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コンペ・ロワイアル【本編 その2】

1 ◆7PJBZrstcc:2022/11/27(日) 17:12:57 ID:Evn30/MU0



ーー心は特殊な領域である。地獄から天国を創り出すことも、天国から地獄を創り出すこともできる。



【当企画について】
・コンペ形式で参加者を募集し、最終的に企画者の◆SvmnTdZSsU氏が名簿を決めたロワです。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎。
・自由度の高いロワを目指します。

【基本ルール】
・誰も人を殺さずに一定時間経過すると首輪爆破。
・優勝賞品は『何でも願いを叶える権利』
・会場からの脱出は不可能。
・首輪が爆発すると絶対に死亡不可避。
・能力制限は書き手一任。
・優勝すると『願いを叶える権利』が与えられる。
・参加前に所持していた武装は解除・没収済み。

【放送について】
・放送は6時間ごとに行われる。(初回放送のみ例外。ロワ開始から1時間前後を想定)
・放送毎に、過去六時間の死者の名前、残り人数、次に増える禁止エリアが発表される。
・参加者の割合的な理由により、禁止エリアの増加割合は放送毎にランダム。

【MAP】
ttps://gamewith.akamaized.net/img/original_b7ee9b5606dac7fdbde04617a1766f00.jpg
・マップにはNPCが居ます。どう扱うかは書き手の自由。

【デイパック】
・全ての参加者はゲーム開始後「デイパック」を渡される。以下中身。

・地図:マップを印刷した安っぽい地図。
・食料:インスタントラーメンと缶チューハイ(ストロングゼロ)×3個だけ。お湯は現地調達。
・ルールブック:基本ルールが書かれている紙。A4用紙。初回放送にて裏側に全参加者の氏名のみ浮き上がる。
・ランダム支給品:現実出展かフィクションのアイテム。最大3つ。

【書き手ルール】
・予約期間は1週間。延長宣言無しでそれ以上経過すると予約は解除扱いになります。
・予約期間中に書ききれない場合はさらにもう1週間の延長が可能です。
・ゲリラ投下もアリです。
・参加者の追加はNG。

【主催者について】
・主催者がどの程度参加者に干渉できるのかや、監視の度合いは書き手一任。

【NPCについて】
・書き手一任。
 ただし上記の『参加者の追加はNG』に引っかかりそうなNPCはご遠慮ください

【参加者の現在地について】
・誰がどこに居るか登場話で明記されていない場合、描写と矛盾しない範囲で好きに設置可能。
・地図にない施設を追加する場合は詳細を書いていただくと助かります。

【追記】
・「書きたいものを書く」というコンセプトなので、基本的に上記のルールに記載されていない事は大抵許されます。

【キャラクターテンプレート】

【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[状態]:健康状態とか精神状態とか
[装備]:手に持ってたりすぐ使えるアイテム
[道具]:基本支給品、ランダム支給品など
[思考・状況]:基本行動方針:
1.
2.
3.
行動・思考の優先順位など
[備考]参戦時期、その他、SS内でのアイテム放置、施設の崩壊など。

【支給品の名前@出典】
ここに↑の支給品の詳細を書く。

【時間表記について】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24

【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の0時からです。

【まとめwiki】
ttps://w.atwiki.jp/compe/

2 ◆7PJBZrstcc:2022/11/27(日) 17:15:08 ID:Evn30/MU0
現時点の名簿
〇は生存している参加者、●は死亡した参加者です。

5/6【ジョジョの奇妙な冒険】
◯エンリコ・プッチ/◯豆銑礼/◯空条徐倫/◯岸辺露伴/◯ディアボロ/●ホル・ホース
4/5【アイドルマスターシンデレラガールズ】
◯夢見りあむ/●高垣楓/◯千川ちひろ/◯島村卯月/◯新田美波
3/4【ゴブリンスレイヤー】
◯ゴブリンスレイヤー/◯牛飼い娘/●令嬢剣士/◯勇者
3/4【Re:ゼロから始める異世界生活】
◯ナツキ・スバル/●レム/◯レグルス・コルニアス/◯ペテルギウス・ロマネコンティ
3/4【Fate/Grand Order】
◯藤丸立香/◯マシュ・キリエライト/◯ラヴィニア・ウェイトリー/●沖田総司
3/3【グラブルーファンタジー】
◯コルワ/◯ナルメア/◯カリオストロ
3/3【銀魂】
◯坂田銀時/◯志村新八/◯沖田総悟
2/3【この素晴らしい世界に祝福を!】
●佐藤和真/◯アクア/◯ウィズ
2/3【スーパーマリオくん】
◯マリオ/◯ヨッシー/●ピーチ姫
2/3【クレヨンしんちゃん】
●野原しんのすけ/◯佐藤マサオ/◯ロボひろし
0/2【タイムパラドクスゴーストライター】
●佐々木哲平/●藍野伊月
1/2【大帝国】
●グレシア・ゲッベルス/◯レーティア・アドルフ
2/2【とある科学の超電磁砲】
◯白井黒子/◯美山写影
2/2【進撃の巨人】
◯エレン・イェーガー/◯ライナー・ブラウン
2/2【魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
◯有栖川理愛/◯清良トキ
1/2【ファイナルソード】
●ぉ姫様/◯勇者(主人公)
2/【チェンソーマン】
◯デンジ/◯パワー
1/2【ドラえもん】
●野比のび太/◯ドラえもん
2/2【東方project】
◯レミリア・スカーレット/◯八雲紫
2/2【ドラゴンクエスト3】
◯アルス(男勇者)/◯アリス(女勇者)
2/2【モンスター烈伝オレカバトル】
◯聖帝エーリュシオン/◯老将エンキ
1/1【ONE PIECE】
◯シャーロット・リンリン
1/1【ドキドキ!プリキュア】
◯菱川六花/キュアダイヤモンド
1/1【黒衣の少女探偵 月読百合奈】
◯月読百合奈
1/1【青鬼】
◯ひろし
1/1【妖怪の飼育員さん】
◯鳥月日和
1/1【快獣ブースカ】
◯ブースカ
1/1【鬼滅の刃】
◯甘露寺蜜璃
1/1【ドラえもん のび太と鉄人兵団】
◯リルル
1/1【刀使ノ巫女(アニメ版)】
◯燕結芽
1/1【アカツキ電光戦記】
◯アカツキ
1/1【大阪万博2025】
◯命の輝き
1/1【ペーパーマリオ オリガミキング】
◯ハサミ
1/1【こじらせ百鬼ドマイナー】
◯飴宮初夏
0/1【Akinator】
●アキネーター

3 ◆7PJBZrstcc:2022/11/27(日) 17:15:31 ID:Evn30/MU0
0/1【からかい上手の高木さん】
●西片
0/1【オーバーロード】
●クレマンティーヌ
1/1【IT それが見えたら、終わり】
◯ペニーワイズ
1/1【呪術廻戦】
◯真人
1/1【BACCANO バッカーノ!】
◯ラッド・ルッソ
1/1【血界戦線】
◯ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ
1/1【UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】
◯サーニャ
1/1【魔法少女リリカルなのはA's】
◯ヴィータ
1/1【野原ひろし 昼飯の流儀】
◯野原ひろし?
0/1【コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
●星野輝子
1/1【Twitter】
◯クッパ姫
1/1【13日の金曜日】
◯ジェイソン・ボーヒーズ
1/1【ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
◯シャドウ茜
1/1【魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF マテリアル娘-】
◯レヴィ・ザ・スラッシャー
1/1【志村けんのだいじょうぶだぁ】
◯変なおじさん
1/1【バトルロワイアル(実写版)】
◯桐山和雄
0/1【うしおととら】
●シャガクシャ
1/1【ワールドウィッチーズシリーズ】
◯シャーロット・E・イェーガー
1/1【Re:CREATORS】
◯煌樹まみか
1/1【ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
◯コーガ様
0/1【クッキー☆BB】
●RRM姉貴
0/1【艦隊これくしょん】
●足柄
0/1【刀剣乱舞】
●和泉守兼定
1/1【リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
◯粕谷瞳
1/1【水曜日のダウンタウン】
◯クロちゃん
1/1【輝光翼戦記 天空のユミナ】
◯翠下弓那
1/1【11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
◯リーゼロッテ・ヴェルクマイスター
1/1【最悪なる災厄人間に捧ぐ】
◯クロ(リーダー)
1/1【Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
◯神楽鈴奈
1/1【真夏の夜の淫夢】
◯平野源五郎
1/1【ウマ娘 シンデレラグレイ】
◯オグリキャップ
1/1【ドリフターズ】
◯土方歳三
1/1【ミスミソウ】
◯野崎春花
0/1【例のアレ】
●Syamu-game
1/1【そんな未来はウソである】
◯佐藤アカネ
1/1【刀語】
◯とがめ
0/1【大番長 -big bang Age-】
●斬真狼牙
0/1【meme】
●絶叫するビーバー

88/112

4名無しさん:2023/01/08(日) 09:52:13 ID:Zkhpe/dY0
age

5名無しさん:2023/01/23(月) 17:24:22 ID:bytMSKJ.0
age

6 ◆j1W0m6Dvxw:2023/02/12(日) 19:28:46 ID:hmJm2OHg0
age

7名無しさん:2023/04/15(土) 18:12:33 ID:FsGk56Zc0
下がり気味なのでage

8 ◆7PJBZrstcc:2023/04/21(金) 20:02:30 ID:0v9JWc/c0
スバル、土方、リルルで予約します

9 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:26:27 ID:HQ6z0mUk0
投下します

10三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:27:29 ID:HQ6z0mUk0
 結論から言うなら、リルルは高台へと到着した。
 いくら浮遊床が特殊なものとはいえ、あらかじめそういうものだと理解していれば対処もできる。
 更に言うなら、彼女は飛行能力もある。
 一定時間飛び続けると首輪から警告が来るとは言え、飛べるのだから落ちる道理はどこにもなかった。

「しかし、何もないわね」

 高台を探索しながら呟くリルル。
 そもそも彼女がわざわざ会場の隅にあるジャンク・ジャンクションを目指しながらこの高台に登ったのには理由がある。
 まず第一に、主催者の意図を確かめるためだ。
 多少、どころではない変な仕様があるものの、こうして足場を用意している以上何らかの理由があるに違いない。
 と考えていたのだが、現実には彼女から見て理由になりそうなものは見当たらない。

 これはリルルの視点の問題なのか、今はまだ無いだけなのか、そもそも存在しないのか。
 それを判断する術を彼女は持っていない。

 ともかく、何もないのなら仕方ないとばかりに、リルルは高台から辺りを見回すことにした。
 まだ夜は明けてないものの、風景はやはり平地より高所の方がよく見える。
 そしてすぐに見つけた。

 何かに乗った人影が、同じく何かに乗った人影に追われている姿を。

 それを見たリルルは即座に高台から飛び降りた。
 もしかしたら追われている人影が探しているのび太、哲平のどちらかかもしれない。なお、ドラえもんは流石に暗がりでも見れば分かるだろうから除外している。
 そうでなかったとしても、レグルスの情報を何か握っている可能性がある。
 どちらでもないにせよ、他の参加者を助けて恩を売っておくのは悪いことではない。
 最悪の状況として、二つの人影がどちらも殺し合いに乗った参加者の可能性もあるが、その時は両方殺せばいい。
 何にせよ、彼女がこの二人を見逃すという選択肢は存在しなかった。





 スバルはキラーパンサーに乗り必死で黒服の剣士、土方から逃げていた。
 スバルにとっての計算外は、土方が即座に追ってきたことだ。
 前のループでは幼稚園の建物の中にいて、スバルの接近に気付いて襲ってきたので、幼稚園に近づきさえしなければ接触することはないと考えていた。
 しかし現実には、土方はスバルの存在を察知し、今もなお追ってきている。
 彼は、自身が放つ魔女の残り香のことを完全に失念していた。


 一方の土方も、現状の追走劇に関しては予想外だった。

 土方が追いかける理由としては、当初としては怪しげな気配を感じたからというだけだった。
 しかし彼がスバルに追いついた瞬間、追っていた相手は一分の迷いも見せることなく脱兎の如く逃げ出した。
 ここで土方は疑問に思う。

 何故逃げる?
 殺し合いに乗っているのは確かだが、少なくとも今追っている相手はこれまでに遭遇したどの参加者でもない。
 あれは全ての他者に怯えているとか、こちらを怪しんで逃げを選んだとかではない。
 明らかに、こっちが殺し合いに乗ったことを知っているから逃げている。
 判断は理解できるが、どこでそれを知ったのかが分からない。
 気づけないほどの距離から遠目で見られたというなら話は終わるが、この暗闇の中そんなことが可能なのだろうか。
 捕らえて聞き出すべきかもしれない。

 土方はそう考えて追おうとするも、スバルはキラーパンサーに飛び乗って逃走してしまった。
 いくら廃棄物(エンズ)といえど、瞬間ならいざ知らず追走戦で魔物を超える走力は出せない。
 どうしたものかと思案するも、すぐにNPCである十匹ほどのスタルホースに乗ったゴブリンの群れが現れ、彼に襲い掛かった。

 土方はゴブリンの群れを認識した瞬間、即座に幽霊を呼び出し馬上のゴブリン達を殺していく。
 すると、乗り手を失ったスタルホースの群れは即座に大人しくなり、新たな乗り手を歓迎べく土方をじっと見る。
 彼は即座に飛び乗り、スバルへの追走を再開した。


 そしてスバルと土方の二人は気づけばG-2にたどり着いていた。
 どこをどう逃げたのかスバルは覚えていないが、気づけば二人とも川に架かった橋を渡っていた。
 いつまで逃げりゃいいんだ、とスバルが焦り始めた頃――

11三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:28:08 ID:HQ6z0mUk0

「そこまでよ」

 空からピンク髪の少女が降りてきて、スバルと土方の二人に向けて油断のない瞳を向けながら、それぞれ両手の人差し指を突き付ける。
 突如現れた少女、リルルに対する二人の反応は大きく異なった。

 まずスバルは、止めようと思った。
 こっちを警戒するのは仕方ないにしても、今後ろにいるのは鉄の扉を切り裂き、ゲレゲレを一度は殺した程の剣士だ。
 少女の実力がラインハルトほどだったとしても、それを判断する術はスバルにはない。

「逃げ――」

 だからスバルは逃げるように叫ぼうとするが、それより早く土方は幽霊を呼び出しリルルに突撃させた。
 彼からすれば、突如現れた少女は自分よりは強いかもしれないが、今戦おうとしている剣士より強いかは分からない。
 ならば危険を忠告し、逃がそうとするのは彼の中の必然である。
 だが――

 ジュッ

 リルルの指先から放たれた熱戦が幽霊を消滅させたことで、スバルの認識は切り替わった。

「うおっ!?」

 対抗手段を持つにしてもまさか指先からビームを撃つとは思わなかったので、驚くスバル。
 しかし彼は今まで魔法を使うハーフエルフや鬼、精霊など人外には慣れた身。
 すぐにそういうものと理解し、自分を助けた以上おそらく殺し合いに乗っていない上に頼れる相手だと認識し、キラーパンサーから一旦降りた。

 一方の土方も幽霊があっさり消されたことには驚いたが、即座に意識を切り替えてリルルを睨む。
 少女の姿をしているからと言って甘く見る気はない。
 彼の陣営には少女でありながら戦場の経験がある炎を操るジャンヌや、少女ではないものの氷を操るアナスタシアがいる。
 目の前の相手もまた、そういう類なのだと判断した。

 
 だが二人の思考とは裏腹に、リルルは土方のみならずスバルも警戒していた。
 そもそも彼女が土方を攻撃したのは、スバルを助けるためというより、殺し合いに乗っている相手を排除するための意味合いが強い。
 それに彼女には、どうしても一つだけ確かめなければならないことがある。

「……一つ、あなたに聞かないといけないことがあるわ」
「な、何だよ」

 あまりにも剣呑なリルルの態度に思わず戸惑うスバル。
 しかしそんなことはどうでもいいとばかりに、彼女は問うた。

「あなたの名前、佐々木哲平?」
「……は?」

 質問の意図が理解できず、現状を忘れ思わず呆けるスバル。
 そんな彼にリルルは凄む。

「答えなさい」
「い、いや違えよ」
「そう。ならいいわ」

 威圧感に屈し素直に返答するスバルを見て、剣呑さを解くリルル。
 なんかあったのか、と思うが今はそれどころではない。
 しかしリルルはスバルに続き土方にも同じ質問をした。

「多分違うでしょうけど、一応聞くわ。あなたの名前は?」
「…………」

 これにどう対応するか、土方は少々悩む。
 別に答える義理はないので無視して斬りかかってもいいが、スバルと同じく質問の意図が理解できない。
 素直に考えれば佐々木哲平という男に何らかの恨みがある、と考えるのが妥当だが、その割に少女は顔を知らない。
 顔を知らないのだから名前を聞いていると考えれば推測できれば、それはつまりあったことのない相手に敵愾心を抱いているというわけで。
 まあ、そんなことはよくあるといえばよくあるのかもしれない。
 自分だって、薩摩というだけで島津豊久に敵意を向けたりしたのだから。

12三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:28:39 ID:HQ6z0mUk0

 だからここで考えるべきは、この質問にどう返すかだ。
 選択肢は大きく分けて三つ。

・素直に本名を名乗る
・偽名を名乗る
・無視する

 さっきも考えたが、無視するのが普通だ。
 だが偽名を名乗り、場を混乱させるのも手だろう。
 戦で裏切り挟撃は当たり前。偽装を用いて土方歳三が殺し合いに乗っていることを隠すのも立派な戦術だ。
 しかし土方はこれを脳内で却下した。

 土方は最初に異世界の新選組に所属する二人の沖田と遭遇している。
 この時沖田達が土方を土方だと認識しているのだ。
 沖田総悟の知る土方十四郎とも、沖田総司の知る土方歳三とも違うにもかかわらず。

 つまり、それだけの情報を理解する程度には会話を交わしたということだ。
 己の大切なものの為、何も関係がない相手はおろか、異世界とは言え同僚に手を掛ける覚悟があるにもかかわらず。
 もっとも、彼の願いは大切なものを取り戻したいと言う、とても情の深いものだ。
 それを念頭に置けば、これは必然かもしれない。

『日本武士と戦えたちと思うだが』

 そして、この殺し合いの前に戦った島津の言葉が、彼の選択肢を決める。
 たとえ目の前の二人がどんな反応をしようとも。

「……元新選組副長、土方歳三だ」
「土方歳三だって!?」

 土方が名乗ると、スバルがおおいに反応する。
 服装はともかく、外見は同郷なので知っている様だ、と土方は考える。

「俺も随分と有名になったものだな」
「知らねえだろ。百年後の日本だと新選組の知名度は抜群だぜ。
 あんたを知らない今の日本人なんて、赤ちゃんぐらいのもんだ」

 賊軍だった筈の新選組が後世には随分と名が残っているらしい。
 三国志の董卓か、それとも同じ廃棄物のジャンヌか。
 いずれにせよ、ロクなものではあるまい。

「あんたに分かりやすく言うなら、今の日本じゃ新選組の扱いは三国志や水滸伝みたいなもんだ。
 英雄だよ英雄」
「……何?」

 しかし、スバルの言葉は土方の予想を裏切り、むしろ評価されているようなものだった。
 そのことに彼は思わず動揺する。

 もしそれが事実なら。
 俺の願いは、もしかしたらとんでもない空回りではないのか。
 いや、もしかしたらそれは目の前の少年の世界だけの話かもしれない。

 まさかの真実に土方は、ここが殺し合いの会場であることすら忘れ、動揺する。
 しかし殺し合いである以上、土方の事情を敵が考慮する理由はない。

 リルルは土方が動揺した一瞬の隙を突いて、ビームを放ち川に突き落とした。
 だが慌てる土方ではない。
 幕末において日本泳法、水術は武芸の一環として扱われており、古来は川や海を甲冑を着用したまま泳ぐものだったという。
 さらに彼には、為次郎という嵐の日に川で泳いで渡ると言う逸話を持った兄が居る。
 その兄に土方は新選組の支援者である佐藤彦五郎と連名で為次郎に当てた手紙も現存している。
 ならば、弟である土方歳三にも泳ぎの心得があってもおかしくはないだろう。
 更に言うなら、今の彼は廃棄物(エンズ)である。
 仮に泳ぎの心得が何一つなかったとしても、川に落とされた程度でどうこうなる存在ではない。
 川に落とされただけならば。

 ジャッ

 何の音だ、と土方が思った瞬間、彼は手足が白い粘液で固まっていた。
 前に視線を向ければ、そこには何やら銃を構えたスバルの姿が。

 この銃の名前は瞬間接着銃。
 とある世界の22世紀の道具で、効果は強力な接着剤を弾として撃ちだすというもの。
 いくら土方が廃棄物(エンズ)となり人間を超えたとしても、この接着剤は人間より巨大なロボットを拘束できるほどのものだ。
 時間を掛ければ拘束を解けるかもしれないが、下は川だ。
 仮に彼が泳ぎの名手だとしても、手足を固められて泳げるわけがない。
 廃棄物なので死ぬことはないが、ただ流されるしかできない。

「あれで死んだかしら……?」
「いや、あの接着剤は五分しか効果がないらしいぜ。早く離れたほうがいいな」

 一方、リルルとスバルは流されていく土方を見ながら、どこか物騒な会話をしていた。
 しかしスバルがそう言うと、リルルは素早く移動する準備を整え、声を掛ける。

「それなら、手早く移動しましょう。
 私はジャンク・ジャンクションへ向かうつもりだけど、あなたはどうする?」
「そうだな……」

 リルルの問いに頭を悩ませるスバル。
 さっきは気付かなかったが、冷静になると川を越えたということは、おそらく自分はF-3のレイジー・リンクスから東へ逃げてきたらしい。
 つまり、B-2にあるジャンク・ジャンクションに向かう彼女について行くと、途中までは一度通った道を戻ることになる。
 しかし、やっと出会えたまともで話の通じそうな相手と、ここで別れていいものか。

「俺は――」

 スバルの出した結論は――

13三者三様 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:29:04 ID:HQ6z0mUk0

【G-2/早朝】

【リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団】
[状態]健康 怒り レグルス、佐々木哲平への嫌悪感(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、とうぞくのかぎ@ドラゴンクエスト3、『子』という文字が12個書かれた紙@妖怪の飼育員さん、ヘブンズ・ドアーのスタンドDISC、藍野伊月の基本支給品、防御スペルカード@ファイナルソード
[思考・状況]
基本行動方針:ジャンク・ジャンクションへ向かい、首輪解除の部品を入手する
1:スバルの返答待ち。一緒に行くか一人で行くかは別にどっちでもいい
2:佐々木哲平に会えば、藍野伊月のことを話す。
3:レグルスはまた会ったら確実に殺す。土方歳三も
4:ドラえもん、のび太と合流する
[備考]
※アイノイツキとの会話で、彼女の過去、現在を知りました。
※処刑されそうになっていた所を、ドラえもん達に助けられた直後からの参戦です。
 原作版、羽ばたけ天使たち版どちらを参考にしても問題ありません。
※佐々木哲平をタイムマシンを悪用した犯罪者だと認識しました。ホワイトナイトを盗作したと判断しています。
※飛行能力に制限があり、一定時間以上飛び続けると、首輪が点滅し始めます。

【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、エンリコ・プッチへの不信感・不快感(大)、土方への警戒心(大)、魔女の残り香(中)
[装備]:キラーパンサー@ドラゴンクエストV、瞬間接着銃@ドラえもん
[道具]:基本支給、お守り@こじらせ百鬼ドマイナー
[思考・状況]基本行動方針:
1:少女(リルル)と行動するか、それとも――
2:レム、無事でいてくれ!
3:『天国』なあ……宗教家ってやっぱ禄なヤツいねぇな!
4:本物の土方歳三までいるのかよ……
[備考]
※エンリコ・プッチの『天国』の解釈を本人からの説明で理解しました。
※参戦時期は聖域に向かう前後。
※『死に戻り』のペナルティには制限が課せられているようです。
※『死に戻り』にも制限が掛かっています。以下一覧
 ・『死に戻り』には回数制限在り。正確な制限回数は現在不明
 ・セーブポイントは主催者側の意思で設定、変更される
 このうち、スバル当人が把握しているものは『死に戻り』の回数制限のみです。
 これ以外にも制限があるかは現在不明です。

【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]健康、異様な気配(魔女の残り香)への警戒心(中)、動揺(大)、川に流されている
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる
1:新選組が英雄……?
[備考]
※参戦時期は単行本4巻終了時点。
※召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
 また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。
※魔女の残り香を感じ取れます。
※川に流されていますが、特に何もなければ生存します


【瞬間接着銃@ドラえもん】
ナツキ・スバルに支給。
撃つと強力なゲル状の接着剤を発射する銃。
その拘束は強力で、撃たれた相手はゴキブリみたいに地面にへばり付くことになる。
下が地面でなかったとしても、手足が固まって動けなくなるだろう。
あくまで撃ちだすのは接着剤なので攻撃力はない。

本ロワでは制限として撃ちだされてから5分で接着剤は消滅し、拘束は解ける。

14 ◆7PJBZrstcc:2023/04/22(土) 08:29:31 ID:HQ6z0mUk0
投下終了です

15名無しさん:2023/05/12(金) 19:55:22 ID:X9kGQCbw0
下がり気味なのでage

16名無しさん:2023/06/06(火) 21:35:48 ID:xH9H4isU0
下がり気味なのでage

17名無しさん:2023/06/07(水) 11:45:01 ID:0D09GH560
投下でもないのに無意味にageるな。誰も喜んでないからなそれ。

18 ◆7PJBZrstcc:2023/06/08(木) 23:03:26 ID:OdqX.GgA0
日和、ブースカ、シャドウ茜、パワーで予約します

19 ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:50:57 ID:TpNWiI/w0
投下します

20人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:51:38 ID:TpNWiI/w0
 H-4の森の中をあてもなく彷徨っていたパワーだったが、しばらくすると森を抜けていた。
 彼女自身も把握していないが、気づけば南下していたのだ。
 そしてそのまま特に誰とも遭遇することなく、同じエリアの名も無き街のような地帯に辿り着くのだが――

「飽きたのじゃ!!」

 パワーは思わず叫んでいた。
 何せ、彼女は殺し合いに乗っていて、なおかつ特に葛藤もなく殺しに乗り気である。
 そんな彼女がただ森を彷徨うだけで時間を使うことを好むだろうか。
 当然好みはしない。
 更に言うなら、彼女が令嬢剣士から奪い取ったトランスチームガンとバットロストフルボトルを使おうとしたものの、使い方が分からず結局デイパックに放り込んだ一幕があった。
 使い方を示す説明書きはあるものの、それは令嬢剣士のデイパックに眠ったままなのだから、仕方ないといえば仕方ないのだが。

「ん。そうじゃ!」

 ここでパワーはあることを思いつく。
 それは彼女が持っているデイパックだ。
 最初適当にデイパックに手を突っ込むと出てきたのがアヌビス神で、彼女と気が合いそのまま話を進めていたが、ここで改めて調べておくのも悪くないと考えたのだ。

「ワシはIQが100あるからのう! 当然覚えておったのじゃ!!」

 誰に言っているのか分からない言い訳じみた言動をしながら、パワーはデイパックに手を突っ込み、最初に触ったものを適当に引っ張り出す。
 するとそれはデイパックよりはるかに大きいのか、徐々に表れつつパワーの視界を覆う。
 やがて完全に出ると、そこには一台の車があった。
 知る人が見れば二代目フィアット500、ルパン三世の愛車で有名な車だと気づくだろう。

「何じゃこの車は?」

 パワーが疑問に思っていると、手には車に関する説明書きを持っていた。
 どうやら車と一緒に出てきたようで、彼女は特に躊躇することなく読み始める。
 そこにはこう書かれていた。

『東山コベニの愛車』
「コベニ……? 誰じゃったか……?」

 説明書きに書かれている名前を見て、聞き覚えがある名前だが誰だったか思い出せず頭を捻るパワー。
 ちなみに東山コベニとはパワーと同じ公安対魔特異課の一員であり、彼女とも面識はある。
 だがすぐに思い出せるほど深い仲ではない。
 しかしパワーは時間がかかりつつも思い出した。

「おお、トンガリを刺した奴じゃな!!
 おのれ……! あやつ、ワシに隠れてこんな車を持っておったとは、許せんのじゃ!!」

 物凄く理不尽な怒りをコベニに向けるパワーだが、車の持ち主はこの場にはおろか殺し合いにすらいない。
 そして怒っている当人はすぐにその怒りを忘れ、とりあえず車に乗り込み、発進させようする。
 しかし彼女は、車を運転するための知識がなかった。

「ミルドラースとかいう人間はなぜこんなに使いにくいものを支給したのじゃ……やはり人間は嫌いじゃ……」

 ミルドラースが人間ではないということを知らないせいで、とんだ飛び火を人間に浴びせるパワー。
 しかしこの車は殺し合いの為に主催者が支給した物。
 免許を持たない子供や車が存在しない世界の参加者もいる中、使えない物体だと思われないための工夫も当然ある。
 具体的には、説明書きに車の動かし方が書いてある。
 パワーはそれに気づき、早速読み始めた。
 そして数分後――

「ハハハハハハ! やはりワシは天才じゃ!!」

 そこには元気に車を疾走させるパワーの姿が。
 こうして彼女は進み始めた。
 特に目的地を定めないまま。

21人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:52:16 ID:TpNWiI/w0





 ブースカとシャドウ茜の追いかけっこは一進一退みえて、その実ブースカに圧倒的な不利がかかっていた。
 理由は二つ。ブースカの疲労とシャドウ茜の速攻にある。
 彼女に遠目とはいえ離れたはずなのに即座に見つかり、更に彼女にはバイクが支給され、猛スピードで追ってくるなどブースカ達からすれば予想外もいい所。
 ロクに回復する時間もなく、おまけにいくらラーメンを食べたからと言って、元々大食漢であるブースカにとっては焼け石に水。
 更に付け加えるなら、制限によりブースカニウムの消費が増えている今となっては、最早逃げることすら辛くなっていく。

 一心不乱なブースカの悪あがきも長くはもたない。
 結局、隣のエリアH-5の中でブースカは力尽きかけ、飛ぶことすらままならなくなっていく。

 そして――



 バッ!!



 突如現れた車にブースカは轢かれ、運ばれていた日和と共に宙をあらぬ方向へ舞い、やがてそれぞれ地面を転がっていく。

 ゴッ

 幸いなのか、ブースカは無事だった。
 撥ねられ地面を転がされ、力が制限されている今ではさすがのブースカもダメージが0とはいかないが、とにもかくにも生きてはいた。

「うう……ひーちゃん、大丈夫?」
 
 自らの痛みに呻きつつも、日和を心配するブースカ。
 しかしその心配は無に帰す。

「……え?」

 ここでブースカ達を追ってきていたシャドウ茜が追いつき、バイクから降りて目の前の光景に呆然となっている。
 遅ればせながらブースカも気付く。
 日和は血まみれで倒れていた。
 それも元々流していた肩からの血ではなく、頭からだ。
 近くには血の付いた石が。
 これだけあれば、誰でもここで起きたことに見当がつく。

 日和は車に轢かれ飛ばされた衝撃で地面を転がり、その時に頭を打ったのだ。

「……ひーちゃん?」

 ブースカが心配気に日和に呼びかけるも、返事はない。
 それどころか、息をしているようには見えない。
 血は止まらず、顔色はどんどん悪くなるばかり。
 肌の色もどんどん冷たくなる。

「ひーちゃん!!」
「やめるんじゃ!!」

 なおも必死になって日和に呼びかけるブースカを、ここまで何も言えなかった目玉おやじが止める。
 否、本当は分かっているのだ。
 ブースカの知能は小学校五年生並である。
 それだけあれば、目の前の光景がどういうものか理解できる。
 だが、感情がそれを受け入れられないだけなのだ。

 誤魔化す必要もない。はっきり言おう。
 鳥月日和はもう死んでいる。
 この殺し合いの中で華々しく散った沖田総司や、悲劇と絶望の中で潰れた西片ような物語性など無く。
 暴走する車に轢かれ頭を打って死ぬという、まるでテレビのニュースに映し出されたありふれた事件のような一幕で。
 シャドウ茜に『改心』させられることもなく、あるいは逆に本当の意味で改心させることも無く、何一つ言葉すら残すことなく、彼女の生はここで終わった。


【鳥月日和@妖怪の飼育員さん 死亡】
【残り87人】


「この……『悪党』め!!」

 目の前の日和の死に激昂したのはブースカではなく、シャドウ茜だった。
 自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にバイクを運転していたスカルが鉄パイプを取り出し、パワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。

「な、何をするのじゃ!!」
「うるさい!!」

 いきなり引きずり出されたことに憤るパワーだが、シャドウ茜がそれ以上の怒りで封殺する。
 彼女の激昂には理由がある。
 彼女にとって『交通事故』は少々特別だ。

22人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:52:47 ID:TpNWiI/w0

 そもそもシャドウ茜が正義を志し、悪党を改心させようとしたのは、母親が轢き逃げで亡くなったのがきっかけである。
 彼女はその車の運転手を目撃していたが、その運転手は国会議員の大和田だった。
 当然彼女はそれを証言したが、警察は聞いてくれなかった。
 それどころか大和田の秘書が犯人ということになっていた。
 どういう経緯でそうなったのか彼女には分からないが、大和田が何かして秘書に責任を押し付けたに違いない。
 秘書は自殺し、家族は今も周りからの誹謗中傷に苦しんでいる。

 茜は大和田を許せない。
 自身の母を殺しながら、何の裁きも受けずのうのうとしていることを。
 そして警察も許せない。
 正義の味方のはずなのに悪を見過ごし、罪なき別の誰かが苦しんでいるのを救おうともしない。

 だからだろう。
 茜には、今目の前にいるパワーが許せない。
 人を轢き殺しておいて何の罪悪感も抱いていないであろう態度が、どこか大和田を思い起こさせるからだ。

 一方、パワーはそんな茜の事情など一切知らないが、とにかく目の前の少女が自分を責めていることだけは読み取れた。
 しかしそんなもので怯むパワーではない。
 彼女は理論武装を掲げ、自分が悪くないと心から信じ反論する。

「ワシが悪いのではない。ウヌのせいじゃ」 
「何を……!!」

 まさか自分のせいにしてくるとは思わなかった茜が動揺するが、パワーは構わず言葉を続ける。

「ウヌがあの女とあの悪魔を追い回さなければ、ワシはあやつらを轢かずに済んだ」
「なっ!?」
「何じゃその態度は……まさかワシのせいにするつもりか?」
 この……人殺しがぁ!!」
「違う!!」

 パワーの余りにも詭弁の過ぎる言い分に怒る茜。
 だがここには、それ以上の怒りを携えたものがいる。


「プリプリのキリリンコ、カッカッカ!!!」

 ブースカだ。
 今までは日和の死をただ悲しんでいたが、パワーと茜の責任を押し付け合うような会話に我慢ができなかった。
 故にブースカはどっちも許さない。
 日和を直接轢いたパワーも、その前に日和を刺したシャドウ茜も。

「待て、落ち着くんじゃ! 日和との約束を忘れるな!!」

 目玉おやじはその様子を危うく思い、必死に引き留めるが当のブースカは最早聞こえていなかった。
 ただ怒りのままに、まずはシャドウ茜へと拳を振り回しながら疾走する。
 ブースカの超能力の一つ、怪力なら彼女にも対抗自体は十二分に可能だろう。
 その攻撃が当たればの話だが。

 BANG!

 ブースカがシャドウ茜へと向かっていく最中、パワーを未だ抑えているスカルの手元には銃口から煙を吹く散弾銃が。
 スカルはブースカの足を見事打ち抜き、そのまま転ばせた。

「うわああああああああああああああ!!」

 転んだブースカの元にシャドウ茜とスカルが一気に詰め寄り、互いに手に持つ武器を全身全霊で振り下ろす。
 アサシンタガーが、鉄パイプがブースカの体を幾度も蹂躙する。
 彼女はただ恐ろしかった。
 人ではないものの純粋な怒りと、それがもたらすであろう暴力を。
 そこに正義などない。
 死を恐れるがゆえに、原因を取り除こうとする、あまりにも原始的な欲求でしかない。

 だがここまでなら、ブースカはこれを振り払えたかもしれなった。
 彼はいくつもの超能力を持ち、その中の一つには怪力がある。
 それを使えれば、シャドウ茜とスカルを振り払い、まだ戦いという概念に持ち込めるだろう。

 カランコロン

 しかし現実はそうはいかない。
 ブースカの頭にある王冠が地面に落ちてしまった以上は。
 スカルの殴打が偶然にも王冠を叩き落としたのだ。

 ブースカの王冠はブー冠といい、彼が使う超能力はここから発生するエネルギーブースカニウムを消費して使用する。
 それゆえ、ブー冠がブースカから離れると、彼は超能力が使えなくなってしまうのだ。
 だからここからはただの蹂躙だ。

「いたい、よぉ……」

 ブースカには、最早呻くことが精一杯だ。
 それでも震え、抵抗しようとするが、何にもならず、やがて彼も日和と同じく動きを止める。
 シャドウ茜とスカルの暴力に晒され、力尽きることしか出来なかった。


【ブースカ@快獣ブースカ 死亡】
【残り86人】

23人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:53:13 ID:TpNWiI/w0

「ハァ……ハァ……」

 動かなくなったブースカを見ながら息を整えるシャドウ茜。
 止めを刺したのは彼女のアサシンダガーだったが、そんなことに意味はない。
 そもそもスカルも所詮は彼女が作り出したものなのだから、どうあっても彼女が殺したのと同じことだ。

「……違う」

 シャドウ茜は必死に否定する。
 何をと問われれば、己の行動の意味を。
 断じて、ブースカを殺したのは恐怖にかられたからではないのだと。

「違う! 違う違う!!
 私は正義で! こいつも、あの女も、『悪党』だから改心させなきゃいけなかったから!!」

 ただ一人必死に否定するシャドウ茜。
 傍らのスカルが何やら声をかけているが、それすら聞こえない。
 自分は正義だと、必死に叫ばなければ壊れてしまいそうで。

 日和とブースカの死体という、かつて命だった二つの物体が、責め立てているように感じる。
 これがお前の正義か。
 こんなものがお前の言う改心なのか、と。

「そうよ!! これが、正義よ!!」

 必死に訴えていたシャドウ茜だが、ここで彼女はようやっと気づく。
 この場にいたはずのもう一人の登場人物、パワーの姿がない。
 乗って来た車と共に、既にこの場を去っていることに。

「……絶対に許さない」

 新たな悪を見つけ、改心を誓うシャドウ茜。
 それが義憤か逃避か、判断してくれるものは誰もいない。





「なんという野蛮な人間どもじゃ!!」

 スカルの拘束が解けた瞬間にコベニの愛車に乗り込み、あの場から逃げ出したパワー。
 彼女はあからさまにシャドウ茜の行動を侮蔑しつつ、二対一は不利という考えから逃走を選択した。

「じゃがそもそもこの殺し合いに優勝できるのは一人だけ。
 どうせあやつらもいずれは仲間割れするに決まっておる。そうなればワシの勝ちじゃ」

 そしてパワーは勘違いしていた。
 スカルもまたこの殺し合いの参加者の一人と思い、殺し合いに乗っている者同士が一時的に手を組んでいると考えていたのだ。
 だからいずれコンビも解消されると彼女は推測した。

 だがスカルは参加者ではなく、シャドウ茜が作り出したものでしかない。
 そもそも首輪がついていないのだから参加者でないと気づくことは難しくないのだが、パワーはあの状況でそこまで見ることはできなかった。

「まあしばらくは離れておくとするかのう! せっかく車も手に入ったのじゃしな!!」

 ハハハハと高笑いするパワー。
 彼女は何も変わらない。ただ理性ある魔人としての振る舞いをするのみ。
 そして彼女は気付いていない。
 この車に乗っているのは彼女だけではないことを。

(すまぬ! すまぬ! すまぬ!)

 車内のパワーから見えない位置に、目玉おやじが隠れ潜んでいた。
 彼はパワーが逃げ出すのを見て、咄嗟にここで残っても無駄死ににしかならないと判断し、彼女の車に乗り込んだのだ。
 しかし彼の心中はあまりにも暗闇に飲み込まれていた。

 いくら仕方ないと理由を付けることはできても、心を通わせた仲間をむざむざ見捨てて逃げたことは、彼の中で大きな傷となっていた。
 そして更に傷を広げるであろう決意を、彼は掲げる。

(すまない日和。わしはお前さんの願いを叶えられん)

 日和はシャドウ茜を説得し、仲間にしたがっていたが目玉おやじはできるとはもう思っていない。
 彼女は死亡し、ブースカも後を追うように逝ってしまっただろう。
 だから彼は決意する。日和の想いを無下にする決意を。

24人生ドラマチックにはいかない ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:53:48 ID:TpNWiI/w0

(わしはあの女を殺す)

 弔いなどではない。ただ目玉おやじの決意としてシャドウ茜を殺すと決めた。

(そしてこの女もじゃ)

 そしてもう一人、パワーも同様だ。
 目玉おやじは運転手をこっそりと睨む。
 かつて妖怪の王だった彼にも分からない異世界の存在だが、そんなことは関係ない。

 この場には物として持ち込まれたが、ここに在るのは意思ある命。
 ただ一匹の妖怪として、彼は化物討伐を心に誓う。


【H-5/早朝】

【シャドウ茜@ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
[状態]:健康、精神的動揺(大) 『マイ・ディア・クイーン』の顕現、岸部露伴のバイクに搭乗中
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.逃げた悪党を追いかけ、改心させる
2.あの女(パワー)は絶対に改心させる。
3.本物の怪盗団は、私を裏切らない……。
4.どうせ皆、悪党なんでしょ………………そうに決まってる! そうじゃなきゃ……
[備考]
心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。

【パワー@チェンソーマン】
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている、コベニの愛車運転中
[装備]:血の剣@チェンソーマン、コベニの愛車@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド の使い方が分かりません。
スカルを参加者と思っています。
車の中の目玉おやじに気付いていません。
どの方向に逃げたかは次の書き手氏にお任せします。


※G-5 東部にて以下のものが放置されています。
 鳥月日和、ブースカの遺体。
 鳥月日和のデイパック(基本支給品(カップ麺全滅)、アリアドネの糸(1本)@世界樹の迷宮シリーズ、ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森)、ブースカのデイパック(基本支給品(食糧は全滅)、アリアドネの糸(2本)@世界樹の迷宮シリーズ)。
※コベニの愛車@チェンソーマン の内部に目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎 が乗り込んでいます。


【コベニの愛車@チェンソーマン】
パワーに支給。
デンジとパワーの同僚、東山コベニが給料を貯めて買った車。
本来ならコベニは家族の送り迎え用にするつもりだったが、結果としては味方ごと敵の暗殺者を轢く、落ちてきた味方のクッションになる、敵へのトドメを刺す武器として扱われるなど散々である。
第一回人気投票七位。

本ロワでは支給品の説明書きに車の動かし方が書かれている。
これさえ読めば物理的に乗り込めない、もしくはハンドルやペダルに手足が届かない、とかでもない限り誰でも使えるようになるだろう。

25 ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 12:54:15 ID:TpNWiI/w0
投下終了です

26 ◆7PJBZrstcc:2023/06/10(土) 14:41:07 ID:TpNWiI/w0
すみません。ミスが発覚したのでこの下の文を

>自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にバイクを運転していたスカルが鉄パイプを取り出し、パワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。

から

>自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にシャドウ茜はバイクを運転していたクイーンからスカルに切り替え、持っていた鉄パイプを振るってパワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。

27 ◆j1W0m6Dvxw:2023/06/10(土) 22:43:09 ID:2Nk13DiA0
日和ー!ブースカー!!( ;∀;)
まさか第一放送前に死ぬとは………
何があってもおかしく無いのがパロロワとは言え悲しい( ;∀;)

28 ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 18:53:52 ID:zDmalwHM0
ゲリラ投下させて頂きます。
先に言っておきますと、メタ的な事情によりオグリキャップを生還させる話になっております。

29メッセージは唐突に ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 18:57:11 ID:zDmalwHM0
 地図から見て横長に建てられている洋館、そこがマサオとオグリキャップが先程入った建物だった。

 裏口の厨房から入り進むと、オグリキャップが大きな冷蔵庫を発見する。

(冷蔵庫… いや、マサオを守る)

 一瞬は冷蔵庫内の中に保管されてあるであろう食料に期待し、その扉を開こうと思ったのだが、幼い子供の同行者であるマサオが居ることもあり首を横にブンブン振って自身の食欲を振り払う。

「あの〜、ガマンしよ?」

 そんな彼女の姿を見てマサオがそう声を掛ける。

「そう、ガマンだガマン。」

 オグリキャップは冷蔵庫を発見したことによって発生した突発的な食欲を抑え、同行者と共に移動を続行。

 そうして食卓がある部屋にたどり着く。
 そこに食料は何もない。

 大きな扉を開け、一行は大広間に出る。
 赤いカーペットなどやシャンデリア等目立つものはあるが、それといってめぼしいものはない。

 一行はそこで金色に輝く手摺り付きの大きな階段を発見し、オグリキャップはマサオを抱えてそれに登る。
 一段一段に大広間のものと同色のカーペットが敷かれており、移動もさほど苦痛ではなかった。

 登った先は廊下であり、そこにはいくつかある部屋につながるドアがある。

 二人はひとまず登ってすぐの場所にある部屋に入る。

「うっわ〜、広ぇ部屋だぁ!」
(大きなベッド…!)
 そこは、大きなベッド等が目立つ広い部屋だった。
 ドアを閉め、二人は一旦休憩をしていこうとした、その矢先────


 オグリキャップの体が突然光出した。

 「え!? オグリキャップ…! 体が光ってるよ!?」
「…ホントだ。」

 それを目撃したマサオに声をかけられたことでオグリキャップもそれに気づく。

「どうも」
「「!!」」

 更には、先程までお互い気配すら感じもしなかったネルシャツ姿の男性が突然にも出現した。

「私は… 一般通過爺とでもお呼びください。
 主催者のメッセンジャーとしてやってきました」

 現れたのは一般通過爺だった。

「突然ですが、『コンペ・ロワイアル』を運営させて頂く上でオグリキャップの参加を続行させておくのは大変危うい状況である事と判断されました。
 ご安心ください。彼女は生きたまま、無事に元の世界へとお帰しします。
 また、彼女が現在ご所持されていらっしゃる支給品は全てここに残させて頂きます。
 では、私からは以上です。」

 彼がメッセージを告げ終えると、光に包まれるオグリキャップの頭からスタンドDISKが飛び出し、そのまま落下する。
 そして、彼女は会場から無事に退場し、そのまま元の世界へ送還してもらえる事になったのだ。

【オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ 生還】
【残り85人】

 その場所には他に彼女が所持していた支給品も一緒に落ちている。
 そして、一般通過爺の姿も見えなくなっていた。

30メッセージは唐突に ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 19:00:30 ID:zDmalwHM0
 また、マサオは知らず、一般通過爺からも伝えられなかったが、支給品の布団と枕のセット、山盛りの炒飯、ブードゥー人形も支給前の状態に戻された上で元の世界に戻してもらえる事になった。

「そ…そんなあああああッ!!」

 だが、その場にマサオだけは残されてしまった。

【H-6 リテイル・ロー西側 洋館の一室/早朝】
【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:恐怖(大)、心理的ショック(大)、失禁
[装備]:ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない)
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけ達を探す
1:オグリキャップー!!
2:ヴィータちゃん、立香さん、行かないで……
3:しんちゃんを探したいけど……
4:いざとなったらひらりマントで自分の身を守る
5:しんちゃんのパパが二人...?
[備考]




※現在、マサオがいる部屋にスタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、オグリキャップの分の基本支給品、ランダム支給品×2(お菓子の類ではない)が落ちています。
※コルワに支給されていた布団と枕、岸辺露伴に支給されていた山盛りの炒飯、クッパ姫に支給されてブードゥー人形@ウマ娘 シンデレラグレイは支給前の状態に復元された上で元の世界に戻されました。

31 ◆bLcnJe0wGs:2023/06/30(金) 19:01:02 ID:zDmalwHM0
投下終了させて頂きます。

32 ◆dxXqzZbxPY:2023/06/30(金) 21:28:31 ID:MJJFbEs60
他の参加者がオグリキャップの強制生還を知ったらどういう考え&行動をとるのか気になりますね…場合によっては面倒な事になるかもしれませんね

33名無しさん:2023/07/01(土) 18:34:24 ID:Ive.cSIE0
>>『コンペ・ロワイアル』を運営させて頂く上でオグリキャップの参加を続行させておくのは大変危うい状況である事と判断されました。

いや、だったら最初から参加させなきゃ良いでしょうが!?(゜_゜;)

34名無しさん:2023/07/01(土) 20:38:42 ID:ulsV.Ubc0
>>いや、だったら最初から参加させなきゃ良いでしょうが!?(゜_゜;)


そんなことはあなた以外みんな分かってますよ。
最初から参加させなきゃ良いじゃなくて、採用してしまった以上は読者も書き手もどうすべきか悩んでて、挙句の果てに役立たずのコンペロワ企画者は何もせずバックれたし、妥協を重ねた結果が今回の投下です。
そんな今更なことを書き込まないでください。

35名無しさん:2023/07/05(水) 01:29:53 ID:Rhzhm.cE0
投下乙です
ウマ娘のレギュレーションが確定したの採用後ですもんね……
最善の判断だったと思います……!

36 ◆7PJBZrstcc:2023/08/13(日) 14:17:29 ID:9zgP0quo0
クッパ姫、デンジ、エンリコ・プッチ、佐藤アカネ、とがめ、野崎春花 予約します

37 ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:16:32 ID:CGpEoJEE0
投下します

38命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:17:13 ID:CGpEoJEE0
 異様だった。
 殺し合いに乗った少女、野崎春花を五人の人間が囲う光景は。

 五人のうち二人、とがめと佐藤アカネは春花に襲われた被害者だ。
 二人とも下手人を殺す気はないが、彼女を見る目はは当然の如く厳しい。

 対する二人、クッパ姫とデンジが睨むのは春花ではなく、とがめとアカネである。
 二人から見れば、春花と合流できたと思ったらいきなり襲われたと主張してきているにすぎないのだから、当たり前といえば当たり前だ。
 しかしデンジのデイバッグを盗み、二人から逃げるように去っているという事実がある以上、分が悪いのは間違いない。

 最後の一人、プッチはそれどころではなかった。
 はっきり言って彼からすれば、春花は殺し合いに乗っていると思っている。
 彼女がデンジのデイバッグを盗むところを目撃しているうえ、スタープラチナを出していた以上十中八九戦闘していたのは確か。
 そしてその相手がNPCでなければとがめとアカネの二人であることはほぼ確定している。
 ならば、殺し合いに乗っていると考える方が自然だろう。

 だがそれよりもプッチにとって重要なのは、春花がスタープラチナのDiscを持っているという点である。
 彼の最終目的からすれば別にそこまで必要なものではないものの、スタープラチナが敵に回るという可能性はできれば排除したい。
 担い手が空条承太郎ではないとはいえ、その力が強力無比なのは間違いないのだから。

 そしてこの五人に囲まれる春花は今、迷っていた。
 最初こそ幸せな世界を手に入れる為優勝を目指すと決断したものの、最初に遭遇したペテルギウスには殺されかけ、次に出会ったクッパ姫とデンジには絆されかけ、そして今は負けて追い込まれている。
 ここで『最初は殺し合いに乗っていたけど、今はやめました。もう一度仲間にしてください』といえば、少なくともクッパ姫とデンジの二人は許してくれるだろう。
 しかしアカネが嘘を見抜く能力の持ち主である以上、この言葉は本心でなければ通用しない。
 そして春花には、今それを本心で言える自信はない。
 そんなにあっさり鞍替えできるのなら、最初から殺し合いに乗ったりしない。
 いくら迷い揺らぎ始めているとはいえ、彼女の家族に対する思いは軽くはない。

「なあクッパ。デンジ」

 各々がそれぞれの事情で口を閉ざす中、最初に口火を切ったのはプッチだった。

「……なんだ」
「なんだよ」
「私が野崎春花を追う前に言ったことを覚えているか?」
「あ〜っと、スタンドがどうこう言ってたやつか」
「そうだ」

 プッチの問いに答えるのはデンジ。
 彼はプッチが春花への疑いを晴らすのならさっさとやってくれ、とばかりにプッチを見る。
 その期待に応える、というわけでは無いが、プッチは話しかけた。

「野崎春花。少し、いいかい?」
「……あなたは?」
「私の名前はエンリコ・プッチ。
 今はクッパとデンジに同行している者で、普段はアメリカのグリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所において神父をしている」
「なあなあクッパちゃん」
「なあアカネ」

 プッチが自己紹介をしている後ろでデンジととがめがそれぞれ、同行者にあることを尋ねようとしていた。

「「しんぷって(とは)、何だ?」」
「えっと……」

 二人の質問が被っていることはともかくとして、質問の内容に困るアカネ。
 彼女からすれば神父について知っていることなど、教会にいる偉い人くらいの知識が精々であるが、あっている保証もない。
 なので言い淀む一方、クッパ姫は自信満々だった。

「なんだキサマら知らんのか。
 神父とはな、結婚式で結婚する夫婦に向かって誓いますか? と聞いてくる人の事だ」
「あぁ〜なんかテレビで見たことある奴か〜!!」
「神父をそんなゲームのNPCみたいな一言だけの存在にするんじゃあないッ!」

 クッパ姫の間違っているわけでは無いがあまりにも正確性に欠けた情報に怒るプッチだったが、すぐに収め春花へ向き直り話を戻した。

「ハァ……ハァ……まあクッパたちのことは今はいい。
 いや微塵もよくはないのだが、日本人はキリスト教に明るい人が少ないと聞いているし、どうやらキノコ王国にはキリスト教が伝わっていないようだ。
 ならばまあ、仕方あるまい。知らぬのなら教えるのが先人の務めだ」
(いいんだ……)

 息を荒げ疲弊するプッチの言葉に、思わず内心でツッコミを入れてしまう春花。
 しかしいつまでもそんな雰囲気は続かない。
 プッチは真面目な顔で春花に目線を向けると、背にホワイトスネイクを出現させた。

39命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:17:41 ID:CGpEoJEE0

「あなたもスタンドを……っ!?」
「さて野崎春花。これは君の言う通り私のスタンドだ。
 詳しく話す気はないが、私のスタンドは人の記憶を読むことができる。
 私はこれからこれで君の記憶を読もうと思う。理由はわかるね?」
「私が、殺し合いに乗っているかどうか確かめる為ですか……」
「そうだ。そして君が今持つスタープラチナならば抵抗できるだろう。
 私はそのスタンドについてよく知っている。君が本来の使い手でないことを差し引いても、そのスタンドは強力無比であることに変わりはない。」
「……」

 語るプッチとは対照的に口を閉ざす春花。
 なぜなら、彼女には目の前の神父が次に何を口にするのか予測がつくからだ。

「だから私は君が次にスタープラチナを出現させた瞬間、殺し合いに乗ったものとして判断させてもらう。
 聖職者として恥ずべきかもしれないが、場合によっては殺害も辞するつもりはない」
「なっ!?」
「オイオイオイ〜! そいつはちょっとやべえんじゃねえの〜!?」

 プッチの発言に驚愕するクッパ姫と、思わず諫めるデンジ。
 彼らは春花が殺し合いに乗っているとは思いたくないし、もしそうであったとしても殺して止めるという選択肢を持ち合わせていなかった。
 そして、持ち合わせていないのは二人だけではない。

「え、いやいやそれは流石に……」

 アカネもまた、プッチの発言に引いていた。
 彼女は春花が殺し合いに乗っていると骨身にしみて分かっているが、それでもやろうとしていることは凶行を止めさせることであり、殺すつもりはない。
 現代日本で育ったごく普通、とは少々言えない部分もあるが、それでも平和な場所で生まれ育った年相応の少女の価値観での判断だった。

「……」

 一方、とがめはプッチの発言に何も言わない。
 確かに彼女はアカネに合わせ、春花を積極的に殺そうとはしていない。
 だがとがめが生きていた時代は決して戦乱ではないものの、剣士や忍者が当たり前に存在する尾張時代。
 そして、その時代で自分の復讐のために殺しを覚悟し、許容している彼女は春花が死ぬこともまた受け入れていた。
 少なくとも、自分やアカネが死ぬよりは。

「わ、私は……」

 そして最後、春花は完全に詰んでいた。
 無抵抗でも抵抗しても殺し合いに乗っているとこの場の皆に晒される。
 抵抗しなければ殺されることはないかもしれないが、どうあっても願いを叶えることはできなくなると考えたほうがいいだろう。
 ならば――

「私は、殺し合いに乗っています……」

 先に全てを曝け出すことにした。
 どうせバレるのなら、いっそ全てを素直に話すことにした。

「うぬぅ……」
「春花ちゃん!?」
「やはりか」

 春花の告白にショックを受けるクッパ姫とデンジ。
 一方、プッチとしては予想できた話だった。最初からそのつもりで話を進めており、その通りの結末になっただけであった。
 だが次の問答ではそうはいかない。

「しかしなぜ、君のような少女が殺し合いに乗ったのかね?」
「……死んだお父さんとお母さんと、妹のしょーちゃんとまた、一緒に暮らしたくて」

 春花が紡ぐ壮絶な言葉に、誰も二の句が継げなかった。
 あまりすすんで人を傷つけるようには見えない彼女が殺し合いに乗っているということは、それ相応の理由があるとは思っていた。
 だがこれほど端的かつ、明確なものがあるとは思っていなかった。
 特にアカネは、目の前の春花が嘘をついていないことが分かるので、思いはひとしおだ。
 それでも何か話そうと先陣を切ったのはとがめだった。

「しかし春花、そなたに何があったのかは聞かないが、復讐しようとは思わないのか?
 例えば私は父上が殺されて、その復讐のために色々頑張っている最中なのだが」
「言い方軽いな!?」

 とがめのサラっと語られる復讐譚に、思わず言い方にツッコミを入れてしまうクッパ。
 しかし春花の返答は変わらず重い。軽くなるわけがない。

「復讐なら、終わらせました。
 お父さんとお母さんを燃やした人たちを、私は皆殺しにしたんです」
「マジかよ……」

40命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:18:07 ID:CGpEoJEE0

 春花の告白に、デンジの唖然とした呟きだけが辺りに響く。
 彼女の言葉に誰もが思う。
 一体何が彼女をここまで追い込んだのか。見た所ただの少女が、ここまでの覚悟を決めてしまえた理由が分からない。
 しかし誰もそれを聞こうとは思えない。

「野崎春花」

 やがてプッチが再び口を開く。
 彼の声色は慰める訳でもなく、かと言って糾弾するわけでもない。どこか淡々としたものだ。
 しかしそれが春花には、まるで慈悲のように思えた。

「君の気持ちは分かる、などとは言わない。
 だが私も昔、妹を失ったことがある。だから、家族を失う苦しみは分かるつもりだ」
「プッチさん……」
「あの時は思ったよ。妹はなぜ死ななければならなかったのだろうか。
 なぜ赤ん坊の時、私ではなくウェザーを連れて行ったのか。
 なぜ私は教会で婦人の告白なんか聞いてしまったんだ。
 なぜ私は神父になんかになろうとしたんだッ!
 なぜ人と人は出会うのだ!? 出会わなければあんなことにはならなかったのに、とね」

 プッチの徐々に熱を帯びていく言葉の意味が、春花のみならず誰も理解できない。
 だが彼の言葉に嘘はない。それだけは、アカネでなくとも理解できる。
 そのまま彼の話は続く。

「妹の死について彼女は何も悪くない。
 それでも妹が死んだのは、友人の言葉を借りるなら引力によるものだろう」
「引力ゥ? なんだそれ?」

 到底つながっているように感じないプッチの言葉に、意味が分からず思わずデンジが口を出す。

「引力とは、本来なら物体が引き合う力のことだが、この場合はそうだな……運命と言ってもいいかもしれないな」
「キサマ……妹が死んだのを運命で片づけるのか?」

 プッチの物言いに思わず食って掛かったのはクッパ姫だ。
 クッパJrという息子や、多くの部下を大事に思っている彼女からすれば、まるで妹の死を仕方なかったかのように語るプッチの言い分は気に入らない。
 だがプッチも引かない。

「そうだ。でなければ妹はなぜ死ななければならなかった?
 彼女は何も知らず、ただ恋をしただけだ。呪われるべきはこの私だ。
 だがそれがなんだ? どんな理由があれば、私の妹が死んでいいことになるんだ?」
「それは……」

 プッチの質問に言葉を止まらせてしまうクッパ姫。
 そもそも彼の妹のことなど何も知らないのだから、何かを言いようがない。

 その様子を見て、クッパ姫が何も言う気がないと判断したプッチは、春花に向き直り話を続ける。

「野崎春花。同じような傷を持つ者としてお願いだ。
 殺し合いに乗るなんてやめ、私と『天国』を目指さないか?」
「そんな、私が今更天国なんて……」
「ああいや、そういう意味じゃない。私の言う『天国』は死後の世界のことではないよ」

 プッチの誘いに目を逸らして断る春花に対し、彼は『天国』の意味を語り始める。
 それはこの殺し合いで最初、スバルに語り拒絶された内容そのままだ。
 人類が生まれてから滅ぶまで全ての運命が定まり、それを皆が理解している世界。
 先が理解できるゆえの『覚悟』こそが、人々の幸せなのだと、プッチは熱く語った。
 だが――

41命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:18:37 ID:CGpEoJEE0

「何言ってるの、この人……」

 アカネには理解できない。
 未来を知るということがどういうことなのか、彼女はプッチ以上に理解できるがゆえに。
 それを幸福だと心から断じる彼の性根は狂っているとしか言えない。

「おかしいぞキサマ!」
「全く同感だ」

 クッパ姫ととがめもまた、プッチの言う『天国』など受け入れない。
 二人は敵意を以て彼を睨む。

「……」

 そして春花は何も言わなかった。
 ただ背にスタープラチナを顕現させ、プッチに向けて戦意を向ける。
 これだけで、彼女の思いは理解できるだろう。

「そうだよな春花ちゃん。
 二度も大事な奴殺されたくねえよなぁ〜!!」

 ギュイイイイインン

 デンジから響き渡るチェーンソーのエンジン音。
 それと同時に現れるは、頭と両腕にチェーンソーを生やした、悪魔でも魔人でもないもの。
 チェンソーマンがここに来た。

「くっ……! なぜだ! なぜ誰も私の『天国』を受け入れない!!
 2……3……5……7……11……」

 一気に四面楚歌の局面に陥ったプッチは叫ぶが、誰もそんなものは聞き入れない。
 素数を数えながら思考する彼に残された手は二つ。
 一つは現在可能かどうかは不明だが、未来の悪魔と契約すること。もう一つは、彼のデイバッグに残る最後のランダム支給品。
 彼が選んだのは――

 バッ

 プッチは素早く自身のデイバッグに手を入れ、最後のランダム支給品を取り出した。
 それは一見すると紐で封された古ぼけた巻物でしかない。だがこの場に小鬼殺しの銀等級冒険者がいれば、それが何か分かっただろう。

         ゲート       スクロール
 この巻物は《転移》が記された巻 物。
 それも、かつてゴブリンスレイヤーが使ったのと同じく、海底に転移先が繋がっている物だ。
 これを開けば

「え……? あれ……?」
「とがめ!?」

 海底から地上へとつながったことで、猛烈な水圧がウォーターカッターとなって前方へと襲い掛かる。
 ここで前方となる方向にいた者は、とがめだった。
 彼女はかつてゴブリンスレイヤーが倒したオーガと同じように、上半身と下半身が分断されていた。
 『堅剛月餅』の効果など関係ない。
 例えばHPが100しかないのに9999のダメージを受ければ、仮にダメージを50減らせたとしても即死するのみだろう。

「まったく……こんなもの、奇策も何もないではないか……」

 愚痴りながら薄れゆく意識の中、とがめが最期に思い浮かべるのは一人の男のこと。
 それは仇を討とうとした亡き父ではなく、仇そのものでもない。
 彼女が復讐のために手に入れた『刀』、鑢七花のこと。

「七花……私は、おまえが……」

 とがめが七花に何を言い残そうとしたのか、知ることが出来るものはいない。
 きっと本来の最期と同じではないのだろう。
 なぜなら本来の最期は、殺害者の情けにより最期の言葉を残す時間があった。
 だけど今ここでそんな時間はない。彼女自身が思考する体力がない。
 だからここまで。誰にも届かず何も分からない言葉がただ、虚しく空を切っただけ。


【とがめ@刀語 死亡】
【残り84人】

42命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:19:05 ID:CGpEoJEE0


 だがとがめの死などプッチからすれば、障害が一つ消えた程度のものでしかない。
 周りが彼女の突然の死に動揺する隙を見て、彼は彼女の死体の横を走り抜ける。

「あっ! 待ちやがれ!!」

 プッチの逃走に気づいたデンジが追いかけようとするも、その時あることが起こった。
 それはプッチにとって幸運なことに、とがめのデイバッグの中身がさっきの衝撃でぶちまけられたのだ。
 中身は基本支給品一式に、緑茶とオレンジジュース。
 そして4級未満の雑魚呪霊、蝿頭。

「なんだコイツは!? クリボーの一種か!?」

 クッパ姫が突如現れた蝿頭に驚くも、即座に倒そうと炎を吐く構えをする。
 蝿頭は木製バットで簡単に祓える程度の雑魚。彼女なら手間暇など掛けることもなく一瞬で追い払い、即座にプッチの追跡に移行できるだろう。
 何もなければ。

「ぬおっ!?」

 しかしそうもいかない。その時、蝿頭とは関係なくある出来事が起こった。

「なんだ!? ワガハイの人形が消えたぞ!?」

 なんと、クッパ姫が持っていたブードゥー人形が手元から消えてしまったのだ。
 これはガイドライン違反によりロワ進行に支障が出ることを恐れた主催者が、オグリキャップとシンデレラグレイ出展の支給品を送還したことが理由なのだが、タイミングが悪いせいで彼女達はこう勘違いしてしまった。
 蝿頭には、何か物体を消滅させる能力があるのではないか、と。

 こうなれば迂闊なことはできない、と慎重になってしまったクッパ姫達とは対照的に、グングンと疾走し逃げていくプッチ。

 ブン

 せめてもの悪あがきに、春花はスタープラチナでラグマイト鉱石を投げつけたが、プッチのホワイトスネイクで防がれてしまい、逃走を妨げることはできなかった。


 不運により生じた誤解で危険人物を逃してしまったクッパ姫達。
 誤解が解けるのにそこまでの時間はかからないだろうが、この僅かな隙に生まれた時間が誰に何をもたらすのか。
 そんなことは、誰にも分からない。





 一方、必死に逃げながらプッチは考える。
 勧誘にまたも失敗したのみならず、あの場で一人殺してしまったからには最早クッパ姫、デンジ達と敵対は避けられないだろう。
 こうなれば未来の悪魔と契約することも視野に入れなければならないかもしれない。

 だが契約すると言っても、向こうにその気はあるだろうか。
 確かに最初は向こうから契約を持ちかけたものの、一度は素気無く断ったのだ。
 それを状況が不利になったからと言って契約したいと言って、向こうが頷くだろうか。
 最悪、私を見限ってあの場にいた他の者に契約を持ちかける可能性すら存在する。

 色々考えるプッチだが、何を差し置いてもまずは逃走に成功しなければ話にならない。
 なぜか向こうは現在足を止めているものの、いつまた追いかけてくるか分からない。
 ならば、何としても距離をとるかどこかに隠れ潜むしかないだろう。


 どれほど他者に否定されても、プッチは己の正義を信じている。
 何でもすると誓ったあの時から、彼は『天国への階段』を登ることを決してやめはしない。

43命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:20:12 ID:CGpEoJEE0


【F-5/早朝】

【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】
[状態]:健康
[装備]:スーパークラウン(解除不可)
[道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する!
1:目の前の化け物に対処する
2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ!
3:ピーチ姫を一刻も早く探し、守る
4:プッチめ、ワガハイをコケにしたことは許さんぞ!
5:ペテルギウスに出会ったら倒す
6:そろそろワガハイが本当は男であると伝えたほうがいいか……?
[備考]
※性格はマリオ&ルイージRPGシリーズを基準としています。
※スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。
※マリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。
※春花と情報交換をしました。
※ホワイト・スネイクの能力について把握しました
※長時間女性でいることで性格に影響が出ているかもしれません。
※異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:健康、動揺、チェンソーマンに変身中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー!
1:目の前の化け物に対処する
2:プッチはぶっ殺す。
3:パワーかぁ〜合流したくねえ〜! でも殺し合い乗ってるのを見たら止める。
4:姫を守るとかクッパちゃん、やっぱりソッチ系……?向こうの世界では一般なの?
5:未来の悪魔うさんくせぇ〜!将来こんなのと契約してアイツ(早川アキ)大丈夫?
[備考]
※時間軸は永遠の悪魔の後。
※春花と情報交換をしました。
※ホワイト・スネイクの能力について把握しました
※異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【佐藤アカネ@そんな未来はウソである】
[状態]:『堅剛月餅』の効果発動中
[装備]:
[道具]:基本支給品、星型の風船@タイムパラドクスゴーストライター
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:目の前の化け物に対処する
1:春花とプッチに凶行をやめさせないと
2:とがめ……
[備考]
※殺し合いが行われることや、優勝者の願いをひとつ叶えるといった主催者の言葉に対してウソの感知は行われておらず、それを信じています。
  しかし、その時に限って能力を制限されていた可能性もあります。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。。

44命に嫌われている ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:20:35 ID:CGpEoJEE0

【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:疲労(大)、背中に刺し傷(塞がっている)、二人(クッパ姫、デンジ)に対して罪悪感
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、デンジのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3、ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量))
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する…?
1:目の前の化け物に対処する
2:プッチの『天国』は絶対に受け入れない
3:ペテルギウスを殺すため、強力な支給品を集める。
4:デンジさんの支給品については後で調べる。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※スタープラチナのDISCを装備しています。
※スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。
※クッパ姫、デンジと情報交換をしました。そのせいでマリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、精神的疲労(小)、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、初夏5才のおやつ@こじらせ百鬼ドマイナー、のどナオール@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:とりあえず逃げる
2:未来の悪魔と契約するか……? いやしかし……
3:異なる世界や能力についてもっと把握しておきたい。
4:機会があればスタープラチナのスタンドDISCをとり戻したい。承太郎の記憶DISCもあればいいが…
5:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
6:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
※参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
※ホワイト・スネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
※デンジ・クッパ姫・野崎春香の情報交換内容を把握しています。
※制限によりホワイト・スネイクのDISCで物理法則を無視した命令は出来ません。
※異なる時間軸や世界からの参戦について把握しました
※NPC 未来の悪魔@チェンソーマンが同行中です。参戦時期は少なくとも早川アキとの契約後。
  基本的にプッチに合図されるまでは隠れて移動していますが、勝手な行動をする場合も多々あります。


※F-5にとがめの遺体と参謀エンリルのナイフ@モンスター烈伝 オレカバトル、基本支給品、缶飲料2本(種類は緑茶とオレンジジュース)@呪術廻戦(アニメ版) が放置されています。
 そこから少し離れた所にラグマイト鉱石@Re:ゼロから始める異世界生活 が放置されています。


【《転移》の巻物@ゴブリンスレイヤー】
エンリコ・プッチに支給。
元々は書き記した場所まで繋ぐ門を生み出す古代の遺物。使い捨て。
ゴブリンスレイヤーは海底に繋ぐことで水責め、ウォーターカッターにするなどの使い方をした。
本ロワで支給されたものも同様に、海底に繋がっている。

45 ◆7PJBZrstcc:2023/08/16(水) 19:21:04 ID:CGpEoJEE0
投下終了です

46 ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:21:53 ID:H4Jk8qt60
ゲリラ投下します

47別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:22:35 ID:H4Jk8qt60
 エーリュシオンは少し考えた末、西を目指すことにした。
 地形を利用して情報格差で有利なエリアへの移動も考えたが、裏を返せばそれは自分の情報を持っている相手に十分な時間を与えてしまうことも意味する。
 無論、再び自分と相まみえるまでに殺されている可能性は十二分にあるが、そうでなければ厄介なことになるだろう。

 これは拙速なのか石橋を叩いて渡る慎重さか、はたしてどちらなのだろうか。

 だが選んだとなれば行動は早い。
 エーリュシオンは早速西へ向けて出発する。
 方位磁石も無しに西へ向かえるのかという言葉もありそうだが、そこは天使。
 人間を見下すだけあって、人間だと間違えそうな部分で間違えたりはしないのだ。
 しかし道を間違えてなければ問題が発生しないのかと言われると、そんなことはない。

 まず、エーリュシオンの出発地点はD-6とD-7の中間地点である。
 この辺りは地図を見てもらえば分かる通り、ここから西に向かえば小さな山が彼の行く手に立ちはだかる。
 山を登る気には毛頭なれない彼は小山を南沿いに迂回して進むことにした。

 さて、ここまでの過程で何が問題なのかというと、まず一つはエーリュシオンが他の参加者と遭遇できていないこと。
 なお、時間軸的にはC-7からD-7 シフティ・シャフトに移動したエレン・イェーガーや、同じ場所にいる桐山和雄と遭遇する可能性もあるにはあったが、結果としてそれは起こらなかった。

 それはさておき、エーリュシオンにはもう一つ問題が発生している。
 何かというと――

「GBGB!」
「GUIII!!」
「GBGYRRR!」

 群れと称してもいい程の数のゴブリンが、彼の眼前に立ちはだかっている。
 それも全てが陰茎を滾らせ、彼に情欲を向けながら。

(どういうことだ?)

 エーリュシオンがこの状況で最初に覚えたのは、疑問。
 彼はこの殺し合い開始直後、ウィズとキュアダイアモンドと戦闘する前に、実はゴブリンと遭遇している。
 最初見たときはこんな醜悪な舞台装置を設置するか、と多大な嫌悪感を抱いたが、自身に性欲を向けてはいなかった。
 こう違和感が浮き彫りになると、抱くのは嫌悪ではなく疑問である。
 しかしその答えはすぐに見つかった。

「キィーッ! あの男をレイプしろぉ!!」

 ゴブリンの群れの奥には、どう見てもゴブリンではない緑色の異形、メガデス怪人が指揮官の体で堂々と立っていた。
 怪人はどこからか緑色の光線、ホモビームを放ち、撃たれたゴブリンは意のままに陰茎をいきり立たせ、エーリュシオンに立ちはだかる群れの一員となった。

「あれには舞台装置を操る力があるのか」

 この流れからあの異形にはNPCを操る力があると考えたエーリュシオンは、ゴブリンの手が届かない所まで飛翔してそのまま勢いよく怪人へと突進する。
 人間ならば道具か異能か。あるいは技術を持たなければ舞えぬ空。
 しかし彼は天使。生まれ持ったものだけで自在に飛ぶことが出来る。人が地面を歩けるのと同じように。

 ガシッ

「キィーッ!」

 メガデス怪人は飛んできたエーリュシオンにホモビームを放とうとするが、それより先に首を掴まれる。
 ギギギと鈍い音を立て、いつでもへし折れることをアピールしつつも、しかしエーリュシオンは首を折らない。
 その理由は極めて簡単だ。

「貴様、この醜悪な舞台装置を操れるな?」
「ハイ(素)」

 命の危機の余り、思わず部下であるメガデス戦闘員の語録が飛び出すメガデス怪人。
 そんな彼に対し、エーリュシオンは何を思うでもなく淡々と話を続ける。

「ならばこれより、この醜悪な舞台装置共を我の意のままに動かせ。断れば、汚らわしい貴様に相応しく浄化してやろう。
 だが従うのであれば、その間だけ生かしておく慈悲を与える」

 この言葉に逆らう術を、メガデス怪人は持ち合わせていなかった。なお、了承しても首から手は離れない。
 従う素振りを見せた怪人に対し、エーリュシオンが出した最初の命令は、現在いるこのC-7で他の参加者をゴブリンに探させることだった。
 一も二もなく即座にゴブリンへ指示を出すメガデス怪人。
 しかし、このエリアに生存者はいない。少し前なら前述した通りエレンがいたのだが、今あるのは市街地にあるクレマンティーヌの死体のみ。
 更に言うなら、彼女のデイバッグはエレンに持っていかれているので、見つけた所で何のメリットもない。
 つまり、エーリュシオンは完全に時間を無駄にした。

「おのれ……!!」
「グエエエエエ!?」

 怒りのあまりメガデス怪人の首を握る手を強めてしまうエーリュシオン。
 しかしそんな無駄なことをしている時間はないと考え、即座に次の手を打つことにした。

48別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:23:38 ID:H4Jk8qt60

「おい、この近くに泥人形が集いそうな場所はないのか?」
「そ、それなら西の方に採掘場がグエエエエ!?」

 エーリュシオンは西から来た上で参加者と出会っていないので、西の方にある施設の情報など必要ないと考えている。
 だがそんな脳内当てをする能力がメガデス怪人にあるわけなく、彼は強権を振るう天使の機嫌を損ね再び首を絞められた。
 それでもなお、彼はまだ諦めず即座に違う場所を示した。

「ならば北の方にも市街地があったはず!!」
「そうか」

 メガデス怪人がもたらした新たな情報を聞き、エーリュシオンは首を絞める手を緩め、早速出発する。
 途中、NPCのゴブリンに遭遇する場面もあったがメガデス怪人のホモビームで洗脳するもよし、洗脳したNPCを宛がうもよしと対処法はいくらでもあった。
 なので何一つ問題が発生することなく、彼らは目的地であるC-5の市街地に辿り着いた。

「その醜悪な舞台装置共を散らして参加者を探させろ」

 街に着いた途端のエーリュシオンの指示に従い、メガデス怪人はゴブリンの群れを市街地に散開させる。
 するとしばらくしてから、どこからか轟音が響き渡るのを彼らは耳にした。
 エーリュシオンはメガデス怪人とゴブリン一匹を引き連れ音のする方へ向かうと、そこには窓の割れた一軒家があった。

 彼らは知らないが、ここは鈴奈とひろしが精神の具現化であるカタルシスエフェクトとペルソナをぶつけ合った決戦の地。
 ジオと一斉射撃の波状攻撃とフラクタルスライサーがぶつかり合い、両者が吹き飛ぶほどの爆発が起こった場所である。
 当然、そんな爆発が起きれば影響は当人だけでなく周り、環境にも及ぶ。
 その爆発により家のガラスが内側から吹き飛び、外から見れば内側から窓が割れた家となっているのだ。

 家を見ながらエーリュシオンは考える。

(ここで泥人形同士の戦いが起こったのは間違いない。だが今、泥人形共はどうしている。
 まだ中に居るのか? それとも逃げたか?)

 ここまで考え、埒が明かないと判断したエーリュシオンはゴブリンに様子を見に行かせることにした。
 その際、持ってこれそうならデイバッグを持って来いという指示もして。

 そう考えていると、家の中に様子を見に行ったゴブリンがデイバッグを二つ持って戻ってきた。
 更に中には二人の参加者が気絶していることも伝えた。ゴブリンは参加者が使う言語は使えないので、ジェスチャーで。

「そうか」

 ゴブリンの報告を聞いたエーリュシオンはデイバッグを奪い取ったかと思うと

 ゴキリ

 メガデス怪人の首の骨をへし折り、ついでに報告してきたゴブリンを蹴り飛ばして殺した。


【メガデス怪人@真夏の夜の淫夢シリーズ 死亡】


 エーリュシオンのこの行動には理由がある。
 まず前提として彼は、メガデス怪人のことを何一つ信用していなかった。
 元々こちらを犯そうとしてきた相手だから、当たり前である。
 力づくで無理矢理従えていたものの、いつまでもそれにリソースを割きたくはない。
 なのでここらで潮時と考え怪人を殺したのだ。
 それに他の参加者を見つける当てはあった。

 彼が考えたのは、優勝するために他の参加者を探すのではなく、逆におびき寄せる手法だ。
 神楽鈴奈とクロという狂信者二人はともかく、最初に出会った亡者とキュアダイアモンドは生意気にも正義感が強そうだった。
 ならば、適当に破壊活動をしていれば誘い出すのはそう難しくないだろう。

 エーリュシオンはメダロックを天に掲げると、剣に光が集っていく。
 そしてそのまま勢いよく剣を振り下ろすと、かのエクスカリバーのごとく光がビームの様に進み、目の前の家を貫いた。
 やがて光が晴れると、そこには瓦礫の山と化した一軒家の姿が。

「さて、離れた場所から様子を見つつ、名簿を確認するとしよう」

 中にいる参加者のことなど一切興味を持たず、彼は近くの家に入っていく。
 その傲岸な振る舞いに天使の要素など欠片も見いだせない。
 もっとも、彼に言わせればそれこそが泥人形の戯言なのだろうが。


 そして彼は知らない。
 今さっき吹き飛ばした家の中に、彼が嫌悪感を抱く狂信者の一人である神楽鈴奈がいたことを。

49別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:24:34 ID:H4Jk8qt60


【C-5 市街地/早朝】

【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:度重なる戦闘により蓄積したダメージ(中)、先程の狂信者たち(神楽鈴奈、クロ)に対する強い嫌悪感、ミルドラースに対する激しい怒り
[装備]:原罪(メダロック)@Fate/stay night
[道具]:ひろしのデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品×2)、神楽鈴奈のデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品1~2)
[思考・状況]基本行動方針:優勝して"ミルドラース"を打ち滅ぼす。その後、穢れた世界を浄化すべく地上にいる全ての命を消し去り、不毛の砂漠にする。
1:ひとまず名簿を確認する
2:救われない世界は消し去るのが最善、それが天命だ。
3:一刻も早く優勝し、"ミルドラース"およびそれに組する者たちすべてを未来永劫消滅させる。
4:キュアダイヤモンド、神楽鈴奈にクロ、およびD-5にいたもう2人の参加者(ライナー、シャーロット)は見つけ次第、跡形も無く消し去る。
5:奴ら(神楽鈴奈、クロ)は、たかが泥人形ごときに何を期待しているのだ?所詮そいつらも、貴様らと同じ『泥人形』に過ぎぬだろうに。
[備考]
ウィズの爆裂魔法により、デイバッグ及びその中の支給品が消滅しています。
本来『七つの大罪』にまつわる様々な特攻効果を持っているが、制限により以下の2つの効果のみ発動しています。
【色欲の罰】:女性と戦う際、攻撃力が2.75倍に上昇する。
【傲慢の罰】:彼に最もダメージを与えたものに対して、攻撃力が約2.5倍近く上昇する(現在はウィズが対象となっている)。
クロ(リーダー)の姿を『黒い影』という形で視認しています。
ミルドラースを、「魔王を従えし真の魔王」である『魔皇』だと認識しています。





 突然だが、少しだけコンペ・ロワイアルの会場の話をしよう。
 まずこの殺し合いの会場の地下には、下水道が存在する。
 現時点で確認されているのはI-8 パラダイス・パームズの地下のみだが、状況を考えるならH-6 リテイル・ローとも繋がっているだろう。
 そして街はC-5の市街地やF-8、G-8のフェイタルフィールドなどいくつかある。
 ならば、下水道は会場全土とまではいかなくても、かなりの広範囲にわたって存在すると考えていいだろう。
 故に――

「ん……くっ……!」

 エーリュシオンが破壊した一軒家の下に下水道があったとしても、おかしくはない。
 結論を言うなら、鈴奈とひろしの二人は地下にあった下水道に落下した。
 エーリュシオンの放った攻撃は家のみならず下の地面にまで影響を及ぼし、崩壊の衝撃が地面を破壊し地下と通ずる穴が生まれ、二人はそこに落ちたのだ。
 その衝撃か、鈴奈は気絶から目を覚ました。

 さてここで考えて欲しい。
 地上にある家の中から下水道に落下して、即座に目を覚ますことが何もなしにできるだろうか。
 下水道にクッションなどない。仮に水の中に落ちたとしても、それは地面よりはマシくらいであって決してノーダメージとはならない。
 なばらどうして鈴奈は目を覚ますことができたのか。答えは彼女の下敷きになったものにある。


【ひろし@青鬼 死亡】
【残り83人】


 鈴奈の下に、ひろしの遺体が横たわっている。
 これが答え。落下の際、彼がクッションの代わりになったから鈴奈は死ななかった。

 別に、ひろしが殊勝な思いで鈴奈のクッション代わりになった訳ではない。互いに気絶していたのだから、何かができるわけがない。
 ただ落下の最中、たまたま彼が彼女を庇うような位置取りに偶然なっただけ。
 そんな幾千、幾万。あるいは幾億分の一の確率が今ここで起こったにすぎない。

「……え?」

 そして鈴奈もひろしの遺体に気付く。
 さっきまで殺そうとしていた、先輩ではない誰かの死体を見て彼女が何かを思うより先に――

『――――』

 放送が聞こえる。
 禁止エリアを告げる、一区切りがつく放送が。

50別にたったひとつでもなければ冴えてもいないけれど ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:25:01 ID:H4Jk8qt60


【C-5 市街地 下水道/早朝】

【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:ダメージ(大) 聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大) 片足を負傷
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:優勝し、先輩がいた場所に帰る
1:???
2:夢でも現実でも、先輩の言葉を信じて戦う
3:先輩は、私とずっと一緒に居てくれると言ってました……なのに、なんであの天使は私と先輩の仲を否定するんですか…?
[備考]
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。


※C-5 市街地にゴブリンの群れがいます。どう動くかは不明です。
※C-5 市街地にある一軒家が一軒瓦礫の山となりました。
※C-5 市街地 地下において、ひろしの遺体とスカルの仮面@Persona5 が放置されています。

51 ◆7PJBZrstcc:2023/09/11(月) 13:25:28 ID:H4Jk8qt60
投下終了です

52 ◆bLcnJe0wGs:2023/09/27(水) 18:00:14 ID:k2MrJTWI0
企画主様がまだ戻って来ていませんが、そろそろ放送に入るというのはどうでしょうか?

53名無しさん:2023/09/27(水) 23:56:57 ID:gs9sznFA0
放送の前に黎明で止まってて、
戦闘不可避の銀時達のところだけは放送前に処理しないと難しいかと
そこ以外であれば他は最悪放送後にしても問題ないと思いますが

54名無しさん:2023/09/28(木) 07:12:19 ID:U1qGYAS60
銀時たちのパートは早朝に到達してますよ

55名無しさん:2023/09/28(木) 19:01:58 ID:O/dPLFSk0
>>54

あそこから放送まで、状況からして何かしら起こりそうだから、
放送後に回すかそれまでに書くかが悩む所ですね。

しかし企画主が役に立たないと他に書く人がいても方向性が定まらなくて大変だと思います。
まあ今更戻ってきてもなあとは思いますが。

56名無し:2023/10/16(月) 11:21:36 ID:pOwyrbH20
佐藤マサオ予約します。

57 ◆7PJBZrstcc:2023/10/20(金) 23:07:14 ID:3UYOlmDs0
蜜璃、変なおじさん、クロちゃん、りあむ、ディアボロ、ザメドル 予約します

58 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:02:00 ID:7QUyk5sI0
投下します

59負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:05:04 ID:7QUyk5sI0
 紆余曲折あったものの、現在プレザント・パークにいる五人の参加者達は、それぞれが持つ情報を交換しようとしていた。
 なお、ディアボロだけは全員最低二メートル以上距離を取っている。
 キング・クリムゾンの射程距離がそれくらいなので、彼以外の四人は距離を取らざるを得なかった。
 りあむと変なおじさんは距離を取るつもりはなかったが、クロちゃんと蜜璃がそれを止めたのだ。
 もっとも、彼は今キング・クリムゾンを使用できないのだが、それを四人はまだ知らない。
 しかし、その前にどうしても気になって仕方ないことを、蜜璃はディアボロに尋ねる。

「……あの、その服は……?」
「これか?」

 それは、ディアボロの現在の服のことだった。
 彼は今、全身にマントを纏っている状態だ。
 無論、顔こそ出しているものの、それ以外は全て隠れている。
 そんな彼の姿は、はっきり言ってまあまあ怪しかった。

「不慮の事故のようなものだ。服が上半分燃えてしまってな。
 仕方がないからこんな服を着ている」
「……もしかしてそれって、ボクのせい?」

 ディアボロの言葉に思わず口を挟むりあむ。
 状況を考えると、自分のせいであることは容易に想像がついた。
 彼女がディアボロに拾われていると認識するより前の最後の記憶は、襲ってきた黒服の剣士に炎をまき散らしながら抵抗している所だ。
 その時の流れ弾が他の誰かに命中しているかもしれない、と彼女は今更ながら青褪める。
 彼女は死にたくはないが、それと同じくらい何もしていない相手を殺したくもなかった。

 実際は流れ弾どころではなかったのだが、別にディアボロはその辺りを掘り下げるつもりはなかった。
 思うところがないといえば嘘になるが、それよりも情報交換を重視したかったのだ。

 そして始まる情報交換。
 まずはとはいっても話すことはそう多くない。
 蜜璃、変なおじさん、クロちゃんの三人が知っている参加者は一人も参加していない為、話すことがない。
 強いてあげるなら新選組の沖田総司と土方歳三くらいだが、りあむは日本人なので知っており、ディアボロからしてみれば外国の偉人くらいの扱いでしかない。
 昔の人間がいること自体は驚きだが、それだけだった。

 だが話は終わらない。
 今ここに居る蜜璃、変なおじさん、クロちゃんとは別に、ディアボロたちが来るより先に合流していた牛飼い娘、ひろし、瞳についての話もする。
 もっともひろし、瞳の二人は殺し合いに知人が呼ばれているわけではないので、残っている牛飼い娘の幼馴染であるゴブリンスレイヤーという男が信用できる、という情報くらいしかない。

「…………チッ」

 そしてこの話を聞いたディアボロは思わず舌打ちをした。
 情報が手に入ったのはいいが、それとは別に自身の悪評が外にばら撒かれていては、彼としては問題視するのは当然。
 救いがあるとすれば、いざとなればこの場にいる面子が多少は庇ってくれるだろう、という点だろうか。
 少なくとも、ジョルノやブチャラティが参加者として存在する時よりはマシだろう、とディアボロは無理矢理にでもプラスに考えることにした。

 次にりあむの知人は高垣楓、千川ちひろ、島村卯月、新田美波の四人である。
 しかしあくまで彼女も彼女の知人も特殊能力を持たないただの日本人女性。
 りあむ含めて五分の四がアイドルではあるものの、ディアボロみたいな能力も無ければ蜜璃みたいな戦闘技術を持ち合わせているわけでもない。
 故に彼女は四人を自分と同じ事務所のアイドルと、そこの事務員と説明した。
 実際はちひろ以外の三人は異世界転移を経験し、技能こそ持ち帰らなかったものの朧気ながらその時の記憶を持っているのだが、その事実をりあむは知らない。

「……というか、本当に知らないの? シンデレラガールだよ?
 ディアボロサマは外国人だからまあ仕方ないとしても、日本なら結構有名だと思うんだけど……」
「知らないしん」
「うんうん」
「私はまず、そのアイドル? っていうのが分からないわ……」

 りあむの言葉に対しそれぞれ返すディアボロ以外の三人。
 とはいえそこは牛飼い娘との会話で異世界の存在を察していた三人。ここに書かれているアイドル達も異世界の存在なのだろうと察することはできた。

60負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:06:07 ID:7QUyk5sI0

「なんか色々ごちゃごちゃしてる……多重クロスってやつ?
 ……めっちゃやむ」

 一方、悪魔の実を筆頭に不可思議な物は目撃していたものの、異世界という可能性は思い浮かばず、更に言うなら追加で悪魔の実について聞いてみたものの誰も知らないことから、現状で最低六つの世界観が存在することに気付くりあむ。
 その結果、彼女は猛烈に頭を抱えるのだった。

「……最後は私か」

 そしてディアボロだが、彼に関しては話すことはあんまり無い。
 何せ、彼をよく知る上に殺し合いに参加しているスタンド使いについてなら彼より圧倒的に詳しいクロちゃんがこの場にいるのだ。
 むしろディアボロは、りあむと並んで教えてもらう立場である。

「……はえー」

 このロワに参加しているディアボロ以外の五人のスタンド使いの情報を聞き、思わず呆けるりあむ。
 彼女にとっては元から超能力者がいるだけでも驚きなのに、それがクロちゃんからすれば漫画のキャラなのだから、もう言葉も出ない。

「ふむ……」

 一方ディアボロは、クロちゃんの話を聞き考える。
 まずはホル・ホースについてだが、彼に関しては知っている情報とそこまで差異はなかった。
 しいて言うならクロちゃんのもたらした情報量が元々の知識より多かったが、そこは別にどうでもいい。最初から大したことは知らない。
 空条徐倫という女がアメリカの不動産王の曾孫で、なおかつ一族にスタンド使いが多いことには驚きだが、それもまた殺し合いに関しては重要とは思えない。
 何よりもディアボロにとって重要だと考えたのは、プッチについてだった。

 エンリコ・プッチ。
 ディアボロから見れば十年以上先の未来で、理解不能の理想を掲げた男である。
 未来を知りたいというのは分かるが、嫌なものや苦難が訪れることを理解しているのなら避けたいと思うのが普通だろう。
 勿論、避けられない場合は勿論あるが、それでも出来る限り避けるのが人間だろう。事実、エピタフを持っていたころの彼はそうしてきた。
 だがそんなことはこの際どうでもいい。
 他人の主義主張など、大なり小なり理解できないものがあるのは普通のことだ。
 そしてディアボロは別に、会ったことも無い神父のことなど理解する気はない。

 彼にとって重要なのは、プッチのスタンド『ホワイトスネイク』だ。
 他者のスタンドと記憶をDiscにして取り出し、装備することで記憶を覗いたりスタンドDiscを頭に入れることでスタンド使いにする能力。
 ディアボロは自身のスタンドとドッピオはこのスタンドに抜かれたのではないか、と考えていた。
 その場合、プッチはこの殺し合いに協力していたにもかかわらず参加させられていることになるが、まあそういうこともあるだろう、とディアボロは思う。
 元々ギャングをやっていた身からすれば、裏切りなどままある話だ。別にプッチはギャングではないが、企みの大層さで言えば一介のギャングを圧倒的に上回っている。

(探すべきか?)

 プッチの悪行などどうでもいいが、この殺し合いに関係があるのなら接触するのも手だ。
 別にディアボロは殺し合いの打破を目標としているわけでは無いが、情報が多いに越したことはないだろう。
 もっとも、情報を持っている保証はない。
 もし殺し合いの主催者と関わりがあるとして、普通に考えれば殺し合いに参加者として放り込んだ時点で、他に情報が渡らないように手を打つ。
 記憶を消したり、話そうとするだけで首輪を爆破するなど、対策はいくらでも思いつく。

(今はそこまで考える必要はないか)

 ここでディアボロはプッチに関する思考を打ち切った。
 主催と関わりがあるかどうかさえ定かではなく、あったとしても情報を持っていない可能性が高い。
 そんな相手に会ってもない段階で、これ以上思考するのは時間の無駄だ。
 それに、ディアボロには気になる事がもう一つある。

「おい」
「何だしん?」

 ディアボロはクロちゃんに話しかける。
 理由は、一つあることを確認したいからだ。

「一つ確認したいのだが、私がゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を喰らってからの話は、お前が読んだ漫画だとどれだけ描かれている?」
「どれだけって……何回か殺されただけだしん」
「内容は?」
「な、内容……?」

 ディアボロに鋭い眼つきで睨まれながら問われるクロちゃんは、必死に答えに関する部分を思い出そうとする。
 いくら彼が既読者だからと言って、キャラに関することならともかく細かい描写までは覚えていない。
 しかし、ディアボロからすればその反応だけで十分だった。

「いや、お前の反応で分かった。描かれているのはどうやら私が体験した死に様の、ほんの一部らしいな。
 ならばこの話は恐らく知らないだろう」

61負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:07:05 ID:7QUyk5sI0

 そう言ってディアボロはクロちゃんだけでなく、この場にいる全員に視線をやる。
 そして全員の注目を集めたところで、ディアボロは語り始めた。

「私は以前、似たような殺し合いに何度か参加している」
『!?』

 突如ディアボロよりもたらされた情報に驚愕する一同。
 特に、彼を知るクロちゃんの驚きはひとしおだ。

「そ、そんな話……!」
「無かったか。だろうな。
 だが私にとっては事実だ」

 ディアボロは以前巻き込まれた殺し合いについて語り始めた。
 ルール自体は今参加している殺し合いとそこまで大きな差はない。
 しかし前の殺し合いは参加者の人数が数十人であったことや、知人同士を数人ずつ纏めて参加させていることが多い。
 また、オープニングでは言っていないがミルドラースの語る放送は他の殺し合いだと大体六時間ごとで、禁止エリアの発表の他に死亡者の発表もあった。
 他にも、首輪を爆発させれば本来その程度で死なないであろう存在も死亡することが多かった。
 という内容を語ったが、この殺し合いの打破に役立つかどうかは今の時点では誰も分からなかった。

 とはいえ、何かヒントがないかと考える一同だったが

 ギイィィ

 いきなり扉の開く音が響いた。
 何の警戒もしていないのか、あるいは中にいる五人に気付いていないのか。
 何一つ淀むことなく足音を鳴らし、五人のいる部屋に入って来る。
 五人は入ってきた者に注視するより先に、ヒュンと風切り音が聞こえた。
 そこで鬼殺隊の柱として戦う蜜璃だけが気付く。
 彼女だけが追えるほどの速度で、入ってきた者から何かの木片が投げ込まれたからだと。
 そして木片は変なおじさんの顔面へと一直線に向かっていることに。

 その木片に対し、彼女は――





 時は少し遡る。
 C-4にて体を再生中のザメドルは、その間何もしないというのも退屈なので支給品を検めていた。
 とはいってもブーストにんじんは消費し、残っているのはよく分からない木片と帽子のみ。
 その帽子は少々サイズが大きいシルクハットで、つばの部分には仕込み刃が隠されていた。

「つまらん」

 一応武器に分類されるものだが、血界の眷属(ブラッドブリード)たるザメドルからすれば無用の長物。
 元々大概の武器より素手で攻撃した方が強い彼にとっては、暇つぶしに使えるおもちゃが精々だった。

 身体が治るまでの手慰み代わりにシルクハットの刃を出し、投げ始めるザメドル。
 しかしそんな彼の前にNPCが現れた。
 明らかな異形。木でできた子供ほどの身体、髪の毛代わりの葉っぱに、まるでタコのような口。
 殺し合いの参加者は誰も知らないが、このNPCの種族名はデクナッツという。
 そのデクナッツが三匹、横並びで現れた。
 現れた三匹は一斉に口から木の実をザメドルに向けて放った。

「ふん」

 その木の実をザメドルは避けることすらせず受ける。
 一般人ならば多少のダメージにもなるだろうが、彼からすれば風で飛んでくる砂埃にも等しい。
 いや、砂埃の方が鬱陶しさは上だろうか。
 ともかく、デクナッツの攻撃はザメドルに一つとして何かをもたらすことはない。

 だがそれはそれとして、いつまでも無視するほどザメドルはデクナッツに無関心に離れない。
 彼は気だるげにシルクハットを投げつける。
 するとそれの軌道は彼から見て一番右から一匹ずつ命中していく。そしてシルクハットは一番左のデクナッツの横に落ちた。
 しかし、デクナッツ達は少し動きが止まったかと思うと、また何事もなかったかのようにザメドルに向かって木の実を放つ。

62負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:07:56 ID:7QUyk5sI0


「ほう」

 ここで自身の攻撃に死なないデクナッツにザメドルは初めて興味を抱く。
 単に不死なのか、それとも特殊な方法でなければ倒せないのか。

 だがザメドルは一々倒し方を思考したりはしない。
 もし不死なら気が狂うまで痛めつければいい。
 それとも特殊な方法でしか倒せないのなら、癪だが無視して移動してもいい。
 腹立たしくはあるが、金泥するのも馬鹿馬鹿しい。
 しかしまだ諦める段階ではない。

 ダッ

 ザメドルが強く踏み込み、一瞬で彼から見て一番左のデクナッツの元に近づき、そのまま頭を掴む。
 次にまたも同じ様に踏み込み、今度は真ん中のデクナッツをまた同じように、今度は逆の手で頭を掴む。
 最後に両手に持ったデクナッツを、残った最後の一匹に向かって投げつけた。

「「「ピー!?」」」

 投げつけられた側と投げられた側が同じ悲鳴を上げ、その場に揃って倒れ伏す。
 即座に三匹は起き上がるが、彼らの眼前にはザメドルが興味深そうに見つめていた。

「ピー!? ニイサンイチバンを無視するなんてあんまりだッピ!」
「驚きだな。まだ死んでないのか」
「あんまりすぎるから、こっちもあいつらに不利になる情報を渡すッピ!」

 ザメドルがデクナッツ達の耐久力に軽く驚く一方、当人たちはヤケクソ気味に情報を吐く。

「参加者のカリオストロはぱっと見金髪の女の子。
 だけど実際は何年生きてるかも分からない錬金術師。もしかしたら参加者の首輪も外せるかもしれないッピ。
 ……ゴーマさま、ゴーマんなさい。なんちて」

 デクナッツのもたらしたその情報は、彼らの耐久力を優に上回るレベルの驚きをザメドルに与えた。
 しかし彼らはそれだけ言って去っていこうとする。

「逃がすわけがないだろ」

 ザメドルは咄嗟に落ちているシルクハット拾ってを投げつけるが、デクナッツ達の姿はそこにはなく、完全に消失していた。
 あまりにも不可解な生物だと思うザメドルだが、そもそも自分達のいるHLも大概だったので、そういうものだと割り切ることにした。
 少なくとも、当てもなく首輪を外す方法を探し回るよりはよっぽどマシだ。

 そうこうしている間に再生も完全に終了したので、ザメドルは当初の予定通り北へ向かうことにした。
 少なくとも彼にとっては幸いなことに、あれからは大したNPCが現れることも無く参加者のいそうな施設、プレザント・パークへと到着した。
 中に誰かがいることは察していたが、彼は特に警戒することもなく入っていく。
 彼ほどの存在になると、警戒という概念が必要ない。
 最初に戦った勇者も、次に戦った四人も、強者ではあるのだろうがそれだけだ。
 なのでむしろ、警戒が必要となるほどの強敵が欲しいくらいだった。


 そんなことを考えながら部屋に入ると、中には五人の人間がいた。
 ザメドルが探す錬金術師カリオストロらしき姿はない。ならば加減する必要はないとばかりに、彼はデイパックから神界の木片を取り出し、適当に投げつけた。

 ザメドルはここまで遭遇してきた他の参加者のせいで、一つ勘違いしていた。
 最初に出会ったのは勇者を名乗る少女と、彼女を逃がした空間転移の術式を使う何者か。
 次に出会ったのは四人がかりで一人失ったとはいえ、血界の眷属(ブラッド・ブリート)と打ち合える程度の使い手。

 それらにしか遭遇していないザメドルはこう思った。
 この殺し合いの参加者は須らくある程度の戦闘力か、何らかの技能を備えている。
 まるで牙狩りのように。
 なのでこれは試金石。
 この程度も対処できないなら問答をする気にもならない。
 さっき話に聞いたカリオストロという錬金術師に一致する特徴の持ち主もいない。
 首輪を外す当ての有無だけ問い、なければ皆殺しにする。どうせ有能な斥候になりはしない。
 しかし、どうやら皆殺しにする必要は今のところないらしい。
 なぜならば

「恋の呼吸陸ノ型 猫足恋風!」

 蜜璃が己の日輪刀を以って、神界の木片をバラバラにしたからだ。

63負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:08:58 ID:7QUyk5sI0

 ズガガガガガッ!!

「ひっ!?」
「え、なになに?」
「何だしん!?」

 直後、バラバラになった木片が投げつけられた勢いのまま変なおじさんの後ろの壁に激突し、轟音を響かせる。
 それにりあむ、変なおじさん、クロちゃんの三人は驚くばかりだったが、ディアボロは完全でないものの今起こったことを理解し、三人に説明し始める。

「……あの男が何かを投げて、それをミツリがバラバラにしたのだ。
 だが投げられたものの勢いがすさまじかったので、そのまま後ろに進んでいったがな」

 ディアボロの解説を聞き驚くとともに、即座にザメドルがいる方を向く三人。
 彼らの瞳には明らかな恐怖が浮かんでいた。

 一方、ザメドルはまあまあ機嫌が良かった。
 彼からすれば最低限求めるものを、目の前の集団のうち一人は持っていたのだから。

「こんばんわ、お嬢さん」

 故にザメドルは蜜璃に話しかけた。
 その顔に悪意はない。いっそ朗らかとも言えるほどの笑顔だった。

 そんな彼を蜜璃達五人は訝し気に見る。
 いきなり攻撃してきたかと思えば、今度は逆に挨拶をしてきた男に対する対応としては、妥当なところだ。

「僕は今首輪を探す方法を探していてね。
 君達は何か心当たりがないかい? もしくはカリオストロとかいう、金髪で錬金術師の少女と今まで遭遇していればその情報でもいいのだが」
「随分なご挨拶だな」

 話すザメドルに対し、ディアボロは破壊された変なおじさんの後ろの壁を一瞥した後、話の主を睨む。
 だが彼の視線による非難を、ザメドルは軽く受け流して弁明のような主張を始めた。

「何、あれはただの試金石さ。
 首輪を外す方法を探すためにできれば他の参加者と協力関係を築きたいところだが、すぐに殺し合いで死んでしまっては意味が無いからね」

 ザメドルの言葉にそれぞれ恐怖や怒りを覚える五人。
 彼の言葉を裏返すなら、使えないなら死んでもいいと、自分以外の命をなんとも思っていないと宣言しているに等しい。
 そして、そんな相手と好き好んで組みたいと思う者は普通いない。
 故にこれは必然。

「悪いけど」

 代表して蜜璃が口を開くが、思いは一つ。
 ザメドルを鋭い眼つきで睨みながら、彼女は決別を宣言する。

「私、いたずらに人を傷つける人にはキュンとしないの」
「そうか」

 蜜璃の言葉を受けてザメドルもまた睨むような眼つきで彼女を見つめながら、こう返した。

「残念だ」

64負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:10:22 ID:7QUyk5sI0





 結論から言おう。甘露寺蜜璃がザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカに勝つ手段は、少なくとも今ここには存在しない。
 いくら彼女が鬼殺隊の柱に上り詰めるほどの才能、実力、修練、経験を持ち合わせているからと言って、それでも血界の眷属(ブラッドブリード)には届かない。
 もし彼女と同じ柱、あるいはそれに類する実力者が後二人か三人いれば話は変わったかもしれないが、ここにいるのは二人を除けばほぼ一般人。
 ディアボロは一般人とは言えないが、スタンドが使えない今は一般人相当の力しか持たない。
 りあむはメラメラの実を食したが、迂闊な攻撃をすれば味方を巻き込む可能性の方が高い。
 クロちゃんはキャッスルロストフルボトルを使えば戦いの場に立つことはできるが、今の彼はフルボトルを役に立たない玩具だと思い込んで、使うという選択肢がない。
 変なおじさんはまだ支給品を調べていないので論外。
 故に蜜璃は孤軍奮闘を強いられていた。
 結果はこうだ。

「んぐ……」

 全身傷だらけの血まみれとなり、片膝をついて息を切らせる蜜璃の姿があった。
 彼女のその様を見下ろしながら、ザメドルは語り掛ける。

「どうだい? 今僕の軍門に下るのであれば、君もあそこの四人も生かしてあげよう。
 首輪を外す方法を見つけるまでという期限もつけよう。どうだ?」
「ハァ……ハァ……」

 優し気に語り掛けるザメドルとは対照的に、蜜璃は未だ息切れを続け答えを出さない。
 一方、傍観者たちはこっそりと話し合っていた。

「もうこれ言うこと聞いた方がいいんじゃ……」
「そ、そうだしん! このままじゃ皆死んじゃうしん……!」
「黙ってろ。あの男が我々にそんな優しくすると思うのか?
 いいように使い潰されて、ロクなことにはならないのがオチだ」
「でも……」

 服従を選ぼうとする変なおじさんとクロちゃんに対し、ディアボロは反対する。
 りあむは二つの意見を聞いて迷う。
 確かにディアボロの言う通り、従ってもロクなことにならなさそうだが、だからといって逆らえばクロちゃんの言う通りこの場で皆死んでしまうだろう。

「そうだよ……ディアボロさんの言う通り……
 こんな人の言うこと聞いちゃ、ダメだよ……」

 もめそうになる四人に対し、会話が聞こえていたのか息絶え絶えに蜜璃が服従を止める。
 その様を見れば従いたくないと皆は思うも、だからといってどうすることもできないのでは、と思ってしまう。

「いや、手はある」

 しかしディアボロはこう断言し、りあむのデイパックに手を突っ込み中から一冊の本、、土ガミの書を取り出し開く。

「え、何その本? ボクの支給品そんなのあったの? てか何でディアボロサマは知ってるの!?」
「その説明は後でしてやる。だが今は聞くな。
 いいか。私は今からこれを使って奴に隙を作る。その間に全員それぞれで逃げるぞ」
「なんでそこまでするしん……」

 ディアボロの自己犠牲めいた言葉に疑問を覚えるクロちゃん。
 彼が知る限り、とても自己犠牲などするタイプには思えないからだ。
 実の所、ディアボロ当人としても犠牲になりたいわけではない。むしろ他の誰かにやらせたかった。
 しかし今土ガミの書の効果を知っているのは彼だけで、人にやらせるなら説明書を読ませなければならないが、そんな時間はない。
 ならばこうするしかない、とばかりに彼は土ガミの書を使う。
 すると彼は、緑の甲羅に黄色の手足と頭を持った、まるで折り紙で出来たような、大きさは五メートルはあるであろう巨大な亀に変身した。
 これがとある世界で亀であるノコノコに崇められる神、土ガミである。

「こんな隠し玉があったのか。驚いたな」

 ザメドルが土ガミとなったディアボロに感嘆している。
 一方、りあむ達も変身したディアボロを見て唖然としてしまったが、当人は構わず手足と頭を甲羅の中に入れ、跳び上がって地面を揺らす。
 その衝撃でりあむ達三人は外に吹き飛ばされ、ザメドルは反対の方に転がった。
 そのままディアボロは溜めに入り、更に大きな地震を起こそうとする。
 当然、ザメドルが黙ってそれを見ている理由はない。
 しかし――

65負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:11:05 ID:7QUyk5sI0

「やあああああっ!!」

 そこに蜜璃が割り込んでくる。
 実力の差は誰の目にも明確だが、無視することはできない。
 なぜならば

「この女、相も変わらず首輪狙いか……!」

 蜜璃の狙いはザメドルの首輪だからだ。
 彼女が所属する組織、鬼殺隊は鬼と呼ばれる存在を殺すための組織。
 鬼は日輪刀という特別な刀で、鬼の首を斬ることで討滅可能な存在。
 言うならば、彼女の剣筋は元々首を狙うことが得意分野。
 そして今、全ての参加者には決して無視できない物、首輪が付いている。
 その首輪を執拗に狙われれば、いくらなんでも無視することはできない。
 故にザメドルは悪手だと感じながらもディアボロを無視し、蜜璃の対処に集中していた。

 ズウウウウウウウン!!

 その間に溜めは終わり、ディアボロはさっきよりも大きな地震を起こす。
 これでザメドルにも多少ダメージが入ったが、それよりも大きな出来事が起こる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 なんと、二回にわたって起きた地震の影響で、彼らが今いる建物が崩壊し始めたのだ。
 これを見てディアボロとザメドルは逃げ出そうとする。
 ディアボロはもとより、ザメドルであっても崩壊する建物の一部が首輪に当たってしまえば爆発して退場となりかねないからだ。
 しかし、ここで退かないものが一人いた。

「やあっ!!」

 蜜璃は未だ逃げる気配も見せず、ザメドルに攻撃を仕掛ける。
 これに驚いたのはディアボロだ。
 彼としては土ガミの力で今いる建物を崩壊させれば逃げる隙くらいは作れるだろうと考えていた。
 だが彼女の判断は自身が逃げることではなく、ザメドルを倒すことを優先した。
 彼女から見ればザメドルは、彼女が倒してきた鬼と同じ。
 決して人と相容れぬ、倒さねばならない敵。

 ディアボロは蜜璃の判断に驚きこそすれ、止める気はない。
 実際、ザメドルが死んでくれるとディアボロとしても都合がよく、なおかつ彼が彼女を必死になって止める理由はない。
 彼女もブチャラティと同じタイプの人間だと判断しただけだ。
 運が良ければ再び合流し同行できるかもしれないが、出来ないならそれはそれで仕方ない。
 そう考えたディアボロは変身を解除し、彼女達に背を向けてこの場を走り去っていく。

 そして崩落しかかる建物の中で、一人の人間と一体の化物の最後の殺し合いが始まる。
 まず動いたのは蜜璃。
 彼女がする最後の恋の呼吸は、壱ノ型 初恋のわななき。
 大きな踏み込みからしなり一太刀で敵をすれ違いざまにバラバラにする技だ。
 これだけで並の鬼なら即座に殺せるが、相手は並の鬼とは比べ物にならない強者、ザメドル。

 ザメドルはなんと、蜜璃の日本刀を動体視力で見切り左手で鷲掴みにし、そのまま自身の方へ引き寄せたのだ。
 避けるにしても防ぐにしても耐えるにしても、まさかそんなことをしてくるとは思わなかった蜜璃は、成すすべなくザメドルの方へ引き寄せられる。
 そして引き寄せた当人は逆側の腕で蜜璃の身体を全力で殴りぬけた。

 ドドオン!!

 ザメドルの腕は蜜璃の体を貫通し、その命を散らしたと考える。
 彼は崩落する建物から脱出すべく即座に腕を体から引き抜こうとする。
 しかし――

「抜けな……っ!?」
「あああああああああああああああ!!」

 蜜璃は未だ死んでいない。
 己の身体を以って、ザメドルを足止めする。
 奇しくもそれは彼女の師、煉獄杏寿郎が上弦の参、猗窩座と戦い、押しとどめるべく行ったことと同じだ。
 なおかつ彼女は雄たけびを上げ、ザメドルの首輪を引きちぎるべく日輪刀を捨て、両手をただひたすらに伸ばす。
 ここが平地ならば、なんの意味もない悪あがきで終わっただろう。
 だが今は崩落しかかる建物の中で、瓦礫が万が一にも首輪に当たらないようにするため急いで脱出しなければならない。
 この状況では、彼女の悪あがきが功を奏するかもしれない。

 ザメドルは焦る。
 それは、この殺し合いの前に「密封」された時よりも、さっき首輪が鳴り始めたあの時よりも。
 もしかしたら、彼の生の中で初めての経験かもしれない。
 この極限の最中で彼は――

66負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:11:45 ID:7QUyk5sI0


 一方、崩落した建物を背に逃げながらディアボロは思う。
 先に逃げた三人と再び遭遇できるかは知らない。
 そもそも、一緒に居るのかすら知らない。
 だからどうした、と彼は思う。
 彼にとって大事なのは、ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破ること。
 その為にいずれはあの化物に対処する方法を見つけねばならないだろうが、まずこの場を生き延びなければ話にならない。
 故に彼は走る。
 その様にかつてあった筈の、帝王の誇りが一欠片も無くても。


【C-3 プレザント・パーク/早朝】

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:とにかく逃げる
2:ディアボロって人、クロちゃんがいうほど危なくはないんじゃない?
3:あの金髪の人怖いね〜
[備考]
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:とにかく逃げる
2:殺し合いが本当? 怖いよ…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:読んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
5:ディアボロよりあの金髪の方がヤバイしん
[備考]
※殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
※フルボトルをただの玩具と思っています。
※「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。

【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:恐怖(大)、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:とにかく逃げる。怖い、死にたくない
2:ディアボロサマに蜜璃ちゃん、大丈夫かな……
[備考]
※メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
※参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン、土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品、マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:とにかく今は逃げる
2:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
3:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
4:あの化物(ザメドル)をどうにかする方法を探さねば……
[備考]
※参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
※殺し合いに何度か参戦した経験あり。
※スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。
 『ホワイトスネイク』でDiscにされて抜かれた可能性もありますが、真実は現在不明です。
※自身以外の「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


※変なおじさん、クロちゃん、りあむの三人が一緒に行動しているかバラバラになっているかは次の書き手氏にお任せします。
 ディアボロは確定で現在別の位置にいます。

67負けイベでも頑張ればワンチャンある説 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:12:27 ID:7QUyk5sI0





 C-3 プレザント・パークにある一つの建物が、戦いの衝撃で崩壊した。
 その傍らに、一つの人影が跪いている。
 人影は焦りからか息を切らせていたが、やがて笑いへと声色が変わっていく。

「ハハハ……まさか私が本気で焦る日が来るとは思わなかったな。
 いやはや、凄まじいなこの殺し合いは。全く――」

 ここで人影は立ち上がるが、この影の表情はさっきの笑みとは異なり、怒りを携えて小さく呟く。

「度し難い」

 その人影にあったのは、怒り。
 牙狩りではない、彼らより弱いであろう人間達に翻弄されたことに対する屈辱感。
 それが人影、血界の眷属であるザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカが抱いた感情だった。
 人間と化物。生き残ったのは化物である彼だった。


【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃 死亡】
【残り82人】


 ザメドルは建物が崩落する中、ある決断をした。
 それは、己の右腕を捨てること。
 身体から腕が引き抜けないのなら、腕を捨てればいい。
 いずれ再生するのだから、今捨てても問題はない。
 奇しくもそれは、彼女の師が戦った猗窩座と同じ決断だった。

 しかしそもそも、人間相手にそんな決断をしなければならないことが、ザメドルには屈辱だった。
 だから彼は決意する。
 さっきまで戦った蜜璃が逃がした四人を、出会えば必ず殺すことを。
 だがまずは――

「この右腕が再生するまで待つとするか。
 ……また待つのか」

 己の腕が再生するまで待つべく、彼はその場に腰を下ろした。


【C-3 プレザント・パーク/早朝】

【ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ@血界戦線】
[状態]:ダメージ(小)、右腕欠損(再生中)、怒り(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、スピードワゴンのシルクハット@ジョジョの奇妙な冒険
[思考]基本行動方針:せっかくだからこの殺し合いを楽しませてもらう。
1:再生が終わるまで待つ。またか。
2:この首輪は忌々しいからさっさと外したい所。ひとまずはカリオストロという錬金術師を探してみるか
3:広い会場を一人で探索するのは骨が折れるから、有能な斥候は手に入れたいとは思う。
4:彼ら(アカツキ、結芽、総悟)とはまた戦いたいものだ。牙狩り程ではなさそうだが。
5:あの四人(変なおじさん、クロちゃん、りあむ、ディアボロ)は次会ったら殺す
[備考]
※原作第八巻『幻界病棟ライゼズ(後編)』より、クラウスに「密封」された後からの参戦です
※首輪の制限により、一定以上のダメージを喰らった場合自動的に密封状態となり、事実上の脱落となります
 今回の戦闘でどの程度のダメージが蓄積されてるかは後続の書き手にお任せします。
※再生能力、戦闘能力はある程度低下しています。
 再生能力は高いものの連続して(常人においての)重傷を負うと、再生が少しだけ追いつきません。
※カリオストロの外見と錬金術師であるという情報を得ました。


※神界の木片@モンスター烈伝 オレカバトル は破壊されました。
※C-3 プレザント・パークの一部の建物が崩壊しました。
※甘露寺蜜璃の遺体と彼女のデイパック(基本支給品、ランダム支給品×2)、甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃 がC-3 プレザント・パークの崩壊した建物の下に放置されています。


【スピードワゴンのシルクハット@ジョジョの奇妙な冒険】
ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカに支給。
ロンドンの貧民街、食屍鬼街(オウガーストリート)のボスだったスピードワゴンがかつて持っていたシルクハット。
一見普通のシルクハットだが、実は鍔の部分に仕込み刃があり、投げることで飛び道具として使用できる。
作中の描写を見る限り、結構軌道は自由自在。


【デクナッツ三兄弟@ゼルダの伝説シリーズ】
原作では最初のダンジョン、デクの樹サマのなかに登場する特殊なデクナッツ。
三匹同時に現れ、真ん中、右、左の2→3→1、通称ニイサンイチバンの順で倒すとダンジョンボスであるゴーマの秘密を教えて去っていく。
本ロワでは同じ順で倒すか全てのデクナッツへ同時に攻撃を加えると参加者、NPCいずれかの情報をランダムで教えて去っていく。もしかしたら主催者の情報も吐くかも。
死亡はせず、一度去るとランダムに違う場所にリポップする。

なお、去っていくときのセリフは情報の内容にかかわらず「ゴーマさま、ゴーマんなさい。なんちて」だッピ。

68 ◆7PJBZrstcc:2023/10/25(水) 09:13:12 ID:7QUyk5sI0
投下終了です

69名無し:2023/12/11(月) 15:07:31 ID:nuPvEK/g0
>>52
Twitter見てましたけど、どうやら更新が
途絶えてるため無理な感じですね

70名無し:2023/12/11(月) 15:07:49 ID:nuPvEK/g0
>>52
Twitter見てましたけど、どうやら更新が
途絶えてるため無理な感じですね

71 ◆bLcnJe0wGs:2023/12/11(月) 17:12:12 ID:WCbKX7760
>>69
自分が何か月も前に書き込んだ話ですのに返信ありがとうございます。
そうですよね…。
実は自分も企画主様のTwitterは見ていたのですが、もう戻ってくる気配はない様に見えますね。

72名無し:2023/12/12(火) 18:30:53 ID:SxvfotWI0
>>71
こうなれば、勝手に進んだ方が楽

73 ◆bLcnJe0wGs:2023/12/17(日) 18:03:23 ID:6YCp.nJQ0
皆様お忙しい中失礼します。
用件から話しますと、モンスター烈伝オレカバトルの後継作にあたる作品(ここでは詳しい言及は控えさせて頂きます。)のガイドラインが先日公開されました。

その後継作品にはオレカバトルに登場したキャラクター(いずれもこの企画には登場していないもの)がアレンジを加えられた上で続投されることが公表されており、今後もこちらの企画内で登場させたままでいると、何らかの問題が発生することを懸念しております。

現在では企画主様も不在ですので、その間に該当作品出典のものを送還、消費等の状態がある場合は支給前の状態に戻した上でそうするといった対処をとってはいかがでしょうか?

74 ◆7PJBZrstcc:2023/12/17(日) 23:08:08 ID:Dgcyv.qA0
>>73
ガイドライン確認させてもらいました。
その上で私としては、オレカバトルの後継作にあたる作品(こちらも詳しい言及は控えます)が明確に同一世界線の続編であると明記されない限りは、ロワに参加させたままで問題ないと判断しています。
ただ、後継作にエーリュシオンとエンキが登場した場合、設定がオレカバトルと差異がなければ、その時は改めて考え直した方がいいかもしれません。

75 ◆7PJBZrstcc:2024/01/01(月) 21:50:52 ID:j4xfpiTI0
サーニャ、勇者(ゴブスレ)、紫、ラッド、瞳、牛飼い娘、ディアボロ 予約します

76 ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:39:33 ID:4DHS.Iaw0
投下します

77少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:40:19 ID:4DHS.Iaw0
 ギュイイイイイイイイイイイン

 ラッドが手に持つチェーンソーの金切り音が、B-4の森の中で響く。
 音を鳴らしながら彼は目の前の怪物、打擲の剛激手へ向かって走りながら、あることを考えていた。

 それはすなわち、目の前の怪物はなんなのかについてだ。
 どう見ても自分と同じ参加者ではないだろう。見た目もそうだが、そもそも首に自分と同じ首輪が付いていない。
 殺し合いの主催者が言っていたNPC、という奴なのだろうか。
 最初に出会ったメイドが殺していた舌の長い怪物と同じ類。
 殺し合いの主軸ではない、邪魔なら殺すかいなすか、あるいは使うしかないただの舞台装置。
 しかし、あのメイドであろうとも目の前の怪物はそう簡単な相手とは思えない。

「つまりアレか? こんなほうれん草食ったポパイでも戦ったことなさそうな化物をよ、余裕でぶっ殺せる奴も俺と同じ参加者になってるか!?
 おいおいなんだよそりゃ!? そんな奴はこう思ってんだろうなぁ。
 俺は強いからこんな殺し合いも遊び感覚で優勝できて、ついでに誘拐されたのはムカつくから主催者も殺しとくか、ってさあ!!
 ……そういうのは自分は絶対死なねえって思ってんだろうな! おいおい、そんなバケモンぶっ殺せたらと思うと過去最高にテンション上がってきたぜ!!」

 一人騒ぐラッドに対し、彼に相対する怪物、打擲の剛激手は何かを発することなく拳を振るってくる。

「ハッハァ――ッ! そんなパンチ当たるわけねえだろうが!
 ジャック・ジョンソンやデンプシー見習えやバ――――――――カ!!」

 しかしラッドは打擲の剛激手のかぎ爪を躱すと、ヒャハハハハハハと狂気の笑い声をあげながら足元へ潜り込みチェーンソーを振るう。
 彼の狙いは足。
 こいつがどれほど強くても、二足歩行である以上足をどうにかすれば立てなくなり、殺すのは一気に簡単になるだろう、と考えたからだ。
 だが

 ガガガガガガガガッ

 打擲の剛激手の足から生じた音は、肉の裂ける音ではなく、例えるならコンクリートをドリルで工事するような、とても生物から発生したとは思えない音だった。

「はぁ!?」

 驚愕の声を上げるラッドだが、打擲の剛激手を知るアイオリスの冒険者ならば驚きはしないだろう。
 なぜなら、その怪物は世界樹の迷宮において上層である23階に存在するFOE。
 そこに到達できるまで鍛え上げ、装備を整えて初めて戦う資格を有する存在。
 ラッドの身体能力と今持つチェーンソーでは、手が届きはしない。

「クソったれが!!」

 そんなことは露知らず、まさか足が切れないとは思っていなかったラッドだったが、とにかく一度距離を取らなければならないと考え、チェーンソーを一旦止める。
 しかし彼が打擲の剛激手から離れるより先に、新たなNPCが二体現れる。
 それらは歩き回る骸骨で、手にはそれぞれ剣と槍を持っている。
 参加者の中で言うのなら、藤丸立香とマシュ・キリエライトなら見覚えがあるだろう。
 人理修復の中で現れる、RPGで言う所の雑魚敵。そんな存在。
 そのスケルトン二体はラッド目掛け武器を構えて向かっていく。だが――

 ズガァン!!

 二体は打擲の剛激手の腕によってあっさりと散らされてしまった。
 この怪物に敵味方の区別などない。これに近寄るものは平等に餌食となる。

 打擲の剛激手にとっては当然の生態でも、ラッドにとっては僅かに生まれた好機。
 彼は即座に背後に周り、なんと怪物の身体を登る。
 彼の狙いは目玉。
 いくら体が硬くても、流石に目玉はそうじゃないだろうと考えたからだ。
 
 ギュイイイイイイイイイイイン

 再びチェーンソーを起動させながら、ラッドは打擲の剛激手の右目にそれを突き立てる。
 肉を抉る刃の音と共に、打擲の剛激手は目玉を抉られる痛みの余り、苦悶の咆哮をあげる。

「お前を殺せる奴はいたとしても、少なくとも俺には殺されねえと思ってたよな?
 だって俺よりお前の方が強い化物だもんな、じゃあ仕方ねえよ。俺だって逆の立場だったらそう思っちまうかもしれねえしな。
 でも! だからこそ! 俺はお前をぶっ殺したいんだよ!! だから殺すわ!!」

 ラッドは打擲の剛激手の眼前に移動し、未だ続く苦悶の声に負けないほどの狂気の叫びを見せる。
 彼は勝ちを確信していた。
 いくら敵が怪物でも、目玉を、ひいては頭を抉られて死なない生き物はいないだろうと、そう考えていた。
 その考えは間違ってはいないだろう。しかし甘い。
 彼は考えるべきだった。
 目の前にいる生物は怪物なのだから、人間にできないことが出来るかもしれない、と。

78少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:40:49 ID:4DHS.Iaw0

 ジュッ

 次の瞬間、ラッドの身体は焼けただれた状態で地面を転がった。
 打擲の剛激手が何をしたかについては、一言で説明が終わる。
 目から熱線を出し、彼を焼いたのだ。
 咄嗟にチェーンソーから手を放し、腕で顔を庇ったものの、それでも上半身は焼けただれる。

 ギュイイイイイイイイイイイン

 ラッドの手から離れても、チェーンソーの躍動は未だ止まらない。
 尋常ではない痛みに苦しみながら、打擲の剛激手はトドメを刺すべく腕を振るう。
 こんなところで終わりなのか、と己を嘆くラッド。

(すまねえルーナ。お前との約束、守れそうにねえ)

 己の生を諦めるラッド。
 だが――

 ズパン

 何かが切れる音が聞こえ、薄れゆく意識の中ラッドは見る。
 彼に向けて振るわれた打擲の剛激手の右手が、長髪の少女によって斬り飛ばされる光景と

「大丈夫ですか!? 今治療します!!」

 己の治療をすると言う、誰かも分からない少女の姿。
 それらを最後に、ラッドは意識を失った。





 時は少し遡る。

 勇者とサーニャは困惑していた。
 理由は紫が持つ卵かけご飯にある。
 彼女が持つそれは茶碗一杯分しかない。
 仮に茶碗というものをこの場で初めて見たとしても、それがどう考えても分け合うには少ないことは明白だろう。

 そんなことは、当の紫も分かっている。
 ただ即座に出せる温かい食べ物がこれしかなかったうえに、おそらくこれから消耗するであろうサーニャに食べ物を渡さないというのは、曲がりなりにも仲間として行動するのにあまりにも不義理ではなかろうか。
 と考えつつ、かといって自分が食べなければ二人も遠慮しかねないので、なくなく三等分を提案したのだった。
 しかし、結果は御覧の有様である。
 
「まあ、それはそうでしょうね」

 とはいえ、いくらなんでもこれだけですませるつもりはない。
 足りないことなど最初から分かっているのだから、別のものを追加すればいいだけの話だ。
 そう考えている紫は自身のデイパックからあるものを取り出す。
 それは香霖堂にて食料を菓子類に交換した際、初回特典ということで他の二人より多めに貰った紫だけが持つもの。

「破亜限堕取(バーゲンダッシュ)よ」

 そう言って紫が取り出したのは、小さなカップに入った人数分のアイスクリームだった。
 だがただのアイスではない。そんなものを、体を温めろと言われた直後に出す彼女ではない。
 これには食べると体力と魔力を回復させる効果があるのだ。

 さて、この破亜限堕取を知る者、参加者の中で例えるなら坂田銀時や志村新八がそれを知れば「ただのアイスにそんな効果あるかァァァァァ!?」とツッコミを入れるだろう。
 しかし、これには確かにそんな効果がある。
 それはなぜかというと、出展が違うからだ。
 この破亜限堕取はアニメ版銀魂の物ではなく、『銀魂 銀玉くえすと 銀さんが転職したり世界を救ったり』のものだからだ。

 銀玉くえすととは、2007年にDSで発売された銀魂のゲームである。
 ジャンルはRPG。故に回復アイテムが存在するが、そのうちの一つが破亜限堕取なのだ。
 これが、紫が香霖堂の食料を菓子類に交換した際、こっそり霖之助が混ぜてくれたものだ。
 説明書きもあったことから、本来なら支給品扱いの物なのだろう。

 紫が最初からこれを出さなかった理由は一つ。。
 破亜限堕取の効果がどれほどか分からなかったことだ。
 体力と魔力を回復させることは分かっても、どれほどかが分からないのだ。
 死にかけていても全快するのか、はたまた切り傷も直せないほど微量なのか。
 そんな不確定なものの上に、サーニャが体を温める方向に話を持って行ってしまったので、ますます出しにくくなってしまった。
 だが卵かけご飯で微妙な顔をされ、代案もなしというのは紫の沽券にかかわりそうだったので、やむなく破亜限堕取を出したのだった。

「治るって言うならボクは貰うよ!」
「いや冷たい物は……」

79少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:41:22 ID:4DHS.Iaw0

 という説明をすると、制止するサーニャの声も聞かず勇者は紫が持つ破亜限堕取を一つ貰い、中身を丸呑みした。
 すると彼女は即座に頭を抱えてしまう。

「ど、どうしました!?」
「頭キーンってする……」

 心配するサーニャに対し、勇者の返答はあんまりにもあんまりだった。
 しかしすぐに立ち上がったかと思うと、彼女は二人に笑顔を見せる。

「でも傷も魔力も治ったよ。ほらほら」

 そう言ってピョンピョン飛び跳ねる勇者。その姿にさっきまでの負傷は確かに存在しなかった。
 実は魔力に関しては完全回復していないのだが、戦うのに支障がない程度には回復している。

「なら私も」

 今度は取り出した紫当人が破亜限堕取を食べる。
 するとさっきまで確かに大きくあった力の消耗による疲労が抑えられ、再び使える位にはなった。

「ま、能力を使うのに支障はないわね」

 使いすぎれば話も変わるが、と後ろに付け加えつつ回復したと告げる紫。
 疲労はともかく怪我が治っているかどうかは見れば分かるので、サーニャもひとまずは問題ないと判断した。
 ならばとばかりに、紫は出発すべく行く先を示す手元のビブルカードを見る。
 それが指し示す先は北東。
 こうして彼女達三人はビブルカードが導くままに進むのだった。

 この時、紫の気が変わって自身のデイバックから他のビブルカードを取り出そうすれば気付いたかもしれない。
 その中にあるビブルカードの内一枚、斬真狼牙の分が焼失してしまっていることに。


 そしてビブルカードに導かれるままB-4に来るまで、彼女達にトラブルはなかった。
 勇者、ヒーラー、スキマ妖怪が揃っていれば、万全ではなくとも大概のNPCに負ける道理はない。
 すると突然、轟音が彼女達の耳に届く。
 何らかの金切り音に、怪物のものとしか思えない咆哮。そしてそれらに負けないほどの男の叫び。
 それらが聞こえた途端、三人は即座に音のする方へ向かった。
 元々瞳のビブルカードを当てにしていたのはとにかく他の参加者に会うため。
 ならば明確に存在する参加者、それも危機に陥っているであろう存在をより優先するのは勇者とサーニャの中では当たり前であった。
 紫もまた、ここで二人に反対する理由もないので大人しくついて行く。
 たどり着いた先で見たのは、火傷を負った男に襲い掛かる異形の怪物の姿だった。

「やあっ!!」

 勇者は即座に怪物、打擲の剛激手へと飛び掛かり右手を切り飛ばし攻撃を防ぐ。

「大丈夫ですか!? 今治療します!!」

 その後ろではサーニャが男に向けて必死に声をかけるが、声を掛けられた方は返事することなく意識を失ってしまった。
 だが打擲の剛激手は未だ健在。
 眼球で稼働し続けるチェーンソーによる痛みに耐えかね暴れまわるが、それは勇者からみれば隙でしかない。
 怪物が腕を不規則に上に振り上げた瞬間、勇者は怪物の懐に飛び込み、手に持つエクスカリバーを横に一閃。
 それだけで、怪物の上半身と下半身は両断され、あっさりと息絶える。
 この時、怪物の上半身が地面に落ちた衝撃で目に刺さっていたチェーンソーが破壊されたが、それに気づく者はいなかった。

「あらあっさりね」
「元々弱ってたからね。この人がほとんど弱らせて、ボクはおこぼれを貰っただけだよ。
 ってそうじゃなくて、この人大丈夫なの!?」

 紫の称賛のそこそこに受け取り、勇者は目の前で大火傷を負っている人影を心配する。
 その心配の声に対し、サーニャは宣言した。

「魔力は相当使いますが……必ず助けます」

 サーニャの言葉を勇者はただ真摯に受け止める。
 ここで自分にできることは、余計な口を挟むことではなく、二人をNPCや危険な参加者から守る事だけだろう。
 そう考えた彼女は護衛の意志を固めるのだった。

 一方、会話に入らなかった紫は一人警戒する。
 警戒相手は今サーニャが治療している相手。
 治療に異議を挟むつもりはないが、何せ相手がどういうスタンスの参加者なのかまるで分からないのだ。
 だがそんなことを言ってもサーニャは治療を止めないし、勇者も紫の言い分を否定はしないが肯定もしないだろう。
 なので紫は一人こっそりと警戒するのだった。

 そして紫の懸念は正しい。
 ここで治療されている人影、ラッド・ルッソは殺人鬼であり、この殺し合いにおいても殺したい相手を殺そうとしている。
 その事実がを彼女達が知った時どうなるかは、今の時点では誰にも分からない。

80少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:41:48 ID:4DHS.Iaw0


【B-4/早朝】

【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:ダメージ(大)、上半身に火傷(大)、気絶
[装備]:スタングレネード@現実
[道具]:基本支給品、
[思考]
基本:自分は死なないと思っている人間を見つけて殺す! とにかく殺す! 殺しまくる!
1:あの怪物(打擲の剛激手)を殺す
2:その後にひろし、牛飼い娘を殺す
[備考]
※参戦時期はフライング・プッシーフット号に乗りこむ直前からとなります。

【勇者@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:約束された勝利の剣@Fateシリーズ、包帯(ところどころに巻いてる)
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)
[思考]基本行動方針:こんな殺し合いを許してはおけない。
1:サーニャちゃんとこの人(ラッド)を守る
2:助けが欲しい人はなるべく助けたい。
3:彼(ザメドル)は倒さないといけない。
4:紫さん、サーニャちゃんと同行。
[備考]
※最低でも魔王を撃破した後からの参戦です。
※約束された勝利の剣の性能は知ってはいますが、
 現状は切れ味のいい剣程度で扱っています
※ランダム支給品の二つはエクスカリバーと交換されました

【サーニャ@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】
[状態]:幻惑の学聖ボタンの強化効果(回避率、命中率上昇、魔族属性に有利)
[装備]:幻惑の学聖ボタン@大番長、サーニャの十字架@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)、鳥の死骸@ミスミソウに刺さっていた棒状の物(洗浄、消毒済み)
[思考]基本行動方針:出来るだけ生命を救う。
1:この人(ラッド)を治療する
2:紫さんと勇者さんと同行。
3:傷ついた人は助けたいけど……
[備考]
※参戦時期は少なくとも固有のストーリー経験済みです。
※幻惑の学聖ボタンの効果で魔族属性に該当する敵に対して強化効果を得てます。
※治癒能力は低下していますが、元々役割がヒーラーなのでそれなりに回復できます。
※能力を用いた死者の蘇生は不可能となっております。

【八雲紫@東方Projectシリーズ】
[状態]:力の消耗(小)
[装備]:緋舞扇@グランブルーファンタジー、ビブルカード(粕谷瞳)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換、破亜限堕取×1@銀魂 銀玉くえすと 銀さんが転職したり世界を救ったり 含む)、ビブルカード×2(シャーロット・E・イェーガー、土方歳三)、卵かけご飯@現実
[思考]基本行動方針:一先ずは異変解決
1:この男(ラッド)を警戒
2:勇者ちゃんとサーニャと共にビブルカードの示す先へ向かわないくても、いいかしらね
3:霖之助さんは変わらないようで安心した。
4:レミリアは……ほっといても大丈夫でしょ。
5:ミルドラースの目論見とか、その辺考察しておきたいかも。
6:この食べ物(卵かけご飯)は、しまっておくわ……
[備考]
※参戦時期は少なくとも緋想天以降です。
※境界を操る程度の能力には制限が掛かっており、行使した場合大幅に力を消耗します。
 ・能力を用いた遠所への移動は2マス先のエリアまでであれば可能です。
※サーニャ、紫、勇者のランダム支給品は森近霖之助の能力、
 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』で鑑定済みです。
 ただし使用方法は分かっていません

81少々ここらでオーバライド ……したいところだけど現実は ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:42:18 ID:4DHS.Iaw0





 一方その頃、紫達三人が当初目指していた粕谷瞳は、牛飼い娘の手に引かれ疾走していた。

 牛飼い娘は一度街に戻ることにしていた。
 理由としては、心情的にひろしを探したい気持ちはあったが、それを優先するには今の瞳を連れるのは危険が過ぎる。
 なので一度戻ることで彼女をプレザンドパークにいる仲間に預けることにしたのだ。
 
 懸命に走る牛飼い娘とは対照的に、瞳はただ虚ろに流されるだけ。
 最早生きる気力すらあるか分からないが、それでもついて行ってはいた。

 ザッ

 そこに一人の男が現れる。
 全身を怪しげなマントで覆いつつも、しかし顔だけは何の意地か出している、ピンクに黒の斑点を髪につけた男だった。
 この特徴的な髪を見て、牛飼い娘はクロちゃんから聞いた話から目の前の男が誰かを見抜く。

(この人、危険だって言ってたディアボロ……!?)

 思わず足を止め、警戒する牛飼い娘。
 それでも咄嗟に銃を構えないのは、彼女が根本的に戦いに向いた人間ではないことの証明だろうか。

 一方、ディアボロもまた、目の前の女性二人がクロちゃん達から話を聞いた牛飼い娘と瞳というメイドであることに気付いた。
 それに加え、虚ろなメイドの瞳はともかく、牛飼い娘が警戒していることにも気付く。

(別に見捨てていくことに抵抗はないが……)

 ディアボロとしては少々考えなければならない状況だ。
 見た所二人は彼がさっきまでいたプレザンドパークへ向かっている様だが、ここで襲撃者のことを伝えず見捨てていくことは簡単だ。
 しかしそれがクロちゃん達に伝わってしまえば、一度勝ち得た評価は最底辺へと落ちるだろう。
 だがここで警戒されている自分からの情報を信じさせることに時間を使うことで、さっきの襲撃者と再度遭遇する可能性もある。

 ディアボロの選択は――


【C-4/早朝】


【牛飼い娘@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM31@現実(予備弾3)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いはしない
1:彼(ゴブリンスレイヤー)を探す
2:瞳を守る。ディアボロを警戒
3 :一度街に戻って瞳を預けてからひろしを探したい
[備考]
※参戦時期は原作9巻終了後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【粕谷瞳@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:健康
[装備]:回復用キノコ×4@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品
[思考]
基本:???
1:とりあえず牛飼い娘と同行する。
[備考]
※参戦時期は本編開始前となります。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン、土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品、マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:牛飼い娘と瞳に対処するか、それとも無視するか――
2:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
3:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
4:あの化物(ザメドル)をどうにかする方法を探さねば……
[備考]
※参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
※殺し合いに何度か参戦した経験あり。
※スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。
 『ホワイトスネイク』でDiscにされて抜かれた可能性もありますが、真実は現在不明です。
※自身以外の「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


※チェーンソー@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage は破壊されました。


【破亜限堕取×3@銀魂 銀玉くえすと 銀さんが転職したり世界を救ったり】
紫が香霖堂で食料と交換した菓子類の中に混ざっていたもの。
本来なら参加者の一人志村新八の姉、志村妙の好物というだけのアイス。
だが出展がアニメ版銀魂ではなくRPGである銀玉くえすとのため、食べるとHPとMPが回復する。


【スケルトン@Fate/Grand Order】
FGOに登場する雑魚敵。武器を持った骸骨というしかないキャラ。最初の特異点である冬木から登場する。
持っている武器は剣だったり槍だったり弓だったりと様々。
本来なら神秘を持たない攻撃は通用しないと思われるが、本ロワではどんな攻撃でも問題なく通用するものとする。

82 ◆7PJBZrstcc:2024/01/04(木) 08:43:11 ID:4DHS.Iaw0
投下終了です。

そしてこの話でペニーワイズと桐山和雄以外の参加者が早朝までたどり着いたので、ここらで放送を投下したいと思います。
ですが他の書き手氏に放送前に書きたい話があれば、今月11日まで待ちますのでその間に書きたい話がある方は予約してください。
なければ12日のどこかで私が放送を投下します。私事で遅れる場合はまた連絡いたします。

83 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/04(木) 11:24:59 ID:POgClnYI0
>>82
投下お疲れ様です。
いつも自分が書いた作品のリレーや出したNPCの処理を氏にやらせてしまっていて申し訳ございません。

また、放送の報告ありがとうございます。
オレカバトル出典のものをどうするかについての意見も拝見させて頂いたのですが、例の続編もまだ正式リリースがされておらず、企画内に出ているキャラやアイテムが続投されるかどうかもまだ判明していないため、こちらでの途中送還を実行してしまおうと考えております。
それともう一つ、本日は書き込みや作品の執筆に使用しているスマートフォンを点検に出し、結果次第ではそのまま交換しようと思っております。
その際にトリップも現在のものから変更しようと思っています。
その場合はこちらのスレ内でも報告させて頂こうと思っています。

マシュ、ラヴィニア、エンキ、エーリュシオンで予約させて頂きます。
また、予約中にも先述した様にトリップを変更させて頂こうかと思っております。

84 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/04(木) 20:26:16 ID:POgClnYI0
>>83
機種変更は終わりました。
トリは変更しないことにします。

85 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/07(日) 21:35:06 ID:oS6z6AyQ0
申し訳ございません。
予約破棄させていただきます。

86 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:33:28 ID:k40zP/SM0
放送を投下します

87第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:34:22 ID:k40zP/SM0
 コンペ・ロワイアルの開始から六時間。
 あるいは真の開幕を告げる放送から四時間半。
 時間にして午前六時。
 これより会場に流れるのは最初の定時放送。
 真の開幕を告げたイレギュラーではなく、バトル・ロワイアル本来のルールに記載された、絶望を告げるもの。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 ミルドラースの声が会場に響く。
 この声に参加者が覚える感情はいかなるものか。
 だがいかなるものであっても彼は看過しない。
 ただ、彼は告げるべきを告げるだけ。

『この放送は禁止エリアについて発表するためのものだ。
 今回は最初の放送から四時間半後だったが、本来は六時間ごとに行う。
 よって次に放送を聞くのは、十二時ということになるな。もっとも、それまで生きていられたらの話だが』

『では禁止エリアの発表と行こうか。

 二時間後にA-6
 四時間後にD-5
 六時間後にI-5

 以上の三つだ。
 そしてせっかくだ。もう一つ諸君らにとって重要な情報をくれてやろう』

 ここでミルドラースは、会場にいる参加者には見えないが邪悪な笑みを浮かべる。
 もっとも、そんなほくそ笑んだ顔を想像できる参加者もいるだろうが。

『それは、コンペ・ロワイアル内で今までに退場した者の名前だ。これからは定時放送において禁止エリアと共に発表してやろう。
 参加者の中には知人や一方的に見知った者を探したり、警戒している者がいるだろう。
 だが死者の捜索に金泥したり、既に死んだ相手を警戒されても滑稽なだけだ。
 面白くはあるが、殺し合いにおいては進行を妨げるだけなのでな。
 心して聞くがいい』

『ではいくぞ。

 絶叫するビーバー
 クレマンティーヌ
 アキネーター
 Syamu game
 RRM姉貴
 藍野伊月
 和泉守兼定
 星野輝子
 野原しんのすけ
 西片
 野比のび太
 ピーチ姫
 令嬢剣士
 足柄
 ホル・ホース
 沖田総司
 佐々木哲平
 グレシア・ゲッベルス
 斬真狼牙
 ぉ姫様
 佐藤和真
 レム
 高垣楓
 シャガクシャ
 鳥月日和
 ブースカ
 とがめ
 ひろし
 甘露寺蜜璃

ああ、あとオグリキャップを忘れていたな。
以上。合計30名だ』

88第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:34:54 ID:k40zP/SM0

『素晴らしい! 既に参加者の四分の一以上が退場しているではないか!
 もし死者が出なければ参加者の首輪を全て爆発させることになるかと思っていたが、そんな興ざめしたことにはならなさそうでなによりだ』

『そしてもう一つ朗報だ。
 先ほど呼ばれた名前の数が多すぎて、覚えられないという者もいるだろう。記録する術を持つ者も少ないからな。
 だが安心せよ。
 参加者の名前が書かれた名簿を見るがいい。
 この殺し合いを退場した者の名前は赤く染めておいた。これで万が一聞き逃したとしても安心だな。
 ついでに禁止エリアの方も同様だ。地図もそのエリアは赤く染めているから、安心して近寄らないようにするがいい』

『余談だが、A-6に存在する香霖堂についてだ。現状、少々隅にありすぎてせっかくの施設が台無しだ。
 なので禁止エリアに選ばれたことと合わせて移転することに決定した。移転場所は、次の放送で発表するとしよう』

『それからこれは詫び入れだが、実は一部の参加者の支給品をこちらで没収している。
 これに関してはこちらの不手際だ。代わりにランダム支給品を同じだけ与えているので、どうかそれで許してはくれまいか』

『最後に、とても大切なことを言っておこう。
 この放送以降の予約に置いて、最終的な時間が朝ならば、放送前に参加者が退場しても第二回放送前の退場者として扱うと明言しよう』

『ではこれにて、コンペ・ロワイアル第一回定時放送を終了する。
 次の放送も聞けると良いな、参加者の諸君』





「お疲れ様」
「……マキマか」

 放送を終えたミルドラースは、彼の元に現れたマキマに対し訝し気な表情を見せる。
 最初の放送の時もそうだが、彼女はなぜ自分の元に来るのか、ミルドラースには理解できなかった。

 彼らは断じて仲間ではない。
 立場こそ同じ主催者であり、この盤上を成立させている存在だ。
 互いに必要としあっていると言っていいが、それでも彼らの間には格差がある。

 ミルドラースとマキマには、見えている物が違う。
 自分には見えていないものが彼女には見えている、と彼は確信している。

 これから我はそんな相手に弱みを見せるかもしれない。
 恐れながらも、彼は一歩踏み出しある問いかけをする。

「マキマよ」
「何かな?」
「貴様は、あの意味を知っているのか?」

 ミルドラースが問うたのは、どう聞いても参加者に向けた物とは思えない『この放送以降の予約に置いて、最終的な時間が朝ならば、放送前に参加者が退場しても第二回放送前の退場者として扱うと明言しよう』一文について。
 聞いたところで答えが返って来る保証はない。
 仮に返答されても、それが真実かどうかを確かめる術はない。
 それでも、彼は問う。

「私も完全に分かっているわけじゃないけど」

 ミルドラースの問いに、マキマは困り顔で応じる。
 彼女の表情は演技ではなく、本気で困っているような、そんな風に見える。

「分かっていると思うけど、あれは参加者に向けた物じゃない。
 じゃあ何に向けたかって言うと、この殺し合いを認識している外側にいる者に向けた物」
「外側?」
「うん。外側。
 コンペ・ロワイアルが始まる前……ううん。私達が生まれるより前から確かにある、決して触れられない筈の場所。
 そして、私達がたどり着くべき場所でもある」

89第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:35:28 ID:k40zP/SM0

 ミルドラースに対して話していた筈が、いつの間にかまるで決意を晒すような語り口へと変わっていくマキマ。
 その様を見ている彼に、意味は伝わらない。
 だが

「らしいよ」
「……らしい?」
「アルタイルちゃんがそう言っていただけだからね。
 正直なところ、私にはまだよく分かっていないんだ。
 参加者にも一部なら理解者がいるみたいだけど、誰の事なんだろうね」
「知るか」

 マキマの言い分を切り捨て、去っていくミルドラース。
 得るものがなかったとは言わない。
 しかし、肝心な部分はよく分からないままだった。

 その後すぐに悪魔神官からマキマが香霖堂に足を運んでいたという情報を得るが、それはまた後の話。





 ミルドラースとマキマが話していた部屋とは別の場所で、アルタイルがあるものを見上げる。
 彼女の視線の先にあるものは、巨大な魔力を内包する器。
 見る者が見ればこう称するだろう。
 ホーリーグレイル、聖杯。
 数多の集められた参加者の元の世界のうち一つ、支給品を含めればいくつかの世界で行われている儀式、聖杯戦争。
 その戦争の果てにある物が、コンペ・ロワイアルの会場にもあった。

「……サーヴァントが落ちたか」

 小さく呟くアルタイル。
 視線の先にある聖杯に魔力が溜まったのを感知すれば、それに気づくことは難しくない。

「藤丸立香は最初の段階で儀式とは予測していたが、まさか聖杯戦争とは思っていないようだな。
 まあ、それはそうか。数多の異世界が集うのなら、知らない儀式の可能性も考えなければならないうえ、沖田総司だけが自分と同じ世界と感づけば、聖杯戦争をしているとは思えんだろうよ」

 独り言を続けるアルタイル。
 誰が聞いているわけでもない。否。彼女は誰かが聞いていたとしても気にも留めていない。

「わざわざ出展をすり替えた甲斐があったものだ。あのままでは沖田総司も名簿の別の行に書かねばならず、気づかれていたかもしれないからな。
 彼女達が住んでいる世界だけでなく、Fateシリーズ以外の出展の参加者にも、我々が召喚したサーヴァントが紛れているとな。
 もっとも、サーヴァントも我々に召喚された記憶などないのだから、閲覧制限を掛けていた野原ひろし? と違ってヘブンズ・ドアーでは見ることすら不可能だ」
 
 何故ここまで話すのかは、この場で分かるのはアルタイルだけだ。
 ミルドラースの手下や他の主催が聞いているかなど、現時点では定まっていない。
 にも拘わらずここまで話す。

 まるで後付けの設定を、既定の事実として定めるかのように。

「さて、気が早いがミルドラースに顔を出しておくか。
 次の放送は私の担当だからな。それを伝えておくとしよう」

 こうしてアルタイルはミルドラースの元へ向かう。
 その様に淀みはない。
 予定外など既にいくつも起こっているのに、彼女はまるで動じていない。

「規定などない。未来など定まっていない。
 ならば私が動揺する道理がない。最後だけが決まっていれば、途中などアドリブでいい。
 極端な話、サーヴァント以外なら外側の都合で帰還者が多少出ても何とかはなる。
 そういうものだ、この話は。

 そうだ、目的だけは成し遂げるとも。
 最後の最後だけは、我々が掴んでやる」

90第一回放送 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:35:54 ID:k40zP/SM0


◆ 


 同じ頃、コンペ・ロワイアル会場にて。
 ゴブリンの巣穴から、一匹のゴブリンが地上に現れた。
 否、知らぬものが見ればそれをゴブリンと認識できるだろうか。

 成人男性よりも大きな体を持つ、筋骨隆々のその姿。
 かのゴブリンスレイヤーならこう言うだろう、ゴブリンロードと。
 誰であろう、真のOPにて現れた主催陣営の一角、小鬼王である。

 なぜ地上に現れるのに四時間半もかかったのか、それは小鬼王が目的地に向かう途中こう思ったからだ。
 何も自分で行かなくても、適当にNPCのゴブリンを宛がえばそれで充分ではないか? と。

 しかしその企みはあえなく潰えた。
 ゴブリン達はてんでバラバラの方向へ向かい、ある時は淫欲を操られ参加者の良いように使われ、ある時は別のNPCの洗脳効果に操られ良いように使われるなど、ロクに役割を果たせてはいなかった。
 なので小鬼王は業を煮やし、自ら殺し合いの場に降り立ったのだ。

 ところで、ゴブリンの巣穴と言うとコンペ・ロワイアル会場において現在描写されているのは、いのちの輝きの出発点だけである。
 しかし、ゴブリンは会場のいたるところに存在している。
 故に、巣穴も一つだけとは限らない。
 つまり、現状小鬼王がどこにいるかは不明である。



 第一回放送と同時に様々な動きを見せる主催者勢。
 しかし、それと参加者の動きはまた別物。
 ぶつかり合うかすれ違うか、はたまた同じ方向を向くか。
 その答えは未だ見えず。
 


※A-6 香霖堂が別のエリアに転送されました。どこに転送されたかは後の書き手氏にお任せします。
※コルワ、岸辺露伴、クッパ姫のデイパックにランダム支給品×1が転送されました。
※第二回放送はアルタイルが担当します。これは現時点での決定で、後で何らかの理由で変更される可能性もあります。
※ゴブリンロードが会場の地上に出現しました。どこに現れたか、どこを目指しているかは次の書き手氏にお任せします。

91 ◆7PJBZrstcc:2024/01/12(金) 19:37:15 ID:k40zP/SM0
投下終了です。
今から予約については自由にお願いします。

これからも本企画をよろしくお願いします

92 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/12(金) 19:49:46 ID:N6I2o78c0
>>91
企画主様が不在である中、放送投下お疲れ様です。
今後もこちらでリレーを続行させて頂くのかは今のところ未定ですが、

93 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/12(金) 19:51:10 ID:N6I2o78c0
>>92
誤って途中送信してしまったので続き
まだまだ読ませて頂こうと思っております。

94名無しさん:2024/01/12(金) 20:08:26 ID:yZaioj2E0
投下および放送乙です
予約がどうのとかいうミルドラースとか出展がどうのいうアルタイルがメタいw
ミルドラース、あっちのミルドラースだったりしないよね?

95名無しさん:2024/01/15(月) 18:04:52 ID:YIHTKERk0
>>73
公式サイトから閲覧出来るお問い合わせフォームにあるQ. 著作物の利用について教えてください【その他】の項目にて著作物の利用について、原則として個人のお客様へは許諾をさせていただいておりません。と明記されていました。

96 ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:24:12 ID:QoZkAXGM0
ゲリラ投下します。
先に言っておきますと、オレカバトル勢を帰還させる話です

97出ていけ!出ていけと言っている!(二度目) ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:24:46 ID:QoZkAXGM0
 G-9 荒野にて、コーガ様とマシュが遭遇する。
 彼女が車を降り、一瞥する。
 この行為を警戒しているものと捉えたコーガ様は、自身の両手を上げ、必死に武器を持っていないことと戦う気がないことをアピールする。
 それが功を奏したのか、車からマシュ以外の者も降りてきた。

 何やら怪しげな触手を抱えるアルビノの少女。
 イーガ団の幹部が持つ刀を携える老騎士。
 そして、思わず目を見張るほどの美少年。
 前の二人は知らないが、最後の少年についてコーガ様は聞き及んでいた。

(こいつ……理愛が言っていた清良トキじゃないのか!?)

 まさかこんなところで遭遇するとは、と言いたくなるも我慢して声を抑えるコーガ様。
 幸か不幸か、その様を目の前の四人に気取られることはなかった。
 だが危険人物が混ざっていると知った以上、コーガ様は慎重に話題運びをしなければならない、と考えた所で――

「な、なんじゃ!?」

 いきなりエンキの体が発光し始めた。
 さらに――

「どうもおはようございます。
 私のことは一般通過爺とでもお呼び下さい。主催者のメッセンジャーとしてやってきました」

 何の前触れもなく、紅のネルシャツを着た老人が五人の前に現れた。
 気配もなくいきなり現れた相手に対し、咄嗟に構えるエンキとマシュ。
 思わず固まるラヴィニア。
 トキはそんな彼女を庇いつつ下がり、コーガ様は特に迷うことなくそれに続く。

 そんな五人の動きに対し、特に反応することなく老人は言葉を続ける。

「突然ですが、『コンペ・ロワイアル』を運営させて頂く上で老将エンキと聖帝エーリュシオンの参加を続行させておくのは大変危うい状況である事と判断されました。
 ご安心ください。お二人は生きたまま、無事に元の世界へとお帰しします。
 また、お二人が現在ご所持されていらっしゃる支給品は全てここに残させて頂きます。
 では、私からは以上です」

 老人の語る言葉は、ここではない別のエリアでオグリキャップが帰還させられた時と変わらないメッセージ。
 しかし、何もできないまま問答無用で返された彼女とは違い、エンキは一つ質問を投げかけた。

「待て、わしの参加がこの殺し合いの運営に危ういとはどういうことだ!?」
「正確にはあなたと聖帝エーリュシオン、それからあなた方の世界から持ってきた支給品なのですが……
 いえ、どちらにせよ答える義理はありませんし、仮に答えた所で理解できません」

 一般通過爺のあまりに一方的な物言いに戸惑いを隠せない五人。
 しかしここでコーガ様がこう切り出す。

「おい、なんだかよく分からないけどそのじいさんとエーリュシオンとかいう奴だけが返されるのか!?
 ついででいいから俺様と、あとそこのあやしい触手持ったガキも返してくれていいんじゃないか!!」
「無理です。少なくとも今は、あなたとラヴィニア・ウェイトリーを帰還させる理由はありません」

 コーガ様の懇願を切り捨てる一般通過爺。
 ちなみにここでコーガ様が自分だけでなくラヴィニアも付け加えた理由は、単純に保身である。

 ここで懇願したところで返してもらえる可能性は、はっきり言って低い。だが言わなければ絶対に返してもらえることはない。
 ならば言うだけ言いつつも、同時に子供を心配する一面を見せれば、後に何かあっても残った女から庇ってもらえるのでは? とコーガ様は考えたのだ。
 なお、トキについては全く信用していない。理愛の話を聞けば当たり前ではあるが。

「こんな中途半端にいなくなってしまいすまん。
 だがせめて生きてくれ。マシュ、ラヴィニア。それから――」

 ここに至ってもうどうしようもないことを受け入れたエンキは、謝罪の言葉を口にする。
 だが彼の言葉は最後まで紡がれることなく、途中で消えて行ってしまった。
 それと同時に一般通過爺もまた姿を消す。
 来るときに気配を感じさせなかったのと、同じ様に。

98出ていけ!出ていけと言っている!(二度目) ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:25:37 ID:QoZkAXGM0





 一方同時刻、C-5 市街地においてはエーリュシオンが激怒していた。
 それも無理はないだろう。
 そもそも無理矢理呼びつけておきながら、都合が悪くなったから帰れと言われて、怒りを覚えない者がいるだろうか。
 せめてもの腹いせにメッセンジャーである一般通過爺を切り殺すが、その行いに意味などない。
 エーリュシオンもまた、オグリキャップやエンキと同じく光っている以上、帰還させられることは最早規定だ。

「おのれぇぇぇぇえええええ!!」

 怨嗟の叫びをあげながら消失するエーリュシオン。
 後に残るのは、彼に支給されたデイバックと、彼がゴブリンに奪わせた二つのデイバックのみ。
 彼の周りに誰もいない。
 そして離れていても彼を思う誰かもいない。


【老将エンキ@モンスター烈伝オレカバトル 生還】
【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル 生還】
【残り80人】


 そして二人が帰還した直後に放送が流れ始める。
 否が応でも現実を突きつける、あの絶望が参加者の耳に入る。


【G-9 荒野/朝】

【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:ボロボロ、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める
1:いや、アンテン様関係なく脱出できるのかよ!? なんだよそれ!?
2:脱出したい。アンテン様でも他の手段でもいいから
3:よくよく考えたら死体を集めりゃいいんだから、別にわざわざ俺様が殺して回る必要ないよな?
4:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
[備考]
※本編死亡後の参戦です。
※支給品は全てまみかによって没収されました。

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
[状態]:体に無数の傷(中)、疲労(小)、ゴブリンへの嫌悪感(中)
[装備]:トヨタRAV4@例のアレ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)、いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)@Fate/Grand Order
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:エンキさん……!?
2:先輩や他のサーヴァントの皆さんと合流したい……
3:エンキさんは別の世界の方でしょうか……?
4:"ネルガル"と"エンリル"はこの殺し合いとは関係がないのでは……?
5:黒幕は第二魔法を自在に扱える存在……?
[備考]
※参戦時期は少なくとも、第1部第六章「神聖円卓領域キャメロット」以降です。そのため自身の宝具などについて把握しています。
※目の前の老人(老将エンキ)をその特徴から、メソポタミア神話の主神『エンキ(エア)』ではないかと推測していましたが、異世界ということで推測を捨てました。
※老将エンキから、"ネルガル"と"エンリル"、"マルドク"に関する情報を得ました。
※"藤丸立香"が殺し合いに参加していることを把握しました。

99出ていけ!出ていけと言っている!(二度目) ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:26:12 ID:QoZkAXGM0

【ラヴィニア・ウェイトリー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、ゴブリンへの恐怖、嫌悪感(大)
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。元凶に立ち向かう。
1:えっ……?
2:違う世界……?
3:ゴブリンはもう嫌
[備考]
※参戦時期は死亡後。そのためカルデアや魔神柱、アビゲイルの正体などを知っています。

【清良トキ@魔法少女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:望遠鏡@ゼルダの伝説 風のタクト
[道具]:基本支給品一式、ホモコロリ@真夏の夜の淫夢、スーパークラウン@New スーパーマリオブラザーズUデラックス、
[思考]
基本:せっかくだから楽しませてもらう。だけど、一筋縄ではいかないかもしれない
1:しばらくは大人しく、ただの高校生清良トキとして行動する。とはいえ、大人しくする必要性は少し減ったかな
2:ミリアは…見つけたら手伝ってもらうかな
3:違う世界か……そこにもキリエライトさんやウェイトリーさんみたいな素敵な子がいるといいな
4:ホモコロリは隠しておく
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※ゴブリンを配下にできますが、現在配下はいません。


※G-9 荒野に風斬り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、エンキのデイバック(基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み))
 C-5 市街地に原罪(メダロック)@Fate/stay night、ひろしのデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品×2)、神楽鈴奈のデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品1~2)、一般通過爺の死体
 がそれぞれ放置されています。
※島村卯月に支給された禁断の薬、ザメドルに支給された神界の木片、佐藤アカネに支給された参謀エンリルのナイフ、とがめに支給された堅剛月餅、ホル・ホースに支給されたトリケラゲノムはそれぞれ支給前の状態に復元された上で元の世界に戻されました。
 代わりに五人のデイバックにそれぞれランダム支給品×1が転送されています。
 また、支給品没収に伴い卯月の『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化が解除され、氷の魔法使いから人間に戻りました。同じくアカネの『堅剛月餅』も解除されました。

100 ◆7PJBZrstcc:2024/01/19(金) 22:26:42 ID:QoZkAXGM0
投下終了です

101 ◆bLcnJe0wGs:2024/01/20(土) 08:18:40 ID:C20H6Vxw0
>>100
投下お疲れ様です。
元々自分がやろうとして断念してしまったことをやらせてしまって申し訳ございません。
また、今回の投下で途中生還になってしまったキャラクター達を応募して下さった書き手様や採用してくださった企画主様にもこちらで謝罪させて頂きます。
この度は、この様な残念な結果になってしまい申し訳ございませんでした。

102名無しさん:2024/01/27(土) 12:01:02 ID:ziSa5Rtk0
(グラブルの規約も確認しにいった方がいいですよ)

103 ◆7PJBZrstcc:2024/07/30(火) 22:38:44 ID:GfhqUQI60
現在まとめwikiがあらされているので、勝手ながら避難所としてハーメルンにアーカイブを作成いたしました。
企画主から何か言われた場合、もしくは企画進行に問題が発生した場合、このアーカイブは削除いたします。
ttps://syosetu.org/novel/350280/

104名無しさん:2024/07/31(水) 08:57:17 ID:U8bc4G3s0
>>103
お疲れさまです。
一読者としてアーカイブ作成ありがとうございます。
氏の作品も読まさせていただいておりますので可能な限りがんばってください。

105 ◆7PJBZrstcc:2024/08/09(金) 23:13:25 ID:8buv/cwk0
アルス、アリス、銀時、アクア、理愛、まみか 予約します

106 ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:46:58 ID:/gXohknM0
投下します

107第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:47:45 ID:/gXohknM0
 両断されたシャガクシャの体のうち上半身、正確には頭からピンク、いや赤黒いとも言える肉塊のようなものが溢れ出す。
 溢れ出た肉は不定形に蠢きながらも、徐々にある形へと姿を変えようとしていた。
 それが何かを、今の銀時とアルスには判別できなかったが、形が判別できるようになる前に攻撃しようとする仲間がいた。

「二人とも何ボーッとしてるのよ! 今のうちにやっちゃうわよ!!」

 警戒しているとはいえ、棒立ちと言えなくもない銀時とアルスの二人に、アクアは攻撃を促す。
 常ならば変貌するシャガクシャだったものを気持ち悪がるか、忌み嫌ってさっさと浄化しようとするかのどちらかだろう。
 だが今の彼女の顔に浮かぶものは焦燥だった。
 楓の蘇生を試みたいが、それは敵のいる場所でやれることではない。
 故に、早く敵を排除して安全を確保したいという焦りが、アクアにはあった。

「いやアリスの治療は……」

 その焦り自体は理解するが、現在治療中の仲間であるアリスの治療はどうなったのか気にするアルス。
 しかし、彼の懸念とは裏腹に、アリスの治療は火傷の痕は残り、傷もダメージもまだあり、完全とは決して言えなくとも、気絶こそすれ当面は大丈夫と言えるほどには治っていた。

「ああもう、私が行くわ! 神の鉄槌を受けなさい!!」
「おい待て! ブウが復活した直後の界王神みたいに焦るんじゃねーよ!」
「例え分かんないわよ!!」

 焦って飛び出そうとしているアクアに対し制止を呼びかける銀時だが、内容に思わずツッコミを入れる。
 しかし、それが結果的に功を奏したのか、彼女が行動に移る前に状況が動いた。

『厚岸コンキリエ』

 どこからか謎の音声が聞こえたかと思うと、虚空から白いパーカーを着た一人の男が踊りながら、肉塊の後ろに現れた。
 男は踊りながらアクア達の元へと近づいてくる。

「……え、何? 何なの!? 怖っ!!」
「いえアクア様、見るところはそこじゃありませんよ」

 アクアはあまりに突然の闖入者に思わずさっきまでの焦りを忘れ、あまりの理解不能っぷりにちょっと恐怖を抱いてしまう。
 一方、アルスは踊る男性を観察し、ある重大な事実に気付く。
 それは――

「あの男性、首輪が付いてません」
「えっ本当!?」
「マジか」

 アルスの言葉にアクアと銀時が二人揃って未だ踊り続ける男の首元を見ると、そこには確かに首輪が存在しない。
 一体この状況でこの男は何をするのか、と三人が観察しているが――

 グ バ ァ ァ ァ ァ ァ ァ

 男はシャガクシャから現れた肉塊にいきなり飲み込まれかと思うと、グシャグシャと音を立てた挙句形を失った。
 誰がどう見ても肉塊に食われた、としか解釈できない光景であった。

「オイィィィィィィィィ!! 何しに来たんだお前ェェェェェェェ!?」

 いきなり虚空から現れた男が何かするのかと思ったら、何をするでもなくただ食われるだけという結末に銀時は全力でツッコんでしまった。

 実の所、食べられたこの男はNPCである。
 名前は不明。彼は『北海道厚岸町にある道の駅、厚岸グルメパーク内の施設「厚岸味覚ターミナル コンキリエ」』のCMに登場するダンスをしている外国人男性である。
 そしてこのロワでは『厚岸コンキリエ』の音声と共に現われ、踊りながら参加者に食料を渡してくれるというお助けNPCだった。
 しかしその真価を発揮する前に食べられてしまったので、三人がこの事実を知るには、現状を打破したうえで再びこの男と遭遇するしかない。
 もっとも、そこまでして知りたい事実かどうかと言われると、答えに窮してしまうのだが。

 そんな事実を知らない三人が戸惑っていると、新たなるNPCがこの場にエントリーする。

108第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:48:06 ID:/gXohknM0

「4!」

 人の声、というよりは何かの鳴き声が外響き、三人は咄嗟に声がした方を向く。
 するとシャガクシャが壊した壁の外から見える場所に、一瞬悪霊と見間違えそうな程解像度が低いものの、よく見れば白い犬がいた。

「4!」

 犬は鳴きながらこっちへと向かってくる。
 それに対し三人は何とか来ないように呼び掛けるが、その前に目の前の肉塊が三人と犬へと牙をむけようとする。

「ゲッ!?」

 それに気づいた三人は咄嗟に後退しようとするが――

 ビタッ

 まるで無理矢理押しとどめられたかのように、肉塊は動きを止めた。
 同時に、犬は危険を理解したのか慌ててこの場を逃げ去っていく。

「動きを止めた……」

 動きを止めた肉塊は、徐々にあるものへと形を変えていく。
 そう、まるで巨大な狐のような形へと。

「ど、どうする? 今のうちやっちゃう?」
「馬鹿、どう見ても迂闊に手出ししちゃ駄目な奴だろ」

 こっそり話し合うアクアと銀時を尻目に、やがて肉塊は三人から見て、九本の尻尾を持つ狐のようなシルエットへと形を整えた。
 そして狐と化した肉塊は、あろうことか三人に言葉を投げつけた。

『よくも、よくもやってくれたな……!』

 肉塊の言葉から伝わってくるものは、怨嗟。
 何の心得もないものが受ければ、これだけで押しつぶされると錯覚しそうな程の重圧。
 それが、目の前の肉塊から発せられている。

 しかし、三人にその程度の圧は通じない。
 歴戦の勇者たるアルスに、侍たる銀時。
 そして悪魔しばくべしを教義に掲げる宗教のご神体は、肉塊に怯むことなど無かった。
 それを知ってか知らずか、肉塊の言葉は続く。

『ああ口惜しや……! まさかシャガクシャがこれほど早く落ちるとは……!
 おかげで無理矢理こんなものに己を宿し、未だ産まれることすら叶わぬ……!!』

 肉塊の言葉の意味は、三人には理解できない。
 そして言葉を発する主に理解させる気もない。これはただの愚痴だ。

『貴様らと出会わなければ……! こんな殺し合いなぞに呼ばれなければ……!
 我は完全なる姿で誕生できたものを……!!』

 愚痴をこぼす肉塊。しかしここでこいつに違うものが芽生え始める。
 それは、疑問。

『しかしなぜシャガクシャが死ぬ……?
 あやつは既に我と同じ存在になっていたはず……』
「何言ってんのコイツ」

 疑問を口にする肉塊に対し、アクアは冷めた言葉を口にする。
 彼女からすれば、目の前の相手こそが浄化すべき悪魔。アクシズ教が決して認めることのできない存在。
 もしかしたら最初に襲ってきた男も、この悪魔が取り付いていたからあんなことをしてしまったのかもしれない。
 だとすれば、彼も被害者だ。楓を殺したことは許せないが、彼女を蘇生した後なら一緒に蘇生して、丸く収められるかもしれない。
 もっとも、悪魔と関係なく悪い奴なら話は変わるが。

 そんなアクアの内心を知ってか知らずか、肉塊は彼女を睨む。

「なに〜!? あんまり見ないで欲しいんですけど〜!!
 あんたみたいな悪魔にジロジロ見られているだけで蕁麻疹が出そうなのよ!!」
『なんだ貴様は……?
 なぜ、そんなに光がある……』

109第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:48:23 ID:/gXohknM0

 シルエットだけで目などない筈なのに、ギロリ、という効果音が聞こえるほど、アクアは肉塊に睨まれたような錯覚を覚える。
 その言葉からはさっきまでの怨嗟が可愛く見えるほどの、圧倒的な憎しみが籠っていることをアクアは瞬時に理解する。
 これほどの黒い感情をアクアは感じたことがない。
 魔王軍の幹部が相手であっても、こんな感情は向けられたことはなかった。

「ギガデイン!!」

 ズガアアアアアアン!!

 だがここでアクアに対する黒い情念を断ち切るかのように、アルスが己が持つ最強呪文で肉塊を攻撃する。
 彼は目の前の肉塊を最大限に警戒していた。この魔物はもしかしたら、かつて倒した大魔王ゾーマに匹敵するやもしれない恐るべき存在だと。

『おのれ……!!』

 しかし肉塊は未だ意志を持ち動く。
 決してダメージを受けていないわけではないが、戦闘に支障はないだろう。

『貴様もか……貴様もまた忌々しく光を携えている……』

 そして肉塊の怨嗟はアクアのみならず、アルスへも向けられる。

『いいだろう』

 ここで肉塊はある決意をし、宣言する。

『まずは貴様らを滅ぼし、この殺し合いの参加者を滅ぼし、主催者を滅ぼす。
 そして全ての世界へと攻め入り、全ての光あるものを滅ぼしてくれようぞ!!』
「おいおい、何でこんなタイミングで大魔王との戦いが始まるんですかコノヤロー。
 ラスボスも大魔王なのに変なタイミングでスケールのデカ盛りしてくるんじゃねーよ」

 肉塊のスケールの大きい言葉にツッコミを入れる銀時。
 しかし軽い言動に反するように彼の目つきは鋭く、肉塊を睨んでいる。
 決して目の前の相手が、口だけのモノではないと感じているがゆえに。

 各々最大限の心構えを持って目の前の肉塊に相対する。
 故に彼らには聞こえない。

『ナンデ ワレハ―ー』

 肉塊の呟くような、小さな本音も。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 大魔王ミルドラースの、初めての定時放送も。


 こうして彼らの戦いは始まった。



 シャガクシャが本来辿る未来で、獣の槍の話を聞き追い求める頃より後ならば。
 もしくは、獣の槍の正当なる持ち主、蒼月潮ならこの肉塊をこう呼んだかもしれない。

 白面の者、と。

110第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:48:41 ID:/gXohknM0





 シュルルルルルルル

 肉塊の九本ある尻尾と思わしき部位のうち三本を、それぞれ一本ずつアクア達三人へ、刺し貫こうと伸ばしてくる。

「いいいいいいいやああああああああああ!!」

 その尻尾をアクアは叫びながら、後の二人は無言で躱す。
 そんな二人に向けて、アクアは必死に訴えかけた。

「お願い! ちょっとでいいから動きを止めるか弱らせるかして!!
 そしたら私の魔法で倒せるから!!」
「止めろったってどうしろってんだよ……!」

 アクアの言葉に愚痴る銀時。
 現状、目の前の肉塊に近寄ることがあまりにもリスキーな状態で、剣しか武器のない彼にできることはあまりにも少ないだろう。
 肉塊の攻撃を回避するのが精一杯だ。

「そこはほら……なんかないの必殺技とか!
 カズマさんなら適当に水出して凍らせるとかしてくれるわよ!!」
「んなこと言われても知るかァァァァ!! 俺はそのカズマって奴じゃねーんだよ!!
 というか必殺技はずっと欲しがってんだよ!!
 バンナムが俺らのゲーム化にどんだけ苦労し続けてると思ってんだ!! 捏造したりかめはめ波でなんとかやりくりしてんだよ!!」
「じゃあ今撃ちなさいよかめはめ波!!」
「本編で撃てるかァァァァ!! 東○アニメーションに俺らがBN Pictures諸共根切りにされるわ!!
 ただでさえプ○キュアで色々あったってのに、なんとか円満に終わった俺らの本編をどうするつもりだテメェ!!」

 そしてそのままなぜか口論が始まってしまった。なお、この間にも二人は肉塊の尻尾の攻撃を必死に躱し続けている。
 一方、二人とは異なり無言で避けていたアルスはある可能性に気付き、試してみる。

「ライデイン!!」

 アルスが呪文を唱え、雷を肉塊に撃ちだす。
 その雷はさっきのギガデインより威力は低いものだが、彼の狙いはそこではない。
 彼はこれによりさっき検討した可能性が事実と気づき、二人に伝える。

「二人とも聞いてください!
 このモンスターは自身の意志とは別に、素早く動くものに体が勝手に引き寄せられる習性があります!!」
「えっ、そうなの!?」
『おのれ……!』

 アルスの言葉を聞き驚くアクアと、気づかれたことに苛立つ肉塊。
 彼が見たのは、ライデインを放った瞬間、雷に向かって肉塊が引き寄せられた事実。
 最初、肉塊の体が意志を無視して動いているように見えた彼は、どういう理屈でそうなるのかを調べたかった。
 そこでとりあえずライデインを撃ち込んだのだ。結果は正解。
 いくらアルス達三人がどれだけ早く動こうとも、雷より早く動くことはできない。
 ならば、もっともはやく動くものに向かう性質のあるノトーリアスB・I・Gが雷に向かうのが必然。

「なるほどな……だったら!」

 そして、銀時はそれを聞きある決断を下す。

「オラよ!!」

 なんと、銀時は肉塊へ向けて自ら駆け出していった。
 それを見て思わず叫ぶアクア。

「ちょっと何やってんのよ!? 話聞いてたの!?」
「うっせえ! 俺が囮してやるから、お前はなんとか魔法ぶち込め!!
 テイルズオブシリーズでよくある、後衛の魔法詠唱の時間を前衛で稼ぐアレしてやるから!!」
「……ああもう! 死ぬんじゃないわよ!!」
『させると思うか?』

 銀時の無茶としか言いようのない行動に、アクアは慌てて魔法の詠唱を始める。
 その行動が奏し、肉塊の一部は銀時に引き寄せられる。
 しかし、大半は尻尾の形を成しアクアへと向けられた。

111第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:49:05 ID:/gXohknM0

「イオラ!!」

 その間、アルスはアクアの護衛に回った。
 これだけはっきり叫んでいれば、肉塊はアクア様の方を最優先で狙うに違いない。
 いくら銀時が動き回って引き付けるにしても、それには限度がある筈。
 必ずアクア様にも攻撃が来るだろう。ならばその隙は自分がカバーする。

 なので、彼は呪文で肉塊を爆破した。
 爆破された肉塊は形を失い、ベチャリと床に落ちる。
 そこに意志は感じない。ただ、僅かながらピクピクとアルス達ににじり寄っていく。
 これを見て、肉塊をバラバラにすることに意味はないとアルスは理解した。

「クソッたれ!!」
『おのれ……!!』

 その間、銀時は肉塊の周りを走り回り、少しでも己に引きつけていた。
 これにより引き付けられているという事実に肉塊の意志が苛立ち、無理矢理引き留め、銀時を無視させようとする。
 アルス、アクアと違い銀時には現状、肉塊に有効な手立てはない。
 ならば、無視していても前二人と違ってそこまで大きな損失ではない。
 だが動く。ノトーリアスB・I・Gの能力に、宿った意志など関係ないのだから。

『ええい!』

 ここで肉塊は逆に考えた。
 ならば先に囮となっている男を殺してしまえ、と。
 その考えの通り、銀時の動きに引き寄せられている体を放置する。

「はっ!」

 だが銀時はそれを読んでいた。
 意志とは違う動きを見せる肉体に肉塊が苛立っていることは、彼でなくとも読める。
 ならばそれを利用して動きを誘導すること自体は、そう難しいことではない。
 そこに彼は狙いを付けた。

「喰らいやがれ!」

 そして銀時は床に落ちているカチンカチンライトを拾い上げ、肉塊を照らす。
 シャガクシャの雷になった体を固めているのを見ていたので、同じようにこの肉塊も固めることができると銀時は考えたのだ。
 彼は知らないが事実、彼のいる世界とは別にある地球から離れた遠い宇宙において、このライトでアンゴルモアという軟体生物の肉体を固めた記録もある。
 しかし――

 シュルルルルルルルルル!!

「うおわァァァァァ!!」

 肉塊は固まることなく、なおも銀時を狙い続ける。彼は失敗したのだ。
 このカチンカチンライトに、軟体生物の硬度を上げる効果はない。
 楓のデイパックに眠る説明書きにはその記述があるが、彼にそれを読む時間はなかった。

 銀時に肉塊が迫る。
 ライトで照らすことを選んだため、動くのが遅れてしまった。
 だが彼にはまだ終わりは訪れない。
 なぜなら――

「ライデイン!!」

 銀時に、目覚めたアリスという救いの手が伸ばされるからだ。
 雷に打たれ一時動きを止める肉塊。
 その隙に銀時はアリスへと駆け寄った。

「オイオイ大丈夫かよ」
「勇者はね、死んでなければ戦えるのよ」

 心配する銀時に対し、アリスは本調子でないことは明白なものの、強気の姿勢を見せた。

「アリス!」
「良かった……!」
『また眩い光が増えるか……!!』 

 それを見てアルスとアクアは安堵し、肉塊は新手に腹を立てる。
 しかし焦りは見せない。
 肉塊には、たとえこの状況で新手が増えてもまだどうにかできるだけの自負と、それにふさわしい実力がある。
 だが――

「マジカル・スプラッシュ・フレア!!」

 さらに人手が増えればどうだろうか。
 前触れもなく空中から桃色の閃光が肉塊を包み込む。
 その場に居る全員が慌てて上空を見るとそこには、どこかの制服と思わしい服を着た少女と、どこか露出度が高めの白を基調とした服を着た少女の二人組の姿があった。
 これを見た銀時とアクアは思わず呟く。

「「魔法少女……?」」

112第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:49:25 ID:/gXohknM0





 時は放送直後まで遡る。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』
「「えっ!?」」

 願いを叶える為殺し合いに乗り、まみかと理愛に襲い掛かったものの逃走した男、彼女達は名前を知らないがエレンを探し、今度こそ止める為、二人は林を飛んで彼を探していた。
 しかし、前触れもなく聞こえてきたミルドラースの声に二人は驚き、思わず移動を止める。

 そして始まるのは魔界の王の独演会。
 殺し合いの開始から六時間で生命の終わりが訪れた者をあげつらう、趣味の悪い発表会。

『ではこれにて、コンペ・ロワイアル第一回定時放送を終了する。
 次の放送も聞けると良いな、参加者の諸君』
「酷い……!」

 午前六時に流れたミルドラースの放送を聞き、小さく呟くまみか。
 彼女の呟きには、怒りが込められていた。
 まず、死者の人数が予想より多すぎる。
 誰も死なないとは、思っていなかった。
 誰も殺し合いに乗らないとは、考えていなかった。
 それはこの六時間の中で出会ったコーガ様や、名前は知らないがさっきまで戦っていたエレンが突き付けている。

 しかしそれでも、三十人もの死者が出るとは予想していなかった。
 これは殺し合いに乗った参加者がいくら強くても、二人や三人ではこんな人数を殺すことはできないだろう。
 つまり、殺し合いに乗った参加者は何人もいる。
 それを、ミルドラースは楽し気に、喜ばし気に眺めているのだ。
 そのことが、まみかのみならず、言葉にこそしなかったが理愛にも怒りを覚えさせる。

 だがここで感情的に怒るのは賢い振る舞いではない。
 そうしたいのはやまやまだが、当たり散らす相手がいないことと、そもそも二人とも当たり散らすタイプではないことが幸いした。
 彼女達が考えるのは、今後の行動だ。

 まず死者三十人に対し、まみか達が出会ったのは自分達を除けばコーガ様と、二人は名前を知らないがエレンの、殺し合いに乗っている二人。
 明らかに、この殺し合いで現在生き残っている参加者の中でも、出会った参加者の数は少ないだろうと彼女達は推測している。
 実の所、生き残っている参加者の中で出会った人数で言うなら、彼女達と同じか以下の者もいるのだが、それはまた別の話。
 とにもかくにも、彼女達は情報が足りない。
 なので、彼女達はエレンを探すことを諦め、人の多そうな北を目指すことにした。

 殺し合いに乗っている参加者を野放しにすることに抵抗はある。
 しかし、林の中では飛行が危うい理愛を連れて探索するのは非常に時間がかかり、その間に向こうが森から離れる可能性はおおいにある。
 二手に分かれるということも考えなくはなかったが、NPCの未知性と理愛の現状を鑑みるとそれも選択しにくい上、エレンばかりに気を取られトキを長く放置することもできない。
 なので彼女達は、トキと名前は知らないがエレン。後ついでにコーガ様の危険性を他の参加者に訴えつつ、彼らを探す方向に舵を切ることにしたのだ。

 そう決断してしまえばまみかと理愛二人の動きは早い。
 林だけは慎重にしつつ、抜けてしまえば彼女達の移動を妨げるものは特にない。
 NPCを避けつつ彼女達は北へ向けて進む。目指すのはF-8、G-8にあるフェイタル・フィールドだ。
 同じエリアのラッキー・ランディングに行くつもりはない。
 余りにも近すぎて今更他の参加者に出会えるとも思えないし、エレンやコーガ様も逃げた以上そんな近場にはいないだろう、と彼女達が判断したためだ。
 代わりに目指すのはF-8、G-8にあるフェイタル・フィールド。
 目指す理由はラッキー・ランディングの次に近いというだけだが、裏を返すと他に当てがないので仕方ないことである。

 その後、何事もなくまみかと理愛は目的地であるフェイタル・フィールドに到着し、そして見た。
 何か分からない肉塊が、数人の男女を襲う光景を。
 そして人を襲う怪物と戦うことに、魔法少女達は躊躇しなかった。

「マジカル・スプラッシュ・フレア!!」

 そして現在に至る。

113第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:49:45 ID:/gXohknM0

「味方、でいいのよね……」
「多分な」

 突如現れたまみかと理愛を訝しげに見つつも、とりあえず敵とは認識しないアリスと銀時。
 一方、アクアは迷うことなく二人の魔法少女に話しかける。

「ねえそこの魔法少女たち〜! ちょっとでいいからその気持ち悪い奴の動き止められないかしら〜!!」
「え?」

 アクアの呼びかけに思わず間の抜けた声を出すまみか。
 彼女の認識では、倒せるかどうか別としてもあの肉塊に大きいダメージを与えているはずだった。
 しかし今まで肉塊と戦っていた四人は、どうにもダメージを与えられていない前提な気がする。

 実の所、四人の中でアリスだけは目覚めたばかりなので肉塊の脅威度をあまり分かっていないため、単に敵が死んだと確定するまで警戒心を絶やしていないだけなのだが、それをまみかが知ることはない。

 ともかく、まだあの肉塊が動くのなら、戦いが終わっていないのなら、油断するわけにはいかない。
 すると、ここで理愛がデイパックからあるものを取り出す。
 それは、動きを止めるという要望に最も適したもの。
 前にデイパックを検めた時には、その時欲しかった紙や飲食物、体を温めるものではなかったのでしまい込まれたもの。
 緑色の葉と茎に、顔が付いた青色の花。
 名前を、アイスフラワーという。

「アイスボール!!」

 地上に降りた理愛がアイスフラワーを肉塊に突き付ける。
 すると花から、ボールという名前とは裏腹に、吹雪を思わせるほどの氷の嵐が巻き起こる。
 巻き起こった吹雪はたちまち肉塊を氷漬けにしていく。

『や、やめろ……!!』

 肉塊は必死に吹雪の範囲外へと己を伸ばす。
 しかし常温から一瞬で氷漬けにするほどの低温が吐き出される中では、普段通りの動きなどできる筈も無し。
 抵抗むなしく、肉塊は完全に氷漬けとなる。

「今だ!」
「オッケー! 『セイグリッド・ターンアンデッド』!!」

 いくらなんでもこの機を逃すアクアではない。
 銀時の呼びかけと共に彼女は躊躇なく浄化の魔法を振るう。

『ギエエエエ! 馬鹿な、我が、こんな……!!』

 氷漬けになってなお、肉塊の怨嗟は辺りに響く。
 せめて氷漬けになっておらず万全ならば、避けるくらいはできた。
 あるいはこんなものに憑依するのではなく、生まれることさえ出来ていれば、耐えられたかもしれない。
 もしくは、敵に女神や勇者がいなければ、たとえ氷漬けにされても対処できただろう。

 そして、この場の誰もが知ることのない敗因がもう一つある。 
 それは、スタンド能力というものの性質。

『大切なのは「認識」すること ですじゃ。! スタンドを操るということは、できて当然と思う精神力なんですぞッ!』

 これはスタンドに詳しいエンヤという老婆の言葉だ。
 肉塊に宿る意志にとって、スタンドである今の肉体は真逆の存在。
 なぜなら、意志からすれば自分は人間とは真逆の陰の存在であり、肉塊は人間という陽の存在から生まれた産物だからである。
 この認識のせいで、肉塊は己の肉体を自在に操るどころか、逆に振り回される始末。
 もし今の肉体を己と同類と認識していれば、制御に苦しむことはなかっただろう。

 しかしそれは無理な話。
 最初、それこそシャガクシャが桐山と戦うより前、主催者がディスクを頭に入れてもらうために付けた懇切丁寧な説明書きの中に、スタンドがどういったものか、どういう効果をもたらすのかがきちんと書かれていたものを、シャガクシャは読んだのだから。
 そうでなければ、誰がディスクを頭の中に入れようなど思うものか。得体のしれない悪魔の実なぞ食べると思うか。
 それを肉塊の意志も把握していたのが運のつき。

 とどのつまり、シャガクシャがこんな早期に死んだ時点で肉塊の詰みは大いにありえた話。
 だから滅ぶ。
 本来の未来において多くの人間、妖を苦しめ、幾多の国を滅ぼした妖怪となることも無く。
 ただ突如現れた、謎の怪物として滅ぶ。

 肉塊はその事実を限りなく認識しつつも、しかし叫ぶ。

『我もせめて、生まれるくらいは――』

 だがその叫びが完全になるより先に、肉塊の意志は消滅する。
 生まれたいと叫んだ不完全な命は、完全な水子となって消えていった。


【■■■■@うしおととら 流産】

114第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:50:08 ID:/gXohknM0


「終わった……!?」

 悪魔の気配が消えたことで、アクアは戦いの終わりを感じ思わずその場にへたり込む。
 しかし、そうは問屋が卸してくれない。

「いえアクア様。言いにくいのですが、あの肉塊は氷が解けるとまた動き出すと思います」
「えっ!? じゃあどうするのよ!!」

 アルスの言葉に驚くアクア。
 しかし彼は見ている。イオラで爆破され、バラバラになった肉塊の一部が動いている所を。
 故に、氷が解ければすべて動き出すと彼は予想していたのだ。
 そして、対策も考えている。

「デイパックに、しまっておきましょう」
「これを!?」

 アルスの提案に叫びつつ抵抗感を覚えるアクア。
 人を食べる肉塊を好き好んで触りたくはない、という当たり前の感覚だが、そんなことは言ってられない。
 現に、銀時は物凄く嫌そうな顔をしながらも、氷漬けの肉塊をシャガクシャのデイパックに放り込み始めたのだから。

「オラ、お前も手伝えよ駄女神。手伝わねーとMVPから足手まといまで降格させっからな」
「わ、分かったわよ! やればいいんでしょやれば!!」

 銀時にせっつかれ、いやいやながらも肉塊を仕舞い始めるアクア。
 本来ならここに勇者や魔法少女たちも加わるのだが、そうもいかない事情がある。
 それは――

「あのすみません、理愛ちゃんを助けてください!!」
「     」

 肉塊と一緒に、理愛も氷漬けになっているからだ。
 彼女が使ったアイスフラワーは実は試作品で、広範囲を氷漬けにする代わりに使用者も凍ってしまうという欠陥があったのである。

「「メラ!」」

 凍った理愛を早く助けるべく、火の呪文を唱える勇者二人。しかしそんなすぐに溶けるほどの高威力を、味方に向けられるはずがない。
 心配そうに見つめるまみかを横に、二人は理愛の氷を地道に溶かす作業を始めるのだった。


【G-8 酒場跡地/早朝】

【アルス(男勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:ダメージ(中)、MP消費(大)
[装備]:王者の剣@DQ3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:あの子(理愛)を助けないと
2:アリスは、もう大丈夫か……
3:仲間を探したい
[備考]
※性格は不明ですが少なくともアリスよりは力が下です
※名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています
※第一回放送を聞き逃しました

【坂田銀時@銀魂(アニメ版)】
[状態]:ダメージ(中)、二日酔い(ほぼ醒めている)
[装備]:洞爺湖@銀魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:主催者の打倒。殺し合いには乗らない。
1:早いとこ肉塊(ノトーリアスB・I・G)を早いとこデイパックにしまわねえと
2:仲間探しは新八も総悟君も放っておいて大丈夫だろうし、探すのは楓さんの同僚を優先でいいよな
3:アクアが女神ねェ……。全く見えねえ
4:なーんか引っかかるな……この名簿
[備考]
※二日酔いによる頭痛に悩まされております。
※アクアを女神だと認識しましたが、態度を改める気はありません。
※メタ知識を制限されています。何らかのきっかけで解除されるかもしれません。
※第一回放送を聞き逃しました

115第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:50:24 ID:/gXohknM0

【アリス(女勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:ダメージ(小)、火傷痕(命に別状なし)、魔力消費(小)
[装備]:ロトの剣@DQ1
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:とにかくまずはあの子(理愛)を助ける
[備考]
※性格は【おとこまさり】です。
※名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています。
※第一回放送を聞き逃しました

【アクア@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:酒の飲みすぎによる悪酔い(今はそれどころではない)、魔力消費(中)
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、扇子×2@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[思考・状況]基本行動方針:主催者の大魔王ミルドラースを倒す。殺し合いには乗らない。
1:うえー……これ(ノトーリアスB・I・G)ばっちい……
2:楓の蘇生を試みたい
3:カズマが心配。ウィズは多分大丈夫でしょ
4:主催者を倒して元の世界に帰る。
5:大魔王が殺し合いを開いて私を呼ぶなんて、これはアクシズ教への宣戦布告ね!
[備考]
※施設内にあった大量の酒を飲みまくったせいで悪酔いしています。
※回復魔法に制限が掛かっています。度合いは次の書き手氏にお任せします。
※第一回放送を聞き逃しました

【煌樹まみか@Re:CREATORS】
[状態]:ダメージ(極小)
[服装]:魔法少女姿
[装備]:マジカルステッキ@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品、婚約指輪@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校、柔らかいタオル@こじらせ百鬼ドマイナー(濡れている)
[思考]
基本:こんな殺し合いなんて止めないと
1:理愛ちゃんを助けないと
2:あの男の人(エレン)を追いかけて、止める
3:理愛ちゃんの身体が心配。無理をしてないといいけど
4:『アンテン様』…やっぱり何者でしょう…?
[備考]
※本編第九話「花咲く乙女よ穴を掘れ」で、死亡後からの参戦です
※コーガ様を、『別の物語の登場人物』だと思っています。
※コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。

【有栖川理愛@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:発情(小)、快楽中毒(中)、ダメージ(極小)、氷漬け
[服装]:魔法少女姿、髪は解いている
[装備]:魔法の杖(変身前はペンダントの形態)@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘、アイスフラワー@スーパーマリオくん
[道具]:基本支給品(ストロングゼロとカップ麺、ルールブックは焼却)、ランダム支給品×1(紙や飲食物、回復アイテムの類は無い)、
     エポナ(足を骨折)@ゼルダの伝説シリーズ、、使い捨てカイロ@妖怪の飼育員さん、レインコート@妖怪の飼育員さん
[思考]
基本:殺し合いを止めたい
1:…………
2:あの男の人(エレン)を追いかけて、止める
3:身体の疼きが……
4:もしトキくんと出会ったら、その時は……
5:『アンテン様』……もしかして魔罪人……?
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※トキによって仕掛けられた『道具』は解除されています
※コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。


※氷漬けのノトーリアスB・I・G@ジョジョの奇妙な冒険 は、シャガクシャのデイパックに仕舞われていきます。


【アイスフラワー@スーパーマリオくん】
有栖川理愛に支給。
5巻12面に登場。使用するとアイスボールと言いつつビームのような勢いで氷が発射され、敵を凍り付かせる。
ただし開発中のアイテムなので、使用すると自分も凍り付く。


【ダンサー@厚岸コンキリエCM】
正式名称『北海道厚岸町にある道の駅、厚岸グルメパーク内の施設「厚岸味覚ターミナル コンキリエ」』のCMに登場するダンスをしている外国人男性。
2018年ごろからCMに登場し、白いパーカーを徐々に脱ぎながら踊っているのが特徴。2021年頃からパーカーの柄が迷彩に変化したものもある。
この男性はCMの為に起用されたのではなく、フリー素材として有料配布されている。

本ロワでは『厚岸コンキリエ』という別人の謎ボイスとともに登場し、踊りながら食料を参加者に渡してくれる。
渡してくれるものは牡蠣だったり毛ガニだったり、もしくはかき豚丼だったりする。

【4って鳴く犬@X(旧Twitter)】
yu氏が2017年11月21日にTwitterに投稿した、数秒程度の動画に登場する白い犬。動画内では「4!」と二回鳴く。
ニコニコで小規模に音MAD素材として流行ったことがある。
本ロワではやたら画質が悪いことと、鳴き声が4なこと以外はただの犬。

116 ◆7PJBZrstcc:2024/08/13(火) 12:50:43 ID:/gXohknM0
投下終了です

117 ◆7PJBZrstcc:2024/11/13(水) 22:50:41 ID:kt/oYONE0
卯月、平野、ペテルギウス、真人 予約します

118 ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:54:48 ID:lDIOVIm.0
投下します

119情報を得る大罪と呪い/溶けた氷の中に ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:55:40 ID:lDIOVIm.0
『ではこれにて、コンペ・ロワイアル第一回定時放送を終了する。
 次の放送も聞けると良いな、参加者の諸君』
「あああああああああああああああああああ!! 怠惰怠惰怠惰怠惰怠惰怠惰怠惰怠惰怠惰!!
 なんという怠惰ああああ!! どうか寵愛に背いた私の怠惰をお許してくださいいいいいいいい!!」

 ここはI-8 パラダイス・バームズ。
 その一角に作られた防壁の中で、ペテルギウスの絶叫が響き渡る。
 彼が叫ぶ理由は放送にある。

 ミルドラースの放送の中にある大量の情報。
 禁止エリア、退場した参加者。
 そしていくつかの事柄。それらは参加者へと大なり小なり何かを齎す。
 それはペテルギウスも例外ではない。しかし、彼が知ったものは他の参加者とは大きく異なった。

「よりにもよってこの殺し合いの名簿を確認していないとは、なんという怠惰!!
 今すぐ確認しなければ!!」

 ペテルギウスにとって禁止エリアの場所は今の自分とは関係がなく、退場者の名前の中に知っているものはない。
 ならば何を知り叫んでいるのかというと、今まで彼は名簿の存在を知らなかった。
 それもそのはず、なぜなら彼は春花との戦闘の中NPCを福音と見間違えた自分を罰するために、最低でも二時間以上自身を傷つけていたのだから。
 その最中に起きた最初の放送を聞き逃し、彼は重要なことを知り損ねていたのだ。

「ああ……脳が震えるうううう!!」

 本音を言うならいくら自分を痛めつけても足りないほどに悔いているが、だからといってそんなことをしている暇はない。
 無駄な時間を過ごすことほどの怠惰はないのだから。

「さて、名簿に知っている名前はあるのでしょうか」

 ペテルギウスは名簿を丹念に確認する。もし魔女の器となれるであろうエミリアがいれば大変なことだ。
 万に一つの見逃しもないよう懸命に、穴が開くほどに見つめていた。
 しかし、彼が見つけた知っている名前は一つだけだった。

 レグルス・コルニアス

 自身と同じく魔女教大罪司教の一員。
 しかし仲間かと言われればそんなことは全くなく、優勝を目指すために手を掛けることに躊躇するような間柄ではない。

「ここにいる知人は彼一人……
 我が同胞や指先を無駄に潰す必要が無くて何より……デス!」

 懸念材料がなくなり、考えるべき事柄が一つなくなるペテルギウス。
 これで彼は、魔女の寵愛を汚した平野と卯月の殺害と福音書を取り戻すことに専念できるようになる。
 どうにもさっきまで戦っていた敵は近くにいないようなので、土魔法を解除し防壁を消す。
 するとペテルギウスの視界に落ちている杖とデイパックを見つけた。
 誰であろう、卯月が持ってきたものの、逃げる際に置いて行ってしまったものである。

「怠惰デスね〜」

 殺し合いの中で武器と荷物という大事なものを落とす参加者を嘲りながら、ペテルギウスは杖とデイパックを拾ってから自身のデイパックにしまう。
 そのまま寵愛を汚した二人を殺すべく、彼は移動を開始するのだった。


【I-8 パラダイス・パームズ/朝】

【ペテルギウス・ロマネコンティ@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:体温低下、両手指欠損、頭から出血と打跡(回復中)、ダメージ(回復中)、興奮(大)、盗人(主催者)への怒り(大)、寵愛を汚した平野と卯月への怒り(極大)
[装備]:ナイフが括りつけられた箒@進撃の巨人
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~1、フリーズロッド@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
     卯月のデイパック(サバイバルナイフ@バトルロワイヤル、強力うちわ「風神」@ドラえもん、ビームサーベル@銀魂、レイガン@大乱闘スマッシュブラザーズX (エネルギー1/5)
                のび太の支給品(基本支給品、ランダム支給品0~1)、ピーチ姫の基本支給品)
[思考・状況]
基本行動方針:脱出優先。必要なら勤勉に優勝を目指す。
1:よりにもよって名簿を確認していないとは!! どうか私の怠惰をお許しくださいいいいいいいい!!!
2:寵愛を汚した平野と卯月を殺す。
3:我が福音書を取り戻すのデス!
4:『見えざる手』を私以外が見ることが叶うなど、あってはならないのデス!
5:レグルス、彼もここにいるのですか。彼は福音書を持っているのでしょうか。
[備考]
※野崎春花、平野源五郎が『見えざる手』を視認できることを認識しました。
 不可視の『見えざる手』は、少なくともスタンド使いなら視認できるようです。
※憑依に関する制限は後続の書き手に任せます。

120情報を得る大罪と呪い/溶けた氷の中に ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:55:59 ID:lDIOVIm.0





「結構死んだな〜」

 それが、真人が放送を聞き終えた最初の感想だった。
 カフェオレを飲んで休憩していた彼だったが、ここでミルドラースの放送が聞こえてきたのでとりあえず聞いていたのだ。
 結果、死亡者は三十人。参加者の四分の一近くがたった六時間が死んだと考えれば、なかなかに多い方と言っていいだろう。
 このうち、真人が殺害したのは二人。すなわち残り二十八人は別の誰かが殺したということになる。
 死んだ参加者の全員が殺し合いに乗っていない無力なものではないだろうが、それでも乗っている側の参加者は十を超えるだろう、と彼は考える。

「あ、そういえば」

 ここで真人はさっきの放送を思い返し別の事に気付く。
 さっきの放送で、宿儺の指を飲ませようとしたあの青髪の、野原ひろしが確かレヴィと言っていた少女の名前は呼ばれていなかった。
 指を飲ませることに成功し、宿儺は顕現したのだろうか。
 それとも外的要因、例えば野原ひろしか知らない参加者が改造人間を倒してレヴィを救いだしたのか。
 はたまた、宿儺の指を飲ませることは成功したものの、レヴィの意志で抑え込み自身の自由意思で行動しているのか。

「最後のはないよな」

 多分、と付け加えながら真人は思う。
 思いついておいてなんだが、全く想像できる光景ではない。
 いくらあの少女が自分達に近しいからと言って、宿儺を掌握できるとは想像しがたい。
 しかし彼女の正体を知らない以上、万が一がないとは言いきれない。

「戻った方がいいかな〜」

 自らが起こそうとした事柄の結果を確かめるべく、一度H-6に戻るべきだろうか。
 万が一失敗した時のことを考えると、貴重な宿儺の指の回収も視野に入れないといけない、と仲間の漏瑚あたりはそう言うだろうか。
 改造人間に失敗したら戻ってくるよう命じているが、当の自分が全然違う場所に移動してしまったのでここには来ないだろうし。

「めんどくせっ」

 しかし真人は正直やる気が起こらなかった。
 まあ回収できるならしたほうがいいだろうしそのつもりだが、それに固執するのはどうにも違う気がする。
 呪いらしくない、と思ってしまう。
 少なくとも、自分がやることではない。

「まあ今呪力消耗してるしー、その状態でのこのこ戻ったら野原ひろしと遭遇しちゃいそうだしー」

 とうとう誰にしているのか分からない言い訳を始める真人。
 言い分は事実その通りなのだが、それを理由にしているだけなのは、もしこの場に他の誰かが居れば誰もが分かることだろう。
 とはいえ呪力を回復させなければならないのも事実。
 なので彼はカフェオレを飲みつつ気になっていた映画、ATTACK OF THE KILLER PUMPKINSを見ようと、再生できる機械を探すことにした。


【I-8 パラダイス・パームズ/朝】

【真人@呪術廻戦】
[状態]:呪力消耗(中〜大)、喜び
[装備]:大量の改造人間(ゴブリン数体を含む)@呪術廻戦+他、変身の指輪@Fate/Grand Order、ATTACK OF THE KILLER PUMPKINSのDVD@妖怪の飼育員さん
[道具]:絶叫するビーバーの死体とデイパック(中身は基本支給品一式、ランダム支給品0~1)、カフェオレ@アンテン様の腹の中(消費中)
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:呪力を回復させつつ、この映画(ATTACK OF THE KILLER PUMPKINS)を見たいな
2:皆殺し。
3:青髪の少女(レヴィ)が宿儺の器になれているか確かめる。そのうちだけど
4:領域展開の兆しは見えた。後は試す相手か。
5:改造人間に渡した指、どうにか回収できないかな。というかどうなったんだアレ
6:あの三人(ペテルギウス、平野、卯月)については保留。
[備考]
※原作16話より参戦です。
※領域展開をなんとなく感じましたが、似たような状態にならないとできないかもしれません。
※F2000Rを模して改造人間を弾丸にすることを覚えました。やってることはぶっちゃけ原作のサイコガンもどきのあれです。
※数体ゴブリンを改造人間としてストックしています。

121情報を得る大罪と呪い/溶けた氷の中に ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:56:23 ID:lDIOVIm.0





 時は少し戻り放送前、I-8 パラダイス・パームズを疾走する一組の男女がいる。
 いや、この言い方は正しいのだろうか。
 正確には、少女を台車に乗せて走る男性の姿がある。
 誰であろう、卯月と平野である。
 二人は態勢を整える為に一度退くことを選ぶ。
 一度退き態勢を整えれば、勝算はある。
 卯月の氷の魔法と平野のスタンドの二つが揃えばあの狂人、ペテルギウスの見えざる手に十分対抗できる。
 だからこそ一度距離を取りつつも決して戦いを放棄するつもりはなかったが、ここで卯月に異変が起こった。

「うぐっ……ああああああああああああ!!」

 なんと、卯月が急に頭を抱え呻きだしたのだ。
 突然のことに何が起こったのか理解できない平野。
 だがこれでは戦うどころではないだろう。
 仕方ないので平野は予定を変更し、ペテルギウスを迎え撃つのではなく逃走を選ぶ。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 直後、放送が流れ始めた。
 一瞬、足を止めてきちんと聞くべきかと考える平野。
 だがここで足を止めることは、ペテルギウスに追いつかれる可能性が増えることを意味する。
 なので放送を耳に入れつつも、平野は台車を押しながら会場を駆けていく。
 途中――

『ピーチ姫』

 平野にとって聞き逃せない名前が聞こえた。
 正直、助からないとは思っていた。
 でものび太と違い、死んだ場面を見たわけでは無いので希望を捨てたくはなかったが、その望みもごくあっさりと無惨に散ってしまった。
 だがここで足を止めてしまえば、何のために走っているのかが分からなくなる。
 なので平野はただ走る。

 それからは幸い妨害もなく、二人はパラダイス・パームズを脱出した。
 そしてそのままどれほど進んだだろうか。平野は疲労するまでとにかくパラダイス・バームズから距離を取る。
 ここで平野は卯月の肌の色が出会った時の、まるで色という物が抜け落ちた白ではなく、自分と同じような黄色人種の肌色になっていることに気付く。
 関連して髪の色も銀から黒くなり、彼には台車に乗る少女がただの日本人の少女に成り代わっているように感じた。

「え、あぁ……私……なんてことを……!?」

 一方、未だ台車に乗せられている卯月は平野が自分を見ていることすら気付かず、口からこぼれる言葉は呂律も満足に回せずただ絶望している。

(まるで生きている蝋人形のようじゃ……)

 その様を見て平野は変な感想を抱くも、すぐにある可能性に行き当たる。

「お主まさか、記憶が戻ったのか!?」

 平野の眼前で頭を抱え、蹲り涙を流す卯月。
 そこに最初出会った時の、記憶を失い取り戻すために殺し合いに乗った冷徹な姿はどこにも見られない。
 ここには絶望し嘆くだけの、ただの少女しかいない。

「……はい。私は全てを、思い出しました……」

 平野の問いに頷く卯月。
 そして彼女はポツリポツリと語り始める。

 最初、殺し合いに参加させられた直後、いきなりゴブリンに襲われ暴行されたこと。
 巫女服を着た自分と同い年くらいの女の子に助けられたが、言動が意味不明すぎることに怯えて逃げ出したこと。
 逃げ出している最中に転び、自分のデイバックから出てきた『飲んだ人の身体を、理想のボディに作り変える』という説明書きが付属された薬を思わず飲んでしまったこと。
 それを飲むと記憶喪失になり、代わりに氷の魔法が使えるようになったこと。
 だが人格もまるで別人となり、記憶を取り戻すために殺し合いに乗ってしまったこと。
 そして今、なぜか薬の効果が消え、記憶を取り戻したこと。

122情報を得る大罪と呪い/溶けた氷の中に ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:56:51 ID:lDIOVIm.0

「それは……」

 全てを語り、絶望のあまりただ俯く卯月に対し、平野は何か声を掛けようとするも、何も出てこない。
 無理もない。平野にとって彼女の言葉はあまりに青天の霹靂。
 殺す気はなくとも止めなければならない敵と認識していた相手が、実はただ薬で狂わされただけの普通の少女だとは思っていなかったのだから。

 こうなると平野にはもう、卯月に対する敵意を持つことはできない。
 のび太とピーチ姫に手を掛けたことだって、卯月のせいではないのだ。
 全ては主催者の手の内。ならば平野に彼女を憎む理由はない。
 おまけにこうして元の姿と記憶を戻すことで、罪のないはずの少女を地獄に叩き落すおまけ付きだ。

(なんと卑劣な!!)

 いくら平野が少年を調教するのが趣味で、無理矢理閉じ込めたりすることはあれど流石に此処まで悪辣ではない。
 むしろネットの淫夢界隈での扱いを知りながらそれを受け入れていたり、淫夢を題材にしたパロディ格闘ゲーム『THE 淫夢 OF FIGHTERS 810114514』に本人役で出演したこともあるほどに聖人の様相もあるのだ。

(俺は店長だが世の中の不逞な、輩を見逃すわけにはいかねぇんだ)

 主催者への怒りを新たに燃え上がらせる平野。
 少女一人をここまで悪辣に追い詰める相手に、最早情けなど一切なし。ただ正義の鉄槌を喰らわせる決意を強めるだけだ。

 なお氷の魔法使い状態から卯月の記憶と姿が戻ったのは、実際の所オレカバトルの二次創作ガイドラインにより急遽コンペロワに参加させられなくなり、参加者と支給品を帰還させた故に起きた弊害であり、決して主催者の意図したところではない。
 しかしその事実を知る術など、今の彼らには持ち合わせていないので、ただ誤解を深めるばかりである。

 そんなことは露知らず、卯月は縋り付くような顔で平野を見つめ、こう言った。

「あの、平野さんでしたよね。確かそう呼ばれてて……」
「ああ、確かに私は平野じゃが」

 名前を問われ、素直に返答する平野。
 そういえばまだこの少女の名前を聞いていなかったことに気付き尋ねようとするが、それより先に卯月が言葉を続けた。

「私を殺してください……」
「何を!?」

 卯月から発せられた内容に驚く平野。
 そこまで思い詰めていたのか。しかし彼女に罪はない。なんとしても止めねば、と決意する中卯月は言葉を紡ぐ。

「私、元の世界ではアイドルだったんです。
 レッスンを頑張ってユニットを組んで、色々ありましたけどシンデレラガールにだって選ばれて、私幸せだったんです。でも……」

 ここで卯月は己の両手を見る。
 今までそこにあったのは努力の末に掴み取った栄光と、その中で手に入れた絆や思い出。
 だが今は、それを覆うように大量の血だまりが見える。
 どれだけ拭おうとも落ちない赤が、お前を逃がさないと見つめている。

「取り返しのつかないことをしたのに、私はまだのうのうと生きているんです……
 さっき聞こえた放送が真実なら、同じシンデレラガールの楓さんは死んでしまったのに」

 卯月の話を聞き、彼女の知人がさっきの放送で呼ばれたことを知る平野。
 彼には彼女に掛ける言葉が見つからない。
 状況を鑑みれば卯月に非はないと平野は言おうとしたが、それをそのまま受け取れる人間ならそもそもこんな考えに至るまい。
 しかし、だからと言って彼女をむざむざ死に追いやる道理もない。
 なので平野はこう切り込んだ。

123情報を得る大罪と呪い/溶けた氷の中に ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:57:10 ID:lDIOVIm.0

「君、名前はなんというのだ?」
「……島村卯月です」
「そうか。ならば卯月。
 私には君の気持ちが分かるとは言わない。しかし想像は付く。その上で言うなら、君は死を選ぶより先にやらなければならないことがある」
「……一体何を……?」
「それは、君が殺したと言うのび太君の友達であるドラえもんとリルル、ピーチ姫の仲間であるマリオとヨッシー、クッパ姫に会って謝罪することじゃ」
「……っ!!」
「無論、私も同行する。私だって二人の仲間じゃからな」

 平野の言葉に何も言えなくなる卯月。
 理屈の上では確かにそうだ、とは言える。
 会いたくないなどと言うのはわがままでしかないだろう。仮に殺されたとしても文句は言えないだろう。
 しかしそんな権利があるのか。未だ生きることにしがみついていいのだろうか。
 だが――

「分かり、ました……」

 それでも卯月は頷いた。
 まるで死にたくないから生きる理由を見つけてしがみつこうとしているように見える自分に嫌悪感を抱きながら、それでも彼女は平野と同じ道を歩くことを選ぶ。

 だが二人は未だ気付いていない。
 今いるこの場はH-7 砂浜。平野がのび太とピーチ姫と死別した場所であり、卯月が二人を殺した罪過が残る地であることを。


【H-7 砂浜/朝】

【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:顔に一本の傷、魔力消費(大~極大)、絶望(極大)、自己嫌悪(極大)、台車に乗っている
[装備]:不死川玄也の散弾銃@鬼滅の刃(弾数8/20)
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:???
1:……私、なんてことを……
2:のび太君とピーチ姫の知人(ドラえもん、リルル、マリオ、ヨッシー、クッパ姫)に謝罪をする
3:……もう死んでしまいたい
[備考]
※『禁断の薬』の効果が解除されましたが、薬を飲む前に受けた傷はサービスで治ったままです。

【平野源五郎@真夏の夜の淫夢シリーズ】
[状態]:頭に傷(小)、スタンドパワー消耗(中程度)、固い決意、疲労(小)
[装備]:マジシャンズ・レッドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険シリーズ、台車@現実、鋼の剣@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品 
[思考・状況]基本行動方針:主催者には正義の鉄槌で、その腐った心を矯正してやろう。
1:卯月と共に行動し、のび太君とピーチ姫の知人を探す。
2: ペテルギウスは保留。少なくとも今すぐ戦わない
3:ピーチ姫……のび太君……
[備考]
※参戦時期は、悶絶少年 其の伍で「今日は逆さ吊り、鞭責めをしよう(提案)」と言った辺り

124 ◆7PJBZrstcc:2024/11/17(日) 08:57:33 ID:lDIOVIm.0
投下終了です

125デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:32:58 ID:aBs992Xo0
投下します

126デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:34:18 ID:aBs992Xo0
 藤丸立香はバギーでシャーローッ・リンリンとヴィータの二人を追っていたものの。
 残すこととなったマサオとオグリキャップへの対応で時間が遅れたこと、
 リンリンもヴィータも生身で車の移動に匹敵する速度で移動していたこと。
 ついでに言えば彼女は無免許運転で慣れてないバギーの運転と言う三重苦。
 三つのことが災いしてしまい、追おうにも二人の姿を見失ってしまったのもあり、
 バギーを道なりに運転しながらも心は途方に暮れていた。

「二人とも、見つからない……」

 マシュや様々なサーヴァントともに困難を乗り越えてきた。
 だが幾多の世界が混在するこの世界に対して彼女はあまりにもちっぽけだ。
 これが人理を救ったマスター……などと自分を卑下にして諦めるつもりはない。
 前を向け。動く足がある。伸ばせる手がある。届かぬ星に歯を食いしばりながら手を伸ばし続けた。
 だから一般人のマスターが成し遂げた。未来を取り戻す旅を彼女は皆の力を借り成し遂げている。
 ……もっとも、それ以上の戦いが待ち受けていることがあったりもするのだが、それは別の話だ。
 ならばどうするか。決まっている。立ち止まってる暇なんかない。だから運転は止まることなく、
 視界は亡き足柄に言われた通り前を見ながらも、周囲の様子を確認しながらバギーを転がしていく。

「!」

 しかし、バギーを彼女は止める。
 バギーを止めたのは、怒鳴るような大声を偶然拾ったからだ。
 声色からして男女の口論。この状況で口論を交わすということは、
 殺し合いに発展してるわけではない、つまり同じ味方の可能性は高い。
 ただ対立はありうること。もしかしたら二人やマシュのことを知ってる可能性もあるし、
 何より口論をしていればそれだけNPCや敵に気づかれる可能性だって高い。
 すぐさまバギーを近くの木陰へと隠し、声の方へと忍び足で様子をうかがう。

「君は何を考えてそんな行動をとっているんだね!?
 身動きの取れない仲間と謎のNPCを放置して向かうなんて、
 漫画でいえば典型的な死亡フラグ以外の何物でもないだろうがッこのスカタン!!」

「私は戦えると言っても本職は服飾が専門なの!
 狼牙なしで私がいたって……待って、今のみっともない言い訳だからなし。
 完全にレーティアは私の判断ミスよ。団長だったらこんなヘマしないのに……」

 露伴からの叱責を素直に受け止めるコルワの姿があった。
 露伴はひろし?から逃亡した後目的地へとたどり着いたわけではあるが、
 そこでは同行者を誰かに攫われてしまったコルワがおり、顛末を聞いた結果、
 『オイオイオイオイ』からの、もはや罵詈雑言めいた叱責を受けており、
 彼女は返す言葉もなく俯いていた。

「まったく、色々言いたいことはあるが、
 此処にあるのは幸か不幸か死体は一人だけで彼女じゃない。
 NPCがどこまで存在意義があるのか分からないことを考えても仕方がない。
 まだ彼女が生きてるかもしれない可能性に賭けて、早く捜索するのが得策か。
 なんで一人は殺して一人は殺さなかったか……まあレーティアだったか。
 彼女のことを考えると、青年誌向けの展開になってそうではあるのが恐ろしいが。」

 ブラックジョークとも言い切れない内容にコルワは唇を嚙み締める。
 コルワだって初見で狼牙のことを警戒するぐらいの酷い有様だったのだ。
 もし連れ去られたのが身体目的だったのであれば、何をされるか想像に難くはない。
 そんなのはお断りだ。ハッピーエンドと言うものに強く固執するコルワにとって、
 レーティアがそんな未来を辿るなんてこと、絶対に認めるわけにはいかなかった。

「あのー、すみません。」

 口論がひとしきり終わったのと、
 敵ではなさそうな会話をしていたのもあり、
 木陰から立香は顔を出しつつも、得物に手を添えて警戒を怠らない。
 しかし、

「む、ヘブンズ・ドアー!!」

「わ、ちょ───」

 時速300kmは出せると自負する仗助のクレイジー・ダイヤモンド。
 それよりも先にヘブンズ・ドアーを仕掛けることができそう『だった』露伴の技術は神速の領域。
 時の加速のの中でも締め切りを順守できるほどの才覚を持つ彼の行動は余りにも迅速である。
 その手腕だけならば、敏捷Aにも匹敵するであろう行動の迷いのなさと技術も相まって、
 スタンドが彼女を躊躇することなく攻撃し、彼女を本に変えて意識を奪う。

「ちょ、何をしてるのよロハン!?」

「今の僕は割と焦っているんだ。
 普段はこんな恐怖の出来事は……いや割とあったかもしれない。
 どちらにしても今の僕は焦り気味なのは自覚してる。手段を選ぶ暇はない。」

127デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:34:47 ID:aBs992Xo0
 ひろし?なる謎の存在と一般通貨爺の登場。
 別に露伴は屈してはいない。だが動揺は、恐怖そのものは存在した。
 振り向いてはいけない小道? 殺人鬼? それらを軽く凌駕している。
 確かにじゃんけん小僧である大柳賢のように書き換えられた存在はいるにはいた。
 しかしあれは例外だ。あんな形での妨害をしてくる存在など彼は微塵も知らない。
 バイツァ・ダストに出会ったという記憶がないのだから、なおさら警戒度は高かった。
 あったとしても、警戒度はさらに跳ね上がったのだろうが。

「あなた、その能力は……」

「そうか。まだ君にもこの能力を話していなかったか。」

 佐々木哲平の時と同じである。
 露伴はコルワと出会ったのだが、躊躇せずヘブンズ・ドアーの能力を行使。
 『今見たことは忘れる』も試してみれば、佐々木哲平と同じ初対面の反応を返した。

「私の記憶も覗いたの!? ちょっとデリカシーがなさすぎるんじゃあないかしら!?」

「非常識な行動をとった君よりはましだと思うがね。
 それに、僕は敵かどうかを安全に確認できる手段を確立してるんだ。
 一々腹の探り合いするよりは有意義だと思うだろ? まあ、僕だけだから、
 君からすれば不公平なことには変わりはない……な、何ィ〜〜〜〜〜〜!?」

 コルワの時も強烈な反応を示した露伴。
 盗作をした佐々木哲平とは比べるまでもない数々の冒険譚。
 空の世界、イスタルシア、特異点。彼女はそんなファンタジーと密接にあり、
 露伴からすれば創作意欲をガンガン高めてくれるリアリティの塊でしかない。

「人理焼却、人類最後のマスター、サーヴァント!!
 何だこの人生は!? 年齢はまだ学生だというのに、
 この物語はコルワの言う団長に匹敵かそれ以上かもしれない!
 ただの一般人だった小娘が、未来を取り戻すための戦いを彼女は成し遂げているッ!」

 だが彼女はどうか。その特異点と呼ばれる団長のような中心人物そのものであり、
 もっとより濃密であり、数多くの旅路をその身体に、心に刻み込んでいるではないか。
 読みたい。殺し合いでなければ夜通し読み通したいぐらい程のボリュームを占めている。
 殺し合いに乗ってるか乗ってないかの確認だけでは飽き足らず多くのページを読み込む。

「なんだこの大冒険はッ! 彼女自身は凡庸な人間……ではないな。
 どんな甲斐性を持っているんだ彼女は。とはいえ一般人だというのに、
 この旅路は今まで出会ってきたどんな人間よりも傑作の物語になるぞッ!!
 いや、彼女を主人公にした物語も悪くない!! タイトルは……そうだ───」

「早くやめなさい!」

 明らかに作業に没頭していると、
 同じ何かを作るクリエイターであるコルワにも伝わる。
 レーティアのこともあるし、軽くチョップを入れられて渋々な表情をしながらやめさせた。
 そこで彼は見るのをやめたが、本の隅に帽子を被った男がいたことには気づかない。
 もし見続けていれば、巌窟王に逆に干渉されていた可能性があったのは、
 幸運なのか不幸なのか、それは定かではない。

「……と言うわけだ。すまなかった。」

「まあそれぐらいでしたら。」

「私より若いのに心広すぎじゃない……?」

「君の心と視野の狭さが露呈したな。」

「……事実とは言え煽るのやめてもらえるかしら。」

 殺し合いに乗ってないなら説明はするべきだとコルワが促し、
 露伴は本を解除した後困惑する彼女へしっかりと能力の説明を行った。
 ただカルデアの癖の強いサーヴァントを散々見てきた彼女にとっては、
 露伴の行動程度ならば許容範囲ともあり、苦笑いで済ませてしまうのだが。

「それで、お二人はなぜ口論を?」

「彼女が満足に身動きできない参加者をおいて、
 仲間の一人の様子を伺いに行った愚かさに憤慨してしまってね。
 結果仲間、と言うか一緒にいたNPCが死亡して仲間が連れ去られた。
 まったく、読者からすれば愚かな行動としか言われないよ君は。」

 返す言葉もないのか、口を噤んで事実上の肯定の意を示すコルワ。
 こちらも切羽詰まっている状況。余り楽観視できるものではないだろう。

「急いで助けないと……って言いたいけど……」

 本来ならどうにか助けたいところではあるが、
 ヴィータもリンリンも放置するわけにはいかない。
 かといって彼女らの足取りはレーティア同様つかめていない。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

128デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:35:17 ID:aBs992Xo0
 どうするべきかを考えていると、
 ミルドラースによる放送が始まり、周囲を警戒しつつ聞き届ける。
 三人とも見知った知り合いや探してる人物がいる。此処で名を連ねれば、
 皮肉だがそれは動く理由が一つ減ることへと繋がり動きやすくなるのだから。

 放送が終わり、三者共に渋い顔をする。
 コルワは深い関係ではないにせよ楓や兼定など、
 騎空団に関わった、仲間になりうる者が次々と脱落している。
 幸い露伴の言う通り、レーティアだけは生きているのが救いだ。
 だが彼女を救えなければ、狼牙達に顔向けすることもできない。
 しかし、事態はそう甘いものではなかった。

「すみません! 私急いで戻らないと……!!」

 沖田総司が退場したことは残念に思っている。
 ちょっとふざけた態度をとることも多く、吐血も多い彼女だが、
 戦う時はそれはもう頼れるサーヴァントの一人であることに変わりはない。
 英霊とは過去の存在だからと言って、退場して何も思わないわけではない。
 いろいろ問題は山積みではあるが、最初の問題はオグリキャップ達である。
 これが極めて問題で、現状のマサオは一人取り残されてる可能性が高い。
 最悪の状況だ。彼女だけ退場してるなら誰かが保護してくれている可能性もあるが、
 楽観視などできるわけがない。マサオは無力な少年。このまま放っておけば、
 参加者どころかNPC相手にだって殺されかねない危険性を孕んでいた。

「待て立香! 僕の話を少し、いや少し長くなるが聞いてもらえるか。」

 バギーへ乗り込もうと動き出す彼女の手を掴んで止める。
 彼女をこのままいかせるわけにはいかない、大事な理由があるのだ。

「佐々木哲平、野原しんのすけ、星野輝子。
 僕が出会った三人はH-6周辺で、君達がいたのはG-6周辺だ。
 万が一全員リンリンとやらに轢殺や食い殺されていなければ別だが、
 あの周辺にはハサミ達を含め殺し合いに乗った参加者が複数いる可能性は極めて高い。
 何も行くな、と言うわけじゃあない。ヒーローぶるつもりはないが助けられるなら助ける方針だ。
 だが今の状態の君だけで窮地に陥ってるかもしれない彼を救出できるか、そういいたいんだ。」

 はっきり言って立香のコンディションはよくない。
 カエルを貪ってでも立ち上がって何とかやりくりしてる状態だ。
 こんな状態の自分が、もしその敵とやらに出会えって戦えるのか。
 しかも最悪マサオを守りながら戦わなければならない。自分が英霊のように、
 前へと立って戦い続ける。これは現実を見ているのか、と言う問いなのだと。
 コンディションなんてものは一瞬で落ちていくとはレオニダスが言っていたが、
 その時その時の最適解を、今の彼女ができるかどうかと言われると妖しい。

「じゃあ諦めろ、って言いたいんですか?」

「違う。僕はそこまで非道じゃあないさ。
 君が行くなら僕が行く。見ての通り僕はほぼ無傷。
 スタンドもある。少なくとも君よりは戦うことができるはずだ。
 移動手段のバイクもある。ペーパードライバーのバギーの運転よりは早いだろう。
 それに、バギーなら彼女を乗せてレーティアを探して乗せることもできるはずだ。」

「岸辺さん……」

 マサオとオグリキャップについては自分の落ち度だ。
 まさかこの短時間で危機に陥るなんてことを予想していなかった。
 自分のしりぬぐいをさせる形になるのは申し訳なく思う。

「それに、気になることもあるからな。漫画家の性か、
 自分で確認しておかないと気が済まない部分があるんだ。」

「気になること……ミルドラースの言ってた予約ですか?」

「いや、あれは何を言ってるのか分からない。
 誰に対してのメッセージか僕達には分からないか、
 歩いは参加者以外の何か……僕が出会った一般通過爺のような、
 特殊なNPCにかけて声をかけた可能性もあるのかもしれないからな。」

 あの言葉に何の意味があるのかは三人にしても謎だ。
 予約とは何なのか。野原ひろしについての謎とも関係あるのか。
 空の世界を旅しても、スタンド使いでも、人類最後のマスターでも。
 三人寄れば文殊の知恵とは言うが、答えは見つかることはなく。

129デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:37:14 ID:aBs992Xo0
「……話が逸れたな。ミルドラースは死者の名前はちゃんと呼んでいた。
 だというのに、オグリキャップだけが呼ばれ方の扱いが雑になっている。
 この手の放送で手を抜いては主催者の信用度が落ちてしまいかねない。
 正確な情報を出すからこそ願いを叶えるという魅力に惹かれるものさ。
 それをいい加減な奴がやっていたら、なんのために戦ってるか分からなくなる。
 だのに忘れていたなんて、大事に冷蔵庫の隅にしまっておいた好きなケーキを、
 今になって思い出すような他人事のように答えた。彼女の死には何かあるんじゃあないか、
 それらに何か意味があるのかを調べたいのもあるから、僕が行くつもりでもあるんだ。」

 露伴は気になったことは追及をやめられない。
 やめられないからろくでもないことに巻き込まれてしまう、
 と言うのが彼のよくあることではあるが、そこはここでも不変だ。
 当然危険は彼の言ったとおりだ。だが彼が恐怖なんかに屈するのであれば、
 ひろし?の警告を読んだ時点で読むのをやめるだろう。
 やめないからこそ岸辺露伴なのだから。

「岸辺さん……マサオ君のこと、よろしくお願いします!」

 出会ったばかりで、
 自分のせいで危険な可能性の方を優先してくれる。
 たとえそれが自分のためだったとしても危険なことは変わらない。
 心配しながら、頭を下げて露伴がバイクに乗るのを見送る。

「コルワ、君のハッピーエンドに対する情熱は僕としても見習いたい。
 だからこそ視野狭窄な行動に出たことに対して僕は憤ってる部分もある。
 説教臭いことをいうつもりはないが、今度は道を間違えるんじゃあないぞ。」

「……ええ、分かってるわ。今度こそ彼女のハッピーエンドを、
 私たちが勝利するっていうハッピーエンドを掴んでみせるわ!」

 その言葉を聞き届けると、
 露伴はエンジンをかけて走り出す。
 二人もバギーへと乗り込んでレーティアの捜索をはじめた。
 数多の死を乗り越え、零れ落ちそうな命を拾い集めていく。

【J-5/朝】

【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)、焦燥感(大)、空の世界と藤丸立香の
[装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』
[道具]:基本支給品、Z750(燃料??%)@大番長、ランダム支給品×1(山盛りの炒飯@ウマ娘 シンデレラグレイの代わりの支給)
[思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。
1:一刻も早く佐藤マサオの元へと向かう。彼もひろしに会わせるのは危険。
2:あの男は、しんのすけ君の知る野原ひろしじゃあないッ!
3:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。
4:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたかったのか? もう二人とも含めていないが……
5:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。
6:ロボひろしには一応警戒。
7:危険な道のりではあるが、仕方ないだろう。後味がよくないものを残すことになる。
8:時間があればコルワ、立香に取材をしたい。なんだあの冒険譚は!?
[備考]
※参戦時期は四部終了後。
※佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。
※佐々木哲平が別の世界の人間だと気づきました
 参加者の一部は別々の時代から参加させられてると思ってます。
※野原しんのすけの劇場版についての情報を複数持っていますが、全て同一の年の、露伴から見て未来の出来事として認識しています。
※野原ひろし? を本にし、記憶を読みました。
※別の世界について把握しました。
※主催者の中にヘブンズ・ドアーと同じタイプのスタンドの持ち主がいると推測しています。
※コルワ、立香と情報交換をしましたが、
 露伴はヘブンズ・ドアーでの情報閲覧もしてるため、
 二人との会話以上に情報を得ているかもしれません

130デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:37:29 ID:aBs992Xo0
【コルワ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康 主催と長髪の少年(桐山)への憤り(極大)、茫然自失(やや回復)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、花子頭+式王子@こじらせ百鬼ドマイナー、着せかえカメラ@ドラえもん、
[思考]
基本:こんな悪趣味な殺し合いなんてぶっ壊す
1:リツカと一緒にレーティアを探す。それが私のできる……
2:狼牙……レーティア……
3:他の仲間も探しておきたい。カネサダやカエデのように間に合わなくなる前に。
[備考]
※参戦時期は少なくともキャラ加入エピソードの後。
※リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団 をリルル@グランブルーファンタジー と思っています。
※立香

【藤丸立香@Fate/Grand Order】
[状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)、ダメージ(大)、無力感、自責の念
[装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9
[道具]:基本支給品×2(自分、兼定分)、クレイジーソルト、和泉守兼定(鞘なし)
[思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。
1:あの子(リンリン)とヴィータちゃんを追い掛けたいけど、レーティアって人も探したい。
2:足柄さん、ごめんなさい……
3:ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。
4:恐らく、これは何らかの儀式では?
5:その後マシュ、土方さん、探す。ラヴィニアも確認はしたい。
6:ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…
7:映画の世界という言葉がなぜか引っかかる。
8:野原ひろしに警戒。ロボひろしにも一応警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。
※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。
 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。)
※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。
※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。
※露伴、コルワと情報交換しました。

131デンジャーゾーンへ乗り込め ◆EPyDv9DKJs:2024/12/24(火) 23:37:45 ID:aBs992Xo0
以上で投下終了です

132 ◆7PJBZrstcc:2025/01/20(月) 23:30:55 ID:0wWiZh/c0
豆銑、ゴブリンスレイヤー、ジェイソン、ハサミ、黒子、写影、飴宮、いのちの輝きで予約します。
延長も先にしておきます

133◆N9lPCBhaHQ:2025/01/25(土) 22:46:19 ID:???0
>第二形態と別ボスとの連戦はゲーム的には大差ない
生まれる前に白面を倒せたのはファインプレー、まさに勇者
それでもノトーリアスくんが残っているのはホラー映画のオチのような不穏さを感じます
一般通過謎NPCはなんだったんでしょうね


>情報を得る大罪と呪い/溶けた氷の中に
記憶を取り戻した卯月を保護する店長は人間の鑑を通り越して聖人なんだよな
どこかの屑も見習ってほしいですね


>デンジャーゾーンへ乗り込め
ぐだ子の記憶見たら露伴ちゃんはそりゃワクワクする
FGOほんへだもんねそれ、セイレムまででも文庫数十巻分近くあるらしいですよ
予約ってなんなんでしょうねほんとに



鈴奈、ペニーワイズで予約して延長します

134 ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:21:10 ID:3dZG5jzc0
投下します

135MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:21:53 ID:3dZG5jzc0
 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

 ゴブリンスレイヤーと豆銑礼、二人とジェイソンの死闘の火蓋が切られた証であるレールガンの銃撃が響く。
 本来ならば常人には使用不可能で、コンペロワの参加者が誰も住まわぬ世界にある製薬会社『アンブレラ』が開発した人型兵器、ネメシスでもなければ使用不可能な機関銃。
 しかしこの男ならば使える。
 クリスタルレイクにて子供の頃溺死仕掛けるも生き延び、母の復讐として幾多も殺戮を繰り返し、一度は死亡するも雷に打たれ蘇り、不死身の怪物と化したジェイソン・ボーヒーズならば。

 レールガンの弾丸が二人に迫る。
 もし命中すれば、生身の豆銑はもとより鎧を纏っているゴブリンスレイヤーすら成すすべもなく肉片と化すだろう。
 だが当然、二人も何の対策もなくジェイソンの前に立ちふさがっているわけでは無い。
 対処する方法は二人の懐に既に収まっている。

 ガブリ

 二人は弾丸が発射されるや否や、懐からある物を取り出し、一口で飲み込む。
 それは豆銑から見ればデフォルメされたお化けの形をしたクッキーだ。
 この殺し合いの参加者の中で言うならマリオ、ヨッシー、ピーチ姫。そしてクッパ姫がそのお化けを見ればこう言うだろう。テレサと。
 二人が取り出し飲み込んだものは、テレサの形をしたクッキーである。

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

 二人はレールガンから放たれる弾丸をその身に浴びる。
 何も知らぬものが見ればこれだけで二人は即座に命を散らしたと思うだろう。
 だが現実は違う。
 二人がクッキーを飲み込んだ瞬間、体から紫色の人魂のようなものが現れる。
 それらは弾丸を防ぐといったことはもたらさない。二人はそのまま弾丸を喰らう。
 これで終わり、とジェイソンは考える。
 次は逃げて行ったあの三人を殺そうか、と思案するもすぐに撤回しなければならなくなる。

 なぜなら、二人とも未だ生きているからだ。
 銃弾を浴びて怯みつつもしかし傷は負っていない。
 肉片を飛び散らさなければならない二人は、倒れ伏しつつも銃弾の威力に反している。

 これがさっきゴブリンスレイヤーと豆銑が食べたクッキーの効果である。
 二人が食べたクッキーの名前はゴーストクッキー。
 一見するとお化けの形のクッキーだが、食べると一定時間相手の攻撃を無効化するアイテムである。
 ただし食べた者も攻撃ができなくなるので、本来は敵の攻撃パターンを覚え、避ける為のアイテムだ。

 だが、豆銑はこれを銃撃を躱すために使用した。
 彼にはレールガンの正確な威力など分からない。だが現代の住人ならば、少なくとも銃に撃たれればどうなるかなど自明の理。
 遮蔽物があるのなら話も変わるが、この平原にそんなものはない。
 スタンドで防ぐことも考えたが、自分だけならまだしもゴブリンスレイヤーまで守れるとは思えなかったので、虎の子とも思えるこのクッキーを使用したのだ。

(時間稼ぎにはもってこいだな)

 などと豆銑が考える一方、ジェイソンからすれば理解不能だった。
 ここがエルム街の悪夢よろしくフレディが見せる夢の世界ならいざ知らず、間違いなく現実のはずのここで銃が効かない相手が現れるとは思わなかったのだ。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 途中、主催者の放送が会場に響き渡るが、レールガンの発射音と弾丸に阻まれこの場にいる三人は聞こえない、あるいは聞くどころではなかった。
 もっとも、ジェイソンは聞いたところで大した意味など持たなかっただろうが。

 カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ

 そうジェイソンが思考している間にレールガンの弾が切れる。
 5000発を誇る装填数だが、同時に秒速100発も誇る。
 すなわち、撃ち続けて入れば一分もかからず弾が切れるということだ。
 もっとも、本来ならそこまで撃ち続けずとも敵を殲滅できるので、弱点とは言えない。
 事実、ネメシスが特殊部隊S.T.A.R.S.に掃射した時は十秒もかからず殲滅に成功している。

 しかし現実はこれだ。
 殺戮を期待されて支給されたレールガンは、ただの一人も殺せず使い物にならなくなる。
 もし弾倉が支給されているなら話は変わるが、少なくともジェイソンがハサミとホル・ホースから回収した物の中にそんなものはない。
 ちなみにホル・ホースの支給品の中にはオレカバトル出展のトリケラゲノムというものが存在していたが、現在は主催に回収され代わりに違う支給品が提供されている。
 ともすればそれが換えの弾倉である可能性もあるが、ジェイソンは確認などしていないし、そもそも入れかわっているという事態が起きている発想すら湧いていなかった。

136MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:22:17 ID:3dZG5jzc0

 ならばとばかりにジェイソンはレールガンを捨て、幸福と勇気の剣を構え二人に向かって行く。
 攻撃が通じないことに薄気味悪さを感じつつも、彼に殺戮を止めるという選択肢は存在しない。

 一方、ジェイソンの追撃を見てゴブリンスレイヤーと豆銑の二人は、ここで一度後退を選択する。
 いくらクッキーの効果で相手の攻撃が通じないとはいえ、それは一時的なもの。
 いつまで持つか使った豆銑すら曖昧なものに、いつまでも命を預ける気にはならない。それはゴブリンスレイヤーも同じ。
 二人の視点で言うなら当然の判断。しかし、ジェイソン相手には悪手だった。

 ズッ

「な、何ィィィィィ――――――――――――――――――――ッ!?」

 なんと、さっきまで距離があった筈のジェイソンが一瞬で二人の傍に移動したのだ。
 あまりに理不尽な移動を見て思わず叫ぶ豆銑。
 ジェイソンはそれを好都合とばかりに問答無用に、手に持つ幸運と勇気の剣を豆銑に叩きつけようとする。

「ドギー・スタイル!!」

 豆銑は襲い来る剣を回避すべく、己の腕を糸の様に細くしゴブリンスレイヤーの腕へと伸ばし絡ませる。
 それを見てゴブリンスレイヤーは素早く引っぱり、豆銑の体を己の元へと引き寄せることで、ジェイソンの豪剣を回避した。
 ゴーストクッキーの効果でダメージを受けないとはいえ、いつなくなるか分からないものに命を無条件で預ける気はない。

 ズガァン!!

 ジェイソンに振るわれた幸運と勇気の剣は地面を穿ち、そのまま伝説の剣のなりそこないのように斜めになった状態で刺さる。
 彼はそれを放置し、今度は豆銑へと掴みかかろうとした。

 これはまずい、と豆銑は即座に理解する。
 今はゴーストクッキーの効果で敵の攻撃は通用しない。
 しかし受けないのはダメージだけだ。例えば銃撃を受けた時、ダメージは受けていないがノックバックは受けた。
 ゲームの無敵状態みたいに、何もかもを無効化して敵に攻撃を加えられるわけではない。
 その状態で掴みかかられれば、今はダメージを受けなくてもいずれは通用してしまうだろう。
 ゴブリンスレイヤーが助けるよう動くだろうと言う信頼はあるが、敵の異様さを考えると確実に助かる保証はない。

 そして何より恐ろしいのが、おそらくだが怪物は今しがた下した思考と同じ考えを抱いているであろうと言うことだ。
 さっき銃が通じなかったのに、自分が剣を回避したのを見て、いずれは攻撃が通用するようになると推測して掴みかかる方向に変えたのだろう。
 つまりこの怪物は言葉こそ発さないものの、知性がある。考えを巡らせている。
 少なくともこと殺戮において、こいつは頭が回る。
 
 豆銑がこの事実に慄く中、ゴブリンスレイヤーもまた頷く。
 彼もまた豆銑と同じ結論に至ったのだ。

 目の前の敵に対し警戒心を新たにする二人。
 しかしここで予想外の出来事が起こった。

「アハハ。やるねぇ〜キミ」

 なんと、今まで気絶していたハサミが起き上がったのだ。
 否、手も足もなく宙を浮かんでいるのだから正しくは浮き上がった、だろうか。
 そんな彼が吐く言葉は、内容こそどこか余裕が見えるものの、声色は明らかに上擦っている。
 ハサミのことなど何一つ知らないゴブリンスレイヤーと豆銑が聞いても、怯えているようにしか聞こえない。

 しかし、そんな印象を抱かれていることなど知らないハサミは、ジェイソンとゴブリンスレイヤーたち二人を一瞥すると、ハッと鼻で嗤いこう零す。

「でも今ボクはキミの相手するの嫌なんだよね〜。
 だからちょっとだけ失礼させてもらうよ〜」

 言ってハサミは飛び去っていく。
 誰がどう見ても完膚なきまでに、言い逃れができないほどの逃走。
 それだけならまだいいだろう。しかし別に問題がある。

「あの方向は……!」

 ゴブリンスレイヤーが思わず呟く。
 理由はハサミが飛び去った方向が、当初の目的地であるソルティ・スプリングだったからだ。
 このままでは危険分子を逃がす対象へみすみす通してしまうことになる。
 だがハサミに対処するにしても、すぐそばにいるジェイソンを無視することはできない。

137MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:22:40 ID:3dZG5jzc0

 スッ

 しかし悪いことは往々にして重なるものだ。
 何やら音がしたと思った次の瞬間、さっきまで二人の近くにいた筈のジェイソンが姿を消した。
 二人はもしや、と思ってハサミの方を見てみるとそこには――

「く、来るな〜〜!!」

 視界に映る距離にてハサミが必死に逃げる様と、転移を繰り返しながら追いかけるジェイソンの姿があった。
 すぐに慌てて追い掛けようとする豆銑だが、そこにゴブリンスレイヤーが声をかける。

「いいのか?」

 何を、と聞き返しそうになる豆銑だがすぐに気付く。
 自分が言ったことだ。いざとなれば己の命を優先すると。
 だからゴブリンスレイヤーは問うのだろう。ここで退くべきではないのか、と。
 理屈では確かにそうだ。このまま追いかければ、怪物のみならずあのハサミとも戦わなければならなくなる。
 脅威が一つから二つに増えればそれだけで死亡する可能性は増える、ごく当たり前の話。

「理屈で言うなら、ここで退くのが賢いのだろうな」
「ああ」
「だが言ったはずだぞゴブリンスレイヤー。約束は神聖なものだと」

 しかし豆銑に退く気はない。
 客観的に見れば彼に非はないだろう。
 敵が黒子と同じ転移という予想もつかない能力を用い、更にハサミの逃走という予想外が重なった結果だ。
 だが他の誰が豆銑を庇い立てようとも、彼自身がその理屈で逃げることを許さない。

「私は’かませ犬’の役割を果たして見せると言ったのだ。まだ役割を果たしていない以上、逃げる気はない」
「そうか」
「もっとも、ソルティ・スプリングに白井達がいないのなら藪蛇を出す必要もあるまい。大人しく退かせてもらうがな」

 豆銑の言葉にゴブリンスレイヤーは頷き、二人は出発する。
 目指す先は黒子達がいるはずのソルティ・スプリング。もっとも、なんらかの理由でいないのであれば話は変わるが。
 もしそうならそれはそれでいいが、いるとするなら犠牲が出る前に辿り着かねばならない。
 二人は急ぎ歩を進める。


 直後、二人の辺りを漂っていた人魂が消えた。





「何でボクを追いかけてくるのさ〜!!」

 ハサミは必死になって逃げながら愚痴る。
 いや、自身では逃げているつもりはない。
 これは一時撤退だ。
 自身だけでは流石に面倒だから、かつて作ったことのあるヒャクメンハリボテメットや、さっき作ったハリボテのゴブリン版みたいなのをもう一度作り、けしかけようと言うだけ。
 断じて、無様に逃げ出しているわけではない。

 だからあの怪物が知らない奴二人と戦っている隙を見て動いたのに。
 なぜか二人と戦うのを止めて追い掛けてくるとは思っていなかった。

 こんなことになるなら、いっそあの二人と組んで戦うべきだったかな? とハサミは一瞬だけ考える。
 しかしそれはすぐに霧散する。
 ブンボー軍団一の技の使い手のボクが、どこの誰とも分からないヤツと手を組むだなんて。

 ホル・ホースの時とは違う。
 あの時はハサミが圧倒的に有利な状況で、気に入ったから引き込んだに過ぎない。

 対して今はどうだ。
 この状況で手を組むよう言えば、まるで自分の身が危ないから助けてくれと言ってるようじゃないか。
 そんなこと、事実がどうであれそう見られることが我慢ならない。

 だからハサミは必死に飛ぶ。
 適当な参加者かNPCさえいれば、未だ勝機はあるはずなのだから、と信じて。

138MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:22:59 ID:3dZG5jzc0

 kill mum kill mum kill mum

 ジェイソンにしか聞こえない「ママ殺して」の声を耳にしながら、彼はハサミを転移を繰り返して追い掛ける。
 ハサミが逃げる傍に転移し、しかし捕まえることなく逃がす。
 これを幾度か繰り返すことで、ジェイソンは普通に移動するより早くソルティ・スプリングへ辿りつこうと言うのだ。

 こう聞くとそんな面倒な手間を踏む必要性があるのかという疑問がわくだろうが、ジェイソンの転移には制限が掛かっている。
 転移は対象を追跡するときのみ使用可能。
 ジェイソンと対象が互いに認識している時のみ使用可能。
 互いに同じエリアにいる時のみ使用可能。
 使用できるのは対象が逃走、隠伏している時にジェイソンが追跡するときのみ。

 このいくつも折り重なった制限がジェイソンの転移には掛かっている。
 その制限に彼は気付いたのだ。
 気づいたからこそ、こうして活用し移動している。

 ジェイソンがソルティ・スプリングを目指す理由は一つ。
 ゴブリンスレイヤーと豆銑に現状攻撃が通用しない以上、一旦他の対象を殺すと決めたからだ。
 そしておあつらえ向きに施設がある。だからそこを目指す。

 ハサミを殺してもよかっただろう。
 しかしかまけていては現時点では殺せない二人に絡まれ、面倒になるかもしれない。
 だから避けた。それだけのこと。
 あの二人が追いかけてこようがこまいが、どうでもいい。
 いずれまた会えたのなら殺すだけ。

 kill mum kill mum kill mum

 母か、あるいは己の望む声を耳に、ジェイソンは殺戮の為に動き思考する。
 そこに意義などない。
 最早ズレにズレた復讐譚に、意義などあるものか。
 ここにいるのは殺戮の為だけに動く怪物、ジェイソン・ボーヒーズ。





 時は少し、具体的には第一回放送より少し前に戻る。
 F-7 ソルティ・スプリングに黒子達四人は居た。
 本来なら更に遠く逃げておくべきだが、それを成せない理由がある。

「ハァ……ハァ……!」

 それは、黒子の疲労にあった。
 ただでさえ消耗が制限により激しくなったうえで、制限がなくてもギリギリな重量を、連続で転移させ続けたのだ。
 今や彼女の体力は限界とまではいかないが、これ以上転移するには無理がある程度の疲労となっていた。

 当初は初夏が黒子を背負って移動することも提案された。
 しかし小柄と言えど人間、それも疲労している相手を運ぶのはかなりの重労働だ。
 初夏が力持ちの逸話のある妖怪ならいざ知らず、彼女は飴舐めであり、そんな能力はない。
 おまけにもうすぐ朝になり、見通しもよくなるだろう。
 真夜中なら夜闇に紛れて逃げると言う道もあったが、それも難しくなる。

「こうなったら仕方ない。一旦どこかに隠れて休もう。
 これだけ建物があるんだ。そう簡単には見つからないさ」

 そこで写影が提案したのは隠伏だった。
 黒子の疲労が激しく、また見捨てるつもりがない写影からすれば、休ませるのは必須。
 しかし野ざらしで休息をとるなど、いつ追手が現れるかもしれない状況でやることではない。
 豆銑とゴブリンスレイヤーが逃げ出すとは思っていないが、敗れる可能性も考慮しなければならないのだから。

 しかしどこかに隠れようにも、何があったのかこの辺りはボロボロだ。
 彼らは知らないが、ここでは既に死亡した艦娘とガンマン。そして帰還させられたウマ娘が黎明にて戦っていた場所である。
 そんな事実を知らない彼らであれど、何らかの戦いがあったことだけは想像できる。

139MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:23:22 ID:3dZG5jzc0

「あそこなら大丈夫そうだけど」

 初夏が比較的無事な建物を見つけ、二人と二匹はそこに入り、窓から見えない位置に腰掛ける。
 写影は黒子を寝かせようと思ったが、当人は動きにくくなると拒絶。
 ならばせめて軽く何か飲み物でもとデイパックに手を掛けたが、ここで問題が発生した。

「飲み物がお酒しかない……」

 この殺し合いで支給される基本支給品は地図と食料とルールブックである。
 そしてその食料の内訳は、インスタントラーメンとストロングゼロがそれぞれ三個ずつである。
 ストロングゼロとは、2009年にサントリーから発売され、今なお人気を誇る缶チューハイである。

 そう、缶チューハイである。酒である。
 水分補給にならない飲み物である。
 そんなものを未成年に支給しているのである。

 正直、主催者は何を考えているのだろうかと、写影はツッコミを入れたくなった。
 未成年飲酒についてはこの際横に置いておくとしても、下手をすれば水不足で動けなくなる参加者が出るかもしれない状況で殺し合いなど、どう考えてもおかしいだろう。

「じゃあ……これ飲む?」

 すると初夏がおずおずとデイパックから瓶に入った液体を取り出す。
 中にあったのは紫色の液体とも少々言い難い何かであった。
 思わず黒子は問う。

「これ、何ですの……?」
「ひ、ひみつ」
「そこで口を濁らせると恐怖しか湧いてきませんが!?」

 小声で叫びながら非難するという器用な芸当を見せる黒子。
 それに弁明すべく初夏は瓶についていた説明書を見せながら口を回す。

「死ぬことはないって説明書に書いてたから大丈夫だと思うけど……」
「死ぬ!?」

 だが初夏の口から出てきた物騒な言葉に写影が反応し、彼は思わず説明書をひったくって読む。
 するとそこはこうあった。

『幽霊型モンスターポウの魂。
 飲むと回復するかダメージを負う。このダメージで死亡することはないので安心』
「嫌だ……」
「だからひみつにしたかったんだけど」

 説明書を見た写影の嫌悪感たっぷりな言葉に、思わず呟いてしまう初夏。
 何をもってこんなものを支給品に選んだのか理解に苦しむ二人だった。

 一方、黒子は説明書こそ読んでいないものの、二人の顔色を見ればあまりよくないものだとは想像がつく。
 しかし初夏がこの場で出してきた以上、別に毒ではないだろうと判断し、黒子は瓶を初夏の手から奪い、勢いよく飲み始めた。

「ええい、女は度胸ですわ!」
「ここ度胸を出す場面じゃないと思うけど!?」

 写影のツッコミもなんのその。黒子はポウの魂を飲み干した。
 すると――

「少し、体が楽になりましたわね……」

 黒子の体力がわずかながら回復した。どうやら当たりを引いたらしい。
 とはいえ回復したのはほんの僅か。まだまだ万全とは言い難い。
 しかし今は移動した方がいいだろう、と彼女が初夏にあきビンを返しながら考えた所で――

「イーッ!」

 外から何かの声が聞こえた。
 獣の鳴き声ではなく、明らかに人の声。
 参加者かはたまたNPC、なおここにいる全員が未だ人間のNPCと遭遇していないので確信はしていないが、ともかく誰かがいる。
 しかし、敵か味方か分からない相手がいる場にノコノコ出ていくのは、現状賢い行いではないだろう。

140MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:23:52 ID:3dZG5jzc0

「じゃあ僕がちょっと様子を見てくるよ」

 なので写影が一人様子を見に行こうと立ち上がった。
 黒子が万全なら自分がいくと言うだろうが、今は違う。
 ならば彼からすればこの場にいる唯一の男が行くべきであろう。なお、いのちの輝きは性別がよく分からないので除外する。

「えっ」

 一方、初夏としては驚きのひと言である。
 曲がりなりにもこの場にいる中では一番年上であろう自分が、明らかに年下の少年の背に隠れるというのはいかがなものか、と考える心はある。
 それにレーダーも持っているのだから、探ると言う意味なら自分の方がいいだろう。
 なので写影を引き留めようと立ち上がりかけるも――

「飴宮さんはできれば黒子の事をお願いします」
「う、うん……」

 押し切られてしまえば、初夏としては言い返しにくかった。
 こうして彼は建物を出ていくが、直後――

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 ミルドラースの放送が始まった。
 流れる放送を最低限だけ聞いて後は聞き流しながら、写影はさっきの声が聞こえた場所に向かう。
 放送については気になるが、黒子達が聞いてくれるだろうし自分は死者の名前の中に気になるものが無いかだけ確認した。
 結果、オグリキャップだけ後から付け足されているように感じる部分は気になるが、後は気に留めるほども無かった。気に留める余裕がなかったとも言う。
 少なくとも、ゴブリンスレイヤーが探している牛飼い娘がいないことだけは明白だったので、気にしても仕方ないと考えたのだ。

 そうこうしている間に写影は目的地に到着する。
 そこで彼が見たものは――

「イーッ!!」
「この辺りには誰もいなさそうですね」

 白い覆面と全身タイツを付け、棒のような武器を持った怪しげな男数人と

「GOOOOB……!」

 写影が見たゴブリンより数回りは大きい、されど成長したと感じる巨大なゴブリンが覆面男の集団を従える姿があった。
 もしもゴブリンスレイヤーがこの場にいれば、あるいは、このコンペロワの主催者ならば、ゴブリンロードを思い出すだろう。
 そう、ここにいるのはゴブリンロード。小鬼の王。
 しかしこの殺し合いの主催の一味にして、会場に降り立った小鬼王ではない。
 ならばこのゴブリンロードは何者か。
 それを説明するには、ここから更に時を遡らなければならない。





 時は第一回放送前の黎明。場所はE-8。
 シャガクシャがはぐれメタルの倒した報酬として現れた宝箱を開けた者がいる。
 それは参加者の誰でもない、NPCのゴブリン二匹だった。
 うち一匹が宝箱を開けると、中には光線銃と思わしき物体が現れ宝箱は消滅。

「GOB!?」

 箱が消滅するという光景にゴブリンは一瞬驚くも、即座に意識はさっき出てきた銃に向かう。
 銃を持つゴブリンは、試しとばかりに他のゴブリンに銃口を向け引き金を引いた。

「GBGBGB!!」

 すると銃口から光が照射され、浴びたゴブリンはゴブリンロードへと進化を遂げてしまった。

 この光線銃の名前は進化退化放射線源。
 22世紀のひみつ道具にして、光を浴びせると浴びせた対象を進化させたり退化させることができるものだ。
 その光によりゴブリンはゴブリンロードへと進化したのだ。

141MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:24:13 ID:3dZG5jzc0

「GBGB」

 一方、進化退化放射線源を手に持つゴブリンはこの光景を見て、早速自分も進化しようと動く。

 グシャリ!

 しかしそれより早く、先にゴブリンロードとなったゴブリンが銃を持つゴブリンを踏み潰した。
 せっかく強くなれたのに、自分と同格の存在を許す理由は何一つ存在しない。
 死体から進化退化放射線源を奪い取り、彼は気ままに進む。

「イーッ!」

 するとしばらくしてから、今度は白い覆面と全身タイツを纏う、棒のようなものを持った男の集団が現れた。
 首輪をしていない為NPCであることは一目瞭然である。
 そんな彼らの名前はメガデス戦闘員。
 C-7に現れC-5にて散ったメガデス怪人の部下である。もっとも、コンペロワでは特に上下関係は存在しない別々のものとして扱われているが。

 ともかくメガデス怪人戦闘員たちは一斉にゴブリンロードへ、手に持つ武器を向ける。
 一方、ゴブリンロードは試しに進化退化放射線源をメガデス戦闘員の一人へと照射した。

 すると、今度はメガデス戦闘員の覆面と白タイツが消え、ただの人間へと様変わりした。
 ゴブリンロードは戦闘員を退化させたのだ。

 元々悪の組織メガデスは超人サイバーZ1号2号や怪人を見れば分かる通り、人間を改造することで勢力を増す組織。
 なので、戦闘員も当然改造されている。
 ならば退化させれば人間に戻るのは自明の理というものだろう。

 グシャリ

 人間に戻されたメガデス戦闘員は即座にゴブリンロードに殺された。
 それを見た残りの戦闘員は即座に武器を手放し、土下座しながらこう言った。

「許してください。何でもしますから」

 ホモ特有の何でもする発言を聞いたゴブリンロードは、ならば自分に従えとばかりに手を振るう。
 意図を察した戦闘員たちは即座に恭順を選び、王に従い進んでいくのだった。

 こうしてゴブリンロードと戦闘員たちは参加者や他のNPCを従えるべく歩んでいたのだが、特に何の成果もないまま今に至る。





 ゴブリンロードがメガデス戦闘員数人を従えている光景を目撃した写影は、素早く黒子達の元へ戻ろうと決意する。
 幸い、未だ向こうには気付かれていないので情報を伝えるのは難しくないだろう。
 しかし、状況はここで一気に変化する。

「は、はなせ〜〜〜〜〜!!」

 どこからか悲鳴か聞こえたかと思うと、二人の参加者が姿を見せる。
 否、この言い方は正確ではないだろう。
 正しくは、ハサミが持ち手の部分をジェイソンに掴まれた状態でゆったり歩いて悠然と現れた。

 ハサミは必死に抵抗しようとしているが、持ち手を閉じられた状態では上手く踏ん張れないのか、喚くだけでジェイソンの手を振りほどくことはできない。

(そんな!? 豆銑さんとゴブリンスレイヤーさんは!?)

 仲間が足止めしているはずの怪物が現れ、動揺する写影。
 二人が命惜しさに逃げ出したとは思わない。
 ならば殺されてしまったか、何らかの方法でジェイソンが逃げ出したかのどっちかだろう。
 ともかく、この場から一刻も早く離れなければ、と写影は音が出ることも辞さず駆け出す。

142MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:24:37 ID:3dZG5jzc0

 一方、ゴブリンロードは余裕だった。
 今の自分は強いうえ、手下もいる。
 おまけに目の前の参加者は無数の傷だらけで、ボロボロだ。
 何やら喋る刃物を持っているが、どう見ても大きくて振り回しにくいだろう。
 あんな武器を使うなんて馬鹿だ、と見下していた。

「イーッ!!」

 メガデス戦闘員の一人がジェイソンに棒を持って向かう。
 ゴブリンロードが行け、と目線で命じた故に。
 戦闘員は素早くジェイソンに近づくと、「腰が入ってないんだよ腰が!」と上司に叱られそうな突きで攻撃する。
 だがジェイソンがそんな突きでダメージを負うようならば、ホル・ホースは死ぬことはなかっただろう。
 事実、ジェイソンは意にも介さずハサミを振るい、あっさりと戦闘員は両断される。

「イーッ!!」
「あっ...。チョットコ…」
「うはぁ...」

 続いて残りの戦闘員が勢い込んで、あるいは怯えながらもジェイソンに向かう。
 しかしそんな彼らもハサミの一振りであっさり命を散らし、残りはゴブリンロード一匹。

 ブウン!

 ジェイソンはハサミを振り上げ、兜割りの要領でゴブリンロードの頭に叩き下ろそうとする。
 だがゴブリンロードはただのゴブリンではない。
 ここまで成長してしまえば、四方世界基準で考えるなら銀等級冒険者でもなければ対処が難しい、十二分に強者として扱われる存在である。
 故にこれくらいのことはできる。

 ガシッ!

 ゴブリンロードは振り下ろされるハサミを、白羽取りの要領で受け止める。
 手にある進化退化放射線源が少々邪魔だと感じつつも、今それを捨てることに意識をやればその瞬間頭を割られるだろう。
 なのでゴブリンロードは少々抑えにくい体制で踏ん張るしかない。

 ギギギ

 二人が触れるハサミから軋む音が聞こえる。
 和泉守兼定の戦いで負ったダメージを回復しきれないままジェイソンと遭遇し、さらなるダメージを負ったところで今はこの仕打ち。
 ハサミの体は限界に近かった。

「い、いやだ! ボクがこんなところで、こんな死に方をするなんて!!」

 ハサミは悲鳴をあげるが、二体の怪物にそんなものを聞き届ける神経はない。
 ただ目の前の相手を殺す為、あるいは生きる為にただ力を籠める。
 しかしその時もとうとう終わりが来た。 

 ピキピキ

 ハサミの体が少しずつひび割れていく。
 まるで終わりを宣告するように。

「ボ、ボクはブンボー軍団一の技の使い手なんだ――」

 それを察してハサミは叫び、必死に暴れようとする。
 しかし怪力を持つ怪物二体を振りほどくことができないまま

 パキン

 ハサミの体が割れ、持ち手の部分と刃の部分で二つに分かれる。
 これは人間で言うなら上半身と下半身が力づくで割られたようなもの。
 すなわち、ハサミの死を意味する。

 ブンボー軍団一の技の使い手は強大な怪物ではなく、ジェイソンに襲われた数多の被害者の一部として終わりを迎えた。


【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング 死亡】
【残り79名】

143MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:24:58 ID:3dZG5jzc0


 一方、ハサミの体が割れたことで二体の怪物は互いに大きくバランスを崩す。
 そこから先に体勢を整えたのはジェイソンだった。
 彼は身体を大きく一回転させたかと思うと、その勢いのままハサミの持ち手をゴブリンロードの首へと叩き込む。

「GBGB!!」

 いきなり首に攻撃を叩き込まれ苦しむゴブリンロード。
 その隙を突き、ジェイソンは次にゴブリンロードの頭にハサミの持ち手で殴りつける。
 もしこの攻撃が並の人間によるものならダメージなどたいしてなかっただろう。
 しかし怪力を誇るジェイソンの攻撃ともあれば話は別。
 一撃でゴブリンロードの頭はひしゃげ、そのまま絶命した。

 ジェイソンはハサミの持ち手を捨て、代わりに刃の部分を拾いある場所に目を向ける。
 そこはさっきまで写影がいた所。だが今はいない。
 しかし居たという事実さえあればジェイソンには十分。
 次の瞬間、彼は姿を消した。

 ゴブリンロードの手にある進化退化放射線源が、死亡した時の衝撃で指が引き金を引き、光線を発射し続けているということに、ジェイソンはついぞ興味を持つこと無く。





「大変だ! ゴブリンスレイヤーさん達が足止めしている筈の怪物がすぐそこに来てる!!」
「えっ!?」
「何ですって!?」

 隠伏という目的を忘れ大慌てで戻って来た写影は、黒子と初夏の二人にジェイソンの到来を告げる。
 その情報に二人は驚くも、ならばこんなところでじっとしている場合じゃないとばかりに、即座に立ち上がり脱出を図ろうとする。
 しかし――

 スッ

 それより早く、ジェイソンがこの場に現れた。

「瞬間、移動……!?」
「そんな……!」

 ジェイソンが瞬間移動可能という事実に驚愕する写影と初夏。
 さて、ここで今一度ジェイソンの瞬間移動に関する制限を確認しよう。
 
 転移は対象を追跡するときのみ使用可能。
 ジェイソンと対象が互いに認識している時のみ使用可能。
 互いに同じエリアにいる時のみ使用可能。
 使用できるのは対象が逃走、隠伏している時にジェイソンが追跡するときのみ。

 ここで重要なのは、あくまで認識さえしていればいいので別に互いに目視が必要ではないということ。
 すなわち、お互いいることさえ分かってさえいれば隠伏しようとも意味がないということである。
 先ほど写影が足音を立てて移動したとき、ジェイソンはゴブリンロードやメガデス戦闘員と戦いながらも写影の存在に気付いたのだ。

 しかしそんな事実を知る者はこの場においてジェイソン以外存在しない。
 そしてそれを鑑みる道理もない。
 彼は手にあるハサミの刃を無造作に投げつける。

 グサッ

 無造作なれどジェイソンの怪力で投げられた刃を躱すことも防ぐこともこの場の誰にも適わず、あっさりと刃は初夏の腹を貫く。

「にげ、て……!」

 この状況で初夏にできることは、生きている残りの仲間に必死に逃亡を呼び掛けるのみ。
 それを最期に、彼女はごくあっさりと息を引き取った。


【飴宮初夏@こじらせ百鬼ドマイナー 死亡】
【残り78名】

144MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:25:17 ID:3dZG5jzc0


「縺ェ繧薙※縺薙→繧偵☆繧九s縺!」

 初夏が殺された直後、ここまで静かだったいのちの輝きが何かを叫び、ビームをジェイソンに向けて発射する。
 だが普通のゴブリンすら怯ませるほどの威力しか出せないビームが、プロボクサーのパンチ連打を受けても微動だにしないジェイソンにいか程の影響を与えられるというのか。
 事実、彼は何一つ怯むことなく次のターゲットとばかりにいのちの輝きへと歩を進める。

「逃げますわよ!!」

 しかしそうはさせないとばかりに黒子は叫びながらいのちの輝きの体を掴み、同時に初夏のデイパックを回収した写影も黒子の腕を掴んだ。
 直後、二人と一匹は転移する。
 転移先はさっきまで写影がいた場所。すなわち、ハサミやゴブリンロードがジェイソンに殺された場所でもある。

「縺輔▲縺阪?縺ィ縺薙m縺ォ謌サ縺励※!」

 転移した直後、いのちの輝きが何かを叫ぶ。まるで逃げることを非難するように。
 それを黒子は諭す。

「あなたにとって飴宮さんは大切だったようですが、だからこそ逃げなければいけませんわ。
 あの方は最期にそう言ったでしょう」
「雖後□雖後□!」

 まるで聞き分けのない子供の様に騒ぐいのちの輝きだが、いつまでもそうしてはいられない。

 ドゴォ!

 なぜなら、追いかけてきたジェイソンが一塊になっている三人に向けて拳を振るったからだ。
 なすすべもなく喰らい、二人と一匹はそれぞれバラバラになりながら地面を転がる。

「グググ……かはっ!!」
「黒子!!」

 血を吐きながら立ち上がる黒子と、そんな彼女を心配しながらも同じく立ち上がろうとする写影。
 一方、いのちの輝きは死体となったゴブリンロードの傍で動かないままだ。
 死んでいるのか生きているのか、この距離では分からない。

「まあ生きているなら見捨てるようで心苦しいですが、ここは少なくともどちらか一人が残りもう一人が足止めに徹する他無いようですわね」
「だったら僕が!!」

 黒子の息絶え絶えな中で吐き出される言葉に対し、写影は力強く宣言する。
 そうだ。その為に僕がいる。
 この殺し合いでそう動くと決めている。
 どんな手を使おうとも、どんな犠牲を払おうとも。黒子を守ると決めている。

「言いそびれたけど、実はその為の力になりそうな支給品も――」
「お断りですわ」

 しかし黒子は写影の決意に否を唱え、彼を別の場所に転移させた。
 どんな理由があろうとも、風紀委員(ジャッジメント)が一般人の陰に隠れるなどあってはならない。
 なにやら隠し玉があったようだがそれも関係ない。
 例え自分より強いことが明確な超能力者(レベル5)、敬愛するお姉様御坂美琴であろうとも、黒子は同じことをするだろうから。

「とはいえ、今の私にどこまでこの殿方の相手を務められるのやら」

 決意を固めたはいいがどうやって足止めするかと考えたその時、不思議なことが起こった。

145MONSTER PANIC ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:25:41 ID:3dZG5jzc0

「ゆるさないぞ――――――!!!」

 グシャリ

 なんと、さっきまでいのちの輝きが倒れていた場所に別の生物が現れた。
 外見は水色の粘土で人型を作り、顔には口だけを用意したものに、顔の周りへまるでオスのライオンのたてがみみたくいのちの輝きを巻きつけたようなもの。
 ちなみに首輪はいのちの輝きの部分に巻き付いたままだ。

 殺し合いの参加者の誰もが、いや主催者であろうとも知ることはないが、見る者が見ればこういうだろう。
 大阪万博2025マスコット、ミャクミャクのようだと。

「あなた、人の言葉を喋れましたのね……しかも可愛らしい声で」

 突如喋り出した推定いのちの輝きに対し、黒子は唖然としながらもどこかズレた言葉を零す。

 実の所、この突然現れたミャクミャクらしき生物はいのちの輝きである。
 ゴブリンロードの死体が放ち続ける進化退化放射線源の光の偶然浴び、この姿へと進化を遂げたのだ。
 もっとも、件の進化退化放射線源はいのちの輝きにより踏みつぶされてしまったが。

 いのちの輝きは怒っていた。
 それは自らの命を脅かす敵、ジェイソンに対して。
 あるいは、好奇心や好意を抱いていた相手である最初に優しくしてくれた初夏の命を奪われたことに対して。

 一方、怒りに燃えるいのちの輝きに対して黒子は静かに告げる。

「申し訳ありませんが、動けるようでしたら一人で逃げていただけるとありがたいですわ。
 私、これからあの殿方のお相手を務めねばなりませんので」

 黒子は逃げるよういのちの輝きにも告げる。
 生きているのなら逃げられるようにしたいという思いは、何も人間だけに適用されるわけではない。
 明らかに敵意を示しているならともかく、さっきまで行動を共にしていた相手への対応ならば当然のこと。

 しかし、それを当然だと思っていたのは黒子だけだった。

 ジュッ

 いのちの輝きは、さっきジェイソンに放ったものとは比べ物にならない威力のビームを黒子に放ち、彼女の上半身を焼き尽くした。

「な、にを……」
「さいしょにいってた! ゆうしょうすればねがいをかなえるけんりをくれるって!!
 だからゆうしょうしてあめみやをいきかえらせるんだ!!」

 黒子は見誤っていた。いのちの輝きが初夏に抱く感情の重さを。
 否、彼女でなくても見抜けなかっただろう。なにせ、いのちの輝き自身でさえもさっきまで抱いていたのは好奇心だったのだから。
 しかしジェイソンに初夏が殺されるのを見て初めて気づいた。
 いのちの輝きが彼女に抱いていたのは好奇心だけではなく、もっと別の重い感情ものもあると。

 それを人間に置き換えるのなら、子供が母親に抱くような感情。
 すなわち、愛情。

 その為に殺し合いに乗るなんてことは間違っている、と黒子は言いたい。
 しかし、焼き尽くされた今では最早口が動かない。
 ならば彼女の願いは一つ。

(写影、どうかあなただけでも生き残って……)

 この思考を最期に、白井黒子は息絶える。
 愛によって、彼女の命は尽きてしまう。


【白井黒子@とある科学の超電磁砲 死亡】
【残り77名】

146さよならが言えない ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:26:12 ID:3dZG5jzc0





「あるんだ! だから――」
「美山写影?」

 ソルティ・スプリングに到着したゴブリンスレイヤーと豆銑を迎えたのは、デイパックを背負い、傷を負った状態で突如現れた写影だった。
 黒子がテレポートを使えることは知っている二人からすれば驚くほどのことではないが、たった一人で現れた事実で察せられることもある。
 すなわち、黒子達はここに来た上で怪物、ジェイソンと遭遇し一人逃がすのが精一杯だったということ。

「すまない」

 だからゴブリンスレイヤーの口から出た言葉は、謝罪だった。
 どんな理由があろうとも、自分達があの怪物を逃がしたせいで、おそらくさっきまで共に行動していた仲間が死亡したのだろうから。
 しかし写影はゴブリンスレイヤーの謝罪に対し、首を横に振って応対する。
 二人に非はないと示したうえで、彼は言葉を紡ぐ。

「別に二人が悪いだなんて思ってない。それより早く黒子を助けに行かないと!」
「ああ」
「場所なら僕が案内するから二人も急いでついて――」
「当て身」

 自らのダメージなど気づきもしてないのか、言葉と気持ちを逸らせる写影に対し豆銑はトン、という音を立てて首元を叩く。
 すると体は傷に抗えなかったのか、写影はごくあっさりと気絶した。
 この光景に疑問を呈したのはゴブリンスレイヤーだ。

「どういうつもりだ?」
「生きているとは正直思えないが、それでも白井を助けに行くのは私だけだ。
 ゴブリンスレイヤー。君は美山を連れてここから離れろ」

 豆銑の言葉にゴブリンスレイヤーは少々驚く。
 それは自らの命を優先するはずの男が言った殿を務めるという言葉以上に、写影を気絶させたということについてだ。
 ゴブリンスレイヤーには、彼を気絶させる意図が分からなかった。
 それは案内役が居たほうがいいという理由以外に、もう一つある。

「シャエイには何か、あの怪物に有効打を与える当てがあったようだが」

 ゴブリンスレイヤーには、写影が何か有効打を持っているからこそ案内役を買って出ていると考えていた。
 彼はいくら気が逸っていたとしても、わざわざ危険な場所に理由もなく出向くたちではないと判断していたために。
 臆病ではなく、足手まといにならないために。
 その意見は豆銑も同じだ。

「そのようだな。
 元々何かを隠していたのは察していたのだが、この状況で有効かもしれない手立てだったとはな」
「信用していなかったのか。それならなぜ逃がして一人で行こうとする」

 豆銑の写影を信用していなかったという言葉に対し、当然の疑問を口にするゴブリンスレイヤー。
 黒子達を助けに行くのはいいとしても、写影を連れて行かない理由にはならない。

「責任だ。私が美山写影を信用していないということと、我々が約束を果たせなかったことに因果関係はない」
「それは俺も同じだ」

 写影を連れて行かない理由には納得しつつも、豆銑一人で行こうとすることには納得しないゴブリンスレイヤー。
 だが豆銑には反論がある。

「そうかもしれんな。
 だが美山写影を逃がさなければ、白井黒子の献身が無駄になる。
 私が生かすと約束した相手の、命をかけた行いを無為にするな」
「ならば俺が行くという手もあるだろう」

 豆銑の言葉に、今度はゴブリンスレイヤーが反論する。
 彼には分からなかった。自分の命を優先すると言ったはずの豆銑が、なぜ死ぬ確率の高い道を進もうとするのかを。
 それほどまでに、彼にとって約束という物は重いのかと。

「ゴブリンスレイヤー。君は冒険者と言ったな。
 依頼を受け、冒険をする者と」
「ああ」
「ならばこれは私からの依頼だ。美山写影を連れて逃げてくれ。
 私に、約束を果たせなかった責任を取らせてくれ」
「……そうか」

 豆銑の言い分に納得したわけではない。
 ただ、これ以上ここで問答しているべきではないとゴブリンスレイヤーは判断した。
 いつ来るかも分からない怪物という脅威を前に、豆銑は決して判断を変えないと理解したがために、ゴブリンスレイヤーは退いた。

147さよならが言えない ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:26:31 ID:3dZG5jzc0

「何を勘違いしているのか知らないが」

 そんな、まるで仲間を死地に追いやるかのような振る舞いを見せるゴブリンスレイヤーを見かねてか、豆銑は助け舟を出す。

「私は死にに行くつもりはない。勝算はある。
 その為には美山写影が背負っているデイパックから紙を取ってくれ。飴宮が抱えていた怪物に支給されていた紙だ」
「あれか」

 豆銑の言葉を聞き、死にに行くわけでは無いと信じたゴブリンスレイヤーは彼の要望に応じ、気絶している写影の背にあるデイパックから紙を取り出し、渡す。
 一見するとただの紙だが、見たままでないことを彼らは知っている。
 保護をすると決めた後、道すがらに飴宮から聞いていたのだ。

「南に行く」
「分かった」

 これ以上やれることはないと判断したゴブリンスレイヤーは、行く先を告げる。
 勝算があるのなら、生きて戻るつもりがあるのなら追いついてほしいという願いを込めて。
 それだけを告げてゴブリンスレイヤーは写影を背負いながら思考する。

 マメズクを疑うつもりはない。
 彼が勝算があると言った以上、何かしらはあるのだろう。
 それはいい。考えることは別にある。

「ミヤマ」

 ゴブリンスレイヤーは写影に声をかける。
 気絶している彼が返答するわけはないが、それでもゴブリンスレイヤーは語り続ける。

「お前は、シライを助けようとした。
 勿論、まるで無策ではないのだろうが、それでも――

 お前は、あの時の俺より正しい。
 姉の死をただ見ていただけの俺より、よほど」

 なぜこんなことを言っているのか、ゴブリンスレイヤー当人すら判断しがたい。
 仲間を失った写影に対し、不器用に慰めているのか。それとも同情しているのか。
 聞き手が気絶している中そんなことを言っても、何の意味もないだろうに。


【F-7/朝】

【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康、美山写影を背負っている
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、白井黒子のランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:ミヤマを連れ南下する
2:怪物(ジェイソン)に対処する手段を考えておく。マメズクが対処できるならそれが一番だが
3:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
4:これでよかったのか……?
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
6:なぜ俺たちは本名で名簿に載っていない?
7: 異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
[備考]
※時間軸はゴブリンロードを討伐した後。
※第一回放送を聞き逃しました

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:ダメージ(中)、精神的ダメージ(大)、気絶、ゴブリンスレイヤーに背負われている
[装備]:イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品×3(初夏、写影、いのちの輝き)、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー、あきビン@ゼルダの伝説シリーズ、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、何かの紙@出展不明、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
[思考・状況]:基本行動方針:???
1:黒子、僕は……
[備考]
※第一回放送を聞き流しているので大部分があやふやですが、少なくとも死者に牛飼い娘がいないことは把握しています。

148さよならが言えない ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:26:52 ID:3dZG5jzc0





「ぎゃあああああああああああ!!」

 豆銑はソルティ・スプリングに到着し黒子達やジェイソンを探す。
 すると何やら聞き覚えのない声の悲鳴が聞こえたので、とりあえず悲鳴のする方へと向かってみる。
 そこで見たものは白井黒子の遺体と

「いやだああああ! なに、なんなのこれ!?」

 足をへし折られ苦しむ、全身青に顔周りに赤いたてがみのようなものを持つ謎の生物だった。
 豆銑には、あれが何なのかまるで想像がつかない。
 まさか道具の効果で進化した、飴宮が抱えた怪物、いのちの輝きが進化したものだとは夢にも思わなかった。

「ぼくはゆうしょう、ゆうしょうするんだ!!」

 足を折られ苦しみながらそれでも優勝すると叫びつつ、いのちの輝きはビームを放ちジェイソンを焼き尽くす。
 それは白井黒子を焼き尽くし、死に追いやったビーム。

 しかしジェイソンにその程度のダメージで死に追いやることなどできない。
 それで死ぬのならホル・ホースの銃撃で終わりを迎えていただろう。
 彼は怯む様子など微塵も見せることなく、いのちの輝きに拳を浴びせる。

 その様子を物陰で隠れて見ていた豆銑は、一瞬だけ二体の怪物同士を潰し合わせれば何もせずとも問題ないのでは、と考える。
 しかしどちらかが逃げてしまえばその目論見は潰えるし、万が一結託されても困る。
 やはり自分が行動すべきだと結論付け、彼はデイパックからあるものを取り出す。
 それは一見するとただのメガホンだが、実際は違う。
 これは『無生物さいみんメガホン』という。

 無生物さいみんメガホンとか、とある世界の22世紀に存在する道具。
 このメガホンは無生物に催眠を掛けることができ、性質を変化させられるのだ。
 重い荷物の入ったダンボールに風船だと思わせれば軽くなり、漫画本に鳥だと思わせれば自在に空を舞う。 

 豆銑はこのメガホンで己の手にある傘にこう催眠をかけた。

「お前はコウモリだ。空を自在に舞うコウモリだ。
 そしてこの紙を合図したら、あの怪物二体の上で開くんだ。
 それだけしてくれれば、後は好きな場所へ飛んでいけばいい」

 豆銑が催眠を掛けると、野崎春花の傘はバタバタと羽ばたき始める。
 そして豆銑が写影のデイパックから取り出した紙を渡すと、バタバタと飛んでいき、ジェイソンといのちの輝きがいる地点から数m上空に留まった。

 しかしここで羽音に気付いたのか、ジェイソンは何やら上を見上げる。
 そして飛んでいる傘を見て訝しく思ったのか、彼はいのちの輝きの顔面を踏み潰そうとしつつこの場から去ろうとする。

「マズイ!!」

 ここで豆銑は、ジェイソンがやろうとしていることを勘づき慌てて止めるべく飛び出した。
 幸いジェイソンはいのちの輝きを踏み潰すべく片足を上げている。ならば隙はある。

「ドギー・スタイル!!」

 豆銑はスタンド能力で自らの身体を伸ばし、ジェイソンの足に引っ掛ける。
 そしてそれを勢いよく引っ張った。

 グラッ

 するとジェイソンはバランスを崩し、今にも転びそうになる。
 両足で地面に立っているならこの程度で彼のバランスは崩せなかっただろうが、片足ならばできなくはない。
 ここで豆銑は叫んだ。

「今だ開け――――――ッ!!」

 その叫びはコウモリと化した野崎春花の傘への合図。
 声に従い傘は空中で紙を開く。

149さよならが言えない ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:27:11 ID:3dZG5jzc0

 ドドドドドドドドドドド

 すると紙が開ききった直後、そこから現れたのは一台のタクシーだった。
 なぜ紙を開くとタクシーが現れるのか。それにはまずエニグマというスタンドから説明しなければならない。

 エニグマとはジョジョの奇妙な冒険4部に登場するスタンドである。
 能力は人や物などを紙にしまうこと。
 このスタンドで本体である宮本輝之輔はラーメンや銃などしましつつ、人間の恐怖のサインを見ることを趣味としていたがここでは別の話。
 彼は、このスタンドでタクシーもしまっていたのだ。
 その紙がここでは支給品となっている。

 単に車を支給するなら他の参加者に支給されている黒塗りの高級車など、スタンドを介さないものもある。
 なので当然それらとの違いもあるが、今は重要ではない。
 今重要なのは、車が上空から怪物目掛け落ちているということだ。

 勝った、と豆銑は思った。
 これなら怪物も死ぬだろう、よしんば生きていたとしても足止めには十分だろうと。
 だが万が一がある。ここは確実に怪物がタクシーに潰されるまでは見届けておこう、とも考えた。
 青い怪物が放つビームは脅威なので警戒はするが、避けることはできるだろう。

 この判断が隙になるとは考えなかった。
 タクシーが落ちるまでの時間はほんの数秒。その間にできることなど流石にないと思考した。

 その判断は正しい。
 ジェイソンだけならここで出来ることはただ潰されるのみ。
 いのちの輝きも痛みに耐えるのが精一杯で、タクシーをどうにかする気力がない。
 しかし、豆銑には思いもよらなかった。
 この状況に一手打てる支給品が、ジェイソンの手元にあることを。

 グイッ

「な、何ィィィィ――――――――――ッ!?」

 次の瞬間、なんと豆銑はジェイソンの懐に収まっていた。
 これはホル・ホースに支給されていた手にとり望遠鏡の効果だ。
 この望遠鏡が持つ効果でジェイソンは豆銑を引き寄せたのだ。
 ジェイソンは支給品を集めた際に効果も確認していたのだ。
 いくら脳が小さくても、説明書きを読むくらいはできる。

 手にとり望遠鏡の効果には一度使うと数時間は使えない制限が掛かっているが、それは既に解除されている。
 なのでここから先、引き寄せることはできなくとも引き寄せられることはできるが、今は余談だろう。

 一方豆銑は何が起こったのか分からないまま手にあるメガホンは潰され、ジェイソンの腕に体はギギギと締め付けられる。
 いわゆるベアハッグと呼ばれる締め技のようなものだ。
 もっとも、片手が望遠鏡に塞がっているのでいささか変則だが。

「うおおおおお――――ッ!! ドギー・スタイル!!」

 豆銑は自分の体を補足することでジェイソンの腕から脱出しようとする。
 しかしもう遅い。
 彼自身の命令で落としたタクシーが、一人と二体の怪物へと降り注いだ。




 ズガァァァアアアアアアアアン!!






150さよならが言えない ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:27:40 ID:3dZG5jzc0


 グラグラ

 それからどれほど時間が経ったのだろう。
 動かない筈のタクシーが揺れ動いたかと思うと、ゴロンと地面を回転し下に車輪を付けたあるべき姿へとなる。
 そしてさっきまでタクシーがあった場所の下から、一つの人影が起き上がった。

 その人影は顔にホッケーマスクを付けていた。 
 その人影は体中に傷跡があり、頭にはいくつもの銃創があった。
 その人影は手に望遠鏡を持っていた。

 その人影は、ジェイソン・ボーヒーズだった。


 そして彼の足元には、タクシーに潰され動かなくなった二つの死体。
 豆銑礼といのちの輝きが死に絶えた姿が、そこにはあった。


【豆銑礼@ジョジョリオン 死亡】
【いのちの輝き@大阪万博2025 死亡】
【残り75名】


 ところで、いのちの輝きに支給されたタクシーには、紙にしまわれている以外にも他の支給された車にはない特徴がある。
 それは――

「おれ、こんなところ走ってたっけなあ〜?」

 運転手のNPCが付属しているという点だ。
 エニグマがしまっていた本来のタクシーも運転手ごとだったので再現されているのだ。
 このタクシーに乗り、目的地を言えばそこに連れて行ってくれる。それが役割。
 しかし――

 グシャリ

 ジェイソンにそんなことは関係ない。
 そこに生きている命があるなら彼は殺す。それが彼の在り方。


 怪物、ジェイソン・ボーヒーズは未だ止まらない。


【F-7 ソルティ・スプリング/朝】

【ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日】
[状態]:全身の数ヵ所に切り傷や刺し傷、無数の銃創(特に両腕と脳)、全身火傷、ダメージ(大)、何れも殺人に支障なし
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』は使用不可)@ドラえもん、
[道具]:基本支給品×3(ジェイソン、ホル・ホース、ハサミ)、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー、ランダム支給品×1
[思考・状況]:基本行動方針:皆殺し

[備考]
※参戦時期はフレディvsジェイソン終了後。
※首輪の爆発か全身を消し飛ばされない限り何度でも復活します。
※part9でやった他者の肉体乗っ取りは制限により使用できません。
※映画内で時折見せた瞬間移動能力を有しています。
 能力に関する情報は以下の通り
 ジェイソン、追跡対象者が互いの存在を認識している事が必要
 同じエリア内でのみ可能。
 対象がジェイソンのいるエリア外へ抜けると再び同じエリア内に入るまで使用不可
 瞬間移動の利用は逃走・隠伏する対象を追跡する場合のみ。
 攻撃を回避する等の手段には使えない。
 以上の制限を自身でもある程度把握しました。
※瞬間移動以外に原作、ゲームで使用した超能力を有しているかは不明です。
※第一回放送を聞き逃しました


※進化退化放射線源@ドラえもん は破壊されました。
※E-7とF-7の境界にレールガン(弾切れ)@実写版バイオハザード、幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険 が放置されています。
※F-7 ソルティ・スプリングに以下のものが放置されています。
 白井黒子、いのちの輝き、豆銑礼の遺体、ゴブリンロードとメガデス戦闘員の群れの死体、鉄矢×10とホルスター@とある科学の超電磁砲、豆銑礼のデイパック(基本支給品)
 また別の場所に飴宮初夏の遺体、簡易レーダー@バトル・ロワイアル。
※進化退化放射線源@ドラえもん、無生物さいみんメガホン@ドラえもん は破壊されました。
※野咲春花の傘@ミスミソウ はどこかに飛んでいきました。どこに行ったかは次の書き手氏にお任せします。

151さよならが言えない ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:27:57 ID:3dZG5jzc0


【ゴーストクッキー@マリオ&ルイージRPGシリーズ】
豆銑礼に支給。
二枚一組のテレサ型のクッキー。初出はマリオ&ルイージRPG4。
使用すると一定時間攻撃を受けてもダメージを受けなくなる代わりに、マリオとルイージも攻撃できなくなる。
相手がひたすら攻撃してくるのでパターンを覚えて回避に役立てよう。

本ロワでは使用後も攻撃を仕掛けることは可能だが、効果が発揮されている間はいかなる手段を以っても相手にダメージが与えられなくなっている。

【ポウの魂入りビン@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
飴宮初夏に支給。
カカリコ村の奥にある墓地などに登場する雑魚敵のポウが倒された時、魂を一定時間残す。その魂はあきビンに詰めることができる。
魂は大人時代のハイラル城下町にあるゴーストショップで売れる他、飲むこともできる。
飲んだらダメージか回復のどちらかが発生する。

本ロワでは飲んだら回復かダメージのどちらかが発生する飲み物だが、ダメージが発生したとしても、このダメージで参加者が死亡することはないものとする。
また、中身がなくなるとあきビンとしても運用可能となる。
もしかしたらどこかでなにかと交換できたかもしれない。

【あきビン@ゼルダの伝説シリーズ】
↑の中身がなくなった後のビン。
中に薬や妖精、牛乳、魚などいろいろなものを入れられるアイテム。
素早く振ることで一部ボスの攻撃を跳ね返すことができる。
本ロワでも、もしかしたら参加者やNPCの攻撃の中に跳ね返せるものがあるかもしれない。

【進化退化放射線源@ドラえもん】
35話にて現れたはぐれメタル撃破の報酬の宝箱の中身。
光線銃型の道具で、この道具から照射される光を生物または物体に浴びせると進化、もしくは退化した姿に変化させることができる。
また、生物の頭脳だけを進化させ姿はそのままということも可能だが、このロワでは不可能とする。

【無生物さいみんメガホン@ドラえもん】
豆銑礼に支給。
無生物に催眠を掛けることができるメガホン。
物に向かってメガホンで「君は○○だ」と呼びかけることで物に別の性質を持たせることができる。

このできる範囲は広く、掃除機をスーパーカーにしたり箒や絨毯に空を飛ぶ効果を持たせたりも可能。
また、鳥やウサギだと思わせることで命を与えることもできる。

本ロワではこの道具でかけた催眠は十分ほどで解ける。
また、一度使うと一定時間使用不可能となる。

【タクシーが入ったエニグマの紙@ジョジョの奇妙な冒険】
いのちの輝きに支給。
元々は四部に登場する宮本輝之輔がスタンド能力で紙にしまっていたタクシー。運転手もセット。
本ロワでも変わらずタクシーと運転手がセットで支給されている。
ただし運転手は一度紙から出すとNPCとして扱われる。


【メガデス戦闘員@真夏の夜の淫夢シリーズ】
正式出展は超人サバイバーZ 02。
悪の組織メガデスの戦闘員。外見は仮面ラ○ダーに出てくるショッカーの色違いみたいな白の全身タイツに覆面。
トレーニング中であろうとも男に触られると感じる。
基本的に「イーッ!」と叫ぶが普通に喋ることも多め。
棒術で戦う。

なお、原作ではトレーニングシーンはあるが戦闘シーンが存在しないので棒術で戦うのは本ロワ独自設定である。

【タクシー運転手@ジョジョの奇妙な冒険】
四部に登場するエニグマにしまわれていたタクシーの運転手。
本ロワではロワ会場の地図にある施設、もしくはエリアを言うことで、そこまでタクシーで運んでもらえる。
タクシーが壊れているなら代わりの車を用意しよう。

152 ◆7PJBZrstcc:2025/01/29(水) 21:28:43 ID:3dZG5jzc0
投下終了です
何かおかしな点、不明な点がありましたら指摘よろしくお願いします

153◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:22:03 ID:???0
投下お疲れ様です!
やはり怖いですねジェイソンは。
まさにホラー映画の虐殺シーンと言わんばかりの大混戦、たいへん見ごたえがありました。
対主催もマーダーも区別なく理不尽を押し付けてくるのは、ホラー映画界を代表するバケモンなだけありますね。
かがやき君のミャクミャク様への進化はおお!となりました。なに味方にフレンドリーファイアしてんだい。
優勝を目指してさえいなければ、あと2カ月に迫った万博開催までに生き残れたかもしれませんね。

私もバケモンにはバケモンをぶつけんだよというわけで投下します。
内容に少し過激な描写があるため、もしSNS等で内容に触れる方はキャラ名を検索避けして頂けると助かります。

154◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:23:57 ID:???0
■■■


必要だったんだ!なにか拠り所になるものが!信じられるなにかが!


■■■


私、なにを、してたっけ。
鈴奈の頭の中に浮かぶのはそれだけだった
なにか、やらなくてはいけないことがあったはずだと。

「……何、この匂い」

目の前は真っ暗で何も見えない。
そんな中、どこからか漂うのは、夏場の女子トイレのような汚水の匂いだ。
鈴奈はランチメイト症候群を患っている。
この匂いは、過去に人目が怖くなり、便所飯をしていた辛い記憶を想起させる。

「って、なんだ、ここって……」

よく周りを見れば、女子トイレの個室だった。
人の目が怖くて逃げていた彼女の、かつての殻だ。

「……そうだ、早く部室に行かないと」

寝ちゃってたのかな?と思い扉を開ける。
向かう場所は帰宅部の部室。今の鈴奈にとって一番大事な場所だ。
メビウスに来た最初の頃は、μに造られた中学時代の友達のコピーとだけ交友関係を築いていた。
一年二組は全て鈴奈のためだけに作られた、魂なきクラスメイトだ。
そんな孤独な鈴奈を救ったのが、同じ帰宅部の部員達だ。
一緒にお弁当を食べたことも、歌を聴いてくれた事もある。
何より、『俺が付いてる』とまで言ってくれた大切な先輩が居る。

外を出て、暗い廊下を手探りで進んでいくと、闇の中にぼんやりとした光が見えた。
学校の片隅にある、吹奏楽室を改装した部室だ。
この居場所がある限り、便所飯をしていた頃のような惨めな思いはもうしない。
楽しげな歓談の聴こえる部室の前に立ち、扉を開けた。

「おつかれー」
「やぁ、鈴奈ちゃん」
「待ってたよ、一緒にお弁当食べよ」

「はい!」

扉を開ければ、いつも通りの光景だ。
仲の良い美笛を始め、いつものメンバーが揃っている。
佐竹笙悟、峯沢維弦、響鍵介、柏葉琴乃、守田鳴子、篠原美笛、天本彩声、琵琶坂永至だ。
過去に不慮の事故で居なくなった鼓太郎を除けば、帰宅部の仲間がこの場に揃っている。

「あれ?部長はまだでしょうか」

それは、何気ない言葉だった。
鈴奈の想い人である先輩こと帰宅部の部長がこの場にいなかった。

「は?」

部員たちの視線は一斉に鈴奈へと向いた。

「え?何ですか皆さん……?」

「……居るわけねぇだろ」
「何、言ってんの、鈴奈ちゃん」
「あのさ、そういう事冗談でも言っちゃ駄目だってわかんないかな?」
「お前、自分が何したか分かってないのか」

何だか訳が分からなかった。
鈴奈への悪態は止まらず、エスカレートする。

「ひっ!な、なななな、なんでっ……そんな眼で見るんですか!」

「そうか、ならお前はもう部員じゃないな」
「それにしても、よくもまあのうのうと部室に戻って来ようとしましたね。貴方、恥ずかしくないんですか?」
「喋らないでくれるかしら。貴方の声聴くと虫唾が走るの」
「人殺しが……!」

部員達が思うままの武器を発現。
剣、弓、鎚といった装備を構え、鈴奈へと襲いかかった。

「ヒィッ!」

155◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:25:35 ID:???0

部室から飛び出し、外から鍵をかける。
背後から罵声が聴こえることに、どくどくとした心臓の音を響かせ、ただ全身全力で駆ける。

「なななな、なに、これ……」

ひとごろし?
そんな事言われても、思い当たることがない。
体力を使い切った鈴奈は廊下の床にしゃがみ込む。
息を立て直しながら、立ち上がることも出来ない。

「これは夢、なのかな……?」

ガタガタと震え、頭を抱えすがるように呟く、叫ぶ。
どこかで自分が、なにかしでかしたしたような気もするが思い出せない。

「ハッ!夢なわけねえだろバーーーーカ!」
「あ!……み、水口さん!」

小馬鹿にするように、不意に背後より声をかけられた。
水口茉莉絵。別名楽士ウィキッド。
人間の繋がりを忌み嫌い、破壊する事に悦を感じる女だ。
かつて彼女の撒いた情報により、何日も飲まず食わずで監禁されたことがある。
限界を迎えた部員達が互いに罵り合う光景は鈴奈にとってのトラウマだ。
人との繋がりを大事にする鈴奈にとって最悪の相性を誇る相手だった。

「まさか、あなたが変な嘘を流したんですか!」

かつて帰宅部の仲間である守田鳴子を利用し、部員達を仲違いさせた女である。
また、良からぬことをしたのだろうと思い当たった。

「はぁ〜〜???何、人のせいにしてんだ!脳味噌詰まってんのか?じゃあお前の無駄にデッケェケツの下にあんのはなんだ!」
「え……?お尻……?ひっ……!」

ふと気づけば、ぐちゃりと、嫌な触感がする。
クッション、なんてものじゃない。

「え、あ、嘘、なんで……」

見覚えのある髑髏の仮面。
それがコロリと転がりれば、見覚えのある顔になる。

「お前が踏み殺したんだろ!どっかの鼓太郎みてえにさ!」

響鼓太郎。それはかつて、楽士シャドウナイフを救おうとし、目の前で事故死した少年だ。
鈴奈にとって初めて目の当たりにした人の死であり、トラウマとなっている。

「人様殺しといて、逃げてんじゃねぇよ人間のクズが!」
「違います!私じゃない……私じゃない!」

ウィキッドを突き飛ばし、また逃げる。
ぜぇぜぇと、なんだか分からない焦りを抱え、ここじゃないどこかへと。

逃げ込んだ場所は市立図書館。
入部前の鈴奈が、メビウスにおいて落ち着ける居場所にしていた場所だ。
そこは、かつてのように心を安らげる平穏な地ではない
通りすがる人間達は、みんな鈴奈を遠目で見てはヒソヒソと嘲笑う。
そんな中でフードを深く被った一人の少年が、ゆっくりと近づいた。

「見損なったよ鈴奈、そんな人間だったなんて」

楽士、少年ドールの姿であった。
当初は敵としての出会いだったが、メッセージアプリ『wire』のIDを交換する程度には関係性が構築された仲だ。

「ああああああああああ!もう嫌だあああああ!やっぱ人間なんて、信じるんじゃなかった!」

そんな彼も絶望したように嘆く。
慟哭に合わせて大量の人々が人形へと変わり、鈴奈へと襲いかかる。

「違うんです!これは、何かの間違いで……!話を聞いてください!」

その言葉は人々の怒号でかき消え届くことはない。
逃げるしか無かった。

走り続けた。限界まで。
これは嘘だと、どこかに本物の先輩は居るのだと信じるために。
パピコ。宮比温泉物語編。シーパライソ。ランドマークタワー。
メビウス中の思い当たるところを全て走り回る。
全ては徒労に終わり、心ない言葉を浴びせられ、無駄に心を苦しめただけだった。

156◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:27:05 ID:???0

そうして逃げ続け、最後に駆け込んだ場所は、学校の女子トイレ。
そこは聖域だ。鍵をかけて隠れてしまえば、昔のように彼女の心を守る殻になる。

「先輩!先輩はどこですか!……返事してください」

マナーモードのように震えながらスマホを叩く。
どれだけメッセージアプリ『wire』で入力しても、既読が付くことはない。

「バカじゃねぇの?現実見ろよ!お前が殺したんだろうが!」
「ヒッ!」

バァン!と扉を叩かれた。
そのたびに鈴奈は震え、悲鳴を上げる。

「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいで部長は死んだ」
「おまえのせいだ!」
「おまえのせいだ!」
「おまえのせいだ!」
「おまえのせいだ!」

扉の外の声は次第に大きくなり、親しき者たちの声が混ざる。
彼らは扉を乱暴に開け、入り込もうとし、そのたびに隙間から顔が覗く。
覗く顔はコロコロ変わり、言葉を吐いては鈴奈を追い詰める。
鈴奈は自分の心を守ろうとするように、無理矢理閉じようとする。

「ち、ちが、私のせいじゃ……」

「弁護の余地もないな、その臭っせえ舌の根焼いて、二度と喋れなくしてやるよ!」
「あーあ、なんでこんな奴と一緒にお弁当食べちゃったんだろう」
「ちょっ、そういうこと言わないで!無理無理無理無理!気持ち悪い!吐きそう……オエー」

「やめて……本当に、やめてください!」

「ほんっと、気持ち悪いですよね?。人様に迷惑かけるぐらいなら、今すぐ死んで豚の餌にでもなったほうがいいですよ?」
「うん、その通り!今すぐ死んでくれる?部長殺しの最後の瞬間!これはバズの予感!」
「そうだ、死ねよ人殺し」
「今すぐ死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「死ね」

扉は過剰な圧力に限界を迎え、叩き壊れた。
鈴奈の心の奥にずかずか踏み込むように、狭い個室へと何人もの人間がぞろぞろと侵入、鈴奈を取り囲む。

「死ね」「死ね」「死ね」

そうしてせかすように、死ね死ねと手を叩きだす。
その行為はただ、鈴奈の死を望む為のもの。

「嫌!やめてください!」

鈴奈だってやるときはやる。
もう限界寸前だ。心を守る為の正当防衛はする。

「これは夢!夢!夢!悪い夢!居なくなってください!」

カタルシス・エフェクトの槍を発現
これも夢なのだと思い込む。
隙を見せた瞬間を狙い、目の前へと槍を突き刺した。

「痛い!痛いよ……鈴奈ちゃん、何するの……」
「あ、あ……」

美笛が痛がるそぶりを見せた事に、思わず動揺する。
夢であると思い込んではいるが、心優しい鈴奈はその姿に心を痛める。

「鈴奈ちゃんが、居なくなれって言ったんだからね……」

美笛の胸に空いた穴から、空気が入り込んでいき、身体が膨らんでいく。
人体構造を無視して真っ赤に充血していくその姿は、まるで赤い風船だ。
ぶくぶくと膨らみ、美笛が本来忌み嫌う肥満体型のようになる。
爆発寸前まで到達したとき、身体から頭部へと一気に空気が流れ込み風船のように破裂した。

157◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:28:07 ID:???0

「ぼひょつ!」

奇声を挙げ、ばぁん、と美笛の頭が爆発した。
それはまさに、赤い風船が破裂するようで。

「あ、え……嘘」

「ふーん、部長だけじゃなく私達まで殺すんだ」
「アンタのせいだから」
「お前のせいです、あ〜あ」
「人殺しが!!この人殺しがァァァ!!」

悪夢は終わらない。
ぱぁん、ぱぁん、と一人、また一人と頭部が膨らんでは破裂していく。
彼らは最期まで鈴奈を責め立て続けた。
血肉のシャワーを浴び、嫌な体温を感じる。
鈴奈の望み通り、この世界には誰も居なくなった。

「え、ねぇ待ってください!違うんです!嫌!私、そんなつもりじゃなかったんです」

言い訳を聞くものはいない。
周囲には首から上を失った遺体が転がっている。
生き別れとなった首からは血が止まらない。

「ひっ!」

壊れた蛇口のように勢いよく、どろどろした血がトイレの個室へと流れ込む。
どれだけ手で抑えようとしても止まることは決して無い。

「止まって!止まって!ごごぼっ、ごぼっ!」

血は止まらない。人間の体積を超えた量を放出しても止まらない、ずっとずっと流れ続ける。
洪水の様な血の濁流は鈴奈の腿、腹、胸、肩と次第にかさが上がっていき、最終的に鈴奈の全身が浸かった。

「ごぼっ、たす……けて……!」

血の中で溺れながら、思わず天井へ手を伸ばした。
なにかに引っ張られた感覚があった。



鈴奈は気が付くとホールの中にいた。
ライブハウス、グラン・ギニョール。
この世界に来る前に最後に居た場所だ。

「……せ、先輩」

喉に絡んだ血を吐きながら息を立て直す鈴奈の目の前には、大切な先輩の姿があった。
俺が付いてると言ってくれた、彼女にとってのヒーロー。
ずっと居なくなったりしない、彼女だけの神様。
その顔を見ただけで、思わず涙を浮かべ鈴奈は安堵した。

「先輩が、助けてくれたんです……ヒッ!」

鈴奈は一瞬、もしかして今までのは全部悪い夢だったのかなと思った。
そんなことはなかった。
痛々しく、全身の骨が砕け、血で真っ赤に染まった彼の姿に気づいたからだ。
自分がそうしたのだと、この瞬間理解した。
なんで?生きてるの?なんて疑問も言う前に、真っ先に謝罪の言葉を告げた。

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

叫ぶように続ける。
SNSのショート動画をループ再生させるように鈴奈は同じ言葉を繰り返す。

「ごめんなさ、あ」

先輩はにこりと笑った。
鈴奈はそれ以上謝罪の言葉を紡ぐ必要が無くなった。

158◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:29:45 ID:???0



「あ、え、」

撃たれたからだ。
先輩の姿が、透明人間の楽士Lucidへと変わる。
一発だけではない、二丁拳銃による連射を繰り返し、完膚までなきに止めを刺す。
Lucidはチッチッと指を振るう。
ここに来る直前の光景を繰り返すように。
鈴奈のトラウマを逆撫でするように。
人さし指を振るい、ジェスチャーした。
限界まで追い詰められたところを救済し、心の底から信用させてから、裏切った。
まるでそんなとき、どんな顔をするのか見たかったように。
それが、人間を壊すのに一番良い手段だと分かっているように。


(どれが、ゆめ、なんだっけ)


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#center(){これは、夢なのか、現実なのか…}


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汚水のかぐわしい香りが漂う不衛生な下水道。
参加者のみならず、NPC達も利用した生活排水は、数分居ただけでも汚臭が身にこびりついて離れなくなる。
そこには今しがた不幸な事故により、無情にも命を終えたひろしと、その上で気を失った鈴奈の姿があった。
西片を捕食した後、恐怖の匂いを嗅ぎつけた最強の捕食者、ペニーワイズは、気絶した鈴奈の姿をとらえた。

「ふぅむ、サプライズプレゼントの具合はどうだい?」

ペニーワイズは先ほど回収したばかりのエコーズを発現している。
そのスタンドは3つの効果があるが、そのうちの一つACT1だ。
その言葉を生み出す力は相手の精神に影響を及ぼす。
例えば、『信じて』のように言葉を信じさせることもできる。
この効果は、つまり脳に直接、働きかけるということだ。
ならば上手くやれば、夢を思うままに操る事も容易だろう。
奇しくもどこかの災厄世界の幽霊が行った手法を、偶然にもペニーワイズは実行した。

幸いにも、いや鈴奈にとっては不幸せな事だが、この場所は下水道だ。
匂いというものは記憶に深く結びつけられている。
この汚臭は友達がおらず、一人で便所飯を食べていた辛い記憶が蘇る。
そんな状況下で『彼女を責め立てる言葉』を送り続けたのだ。
その心の奥でトラウマを何倍にも膨らませ、踏み躙った。
夏油傑に祓われた名もなき呪霊ですら相手に犯される悪夢を見せる程度の事は出来るのだ。
上位存在たる『それ』に出来ないはずがない。

「リアルさが足りない?見分けがつかない夢の世界はお前にとっては十分現実だろう?」

そもそも臆病な鈴奈である。
刺激できるトラウマは数多くあった。
ウィキッドによる部室での監禁、鼓太郎の事故、孤独な便所飯、そして大切な先輩からの裏切り。
そんな光景をRemixして繋げてやった。
いずれ一つでも1人の女子高生が抱え込める許容量ではない。

「え……?」

悪夢から覚めた鈴奈は唖然とした。
ぼんやりとした頭は次第にはっきりし、悪夢が終わらないことを瞬時に理解させる。

「ヒィッ!」

目の前には巨大なピエロが居た。
その両手で全身を握られている。逃げることは叶わない。
今まさに、頭から丸ごと食べられる直前という状況だった。

「やぁ、モーニングコールの具合はどうだった?」

放送が流れ出すが、聴くほどの余裕は鈴奈には無い。
地獄の様な悪夢から、いつまでも醒めないことへの絶望だ。

159◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:31:32 ID:???0

「誰がお前のような根暗女と帰りたい、お前はいつだって独りぼっちだ」

ペニーワイズの顔が、コロコロと姿を変える。
声色を変え、ただただ、責め立てる。

「『私』は、『おれ』は、『オイラ』は、」

それは、鍵介、笙悟、維弦、鼓太郎、琵琶坂。
それは、琴乃、彩声、美笛、鳴子。
それは、鈴奈の中学生時代の友達である亜衣。
それは、フードを被った少年、2面性のある魔女。
それは、鈴奈が思いをよせる、ただ一人の先輩。

「愉快なピエロさ。そしてお前も踊らされる道化だ。最期にお前の大好きな先輩とキスしな、別れのキスさ」

御馳走を前に『それ』は口を大きく広げる。
先輩に化けた顔が裂けていき、捕食者としての姿を晒す。

「さあ、浮かぶ時間だ!」
「……い……な」
「ん〜〜なんか言ったかいスズナ?」

最期の泣き言でも聞いてやろう。
そうペニーワイズは口元に聞き耳を立ててやった。







&sizex(7){「……先輩はそんなこと言いません!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」}
「うぉっ!」

度し難いほどの大声か下水道すべてに響いた。
これには、ペニーワイズといえど思わず手を離した。

鈴奈がこれまでに人生で発した最大級の声の、さらに何倍もの大きさで。
心の奥に溜まっていたなにかを、勢いよく放つように。
そして、黒く禍々しい衝動が彼女の身を包み。棘のようなものが鈴奈の体内から生えた。


鈴奈の心は今、限界を迎えた。


ペニーワイズは追い詰め過ぎた。
鈴奈は殺し合いが始まってから―――いや、始まる前から常に心の奥で苦しみ続けていた。
カタルシス・エフェクト・オーバードーズという技がある。
暴走寸前ギリギリまで心の力を解放し、自らの力を強化する帰宅部員の切り札。
神楽鈴奈はこの殺し合いに呼ばれる直前、その力を発動し戦闘していた。

その上、この殺し合いに呼ばれてからは、アリアによる調律が受けられない状況下でカタルシスエフェクトを連発。
本来カタルシスエフェクトを発動するには心の力の調律が必要になるのだが、その調整が出来ていないのだ。
そのうえ、ひろしを事故で殺すという殺人経験。
さらに彼女のトラウマを逆なでする、他人から見られ、ボロクソに存在を否定されるという地獄。
ただの女子高生が耐えられる量はとうに超えている。

するとどうなるか、心の調律は崩れ、不安定に、攻撃的になる。
カタルシスエフェクトは制御を失い、メビウスの住民であるデジヘッドとして暴走したのだ。
のちに二代目帰宅部に入部するはずだった風祭小鳩の逆だ。
そもそもカタルシスエフェクトはデジヘッドと同じ力を調律によって制御したもの。
ならば調律出来なくなった時点で、逆説的な変化もありうる。

前兆は既にあった。
この殺し合いにおける鈴奈の行動もそうした事情により裏付けられる。
本来は心優しくて内向的な鈴奈が、エーリュシオンに煽られた程度で激昂したこと。
スカルの仮面を被ったひろしをLucidだと見間違えたこと。
デジヘッド化の片鱗が出ていた初期衝動だ。
衝動に抑えが効かず、認知が歪んでいたならば説明が付く。

「な、あああ〜〜?」

ペニーワイズとしても想定外だった。
先ほどまで絶望を叩き込んでいた女が一瞬にして、恐怖を克服したのだ。
ペニーワイズの幻覚は『これは夢』だと強く思い込むことで対処出来る。
奇しくもデジヘッドという、現実から目を背け、都合の良い夢に捕らわれた存在となった鈴奈には効果は無い。
幻覚を理想で上書きした形だ。

160◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:33:51 ID:???0
ペニーワイズの体が煙を立てて縮んでいく。
デジヘッドは辛い現実から目を背け、理想に盲信した存在。
そうなると現実の辛い記憶、苦しい記憶を忘れてしまうのだ。
恐怖を糧とする『それ』にとって、相性は最悪となる。

「偽物は、居なくなってください!」

駆け出す。目の前の現実から目を背ける為に。今度こそ目を覚ます為に。
鈴奈が発現したその槍が、心臓を貫かんとした。

「なああああ〜〜〜〜!


……なぁんてね。ほぉら、こっちさ、手の鳴る方へ」

ピエロとはおどけるものだ。そしてアドリブも効く。
記憶を覗いたということは、デジヘッドの特性も当然すでに知っているということだ。
槍に貫かれる瞬間、『それ』はテレポートにより姿を消した。
鈴奈の数十メートル後ろに現れ、ひらひらと手を振るう。

「逃げないでくださ……え?」

振り返る鈴奈。
目にしたのは、潰れたはずのひろしの死体だ。
折れた骨でどうやっているのか不明だが、実際立っている。
ペニーワイズの力は幻覚だけではない。
自在に物を動かすテレキネシスという超能力もある。
作中では幻覚も混ざっているため、どこまでのことが出来るかは不明だが、
相手の身体をフワフワ浮かべたり、ヘンリーのナイフを病室に送り込むなどは実際にやっている。
その力でひろしの遺体を自在に操り、鈴奈へと向かわせた。

「せ、先輩!」

だが、彼女の眼には、それがスカルの仮面を被ったひろしでは無く、愛する先輩の姿に映ってしまった。
これはペニーワイズの幻覚ではない。
デジヘッドの眼は無意識下で、映る物を自分の理想に変えてしまう事がある。
男性恐怖症の天本彩声の眼にメビウスの住民全てが女性に見えたように。
ひろしを踏み殺してしまったこと。先輩に裏切られたこと。
ふたつの現実を受け入れられなかった鈴奈の脳は、それが怪我の一つもしていない、五体満足の先輩の姿に映ってしまった。

「はは、そっか、これはやっぱり全部夢だったんだ!」

ひろしの遺体は千切れかけの手を動かし、『ウソウソ』とでも言いたげなジェスチャーをする。
その瞬間、裏切られたという現実も、殺してしまったという現実も、彼女の頭の中で全て無かった事になった。

「先輩が死ぬわけない!私が先輩を殺す訳がない!私を裏切る訳がない!俺が付いてるって言ってくれましたもんね!ああ、良かった!」

デジヘッドの盲信性が悪い方向に作用していく。
人間の脳は追い詰められると、どれだけあり得なくて都合の良い嘘だろうと、それに縋ってしまう習性がある。
デジヘッドとなった者は衝動のままに動く、辛い出来事を忘れさる。
恋人や家族の死を忘れて幸せな夢の中で生きる者たちは数多い。
メビウスの住民は誰もが現実との矛盾、ホコロビに気づけない。違う、気づこうとしないのだ。
本来の鈴奈ならばともかく、追い詰められて暴走した罪悪感は、彼女の正気を容易く奪いさった。

鈴奈は、先輩に駆け寄ろうとした。
無事だった事が嬉しかった。
思いっきり、すっ転んだ。
エコーズACT3は重さを変える。
その力で、鈴奈の足を急激に重くした。

「もごっ!(動けなっ)」
「ハハハ!大好きな先輩とキスできて幸せかい?」

転んだ鈴奈は抱きついてキスをするように、ひろしの遺体へと覆い被さる形となった。
早く退かないと、と思えど身体が抑えつけられたように重く、言うことを効かない。
それどころか、ひろしと共に徐々に地面へと埋まっていく。

「も、も”も”っ……!?」
「それにしてもお腹が空いたな。何が食べたい?ピーナッツ?綿あめ?ホットドッグ?」

いつの間にかペニーワイズの縮小が止まっていた。いや、再び大きくなっている。
これまで通りのペニーワイズなら、相手が恐怖を克服した時点で終わっていただろう。
だが、今はエコーズという新たな超能力が宿ったのだ。
それを利用して、新たな恐怖を与えてやれば、何の問題もない。

身体全体が重くなる。鈴奈の筋肉では到底動かせない程に。
もがく事もできず、型を嵌めたように、鈴奈の形に合わせてぴったりと地面に穴が空いた。

「……そう!忘れちゃいけないポップコ-ン!スズナは好きかい?」

161◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:35:28 ID:???0

まだまだ体重の上昇は止まらない。
2倍、3倍へと膨らみ続ける。
これだけではダメージにならないが、その下にいる者には別問題だ。

「私は大好きだ。跳ねるからさ。そら、ポンポンポン!ポン!ポン!ポォン!」

5倍、10倍。
下敷きとなったひろしの遺体が押し潰され、ポンポンと小粋のいい音を立てて断裂していく。
スタンドの強さは精神力の強さを由来とする。
ペニーワイズは相手の恐怖により強くなる。
つまり、鈴奈が怖がるほどに、重量が加速度的に跳ね上がり、ミンチ化が進むということだ。
自分のせいで大事な先輩が潰れていく。
内臓が潰れて、破裂して、肉が跳ねる感覚を、鈴奈は身体で感じる。
認知の歪んだ鈴奈にとって、それは先輩を自らの体重で潰しているのと変わらない。

「ハハハハハハ!どんどん重たくなるぞぉ〜。ポップコーンと御一緒にジュースもどうだい?」
「もごっも、ごごご!ご!もも(あ、やだっ……もうやめてください!やめて!嫌っ、嫌あああああああ!!!!!!)」

数十倍、数百倍か。測定できない程に鈴奈は重くなった。
ひろしの身体がミンチとして潰れていく。鈴奈はプレス機となった。
トン単位へと膨らんだ圧力で人体が圧縮される。血液、内臓、脳漿が搾りたてジュースの如く勢いよく溢れ出すのを身体で感じる。
鈴奈は穴の中で、染み出したそのプールを零距離で浴びる事になる。
遺体に溜まっていたガスが急激に圧縮され、高熱を放つ。
砕けた細かい骨の破片が圧力で勢いよく刺さる。
人体で最も頑丈な頭蓋骨も叩き割れ、頭部が破裂、その中身が押されるままに勢いよく飛び出す。
鈴奈の口と鼻から、ひろしの肉片や脳味噌が入り込み反射的に嘔吐反応を促す。

「おぇづ、おぇええええええ」

嘔吐したところで何も変わらない。
首も瞼も動かす事も出来ない今、吐瀉物はプールに混ざり、直接顔に浴びる事になる。
鈴奈のファーストキスはゲロ味だった。
自らの胃液でその綺麗な肌を焼いていく。
まだまだ重くなる。あまりの重さに地盤が陥没、下水道の流れが変わり、勢いよく鈴奈へと流れ込む。
汚水、肉片、脳漿、嘔吐物が混ざった液体が喉に絡みつき鈴奈を苦しめる。

「お、ごこごこごご!ぼっ!」
「まただ!また、殺したなスズナ!お前のせいで大事な先輩がバラバラだ!お前のせいで死んだんだ!」

地獄の苦しみはひろしの遺体が、地面の染みになるまで続いた。
鈴奈を救おうとした勇気ある少年の思いは何もかもが無情に終わる。
その願いは反転し、遺体すらも追い詰めるための呪いとして余すところまで使われた。
粉砕された肉片は次第に下水の流れに混ざって流れて溶けていき、残ったのは存在したことを示す染みだけだ。
どれだけの時間が過ぎたか、汚水で膨らまされた腹と共に、鈴奈は茫然自失した。

「は、はは……いや、いや、やだ、先輩が……なくなっちゃった」

その僅かな染みも、少しずつ水に溶けていき、もう目の前には何もない。
こんな状況、デジヘッドの盲信性があれど処理出来ない。
できるわけがない。

「これは、ゆめ?」
「現実さ、お前のせいであいつは死んだんだ」
「……わたしの、せい?」
「そのとおりでございまぁす!!」

「あ、は、ははははははははははははははは!」

鈴奈は完全に壊れた。
現実逃避出来る分量を完全に超え、恐怖はオーバードーズした。

「うーーーん。受け入れられないかい?OK!特別サービスだ!そんな鈴奈には、素晴らしい夢の世界にご招待だ! 
「……いや……ゆめはいや!………ゆめはもういやあああああ!!」
「なあに、心配することはないさ!」

鈴奈にはもう訳がわからない。涙を流し、呂律の合わない言葉を吐き、四つん這いで這って逃げ出そうとする。
何の意味もない。
『それ』は鈴奈の頭を掴み、無理矢理瞼をこじ開ける。
そうしては口を大きく、文字通り引き裂けたほどに広げた。
体内から溢れた死の光が鈴奈を包みこむ。
それが偽りの光(Lucid)であれど、もう鈴奈は抗えない。

「さぁ、友達になろう!大丈夫さ!『俺がツイてる』!」

162◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:42:28 ID:???0
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#center(){どれが夢? }
#center(){どれが現実?}


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「ヒィィィイ!訳が分からねえ!」

男達が逃げていた。
彼らは名前を覚える必要も無いNPCの吸血鬼だ。
このあと死にます。

「どうしてこんな目に!」

あまり必要ないが、一応何があったかを解説する。

彼らは、エーリュシオンの帰還により放置されていた鈴奈とひろしのデイバッグをたまたま拾い、中身を物色。
「ストゼロがあったぞ!」「でかした!!」とキメて猫ミーム動画の如くハッピーハッピーハッピーしていたところ、気絶していた女を発見。
当然の如く襲おうとした。

一応彼らの紹介をすると、先頭を走るのが名もなき吸血鬼。ユカポンというアイドルのファンをしている。
後ろに続くのが伊藤大祐、田所興起、虻谷、広沢満之という暴力と性欲に溢れた男共である。
ちなみに後ろの4人も色々あってウイルスに感染し、吸血鬼になっていた。
彼らがNPCとして殺し合いに呼ばれ、人間を辞め、意気投合し手を組むまでに笑いあり涙ありのドラマが百万文字程あったのだが、特段面白味もないので省略する。

そんなこんなで彼らは気絶中の鈴奈に対して、股ぐらをイキり立たせていた。
女は血に塗れ、汚水のクソみてェな匂いもするが、ライフラインが壊滅し、不衛生な世界に住む吸血鬼にとってその程度は些細なことだ。
大祐は「おっ、この子胸デッケェじゃん」と刹那的な快楽にウキウキだった。
田所は「コイツ、琵琶坂のとこで見覚えあんぞ!」とストレス発散にいたぶるつもりだった。
虻谷はデュフデュフ笑っていた。
広沢はユカ略と共に肛門調教するつもりだった。
そんなわけで男達はファック&サヨナラからのR-18G展開にしようと近づいた。

「うわ、『身体に落書き』ってやつか?」

大祐が馬乗りになり、服を脱がそうとしたところ身体に描き込まれた文字に気づく。
そういうフェチなのかと誤解した。

「なんだこりゃあ……?『KILL』……ぅ!」
「あ”あ”、あ”ああああ”あああああああ!!!!!!」
「あああああああああ!うるせェな!」

彼女は悲鳴とも嘆きともとれる大きな慟哭を発した。
少女が目を覚まし自分の状況を理解すると、一瞬でその姿を変貌させる。
ネオン管のようなものが刺さった異形の怪人となった。
そのまま目の前の現実を否定する。
どこからか槍を発現すると、一差しで大祐のマイナスドライバー(意味深)を貫いた。

「痛でえええええええ!」
「ヒィッ!コイツやべェぞ!お前ら逃げろ!」

解説終了。冒頭に戻る。

もちろん彼らはただ無様に逃げるわけではない。
そのへんに無から生えていた弓矢やら日本刀やら西洋剣やら破壊の鉄球やらを手に鈴奈を迎え撃つ。
素人のそんな小細工が通用する相手ではない。
瞬く間に、刺され、壊され、捩じ切られ、貫かれ、叩かれて数を減らしていく。
狂暴で再生力の高い吸血鬼といえど、それ以上の殺意と暴力を振るわれては何の意味もない。

「ま、待ってくれよ……悪かったからさ……ゆるしてくれよ! な! な!」

彼らは必死に命乞いをした。
彼女はもう何も聞きたくないようで、通じなかった。

&color(red){【伊藤大祐(NPC)@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage 死亡】}
&color(red){【田所興起(NPC)@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ- 死亡】}
&color(red){【虻谷(NPC)@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘 死亡】}
&color(red){【広沢満之(NPC)@黒衣の少女探偵 月読百合奈 死亡】}
&color(red){【ユカポンファンの吸血鬼(NPC)@彼岸島 48日後… 散る】}

163◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:43:48 ID:???0
■■■


一度人を殺したら「殺す」って選択肢が
俺の生活に入り込むと思うんだ


■■■


初の殺人を終えた鈴奈は、特に思うこともなく彷徨う。
夢遊病患者の如くふらふらと。
身体にかかった血を拭くことすらしない。

今の鈴奈には何本ものネオン管が刺さり、身体を貫いている。
これはあくまで、身体から溢れた泥質化した感情の象徴であり、実際に刺さっているわけではない。
とは言え全身に被った真っ赤な血肉と合わさり、非常に痛々しい姿だ。

「ハハハハハ!鮮血、ビューティフォー!」

その姿が、ペニーワイズには面白くて仕方がなかった。
NPC達の血溜まりのうえで、愉快に楽しくスキップからのダンスをキメた。
この鈴奈が辿り着かなかった未来には、マリオヘッドという存在がいる。
意識をコントロールされ、傀儡として動くようになったデジヘッドだ。
支配元から直接力を与えられる分、本来のデジヘッドより強化されている。

「初めての殺人おめでとう!これで本当にお前は人殺しだ!スズナに大きな拍手を!」

ペニーワイズは鈴奈を捕食するのではなく、自らの手駒とすることを選んだ。
かつてヘンリー・バワーズに『殺せ』『皆殺し』などと殺人を唆し、ルーザーズクラブに恐怖を味あわせたように。
マインドコントロールは元々ペニーワイズの得意技。
さらにダメ押しとして精神へ直接干渉するエコーズまである。
そのスタンドの力は自殺寸前まで追い詰められた広瀬康一の母を正気に戻せる程だ。
逆にいえば、その力を反転させれば今以上の地獄に叩き落とす事もできる訳だ。
鈴奈の身体に描き込まれた『KILL』の文字は、デジヘッドとしての溢れ出す攻撃性を周囲への殺意として塗り替えて、何倍にも増幅させた。

「近くに面白そうな子達がいるみたいだしね、たっぷりと恐怖を味合わせてきてごらん!」

レミリアやドラえもん、クレマンティーヌなどの記憶を見て、この世界には自分の様な超能力を持つものが居ることを知った。
鈴奈の記憶におけるデジヘッドや、ひろしが使ったペルソナもそれだ。
だから、それを利用する。そうすればもっと恐怖を味わわせることが出来る。

鈴奈は呪われた。もう後戻りは出来ない。
ゲラゲラゲラゲラと、道化は愉快に笑う。
それはまさに玩具で遊ぶ子供。
上位存在にとっては、どんな人間も糧であり玩具にすぎない。

「スズナはず〜っと一人ぼっち!仲間なんて一人もいない!友達なんて全部ウソ!みんなお前を裏切った!だけどもう安心だ!大親友の『俺が憑いてる』!」

164◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:45:12 ID:???0
■■■


Ah あてなく泣いている 欠けた心は檻のようで


■■■


「……せんぱいは、おれがついてるっていってくれた……だから、みんなを」

『KILL(殺せ)』

「……はい、ころします、わたしがせんぱいをころしたから、せんぱいはわたしをすてた、でもそれはゆめで、あれはげんじつで、これはまぼろしで……ゆめはもういや……」

『KILL(殺せ)』

「……はい、だから、わたしはかえるんです、せんぱいといっしょに、だからころして、ゆめからさめるの、ゆめはつらいから、くるしいから」

『KILL(殺せ)』

そんな未来はウソである。
元の世界に帰ったところで、先輩は鈴奈を裏切り、すでに見限っている。紛れもない現実だ。
彼女が進む先は、喜劇ですらない。茶番ですらない。
ただのピエロだ。
観客のいない孤独な道化には、笑い声すら起きやしない。

『KILL(殺せ)』
 
鈴奈の頭の中は、もうめちゃくちゃだ。
理不尽に玩具にされ、好き勝手掻き回され、整理なんてされていない。
理想郷での幸せな時間は壊された、心の中の聖域は陵辱された、夢は安息の地では無くなった。
彼女を休ませるものはもう何もない。
生き続けるだけで、この世の全てが苦しみとなった。

(もう、わからなく、なっちゃった)

裂いて、繋いで、裏表が混ざったメビウスの輪っか。
どちらが夢でどちらが現実か。全てがホントで全てウソ。
光は闇になり、闇も光になる
白と黒が混ざったモノクロの輪は、もう、ほどけない。

『KILL(殺せ)』

頭の中でμの歌が鳴り響く。
この世界に呼ばれる直前、グラン・ギニョールで流れていた曲だ。
それは、恋人の死を受け入れられず、壊れてしまった者の叫びである。


ほら、ここに在(い)るじゃないか!


鈴奈は、そっと骸骨の仮面を撫でた。

「私を、どうか許してください……」

一粒の涙と共に漏らした小さな声は、溢れ出す殺意の音に埋もれた。
鈴奈自身を含め、聴いたものは誰もいない。


※C-5にNPC達の遺体と武器が転がっています。
※鈴奈とひろしが落ちたC-5の地下下水道はIT本編でペニーワイズが拠点としていたものとします。
※ひろしの遺体は粉砕され下水に流れていきました。もう見つかりません。

165◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:52:11 ID:???0
【登場NPC紹介】
【吸血鬼@彼岸島 48日後…】
彼岸島におけるマスコットキャラ。エテ公のついでに配置されていた。
雅様が日本本土にばら撒いた吸血鬼ウイルスに感染した元人間達。人間の3倍の力と高い再生力を持ち、高い凶暴性を誇る。
基本的に人間を見下しており、餌か玩具かオナホ程度にしか見ていない。
本当に半年前までただの人間だったのか?と思うほどの蛮族。
ちなみに今回登場したのは166話でユカポンを襲い肛門性交を覚えさせた個体である。コイツいつもロワで女襲ってはズガンされてんな。
他の個体が呼ばれているかは不明。もう出ないかもしれない。
吸血鬼の血を一滴でも体内に入れてしまった人間も、ウイルスに感染し新たな吸血鬼となる。
明さんは何度も血を浴びてるのになんで感染しないんだ?

【田所興起@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
周りの迷惑を顧みず、μを熱狂的に応援する狂信者の一人。
独りよがりな性格ゆえμや楽士のコントロールも効かず、身勝手な『エゴヘッド』と呼ばれ忌み嫌われている。(公式サイトより引用)
CV:杉田で名前が田所な人間の屑。なんだこれは……たまげたなあ

【伊藤大祐@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
粕谷瞳と同じくシークレットゲームのプレイヤーの一人。
であるが、参戦時期は本編開始前の為、互いに面識なし。
後先のことを一切考えない刹那的な快楽主義者であり、隙あらば監禁レイプを仕掛けてくる最低のフナムシ野郎。
エロゲのエロ部分の担当者。人気投票7位。

【虻谷@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
エロラノベのエロ部分の担当者その1。
キモデブ巨チンの竿役。通称アブラミ。理愛とラブラブ初エッチした。いいなぁ。
巨チンとは言えトキくんほどの大きさではない。

【広沢満之@黒衣の少女探偵 月読百合奈】
エロラノベのエロ部分の担当者その2。
月読家に恨みを持っており、校長である月読彩の『生きた張形』として百合奈達を陵辱した。
校長のキャラが濃いので竿役としては相対的に地味。

166◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:52:56 ID:???0
【C-5 朝】
【ペニーワイズ@IT/イット “それ”が見えたら、終わり。】
[状態]:ピエロの姿、健康、興奮
[装備]:エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:捕食者として、この催しを楽しむ。
1:餌を探す。できれば子供が良い。
2:レミリアのような特殊能力を持った相手は注意する。
3:スズナを利用し、より良い恐怖を引き出す
※参戦時期は『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の前。
※対峙した相手の記憶を読むことができます。
※テレポートの範囲は半径20m以内で、一度使用したら十分間使用出来ません。
※透明化、テレパシー、マインドコントロール、テレキネシスなどといった能力に制限があるかどうかは不明です。
※クレマンティーヌ、レミリア、ドラえもん、神楽鈴奈の恐怖を抱くものを把握しました。

【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:ダメージ(大)、片足を負傷、ストレス(極大)、嘔吐、全身から汚水の匂い、嗅覚麻痺、全身が血で塗れている
マリオヘッド化@Caligula2、エコーズによる『KILL』の文字、『夢を見る』と『人の上に乗る/乗られる』ことに対しての心的外傷
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル、スカルの仮面@Persona5、原罪(メロダック)@Fate/stay night
[道具]:基本支給品×2(ストゼロは全消費)、ひろしのランダム支給品×2、神楽鈴奈のランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:■■■て
1:みんな、ころさ、ないと
2:ゆめからさめたい、ゆめはもういや
3:ゆめってなんだっけ?
4:どれがげんじつ?これはどっち?ゆめはさめなきゃ
5:あれ、わたし、なんでかえりたいんだっけ?せんぱいはわたしをすてた
6:せんぱいはどこ、わたしがころした
7:それはゆめ、ちがう、げんじつ、うそ、いきてる、ほんとう、まぼろし、わからない
8:ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……
9:たすけて
[備考]
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
琵琶坂生存ルート。男主人公です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。
→夢と現実と幻覚の区別が付かなくなりました。
※『夢を見る』『人の上に乗る/乗られる』ことにトラウマを感じます。今後その様な事があればフラッシュバックが発生します。
※デジヘッド化にマインドコントロール&エコーズの精神干渉が合わさりマリオヘッド@Caligula2に変化しました。
目にした人間に対して無差別に襲いかかります。
カタルシスエフェクトは使えませんが、敵デジヘッドが使うような槍状の武器は使えます。
Lucidや暴走小鳩が、銃やモーニングスターを使っていたのと同じ様なものです。










※吸血鬼の返り血を浴びました。ウイルスに感染したかは現状不明です。

167◆N9lPCBhaHQ:2025/02/07(金) 01:53:35 ID:???0
投下終了です
タイトルは
161までが『妄想凶/狂ザナトリウム』
162からが『ある少女のパラドクス/パラノイア』です

168◆N9lPCBhaHQ:2025/02/08(土) 08:37:24 ID:???0
ガバがあったので田所のセリフだけ下記に変更します

田所は「この制服、メビウスの連中じゃねえか!」とかつて閉じ込められた腹いせにいたぶるつもりだった。

wiki収録はこれからwiki管理権限の移行手続きを進めて、特に異論がなければその後にしようと思います

169バッドレディスクランブル ◆EPyDv9DKJs:2025/04/02(水) 09:56:31 ID:woIv0/1Y0
短いですが投下します

170バッドレディスクランブル ◆EPyDv9DKJs:2025/04/02(水) 09:57:45 ID:woIv0/1Y0
『野比のび太』

「え。」

 あれから南のE-8の橋を移動終えると、
 その最中に流れてきたミルドラースの放送に、間抜けな声が出た。
 彼にとってどれほど大事な存在か。それは最早語る必要はないだろう。
 そんな彼は死んだ。フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット。
 全てが分からないまま、再起のため立ち上がろうとした矢先の出来事だ。
 実感が全くわかない。危険な旅はいくらでもあった。それでもなんとか乗り越えた。
 魔王やら鉄人兵団やらなにやら、命懸けどころか人類の存続に発展したことだってある。
 でも、もうそれは叶わない。あの子供部屋で帰らぬ人を寂しく待つのは、自分側になると。

 なお、西片と合流したのは西片が死んだエリアから南なのに、
 また南へ向かっているのは、E-8に橋があるからだ。
 吸血鬼の弱点である流水を知っていた。あれは、
 幻覚だからこそ再現された行動の可能性はあるかもしれない。
 それでも、今も皮を超えた先で嘲笑っているのではないかと考えると、
 腹立たしく思えてならない。そういう理由もあってその方向に移動していた。
 実際は、下水道でよろしくやっているわけなのだが、そんなの知る由もなく。
 だから橋を渡って、東へ行くことを決意したわけなのだが。

「ああ、ダメそうだな。」

 落胆、と言うよりは仕方ないか。
 と言った感じの声色でレミリアは呟いた。
 懸念してた通りだ。リルルと言う人物は生きてるようだが、
 彼にとってののび太と言う人物は自分で言う、パチュリーを超えたものだ。
 彼女ももしパチュリーがいて死亡したら、流石に動揺が隠せず震えた声がでたかもしれない。
 だから仕方がないことではある。

「……再起不能と言ったところかしら。」

 だがそれとこれとは別だ。
 再起できないようなら彼は此処に置いていく。
 その考えについて揺らぐことは決してなかった。
 厳格に踊らされたのは自分もなので強くは言えないが、
 トラウマを相手に立ち向かわず一目散に逃げ出した彼女にとって、
 ドラえもんの評価と言うものは概ね地に落ちていると言ってもいい。
 せめて再起するよう背中を押した。突き落とす意味ではなく、前へ進ませるため。
 けれどダメだった。仲間を死なせ、大事な存在を喪った彼は最早まともに立ち上がれない。
 存外そんなもんだ。人間ではないロボットではあるが、妖怪からすれば人間とそう変わらない思考だ。
 幻想郷では赤子のような存在とされるレミリアでも齢500歳だ。既に妖怪としての価値観がある。
 人の生き死に強い感情は生まれない。多分、霊夢や魔理沙が寿命で死んでもいつか忘れてしまう。
 吸血鬼とはそれぐらい長寿だ。だから西片の死も今こそ自分の責もあるがゆえに重くとらえてはいる。
 それでも、きっと忘れてしまう。殺し合いが終わるころか、或いはこの戦いの最中ですらありうる。
 別にそれを悲しいとも思わない。記憶とはそうやって入れ替わってくのだから、当たり前のことだ。
 そして、それが長い時間を生きる妖怪のありふれたあり方の一つなのだ。
 人間のように悲しみに暮れる時間は、人間の時間から見ても酷く短い。

「……誰かくるわね。」

 置いていくとするか、
 そう決めたレミリアだったが、
 妖怪である都合聴力も人並み外れたレミリアが察知する。
 川の流れの中聞こえてくる、大地をける重い鉄の音。
 鬼が出るか蛇が出るか、NPC、或いはあの怪物が再来してくるか。
 いつでも先制攻撃できるようにと、その手には槍を持って構えておく。
 待ち続けていると出てくるのは、子供を抱えている鎧の男───ゴブリンスレイヤーだ。

「……ゴブリンではないが、敵か。」

 ゴブリン以外に関しては尋常じゃないレベルで疎い彼だが、
 彼女の背中に映える翼は少なくとも人間でないことの証明だ。
 なお、彼の世界にも吸血鬼がいたりするのだが、それは割愛させていただく。
 だから身構える。祈り持たぬ者は、往々にして人間とは離れた容姿を持つのだから。
 あくまで彼はゴブリン専門の男だ。それ以外に関しては特別強い力を持ってるわけではない。
 写影を守りながら戦うのは難しいだろう。しかし、それでも豆銑から託された存在であり、
 嘗ての自分に重なるような少年を守らなければならない苦境であるのは確かではあるが、
 その程度で諦めるような思考を持ち合わせてはいない。

「敵、ねぇ。じゃあ私の横に項垂れているこいつを殺さない理由を考えてもらおうか。」

171バッドレディスクランブル ◆EPyDv9DKJs:2025/04/02(水) 09:58:21 ID:woIv0/1Y0
 横にいるドラえもんは完全に無防備だ。
 今彼女が持つ傘て頭を叩き潰せばそれで殺せる。
 それぐらいに無防備な相手を放置する危険人物などいない。
 (ドラえもんがロボットであると言う認識をしてない以上そういう認識である)
 妥協か、許容か。それは定かではないが、少なくとも殺し合いに乗る人物でないことは伺えた。

「……分かった。だが俺達は北東から逃げている身だ。
 お前たちも避難しておけ。力があるなら別だが。」

「吸血鬼にそれを問うか? せっかく来ておいて、
 逆走になるのは癪だが……見殺しにすると信用に関わるか。」

 株は大暴落と言ってもいい相手だが、
 面倒を見てくれる相手が見つかったのに見殺しにするほど薄情でもない。
 この六時間、ほとんど同じエリアをぐるぐる回るように動いてるな。
 なんてことを思いながら、レミリアはドラえもんを抱えてゴブリンスレイヤーと移動する。
 速度を上げるついでだからと写影も担げば、ゴブリンスレイヤーはいつも通りの速度で、
 二人抱えててもレミリアの膂力とスピードならばその程度大して苦にもならなかった。

 一応合流することができたので、一先ず四人……とは言うものの、
 気絶している写影と、精神的に折れてるドラえもんでは会話にならない。
 完全にレミリアとゴブリンスレイヤー、二人だけの会話に落ち着いてしまう。
 移動の途中、名前を知らないが怪物であるジェイソンに襲われた顛末を話していく。
 それとレミリアからは第一回放送についての話を伺ったが、予約がどうとか、
 わけのわからないことは一旦放置として、生存者に彼女がいるのは彼にとっては安心だ。
 もっとも、この死人の数だ。あまり悠長なことを一手られる余裕はないのだろうが。

「怪物、怪物……ああやだやだ。怪談なんて、幻想郷の連中だけにしとけっての。」

 もはや怪談噺の怪物の類ではないか。
 幻想郷にでも居座って、さっさと霊夢にでも退治されてろ。
 そんな感想を抱きたくなるような敵と戦っていたらしい。

「お前の言う方の怪物か。恐らく、俺では難しいだろうな。」

 受けた攻撃の内容から察するに、
 自分にとってのトラウマを利用した幻覚を用いる。
 もしも、自分が最も苦手とするものは何かを考えた。
 ゴブリンは憎む敵であり、トラウマとは別なので除外だ。
 しかし、もしあるとするならば───それは姉になるのだろうかと。
 ただ、見ていることしかできなかった。彼女が凌辱され惨殺される様を、壁の隙間からずっと。
 あの地獄のような光景を再現された時、果たして姉を捨て置いてゴブリンを殺せるのか。
 そう問われると、答えに悩む。精神攻撃に関しての耐性は悪趣味なゴブリンでできているが、
 そういう方向での攻められ方は少ない。だから、どうしたものかと少しばかり頭を悩ませる。
 彼は自分を最強や優秀だとは思わない。ゴブリン相手にだって死ぬ。その可能性を常に考慮し、
 優れたな装備や優秀なアイテムをなるべく残さないよう配慮した装備構成にしてるのもそれだ。

「お前の人生も、相当厄介そうだな。」

 人間のトラウマなんていくらでもあるだろうに。
 即決で倒すのが難しいと言えてしまうその冷静さ。
 ドラえもんには持ち合わせてないものを持っているようだ。
 頼もしくはあるが、霊夢や魔理沙程の強さも期待できない難しさ。
 まあ、紅魔館の妖怪や人間を全員タコ殴りにしてくるような連中を比較する、
 なんて連中と比較する方がおこがましいと言われればそうなのであるのだが。

「えーっとゴブレットスレインだっけ?」

「ゴブリンスレイヤーだ。小鬼殺しやオルクボルグと呼ぶ奴もいる。」

「随分多彩な称号だこと。良いわ。こいつ(ドラえもん)預けるから、
 目的地でもどこにでも行きなさいな。そっちの怪物、私が相手をするから。」

「……本気か? 単独で挑むのは至難とみるが。」

 確かにレミリアの力、精神性。どれも高水準だ。
 辺境の地の槍使い達にも負けず劣らずか、それ以上の存在。
 だからと言って、あの怪物相手に一人で立ち向かえるとは思えない。
 無論、レミリアの実力をちゃんと見ていないから、と言うのもあるのだが。

「私は今気が立っている。ストレス発散ができる相手が欲しかったところだ。」

 手の爪を立て、悪魔のようなぎらついた顔と笑みを浮かべるレミリア。
 散々コケにされた上に逃げられている以上、プライドの高い彼女のストレスはマックスだ。
 それに、ドラえもんを置いていく口実もできている。ここらでちょっとストレス発散に勤しむ。
 厄介だからなんだ? その程度で恐れるレミリアではない。彼女が恐れるものがあるとするなら、
 それこそあの時出てきた、悪魔の妹ぐらいなのだから。

172バッドレディスクランブル ◆EPyDv9DKJs:2025/04/02(水) 09:58:44 ID:woIv0/1Y0
「……ならば持っていけ。クロコの支給品だ。
 俺たちの時は使う暇や使い道がなかったが、
 お前にならば何かあった時に役立つかもしれない。」

 写影に渡すべきかもしれない。
 そう思ったものの、状況が状況だ。
 彼女がジェイソンを引き受けると言うのならば、
 勝率を少しでも上げるための最適解な行動をとるべきだと。

「悪魔への貢ぎ物か。いいだろう。受け取ってやる。
 その対価、このレミリア・スカーレットが怪物退治でその対価を支払ってやる。」

 黒子の支給品を受け取ると、レミリアはゴブリンスレイヤーの反対側へ駆け出す。
 豪速。そうとしか言えない速度で駆け抜けていく姿は、どれだけこちらに合わせてたか分かるものだ。
 あれならば勝てるのだろうか。いや、絶対はない。賽の目が一を出すように、些細なことで人は死ぬ。
 ゴブリンスレイヤーの生きた世界とは、そういうものなのだから。優れていても死ぬときは死ぬ。
 とは言え、せめて彼女の生還を願うことだけはしておきたくはあった。

「……しかし、ドラえもんと言ったか。重すぎる。すまないが起きてくれ。」

 ドラえもんの体重はほぼ130キロにも及ぶ。
 とても常人が運べる重量ではなく、直ぐに声をかけるゴブリンスレイヤーだった。

【E-8/朝】

【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:悲しみ、精神疲労(特大)ミルドラースに対する怒り、ペニーワイズへの恐怖、精神が折れてる
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、スコップ@幼女戦記、西片のデイバッグ(基本支給品のみ)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアと行動する。
2:あの怪物(ペニーワイズ)をやっつけるため、仲間を探す
3:のび太くん……

※四次元ポケットは回収されました。
※レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました。

【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:苛立ち、屈辱感、自分に対して戸惑い(小)
[装備]:シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー、折り畳み傘@現実
[道具]:基本支給品、目隠し(血塗れ)@水曜日のダウンタウン、白井黒子のランダム支給品×1〜2
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:リルルと言う少女を探す。
2:あの怪物(ペニーワイズ)はいつか殺す。
3:怪物を殺す為に策を練り、仲間を集める……まるで人間みたいね。
4:向こうの怪物(ジェイソン)退治。この苛立ち、アンタで解消させてもらうわよ。
5:ドラえもん……ま、残念だが仕方ないか。

[備考]
※参戦時期は紅魔郷終了後からです。(EXではないためフランが地下から解放されていません)



【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康、美山写影を背負っている
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:ミヤマを連れ南下する
2:怪物(ジェイソン)に対処する手段を考えておく。マメズクが対処できるならそれが一番だが。
3:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
4:これでよかったのか……?
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
6:なぜ俺たちは本名の状態で名簿に載っていない?
7: 異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
8:怪物(ペニーワイズ)か……俺では難しいだろうな。
[備考]
※時間軸はゴブリンロードを討伐した後。
※第一回放送を聞き逃しましたが、レミリアから聞いてます。

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:ダメージ(中)、精神的ダメージ(大)、気絶、ゴブリンスレイヤーに背負われている
[装備]:イエロー・テンパランスのスタンDISCC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品×3(初夏、写影、いのちの輝き)、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー、あきビン@ゼルダの伝説シリーズ、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
[思考・状況]:基本行動方針:???
1:黒子、僕は……
[備考]
※第一回放送を聞き流しているので大部分があやふやですが、少なくとも死者に牛飼い娘がいないことは把握しています。

173バッドレディスクランブル ◆EPyDv9DKJs:2025/04/02(水) 09:59:14 ID:woIv0/1Y0
以上で投下終了です

174 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 16:33:20 ID:zB0V7AIo0
ナルメア、カリオストロ、百合奈で予約します

175 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:15:06 ID:zB0V7AIo0
投下します

176 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:15:36 ID:zB0V7AIo0
 C-1、人の姿なし。
 D-2、人の姿なし。
 E-3、人の姿なし
 F-3、人の姿なし。

「なんっでだよ!!」

 座席のソファをボフボフと叩きながら、
 まったく参加者に出会えない状況にカリオストロが苛立つ。
 人数で言えばこの参加者の総数で言えば出会わない確率は極めて低いものになる。
 せっかく時間をかけてまで時間制限付きとは言え移動できる足を手に入れたのだ。
 もっと人と出会えてもいい頃ではないかと人がいそうな場所を次々と調べ続けて、
 最終的に妥協して名前のありエリアがあるF-3まで行ったのに此処にもいない。
 いや、F-3のふたば幼稚園には人がいた痕跡があったので決して外れではないが、
 その当人も何処かへと行ってしまったようで、現在は手掛かりが一切存在しない。
 なお、素直に最初に南に行っていれば甘露寺を筆頭に多くの参加者に出会えたのかもしれないが、
 同時にザメドルと言うカリオストロだろうと、どうしようもない戦力にぶちあたっていたので、
 これについては幸運と捉えるか不幸と捉えるかは、少々判断しかねるところだろう。

「一度南へ向かってみます? 支給品は酒と乾麺だけ。
 とてもではありませんがこれだけで食料を賄えれません。
 最悪飲み水の確保に川や湖周辺で水の調達をしてるとかは。」

「ありえるぜ……というかオレ様達も水の確保は必須だ。
 川の水がどの程度のものか見ておくのも一応手になるしな。」

 この戦い、食料をどんな手段で確保するのかも勝負がかかっている。
 食糧難に陥ればそれだけで致命的だ。腹が減っては戦はできぬと言う言葉のように、
 この程度、というよりまともに食料をよこす気がないこの現状は全参加者が抱える問題だ。
 参加者同士で奪い合っても酒と乾麺だ。どのみち長続きしない。どこかで調達の必要がある。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 誰と出会うこともないままに、ミルドラースの放送が始まった。

 放送結果は当然、いいものではない。
 彼女たちはそもそも誰とも出会えてない。
 だから誰が危険だとか、誰がいい人だったかか分からない。
 結果、兼定と言った知己が死に、大勢の参加者がこの世を去っただけ。
 誰が善良で、誰が殺されても仕方ないような人物だったか図ることもできない。
 気落ちするのはやはり比較的一般的な世界にいた百合奈ではあるものの、
 放送が終わればすぐに痛車を運転し、目的である河辺へと向かう。
 二人以降誰とも参加者に出会ってないから甘いものだと思っていた部分は、
 確かにあったと自覚はしている。凌辱とかこそされた経験は確かにあれども、
 他者の命を奪うほど殺伐とした世界を生きていないのだからまっとうな思考だ。
 けれどカリオストロ達とは一蓮托生の覚悟を決めた身だ。必要であれば人を殺す。
 その覚悟を決めておいていざ人の死を前にして、いつまでも立ち止まるわけにはいかない。
 運転ができるのは自分だけだ。自分が止まればそれだけ助けられる人が助けられない。
 一人でも多く命を救え。探偵の趣旨とは違うが、その志は真っすぐありたかった。

(予約についてはどういうこった……?)

 唯一カリオストロはミルドラースの最後の言葉を考える。
 予約とは何なのか。何かが予約して始めているのか。
 疑問点は全く尽きないないようではあるものの、
 それを中断せざるを得ない状況が始まった。

「ユリナちゃん、カリオストロちゃん! 参加者がいたわ!」

 天窓から人を見つけたナルメアの一言に急ブレーキをかける。
 参加者と出会えたのは良し。この六時間において、
 最も情報も何もかもが不足しているのは自分達だと自覚している。
 問題はどちらか。敵であれば予定通りに、味方たりうるのであれば情報交換を。
 川辺から這い上がってきた、ずぶ濡れの男に対し、三者はおりながらそれぞれ得物を構える。

「……貴様らに問おう。新選組を知っている奴はいるか?」

 川を流れ、這い上がりながら土方は考えていた。
 新選組は時代の敗者ではなく、英雄としてあったのか。
 スバルがいた世界だけかもしれない。そう思ったがゆえに聞かずにはいられない。
 自分達の歩みは、いかようなものとして扱われているのかと。

「新選組? カネサダの奴がたまに言ってたな。」

「……兼定に会っているだと?」

177 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:15:58 ID:zB0V7AIo0
「刀剣男子っつー、刀に魂が宿った存在みてーなもんだよ。
 んでカネサダはその一人で、たまに新選組の話をしてたな。
 まあ、此処では会うことはなく放送で呼ばれちまったわけだが。」

 愛刀である和泉守兼定が人となり、それにより面識がある。
 何とも奇妙なものだと思うが、自分自身廃棄物(エンズ)であり、
 非業の死を遂げた人間が、怪物が、常軌を逸した力の黒王を見てきた。
 現代も平安時代には付喪神の概念が存在していたこともある。
 特別驚くことはなく、淡々と話を進めていく土方。

「私の方が詳しいかと。土方歳三……新選組の副長、でしたわね。
 沖田総司も和泉守兼定も放送で呼ばれてるのを見るに、土方歳三本人のご様子で。」

 此処で前に出るのは現代日本で活動していた百合奈だ。
 『誰なの?』とナルメアが尋ねると、新選組の活動内容を掻い摘んで解説していく。
 成績優秀である百合奈にとって、新選組の説明についてはわけのない出来事だ。

「で、言っちまえば俺様と同じ過去の人間ってわけか。
 ま、てんっさい錬金術師であるオレ様は封印って形で生きてたが。」

「……それで、貴様の世界では新選組はどういう扱いだ。」

「……中には沖田総司の病弱を筆頭とした、
 判官贔屓によるものも否定はできないと思いますが、
 武士よりも武士たらんとした立ち居振る舞いを筆頭として、
 数々の人間ドラマ……失礼、横文字だと伝わらないかもしれませんね。
 人間が生きてきた物語がそこにありました。義を通さんとしたその姿は、
 やがて英雄や憧憬たる存在として扱われ、小説、ゲーム……ではなく遊戯、創作、
 様々な媒体に取り扱われるようになり、今も歴史家にも人気の高い方々になります。
 ただ、幕末や明治と言ったあの時代そのものに憧れを抱いた人も多いとは思いますが。
 坂本龍馬、高杉晋作、桂小五郎……現代においても伝わる偉人も大勢いたことですので。」

 スバルも言っていたことだが、やはり新選組は敗者・賊軍ではないらしい。
 寧ろ英雄や憧れと言った、羨望の眼差しを向けられるような存在になっているようだ。
 函館で死を迎え、知ることなく終わった自分達の誠の旗は、未来にも知れ渡っている。
 ならば、別に優勝を目指す理由も特別ないのではないだろうか。
 このまま、優勝をせずとも目的が果たされてるのではないか。




















 そんなわけ、あるものか。

「危ないッ!!」

 ナルメアが閻魔で土方の一刀を防ぐ。
 鉄の扉も容易く切り刻むことのできるパワーを持つ土方の刃は、
 いかに十天衆の最強の刀使いと称されたオクトーを相手にしたナルメアでも鍔迫り合いになる。

 確かに新選組は先の未来でも生きているのだろう。
 恐らくは、漂流物や廃棄物に纏わる自分の世界であっても。
 それは事実だ。確かに、彼の名は後世に伝わっており、
 本来あるべき未来においてもある人物も新選組を褒めちぎった。
 だからと言って、戊辰戦争の経緯、幕末の動乱の世を生み出した島津。
 彼らを許すことなど到底できない。本来血筋でこそあれども無関係である、
 先祖である島津豊久相手ですらただならぬ妄執を向けていたのが彼だ。
 様々な世界で称されようとも、その未来を辿らなかった彼には止まる理由がない。
 奇しくもその真っすぐな有様は、別世界の沖田の知る土方と同じ思考でもあった。

「ナルメアさん! 今援護を……」

178 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:16:38 ID:zB0V7AIo0
 鍔迫り合いの最中、ナルメアの横をすり抜けていく新選組の隊士。
 攻撃を受けるとまずいと距離を取るも、隊士はナルメアを狙わない。
 狙うのは百合奈だ。

「ユリナ! テメエは自分の身を守れ!」

 彼女を狙うのはただ一つ。もっとも弱い存在だからだ。
 ナルメアは刀の構えから手練れであったのは十分にうかがえる。
 新選組でも戦えば苦戦は強いられるだろうと確信を持つだけの実力を持ち、
 事実人間離れしたパワーで切りつけても得物の性能の良さもあり防いでいる。
 後方のカリオストロは同じ黒王軍のアナスタシアのような前線をメインとしないタイプ。
 距離のある状態で隊士を飛ばしたところで迎撃されるのがオチであり、
 最終的に選択肢が絞られたのは、現代知識を持っている百合奈になった。
 確かに刀の構え方は素人のそれではないが、一方でそれはナルメアほどではない。
 だから隊士で優先的に攻撃するのは百合奈と、最初から決めていた。

「クッ!」

 小烏丸天国には詠唱をすれば攻撃力が増強できるが、
 妖力やそれを代替えできるものがない彼女には無用の長物。
 得物の性能自体はいいため隊士一体との剣劇はできてはいるが、
 言い換えれば一帯を相手するだけで手いっぱいな状況に持ち込まれる。

「チッ! させねえよ!」

 カリオストロが他の二体の隊士の地面から光輝く槍を突き出す。
 迎撃を狙ったものだが腐っても、いや幽霊でも隊士なのか攻撃を避けた。
 近づくことができないと判断したのか、隊士はカリオストロの方へと殺到していく。

「御嬢様を集団でナンパとか新選組っつーのは礼儀がなってねえなぁおい!」

「二人とも───」

 二人を警戒する暇などどこにもない。
 相手は廃棄物の土方歳三。気を配りながら戦う余裕などない。
 迫る剣技を、持ち前の抜刀術で甲高い音とともに防ぎ、剣劇を続ける。
 数々の魔物を屠り、憧れた剣豪のため鍛錬を続けた熟練の刃は、
 廃棄物相手であろうとも見劣りすることなく凄まじい斬り合いになっていく。
 常人から見れば何をしてるのか分からない、火花がそこら中に散っていくだけの光景。
 その真実は互いに高速の剣技によって刃をぶつけあい、互いに一撃を叩き込むためのもの。
 一定距離で幽霊も消えるかもしれないと、ナルメアはうまいこと距離を取りながら土方と切り結ぶ。
 途中にゴブリンなどのNPCが点在しており襲い掛かってくるが、所詮彼らの敵に非ず。
 戦いの邪魔、とすらされないかのように切り結んでる間についでで切り刻まれていく。
 血肉の一片すら彼らは浴びることなく、走りながら互いの刃をぶつけあっていく。

(相当な得物だ。あまり無理をすればこちらの方の刃が折れかねない。)

 土方が相手するナルメアの刀はおでんが用いたその世界での極めて少ない名刀の一振り。
 並の剣士では扱えないそれを、いかに特殊な力を持った刀と言えど無意味に切り結び続ければ、
 何方の刃が先に劣化していくかなどは、想像するに難くない出来事だ。

(ならば。)

 信長には戦略家としては未熟と評される土方ではあるが、
 戦況を見極める戦術家としての才はあると評価もされている。
 この膠着する状況を打開する手段の確立事態は、そう難しくなかった。
 デイバックから何かを取り出そうとし、ナルメアは距離をとる。
 取り出す暇を与えないと攻撃を仕掛けたが、土方は地面をスライスし、
 それを蹴り上げ、飛び道具兼視界の妨害用としての二つの手段に変えて攻撃してくる。
 廃棄物になってからは士道に反するとしてやらなかった、生前はやった砂利かけの目つぶしの類だ。
 即座に飛来する大地を切り刻み、視界を開けるものの、既に土方の目的は終えていた。
 構えるのは風神の盾。同時に土ごと彼女を吹き飛ばす豪風が吹きすさび彼女を吹き飛ばす。
 そして、それに追いつくような尋常じゃない速度で、土方はナルメアへと斬りかかった。


「新選組隊士、確かに一人一人強いですわ……ですが!」

 ザンッ、とでも音が聞こえそうな程に幽霊を両断する百合奈。
 相手は亡霊と言えども本物の新選組ではあるが、一体一体の攻撃力は高くない。
 確かに体には黒いゴシックな服には多少の赤い筋が刻まれ負傷は免れなかったものの、
 元より小烏丸天国が業物としての性能が破格だ。剣術としての優れた彼女であれば、
 幽霊ぐらいであれば十分に対応でき、カリオストロの援護もあり幽霊は処理できた。
 後は土方一人だけだが、そこへ吹き飛ぶように転がってくるナルメア。

「ナルメアさん!? 大丈夫でして!?」

 腹部から軽く噴き出す出血。
 致命傷ではないようなのでナルメアもすぐ立ち上がり、
 無事であることに安どの息を吐く百合奈。





 しかし。





「……は?」

179 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:17:59 ID:zB0V7AIo0
 カリオストロから、間抜けな声が出た。
 ナルメアが突如として、近づいた百合奈へと斬りかかったからだ。
 攻撃が来るなど一切予想してなかった百合奈の黒服は赤黒く染め上げられる。
 ゴポリと血反吐を吐きながら、膝をついて、ゆっくりと地に伏せる百合奈。
 どうして? そんな困惑が百合奈の表情から手に取るようにわかるだろう。
 今まで誰一人として斬られてないからすっかり忘れられがちのことではあるのだが、
 毒濁刀には斬った相手を洗脳する特性を持っており、ナルメアはこれに斬られた。
 しかも使用者も魂を食われる行為も、廃棄物である土方ならば耐えられるデメリットだ。

(クソゥ、ユリナは致命傷だ、あれはもうオレ様の治癒術でも助からねえ!
 しかもナルメアは多分、なんかの洗脳を受けちまってやがる!
 いくらオレ様でも二対一でこの状況はまずい! 畜生、博打するしかねえ!)

 「ウロボロス! アルス・マグナ!!」

 赤と青、二対の蛇が高速で回転しながら雷光をまき散らす。
 当たれば少なくないダメージではあるが、当たればの話である。
 見れば大したことはなく、足を止めて攻撃が止まるのを待つだけだ。
 上から、横から攻め入っても問題はないが思わぬ反撃があるやもしれない。
 せっかく手に入れた手駒をむやみにダメージを負わせるわけにはいかないのもある。
 だがカリオストロもまた、これによりダメージを与えるのは目的ではない。

「イッケエエエエエエエエエ!!」

 全速力で痛車へと乗り込んで、アクセルを全力で踏んだ。
 安全運転とか、座席に着くとか一切考えてない、ただのアクセル。
 いつでも逃げられる程度に魔力をタービンリアクターに残しておいたお陰で、
 カリオストロ一人でも運転自体は可能だが、当然後のことなど考えていない。
 ただこの場から逃げる以外の選択肢が今の彼女にはなかった。それだけだ。
 土方ならば追おうと思えば追える可能性はあったが。百合奈の支給品もある。
 捨て置くわけにはいかずそれを回収するころには、カリオストロの痛車の姿はない。
 遠くで爆発するような音がしたので、カリオストロが逃げた方角自体は分かる。
 しかしナルメアの洗脳がどの程度のものか。支給品の確認など状況の確認も必要だ。
 風神の盾も置きっぱなしであり、待ったなしの追撃をするのは少々難しいだろう。
 本来ならば、新選組の名を冠する戦闘機に搭乗した男により新たな道を見出した土方。
 しかし此処にあるのは、島津への怨嗟を捨てきれぬ、幕末の亡霊である。





「半日どころか半分も使えなかったな……」

 アクセル全開で飛ばし、着地も何もかも考えなかった行動だ。
 当然突貫工事で作った痛車など保つわけがなく、着地と同時に大破している。
 カリオストロ自身は場数を相当踏んでるのでこの程度の問題は些事であり、
 大破する前に痛車から飛び出して転がりながら土を盛り上げ、壁として展開して防護した。
 なので大事には至ってないが、移動手段も失った上に有力的な仲間も失ってしまい、
 あまつさえ同じ空の世界の仲間は洗脳されていると言う最悪の状況に持ち込まれている。

「クソッ……天才錬金術師であるオレ様が、一瞬で辛酸舐めさせられるか……!!」

 いつだったかパラケルススにメタられた時のような、酷い苛立ちを覚える。
 順調かどうかはともかく安全な滑り出しをしたと思えば一気にそれらを喪った。
 救いが、よりもよって人に出会わなさ過ぎてナルメアが安全な人物だと言う情報が、
 コルワや一部の参加者からしかの伝達だけというのが余りにも皮肉であることに余計苛立つ。

180 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:18:24 ID:zB0V7AIo0
 だからと言って立ち止まってる場合ではない。
 このまま一人でいても土方に追われる可能性は高い。
 どの方角に飛んだかもわからない。湖に突っ込んでないのを見るに、
 少なくとも南西に向かったと言うわけではないようではあるが、それぐらいだ。
 場合によっては川を飛び越えてエリアを飛んだ可能性もある。とにかく、
 痛車から離れるようにカリオストロは走り出すが、その速度は余り早くない。
 元々カリオストロは病弱な身体を肉体を作ってそっちに魂を映した存在だ。
 だから満足な運動はできておらず、彼女は泳ぐことすらできないほどに運動神経が乏しい。
 移動手段が欲しかったのはそれもあったが、失ったものは仕方ないと割り切り、移動していく。





(ああ、私死ぬんですのね……)

 血が流れる中、彼女は思う。
 自分は死ぬのだと。斬ったのはナルメアだと。
 何故なのか分からない。一般的な世界を歩んだ彼女にとって、
 分からないことが多すぎる。刀で斬られた相手が洗脳されました、
 そんな理由をこの思考が朧気になる間の僅かな時間で見出すのは不可能だ。

(撫子……)

 思い出すのは親友の撫子だ。
 事件は解決した。校長達は逮捕されたが、
 それでも一度は脅しの材料に利用された身ではある。
 だから唯一笑顔を見せられる、彼女のことが気がかりだった。
 けれどもその記憶もやがて朧気になっていき、命の燈火が消えていく。
 近寄る土方に、一矢報いることすらできぬまま散っていくのはなんと無力か。
 覚悟を決めてもこのザマで、自分の無力さを呪いながら、彼女の瞳から光が消えていった。

「……どうやら本物だったらしいな。」

 妖刀の類なのは幽霊を操る都合なんとなくではあるが察してたが、
 本当に他者を操れると言うのには少々懐疑的な部分はあった。
 しかし効果は抜群だ。支給品を確保し、駒も用意できた。後必要なのは、
 今後戦っていくだけの備蓄ぐらいなものである。

「香霖堂……探してみるか。」

 何やら店のようなものがあることが示唆されていた。
 物資の調達ができる可能性があることに越したことはない。
 カリオストロを追うか、或いは香霖堂を探すか、さらに参加者を減らすか。
 新選組は止まらない。不退転の道を歩み続ける。
 たとえ、どんな道であろうとも。



「ふふっ……」

 洗脳されたナルメアは笑っていた。
 何故笑っているのかは本人も分からない。
 ただ、自分のすることは土方のために人を斬ることのみ。
 それだけを考えていればいいのだから。

【月読百合奈@黒衣の少女探偵 月読百合奈 死亡】
【残り74名】


【F-4 朝】

【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]健康、異様な気配(魔女の残り香)への警戒心(中)、動揺(小)
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品×2(自分、百合奈)、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品×0〜3(自身のは確認済み、百合奈の分は不明)、小烏丸天国@11eyes -罪と罰と贖いの少女-
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる。
1:新選組が英雄だとしても、俺は島津を筆頭に許せぬものがある。
2:ナルメアを利用する。
3:小娘(カリオストロ)を追うか、香霖堂を探すか。
[備考]
※参戦時期は単行本4巻終了時点。
※召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
 また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。
※魔女の残り香を感じ取れます。

【ナルメア@グランブルーファンタジー】
[状態]:ダメージ(中)、洗脳状態
[装備]:閻魔@ワンピース
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考]基本行動方針:この殺し合いを止めるために主催は倒す。
1:参加者との接触。できれば情報が得られるタイプの人。
2:斬る。土方の為に、只管に斬る。
[備考]
※最低でも100フェイトエピソードが終わった後からの参戦です
※毒濁刀に操られています。
 解除の方法は少なくとも毒濁刀の破壊等です。

181 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:18:43 ID:zB0V7AIo0
【??? 朝】

【カリオストロ@グランブルーファンタジー】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、苛立ち、
[装備]:シンフォーザベルゼ@Death End Re:Quest
[道具〕:基本支給品、ランダム支給品×2、百合奈作即席ジャマー@現地調達?
[思考]基本行動方針:殺し合い? 下らん。
1:名前のない建造物を調べていくが、何もなさそうだし普通に人探し。
2:首輪解除のための材料集め、基首輪を集める。
3:↑乗ってるが引きこもってる奴ができれば理想だがな。
4:首輪集めるメリットは他にもあるかもだから気を付けておくか。
5:命の輝き…少し興味があるな。
6:ミルドラースは何を考えてるんだか…考察材料が欲しい。
7:ナルメア、ユリナ……クソッ。
8:ヒジカタは絶対ぶちのめす。カネサダには悪いがな。
[備考]
※参戦時期は少なくともイベント『アルケミスト・デザイア』以降
※兼定、美波、楓、卯月、エレンとの面識はあるものの
 兼定   :アニメ『活撃刀剣乱舞』の世界の兼定。即ち本家とは面識がない
 エレン  :エレンは空の世界の住人=平行世界の人間なので当然面識はない
 デレマス勢:夢落ちと思ってる。ただ二人と違い面識がある可能性はある
 リルル  :同名の別人であるため一切の関係がない

※カリオストロ作自動車@現地調達? は大破しました。
※首輪には何かしらの使い道があると推測してます
 しかし、首輪の解除もしないうちに消費するつもりはありません
※簡潔な程度に主催者の考察として
①:典型的な儀式の供物(可能性:低)
 ・百合奈と言った一般人も巻き込んでて質を問わない?
 ・憎悪や殺意を混ぜ込んだ蟲毒のような類か?
 ・NPCだけでやり合えばいいようにも感じる
 ・疑問:規模の割にやることが地味すぎる
②:ミルドラースは『敵』でありその為の戦力強化(可能性:中)
 ・一般人や支給品の存在意義が確立される
 ・支給品に自分たちが調整した武器を試すことができる
 ・NPCの存在意義も出てくる
 ・疑問:こんなことできるなら月の民も余裕で過剰
③:アーカルムシリーズに使う戦闘データのシュミレート(可能性:大)
 ・一般人や支給品は勿論、NPCにもばらつきはあるが意味がある
 ・別の世界の人間を呼び込むことで更なるシュミレートを重ねられる
 ・首輪の存在理由もこれにょって乗る、乗らない関係なしにデータが集めやすい
 ・疑問:こっちの方が質のいいデータ収集になるのかと言う疑問

※E-4以外の近隣のエリアのどこかにいます
 どこにいるかは後続の書き手にお任せします。

182 ◆EPyDv9DKJs:2025/04/09(水) 21:19:25 ID:zB0V7AIo0
以上で「舞い謳え胡蝶 ■めるものが」投下終了です

183 ◆7PJBZrstcc:2025/05/18(日) 21:52:57 ID:Ao0ZANaU0
ゲリラ投下します

184「ねぇ今何処?」「会場ん中」 ◆7PJBZrstcc:2025/05/18(日) 21:53:29 ID:Ao0ZANaU0
 コンペロワ会場北西部にて、三人の男女、りあむ、クロちゃん、変なおじさんが疾走している。
 三人が疾走するのはひとえに逃走の為。
 彼らは名を知らないが、ザメドルという圧倒的な力の持ち主である吸血鬼から逃げる為だ。
 その為に彼らは走る。

「ハァ……ハァ……」
「もう無理だしん……」

 しかしどれほど走ったか彼ら自身ですら分からない頃、クロちゃんと変なおじさんが息を切らして地面にへたり込む。
 二人ともいい年と言えるような年齢なのだ。
 そのうえでこんな整備されてたグラウンドとは真逆のような走りにくい場所で、長時間全力疾走を強要されれば体力を消耗して疲れるのは無理もない。
 幸いなことに件の吸血鬼や他の参加者、それにNPCも周りには見えない。
 なので二人に次いでりあむも腰を下ろす。
 いくら二人より二回りは若くて、おまけにアイドルとしてトレーニングを積んでいるとはいえ、やはり疲労はするものだ。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』
「えっなになに!?」

 するとその直後、いきなりミルドラースの声が響く。
 三人が戸惑うが、大魔王の放送は止まることなく進む。

『では禁止エリアの発表と行こうか』

 そして始まる禁止エリアの発表。
 大人しく聞く三人だが、ここでりあむがあることに気付く。

「……そもそもボクたち、今どこにいるの?」
「「……さあ?」」

 三人は現在位置を把握していなかった。
 逃げるのに必死でどっちに向かったかも曖昧なうえ、そもそも人間は真っすぐ歩けない生き物だ。
 真っすぐ進んでいるつもりでも実はグルグル同じところを回っている、ということもよくある。
 ただでさえ必死に走っていた状況で、なおかつ真っすぐ進んでいないとなれば、どこにいるのか分からないのは必然だった。

 とはいえ禁止エリアのA-6、D-5、I-6は出発点C-3から見れば、D-5以外はそこまで近い位置ではない。
 おまけにD-5にはディルディット・タワーという目立つ施設があるが、彼らの視界にそれらしい建物は見えない。
 なのでひとまずは大丈夫だろう、と三人が結論づけたところで放送は更なる情報、脱落者の名前を告げる。

『ホル・ホース』
「えっ」

 次々と告げられる名前に対し、最初に反応したのはクロちゃんだ。
 彼が知るホル・ホースという男は抜け目がなく、そう簡単に死ぬとは思っていなかった。
 だが現実は殺し合い開始六時間以内での脱落だ。
 クロちゃんからすれば危険人物であるので死を悼むことはないが、驚きは隠せなかった。

『高垣楓』
「そんな……!」

 次に反応したのはりあむだ。
 彼女にとっては偉大なシンデレラガールズの一人にして、尊敬する先輩。
 決して、こんな殺し合いなんかで死んでいい存在ではなかった。

『ひろし』
『甘露寺蜜璃』
「「「……」」」

 そして最後に三人そろって反応するのは、ひろしと蜜璃の二つの名前。
 もっとも、りあむにとっては話に聞いただけの相手なので少々芳しくないところもあるが、蜜璃に関しては素直にショックを受けている。
 なにせ、殺し合いに乗って襲い掛かって来た男を相手に足止めをかって出てくれた相手の死なのだ。
 おまけに殺し合いに乗った方の名前らしきものは呼ばれていない。
 仮に相打ちになったとするなら、放送でひろしと蜜璃の間にそれらしい名前があるはずなのだから。

『ではこれにて、コンペ・ロワイアル第一回定時放送を終了する。
 次の放送も聞けると良いな、参加者の諸君』

 ミルドラースの放送が終わり、ショックが抜けきらない三人。
 しかしコンペロワは彼らを休ませない。
 彼らの元に、三匹のNPCが現れた。

185「ねぇ今何処?」「会場ん中」 ◆7PJBZrstcc:2025/05/18(日) 21:53:52 ID:Ao0ZANaU0

 一匹目は巨大な鳥のNPC。
 鋭い一対のかぎ爪が特徴のこのモンスターは、ヘルコンドル。
 参加者の中では勇者ロトの二人であるアルスとアリスなら知っているだろう。

 二匹目は一頭身の体に手足を生やし、魔法の杖を持っていることが特徴のNPC。
 名を、きめんどうしと言う。
 これもさっきのヘルコンドルと同じく、参加者の中では勇者ロトの二人であるアルスとアリスなら知っているだろうか。

 三匹目は三つ目で鳥の翼を持つ、まるで二本足で立つグリフォンのようなNPC。
 名を、サイレス。
 さっきの二匹とは違い、このNPCを知る参加者は居ないだろう。


 さて、実はこの三匹のNPCにはある共通点があるのだが、これを分かる人はいるだろうか。
 一つはドラクエシリーズ出展であること。
 もっとも、初出が上二匹は3だが、最後のサイレスは6なので今一つ共通点とは言い難いだろう。

 そんな三匹の確実な共通点、それはバシルーラという呪文が使えることである。

 バシルーラとは、対象をどこか遠くに飛ばしてしまう呪文である。
 戦闘中に使えば相手を戦闘から除外できるという、通じれば強い呪文である。
 実はある程度狙いを定めて飛ばすことができるらしい話もあるが、少なくともここではあまり関係なので語ることはない。

 そのバシルーラを、三匹のNPCはりあむ、クロちゃん、変なおじさんそれぞれに向けて使用する。

「「「わああああ〜〜〜〜〜〜〜!!」」」

 呪文に対し抵抗する余地のない三人は、成すすべもなく飛ばされていく。
 どこに飛ばされるかは誰にも分からない。
 もっとも、それぞれ別のNPCから呪文を受けたので、飛ばされる場所がバラバラなのは確定している。
 ただし、この呪文で飛ばされても飛ばされた先に何もなければ死ぬことはない。

 しかし、そんな事実を知らない三人はただ叫ぶことしかできず、成すすべもなく会場の空を舞うのだった。


【???/朝】

【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:恐怖(大)、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:わああああああああ!?
2:ディアボロサマ、大丈夫かな……
3:楓さん……蜜璃ちゃん……
[備考]
※メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
※参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:わああああああああ!?
2:蜜璃ちゃんとひろしが死んだなんて…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:読んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
5:ディアボロよりあの金髪の方がヤバイしん
[備考]
※殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
※フルボトルをただの玩具と思っています。
※「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖(大)、疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:わああああああああ!?
2:蜜璃ちゃん、ひろし君……
3:あの金髪の人怖いね〜
[備考]
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


※三人はそれぞれ違う場所に飛ばされました。


【ヘルコンドル@ドラゴンクエストシリーズ】
巨大なワシのような鳥系の魔物。初出は3
結構いろんなところに出現するところと、バシルーラで有名。氷系や風系の呪文に弱い。

【きめんどうし@トルネコの大冒険シリーズ】
一頭身でピンク色の魔法使いモンスター。初出は3だがNPCとしての出展は外伝。
ドラクエ本編ではメダパニの使用頻度が高いが、トルネコシリーズではバシルーラの使用頻度が高い。
本ロワでもバシルーラの使用頻度が高い。

【サイレス@ドラゴンクエストシリーズ】
三つ目で二足歩行する鳥の翼を持った魔人モンスター。FFの白魔法ではない。初出は6
マホトーン、バシルーラの呪文を使用する。

186 ◆7PJBZrstcc:2025/05/18(日) 21:54:21 ID:Ao0ZANaU0
投下終了です

187 ◆7PJBZrstcc:2025/06/29(日) 19:07:34 ID:D5u2JOK60
マサオ、ひろし?、レーティア、レヴィ 予約します

188 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:30:59 ID:NpMGC4sI0
投下します

189■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:31:46 ID:NpMGC4sI0
 空飛ぶベッドに乗り移動していたひろし? とレーティアは、H-6 リテイル・ローに到着した。
 彼がここを目指したのはしんのすけとマサオを探す為だ。
 その過程で岸辺露伴を見つければただで済ませるつもりはないが、優先順位は少し下がる。

 そして今、ひろし? の目の前にはあるものがある。
 まず目に入ったのは得も言われぬ怪物の死体。よく見ると首輪があることから、元が参加者であることは読み取れる。
 しかしこれが参加者の能力や支給品で変化させられた姿なのか、元々そういう姿の参加者なのか判別はできない。
 何せ、最初に出会ったのがどう見てもマーモットだ。そういうのもいると言われれば頷けてしまう程度に、この殺し合いの参加者は多種多様なのだから。
 まあ死体なので、別に興味もないが。

 もう一つはバラバラの肉塊と血だまり。
 状況で考えるなら、こいつもまた殺し合いの犠牲者の一人。血と肉の量から見て死体は成人男性だろうか。
 ならば少なくともしんのすけではないだろう、とひろし? は推測した。

 事実はさっきの怪物の死体こそがひろし? の探す野原しんのすけであるという事実に気付かないまま、彼の目線はまた別の物に移る。

 それは一つのデイパック。
 参加者の誰かが落としたまま拾えず移動したのか、はたまた殺されたのか。
 まあどちらであっても関係ない、と彼は結論付けた。

 実の所、このデイパックは佐々木哲平のものである。
 ここにいるひろし? ではなく、ロボに記憶をコピーさせた、いわばしんのすけと同じ世界にいたもう一人の野原ひろしを最期に助けた男のものだ。
 もっとも、そんな真実がひろし? に伝わることはないだろうが。

 とはいえ、これ以上大したものもなさそうだと判断したひろし? は空飛ぶベッドを降り、デイパックに手を伸ばそうとした。
 すると――

「うわああああああああああああああん!!」

 どこからか子供の泣き声が聞こえた。
 一瞬訝しむひろし? だが、すぐにこの声に聞き覚えがあることに気付く。
 この声は彼の息子しんのすけの友達、佐藤マサオのものだ。

 それに気づいたひろし? が慌てて声の主を探すと、泣きながら疾走するマサオの姿を見つける。
 ただ、彼の背中に何か羽のようなものを背中に付けているのが気にかかったが、この殺し合いには変な支給品がある。
 ならばその類だと判断し、あまり気にせず行動を進めた。

「おーい!! マサオ君! 俺だ、しんのすけの父ちゃんのひろしだ!!」
「えっ!?」

 ひろし? がマサオに呼びかけると、呼びかけられた方は一瞬驚くも、ひろし? の姿を見つけると安心したのか笑顔を浮かべてそのままこっちに向かって走ってくる。
 しかしある程度まで近づくと、さっきまでの笑顔が消え、困惑とも恐怖ともとれる表情となり歩を止めた。

「お、おいどうしたんだ? 大丈夫か?」

 マサオが突然動きを止めたことを心配するひろし?
 だがマサオは返答することなく、代わりにひろし? の顔を見つめ、小さく呟いた。

「おじさん……本当にしんちゃんのおじさんなの……?」
「……は?」

 マサオのこの言葉を、ひろし? は飲み込めなかった。





 時は少し前に遡る。

「助けてええええええええ!!」

 佐藤マサオはリテイル・ロー西側にある洋館から飛び出し、道路を叫びながら走っていた。
 普通に考えれば愚かな行動だろう。
 もし殺し合いに乗っていない参加者が傍を通りかかれば、その行動を止めることは最早必然。

 事実、もしマサオがもう少し平静ならば臆病な彼のこと、きっと洋館の中で怯え隠れ続けただろう。
 しかし彼の精神状態はもう限界だった。
 突然殺し合いに召喚されたこと。
 殺し合いで出会った仲間の足柄が、彼の目の前で捕食されたこと。
 そして最後に、一緒にいた仲間オグリキャップが、主催の意志で会場から追い出されたこと。

190■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:32:18 ID:NpMGC4sI0

 これらの出来事に遭遇し続けたマサオは思った。
 家の中に隠れていても危ない。そして、一人でいたくない、と。
 もし傍にあの嵐を呼ぶ幼稚園児、野原しんのすけがいれば道中慌てふためくことはあっても、最終的にはツッコミを入れつつも落ち着けたやも知れない。
 だが現実は一人ぼっち。
 なので泣き叫ぶ愚と逃げ惑う愚を犯しながら、マサオはただ一人走り回る。
 
「おーい!! マサオ君! 俺だ、しんのすけの父ちゃんのひろしだ!!」

 それからどれほど経っただろうか。
 実際はそこまで経ってないが、マサオからすれば永遠とも一瞬とも言える間にて、彼は知っている名前の持ち主に呼び止められる。

 マサオは声に一瞬驚くも、すぐに感情は喜びに変わった。
 何せやっと出会えた知り合いなのだ。この殺し合いの中で数少ない、無条件に信頼できる存在なのだ。
 他にいるとしら、それは元からの友達しんのすけに加え、この殺し合いで出会った藤丸立香、ヴィータ。
 そして立香の仲間であるマシュ、ラヴィニア、沖田くらいだろうか。
 参加者の数に対して、あまりにも少ない。

 だからこそマサオは迷いなく、自分の名前を呼んだ男の元へ向かって行く。
 しかし途中で何か違和感を覚え、彼は足を止める。

「お、おいどうしたんだ? 大丈夫か?」

 突如足を止めたマサオを心配する声も聞こえない。
 彼はただ、目の前の男の違和感を考え、気づく。

 まず、顔が普段と違う。
 例えるなら画力の高い漫画家が、ひろし本人の特徴を捉えつつもしかし似せないように書いたかのような、これじゃないといいたくなるような顔だった。
 次に声。
 目の前のひろしの声が、よく聴くと普段聞こえている声と違うのだ。
 仮にも同じ人間なら、成長期か病気でもない限り声が変わるなどそうそうないだろう。
 もしこれが殺し合いの極限状況でなければ、あるいはどちらか片方なら気のせいで片づけたかもしれない。
 だが二つ合わされば、それは無視できない違和感となる。

 これはマサオの参戦時期が劇場版のロボとーちゃん終了以降であると同時に、ひろしの声優が藤原啓治から森川智之に代わる前であること。
 そしてここにいるひろし? の声優が森川智之であることが重なった複合事故のようなものである。

 とはいえ、そんな事情などここにいるマサオが知る筈もなく、知ることもないだろう。
 彼はただ、目の前の相手に対しこう問いかけるだけだ。

「おじさん……本当にしんちゃんのおじさんなの……?」
「……は?」

 マサオの言葉を理解できず呆然とするひろし?
 しかしそれでも何かの間違いだろうとばかりにマサオに近づこうとする――

「来ないで!!」

 だがマサオがひろし? を拒絶した瞬間、それまでの彼の様子と一変する。
 どこか不気味に見える笑みを浮かべながら、マサオに語り掛けると言うよりは己に強く信じ込ませるように言葉を発し続ける。

「俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ。
 俺は野原ひろしなんだ。誰が何を言おうと野原ひろしなんだ」
「ひぃ!?」

 突如様子が変わったひろし? に対し怯えるマサオ。
 不気味なまるで壊れた音楽プレイヤーの様に同じ言葉を発し続けるが、マサオにはどこか似たようなものを思い起こさせる。

191■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:32:43 ID:NpMGC4sI0

「コンニャ……クローン?」

 マサオが思い浮かべたものはコンニャクローン。
 かつて春日部を始めとする六つの都市を覆いつくした、コンニャクで出来た人を模したクローン。
 マサオには、今のひろし? がそれにしか見えなかった。

 だがそれは違う。ここにいるひろし? は本物の野原ひろし。
 ただマサオとは違う世界の住人なうえ、主催者によってありえない改変が加えられただけで。
 そんなこと、当人は認識していないが。
 それでも、自身は本物のひろしなのだと、拒絶などしないでくれと必死に訴えかける。

「本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ。
 本物のひろしだよ。本物のひろしだぜ」
「  」

 笑顔を浮かべて自分は本物のひろしだと語り続ける男を相手に、マサオは最早言葉すら出ない。
 代わりにリンリンに殺された時と同様に、膀胱の決壊が起こり再び失禁してしまう。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 するとここで唐突にミルドラースの放送が始まる。
 しかしマサオもひろし? もそれを聞く余裕がない。

「俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
 俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は」

 自己のアイデンティティが揺らぎ続け、必死に保とうとするひろし? と、その様を見てただ怯えるマサオに、ミルドラースの嘲笑は意識するに値しない。
 それでも――

『野原しんのすけ』
「……え?」

 マサオにとっての親友、ひろしにとっての息子が死者として呼ばれたことだけは、二人にも把握できた。
 その時、ひろし? は呟く。

「しんのすけが、死んだ……!?」

 彼にとって一番恐るべき事象を認識した瞬間、さっきまでの揺らぎが収まり、ただ一人の父親として息子を亡くした父としては真っ当な反応をしている。
 必死に探し求めた息子は、既にこの世にいないことを認識したのだから、それは当然だろう。

「そんな……俺は息子を守れなかったのか……」

 慟哭しかかるひろし?
 俺は息子を、しんのすけを見つけて譛ェ遒コ螳なくちゃいけなか――

「……え?」

 ここでひろし? は自らの思考のノイズに気付く。
 少し前に岸辺露伴がヘブンズ・ドアーで目撃した文字化けを、ひろし? 自身も認識した。

「俺、しんのすけを見つけてどうするつもりだったんだ……!?」

 それはここにいるひろし? に、今までの行いの矛盾を突き付けられることでもあった。

 しかし考えてみれば当たり前。
 仮に皆殺しを目指すなら、どう過程を踏もうともしんのすけとマサオを殺すことになる、あるいは死亡することは決定事項。
 もししんのすけとマサオを保護するなら、参加者の殺害は必要ない。
 ともすれば殺し合いに乗った、あるいは危険人物を殺害することはあったとしても、少なくとも最初に出会ったビーバーやサングラスの男、Syamuを殺す必要はない。

 すなわち、ひろし? の行動は誰がどう見ても矛盾している。
 彼自身がそれに気づいてしまった時――

192■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:33:46 ID:NpMGC4sI0


      .ヽ  ...l .l       ,!   \   l三L  .r|    iゞ   .!  ./  ./ i′       ,./     ., -'''″
-、、     ヽ  " ヽ.      !     \  .!三l /│  ./    │ ./   ./ /       ./  _,、,/
  `''-..、   .!'、、  .\    /         ヽ.,!三三三} ,i、/     l‐l゙  ,ノン゛      ,,/,..-‐' /
、    `''、, .l  \   ヽ  │           l゙三三三| / . l′   ./ .! シ´       ./    /
. ゙''-、    .\.l   .`'-、.ヽ. !        /.三三三|/  .l    ,l lン゛      . /    /
   `''-、.   ..゙!、     ゙ゝゝ         /三三三三 !、  l   ./ | ."     . /     ./        ... -ー''',゙
      . l    ヽ      ト、、    /三三三三三 l. !!  ./ ;;l゙     .,,./       ./      , / _..-'"´
       .l    ヽ    ..l三゙''-、__/三三三三三三 ∨} / 三|   .,ン/'゙    .,/;∨  ー―ー'、,..-'″
        l     `-、   ヽ三三三三三三三三三三 テ三三| .,..‐゙/  . _..-'"三r'" ̄ ̄ ̄ ̄"
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  ゙'';;- ___l      ヽ`'-..,, ヽ三三三三三三三三三三三三 l゙‐'´三三三 iiン-‐''゙゙´三三三 ゙̄ii./ ″
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             `'ジ7"三三三_,,vi丶三三三/.i三三三三三三三三ヽ_ `|三三三三o三三三゙!ミ-/  .`\__、
      ._,, -'' /  ./ ;;.,r‐'''"゛ ./゙三三三/ .、 |三三三三三三三三三~ 三三三三\ .`゙'''ー-ゝ `'-、、 ‐. ̄ ̄
   _..-''´._ /   / ./   、 l三三三/  / .!三三三三三三三三____三三三三三l,_       `゙''''ー- ..
^'''" _ /    ./,./    .,/-l三三三/  _,!__/三三三三三三三三三゙'''ー、, `'''ー ..__三三゙'-、
._..-'"     ,/;i./ .ー ̄^゙'、.,..-''゙三-''7;i,゙_‐´ .,./ 三三三三三 ! ヽ三三三三三゙ゝ、__二ュ三三ヽ、
     ._.. -゙‐─^゙~゙''ー ../゙'''ク´   /三三゙'゙三三三三三三l′ |三三三三三三,____三三三、三三`'、
__‐''"            /     l三三三三三三 /.l三三ヽ .!三三三三 |     ̄ !.、 `'''ーxy..ミll― .__
               /     l丶;.,./ 三-、三/  .l三三三三、三三三|      .| .!     `'-,,ヽ、
                /     ./ /  / ゛  ..l′   .l三三三./ \三三|      .| .|       `'ヽ、
_,,.. -‐''''^゙ ̄ー―┐       ,/'"  /      l,    .ー!'、.;;ノ    `''''、;;.!     │.ヽ            `'-、、
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     ,/゛ .`./     /     ./       / .!     .!   ヽ       .ヽ      ヽ  .|'-

193■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:34:22 ID:NpMGC4sI0


 何かが決定的に壊れる瞬間が認識できた。
 それまでかろうじて残っていた野原ひろしの本来の部分、あるいは残滓と言えるものが、決定的に。

「―――――――――――――――――――――俺は、誰だ?」

 自分というものが壊れたひろし? はただ虚ろな目で、虚空に向けて問うも、答えなど返ってくるはずもない。

「                                       」

 そして最早動くことも叶わない。
 本来する筈の挙動と、する筈のない挙動が矛盾している事実を正しく認識し、正気を失った。
 ひろし? は最早思考することも動くこともできず、ただ息をして佇むだけの生物となり下がった。
 このままでは他の参加者に殺されるか、時間切れで首輪が爆破するかのどちらか以外の結末はあり得ない。
 だが――

『あーもうめちゃくちゃだよ(呆れ)』

 ここで一人の男の呆れた声が聞こえた。
 もっとも、ひろし? もマサオもそれを認識することはなかったが、認識する必要などない。
 これはテコ入れ。
 コンペ・ロワイアルは野原ひろし? を虚ろなまま放置などしない。





 ベッドにテーブル。テレビに小型の冷蔵庫。
 テーブルの上には缶ビールがいくつかある、大学生の一人暮らしのような部屋で、一人の男が何やら作業をしている。
 その様は傍目には、いや余人にはただ指を動かしているようにしか見えない。
 この動きの意味を理解することができるのは、神でなければならない。
 すなわちこの男は神。

 ■■ is God.

 だがこれでは何も伝わらないのできちんと人間に伝わるように説明しよう。
 男が今行っているのは、稼働しなくなった野原ひろし? を再び動くようにするための調整だ。
 とはいえどうしたものか、と彼は思案する。
 なにせ、本来のひろしの状態で壊れてしまったのなら手を出そうとは思わなかったが、こうなったのはこっちの都合である。
 ならば仕方ないだろう。自らの不手際を棚に上げ、ただ殺される様を見て誰が面白がると言うのか。
 精神崩壊の事例ならひろし? の横にいるレーティア・アドルフがいるが、あれは元々そういう役でしかない。
 ゆえに男がどうこうする義理はない。

『あのさぁ……』

 まあそれはそれとして、男は呆れたように嘆息した。
 そもそも土台から無理のある話だったのだ。殺し屋ひろし概念をヘブンズ・ドアーで昼メシの流儀ひろしに植え付けるなど。
 見てる分にはいいだろうが、こうして運営の立ち位置に立つと面倒この上ない。
 野原しんのすけが共に参加している殺し合いに、ひろしのスタンスを皆殺しにして参加させるなど無理が生じるに決まっている。
 面白いとでも思ったのか? いやそれはこっちも思った(反語)

『†悔い改めて†』

 とはいえ、叶うならこれ以上こっちから手を出す事態にならないように軽く戒めさせつつ、男は作業を終わらせる。
 その結果がこれだ。


【野原ひろし?@野原ひろし 昼メシの流儀→ネットミーム 出展変更】


 男はひろし? の出展を原作からネットミームに変更した。
 本来のひろし要素を排除し、付け加えられた「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素をメインとしたのだ。
 こうすれば己の矛盾に悩むことはない。
 思う存分殺し合いに乗ってくれ。その果てに何を願うかは、今のこっちには知ったことじゃないが。

『ハイ、続きヨロシクゥ!』

 作業を終えた男は、視点をここから元のひろし? 達へと戻すように促す。
 なのでここからは要望通りに視点を戻すことにしよう。


 なお、出展を絶叫するビーバーと同じくmemeにしなかった理由は、そうすると名簿でひろし? とビーバーが同じ列に並び変えられてしまうからだ。
 なれば、目端の利く参加者が気づけばいらぬ考察をしてしまうのは間違いない。
 目的に進もうとした結果間違えるならともかく、最初から無駄なことを考えていらない時間を男は使ってほしくなかったのだ。

194■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:34:49 ID:NpMGC4sI0





 なにかが変わった、とマサオは感じた。
 何がと聞かれたら分からないが、とにかく目の前のおじさんのなにかが変わったのだ。

「マサオ君」

 ひろし? がマサオに呼びかける。
 彼の声にさっきまでの動揺も虚無もない。
 時間にして一瞬も経っていない筈なのに、目の前の相手はさっきまでと別だとマサオは明確に理解した。
 その証拠は次の台詞にある。

「俺、殺し合いに乗ってるんだ。だから俺、マサオ君を殺すぜ!!」
「えっ?」

 突然の宣言。突然の豹変。
 なにもかもが変わり果てたひろしの残骸に対し、マサオは最早呆然としかできない。
 しかし当人は一切構わず、そのまま今まで殺した参加者の話をなぜか始めた。

「まずこう、バーンとデカいんだよ!! デカいのが2つはみ出しちゃってるわけ!!
 それで俺は口を大きく開けて、横からかぶりつきよ!! こう!!」
 
 ひろし? が殺した参加者は絶叫するビーバーとSyamu_gameの二人。
 絶叫するビーバーことマーモットの体長は大きくても一メートル程で、シャムの身長は160cm程度だ。
 とてもバーンとデカいなど言えない上、殺した際に使った武器は口ではなく銃だ。
 これはただ単に適当な嘘を言っているのか、それともネットミーム出展になったことでなんらかの変化が訪れたのか。
 全ては後に決まるのだろう。
 
「男野原ひろし!! 出てきた参加者は残らず殺す!!」

 ひろし? の力強い叫びと共に彼の背中からスタンド、キング・クリムゾンが出現し、同時にそのスタンド能力で時を飛ばし、マサオの目では一瞬にしか見えない間に、彼の目の前に移動する。
 後はそのままスタンドで手刀を振るえば、それだけでマサオの首と胴体は別れを告げるだろう。
 だが――

 ドンッ

 突如現れた人影がマサオを突き飛ばし、さっきまで彼が居た位置にその人影が成り代わる。
 人影の正体をひろし? はすぐわかった。
 何せさっきまで連れまわしていた少女、レーティア・アドルフなのだから。
 分からないのは、今までただ虚空を見つめるだけだった少女がどうしてこのタイミングで飛び込んできたのか、だ。

 一方、レーティアからすればこれは贖罪だ。
 コア軍の投与した薬によって何もかも壊され、ただおくすりの為だけにあらゆる陵辱を受け入れ奉仕するだけの日々。
 そして殺し合いに呼ばれ支給品によって正気を取り戻した後も、彼女は何もできていない。
 生存を喜んだ部下のグレシアは目の前で無惨に死亡し、自身と行動していた何に対してもギャンブラーは情報を抜き取られた挙句処分された。
 おまけにマーダー相手に殿を務めてくれた狼牙は、さっきの放送で名前を呼ばれ死亡したことも分かっている。
 対してレーティアは、何をするまでもなくただ生を得続けてる。

 そこにやってきた見も知らぬ少年、マサオが命の危機に瀕している。
 手の届かない位置で亡くなった狼牙と、いきなりのことでどうしようもなかったグレシアはともかく、ギャンブラーの死はもしかしたら防げたかもしれないと、レーティアは今になって思えた。
 だから彼女は飛び出した。自分にそんな体力が残っていることに驚きつつも。

 アイドル総統などと持て囃されつつも、ただ国を荒らされ多くの人間を苦しめる元凶となった己は、生まれてきたことすら間違いだと思った。
 おくすりを追い求める為にどんな無様も晒す、ムシケラの姿の方が正しいと思ってた。

 だとしても、そうであっても、目の前で失われそうになる命を救うことだけは、きっと間違っていない筈だ。

 ザシュッ

 キング・クリムゾンの手刀はレーティアを袈裟切りにし、肉体を両断することはないものの多大な損壊を与える。
 ここから彼女を助けることなど、よほど強力な回復アイテムであっても不可能だろう。

「よかった……!」

 しかしレーティアは喜びを見せる。
 こんなことに意味などない。自分のせいで失った尊いものは決して返ってこない。庇った少年はドクツ第三帝国の代わりになどなれない。
 それでもなお、彼女は笑顔を浮かべてこの世を去る。
 無意味な自分の、最期の誇りを胸に抱いて。


【レーティア・アドルフ@大帝国 死亡】
【残り73人】

195■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:35:17 ID:NpMGC4sI0

「うわあああああああああああああああああ!!」

 目の前で見知らぬ自分より年上の少女が惨殺されるのを見たマサオは、一も二もなく背を向けて逃げ出す。
 それは人として当然の行いであり、レーティアの望みでもある。
 しかし幼児の逃走など、成人男性からすればたやすく追いつけるものでしかない。
 そのはずだった。しかし――

「早っ!?」

 現実には、マサオはひろし? の目にも止まらぬ速さであっという間に遠ざかっていた。
 これはマサオがしんのすけの友人だけあって園児離れした能力を見せることがあるだけでなく、彼の背中についている羽に秘密がある。

 羽の名前は天狗の羽といい、装備すると移動力が増すアイテムである。
 コンペロワでは付けると移動速度が増すアイテムとして扱われており、マサオはこれで足が速くなっているのだ。

 この羽は元々オグリキャップの支給品だった。
 しかし彼女はウマ娘。元々の身体能力だけで時速60キロ以上の速度を出せる種族に移動速度を速めるアイテムなど必要ない。
 なので彼女が帰還させられる前にマサオに譲渡されていたのだ。なお、ひらりマントは一緒に付けていたが、彼が走り出した際に邪魔なので落ちてしまった。

 ともすれば前話と矛盾が出そうな語り口だが、これはオグリキャップの帰還に重きが置かれたためマサオの羽について描写されなかったのだ。
 決して過去改変が起こったわけではないとご留意いただきたい。

 それはともかく、ただ単に速いだけならひろし? からすれば問題ない。
 懐にあるデザートイーグルで撃ち抜けば済む話。
 だがここは町の中。一度建物の角を曲がればそれだけで彼の視界からマサオは姿を消す。

「そう簡単に殺されてくれないというわけだ。楽しませてくれるじゃねーかマサオ君!!」

 マサオの思わぬ抵抗を受け心持ちテンションが上がるひろし?
 彼はターゲットを追いかけるべくマサオと同じ角を同じ方に曲がる。しかしターゲットの姿は見えないままだ。
 建物の中に入ったのか、それとも更に曲がり攪乱しようとしているのか。
 どちらにしても、少々面倒なことになりそうだ。

「ハハハ……」

 乾いた笑みを浮かべながらとりあえず手近な建物に入るひろし?
 そこで軽く探索するも、マサオは見つからない。
 こうなると、最早探すのは困難と言っても差し支えないだろう。

「ちぇっ」

 しょんぼりした様子を見せながら、仕方ないのでここは一旦諦めて他の場所に行くことを考えるひろし?
 その為に彼は空飛ぶベッドのある場所まで戻ってきた。
 とりあえず出発しようとするがその前に、彼は佐々木哲平のデイパックを拾おうと手を伸ばす。

 キィンッ

 するとどこかから、何かの音が聞こえた。
 これが何かひろし? には分からない。だが危険を直感したのか咄嗟にスタンド能力を発動させた。

「キング・クリムゾン!!」

 キング・クリムゾン。
 それは時間を吹き飛ばす力。空の雲はちぎれ飛んだことに気付かず、消えた炎は消えた瞬間すら認識できない帝王の力。
 正しくその力は今回も発動し、今の所有者ひろし? を守り、代わりに彼の近くにあった空飛ぶベッドが半分に切られた。

「なっ!?」

 咄嗟に能力を使ったとはいえ何が起こったのか分からず戸惑うひろし?
 するとそこに新たな人影が現れる。

「俺の呪力を躱すか。不遜な」

 そこに現れたのはマサオよりは少し上であろう青髪の少女が、不機嫌そうな様子で立っている。
 だが見た目に反し彼女が放つ威圧感、殺意、悪意は少女、いや人間に相応しくないほどに圧倒的なもの。
 彼女の肉体の名前はレヴィ・ザ・スラッシャー。

 そして彼女の内にある者の名前は両面宿儺。

 呪いの王が現れた。
 何の因果か。ロボのひろしと別れた後に、今度は別世界のひろしの残骸の前に。

196■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:35:45 ID:NpMGC4sI0





 時はまたも少し遡る。

 宿儺がロボひろしに逃げられた後、彼は当てもなく会場を彷徨っていた。
 彼からすればひろしに執着する理由は何もない。
 何か特別な理由があるなら誰かに執着を見せることもあるが、少なくとも理由がロボひろしには存在しなかった。
 なので他の参加者を探す為に会場を歩いていたのだが、ロクに見つからない。

「私、ビッグ・ザ・メリーさん……」
「ヒャッハァァァァァァァァ!! このS級妖怪である猿夢様があなたをハンバーグにしてあげますからねェェェェェェッ!!」

 途中、会場に放たれているNPCが宿儺を襲うこともあった。
 しかし――

「「ぎゃああああああああああ!!」」

 宿儺からすれば取るに足らない相手だった。
 並の参加者なら十人集おうとも血祭りにできただろうが、彼の相手をするにはあまりにも格が足りない。
 なので彼からすればせっかく蘇ったにもかかわらず、張り合いがない。
 こうなると指を支給品に入れたことすら主催者に対する苛立ちの理由になる。

『おはよう。四時間半ぶりだな、参加者の諸君』

 するとミルドラースの放送が始まった。
 天上天下唯我独尊。己の快不快のみが判断基準の宿儺からすれば到底許容できない振る舞いだが、優勝した後に鏖殺することを改めて決意しつつ放送を適当に聞く。

(そんな……ロボひろしが探してた子が死んじゃったなんて……)
「うるさい」

 途中、レヴィがしんのすけの死を嘆く一幕もあったが、宿儺は冷たく切り捨て、代わりに別の事柄へと思考を移す。

「禁止エリアか。全く、煩わしい」

 宿儺が苛立つのは禁止エリアだ。
 実は禁止エリアに侵入するとどうなるのかミルドラースは説明していないが、おおよその想像は付く。
 首輪を爆発させるか他の要因か、とにかく侵入した参加者を死亡させるのだろう。
 意図も分かる。おそらく弱者の穴熊を防ぐためだ。
 この蟲毒の仕様を考えるなら、最適解はどこかの建物でひたすら隠れ潜むことだろう。
 だがそれではいつまでたっても最後の一人など決まる筈もない。
 なので穴熊している参加者を無理矢理外に追い出すために禁止エリアを作っているに違いない。

 本来なら彼はこんな縛りを気にする道理はない。
 なぜなら本来の彼は首輪の爆発ごときで死亡しない。この宿儺は経験していないが、自らの心臓をえぐり出しても平然と生存できるのだから。
 だが何らかの縛りを用いれば、あるいは宿儺にも気付かせないように領域に属するものが展開されていれば、彼を殺す首輪を作ることはできるかもしれない。
 否、そうでなければ指を支給などしないだろう。

 理屈は分かる。
 分かるが、それに対しどう思うかは別の問題だ。

 しかし苛立っていても今の宿儺にどうにかする手立てはない。
 なので仕方なく彼はデイパックを取りに行くことにした。
 肉体であるレヴィのデイパックは基本支給品はボロボロ、ランダム支給品は佐々木哲平に回収され彼のデイパックに。
 そして哲平のデイパックを、宿儺は放置していた。
 己の強さに絶対の自信がある彼からすれば、支給品など無用と思っていたが故に。

 だが事情が変われば仕方ない。宿儺は哲平のデイパックを取りに戻る。
 そしてたどり着いた先で見たものは、どこの誰とも知らぬ凡夫が己の必要な物に手を伸ばす不遜な姿。
 ならば迷いなどするはずもなく、宿儺は呪力を飛ばす。
 されど――

「キング・クリムゾン!!」

197■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:36:12 ID:NpMGC4sI0

 宿儺の呪力は、あろうことか凡夫と見下した男、野原ひろし? をすり抜け、代わりに後ろのベッドを破壊した。
 目の前の男から呪力を感じないので術式を使ったわけではないことは分かるが、では何をしたのか宿儺には分からない。

「俺の呪力を躱すか。不遜な」

 ギロッ

 だが理解する理由はない。
 目の前の男は少し威圧するだけで止まる程度の存在だ。
 最期に意地を見せたとはいえ、恐怖に慄きながら必死に殺し合いの説明をした佐々木哲平のように。
 しかしまたも予想外なことが起こる。

「小さな体なのにとても強くて驚いたよ。名前を聞かせてもらっていい?」

 なんとひろし? は怯える様子など一切見せず、それどころか呑気に名前を尋ねてくる始末。
 俺に恐れを抱かないとは一体どれほど愚鈍なのか、とこれには宿儺も一瞬呆気にとられそうになるも――

「なんだ、ただ壊れているだけか」

 すぐにひろし? が正気ではないだけなことに気付く。
 恐怖を感じない強さを持つのではなく、感じられるだけの感性を消失しているだけ。
 これでは嬲る楽しみも生まれん、と少々つまらなさを感じる宿儺。

 一方、ひろし? は呑気な態度とは裏腹に目の前の少女、宿儺の危険度を理解していた。
 確かに宿儺の言う通り、今のひろし? は壊れた残骸でしかない。
 だが残骸であろうとも優勝を目指す意思がある以上、ここで生き残る術を行使するのは必然だ。

「来い!」

 ひろし? は懐から何やらカードを取り出すと、それを天に掲げる。
 するとカードが一瞬光ったかと思うと次の瞬間、さっきまでいなかった新たなる人影がここに現れた。

「式神か?」

 宿儺が己の知識にある似たようなものだと推察しつつも、どこか訝しむ。
 なぜ訝しむのかというと、目の前に現れた人影の威圧感が、おおよそ式神が醸し出せるとは思えないほどのものだからだ。

 それは当然だろう。なぜならば彼、いやコンペロワの現在の生存者が知る由もないがこの人影は本来式神などに収まる器ではない。
 見た目な少々色白な美形の男で、ソフト帽とペイズリー柄の黒ジャケットが特徴的な彼の名前は鬼舞辻無惨。
 既に死亡した甘露寺蜜璃、あるいはコルワが面識のある鬼殺隊が千年追い続けた鬼の首魁である。

 されどここにいる無惨は本物ではない。
 参加者ではなくNPCでもなく、彼はひろし? が掲げたカードから呼び出された紛い物。
 朝日を浴びても死滅しない代わりに、どんな手を使っても己が生き延びる選択も、己を天災と並べる傲慢さも持ち合わせていない、召喚者の命令を聞くだけのコピー。

 しかし力だけは本物と並ぶ。
 宿儺の壁として、彼に立ちはだかる。

「じゃあな!!」

 そしてひろし? は宿儺の相手を無惨に押し付け逃げ出した。
 宿儺は当然逃がすつもりなどないが――

「ほう?」

 何か行動を起こすより前に無惨が眼前に立ち、目にも止まらぬ速さで宿儺を殴り飛ばす。
 そのまま彼は建物の壁をぶち抜きながら吹き飛ばされていく。

「てっきりアームだけ産業用ロボットかと思ったら、人型とは楽しいねぇ!!」

 無惨の強さを見てひろし? が感嘆しているのかよく分からない台詞を吐きながらこの場を去っていく。
 彼は知っている。この無惨は確かに強いが、実はこの場に現れ続けることに時間制限があることを。
 なので倒しきれなかった時の為に、彼は宿儺から逃げることにしたのだ。

「あの不気味なお嬢ちゃん、いいもん持ってたなオイ」

 この無惨を呼び出せるカード、元はレーティアに支給されていたものである。
 キングコアによって壊され、支給品によって正気に戻された彼女に用意された数少ない慈悲。
 もし万が一戦う意志を取り戻した時の為に用意された最強のカードは、何の因果か同じく壊れた男の手に奪われてしまった。

198■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:36:39 ID:NpMGC4sI0





 宿儺と無惨。共に参加者ではない者同士の戦いは、熾烈を極めていた。
 リテイル・ローに並んでいた建物、家やビル、店などは戦いの余波で最早崩壊と称するしかない有様と化している。

「はははははははははは!!」

 そんな被害を振りまく片割れ、両面宿儺は高らかに笑う。
 この殺し合いに現れてから見せ続けた嘲りではなく、戦いの高揚によって。

 キィンッ

 宿儺が呪力を飛ばし、無惨の右腕を切り裂く。
 それだけで常人なら致命傷だが、無惨の回復力ならば些事。
 何事もなく、否右腕の袖だけは切り飛ばされたまま、されど腕は元に戻り、返礼とばかりにさっき斬り飛ばされた右手で近くにあった瓦礫を掴み、宿儺に投げつける。

「ふん」

 大砲と見まがうほどの勢いで飛んできた瓦礫を首を動かすだけで躱した宿儺は、そのまま無惨の背後に回る。
 そして両腕を振り上げ叩きつけようとするがその前に――

 ヒュゥン

 無惨の背中から九本の触手が生え、宿儺の体を大の字に拘束する。
 中身こそ呪いの王なものの、見た目は見麗しい童女のレヴィが触手に開脚した状態で拘束されるという、一部の人間なら歓喜しそうな光景ではあるが、これからこの無惨が行うことは性欲を満たすことではない。
 否、本来の無惨であったとしても性欲を満たしなどしないだろう。
 生存欲求のみの怪物に、敵対する強者を嬲ることなど思考すら及ばない。
 あるのはただ即座に息の根を止めるという殺意のみ。

 故に無惨は宿儺を拘束したまま振り回し、地面や近くの建物に叩きつけ続ける。
 呪い、例えば真人ならば何の意味もないだろう。
 だが宿儺にならば通じる。人の腹から生まれた者ならば。
 レヴィという肉体に受肉しているのならば。

 されどその程度で死ぬのなら、宿儺は呪いの王などと呼ばれる前に死んでいるだろう。
 証拠に、彼は呪力で無惨の触手を全て切断し、既に脱出しているのだから。

 無惨は触手を再度生やし、またも宿儺を狙う。
 しかし宿儺はそれを切断することなく全て躱し、懐に入り込んだ。

「思ったよりつまらんな、貴様」

 宿儺は無惨をこう称しながら、そのまま拳を腹に叩き込もうとする。
 彼は無惨の攻撃をほぼ見切りつつあった。
 なにせ攻撃が単調なのだ。
 胆力は大したものだが、それ頼みなせいである程度戦えば見切れてしまう。
 もっとも、宿儺ほどの力の持ち主でもなければ、こんな弱点を付くより先に殺されるのが関の山だろうが。

 その分析は正しい。ここにいる無惨は本来のものと同じく、ただ徒に力を振り回すだけだ。
 そこに技術などない。研鑽などない。
 それだけでただ一人以外なら苦も無く倒せるのが彼の生涯だったのだから。

 しかし宿儺は知らない。無惨の体は触手が生えているだけの異形ではないことを。

199■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:36:58 ID:NpMGC4sI0


 ド ン ! !


 宿儺が拳を浴びせようとした刹那、無惨の体に巨大な口が出現する。
 同時に、宿儺の体に膨大な衝撃が走り、彼の体は無様に地面を幾度となく転がる。
 しかしそれは、これ以上の接近戦は千日手となると考えていた宿儺は即座に起き上がり、好機とばかりに言葉を紡ぐ。

「竈(カミノ)」

「開(フーガ)」

 宿儺が唱えると、彼の左手に炎が宿る。
 そのまま彼は左手を前に、右手を後ろに、まるで弓に矢をつがえるように構え、放つ。

「アアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 放たれた炎は一直線に無惨に向かい、彼を焼き尽くす。
 もし本来の彼ならば、どれだけ焼き尽くされようとも諦めないだろう。
 水場を探すかもしれない、土にまみれ転がり消火しようとするかもしれない。
 あるいは近くにいる人間を喰らいながら少しでも生き長らえようとするかもしれない。

 だがここにいるのはただのコピー。
 虫のような感性の生きることに固執した生命ではなく、戦えぬものの為に用意された刃。
 故に何か抵抗することもなく、無惨は焼き尽くされてしまった。

「ふん。最後はともかく、まあ少しは楽しめたか」

 何気なく無惨に対する感想を呟きながら、宿儺は自身の体に受けた傷を反転術式で直そうと試みる。
 だが――

「む……?」

 宿儺の術を用いても、己の体のダメージが完全に癒えていない。
 治せないほどの深手では断じてない。そもそも、死んでいない限り治せない傷などまずない彼からすれば、これは立派な異常事態。
 されど彼は気にしない。
 術式の一部すら枷が掛けられてなお、彼は己の絶対性へ疑問など抱きはしない。

「おっ、あったな」

 己の治療もそこそこに、宿儺は近くに落ちている、壊れたベッドの傍にあったデイパックを拾う。
 彼が知ることはないだろうが、それは当初目的としていた佐々木哲平のものではなく、ひろし? が引き連れていたレーティア・アドルフのもの。
 もっとも、彼には関係ない。
 彼が用があるのは基本支給品の地図のみ。
 それさえあるのなら、誰の物かなど興味を抱くはずもなく。

 ガサッ

 早速地図を広げ、地形と現在地を確認する宿儺。
 彼が現在地は禁止エリアからかけ離れていると知るまで、あとわずか。

200■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:37:33 ID:NpMGC4sI0


【???/朝】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:恐怖(大)、心理的ショック(大)、失禁
[装備]:天狗の羽@幻想少女大戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない)
[思考・状況]:基本行動方針:???
1:おじさんの偽物(ひろし?)から逃げる
2:ヴィータちゃん、立香さん、行かないで……
3:しんちゃんはもういない……
4あれ、:ひらりマントは……?
5:しんちゃんのパパが二人いる訳じゃない!!
[備考]
※マサオが記憶している野原ひろしのCVは藤原啓治です。
※第一回放送を聞いてはいましたが、しんのすけの死亡以外の情報を把握していません。

【野原ひろし?@ネットミーム】
[状態]:健康、怒り(中)
[装備]:懐にデザートイーグル、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、鬼舞辻無惨のカード(12時間使用不可)@ユニオンアリーナ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個(確認済み、移動手段の類はなし)、ポンプアクションショットガン@ゾット帝国、グレシアのデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜2)
    佐々木哲平のデイパック(基本支給品、三代鬼徹@ONE PIECE、沖田のバズーカ(弾未装填、残弾不明)@銀魂)
[思考・状況]基本方針:他参加者の殺害
1:あの子供(レヴィ)から逃げる。
2::あの野郎(岸辺露伴)どこ行った!?
3:岸辺露伴は殺す。
4:名簿への疑問
[備考]
※原作出展ではなくなりました。「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素がメインとなってます。
※CVは森川智之です。
※主催者から『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』と付け加えられています。理由は現状不明です。
※ヘブンズ・ドアーで文章が書きこまれると、自動的に『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』という文章が湧き、書き込まれた文章を塗りつぶして無効化します。
 これは仕様なのか、主催者でも計算外なのか現状不明です。
※何に対してもギャンブラー経由でコルワと彼女が話した情報、桐山和雄の外見(変身時のみ)を知りました。
 その為リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団 をリルル@グランブルーファンタジー と思っています。
※第一回放送を認識していません。


【H-6 リテイル・ロー/朝】

【レヴィ・ザ・スラッシャー@魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF DESTINY-マテリアル娘。】
[状態]:宿儺の器、ダメージ(小)、呪力消費(極小)
[装備]:宿儺の指(15本分)
[道具]:レーティアのデイパック(基本支給品、注射器、『エルフが作った、どんな病気も治せる薬@銀魂』が入ったペットボトル(1/5消費))
[思考・状況]:基本行動方針:宿儺から肉体を取り戻す。
1:...出会う参加者を鏖殺する。特にあの式神使い(ひろし?)
2:地図を確認する
3::王様やシュテルんは今どうしてるのかな...
4:しんのすけが死んじゃったなんて……ロボひろし大丈夫かな……
[備考]
※ロボひろしのことについて色々知りました
※宿儺の器となりました。十五本分の魂が入っています。
 肉体の意識は宿儺優位ですが、頑張ればレヴィも表層に出てくることができます。
※反転術式に制限がかかっています。受けたダメージの完全な治癒はできません。

※H-6 リテイル・ローの一部が崩壊しました。
※マサオとひろし? はH-6、もしくは周辺1エリアのどこかにいます。それぞれどこにいるかは次の書き手氏にお任せします。
※H-6 リテイル・ロー西側 洋館の一室にスタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)@ジョジョの奇妙な冒険、オグリキャップのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×1(お菓子の類ではない)) が放置されています。
 またH-6のどこかにひらりマント@ドラえもん が放置されています。
※空飛ぶベッド@ドラゴンクエスト6 は破壊されました。

201■・■・決・壊 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:37:54 ID:NpMGC4sI0


【天狗の羽@幻想少女大戦】
オグリキャップに支給。
装備すると移動力を+2するアイテム。
本ロワでは装備すると移動速度が上昇するアイテム。装備の際は背中に装着しよう。
また、この移動速度というのは徒歩や走行だけでなく、車やバイクなど装備者が運転する乗り物も含まれる。
ただし装備者自身が運転しないと効果は発揮しない。

【鬼舞辻無惨のカード@ユニオンアリーナ】
レーティア・アドルフに支給。
BP5000のカード。
本ロワでは使用すると10分間鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 のコピーを召喚する。召喚して10分を超えるか一定以上のダメージを受けると消滅する。
このコピーされた無惨は太陽の光を浴びても消滅しない。代わりに意思もなく、召喚されている間は使用者の命令を聞くだけの存在となる。
それ以外の体質(無惨の血を与えられると鬼@鬼滅の刃 になるなど)が再現されているかは現状不明。
一度使用すると再使用できるまで12時間のインターバルが必要となる。

ちなみにユニオンアリーナにおいて宿儺のカードも同じBPなので、もし虎杖悠二が器となった宿儺と戦闘することがあれば互角に戦える、やもしれない。


【ビッグ・ザ・メリーさん@入居者全滅事故物件】
都市伝説『メリーさん』界隈の中でも最強の女(自称)
スチール製のドアを正拳突きで歪めたり、マンションの三階まで跳躍できるほどの筋力を持つ。強い。あとデカい。

【猿夢@八尺様がくねくねをヌンチャウ代わりにして襲ってきたぞ!】
車掌の服装をした猿の見た目をしたS級妖怪。
対象を夢の中に誘い込み徹底的に惨殺し、その影響で現実でも死に追いやる。
そんな妖怪がなぜ夢ではなく現実で猛威を振るうのか。

まあ、そういうこともあるだろう。
夢は見るだけのものではなく、現実で叶えるものでもあるのだから。(八尺様がくねくねをヌンチャウ代わりにして襲ってきたぞ! より引用)

202 ◆7PJBZrstcc:2025/07/01(火) 22:38:29 ID:NpMGC4sI0
投下終了です
なにかおかしな点、不明な点がありましたら遠慮なく指摘お願いします


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