。」
そうこうしている内にロナルドはやる気満々、魘夢殴る気満々。
実際殺し合い打破の方向で動く分には構わないし、ドラルクだってさっさと元の何度も死ねる身体に戻りたいのが本音だ。
なので渋々ロナルドを先導しようとした途端に、ロナルドにそれは発生した。
「……あ。」
「ひゃうっ!?」
ロナルドの掌に、何かが触れている。それは黒くて触れるとプルンプルンとした感触。
よく食品でおっぱいゼリーだとかおっぱいプリンだとかがあるが、そういうのを買ったことは多分なさそうな童貞ルドには縁はなく。
ただ確かなことは、吸血鬼退治人ロナルドは、人生で初めて(服越しとは言え)おっぱいの感触をその手で感じることが出来たという事実。
そう、おっぱいだ。悪ガキが一度夢に見て盛大に触りたいと思ったおっぱいだ。しかも貧乳とかちょっと残念に思えるアレではなく、ちゃんとした巨乳だ。大きさだけで言えば同業のハンターであるマリアと同等。
で、肝心のおっぱいを触られた巨乳で黒髪で赤い瞳の美女は、未知の感触に顔を赤らめ、プルプルと身体を震わせていた。何ならちょっと息遣いが荒そう。
「……この清々しい気持ちを揉みながら歌わせてもらいます」
「あっはい」
119
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 15:00:05 ID:1Rs7t1YA0
〜始めてのおっぱいの歌〜
作詞:ロナルド
作曲:ロナルド
歌:ロナルド
ああ〜おっぱい〜 はじめてのおっぱい〜
夢にまでみた〜 おっぱいを俺は揉みしだく〜(oh〜)
プリンプリン〜 一度プリンを触ってみたら崩れた経験〜
ゼリ〜ゼリ〜 一度ゼリーに触れて味わったあの揺れる感覚〜
忘れられない思い出が〜 今ここにある〜
あの柔らかさ〜 ぷるんとした触り心地〜
悪ガキが一度夢見た幻想の果て〜 ペガサスに乗って俺はその先へ往く〜(ah〜)
ああ〜おっぱい〜 夢にまでみたおっぱい〜
触り心地抜群のおっぱい〜 もうこれ以上望む願いはない〜
我が生涯に一片の悔い無し〜!!!!(Yeah〜)
「いやそこは悔いろ」
☆ ☆ ☆
後に、ロナルドが渾身の美声を以って歌唱した童貞丸出しな歌を聞いたドラルクはこう語る。
まさに小学生が大人のお姉さんに幻視したおっぱいへの憧憬と直接触って実感した内容なのだが、これ歌いながら現在進行系で年相応の女の子のおっぱい揉んじゃってるの人として終わってると思った訳で。
実際、揉まれた女の子ちょっと火照ってないかと言いたくなったが正直言っても言わなくてもこの先の展開もう予見出来たから心の内に仕舞っておいて。
「うりゃあああああああああああ!!!!!!」
「おっぱいぃぃぃぃ!!!!」
勿論、ロナルドくんは殴られたな、見事なまでの廬◯昇龍◯だったよ。というか叫び声までおっぱいだなんてロナルド君がそろそろ哀れに思ったからこの事はお兄さんには黙っておくとしよう。
あの年頃の女の子というのにロナルドくんを殴りあげるあの膂力。間違いなくシンヨコ適性があると睨みましたよ、ええ。性格的にターちゃんあたりとなんか気が合いそうだ。
「何なんですか……いきなり何なんですかあの変態……カズマでもあんな直接やらかしたりなんてしないのに……ううぅ………ぁぅ……。」
まあ、事故とはいえロナルドくんの奇行の被害者になってしまった彼女はご愁傷さまである。
私達と同じく彼女も身体と中身が一致していないようではあるが、せっかくロナルドくん以外での他の参加者だ。一旦話しかけてみることとしよう。
え、ロナルドくんはって? ついさっき落下して大の字でぶっ倒れているな、後で起こしてやろう。
120
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 15:00:26 ID:1Rs7t1YA0
◯ ◯ ◯
「いやいや、シンヨコってなんなんですか。いや吸血鬼ぐらいは知ってますよ。実際に会うのは始めてですけど。」
というわけで、満足そうな顔で倒れているロナルド(おっぱいバカ)を放置して二人で話し合った。
めぐみんはそもそも吸血鬼は知っているのにシンヨコの事を全く知らなかった。その前に明らかに中二病っぽいポーズで「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法〈爆裂魔法〉を操りし者!」なんて自己紹介されたが、ドラルク的に正直シンヨコでのポンチ吸血鬼共の自己紹介が割とポピュラーなのもあって特に気にしなかった。実際吸血鬼退治人にも大分ポンチなやついるわけだし。
「まあシンヨコを知らんのならそこままずスルーだ。というよりも魔法の存在する世界だとか本当に異世界転生の世界観ではないか。」
ただし、ドラルクとしてはマジモンの異世界転移案件まで巻き込んできた魘夢に対して改めて驚きを隠せない。めぐみんの話すアクセルの街や自称女神なアクア等の話を聞く限りは本当にライトノベル等の異世界転生モノによくある設定の数々。しかもめぐみん本人は嘘を言っているようには思えない。
「と言っても、今の私の身体も別の同族の身体だ。しかも私よりも間違いなく強い。」
「その根拠は?」
「基本的に私は足の小指をタンスにぶつけただけですぐ死ぬ。」
「クソ雑魚じゃないですか、生きてて恥ずかしくないんですか?」
「ぐはぁッ!! 最近は聞かないどストレートな罵倒! ……と、本来ならこの程度で死ぬはずなのだがね元の身体だと。」
「……何処から突っ込めば良いのやら。」
ドラルクの正直聞かされてドン引きしそうな事実にめぐみんは真顔になった。
まさかカズマ以上に癖の有りすぎる生き物がここに来て存在するとは思わない。いや正直他から見た紅魔族も十分変人なのだが、ぶっちゃけめぐみんにその自覚はない。
「ですが、ドラルクとやらも運がいいです。この紅魔族きっての天才にして爆裂魔法の使い手たるめぐみんと出会った幸運、これを見逃すという選択肢はないですよ。」
「だが今のその身体だと爆裂魔法使えないのではないかね。」
「……そ、それはたしかにそうですけど! まあ一通りの上級魔法は使えますし優良物件です優良物件。でもやはり爆裂魔法が使えないというのがもどかしい……!」
実質的な視点から考慮し、めぐみんの身体として充てがわれたゆんゆんの身体は普通に考えれば当たりともいうべきだ。
文武両道。中級及び上級魔法果てはテレポートを一通り使うことの出来る至れり尽くせり。ただしめぐみんにとっては爆裂魔法が使えないという一点だけで致命的だ。
だが、だからといってゆんゆんの身体で勝手に爆裂魔法を習得なんて真似はしたくない。何せゆんゆんの身体はゆんゆんのものであり、ある種ライバルにして親友への経緯というものだ。そこまで彼女も落ちぶれてはいない。
「それに、その、胸……」
自分の手のひらを胸に当てながら、再びめぐみん顔に赤らめが浮かぶ。
本来のめぐみんにはこれほどの胸はなく、というか揉まれる程のデカサイズではない。
なのだが、残念なイケメンに事故同然に揉みしだかれ、甘い声を出してしまった。
というよりも、貧乳を触られるのと巨乳を触られるのでは間違いなく感覚が違うのだ。
「なるほど、その様子だと今まで揉まれる程の胸なんてなくていざ揉まれた結果、戸惑いと快感が伝わってしまったのだな。」
ドラルクが簡単に推測し、結果凡そ当たっている。
今まで貧乳になっていた人物がいきなり巨乳になる。つまり胸方面での感触が何か敏感になっちゃうのはその手の同人誌でのお約束だ。「全くロナルドくんも罪な事をしてくれたものだ」と呟くも。
先程の発言が盛大に地雷だったのかメラメラ怒りの炎を瞳に宿しためぐみんが徐ろにドラルクに接近。
121
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 15:00:45 ID:1Rs7t1YA0
「今ここで一回死んでみますか?」
「あぎゃー!? キャメルクラッチやめて流石に今死んだら本当に死んじゃうあだだだだだ!!!!」
胸のことナチュラルに指摘してしまった結果見事にドラルクは駱駝固め決定。
バンバン地面を叩いてギブ宣言、数十秒後無事開放された。
そもそも元の身体と違って普通に脱出できそうなのだが、現状では宝の持ち腐れである。
「……清楚だと思いきや思いっきりお転婆じゃないか。◯ローラだと思ったら完全にア◯ーナ姫だった気分だ……。」
「どうやら懲りないみたいですねこの吸血鬼……!」
「ストップストップ! 話題チェンジ! 君の得意な爆裂魔法というのは、一体どういう内容なのだね?」
今度こそ発言次第で昇天サせられそうということで、めぐみんの特技「爆裂魔法」について話題を切り替え。
すると突然得意げに「ふっふっふっ……」っと笑いだしながら、妙ちくりんな決めポーズに。要するにめぐみん上機嫌。
「よくぞ聞いてくれましたね! 爆裂魔法とは最強の攻撃魔法。一度放てばどんな敵であろうと木っ端微塵に吹き飛ばす!それが機動要塞だろうが魔王軍の幹部だろうが関係ない! 長きにわたる努力の既に手に入れた夢の結晶、止まらない憧れの象徴なのです!」
「ほうほう」
熱意全力で爆裂魔法を語るめぐみんは妙に輝いて見えた。例えるならロナルドが兄貴の武勇伝を語る感じだ。実際彼女の力説通り、爆裂魔法とは本当に一撃必殺の強力無比な代物なのだろう。
「所で、魔法というのだから使用魔力量とか、溜めとかは。」
「はい、滅茶苦茶かかりますね。ですが一発でも打てればそれで勝負が決まります。」
「ところで使った後はどうなるわけ。」
「動けなくなりますね。ほぼ全ての魔力を使いますので。」
現実はそう簡単には行かないのが世の常。たしかに威力こそは折り紙付きなのだろう。
だがその実態は魔力消費絶大、溜め時間長い、そして一度使用したら術者が事実上使い物にならない。
「出来ることなら一発披露してあげたいところですが、如何せん今の身体はゆんゆんのものですので。」
「いや別に使わなくてもいいから。というかただのロマン技ですねわかります。」
何だか調子に乗っているめぐみんを窘めながら、ドラルクはだいたい察した。というかつまりそういうことだろう的な諦観だった。最強の攻撃魔法というお題目は嘘ではないだろうが、如何せんその他諸々で足引っ張ってしまっている。ゲームなら兎も角現実でそれは流石に多大な下準備無しでは真っ当に発動すら困難。
122
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 15:01:16 ID:1Rs7t1YA0
「そう! ロマン! ですがロマンだからといって何ですか! 私は爆裂魔法を愛し、爆裂魔法を極め続けた爆裂魔法の女めぐみん! 例え他の魔法が使えなくとも、爆裂魔法さえ使えれば良いのです! 何故なら、私は爆裂魔法しか愛せないのだから!!!!」
(よし、この娘シンヨコ適正抜群すぎるな。それはそれとして爆裂魔法しか使えないのはアークウィザードとしてただの欠陥品でしか無いぞ。)
もはや語るに及ばずという感じだ。別の身体ゆえ多分優秀なアークウィザードに収まっている感じであるが、もしこれが元の身体であれば爆裂魔法しか能のない悲しき中二病だ。
絶対に追放系のな◯う小説で真っ先に追放されそうなタイプのやつだと。
「爆裂魔法すげぇ!」
「起きてたんだねロナルドくん。」
そして、何か知らん間に意識の深淵から復活していたロナルド。先程の話を聞いていたのか大いに盛り上がった。というか爆裂魔法に興味津々だった。
「ふふっ、爆裂魔法とは至高にして究極。最大にして最強! 我に敵なしとはこの事。明確にメタられない限り負ける余地のないのです!」
「すげぇ! マジですげぇ! 俺の兄貴と同じぐらいすげぇ! もし元の身体に戻ったらその爆裂魔法俺に見せてくれ! 次回のロナ戦のネタにする!」
「話だけでここまで魅入られてくれるのは素質がありますよあなた! 良いでしょう、あなたも共に爆裂道を極めましょう!」
「二人の少年ハートが意気投合してしまった。」
先程のセクハラ被害の余韻は何処へやら。爆裂魔法という子供心を引き付けるロマンに惹かれてしまったロナルドが見事めぐみんと意気投合。
このまま本当に爆裂道突き進んでロナルドくんのキャラが不定形スライムになりかねないがぶっちゃけ既に手遅れな気がしたのでドラルクはスルーした。
「いやこの際協力してくれるのは良いとしてだ。先程私達は名簿を確認したのだが、そっち側に知り合いがいるのは確認できたのかねめぐみん君?」
「いえ、たぶれっと……っていうのが使い方まだ慣れていないもので。」
「異世界転移あるあるだな。そこは私もロナルドくんも詳しいから遠慮せずに尋ねても構わんぞ。」
めぐみんがタブレットの使い方に慣れていないのは、まあ異世界から人やってきたら電子機器等に慣れていないという物語の基本的なテンプレあるある。
「それはありがたいですね。でもその前にちょっと体慣らしに付き合ってくれませんでしょうか。」
「体慣らし?」
「はい。さっきも言った通り爆裂魔法しか使ったことがなく、使えるにしても感覚とかは掴みたいと思っているので。」
「ああなるほど、確かに元の身体とは色々と勝手が違うだろうからな。」
実際な所、めぐみんは今ままで爆裂魔法以外の魔法は使ったことはない。何せ爆裂魔法習得のためにその他の魔法を一切覚えなかったからであり。
中級魔法・上級魔法は実際にゆんゆんとかが使っているのを見ているために見様見真似で出来なくはない、のだが、実際使って感覚を掴まなければ本番で盛大にミスっちゃう可能性がある。
ちなみにドラルク、ロナルドと再開する前に、レミリアの身体で飛行出来るようになるまで数十分ぐらい掛かり、かつ何度か足の小指をぶつけて悶絶していたり。
123
:
この素晴らしきにっびきと◯◯を?
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 15:01:38 ID:1Rs7t1YA0
「というわけですのでロナルド。ちょっとの間は魔法試し打ちの的になってください。」
「ゔぇぇぇぇぇなんでぇぇぇっ!?」
そんな訳でめぐみんが告げたのは、ロナルドに対する処刑宣告(しかえし)である。
「その理由は自分の胸に聞いてください、あれで全て許されると思ったら大間違いですよ?」
図太さだけはクズ冒険者カズマとある種同等であるめぐみんが、ロナルドのかましたセクハラを見逃すわけもなく。あんな羞恥の事実を忘れられるわけも無いので、つまりお仕置きである。
「頑張れロナルドくん! シンヨコ屈指のゴリラーマンである君ならば何となく凌げるだろう!」
「殺す! 全て終わったらドラルク二兆回殺すぅぅぅぅ!!!」
「では覚悟しなさい、ファイアボール!」
その後、数分ぐらいロナルドの悲鳴が聞こえたという。
【一日目/深夜/D-2】
【ロナルド@吸血鬼すぐ死ぬ】
[身体]:シャーロック・ホームズ@憂国のモリアーティ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:魘夢ぶん殴る、元の世界に帰る
1:元の身体は必ず取り返す(元の身体に戻るとは言ってない)
2:なぁ、俺このまま元の体に戻らないで帰って良いんじゃね?
3:無力無害な一般人は保護、危険なやつはまあ腕力で。
4:爆裂魔法すげぇ!
[備考]
※初おっぱい揉みを経験しました
【ドラルク@吸血鬼すぐ死ぬ】
[身体]:レミリア・スカーレット@東方Project
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、セロリ@吸血鬼すぐ死ぬ
[思考・状況]基本方針:さっさと元の身体取り戻して帰りたい
1:彼女(めぐみん)、何というかシンヨコ適正抜群だな。
2:頑張れロナルドくん(笑)(笑)(笑)
[備考]
※レミリアの身体にある程度慣れて飛行等は出来るようになりましたが、スペルカードや能力が使えるようになったかどうかは後続の書き手にお任せします。
※めぐみんとの会話で「この素晴らしき世界に祝福を!」の世界観の情報をある程度得ました
【めぐみん@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ(アニメ版)】
[身体]:ゆんゆん@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ
[状態]:健康、胸揉まれた事による気恥ずかしさ及び言葉じゃ言い表せない余韻(小)、ロナルドに対しての一時的な怒り(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生存優先。魘夢を倒してさっさと元の身体に戻ります。もちろん、ゆんゆんもです!
1:ゆんゆんの身体は私が守ってあげます!
2:カズマ達が居たら合流しましょう!
3:流石にこめっこは巻き込まれてないでしょう
4:爆裂魔法は使えませんか。仕方ないので上級魔法で戦ってやりましょうとも!
5:なので慣れる為に新たなる爆裂道の同士ロナルドで試し打ちしましょう。
6:何なんですかシンヨコ……
7:胸、揉まれた……いや自分の身体のじゃじゃないですけれど……カズマにも揉まれたこと無いのに……ううぅ///
[備考]
※参戦時期はこの素晴らしい世界に祝福を!紅伝説終了後です
※ドラルクとの会話で「吸血鬼すぐ死ぬ」の世界観の情報をある程度得ました
※まだ名簿は確認できていません。
124
:
◆2dNHP51a3Y
:2023/08/15(火) 15:01:51 ID:1Rs7t1YA0
投下終了します
125
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/15(火) 23:56:27 ID:eZlFwLgc0
皆様、お疲れ様です。
ゾーフィで予約します。
126
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/16(水) 01:05:42 ID:qsUm37OA0
ケケラ、まろうこんで予約します。
127
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/16(水) 13:33:27 ID:N2olpCu.0
ドッスン、フラウィ予約します
128
:
◆4u4la75aI.
:2023/08/16(水) 22:23:24 ID:F5ZJrIkM0
句楽兼人、アイシ・アヤノで予約します
129
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:00:00 ID:VOYf66G20
投下します
130
:
チュートリアル
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:01:40 ID:VOYf66G20
「クッパ様や元の身体の主は巻き込まれていなかったか。しかし……。」
上司や同僚、ライバルが巻き込まれているという、一番の懸念は杞憂に終わった。
数少ない知り合いとして、誰かのボディに同僚のパックンフラワーのものが使われているそうだが、自分の知っている間柄のものなのかは不明だ。
だが、それでも素直には喜べなかった。
この殺し合いが始まってまだそれほど時間は経っていない。だというのに、これほど多くの参加者が死んでしまったことを知らされたからだ。
「許してはおけんな。」
顔が付いてある月を睨みつけ、殺し合いを打破することを誓う。
しかし、それに関して1つ問題があった。
自分の身体は、元の姿より柔軟に動くことが出来る。
その反面、攻撃手段が極めて限られている。
元の状態であった時は、上からのしかかればマリオでさえも倒すことが出来た。
だが、今の状態でのボディプレスは、せいぜい相手をケガさせるぐらいだろう。
身を護るために、戦い方の一つぐらいは確保しておきたい。
それにタケシという男は、自身が戦うというよりもむしろ、ポケモンという生き物を使役し、戦わせることが得意だったらしい。
同じように戦おうにも、ポケモンとはなんのことなのかさっぱりだし、そもそもいない以上はどうにもならない。
支給品袋を開けて見ると、適度に長い、こん棒のようなものが出て来た。
素手よりましという程度だが、とりあえず持っておくことにした。
今度は地図に目を通す。とは言っても特に知っている場所は無いため、適当に参加者がいそうな場所を探ってみることにした。
走り始めてからしばらくすると、その先に知っている姿が見えた。
赤と白の水玉模様と、鋭い牙が印象的な怪物。
「おお!パックンフラワー!……違ったか……」
姿を知っている者を見かけ、ついつい反射的に叫んでしまった。
そもそも自分と顔馴染みの個体なのかも分からないし、それ以前に魂が別人の者である以上、声をかけられても戸惑うだけだろう。
よくよく見れば、ドッスンが知っている彼はドカン伝いにしか動けなかったし、見たことない植木鉢のようなものを使って動いている。
モバイル式ドカンという物なのかもしれないし、もしかすると全く違う文化背景のパックンフラワーかもしれない。
131
:
チュートリアル
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:03:01 ID:VOYf66G20
「ハロー!ボクはフラウィ!そんななまえじゃないよ!もしかして、このカラダのしりあい?」
「話が早くて助かる。ワシはドッスンという者で、お主の身体…パックンフラワーと同じボスに仕えていた。」
同僚(多分)の持ち主が、気さくな性格で安堵する。
殺し合いにも乗っている相手だとは思えない。
「そうかあ。ハナシができるあいてにあえてよかった。いっしょにあのワルいヤツをやっつけようね!!」
「うむ。フラウィとやら。よろしく頼むぞ。」
「ところでさあ、キミのもってるぶきは、ぼうきれだけなの?」
同盟を組むことになったフラウィは、早速話を持ち掛けてきた。
武器の交換か、はたまたいらない武器を支給されたなら貰ってくれということなのだと解釈した。
132
:
え?話の流れがまる分かりだって?うるさいなあ
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:05:28 ID:VOYf66G20
「その通りだが、どうかしたのか?」
「チンケなぼうきれじゃ、LVをあげるのにもくろうするとおもってね。
ボクにしきゅうされたぶきを、わけてあげようとおもっているんだ。」
LVとは何のことやらと思ったが、彼の言う通り、こん棒一本では心もとないため、彼の提案を受けることにした。
「かたじけない。ありがたくいただくことにしよう。だが、お主に武器は必要ないのか?」
パックンフラワーに適した武器は何か聞かれれば、彼も悩んでしまうが、それでも持っているに越したことは無いだろう。
「かんけいないよ。ボクにはこんなたたかいかたが、できるからさ!!」
突然、フラウィは口からトゲ付き鉄球を吐き出してきた。
その技は、ドッスンが知っているパックンフラワーの技に非ず。
シューリンガンという鉄球を吐き出す攻撃は、全く知らなかった。
「ぐわっ!!」
勢いよく飛んで来た鉄球が、ドッスンの顔面にぶつかる。
まともに攻撃を受け、勢いよく吹っ飛んだ。
普通の人間なら、頭蓋骨陥没で即死に至る攻撃だ。
尤もポケモン、その中でもとりわけ頑丈な者達と共存を遂げてきたタケシの肉体なら、怪我で済んだが。
「お主……一体何を?」
鼻から何か生暖かいものが流れ、違和感を覚えて、それを手で拭う。
鼻血という、ドッスンの肉体では流れることの無かったものをその手で拭いながら、話しかける。
「バカだね。」
尖った歯をむき出しにして、花は笑う。
獲物を見つけた時のパックンフラワー以上に、醜悪なものだった。
「このせかいでは、ころすか、ころされるかだ。」
しまった、油断したと思ったが、もう遅かった。
ボコの棒を振り回して攻撃しようとするも、相手には届かない。
対してフラウィは、離れた相手にも攻撃が出来る。
「ま、待て……。」
「こんなぜっこうのチャンス、のがすわけないだろ。」
元来、ドッスンというのは兵隊というより、障害物のような役割を担っていた。
従って攻撃を躱された後は反撃されるより、無視されることが多かった。
こちらから攻撃する機会には恵まれていても、敵の方から攻撃を受ける機会はそれほど無かったのである。
ドッスンにファイアボールを256発当てれば倒せるという噂もない。
慌てている間に、フラウィは口を膨らませ、次の弾丸を吐き出そうとする。
「しね」
133
:
え?話の流れがまる分かりだって?うるさいなあ
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:05:47 ID:VOYf66G20
プッ、という軽い音とともに、重たげな鉄球がドッスン目掛けて吐き出される。
ボコの棒で打ち返そうにも、明らかにそんなことが出来る大きさじゃない。
ドッスンは細い目を固く瞑る。
だが、ドッスンの顔面に鉄球が当たる瞬間。
ドカンという、物が砕ける音が聞こえた。
小柄な少女が、小さな手でいとも簡単に鉄球を砕いていた。
あまりに人間離れした芸当に、ドッスンも開いた口が塞がらなかった。
彼が戦った人間であるマリオやルイージだって、レンガブロックを砕くことが出来た。
だが、彼女がやってのけたことはそれ以上の離れ業だ。
「ふむ。これが『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』か。」
シューリンガンを彼女が砕けたのは、人間離れした剛力を持っているからではない。
フランドール・スカーレットの程度の能力により、『その物の一番弱い箇所』を自分の手の中に移動させ、拳を握りしめることで対象を破壊することができるのだ
「なにをするんだ!ボクのじゃまをするなよ!!」
フラウィは良い所で邪魔をされて怒るが、それどころではないことにすぐに気づく。
目の前の少女が、更なる力を見せつけたからだ。
「邪魔をするのがどちらなのか、まだ分からないのか?」
きらきらした飾りが付いた翼をはためかせ、右手を掲げる。
スペルカードというものを知らないドッスンでさえ、凄まじい力が集まっているのだと感じた。
「この力も使ってみるか。禁忌『レーヴァテイン』。」
真っ赤な光線が、フラウィを貫こうとした。
辛くも植木鉢ごとその身を転がし、事なきを得るも、それで終わりでは無かった。
まるで自分が元のフラウィの時に飛ばした花びらのように、大量の弾幕が降り注いだ。
「やったか!!」
そこにフラウィの姿は無く、残ったのは荒れ果てた平原だけ。
「小癪な奴め。逃げた様だ。」
「それは残念だ……だがかたじけない。ワシはドッスンという者。済まぬが名前を教えてもらえぬだろうか。」
「……俺様は、左丹下炎(さたんげほむら)。八百小という小学校の校長をしている。」
134
:
チュートリアル
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:06:15 ID:VOYf66G20
☆
フランの肉体の持ち主、サタンがドッスンを助けたのは、断じて正義感からではない。
信用を買い取り、最後の最後まで利用するつもりだからだ。
「サタンゲ……?そのような名前の者、いなかったような……。」
「ああ。名簿にはサタンという名前で載せられている。なぜ俺様だけ仇名で載せられているのか分からんが、どうでもいいだろう。
他にも本名なのかよくわからん者もいるしな。」
ドッスンの世界の宗教観など、サタンは知る由もない。
それはそうとして、自分の本名が大悪魔の名前だと知られれば、それだけで信用の失墜につながる可能性もある。
当初の予定としていた、八百小に乗り込む時に使うつもりだった、ややとっつき安い名前を名乗ることにした。
「サタンゲ。助けてもらって厚かましい事この上ないが、頼みがある。
是非ワシと一緒に殺し合いを壊して欲しい。」
ドッスンは深々と頭を下げる。
彼は知らない。悪魔に願いなどしてはいけないことを。
だが、そんなことは知る由もない。
フラウィとの戦いで、なぜこれほど早く8人もの犠牲者が出たかはっきり分かった。
クッパ軍団の一員として恥ずかしいが、自分一人で行くには、あまりにも力不足だ。
「無論だ。あの花の怪物のような奴等を倒すためにも、同士を集めようではないか。」
135
:
チュートリアル
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:06:33 ID:VOYf66G20
サタンはドッスンに背を向ける。
早く先に進もうという意志の表れではない。
自分が浮かべた邪な笑みを、見られないためだ。
(上手く行った。これからもっと多くの参加者の信頼を買おう。
積み上げた信頼が崩壊する瞬間こそ、地獄というものは生まれるのだ。)
誰が考えられるだろうか。騙された自分を助けてくれた相手が、地獄の悪魔なのだと。
フラウィの襲撃は、ほんのチュートリアル。
ドッスンの災難は、まだ終わってはいない。
【D-6 草原】
【サタン@ウソツキ!ゴクオーくん】
[身体]:フランドール・スカーレット@東方project
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、神楽の番傘@銀魂、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この殺し合いの舞台を地獄にする。最終的には優勝狙い
1.善良な対主催グループに潜り込み、悪の心を植え付ける。
2.日光対策に一応昼間の拠点になりうる場所も探しておく。
3.ドッスンや他の対主催からの信頼を積み上げて、やがて壊す。
4.元々使う予定だった『左丹下炎(さたんげほむら)』という名前を使う
[備考]
※参戦時期は39話終了後
※スペルカードの類はどこまで使えるかは不明です。
【ドッスン@スーパーマリオシリーズ】
[身体]:タケシ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:顔面にダメージ(中)、鼻血(止血済み)
[装備]:ボコの棒@ゼルダの伝説風のタクト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(少なくとも武器らしいものはない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し、タケシに身体を返す
1:ヒトの力を使い、殺し合いを破綻させてみせる
2:同僚(多分)の身体が、あのような悪者(フラウィ)に使われるとは!!
3:サタンゲと共に対主催を集める。また、フラウィには注意する。
【C-6 草原】
【フラウィ@UNDERTALE】
[身体]:パックンフラワー@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:このせかいでは、ころすかころされるかだ
1:一度は失敗したが、カモを探す
2:何なんだアイツ(サタン)は!あんな奴がいるなんて聞いてないよ!!
3:花の姿というものには飽きているんだけどなあ…
[備考]
※最初のチュートリアル前、もしくは本当のリセット後からの参戦です。
※原作ゲームの本編進行中の時と同じく、ケツイによるセーブはできません。
※タマシイを奪うこともできないものとします。
※スーパーマリオRPGでのCMのように、パックンフラワーの身体で喋ることは可能としておきます。
※もし、最後の切り札が使用可能とするならば、召喚されるボスパックンは意思の無い存在とします。
【支給品紹介】
【ボコの棒@ゼルダの伝説風のタクト】
ドッスンに支給された武器。それなりに長くて丈夫な木の棒。
素手よりはマシと言った程度だが、先端に火をつければ松明として活用することも出来る。
136
:
チュートリアル
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/17(木) 23:06:45 ID:VOYf66G20
投下終了です
137
:
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:03:08 ID:SHaP3bLw0
投下します
138
:
井の中の獣、大海を知りとて
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:05:07 ID:SHaP3bLw0
闇の中、タブレットの光だけがアヤノを照らす。この場に連れてこられ1時間、スタンドの能力を確認したりしながら過ごした彼女は何者とも出会うことのないまま放送を迎えた。
「(随分と早いペースだな)」
アヤノが放送を聴き終わり、まず最初に出た感想がこう。
一つの島で一気に8人もの死者など、ニュースでも滅多に聞かない異常事態。さりとてアヤノに怒りや悲しみ、ましてや恐怖なんて感情は湧いてこない。この場に居るアヤノは経験こそしていないものの必要さえあれば一つの学園の人間を皆殺しにできる程の感性を持つ彼女、当然といえば当然であろう。
だかしかし。
「(しかしなんだ、あの姿は。着ぐるみか?)」
タブレットに淡々と映されていった死者の写真、自身とユカコの様に人間の姿が流されていくと思いきや、壺に入っている化け物、悪魔の様な羽が生えている少女、何かもうよくわからない生き物。到底仮装や着ぐるみなんて言葉では説明できない者達。
「(名前もなんなんだ……ピエロやらじゃんけんやら……芸人か何かか?)」
もしそれらが着ぐるみなんてものじゃなくそのまま動き回るさまを想像してみては、スタンドの件も加えやはりこの場が普通ではないと再認識する。それにその不可解な生き物達がスタンドの様に異能力を持っている可能性も高い。
「(常識は捨て去った方が良いな)」
1時間の暇の中確認した支給品及びデイパックの仕組みも随分と不可解であった。アヤノとて身分は単なる女子高生、彼女にとっての幸運はそれはそういうものだと割りきれる能力を持っていたことであろう。
続けてタブレットを操作する。名簿は再び意味不明な名前のオンパレード。アヤノが少し気にかけていた『センパイがこの場に居る可能性』が0になった以上、名簿に大した興味はない。自身の名の表記が何故か自身と同じ日本人であろう者達とは違ったことだけが少し気になったが、特に影響はないと認識し、地図のページへとタブレットを操作した。
相変わらず漫画やゲームから飛び出してきたような名前が並んでいる。
「(めぐみんの家、ナナチのアジト……この名前、確か名簿にも)」
地図の施設から気付きを得たアヤノ。
だが途端、
「ちくしょうがあーーーーーーっ!!!!!!」
「!?」
少し先から響いてきた男の声、アヤノの意識は向けられる。
「(……向かうか)」
言葉の内容からして、荒々しい人物であるとアヤノは認識。もしもの際退避、あるいは戦闘がすぐに行えるようアヤノは荷物を整えてから声の方角へと向かった。
◇◇◇◇
139
:
井の中の獣、大海を知りとて
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:05:50 ID:SHaP3bLw0
「ちくしょうがあーーーーーーっ!!!!!!」
まるで獣の様に怒りを露にする彼、句楽。
彼の怒りの対象はーーあまりにも多い。
先程戦闘し、卑怯にも逃げた悪の男、8人もの者が殺されてしまったという事実、改めて彼らを救いに行けない身体に入れ換えた殺し合いの主催者達、そして何より自分自身、句楽兼人の身体が何者かに与えられている現状。
最後の項目に関しては焦りすら感じていた。自らの身体の強大さは多いに理解している、もしも敵対した際こんな身体では敵う筈がない。自らと同じような正義の心を持つ者に与えられているならまだしも、何より殺し合いなんて開くような悪だ、自分の身体も悪の手に渡らせているだろうと断定。
「くそっ、確か肉体を取り換える施設があると言っていたな」
彼に残っている希望は、女が言っていた身体を取り替える施設のみ。何とか自分の身体を持った悪と共にその施設へと向かわなければならない。
「どこにあるんだっ、早くそれを見つけてさっきの悪もとっとと殺してやらなけれ……」
慣れないタブレットを操作し、地図のページを開こうとした際、途端句楽は動きを止めた。
原因は足音。何者かが自身に近づいていることに気付いた彼は視線をタブレットから離し、辺りを見渡す。
「…………」
現れたのは先程の悪とはうってかわって、制服を着た美少女。見た目で判断してはいけない、というこの場のルールさえ忘れ、句楽は顔をフニャリと弛める。しかしすぐに気を取り直し、話し掛けた。
「そこのきみ、きみも巻き込まれた子かね」
「……は、はい。えっと、こちらから、声が聞こえて……」
「声……ああ、恥ずかしい所を聞かれてしまった様だね」
その美貌、そしてそれに似合っているおしとやかな態度に影響されたのもあってか、先程まで暴れていたとは思わせないほど大人しく話しかける。
「それより、きみも災難だった。でも安心してほしい!今はこんな身体になってしまったが、ぼくは元々正義のヒーローだからね」
「正義の……」
「ああそうさ、実はぼくは……正義のヒーロー、ウルトラ・スーパー・デラックスマンその人なのです」
胸をポンと叩き、宣言。反応を待つように、句楽は少しの間黙りこむ。
「…………驚かないの?」
「ああ、え?えっと……お医者さん、とかのご職業の?」
「えぇ?」
いつまでも返ってこない反応にモヤモヤとした句楽だが、帰ってきた返事は想定外のもの。今でこそ忌々しい奴らが規制を掛けているものの、報道番組や新聞紙で毎日目に入っていたであろうウルトラ・スーパー・デラックスマンの名を知らない人間なぞ居る筈もない。
「じゃあぼくの名前も?」
「えっと……すみません」
建前上知られてはいけない名前すら聞いても、彼女の様子は変わらない。嘘を言っている様にも見えない。
「……まあ、知らないものは知らないか!句楽兼人、ぼくの名前」
「ああ、はい。はじめましてクラクさん、アイシ・アヤノと申します」
「アヤノちゃんかあ、学生?」
「はい、高校生です」
自らを知らないゆえか、自然と自分に対して会話を繰り広げるアヤノへ句楽は大きく好感を抱く。
「……あの、すみません。失礼かもしれませんが」
「?」
「さっきの声は……句楽さんものですよね?えっと、どうしてあんなに怒っていたのか聞きたくて」
久々に他人から受けた質問、句楽は文句の一つも言わず口を開く。
「さっき言った通り、ぼくは正義のヒーロー……だから、というかいや、ヒーローになる前からぼくは悪というものが許せなくてね」
「……この殺し合いを開いた悪!そして既に存在している殺人者!おれは絶対に許すことができない!」
「その上おれのヒーローの身体も奪われた上悪人の手に渡っている!絶対に、絶対に取り戻して殺し合いの主催者達をひねってやらないと気がすまない!!」
「…………また熱くなっちゃったな、つまりそういうことだよ、この場に居る悪が許せなくて、ね」
ヒートアップしながら語る句楽、怯えもせず大人しく聞くアヤノ。
「……クラクさんは、いい人なんですね」
「そうだろう?って自分で言うのは違うかな」
「いえ、誇って良いはずです。他人の不幸を悲しみ、怒れるその姿。かっこいいです」
「……エヘ、カッコいいだなんてねそんな」
140
:
井の中の獣、大海を知りとて
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:08:10 ID:SHaP3bLw0
アヤノの直球の誉め言葉に思わず照れる句楽。先程までの怒りはどこへやら、すっかり上機嫌であった。
「……それに、悪人の手に渡っているって……クラクさんの身体が、ですか?」
「ああ、名簿は見た?肉体の欄に間違いなく書いてあった。ぼくの元の身体は文句なしに強い、それが悪人の手に渡っていると思えば……!」
「……!一つ思い出したのですが、地図は見ましたか?」
「地図はまだ見れてなくて、何かあるの?」
「はい、見てください」
アヤノは自身のタブレットを取りだし、地図の一点を指しながら句楽へと見せる。途端句楽は目を丸くさせ驚いた。
「“句楽邸”!?」
「はい。地図に載っている限りだと、めぐみんの家、ナナチのアジト、禪院邸、ロナルド吸血鬼退治事務所……いずれも名簿に載っていた人物の名を冠している施設です。なので、この句楽邸もクラクさんのものかもしれません」
「ぼくの家はこんな場所にないんだけれど!?」
「はい……でも、この場所はさっきから不可解なことばっかりです……見てください」
そう一言、アヤノはデイパックを地面へと置き、手を突っ込む。
瞬間、ドシンという音と共に現れたのは、
「……!?!?カバンから車が!?」
「私も驚きました……意味がわからないですけど、本物みたいですし……収納もできましたし」
到底デイパックに入るはずのない車。句楽も目を白黒させ、開いた口が塞がらなくなってしまう。
「……ここはあらゆる常識が通じません。なので……というとおかしいですけど、ここにあるクラクさんのお家も本物かもしれません」
「……もしそうなら、勝手に人の家をこんな場所に移すなんて到底許されない。また奴らを裁く理由がひとつ増えた!」
「それに……クラクさんの身体を得た人間がそれに気付けば力を使いこなすため、何か情報を得るためにここに訪れるかもしれません」
「つまり……」
「まずはクラクさんのお家に向かいましょう」
「……きみ、よく頭が回るねえ。よし!一緒に向かおう、その車を使おうよ、運転しても良い?」
「ええ、もちろんです」
句楽は笑顔でアヤノを称賛し、言う通り句楽邸へと目的地を決定する。怒りからはかなり解放されたものの、身体どころか自宅まで奪われているかもしれない状況、主催者への憎悪はもはや限界に近いものとなる。
句楽は運転席に乗り込み、アヤノは助手席へ。いかにも家庭を築いた者が所有していそうな自家用車、どこか見覚えを感じつつも句楽はハンドルを握る。
「何度もしつこいかもだけど、きみみたいな子は無事に送り返してあげるよ。そしてその後お茶でもしようじゃない」
「ええ、ありがとうございます」
久々に現れた、完全なる“悪”、そして正義である自分を褒め称えるアヤノ。
「(なんだか久しぶりだねえ、こういうの)」
マスコミも警察も敵になった今ではもはや叶わなかったであろう状況に、句楽は確かな高揚を抱いていた。
141
:
井の中の獣、大海を知りとて
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:08:24 ID:SHaP3bLw0
【句楽兼人@ウルトラ・スーパー・デラックスマン】
[身体]:堂島正@血と灰の女王
[状態]:ダメージ(小)背中に裂傷 疲労(小) アヤノへの好感 片山の車を運転中
[装備]:ヴィクティブレード@現地調達 片山の車@ウルトラ・スーパー・デラックスマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いに乗った者も、主催者も徹底的に殺す。
1:句楽邸へと向かう。
2:白い男(夏油)は今度会ったら絶対殺す
3:アヤノちゃんはとても良い子だ、それに可愛らしい
4:久しぶりだねえ、こういうの
[備考]
※参戦時期は本編で片山が家に来るまで。
※Dナイトは少なくとも今は使えません。
「(うまくいった)」
窓を眺めながら、アヤノは密かに笑う。
句楽の信用を勝ち取った。確実であろう。
言葉を聞くに、確かに悪を嫌っているのだろう。ただ、どうも単なる正義漢には見えない。最初に聞こえた叫び声からして、悪への憎悪が人一倍強いという点もどこか行き過ぎている様に見える。だが同時に、手玉にとるのは楽なタイプであろう。事実、今は完全に信頼されているのだから。
「(ユカコ、役に立った)」
それに山岸由花子の身体を手に入れたということもやはり幸運であった。山岸由花子という人物は、鏡を見ればそういうものに疎い自分でもそう思えるくらい美人だ。まだ少ない会話からも、句楽が女好きであろうと察せられた。もし身体が男や化け物のものであればこうも簡単に信用を勝ち取ることはできなかったであろう。
しかしやはり、彼の言うウルトラ・スーパー・デラックスマンなどというものについては情報が足りない。句楽の背中に見えた傷、普通の肉体であればこうも平然な態度ではいられないであろうそれ。恐らく句楽の身体もスタンドか何か、異能力を持っているのだろう。それ故初対面時、辺りに人間が居ない状況であったが襲い掛かることはできなかった。それにその肉体を持った上で文句なしに強いと言い張るウルトラ・スーパー・デラックスマン……句楽の身体も異能力を持っているのであろう。ヒーローなんて言葉も戯れ言にしか聞こえないが、こんな状況だ。簡単に切り捨てる訳にはいかない。
「(車内で、色々と聞き出すか)」
今の句楽はおだてれば好きなだけ情報を出してくれるだろう。
この状況は異常だ。知らない事柄が多すぎる。
「(結局、慎重に動かなければいけないのは一緒か)」
とっとと全員殺し、センパイの元へ帰る、なんて思っていたがどうもそれは無理そうだ。
「(……少しだけ待っててくださいね、センパイ)」
アカデミ高校より広くなったフィールド、広くなった常識。アヤノは少し気疲れしつつもやはりセンパイのことだけを想っていた。
【アイシ・アヤノ@Yandere Simulator】
[身体]:山岸由花子@ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない
[状態]:健康 片山の車に乗車中
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、センパイだけとの永遠を望む。
1:クラクを利用。敵が現れれば盾になってくれるだろう。
2:異能力に注意。
3:ウルトラ・スーパー・デラックスマンとは……?
4:センパイ……♡
[備考]
※スタンドはゲーム内でのイースターエッグにて扱っていた為難なく扱えます。
【支給品紹介】
【片山の車@ウルトラ・スーパー・デラックスマン】
アイシ・アヤノに支給。片山の自家用車。5人程度なら難なく乗れる。
142
:
井の中の獣、大海を知りとて
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:08:53 ID:SHaP3bLw0
投下終了です
143
:
井の中の獣、大海を知りとて
◆4u4la75aI.
:2023/08/18(金) 05:39:45 ID:SHaP3bLw0
申し訳ありません、現在地
【一日目/深夜/E-5】
を追加させていただきます。
144
:
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/18(金) 14:54:08 ID:BU70wonQ0
投下します
145
:
hope or despair
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/18(金) 14:54:38 ID:BU70wonQ0
「そういえばレミリアさんって吸血鬼なんですか…?」
「あら、どうして急に?」
「咲夜さんのプロフィールにレミリアさんのことも少しだけ書いていたので本当なのかなと思って」
「そういうことね」
道中、唐突に風間から投げられた疑問を不思議に思ったレミリアだったが、風間の説明で理解できた
「一緒に行動してるし教えてあげるわ、貴方の言うとおり私は吸血鬼よ、でも安心しなさい、今は貴方の身体だから血を吸うことはないわ」
「本当だったんですね…本物の吸血鬼は初めてだな…」
「その口振りからすると吸血鬼に近い存在にあったことあるのかしら?」
「近いというか遠いというか…」
「?」
レミリアの問いかけに風間は口ごもった
風間は過去にかすかべ防衛隊の面々と共に超エリート校私立天下統一カスカベ学園、通称天カス学園に体験入学したことがあり、そこで吸血鬼による怪事件が起きていた、しかし実際は吸血鬼ではなく『吸ケツ鬼』という変な名前でその名の通りその吸ケツ鬼にお尻を噛まれた者は皆おバカになってしまうという何ともお下品なものだった
「そ、それよりこれからの事について考えましょう!ね!」
「…貴方がそこまで言うなら追及はしないわ…」
しかもその吸ケツ鬼に自分も噛まれてしまいおバカになったとはとてもレミリアに話すことはできなかったため風間は強引に話を切り離した
レミリアも風間の妙な圧に追及するのをやめた
その時…
「うわぁ!?な、何!?」
突然アラームが鳴り始めたのだ
「…落ち着きなさい、どうやらタブレットからアラームが鳴ってるわね…主催の奴が映ってるから恐らく放送よ、トオルも早くタブレットを出しなさい」
「は、はい!」
レミリアの言うとおりアラームはタブレットから出ており既にタブレットには主催であるウタの姿をした魘夢が映し出されていた、放送の合図だ
レミリアの呼び掛けで風間も早急にタブレットを出した
『やあお前たち、約束の連絡の時間だ』
そして魘夢が喋りだし放送が始まった
146
:
hope or despair
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/18(金) 14:55:08 ID:BU70wonQ0
◆◆◆
「…一時間で8人も…そんな…」
放送が終わり最初に口を開いたのは風間だった
無理もないだろう、5歳であるから彼からしたらこの短時間で8人もの参加者が死んだという事実は衝撃であり恐怖でしかなかった
「貴方の世界は殺し合いとか戦争とかもなくて平和だったかもしれないけど、今私達がいるのは殺すか殺されるかの場所よ、死人が出てもおかしくはないわ」
「…はい…」
レミリアの言葉は最もだった、今は殺し合いの場でありいつ殺されてもおかしくはないのだ、それは分かっていても風間は顔を曇らせた
「…はぁ…咲夜はそんな表情見せないわ、咲夜の身体を扱ってるんだからもう少しシャキッとしなさい」
「…分かりました、怖いですけど僕、頑張って生き残ります…!」
レミリアに渇を入れられた風間は気持ちを入れ換えた
怖いのは勿論ある、しかしいつまでも怯えていても仕方がない、それに自分は今までいくつもの修羅場を潜ってきた、ここにいる以上生き残るしかないのだ…
「次に名簿を確認しておきましょう、貴方の知り合いとかいるかもしれないわ」
「分かりました」
そして二人は名簿を見始めた
精神の名簿、身体の名簿、両方を見終えた二人はタブレットを閉じた
「僕の方は知り合いはいませんでした…レミリアさんはどうでした?」
「二人いたわ、精神と身体で一人ずつ…後私の身体もね」
「そうなんですか…ちなみに誰ですか?」
「精神の方は今貴方の身体となっている咲夜よ」
「咲夜さんも連れてこられていたんですね…身体の方は誰ですか?」
「…私の妹…名前はフランドール・スカーレットよ」
「そういえば名簿にレミリアさんと似た名前があるなと思ってたけどレミリアさんの妹さんだったんですね」
「…そうね…」
互いに知り合いについて話し合っていたが風間は一つ疑問に思ったことがあった…
(何だかレミリアさん…表情が暗いような気が…)
それは先ほどまで自分に渇を入れてくれていたレミリアの表情が曇っているように見えたからだ
しかし風間は特にレミリアに理由を聞こうとはしなかった、知り合い、ましてや妹まで連れてこられているとなると心配で暗くなっても仕方がないと風間は思ったからだ…
147
:
hope or despair
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/18(金) 14:55:21 ID:BU70wonQ0
しかし風間の予想とは裏腹にレミリアは焦っていた
(咲夜はどう行動するかしら…この殺し合いに反抗する可能性も勿論あるけれど、私がいると知ったら私を優勝させようとする可能性が高いわね…その場合接触して説得する必要があるかもしれないけど、トオルもいるから下手に接触するのは逆に危険かしら…)
レミリアは咲夜のこともどうすべきか色々考えたかったが、もう一つ巨大な爆弾があった…
(フラン…あの子の身体もここにいるのね…非常にまずいわ… )
そう、それは妹のフランのこと…レミリアが焦っていた主な理由もフランのことだ
(フランの身体を扱っている参加者が殺し合いに反抗している者だったら良いのだけれど…もしこれが殺し合いに乗っている者だったとして仮に身体に慣れて扱えるようになった場合…この殺し合いは…地獄と化すわ…)
様々な思考を巡らせていた時、
「あの、レミリアさん、少しいいですか…?」
風間から声を掛けられた
「どうしたのトオル?」
「その、まだ言ってなかったんですが実は死んじゃった人の身体の方で僕の友達のお父さんが呼ばれていたんです」
「そうなの、ちなみに誰?」
「野原ひろしっていう人です、それで疑問に思ったことなんですが、精神はどこにあるのかなと思って…」
「…どういうことかしら?」
「上手くいえないんですけど、身体しか名簿に載ってない人ってその身体の本来の持ち主の人ってどうなってるのかなって…」
この風間の質問に関してレミリアはまた考えた
(考えてみれば放送で呼ばれていた小悪魔も身体の方しかいなかったわね、もし精神しか書かれてなくて身体の方がない場合はその身体は意識なしの状態で放置されてると考えられるけど…精神の場合はどうなってるのかしら…放置されて魂だけがさまよってるのか…それとも主催によって捕らえられているのか…)
「分からないわね…放置されて魂だけがさまよってるのか主催によって捕らえられているのか…恐らくどっちかだとは思うけれど」
「そうですか…」
「今考えても仕方がないわ、それよりもこれからどうするかね」
「それなんですが…少し休んでもいいですか?ちょっと疲れちゃって…」
「…はぁ…仕方ないわね、でもいつ襲われるか分からないから気を引き締めておきなさいね?」
「は、はい」
そして二人は休息することを選んだ
その時レミリアが風間にこう伝えた
「トオル、この殺し合い…場合によってはとんでもないことになるわ」
「え?」
「だから今の内に覚悟しておいた方がいいわ」
「わ、分かりました…」
レミリアの唐突の言葉に風間は頷くことしかできなかった
この二人の運命は『希望』か『絶望』か…
148
:
hope or despair
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/18(金) 14:56:07 ID:BU70wonQ0
【G-2/森/深夜】
【風間トオル@クレヨンしんちゃん】
[身体]:十六夜咲夜@東方project
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアさんと行動する
2:何かあったらレミリアさんを守らなきゃだけど…僕にできるのかな…
3:身体しか載ってない人って精神の方はどうなってるんだろう…
[備考]
※殺し合いについて理解しました
※映画での出来事を経験しています
【レミリア・スカーレット@東方project】
[身体]:風間トオル@クレヨンしんちゃん
[状態]:健康、主催に対する怒り(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:主催をぶっ飛ばす
1:トオルと行動
2:子供の身体なんて…私も舐められたものね
3:トオル…想像していた以上に凄い経験してるわね…
4:いざとなったらトオルに守ってもらうつもりだけど…大丈夫かしら?
5:咲夜はどう行動するのかしら…
6:フランの身体を扱っている参加者とは極力会いたくない
7:身体しか載ってない者の精神は捕らえられている…?それとも魂だけがさまよっている…?
149
:
◆.EKyuDaHEo
:2023/08/18(金) 14:56:27 ID:BU70wonQ0
投下終了します
150
:
◆7PJBZrstcc
:2023/08/18(金) 19:50:59 ID:BSM4mW0I0
ムスカ 予約します
151
:
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:07:24 ID:2itNVrDc0
ゲリラ投下します
152
:
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:08:15 ID:2itNVrDc0
「………………は?」
放送が終わり、タブレットに追記された精神側の名簿を見ていた虹村億泰は、ある一つの名前に目が釘付けになった。
虹村形兆
それは、あるはずのない名前だった。
目をごしごしと擦って、もう一度その名前を見る。
虹村形兆
見間違いではない。
自分のすぐそばに表示されたその名前は…紛れもなく兄の名前だった。
「なんで…どういう、ことだよ」
兄貴は死んだ。
この目で確かにその死を見た。
蘇った?
いいやありえない。
仗助がいつだか言ってた気がする。
どんなスタンドだろうと人を蘇らせることはできないって。
自分のスタンドは治すことはできても死人を蘇らせることはできないって。
ありえない。
ありえないありえないありえない。
動揺する心をなんとか抑えつつ、助けを求めるように同行者の方を見る。
「せ、星歌さん…」
「…虹村君」
対峙する同行者…伊地知星歌の顔色もまた、暗い。
自分と同じように、大切な誰か…たとえば妹だという虹夏が呼ばれたりしたのだろうか。
しばらく、お互いに見つめ合う
やがて先に口を開いたのは、星歌の方だった。
153
:
痛みも、苦しみも、分かち合って
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:09:16 ID:2itNVrDc0
「虹村君…私を殴ってくれ」
「はあ!?」
突然の要求に、億泰は困惑する。
「な、何言ってんだよ星歌さん」
「いいから殴れ。私は…自分が許せねえんだ」
「て、敵でもねえ女を殴ったりなんかできねえですよ」
「…頼む、殴ってくれ。でないと私は…!」
懇願する星歌の姿に、億泰は思う。
きっと星歌も、名簿を見てなにかショックなことがあったのだろうことは、バカな自分にもわかる。
それで彼女の気が済むというのなら、そうしてあげるべきなのかもしれない。
しかし…
「ズルいっすよ、星歌さん」
「え?」
「辛いのが…苦しいのが、あんただけだと、思ってるんすか?」
億泰の言葉に、星歌はハッとする。
「わ、悪い、虹村君!私、自分のことばっかで…ああくそ、ほんとに私、自分の事ばっかだ」
「殴るなら…星歌さんも俺のこと、殴ってくだせえよ」
「虹村君…」
「お互い、もやもやしてるもん、ぶつけあって、吐き出しましょうよ」
「…はは、いつの時代のヤンキー漫画だよ」
「おう!やるとなったら、女だからって、手加減しねえぜ!」
「はっ!言うじゃねえか億泰!こっちだって、容赦しねえからな!」
そうして、両者の殴り合いはお互いがスッキリするまで続いた。
星歌の億泰の呼び方が変わっていることに二人が気づくのは、もう少し後の事だった。
154
:
痛みも、苦しみも、分かち合って
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:09:58 ID:2itNVrDc0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
泥臭い殴り合いを終えた両者は、お互いのことを語り合うこととなった。
「そっか、死んだ兄貴が…」
「ああ…兄貴は確かに死んだ。死んだ奴が生き返るなんてありえねえ。なのになんで…」
タブレットを操る億泰のたどたどしい手つきを見ながら、星歌は言った。
「なあ億泰…今、西暦何年だ?」
「は?何年って…1999年?」
「なるほど、どおりでタブレットの扱いが高校生のくせに拙いわけだ…私にとっての今は、それより20年くらい未来だ」
「!?」
ますます混乱する億泰に、星歌は自分の考えを述べた。
すなわち、この殺し合いの連中は、時代がバラバラの奴らを集めているんじゃないかと。
「つまりだ、死んだはずのお前の兄貴が生きてるのも…」
「過去から連れてきたってことっすか!?」
「可能性の話だけどな」
「でも、それなら…過去の兄貴がこの世界で死んだりとかしたら…過去の俺はどうなるってんだ!?」
「…そこまでは私にも分からねえよ」
しばらく沈黙が続く。
やがて口を開いた億泰は、迷いのない顔で言った。
「過去とか、未来とか、難しいことは分かんねえけど…この世界の兄貴が過去の兄貴なら…多分、親父を殺すために、殺し合いに乗ってるはずだ。兄貴の弟として…この虹村億泰が止める!今分かるのは、それだけだ!」
「事情は分かんねえけど…私も協力するぜ。兄弟で殺し合いとか…笑えねえ冗談だからな」
155
:
痛みも、苦しみも、分かち合って
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:11:11 ID:2itNVrDc0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「それで、星歌さんの方は何があったんすか?いきなり殴れとか言ってきて…」
「…最初に精神側の名簿見てさ、妹の名前がなくてホッとして…だけど、肉体側の方に妹の名前があった」
「…そのショックで俺に殴れって言ったんすか?」
言いながらも、億泰はしっくり来なかった。
妹の名前があってショック…というのは分かる。
しかし、それで殴られたくなるというのが、いまいちピンと来ない。
「…精神側の名簿にはさ、妹が所属してるバンドのメンバー…ぼっちちゃんに喜多ちゃん、リョウの名前があったんだ。虹夏にとってかけがえのない仲間で…私も仲良くしてた相手なのに、私は…妹がいないことを喜んでた」
「…家族が巻き込まれてないことを喜ぶのは悪いことじゃねえっすよ」
「…そうかもしれねえけどさ。自分がすっごく身勝手で自分本位な人間に見えて…腹が立った」
「星歌さん…」
「…さ、湿っぽい話はこれで終わりだ。せっかく殴り合ってあったまった心と身体が冷めちまう」
気丈に振る舞う星歌の姿に、億泰はかつての兄の姿を幻視する。
自分に極力手を汚させないように振る舞い、一人で抱え込んでいた兄の姿を。
「星歌さん、無理はしねえでください」
「あ?無理はしてねえよ。そりゃさっきはみっともねえ姿見せちまったが…億泰のおかげですっきりしたし。それに年長者として見栄くらいははらせてくれよ」
「それでも…本当にきつい時は、俺を頼ってくれよ!俺、頭悪いし、考えるの苦手だけどよ…姉とか年上とかって以前に、星歌さんは…もう俺にとって、大事なダチなんだからよ!」
「…ダチ、か。ありがとうな、億泰」
兄が巻き込まれた弟。
妹が巻き込まれた姉。
痛みや苦しみを背負いつつ、だけども2人は進んでいく。
お互いの傷を、分かち合って、進んでいく。
156
:
痛みも、苦しみも、分かち合って
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:11:45 ID:2itNVrDc0
【一日目/深夜/F-2 森】
【伊地知星歌@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険Part6 ストーンオーシャン
[状態]:全身に軽度の殴り痕
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:虹夏や結束バンドメンバーたちと共に、無事に帰る
1:虹夏の身体も、他の結束バンドメンバーも守る
2:形兆が殺し合いに乗っているなら、億泰と共に止める
[備考]
※参戦時期は少なくとも結束バンド結成以降です。
※スタンドに制限はかかっていません。
【虹村億泰@ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない】
[身体]:津上翔一@仮面ライダーアギト
[状態]:全身に軽度の殴り痕
[装備]:オルタリング@仮面ライダーアギト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:エンムとかいうやつをぶちのめして、殺し合いを止める。
1:兄貴が殺し合いに乗っているなら止める
2:星歌さんの知り合いや妹の身体を持つ者を見つけたら守る
3:仗助や露伴と合流する。由花子の肉体を持つ者にも会いたい。
2:アギト?変身?カッピョイイ――ッ!
3:妹さん大事にするんだぜ、星歌さん。
[備考]
※参戦時期は吉良吉影撃破後のどこか。
※津上翔一の本名は沢木哲也ですが、今後肉体の名前が記される場合は津上翔一とだけ表記されます。
※オルタリングは一つの支給品扱いです。
※形兆は過去の世界から連れてこられているのだろうと考えています。
157
:
◆OmtW54r7Tc
:2023/08/18(金) 22:12:23 ID:2itNVrDc0
投下終了です
158
:
◆7PJBZrstcc
:2023/08/19(土) 08:53:12 ID:U.azLOe60
短いですが投下します
159
:
私は完璧で究極のムスカ大佐だ
◆7PJBZrstcc
:2023/08/19(土) 08:54:00 ID:U.azLOe60
「ハッハッハッ! パズー君、君はラピュタ王の雷で焼き払ってやる」
魘夢の放送を聞き終えたムスカは早速タブレットで名簿を確かめる。
彼にとって死者の名前は精神も体も見ず知らずの相手ばかりで、はっきり言ってどうでもいいものだった。
それは未だ生きている参加者のほぼ全員も同様であったが、一人だけ無視するわけにはいかない名前があった。
パズー。
それは、原作においてラピュタを巡って敵対した少年である。
このムスカはあくまでカオスバトル出展で、別に原作の記憶があるわけではない。
しかし彼にとってパズーは、ひとたび現れれば滅びの呪文で敗北を齎す死の象徴。
だからこそ、ムスカは逃げるわけにはいかない。
必ず勝つ、と彼は内心で決意した。
とはいえ今のままでは不安だと感じたムスカは、ひとまず支給品を検めることにした。
その結果今すぐ使えそうなのは、この二つだった。
一つ目はムスカ自身に支給されていたグレートアクターと言う名前の、防御本能スティグマと呼ばれるものだ。
これは仮想空間『リドゥ』の二代目帰宅部達が防具として使用しているものである。
ぱっと見はただの光の球だが、ひとたび装着すれば防御力と回避率が上昇する効果がある。
どうやって装着しているのかは本来の二代目帰宅部達にしか分からないが、この殺し合いでは持ち主の意志一つで着脱可能となっている。
なので、ムスカは迷うことなく装着した。
いくら死んでも蘇れるとはいえ、この殺し合いでは回数制限がある以上、防御力を上げておくことは決して無駄ではないだろう。
だがムスカが目を付けたのはそれだけではない。
防御力も大事だが、攻撃力も当然大事。
その攻撃力を底上げする物が、放送前に殺したクラウンイマジンの支給品の中にあった。
その支給品の名前は、善滅丸。
とある世界において地球を征服したネオ・マルハーゲ帝国が作り上げた、精神にある善の心を溶かし邪の心を完全開放させる秘薬。
悪の本能が解放され真の力が発動する、恐るべき薬だ。
ただし一度に二錠飲むと角と尻尾が生えた異形の姿になり、スタミナの消耗も激しくなるという作用もあるが。
今のムスカは銃で攻撃するものの、弾切れした際にあてになるのは己の肉体。
そもそもカオスバトルにおける彼の攻撃方法が不明確な以上、肉弾戦に長けている可能性もゼロではない。
「素晴らしい! 最高!!」
とにもかくにも、強力な支給品が二つもあるという状況にムスカはご満悦だった。
高笑いしながら出発しようとする彼だったが、ふと足を止めて振り返る。
視線の先には、誰のものか分からない玉座があった。
それを見ながら、彼はふと呟く。
「出発点が玉座の間とは、上出来じゃないか」
【一日目/深夜/E-4 玉座のある古墳】
【ムスカ@カオスバトル】
[身体]:蓬莱山輝夜@東方Project
[状態]:健康、一回死亡
[装備]:リボルバー@天空の城ラピュタ、グレートアクター@Caligula2
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜3(確認済み)、善滅丸×5@真説ボボボーボ・ボーボボ
[思考・状況]基本方針:見せてあげよう、ムスカの雷を!
1:小僧(パズー)! 君はラピュタ王の雷で焼き払ってやる!
[備考]
※制限により輝夜の肉体は2回までは死亡しても生き返りますが、3回目で完全に死亡します。
※復活のタイミングは自由ですが、制限により死亡後5分経てば強制的に肉体が元に戻ります。復活の場所は元の居場所から視界に入る圏内ならばある程度指定可能です。
※ムスカ側の仕様により死亡時はその場で小規模な爆発を引き起こします。爆発音は響きますが、巻き込まれても大した影響はありません。これにより死体は残りません。
※天空の城ラピュタ内のムスカのセリフ以外の言葉を発する事は出来ません。セリフの組み合わせによるある程度の改変は可能です。
【グレートアクター@Caligula2】
ムスカに支給。
ステータスが防御+415、回避+58される防御本能スティグマ。
本ロワでは所持者の意志で自在に着脱が可能。外している時は光の球となり、譲渡も可能。
装備者が死亡した場合は、死亡した場所で浮遊する。これは装備者が復活できる場合は発生せず、復活できない時のみそうなる。
【善滅丸×5@真説ボボボーボ・ボーボボ】
クラウンイマジンに支給。
ネオ・マルハーゲ帝国で開発された、善の心を溶かし邪の心を完全開放させる秘薬。
本ロワでは一錠飲むと一定時間パワーアップする増強剤として扱われる。また、二錠以上飲むと尻尾と角が生えた異形の姿となり、圧倒的なパワーアップするもののすぐにスタミナが切れるようになる。
一定時間経つと効果は消える。ただし、善の心を溶かす都合上、善人が一度飲めば殺意が暴走しやすくなる。
160
:
◆7PJBZrstcc
:2023/08/19(土) 08:54:26 ID:U.azLOe60
投下終了です
161
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/19(土) 18:07:41 ID:SDLM765M0
皆様乙です
岸辺露伴、ちいかわ+チャカ、桜井景和予約します
162
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/20(日) 01:12:27 ID:qRYHCYak0
専用したらばに支給品に関する質問がありましたので、そこから新たに本ロワで支給禁止の品を指定したいと思います。
・原作でDISC化されていないスタンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
・原作で死亡した参加者以外のキャラの死体
163
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:24:36 ID:ckh..LM.0
投下します
164
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:25:01 ID:ckh..LM.0
これは、二回目の放送が始まる前の出来事。
ウタが、とにかく今は身体を取り戻さなきゃと、行動を開始して直ぐのことだった。
轟音が響いた。
彼女のすぐそばで、巨大なモノが倒れるような大きな音が。
彼女が察したのは、既に戦闘が始まっていることと、その下手人が強力な力を持っているであろうこと。
ウタはシャンクス達と航海していたからよくわかる。
モノをぶって音を鳴らすのと壊して音が鳴るのではまるで違う。
破壊ということは対象のモノの耐えられる力を越えられるということであり、ただ道具なり素手なりでぶって音を響かせるのとは比べ物にならない。
彼女の脳裏に過るのは逃走と停滞。
逃走。
ウタには戦闘経験がない。あるのは、ウタウタの実に支配されているウタワールドでの絶対的な優位での蹂躙か、幼い頃のルフィとの子供じみた小競り合いくらいである。
いま、この会場にはそれらのような身の安全を保障されるものがどこにもない。
なにがなんでも身体を取り戻そうと決めているウタにとっては、ここで要らないリスクを背負う必要はなく、即座に逃げるのは決して間違いではない。
停滞。
ウタという少女は、人の死を許せない。
生死観こそ常人と異なれど、敵味方関係なく、目の前でたった一人でも瀕死になれば大いに動揺し冷静さを欠いてしまうほどに。
それは元来の性格か或いはかつてのトラウマか。
答えを知る者はいないが、誰かが争っているのであれば命を落とす前に止めたいという想いが足をその場に縫い留める。
逃走か。
停滞か。
その戸惑いが、彼女の足を止め、これからの運命をも変えてしまう。
165
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:25:41 ID:ckh..LM.0
ほどなくして、彼女の前に男が現われた。
その姿を視界に映した瞬間、ゾワリと全身の産毛が逆立ち肌が粟立つ。
現われた男は、巨大だった。
質実剛健を体現するかのような静謐な髭と顔立ち。
ウタの知る中でも大きな体躯の持ち主、ハウリング・ガブを優に超える巨体。
右手には湾曲した鉈のような大剣。
左手には刺すことに特化した巨大な三叉矛。
全身から放たれるプレッシャー。
その全てが見る者を萎縮させ、敬服を誘発させる。
だがそれ以上に。
ウタの目を引き付けるのは———隠すことなく曝け出された、股間のデッケェ『フルチン』である。
(うわ、スッゴ...でっか!!)
重力に従い頭を垂れるソレは、まだ彼が微塵も本気を出していない証左。
にも関わらず、幼き頃に男所帯の中で過ごしてきたウタの知る中でも最も大きなソレは、年頃の娘相手にも威厳を醸し出し、悲鳴をあげるという選択肢すら奪い去る。
「娘」
「へっ、あっ、なっ、なに?」
頭上よりかけられる声に、ウタはハッと我に返る。
「私は...上弦の壱『黒死牟』...貴様も...名を名乗れ...」
「あっ、えっと...あたしはウタ。映像電伝虫であたしの歌とか聞いたことないかな、ほら、新時代とか...」
「知らん」
ばっさりと切り捨てられたことにシュンと気持ちが萎えるウタ。
一方で、男、黒死牟は彼女を見て一考する。
(この娘...上弦という肩書にも反応はしなかった...鬼殺隊でもなければ...鬼でもないか...)
黒死牟はこの殺し合いに乗っても構わないと思っている。
だが、参加者が全員肉体と精神を入れ替えられているとのことから、彼は敢えて初手で斬りかかることはしなかった。
主たる無惨までもが巻き込まれ、己よりも脆弱な肉体を与えられている可能性を考えていたからだ。
万が一にも初手から斬りかかり、もしそれが無惨であれば、己の主を手にかけることになる。
そんなことになれば目も当てられない。
また、もしも鬼殺隊の面々であれば、上弦の鬼である自分に闘志を燃やし少しは楽しい戦いができるかもしれない。
だから、こうして踏み絵の如くまずは名乗りから入ることにしたのだ。
では、無惨でもなければ鬼殺隊でもない相手にはどうするか?
決まっている。
「剣を抜け...小娘...」
戦い屠るだけだ。
166
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:26:13 ID:ckh..LM.0
「ッ...!」
「ここは殺し合い...然らば...当然だろう...」
「あんた、殺し合いに乗るの!?」
「戦は嫌いではない...勝たねば帰れぬのなら...避ける謂れも無し...」
これ以上の言葉は不要、と言わんばかりに黒死牟は右手の大剣を頭上に振り上げる。
ただそれだけの動作で、ウタは己の死を予感させられる。
間違いない。
ここで動かなければ、この大剣は容赦なく自分を両断する。
わかっている。
わかっているのに、ウタの身体は震えるだけで動いてはくれない。
殺意。
ウタという少女は、大波乱の大海賊時代に産まれながらも、今まで誰にも高濃度な殺意を向けられたことがない。
幼き頃の航海中の海戦では、現場を目撃しないようにシャンクス達に大層大事に船室へ避難させられ。
エレジアでのトット・ムジカによる住民虐殺中には彼女は気を失っていて。
ライブに乱入してきた海賊たちからは景品扱いであり、且つウタワールドの中であるため命の危機には程遠く。
現実世界での海軍たちも、世界の歌姫という立場もあってか、まだ威嚇で済ませる程に手心が加えられていた。
そんな彼女の身体には、怒りもなく憎悪も無い、純然たる殺意と突きつけられる死の未来は重すぎた。
大剣が振り下ろされる。
動けない。
切っ先が迫ってくる。
目を瞑り現実から逃避する。
剣が彼女の髪の毛に触れ
「ドラァッ!!」
叫びと共に甲高い音が鳴り、黒死牟の身体が後方へと弾かれ、ウタは思わず尻餅を着いてしまう。
「間一髪ってのはこういうことを言うんだろうなぁ〜」
167
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:27:45 ID:ckh..LM.0
聞こえてきた声に、ウタは瞑っていた目を恐る恐る開ける。
目に飛び込んできたのは、ズル剥けの赤黒い肉棒ではなく、小さく青白い体躯。
「おい、大丈夫かあんた!?」
「———ッ!」
くるりと振り返れば、そのくりくりとした大きな目と小生意気なギザ歯が向けられる。
その姿、まさに子供向けにデザインされた人形。
そんな彼にウタは。
「か...」
「か?肩でも痛め———」
「かわいいいいいいいいい!!!」
今までの緊張感が嘘だったかのように、頬を緩めて抱き着いた。
「どわーッ、なんだよ急に!?」
彼———東方仗助は、ハートマークを浮かべんほどに抱き着いてくるウタに大いに困惑する。
仗助は女子生徒にけっこうモテる。少なくとも不良のようなスタイルだからって毛嫌いされることはない。
しかし今しがた命の危機に陥ったばかりの少女にこうもすり寄られるのは予想外である。
仗助は知る由もないが、今の彼の身体であるアンチョビ究極体は、女子のみならず男子にも通用する癒し体である。
つい先ほどまで残虐ファイトを披露していたアンチョビ相手にも関わず、実況解説のポー、更には対戦相手であるTボーンやコロッケですらメロメロにしてしまうほどに。
そんな可愛さの塊であるアンチョビ究極体が窮地に助けてくれたとなれば、可愛いもの好きのウタが夢中になってしまうのもさもありなん。
(い、いや、こんなかわいい子に抱きしめられるのは悪い気分はしねえけどよぉ...)
仗助は健全的な思春期男子だ。
見た目可愛い女子に触れられれば普通に喜ぶし照れながらもイイ気分になる。
だが、状況が状況だ。
「いまはそれどころじゃあねえんだ...なあ、おっさんよぉ」
ウタを腕で除けつつ、仗助は黒死牟と向き合う。
「うむ...その体躯に見合わぬ膂力...実に興味深い...名はなんという...」
「東方仗助。そういうあんたは」
「私は...上弦の壱『黒死牟』...」
「こくしぼう...イカス名前じゃあねえか。尤も、丸腰の女の子に斬りかかるなんざ、名前とその立派なモンに比べてチト女々しいと思うがよぉ〜」
仗助は煽りつつ、普段の癖で櫛をズボンから取り出そうとして、そういえばいまの自分は服も来ていなければ髪もないことを思い出して止めた。
168
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:30:01 ID:ckh..LM.0
「くそっ、髪の毛セットしねえとなんか落ち着かねえぜ...おい、あんた。名前は?」
「あたしはウタ」
「ウタちゃん。向こうの小屋に俺の仲間を待たせてる...ワリィが、そいつのところに行っててくれねースか」
「...!」
ウタは思わず息を呑む。
この子は自分を助けに来てくれた。それ自体は嬉しいことで、身体を取り戻すためにも非常に助かることだ。
けれど、彼はあの男を引きつけ自分だけ逃がそうとしている。その意味がわからないほど、ウタも馬鹿じゃない。
その不安を察した仗助は、安心させるようにフッと口元を緩めて笑いかける。
「別に犠牲になろうとか思ってるわけじゃねースよ。あんたに万が一のことがあったらヤダなぁっつーお節介心が湧いちまっただけだ」
「でも...悪いよ。お互い、なんにも知らないのにこんな、危険なこと...」
「それをこれから知る為に、お互い頑張ろーぜ...って考えるのはどースかね?」
その言葉にウタはぐっと唇を噛み締める。
少し会話をしているだけでも、この仗助という子が優しい人間だというのはよくわかる。
危険を自ら引き受けて。
こっちの重荷にならないように言葉を色々と考えてくれて。
言い換えれば。
彼は自分に対してなにも期待などしていない。
当然だ。
自分が支配するウタワールドの中でもなければ、自分の身体でもない。
いまの自分はただの歌が上手いだけの女の子。
求められた役割すらこなせないハリボテの救世主。
『助けてよウタ』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
『助けて』
今まで何度も求められた言葉が、重荷になっていたはずの言葉が、今は誰からも求められない。
あれだけ多くを犠牲にしたくせに。あれだけ多くの人に迷惑をかけた癖に。
一歩違う場所にくれば護られるだけのお荷物でしかない。
それがかえってぽっかりとウタの胸中に穴を空け、胸を苦しくさせる。
「ごめん...ごめんね...!」
ウタは今にも泣き出しそうな顔で、仗助の示した方角へと走り始める。
「...?」
そんなウタの背景など知らぬ仗助にとっては、その意味が全くわからなくて。
そして。
その意味を推し測る暇も、時間は許してくれない。
169
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:30:55 ID:ckh..LM.0
「話は...済んだか...」
「ああ。ちゃんと待っててくれるなんざ、思ったよりも律儀じゃあねーか」
「かような弱者...私が下さずともすぐに散る...然らば興味深いお前に意識を注ぐのみ...」
「...もうちっとカッコイイ理由だったらこっちも色々と考えたけどよ。あんたにゃあ遠慮っつーモンは必要なさそうっスねぇ〜〜!!」
黒死牟が構える前に、仗助は地を強く踏み込み地面を蹴る。
繰り出されるは、アンチョビの身体から放たれる彗星の如き高速の跳び蹴り。
「ドラァッ!!」
雄叫びと共に放たれる蹴りを、黒死牟は大剣で受け止め踏みとどまる。
先ほどは不意打ちのために留まり切れなかったが、今度は互いに認識し合ってのスタートのため、まるで違う。
仗助の蹴撃を受け止めるために必要な力はどれほどか、黒死牟の経験値ならば見極めるのは容易い。
「うおっ、と...」
飛び蹴りが止められたことで、仗助の身体が宙に投げ出される。
その隙を逃す黒死牟ではない。
左手の三叉矛が仗助の身体を穿たんとはしる。
「『クレイジー・ダイヤモンド』!!」
穂先が身体に届く寸前、仗助の身体から脚の形をした像が現われ矛を蹴り上げる。
その威力を以てして、黒死牟の体勢が崩れ、仗助もまた射程距離から離れる。
「むっ...」
「そっちが二刀流なら、こっちも『俺』と『スタンド』の二刀流でいかせてもらうぜ」
仗助の背後より人型のスタンド像『クレイジー・ダイヤモンド』が現われ、共に黒死牟を見据える。
「そんじゃあ改めて———行くぜぇ!」
地を蹴り黒死牟との距離を詰めれば、仗助とクレイジー・ダイヤモンドの両拳が同時に振るわれる。
それを迎え撃つ、黒死牟の大剣と三叉矛。
矛と仗助の拳が、大剣とクレイジー・ダイヤモンドの拳がぶつかりあい、激しい剣戟は一帯に砂塵を巻き上げ甲高い音を響き渡らせる。
剣を振り抜き、弾かれる仗助に追いつくように高速で動き、回り込む黒死牟。
仗助の身体を両断せんと大剣を振り下ろす。
が、手ごたえはなく、ただ地面を叩き土煙をあげるだけだ。
(残像...)
背後に感じた気配目掛けて三叉矛を突き出す。
迫る矛にも一切動じず、仗助はクレイジー・ダイヤモンドの腕を支柱にし宙返りをして躱し、更にスタンドに矛を抑えさせ、その隙を突き仗助本人の拳が黒死牟の鎧に放たれ身体を揺らす。
170
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:32:05 ID:ckh..LM.0
(やっぱすげえぜこのアンチョビくんの身体は!)
仗助たちスタンド使いにおいて、多くの者に共通している弱点は本体である。
本来の東方仗助という少年は戦闘での機転は優れているものの、基本的な肉体スペックは普通の人間である。
クレイジー・ダイヤモンドは確かに強力なスタンドではあるが、ソレと同じことを本体が出来るかは別問題。
例えば高速で迫る乗用車と正面から出くわした時。
クレイジー・ダイヤモンドであれば能力を使わずとも車を殴りつけるなり跳躍で躱すなりすれば対処できるが、普通の人間である東方仗助本体では抵抗しきれず最低でも手傷を負ってしまう。
スタンド使いの戦いにおいて本体スペックの差は戦局を左右するものなのだ。
だが、このアンチョビ究極体はまさにそんな弱点を補うかのような性能をしている。
オリンピックスポーツ選手を優に超える、クレイジー・ダイヤモンドにも匹敵する身体能力。
小柄な身体からは考えつかない力。
なにより、多少の傷であれば自前の能力でカバーが出来る。
つまり、いまの仗助は実質二体分の近距離型スタンドを操っているのに等しいのだ。
「うむ...反射神経...力と速さ...血鬼術染みた人形...なにより慣れぬ身体でも衰えぬ経験からくる状況判断...これほどの戦士は久しく目にかかれぬ...」
「随分と余裕こいてるが、んなこと言ってられんのもいまの内だぜぇ!」
クレイジー・ダイヤモンドと共に躍りかかる仗助。
クレイジー・ダイヤモンドと自分に対する黒死牟が互角の身体スペックであるならば、相手に攻撃をさせる余裕を与えるべきではないという判断だ。
黒死牟は迫る仗助に対し、ぽつりと呟く。
「此方も抜かねば...無作法というもの...」
刹那。
下方向から殺気を感じた仗助は、咄嗟に両腕を交差させ防御の姿勢に入る。
そして。
黒死牟の下半身が光り輝くのと同時、『そういえば俺、亀が苦手だったなあ』なんてことが脳裏を過るのだった。
171
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:33:30 ID:ckh..LM.0
☆
「うぅ...いきなりとか勘弁してよ、もう...」
喜多郁代は、アンチョビの皮を被りながら小屋の隅で膝を抱えていた。
仗助と情報交換をしてほどなくして、なにかが倒れる音が響き渡り、仗助は様子を見てくると郁代を小屋に押しやり向かってしまった。
郁代としては一人残されるのは不安なので、向かってほしくなどはなかったが、万が一にも知り合いが荒事に巻き込まれていたらイヤなので、早く済ませて戻ってきてほしいと願うばかりだ。
(気のせいかまだ音が響いてるし...まさか、本当に殺し合いが...)
郁代の不安を遮るように、ゴンゴンゴン、と扉を叩く音が鳴る。
「東方くん!?」
郁代は不安から解放されたかのようにパァッ、と頬を緩め顔を上げる。
「ごめん、ここに仗助って子の仲間いる!?」
しかし現れたのは仗助ではなく、幸薄な雰囲気を醸し出す天使のような美少女だった。
「えっ?だれ!?」
「あたしはウタ。さっき仗助って子に助けられて...って、お化けぇ!?」
ギョッと目を見開くウタに、郁代は慌てて否定する。
「ちっ、違うよー!ほら、にんげんだよ、にんげん!」
被っていたアンチョビの皮をめくると、ぴかりんと光る禿げ頭が表れる。
「なんだハゲたお爺ちゃんか...なんでそんなもの被ってるの?」
「心は乙女なんで...いや、そんなことよりも助けられたって、東方くんは?」
「...ごめん、あたしを助けるために半裸のお爺さんを食い止めてて...」
「は?..ごめんもう一回言って」
「いや、だから、あたしを助けるために半裸のお爺さんを———」
ウタのその先の言葉は紡がれない。
バキリ、となにかが壊れる音がしたかと思えば、頭上を高速でなにかが通り過ぎていって。
その余波で小屋の屋根は吹き飛ばされ風が吹き荒れ埃を舞い上げる。
「ぶわっ!?」
「なっ、なに!?」
ほどなくして埃が収まり、飛来してきたソレの正体が露わになる。
月光に映し出される青白い臀部。
ピクピクと痙攣する小柄な体躯。
ソレはまさに、頭部を壁に埋め込まれた東方仗助の姿だった。
172
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:34:47 ID:ckh..LM.0
「東方くん!」
郁代は慌てて頭上の仗助の身体を引っ張り、身体を下ろそうとする。
「ちょっと、あんたもてつだっ、て...」
振り返り、ウタに手助けを求めようとする郁代だが、その言葉は飲み込まざるを得なかった。
ウタの背後より現れたのは、郁代の倍はありそうなほどの巨漢。
だが、彼女の目を惹くのはその大柄な身体ではなく、その下。
郁代の身長の倍はありそうなほどに大きくそそり、筋張った巨大な宝剣。
幼き頃、お風呂で見たお父さんのモノの何十倍はありそうなほどの大きなモノ。
万人が「ばっちぃ」と思うであろうソレを見ても、あろうことか郁代にはソレが輝きを放っているかのように見えていた。
「他愛のない...まだ半勃ちというのに...これで終わりか?」
ギロリ、と黒死牟は敵を見下ろす。
最初に出会った小娘も妙な皮を被った小柄な老人も、死への恐怖か、身を震わすだけでロクに動けない。
先ほどまで戦っていた小童も、壁に頭をめり込ませたまま動かない。
股間の剣を一度抜いただけでこの有様とは、期待外れだったか。
黒死牟は、屹立した肉棒をウタ目掛けて振り下ろす。
人の命を断つには十分すぎる重さのソレは、情け容赦なく少女に迫る。
「———させるかよぉっ!!」
雄叫びと共に青白い影が躍り出て斬撃を防ぐ。
もはや先刻の巻き戻しかのような光景だが、その実はまるで違う。
振り下ろされたのはズル剥けの巨根であり、仗助の身体もまた、先ほどとは違い、胸部に鈍器で殴られたような跡が刻まれており、顔面も腫れあがっている。
もはや勝負は明らかな有様であった。
「満身創痍で...よく動く...」
「へっ...ここからが仗助くんの本気だぜ、おっさん」
仗助は己の角を掴むと、そのまま引っ張り上げる。
すると、ずるり、と皮が脱げ傷一つない仗助の姿が表れた。
これぞ、アンチョビ究極体の技『完全再生(パーフェクトリバース)』である。
173
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:38:22 ID:ckh..LM.0
「ほう...鬼でもないのにその再生力...珍妙だ...」
「あんたには珍妙だのなんだのと言われたくねーな...さあ、第二ラウンド開始だぜッ!!」
仗助はクレイジー・ダイヤモンドで殴り掛かり、黒死牟は今度は聳え立つ宝剣一本で迎え撃つ。
「ドララララララララァァァァァ————ッ!!!」
クレイジー・ダイヤモンドから繰り出される機関銃の如き両拳のラッシュ。
黒死牟は内股で構え、腰のスナップを効かせることで四方八方に肉棒を走らせその全てを捌ききる。
「うぐ、こ、このおっさん...ち〇ぽ1本で戦ってる時の方が強くねぇーッスか...!?」
クレイジー・ダイヤモンドのラッシュを越える速さで襲い来る宝剣を前に、仗助は徐々に劣勢になっていく。
二刀流と一刀流。
どちらが剣術として優れている、という問題ではない。
どちらにも長所と短所が存在しており、使い手がどちらを好むか、という問題に過ぎない。
黒死牟は先ほどまで、ベオウルフの肉体に合わせた戦い方を試していた。
だが、本来の彼の戦闘スタイルは一刀流。
先ほどまではベオウルフの身体の慣らしとして二刀で戦っていたが、本来の得手は一刀なのである。
故に一太刀のキレも威力も、黒死牟本来の剣に近づいているのだ。
(クソッ、やっぱ俺の方でも攻撃しなくちゃ追いつかねえ!)
仗助としては、完全再生の為の腕を痛めつけるような危険は冒したくない。
しかし、このままでは再生どころか首を刎ねられるのもそう遠くはないと察し、己もまた攻勢に出る。
「ドラァッ!!」
クレイジー・ダイヤモンドと仗助の拳が同時に突き出され、迫る逸物の先端と衝突する。
———が。
(う...ッソだろ!?)
拮抗したのは一瞬。
亀頭は瞬く間に仗助とクレイジー・ダイヤモンドの拳を押しのけ、パァンと甲高い音と共に弾き飛ばしてしまう。
しまった、と思った時にはもう遅い。
パァン、と音を置き去りにするかの如き腰の前後運動により、黒死牟の一物は仗助の胸部に被弾。
まるで鉄塊を直接ぶつけられたような硬さと威力に仗助は胸部を凹ませ吐血と共に再び吹き飛ばされる。
トびかける意識の中、仗助は角に手をやり、再び完全再生を果たす。
三度の仕切り直し。
だが、仗助のみならず、見ている二人ですらこれまでのやり取りで思い知らされた。
このまま戦えば、間違いなく仗助は負ける。
174
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:40:12 ID:ckh..LM.0
(いやだ)
郁代の背筋にドッと冷や汗があふれ出す。
半裸のハゲおやじに身体を変えられただけでも災難だというのに、始まって数分でこんな命の危険に晒されて。
親切な人に出会ったのも束の間、その人もろともいきなり巨大なちんちんに殺される。
嫌だ。そんなの、絶対に!
「ねっ、ねえ、貴女、このままじゃ東方くんが負けちゃう!お願い助けてよ!」
郁代は咄嗟に傍にいるウタに縋りつくように助けを求める。
彼女は死の脅威に晒され冷静さを欠いていた。
女の子一人に縋ったところで、あの超人バトルに混じれるわけがない。
そんなこと、冷静に判断できればわかるはずだが、しかしいまの彼女にそんな余裕はなかった。
けれど。
ただ我武者羅に言ったその言葉が。
救いを求めるその姿が、彼女の運命を大きく動かす。
『助けて』
その言葉は幾万も求められてきた。
『助けて』
ただ一人の歌姫には。
幾多の命を奪った罪人には。
それは過ぎた言葉であり重すぎる十字架であった。
『助けて』
その言葉に日々苛まれてきた。
吐き気を催したこともある。
けれど。
『助けて』
ソレは呪いであるのと同時に、彼女にとって救いの言葉でもあった。
ウタは求められたからみんなの歌姫になれた。
孤独に心を塞いだ10年から掬い上げられたから、再び前向きになることができた。
みんながウタに助けてと縋ったように、ウタもまたみんなの『助けて』に縋っていたのだ。
(そうだ。あたしがやらなくちゃ。どこでとか、いつだって関係ない。あたしはウタ。新時代を作る女なんだから)
ソレはもはや強迫観念に近いモノだが、しかしそれがいつだって悪し様に働くとは限らず。
少なくとも、いま、この場では、初めての死地に怯える心を隠すのにはうってつけだった。
だが。
郁代の助けてに応えるにはどうすればいいか。
仗助と黒死牟の戦いに割って入ることはできない。
しかし説得は無意味だというのは、見ていればわかる。
ならばどうする。
どうすれば、仗助を助けることができる。
『ウタ。この世界に平和や平等なんてものは存在しない』
ふと過る、父と慕った男の声。
聞きたくない、けれどずっと聴きたかったその声に、ウタは思わず身を委ねる。
『だがお前の歌声だけは、世界中の全ての人たちを幸せにすることができる』
「あたしの、歌声...」
ポツリ、と呟く。
そうだ。
赤髪海賊団の音楽家の時も。
世界の歌姫になってしまった時も。
自分に求められたのは、歌だ。
みんながみんな、あたしの歌声を望んでいるし、あたし自身もみんなが望むことを望んでいる。
あたしにはこれしかないから。
歌うことでしか、みんなを助けることが出来ないから。
(だったら———ここでも、そうするしかない)
そう決めたら、フッと頭が軽くなった。
175
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:42:25 ID:ckh..LM.0
自分のもとの身体のことも。
罪に縛られる汚れた手足も。
目の前の光景も。
いまだけは、全てが削ぎ落されていく。
たん、たん、たん、と自分の軽快な足踏みを楽器に、あたしはあたしの世界に沈んでいく。
荒れ果てた家屋をステージに。
鳴り響く剣戟を伴奏に。
(いくよ...3・2・1...)
あたしは深呼吸と共に、思い浮かんだ詞を一気に吐き出した。
———カミサマ、背界でどうか寄り添わせて サカサマの祈りを叩きつけて歌え!
叫ぶ。全てを絞り出すように、ありったけの想いを込めて、全力で叫ぶ。
———幸と業よ、後悔を剥がさないで 背中合わせのハレルヤが 飛んでいかないように!!
みんながギョッとして、あたしの言葉に集中している、気がする。
でももう止まらない。止められない。
あたしの歌は、まだ始まったばかりだから。
>ようこそ、新しい×××へ
「え?これ、スピーカー?でもどこから...?」
ようこそ、新しい×××へ<
「いったい何事か...血鬼術か...?」
>ようこそ、新しい×××へ
「こいつぁ...歌か?」
ようこそ、新しい×××へ<
まるで今までやっていたことのようにしっくりとくる。
そうか、きっとこの子も、『リグレット』も、こうやって歌を送っていたんだ。
>ようこそ、新しい×××へ
「な...なんか妙だぜ...さっきまで結構追い詰められてたのによぉ」
仗助は笑みを浮かべつつ、地面を踏みしめ、思い切り蹴る。
先も放った、高速での飛び蹴り。
黒死牟は既にその威力も速さも見切っている。
冷静に一物の先端を向け、仗助の跳び蹴りに備える。
ようこそ、新しい×××へ<
衝突。
しかし、今度は弾かれることなく、正真正銘、拮抗している。
「むぅっ...!」
「なんだか急に力がムンムン湧いてきやがったぜぇ〜〜!!」
>ようこそ、新しい×××へ
仗助も、ウタ自身も自覚していないが、これこそがリグレットの『力』の恩恵の一端である。
彼女は特定の、あるいは不特定に対して己の歌を唄いあげることで対象の能力を増したり、洗脳して支配下におくことができる。
無論、大規模に支配する力は制限で封じられているが、いま、ウタが行っているのは個人に対しての簡易的な支配。
ウタは仗助を『助ける』ために、彼個人に対して歌による干渉を行い、思考に影響を及ぼさない程度の簡易的な支配———軽微なデジヘッド化現象を引き起こした。
言うなれば関域的なフロアージャック———本来は、リグレットに敵対するバーチャドール『キィ』の技を、疑似的に再現したのだ。
(そうだ...あたしは歌で救うんだ。あたしはウタ。みんなの歌姫、ウタだから!!)
>ようこそ、新しい×××へ<
176
:
人は許容範囲を超えた時、冷静さを失ってしまう
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:44:37 ID:ckh..LM.0
決意と共に、ウタの歌が鳴り響く。
それが2回目の放送を迎える直前の、前哨戦の顛末だった。
【一日目/深夜/G-4】
※各キャラが魘夢の放送を聞き取れるかは次の書き手の方にお任せします。
【ウタ@ONE PIECE FILM RED】
[身体]:リグレット@Caligula2
[状態]:精神的疲労(中)、熱唱中
[装備]:ウタのアームカバー@ONE PIECE FILM RED
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:エンムから体を取り戻す。
1:仗助を『助ける』ために歌う。
2:体を取り戻す方法を探す。その後は…
[備考]
※参戦時期はライブ会場に赤髪海賊団到着後〜トットムジカを歌う前。
※殺し合いの会場がウタウタの実の能力により創られた世界ではないかと考えています。
【黒死牟@鬼滅の刃】
[身体]:ベオウルフ@ローゼンガーテンサーガ
[状態]:健康、フルチン
[装備]:姑獲鳥の三叉矛@彼岸島 48日後... 十咎ももこの大剣@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:生還し元の肉体を取り戻す。
1:まずは目の前の敵との闘争を愉しみ、斬る。
2:無惨がいないか確かめたい。
【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:アンチョビ(究極体)@コロッケ!
[状態]:疲労(中)、簡易的なデジヘッド化による能力の強化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:エンムとかいうやつをぶっ飛ばして殺し合いを止める。
1:目の前の黒死牟に対処。
2:とりあえず郁代の為にまともな服を探す。
[備考]
※肉体のアンチョビは究極体以外の姿に変化することはできません。
※ウタの歌を通じて、簡易的に支配下に置かれていますが、思考にはさほど影響はありません。
ウタの歌が止まればデジヘッド化も消えます。
【喜多郁代@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:アドバーグ・エルドル@魔法陣グルグル
[状態]:健康
[装備]:アンチョビ究極体の皮@コロッケ!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:元の世界に帰りたい
1:とりあえず目の前の危機をどうにかしてほしい。
2:とりあえずまともな服が欲しい。
3:キタキタおやじってなによ…いくら私が『キタ』だからってあんまりじゃない?
[備考]
※「郁代」呼びよりも「喜多」呼びへの忌避感の方が強くなっています
177
:
◆ZbV3TMNKJw
:2023/08/24(木) 23:45:11 ID:ckh..LM.0
投下を終了します
178
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:34:59 ID:0tMJcMaQ0
投下します
179
:
岸辺露伴、温泉宿へ行く
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:35:56 ID:0tMJcMaQ0
会場北部にある山の中に設置された、温泉つきの宿。
岸辺露伴とちいかわ、そしてちいかわに支給されたアヌビス神に宿るチャカは、この場に腰を落ち着けていた。
元々この施設は、ちいかわと遭遇する前の露伴が遠目にその存在を確認していた。
その後話し合いをするなら野外よりも屋内の方がいいだろうと、露伴がちいかわを案内したのである。
なお露伴を信用していなかったちいかわは同行するのを渋っていたが、交渉力では露伴の方が上(というか、ちいかわが低すぎる)。
露伴の弁舌に翻弄され、気がつけば一緒に宿の一室にいた。
ここまでは順調に進めていた露伴だったが、そこから先は手こずることになる。
まず、ちいかわは語彙力に乏しい。露伴からすれば、幼児並だ。
だがそれは、根気でなんとかなる。
問題は、チャカとの情報共有である。
チャカが体を操っている間、ちいかわは意識を失ってしまう。
そして体を操っていない状態では、チャカはしゃべれない。
厳密にはテレパシーでちいかわに意思を伝えることはできるが、ちいかわの語彙力ではそれを正確に露伴に伝えることができない。
そのせいで、「3人で情報を共有する」ことが非常に面倒なのである。
どうにか上手い方法はないかと試行錯誤しているうちに、あっという間に1時間が経過していた。
◆ ◆ ◆
「おいおいおいおい、たった1時間で8人か〜?
ずいぶんと死んだなあ」
「うっ……」
放送終了後、露伴は苦虫をかみつぶしたような表情で独りごちる。
一方のちいかわは、真っ青な顔で目に涙をたたえていた。
(いや、これは本当に予想以上のペースだぞ……。
これだけ開始直後に死人が出るということは、無力な体を与えられた参加者が多かったのか……。
あるいは逆に、与えられた体の実力を使いこなせずに死んだか……。
まあ情報が少なすぎて、推理したところで意味はないな)
一通り考えを巡らすと、露伴は改めてタブレットを手に取った。
表示するのは、送信されたばかりの名簿だ。
「そっちはどうだ? 使えるかい、タブレット」
「んっ……」
拙い手つきながらも、ちいかわはタブレットを操作していく。
「君も名簿を見てほしい。その中に、知ってる名前はあるか?」
「えっ……あっ……」
180
:
岸辺露伴、温泉宿へ行く
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:36:58 ID:0tMJcMaQ0
露伴の問いに、ちいかわは困惑の表情を浮かべる。
だが困惑はしていても、否定はしていない。
その様子を見て、露伴は一つの確信を得た。
「名前を見ても知り合いかどうかわからない……のか?」
今度の質問には、ちいかわは首を縦に振る。
(なるほど、おそらくこいつの生きていた社会には、「他者を個人名で呼ぶ」という文化がない……。
そりゃ自分の名前を認識してないわけだ……。
そうとう原始的な社会……と思ってしまいそうだが、こいつは拙いとはいえ情報機器を使うことができている。
それにさっき読んだ記憶から判断する限り、こいつらの社会にはある程度文明の利器が存在している。
少なくとも現在の情報だけで判断すると……ひどくいびつな社会だ)
思考にふける露伴。ちいかわはその様子を、不思議そうに見つめている。
「ああ、放置してすまないね。
今度は、チャカに名簿を見てもらいたい。
彼に代わってもらえるかな」
「んっ」
露伴の要求を素直に受け入れ、ちいかわはアヌビス神を鞘から抜く。
その瞬間、ちいかわの人格がチャカに入れ替わった。
「状況は理解しているな? よろしく頼む」
「ああ、わかっているが……。この道具は、片手では使いづらいな……。
元々慣れていないというのに……」
刀から手が離せないゆえにタブレットの操作に悪戦苦闘するチャカを見ながら、露伴は再び思考を開始する。
(彼の言動を見る限り、彼の国はちいかわよりよほど文化的だ。
だが、機械の扱いには慣れていないようだ。
やはり彼らが僕と同じ世界の住人と考えるのは、明確に無理がある。
すなわちそれは、異世界が存在するということだが……。
フィクションじゃよくあることでも、現実に存在しそうとなるとさすがに好奇心が抑えきれないな)
こみ上げてくる笑いを抑えながら、露伴はチャカに視線を向ける。
チャカは浮かない表情で、顔に汗を浮かべていた。
「その反応……。知り合いがいたか?」
「まあな……」
一つため息を挟んで、チャカは語り出す。
「肉体の方に名前があるルフィくんと、精神と肉体両方に名前があるサンジくん……。
サンジくんの方はフルネームを聞いていなかったので、本人と確定できないが……。
この二人は、我々の国を救ってくれた恩人だ。
それにシャンクスとゲッコー・モリア……。こっちの二人は、世界的に有名な海賊だな」
「有名な海賊、ねえ……」
露伴は、さらに考察を進める。
(僕らの時代でも、東南アジアの方じゃ未だに海賊が元気に活動しているらしいが……。
海賊個人の名前が、世界的に知られるってことはまず考えられないよな〜。
やはりチャカも、僕とは違う世界の住人……。
海賊が悪名を轟かせてるってことは、海上移動が盛んな世界なのかもな)
露伴が沈黙している間に、チャカはさらに語る。
「だが気になるのは、名簿にシャンクスの名前が二つあることだ……。
その片方はすでに死亡してしまったようだが……。
先ほど見た顔写真は、私の知っているシャンクスのものだった。
ならば、もう一人はいったい……」
「普通に考えれば、同名の誰かさんなんだろうが……。
おそらくこの殺し合いを開いた連中は、複数の世界に行き来できる。
それを考慮すると、並行世界の同一人物という可能性もあるな」
「並行世界……?」
「ああ、君の世界では浸透してない考え方か。
根底からして異なる異世界とはまた別の、似ているがどこかが異なる世界のことさ。
たとえば君が王家に仕えることなく市井の人間として生きてる世界とか、僕がもっと早くヘブンズ・ドアーに目覚めてる世界とかな」
「そんなものが……本当にあるのか?」
「さあねえ。僕のところでも理論だけで、実際に確認されたわけじゃない。
だがこの場には、僕らの常識がまるで通用しない。
どんな絵空事も、真実になる可能性がある」
「むう……」
181
:
岸辺露伴、温泉宿へ行く
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:37:56 ID:0tMJcMaQ0
露伴の説明にも、チャカは納得できていないようだ。
「まあその辺の話は、後でゆっくり聞かせてもらうとしよう。
それより、そちらの知っている名前はあったのか?」
「ああ、そうだったな。精神の方には、知り合いが二人いるな。
東方仗助と虹村億泰。僕とはあまり気が合わない連中だが……まあ殺し合いに乗るような性格じゃあない。
見つけられれば、協力できるだろう。
後は肉体の方に、山岸由花子……。彼女は仗助達の友人だ」
3人の名前を挙げる露伴。
だが実際には、彼には他にも知っている名前があった。
億泰の兄である虹村形兆と、ここにはいない知人の旧友であるモハメド・アヴドゥルである。
だが二人とも露伴にとっては故人であり、名前を聞いたことがあるだけで直接の面識はない。
後者に至ってはこの場でもすでに死んでおり、わざわざ情報を共有する必要性は低いと判断したのである。
「それで君の知人達も、君のように特殊な力を持っているのか?」
「そうだな。仗助は生物の負傷や物質の損傷を回復する能力。
億泰は手で攻撃したものを消滅させる能力。
そして由花子が、髪を自在に伸ばす能力だ」
「何というか……すごいな……」
露伴の回答に、チャカが冷や汗を浮かべる。
「君の周囲は、そんなに能力者が多いのか?」
「多いのは事実だが、それは能力者同士のコミュニティができてるからだよ。
別にとなりのおっさんも、向いのガキも、みんな能力者ってわけじゃない」
「そうなのか……。だがそもそも、その能力というのはいったいなんなのだ?
話を聞く限り、悪魔の実の能力とは別物のようだが」
「まあ知りたいというのなら、話してもいいが……。
別に、この場でそこまで深く知る必要はないからな〜」
どこまで説明したものかと、考え込む露伴。
その時、彼の耳が部屋の外からの音を捉えた。
「すまないが、説明は後だ。お客さんが来たようなんでな」
◆ ◆ ◆
時間は少しさかのぼり、放送直後。
「くそっ!」
桜井景和は怒りのままに近くの木を殴りつけようとし、ギリギリで慌てて止める。
今の肉体は本来のものではなく、幼い少女のものであることを逆上して失念していた。
こんなことで怪我でもしてしまっては本来の持ち主に申し訳ないし、この場での行動に支障が出てしまう。
軽率な行動を取りかけた自分を戒め、景和は改めて怒りを燃やす。
「もうこんなに死者が出てるなんて……。
そんなに殺し合いなんてしたいのかよ……!」
殺し合いの主催者、そしてそうそうに手を血に染めた参加者たちに対し、景和は憎悪を募らせる。
すでに死者は8人。精神と肉体を別人として考えれば、16人もの人間が死んでしまったことになる。
その全てが善人ではなかったかもしれないが、全てが悪人だったわけでもないだろう。
それらの命が失われたという事実は、景和の中の黒い感情をさらに拡大していく。
「こんなゲーム、何が何でも止めないと……。
でもまずは、状況確認だ……」
荒ぶる気持ちを抑え込みながら、景和はタブレットを操作して名簿を表示する。
彼が敵と見なす吾妻道長と五十嵐大智の名前は、そこにはなかった。
だがそれ以外の知っている名前は、いくつか確認できた。
まずは精神側の参加者として、ケケラ。
「よりによって、扱いに困るやつが……」
182
:
岸辺露伴、温泉宿へ行く
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:38:51 ID:0tMJcMaQ0
その名前を見て、景和はため息を漏らす。
ケケラは、デザイアグランプリにおいて景和を応援しているサポーターだ。
つまりは、景和にとって味方となる人物。少なくとも、ケケラ本人はそう思っているだろう。
だが景和は、彼を完全に信用しきれない。
未来人であるケケラの倫理観は、現代人とは異なる。
特に最近の彼の言動は、それを強く意識させるものが多かった。
おそらく景和に危害を加えてくることはないだろうが、それ以外の参加者にどう対応するかは未知数だ。
景和を優勝させるために他の参加者を殺そうとする最悪の展開も、絶対にないとは言い切れない。
「行動を監視できるよう、早めに合流を目指した方がいいかもな……。
でも、ケケラだけにかまってるわけにもなあ」
知っている名前は、肉体側の名簿にもあった。
仮面ライダーギーツ・浮世英寿と仮面ライダーナーゴ・鞍馬袮音だ。
袮音の方は紛れもない友人だし、殺したくはない。
だが問題は、英寿の方だ。
景和は願いを叶えるための条件として、英寿の殺害を課されている。
ここで肉体だけを殺しても、それを達成したことになるだろう。
ギーツの強さは変身する英寿のスペックによるところも大きく、たとえ変身できたとしても英寿本人と戦うよりは勝ち目が増すはずだ。
だが、英寿の体に入っているのが善人だとしたら。
それを殺すのは、景和にとって許されざる暴挙だ。
「結局、本人と会ってみないことには決められないか……」
天を仰ぎ、景和は再びため息を漏らす。
「そういえば……」
景和の視線が、再びタブレットに戻される。
何度も世界改変を経験したせいか若干記憶が曖昧だが、自分が知っている人物であろう名前が他にもあった。
浅倉威と城戸真司。かつて権限を強引に奪った元ゲームマスター・コラスが開催したデザイアロワイヤルの参加者。
デザイアグランプリとは別の戦いをくぐり抜けてきた仮面ライダーたちだ。
浅倉の方は、はっきり言ってほぼ何も知らない。名前も誰から聞いたのか思い出せないレベルだ。
ただ、どうやら危険人物らしいということだけは覚えている。
一方の城戸は、二人きりで言葉を交わしている。
関わった時間こそ短いが、信頼できる人間だと断言できる。
この場で出会うことができれば、きっと協力してくれるだろう。
問題は城戸の名前が、「その他」の欄に記載されていたことだ。
つまり彼は、副人格なり支給品なり自分で能動的に動けない立場にいることになる。
見つけ出すのは、難しいかもしれない。
「とりあえずはこんなところかな……」
タブレットをデイパックに戻し、景和は静かに呟く。
「ケケラは信用できるか微妙だし、城戸さんは見つけるのが難しそうだし……。
あまり知り合いには期待できないな。
まあ殺し合いの場なんだから、知り合いは少ないに越したことはないんだけど……。
とにかく、見知らぬ相手と友好関係を築くことができないと厳しいな。
俺一人じゃ、明らかに戦力不足だ」
そう言いながら、景和は腰に巻いたベルトに手をやる。
ウィザードライバー。
デザイアグランプリのライダーや城戸達とはまた異なる、仮面ライダーの変身システムである。
その性能は、景和にとっては未知数。
仮に強力なライダーだったとしても、初めて使う景和に全ての力を引き出せる保証はない。
しかも今の景和の肉体は、幼い少女のもの。
どう考えても、身体能力は本来より低下している。
総合的に見て、今の自分の戦闘力は参加者の中で中位から下位であろうと景和は分析していた。
この程度の力では、主催者を討伐するどころか自分の身を守るのもおぼつかない。
目的の達成には、仲間の存在が不可欠だ。
「上手いこと、殺し合いに乗ってない人に会えるといいんだけど……。
そう都合よくいくかなあ」
悲観的な言葉を漏らしながら、景和は移動を開始した。
183
:
岸辺露伴、温泉宿へ行く
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:40:06 ID:0tMJcMaQ0
◆ ◆ ◆
少し歩いたところで、景和は白い気体が風に乗って流されてきているのに気づいた。
最初は山火事かと思ったが、すぐにそうではないと理解する。
湿気を多く帯びたその気体は、温泉から生じる湯気だった。
「この近くに、温泉があるのか……。
もしかしたら、そこに俺より早く来てる人がいるかもしれないな」
そう考えた景和は、湯気をたどって進んでいく。
しばらくして、彼の視界に小さな宿が映り込んできた。
「さて、と……。誰かいるかどうか……」
腰のベルトを今一度確認してから、景和はわざと音を立てて玄関を開ける。
程なくして、室内から物音が聞こえてきた。
緊張の面持ちで成り行きを見守る景和の前に現れたのは、二人の若い女性。
その片方の顔を見た途端、景和は思わず呟く。
「姉さん……?」
「はあ?」
その女性……鬼頭はるかの肉体に宿った露伴は、思い切り嫌そうに顔をゆがめた。
◆ ◆ ◆
「すいませんでした。姉に雰囲気が似てたもので……。
いや、似てたと言ってもそっくりってほどではなくて、親戚くらいの……」
「うん、別にそこを詳しく聞きたくはないんだ」
数分後、露伴達は元の部屋に戻って景和の話を聞いていた。
「で、桜井景和くんだったね。
僕は岸辺露伴。今は女性の体になっているが、本来は男性だ」
「露伴さん……ですね」
(外見も名前も日本人だが、僕の名前に反応しない……。
つまりは彼も、別の世界の人間か)
景和の反応を見て、露伴はそう判断する。
「そしてこっちが、ちいかわとチャカだ」
「え、二人?」
「今は支給品のチャカが、肉体を支配している状態だ。
こうすると……」
「あ、おい!」
露伴はチャカの了承も得ずに、アヌビス神の刀身を鞘に収める。
その瞬間、これまで眠っていたちいかわの意識が目覚める。
「えっ!? わ、わあっ!?」
気がついたら、目の前に見知らぬ人間がいた。
その状況に困惑し、ちいかわは半泣きになって後ずさる。
「え? え?」
その反応に、景和の方も混乱してしまう。
(ああ、直接見せた方が早いと思ったが……。
かえって面倒なことになりそうだな……。
景和の話も聞かないといけないし、チャカと話したことをちいかわに説明する手間も……。
しばらく、ここから動けなさそうだ)
ただ一人冷静な露伴は、額を押さえてため息を漏らす。
(早いところ、彼も読んでしまいたいんだがな……。
お人好しの空気の裏にある、たしかな闇……!
絶対に面白いぞ、彼は!
だがヘブンズ・ドアーを使っているところをちいかわやチャカに見られては、
また不信感を抱かれてしまうかもしれないからな……。
なんとか隙を作って……)
部屋の中の二人に見えないように、露伴は口元を怪しげに歪ませた。
184
:
岸辺露伴、温泉宿へ行く
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:41:37 ID:0tMJcMaQ0
【B-7 刀鍛冶の里の宿/深夜】
【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:鬼頭はるか@暴太郎戦隊ドンブラザーズ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、サングラス&ドンブラスター&アバタロウギア オニシスター@暴太郎戦隊ドンブラザーズ、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らないが、取材は満足するまでさせてもらう
1:景和を交えて、情報交換を続ける。
2:景和にもヘブンズ・ドアーを使いたい。
3:自身に支給された変身アイテムもどこかで試しに使ってみたい。
4:気は乗らないが、仗助と億泰も探してやるか。
[備考]
※第4部終了後からの参戦とします。
※「岸辺露伴は動かない」のエピソードは、第4部進行中の出来事とされている「懺悔室」以外未経験です。
そのため、橋本陽馬を知りません。
※ヘブンズ・ドアーで殺し合い参加者を本にした場合、そこに記される記憶は精神側のもののみとします。
【ちいかわ@なんか小さくてかわいいやつ】
[身体]:伊地知虹夏@ぼっち・ざ・ろっく!
[状態]:健康、「岸辺露伴に攻撃できない」と書き込まれている
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:イヤッ!イヤッ!!(殺し合いは嫌だ)
1:わっ!(知らない人がいる!)
[備考]
※参戦時期は、あくむ編が終了した頃とします。
※個人名を認識していないため、名簿の「モモンガ」が知り合いだと気づいていません。
【桜井景和@仮面ライダーギーツ】
[身体]:こめっこ@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ
[状態]:健康
[装備]:ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&フレイムウィザードリング&キックストライクウィザードリング@仮面ライダーウィザード、
ウィザーソードガン@仮面ライダーウィザード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0?1
[思考・状況]基本方針:魘夢に罪を償わせ、こめっこちゃんにこの身体を返す
1:危険人物を倒す覚悟は出来てる。でも身体が普通の人なら、あまり殺したくない
2:露伴達と情報交換をする。その後は、できれば協力者になってもらいたい
3:城戸とケケラを探す
4:英寿の肉体は、ひとまず会って中の人格を確認したい
[備考]
※ 参戦時期は43話「創世Ⅴ:その名はギャーゴ!」です
[意思持ち支給品状態表]
【チャカ@ONE PIECE】
[身体]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:鞘の中
[思考・状況]基本方針:殺し合いの打倒
1:情報交換を続ける。特に異世界について、もっと詳しく聞きたい。
2:私も娘(ちいかわ)としっかり話し合いたい。
3:戦闘時はなるべく、私に肉体を使わせてほしい。
[備考]
※参戦時期はアラバスタ編終了直後。
185
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/25(金) 00:42:38 ID:0tMJcMaQ0
投下終了です
問題点等ありましたら、指摘お願いします
186
:
◆kLJfcedqlU
:2023/08/25(金) 08:04:02 ID:jns5GWTQ0
お疲れ様です
後藤ひとり 杉元佐一 リョースケ 神賽惨蔵で予約します
187
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:11:19 ID:nNHIL4X20
先に少し報告します。
本編開始後の特撮系統の変身アイテム支給禁止ルールについて、前に話していたフォームチェンジ用アイテムは支給可能なことを書き忘れていたので、まとめwikiのルールページに追記してました。
また、「私は最強」に登場させた支給品「プレミアムリビドークロスGreat mother@淫獄団地」の説明文での哺乳瓶内の液体について以下のように追記します。
・この液体は「おりこうミルク」と呼ばれ、その実態は母乳と麻薬の混合物である。
・ようはこれを飲んだ者の状態は、強制的に甘えん坊にされたものということである。
報告は以上です。
それでは、予約分を投下します。
188
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:13:21 ID:nNHIL4X20
ある街中の名前の無い民家の中で、ケケラはソファの上に座ってタブレットを眺めていた。
ケケラはこの部屋の中で最初の連絡の時間を待っていた。
そのまま彼はここで最初の放送の時間を迎えた。
そこで発表された死者達について思うことは特にない。
早い内に退場者が多めに出ることくらい、かつてのデザイアグランプリではよくあったことだ。
放送での他の情報についての精査は、名簿を確認してからにしようとした。
ケケラにとって、それらの重要性は誰がこの殺し合いにいるかで大きく変わるのだ。
そのためケケラは、タブレットが操作可能な状態に戻ってすぐに名簿を確認した。
結果、その顔に笑みが浮かんだ。
「ははっ、まさか本当にお前がいるとはなあ!桜井景和ぁ!」
そこには、自分の【推し】の名前があった。
「はあ…こりゃあとんだサービスだなあ」
ケケラは笑みを浮かべながらも、怪訝な感情も表情も混ぜる。
殺し合いという環境において、桜井景和はきっと止めるために奔走する。
その過程で、悲劇も確実に数多く起こるだろう。
桜井景和がそんな悲劇に巻き込まれる可能性も考えられる。
もしかしたらそれにより、自分の理想とする笑いが得られるかもしれない。
しかし、この殺し合いでは自分も参加者の1人とされている。
自分が生き残るには、桜井景和の死も必要となってしまう。
この殺し合いの環境で、必ずしも自分の理想が叶う保証はない。
桜井景和を理想の本物の仮面ライダーにできないまま、彼を死なせなければならないというのはやはり困る。
そのために、ここでの殺し合いの最終目標についてはやはり悩む。
「んでもって、身体側にはまさかの浮世英寿と鞍馬祢音がいるときたか…こいつらにはどんな奴がなってんのやら…」
身体側とされている名前にも、ケケラが注目すべき名は存在していた。
その中でも特に要注意なのは、浮世英寿だ。
浮世英寿は、直近でとんでもないパワーアップがあったとケケラは記憶している。
彼は、自分の母親である創世の女神から創世の力を受け継いだ。
それにより、グランドエンドを迎えるはずだったデザイアグランプリを別の形で終わらせた。
その結果、世界がどうなったかは知らない。
それを確認できるようになる直前に、殺し合いに巻き込まれたからだ。
もっとも、その力をそのまま使えることはおそらく無いだろう。
創世の力は下手したら殺し合いそのものを破綻させかねない。
さすがに、何らかの対策が施されているはずだ。
そうでなくちゃ困る。
鞍馬祢音については、そこまで大きく警戒はしていない。
彼女は確かに仮面ライダーナーゴとして戦っていたが、それはジャマ神仮面ライダーバッファの力でIDコアを粉砕されたことで、もう変身はできなくなったとケケラは記憶している。
IDコアが失われた以上、彼女の身体を当てはめられた者にナーゴへの変身アイテムが与えられていることはないだろうとケケラは考える。
とは言っても、デザイアグランプリ参加者の身体とそいつが使ってた変身アイテムを渡されたからといって、必ずしもそれを使えるとも限らない気もするが。
◇
(だがまあ…こいつらの身体を使っている奴次第では、俺が見たいものを見られるかもしれねえな)
桜井景和は一応まだ、浮世英寿と鞍馬祢音のことを仲間として認識していたはずだ。
とは言っても、浮世英寿とは創世の女神の処遇を巡って対立気味にもなっていたが。
しかしそれはともかくとして、少し思いついたこともある。
もし、今のその中身がどうしても相容れない者等だったりした場合、桜井景和はどのような反応をするだろうか。
そしてもしそいつらを殺した場合、仮面の下に隠すに相応しい涙を流すことになるだろうか。
そんな可能性を考えると、期待したくなる気持ちが出てくる。
先述したように、浮世英寿と対立気味だったことを基点にそそのかしてみたりすれば、その点からでも何か面白いものが見られるかもしれない。
鞍馬祢音についても、姉の桜井沙羅と仲が良かった点から何か言えるかもしれない。
(何にしても、今の景和がどんな姿をしているのかは知っておきてえな。そのためには、やっぱ誰か殺しておくべきか…)
先ほどのタブレット越しの放送で知らされた組み合わせ名簿、それには顔写真も付いているとのことだ。
手に入れれば、桜井景和がどんな姿をした誰の身体になっているかが分かる。
しかしそのためには、他参加者の殺害が必要とのことだ。
一応、ケケラには殺傷能力のある品物が支給されている。
その支給品とは、銃口がカエルのような形をした銃だ。
名もゲロゲロ銃(ガン)というらしい。
正直な気持ち、先に確認した支給品がカエルとタヌキの着ぐるみだったことから、これを見た時もおちょくってんのかと思った。
189
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:15:29 ID:nNHIL4X20
けれどもまあ、武器であることには変わらない。
着ぐるみよりはまだましだ。
ケケラはそうして、ソファに座りながら自分の今後の動向について少し悩んでいた。
そんな時だった。
『SET』
ケケラの耳に、聞き覚えのある音声が小さく聞こえた。
それは、デザイアグランプリの観戦において何度も何度も聞いた耳に馴染んだ音だ。
デザイアドライバーから流れる音声だ。
それは、ケケラのいる部屋の外から聞こえた。
壁や窓に挟まれていたため音は小さくなっていたが、確かにその音が聞こえたと感じた。
聞き慣れていなかったら分からなかったかもしれない。
ケケラは窓の方に目を向け、外の様子を見た。
そこには、自分も顔を知る男が立っていた。
浮世英寿、厳密に言えばその身体を当てはめられた参加者がそこに立っていた。
そいつは、室内のケケラを笑顔で真っ直ぐ見つめていた。
腰には先ほどの音声の元、デザイアドライバーが巻かれている。
ドライバーの右側には、これもまたケケラに見覚えのあるアイテム、マグナムバックルがセットされている。
隣には、『MAGNUM』の文字とマークが浮かんでいる。
それを見て、ケケラは外にいる相手が何をしようとしているのかをすぐに察する。
「ジュウジュウにくコースフォルムにチェンジした!」
外の浮世英寿の姿をした者は、そう叫んでマグナムバックルのリボルバーを回しトリガーを引いた。
『MAGNUM』
そんなこれまたケケラに聞き覚えのある電子音声と共に、窓の外にいる者の姿が変わる。
体は一度黒い装甲とスーツに包まれる。
マグナムバックルから出現した弾丸が、隣にあった『MAGNUM』の文字とマークを破壊し、そこから白い装甲を出現させる。
白い装甲は、口・顎部分から上は含まない上半身のものであった。
そして、背後から出現した大きな手がその装甲を掴み取り、体に合わせるようにスライドさせる。
同時に、頭上からキツネ型の白い面が降ってきて顔部分に被さる。
『READY FIGHT』
その音声と共に、変身が完了する。
本来の浮世英寿も変身していた仮面ライダー、『仮面ライダーギーツ』がそこに立っていた。
(………ちょっと待て、さっきのは変身の掛け声のつもりか?)
ケケラは一瞬、先ほどのジュウにく何とかチェンジの発言に気を取られた。
そんなことを考えていても、ギーツは止まらない。
ギーツはその手の中に出現した銃「マグナムシューター40X」の銃口を室内のケケラに向け、トリガーを引いて発砲した。
◆
ギーツの銃から放たれた弾丸は窓ガラスを割りし、室内にいるケケラへと音速で飛んでいく。
「うおっ!やべ!」
ケケラは一瞬の隙を見せながらも、相手が攻撃するつもりであることは流石に感付いていた。
発砲の直前か同時の辺りに、ケケラは前方に跳んだ。
弾丸は間一髪で、ケケラの滝和也としての後頭部をギリギリ掠めただけに済んだ。
ケケラは跳んだ先の床に片膝をつく形で着地する。
そして、窓の方に顔を向けて外にいる下手人の姿を再度確認する。
そこには確かに、自分もよく知る仮面ライダーギーツの姿があった。
「いきなりおそってくるワタシはまろうこん。よろしくね!」
「…本当に突然のご挨拶だな」
まろうこんの自己紹介に対し、ケケラはそう呟く。
こんな風に襲撃しておきながら明るくよろしくと言うその姿に、異常さを感じてしまう。
そしてまろうこんは立て続けに言葉を発する。
それにより、ケケラはさらに困惑させられることになる。
190
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:17:26 ID:nNHIL4X20
「うってきたよ!」
(確かに今、撃ってきたけどな。それ、わざわざ言うことか?)
「あっしはすごきつねポケモンです」
(確かにギーツは狐だが…「すご」と付けるのは自画自賛のつもりか?それにポケモンとは何だ?)
「ゆうひのうみにたくさんのあわがかさなってへんしんしちゃうなんて!!」
(確かに今お前は変身しているが、夕日の海にたくさんの泡?何を言っているんだ?)
「ひゃールン♪ルルルン♪ルルルン♪」
(急にどうした?)
何だかさっきから、まろうこんの言っていることの意味が分からなくなってくる。
こんなのギーツじゃねえ。
そんな言葉しか頭に思い浮かばなくなってくる。
ジーンがこの光景を見たら、絶対にブチ切れそうだななんてことも考えてしまう。
それでも一応、分かることはある。
何故だか、相手は喜んでいるようだ。
先ほど攻撃してきたことからして、獲物を見つけた喜びだろうか。
そうなのかどうかはともかくとして、相手が自分を殺そうとしていることには変わらない。
けれども、そう簡単に殺されてやるつもりもない。
そして、ケケラとしてはここで相手を返り討ちにするつもりもない。
ケケラが目指すのは、また別の道だ。
ケケラの視線は、ギーツに変身したまろうこんの背後に行く。
それこそが、ケケラの今この瞬間の目的となるものだ。
そこには、湖があった。
◆
「セカイは……ワシのものだ!」
まろうこんはそう叫び、銃を乱射しながら室内に向かって近付いてくる。
そうして放たれた弾丸の一つが、天井の照明に当たり部屋の中から光を消す。
他の家具も、銃弾の雨により破壊されていく。
部屋の中は、か い め つ状態に近付いていく。
「くっ!」
ケケラは膝を付いた姿勢から、ソファを盾にしながら立ち上がり、部屋の出入口の方へ向かって逃げる。
ケケラは部屋から出て、出入口に繋がる壁に身を潜める。
「あれでかくれたつもりか?かわいいものだな」
まろうこんはそう言いながら、自分が割った窓を潜り抜けて部屋の中へと侵入してくる。
『ドウン!』
「わわっそい」
まろうこんが入った瞬間、ケケラはゲロゲロ銃を持った手を壁から出して、まろうこんに向けて発砲した。
弾丸はまろうこんが持っていたマグナムシューターの銃身に命中する。
それにより、まろうこんは手に握っていたその銃を落としてしまう。
その隙に、ケケラは部屋から離れて建物内の別の場所へと移動する。
「やるねぇ」
まろうこんはそう呟く。
その言葉には、怒気も含まれているようだった。
「くそッ!どこにきえやがった!」
まろうこんはそう言いながらも、床に落とした銃を拾おうとする。
そうしている折に、人が階段を上っていくような足音が聞こえてきた。
相手はどうも建物の2階に逃げようとしているようだった。
その足音はやがて、まろうこんが現在いる部屋の天井から聞こえてくるようになる。
どうやら丁度真上の部屋に移動したようだった。
「みつけたネマシンガン」
そんなあろうこんなことを言いながら、まろうこんは天井に向かって再び銃を乱射し始めた。
天井には無数の穴が空く。
その真上の部屋の床も同じだ。
その部屋の中は、下から来る銃弾に襲われていた。
191
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:18:44 ID:nNHIL4X20
しかしまろうこんから見えていない以上、狙って当てることはできない。
銃弾はその部屋にいる男、ケケラにいくつか掠めたが、彼にとっては運良くまともに弾が当たることはなかった。
せいぜい、服を少しだけ破った程度だ。
ケケラの足音はやがて、上の部屋を通り過ぎていく。
それも、先ほどまろうこんが入ってきた、外の方角に向かってだ。
ケケラは明らかに、2階から外に逃げようとしているようだった。
「しのみずうみへあんないします。そこはかとなく しずめてみよう……」
まろうこんのこの発言は、今いる民家の近くに湖があることを認識してのことだ。
殺すついでに、水の中に沈めてやろうと、そんなことをするつもりのようだった。
しかし結果として、まろうこんのこの認識は誤ったことになる。
まろうこんがゆっくりと部屋から再び外に出ようとしていたら、水の中に何かが落ちる音が聞こえた。
まろうこんに一瞬見えたそれは、明らかに人影だった(ヒトカゲじゃないよ!)。
ケケラは、2階から直接湖の中へと飛び込んだ。
◇
ケケラは今、自身に支給されたカエルスーツを着用していた。
2階に逃げた後すぐに着た。
着替えには手間取らなかった。
これを使おうと思って手に取り、体に押し付けた瞬間あっという間にスーツに身を包まれていた。
このカエルスーツはただの着ぐるみではなく、特殊な効果を持つアイテムだった。
カエルスーツを身に纏った瞬間、ケケラの肉体は何故だかカエルのように跳び跳ねてでしか移動できなくなった。
しかし、それに対して何かを思う暇はなかった。
下からの多量の銃弾が現在進行形で自身を襲っていたからだ。
移動方法を強制されることに困惑しつつも、ケケラは2階の部屋の窓を開け、そこから身を出して跳んだ。
すると、明らかにジャンプ力が上がっていたことを実感できた。
結果、建物から近いとは言え少しは距離のある湖まで、ひとっ飛びで直接着水した。
このためにカエルスーツを着用したのだ。
目的はもちろん、このまま水中を泳いで逃げることだ。
最初発見した時はおちょくっているのかと感じたこともあり、カエルスーツの説明書を読んだ時も半信半疑だったが、この場を乗り切るにはこれしかなかった。
こうして、全身タイツカエル男滝和也な姿になったケケラは、水の中に飛び込んだ。
そのまま彼は、水中を泳いで行く。
その水泳速度は、通常よりも速い。
最初は快く感じなかった支給品だが、思った以上の効果を発揮していた。
このままケケラがまろうこんから離れようとした、その時だった。
「へんけいするでゲスよ〜!」
『REVOLVE ON』
「サア クルンクルンダ!」
『SET FEVER』
(!?)
思わぬ音声が水中越しでくぐもって聞こえ、ケケラの動きが一瞬止まる。
軽快な変身待機音も同時に流れてくる。
それは、彼が知る中でもどちらかと言えば強い方と言えるアイテムから流れる音声だったからだ。
(いや、アレは運が良くなけりゃ使いこなせねえ。焦らず進まねえとな)
一瞬動き止めるも、ケケラは泳ぎを直ぐ様再開する。
ケケラは、暗い闇に包まれた水中を一人静かに素早く泳いでいった。
◇
『GOLDEN FEVER』
「……いらねぇ……」
結果的に、まろうこんがこれ以上ケケラを追うことはなくなった。
まろうこんは新しく出したアイテムで、この場で望み通りにすることはできなかった。
192
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:20:25 ID:nNHIL4X20
まろうこんの3つ目の支給品は、フィーバースロットレイズバックルという名のアイテムだ。
これは、デザイアドライバーにセットすることで使えるようになる。
このアイテムの特徴は何といっても、スロットを回すことで他のレイズバックルの力をランダムでどれか一つ使えるようになることだ。
なお、その対象は存在する全てのレイズバックルというわけではないことをここに留意しておく。
それでも、たった一つで様々な力を使うことができるようになるのは強力と言える。
しかしやはり、どんなバックルの力を使えるかはランダム、選べないという点がやはりネックとなる。
一応、一度回した後に引き直すこともできるが、そのためには一回一回バックルを取り外さなくてはならないため、手間がかかる。
まろうこんは今この場で、そのバックルを使用した。
元から持っているマグナムシューター40Xで狙撃することは、相手が暗い湖の中に逃げ込んだため難しくなったためだ。
しかし、まろうこんはそのバックルからここで役立つものを引き当てられなかった。
バックルのスロットが指し示したマークは「???」、ブーストかアームドの何れかを更にランダムで出すものだ。
そしてここでまろうこんが引き当てたのは、「アームドハンマー」だった。
これにより、まろうこんの手元に新たにピンク色をしたハンマーが出現する。
しかし、これで水の中を逃げる相手を追うことはできない。
これが出てきたことに困惑している間に、ケケラとの距離は更に引き離されていく。
もう、再抽選を行ったとしても間に合わないほどに。
◇
「ぷはっ」
ケケラが水面から顔を出す。
もう、先ほどまでいた陸地からは完全に離れていた。
向こうからこちらを確認することは難しいほどの距離だ。
水面から顔を出したのは呼吸のためだ。
流石にカエルスーツに水の中でも呼吸をどうにかする機能はなかったようだった。
これで長く潜れたら、それはそいつが元から肺活量の凄まじい奴なだけだ。
「ふー…どうやらプロペラは出なかったみてえだな」
ケケラが一瞬恐れたのは、相手が空を飛んで追ってくることだ。
フィーバースロットは、空を飛べるようになるアームドプロペラが出てくる可能性も一応ある。
呼吸のために水面から出たところを、空から攻められるなんて可能性が思い浮かんでいた。
しかしそれは、少なくとも今は杞憂となった。
「にしても…まさかあのギーツがあんな変な奴になるとはな…本当に何だったんだあのまろうこんってのは」
浮世英寿の身体となっているのが危険人物である可能性は期待はしていた。
しかしまさかあんな風になっているとまでは想像していなかった。
一応、まろうこんは結構極悪そうな奴ではあるようだった。
ただ何故だか、一人称や口調がブレブレだった。
ところどころ何が言いたいのかも分からなかった。
デザイアグランプリで色んな時代の色んな奴を見て来たつもりだが、あんな何かおかしいとしか表現できないような奴はおそらく初めて見た。
安心できることは、やはり流石に創世の力は使えなさそうなことぐらいだろう。
「………あいつを景和に会わせたらどうなるかな?」
ケケラはやはり、そういった点についても気になった。
英寿の中身があんな奴だと、桜井景和がどんな反応をするのか興味深く感じる。
中身がアレなら、殺すことへの躊躇はなくなるだろうか。
それともまた別の反応を示すだろうか。
殺させたとしても、そこから理想の仮面ライダーにすることに繋げられるかどうかは分からない。
それでも、『オタク的』な好奇心がそんな風にもしてみたいという気持ちを大きくしていく。
「何はともあれ…まずは桜井景和を探さねえとな」
何にしても、まずは桜井景和の無事を確保できなくてはケケラの目的は達成できない。
自分の見えないところで下手なことをして死なれたら困るどころの話ではない。
最悪、もし桜井景和がかなりとても弱い身体を与えられていたらと思うと、まろうこんと戦わせるどころじゃなくなる。
もしもの時は、先ほどの放送で知らされた身体の取り替えが可能な施設とやらを探して、景和をもっと強い身体に取り替えさせることも考えるべきだろうか。
そういったこともあり、ケケラとしてはやはり組み合わせ名簿が欲しいと感じる。
そのためにもどこかで殺すのに都合の良い相手と遭遇できないかと思いながら、ケケラは暗く冷たい湖の中を泳いでいった。
193
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:21:23 ID:nNHIL4X20
【C-3 湖の中/深夜】
【ケケラ@仮面ライダーギーツ】
[身体]:滝和也@仮面ライダーSPIRITS
[状態]:健康
[装備]:カエルスーツ@スーパーマリオシリーズ
[道具]:基本支給品、タヌキスーツ@スーパーマリオシリーズ、ゲロゲロ銃@ONE PIECE
[思考・状況]基本方針:桜井景和を理想の仮面ライダーにする
1:何はともあれ、まずは桜井景和を探す。
2:この支給品、おちょくってんのかと思ったが…意外と役に立つか?
3:組み合わせ名簿のデータを手に入れるため、誰か殺しておきたい
4:まろうこんを景和に会わせてみたい。どんな反応をするのやら
5:鞍馬祢音の身体は誰が使っているのやら。景和に会わせたら笑えそうな奴ならいいが
[備考]
※参戦時期は慕情編終了直後。
【ゲロゲロ銃@ONE PIECE】
バロックワークスのエージェントの1人、ミス・ファザーズデーが使用する銃。
銃口がカエルのデザインをしている。
放たれる弾丸もカエルの形をしている。
原作では、Mr.7が使用する黄色い銃の弾丸との合わせ技で撃った二つの弾丸を衝突・破裂させる芸当を披露していた。
◆
「ワタシをおそれたんだとおもいます」
そう言いながら、完全にケケラを見失ったまろうこんはその場で変身を解除する。
「どうやら……ちょっぴりなまいきみたいだね」
まろうこんは逃げられたことに対する悔しさと怒りは感じているようだった。
「ちっこうなりゃはらいせだ」
「たるお!きょうもこらしめてあげる」
「でもいま……たるおはいない……」
まろうこんはここにいない者の名を呼ぶ。
そのことを彼女自身自覚していた。
「あっ!たるおヲタイホシマショウ」
思いつきみたいな感じでまろうこんはそう言った。
彼女は、その他名簿に載っているコリンクを自分の知るたるおかもしれないと認識しているようだった。
………別にそういう訳ではなく適当に言っているだけかもしれないが。
「なかま?うん。なかまはなにもこうかがないけどおみせでたかくうれるぞ!」
まあ何にせよ、彼女は自身の欲望を最優先にすることに何も変わりはなさそうだった。
「アオオオオォォォォォォォンッ!!」
まろうこんは突如叫び声を1つ上げ、そしてまたどこかへと歩いて行った。
まろうこんはいつもあばれたくてウズウズしています。
【C-4 街 西端寄り/深夜】
【まろうこん@バケモン混沌のダンジョン 罵愚の探検隊】
[身体]:浮世英寿@仮面ライダーギーツ
[状態]:健康
[装備]:ギーツのIDコア&デザイアドライバー@仮面ライダーギーツ
[道具]:基本支給品、マグナムバックル@仮面ライダーギーツ、フィーバースロットレイズバックル@仮面ライダーギーツ
[思考・状況]基本方針:みんな きえてもらいます(優勝狙い)
1:エーンテイ
2:たからっていうのはな、じぶんのものにならなきゃ、いみがねえんだよ
3:スペシャルエピソード"てんさいまろうこん"があそべるようになった!
4:さあいこう!たるおはにげだせないぞ!
5:う〜〜〜〜〜ヒッヒッヒッヒッヒッ!
6:すべて、ダークライのしわざです
[備考]
※ギーツのIDコアは、元の使用者である浮世英寿の身体でないと使用不可なものとします。
【フィーバースロットレイズバックル@仮面ライダーギーツ】
レイズバックルの一種。
デザイアドライバーにセットした状態でレバーを押してスロットを回転させると、そうしてランダムで出てきた図柄のレイズバックルに対応した装備を装着させる。
一度バックルから外した後に着け直し、回し直すという形で装備のリセマラをすることは可能。
図柄は「マグナム」、「ゾンビ」、「ニンジャ」、「モンスター」、「ビート」、「???」の6種類。
「???」が出た場合は、ブーストかアームドのいずれかから更にランダムで抽選される。
デザイアドライバーのもう片方に装着されたバックルと同じ図柄が出た場合、その力を数倍に高めるフィーバー状態となる。
194
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/08/26(土) 22:22:42 ID:nNHIL4X20
投下終了です。
タイトルは「0池や 蛙飛びディアルガ』というべきそんざいになっているのだ。 水の音0ヘイヘイ!」とします。
195
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/27(日) 00:18:42 ID:0kkSGBhI0
投下乙です
黒江、アーカード予約します
196
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/08/27(日) 13:34:31 ID:sXXA3z7A0
ナギ、佩狼、真希、ピッコロ予約します。
197
:
◆TruULbUYro
:2023/08/27(日) 18:17:57 ID:3ARMTSS.0
申し訳ありませんが、延長させていただきます。
198
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:15:06 ID:OVAZcvjA0
締め切り間近まで遅くなりましたが、投下します。
199
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:15:53 ID:OVAZcvjA0
まだ暗い夜の中、不気味な人面の月が浮かんでいる。
―その月の光を受けて、銀色に輝く鎧が空を飛んでいた。
鎧を着た身体に宿る精神の名はゾーフィ。
赤い異星人と袂を分かったゾーフィは空中を移動していた。
空中からといっても、深夜の闇の中では周囲は見えづらい。
しかし、月明かりで見えた街の様な場所を目指して移動する。
人間の身体となり、元々の飛行能力を支給されたスーツで補っているゾーフィだが、
身体に対して不思議と違和感を感じていなかった。
ふと、プロフィールに書いてあった早田進次郎の情報を思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数十年前、科学特捜隊の一員だった父・早田進が光の国の巨人と同化し、地球を怪獣・宇宙人から守る為、戦っていた。
その後、とある侵略者が送り込んだ“宇宙恐竜”との戦いで、早田と光の巨人は分離し、巨人は母星へ帰ってしまう。
しかし、巨人の力の一部は早田隊員に残り、
その息子の進次郎にも光の巨人の身体・特殊能力、―通称“ウルトラマン因子”が受け継がれた。
そして、進次郎も父と同じく、科特隊に入り、
新たな“ウルトラマン“として、侵略者から地球を守る為、戦っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
200
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:16:52 ID:OVAZcvjA0
(“ウルトラマン”…、不思議と縁のある言葉だ。)
“”光の国”、光の星とは似て異なる…
多次元宇宙(マルチバース)の中の一つの世界か。
成程、ウルトラマン因子―光の国の力を受け継いでいるだけあって、この身体は本来の身体より劣るものの、動きやすい。快適さも感じる。
しかし、夜中の移動と先程の戦闘の緊張感からか、段々と眠気を感じて来た。
そして、元々の身体では感じる事のなかった眠気が不本意ながら、人間になってしまった事を否応なく思い出させる。
(放送の事もある。早く、身体を休ませる場所を見つけよう。)
気を紛らす為に使命について―人間について、改めて考える。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
地球に来る前の情報では人間―地球人は文明も低く、肉体も脆い存在との事だった。
しかし、地球を観察する中で、短期間の内に発達する技術力や危機的な状況での団結力など
称賛すべき所もあるが同時に
警戒に値する力を持っていると感じていた。
更に、この会場では進化した存在と思われる強力な能力を持った者も現れた。
この殺し合いを開いた強い悪意を持った者―魘夢。
先程出会ったどのような攻撃も効かなかった名前の知らない男。
そして、この身体―早田進次郎。
多次元宇宙の存在とはいえ、異星人の力を持った新しい人類―。
それらを踏まえ、“光の星”の判断は正しかったと思う。
―彼らの様な人間が宇宙に進出し、他の星々に害を及ぼす前に“駆除”しなければ。
人間の進化は早い。
優勝し、生き延びる者は勿論、
月の墜落でも生き延びる者―
主催を倒し、生き延びる者―
そのような有り得ない者が現れてもおかしくはない。
この会場で、人間が生き延びる可能性
はごく僅かでも潰さなければならないのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
201
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:17:49 ID:OVAZcvjA0
心の中で、自身の使命を振り返った後、眼下の景色が変わり、周囲を見渡す。
(ここは…、廃墟の群れのようだな。)
そこは災害や核戦争で住民も死に絶えてしまったかの様な、壊れた民家やビルが並ぶ区画であった。
(だが、この壊れた町並みも永遠ではないだろう。どこかに終わりがある筈だ。)
予想通り、程なくして廃墟の中に建つ一軒の正常な屋敷を見つけた。
着陸し、待ち伏せている者がいないか気を付けながら、屋敷内へ足を運ぶ。
(そろそろ、時間だ。ここで放送を待つとしよう。)
殺し合い開始以来、動き続けた光の使者はそこでようやく足を止めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
屋敷の中に入ったゾーフィは屋敷内の一室―
何故かテレビや机等の家具が積み上げられていたが、恐らく客間―で放送を待っていた。
やがて、自動的にタブレットが起動し、放送が始まった。
「一時間の内に、二人も…、何という事だ…。」
タブレットに送られた画像を見て、愕然とする。
予想はしていたが、やはり赤い外星人以外の異星人達―人外の者達―も参加させられていた。
人間と違い彼らは助けたいが、現状ではそれは難しいだろう。
「玉壺、クラウンイマジン…、違う星から来た知的生命体よ。
済まない、愚かな人間の開いた殺し合いに巻き込まれてしまって。
…どうか安らかに眠ってくれ。」
ゾーフィは、犠牲となった人外の参加者に―
知らない事とはいえ、殺し合いに乗る予定だった外道達に哀悼の意を示した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
202
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:19:04 ID:OVAZcvjA0
弔いを終え、ゾーフィは今後について思案する。
一時間に六体もの人間が“駆除”されたという事は
この悪趣味な催しに積極的な者は多い。
自分が動いて、殺し回る必要はないという事だ。
しかし…。
(人間の参加者が多いとはいえ、中には地球外の生命体もいる。彼らが犠牲になる事は避けたい。
…無論、メフィラスの様な悪質な内面を持っていれば、殲滅の対象に含むが。)
続いて、名簿を確認する。そこには知った名前があった。
(やはりいたか…、リピアー。)
名簿にある“ウルトラマン”の名。
それは地球に来た同族、リピアーに人間が付けた名前だった。
(その名で載っているという事は、人間の為に戦うのか、リピアー。)
無論、進次郎の情報に乗っていた多次元宇宙から来た別人の可能性もある。
しかし、まずは本人が居ると考えて、行動した方がいいだろう。
(リピアー…。再会すれば、私は協力を持ち掛けるつもりだ。しかし、断われば…。)
排除も視野に入れなければならない。
と、頭の中に浮かんだ言葉を飲み込み、再度、名簿に目をやる。
どうやら、人間を殲滅する切掛を作ったメフィラスも招待されていたようだ。
(メフィラスについては、話す事はないな。
その口が甘言を囁く前に、処断するとしよう。)
悪質宇宙人にはそう切り捨てると、他の情報について考える。
203
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:20:10 ID:OVAZcvjA0
入れ替えの名簿については人間と異星人の区別の為に必要だが、殺し合いに肯定的な以上、いずれ手に入るだろう。
が、先程の放送で気になる言葉が出て来た。
(入れ替え装置か…。)
個人的な思いはあるものの、自身の身体はこのままでも構わない。
しかし、人間にされてしまった他の宇宙人らを元に戻す事が出来るかもしれない。
(それが在りそうな場所は―)
科学特捜隊 日本支部―
進次郎のプロフィールと新たに更新された地図に載っている建物だ。この場所から近くにある。
(この人間の情報に載っていた科学特捜隊…。行って見る必要はありそうだ。)
組織の活動内容・研究からして入れ替え装置の様な機械を扱っている可能性は高い。
そして、ゾーフィに支給されたスーツもそこで開発されたらしい。
戦闘で破損する事も考え、修理道具・方法を手に入れる事も必要だ。
問題は都市部にあり、人が集まるかもしれないが…、本心さえ隠せば誤魔化せるだろう。
それにしても…。
(この近くに私を配置したという事は、この建物へ誘導する為か? 魘夢。)
ゾーフィの初期配置は科特隊の基地へ近く、
彼は記載されている情報を見て、基地への移動を考えたが、その思考も織り込み済みかもしれない。
しかし、この会場での足掛かりは必要であるし、
この屋敷に滞在し使える物はないか詳しく調べる事も頭に浮かんだが、
時間をかけるとまだ近くにいるであろう初めに敵対した男か、本心を漏らした赤い外星人が装備や協力者を携えて、挑んで来るかもしれない。
……それを考えると仕方ない。
積極的な参加者を迎え撃つ為にも予定通り、基地へ向かおう。
思考をまとめるとゾーフィは立ち上がり、部屋を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
204
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:21:19 ID:OVAZcvjA0
部屋を出たゾーフィは、顔を覆っていたマスクを外し、洗面所にいた。
科特隊へ行く前にまだ少し残っていた眠気を振り払う為、顔を洗いたかったからだ。
『顔を洗う』という行為も元の身体には必要のなかった行動だ。
人間の身体というものは食事以外にも、
普段の状態を維持する為の行動が多いとつくづく感じる。
と、その時に洗面台の鏡で、初めて仮初めの身体の主を見る事が出来た。
まだ若い、未来ある少年の姿がそこにあった。
(進次郎…。君の身体を宇宙の平和の為に…。人間を滅ぼす為に使わせて貰おう。
……心配する事はない。全てが終われば君も…、皆と同じ所へ連れて行こう。)
そう呟き、ゾーフィは歩き出す。
この身体の職場に向かって。
人類を葬る為、人類を守る為の場所に向かって。
【D-7 句楽邸/深夜】
【ゾーフィ@シン・ウルトラマン】
[身体]:早田進次郎@ULTRAMAN
[状態]:健康
[装備]:ULTRAMANSUIT〈B TYPE〉@ULTRAMAN
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:(魘夢を含めた会場内の)人類の殲滅
1:科学特捜隊 日本支部へ行き、入れ替え装置の捜索及びスーツの修理道具・方法を手に入れる。
2:人間と入れ替わってしまった異星人達を救いたい。(メフィラス・赤い外星人〈メトロン星人〉を除く。)
3:人間以外の協力者を見つけたい。リピアー(ウルトラマン)を説得して、仲間にしたい。
4:殺し合いに乗っている者が多いと判断し、様子見に回る。
又、優勝を狙うつもりはないが、光の星からの後任の為に、少しでも危険な人間を減らしておきたい。
5:“切り札”こと天体制圧用最終兵器(ゼットン)の奪還・回収。
[備考]
※参戦時期は天体制圧用最終兵器(ゼットン)起動前
※魘夢(ウタ)と泉研(句楽)を進化した人類と思っています。
※人外の参加者を全て異星人と思っています。
※人外でも、性格によっては排除の候補に入れる可能性があります。
205
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:22:21 ID:OVAZcvjA0
【ULTRAMAN SUIT〈B TYPE〉】
科学特捜隊に所属する井出光弘が開発した初代ウルトラマンを模した早田進次郎専用の戦闘用パワードスーツ。
〈B TYPE〉は科特隊の協力者・ヤプールの技術が入り改良され、スーツの軽量化に成功し、高速での飛行能力等、〈A TYPE〉に比べ、各機能が格段に上昇している。
装備として、両腕に装備された兵装〈スペシウムブレード〉があり、組み合わせる事でお馴染みの『スペシウム光線』を発射する。
また、両掌部にある〈スペシウムコア〉からスペシウムエネルギーをリング状にし、ウルトラスラッシュ(八つ裂き光輪)を作成する事が出来る。
他に、装着者への負荷を考慮したリミッターを解除する事で3分間だけスーツの性能を限界まで引き出す事が出来る。
その際、胸のカラータイマーもとい胸部スペシウムコアが赤く発光し、全身も赤く輝く。
206
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/08/29(火) 19:23:23 ID:OVAZcvjA0
投下終了します。
タイトルは【光の星から宇宙の為に】です。
コンペ時に支給品情報を載せていなかったので、追加します。
個人的に内海くんに早く憧れのウルトラマンに会って欲しいという気持ちがあり、執筆しました。
誤字・脱字、話のおかしい所があれば、ご指摘お願いします。
207
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/29(火) 21:29:34 ID:AW65GHn60
投下乙です
自分も投下させていただきます
208
:
今宵は化物(わたし)たちが主役
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/29(火) 21:30:53 ID:AW65GHn60
誰もいない道路に座り込み、私はタブレットを操作していた。
「環さんたちは……いないみたいだね……」
知り合いの名前がないことに、安堵のため息が漏れる。
合わせる顔がないというのもあるけど、彼女たちが危険にさらされたなかったのが素直に嬉しい。
こんな地獄みたいな戦いに参加させられるのは、私だけで充分だ。
ただ厳密に言えば、知ってるかもしれない名前はある。
「佐倉杏子」。ほんの少しの間だけマギウスの翼にいた子が、こんな名前だった気がする。
もっとも私は、ほとんど関わることはなかったけど。
それに彼女は、肉体だけが参加させられている。
仮に会ったところで、どうにもならない。
そういえば、私の名前が「黒江」としか書いてないのはなんでだろう。
他の魔法少女に、ほとんど自分のフルネームを教えてなかったせい?
まあ他にも本名とは思えない名前がいっぱいあるし、深い意味はないのかもしれない。
「それより問題なのは、こっちだよねえ……」
私の視線の先にある名前は、「黒死牟」。
この体の本来の持ち主も、この場にいる。
もし遭遇したら、どうなるんだろう。
問答無用で襲いかかってくるのか、それとも話し合いになるのか。
プロフィールを読んだだけの私では、想像できない。
「後は、地図も配信されてるんだっけ……」
画面を切り替えようとした、その時。
「フハハハハハハ!!」
多分そう遠くない場所から、異様にテンションの高い笑い声が聞こえてきた。
◆ ◆ ◆
「そうか! 貴様もいるのか、少佐!
まだ戦争がし足りないらしいな!
いいだろう! 今度は私が直々に、地獄に送り返してやる!」
声の方に行ってみると、そこには街灯の下でタブレットを見ながら叫ぶお兄さんがいた。
たぶん、かなりのイケメンなんだけど……それが台無しになるくらい、表情が怖い。
何だか地獄に送り返すとか物騒なこと言ってるし、たぶん関わらない方がいい人だ。
私は、すぐにその場を立ち去ろうとした。だけどそれより一瞬早く、お兄さんがこっちに気づいた。
「っ!」
私は、慌てて逃げ出した。
「おいおい、つれないじゃないか」
しかし回り込まれてしまった!
「え、な、なんで? 距離、50メートルは……。
加速の魔法?」
「まあ、落ち着け。今の私は、誰彼かまわずケンカを売るような気分じゃない。
化物(フリーク)同士、仲良くお話ししようじゃないか。
おっと、中身まで化物とは限らんのだったな。これは失敬」
「フレーク……? コーン……じゃないですよね?」
「むう? 微妙に言葉が通じていないのか?
人ならざるもの、ということだ」
「人じゃないもの……」
私に、否定はできない。
魔法少女になり、魔女に堕ちた私は、人間と呼べる存在から遠ざかってしまったのだから。
209
:
今宵は化物(わたし)たちが主役
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/29(火) 21:31:54 ID:AW65GHn60
「そう、ですね……。
私も……もう人間じゃないですね……」
「何やら、訳ありのような言い方だな。
詳しく聞かせてもらおうか」
私は魔法少女について自分の知っていることを、洗いざらいお兄さんに話した。
初対面の人に言うようなことじゃない。
でも言ってしまったのは、それで少しでもこの心が軽くなればいいと思ったのかもしれない。
お兄さんは最初、興味津々という様子だった。
でも話が進むにつれ、その表情はどんどん険しくなっていった。
「気に入らんな」
一通り話が終わると、お兄さんは低い声でそう言った。
「まあ、私がとやかく言えた立場ではないかもしれんが……。
まだ判断力が未熟な若者を狙い、甘い餌をぶら下げて『人間でなくなる』という重要な部分を伏せて契約を結ばせる。
ヘドが出るほどに悪質だ。
それに……化物は人間が倒すからこそ美しいのだろうに」
その言葉は、魔法少女というシステムそのものを非難するものだった。
でも私には、どこか自分が責められているように感じられて……。
気がつくと、私はまた逃げだそうとしていた。
「おいおい、まだ話している途中だろう」
そして、また回り込まれてしまった。
「何か私の言葉が気に触ったのなら謝罪するが……。
敏捷性を強化するこの腕輪をつけた私から、逃げられるとは思わないことだ」
そう言いながら、お兄さんは右腕につけられたリングを見せつけるようなポーズを取る。
あの異様な足の速さは、そういうことだったらしい。
「まあ貴様がその体を使いこなせていれば、逃げることも可能だったろうが……。
動きが雑すぎる。貴様、この1時間ろくに慣らしをしなかったな?」
その通りだ。私はここに連れてこられてから今まで、何もしていなかった。
ただ、漫然と時間を過ごしていただけだ。
「あなたの言う通りです……。私は、何もしなかった……」
気がつくと、私は地面に膝をついていた。
「もう、何もしたくないんです……。
誰も助けたくないし、誰にも助けられたくない……。
死んで、やっと解放されたはずだったのに……こんな体でまた生かされてる!
私は……どうしたらいいんですか?
教えてくださいよ……」
私は、すがるようにお兄さんの顔を見上げる。
「すまないが、私におまえを導く権利はない。
私もまた、逃げた者だからだ。
人間であることに耐えられず、化物になってしまったのが私だ」
「それじゃあ……お兄さんも人間じゃないんですね」
「ああ、そうだ……。
本来の私は、吸血鬼だ。
名前はいろいろあるが……名簿にはアーカードと書かれているようだな」
「吸血鬼……」
完全に空想上の存在だと思っていたものが実在することに、ちょっとビックリする。
まあ魔法少女だって一般的には実在すると思われてないし、今の体は鬼なんだけど。
「さて、それを知ってどうする、魔法少女よ。
もう一度言うが、私ではおまえを導けん。
だが、おまえが勝手に学び取れる何かはあるかもしれないな。
私と来るか? それとも、一人でいくか?」
「わざわざ、聞かないでくださいよ……」
私は、ゆっくりと立ち上がる。
「このままさまよい続けてたって、何にもなりません。
だったら、少しでも変われるかもしれない方を選びます」
「いいだろう。歓迎するぞ、魔法少女」
私の言葉に、アーカードさんが笑う。
ものすごく怖い笑顔で。
210
:
今宵は化物(わたし)たちが主役
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/29(火) 21:33:12 ID:AW65GHn60
正直ちょっとだけ後悔したけど、この選択は間違ってないと思う。
「自分も逃げた」と、アーカードさんは言った。
でも今の彼は、そんな弱い人には見えない。
この人は今まで、どんな経験をしてきたんだろう。
それを理解すれば、私が進むべき道も見つかるかもしれない。
「さて、どこに行こうか」
考え込む私をよそに、アーカードさんはタブレットを取り出す。
どうやら、地図を見ているらしい。
そういえば、私もまだ見てなかったっけ……。
「どうやらハレルヤランドというのが、向こうに見える遊園地のようだな。
あれはあれで興味深いが……施設の多い、南東の市街地を目指す方が面白そうか。
この体に縁のある施設もあるようだしな。
本来の彼も、ここを目指す可能性は高い」
この体……今のアーカードさんが使ってる、銀髪のイケメンお兄さんに縁のある施設があるらしい。
どれだろう。
「ここからは、地下鉄で移動できるのか。
よし、さっそく向かうぞ。
ついてこい、婦警2号」
「え、何号って?
あの、私、黒江って名前で……」
「そうか。では行くぞ、クロエル」
「いや、なんか天使みたくなってますけど!?」
私の言葉にかまわず歩き出すアーカードさんさんを、慌てて追いかける。
気がつけば、少しだけ心が軽くなっている気がする。
ひょっとして、私に気を遣って軽口を叩いてくれたんだろうか。
環さん……私、もうちょっとだけ生きてみるよ。
もう遅いのかもしれないけど、それでももうちょっとだけ。
【C-4 街 南部/深夜】
【アーカード@HELLSING】
[身体]:ロナルド@吸血鬼すぐ死ぬ
[状態]:健康
[装備]:フリントロック式44口径6連発リボルバー(残弾50)@ONE PIECE、星降る腕輪@ドラゴンクエストIII
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:主催の撃破
1:積極的に戦うつもりはないが、向こうから攻撃されれば容赦はしない。
2:駅に行き、地下鉄で南東の街に向かう。
3:少佐はサーチアンドデストロイ。
4:できればロナルド本人に会っておきたい。
[備考]
※参戦時期は本編終了後
【黒江@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[身体]:黒死牟@鬼滅の刃
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いをする気は無いけど…。
1:アーカードに同行する。
2:黒死牟さんにあったらどうしよう……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
【星降る腕輪@ドラゴンクエストIII】
装備すると、素早さが2倍になる装飾品。
「III」ではイシスの宝として安置されている。
211
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/08/29(火) 21:34:38 ID:AW65GHn60
投下終了です
問題等ありましたら、指摘お願いします
212
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:48:32 ID:dLqvtdMM0
投下します
213
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:50:52 ID:dLqvtdMM0
「どういうことだよ……。」
禪院真希が、そう呟くのも当然な話だ。
何しろ、自分が壊した家の者達が生きているからだ。
あくまで彼女が聞いただけの話だが、非術師に殺された呪術師は、死後呪いに転ずるという。
ここにいる直哉や甚市は、呪いになった者ではないのかと考えたが、分からないままだ。
そして、彼女がもう2人知っている名前があった。
封印されたはずの五条悟に、高専同期である乙骨によって殺された夏油傑。
ついでに、身体だけの参戦だが、渋谷で出会った伏黒甚爾の名前まであった。
五条悟ならば与えられた肉体にもよるが、助けにはなるだろう。
いや、あの性格に強さが備わっていないならば、助けにならないかもしれないが。
だが、それ以外の死者は、到底味方になれないような相手ばかりだ。
「ま、思い知らせてやりゃ良いだけか。再生怪人ってのは決まって弱いってな。」
また会えたとしても、今までとは違う関係を築けるような相手ではないのはよくわかっている。
生き返ったのか、それとも転生したのか知らないが、また殺せばいいだけの話だ。
尤も、そのうち1人は不運にも死んでしまったようだが。
■
「玉壺……だと?」
魘夢から死者の報告を聞き、佩狼はそう呟いた。
ただ、呟いただけで終わり。怒りを見せることなく、だからと言って歓喜を見せることもなく。
ただ、魘夢の声が聞こえた方向をじっと見据えていた。
「知り合いだったのか?」
その様子を案じてか、ナギが声をかける。
ナギからすれば、8人も死者が出たのは驚きだったが、特に知っている者が呼ばれることは無かった。
ただ、自分の村を滅ぼした国の女王が、名簿に載っていることは分かったくらいだが、それより佩狼のことが気になった。
「名前を知っているだけだ。十二鬼月の話はしたな?」
同じ十二鬼月ではあるが、佩狼は何度も構成員が殺されている下弦の鬼なのに対し、玉壺は100年以上誰も殺されていない上弦に属している。
食った人の人数も、単純な力も、てんで比べ物にならない。
そもそも当の佩狼でさえ、会っても覚えてもらうことは無いだろう。
生存者の名簿の中には、同じ上弦の鬼の黒死牟の名前もあったが、同じく面識のある相手ではなかったのでどうでもよかった。
「でも、仲間が殺されたら思うことがあるんじゃないか?ほら、なんかこう…悲しいとかさ。」
214
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:51:21 ID:dLqvtdMM0
ヤマタイ国の侵略を受け、仲間や家族を失ったナギだからこそ思うことだ。
それからヤマタイ国を守る兵士の一人になったとしても、その時の悲しみを忘れた訳ではない。
「人間のようなことを言うな。大した付き合いも無い者のことを悲しめと言われても、無理な話だ。
そんな下らん心配をするぐらいなら、あの世からの迎えが来ないか気を配れ。」
「おむかえでごんす。」
不意に彼等の近くを、長い鼻と一本の毛が特徴的な生き物が通ったが、見なかったことにした。
「分かってるよ。おれは言われなくても生きて帰るつもりだ。行こうよ。」
「ああ……ちょっと待て。煉獄!!?」
佩狼の目を引いたのは、精神ではなく、肉体の方のリストだった。
それが載ってあったのは後の方なのもあり、気づくのに聊か時間を要した。
「煉獄杏寿郎!?」
その名前を聞いた時、喜びとも怒りとも悲しみとも言えない、複雑な感情が過った。
自分を討った人間の名前があった。だから何だという話でもない。
報復がしたい訳でもないし、かといって自分の大切なことを思い出させてくれたことへの感謝を告げたい訳でもない。
そもそも、この会場にいるのは彼ではなく、彼の肉体だ。
当人に会っても分かってもらえるはずなど無い。
知っている者の名前があっても、やるべきことは変わらず、変えられず。
言ってしまえば、今の彼は行き先を見失っている。
鬼の呪縛から解放され、鬼の討伐を決意したは良いが、それに至るまでの道筋がてんで分からない。
彼について行こうというのも刀の持ち主に恥じぬ行いをする心持だが、同時に何をすれば良いのか分からないというのもある。
ナギは佩狼を頼ろうとしていたが、実際の所頼っているのは、どちらなのだろうか。
「どうしたんだ。今度こそ友達が「ナギ!!」」
その言葉を最後に、会話は途切れた。
何しろ、どこからともなく氷の塊が飛んで来たのだ。
佩狼は刀を抜き、氷の塊を次々に砕いて行く。
「冷たっ!!」
佩狼の砕いた欠片が、ナギの腕に当たる。
その冷たさは、まごうことなき氷だった。
冬でもないのに氷を降らせるなど、常識的に考えてあり得ない。
妖術、とは言ってもヒミコが使ったようなインチキのまじないではなく、不条理を味方にした本物の術だと分かった。
215
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:51:44 ID:dLqvtdMM0
「ああ、わりい。この身体で使えるって魔法の練習をしていたんだが、コントロールが上手く行かなくてな。」
現れた女性の口調には、どこかガサツさが混ざっている。
だが、見た目は良家のお嬢様と言った雰囲気だ。
どうにも違和感しか覚えないが、この世界では当たり前のことだ。
「そう言われて、はいそうですかと帰る愚か者がいると思ったか?」
佩狼は刀を女性、禪院真希に向けた。
殺し合いには乗らないつもりだが、血鬼術にもよく似た力を使ってくる相手を見過ごすほど、彼は甘くはない。
殺すつもりは無いにしろ、ある程度攻撃して無力化させるつもりだ。
「人のミスを延々と指摘してくるタイプか?モテたことねえだろ。」
それに対して真希は大剣をザックから取り出す。
おおよそセーニャの姿に似つかわしくないほど、両刃で幅広の剣だ。
禪院真希は、呪力に恵まれず、代わりに身体能力に秀でていた。
それを活かし、武器を用いた戦術を得意としている。
佩狼と真希が睨み合い、今にも戦いが始まろうとしていた。
だが、そこに1つの横やりが入る。
いや、正確に言えば『横矢』というべきなのかもしれないが。
「待ってくれ!!それ……猿田彦の剣じゃないか!!」
「え?そりゃアンタの知り合いか?」
ナギが放った矢は、どちらも狙うことは無かった。
彼らが立っている場所の、ちょうど真ん中に刺さっていた。
勿論、射ることを目的としたのではなく、戦いを止めるために撃ったものだ。
「そうだよ。おれの大切な人が持っていた武器なんだ。返してくれないか?」
「おい、ナギ……」
これから戦う者に対する態度とは思えない。
彼は話したいことがあれば、物怖じせずに入って行く性格だ。
「はあ?敵に武器を返してくれって言われて、返すバカがどこにいるんだよ?」
「代わりの武器ならあるからさ。」
そう言う問題じゃないだろ、と思う2人をよそに、ナギはザックから武器を取り出した。
出てきたのは、これまた立派な槍だ。
この場では誰も知らぬことだが、真希のもとの肉体も使ったことのある武器だ。
彼としては弓矢の方が得意の武器だったため、ザックの底に放っておかれたのだ。
いや、だから武器の貴賤だったり、どうして彼がその武器を使っていなかったかは問題なのではない。
「なあ、これと交換できないかい?」
「……あー、何かシラケたわ。この戦い、無しってことで良くねえ?」
「……奇遇だな。隣の小僧もそれを望んでいそうだ。」
■■
216
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:52:25 ID:dLqvtdMM0
「魔法……血鬼術とは違うもののようだな。」
互いに殺し合いに乗っていないことが分かると、真希は何をしていたのかを話した。
自分の肉体である、セーニャに出来る『魔法』という力を試しに使っていたのだ。
呪力をほとんど持たず、肉体と呪具で呪いを祓って来た真希としては、無用の長物と言いたかったが、折角なので使ってみようと考えていた。
「ああ。私もさっぱり分からない力だ。」
「でも、当たりの身体なんじゃないか?色んな事が出来るんだろ?弓矢より凄いじゃないか!」
「なわけねえだろ。使ったら疲れるし、全然コントロール出来ないし、間違ってアンタらみたいなのに絡まれるし、ロクなもんじゃねえよ。」
魔法の中には、炎や竜巻を起こしたり、傷を癒したりすることが出来る。
先程真希が撃った魔法は、ヒャダルコという氷の雨を降らせる魔法だ。
「もう何回かやってみれば出来るんじゃないか?」
「何回か……ねえ。そんなに悠長に構えてて、殺し合いが待ってくれるのかね。」
そうは言いながらも、真希はもう1度氷の魔法を使ってみた。
先程のように暴投をするわけではないが、まだ当たった場所がまばらだ。
その瞬間、突然ナギの背筋が冷えた。
氷魔法による温度の低下が原因ではない。より恐ろしい者の存在を感じ取ったからだ。
「来る!!」
最初に声を上げたのはナギだった。
彼の身体のずば抜けた聴力がモノを言ったのか、それとも彼の第六感か。
凄まじい力を、真希や佩狼よりも先に感じ取った。
「ああ。構えろ。」
「分かっている。けれど……何だよこれ……。」
数多くの戦場を乗り越えて来た3人でさえ、恐怖に押しつぶされそうになっていた。
まだ敵の姿は見えていない。
だというのに、心臓を掴まれているような感触が3人にあった。
真希からすれば、帳が降りた時の感覚に似ていたが、圧迫感がけた違いだった。
217
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:53:10 ID:dLqvtdMM0
そこから、破壊が現れた。
「その魔法、この肉体と同じ世界の者か?」
文字だけを読めば、気さくに話しかけているとも解釈できる、
だというのに、3人は死刑宣告を聞かされているような気分だった。
じっとりと嫌な汗が、身体から滴り始めた。
「そう身構える必要もあるまい。わしはただ、そこの金髪の使っていた力を知りたいだけだ。」
目の前の相手が、まずは異常に大きいというだけで、恐ろしさが伝わる。
優に2メートルは超えており、3人の中で一番背の高い土方の肉体でも、胸ほどの高さにしかならない。
そこから見せる青い顔、とは言っても病人のような顔ではなく、原色に近い青い肌は人間のものではなく、怪物のものだ。
そして青い顔と対になるような、絢爛な橙の衣が不気味さを一層際立たせる。
かの怪物の姿は、誰がどう見ても魔王という他なかった。
「分かったよ。でも人に物を頼むときは、代わりに何かを用意するモノだ。
私が教えたら、何か礼をくれんのか?」
言葉を紡がずにいると、恐怖に押しつぶされてしまいそうになった。
真希の言葉を聞くと、ピッコロはニヤリと笑った。
「見返りか。面白いことを聞く。
わしがお前たち3人をしばらく殺さずにおいてやる。これがわしからの誠心誠意の褒美だ。」
その言葉を聞くとすぐに、2つのつむじ風が走った。
逃げても殺される。魔王の言う通り魔法を教えても、約束は反故にされると思った3人は、すぐさま抵抗の姿勢を見せた。
目の前の敵は、外も内も、正真正銘の魔王だ。人を何人も殺し、その数百倍の数を恐怖のどん底に叩き落とした魔王だ。
だが、忘れるなれ。彼らを討つのは人間だということを。
佩狼は日輪刀を、真希はナギから貰った槍を構え、猛然とピッコロ目掛けて突進する。
この先3人が生き残れる方法と言えば、相手が余裕を見せている間に、徹底的に攻撃して攻め潰す。
勿論、それを許してくれる相手ではない。
「これは驚いた。たった3匹のアリが、わしに勝てると思っているのか。」
「うるせえ!!ナメクジ野郎!!」
すぐさま真希は、敵の首筋目掛けて槍を突き立てようとする。
セーニャという少女の身体は、魔法だけではなく槍や鞭と言った武器が使えるのも分かっていた。
なのでこの戦いは、真希とセーニャ、両方が使い慣れているやり方で戦うことにした。
218
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:53:28 ID:dLqvtdMM0
「温いわ。その程度の腕前の戦士など、わしがいくらでも殺してきたわ。」
突進してくる2人を弾き飛ばそうと、ピッコロは右手を前に出してくる、
言葉で表せば、それはただの張り手。だが絶大な力を持つ魔王が行うことで、破壊の一撃に変わる。
その瞬間、佩狼たちに向かい風が吹いた。
魔法ですらない。ただ拳を突き出した風圧。それでも、人間ぐらいなら簡単に吹き飛ばすことが出来る。
「バァカ。引っかかりやがったな。」
だが、真希は槍のリーチを生かした攻撃をするつもりではなかった。
姿勢を低くし、風圧を受けない場所から、敵の懐に飛び込む。
先端はブラフ。リーチに頼りすぎない攻撃だ。
京都姉妹校交流会戦で、三輪霞に対して行ったやり方と同じである。
そのまま、獣のように低い姿勢を保ち、槍を回転させる。
セーニャが得意としていた『黄泉送り』という技だ。
真希だけではない。魔王の左側から、佩狼も斬りかかる。
彼は鬼だった頃から、直接攻撃するよりも、死角からの攻撃を得意としていた。
正面と左側、2方向からの捨て身の攻撃が、魔王を襲う。
だが、十字に交わった攻撃は、空を切った。
魔王は後方に退く。その動きは静かで、故に捉え所がない。
「まだまだ行くぜ!!」
だが、1度躱されたぐらいで彼女らの攻撃は止まらない。
むしろ、相手が反撃に移られれば終わりだと考え、徹底的に攻め続けた。
真希が薙ぐ。ピッコロが身を捩り躱す。
佩狼が足を斬り裂こうとする。その場所に魔王はいない。
ナギの矢が魔王の心臓目掛けて放たれる。だが、何もなかったかのように弾かれる。
勝負は3人が攻めに回っている。だが互角ではない。弄ばれている。
「つまらん。」
ふいにバチン、という音がして、前線の二人の攻撃が止められる。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
目の前の敵が良く分からない能力の持ち主で、見えない力に止められたのかとも思った。
だが、ピッコロはそんなものは全く使ってはいない。
指だ。二本の指で2つの刃物を掴んで受け止めたのだ。
だが、もう1つ攻撃がある。
ナギが放った矢が、真っすぐピッコロの顔面へと飛んで行く。
だが、これまた予想外の方法で無力化された。
フッ、と魔王が息の塊を吐くと、飛んで行った矢はあらぬ方向に吹き飛ばされた。
弾かれることや躱されることはあっても、息で矢が吹き飛ばされることなど、どう予想出来ようか。
「うわっ!!」
吹き飛ばされた矢が、そのままナギの方に向かって来た。
どうにか躱すも、迂闊に攻撃することすら許されない恐怖を、植え付けられることになる。
219
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:53:48 ID:dLqvtdMM0
「吹き飛べ。」
そのまま魔王は、前線の2人を武器ごと投げ飛ばした。
地面をゴロゴロと転がっていく。
手ではなく、指2本で投げたためか、真希も佩狼も地面の染みにことは無かった。
それでも、身体をしたたかに打ち付けた。
「もう終わりか?ならばこちらから行くぞ。」
それまで岩のように静かだったピッコロが一転して、嵐のように動き始めた。
まずは近くにいる佩狼に狙いを定める。
魔王は走らない。一体どのような手品を使っているのか、宙を浮いて、足音ひとつ立てずに迫り来る。
「速いっ!!」
立ち上がったばかりの佩狼に、蹴りを見舞う。
宙に浮かされた後、上からの拳で地面に叩きつけられた。
それで死ぬわけではないが、まだ攻撃は終わらない。
地面に背を付けられた佩狼目掛けて右足を上げ、その喉笛を踏みつぶそうとした。
だが、彼も伊達に十二鬼月の一角、そして時代を渡る剣豪の肉体を持っているわけではない。
寝転がされている状態でも刀を上に構え、踏みつけからその身を護る。
「ほう、抗うか。だが、いつまで持つかな?」
ピッコロは踏みつける足の力を強める。
刀は横からの衝撃には弱い。
勿論人間が踏んだぐらいでは折れないかもしれないが、相手は巨体の魔王だ。
「佩狼!!」
ナギがピッコロの後頭部目掛けて矢を放つ。
だが、これも指で受け止められてしまった。
「いい気になってんじゃねえぞ!!」
起き上がった真希が、再度突進する。
今度は背後からの攻撃だ。槍で地面に円を描くように、魔王の足元を斬り付けようとする。
それはセーニャが得意としていた『薙ぎ払い』という技に酷似していた。
だが、片足立ちになっていた魔王の足を斬り付けようとした瞬間、そこに敵の姿は無かった。
そこにいたのは、真希と佩狼だけ。
気が付けば魔王は、3人から離れた位置にいた。
「教えてくれぬというなら、わしがお前たちで新しい力を試してみるか。」
先程の攻撃で、佩狼を仕留めなかったのは、出来るだけ多くの獲物を1か所に固めるため。
いつでも殺すことが出来る分、自分の新しい力、見知らぬ魔法を慣らすことが重要だった。
「マヒャド!!」
ピッコロの両手に青い光が集まったと思いきや、その光が花火のように弾ける。
突然、上空から巨大な氷が降り注ぐ。
真希が間違って撃ったようなものではない。
はっきりと殺意の籠った一撃だった。
220
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:54:11 ID:dLqvtdMM0
「ふふふ……まずは2人……。」
空を舞う半透明の氷は、美しく残酷だ。
裂傷と凍傷、2つの傷で相手を確実に殺す。
「くそ……メラミ!!」
真希はそれに対抗し、炎の魔法を唱える。
だが、あくまで彼女は初心者。おまけに超常的な力を使うのに向いていない。
たとえ賢者の子孫の肉体を得たとしても、昨日今日で使いこなせるものではない。
大量の氷を1つ溶かしただけで、すぐに火は消えてしまった。
勿論、佩狼も3度目の人生を無為にするつもりは無い。
刀を振り回し、氷を砕いて行く。
だが、魔法の氷の数は多く、1つや2つ砕いたくらいでは全く意味が無い。
おまけに、剣を振る腕が、段々鈍くなっていくのを感じた。
マイナスを優に超える低温により、身体が末端から凍らされているのだ。
「佩狼!!真希!!」
氷魔法の攻撃範囲外にいたナギは、決して彼らを捨てて逃げるつもりは無い。
持っている弓矢で、降り注ぐ氷を一つでも多く砕く。
「仲間を見捨てぬか…わしからすれば、笑い種よ。」
しかし、氷に夢中になるあまり、その使い手の警戒を緩めていた。
いつの間にかピッコロは、ナギの後ろに立っていた。
「「ナギ!!!!」」
二人は異口同音に叫んだ。元々、弓兵というのは間合いに入られた時点で、敗北が決まっているようなもの。
相手が魔王ならば、猶更のことだ。
「さて、どうやって殺すかな。」
ピッコロはすぐに殺そうとせず、ナギの頭を掴み、宙づりにした。
「くそ……離せよ!!」
ナギは手足をばたつかせ、自由になろうとするも、当然許してくれる相手ではない。
拘束されてしまった時点で、ナギはもう詰んでいる。
「何をしようと無駄だ。まあそうするのも悪くないが。」
ピッコロがナギの頭をすぐに握りつぶさなかったのは勿論、情けのつもりではない。
自分に歯向かった者達に、より多くの恐怖と苦しみを与えるためだ。
目に付く人間全てを殺すのが魔王ではない。恐怖を与え、支配するのが魔王だ。
221
:
戦いの時 解き放たれた心に宿した火よ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:54:33 ID:dLqvtdMM0
「お前たちにはこれをやろう。マヒャド。」
再び魔力が弾け、氷の雨が降り注ぐ。
真希と佩狼はすぐにでもナギを助けに行こうとする。
彼に恩などあるわけではないが、それでも魔王相手に見捨てる訳にはいかない。
だが、超低温により動きを制限され、迫り来る氷の刃に動きを止められ、助けに行けない。
「くそ……ベギラマ!!」
真希は未知の力の相手に良く動き、必要とあらば魔法も使っている。
だが、それは膨れ上がっていく利息のみを払い続けるような行為。
その場しのぎにはなれど、根本的な解決にはならない。
「おのれ………」
思うように攻撃が出来ず、佩狼の胸の中に苛立ちを覚える。
銃で自分の頭を打ち抜いてしまいたくなるが、そんなものはないし、この場この身で行うなどただの自殺行為だ。
そもそも銃など無くとも、敵の力のせいで痛いほど頭は冷えている。
(落ち着け……戦いは常に冷静であらねば……。)
あの時の戦いも、行動を尽く潰された末に終わった。
蘇っても同じ結果で終わってしまうのか。
そう思った瞬間、複数の鋭い氷が佩狼に襲い来る。
222
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:55:17 ID:dLqvtdMM0
彼の3度目の命が途絶えかけた刹那。
何かが弾けた。
一瞬で吹雪が吹き飛ばされ、無数の氷塊が砕かれた。
佩狼の長い腕で、これまた長い刀を外側に大きく振り回し、マヒャドから身を護る。
それは土方歳三の太刀筋に非ず。
(煉獄よ。技を貸してもらうぞ。)
その動きは、かつて自分を討った者の技。鬼だった時の自分が放った銃弾を、吹き飛ばした技。
彼はその技を、『肆の型 盛炎のうねり』と呼んでいた。
「ほう……足掻くか……」
確かに彼が時代を渡る剣豪、土方歳三の肉体を持っている。
だが、それだけで炎の呼吸の技は使いこなせる代物ではない。
それでも、煉獄杏寿郎は持っていないもの、彼の世界には無かったものがそこにはあった。即ち、真希が放った炎魔法を剣に纏わせて、違う形で『炎』の呼吸の技を撃ったのだ。
日輪刀が魔法の炎を纏ったのも、なんらおかしい話ではない。
ある鬼狩りは、鬼になった妹の、燃え盛る血を刀に付けて鬼の首を焼き切ったことがある。
「ありがたい!!行くぜ!!」
今度に攻撃を仕掛けるのは真希の方だ。
邪魔な氷と吹雪が無くなった瞬間、槍を右手で前面に番えて、真っすぐピッコロ目掛けて突進する。
とにかく、捕まっているナギをどうにか助けないと、勝負にもならない。
「いい動きだ。だが人間が正面から魔王に勝てると思っているのか。」
「強いけど浅はかなのは分かったよ。」
「何!?」
ピッコロの右腕には、矢が刺さっていた。
さしもの魔王も、僅かながら痛みを感じ、ナギを手放す。
槍を前面に構えていたのは、またもブラフ。
ナギが撃ち損ね、地面に転がった矢を拾い、魔王の腕目掛けて投げつけたのだ。
「よくやったぞ!!」
佩狼はザックに手を突っ込み、ピッコロ目掛けて黒いボールのような物を投げる。
こんなものなど襲るるに足らんと笑みを浮かべる魔王だが、それが間違いだったと気付いた。
とある国の集団の総長が愛用していた、鉄の扉をも壊す爆弾だ。
彼が鬼だった時は、刀のみならず重火器を使って人間を殺していた。
耳をつんざくような轟音と、派手に上がった爆風が、魔王の身体を焼く。
まだ攻撃が終わりではない。
爆風で視界が悪くなっている中、真希が突っ込んでくる。
それに続くように、佩狼も剣を持って斬りかかる。
223
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:55:36 ID:dLqvtdMM0
「黄泉送り!!」
――炎の呼吸 壱の型 不知火
疾風迅雷の斬撃と刺突が、魔王の腹に刺さる。
「おのれぇ………。」
殺せないにしろ、初めて攻撃が魔王に当たった瞬間だった。
ゆえに3人は考えてしまった。
これはもしかすれば、勝てるのではないかと。
「まだだ!!畳みかけろ!!」
「言われなくても分かってるよ!!」
(ぼやぼやするな!おれも戦え!!)
解放されたナギも、矢を手に握りしめ、直接魔王に突き刺そうとする。
だが、彼らは知らなかった。今まで魔王が見せていたのは、ほんの一面のみということを。
「かあーーーーーーっ!!!」
3人の第六感が警鐘を鳴らし、武器を持った腕に鳥肌が立った。
ピッコロが大声を上げたと思いきや、口から真っ白な息を吐き出された。
それには、吸えば死に至る猛毒が含まれているわけではない。
ただ、恐ろしいほど低温なだけだ。
「なんだ……これ………」
別の世界では凍える吹雪と言われたその力は、マヒャド以上のものだった。
至近距離にいた3人は強風の前に吹き飛ばされ、その後も超低温の氷を受け続けることになる。
ナギも佩狼も、圧倒的な吹雪の前に抵抗すらできない。
いくら身体を鍛えても、何を犠牲にしようと、人間が雪崩に勝てないのと同じだ。
その人間より大きく、力を持っていた恐竜が、氷河期を生き延びられなかったのと同じだ。
目を開ければ眼球が凍り付くことが分かっていたため、ピッコロを見据えることさえ出来ない。
「ちくしょう……メラゾーマ!!」
あと数秒もすれば、3人共凍死は免れないだろう。
吹雪の中で、赤い光が煌めく。
上級魔法は体力をかなり消耗する。禪院真希のように慣れていない者なら猶更だ。
だが、この場では出し惜しみしている状況ではない。
使えそうなものは全部使わないと、勝つどころか、全滅さえおかしくない状況だ。
大きな炎の弾は、吹雪の中でも消えることなく進んでいく。
メラゾーマの炎は消え無い炎だ。消すならば、同じように魔法を使うか、魔法の力を秘めた力で打ち払うかだ。
だが、ピッコロはどちらもしなかった。
何故なら、消す必要はないからだ。
224
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:56:02 ID:dLqvtdMM0
「反射魔法(マホカンタ)とは……これまた面白い力だ。」
魔王の前に、光の壁が現れる。
その輝きは、メラゾーマと同様、吹雪の中でもはっきり見えた。
魔法で作られた鏡に当たった炎魔法は、術者の方向に戻って来た。
「くそ……避けるしかねえ!!」
誰が予想出来るだろうか。頼みの綱の魔法が、一転して自分たちの脅威になるなど。
一度マホカンタにより跳ね返された魔法は、二度は反射できない。マホカンタで跳ね返された魔法の餌食にならない方法は3つ。
もう1度同じ魔法を撃って相殺するか、魔法の力を込めた防具でその身を護る。あるいは飛んで来たそれを躱すしかない。
高く跳躍することで、飛んでくる炎の弾から逃れる。
だが、地面に着地した真希が、ガクリと膝を付いた。
理由は単純にして明快。使い慣れてもいない強力な魔法を使い過ぎたからである。
今まで真希は、乏しい呪力の代償に得られた、無尽蔵に近い体力と筋力で戦って来た。
だが、体力は仲間の中でも少ないセーニャの身体では、体力にモノを言わせた戦いは出来ない。
「がああああっっ!!」
佩狼が真希に出来た隙をカバーしようと斬りかかる。
彼女のことを守ろうなんて気は更々ないが、今1人崩れることが、いかに危機的状況か分からぬほど、彼は愚かではない。
そもそも、彼は鬼の頃から影の狼を使った集団戦を得意としていた。
――炎の呼吸 壱の型 不知火
「ひょおおおおーーーっ!!」
だが、正面から魔王と戦うことなど、聖なる武具を身にまとった勇者でもない限り、無理な話だ。
大声を上げた大魔王が、拳を放つ。剣の腹でその身を守ろうとするが、その身体ごと吹き飛ばされる。
「実に下らぬ。真似事の剣術でこのピッコロ大魔王に勝てるはずが無かろう。」
ピッコロ大魔王は封印されるまで、何人もの戦士を殺してきた。
なので鬼を滅する呼吸のことは知らずとも、格闘家を強さを見極める審美眼は備わっている。
目の前の相手が、自分を電子ジャーに封印した武泰斗のように、本当に力を持った者か。
はたまたその真似事をして強くなった気になっているかなど、少し拳を交わしてみれば分かることだ。
「ぎいいいいいいいいい!!!!」
怒りのまま、魔王に斬りかかる。技の構えも作らないまま、粗雑に剣を振る。
肉体が変わっても、性格というのは変えることが出来ない。
真似事の剣術。真似事の剣術。真似事の剣術。
そんなことは無いと言い聞かせながらも、その通りのことだ。
225
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:56:19 ID:dLqvtdMM0
「うあああああああああ!!!!!」
それでも、剣を振り続ける。生き返ってまで否定されたくない。
早くこの男を殺さねば、憤死してしまいそうだったからだ。
「ふん。このわしも甘く見られたものだ。」
それをピッコロは余裕を持って迎え撃つ。
彼の安直極まりない攻撃を、それに混じって矢が飛んでくるが、全て容易に躱していく。
勿論、ただ躱すだけではない。指先に、どす黒い光が溜まっていく。
「ぬううん!!」
それはゾーマではなく、ピッコロが得意としていた技。
魔族特有の力を指一点に集め、銃のように放出する技だ。
彼がもしこの殺し合いに招かれていなければ、悟空に対してかめはめ波の意趣返しに撃っていた。
「くそ……間に合え……メラミ!!」
ようやく立ち上がった真希が、魔法を飛ばす。
だがもう遅い。佩狼は攻めすぎていた反面、回避に出ることはもう出来なかった。
真っ黒な光が、彼の心臓へと迫り来る。
2度目の死が、すぐそこに迫り来る。
鬼の姿から人間に戻れたからと言って、物事が好転するわけではない。
彼がやっているのは、ただの強者の真似事。そんなもので魔王を討てるわけがない。
人間の時に、新政府の人間に敗れ。
鬼になっても、炎の呼吸を使う者達に敗れ。
そして今もまた、敗北しようとしていた。
魔王の魔力の塊は、真っすぐに佩狼の心臓へと飛ぶ。
真希が放った中級魔法で、威力を殺しきれることはない。
彼が魔力の餌食になる瞬間、脇腹に何かがぶつかる衝撃が走った。
そして、爆音が響く。
「何を……している!!」
倒れているのは佩狼だけではない。ナギもまた同じ場所に倒れていた。
魔法弾は咄嗟にナギが体当たりしたおかげで、急所からは外れた。
あくまで即死しなかっただけだ。そして、ナギもまたその力に巻き込まれてしまった。
226
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:56:42 ID:dLqvtdMM0
「おれは死にたくないだけなんだ!!」
叫ぶ。
その反動で爆風で焼けた箇所がいっそう痛む。
「だから、皆殺しにしようとする奴を、みんなで倒さなきゃいけないんだ!!」
彼は失って来た。故郷のクマソをヤマタイ国に滅ぼされ、それからヤマタイ国を心の底から憎んだ。
だが、そのヤマタイ国の猿田彦や、そのスパイと協力するうちに、その憎しみは薄れた。
いや、薄れた訳ではない。それよりも死にたくないという想いが勝り始めたのだ。
「くだらぬ三文芝居を見せつけおって。そろそろ死ぬか?」
魔王は余裕を持って構えている。
目の前の相手は強い。佩狼を鬼にした鬼舞辻無惨以上かもしれない。
赤アリを蹂躙していく黒アリの集団ではなく、たった一人で破滅を齎していく災害のような存在だ。
そんな相手に、佩狼は。
ただ、静かに斬り付けた。
「ぬ!?」
薄いが、それでも衣に裂け目が走る。オレンジの衣に、青い血が染みる。
ひどく静かな、横薙ぎの一撃だった。
奇跡が起こった訳ではない。魔力の弾丸を撃たれた腹が憎らしいほど痛く、剣を振るう腕は半分ぐらい麻痺している。
数時間前会ったばかりのナギの想いに答えという訳でもない。
ただ、この場では誰かのためではなく、皆が己を通すために戦っている。
そんな中、煉獄の刀を持ちながら、自分だけ見苦しい真似は出来ないと気付いただけだ。
「ふん。死にぞこないが……。」
一撃とは言わず、追加の攻撃を加えようとする。
だが、彼は先程とは異なり、冷静だった。
一歩退き、2つ目の爆弾を投げる。
それはただの爆弾に非ず。魔王という名の岩戸を開き、勝利という財宝を手にするための武器だ。
「下らんわ!!」
爆風に焼けるのも恐れず、魔王は凍える吹雪を吐き出し、熱風と飛び散る鉄片を吹き飛ばす。
だが、爆弾のみが彼の武器ではない。
高くあがった煙に紛れ、吹雪が当たらない方向に逃れた。
227
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:57:13 ID:dLqvtdMM0
誰が言ったか。心を燃やせと。
今、佩狼の心の内は冷静でありながら、誰よりも熱く炎が燃え上がっていた。
魔王に対し一瞬生まれた隙を利用し、佩狼は強く地面を踏み込む。
剣を上段に構え、大きく息を吸い込む。
身体の痛みは、気にならなかった。
「………!!」
ピッコロの背筋に、怖気が走った。
あの時、自分を電子ジャーに封印された時の記憶が蘇る。
目の前の相手が取っているのは、魔封波の構えとは全く異なる。
だというのに、あの時と同じ感情を胸に抱くことになった。
――玖の型 煉獄
「最後の魔法だ!受け取れ!!メラミ!!」
神速のごとき勢いで地面を蹴り、呼吸を吐き出し、魔王に斬りかかる。
自分が受けたあの斬撃を思い出す。どんな一撃かは、教えてもらわずとも、その身で覚えている。
「おのれ……!!だが、その程度の速さでわしに敵うと思うな!!」
ピッコロは剣が肉体を走るより先に、佩狼の腕を握りつぶそうとした。
だが、彼の腕に、ナギが放った矢が刺さる。
魔王の懐に飛び込み、身体に刃を突き立てる。
咄嗟に身を捩られたため、心臓を突き刺すことは能わなかった。それでも問題ない。
玖の型 煉獄は一瞬で出来るだけ多くの面積を根こそぎ抉り斬る、炎の呼吸の最終奥義。
真似であろうが関係ない。みっともなかろうがどうでもいい。
自分は、ただ目の前の敵を倒すだけだ。
228
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:57:43 ID:dLqvtdMM0
魔族の身体を構成する筋肉に、刃を止められる。それでも刀を振るい続ける。
勿論、煉獄家の者が使う炎の呼吸の最終奥義とは、天と地ほどの差がある。
だが、その穴を真希の炎魔法がカバーする。
このやり方ならばマホカンタで跳ね返されることもない。
炎の呼吸の技は本当の意味で炎の力を持ち、吹雪を吹き飛ばす。
そして、佩狼の生前の刀を振るった経験、そして、明治の世を生きた土方歳三の剣の腕。
彼を作る、彼を取り巻くすべてが、佩狼の背中を押した。
爆音が、闇夜に響いた。
「おい…佩狼はどうなった?」
激しい煙がもうもうと上がり、辺りは見えない。
真希の声だけが、妙にうるさく響いた。
やがて、煙が晴れた。その先では戦いの結果が映っていた。
「佩狼……そんな!!」
「驚かしおって。所詮は、こんなものか。」
魔王の手刀が、老剣士の心臓を貫いていた。
あの一撃は確かに魔王に通用した。だが、手傷を負わせただけだ。あと一歩の所で、殺すには至らなかった。
「この力が無ければ、死んでいたのはわしのほうだったかもしれぬな。」
佩狼の肉体を、ぽいと投げ捨てた。ぐちゃ、という音がして、地面に血だまりが出来る。
彼の奥義が刺さる寸前に、魔王はある技を撃った。
それは『凍てつく波動』と呼ばれる物。この力で、真希が佩狼に対して放った魔法を無力化した。
万策尽きたとはまさにこのことだ。
ナギは動かない。動くことが出来ない。
自分一人に、今の佩狼の技以上の攻撃をすることは出来ない。
「さて。残った二匹も殺してやるとするかな。」
「抱いてやるよ。それともゲテモノは人間じゃなくてゲテモノの方が好みか?」
真希は槍を捨て、そんな魔王相手に構えを取った。
相撲取りの蹲踞のような体勢で構え、敵を迎え撃つ。
良家のお嬢様として育ったセーニャらしからぬ姿だ。
それは不知火型と呼ばれ、敵の攻撃を捨て身で受けて反撃を行うカウンター技だ。
だが、魔王はそんな彼女の覚悟を、簡単に蹂躙する。
「捨て身ならば勝てると思うのが間違いというものだな。」
魔王は受けて立つことはしない。
勝負に乗る必要などないからだ。
遠くからマヒャドで、ナギと真希の二人を殺そうとする。
そろそろ魔法の使い方にも慣れ、コントロールが上がって来た。
魔力も切れ、氷の刃を打ち払える仲間も倒れ、最早どうにもならない。
「死んで……たまるか……。」
氷の雨が目の前まで迫り来る。
それをナギは見つめていた。
だが、氷があまりにも残酷に輝いていたため、眩しくて目を閉じてしまった。
229
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:58:01 ID:dLqvtdMM0
音が止んだ。
目を開ける。
彼らは死んでいなかった。
それが夢だったという訳ではない。
いや、目を開けた先に映った光景は、ある意味夢のようにおかしな光景だった。
「な?わしの魔法を……。」
敵味方問わず、その光景に驚く。すぐ近くに、筋骨隆々で赤銅色の肌の男がいたからだ。
いや、驚いたのはそれだけではない。
初めはナギは、男が持っているそれを丸太か何かだと思った。
だが、それは違った。ナギさえも持っている物。
すなわち、陰茎だ。それもとてつもなく大きい陰茎だった。それでマヒャドを撃ち返したのだ。
「どうして……」
「爆音が聞こえて、ここへ来た。」
佩狼の攻撃では魔王を倒すことは出来なかった。
だが、彼の生きることへの想いは、確かに縁壱に伝わったのだ。
それを知った男の死に顔は、どこか安らかだった。
「すまない。」
老剣士が静かに目を閉じたのを見ると、彼は静かに呟いた。
その言葉は静かながら、はっきりと聞こえた。
優しさと強さを併せ持つ、彼を体現したかのような言葉だった。
「ふん。そんなゴミのために戦おうというのか。愚かな。」
その言葉が、鬼狩りの剣士になるはずだった男の心を燃やした。
「何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っている?」
この世界にいる縁壱は、鬼舞辻無惨のことは知らない。
だが、それでも正義感はしっかりと持っていた。
そして目が合ってすぐに気づいた。このピッコロという男は、倒さねばならないことを。
自分の肉体は、ピッコロのような男を倒すためにあるのだと。
「君たちは逃げて欲しい。」
縁壱は2人を見て、そう告げた。
「え?おれは……ちょっと待ってくれ!!」
戸惑うナギに対し、真希は彼を引っ張って走る。
そのまま、魔王の目が届かない所まで走った。
【佩狼@鬼滅の刃外伝(身体:土方歳三@ゴールデンカムイ) 死亡】
【残り 72名】
【継国縁壱@鬼滅の刃】
[身体]:キンターマン@キン肉マン
[状態]:静かな怒り
[装備]:煉獄杏寿郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品(本人、佩狼)ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いと厭夢を止める
1:目の前の邪悪を倒す
2:殺し合いにのった参加者は説得か強行手段で無力化する。
3:2の状況になっても命を殺めたくはない。
[備考]
※継国家を出て空の下を走りぬけた後に
うたに会う間からの参戦です。
【ピッコロ大魔王@ドラゴンボール】
[身体]:ゾーマ@ドラゴンクエストIII
[状態]:ダメージ(中) MP消費(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(自分、佩狼)、ランダム支給品1〜4 爆弾×3
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
[備考]
1:目の前の男を殺す。
2:殺し合いの会場を恐怖で覆い尽くす
3:ゾーマの出来ることをもっと試したい
※参戦時期は封印が解かれてから、悟空と最初に戦うまでの間
230
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:58:37 ID:dLqvtdMM0
「ふざけるな!どうしてあいつを倒すのを邪魔した!!」
ピッコロと縁壱が戦っている場所から、大分離れた場所。
そこまで来て、真希は初めて彼を投げ飛ばした
「私達じゃ足手まといになるんだ。分かんねえのか?」
「分からないよ!!仲間を殺されたんだから、あいつを殺さなきゃいけないだろ!?
彼は涙ながらに話をした。
故郷の国が滅ぼされた後、猿田彦に対して殺意を向けた時に似ていた。
あれから弓の腕を上げ、ヤマタイ国を守る弓兵にまでなった。
だというのに、圧倒的な力を持つ魔王の前に敗れ、友を失ってしまった。
そんな打ちひしがれた少年の胸倉を、真希はぐっと掴んだ
「ナギ。お前、この世界で何がしたい。何を叶えたい!!」
「おれは……しにたくない!!」
彼は叫んだ。殺し合いの会場でそんなことをするのは間違っている。
それでも声の続く限り叫んだ。
「じゃあ。戦え。死にに行こうとするんじゃなくて、闘え!!!!命ってのはその後について来るもんなんだよ!!
あのナメクジ野郎を倒せるようになるまで、戦い抜け!!」
2人は痛む身体を無視して、ただ叫んだ。
そうしないと、更なる喪失に押しつぶされそうになったから。
【ナギ@火の鳥 黎明編】
[身体]:西園寺右京@Dr.Stone
[状態]:ダメージ(大)体のあちこちに打撲 凍傷 悲しみ(大)
[装備]:勇者の弓@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス(矢20本)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1 猿田彦の剣@火の鳥 黎明編
[思考・状況]基本方針:生還し、今度こそ火の鳥の血を飲む。
1:真希と共に行く
2:殺し合いに乗るつもりは無い。
3:鬼の血には興味がある。
【禪院真希@呪術廻戦】
[身体]:セーニャ@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[状態]: ダメージ(大)MP ほぼ0
[装備]:メタスラのやり@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない、さっさと元の世界へ帰らせてもらう
1:自由にやりますか。呪術師らしく、あたしらしく。
2:魔王だろうと理不尽だろうと生きてやるよ。
[備考]
※参戦時期は17巻『葦を啣む』以降
【猿田彦の剣@火の鳥 黎明編】
禪院真希に支給された大剣。ヤマタイ国の将軍、猿田彦が使っていた。
時代の技術故に戦国時代で作られた刀よりは劣るも、それでも優れた大きさと切れ味を持っている。
【メタスラの槍@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
ナギに支給された槍。メタスラの欠片を使っているため軽くて頑丈だが、メタル系、獣系にダメージが増え、さらにスライム系を一定確立で魅了させる。
【爆弾@ローゼンガーテンサーガ】
阿羅火暗那威斗(あらびあんないと)の総長、アリババが持っていた爆弾。
未来視の出来るモルジアナの力で作られた近代兵器。
鉄の扉を爆破することも出来る。
231
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/01(金) 23:58:47 ID:dLqvtdMM0
投下終了です
232
:
戦いの時 悲しみが世界を何度打ち負かしても
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/02(土) 00:18:02 ID:RCGlFDh60
すいません。現在地忘れてました。
ナギ、禪院真希がいるのが【E-3】、ピッコロ、縁壱がいるのが【F-3】です。
233
:
◆TruULbUYro
:2023/09/03(日) 17:53:13 ID:rwAMptcY0
予約を破棄致します。長期間に渡るキャラ拘束大変申し訳ありませんでした。
キャラが未予約だった場合に限り、ゲリラ投下の形で投下させて頂きます。
234
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/03(日) 21:11:24 ID:DHur9PjM0
ウタ、東方仗助、喜多郁代、黒死牟、辺見和雄を予約します
235
:
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 22:38:04 ID:bxlhd2wE0
投下します
236
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 22:41:37 ID:bxlhd2wE0
『よりにもよって辺見和雄だと!』
魘夢の放送を終え、名簿を確認する後藤ひとり。彼女と肉体を共有している杉本は、数少ない知った名前に頭を抱えた。
辺見和雄 100人以上を殺してきた殺人鬼 彼が知る中で最も危険な人間の一人。
殺し合いの場において、もっとも見たくなかった名前ともいえる。
『だが...こいつはとっくに死んでいる筈。』
そして、杉本佐一が殺したはずの人間の名前である。
その眼で死体を確認し、皮まで剥いだのだ。万が一生きているということもないだろう。
『ひとりちゃんは俺よりずっと未来から来ていると言っていた、もしかしてここにいる人間は時間や時代を関係なく集められているのか?』
そんな疑問が頭に浮かび、仮説について相談しようと後藤ひとりに意識を向ける。
言葉を掛けようとするその前に、杉本の頭に後藤ひとりの感情が流れ込んだ。
『死ぬのが怖い。』
不死身の杉本の頭に流れ込んだのは、久しく彼が言葉にしていなかった思いであった。
「なんで....なんで.......」
三鷹アサの体で、後藤ひとりは今にも崩れそうなほどにガタガタと音を立てて震えていた。滝のように汗が吹き出し、全身に寒気が走る。
後藤ひとりの視線の先には、後藤ひとりの所属する『結束バンド』の仲間や、ライブハウス『STARRY』の店長の名前がある。
杉本の話、そして魘夢の放送。頭はいい方ではない後藤ひとりだが、名簿に名前が載っている意味が分からないほど、耄碌しておらず。
友人が巻き込まれた状況を楽観視できるほど、軽薄な人間にはなれなかった。
「リョウ先輩....喜多ちゃん.....店長さん......」
『...そうか、友達が参加させられていたのか。虹夏ちゃんって子の体もか。』
杉本の頭に響く想いは、初めて会った時のような他人に過剰におびえるものではない。
自分の命が危機にあるという実感。数少ない友人も殺し合いの場に呼び寄せられたという恐怖。自分や友達が死ぬのが怖いという、ありふれた感情。
後藤ひとりの人生に、心を震わせることはあっても命を奪う瞬間はない。
杉本佐一は、戦場を生きてきた。人を殺したことも、殺されそうになったこともある。
だからこそ、後藤ひとりの恐怖はよく理解できた。
『やっぱり。この子の手を穢すわけには、いかない。』
杉本佐一は決意する。それが彼の基本方針だ。
殺し合いには不参加。後藤ひとりも杉本佐一もその点に関しては同意していたが、2人の肉体は無策で勝ち残れるほど強力なものではない。
それに、辺見和雄やひとりの友人たちがどんな姿なのかも分からない状態で、当てもなく策も無く動くのは危険だ。
後藤ひとりが他者とのコミュニケーションを苦手としていても、一時的に協力できる仲間の存在は必要であった。
『なあひとりちゃん。これからのことなんだが』
「え?」
ひとりが少し落ち着いたところを見計らって、杉本が提案のために声をかける。
二人が今後のために話を詰めようとした、その時だ。
「あああああああああああああ!!!!殺してやる!殺してやる!」
狂ったように叫ぶ男と、覆面越しに目が合った。
237
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 22:43:36 ID:bxlhd2wE0
◆◇◆◇◆
「お....俺....俺がし....死んでる!!」
小さな池の傍でタブレットを確認していたリョースケの顔が、恐怖に歪む。
魘夢の放送の後、送られた死亡者リストに自分の名前があったからだ。
涙目のルカ。この一時間で死んだ参加者。
その体に割り当てられたのは、他でもないリョースケ自身だった。
生気を失ったように、リョースケは力なくへたりこむ。
自分の体が死んだ。 誰かがその体を持っていた涙目のルカを殺害した。
タブレット上に無慈悲に浮かぶ事実を、彼は受け入れられずにいた。
知らない男に、推していたアイドル『アイ』には二人の子供がいるという話を聞かされた。
信じていたアイドルに裏切られ、見下されて、騙されて。花束とナイフを手に教えられた住所に向かう。明確な殺意を持ち、人を殺すという覚悟を持って街を行く。
彼が魘夢によって殺し合いに参加させられたのはその矢先の出来事だった。
初めは訳も分からず困惑。暫く惨めに泣き叫んだ後は、自身に与えられた体である「バトル・キング」の肉体が持つ、元の自分とは桁外れのフィジカルに興奮。
国際格闘大会『ハイパーバトル』の頂点に立つその体は、リョースケに伝説の武器を手にしたような安心感と優越感を与えた。
木に正拳突きで抉れるような跡を残し、「いける!いけるぞ!!」声高に叫ぶようになるころには。この殺し合いにも乗り気であったし、その中でも余裕で勝てるとリョースケは確信していた。
魘夢の放送を見るまでは。
「あああああああああああああああああ!!!!!!!」
リョースケの精神を保っていたものが音を立てて崩れ去った。
リョースケはアイドルが好きなだけの一般人だ。
好きなアイドルに子供がいるという情報を聞いただけで殺意を覚えるほど、矮小な精神しか持っていない人間だ。
人を殺す意志を持っていながら、自分が死ぬかも知れない環境に耐えられるほど。彼は強くはなかった。
「殺される.....殺される......殺さなきゃ俺が殺される!!!!!」
恐怖と殺意だけが本能を突き動かし、青年は走る。
そんな彼に運悪く出会ってしまった参加者が、後藤ひとりだった。
238
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 22:47:16 ID:bxlhd2wE0
◆◇◆◇◆
「お...お前も俺を殺す気なんだろ!!!そうなんだろ!!!!!!」
「ひっ...」
『ひとりちゃん!俺と変われ!』
杉本の叫びと呼応して、学生服を着た少女の顔に傷ができ、目が夜鷹のように渦巻いた。
肉体の人格が三鷹アサからヨルへ。後藤ひとりから杉本佐一へ。
陽が落ちるように切り替わる。
戦争の悪魔が三鷹アサの体を任意で乗っ取れるように、杉本佐一も後藤ひとりと任意で入れ替わることができる。
もっとも、杉本佐一はごく普通の女の子をないがしろにして表に出ようと考える人間ではない。
そのため彼が表に出るときは強制的に入れ替わった場合を除いて“後藤ひとりが了承した時”か“のっぴきならない非常事態の時”に限られる。
無論、今回は後者である。
「うああああああ!!!」
「ちょっとおい!落ち着けって!」
『ひぃ.......』
目元を覆面で隠した筋骨隆々の男が泣き叫びながら、その鍛え上げられた腕をぶんぶんと振るう。
風を切る音を響かせるその剛腕は、三鷹アサの腕より倍は大きい。
その腕が目の前にいる女子高生に向けて振るわれていた。
恐怖に歪み涙を流すその様子から、相手が錯乱しているということは杉本どころか後藤ひとりにさえも理解できた。
杉本佐一は何とか宥めようと声を掛けるが、残念ながら効果はない。
「おらぁ!」
「あっぶねぇ!」
男が勢いづけて撃ちだした拳を、杉本は上体をずらして素早く躱す。
背後にあった木が少女の代わりに正拳突きを受け、表面の皮が雷の落ちたような轟音とともに抉れた。
「何で避けるんだよ!」
「避けるに決まってるだろ!」
至極当然の反応を返しつつ、杉本は少しずつ距離を取っていく。
錯乱し正常な判断が出来ないリョースケは、本能的に距離を詰め、なおも杉本を殴り殺さんと迫る。
239
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 22:50:42 ID:bxlhd2wE0
体の主導権を自分に切り替えることが出来て良かったと、杉本は思う。
眼前に居る男の筋力は、『牛山辰馬』や『岩息舞治』といった自身が知る最高峰の筋肉(マッスル)に勝るとも劣らない。
体を同じにする後藤ひとりが戦いに慣れていないことは、初めの一時間でよく知っていた。
彼女が主導権を握ったままだったのなら、今の一撃で顎を殴り飛ばされそのまま死んでいただろう。
そんな筋力には似つかないほど、相手の動きは素人そのものだ。喧嘩もしたことがないように思える。
おそらく、精神にいるのは後藤ひとりのように戦闘や殺し合いとは縁遠い参加者だ。
杉本はそう予想し、それは事実当たっていた。
ただの青年であるリョースケの技術では、歴戦の兵士である杉本佐一に当てるには技術が数段不足している。
ぶんぶんと振り回されるリョースケの腕。そのほとんどが杉本の影さえ捕えず、当たりそうな攻撃も杉本にいなされ続けている。
彼らのいる場所は草原だ。周囲には数本の木や岩があるくらいで、障害になりそうなものはない。
男と向き合いながらも杉本は一定の距離を取り続けていた。
(..だが、いつまでだ。避け続けるだけだとジリ貧だぞ!)
大振りで遅く錯乱した状態の攻撃。避け続けるのなら容易だ。
だがそれだけでは決着がつかないのが、殺し合いというものだ。
ちらりと、杉本は腰に下げた武器を見る。
支給されたアイテムの中で、最も実用に長けた武器。ひとりに護身用として持たせていたものだ。
屠坐魔と呼ばれる呪いを込めた短剣が、腰のケースに収められていた。
リョースケの隙だらけの攻撃をかいくぐり、短剣を刺す。
杉本の技術をもってすれば容易いことだ。それでこの場は勝利を収められる。
だがそうすれば、彼は間違いなく死ぬだろう。
殺して勝つことは容易だが。殺さないように加減するには、目の前の肉体は屈強すぎた。
(どうすればいい...避け続けてもどうしようもない。かといって殺さず制圧するには...あの筋力は強すぎる!)
確実に逃げるには、三鷹アサの体では四肢の長さもスタミナも不利。
殺さずに制圧できるほど、今の両者に実力の差はない。
隠れ逃げるには、今いる草原は広く障害物にも乏しい。
杉茂の手元にある武器は、短剣だ。刺し殺すには十分だが、殺さず止めるには適さない。
仮にここに居る体が杉本佐一のものだったのなら。さしものバトル・キングの体だとしても隙だらけのリョースケを抑え込むのは容易かっただろう。
だが、ここにあるのは三鷹アサの肉体。
運動に特別優れたわけではない、女子高生の体。
“女子高生の体の達人”では、“世界チャンピオンの体の素人”相手に、勝つことは出来ても止めるには一手不足していた。
240
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 22:56:49 ID:bxlhd2wE0
「騒音(うっせ)えわ。夜に騒ぐな。」
ふと、杉本の耳にそんな声が聞こえた。
声の主がいる場所、リョースケよりさらに後ろに、変わらず振るわれる腕を避けつつ杉本は意識を向ける。
暗がりに声の主の姿が見える。
女子高生だ。年は後藤ひとりや三鷹アサとそう変わらないだろう。
岩陰から姿を見せた彼女が、拳を振るうリョースケに向かって駆けていく。
夜の草原を走る少女の胸のあたりから、ぱちりと光が走ったように見えた。
「錯乱(パニク)っとるなら。すこし寝ろ」
いつの間にか女子高生はリョースケのすぐ後ろの間で迫っていた。
ひとりと杉本の目の前で、ヒュンと風を切る音とともに男が膝をつく。
巨体が白目をむいて崩れ落ち、草原の上に倒れ込んだ。
『な...なな...なにが...』
「手刀だ。あの女子高生、あの筋肉男の首に勢いよく手刀を振り下ろして気絶させたんだ。」
ひとりには何が起きたのか全く分からなかったが。杉本は目の前で起きたことをはっきりと認識していた。
女子高生の肉体を胸元の光...悪刀・鐚と呼ばれる武器の力で活性化させた。忍者の手刀。
背後ががら空きだったリョースケを気絶させるには、十分な一撃だった。
一息つく青髪の女子高生と、ひとり・杉本の目が合った。
四つ葉ような目をした彼女には、さっきまでの錯乱していた男とは違い敵意も無いことが見て取れた。
「恐ろしく早い手刀だな...俺じゃなきゃ見逃してたぜ。」
「ほう、見切っておったか。さっきまでの立ち回りと言い、見た目に寄らず中々の戦闘(ケンカ)慣れしているか。」
「残らず体が入れ替わっているのに、見た目が何かの参考になるのか?」
「それもそうだ喃。」
ハッハッハと目の前の少女は笑う。女子高生らしくない年季を感じる言葉づかいに、杉本の中で後藤ひとりが『や...ヤンキーだ』と警戒心をあらわにする。
誰に対してもこんな感じなのだろう、この一時間で後藤ひとりに慣れつつあった杉本は、警戒してビクついている姿に、安心感を覚えていた。
「ともかく助かった。礼を言うよ。俺は杉本佐一。アンタは?」
「神賽惨蔵。互いに聞きたいこともあるだろうし、そこで情報交換(じょしかい)としゃれこむか?」
神賽は池沿いにある小さな小屋を指さす。4,5人なら入れるだろう木造の小屋、一息つくにはもってこいだ。
「有難い。一息付ける場所が欲しかったんだ。」
「それとこの男。どうする?お主らが殺したくないなら儂が代わりに対処するが」
神賽が視線を落とした先には、気絶している巨体の男。
先ほどまで自分たちを襲った相手だ。神賽の言う“対処”という言葉の意味も、杉本にはわかる。
杉本は少し考え。神賽に返答した。
「それなんだが...少しでもこいつから情報を聞き出せないかな?」
「ふむ。まあいいじゃろ。一対一(サシ)なら今の儂でも骨の折れる相手、聞けるうちに聞き出すのは良案(アリ)かもな。」
◆◇◆◇◆
「ハッ!」
リョースケが目覚めると、そこは小さな小屋の中だった。
椅子の上で気絶したまま座っていたリョースケが見回すと。テーブルを挟んで両側に、女子高生らしき人が、一人ずつ。
右手側には黒い髪を一つに束ねた女子高生、「ひっ」と悲鳴をあげ、怯えた眼を向ける。
左手側には青い髪をショートに切り揃えた女子高生、鋭い目つきをリョースケに向ける。
「起きたか。意外と早い。頑健(マッチョ)な肉体に感謝しろよ喃。」
青髪の女子高生...神賽が言った。女子高生らしくない言葉遣いと見透かすような鋭い視線にリョースケは腰を抜かす。
椅子から転げ落ち足をテーブルにぶつけたが、体が頑丈だからか痛みは無かった。
241
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 23:07:33 ID:bxlhd2wE0
「なんだお前!俺に何をした!」
「忘却(すっとぼけ)てるのか?さっきまで自分が何してたか思い出せるか?」
神賽の言葉を受け、リョースケは記憶をたどる。
魘夢の放送を聞いて、涙目のルカという人がリョースケの体で死んで。その後....
「あ。」
錯乱した状態で、黒髪の女子高生に殴りかかったことを思い出す。
雰囲気が随分違うが、リョースケの記憶の姿は、右側に座る女子高生と一致した。
黒髪の女子高生に視線を向けると、あわあわと定まらない視線をしている。
怯えさせてしまったことは、間違いなかった。
「あ、あの時はおれもどうにかしてたんだ!すまなかった!」
「だだだ...だいじょ...大丈夫です」
『いや全然大丈夫じゃないんだけどな。ひとりちゃんだったら死んでたぞ。』
コミュ障な後藤ひとりは、相手に言葉に反対できない。
内心で杉本が反論したように、ひとりの本心ではリョースケへの警戒や敵愾心は高いままだ。
『だが.....』
(謝罪の言葉が出るだけ、まだましかの)
一方の杉本と神賽は、少しだけリョースケを見直した。
彼は自分の行動を“悪いこと”だと認知できる程度には、真っ当な感性をしている。
だからと言って二人の警戒が緩むわけでも、信頼を勝ち得たわけでもなかったが。『目覚めた瞬間即ブッ殺すべき相手』ではなくなっていた。
「自己紹介がまだだったの儂は神賽惨蔵。」
「あばばばばば「俺は杉本佐一。と言っても俺は副人格って奴で、本来は後藤ひとりって子だ。」
限界だったひとりに代わって、杉本が表に出る。
副人格という話を聞いて、記憶の中との雰囲気のズレはこれが原因だと。リョースケは納得する。
「名簿にはリョースケって書いてある。なんで本名じゃないのか分かんないけど...」
「ならばリョースケ。単刀直入に聞くが、お前が知っとること。全部吐露(は)け」
自己紹介もそこそこに、情報交換。
杉本と神賽がリョースケを中に連れてきたのは、ひとえに彼の持つ情報が欲しかったからだ。
結論から言えば、リョースケの持つ情報は多くない。
名簿に知っている人はいない。正確には、『星野アクア』は彼と同じ世界の人間だし、神賽が体を使っている『黒川あかね』もそうであるが。時期の関係でリョースケは二人の事を知らない。
彼が知っているのは、都市部にある『苺プロダクション』くらいのものだった。
(辺見和雄...そんなやべえ奴が来ているのかよ!)
一方のリョースケは、もたらされた情報にひどく怯えていた。
後藤ひとりの知り合いや、肉体だけの伊地知虹夏や土方歳三はまだいい。
もっとも衝撃だったのは、辺見和雄だ。
100人以上殺した殺人鬼。このデスゲームには、そんな奴まで参加している。
さらにここにいる人は、その体であるアーカードなる人物の事を知らない。
殺人鬼が、未知の体で暗躍する場所。
世界チャンピオンの肉体を得たからと一介の青年が圧勝できる環境ではないと、リョースケは心の底から理解した。
「これが、お主の元の顔か。元の面の方が美男(いけ)とるぞ。」
「...まあ、もう死んだんだけどな」
神賽の軽口を、軽く流す。
彼はもう、死んだ自身の体について考えるのを止めていた。
242
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 23:10:56 ID:bxlhd2wE0
「それで。これからどうする?」
「...なら。俺は苺プロダクションに行きたい。」
居心地が悪そうにリョースケは答える。
「...この場所に建物があるってことは。多分、参加者に関係のある場所ってことだろ。そこの後藤ひとりって子のいるライブハウスがあるみたいにさ。」
「まあ、それはそうだな。めぐみんや禪院って家がある名前もここにはあるし。」
「だろ。だったらさ、苺プロダクションの関係者もいるはずなんだよ。例えば、『アイ』!」
「確か...お主の推している偶像(アイドル)だったか。名簿に名前が無いのも、芸名ではなく本名が乗ってるとすれば、無い話ではないか。」
「そうそう。少しでも知ってる奴に会いたいってのは、自然な事だろ?な?な?」
リョースケの話は筋が通っている、概ね嘘ではない。
だが、彼の目的は『アイ』を殺すこと。
他の参加者を殺すことは無くても、自分たちファンに嘘をついて子どもをつくった『アイ』だけは、今をもっても許せないでいた。
もしそのことが、殺し合いに反対している杉本や人を殺す悪人をブッ殺す神賽に気づかれたらどうなるかなど、今のリョースケは考えてはいない。
リョースケの提案は本音と打算の入り混じった、言ってしまえば取り繕った言葉ではあった。
だが。
『知ってる人に...会いたいって思うのは。自然なこと。』
動けなかった後藤ひとりに、動く原動力を与えたのは。その言葉だった。
「わ....わたしは。STARRYに行く!」
黒髪の女子高生が、震えた口を開く。
顔に傷はなく、目は泳いではいたが確かに神賽とリョースケを向いていた。
いきなり大声を出した姿にリョースケはびくつき。神賽も面食らったようにめをぱちくりさせる。
体を同じくする杉本でさえ、後藤ひとりが自分から肉体の主導権を得ることに驚いてた。
「...ここには、私の友達が居ます。リョウ先輩に喜多ちゃん。あと店長さんも。多分、STARRYがあることを知ったら。来ると思う...ます。」
必死に言葉を紡ぐ後藤ひとりは、正面に座る神賽に目が合った。
興味深そうに話を聞く彼は、うっすらと笑顔を浮かべていた。
「わ...私には杉本さんが居てくれるけど....他のみんなには全然戦えないままかもしれない!だから.......」
「....助けたい。か」
「大事な...友達なので。」
―――山さん!また―――逢ったなァ!
神賽の脳内に、親友にして宿敵である始祖の極道の顔が浮かぶ。
―――帰りたいよ。佐一・・・
杉本の脳内に、戦場で命を失った親友の顔が浮かぶ。
友を助けたいという思いは、友が死んでもなおその顔が心にあり続ける者達にとって。大きく、だからこそ汚してはいけないと思える。
「そうか...ひとりちゃん。」
いつの間にかひとりと入れ替わった(長時間知らない人の前で喋ったので、ひとりの精神は限界だった)杉本は、父親のように優しい目で自分の中のひとりを見た。
体を同じくするのが後藤ひとりでよかったと、心から彼は思った。
この時まで、神賽惨蔵にとって後藤ひとりは、『杉本佐一のオマケ あるいは庇護対象』くらいの認識であった。
(その認識、改めねばならんか。)
喋るのが苦手な少女が、『友人の為』と言った言葉を、ないがしろにはできない。
――情に揺れた忍者は、いとも容易く誤断(ミス)って死ぬ。
神賽の知る限り、最も多い忍者の死因。
神賽は決して情に絆されない男だ。
もし仮に今後後藤ひとりが誰かを殺そうとしても、その前に冷静にブッ殺すだろう。
(だからといってこの情(おもい)を無視する気には、なぜかなれん喃。)
神賽は、ふうと一呼吸つく。どことなく満足そうな、笑顔で。
243
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 23:22:05 ID:bxlhd2wE0
「なら、儂は“後藤ひとり”に着いていこう」
神賽の言葉に、「えー!」と不本意な声を上げるのはリョースケだ。
「なんだよ!俺だけ別方向じゃねえか。着いてきてくれないのか!?」
「着いていく理由がない。お主の言葉は一理あるが。『アイドルを守りたい』とも『助けたい』とも言わなかったじゃろ。」
「それは....」
「想いに貴賤(ランク)をつけたりはせんが、儂は後藤ひとりに協力する。」
冷淡に返す神賽の言葉に、リョースケは言い返せない。
神賽は後藤ひとりと杉本佐一には最低限の信用を向けてはいるが。リョースケに対する信用は、積極的に協力するほどのものではなかった。
「幸い、苺プロダクションもSTARRYもここから南側だ。そこまで同行って形ならいいんじゃないか?」
「......わかったよ。」
案を出す杉本の言葉。
そこにわずかながら不信と警戒の色が見てとれることは、リョースケにも分かった。
先に謝罪の言葉が出たことで、杉本・神賽両名はリョースケが『素直』な人間であることは認めている。
だがしかし、リョースケは、恐怖で錯乱しながらも。力で相手をねじ伏せ、殺される前に殺すという選択をした。
バトル・キングの力に酔いしれていたというのもあるだろうが。そもそも“他者を傷つけ、攻撃できる人間”だと神賽は判断していた。
(おそらくこいつは『耐えられる』かどうかは別にしても“人を殺せる人間”。今回は後藤ひとりと杉本佐一に免じるが、怪しい動きをすれば即対処できるよう警戒は必須!)
同じ懸念は、杉本も感じていた。
殺し合いに積極的に乗るつもりもなく、自主的に人を殺すつもりもないが。
天秤が少し傾けば、良くも悪くも素直なこの男は、殺人を犯せる。
杉本と神賽から見たリョースケの性質であり、事実である。
提案にも扱いにも不服だと思うリョースケだが、それを気にしてくれる人はいない。
アイがいる可能性がある苺プロダクションに行きたい。
戦闘に長ける神賽か杉本に苺プロダクションまで同行して欲しい。
リョースケはそう希望しているが、それを実現する交渉材料も無ければ、行動を共にしてもらえるほどの信頼も無い。
ついさっきまで、彼がひとりと杉本を襲ったのは、紛れもない事実だ。
むしろ殺さずにいてくれるだけ、リョースケは間違いなく幸運だったといえる。
それらのことを、リョースケは頭では理解してはいたが。
「...なんでだよ。」
そのことを幸運だと飲み込めるほど、彼は出来た人間ではなかった。
三人は夜の街に向けて、南に進む。
女優の体をした忍者は、警戒をしながらすたすたと。
女子高生の体をしたギタリストと兵士は、隠しきれない不安を抱えてかつかつと。
格闘家の体をしたただの青年は、思いつめるようにとぼとぼと。
――大事な友達だから。
「そんな奴。俺にはいねえよ」
ぽつりとつぶやく青年の言葉は、前を行く人たちには届かない。
この場で最も強い体を持ちながら、最も自分を惨めに思っていたのは。
ほかならぬ、リョースケ自身であった。
244
:
情ある者たちのプレリュード
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 23:22:53 ID:bxlhd2wE0
【一日目/深夜/D―8】
【後藤ひとり@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:三鷹アサ@チェンソーマン
[状態]:精神的疲労、羞恥心、混乱(小) 神賽・リョースケへの警戒(大)
[装備]:屠坐魔@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:STARRYに行って、みんなと合流する
1:やだやだやだやだ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいムリムリア゛ア゛ーーッ!!
2:筋肉と陽キャが増えた...たすけて.....
3:リョウ先輩に喜多ちゃんに店長さんも...
[備考]
※参戦時期は少なくとも文化祭ライブ以降
【リョースケ@推しの子】
[身体]:バトル・キング@タフ・シリーズ
[状態]:不安(中) 恐怖(大) 劣等感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:元の世界に戻って星野アイを殺害する
1.俺の体が死んでる!なんでだよ!!!なんで俺だけがこんな目に!
2.苺プロダクション.....。ひょっとしたら関係者もここにきているのか?
3.友達なんて....俺には
[備考]
※アイを殺す前からの参戦です。アイの本名および『星野アクア』については知りません。
【神賽惨蔵@忍者と極道】
[身体]:黒川あかね@推しの子
[状態]:健康 悪刀に対する警戒 リョースケに対する警戒
[装備]:悪刀 鐚@刀語
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:主催者と殺し合いに乗り気な悪人は殺す それ以外は生かして帰す
1:儂とこの少女(黒川あかね)をこんな悪夢(クソゲー)に巻き込んだこと。悔いてもらおうぞ!!
2:後藤ひとり。友人(ダチ)のために動くとは、意外と見どころがあるかもしれん喃
3:リョースケはおそらく”人を殺せる人間”。次怪しい動きをすればその時は....
[備考]
※参戦時期は情愛大暴葬より後です
[副人格キャラ状態表]
【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:ヨル@チェンソーマン
[状態]:健康 ひとりに対する心配 リョースケへの警戒
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らないし、こいつ(ひとり)にも乗らせない。
1:殺す必要がある時はどうするか…
2:俺の方が副人格ってやつで…参加者にはならないってことなのか?
3:こいつ(リョースケ)、大丈夫か?
[備考]
※細かい参戦時期は後続の書き手にお任せしますが、少なくとも原作第221話「ヒグマ男」終了以降のどこかとします。
【屠坐魔@呪術廻戦】
後藤ひとりに支給された短剣 『呪具』と呼ばれる呪いを込めた武器
245
:
◆kLJfcedqlU
:2023/09/03(日) 23:23:25 ID:bxlhd2wE0
投下終了です
246
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:23:01 ID:nMl6FYh.0
前半投下します
247
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:24:00 ID:nMl6FYh.0
叩きつけるは殴打の嵐。
迎え撃つはそそり立つ剛直の猛威。
戦場へ響くは歌姫のハーモニー。
平穏の二文字へ唾を吐き捨てる光景、最後に待つは生か死かの二択以外に有りえぬ戦場がそこにあった。
「ドラララララララララララララララァッ!!!」
「ぬぅ…!」
歌声に負けじと声を張り上げる拳闘士。
東方仗助のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドが此度も悪を打ち倒すべくラッシュを放つ。
数多の敵スタンド使いを撃破した半身は、今宵一味違うと仗助自身もはっきり分かった。
拳一発一発のキレが杜王町での戦闘時よりも増している。
元々破壊力とスピードは空条承太郎のスタープラチナにも引けを取らないが、今ならば冗談抜きに渡り合えると思ってしまう程。
後輩スタンド使いとしては少々生意気な事を思いつつも、攻撃の勢いは決して緩めさせない。
頭部、四肢、胴体、そして猛々しい男の象徴。
それら全てを余すことなく狙い打ち、再起不能へと持って行く。
スタンド使いでもない只の人間が生身でクレイジー・ダイヤモンドと戦り合うのは不可能。
そんな常識が通用する相手ではないのだから。
「気迫は見事だが…まだ足りぬ…」
「こんだけ殴ってそれかよ…タフ過ぎるんじゃあねぇのか?」
重装甲の如き筋肉と、天を突きあげる巨大なペニスは決して見せかけに非ず。
イェーターランドの国王ベオウルフ、例え肉体のみであろうとも圧倒的な力に翳りは無し。
自らの男根を目にも止まらぬとしか形容できない速度で突き出し、クレイジー・ダイヤモンドの拳を全て防いだ。
その暴力的な腰使いは女を悦ばせ絶頂へと導く紳士とは程遠い。
性欲発散の為だけに穢れを知らぬ少女を壊す、外道の所業に他ならない。
自国の民ならず敵をも魅了し心火を滾らせた益荒男はここにおらず。
英雄の体を我が物とするは、千年を生きる悪鬼に魂を売り渡した異形の剣士。
上弦の壱・黒死牟。股間の聖剣を邪悪な魔剣へと変え、血を求める鬼である。
248
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:24:38 ID:nMl6FYh.0
スタンドだけで倒し切れないのなら手数を増やせば良い。
仗助とクレイジー・ダイヤモンドが黒死牟の左右に移動し、挟み撃ちの形で攻撃を仕掛ける。
完全再生の使用に支障が出る為、なるべく両腕を痛め付ける真似は控えたかったがそれはさっきまでの話。
ただでさえ超人的なアンチョビの身体能力がより上昇した今ならば問題無い。
己のスタンドにも劣らぬスピードで手刀を繰り出した。
「ちょいと卑怯かもしんねえけどよ、フルチンで女の子を襲う変態が相手なら心も痛まねぇってもんだぜぇ〜〜!!」
二方向からの猛攻をも股間の剣一本を豪快に、それでいて精密に振るい対処。
多対一の状況など鬼狩りを相手に飽きる程相手にして来た。
だが現在戦っているのは上弦という肩書に何の反応も見せなかったように、鬼殺隊の隊士ではない。
こうして急激に身体機能を強化したのも、呼吸でもなければ、まして痣を発現させたのとも違う。
理由は深く考えるまでも無い、原因を作ったのはこの珍妙な体の小僧とは別にいる。
死闘には場違いな歌声を響かせ続ける少女を睨んだ。
――カミサマどうか背界で寄り添わせて
警戒交じりの視線も意に介さず、歌姫は仗助へと歌を届ける。
助けを求められたならば、手を差し伸べ力とならねばならない。
救世主として当然の行為。
呪いのように自分の奥底へ根付き、時には精神をすり減らした日も少なくはない。
しかし自分の歌を必要としてくれる者が、彼女にとっての救いとなったのもまた変えられない事実。
故にウタは歌い続ける事をやめない、やめられない。
――サカサマの祈りを叩きつけて歌え!
頭に浮かんでくるのは知らない筈の歌詞。
ウタ自らが作詞作曲したのとは違う、なのに不思議と前から知っているような気がしてならない歌。
フレーズの一つ一つに想いを乗せて歌う。
助けてくれと縋り付いた少女へ応える様に、今も戦っている小さな彼を支えられるように。
249
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:25:44 ID:nMl6FYh.0
「凄い……」
近くで見ていた郁代が思わず感嘆の言葉を呟く。
結束バンドでギターボーカルを担当し、まだまだプロには及ばずとも音楽の世界へ足を踏み入れたからこそ余計に魅せられた。
自分達が巻き込まれたのは正真正銘の殺し合いで、呑気な考えを抱いている余裕でないとは理解しつつも。
ウタの歌に感動する気持ちを抑えられない。
心が熱を帯び視線を逸らせない感覚には覚えがある。
台風の日に行われた結束バンドの初ライブ、大ピンチの空気を塗り替えた後藤ひとりのギター演奏。
間近で見たひとりのかっこよさとは違うけど、魂を揺さぶられたのは一緒。
まるでここら一帯がウタの為のライブステージと化したと錯覚してしまいそうだ。
弾かれたよう視線を仗助の方に移す。
さっきまではフルチンの危険人物相手に叩きのめされるばかりだったのが、今ではどうだ。
互角に渡り合い、浮かべる笑みには余裕と力強さがハッキリ表れているではないか。
「これなら…!」
勝てるかもしれない。
ヒーローを応援する幼児の気分で拳を握り締め、郁代は食い入るように戦いを見つめる。
少女達の声援と期待へ応えんと、クレイジー・ダイヤモンドがラッシュの勢いを更に増し、
『やあお前たち、約束の連絡の時間だ』
水を差す声が響いた。
空気を読めとブーイングを口にする観客はいない。
忘れてはならない、ここはライブ会場では無く殺し合いの地だ。
冷水を浴びせられ強張る郁代とは反対に、他三名が放送へ反応した様子は見当たらない。
男二人は眼前の敵へと意識を裂き、歌姫は自らの世界へと入り歌う事へ集中している。
タブレットの入ったデイパックから流れるくぐもった音声も、それぞれの動きを止める理由にはならず。
結局この場でタブレットを取り出したのは郁代一人だけだった。
250
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:26:47 ID:nMl6FYh.0
『前に伝えた通り、お前たちに支給した"タブレット"に名簿と地図の"データファイル"というものを送った』
スタンドとスタンド使いによる二刀流のラッシュ。
敵が只の人間ならば既に数十回は殺されている殴打を、手加減抜きで打ち放つ。
『それから名簿についてはもう一つ、精神と身体の組み合わせ名簿の配布を予定している』
歴戦のスタンド使い渡り合うは十二鬼月最強の鬼。
得物の数は敵に劣れど何のハンデにもなりはしない。
体中から男根を生やしたとしか思えない速度で拳と打ち合い、余波が周囲を破壊する。
『ああ、そうだ。今言った通り、この一時間でもう既に誰かの殺害に成功した者も存在する』
「そ、そんな…!?」
何でもないように告げられた内容に、郁代は戦慄するばかり。
人が死んだ、それもたった一時間の間に。
仗助と陽キャらしく会話に花を咲かせている間にも、別の場所では平然と他者の命を奪う者が現れた。
今一度、これが悪ふざけの類では無いと思い知らされる。
――背中合わせのハレルヤが飛んで行かないように!
無数のスピーカーとウタ本人の口から歌が響く中、もう一つの歌が流れる。
残酷で楽し気に、歌姫の体を得た鬼はそれを口遊む。
知らない名前と知らない人達の顔。
どう見ても人間でじゃあない者もいたけど、そんな存在も発表されたという事は既にこの世にはいない。
ニュース番組で事件が報道されるのとは違う、いつ自分がこの中に名を追加されてもおかしくはない恐怖。
ごくりと唾を飲みこむ郁代を無視し、死者の名が次から次へと呼ばれていく。
仗助と郁代の知っている者は一人もいない。
玉壺の名が聞こえても黒死牟が気を割く気配は皆無。
半天狗共々鬼狩りに敗れた上弦へ今更深く考え込む理由もない。
ここにいるのが三人だけなら、死者の名前に動揺する事は無かっただろう。
251
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:27:46 ID:nMl6FYh.0
『シャンクス…その身体の名はじゃんけんするやつ』
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――え?」
あっさりと。
呆気なく。
笑ってしまうくらい簡単に。
ウタの世界は壊れた。
歌声が止まる。
音楽も鳴り止み、スピーカーは煙みたいに消える。
コンセントを引き抜き無理やり電源を落としたように、歌は切れてしまった。
戦場の空気を支配した歌姫のステージはもうどこにもない。
男達の怒声と叩きつける音だけが響き、全てが元に戻ってしまう。
「シャンクス……?」
視界が郁代の持つタブレットを捉える。
そこに映った一枚の画像。
他の見知らぬ連中よりもいやにハッキリ見えた男を、ウタが知らない筈が無い。
自分の髪の毛の片方と同じ、綺麗な赤髪の彼を見間違えるなんて有り得ないのだから。
画像が切り替わり、自分と同じ顔をした奴が何かを言っても。
ウタの耳には最早届かない。
タブレットを持つ禿げた老人も、真っ向からぶつかり合う男達すらいないもののように感じられた。
252
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:28:25 ID:nMl6FYh.0
「シャンクスが、死んだ…………」
自分で言って、悪い冗談としか思えなかった。
あのシャンクスが、赤髪海賊団を率いる船長が、誰よりも強い父親が。
こんな意味の分からない場所で、ウタの知らない所で命を落とした。
どこの誰とも知れない輩に殺されたなど、ジョークにしたって笑えない。
「そん、なの……!」
嘘だと言いたいのに、言葉は口から出てくれない。
エンムがデタラメを言っているだけだと鼻で笑えもしない。
そもそも自分はどうしてこんなに動揺しているのか。
シャンクスは悪い海賊だ。
自分を捨てて、エレジアの人々を殺し金銀財宝を奪った大悪党。
むしろ死んで清々する程の――
「ちが、ちがう…だって……ああ違う…!」
違う、シャンクスは自分の為に罪を被った。
エレジアを滅ぼしたなんてやってもいない汚名を自ら被り、自分を守ろうとしてくれた。
本当に殺されるべきは、エレジアを火の海に変えた自分の方で――
「あたしは…ちが…シャンクスは……」
考えが纏まらない。
頭の中に指を突っ込まれかき混ぜられてるように、ぐちゃぐちゃして気持ちが悪い。
253
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:29:09 ID:nMl6FYh.0
シャンクスは自分を守ってくれた、大好きな家族
いや違う、海賊嫌いの歌姫がシャンクスを好きだなんて言って良い筈が無い
ファンの皆を失望させてしまう、でもシャンクスはライブに来てくれた
そうだ都合が良い、最後に決着をつけたかったんだ。向こうから来たなら好都合
あたしの新時代を否定するルフィを助けるような奴だ、きっとアイツも本当は悪い海賊で
違う本当は違う、信じ切れなくて謝りたかったもう一度あたしの歌を聞いて欲しい、なのに本当に言いたかったことは一つも言えずにシャンクスは
「違う…!シャンクスは…あ、あたし……う…うああああああああああああああ……!!!」
「ちょ、ちょっと、どうしたの…!?」
自分が何をしたかったのか。
本当はシャンクスに何を言いたかったのか。
それすら答えを出せず、ただシャンクスが死んだという事実だけが圧し掛かる。
心配気に声を掛ける郁代に言葉を返す余裕は無く、蹲って絶叫するしかなかった。
254
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:29:44 ID:nMl6FYh.0
「ぐああああああああああっ!!」
ウタをどうすれば良いのか郁代へ考えさせる暇は与えられない。
吹き飛ばされ目の前に叩きつけられた水色の小さな体。
傷だらけで転がる仗助の姿に息を呑む。
「奇怪な力を持っていようと…所詮は未熟な娘に過ぎぬか…」
魔剣を勃起させ悠々と近付く。
呆れと失望を口にする威圧感は、自分達の前に姿を見せてから全く衰えない。
仗助が黒死牟と互角に渡り合えたのはウタの、正確に言うと肉体であるリグレットの能力の恩恵。
当然歌が止まれば仗助のデジヘッド化も消え、強化された能力は元に戻る。
そうなってしまえばさっきまでの光景の焼き直しだ。
襲い来る巨根への対処が追い付かず、殴打をその身に受けこの様である。
「ひ、東方くん…!」
「もっと下がってろ郁代…!このおっさんにゃあ『女の子に優しく』なんざ期待できねぇからよッ!」
背後を見ぬまま叫び、完全再生で皮を脱ぎ去る。
傷は癒えても状況は何一つとして良くならない。
詳しい原理は分からなくとも、急に自分の体の調子が良くなったのがウタの歌声による影響とは仗助も気付いた。
だが今の彼女にもう一度歌ってくれと頼んだ所で、承諾出来る精神状態では無いだろう。
仗助に言われ郁代はウタを無理矢理引っ張って距離を取る。
抵抗する様子も無くされるがままのウタへ、気を遣っていられる場面でもない。
255
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:30:26 ID:nMl6FYh.0
離れて行く二人を視界に納めつつ、黒死牟は興味無さ気にチラと視線をくれてやるのみ。
歌声を媒介にして他者を強化するという、血鬼術とは別の異能。
多少の興味もあったが蓋を開けてみれば何とも落胆せざるを得ない。
大方、親しい者が死者として名を呼ばれ戦意を喪失したのだろう。
これが鬼狩りであったなら無念も悲しみも刃に乗せ、死ぬまで戦いを投げ出さないというのに。
脆弱な心構えの娘など自分がいつでも殺せる、何だったら自分が手を下すまでもなく野垂れ死ぬ可能性だって高い。
よって優先するのは依然変わらず水色の奇妙な参加者。
「折れぬ心意気は認めるが…いい加減に幕を引くとしよう…」
ここが殺し合いの地ではなく、自身も元の肉体ならば鬼に勧誘する選択もあった。
だが無惨が参加しているかは分からず、仮にいても他者の肉体では鬼に変える事は不可能。
少々惜しい気もするが、この辺りで命を刈り取らせてもらう。
「ぬぅん…!!!」
傍らの人形で殴り掛かる隙は与えない。
巨体に見合わぬスピードで急接近し巨根を振り下ろす。
かの四皇、百獣の名を知らしめる大海賊にも引けを取らぬ迫力である。
男根の下には原型を留めぬ死体が――無い。
「しぶとい小僧だ…」
「チ○ポに潰されて死ぬなんざ、あの世で爺ちゃんに笑われちまうからな…流石に御免だぜ」
自力での回避は難しいと判断。
クレイジー・ダイヤモンドで自らを蹴り飛ばし強引に脱出。
紙一重ながら避けられたものの、危機的状況であるのに変わりはない。
一度躱されたから何だと言う、死ぬまで男根を振るえば良いだけの話だろうに。
だというのに仗助が浮かべるのは不敵な笑み。
悪戯の成功を喜ぶ悪童のようなしてやったりと言いたげな、しかし不思議と心強さを感じずにはいられない。
まるで彼の父、二代目『ジョジョ』を思わせる顔だ。
256
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:31:07 ID:nMl6FYh.0
「散々そのデカチンを振り回してくれたお陰でよぉ〜〜…ここら一帯モグラが出たみてぇにボロボロだよな?」
仗助に言われずとも見れば分かる。
木々がへし折れているのは言うまでも無く、地面はもっと酷い有様だ。
ただでさえ巨人の如き体躯のベオウルフと比べ、アンチョビの体は子どものように小さい。
必然的に攻撃は下向きで行われ、その度に地面はあちこちが大きく削られている。
そしてこの状況こそ仗助にとっては都合が良い。
「ドラララララララララララァッ!」
クレイジー・ダイヤモンドが地面を叩く。
勝てないと悟り自棄に出たのか?
否、荒れた地面が元の形を取り戻そうとする。
単に打撃を繰り出す人形としか見ていなかった黒死牟は目を見開き、地面と、何より自身に襲い来る変化を目撃した。
「あんたは俺らをハメる気でいたんだろうが、逆にハメさせてもらうぜおっさんよッ!!」
叩きつけたままの巨根を巻き込み、地面が元の形へ修復される。
土や草に覆い隠された男根は最初から地面の一部だったかのように固定。
大地との意図せぬ融合を果たすも黒死牟に焦りは皆無。
男根に力を籠め引き抜けばそれで済む。
だがしかし、動きを止められたのには変わらない。
この戦闘において黒死牟は初めて、明確な隙を仗助に晒したのだ。
「ドララララララララララララララララララララララララララララララァーーーーーッ!!!!!」
「ぬぅううううう…!!!」
咄嗟に両腕を交差し防御の構えを取った。
分厚い筋肉の装甲を覆うラッシュに、ダメージは最小限に抑えるも痛みは殺せない。
人の体でしか味わえない久しい感触。
殴っている仗助も敵の頑丈さには歯噛みする。
自慢のスタンドによる拳を受けて尚も耐えられるとは、全く敵ながら天晴というもの。
ならば、もう一つの武器を使わせてもらう。
257
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:31:57 ID:nMl6FYh.0
「光剣滅殺(デスライトニング)!」
手刀を作った右手から、名前の通り光の剣を出現させる。
完全再生だけがアンチョビの使える技ではない。
普段の姿の時の主力技は究極体になろうと変わらず使用可能。
(つくづくビックリ箱みたいだぜアンチョビ君の体は!)
手から光り輝く剣を出す芸当まで出来る。
漫画の主人公のような力には、仗助も高校生とはいえ「男の子」の部分がつい反応してしまう。
尤もすぐに切り替え、光剣を眼前の敵へ振るわんと動く。
殴って駄目なら斬ってみろというやつだ。
「成程…」
敵への関心を籠めた呟きは、口にした黒死牟本人にしか聞き取れない。
力で及ばずとも頭を使い戦闘を有利に動かさんとする。
己の能力を熟知していなくては不可能、こちらが思った以上に戦い慣れているらしい。
してやられた事実を噛み締め、こちらも相応しき技で返してやらねば無礼に他ならない。
「っ、なんだ…?」
空気が震える。
天変地異の前触れを予期させる不吉さは、対峙する大男が発する呼吸の音。
人の身でありながらも、柱や鬼にすら引けを取らぬ肺活量。
振動を起こし折れた木々を震わせる呼吸が齎すは、更なる活力を与えられた雄の象徴。
女の膣を掻き回し、男の菊門を嬲る。
最早性行為の域では到底収まらぬ、敵を屠る正真正銘の剣としての真髄が発揮されようとした。
258
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:32:45 ID:nMl6FYh.0
――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月
地面が弾け飛び、眠れる怪物が再び目を覚ます。
振り上げられる男根の一撃、否、三撃。
本来、月の呼吸とは黒死牟の血鬼術と組み合わせて放つ、鬼殺隊の呼吸法とは違う技である。
刀を振るい不可視の斬撃を飛ばし、周囲にも三日月状の斬撃を纏わせる広範囲への攻撃。
ベオウルフがどれだけ優れた肉体であろうと、黒死牟本人で無い限り血鬼術は使えない。
まして振るう得物も己の能力で作った虚哭神去に非ず。
されど、元の月の呼吸とは違えども近付ける事は可能。
男根が三つ同時に放たれたと思わせる程の速さで腰を振った、今しがたの型のように
「う、おおおおおおおおおおおおおっ!?」
僅か一瞬で重みを増した威圧感に急かされ、攻撃を中断。
光剣を盾にしながら後退した仗助の判断は間違っていない。
但し、それだけでやり過ごせる甘い相手では無いのだが。
直撃は避けつつも男根の完全回避とまではいかず、ワイヤーで引っ張られる勢いで吹き飛ばされた。
地面へ叩きつけられる痛みは、数えるのも嫌になる。
(クソッタレ…チ○ポ振り回して出来る芸当じゃねぇだろうがよォ〜〜〜!!!)
今更過ぎるが真っ当なツッコミを胸中で吐きながら、痛む体に鞭を打って立ち上がる。
黒死牟も、天を見上げる魔剣も不動。
エベレストよりも遥か高くへそびえる巨根は、一向に萎える様子が見当たらない。
あんだけ立派なモノをぶら下げているなら、体を使う当人もそれに相応しい性根であって欲しいと愚痴る。
「まぁ、言ったところでどうにもならねぇけどな…」
苦笑いと共に光剣を構え、傍らのクレイジー・ダイヤモンドも拳を握る。
未だ諦めを見せない敵へ容赦は無用、熱を増した亀頭を突き付け、鈴口が睨む。
「こんばんわ皆さん。良い夜ですね」
声がした。
戦場を更なる混沌へと引き摺り込む乱入者が、満面の笑みと共に現れた。
259
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:33:21 ID:nMl6FYh.0
◆◆◆
全身が歓喜で打ち震える。
頬は初恋にときめく少女のように紅潮し、口の端からは涎が垂れそうだ。
抑え切れぬ興奮が逸物へ熱を送り、股座がいきり立つ様は繁殖行為に励む直前の如し。
説明書を片手に四苦八苦しつつ、名簿を開き直ぐの事だ。
刺青囚人の辺見和雄がその名前を見付けたのは。
見間違いでは無い。
何度も何度も画面を穴が開くくらいに凝視して、求めて止まない「彼」がここいると確信を抱いた。
「ああ――やっぱりあなたもいるんですね、杉元さん!」
杉元佐一。
自分と同じ刺青囚人の白石と行動を共にし、金塊を狙う元軍人。
忘れもしない、鰊漁師として潜伏中に運命の出会いを果たした男。
杉元も殺し合いに参加している。
辺見と同じ地で、同じ月を見ている。
自分と彼を結ぶ糸は一度死しても断ち切れなかった、これを運命と呼ばずに何と言う。
喜びに酔いしれるのも束の間、ふと顔色が曇る。
名簿によると杉元は正式な参加者では無く、「その他」に分類されるらしい。
二重人格や意思持ち支給品など、ある意味参加者以上にどんな体なのか予想が付かない。
もしかすると、自力では動けず喋る事しか出来ないような体になっているんじゃあないのか。
絶対にあり得ないとは言い切れない予想に、辺見の不安は加速する。
幾ら何でもあんまりだ、折角杉元がいてもまともに動けないのでは台無しも良いところ。
260
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:33:57 ID:nMl6FYh.0
「…いえ、殺し合いを開いたのなら杉元さんの素晴らしさは理解しているはず」
魘夢だって杉元の情報を何も知らず、参加させた訳ではあるまい。
正式な参加者でなくとも、『不死身の杉元』としての本領が発揮出来るだけの体は与えたに違いない。
そうでなければ勿体ないじゃあないか。
あれ程に自分の命を煌めかせてくれた杉元を、無粋極まる身体に閉じ込める真似はしてくれるなと強く願う。
杉元以外にも興味を引く名前はあった。
殺し合いにて辺見に与えられた体の持ち主、吸血鬼のアーカード。
アーカードと因縁深い戦争狂の少佐。
彼らも参加者として会場の何処かにいるらしい。
自分の体が勝手に使われてると知り、アーカードはどうするのだろうか。
怒り狂うか?或いはそれもまた面白いと手を叩くのか?
どちらにしても殺しに来るなら、それは間違いなく素敵だ。
それなら早速死を振り撒きに行かねばなるまい。
参加者を片っ端から惨たらしく殺し、理不尽の権化として君臨し、恐怖と警戒を集める。
きっと杉元を始め、怪物相手にも勇敢に立ち向かう人々が自分を殺しに来る筈。
人間を超えた化け物たちも興味を引かれ、我こそが勝者となるべく闘争に臨むだろう。
素晴らしい、人も化け物も死力を尽くして辺見を殺そうとする。
きっと生前以上の煌めきと出会え、これ以上無い程の幸福に包まれ死ねるんだ。
そうと決まればグズグズしていられない。
意気揚々と出発しようとし、おやと首を傾げた。
261
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:34:41 ID:nMl6FYh.0
「いつの間にか歌が止まった…?」
魘夢が放送を行う少し前。
適当な参加者を求め歩いていた辺見の耳に届いたのは、少女の歌声。
音楽にさして興味を持たない辺見からしても、つい足を止め聞き惚れてしまうくらいには惹かれる声だった。
誰が歌っているのかは知らないが、自分のように歌声を聞き付けた者達が集まるかもしれない。
歌が聞こえる方へと小走りで近付き、放送が始まったのはその数分後のこと。
杉元の名前に興奮し気付くのが遅れたが、ウタは既に聞こえなくなっている。
流石に放送を無視してまで歌いはしないのだろうと結論付け移動を再開。
代わりに聞こえて来たのは明らかに争い合う音。
隠れながら慎重に覗いてみた途端、辺見は興奮で逸物から先走り汁を溢れさせた。
殺し合っていたのは男と異形。
水色の小さな体躯で、伝承に登場する小鬼にも見える者。
奇妙な人形を操る姿には驚きだが、もっと驚愕するのは相手の方だ。
大きい、刺青囚人の牛山辰馬をも凌駕し兼ねない巨体の大男。
何より注目すべきは下半身、天へと昇り雲を突き破る龍の如き迫力。
古来の神々が手にする神器もかくやと言わんばかりの神々しさ、あの部分にだけ神が降臨したと言われても納得するしかない。
(な、なんて人達なんだ……)
やはり持った通りだ。
この殺し合いではアーカードの体を持つ辺見の蹂躙劇にはならない。
彼らのような参加者がゴロゴロ存在するのなら、怪物相手にも殺し合いを成立させられる。
まさかいきなり自分を強く煌めかせてくれるだろう者を見付けられるとは思わなかった。
気体と下半身を膨らませ、待ち切れずに戦場へ姿を現わす。
生前のように潜伏しながら殺して回る必要は無い。
何故なら今の自分は化け物、人間に殺されるべき不死の王。
堂々と己の存在を見せつけてこそ意味がある。
(ああ、本当に――良い夜だ)
これより始まる闘争へ思いを馳せ、心の底からの笑みを浮かべた。
262
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:35:19 ID:nMl6FYh.0
○
「お前は…」
唐突に現れた乱入者へ、黒死牟は目を細めた。
鬼狩りと同じ正義感の持ち主が助太刀に現れる。
若しくは漁夫の利を狙う姑息な輩が、ここぞという場面での介入を目論む。
そういった可能性は想定の内だがこの男はどちらでもない。
歓喜の笑みは真っ当な感性の持ち主とは程遠く、人が発して良いものとはかけ離れた気配。
姿形は人間のソレに相違なくとも、黒死牟には分かった。
「コレ」を人に当て嵌めるのは大間違いだと。
「なァあんた…」
仗助もまた突然出て来た男へどう対応すべきか悩む。
コートも帽子も、ついでにサングラスも赤という全身赤尽くしの怪しさはさておき。
自分達が行っていたのは命懸けの戦闘。
どう見ても気安く挨拶して登場する場面では無いだろうに、男は平然とやってのけた。
呑気を通り越し異常としか思えない。
何より仗助もまた、赤い男の纏う血の気の凍り付くような気配を感じるのだ。
今はもういない連続殺人鬼の薄気味悪さとはまた違う、ありきたりな言葉で言うなら嫌な予感。
仮に承太郎やジョセフがいたならば、ジョースター家の宿敵である帝王の姿を重ねただろう。
「一応言っとくけどよ、そこのフルチンのおっさんは『乗ってる』側なんで逃げた方が良いんスけどね」
「ご忠告ありがとうございます。でも逃げるなんてとんでもない」
念の為に促した警告もにニコニコ笑いながら受け流される。
仗助の中で男への警戒が猛烈に跳ね上がり、黒死牟に至っては股間を振るい仗助諸共仕留める気だ。
両者の瞳が突き刺さるのをさぞ嬉しそうに受け止め、辺見の右腕が跳ね上がった。
263
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:36:02 ID:nMl6FYh.0
「だって僕は、煌めき合い(ころしあい)に来たんですからぁ!!」
右手に握られた物が何なのか、理解と同時に仗助の頬が引き攣る。
銃だ、引き金を引けば弾を発射する、日本では限られた職種の人間しか携行を許可されない武器。
尤も辺見が手にしたのは、仗助の祖父も持っていたような警察官の拳銃とはどう見ても別物。
回転式のマズルを六つ備えた巨大なフォルム。
俗にガトリングガンと呼ばれるソレの正式名称はGX-05〈ケルベロス〉。
対未確認生命体・アンノウン用に開発された主力武器である。
「さぁ!僕を殺してください皆さん!」
熱の籠った叫びはけたたましい銃声に掻き消され、誰の耳にも届かない。
青い小鬼と下半身丸出しの巨漢へ大量の銃弾がばら撒かれる。
アンノウンの強固な外骨格をも破壊する特殊弾を、暴風もかくやの勢いで発射。
G3-Xという強化装甲服を装着した者ですら、両手でしっかりと構え撃つのを想定したのがケルベロスだ。
だというのに辺見はあろうことか、片手で棒切れのように振り回しながら乱射している。
生身でそんな扱い方をすれば腕が吹き飛ぶのは確実だが、アーカードの体が無茶な撃ち方を可能にした。
吸血鬼の中でも最上級の能力を持つアーカードは、当然桁外れの怪力の持ち主。
ケルベロス以上に凶悪な性能の銃を平然と連射した事もある故に、この程度は欠伸が出るくらいに容易い。
「イカレてんのかこのオッサンはよォ〜〜〜!?」
慌ててまだ倒れていない気の後ろに隠れ、仗助は頭を抱える。
巨根を振り回して暴れる大男の次は、不気味な笑みと共に銃をぶっ放す赤男。
参加している男は自分以外こんなのばっかりなのか。
一方黒死牟の対処法は変わらず、ベオウルフの持つ最大の武器を活かした防御。
逃げ隠れする選択は無視し、真っ向から魔剣を振るい叩きのめす。
突風を受けた風車のように男根を高速回転させ、銃弾を叩き落としながら接近を試みる。
264
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:36:48 ID:nMl6FYh.0
「来て!来てください!それを僕の中に突っ込んで!」
明治時代には存在しないオーバースペックの銃火器。
それを真正面から防ぎ斬りかかる巨漢へ股間を濡らしつつ、しかし大人しく殺されてはやらない。
この程度では辺見が求める煌めきには程遠い。
全力で殺しに行く、すると向こうも全力で殺しに来る。
弟がヒグマに食われる瞬間に見せた、無意味ながらも決死の抵抗と同じ、いやそれ以上の煌めきこそが辺見の目的なのだから。
「むっ…!?」
銃撃を止め、跳躍した辺見が放つは顔面狙いの蹴り。
回転する男根の間を縫い、杭打機よりも鋭い一撃が黒死牟に迫る。
速度を緩めず回転させた魔剣の間を掻い潜るとは、蟻の尻穴に糸を通すよりも困難だろうに。
異様な雰囲気に違わず、発揮する能力もまた人間の限界を容易く凌駕しているらしい。
元より油断はしていなかったが、脅威の度合いをより高めた。
「だが甘い…」
されど黒死牟もまた、並の枠では決して収まらぬ怪物。
扱う体は怪物以上に怪物らしい人間。
たとえ不死の王(ノー・ライフ・キング)が相手であっても、簡単に勝利は譲ってやれない。
上体を後方に大きく倒し、下半身を突きあげた体勢となる。
所謂逆さブリッジのポーズ。
辺見の蹴りを避け、真下から男根による突き上げを繰り出したのだ。
「ああ!僕の足が!?」
蹴りを放ち伸ばしたままの脚は、男根に貫かれ引き千切られた。
片足が使い物にならなくなり、敵の機動力は自然と低下。
そういった展開は相手が常識の範囲内で計れる存在だったらの話。
撒き散らされた血が傷口へと戻り、ビデオの逆再生を見ているように足が元の形を取り戻す。
時間にすれば5秒と掛けずに完治。
上弦の鬼にも匹敵する再生速度、敵が人では無いと分かってはいたがやはりこの程度の傷は無意味。
ならば両断してはどうだ、立ち上がり男根を横薙ぎに振るう。
265
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:37:47 ID:nMl6FYh.0
「おおっと!?」
落下の瞬間を狙い振るわれた男根は、辺見へ傷一つ付けられない。
再生したばかりの足で男根を踏み付け土台代わりにし跳躍。
僅かにでもタイミングがズレれば再び片足を失う羽目になる行動も余裕でこなした。
黒死牟の顔の位置まで跳び上がり、先程は届かなかった蹴りを放つ。
靴底に当たる硬い感触、交差した両腕でガードされたのだ。
筋肉が盛り上がり血管が脈動、男根ばかりが注目されがちだが鍛えられた全身もベオウルフの武器。
ガードを解除し剛腕を振るい辺見を吹き飛ばす。
何もしなければ大木に激突、運が悪ければ枝に心臓を貫かれて死亡。
そんなつまらな過ぎる死に方は御免だ、まだまだ己の欲する煌めきには程遠いのだから。
「せはぁっ!」
ケルベロスを持つのとは反対の手で手刀を振るう。
大木を一刀両断にし激突を回避、ついでに陰に隠れていた小鬼も発見。
「君も遠慮しないで、僕を煌めかせて!」
トチ狂ったとしか思えない言葉を吐き、真下へ踵落としを繰り出す。
踵の下には陥没した地面があるばかり、青い体は見当たらない。
真横からの敵意を察知、横目で見ると光り輝く右手を振り被る小鬼がいた。
各地で殺人を繰り返しながらの生活を続けていたのもあって、辺見は自分に向けられる敵意へ敏感だ。
体を大きく逸らし剣を避け、反対にケルベロスを突き付ける。
「ドララララララララララララララァッ!!」
しかし弾は発射されなかった。
光剣を躱される事くらい仗助には十分予想の範囲内。
避けた体勢から復帰される前にクレイジー・ダイヤモンドを出現、ラッシュを叩き込む。
これ程に接近してくれているのなら、射程距離の短さも問題にはならない。
殴り飛ばされ血を撒き散らしつつも、倒れはせずに二本足で踏み止まった。
266
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(前編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:38:40 ID:nMl6FYh.0
「グレートどころかクレイジーも良いとこだぜ、このおっさん…」
顔面からの出血も意に介さず、むしろ気持ちが良いとばかりに辺見は笑う。
こんな奴と対峙する真っ最中の仗助からしたら堪ったもんじゃあない。
片桐安十郎や吉良吉影とは別ベクトルで異常である。
とはいえげんなりし続けるのも程々にしなくては。
辺見はもとより、黒死牟も巨根を揺らし今この瞬間にも殺そうとしているのだから。
「素敵です…やっぱり僕は殺し合いに参加して本当に良かった…!」
圧倒的な力を持つ怪物の蹂躙劇。
そんな安っぽい展開にはならず、抗い傷を付ける者達と殺し合う。
巻き込まれた当初は無粋極まると辟易したが、今となっては魘夢に感謝の念すらあった。
生前以上の煌めきも実現不可能なんかじゃない。
「でもまだ足りない…もっともっと本気で殺しに来てもらわないと、あの時の煌めきは越えられないじゃあないですか!」
黒死牟も仗助も強いのは分かった。
だが自分が最高の煌めきを発するには足りない、だってこっちはまだまだ余力を残している。
こちらの全力をぶつけ、それすらも上回る程の執念で相手が食らい付いてこそ、自分は煌めく事が出来る。
大きな銃を撃つ、怪力や再生能力を見せ付ける。
それだけじゃあ駄目だ、アーカードの力はそれっぽっちじゃないだろう。
彼らにはもっと本気を出してもらわねばならない。
だから辺見がソレを口にするのに、何の躊躇も無かった。
「拘束制御術式
第3号
第2号
第1号
解放」
凍り付く。
その場に集まった全員が総毛立ち、空気が悲鳴を上げる。
脳が叫ぶ、肉体の司令塔が全力で警鐘を鳴らす。
恐ろしい事が起きる。
この化け物を放置すれば、恐ろしい事が起きてしまうと。
闇が溢れる。
アーカードと言う名の化け物が支配する。
辺見和雄と言う名の人間が混沌を引き起こす。
「さぁ、僕と一緒に煌めき合いましょう」
『本当の吸血鬼の闘争』の幕開けだ。
267
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/07(木) 00:39:39 ID:nMl6FYh.0
投下終了です。残りはもう暫くお待ちください
268
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:53:14 ID:4/96RJSs0
残りを投下します
269
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:54:31 ID:4/96RJSs0
◆
帳が下りる。
獲物を捕らえ、自らの狩場を作り上げる。
夜の闇よりも尚濃い暗闇が覆い隠し、無数の眼が睥睨するは二匹の餌。
しかし甘く見るなかれ。
彼らは黙って食われる事を良しとはしない、油断すれば反対にこちらが喰い殺されてもおかしくはない。
「なんだ、こりゃ……」
息を呑み、ようやっと吐き出した少年の言葉へ答えを返す者はいない。
イカレた言動を繰り返す赤い男が何を始めたのか。
具体的な解答は弾け出せずとも、仗助が理解したのは一つ。
マズい事態が起きてしまった。
スタンド攻撃だとか最早そういう次元では無い。
人間の根本的な部分を震わせる、人ならざる脅威と対峙した恐怖。
嘗て、吸血鬼や柱の男と死闘を繰り広げた戦士たちのように、仗助もまた怪物と戦わねばならない運命へと導かれたのだ。
「……」
闇そのものに睨み付けられ、黒死牟は不動の姿勢で睨み返す。
赤い男が姿を変えてから明確な攻撃はされていない。
しかしこの光景を目の当たりにし、上弦の壱たる自分をしても戦慄を抱かざるを得ない存在感と対峙すれば理解する他無い。
敵は人を超えた怪物として間違いなく最上位、自らの主にも引けを取らない強者。
分かった所で怯え逃げ出すつもりは毛頭ない。
誰が相手だろうと勝たねばならぬ、敗北だけは決して許されぬ。
四百年前のあの日、赤い月夜に味わった屈辱が黒死牟を勝利への執着へ縛り付けて離さないのだ。
「さぁ――煌めき合いましょう」
闇が蠢き、波打ち、押し寄せる。
数百か、下手をすれば数千にも届きかねない牙、牙、牙。
顎を打ち鳴らし、我先にとばかりに獲物へ食らい付かんと迫る百足と蝙蝠の群れ。
闇が産み落としたと証明するように、全身を染め上げる黒。
唯一、血よりも赤い目を爛々と光らせ鬼と人間へ襲い掛かった。
これらは使い魔、自らが使える王に歯向かう不届き者へ死を与える役目を任された軍隊。
270
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:55:30 ID:4/96RJSs0
「っ!!ドララララララララララララララァッ!」
既に脅威は間近に迫りつつあった。
であれば何時までも呆けていられる余裕は微塵も無い。
急ぎ攻撃に移らねば待ち受ける末路は一つ、骨まで食い散らかされる惨めな餌。
自らの精神象が本体の意思を受け取り拳を放つ。
「ドラララララララララララララララ」
近付いた端から拳を振り落とし叩き潰す。
近接パワータイプのスタンドでは間違いなく上位に位置する性能。
1秒間が過ぎる間に数十匹を纏めて葬る事だって難しくは無い。
だがそれでも圧倒的に手数が足りなかった。
「クソッ!むしむしぴょんぴょん鬱陶しいんだよォ〜〜!!」
使い魔の数が多過ぎるのだ。
こちらがどれだけ潰してもまるで終わりが見えない。
とてもじゃないが、クレイジー・ダイヤモンドだけでは手が足りなかった。
仗助本人も対処に回らなければスタンド諸共食い潰されるに違いない。
光剣を振り回し、クレイジー・ダイヤモンドが打ち漏らした使い魔を切り裂く。
悲鳴すら上げずに焼き潰される蝙蝠へは目もくれず、まだ息のある方へと片っ端から光剣を振るう。
(チクショ〜〜〜!!なんだって俺はこう動物って奴にゃロクでもない目にばっかり遭うんだよ!?)
以前、承太郎と二人でハンティングに行った時の光景が嫌でも思い起こされる。
あの時はネズミ、今度はムカデとコウモリ。
動物関係で災難にばかり遭遇しているのを偶然で片付けて良いのだろうか。
ひょっとして自分の先祖が動物に何かをやらかして、とばっちりを受けてるんじゃあないか。
271
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:56:16 ID:4/96RJSs0
「っ!?があっ!」
などと能天気な悪態を吐いている間にも使い魔は止まらない。
蝙蝠と百足の波を掻き分け、一際巨大な顎が出現。
複数の目を持つ黒い犬(ブラックドッグ)が涎を垂らし、クレイジー・ダイヤモンドに牙を突き立てる。
歯が食い込む度にスタンド使い本体である仗助にも、フィードバックにより激痛が襲う。
一般人の郁代にクレイジー・ダイヤモンドが見えていた時点で察するべきだった。
殺し合いではスタンド使いでなくとも、スタンドが見えるだけでなく干渉も可能。
魘夢が何らかの細工を施したのだと、気付く機会は十分あったはず。
痛みに怯めば敵へ付け入る隙を与える事へ繋がる。
ここぞとばかりに殺到する使い魔達と、一気に噛み千切らんと顎に力を籠める犬。
形勢は瞬く間に絶体絶命の危機へ一直線。
「ざっけんじゃあねぇぞワン公コラァァァーーーッ!!俺はテメェらのおやつじゃあねェぞォォォーーーーーッ!!!」
しつこく食らい付く犬へ怒りと焦りを露わにラッシュを放つ。
顔面をタコ殴りにされては流石に堪えたらしく、ぎゃんと悲鳴を上げ口を離せばこっちのもの。
痛みに構う暇すら今は命取りだ、再びスタンドと光剣で使い魔どもを蹴散らす。
時折噛み付かれ体のそこかしこから血が噴き出るも、歯を食い縛り迎撃に集中。
(埒が明かねぇ!)
潰せども潰せども一向に終わりが見えない。
さりとて別の手に出ようにも動きを止めればどうなるかは言うまでも無く、これでは完全再生を行う隙すら見当たらない。
せめて時間でも止まってくれればと、無敵のスタンドを持つ男を思い浮かべるのも致し方無い事だろう。
272
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:57:24 ID:4/96RJSs0
使い魔に襲われているのは仗助一人ではない。
黒死牟へも等しく、蠢く蝙蝠と百足の津波が覆い被さった。
ベオウルフの巨体を喰らい尽くすには相応の数が必須と判断したらしい。
故にか、使い魔の量は仗助に殺到するのよりも多い。
力無き人間は勿論のこと。
歴戦の柱や人を多く喰らった鬼であっても、背筋が凍り付くのを抑えられない悪夢の如き光景。
黒死牟に恐怖はない。
そちらが圧倒的な物量で攻めるならば、それ以上の力を以て捻じ伏せるのみ。
――月の呼吸 陸ノ型 常夜孤月・無間
呼吸を練り上げ全身の筋肉が張り詰め、猛々しい魔剣が脈動する。
本来は刀の一振りで広範囲に斬撃を放つ技。
全方向へ一瞬の内に縦横無尽な攻撃を行う攻防一体の型も、鬼の体と虚哭神去が無ければ再現不可能。
だが近づける事は難しくない。
ベオウルフという人の身でありながら、黒死牟をして感心する程の肉体を持ち。
古今東西、ありとあらゆる名剣名刀をも凌駕する男根を振るう男の体ならば。
カッと目を見開き、暗黒の津波を真正面から打ち破るべく動く。
股間の魔剣だけではない。
体中の筋肉を余すことなく総動員し、渦を巻くかの如く全身をうねらせる。
360度全方位からの脅威を暴れ狂う男根が粉砕。
肉体には掠り傷の一つすら付けさせず、使い魔を蹴散らし相も変らぬ魔人の風格を漂わす。
しかし戦いは未だ継続中。
闇から這い出るは混沌を巻き起こした張本人。
赤い外套から黒を纏った姿となり、より一層死の気配を漂わせる。
上半身を生やした辺見がケルベロスの照準を合わせ、引き金に指を掛けた。
使い魔の津波を凌いだばかりの黒死牟へ、今度は銃弾の暴風雨が牙を剥く。
273
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:58:48 ID:4/96RJSs0
尤もそれは黒死牟にとって既に見た攻撃。
恐れるに足りない豆鉄砲の掃射に過ぎない。
男根が台風の日の風車を思わせる速度で高速回転、対アンノウン用の特殊弾も魔剣の前には無力。
一発残らず叩き落とし、そっちから顔を見せたなら好都合と急接近。
頸を落として尚も生きていられるか試そうと魔剣を振るう。
「ああ…素敵だぁ…」
頸を斬り落とした手応えは無く、代わりに硬いモノを叩きつけられた感触。
視線の先では全身を這い出した辺見、その手には禍々しい装飾の大剣が握られていた。
大きさからしても確実に両手で振るうのを想定し生み出された得物。
だというのに片手で振り回した事実へ驚くのは今更だ。
むしろ己の魔剣を止め、刃こぼれの一つすら起こさない剣へ少しばかり関心を抱く。
「得物には恵まれたようだな…」
無数の弾を吐き出す銃のみならず、剣もまた相当な業物。
ならばそれを使って打ち破ってみろと、言葉では無く股間で伝える。
鍛えに鍛えた腰使いに物を言わせ魔剣が乱舞のメロディを奏で、辺見は笑みを深め迎え撃つ。
竿と刀身を叩き付け合い、音楽と呼ぶには無骨なハーモニーが響き渡った。
(何とも…噛み合わぬ男よ…)
腰を突き出しながら、黒死牟は冷静に敵の力量を見極める。
数度の打ち合いで察せられたのは、辺見は剣術に関しては素人同然。
恐らく殺し自体には慣れているのだろう、だが武芸を極めた者の動きとは程遠い。
しかし、技術の未熟さを補って有り余るだけの力が敵の体には宿っている。
滅茶苦茶に剣を振り回す、ただそれだけの動作すら脅威と化す膂力と速度。
何より今の状態になってから身体能力が更に強化されたのを、打ち合いを通じ感じ取れた。
僅かながら力で押し負け、黒死牟の方がよろけかけた程。
もし自身の体のような戦士が敵の体に入っていれば果たしてどうなったかと、ほんの少しだけどうでもいい事を考えた。
274
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 13:59:42 ID:4/96RJSs0
魔剣と魔剣の激突の度に発生する衝撃波がエリアを破壊する。
一度の衝突で発生する余波が地面を引っぺがし、木々を切株すら残さず切り刻む。
使い手の力が桁外れな為に、最早剣でありながら対軍兵器と読んでも過言ではない。
長々と打ち合うのは黒死牟の望む所に非ず。
技を用いて勝負を決めに行く。
――月の呼吸 拾陸ノ型 月虹・片割れ月
月の呼吸の十番台の型。
鬼殺隊最強の岩柱をして、技が尽きぬと戦慄させた手数の豊富さは健在。
跳躍し真下の標的目掛け目にも止まらぬとしか形容できない速度で腰を振った。
流星群もかくやという怒涛の勢いで降り注ぐ男根。
出鱈目に打ち放っているのではない、辺見と蠢く使い魔の位置を正確に捉えた上で魔剣を突き刺す。
「良いです…良いですよ…!もっと激しく僕を殺しに来てください!」
なれど、容易く滅ぼせないからアーカードは強大な化け物として君臨し続けた。
生前以上の煌めきを欲するが故に、辺見も抵抗を決して諦めない。
黒死牟の技が激しさを増すのならば、相応の力で以て迎え撃つ。
殺し合いが苛烈になればなる程に、自分は煌めけるのだから。
降り注ぐ魔剣相手に逃げも隠れもせず、大剣を叩きつけて相殺。
一撃でも打ち漏らせば直撃は免れず亀頭が心臓を串刺し、それは甘美で輝かしい最期だろう。
275
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:00:18 ID:4/96RJSs0
「だけどまだ足りない…!もっともっと僕を煌めかせてぇん!」
絶頂寸前に似た蕩け切った顔ながら、剣を振るう動きは研ぎ澄まされたもの。
一挙一動が徐々にキレを増し、黒死牟は内心で首を傾げた。
先程までは素人同然だった筈が、段々と洗練された剣士のソレへ近付いているではないか。
よく分からない現象に困惑するのは一瞬に留める。
相手にとって不足はなし、むしろこうでなくてはと俄然戦意を燃え上がらせた。
アーカードが使い慣れた武器は言うまでも無く、特別なカスタムを施した対吸血鬼・食屍鬼・アンデルセン神父用の二丁拳銃。
しかし近接戦闘においても無類の強さを誇り、剣の扱いだって心得ている。
ヘルシング機関のジョーカーになるずっとずっと前、まだ彼が『伯爵』だった頃。
戦場で無数の敵兵の首を撥ねた腕前は衰えを知らない。
ロンドンでの大戦争ではアンデルセンと互角の剣戟を繰り広げたくらいだ。
肉体に根付いた剣を用いた闘争の記憶を、辺見自身も気付かぬ内に引き出した。
辺見の精神がアーカードの体へ馴染んで来たと言うべきか。
と、詳しい事情が何であれ辺見にも黒死牟にも関係無い。
目的は違えど昂る心は同じ、殺意を剣に乗せ闘争の快感へと身を委ねる。
「好き勝手やってんじゃねぇよチクショォ〜〜〜!!!」
化け物同士のぶつかり合いで生じる余波に巻き込まれた、少年の悲鳴を無視して。
276
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:01:22 ID:4/96RJSs0
◆◆◆
「なに…これ……」
正気を疑う闘争の場より少し離れた位置。
自分の目に映る光景が現実のものとは思えず、郁代は乾いた呟きを漏らす。
ここに来てから常識とはかけ離れたものは嫌と言う程見て来た。
別人の体に変えられた自分、スタンドなる超能力を使う宇宙人のような体になった少年、異常なサイズのペニスを振り回す巨漢、不思議な歌を響かせる少女。
リョウ風に言うとロックな世界観なのかもしれないが、STARYでのバイト中につい居眠りをして夢を見たと言う方が納得できる。
紛れも無い現実だとは分かっているが。
視線の先で巻き起こる戦いだってそう。
悪い夢だと思い込むには聞こえる音も、肌を叩く空気の揺れも余りに生々しい。
何より体の奥底、他者の体ではない郁代本人の心を蝕む恐怖が、現実逃避を許してくれなかった。
下半身丸出しの大男に仗助が負けそうになり、次は自分も男性器の餌食になるのではと恐怖を抱いたのはつい数分前のこと。
今感じている恐怖はあの時の比では無い。
原因を作ったのは赤いコートの男。
どこからともなく現れ銃を乱射し、訳も分からぬ内に恐ろしい光景を生み出したのだ。
アレは一体何だ、アレは人なのか?
いいや違う。
あんなに恐ろしいものが人である筈がない。
277
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:02:29 ID:4/96RJSs0
「ひっ、やっ…いや……」
寒くないのに体中が震える。
膝が笑いまともに立っていられない。
見えるもの、感じるもの全てが恐くて堪らない。
どうして自分がこんな恐い場所にいるのかも分からないし、分かりたくない。
何か悪い事をしたから罰を受けたとでも言うのか。
学校で友人達と談笑して、イソスタやトゥイッターを更新して、放課後は階段下のスペースで二人でギターの練習をして。
普通の女子高生らしい日常に、バンド活動というほんのちょっぴりのスパイスを加えた生活を送っていただけなのに。
何でこんなものに巻き込まれなきゃならない。
「ひとりちゃん…リョウ先輩…伊地知先輩…誰か、助けて……」
嬉しそうに笑う化け物が恐い。
楽し気に殺し合う大男が恐い。
大きな銃で撃ち殺されるかもしれない。
沢山のムカデとコウモリに喰い殺されるかもしれない。
冗談みたいな大きさの男性器で叩き潰されるかもしれない。
直接殺気を向けられていなくとも感じずにはいられない死の予感へ、堪らずバンドメンバーの名を口にした。
「……」
のそりと、郁代のすぐ傍で動く気配が一つ。
届く筈の無い結束バンドへの声を聞き届けた訳ではない。
放送が終わってからずっと蹲り、引き摺られても抵抗しなかった少女。
天使のような翼を揺らし、ゆっくりと顔を上げる。
見つめるのは郁代が見ているのと同じ、おぞましい闘争。
言葉を発さず小さな呼吸音だけを漏らしながら、少女はふらふら頼りない足取りで戦場へ近付く。
278
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:03:28 ID:4/96RJSs0
「え、ちょ、ちょっと…!」
恐怖でとても意識を割ける精神状態でなかった郁代も、ようやく少女の異変に気付いた。
何を考えているのか知らないが、あの場所へ行くのは自殺行為に等しい。
もしかしたらまた不思議な歌で何とかするのかもしれないけど、今となってはあんな恐ろしい連中をどうにか出来るのか分かったもんじゃない。
咄嗟に止めようと手を伸ばし、彼女がどんな顔をしているかが見えた。
「っ…!」
鬼がいた。
女の子相手に抱くような感想じゃないと理解していても、そう思わずにはいられない。
幸薄な美少女の面影は鳴りを潜め、憎々し気に戦場を睨み付ける彼女は郁代に目もくれない。
ただ一歩一歩、今度は確固とした意思に従い近付いて行く。
放送が終わった後、起きた全てはウタの耳にも届き、視界から情報が伝えられた。
下半身丸出しの大男だけじゃなく、別の危ない奴も乱入。
自分には目もくれずに殺し合い、さも嬉しそうな笑い声を上げている。
真っ当な倫理観をゴミと共に投げ捨てた連中を見ている内に、ウタの中へ沸々と湧き上がる思いがあった。
シャンクスは死んだのに、どうしてあいつらは生きているんだろう。
ウタという少女は基本的に人を傷付けるのを好まない。
大切なファンを苦しめる海賊たちへの嫌悪から来るものであり、生来の優しさでもある。
ライブを邪魔した海賊、自分勝手に市民を苦しめる天竜人、天竜人の言い成りと化す海軍。
そういった者達への怒りや苛立ちはあれど、殺そうとは全く思わなかった。
事実、天竜人の命令で自分を捕らえようとした男達が撃たれれば、血相を変えて治療するくらいには誰かが傷付くのを嫌う。
279
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:04:05 ID:4/96RJSs0
しかし、その優しさに亀裂が刻み付けられた。
シャンクスの死亡。
あれ程憎み、けれど心の底では憎み切れなかった父親。
自分の為に汚名を被った男へ謝り、聞いて欲しかった歌声を届かせる機会は永遠にやって来ない。
ウタウタの実の能力でファンを操り、一方的に殴り続けたエレジアでの記憶が最後となってしまった。
感情の整理もままならずに心へ深い傷を負い、目に入ったのは笑いながら命の奪い合いに興じる怪物達。
誰かを思いやる気持ちなんてこれっぽっちも感じられない悪党。
ファンの皆を苦しめる悪い海賊と同じ連中。
鳴り止まない闘争の音が鼓膜を刺激し、ウタの中にドス黒いモノが溢れ出した。
どうして死んだのがシャンクスで、誰かを平然と傷付けるあいつらじゃないんだろう。
あんな連中がいるから、シャンクスだって殺されてしまったのではないのか。
ひょっとすると、あいつらがシャンクスを殺した?
根拠なんてない。
事実を言ってしまえばシャンクスの死に彼らは一切関わっていない。
これはただの八つ当たりに過ぎず、さりとてウタ自身にもこの衝動を止める気は無かった。
「なんでアンタ達が生きてて…なんでシャンクスは……!」
怨嗟の声がトリガーとなり、背後へ巨大なスピーカーボックスが出現。
但し届けるのは天使の歌声では無い。
その証拠に、スピーカーボックスに取り付けられたのは複数の砲口。
リグレットの能力は何もデジヘッド化による支配だけではない。
現実から逃げた者達の楽園、リドゥの崩壊を目論む侵入者を武力で排除する事だって可能。
ウタのただならぬ気配へ男達が気付いた時にはもう遅い。
「アンタ達みたいな奴がいるから…だから…!うあああああああああああああああっ!!!」
スピーカーボックスが火を吹き、爆炎が広まる。
子供の癇癪で片付けるには凶悪極まりない暴力が降り注いだ。
280
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:04:44 ID:4/96RJSs0
○
――月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月
油断できない威力の攻撃が来る。
察したならば指を咥えて黙って見ている阿保はおらず、即座に対処へと移行。
再び三刀流の構えを取り、呼吸を練り上げ技を放つ。
本来は渦上の斬撃を発生させ広範囲の敵を斬り刻むが、此度は黒死牟自身が三本の剣を前左右に伸ばし回転。
斬撃を伴った竜巻を巻き起こし来たる砲撃を斬り伏せる。
股間の魔剣は言うまでも無く、両手に握るはアマルガムと魔法少女の武器。
使う得物としては文句なしの強度と切れ味だ。
生きた災害と化しエリアの破壊へ拍車が掛かる。
「ああ熱い!でもまだ温いですよ!もっと熱く!激しく!煌めかせてください!」
大人しく殺されてやらないのは辺見も同じ。
圧倒的な火力で消し飛ばされる末路、それもまた煌めけるのに良いかもしれない。
但し生半可な火力では駄目だ、アーカードの全力でも叶わない程の威力でなければ自分の望む煌めきへは届かないだろう。
大剣を振り回し、時にはケルベロスで弾幕を張る。
加えて無数の黒い手を地面から発生させ砲撃を凌いだ。
(やっぱりだ…参加している皆さんは僕の期待通りの方達ばかりだ…)
戦場へ乱入した時は項垂れており、正直ほとんど興味は抱かなかった少女。
それがどうだ、彼女もただの人間では有り得ない力で自分を殺そうとするではないか。
男とか女は関係無い、誰もがアーカードへ届くかもしれない力の持ち主。
生前の、人間の体だった時には予想もしなかっただろう最高の煌めきがここにはきっとある。
ともすれば、杉元との殺し合いで感じた幸福感をも凌駕する煌めきが見つかるかもしれない。
281
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:06:38 ID:4/96RJSs0
(ああ…ごめんなさい杉元さん…こんなふしだらな僕を許してください……)
杉元に殺されたいと心の底から思ったのは嘘じゃない。
杉元との出会いに運命を感じたのだって、間違いなんかじゃあない。
けれど自分は今、杉元以外の相手から与えられるだろう死にまでときめいてしまっている。
心は夫を愛しているのに、体は間男の性戯で快楽に堕とされる人妻の気分だ。
申し訳ないと思いながらも、逸物がそそり立つのを抑えられなかった。
互いに考える事は微塵も似つかないとはいえ、黙って死を受け入れる気が無いのは変わらない。
各々武器と能力、技を駆使し死をあっという間に遠ざける。
「っ!!」
それがウタには酷く憎たらしい。
何でシャンクスは死んだのに、こいつらは死なない。
そんなのはおかしいだろう、ふざけるのも大概にしろ。
冷静さを取っ払い、複数の感情が何重にも絡み合った形容し難さに、ウタ自身も振り回される。
「消えて…消えてよ…!!」
半狂乱で叫べばスピーカーボックスだけでなく、複数の砲台や銃口が出現。
目の前にいる連中が生きたままなのが許せない。
シャンクスは死んだのにあいつらが生きてるのは認められない。
正しさも優しさもない八つ当たりを叶えるべく銃口が一斉に火を――
282
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:07:18 ID:4/96RJSs0
「もうやめてぇっ!!!」
吹く前にウタへ縋り付く者がいた。
飛び掛かり、標的へ伸ばした腕を強引に降ろさせようとする。
完全に不意打ちを受けた形となり、ウタは縋り付いた人物諸共地面に倒れ込んだ。
体への鈍い痛みも今は気にならない。
訳も分からず目を瞬かせ、すぐにキッと吊り上げ怒鳴り返す。
「いきなり何…!?どうして邪魔するの!?」
怒声を間近で浴びせられた当人は必死にウタを抑え込もうとしたまま。
目尻に涙が溜まった顔は小汚い禿げ頭の老人のもの。
なのにどうしてか、ウタには一瞬知らない筈の少女の顔が重なって見えた。
ウタからの文句を真っ向から受けて尚も一切怯まない。
苛立ちと困惑でささくれ立つウタへ、負けじと言い返す。
「東方くんまで死んじゃうから…!だからもう…!」
「――――えっ」
冷水を浴びせられるとは正にこの事か。
あれだけ熱くなっていた頭から熱があっという間に消え去った。
マーブル模様にかき混ぜられぐちゃぐちゃになっていたのが、不思議と綺麗に片付いた気さえする。
どうして彼女がここまで必死に止めようとしたのか。
自分が八つ当たりに身を任せてばかすか撃てばどうなるか、そんなの誰が見たって答えは同じだ。
砲撃が止み、煙が晴れた戦場ですぐに見つかった。
吹き飛ばされた地面に横たわる、体のあちこちが焼け焦げた水色の小さな彼を。
283
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:08:27 ID:4/96RJSs0
「あ……」
下半身を露出した巨漢と赤い服の化け物は、殺し合いに乗っている悪党。
それは間違いない。
では彼は?水色の可愛らしい体をした彼も許されざる悪人か?
違う、彼は会ったばかりのウタを助け、逃がしてくれた。
自分がショックを受け歌えなくなっても、たった一人で戦った命の恩人とも言うべき相手だ。
断じて死んで良い訳がない。
「あ……あたし、は……」
攻撃する時、自分は彼に何かしたか?
今から強烈なのを撃つから避けてと、先に警告はしていない。
彼に当たらないように調整してもいない。
自分の中のドス黒い怒り促されるまま攻撃を行った。
彼が巻き込まれるかなんて考えもしないで。
「あたし…ち、ちが…そんな…つもりじゃ……あ、あああ…!あたし、いや、なんで……こんな、ちがう…!だって、うそ、ち、ちが…」
息苦しい。
何を言えば良い、何を考えれば良い、何をすれば良い。
一つも正しい答えが出せない。
分かるのは、自分が大きな間違いを犯してしまった事だけ。
そんなつもりじゃなかった、自分でも頭が滅茶苦茶になってて考えが回らなかった。
言い訳にすらならない言葉が渦を巻き、震えが止まらない。
『ほら、言った通りじゃないの』
声が聞こえた。
この世で最も聞き覚えのある、少しだけ幼い声。
目の前に知っている女の子が立ち、こちらを見上げていた。
丸い瞳は信じられないくらいに冷たくて、吐き捨てる声にはこれでもかと侮蔑が込められていて。
馬鹿みたいに立ち竦む自分へ向け、女の子は淡々と言う。
『あんたなんか歌姫でも救世主でもない、ただの人殺しでしょ』
284
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:09:30 ID:4/96RJSs0
「―――――――」
人殺し。
どんなナイフよりも鋭い言葉が突き刺さる。
あの日見つけた、知りたくなかった真実の映像。
燃える国、逃げ遅れて殺される人達。
自分の歌は世界を滅ぼすと警告する誰かの声。
12年前、炎の海に沈んだ音楽の島が、倒れ伏した水色の少年と重なって。
バキリと何かが折れる音がした。
「ああああああああああ…!!!あ、あたし…ごめんなさ…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい……」
顔をくしゃくしゃに歪めて嗚咽する歌姫の泣き声が空しく響く。
(やはり…所詮は脆弱な娘に過ぎぬか…)
涙を流すウタも黒死牟の目には下らない光景としか映らなかった。
歌声で他者を強化するだけでなく、火力に物を言わせ焼き払う術も手にしている。
油断ならない能力だとて、使う本人がこの様では宝の持ち腐れとしか言いようがない。
せめて鬼狩りや人形を操る少年のような正義感や使命感を持ち合わせるなら、幾らか楽しめたかもしれないがそれを期待するだけ無駄。
しかもあの娘は一応味方である筈の少年を巻き添えにした挙句、それが原因で戦意を失う始末。
何とも締まりのない末路へ、僅かだが少年へ憐憫を抱かざるを得ない。
(うーん…仕方ない、僕を煌めかせてくれるのは別の人に期待しよう)
悪い意味で予想できなかった結末には、辺見も些か肩透かしを食らう。
人形を操る小鬼と砲撃を行った少女にも自分へ抗って欲しかったが、こうなっては無理だろう。
ならせめて、自分の存在を他者へ知らしめるのに役立ってもらう事とする。
禿げ頭の老人を殺し、少女を生き証人として逃がす。
そうすれば参加者達の間で自分の話が広まり、杉元を始めとして多くの者が殺しに来る筈だ。
煌めきを探す以外にも口封じなど、必要とあれば人を殺すのに躊躇はない。
「っ…!」
「きゃっ…」
無表情で剣を振り被る辺見に気付き、ウタは咄嗟に郁代を突き飛ばした。
ウタの意図を郁代が察した時には既に手遅れ。
大剣は振り下ろされ、少女の命を一刀の下に断つ。
標的と逃がす対象が逆となったが、さしたる問題もないのでこのまま殺す。
罪悪感も良心の呵責も何も無い、ただ必要だからとの理由のみで少女の命が散らされようとした。
285
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:10:31 ID:4/96RJSs0
だが、来るべき瞬間は訪れない。
「グレート……間一髪ってやつだぜこいつぁ…」
大剣の一撃を受け止めたハートの装飾の拳闘士。
傍らで傷だらけと化しつつも、不敵な笑みを浮かべる水色の少年。
まさかの復活劇に辺見の動きも止まり、次の手を許す羽目となった。
「こいつは礼だおっさん!遠慮しないで受け取れッ!!」
大剣を受け止めた手を今度は辺見へ伸ばす。
殴るつもりでは無い、掌は開いたままだ。
何かが握られていると気付いた辺見の脳天からつま先までを電流が駆け巡る。
これ程の傷を負いながらも、自分の勝利を確信しているかの力強い笑み。
追い詰められ、必死の抵抗を見せてこそ鮮烈な輝きを発する煌めき。
ああ、ああ、これこそ正しく――
「君が僕を――」
「衝撃貝(インパクトダイアル)!!!」
最後まで言わせはしない。
何を言いたかったのかは誰にも伝わらず、辺見の体は地面から引き離される。
砲弾のように夜空の彼方へと姿を消し、やがて小さなシルエットすら見えなくなった。
突然現れ猛威を振るった化け物の、一瞬ながら派手な退場を見届け仗助はどっと息を吐く。
辺見の撃退成功に安堵し気が抜けたからではない。
全身に襲う倦怠感と、骨が吹き飛ぶような痛みが原因だ。
「痛ぇ〜〜〜〜っ!!二度目は御免ぜこいつは……」
クレイジー・ダイヤモンドの掌から落ちた貝殻を拾いボヤく。
説明書に記された通りの効果は確かめられたが、反動も洒落にならない。
考え無しに連発しては冗談抜きに死にかねない代物だ。
念の為スタンドに装備させて使ってみたものの、本体にも反動による痛みが容赦なく襲う。
二度と使いたくは無い。
286
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:11:51 ID:4/96RJSs0
「東方くんっ!」
「無事、だったの…?」
慌てて駆け寄る郁代と、呆然と見つめるウタ。
反応の違う二人へ言葉は無く、自分のデイパックを郁代へ投げ渡した。
咄嗟に受け取るも意図が読めず困惑する彼女達へ、背を向けたまま言う。
「郁代、予定変更だ。俺の鞄に入ってるアレを使ってそっちの子と一緒に逃げろ」
「なっ…」
言われた内容に理解が追い付かず、混乱が強まる。
いや、仗助がどう動けと言っているかが分からない訳ではない。
まだ主催者の放送が始まる前、二人で体のプロフィールや支給品を確認していた時のこと。
仗助のデイパックから出て来たのは奇妙なデザインの乗り物。
もしもの時はこれを使って逃げるのも有りだ、なんて話をしていた直後に何かが倒れる音が聞こえ、今に至る。
「ま、待って…!それじゃあ東方くんも一緒に…」
逃走には郁代も賛成だ。
だがそれは三人で一緒に逃げるものだろうに。
仗助の言い方では彼を置いて二人だけで逃げろと言っている様にしか聞こえない。
そんなの納得出来ない。
会って少ししか経っていないけど、仗助はいきなり引っ叩いた自分へ怒りもせず一緒に行動してくれて、危ない連中から守ってくれた少年。
そんな彼を置き去りにして逃げるなど、恩知らずな真似に出るような性悪になったつもりはない。
「ちょ、ちょっと、ねえ、待ってよ…。だってあたしのせいでそんなにボロボロで…だったらあたしも残ってもう一回歌って…」
「申し出は有難いんだけどな、あのおっさんがそれを許しちゃあくれねえだろうぜ」
満身創痍の仗助と、見るからに憔悴しているウタ。
二人に対し黒死牟が負った傷は雀の涙程度、魔剣から放たれる強烈なプレッシャーも依然変わらず。
ドクリドクリと血管が揺れ、異様なまでの熱気は獲物を求めて止まない野獣そのもの。
女の膣を貫くのでは到底満足できない。
命を刈り取り我こそが捕食者であると証明しなければ、勃起は治まりそうもなかった。
287
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:12:49 ID:4/96RJSs0
「ま、心配いらねースよお二人さん。あんな丸出しの変態オヤジなんぞに負ける仗助くんじゃあねぇからよ」
「東方くん…でも…!」
「悪い郁代。……もう行ってくれ」
あえて安心させるような軽い口調でも納得いかず食い下がり、それでも尚こちらを見ずに口にした言葉。
郁代は仗助の事を詳しく知ってはいない。
杜王町の住人でなければ、スタンド使いのような非日常を生きる人間でもない。
だけど、こうまで言われて察しが付かない少女ではなかった。
「……っ!」
「あ、ま、待って…」
唇から血が出る程に噛み締め、ウタの手を無理矢理引っ張る。
抗議の声も今は無視だ、渡されたデイパックから目当ての乗り物を引っ張り出す。
壺を逆さまにしたような形状に、ピエロに似た顔の付いた物体が浮遊している。
見れば見る程不思議な形の中へウタを押し込み、郁代も乗り込めば空高くへと浮上。
「東方くん…!」
地上の彼の名前を呼ぶ。
自分達の方へは目もくれない、徐々に小さくなる仗助に。
きっとこれが最後になると分かっていても、諦め切れずに叫んだ。
「待ってるから…!遅れても良いから、ちゃんと来て…!」
やっぱり彼はこっちを見ない。
それでも、米粒のように小さくなる後ろ姿だというのに、片手を上げて反応してくれたのは分かった。
288
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:14:15 ID:4/96RJSs0
「よう、また律儀に待ってくれたんだな」
「二度も言わせるな…弱者が逃げたとて…私が手を下さずとも野垂れ死ぬだろう…」
「…あんたのことは好きになれそうもねぇなおっさんよ」
「何より…私との一騎打ちにて果てるのを望むならば…応じてやるのも吝かではない…」
お見通しかと苦笑いし肩を竦める。
ウタが砲撃を始めた時、黒死牟や辺見の陰に隠れる形でやり過ごそうとした。
彼らに仗助を守る意図は存在せずとも、盾として利用し死を免れるのには成功。
だからといって無傷で済んでいない。
あの場で最も負傷が重かったのは仗助だ。
ダメージの大きさはそのまま移動の足を引っ張り、結果として数発は被弾。
皮が焼け焦げた影響で完全再生はもう使えない。
体の持ち主、アンチョビが裏バンカーサバイバルでニガリの猛攻を受けた時と同じ。
追い打ちをかけるように、クレイジー・ダイヤモンドで負傷を治せるのは自分以外の者のみ。
郁代達と共に逃げれば回復手段が見付かったかもしれない。
しかし黒死牟が撤退を見逃してくれないのは嫌でも分かる。
敵はウタや郁代を弱者と見なし、逃げても積極的に追う気は無いだろうが仗助は別。
自分が彼女達と共に逃げようとすれば黒死牟は高確率で追跡し、下手をすれば三人とも殺されるだろう。
郁代達を生かすには仗助が残るしかなかった。
だが率直に言って現状は詰みだ。
満身創痍の体を治すアテは何も無く、敵へ勝てるイメージは全く浮かばない。
それに気付かぬ黒死牟ではない。
勝てぬと理解しながらも闘争の中で果てるのを選んだなら、汲み取るくらいはしてやる。
我欲で鬼殺隊を裏切り悪鬼に魂を売り渡した男でも、本来は生真面目な武人。
無粋な真似には出ず、逃げた娘と老人には構わなかった。
289
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:15:41 ID:4/96RJSs0
「勘違いするなよおっさん。俺はあんたを廃棄寸前のパンチングマシーンみたいになるまでブチのめして、それから郁代達のとこに戻るつもりでいるんだからよぉ〜〜」
「口の減らぬ奴だ…」
素直に認めるのも癪なので精一杯の虚勢を張る。
なるべく考えないようにしていたが、未練というやつからはどうしたって逃げられないらしい。
康一達まで巻き込まれていなければ良いが、由花子の暴走も心配だ。
露伴の奴が参加してるなら、まぁどうせ最後だし少しくらいは無事を祈ってやる。
祖父に続き自分までいなくなり、母には申し訳が立たない。
それに、体の持ち主にも悪いことをしてしまう。
プロフィールを読む限り、ロクな性格じゃあないとは分かった。
悪ガキなんてもんじゃない、ゲスな悪党と吐き捨てられても擁護できない。
だけど、家族への愛は本物だった。
兄を本心から大切に想う、まるでどっかの誰かのように。
馬鹿な親友(ダチ)とどこか重なる部分もあったせいか、アンチョビの体を本人に返してやれないのは心残りだ。
空気が激しく振動、敵を葬る魔剣を呼吸により研ぎ澄ます。
やっぱりソレかよと呆れつつ、スタンド使いもまた最後の戦いに臨む。
自分が助からないのは確定だとしても、何も出来ずにくたばるなんて真っ平御免。
最後に一泡吹かすくらいはやってやらないと、死んでも死に切れない。
「クレイジー・ダイヤモンド…!」
出現させたスタンドは本体同様に傷だらけ。
だが戦意は俄然燃え上がり、打ち倒すべき邪悪をしかと見据える。
放つのは自慢の拳ではなく仗助自身。
アンチョビの小さな体を持ち上げ、まるで砲丸投げの選手のようにポージングを取った。
290
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:16:22 ID:4/96RJSs0
(散々こき使って悪いけどよ、どうせなら最後は一緒にカマしてやろうぜッ!!)
標的は外さない、本体の意思に従い投擲。
満身創痍なれど決して失われる事の無い輝きは、ジョースターの人間が持つ黄金の意思。
悪鬼を滅ぼす誇りのバレットが打ち込まれる。
「火球爆獄(ヘルロケッティア)!!!」
――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮
撃ち貫くは爆熱の弾丸。
斬り伏せるは凶月の刃。
バンカーの肉体と、スタンド使いの最後の一手。
英雄の肉体と、日輪への執着が生んだ鬼の技。
閃光と化した両者の交差は一瞬。
互いへ背を向け、身動ぎ一つしないまま時間だけが過ぎて行く。
何も語らない、背後の敵へ視線の一つもくれてはやらない。
戦いの結果はもう、分かり切っているのだから。
「チクショウ……」
崩れ落ちる小さな体。
自らが流した血の海に沈み、双眸は閉じられる。
ダイヤモンドは砕け散り、二度と動く事はなかった。
291
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:17:54 ID:4/96RJSs0
◆◆◆
「ねえ待ってよ!降ろしてってば…!」
戦場から離れた上空、浮遊する物体でウタは焦りを露わに要求を伝える。
同じ事を口にするのはこれで何度目になるだろうか。
どれだけ頼み込んでも聞き入れて貰えず、焦燥は加速するばかり。
「戻らないと、あの仗助って子は本当に……」
本当に、死んでしまう。
自分が考え無しに攻撃し巻き込んだ傷が彼の足を引っ張っている。
覆せない事実がウタの精神に重荷となり、余計に戻るべきだとの訴えが強まった。
なのに一向に戻る気配は無い。
どうしてだ、彼女は仗助の事が心配じゃあないのか。
困惑と苛立ちに後押しされ、肩を掴み激しく揺さぶる。
「ねえ!戻ってよ!そうしたらあたしがまた歌って…」
「無理よ!!」
掴んだ腕を振り払われ怒鳴り返された。
思わず鼻白むウタへお構いなしに、郁代もまた絞り出すように言葉を続ける。
292
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:20:58 ID:4/96RJSs0
「戻っても、今のあなたは歌えないでしょ!?」
「なっ!?決めつけないでよ!そんなのあんたに分かる訳――」
「分かるわよ!!」
反論の言葉も最後まで言わせてもらえず、ぴしゃりと黙らされた。
精神は少女でも体は老人とはいえ大人の男性。
怒声に思わず怯み、叱られた猫のように縮こまる。
大人に怒られた記憶など、まだレッドフォース号に乗っていた頃と、フーシャ村でヤンチャした時くらいのもの。
ゴードンにだって怒鳴り付けられた事は無いのに、体が竦んでしまった。
「あなたみたいに凄い歌は歌えないし、ギターの腕だってまだ全然だけど…でも、私にだってそれくらい分かるわよ…。今のあなた、ちゃんと歌える状態じゃないでしょ?」
結束バンドに加入して、活動をこなしていれば自ずと分かって来る。
例えば学校での失敗が響き、練習でも演奏が揃わなかったりだとか。
極度の緊張や観客の空気が悪く、本番で失敗するだとか。
自分達の経験や、他のバンドメンバーの様子を見て来たから察せられるようになったのだと思う。
今のウタはステージに上がる為の及第点すら与えられない程に、コンディションは最悪だ。
STARRYだったら店長とPAさんの両方からNGを食らい、ステージに上がらせてもらえないだろう。
「そんなの…!っ……」
そんなもの、本当はウタだって分かってる。
シャンクスの死から立ち直れず、助けてくれた男の子を傷付け、精神的に参った状態。
こんな有様で最初の時のように歌えるとは口が裂けても言えない。
仮に歌詞を口に出しても、仗助を支えられたような力が発揮されるかだって定かではない。
もし戻って何の役に立たなければ、仗助が自分達だけでも逃がしたのが無意味となってしまう。
音楽の島の国王から長年に渡り教育を受けて来たのだ、こんなメンタルで歌を歌える筈が無いことくらい理解している。
293
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:21:43 ID:4/96RJSs0
「だって、あたしの、あたしが悪くて……ごめんなさ…ごめんなさい…ごめんなさい……」
それ以上は郁代への言葉を返せず、涙と共に後悔が溢れ出す。
もしシャンクスの死から立ち直っていれば、歌で助けとなれたかもしれない。
或いはせめて彼を攻撃に巻き込みさえしなかったら、今頃は悪党を撃退できたか、三人で逃げる事だって出来た筈。
だが現実にはそうならなかった。
仗助きっとあの大男に殺されたろうけど、原因を作ったのは紛れも無く自分。
結局自分がやったのは助けてくれた優しい男の子を死に追いやっただけ。
人殺しと、幻覚の幼い自分に言われた言葉が楔として胸に突き刺さる。
これを抜き傷を癒す術が何なのかは分からなかった。
「……」
項垂れる少女を郁代は複雑な面持ちで見つめる。
ウタを責めたい気持ちが全くない訳ではない。
あなたのせいで東方くんがと怒りを叩きつければ楽だ。
でもこんな風に後悔の涙を流し、罪悪感に打ちひしがれる姿を見てしまえば何も言えない。
喉奥まで出かかった言葉を無理矢理飲み込み、口を噤む。
郁代だってウタが望んで仗助を傷付けたんじゃあない事くらいは理解している。
放送の直後に様子がおかしくなったのを思い出せば、理由も察しは付く。
何より、ウタは助けてと縋った自分の言葉に応えてくれた。
冷静に考えると自己紹介もしてない相手からいきなりああ言われたら、突っ撥ねてもおかしくはない。
自分の無茶を聞いてくれたのだし、本当は優しい女の子なんだろう。
なら、本当に責められるのは何の役にも立っていない自分の方じゃないのか。
そんな風に考えてしまう自分もいて、表情に影が差す。
(ひとりちゃん…先輩…みんな……)
結束バンドの皆に、友人達に、両親に、知ってる人に傍にいて欲しかった。
こんな危険な場所にはいない方が良い、殺し合いに巻き込まれてないのを願うべき。
そう分かっていても、最低な事を考えているのだとしても。
自分の日常を彩る人達に会いたくて堪らなかった。
294
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:22:34 ID:4/96RJSs0
幸か不幸か郁代の願いは叶っている。
結束バンドのメンバーとバイト先の店長も参加者に登録され、向こうも郁代を探す真っ最中。
名簿を見てひとり達の存在を知った彼女が喜ぶか否か、どんな反応をするにせよ遠くない内にその瞬間が訪れるのはほぼ間違いない。
それはウタも同じ。
彼女の父親と幼馴染が精神と身体でそれぞれ巻き込まれたのを知る機会も時間の問題。
尤も、真実に辿り着けるかどうかは別だ
放送で名前を呼ばれたのはウタの知るシャンクスとは全く違う存在であること。
もう一人のシャンクスは今も会場のどこかにいること。
そもそも、殺し合いに「本物の」シャンクスは最初から参加していないこと。
果たしてこれらに気付けるのかどうか。
取り返しの付かない過ちに打ちひしがれる歌姫の苦難は、まだ序章に過ぎない。
【一日目/深夜/G-4(上空)】
【ウタ@ONE PIECE FILM RED】
[身体]:リグレット@Caligula2
[状態]:精神的疲労(大)、シャンクスの死に言い表せない感情(大)、仗助への罪悪感(大)、空を移動中
[装備]:ウタのアームカバー@ONE PIECE FILM RED
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:エンムから体を取り戻す。
1:あたしのせいで…ごめんなさい…。
2:体を取り戻す方法を探す。その後は…。
3:シャンクスが死んだ……?
[備考]
※参戦時期はライブ会場に赤髪海賊団到着後〜トットムジカを歌う前。
※殺し合いの会場がウタウタの実の能力により創られた世界ではないかと考えています。
※放送で名前が呼ばれたの自分の知るシャンクスだと思っています。
【喜多郁代@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:アドバーグ・エルドル@魔法陣グルグル
[状態]:健康、悲しみ、ウタヘの複雑な想い、殺し合いへの恐怖、空を移動中
[装備]:アンチョビ究極体の皮@コロッケ!、クッパクラウン@スーパーマリオシリーズ
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜4(仗助の分含む)
[思考・状況]基本方針:元の世界に帰りたい
1:東方くん…。
2:とりあえずまともな服が欲しい。
3:キタキタおやじってなによ…いくら私が『キタ』だからってあんまりじゃない?
[備考]
※「郁代」呼びよりも「喜多」呼びへの忌避感の方が強くなっています。
※どちらもまだ名簿を確認していません。
※どこへ向かうかは後続の書き手に任せます。
295
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:24:00 ID:4/96RJSs0
◆◆◆
惜しかった。
動かなくなった仗助と散らばった自身の支給品を見やり、黒死牟は独り言ちる。
最後に繰り出した頭突きが黒死牟へ傷を付けるのは叶わず、精々デイパックを掠め中身を散乱させた程度。
もし万全の状態で放っていれば、狙いも威力も今の比では無かっただろうに。
とはいえ自分相手にここまで戦い抜いたのも事実。
赤い男程ではないが、初戦の相手としては歯応えのある敵だった。
鬼となっていればさらに上を目指し、猗窩座共々武を極めんとする未来があったかもしれない。
そういう意味でも惜しい少年を亡くしたと思う。
状況が状況だけに致し方なし。
「これ程に楽しめたのは…いつ以来か…見事であった…」
もう聞こえないだろうが賛辞を送り、暫しの沈黙を挟み背を向ける。
仗助が持っていた貝殻と散らばったデイパックの中身を放り入れ、最後に手にした物の異変に気付いた。
参加者共通のデバイス、タブレット。
黒死牟の生きた時代には無い未来の技術品。
同封された説明書と睨めっこしながらどうにか使い方を把握し、ベオウルフのプロフィールを確認出来たのは一時間と数十分前のこと。
そのタブレットはデイパックから落ちた際、運悪く石にでもぶつかったのか。
或いは強く叩きつけられたのか画面に亀裂が入り、うんともすんとも言わない。
プロフィールはとっくに確認済みだが名簿と地図が見れないのは少々困る。
「まぁ良い…殺して奪えば済む話だ…」
どうせこの先も出会う者と殺し合うのだから、勝利し相手の支給品からタブレットを再入手すれば良い。
何にしても殺し合いは始まったばかり。
次に遭遇する者もまた、魔剣を勃たせるに相応しい強者と期待し揚々と歩き出す。
彼の心を唯一掻き乱す日輪も、この地で剣を振るっている。
血を分けた双子の弟が時を超えて参加しているとは、夢にも思わなかった。
【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険(身体:アンチョビ(究極体)@コロッケ!) 死亡】
【一日目/深夜/G-4】
【黒死牟@鬼滅の刃】
[身体]:ベオウルフ@ローゼンガーテンサーガ
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)、フルチン
[装備]:姑獲鳥の三叉矛@彼岸島 48日後...、十咎ももこの大剣@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝
[道具]:基本支給品(タブレット故障)、衝撃貝@ONE PIECE、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:生還し元の肉体を取り戻す。
1:闘争を愉しみ、斬る。
2:無惨がいないか確かめたい。
3:他の参加者から支給品を奪い名簿を確認する。
4:赤い男(辺見)とはいずれ決着を付ける。
5:逃げた娘達(ウタ、郁代)を積極的に追う気は無い。
[備考]
※タブレットが壊れた為名簿を確認出来ていません。
296
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:24:47 ID:4/96RJSs0
◆◆◆
「ふぅ…」
宝石を散りばめた夜空と、それを台無しにする月を見上げうっとりと息を吐く。
何も星の輝きに目を奪われたのではない。
大の字に転がりながら、辺見は改めて幸福に酔いしれる。
さっき出会った者達は皆素晴らしかった。
巨根を武器にする大男と、強烈な砲撃を繰り出す少女は言うまでもなく。
何より自分をここまで吹き飛ばした小鬼。
絶望的な力を持つ化け物相手に一歩も引かず、死の危機に瀕して尚も決死の抵抗に打って出る。
心から羨ましいと思った。
自分も彼と同じ、いやそれ以上に煌めいて殺されたい。
その為にもより大勢の参加者を殺し、自らの恐怖を知らしめなければならない。
先程の少女と老人がどうなったのかは知らないが、もし揃って巨根の大男に殺されたのなら別の宣伝役が必要だ。
男も女も子供も老人も、誰であろうと容赦せず殺し理不尽の権現として君臨する。
そうすればきっと、多くの者が自分を殺しに集まるだろう。
当然杉元も。
「杉元さん…あなたはどんな風に僕を殺してくれるんですか?早く、早く会いたい…!」
全身の骨が粉砕される程の傷も既に再生完了済み。
逸る心のままに立ち上がり、煌めき探しの旅を再開する。
不死身の兵士との再会を夢見て駆け出す姿は、まるで恋焦がれる乙女のようだった。
【辺見和雄@ゴールデンカムイ】
[身体]:アーカード@HELLSING
[状態]:疲労(中)、高揚感、下半身がぐしょ濡れ
[装備]:GX-05ケルベロス(エネルギーマガジン×10)@仮面ライダーアギト、魔王の剣@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:生前以上の最高の煌めきを探しに。
1:自分の存在を喧伝出来る様に、参加者を殺していく。
2:化物と殺し合える強い人を見つけたら、煌めかせてもらう
3:杉元さんとの再会が待ち遠しい。もう一度僕と煌めき合いましょう!
[備考]
※死亡後から参戦。
※現状命の残機は1。この状態で心臓を破壊されれば復活せず死亡します。
※拘束制御術式の解放は1号まで可。零号は制限により(というより残機1なので)使用不可。
297
:
眠れ赤子のように、消えよ数多の塵のように(後編)
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:25:30 ID:4/96RJSs0
【衝撃貝@ONE PIECE】
空島に存在する特殊な貝の一つ。
衝撃を蓄え、殻頂を押す事でそれまでに溜め込んだエネルギーを自在に放出する。
攻撃と防御の両方に使えるが反動は大きく、使用者もダメージを受ける可能性がある。
【クッパクラウン@スーパーマリオシリーズ】
クッパが乗る小型の飛行船。初出はスーパーマリオワールド。
茶碗型で、下方に小さなプロペラが1つだけ付いているという非常にシンプルな構造。
名前の通りピエロの顔が描かれている。
クッパ7人衆とピーチ姫が乗っても大丈夫なくらいには、重量にも耐えられる。
【GX-05ケルベロス@仮面ライダーアギト】
警視庁が開発した対未確認生命体用特殊強化装甲、G3-X専用の携行型重火器。
運版形態から番号を入力し攻撃形態へ解除するが本ロワでは最初から攻撃形態で支給された。
特殊徹甲弾を1秒間に30発発射可能。
設定上の装弾数は120発だが、劇中では明らかにそれ以上の数をリロード無しで撃っている。
【魔王の剣@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
強い闇のチカラで全てを切り裂く魔王が創りし凶剣。
ゲーム中ではイレブン(主人公)が装備可能。
武器ガード率3%の特殊効果あり。
298
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 14:26:12 ID:4/96RJSs0
投下終了です
299
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/08(金) 15:05:33 ID:4/96RJSs0
すみません。辺見の状態表の備考欄に以下の文を追加します
※どこまで吹き飛ばされたかは後続の書き手に任せます。
300
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/09(土) 10:57:24 ID:cKCtHDaQ0
浅倉、シャンクス予約します
301
:
◆4u4la75aI.
:2023/09/09(土) 15:32:21 ID:VREUHgTg0
山田リョウ、タイラント、十六夜咲夜で予約します
302
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/12(火) 21:10:02 ID:SaXNa5J.0
鏡飛彩、戦極凌馬、キャル、モモンガを予約します
303
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/14(木) 18:16:19 ID:???0
オマツリ男爵、ブラック、泉研予約します
304
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/14(木) 21:18:04 ID:UxGrfMxc0
句楽、アヤノ、ドッスン、サタン、扇予約します。
305
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:38:41 ID:uy4z/p.60
投下します
306
:
1シャンク去ってまた1シャンク
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:39:40 ID:uy4z/p.60
なぜかジャンケンを挑んでくる化物を殺害した浅倉は、回収した支給品を確認していた。
すでに、肉体の能力により生み出せる槍が武器として充分使えるのは確認済みだが、手札は多いに越したことはない。
その方が、より面白い戦いができるのだから。
「あぁ? なんだ、このヌメヌメした感触は……」
突如手を襲った不快な感覚に、思わず浅倉は顔をしかめる。
だがその不快感に耐え、その物体をデイパックの外に引きずり出した。
全貌があらわになり、その正体が判明する。
それは、魚だった。
大きさは、本来の浅倉の身長ほどもある。
そして何より、象のような長い鼻と牙が生えているのが特徴的だった。
少なくとも浅倉にとっては、未知の魚だ。
「何だかわからんが、とりあえず……鯖じゃねえ!!」
妙に大きな声で、浅倉は叫ぶ。
なぜか、少し胸がすっとした浅倉であった。
「エレファントホンマグロ……か。やっぱり、知らない魚だな。
というか、これマグロか?
鼻を抜きにしても、あんまりそれっぽくないような……」
説明書を見つけた浅倉は、それに目を通す。
とはいっても、わかったのはこの魚が食用であることくらいだ。
「まあ生魚持ち歩いても腐りそうだし、さっさと喰っちまうか……。
腹もそれなりに空いてるしな。
いちおう火とか通した方がいいのか、これ」
火を使うのにどこかいい場所はないかと、周囲を見渡す浅倉。
その時彼の目に入ったのは、「喫茶どんぶら」というのれんだった。
「喫茶店……。ちょうどいいな。
喫茶店なら厨房くらいあるだろ」
エレファントホンマグロを引きずり、意気揚々と浅倉はその建物に入っていった。
◆ ◆ ◆
「鼻が美味いな、エレファントホンマグロ……」
しばらく後。浅倉は喫茶店のカウンター席で適当に切って焼いたエレファントホンマグロをかじりながら、タブレットを操作していた。
すでに、放送は流れている。
伝えられた死者の中に、特に浅倉が気になるものはいなかった。
強いて言うなら、自分が殺した相手の名前が「シャンクス」だと判明したくらいだ。
「参加者名簿も……知ってる名前はほとんどないな」
忌々しげに、浅倉が呟く。
彼に覚えのある名前と言えば、「城戸真司」くらいのもの。
遊び相手として悪くはないが、それも彼が「龍騎」であることが前提の話。
「その他」の欄に名前が掲載されている城戸は、まともな肉体が与えられていないことになる。
戦闘力があるかどうかも怪しい状態の城戸に、浅倉が魅力を感じるはずもない。
「まあ、強いて言うならこの名前か」
浅倉の視線が向かうのは、「浅倉威」の文字。
彼が参加者である以上、本来名簿に自分の名前があるのは当たり前だ。
だが今回の殺し合いにおいては、一概にそう言い切れない。
「精神」と「肉体」の両方に名前のある参加者は、ごく一部なのだから。
「俺の体を与えられた参加者が、どこかにいる……」
はっきり言えば、それ自体に浅倉が感じることはあまりない。
彼は自分の肉体に対して常人以上に執着しているわけではないし、逆に嫌悪しているわけでもない。
現在与えられている魔法少女の肉体も充分に強いし、少なくとも殺し合いの間は元の肉体に戻る理由はない。
戻りたくなったら、優勝した時の願いで戻してもらえばいい。
その程度の認識だ。
だが浅倉は、その肉体に付随しているであろうものに興味を抱いていた。
浅倉の指が、タブレットの画面を切り替える。
新たに表示された名簿には、「ベノスネーカー」の名前があった。
このミラーモンスターの名がその他の名簿に記載されているということは、支給品に王蛇のデッキが存在しているということ。
そして、自分の支給品にデッキがないのは確認済み。
ならば、肉体の方に支給されている可能性が高い。
307
:
1シャンク去ってまた1シャンク
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:40:41 ID:uy4z/p.60
「いくらこの体なら、道具なしで戦えるっていっても……。
やっぱり、使い慣れた武器はほしいよなあ」
かすかに笑うと、浅倉はまた一口エレファントホンマグロを口の中に放り込む。
そしてそれを水で流し込むと、タブレットの表示を地図に切り替えた。
「しかし、どこに行くべきかねえ……」
浅倉の目が、様々な施設の間で泳ぐ。
施設の中には宿敵といっていい存在である北岡秀一の事務所もあったが、本人がいないことがわかっているのに行っても仕方がない。
嫌がらせで荒らしに行くのも一興だが、おそらくこの場にはそれよりもっと楽しませてくれる相手がたくさんいることだろう。
「闘技場とかあれば、わかりやすかったんだがな……。
国立競技場でも行ってみるかあ?」
考えを巡らす浅倉。
そんなとき、新たな来客が店に現れた。
「あのー、なんかおいしそうなにおいがするんで来ちゃったんですけど……」
入り口から顔をのぞかせたのは、スポーツタイプのジャケットを身に纏った女性だった。
芸能界でもやっていけそうな美貌に、媚びた笑顔を貼り付けている。
「なんだ、あんたも食うかい?」
浅倉は切り身を一つ手に取ると、それを無造作に放り投げる。
女性の目をそちらに向けさせておいて、浅倉は隠し持っていた銃の引き金を引いた。
「っ!」
女性の頬を、エネルギーの弾丸がかすめていく。
その凄まじい速さに、女性は反応できなかった。
もっと浅倉に銃の腕があれば、弾丸は顔面を直撃していただろう。
「い、いきなり何するんですか!」
「だまし討ちのつもりなら、もう少し上手くやれよ、バカが。
殺気がダダ漏れなんだよ」
抗議に対し、浅倉は憮然とした表情で言い放つ。
その瞬間、女性の顔から感情が消えた。
そして数秒後には、この世のありったけの闇をかき集めたような醜悪な表情が浮かんでいた。
「人をだますのは得意のつもりだったんだがな……。
いやあ、いかん。この状況に、気持ちが高ぶりすぎているようだ」
女性……否、シャンクスは、並の人間ならそれだけですくむような冷たい声で言い放つ。
「ならば、正面から殺させてもらおう」
シャンクスはどこからともなくドライバーを取り出し、それを腰に当てた。
「そりゃまさか……ライダーのベルトか?」
シャンクスの取り出したものを見て、浅倉は怪訝な表情を浮かべる。
それはどこかの未来で、浅倉自身も対峙することになる仮面ライダーのベルト。
だが今ここにいる彼にとっては、完全に未知の代物だ。
『ENTRY』
「冥土の土産に、たっぷり味わっていくといい。
現実などという矮小な枠に囚われない、虚構の力を」
『SET』
続いて、シャンクスは藍色と金に彩られたバックルをドライバーにセットする。
ファンタジーレイズバックル。
おのれが生み出してしまった虚構の娘を、それでも愛することを決意した父親の思いが生みだしたアイテムだ。
「変身……!」
『FANTASY』
シャンクスの宣言と共に、複数の魔法陣が彼を取り囲む。
そして、バックルと同じカラーリングの装甲が装着されていく。
やがて完成するのは、希望あふれる魔術師を連想させるデザインの仮面ライダー。
仮面ライダナーゴ・ファンタジーフォームだ。
『REDY FIGHT』
「待たせたな。
準備に時間がかかった分、ここからは手早く済ませてやるよ」
「はっ、上等だ」
浅倉もまた槍を出現させ、戦闘態勢を取る。
「猫のライダーは初めて見るな……。
どれほどのものか、お手並み拝見といこうか!」
狂気の笑みを浮かべながら、浅倉はシャンクスに襲いかかった。
308
:
1シャンク去ってまた1シャンク
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:41:28 ID:uy4z/p.60
◆ ◆ ◆
二人の戦いはすぐに、店内から路上へと移行した。
シャンクスが生成した光のサーベルと、浅倉の槍が何度もぶつかり合う。
「そういえばこの近くで、手の化物が死んでいたが……。
あいつをやったのはおまえか?」
「ああ? たしかにそいつを殺したのは俺だが……。
それがどうしたぁ!」
戦闘中に突然話しかけられ、いぶかしげに思いつつも浅倉は律儀に答える。
「そうか、よくやった。そいつは俺であって俺じゃない。
俺が一番死んでほしかった男だ」
「はあ?」
シャンクスの口が紡ぐ支離滅裂な言葉に、さすがの浅倉も困惑を隠せない。
その隙を突き、大振りの一撃が放たれる。
なんとか槍で受け止めた浅倉だったが大きくバランスを崩され、急いでサーベルの届かない位置まで後退した。
「ああ、思い出したぜ。
名簿を見た時、妙だとは思ったんだ。
シャンクスって名前が、二つあったからな。
おまえ、あいつの影武者か何かか?」
「さて、どうだろうな。あるいは、あいつもまがい物だったのかもしれん」
「わけのわからねえことばっかり……言ってるんじゃねえ!」
叫び声と共に、浅倉が突っ込む。
だがシャンクスはその突撃を軽やかに回避し、カウンターを放った。
浅倉の脇腹に、赤い線が引かれる。
「くっ……」
「いちいち動揺するなよ。
俺はおまえの敵だぞ。おまえが望むような返答ばかりするわけがないだろう。
聖者でも相手にしてるつもりか?」
「うるせえ……。イライラさせるんじゃねえーっ!」
苛立ちに任せ、がむしゃらに槍を振り回す浅倉。
だがそんな雑な攻撃が、シャンクスに通用するはずもない。
虚構の存在であっても、その戦闘力はオリジナルのシャンクスを基準に設定されているのだから。
「まるでかんしゃくを起こしたガキだな」
冷静に浅倉の攻撃を見極めたシャンクスは、槍の柄をめがけて蹴りを繰り出す。
狙いどおりの場所に命中した蹴りは、槍を浅倉の手から弾き飛ばした。
「詰みだ」
浅倉の首を切り落とそうと、シャンクスがサーベルを振るう。
だがその刃が浅倉に届くより早く、シャンクスの腕を強い衝撃が襲った。
電光を纏った、浅倉の右足。それがシャンクスの腕を捉えていたのだ。
「そっちこそ、聖者でも相手にしてるつもりか!
武器が槍だけのはずがないだろうが!」
獰猛な笑みを浮かべながら、浅倉が叫ぶ。
彼の足に装備されたのは、「キック力増強シューズ」。
使用者の脚力を大幅に増強し、サッカーボールで大木をうがつことも可能とする危険物である。
その威力を直接叩き込めば、いかに仮面ライダーといってもダメージは避けられない。
「次は顔面叩き潰してやるぜ!」
相手の腕を足場にして、浅倉は跳躍する。
そこから繰り出すのは、反対の足で放つ回し蹴り。
シャンクスに、防御の動きはない。
浅倉の足はそのままシャンクスの頭部に向かっていき……それを砕くことなくすり抜けた。
309
:
1シャンク去ってまた1シャンク
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:42:57 ID:uy4z/p.60
「は……?」
「切り札というのは、ここぞという時まで取っておくものだぜ」
仮面ライダーナーゴ・ファンタジーフォームが持つ、唯一無二にして強力すぎる能力。
それが、あらゆるものを透過できる力だ。
使いようによっては無敵となるこの能力は、この殺し合いにおいては主催者によって「連続使用は不可能」という制限を課せられていた。
ゆえにシャンクスは、ここぞという時までこの能力を温存していたのだ。
「こいつはお返しだ」
『FANTASY STRIKE』
攻撃を空振りし隙だらけの浅倉に対し、今度はシャンクスが蹴りを放つ。
青いオーラを放ちながらの跳び蹴り。
ファンタジーフォーム最強の大技、ファンタジーストライクである。
「があああああああ!!」
背中に強烈な一撃を受けた浅倉は、絶叫と共に吹き飛ぶ。
その体は、近くにあった川へと転落した。
「ちっ、面倒な……。
さすがにこの暗さで、川に入って死体を確認するのは手間に見合わん。
まあいい。あれだけの一撃を食らったんだ。
生きていたとしてもまともに動けず、溺れ死ぬだろう」
浅倉が消えた川を見つめながら、シャンクスは変身を解除する。
「まだまだ、殺さなければならないやつはいる……。
ウタの精神もルフィの肉体も殺して……俺が優勝してやる」
「本物」が言うはずのない言葉と共に、シャンクスは邪悪に笑った。
◆ ◆ ◆
「ぷはあっ!」
だいぶ下流に流された場所で、浅倉は川から顔を出した。
彼にとって、背後から攻撃されたのが幸運だった。
デイパックが盾となり、ファンタジーストライクの威力を吸収してくれたのだ。
だが、それでも浅倉自身が受けたダメージは決して小さくない。
それに盾となったデイパックは吹き飛び、支給品も四散してしまった。
残っているのは身につけていたキック力増強シューズと、他の荷物とは別に持っていたソウルジェムだけだ。
「やってくれたな、猫野郎……。
この借りは必ず返すぜ……!」
冷たい水の中、手負いの蛇は静かに憎悪の炎を燃やしていた。
【F-6 街/深夜】
【シャンクス@ネットミーム】
[身体]:鞍馬祢音@仮面ライダーギーツ
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:デザイアドライバー&ナーゴのIDコア@仮面ライダーギーツ
[道具]:基本支給品、ファンタジーレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝して本物のシャンクスになる。
0:この殺し合いを、(俺の優勝で)終わらせに来た!!
1:ルフィに会えたらその時は…帽子の他にも返すものがあるだろ?ゴムゴムの実を返して貰う。
2:優勝するためには手段を問わない。卑怯?聖者でも相手にしているつもりか、麦わらのルフィ。
3:よくやった!これは俺の身体じゃない。だが赤髪が男の時代はこの殺し合いの間は終わるんだ。
4:お前(祢音)の紛い物の身体、俺とファンタジーレイズバックルによく馴染むぜ。
5:優勝したら願いを叶えて貰った上で主催者達を背後から一突きする。殺し合いを勝手に開いて巻き込んだからには命をかけろよ。
6:I can swim.
7:なぁウタ、この殺し合いに平等なんてものは存在しない…。
[備考]
※この身体で覇気を使えるかどうかは後続にお任せします。覇王化は制限により使えない扱いになります。基本的には誰かに教える事も出来ません。
※このシャンク(単数形)は主に「MONSTERsJOHN TV」のONE PIECE考察動画のサムネネタが元になっています。
※ファンタジーフォームの透過能力は、制限により1回使用するごとに1分のインターバルが必要です。
310
:
1シャンク去ってまた1シャンク
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:44:11 ID:uy4z/p.60
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[身体]:佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:ダメージ(中)、魔法少女に変身中、デイパックなし
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、キック力増強シューズ@名探偵コナン
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:戦いを続ける
1:シャンクスにリベンジする。
2:戦う相手を探す。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※ソウルジェムは支給品に含まれず、破壊されると死亡するものとします。
※槍は魔法で出したものであるため、支給品に含まれません。
[備考(共通)]
※喫茶どんぶらの店内に、エレファントホンマグロ(可食部分残り8割)@ONE PIECEが放置されています。
※F-6にレイガン@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL、浅倉の不明支給品0〜1、シャンクスの不明支給品0〜2が散乱しています。
ただし、ファンタジーストライクの衝撃で破損している可能性があります。
【エレファントホンマグロ@ONE PIECE】
ローグタウンでサンジが食材として仕入れた魚。
偉大なる航路突入直後に調理されて振る舞われたが、真面目な話をしている間にルフィが一人でほぼ食べ尽くしてしまったため一悶着起こることに。
ルフィいわく、鼻が美味いらしい。
【レイガン@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL】
シリーズ皆勤賞の、射撃系アイテム。
威力は低いが弾速が速く、射程も非常に長い。
かつて任天堂が発売していた「光線銃」がモチーフと言われているが、公式で明言されてはいない。
【キック力増強シューズ@名探偵コナン】
電気と磁力でツボを刺激することで、キック力を大幅に高めることができるスニーカー。
小学生の肉体になってしまったコナン(新一)の自衛手段として阿笠博士が制作したが、
自衛には明らかに過剰な破壊力を持ち、初使用時はコナンもドン引きしていた。
311
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/09/16(土) 18:45:05 ID:uy4z/p.60
投下終了です
問題点などありましたら、指摘お願いします
312
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/09/18(月) 21:08:33 ID:cAZ/NNhM0
突然なことですみません。
私のTwitterを見ているかどうか不明な書き手の方に向けての感想を一つ投下しようと思います。
なお、これはTwitterに書いたもののコピペ・改訂・追記したものとなります。
>光の星から宇宙の為に
ちゃうねん。玉壺は元々は地球人なのねん。まああの見た目でそうだと言われても信じがたいかもしれないが。
ウルトラマンや内海だけでなく、ユーリにも会えるかどうかも気になってきました。
313
:
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:01:50 ID:Wnb0hQTw0
投下します
314
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:02:19 ID:Wnb0hQTw0
金に溺れること一時間、山田リョウは夢心地であった。
ハレクラニの能力は強大である。ゴージャス真拳は紙幣を生み出すものだけでなく、殺し合いという場に確かに向いている宝石を撃ち出す技、更には紙幣に描かれていた騎士を実体化するなんて芸当まで出来てしまった。
ゴージャス真拳については全てプロフィールに記されていたものの、1時間で多くの技を習得できたのは山田リョウという人物の天才肌な一面が発揮されたからであろう、代わりにベースの技術か学力が失われただろうが。
「綺麗……」
自ら生み出した宝石を眺める。裕福な家庭で育った故、宝石は特に珍しいものではなかった。ただ、自分が作ったなんていう満足感やら紙幣の海に埋もれている多幸感も重なり、それは普段の何倍も美しく見えた。この宝石をずっと眺めていたい、そんな心地よさ。
ただその夢心地に水を差すものあり。
『やあお前たち、約束の連絡の時間だ』
「…………!うわ、これ、さっきの」
いくら現状を楽しんでいたとはいえ魘夢の事を忘れていた訳ではない。一応は殺し合いなんて言われているのだ。確かにここまでハレクラニの身体を試し、最悪人を殺しかねない力がある事も知ったがリョウの常識は変わらない。殺し合いなんて、絶対にやっちゃダメだ。
しかし放送を無視する訳にもいかない。パーリータイムを一旦中断し、リョウは紙幣に囲まれた床へと座り込んだ。
◇
「……」
意味がわからない、というよりかは実感が湧かないという表現が正しいのであろう。おそらく今回の放送の目玉であった死者の発表に対しても、普段テレビ越しに聞く事件程度の感動しかなかった。
山田リョウはただの一般人なのだ。人殺しなんてものは当然無縁、現状も未だにテレビのドッキリだとか、オーチューブの企画みたいなものだろうと、心のどこかで思っていた。
「ぼっちに郁代……店長もいる」
タブレットの名簿をスライドしていくと親しい人物の名が並ぶ。流石に同姓同名の別人ということはないだろう、出来れば出会いたいがこの姿のままで大丈夫だろうか、なんて呑気に考える。ここまで揃って虹夏だけいない事が少し気がかりだったが、次に見たページでその不安はまた別のものとなる。
「虹夏……」
肉体側のプロフィール。その中に伊地知虹夏の名はしっかりと書かれていた。ハレクラニの名もある以上、自らと同じ様知らない人間に虹夏の身体が与えられているのだろう。
「……やだな」
虹夏が知らない身体になってるならまだ良かった。虹夏は虹夏。身体が変わろうとも精神は変わらず。
ただ、虹夏の姿をした虹夏でない人物。それを想像するだけでなんとなく、気持ち悪かった。
しかしどんな人物に与えられたなんて確かめる方法はない。店長の身体が虹夏になってたらまだ良いか、なんて思いながらタブレットを別のページへと操作した。
そこでもやはり、気持ち悪い現象。
「STARRY……」
地図の中の街にポツリと記されている、虹夏達のライブハウス。
「……いや、こんな所にある筈ないけど」
最初に目を覚ました部屋の中から一歳動かずにいた為周りの景色を確かめていないが、少なくとも下北沢の地図はこんなにカオスなものではない。
ここは下北沢ではない、しかしSTARRYはある。
「……確かめに、いくか」
たまたま同じ名前の施設なのかもしれない、そっくりそのまま再現された偽物かもしれない、ただSTARRYは虹夏が、店長が、そして自らも愛するライブハウス。そこに名前がある以上気にせずにはいられなかった。
それにぼっち達も同じ考えであろう、そこで合流できる可能性も高い。部屋に散らばった紙幣と宝石を丁寧に回収し、リョウは扉を開け部屋を出た。
「……暗」
ポツリと感想を漏らす。振り向けば、どうやら今まだ自分がいた場所は一つの丸太小屋だった様だ。
まずリョウは空を見上げた。一度見たら頭から離れない様なビジュアルの月がこちらを睨む様に宙に浮いている、ついうわあと小さく声を出してしまった。あまり長く見たいものではなかった為すぐに視線を変えた。
まずは周りを見渡そうとデイパックから懐中電灯を取り出し、辺りを照らす。
「……?」
そこで一つ目に入ったものは、バラバラに崩された建物の様なもの。
状況故少し恐怖を感じるも、疑問は浮かぶばかり、何があったのだろうか、誰かが居るのだろうか。
ほとんど無意識に、リョウの足はそちらへと向かいはじめた。
おそらくここまでが、彼女の幸福の最高点であっただろう。
315
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:02:57 ID:Wnb0hQTw0
「……何これ」
辿り着いた、木造建築の跡。地震等で倒壊したというよりは、まさしく巨人が暴れ回った後の様な悲惨さ。
リョウの中の恐怖が増加していく。この場は、普通ではない。
「……?何、この」
途端、鼻に入ってくる錆びの様な匂い。
それが何の匂いなのか、リョウは知らない。知るわけがない。
ぴちゃり、突然地面の音色が変わる。
疑問に思った、だから懐中電灯を足元へと向けた。
“それ”が何なのかを認識するまでには、少しタイムラグがあった。
靴に赤色がべったりと塗り付いている。
赤色の水面にはどろりとした何かが浮いている。
それに染まった様な赤い糸が、ぱらぱらと地面に張り付いている。
すぐ側、デイパックが置いてあった。
「――――!?」
“それ”が“そうなった”ものであると理解できた脳を、リョウは恨んだ。
深夜、崩壊したロッジ。とある淫魔の圧死体を前にし、声ならぬ悲鳴が上がる。
山田リョウはこの瞬間、殺し合いへ足を踏み入れた。
◇
「……小悪魔」
山田リョウが死体を目撃するほんの少し前。十六夜咲夜は放送を聞き終わり、ポツリと一言溢した。
放送で名を挙げられた知り合いの肉体。同じ紅魔館に務める者という一点以外ではあまり接点が無い彼女であったが、仲間の肉体の死を宣言され一切動じない程咲夜は冷酷でない。
「(……見つけたら、埋葬でもしようかしら)」
精神にはまた違う悪魔が入れられていたとはいえ、身体が小悪魔である事は事実。死体を見つけたら埋葬しよう、と決めた後はきっぱりと負の感情を断ち切った。
「……!」
その後咲夜はタブレットの名簿を眺め、一つの名前に意識を引きつけられる。
レミリア・スカーレット。紛れもない自らの主の名。
だが特に驚きはしなかった。そもそもこの場で目覚めた時から既に、主も巻き込まれている前提で方針を決めていた。
『お嬢様を見つける』。その方針をより強固なものとし、咲夜は気を引き締める。いくら強大な力を持つ主とはいえ、この場ではその力が全て奪われ力無き人間の幼児の身体に精神を入れられようともおかしくはない。幸運にも自らは『仮面ライダー』なる力を与えられている。メイドとして、従者として、主を守ることは何よりも最優先だ。
「(あら、これは……)」
もう一つ、目に入った精神の名。
『リョースケ』。先程自分が殺した狂人の肉体とされていた人間。おそらく同一人物、つまり先ほどの放送も聞いていただろう。
「つくづく哀れね……」
316
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:03:31 ID:Wnb0hQTw0
プロフィールに書かれていた事柄を経験した挙句、今この場では肉体が殺された事を告げられるあんまりな運命。その肉体を殺した者こそ自分であるがそこに関しては仕方ないと割り切る。心の中、詫びの心をほんの少しリョースケに捧げておいた。
次に肉体の名簿へと移動しようとした、その時であった。
「!」
森の中、男の叫び声が聞こえる。叫び声というにも、悲鳴と形容するのが正しい声。
おそらく何者かの襲撃に遭っているのだろう。助けに行く、という訳ではないが主に訪れるかもしれない危険を減らす為にも向かった方が良い。
森の中、タブレットを仕舞い咲夜は駆け出した。
◇
「(襲撃というよりかは、ただ驚いた様に見えるわね)」
咲夜が目撃したのは、口を手で押さえ腰を抜かす男。その目の前には肉と骨片が散らばった血溜まりが出来ている、衣服だったと思わしき散り散りの布も血に沈み赤色に。相当酷い殺し方をされたのであろう。目の前の男がその下手人であるとは死体の状況やこの怯え方を見るに到底思えない。金の鎧を纏った派手な外見には似合わないその格好、精神は至って普通の人間なのだろう。
「……うわあっ!?はっ、あ、いや」
「落ち着きなさい。貴方が“やった”んじゃない事くらいわかるわよ」
自身の姿を認識した途端後退りする彼、簡単に追いつけるとはいえ逃げられては困る。今後の行動の手数を増やす為にも、人員は増やした方が良い。男は見る限り積極的に人殺しなど出来るような者だとは思えない。
「私は十六夜咲夜。少なくとも危害を与えるつもりはないわ、名前を教えて頂戴」
「…………山田リョウ、です」
「山田リョウ……あら、もしかして女だったかしら。大変ね、そんな変な格好させられて、動きづらいでしょう?」
少なくとも山田リョウは取り乱し会話もままならない様な状態ではなかった。会話が可能と判断し、咲夜は続ける。
317
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:04:04 ID:Wnb0hQTw0
「さっきの叫び声は貴方?」
「……はい」
「まあ……気持ちはわからなくないけれども。結構遠くまで聞こえてたのよ、変質者に気付かれるかもしれないし今後気をつけなさい」
「はい……」
「それで、これは今見つけたの?」
「……」
「そう……」
頷くか小さく返答するだけの姿はまるで幼児の様で。しかし普通の人間がいきなり死体を見せつけられ平常を保てというのも無茶だ。返答してくれるだけありがたい。
咲夜はしゃがみ混み地面を眺める。吸血鬼である主に仕える身、血は見慣れているというレベルでなく日常の一部。目の前の血溜まりは確かに人間だったもので、しかしここまでミンチみたくぐちゃぐちゃにされているものは見たことがない。
「(岩でも落とされなきゃこうならないわよ)」
具体的な死に様がイメージできない。自らの身分や死者の放送を見てもこの場には人間以外の参加者も多い筈。幻想郷で言えば……鬼の様な種族が明確な恨みを持ちながら徹底的に叩き潰しでもしない限りこうはならない。
「(というか、これ……)」
途端、何かに気付いた咲夜は血に浮かんだ破片を掬い取る。衣服の切れ端だと思っていたそれ。ただ、この感触は布ではない。
それに咲夜は、この感触を知っている。
「羽……」
羽、黒い布切れ、そこらに散らばっている赤髪。
『さっきゅん…その身体の名は小悪魔』
咲夜の中で、全てが繋がってしまった。
「(…………埋めることすらできないじゃない)」
中身は他人とて、小悪魔は小悪魔。
その亡骸の人物にすぐに気付く事すらできなかった自分へ、そこまで彼女を崩した下手人へ、割り切った筈の感情が沸々と湧いてきた。
「(…………落ち着きなさい、情報を整理するのが先)」
ふう、と一息吐き。まずはここから離れる事を考える。血は全くと言って良いほど乾いていない、つまり殺されてから長くは時間が立っていない。下手人がそこらを彷徨いている可能性は高い。
318
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:04:38 ID:Wnb0hQTw0
「貴方、取り敢えずここから離れましょう」
ならば一先ず自らが辿った道へと戻り、タブレットの確認とリョウから情報を引き出す方が良いだろう。
すぐ側にあった小悪魔、即ちさっきゅんのデイパックを回収し、リョウの方面を向く。
「……リョウ?」
しかしリョウの異変に彼女は気付く。
ただ一点、ある方角を向き困惑の表情を浮かべている。
「……何か、音が」
「音?」
リョウの言う通り、辺りの音に注意を向ける。
しばらく後、確かに地響きの様な音が聞こえてきた。
山田リョウがその低音に真っ先に気付く事が出来たのはバンドの作曲という立場、あらゆる音に普段から耳を傾けていたからか。
しかし彼女達の間違いはひとつ、その時点ですぐに逃避の選択を選ばなかったことだ。
シュッ シュッ シュッ シュッ
ゴウン、ゴウンと揺れが近づく。
シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ
響く蒸気音が森を支配する。
シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ
山田リョウが発した叫びは、彼への呼び鈴となった。
じこだ、じこだ
じこがおきるよ、ほらいきなり
もうそこに、“機関車”が来る
『ポッポ〜♪』
◇
319
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:05:13 ID:Wnb0hQTw0
現れるは、張り付いた笑みに血痕を上塗りした顔面機関車――タイラント。
地響きがする程の相手、さっきゅんを殺した敵が迫っている事を咲夜は確信していたが、まさか機関車が来るとは思いもしなかった。脳に響く音楽は能力か何かか。
「……リョウ、下がってなさい」
交戦は確定事項。ナイフが得物の普段の戦い方では機関車の装甲には一切通じないだろう。だが、『仮面ライダー』の力ならば。
『ツクヨミ!』
「(つくづく、さっき試せなかったのが残念だわ)」
流れる様な動作で、ライドウォッチをジクウドライバーへ装着させる。概要は確認している。力が手に入るのならば、どの様なものでも良い。
小悪魔の肉体を殺した仇を取りに動こうとは思っていなかった、何より優先すべきは主。だが、こう目の前に仇が現れたならば。
彼女の選択肢はただ一つとなる。
「変身」
『ライダータイム!』
『仮面ライダー ツクヨミ』
『ツ・ク・ヨ・ミ!』
『ツクヨミ』の四文字が仮面へと貼り付けられる。
軽快なBGMが脳に響く中、煌びやかな音楽がそれを裂いた。
「(成程、ね)」
神秘の鎧に包まれた肉体、明らかな強化を身を持って感じ取れる。その上ツクヨミの肉体が持っていた時間停止能力も使用可能。機関車を相手にしたとて、十分にやり合える。
「もう一度言うわ、危ないから下がってなさい」
その一言と共に、咲夜は翔ぶ。
仮面ライダーと機関車、遥か先の未来交わる存在であった二つは、この場にて戦火を交える事となった。
◇
戻りたかった。
何処に?さっきの夢心地に?違う。
日常に、戻りたかった。
山田リョウの目前で行われている事柄は、もはや人智をとうに超えたもの。ハレクラニの特殊な肉体を得たとて、人間のバラバラ死体を目撃した事も、人面機関車が襲いかかってくる事も、助けてくれた女性――咲夜が突然ニチアサみたく姿を変えた事も、あらゆる情報の洪水。脳はパンク寸前だ。
320
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:05:53 ID:Wnb0hQTw0
咲夜は跳び上ると、機関車の顔面に蹴りを入れる。機関車はまるで怯まぬ様子でそれを受け止め、ゴウンと強引にボディを叩きつける。
途端、咲夜の姿が消える。驚くも束の間、背後に現れた咲夜は腕から光の剣の様なものを生み出し、思い切り突き刺した。
「止まりなさい、今なら遺言くらいは聞いてあげるわよ」
タンク部分に剣を突き刺されたタイラントは汽笛を鳴らしながらブンブンと体を振り回す。咲夜は一切のバランスを崩さず運転室へ語りかける。
ここで一つ、咲夜は勘違いをしていた。この機関車らしき物に対し、咲夜は未だ『乗り物』という認識でいる。
当然も当然。誰が即座に機関車の肉体そのものが参加者と理解出来るものか。タイラントは主催の手によって生まれた暴走機関車。止めるならば、機関車を丸ごと破壊するしかない。
「聞く耳はない様ね」
しかし咲夜の目的は最初から破壊のみ。一撃で仕留める為、空いている左手をドライバーへと移す。
「なら貴方も、おしまいよ」
『タイムジャック!』
タイラントから剣を引き抜き、軽く跳び上る。
タイムジャック、即ち仮面ライダーの必殺技、ライダーキック。
咲夜の背面に三日月が浮かぶ。この一瞬は、咲夜《ツクヨミ》の世界。
蹴りが叩き込まれる。
「……」
もはや唖然とするばかり。リョウの目の前で開幕されたヒーローバトル。スピーカー越しでない爆発音を初めて耳にし、思わず目をも塞ぐ。
助かった、少なくともリョウはそう思っていた。爆発音に紛れた、蒸気の音に気づかなかったから。
「……え?」
巻き上がった砂、やがて視界が晴れる。
見えたのは、脚を地面に突き刺す仮面。一切変わらぬ様子の機関車。
その機関車の周囲には、二つ、赤白の傘のキノコがぐるぐると回っていた。
ある世界、レースゲームが行われていた。
ある者はバナナの皮を放り、ある者はカメの甲羅を投げつける。なんでもありのカオスなゲーム。
その世界には、車両を加速させるキノコが存在していた。
今、タイラントに支給されたアイテムはまさしくそのキノコ。しかも三つ入りの、『トリプルダッシュキノコ』。
321
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:06:31 ID:Wnb0hQTw0
「(躱された――!?)」
頭上から迫るキックは微かな隙を見、加速し回避。キノコの活かし方としては特殊な例。
なら、最も簡単な活かし方は?
「――ぁッ!?」
それは加速、キノコを二つ一気に使った、圧倒的な加速。
もはや弾丸の様な速度で迫る機関車は、寸分の狂いなく咲夜の全身へ突き刺さった。
もはや悲鳴すら上がらない唐突な破壊。一気にダメージを受けた装甲は解除される。高く浮かび上がった咲夜の肉体は、生身で地を這う事となる。
「ひ……っ!?」
運悪くと言うべきか。突き飛ばされた肉体は偶然にもリョウの目の前にどさりと落ちた。ごふぅ、なんて音と共に咲夜の口元から血が吐き出される。仮面ライダーツクヨミの装甲を持ってしても、弾丸機関車のダメージは咲夜にしっかりと叩き込まれてしまった。
「あ、さく、咲夜さん――」
『ポッポ〜♪』
ヒーローの敗北。リョウの絶望の前に迫る機関車、即ち『死』。
咲夜の目は閉じている。頼れる人間は居ない。絶望、絶望。
「あ、ああ、ゴージャス真、ひっ」
迫る大音量の絶望、精神もまともでない今ゴージャス真拳を放つことさえままならない。数枚放たれた紙幣が車輪に巻き込まれて散り散りになる様子が余計リョウの心を阻む始末。
しかしタイラントに容赦などない。二人いるならば、丸ごと潰せば良いのみ。
前輪が持ち上がる。二つの頭蓋が潰される――
「『ザ・ワールド』」
――事はなかった。
寸前、咲夜の口からぽつりと出た言葉と共に、目の前の機関車は完全に動きを停止する。
時が止まる、ここは咲夜の世界。スペルカードを扱った訳でもない、能力も細かくは違う。だが、敵を自分の世界へ引き込むならば、この言葉がちょうど良かった。
「あ……は?」
「……リョ、ウ。頼みがあるわ」
「!」
咲夜の容態は紛れもなく重症。ツクヨミという人間の肉体は普段から弾幕ごっこを行う咲夜より脆く。しかし主の護衛すらせず、死ぬわけにはいかなかった。
「できるだけ私を、担いで、遠くまで逃げて」
「この時間も、長くは……はぁ、持たない、から」
時を止めた咲夜を襲うものは、痛みに重ねがけされる疲労感。時を止める能力は無法も良い所、一切の制限無しに扱える訳もない。止めた時が重なる度、咲夜の肉体を疲労が襲う。
「急いで……っ!」
「……っ!」
322
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:06:59 ID:Wnb0hQTw0
リョウとて死にたくなどない。状況こそ理解出来ていないが、またも咲夜が作り出してくれた希望、恐怖に阻まれた身体に鞭を打ち、咲夜を抱え走りだす。ハレクラニの肉体はツクヨミの肉体をも簡単に持ち上げる。デイパックも四つ分回収してなお走るだけには問題ない。
「(……従者である自分が、こんな体たらく。お姫様抱っこまでされてしまって、ねぇ)」
息を荒げながらも、咲夜は時を止め続ける。脳内は呑気の様に見えても、こちらも山田リョウという足――希望に縋るしかない。
「(相手を見誤ったわ、ね。あとこの身体は、強くもない、し…………あ、そろそろ限界かも……)」
咲夜の視界が黒く染まっていく。暴走機関車の出発カウントダウンが始まる。
「(……お嬢様を護らなければいけないもの。リョウ、どうにか、どうにか逃げ切って)」
祈りを最後。ぱちり、と咲夜の目が閉じる。
遠くで轟音が響く。機関車と人間の追いかけっこが、始まった。
◇
何を間違えてこんな目に遭っているのか。わからないままも地面を踏み締め、逃避を続ける。
腕の中の咲夜は意識を失って尚息をしている、死んだわけではない。だが、べったりとした血の感触がなんとも気持ち悪く、それを気持ち悪いと思ってしまったことへの罪悪感をも感じてしまい。
「……誰か」
身体がいくら強くなろうとも、山田リョウはまだまだ単なる少女だ。死の恐怖にいきなり逆らえる筈もなく、そしてその恐怖から救い出してくれた咲夜へ心から感謝していた。
自分だけではどうにも出来ない。しかし助けを呼ぼうと叫べば同じ様機関車を呼び寄せる事となってしまう。
シュッ シュッ シュッ シュッ
「……は?」
しかしタイラントの執念深さを舐めてはいけなかった。地面の草が踏まれた跡。その僅かな路を辿りタイラントはあたかも簡単にリョウへと辿り着いたのだ。
リョウの頭の中にまたも陽気なBGMが流れ始める。表情がまたも絶望に染まる。だが、足を進めた先にひとつ、希望が見えた。
「あれ、って……」
緑色の大きな筒、そしてその先にある巨大な池。
「池……!」
いくら動きが化物染みていても、機関車が水没して動ける筈がない。なら、ここに飛び込んで誘導すればいい。
「……いや」
だが、もし飛び込んだ先でも難なく動けたならば。運転室から出てきた人間が水中移動を得意であれば。
リョウはインドア派、運動は得意でなく当然水泳も苦手。咲夜も抱えたまま、不利になるのは当然こちら。
ならば、機関車だけを落とせばいい。
普段、ニュースや学校で聞く列車の天敵。線路を辿らない化物相手だが、通じるならそれで良い。
323
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:07:26 ID:Wnb0hQTw0
『ポッポ〜♪』
「……っ」
後輪を浮かべ、ラリアットの様な体勢。咲夜に仕掛けた物と相違無い。ならば、片輪で不安定となっている今はチャンスだ。
「……ゴージャス真拳」
小学生のいたずら。大事故に至る原因。列車の天敵。
「フォーリング・ジュエルズ!」
すんでのところ。努力の賜物。機関車を転覆させる為、リョウは宝石を地面へとばら撒くことに成功した。
まさかニュースで見た犯罪を行うことになるとは思わなかった。置き石、解釈を変えれば、敵となった機関車を唯一倒せる可能性。これで池へと落ちて欲しい。
だが、その後の軌道はリョウの予想とは異なる物で。
「――え」
大量の宝石の山を踏んづけた機関車は頭上、高く跳ね上がった。そしてそのまま。
ティウン ティウン ティウン
緑の筒の中へと、入り込んでしまった。
「…………」
明らかに機関車のサイズより小さな穴に入り込んでしまった。宝石の山が機関車をジャンプさせた事実も困惑の種だったが、偶然の幸運と呼ぶしかない。
リョウは地図を見ていなかった、そのせいで目の前の筒が『ワープ土管』である事も知らなかった。
だが、脳内で流れていたBGMも消える。脅威は一先ず去ったことは理解できた。
「……早く、逃げないと」
しかし一息ついている暇はない。咲夜の容態は未だ悪いまま。
「さっきの建物……いや、他を当たった方が……」
リョウは考えるも、足を再び動かす。
「(また出てきたらその時は終わり。逃げて、どこかで。咲夜さんを)」
衝撃的な体験続き。ダメージがないとは到底言えない。
だが今はとにかく助かった。走って、走って、何処かへ逃げて。その先で命の恩人を救わなければ。
山田リョウは一生分と言ってもいい程の恐怖体験をした。
しかし、まだ殺し合いも序章。その事をリョウは理解したくもなかった。
【A-7 森/深夜】
【山田リョウ@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:ハレクラニ@ボボボーボ・ボーボボ
[状態]:健康、疲労(中)、恐怖(大)、咲夜をお姫様抱っこ
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、真・ハイパーノート@ハイパーインフレーション、ゴージャス真拳で出した紙幣・宝石、ランダム支給品0〜2、さっきゅんの基本支給品とランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。殺しとか、ダメに決まってる。
1:逃げて、咲夜さんを治療できる場所を探す。
2:怖すぎる、早く帰りたい、助けて。
3:ぼっち達に会いたい、虹夏の身体は……会った方が良いけどさ
4:ゴージャス真拳はある程度出来る様になった気がする。
5:脱出方法とか、元の肉体の戻り方とかは、後で考えよ……
6:金持ちバンザーイ……とか言える気分じゃなくなったんだけど……
[備考]
※制限により、ハレクラニの肉体で操った金により一円硬貨にされる技は封印されています。
【十六夜咲夜@東方Project】
[身体]:ツクヨミ@仮面ライダージオウ
[状態]:気絶、疲労(大)、吐血、全身にダメージ、内臓損傷(小)、リョウに抱っこされ中
[装備]:ジクウドライバー&ツクヨミライドウォッチ@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、咲夜のナイフ@東方Project、ランダム支給品0〜1、スコップ@東方Project、涙目のルカの基本支給品とランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:今は殺し合いには乗らない、とりあえずは抗う方向で行かせてもらうわ。
1:リョウ、頼んだわよ。
2:何よ機関車って……。とにかく次会った時は対処しないと……。
3:お嬢様を探したいわね。
4:軽率に乗ったり殺す事はしない。お嬢様に会ってからちゃんと考えるわ。
5:姫虫百々世?誰なのかしら…?
6:あの顔のある月をなんとかする方法…あるといいんだけど…。
7:小悪魔……。
[備考]
※制限により時間停止を続ける程疲労感が襲いかかります。
※時間停止の対象は咲夜の裁量により選択可能です。
※咲夜の過去については色々な説が出ていますが、どれを採用するか等は後続にお任せします。
※精神名簿のみ確認しています。
324
:
逃げたい逃げたい
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:07:52 ID:Wnb0hQTw0
◇◇◇◇
ワープ土管の先。さらさらと川が流れているすぐ側、タイラントは現れる。
唐突に景色ががらりと変わった現状、流石のタイラントも対象が何処へ行ったかは見当もつかない。知能も一般的な人間よりは低い。自らが土管でワープして来た事実をも認識していない。
シュッ シュッ シュッ シュッ
しかし任務を遂行するのがタイラント。機関車の身になろうとも変わらず。
任務は参加者の皆殺し。順番が変わろうともどうせ殺す。現状もどうと言う事もない。
新たな参加者を探し出す為、車輪は動き出す。じこはおこる。まだまだおこる。
【H-4 ワープ土管付近/深夜】
【タイラント@バイオハザードRE:2】
[身体]:トーマス@きかんしゃトーマス
[状態]:健康、返り血が付いている、タンク部分の損傷(小)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:全ての参加者の殺害
1:次の殺害対象を探す
[備考]
※トーマスのサイズは3メートルほどに縮小されています
※タイラントに補足された参加者は、きかんしゃトーマスのBGMが聞こえるようになります
※線路以外のあらゆる道で走ることが出来ます
※階段の上り下りや扉の開閉も出来ます
※デイバッグはトーマスの中に入っています
※デイバッグの操作も可能です。中身を取り出すことは可能ですが、タブレットを扱うことは流石に難しいでしょう
※崩壊したロッジの付近に丸太小屋が建てられています。中には山田リョウが取り逃がした紙幣が数枚そのままになっています。
【トリプルダッシュキノコ@スーパーマリオシリーズ】
タイラントに支給。マリオカートでおなじみのキノコ。
使用することで一時的に加速する事が可能。使用すると三つのキノコが身体の周囲をぐるぐると回転し始める。
タイラントが全て使用した為消滅。
325
:
◆4u4la75aI.
:2023/09/20(水) 00:08:37 ID:Wnb0hQTw0
投下終了です。制限等問題があれば修正致します。
326
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:35:07 ID:TckWVkC60
投下します。
327
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:35:41 ID:TckWVkC60
禪院扇は、闇雲に会場を徘徊していた。
この殺し合いを壊すカギを探るために、歩き始めたはいい。
だが、行けども行けども人に会えないし、会える気がしない。
参加者を先導して救済しようにも、殺し合いに乗った者を殺そうにも、人に会えなければ意味が無い。
大して進展もなく、無駄に時間と体力を浪費させられた中、魘夢の放送が響いた。
その放送が終わり、彼の苛立ちは頂点に達していた。
自分の家の者が死んだことはどうでもいい。
だが、参加者の数が減ってしまえば、自分の業績を評価する者が減ってしまう。
そうすれば、次期当主の座を推薦してくれる者も少なくなり、偏屈な者達が考えを変えてくれなくなる。
ひとまず、名簿で知っている者がいないか、調べてみることにした。
苛立ちのあまり、タブレットをたたき割りたい衝動に駆られながら。
最初に目に入ったのは、夏油傑という名前。
「誰かと思えば…殺す手間が省けるから良いが……」
彼は当事者ではないにせよ知っている。
1年前に起こった事件、百鬼夜行の首謀者であることを。
そして死んだはずが、どういうわけか再び現れて渋谷事変にも関わっていたことを。
その後すぐに、五条悟の名前が見つかる。
「奴は封印されたはずだ……なぜこんな所にいるのだ……!!」
彼の名前を見て、さらに苛立ちが増すことになる。
人間離れした実力と、若者に未来を託したいという腹立たしい思想は、自分の道を阻むと思ったからだ。
今はただ、奴にも出来損ないの身体が支給されていることのみを願った。
そして次に見た名前は、同じ禪院家の名の者。
「お前のような若造に、次期当主の座はやらん……!!」
直哉もまた、次期当主の座を奪われた者。
だからと言って同情するつもりは露ほどもない。
当主の座を奪われた原因が実力ではなく、理不尽なのは自分だけだからだ。
自分だけは、娘が出来損ないだったという理不尽が原因だと思っていた。
その次の名前も、禪院家の者なのは分かった。
だが、下の名前を見た瞬間、地震が起こった。
あまりに大きな地震のせいで、タブレットを落としてしまった。
本当のことを書くと、それは地震ではない。
怒り、恐怖、そして己への憐憫。扇の胸の内で渦巻いた様々な感情による、震えだった。
「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!
この世界でまで私の邪魔をしようとする気か!!!!!」
半ば八つ当たり気味に、地面に落ちたタブレットに蹴りを入れた。
液晶画面にひびが入り、二発目の蹴りで壊れてしまった。
328
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:36:03 ID:TckWVkC60
このような場所で叫ぶことは、貴重な名簿を壊すことは、色々とデメリットがある。
そんなデメリットを無視した上で、己の感情を露わにする。
それは到底自分の娘に向ける感情ではない。
だが、自分の未来を閉ざしてきた人物への感情と考えれば、理にかなっている。
尤も、その理とは彼の中でしか完結しないものだが。
「それならそれで、此方にも方法はある。」
だが、ここで男は1つ考えた。
かつて考えていた通り、自分の娘を殺せばいい。
ただし、彼女を悪と仕立て上げた上で。
その上で殺すことが出来れば、足手まといを排除出来たついでに己の格も上がり、一石二鳥というものだからだ。
地図のデータに入ったタブレットを、愚かにも壊してしまったが、残骸を置いて先に進むことにした。
☆☆☆
「こう見えてぼくはねえ。何の力もないサラリーマンだったんだ。」
車の中で、句楽は話を始めた。
頼まれてもいないのに話したわけではなく、同じ車に乗っている少女から質問されたものだ。
「世の中にあふれるどす黒い不正を見るにつけ聞くにつけ、いきどおろしさに胸の塞がる日々を送っていたものだ。」
彼が得意げに語る様子を、少女は支給された水を飲みながら聞いていた。
その胸の内に、純粋さとは全く異なる感情を秘めて。
そんな彼女にとって、男の身の上話などどうでもいいものだった。
何しろ、アイシアヤノという少女が人として惹かれた男は、たとえ幾重の世界を渡っても一人だけだから。
問題は、ウルトラ・スーパー・デラックスマンがどのような力をもつのかだけだった。
「ある朝……X線、怪力、飛行力。おれは超人になったのだ!!
それこそこんな身体なんか下らないぐらい、とんでもなく強いぐらいのね。」
ここからが話の盛り上がり所だ、と言わんばかりに、彼の語調が強くなる。
話しているだけで、彼の気持ちが高揚しているのが伝わって来る。
「正義の味方として、おれの大活躍が始まった。
単なる犯罪者だけではなく、小は暴走族から大は財政界の黒幕や公害企業までもおれの鉄拳を浴びた」
「そんな凄い活躍をしていたんですね。」
彼女の言葉は、本心ではない。
自分とは関係ない正義など、心底どうでもいいからだ。彼女は正義を信奉するような倫理観とは無縁の人間だ。
ただ思うのは、句楽の肉体を承った者が、相当厄介な存在になるということだ。
彼の仮説通り悪人が持っていれば言うまでもなく。逆に善人だったとしても、優勝を狙っている彼女にとって手ごわい敵になるのは間違いない。
329
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:36:25 ID:TckWVkC60
「ところで、こんな話を聞いても、やはりウルトラ・スーパー・デラックスマンのことに覚えはないんだね?」
「え?はい。そんなヒーローの話は聞いたこと無いです。」
2人が生まれ育ったのは、こんな殺し合いがなければ決してつながることのない別々の世界だ。
だからアヤノが句楽のことを知らないのも当然なのだが、そこに彼は別の間違った答えを見出した。
「やはり…報道管制だな。君がおれのことを知らないのも、それが原因だ。」
無精ひげが印象的な医者の顔が、歪み始める。
目つきが鋭くなり、ギリギリと歯ぎしりをし始める。
「犯罪のニュースを流すとおれが飛んで行くもんだから、隠していやがるんだ。」
「隠している?どういうことですか?」
今のは演技ではない。本心からの疑問だ。
当事者でもないアヤノは、話の繋がりが分からなかった。
「そうだな……こういう話は順を追って話していった方が良いだろう。
いつだったかはもう分からない。いつものように悪人どもを抹殺していた時のことだ。
警察が現れて、おれを逮捕するなんて言いやがった。」
「どうして逮捕されなきゃいけないんですか?」
「だよねえ。おれの力は世の不正を正せと神が与えたもうものなのに、悪を抹殺するのがなぜ悪い?」
もし話を聞いている者が、まともな倫理観を持っているのなら、目の前の男のしていることの恐ろしさが分かるだろう。
残念なことに、この場にまともとされる倫理観を持った者はいなかった。
いや、彼を怒らせずに済んだため、幸運なことにと言うのが正しいのかもしれないが。
「それからすぐに、マスコミも正義の味方をとやかく言うようになった。
奴等も黙らせたよ。最も、おれのことを褒めたたえることは終ぞ無かったがね。」
一通りウルトラ・スーパー・デラックスマンのことについて聞き終わった後、彼女は目の前の相手を厄介だと思った。
恐らく自分が何をしようとしているか分かれば、躊躇なく殺そうとするということは分かった。
だが、同時に御し易い相手だとも思った。
巧い事自分を悪に襲われた被害者のふりをする、あるいは厄介な相手を悪だと吹き込めば、相手を殺し合いの渦中に追い込むことも可能ははずだ。
「話を戻そう、おれを逮捕しようとした警察共を片っ端からひねっていくと、今度は自衛隊がやって来た。」
そしてもう一つ、句楽の話を聞きながらも、アヤノはしていたことがあった。
車の中に何かないか、物色していたのだ。
邪魔者を始末するのに、戦車や伝説の剣や魔法の杖はいらない。
身近にある物でも、急所を狙えば十分殺すことが出来る。
現在の句楽が持っている肉体が何なのか、未だ分からずじまいだが、1つでも武器になれるものは持っておいた方が良い。
330
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:36:47 ID:TckWVkC60
そんな中、車の中の収納箱から、1枚の紙が見つかった。
何か重要なことが書いてあるのか気になり、覗いてみるも、てんで期待外れの内容だった。
なにしろ、それは何の変哲もない、ただの免許証だからだ。
だが、句楽にとっては関係のないものでは無かった。
「何か面白いものでも見つかったのかね?見せなさい。」
句楽は半ば引っ手繰る形でそれを手に取る。
すぐにそれは、知っている人物の名前が表記されていることに気付いた。
同時に、この車の持ち主が誰であるかも。
「あいつら!!」
「え?」
「くそったれ!!おれの友人まで巻き込みやがって!!」
車の持ち主である片山は、句楽の昔からの知り合いであり、今でも数少ない話し相手だ。
無理矢理話し相手にしたと言っても良いが、少なくとも彼はそう思っている。
彼は殺し合いに呼ばれていないと思っていたが、あろうことか財産の1つを奪われていたのだ。
改めて奴等を裁かねばならない理由が、また1つ増えた。
「ちょっとクラクさん!!ハンドル!!運転!!」
その感情の高ぶりは、彼の運転にも現れる。
ウルトラ・スーパー・デラックスマンになってから、己の肉体にのみ頼っており、長らく車を運転してなかったから猶更だ。
今までにないほどの速さで進む車が揺れる。どうにか事の重大さに気付いた句楽は、ブレーキを踏み始めた。
☆☆
「おお!?何だアレは!!」
辺りを伺いながら草原を歩いていると、鉄の怪物が向こうを走っているのを見えた。
あれも参加者の1人なのかと考えてしまう。
ドッスンが知っている乗り物と言えば、主のお気に入りのクッパクラウンや、レース用のカートぐらいだ。
「知らぬのか?自動車と言って、オレさまの世界ではありふれた乗り物だったぞ。」
それに対して答えるのはサタンだ。
彼は人間の世界のことを幾分かは知っているため、向こうにあるものが何なのか分かった。
そしてその車が、明らかに暴走していることも。
尤も、サタンにとってあの車が暴走していようとどうでもいいことなので、放っておこうとした。
「おい待て…何処へ行こうと言うのだ!!」
「ジドウシャの中にいる者と話をしたい。」
一度やられたというのに、なんという愚直さだ。
そんなドッスンの態度を、サタンは呆れながら見ていた。
勿論だが、人の足でトップスピードに近い車に追いつけるはずがない。
だが、突然車はバナナの皮でも踏んだかのようにスピンし、草原の真っただ中で止まった。
331
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:37:14 ID:TckWVkC60
「おい!大丈夫か!!」
しばらく反応が無かったが、やがて車のドアが開いた。
出てきたのは、無精髭が印象的な医者のような男と、長い髪の女子高生。
「いたた……運転荒いですよ……。」
「いやあ、すまないね。おれとしたことが、ついカッとなってしまった……。」
2人は身体をしたたかに打ち付けたが、大けがしたりするようなことはなかった。
早速ドッスンに気づいて、声をかける。
「無事で何よりだ……。自己紹介が遅れた。ワシはドッスン。この殺し合いを壊そうとしている。」
「いやあ、見苦しい所を見せてすまないね。けれど、ぼくと会えたからには安心だ。
このウルトラ・スーパー・デラックスマンが悪い奴等を成敗してやるからな。」
ニコニコしながら、句楽はドッスンに話しかける。
自分達のことを慮ってくれる相手なのだから、殺し合いには乗っていないという考えだ。
「ウルトラ・スーパー・デラックスマン?」
聞き慣れぬ言葉に、ドッスンは眉を顰める。
「クラクさんは、悪い奴等を成敗するヒーローなんですよ。」
少女の言葉にあわせるかのように、句楽はエッヘン、と胸を張る。
そんな彼の態度に対し、ドッスンはあまり嬉しい気分を抱かなかった。
何しろ、今は殺し合いに乗っていないとは言え、自分は悪の組織に所属していた自分だ。
彼の世界でいうとマリオのようなヒーローの名を冠する者は、本来敵に該当する。
「ん?何だね?折角ヒーローが来たんだ。もっと喜びなさい。」
句楽は元の世界にいた時、同僚とも目が合えば、苦虫を噛み潰したような顔をされていた。
だからそんな顔をされるのは慣れている。
だが一たび美少女から、尊敬の眼差しを受けてしまうと、他の者もそのような態度で接して欲しいと思ってしまう。
「ああ。すまない。少し考え事をしていてな。ならワシはヒーローの仲間として、出来ることならなんでもしよう。」
「嬉しいこと言ってくれるねえ。」
ドッスンは自分の行いを省みるつもりは無いが、善悪の区別はついている。
もし自分が、悪の組織の一員だったと分かれば、このヒーローはどんな顔をするだろうか。
332
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:37:30 ID:TckWVkC60
「ドッスン。お前は先を急ぎ過ぎだ。車に乗っていた者が悪人だったらどうする。」
「すまない。でもこの2人は悪人でない。結果的に問題ないだろう。」
ようやく遅れて、サタンが3人の場に現れる。
山岸由香子と同様、これまた美しい少女が現れたため、句楽の視線が釘付けになる。
彼の好みはフランのような10かそこらの少女より、彼の世界で言う星野スミレのような20前後の美女だ。
だが、その好みを差し置いてなお、フランの姿は目に余る美しさがあった。
「そうジロジロ見られても困る。俺様の中身は男なのでな。」
「ジ、ジロジロだなんて失礼な!!いや、見ていたのは本当だが…決してそんな気があった訳じゃ……。」
挙動不審な対応をする句楽に対し、その様子を余裕綽々と眺めるサタン。
どちらがヒーローで、どちらが悪役(サタン)なのか分かったもんじゃない。
「そ、そうだ!!君たちに一つ、聞きたいことがあるんだ!!」
「ほう?」
「あのエンムとかいう奴が言っていた、『肉体を取り換える施設』のことは知らないか?」「悪いが、知らないな。」
別の方向を歩いて来た2人なら、もしかすれば知っているかもという期待があった。
だが残念ながら、その期待は露と消える。
「何をしている……!!こんな所で……!!」
4人の空気に割って入ったのは、1人の金髪の男だった。
金髪と言うと明朗快活なイメージが強いが、この男はその逆だった。
1人いるだけで、場の空気がどんよりと淀むことになる。
何しろ、自分を邪魔する出来損ないが同じ場所にいると分かった上に、2時間ほどずっと人に会うことも無く延々と歩かされていたのだ。
彼の苛立ちは最高潮に達していた。
「何だねきみは。まあ安心したまえ。この正義のヒーローがいるのだから……」
「ヒーローだと?下らん。」
句楽の発言を、扇は一蹴した。
自分がこれほど苛々しているのに、言うに事を欠いてヒーローとは。
彼にとって、正義のヒーローなどは若者しか好まないもの。
大方承認欲求に飢えた馬鹿者か、はたまたドン・キホーテのような気狂いとしか思えなかった。
第一、この殺し合いを打破するのは自分だ。そんな自負がある扇にとって、正義の味方など無用の長物でしか無かった。
「な、何だとお!!」
333
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:37:51 ID:TckWVkC60
その発言を聞いて黙っているほど、句楽は冷静でいられる人間ではない。
扇は彼に対して悪意を持って言ったわけではないが、そんなことは知ったこっちゃない。
顔を真っ赤にし、今にも金髪の男目掛けて、掴みかかりそうになる。
「ヒーローなど下らんから下らんと言った。」
「うぬーっ!!もう勘弁ならん!!」
句楽は瞬く間にヴァンパイヤに変身し、ヴィクティブレードを構える。
いくら元の力を奪われようと、人間にここまで言われる筋合いはない。
対して扇も、刀の鍔を握り締め、居合の姿勢を取っている。
「おれを怒らせたらどうなるか、思い知らせてやる!!」
「出来損ないが……。」
2人は睨み合っている。今にも殺し合いが始まろうという状況だ。
「ま、待て!何をしようと……」
それをいち早く制止しようとしたのは、ドッスンだった。
一体どうして目の前の2人が、一触即発という空気を作ったのか分からない彼だが、今の状況がまずいことは分かった。
自分1人でどうにか出来る相手なのかは定かではないが、止めるのは自分でしかないと考える。
「まあ、そう出しゃばることも無いだろう。」
しかし、サタンはあろうことか、彼の右肩を掴んで制止した。
その浮かべている不敵な笑みは、何の意図によるものなのか想定できない。
「なぜだ……」
「俺様達はウルトラ・スーパー・デラックスマンとやらのことを知らない。
ここで1つ、あの男の力を見届けるのも悪くないのではないか?」
サタンはドッスンに耳打ちする形でそう話した。
「あの二人の戦いを止めるなと?」
「ああ。不必要な戦いに関わることほどバカげたことは無かろう。それに奴が本当のヒーローか分かる良い機会だぞ?」
334
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:38:08 ID:TckWVkC60
サタンの言うことは、意外と理にかなっている。
句楽兼人という男が、ヒーローと名乗るにふさわしい力を持っているか、はたまた見せかけなのかは判別できない。
もし実力があれば、目の前のうさん臭さしかない男を勝手に排除してくれる。
尤も、彼の胸の内には、争いを広げていきたいという想いが一番にあるのだが。
「それに、あの2人の戦いに巻き込まれて、お前が怪我をしたらどうするんだ?」
「だが……。」
サタンとしても「今は」ドッスンが不必要な争いに巻き込まれて欲しくはない。
彼は他の参加者から信頼を買うために必要な隠れ蓑として、利用する価値があるからだ。
この時、タケシの糸目とフランのきらきらした瞳が初めて合った。
間近でこのサタンという男が「行くな」と目で語っているのが分かった。
(お主の言いたいことは分かる。だが……)
上がって、落ちる。落ちては、上がる。
この世界はかつてのドッスンの生き方ほど、シンプルではない。
【一日目/黎明/E-6】
【句楽兼人@ウルトラ・スーパー・デラックスマン】
[身体]:堂島正@血と灰の女王
[状態]:ダメージ(小)背中に裂傷 疲労(小) アヤノへの好感 怒り(中)
[装備]:ヴィクティブレード@現地調達
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いに乗った者も、主催者も徹底的に殺す。
1:句楽邸へと向かう。
2:目の前の男(禪院扇)を黙らせ、ヒーローだと認めさせる
3:白い男(夏油)は今度会ったら絶対殺す
4:アヤノちゃんはとても良い子だ、それに可愛らしい
5:久しぶりだねえ、こういうの
[備考]
※参戦時期は本編で片山が家に来るまで。
※Dナイトは少なくとも今は使えません。
【禪院扇@呪術廻戦】
[身体]:煉獄杏寿郎@鬼滅の刃
[状態]:健康
[装備]:何らかの刀@出典不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:禪院家当主(候補)による迅速な殺し合いの終結
1:自らが旗頭となり、参加者達を導く。弱き者を救う、それが呪術師の責務だ…
2:解決不可能と判断した場合は優勝に切り替える。弱者が強者の足を引くなどあってはならない…
3:ヒーローだか何だか知らないが、この男を黙らせないとな。
[備考]
※参戦時期は禪院家忌庫にて真希を待ち伏せていた時からです。
※何の刀が支給されたかは、採用された場合後続の書き手様にお任せします
※タブレットを壊してしまったため、地図を確認してません。また、肉体側の名簿も読んでいません。
【サタン@ウソツキ!ゴクオーくん】
[身体]:フランドール・スカーレット@東方project
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、神楽の番傘@銀魂、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この殺し合いの舞台を地獄にする。最終的には優勝狙い
1.善良な対主催グループに潜り込み、悪の心を植え付ける。
2.日光対策に一応昼間の拠点になりうる場所も探しておく。
3.ドッスンや他の対主催からの信頼を積み上げて、やがて壊す。
4.元々使う予定だった『左丹下炎(さたんげほむら)』という名前を使う
5.句楽と扇の戦い。どうなるか見ものだな
[備考]
※参戦時期は39話終了後
※スペルカードの類はどこまで使えるかは不明です。
【ドッスン@スーパーマリオシリーズ】
[身体]:タケシ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:顔面にダメージ(中)、鼻血(止血済み)
[装備]:ボコの棒@ゼルダの伝説風のタクト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(少なくとも武器らしいものはない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し、タケシに身体を返す
1:ヒトの力を使い、殺し合いを破綻させてみせる
2:同僚(多分)の身体が、あのような悪者(フラウィ)に使われるとは!!
3:サタンゲと共に対主催を集める。また、フラウィには注意する。
4:無理にでも止めるべきか?サタンゲの言う通りにすべきか?
335
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:38:25 ID:TckWVkC60
場の空気を句楽と扇が牛耳っている中。
アイシアヤノだけは、一人別行動をとっていた。
彼女が今いるのは、片山の車の下。
そんな場所に潜り込んだりすれば、一目で行動を怪しまれるはずだが、誰も気づく者はいなかった。
勿論目的は、車のパーツではない。彼女の世界にもあった、特に揮発性の高い可燃物。
水の入ったペットボトルの中身を捨て、車の底辺のドレンコックを回し、零れた液体を受け止める。
ペットボトルにガソリンが溜まると、慌ててコックを締めた。
誰かと誰かが争っている間、話をしている間というのは、アヤノの独壇場。その間に一人で、必要な道具を1つでも集めることが出来る。
(これでよし……やはり人を殺せそうなものは一つでも用意しておかないとな……。)
撲殺や刺殺が出来ない相手でも、ガソリンをかけて焼殺することが出来るかもしれない。
数人が集まった建物に放火すれば、一度に多くの参加者も殺害可能だ。
(クラクをどうするかな……)
そんな間に悩んでいることは、この先も彼と共に行くかどうかだ。
あの男は、どうにもムキになりやすい所があるのはわかった。
仮に今の状況を切り抜けられたとしても、この先も他の参加者と波風を立たせる可能性がある。
それに関しては問題ないが、自分にまでとばっちりが及ぶ危険性は否定できない。
この場を離れるか、争いが終わるまで待つか。
少女はじっと、思考する。
かくして、ドッスンとサタン。扇と句楽、そしてアヤノは近づいて行く。
何処にあるとは分からない、爆弾の導火線へ。
【アイシ・アヤノ@Yandere Simulator】
[身体]:山岸由花子@ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない
[状態]:健康 片山の車の下にいる
[装備]:ガソリン入りペットボトル(現地調達) 片山の車(ガソリン1/2)@ウルトラ・スーパー・デラックスマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、センパイだけとの永遠を望む。
1:クラクを利用。と思っていたが、彼の性格に注意
2:異能力に注意。
3:この場に留まるべきか、逃げるべきか
4:センパイ……♡
[備考]
※スタンドはゲーム内でのイースターエッグにて扱っていた為難なく扱えます。
336
:
ミス・コンダクタ
◆vV5.jnbCYw
:2023/09/20(水) 00:48:30 ID:TckWVkC60
投下終了です
337
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 17:55:54 ID:Mc.wm5VE0
投下します
338
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 17:58:08 ID:Mc.wm5VE0
医者は有能であっても万能ではない。
天才外科医だ何だと持て囃されたとて、人の身で起こせる奇跡以上の救済は土台無理な話。
知識を吸収し、経験を積み、腕を磨いた所で助けられない患者は存在する。
もし全ての命を一つも取り零さず救えるのなら、それは最早ドクターではなく神と呼ぶべきだ。
現実にそんなものがいれば恋人の消滅を防げただろう。
代償付きの奇跡に縋る必要もない。
生憎と飛彩の知る神は、崇高とは程遠い傲慢と狂気が服を着て歩いているような男だが。
鏡飛彩はドクターである。
しかし無限に手を伸ばし人々を救える神様ではない。
自分がいながら複数の死者を出してしまった事実、大多数の者は飛彩に責任は無いと口を揃えて言う。
飛彩自身、出来る事と出来ない事の分別は付けられる人間だ。
だから仕方のないとは分かっている。
もし自分がもっと迅速に動いていれば、そう考え込むのを堪えこれからどう動くかに頭を働かせた。
死者は二度と帰って来ない。
ゲーム病で消滅した患者と違い、いずれ復活させられる希望は持たせられない。
取り零した者を戻せないなら、もうこれ以上は失わない為に戦うだけだ。
主催者への怒りはあるが放送で伝えられたのは無視出来ない内容ばかり。
まず優先して確認を行うのは新たに見れるようになった名簿。
タブレットを操作し画面に表示、精神・身体・その他を隅々までチェックする。
CRの関係者は自分以外不参加。
残念、とは思わない。
確かに宝生永夢を始めとする仲間達がいれば心強かったが、元々自分達ドクターの戦場は患者の治療を行う病院。
必要な時に必要な医療スタッフがいないせいで、最悪の事態を招く可能性は十二分にある。
むしろ永夢達まで巻き込まれてCRがもぬけの殻とならずに済み、安堵感を抱いたくらいだ。
339
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 17:58:42 ID:Mc.wm5VE0
「浅倉だと…?」
ただ知っている名前が一つも見つからなかった訳ではない。
浅倉威、以前戦った凶暴極まりない仮面ライダー。
永夢が散々痛め付けられ、飛彩の助手も襲われたのは覚えている。
レベル4のブレイブで勝利し、浅倉は消滅した筈。
同姓同名の別人という線も無くは無いが、もし飛彩の知る浅倉ならまず間違いなく殺し合いに乗るだろう。
他に知っている名前と言えば、さやかのプロフィールで度々名前が出て来た佐倉杏子か。
尤もこちらは体のみ参加しているので、本人と話す機会はない。
さやか同様、魔法少女の運命に弄ばれた挙句に殺し合いへ利用したのには怒りが湧くが。
身体側の名簿でもう一つ無視できない名前があった。
「俺の体もか…」
どうやら殺し合いには精神のみならず、自分の体までもが利用されているらしい。
ふざけた真似をする主催者への苛立ちは後々直接ぶつけるとして。
自分の体が参加者の誰かに与えられたという事は恐らく、ゲーマドライバーとガシャットも所持していると睨む。
殺し合いで飛彩の体になり最も大きなメリット、それは適合手術を受けた肉体故にゲーマドライバーで変身が可能なこと。
飛彩の体を有効活用させる為に、ブレイブへの変身に必要な道具一式も支給された可能性は非常に大きい。
問題はどのような人物が自分の体に入っているかだ。
CRの仲間や以前共闘した仮面ライダーゴースト達のように、人格面で信用できるなら良い。
その反対、ゲーム病患者を治療するブレイブの力を他者の殺害に使う輩ならば蛮行を見過ごせない。
最悪あの浅倉が自分の体で暴れ回っているかもしれないと考えると、のんびり構えてはいられなかった。
とにかく動き回り他の参加者と接触しなくては始まらない。
地図を見ると、ここから最も近い場所に施設がある。
偶然にもさやかと関係のある場所。
取り敢えずはそこを目指そうと荷物を纏め歩き出す。
周囲への警戒を怠らない、女子中学生に似合わぬ剣呑な気配を纏って。
340
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 17:59:28 ID:Mc.wm5VE0
◆◆◆
「ま、そうなるだろうね」
主催者へ憤りを覚える者がいる一方で、その反対もまた存在する。
タブレットに目を落とし何でもないように呟く男、戦極凌馬は正にそれだ。
殺し合いなのだから、積極的に他者を殺す人材を参加させているのは当然の話。
一時間で8人が命を落としたのも、これといった驚きは無し。
知っている者はおらず、どう見ても人間じゃない画像には多少興味があったが、死んでしまっては凌馬の研究に付き合ってもらうのだって不可能。
死んだ連中はご愁傷様だと心にもない言葉一つで済まして、さっさと切り替えるに限る。
(身体の取り換えが可能、ねぇ…)
魘夢から齎された情報で特に興味を引かれたのは、会場の何処かに設置された特殊な施設。
既に主催者によって別人と取り換えられた体を、更に別の参加者のものへ変える。
「今の自分の身体に不満がある奴」、との言い方からして所謂救済措置。
元の体よりも圧倒的に弱い、使い辛い体となった参加者にも優勝の芽を出す為の調整と言った所か。
「ニャ…」
自分の肩に乗る小さな同行者を盗み見る。
凌馬と違い死者が出たのに少なからずショックを受けているのか、緊張している様子。
ポケモンなる不思議な生物の体にされ、元の体は凌馬のものとなったのがキャルだ。
彼女のタブレットも確認しニャオハのプロフィールを見たが、戦う為の力は持っているらしい。
が、いきなり人間とはかけ離れた生物の体にされれば何かと不便も多い。
こういった者にとっては新たに体を入れ替える施設は有難いだろう。
(けどまさか、魘夢直々に元の体に戻るのを問題無しにするとは思わなかったよ)
キャルのように精神・身体両方が参加させられた者は、魘夢の口振りからして一定数いる。
先程放送でも触れたように、場合によっては元の体を取り戻す状況も起こりかねない。
にも関わらず、一応見逃すと主催者側の口から飛び出したのは意外に感じられた。
滅多に起こり得ない事態だからと楽観視しているからか。
それにしたって凌馬には少しばかり奇妙に思えてならない。
341
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:01:08 ID:Mc.wm5VE0
(わざわざ他人の体に入れ替える手間を挟んだって事は、自分以外の体で殺し合うのがこのゲームの大事な部分だろう?)
だというのに殺し合いの途中で元の体を取り戻しても構わないとは。
主催者の狙いが読めず自然と眉間に皺が寄る。
施設の場所や名前は明かされなかったので、容易く元の体にはなれないと高を括っているだけかもしれないが。
(まぁ取り敢えず、その施設とやらが見付かってもキャルくんには使わせないようにしないとね)
脱出まで待てずに元の体を取り戻すべく、件の施設で勝手な真似をされたら堪ったものじゃない。
折角ゲネシスドライバーが手元にあっても体がニャオハでは宝の持ち腐れ。
こんなキーボードを打つのにも苦労する体にされるなどお断りだ。
ランドソルという未知の場所の情報と、ポケモンというこれまた興味深い生物の体。
それらを持ち合わせるので手頃な協力関係を結んだが、今後は監視も含めて一緒にいた方が良いだろう。
最悪の場合は始末するのにも躊躇は無いが、現段階でそれは早計。
必要ならば殺しも厭わない、逆に言うと必要が無ければわざわざ手を汚す気は無い。
極めて利己的な思考は決して面に出さず、名簿の確認に移る。
運が良い事に沢芽市の人間は誰一人としていない。
余計な悪評やら何やらを吹聴される心配は無く、懸念事項が一つ減った。
(彼もいない、か。オーケーオーケー、むしろいたらこっちとしても困るよ)
自分を殺した張本人、チームバロンのリーダー駆紋戒斗も不参加。
憎たらしいあの男へ借りを返してやりたい気持ちは勿論あるが、殺し合いで返すのは凌馬としても不本意だ。
何せ凌馬が屈辱を晴らしたいのは、「自分のゲネシスドライバーを用いずに進化を果たした戒斗」なのだから。
殺し合いでは戒斗も別人の体になり、オーバーロードにも変身不可能。
オーバーロードの力を失った戒斗を殺した所で、自分の技術の方が上だという証明にはならない。
戒斗への借りは殺し合いから脱出し、主催者達から手に入れた技術を元に更なる強化を施したデュークの力を以て返す。
342
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:02:00 ID:Mc.wm5VE0
『あいつらはいないんだ…』
凌馬の肩に乗り共に名簿を見たキャルも安堵のため息を零す。
美食殿の三人は元より、自分の知るランドソルの住人の名前は無し。
こんな悪趣味極まる催しにユウキ達が巻き込まれてないのは良い事だ。
何で自分だけを参加させたのか、理不尽への憤りはあるが。
『……』
そうだ、美食殿の皆がいないのは良い事に決まっている。
これまで四人で経験してきた冒険とは違う、僅かな間に死者が出るような場所に、あんな能天気でお人好しな連中は似合わない。
分かっていても、不意に心細さを覚えてしまう。
ユウキと、コッコロと、そしてペコリーヌも参加していれば。
勿論心配もしただろうけれど、自分一人ではない事に安心したのかもしれない。
(っ…、最低……)
身勝手な己への嫌悪に苦い味が口内へ広がる。
彼女の様子に気付いてか気付かずか、飄々とした声が掛けられた。
「さてと。お互い知り合いもいないようだし、これからの事を考えようか」
『そう、ね…。どうするのよ?』
「まっ、初めは情報収集に動くべきかな。我々は魘夢やバックに付いているだろう連中の事をほとんど知らない」
それはそうだとキャルも頷く。
魘夢も、その体になっている紅白髪の女も殺し合いで初めて知った存在だ。
殺し合いに乗らず脱出しようにも魘夢達が見逃す訳が無い。
第一脱出とは言うが具体的な方法があるでもない。
その辺りはどうするつもりなのか。
343
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:03:33 ID:Mc.wm5VE0
「そこも含めて足を使っての情報集めさ。私としてはまず…ここを調べておきたい」
画面に地図を映し、凌馬が指を置いた場所には海賊船と表示されていた。
『海から逃げようってこと?でもそれじゃあ…』
「ああ、妨害されるだろうしそもそも船が動くか分からない。ただ情報は拾えるだろう?」
海賊船は操縦可能なのか。
可能だとすれば動かして海からの脱出が出来るのか。
主催者に妨害されるとして、一体どのような方法を用いて来るのか。
物理的な方法で脱出しようとした場合、どうなるかを知っておくだけでも明確な脱出プランの役には立つ。
「それと、私としては接触したい参加者がいる」
『…?さっき知り合いはいないって言ったばっかりじゃないのよ』
「知人はいないよ。でも探したいのは我々二人とも知っている人間だ」
画面を名簿に戻し探したい人物の名に指を当てる。
キャルが目で追った先にあったのは「ウタ」の二文字。
『ウタって…あのエンムとかって奴の!?』
「偶然同じ名前って可能性もあるけどね。ただ本人なら会って話を聞く価値は十分あるよ」
主催者に体を奪われた本人も参加させられているならば、確かに凌馬の言う通りだ。
魘夢や殺し合いに関して何らかの情報を持っている可能性はある。
もし魘夢達のことを何も知らなくても、彼女自身の詳細だけでも聞いておいて損は無い。
例えば参加者の精神を別人の体に入れ替えたのは、ウタが持つ何らかの能力によるものだとしたら?
今は仮定の話に過ぎないが、真実なら主催者側の戦力を詳しく知る事が可能。
大掛かりな殺し合いを始めた主催者がわざわざ手に入れた体だ、単に容姿が優れているだとかのつまらない理由だけでは無い筈。
344
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:04:53 ID:Mc.wm5VE0
「大まかな動きはこんな感じだよ。何か意見はあるかい?」
『んー…ないわ。あんたの方が頭回りそうだし任せる』
言って自分の肩から降りようとしないキャルへ、「タクシーじゃないんだけどね」と呆れつつ移動を開始。
彼らがいるのは街であり、設置された街灯のお陰で明かりには困らない。
暫く進んだ先で、進行方向に異物を発見し足を止めた。
道路へ無造作に投げ捨てられ、ピクリとも動かないソレ。
青褪めるキャルとは正反対に涼しい顔で、されど警戒は怠らず近付く。
『し、死んでるの…?』
「見ての通りだよ」
屈みこんで死体を覗き込む。
大きな特徴も無い、平凡な顔付きの日本人男性。
ついさっきの放送で発表された死者の中に、これと同じ顔があったのを思い出す。
赤く染まった胸以外に外傷は見当たらず、周囲も男の乾いた血以外は綺麗なもの。
状況から察するに背後から心臓を一突きにされ、呆気なく退場となった。
この男の体に入っていた精神は、お世辞にも人が良さそうとは言えない風貌の者だった筈。
堅気でない男だろうと突然の殺し合いに動揺した隙を突かれた、そんなところか。
(まぁ運が悪かったね)
どう殺されたかが分かっても興味は無い。
葛葉紘汰のような人間なら殺害者への怒りを燃やすのだろうけれど、凌馬からしたらそんなものに思考を割くだけ時間の無駄。
支給品も持ち去られている以上、長々と留まる理由もない。
移動を再開すべくサッと立ち上がり、
345
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:05:51 ID:Mc.wm5VE0
『っ!待って、誰か来る…』
キャルの言葉に動きを止めた。
ポケモン故の探知能力の高さ故か、警戒し一点を睨む彼女と同じ方へと視線をやる。
もしもの事態に備えてドライバーは巻いたままだ。
一人と一匹が見つめる先で姿を見せたのは、水色の髪をした少女。
キャルと同じくらいの年頃だろうか。
但し中身まで年相応とは言えないらしい。
こちらを確認するや否や、目を細め警戒を露わにし纏う空気が鋭さを帯びる。
死体の傍で佇む一人と一匹、成程誤解されても文句は言えない状況だ。
「お前達は――」
「おっと、誤解しているようだが先に違うと言わせてもらうよ。我々が来た時には既にこの有様さ」
両手を上げ敵意はないとアピール。
年頃の少女の体だからか、口調も相俟ってどこか小生意気な仕草に見える。
本当に誤解を解く気があるのかとキャルが目で訴えようとし、少女の疑わし気な視線が自分にも向けられているのに気付いた。
「ニャ、ニャン!ニャーンニャ!」
首を横に振ってやっていないと伝える。
人語を話せないのが非常にもどかしいが、態度で相手にも意図は伝わったらしい。
警戒は解かないまま次に話すべき言葉を発し、
カランと、何かが転がった。
くすんだ緑の丸い物体。
卵のようにも見えるソレに全員の視線が集中。
「――――――」
どこから来たのかとか、至極当然の疑問は後回し。
ソレが視界に映った時点で正体を察知、考えるよりも先に体が動き出す。
346
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:06:39 ID:Mc.wm5VE0
「――っ!!」
「変身っ!」
『ロックオン!ソーダ!レモンエナジーアームズ!』
『ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイト!』
青の少女は指輪を光らせ、猫耳の少女はロックシードを装填。
ソウルジェムに内包された魔力を解放し、ヘルヘイムの果実のパワーを己が身に纏う。
与えられた僅かな猶予で互いに変身を完了。
マリンブルーのスカートにマントを靡かせた、美樹さやかの魔法少女姿。
ライドウェアの上からレモンの装甲を展開した、アーマードライダーデューク。
「ニャーッ!?」
それまで凌馬の肩に乗っていたものの、頭上から落ちて来るレモンに慌てて退避。
地面に下りたキャルを飛彩が引っ掴んで跳躍。
同時にデュークも飛び退いた直後、丸い物体…手榴弾が爆発。
とうに命が失われ、抜け殻と化した男の肉片があちらこちらに散らばった。
腿から上を失くした脚が放り投げられた先で、新たに姿を現わす者が一人。
「ちくしょう!しくじった!」
地団太を踏み、苛立たし気に吐き捨てるのは男。
と言っても声の低さから判断出来たのであって、外見だけでは性別も分からない。
装甲服、と言うのだろうか。
四肢と胸部を覆う白に、所々でエメラルドグリーンが鮮やかに光る。
企業のロゴがペイントされた近未来チックな存在は、この場の誰もが初めて見るもの。
ふと、男が手に持った剣へデュークが目を向ける。
刀身には赤い汚れが付着しており、元からあった装飾の類で無いのは誰の目にも明らかだった。
347
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:07:45 ID:Mc.wm5VE0
「一応聞いておくけど、ここにあった死体は君の仕業かい?」
「だったらなんだッ」
特にシラを切る様子も無く、あっさりと殺害を認めた。
仮面の下で嘲笑を浮かべつつ、誤解を解く手間が省けたのは都合が良い。
「とまぁ、真犯人が自ら出てきた訳だし私達は無罪というのが君にも分かっただろう?お互い敵意が無いなら落ち着いて話でも…と行きたいんだけどね」
「奇遇だな、俺もお前達にはその聞きたい事がある。だがまずは…」
「そうだねぇ、まずは邪魔者の掃除が先かな」
サーベルとソニックアロー、各々専用の武器を突き付ける相手は装甲服の男。
偶然にも体と同じ名前、モモンガと名簿に登録された存在は鼻を鳴らして剣を構える。
最初に一突きで殺した男と違い、今度の相手には避けられてしまった。
爆弾を一つ無駄にされたのもあって余計に苛立つ。
それなら直接剣で斬って殺すだけだ、可愛さの欠片も無い体だけど強さは本物なのだから。
「とっととくたばれッ!」
有無を言わさぬ怒声と共に襲い掛かった。
手にした得物はバロンソード、脳人のリーダー格であるソノイの愛剣。
ドンモモタロウとの死闘で幾度も火花を散らした刃が、此度は信念も何も無い身勝手な欲望を乗せ走る。
最初に標的は水色の髪の少女だ。
モモンガからの殺意を受け、迎え撃つべく飛彩も武器を振り被る。
ブレイブではない、魔法少女の能力でどこまで戦えるか。
試運転としても丁度良い機会である。
348
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:08:26 ID:Mc.wm5VE0
「どりゃッ!」
バロンソードとサーベルが激突。
少女の細腕で装甲服の男の猛攻を止める、普通では有り得ない光景がそこにはあった。
防いだままの体勢から受け流し、モモンガがよろけた所へ切っ先を突き立てる。
危うげな状態から左腕で防御、白い装甲に阻まれ血の一滴すら流れない。
身体能力。生身の時とは比べ物にならない、レベル2のブレイブとほぼ同じ動きが可能。
耐久性。多少打たれ強いがブレイブの時より大幅にダウン。回復魔法とやらが使えるらしいが多用するつもりは無い。
武器。ガシャコンブレイカーとは違うが使い慣れた刀剣類(メス)。
ゲームエリア。当然ながら展開されず。エナジーアイテムを使った戦法は不可能。
「はっ!」
さやかの体でやれる事と出来ない事を弾き出し、今度はこちらから踏み込む。
真正面から斬りかかるも防がれる、想定済み。
モモンガが攻撃に移るのを待たず転がるように横へ移動、サーベルを叩きつける。
慌てて防御に動き、危うげながら二撃目も防がれた。
押し返され飛彩の体が後方に倒れる、否、自ら地面に背中から倒れ込みサーベルを向ける。
振り下ろされるバロンソードにも慌てず、サーベルから刀身を射出。
肩を狙った一撃は見事に命中、火花が散らされ痛みに呻く声が飛彩にも届く。
全身を跳ね上げ刀身をキャッチ、グリップ部分へ戻し再び剣の形を取り戻す。
「ッ!?ぬがッ!」
怒り心頭で飛彩を斬り殺さんとするも叶わない。
バロンソードで飛来する光を防ぐ。
一発で終わってはくれずに二発、三発とモモンガを襲うのはエネルギー矢。
忌々しく睨んでもどこ吹く風で矢を射る騎士、デュークの仕業だ。
一対一の正々堂々としたスポーツでないなら援護射撃に出たって文句は言えないだろう。
何より最初に爆弾で皆殺しにしようとしたのはモモンガの方。
卑怯だ何だと言われようと、デュークは聞く耳持たず。
349
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:09:22 ID:Mc.wm5VE0
「ズルいぞッ!」
「君が言って良い台詞じゃないよね?」
モモンガの抗議を鼻で笑い照準を合わせる。
レーザーポインターによりいかなる状況だろうと精度は落ちない。
急所を狙い放った矢はまたしても防がれた。
「どこを見ている」
だが矢に意識を割き過ぎたのは間違いなく失敗だ。
背後から斬られ悲鳴が出るも相手はお構いなしで追撃を仕掛ける。
「こんにゃろッ!」
滅茶苦茶に剣が振り回され攻撃を中断、距離を取って躱す。
動きは技術もへったくれも無いが、それだけに少々読み辛い。
とはいえ大きな問題とも言えず、現に剣の合間を縫ってエネルギー矢が胸部へ命中。
出血代わりに火花が散り、ダメージで強制的に動きもストップ。
発射された次弾こそどうにか防いでも、片方へ気を取られれば当然もう片方が動く。
懐へ潜り込み繰り出す斬り上げ、またもやモモンガの悲鳴が上がった。
ここまでの攻防で飛彩と凌馬、それに巻き込まれないよう離れたキャルも気が付いた。
敵は身体能力こそ高いものの戦闘に関しては素人同然。
バグスターの切除や魔物退治、黄金の果実争奪戦など荒事を経験して来た三人からしたら、モモンガの動きはお粗末同然
モモンガも元の世界では摩訶不思議な体験をしたとはいえ、戦闘行為はゼロと言っていい。
同郷の参加者であるちいかわのように、討伐で日々の生計を立てているでも無い。
武器を手にして戦うという行為自体これが初めて。
肉体の身体能力を用いたごり押しだけでは勝てない現実が、ここで立ちはだかる。
しかし飛彩達の方も決定打を与えたとは言い難い。
モモンガが纏った装甲の恩恵か、ダメージこそあっても戦闘は未だ続行可能。
尤も、このまま我武者羅に剣を振り回したとて飛彩達の有利は変わらないが。
サーベルの突きを防いだ直後にエネルギー矢が飛来。
頭部を掠めるも命中には至らず、モモンガはデューク目掛けて片腕を向けた。
装甲服に搭載された武装、アンカーガンを発射。
常人であれば防ぎようのない勢いであっても、アーマードライダーなら問題無い。
軽く身を捻り躱し、癇癪を起した子供のように地団太を踏むモモンガへエネルギー矢を射る。
350
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:10:16 ID:Mc.wm5VE0
「なっ…」
だがここに来て敵は予想外の動きを見せた。
矢が射抜く正にそのタイミングで、モモンガの姿が消失したのである。
視覚センサー内からロストした敵の発見には数秒と掛らない。
あっちこっちへ視線を向ける必要は無かった。
何故なら消えたと驚愕した直後、モモンガはデュークの目と鼻の先に現れたのだから。
「っ!」
振り下ろされる刃を前に、呑気に弦を引いてはいられない。
ソニックアローのシャフト部分で防御。
アークリムとも呼ばれるこの箇所には、近接戦闘用にブレードが備わっている。
至近距離からの斬撃にも破壊されず受け止め鍔迫り合う。
改めて近くで観察、自分の開発したドライバーの類は装着していない。
(やっぱりアーマードライダーとは関係無い装甲服、ってとこかな?)
「抵抗するなッ、早く倒れろッ」
好き勝手言うモモンガに冷めた目を向け、肩越しに斬りかかる少女が見えた。
背後からの手痛い一撃を食らう、そんな予想は外れる事となる。
「脱出ッ!」
モモンガの姿が消え、今度は飛彩の背後へと現れたではないか。
刺し貫く敵意へ反射的に防御の構えを取り、サーベルへ衝撃が叩き込まれる。
横薙ぎに振るった剣の威力は馬鹿にならない。
構えた体勢のまま飛彩は宙へと吹き飛ばされた。
「おっと、行かせないよ」
追撃に出ようとしたモモンガを止めるのはデューク。
エネルギー矢を射られ対処に回らざるを得ず、飛彩へ振るう筈の剣で矢を霧散。
苛立ちを籠めた唸り声を発し、デュークへと急速接近。
やはり傍目には瞬間移動したとしか思えない。
バロンソードとアークリムで打ち合っている間に飛彩が復帰を果たす。
柄を操作しモモンガ目掛け刀身を射出した。
351
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:11:48 ID:Mc.wm5VE0
「ふんッ、当たるかッ」
これをモモンガ、跳躍して回避。
しかもただ跳んだだけではなく、何と空中を走り始めた。
まるで見えない足場があるかのような動きに、飛彩達も困惑を隠せない。
「あの装甲服の仕掛けか…?」
「知るかッ、何かやってみたら出来たんだッ!」
装甲服に特殊な機能が備わっているのを疑うが、素直に答えは返って来ない。
代わりに頭上からの斬り落としが繰り出される。
それぞれ飛び退き躱し、剣を叩きつけられたアスファルト部分は見るも無残に破壊。
元より油断するつもりは無かったとはいえ、この威力を見せ付けられては自然と身が引き締まる。
モモンガが見せた奇怪な動きの正体。
それは装甲服の機能では無く、肉体の持ち主であるモモンガ中将が身に着けた武術。
名を六式。
極限まで鍛え上げ人体を武器に匹敵させる武術の総称。
主にサイファーポールを始めとした、世界政府の直下機関に所属する者が扱う戦闘術である。
瞬間移動と見紛う動きは六式の一つ、剃。
地面を10回以上蹴り、反動で高速移動を可能とする移動技。
宙を走り回ったのは月歩、剃と同じく六式の移動技だ。
跳躍中に空を蹴り落下を防ぐ、強靭な脚力を用いてあたかも空中へ道があるかの動きを見せる。
肉体に焼き付いた記憶の恩恵故か、モモンガ中将が元々得意とするこれらの技をモモンガも使用できた。
「成程ねぇ」
しかしだ、超人的な能力を我が物とするのはモモンガだけの特権に非ず。
モモンガの動きをデータ解析し、デュークが奇妙な動きの正体に当たりを付ける。
剃を行使し剣を突き出すモモンガ、常人ならば一切の反応を許されずに串刺しの末路。
迫り来る死にデュークは余裕を崩さず、リラックスした姿勢のまま。
切っ先は装甲を掠めもせずに外れ、反対にアークリムで斬り付けられた。
352
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:14:21 ID:Mc.wm5VE0
一度怯めばどうぞ攻撃してくださいと言っているのと同じ。
流れるようにソニックアローを振るい、モモンガの装甲服にダメージが蓄積されていく。
どうにかバロンソードを翳すが、反撃は許されず防戦一方。
剃で距離を取ろうにも足を斬られて強制的に中断。
種の割れた手品などデュークにとっては恐れる必要も無い。
「このッ、痛いんだよッ!」
苦し紛れに跳び上がり、月歩でデュークから逃げようとする。
地上から放たれる矢を防ぎながら安全圏まで離れて行き、
「んなッ!?」
青い魔法少女が立ち塞がった。
真正面からの斬撃を防ぎ、反対に斬り付けるも既に姿はない。
真横、頭上、背後、再び真正面と絶えず移動しサーベルの猛攻を繰り出す。
多方向からの攻撃にとうとうモモンガの足が止まる。
空を蹴らねば月歩は発動せず、撃たれた海鳥のように地面へ真っ逆様だ。
「く、くそッ…」
アスファルトへ叩きつけられたモモンガを尻目に、飛彩は涼しい顔で降り立つ。
魔力で足場を作り空中移動を可能としたが、ぶっつけ本番でも案外上手くいくらしい。
モモンガへサーベルを向けると、刀身部分が連結状に変化し射出。
胴体に絡み付き動きを封じる。
353
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:15:17 ID:Mc.wm5VE0
「ニャアアアアアアア!!」
モモンガが拘束を抜け出すのを待たず、これまで静観していた三人目が仕掛けた。
ニャオハのわざを放ったのはキャルだ。
美食殿の一員として様々な冒険に繰り出し、ユウキ達との連携で魔物を退治した経験を持つ。
協力して敵を倒す場面でどう動くかには慣れており、ここぞというタイミングを見極めるのも今に始まった事ではない。
「ウワッ!!視界が乱れる!!!」
キャルが放ったのはニャオハが最も得意とするわざ、このは。
名前の通り木の葉を相手にぶつけて攻撃する、くさタイプのポケモンにとっては基本的なわざだ。
しかし、ニャオハの使うこのはは他のポケモンより規模が大きい特殊なもの。
威力こそ未熟な面が目立つものの、大質量の木の葉を巻き起こす程。
大量に発生した木の葉はモモンガを覆い隠し、視界を完全に眩ませた。
装甲服のお陰でダメージこそ無いとはいえ、突如発生した緑の壁に怯み隙を晒す羽目となる。
「良い仕事してくれるね、感謝するよ」
『ロックオン!レモンエナジー!』
絶好のチャンスをみすみす捨てる馬鹿でも、今になって攻撃を躊躇するお人好しでも無い。
ソニックアローにエナジーロックシードを装填、必殺のエネルギーを付与。
弦を引き絞り照準を合わせる、木の葉に覆い隠された標的もデュークのカメラアイの前には丸裸同然。
破壊力を倍に高めたエネルギー矢を発射、木の葉の旋風が晴れた時には既に手遅れ。
「のっぎゃあああ〜〜〜〜っ!?」
何とかサーベルを砕いたが、バロンソードの防御だけでは防ぎ切れずに吹き飛ばされる。
これまで以上に散らされる火花、出血だったら致命傷は確実だろう。
地面を転がり呻くモモンガ、装甲服がダメージを抑えたと言っても限度があるのは誰の目にも明らか。
354
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:16:02 ID:Mc.wm5VE0
「この……くらえッ…!」
「ニャッ!?」
それでもモモンガは自分の事に関して諦めと程遠い性根の持ち主。
手にした物を投げ付ける、対象に選ばれたのは運悪くキャルだ。
もしや最初に使った爆弾かと身構えるが、形状はどう見ても別物。
投げた正体は足、爆弾で四肢が千切れた死体の一部を偶然掴んだのである。
悪趣味な奴だと思うも爆弾に比べたら危険度は低い、必然的にキャルの中で警戒度は低下。
それは大きな間違いだったが。
散々な目に遭った死体、この人物は精神側の参加者だったジェイク・マルチネスのような超能力の類は持っていない。
身体能力だって平均的な成人男性の範疇に収まる程度。
大騒動に巻き込まれた際には火事場の馬鹿力を発揮するが、大半の理由は家族愛などの正しい心に突き動かされたから。
シュテルンビルトに混乱を巻き起こした犯罪者のジェイクでは、間違いなく起こせる筈も無い力だ。
ただもう一つ、他の人間にはない身体的特徴が彼にはある。
状況によっては武器にもなり得るその特異な体質を、不幸な事にキャルは身を以て味わう羽目となった。
くるくる宙を舞う足からすっぽ抜けた靴。
モモンガが意図したので無いが偶然にもキャルの顔へ、ぽすりと履き口が当たる。
ある者は全身を真っ青にして震え上がり、ある者は同情の念と同時に成仏を唱えるだろう。
ジェイクが終ぞ見る事の無かった体のプロフィール、男が持つ絶対の兵器。
――野原ひろしは絶望的なまでに足が臭い
「ウ゛ニャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア〜〜〜〜!!!??!」
ダミ声を発し引っ繰り返る。
白目を剥き泡を吹いて悶絶する有様は、可愛らしい容姿のポケモンとは思えない。
まるで毒ガスの被害にでも遭ったかのようだ。
ある意味毒に近いが。
355
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:16:52 ID:Mc.wm5VE0
「っ!どうした…!?」
尋常ではないキャルの様子に飛彩もモモンガから目を離す。
仮面越しとはいえ凌馬もまた、突然の事態には困惑気味。
まさか靴の臭いを嗅いだだけでこうなったとは流石の二人も予想外。
そしてこの状況はモモンガにとっての好都合に他ならない。
自分への注意が逸れたのを見逃さず、ひろしの足とは違う物を投擲。
カランと最初の時と同じ音を発し、地面を転がる物体。
緑色をした卵型の手榴弾、ではない。
縦に長く青いペイントが施されたソレが、数秒の間を置いて炸裂。
爆弾にも負けず劣らずの爆音が響き、飛彩達の視界を閃光が奪い去る。
見える景色が真っ白に染まり、聞こえるのは耳鳴りにも似た音一つ。
視界が鮮明になった時、モモンガの姿は見当たらなかった。
飛彩はふと自分の(というかさやかの)体に目をやり、外傷が一つも無い事に気が付く。
魔法で治療した覚えは無いし、この戦闘で負傷はしていない。
だが爆発を間近で受けたのにも関わらず、僅かな火傷も負っていないのは不自然。
残留する耳鳴りが酷く鬱陶しい、そこへ呆れにも似た声色が届いた。
「光と音だけの玩具だったようだね。全く小賢しい…」
変身を解除した凌馬はキャルの首根っこを掴み肩を竦める。
モモンガは自分達が怯んだ隙にまんまと逃げたのだろう。
無駄に体力だけを消費させて、ロクな収穫も無いとは何とも腹立たしい。
と言っても今回の戦闘データはデュークにしっかりと保存された。
次に戦う機会があってもまず遅れは取らないし、何ならキッチリ仕留める自信だってある。
(ま、今は彼女との話が先だ)
コスプレのような格好になったと思いきや、アーマードライダーにも引けを取らない戦いをしてみせた少女。
肉体の能力は当然として、精神側が持つ情報も詳しく聞いておきたい。
凌馬から見ても中々に戦い慣れているようだし、単なる一般人ではまずない。
356
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:17:40 ID:Mc.wm5VE0
「取り敢えずキャルくんがこの有様だし、中で休みがてら話でもしないかい?私としてもキャルくんの体を酷使して、後で彼女に怒られては困るんだ」
「…良いだろう。あの仮面ライダーの事も含めて聞きたい事は俺の方にもある」
「ふぅん…仮面ライダー、ねぇ」
アーマードライダーではなく仮面ライダー。
つまり自分が開発したライダーシステムとは別の存在を知っている、或いは元々それに変身していたのか。
益々以て興味が湧き、目を光らせる凌馬と並んで飛彩も歩き出す。
なし崩し的に共闘したのもあって、恐らく積極的に他者を襲うつもりがないのは分かった。
だが信用できるかどうかは別問題。
猫耳の少女、話し方からして中身は男なのだろうが性別はこの際置いておき。
どうにも言動や素振りの一つ一つに、自身の知る男の姿がチラついて離れない。
友好的に振舞いながらも見え隠れする冷酷な本性。
恋人が消滅する根本的な原因を作った、神を名乗るあの男と近しいものを感じるのはきっと気のせいでは無い。
(なら野放しにして余計な被害が広まるのはノーサンキューだ)
おかしな真似に出て参加者に危害が及ばないようにする為に、近くで監視しておく。
それにキャルという、今は猫のような生物の体に入った者も心配だ。
彼女の体でよからぬ行為をするつもりなら、見過ごす訳にはいかない。
肩を並べ、されど互いに決して隙は見せず。
少女の体を手に入れた男達のバトルロワイアルが改めてスタートを切った。
【一日目/深夜/F-8 見滝原中学校】
【鏡飛彩@仮面ライダーエグゼイド】
[身体]:美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]基本方針:さやかが果たせなかった“正義の味方”として、この殺し合いは俺が止める!
1:猫耳の少女(凌馬)と話をする。警戒しておいた方が良いだろう。
2:ドクターが他人の命を奪うなど言語道断だ。だが危険人物は切除しなければ被害が増す。……そういう輩は、俺が切る
3:俺の体に入っている精神が善人なら良いが…。
4:装甲服の男(モモンガ)を警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくとも本編終了後。Vシネ以降かどうかは後続の書き手にお任せします
※ソウルジェムは支給品と扱われません。
※まどか☆マギカシリーズ原作と同じく、ソウルジェムは本体と扱い、一定距離を離されたら体を動かせず、破壊されたら死亡するものとします。
※ゲーマドライバーとガシャットは自分の体を与えられた参加者に支給されていると考えています。
【戦極凌馬@仮面ライダー鎧武】
[身体]:キャル@プリンセスコネクト!Re:Dive
[状態]:疲労(中)、キャルを運んでる
[装備]:ゲネシスドライバー+レモンロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品、動物語ヘッドホン@ドラえもん、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:脱出して主催者の力を手に入れる。
1:青髪の少女(飛彩)と話をする。興味深い話が聞けそうだね。
2:生存優先、手段は問わない。
3:キャルと共に行動する。
4:海賊船を調べ海上からの脱出が可能かどうか調べたい。
5:ウタに接触し主催者に関する情報と、彼女自身が持つ力を聞いておく。
6:体を入れ替える施設を見付けてもキャルくんには使わせないようにしよう。
[備考]
仮面ライダー鎧武43話、死亡後からの参戦です。
【キャル@プリンセスコネクト!Re:Dive】
[身体]:ニャオハ@ポケットモンスター(アニメ)
[状態]:精神的疲労(小)、悶絶、凌馬に運ばれてる
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:脱出して元の身体を取り戻す。
0:くしゃい〜……。
1:戦極凌馬と共に行動する。
2:殺し合いなんて乗りたくない……。
[備考]
参戦時期は少なくとも第一部終了後。
357
:
手のひらで転がすMarionette
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:19:09 ID:Mc.wm5VE0
◆◆◆
「ちくしょうッ!失敗だッ!」
地面を踏み付け、何度剣を振り回しても苛立ちは消えやしない。
最初に殺した男のように簡単にはいかず、無駄に体力と爆弾を減らされただけに終わった。
せめてこの体が可愛らしい見た目なら油断を誘えたかもしれないが、現実はとことん厳しい。
モヒカン頭と髭面のいかつい中年が可愛い子ぶったところで、ただ単に気色悪いだけだ。
普段自分が何かと要求を突き付けている鎧さんとはまた違う装甲。
これを着ていなかったら本当に死んでいたかもしれない。
死ぬのは御免だ。
元の体を取り戻すのは勿論、優勝したら願いを叶えられるとあれば何が何でも生き残ってやる。
巻き込まれた当初は元の体に戻るので頭がいっぱいだったけれど、どんな願いも叶えてくれるというのに魅力を感じない方が無理な話。
一応名簿を見たが知り合いが巻き込まれているかは不明。
名前で呼び合う習慣が無い故か、当たり前だが。
仮にいたとしても殺さない理由にはならず、自分の願いの為に容赦なく斬るまで。
「欲しーよなッ、欲しーだろッ、全部全部、何もかも!」
小さくてかわいい体には収まりきらなかった、ドス黒い強欲さは健在。
絶対正義の白コートがこれ程に似合わない生物もいないだろう。
市民を守る海兵とは正反対の、海賊のような邪悪さで次の獲物を探し始めた。
【一日目/深夜/F-8 見滝原中学校】
【モモンガ@なんか小さくてかわいいやつ】
[身体]:モモンガ@ONE PIECE
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:一級剣バロンソード@暴太郎戦隊ドンブラザーズ、ワイルドタイガーのヒーロースーツ@TIGER&BUNNY、手榴弾セット(破片手榴弾×2、閃光手榴弾×2)@バイオハザードRE:2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(ジェイクの支給品)
[思考・状況]
基本方針:優勝して元の体に戻り、願いも叶える
1:参加者を探して殺す。もし知り合いがいても関係無い
[備考]
※参戦時期は食糧枯渇事件の最中
【ワイルドタイガーのヒーロースーツ@TIGER&BUNNY】
鏑木・T・虎徹がワイルドタイガーとしての活動時に装着するパワードスーツ。
両手首にアンカーガンが搭載。
非常に高い耐熱性と防弾性の他に、風船並みの柔軟性も併せ持つ。
クソスーツ(斎藤さん命名)の方ではない。
【手榴弾セット@バイオハザードRE:2】
ゲーム中に手に入る二種類の手榴弾、それぞれ三個ずつのセット。
破片手榴弾は爆発で敵を攻撃し、閃光手榴弾は爆音と強い光で敵を怯ませる。
358
:
◆ytUSxp038U
:2023/09/24(日) 18:20:43 ID:Mc.wm5VE0
投下終了です
あとすみません、モモンガの現在位置の見滝原中学校は誤りでした
359
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 17:52:21 ID:???0
投下します
360
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 17:54:52 ID:???0
結論から言えば、泉研は焦りすぎた。
出会ったばかりで、敵かどうかもわからないメトロン星人やゾーフィに襲い掛かるというのは、一見すると気狂いのように映るだろう。
しかし、研の立場から見れば何らおかしなことはない。
彼にとって、異星人とは攻撃的で危険な存在なのだ。警戒してしまうのも無理はないだろう。
偏見といえばそうなのだが、研は異星人との相手をジュラル星人としかしたことがない。
彼らへの対応について、殲滅と言う過激な方法しか知らないのだ。
ジュラル星人の地球侵略は少なくとも50年前から始まっている。10歳児である研が産まれるずっと昔からだ。
正義とはその時代や与えられた立場によって変わるもの。
一昔前は問題無かった事柄が、時が経ちタブーとなることもあれば、逆に緩和されるなんてことも珍しくない。
現代から見れば、過剰とも思えるチャージマン研の正義であるが、彼の生きた時代ではこれが普通である。
卑劣な手を使い、2074年の地球のさらに500年先の科学力を持つジュラル星人を相手にするうえでは、地球人としても強硬な対処手段をとるほか無い。
長年侵略という恐怖に脅かされた近未来の地球には、そういう文化や考え方が根付いてしまっているし、研もそんな環境の中で育ってきてしまった。
よって、他者を傷つけるかもしれない危険な存在は、即座に倒さねばいけないと普段通りの判断してしまったのだ。
もしも。
彼の隣に誰かが居れば、もう少し冷静で的確な判断も行えたかもしれない。
泉研は時に冷酷な判断を下すが、人の話は聞くし人間的な感情も持っている。
キャロンの言葉を聞いて暴れまわる大仏への攻撃を中止したこともある。
あるいは別世界の泉研が出会ったアポロ星人のリリーのように、異形の姿をしていても他人の身を案じる優しい心を持つ異星人を知っていたのなら、メトロン星人達と一時的な同盟を組むことも選べたのだろう。
かつてアイアン星という共通の敵を前に、ジュラルの魔王とのつかの間の握手を築きあげたように。
「……ガハッ」
だけど、過ぎ去りし時はもう戻らぬ。
血を吐き、地に伏せる。
こうしている間にも命が燃え尽きてゆく。
胃ガンとは自覚症状が少なく、症例が出たときには既に手遅れであるケースが多い。
そのため定期検診により早期発見が重要視される。早期がんあれば90%以上は治療により完治できるのだ。
しかし、自分が無敵だと思いこみ、数年間健康診断を受けずにいた句楽の身体は時すでに手遅れ。
吐血という症状が出てしまっている時点で、すでに末期段階だ。
胃付近の激痛のみならず、出血が続くことによる貧血、倦怠感、吐き気、胸やけといった症状。
加えて胃の周りにある肝臓や腸といった組織への浸潤もしている可能性が高い。
これ以上進行が進むとガン細胞が血液やリンパ液の流れに乗り、脳へと転移し死に至る場合もある。
気付いたときにはもう手遅れ、後悔したところで選択をやりなおすのは不可能。
その苦しさは過去に受けたキチガイレコードすらも上回る。
それが最高医学をもってしても治療不可能な、ウルトラ・スーパー・デラックスガン細胞による地獄の苦しみだった。
「……キャ、ロン……バリ、カン……ママ」
死を目前にして、脳に浮かぶのは家族のこと。
光の無い森の中、身体が自由に動かず、刻一刻とせまる死。
死の恐怖は誰にとっても共通だ。
どれだけ強い装備や肉体を持っていても関係ない。
10歳の子供にとってはあまりにも過酷すぎる状況。
この世界において、研は孤独だった。
「……パパ、たすけて」
それはチャージマン研ではなく、ただの泉研としての弱音。
医者である父がこの場にいるのであれば、治療法はあった。
句楽が生きた時代よりも遥かに医療が発達した近未来の科学ならば、ガン細胞を消滅させるアトスメヒによる光線治療も可能だっただろう。
「ム、死にぞこないか」
361
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 17:56:53 ID:???0
がさり、と音を立てて人影が近づく。
懐中電灯の光りが見えたかと思えば、人と思えぬ7m近い巨漢がシルエットとして映る。
死人のような青白い肌に、アンバランスな体系。
その身体は七武海の一人、ゲッコー・モリア。
精神として宿る者はオマツリ男爵。
「……誰だ……お前は……ジュラル星人の仲間か」
その瓢箪のような細長い外見から、研はジュラルのような異星人だと判断した。
咄嗟にアルファガンを構えんと、立ち上がる。
病に犯された研にとってはそれだけで、体が震え、呼吸が不規則になり、視点が定まらず、真っ直ぐに立てなくなるほどの苦しみだった。
だけどその目にはまだ光が宿っている。
全てのジュラル星人を殲滅させるという、チャージマン研として地球のため、全人類のため戦うと決めた日から変わらないケツイの光だ。
「寝たままで構わん、どのみちすぐに永遠の眠りにつくだろうからな」
影法師(ドッペルマン)を傍らにおき、オマツリ男爵は思案する。
この場で研に出来るのは『殺してゾンビの肉体として確保』するか、『生かしたまま影を切り取り、自分の身体に取り込む』かだ。
どちらを選ぶにせよ相手が瀕死であるというのは、好都合だった。
これまでの一時間で死亡した参加者達は先の放送で顔が知られてしまった。
影を入れてゾンビとして仕立て上げても、死んだはずの参加者を連れているとなれば、どうしても注目を浴びてしまう。
手札は欲しいが、序盤から目立ちたくはない。
オマツリ島の秘密を何十年も隠し、幾多の海賊達を騙してきたほどのしたたかな男爵である、手の内が知られるような事は避けたい。
ここで『殺してゾンビの肉体として確保』してしまうのなら、影を入れたとしても次の放送までは怪しまれにくい。
一方の『生かしたまま影を切り取り、自分の身体に取り込む』だが、これには、残った本体を無力化する必要が出てくる。
影が存在するには、本体が生きていなければいけないというルールがあるためだ。
それに切り取った後の本体は太陽の光を浴びると消滅してしまい、合わせて影も消えてしまう。
その為、切り取った後の本体は生かさず殺さずの状態で日の当たらない場所に封じ込むことが望ましい。
本来のゲッコー・モリアが、抜け出すことが難しく日の当たらない”魔の三角地帯”に本体を流していたように。
(フム、ならばゾンビの実験といくか)
どのみち研の命は長くない。
持って数時間、長くても今日を超えられるかどうかといったところだろう。
影を切り取っても、すぐに死んでしまい無駄になる。
故にここで殺して死体として確保しておくことを選んだ。
「”欠片蝙蝠(ブリックバット)”」
影法師が砕け散り、一粒一粒が蝙蝠へと変化。
研の全身を噛みちぎらんと襲い掛かる。
「クッ、瀕死を……狙う、とは……卑劣な、やつめ」
震える標準を必死に抑えながら、研は駆除するように欠片蝙蝠を一体一体アルファガンで狙撃していく。
さながらジュラル星人に改造された蝶、サンダナパレス・アグリアスを相手にしたときのように。
「無駄なことよ」
どれだけ光線を撃ち込んでも欠片蝙蝠には通じない。
影とは光ある場所に生まれるもの、光線を浴びせたところで攻撃には繋がらない。
光線が当たった瞬間、欠片蝙蝠は飛沫となり受け流し、飛び散らせても即座に集まる。
ならば次はこれだとベルトが回り出す。
362
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 17:57:43 ID:???0
「ビジュームベルト!」
広範囲を纏めて攻撃するベルトの回転。
周囲のジュラル星人を纏めて吹き飛ばす程の竜巻ならば、たちまち欠片蝙蝠も辺りに散らばってゆく。
「ほう、なかなか面白い道具ではないか」
盾となる影が居なくなった隙を付き、なけなしの体力でオマツリ男爵の胸元へと駆ける。
USDマンの拳はビルの壁をも破壊するほどの威力。
モリアほどの巨体であれ、当たれば致命傷となるだろう。
「何っ」
当たったはずの拳はゴムを殴ったようにボンと跳ね返される。
攻撃を受けたのは、先程散らばったはずの影法師だ。
「どこを見ている」
研は知らぬことだが、本体と影法師の位置はいつでも入れ替えられる。
攻撃の当たる直前、散らばった蝙蝠達を影法師へと戻し転移した。
「クッ……お前」
影法師 をどうにかせねば、オマツリ男爵に攻撃が届くことはない。
しかし、研がそれを理解しても対処は不可能。
USDマンの肉体は確かに最強であるが、影法師もまた最強の盾。
ルフィの銃乱打に対して全て反応し、受け止められたほど。
一対一であるならば、これほど厄介なものは無い。
研に備わったどんな武装や超能力も無意味だ。
結果として、何も有効打の無いままに体力だけが減っていく。
「ハァッ、ハァ……」
「どうした?さっきのように惨めにパパにで助けを求めるか?だれも来んだろうがな」
病とは恐ろしいもの。
かのピッコロ大魔王を倒した孫悟空でさえも、心臓病を背負っていた時期は敵に苦戦を強いられたのだ。
どれだけ強い肉体でも、その力を発揮できなければ持ち腐れとなる。
「お前達……ごとき、僕一人で……十分だ」
「とんだ強がりを……!」
ビルを壊せるパンチだろうと当たらなければ意味はない。
即座に影が盾となり、防がれる。
どれだけあがいても、その攻撃がオマツリ男爵に当たることは無い。
「ハァ……ハァ……ゲホッ」
戦いが長引くほど胃ガンによる苦しみは加速度的に増していく。
これまで研が経験してきた戦いはほとんど短期に終わるもの。早いときは1.5秒で終わる事すらもあった。
研は長期戦自体に慣れていない。
まさに最悪の相性である。
ついには手の握力すらも無くなっていき、アルファガンを落とす。
その隙を付き、飛び散った影が研の四方を囲んだ。
「”影箱(ブラックボックス)”」
箱のようになり、バタンと泉研を閉じ込める。
泉研がチャージマン研に変身するには光が必要だ。
どれだけ小さくてもいい。自然の光でなくてもいいし、刹那に消える火花程度の光でも構わない。
逆に言えば光が存在しない所では無力となるのだ。
「アッ!」
黄色い服が消滅し、USDと書かれた句楽健人の服へと戻る。
合わせてアルファガンとリジュームベルトもその機能を止める。
チャージマン研は、コスチュームの「V」の部分に光が当たらなくなると一切の機能が停止してしまう。
ジュラル星人との戦いでは一度も見ることの無かった弱点だが、今この瞬間に発生した。
「余計な手間をとらせおって」
ゲッコー・モリアの戦闘スタイルはゾンビを利用した他力本願であるが、素の戦闘能力も高い。
後の四皇たるカイドウやルフィと渡り合えるほどの力は持っている。
USDマンは世界一のヒーローではあるが、ゲッコー・モリアもまた世界に名を残したヴィランだ。
単純な実力で比較するならば、USDマンにも引けを取らない。
箱を抱えたまま、大きくジャンプ。
そのまま全体重を乗せ、蹴り飛ばすように地面へと研を叩きつける。
「ガ、ガハ……」
363
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 17:58:38 ID:???0
箱が割れ、血を吐き、そのまま研は倒れる。
頭を強く打った際、目立った外傷が無くてもその頭の中にはダメージが入っていることがある。
率直に言えばいわゆる脳震盪だ。
USDマンは無敵ではない。女性に頭部をハンマーで強打された際は、思わず頭を抑えてしまっていた。
外傷は負わなくても、衝撃が身体に全く伝わらない訳では無い。
それを成人女性の何百倍もの力を持つ七武海の手で、地球と言う大質量の物質に勢いよく叩きつけたのならばどうなるか。
USD脳細胞が大きく揺さぶられる。その世界一頑丈なUSD骨細胞の中で。
いくら頑丈な身体といえど、その構造自体は人間と同じ。
酒を飲めば酔うし、腹が減れば好物のラーメンやスシの出前を取らねばいけないし、ガンになれば死ぬ。
人体の共通弱点はUSDマンといえど通用する。
「いい機会だ、試すとしよう」
研に止めを刺さんと、オマツリ男爵は電気が書かれた星型のオブジェを取り出す。
握りしめると、頭の上に青白い炎が沸き上がった。
それは『コピーのもと』と言い、本来は星の戦士に能力を与えるためのものだ。
『プラズマ』の能力を得たオマツリ男爵は、発電した電気を弓矢の形へと変え研へ向けて放つ。
影を取り込むことで相手の能力をコピー出来るゲッコー・モリアの肉体は、その道具と相性が良かった。
「第一の矢、第二の矢」
狙いは研の足。
オマツリ男爵の放つ弓矢は、飛び道具が効かないゴム人間すらも岩に貼り付けに出来るほどの技術だ。
そこにプラズマアローという形無き電気の弓が組み合わさる。
微量ではあるが、人間の身体には電気を流れている。それはUSDマンであっても例外ではない。
ゆえに頑丈な句楽の身体でも、人間である限りはじくことは不可能。
「第三の矢、第四の矢」
次に両腕。四肢は塞がれた。
普段のUSDマンの力ならこの程度は拘束のうちにも入らないだろう。
病により思うような力が出せない今、抜け出すのには時間がかかる。
かと言って時間をかけては命が尽きる。
詰みだ。
手も足も出ず、武装も使えず。口を塞ぐ血の塊は、変装に必要なチャージングGOを叫ぶことを禁止する。
研の敗北は決まった。
「もはや、その格好では何も出来まい」
泉研は確かに強い。変装する前でも殺人ボクサー・タイガーMを倒せるほどの強者だ。
そこにジュラル星人を一撃で殺せる武装と、USDマンの頑丈な身体が上乗せされるのだ。
最強の矛と盾を合わせもつ研は、本来ならばこの殺し合いにおける最強の一角に入っただろう。
その力も発揮できなければ何の意味もない。
ある海賊団の船長は言った、『決してオマツリ男爵に一人で挑んではいけない、それこそが男爵の思うつぼ』だと。
言ってしまえば、泉研の運命は仲間の手を借りずに一人孤独に挑んでしまった時点で決まっていたのだ。
「ほう、句楽健人。『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』か」
転がった研のタブレットを回収し、オマツリ男爵はその肉体のプロフィールを知る。
重火器や核ミサイルすらも通じない丈夫な体に加えて透視、怪力、飛行力といった多彩な能力を持つ。
核ミサイルというのは大海賊時代に生きる男爵には分からないが、頑丈な肉体なのはわかる。
ただしその代償か、末期がんに汚染され余命が非常に短い。
「……ふむ、丁度いいな」
肉体面の強さは先程までの戦いでおおよそわかっている。
病に犯されていようと、ゾンビの肉体とするならば何の問題もない。
すでに死んでいるゾンビであれば、むしろ唯一の弱点を顧みず全力で戦えるため相性は最高に良い。
影を取り込むよりは、死体として確保しておくのが良いだろう。
幸いオマツリ男爵の支給品には運搬用の道具があった。
「しかし、よくこんなものが入ったものだ」
取り出したのは、何人も乗り込めそうな大きな馬車だ。
明らかにデイバッグに入るわけがないサイズだが、悪魔の実という摩訶不思議な能力が知られている大海賊時代。そんなものもあるだろうと流す。
研の遺体は備品の棺桶の中に入れておけばいい。
誰かに怪しまれても、道中で見つけた遺体を元の世界で埋葬してやるつもりだったとでも言えば誤魔化しは効く。
「マ、マ……パ、パッ、キャロ……バリカ……ごめ……」
研の命は風前の灯火。
元々末期だったところに、過度の肉体負荷をかけたのだ、もう燃え尽きてゆく命だ。
急激な血圧の向上により強靭なUSD心臓から送り出される血液は、ボロボロの胃を自ら傷つける刃となる。
出血は収まらず、ポンプのように喉を込み上げる。
喉に絡み、気道を塞ぎ、持ち主を窒息させんとする。
「誰も来んと言ったら来ん。そのまま一人寂しく孤独に死んでいくがよい」
364
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:01:09 ID:???0
仲間などという人同士の繋がりを憎むオマツリ男爵にとって、その姿は愉悦だった。
だから気が緩んでいた。
背後にいた存在にも気付かなかったほどに。
「なんだ、これは」
不意にオマツリ男爵の体が痺れた。合わせて影法師の動きも止まる。
振り返ると、女の姿があった。
真っ暗な森の中のはずなのに、誰もが目を奪われていくほどの輝きを放っている。
「こんばんは!いえ、この身体ならジェルばんは!と言うべきでしょうか?」
まさに『救世主』。正義の味方である研ですらそんな言葉が浮かぶほどの一筋の光。
ハニートラップに引っかかり続けた研ですら、かわいいと思ってしまうほどの美貌。
インターネットの光たる天使がそこにいた。
「何をした、貴様」
「お取り込み中のところ申し訳ありません、少々お話を聞かせていただいても宜しいですか?」
「ロト」
スマートフォンから抜け出し、カメラちゃんはオマツリ男爵の周りを飛びまわる。
身体であるロトムは豊富な補助技と高い素早さを合わせ持つポケモン。
戦いの起点を生み出すのはお手の物だ。
ポケモンにはゲンガーやマーシャドー、ダークライのように、影に干渉出来る種族や『かげうち』のように影を武器とする技もある。
先ほど放った『でんじは』の麻痺効果はそういった相手の行動や技も封じる事がある。
同様にカゲカゲの力も満足に発揮出来なくなる。
「オレちゃんはヨーチューバーのブラックです。ご存じないですか?あのピカキンぐらいには有名ですよ。」
見た目は天使だが、中身は悪魔。
ソフトクリームのバニラのような、こっくりと甘く怪しげな雰囲気。
雰囲気だけでなく匂いすらも感じ取れそうであった。
「知らんな」
「だ、めだ……にげ……て」
「ええ、撮影が終わればそうさせてもらいます」
興が削がれたオマツリ男爵は、怒りのまま拳をカメラちゃんへと振るう。
「忌々しい光だ!」
しかし、カメラちゃんには当たらなかった。
複数人で強者を相手にする戦闘、いわゆるレイドバトルにおいて、攻略の決め手となるのはバフデバフだ。
麻痺の状態異常は行動不能だけでなく、相手の素早さを大幅に下げる効果がある。
そこに『かげぶんしん』を積めば回避は容易となる。
「逃げるのに邪魔ですね。カメラちゃんちょっとこれ持ってもらえます?」
「ロト」
デイバックをカメラちゃんに預け、ブラックは回避に専念。木々を介して走り回る。
その合間にカメラちゃんがオマツリ男爵へと接近し周りを飛び回り電気を放つ。ときに体当たりも織り交ぜ、陽動する。
不意打ちならともかく、小手先の技ではダメージに繋がらない。
「有効打ではないですか。ちょっとこれお借りしますね」
そうしてブラックが回収に向かったのは研が落としたアルファガン。
光がなければ使えないが、エネルギー代わりならばここにある。
「カメラちゃん!」
「ロトッ」
呼びかけと同時にカメラちゃんが戻り、アルファガンへと一旦取り憑き先を変える。
ロトムは機械に宿る事のできるポケモン。
その身体をもって、エネルギーをチャージする。
ブラックは木々を隠れ蓑に攻撃を回避し、タイミングを伺いつつ、オマツリ男爵へと狙いを付ける。
「ディスイズ炎ターテイメントォ!」
365
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:01:57 ID:???0
麻痺効果で影法師による防御が難しいタイミングを見計らい、アルファガンの光線がオマツリ男爵を包みこむ。
銃撃戦はブラックの得意分野だ。悪魔達が群雄割拠する魔界において、魔界フォトナランキング1位の座を取るほどに。
「やっ……たか?」
「死亡フラグを立てないでくださいね」
光線を浴びたオマツリ男爵は所々に焦げ跡が残っているが、まだ立っている。
七武海の一人が、光線一発程度で倒されるなどあり得ない。
「貴様……!」
男爵の身体からはバチバチと火花が上がっている。
最大まで高まったプラズマはシールド状となり身を包んでいる。
当たる直前に電気を纏ったことで光線の効果が弱まっていた。
「いくら小細工を尽くそうが、これで仕舞いだ」
お返しとばかりに、巨体を包んでいたシールドが巨大なエネルギーへと変わる。
ボール状に変え、回避出来ぬほど大きな『プラズマはどうだん』として放った。
回避しきれず、直撃したブラックを焼き尽くし、文字通り黒焦げの死体へと変えた。
「そん、な……!」
これで終わりだと、男爵は笑みを浮かべる。
「それ、シャドウちゃんです」
不意にオマツリ男爵の手足を鎖が縛り付けた。
デビルチェーン。ブラックが魔力で生み出す魔法の鎖である。
「実はオレちゃんも影使うのが得意なんですよね」
森の中から無傷のブラックが現れる。
焼け焦げた死体は、ブラックではなく偽物。
人呼んでシャドウちゃん。ブラックが自らの影から作り出した黒子である。
戦闘の合間に隙を見て入れ替わっていた。
「本当なら1000人ぐらい出せるんですけど、この身体で出せるのはたった"ひとり"が限界ってところです」
あらら困りましたもう使えませんwと、本来のインターネットエンジェルならば使うはずのない草まで生やして楽しげに笑う。
そうしてしばらく笑ったあと、スッと落ち着いた。
アルファガンによる射撃も通じず。シャドウちゃんによる身代わりも失った以上、不利なのはブラックだ。
「オレちゃんの見通しが甘かったみたいですね。君だけでも逃げてください」
「でも君が、モガッ」
ブラックは隠し持っていた仮面のようなものを取り出し、研の顔へと強引に被せた。
「君、一体何を!?」
「どうですか?多少は息がマシになったでょう?」
それは『モンゴルマンのマスク』。
どんな不治の病も完治する終点山に生えた、霊命木という木により作られた仮面。
被ってさえいれば、ゆっくりではあるがどんな病や外傷も回復していく効果がある。
「それを被っていれば一人で逃げるぐらいの力は出るでしょう。ここはオレちゃんが引き受けますから逃げて下さい」
「でも君は!」
「そんなこと言ってる場合ですか!助けでも呼んできてください!ほらもう持ちませんから!急いで」
「……ゴメン」
多少回復した力で、矢による手足の拘束を振り解き、研は背を向けて走り出す。
研にとって、初めての逃亡だった。
逃げた研を横目にブラックはニヤリと笑う。
「話は終わったか」
「ええ」
デビルチェーンを引き千切り、オマツリ男爵が再び動き出す。麻痺も時間経過により効果が切れた。
魔力による撹乱は出来るが、今のブラックは身体能力上はただの人間並みの強さしかない。
七武海を相手にするのは無謀といえる。
しかし、ブラックは勝ち負けで動くような者ではない。
行動原理は鬼ヤバなものが見れるかどうか。
研を助けたのも動画的にそっちのほうがバズると思ったからだ。
「出会ったばかりの男になぜそこまでできる!」
「いやあ、オレちゃん、ファンは大事にするほうなんですよ」
「ファンだと?貴様はそんなもの為に命を賭けられるというのか!」
ブラックは当然のようにヘラヘラと笑う。
そういった人間同士の『結束』を憎むオマツリ男爵にとっては、ブラックがそう笑えるのが妬ましい。
怒りがこみ上げてくる。バラバラにしたくなる。斬り刻みたくなる。
仲間を失ったワシと同じ気持ちを味合わせてやりたいと憤る。
「そうか、ならば代わりに死ね!」
欠片蝙蝠達がオマツリ男爵の足元に集まり、命を刈り取る形状へと変化していく。
「”角刀影(つのトカゲ)”」
頂上決戦にて、巨人族すらも一撃で貫通させた必殺の槍。
単なる人間に向けられては、避けることは不可能。
そんな状況の中、悪魔はカカカと最後まで笑いつづけた。
「では、後をよろしくお願いしま」
366
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:03:46 ID:???0
その言葉が最期まで続くことはない。
エンタメにおいて赤は御法度。そこから先は映せない。
締めのチャンネル登録への呼びかけもないまま打ち切り。
悪魔はこの場所からBANされた。
〇〇〇
研は走り続けた。ただ無様に。
ぜえぜえと息を荒くして。
男爵が見えなくなるまで走ったあたりで立ち止まった。
ヒーロー失格、そんな言葉が頭によぎる。
「女の子一人に任せて逃げるなんて……僕は正義の味方失格だ」
あの場ではそうするしかなかった。
それは分かっている。だけど割り切れない思いだ。
気持ちの切り替えの早い研だが、目の前で命の恩人を犠牲にしてまで平気でいられるほど冷血ではない。
「もうこれ以上、君のような犠牲が出る前に宇宙人どもを倒すから……空の向こうから見ていておくれ」
「かわいそうな悪魔もいたものですね」
「ロト〜」
不意に声を掛けられ、振り向いた。
倒されたはずのブラック達が五体満足でそこにいた。
「そんな!貴方は殺されたんじゃ」
「ちょっとしたトリックですよ」
種明かしをしてしまえば、先ほど倒されたのもブラックが生み出したシャドウちゃんだった。
ロトムが使える技に『トリック』というものがある。
自分と相手の持つアイテムを交換する技だ。
カメラちゃんに一時的にデイバックを預けたのもその布石だ。
オマツリ男爵に体当たりさせた際に、どさくさに紛れてトリックを発動。ブラックとオマツリ男爵のデイバックが入れ替わった。
デイバックの外に出ていたアイテムは奪えなかったが問題ない。
銃撃戦の中、回収したデイバックに残っていた支給品を確認して、ブラックはもしもの時の撤退策を考えた。
木陰に隠れた隙を見て、シャドウちゃんを2体作っておき、一体を身代わりに。
もう一体にアイテムを持たせて避難させておく。
そうして奪った『スーパーワープブロック』を使わせ、角刀影が当たる寸前に場所を入れ替えさせた。
男爵が殺したのは入れ替わったシャドウちゃんだ。
「実はオレちゃん数え間違えてましてねw。『シャドウちゃん、二人いた!?』ってやつですよ」
“ひとり”しか作り出せないと言ったのもブラフ。
殺し合いにおいて、嘘は武器だ。
「巨人族のリトルオーズJr.さんを貫いたとされる角刀影。撮影成功です!ぶいっ」
ついでに手に入れたタブレットからゲッコー・モリアのプロフィールも確認していた。
代償に自分のタブレットを手放すことになったが、こちらのデータは消してあるので身バレする問題はない。
動画のためなら自らピンチを演じ、素材とするのがブラックという悪魔。
全ては鬼ヤバ動画を撮るための演出。
クロスオーバーバトルはバズりやすいのだ。
「まっ、オレちゃん悪魔ですからね」
テレーン♪
|&br()>新しい配信ネタを取得しました&br()&br()ロワはいしんLevel1&br()強マーダーと戦ってみた!&br()&br()|
どこかで小粋の良いSEが鳴った気がした。
「おっと、今は天使でしたか」
こつんと頭を叩き、わざとらしく舌を出してふるまう。
人を馬鹿にしたようなあざとい振る舞いだが、その美貌の前では可愛さが上回る。
確かにオマツリ男爵は何十年も海賊たちを騙してきただろう。
しかし、ブラックは神話の時代から動画クリエイターをやっているのだ。
相手の裏をかき、騙すことに関してはこちらの方が一枚上手だった。
367
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:06:31 ID:???0
「君……いったい何が目的なんだ!」
「何って……撮影ですが?」
研としてはブラックの真意が掴めていない。
手鏡に姿が映ることからブラックが人間に化けたジュラルではないことは分かっている。
それを加味しても、研が今まで出会ったことのないタイプだ。
掴みどころのないブラックに困惑せざるをえない。
ブラックとしても殺し合い自体は反対である。
人間の予想外のおもしろさをまだまだ見ていたいブラックにとって、素材となる人間達が死んでしまうのは困るし、自分が消えるのも困る。
でも、それはそれとして、こうした極限空間での人間の本性には興味が湧いてしまうのがブラックというものだ。
研を助けたのも、そうした人間への好奇心によるものだ。
「助けてくれたのは嬉しいよ。……でも、僕は宇宙人どもを倒しに行かないと」
「ほう、宇宙人ですか……詳しく話を聞かせていただけますか?」
宇宙人という言葉に、ブラックの眼が光る。
ブラックが求めるのは人間の裏側だけではない。
都市伝説やSCPといったオカルトの裏側も好むのだ。
○○○
「なるほど、大体わかりました」
「わかっただろう?ジュラル星人は危険な存在なんだ!早くやつらを倒しに行かないと!」
慌てて駆け出そうとした研だが、すぐさま胸を抑えうずくまる。
「研君、まだ早いですよ」
モンゴルマンマスクの効果で胃ガンの進行はゆっくりと回復傾向にある。
それでも身体の不調が一瞬で治るわけではない。
病み上がりのまま戻っても先程のように返り討ちに会うだけだ。
「それに研君、宇宙人も全員が危険とは限りませんよ」
淡々と、だけど燦々と。語りかけるように呟く。
本来はインターネットの天使が、救世主として人々を照らすであろう言葉。
それが泉研ただ一人に向けられる。
「君だって見てただろう!この会場にはあんな危険なやつらがいるんだぞ!」
「しかし、最初に出会った二人の宇宙人の方達は研君に危害を加えたりしましたか?話を聞いていると、どうにも研君が先に手を出したように思えますが……」
ジュラル星人をただ倒してきた研にとって、その言葉は信じられなかった。
「そんなこと言ってもあいつらは危険な……」
言葉ではそう否定するが、研も内心わかっている。
これまで敵対したジュラル星人の中にも良い者はいた。
作戦と感情の中で揺らいだX-6号。
今もなお、お兄さんのように慕っている師範代、J-7号。
研は同胞に殺された彼らの為に、弔いまで上げたこともある。
出会い方さえ異なれば、仲良くなれたかもしれなかった。
だけど、そのやり方を知らない。これまでは殲滅と言う方法しかやってこなかったのだ。
「まあこうゆう状況ですからね、今度会ったらいきなり攻撃せずちゃんと話を聞いた方がいいですよ。それに普段のようにカメラでのファインダーで確認していない以上は、魘夢さんがジュラル星人だとも決まったわけではありません」
「ロト」
対話は大事だ。
助手であるカメラちゃんであるが当初は敵として排除するはずだった。
興味本位で悪魔側の事情を聞いたからこそ今の関係がある。
「相手の裏側も知っておいたほうが面白いですしね」
368
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:08:07 ID:???0
様々な存在の裏側を長年見てきたブラックだからこそ言える言葉。
学校一の美少女の裏側も。
誰もが信仰する神様の裏側も。
インターネット・エンジェルの裏側も。
宇宙人も未来人も異世界人も超能力者も。
どんな清廉潔白な人物も裏側ではどんな本性を持っているかは分からない。
その逆も然りであり、一見怪しい存在が取材をすると実は善行を行っていたなんてこともあった。
「それに、人間と宇宙人が共に楽しく遊べる日だっていつか来ますから」
ブラックは知っている。というより先日動画にしている。
地球侵略と友情との板挟みの中で、地球を守ろうとした人間とエイリアンのことを。
「ああ、そうそう、名簿は見ましたか?アナタの身体の持ち主である句楽兼人さんはこの世界にも呼ばれていますよ」
「なんだって!?」
急いでタブレットを確認する研。
巻き込まれた身体を返さなくてはと使命感が沸き上がる。
その姿を見て、ブラックはどこかニヤリと笑っている。
「何がおかしい!」
「いやあ先程の放送を思い出しましてね、会場のどこかには身体を元に戻せる装置もあるみたいですよ」
「じゃあ早く探してみんなの身体を元に戻さないと!」
「ほう!研君は身体を返したいと!」
不意にブラックの笑みが深まる。
カメラちゃんはちゃっかりと真正面に向き合い、カメラアングルを調整する。
まさに、二人はその言葉を待っていたかのように。
「本当に句楽さんに『その身体』を返したいんですね?いいでしょう、撮影に協力頂けるならオレちゃんも存分にお手伝いしますよ」
わざとらしく。
煽るように。
もったいぶるように。
それでいて囁くような、かったるい甘い声。
「こうかいしませんね?」
あまりに甘美な悪魔の誘惑。
この誘いに乗れば研は病の苦しみから解放される。
しかし、それは句楽兼人に死の運命を押し付けることに他ならない。
「……それは」
研は地球のため、全人類のために命を懸けて戦う。人間は守るべき存在だ。
ジュラル星人には厳しい研だが、その一方で人間に対してはどれだけ危険な相手でも殺さない主義だ。
放火事件を起こした雄一少年や、人類を裏切ろうとした山村博士のような人物でさえもその身を守る。
正体がジュラル星人だと発覚するまでは、不良少年やタイガー・Mのような危険人物ですら手をかけない。
『いくら悪い奴らでも、人間にアルファガンは打てない』と自分から言っているように、人間相手にはチャージマンとしてもたらされた力を向けないし、アルファガンに備わった麻酔銃モードすらも使わないのが研だ。
過去に研は、ボルガ博士一人の命とレセプションに呼ばれた大勢の科学者達の命を天秤にかけ前者を選んだことがある。
博士の頭の中に仕掛けられた時限装置が作動し、残り数10分に迫った場面。
攻撃してきたジュラル星人に邪魔をされ、博士の頭に仕掛けられたダイナマイトを摘出することができなかった。
結果として、起爆間際に空中で放棄するという、非人道的とも呼ばれかねない手段をやむを得ず取ってしまったことを今も研は悔やんでいる。
あの時の苦渋の決断を思い出し、研の額にたらりと汗が流れた。
「カカカ!すぐに契約(ディール)しろとは言いませんよ。……ですが」
ブラックはしばらく笑ったあと、研に背を向けて。ただ一言呟く。
「後悔なき選択を選んでくださいね」
〇〇〇
(さて、研君はこれからどうするのか)
369
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:11:41 ID:???0
光あるがぎり、闇もまたある。
逆に言えば、どれだけ闇が深くても、光とは消えないもの。
道を踏み外そうとした人間が、自分の失敗を自覚して新たな道へと進む姿も同じだけ見てきたのだ。
(『少年ヒーローが抱える正義の裏側、暴いてみた!』、なんて企画も面白そうしたがこっちは没ですかね)
タブレット状に変形したスマホロトムに映し出されたサムネイルを、慣れた手付きでゴミ箱へ。
自分にもたらされた力で、無抵抗の相手や本来守るべき相手を犠牲にする。そうなってしまえばヒーローではなくヴィランとなる。
もしも、ヒーローたる研が守るべき人間の命すら犠牲にする道を即座に選んでいたら。
それはそれで、ブラックの求める炎タメではあったのだ。
追い詰められた人々の心に不意に潜む邪な心。そんな"人間の本性"を"鬼ヤバ最強動画"としてお届けする。それがブラックチャンネルである。
元の世界であれば、「ディスイズ 炎ターテイメントォ!」の掛け声とともに魔界へと叩き落とす、いつもの流れとなっていたかもしれない。
(……あちらさんも気になりますしね)
句楽兼人のプロフィールを思い出し思案する。
正義の味方、ウルトラ・スーパー・デラックスマン。
突如として超人的な力に目覚め、善良な人、弱い人、困っている人びとを救うため日夜働いているヒーロー。
プロフィールにはそう書かれているが、どうにも胡散臭かった。
(カカカ、善良なヒーロー句楽兼人さん。もし出会う機会があれば、是非ともインタビューさせて頂きたいものです)
370
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:13:17 ID:???0
【一日目/深夜/C-8】
【泉研@チャージマン研!】
[身体]:句楽兼人@ウルトラ・スーパー・デラックスマン
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、吐血、末期の胃癌、両手両足に弓傷、モンゴルマンマスクの効果による回復中
[装備]:モンゴルマンのマスク@キン肉マン、ビジュームベルト@チャージマン研!、アルファガン@チャージマン研!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:ジュラル星人らの殲滅……だったけど
(自分がジュラル星人及び協力者と思った人物を倒す?)
1:しばらく安静にする
2:句楽さんに肉体を返したいけど、でも……
3:痛みが治まったら、あの二人(メトロン星人と鎧の人物)を追う?
4:あの宇宙人(オマツリ男爵)はどうにかしたい
[備考]
※参戦時期は64話「爆発!マンモスコントロールタワー」後です。
※殺し合いの首謀者を【ジュラル星人】・【ジュラルの魔王】と思い込んでいましたが、違う可能性も視野に入れました。
※プロフィールから句楽兼人のことを知りました。
※あらゆる攻撃を受け付けない身体を持っていますが、末期癌を患っています。
※癌の影響で本来のウルトラスーパーデラックスマンほどの力が発揮できなくなっています。
※手鏡に映ることを確認し、ブラックがジュラル星人ではないことを理解しました。
【ブラック@ブラックチャンネル】
[身体]:超絶最かわてんしちゃん@NEEDY GIRL OVERDOSE
[状態]:健康、魔力消費(小?中)
[装備]:ロトム+モンスターボール@ポケットモンスター
[道具]:基本支給品(オマツリ男爵)
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いの闇を暴く
1:撮影開始といきましょうか。
2:面白そうな参加者がいればインタビューする。
3:句楽兼人さん……ちょっと、気になりますね。
4:さて、研君の後悔なき選択を撮影しましょうか。
5:帰ったら身体を元に戻したうえで改めて超てんちゃんに撮影を申し込む。
[備考]
※参戦時期は少なくとも原作漫画版8巻「B.T.」編までは経験しています。
※人間になったことで魔力が普段より抑えられています。時空を超える能力など殺し合いから抜け出す能力は使えません。
※肉体の参戦時期・到達エンディングはお任せします。
※タブレットから肉体のプロフィールが削除されました。
※シャドウちゃんは一度に2体まで作り出せます。ただしブラックの言うことなので実際はもう少し出せる可能性もあります。
[意思持ち支給品状態表]
【カメラちゃん@ブラックチャンネル】
[身体]:ロトム@ポケットモンスター
[状態]:正常、PP消費(小)、撮影中、スマホロトム
[思考・状況]基本方針:ブラックと共に行く
1:撮影する
2:ブラックをサポートする
[備考]
※参戦時期は少なくても原作漫画版8巻「B.T.」編までは経験しています。
※支給されたスマートフォンに入り、スマホロトムになっています。
※登場話〜現在までの光景がカメラちゃん目線で録画されています。
※現在、使えるわざに「でんじは」「かげぶんしん」「トリック」があります。麻痺を与えた場合一定時間経過で自然回復するものとします。
【モンゴルマンのマスク@キン肉マン】
ブラックに支給。
モンゴルマンが付けている木製マスク。
どんな不治の病も完治する終点山に生えている『霊命木』という木により作られている。
脳をえぐられる重体を負ったラーメン……モンゴルマンは、一年間この木から出るガスを吸い続けたことで徐々に回復していき完治した。
また、モンゴルマンはこの木で作ったマスクを被っていることで、山を下りても戦えるようになった。
ただし、効果は覆面を付けている間のみ有効。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
371
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:14:25 ID:???0
「……偽物か」
シャドウちゃんの残骸を蹴り飛ばす。
オマツリ男爵はリリー・カーネーションという魔力が尽きると植物に戻る存在を知っている。
それと同じような能力で、自分に化けさせていたのだろうと察する。
『マ、マ……パ、パッ、キャロ……バリカ……ごめ……』
思い返しても、愛する家族の助けもないまま、孤独に死に向かう研の姿は心を踊らせた。
それなのにせっかくの良い気分が台無しとなった。
今となっては、遺体を手に入れることが出来なかった上に、まんまと踊らされた苛立ちが上回る。
「……それにしても……パパ、パパか」
連鎖して脳裏に過ぎったのは、お茶の間海賊団船長、お茶の間パパの姿。
男爵が妻を殺した後もみっともなく生き続けている無様な男。
肉親だろうと、仲間だろうと、いずれ別れの時は来る。
リリー・カーネーションの生贄としてきた幾多の海賊達と同じだ。
どれだけ大切でも家族だの仲間だのといった関係がいつまでも続かないのは、20年間見てきた光景で分かりきっている。
「下らん」
それが分かっていてもなお、孤独を嫌うのがオマツリ男爵という男であった。
表では海賊たちの仲間割れを愉しみつつも、その『裏側』で彼自身もまた、仲間を失うことを怖がっている。
【一日目/深夜/B-8】
【オマツリ男爵@ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島】
[身体]:ゲッコー・モリア@ONE PIECE
[状態]:ダメージ(小)、コピー能力『プラズマ』
[装備]:馬車@ドラゴンクエストVI (影法師に引かせている)
[道具]:基本支給品(ブラック)、コピーのもと(プラズマ:残り2回)@星のカービィシリーズ
[思考・状況]基本方針:優勝して仲間を生き返らせる。
1:他参加者の影と、死体を集めてゾンビを作る。
2:死体を集めるために、今後の動向を考える
3:ウルトラ・スーパー・デラックスマンの死体が欲しい
[備考]
※参戦時期は少なくとも麦わらの一味の地獄の試練を始めてからです。
そのため映画の時期の麦わらの一味とは面識があります。
※本ロワではカゲカゲの能力で影を入れて作ったゾンビは、精神側の人格が宿ります。
【馬車@ドラゴンクエストVI 幻の大地】
オマツリ男爵に支給。
歴代のレイドック王が乗りこなした由緒正しき馬車。
馬車馬であるファルシオンを仲間にしたあとは主人公達のものになる。
このロワでも馬は付属していないので、自分で押すか代わりの動力を探すしかない。
車内の備品として数人分の棺桶も付属する。
【コピーのもと(プラズマ)@星のカービィシリーズ】
オマツリ男爵に支給。
触ることで青緑に燃える帽子が装備され、プラズマの能力を得ることが出来るオブジェ。
外見はカービィwii以降の円形ケースの中に星が入ったデザイン。
あまりに強いダメージを受けると能力が解除される。
ゲーム上は無限に使えるが、このロワでは3回の使用で消滅するものとします。
北沢徹(カービィ)がこれを使ってヘルパーを生み出せるかはお任せします。
【スーパーワープブロック@スーパーマリオシリーズ(マリオパーティ スーパースターズ)】
オマツリ男爵に支給。
選んだライバルと自分の場所を交換できる。
所持しているアイテムも一緒にワープする。
普通のワープブロックと違い、アイテムショップで買えない地味にレアな道具。
一回きりの使い捨て。
372
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 18:15:15 ID:???0
投下終了です
タイトルは「I'll Face Myself -孤独の唄-」で
373
:
◆N9lPCBhaHQ
:2023/09/28(木) 23:59:48 ID:???0
【コピーのもと(プラズマ)@星のカービィシリーズ】
の説明に以下を追記します。
※作中ではカゲカゲの実がカービィ同様に、能力を取り込める体質のため使用出来たという扱いにしていますが、
それとは関係なしに、他の参加者が使用できるかどうかはお任せします。
374
:
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:05:22 ID:eezvUjc60
形兆、ユーリ予約します
375
:
迷いは禁物だぜ 覚悟完了
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:13:58 ID:eezvUjc60
投下します
376
:
迷いは禁物だぜ 覚悟完了
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:14:22 ID:eezvUjc60
「肉体、精神共に知り合いなし。運がいいやら悪いやら。」
同じ声色。しかし姿形は人を離れたその状態でユーリはいつも通りごちる。
知り合いがいないのは行幸。ザギと言った面倒な相手もいないようではある一方で、
この容姿をいきなり信用してくれる参加者が一人もいないと言う事実の裏返しにもなる。
幸い、玉壺の姿は一度死者として晒された以上『こういう奴はいる』と大体の人は認識している。
人外もいるならば多少は受け入れる姿勢になってくれている人が多いことをなるべく願うしかない。
玉壺としての知り合いは残念ながらプロフィール上からは判断できない為意味をなすことはない。
まあ、いたところで鬼の可能性の方が高いのであてにならないが。
「にしてもどうするか……」
現在位置がどこか分からなかったが、
近くにみすぼらしい家と川の向こうが雪ともあり、
おそらくめぐみんの家であるB-6周辺であるのは分かる。
玉壺を沈めた場所も寒かった気がすることから間違いはない。
となれば刀鍛冶の里は玉壺が襲った場所として遠くない場所にある。
しかし、名前も知らない鬼殺隊が向かう可能性もある場所で、
鬼の姿である自分が向かえば戦闘に発展する恐れはあるだろう。
フレンの事でこじれた結果、ソディアに一度刺された記憶は新しい。
人は状況を考えずに行動に出てしまう。鬼殺隊は危険な鬼を倒す存在だが、
だからと言って話がすぐ通じるかどうかがわからない可能性は否定できない。
(行く当てがなさすぎるのも問題だな。)
海賊船はバンエルティア号と表記されてないことから、
恐らくこれはユーリが想定してる場所でもないと感じた。
自分にとって何かメリットがあるものか、と言われると違うだろう。
となると、今後の為に必要なことが何かを考えると当てはないように見えるが、
一つだけ新しい方針は存在している。
(身体を入れ替える施設だな。)
この身体は間違いなく強い。だが一方で危険なものだ。
龍之介の血は魔術師の家系であるので、ある意味それは稀血の類だ。
だから彼は反応したかもしれないが、説明にそこまで詳細に書かれてない以上、
人の血を見ると我を忘れそうになると言う可能性を孕んでいるとユーリは感じていた。
いずれやらかす可能性は否定できない。だから精神を入れ替えられる場所。
それを探して倒さなければならない敵にこの身体を渡して仕留めておきたい。
もっとも、殺し合いに乗った参加者を生きたままその施設に連れて行くなど、
妄言と言ってもいいようなレベルの面倒くさいことになってることには変わりない。
だからあくまで保険。中には元の身体と精神が両方の参加者もいることだ。
善であればその施設を守る、悪であれば元に戻られる前に破壊しておく。
態々説明すると言う事は、戻ったらとてつもない力を持つ可能性もありうる。
ある意味、玉壺を先に仕留めることができたのは大きな利点ともなれた。
規模は不明としても半天狗と二名だけで里を襲撃できるだけの力量があるなら、
その力は慣れない身体が多い参加者の中でも指折りの強さになりかねない。
「置き手紙ぐらいはしておくか。」
めぐみんは参加者にもいた。
目的地として向かうする可能性はある。
敵に見つかって処分される可能性もあるし、
下手に名前を残しておくと手紙を改変されて変なことになりかねない。
『カスカベ学園へ向かう。手紙の主より』と簡潔な手紙をテーブルに置いておく。
カスカベ学園は単に場所が近いのと、天下統一なんて仰々しい名前もあることだ。
精神の入れ替えに限らず、何かしら有益なものがあっても別におかしくはないとの判断。
同じく遠くない施設なら天城屋旅館もあるが、この恰好で寒地へ行くのは少し怖くもある。
なお、普段と目の位置が明らかに違うので筆跡が少し歪なものになってはいるが、
元々知人がいない以上筆跡の違いはさして問題ないとして考えるのはやめた。
「さて、そろそろ移動でもすっか───」
置き手紙も置いたことで向かうとする。
その瞬間、ふすまの向こうからパラララと銃声が、
ふすまを突き破って蜂の巣を描きながらユーリへ襲う。
「ッ!?」
咄嗟に壺の中に全身を入れることで弾丸は回避。
すぐに顔を出して背後を見れば、壁には小さくも当たれば洒落にならないであろう弾痕が目立つ。
377
:
迷いは禁物だぜ 覚悟完了
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:14:42 ID:eezvUjc60
「肉体、精神共に知り合いなし。運がいいやら悪いやら。」
同じ声色。しかし姿形は人を離れたその状態でユーリはいつも通りごちる。
知り合いがいないのは行幸。ザギと言った面倒な相手もいないようではある一方で、
この容姿をいきなり信用してくれる参加者が一人もいないと言う事実の裏返しにもなる。
幸い、玉壺の姿は一度死者として晒された以上『こういう奴はいる』と大体の人は認識している。
人外もいるならば多少は受け入れる姿勢になってくれている人が多いことをなるべく願うしかない。
玉壺としての知り合いは残念ながらプロフィール上からは判断できない為意味をなすことはない。
まあ、いたところで鬼の可能性の方が高いのであてにならないが。
「にしてもどうするか……」
現在位置がどこか分からなかったが、
近くにみすぼらしい家と川の向こうが雪ともあり、
おそらくめぐみんの家であるB-6周辺であるのは分かる。
玉壺を沈めた場所も寒かった気がすることから間違いはない。
となれば刀鍛冶の里は玉壺が襲った場所として遠くない場所にある。
しかし、名前も知らない鬼殺隊が向かう可能性もある場所で、
鬼の姿である自分が向かえば戦闘に発展する恐れはあるだろう。
フレンの事でこじれた結果、ソディアに一度刺された記憶は新しい。
人は状況を考えずに行動に出てしまう。鬼殺隊は危険な鬼を倒す存在だが、
だからと言って話がすぐ通じるかどうかがわからない可能性は否定できない。
(行く当てがなさすぎるのも問題だな。)
海賊船はバンエルティア号と表記されてないことから、
恐らくこれはユーリが想定してる場所でもないと感じた。
自分にとって何かメリットがあるものか、と言われると違うだろう。
となると、今後の為に必要なことが何かを考えると当てはないように見えるが、
一つだけ新しい方針は存在している。
(身体を入れ替える施設だな。)
この身体は間違いなく強い。だが一方で危険なものだ。
龍之介の血は魔術師の家系であるので、ある意味それは稀血の類だ。
だから彼は反応したかもしれないが、説明にそこまで詳細に書かれてない以上、
人の血を見ると我を忘れそうになると言う可能性を孕んでいるとユーリは感じていた。
いずれやらかす可能性は否定できない。だから精神を入れ替えられる場所。
それを探して倒さなければならない敵にこの身体を渡して仕留めておきたい。
もっとも、殺し合いに乗った参加者を生きたままその施設に連れて行くなど、
妄言と言ってもいいようなレベルの面倒くさいことになってることには変わりない。
だからあくまで保険。中には元の身体と精神が両方の参加者もいることだ。
善であればその施設を守る、悪であれば元に戻られる前に破壊しておく。
態々説明すると言う事は、戻ったらとてつもない力を持つ可能性もありうる。
ある意味、玉壺を先に仕留めることができたのは大きな利点ともなれた。
規模は不明としても半天狗と二名だけで里を襲撃できるだけの力量があるなら、
その力は慣れない身体が多い参加者の中でも指折りの強さになりかねない。
「置き手紙ぐらいはしておくか。」
めぐみんは参加者にもいた。
目的地として向かうする可能性はある。
敵に見つかって処分される可能性もあるし、
下手に名前を残しておくと手紙を改変されて変なことになりかねない。
『カスカベ学園へ向かう。手紙の主より』と簡潔な手紙をテーブルに置いておく。
カスカベ学園は単に場所が近いのと、天下統一なんて仰々しい名前もあることだ。
精神の入れ替えに限らず、何かしら有益なものがあっても別におかしくはないとの判断。
同じく遠くない施設なら天城屋旅館もあるが、この恰好で寒地へ行くのは少し怖くもある。
なお、普段と目の位置が明らかに違うので筆跡が少し歪なものになってはいるが、
元々知人がいない以上筆跡の違いはさして問題ないとして考えるのはやめた。
「さて、そろそろ移動でもすっか───」
置き手紙も置いたことで向かうとする。
その瞬間、ふすまの向こうからパラララと銃声が、
ふすまを突き破って蜂の巣を描きながらユーリへ襲う。
「ッ!?」
咄嗟に壺の中に全身を入れることで弾丸は回避。
すぐに顔を出して背後を見れば、壁には小さくも当たれば洒落にならないであろう弾痕が目立つ。
378
:
迷いは禁物だぜ 覚悟完了
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:16:00 ID:eezvUjc60
(パティが使ってる銃の小型版か! 敵の姿気配は……いや足音がするな。
鬼だから気付けてるのか、わざとなのか分からねえが複数いやがるのか?
目立たないよう電気を付けなかったのが仇になったってところか。姿は見えないしやりづらいな。)
焦って声や姿を出すような真似はしてこない。
となればこれは分かってて殺し合いに乗った参加者だ。
だったら余り容赦する理由はないと言ってもいいだろう。
足音の小さくも複数あるが、余り体格が大きくないのは分かる。
「試しにやってみっか……蛸壺!」
どこからともなく出てくる壺を肩に担ぎ、
巨大な蛸の触手を放つ技、蛸壺地獄。
文字通り壺から蛸の触手で敵を拘束や殴り飛ばす攻撃だ。
(なおユーリは技名を省略する癖がある為これを蛸壺と呼ぶ)
触手は本来ならばより多く出せるものの今の彼には一本だけである。
しかしそれだけで問題なかった。と言うより一本でもやりすぎなのだ。
なんせ制御がうまくできず、ふすまを突き破った後、天井を丸ごと吹き飛ばした。
元々頑丈とは言い難いめぐみんの家は、容易く廃墟に変わってしまう。
「……あー、めぐみんって奴。悪い。俺の想像を越えてたわ。」
一本でこれってどんな化け物火力してんだよ。そう思わずにはいられないユーリ。
実際、時透無一郎が受けた際は複数の触手で家を損壊していたので一本でも大概である。
月明かりで先ほどよりは見やすくなった一方で、破壊による煙が邪魔で周囲は見えない。
どこから来るか警戒していると、空から変な音が聞こえて其方を見上げる。
「ってなんだありゃ!?」
空を飛ぶ乗り物はいくらかあれども
ユーリの世界にヘリコプターやアパッチと言う物はない。
プロペラ音が響く中飛んでくるミサイルに咄嗟にワープするも、
まだ遠くまで行けないユーリには爆風までは抑えられず軽く吹き飛ばされる。
「ッ! ってぇ……」
鬼なんだから大して問題ではない。
とは言え痛いものは痛いのは変わらない。
或いは身体と精神が合わないから痛いだけの可能性もある。
壺が音を立てながらゴロゴロと廊下を転がっていき、
ワープで強引に起き上がることで態勢を整えていく。
何にせよ今は此処から脱出が先決。すぐさままだ屋根が残っている玄関の方へとワープを続けていく。
(銃を撃ってたのとは別だ。ありゃ精霊を召喚とかそういう類なのか?
それとも銃の奴が一人目で飛んでる奴は別の奴とかそういうことか?
クソッ、情報が少なすぎるしまとも小さいんじゃ魚とか蛸じゃ狙えねえ!)
ワープで玄関を飛び越えて、更にワープで距離を稼ぎ一時森の中へと逃げ込む。
里は近いものの、森へ経由する形でカスカベ学園の方へと向かっていく。
「……地雷にかからなかっただと?」
下手人である虹村形兆はめぐみんの家の周囲に地雷を設置していた。
何処へ出ても地雷には引っかかるように、窓や玄関の近く全てに。
だが避けられた。いや、避けたと言うほど相手は認識していなかった。
瞬間移動の類。ザ・ハンドと言う危険物に触れることなく移動ができるスタンドを持つ弟がいる。
しかしあれは瞬間移動とは言うが、空間を削って強引に移動しているに等しいものになる。
地雷を踏んだと言う行為すらしていない。本当の意味での瞬間移動だ。
「……とりあえず参加者の基準は理解できたな。」
379
:
迷いは禁物だぜ 覚悟完了
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:16:22 ID:eezvUjc60
彼の今回の目的は参加者の強さがどの程度かを図る為だ。
八人の死者。想像以上に乗り気な参加者はいるのは間違いない。
だったら積極的に参加者を殺さずとも事態は進展していくだろう。
なので必要なのは参加者がどの程度の強さを持っているのかにある。
スタンドは便利だからと言って油断はしない。制限もされているはず。
結果情報は得られた。スタンドは他人にも見えるし反応もされるらしい。
あれがスタンド使いであれば、と言う注釈は付くが用心深いのが形兆になる。
言うなれば完璧主義者。CDケースをきちっとしまうように順番どおりに事を進めていく。
だから甘く見ない。甘く見たから音石にやられてしまった、とも言えるのだから。
何にせよ基準は低くないと見ていい。支給品はなるべく早く集めて後半に備えたいが、
そううまくはいかないよう敵の強さはかなり厄介な方向を向いてるとみてよかった。
(……)
音石を思い出しながら思い返すは見知ったシリアの名前。
矢でスタンド使いにした由花子、露伴、敵対した仗助、そして───弟の億泰。
別に予想はしていたことだ。いたっておかしくない。だから今更な話だ。
弟がいようといなかろうと、答えは決まっている。親父を殺す為容赦はしない。
だが、できれば自分の手で倒すべきと言う、非合理的な理由がどこかにあった。
それは親父を殺す為の覚悟を決める為か、或いは弟だからこそ越えなければならな五試練か。
弟を庇ったように、非合理的な理由を胸に形兆は歩き出す。
【B-6 めぐみんの家付近/黎明/1日目】
【虹村形兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ナナチ@メイドインアビス
[状態]:健康、複雑な感情
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝し、おやじの魂を解放する
1:支給品を集めて後半に備える。それまでは積極的に動かない。
2:億泰は……
3:東方仗助。あの時みたいな油断はもうしない。
[備考]
※死亡後から参戦です。
※ナナチのプロフィールの経歴欄の情報は、ナナチハウスでのミーティ死亡までのものとします。
※どれだけ優位にあっても油断しなくなってます。
【ユーリ・ローウェル@テイルズオブヴェスペリア】
[身体]:玉壺@鬼滅の刃
[状態]:ダメージ(小)、身体の状態や人物に嫌悪感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:いつも通りにやるとしますか。
1:めぐみん、悪ぃ。家ぶっ壊しちまった。
2:カスカベ学園に向かってみる。
3:行くとこねえんだよなぁ。どうすっか。
4:精神と体を入れ替える施設を探しておきたい
5:あわよくばこの身体をできれば早めに捨てたい。
が、うまくはいかないだろうなぁ。態々言うってことは。
[備考]
※参戦時期は少なくともザギ(タルカロン戦)より前。
またPS3以降のヴェスペリアです。
※肉体の参戦時期は現時点では不明です。
※血鬼術は現時点では殆ど使えないor使っても貧弱です。
(一万滑空粘魚で僅か十体しか飛ばせないとか、そんな感じ)
壺から壺への転移は一応できますが慣れない限り短距離です。
現時点で蛸壺地獄は一本だけですがそれでも大概強いです。
※B-5の川の何処かに玉壺(龍之介)の遺体が沈んでます。
服に石が詰められてるため暫くは浮いてきません。
※B-6めぐみんの家が半壊しています。
380
:
迷いは禁物だぜ 覚悟完了
◆EPyDv9DKJs
:2023/09/29(金) 18:23:39 ID:eezvUjc60
投下終了です
381
:
◆OmtW54r7Tc
:2023/09/30(土) 00:16:01 ID:7rXnyrhM0
ゲリラ投下します
382
:
おやすみなどさせない
◆OmtW54r7Tc
:2023/09/30(土) 00:16:48 ID:7rXnyrhM0
「嘴平伊之助…こんな被り物をしているが、人間なのだな」
自分とは異なる魔王との戦いから敗走した魔王タソガレは、充分距離を取ったことを確認しつつ、茂みでタブレットを見ていた。
そして、そこに書かれた肉体の人物…何故か猪の被り物をしている人間、嘴平伊之助の情報を読んでいた。
どうやら彼は、幼い頃に色々あって本来の親とは引き離され、猪に育てられたという特異な経歴を持った人間らしい。
そして、鬼と呼ばれる怪物を倒す剣士であるとも書かれている。
「猪に扮しているのに剣士なのか…先ほどの戦いで肉弾戦を仕掛けたのは失敗だったな」
あの時はまだ確認していなかった支給品を確認すると、確かに2本の剣があった。
…かなり刃こぼれの酷い剣だが。
「おのれ…吾輩にこんな酷い剣をよこすとは」
それが肉体である伊之助本人の武器とは知らず、タソガレは憤った。
とはいえ、いくら状態の酷い剣であっても、身を守るために必要な武器だ。
先ほど敗れた奴との再戦の為にも、今はこの剣を使いこなすしかないだろう。
タソガレは2本の剣で素振りをはじめ…放送が流れたのはそれからしばらく経っての事であった。
383
:
おやすみなどさせない
◆OmtW54r7Tc
:2023/09/30(土) 00:17:32 ID:7rXnyrhM0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「なっ…あれは…我が城の淫魔ではないか!?」
放送にて呼ばれた死者の中にあった知り合いの姿に、タソガレは驚く。
淫魔…同僚からはさっきゅんと呼ばれる彼女は、淫魔としては半人前であり、魔王軍の中ではかなりの下っ端である。
そんな彼女がまさか自分と共に呼ばれ、しかも死んでいるとは…
「まさか他の者も…!?」
タソガレは慌ててタブレットを開き、新たに追加された名簿を確認する。
隅から隅までじっくりと確認したが…他に知った名はなかった。
十傑衆も、他の配下も、人間の姫も、名簿にその名が記されていなかった。
「まあ玉壺やクラウンイマジンは、吾輩が知らないだけで我が魔王領の者かもしれないが…きりさきピエロという奴は、シザーマジシャン辺りの親戚かもしれない」
一応伊之助のプロフィールを見た後の為、異世界の住人という概念があることは理解しているので、「異形=自分の世界の魔物」とは限らないとは分かっているが。
ともかく名簿を見て分かったことは、少なくともタソガレが知る名は死んださっきゅん以外におらず、参加者の中にタソガレやさっきゅんの肉体を持つ者はいないということだ。
「ともかく、まずは淫魔の子の肉体…小悪魔という者の死体を見つけなければな」
魔王城には、あくましゅうどうしという蘇生の術に長けた幹部がいる。
週1で人質の人間の姫を生き返らせている彼ならば、きっと彼女を蘇らせることができるだろう。
「魘夢…吾輩の仲間に手を出したこと、後悔させてやろう。貴様に安眠などさせてなるものか。吾輩が貴様に見せる夢は…悪夢だ」
タブレットを閉じたタソガレは、早速出発しようとして、ふと気が付いたことがあって手鏡を取り出した。
「なんとなくそのまま被っていたが、こんなものをかぶっていては警戒されてしまうな」
タソガレが猪の被り物を脱ぐと、現れたのは綺麗な顔立ちをした人間の男性の顔であった。
「…意外なほどに美形だな」
とりあえず、見た目で警戒されるということはなさそうな顔立ちだ。
ただ、そこでタソガレはもう一つの問題に気づいた。
「名簿には吾輩の名前は『魔王タソガレ』とあったな…魔王などと名乗っては警戒されるかもしれない」
とはいえ、下手に偽名を名乗ってもバレた時が怖い。
タソガレとだけ名乗っても、名簿にある『魔王』に反応する者がいるだろう。
人質の姫やその母親などの例外はあれど、魔王という肩書を持つものが警戒されるのは避けられない。
「しかたない…人間に倣って、ファーストネームということでごまかすか」
魔族の世界に、ファーストネームという概念は基本的にはない。
故にタソガレは人間の名前を参考にすることにした。
「姫のフルネームは確かオーロラ・栖夜・リース・カイミーン。栖夜が名前だったか…『魔・王・タソ・ガレ』…名前は『王』…不自然か?」
よく考えてみれば姫は王族だからファーストネームが特別なのかもしれない。
名簿の中には「○○・△△」という名前の者がいくらかいたし、シンプルに「魔王」が名前で「タソガレ」がファーストネームということでいいかもしれない。
(魔王の方が名前なのはスヤリス姫の名前の影響で名前は和名、ファーストネームはカタカナという認識を無意識に刷り込まれた為である)
「…結局魔王を名乗ることになってしまうが、なんとか押し切るしかない。淫魔、待っていろ。お前をこのまま永遠に眠らせてなどやるものか。お前が眠るべき場所はこんな場所ではなく…我が魔王城なのだからな」
決意を胸に、魔王は動き出す。
騒がしくも楽しかったあの日々を、取り戻して見せると誓って。
【H-3 森/深夜】
【魔王タソガレ@魔王城でおやすみ】
[身体]:嘴平伊之助@鬼滅の刃
[状態]:ダメージ(大)、全身各所に凍傷
[装備]:伊之助の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、チーターローション(残り2回分)@ドラえもん、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:さっきゅんの魂と肉体を取り戻し、元の世界に持ち帰り蘇生させる
1:さっきゅんの肉体である小悪魔の遺体を探す
2:魔王はそういう名前だということでごまかす
3:ピッコロへの借りは、いずれ返す
【伊之助の日輪刀@鬼滅の刃】
嘴平伊之助の扱う二本の刀。
本人の手により意図的に刃こぼれさせられており、普段温厚な担当の刀鍛冶もそれを見た時は激怒した。
384
:
◆OmtW54r7Tc
:2023/09/30(土) 00:18:12 ID:7rXnyrhM0
投下終了です
385
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/06(金) 00:35:42 ID:iwIphgWU0
北沢徹、ジョン・ジェームズ・ランボー、首領・クリークで予約します。
386
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/06(金) 19:38:03 ID:pT9FBHYQ0
パーズ、リンク予約します。
387
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 00:03:40 ID:AdLHhXqU0
一度議論スレの方に投下します。
388
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/07(土) 00:48:43 ID:HKs/rWjc0
皆様、お疲れ様です。
遅くなりましたが、 ◆N9lPCBhaHQ様、研の初リレーありがとうございました。
研についてコンペ時に、いきなり襲い掛かったり、末期癌等の厳しい条件で書いたので、書いた後に後悔しましたが、あのように綺麗にまとめて下さって、気恥ずかしい思いでした。
また◆5IjCIYVjCc様、
>>312
での感想ありがとうございました。
他の掲示場でもさり気なく入れた玉壺ネタに反応してくれる方がいて、嬉しかったです。
改めてメトロン星人で予約を入れたいと思います。
時間はかかると思いますが、よろしくお願いします。
389
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/07(土) 01:35:42 ID:DwUQRP7o0
専用したらばや別所の方で質問があったので、そこから新たに本ロワにおいて支給禁止の品を追記しておきます。
・トットムジカの楽譜@ONE PIECE FILM RED
390
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 10:22:44 ID:AdLHhXqU0
投下します。
391
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 10:23:09 ID:AdLHhXqU0
パズーの知り合いは、敵1人しかいなかった。
恐らく優勝を企んでいるであろうムスカ大佐に、警戒心が募る。
その反面、シータやドーラがいないことには安堵を覚えた。
彼女らが肉体として利用されていることも無い。
なので、隣にいるパートナーにタブレットを見せることにした。
「なあ。君が知っている人はいたのか?」
リンクは覚束ない手で、画面をスクロールさせる。
言葉を話せぬ獣と言え度、元の魂は人間であるため、文字を読むことは可能だ。
人ならざる手でタッチされた名前は『チャット』。
彼の元パートナーであり、共にタルミナを冒険した仲間だ。
「仲間なのか?」
コクリと首を縦に振る。人の言葉も理解できる以上、はいかいいえで答えられる質問なら返答可能だ。
パズーもそれを分かった上でポケモンになった人間と接している。
「じゃあ、支給品を確認したらチャットを探すことにする。それでいいな?」
コクリと頷いたのを確認すると、パズーは支給品を確認し始めた。
次に出てきたのは、青い色をしたオカリナだった。
形状でそれが楽器だと分かったが、演奏できそうにないし、ましてや護身用にもなりそうにない。
彼は炭鉱の町で働いていた時、朝を告げるトランペットを吹いていたが、それとこれとは別だ。
外れの支給品かと落胆するが、その瞬間何かが風のような速さで動いた。
「うわ!!……なんだ。驚かさないでくれよ。」
電光石火の速さに驚くが、その正体が分かってしまえばさほど恐ろしいものではない。
リンクが凄い勢いで動いただけだ。その口にはオカリナが咥えられている。
「…まさか、元の身体の持ち物だったのか?」
目の前の相手が、人の物を急に強奪するような粗暴な性格の持ち主でない。
出会ってからさほど時間の経っていない関係だが、パズーはリンクをそう思っていた。
尤も、リンクは元の世界では人の部屋のツボを叩き割り、宝箱の中身を盗んでいたのだが、それはナシにしておこう。
何の変哲もないオカリナだと思っていたそれが、リンクにとって馴染みのある物だとすぐに判断した。
392
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 10:23:42 ID:AdLHhXqU0
事実、そのオカリナはリンクの冒険のカギになったアイテム。
ハイラル王家に伝わる秘宝は、ハイラルでもタルミナでも幾度となく彼を助けた。
時を巻き戻し、時を重ね、時を遅め。時には逝けぬ者を浄化し、そして道を切り開いてきた。
オカリナの先端を口に付け、演奏しようとする。
だが、音が鳴るだけで、楽曲にはならない。
それもそのはず。その楽器は人のためにデザインされたものであって、ポケモンが演奏できるようにはなってない。
仕方がなく、パズーにオカリナを返すことにした。
その様子が落ち込んでいるのだと、ポケモンの言葉が分からない彼にも分かる。
「そうだ。さっきエンムって奴が、『ある施設で身体を取り替えることができるかもしれない』って言ってたよな?
そこで人の身体を貰ったらどうだ?」
パズーの言うことが妥当だ。
勿論、素直にポケモンの身体になってくれる人がいるのかという疑問もあるが、今はそれに期待するしかない。
まあ、世界にはポケモンどころか、生き物ですらないなんとかバニアの人形になりたい奴もいるそうだが。
続けてパズーが中から出したのは、一冊の本だった。
武器じゃなかったことに落胆するも、何かに使えるかもしれないと思い、タイトルに注目する。
「ウタの歌?何だこれ、ダジャレじゃないよな……。」
一体なぜこんなものが入っているのか。
疑問を感じながらも、中身を開いてみる。
「新時代……私は最強……逆光……。」
中身は楽譜だった。恐らくウタという者が歌っていた曲なのだろう。
そこで、パズーは思い出した。
ウタというのは、エンムという者の肉体の名前だったと。
同名の別人という可能性も無くは無いが、明らかに何か関わっていると考えるのが妥当だ。
殺し合いをするついでに、自分の元の肉体が作っていた歌でも貰っていけというのか。
あまりに馬鹿馬鹿しくて捨てた所、またもリンクが咥えて拾って来た。
「……必要ってことか?」
彼の表情からして、それを捨ててはならない物だと判断したのだと、パズーにも理解できた。
リンクがウタの楽譜を拾って来たのも、当然の話だ。
彼の冒険の中で、オカリナの奏でる曲は、常に活路を開いて来た。
目覚めのソナタ、ゴロンのララバイ、潮騒のボサノバ、抜け殻のエレジー。そして、月を止めるカギになった誓いの号令。
主催者にムジュラの仮面が関わっている以上、ここでも時のオカリナが、そしてこの楽譜が何等かの役に立つと考えた。
393
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 10:25:09 ID:AdLHhXqU0
そして、パズーがもう1つ思い出したことがあった。
ウタの身体こそは現在エンムが持っているが、その魂はこの殺し合いのどこかにいることを。
誰の肉体の中にいるのかは不明だが、この楽譜、もしかすればこのオカリナとウタを会わせれば何かが起こるかもしれない。
(意外と、探さなければならない人は多いのかもしれないな……)
パズーには誰も知らぬことだが、ウタが求めていた少年の肉体を持った者が、彼女を探している。
この奇妙な縁は、偶然か必然か。
【B-2/早朝/1日目】
【パズー@天空の城ラピュタ】
[身体]:モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE
[状態]:健康
[装備]:ヒスイ地方のモンスターボール@ポケットモンスターシリーズ(Pokémon LEGENDS アルセウス)
[道具]:基本支給品 時のオカリナ@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 ウタの歌の楽譜@ONE PIECE Film RED
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:リンクと共にウタ、チャットを探す
2:この楽譜とオカリナ、主催者は何か関係あるのか?
3:ムスカには警戒。
4:ルフィという海賊は危険な人物じゃなかったことには安心。
[備考]
※本編終了後から参戦とします。
※ルフィの肉体の細かい参戦時期は後続の書き手にお任せしますが、少なくとも新世界編以後のものとします。
※ルフィのプロフィールにウタと幼馴染であるといった情報が書かれてません。
[意思持ち支給品状態表]
【リンク@ゼルダの伝説ムジュラの仮面】
[身体]:コリンク@ポケットモンスターシリーズ(Pokémon LEGENDS アルセウス)
[状態]:健康
[思考・状況]基本方針:ムジュラの仮面を倒すために月に行く
1:オレを出した、目の前にいる人物(パズー)と共に行動
2:オレが知っている、月やムジュラの仮面についての情報を伝えたい
[備考]
※ゲームクリア後からの参戦とします。
※コリンクとしての性別はオスとします。
※技構成などは後続の書き手にお任せします。
【支給品紹介】
【ウタの歌の楽譜集@ONE PIECE Film RED 】
パズーに支給された曲集。『新時代』を始めとする、ウタが作中で歌っていた7つの曲の楽譜が載っている。
なお、作詞作曲はどちらもウタということになっている。
【時のオカリナ@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面】
ハイラル王家に伝わるオカリナ。リンクがハイラル王国を発つ際にゼルダから渡された。
特別な力を秘めており、然るべき場所で然るべき曲を奏でれば、何かが起こる。
名の通り、時間を操ることに――――――――――――――――――ちょっと待てよ!?
ボールの中で、リンクは思考する。
時のオカリナが、『本当にこの場で救いとなる道具なのか』ということだ。
394
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 10:25:57 ID:AdLHhXqU0
仮に自分が人間の肉体を手に入る、あるいは他の方法でオカリナを吹けることになったとする。
そこで『時の唄』を奏でた場合、時間を巻き戻せるのかということだ。
その疑問を裏付ける根拠も、2つある。
当たり前の話だが、ムジュラの仮面を含めてタルミナのほとんどの存在が、時間が巻き戻されている話は知らない。
知っているのは自分とチャット、ついでに幸せのお面屋だけのはずだ。
だが、時の唄1つで殺し合いをリセットすることが出来るのは、いくら何でもムシが良すぎではないか。
エンムあたりがその対策をしていてもおかしくはない。
そして、2つ目の根拠は『時の唄』は、常に時間を巻き戻すために使われていた曲ではないということだ。
確かにリンクがハイラルにいた時から知っていた曲だが、タルミナに来るまではその使い道は違っていた。
ハイラルでは奏でても時間の巻き戻しは出来ず、トライフォースの紋様の付いたブロックを出したり消したりすることしか効力が無い。
恐らくタルミナではないこの場所で、オカリナを奏でても、そのままの力を発揮するのだろうか。
そしてもう一つ。これはリンクにも知らないことがある。
パズーに支給されていたウタの曲集。
確かにその楽譜に記されている歌を彼女が歌うことで、超常的な力を発揮できる。
そこに時のオカリナの力、そして現在の彼女に備わっているリグレットの力が合わされば、音楽の域を超えた何かが作曲されるだろう。
だが、それが必ずしも未来へつながるとは限らない。
何しろ、彼女は未来を作ることを拒絶し、自身が作る楽園の中で生きることが至上の幸福だと考えているからだ。
その意味ではリンクが奏でて来た曲とは、真逆の存在である。
この世界で彼女の歌が、楽曲が作るのは、救いか破滅か。
今言えることは1つ。ジグソーパズルを解いたからと言って、問題がすべて解決するわけではないことだ。
395
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 10:26:07 ID:AdLHhXqU0
投下終了です。
396
:
譜面上のジグソーパズル
◆vV5.jnbCYw
:2023/10/07(土) 15:13:43 ID:AdLHhXqU0
訂正です。
時間帯
早朝→深夜
レス395
誤
恐らくタルミナではないこの場所で、オカリナを奏でても、そのままの力を発揮するのだろうか。
修正後
リンクの推測は当たっていた。
時のオカリナはハイラルとタルミナ。2つの世界で彼を支えてきた。
だが一部の例外を除き、ハイラルで力を発揮した曲は、タルミナでは同じ力を出すことは無い。
そしてこの地は、タルミナでもハイラルでもない。
従って、時の唄を奏でることでどのようなことが起こるのかは不明だが、とりあえず時間を巻き戻すことは不可能である。
397
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/14(土) 00:01:41 ID:ib0PoEDI0
予約にパズー、リンクを追加します。
また、予約を延長しておきます。
398
:
◆ytUSxp038U
:2023/10/14(土) 00:50:47 ID:PGQ2V2XI0
継国縁壱、ピッコロ大魔王、伊地知星歌、虹村億泰、少佐を予約します
399
:
◆ytUSxp038U
:2023/10/19(木) 22:55:22 ID:uPT7tr9E0
すみません、予約を破棄します
400
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/20(金) 21:22:46 ID:nHBh0F9E0
間もなく締め切りの時間ですが、予約していたメトロン星人の延長をお願いします。
一キャラだけですが、時間がかかって申し訳ありません。
401
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:15:47 ID:vjURQFR.0
投下します。
402
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:17:46 ID:vjURQFR.0
時刻は、午前1時になる少し前のこと。
それは、雪に囲まれた村の中の道でのことだった。
雪が積もるその道路の上に、ポツンと一人の少女の遺体が横たわっていた。
遺体の胸から流れ出る血が、下にある白い雪を赤く染めていた。
その遺体に、一つの影が近付いてきていた。
それは、人の姿をしていなかった。
ピンク色の球体から、丸みを帯びた手足が生えたかのような存在だった。
その姿は、カービィという星の戦士のもの。
そして、その中に精神を移されたのは、北沢徹という男だ。
徹は、雪の上にある少女の遺体の側に来て、状態を確かめる。
そしてそれが確かに死んでいること、吸血鬼等ではなく人間のものであることを確認する。
(誰かは知らないが、可哀想に…)
遺体の状態は、とても酷いものであった。
胸には何か巨大な刃で刺されたような痕があり、そこで血を流す大きな傷が痛々しく見える。
顔はまるで何か恐ろしいものでも見たかのような表情で固まっていた。
自分の知る、吸血鬼やアマルガム等にでも出くわしたのだろうかとも感じた。
本来ならばとても可愛らしい顔をした少女だったろうに、それが大きく歪められたかのような感じがした。
もしかしたら、アイドルとかをやっていたかもしれない。
もちろん、ここにおいてはその中身は別人になっていただろうが、それでも憤りを感じずにはいられない。
支給品はどうもこの状況を作り出した下手人が持ち去ったらしく、プロフィールで身体としては何者のものかを確認することはできなかった。
また、この遺体はこのままここで放ってはおけないとも感じた。
弔いもせずに放置してしまうのはより可哀想だ。
だが、今の徹では身体の小ささでは、運ぼうとしてもどうしても引きずる形になる。
何でも入るらしきデイパックの中に死体を入れられないかとも思ったが、それは何故かできなかった。
入れようとしても、見えない何かに阻まれているかのようになった。
引きずる以外に手段があるとすれば、今の身体に備わった力である『吸い込み』により、口の中に入れて運ぶという方法も思い付く。
だが、人間の死体を口の中に入れて運ぶだなんて、流石にどうかとも思う。
人道的にも、衛生的にも、問題だらけだ。
どうしたものか、やはり引きずるしかないのかなんてことを考えていた。
そんな時だった。
「おい、そこの…」
『♪〜』
北沢徹の目の前に新たな人物が現れた。
それと同時に、二人の持つタブレットからアラームが鳴り響いた。
◆
ランボーがそいつを見つけた時、彼はまたもや自分は幻覚を見てるのかと感じた。
ピンク色の球体の体を持つ謎の生物、それも大きさは僅か子供の足くらいのもの。
それが、この殺し合いの参加者の資格とも言えるデイパックを背負っている。
これを発見し、一目見ただけでは自分の目と頭の方を疑った。
あんな生物があり得るのか、内臓とかは一体どうなっているんだ、そんなことも思った。
ランボーが相手を見つけた時、相手は既に死体の側にいた。
一瞬あのピンク玉がやったのかとも思ったが、よく見てみれば武器も持ってないし返り血を浴びているわけではもなく、やっていることもただ死体の状態を調べているだけのように見えた。
よくよく考えてみれば、この殺し合いの環境においては相手の見た目なんて内面の判断材料にはならない。
少し様子を伺った感じだと、相手もこの場所にはたどり着いたばかりであり、死体を作り出した犯人に関する情報が何か無いかと探っているようだった。
これだけでは相手が殺し合いに乗っているかどうかの判断はつかないが、少なくとも完全に無視する訳にもいかない。
とりあえず、一応は警戒しておきながらランボーは接触を試みた。
そんなタイミングで、主催陣営からの連絡が始まった。
相手もまた、ランボーの存在に気付くこたになった。
結論から言えば、ランボーはそこまで警戒する必要はなかったのだ。
◇
放送が始まった時、ピンク玉…北沢徹とはとりあえず互いに殺し合いには乗っていないことの意思表示を軽くしておいた。
お互い、疑問に思っていること等について詳しい話はまた後でということになった。
そして二人は、一応互いに警戒心は少し残したまま、放送に集中した。
放送で出た最重要な情報、この一時間の内に八人の死者が出たことについては二人とも当然良い思いは全くしない。
そもそもで言えば、犠牲者の一人の死体が目の前にある。
ランボーとしても、こんな年若い少女が犠牲になることは許容できることではない。
服装からして、本来は学生だったように見える。
この肉体の少女…島村卯月は、戦場とは本来は縁は無かっただろう。
本人の精神の行方は不明だが、肉体だけでも殺されたのは確かだ。
それは、本来の平和な人生を壊されたということだ。
403
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:19:21 ID:vjURQFR.0
なお、先ほどの放送で見せられた写真においては、その中身は一般人には明らかに見えない人物だった。
あんな黒ずくめの服装をした上に本来の顔が分かりにくくなるサングラス、どこぞのマフィアの人間かと感じた。
北沢徹も、その黒ずくめの男…ウォッカのことは見た目からは反社会的な人物かと思った。
まあだからと言って、死んでよかったと言う訳にもいかない。
見た目が怪しすぎても、絶対に悪人だったとも限らないからだ。
※悪人なら死んで良かったという話ではない。
まあそのことについてさらに言えば、八人の死者達の中には明らかに人間ではない者もいた。
北沢徹からしてみれば、玉壺と呼ばれた者などは吸血鬼共の仲間にしか見えなかった。
まあだからと言って、彼らから殺し合いに対する怒りが消えるわけではない。
もう一般人が巻き込まれているだろうこの状況は、許すわけにはいかないのだ。
◇
「…俺のところは幸い、家族や知人が巻き込まれていることはなかった。そっちはどうだ?」
「………俺の直接の知り合いはいない。だが、俺の身体の嬢ちゃんの精神が参加者にいるらしい」
ランボーと徹は放送後、それぞれ名簿を確認した。
徹の方は、彼が危惧したような自身の家族が巻き込まれている自体にはなっていなかった。
だが、ランボーとしては心穏やかにはいられなくなるような情報があった。
ランボーは自分の今の身体であるポプ子の精神も、この殺し合いの場にいることを把握した。
ランボーはまだタブレットの扱いはたどたどしかったが、自分よりはこのような感じの機械類に慣れている徹と一緒に使いながら確認した。
「……俺は、この身体も返してやりたいと考えている」
「ああ、ならばそのためにさっきの放送で言ってた施設とやらも探す必要があるな」
「…あいつらの言う通りになるのは気に食わないがな」
プロフィールにはポプ子はどこにでもいる14歳の女子中学生とあった。
そんな少女本人がまさかこの異常な戦場にいるとは思ってなかった。
主催陣営に対する怒りの感情が増える同時に、ここにいるだろう彼女のことを助けてやりたいとも感じる。
そのためにもまず、彼女の状態を元に戻してやる必要があるかもしれないという考えが浮かぶ。
先ほど発表された死亡者の中には、元々人間だったけれども化物の身体で殺された者もいたようだった。
ポプ子もまた、そんな人外の身体になっている可能性は否定できない。
現に、ランボーの目の前にいる人物も元は人間だったようだが今は違う。
ごく普通の少女が似たような状況になったら、精神的にかなりキツいことになるだろう。
絶対に人外になっていると決まったわけではないが、何にせよ本来の身体があるのならば本人もきっと戻りたいと思うはずだろう。
だから、ランボーはポプ子にこの身体を返してやりたいと思った。
この時は、どんなものだろうが自分が今のポプ子の身体を押し付けられても構わないと、感じていた。
◇
その後、ランボーと北沢徹は互いに名簿に直接の知り合いの名前は精神・身体共に存在しないことを確認した。
そして、二人は自己紹介を軽く行った。
当然、そこでお互いの持つ情報の齟齬に気付くことになる。
「吸血鬼の支配だと…?未来の日本(ジャパン)がそんなことに…?」
「ああ…そしてそれに対し国連軍は、吸血鬼を日本から出さないために、大量のミサイルで攻撃してきた。俺は本来、そのミサイルによって死んだはずだった」
「……っ」
「だからと言って、アメリカ人のあんたを恨む気はこれっぽっちもないさ。時代も違うから無関係だし、それに国連軍もあくまで人類のためにやったことだからな」
目の前の相手が実は死人だということにも驚かされたが、その他にもとんでもない話を聞かされた。
自国とは遠く離れた外国のこととはいえ、未来世界の惨状にランボーは絶句する。
まず第一に吸血鬼なんてものが存在していること事態が簡単には信じられない。
話を聞く限りだと、自分も経験したベトナム戦争の戦場並に酷い場所に日本はなってしまったようだった。
そして、未来の日本がそんな状況らしいという事は、今の自身の身体のポプ子も同じ場所から来たのではないかという考えも浮かぶ。
アジア系っぽいポプ子は、日本人である可能性もある。
ランボーはてっきり、ポプ子は何の変哲もない平和な学生生活を送っていたと思っていたが、場合によってはそうではないという可能性があるのではないかと思えてきた。
けれども、実際のところは直接会ってみないと分からない。
念のため、会えた時の心構えを変えておいた方が良いかもしれないことになっただけだ。
まだ簡易的に聞いただけだが、北沢徹の境遇については複雑な気持ちもある。
だが、今はそればかりを気にするわけにもいかない。
何故なら無視してはいけないようなものが、他に目の前にあるからだ。
404
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:20:32 ID:vjURQFR.0
◇
「おい、キタザワと言ったか…お前、こいつには気づいたか?」
「ああ、分かっている。どこかに続いているな…。足跡の大きさからして、犯人も女性の肉体でいるのか?」
ランボーは死体の横の雪の上を懐中電灯で照らしながら指差す。
そこには、ピンク色の水滴が落ちたかのような痕跡があった。
その跡は、点々と死体から離れていくように続いていっていた。
また、その隣には足跡も残っていた。
大きさは子供のものよりは大きく、大人の男性のものよりは細めに見える。
そのため、大人の女性の肉体のものではないかと推測した。
「こいつを辿っていけば、犯人の所に行けるかもしれん。俺は行くつもりだが、お前はどうする?」
「もちろん、俺も行くさ。この人を殺した相手を、どうにかしないといけない」
色付きの水滴と足の跡は、ウォッカを殺害した下手人が残したものと考えられる。
何故にこんなものが残っているのかは二人には分からない。
もしかしたら、発見した者をどこかに誘き寄せるための罠として残したのかもしれない。
それでも、そう簡単に無視はできなかった。
死体の表情から、犯人は何か恐ろしいものかもしれないという考えも浮かぶ。
だからと言って、怖じ気づいてはいられない。
そもそも、ここにいる二人はこれっぽちもそんな感情は抱いていない。
他人(人)の身体を傷付けてしまうのではという心配は無いわけではないが、そういったことを一々気にして状況を悪化させたら本末転倒だ。
戦う覚悟は、既にできている。
ランボーと徹は一旦自分たちについての話を切り上げ、発見した死体を作り出した犯人を探すために移動を開始した。
死体自体は、残念ながら一度置いていくことになった。
ランボーの身体もどちらかといえば子供なこともあり、協力しても運ぶのは余計な時間がかかると判断された。
それよりは、まだ遠くには行ってないだろう犯人をどうにかする方を優先するべきだという話になった。
(またいつかここに戻って、ちゃんと弔おう)
徹はそんなことを考えながら、ランボーと共に雪道の上を歩いていった。
◆
やがて二人は、ある建物の前にまで辿り着いた。
それは、木造のホテルだった。
入口の上には「ルテホ界世幌札」と、看板に書かれていた。
こうなっているのは、この建物が日本の明治時代のもので、右から左に向かって読む形で書かれているためだ。
この建物は、地図上においては「札幌世界ホテル」と表示されているものだった。
ピンク色の水滴の跡は、そのホテルの入口にまで続いていた。
犯人は、この建物内に入っている可能性が高そうだった。
「……準備はいいか?」
「…いや、ちょっと待ってくれ。試したいことがある」
ランボーが突入の合図を出そうとした時、徹は一旦それを止めた。
そして、自身のデイパックをひっくり返し、中からあるものを出した。
出てきたのは、巨大な氷のキューブだった。
「…デイパックにはこんなものまで入るのか。これをどうするつもりだ?」
「こうするんだ」
徹はカービィとしての身体で大きく口を開き、『すいこみ』をした。
氷は口の中に吸い込まれ、徹はそれを頬張った後に飲み込んだ。
すると、徹の姿に変化が現れる。
まず、ピンクの体色が青・水色に変わる。
そして、頭にはクリスタルのような形の氷が付いた帽子が被らされる。
これぞ、カービィが氷の力をコピーした姿、アイスカービィだ。
「良かった、上手くいったか。これで俺は、氷の力を使えるようになったらしい」
徹は念のため、カービィが持つコピー能力を使用しておこうと考えた。
そのままでもカービィはある程度戦えるらしいが、まあやっておいて損は無いだろうと判断した。
「この状態は俺がダメージを受けると解除されるらしい。だが、さっきの氷はあと二つある。必要な時はそれを使う」
徹に支給された氷は合計三つだった。
実は、この氷は本当はかなり不可解な品でもあった。
今回はカービィのコピー能力に利用させてもらったこの氷だが、本来の効果は「持った人の髪を水色に変える」らしいのだ。
しかも持とうとすると何故だが、手のひらサイズに小さくなるらしい。
徹としては正直なところ、この辺りは説明書を読んでもよく分からなかった。
氷は元々ある列車の中にあったものらしいが、何でこんな効果のあるものになったのかは分からない。
けれども氷であることは確かなようなので、とりあえずその性質をコピーできるかどうかは試してみようと考えた。
その結果は一応、成功のようだった。
カービィは本来、特殊な敵対生命体を飲み込むことや、「コピーのもと」などと呼ばれる物体を使うことでコピー能力を発動する。
だがここにあった変な氷も一応コピーには使えるもののようだった。
405
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:21:55 ID:vjURQFR.0
「よし、それじゃあ今度こそ入ろう」
「ああ…気を引き締めておけ。あと、もしやばそうならすぐに撤退するぞ」
「ああ、分かった」
徹がアイスカービィへの変身を完了した後、二人は再びホテルの出入口扉に向き直る。
そして、緊張感を持ちながらその扉を開けて中に入っていった。
◆
ホテルの中に入った後も、追跡するのは容易だった。
ピンク色の水滴の跡は、室内でも続いていた。
ランボーと徹はその水滴の跡も辿っていく。
「……何だかここ、妙に入り組んでいないか?」
「…確かに、そんな感じがするな。下手すれば迷いそうだ」
ホテル内の構造に二人は少し違和感を抱く。
ここは一応ホテルであるはずなのに、客に何か優しくないような造りをしているように感じた。
違和感を抱きながらも、二人は水滴の跡を追っていった。
そしてやがて、一つの部屋の前にまで辿り着いた。
その部屋にはドアが付けられていた。
しかしそれは、半開きの状態にあった。
「……おい、隠れながら確認するぞ」
「分かった」
二人はドアに身を潜めながら、部屋の中を確認しようとした。
おそらくこの中にいるであろう、殺人者に見つからずに相手の姿・状態を把握するために。
そして確かに、二人が探していた人物はそこにいた。
「「…………!?!?」
ランボーと徹の二人は、前にそいつを見たウォッカと同じく、それを見た瞬間思考が停止した。
そして二人にとっては知らぬことではあったが、それはウォッカが目撃した時よりは少しだけ前と変わっている所もあった。
ほとんど布を巻き付けているだけな、異常で卑猥過ぎる服を着た豊満な胸の女だ。
丸出しの乳房には、搾乳機のようなものが取り付けられている。
背中からは、二対で計四本の人造アームが出現している。
生身のものを含めれば、計六本とまさに阿修羅を彷彿とさせる数の腕を持つこととなる。
それらの内、生身の方の腕の一つには、血の付いた大剣が握られている。
これはランボーと徹は知らないことだが、以前はその剣は複数の腕でようやく持てたはずの剣だった。
それを今は、片手で軽々と持っていた。
もう片方の生身の腕には、これまた別な剣が握られていた。
それは何故だか、「♀」のマークを剣の形にしたような代物だった。
背中にある人造アームには、一つにはピンク色の液体の入った哺乳瓶が、それと対になる位置のものにはまるでタイヤのようなものが付いた白い銃が握られていた。
残る二本のアームには、どちらも黒い布団叩きが握られていた。
背中側からは、アームの他にも何かのチューブが二本繋がっていた。
一本は、先述の哺乳瓶に繋がっている。
もう一本は、重力に従って垂れ下がっており、その先には割れた哺乳瓶のようなものに繋がっている。
その割れた瓶からは、ピンク色の水滴がポタポタと落ちている。
ランボーと徹をここまで導いた水滴の跡は、それによってできたもののようだった。
女の目からは、数刻前と同じく血涙が流れている。
だが、それだけではない。
目の周りには、ひび割れのような線も走っていた。
そして、女のほぼ素肌を晒しているその肉体には、大量の血が付着していた。
女の肉体に傷は見当たらない。
その血はどう見ても、返り血としか思えないようなものだった。
それが、この場における首領・クリークの今の姿であった。
406
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:26:18 ID:vjURQFR.0
◇
「………あれは絶対ヤバい、ここを離れるぞ!」
「あ、ああ…そうだ。ここは撤た
「! ア゛ア゛アアアアァァッ!!!」
ランボーと徹の意思が一致した瞬間、クリークが叫んだ。
二人は小声で会話していたが、動揺したことにより隠していた気配がブレてしまった。
それを、クリークに気付かれてしまった。
「俺はあぁ!!最強だあああァぁ!!!」
クリークは部屋の中で、左手に持った♀型の剣を出入口の方に向けて振るった。
すると、その剣の刃が急速に伸びていった。
「なっ!?『ドス』ガハッ……!!」
刃は、ただ真っ直ぐに伸びただけではなかった。
ドアの近くに差し掛かった時、刃が曲がった。
それにより半開きのドアから出た刃は、普通なら当たるはずのない、外側のドアに沿ってに身を潜めていたランボーに当たった。
この攻撃は、流石のランボーも予測することはできなかった。
不意を打たれる形になった。
曲がった刃は、ランボーの喉の辺りに突き刺さった。
その後、刃は収縮して元の場所・長さに戻っていった。
「お、おい!大丈夫か!?」
「ゲホッ、ゲホッ!あ、ああ…問題な…………は?」
鋭い刃で貫かれたはずにも関わらず、ランボーの喉から血が流れることはなかった。
傷一つも、ついていなかった。
けれども、完全に無事というわけでもなかった。
自分の身体に起きた変化に、ランボーは気付いた。
そしてそれは、徹にもすぐに分かるものでもあった。
「ラ、ランボー…その声は…」
「……嘘だろ」
ランボーの声は、ポプ子の肉体の少女の声から、男の声に変わっていた。
もう一度発声してみて、それが事実であることを再確認してしまった。
具体的に言えば、CV:花○香菜から、CV:山○勝平に変わってしまっていた。
変化が起きているのは、声だけではなかった。
本来は女性には無いはずの喉仏が出現していた。
股間からも、『アレ』が生えていた。
ポプ子としての肉体は、男体化してしまっていた。
今、ランボーに突き刺ささった剣は『魔剣バルムンク』。
『ニーベルンゲンの歌』に登場する伝説上の剣と名は同じだが、一応は別物だ。
この剣は、斬りつけた者に肉体を男にする呪いをかけてしまう。
しかも、これは剣であるはずなのにとても柔軟で、まるでゴムのように伸び縮みもする。
ランボーはそれにより不意を打たれ、呪いにかかってしまった。
なお、ここにおいては見た目の変化はほとんどなかった。
ずんぐりむっくりな、そのどこかムカつきを感じるポプ子としての外観に変わりはなかった。
407
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:29:04 ID:vjURQFR.0
そして、二人はここで、このことに一々驚いている暇もなかった。
「オオオオオオオォォォッ!!!」
クリークが部屋の中からずぎゅんどぎゅんと弾丸のように走り出す。
「こっちだ!」
「クッ!」
混沌としてきたこの状況の中、まだ混乱はしているもののランボーと徹は来た道筋を戻ろうとする。
ここで、徹はランボーの手をとってそれを引きながら進み始める。
アイスカービィの力で、廊下の上に薄い氷を張りながら滑走する。
これにより、普通に走るよりも少し速い速度で移動できるようになった。
「ガアアアアアァッ!!!」
二人が身を潜めていたドアから離れた直後、そこにクリークが突っ込んでくる。
持っていた大剣が、ほんの一瞬前まで二人のいた場所を破壊しながら通り過ぎる。
そしてクリーク自身は走り出す時に急につけた勢いが余って、部屋から出た後にちゃんと曲がり切れず、向こう側にあった壁に激突する。
壁に穴を開け、クリークはその中に転がり込んだ。
「俺ニ逆らウナアあアァァ!!!」
穴の中に倒れ込んだ状態になっても、クリークの攻撃は止まらない。
人造アームの一つが持っている、哺乳瓶の先端を二人に向けて中の液体…おりこうミルクを勢いよく発射した。
「ハーッ!」
それに気付き、対処するため徹が一旦止まりクリークの方に向き直る。
そして口を大きく開き、アイスの力で冷気の息を吐いた。
これは、アイスカービィが持つ「こちこちといき」と呼ばれる技だ。
その冷気により、向かってきたおりこうミルクが空中で凍らされる。
放出された息の押し返す力により、凍ったミルクの勢いも削がれる。
棒状に凍ったおりこうミルクは、二人の前に重力に従いながら落下し、砕かれた。
「アア゛アアァ!!」
今度は、これまた人造アームの一つが持つ小さなタイヤの付いた銃…ゼンリンシューターの銃口が二人に向けられる。
アームの指は、その銃の引き金にかかっていた。
『ヒュンッ』『カンッ』
「うアア゛アァッ!?」
それに対し、ランボー弓を引いてが矢を放った。
矢はゼンリンシューターの側面部分に当たった。
それにより、銃口の角度が変わり誰もいない方向にエネルギー弾が発射された。
エネルギー弾は壁に当たり、そこに小さな穴を作るだけの結果に終わる。
『ヒュンッ』
そしてランボーは、続け様に二本目の矢を放った。
その矢が向かう先は、クリークの眉間だ。
ランボーは、相手を殺すつもりで矢を放った。
自分たちを今襲ってきている相手は、どうも正気を失っているようだった。
言動もそうだし、何よりあんな売春婦でも着ないような常軌を逸した格好で暴れるだなんて、絶対にまともな頭でできる訳がない。
そもそもこんな雪に囲まれた建物の中、室内が暖められている訳でもないのにあんな格好で寒くないのかとも思う。
おそらくはあの格好のまま外を歩いていたであろうことも、正気じゃない・狂っていると感じる。
人外の肉体になっている北沢徹を差し置いて、この戦場に来てから最も幻覚・悪夢みたいな存在だとも思う。
しかも、意図的にやったかどうかも分からないが、人の肉体的性別を変えるだなんて能力まで見せてきた。
何のためにやったかなんて、その理由は全く思い付かない。
がむしゃらに支給された武器を振るったらたまたまこうなったとしか考えられない。
相手のやっていることは、無茶苦茶としか言いようがなかった。
交渉等も全くできそうにない。
この異常な戦場において、こんな存在はできる時に始末する他ない。
同行者に無断でやるのはどうなのだとか、身体側の女に悪いだとか、そんなことを気にしている暇もない。
下手をすればこちらがやられる。
これまで経験した戦場によって染み付いた感覚も、こうするべきだと判断していた。
自身が持つ弓矢の威力は既に確認済み。
そして、ランボーのいる場所から相手までの距離は、そこまで遠い訳でもない。
ほとんど咄嗟のことだったが、狙いを付けるのはランボーには簡単なことだ。
これらの条件から自分が放つ矢は、眉間から頭蓋骨を貫通して相手の脳に刺さり、死に至らしめることは可能だと判断した。
そして、本来ならばその通りのはずであった。
『ガンッ』
「くあっ……!」
「は?」
ランボーの放った矢は、確かに相手の眉間に命中した。
だが、そこに突き刺さることはなかった。
それどころか、傷一つも付けられなかった。
まるで、鋼鉄の板にでもぶつかったかのように弾かれてしまっていた。
◇
408
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:30:36 ID:vjURQFR.0
『天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)』と名付けられた麻薬(ヤク)がある。
これは、麻薬汁(ヤクじる)に紙を漬け込むことで生産され、その名の通り回数券(クーポン)の要領で一枚ずつ千切り取って使用するものだ。
これの効能は凄まじく、とてつもない快楽と依存性を引き起こす。
そんな天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)を『改悪』した『地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)』というものもある。
これは、快楽よりも肉体の強化に重きを置いた薬物だ。
口に含んで服用(キメ)れば、ただ身体能力が上がるだけでなく、傷の再生能力、爆発にも耐えうる頑強な防御力等が得られ、感性も増幅され研ぎ澄まされる。
これの効果もまた凄まじく、たとえ鼠だろうと一片でも与えれば熊を倒す程の力を与えてしまう。
また他にも、目の周りにひび割れのような血走りが生じるという効果も出る。
そしてここにおいて、首領・クリークはこの『地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)』を服用(キメ)ていた。
これは元々はウォッカに支給されていた品であったが、クリークは奪ったデイパックの中からこれを見つけてしまっていた。
これにより、クリークのアイゼンとしての肉体は大幅に強化された。
ダ・イルオーマの大剣を片手で振り回せるようになっていたのもこのためだ。
矢が刺さらなかったのも、麻薬(ヤク)の効果で表皮が硬化されていたからだ。
本来の肉体でのクリークは、1tにもなる大戦槍という槍を扱える程の怪力を誇っていた。
しかしアイゼンの肉体ではいくらリビドークロスの力を纏っていても流石にそこまでの力は発揮できなかった。
だが、今は麻薬(ヤク)を服用(キメ)ている。
これにより増幅された力は、もしかしたら本来のクリークのものを超えているかもしれない。
今のクリークはまさに、クリークを超えたスーパークリ『言論弾圧』!
…まあ、とにもかくにも、今のクリークはかなり強化された状態にあるという訳であった。
◆
「くっ!」
『キンッ』
「なっ!?」
ランボーは、今度はクリークの目の方に向かって矢を放った。
しかし、それも効かない。
目を閉じている瞼の皮膚も、地獄への回数券の効果で硬化されていて、それに弾かれた。
それでも、顔面に矢が勢いよく当たったことにより、クリークは少しのけ反る形になる。
しかしそれも、すぐに顔を上げた状態に戻る。
「俺ニ……甘エろおォ!!」
『バキッ』
リビドークロスとそれに付随する共振石の影響で、本来クリークになかったはずの母性欲が増幅される。
それと元々ここに来る直前にも暴走していた影響により、クリークの精神は滅茶苦茶に変容させられ、彼自身も自分が何を言っているのかも全く分からなくなる。
そんな状態のまま、再び彼は床を強く踏み込みながら駆け出して襲いかかろうとする。
「ハーッ!ハアーッ!!」
『カチン』
「グッ…!」
これに対抗できたのは徹の方だ。
前と同じくアイスカービィの氷の吐息、こちこちといきをクリークの全身にかかるように吹き掛けた。
結果、クリークは全身を氷漬けにされた。
「うおオおおォっ!!!」
しかし、クリークはそれを打ち破った。
全身を強引に動かしたことで、身体の周りの氷は砕かれた。
10秒くらいは止められたが、すぐに動きだされてしまった。
氷の拘束から逃れたクリークは、そのまま再び走り出す。
「がアアアああァ!!」
クリークは新たな攻撃を仕掛ける。
それは、これまでのような6本の腕に持った武器を使うものではなかった。
狙うは先ほど自分を凍らせてきた相手、徹だ。
そして今の徹は小さいカービィの肉体。
そんな相手を攻撃するために最も手っ取り早い武器、それは足だ。
クリークは、徹に向かって、まるでサッカーボール相手に行うような感じの蹴りを放った。
「くっ!」
それに対し徹は咄嗟に自身の身体全体に氷を纏って防御体勢になった。
これもアイスカービィの技、「こちこちガード」と呼ばれるものだ。
「うわああっ!?」
しかしそれもまた、麻薬(ヤク)で強化された肉体相手には敵わなかった。
自身に纏った氷も砕かれ、徹は後方へと蹴り飛ばされた。
吹っ飛んだ徹は壁へと叩き付けられた。
それどころか、壁には穴が空き、徹はその内側へと落ちていった。
けれどもこれは、致命的なダメージにはならなかった。
氷のガードは、徹本体に届く衝撃をある程度は和らげてくれた。
それでも、全くの無傷ではない。
ダメージを受けた結果、徹のコピーは解除されていた。
アイスのコピー能力は、能力星の結晶となって徹の肉体から排出された。
徹は、元のピンクの素のカービィの姿に戻っていた。
能力星は壁の穴の中から出てきて、廊下の床の上を跳ねながら離れた場所へと行ってしまった。
そして能力星は、短い時間でいずれ消えてしまうものだ。
「キタザワ!」
「ぐっ…」
409
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:32:48 ID:vjURQFR.0
ランボーが声をかけるが、徹はそれに応えられない。
壁の内側に隠れ、姿も見えなく、苦痛に悶える声が聞こえるだけだった。
「躾ダあアあぁぁっ!!」
(!しまっ…)
クリークの攻撃は止まらない。
手に持った大剣をランボーに向かって振り下ろそうとしていた。
そしてランボーはそれに対抗することはできなかった。
咄嗟に弓矢を構えようとしたが、それも間に合いそうになかった。
相手の、強化された肉体から繰り出されるスピードについていけなかった。
大剣が今すぐにでもランボーの頭に届きそうになった、その時だった。
「うおっ!?」
ランボーの背中が誰かの手に掴まれ、後ろに向かって強い力で引き寄せられた。
後方に移動させられたことで、先ほどまでランボーがいた場所の床の上に、大剣が叩きつけられた。
大剣が切り裂けたのは、床だけだった。
「君、大じょ…………何だアレ!?」
ランボーの後方から初めて聞く声がした。
その声の主が今ランボーを助けたようだった。
ただ、その相手はランボーのことを心配しようとしたが、その前にクリークの姿に驚く反応をしてしまっていた。
そんな声を聞いてから、ランボーは後方を振り向いて自分を片手で掴んでいる相手の姿を確認する。
そこにいたのは、赤い服に麦わら帽子を被った青年だ。
そしてその隣には、水色の毛並みを持つ猫並みのサイズの動物がいた。
◆
パズーとリンクは支給品の確認を終えた後、自分たちがいたB-2の村の中に移動しそこの探索を行っていた。
ウタやチャット、その他に誰か協力関係を結べる人がいないかということを期待してのことだった。
しかし、彼らがそこで発見することになったのは、一つの死体だった。
見つけた時は驚いてしまったが、やがて人の痕跡が残っていることにも気づいた。
ピンク色の水滴の跡と足跡が死体横の雪の上にあった。
パズーとリンクも、死体は一旦そこに置いたままにして、痕跡を辿っていった。
足跡が複数人分あることから、もしかしたら自分達以外に先に発見・犯人の追跡をしている人がいるかもしれないことを考えた。
それがどんな人物達かの確認のためにも、二人もそこから追跡を始めた。
結果、パズーとリンクも札幌世界ホテルに辿り着いた。
彼らもホテル内に入り探索を開始しようとしたが、すぐ異常に気付くことになった。
建物内から、大きな音や人の叫ぶ声が聞こえて来た。
それらが聞こえて来た方に向かってみれば、そこでは一人の少女?が今にも大剣で斬られそうになっている場面があった。
大剣を振り下ろそうとしている相手が何者かを確認する暇もなく、パズーは殺されそうになっている相手に向かって手を伸ばした。
ゴムの肉体のおかげで、少し離れた位置からでも腕を伸ばして届かせることができた。
それに、ゴムの縮む性質のおかげで掴んだ相手を自分達のいる所に素早く引き寄せることができた。
そうしてその人…ランボーを助けられたことに安堵したのも束の間、今彼を襲っていた相手…クリークをパズーはしっかり視界に入れてしまった。
その異常な姿を見たことで、ランボーにちゃんと話しかける前に驚きの声を上げてしまった。
そして場面は、今に戻る。
◇
「……………ア?」
この状況で、驚かされているのは何もランボーやパズー達だけではなかった。
クリークもまた、その場で呆然とした状態になっていた。
聞き覚えのある声に反応して、閉じていた目が見開かれた。
そうして見た、今この場に現れた者の顔に、覚えがあった。
それは、この舞台に来る直前、自分を頭から船の甲板に叩きつけた相手。
自分を、倒した男。
『ズキン』
「グッ…イ……ア゛ア゛ア゛ア゛ァァッ!!!」
「…?」
「な、何?どうしたんだ!?」
クリークは突如頭を抱えて苦しみだした。
これまで正気を失っていた彼に、敗北の記憶が脳を痛めつける。
そうなっていることを知る由もないランボー達は、急に苦しみ始めたことに対し困惑の反応しか出せない。
「オ、レ……俺は…!」
蘇っていく記憶が、クリークの狂っていた頭に自身が何者であるかを分からせてくる。
410
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:35:58 ID:vjURQFR.0
「麦わら、小僧ォ……ウアアアアアアアアァァッ!!!!」
苦しみながらも、クリークは再び襲いかかろうとする。
もう一度両手に剣を持って、ランボー達の方に向かおうとする。
「リンク、頼む!」
「!」
相手が何故かいきなり苦しみ出したことには驚かされた。
だが、再び襲いかかってくるなら対抗はする。
パズーは、それをリンクに任せた。
リンク自身も、その言葉に応えた。
相手は大量の武器を持っており、素手のパズーでは対処は難しい。
そして、リンクならばこれをどうにかできると判断した。
そのための手段を、リンクは持っていた。
「リュン!」
『バチッ!』
「ぐああああっ!?」
リンクはコリンクとして持つ技、でんきショックを放った。
電気ならば、相手が肉体を頑強にしていようと内側に効果が出る。
もっとも、パズーはそこまで分かっていてリンクに託した訳ではなかったが。
離れた位置から電気を浴びせられたクリークは、その場で麻痺になって動きを止められた。
「ギ、イイイイイィィ…!」
それでもクリークは身体を無理矢理動かそうと振るわせる。
「リィン!」
「グッ…」
そこにリンクが追撃を加える。
コリンクとしての技、「でんこうせっか」を繰り出した。
頑強になっている肉体相手には、でんこうせっかの物理的なダメージは通りにくい。
けれどもそもそもで言えば、でんこうせっかは威力よりもスピードに重きを置いた技だ。
それにより、クリークの麻痺が消える前にこの技を当てることができた。
リンクのでんこうせっかによる体当たり攻撃は、クリークの腹の辺りに当たった。
その結果、肉体へのダメージはなくとも、クリークは体勢を崩した。
クリークは今、リビドークロスのアームも使いながらたくさんの武器を持っている。
そのため、クリークは上半身がそれなりに重くなっている。
それに対し下半身はほとんど何も付けてない。
つまり元々、体幹バランスは通常よりも悪くなっていたのだ。
こうなったのは、電気による麻痺で体を思うように動かしにくかったこともあるだろう。
体勢を崩したクリークは、後方に向かって尻餅をつくように倒れ込んでいった。
そのまま床の上に、武装の分も含めて重くなった身体が叩き付けられた。
『バキッ!』
「ア゛ッ!?」
クリークの身体が倒れ込んだその時、その下にあった床が壊れた。
しかしただ、壊れただけではなかった。
その床には、大きな穴が開いた。
底が見えないほどの、深い穴が。
「あ゛ああァァー………………………」
クリークはその穴の中に、装備を壁に擦り付けながら、落下していった。
◇
札幌世界ホテルは、普通のホテルではない。
網走監獄を脱獄した、金塊の在りかを示す刺青持ちの24人の囚人の一人、家永カノ(本名:家永親宣)が自らの目的のためにあらゆるところを改造した殺人ホテルだ。
そうして作られた罠の中に、落とし穴も存在した。
これは、レバースイッチを1つ引くだけで、床が開いてそこに立っていた者を下に落とすことができる仕掛けだ。
クリークは先ほど、その穴が下にある床を走るために強く踏み込んだ。
それにより、その部分の床が少し壊れた。
けれども、その時はまだ完全には穴は開かなかった。
だがそうだとしても、これによりその床は脆くなってしまっていた。
そして今、クリークはリンクの攻撃によりバランスを崩して後方に追いやられ、尻からどかりと座り込むように倒れた。
その倒れた場所も、その穴のある床だった。
結果、尻から全重量がかかったことで床が完全に壊され、隠されていた穴が開いてしまった。
クリークは重力に従って、そのままその穴の中の暗闇に消えていった。
411
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:37:56 ID:vjURQFR.0
◇◇◇◇
「あ痛た………あれ?さっきの変態女は?それに、その人は?」
「……あの女は、穴に落ちた。こいつは、俺を助けた」
「何だって?」
「え?その声…」
壁の中から、北沢徹がようやく出てきた。
壁の穴から這い出てきた徹は、状況をパッと見て、そこから生じる疑問点を述べた。
それに対してランボーは答えるが、彼の少女の姿から発声された『男性』の声に、今度はパズーが疑問を呈した。
それに、パズーからしてみれば壁の中から出てきたピンク色の球体の生命体も不可思議な存在だった。
また、パズーとしてはさっきの変態女…クリークが自分の顔を見て何か反応しているようだったことも気になっていた。
麦わら小僧と呼んでいたから、もしかしたらルフィのことを知っていたのかもしれない。
けれども、他に情報整理しなければならないこともあって、その話をすぐに切り出すことはできなかった。
先ほどまで戦っていた相手が、突如床に開いた穴の中に落ちて消えるだなんて結末は、彼らには予想がつかなかった。
その上、ランボー達とパズー達も初対面であり、お互いのことは全く知らない。
パズーはとりあえず状況から咄嗟にランボー達の手助けをしたが、信頼できるかどうかも本当はお互いにまだ不明な段階だ。
このままここではまともに話し合うことなんてできない。
その結論には、ここにいる全員が到達していた。
「とりあえず、話はこの建物から出てからにしよう。ここはどうも、やはり何かおかしい」
この提案は徹が先に出した。
徹は、先ほど壁の中に叩き込まれた際、奇妙なことに気付いた。
それは、客も通る廊下等では決してない、隠し通路のようなものが壁の中にあったのだ。
何故こんな通路があるのかといった点については不可解だったが、先ほどまで戦闘中だったこともあり気にしている暇はなかった。
けれども外に出てみれば、今度は突如開いた穴に先ほどまで自分たちを襲っていた相手が落ちたという。
ホテルの構造はやはり普通ではない、こんな場所で落ち着いて話し合うことなんてできない。
他の者達もそのことを分かってきており、提案にはすぐに乗った。
4人は、今回様々なことがあって疲れを感じながらも、外に出るために一緒に歩き出した。
【B-2 札幌世界ホテル/黎明/一日目】
【ジョン・ジェームズ・ランボー@ランボー】
[身体]:ポプ子@ポプテピピック
[状態]:男体化の呪い、疲労(小)
[装備]:勇者の弓(矢立、予備矢多数含む)@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(ランボーから見て武器ではない)
[思考・状況]基本方針:生き残る
1:このホテル内から外に出て、北沢徹やさっき自分を助けた青年(パズー)と話をする。
2:他にも脱出プラン等の情報提供者、協力者になれそうな者を探す。
3:さっきの変態女(クリーク)はどうなったのか。転落死してくれていたらもう余計なことを考えずに済みそうだが。
4:こんな身体になったこと、嬢ちゃん本人に何て言えばいいんだ
[備考]
※参戦時期はラストシーン、トラウトマン大佐に連れられ逮捕された直後です。
※ポプ子のCVは元は花澤○菜でした。
※現在、男体化の呪いの影響でCVが山口○平になっています。外見の変化はほとんどないものとしておきます。
※服装はポプ子の着てるセーラ服です。クソダサくはないです。海兵スタイルのランボーだってありだろゥァア゛―ッ!!
【北沢徹@彼岸島 48日後…】
[身体]:カービィ@星のカービィシリーズ
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、フィレンツェ行き超特急内の氷×2@―パッショーネ24時―、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを打破する。
1:このホテルから外に出て、ランボーや青年(パズー)と話をする。
2:他にも殺し合いに乗っていない参加者と合流したい。
3:殺し合いに乗っている参加者は止める。
4:さっきの変態女(クリーク)はどうなったのか…
5:島村卯月と呼ばれた少女の身体の遺体を埋葬してあげたい。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※ダメージを受けたことにより飛び出したアイスの能力星は、時間経過により消滅しました。
412
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:39:25 ID:vjURQFR.0
【パズー@天空の城ラピュタ】
[身体]:モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE
[状態]:健康
[装備]:ヒスイ地方のモンスターボール@ポケットモンスターシリーズ(Pokémon LEGENDS アルセウス)
[道具]:基本支給品 時のオカリナ@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 ウタの歌の楽譜@ONE PIECE Film RED
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:ホテルの外に出てこの人達(ランボー、北沢徹)と話をする。
2:リンクと共にウタ、チャットを探す
3:この楽譜とオカリナ、主催者は何か関係あるのか?
4:ムスカには警戒。
5:ルフィという海賊は危険な人物じゃなかったことには安心。
6:さっきの女の人(クリーク)は何だったんだ?殺し合いに乗っているみたいだったが…
7:さっきの女の人(クリーク)、反応からしてルフィを知っていたのか?
[備考]
※本編終了後から参戦とします。
※ルフィの肉体の細かい参戦時期は後続の書き手にお任せしますが、少なくとも新世界編以後のものとします。
※ルフィのプロフィールにウタと幼馴染であるといった情報が書かれてません。
[意思持ち支給品状態表]
【リンク@ゼルダの伝説ムジュラの仮面】
[身体]:コリンク@ポケットモンスターシリーズ(Pokémon LEGENDS アルセウス)
[状態]:健康
[思考・状況]基本方針:ムジュラの仮面を倒すために月に行く
1:オレを出した、目の前にいる人物(パズー)と共に行動
2:オレが知っている、月やムジュラの仮面についての情報を伝えたい
3:さっきの女の人(クリーク)は何だったんだ?
[備考]
※ゲームクリア後からの参戦とします。
※コリンクとしての性別はオスとします。
※現在判明している使える技は、「でんきショック」、「でんこうせっか」の二つです。
※他の技構成などは後続の書き手にお任せします。
◆
家永カノが仕掛けた落とし穴の罠、その暗闇の中に落ちた首領・クリークは、まだ生きていた。
穴の底には、網状のハンモックのようなものが用意されており、それがクッションとなっていた。
これも元々、家永カノが用意したものだ。
落とし穴の先にあるものは拷問部屋であり、そこで拷問できるようにするために、落とした者を生かせるようにできていた。
「おレ…俺は…」
ハンモックからずり落ちた後、クリークは虚ろな目をして頭を手で押さえながら立ち上がる。
でんきショックによる麻痺はもう消えていた。
先ほどの出会いは、錯乱状態にあったクリークの精神に影響を与えていた。
自分を倒した男のことの記憶が、彼自身に自分が何者であったかを少しずつ思い出せてきていた。
この殺し合いで最初からあった大きな怒りの感情が、一周回って彼の中に冷静さを取り戻してきていた。
彼の中にあった狂気は、少しだけだが確かに鳴りを潜め始めてきていた。
【B-2 札幌世界ホテル 秘密の拷問部屋/黎明/一日目】
【首領・クリーク@ONE PIECE】
[身体]:アイゼン・ホノカ@淫獄団地
[状態]:狂乱、頭痛、記憶と理性が少しだけ回復、返り血を浴びている、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)による肉体強化
[装備]:プレミアムリビドークロスGreat mother@淫獄団地、ダ・イルオーマの大剣@ゼルダの伝説スカイウォードソード、ゼンリンシューター@仮面ライダードライブ、魔剣バルムンク@ローゼンガーテン・サーガ、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)(1枚分)@忍者と極道
[道具]:基本支給品、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)(残り4枚分)@忍者と極道、ランダム支給品0〜1(ウォッカの分)
[思考・状況]基本方針:俺は最強だ!!!
1:俺は…
[備考]
※参戦時期はルフィからゴムゴムの大槌を喰らった直後とします。
※現在、共振石の影響もあって狂乱状態にあり、無差別に人を襲うようになっています。ですが、ルフィの顔を見た影響で感情が揺さぶられ、少しずつ正気を取り戻しかけてきています。
※リビドークロスの一部である哺乳瓶の左側の方が半壊しています。
※装備欄にある「地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)@忍者と極道」は口内に含んだ状態です。
413
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:40:41 ID:vjURQFR.0
[支給品紹介]
【フィレンツェ行き超特急内の氷@―パッショーネ24時―】
フィレンツェ行き特急の中でブチャラティが持った氷。
何故かかなり巨大化していたが、手に持とうとするとこれまた何故か通常サイズに戻る。
また、これを持ったブチャラティは髪が水色になった。
ここにおいては、他の人物が持っても髪が水色になる効果があるものとします。
また、普通の氷の性質も持っているものとします。
最初は3つ支給されていた。
北沢徹に支給。
【魔剣バルムンク@ローゼンガーテン・サーガ】
♀マークのような意匠をした魔剣。
斬った者に男体化の呪いをかける能力を持つ。
また、刀身はとても柔軟で自在に折れたり、伸び縮みしたり曲がったりする。
首領・クリークに支給。
【地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)@忍者と極道】
極道の闇医者・繰田孔富によって開発された麻薬の一種。
前身となる「天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)」の改悪版。
名の通り、クーポンチケット状になっており、一枚ずつ千切って使用する。
口内に服用すると、強烈な身体能力、再生能力、防御力が得られ、感性も増幅される。
その効果は凄まじく、ネズミに与えれば熊を倒してしまうほどのものである。
基本的には口内に含んだままで使用するが、口内から無くなっても効果は90分は続く。
服用すると、目の周りにひび割れのような血走りも現れる。
ただし強化は完璧ではなく、頚椎の隙間を走る0.5mmのラインだけは強度が変わらず、そこを正確に狙えば、通常のナイフ等でも刃が通る。
また、酸にも弱く飲み込んでしまった場合は胃酸により本来の効果は発揮できなくなる。
忍者等、身体能力がカンストしてしまっている者には効果がない。
2枚同時に使用すれば効果は上昇するが、肉体は耐えられず命を5分に縮めてしまうか、1分も経たずに肉体を爆散させてしまうかになる。
この場においては、5枚分支給されている。
元はウォッカに支給。
414
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/25(水) 22:41:22 ID:vjURQFR.0
投下終了です。
タイトルは「通常攻撃が状態異常付与攻撃で六回攻撃のお母さんは好きですか?」とします。
415
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:19:05 ID:JGnv1kCw0
遅くなりましたが、投下します。
416
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:20:15 ID:JGnv1kCw0
四十年―
幾度の侵略者が来たか
幾つの防衛隊が迎え撃ったか
幾らの―光の巨人が地球に来たか
とある恒点観測員に負けてから、文明監視員に会うまで、私は傍観者だった。
初めて地球に降り立った時から長い年月が立ち、
変わりゆく人類と文明に別れを告げ、
いつか地球が手に入ると予測し、迎えを待った。
地球で最後にかつてのような事件を起こし、
新たな光の戦士にも会えた。
もはや、地球に思い残す事もない―。
その筈だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
417
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:22:01 ID:JGnv1kCw0
(全く…、後は母星に帰るだけだというのにとんだ横槍が入ったもんだ。)
光の星の使者を見送った後、赤い異星人―メトロン星人は愚痴をこぼした。
(しかし、ゾーフィの奴にも困ったものだ。
こんな原っぱに放り出して。)
光の使者は先程の天然パーマの男から助けてくれたものの、メトロン星人を草原に降ろし、先程の問答を行った。
結果、袂を分かった後は、この場に置き去りにされてしまった。
(はぁ…、てっきり話の分かる奴と思ったんだけどな。)
光の国の戦士と似たような雰囲気を持っていた為、協力してくれると思ったら別の方面で厄介な相手だった。
かつて出会った光の戦士―ウルトラセブンやウルトラマンマックスとは形は似ていても、内面までは似つかない。
彼らは、対峙した時、宇宙人ながら人間らしい感情を見せる所があった。
しかし、ゾーフィは違う。それらとは別物だ。
あの鎧の中の身体は恐らく人間だろうが、感情を見せない―機械のような冷たい感じを受けた。
強いていうなら、使命を果たすだけの人形だろうか。
『再び見合う事があれば…、排除すべき障害として…、敵として対峙しよう。』
その言葉通り、次に会えば命を奪う事も躊躇わないだろう。
(最初に見逃してくれただけでも儲けものか。)
そう思い直すと、改めて危険がないかどうか周囲を見渡す。
418
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:23:23 ID:JGnv1kCw0
―草原には人気もなく、冷たい風が吹いていた。
そして、空には大きな満月が浮かんでいる。
地球に馴染んだメトロン星人にとっては、月見でもしたい気持ちになるが、
その雰囲気を壊しているのは月に貼り付いている巨大な人面であった。
(アレは一体何だろうね。怪獣とは違うようだし…。まぁ、何にせよ、あれが落ちて来る前にどうにかしなくては。)
巨大化して受け止めるか、或いは両腕の兵装で撃ち落とすか―
どちらも今の段階では難しいだろう。
受け止めるにしても一人では無理だろうし、撃ち落とすにしても火力が足りない。
また、安易な巨大化はかえって、危険人物を呼び寄せるだけだ。
(仕方ない。先ずは協力出来そうな参加者を探すか…。さて、どう動こうか?)
先程、ゾーフィに抱えられて空中から逃げた時に月の明かりで周辺の景色が見えた。
遠くに見える街の様な建物の群れと、眼下に見えた湖―。
そしてゾーフィは建物の方向―恐らく市街地の方へ向かっていった。
(危険はあるが、人が集まるであろう市街地には行きたい…。
だが、すぐ近くにゾーフィもいるだろう。
会いたいとは言ったが、流石にすぐ会う訳にはいかないな。
……なら、今来た道を戻り湖を迂回し、時間を置いてから市街地に向かうか。)
通った道なら、隠れている危険人物がいる可能性が低く、ある程度安全だ。
懸念は先程襲って来た天然パーマの男だが…、吐血量から見て、直ぐには動けないだろう。
(『急がば回れ』とも言うし、先ずは湖に行くか…。)
メトロン星人はデイバッグを背負うと、先程通ったルートを辿り始めた。
419
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:24:37 ID:JGnv1kCw0
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらく歩くと、思いのほか早く湖が見えて来た。
(何だか、何処ぞの変身怪人が宇宙怪獣でも飼ってそうな湖だね。
さて、流石に市街地まではまだ遠いか。)
月夜の下、再び動き出す赤い侵略者。
歩きながら気を紛らわす為、この殺し合いの会場について考えてみる事にした。
(さて…、我々にとっては不愉快なこの催しは何処でやってるんだろうね。どこかの無人島かな?
…なんて、いくら無人島でも人面の月が浮かんでいたら、外部の者に見つかってしまう。)
またこれだけの人々がいなくなったのに、光の国―宇宙警備隊や現行の防衛組織DASHは気付かない無能だろうか。
侵略する側にとってはその方が有り難いがそんな事はあるまい。
(“本物の月”がない時点で大体想像出来るが…、ここは『異空間』だろう。)
異空間―
それは怪獣、宇宙人が作り出した現実世界とは隔絶された空間の事である。
四次元空間、異次元空間等、種類や名称や微妙に違いもあるが、
作成者によって現実の自然に似せた空間や、全くの異世界を作り出す事が出来る。
大抵は光の戦士や防衛隊の介入を防ぐ為に作り、
四十年前―自分の世代ではイカルス星人、ベル星人らが作り出し、前者は侵略の前線基地を作る為、後者は獲物を狩る為に使用した。
それ以降も様々な怪獣・宇宙人が同じ様な用途で作り出している。
ベル星人の『擬似空間』は地球の森に似た空間という。作成者によっては、地球に似せた精巧な世界を作り出す事も可能だろう。
420
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:25:38 ID:JGnv1kCw0
(母星からの救援やDASH、宇宙警備隊等の助けは期待しない方がいいだろうな。
異空間は外部からの侵入は難しい。
これまでの防衛隊も手を焼いていた情報がある。
捜索はしているだろうが、彼らが異空間に突入する頃には、我々の多くは屍になっている可能性があるな。)
また異空間を脱出するには、作成者を倒すまたは作り出している道具を破壊する事だ。
(私の知っている“異空間”ではどちらかが、空間内に存在していた。
一番わかりやすいのは、主催の一味がこの会場内の何処かに潜伏している事だが…、流石に安直過ぎる。)
他に参加者の中に主催に協力する空間作成者がいるか、もしくは支給品内に空間を維持する道具を紛れ込ませている可能性も考えられる。
(まぁ、私の知らない異空間を維持する方法もあるかも知れない。結論を出すのは早いな。)
と、そこまで考えた所で、デイバッグの中で何か鳴り響く音が聞こえた。
足を止め、中を探ると魘夢が“たぶれっと”と呼んでいた電子端末が起動していた。
画面の中では可憐な美少女―魘夢が暗闇の空間にいた。
『やあ、お前たち、約束の連絡の時間だ。』
(あれま、もう一時間たったのか。
それにしても相方の仮面の小僧と違って、目立ちたがり屋なお嬢さんだね。いや、お坊ちゃんか。)
軽口を叩いたもののこの音が原因で、背後を取られて、御陀仏とは笑い話にもならない。
なんとか音が広まらない様に身体でタブレットを覆い、周囲に気を配りながら、放送に耳を傾けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
421
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:26:58 ID:JGnv1kCw0
「8人か…。随分、血の気の多い輩がいるもんだ。」
メトロン星人は自動的に表示されるタブレットを見て呟いていた。
指がなく、タブレットの操作が出来ない彼にとってはこの仕様は有り難かったが、
放送を見て、複雑な気持ちに駆られる。
殺し合いに乗ってない者は勿論、殺し合いに乗っても賢い者は初めは様子見に徹する筈だ。
それでも、これだけの人数が亡くなったという事は、短絡的な考えの者も多いという事だ。
(私としては、もう少し知的な駆け引きを期待していたが…、それを求めない輩もいるという事か。)
嘆きながら、引き続き画面に目をやる。
(この放送で分かったのは、眼の前の女装少年の性格が悪いって事だな。)
最初の放送で、魘夢は自身を『元・下弦の壱』と言った。
そして、犠牲者の写真の中に目に『上弦・伍』と描かれた化け物の姿が有り、
放送でも、上弦の伍が死んだ事に触れ、笑っていた。
(数から察するに、自分の元上司を殺し合いに参加させていたのか…。
『伍』というと、他の数字の上司達も招かれているかもしれないな。
…かつての上司の事を忘れないなんて、忠誠心の強い奴だね。)
嫌味を心の中で呟き、考える。
元上司の連中―上弦らが仮にこの会場にいるのなら魘夢の情報を得る為に接触したいが、今の段階では難しいだろう。
放送は続き、最後に入れ替え装置の話が出て来た。
(もうそんな特典情報をくれるのかい。…えらい早いな。)
赤い異星人はその話を切り出した事に少し引っ掛かりを感じた。
そして放送は終わり、画面は再び暗闇へと戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
422
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:28:00 ID:JGnv1kCw0
メトロン星人はついでに、再度“たぶれっと”が操作出来ないか、腕の先のヒダ様な部分であちこち触ってみる。
しかし、筒の様な腕では、電源は入れられても開く事が出来ず、中の情報を見る事が出来ない。
付属されている説明書も読んだが、画面の“たっちぱねる”を押して操作する為、ある程度圧力を加えないと反応しないらしい。
(少しは異星人が使う事も考えてほしいものだ。
こんなツールに頼るから人間は退化して、“お猿さん”になるんだよ。)
地球侵略に成功したら、こんな道具は廃止させようと赤い侵略者は心に誓った。
(しかし、この道具は何処から来たんだ?
地球にはまだこのような電子端末が出て来るにはまだ十数年早いが…。)
(いや、逆か。十数年後から持ってきたのか。)
地球には時間を操る怪獣が何度か現れている。
それらの技術を応用して、未来の道具を持ってきたのかもしれない。
しかし、異空間に未来の技術、ただ殺し合いをさせる為にしては手が込んでいる。
そこまでして、女装少年―魘夢は何を企んでいる?
まさか、『可愛い女の子の身体になりたかった』みたいなどこかの軍隊の総帥のような理由ではないだろう。
423
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:29:26 ID:JGnv1kCw0
(私の物差しで彼らを測るのも何だが…やはり、地球か他の星への侵略が目的か?)
人々の心と身体を入れ替える。
一見、侵略に関係のない行為だが、対象が政府の要人ならばどうだろうか。
侵略者は易々と国の中枢に入れる訳だ。
また警察、軍隊、そして光の国の様な英雄達。
市民を守る者達を入れ替え、悪事を行う。
たちまちパニックになり、無法状態が生まれるだろう。
(文字通り、正義と悪が入れ替わる…。『正義』という言葉が悪の代名詞になる訳だ。)
しかし、侵略が目的としたら、何故行動に移さない。
何故、こんな殺し合いを行うのか。
(考えられるとすれば、入れ替わる技術にまだ問題があるという事か。)
問題―、それが何なのか?
(例えば…、入れ替えが維持できる時間か?)
そもそも、初めから疑問に思っていた。
何故、殺し合いの期間が3日なのか。
5日や1週間では都合が悪いのか。
勿論、宇宙警備隊やDASHを恐れ、短い期間での開催を行った可能性もあるが……。
他にも理由があるのかも知れない。
(もしかすると…、3日“しか”入れ替わる事が出来ないのか?)
ならば、辻褄が合う。
3日では、やれる事は限られる。
国を乗っ取る事も大それた悪事を行う事も出来ない。
そして、魘夢が早い段階で『入れ替え装置』の存在を明かした事も、時間がたてば、元に戻る事を隠す為ではないのか。
424
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:30:36 ID:JGnv1kCw0
(そうなると、この殺し合いの目的は―入れ替え期間を延ばす為のデータ収集か?)
大勢の参加者を集め、その中から期間を延ばす為の要素を抽出し、
その後、改めて侵略計画を実行する。
それが目的なのか?
だとすると、必ず主催者側が参加者の現在位置や状態を把握出来る様にしている筈。
そうすれば、先の放送の様に、脱落者の情報も手に入りやすい。
その為に手っ取り早いのは、参加者らに発信器を持ってもらう事だ。
だが、身の周りの持ち物や身体にそれらしき物は見当たらない。
考えられるとすれば―
(この“たぶれっと”とか言う機械か。)
そう、タブレット内に参加者の状態を伝える計測機器や、盗聴器が仕込まれている可能性がある。
それらを調べれば、主催に繋がる手掛かりや脱出の糸口が掴めるかもしれない。
しかし…、貴重な情報源である自分のタブレットを分解する訳にはいかない。
(開始早々、“たぶれっと”を壊す輩はいないだろうし…、困ったな。)
やはり、初めに犠牲になった8人の遺体を探すしかない。
支給品は奪われていても、タブレットは回収されずに残っている可能性がある。
また、遺体を調べる事で、体内にも発信器の類いや反乱防止の為の爆弾等が見つかるかもしれない。
(遺体の状態によっては、下手人の判別や、どんな攻撃方法を持っているかも分かるだろうしね。)
425
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:31:50 ID:JGnv1kCw0
後は他の参加者と交流して、地図や支給品・参加者情報などの基本的な情報を手に入れたい。
特に名簿は確認したい。
果たして自分の知っている侵略者は居るのか。
居れば条件によっては協力出来るかもしれない。
また敵対するにしても、知っていれば対策も練れる。
(とはいえ、ワイアール星人のような他の生物を同化して来る奴がいたら困るよな…。)
他に防衛組織の隊員、かつてのウルトラ警備隊やまたはDASHのメンバーはいるのか。
個人的にいて欲しいと思っているのは、この会場に来る前に会ったトウマ・カイトことウルトラマンマックス。
そして―モロボシ・ダンことウルトラセブン。
彼らはいるのだろうか。
(思い残す事は無いと思ったが、一応あったな。)
四十年前、メトロン星人の侵略を止めたウルトラセブン。
本来なら憎むべきだろうが、あちらも“職務”を果たしただけだ。
―むしろ、地球に長居出来た事を嬉しく思う。
母星に帰る前に、挨拶をしたいとも考えていたが、“光の国”に戻ったと聞いて諦めていた。
普通ならそんな強力な存在は参加させないが、今回は身体を入れ替えるという条件が付いている。
計画に邪魔なセブンを無力化して、尚且、戦力としてセブンの身体を求めるというなら、参加させているかもしれない。
(何にせよ、取り敢えずは生き残る事が重要だ。
…仮に奴らがいて、変な姿だったらからかってやろうかね。)
426
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:33:12 ID:JGnv1kCw0
考えに纏まりがついた所で、タブレットを仕舞い、先に進む為に立ち上がる。
その時、ふと、魘夢の言葉を思い出した。
『【どんな願いでも叶えられる権利】を譲渡することを約束しよう』
(魘夢、私は地球が確かに欲しいが…、
お前さん方がどんな力を持っていようとも、四十年間、様々な侵略者が手に入れられなかった物を簡単に叶えられるとは思えない…。
それに…願いは他人に叶えて貰うのではなく、自分の力で勝ち取る物だ。
だから、私の望む願いは―お前達の命そのものだ。)
心の中で宣戦布告し、赤い侵略者は、脱出に向けて―、地球侵略の為の一歩を踏み出した。
427
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:34:41 ID:JGnv1kCw0
【一日目/D-8(C-8寄り) 湖/深夜】
【対話宇宙人 メトロン星人@ウルトラマンマックス】
[身体]:メトロン星人タルデ〈ラウンドランチャー〉@ウルトラマンオーブ
[状態]:健康
[装備]:ラウンドランチャー(初めから装備済)@ウルトラマンオーブ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:この殺し合いから生き延び、母星に帰る。そして、機を伺い地球を手に入れる。
1:ゾーフィに会うのを避ける為、湖を迂回し、市街地へ向かう。
2:タブレットを使える者を探し、基本情報を入手する。
3:犠牲者を探し、襲撃者の情報を得る為、遺体を調べる。またタブレットが有れば回収し、主催にバレない様に分解する。
4:ゾーフィと天然パーマの男(泉研の名前は知らない)は警戒。
5:参加者情報を見て知っている者がいたら、侵略者・防衛隊に関わらず、手を組みたい。
適わなければ排除する。
[備考]
※人間への擬態は出来ませんが、巨大化する事は可能です。
※ラウンドランチャーは入れ替わる前から装備しています。(タブレットを確認してないので、外し方は分かりません。)
※元の身体の方が色男と思っています。(人間に違いは分かりません。)
〔今話の考察まとめ〕
※殺し合いの会場を『異空間』と考えています。
会場内に“空間作成者”もしくは“空間を維持する道具”があると考えています。
※タブレットは未来から持ってきた道具と思っています。
※殺し合いの動機は侵略の為に、入れ替える期間を延ばす為のデータ収集と考えました。
その為、タブレット内に収集用の機器や盗聴器があると予想しました。
また、入れ替え期間は『3日』ではないかと考えています。
『入れ替え装置』の件はそれらを隠す為と思いました。
※僅かながら、ウルトラセブンが居るのではないかと考えています。
※地球侵略に成功したら、世界中のタブレットは廃止すると誓いました。
428
:
◆0ZMfbjv7Xk
:2023/10/28(土) 00:35:31 ID:JGnv1kCw0
投下終了します。
タイトルは【侵略者は思考の海を征く】です。
誤字・脱字があればご指摘お願いします。
429
:
◆5IjCIYVjCc
:2023/10/28(土) 17:35:20 ID:ewM2d0d20
投下お疲れ様です。
>侵略者は思考の海を征く
3日の制限時間は入れ替えを維持可能な時間説、そんな考え方もありましたか。
侵略性宇宙人らしい視点を兼ね備えた考察がとても良くできていると感じます。
魘夢が女装少年扱いされていることにもクスッときてしまいました。
430
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/11/28(火) 01:01:07 ID:7zMbBcCA0
朝倉&あちゃくら、ゲリラ投下します
431
:
支給品になったおまえが悪い
◆NIKUcB1AGw
:2023/11/28(火) 01:02:22 ID:7zMbBcCA0
「ふーん……。キョンくんはいないかあ」
朝倉涼子は仮面ライダー王蛇に変身したまま、道端のベンチに腰掛けてタブレットを操作していた。
「他の知ってる名前もなさそうね。
まあ、涼宮さんや長門さんが参加させられてたら面倒なことになってたから、これは吉報だわ。
シンプルに全員殺せば……あら?」
朝倉は「その他」の欄に記載されたある名前を見て、独白を止める。
彼女の興味を引いたのは、「あちゃくらさん」という名だった。
「私とちょっと似てるわね、この名前……。
何か親近感を覚えるわ……」
その感情から、朝倉は思考を発展させていく。
「このデッキに付属してきたベノスネーカーっていう動物の名前も、名簿には載ってる。
つまり、それにも誰かの人格が入ってるってことよね。
もしかしたら……」
おのれの推論を実証すべく、朝倉はデッキから1枚のカードを取り出した。
それを読み込み機である杖・ベノバイザーにセットし、発動させる。
『ADVENT』
周囲に響く、機械音声。
それと同時に、巨大なコブラ・ベノスネーカーがミラーワールドから召喚された。
「ねえ、私の思い違いだったら申し訳ないんだけど……。
あなたの名前って、あちゃくらさんかしら?」
単刀直入な朝倉の質問に、ベノスネーカーは動揺したように体を揺り動かす。
「合ってるのね?」
さらなる問いに、ベノスネーカーは頭部を上下させて肯定を表現した。
「……ひょっとしてあなた、しゃべれないの?」
帰ってくるのは、再度の肯定。
「そう。面倒ね……。
まあいいわ。あなたは、私に関係のある存在?」
肯定。
「やっぱりそうなのね……。
おそらくは何らかの理由で変質した、未来ないし並行世界の私ってところかしら?」
肯定。
(うわー、私と思考がほぼ同じ……。
さすが同一人物……)
もう一人の自分と対峙しながら、ベノスネーカー……もといあちゃくらさんは呆れと感動が混じったような複雑な感情を抱いていた。
(まさかこんなに早く、私が私であることに気づかれるとは……。
どうしよう、殺す気バリバリの相手にあんまり協力したくないんだけど……。
でも私なら、当然協力を要請してくるわよねえ)
これからの展開を予想するあちゃくら。そしてそれが当たっていたことが、すぐに判明する。
「あなたが私なら、もちろん私が優勝するために協力してくれるわよね?」
(はい、やっぱりー!)
内心いやがりつつも、あちゃくらはあえて首を縦に振った。
「ありがとう。まあ、当然よね。
あなたは私なんだから」
(まあ下手に抵抗して処分されても困るし、今は従っておきますか……。
私に殺される人には悪いけど、どうも知り合いはいないみたいだし。
あ、でもキミドリさんはいるかも。たぶん向こうの私は、キミドリさんのこと知らないだろうからなあ。
……うん! たぶん大丈夫よね!)
懸念すべき事案を、あちゃくらは雑に流した。
「それじゃあ、あなたとの対話はこのくらいでいいかしら。
さっそく他の参加者を探しに……」
朝倉の言葉は、そこで中断される。
周囲に、ガラスの割れる音が響いたからだ。
厳密には少し前にも同じ音がしていたのだが、たまたまベノスネーカー召喚のどさくさで聞き逃していたのであった。
「わざわざ居場所を教えてくれる人がいあるみたいね。
せっかくだから、ご招待を受けましょうか」
ためらうことなく、朝倉は音の方向へと走り出した。
あちゃくらも蛇の体をくねらせ、その後を追う。
(ククク、不利になれば貴様などポイよ……!)
背後の自分が抱く不穏な思考に、朝倉は全く気づいていなかった。
432
:
支給品になったおまえが悪い
◆NIKUcB1AGw
:2023/11/28(火) 01:03:16 ID:7zMbBcCA0
【G-7 街 ロナルド吸血鬼退治事務所付近/深夜】
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[身体]:浅倉威@仮面ライダー龍騎
[状態]:健康、仮面ライダー王蛇に変身中
[装備]:王蛇のカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して元の世界に帰る
1:ガラスを割った参加者の元に向かう
[備考]
※参戦時期はキョンを襲撃する直前
[意思持ち支給品状態表]
【あちゃくらさん@涼宮ハルヒちゃんの憂鬱】
[身体]:ベノスネーカー@仮面ライダー龍騎
[状態]:健康
[思考・状況]基本方針:生還する
1:今のうちは、朝倉に従う
2:場合によっては、朝倉を見捨てることも辞さない
3:知り合い……いないのよね?
433
:
◆NIKUcB1AGw
:2023/11/28(火) 01:04:33 ID:7zMbBcCA0
投下終了です
問題がありましたら、指摘お願いします
434
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/05(火) 13:15:50 ID:oWO4ZcH60
継国縁壱、ピッコロ大魔王で予約させていただきます。
435
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/19(火) 11:51:26 ID:x7o7jcXM0
申し訳ありません、延長させていただきます。
436
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:45:45 ID:qBbeUYyo0
投下します
437
:
初日の出
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:46:42 ID:qBbeUYyo0
倒れてはいけない、
この邪悪は命ある限り多くの者立ちを
そして何もかもが美しい世界を踏みにじる。
冷徹な行動で他人を冷遇する者といえば
縁壱の中では父親の存在があった。
自身を忌子と罵り三畳の間に入れた父上、
そして忌子の縁壱と遊んだことに激高し、
優しかった兄上を腫れるほどぶってしまったこともあった。
しかしこれらの過激とも言える行いは
何も悪意からではなく信仰の教えにまっすぐに従っただけなのだ。
戦国の時代では何も珍しいことではなかった。
だがこの邪悪からは事情もなく悪意をもたらす存在。
非道な行いそのものが目的の外法の権化。
今まで本当の極悪人を知らなかった縁壱でも生まれついての邪悪さを察知できた。
「先の戦い、いや蹂躙を目の当たりにしておらんようだな!
貴様如きに交代したところでなにができるというのだ!」
大魔王の憤りと疑問の言葉を意に介さず
無言のまま剣を構え、股間の肉棒に一層力をいれる。
この体では元の幼い体では可能だった相手の肉体の内側を見ることはできない。
兄、巌勝の師範を圧倒した時のような感覚で挑むのは得策とは言えない。
しかしキンターマンの肉体は僅かな時間で地球と月を往復しても
息切れを起こさない恐るべきスタミナを持つ。
男性の陰茎は勃起すれば血液で充満し、そそり立ち、陰茎とその周囲もさらに熱くなる。
超人のキンターマンがひとたび勃てば、人間のものとは比較すら馬鹿馬鹿しくなるほどの
圧巻のサイズとなり、業火すら涼しく思える熱を宿す。
元の熱に加え生まれ持った特異な呼吸法により肉体にはさらなる熱が生じている。
そして今、呼吸法を持って活動を続けた影響か
呼吸法による熱が極まった影響か額の左側から側頭部にかけて、
そして陰茎にも太陽の熱気を彷彿とさせる痣が発現した。
大魔王の極寒呪文のマヒャドが直撃しても、
凍結化するどころかしもやけのあとすら一切残らず
むしろ余裕でマホカンタの如く跳ね返せるのだ。
「先の氷塊を打ち返しただけで得意気になっているようだが…
わしの大技があれだけと思うなよ!」
ピッコロは佩狼たちを大いに苦しめた
マヒャドをたやすくうちかえされ狼狽えた。
魔族(またはナメック星人)に不要で付いていない器官の陰茎を
丸太のように太く分厚く巨大化させる時点で気味が悪く、
その上、マヒャドを苦も無く
先ほど唱えたマホカンタの如く跳ね返した。
これで動揺せず平静を保てというのは無理がある。
しかし今放てる技は何もマヒャドのみではない
単に恐ろしく温度が低く、対象の敵を等しく極寒の地獄に晒すこごえるふぶきがある。
氷の塊では跳ね返されるが、肺をも凍らせる冷気ならば打ち返せはしまい。
その巨根を振るい返そうとしてもたちまち氷結するはず。
「カアアアアァァ!!」
口から文字通りゾッとする白色の冷気がほとばしる
地面と空気を凍てつかせつつ縁壱を氷結させ
氷のオブジェにするべく邪悪な吹雪は直進する。
冷気を見据えた縁壱は微動だにせず
股間を大きく開き陰茎を戦槍のようにまっすぐ伸ばしつつ
鉄球の如くのようにぶんまわす。
438
:
初日の出
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:47:38 ID:qBbeUYyo0
「なっ…あり得るか!?こんな光景が!?」
扇風機のように激しくまわる巨大な陰茎がおいかぜを巻き起こし
すぐさま大魔王への逆風と肥大化し
こごえるふぶきを反射した。
今度はこちらが敵を死に至らしめる技を反射させられる。
ピッコロとて予想できなかった。
刃向かうムシケラを絶望させ凍てつかせる猛吹雪が
己を氷結させる危機を招こうなどとは。
「カアアァッ!」
もう一度こごえるふぶきを吐き起こし
反射された壱度目のふぶきを相殺することで掻き消す。
掻き消えている最中のふぶきから縁壱がとびだしてきた。
「き、貴様ァァ!!」
大魔王が2発目の冷気を放った時点で縁壱は地を蹴り
陰茎と託された日輪刀を構えて大魔王へ飛び出す。
ピッコロも右手で陰茎を
左手で刀を受け止めるが反応が遅れ
耐性を崩し、受け止めきれず刀は受け流せたものの
巨根による殴打は捌けなかった。
さながら民家など積み木のようにバラバラに粉砕する丸太を打ち込まれたようだった。
大魔王は溝に打ち込まれた多大な衝撃に耐えきれず
口からは血液と唾液がこぼれ
腹部を押さえながら徐々に後ずさる。
その隙を縁壱は逃さず
ピッコロの懐へ飛び込み刀を突き刺そうとする。
先ほど2連でこごえるふぶきを吐き起こしため
3発目を放つのは多少のインターバルが必要となる。
元の肉体の大魔王ゾーマにはバラモスブロスという
青い体肌のカバのような(一部では竜頭とも言うらしい)魔物がいた。
短時間でもまれに上司の大魔王にすら不可能な3回の行動をやってのける特性を持つ。
配下の魔物にできる技や呪文は上位の魔物も可能とは限らない。
そもそもできるがあえてやらないこともあり得るものの
3回行動は少なくとも元の世界ではバラモスブロスしかできない。
3回の動きは上官の大魔王もあらゆる願いを実現化する神の龍ですらなし得ない。
ようする今すぐ吹雪を吐くのは不可能で、
両手も激痛とダメージが走る腹部を押さえているため
今の大魔王に
巨根の殴打と刀による切り傷の苦痛をかみしめること以外できることはない。
佩狼と真希による疾風迅雷の斬撃と刺突の傷もますます疼く。
防御の構えも回避もできないピッコロは日輪刀の斬撃をもろにうけた。
今回の殺し合いでここまで瞬く間に
翻弄されたの初めてであった。
「やってくれたな…肉体が異なるがわしを
こんなあっという間に痛めつけたのは貴様が初めてだ。」
異なる世界の大魔王の肉体を手に入れ
先ほどの3人組を多少驚くことはあったが容易に蹴散らし
ピッコロは少なからず慢心していた。
このパワーで猛威を振るえば必ずや悪と恐怖で殺し合いの舞台を埋め尽くせる。
そして最後には願いを我が物とするのだ。
正義を振りかざす輩などこの手で退治し、
役に立ちそうな極悪な参加者は配下に引き込もうとしていた。
そして何もかもが思い通りになるとは限らないことを思い知らされていた。
唐突に現れた褐色の巨漢の刀と股間にそびえる巨根わけのわからぬ
攻撃の前に追い詰められ動揺しつつも闘志をふり絞る。
大魔王として矜持と悪への執念が敗北を許さぬのだ。
439
:
初日の出
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:48:13 ID:qBbeUYyo0
◆
嫌だ、心苦しい、やっぱり自分は武器を持って
相手を傷つけることに向いていないのだ。
目の前の者を痛めつけ破滅の渦中に引きずり込む殺し合いに
どうしても価値があるとは思えない。
この邪悪を倒さないと他の美しい命が奪われる。
だから刀を手に取って切らなくてならない。
股間に龍のように伸びた男根を叩きつけなければならない。
理性ではそう思いこもうとしても
武器で傷つけること事態に恐怖と逃避感を感じずにはいられない。
巨根で殴られ刀の切り傷を負わせられた
ピッコロを見るごとに縁壱は静かな怒りとは別に
蝕むような罪悪感が芽生える。
四肢の動き、的確な判断力、敵の技への対応
どれをとってもまるで幾多の修羅場をくぐり抜けた熟練者のような無駄のない
初めての実戦とは思えぬほど戦い様であった。
少なくとも動揺と恐怖といった負の感情を背負い
戦いに逃避感とおびえを持つ者とは思えぬ強さだった。
「可能ならもう引いて欲しい。」
「なに…?」
「こんなに痛めつけ合って何になるんだ。」
縁壱の口から戦いの終息を願う言葉がこぼれる。
素朴な感性の持ち主で争いを拒むこどもにとって
命のやりとりはこころ苦しい災厄でしかなかった。
「はっはっはははは…おかしなことを抜かしおって!
わしにあれほどのこうげきを叩きつけたヤツの言葉とは思えんわ!!」
一方ピッコロ大魔王からすればつまらんギャグにもならない
戯れ言にしか聞こえなかった。
甘ったれたしょうも無い正義感を振りかざし
殺し合いを止めようとする時点で論外だが
こいつはもう論外未満だ。
今までも正義の味方気取りの武道家どもは数えきれぬほど殺してやったが
苦痛に悶えているにも関わらず笑ってしまうほど滑稽だ。
そもそもこの大魔王を苦戦させるほどの猛者なのだから
邪魔な者は実力でねじ伏せれば済むだろうに。
この大魔王がお涙頂戴の説得や
ちょっと不利に追い込まれたくらいで降参するわけがない。
悪の権下ピッコロ大魔王にとって素朴で善良な人間の感性なんぞ
生まれ変わって善良にでもならない限り理解も受け入れもできるわけがなかった。
「しかしやってくれたな…肉体が異なるがわしを
こんなあっという間に痛めつけたのは貴様が初めてだ。」
命のやりとりを好んでも逃避感があろうとも
この戦いはどちらかがバラバラになるまで終わらない。
激しい猛攻を正面から喰らったピッコロは苦痛が多少は治まったのか
腹から手を離し闘志と殺意を燃え上がらせ構える。
440
:
初日の出
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:48:37 ID:qBbeUYyo0
氷塊の呪文も吹雪のブレスもこの棍棒男には通じない。
ならばこの肉体のパワーと技術を持って
息の根を止めるしかない。
極寒の技だけが大魔王の武器にあらず。
ローブとネックレスを身につけた外見のため
戦士のような豪快な物理攻撃は
得意ではないように見えなくもないが実際は別だ。
先の戦いで佩狼の肉体を手刀でたやすく貫いたように
大魔王ゾーマのこうげき力は人体など簡単に貫き壊せるほど凄まじい。
しかし凄まじい破壊力を備えるのは敵も同様、
肉弾戦は熾烈を極めどちらかがバラバラになるまで終わらないほどに激しくなるはず。
「ぬうぉぉおおりやあ!!」
地を蹴飛ばしたピッコロが縁壱の身を粉々に砕くために
鉄拳を握りしめ振るわんとする。
約7尺(約2メートル)以上の巨体からは想像もつかないほどの速度で向かってくる。
元の体で相手の臓腑な筋肉の流れを見れば回避はたやすいが今の肉体ではそれが不可。
無理に避けようとしてもタイミングが遅れ対処をするのは極めて難しい。
ならばとれる手段はただ一つ。
真正面から棍棒のような肉帽で大魔王の拳撃をうけとめるのみ。
「ぐんぬ…おおおおお!!」
ピッコロの片手は肉帽に止められた。
互いの動きがつばぜり合いで止まる。
縁壱の魂が宿ったキンターマンの肉体は
本来背丈の小さい50万パワーのとある超人にも
力が劣り35万パワーしかない。
筋骨隆々のマッシブな外見ではあるものの
力は並かそれ以下の可能性がある。
故に世界を闇で塗り替える大魔王のパワーにあらがえるはずもないが
縁壱が使いこなせる呼吸の特異な力によって限度を超えた膂力を引き出している。
単純な力比べで渡り合えるのは縁壱の呼吸のおかげだ、
逆に言えば呼吸の力がなければ渡り合えないことでもある。
正面から伸びた陰茎が防がれ動けなくなれば何もできない。
片手に携えた日輪刀で斬りかかれはしない。
陰茎が長すぎるあまりに先端を止められれば武器による攻撃は届かない。
その気になれば強引に陰茎を切り離して自由に動くことはできるだろうが
キンターマンの肉体を縁壱は極力傷つけず
本人に返すつもりでいるためそんなことをするわけにはいかなかった。
そしてピッコロは空いているもう片方の手に魔力を込め弾丸のように放つ。
弾の速度は半端ではなく縁壱は被弾する。
焼け付くような衝撃と痛みに眉を顰める。
(ようやくこちらの一撃が通じたわ…氷の呪文は完全に対処されたが
あらゆる技が通用しないわけではないようだな。)
攻撃が初めて通じ、ピッコロは少し安堵する。
この猛攻の手を緩めずケリを一気に付けに行く。
大魔王ゾーマの肉体で可能な技や特殊能力を調べるために
フルパワーを敢えて発揮せず、あえて茶番に興じるような
遊び感覚で戦ってきたが、
余計なお遊びは今は控え目の前の男を手加減せず
全身全霊で殺そうとする。
そのためにもピッコロは再度、指先に魔力をため込み光弾を発射する。
大魔王は光弾の連射をやめず、執拗に撃ってくる。
441
:
初日の出
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:49:04 ID:qBbeUYyo0
何発放ってきたのか、縁壱は何発喰らってしまったか。
両手ではとても数え切れないほどの
光弾を受けた縁壱の身は焦げぐったり倒れ伏せた。
日輪刀を手から離してしまい
その隙を見逃さずピッコロは煉獄の日輪刀にも光弾を放ち粉々に破壊した。
「さぁどうする?もうたちあがらんのか?」
大魔王が放つ攻撃手段に完全に対応できる人間などやはりいるはずがない。
ガンガン攻めていき、この薄気味悪い棍棒男をとっととぶち殺したいが
まだまだ手札を隠している恐れもある。
慢心を抑えた大魔王に隙は極めて少なかった。
(苦しい、背を向けて逃げたい気持ちがある、だけど。)
攻撃が初めて通じたピッコロに対し
縁壱にも初めてのことがあった、それも生まれて初めてのことだ。
それは相手の反撃で傷を負ったこと。
争いはやはり何より恐ろしく肯定しがたい。
乱暴な言葉による争い、武器を持って命を狙う争い。
父上はかつて忌子の自分と遊んでくれた兄上を殴り、
それを良しとせず烈火の如く怒りを燃やした母上と言い争った経緯がある。
あの時は悲しく苦しく気持ちでいっぱいだった。
自分の存在があったせいで命を助けてくれた母が、
信心深く武家の使命と責任に真摯な父が、
そして禁じられ発覚した時は容赦なく暴力を振るわれるのにも関わらず
自分を気遣ってくれた優しい兄が。
優しくて正しい家族が憤りを向けあい傷つく機会はもう二度と来ないで欲しい。
あの時以来縁壱はもめ事や喧騒を一層苦手とするようになったかもしれない。
まだ縁壱は諦めてはいない、
今は恐怖だがここで果てればさらに多くの者が
恐怖のそこに沈みゆく。
それでも闘志がまだ完全には霧散していない証なのか
股間の熱き肉の棒はいまだに大樹の如くそそり立っていた。
「やはり人間どものレベルはこの程度よ、
ちょっと痛めつけられたくらいでズダボロではないか
お前ら人間なんぞが魔を凌駕できるはずなどなかったのだ!」
完全なとどめを刺すべくピッコロ大魔王は縁壱の縮まらない肉棒を握り
まるで旗を陰るように中へ上げた。
そのまま大地へ振り下ろし地へ叩きつけ、次は左方向に上げて再度叩きつける。
左のつぎは右に、そのつぎはまた左に、そのまた次は右に振り上げ
叩きつけるのを何度も繰り返し地へ、さながらムチのように叩きつけた。
一度一度地へぶつけられるごとに肉体へ激痛が蝕む、
数多の手傷が生じる巨漢の肉体からは血が噴水のように噴きあがる。
地べたのぶつかり合う衝撃と轟音が生じる。骨もいくらか折れている。
鍛錬を繰り返した強靭な筋力と
丸太のような陰茎を有する肉体でもこれほど攻められば瀕死は免れない。
幾度となく叩きつけてやったピッコロは
とどめに真上に跳躍し、掴んだ縁壱を投槍の如く地面へ投擲する。
「とっておきのダメ押しといってやるわ!グチャグチャにしてくれるぞ!」
重傷を負い動けない縁一を狙い大魔王は、宙に浮いた状態でマヒャドを唱えぶつける。
さらにそのまま急接近し、魔族特有の人差し指から気光弾をゼロ距離でぶっぱなし、
とどめに凍える吹雪も吐き散らし、これも気光弾に続きゼロ距離で放った。
「これにてお終いよ…、多少は驚かせてくれたが、
貴様たち軟弱な人間がどんな力も得ようが大魔王様には足元にも及ばんのだ。」
大魔王は勝利を確信していた。
取るに足らない愚かな人間なんぞが魔に属する者たちの頂点に勝てるはずがない。
442
:
初日の出
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:49:21 ID:qBbeUYyo0
かつて大魔王を電子ジャーに封じこみトラウマを植え付けてきた
武道家どもの長を務めていた武泰斗でさえ
結局倒しきることはできなかった。
むしろ絶対に倒せないからこそ封印という手段をやむを得ず選択したのだ。
443
:
輝け日よ
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:50:04 ID:qBbeUYyo0
中編、「輝け日」をとうかします。
444
:
輝け日よ
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:50:23 ID:qBbeUYyo0
(もうなにも感じることができない、記憶だって薄れていく。)
五感が徐々に消えかけ縁壱の中で全て黒色に、
真っ暗になっていく。眠くもなってきた。
疲れだって出てくる、継国家を出奔して
赴くままに走っていても疲れは感じなかったのに。
思考も薄れてきた、今の自分はどうして戦っていたのか
そんな単純な理由だってわからない。
縁壱はもう死体も同然だった、
勇ましくそびえ立っていた肉根も今は常識の範囲内のサイズに収まり
丸太のように太く強靱な見る者を圧倒させる大きさが嘘のようであった。
忌子の自分にできることなど元から何にも無かったのだろう
なんの価値もなくこの生になんの意味も無かった。
疎まれ蔑まれる忌子の自分が誰かの役に立ち助けて、
誰かの希望となり穢れのない命と守り抜く。
そんなことを思い戦ってきたが単なる傲りだった、
身の程をわきまえずできないことを無理に実行しようとした一人の愚か者、
それが継国縁壱という子どもの全てだった。
当然の失意とまぎれもない絶望に引きずられながら幼い少年の命は死へ堕ちた。
『落ちこぼれのどこが悪い!?世の中ウルトラマンやゴジラばっかりじゃないわい!』
この声は誰の声なんだろう、死んだ自分にはもうなにもきこえないはずなのに
とっても熱く大きくて快活な叫びだ、
自分には芯の強さと揺るがない自信と決意が秘められている。
それでおいてなんだか無邪気にも思えた。
日本一の侍を目指したあにうえのような純粋なあこがれ…、
これらの声には相手を何が何でも助けたいという慈悲も感じた。
その声を耳にすると勇気が芽生えてくる。
自分ではない誰かのために力を使わなければ
この男を絶対に止めなくちゃいけない。
大魔王の氷塊と吹雪に凍てつき傷ついた
極低温のからだに太陽のような熱気が宿りはじめた。
死にかけていたとは思えない温かさ縁壱を再び動かす。
これは友情パワーまたは火事場のクソ力と呼ばれる力であった。
このキンターマンもキン肉スグルとバトルロワイヤルという形式で一戦交えた経験がある。
火事場のクソ力はその力を持って戦えば対戦相手にも移り
その移った者がさらに他の相手と戦えば火事場のクソ力もまた移る。
このようにキン肉スグルが編み出した火事場のクソ力はとめどなく広大化していたった。
その力が今継国縁壱にも渡った。
冬の凍てつきと積雪を緩やかに溶かす春の穏やかな陽光の如く静かに輝くと
輝きが縁壱を覆った段階で、夏の太陽も同然に縁壱はまばゆくも鮮烈な光を放った。
その光はまさしく夜明け、日の出だった。
「し、死体がなぜおきあがるのだ!」
こいつは不死身とでもいうのか、
なんの理由で物言わぬ骸が足を地に着け再び動くというのだ。
445
:
輝け日よ
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:50:50 ID:qBbeUYyo0
心臓を確かにとめたはずだ。
なのにまた立ち上がるのおかしい、明らかな理不尽。
急所の箇所を削られはかいされて生き延びる人間などありえない。この男はいったい何者だ、いやそもそも本当に人間なのか?
われらと同じ魔族のような正真正銘の怪物だったのか?
「だれかの温かく大きな声が聞こえた」
「声だと、わしにはなにもきこえんかったぞ…
きさま頭がおかしくなり幻聴でもきこえたか?」
「その声が倒れて弱い俺を支え動かしてくれた」
「起き上がってくる体のみならず頭も意味不明な奴め…!
事実なんぞもはやどうでも良い!今度こそ貴様を地獄に叩き落としてくれる!」
次は確実に息の根を止める、心臓を停止ではなくその肉体を消し飛ばすくらいの気概で行かねばこいつはくたばらない。
自らの口に片手を突っ込み、体内にためられたこごえるふぶきで凍結させる。
凍てついた手は氷結の剣と化かした。
真っ二つに泣き別れろ!
バラバラの刺し身にしてやることで即死を目論む。
大魔王の凍てつく魔刃が超人の肉体を引き裂かんと牙をむいた。
唐突に嵐のような風が吹き腕にとてつもない衝撃が巡ったかと思えば
凍った手が腕もろとも宙を舞っていた。
「こ、これは…?」
下人の姿に目を向けると
巨根のスイングで腕を凍った手刀もろとも弾き飛ばし
そのスイングで大風が放たれたのは疑う余地もなかった。
「ご、おおおおおぉぉぉぉ…」
胴体から右腕が根元から跳ばされ欠損の苦痛に包まれる。
ピッコロ大魔王の元々の肉体は一応自己再生力を有する
ナメック星人であり、体力を消耗するが
おそらく欠損などトカゲの尻尾の如くすぐさま復活できるはずだ。
だが大魔王ゾーマの肉体に再生能力や回復の手段は特にない。
本来ならば即再生できた重傷を治癒することは今はできなかった。
何より蔑んでいる人間如きにここまで追い込まれるのはとんでもない屈辱であった。
(やはりこいつは…ただの人間とは違う…!人外以外にはありえん!)
大魔王は確信した、こいつは人間を超えた生き物なのだ。
その推論は見事的中している。
遙か古の時代に神々が想像した種族の超人、
キンターマンもその超人の一人なのだ。
月まで往復できる異次元のスタミナ、
男根を丸太のように巨大化できる力、
こんなことはただの人間には間違いなく不可能な芸当。
まさに人類を超越した優秀な種族、それが超人。
この世を安寧に導くために
強く勇ましく造られただけにあり伊達ではない。
そして火事場のクソ力、縁壱はいまに
オメガケンタウルスの海賊超人が言うところの第二段階のパワー、
己のためではなく他人のために戦う際に発揮される力とともに戦っていた。
「もう一度言ってみる、もう引いて欲しい。」
新たな力を手に入れ格段に実力が増しても
戦いを嫌い、平穏な形での決着がつくことを臨まずにはいられない。
ものわかりの良い大人であれば説得で
ピッコロ大魔王という根っからの極悪人は応じないと断言できる。
446
:
輝け日よ
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:51:09 ID:qBbeUYyo0
こんな状況でも対話を試みるのは縁壱に宿る確かな善性ゆえか
または子ども特有の単なるわがままかもしれない。
「二度と口を開くなああ!」
激昂するままに残った手で殴りかかるも
迫力や力強さはアルもノン動きが単調で拳の軌道は読まれ回避される。
対照的に縁壱の動きには一切の無駄がなく、避けたのとほぼ同時に背後へ回り
重い男根の一発を背へ向けてたたき込んだ。
血反吐を口部から爆発させたようにぶちまけ
仰向けにピッコロは倒れこむ。
(こ、このままでは…ダメだ!!勝てぬ!!)
凍てつく冷気の呪文やブレスは通じず
膂力を活かした暴力と気光弾で黙らせるのには一度は成功した。
しかし死体となった状態から復活し、おまけにさらなる強さとパワーを発揮して
再度向かい完膚なきまでに打ちのめしてくるなど
ピッコロ大魔王からすれば理不尽な苦痛を思い知らされたようなものだ。
屈辱を晴らす以前にこのままでは殺される。
なにか打開する方法はないのか、
デイバック内にある支給品をたよってみるか、
それもだめだろう役に立つ道具を使っても
使うわずかな時間が隙となり、
使用を許さず一方的に蹂躙されてしまう。
氷のブレス、呪文が通じず肉弾戦で挑み有利に立ち回り
ついぞこの男を地獄へ葬ったと思いきや
突如やつの全身が閃光のように輝き
見たこともない力を見せつけてきた。
奴の表情からして今までこの能力を使えていたのではなく
この絶体絶命の土壇場で新たなる能力か謎のパワーに目覚めたらしい。
にわかにはありえぬ話だが強大な力に追い込まれれば追い込まれるほど
ヤツは壁を乗り越え未知の領域にまで進化するというのか。
(ま、まさか…わしがここで終わるというのか…
まだ全然恐怖も絶望も振りまけてオランというのに…!)
もちろんピッコロ大魔王にとって、引けなど言われても降参の勧めにしか聞こえない。
下等な人間と思っていた敵に降参せよと言われても後退はなにがあってもしない。
こいつの存在だけはなんとしてでも消し飛ばす。
欠損しようとも大魔王の憎悪と戦意が薄らがない。
だが度し難い力の差を埋めて勝たなくては打開は不可、
バトルロワイヤルの舞台を恐怖と悪で包み込む野望など夢幻と散る。
447
:
絶望の大魔王
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:51:47 ID:qBbeUYyo0
後編「絶望の大魔王」を投下します。
448
:
絶望の大魔王
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:52:09 ID:qBbeUYyo0
(諦めん…ワシは諦めぬぞ…!!)
大魔王に宿る悪意や憎悪の邪悪な感情がさらに燃え上がる。永久に崩れぬ闇と絶望の世界を蘇らせるためこんなところで倒れるわけにはいかない。
大魔王の足元から黒紫の火のような瘴気が生じたのはその時だった。
「こ、これは、いったい…」
突如大魔王に舞い上がった禍々しい瘴気に縁壱も怪しみ警戒する。
今から起きようとする何が尋常ではない
人の手には余るおぞましい出来事だとはすぐに理解できた。
なにか邪悪な事を起こそうするまえに
縁壱はダンコンを引き締めて膂力を込めつつ
大魔王の頭をかち割るため縦方向に上げ
ギロチンのような速度で振り下ろした。
今までは男根の一発は通用していた。
異常事態が起こってしまう前に
即死させることによってカタをつけるのだ。
だが振り落とした陰茎が大魔王の頭部を破壊することなく、
大魔王を包む未知の結界に激突し、
破壊することは叶わなかった。
「カアアアアア…。」
(これは…。)
縁壱の本能と全身の細胞が泣き叫んでいる。
今すぐ足を後方に行くために
死力を尽くして動かし逃走するべきだと。
今までに思い知った事の無い絶望が今来たると。
しかし絶大な恐怖に蝕まれても背を向けることはしなかった。
未知の力を有した今、目の前の怪物を倒せる可能性はまだまだある。
決めたことは曲げない、この男を倒し
被害と猛威を野放しにはしないと固く決めた。
前に大魔王と戦っていた3人のためにも後ろを向かない。
449
:
絶望の大魔王
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:52:27 ID:qBbeUYyo0
「この勝負どちらかがバラバラになるまで終わらぬようだな…。」
大魔王の重厚で邪悪な声が響き渡る。
「くっくっくっく…この大魔王をここまで追い詰めるとは
このバトルロワイヤルで貴様を超える戦士はおらぬだろう…」
火事場のクソ力という謎の能力を自在に使いこなし
限界を突破した継国縁壱の類を見ない力は
いかに無双を誇る大魔王でも認めざるを得ない。
この滅びと敗北へ追い込まれる危機感と戦慄は
否王でも遙か昔にむたいとなる武道かに封じられた忌まわしき過去を思い出させてくれる。
この地上にまだこのような化け物がいたとは…。
「この大魔王以外を除いてな!!」
大魔王の強靱な肉体が、
周囲に黒紫煙が竜巻のように渦巻き
やがてこの世界そのものを包み込むように覆い尽くした。
一抹の光すら許さぬ暗黒が際限なく広がり
縁壱の視界は闇で真っ暗になる。
そして静寂だけが残る、先ほど死闘を繰り広げた大魔王の姿も見えない
仮に今透き通る世界が使えてもこの深き闇によって
大魔王の姿を見ることができないという確信のみがあった。
気がつけば力は発動しているはずなのに自身が光を放たなくなっている。
しかしこの溢れ出る力の実感は途絶えていない。
この闇の空間は文字通りどんな光でも存在を許さない闇の世界らしい。
全てを覆い尽くした闇が蠢き一点に集いはじめた
天空を包む闇が
地を侵食する闇が
地平の彼方すら一色に染め上げる闇が
逆らえない引力に呑み込まれるように集結する。
縁壱がを見抜くとその場には確かに大魔王がいる。
しかし先ほど戦ったものと同一の存在に思えないほどの変化があった。
「おお…なんだこのとてつもないバリアは…
満ちていくぞ…わしすら想像つかぬほどの素晴らしい力ではないか…。」
大魔王の肉体は燃えさかる闇をまとい
以前とは別の存在に思えるほどの存在に生まれ変わっている。
宿っている魔力と闇は無限に思えるほど濃く深くなり
負の存在、この世界に存在する闇という概念そのものに化けたのではないか。
「この偉大なパワーを今の貴様で存分に試すとしよう!
簡単には壊れてくれるなよ…?」
450
:
絶望の大魔王
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:52:52 ID:qBbeUYyo0
雰囲気も次元も今までとは明確に異なる。
敵もまた絶体絶命の窮地で新しく凄まじい力に覚醒した。
先手必勝、新たな力を持って猛攻をたたみこむべく
ピッコロは手刀を再度欠損していない片方の手で構え、突撃する。
それを縁壱は下の棍棒を構え迎え撃とうとする。
敵の速度はたしかに増している。
それでも反応できないわけではなかった。
先と同じく一発打ち込めばいい。
それが過ちで致命傷に至るとは想像もできなかった。
手刀が陰茎に触れたのとほぼ同時に股関から真紅のシャワーが吹き乱れる。
「棒はなくなったぞ!」
いまいましい武器の陰茎を切断したことにより歓喜のあまり高笑いをせずにはいられない。
やつの最大の武器はあの男魂だったのだ。
それが全く使えなくなればもうアリンコのようなムシケラ同然だ。
無欠の闇、闇の衣をまとった大魔王の最大の武器は
絶対零度のブレスでも偉大な魔力から打ち出される
氷の呪文でもない。
どんな願いでも叶える神の竜と並ぶ守備力と俊敏性、
どんな大ダメージも確実に言える自動回復力、
元の世界では誰もが超えらぬ究極の膂力が大魔王の真の武器であった。
今まで体感したことのない酷すぎる苦痛に
縁壱は壊れたように泣き叫び嘔吐もしそうになる。
最大の武器にして男の象徴の男性器が切除されるのは想像を絶する苦しみ、
まさしく絶苦であった。
「その棒がなくなればもはやなにもできまい!」
息も乱れもだえが止まらない。
今後たとえ生き延びてもこの苦痛を超える痛みには遭うことがないと思えるくらいだ。
苦痛と絶望感がとれる気配がまるでない。
歯を食いしばりたとえ
五体が粉のように霧散するほど
くだかれようとも、立ち向かわなくてはならないというのに。
そうだ陰茎が切断されたからなんだ、
手も足だってまだ残っている。
武器は陰茎だけではない。
こちらから一撃をどうにかしてお見舞いし活路を見いだすのだ。
大魔王の心臓の位置めがけて突進するも、
その攻撃は両手で簡単に止められてしまう。
「素晴らしい、最高のパワーに目覚めたのは貴様だけではないようだぞ…!」
戦慄せずにはいられない、大魔王の今のパワーはまさに最高潮に達していた。
縁壱はまるで自分が生き物ではなく大地震でも生じない限り
崩落しないような大山を相手に戦っているような気分であった。
ちょっとやそっとの衝撃では永遠に動じない。
火事場のクソ力を含めて渾身の一撃も今の大魔王相手には蚊ほども効いていない。
さらに驚くべき事に今までうけた傷もいつのまにか再生している。
やみのころもはただ身体能力を恐ろしく底上げする以外に
尋常ではない回復力すらも付与するのだ。
欠損していた腕もほぼ完治し、
新たな腕がまるで何事もなかったかのように復活していた。
(ここまでパワーを身につけられるとは
下手すれば全盛期の力にも匹敵するではないのか…?)
451
:
絶望の大魔王
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:53:10 ID:qBbeUYyo0
最盛期のピッコロ大魔王のパワーはまさしく絶望的な強さであり
どんなに屈強な者でも敵わないと悟らせるほど。
その時の最強の力に並ぶほどこのやみのころもをまとった
大魔王ゾーマの実力は恐ろしい
その力を今は我が物としている
ピッコロ大魔王さえ狂喜を通り越し戦慄するほどだ。
もしこのバトルロワイヤルが自分の優勝で完遂され
元の魔族の肉体に戻れても
大魔王ゾーマの魂または精神を無に返さない限り
大魔王と大魔王の魔の真の頂点を争う決戦が待っているかも知れない。
(まぁそういったことは後に考えればよい…。)
いますべきことはまずは散々煮え湯をのませてきたこの男に
絶望を刻みながら死に至らしめることだ。
覆すのは不可能なのはわかりきっているはずだがそれでも男はまた
この大魔王に向かって攻撃を加えようとする。
「ぐはははは!往生際の悪い奴め!
貴様にはもうなにもできんというのがわからんのか!」
またこちらに向かって突進してきた、
ワンパターンで芸のないヤツだ。
単純なこうげきは通用しないというのに。
縁壱も肉体だけに頼った攻撃は控え支給された道具を活用しようとしたが
それはやめた、バックの中身に手をいれた瞬間に怒涛の攻撃を間違いなく行ってくる。
だからこの肉体に頼ったちからで未知を開くしかない。
「ハアッ!!」
縁壱の頭をがっしりにぎりそのまま捻り縁壱の頸をあらぬ方向に曲げて首骨を破壊した。
この時点でもう縁壱は戦闘不能に陥ったがそれでも手を緩めない。
さらに上空へ放り投げ、ピッコロは下半身に力をいれ真上に跳躍する。
腹部を狙い握り拳を落としあまりの力に地へ殴り堕とされるのではなく
そのまま胴体を両断されてしまう。
決着は恐怖と絶望をつかさどる大魔王の勝利に終わった。
泣き別れとなった縁壱の胴体が地面に落ちる。
後に鬼殺隊の全集中の呼吸を伝え
悪鬼滅殺へ導き繋げるはずの命はいま散った。
452
:
絶望の大魔王
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:54:21 ID:qBbeUYyo0
(なんとか…なんとかしなくては…おれが…)
それでもなお諦めたくはない。
この邪悪だけは…自由にさせてならない
その一心で消えゆく命はまだあがかんとする
いくらでも悪足掻かなくてはだめなんだ。
長きにわたって戦い抜こうとする意思と執念があろうとも
死という終わりを覆すことはできない。
幼い日輪は死という永久凍土の中で眠った。
もう覚めることはないのだ。
【継国縁壱@鬼滅の刃 死亡】
ラストのゾーマの血の文
この世と人間どもに宿る希望とひかりを絶望と恐怖の闇を持って滅ぼし
天地を暗黒に染め上げ、未来永劫崩れぬ闇と絶望の世界を招来させ
完全無欠の負の権下、それが大魔王という概念。
天に浮かぶたった一つの太陽は凍てつく大魔王という極寒によって
誰かを暖め照らし希望を残すことは二度と叶わなくなった。
(さぁ待っていろムシケラどもよ…今に…今にこの力で存分に絶望させてくれるわ!)
元の魔族の肉体を取り返したあとにおきるであろう
大魔王ゾーマとの決戦も並大抵では終わらない死闘になるはず。
しかし少なくともこのバトルロワイヤルの会場にいる今は
恐怖と絶望をまき散らすのが優先だ。
さらに言えばナギとまきとかいうゴミどもをさらに怯えさせ絶望させたい。
自分たちを助けた男がどんなに嘆くだろうか。
その絶望と旋律に染まった表情もできればおがみたい。
ただ自分が殺したと言っても信じないまたは
別の要因で命を落としたと思い込む可能性もある。
そこでピッコロ大魔王は自分が殺した証のため
切断してやった陰茎をデイバックにしまい込んだ。
闇の衣をまとい真の闇へ至ったピッコロ大魔王は
さらなる地獄と悪意を見せつけるために悪行を繰り返す。
文字通り悪の概念しかない大魔王に良心や情けは1パーセントも存在しない
絶対なる悪こそが揺るがない存在意義なのだ。
【F-3】
【ピッコロ大魔王@ドラゴンボール】
[身体]:ゾーマ@ドラゴンクエストIII
[状態]:ダメージ(小、回復中) MP消費(中)、闇の衣による児童回復。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(自分、佩狼、縁壱)、ランダム支給品1〜4 爆弾×3
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
1:この闇の力を持って恐怖と地獄を全ての者に思い知らせる。
2さきほどのごみども(ナギ、禪院真希)にこいつ(縁壱)の棒を見せて死を理解させ絶望させたい。
[備考]
※参戦時期は封印が解かれてから、悟空と最初に戦うまでの間
※闇の衣をまといました。
※継国縁壱の支給品を奪いました。
453
:
◆0EF5jS/gKA
:2023/12/26(火) 06:54:40 ID:qBbeUYyo0
投下は以上となります。
454
:
◆8eumUP9W6s
:2024/01/13(土) 00:55:11 ID:ULId31Hc0
五条悟、城戸真司で予約します
455
:
◆8eumUP9W6s
:2024/01/27(土) 08:52:13 ID:JzhQ7boE0
報告が遅れてしまいましたが予約を延長します
不可能なようなら一旦破棄します、申し訳ありません
456
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/01/27(土) 10:30:18 ID:l4vWfyO20
>>455
申し訳ありませんが、予め用意していたルール通り、予約については今回は破棄と扱わせていただきたいです。
なお、本来の期限から5日経てば再予約は可能であり、この予約不可期間の間でも投下自体は可能です。
457
:
◆8eumUP9W6s
:2024/01/27(土) 10:35:08 ID:JzhQ7boE0
>>456
了解しました、一旦破棄させて貰います
458
:
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 07:08:07 ID:zxwgFsis0
夏油傑、予約します
459
:
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 16:40:43 ID:zxwgFsis0
投下します
460
:
Merry Christmas
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 16:43:31 ID:zxwgFsis0
「おいおい悟…君までいるなんて、冗談だろ?」
放送を終え、タブレットで参加者の名前を確認した夏油傑は、思わずそう呟いた。
五条悟。
五条家の六眼。
最強の呪術士。
そして…親友であり敵だった男。
「あいつをあっさり攫ってこんな催しに巻き込むとは、どうやらこの殺し合いの黒幕は、とんでもない奴らしい」
あるいは…この夏油傑の気配を察知して追ってきたか…と考えるのは流石に自意識過剰か。
あの悟ならそれくらいの規格外のことをしでかしてもおかしくないが。
まあ、救いがあるとすれば肉体の方に悟の名はなく、この悟は六眼を使えない以上本来の力を使えないだろうということくらいか。
ただ、あの悟であるし肉体が変わっていても全く油断はできないが。
そして、肉体の方にも見過ごせない名前があった。
「伏黒甚爾…あの時の奴も、肉体だけとはいえ復活しているのか」
それは、まだ夏油が呪術高専にいた頃。
悟とともに臨んだ任務で、星漿体の少女、天内理子を守る任についた夏油は…失敗した。
理子を、この伏黒甚爾に殺されて。
結局あの化け物は悟によって倒されたが…それより以前に、夏油は彼に敗北している。
正直、今でも勝てる自信はあまりないし、現在のこの肉体ではなおさらだ。
肉体の方が連れてこられているとなると、下手したら悟以上の厄ネタと言えるかもしれない。
「とりあえず…彼らは今は避けておくか」
地図を見ると、見知った場所といえるのは禪院邸だが、こっちの方に行くのはやめておこう。
参加者の中には悟の教え子の禪院家のお嬢さんがいるようだから悟が合流の為にこっちに来る可能性は高いし、伏黒甚爾も禪院家関係者らしい。
甚爾のプロフィールを見た精神の持ち主が興味を引かれてそっちに向かうという可能性もなくはない。
今は避け、他の参加者に倒されるか、消耗したところを討つ。
かつて伏黒甚爾が五条悟に仕掛けた策を真似ているようなのは癪だが。
461
:
Merry Christmas
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 16:44:09 ID:zxwgFsis0
「…支給品を見ておくか」
今のこの身体だけでも召喚した剣や魔物など、手札としては悪くないが。
悟や甚爾を相手取るには足りない。
有用な道具がないか、確かめておくべきだろう。
「サンタ服…バカにしているのか?」
一つ目の支給品…サンタ服。
しかもミニスカ。
説明によると喜多郁代…参加者の中にも名前があった女子高生の私物らしい。
肉体のギラヒムは結構長身なので当然夏油にこれは着れない。
着れたとしても着ないが。
「…その喜多郁代という子に渡せばよかったんじゃないかな?」
ちなみに現在の喜多ちゃんは腰みのと変な皮というまともではない服装である。
会ったら渡してあげれば喜ぶと思うよ?(ちなみにキタキタおやじは160cm、喜多郁代は158cm)
ともかく気を取り直して二つ目の支給品を取り出す。
「…私がクリスマスに騒ぎを起こして死んだことへの当てつけのつもりかい?」
二つ目の支給品…プレゼント箱。
説明にはワッピーちゃんのぬいぐるみが入っているとしか書いてない。
脱力しつつ一応プレゼント箱を開けてみると、
『ウソだよ〜〜!!』
ビヨーンと飛び出すびっくり箱。
同時に、支給品説明の内容が変わった。
『ワッピーちゃんのぬいぐるみが入ったプレゼント箱……というのはウソだよ〜!
ほんとはびっくり箱でした〜!』
グシャリ
地獄王特製びっくり箱は無惨にも夏油の足で踏みつぶされた。
「…最後の支給品も見てみるか」
全く期待できないものの、最後の支給品を取り出し…
「なっ…!」
夏油は思わず絶句した。
彼の三つ目の支給品…それは
真っ二つになった五条悟の死体だった。
462
:
Merry Christmas
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 16:45:28 ID:zxwgFsis0
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「さ……と……!?」
死体と共に出てきた説明の紙を見る。
『2018年12月24日、両面宿儺との決戦に敗れた五条悟の死体。』
「両面宿儺…あの大昔の最強の呪術師か!?」
夏油も話だけは聞いたことがある。
両面宿儺。
1000年前、呪いの王とも呼ばれた最凶最悪の呪術師。
自分が死んだ1年後に、どういう訳かこの大昔の怪物が蘇り、悟は戦い、そして敗れたらしい。
「そうか……悟、お前負けるのか」
落ち着いた声で、夏油はそう呟いた
事情が分かれば、あっさりとしたものだった。
無二の親友の死を嘆くには、自分は知りすぎた。
人の死も、悲しみも、絶望も。
ただ、この最強が負けたという事実への衝撃だけが、なかなか抜けてくれなかった。
「はは…なんだ悟、最強のお前でも、負けるんだな」
敵対しておいてなんだが。
夏油は、この男がこうして完膚なきまでに負ける姿というのが、あまりイメージが湧いたことがなかった。
昔ならいざ知らず、天内理子の一件の後の悟は、本当に最強だったから。
「全く…とんだクリスマスプレゼントだな。それとも誕生日プレゼントだったりするか?この世界が今何月何日かは知らないが」
そんな軽口を叩きながら、夏油は先のサンタ服とびっくり箱は放置し、悟の死体だけを回収した。
死体とはいえ、あの五条悟の肉体だ。
何か使い道があるかもしれない。
「さて、動くとするか」
行き先はもう決めてある。
ここから南にあるペシミズム厭世病院だ。
名前こそ妙だが、病院であるなら医療品があるかもしれないし、手頃な負傷者がやってくるかもしれない。
「悟…悪いけどこの世界でも負けてもらうよ。『元・最強』」
463
:
Merry Christmas
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 16:46:01 ID:zxwgFsis0
【E-7 街/深夜】
【夏油傑@呪術廻戦】
[身体]:ギラヒム@ゼルダの伝説 スカイウォードソード
[状態]:健康
[装備]:召喚した剣@現地調達
[道具]:基本支給品、五条悟の死体@呪術廻戦
[思考・状況]
基本方針:優勝し、世界の清浄・非呪術師(さるども)の絶滅を望む
1:ペシミズム厭世病院へ向かう。
2:五条悟や伏黒甚爾の肉体を持つ者は今は避け、他の者に殺されるか消耗するのを待つ
2:参加者は殺す。ただし争いに使えそうな者は生かしておく。
3:この身体で出来ることをもっと試したい。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※召喚術で、魔物を一度に召喚できる数は限られています。また、全て殺されると、再召喚まで時間を要します。
(ボコブリン(赤)×5 モリブリン×2 スタルフォス×2 青ボコブリン×1)
瞬間移動(大)(原作で剣を回して消える技)は、一度使うとしばらくは使えません。
【その他】
※喜多郁代のサンタ服@ぼっち・ざ・ろっく!、びっくり箱(潰れてる)@ウソツキ!ゴクオーくんは、E-7に放置されています。
【支給品紹介】
【喜多郁代のサンタ服@ぼっち・ざ・ろっく!】
6巻の伊地知星歌の誕生日ライブにて喜多郁代が着ていたサンタ服。
ちなみにミニスカ。
【びっくり箱@ウソツキ!ゴクオーくん】
5巻21話にてゴクオーが小野天子の誕生日プレゼントとして用意したワッピーちゃんのぬいぐるみが入ったプレゼント箱。
…と見せかけたびっくり箱。
【五条悟の死体@呪術廻戦】
236話、2018年12月24日、両面宿儺との決戦に敗れて真っ二つとなった五条悟の死体。
464
:
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 16:46:57 ID:zxwgFsis0
投下終了です
465
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/03(土) 17:58:46 ID:u45v7TT60
申し訳ありません、せっかく投下してくださったところ何ですが、気になった点について話させてください。
死体の支給については、以前ここでも報告したように、専用したらばの質問スレで質問があった際、個人的に好ましくないして支給できないものとしていました。
まとめwikiのルールのページの方では「参加者以外の死体の支給はできない」となっており、参加者内に五条悟がいるため、今回の死体も支給可能なように読み取れるかもしれませんが、これは言葉の綾です。
ここで言う「参加者の死体」とは、ロワ開始時点から参加者に与えられた肉体側のもののことを言っています。
更に言えば、参加者の死体はそもそもデイパック内には収容できないものとしていました。
そのため今回の話は、支給品として登場した五条悟の死体の部分については、見直しすることをお願いしたいです。
何か意見等があれば、専用したらばの議論スレの方にお願いいたします。
466
:
◆OmtW54r7Tc
:2024/02/03(土) 18:39:14 ID:zxwgFsis0
すみません、見落としておりました
ちょっと修正とかも思いつかないので、今回の話は破棄させてもらいます
467
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/03(土) 19:50:55 ID:u45v7TT60
>>466
了解しました。
こちらこそ、このような話になってしまい申し訳ありません。
468
:
名無し
:2024/02/03(土) 20:17:26 ID:Jxdsdpvs0
何か話ぐだって来たな
469
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/10(土) 23:04:48 ID:rmFNelu20
ウルトラマン、メフィラスで予約します。
470
:
<削除>
:<削除>
<削除>
471
:
<削除>
:<削除>
<削除>
472
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/17(土) 23:09:33 ID:phIDfmDo0
投下します。
473
:
シン・剛アックス
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/17(土) 23:11:30 ID:phIDfmDo0
地図上においてA-3と記された位置、
そのエリアの大部分を占める雪の降り積もった村の中、
そこにある名前の無い民家の中に二人の外星人、ウルトラマンとメフィラスはいた。
「………それは一体、何なのかな?ウルトラマン」
「………私への支給品の一つだ。一応は…武器……なのか?」
民家の中で合流した後、最初の一時間が経つまで、二人は自分達の支給品を軽く確認しようとしていた。
その過程で、ウルトラマンの持っていたデイパックの中から一つ妙な品が出てきた。
それを見た時、2人の表情は少し怪訝なものになった。
端的に言うと、それは横断歩道の歩行者用の信号を象った斧だった。
実際にこの斧の名前も、そのまんまシンゴウアックスと言うらしい。
ご丁寧なことに(?)、持ち手部分には横断歩道においての歩行者用の押しボタンのようなボタンも付いていた。
そしてこの斧には、本来の信号なら歩行者専用等と書かれるだろう部分に、ライダー専用等と書いてあった。
それがあるのは、斧としての刃の部分の丁度横部分でもあった。
「…つまり、今の私に専用の武装というわけになるのかな?」
「待て、まさかお前の肉体もライダーと呼ばれる存在だったのか?メフィラス」
「何?……まさか、そんな偶然もあったとは…いや、こちらの肉体を決めているのは向こうだから、もしやこれは意図的に…」
支給品からそんな話題に話が膨らんできた、そのタイミングだった。
彼らの持つタブレットからアラームが流れ、映像が勝手に映し出された。
◆
「1時間で8人か…しかも中には、我々と同じく外星人と思われるものが精神側には1人いたようだ」
「………1人?」
「ああ、確かに地球人類に見えない者は2人程いたな。だが、1人はおそらく地球由来の存在だと考えられる」
「……誰がそうだ?」
「玉壺と呼ばれていた者がそうだな。目と二つに増えた口の位置が反転し、片目は額に移動していたが、アレは確かに地球人の肉体だと思われる。それに、目の方には地球の文字、漢字が刻まれていたからな」
「…なるほど。確かに、その可能性はあるかもしれないな」
「仮に地球人だとして、何故あんな姿になっているかの理由は不明だが」
放送で発表された、最初の一時間内の死亡者情報について、ウルトラマンとメフィラスは互いの意見を交換し合う。
「……まさかとは思うが、今の玉壺とやらを見て、地球人類の新たな兵器への開発の可能性が思い浮かんではないだろうな」
「………こんな環境でそれを一々気にかける暇はないだろう、ウルトラマン。それに光の星の対応からして、もう私がそのようなことをするのは難しいだろう」
メフィラスが少し興味を惹き付けられているかのような表情をしていたことから、ウルトラマンがそれを指摘する。
「今はこんなことを話している場合じゃない。とりあえず、1時間で8名死亡する程度には殺し合いに乗っている者達がいるのは分かったんだ。次にやるべきことは、データ配布された名簿の確認だろう?」
「ああ、その通りだ」
2人はタブレット画面を操作し、配布された名簿の内容を確認する。
「………私のことは、ウルトラマンと表記されているか」
「そう言えば、その名はあくまで地球人類が付けたものだったな。向こう側は、君の本来の名を把握していないのかもしれないな」
「…易々とそう断じるのも早計な気はするが。他にも、おそらく本名ではないと思われる名はあるだろう」
「確かに、他のそういった者達の違いも気になるところだな」
まず最初に気にしたのは、ウルトラマンが名簿上においてもウルトラマンと書かれていることだ。
ウルトラマンは、あくまで地球上においての呼称だ。
光の星における本来の名は、『リピアー』と言う。
「……ゾーフィ。まさか、この名をここで見ることになるとは」
「ゾーフィ…光の星の裁定者か」
「…こちらの名は把握していたか」
「先ほどと言うことは変わるが…裁定者の名があるということは、もしかしたら、君の本来の名を把握した上でウルトラマンと表記していたのかもしれないな」
「向こうはあくまで、私をウルトラマンとして扱いたいという訳か」
「もしかしたら、君への挑戦というつもりもあるかもしれないな。なあ、地球人類のヒーローさん?」
「…………さあ、どうだろうな」
名前の表記について、ちょっとした推察を少々煽るような声音で言う。
ウルトラマンはそれを軽く受け流す。
「それで、裁定者がいること自体には君はどう思う?ここにおいては、一体どんな方針でいるのだろうな?」
「……それはおそらく、私と地球人がゼットンを倒したことに対し、どう感じているかで少し変わるだろう」
ウルトラマンの認識としては、自分はゼットンを倒した直後にここに来た。
本来の歴史において、ゾーフィが迎えに来る前のことだ。
だからゾーフィについても、同じくらいの時期にここに連れてこられたという認識となる。
474
:
シン・剛アックス
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/17(土) 23:13:22 ID:phIDfmDo0
「ゼットンを倒したことについて、彼が地球人の知恵と勇気に対し敬意を抱いてくれるのであれば、全うに殺し合いの打破を目指すだろう。しかし、もしより地球人を脅威として危険視することになるのであれば、該当する者達を殺害しようとする可能性が発生すると考えられる」
「なるほど。確かにあのゼットンを倒すとなると、敬意と脅威、どちらも感じる可能性は存在するか」
「けれども、如何にせよ殺し合いの打破までならば、どの場合でも最終的には目指すと思われる」
「ならば裁定者に対しては、もしもの時は説得を行う必要があると、そのように考えても良いのだろうかな?」
「……確かに、そう見るべきだろう」
「しかしやはり、果たしてそう上手くいくのだろうかな?光の星の宇宙のためならばと起こす行動の問答無用さは私もよく知るところだ。だからこそ、私はあの時裁定者を見て直ぐに避難行動に移したのだがね」
「………それも考慮している。やはりどのように対応するかは、実際に会合したその時に判断する他ない」
本来ならば、ウルトラマンはゼットンを倒した後、吸い込まれたプランクブレーンの中で発した信号によりゾーフィと再会するはずだった。
しかしここにおいては、本来の歴史でそうなる直前辺りの記憶までしかウルトラマンは有してない。
だから、ゾーフィが地球人に対して現在どのような見方をしているのか分からない。
けれども流石に、殺し合いに積極的に乗るような者ではないことも分かっている。
今ゾーフィについて考えられるのは、たとえ地球人をどんな見方をしていようと、殺し合いの打破の方を最優先してもらいたいということくらいだ。
もし、地球人類の排除も並列しようとしているならば、その際は説得の必要性があるということになる。
せめて、もし会合することがあれば、話が通じることを今は願うしかない。
◇
「他には…明らかに外星人だと言っているような名前も一つあるな」
「ああ…思いっきり『対話宇宙人』等と書かれているな」
次に2人が気にしたのは、『対話宇宙人 メトロン星人』という名で名簿に登録されている参加者についてだ。
「対話宇宙人等と言うからには、きっと私のように対話で平和的に他の種族と交流を持とうとしている外星人なのだろうな」
「………お前の言う対話とは、相手に言葉の真意を悟らせないようにして都合の良い言質だけをとろうとする、悪質なものだろう」
「…悪質とは心外だな」
メフィラスの発言に、ウルトラマンは少し指摘を入れる。
メフィラスは少しだけ渋そうな反応を示す。
「まあ何にせよ外星人であるのならば、我々が接触する必要性はあるかもしれないだろう」
「……件のメトロン星人だが、身体側にも名前があるな。表記が違うことからして、別個体のようだが」
「確かにな…こちらには対話宇宙人等の表記は無いな」
「その代わりにあるのは、タルデという名とラウンドランチャーという表記…ランチャーと言うからには、何かを発射する能力を備えているということか?」
「そう考えると、こいつの身体を宛がわれた者は手の内が他の者達に予測されるのが少し可哀想にも思えるかもな」
「……対話宇宙人と表記されている方は、これをどう感じているのか」
「案外、その対話宇宙人にこのラウンドランチャーの方が与えられている可能性もあるかもしれないな。先ほど君が言ったように、同じメトロンでも別個体のようだからね」
ウルトラマンとメフィラスは、外星人と思われる者の話を続ける。
如何にせよ結論としては、自分達と同じく外星人の可能性が高いのであれば、とりあえず接触してみるに越したことはない。
地球外の知的生命体同士であるならば、人類に対する互いの方針を確認し合う必要性があるかもしれないだろう。
ウルトラマンとしては同じ外星人であることの責任感故に、そしてメフィラスは好奇心故に。
◇
次に2人が気にするのは、タブレット内に追加された地図についてだ。
特に、先ほどの放送で伝えられていた『精神の入れ替えを可能とする施設』については2人も気になった。
「それらしき施設は…地図に乗っている名前だけでは判別は難しいか」
「僅かでも気になるところを挙げるとするなら…何故だか人が住むだろう街から遠く離れた森の中にある『ゲームセンター』や、明らかに病院には付けてはいけない名前の『ペシミズム厭世病院』くらいか」
「……ペシミズムとは確か、それがそもそも悲観主義・厭世主義を意味する言葉。そして厭世とは生きることは苦としか感じられない、良くなものだという考え方を意味する言葉か。確かに、人間の命を救うための病院には似つかわしくない名だな」
「ええ…それらの言葉は、私もあまり好きではないですね」
475
:
シン・剛アックス
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/17(土) 23:14:23 ID:phIDfmDo0
地図にある施設にいくつか小さな違和感はあれど、それが入れ替えのためのものであるという根拠には全くならない。
結局、今ある情報だけでは一つずつ確かめてみないと件の施設にたどり着くことは不可能だろう。
「そもそも、我々がその施設に積極的に向かう必要は無いんじゃないかな?ウルトラマン。我々は今の肉体のままでも十分ではないかね?」
「それも一理あるが、もしその施設の詳細を把握することが可能ならそれに越したことは無い。我々に協力できる者で、その施設を使いたいと考えている者もいるかもしれないからな。……そのような者が必ず存在するとも限らないから、確かに優先度は高くなくても良いだろう」
「……その特殊な施設の存在が前提にあってもなくても、地図上で記された施設に行こうとする者は現れるかもしれないな」
精神入れ替えが可能なものがあるかどうかはともかくとして、地図上で施設だと記された場所は他参加者がとりあえずの目的地として設定する可能性も否定できない。
他に誰か協力できる者を探すのに、向かってみる価値はゼロでは無いだろう。
危険人物が来る可能性はあるが、その場合でも都合が悪いわけではない。
殺し合いを打破するならば、むしろそういった人物は積極的に無力化しなければならない。
「とりあえず、我々のいるこの村の中には禪院邸という施設があるようだ。一先ずはそこに行ってみるか?」
「……一応行ってみるだけ、全くの無駄ではないだろう」
「それじゃあ、次の行動は決まりだな」
2人はそこまで話すと席を立ち、荷物をまとめ始める。
実際に放送での件の施設があるかどうかはともかくとして、そこに他参加者が来る可能性は無くはない。
2人は自分たちがいた民家の中から外に出て、次の目的地に向けて歩き出した。
【一日目/A-3 村/深夜】
【ウルトラマン@シン・ウルトラマン】
[身体]:本郷猛@シン・仮面ライダー
[状態]:健康
[装備]:タイフーン&仮面ライダーの戦闘服&ヘルメット@シン・仮面ライダー
[道具]:基本支給品、シンゴウアックス&シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを破綻させる
1:メフィラスはとりあえず信用する。
2:一先ずは禪院邸に向かう。
3:ゾーフィに会えたら協力するよう説得する。
4:外星人と思われるメトロン星人という者にはどこかで接触しておきたい。
[備考]
※参戦時期はゼットン撃破後
【メフィラス@シン・ウルトラマン】
[身体]:風祭真@真仮面ライダー・序章
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを破綻させる
1:一先ずは禪院邸に向かう。
2:外星人と思われるメトロン星人という者にはどこかで接触しておきたい。
3:裁定者(ゾーフィ)の説得は、果たしてそう上手くいくものなのだろうかな?
[備考]
※参戦時期は地球を去った後
[支給品紹介]
【シンゴウアックス&シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ】
仮面ライダーチェイサーが主に使用する、横断歩道用の押しボタン式信号機のような形状をした斧。
刃部分の反対側に必殺技発動のためのシグナルバイクを入れるスロットがある。
ここにおいてはその必殺技発動用のシグナルバイク、シグナルチェイサーも一応付属しているものとする。
シグナルチェイサーをスロットに入れた後、持ち手の押しボタンを押して、『マッテローヨ!』という音声が流れた後に刃部分にエネルギーがチャージされ、『イッテイーヨ!』のエネルギー充填完了音声が流れた後にトリガーを引くことで必殺技を発動できる。
エネルギー充填中は実際の信号機よろしく赤のランプが灯り、エネルギー充填が完了すれば青のランプが灯る。
476
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/02/17(土) 23:14:50 ID:phIDfmDo0
投下終了です。
477
:
◆NIKUcB1AGw
:2024/02/25(日) 00:23:14 ID:shSZXIhI0
少佐、予約します
478
:
◆NIKUcB1AGw
:2024/03/01(金) 21:16:12 ID:aPk8K/d20
投下します
479
:
森は人を迷わせる
◆NIKUcB1AGw
:2024/03/01(金) 21:17:09 ID:aPk8K/d20
夜の森の中。
暗闇に溶け込むかのような黒い男が、シャドーボクシングのごとく虚空に向かって攻撃を繰り出し続けている。
本来のその体の持ち主は、ウォーズマン。
当時のソビエト政府により戦闘マシンとして育成されるも、やがて熱き心に目覚め地球の平和を守るために戦った男だ。
だが現在その肉体に宿るのは、ウォーズマンとは真逆と言ってもいい精神性を持つ男。
戦争を愛し、戦いを巻き起こすことに全身全霊をそそぐナチスの残党。
本名は不明。彼を知る者は、主にこう呼ぶ。
「少佐」と。
「ふむ……。だいぶ馴染んできたかな」
動きを止め、少佐は独りごちる。
彼が見方によっては奇行とも感じられる行動を取っていた理由、それは今の体に慣れるためであった。
少佐の本来の肉体とウォーズマンの肉体では、身体能力に差がありすぎる。
ゆえに少佐では、その力を十全に発揮することはできない。
それでも力を引き出すために、彼は鍛錬に打ち込んでいたのだ。
全ては、よりよき戦いのために。
「こういうのは専門外だが……。たまには悪くないな。
さて、そろそろ……」
少佐が荷物に手を伸ばした、ちょうどその時。
けたたましいアラーム音が鳴り響いた。
「おお、ぴったりだ」
不気味な笑顔を浮かべながら、少佐はタブレットを手に取った。
◆ ◆ ◆
「クククク……。ハーッハッハッハ!!」
放送後。
タブレットに送信された名簿を確認した少佐は、大声で笑い出した。
そこに、見知った名前を見つけたからだ。
「アーカード」。
それは少佐の知る限り、最強の吸血鬼。
彼と戦うことこそが、少佐にとって究極の闘争であった。
そのアーカードと戦うチャンスであると知り、少佐のテンションは急上昇する。
だが時間が経つにつれ、現状は決して彼に都合のいいものでないことに気づく。
「そうか、つい浮かれてしまったが……。
やつも今は、本来の肉体ではないのだな。
それでは、最高の戦争にはならん」
精神と肉体、両方揃っていてこその最強。
たとえば脆弱な一般人の肉体に入ったアーカードを倒したところで、それが最高の戦いになるはずがない。
万が一、肉体が本来のアーカードに匹敵するような強者であっても同じことだ。
「万全のアーカードに勝ったわけではない」というしこりが残ることになる。
「うーむ、悩ましい。
実に悩ましいな」
そんなつぶやきを漏らしながら、少佐は肉体側の名簿もチェックする。
「おや、これは……」
驚愕の声と共に、少佐の動きが止まった。
彼の視線の先には、「アーカード」の名前がある。
「なるほど、やつの肉体は別の参加者に与えられているのか……。
ならば先ほど説明があった、体を入れ替えられる施設を使えば……。
とはいえ、言うほど簡単ではないか」
施設を使い、アーカードの肉体と精神を揃えた上で戦う。
それが少佐にとっての理想だ。
だが問題は、相手がそれに乗ってくれるかどうかだ。
アーカード本人と、アーカードの肉体を与えられた参加者。
両方が体の入れ替えに応じてくれる保証などない。
もちろん気絶させるなどして強引に入れ替えさせる方法もあるが、その場合も少佐と相手の戦力差によっては実行困難となる。
「せっかくのチャンスだと思ったのだが……。
どうにも障害が多いな」
愚痴を漏らしながら、少佐はタブレットをデイパックに戻す。
「何にせよ、やつの精神と肉体の所在……それに施設の位置。
これは知っておくべきだな。
そろそろ動くか」
デイパックを背負い、歩き出す少佐。
その脳裏に、ふと先ほど戦った白い鎧の男が浮かび上がる。
「そういえば、彼はどうするかな……。
……まあいいか。
戦いたいのであれば、彼の方から追いかけてくるだろう」
そう結論づけ、少佐はさらに森の中を進んでいく。
その足取りは、実に軽やかだ。
彼は、戦争が大好きだ。
そして戦争のための準備もまた、彼にとっては戦争の一部なのだ。
少佐の戦争は、すでに始まっている。
480
:
森は人を迷わせる
◆NIKUcB1AGw
:2024/03/01(金) 21:18:15 ID:aPk8K/d20
「それにしても、ここはどこなんだろうな?
森ばっかりでさっぱりわからん。
微妙に川の音が聞こえるような……」
【E-4 森・川の南側/深夜】
【少佐@HELLSING】
[身体]:ウォーズマン@キン肉マン
[状態]:疲労(小)
[装備]:鉄の爪@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ニューナンブ(残弾49)@現実、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:闘争を楽しむ
1:万全のアーカードと戦いたい
2:アーカードの精神と肉体を見つける
3:体を入れ替えられる施設を見つける
4:いずれ鎧の青年と決着をつける(アーカードが最優先なので、優先順位は低下)
5:とりあえず川に行ってみるか
[備考]
※参戦時期はロンドン襲撃以前
481
:
◆NIKUcB1AGw
:2024/03/01(金) 21:19:10 ID:aPk8K/d20
投下終了です
482
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/05/05(日) 15:22:00 ID:AQLxp4OU0
星野愛久愛海&高遠遙一でゲリラ投下します。
483
:
変な病院
◆5IjCIYVjCc
:2024/05/05(日) 15:22:58 ID:AQLxp4OU0
!?
『 今週のスローガン
潔く散れ! 』
「………何だこのスローガン。ここは本当に病院か?」
『ペシミズム厭世病院という名も、それらしくありませんしね』
『ですがこのスローガンは、殺し合いのためのものとしてなら、合致しているとも思いますね』
赤黒い装飾に身を包んだニンジャ、そこに宿る2つの人格、星野愛久愛海(以後アクアと呼ぶ)と高遠遙一は今、ある病院の前にたどり着いていた。
ついでに言っておくと、彼(ら)の手には鞘に収まった刀が一本握られていた。
とは言っても、その刀は脇差並みに短いものであったが。
これは彼に対する支給品の一つだった。
もしもの急襲があった時に護身用として念のために装備していた。
その刀の銘は『ちゅんちゅん丸』と言った。
話を戻す。
アクアと高遠は確かに病院の前にいる。
けれども彼らがたどり着いたその場所は、病院としてはかなり違和感のある建物でもあった。
この病院に掲げられている名前は『ペシミズム厭世病院』。
以前別の話でも解説したことだが、ペシミズムは悲観的、厭世的を表す言葉。
厭世的とは、自分が生きるこの世のことを良くないものだという見方をすることだ。
口の「忍」「殺」のメンポと覆面で顔をほとんど隠しているために少し分かりにくいが、目元だけでもアクアはかなり怪訝な表情をしていることが外からは見てとれた。
一応は元医者であるアクアにとっては、こんな名前とスローガンを掲げる病院の存在を受け入れ難かった。
全面的に、患者に対し「治るのは諦めてさっさと死ね!」と言って突き放しているかのような病院であった。
前々世(別に前世で死んだ訳ではない)で医者だった時、難病で若くして命を落とした少女を受け持っていたことがあるから尚更不快感があった。
高遠が言うように、スローガンは殺し合いに合わせたものだとしても、どちらにせよ最悪度合いは変わらないが。
アクアが病院前でそんなことを考えていた、その時だった。
タブレットからアラームが鳴り、最初の説明でも予告されていた連絡の放送が始まった。
◆
『涙目のルカ…その身体の名はリョースケ』
「…………え?」
最初の一時間の内に死亡した者達について発表された。
そこで最後に紹介された者の、身体側の方を、アクアは知っていた。
しかしそいつは、もう何年も前に死んだはずの人物だった。
アクアがそいつと直接会ったのは、前々世も含めてたったの2回だ。
けれどもそいつは、星野アクアの人生に決して消えない大きな傷を残した。
そいつが自分の目の前で何をしたのか、その記憶がより鮮明に蘇る。
リョースケこそが、星野アクアの母である星野アイを、直接殺害した犯人だった。
そして彼は、かつてアクアが雨宮吾朗だった頃に崖の下に突き落として殺害した犯人でもあった。
アイが彼をリョースケと呼んでいたことも覚えている。
あの時、彼の行動によって倒れたアイが、その体から段々と失われていく体温の感覚の記憶も呼び起こされていく。
「な……んで、あいつ…が」
タブレットにリョースケの顔が映った時、アクアは動揺を隠せなかった。
『落ち着いてください。彼の肉体はもう死んだと、今伝えられたばかりでしょう』
「……あ、ああ、そうだったな」
高遠の言葉にアクアは少し落ち着きを取り戻す。
死んだはずのリョースケの肉体がここで呼ばれたということは、主催側が死んだ人間を蘇生する方法を持っていることの信憑性を少し上げることになる(実際に生きているところを見た訳ではないのでまだ確定はできない)。
蘇ったリョースケの肉体が既に再度死体になっているのであれば、これ以上気にする必要は無いはずだった。
リョースケは確かに実行犯だが、アイ殺害の黒幕は他にいるはずだから、これで話はおしまいのはずだった。
しかし、そうもいかなかった。
『とりあえず、配布されたらしい名簿を確認してみましょう』
高遠はアクアに次の行動をとるように促す。
高遠もまた、名簿の内容は気になっていた。
「ああ……………は?」
名簿に目を通したアクアは、再び絶句することになる。
先ほど身体側が死亡者として発表されたリョースケが、精神側の名簿に参加者として名前が載っていたからだ。
◆
484
:
変な病院
◆5IjCIYVjCc
:2024/05/05(日) 15:25:32 ID:AQLxp4OU0
『ふむ……精神側と身体側、どちらにも共通する名前は他にもあると』
『これらもそれぞれ同じ人物を指しているとなると、精神側のリョースケもあなたが知っている者である可能性は高そうですね』
「っ……」
身体側の名簿も確認した後、高遠はそんなことを言う。
その言葉にアクアは表情を少ししかめる。
『おや、どうしました?せっかく母親の直接の仇が生きているかもしれないことが分かったのに、あまり嬉しそうではありませんね』
「……………当たり前だろ。……身体は別人なんだから、殺そうとしたらその身体側の人も死ぬ。それに、黒幕は俺の父親だから……」
高遠の言葉にアクアは少し考え込むような仕草を見せた後、少し早口気味に言葉を紡ぐ。
それはどこか、あまり考えをまとめないまま思い付きで喋っている、言い訳じみたもののようにも聞こえた。
『前に話したことに続きますが、この殺し合いにおいて乗っている者を返り討ちにできるかどうかの是非、それを気にしている場合はないでしょう』
『たとえ、肉体の方は本来は乗るような者じゃなかったとしても』
『無関係の人間をもう1人分殺害してしまうかもだなんてことを気にしていたら、それこそ取り返しのつかないことになる可能性だってあります』
『むしろ…先に殺してあげることの方が、これ以上自身の肉体で人を殺すことのないよう、本来乗らない無関係な者にとっての救いにだってなるかもしれません』
『それに件のリョースケ君とやらは自分の肉体を殺害されています』
『彼は好きなアイドルが子供を産んでいたとだけで殺しに行くほど短絡的な人物なのでしょう?』
『それならば、自分の肉体の蘇生のために殺し合いに乗る可能性が高いと考える方が自然ではないでしょうか?』
「……お前、唆しているつもりか?」
高遠に対しアクアはそう答える。
その言葉には、高遠に対する不快感も含まれているようだった。
『さあ。それよりも私は、あなたが本当に父親すら殺すつもりがあるのか少々疑問に感じてきましたがね』
高遠はそう、アクアを煽るようなことを言う。
『直接の仇に対してのその物言い…まるで、殺したくがないために、理由を探しているかのように感じましたよ』
「……俺に、どうしてもリョースケを殺せと言いたいのか?」
『そういう訳ではありません。こんな環境で復讐を優先して視野が狭くなってもらうのも困りますからね』
『私はただ、前にも言ったように、いざという時にどんな相手でも殺せるかという話をした
いのです』
『まあ、どうしても無理だと言うのならそんな時は私が変わってあげしょうか?』
「…お前みたいなのに任せられるか」
高遠に対しアクアは悪態を吐き続ける。
けれども彼の言葉にはずっと、心の中の動揺も含まれていた。
アクアはずっと、自分でもリョースケをどうしたいのかが分かっていなかった。
リョースケについては少し言い方を変えてみれば、復讐することを諦めていた相手だ。
前にも書いたが、リョースケは本来もう既に死んでいたはずの者だからだ。
それがいきなり実は生きてこの殺し合いの舞台にいますだなんてことは、すぐには飲み込めなかった。
ずっと憎しみ続けていた顔も知らない父親と違い、憎悪の継続がこれまでは微妙に出来ていない相手だった。
『まあ、あなたがリョースケ君をどうしたいかなんてことは別に今すぐ決める必要もありませんがね』
『今後必ず遭遇できる保証も無い、もしかしたら身体側と同じく会える前に死亡してしまう可能性も考えられますからね』
「………そうだな」
アクアはただそう返事する。
これについては確かに、高遠の言う通りではあった。
アクアがどう考えようと、リョースケには実際に会えなければ意味が無い。
だから高遠とこれについての話をするのは、もう終わりだ。
(………だが、僕はやはり、あいつのことは……)
高遠と話すのは終わりとは言え、考えるのを止めることはそう簡単にはできなかった。
アクアの中での感情の整理はまだついてない。
星野アイの死に関して、悪いのは全て自分の父親だという確信はある。
けれども、先ほどは殺したくないみたいな意味に捉えられることは言ったものの、実行犯であるリョースケのことを許せないという気持ちも、確かに存在はしていた。
時間をおいて考えて続けてると、やはりそんな気持ちが存在していることを自覚してきていた。
かつてアイの子供に生まれ変わったばかりの頃は、前の自分を殺害したリョースケに対し感謝するような気持ちもあった。
けれども、それは全くの間違いだった。
彼がアイを殺害した今、そんな風に考えていた頃の自分は大馬鹿者だとアクアは思う。
485
:
変な病院
◆5IjCIYVjCc
:2024/05/05(日) 15:33:15 ID:AQLxp4OU0
アイを殺害した時、そっちが先に裏切ったからだ何だと言いながらも、アイが自分を覚えていたことを知ったら一目散に逃げ出した。
そして挙げ句の果てには自殺、完全に何もかもから逃げ去ってしまった。
リョースケがそんな彼自身の心の弱さで人を傷つけ、多くの人生を滅茶苦茶にしたのは、確かなことだった。
自分の父親が元凶であることには変わりないとは思うが、あんな行動をとることを最終的に決めたのはリョースケ自身だ。
(もし奴が今もあの時と変わらないのだとしたら、俺は…)
アクアは最悪の可能性を思い浮かべる。
それこそ、高遠が言うようにリョースケが短絡的に動いて人を傷つけるようなことがあるとなると…
アクアがそんなことを考えている時、メンポの上に小さく見えるその右目には、小さな『黒い星』が現れているようにも見えた。
◆
『他に、名簿にあなたの知る名前はありますか?』
「……一応、1人いる。身体側にある黒川あかねという名がそうだ」
リョースケについての話を一通り終えた後、他に名簿から分かることについての話に移る。
高遠が知る者は1人もいなかったが、アクアは身体側のものに1人いた。
『この方は一体どのような人で?』
「………表向きは一応、俺の恋人ということになっている」
アクアはそう含みを持たせた言い方をする。
『そんな言い方をすると言うことは、実際には違うということですか?』
「……彼女は、俺の復讐の役に立つと判断した。そのため手元に置くためにそういうことにさせてもらった」
『ほう、悪い男ですね。で、具体的にはどう役に立つと思ったのですか?』
「………彼女は人に対する分析力が高い。俺の母、アイについても俺以上に理解できているかもしれない。彼女を通じてアイのことをより知れれば、当時のアイがどんな動きや考え方をしていたか等も分かり、いつか俺の父親にも辿り着くかもしれないと思った」
「……だから、精神の方の無事はまだ分からなくとも、肉体の方も生還させてやりたい」
「たとえ、もしあかねの肉体が殺し合いに乗っていたとしても」
アクアはそう、自身の希望を述べた。
『まあ確かに、元に戻った後の不足の事態に備えるといった点でも、なるべくそうした方が良いかもしれませんね』
『ですが、私にそこまでのことを話しても良かったのですか?』
「………下手な誤魔化し方をしたら、お前は変に突っ掛かってきそうな気がしたからな」
「それのせいで後から悪影響が出るのも困るし、話した方がマシかもしれないと判断した」
アクアからしてみれば高遠のことはやはりいまいち信用しきれない。
先ほどからの口ぶりからしても、そもそも高遠は人を殺すことに対し抵抗が全く無いみたいだ。
しかし今は強制的に一心同体にさせられている身だ。
下手な隠し事が原因となっていつか余計なことをされるのも困る。
『しかしまあ、そう上手くいきますかね』
『もしかしたら、黒川あかねの中身がそれこそ件のリョースケ君になっている可能性だってまだ考えられますからね』
『先ほどの連絡であった、組み合わせの分かる名簿を手に入れられれば、それに関する心配も解消されるとは思いますがね』
「だからと言ってそれを狙うために無関係な奴を殺すつもりは無いぞ」
『フフッ、冗談ですよ』
「………」
冗談にしても質が悪いとアクアは思う。
とにかく、今のところは黒川あかねの中身は話の通じるまともな人物であることを祈るしかない。
◆
彼らは次に、配布された地図の確認を行い始める。
そしてそこにもまた、アクアにとって見逃せないものがあった。
「苺プロダクション本社事務所……これは本物か?」
苺プロダクション、それはアクアが現在所属している事務所だ。
『本物か気になるのなら行ってみれば良いんじゃないですかね?』
『あなたが一番よく分かっているでしょうが……ここが先ほど知らされた「精神を入れ替える手段のある施設」では無いでしょうがね』
「……そりゃ確かにそっちの方も探しておきたいけどもな」
486
:
変な病院
◆5IjCIYVjCc
:2024/05/05(日) 15:34:51 ID:AQLxp4OU0
苺プロダクションのことは気になるが、他にも気にしてしまうこともある。
先ほどの連絡で伝えられた精神と身体の入れ替えを可能とする施設、それがどこなのかはなるべく把握しておきたい気持ちはあった。
例えば、黒川あかねの肉体の件にしても、もし今の中身が問題のある人物でも、まだ話の通じる人物と交換させるという手が使えるかもしれないからだ。
なお、それをやるためには黒川あかねの肉体の人物を生け捕りにする必要があるが。
それに今の中身でも問題なさそうなら、自分はあまりその特殊な施設を探す意味が少なくなってしまう。
それを考えると苺プロダクションの方に向かってそこの現状を確認しに行った方がまだ良いかもしれない。
『もしかしたら、リョースケ君も知っている施設として苺プロダクションの方に向かうかもしれませんしね』
『ですがやはり、私としても精神入れ替えが可能な施設については気になりますね』
『目の前の病院くらいは、少しくらい調べる時間もあると思いますがねえ…』
「……」
アクアはここで少し迷う。
高遠の言う通り、目の前の変な病院を先に調べるか、それともすぐにでも苺プロダクションの方に向かうか。
精神を入れ替える施設とやらは、どこにあるかのヒントは全く無い。
探し出すには地図上に記された施設を片っ端から調べるしかない。
少なくとも、自分もよく知る苺プロダクションの中には無いことは断言できる。
だからそっちに向かう選択肢は、一旦は件の特殊施設のことを諦めることになる。
しかし距離的には、念のため病院の方だけでも調べても問題はなさそうな気もしてくる。
リョースケがもしプロダクションの方に向かうとしても、遅れて行っても出会える可能性はありそうな気はする。
もしもの時のための治療に使える道具を手に入れられるかもという意味でも、病院の方を先に調べる価値はありそうだ。
………こんな名前の病院にまともな医療器具があるかは、少し疑問に感じてしまうところもあるが。
「俺は…」
アクアの次の目的地は…
◆
正直なところ、アクア君とはもっと別の出会い方をしたかったですね。
彼には迷いがある。
それも、自覚している分と、出来ていない分の両方が。
だからこそ、違う出会い方ができれば、良いプロデュースができる相手だったかもしれませんが…。
この環境ではあまり無茶をさせることは止した方が良いでしょう。
ですがせめて、リョースケ君との間の因縁は解消してあげたい気持ちもありますね…。
その方が今後殺し合いで生き残るための精神的余裕も生まれるでしょう。
そのための方法は、彼の手で復讐させるのがベストか、それとも別の方法が良いのか…。
この舞台に金田一君がいないことも、少し残念ですね。
ま、もう少し様子を見てみましょうか。
【一日目/F-7 ペシミズム厭世病院前/深夜】
【星野愛久愛海@【推しの子】】
[身体]:フジキド・ケンジ@ニンジャスレイヤー
[状態]:健康、高遠への不信感、リョースケに対する暗めの感情
[装備]:ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:すぐに苺プロダクションの方に向かうか、それとも先に病院を調べるか…
2:リョースケがあの時と変わらないなら、俺は…
3:あかねの肉体の無事は確保しておきたい。
4:復讐とは関係ない殺人が俺にできるのか……?
5:高遠はどうにも信用ならない
[備考]
※参戦時期はアニメ一期終了後です
※フジキドの参戦時期は少なくとも三部終了より前です。
※アクアの了承、もしくはアクアの意識が弱くなれば高遠が身体の主導権を握れます。
※アクアが聞こえるもの、見えるものは基本的に高遠と共有されます。
【高遠遙一@金田一少年の事件簿】
[身体]:ナラク・ニンジャ@ニンジャスレイヤー
[状態]:健康
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗る気はない。
1:しばらくは星野君に協力する。私もこんな芸術性の欠片もない殺し合いで死にたくはないので
2:復讐ですか……
3:せめてリョースケ君との因縁はどうにか解消してあげたいですが…果たしてどんな手段を取らせるべきか…
4:もし星野君が人殺しを躊躇うなら、その時は変わってあげてもいい。変われるのなら
[備考]
※参戦時期は少なくとも魔術列車殺人事件終了以降です。
※ナラクの参戦時期は少なくとも三部終了より前です
[支給品紹介]
【ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!シリーズ】
カズマが日本刀を模して鍛冶屋に作らせた刀。
最初は長かったが、建物からの出入りの際に引っかかる等の理由で短く作り直された。
銘のちゅんちゅん丸はめぐみんが付けたもの。
487
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/05/05(日) 15:35:35 ID:AQLxp4OU0
投下終了です。
488
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/11(土) 17:55:56 ID:???0
投下お疲れ様です。
死んだはずの復讐相手まで呼ばれていたらアクア君も迷いますね。
この会場にリョースケぶっ殺しゾーンが産まれてしまうかは高遠にかかっている。
ドクトル、シャドウ天城雪子で予約します。
>>388
感想ありがとうございます。末期癌という、このロワでしかできない追い詰められた研を書くことが出来て私としても楽しかったです。
489
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:27:31 ID:???0
投下します
490
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:28:31 ID:???0
厄介な事になった。
放送が終わり、ドクトルが真っ先に思ったことはそれだった。
己が罪の象徴である真莉愛がこの世界に呼ばれていない事には安堵したが、もう一つ問題が発生した。
『リグレット』。リドゥの管理者たる彼女までもが肉体として、この世界に呼ばれていると言う事だ。
元々ドクトルがいたリドゥという世界は人為的に作られた仮想現実であった。
その世界では自分が望むならどんな姿にもなれた。
楽士の中には機械の身体を得た者だっている。
ドクトルが問題とする点は、それと同様にこの身体もアバターとして与えられたものなのかということだ。
それなら構わない。この世界のリグレットを殺したとしても、元いた世界のリグレットには何ら影響がないからだ。
だが、本物のリグレットの身体を奪ったうえで、別の人間に与えたのならば話は変わる。
まず、疑問となるのは、『リグレットの精神』が現状どうなっているかだ。
先ほど考えていたように、この世界がリセット中のリドゥを奪って作ったものであれば、彼女から抜き取った精神は主催者の手に囚われている可能性はある。
「……天吹真理恵の例もあるしな」
天吹真理恵、リドゥの核となる少女だ。
リドゥは彼女の為に作られた小さな世界を、リグレットがアップデートしたことで作られている。
故に彼女に何かあれば、連動してリドゥは崩壊してしまう。
だからこそ以前ドクトルは万が一に備え、天吹真理恵を捕らえて手元に置いた。
同様に、この世界がリドゥを改変したものであれば、核となる彼女とそれを管理するリグレットは主催者の手元にある可能性が高い。
ただ、これはあくまで予想だ。主催がリドゥとは関係のない別組織の可能性もある。
もしかしたら、既に用済みとして抜き取ったリグレットの精神は削除されているかもしれない。
「さて……どうする」
ドクトルの行動理由のすべては、クランケこと井手口真莉愛の為だ。
手術の失敗を無かった事に出来るなら、殺し合いに乗って優勝を目指すという行為自体は構わない。
だが、リドゥにおいて全能のリグレットの力ですらクランケの足は治せなかったのだ。
仮に優勝して願いの権利を手にしたとしても、またあの時のように失敗する可能性だってある。
ドクトルの心はもう、再び失敗することに、患者である真莉愛に自分を責める目で見られることには耐えきれない。
セカンドオピニオンというわけではないが、本来の目的通りにリ・リドゥを作り出す道筋も可能なら確保しておきたいのだ。
だからこそ、不測の事態に備え、リグレットの身体だけは無事にリドゥに戻しておきたいのだが、優勝するうえでは彼女を殺さねばいけない。
その矛盾した思いを解決する方法が一つだけある。
「身体を入れ替える装置、か……」
放送で告知のあった、身体を入れ替える装置。
それを見つけ出し、『リグレット』の身体と自分の身体を一時的に交換する。
それならば、優勝を狙っても『リグレット』を殺さずに済む。
そして、本物のリグレットの精神が、予想通り主催者の手の内にあるのなら、再び入れ替え装置を使い身体を返却する。
これなら当初の目的通りのリ・リドゥを作り出すという道筋も残すことが出来る。
とはいえ、これは厳しい道程となる。
3日という時間で現在地不明の彼女と入れ替え装置の2つを探さねばいけない。
見つけ出しても素直に相手が従うとは限らない。
リグレットの強さは、楽士として協力関係を組んでいた自分自身が一番よく知っている。
彼女は、彼女を信仰する者達の思いを力とする。
この世界においてどれほどの力を持っているかは不明だが、生半可な実力では相手になるか不明だ。
仮面ライダーの力で無理矢理従わせるというのも、通用するかは分からない。
「……現実的ではないな」
迷ったところで、拒否権は自分に無い。
決めるのは自分じゃない。
ここは最低、救いがない。
ドクトルが救われるには誰かを犠牲にしなくてはいけない。
それは自分も例外でない。
◯◯◯
491
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:29:26 ID:???0
500個以上のアトラクションを兼ね備える『ハレルヤランド』。
その中央に位置するマネーキャッスルにドクトルはいた。
ハレルヤランドは開始地点の近くであったこともあり、入れ替え装置の情報を集めるために訪れた。
これだけ広大な遊園地である、装置が隠されている可能性は高いとの判断であった。
マネーキャッスルに来た理由は、中心部に大きく備わっており、取り急ぎの探索場所として丁度良かったからだ。
アトラクションの中から装置のありそうな所の目星を付けるというのも考えたが、
場内に設置されたハレルヤランドマップがなんの嫌がらせか、縮尺が日本列島サイズとなっており探索が困難であった。
マネーキャッスルは、本来はこの施設のオーナーであり、身体としても呼ばれているハレクラニが居城としている場所である。
ドクトルの目の前にはいかにも成金趣味のような、札束とコインで埋まったプールがある。
真上のモニターには各アトラクションの売上が表示されており、金銭に浸かりながら業績を見ることが出来るという代物だ。
「理解できん趣味だ」
モニターの近くにはリモコンが転がっていた。
調べてみると、好きなアトラクションをここから爆破処分することができるという代物であった。
実際ハレクラニは儲からないと判断したアトラクションは即座にこの場所から爆破している。
とは言え、殺し合いの場において爆破という手段は余りに目立ちすぎる。
威力自体は大きいだろうが、使いどころが難しい。
それに入れ替え装置まで巻き込んで爆破してしまったら元も子もない。
「支配者という奴は……」
一見すると天国のように映るハレルヤランドであるが、その『裏側』は地獄だ。
オーナーであるハレクラニは、不要なアトラクションは客が居ることなどお構いなしに爆破するうえ、ボーボボに敗北した部下も弁明を聴くことなく一円玉へと変換する程に冷酷な男だ。
また、ドクトルがこの城に辿り着くまでにも、立ち入り禁止と称された建設現場があった。
辺りに転がった鞭や乱暴に毟られた髪の毛などを見れば、恐怖がこの天国を支えている事が分かる。
「どこも同じ、か」
彼が居たリドゥも、どんな願いも叶う天国のような世界であるが、それを維持するには『裏側』に犠牲がある。
強制的に現実世界から拉致し、元の世界への帰宅は許されず、反抗的な者は洗脳して無理やりリグレットの信者とする。
理想を叶えるには綺麗事だけでは通用しないのは、ドクトルにとって分かり切った事だ。
「……下らん」
この地の支配者と同じようなことを自分はしてきた。
少女の脚を治すためだけに、大勢のそれ以外の命を犠牲にする。
プライオリティの順序がおかしいと言われようが、そんなことは分かっている。
それでもこれ以上、少女の未来を奪った後悔に苦しめられることは耐えられなかった。
「あらあら?こんな大きなお城だもん?王子様もいると思ったんだけどぉ」
不意に声が響いた。
くるりとした眉毛に、清潔感のあるスーツと革靴。
その身体には似つかぬ、媚びる様な女性口調。
肉体は四皇の料理人サンジ、精神は檻に閉じ込められたお姫様の影、シャドウ雪子である。
「キャッ?お医者様なんてス・テ・キ?これより雪子の逆ナンコーナー始まるゾ?」
「……これより、執刀を開始する」
両手でハートマークを作り誘惑する雪子に答えることなく、ドクトルはガシャットを挿入し、レバーを引く。
覚悟はとうに出来ている。
『タドルクエストレベルアップ』
ゲームエリアが展開され、周囲にエナジーアイテムが出現する。
光に包まれればドクトルの姿は青と白の勇者、仮面ライダーブレイブレベル2へと変わった。
「あら、勇者様みたい。囚われのお姫様を助けてくれるのかしら?」
ドクトルはそんな期待に耳を貸すことはない。
ガシャコンソードを構え、雪子へと向き直った。
「……ふうん……遊園地にヒーローショーはつきものだけど……」
その行為だけで雪子はドクトルに対しての興味が冷めた。
自分を連れ出してくれるヒーローじゃないのなら、なんの興味も抱かない相手だ。
「もう私、フェザーマン見るって歳じゃ無いのよね!」
彼女が探偵少女のシャドウであれば、朝の特撮番組の様な姿に惹かれただろう。
だけど雪子が望むのは絵空事のヒーローではなく、実際に自分を救い出してくれる王子様だ。
「それにこういうの、もう見た!」
シャドウ雪子は異なる世界ではあるが、放送前に仮面ライダーとの戦闘を終えている。
襲い来るドクトルの剣術を、炎を纏った脚で軽く弾く。
中身は単なる女子高生の影、まだ完全に使い切れていないとはいえ、その身体は四皇幹部としてのスペックを誇る。
慣らし時間のうちに戦闘を経験し、コツを掴んでいた雪子が一歩有利となる。
492
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:30:33 ID:???0
「そうか、お前も機械か」
医者というものは人間の構造ならば嫌でも頭に入っている。
攻撃を受けた衝撃が人とまるで違う、鋼鉄に殴られたような感触だった。
相手が、同じオスティナートの楽士に所属するマキナのように、全身を機械に変えたサイボーグなのだと理解した。
彼の様な強者ならば、中途半端は通用しない。
ならば、さらなる力が必要だとガシャットを差し替える。
『Let's Going King of Fantasy!』
『DUAL UP! Satan appeared! Say ”MAOU” TADDLE FANTASY!』
白を基調としたブレイブのスーツの上に鎧となるファンタジーゲーマが装着された。
その名は、先ほどまでのレベル2のブレイブを遥かに上回る、仮面ライダーブレイブ ファンタジーゲーマー レベル50。
その姿はテレビゲームの魔王の様な、禍々しい漆黒の衝動を放っている。
「……執刀準備完了」
「なぁんだ、勇者様かと思ったら魔王なんだ」
興味がそがれた様に雪子のテンションが下がる。
ドクトルが漆黒の万能マント『ウォーフェアマント』を翻せば、魔王には配下が必要だろうととはかりに異形の怪人、バグスターウイルスの群れが現れる。
「あいにくだけど、私、魔王なんかに用は無いの!」
魔王とは、王子様と同じくお姫様を外へと連れ去っていくものだ。
ハイラル王家の王女。キノコ王国の王女。カイミーン国の女王。
この地に呼ばれし達と関係深き、彼女らを振り返っても分かる、伝統的な役割だ。
「魔王なんて大っ嫌い!ほんっと、お姫様を閉じ込めるなんて酷いことするわよね!」
だけど王子と魔王がお姫様に与えるものは真逆だ。
檻から救い出すのが王子様であるが、
拉致した彼女らを狭い檻の中へと閉じ込め、自由を与えないのが魔王である。
「私の王子様じゃないなら、死んじゃってよ!クズ男!」
檻に閉じ込められたシャドウ雪子にとって気持ちを苛立たせる相手だ。
指示により襲い掛かるバグスターウイルスの群れに八つ当たりをするように、シャドウ雪子もまた、ジェルマの科学を起動する。
「本気のアタシ、見せてあげる!」
漆黒のスーツに包まれ、同色のマントとマスクが装着される。
ジェルマの科学に身を包んだ『ヒーロー』あるいは『怪物』。
その名は『おそばマスク』あるいは『ステルス・ブラック』。
足元のブースターによる加速がバグスターウイルスの群れを向かい打つ。
勢いを増した『アサルトダイブ』の突撃。
大勢いた彼らは一撃も入れることなく焼き尽くされ、瞬く間に消滅した。
四皇幹部相手に戦闘員如きでは、僅かな時間稼ぎ程度にしかならない。
『コ・チーン!』
時間稼ぎだけで魔王には十分だった。
刀から湧き出た冷気が、凍てつかせんと雪子の足元へと迫る。
ガシャコンソードは炎剣と氷剣を切り切り替える事が出来る
「そんなもの!」
すぐさま、雪子は『白の壁』を展開。
氷属性を弱点としたシャドウ雪子にとっての身を護る盾だ。
障壁に塞がれた氷の侵食は急激に速度を落とし、雪子には届かない。
相手の策を封じた雪子は、この機を逃さない。
体制を立て直す隙をついて蹴り飛ばしてやろうとし、
ドクトルの姿が目の前から消えた。
「な、……ええ!?」
493
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:31:04 ID:???0
いつの間にか背後へと回っていた、ドクトルの斬撃を紙一重で躱す。
バグスターウイルスも氷結もブラフであった。
本命はこの一撃。ウォーフェアマントには瞬間移動機能がある。
その機能を使い背後を取ったのだ。
一撃だけでは終わらない。
魔王は何度も瞬間移動し、予期せぬ方向からの攻撃を繰り返す。
海軍大将の放つレーザーにすら反応出来るサンジの肉体であるが、
予想も付かず、止まない斬撃に何時までも対応し続けるには雪子はまだ経験が足りない。次第に追い詰められていく。
「こ、これでも喰らいなさい!」
彼女らしくなく、思わず焦る。
咄嗟に放った『焼き払い』の業火は魔王へと覆い被さらんと襲い掛かる。
だけど、魔王とは絶望を与えるものだ。
希望を容易く蹂躙できるからこそ魔王なのだ。
「え……」
苦し紛れに放ったその炎が届くことはない。
咄嗟に放った炎は魔王の持つ剣に全て吸い込まれていく。
火炎を操るガシャコンソードには炎を吸収する能力もある。
かの世界のラスボスが放った炎すらも容易く受け止める程にだ。
想定外の特性により、雪子に隙が生まれた所を魔王は追撃する。
『キメワザ』『TADDL CRITICAL SLASH』
魔王は高く飛び上がり、ぐるりと回転力を付ける。
さながら少女の心に沸いた、シャドウという悪性腫瘍を身体から切除してやるかのように。
「嫌っ!こんな所で、消えたくない!」
ジェルマの科学で作られた身体といえど、扱うのはあくまで女子高生の影。
弱虫で、強くなんかない、一人で何もできない閉じこもった鳥。
自分の攻撃が通じず、迫りくる魔王の姿に、恐怖を抱くなというには無理なものだ。
打つ手の無い雪子は逃げるしかない。
「あ……」
逃げる?どこへ?
気付いたときには、目の前に壁。
この城は檻だ。自分から閉じ込められた鳥に、逃げ場なんて最初から無かった。
「王子さまっ!王子さまっ!」
目前に迫った死が迫る。
どれだけ助けを呼んだところで、彼女の兵たる白馬の王子さまはもう来ない。
「なんで……なんで来てくれないのっ!」
ドクトルは雪子へと狙いを付け急降下。
マネーキャッスルの壁を突き破り、遥か外へと飛び出した。
■ ■ ■
がらがらと、音を立てて崩れる城の壁を背にドクトルは呟く。
「……まず、一人か」
願いの為に人をこの手で殺していくことに、抵抗が無いかと言えばある。
リドゥにいた際は、毒を飲ませての殺人を試みた事はあるものの、それとはまた違う不快感が付き纏う。
「先は長いな……」
魔王の仮面に隠された医者の顔は窺うことが出来ない。
その奥で何を思うのかは、本人にしか分からないことだ。
だが、これだけは言える。ドクトルは決して悪には成り切れない男だ。
以前、毒を盛った際も、人知れず泣きそうな声で何度も謝り続けたのだ。
かつて『命を奪うならせめて自分の手で』と言ったように、一度は命と向き合った医者として最後の矜持も持つ。
悪に成りきれない中途半端な男だからこそ、罪悪感に苦しみ続け、開放されない日々を送り続ける。
口調からして中身は女だったのだろう。
もしかしたら、真莉愛と近い歳だったのかもしれない。
真莉愛の未来の為に、別の少女の未来を奪った。
そんな思いも泡沫の様に浮かび上がるが、ドクトルは魔王となると決めたのだ。
全ては贖罪。奪ってしまった真莉愛の幸福の為だ。
そう自分に言い聞かせ、進むしかない。
494
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:31:32 ID:???0
「あははははははは!」
背後から笑い声が響く。
いや、そんなはずはない、とドクトルは思わず振り返る。
その声は確かに倒したはずの少女の声であった。
「私……飛んでる!」
逃げる場所はただ一か所だけあった。
だから、跳ねた。
攻撃の直撃する直前、僅か刹那の時間。雪子はドクトルを飛び越え、瞬時にはるか天井付近まで飛躍し、回避していた。
“空中歩行”〈スカイウォーク〉
この技は元々、サンジが逃げたいと強く思った事で身についた技術だ。
サンジという男は2年程、カマバッカ王国というオカマ達の国で修行をしていた事がある。
サンジ自身もオカマになりかけた程に辛く厳しい修業であった。
ある意味では女性より女性らしい彼らから受けた経験は、その身体にトラウマとして染み付いている。
その経験が男と女を併せ持つ現在の雪子の状態と、追い詰められた状況により想起され、直撃を回避出来た。
「あっはははははは!なぁんだ、【私】って飛ぼうと思えば飛べるんだ!」
笑いのツボに入ったかの様にゲラゲラと笑う。
飛ぼうと思えば何処までも飛べる。単に勇気が出なくて言い訳していただけ。
心の何処かでわかりきっていたそのことに、どこか自虐的に笑い、雪子も外へと飛び出す。
そうして、空高く飛び上がり、空中で反撃体制をとる。
「お返し!“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉!!!」
先ほどの逆の構図。光と影の様に攻守が反転する。
ドクトルの真似をするように、回転しつつ勢いを増してゆく。
「まだよ!何倍にもして返してあげる!」
『コンセントレイト』、魔法技の威力を倍以上に上げるスキルを発動。
精神を集中させ高まった魔力により炎はさらなる勢いを増し、次第に全身を包み込む。
「これで消えてしまいなさい!」
脚の加速装置が更に威力を上乗せする。
二度目のステルスブラックへの変身に伴い、サンジの肉体を包む科学は以前より進行が進んだ。
その姿はさながら流星。
“流星おそばキック”。身体の料理人がそう名付けた技によく似ていた。
『キメワザ』『TADDLE CRITICAL FINISH』
向かってくる雪子に対し、魔王も迎え撃たんと駆け出す。
相手が力を高めるならば、こちらもさらなる力を望む。
『マッスル化』
迎え撃つ先のエナジーアイテムを回収し、魔王の力がさらに膨れ上がる。
ガシャコンソードの火炎と氷結が勢いを増し、混ざり合う。
そのままX字を描き、雪子へと振るわれる。
「さよなら!ガッカリ王子様!」
その彼女の、迫りくる脚へと向けて。
■ ■ ■
495
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:32:37 ID:???0
二人の必殺技の衝突により、身を劈く轟音が鳴り響いた。
それは余波だけで周囲のアトラクションを軽く吹き飛ばす。地を鳴らし、削り取り、炎が舞い上がる。
元々ハレルヤランドには不要なアトラクションを処分するための爆破設備が備わっている。
舞い上がった炎はそれに引火し、周囲の被害を更に加速させた。
さながら災害の後だ。わずか一瞬で天国は地獄へと変わった。
崩壊が落ち着いた後、立っていたのはただひとり。
過剰強化≪Overdose≫された二人の技。
方や四皇幹部、方や魔王。
聞こえは良いが、その力を扱うのは女子高生と中年男性という素人だ。
両者共に本来の肉体所持者程に熟練していない。
少なくとも今この瞬間において、二人の必殺技の威力は同等であった。
体と技で差が付かないならば、勝敗の決め手となるのは心だ。
自ずと信念の強さとなる。
■ ■ ■
「あら?貴方、思ったより弱いのね」
立っていたのは、シャドウ雪子だった。
雪子の蹴りは剣圧を突き破り、ドクトルへと到達した。
「俺は……何を」
ドクトル自身も気づいていなかったことだが、彼は無意識の内に力を抜いてしまった。
その理由はシャドウ雪子の脚技を、思わず斬撃で防ごうとしたことによるものだ。
脚とはドクトルにとって原罪の象徴であり、手に持つガシャコンソードは飛彩曰くメスである。
言わば女の足をメスで切り刻まんとしたのとなんら変わらない。
それはドクトルにとって、かつてのトラウマを想起させる行為だった。
ドクトルは決して非情になりきれない男だ。
再び女の足を機能不全にすることに、僅かながら『心の奥』で躊躇があった。
「あ、わかった!貴方……もしかして【宮司桐人】ね?」
納得がいった様にシャドウ雪子は呟く。
なぜ、自分の名前を知っている、とドクトルが疑問を上げる前に言葉は続く。
「あはは!そっか!そりゃそうよね!怖いわよねぇ!女の脚を痛めつけるのは!」
誰も知らないはずの自分の原罪まで把握されている。
そのことに心の奥を撫で回すような、ねっとりとした苛立ちと不快感を与える。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
#center(){ドクトルの心の奥に踏み込みますか?}
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「あの子を外に連れ出してあげたかったんでしょ?白馬の王子様気取りで助けられると舞い上がって」
「……黙、れ」
「黙らない!だけど、お前は王子様じゃなくて魔王様!女の子の人生を台無しにして。一生出られない籠の中に閉じ込めた!」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
#center(){本当に踏み込みますか?}
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
496
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:33:09 ID:???0
「ねぇ、そうでしょ……『せんせい』」
か細い『声』だった。
「たすけてよ」
恐怖、恨み、絶望、悲観。
それらが混ざった様な、今にも泣きそうな言葉。
ドクトルがずっと直視するのを避けてきた真莉愛の、その言葉を勝手に突き付けてやるかのようで。
「違う……お前は真莉愛じゃない!」
その言葉を否定するようにドクトルは立ち上がり、再び剣を構える。
胴を狙い、駆け出そうして。
「な……!」
そこから先は進むことが出来なかった。
鎧となるファンタジーゲーマが、RPGの呪いの装備の様にドクトルの動きを封じたからだ。
ガシャットギアデュアルβは扱うのが難しいガシャットだ。
身を包むファンタジーゲーマは、本来の所持者である飛彩でさえ意識を乗っ取られかけた程に強大な力を持つ。
長期の変身は難しく、使い始めた当初は気を失う事すらあった。
それでも、飛彩は人の命を預かるという、世界一のドクターとしての強い意志があったからこそ乗り越えることに成功した。
ただ、飛彩と違いドクトルは悪人になりきれないと称されるように軸のぶれている男だ。
彼のような、人を救いたいという強い意志を持たず、その心は贖罪と後悔が占めている。
シャドウ雪子の煽り≪テラーボイス≫によってトラウマを揺さぶられ、『恐怖』を抱いた今、魔王の維持は困難となる。
飛彩の様に現実に立ち向かうことではなく、突き付けられた現実からの『逃走』が頭をよぎるドクトルに制御出来るわけが無い。
「なんだ、これは」
よって迎える結末は、飛彩の逆となる。
目が赤く染まり、衝動が全身を支配する。
「あ……うぐ」
自発的意思が薄れていき、心が塗りつぶされていく。
さながら、リドゥにおけるデジヘッドのように。
その姿を雪子の影は熱を帯びた視線で見つめている。
「消えてしまいなさい!」
雪子が手を振れば、ドクトルの周囲を高熱の炎が囲みこむ。
そのまま炎を脚に宿し、身動きの取れないドクトルに蹴りを叩き込む。
『戦慄のロンド』、お姫様が可憐に舞い踊るかのようにリズムよく何発も。
見様見真似であり、身体の料理人には似合わぬ美しく無い動きだ。
それだけでは終わらない。
ダウンした魔王へと総攻撃として、何度も蹴りやスキルを重ねていく。
さながら、料理が絶望的に下手な天城雪子が手に取った材料を思いつきのまま調理する様に。
乱雑な技も、シャドウのスキルとジェルマの科学に後押しされれば、残り体力を表すライダーゲージはあっという間に0へと近づけていく。
「どーん!」
最後に追撃として、彼女のかつてのヒーローである里中千枝のマネで締める。
空へと天高く突き上げた蹴りは、魔王をはるか地平の彼方まで吹き飛ばした。
■ ■ ■
497
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:33:35 ID:???0
シャドウとは、人々の抑えこまれた心の奥の象徴だ。
だから先ほど、剣を振るうのを一瞬躊躇したドクトルに対して、後ろめたい過去があるのだと察することが出来た。
「読んだ通りだったみたいね」
雪子が取り出したのは二冊の手記だ。
支給品として配られていたそれには、ある医者とある患者の後悔が記されていた。
手術の失敗によって少女の足を不全にした医者と、その患者の物語だ。
「貴方……まるで【私】みたい」
それはある患者―――クランケこと井出口真莉愛のことだ。
彼女はリドゥにおいて自分の脚が治っているのに、医者と患者という関係が変わってしまうのが怖くて治っていないフリをしている。
一歩踏み出す勇気が無く、自分から檻に幽閉されることを望んだ少女。
要素を抜き出せば、本来の天城雪子とよく似ている。
だから、ある種の自己嫌悪感を抱いた。
半ば八つ当たりに近い。思わず苛立ちをドクトルにぶつけてしまうほどに。
吹き飛ばしたドクトルを追う気は無い。
受け身な天城雪子の影は、自発的には動かない。
必殺技の直撃を受けたところにさらなる連撃を浴びせたのだ。仮に生きていたとしても長くないだろうと結論付ける。
「じゃあ次の王子様、首を洗って待ってろヨ?」
飛べようになったたからと言って、本来の天城雪子の問題は何一つ解決していない。
依然として檻の中に閉じこもる。
これからも、やることは変わらない。
願わくば、今度こそ白馬の王子様に出会える事を、
祈っているだけ。
※ハレルヤランド内マネーキャッスルが一部破損。
また場内の一部施設に崩壊、爆発、火災が発生しました。
【一日目/C-4 ハレルヤランド/深夜】
【シャドウ天城雪子@ペルソナ4】
[身体]:ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE
[状態]:健康、疲労(小)、レイドスーツによる科学の目覚め(小)
[装備]:レイドスーツNo3(ステルス・ブラック)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、ドクトルとクランケの後悔@Caligula2
[思考・状況]基本方針:ここではないどこかへ自分を連れてってくれる人を探す。
1:我は影、真なる我。私じゃない天城雪子/ヴィンスモーク・サンジは殺す。
2:誰かぁ私をここから連れ出して?できないなら死んじゃってよ。
[備考]
※参戦時期は本編で雪子の体に戻る前です。
※召喚を除くシャドウとしてのスキルを使用できます(二連牙、白の壁、焼き払い、アギ、コーチング、テラーボイス、戦慄のロンド、アサルトダイブ、マハタルンダ、コンセントレイト)。
※アギを纏うことで悪魔風脚を発動できるようになりました。
※レイドスーツを装備したことで肉体の科学が目覚めつつあります。具体的な影響や進展は後続の書き手にお任せします。
※空中歩行を発動できるようになりました。
【ドクトルとクランケの後悔@Caligula2】
シャドウ天城雪子に支給。
リセット段階のリドゥに残された二人の記憶の残滓。
本編クリア後に彼らとの記憶に打ち勝つことにより閲覧可能となる二冊の手記。
二人の現実でのプロフィールから語られなかった後悔まで記載されている。
■ ■ ■
498
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:34:16 ID:???0
ライダーゲージは体力を表す。
0になったとき、変身者はゲームオーバー。即ち死亡する。
「……生き残ったか」
ドクトルは生きていた。
過剰強化された蹴りにより、周囲の湖を飛び越え隣のエリアの川岸まで吹き飛ばされる。
勢いのまま地面に叩きつけられた事で、0になる直前にガシャットギアが外れ、幸か不幸か変身は解除された。
ライダーゲージは変身を解除すればリセットされる。
雪子がその仕様を知らなかったが故に一命を取り留めた。
「うっ…………ぐ」
とはいえ、限界を超えた力の代償は肉体を蝕む。
ファンタジーゲーマーの強化装置『エンハンスギアベータ』は戦闘に関わる全機能のリミッターを強制解除し、変身者の負担と引き換えに強大な力をもたらすものだ。
かつての飛彩のようにドクトルは地面に伏せる。
「……かっこわるいな……俺は」
魔王としての覚悟を突き通せず、中途半端な自分に嫌気が指す。
どれだけ分かっていても自分の限界を感じてしまう。
それでも、最後までやり遂げなければいけない。
気を失う前にデイバッグに入っていた薬を飲み、脳内物質を全開放し、無理やり目を覚ます。
成分もはっきりしていない薬品に頼ることに医者としての抵抗はあったが、この状況下で休むわけには行かない。
身体に鞭を打ち、倒れそうになりながらも、もう一度立ち上がる。
3日間という限りある時間。果たせねばならぬ贖罪と恐怖が、嫌でも身体を動かす。
「……早く、俺を解放してくれ」
願わくば、いずれ辿り着く救いの為に。
叶うか分からない夢物語であれ進み続けるしかない。
報われるか、果てるか、決めるのは僕じゃない。
【一日目/D-4/深夜】
【ドクトル@Caligula2】
[身体]:鏡飛彩@仮面ライダーエグゼイド
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ズバリ・アドレナリン(残り9個)@ニンジャスレイヤー、タドルクエストガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアルβ@仮面ライダーエグゼイド
[思考・状況]
基本方針:真莉愛の理想と幸福を叶え、贖罪を終える
1:医者が人の命を奪う。その行為に、最早躊躇いはない。
2:入れ替え装置及びリグレット(肉体)を捜索する。
3:リグレット(肉体)と一旦身体を入れ替え、優勝後にリグレット(精神)と装置を使い身体を返す。
[備考]
※参戦時期は第8章前
※リグレットの精神及び天吹茉莉絵が主催の手の内にある可能性を考えています。
【ズバリ・アドレナリン@ニンジャスレイヤー】
ドクトルに支給。
ヨロシサン製薬が製造する精神安定系の薬剤。10個セット。
重症を負ったニンジャ達の気付け薬や鎮痛薬として使われる。
オーバードーズを繰り返すと中毒症状を起こし、切れると頭痛や思考の鈍化などが起こって最悪死に到る。
主に注射器を介しての接種が主であるが、作中では粉末型や食料品に含まれたものもありバリエーションが豊富。
今回はZBR錠剤として支給。
499
:
◆N9lPCBhaHQ
:2024/05/25(土) 10:36:42 ID:???0
投下終了です。
タイトルは『抗うためにエスケープ・フロム・ゲンジツ』で。
シャドウ雪子の語尾のハートマークが文字化けしているのでwikiで直します。
また、シャドウ雪子のコンセントレイトとアサルトダイブ(あとマハタルンダ)については
登場話の使用可能スキルに記載されていませんでしたが、
PS2版において使用していたため使えるものと判断しました。
ただ、ゴールデン版の攻略本を確認したところ削除されていたため、そちらに準拠するならば該当箇所をカットします。
500
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/14(月) 23:41:05 ID:V6EkLBeY0
夏油傑で予約します。
501
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/26(土) 00:00:49 ID:pdVqNvDw0
投下します。
502
:
「また会えるよね」って、声にならない声
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/26(土) 00:01:56 ID:pdVqNvDw0
「何でこんなものばかりなんだ…」
夏油傑は今、F-5の街中にいる。
彼はそこで、自分へのランダム支給品の中身を確認していた。
最初に出てきたものは、額部分に「肉」と書かれて頭頂部にトサカのようなものがついた不細工な覆面であった。
付属の説明書によると、これは本来キン肉スグルという名の人物が身に付けていたものとのことだった。
…まさか名前が同じだからこんなものを自分に支給したんじゃないだろうなと、夏油は少し思った。
この覆面マスクは一応特殊機能は付いており、頭のトサカ部分はキン肉カッターと呼ばれるもので外して武器として使うこともできるらしい。
…けれども、正直な気持ちこの不細工面の覆面は着けたく無いと感じていた。
トサカのカッターにしても、今のギラヒムの身体の魔力で剣を作り出せるから必要無い気がしている。
次に出てきた2つ目の支給品、それもまた顔を隠すお面だった。
まさか1つ目と似たようなものが連続で出てきたことには驚かされた。
…けれども、それはお面と呼ぶには少し奇妙な形をしていた。
これは被ると、顔部分はまるでのっぺらぼうのようになり、額の上辺りから謎の人物の小さな頭が生えたかのようなことになる形をしているからだ。
このお面は、カマロのお面という名だった。
カマロとは、このお面に生えている頭の元となった人物の名前らしかった。
被ると、奇妙なダンスが踊れるようになるらしい。
これもまた、デザイン的にあまり着けたいという気持ちにはなれなかった。
殺し合いでダンスをする暇もあるとは思えない。
そして最後に出てきた3つ目の支給品は、2枚の雑巾だった。
これについても、何のために入っていたのか理解できなかった。
殺し合いに役立つ方法も思い付かない。
だから、直ぐにデイパックの奥の奥の方に仕舞い込んだ。
ここにあった雑巾自体はそんなに使われていないのかあまり汚いものには見えなかった。
……だが、雑巾だということで自分が元の身体で呪霊を取り込む時の味を連想して一瞬思い出してしまった。
あの、吐瀉物を処理したかのような味を――
……ともかく、まるでなかったことにするかのように直ぐに仕舞ったのはそのこともあるかもしれない。
(どれもいらないな…)
夏油は自分への支給品に対して、そんな印象を抱いていた。
趣味の悪い覆面が2つにただの雑巾が2枚、どうしてこんなことになってしまったのかと思う。
しかも後から出てくるものにつれて殺し合いに役立ちそうにないものが出てきているとも言える。
そのことに対し、夏油の中に不満が大きく現れていた。
けれども、そればかりを気にする訳にもいかなくなる。
夏油が自分への支給品を確認した直後のことだった。
チャイムが鳴り、タブレット越しに最初の放送が始まった。
◆
「………そうか、君もいるのか。……悟」
放送後、配布された名簿データを確認して、夏油はその名前を直ぐに注目した。
発表された放送前時点での死亡者達については、大きく思うことはあまり無い。
強いて言うなら、呪術界の御三家の一つである禪院家の呪術師が1人、精神側の方で名前が呼ばれたことには耳を傾けた。
非呪術師(猿)ではないが、どうせ自分と敵対するだろうことを考えるとどちらにせよ最終的には殺し合いとして殺害する必要があったことには変わりない。
それに、顔見知りの相手という訳でもないからそこまで気にする必要もあるまい。
他にも呪霊っぽい奴らが死亡者達の中にいたことも同じく、もういないのならあまり注目しなくても良いだろう。
それよりも夏油にとって重要なのは、まだ生きている参加者の方にいた。
その名前を見た瞬間、夏油は脳内に、3年間の青い春が溢れ出したような気がした。
五条悟、それはかつての夏油傑の親友だった男。
そして、現代の呪術師として最強となった男。
最後に、自分を殺してくれた男だ。
(悟……君は今も、最強なのかい?)
503
:
「また会えるよね」って、声にならない声
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/26(土) 00:05:02 ID:pdVqNvDw0
ここで気になるのは、今の五条悟がどんな身体になっているかということについてだ。
五条悟は最強になった。
しかしそれは、彼の本来の肉体に宿った術式と六眼ありきのものだ。
この殺し合いのテーマ上、五条悟も別人の身体になっている。
それに、五条悟の本来の肉体もここには存在しない。
現在は精神側の名簿を見ているためまだ後のことにはなるが、身体側の名簿も確認すればそのことも分かる。
ともかく、この殺し合いにおいては五条悟も最強では無いことはほぼ確実だろう。
五条悟が最強じゃなくなったことについての夏油の心情は、はっきり言うと彼自身にもしっかりと言語化することができない。
五条悟が最強ではなくなったことを察した時、顔には笑みが浮かんだ。
だがそれはきっと、喜びのものではないだろう。
何をあんな奴らにしてやられているんだという、そんな感じの気持ちに近い。
こんな状況を作り出した主催陣営に対しても、そう簡単に言い表せない感情が現れてきている。
その感情は、怒りにも近いところがあった。
ただ、自分の感情のことは一旦おいといて、夏油には五条悟について知らなければいけないことができた。
それは、彼が今はどんな姿でいるのかということについてだ。
そしてそのことを把握するための方法は、1つある。
先ほどの連絡で、次の放送までに誰かを殺害出来た者は、次回放送時に参加者の精神と身体の組み合わせの名簿データが配布されると言われた。
しかもそれには、顔写真もついてくるとのことだ。
それがあれば、五条悟が今現在どんな姿をしているのか分かることになる。
一々会う者に対して誰なのかを尋ねなくともよくなるということだ。
どちらにしろ殺し合いには乗るつもりではあったので、入手条件には問題はない。
強いて言うなら、次の放送までに急がなければならない。
◇
「禪院家の者達は他にもいるか…あの『猿』も」
五条悟以外にも、精神側名簿には夏油に縁のある者達の名はあった。
なお、直接的にあると言えるのは1名だけだったが。
その者たちは皆、禪院家の者達だった。
自分との縁が薄い2人(扇、直哉)については、ただ禪院家の呪術師とだけ認識している。
しかし残る1人の直接的な縁のある者…禪院真希については、思うところはかなりあった。
それはどちらかと言えば、嫌悪の情であった。
夏油がただ嫌う呪術の扱えない非呪術師(猿)というだけでなく、彼女はフィジカルギフテッドの天与呪縛を持っているからだ。
それは生まれつき呪力を得られない代わりに、超人的な身体能力を得られるというものだ。
しかし彼女は、呪力が全く無い・完全にゼロという訳ではなかったはずだ。
生きているだけで呪霊を生み出す温床である他の非呪術師(猿)と似たようなものだ。
ちなみにそうなっているのは、彼女の双子の妹は呪術師として活動できるくらいには呪力を有しており、呪術的には双子は同一人物として見なされるからということに因を発している。
…もっとも、夏油は知らぬことだが、ここにいる本人にとってそのことは既に過去のことだが。
ともかく、ただでさえ夏油にとってとても苦い思い出を作った「あの男」と同じ呪縛を持っている上に、そんな中途半端な状態の彼女は、夏油とは絶対に相容れない存在と言えるだろう。
だがそんな彼女も、ここにおいては別の肉体だ。
もしかしたら、「猿」ではなくなっているかもしれない。
しかしだからと言って、この環境では殺さない訳にはいかない。
前に自分が折本里香を狙って高専を襲撃した時とは違い、しっかりと止めを刺さなくてはいけない。
例え彼女が悟の生徒だとしても。
殺すこと自体は、他の禪院の呪術師達に対しても同じことだ。
彼ら彼女らについて思うことはやはり多々あるが、結局やることは変わらない。
◇
次に夏油は身体側の名簿データの確認を行おうとした。
そしてそこでもまた、大きく注目してしまう名前が存在していた。
504
:
「また会えるよね」って、声にならない声
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/26(土) 00:06:53 ID:pdVqNvDw0
「伏黒、甚爾…!?」
伏黒甚爾、それは前述した禪院真希と同じく例のフィジカルギフテッドの天与呪縛の持ち主。
真希とは違い、呪霊を絶対に生み出すことのない完全なる呪力ゼロの肉体の持ち主。
そして、ある意味夏油が今のようになるきっかけを作った、あのとても苦い思い出の原因となった男。
「………死者の肉体も扱えるということか」
伏黒甚爾は本来、死んだはずの人物だった。
殺害したのは、五条悟だった。
もっとも、そうだということについては自分も同じと言えるものだったが。
違うのは、夏油は精神の方がここにあり、伏黒甚爾は肉体の方があるという点だ。
夏油は伏黒甚爾の肉体の強さはよく分かっているつもりだ。
かつては自分も敗北した相手だ。
五条悟も最強ではなかった頃に敗北し、死に瀕した。
むしろ、そこで生死の境を彷徨ったことをきっかけに、五条悟は本当の意味で最強になれた。
かつて夏油と五条悟が受けたある任務、それを『失敗』させたのが伏黒甚爾だった。
だが結果的にそのおかげで、夏油は非呪術師(猿)の醜さを最初に大きく実感する機会にもなった。
伏黒甚爾の存在は、夏油と五条悟の人生を転換させるきっかけになったとも言える。
「……まさか、悟がこいつの中身になっていないよな?」
伏黒甚爾の強さはただフィジカルギフテッドの力にかまけたものではなく、本人の戦闘センスもあってのことだとは前に戦った時にも感じた。
何も知らない者なら、使いこなせない可能性はある。
けれども、そうでなければその力を活用できるかもしれない。
それこそ伏黒甚爾の本来の生まれである禪院家の者達や同じ呪縛持ちの真希、
そして自分と同じく彼と戦った五条悟ならば、力を上手いこと使いこなせる可能性も考えられる。
ここで感じるべきは、ただそうなっている可能性を警戒することだけであるべきだ。
ただ、夏油はどうも、五条悟が伏黒甚爾になっている可能性について「嫌」な感情も少しあった。
悟にだけはあの男になって欲しくない、無意識的な部分もあったがそんな風に思いかけているところもあった。
「…いや、どちらにしろ殺すことには変わらない。……あの時のリベンジとでも思っておくか」
夏油は一旦自分の思いを振り払い、何にせよ伏黒甚爾の肉体の参加者を倒すための覚悟をしようとする。
相手との因縁は肉体だけで、自分も全く違う肉体での戦いをしなければならないが、もし戦うことがあればそれはリベンジマッチだ。
よっぽどの相手で無ければ中身が何者であろうと苦戦するかもしれないことを考えながら、夏油は戦うために精神を整えようとした。
◇
次に夏油は何処に向かうかを決めようとした。
地図のデータを見ながら現在地を確認し、目的地となる場所を探した。
なお、夏油は今のところ「精神を入れ替えられる施設」を探そうとは思っていない。
地図を開いてみたら施設は数多くあり、この中からすぐに探すのは難しそうであった。
そして今のところは、その施設を利用する理由も無い。
五条悟を始めとした自分の知る者達の肉体次第では、話は変わるかもしれないが。
ともかくとして、夏油はまず自分の現在地を把握した。
この話の一番始めの方で述べた通り、彼は今F-5の街中にいる。
そして次の目的地を、同じエリアの街中にある「ゲント鉄砲店」にしようと考えた。
施設名からして、この場所は鉄砲…銃の専門店であり、そういった武器の類が多く置かれていると思われた。
その武器類を使えるかもしれないと夏油は考えた。
今の夏油の身体であるギラヒムは、保有する魔力から魔物を作り出す力があるようだった。
どんな魔物が出てくるかは既に試してある。
その魔物達にも、施設で入手した武器を持たせてみるのはどうだろうとも考えた。
魔物達の基本の武器は刀剣類や槍といったものなのだが、これに遠距離攻撃のできる銃を持たせてみて戦略の幅を広げるのも手の1つかもしれないことが考えられた。
元々の支給品があまり良くないものばかりだったというのも、新たな武器入手を目指す理由の1つではある。
そのことに対する不満を晴らしたいような気持もあった。
ちなみに、夏油の残された身体(死体)を使っているはずのある呪詛師も、術師相手なら通常兵器も積極的に取り入れるべきといった発言をしている。
F-5には他にも警察署があり、武器等はそちらでも入手できる可能性はあるが、とりあえずは専門店だと思われる方に行ってみることを決めた。
◆
「さて、そろそろ行くか…」
ある程度行動指針を決めた夏油は移動し始めた。
(悟…君は今、どうなっているのかい?)
色々と考えることはあったが、その思考の中心近くには、彼のかつての親友の姿が今もまだ色濃く存在していた。
505
:
「また会えるよね」って、声にならない声
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/26(土) 00:07:50 ID:pdVqNvDw0
【一日目/F-5 街/深夜】
【夏油傑@呪術廻戦】
[身体]:ギラヒム@ゼルダの伝説 スカイウォードソード
[状態]:健康、五条悟が巻き込まれていることに少し動揺
[装備]:召喚した剣@現地調達
[道具]:基本支給品、キン肉マンのマスク@キン肉マン、カマロのお面@ゼルダの伝説ムジュラの仮面、雑巾2枚@ボボボーボ・ボーボボ
[思考・状況]
基本方針:優勝し、世界の清浄・非呪術師(さるども)の絶滅を望む
1:参加者は殺す。ただし争いに使えそうな者は生かしておく。
2:悟を探す。
3:組み合わせ名簿を手に入れるために次の放送までに誰かを殺しておきたい。
4:伏黒甚爾の肉体の参加者に警戒。
5:禪院家の落ちこぼれの猿(真希)は、今度こそ殺害する。次はしっかりと止めを刺す。
6:他の禪院家の呪術師達(扇、直哉)も、大義のために殺す。
7:この身体で出来ることをもっと試したい。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※召喚術で、魔物を一度に召喚できる数は限られています。また、全て殺されると、再召喚まで時間を要します。
(ボコブリン(赤)×5 モリブリン×2 スタルフォス×2 青ボコブリン×1)
瞬間移動(大)(原作で剣を回して消える技)は、一度使うとしばらくは使えません。
[支給品紹介]
【キン肉マンのマスク@キン肉マン】
キン肉スグルが普段から被っているマスク。
頭のトサカはキン肉カッターという武器にもなるらしい。
額の肉マークはオナラー・タイマーというニンニクエネルギーを量を表す指標になり、肉マークは剥がすと数分で死に至る設定もあったが、現在もこれらの設定が存在しているかは不明(pixiv百科事典によればもうその設定は忘れ去られたもので、今はただの模様らしい)。
ちなみにキン肉スグルが出身の一族であるキン肉族は生まれたら直ぐにマスクを着け、最初に着けたマスクを一生身に付けるという風習があるのだが、このマスクは父親のキン肉真弓が間違えて選んだものである。
その真弓は幼少期の頃のスグルをこのマスクの容姿が元でブタと間違えて地球に捨ててしまった。
また、キン肉族にはマスクを取られて素顔を見られてしまった場合は死ななければならないという掟も存在する。
【カマロのお面@ゼルダの伝説ムジュラの仮面】
ダンサーのカマロの霊から貰えるお面。
被るとカマロ直伝のダンスを踊れるようになる。
本ロワにおいては被れば誰でも踊れるようになるものとする。
【雑巾2枚@ボボボーボ・ボーボボ】
ボーボボがキバハゲとの対決(通称:キバハゲデュエル)で発動した2枚の雑巾。
首領パッチ曰く、ボーボボが対決中にこれを使っていなければ首領パッチやビュティ、ヘッポコ丸も含めて全員死んでいたらしいが、何故そうなるのかは不明。
506
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/10/26(土) 00:08:19 ID:pdVqNvDw0
投下終了です。
507
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/17(日) 22:24:14 ID:9bUssp2.0
五条悟、城戸真司で予約します
508
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:46:25 ID:uV1YJAyw0
投下します。
509
:
「最強」なのだった
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:47:31 ID:uV1YJAyw0
『ガシャアン』
「……………は?」
『夏油傑』
その名前を見た瞬間に、五条悟の脳内に再び3年間の青い春が溢れ出す。
彼は今、初回放送でデータが配布された精神側の参加者名簿の内容を確認していた。
放送は散策していた途中で突如として始まったため、そちらの確認の方を優先した。
そこで彼は見つけてしまった。
ここに来るほぼ直前にも肉体だけは目撃した、かつて自分自身が手にかけた「親友」の名前を。
その名前を見た後、五条悟は少しの間放心していた。
それが誰のものかをはっきり理解した次に五条悟の中には、大いなる怒りも駆け巡った。
それは前述したような肉体を…別の誰かがその死体を乗っ取って活動している姿を見た時と同じようなものだった。
自分を獄門疆に封印した奴と同じように、この殺し合いの主催陣営も夏油傑の尊厳を踏みにじっているように感じた。
(………いや、それこそやはり、あの時のアイツも関わっている可能性がより考えられるんじゃないか?)
時間が経って五条は少し冷静さを取り戻す。
そして死者であるはずの夏油傑がこの殺し合いに巻き込まれている理由を考え始める。
前に夏油の死体が乗っ取っている何者か(今の五条は知らぬ名だが、羂索という)と出会った時、五条悟の呼び掛けに対し夏油の肉体が反応したかのような現象が見れた。
※以下、一々夏油傑の肉体を乗っ取っている者と呼ぶのもくどいので、地の文では羂索と表記する。
その時の夏油の体は、その体を動かしている羂索の意思に反して自分で首を強く絞めた。
まるで夏油傑の意思が、その体にまだ残っているかのようだった。
羂索本人も、こんなことは始めてだと言っていた。
だからもしかしたら、羂索がその肉体を完全にモノとするために、残っていた夏油の精神を何らかの方法で引きずり出してこの殺し合いに参加させたのではないか。
そんな考えが、五条の脳裏に浮かんでいた。
なお、本当のところは羂索が乗っ取っている夏油の体には夏油の精神が残っていた訳ではないようであった。
あの時夏油の体が勝手に動いたのは、首のもげたトンボが動いたようなものらしい。
つまり、前述のような考察の意味は全く無い。
それでもやはり、死んだはずの親友が生きてこの舞台の上にいるかのような情報を見たことによる動揺は、まだ彼の中には残っていた。
(……何にしても、この傑には直接会って確かめるしかないか)
結局のところ、夏油傑本人に出会わなければ何故死んだはずの彼がここにいるかの真実は分からないままだ。
しかし、その彼もまたこの殺し合いにおいてはその姿を変えられており、捜索は困難だ。
先の放送では顔写真付きの組み合わせ名簿を次の放送までに誰かを殺害できたらデータを配布すると発表されたが、それを狙うことを簡単に決める訳にもいかない。
もし、自分が殺害しても問題無さそうな者に遭遇できたなら、話は変わりそうだが。
例えば、余程の危険人物とか。
「………傑、できるならお前とは…」
五条悟の中には、夏油傑とは戦いたくない気持ちがあった。
こんなろくでもない殺し合いを始めるような奴らの言いなりになってほしくないと思っていた。
できることなら、あの頃のように共に並び立ちたいと感じていた。
今の別人の身体を使っている状態の自分と彼で、かつてのような"最強"になれるかは怪しくてもだ。
……自分1人だけで"最強"になってしまい、あんな別れ方をした後でこんな考え方をするのは虫のいい話かもしれない。
それでも、五条悟はあの頃の青い春を忘れられなかった。
◇
510
:
「最強」なのだった
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:48:36 ID:uV1YJAyw0
「まさか、真希もいるとはね」
夏油の名を見たことによる動揺はまだ残っていながらも、五条は名簿の中から他の知り合いがあるかどうかを確認する。
そこで、彼は自分の生徒の名を1つ見つけた。
「……って、うっわ、他にも禪院家がいるのかよ。流石に全員集合じゃないけどさあ」
名簿には自分の生徒である禪院真希の他にも、同じ禪院家の呪術師の名前が3つ存在していた。
なお、その内1人は先の初回放送までの間に死亡してしまったようだったが。
「あちゃあ…こりゃあ、真希への嫌がらせつもりか?確かクソ親父とか言っていた奴までいるし」
禪院真希と彼女が生まれた禪院家は、はっきり言ってその関係性は最悪と言える。
禪院家は呪術界において、五条悟が当主を務める五条家とも並んで御三家と称される程の呪術の名門だ。
そんな家に禪院真希は、呪術を全く扱えない身体で生まれ、落ちこぼれと扱われて酷く冷遇された。
禪院家野中では呪術師では無いものは人として扱われない、そう言えば彼女が生まれた家でどれほど酷い扱いを受けて来たかは想像に難くないだろう。
ここでの名簿には確か彼女の父親である禪院扇の名も記されているが、その親子関係もまた最悪のもののだったはずだ。
それに禪院家は他に、五条家と仲が非常に悪いという問題もある。
これは今の世代よりもずっと前から存在する問題だ。
五条悟自身も前述のような立場の真希を呪術師として教え育てようとしているから尚更だ。
この殺し合いにおいて、彼らと真っ当に協力できるかどうかも正直怪しいところだ。
(五条悟視点では)現当主である直毘人だったらまだ話はできるかもしれないが、いない者のことを考えても仕方ない。
「とりあえず真希とは合流を目指そう。向こうの現状も気になる所だしね」
禪院家の他2人はともかくとして、自分の生徒のことは一応心配していた。
本来の真希だったらこんなところでも自分でどうにかできるだろうと信頼できるが、誰の身体かも分からない状態ではちょっと怪しいところが出てくるかもしれない。
彼女を導くためにも、ここは合流を目指した方が良いだろう。
他の生存している2人については…まあ、話が通じることを祈るしかないだろう。
◇
『……チラッ チラッ』『ウズ ウズ』
「あっ、そうか。君も確認したいか」
五条が近くに置いていた手鏡…そこに映し出される鏡の世界、ミラーワールドから1体のミラーモンスターが顔を覗かせる。
そのミラーモンスター、デストワイルダーに精神を宿らさせられた城戸真司が、その場所から自分もタブレット内の画面を見たいかの様子を見せる。
また、他にも何か言いたそうでもあった。
今の真司は声を出せないため、身振り手振りだけで自分がしたいことを表すしかない。
最初に夏油傑の名前を見つけた時、五条はその精神的衝撃の大きさにより少し真司の方にまで気をかける余裕がなかった。
だから、今からようやく名簿を真司の方にも見せることになる。
五条はタブレットの画面を鏡像の先にいる真司に見えるように向ける。
なおタブレットを持つのと、名簿上の名前への指差しで両手を使うため、先ほどのような手鏡を持ってのやり方は使えない。
そのため五条は近くにあった建物の側まで移動し、そこにあったガラスに映る鏡像にデストワイルダー姿の真司がいることを確認する。
そしてそこでタブレット画面を真司に見せることにした。
五条悟はまず名簿の中から自分の知っている名を教え、信頼できる者、ちょっと微妙な者、……出来ることなら協力したい者だと教えた。
「こいつと…傑と一緒なら、僕らはきっと本当の意味での最強になれるんだろうけどね…」
自分が知る者の説明が終わった時、五条はポツリとそんな言葉も漏らした。
「………何てね。辛気臭く話すことじゃないよな」
五条はそう言って自分の話を一旦切り上げた。
「それじゃあ次は僕がこうやって1人1人指差すから、知っている奴なら首を縦に、知らないなら横に振ってみてくれ」
五条は次に精神側名簿に書かれた名前を1人ずつ見せながら真司の知り合いがいるかどうかを確認させる。
(……くっ。蓮はいないけど、よりにもよって浅倉はいるのか…)
確かにその名簿には真司が知る者の名も1つあった。
それも名簿の中では上から数えてかなり早めの方で。
だが、真司がその名前を見た時、体を少し硬直させてしまった。
言われた通り首を縦に振るのも少し遅れた。
何故ならそいつ…浅倉威は、凶悪殺人鬼だからだ。
真司が生前参戦していたミラーワールドのライダーバトルの参加者でもあり、その時も戦いには積極的であった。
自分が先に脱落してしまったため、浅倉がライダーバトルの果てにどうなったかといったこと等は分からない。
しかしあの男ならば、例えこんな環境でも殺し合いには確実に乗ることになるだろう。
だから、止めなくてはならない。
511
:
「最強」なのだった
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:49:35 ID:uV1YJAyw0
「なるほど、1人だけか。で、こいつは僕らと協力できそうな奴?」
『フルフル』
「そうか…じゃあ、逆にとっても危ない奴だったりする?」
『コクコク』
「なるほどね…」
五条からの質問に真司は首振りで答える。
詳しいことは伝えられずとも、浅倉威は危険人物だということは五条にも分かったようだった。
この殺し合いの環境ではたとえ真司が話せたとしても正確な脅威度は分からないが、とりあえずとして五条の中でも警戒対象には入った。
◇
「それじゃあ次はこっちの名簿を見ようか」
五条は次に身体側の名簿ファイルを開く。
そして真司と一緒にそっちのファイルの内容も確認していく。
「ふむ、こっちでも浅倉威ってのはいるのか。なあ、もしこいつの身体が他のヤバい奴に渡ったら危ない?」
『……ウーン…』
こちらにおいても、早い内に浅倉威の名前を見つけた。
浅倉の身体だけに関しては、仮面ライダーのことを除けば一応普通の人間であるので、それだけでは脅威としてはそこまで高いとは言えないかもしれない。
でも曲がりなりにも凶悪犯の肉体であるため、通常の人間よりは生身でも身体能力は高めかもしれない。
それに今ミラーモンスターとなった自分と共にカードデッキが五条悟に支給されたのと同じように、浅倉威の肉体の元にも同じように仮面ライダーになるためのカードデッキが支給されている可能性ももしかしたらあるかもしれない。
この場合は脅威度をまた一から考え直さなくてはならない。
そのため真司は、YesともNoとも言い難いかのような反応を見せる。
「……まあいいや。先に他の奴を…」
浅倉威の身体側の脅威度のことは一旦置いといて、五条は他の名前を見ていく。
「……うげっ!マジかよ…」
やがて見つけたある名前を見て、五条悟はすごく嫌そうな顔をした。
それは「伏黒甚爾」の名前であった。
「あー、何つーかさ、この伏黒甚爾って奴の体、けっこう強いんだよね。前に僕も殺されかけたことがあるくらい」
五条悟は伏黒甚爾がどんな奴なのかを説明する。
伏黒甚爾とは、呪力が全く無い代わりに身体能力が凄まじく高くなっているフィジカルギフテッドの天与呪縛の持ち主だ。
それに加えて様々な呪具も扱ってくるため、学生時代の五条は最初に戦った時にはものの見事に敗北した。
だけどもそれで一度死にかけたおかげで、当時の五条は呪術の核心を掴んだ。
その後伏黒甚爾へのリベンジも果たし、五条悟は現代最強の呪術師と呼ばれる程になった。
しかしそれは、本来の五条悟の肉体にある六眼と無下限呪術の術式あってのものだ。
「……はっきり言うと、もしこいつの肉体が敵になったとしたら、僕らだけで何とかできるかは難しいと思うんだよね」
少し前に言ったこととは逆になるが、本当のことを言うと今の五条悟は「最強」とは言い難いだろう。
肉体のエディータ・ロスマンの力は、そもそも十全に発揮するために必要な道具が無い。
真司…デストワイルダーが付いてきている仮面ライダータイガのカードデッキは、本来ロスマンの物ではない。
本来ロスマンの肉体で使うべきストライカーユニット等は支給品の中になかった。
そういったこともあり、今の五条ではロスマンのウィッチとしての魔法の力を上手い事使いこなすことはほとんどできないだろう。
ロスマンの体力が低いこともあり、支給品の力を借りても五条は戦いにくいだろう。
カードデッキ以外の支給品としては、1つはサッカーボールを膨らませて射出するベルトがあった。
このボールは膨らまし続ければアドバルーン大までにも膨らむという、とんでもない伸縮性のゴムを使っているらしい。
そしてそのボールは、スイッチの切り替えによって打ち上げ花火にもすることができるということだ。
しかし、花火程度では伏黒甚爾の肉体相手には少し心許ないかもしれない。
しかもボールは1回しか出せない使い切りのものだ。
そして最後の3つ目の支給品は、特殊なベルトに取り付けるための装置だ。
このアイテムの名は、「ブーストマークⅢバックル」という。
ただし、これを使用するためには「デザイアドライバー」というベルトが必要とのことだ。
そんなベルトは、ここには無かった。
つまり、今のところは全くの役立たずなアイテムだ。
しかも、例えデザイアドライバーがあったとしても、「創世の力」というものを宿した肉体でないと力を十全に発揮することができない…というか、使えないかもしれないらしい。
つまりこの場において、このアイテムは完全に宝の持ち腐れということになる。
本来なら自分が持つべきじゃない、別の所に支給されるべき品なのだ。
まあ、もし使えたとしてもこれで伏黒甚爾を何とかできるかどうかは分からないが。
「だからまあ、今のところはこいつの肉体が敵に回らないことを祈るしかないね」
512
:
「最強」なのだった
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:50:14 ID:uV1YJAyw0
伏黒甚爾の肉体を持つ者が味方になってくれるのであれば、逆に心強いことになる。
それこそ、元は同じ天与呪縛を持っていた禪院真希であれば、彼女にとっても扱いやすい身体となっていることだろう。
真希の天与呪縛が少し中途半端だったことを考えると、むしろ元に戻った時のための良い経験となるかもしれない。
これこそまさに、希望的観測なことであるが。
◆
「それじゃあ、次はこっち…」
『ガシャアン』
「……ん?」
『!』
身体側名簿を確認した後、五条は次にその他の精神側名簿ファイルを開こうとした。
しかしそうする前に、その手を一旦止めることになった。
どこからともなく、ガラスが割れたかのような音が聞こえてきたからだ。
だがその音は、そこそこ小さく聞こえた。
その音は少し遠いところから来たようであった。
真司もその音には気付いた。
ただし、真司がその音を聞いたのはこれが始めてではなかった。
実は、五条が最初に精神側名簿を確認し始めた時に、真司は同じようなガラスが割れる音を聞いていた。
けれどもその時の五条は、夏油傑の名前を見たことにより動揺していた。
そのため五条は気付かなかったのだ。
そのことと、そもそも今の自分が話せないこともあり、最初の音のことは真司は五条に伝えることが出来なかった。
最初も本当に小さな音だったこともあり、気のせいだった可能性も考えられてしまい、真司も名簿確認の方を優先する動きをしてしまった。
しかしここで五条も反応したことにより、気のせいではなかったことが証明されてしまった。
「今のは…向こうに誰かいるのか?」
五条は小さな音が聞こえてきた方角を向く。
音がしてきたことからそっちの方には人がいることが考えられる。
そしてガラスが割れるという破壊の音が聞こえてきたことから、もしかしたら戦闘が行われている可能性も考えられた。
「……ごめん、中途半端な所だけど、先に向こうの方を確認しに行こう」
五条はミラーワールドの中の真司にそう話しかける。
人がいるのならそれは自分の知り合いである可能性もある、戦闘が行われているのなら自分の味方になり得る人物がピンチに陥っている可能性も考えられる。
そのため、名簿確認の途中だが音が聞こえてきた方に先に向かおうとのことだ。
『コクコク』
真司もその考えには賛成だった。
もし遅れてしまったことで後悔するようなことが起きたら大問題だ。
最初の音には気付いていたのに五条を無理矢理引っ張ってでもすぐ向かおうとしなかったから尚更だ。
◇
「でもその前に、最後に1つだけ確認しておこう。今更になるけど、君の名前を教えてくれないかな?」
五条は移動を開始する前に、先にストップしていたその他の精神側名簿ファイルの確認を行おうとした。
デストワイルダーに宿った真司は今、この殺し合いにおいては意思持ち支給品と扱われている。
意思持ち支給品にされた者の精神はこのその他名簿に記される。
五条はこれまで、真司の名前を聞きそびれて知らないままに話をしていた。
そして今、2人は推定戦闘が行われている場所に向かおうとしている。
その場所へと、共闘相手の本当の名前を知らないまま行くのは少し問題有りと判断した。
少しでも信頼関係を築くため、五条は先に名前を聞いた。
「なるほど、城戸真司と言うのか…。遅れちゃったけど、これからよろしくね、真司」
その他に記された8つの名前の内、自分のものが指さされた時に真司は頷いた。
こうして、五条悟はようやくその名を知る。
その後、この中にも他に知っている名前が無いか聞かれたが、特に無かったためこの話はそこで終わった。
他に五条の知っている名前も特になかった。
「よし!それじゃあ向こうの方に行こうか」
話を切り上げ、五条は真司を連れて今度こそ音の聞こえてきた方へと移動を始めた。
「……なあに、きっと何とかなるさ。今はどこにいるか分からないけど…この舞台には傑だっているんだからね」
移動を開始した辺りで、五条は最後にそんな言葉を呟いた。
それは言葉だけだと楽観的なところはあったが、その顔にはどこか陰りもあった。
(……五条、あんたはその傑って奴と何があったんだ?)
夏油傑の名前を見て空の五条悟は、どこか様子がおかしいところがあった。
そのことに真司も気付いてきていた。
しかしそう思っても、それを五条悟に指摘することはできない。
鏡の中のモンスターは、人に寄り添うことはできない。
513
:
「最強」なのだった
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:51:25 ID:uV1YJAyw0
【一日目/G-6とG-7の境目付近/深夜】
【五条悟@呪術廻戦】
[身体]:エディータ・ロスマン@ブレイブウィッチーズ
[状態]:健康、疲労(小)、夏油傑が巻き込まれていることによる動揺・怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、タイガのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、どこでもボール射出ベルト(花火機能付き)@名探偵コナン、ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ
[思考・状況]基本方針:殺し合い?乗るわけないでしょ。
1:とりあえず音が聞こえてきた方に行ってみる。
2:傑を探す。出来ることなら、あの頃のように共に戦いたい。
3:真希のことも探す。今はどんな状態か分からないけど、先生としてしっかりと導いてあげないとね。
4:他の禪院家(直哉、扇)については…ちゃんと協力できるか少し怪しいところがあるな。
5:伏黒甚爾の肉体の参加者を一応警戒。協力できるような奴ならいいけど…最悪の場合、恵には悪いけどもう一度殺すことになるかも。
6:へぇ、この子(ロスマン)も先生なんだ。この子の教え子や仲間が居たら探すのもありかもね。
7:飛べないのは不便だしストライカーユニットっての、あったら探そうか。
8:あの怪物に入れられた城戸真司は、とりあえず話は通じるようだし危険人物っぽさは無いかな…?
9:浅倉威という人物は一応警戒。
10:主催側が使ったのは精神と肉体を入れ替える術式か、或いは未知の何かか…。
11:最悪の場合は僕の身体が奪われ使われてるかもとも考えとく。一先ず参加者の中にはいないようだ。
12:やはりあの時の奴(羂索)も関わっているのか…?
[備考]
※参戦時期は91話の「渋谷事変⑨」にて、完全に獄門疆に封印された後からです。
[意思持ち支給品状態表]
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[身体]:デストワイルダー@仮面ライダー龍騎
[状態]:健康、五条悟に対し少し心配な気持ち
[思考・状況]基本方針:五条に協力して、このこの殺し合いを止める。
1:こんな馬鹿げた殺し合い、止めなくちゃな。
2:浅倉や他に危険な奴が居たら、五条と一緒に戦って止める。
3:五条は傑って奴と昔何があったんだ?本当に会って大丈夫なのか?
4:蓮は巻き込まれてなくてよかった。
[備考]
※参戦時期は死亡後からです。
※二人が聞いたのはG-7の方でポプ子がガラスを割った音です。
【どこでもボール射出ベルト(花火機能付き)@名探偵コナン】
サッカーボールをどこでも射出できるベルト。
バックル部分に付いているスイッチを押すと、バックル中央からサッカーボールが膨らまされて出てくる。
ボールは膨らまし続ければアドバルーン大にまで膨らむ。
また、ここにあるものは劇場版で使われる花火機能付きのものである。
花火ボールは水中でも爆発させることができる。
花火にする場合、ダイヤル操作で爆発するまでの時間を調整することも可能。
なお、ボールを射出できるのはどの場合でも1回までとする。
【ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ】
仮面ライダーの変身ベルト:デザイアドライバーにセットして使うレイズバックルというアイテムの一種。
『仮面ライダーギーツ』の第37話で浮世英寿が母であるミツメから継承した「創世の力」で生み出した特殊なレイズバックル。
本来の持ち主である浮世英寿/仮面ライダーギーツがそのまま使用した時はブーストフォームマークⅢとなり、創世の力により空間を創り変える能力を得た。
しかし、マークⅢのままでは創世の力を制御しきれなかった。
展開して二分割すると「ブーストマークⅨバックル」へと変化し、使用者に超常的な戦闘力やスピードを与えられるようになる。
仮面ライダーギーツがマークⅨで変身してギーツⅨとなった時は、創世の力を自在に操り、破壊と創造や事象の改変等といった神のごとき力を発揮した。
なお、「創世の力」を宿している状態の浮世英寿以外の者がこのレイズバックルを使っても力を発揮できるかどうかは不明。
本ロワにおいては、これを使用する場合の本ロワ独自の時間制限等は無いものとする。
514
:
◆5IjCIYVjCc
:2024/11/28(木) 23:51:47 ID:uV1YJAyw0
投下終了です。
515
:
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:04:16 ID:sXnH/I/c0
ゲリラで投下させていただきます
516
:
永遠なんてないけれど、それでも
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:05:48 ID:sXnH/I/c0
風間トオルとレミリア・スカーレットの二人は、風間の提案により身体を休めていた。
とはいえ、ただ休むだけというのも時間がもったいない。
名簿は確認したものの、ランダム支給品はまだちゃんと見ていないし、地図でどこを目指すのかも決めたい。
そういうわけで、まずは支給品を調べることになった。
「僕の支給品、一つ目は…」
「…メイド服ね。後藤ひとり…名簿にも名前があった人が着ていたものらしいわね」
「そして二つ目は…」
「…メイド服ね。名簿には名前がないけど、朝比奈みくるって人が着ていたものみたい」
メイド服&メイド服。
風間トオルの肉体もまたメイドである十六夜咲夜であるから、トオルは今、3着のメイド服を手に入れたことになる。
「いやなんでだよ!?なんでメイドの咲夜さんに別のメイド服を支給したんだよ!?」
思わずデイバックを床にたたきつけて突っ込む。
物騒で殺傷力の高そうな武器が欲しかったとは言わないけど、それにしたってあんまりだろう、これは。
着替えには困らないけど、今欲しいのはそういう気遣いじゃ絶対にない!
「ふうん、後藤ひとりの方のメイド服はともかく、朝比奈みくるのピンクのメイド服はうちの咲夜にはあんま似合わなそうね。フラン辺りが着たら似合いそうだけど。でもピンクの咲夜ってのも、それはそれでちょっと見てみたいかも」
「何変な分析してるんですか!?こんなのでどうやって戦えっていうんですか!?」
「何よ、余裕のない男はモテないわよ、トオル?まだ支給品はもう一つあるかもしれないのだし、落ち着きなさい」
「うう…」
レミリアに諭され、ともかくトオルは気を取り直して最後の支給品を探す。
出てきたものは…
「これは…木の棒?」
「良かったじゃない、メイド服じゃなくて」
「これ…なんでしょう?棒の先端にピンク色のナニカがついてる。見た目はソフトクリームっぽいけど…」
トオルはその木の棒を自分の顔に近づける。
その瞬間、プ〜ンといやあな臭いが漂ってきた。
そう、それは形こそ似ているが、ソフトクリームではない。
その正体は、ウ…
「うわああああああ!」
トオルは思わず棒を振り回してそのピンクの物体を振り落とした。
ピンクの物体は、べちゃりと地面に潰れた。
517
:
永遠なんてないけれど、それでも
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:06:33 ID:sXnH/I/c0
※ここから先、書かれている文字と実際に喋っている内容が違うことがあります。
台詞の中の「ウ●チ」は「ほにゃらら」と読んでね。
「な、な、なんでこんなものが」
「トオル、その棒…復活してるわよ」
「え!?」
レミリアの指摘にトオルが木の棒を見ると、取り払ったはずのピンクのそれが再び先端にくっついていた。
「うわあああ!」
再びトオルはそれを振り払うが、やはりピンク色の物体は復活してくる。
「…トオル、私たち、ここでお別れしましょうか」
「なんなんだこれはああ!」
頭を抱えて叫びつつ、トオルは説明書の紙を読んだ。
「なになに…『プリンプリンのウ●チ(※)棒。プリンプリンがウ●チ(※)を投擲するのに使う木の棒。特別仕様としてウ●チ(※)を投擲するとすぐに次のウ●チ(※)が補填されます。いくら投げようが無限に補填されます。』……何の嫌がらせだよ!」
「ま、まあ、ある意味投擲武器として役に立つんじゃないかしら?」
「確かに嫌がる人は多そうですけど……ええっと、まだ続きがあります。『また、この棒を持って強く念じるとウ●チ(※)がトラップウ●チ(※)に変化し、粘着力が上がります。これを踏んだものは身動きが取れなくなります』」
「敵の動きを止めるなんて、結構使える武器じゃない!やったわねトオル!」
「そういいながら距離を取らないでくれます…?」
レミリアはいつの間にか、トオルから3メートルくらい離れた距離に立っていた。
「念じる、か…こ、こうかな?」
トオルは棒を持って念じてみた。
ムクムク
すると、先端のウ●チが一回り大きくなった!
「うわあ!」
驚いて再び棒を振り回す。
トラップウ●チは地面にベチャっと落ちた。
「これが粘着力の上がったナントカって奴ね…トオル、どれほどの効果があるか触って確かめてみたら?」
「触らないですよ!」
518
:
永遠なんてないけれど、それでも
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:07:32 ID:sXnH/I/c0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「うう、なんで僕がこんな…」
メイド服なんかよりはるかに酷い支給品に落ち込むトオルを尻目に、レミリアは自分の支給品を確かめることにした。
トオルみたく変なものでないといいのだが。
「これは…トマト?」
一つ目の支給品は、マキシムトマトというらしい。
説明を見てみれば、その効果はなんと食べると体力が全回復。
大当たりといっていいが、一つしかないし使いどころは慎重になった方がよさそうだ。
「次のこれは…巻物ね」
二つ目の支給品は、魔法の巻物。
巻物に書かれた呪文を唱えれば誰でも使える魔法の巻物(消耗品)である。
その効果は『味方の誰かを超人にする』…というものなのだが。
主催陣の嫌がらせか、あるいは実際に使うまで効果が分からないというスクロールの特性を重視したからか、説明書には魔法効果までは書かれていなかった。
「うーん…効果の分からない1回きりの魔法って、使いどころに困るじゃないの」
とりあえず、この巻物はどうしてもという時にだけ使うようにしようと決めるレミリアだった。
「ああ〜!こんなのは僕のキャラじゃないのに〜!こういう下品なのはしんのすけの役回りのはずだろ〜!」
「…まあ、彼よりはマシよね」
咲夜本人は到底しなさそうな狼狽えぶりを面白そうに眺めながら、レミリアは最後の支給品を取り出した。
「これは…バッジ、なのかしら?」
説明書には、「K・Bバッジ。カスカベ防衛隊の証のバッジ」ということしか書かれていない。
特に役に立たなそうでガッカリだが…はて、カスカベ?
どこかで聞いたような…
「それは…!」
ショックから立ち直ったらしいトオルが、レミリアの持つバッジを見て驚いた顔をしていた。
ああ、そうだ、思い出した。
カスカベ防衛隊、それは確かトオルの…
「レミリアさん…そのバッジ、譲ってもらえませんか?その、代わりになるようなもの、メイド服くらいしかないんですけど…」
「…いいわよ、交換なんてケチなこと言わないわ。これはあなたがつけてなさい、トオル」
そういってレミリアは、そのバッジをトオル…咲夜の胸元に取り付けた。
519
:
永遠なんてないけれど、それでも
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:08:34 ID:sXnH/I/c0
「う、うう…」
バッジをつけられたトオルは、そのバッジをしばらく見つめると。
その目には、涙が流れていた。
「ネネちゃん、ボーちゃん、マサオくん……しんのすけ」
そのバッジ、カスカベ防衛隊バッジは。
風間トオルにとっての友情の証だった。
『じゃーん!』
『何それ?』
『カスカベ防衛隊バッジのデザインさ』
『バッジぃ?』
『みんなの団結を深めるためにも こういうの必要だと思うんだよねぇ』
この直後、しんのすけが引っ越すと聞いて、ショックで思ってもないことを言ってしまって。
そう、彼らといた時間は、決して楽しいだけのものではなかった。
時には喧嘩して、ぶつかって。
それでも最後には仲直りして、また遊んで。
トオルは知っている。
あの輝かしい日々が、永遠に続くものではないと。
エリートの道を行く自分は、いつかは彼らと違う道を歩まなければならない。
だからこそ、彼らとの今を、大事にしたい。
同じ幼稚園にいる今のうちに、沢山の思い出を作りたい。
それなのに、こんなところで終わってしまうのか。
もうこれ以上、思い出を増やすことはできないというのか。
みんなと、一緒にいられないなんて、そんなの…
「嫌だ…嫌だ!みんな…みんな……!会いたい…会いたいよう…!」
風間トオルは、まだ5歳の子供だ。
どれだけの冒険を経験しようが、ピンチを乗り越えようが、まだ幼い少年なのだ。
そんな彼にとって、殺し合いという環境は、みんなに会えないかもしれないという恐怖は、とても辛いもので。
今までなんとか考えないようにしていたそれに思い至り、限界を迎えた。
「トオル…しっかりなさい」
その場にうずくまり泣き崩れるトオルを、レミリアは口ではたしなめつつも、宥めるように頭を撫でた。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
トオルとレミリアは、休息を終え出発していた。
目的地は紅魔館。
ここから南西にある、レミリアの屋敷である。
「トオル、屋敷に着いたら、特訓するわよ」
「特訓…ですか?」
「ええ、私が知る咲夜の戦いを、あなたに叩きこんであげる。わたしが…そして、あなたが生きて、みんなと会えるようにね」
「!…はい!」
520
:
永遠なんてないけれど、それでも
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:11:19 ID:sXnH/I/c0
【G-2/森/黎明】
【風間トオル@クレヨンしんちゃん】
[身体]:十六夜咲夜@東方project
[状態]:健康
[装備]:プリンプリンのウ●チ棒@コロッケ!、K・Bバッジ@クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 〜サボテン大襲撃〜
[道具]:基本支給品、後藤ひとりのメイド服@ぼっち・ざ・ろっく、朝比奈みくるのメイド服@涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:紅魔館に向かい、レミリアさんと特訓する
2:レミリアさんと行動する
3:何かあったらレミリアさんを守らなきゃだけど…僕にできるのかな…いや、やらなきゃ
4:身体しか載ってない人って精神の方はどうなってるんだろう…
[備考]
※殺し合いについて理解しました
※映画での出来事を経験しています
【レミリア・スカーレット@東方project】
[身体]:風間トオル@クレヨンしんちゃん
[状態]:健康、主催に対する怒り(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、マキシムトマト@星のカービィシリーズ、スクロール@魔法陣グルグル
[思考・状況]基本方針:主催をぶっ飛ばす
1:紅魔館に向かう。咲夜たちとの合流を期待しつつ、トオルを鍛える。
2:トオルと行動
3:子供の身体なんて…私も舐められたものね
4:トオル…想像していた以上に凄い経験してるわね…
5:いざとなったらトオルに守ってもらうつもり、その為に彼を鍛えるわ
6:咲夜はどう行動するのかしら…
7:フランの身体を扱っている参加者とは極力会いたくない
8:身体しか載ってない者の精神は捕らえられている…?それとも魂だけがさまよっている…?
※G-2のどこかに、トラップウ●チが設置されました。
踏むと引きはがすことはほぼ不可能です。
【支給品紹介】
【後藤ひとりのメイド服@ぼっち・ざ・ろっく】
後藤ひとりが文化祭で来ていたメイド服。
「オムライス美味しくなれ…へっ」
【朝比奈みくるのメイド服@涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ】
朝比奈みくるのメイド服。
ピンクミニの方。
【プリンプリンのウ●チ棒@コロッケ!】
バンカー、プリンプリンの武器である、先端にウ●チがついた木の棒。
特別仕様として、木の棒からウ●チが離れるとすぐに別のウ●チが補充され、念じると粘着力の高いトラップウ●チに変じる。
トラップウ●チを踏んだものは、基本的に引きはがすことは不可能。(靴を脱いだり地面ごとくりぬいたりという抜け道はある)
ちなみに実際のプリンプリンがどうやって大量のウ●チをストックしているのかは不明。
【マキシムトマト@星のカービィシリーズ】
シリーズお馴染みの回復アイテム。
体力を全回復させることができる。
【スクロール@魔法陣グルグル】
6巻でトマが使っていた魔法の巻物。
巻物を開きそこに書いてある「魔の山より大男が生まれた!その男は無敵のつよさ。そのこぶしは岩をもくだく!」という呪文を唱えることで味方をランダムで超人にする呪文を発動させることができる。使えるのは1回きり。
ちなみに説明書には魔法の効果の説明は書かれていない。
【K・Bバッジ@クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 〜サボテン大襲撃〜】
風間トオルの提案によりつくられた、カスカベ防衛隊の友情の証であるバッジ。
手作りのただのバッジであるが、映画の敵であるキラーサボテンを倒す切り札として使われ、しんのすけを救った。
2024年公開の『オラたちの恐竜日記』では恐竜のナナにバッジ代わりの首輪を作っており、各映画間でのつながりが基本薄いクレしん映画では珍しく、バッジの存在について言及されている。
521
:
◆OmtW54r7Tc
:2024/12/03(火) 23:13:12 ID:sXnH/I/c0
投下終了です
そして投下直後ですが、
>>519
のラストの方にある「ここから南西にある」は、南西でなく北西の間違いでした
522
:
<削除>
:<削除>
<削除>
523
:
◆NIKUcB1AGw
:2025/01/15(水) 21:22:55 ID:jSTVNeBo0
禪院直哉、橋本陽馬予約します
524
:
◆NIKUcB1AGw
:2025/01/16(木) 21:29:05 ID:q2BOi6TA0
投下します
525
:
君は完璧で究極のフィジカル
◆NIKUcB1AGw
:2025/01/16(木) 21:30:43 ID:q2BOi6TA0
RUN RUN RUN
橋本陽馬は、走る。おのれの目的のために。
RUN RUN RUN
走る。走る。この殺し合いを終わらせ、1秒でも早くおのれの肉体を取り戻すために。
(この体……。鈍重そうな外見の割には、それなりに速く走れるが……。
この程度で妥協できるか!)
走っている間もなお、意にそぐわぬ体を与えられたことによるストレスは陽馬の中で高まっていく。
その苛立ちが限界に達しようかというその時、彼が背負ったデイパックの中からけたたましいブザーの音が響いた。
「なんだ……!?」
想定外の出来事によって我に返った陽馬は、急いでデイパックを降ろして中身を確認する。
そしてブザーの発生源である、タブレットを取り出した。
そこに映るのは、悪鬼が宿る少女の姿。
放送が、始まった。
◆ ◆ ◆
放送で告げられた死者の中に、陽馬の興味を引く存在はいなかった。
強いて言うなら、とうてい人とは思えぬ異形が混ざっていた程度である。
だがすでに、他人と体が入れ替わるという異常事態が発生しているのが現状だ。
化物の1匹や2匹混ざっていてもおかしくないだろうと、陽馬はさほど気にしていなかった。
それよりも重要なのは、肉体を交換できる施設が存在するという情報だ。
むろん陽馬は、最終的には自分の肉体を取り戻したいと思っている。
だがこのまま醜い体でストレスを溜め続けるよりは、一時的に他の体に移る方がよほどいい。
元の体には及ばなくても、今のものよりはまともな体ならいくらでもあるだろう。
ならば、やることは決まった。
手頃な肉体を持つ参加者を生け捕りにし、施設を利用して体を入れ替えるのだ。
その後はこの醜い肉体を殺し、これまでの憂さを晴らすこともできる。
「そうと決まればさっそく……いや、その前に名簿を確認するべきか」
はやる心を抑え、陽馬はダウンロードされたばかりの名簿を開く。
今の彼に、自分の肉体より大切な人間など存在しない。
誰が参加させられていようと、殺すだけだ。
だが、自分はこの名簿を確認しなければならない。
陽馬には、そんな確信めいた予感があった。
そして、それは正しかった。
「くっ……くくっ……」
陽馬の口から、くぐもった笑い声が漏れる。
「あなたも来てたんですね、露伴先生……」
「岸辺露伴」。陽馬がここに来る直前、おのれの誇りをかけて勝負をしていた人間。
彼の名前も、名簿に記されていた。
「ちょうどいい……。もう一度勝負しましょう。
それまでは死なないでくださいよ、露伴先生」
そう呟きながら、陽馬は口角をつり上げる。
「さて、それじゃあ……うん?」
タブレットをデイパックに戻そうとした陽馬だったが、
そのタイミングでタブレット内に「肉体のプロフィール」というデータがあることに気づく。
「……まあ、見なくてもいいか。こんなやつの情報など、見ても不快なだけだ」
忌々しげに呟き、陽馬は改めてタブレットをしまう。
その際、指先が何か冷たい金属に触れた。
「ん? これは……」
その感触が気になり、陽馬はそれを取り出す。
出てきたのは、特に代わり映えのない金槌だった。
「ああ、個別の支給品というやつか。
武器というには、少々冴えないが……。
まあこんなものでも、人を殺すには充分だしな。
このくらいの大きさなら、走る邪魔にもならないし」
デイパックを背中に戻し、金槌を手にして陽馬は再び走り出す。
行き先は、特に決めていない。
出会った人間を殺す。ただそれだけだ。
526
:
君は完璧で究極のフィジカル
◆NIKUcB1AGw
:2025/01/16(木) 21:31:40 ID:q2BOi6TA0
◆ ◆ ◆
陽馬が走る道路の近く。
一人の男がベンチに座って、タブレットを確認していた。
禪院直哉である。
「思ったより、知った名前がおるねえ」
名簿を眺めながら、直哉が呟く。
そこには禪院家の関係者を中心に、直哉の知る名前が数多く記されていた。
その中の一人である禪院甚壱は、すでに先の放送で死亡が知らされている。
放送を信じるなら、直哉が先ほど殺した醜男の中身が彼だったらしい。
図らずも身内を手にかけてしまったことになるが、それについて直哉が何か思うことはない。
血が繋がっているといっても、所詮は当主の座を巡って足を引っ張り合う関係。
知らずに殺したところで、「ああ、そう」で終わりだ。
まだ生きている扇についても、同じようなものだ。
他に夏油傑の名前にも聞き覚えがあったが、こちらもどうでもいい。
直哉にとって有象無象と区別すべきは、二人だけ。
一人は、五条悟。
「僕を止めたければ、現代最強でも連れてこいとは思っとったが……。
ほんまにおるんやな。
まあ、今は最強とちゃうやろうけどな」
五条悟こそが、今の世で最強。それは疑いようのない事実だ。
だが今の彼は、別人の肉体に精神を移し替えられているはず。
元が最強なのだから、どんな肉体になっていても弱体化は免れない。
例外として、別の時代の最強―それこそ、宿禰のような―の肉体を与えられてでもいれば話は別だが……。
さすがにそこまでの化物が生み出されている可能性は低いだろう。
そして、もう一人。
「ほんまに君とは縁があるなあ……真希ちゃん」
今の直哉が執着というものを抱く、ただ一人の存在。
禪院家の最底辺だったはずなのに甚爾の域に到達し、自分を二度にわたって打ちのめした女。
禪院真希。その名も、名簿には記されていた。
「他の奴らは、どこでどう死のうがかまわへんけど……。
君だけは、絶対に僕の手で殺したるわ」
怨嗟に満ちたどす黒い声が、直哉の口から漏れる。
まだ自分は、ここまで人を呪うことができるのか。
直哉自身が、そう驚くほどに。
◆ ◆ ◆
そして、数十分後。
大通りの路上で、二人は遭遇することになる。
まずは無言でにらみ合う二人。
やがて、直哉が先んじて口を開く。
「呪霊やないようやけど……えらいけったいな見た目やなあ。
ダイエットせえや、デブ」
直哉にとって、それはほんのジャブ程度の挑発のつもりだった。
しかしその言葉は、陽馬の逆鱗を的確に撃ち抜いていた。
「オレが……好き好んでこんなクソみたいな体を選んだと思っているのかぁぁぁぁぁ!!」
絶叫と共に、陽馬は金槌を振り上げて直哉に襲いかかる。
その勢いは、一般人であれば対応が困難なレベルであった。
だが今の直哉にとっては、なんてことのない攻撃に過ぎない。
「その脂肪、そぎ落としたるわ」
飛び込んでくる陽馬の腹に、直哉はカウンターで回し蹴りを叩き込む。
陽馬の体は大きく吹き飛び、近くの建物の壁に激突。
壁は砕け散り、陽馬はその向こう側へと落下した。
(ん?)
その瞬間、直哉は違和感を覚える。
(なんか、あいつの体が微妙に縮んだような……。
それに殺す気の一撃で、血の一滴も飛んでへんのはおかしくないか?)
顔をしかめる直哉の見つめる先で、陽馬がのっそりと立ち上がる。
その姿には、まったくダメージが感じられない。
衣服も汚れや小さな傷こそあれ、血は付着していないようだ。
527
:
君は完璧で究極のフィジカル
◆NIKUcB1AGw
:2025/01/16(木) 21:32:38 ID:q2BOi6TA0
「なんや、おまえ……」
眉間にしわを寄せ、直哉は呟く。
「おかしいやろ。甚爾君の体で蹴り飛ばして、なんでピンピンしとんねん。
脂肪の防御力っちゅうんは、そんなに高いんか?」
「どうやら、そのようだな」
「あぁ?」
皮肉のつもりで言った言葉を肯定され、直哉の表情はますます険しくなった。
「どうやらこの体、ただの醜い肥満体ではないらしい……。
オレ自身、まだ理解していないが……。何か特別な力が宿っているようだ」
「特別な力ぁ? 何を寝ぼけたことを……」
不機嫌な声色のまま、直哉は言い捨てる。
陽馬は呪術師でもなければ、むろん呪霊でもない。
その程度のことは、直哉にもすぐわかる。
ただの人間が、「特別な力」など持っているはずがない。
それが直哉にとっての常識だ。
しかし、陽馬の肉体であるファットガムはその常識の外から来た存在。
大多数の人間が、「個性」と呼ばれる異能を宿す世界の住人だ。
ファットガムの個性は、「脂肪吸着」。
その脂肪で、あらゆるものを押しとどめる。
それが、形のない衝撃であっても。
直哉の蹴りを食らった時、陽馬は無意識のうちにその衝撃を吸収していた。
そして壁にぶつかったタイミングで、やはり無意識に衝撃を放出。
結果として直哉の放った蹴りの威力は、壁を壊すことに消費されたのだ。
とはいえ、全ての衝撃を吸収できたわけではない。
それができれば、吹き飛ぶこともなかったのだから。
実際には、陽馬は多少のダメージを受けている。
しかしそれは、見ただけはわからない程度のものである。
「だが……だからといって、オレがこの体を気に入らないのは変わらない」
直哉の反応を無視し、陽馬は一方的にしゃべる。
「その点、君の体は素晴らしいな。
そこまで鍛え上げられた肉体を、オレはオレ自身以外に知らない。
オレが入れ替わる肉体は、それにしよう」
「何を勝手なこと言うとるんや、君ぃ」
とうとう不機嫌を通り越し、直哉の顔に明確な怒りが浮かぶ。
主催者が甚爾の肉体を自分に与えたことは、耐えがたい屈辱だ。
だがだからといって、どこの誰かもわからないゴミ屑に甚爾の肉体をくれてやるなど許容できる話ではない。
「もうアカンわ。我慢の限界や。
元から殺すつもりやったけど、もう絶対に殺すわ」
「奇遇だな。オレも君を殺したくて仕方ない。
とはいえ、オレが入れ替わりたい肉体を殺すわけにはいかないからな……。
まずは気絶させて、生け捕りにしよう」
二人は、改めて戦闘態勢を取る。
究極の肉体に心を焼かれた者同士の戦いは、ここからが本番だ。
【G-5 街/深夜】
【橋本陽馬@岸辺露伴は動かない】
[身体]:ファットガム@僕のヒーローアカデミア
[状態]:脂肪消費5%
[装備]:釘崎野薔薇の金槌@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、元の肉体を取り戻す
1:直哉を倒し、生け捕りにする。
2:肉体を交換できる施設を見つけ、直哉と肉体を入れ替える。
3:露伴を見つけ、再戦を挑む。
[備考]
※参戦時期はトレーニングジムから転落した直後
※肉体のプロフィールをチェックしていません。ただし無意識に発動したことで、個性についてはおぼろげながら理解しています。
【禪院直哉@呪術廻戦】
[身体]:伏黒甚爾@呪術廻戦
[状態]:健康、主催への怒り(極大)
[装備]:絶刀・『鉋』@刀語
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:全て潰す
1:甚爾君を穢したクソアマ共を皆殺しにする。
2:俺を見下し切ったアバズレ共は絶対に呪い殺す。
3:1、2の為に参加者も全員殺す。甚爾君の身体で負けるなんてあったらいかんのや
4:目の前のデブを確実に殺す。
[備考]
※参戦時期は呪霊として祓われた後
○支給品解説
【釘崎野薔薇の金槌@呪術廻戦】
釘崎野薔薇が、おのれの術式に使用する金槌。
彼女以外の人間が使っても市販品とまったく変わらない代物でしかないが、充分に人を殺せる凶器にはなる。
528
:
◆NIKUcB1AGw
:2025/01/16(木) 21:33:48 ID:q2BOi6TA0
投下終了です
何か問題がありましたら、指摘おねがいします
529
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/02/17(月) 23:01:35 ID:8PU/oNwA0
五条悟、城戸真司、朝倉涼子、あちゃくらさん、ポプ子で予約します。
530
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/01(土) 23:15:15 ID:Bhhzj.yk0
予約を延長します。
531
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:09:31 ID:vSgFBXXc0
遅れてしまい申し訳ありません。
投下を始めます。
532
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:10:53 ID:vSgFBXXc0
「ウオオオオォォォーーッ!!!」
ポプ子は今、街中を走っている。
ロナルド吸血鬼退治事務所を飛び出した彼女の次の目的地は、ここから南東方向にあるH-8エリア、そこにある錦御殿だ。
精神入れ替えが可能らしい物がある場所の把握のため、彼女は施設を片っ端から探すことに決めていた。
そして前にロナルド吸血鬼以下略の中でとりあえず現在地を確認した後、本当に全ての施設を順番に巡ることができるようにするために、南東の端の錦御殿の方に向かおうとしていた。
けれども彼女はまだ、G-7エリアのやや西寄りの方にいた。
元々いたロナルド以下略がそもそもこのエリアのやや西寄りにあったからだ。
そしてそこからまだ脱出できていない段階で、非常事態が起きることになる。
まだ、南東の方へ行くための方向転換をしたばかりの時であった。
「それじゃあ早速、やってちょうだい」
『SHAAAA!』
「何だっ!?」
ポプ子めがけて何かが飛んできた。
その何かを、ポプ子は咄嗟に横に跳んで避けた。
飛んできたものは、黄味がかかった吐瀉物のような見た目の液体の塊だった。
液体は先ほどまでポプ子のいた場所に着弾すると、そこのコンクリートの地面を瞬く間に溶かしていった。
飛んできたものは溶解液だったのだ。
「あら……まあ、とりあえずはこんなものでしょうか」
「てめえは…!」
溶解液の飛んできた方へ顔を向けると、紫を基調としたカラーリングの仮面の騎士が、その場に立っていた。
その隣には、これまた紫の体色をした巨大なコブラが佇んでいた。
仮面ライダー王蛇とその契約ミラーモンスターのベノスネーカーがそこにいた。
溶解液を吐いたのはミラーモンスターの方だ。
彼らの中身は、本来の王蛇である浅倉威の身体となった朝倉涼子と、その並行同位体のあちゃくらさんだ。
◇
「いきなり何すっだてめえぇーーーッ!!!」
「殺し合いにいきなりも何もないでしょう」
ポプ子がロ以下略内の窓ガラスを割った音を聞き付けて、朝倉涼子はこの場に現れた。
標的となる者を見つけたのなら、後は元の世界に速やかに帰還するという自分の目的のために排除するだけだ。
ポプ子を発見した彼女は早速、あちゃくらさんの方に指示を出して攻撃させた。
結果は避けられこちら側にも気付かれたが、ならば次は相手を倒せるまで戦うだけだ。
『SWORD VENT』
朝倉はデッキから取り出したソードベントのカードを杖型召喚機のベノバイザーに装填する。
そうして召喚したベノスネーカーの尻尾を模した武器であるベノサーベルを手に取り構える。
「初対面なところ申し訳ありませんが、私には急いで行かなければいけないところがあるので、この殺し合いを早く終わらせるために死んでください」
「急いでんのはこっちだって同じじゃボケェーッ!!てめえが先に消えろやあーっ!!」
朝倉の言葉に対しポプ子も中指を立てながら叫ぶ。
ムカついたポプ子は移動を一旦止めて、応戦することを決めた。
そして腕を振り回しながら、ベノサーベルを構える朝倉に向かって走って突っ込んでいく。
「おりゃあ!」
ポプ子はパンチを繰り出そうとする。
しかしそれは明らかに、相手に届かない距離からでのものであった。
けれども、それで問題は無かった。
『ビュンッ』
「!」
今のポプ子のレグとしての身体での腕は、前腕から先がロボットらしく機械の外観をしている。
その前腕の更に前半分の部分が、ポプ子が腕を振り回すと同時に割れる。
割れたとは言っても、離れた部分とはワイヤーロープで繋がっていた。
そして割れた先の拳部分が、朝倉の方に目掛けて飛んでいった。
飛んで離れていくにつれて、ワイヤーも体から出て伸びていく。
こうしてポプ子の拳は、ワイヤーを伸ばしながら離れたところからでも朝倉に向かって飛んでいくことができていた。
朝倉はそれに対し、咄嗟にベノサーベルを自分の顔の前辺りを守るよう斜めに立てる形に構え直す。
『ガシィ』
ポプ子は伸ばした手を開き、ベノサーベルの刃部分を掴んだ。
これを掴んでも、その機械の手の平が傷付くことはない。
「でえい!」
『ブン!』
「わっ…」
ポプ子は腕を上に勢いよく上げる。
繋がるワイヤーと離れた手の方もそれに伴って空中へと引き上げられる。
ポプ子の手が掴むベノサーベルを朝倉もまだしっかりと持ち手を握っていたために、彼女も一緒に空中へと放られる形になる。
(お願いしますよ)
『SHAAA!(あっはい!)』
533
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:14:10 ID:vSgFBXXc0
空中に放り出された朝倉は、視線を一瞬ベノスネーカー(あちゃくら)の方に向ける。
その視線から相手が伝えんとしている意図を察知したあちゃくらが行動に出る。
あちゃくらは、もう一度ポプ子に向かって溶解液を吐いた。
「クソッ!」
ポプ子はその溶解液も横に飛んで避ける。
『パッ』
ポプ子がその行動をとった隙に、朝倉はベノサーベルを一度手から離す。
地面に降り立ち、もう片方の手に持っていたベノバイザーを構える。
「私を奴に向けて弾き飛ばしてなさい」
『SHA?(えっ?)』
「いいからやりなさい」
『SHA,SHAA!(は、はい!)』
朝倉はあちゃくらに自分をポプ子に向かって飛ばすよう指示する。
『バシィ』『ビュンッ』『ドゴォ』
「ぐへぇ!?」
あちゃくらは尻尾で朝倉を弾き飛ばす。
朝倉はベノバイザーの下部先端を前に向けながら吹っ飛んでいった。
ポプ子はそれを止められず、ベノバイザーの先端による突きを胸元に喰らう。
その衝撃でポプ子も吹っ飛ばされ、伸びた手の先に掴んでいたベノサーベルの刃も離してしまう。
「ふーん……皮膚は人間とそこまで変わらないようですが…?」
朝倉は先の攻撃の感触からそんな風に感じる。
腕がロープに繋がる形で分離して伸びるところから、相手の身体が普通の人間のものではないことは流石に理解している。
今の自分の身体は一応は普通の人間のもので、戦闘能力は支給品の変身アイテムに依存してしまっている状態だ。
相手の能力はまだほんの僅かなものしか見ていないが、その点からまだ自分の方が一歩劣っているかもしれないと感じる。
けれども相手が衝撃によって苦悶の声を上げるのならば、隙に付け入れられる可能性も見えてくる。
ただ皮膚の感触は人間と変わらなかったが、突いたところは傷が付いたようには見えない。
感触は同じでも、人間よりも頑丈そうでもあった。
そんなことも考えながら、朝倉は後ろに下がって地面に落ちたベノサーベルを拾い上げる。
「で、あなたの方は私にしては反応が鈍いですね。もっとしっかりしてください」
『S,SHAaa…(は、はあ…)』
ついでに朝倉はあちゃくらに文句を言う。
並行世界(スピンオフ)とはいえかつては同じ朝倉涼子という存在だった。
しかしここに来る前まで、ぶっちゃけあちゃくらは本来の自分の使命を忘れかけているくらいにはボケかけているところがある。
これまでは長門有希の家事の手伝いばかりだったため、それも無理はないかもしれない。
おかげで戦闘のための心構えもできていないままここにいる。
「ちっ、やるじゃねえか…」
ベノバイザーで突かれて倒れていたポプ子が起き上がる。
伸ばされたワイヤーロープも仕舞われて腕も最初の状態に戻っている。
ほんの少しの攻防だが、相手は手練れであることが感じられる。
自分もまた、より気を引き締めて戦わなければないことを思わされる。
「そんじゃあ、もういっちょ行きますか!」
ポプ子はもう一度攻撃を試みようとする。
左腕の中からワイヤーを少し引き出し、その先の手は拳を握りしめる。
そして右手でワイヤーロープ部分の途中を掴み、そこを中心に繋がった腕をブンブンと回転させ始める。
「うおおおおおお!!」
ポプ子は腕の回転速度を上げながらもう一度駆け出す。
「おりゃあ!!」
そうして速度を付けたワイヤー先の握り拳を、朝倉に向けて投げ出した。
対する朝倉はベノサーベルでそれを弾き返すことを考えながら構える。
そして、その拳が朝倉の方に届きそうになった時だった。
『ADVENT』
そんな音声と共に、近くに落ちていたガラスから1体の大きな影が飛び出した。
そのガラスは、近くにあるロナルド吸血鬼退治事務所の窓ガラスが割れたものだ。
ポプ子が中から割って吹っ飛ばしたものだ。
『バシッ』『ガキンッ』
「何ッ!?」
「あら…」
影はポプ子と朝倉の間に入り、2人の攻撃を受け止める。
それは白い体に青い縞模様の虎のような姿をした二足歩行の怪物だ。
現れたそいつの正体は、ミラーモンスターのデストワイルダー。
さらに言えばそこに宿された精神、城戸真司だ。
「はいはーい!そこ2人、一旦ストップしてねー」
女の声でそんな言葉が投げかけられる。
声の聞こえて来た方向に顔を向けてみれば、そこには全身を白銀の鎧のようなもので包んだ者がいた。
それは朝倉が変身している仮面ライダー王蛇と同じく、ミラーワールドで活動するための仮面ライダーの1人であるタイガだ。
そして今は姿を隠しているその中身は、エディータ・ロスマンの身体となっている五条悟だ。
彼は、予め支給品のデッキを使って変身した状態でこの場に現れた。
534
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:19:37 ID:vSgFBXXc0
◆
五条悟と城戸真司も、朝倉達と同じくガラスの破壊音を聞きつけてここに来た。
彼らがたどり着いた時にはもう、戦いは始まっていた。
ポプ子と朝倉達はそれぞれ相手方に集中していて五条達が来たことには気づいていなかった。
そのためその隙に、五条はタイガのデッキを使って変身しておいた。
そしてポプ子と朝倉2人を止めるためにそれぞれが攻撃を行おうとするタイミングに合わせてデストワイルダー(真司)をアドベントのカードで召喚した。
良い位置にガラスの破片も落ちていたため、そこに映る鏡像からこちら側に呼び出して2人の間に割り込ませることができた。
(しかしまさか、王蛇のデッキまであったなんて……声からして、体も浅倉のものか?)
自分が片腕で止めているベノサーベルの持ち主を見ながら真司は考える。
浅倉威の身体がこの舞台に存在することは五条から見せてもらった身体側名簿から把握していたが、まさかこんな早くそれと対面することになるとは思っていなかった。
しかもピンポイントに王蛇に変身できるようになっていることも驚きだった。
付属品に自分(デストワイルダー)が付いてきているタイガのデッキの支給先は本来の持ち主である東條悟のものでなかったためにも余計にそんな風に感じていた。
※そもそも、参加者の精神・身体側にも東條悟がいない。
本来の使い手である浅倉の身体ならば、それにしっかりとフィットして力を発揮できるだろうという考えからそこに支給したのだろうか。
(それにあのミラーモンスター、あいつも俺と同じで誰かが中にいるってことだよな……)
王蛇のデッキがあるならば、それに付属してミラーモンスターのベノスネーカーも一緒にいることも必然なことだった。
そしてその中身もまた、自分と同じく人間の誰かの精神が宿らされていることも真司には察せられた。
「さてと、一応言うだけ言ってみようか…。僕は五条悟、君たちはこの名前に聞き覚えは?」
「あ゛ぁ゛っ!?てめえなんざ知るかあ!」
「私もあなたのことは知りませんね」
真司を間に挟んだまま五条の質問にポプ子と朝倉は答える。
ポプ子の方は伸ばした腕を元に戻し、離れた所にいたままに答えていた。
朝倉はともかく、ここにいるポプ子は五条の知識は無いようだった。
「よし、分かった。それじゃあ次に、君たちはこの殺し合いには乗っているのかな?」
「一々聞くんじゃねえよ面倒くせえ!急いでんだよ死ねや!!」
「…………そうですね、私にも急がなければならない用事があるので、どんな形でもこの殺し合いはさっさと終わらせたいです」
五条からの質問にポプ子は殺意で返す。
朝倉も自分の方から仕掛けた手前あまり誤魔化さず、少し遠回しに優勝してでも元の所に帰りたいことを伝える。
『GUO,GAA!(お、おいあんた!)』
『S,SHA!?(は、はい!?)』
真司の方も近くにいるベノスネーカー(あちゃくら)に対話を試みる。
ミラーモンスター同士ならば言葉が通じる、という事実を生前に確認したことがあるわけではない。
けれどもミラーモンスターになっている者同士、少しでも可能性があるのならば相手が何を考えているかを確かめない訳にもいかない。
もしかしたら無理矢理従わされているだけで、本当は人を殺すための道具として利用されることを嫌だと思っているかもしれない、とも真司は考えていた。
そして今声をかけてみた感じ、どうやらこの場においてはミラーモンスター同士ならば言葉は通じるようだった。
『GUU,GUO!GUAO!(あんた、本当はそいつに従うのは嫌だと思ってねえか?それなら、何とか逆らってみないか!?)』
真司としては、ミラーモンスターが契約主を攻撃したことのある事例を知っている。
それこそ件の浅倉威が契約していた3体のミラーモンスターがそうであった。
彼らは浅倉が餌となる野良のミラーモンスターを倒して自分達に与えてくれないために、そんなことになってしまった。
そんな時に対し浅倉は、餌に出来そうな野良ミラーモンスターを倒すために、中学生の少女を囮にした。
ちなみにその時の浅倉はあくまで囮にしただけで助けるつもりは全く無かったが、結果的にはその少女を守る形となり、彼女の心の拠り所になっていた。
これについては少女が両親を上記の野良ミラーモンスターに殺されたばかりだったからということもあったが。
最終的には浅倉を見捨てないことを決めた真司が配慮したこともあり、浅倉は少女を狙っていたミラーモンスターを餌として与えることができた。
535
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:21:16 ID:vSgFBXXc0
話は逸れたがようするに、基本的には命を食うという本能を満たすためにミラーモンスターは契約者に従うが、それが無くなれば攻撃してくる。
ここにはミラーモンスターはライダーのカードデッキと契約状態にあるもの以外の野良は存在しないため、食事が出来る機会は滅多にない、契約継続のための条件を満たしにくいだろう。
そもそも中に人がいる状態だったミラーモンスターを食べたいとも思わないだろう(これについては真司の希望的観測を含む)。
そして本来のミラーモンスターよりも人間らしい思考ができている自分達ならば、より逆らいやすいのではないかという可能性を真司は考えていた。
『Shiii……Aaaa……(いやー……そのぉ……)』
真司に対しあちゃくらは歯切れの悪い状態になる。
『S、SHAAa.(いや、そのですね?私としては別にこの人を見捨てても構わないのですが……何か、いきなり自分を裏切るようなことをしたら私の死亡フラグも立つような気もしてきまして…ね?)』
『GAU?(はぁ?)』
あちゃくらは煮え切らない感じのまま真司にそんなことを伝える。
こんなことを言うのは、ただデッキの契約の力で従わされているからだけではない。
殺し合いが始まって早々に裏切るような真似をするのは読者等に対し悪印象を与えるかもしれない。
そうしたら、早死にするかもしれないみたいな考えも浮かんできていた。
だから今この瞬間はまだ、朝倉のことを完全に表立って裏切るのはまだ早いと思ってきていた。
あちゃくらのそんな思惑までは真司にはあまりよく飲み込めなかった。
特に、『自分』を裏切るという発言の意図が特にクエスチョンマークが浮かんだ。
まあ、まさかライダーと契約ミラーモンスターで、それぞれの中身が並行世界の同一人物同士だなんてことは流石に真司の想像の範囲を超えていたことであったが。
そのおかげで、真司からしてみれば相手の発言は要領を得ないものとしか捉えられない。
◇
「まあ、君達がとにかく急いでいることは分かったけど……だからってどうしても殺し合わなくちゃいけないのかい?」
「ふうん…?」
「はあぁあぁあ〜〜っん!?」
五条はポプ子と朝倉に対し問いかけた。
その言葉に、朝倉は少しだけ耳を傾けるような仕草を見せるが、ポプ子の方はそのような態度にならなかった。
「帰ることが目的なら、無闇に戦って敵を増やすよりも、まずは一緒にこの舞台から脱出する方法を探してみる方が生き残るためにも良いとは思わないかい?」
五条は今ここで行われていた戦いを停戦することを呼び掛けた。
帰ることだけが目的ならば、殺し合い以外にも道はあるかもしれないと言っていた。
「ナメんじゃねえぞ!」
しかしポプ子はその言葉に反発する。
「こちとら今滅茶苦茶ムカついてんじゃ!そこの奴はぶっ殺さなきゃ気が済まねえ!」
ポプ子は声を荒げながら叫ぶ。
自分に対し攻撃を仕掛けてきた朝倉に対する苛つきと殺意は抑えられない。
ここで停戦するなんて彼女の中ではあり得ないことだった。
五条の言葉に対し聞く耳は初めから持っていなかった。
「そうですね……確かに、あなたの言うことにも一理あるかもしれません」
対する朝倉の方は、何と引き下がるような動きを見せた。
ベノサーベルを下ろし、数歩下がって真司から離れる。
「帰るだけなら確かに、あの月と殺し合いの舞台周りに張られているというバリアを何とかできれば良いですよね。ごめんさないね、こんなことをしていて」
朝倉は何と、五条の言葉の方に賛同するようなことを言い始めた。
「身体の方は元に戻さなくても良いのかい?」
「それはまあ……どうせ私の本来のものはありませんし、別にここから帰れた後で解決策を探しますよ」
そしてあくまで、脱出の方が優先事項だということも伝える。
『G,GI,GUAU!(な、何だよ、あんたの相棒、話せば分かる奴じゃんか!)』
『…SHIii……Aaa……?(…いやー……そのー………どうなんでしょう……?)』
『GAU?(え?)』
意外にも朝倉が歩み寄ってくれたと思い、少々楽観的な反応をしてしまう。
しかしそれに対しあちゃくらの方は、先ほどよりも更に歯切れの悪い感じになる。
「あーハイハイそーですかそーですか分かりましたよ!!」
朝倉の言葉に対し五条が何か返事をする前に、ポプ子がうんざりしたような様子を見せながら声を出す。
「お前らが共闘しようが裏切り合おうがどうでもいい!どうせここにナナチはいねえんだ!どのみち視界に映るお前ら全員ぶっ殺せば良いってだけのことよおッ!!」
そう叫んでポプ子は、攻撃のための活動を再開した。
536
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:22:30 ID:vSgFBXXc0
◆
「オラァ!」
ポプ子は元からいた遠距離の方から、再び拳をワイヤーで伸ばして飛ばしてくる。
『グイッ』
『GUO!?(うおっ!?)』
『ガキィン!』
それに対し朝倉が真司を引っ張って後ろにやり、ポプ子の拳をベノサーベルで弾く。
「私を信用できるかどうかは別として、一先ずはアレを何とかしてから話をしましょう」
ポプ子の方に向けて剣を構えながら朝倉は五条に話しかける。
先ほどポプ子がさりげなく裏切りの可能性を指摘していたためか、前もって信頼性の問題にも触れていた。
「……まあそうだね。アイツ相当興奮しているみたいだし」
五条は少し考え込む様子を見せるが、すぐにポプ子の方に向き直る。
先ほど真司を呼び出すために使ったタイガ用の召喚機でもあるタイガとしての武器、デストバイザーという斧を構える。
『バッ』
ポプ子は伸ばした腕をまた一旦元に戻す。
その直ぐ後に、両腕を地面に対し平行な横向きの動きで自分の後ろの方に回す。
「ウオオオリャアァッ!!」
『ビュンッ』
そしてそこから戻すような形で再び横向きに腕を前の方に勢いよく回し振る。
同時に、両腕のワイヤーロープが遠心力に従うように伸ばされる。
それはこれまでよりも速く、そして長く伸びていった。
伸びていく量は明らかに、合計すればこれを出しているポプ子のレグとしての身体の体積を超えていた。
ポプ子が両腕を広げていたことにより、どんどん伸びていくワイヤーの線は、五条や朝倉達をまとめて囲う程に拡がっていく。
「フンッ!」
ポプ子は腕を手前で閉じ、それに伴い伸ばし拡げたワイヤーも閉じていく。
そうして閉じていくワイヤーが五条・朝倉達の方に迫って行く。
位置的には、ポプ子の右腕のワイヤーアームが五条に、左腕の方があちゃくらさんに届きそうになっていた。
「せいっ!」
五条はこれに対し、デストバイザーの刃をワイヤーに向かって振るう。
『ギン』『グニッ』
「むっ…」
ワイヤーはその刃で断ち切られることはなかった。
明らかに金属製のように見えるため、それが束ねられたものが刃程度で斬れるといったことはまあ期待していなかった。
しかしそれだけでなく、ワイヤーの勢いを止めることも出来なかった。
ワイヤーはそのまま進み、五条の体に腹の上から何重にも巻き付いて行く。
その際に、デストバイザーを持っていた右腕も一緒に巻き込まれてしまう。
デストバイザーの持ち手部分ごと右腕を体に固定される。
これにより、五条は左腕以外の身動きが取れなくなる。
『Ju,JURA!SHA!』
あちゃくらも自分に向かってくるワイヤーに対応しようとする。
咄嗟に溶解液を吐いてハイヤーに当てようとする。
…が、高速で迫っていたため狙いを定められず外してしまう。
『グル』
そのままワイヤーはベノスネーカーとしての身体にぶつかり、そこを起点として曲がり巻いて回る。
回るワイヤーはあちゃくらよりもワイヤーの範囲の内側にいた朝倉と真司にも向かっていく。
「ハッ」
『GAU!』
それに対して朝倉と真司は、近くに落ちていたガラスの破片に向かって飛んだ。
そこに映る鏡像から、ミラーワールドの中に飛び込んだ。
こうしてこの世界から姿を消したことにより、迫るワイヤーから避けられた。
彼らのいた場所を通り過ぎたワイヤーは回り続け、あちゃくらの長い身体に巻き付いていった。
『JURAA!』
「させるか!」『ブンッ』
『SHAAA!?』
朝倉が飛び込んだのを見てあちゃくらは自分もガラスからミラーワールドに入ろうとする。
しかしその前に、ポプ子があちゃくらに巻き付かせたワイヤーが繋がる左腕を上方向に振り回す。
それに引っ張られ、あちゃくらは持ち上げられてしまう。
ベノスネーカーとしての巨体を持ち上げる程の力を、レグとしての身体は有していた。
『ズドン』
『SHABRAa!?』
あちゃくらはそのまま、地面に叩き付けられてしまう。
「ハッ!」
その次の瞬間に、朝倉がミラーワールドから飛び出して戻って来る。
ベノサーベルを構えて、ポプ子に向かって斬りかかろうと突撃してくる。
537
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:23:57 ID:vSgFBXXc0
「このっ…」
『STRIKE VENT』
「なっ!?」
これに対しポプ子は、右腕のワイヤーで捕らえた五条を振り回して朝倉にぶつけようとする。
しかしそうする前に、五条の方が行動することに成功する。
ワイヤーで固定されたデストバイザーは逆さまの状態になっており、刃は下向きで足の近くの方にあった。
そこに繋がるカードスロットも同じで、これは普段は虎頭の装飾に隠されている。
この装飾は斧としての持ち手部分と連動しており、これをスライドすることでスロットが出てくるようになっている。
その方に五条は動かせる左腕を何とか持っていき、持ち手を操作してカードスロットを出した。
そして同じく左腕で腹近くのカードデッキにも手を伸ばし、そこからカードを一枚取り出した。
そのカードを身をかがめながらスロットの方に差し込み、装飾を再スライドさせて戻してカードの効果を発動させた。
タイガのストライクベントの効果は、デストワイルダーの手を模した鉤爪付きの手甲であるデストクローという武器を装備することだ。
カードの効果発動により、どこからともなく出現したそれが五条の両手に自動的に装備される。
これにより腕が急に太くなり、巻き付くワイヤーが押しのけられ、体との間に一部隙間も出来る。
「よっと」
そんな状態で五条は巻き付かれた右腕の方のデストクローを外しながら少し跳ぶ。
そうして、五条は自分を拘束していたワイヤーからの脱出に成功する。
ワイヤーが押された分だけ隙間ができたこともあり、このようにすることができた。
「ハアッ!」
『ゴンッ』「グアッ!」
『バシッ』「ブヘッ!」
『ドスッ』「グヘアーッ!」
五条が拘束から抜け出したことに驚いた隙に朝倉が近付いて来た。
彼女が持っていたベノサーベルにより、頭、顔の順で叩かれる。
そして最後の三撃目で、みぞおちの辺りを突かれて吹っ飛ばされる。
『シュル…』『ドサッ』
朝倉の攻撃によりポプ子が怯んだことで、あちゃくらを拘束していたワイヤーロープも緩んだ。
これにより解放されたあちゃくらはコンクリートの地面に落下する。
けれども、先ほど叩き付けられたことにより目を回しており、あちゃくらはそのまま地面の上で倒れてピクピクと痙攣しながら伸びてしまっていた。
それ以上は動ける様子は見られなかった。
「ゲホッ、ゲホッ、この…!」
「あら……これでも駄目ですか」
ポプ子は咳き込みながら、戻した手で胸元を押さえながらうずくまって朝倉を睨む。
対する朝倉はポプ子の頑丈さに驚いている。
杖よりも先端の鋭い剣で突いたのに、これでも相手の体に傷付けることが出来なかった。
だが相手は衝撃から咳き込んではいるため、肺等の内臓は流石に体内に存在するかもしれないことも考えられた。
付け入れられる点があるとすれば、そこだろうか。
体の中から大量のワイヤーを出すにも関わらず、内臓の入るスペースがあるらしいことにも不思議に思うが。
『ADVENT』
「次は僕たちが行こうか」
『GAU!』
朝倉がポプ子の頑丈さに呆気にとられている隙に、五条が動く。
デストバイザーにカードを装填し、もう一度ミラーワールドにいた真司をこちら側の世界に呼び出した。
ガラスの破片の鏡像から飛び出した真司は、朝倉の前に出てうずくまるポプ子と対峙する。
「こいつ…!」
『GAO!』『バシィ』
「ぬおぉっ!?」
真司はポプ子に向かって攻撃を仕掛ける。
そうして動きを止めることを五条が望んでいると、カードの効果を通して伝わっていた。
ポプ子はそれらの攻撃に怯む。
相手の巨大な虎のような手の平の打撃と鉤爪による斬撃に対し、腕で何とか防御しようとする。
「くっ、この…!」
『ビシィ』『バシィ』
しかし、そう上手くは捌けなかった。
相手の攻撃は何撃か顔等にも当たっていた。
これで表面が傷付くことはなかったが、怯まされて反撃が難しい状態にあった。
「それじゃあ、早いとこ決めちゃおうか」
『FINAL VENT』
ポプ子が真司への対応に追われている隙に、五条は最後の決まり手とするための技の準備をし始めた。
デッキからそのためのカードを取り出し、それをデストバイザーのスロットに装填した。
それによる音声が鳴ると同時に、五条の両手に再びデストクローが装着される。
538
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:24:56 ID:vSgFBXXc0
『!』
『ガシィ』
「ぐぅあ…っ!?」
真司の方にもカードの効果により何をするべきかの指令が伝わる。
同時に真司は、デストワイルダーとしての巨大な手でポプ子の胸元を押して地面に倒した。
『ズザザザザッ!』
「アババババババババッ!!?」
真司は片手でポプ子を地面に押し付けたまま引き摺っていく。
その行き先は、五条のいる所だ。
ポプ子はこれに抵抗できないまま、そこに向かって引き摺られていく。
「ハアアァ…」
五条は自分に向かって運ばれていくポプ子を注目しながらデストクローを構える。
「ハアッ!」
『ドスッ』
「ガッハァッ!!?」
そして自分の前までに来たところで、右手のデストクローを地面にいるポプ子に目掛けて突き立てた。
爪が向かった先は、仰向けで引き摺られたことで盛大にこちら側に向けられた腹だ。
5本の爪の内一本は、腹の中央に存在するヘソに突き立てられた。
他の肌の部分には爪は刺さらなかったが、そこだけは柔らかいため刺された。
これによりポプ子は、今までで一番の苦悶の声を上げた。
「ハアアアァ……ハアッ!!」
『ドジャアァッ!』
「ギャアアアアアァーッ!!」
ヘソに爪を刺したまま、五条はポプ子を持ち上げた。
その直ぐ後に、五条はポプ子を地面に向かって思いっきり叩き付けた。
そこから、更に大きな悲鳴が上がった。
地面に叩き付けられた後、ポプ子は爪を刺されたヘソから赤い血のような液体を垂れ流す。
そして白目を剥いたまま、僅かに体を痙攣させる以外は、動かなくなった。
◆
『ビュッ』
「!」
ポプ子が動かなくなったのを五条が確認した直後のことだった。
彼に目掛けて、別方向から攻撃が飛んできた。
『ガキィン!』
五条はデストクローの広い甲の部分でその攻撃を防ぐ。
それが狙っていたのは、五条の腹にあるタイガのデッキ部分だった。
ここ目掛けて飛んできて防がれたそれは、ベノサーベルの刃の先端だった。
朝倉が、五条を裏切って攻撃してきたのだ。
「あら……こうなるのは分かってましたか?」
「そりゃあまあ……色々とあからさまだっだし」
ぶっちゃけた話、五条もこうなる予感はしていた。
自分から停戦を誘ったとはいえ、相手の飲み込みの早さは明らかに不自然なものだった。
実際のところ、言葉にはしなくともお互いにこうなること自体は分かっていたのだろう。
朝倉はやっかいな相手であるポプ子が動かなくなってから、五条の方も倒そうとしていた。
五条がポプ子を倒したから、そうなった直後を隙と見て、ライダーの変身の源となるため弱点となる腹のデッキを狙ったのだろう。
結局は五条の方もそれを直ぐに察していたため、攻撃はあっさりと防がれてしまった。
「月とバリアを何とかできれば殺し合いをやる必要は無いと言ってたけど、それはもう諦めたのかな?」
「確かにそうかもしれませけど、そもそもあなたはそのための解決策に心当たりはあるのですか?」
「まあそれは、人を集めてから考えても別に良いんじゃないかな?」
「そういうことだと思いました。なら、その方法よりも戦いで勝ち残る方が早くてまだ可能性もあるかもしれないと思いましてね」
五条からの問いかけに朝倉はそう返す。
共闘の誘いに乗ったのは最初からフリだけのつもりで、何にしても最後には戦うつもりだったことを示した。
その後朝倉は、後ろ向きに跳んで五条から距離をとる。
「ほら、起きなさい。まだ戦いは終わってませんよ」
『…SHURA?』
朝倉は地面に倒れていたあちゃくらに近付き、ベノサーベルの持ち手部分で小突いて起こす。
あちゃくらは思考がはっきりとしていないような状態のまま、ベノスネーカーとしての頭と鎌首を持ち上げて起きる。
「寝ぼけていないで前を見てください。次は彼との戦います。攻撃してください」
『SHu,SHAa!』
朝倉はあちゃくらに指示を出す。
指示を受け取ったあちゃくらが先に慌て気味に動き始める。
五条の方に顔を向けて、焦るようにそっちに向けて移動しようとする。
「おっと、そうはいかないよ」
『FREEZE VENT』
あちゃくらが動き出した瞬間、五条はデストクローを外し、カードを一枚取り出してデストバイザーに装填した。
『!?(あ、あれ……?動けない…?)』
デストバイザーから音声が鳴った瞬間、あちゃくらは動けなくなった。
尻尾の先や舌先ですらも全く動かすことが出来なくなっていた。
その体は完全に、凍結させられていた。
539
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:28:11 ID:vSgFBXXc0
これが、タイガの持つフリーズベントのカードの効果だ。
ミラーワールドのライダー同士の戦いにおいて、相手の契約ミラーモンスターを凍結させて全く動けなくしてしまうのだ。
これにより、あちゃくらは今はその動きを完全に停止させられてしまっていた。
「そんなカードがあるなんて…」
「どうする?降伏でもしてみるかい?」
「……いいえ、まだ勝負が決まってませんので」
相手のミラーモンスターがまだ動ける分、1対2となり自分の方が不利だということは朝倉も理解している。
だからと言ってまだ自分が負けたわけではなく、手の内を全て晒してもいない。
朝倉はまだ諦めずに五条との戦いを続けようとしていた。
「それじゃあ真司、あいつのことも止めようか」
『……GAU』
五条は真司の方にも戦いを続けるように言う。
そうしてデストバイザーを構えて前に出る。
それに対し真司は少し俯いた様子を見せてから、遅れて前に出る。
「ハアッ!」
「ヤッ!」
『………』
五条と朝倉が武器の打ち合いを始める。
しかし真司は、近くで少し攻めあぐねているような様子だった。
何か迷いがあるのか、少々挙動不審にも見えた。
真司は今、2つの事柄について思うところがあった。
1つは、今戦っている相手についてだ。
浅倉の身体と王蛇の力を手に入れたその相手は、こちらのことを裏切ってきた。
先ほどのベノスネーカー(あちゃくら)の反応からして、そっちはこうなることを分かっていたのだろう。
五条もまた、このことを分かっていたようだった。
少し考えればあんな風な形で共闘の誘いに乗るなんてことは確かに怪しかったのだろう。
それでも、本当に裏切られたことにはやるせない気持ちがある。
今の気分としては、前々に述べたような本来の浅倉が助けた少女を囮だと言い放った時のもののようだった。
浅倉の身体を与えられるような者なのだから、その精神も浅倉に類似するところがあったのだろうかなんてことも考えてしまう。
そんな決めつけるような考え方をしてしまうことも、何だか嫌な気持ちにさせられてしまう。
そしてもう1つの思うことは、先ほど五条と一緒に倒した相手についてだ。
戦わなければ相手を止められないことは理解していたつもりだ。
しかし先ほどの戦いにおいては、真司はファイナルベントの際に、手加減を全く加えなかった。
それは、真司自身の意思には反しているところもあった。
これはきっと、自分が今ミラーモンスターになっているからというのもあるだろう。
そのために、カードの効果により体が勝手にファイナルベントの完遂のために動かされてしまった。
……真司はできることなら、戦いの相手の命までは奪いたくないと思っている。
しかしここに来てからの戦いの中で、五条はその点について、相手を殺す結果になっても構わないような感じがある。
ファイナルベントでの最後の一撃も、容赦はしていなかったように見えた。
殺し合いを止めたい気持ちは同じでも、自分と五条とではどこかすれ違っている点があるようにも感じ始めていた。
だがそう感じていることを五条自身に伝えることはできない。
自分がここではあくまでもミラーモンスターとしてしか動けないこと、それによる弊害で五条に自分が本当にやりたいことを伝えられないこと、そういったこと等が心の中で引っ掛かりがあった。
それに先ほど倒した相手も、確かに酷く興奮はしていたが、もしかしたらまだ話し合う余地はあったかもしれない。
今の自分が喋れないからこそ、問答無用で倒してしまったかのような感覚に陥ってしまう。
そんな後ろめたい気持ちが真司の中で出てきてしまっていた。
そんな気持ちがあったために、真司は何げなく先ほど倒した相手…ポプ子の方へと視線を向けた。
そこで真司は、驚かされることになる。
『!?』
「くっ……そおっ…」
ポプ子はまだ、生きていた。
◆
(嘘だろ…アレでまだ動けたのか!?)
これまでの戦いの中でも、ポプ子が相当頑丈なことは分かっていた。
しかしまさか、腹を刺されて地面に叩き付けられても耐えられる程だとは思っていなかった。
ファイナルベントは強力な必殺技だと真司も認識していたが、これでもまだすぐに意識を取り戻す程だとは想像していなかった。
(いや…あれを食べて回復したのか?)
ポプ子をよく見てみると、片腕に何か持っていた。
それは食べかけの黄色い果実であった。
540
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:32:56 ID:vSgFBXXc0
「ガブッ!むしゃゴクッ」
ポプ子はその果実の残りも全て口に運び平らげた。
彼女が今食べたその果実は「オボンのみ」というものだ。
これはポケモンが食べた場合、最大HPの1/4を回復できるとう代物だ(時代が違えば1/2も回復できることもあった)。
ポプ子の身体であるレグはロボットだが、口からものを食べてエネルギーにすることはできる。
と言うよりは電気でもエネルギーは出来るため、力という概念を取り込んでいるという説もある。
だからオボンのみを食べて体力回復することができた。
しかしいくら効果があると言っても、口に運べるだけの元気が無ければ意味はない。
そこはやはり、レグとしての耐久力の高さがものを言ったところもある。
だがそれだけでなく、ポプ子自身が相手の必殺技を受けてしまった悔しさと憎さをバネに、何とかすぐに意識を取り戻して気力で起き上がったということもある。
「ん?」
「あら…?まだ生きていたのですか?」
このタイミングで五条と朝倉もポプ子のことに気付く。
彼らは咄嗟に自分達の戦いを止めて距離をとる。
「いまのはいたかった…いたかったぞ―――――――――っ!!!!!」
それとほぼ同時に、ポプ子は大声を出しながら右腕を上げて前に出し、手の平を開いた。
機械的なその手の平の中央には、丸いレンズのような"発射口"が存在していた。
開かれたそれは、五条悟の方に向けられた。
ポプ子の手の平にエネルギーが収束する。
この瞬間、五条はほとんど棒立ちな状態となっていた。
『ドンッ!!』
「うわっ!?」
咄嗟に、真司が五条を突き飛ばした。
「はーーーーーーーーッ!!」
ポプ子の右手から、光線が放たれた。
その光は、人一人くらいなら飲み込めそうな程太く大きいものだった。
真司が五条を突き飛ばした瞬間に、その光線が通り過ぎた。
『ジュッ』
光は、真司のデストワイルダーとしての身体の胸辺りから下の全てを飲み込んだ。
『ドサッ』
「……………真司?」
光が消えた後、真司の体が崩れ落ちる。
その身体の光が通り過ぎた後の部分は、完全に消滅してしまっていた。
(………ああ、またやってしまったなあ)
薄れゆく意識の中、真司はここに来る前のことを思い出す。
真司は本来、たまたま近くにいた女の子をミラーモンスターのレイドラグーンの攻撃から庇って負った致命傷が元で死んでしまった。
けれども真司はそれについて、今も前も後悔はしていない。
自分が納得できるだけの願いの答えは見つけられているから。
(でもそれを、五条に言えないのは辛いなあ…)
生前の友である秋山蓮にはその願いが何なのかは伝えられた。
だが今の相棒である五条悟にはそれを教えられていないし、そのための方法もない。
けれども、たとえほんの約2〜3時間くらいのかなり短い付き合いでも、共に戦うと決めていた相手であるからには知ってもらいたい気持ちもあった。
出来ることなら、五条にも今後は誰も殺さずに殺し合いを止めてもらいたいのが理想ではあった。
気持ちのすれ違いも解消したかった。
それもまた、伝えられない以上叶うことのない願いだなとは思ってしまう。
(五条…お前は、夏油って奴に、会えたら、良い、な………)
せめて、彼の過去や思っていることの詳細等は知らなくとも、五条悟自身のここでの望みが叶うことを祈った。
それを最後に、城戸真司の意識は消失した。
ミラーモンスターとしての残る肉体も消滅し、後にはそこに命があったことを示すための光の塊のような、魂のようなものがそこに浮かんでいた。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(身体:デストワイルダー@仮面ライダー龍騎) 死亡】
541
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:35:25 ID:vSgFBXXc0
◆
真司に突き飛ばされた後、五条は呆然としながら地面に尻餅をついていた。
そして真司が消滅した直後、彼が変身していた仮面ライダータイガから"色彩"が失われた。
差色となっていた青色が失われ、全体的な色もくすんだ灰色のようになってしまった。
契約ミラーモンスターが先に倒されたことにより、ライダーからも契約によって得られていた力が失われた。
仮面ライダータイガは今、いわゆるブランク体という大きく弱体化した状態となってしまっていた。
専用召喚機であるデストバイザーからも、虎頭の飾りが消滅してしまっていた。
(まさか、あんな武器まで隠し持っていただなんて…)
朝倉は今、ポプ子の方を大いに警戒していた。
相手が手の平から発した大きな光線はとてつもない威力だった。
それは自分が先まで戦っていたライダーのミラーモンスターを飲み込んだ後も、その先にあった街中の建物にも当たっていた。
光線は建物の当たった部分も貫通して消滅させていた。
その更に奥の建物群にも命中したのか、貫通した後の穴が一直線に並んでいるのが見て取れた。
もしこれが直撃したのならば、たとえライダーに変身していたとしても即死するだろう。
だから今は、ミラーモンスターを失った上に隙だらけの五条よりも、ポプ子の方に注目していた。
「……………やっべ」
しかし朝倉の予想外なことに、ポプ子の方は顔を青ざめていた。
『クルッ』
「うおおおおおおおおぉぉぉーっ!!!」
「あら?」
ポプ子は朝倉や五条のいる方とは全く別の方向へ転換して走り出した。
腕のワイヤーロープを長く引き出し、近く建物の壁を越えて屋上の方へと駆け登っていった。
そしてそのまま様々な建物の屋上を乗り継ぎながら、何処かへと逃げ去ってしまった。
朝倉は相手のまさかの行動に反応できずそのまま見逃してしまった。
「……いや、あれだけ強力なものを今まで使わなかったということは、何らかのデメリットもあったのでしょう」
だから今こうして逃げていったのだろうと、朝倉は少し考えて納得する。
しかしこうして見失ってしまったからには、追いかけても見つけるのは容易ではないだろう。
「仕方ありません、先にあちらを仕留めましょう」
朝倉は五条の方に注目を変更する。
ミラーモンスターを失って弱体化した相手なら、倒すのもそう難しくは無いだろう。
しかも相手は相方を失ったことに対してまだ呆然としているようでもあった。
「ほら、行きますよ」
『SHU!?(え!?)』
「い・き・ま・す・よ」
『S,SHA!(は、はい!)』
ミラーモンスターがいなくなったことで、フリーズベントの効果も消えていた。
あちゃくらも動けるようになっていたため、これから一緒に攻撃の行動に移ることを促す。
あちゃくらは状況に着いていけてなかったのか、少しボケっとしてしまってもいたが。
「さっさと決めてしまいましょう」
『FINAL VENT』
朝倉は時間をかけずに相手を仕留めようとする。
今できる最上級の必殺技であるファイナルベントの発動を行おうとする。
相手がブランク体に弱体化している状態なら、これですぐに決着をつけられると判断してのものであった。
「ハアア…!」
『SHIIA!』
朝倉は五条のいる方へ向かって駆け出す。
その背後をベノスネーカー(あちゃくら)が地面を這って追って来る。
「ハアッ!」
『SHAA!』
朝倉は走りながら跳躍し、空中で宙返りを行う。
その回っている最中の背後に向けて、あちゃくらが口から毒液を勢いよく吐き出す。
「ハアアーッ!」
毒液に押されながら、朝倉はキックを放つ。
そのキックは、左右の足を交互に振るバタ足をしながらの連続キックであった。
これこそが仮面ライダー王蛇のファイナルベント、ベノクラッシュであった。
そんな必殺のキックが、五条悟に向かっていった。
「!」
『サッ』
しかし五条の方も、何もしないわけではなかった。
五条はどこからともなく、1つのゴムベルトを取り出した。
『プシュー』『ポンッ』
五条はそのベルトを手で持ちながら操作した。
するとベルトの丸い金属バックルの部分から、1つのサッカーボールが膨らみながら出現した。
『バシッ』
五条はそのボールを拳で打って、自分に向かってキックしてきていた朝倉目掛けて飛ばした。
ボールは、五条と朝倉の間の距離が1メートルの程もなさそうなところで、朝倉のキックにぶつかった。
542
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:37:32 ID:vSgFBXXc0
『ボォンッ!!』
「!?」
『SHU!?』
朝倉のキックにボールが当たった瞬間、ボールは爆発した。
ただ爆発したのではなく、色彩豊かな火の光を輝かせる、花火として爆発した。
この花火により朝倉のキックの威力は殺される。
それだけでなく、朝倉自身も後方へと吹っ飛ばされた。
◇
『ドサッ』
「あ痛っ」
朝倉は地面に強めに叩き付けられた。
その衝撃により、朝倉は王蛇への変身も解除させられていた。
「あ痛た…」
『SHURA…』
地面に倒れた朝倉にあちゃくらも心配して駆け寄ってきた。
「奴は…」
朝倉は体を起こして五条の方の様子を確認しようとする。
少しの間、周囲は花火の爆発によって発生した煙に包まれ、視界が悪くなっていた。
それが晴れた後、そこに五条の姿はなかった。
「……こちらにも逃げられましたか」
朝倉は地面に落ちた際に腰も強く打ち、痛めた。
少しの間は立ち上がることができない。
立ち上がれるようになる頃には、もう相手にも遠くに逃げられているだろう。
(ポンコツな)相方に追わせるのも難しいだろう。
「けれども…もう十分なようですね」
五条がいなくなった場所をよく見てみると、何か青色の破片のようなものが落ちているのが見てとれた。
それは、タイガのデッキの破片であった。
先ほどの花火が爆発した時、朝倉の方は足先を向けていたため、花火の爆風等は腹のデッキに正面からは届かなかった。
しかし相手の方は、地面に立った状態であったためにそれが正面から届いてしまった。
相手は、自分自身が起こした爆発の影響で、自分のデッキを壊してしまったのだ。
相手はおそらく、花火が使い切りで無い限りは、これ以上戦うための手段は持っていないだろう。
あるならもう使っているはずし逃げもしないだろう。
朝倉の目的はあくまで殺し合いを一刻も早く終わらせて元の世界に帰還すること。
そのために他参加者を殺す役割を持つのは自分で無くとも良い。
逃した相手は、放っておいても長くは生きられないだろう。
なるべくなら死んだところを直接確認できた方が安心できるだろうが、とりあえず今のところは焦って追わなくともそこまで問題は無いと思っておく。
「……アレ、どうします?」
『SHA?』
次に朝倉は空中を漂う光の塊を見ながらあちゃくらに話しかける。
そこにあるのは先ほど相手方のミラーモンスター、デストワイルダー(城戸真司)が消えた後に現れたものだ。
あちゃくらはそれに対し、何か気になる様子で顔を近付ける。
『パクッ』『ゴクッ』
「あら、そうするのですか」
あちゃくらはそれを口に含み、飲み込んだ。
朝倉もその様子を確認した。
(……あっ。つい食べちゃったけど、これけっこうマズイことじゃ?)
あちゃくらは今の自分の行動についてそんな風に思ってしまった。
ここで言うマズイとは、味のことではない。
光る塊を前にした時、本能的に食してしまった。
これは、身体がミラーモンスターのものになっていたためだった。
光る塊は、ミラーモンスターが消滅する際に発生するエネルギーの塊だ。
ミラーモンスターの生態として、活動するにはこれを接種する必要もあるため、つい本能的に取り込んでしまった。
ここであちゃくらが気にしてしまったことは、今のエネルギーと元となったミラーモンスターの精神は、どうも人間のものっぽかったところがあったことだ。
自分は今、人間を補食したも同然なのではないかと感じてしまったのだ。
(いや……私もどうせ元から人間じゃないんだし、そこまで気にすることでもないかな…?………うん、気にしなくていい………はず)
あちゃくらは自分に言い聞かせる。
どうせもう食べてしまった以上戻すこともできない。
過ぎてしまったことは受け入れるしかない。
「それじゃあ次は、どうしましょうかね…」
朝倉は地面に座り込んだまま、体の痛みが引くのを待つ。
そうした後、次はどこに向かい何をするべきかを考え始めた。
543
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:39:31 ID:vSgFBXXc0
【G-7 街 ロナルド吸血鬼退治事務所付近/黎明】
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[身体]:浅倉威@仮面ライダー龍騎
[状態]:健康、ダメージ(小)、腰が少し痛い
[装備]:王蛇のカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して元の世界に帰る
1:体の痛みが引くまで少し待つ
2:次はどうしましょうか…
[備考]
※参戦時期はキョンを襲撃する直前
[意思持ち支給品状態表]
【あちゃくらさん@涼宮ハルヒちゃんの憂鬱】
[身体]:ベノスネーカー@仮面ライダー龍騎
[状態]:健康、ミラーモンスターの消滅で発生したエネルギーを摂取
[思考・状況]基本方針:生還する
1:今のうちは、朝倉に従う。裏切るには少し早い気もする
2:さっきのやつ(ミラーモンスターのエネルギー)…本当に食べても大丈夫だった?
3:場合によっては、朝倉を見捨てることも辞さない
4:知り合い……いないのよね?
※G-7の周囲の一部の建物が、火葬砲の影響で一直線に大穴が開いています。
※他のエリアにも影響が出ているかは後続の書き手にお任せします。
◆
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!」
ポプ子は今も、様々な建物の屋上を次から次へと跳び渡っていた。
彼女は先ほど怒りに身を任せて、今の自分に使える最上の必殺技である「火葬砲(インシネレーター)」を使用した。
これはレグとしての身体の手の平や足の裏に搭載されているレンズのような部分から発射することができる。
この火葬砲はただの熱光線などではない、その威力は常軌を逸している。
火葬砲が当たった物体は何であろうと、分解されたように焼かれながら消滅してしまう。
これはレグが本来存在していた魔境、奈落(アビス)のルールを書き換える程のものだと称される。
具体例を1つ言うと、アビスの「呪い」により不死の体になってしまった者を消し飛ばし、殺すことができたことがある。
それ程強力であり、特殊な武装なのだ。
しかしそうである分、弱点も存在する。
1つは大きなエネルギーを補給しない限りは撃てる回数に制限があること。
もう1つは、一度放てば、10分後にそこから2時間も意識を失って昏倒してしまうというものだ。
これが今ポプ子が問題としていることだった。
ポプ子は先ほど火葬砲を一発撃ってしまった。
もうすぐ昏倒してしまい、2時間は全く動けなくなってしまう。
1人でそんなデカすぎる隙だらけの状態になってしまえば、その間に何が起きるか分からない。
それこそ先ほど戦った者が残っている場所で眠ってしまえば、その間に殺されるかもしれない。
レグの身体は頑丈だが、ヘソ等は例外だし、方法によっては切断することもできる。
下手したら、動けない内に殺されてしまうかもしれない。
それだけは絶対に避けなくてはならない。
だからポプ子は今は必死に逃げている。
火葬砲を撃ってから10分経つ前に、敵を撒いて隠れられる場所を見つけるために。
だが、今のポプ子はかなり焦ってしまってもいた。
自分が今どの方角に向けて逃げているかも分かっていなかった。
そんな彼女はやがて、10分まで後数十秒といったところで、あるものを見つけた。
それは、川であった。
具体的には、F-7の方に位置する街中を西から東へと流れる川であった。
「ここだああああああァーッ!!」
川に気付いた瞬間、ポプ子はそこに向かって建物の屋上から大きく跳んだ。
ポプ子はレグの身体についてあることを思い出していた。
レグは呼吸はするが、もしかしたら呼吸の必要が無い可能性もあるのだ。
本来のレグは長時間水の中に潜ったこともある。
だからポプ子は、水中ならば2時間誰にも見つからずに隠れ続けられるのではないかと考えた。
この考えが間違っていて、もしかしたら溺れてしまう可能性だってまだある。
体の大部分が金属であろうロボットのレグの身体では、簡単に浮くこともできないだろう。
けれども慌てているポプ子にとっては、そんなことまで考えている余裕もなかった。
そうして空中に跳び出したポプ子は、放物線を描きながら川の方へと向かって行った。
「あ゛っ」
その瞬間に、火葬砲を撃ってから10分が来てしまった。
ポプ子は宙を舞いながら、その意識を失ってしまった。
そのために、彼女はあることに気付けなかった。
自分が向かっている先に、誰がいるのかを。
544
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:43:16 ID:vSgFBXXc0
◇
「ぐっ……はあ………ようやく上がれるか」
F-7の川の中から一つの人影が陸に上がろうとしていた。
赤い装飾を身に纏うその小柄な影の正体は、佐倉杏子の身体となっている浅倉威だ。
彼は前の戦いで川の中に突き落とされた。
そうして今、ここまで流されてしまった。
意識は保っていたが、思ったより流れが速く、未だ慣れない女子中学生の肉体であることもあり陸に上がるのに少々時間がかかった。
そして今、このF-7でようやく川の中から出られそうになっていた。
そんな時であった。
『ヒュルルル…』
「ん?」
浅倉は何かが風を切るような音を耳にした。
下半身をまだ水に浸けたまま、浅倉はそちらの方に視線を動かした。
そこからは、レグの身体のポプ子が、浅倉のいる方に目掛けて飛んできた。
『ゴンッ!』
「があっ!!?」
浅倉が振り向いてすぐに、2人の脳天が衝突した。
ポプ子は浅倉の頭の上でバウンドし、対岸の陸の上の方へと落ちた。
浅倉の方は、衝撃で陸にかけていた両腕を思わず離してしまった。
「い゛だっ、でめっ、ぼぶっ…ごのっ、ごぼぼぼ………」
浅倉は再び、川の流れに呑まれた。
衝撃に頭を揺さぶられ、朦朧とする意識のまま東に向かって流されていった。
自分をこうしたものが何者なのか、あまり確認できないままに。
対するポプ子は、思い通りに川の中に飛び込めなかったことにも気づけぬまま、川の近くで眠り続けていた。
【一日目/F-7 川の近く 北側/黎明】
【ポプ子@ポプテピピック】
[身体]:レグ@メイドインアビス
[状態]:健康、昏倒中(約2時間目覚めない)、へそにダメージ(中)、エネルギー消費(火葬砲1回分)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:皆殺し。もちろん魘夢達も殺す。ただし、自分やナナチの身体については保留。
0:………
1:がんばるぞい!
2:意識を失っている中で殺られないことを祈るしかねえ
3:さっきの奴ら(五条悟、朝倉涼子)はムカつくからいつかぶっ殺す
4:自分やナナチの身体についてどうするかは一先ず保留。見つけたら一応捕まえておく。
5:面倒くさいがもしもの時のため取り替えのできる施設を探しておく。
[備考]
※レグの腕は健在です。
※『メイドインアビス』についての知識は一応有しているものとします。
※アニメ版2期の放送より前からの参戦としておきます。
※火葬砲を1発撃ちました。残り何発まで撃てる状態かは現状は不明としておきます。
【オボンのみ@ポケットモンスターシリーズ】
現実でいうザボンという柑橘類をモチーフとした、黄色のきのみ。
ポケモンが食べると最大HPの1/4を回復する。
ポケモンに持たせれば、HPが半分になった時に勝手に食べてくれる。
「Pokémon LEGENDS アルセウス」においてのみ最大HPの1/2も回復してくれる。
ポプ子に支給。
【一日目/F-7 川の中/黎明】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[身体]:佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:ダメージ(中)、頭頂にダメージ(小)、魔法少女に変身中、デイパックなし
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、キック力増強シューズ@名探偵コナン
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:戦いを続ける
1:何だか分からんがぶつかられてまた流されてイライラする
2:シャンクスにリベンジする。
3:戦う相手を探す。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※ソウルジェムは支給品に含まれず、破壊されると死亡するものとします。
※槍は魔法で出したものであるため、支給品に含まれません。
※川の流れに逆らえず西から東に流されています
545
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:44:40 ID:vSgFBXXc0
◆
「………あーあ、やってしまったなあ……」
G-7のロナルド吸血鬼退治事務所から離れた所にあるどこかの路地裏、戦いから逃れた五条悟はそこにいた。
その服装や体にはところどころ傷があるようにも見えた。
先の戦いの結果は、はっきり言って五条悟の敗北であっただろう。
出会ったばかりとは言え、共に戦うと言った仲間を失ってしまった。
その原因は、自分が油断していたからという風にも、五条は感じてしまっていた。
本来の肉体での五条悟は、無下限呪術によりあらゆる害ある攻撃が"無限"に守られて自分に届かないようになっている。
それも、自動的になるようにしていた。
どれだけ気をつかっていても、その時の感覚が抜け切れていなかった。
あの時の相手(ポプ子)が何かただならぬことをしようとしていた時も、避けるという判断が遅れてしまっていた。
だから、城戸真司が突き飛ばして庇った。
1人生き残り、相方をこうもあっさりと死なせてしまったために、余計にそのように感じていた。
五条悟は今、親友が闇堕ちした時や、それを自分が殺した時並みの暗い感情を抱いていた。
残ったデッキも逃げるために使った花火ボールの爆風により壊れてしまった。
逃げられたのも爆風の衝撃に乗れたからというのもあるが、そのリターンにはあまり釣り合っているように感じられない。
その花火ボールも、1回だけの使い切りだ。
残る最後の支給品も、強力でも自分では使えない品だ。
「……………何が最強だよ、クソ……」
そうして彼は一人で、最も彼らしくない言葉を呟いてしまっていた。
【一日目/G-7 ロナルド吸血鬼退治事務所から離れた場所/黎明】
【五条悟@呪術廻戦】
[身体]:エディータ・ロスマン@ブレイブウィッチーズ
[状態]:健康、疲労(大)、ダメージ(中)、夏油傑が巻き込まれていることによる動揺・怒り、自己嫌悪気味
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、どこでもボール射出ベルト(花火機能付き)(使用済み)@名探偵コナン、ブーストマークⅢバックル@仮面ライダーギーツ
[思考・状況]基本方針:殺し合い?乗るわけないでしょ。
1:………真司…………ごめんね
2:傑を探す。出来ることなら、あの頃のように共に戦いたい。
3:真希のことも探す。今はどんな状態か分からないけど、先生としてしっかりと導いてあげないとね。
4:他の禪院家(直哉、扇)については…ちゃんと協力できるか少し怪しいところがあるな。
5:伏黒甚爾の肉体の参加者を一応警戒。協力できるような奴ならいいけど…最悪の場合、恵には悪いけどもう一度殺すことになるかも。
6:へぇ、この子(ロスマン)も先生なんだ。この子の教え子や仲間が居たら探すのもありかもね。
7:飛べないのは不便だしストライカーユニットっての、あったら探そうか。
8:浅倉威という人物は一応警戒。
9:主催側が使ったのは精神と肉体を入れ替える術式か、或いは未知の何かか…。
10:最悪の場合は僕の身体が奪われ使われてるかもとも考えとく。一先ず参加者の中にはいないようだ。
11:やはりあの時の奴(羂索)も関わっているのか…?
[備考]
※参戦時期は91話の「渋谷事変⑨」にて、完全に獄門疆に封印された後からです。
546
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/10(月) 23:45:35 ID:vSgFBXXc0
投下終了です。
事後報告になりますが、登場人物に浅倉威を追加しました。
タイトルは「命(きぼう)の果てに」とします。
547
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/12(水) 00:35:34 ID:???0
投下お疲れ様です
永遠なんてないけれど、それでも
プリンプリンのあの棒を主催がバッグに詰めてるの想像するとじわじわくる
クレしん&コロコロノリから急にしんみりすると温度差が凄い
君は完璧で究極のフィジカル
確かにフィジカルギフテッドボディは陽馬にとっては理想形ですね
ファットガムの個性と言うギフトの性能をどれだけ理解できるか
命(きぼう)の果てに
し、真司------!その最後はまさに英雄。
うっかり食べちゃったあちゃくらさんかわいい。
巻き添え食らっちゃった浅倉さんかわいそう
ヒミコ、ムスカ、ドクトル予約します
548
:
◆5IjCIYVjCc
:2025/03/15(土) 18:48:05 ID:.7jgGLeg0
登場禁止な支給品について、以下の物を追加します。
・石化装置(メデューサ)@Dr.STONE
549
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 21:57:40 ID:???0
投下します。
550
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 21:59:05 ID:???0
古代において、夜は死の象徴だった。
今より医学が発達しておらず、明かりも無い世界を出歩く危険性は死を意味した。
「ええい!なんだあの月は!ここは黄泉の国だとでも言うのか!」
ヤマタイ国の女王、ヒミコにとっても夜は恐怖だ。
古代日本においてそうだったかは分からないが、多くの神話において月は死の象徴である。
不気味な顔を浮かべ、3日後に落ちてくるその巨体は、まさに死のメタファーと言えるだろう。
死ぬことを恐れる彼女にとっては、その恐怖は何倍にもなる。
「太陽!太陽はまだ昇らないの!」
太陽信仰は最も原始的な宗教である。
日本各地で太陽へ向けて石を並べた聖地や、火の鳥のレリーフが存在する程だ。
貴人の墓には日輪の祭壇を設けるなど古くから慣習としても伝わる。
昔の人々はただ一つ命の源として生の象徴たる太陽を信仰していた。
「そうだ!」
息を吸い、大きく吐く。
発火の一瞬、眩い輝きを放つと、一直線に炎が放たれた。
燃える草木は彼女の行く道を照らす、たいまつ代わりとなる。
「ホホホ!明るくなった!アン、ドウ、トロア!」
常人なら立つことも出来ない灼熱の大地をものともせず、ヒミコはその上を楽しげにダンスする。
年老いて病に犯されていた頃は出来なかった、軽々しい動きだ。
燃えたぎるマグマで溢れた火山を住処とするオロチの身体は、火炎の最高位呪文すら無効にする。
大魔王ゾーマですら持っていない高い炎耐性を持つオロチならこんな道は余裕だ。
一直線に出来た炎の道筋は、まさに彼女専用のレッドカーペットといえる。
「火を操る力!実に日の巫女たる私にふさわしい!」
古代における火は、明かりであり、調理器具であり、武器であり、ライフラインだ。
日本神話におけるカグツチなど、火を奉る信仰は古くから存在する。
人間は火を扱えたからこそ、繁栄したのだ。
「しかし、暑さは平気とは言え蒸れるな……扇風機とアイスクリームぐらい用意しておかんか!」
そうして火を灯しながら進んでいくと、
玉座が飾られた前方後円墳の影が見えた。
地図で言うところの『玉座のある古墳』である。
「なっ、墓ではないか!?エンギが悪いわっ!」
卑弥呼がどのように葬られたかは作中で語られていないが、魏志倭人伝にこの様な史料がある。
『卑弥呼以死 大作冢 徑百餘歩 ?葬者奴碑百餘人』とあり、
簡単に言えば、『卑弥呼の墓を直径百歩の大きさで作った。奴隷が百人程殉死した』と言う意味。
彼女の墓として有力説とされるのが、奈良県の箸墓古墳である。
「こんなチンケな墓に玉座だと?ふん、女王は私1人で充分じゃ」
276mの箸墓古墳と比べれば、確かに小さいと感じるだろう。
死を忌み嫌うヒミコにとっては縁起でもない施設だが、調べてみる。
わざわざ地図に書かれている程の玉座だ、女王として気になりはする。
頂上へと登れば、座ったものを次王として讃える虎の毛皮が被せられた玉座が置かれている。
「ほう、確かに良い椅子じゃ、座り心地も良い。ヤマタイ国に持って帰るとするか」
ちなみに『玉座のある古墳』と称されているが、この古墳のロケ地は群馬県高崎市にある八幡塚古墳である。
5世紀頃に作られた豪族の墓とされるその古墳は、平成の時代に綺麗に舗装され、復元整備されたものだ。
ん?平成?舗装?
「お前たちの平成って醜くないか?(幻聴)」ダッテージンセーハイッカーイ♪
「誰じゃ醜いと言ったのは!その目つぶしてやる!……気のせいか」
完全に気のせいなのだが、この椅子に座っていると平成を私物化して歴史を舗装する男の声が聴こえそうな気がした。
椅子をヤマタイ国に持って帰ろうかとも思ったが、その気も失せた。
「これはなんだ?虫けらの顔か?」
椅子の脇にはヒミコの目が見てもよくわからない置物がある。
常磐ソウゴが集め、常磐SOUGOが奪い、この古墳で手元に置いていた平成ライダー達のライドウォッチなのだが、意味がわかるはずもない。
551
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:00:21 ID:???0
「それになんじゃこの土くれは、墓への供え物か?」
この古墳には道沿いに筒状の円筒埴輪が配置されている。
また、一般的によく知られる人や動物を模した形象埴輪は、少し離れた内堤部分に綺麗に並べられている。
「こんな土くれより人間を埋めるのはどうじゃ?
偉大な女王の死を悲しんで何十、何百人も後を追う!フフ美しい話じゃ。映画にすると絶対泣かせるぞ」
埴輪という文化が生まれるのは、彼女の没後から一世紀ほど後の為、それが作られた意味が理解出来ない。
人型の埴輪は無駄に生き埋めとして死ぬ民の命を救うために考えられたものだ。
「しかし!私はヤマタイ国の永遠の女王!墓なんて作る気は無い!いつまでも若く、いつまも美しくあるのだ!」
ヒミコは日本における太陽信仰の祖である。
彼女の名の一説に日御子というのがある、文字通り太陽に使える者だ。
また、一説によればヒミコと、古事記に書かれている天照大御神は同一存在であるとも称される。
火の鳥世界の古事記は、後にヤマトが作り出したプロパガンダのため、この説は採用出来ないのだが、
なんにせよ太陽という火のメタファーを背後に持つからこそ、権力と宗教が結びつき彼女は王女として恐れられた。
カメの甲を火にくべて、その割れ目で罪を決めるなんていう、でたらめな占いであってもだ。
「祝え!これが新たな女王の門出となる1ページ目じゃ!」
大きく炎を吐けば、古墳に飾られた円筒埴輪に沿って一斉に火が走っていく。
まるでウォズがこの場所でゼロワンや常磐ソウゴを祝ったときの光景を再現するかのように。
「目が、目があああああ!」
「何事だ!」
叫び声が上がった。
暗闇の中、急な炎の閃光で目が眩んだらしい。
「貴様もこのヒミコの糧となるがいい!」
叫び声を頼りに進めば、地面に付きそうなほど長い髪に、手足の先まで衣服に包まれた少女が見える。
この様な和装はヒミコの時代にはまだ無かったが、質の良い衣服という事は理解できる。
ヒミコは目を擦る女へと近づき、その面を見た。
「あ、ああ!」
ヒミコは別の意味で目が眩んだ。
それは、目の前の人物があまりに美しすぎたからだ。
思わず天女、あるいは神かと思った。
それは、太陽と対比される存在である月の姫。
かぐや姫として現代まで語られ、その美しさから5人の貴族を虜にした絶世の美女。
まだ竹取物語を知らぬヒミコであれ、その美しさは理解できる。
「……なんて美しいの」
「私と勝負するかね!」
目を押さえて錯乱していた美少女は、次の瞬間には自信満々にドヤ顔を決めていた。
せっかくの美貌もその中身は混沌としていた。
「私は素晴らしい力を持つムスカ大佐DA!」
「ふ、ふん、おだまり!私はヤマタイ国の女王、ヒミコだぞ!」
ヒミコはなんとか気を保つ。
どれだけ相手が美しかろうと自分には力があるのだと、自信を鼓舞する。
「これはこれは王女様ではないか!私はラピュタの正当な王位継承者ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。君はラピュタ王の前に居るのだ」
「楽太郎だかロビタ王だか知らんが、そんな国は聞いたこともないわ!」
ヒミコが知っているのは火の国クマソやマツロ国、ヨマ国、そして日本国王の印を賜った魏の国といったところだ。
これが返答代わりと、その美しい顔めがけて『ほのお』を思いっきり吹き付けてやる。
「何をする!目がああ、目がああああああああ!」
「ホーホッホ!まっこと醜い!」
歴史に残る程の美貌は一瞬で失われた。
目を抑え、爛れてしまった部分を守るその仕草は痛々しさしか感じない。
「なんと楽な身体よ!」
火を自在に扱える立場になったという時点で、ヒミコにとって自分は神様になったも当然だ。
こんな力があれば、もう自分に敵う人間は居ない。その事がヒミコは嬉しくて仕方がない。
老いて病に伏せていたときとは比べ物にすらならない龍の力を思う存分に震えるのだ、さぞかし格別な気分だろう。
「簡単!!簡単!!」
歴史上において八岐大蛇の名が登場するのは、卑弥呼没後の古事記であるためその伝承を彼女が知っていたかは定かではない。
どちらにせよ、こんなにも強い身体があれば優勝も簡単だろうと慢心するのは変わらない。
強さを得た身体に溺れる様な笑みを浮かべながら、その怪力を振るい止めを刺そうとする。
552
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:03:18 ID:???0
「何度でも蘇るさ!」
「えっ」
ムスカが抑えていた手を外せば、顔に覆っていた痛々しい火傷は即座に代謝が進み、シワの一つもない綺麗な白い肌へと戻っていく。
彼の肉体たる輝夜は蓬莱の薬を飲んだことで不老不死の肉体を持ち、外傷を負っても再生する。
稗田阿求によると、同様に薬を飲んだ藤原妹紅は『怪我の治りが異様に早く、大怪我を負っても数日で元通りになる』と称されている。
「おおおおおまえ!その身体!まさか!火の鳥の血を飲んだのか!」
ある意味では近い、輝夜は火の鳥たる藤原妹紅と日頃から殺し合う程の仲だ。
輝夜の身体は炎術を操る彼女と三百年も殺し合い、焼かれることを経験している。
グレートアクターによる耐久の向上も合わせれば、死ぬ程のダメージではない。
この程度の炎ならば、死に達するよりも、治るほうが速かった。
痛みはあるのだが、何度も死んでは生き返る戦法を主体に行うムスカにとっては慣れたものだ。
「おのれ!ならば、そのハラワタ食らいつくしてやる!」
やまたのおろちは生贄として若い娘を好んで捕食していた。
それに引き摺られたのか、思わず食らいたいという言葉が出た。
ヒミコは知らない事だが、蓬莱人の生き肝を食すると食べた人も不老不死になると言われている。
ハラワタを食ってしまえば、ヒミコは念願の不死になれると言えるだろう。
ヒミコは正体を現し、怪竜やまたのおろちへと姿を変えた。
隣の古墳と並ぶほどの巨体になると、5つの頭でもう一度狙いを付ける。
今度は顔面だけではなく全身を覆える程焼き尽くせるように、大きくいきをすいこむ。
「ハハハ!君にぜひ見てもらいたい!ラピュタ王の命乞い!」
『ひのいき』、『もえさかるかえん』、『はげしいほのお』と、次第に威力が高まる炎がムスカへと迫る。
ムスカは避けもせず、地面に伏せ高速で頭を下げた。
「私はGO★MI★DA!許して許して許して許して!いい子だ!いい子だ!私はいい子だから!」
幻想郷で起きた第二次月面戦争ではスキマ妖怪が月人に頭を下げたが、この世界では月の姫が許しを請うという逆の構図となった。
「情緒不安定か!ソーウツ病ならメンタルクリニックに行け!」
MAD動画仕様のツギハギセリフは、急に笑ったり落ち着いたり媚びたりと落ち着かない。
思わず手塚漫画特有の時代背景に合わないカタカナ語が出る。
ムスカのふざけたリアクションは、それだけ余裕があるということだ。
どんな卑怯な手段を使おうが最終的に勝てばよかろうなカオスバトルの住民にとって、命乞いなんて相手のペースを崩すためのただの手段に過ぎない。
「ムス(怒)私をあまり怒らせない方がいいぞ!よく眠れたかな?私は頑丈だよ」
ムスカは土下座をやめ、不機嫌になりつつも煽りで返す。
高温で焼かれた身体は非常に痛々しいが、何一つ意に返さず、じわじわと治っていく。
支給品で向上した防御力や、地に伏せて直撃を避けたのもあるが、『はげしいほのお』は戦闘の経験を積んだ人間なら数発は耐えられる威力。
藤原妹紅に幾度となく焼かれた彼女を即死させるには至らない。
ムスカ自身もカオスバトラーとして、サイヤ人やらウルトラマンやら仮面ライダーやら上弦の鬼やらの強敵達と戦わされてきた男である。痛みには慣れている。
どれだけ高威力な攻撃で爆死しても怯まず、次の瞬間には平気な顔で何度でも立ち上がるのがカオスバトルムスカだ。
「おのれ!火が効かんならば、この牙で食いちぎってやる!」
「歯歯歯歯歯歯歯!読める読めるぞ!」
オロチの5つの頭は、人間が1行動できる間に2度の行動を可能とする。
それなのに噛みつきは何一つ当たらず、ムスカはひらりと身を交わす。
輝夜は『永遠と須臾を操る能力』を持つ。
須臾とは、凄く短い時間の事である
人間が感知出来ない程の一瞬で、彼女はその一瞬の集合体だけを使って行動する事が出来るという。
一瞬の猶予があれば、首の来る方向を読んで回避するのは容易い。
ヒミコの方も慣れない巨体で、感情任せのやみくもな動きというのもあるが、ムスカは28歳(32歳の場合もある)にして大佐に上り詰めた程に狡猾な男。瞬時の判断は速い。
ラピュタ本編でもロボット兵の対処に、即座に冷静で的確な指揮を出していた。
また、ムスカが経験してきたカオスバトルはその多くがノーガード戦だ。
枠に囲まれて回避が出来ず、相手の技に耐えられなければ即座に負けとなる戦いを繰り返してきた。
それと比べれば、今回の戦いは避けていいうえに、グレートアクターで高まった回避と輝夜の能力による猶予時間もあるのだ、楽なものだろう。
553
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:04:21 ID:???0
「おのれ!私は日の元の女王だぞ!おとなしく食われろ!」
「汚静かに!私はサンは嫌いです!」
急にもののけ姫をdisったのではなく太陽を意味するSUNだ。
ムスカが属するカオスバトル四天王には松岡修造という者がいる。
太陽の様な暑苦しさを武器にし、何度もムスカと腕を競った腐れ縁であった。
「さっさと逃げればいいものをwwwww」
「何を笑うか!その美しさ!不死の身体!私によこせ!」
欲しいは正義だ。ほんの目の前にある美しく不老不死の身体。
ヒミコが生涯を通じてずっと追い求め、手に入った瞬間に失ったもの。
それが目の前にあって、諦めて逃げるなんて事は出来ない。
「シューティング玉座の的は城壁じゃないか」
だけど、ヒミコの噛みつきはムスカには届かない。
ムスカは空耳語録を駆使し、弾幕を放ち自らを狙うオロチの首を撃ち落とす。
まさに城壁のようだ。
「これは僅かだが心ばかりのお礼だ、とっておきたまえ。見ろ!この巨大な飛行石を!」
ムスカを中心に幾何学模様の魔力が集まり魔法陣となり、宝石の様な輝きを放つ。
それは飛行石ではないが、太陽の輝きにも似た深紅色のルビーを彷彿とさせる。
「見せてあげよう、ラピュタの雷を!」
「雷だと!?おいばか!よさぬか!」
ヒミコの身体が身震いした。
高耐性を持つオロチだが、勇者が放つ雷属性の技は弱点である。
肉体のプロフィールを事前に目を通していた事でその事は知っていた。
「旧約聖書にあるソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ、ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがね」
大嘘である。
「氏ねえええええええ!」
動画サイトの規制対策に【死】を【氏】として伏せる言い回しだ。
全方位へと放たれたレーザーとヒミコを直接狙う巨大な赤い玉が合わさった弾幕は、幻想郷最速の天狗でもなければ回避は難しい。
やまたのおろちの巨体も、ただの的にしかならない。
ムスカが放ったそのスペルカードは、新難題「エイジャの赤石」。
どこかの不老不死の一族が太陽を克服するために求めた秘石の名前が付けられている。
それが太陽信仰の祖へと放たれたのは、ある意味皮肉だろう。
「うぐっ……雷じゃ、ないのか……」
音声素材の都合ゆえに雷と称しただけで、このスペルカードは雷属性でもなんでもない。
この石の熱さは天狗曰く石焼き芋の石並み。やまたのおろちの熱耐性なら、衝撃のダメージはあるが耐えられた。
「君にぜひ見てもらいたい!最高のショー!」
たび重なる戦いを経験したムスカは、ここで油断して攻めを止める様な男ではない。
取り出したのは善滅薬。心に宿る悪の心を増強させる薬だ。
漆黒のオーラが身を包み、ムスカの力をさらに引き上げる。
「私はメガァアアアアアムスカ大佐だ!」
カオスバトルを始めとするMAD動画において、ムスカはフリー素材の様な扱いをされる。
ネット黎明期から玩具にされ続けた男は、伝統芸能のように同じセリフを繰り返すだけではない。
ライバルの赤い道化師のMADが、新素材により令和ドナルドとして再ブームを起こしたように、ムスカもメガシンカを遂げる。
「凄い!凄い!凄い!」
カオスバトルでムスカが出来ることは、ラピュタ本編のツギハギだけではない。
例えば動画によってはドナスカ大佐というキャラになり、ドナルドと融合させられたこともある。
他のバトラーと協力関係を築き、タッグ技を生み出す事もある。
カオスバトルがMAD動画である以上、素材の追加や組み合わせにより新たな展開はできるということだ。
「封印が解けたのだ!ロリごっこは終わりDA!」
輝夜はロリのように見た目は若いが数億年は生きている。
彼女の『須臾を操る能力』は応用すれば異なる複数の歴史を持てるという。
その詳細には不明な点が多いが、作中でも永夜返しの際に霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、幽々子の弾を使いこなしていた事から、平行世界の力を扱えるのではないかとの考察がある。
その能力によりムスカは、異なる歴史を歩んだ自分を音声素材として追加した。
554
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:05:34 ID:???0
「初めて私の姿を見たときから、君はすでに負けていたのだよ。私の恐怖……テラーにね」
音声ツギハギではないスムーズなセリフ。
今のムスカより数十年は年季を得た声。
インターネットにおいてムスカは、俳優ネタで寺田農の関連作品と組み合わされる事がよくある。
善滅薬と輝夜の能力を組み合わせ、ムスカというネットミームに刻まれた悪……すなわち寺田農の演じたヴィラン達のセリフを新素材として追加した。
そうはならんやろ?なっとるやろがい!
ムスカはカオスバトルを無秩序にすると称される程に自由な男。
カオスバトルはルール無用、超展開はよくあることだ。
「こ、怖くなんかないぞ!私は神!私の権力は絶対なもの!なんでもできる!」
「はははははは!嫌いです!さっさと死ねぇ!」
神という言葉は、好敵手たる赤いアフロの教祖様を彷彿とさせ苛立たせる。
信者達が『神ィ!?』として教祖を信仰しているからだ。
あのピエロにラン★ラン★ルーという言葉とともに爆破されたり、ハンバーガーで潰された思いが蘇り、即座にムスカを苛立たせた。
もはや運営に気を使うこともなく、伏せ字もやめた。
「3分間舞ってやる!」
その怒りは隙だらけのヒミコへと、腹いせにぶつけられる。
音MAD用語に『ドラム』という言葉がある。
アニメ等のワンシーンの音を加工し、繰り返すことで文字通りドラムの音にする事だ。
アニメのMADなどでは人を殴るシーンなどを繰り返して使われる事がよくある。
今ヒミコが受けているのがそれである。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」
「グァァ!グァァ!グァァ!グァァ!グァァ!」
カオスバトル動画の前身となった、うごメモの『ドナルドVSムスカ』のように逐一妙なポーズを挟みながら竜の頭部へと高く飛びラッシュを決める。
ふざけているようにしか見えないが、その威力は計り知れない。
「アホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホ!」
「グァァ!グァァ!グァァ!グァァ!グァァ!」
能力で瞬時に移動し、ヒミコが状況を理解するよりも早く、次の頭部の目の前へ。
肉体の輝夜には巨大な金閣寺の一枚天井を持ち上げたとの逸話もある。
善滅薬でさらに高まったその怪力を振り下ろせば、やまたのおろちの巨体だろうとダメージは入る。
「ゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミのようだ!」
「グァァ!グァァ!グァァ!グァァ!グァァ!」
3分間リンチし続けた。
それはムスカの体感時間であり、実際には数十秒程の光景だった。
ラピュタ本編でも3分と言いつつ50秒で切り上げる男に時間感覚を求めてはいけない。
「グアアアアアアアア!」
ド ン ★
『やまたのおろちを やっつけた!』
『5300の けいけんちをてにいれた』
『やまたのおろちは たからばこをおとしていった!
ムスカは たからばこを あけた!
なんと くさなぎのけん をみつけた!』
テテテッテッテテー!
『ムスカのレベルがあがった! Lv53のようだ!』
カオスバトル仕様で何故か発生した爆発とDQ演出があわさり、非常に騒がしくヒミコは倒された。
【ヒミコ(身体:ヒミコ@ドラゴンクエストIII そして伝説へ)@火の鳥 黎明編 撃破】
555
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:06:51 ID:???0
「グ……グオォアア……」
倒されただけで死んでいない。
変身が解け、元の人間態へと戻ったが、まだ生きている。
やまたのおろちは非常にしぶとい魔物だ。
勇者達に一度は倒されても、ジパングの屋敷に逃げ出してすぐに2回戦目を続けられたり、
勇者が火山から撤退するたびに律儀に最深部に待ち受けるせいで、経験値稼ぎやモンスターメダルの吟味にも何度も狩られたり、
勇者達に2度も倒された後も『あやしいかげ』に化けて襲いかかったり、
氷に封印された洞窟にて何体にも増えて再度行く手を阻むなど執念深い。
そのしぶとさから格闘場の人間に捕まり、魔物同士で殺し合わされたうえに勇者達に大金を賭けられた事もある。
また、大魔王ゾーマが倒された後も仮死状態のまま生き延び、ロトの紋章を継いだ者達と『ヤマタノオロチ・強』として激戦を繰り広げたなんて話や、
冒険者の大地アストルティアにて、ジパングからの刺客を名乗るやまたのおろちが現れたなんて噂もある。
そんな逸話が数多くある、タフって言葉が似合いそうな生き汚い魔物である。
「殺される、いやだ……死にたくない……」
肉体的にはまだ戦える。
だけど、その肉体を操る者は限界だった。
ヒミコはそもそも人生で一度も戦った事が無い。
鍛えた己の力ではなく、でたらめな呪術や占いで人を脅して権力を手に入れてしまったのだから当然だ。
拷問や処刑ですらいつも部下任せにしてきたのだ。
初めて受ける暴力の嵐に戦意を喪失してしまった。
日食という現象がある。
月が太陽の光を完全に覆ってしまう事だ。
古事記の中でも天岩屋戸伝説として残っており、ヒミコも若い頃に経験している。
月の姫により、死の恐怖に呑まれた日の女王はまさに、その現象を思わせる。
あの天の怒りに震えて隠れることしかできなかった時を再現するかのように、ヒミコは怯えることしか出来ない。
「ビルが溶け、人が死ぬ。この街では良くあることだ」
「死ぬのか……私はまた、嫌……まだ生きていたい……」
「いつまでも、あると思うな仇桜ってな、イェ〜イ!」
「嫌だ!死ぬのは嫌!死ぬのだけは嫌!」
「おんなじことしか聞かねんだもなぁ、同じこと答えるよ」
ムスカは寺田農が演じた、どこかの風都の黒幕や対話宇宙人や民の党の幹事長のセリフを引用しつつ煽り散らす。
「"ノブレス・オブリージュ"。高貴なる者には背負うべき責任がある。我々呉島は俗物とは違うのだ。分かったな、貴虎」
呉島貴虎ではない。
「……死にたくない……誰かたすけてくれ、そうだ!スサノオは、スサノオはどこだ?」
自分で追放した弟にすら助けを乞う。
その姿はムスカには笑えて仕方がない。
何たる無様か、王の姿かこれがと。
「ハハハ!素晴らしい命乞い!」
ムスカは、カオスバトルでこれまでに何度も死んできた。
死んでは生き返りまた死んで生き返り、バルスされ、爆死する。
終わりがないのが終わりである生と死の因果。
カオスバトルで敗北しようが優勝しようが、待っているのはまた次のカオスバトルだ。
そんなムスカはもはや死を怯えるなんて事はなく、彼女が怖がる理由か分からない。
ムスカにはどんな事をしてでも、戦いに勝ち続けることしか頭にない。
もしかしたら、ムスカの心は繰り返される戦いで壊れているのかもしれない。
「……取り込み中悪いが、聞きたいことがある」
「へぇっ!?医師の制服さん!」
そう笑っていたムスカに白衣を着た男が不意に声をかけた。
カオスバトルで乱入者のエントリーはよくあることである。
■■■
556
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:08:08 ID:???0
シャドウ雪子との戦いを終えたドクトルは入れ替え装置を探すため、近くの施設である古墳へと南下していた。
古墳の周辺はオロチの吐いた炎で溢れている。
そんな暑さで長くは居られない様な場所も、ガシャコンソードの炎吸収があれば近づく事ぐらいはできる。
「……放送で言っていた、入れ替え装置を見つけたか?」
「君の家の古い暖炉にあった」
「……………なんだと?」
「君の気持ちはわかるが、どうか手を引いてほしい、君も男なら聞き分けたまえ」
「真面目に答える気はないようだな」
ドクトルは質問が茶化されたことに思うことはない。
医者という職業は会話が通じない人間と数多く会うものだ。
それならば、ただ倒すだけだ。
「君にぜひ見てもらいたいものがあるんだ、死ねぇ!」
戦いを邪魔されたムスカは、答えはこれだと言わんばかりにリボルバーを発射。
ドクトルは即座に仮面ライダーブレイブへと変身し防ぐ。
「ハハハ!凄まじい破壊力!恐るべき科学力のロボット!金属なのか!粘土なのか!木の根なのか!」
仮面ライダーブレイブの姿を見て、そう呟いた。
カオスバトル動画において仮面ライダーシリーズは常連であり、ムスカも何度も手合わせした相手。
同じくエグゼイドのライダーである檀黎斗とは、何度も復活する戦法を使う者同士で競い合う仲だ。
ムスカの相手として不足はなかった。
■■■
「……今のうちに……ひきあげじゃあ……」
ムスカが乱入者の相手をしているうちにと、地面を這うようにゆっくりと逃げ出す。
無様な自分の姿と死の恐怖に涙を流しながら、目の前の現実から少しでも離れようとする。
ふと、少し遠くに何やら渦のようなものが見えた。
「……む……なんじゃ……」
それは、かつてこの古墳で常盤SOUGOが作り出した、平成生まれだけを選んで吸い上げる穴。
――――ではない。
「あれは……」
それはヒミコが無意識に発動した『旅の扉』を作り出す能力だ。
やまたのおろちは倒された後、この力でジパングの屋敷へと逃走した逸話がある。
ヒミコはこの中に入れば逃げられると、感覚で理解した。
渦はすでに消えかけている。
ボロボロの身体を無理して立ち上がり、急いで駆け出した。
「どこへ行こうとyouの金★流行りのムスカは嫌いですか?」
敵をそう簡単に逃がす様なムスカではない。
ドクトルとの戦いを中断し、ヒミコの元へと駆け出す。
一時期Tiktokで流行っていた空耳語録を言いつつ急いで追いかける。
「おおお鬼ごっこ!私と★私と★鬼ごっこ★」
思わずうごメモで人気だったカービィのBGMに合わせたムスカMADのリズムを刻む。
シータを追いまわしたねっとりとしたシーンを倍速したカサカサとした早歩きで駆ける。
「気色悪いわ!ええい!ゴールドアストロン!」
「目があああああああああああああ!」
慌ててバッグから黄色い玉を取り出し、ムスカへと光線を放った。
走りながら光を浴びたムスカは頭から黄金化していき、目を抑えたポーズのまま地面へと倒れた。
これだけで逃げられるわけではない。
敵は1人だけではない。カオスバトルは全員敵のバトルロイヤルだ。
ムスカより出遅れた事で黄金化の範囲外にいたドクトルもまた、ヒミコを追いかける。
咄嗟に炎を放つが、ガシャコンソードに防がれ何一つ効かない。
動きを封じようと放った、やけつくいきは全身を覆ったスーツで防がれる。
「わ、わわわわ、私の側に近寄るなああああああ!!!」
旅の扉まであと数メートル。ヒミコは大きな『おたけび』を放った。
ドクトルは驚き竦み上がった。
その隙を付き、ヒミコは飛び込んだ。
旅の扉は消えていった。
■■■
557
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:09:02 ID:???0
「逃げたか……」
渦は消えてしまいもう追いかけることは出来ず、静かな時間が過ぎる。
ドクトルからすれば何の成果もない戦いだった。
目を抑えた変なポーズのまま黄金化した麗人を見て、数年前に相手を人形に変える楽士がいたという話をふと思い返したぐらいだ。
支給品でも回収していこうかとも思ったが、バッグも黄金化してしまい、取り出すことは出来ない。
「これは……」
だがよく見れば、黄金化したムスカから少し離れた所に、数粒の薬と紙切れを見つけた。
先ほどムスカが服用した残りが、転んだ際にこぼれ落ちていた。
「……悪の心を解放する薬だと?」
善滅丸とその説明書きだ。
すでにZBRをキメている身。飲んでは自分の身が持つか保証は出来ない。
薬物の過剰摂取が禁忌とされるのは医者ならよく知っている。
「使うにしても、最終手段だな……」
それは悪になりきれないドクトルにとっては特効薬ではあった。
あの子を救えるならば、この身が滅びろうとも構わない。
迷いはしたが、拝借はしていく。
いずれ必要となるかもしれないとポケットに忍ばせた。
■■■
(私はキンカ大佐だ)
黄金化してもなおムスカの意思は続いていた。
ドクトルが薬を拝借しているのを見ていることしか出来ない。
(アホ死ね!私をあまり怒らせない方がいいぞ!!)
黄金化が解除されるまで何もできないことに苛立つ。
(ハハハさっさと逃げればいいものを)
とは言え、ムスカはしたたかな男。
蓬莱の薬の力でこんな黄金化はすぐに解いて、さっきのピエロのように不意を付いて殺してやろう。
ムスカはそう思っていた。
(待て、待て待て待て!お前ここで待て!誤解していた!来たまえ!こっちだ!)
そう思っていたのだが、一向に黄金化が解除されない。
それどころか効果が解けるよりも早く、ドクトルは目の前を去っていく。
(バカ!待て!待って待って待って待って待っていて!返したまえ!3分間待って!いい子だから待って!)
それもそのはずで、黄金化は状態異常を事前に防ぐ呪文、キラキラポーンの効果すらも無効にしてしまうほど。
飲んだ者を元の状態へと戻す蓬莱の薬といえど、この時ばかりは大人しく時間切れまで待ち続けるしか無かった。
「封印が解けたムスカ大佐の復活を祝ってくれたまえ!」
しばらく経ち、ようやく元に戻った時、ドクトルはもう去っていた。
「へぇっ!?」
■■■
「ハァ……ハァ……よかった、生きている」
ヒミコは命からがら逃げ出した。
全身に暴行を受けた痛々しい姿は、従者が見れば『いったいどこで こんな おけがを なさったのやら……』と呟くだろう。
「なんで私がこんな目に合う!ヤマタイ国の女王だぞ!下民とは違う!」
死の恐怖という現実から逃避するかのように、怒りが止まらない。
自分はこんなにも苦しんでいるというのに、不老不死に強さと美貌までも兼ねそろえたムスカが憎くてたまらない。
「にくいっ!!」←バンパイヤ
コマ内に別の手塚漫画のタイトルが書かれそうなほど、牙を出して口元を大きく開いた。
手元のアリシアのナイフ……どこかの憎しみの魔王が抱いた、その始まりの感情を受け継ぐかのように握りしめる。
「私をこんな目に会わせおって!今に見ていろ!あの身体、絶対に手に入れてやる……!」
一生をかけても手に入れたかった、不老不死の身体が手の届く範囲にある。
すぐにでも入れ替え装置を見つけ出して自分のものにしたいのだ。
「だ、だが……もし、装置が見つからなければ……」
鉄で出来た筒の様なものを取り出す。
それは、摂取した者に不死の様な生命力を与えるという道具だ。
今にも飛び付きたい気持ちはあるが、どんな変化が起こるか分からないというデメリットがある。
自らの美しさを維持したいヒミコにとって、元々使う気はない道具であったのだが、先の戦いで考えを改めた。
殺されかけた恐怖に震える彼女に不死の様な生命力は、それだけ魅力的に映るのだ。
「ヒ、ヒヒ……死ぬよりはマシか……」
その道具は、言ってしまえば生命に対しての侮辱だ。
打ったものを生きものの本質から離れた存在へと変えてしまう。
その名前をGウイルスという。
558
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:11:06 ID:???0
※D-3を中心にヒミコが吐いた炎が点在しています。このまま燃え広がるか自然鎮火するかは不明です。
※玉座近くに常磐ソウゴが集めたライドウォッチ@劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzerが置かれています。
※ヒミコがどこに行ったかはお任せします。
【一日目/D-3 玉座のある古墳/黎明】
【ムスカ@カオスバトル】
[身体]:蓬莱山輝夜@東方Project
[状態]:一回死亡、善滅薬1粒摂取、全身に所々焼かれた跡(再生中)
[装備]:リボルバー@天空の城ラピュタ、グレートアクター@Caligula2、くさなぎのけん@ドラゴンクエストIII そして伝説へ
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0?3(確認済み)、善滅丸×2@真説ボボボーボ・ボーボボ
[思考・状況]基本方針:見せてあげよう、ムスカの雷を!
1:小僧(パズー)! 君はラピュタ王の雷で焼き払ってやる!
[備考]
※制限により輝夜の肉体は2回までは死亡しても生き返りますが、3回目で完全に死亡します。
※復活のタイミングは自由ですが、制限により死亡後5分経てば強制的に肉体が元に戻ります。復活の場所は元の居場所から視界に入る圏内ならばある程度指定可能です。
※ムスカ側の仕様により死亡時はその場で小規模な爆発を引き起こします。爆発音は響きますが、巻き込まれても大した影響はありません。これにより死体は残りません。
※天空の城ラピュタ内のムスカのセリフ以外の言葉を発する事は出来ません。セリフの組み合わせによるある程度の改変は可能です。
※空耳語録の使用、同音異義語への言い換えは可能とします。
※善滅丸&異なる歴史を持つ能力で寺田農が演じたキャラのセリフ素材も言えるようになりました。
※カオスバトルに参戦したキャラの知識があります。ただし、パズーとドナルドへの執着の方が強いので、なにか切っ掛けがなければわざわざ思い返すことはありません。
【一日目/D-3 玉座のある古墳から離れた場所/黎明】
【ドクトル@Caligula2】
[身体]:鏡飛彩@仮面ライダーエグゼイド
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ズバリ・アドレナリン(残り9個)@ニンジャスレイヤー、タドルクエストガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアルβ@仮面ライダーエグゼイド、善滅丸×2@真説ボボボーボ・ボーボボ
[思考・状況]
基本方針:真莉愛の理想と幸福を叶え、贖罪を終える
1:医者が人の命を奪う。その行為に、最早躊躇いはない。
2:入れ替え装置及びリグレット(肉体)を捜索する。
3:リグレット(肉体)と一旦身体を入れ替え、優勝後にリグレット(精神)と装置を使い身体を返す。
4:善の心を消せる薬か……
[備考]
※参戦時期は第8章前
※リグレットの精神及び天吹茉莉絵が主催の手の内にある可能性を考えています。
【一日目/不明/黎明】
【ヒミコ@火の鳥 黎明編】
[身体]:ヒミコ@ドラゴンクエストIII そして伝説へ
[状態]:ダメージ(中)、死への恐怖(大)
[装備]:アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、イエローオーブ@ドラゴンクエストシリーズ、Gウイルス@バイオハザード RE:2
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:優勝し、永遠の命を得る
1:オロチに変身するのは醜いが、いざという時は仕方がない
2:あの美しく不死身の身体(ムスカ)!欲しい!入れ替え装置を探さねば。
3:Gウイルス……使いたくはないが、死ぬよりは……
4:あの小娘共(椿、チャット)。次会えば喰ってやる。
[備考]本編死亡後からの参戦です。
※DQ3本編で使用した、ひのいき、もえさかるかえん、はげしいほのお、おたけび、やけつくいきは使用可能です。
他媒体でやまたのおろちが使った技については不明です。
※作中で行ったテレパシーによる会話や旅の扉の作成も可能とします。旅の扉は短期間に連続で作成はできません。
559
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:11:59 ID:???0
【くさなぎのけん@ドラゴンクエストIII そして伝説へ】
現地調達品。
やまたのおろちを最初に倒した際に、必ず落とす一点物の剣。
どこに隠し持っていたかは不明だが、おそらく元ネタの日本神話同様に体内に隠されていたのだろう。
句楽兼人のヴィクティブレード同様、肉体に付属する武器として現地調達品扱いとする。
中盤の剣としては申し分ない攻撃力を持ち、道具として使うとルカナンの効果で相手グループの守備力を下げられる。
最近のHD2D版では物理ダメージ計算式が変わったため使い所が減った。
【常磐ソウゴが集めたライドウォッチ@劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer】
会場に配置されたアイテム。
ジオウ本編からOQまでに常磐ソウゴが集めたクウガからビルドまでの19個のレジェンドライドウォッチ。
三段重ねのウォッチダイザーに6個ずつ嵌められ、一番上にはディケイドライドウォッチが嵌められている。
映画本編では常磐SOUGOが奪い、玉座近くに置かれていた。この世界でもそのまま置かれている。
ジカンギレードなどライドウォッチを読み取る支給品があればその力を引き出せる。
なお、ジオウライドウォッチが支給禁止の変身アイテムに抵触するためアーマータイムは不可能。
また作中において一部のライダーが、ライドウォッチを使って変身を行っている描写があるが、
これはあくまで本来の変身者や関係者故に可能だったものと思われるため、このロワではライドウォッチ単品での変身は出来ないものとする。
【イエローオーブ@ドラゴンクエストシリーズ】
ヒミコに支給。
このロワの参戦作品ではDQ3とDQ11に登場する黄色い玉。デザインはDQ11のものとし台座は付いていない。
6色のオーブを集めて祭壇に捧げれば神鳥ラーミアの復活や虹の橋を架けるのに使える。
もし今後やまびこのふえが支給されたら、その音に反応してやまびこを返してくる。
DQ11では、このオーブのチカラを解き放つ事で相手を黄金の塊へと変えてしまうゴールドアストロンという技がある。
黄金になった者は1〜2ターンの間一切の行動が出来ない代わりに、何一つダメージや状態異常を受けない無敵状態となる。
このロワでも体力や魔力を消費する事で発動でき、効果の射程は数メートルとし、2名まで一度に黄金化できる。
また、魔王ウルノーガにこのオーブを授けられたマヤはオーブと融合し、鉄鬼軍王キラゴルドとしての装甲を身に纏った。
よく見ると尾の部分にこのオーブが付いている。このロワでもキラゴルドになれるかは不明。
【Gウイルス@バイオハザード RE:2】
ヒミコに支給。
アンブレラ社が作り出したウイルス兵器。
打ったものに不死とも言える生命力と、予測不能な進化を短期間に何度も与える。
作中のメモによると侵食が進むにつれ、自我や言語能力は数日間に亘って徐々に低下していき最終的には喪失するとされる。
これは作中でウィリアム・バーキンが打ったもの。
彼の場合は瀕死状態から即座に立ち上がれる程に回復した……その後G第一形態へと変貌したが。
「強烈な攻撃力と不死とも言える生命力を備えたG生物」byバイオハザード公式X
560
:
◆N9lPCBhaHQ
:2025/03/20(木) 22:13:36 ID:???0
投下終了です。
タイトルは554までが
『切って貼った 誇張されたラピュタ王が居たよ 虚構のコラージュを貼るよ』
555からが
『死んでた 老人が隣でじっと見てたよ 生きるため 見てたよ 見てたよ』
でお願いします
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