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闘争バトルロワイアル【二章】

63 ◆ZbV3TMNKJw:2019/06/06(木) 22:37:00 ID:YngMiVUM0
投下終了です

64名無しさん:2019/06/06(木) 23:55:51 ID:0eL1uT2A0
投下乙です
さやかと杏子は完全に決別したか。再戦の時は来るのだろうか
相変わらずのツンデレな隊長はやっぱり彼岸島のメインヒロインだってはっきり分かんだね

65 ◆ZbV3TMNKJw:2019/11/02(土) 00:28:16 ID:rT4vcn460
投下します

66汚れちまった悲しみに... ◆ZbV3TMNKJw:2019/11/02(土) 00:29:08 ID:rT4vcn460
どれほど泣いただろうか。
どれほど無力にうちのめされただろうか。

男の躯に縋りつき、少女―――小雪はただただ喚き続けた。

返事などない。わかっている。
それでも散っていった者たちの名前を呼ぶのは、呼ばずにはいられないのは理屈ではないのだ。

―――私のせいだ。私が、戦えなかったから。

己への自責と不甲斐なさと嫌悪感と、様々な悪感情が湧き上がってはまた増していく。

(リンゴォさんも、ゆうさくさんも私が戦っていれば死ぬことなんてなかった。私が戦ってさえいれば...)

リンゴォもゆうさくも、自分を助けるためにあのスズメバチと相対し、命を落とした。
もしも自分が戦っていれば、違う結末が待っていたかもしれない。

(...ここに来てからじゃない。私は護ってもらってばかりだった。ずっと...)

魔法少女に選ばれて、密かに夢見てた正義の味方みたいなことをして、魔法少女同士の理不尽なデスゲームに巻き込まれて...

そんな時、いつも隣にいてくれたのは、戦ってくれたのは、魔法少女ラ・ピュセル―――岸部颯太だった。
基本的に、魔法少女は互いの正体を知らない。
けれど、そんな中で、彼が『スノーホワイト』を小雪だとすぐに見抜いたのは驚いたし、なにより彼が魔法少女になっていることには更に驚いた。

互いに正体を明かしてから、魔法少女として活動する時にはいつも一緒にいてくれた。
ルーラ達に襲われた時も、戦えなかった自分に代わってその剣を振るってくれた。
そして―――自分の知らないところで死んでしまった。

ファヴは死因は事故だと言っていた気がするけれど、車ですら平然と止められ銃撃されても死ぬかも怪しい魔法少女がどんな事故で死ぬというのだろうか。
きっと、彼は誰かと戦って死んだに違いない。
小雪に内緒で、自分独りで。

67汚れちまった悲しみに... ◆ZbV3TMNKJw:2019/11/02(土) 00:29:41 ID:rT4vcn460

そして、そんな彼が殺し合いに巻き込まれているということは、再び彼が死ぬ可能性があるということ。
リンゴォやゆうさくのように動かぬ肉塊となってしまうということ。

「嫌...嫌だよそうちゃん」

死んで欲しくない。また会いたい。またお話したい。また一緒にいたい。
言い知れぬ不安が、恐怖が、彼女の脳髄を麻痺させていく。

会わなければいけない。彼を死なせない為に。今度こそは、自分が彼を護るために。
でないと、リンゴォやゆうさくに護って貰った意味が―――

「ぁ...」

思わず声が漏れた。
小雪の眼に入ったのは、男達の躯―――その片方の首に巻かれた赤色の首輪。

小雪の脳裏に、名簿と共に記載された条件が過ぎる。

【生還条件】
最後の一人になるまで殺し合うか、赤い首輪の参加者を殺せば、即ゲームクリア。ゲームから解放される。
赤い首輪の参加者が全滅した場合は、通常のロワのように優勝者は一人となる。
ちなみに、自分の意思で残留するかどうかを選ぶこともできる
その場合は、特典として本人の希望するある程度の要望を叶えてもらえる
例:参加者の詳細情報、強力な武器や装備の支給など

赤い首輪の参加者を殺せば、生還もしくは情報などの要望を叶えてもらえる。

小雪自身はゆうさくを殺していない。けれど、主催側はどうやって殺した者を判断するのか―――少し考えればわかる。

(ゆうさくさんの、首輪をもらう...)

首輪を貰うということは、即ち彼から首輪を外すということ。
どうやって?首輪を引きちぎる?魔法少女ならば可能だろう。だが、果たして壊れた首輪で要望を叶えてもらうことができるのだろうか。
解体するか?いや、機器に対してのロクな技術も知識も持っていない彼女が徒に触れればどうなるかは明白だ。
首輪を傷つけずに外す方法。それは―――

「首、を」

ドクン、と小雪の心臓が跳ねた。

68汚れちまった悲しみに... ◆ZbV3TMNKJw:2019/11/02(土) 00:30:13 ID:rT4vcn460

ハッ、ハッ、と小さく息が漏れる。

自分はいま恐ろしいことを考えている。

颯太に会うために、ゆうさくの首を千切ろうなどという、残酷な考えだ。

(嫌...そんなことしたくない...!)

身体が震え、生理的嫌悪感が腕を痺れさせる。
できるはずもない。
出会ってまだ数時間とはいえ、ずっと励まし続け、支えてくれ、護るために命を張った彼の亡骸を辱めるようなことを。
そう。できるなら、このまま埋葬するべきなのだ。けれど...

(でも...手がかりが無いとそうちゃんを探すなんて...)

この会場は決して狭いとは言えない。
一周するだけでも最低半日はかかるかもしれない。
そんな中でなんの情報もなく個人を捜し当てられる確立が果たしてどれほどのものか。

(私は...)

滲む視界で、ゆうさくの亡骸を見つめる。
選ばなければならないのだ。まだ生きているかもしれない颯太か、既に死んでいるゆうさくか。

小雪はゆっくりと立ち上がり、その歩を進める。
足に鉄枷を嵌められたかのように重い。一歩一歩が、容赦なく彼女の心を削っていく。
そして小雪は膝からへたり込んだ。ゆうさくの亡骸、その厚い胸板の上に。


彼女は選んだ。
既に死んでしまったゆうさくではなく、まだ生きているかもしれない颯太を。

変身し、ゆうさくの首にそっと手をかける。

(ごめんなさい...)

心の中で何度も何度も謝罪する。
それでも罪悪感なんて消せやしない。
きっと、生きている限りこの感情は引きづり続ける。

唇を噛み締め、指に力を入れる。

そして―――



『...恐いときは恐いっていえばいい』
『子供は大人に頼ればいいんだ』
『乳首感じるんでしたよね?』
『あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・ああああ↑↑↑』



「だめ...できない...」

69汚れちまった悲しみに... ◆ZbV3TMNKJw:2019/11/02(土) 00:32:17 ID:rT4vcn460

ゆうさくの向けてくれた笑顔が、自分を気遣ってくれた言葉が脳裏をよぎった途端、彼女の指から力が抜けた。
駄目だった。
いくら魔法少女になったとはいえ、彼女の本質は平凡な日常で生きてきた夢見る少女だ。
頭の中では決意したつもりでも、それがすぐに実行できるほど彼女は強くない。
きっと、近い将来にはそうなったかもしれないが、しかしいまの彼女には無理だった。

自分と関わった人に傷ついてほしくない。
そんな普遍的な彼女の性質が、決意ひとつで変われるはずもなかった。








ふらふら、ふらふらと覚束ない足取りで、小雪は進む。

「待ってて...リンゴォさん、ゆうさくさん」

倒れ伏していた男たちの遺体は、小雪のデイバックに収納されていた。

このデイバックが人が入れるような不思議なデイバックでよかったと心底思う。

おかげで、これ以上二人を傷つけずに運ぶことができるのだから。

「こんなところじゃない...お日様のあたるような、もっと気持ちいいところに連れていきますから...」

詭弁だ。

どこに埋葬しようが死体は喜ばないし不満も漏らさない。いま彼女が背負っているのは既に命を失った抜け殻に過ぎないのだから。

わかっている。彼女もそんなことはわかっているのだ。

けれど、現実から逃れるように、理想の果てにある清く正しく美しい姿に依存するように。

勝手な約束をとりつけ、償いという言い訳をつくり、己の悲しみを紛らわそうとしてしまう。

ふらふら、ふらふら。

少女は行く。あてもなく、しかし止まることなく亡霊のように。

その歩みが正されるかは、いまはまだわからない。


【F-3/一日目/朝】

【スノーホワイト(姫河小雪)@魔法少女育成計画】
【状態】死への恐怖(絶大)、ゆうさくやリンゴォを喪った悲しみ(極大)
【道具】基本支給品、ランダム支給品1、発煙弾×1(使用済み)
【行動方針】
基本:殺し合いなんてしたくない…
0:リンゴォとゆうさくの遺体をどこかいい場所に埋葬したい。
1:同じ魔法少女(クラムベリー、ハードゴアリス、ラ・ピュセル)と合流したい
2:そうちゃん…
※参戦時期はアニメ版第8話の後から
※一方通行の声を聴きました。
※死への恐怖を刻まれました。
※変身が解かれている状況です。
※時間経過により、赤首輪殺害における権利を失いました。

70 ◆ZbV3TMNKJw:2019/11/02(土) 00:32:50 ID:rT4vcn460
投下終了です

71名無しさん:2019/11/02(土) 03:28:44 ID:OdNAn43o0
投下乙です
疲弊してるスノーホワイトがかわいそうなのに、ゆうさくの回想の言葉が淫夢語録なせいで草生える

72名無しさん:2019/12/13(金) 18:59:24 ID:UWVkFZok0
投下乙です
対応者のままではあるけどスノーホワイトの黄金の精神が濁らなくてよかった

73 ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 21:59:34 ID:oRx9MZT20
久しぶりに投下します

74教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:00:12 ID:oRx9MZT20
放送の声が木霊する。

しかし、彼らは死者を意に介さない。

彼らにとって大切な者などこの会場には存在しないのだから。

「とおりゃあ!」

気合一徹、ワイアルドの金属バットが振り下ろされる。
対するモズグスは、防御の構えをとることもなくそれを頭部で受け止める。
無傷。モズグスの岩石と化した頭部にはかすり傷すらもつけられない。

「ほあああああああ!!」

一撃で足りぬのならば、と、ワイアルドは己の身体を独楽のように回しながらバットを振るう。
絶え間なく振るわれる凶器は、モズグスに反撃の目を許さない。
ダメージこそは微小ながらも、その腕力そのものは殺しきれず、モズグスの身体は徐々に後退していく。

「新必殺技!ワイアルドトルネード!!」

最大にまで高まった遠心力のまま叩きつけられるワイアルドの腕が、モズグスの喉へと極まる。
そのパワーとスピードから放たれるラリアットはモズグスの岩石の身体にすら衝撃を通す。

「ヌゥッ!」

しかし、痛みと向き合い行く候。モズグスはこれしきの痛みで怯む教祖ではなし。

「神・千手砲(ゴッド・センジュカノン)!!」

翼が岩石の拳に変化する。
暴風のように振るわれる岩石の拳にさしものワイアルドも怖気づく。
対処できる速さではある。が、しかし、一撃でも受ければただでは済まないだろう。
ビビッて防御に入るのも癪、反撃も割に合わないとなれば避けるのみ。
しかし、周囲は炎に巻かれているため派手な動きもとりにくい。

75教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:00:39 ID:oRx9MZT20
(メンドくせえなぁ〜、俺はこういう戦いは嫌いなんだよ)

ワイアルドの好きな戦いはあくまでも蹂躙であり、自分が気持ちよく戦えない戦などクソくらえである。

(それにコイツの身体...気のせいか、段々硬くなっていってねえか?)

ワイアルドの心配は杞憂ではなかった。
モズグスの身体は徐々に岩石に染まっていっている。それだけでなく、数多の戦場を経験しているワイアルドとは違い、モズグスは戦闘においてはまだ発展途上。
いわば未知数。成長の伸びしろを見ればワイアルドの才能を上回っている。

「こりゃワリに合わねえや」

そう呟き、ワイアルドはあっさりと踵を返し走り去っていく。
もともと、雑魚を相手に遊び余裕があればゾッドを殺す、程度の戦闘スタンスだ。
敗けるつもりはないがここで正面衝突し深手を負うようなリスクはとりたくない彼がここで走り去るのも当然のことだ。

「愚か者!私が罪人を逃がすとでも思うてか!!」

モズグスもまた叫び、走り出す。
普段ならば足の痛みで走れないが、岩石で象られた今ならそれも可能。
ましてや、なるべく炎を避けつつ走らなければならないワイアルドと、炎を突っ切ってでもとにかく彼を追えばいいモズグス。
その距離が縮まっていくのは必然といえよう。

こりゃたまらん、といわんばかりにワイアルドは眼前の教会へと駆けこんだ。

「ムムッ!」

教会。それはモズグスにも馴染みのある、神の声を授かる神聖な場所である。
よもやこんなところにも建っているとはわからないものだ。
そんな感慨に浸るも、なればこそ早急にあの不届きものを追い出さねばならない。

扉を破壊、するようなことはなく懇切丁寧に開き、一礼一拝と共に淑やかに足を踏み入れる。
立ち並ぶ長椅子や長机を検めるも、ワイアルドの姿は見えない。
どこに隠れたというのか...

カッ カッ カッ

足音をモズグスの耳はとらえ、出所へと振り返る。
階段だ。
ワイアルドは階段を登ったのだ。

76教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:01:02 ID:oRx9MZT20

「逃がさん...神に許しを請いなさい。そして、心を改めるのならば罪を受け入れ神の与えし試練を乗り越えなさい!」

ズン、ズン、と重厚な足音を立て、モズグスもまたワイアルドの後を追う。

「!」

降り注ぐ石造りの彫像を、モズグスはその石頭で破壊する。
足こそは一旦止まるものの、怪我はなくダメージもさほどない。

「味な真似を!」

一定の間隔を置き投げつけられる彫像や瓦礫などを砕き、徐々に距離を詰めていく。
やがて、さしかかる最上階への梯子。
それに手をかけのぼるも、モズグスの背中の巨大な石の拳が邪魔をし、出口から出られない。

「...神よ。お許しを」

拳で屋根を撃ち、穴を広げて登る。

「おーおー、ご苦労さんなこって」

巨大な十字架に背を預けたワイアルドが、モズグスを嗤って迎えた。
モズグスは、煽りに苛立つことも憤ることもなく、淡々と告げる。

「観念なさい...神のお膝元にて、邪教徒が幅を利かせられることはなし」
「へっ、使途の身体を手に入れてずいぶんご機嫌なことだな教祖様よ。いや実際、その硬さは大したもんだぜぇ」

言いながら、ワイアルドは己の胸当てを外し、デイバックへとしまい込む。
まだ抵抗の意思があるのか、とモズグスは身構え、気づく。
煙。ワイアルドの身体から、煙が漏れ出していた。

「だがなぁ。所詮てめぇは使途擬き。本物の使途様には勝てねえってこと、教えてやるぜ!」

ゴウッ。
ワイアルドの煙がモズグスの視界一帯を覆う。

「小癪な...このようなまやかしが私に通じるとでも」

炎を吐き周囲を纏めて攻撃しようとした矢先。彼の足元が、崩れ落ちた。

「ムオ!?」

モズグスの身体が浮遊感と共に宙に投げ出される。
視界から煙が遠ざかるのを認識し、彼は自分の足元が崩れ落ちたのを理解した。

この教会は屋根から地面まで直線の吹き抜けとなっている。
このまま落ちれば少なくないダメージを受けてしまう。だが、翼は石の腕に変わってしまったため飛ぶことはできない。
ならば壁にでも腕を突きさして落下を防ぐ。伸ばされた手は、しかし壁に届かず。
巨獣に変身したワイアルドの太く毛深く逞しい腕がモズグスを捉えていた。

77教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:01:32 ID:oRx9MZT20
「行かせるワケねーだろ...そらっ!」

ワイアルドの巨腕が振り下ろされ、モズグスを地面へと叩き落とす。
いかに岩石の如き頑丈さといえど、高所からの落下とワイアルドの剛腕による投げ飛ばしのダメージは防ぎきれない。
バァン、と一際大きい衝突音と共に地面と共にモズグスの身体が欠け、彼の吐血さえ隠れるほどの砂ぼこりが舞い上がった。
一方のワイアルドは、壁に腕を突きさし落下を防ぎ、使徒の姿を解くことで質量を減らすことで腕にかかる負担を軽くした。
これならば、飛び降りてダメージを負うようなことはなく、安全な場所まで壁を伝うことができる。

「ごっ...ごっ...」

モズグスは咳き込みながら、ふらふらと立ち上がり、しかし眩暈と共に倒れそうになる。
その身体がなにかに支えられた。
眩暈から回復した彼の視界に入るのは華奢な腕。その身を包む黒服と、不健康そうな眼の下の隈。

「おぉ...あなたでしたか。よくぞご無事で」

モズグスは彼女、ハードゴア・アリスが己を支えてくれたことを認識し柔らかにほほ笑んだ。

「他の方々は何処へ?」
「......」
「...そうですか。無事であればよいのですが」

アリスの反応でさやか達とは逸れたことを察し、モズグスは彼女たちの無事を祈る。
名前も知らぬ少女たちではあるが、罪人でなければ無事を願うのは当然のこと。
また再会し、共に神の示す職務を説いていきたいものだ。

「さて。あの罪人への刑を執行せねば。お嬢さん、しばし離れていなさい」
「......」

モズグスの呼びかけに答えず、自分を見つめるアリスに、モズグスは疑問符を浮かべる。
なぜ彼女は逃げないのか。なぜ自分を見つめているのか。

「...スノーホワイト」

ポツリ、とアリスの口から小さく漏れる。

「白い魔法少女...スノーホワイトを知りませんか?」

78教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:02:04 ID:oRx9MZT20
問いかけられたのは、一人の少女の名前だった。

「スノーホワイト...白い魔法少女...?」

モズグスは、彼女の探し人を、己の記憶に照会するために呟かれた名前を反芻する。

「白い魔法少女...白い...」

その特徴に当てはまる者を探し出す為に、もう一度。

「魔法少女...魔法...少女...」

その反芻により、彼は解答を得た。

「魔女...!」

彼にとって、災厄を齎す悲劇の種を。

「魔女!魔女!まあじょぉ!!許すまあじ!!」

ビキビキと顔面の至る箇所に青筋が走り、モズグスの叫びが教会に木霊する。
魔女、それは彼にとって忌むべき存在、邪教徒の象徴である。
神々の齎した教典にも語り継がれており、現に彼が連れてこられる前も、魔女は異形の怪物を塔に放った。
スノーホワイトとやらがあの魔女と同一のものかはわからぬが、もしもあのような事態を起こせる可能性を秘めた者ならばやはり断罪すべきである。

「やはりこの島には異教徒が蔓延っておるか!!いいでしょう、私は何物の挑戦も受け付けます。かかってきなさぁい!!」

彼の信仰はただ己の保身や安全を保証するためのものではない。
浄も不浄も、神の要求であればその身を捧げる覚悟で答え、やり遂げる信念である。
神が異教徒を滅ぼせと言えば、己が如何な状況に陥ろうとも疑わず遂行する。
盲目的なほどのそれこそが、彼の信仰の強さであり、使徒擬きでありながら、それに劣らぬ強さを発揮できる礎になっている。

だからこそ。

「...させない」

彼は不覚をとることになる。

前方からの不意打ちに反応する間もなく、ドズリ、と、彼の左胸を細腕が貫いた。


岩石染みた彼の身体を貫くのは、使徒といえども困難である。
ならば、その頑強さを超える力があればいい。

魔法少女のただでさえ強力な力に、超常的な力を齎すなにかが加わればそれも可能である。

「がふっ...不覚」

モズグスの口から血が零れる。
スノーホワイトの名前を口にした時から、真っ先に疑うべきは、アリスの立ち位置だった。
彼女が魔女を探しているのはなぜか。なぜ魔法少女などという遠回しな言い方をしたのか。
だが、彼はそれに気づけなかった。
邪教徒がその名の知られた『血の教典のモズグス』に存在を知られるリスクを冒してまで、あんなにも平静に魔女の存在を訪ねるはずがない。
皮肉にも、彼の強さの証である盲目的な信仰こそが、アリスへの疑念を遠ざけてしまったのだ。

「よもや...私が見誤るとは...神よ、今より御許に参ります」

モズグスは、己の体内で心臓が握りつぶされるのを実感し、死を悟った。

「しかし」

だが、それで彼の信仰が終わることはない。
『信仰とは死ぬことと見つけたり』。
そんな彼が、己の命が尽きる程度で、神の意思に背くことはない。

「せめて、この神敵を道連れに、我、最期の命の炎で邪悪を焼き尽くさん!!」

モズグスの口元に炎が溜め込まれていく。
察したアリスが、彼の胸から腕を引き抜こうとするも、しかし胸の筋肉と掴まれた両腕に阻まれる。

「ゴォォォォォォォッド!!!ブレェェェェェェェェェェス!!!!!」

吐き出された炎が、モズグスとアリスを包み、椅子や壁に燃え移り、瞬く間に教会は浄化の炎に包まれた。

79教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:02:37 ID:oRx9MZT20




「ッア―――ッ、エライ目こいたぜたっくよぉ!」

身体のところどころに焦げ目がついたワイアルドが、毒づきながら教会から離れていく。
壁を伝いながら、モズグス達の様子を伺っていたワイアルドは、いち早くその異変に気が付き、壁を破壊し咄嗟に逃げる判断を下した。
それが幸いし、炎が回りきる前に脱出し、軽傷にとどまった。

「あの火の勢いじゃあ2匹とも死んじまっただろうが...どうにも気に入らねえ。エンジョイ&エキサイティングが俺の主義だってのによォ」

ボリボリ、と不満げに眉を潜めながらこめかみをかく。

犯すのを邪魔され。
ムカつく牛バカには返り討ちにされて。
オイシイところを横取りされて。

この殺し合いに招かれてから、どうにもスッキリとした気分になれない。
好きに殺り好きに犯る。
それが使徒の、なにより自分のモットーのはずなのに。

「まあ、コイツは俺の虐殺ショーじゃなく殺し合いなんだ。使徒が圧倒的な強者じゃつまらねえってことかい」

仮に自分が主催ならばそう思う。殺し合いだというのに使徒が一人勝ちしている姿など面白くもなんともない。
だから、この殺し合いには使徒にも張り合える者たちが多く、それゆえにスッキリしきれないのだ。

「よーし決めた。俺はもう遊ばねえ。赤首輪見つけたらとっととオサラバしてやるぜ」

こんな戦いはワリに合わない。使徒ならもっと欲望のままに振舞う方が性に合う。
ゾッドへの復讐もガッツとの闘いも、奴らが脱出できたらやればいい。もし脱出する前に死ぬのならその程度の奴らだったというだけだ。

ぼうぼうと燃え盛る教会を眺めつつ、まあこの火ならあの二人も死ぬだろうと見切りをつけ、ワイアルドは新たなる獲物を求めて歩き出した。




ゴ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ

燃え盛る教会をワイアルドが後にしてから30分ほどが経過した頃。
教会が崩れ落ち、炎は更に勢いを増した。

その炎の中で、蠢く影が一つ。

「......」

ハードゴア・アリス。
モズグスの炎の直撃を受けた彼女は一度は黒炭になるほど身体が焼かれたものの、彼女の魔法により再生し、再び万全な身体に戻った。

「......」

燃え盛る炎が改めて己の身体を焼くのも構わず、彼女は無言のまま歩を進める。

彼女の手に握られるのは、モズグスの赤首輪。その感触が、否が応でも自分の行いを思い知らされる。
ハードゴア・アリスは人を殺したのだと。

80教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:03:18 ID:oRx9MZT20

殺し自体は初めてではない。殺し合いの前にも、スノーホワイトを助けるためとはいえマジカロイド44を殺害したし、不死に準ずる能力者の男も、実質はアリスが殺したようなものだ。
だから嫌悪感などはなく、むしろスノーホワイトの為には正しいことだと思っている。

本来ならば、モズグスに加勢しワイアルドを共に倒す予定だった。
しかし、なにが琴線に触れたのか、彼はスノーホワイトを害する旨のことを叫び始めた。
この瞬間、アリスの予定は大幅に変わった。
ワイアルドはあからさまな危険人物であり、あのままでも多くの参加者に警戒されることは間違いなく、スノーホワイトも遭遇すれば逃げることを考えられるだろう。
だが、モズグスは違う。普段が温厚だからこそ、急な豹変が非常にやっかいだ。加えて、アリスの目から見ても、彼は戦闘中にどんどん変化し力を増していた。
このままワイアルドと戦っている最中に更なる成長を遂げれば、自分どころか、さやか達や幻之介らの手を借りても手に負えなくなるかもしれない。

以上の点から、スノーホワイトにとって危険なのは、ワイアルドよりもモズグスだと判断した。
だから殺した。彼が成長しきる前に殺す判断を下した。

「......」

焼かれながらも再生を続けながら、アリスは教会から出た。
炎の届かぬ場所まで向かった彼女は、そこでようやくモズグスの赤首輪を起動した。

『おめでとうございます!あなたは見事赤首輪赤い首輪を手に入れました!』

鳴り響く陽気なファンファーレ。そして浮かび上がってくる巨大な黒球。

『くろうさぎ。

めにゅ〜
1.元の世界に帰る。
2.武器を手に入れる
3.情報をひとつ手に入れる。
4.その他(参加者の蘇生は駄目よ)』

その画面に浮かび上がるメニューをアリスは注視する。

1番。スノーホワイトがいない世界に帰る意味はない。却下。
2番。自分にはまともに武器を扱うような技量はない。振り回すだけならそこらの標識でも充分だ。却下。
3番。スノーホワイトの現在地は知りたい。保留。
4番。参加者の蘇生以外のなにか。欲しいのは一つだけ。

モニターに触れる。
アリスが選んだのは4番だった。

欲するモノと書かれた画面に切り替わったので、アリスは躊躇うことなく望みを口にした。

「スノーホワイトを今すぐ元の場所に帰してください」

『えらー』

「スノーホワイトを今すぐ元の場所に帰してください」

『えらー』

「スノーホワイトを今すぐ元の場所に帰してください」

『えらー』

「...スノーホワイトをこの特典で帰すのは無理ですか?」

『【すのーほわいとをこのとくてんでかえすのはむりですか?】このしつもんへのこたえでよいですか?』

「......」

アリスは『いいえ』のボタンを押した。

再び元のめにゅー画面に戻る。
アリスは考える。4番の選択肢ではスノーホワイトを帰すことはできなかった。
つまり、彼女が生きて帰るにはやはり彼女自身が首輪を手に入れなければならない。
自分が代わりに赤首輪を倒すだけでは駄目なのだ。

やはり使うのは自分の首輪が最適だ。ちょうど、完全な人殺しになってしまったのだ。
恐らくスノーホワイトは嫌がるだろうが、こんな自分の首ならば多少は彼女の罪悪感も紛らわせるだろう。

ならば、この特典の使い道はひとつ。

「スノーホワイトの居場所を教えてください」

3番に触れ、望みを告げる。

すると、黒球からか細い光線が放たれ、ジジジ、という電子音と共に小さな球が徐々に姿を現していく。
現れたソレを、アリスは手に取った。
球には小さなモニターがついており、テレビ番組や漫画で見るようなレーダーのように、円形状の線が上方向から流れ始めた。
説明書でもないものか、と黒球に目を向けた瞬間、それは音もなくあっという間に消え去ってしまった。

モニターを見て、アリスは考える。このレーダーは恐らくスノーホワイトの居場所を教えてくれている。
これを信じるのならば、彼女がいるのは北の方角。
音波の間隔が広いのは、いまはそこまで近くにいないからで、近づけば恐らく音波の感覚も狭まっていくのだろう。

それを認識したアリスは、すぐに駆け出し燃え盛る教会を後にした。

【モズグス@ベルセルク 死亡】

81教祖爆発!私がやらねば誰がやる! ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:04:11 ID:oRx9MZT20

【H-5/一日目/朝】

※H-5に生えてきた教会@彼岸島が燃えて倒壊しました。



【ワイアルド@ベルセルク】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(大)、ボコボコ、全身に軽い火傷
[装備]:
[道具]:金属バット@現実、基本支給品、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針: エンジョイ&エキサイティング!
0:そろそろスッキリしたい
1:鷹の団の男(ガッツ)を見つけたら殺し合う。
2:ゾッドはどうにか殺したい。
3:さっきのガキ共を見つけたら殺してこの殺し合いから脱出する。

※参戦時期は本性を表す前にガッツと斬り合っている最中です。
※自分が既に死んでいる存在である仮説を受け入れました。

【H-5/一日目/朝】

【ハードゴア・アリス(鳩田亜子)@魔法少女育成計画】
[状態]全身にダメージ(中、再生中)
[装備]なし
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品1、元気が出る薬(残り2粒)@魔法少女育成計画。薬師寺天膳の首輪、モズグスの首輪(使用済み)
スノーホワイトの居場所がわかる小型レーダー(赤首輪の特典)
[行動方針]
基本方針:スノーホワイトを探し、自身の命と引き換えに彼女を脱出させる。
0:スノーホワイトのいる方角へ向かう
1:「スノーホワイトに会えないと困る」という強い感情を持ちながら会場を回る。
2:襲撃者は迎撃する。ただしスノーホワイトとの遭遇優先のため深追いはしない。
3:自身の脱出はほぼ諦めた。
4:ワイアルドは始末しておきたい

※蘇生制限を知りました。致命傷を受けても蘇生自体は行えますが蘇生中に首輪を失えば絶命するものだと捉えています。あるいは、首輪の爆発も死ぬと考察しています。

【元気が出る薬@魔法少女育成計画】
怪我とかは治らないけどテンションがマックスになる薬だよ。
平たく言えばドーピングのようなもの。
本編では寿命を3年先払いすることで手に入れることが出来る。
このロワでは3粒支給されており、寿命の先払いの代わりに、3粒飲んだ場合1時間以内にその参加者は死ぬ代償がある。

82 ◆ZbV3TMNKJw:2020/05/11(月) 22:04:44 ID:oRx9MZT20
投下終了です

83名無しさん:2020/05/13(水) 13:34:13 ID:Uk6HOSKc0
乙です
実力で劣るワイアルドが残るとは……
生き汚さも強みと思わせるモズグスに負けない存在感を出したのは面白かったです
アリスは原作以上に危うい面が強まってる感じ
それだけにスノーホワイトとの精神面でのすれ違いも大きくなりそう
それにしてもどっかのアニメの劇場版を思わせるタイトルw

84名無しさん:2020/10/10(土) 12:59:15 ID:kJ9ImCXI0
もう待ちきれないよ!早く書いてくれ!

85名無しさん:2020/10/10(土) 13:14:06 ID:vobK6EB60
自分で続きを書こうと言う意思も無いの?そんなんじゃ甘いよ(棒)

86名無しさん:2020/10/11(日) 10:16:06 ID:RInhvJRc0
パロロワは、いやそりゃ他の人にリレーされるのは気持ちええっすよそりゃねえ
あの人が来ると企画が止まるとか言われますけどもね
筆力が弱いんですかね?やる気は大きいですよ

87名無しさん:2020/10/11(日) 11:12:57 ID:RInhvJRc0
一度止まるとどの話もリレーしにくく見えるんでしたよね?

88名無しさん:2020/10/12(月) 01:13:05 ID:Qpq12NTU0
何だこのレス!?(驚愕)

89名無しさん:2020/10/18(日) 17:23:44 ID:vkJ5GQMo0
>>82
投下乙

90TNOK:2021/03/20(土) 19:46:28 ID:Fl8a3GWE0
あくしろよ

91関西クレイマー:2021/04/07(水) 10:10:13 ID:VSy3Vgis0
これはな、だれでもそうなるんや……

92名無しさん:2021/05/05(水) 16:17:46 ID:v8.JXD2o0
止まったね

93 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:27:15 ID:9xB6Sjr20
久しぶりに投下します

94分離 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:30:17 ID:9xB6Sjr20
「ちょ、ちょっと本当に行くの!?」

佐山流美は引き留めるように慌ててT-800の後を追う。
放送を聞き、主催に真宮が関わっていると知った時は心底苛立った。
しかし、T-800が千手観音のもとへ行くと言い出せばもうそんな怒りもどこへやら。

「ノープロブレム」
「いや、でも、マジの怪物だよ?もう少し装備とかあった方がいいんじゃない?」

この機械的な反応しかしない男がどの程度強いかはわからない。
しかし、マミを失った今、自分に敵対しない参加者はどうしても確保しておきたい。
無碍に戦力を消費したくない一心で引き留めようとするも、ジョンコナーの障害に成りえるものは排除しておかねばならないと聞く耳を持たず。

歩きながら移動していれば、気づけば町中に。ここはE-5。流美が千手観音と遭遇したB-5とは逆の方角である。


(...念のために逆側を示しておいてよかったよ)

流美はこの頑固一徹男を引き留められない可能性を考慮し、E-5で出会ったと嘘の情報を流した。
これならば千手観音との遭遇も後回しに出来るし、他の参加者とも交流できるかもしれないという一石二鳥な選択肢だった。

ピタリ。

己の策の成功に安堵しかけていた流美を他所に、突如、T-800はその足を止める。

「ど、どうしたの?」
「生体反応を発見した。これより接触を開始する」

彼らの見つめる先は、ジョッキの絵が描かれた壁掛けのある扉。つまりはバーであった。

T-800は躊躇いなく扉を開け、ずんずんと階段を上がっていく。
流美は遅れて、周囲に最大限警戒しながらT-800の後ろを着いていく。

階段を上り切った先に待っていたのは、大剣を構えて警戒心を露わにする少女と、各々がそれぞれの構えをとりやはり警戒をしている三人の男。
T-800は一同を見回すと、無表情のまま野太い声で一言を発した。

「ハァイ」

95分離 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:30:52 ID:9xB6Sjr20







「つまり佐山はクラムベリーって奴と先生みたいな口調で喋る怪物に襲われたんだな?」
「そっ、そうそう」

バーにいたのは吉良、上条、ラ・ピュセル、左衛門の四人。
T-800の挨拶で困惑していた一同に、遅れて到着した流美が身振り手振りを加えながら自分たちに敵意はないと訴えかけ、どうにか情報交換へと持ち込むことが出来た。

「巴さんもあいつに、クラムベリーに襲われて、それで...」
「なあ、岸部。クラムベリーって...」
「...ああ。やっぱりあいつは...!!」

ラ・ピュセルの拳が握り絞められる。
彼の中では未だに消えていない。あの女に痛めつけられた苦痛を、刷り込まれた死への恐怖を。

「上条さん。僕は行きます。あいつは絶対に止めなくちゃ...!」
「待てよ岸部。それなら俺も行く」
「上条さんはここの皆を護っていてください。あいつとの戦いに一般人は割り込めない」
「じゃあ、お前は確実に勝てるのか?」
「それは...」
「なら俺も連れて行けって」
「ダメだって言ってるだろ!あいつの危険性をその目で見てないからそんなことが言えるんだ!」

「ちょっといいかな?」

熱くなっていくラ・ピュセルと当麻の口論に、静観していた吉良が口を挟む。

「ラ・ピュセルはクラムベリーとやらを止めたいし、上条くんは単身で向かう彼女が心配だ。君たちの言い分はとてもわかる。
しかしね、わたし達の目的は一つじゃあないんだ」

吉良は二人に目線でT-800へと意識をやるように促す。

「彼はジョン・コナーという少年を探したい」

次いで、左衛門へと目を向ける。

「彼は弦之介と陽炎という仲間を探したい」

流美へと目を向ける。

「彼女は友達である小黒妙子ちゃんを探したい」

そして、最後に己の首輪に指を指す。

「そして共通の目的であるのは、皆が首輪を外したいということだ」

なにが言いたいのかを測りかね、眉を潜めるラ・ピュセル。
そんな彼の態度に、吉良はフゥ、とため息を吐く。

「こういう時は個人の感情だけで動くのではなく、互いの目的を擦り合わせて最適な案を出すのが大切だ。
君たちが抜けたことで私たちがそのクラムベリーや怪物に襲われたらどうする?その逆も然り。クラムベリーを追っていた筈なのに怪物とクラムベリーに挟まれたらどうする?」

96分離 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:31:19 ID:9xB6Sjr20

吉良の言葉に、ラ・ピュセルはハッと目を見開く。
個人の我を押し通すのではなく、周囲の皆と相談して物事を決める。その際に、周囲に耳を貸さず我を通すだけでは周囲を不安に晒してしまう。
それは学校でも幾度となく経験してきたことだ。
魔法少女という特別性をはき違えてしまったのかと、ラ・ピュセルはしょんぼりと肩を落とす。

「...すみません吉良さん」
「いや、思い留まってくれたならいいんだ。こんな異様な状況でも私たちを護ろうとしてくれるその気概はとても嬉しいからね」

優しい声音で宥められたラ・ピュセルは気恥ずかしさにほんのりと頬を染め、「ど、どうも」と小さく零す。
その様子を見た当麻は吉良に軽く会釈し礼をすると、吉良も小さく頷き返す。

「さて。わたし達の目的をスムーズに進行させる為には」
「人手を分けるのはどうじゃ」

真っ先に声を挙げたのは左衛門だった。

「確かに六人で行動しておれば護りは盤石じゃ。しかし、籠城戦ならいざ知らずこれは期限付きの戦。数日の間に情報を集め決着を測るのならば多少の危険は受け入れるべきではないか」

人数分け。確かにこれでは戦力を分けて分散してしまうとはいえ、順調に進めば探索範囲が広がり情報も得やすくなる。
いま、ラ・ピュセルを除けば身内の情報が欲しいのは上条・左衛門・流美・T-800の四人。となれば、優先されるのは情報の収集だろう。

「ふむ。別れて行動か...私は構わないが、皆はどうかな?」
「俺はどちらでも構わない」
「あ...あたしもいいよ」
「...まあ、仕方ないよな」
「...わかりました」

上条とラ・ピュセルはあまり乗り気ではないとはいえ、どのみち、過半数が賛成しているのだ。
ならば、チームを分けるという流れに決まるのも当然の結果だ。

「人数はどう分ける?儂は二人三組でわければ良いと思うが」
「それでは戦力を絞りすぎではないか?半分、三人二組ではどうだろうか」

左衛門の三組と吉良の二組。
異なる意見が出たが、しかし争いはしない。二人は、またも残る四人に意見を求める。

「なんだっていい」
「...あたしは三人二組で」
「俺も佐山と同じだ」
「僕も二人と同じ意見だ。やっぱりある程度の安全性は確保しておくべきだ」

議論は白熱することもなく、あまりにもスムーズに滞りなく進んでいく。
多数決。それは少数の意見は封殺し多数派の意見を通す合理的解決方法である。

「さて。人数の配分も決まったところで、肝心のチーム分けだが...この二組の肝をそれぞれ赤首輪であるラ・ピュセルとT-800に任せようと思う」
「OK」
「了解した」

即答するT-800とラ・ピュセル。
この二人を中枢としたチーム分けを吉良は振り分けていく。

97分離 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:31:42 ID:9xB6Sjr20

「分ける基準としては腕っぷしの強さにするべきだろう。となれば、ただのサラリーマンである私と少女である流美ちゃんは別れた方が良いだろう」
「...じゃあ、あたしはこっちの岸部...?さんに着いていくよ。巴さんを殺したクラムベリーを探すなら手伝いたいし」
「む、そうか。なら私はT-800だな。残るは左衛門と上条くんだが...」
「左衛門さん、俺が岸部に着いていく」
「いや、儂もこちらを希望させてもらう。主の術、幻想殺しと言ったか。ソレはあやつにも影響してしまうのじゃろう。儂の方があやつも気兼ねなく戦えるはずじゃ」
「けど...」
「上条さん。僕は大丈夫だから、あなたは吉良さん達を護ってくれ」
「岸部...わかった、あまり無茶はするなよ」

滞りなくチーム分けが進んでいく様相を眺めながら吉良は思う。

(狙い通りだ...これで私にとって非常に都合が良くなったよ)

目立つことを嫌う自分が、らしくなくまとめ役を買って出た甲斐があった。
吉良にとって上条当麻の神の如き右手とラ・ピュセルの天使のように綺麗で美しい手は目の保養を通り越して性癖の好みに合致しすぎたポルノ雑誌のようなものだった。
一つならまだちょうどいいが二つとなると常に竿を擦られているようなものである。
事実、吉良はその手を見た途端に一度発射し、放送が終わって元気を取り戻したと思った途端にまた出してしまった。
天国的な快楽ではあるがこのままでは身が持たないと思っていた矢先に現れたのがT-800と流美である。
T-800の手は決して汚くはなく、むしろサイボーグだけあって整った部類ではあるが、それはあくまで好感度が抱ける、というだけのこと。
少年が実物大ロボを見て目を輝かせるのと同じで、そこに性的な意思は介在しない。
流美の手は論外だ。傷だらけで、形も良くない。普通どころか醜い部類である。
それがかえって吉良に賢者の如き冷静さを与え、興奮のし過ぎは良くないという自制心を働かせる余裕を生じさせた。
その為、吉良はそれとなくチームを分散する流れになるよう取り計らい、且つ都合のいいチーム分けをすることができた。

(懸念としては左衛門が私の能力を知っていることだが...その為に赤首輪のラ・ピュセルと組ませたんだ)

赤首輪の参加者であるT-800とラ・ピュセル。
このうち、左衛門の毒針が通用するのはあくまでも生身のラ・ピュセルのみである。
もしもラ・ピュセルと組んだのが吉良であれば、左衛門は脱出の権利を渡すわけにはいかんと吉良が能力を隠していたことを明かす危険性がある。
しかし、T-800と組むということは、左衛門の視点から見れば自分では殺せない相手と組んでいるということ。
つまりは手放しても問題はない駒を吉良に渡し、且つ己は使い勝手のいい駒を所持しているというだけだ。
ならば吉良の能力を公表し無暗に敵対する可能性をわざわざしょい込むような真似は控えるはず。

(まあこれでラ・ピュセルの手を失ってしまうリスクは抱えてしまったわけだが、そこは受け入れよう)

ラ・ピュセルの手を拝めなくなるかもしれないのは残念だが、テ〇ノブレイクで死ぬよりはマシである。
当麻の右手を神と評するならばラ・ピュセルの手は天使。
神と天使、どちらを残すかと百人に問えば百人が神だと答えるだろう。

「では三度目の放送を合図にここに戻るとしよう。それで異論はないか?」

左衛門の案に一同は頷き合い、互いに一時の別れと労いの言葉をかけSMバーを後にする。


これ以上誰の犠牲もなく平穏に殺し合いを終わらせたいという幻想を殺せぬ幻想殺し。
与えられた任務を達成する為に戦うサイボーグ。
己の欲望に正直に生きるシリアルキラー。


愛する者を救いたいと願う魔法少女(少年)。
己の里の為に身を削る日陰者。
復讐に怯え己の業から目を背ける哀れな少女。

彼らの行く先がどうなるかは、今は誰もわからない。

98分離 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:32:41 ID:9xB6Sjr20

【E-5/街(下北沢、SMバー平野)/一日目/早朝】

【T-800@ターミネーター2】
[状態]:異常なし
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針:ジョン・コナーを守る
0:一時的に当麻、吉良と行動する。シェンホアと合流した後、第三回放送までにここに戻ってくる
1:T-1000は破壊する。


※参戦時期はサラ・コナーを病棟から救出した後です。



【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品、淫夢くん@真夏の夜の淫夢、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:一時的にT-800、吉良と行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:御坂、白井と合流できれば合流したい。
2:一方通行を斃した奴には警戒する。
3:他者を殺そうとする者を止めてまわる。

※淫夢くんは周囲1919㎝圏内にいるホモ及びレズの匂いをかぎ取るとガッツポーズを掲げます。以下は淫夢くんの反応のおおまかな基準。
ガッツポーズ→淫夢勢、白井黒子、暁美ほむら、ハードゴアアリス、佐山流美のような同性への愛情及び執着が強く異性への興味が薄い者。別名淫夢ファミリー(風評被害込み)。
アイーン→巴マミ、DIO、ロシーヌのような、ガチではないにしろそれっぽい雰囲気のある者たち(風評被害込み)。
クソザコナメクジ→その他ノンケ共(妻子や彼女持ち込み)。
判定はガバガバです。また、参加者はこの判定を知らされていないため、参加者間ではただの参加者探知機という認識になっています。
※吉良がガッツポーズに分類された可能性があります。

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、スッキリ、ラ・ピュセルと上条当麻の手に心酔に近い好意、新しいパンツ(白ブリーフ)。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本行動方針:赤い首輪の奴を殺して即脱出...したいが...ここは天国だ...抜け出すべきなのだろうか...?
0:一時的に当麻、T-800と行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:少女(ラ・ピュセル)の手はこの世のものとは思えないほど美しい。上条当麻(少年)の右手は私が触れることすらおこがましく思えるほど神秘的だ。
2:こんなゲームを企画した奴はキラークイーンで始末したい所だ…
3:野獣の扱いは親父に任せる。できればあまり関わりたくない。
4:左衛門の手も結構キレイじゃないか?
5:最優先ではないが、空条承太郎はできれば始末しておきたい。

[備考]
※参戦時期はアニメ31話「1999年7月15日その1」の出勤途中です。
※自分の首輪が赤くない事を知りました。
※絶頂したことで冷静さを取り戻しました。

99分離 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:33:03 ID:9xB6Sjr20

【ラ・ピュセル(岸部颯太)@魔法少女育成計画】
[状態]全身に竹刀と鞭による殴打痕、虐待おじさん及び男性からの肉体的接触への恐怖、同性愛者への生理的嫌悪感(極大)、水で濡れた痕、精神的疲労(大)、上条への好意
[装備]
[道具]基本支給品、だんびら@ベルセルク
[行動方針]
基本方針:スノーホワイトを探す
0:一時的に流美、左衛門と行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:虐待おじさんこわい。
2:クラムベリーを倒す
3:襲撃者は迎撃する

※虐待おじさんの調教により少し艶かしくなったかもしれません。



【如月左衛門@バジリスク〜甲賀忍法帖〜】
[状態]:特筆点無し
[装備]:甲賀弾正の毒針(30/30)@バジリスク〜甲賀忍法帖〜
[道具]:基本支給品×1、不明支給品×0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:弦之介や陽炎と合流してから赤首輪の参加者を殺して脱出。
0:一時的に流美、ラ・ピュセルと行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:甲賀弦之介、陽炎と会ったら同行する。
2:野獣先輩からは妙な気配を感じるのであまり関わりたくはない。
3:ラ・ピュセルは現状では狙わない。
[備考]
※参戦時期はアニメ第二十話「仁慈流々」で朱絹を討ち取った直後です。
※今は平常時の格好・姿です。
※自分の首輪が赤くない事を知りました。


【佐山流美@ミスミソウ】
[状態]:疲労(中)、野崎春花と祥子への不安と敵意。 マミを刺したことへの罪悪感、クラムベリーへの恐怖。
[装備]:ガンツスーツ@GANTZ(ダメージ60%)、DIOのナイフセット×9@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:不明支給品0〜1、基本支給品×2
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
0:一時的に流美、ラ・ピュセルと行動する。第三回放送までにここに戻ってくる
1:自分の悪評が出回る前に野崎春花と野崎祥子を殺す。
2:ラ・ピュセルにクラムベリーを倒して貰いたいが...出来るのか?
3:赤首輪を殺してさっさと脱出したい。
4:たえちゃんはできれば助けてあげたいが、最優先は自分の命。
5:あの先生の声の仏像キモイ、怖い。
6:また赤首輪かよ...

※参戦時期は橘たちの遺体を発見してから小黒妙子に電話をかけるまでの間。
※本来のガンツスーツは支給者専用となっていますが、このガンツスーツは着用者に合うようにサイズが変わるので誰でも着ることができます。

100 ◆ZbV3TMNKJw:2021/08/06(金) 22:33:28 ID:9xB6Sjr20
投下終了です

101名無しさん:2021/08/07(土) 06:08:15 ID:2wr4XROI0
乙です
吉良が役に立ってて薄気味悪い心地良さを感じて思わず苦笑してしまいました
忌むべき種別の変態でもここまで意思と行動力が伴ってると強みですねえ
ラピュセルも青臭さから来る無謀さがとても彼らしかったです
他の登場人物もみんな目的に全力なのが伝わって実に読み応えがありました

102名無しさん:2021/08/09(月) 23:04:43 ID:Mf/M9oEs0
ちょっと待って、投下があるやん!
停滞していた企画を参加者の交流とチーム分けのシャッフルで活性化を図りに行くとかおお〜ええやん気に入ったわ
でもJCをSMバーに連れ込むあのターミネーターは親方に連絡させてもらうね?

103名無しさん:2022/01/09(日) 00:50:28 ID:NQh5WWK.0
保守

104名無しさん:2022/01/09(日) 10:47:53 ID:WUielR2g0
>>103
ちょっと遅かったんちゃう?

105名無しさん:2022/01/23(日) 00:19:51 ID:d9FVcifE0
悲しいなぁ・・・

106名無しさん:2022/12/10(土) 19:08:26 ID:7HkzRTOs0
(早く続きがm)痛いんだよおおおおおおおお

107名無しさん:2022/12/18(日) 21:15:10 ID:JMp48Q1Y0
(スレが)止まっ───て見えるのは、私だけでしょうか?

108名無しさん:2022/12/25(日) 13:55:16 ID:PcGMyLD60
まぁ〜だ時間かかりそうですかね〜?

109名無しさん:2023/03/05(日) 13:36:41 ID:rQHvKukw0
保守

110名無しさん:2023/07/05(水) 20:36:02 ID:FiClwT6I0
流行らせコラ!

111名無しさん:2023/10/24(火) 20:04:34 ID:/2UJpCQ60
(このロワの進行はもう)ダメみたいですね(諦め)


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