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ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所9

1管理人 ◆h6U6vDPq/A:2011/08/28(日) 11:25:11 ID:tHS5XxCA
ここはストライクウィッチーズ百合スレ避難所本スレです。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所8
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12483/1299248601/

●Janeで避難所を見る場合
・板一覧を右クリックして「新規カテゴリを追加」をクリック(板一覧が無い場合は「表示」→「板ツリー」→「板全体」で表示できる)
・カテゴリ名を入力してOKをクリックする(例:「したらば」)
・作成したカテゴリにカーソルを合わせて右クリックし、「ここに板を追加」をクリック
・板名を入力してOKをクリックする(例:「百合避難所」)
・URLに「http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12483/」を入力してOKをクリックする。

274looking at you 01/03:2014/06/05(木) 23:07:01 ID:6Fewj5Wg
「ねえトゥルーデ」
 午前中の訓練を終え、食堂にて皆で一緒に軽い昼食を済ませた時、横に座っていたエーリカが不意に呟いた。
「ん? なんだハルトマン」
 空になった皿を見、トゥルーデの顔をじっと見、金髪の美しい少女は言った。
「トゥルーデの手料理、最近食べて無いよね」
「なっ!? いきなり何を言うかと思えば」
 たじろぐ“お姉ちゃん”。
「あれ? 有ったっけ?」
 確かめるエーリカ。
「食事当番で振る舞っているだろう」
「蒸かし芋ばっかりじゃーん。やだやだ、もう飽きたよー」
 首をぶんぶんと振るエーリカ。
「じゃ、じゃあシチューを付けて」
「それもお決まりのだよー。どうせ蒸かし芋を砕いて一緒に食べるんでしょ? 最前線の食事でもよくそれ食べてたじゃん」
 戦友の指摘に頷くトゥルーデ。
「まあ、手頃に食べられるからな」
「そうじゃなくてさー」
 つまならなそうにだだをこねるエーリカ。
「じゃあどうしろって言うんだ」
「凝ったものじゃなくていいから、何か作ってよ〜」
「言ってる事がメチャクチャだぞ……うーむ」
 トゥルーデは……助けを求めた訳ではないが……思わず辺りを見回した。ニヤニヤしながら二人を見る者、しらけている者、頬を赤らめてひそひそ話をする者……つまり今のトゥルーデにとって何らかのプラスになりそうな“人材”は無かった。
 トゥルーデは無言で立ち上がると、使い終わった食器を持って立ち上がり、台所に向かった。
「あーもう。トゥルーデの意地悪ー」
 エーリカはテーブルにだらーっと上半身を投げ出すと、つまならそうにぼやいた。
「そりゃお前、堅物にああ言う言い方するから」
 ルッキーニをあやしていたシャーリーが横でニヤニヤ笑いながらエーリカをつつく。
「だってー。たまにはいいじゃん、そう言うのもさ」
「まあな。でもねだるのも良いけど、時間と場所を弁えた方が良いかもな」
 シャーリーは意味ありげに辺りを見て言った。確かに、皆カールスラントのエース二人の事で何か話をしている様だった。
 つまならそうに、エーリカはシャーリーの肩をぽんと叩いて彼女への返答とすると、食卓を離れた。

275looking at you 02/03:2014/06/05(木) 23:07:34 ID:fv6NGg4k
 午後の訓練が終わる事、エーリカは厨房から良い香りがするので、ふらっと引き寄せられる様にやって来た。訓練の指導にトゥルーデは姿を見せなかった。お昼の事、まだ怒っているのかな、と気になりもする。
 果たしてそこには……、大鍋を前に、あれやこれや食材と格闘しているトゥルーデが居た。食事当番の“定番”たる芳佳もリーネも居ない。ただ一人で、黙々と料理を作っていた。
 エーリカの視線に気付いたのか、はっと振り返るトゥルーデ。おたまを手に咄嗟に出た声が上ずる。
「な、何だ? どうした」
「それはこっちの台詞だよ、トゥルーデ。一人で何やってるの? 今日の夕食当番ってミヤフジとリーネじゃ……」
「ちっ違う、違うんだこれは、その」
 トゥルーデの表情を見たエーリカは、ぱっと顔を明るくして言った。
「もしかして、お昼の事覚えててくれたの?」
「そ、そう言う訳では無いが……宮藤とリーネは訓練で忙しいから、私が代わったまでだ。本当だぞ」
「本当に?」
「ああ……その証拠に」
 トゥルーデは、煮込んでいる鍋の蓋を取って、中身を見せた。ことことと煮込まれる様子を見、ぼそっと呟くエーリカ。
「またシチュー?」
「あり合わせの材料で如何に栄養バランスを考えるか。それが私の……」
「じゃあこれは?」
 横に有った皿を見、指差す。一人分だけ、こっそり取って置いたかの様に、茹でたてのソーセージが数本並んでいる。
「それは……、目ざといな。見つかったなら仕方ない。ほら」
「私に? これどうしたの?」
「たまにはカールスラントのブルストも食べたくなるだろうと思って、前に取り寄せたものだ。……特別だからな?」
「シチューには入ってないの?」
「そっちの大鍋は皆で食べるからな。他にも、あり合わせの肉を入れてる」
「なるほどね」
 トゥルーデはフォークと、茹でたてのソーセージをエーリカに渡す。
 エーリカは早速カールスラントの名物を口にした。香ばしく燻された腸詰めは皮はぱりっと、中身はジューシーで、懐かしの故郷を思い出す。
「美味しい。これに付け合わせでザワークラウトがあればね」
「そこまで贅沢は出来ないな。あとはシチューで我慢だ。これでも真剣に作ったんだからな」
「誰の為に?」
「そこまで言わせる気か」
 ちょっと意地悪な事を聞いたエーリカは、愛しの人の反応を見て、くすっと笑った。
「ま、いいや。トゥルーデ、ありがとね」
「私は今、お前にこれ位しかしてやれない」
「十分だってば……じゃあ私からお礼に」
 エーリカはトゥルーデにそっと唇を重ねた。トゥルーデの唇からは(味見していた)シチューの味が、エーリカの唇からはブルストの味がした。

276looking at you 03/03:2014/06/05(木) 23:08:00 ID:fv6NGg4k
「へえ。今夜はバルクホルンのシチューか」
 シャーリーは昼間の事を思い出し、トゥルーデの脇をつんつん肘でつつきながら言った。
「悪いか?」
「いや、悪くないよ。なかなか美味いね」
「そうか」
 もう少し何か言いたげなシャーリーだったが、ルッキーニに袖を引っ張られ、ほいよーと声を掛けつつ背を向ける。
「ふむ。よく材料と栄養を考えて、質素だが……質実剛健な味だな」
 ミーナと食事の席を共にしていた美緒が一口食べ、満足そうに呟いた。
「貴方が言うと何か重そうに思えるわ」
 美緒の言葉を聞き、くすっと笑うミーナ。そして気付く。
「あら、トゥルーデ。このシチュー美味しいけど、何か隠し味でも?」
 言われた当の本人は、まんざらでもなさそうな顔で返事をする。
「よく分かったなミーナ。でもすまない、今日のは秘密だ」
 ふふ、と笑って返すミーナ。
 食卓では、蒸かし芋やパンを付け合わせに、和気藹々と皆が食事をしている。
 例えメニューは少なくても、美味しければ。皆が楽しく食事出来れば……そう考える様になったのは何故か。誰の影響なのか。
 横に居る相棒であり仲間であり“夫婦”の顔を見る。
 美味しそうにシチューを頬張る姿を見て、何となく分かった気がした。
 ふと、目が合った。
「トゥルーデどうしたの?」
「いや。何か変な顔でもしてたか?」
「ううん。別に」
「そうか」
「やっぱり、トゥルーデの作ったシチューは美味しいね」
 一口食べて、言葉を続けるエーリカ。
「そう。これだよ。これだよ、トゥルーデ」
 頷いて笑うエーリカ。トゥルーデも思わずふっと笑みがこぼれる。
 夕食の時間は、そうして和やかに過ぎて行く。

end

277名無しさん:2014/06/05(木) 23:09:06 ID:fv6NGg4k
以上です。
OVAも有るし、戦いはこれからですね!

ではまた〜。

278名無しさん:2014/06/12(木) 12:08:20 ID:sMqQJfco
乙です。
OVA第一弾の舞台はサントロンらしいのでエーゲル期待ですね。

279mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2014/08/15(金) 20:30:17 ID:ReaXWKVQ
こんばんは&お久しぶりです。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

280shocking party 01/03:2014/08/15(金) 20:30:59 ID:ReaXWKVQ
 その“戦闘用衣装”を渡されたトゥルーデは固まった。服を持つ手がわなわなと震える。困惑は怒りへと変わり、無表情なままの中尉に矛先が向けられた。
「これは一体どう言う事だ!? 説明して貰おうか?」
 怒鳴り声に憶する事なく、エーリカと瓜二つの双子の妹、ウスルラ・ハルトマン中尉は黒板にチョークで数式と簡単な図を書きながら答えた。
「試着して頂く理由は二つあります。まず、その衣装が戦闘時の機動に与える影響を調べます」
「空気抵抗軽減と言う意味では、これではかえって悪くないか? なあ、ハイデマリー少佐」
 同じ服を渡されたハイデマリーは、何故かうっとりと見惚れている。
「……ハイデマリー少佐?」
 名前を呼ばれ、はっと我に返るハイデマリー。こほんとひとつ咳をして、トゥルーデに向き直る。
「いえ、ハルトマン中尉の提案ですから。私も今夜、ナイトウィッチとして試験飛行したいと思います」
 答えを聞いたトゥルーデは、ええー、と思わず幻滅が声に出る。もう一度服を見る。可愛いフリルで飾られ、フリッフリの……まるで酒場か劇場のダンサーが着る様な服。しかもご丁寧に、ベルトにまでしっかりとフリルが付いている。
「このベルト……ストライカーユニットを装着する時邪魔になりそうだが」
「ならない様にぎりぎりの部分で採寸してますから問題有りません」
 トゥルーデの詰問口調の疑問は次々とウルスラに向けられる。それにすらすらと答えるウルスラは技術者の顔をしていた。
「ハイデマリー少佐の服は、確かに黒系統の色が使われているから夜間戦闘ではそこそこ良いだろう。腹部の白い部分が気にはなるが。しかし私のは何故赤なんだ? 迷彩にも何もなってないぞ。この色の意味は? 敵を引き付けるとかそう言う事を意図しているのか?」
「大尉の服が赤いのは、ファンサービスです」
 ぼそりと呟くウルスラ。
「は? ファン……サービス? 一体誰に?」
 固まるトゥルーデ。
「わったしだよー」
 ウルスラの肩をもみもみしながら現れたのは、トゥルーデの相棒、エーリカ。
「何故だ!?」
 トゥルーデは頭を抱えてしゃがみ込んだ。全く意味が分からない、と言った表情。
「まあ、半分は本当って事で良いじゃない」
「良くない! 何でお前を喜ばせる為に……」
「近々ミヤフジが留学で近くに来るらしいから、その服で出迎えたら驚いて喜ぶんじゃないかって、ウーシュと話してたんだよ。ね?」
 ウルスラの顔を見てにやけるエーリカ。
 トゥルーデはすっと立ち上がると、真顔で我先にと更衣室に向かった。

「どうだハルトマン? 似合ってるか?」
 両手を腰に当て、誇らしげに服装を見せるトゥルーデ。
 本当に着るとは思わなかった、とは口が裂けても言えないエーリカ。
「流石は姉さま。バルクホルン大尉の事をよく分かってらっしゃる」
 感心するウルスラ。
「まあねー、何だかんだで付き合い長いし」
 少々呆れが入った顔でトゥルーデを見るエーリカ。ウルスラは早速メジャーを持ち出すと、再度、服の採寸を行った。
「腕を伸ばして下さい、そう、そんな感じで……事前の測定通りですね。問題有りません」
「流石はハルトマン中尉だな。で、テストは? すぐか?」
「まずはストライカーユニットを装着出来るか、試験的に装着して頂きます」
「装着だけならおやすい御用だ。さあ行くぞ!」
「……ノリノリだよこのお姉ちゃんは」
 完全に呆れるエーリカ。
「何か言ったか?」
「別にー。何でもなーい」

281shocking party 02/03:2014/08/15(金) 20:31:28 ID:ReaXWKVQ
『……ああ、飛行も問題無い。これから何通りかの戦闘機動を行ってみるが、よく観察していてくれ』
「了解です、大尉。お気を付けて」
 ストライカーユニットの調子が良い、とそのまま格納庫から滑走路に出て、飛行するトゥルーデ。ウルスラは地上から観測機材を持ち出し、その様子を記録する。時折メモを取りながら、双眼鏡を片手に上空のトゥルーデを追う。
 フリルの服は、ベルトもストライカーユニットに干渉しないぎりぎりの部分で作られ、装着や動作には問題無かった。
 一度空に昇れば見事な軌跡を描き、教科書通りの完璧な機動をこなすトゥルーデ。フリルの服が風に靡き、まるでワルツを踊る娘のよう。
『悪くないな』
「良かったです」
 短くも率直な感想を聞き、まんざらでもない様子のウルスラ。
「やっぱり私の理論は間違ってなかった。あとは……」
「良くない」
 むすっとした声、そしてBf109の特徴的なエンジン音が迫る。ストライカーユニットを装着し、タキシングで近付いて来たエーリカだった。
「え? 姉さま?」
 意味が分からない、と首を傾げるウルスラ。その仕草が癇に障ったエーリカは、先程の言葉を繰り返した。そしてウルスラの脇を強引に抜けると、そのまま空へと昇った。

「トゥルーデ!」
 それまでるんるん気分で飛んでいたお姉ちゃんは、苛立ちが籠もった呼び方をされ、びっくりして振り返る。
「んんっ!? ハルトマン、どうした?」
 エーリカはトゥルーデの周囲をぐるりとロールして服のひらひら加減を確かめると、不意に呟いた。
「私と模擬戦しよう」
「何をいきなり」
「まだ魔法力充分残ってるよね? 今夜の食事当番を賭けて、勝負!」
「おいおい、どうしたって言うんだ? 待てハルトマン。今は……」
 制止するトゥルーデをよそに、エーリカはドッグファイトの構え。模擬戦の武器は無い。しかし、背後を数秒取ったら勝ちと言うシンプルなルールで挑んで来るのは明白。
(何だか分からんが、とりあえず実力で黙らせるしかないか)
 トゥルーデは頭を二度軽く振ると、鋭くターンしてエーリカを追った。

「これは……素晴らしいデータが取れそうです」
 思わぬ展開に気分が高揚し、記録するメモが増えて行くウルスラ。機材を見てデータをチェック、双眼鏡で二人のマニューバを観察、大忙しだ。
「困ったものね、二人共」
 そこに現れたのはミーナだった。
「あ、ヴィルケ中佐」
「ハルトマン中尉。あの二人を止められない?」
「何故ですか? 飛行テストに模擬戦、これは絶好の機会……」
「既にそう言う事でなくなっているから」
「えっ?」

282shocking party 03/03:2014/08/15(金) 20:31:56 ID:ReaXWKVQ
「どうしたミーナ……何、模擬戦中止? 理由は? ……分かった。了解だ」
 無線越しに聞こえるミーナの指示に従い、速度を落とす。すぐさまエーリカが真後ろに貼り付くので、ついつい反射的に身を逸らしてしまう。
「待てハルトマン! ミーナからの連絡だ。模擬戦は中止だ。基地に帰投するぞ」
「やだ」
「駄駄をこねるな。ミーナも困るし」
「やだ。私、やだ!」
「ちょ、ちょっとハルトマ……」
 構わず向かってくるエーリカ。焦るトゥルーデ。速度が落ちている。このままでは……

 危うく交錯すると言う場面で……

 トゥルーデはエーリカをがっしと捕まえた。
「待て。らしくないぞハルトマン。勝負はお預けだ」
「だって……嫌なものは嫌だから」
 トゥルーデにしっかり抱きしめられる格好で、しゅんとするエーリカ。トゥルーデは落ち着いた優しい声で、エーリカに問い掛けた。
「どうして嫌なのか、言ってくれないか?」
「トゥルーデのバカ!」
「な、何故怒る?」
「だって……」
 トゥルーデの服の裾をつまらなそうに弄るエーリカ。
 それを見て、はたと気付くトゥルーデ。
 改めてエーリカに向き直ると、微笑んで、話し掛ける。
「悪かった……。はしゃぎ過ぎた。お前が居るのに。私とした事が」
 疑いの眼差しを向けるエーリカ。
「本当にそう思ってる?」
「ああ、本当だ」
 優しく笑い、ぎゅっと抱きしめる。
「本当に本当?」
「本当に本当だ」
 トゥルーデはその印にと、そっとエーリカの頬にキスをする。
「さあ、帰ろう、エーリカ。ミーナが、そして皆が待ってる。お前の大切な妹も」
「……うん」
「今夜は私が食事を作ろう。お前の好きなもの、作るからな」
「本当?」
「ああ」
 二人は手を取り合い、ゆっくりと滑走路を目指し降下した。

 日も暮れ、夕食の時間となり、食卓を囲むウィッチ達。
「……それで、どうしてバルクホルン大尉が今夜の食事当番なんです?」
 いまいち状況が飲み込めないハイデマリーは、出されたシチューに蒸かし芋、よく茹でられたヴルスト、添えられたザワークラウトの数々を見て、首を傾げた。
「あー、その話は後で。とりあえず食べてくれ」
 いつもの服に着替え直し、食事当番のエプロン姿のトゥルーデに促される。
「はあ……」
 つい生返事になってしまうハイデマリー。
 その横ではエーリカが満足げにヴルストを頬張っている。ミーナにどう言う事かと視線を送るも、妙な苦笑いで返される。
 エーリカの横では、何だか少し残念そうなウルスラが黙々と食事をしている。
「元気無いわね?」
 ミーナに聞かれると、ウルスラは計測途中で“強制終了”した模擬戦の事を少しだけ話して、はあ、と溜め息を付いた。
「それはまたの機会にすれば良いわ。ねえ、二人共?」
 ミーナに問われたトゥルーデとエーリカは、揃って頷いた。
 ああ、そう言う事なんだ、とトゥルーデとエーリカを交互に二度見した後、ハイデマリーはシチューに手を付けた。
 “温かい”食事。
 それも二人の関係を知る答え。

end

283名無しさん:2014/08/15(金) 20:33:02 ID:ReaXWKVQ
以上です。
公式サイトのPV第2弾を見て思い付いたネタです。
OVA2作目も発表されて盛り上がってきましたね!

ではまた〜。

284名無しさん:2014/08/28(木) 23:31:41 ID:UlBl01Ig
乙です。
お姉ちゃんすっかりああいう服を着させられるキャラに・・・

285mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2015/03/12(木) 03:37:45 ID:NKiZysoc
こんばんは&お久しぶりです。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

286alive 01/02:2015/03/12(木) 03:38:23 ID:NKiZysoc
 トゥルーデはベッドの上に居た。包帯姿が痛々しい。

 ちょっとの無理のつもりだった。それが油断を招いたのか、戦の最中MG42が暴発し、胸と腕を痛めてしまった。不時着した際にストライカーユニットが破損し、足も捻挫する始末。熟練ウィッチのする事ではない、と自省する。
 幸い重傷ではなく命に別状はなかったもののミーナから絶対安静を言い渡される。まるで拘束されているかの様な扱い。
「貴女は普段から頑張り過ぎなんだから、少しはゆっくり休まないと……って事じゃない?」
 ミーナは苦笑混じり、冗談半分で戦友を気遣ったが、トゥルーデはそうかもな、と呟いたきり、ふい、と窓の外を眺めた。

 その日もトゥルーデは病室の窓から、空を眺めていた。
 飛行訓練をしているウィッチ達の姿が目に入る。
 その中にはエーリカも、ハイデマリーも。たまにデスクワークを中断してミーナも空に上がる。綺麗なラインを引いて、空を舞う彼女達。
「実に見事だ」
 ぽつりと呟くトゥルーデ。
 今まで若い、ヒヨッコのウィッチ達を沢山見てきたせいか、彼女達が人一倍の努力をして一人前の「魔女」として羽ばたき、活躍する姿を見るのはとても心強い。今一緒に居る仲間達も、背中を預けられる程の全幅の信頼を置いている。
 だけど。
 トゥルーデは同時に、出来れば見たくない、多くのものを見てきた。いや、見過ぎたと言った方が良いかも知れない。
 負傷して野戦病院に担ぎ込まれる未熟な魔女。“上がり”を迎えて“無力”になった先輩達。いずれもウィッチとして傷付き力尽き、二度と空へ上がれなくなった、不幸な娘達。
 焼き払われる故郷。炎と障気に呑み込まれる人々、街や自然。
 守りきれなかった、最愛の妹。
 その時自分は何が出来た? 何をすべきだった? ……いや、何も出来なかった。幾ら撃墜数を稼いだところで、幾ら独りで奮闘したところで、事態が好転するとは限らない。
 今だってそうだ。結局気持ちだけが空回りして、病室のベッドを無駄に温め続けている。ヒナが孵る訳でもないのに、
 もっと窓辺に近付きたい。ベッドから出て、もう一度空を……体を起こす。胸に、腕に、激痛が走る。顔をしかめる。
 くそっ。私は結局あの時から……、いや、今も何も変わってない。何一つ。
 トゥルーデは口にはしないが内心叫ぶかの勢いで毒付いた。
「その顔は、またイケナイ事考えてるんでしょ」
 耳元で聞こえた声に、はっとして振り返る。エーリカだった。
「な、何だハルトマン? 訓練はどうした?」
「午前の訓練はとっくに終わったよ。ちょっと様子見に来た」
「冷やかしか」
「トゥルーデってば。その顔見ればすぐ分かるよ。また暗い事考えてたでしょ?」
 図星。
 言葉を失い、そんな事は無い、と強がるも、エーリカは微笑むと、トゥルーデの手を握る。
「トゥルーデって、分かり易いんだから。何年一緒に居ると思ってるのさ」
 その一言で、毒気を抜かれた様に、へなへなと力が抜けるトゥルーデ。ベッドに沈み込む程に身を任せ、そうさ、と言葉を続けた。
「寝たきりになるとな。他にする事が無くなって……色々とな。考えてしまうんだ」
「考え過ぎ。それならすぐに治して、早く空に……」
「出来ればとっくにそうしている!」
 思わず怒鳴る。そして、一瞬悲しそうな顔をしたエーリカを見て、慌てて言葉を選ぶ。
「す、すまない。そう言う、つもりじゃないんだ。お前が気遣ってくれるのは有り難いんだが……私も、その、ええと」
「焦っちゃダメだよ」
 エーリカは笑顔を作るとトゥルーデのおでこに軽くキスをして、そのまま部屋を後にした。
 トゥルーデは何故か、焦がれる思いに駆られた。
 行かないで。もう少し一緒に居て欲しい……せめてあと数分でも良いから。
 しかし、無情に閉じられた病室の扉を見て、暗澹たる気分になった。
 彼女に当たり散らすのは、正直褒められた行為ではなかったし本意でなかった。しかし、エーリカの言う通り焦っている証拠でもあった。
 なら、せめて。
 悲鳴を上げる体に鞭打ち、強引に身を起こす。行ってしまったなら、せめて窓辺から、姿を見たい。
 しかし、彼女の体はまだ歩ける状態にはなかった。起き上がったは良いが、その次が全く踏み出せない。姿勢を崩しベッドから転げ落ちる格好になり、床に頭と顔をぶつける。余計な傷を作ってしまった。
 苦痛に顔を歪め、床を這いずりながら、それでもトゥルーデは力を振り絞り、窓辺を目指す。
 せめて、少しでも見たい。空の青さを。外の光を。彼女の姿を。

287alive 02/02:2015/03/12(木) 03:38:50 ID:NKiZysoc
 部屋の扉が開いた。扉を開いた主は何も言わずトゥルーデの元に駆け寄る。
「大丈夫!? どうしてこんな事に?」
 エーリカだった。
「いや……お前が空を飛ぶ姿を見たいと思って」
「だからってベッドから落ちちゃダメじゃん」
 エーリカは魔力を発現させると、トゥルーデをそっと抱きかかえ、ベッドに戻した。
「すまない」
「もう、無茶して。後で看護婦さんに言って、ベッドの位置を窓辺に移して貰うから。それで良いでしょ?」
「あ、ああ。そうしてくれ」
 無様な姿を見られてしまった。エーリカの顔を直視出来ない心境。
 エーリカはトゥルーデの頬に出来たかすり傷を、消毒液を含ませたガーゼでそっと撫でる。
「う……しみる」
「全く、怪我人なのに怪我増やしてどうするのさ」
「それは……」
 言葉が続かない。とりあえず、有り難う、とだけ呟くのが精一杯。
「もしかして、トゥルーデ」
「?」
「さっき私が行っちゃったから、後追い掛けようとしたとか?」
「そ、そんな……事……」
 エーリカはくすっと笑った。そうして、トゥルーデの頬をそっと撫でた。
「トゥルーデ、本当、分かり易いんだから。何処へも行かないよ」
「……」
「さっき外へ出たのは、ちょっと取りに行くものがあったから」
「取りに? 何を?」
「お昼ご飯。トゥルーデと一緒に、お昼食べようと思って」
「私の事など、気にする必要は無い」
「私は気にするよ。それに、ちゃんと痛み止めの薬飲んでる? 飲まないと痛み引かないよ?」
「それは……」
「ほら、一緒に食べよう?」
 エーリカは廊下から、用意してきた小さなワゴンを引っ張り込んだ。
 そこには、バスケットにパン、食器にブルスト、スープ皿に簡素なシチューを盛り付けてあった。
 それを見て、ぐう、と腹の虫が鳴るトゥルーデ。怪我人だが病人ではないので、食欲は一応有る。
「トゥルーデ、体は正直なんだから。にしし」
「その笑い方止めろ。何かいやらしいぞ」
「トゥルーデこそ、私をどう思ってるのさ」
 ベッドの脇にテーブルを寄せると、小さく簡素な食卓を作り、さあどうぞ、と勧める。怪訝な顔をするトゥルーデ。
「これ、お前の料理か?」
「私は禁止されてるし。今日はミーナが食事当番」
 ちょっとばかりむっとするエーリカを見て、少々の罪悪感が胸を過ぎる。
「そ、そうだったな。そうか、ミーナか。後で礼を言っておかないと。勿論、持って来たお前にも、……有り難う」
 病室に香る温かい食事を見て、トゥルーデは少しほっとした気分になった。食事が出来るから、それは勿論の事、大切なひとと一緒に居る時間が増えるから。
 エーリカはそんなトゥルーデを見て、笑顔を見せた。向けられた微笑みを見、変な所で堅物な大尉は彼女の名を呼んだ。
「どうしたエーリカ」
「さっきも言ったよね。トゥルーデの考えてる事は何でもお見通しだよって」
「なっ……!」
「食べたら添い寝してあげようか? なんてね」
 笑うエーリカ。嬉し恥ずかしさ、照れを隠す為か、ついつい口答えするトゥルーデ。
「添い寝って、お前、訓練とかしたくないからじゃないのか?」
「半分は当たってるかもね。でももう半分は……」
 そっと手を重ねる。あえて抱きついてこないのは、トゥルーデの体を気遣っての事か。
「分かるでしょ?」
 耳元で囁かれ、思わず溜め息が出る。そして笑みがこぼれる。
「そうだな……そうかもな」
「だよね。私達、仲間だし、家族だし、戦友だし、夫婦ですから」
 さらっと言ってのける愛しの人を前に、トゥルーデはもう降参だとばかりに苦笑するしかなかった。

end

288名無しさん:2015/03/12(木) 03:39:07 ID:NKiZysoc
以上です。
時期的に、OVAの頃に起きたifなお話だと思って頂ければ。

ではまた〜。

289mxTTnzhm#e3/9j ◆xYuZ0hfvr.:2015/04/09(木) 02:32:33 ID:Ki/fkaTA
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。
今回は一部R-18G描写が有りますので苦手な方はご注意を。

ではどうぞ。

290mxTTnzhm ◆JH7EiLzP12:2015/04/09(木) 02:35:41 ID:Ki/fkaTA
トリップがおかしくなったので新しく付け直し。
これでどうでしょうか。

291名無しさん:2015/04/09(木) 02:36:05 ID:Ki/fkaTA
では改めて。

292alive II 01/02:2015/04/09(木) 02:37:13 ID:Ki/fkaTA
 そこは戦場。空も地も、ネウロイに埋め尽くされたこの世の地獄。
 トゥルーデは部下に指示を出し戦闘を継続しつつ、後退し防衛ラインを下げるよう司令部に無線で連絡する。帰って来た答えは「否」その場で持ちこたえろの一点張り。即ちそれは物量で押してくる敵に磨り潰され呑み込まれる、いわば全滅を意味していた。
「気が狂ってるのか司令部は!?」
 無線で毒づくと、トゥルーデは部下を集める。動ける者に負傷者の救助、搬送とこの戦場からの撤退を命じた。それは司令部に対し命令違反になるのではと部下が問うと「無線の故障でよく聞こえなかった」とだけ答えた。そうしてすぐに撤退開始を命じた。
「背中は守ってやる。とにかく飛べ! 行け!」
 負傷した部下から託された銃をどっさり背負う。これなら当分銃と弾薬に困る事はなさそうだ。もしくは自身の魔力が尽きる方が早いか、どちらかだろう。そうして、大勢の負傷者を抱えた、のろのろとした撤退が始まった。
 前を行く部下から悲鳴が聞こえた。撤退ルートの先に、ネウロイの群が現れた。挟撃に遭った様だ。このままだと全滅は不可避。トゥルーデは一気に前進すると、立ち塞がるネウロイをMG42で粉微塵にしていく。
 爆発音が聞こえ振り向く。後方でシールドを破られたウィッチ二人が、被弾して墜落するのが見える。ストライカーユニットは破損し完全に機能を停止しているが、まだ高度は有る。
「焦るな! 落ち着いてパラシュートを開け!」
 無線で必至に呼びかけながら、墜落する部下達を追う。手が届けば……。しかし間に合わなかった。影はみるみる小さくなり……燃えさかる町の狭間に消えた。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
 トゥルーデは自分で毒突くのも分からないまま感情を露わにする。そのままホバリングし、墜落した部下の容態を確かめた。二人共即死だった。地面に激突したダメージで、体のありとあらゆる骨が折れていた。一人は顔面から落ちた衝撃か、顔はぺったりと潰れて、穴と言う穴から血が吹き出ていた。もう一人の体を動かすと、肩が崩れ、固まったままの指先と腕がぼとっと落ちた。
 そっと集まった部下達は動揺を隠せない。トゥルーデはそれでも部下の骸を背負い、千切れた腕をポケットに押し込むと、撤退の続行を命じた。部下だった肉塊……二人分の体から流れる血がトゥルーデの首筋を、耳の裏を伝う。体を掴んだ手のひらにも、どす黒い血がこびり付いている。服に黒っぽい染みが広がる。しかしそんな事に構っていられない。まだまだ防衛ラインまでは距離が有る。到達するまで、これ以上落伍者を出してはいけない。だが、よく見ると集まった部下は当初の半分にも満たなかった。迷子になったか、ネウロイの波に呑まれたか……。
「とにかく生き残れ! 犬死には許さん! 行くぞ!」
 雪崩の如く押し寄せる黒い渦と化したネウロイに向かい銃を連射し牽制すると、残った部下に飛び立つ様命じた。
 でも、部下は皆、消えていた。いつの間に、一体どこへ行ったのか。トゥルーデが担いでいた部下も、消えている。ぬるっとした血の痕だけがこびり付いている。
 独りぼっちの、戦場。
「何処へ行った!? 全員、応答しろ! 現在位置を伝えろ! 生存者は居ないのか!? おい! 誰か!」
 無線からは、ざーと無機質なノイズだけが聞こえる。空が紅蓮の炎に染まり、また何処かで爆発が起きた。飛んでくる火の粉が頬を焦がす。体から吹き出る汗は、部下を全員失った冷や汗か、それとも燃え盛る炎の熱さ故か。
「畜生」
 トゥルーデは飛び立とうとした。気付けば、周囲をぐるりネウロイに囲まれている。異形の者達、妙な形をした「何者か」つまりは彼女の敵。トゥルーデは、独り吠え、両手にMG42を構え、銃撃を続けた。防衛ラインまで、絶対に帰る。たった一人になったとしても。
 しかし。
 何か、大切な事を忘れてないか?
 ふと、思いが胸を過ぎる。
 その僅かな隙を突いて、至近距離から禍々しい光線が放たれる。回避出来ない。シールドはもう限界。
 砕かれ、灼かれる。自分の血飛沫の熱さを感じる。それはまるで……

293alive II 02/02:2015/04/09(木) 02:37:45 ID:Ki/fkaTA
「起きた? トゥルーデ」
 天使の声に導かれる様に、かっと目を開ける。飛び起きる。
 血の痕が、無い。あれから一体どうなった? 部下は? 武器は? 敵は? 焦るトゥルーデを前に、金髪の同僚は彼女の頭を撫でた。
「怖い夢、見たんでしょう? また昔の夢?」
 夢? 一体何の事だ? ここは何処だ? トゥルーデは周りを見る。見覚えの有る、部屋。窓の外を見る。そう、ここは……つい最近赴任した、サン・トロンの基地。地平の彼方から微かに覗く朝日が眩しい。視界の隅にちらりと見えた、空を飛ぶウィッチはミーナかハイデマリーか。
「わ、私は」
 混乱が隠せないトゥルーデは、わなわなと両手を見る。綺麗な手も、べっとりこびり付いていた血の痕がまだあるみたいに思えて、声を震わせる。
「助けられなかったんだ。部下が、皆居なくなって」
 黙って聞いている同僚は、続きを促した。
「墜落死した奴等も居た。体の骨が全部砕けて、ボロ布みたいになって……。あいつの血が、血が、私の手と、首に。腕は? 腕の欠片は何処だ?」
「相当怖い夢見たんだね」
 呆れ半分、慰め半分で、同僚は言葉を続けた。
「で、そこに私は居た?」
 はっとして、トゥルーデは声の主を見る。
 エーリカ・ハルトマン。大切な同僚。撤退戦での、生き残りの一人。
「お前は……、居なかった」
 目の焦点がまだ定まらない。しかし、彼女の姿かたち、表情は判った。
「そう。夢だよ。夢じゃなかったら、私が横に居るもの」
 そう言うと、エーリカはそっとトゥルーデを抱きしめた。彼女の体の温もりが、トゥルーデの凍えていた心を溶かす。
 大きく深呼吸すると、トゥルーデはエーリカを抱き返した。全身で、彼女の感触、匂い、存在そのものが絶対的に確かなものである事を改めて確認する。もうひとつ大きく息を付くと、ぎゅっと強く抱きしめた。

「生々しい夢だった。本当に、あれは夢だったんだろうか」
 トゥルーデはもう一度横になり、脳に刻まれたおぼろげな記憶を辿り、エーリカに聞かせた。
 一緒に添い寝するかたちのエーリカは、まだあやふやな反応を見せる相棒を気遣った。
「たまにぞっとする夢を見る事はあるよ、トゥルーデ。でも、夢は夢だから」
「あ、ああ。でも」
 まだ事態を飲み込めないトゥルーデに、エーリカは頬を撫で、笑顔で言った。
「疲れてたんじゃないの? それか疲れが一気に出たか」
「疲れ? そういうものか」
「じゃなきゃ、そんな夢見ないでしょ。すっごいうなされてたし」
「そ、そうか。色々と、すまなかった」
 ベッドに横になり、天井を見る。まるでついさっきまで戦場に居たかの記憶、あれは夢だったとは信じ難い。けれど、エーリカが横に居るなら、彼女がそう言うなら、確かにそうなのか、とも感じる。
「ねえ、トゥルーデ」
 エーリカは名を呼ぶと、指を絡ませてきた。指に当たる感触に、トゥルーデは覚えがあった。二人の愛の証、絆の印。お揃いの指輪。つまりは、今ここに居る二人は真実(ほんとう)の二人。
「そうだ……。そうだった」
 トゥルーデは一人頷く。記憶の霧が晴れていく感覚。そうして、ふうと息をつくと、愛しの人の名を呼ぶ。
「ありがとう、エーリカ」
「どうしたしまして」
「でも、本当に、夢じゃない位にリアルだったんだ。感触が、今も……」
「それねー」
 エーリカは悪戯っぽく笑った。
「トゥルーデうなされてるから声掛けたけど起きないし。じゃあ、って、首とか色んな所にキスしてた」
 言われたトゥルーデは呆気に取られてエーリカを見た。
「はあ? お前は私に何てことを」
 トゥルーデは、夢の出来事をおさらいした。首筋、手のひら、耳の裏、頬……そう言う事か、なんてこった、と一人呟く。
 どうしたの? とにやけるエーリカに、トゥルーデは言った。
「お前は天使なんだか悪魔なんだか分からない」
「何それ酷い。心配してたんだから」
「本当に?」
「勿論」
 ふふ、と微笑む天使を前に、力が抜ける。
「まあ、良いか……。何だかほっとしたら、また少し眠くなってきた」
 ふわわ、とあくびをするトゥルーデ。エーリカは少し驚いた様子で彼女を見た。
「いつも早起きのトゥルーデにしては珍しいね」
「まだ起床時間じゃないだろう」
「そうだね。それにトゥルーデ具合悪そうだもんね。大丈夫、私も一緒だから」
「今度は、変な事、するなよ……」
 うとうとと、トゥルーデはエーリカに向き合ったまま、瞼を閉じた。
 お互いに絡ませ合った指は解けそうもないが、解くつもりもない。
「今度は、一緒に同じ夢を見られれば良いんだけどね」
 エーリカはそう呟くと、愛しの相棒が見せる安らかな寝顔を見つめ、ふっと笑った。

end

294名無しさん:2015/04/09(木) 02:38:05 ID:Ki/fkaTA
以上です。
時期的に、OVAの頃に起きたifなお話だと思って頂ければ。

ではまた〜。

295mxTTnzhm ◆.7r9yleqd.:2015/04/09(木) 16:12:17 ID:Ki/fkaTA
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。
前作「Alive II」の続きです。

ではどうぞ。

296alive III:2015/04/09(木) 16:12:54 ID:Ki/fkaTA
 結局二人して寝過ごした後、遅い朝食を取るカールスラントのエース二人。温かいコーヒーに、ハムと野菜を挟んだ簡単なサンドイッチを食べる。ミーナとハイデマリーは、それぞれ既に任務に就いている様だった。この日は特に出撃も無く、気怠いとも言うべき、珍しく平和な雰囲気が基地内に漂っている。
 食事の最中、思い出したかの様にエーリカが呟いた。
「そう言えばさ」
「ん? どうした?」
「夢は夢占いで使われる位に重要、って話もあるよね」
 コーヒーを飲んでいたトゥルーデの手が、ぴくりと止まる。じろり、とエーリカを見据える。
「何が言いたい」
「いやーそれってさ、つまりはトゥルーデにとって何かの暗示じゃないかなって」
 そう言うと、エーリカはサンドイッチを一切れ、もくっと口にし、もぐもぐと噛み砕く。
「暗示って、何の?」
「私も分からない」
 訝しげに聞くトゥルーデに、素っ気なく答えるエーリカ。
「言っておいてそれか」
「これが例えばエイラなら占いに詳しいから何か知ってるかなーとか思ったんだけどね」
 数ヶ月前まで501JFWに居た仲間を思い出し、懐かしそうにエーリカが言った。スオムスのエースを思い出したトゥルーデは疑惑の眼差しでエーリカを見て言った。
「あいつはそう言うとこ、結構適当な感じがするが」
「まあねえ」
「そもそも。お前は、最初は夢だから心配するなと言っておいて、今になって何かの暗示とか言い出すとか、一体どう言うつもりだ」
 寝直してやっと落ち着いたのに、とぶつくさ言いつつ、もう一切れ、サンドイッチを口にする。さっぱりしたパンにみずみずしい野菜、しっかりした味のハムがなかなか食欲をそそる。
「夢で苦しんでるトゥルーデ見たらさ、何か良い解決法とか無いかなって」
 エーリカの弁明を聞いたトゥルーデは、じと目で言った。
「本心は?」
「色々調べたら面白いかなーってね」
 さらっと言ってのけたエーリカを見、トゥルーデは思わず声を上げた。
「お前! やっぱり私で遊んでるじゃないか」
「そんな事無いよ。トゥルーデの事、色々知りたいなって」
「今更、私の何を知ろうと言うのか……」
 そう呟きかけて、サンドイッチを持つ手が止まる。
「あれぇ? トゥルーデ、顔赤いよ?」
「何でも無い」
「自分で言ってて恥ずかしくなったとか」
「う、うるさい!」
 ぱくっとサンドイッチを食べたエーリカは、目の前で恥じらう愛しの人を見て、ふふふと笑った。
「大丈夫だって」
「何が」
「今夜一緒に寝る理由、出来たよね」
 意味有りげににやけるエーリカ。
「全く、どこまでも享楽的だな」
「人生は楽しまないとね」
「お前だけ楽しんでも……」
「何言ってるの、トゥルーデも一緒に、だよ?」
 当り前の様にさらっと言われ、返す言葉も無いトゥルーデ。
 呆れた顔を前に、エーリカは涼しい顔。
 続く食事。
 暫くして、金髪の天使は、にしし、と笑った。
「また何か悪い事考えてる顔してるぞ」
「酷いなあ。今夜の事考えてただけだって」
「何だかな」
「トゥルーデも、まんざらでもない顔してるし」
「なっ!? そ、そんな事は……」
「お互い様。今更、だよね。私達」
 けどね、と言葉を続けるエーリカ。
「だからこそ、楽しいし、嬉しいんだけどね」
 そう言ってから、とびきりの笑顔を見せられては、トゥルーデも、ただ苦笑いするしか無かった。

end

297名無しさん:2015/04/09(木) 16:14:22 ID:rQqXnZas
以上です。
時期的に、OVA〜劇場版の頃に起きたifなお話だと思って頂ければ。

私信ですが、再度トリップ変更しました。よしなに。

ではまた〜。

298名無しさん:2015/04/19(日) 22:39:32 ID:Qxnqp33s
乙です。

299mxTTnzhm ◆.7r9yleqd.:2015/08/14(金) 23:56:51 ID:tfwBIjAc
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

300meteor shower 01/02:2015/08/14(金) 23:57:26 ID:tfwBIjAc
 ハイデマリーが苦戦している。その報を受けたトゥルーデとエーリカは急ぎ出撃の準備を行い、暗闇の支配する空へと飛び立った。計器飛行でハイデマリーの交戦ポイントへと急ぐ。
「カールスラント一のナイトウィッチが苦戦する程の相手だ。我々も気を付けないとな」
「そうだね。で、敵のサイズに形状は?」
「……そう言えば、ハイデマリー大尉からの連絡では、そこまでは聞いていない様だが」
 二人はMG42の動作確認を改めて行い、ストライカーユニットのエンジンに魔力を注ぎ込み、力強く加速する。
 エーリカが、何かに気付いた様で、さっきからちらちらと何処かを見ている。
「どうしたハルトマン。何か有ったか」
「うん? 後で話すよ」
「戦う前から気を散らすな。油断大敵だぞ」
「はいはい。そう言えばトゥルーデには……」
「……ん? どうかしたか?」
「何でもない。さっさと行こう」

 接近しているうち、ハイデマリーの交戦ポイントはすぐに判別出来た。時折断続的に放たれる銃弾と曳航弾、漆黒のネウロイから放たれる禍々しいビームの束が、闇夜に時折見える。
「あそこだ。高度を上げて、一気に突っ込んでカタを付ける」
 二丁の銃を構え、戦闘の構えを取るトゥルーデ。二人揃って上昇する。
「了解。おーい、ハイデマリー大尉、助けに来たよー」
 無線で呼び掛けるエーリカ。
『二人共、気を付けて。このネウロイは闇に紛れて、なかなか手強い』
 既に長時間対峙しているハイデマリーは呼吸がやや荒い。掩護しないと危険だと無線越しに分かる。
「大丈夫かハイデマリー大尉? しかしハイデマリー大尉がここまで苦戦するとは相当だな」
 呼び掛けつつ、周囲を見回すトゥルーデ。
「ハイデマリー大尉には姿が見えないの?」
 エーリカは思い出したかの様に問い掛けた。ハイデマリーの固有魔法は夜間視能力。月明かりの無い夜でも、魔導針と合わせてネウロイを容易に捕捉する事が可能な筈であった。
『まるで敵の周辺に靄が掛かったみたいです。恐らく自身から何かの妨害物質的な何かが出ているみたいで、私の固有魔法でも……っ!』
 無線にノイズが走る。ハイデマリーのシールドが一瞬光る。相当の衝撃である事が分かる。
「いかん。ハイデマリー大尉を一刻も早く……」
「あ」
「どうした?」
 エーリカの呟きに、思わず空を見上げるトゥルーデ。
 一瞬、ひゅんと何かが光った。まるで夜空を一瞬だけナイフで裂いた様に輝きを見せ、ぱあっと明るく輝いてから、何事も無かったかの様に静けさが戻る。
「何だ、今のは」
「流星群、かなあ」
「今の時期に流星群など有ったか? 予定変更、まずはハイデマリー大尉と合流だ」
「了解」
 二人は牽制の射撃を行いながらハイデマリーの傍に寄り添った。
「大丈夫かハイデマリー大尉、怪我は」
「何とか。でも残弾僅少」
「三人居れば何とかなるよ」
「数が揃えばと言う問題でも……ん?」
 トゥルーデも気付いた。先程エーリカが言った様に、“流星群”らしき星の輝きが見える。しかも、少しずつ増えている事に。
「どうしましたバルクホルン大尉」
 ハイデマリーは夜空を見上げるトゥルーデの顔色を窺った。
「なあ、ハイデマリー大尉」
「何でしょう」
「ナイトウィッチにこんな事を言うのも何だが……、この空の一瞬の輝き、使えないか?」
 真顔のトゥルーデに、ハイデマリーは控えめな笑顔で答えた。
「奇遇ですね。私も同じ事を考えていました。流星が光る瞬間、僅かにですが、本体が見えるんです」
 トゥルーデは、力強く頷いた。
「なら、我々に指示を頼む。同時に攻撃すれば、或いは」
「天体任せとは、面白い作戦ですね。……行きましょう」
「二人してずるいな。先に見つけたの、私だからね」
 エーリカは面白半分にからかいながら、二人と共に飛行する。時折飛んで来るビームをトゥルーデと一緒に防御しつつ、ハイデマリーを護る。
 三人は編隊を組み、ネウロイと交戦を続ける。夜空を観察していると……時折、流星が重なり、まるで雨の様に降るタイミングが有る。ハイデマリーも魔力を使い、敵の位置を見極めていた。
「バルクホルン大尉、ハルトマン中尉、良いですか。敵、前方右斜め四度……いえ、五度」
 刹那。
 三人を支援するかの如く、空がぱあっと輝いた。まるでシャワーの様に、流星嵐が到来したのだ。トゥルーデとエーリカには見えずとも、ハイデマリーの瞳には、はっきりとそのシルエットが浮かんだ。
「今です!」
 揃って銃弾を撃ち込んだ先には……確かな手応え。靄の中に紛れていたネウロイが金属的な断末魔を上げ、爆発した。すぐに靄も晴れ、辺りはネウロイの遺した塵が舞った。
 その上空から、降り注ぐ流星群。

301meteor shower 02/02:2015/08/14(金) 23:57:51 ID:tfwBIjAc
「凄いね。こんなに流星見えるなんて」
 エーリカはさっさと銃を担ぐと、後ろ手に腕を回し、空を見上げた。
「今回は、助かりました。二人の掩護が無ければどうなっていたか」
「いや。強敵を相手にたった一人で持ち堪えたハイデマリー大尉があればこその武勲だ。流石はエースのナイトウィッチだ」
 謙遜し合う二人の大尉。
「もう、カタイんだからトゥルーデも、ハイデマリー大尉も。ほら」
 エーリカはトゥルーデとハイデマリーの肩を掴むと、ぐいと引っ張り空へと顔を向けさせる。
「え?」
「おい何するんだ」
「多分、あそこから飛んで来るんだと思う」
 エーリカが指す方向から、あちこちへと流星が煌めく。
「放射点、ですね。流星群は放射点から色々な方向へと輝くんです」
「博識だな、ハイデマリー大尉」
「いえ、本で読んだだけですから」
 少し会話している間でも、流星群はその勢いを強め、三人を明るく輝かす。
「それにしても凄い数だ……こんな星空は、今まで見た事が無い」
 トゥルーデは、しばし見とれた。
「私もです」
「私もー」
 ハイデマリーとエーリカが揃って相槌を打つ。
「ミーナもこの空、見えているだろうか」
 ぽつりと呟いたトゥルーデ。耳元にセットした無線に、すぐに返事があった。
『基地からも綺麗に見えているわよ。みんなお疲れ様。無事で良かったわ』

「ねえ、もう少し見ていたいな」
 エーリカはトゥルーデの肩を抱き寄せ、悪戯っぽく笑った。
「我々は流星群の見物に来たんじゃないんだぞ」
「でも、もう少しだけ、“観察”したい気持ちは有ります」
 ハイデマリーも微笑んだ。
「ほら、トゥルーデ」
 エーリカは二対一だといわんばかりにトゥルーデの腕をぐいと掴む。
「ああもう、分かった。だから引っ張るなハルトマン」
 頭上に煌めく光のシャワーは、三人を祝福するかのよう。
 三人はゆっくりと漂うかの様に空を浮かび、夜空の輝きに酔いしれた。

end

302名無しさん:2015/08/14(金) 23:58:05 ID:tfwBIjAc
以上です。
時期的に、OVAの頃に起きたifなお話だと思って頂ければ。

ではまた〜。

303名無しさん:2015/08/20(木) 14:22:31 ID:1.nj5rFs
綺麗で面白かった(小並感)

304名無しさん:2015/08/30(日) 00:18:05 ID:NhVpbZNY
面白かったよ

305mxTTnzhm ◆.7r9yleqd.:2015/11/13(金) 04:07:59 ID:9miF8XqM
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

306deep red 01/02:2015/11/13(金) 04:08:28 ID:9miF8XqM
「珍しい食材? 一体、何だ?」
 扶桑から届いた荷物。その幾つかを芳佳と美緒が取り分けせっせと梱包を解き、いそいそと厨房へ運ぶ姿を見、トゥルーデは首を傾げた。
 それから一日、芳佳は厨房に掛かりっきりで……たまにリーネが手伝っていた様だ……翌日になってもまだ厨房で作業を続けていた。そんな彼女を見て、トゥルーデは一体何が起きているのか、と疑念を抱く。
「さあね〜。気になる?」
 横を歩いていたエーリカに脇をつつかれ、うーん、と唸った後感想を呟く。
「まあ……またこの前の肝油みたいにきついのは勘弁して貰いたいが」
「じゃあ、ちょっと様子、見に行こうか」
「いや、扶桑の食べ物は扶桑人に任せた方が良い」
「珍しく乗り気じゃないね、トゥルーデ。肝油で懲りた?」
「懲りたと言うよりも……いや、何でもない」
「じゃあ行こうよ」
 結局エーリカに袖を引っ張られ、厨房へと向かった。

 厨房の中は湯気に満ちていた。
「何だこの大量の水蒸気は? 何が有った?」
「おお、バルクホルンとハルトマンか」
 腕組みして様子を見ていた美緒が二人に気付き、顔を向けた。
「やっほー。遊びに来たよ」
 エーリカは手を振ると、のんびり厨房を眺めている。
「少佐。これは一体?」
 トゥルーデは美緒に問うた。
「赤飯を蒸している」
「赤飯?」
「あ、バルクホルンさん」
 蒸し器の前で火加減を見ていた芳佳もトゥルーデ達に気付いて、姿を見せた。
「宮藤、お前昨日から何をやっているんだ? そんなに時間の掛かる食材、というか料理なのか」
「はい。お赤飯を作るには、時間が掛かるんです」
「そうだぞバルクホルン。昨日から餅米を漬け込み、小豆を下茹でして……まあ、私は横で見ていただけだがな」
 豪快に笑いながら、美緒は説明した。
「はあ……」
「ミーナとペリーヌも先程様子を見に来ていたぞ。リーネも時々宮藤を手伝っている。実に有り難いな」
「そうか、なるほど」
 説明を受け、少々引っ掛かる部分を感じたトゥルーデは、素直に疑問をぶつけてみた。
「しかし、何故にそんなに手間の掛かる料理を? 扶桑ではこれが当たり前なのか?」
 芳佳は火加減をもう一度確認すると、トゥルーデに顔を向けて説明した。
「お赤飯は、扶桑ではおめでたい席には欠かせない料理なんです。あと栄養もあって腹持ちも良いので、海軍でも活用していますよ」
「ほほう。そういうものなのか」
 少しほっとした表情のトゥルーデを見て、美緒はまた笑った。
「安心しろ、味は悪くないぞ! 是非とも食べて貰いたいものだな!」
「あ、もう出来ますよ。坂本さん、少し味見してもらえます?」
「ご苦労、宮藤! 戴くとしよう」
 大きな蒸し器から、蒸し布ごとどっさりと湯気の立つ塊が取り出され……ゆうに501の人数分は有りそうだ……、芳佳は慣れた手つきでおひつに移すと、赤飯をお椀によそい、箸と共に美緒に手渡した。
「では早速」
 美緒は頷いて箸を取った。
 トゥルーデにとって、赤飯は初めて見るものだった。米に豆が混ざっているが、何と言ってもピンクにも見える不思議な色をしているのが気になる。色使いから、扶桑の米菓子か? とも思う。
 一口二口、ぱくっと食べた美緒はひとつ頷いた。
「流石だ宮藤! 美味いぞ! よく頑張ったな。皆も喜ぶぞ」
「ありがとうございます! あ、良かったらバルクホルンさんとハルトマンさんも食べます?」
「夕食で出るのだろう? なら……」
「出来たても美味しいですよ?」
「貰おうよ、トゥルーデ」
 エーリカに促される。
「まあ、少しなら」
「はい、どうぞ」

307deep red 02/02:2015/11/13(金) 04:08:56 ID:9miF8XqM
 二人にもお椀が渡される。トゥルーデはてっきり普通の米と思っていたが、箸でつまんだ瞬間、粘度、いや硬さが違う事に気付く。怪訝な表情のまま口にする。粘り気と硬さも、普段出される白米と全く異なる。豆は小さめで、特徴的な色味だ。味は……想像していたものと違う。
「なるほど。これが扶桑の」
 不思議そうな顔をして、一口、二口と食べるトゥルーデ。
「へー。変わってるね。いつも食べてる白いご飯と違う」
 エーリカが素直な感想を口にする。
「まあ、初めて食べる時はそうなるかもな。ああ、胡麻塩を掛けると良いのだがな。有るか、宮藤?」
「勿論です坂本さん。はい、お二人共、どうぞ」
 既に用意してある辺り手際が良い。胡麻塩をぱらぱらと掛けられると、ほのかな塩分がまた風味を引き立たせる。
「ほう。これはまた……」
 改めて口にして、頷くトゥルーデ。それを見た美緒は頷き、芳佳にご苦労、と改めて声を掛けた。
 味見を終えたトゥルーデは芳佳に礼を言ってお椀とお箸を返す。エーリカはおかわりしたい様子だったがトゥルーデが止めた。

「しかし、何故に今日、赤飯を? 今日は特に何かを祝う日ではないと思ったのだが」
 味見を終えて、美味しかったと芳佳に感想を言った後、またも浮かんだ素朴な疑問を呟くトゥルーデ。
「それは、久々に扶桑から様々な物資が届いたからな。その祝い……、と言う事では駄目か?」
 美緒は珍しく、少し言い訳めいた口調で答えた。
「坂本さんが久々に食べたいって言うので作りました」
 しれっと言う芳佳に、おいこら、と少しばかり顔を赤らめて小言を言う美緒。
「なるほど、まあ、良いんじゃないか。少佐も宮藤も。確かに補給はめでたい事だし」
 トゥルーデはそんな二人のやり取りを見て、くすっと笑い、二人に言った。
「ねえトゥルーデ」
 エーリカが腕を絡めて、トゥルーデに聞いてきた。
「ん? どうしたハルトマン」
「私達もお祝いする時に、これ作って貰おうよ」
「何故に?」
「んー。何となく? 色が綺麗だから? じゃダメかな?」
「私に聞かれても困る。第一、作るの大変だから迷惑だろうに」
 話を聞いていた芳佳は、二人を見て聞いた。
「お二人共、何かお祝い事でもあったんですか? ご希望と有ればいつでも」
「まあ、毎日がお祝いだよね。私達って」
「何だそれ」
 二人の会話を聞いていた芳佳は、意味がよく飲み込めないながらも、頷いた。
「? 分かりました。またすぐお作りします。まずは今晩お出ししますから」
「ありがとね、ミヤフジ」
 ウインクして喜ぶエーリカを前に、トゥルーデは想わず名前で聞き返してしまう。
「おい、エーリカ良いのかそんな簡単に頼んで」
「だって、そうだし。違う?」
「いやまあ、お前が言うなら……」
「お前達も、蒸し上がりの赤飯みたいに熱々だな!」
 カールスラントのエース二人を見ていた美緒は、腕組みして大いに笑った。

end

308名無しさん:2015/11/13(金) 04:09:20 ID:9miF8XqM
以上です。
扶桑以外の人が「お赤飯」を初めて目にしたらどう言う反応をするか……
そんな感じで書きました。


ではまた〜。

309mxTTnzhm ◆.7r9yleqd.:2015/12/25(金) 00:42:02 ID:GT4DC8Wg
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

310sisterhood 01/04:2015/12/25(金) 00:42:46 ID:GT4DC8Wg
 とある週末。午前の訓練飛行を終え基地に帰還したトゥルーデは、シャワーもそこそこに部屋へと戻る。
 珍しい光景を見た。通り掛かった食堂で、テーブルに突っ伏しているロマーニャ娘を見つけたのだ。普段は何処か謎の隠れ家へ行く筈なのに、どうしてこんな所に。
「おや、ルッキーニどうした」
 声を掛けると、珍しくらしくない悲壮な表情で、ぼそぼそと呟いた。
「シャーリーが……」
 ああ、と思い出し、説明して聞かせる。
「あいつなら本国陸軍への連絡か用事で朝から出掛けている筈だが。何か問題でも?」
「だって、遊んでくれる人いないー」
 じたばたと腕を振って、テーブルを叩くルッキーニ。
「遊んでる暇が有るなら訓練でもしろ」
「坂本少佐みたいな事いわないでよー……」
 トゥルーデをちらっと見た後、しゅんとしてしまった。

 ああ、なんだかな、もう。

 トゥルーデは心の隙間にもやもやを感じる。普段は快活な筈なのに、寂しそうな彼女が何だか気の毒で。

 そうしてると、ルッキーニの腹がぐるる、と鳴いた。
「あーお腹減ったー」
「まだ昼まで時間有るぞ」
「お腹減ったお腹減ったお腹減った」
「お前は子供か……ってまあ年齢的にはそうか」
「一人で納得してるの何かずるい!」
 怒らせてしまったか。トゥルーデはそれでも冷静に観察していたが、このままでは埒が開かない。やれやれと呟くとルッキーニの名を呼んだ。
「仕方無い、付いてこい」

 厨房の脇に座らされるルッキーニ。トゥルーデは置かれていた誰かのエプロンを借りると甲冑宜しくぎゅっと身体に纏い、鍋を用意した。
「何か軽めの食事を作ってやる」
「ウエェ、バルクホルン料理出来るの? 芋料理以外に」
「馬鹿にするな? これでもアイスバインは得意なんだぞ? いや、あれは時間掛かるけど」
「軽めじゃないしー!」
「仕方無い。特別にリクエストに応えてやる。何が食べたい」
「マンマのパスタ!」
「私はお前のママではないが……ふむ、パスタか。確か何処かに乾麺があったはずだ」
 がさごそと厨房の棚を漁り始める。
「ソースは何でも良いよ」
 後ろ手に腕を組んで、のほほんと指示を出すルッキーニ。
「そう言われても作り方知らないのだが」
 聞かれたロマーニャ娘は、マンマの作り方を思い出して、指で空中の何かをなぞる様に、時折大きな身振りを交えてレクチャーする。
「んーとね。確かフライパンにオリーブオイルドバーッと入れて、ニンニクをトントントントンって刻んで入れて、ザクザクッて切ったトマトを入れて、グジュグジューって煮込んで、茹でたパスタと混ぜる……んだったかなあ」
「教え方があやふや過ぎだ! 擬音ばかりで通訳が必要なレベルだぞ」
「ひどい!」

 シャーリーは、よく付き合ってられるな。
 トゥルーデはそんな事を思いながら溜め息をつきつつ、ガスコンロの火を付けた。

 寸胴鍋に張った水が熱せられ、ぐつぐつと沸騰する。手にした乾麺を適当にぱらっと入れる。
「さて、これからどうすればいい?」
 聞かれたルッキーニは仰天した。
「えっ、パスタの茹で方も知らないの? それじゃ良いマンマになれないよ?」
「私はロマーニャ人ではないから知らなくて当たり前だろう! ……で、どうすればいいんだ」
「アルデンテで」
「それはどう言う意味だ」
「え、説明必要? うーんとね、中に火が通ってないの」
「生煮えはダメだろう」
「いやそうじゃなくて。火は通ってるんだけど、芯が少しカタイの」
「つまり微妙な火加減というわけだな……しかし微妙ってどの位だ」
 トングで茹だる麺をつまんだり、火加減を細かく変えてみるのを見て、ぼそっとルッキーニは言った。
「まるで実験してるみたいだね」

311sisterhood 02/04:2015/12/25(金) 00:43:21 ID:GT4DC8Wg
 そうこうして、あちこちから食材を見つけてフライパンも使ってソースらしきものを作り……何とか「料理」と呼べそうなものが出来上がった。
「で、お前の言う通りに作ってみたが。トマトはあいにく新鮮なのが無かったから、瓶詰めしてあった油漬けの乾燥トマトを使った」
 一口食べて、無言のルッキーニ。
「……」
 じっと、トゥルーデの顔を見る。
「せめて何か言え」
「……空腹は最高の調味料だって、マンマもシャーリーも言ってた」
「そ、それはどう言う意味だ?」
「初めてにしては上出来かなーって」
「何だその上から目線は」
「でも、まあ、食べられない事は無いし。うん。ありがと、バルクホルン」
 ルッキーニはそう言うと、ぼそぼそとパスタを食べ始めた。余り美味そうではない風にも見える。
「どれ、私も少し味見……」
「へー。トゥルーデがロマーニャ料理ねー」
 すっと肩に手が置かれ、耳元で覚えのある声が聞こえた。
「うわハルトマン? いつからここに?」
 思わず仰け反るトゥルーデを前に、意地悪くにっと笑って見せる。
「面白そうな事してたから、こっそり様子覗いてた」
「何故見てた?」
「見てた方が面白いかなって。トゥルーデ、私の分も有るよね?」
「……無いと言ったら作らせるつもりだな? ほら、私の分を食べると良い」
「やったー」

 試食したエーリカも、一口食べて、じっとトゥルーデの顔を見た。
「で、ハルトマンも何故黙る」
「ちょっと塩気足りない?」
 エーリカの言葉に、ルッキーニもそれそれ、と頷く。
「バルクホルン、パスタ茹でる時塩入れた?」
「塩?」
「塩ね。どばーって入れるの。マンマはいつもそうしてた」
「そんな事したら麺がしょっぱくなるだろ」
「それが不思議とならないんだけどなー」
「なら分量は?」
「そこまで知らない」
「適当過ぎだろう」
「でも美味しかった。ありがと」
 ルッキーニは皿をシンクに持って行くと、そこで初めて、微かに笑みを浮かべた。
 トゥルーデは時計を見た。何故か彼女を直視出来ない雰囲気がして。適当に言葉で誤魔化す。
「もう少しでシャーリーが帰って来る筈だが」
「ホント? あたし、基地のゲート前行って待ってる」
 そんな二人のやり取りを見ていたエーリカは、もくもく、とパスタを一口食べて、へえ、とだけ呟いた。

312sisterhood 03/04:2015/12/25(金) 00:43:46 ID:GT4DC8Wg
 ルッキーニはそそくさと出て行った。厨房の片隅に居るのはトゥルーデとエーリカ二人だけ。
「ねえ、トゥルーデ」
「どうしたハルトマン」
「ちょっと、味気ないな」
「ルッキーニと同じ事を言うな。ロマーニャのパスタ料理は初挑戦だったんだ、少しは……」
「どうして初挑戦したのかなー?」
「あんまりにも五月蠅かったからだ」
「普段は芋料理ばっかりなのにどうしてロマーニャ料理?」
「何だ何だ、まるで尋問みたいじゃないか」
「そりゃあねトゥルーデ、訓練終わったらふっと居なくなって、彼女厨房に連れてくの見たら、どう思うか分かる?」
「勘ぐり過ぎだろう」
「そこがね、やっぱりまだまだ“堅物”って言われちゃう理由なんだよね」
「何が言いたい」
「でも前に比べたらトゥルーデは進歩してるよ、私が言うんだもの。間違いないよ」
 このパスタとか。と、エーリカはくるっとパスタをフォークに絡めると、トゥルーデの口元に持って行く。
「食べてみなよ」
「そう言う食べさせ方は……分かったよ」
 一口食べて、ようやく二人が言っていた事が分かる。
「確かに、塩気が微妙に足りないな」
「でしょう? 私もそう思うし、これは間違いの無い事実だね。不合格」
「おいおい、そりゃ酷いな。ルッキーニは一応食べたぞ?」
「お腹減ってたからでしょ」
 ニヤニヤしながら、フォークを唇に当てて、目の前の彼女を見るエーリカ。
 トゥルーデは一体何をして欲しいのか最初分からなかったが……フォークでつんつんとつつかれて、ようやく理解する。おずおずと手を伸ばし肩を抱き、唇を重ねる。
 暫く、そっと抱き合ったまま、お互いを味わい……ふう、と息をつく。
「合格」
「何が」
「私のおヨメさんとして合格って事かな」
「そう言う意味か」
「ルッキーニにあれだけするんだから、私の時はもっとちゃんとしてよ?」
「それは当たり前の事だ」
「なら良いんだけど。とりあえず“今夜”が楽しみだね」
 エーリカの言うそれは、食事ではない事は明白。
 彼女なりの嫉妬か、同じ指輪をはめている者としてのプライドか。
 トゥルーデはそんなエーリカの感情をいまひとつ理解出来ないながらも、目の前の愛しのひとをそっと抱き寄せたまま、同じ時を過ごす。

「あれ、バルクホルンさんにハルトマンさん、どうしたんですか? お昼当番私達ですけど」
「ああミヤフジ、ごめんね私達ちょっと厨房借りてた」
「いや、それは私が」
 言い掛けたトゥルーデを遮って、芳佳に声を掛けるエーリカ。
「良いから。じゃあ悪いけどミヤフジ、後片付け宜しくね」
「あ、はい。分かりました」
 微妙に納得出来ないながらも、命令とあっては……と言った顔をする芳佳。

「良いのか、任せてしまって」
「だって、ミヤフジだって一人で料理する訳じゃないでしょ?」
「??」
「分かるでしょ?」
 握る手の強さで……ようやく言いたい事を把握する。
「そうだな。とりあえず、何処へ行こうか」
「シャーリーのお出迎えでも?」
「そうするか」
 二人手を繋ぎ、厨房から外へ。

313sisterhood 04/04:2015/12/25(金) 00:44:09 ID:GT4DC8Wg
 ちょうど二人がゲート前に付くと、見慣れたトラックが轟音を立て、土煙を上げながら戻って来た。あのエンジンサウンドに走りっぷり、誰が乗っているか、そして誰がチューニングしたかすぐに分かる。
「シャーリー! おかえり!」
 ルッキーニが大きく手を振る。
 ずささ、とドリフト気味にトラックを操り皆の前にぴたりと停めて見せるシャーリー。運転の腕は確かだ。
「いよっルッキーニ、ただいま! ……って、どうしたんだ二人共。あんた達までお出迎えって珍しくないか?」
 カールスラントのエース二人を見つけて、疑問を口にするリベリアン。
「まあ、暇潰し?」
「見せつけてくれるな、二人して」
 エーリカの言葉に、笑って返すシャーリー。
「なあ、シャーリー」
「ん? どうしたんだバルクホルン。あたしに何か用事か? ストライカーユニットの調整とか?」
「お前は本当に凄い奴だ」
 そう言うと、うん、とひとつ頷いた。
「はあ!? いきなり何だよそれ?」
 驚き半分、笑い半分の顔をしたシャーリーを前に、トゥルーデは平然と言った。
「それだけ言っておきたかった。じゃあな」
「おいおい、意味がわかんねーぞ」
 呆気にとられるシャーリーを置いて、トゥルーデは基地に戻る。エーリカも一緒。
「良いの? もっと詳しく言わなくても」
 とりあえず聞いてみたと言う顔をするエーリカに、トゥルーデは事も無げに答えた。
「言わなくてもあれこれと喋るだろう。ルッキーニが」
「そう言うところは鋭いのにねー」
 エーリカはトゥルーデの脇をつんつんとつついた。こらこら、と返す二人は、まるでじゃれ合う子居ぬのようで。
 やがて、時計の針が、ぴたりと頂点を指して重なった。二人の将来を暗示するかの如く。

end

314名無しさん:2015/12/25(金) 00:44:26 ID:GT4DC8Wg
以上です。
お姉ちゃん風を吹かそうとしても結局上手く行かないお姉ちゃん的なものを。

ではまた〜。

315mxTTnzhm ◆.7r9yleqd.:2016/01/01(金) 05:04:09 ID:OI0yXhJ2
あけましておめでとうございます。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

316sisterhood II:2016/01/01(金) 05:04:33 ID:OI0yXhJ2
「何をしているハルトマン! 新年だからと言って我々のやる事に変わりはないぞ!」
 腰に手を当て言い放つ堅物大尉。ミーティングルームでくつろぐエーリカはソファに埋もれそうな位だらっと身体を預け、眠たそう。
「またまたトゥルーデ、カタいんだから〜」
 エーリカはふわあ、とあくびをしながら答えた。哨戒任務明けで、身体がだるそうだった。
「だからー」
「ダカラー」
 横でコーヒーを飲みながらお喋りしていたシャーリーとルッキーニも、同じ口調でからかった。
「お前ら……揃いも揃って」
 怒りに震えるトゥルーデを前に、コーヒーの入ったマグカップに一口口を付けると、シャーリーはルッキーニの頭を撫でながら言った。
「まあ、年明けなんだし、アンタも何か少しは祝ってみたらどうだい」
 呆れるトゥルーデ。
「これだからお気楽リベリアンは……それどころじゃないだろう」
 悪戯っぽく、顎で指し示しながら反論するシャーリー。
「そう言うアンタの左指にはめてるそれはなんだって話だよ」
「ぐっ……こ、これは」
 言われて片方の手で指輪を隠す。二人の絆の証を指摘され、咄嗟に反論出来ない。
「良いんです、トゥルーデはこれで」
 珍しく真顔のエーリカは、トゥルーデの腕をぐいと引っ張ると、無理矢理座らせて肩を抱いた。そうして真顔で言葉を続ける。
「私達、夫婦ですから」
 今度はお気楽大尉が呆れ顔。
「夫婦って言われてもなあ……ハルトマン、お前の性格ホント羨ましいよ」
 言われてエーリカは不敵な笑みを浮かべる。
「イイナー、ふうふ」
 ルッキーニは指をくわえて羨ましそうに呟いた。
「良いなって。まあ、ルッキーニにはまだ少し早いかもな」
 あやす様に諭すシャーリー。その言葉を聞いて、少し拗ねるルッキーニ。
「えー、だってー」
「そうだなー。ルッキーニがどうしてもって言うなら、今度街に出て見てみるか?」
「ヤッター! じゃああたしネックレスが欲しい」
「ネックレス? 指輪じゃないのかよ」
「あれ?」
 どこかちぐはぐな仲良し二人を見て、トゥルーデに身体を預けたまま腕を絡めたまま、くすっと笑うエーリカ。
「どうかしたか」
 トゥルーデは真面目な顔でエーリカに問う。
「何か、ちょっと昔のトゥルーデと私を思い出したかな」
「私はあんなだったのか」
「幼いとかそう言う意味じゃなくてさ。鈍いって言うか」
「本人の前でそう言う事言うか」
「だってほら。トゥルーデ、自分で言った事、もう忘れてるし」
「言ったって、何を?」
「『新年だからと言って我々のやる事に変わりはない』ぞ〜って。つまりはね」
 エーリカは耳元でこそっと囁いた。途端に顔を真っ赤にするトゥルーデ。
「ちっ違っ! 私はそう言う意味で言ったんじゃない! 大体エーリカお前はいつもいつも……」
 つい我を忘れて相棒を名前で呼んでしまうトゥルーデ。そこにも気付いて、言葉が止まる。
「さ、じゃあ変わらない事、証明して貰おうかな。早速行くよ〜」
「ちょ、ちょっと待ってくれないか……」
「だーめ。楽しみだなー」
 エーリカはトゥルーデの唇を人差し指で塞ぐと、自分の唇にも当てて、内緒のポーズを取った。余計に困惑するトゥルーデ。そんな彼女の腕を引き付けてぐいぐいと引っ張ると、じゃあね、と残った二人に手を振って、一緒にミーティングルームから出て行った。
「ンニャ? ハルトマン達何処行くの?」
「まあ……部屋だろうな」
「何で?」
「それはルッキーニがもう少し大きくなったら教えてやるよ」
「ふぅん。二人で一緒にトレーニングするとか?」
「それはある意味当たってるかもな」
 シャーリーはそれ以上言及せず、コーヒーをぐいと飲み干した。意味が分からず、首を傾げるルッキーニ。
「ま、今日も平和ってヤツだよ。お菓子食うか?」
「食べる食べる」
 シャーリーの言う通り、基地は今日も平和らしかった。

end

317名無しさん:2016/01/01(金) 05:05:02 ID:OI0yXhJ2
以上です。
お気楽なミーティングルームでのひとこま。

ではまた〜。

318mxTTnzhm ◆.7r9yleqd.:2016/01/02(土) 18:37:49 ID:3az8RllY
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編になります。

ではどうぞ。

319the point of lover's night 01/02:2016/01/02(土) 18:41:42 ID:3az8RllY
 カールスラント空軍の用事で501基地を離れ、ロンドンに一人到着したトゥルーデ。寒空の下、軍支給のロングコートを着込み、書類の入った鞄を抱え込むと、早足で軍の連絡所を訪れる。
「……以上だ。書類に何か問題は」
 受付に出た係員は、手早く501から(ミーナが書いたものだが)送られた書類の数々に目を通していく。
「すみません、この部分、もう一度司令官殿に確認願えますか」
 一枚の書類を見せられた。トゥルーデが見たところ単純な誤字だが、正式な書類では許されない。
(ミーナ、疲れているのか)
 トゥルーデはふむ、と頷くと、電話を借り、交換手に501基地に繋ぐよう要請する。
「ああ、ミーナか。預かった書類だが、一枚だけミスが有った……なに、単なる誤字、それも一文字だけだ。一応確認の為連絡した」
『あら、ごめんなさいね。何度もチェックしたのだけど』
「仕方ない。誰でもミスはする。完璧な人間など居ないさ。それよりミーナ、最近疲れてるんじゃないのか?」
『有り難う。でも、電話口で心配されてもね』
 耳元から聞こえるミーナの声も、どこか疲れ気味の様だ。トゥルーデが何か言おうとした時、ミーナが言葉を続けた。
『それよりトゥルーデ、貴方の事をもっと心配してる子が一人居るから、早く帰ってきた方が良いかもね』
「それはどういう……」
『遅い、トゥルーデ。何やってるのさ』
「その声はハルトマンか。お前こそ執務室で何をやっている? ミーナと少佐の邪魔をしてるんじゃないだろうな?」
『遅いと罰ゲームだよ』
「なんだそれは」
『ともかく、早く帰って来てよね。待ってるから。それとも、少しお喋りする?』
「こら、軍の回線を使って私話など出来るか!」
 受話器に向かって怒鳴るトゥルーデ。
「あの……用件は」
 横で待機する受付の係員も、困惑気味だ。
「ああすまない……後でもう一度連絡するから、少しだけ待て。一度切るぞ」
『えーっ、ちょっと、トゥルーデ』
 がちゃり、とまだ声の余韻が残る受話器を置き、連絡を絶つ。
「さて済まなかった。やはり単なる誤字と言う事で、私が訂正出来るのであればこの場で手続を行うが」
「ではお願いします」
 トゥルーデは用意された席に着くと、すらすらと訂正書類の作成を始めた。

320the point of lover's night 02/02:2016/01/02(土) 18:42:07 ID:3az8RllY
 小一時間掛けて用事を済ませたトゥルーデは、軍の連絡所を急ぎ後にする。
 日も暮れてきた。急ぎ、街角に有る筈の公衆電話を探す。
 確か、目立つ赤い色のボックスが有る筈だ。
 早足で歩きながら、電話ボックスを探す。すぐに見つかった。扉を開けると、中は独特の臭いがするのもロンドン流か。
 公衆電話に立ち寄る途中、通話用の小銭を売店で崩してもらい、早速電話する。
 さっきの、エーリカの言葉が、気になる。
 先程と同じ様に、501基地に繋いで貰う。基地のオペレータが出たので、早速呼び出して貰う事にする。
「ああ私だ、バルクホルンだ。ミーナを……いや、ハルトマンは居るか」
 掛け放題の軍の電話と違い、公衆電話なので、時間が気になる。
 早く出て欲しい。ポケットに溜め込んだコインを適当に放り込みながら、エーリカが出るのを待つ。
 何度かコインを投入した所で、受話器に反応が有った。しかしまだ出ない。
(あいつは何をやってるんだ。こっちは急いでるんだぞ)
 焦りが手に出る。コインを一枚落としてしまい、隙間からボックスの外に転がって出て行ってしまった。気にしている暇は無い。
 暫くして、不機嫌そうな声が受話器越しに聞こえて来る。
『何さ、トゥルーデ』
「酷いなエーリカ。お前が電話しろって言ったから」
『今何処』
「まだロンドンだ。軍で私用の電話は出来ないから、今街角の公衆電話から掛けてる……えらい勢いで小銭が減っていくぞ」
『大変そうだね』
「全くだ。それで、何か必要なものは有るか? せっかくのロンドンだ、何か……」
『要らない』
「珍しいな」
 言いつつ、一枚またコインを入れる。
「菓子のひとつでも買って帰っても良いんだぞ」
『トゥルーデが帰って来れば、それで良いから』
「随分と大人しいんだな……さては横にミーナと少佐が居るな?」
『もう、トゥルーデのバカ! 早く帰って来ないと、後で怖いよ』
「お前が言うと本当に怖く感じる……分かったよ。とりあえずお前が好きそうなもの、手短に何か買って帰る」
『本当、そう言うとこ、鈍いんだから』
「何故怒る」
『じゃあ、好きって言ってよ』
「電話口でか? まあ、好きだが」
『全然心こもってない』
 電話が切れそうになり、慌ててコインを何枚か入れる。
「ああもう。……愛してる。これで良いか? 続きは帰ってからだ」
『うん。待ってるから。待ってるからね』
「分かった。すぐに……」
 続きを言おうとしたが、小銭が無かった。そのまま通話はぶつりと切れた。
 途切れたエーリカの声。余韻が、ぼろぼろにすり切れた受話器の奥にまだ残っている気がして。
 名残惜しいが仕方ない。受話器を下ろすと、ボックスから出た。
「さて、アイツは何が好みだったか……お菓子でも買って帰るか」
 言い聞かせる様に呟くと、トゥルーデは鞄を持ち直し、再び歩き始めた。
 二人の約束を守る為に。

end

321名無しさん:2016/01/02(土) 18:42:22 ID:3az8RllY
以上です。
公衆電話での二人のやり取りを書いてみました。

ではまた〜。

323名無しさん:2016/01/10(日) 13:56:34 ID:T/5XuC.2
500KB達していたので次スレです。

ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所10
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12483/1452401618/


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