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【Fate】アースセル「真なる聖杯を手に入れろ」【避難所】
78
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/08(火) 23:57:16 ID:YeNr5gUc
今日はここまで。
ただ愉悦が無自覚にドジって窮地に陥るところを書きたかっただけです。
(ペラペラ獲物の前でしゃべっちゃうという愚行)
聖堂協会が黙認(というか総意?)してたはずだけど、魔術教会からしてみればどんな対応取るかわからないので、十分脅せるかなと
あと……あれや。これ正直脅しとか焦る内容かはわからないけど、冷静じゃなかったってことで一つ。
79
:
普通の名無しさん
:2014/07/09(水) 04:37:15 ID:HKClTKmc
乙
この頃の若き綺礼ならやりかねんミスだな
特に英雄王と愉悦、二人の理解者ができた直後だし精神の均衡が崩れていてもおかしくない
80
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 17:04:00 ID:/jS385Ck
ギルガメッシュ「――――ハ。無様だな綺礼」
旅立ちの準備をしていると、アーチャーがワインを片手に問いかけてきた。
綺礼「黙れ! 今は貴様の相手などしている暇はないのだ! アーチャー!」
あまりにも最悪のタイミングに、そのサーヴァントを睨み付ける綺礼。
ギルガメッシュ「おお、そこまで吼えるか。さぞ悔しい敗北であったろうに」
ギルガメッシュ「今までのお前では考えられない程の激情だな」
ギルガメッシュ「この際だ。神父をやめるのもまた一考だぞ?」
綺礼「そんな事、出来るわけが無いだろう!」
言峰綺礼は、今まで生きてきた中で、屈辱を感じていた。
まさしく無様。こんな負け方をするとは、思いもしなかった。
ギルガメッシュ「なあ綺礼よ。お前のその悔しさは、敗北からだけなのか?」
綺礼「何だと?」
思わずアーチャーの言葉に耳を傾ける綺礼。
ギルガメッシュ「いや、何。貴様はアレと同じことがしたかったのではないか?」
綺礼「衛宮切嗣と、同じこと、だと……?」
それは一体何なのか。
戦場での場数なら負ける気はしない。
人を殺した数も自分が勝っていたと確信を持って言える。
ギルガメッシュ「簡単ではないか。今お前の感じている物を、人に与えたいのではないか?」
ギルガメッシュ「人に苦痛を、人に不幸を。そして人類に最悪を! それがお前の求める物なのではないのか?」
綺礼「……そんな、ことが」
あってたまるか。
その一言が言い出せない。
何故だ。ここで否定しなくては。
否定しなくては、そんな事を肯定されるなんて許されない。
まさか、そんな筈はない。そんな筈がないのだ。
自分は神に殉ずる神父だ。
そんなことが、あってはならない――――!
麗羅「あれ? 綺礼君、令呪なくなってしまったの?」
混乱に陥っていた綺礼の前に、綺麗の手に目を凝らしている麗羅が部屋に入ってきた。
ギルガメッシュ「ほほう、この間の盗み聞きの雑種ではないか」
麗羅「貴様、よくも私の前に現れたものだな……ッ!」
あの時、麗羅が『暗殺者』という言葉を使ったからこうなったのだ。
八つ当たり気味に麗羅を睨み付ける綺礼。
麗羅「私を責めるのはお門違い。あの女の体を確認しなかった綺礼君もいけないんじゃない」
麗羅は淡々と真実を述べる。
麗羅「ねえ王様。綺礼君が求めている物は、そういうものなの?」
首を傾げ、黄金の王に問を掛ける。
ギルガメッシュ「生意気な口だ。童でなかったら、その首を刎ねていたぞ」
麗羅「怖い怖い」
びっくりするほど棒読みで怖がるフリをする麗羅。
王の威光に身を委ねればいいものを、と溜息を吐くアーチャー。
ギルガメッシュ「問いに答えてやるが、この神父が求めているのは間違いなくそういった類の愉悦だ」
ギルガメッシュ「それも、本人が最も禁忌としているものであろうよ」
綺礼「……ならば、問おう。私の愉悦とは、私の求めているモノとは、一体何なのかを」
勝手に話を進める二人を、睨み付ける綺礼。
ギルガメッシュ「もう大分話してやったのだがな。我にしては大サービスだぞ?」
ギルガメッシュ「後はもう、お前が探すしかあるまいて。この冬木の地でな」
フハハハハハ! と高笑いをするアーチャー。
アーチャーの言葉を聞き、ふと考える素振りを見せる綺礼。
彼の中で何かが決まったのか、迷いの無い動きで一つの外へと飛び出す。
その後を、ヒョコヒョコと付いて行く麗羅。
麗羅「綺礼君綺礼君、もう旅の準備はしなくていいの?」
綺礼「彼の英雄王に、この冬木の地で探せと言われたのでな。この地にいる為の、口実作りをすることにしたのだよ」
綺礼「ちょうどいい。お前も害虫駆除を手伝ってくれ」
麗羅「それってどんな害虫なの?」
顎に手を当て、考える素振りを見せる綺礼。
綺礼「タコの様な害虫だ」
麗羅「それって虫じゃないよね。タコだよね」
綺礼「……比喩もわからんのか。山育ちというのは」
二人は、キャスターの工房へと歩を進めるのであった。
.
81
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 17:04:44 ID:/jS385Ck
目的地にたどり着くと、早速害虫という海魔達が襲い掛かってきた。
軽く見積もっても、その数は30を超えるだろう。
綺礼「お前の力量を見ておきたい。その拳で片付ける事が出来るか?」
能面のような笑みを浮かべ、麗羅は海魔の前に立つ。
麗羅「女の子に害虫駆除やらせるなんて、綺礼君さい・てい」
一匹の海魔が、麗羅に襲い掛かる。
それを、麗羅は拳で突く。
麗羅「それ」
――――あまりにも、間の抜けた掛け声で。
拳で突かれた海魔は、呆気なく弾け飛んだ。
突かれた個所から血肉をまき散らし、吹き飛ばされる。
声を上げることも許されず、その海魔は文字通り絶命した。
麗羅「しゅっ」
無論、それだけでは終わらない。
命令は絶対だ。
この場にいる海魔を、拳だけで打倒し、絶命させる。
蝶が舞う様に、蜂が刺す様に。
そんな表現があるが、それだけでは彼女を表現することは叶わない。
そんな陳腐な言葉で表現するのもおこがましい。
そんな次元を越えた――――『殺』の業。
『死』ではなく『殺』。
彼女は既に、『殺』の極地に辿り着いていた。
綺礼「――――」
その業は、本物だとかそんな話の次元ではない。
それを越えた何かだという事は分かるが、表現のしようがない。
綺礼は、そんな麗羅を、ただ傍観することしかできなかった。
.
82
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 17:05:04 ID:/jS385Ck
そして、傷一つなくキャスターの工房にたどり着いた二人。
そこには、出来の悪い人間オブジェがいくつも転がっていた。
二人がよく知る血の匂いが、工房内を充満していた。
麗羅「綺礼君綺礼君、この人たち生きてるよ?」
綺礼「そういうのを死に体というのだ。覚えておくといい」
火葬式典を付属させた刀剣を取り出し、容赦なく一つの死に体に突き刺した。
すると、その刀剣は炎上し、死に体達を燃え焦がしていく。
麗羅「生きているのにえげつないね」
綺礼「いや、このまま生きている方が辛いだろうよ」
全てのオブジェが燃えたのを見ると、綺麗はキャスターの工房から去る。
麗羅「ねえ、これで口実作り出来たの?」
綺礼「ああ。今夜辺りに分かるだろう」
聖職者の様な顔で笑みを浮かべる綺礼。
事前にアサシンからキャスター達の性格、趣味嗜好は聞いてあった。
こうなれば、後はどうなるかは予測できる。
衛宮切嗣に受けた煽りを、ここですっきりと晴らすことができた。
これで少しだけすっきりとできたとともに、どこか満足感を覚える綺礼であった。
――――もう答え見つけてるんじゃないの? この人。
そんな綺礼をみて、麗羅はそう思った。
83
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 17:10:52 ID:/jS385Ck
――――夜。
冬木大橋が架かる未遠川にて、その海魔は存在した。
キャスター「ご期待あれリュウノスケ! 最高のCOOLをご覧に入れましょう!」
全長百mを越える海魔に、誰もが驚愕した。
冬木に住む人々も、その神秘を括目する。
その中には、綺礼と麗羅の姿もあった。
麗羅「これが綺礼君の言っていたヤツ?」
綺礼「そうだ。そう、なのだが……」
正直、予想を超えていた。
代行者として冬木の地にいる口実さえ作ればいいと思っていた。
その為にキャスターやそのマスターが逆上しそうな行動を取ったのだ。
キャスターの情報は、アサシンに以前監視させ報告していたから、考えを読むのは容易かった。
だが、まさか、ここまでとは。
舐めていたとしか言いようがない。
麗羅「で、どうするの?」
綺礼「代行者として、神秘の漏洩は防がねばな」
麗羅「もうダダ漏れだよね?」
綺礼「私の父は優秀だ。この程度の騒ぎなら何とかなる」
実際は教会で頭を抱えて何とかこの事を大きくしない様に頑張っているのだが、息子は知らない。
麗羅「私も行くべき?」
綺礼「いや、お前はここで様子見だ。私の答えを得る前に、キャスター以外のマスター達を殺されては困る」
もう絶対答え得てるでしょうに、と麗羅は睨みつけるが、綺礼はそれに構わず飛び出してしまう。
麗羅「……私は、どうするべきか」
土手に座り、時折襲い掛かってくる大海魔の触手を消し飛ばしながら、綺礼のすることを眺めることにした。
龍之介「超COOLだよ! 旦那ァ!」
麗羅「――――ん?」
野次馬の中に、一際興奮している男を見つけた。
その手には、令呪の痕が刻み込まれている。
アサシンからの情報として、彼こそがキャスターのマスターだと確信した。
キャスターのマスターであれば、綺礼君にも問題ないだろう。
これも仕事だ。殺さなくては。
麗羅は騒いでいる男の後ろに立ち。
――――その首を握り潰し、川に投げつけた。
.
84
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 17:16:41 ID:/jS385Ck
キャスター「龍之介ぇ! おお、龍之介ぇぇえええ!!」
土手にいる野次馬の一人が殺された事により、キャスターが怒り狂い始めた。
もっとも、既に狂っていたのだが。
その時切嗣は、ライダーのマスターと共に川の近くで行動していた。
誰が殺したのかと気になったが、キャスターのマスターからは人が引き始めていた。
人が突然死んだのだ。そうもなるだろう。
離れている切嗣たちからは、誰が殺したのかは判断できない。
切嗣(アサシンは自害させたはず。なら、一体誰が……?)
そう切嗣が思考を巡らせているその時だ。
言峰綺礼が降り立ったのだ。
切嗣「何をしに来た」
綺礼が河原に降り立つと、切嗣が真っ先に銃を向けて来た。
綺礼「いや何。代行者として見逃せないのでね。アレを討伐しに来たのだよ」
切嗣「……人間である君が? アレに?」
綺礼「人間であると同時に代行者だ。聖杯戦争のマスターではなく、代行者の使命としてここに来た」
なるほど、そこまでしてこの地に残りたいのかと、哀れみの眼差しを向ける切嗣。
黒鍵を構え、川に溢れる小さな海魔達へ討伐しようと駆け抜ける。
ウェイバー「お、オイ!」
ライダーのマスター、ウェイバーが引き留めようとするが、綺礼は意にも返さず走り出す。
切嗣「……僕としては、このままアイツをライダーの固有結界に引き込んでくれると助かるんだ」
切嗣「お願いできるかな? ライダーのマスター」
実を言えば、大海魔を一時的にライダーの固有結界に閉じ込めて時間稼ぎをするという作戦の真っ最中。
ウェイバー「ぼ、じゃなくて……私は別に構わないけどね、反則したマスターをこ、殺すなんて」
ウェイバー「でも、そこまでしなくてもいいんじゃないか?」
切嗣「君はもう少し非情にならなきゃ、この世界はやってけないよ」
ウェイバー「……キャスター倒した後の二週間の停戦同盟、正式に引き受けてやるのに、その言い方は無いだろう?」
監督役が信用ならないと分かった今、ルールなんてあって無いに等しい。
切嗣はこの後、冬木が混沌とした戦場になるだろうともちろん予想している。
そんな事をしたら、サーヴァントが早く落ちるのではないか?
だがそんな事はどうでもいい。
監督役が信用を失った。これが重要。
そして、この事によって信用を得たのは誰か?
監督役の不正を暴き、それを公正に、公平に教え与えた者。
――――セイバー陣営に他ならない。
そこまでくれば後は簡単。
信用が『セイバー陣営>他の陣営>監督役』となれば、聖杯戦争の主導権はある程度こちらが握る事が出来る。
勿論容易くは無かった。
だが幾多の戦場をありとあらゆる方法を持って切り抜けた手腕によって、それは可能とされた。
現に、ライダー陣営、ランサー陣営は二週間の停戦に賛同し。
それを聞いたバーサーカー陣営、アーチャー陣営も同意してくれている。
同意していないのは既に脱落しているアサシン陣営である綺礼と、この戦いの敵であるキャスター陣営のみである。
このキャスター陣営に勝利することが出来れば、信用は確固たるものとなる。
二週間の停戦も、現実帯びたモノとなるだろう。
大海魔の姿が消える。どうやらライダーが固有結界に取り込んだらしい。
舞弥『切嗣、こちらの準備は整いました』
切嗣「さて、と――――」
ランサーに呪いを解呪するように頼むとする。
セイバーの宝具が使えなければ、この戦いは破綻する。
ランサーの騎士道精に期待するとしよう。
.
85
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 17:18:04 ID:/jS385Ck
今日はここまで。
ちなみに、停戦を引き受けた理由は以下の通り。
ライダー陣営(ウェイバー)→赤ん坊に情がわいた
ランサー陣営(ソウラ)→令呪を使ってディルムッドとゆっくりたっぷりねっちゃりとイチャイチャしたいから
バーサーカー陣営(雁夜)→皆が停戦してるって聞いたから
アーチャー陣営(時臣)→監督役の不正? 関係ナイヨーアピール
お前ら聖杯戦争をしろ!
この後の戦いはZeroと大体同じなので、またもやカットです。
86
:
普通の名無しさん
:2014/07/12(土) 19:30:44 ID:2OXPfDJI
乙
なんか前回に続いて、切嗣があんまり切嗣っぽくない気がする
87
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/07/12(土) 22:40:42 ID:/jS385Ck
>>86
切嗣はプリヤ時空が主軸。
士郎とかも引取った影響もあって、かなり丸くなっちゃってます。
戦い方が切嗣らしくないのは、できるだけ鯖を落とさないようにするため。
鯖が落ちたら母体と赤ちゃんにどんな影響を与えるかわからないから。
魔術師を殺せばいいってわけじゃないんで、かなりの縛りプレイです。
セイバーと話してるのは、結構切羽詰ってるっていうのもある。
けどいざ話してみたら、意外と戦場トークが弾んだりしたのであんまり毛嫌いはしてない。
という設定。
作者的には、物語前半は幸せ一杯を表現していっていう思いもあった。
……だって終盤は、アレだから(遠い目)
.
88
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 00:58:53 ID:tVRtN2Ek
ギルガメッシュ「中々に有意義な夜だった」
教会の地下に戻ってきたアーチャーは、不服そうにしながらワインを口に含んだ。
狂犬に宝具の一つを破壊されたが、征服王は中々見込みの在りそうな男だ。
できれば酒の席の一つでも設けたかったが、今からだとそれも出来なさそうだ。
何故なら――――
麗羅「王様、お帰り」
この童がいるからだ。
子供だというのに、その目に生気は無い。
何かに焦がれる熱い感情が、この少女には無い。
それがギルガメッシュには気にくわなかった。
ギルガメッシュ「……なんだ雑種? 我に何か用か?」
麗羅「ちょっとね」
手に刻み込まれた令呪をギルガメッシュに見せる。
すると、面白そうに頬を緩ませた。
ギルガメッシュ「ほう、よりによって貴様か! 聖杯もずいぶんと壊れている物だな!」
麗羅「で、どうすればいいと思う?」
ギルガメッシュ「何故我に聞く?」
麗羅「王様だからよ」
気にくわないのは、目だけではない。
この少女の表情というのは、全て仮面なのだ。
確かに、笑う事ができる。
しかしそれは、表情筋を動かしただけのモノ。
その奥底に、心は無い。
彼女の生まれ持つ対極の破片の影響だとは思うが、気にくわないのだから仕方がない。
ギルガメッシュ「まあ良い。盛り上がりに欠けていたところだ」
ギルガメッシュ「――――どれ、俺が一つ自覚させてやろう」
王の財宝から一つの宝具をとりだし、麗羅の額に、当てた。
89
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:00:08 ID:tVRtN2Ek
雁夜「時臣ィィィイ……ッ!」
間桐雁夜は遠坂時臣に燃やされ、ビルの下へと落ちていた。
遠坂時臣が憎い。
自分から最愛の人を奪ったアイツが憎い。
さも当然の様に葵さんから子供を奪った魔術師が憎い。
雁夜「……う、ぁ。カッ……!」
まさしく虫の息。
それでも間桐雁夜は生きている。
歪んだ 愛情/思考 に執着しながら。
意識が落ちる。
黒い暗い微睡に、身を任せる。
すると、揺りかごの様に暖かいモノを感じた。
『もう大丈夫よ。雁夜クン』
そんな声が聞こえたような気がして、目を開く。
もちろんというべきか、目の前には誰もいない。
しかし、自分がいる場所はビルの真下では無かった。
自分の最愛の人の子供が囚われている 家/檻 の門の前に他ならない。
雁夜「……もしかして、葵さんが俺を?」
そうだとしたらなんと恥ずかしい事か。
自分は時臣に敗北し、醜態をさらしてしまった。
ああでも、葵さんに手当されるのも悪くない。
そんな事を考えながら門を潜り抜ける。
聖杯戦争中に、葵が冬木市にいるなんてありえない事だというのに。
◇
言峰綺礼は、ずぶ濡れになりながらも帰路を歩いていた。
そんな綺礼に、黄金の王が問いかける。
ギルガメッシュ「どうした綺礼? 死にそうな顔をしおって」
綺礼「――――正直死ぬかと思った」
ライダーの固有結界に巻き込まれ、
数多くの兵隊達に襲われながらも戦い抜き、
セイバーの聖剣からぶっ放されるビームから泳いで逃れた。
神は今、自分に味方してくれている。
聖職者である綺礼は、それを確信持って言えるだろう。
ギルガメッシュ「いやはや、あの聖剣から逃れることが出来るとは思っていなかったぞ。お前は我を飽きさせぬな。綺礼よ」
綺礼「……黙れアーチャー」
恐らく、衛宮切嗣は躊躇いも無く行動を起こしたのだろう。
躊躇いの無いその決断力に称賛を送りたいほどだ。
とぼとぼと歩いていると、遠坂葵の姿が見えた。
葵「あ、綺礼君」
こちらに手を振ってくる始末。
綺礼「ど、どうなされたのですか? 禅城のご実家に帰られているはずでしょう?」
流石の綺礼も驚かずにはいられない。
聖杯戦争が行っている期間は冬木市に近寄らない様時臣も言っていたはずだ。
だというのに、なぜ彼女がここにいるのか?
葵「あら綺礼君。本当に気が付かないのかしら?」
綺礼「何の――――」
言われてみれば、その顔は綺礼の知る遠坂葵ではない。
彼女は、虚木麗羅の様な仮面の様な笑みは浮かべない。
麗羅「時臣の奥さんかと思った? でもラッキー。可憐な美少女の私でした」
クルリと一回転しながら、その姿を四歳児の幼いそれになって、綺礼の知る虚木麗羅の姿に成る。
綺礼「なんだそれは? 貴様は魔術の類でも身に着けたとでもいうのか!?」
麗羅は、うーんと腕を組んで悩んだそぶりを見せる。
麗羅「さあ? 王様が手心を加えてくれたの」
綺礼「……どういうことだ? お前はこの暗殺者を嫌っていたと思っていたのだがな」
ギルガメッシュ「この聖杯戦争を面白おかしく彩ってやろうと思ってな」
ギルガメッシュ「なに、お前の答えもすぐに見つかるだろうよ」
そう英雄王は言った。
90
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:00:40 ID:tVRtN2Ek
ギルガメッシュ「して綺礼、今夜はこの後、どう過ごすつもりだ?」
言峰綺礼の戸惑い等気にも留めず、英雄王は問いを投げかける。
綺礼「――――時臣師を殺す」
ギルガメッシュ「ほう、随分と思いきるな」
綺礼「そしてお前を私のサーヴァントにしようと思っていたのだが……」
自分の手を見る。
マスターの資格である、令呪はどこにもない。
ギルガメッシュ「それなら心配するな。代わりにこれを我のマスターの代用できる」
気にくわんがな、と言いつつ、ギルガメッシュは麗羅の右手を綺礼に見せる。
そこには、確かに令呪が浮かび上がっていた。
綺礼「貴様、いつの間に……!?」
麗羅「ランサーのマスター殺した辺りから」
聖杯はマスターにふさわしいモノを選ぶというが、これでは英雄王のスペックは自分と契約した場合より落ちるだろう。
ギルガメッシュ「まあ我のスペックが落ちるだろうが、問題は無かろう」
その言葉に溢れる自信は流石というべきか。
何を根拠にそこまで言えるのか、綺礼には不思議である。
麗羅「それで、このまま私が英雄王のマスターってことでいいの?」
ギルガメッシュ「ああ、吐き気がする程遺憾だが。仕方があるまい」
話は大体終わった。
さっさと時臣師を殺しに行くとしよう。
91
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:01:35 ID:tVRtN2Ek
師父から受け取ったアゾット剣で、その師父を殺した言峰綺礼。
彼は麗羅を師父のサーヴァントと契約し、笑みを浮かべる。
麗羅「殺したね」
ふいに、どこからともなく現れた無機質な少女が、真黒な無垢な瞳で問いかける。
綺礼「ああ、そうだとも」
さて、この少女はどうしようか?
山猫風情に自分が後れを取るとは思わないが、念には念を入れておくべきか。
ギルガメッシュもこの小娘は気に入らないと言っていたし、彼に始末してもらおうか。
綺礼が考えをめぐらせ考える中、少女は遠坂時臣の死体に触れる。
麗羅「ねえ、綺礼君。私、貴方の愉しい事が、わかったかもしれない」
綺礼「ほう、それはどういったい――――」
綺礼は己の眼を疑った。
遠坂時臣の死体を、遠坂時臣が触れているからだ。
いや、違う。これはあの無機質な少女。それ以外の何者でもない。
あの少女は、瞬時に遠坂時臣に化けたのだ。
死んだ人間が蘇る例は死徒化位のモノだが、それが目の前で起こったのかと思って動揺した。
麗羅「ねえ、綺礼君。 コレを使って、貴方に面白い物を見せてあげようと思うの」
時臣「その剣よりも、君が喜んでもらえると思うな」
声までもが、完全に模倣される。
時臣「――――今までにない愉悦というモノを、君に与えよう」
その遠坂時臣は、目の光を失っており、その笑みでさえ無機質だと感じさせるモノ。
綺礼「ほう」
しかし、綺礼は感嘆の声を上げた。
この少女は、今まで笑みを浮かべようとすらしなかったのだ。
それが今ではどうか?
自分の愉悦を理解し、それに対してプレゼントを贈ると笑みを懸命に浮かべている。
綺礼「いいだろう。好きにやらせてみるのも一考だ」
綺礼「虚木麗羅。私に愉悦を与えるというのなら、私の満足できるものを用意しろ」
自分の師父を殺した言峰綺礼は、今までにない強欲な目で麗羅に命じる。
遠坂時臣は黒い少女へと戻り、ソファに座る。
時臣「任せたまえ。私を誰だと思っているんだい?」
何ともわざとらしい応酬。
しかし、何とも様になっている光景であった。
ギルガメッシュ「山猫、精々我を満足させろよ?」
ソファで優雅にくつろぐ自分のサーヴァントに遠坂宗臣という虚木麗羅は、躊躇いなく頷いた。
92
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:02:23 ID:tVRtN2Ek
それは、まだ太陽が昇り切らない頃の、禅城家にて。
遠坂葵が目を覚ます。
時臣「やあ葵。よく眠れたかい?」
寝室の扉には遠坂時臣が立っていた。
葵「と、時臣さん? どうしたんです? 聖杯戦争でお忙しいんじゃ……?」
葵「もしかして、また凛に会いに来てくださったんですか?」
時臣「……聖杯、か」
時臣は目を伏せ、後悔するような表情を浮かべた。
時臣「確かに、聖杯も大切だ。 ……遠坂の悲願ばかりを考え、私の眼は曇っていたのだ」
時臣「一番大切なモノを、私は置いてきてしまった。どうか、どうか、愚かな私を許してほしい」
目に手を当てる時臣。
葵はそれが、とても悲しく泣いているように見えて、戸惑った。
今まで自分の主人がこんな反応を見せたことは無かった。
故に、どういう反応をすればいいのか分からなかったのだ。
葵「一体、何のことです? 時臣さん」
戸惑う葵。
時臣は彼女の手を引き、優しく、そして力強く抱きしめる。
時臣「これからいう事は、とても残酷だ。聞いてくれるかい? 葵」
葵「ええ、貴方の為なら、どんな言葉も聞き入れます」
葵の迷いのない凛とした言葉に安心したのか、時臣は彼女に耳にささやく。
時臣「――――桜と、もう一度家族になろう」
それは、何という言葉だろうか。
葵には一瞬何を言っているかわからなかった。
だが、意味を理解すると、目から感情の雫を溢れ出させる。
その感情の意味は、いったい何だろうか。
とても、言葉では言い表せない感情だった。
葵「それは、それは本当ですか? 時臣さん」
時臣「ああ、本当だとも。私が嘘を吐いたことがあったかい?」
そう優しく囁くと、葵は一際大きな声で泣き出した。
凛「ん……んぅ?」
一緒のベットで寝ていた凛が、目を覚ます。
当然だろう。自分の母が泣き喚いているのだから。
凛「……あ、お父様ぁ。ぅん? おはようございまぁす」
まだ寝ぼけているのだろう。
状況をまだ把握していないようだ。
時臣「……凛、また桜と一緒に暮らしたいかい?」
時臣がそう尋ねると、凛は眠気が飛んだのか、目を大きく開かせて頷く。
凛「暮らしたい! また桜と一緒に暮らしたいです! お父様!」
凛の頭を撫で、時臣は決心する。
時臣「じゃあ、今から迎えに行こうか」
凛「はい!」
何ともまあ仲睦まじい家族の姿なのだろうか。
遠坂家の事情を知る者は、感動の展開のあまり涙を流すだろう。
――――まあこんなの、全部嘘なんだけどね。
.
93
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:47:28 ID:tVRtN2Ek
臓硯「雁夜、雁夜や。ちょっと来い」
朝、間桐家にて。
臓硯が雁夜の名を呼ぶ。
雁夜「……何だ妖怪。聖杯戦争は二週間の停戦だっていっただろう」
雁夜「破れば他の陣営に叩かれるって言ったのはお前だろう?なんだ、ついにボケでも来たか?」
臓硯「その聖杯戦争についてなんじゃがな。ほれ」
臓硯手紙を渡す。
臓硯「教会からじゃよ。なんでも、キャスターとの戦いの件で話があるらしい」
臓硯「アレじゃないか? ほれ、戦闘機をのっとった件じゃよ」
雁夜「……あれはキャスターを倒すのに必要だったろう」
実際の所、キャスター戦に置いてバーサーカーはこれといった活躍はしていない。
だがそれと同時に、あれは神秘の漏洩とはあまり関係が無い様に思える。
臓硯「表面上はセイバー陣営である衛宮切嗣が仕切っておるが、監督役はあくまで教会じゃ。 行かないと大変なことになるかもしれんな」
臓硯「教会とは揉め事を起こしたくない。ほれ、さっさと行って来い」
雁夜「わかったわかった。行ってくればいいんだろう!」
雁夜はフードを被ると、そそくさと門から家を出る。
それを眺めていた臓硯だったか、雁夜の行った方向とは逆から、見覚えのある影がいくつか見えて来た。
遠坂の一家だ。
この二週間の停戦とはいえ、いったい何を考えているのか。
危険なことには変わりがないだろうに。
三人は、迷いなく間桐の門をたたく。
臓硯「……一体何の用なんじゃか」
臓硯は躊躇いながらも、門を開いた。
94
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:48:29 ID:tVRtN2Ek
間桐家の客間にて、臓硯は時臣の話を聞いていた。
臓硯は時臣の話を聞き、ふむと頷く。
臓硯「成程。桜を返してほしい、と」
時臣「虫のいい話だとは分かっております。ですが、私には、私達には桜が必要なのだと、ようやく分かったのです」
時臣は真っ直ぐな視線で語り掛けてくる。
それが臓硯にはたまらなく嫌だった。
まるで、自分の体の弱点を見透かされているような、そんな感覚に陥っている。
以前の遠坂時臣とは、明らかに何かが違う。
こんな戦場に立つ風格を持つ男ではなかった。
現に、表情はあるものの、それは仮面を付けているかのようだと思える。
臓硯「……しかしじゃ。 既に桜は間桐の教育を受けておる」
臓硯「遠坂の魔導を極めるのはちと無理があるだろうし、こちらの魔術を漏洩したくはない。引き取ってもらおうかの」
時臣「そんな事はどうでもいいのです。私は、私達は、もう一度桜と家族に成りたい」
臓硯「こちらは――――間桐との同盟を破る覚悟だ」
『殺』を宿した眼光が、臓硯を捉える。
恐怖こそはしないが、言いようのない焦りに襲われる。
時臣に一体どんな心境の変化があったのか、予想が付かない。
だが、
臓硯「カカカカカ! 吼えたな若造!ここは間桐の家、ワシの胃袋も当然よ!」
臓硯「もう一度聞き直しておこう。どんな覚悟じゃと?」
部屋の隅から、蟲をという蟲が集まり、時臣たちを囲む。
凛「お、お父様ぁ……!」
怯えて時臣に縋り付く凛。
時臣「凛、遠坂の家訓を忘れたのかい?」
時臣「――――遠坂たるもの、どんな時も優雅であれ。動揺などはしてはいけない」
凛「……は、はい! わかりました!」
涙を流しながらも、自分の宝石を構える凛。
時臣「さて、臓硯殿。聞き直しの答えだが、こちらに二言は無い。耳はまだ健在だろう。確認しなくとも、分かっているはずだ」
臓硯「カッ! いいだろう。遠坂との長きに渡る同盟はここで終わりじゃ。死をもって終止符を打ってやるとしようかのう」
臓硯は蟲に命令を出そうとした。
だが既に、臓硯の体は朽ちていた。
臓硯「――――ガ!?」
燃やされる。
蟲達と共に、いや、この部屋を巻き込んで、共に燃やされている――――!
綺礼「時臣師、ご子女を連れてきて参りました」
見れば、代行者が眠っている桜を抱きかかえている。
時臣「よくやった綺礼。流石は私の弟子だ」
ギルガメッシュ「ハ! 全て我任せの癖に、よくいうな」
時臣の隣には、黄金のサーヴァントが鎮座していた。
ギルガメッシュ「もう用はないな? 帰るぞ綺礼。ここにこれ以上いる意味はないだろう」
時臣「いいや、まだです英雄王」
黄金のサーヴァントの話を遮り、前に出る時臣。
時臣「臓硯。私の家族を殺そうとしたのだ。という事は、貴様も殺される覚悟は出来ているな?」
レイピアの様に杖を構える時臣。
――――それはまたしても、瞬く間の出来事。
時臣は臓硯に近づき、臓硯の体から一匹に虫を取り出す。
それは臓硯の核、その体の中の蟲では、本当に大切な蟲の部分で――――
臓硯「た、頼む。許して――――」
許しを請おうとした。
だが、瞬く間の出来事だ。何もできずに
臓硯の核ともいえる蟲は、貫かれた。
時臣「さあ、家に帰ろう」
遠坂時臣/虚木麗羅は、優雅に凱旋を果たすのだった。
95
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:50:11 ID:tVRtN2Ek
アイリスフィールの体の調子は順調だった。
時々陣痛などで苦しむが、医師免許を最近取得した舞弥が言うには、良好だとの事だ。
現在はアインツベルンの城で使い魔などの情報の整理をしている。
そして、切嗣はそれを知った。
切嗣「何だと……!?」
使い魔を通して、それを確認する切嗣。
セイバー「どうかしたのですか? 切嗣」
切嗣「停戦協定を破る陣営が現れた」
ああ、と納得するセイバー。
セイバー「……それは当然と言えば当然でしょう。既にサーヴァントは二騎落ちている」
セイバー「このまま畳みかけて勝利を勝ち取ろうとした陣営がいてもおかしくない。して、それはどこの陣営でしょうか?」
確かにセイバーの言うとおりだ。
こんな協定は破られるためにあるようなモノだ。
切嗣自身、時間稼ぎ程度にしか思っていなかった。
だが、これはさすがに予想外だった。
切嗣「アーチャーだ」
セイバー「……なんと」
これはさすがのセイバーも動揺を隠せない。
切嗣から渡された資料や、停戦を結んだときにアーチャーのマスターの事は大体理解していたつもりでいた。
慎重に事を進めるタイプだと思っていたが、いきなり停戦協定を破ろうとは思いもしなかった。
アイリ「え? でも、英霊は二騎しか落ちていないわよ」
切嗣「サーヴァントとは交戦した様子はない。恐らく間桐雁夜は生きているだろう」
切嗣「遠坂時臣は、間桐の家を焼き払った。十分な宣戦布告と見て間違いないだろう」
セイバー「待ってください切嗣。彼の性格からして、その行動はおかしくはありませんか?」
切嗣「アレ一人で考えればそうだ。でもね、言峰綺礼も一緒にいたんだよ」
それらに唖然とする面々。
舞弥「……セイバーの聖剣から逃れていたとは思いませんでした」
銃を点検しながら、舞弥は歯ぎしりを鳴らす。
舞弥「すいません切嗣。私のミスです。あの大海魔が倒された時、私が一番傍にいたというのに、言峰綺礼を確認できませんでした」
切嗣「いや、舞弥は十分仕事をしてくれていたよ。合図や場所の指定は、僕一人ではできない事だった。
切嗣「それに、セイバーの聖剣から逃れられるのがまずおかしい。そんな想定外は誰も考えないさ」
大海魔が一瞬で消し飛んだのだ。
誰もが言峰綺礼は死んだと確信した。
アイリ「流石は代行者。泳いでセイバーのエクスカリバーから逃れるとは……」
セイバー「それは恐らく違いますアイリスフィール。恐らくは魔術の類を使ったのでしょう」
セイバー「そうでなければ私のエクスカリバーから逃れるはずがありません」
そうでなければ、アーサー王の沽券に係わる。
実は泳いで逃れているなど、確かに誰も思う事は無いだろうが。
96
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:50:44 ID:tVRtN2Ek
切嗣「……まあ、それも問題なんだが、もう一つ問題があるんだ」
セイバー「何でしょう?」
心底理解できない、そんな表情で切嗣は口を開ける。
切嗣「自分の家族を、一緒に連れていた。遠坂葵も、娘の遠坂凛も、そして養子に出していた間桐桜もだ」
拳を握りしめ、机を叩く切嗣。
家族の為に戦っている切嗣にとって、それはなんと愚行に見えた事か。
戦場に家族を連れだすとは、外道にも程がある。
舞弥「他の陣営に伝えますか?」
セイバー「信頼の為には、情報は明るみに出すべきです」
切嗣「だがあのサーヴァントは格が違う。一人で挑めば絶対に返り討ちに会うだろう」
切嗣「監督役はこんなマスター同士の決まりごとはどうでもいいだろうし、討伐令なんか出しちゃくれないだろうね」
切嗣「それに言峰綺礼が関わっているんだ。協力はしてくれないだろう」
舞弥「なら、映像を見せてまた揺さぶれば」
切嗣「揺さぶって交渉した結果がこれだ」
切嗣「奴らは、聖杯の為なら教会側のお叱りや魔術協会の文句なんか気にしちゃいない」
切嗣「迂闊に交渉しようとすれば、お構いなしに攻撃だろうね」
重くなる空気。
セイバー「ですが切嗣、やはりここは他の陣営にも知らせた方がいいと思います」
切嗣「何故そう思う? セイバー」
セイバー「アーチャー陣営が活動し始めたと警告し、警戒をさせた方がいいかと思います。
セイバー「もちろん。どの陣営も一応の警戒はしているとは思いますが、やはり知っていると知っていないでは判断力も違うものです」
セイバー「これは私の経験談といいますか、戦場で変に隠し事をすると、信頼を失いそこから争いになることもある」
セイバーのいう事はもっともだ。
しかし、アーチャー陣営が動いたと知れば好戦的になる輩も多いだろう。
それでは乱戦は必須、サーヴァンとも確実に落ちるだろう。
これ以上、アイリに魂が収納されると、子供に影響が出る。
だが……しかし……。
切嗣「……警戒を、促しておくか」
舞弥「分かりました。所在不明のライダーとバーサーカーのマスターに、何とかして伝えます」
セイバーの意見を尊重し、衛宮切嗣は他の陣営にこの事を知らせることにした。
97
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:52:37 ID:tVRtN2Ek
時臣「葵、君と子供達に、見せたいものがある」
時臣に言われ、葵は子供達を連れて玄関までやってきた。
聖杯戦争が始まってからというモノの、時臣さんは魅力的になったなと葵は感じていた。
別に、今までの彼に不満があったわけではない。
寧ろ魔術師である彼に、葵は心底酔う程愛している。
だが突如、『桜ともう一度家族になろう』と言われた時には困惑した。
しかし時臣が葵を引き連れ、間桐を訪ねて桜の救出劇を見た葵は、そんな些細な問題などもう感じることは無かった。
時臣『葵、すまなかった。君の事も、子供達の事も考えていなかった』
時臣『遠坂の魔術師として根源は目指さなければならない』
時臣『しかし、桜を間桐に預けたのは間違いだと気が付いたんだ』
時臣『家族とは、同じ屋根の下で過ごさなければならない』
時臣『それが何よりの幸せなのだと、私は気が付かなかった……』
時臣『こんな愚かな私を、どうか許してほしい』
むしろ時臣がそう言って、自分の事を今まで以上に愛してくれているのだと感じた。
まるで自分の心が全て見透かされ、甘い蜜を注ぎ込まれたような感覚を味わい悦に浸った。
抗いがたい、甘い、甘い蜜で、自分は支配されていると思ったときは、今までのどんな夜よりも興奮した。
体が熱く、今まで以上に彼の事を求めている。
つまりは、葵今まで以上に遠坂時臣に酔っているのだ。
玄関にたどり着くと、言峰綺礼が大きな箱を背負っていた。
葵「あら、言峰さん。今回は本当にありがとうございました」
挨拶をすると、言峰も笑みを浮かべて挨拶を返す。
綺礼「こんばんは葵夫人。今夜も貴女は美しい」
葵は驚いた。
何故なら、『あの』言峰綺礼が、笑みを浮かべて、あまつさえ冗談を言ってのけたのだ。
葵の知っている言峰綺礼という男は不愛想という印象だったので、そのギャップに混乱した。
時臣「こらこら言峰。人の妻に手を出すのはいただけないな。君をそんな風に育てた覚えはないぞ」
葵が困惑をしている中、時臣はいつも以上に優雅を醸しながら歩いてきた。
色気、というモノだろうか? 今まで見る事の無かった時臣の一面を見るたび、葵は魅せられて行く。
時臣の笑みは今まで以上に輝いていて、ほれぼれと葵は眺めてしまう。
時臣「もしもこの遠坂時臣の愛する妻に手を出そうとするのなら、直々にお仕置きをしなければならない」
綺礼「これは失礼しました。しかし、私は事実を述べたまでですよ」
時臣「言峰、君も言うようになったじゃないか」
綺礼「いえいえ、貴方には敵いませぬ」
二人は顔を見合わせると、突如笑みを浮かべた。
綺礼は心底おかしいというかのように、腹を抱えて笑っていた。
98
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:56:59 ID:tVRtN2Ek
娘達は突如綺礼が笑い出していたので困惑していた。
それもそうだ。あの言峰綺礼が笑っているのだから無理もない。
時臣は綺礼の頭をコツンと杖で叩くと、綺礼はなんとか笑いを止めようと口を押える。
時臣「いやすまない。ここ最近働き尽くしで、疲れているらしい」
笑いが収まると、時臣は言峰に箱を下すように命じた。
時臣「突然笑い出して済まなかった。君たちが驚くお顔を思い浮かべると、つい、ね」
凛「驚く? この箱の事ですか?」
桜「これは何ですか。お父様?」
凛と桜は、キョトンと首を傾げ、自分の父に問いかける。
時臣「プレゼント……というのも違うな。これは、君たちが大切に思っているモノだ」
時臣「開けたらきっと、とても驚くだろう」
葵にはそんな物に心辺りは無かったが、時臣の言葉に胸を躍らせていた。
――――最近の時臣さんはロマンチックだ。
――――きっと、自分が思いもよらない、とびっきり素敵なものに違いない。
時臣「開けてみると良い」
時臣にそう言われて、ときめきながら箱をを開けた。
中にあったのは――――。
死の匂いを醸し出す、遠坂時臣の死体。
葵「……え?」
予想を上回る贈り物に、葵は戸惑わざるをえなかった。
――――何故この中に時臣さんがいるんだろう?
一瞬、そこで思考が停止した。
葵「―――――あ」
しかし、遠坂葵の脳は正気を取り戻した。
あまりの異常事態に遠坂時臣に酔っていた意識が、一気に覚醒した。
葵「わ、悪い冗談は、やめてください。どういう事です? これは」
隣にいる、自分の旦那のハズの男を見る。
時臣は嗤っていた。言峰と一緒に笑っていた時と同じ笑みで、葵を嗤っているのだ。
時臣「簡単なことだよ。葵」
怯える葵を笑いながら、優雅に両手を広げ時臣は語る。
時臣「全てが嘘! それだけの事なんだ」
葵「う、そ?」
時臣「そう、嘘だ」
時臣は軽く頷き、話を続ける。
時臣「――――君を愛した夫はいなかったんだよ。今日の朝からね」
時臣「君は私の嘘の蜜に浸っていただけに過ぎない」
麗羅「もうバカみたい! 自分の夫でしょ? ――――それ位わかりなよ」
その人物は既に時臣の姿ではなく、黒い少女へと姿を変えた。
年齢だけ見れば、凛や桜よりも小さい。
99
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:58:06 ID:tVRtN2Ek
麗羅「あーあ、かわいそうな時臣さん」
麗羅「浮気ですよー見てますか? あ、死んでるから分からないか」
麗羅「アンタみたいな夢見がちな女って扱いやすくて、すっごく助かった。」
麗羅「お蔭で私と綺礼は大爆笑! 四歳にして悦をしった私ってイケナイ子だと思う? 思う?」
言峰にねーねーと呼びかける黒い少女。
当の言峰は、左手で顔を抑え、右手で壁を段々と叩いて爆笑している。
麗羅「うーん、でもちょっとチープだったかな。初めてだったから勝手がよくわからないや」
麗羅「やっぱこういうのって時間を掛けないとダメなのかな?」
うーんと血まみれの腕を組んで考える黒い少女。
葵「それこそ嘘よ! 時臣さんを返しなさいよ!」
葵は逆上して、黒い少女に襲い掛かる。
麗羅「ていや」
しかし、葵は突如としてその場に転んでしまう。
ただ単に黒い少女が足を引っ掻けただなんて、葵には分からなかった。
麗羅「もう返してるでしょ? ほら、あれあれ」
葵「嘘! あんなの作り物よ! 時臣さんを返しなさいよッ!」
足が動かないのか、腕を使ってミノムシの様に這って黒い少女に近づく。
それを見て、言峰は一際大きく笑い出す。
麗羅「……うーん、しょうがないな」
箱に入っている時臣の元に走り出し、黒い少女手際よくソレを取り出す。
黒い少女は、ソレを葵の手の中に収めた。
葵「う、ぁあ……」
ソレに触れ、見た葵は理解した。
麗羅「――――ねえ、貴女は夫の綺麗な目を見てもわからないの?」
ソレは、今さっき黒い少女から取り出された、遠坂時臣の、青く聡明な目玉だった。
葵「うあああああああああああああああああああああああああ!!」
葵はそれを投げ出し、現実から逃げる為どこかへと這って逃げようとする。
麗羅「ああ、もういいや。お疲れ様」
黒い少女は葵の首を蹴り飛ばず。
壁にぶつかった頭は、ボールの様には弾まず、悲しみの表情を浮かべたまま潰れた。
.
100
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 01:58:51 ID:tVRtN2Ek
綺礼「して麗羅、この後はそうするかね?」
笑いおさまった綺礼は、黒い少女である麗羅に尋ねる。
麗羅「もう、大人なんだから分かりなさいよ綺礼。オーイ王様。またまた出番だよー」
麗羅はギルガメッシュに呼びかけ、黄金の王は現れる。
ギルガメッシュ「――――ハッ! 貴様の在り方は気に入らん。異端にも程がある」
ギルガメッシュ「が、これは醜悪なるよい劇であった。褒めて遣わす。今宵ばかりは、飲み明かそう」
王の財王の中から、極上のワイン瓶を取り出し、麗羅と言峰はワイングラスを渡す。
麗羅「さすが王様。よくわかってる」
麗羅は笑みを浮かべながら、ギルガメッシュにワインを頂戴とオネダリをした。
ギルガメッシュ「綺礼」
だがそこまで気を許してはおらず、ギルガメッシュはワインを灌げと目で綺礼に命じる。
麗羅「王様ってば、イケずー」
ギルガメッシュ「フン、弁えろよ山猫風情が。これは貴様を称したワインではない」
ギルガメッシュ「綺礼がまた一つ、己の愉悦を理解できたからこその祝いの品よ」
綺礼は三人のグラスワインを注ぎ、二人はそれを優美に愛でる。
注ぎ終わると、それぞれワイングラスを手に持つ。
綺礼「……しかしだ。この小娘共を生かす価値はあるのか?」
綺礼は飲む前に、時臣の子供二人を一瞥する。
今までにないほどの奈落の底に叩き落とされた少女達。
一人は現実を認めず、耳を抑えて顔を伏せる。
一人は現実を認めて、母の血で何かを描く。
麗羅「魔術とかよくわからないけど、英雄王の魔力になったりしない?」
綺礼「ふむ、可能ではある。が、それだと私の父が邪魔だ」
麗羅「殺せばいいじゃない」
不思議そうに首を傾げる麗羅に、綺礼は悩みを吐露する。
綺礼「どうやって殺せばあの人が苦痛に顔を歪ませるのかを思案していてな……」
綺礼「自分でも分からぬ私の本性をどうやって教えればいいのやら」
麗羅「それじゃあ仕方がないか」
綺礼はワインを口に含み、味を堪能する。
綺礼「……ああ、ワインがうまい」
今までに感じたことが無いほどの至福。
麻婆豆腐でもここまでの感覚に陥ることは出来ないだろう。
特に絶望している時臣の娘二人を見ていると、胸に湧き上がるモノが有る。
これが愉悦。
そして、この先に自分の求める答えがあるのだ。
――――答えは、もうすぐ目の前に。
綺礼は人の不幸に酔い、溺れていった。
101
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/04(月) 02:00:51 ID:tVRtN2Ek
今日はここまで。
本当はこの後サーヴァントとして式さん出す予定でいたけど、勝てるビジョンが見えなかったので取り消し。
.
102
:
8/5 01:00-13:00したらばメンテ、LR変更につきご一読ください
:2014/08/04(月) 02:28:15 ID:HtrGgEoQ
乙
いやマジで式さんは出したら愉悦王じゃ勝てないと思う
本気の英雄王なら「」として完全に開放しない限り大丈夫だろうけど
103
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/08/09(土) 11:55:06 ID:h4M6dleM
一夜明けて、冷静になってログを読んでみる
IDを偽装されたとしか思えない程の、世界観
再開の構えをする
104
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:32:42 ID:rB2rZR8.
言峰教会にある事務室では、言峰璃正が涙を流していた。
仕事をしながらも、丸一日泣いていた。
神秘の漏洩を防ぐ為、自分の息子が死んだのだ。
代行者になった時から覚悟はしていた。
しかし、だ。
目と鼻の先で、自分は何もすることが出来ずに死んでいったのだ。
これが泣かずにいられるだろうか。
そんな時だった。
綺礼「何を嘆いておられるのです。我が父よ」
璃正「綺礼……!」
自分の息子が、五体満足で目の前にいるのだ。
璃正は主に感謝をした。
璃正「綺礼! 生きていたのか……!」
感極まり最愛の息子に抱き付く璃正。
綺礼「ええ、生きていましたとも。泳いで何とか致命傷は避けました。色々と時間はかかりましたが」
璃正「そうか……! そうか! ……大変だったな!」
綺礼を抱きしめながら、歓喜の涙を流す璃正。
祝いだ。今夜は麻婆豆腐で振る舞ってやろう。
綺礼「父上」
璃正「なんだ?」
顔を上げ、自分の息子の顔を見る。
今までに見たことも無い様な笑みを浮かべる。
自分の息子が、こんな風に笑えるとは知らなかった。
璃正にはそれが嬉しく思えた。
綺礼「――――どうか、私の在り方を理解して下さい」
一瞬――――璃正は自分の身に何が起こったか分からなかった。
胸が張り裂ける様に、痛い。
下を目を向けば、黒鍵が胸に突き刺さっている。
璃正「……どういう、ことだ。――――綺礼」
他の誰でもない、最愛の息子である、言峰綺礼によって。
綺礼「私は蝶よりも蛾を愛する」
璃正の首をしめ、天高く掲げる。
綺礼「私は美しいものを、美しいと感じる事が出来ない歪んだ人間」
――――それはまるで神に供物をささげる、敬愛な羊の様。
綺礼「父は私を立派な人間だと評するが、それは違う」
璃正の首に掛けている手に、じわじわと力が入る。
綺礼「生まれながらにして善よりも悪を愛し、他者の苦痛に愉悦を感じる」
璃正「何を、何を言っている……!?」
璃正が苦しそうに顔を歪める。
綺礼「簡潔に言ってしまえば――――」
綺礼の笑みが、深まる。
綺礼「――――貴方の理想の息子は、幻想に過ぎんという事だ」
骨が砕け、血肉が飛び散る。
璃正の首と体が分離した。
綺礼「本当の言峰綺礼とは」
璃正の髪の毛を掴み、垂れる血をもう片方の手で掬う。
綺礼「 貴方の命を嘲笑い 」
その掬った血を、この世を去る間際の璃正の顔に叩きつける。
理解しろと。そして主に悔いながら死んでいけと。
綺礼「貴方の心を殺したいと願う、羊の皮を被った悪魔でしかないのだ――――!」
その言葉が届いたのか、璃正は悲しみの表情を浮かべ、
言峰綺礼の手によって、その命は絶たれた。
.
105
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:40:41 ID:rB2rZR8.
綺礼「――――は」
無残極まりないその光景を見て、言峰綺礼は笑みを浮かべる。
綺礼「―――――はは、」
嬉しくて可笑しくてたまらない、そんな想いが、胸に熱く充満する。
綺礼「ははははははは―――――!」
腕を広げ、胸に秘められた自分を抱きしめる。
綺礼「ああ、なんて――――すばらしい」
膝をつき、愉悦に浸る綺礼。
答えはまだ得ることはないが、とても晴れ晴れとしている。
父を殺した禁忌の悦楽が、ここまでの程のモノとは思っていなかった。
この手で父を葬ることが出来て、心の底から歓喜していた。
――――ああ、この笑みが剥がれない。
ギルガメッシュ「そこまでにしておけ、綺礼」
振り向けば、黄金の王が居座っている。
そのまま立ち上がると、璃正の死体から令呪を剥ぎ取り、綺礼の腕に移す。
綺礼「私はマスターではない。令呪は意味の無い者だ」
ギルガメッシュ「バカ者。令呪は持つ者の力を底上げする効力もあるのは、貴様も知っていように」
ギルガメッシュ「――――それに、だ。次はお前とあの山猫の、遊戯の時間であろう?」
時計を見る。
どうやらかなりの時間を要したらしい。
綺礼「ああ、そうか。ではいくか」
礼拝堂へと、足を運んだ。
.
106
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:41:56 ID:rB2rZR8.
間桐雁夜は混乱していた。
教会へ行けば、金髪の少年が監督役の代わりに手紙を差し出してきた。
手紙の内容は、夜に遠坂時臣と合わせるといった物である。
――――これ位使い魔で伝えろよ。
そう思って家に帰って来てみれば、焼け野原と化していた。
聖杯戦争は停戦協定を結んでいる筈だから襲ってくるわけが無い。
それに妖怪蟲爺の姿も無い。蟲達に探させても桜ちゃんの気配さえない。
何が何だか分からないといった状況でここまできたといった次第だ。
礼拝堂の扉を開く。
奥の方に、赤い背広を着た時臣の後ろ姿が見えた。
雁夜「時臣……ッ!」
ツカツカと歩いていき、時臣の肩を掴む。
汗をかいているのだろうか、背広が湿っているのがわかった。
雁夜「お前にはなあ、言いたいことがたくさん有るんだ! 殴らせろ!」
だが、肩を掴むと、時臣は容易く床に転がった。
雁夜「おい、何をふざけてるんだ時臣――――」
転がっているのは、時臣だけではない。
時臣の青い目玉も、顔の傍に転がっていた。
雁夜「……あ、あ」
自分の手を見て見れば、手が血によって赤く彩られていた。
雁夜「じょ、冗談はやめろよ時臣! こ、この目玉だって、オモチャだろ!」
顔を見る勇気はなかった。
代わりに、素早く目玉を掬い取る。
ニュルニュルと生々しく、蟲達と同じように気持ち悪く感じた。
葵「――――雁夜君?」
その声に気が付き、後ろを振り返る雁夜。
雁夜「あ、葵さん……!」
葵「……なんで、時臣さんが倒れているの?」
葵「その手に持ってるのは――――何?」
口元を手で隠し、悲しそうな目をする。
雁夜の手の中には、先ほど持った時臣の目玉があった。
雁夜「ち、違う! これは!」
それをとっさに隠して、葵に手を伸ばし迫る雁夜。
葵「来ないで!」
葵の拒絶に、戸惑う雁夜。
手で顔を覆い尽くし、嘆く葵。
恐らくは、泣いているのだろう。
葵「雁夜君! 貴方って最低よ!」
葵「私の夫って知ってるのに、殺すだなんて!」
葵「あの人の、綺麗な瞳まで取り除いて! 人間のやる事じゃないわ!」
雁夜「こ、コイツが悪いんだ! コイツが、桜ちゃんを……」
葵の激昂に、狼狽するしかない雁夜。
自分の想いの矛盾点も気が付いていないのだろう。
葵「ふざけないで! 何が私の為よ!」
葵「聖杯で自分の願いを叶えてもらうためでしょ!」
葵「あんたなんかに何が解るっていうのよ!」
葵「あんたなんか――――誰かを好きになったことさえないくせにッ!」
.
107
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:45:18 ID:rB2rZR8.
――――その言葉が、雁夜の中にある、大切なものを壊した。
雁夜「う、うあわあああああああああ!」
首を締めに襲い掛かる雁夜。
だがそれは、いともたやすく翻される。
気が付けば、雁夜は床にキスをしていた。
雁夜「……うぇ?」
雁夜は自分が葵に蹴り倒されたという思考に、結びつかなかった。
葵「最低。最低よ雁夜君」
雁夜「ぐふっ!?」
葵の足が、雁夜に突き刺さる。
的確に、痛みを感じる場所を蹴られる。
葵「貴方のにっくい恋敵を殺せば、私が振り向くとでも思ったの?」
葵「バカみたい。世界がそんなに優しく出来てるわけないでしょう?」
葵「童貞特有の思考よねー。大人の世界もわかってないおこちゃま」
葵「いや、まあ雁夜君のはそれ以前の問題なんだけどさ」
なんだ。何だこの葵さんは。
僕の知ってる、綺麗で、美しくて、儚い葵さんじゃない。
葵「というか、妄想と現実の区別がついてないでしょ?」
葵「頭の中がとっても幸せなのね。無様よ雁夜君」
葵「私が結婚すると知って家飛び出してー」
葵「『桜ちゃんを助ければ僕に振り向いてくれるかも!』って」
葵「そんな妄想で一年くらいその体弄ったんだっけ?」
葵「 変態 、 お花畑 、 犯・罪・者 !」
葵「ああ、笑えない。気持ち悪い。貴方って本当に生きてる価値が無いわ」
そう言われ、蹴られながらも、間桐雁夜は拒絶する。
葵「ああ、なんて――――ブザマ」
目の前にいる、遠坂葵という現実を――――。
.
108
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:47:27 ID:rB2rZR8.
麗羅「はい、できあがり」
綺礼とギルガメッシュのいる所まで、雁夜を蹴り飛ばす黒い少女。
ギルガメッシュ「見事に腑抜けたな」
綺礼「そう雑に扱うな虚木麗羅」
綺礼「利用価値はまだ十分とあるのだぞ?」
麗羅「キモくて触りたくない」
綺礼は口を開きかけるが、少し考え直し、改めて口を開く。
綺礼「気持ちは分からんでもない」
麗羅「でしょう?」
綺礼の言葉を聞き取ると、麗羅はギルガメッシュに振り返った。
麗羅「じゃあ早速、お願い王様ー!」
ギルガメッシュ「……何だ雑種?」
麗羅「この人操って、アイリスフィール誘拐してきて」
頭が痛くなってきたのか、ギルガメッシュは頭を押さえる。
ギルガメッシュ「……何故我がそんな事をせねばならんのだ」
麗羅「綺礼君の為なのに?」
チッ、と嫌そうに舌を鳴らす英雄王。
ギルガメッシュ「一々癪に障るな貴様は。仕方があるまい、やってやろう」
そう言って、ギルガメッシュは宝具を取り出した。
.
109
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:48:45 ID:rB2rZR8.
その次の朝、アインツベルン城で切嗣は項垂れていた。
切嗣「……ああ、何て憂鬱な朝なんだ」
一日アーチャー陣営を見張ろうとしたが、何らかの力で疎外された。
恐らくは、あのアーチャーの宝具の一つだろう。
舞弥は傍で同じく監視の作業や武器の手入れなどをしている。
セイバーはアイリの様子見を頼んでいる。
まったくおだてれば扱いやすいサーヴァントである。
セイバー「切嗣!」
切嗣「うわおう!?」
悪口を考えている所にその本人が現れたら、誰だってビビる。
機械からかけ離れた切嗣の思考でもそれは同じだ。
セイバー「大変です。アーチャーがこちらにやってきているとの事です!」
切嗣「何だって!?」
いや、十分予想できる展開だった。
今聖杯戦争で信頼を握り、各陣営をある程度動かせるのは衛宮切嗣なのだ。
倒すならてっぺんからという事なのだろう。
すぐに監視を森の中に移し、陣営を把握する。
アーチャー、それに遠坂時臣だ。
切嗣「穴倉を決め込んでいた遠坂時臣……先陣に出て来たか」
舞弥「どうしますか? 切嗣」
切嗣「あのアーチャーは様々な宝具を持っている」
切嗣「あの時臣がわざわざ出て来たという事は、アーチャーから強くなるような宝具でも用意してもらったのか」
切嗣「それとも、余程自分の腕に自信があるか、だ」
煙草をふかし、起源弾を取り出す切継。
切嗣「僕とセイバーが行く。アイリと舞弥は、くれぐれも戦闘は避けて逃走するように」
舞弥「念の為用意していた第二の拠点ですね。わかりました」
すぐさまアイリの元に向かう舞弥。
セイバー「では、切嗣」
切嗣「ああ、行こうか。――――僕たちの戦場に」
.
110
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:49:16 ID:rB2rZR8.
森を進むアーチャーと時臣。
その前に立ちふさがる、二つの影。
アーチャー「現れたな、セイバー」
セイバー「現れたとも。貴様はここで討ち滅ぼす」
アーチャー「――――ハ! 生娘風情が、無理をするな」
セイバー「私は、子持ちだ! ヤンチャ過ぎて国家を滅ぼすほどの元気っ子だ!」
アーチャー「なん……だと……!?」
自分の目が曇り、動揺するアーチャー。
セイバーの眼は嘘をついていないように見えたのだ。
故に、矛盾が生じ、少しばかし混乱する英雄王。
これは、セイバーの意図したものではなかったが。
――――その隙を逃さず、切りかかった。
アーチャー「おっと」
しかし、それを優雅に避けて見せるアーチャー。
アーチャー「流石は騎士王。教科書に載っているような模範的な戦い方だ」
切嗣は時臣と対峙していた。
が、すぐに後悔した。
切嗣「貴様……バーサーカーだな!」
近づくまでは分からなかったが、こうして正面から見ると禍々しい狂気を隠せていない。
これが一介の魔術仕如きにだせる狂気ではないと、切嗣は理解していた。
時臣「■■■■■■――――!」
その姿が、メキメキと黒い騎士のそれに代わる。
バーサーカー「A――――urrrrrrッ!!」
時臣ではなく、バーサーカーだった。
ということはだ。
切嗣(……遠坂時臣と間桐雁夜が同盟を組んだとでもいうのか)
そういえば雁夜は警告を促した際見つからなかった。
もしかしたら、間桐邸襲撃時に同盟を組んでいたのかもしれない。
色々と不味いことになった。
切嗣「Time alter――――double accel!」
切嗣は逃げの一手に徹する。
英霊と真正面から戦って勝つ術など、衛宮切嗣には持ち合わせていなかった。
だが、それでも尚、挑発するように弾丸を撃ち当てていく。
アイリの所へ行かせない為だ。
バーサーカー「■■■■■――――!」
近くにあった樹を根元から抜き取り、振り回すバーサーカー。
それだけで彼は嵐の様な攻撃力を掌握する。
切嗣「チィ……ッ!」
このままではまずい。
その時だった。
ライダー「AAAALaLaLaie!!!!」
突如空から舞い降りて来た戦車が、バーサーカーを吹き飛ばす。
ライダー「大丈夫か。セイバーのマスター」
切嗣「……何をしに来た?」
ライダー「いや何、坊主がな『襲って利があるのは、その中心人物のところだ』と言いおってな」
ライダー「近くに簡易的だが拠点を設け、すぐに駆けつけられるようにしておいたのだ」
ウェイバー「勘違いするなよ! 厄介なアーチャーを片付けられるチャンスだって踏んだだけだからな!」
ウェイバー「お前の所の赤ん坊がどうなった所で、僕は知ったこっちゃない」
ライダー「……そこを一番心配しておったくせに」
ウェイバー「言うなよライダー! 威厳が無くなっちゃうだろう!」
切嗣「成程、いや、助かった」
ライダーのマスターは実に扱いやすい人種だ。
ここはバーサーカーの相手を頼んでおいた方がいいだろう。
切嗣「僕は奴らのマスターを探してくる」
切嗣「バーサーカーの相手を頼めるか? 征服王とそのマスター」
ウェイバー「いや、それはいいけど……バーサーカーを撤退させるのは難しいぞ」
切嗣「気遣い感謝するが、そこら辺の匙はそちらに任せるよ」
そうして、切嗣は深い森の中に入っていく。
切嗣(サーヴァントは囮……なら、奴らが向かうのは)
聖杯であるアイリ、それを略奪しに来たのだろう。
.
111
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:50:17 ID:rB2rZR8.
アイリと舞弥は、未だに森の中を抜けられずにいた。
舞弥「マダム、あと少しで車です。頑張ってください」
アイリ「ええ……! 分かってる。わかってる、けど……ッ!」
なんと運の悪い事か、逃げている途中で陣痛が始まってしまったのだ。
綺礼「久しいな。ご婦人」
そこに現れる、敵である神父。
衛宮切嗣が最も敵視した男。
想定外だった。
目の前に現れるまで、気付きもしなかった。
陣痛で結界内の把握が難しくなっているのかもしれない。
アイリ「……あら、どいて下さらない? そこを通りたいの」
綺礼「この後、できればお付き合いを願いたいのですが?」
アイリ「あらごめんなさい。私、旦那以外の男の人のエスコートは受けない主義でしてよ?」
綺礼「ほう、ならば――――力づくで連れていくしかないようだ」
アイリの視界が赤く染まった。
アイリ「え?」
隣にいた舞弥の首が、弾け飛んだのだ。
アイリ「――――舞弥さん!」
そして、
麗羅「こっちは殺しても良かったんだよね?」
舞弥の首を持つのは、ロングコートを着た小さな少女。
フードをかぶっており、顔はよく見えない。
綺礼「殺してから確認を取るな」
麗羅「はーい」
綺礼「アーチャーに撤退を促しておけ。それと、処理をしておけよ」
麗羅「了解」
アイリの首を、トンと叩く。
アイリ「――――あ」
アインツベルンの人形は意識を失い、吸い込まれるように綺礼の腕の中に倒れ込んだ。
112
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:52:21 ID:rB2rZR8.
綺礼「さて、後の事は任せたぞ」
麗羅「任せてよ」
綺礼を見送ると、手筈通りに事を済ませる。
もちろん、後始末である。
コートを脱ぎ去り黒い異形へと姿を変える麗羅。
その姿は、アサシンであるハサンそのものだ。
ハサン「随分と……遅かったな」
後ろを振り返り、やってきた者を見定める。
一本の槍を構える、一人のサーヴァントの姿があった。
ランサー「……ああ、どうやら俺は、またしても出遅れてしまったらしい」
ハサン「無様だ。ここで消し去ってやろう。アサシンのサーヴァントよ」
呵呵呵呵呵、と嘲笑いランサーを指す麗羅。
ランサーは自分がアサシンであると、本気で思っているらしい。
それが堪らなく、麗羅にはおかしくてたまらなかった。
ランサー「何故貴様が生きているのかは知らないが、ここで討ちとらせてもらう!」
ハサン「何も守れぬというとに、私を討ち取ろうとするか。呵呵呵呵呵!」
先に動いたのはランサー。
その紅の槍は、心の臓を確実に穿とうとする。
ハサン「動きが大きすぎるぞ。ランサー」
懐に潜り込み、心の臓に掌を叩きこむ。
ランサー「うぐ!?」
身体が停止するランサー。
その隙に、最後の一本をへし折ってやった。
ランサー「お、俺の槍が……!」
ハサン「呵呵呵呵――――!」
――――ああ楽しい!
楽しい愉しいたのしいタノシイ――――!
今までにない高揚感に、麗羅はとまどいが隠せなかった。
しかし、不思議にも思う。
自分は今までと同じ行為をしているのに、なぜここまでも楽しいのだろうと。
そう愉悦に浸っていたのが、命取りとなった。
ランサー「――――『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』!」
.
113
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 21:55:13 ID:rB2rZR8.
ランサーが折れた槍を麗羅の顔に投げつけ、魔力を爆発させたのだ。
「な――――!?」
正面からの思わぬ奇襲に、麗羅の右目が壊れた。
そして何より、ハサンの姿から虚木麗羅の姿へと戻ってしまった。
ランサー「こ、子供!? しかも、これはサーヴァントではない。化けていたのか!?」
ランサー「……うん、確かに今はサーヴァントとしての気配が感じられない」
ランサー「だが、先ほどは――――」
目の前の少女に戸惑うランサー。
無理もない。サーヴァントと思っていた者が、幼き少女だったのだから。
その戸惑いを、麗羅は見逃さなかった。
麗羅「――――その霊核、貰い受けるわ」
その小さな右手が伸ばされる。
目にも止まらぬ素早さで、ランサーの霊核を的確に突き破った。
ランサー「――――が……ハァッ!?」
何が起こったかも分からずに消えていくランサー。
一か八かの攻撃だったが、うまくいったらしい。
ソウラ「ディルムッド!」
ランサー「……ソウラ、様。……どう、か。お逃げ下さい。……コイツは」
麗羅「黙れ」
目の前に繰り広げられようとされる喜劇に吐き気がし、ランサーを蹴り殺す。
それだけでランサーは消滅した。
麗羅「 後は 」
崩れ落ちる瞳で、ソウラを捉える。
ソウラ「ヒィ!?」
踵を返し、一目散に逃げる
逃がさない。
見てしまったからには、葬り去る。
背中を見せる獲物を、歩いて追う麗羅。
森の中で、ひと時の鬼ごっこが始まった。
麗羅「みーつけた」
勝者はもちろん、鬼役だった。
.
114
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:02:43 ID:rB2rZR8.
◇
あれは一体なんだったのだろうと、麗羅は首をかしげる。
愉悦、とはまた違うものだと、壊れた目を手に考える。
自分の行為は、以前と何ら変わりないもの。
なら変わったのは―――――自分だ。
英雄王と契約したあの夜。彼は宝具を使い自分に何かをした。
不思議なもので、虚木麗羅という自分は、惹きつけられるように受け入れたのだ。
あの宝具で自分は感情を埋め込まれたか?
いや、だとすると、それは言峰綺礼にでもくれてやればいい品物だ。
そう、それは違う。それは理解している。
あれはそういうものではない。
あれは――――開花させるもの。
ただの、きっかけに過ぎぬモノ。
殺人の才以外に自分に何かがあるとは思えないが、多分そういう事だ。
そう考えているうちに、言峰綺礼の隠し場所にたどり着いた。
.
115
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:05:45 ID:rB2rZR8.
――――かつてのキャスターの根城にて。
麗羅が綺礼を見つけると、暗い場所で妊婦の首を絞めていた。
それにしても……これはまた、面白そうなことになっている。
麗羅「ダメじゃない綺礼君。折角のお人形さんを壊すだなんて、勿体ないわ」
綺礼「こればかりは、貴様にも譲れん。この至福を味あわせてもらおう」
そう言って綺礼は振り向き、麗羅を睨み付ける。
すると、驚愕した。
綺礼「どうしたその右眼は? 衛宮切嗣にでもやられたか」
ニタニタと笑みを浮かべる綺礼。
ムカつく。
麗羅「ランサーよランサー。片しておいたけどね」
さらりと、サーヴァントに打ち勝ったと、虚木麗羅は言った。
その言葉に驚いた綺礼であったが、山育ちならば仕方がないと納得した。
綺礼「……ならば、その右眼くらいは安いものだろう」
麗羅「後で直してちょうだい」
綺礼「英雄王にでも頼むことだ」
ふんとつれない態度をとる綺礼。
愉悦に目覚めてから、少し冷たくなった気がする。
その証拠に、そそくさとアイリスフィールの拷問に戻ってしまった。
麗羅「確かに、そうやって苦痛に歪めた顔を見るのも面白いと思うわ」
でも、と言葉を付け足す。
麗羅「……私だったら、もっと美味しく調理できるけど?」
麗羅「もしかしたら、葵さん以上の、甘ーい蜜になるかもよ?」
綺麗はアイリの首から手を放し、やってみろと麗羅に譲った。
アイリは空気を取り込もうと、床でのた打ち回っている。
――――いいだろろう。
出て来た獲物に、舌なめずりする麗羅。
――――この妊婦に最悪を。
アイリの傍に麗羅は座り込んだ。
麗羅「貴女が衛宮切嗣さんの奥さんね。アイリスフィール・フォン・アインツベルンさん」
アイリ「……そういう貴女は誰?」
体を懸命に起し、麗羅を睨み付けるアイリ。
麗羅「アーチャーのマスター。りっぱな聖杯戦争の立派な参加者よ」
アイリ「そう、それで私に何をするつもり?」
アイリ「切嗣のことなら、そちらの方に教えて差し上げたわ」
麗羅「私、妊婦をどうこうする趣味は無いの。強いて言うなら……」
麗羅は表情筋を動かした。
歪な音をたてながら、その無機質な顔が、崩れる。
そして、彼女は――――
麗羅「――――その赤ん坊、私に頂戴」
――――アイリスフィールの腹を抉り、小さな命を掬い取った。
.
116
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:06:18 ID:rB2rZR8.
血が舞い、麗羅は赤く染まる。
アイリスフィールは声にならない叫びを上げ、綺礼は思わず笑みを浮かべる。
アイリ「ガハッ――――がァあ!」
口と腹から血を溢れ出させ、アイリは痛みにのた打ち回る。
それはまるで、夏場に地に落ち蠢く蝉の様――――。
綺礼は笑い出そうとするが、麗羅が綺礼の口に人差し指を当て、赤ん坊を預ける。
その次にアイリの顎を左手で掴み、右手で次の行動を行おうとした。
が、その顔に埋め込まれている二つの眼を見てみれば、綺麗な赤い瞳をしている。
腹を抉られたというのに、強情にも麗羅を睨み付ける、美術品の様な瞳。
眼を潰そうとしたが、それはあまりにも勿体ない。
麗羅「あ、丁度いいから、その眼も私に頂戴」
なので、眼球に傷がつかないように、二つ抜き取った。
アイリ「あああああああああああああああああああ!」
腹が痛み、目が痛み、声を上げ静かに泣き声を上げるアイリスフィール。
そんなアイリの姿を眺めながら、この目は温かいなと想いに耽る。
綺礼は赤ん坊を抱えながら、口を押えて笑いをこらえている。
麗羅はアイリの目玉も綺礼に預けた。
なぜ渡すのかと一瞬不思議に思ったが、あっさりと綺礼は理解した。
――――さて、ここからが本番だ。
.
117
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:08:42 ID:rB2rZR8.
「オギャア! オンギャア!」
アイリの耳に、赤ん坊の声が聞こえた。
産声だ。未熟児であろうが、無事にこの世に生を成したのだ。
アイリ「イリヤ!」
アイリは既に名前を付けていた赤ん坊の名を口にして、声の聞こえる方へと手と足を動かす。
目は見えていない。耳だけで赤ん坊の元へ向かっているのだ。
その身は聖杯の影響で、人としての体の機能は著しく低下していた。
それに腹を抉られ、目を抉られているのだ。動けないのが当然だ。
――――しかし、アイリスフィールは母親だ。
我が子が泣いているのなら、母親として、抱きしめ、慰めてあげなくてはならない。
もう自分がいるから大丈夫だと、貴女はこの世で安心して生きていいんだと。
そして、ようやく泣き声の元にたどり着いた。
手探りで探し、小さく、そして暖かな命に触れる。
アイリ「イリヤ……!」
触れた瞬間、アイリスフィールは抱きしめた。
アイリ「ああ、イリヤ! 私の可愛い、イリヤスフィール……!」
本当に、本当によかった。
自分が聖杯になる前にこの子を生み出そうと、頑張っていた。
この世に誕生することが許されて、本当によかった。
――――アイリ、大丈夫だ。絶対に君とイリヤを救って見せる。
――――僕が、聖杯戦争を行われないように頑張るから。
切嗣との思い出が鮮明に浮かび出した。
――――え? 養子が欲しい? 構わない……構わないけど。
――――……アイリ。僕は君も、お腹の赤ちゃんの事も諦めたわけじゃない。
――――君は、僕が守って見せるから。安心していいんだ。
そういえば、士郎はもう自分がこの子を産めないと諦めて引き取った子だった。
イリヤの代わり、というわけではない。
ただ、母親として生きて見たかった。
妻ではなく、母親。
――――こ、こんにちわ。今日からよろしくお願いします。
――――アイリさーん! 洗濯物やっておいたよ。
――――ああ! アイリさん! 米をあらうのに洗剤は使っちゃダメだ!
――――うん、やっぱり母さんの料理はおいしいや。
始めこそはよそよそしかったけど、それでも最後には自分をお母さんと呼んでくれた。
血は繋がっていなくても、親子になれると、家族になれるのだと知った。
もう、悔いはないなんて思っていた。
けど、けれども――――
アイリ「――――イリヤスフィール、貴女と離れるなんて、私嫌よ」
その言葉は、母親の愛に満ちていた。
生きたい。そう思ってしまう。
聖杯になる前に、もう自分は目が見えないし、そろそろ死んでしまうだろう。
もう体はこんなにボロボロだけど、生きたいと願ってしまう。
この子の母親でいたいと、願ってしまう。
――――お願い神様。せめて、せめて死ぬまで、この子と一緒にいさせて。
それは、アイリスフィールの、最期のわがまま。
.
118
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:09:25 ID:rB2rZR8.
「――――残念でした。全部嘘です」
それは、いともたやすく喰いちぎられる。
.
119
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:10:00 ID:rB2rZR8.
腕の中にいたはずの赤ん坊が、突然大きくなった。
小さい赤ん坊が大きく成長し、今、言葉を発した気がした。
それはおかしい。ホムンクルスの赤ん坊でも、いや、だからこそおかしい。
この大きさ――――自分の眼球を奪った黒い少女と、同じ大きさではないか?
「貴女は自分の子供も抱けずに死ぬのよ。アイリスフィール」
嘘だ。
「ねえ、自分の赤ん坊と私を間違えちゃうなんて、お馬鹿さんにも程があると思うの」
これは嘘だ。
麗羅「――――ねえ、貴女から全てを奪った人間を愛おしく抱きしめるって、どんな気持ち?」
アイリの背後から、男が笑っている声がした。
アイリ「あ、ああぁ、ああああぁぁああああ!!」
アイリは奇声を上げながら、腕の中にいる少女の首を絞める。
麗羅「ねえ綺礼。こっちに来て顔を見て見なよ。 この人、今とっても面白い顔をしているわよ?」
綺礼「とことん、私のツボを捉えているな。麗羅は」
アイリ「ああ! 黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえ!」
しかし、麗羅には余裕があった。
何度も言うようだが、アイリスフィールという人形は、人間の機能がかなりの所まで停止しているのだ。
麗羅「首を絞められても、痛くも痒くもなーい」
そう麗羅はアイリに囁くと、アイリは首を絞めあがようと、大きく口を開けて泣き叫ぶ。
麗羅「いい加減、うるさい」
麗羅はアイリの首を掴む。
すぐに声はやんだ。
アイリ「……や、やめ、て」
麗羅「自分がされて嫌なことを、相手にもしちゃいけないって、習わなかった?」
麗羅「それは、メッ! よ。アイリスフィール」
無機質に、淡々と。それでいて嘲笑うかのように少女は語る。
麗羅「あ、でもそんな道徳感、貴女にわかるわけないか」
――――だって、お人形さんだもんね。
首を握りつぶし、赤い鮮血が麗羅に降り注いだ。
麗羅「……ねえ、どうだった綺礼?」
赤ん坊を抱いている神父に、麗羅は問いかける。
綺礼「――――ああ、最高だった」
神父は、実にそれらしく笑みを浮かべた。
.
120
:
◆K7pqbvuGjs
:2014/08/15(金) 22:11:53 ID:rB2rZR8.
ダイナミック☆帝王切開
今日はここまで
あ、ちなみに愉悦ちゃんの高揚感とかは因子がギュインギュイン高まってるからです。
感情=対極の欠片の因子 みたいな感じで勘違いしちゃってます。
イライラしちゃってるのは因子が高まって安定してないから。
自分でも分かってないから仕方がないね!
ましてや五歳にも満たない幼女だから仕方ないね!
それもこれも、全部対極の欠片ってやつの所為なんだ!
121
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/08(月) 22:47:44 ID:ICTbnzb2
てすと
/´/:i:i/:i/:i:i/:i:i:/:ハヾ:iヾiヾミi:ミi:ミiミヾ;_},....,_ ....|
. / /:i:i:i/:/'i:i:i:ア:i:i:i/:i:iリ:i:iVi:i',:i:iVミi:ミi:ミiニヾ`ヽ: `ヽ、 ..|
/ ,:i:;i:i:i:i/://:i:ア:i:i:/':i:iハ:i:iⅥ:i:i',:iVミi:ミi:ミ:iミヽ: : : :`: ーミ: ,、 |
'′/;イ:i:i:i/:///:i:/ /:i:/ ';i:i:Ⅵ:i:i',i:iミi:ミi:ミ:=≠{、.: : : : : : :/ |
/' /i:i:i/i/i'イi:i/ /:i/ !:i:i:}:i:i:i:i:i:}ミi:ミi:=≠彡!:、、: : : :/ .....|
/' /i:/:i'i:i{;ニ,_ミヽ /i/´ ̄ ̄ !:i:i:}:i:i:i:i:i{ミi:ミi:ニ彡彡〉' `: : '′ .|
/ i:i:7:i'i:l:i{ {心;゛ 〃 ‐'彡r≠ドミ!:i:i:i:i:}ミi:ニ≠彡アア: : : : { ......|
. , !:i:{:i:!:i:i{乂マ刈/" ´ {゚圦刈!i:i:i:i:i}ミiミ_=彡'//: : : : : ! |
{! !;i:i!:i:i:i:i{ `゙ ‐゙ー-≠'リ!i:i:i}:i/´ヘ}:i:i:/;' `  ̄ ´ ......|
{ | !:i!:|:i:Λ { 〃.!i:i:i:i/〉゙/:i/:i′ |
゛ | {:i:!l:i:i{∧ /' j:i:i:/≠´i:i:/:i:{ .|
! い:i:{`ー/i;.、 ` ー_-‐' ' /i:i/:i:i:i:i:i:i/:i:i:{ .....|
}:i:Ⅵ, /:i:/ \ ...ィ':i:i/:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:{ ..|
|:i:{ヾV:i/ /i:>.,.,.,r ≦´ /:i:i/:iィ≠ヽ{:i:i:i:i:{ ......|
|:i:{ /i>'-.、/:i:i:i:i:i:i:7 ノi/:/: : : : : ィ: ミ:、i{ ......|
,. ィ|:i:{: : ;ィ弖三>ィ‐′ ///: : : : :>‐=、ヾー:、 .|
. >:‐/ :ィ´{:i{V´ ^ く// /:〃: :/´ : : : { : : :ヽ :`、 .....|
/: : < : : ゙、 〉{' //ゝ /: : /:イ´: : : :_ : 、:}: : : : :ヽ、', |
....|
122
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/08(月) 22:48:42 ID:ICTbnzb2
Jan StyleとSS速報の文字コードが違うからズレるのだろうか…それにしては酷過ぎだろ…
123
:
普通の名無しさん
:2014/09/12(金) 07:39:28 ID:wBg3bYwk
エディタ上でチェックしてもズレるのか
124
:
普通の名無しさん
:2014/09/19(金) 22:30:06 ID:AouIuU2M
どうやらSS速報さんがメモリ増設作業中だそうな……
VIPService 荒巻
@aramaki_vip2ch
ご無沙汰しております、夏休みの広告収入が若干黒字を達成しましてー
今からメモリ大増設大会を行います。
ええ、プラス16GBの合計32GBへ大変身です。
作業完了まで今暫くお待ち下さい。。。
125
:
普通の名無しさん
:2014/09/19(金) 22:43:14 ID:GSLHoCis
マジか
ああ、最近送信のラグがあったし、それの解消の為の作業かな?
ありがたやありがたや
126
:
普通の名無しさん
:2014/09/19(金) 23:05:59 ID:3GIsEosw
全然動かないと思ってこっち来たけど、あー、メモリ増設中なのか。把握
書き込み遅かったから時間指定以外は安価取るの難しかったんだよな、ありがたやありがたや
127
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 07:35:12 ID:x/hWIfiM
これは長期化待ったなしですね……
VIPService 荒巻
@aramaki_vip2ch
ちょっとサーバがあがってこないっすね。。
またNICの問題再発かなぁと原因探求中。
申し訳ないです。もう少しお待ちを。
128
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/20(土) 17:16:27 ID:Mv5jTEAc
これはしばらく掛かりそうですねー
おかげでプロローグとか出来たからいいっちゃいいですけど
129
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 17:19:56 ID:N7meCzpM
こっちでやるわけにもいかないし……
なんという生殺しか
130
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 17:46:22 ID:x/hWIfiM
小ネタ連射でもええんやで……
131
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 17:47:09 ID:x/hWIfiM
すまぬsage忘れ
wikiもちょっと避難所メインにしとくか
132
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 17:49:07 ID:SaGVy5Jk
逆に考えるんだ
その分支援準備に時間が割けると
133
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 17:56:18 ID:M7JM56Ik
如何やら、更に時間かかりそうな気配…
コレは今週末動かないんじゃと思えて来た
134
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/20(土) 18:09:29 ID:Mv5jTEAc
【なんとなく練炭をアバターにしましたが】
【スキルがもしかしてそのまんま?】
【正田さんの中二力が高すぎて、ちきゅうくん付いて来れなかったのでDiesも神威もやっていないという】
彡;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,. -‐''"ソ /
ノ-:::::::::::::::;;;;;;;ノ:::;;;;;;;;;;;ゝ;;;;;;;;;;彡 /
イ:::::::::::::\;;;;;;ノノ:::;;;;;;;;;;;;;-=ニニ==z__ /
,イ:::::::彡ミ::::::::\::\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;トミz_ /
/:::::::::::::::ミ::::::<::::::::::\;;;;;;;ト;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;llト / / _,,. -
彡ニ;;;;;=;;;==-;;ミ:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ / / /
//::::::::::::::::::::::::::::::::::ミ:::::::::::::::lノ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;彡--/ / / /
<:::::::::::::ハ:::::\::::::::メ:::::::::ヽ:::::::::ト:::::ゝ:::::;;;;;;;ノ \ ;;;; / /
l\:::\::ヽ:≧:ゝ=--ゝ =--:::::::::::::::::;;;;;;≧  ̄7;;; / /
`, ハ:ヽ::::::トヽ=- 彳=彳:::ヽ:::::::ヽ:::::ゝ:::::l < _,,. -‐''"´ /
ll ヽ::::ヽ:::::ヽ::\弋5乂::::{\:::::::/ ヽ:l / /
ノ ゝヾ:::::::::lヽ ̄` ヽ::::X// リ / /
ヽハl::::::! __ _,,.-''"´ / /
\ヽ _,,`/ ` / //
┌-ト‐-z_/ _,,. -‐''"´ / _ /
/  ̄ `y' / l / /:::X::::ヽ
/ /  ̄ . < / l / _,,. -‐''"´:::/:::::::::\::ゝ
- __x ̄`-Y 气 /:/::::::/:::::::::::::::::::::::Yj
l :::::::::::/ /:::7  ̄ /--七---x/::::/:::::::::/::::::::::::::::::::::::::::l:l
.l ::::::: ̄::::/ゝ ノ / l::::::::\:/::::::::://::::::::::::::::::::::::::::::lヘ
l / ::::/:::::::`--j/ / l:::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l::::l
_,,.--l ::/::::::::::::::::l / l:::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l::::ハ
/l/:::::::::: l / :::7:::::::::::::/l:/ l::::::::::::::::::::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::ヽ
{::l::::::::: l l_,,./ ヽ::::::/:‖: }:::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::ヽ
l:l\ _,,. -‐''"´/:::/:::::/ヾXzz l:::::::::ヽ::::::::::::ll:::::::::::::::::::::::::::::::::::::;lヽ:::::::::::ヽ
lゝ--------''''''::::::::/::::/;l ‖ l:::;;;;;;;;;:::;;;;;;;;;;;;;ll::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lヾ::::::::::::::ヽ
135
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:15:44 ID:Tuqy2L5E
それは勿体無い、今からでも遅くはない
136
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/20(土) 18:20:22 ID:Mv5jTEAc
後は、時期が悪かった…あの時はユーザー怒りの日とか言われてたんで、
手を出しずらかったのもありましたね
137
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:20:59 ID:bvCGfv3w
能力は似てるけど違うんじゃね
原作は更に付加効果あるし、というか厳密には時間停止じゃない
AAはばっちり合ってると思う
138
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:21:38 ID:x/hWIfiM
型月作品と正田作品は厨二のベクトルがちょっと違うからねぇ
ワイにもちょっと毒性強すぎて避けてた
139
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/20(土) 18:22:20 ID:Mv5jTEAc
【フィガ・ロッソさんのアバターの素晴らしきヒィッツカラルドさんがツボに入ったんですがどうしてくれる】
【指パッチンしながらダンスするんじゃねぇ!】
/: : : : : :ィ´\ヘ/Wヽ イ: : : : : : : : ヽ
. /: : : : :, 、ヘハ/\/´: ,. 、: : ::ハ
/: : : :/ \: : : : : : : :/. \: : ハ
. l: : : 〔 `ー― ´ 〈: : : l
. l: : / _ /: : :`ヽハ: : :l
. l: :l /´: : : ::>.、 /: :/ `` l: : :l
」_::! // ``ヽ: : : :〉 ∠: :∠ _. l: : :L
/__〕l ヽ、 ̄ ̄ ̄〉 〔 ̄ ノ l:l´ ヽ
l ´ l:l.  ̄ ̄/ i \ ̄ ̄ l:l´ !
ヽ l:l / ::::! \. !:!. /
. __ 〕く.l:l / :::l ヽ l:l _/、__,.ィ
ヽ: : : : : : : : : l. / ::! 、ヽ. l: : : : : : : : : : /
_ヽ、 _: : : ::l / ,、______,ィ} ヽ. !: : : : : : : : /,.ィ
ヽ: : : : : : : : : : : :、 !ー―――――― ノ イ: : : : : : ̄: : : :/
ヽ、::_: : : : : : :lヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ / l: : : : : : : : : /_
ヽ ̄:: : : : : : : : :: l ヽ  ̄ ̄ ̄. / !: : : : : :  ̄: : : : /
ヽ、: : : : : : : : :l ヽ / l: : : : : : : : : : :/
ヽ: : : : : : : ! ヽ ___ / l: : : : : : : : :イ
 ̄_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\_ ̄
_/ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/\_
,. イ l ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄\::::::::::::::::::::::::::::/ l ` ヽ、
,. <. l ヽ:::::::::::::::::::::::::::| |:::::::::::::::::::::/. ! > 、
. l ヽ::::::::::::::::::::::::〉 ´ 〈::::::::::::::::/ !
140
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:26:28 ID:SaGVy5Jk
ジャイアントロボは曲なら知ってるけど話とかキャラとか全然知らなかった
素晴らしきヒィッツカラルドさん「素晴らしき」まで入れて名前なんだなワロタ
141
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:29:15 ID:M7JM56Ik
時間停止というより、無限の減速を押し付けて自分は無限に加速する事で疑似的な時間停止になってたはず
追加効果もあるから、そのままじゃ決してない。AAはぴったりだと思いますよ
あ、あと、この貴方のスキルってNOUMIN枠じゃないかと個人的には思うのですが
142
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:33:38 ID:Tuqy2L5E
そんな枠はない(断言)
さてさてどんなサーヴァントと組むのか
143
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 18:34:50 ID:GPbvyOGs
鯖を見たかったのだが、鯖は既に落ちていた
144
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 20:31:16 ID:N7meCzpM
どうやってサーヴァントのクラス決めるんだろうか?
前回と同じ感じ?
145
:
普通の名無しさん
:2014/09/20(土) 20:36:15 ID:Tuqy2L5E
そう言えばwiki更新お疲れ様です
今は過去スレもよめないけど
146
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/21(日) 01:15:40 ID:hp3ZTkKA
サーヴァント決めは、原作的にバサカとアサシンは優先的に決められるようにするか
触媒召喚にするか、完全ランダムにするか
どうするか…
147
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 01:20:51 ID:cXp.pFqI
どちらでも楽しいものがあるのから困らないのに悩んでしまう。
個人的には触媒からサーヴァントの推測とかできるから、そっちが好きかな。
でも、何が来るかわからないドキドキ感も嫌いじゃないわ。
148
:
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
:2014/09/21(日) 01:21:50 ID:uSprW0ew
オンラインゲーム的にはランダムが一番ありそう
もしくは課金して触媒召喚
149
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 01:47:01 ID:IlslrQUU
基本はランダム召喚で、課金アイテムか、キャンペーン時の入賞アイテムを使うとある程度選択召喚が出来る、とか?
後は、HWOでは触媒はカードって形らしいけど、書いてある触媒名とかわかるとサーヴァントの正体推測にもなって楽しそうだね
150
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 01:48:41 ID:2BUqw.Uo
最初に特典として触媒か霊地か礼装か選んでもらうのも面白そうね
151
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 02:04:13 ID:QQqpG4MU
>>150
選べるスタートアップ特典的な奴か
礼装と触媒はfate/goにマジでありそうな話
152
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/21(日) 02:05:20 ID:hp3ZTkKA
【避難所特典その1】
前回は完全ランダムだったので
今回は、普通に決めるのもあり
触媒召喚はこんな感じ
1.『木の鳥型』
2.『土埃のついた簪』
3.『袋に入った土』
4.『熱を帯びた鎧』
5.『白きの笛』
6.『灯心草』
7.『虫に食われた手稿』
8.『翼の化石』
153
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/21(日) 02:09:27 ID:hp3ZTkKA
__ ‐- .、
. -=ニ : ̄/:ー_ノ.: 丿
ア´.: .: .: :./.: .:アー<:、
〃./ .: ′/.: .:./.: .} ヽ:. :.\
/ .:/ :/ :/.: .:./.: .: .: .∧.:. :. :\
/ .:/.: :/.://.:.:// .: .: .: イ:. :. :. : i:. \、
/ .://.:7.:/_':∠., / .: .:/.,_|:i .:l:. :. l:: :i 》
>>150
それ採用
/ .://!i7:/〃 う >:.:.:/ . _ リ! :|:. :: l:i: |〃
/ .:/∧|:i|:{i:/ `/.:/ '7ぅミ{|i:i|:: l:: l:i::|′ えらいわアナタ百万年無税
/ .:/:/:/i|:i|:|i:{/ ´ ` ー〈从l:i:i}:i:|:i:i|
/ .:/:i:':/:i:i|:.l:|从 ′ ノ /i:i:/:i:i|:i:i|
.: ./:i:i:/:i:i:i:|:.l:|:i:、 `..ー‐ ∠ノi:/:|:i:i|:i:i:|
.: .:/:i:i:/:i:i:i:i:i|:.l:|i:| 丶 __ . イi:i:i:i:/i:i:|:i:リ:i:i:|
.: ..:イ:i:i:/:i:i:i:i:i:i:|:.l:|i:! |i:i:i:i:i:i:i:/:i:i:i:|イ:i:i:i:i|
/ .:/.:i:∠、-- == |:.l:|^ 、 ,{<:i:i:i:i:{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:リ
/ .:/γ´, \ ` 》、{., `σ´ }ム  ̄ > 、i:i:/i:.
/ .:/.: :/ , し }'\/ニ7 `゙ ´ }=ムr:/´ ∨i:i:i.:.
/ .:/.: .:,:7 ′ 辷 ゝ=∟,.,.,. ___.,.ノニア辷{ , 、 Vi:i:i.:.
/ .:/′.i:/:ゝ } ; 辷 `ヽ/ ... 、_ヽ´と  ̄ヽ : ハi:i:i:.:.
/ .:/ ′.:/:i:i:i〈-ゝ _j '{ 辷 /´..,¨´< 厂ヘ _V , ノ:i:i:i:i:i:.:.
/ .:/ / .:i:/:i:i:i:i:i:辷=ー ミ) 辷_/ ‐-、\ノ__ _ ノг彡- Vィ:i:i:i:i:i:i:i:.:.:.、
. :/ / .::i:/:i:i:i:i:i:i:{ニニ二{ ノ_{ t /<二 、, ニ.._!{┌− V{i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.\
" / .::i:/:i:i:i:i:i:i:i:i〉ニニニ{_ノ=_{ `´ ... --' ー- 、 ヽi_г ∨!i:i:i:i:i:i:i:.:.\:.\
/ .::i:/:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ニニニノニニ廴_∠ア´O! 鄯`ー‐、 ∠}|i:i:i:i:i:i:i:i:.:.:.:.\:.\
. / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:}ニニ/ニニニニア } | { 》≧≦_={7i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.\:.\
/ .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ニニニニニニア } | { 〈リニニニリ{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.:. \:.\
. / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}ニニニニニノ .}Ol { 〉二二二{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.:.:.:. \:.\
154
:
◆XFKJOt0a3Y
:2014/09/21(日) 02:19:38 ID:hp3ZTkKA
`ヽー:、
_____ }:i:i:i:\
___ >=‐-‐≦: ̄/:i:i:i::ベ', ノi:i:i:i:i:ノ
{: : : ≧ : 、 >'":〃:i:i:/:i:/i:i:/:/⌒ー=ァ/:i::>'"
| : : : : : : : '/イ/:i:i:/:i:i:i:/i:/:/:/i:/i:/}⌒T´i:ミi:x
!: :____ : .:./彡゙7:i:i:i:i:i:i:i:i:i:/゙//i:/i:/ /:i:i:i:i:i:i:i:/:i:ヽ\ じゃあ、礼装は以下から選択かしらね(全部使い捨て)
. , : Ⅵili鄽彡イ':i:i:鄱:i:i:i:/:/≠< //、 /:i:i:i:i:i:/:i:i:i:i:|\\
} : Ⅵi√彡イ!:i:i:鄱:i:i:i:i:/.心..ハ\ヽ゛ノ:i:i:i:i:/___!:i:i:i:i|:i| 丶:':, 1.ハーピィの羽箒 効果:1度完全撤退
〃: : _ヽ√彡イ|:i:i:鄱:i:i:i:/==- '、 /:i:i:i:/___ |:i:i:i:i|:il Ⅵ
厶ィ⌒~鄯r=ミ1:i:i:鄱i:i:i:{ /::>'" {.心.}ヽ:i:i:i:l从 }:i 2.光の封殺剣 効果:3ターン必ず有利+1 不利:-1を付与
>:ミ Ⅵ v゛l:i:i:i:鄱i:i:i:| / ´ 〉ーく,_ }i:i;iリ:i:Λ jリ
/: : / }、ゝ|:i:i:i:鄱:i:i:i| ` ′ /'/i:i:i:i:i:Λ'′. 3.強欲な壺 効果:必ず、エクストラターンを発生させる
/: : / /:i:i>|:i:i:i:鄱:i:i:i| 、 Λ/:i:i:i:i:i:i:\
/: : / /:i:i:i:i:i:|:i:i:i:i鄱:i:i:i| 一 / ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:\
/__ -==ニニ二三三|:i:i:i:i:鄱:i:i:il、 イ、 V:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
r≦ニ二x≦ァ´-=ニニニ|:i:i:i:i:鄱:i:i:il-> ≪:i:Λ Ⅵ:i:i:i:i:i:i:i:Λ\: 、
Ⅵニ-=>イ-=ニニニニニ|:i:i:i:i:i鄱:i:i:iⅥΛ:.:> <i:i:i:i:i:i:i:i:i:Λ 酛\:i:i:i:i:Λ \: 、
. `^^´/-=ニニニニニ从:i:i:i:i:鄯:i:i:i:∨‐', Ⅵ.....ヽニ\:i:i:i:i:i:i:i:i:\ }:! Ⅵ:i:i:i:Λ ヽ:,
/ア´-=ニニ__ニニニ∧:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨_{_ Ⅵ.......Ⅵニ',≧x:i:i:i:i:i:i:iリ、 Ⅵi:i:i:i:i:! ′
_/´^-=ニニ/⌒;ニニニΛ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨{〜、`\.....Ⅵ_]ニニ>‐x':i:i:\ Ⅵ:i:i:i:i|
=‐-ニ二ニ=彡≦ニニニニニ}リ\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\㌃〜㍉',..}ニ!{-=ニ二〈i:丶:i:i:゛}:I:i:i:i:i|
ニニニニニニニニニニ-=ノⅣ{\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\Λく〜Ⅵ]=\ニニ/:i:i:i:i:i:i:i|:i:i:i:i:リー --- ―‐
]二ニニニニニノ\ニ-=//ⅣΛニ\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\-、__j..}]=ニノニニ/:i:丶:i:i:i:i|:i:i:i:/-==ニ二三
]ニニニニニ〃==Λ-=//_/ノΛ-= \:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\......Ⅵニニ/、:i:i:i:i:i:i:i:i:リ:i:/-=ニ二三三
155
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 02:38:10 ID:2BUqw.Uo
宝具から名前だけ借りたプチ礼装だと参加者が釣られそうだなー
「これで今日から貴方もセイバー」みたいな
156
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 02:59:19 ID:IlslrQUU
>>152
如何しよう、触媒の名前からどんな鯖が採用されたか予測しようと思ったけど、
頭抱えるほど全くわからねぇ…。とりあえずキャスターは作家なんじゃなかろうかというのは予測したが
157
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 03:19:32 ID:Bjqz8t3k
有名な手稿といったら、レオナルド・ダ・ヴィンチとかかな
158
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 03:25:45 ID:7pXExb3.
木の鳥型はカルナさんのライバルくさいがさて
159
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 03:45:46 ID:BKPHSyCY
礼装からデュエリストが侵食して来そう
160
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 05:02:16 ID:kAFFb1kk
やばい、あの触媒明らかに俺の考えたサーヴァントのやつじゃないか!
嬉しすぎて眠れねぇwww
161
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 06:40:05 ID:cXp.pFqI
お、SS速報のログ読みこんだな。とはいえ、すぐに安定するかは判らないけど。
162
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 07:08:52 ID:Vowva7oA
ふえぇ……灯心草で軽くググってみたら神武天皇とかナガスネヒコとか出てきたよぉ……
163
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 07:32:40 ID:8WFjohWo
英雄王が蛇の化石だったからまぁいい
土に入った袋は多分土地がファクターなんだろう
...草?
164
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 08:05:54 ID:v5mqViZM
羽根箒が優秀過ぎてヤバい 実質令呪2画のアドバンテージは超デカい
弱鯖なら弱鯖で同盟やらなんやらのやりようがあるし礼装のが美味いわこれ
165
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 08:46:17 ID:SmdAJgf6
土埃のついた簪ってアレしか思い浮かばないがどうだろ
166
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 10:03:03 ID:IlslrQUU
何で皆この触媒群からサーヴァントが予測できるんだよ…www
そして速報、直ったみたいだよー
VIPService 荒巻
@aramaki_vip2ch
見ろ!メモリが32GBのようだ!
167
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 10:20:05 ID:Jp6vHE92
袋に入った土・・・ 甲子園球児かな?(すっとぼけ)
168
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 10:58:57 ID:5sv5q3.o
自分のが採用されてるとすれば触媒は土だけど、多分同じように考えてる人多いだろうなあ
どこの土かによって色々だし
169
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 11:07:13 ID:vuYjOZoU
土で特定するなんて俺には出来そうにない……
俺が採用されてるなら笛だな
……嬉しすぎるww
170
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 11:19:53 ID:JeI0H7Pg
勝つ事を優先するなら、言うまでもなく地力が高い鯖を選びたいが
(追加行動=基本的に鯖の強さが行動の強さに反映)
誰が呼ばれるか見当つかないからどうしたものか
171
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 11:24:35 ID:vuYjOZoU
本来サーヴァントなんて召喚されないとわからないからな
運営はそういったものを感じて欲しいんじゃない?(設定的に)
172
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 11:43:12 ID:1sHLDZhE
翼の化石……アーケオプテリクスかその関係者?
173
:
普通の名無しさん
:2014/09/21(日) 12:15:57 ID:.rLXQGUI
鯖に合う鱒を選んだっぽいし、その辺りの融通はどうなってるんだろ
好きな鯖選びたいのもそうなんだけど、敵主従も相性良いコンビがいいな。燃える
174
:
普通の名無しさん
:2014/10/05(日) 15:20:25 ID:CQEzzKc6
今のところ良好な関係の鯖鱒ってどの組が居たかな?
自分的には狂組、槍組、騎組、魔暗同盟組かなーと思うんだけど
特殊組は鱒と鯖の基本方針があまりよろしくなかったけど、ペアとしては悪くなかったんじゃないかなと
175
:
普通の名無しさん
:2014/10/15(水) 20:39:29 ID:f1piV7Rs
エクストラ組は描写が少ないから仲良かったか悪かったかは分からんなー
剣組も同様だけど手品見せて喜ばせてたらしいから悪くなさそう
176
:
普通の名無しさん
:2014/11/01(土) 20:31:57 ID:Du1Z1vGc
レアルタのラストエピソードを彷彿とさせる
177
:
普通の名無しさん
:2014/11/01(土) 20:33:05 ID:Du1Z1vGc
興奮しすぎて書き込む場所間違えた……
178
:
普通の名無しさん
:2014/11/08(土) 03:53:12 ID:.mrRhLjc
「独りで迷子は心細いけど、二人一緒なら冒険だ」
練炭のこのセリフほんと好き
ぼっちでトコトコ歩いてるヒルデちゃんの手を笑顔で握って一緒に歩くんだろ練炭?
179
:
普通の名無しさん
:2015/04/05(日) 23:15:43 ID:jPbp1rUg
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今のアースセルの戦況はマスター連合側が不利だった。圧倒的と言ってもいいぐらいには。
マスター達が持つ札は多い。だが勝ったことなど数える限り。その現実が現在の参加者達の生存圏だ。
敵の手札が分からない上に、どれだけ通用するのかも分からない。その癖、相手はこちらの手の内を覗くかのようにカードを伏せて配置する。
霧深い夜の街中を彷徨うような先の見えない戦いは集中力も下がる。ミスが続けばあっという間に影送りだ。
守れた領域は一分程。そのなけなしも気を抜けば悪魔は刈り取りのように支配権を奪うだろう。
あの終わりのなかった本戦と同じように、修羅道の中に落ちるのだ。
それを青年は知っている。あの日、戦う事の意味を知った。
対戦相手の胸を焦がさんばかりの渇望を。情報の海に消えていく最期を。
なにより寄り添う女の憎愛を。紡いだ筈の親愛と睦言を。
全てはこの胸の中に。心臓の、魂の奥に刻まれた。彼らの想いは大切に仕舞われた。
だからこそ認めない。
苦難という鎚を、試練という火を。
焼べられ叩かれ心はいつしか鋼を鎧纏う
なるほど闘争の生存競争は人を剣へと鍛えるだろう。
だがそれは触れ合いの健全ではありえない変貌と呼ばれるものだ。
変わらぬ日常こそ価値がある。その営みでこそ育まれる光がある。
安寧は戦争と比べれば遅い歩みであるかもしれないが決して停滞だと切り捨てていいはずがない
堕落と断ぜられていいはずがないのだ。
血では決して贖えない刹那/輝きを知るが故に、男は決して玉座を許さない。
180
:
普通の名無しさん
:2015/04/05(日) 23:17:14 ID:jPbp1rUg
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悲鳴。
怒号。
雄叫び、断末魔。
実体なき虚数の影絵があった。
月より産まれ、地を侵す悪性腫瘍。
黒を纏った少女は影の群勢を引き連れて地獄の釜を開け放す。
防衛機構の反転、領域を自らのメモリに変えるだけの人食鬼。
エネミーなど生温い。侵し、潜み、増殖するのみのウィルス。
無形で蠢く海月のような外見は名状し難い不吉さを伴っている。
喰らいつき、潰し合う怪物に戦術が入り込む余地はない。
ただ正面から殲滅させるのが最適解であるから小癪な策など足枷にしかならない。
逃れる術もない怪物が現れた直後に暗い沼に引き込まれる。
誰かが仲間を救い、直後に消えていった。戦士の命は等しく強度を試される。
応戦するマスター達、 多くを削ったが滅するまでは至らない。 襲撃者の正体もわからず結局は物量に圧殺された。
そうして、終わった戦場で誰かがつぶやいた。守りきった、と。
目の前の景色を見て、青年が。サーヴァントは自分を助けるために火に身を委ねた。
だからこそ自分は生きている。その点では、目的を果たせたとも言える。次に繋ぐ希望を残せたのだと思う。
―――大敗なのは確かだ。が、ただ負けたわけでは決して無い。役目を果たし、目的は果たせたのだと。
「……………………………ふざけるなあ!!」
誰かをが叫んだ。生き残った誰もが同じ気持ちを持っていた。
感情が掻き乱れる。声を上げて泣き喚く。それが何に対しての涙なのか、それすら分からない。
―――――負けた。
負けて、負けて、負けて。最後には、逃げた。あの影から。あの、地獄から。
屈した人物は居る。大勢が心を折られていた。
だけど、それでも変わらず空を見上げる青年が在った。
181
:
普通の名無しさん
:2015/04/05(日) 23:17:37 ID:jPbp1rUg
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hollow Earth theory : CCC
王国の反転、仮説世界
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182
:
普通の名無しさん
:2015/04/05(日) 23:18:06 ID:jPbp1rUg
アースセルに築かれた空洞は同時に奈落でもある。
あらゆる行いは虚構に留まり真実に足りえない。
目の前に有っても存在として成立しない事実は仮説として集積するだけ偽りの楽土。
魂すらプログラムとして有るだけの伽藍堂。
古来よりシャンバラなどの楽園と関連付けられた地底世界は、同時に冥府や地獄としての側面の方が遥かに強い。
必然、その悪性情報の奔流の防波堤/ファイアーウォールたりえる存在も禁忌中の禁忌に限られる。
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予兆なく始まった戦闘、一方的な侵略が終わった時には夕焼けに染まっていった。
時間の概念などない筈のアリーナの空に、橙に染まった雲が風に運ばれ彼方へと流れていく。
その空を見ながら、次なる決意を抱く姿が。
彼こそは、戦火の中に生き残ったもの。
ああ、だがその外観はなんと痛ましいものか。
火を思わせる赤髪と同色の血の涙跡を残す瞳は男が魔に属することを意味する。
現状に抗う決意が端麗な容姿を歪めるのならばこれ以上の皮肉はないだろう。
�������� Denn der G���tter Ende d���mmert nun auf.��
「 誉を頒ち栄光の舞台に幕を引く時が来た 」
彼に許された事象は無窮の加速と無間の視座。
過ぎ去る愛しい景色が美しいままであって欲しい。
何の変哲もない日常でさえ素晴らしき日々と仰ぎただひたすらに繰り返していたい。
それがこの者の願いである。��
So, werf' ich den Brand��in Walhalls prangende Burg.��
「故に永遠なる神々を刹那の内に焼き尽くすのだ」
しかし、その想いは穢され砕かれた。
魔人の行軍によって人食街に呑まれかけた男は女の献身によって生き残る。
すなわち、力ある者たちの残酷な運命
���������������� ラグナロク
「 終楽章・天魔失墜 」
かつて竜殺しの英雄の魂と呪いを天界に届けた破滅の焔。
愛を求める誰もを愚かな役者と嘲るローゲの対界宝具。
かつての巫女の預言の再現によって彼女を対価に生き残ることを余儀なくされた。
183
:
普通の名無しさん
:2015/04/05(日) 23:18:43 ID:jPbp1rUg
ただ感じたのは悲憤。
押し寄せる絶望に対比して膨らむのは、守りきれなかった己の非力さに対してか。
その思いは烈火のような憤怒にも似て、膝をつくことを認めさせない。
男に与えられた自身を改造するスキル。��
AIの原則から外れた例外アバターは嘆きに任せて語源通りの維持の化身に男を拡張させた。
バグの増大による自己崩壊も厭わぬ後付け増築。
事実、記憶の多くはすべからく不鮮明。
記憶と呼べるものはまさに砂のように埋もれてただ流されていくだけのモノ。
しかし、それでも失うことの絶望的なまでの恐怖感と憤怒の感情をけして忘れたことはなかった。
許せない、認めない。��
駆け抜けた過去を無駄になどさせない、誓った未来を無為にしない。
光のような一瞬の真実をうつろだと嗤わせてなどなるものか。
消えゆく女の残照を掻き集め、約束された刹那の先の消滅を永遠に引き伸ばし異界を展開し続ける。
他のことなど見えない、聞こえない。堕天して魍魎と化し、魂が焼き尽くすまで唯一つの想いを持ち続ける。��
絶対停止の命令はフロアに黄昏の帳を落とす。
全体からすれば芥子粒程。だが残っている限り栓となり胎蔵曼荼羅を押し留める。
あらゆる生命が飲み込まれる筈の影の再侵略を自身の階層で留め、拮抗を続けている。
愛する日常を守護る限り男は決してうつろわない。
守るという事だけがそれにとっての全てであり、それを侵そうとする者には全霊を以て攻撃するのみ。
ここは求め続けた天上楽土。ここが永遠に続けばいい。
ここは二度と渡さない。
そう渇望を歌い上げながら、それは鳴動を開始する。
かつての舞台の主役が全身全霊で世界に抗おうとしている。
男のことを世界はツァラトゥストラと語った。
184
:
普通の名無しさん
:2015/04/05(日) 23:19:22 ID:jPbp1rUg
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命にて満たす
定命なる人間の命にて
力持つ者らの城を朱に染める
いつかノルンが語った古い詩篇の欠片
だから目を開けたときから、これは夢だと分かった。
だから目を瞑らないように必死で擦った。
そうして、恐る恐る、震える声で。
「レン……」��
その言葉は届き、けれど呼ばれた彼の方が驚いたような顔をして。��
「……ああ、おはようヒルデ」��
彼はいつものような声で、いつもより少し強張った表情で――多分、無理をして、笑みを浮かべた。��
疲弊した躯を薪に火を灯す痛ましさ
嘗ての女の相似であることを男は気付いているのか
何故自分が生きているのかと訊くと男は、ごめん、とだけ呟いた。
それが、今の自分と彼との距離を感じさせて悲しかった。
ぱちぱちと音を立てて燃える残り火が、彼の顔を仄かに染め上げている。
目覚めた場所は何処とも知らぬアリーナの端。
いつものように隣ではなく、正面に座ったのは、どこまでが本当なのか分からなかったからだ。
狂気を脱いだ自分が彼を見間違えるはずがないだろう
嘆きの水底から引き上げた彼の言葉を違えるはずがない
ーーーでは触れることはできるのか。��
安らぎの中で呼んだ名前も、駆け抜けた日々も、繋いだ指の感触も、噛み締めた幸福も確かだったと確信できる。
例えこの身が座に還っても忘れるものか
でもその姿はあまりに儚くて、触れれば崩れてしまいそうで
ただ男の存在を確かめることだけが怖かった。
185
:
普通の名無しさん
:2015/04/06(月) 23:36:28 ID:615LA7m.
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Gott ist tot
神無月にて
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186
:
普通の名無しさん
:2015/04/06(月) 23:37:03 ID:615LA7m.
■■■が人理の定礎となった運命から数年後。
『城』と呼ばれる砦がある。
欧州奥地に人知れず佇む館だった。
便宜上、城と呼ばれていたが由来も正式名も知られず、名称も外見からつけられたにすぎなかった。
ただ在ることにこそ意味がある。そう言わんばかりの、奇妙な砦だった。
曰く、あの砦は獅子の別荘である
曰く、封印指定をうけた魔術師の領土である
曰く、あの鮮血魔嬢2世が監禁されている
曰く、世界を裏から操る魔術結社のアジトである
魔術を知るものは様々な憶測を立てるがどれも真実に足りえない。
その砦の大広間には、今、ふたつの人影がある。
ひとりは黒い姿をしていた。黒い男は笑みを顔に貼り付けている。
背の高い、仕立ての良いコートに身を包んだ男。彼の瞳には隠しきれぬ喜悦があった。
ひとりは白い姿をしていた。白い男は決意を瞳に宿らせている。
白色の何処か水晶を思わせる兵装。彼の瞳には揺るぎない意思があった。
黒い男に名前の類がない。
祝福の人、と集う人もいるという。
だが、その言葉が皮肉にもならないことを白い男は知っていた。
獣の王の祝福など、末法論者や教会の懐古派のことも笑えない。
187
:
普通の名無しさん
:2015/04/06(月) 23:37:48 ID:615LA7m.
『ようこそ。貴様の到来を待ち侘びていた』
微笑を貼り付けたまま、黒い男が言った。
その灼熱の生き様に似合わぬ声で、冷酷な王者にそぐわぬ声で、静かに。穏やかに。
敵意はない。
同胞を迎え入れるかの所作はこの場において限りなく不整合であると同時に適切だ。
『まずは讃えさせてくれ。私に貴様の勇気を』
「勇気か」
白い男が言葉を返す。僅かに震えるその声に込められた感情は、ただひとつ。
「君はそう言って世界を捻じ曲げる。民を嘲笑う残酷な魔王。ようやく君を追い詰めた。ここを失うのは惜しいか」
『私が惜しいと思うのは貴様の存在だよ。錬鉄の騎士より、五大の元素使いより、誰よりも先に貴様はここに辿りついた。
魔道に挑む尊き者よ、私はその勇気が世界から失われることを心から惜しんでいる』
「抜かせ。君は人間を選り好みしているだけだ。君の語る楽土など目で分からないと安心できない独善の理想でしかない」
魔術王、双角王、蒼き狼、第六天魔王、伍長閣下。
魔王の側面を持つ王たちの示す道は確かに人類の範図を広げただろう。
だが彼らの存在は常に戦と犠牲の業の夢にしかないと白い男は告げる。
『だが抑止はアレを受け入れた。人類のシンカを対価に、訪れる破滅のみを制する契約を』
言葉を切ると同時に黒い男は表情を削ぎ落とした。
人らしさを捨てながら優しさに満ちた少年王の笑みを捨て去って。
人らしい強さの為に人に試練を与える冷酷なる魔王のそれへと。
『気高き人よ。外法にありながら誰よりも人間であった者よ。私と共に人類のシンカを見届けようじゃないか』
「返答はひとつだ」
『ほう』
「ふざけるな」
瞬間、白い男は群体と化していた。
結晶化した飛蝗蟲が命の熱量を全身へ伝え体皮を鎧へと変える。
現れるのは燃え盛る炎に生き物がたじろぐように、広間に差す影が揺れるかのような錯覚。
それを見て黒い男は再び目に喜悦を灯す。
「夢と区別出来ないような世界より俺は子供が笑える明日が欲しい」
誇りを薪に、魂を糧に、自らの存在をより高みへ。
特別なスキルではない、あらゆる人間が持ち得る意志の力。
それでこそと惜しまぬ礼賛と共に黒い男は前に、前に。
白い男の跳躍は人の限界とっくに突破して石床に罅を入れ、虫食いの如く浸食した。
振り抜いた腕が互いに交差して振るわれる。
受け止めるのも同時。激突し合う戟音。
片方は右手に銃を、片方は短剣を。
「だからこそ俺の欲/エゴで魔王、今、ここで君を」
『今、ここで?』
「倒す」
188
:
普通の名無しさん
:2015/04/06(月) 23:53:34 ID:615LA7m.
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189
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普通の名無しさん
:2015/04/30(木) 15:44:34 ID:XWIDSXUs
そこは、まるで地を浸蝕する星空の海面 。
青空を模した大地には水が張られ、空には星を模した海峡が続く。
部屋と呼ぶには果てが遠く、周りを檻の如く黒い箱のような機械が埋め尽くしている。
渺茫な空間。事象決定樹、フォールンアンジェリカ。
天上を模倣した海下の世界。
制者の夢/世界を人類史に刻む聖杯そのもの。
40億のサーバーが紡ぐ実体無き量子精神網の仮想空間。
「では、君はこの事態に直接動くつもりはないと?」
その梵に最も近い構造領域にて語る2人の男がいる。
一人はトワイス・ピースマン。
二十世紀末の臨床医学の貢献者にして多くの紛争に従事した医学者。
氷の大地に突き刺す様々な石柱の一角に座っている。
一人はユーサー・ランスロー。
内紛の果てに滅んだ亡国の王にして協会嘱託魔術師。
そして復讐者として多くの戦地で武威を奮い惨めに最期を終える、と観測された騎士の末裔。
共に二つの聖杯戦争の深淵へ辿りついた男たち。
その在り方は無色透明、その中にどこまでも大きい使命感を感じさせる、二人の男性。
190
:
普通の名無しさん
:2015/04/30(木) 15:45:22 ID:XWIDSXUs
「場合による、とだけ」
「それは指導者の言う『前向きに検討する』ではないのかい?」
特有の空虚さを放ったまま、トワイスはある種の皮肉を送る。
その口調は、非難というより困ったものだと落胆するように。
「やはり、君は選ばないのだね」
表情に乏しいままにトワイスはメガネを持ち上げる。
氷の大地の真下には、箱型の何かから光が漏れている。ユーサーは、そこからゆっくりと振り返った。
「私としては貴方が彼を拒絶したことが少し意外でした」
「黄金期を迎えないアセンションでは、可能性を潰しかねないというだけだよ。定命の人間が夢を叶えるには世界のリソースは少なすぎる。結果として強者となる者が理想を掴む権利を持つ、それを否定しては人類史は語れない」
すべての人間が望みを叶えることなどできはしない。
様々な要素を満たした人間だけが望みに手を伸ばすことができる。その過程で、争いが生まれることは否定できない現実だ。
流血を忘れて歩み続けるには人間の精神は成長していないと、トワイスは語る。
191
:
普通の名無しさん
:2015/04/30(木) 15:46:04 ID:XWIDSXUs
「君がそうであったように成長の為に多くを食い潰した。その喪失を前に、それを無視して完成するなど許されない。君なら、理解できる筈だ」
独善。偏執的。
トワイスの言葉はそんな独り歩きに満ちていながら彼自身がそれを正しいと認めていない。
歪んでいながら真っ直ぐな信念であるのは、それだけ願いに対し真摯であるからだろう。
「その為に聖杯戦争を?」
「地に嵐を。世界を己の色に染める個人を鍛えるのにこれ以上の舞台はないだろう?」
戦争の犠牲者であり、それを憎みながらも過ちだと否定できなかったトワイスが至った答え。
人類が存在する意義であり、本能。
「それは亡霊の言い分ですよトワイス。唯一の結論を得た者が今を生きる者達に干渉すべきでない」
なぜならそれは自由をさ迷う中でこそ選択する生者の価値を貶めることに他ならないから。
真に生きたいと思う時にだけ、人生が生きるに値するのなら、あの戦場こそが至高であり、そんな暴論が通るなら人類は争いを忌諱しない。
それは長い時間をかけて人間が学び、語らい歩んできた証ではないか。
「未来を奪うことなど許されない。機械仕掛けの英雄は最後の最後。終わりきった後でなければならない」
「例えそれが、四万と二千三百を殺し、九千と八百二十四の流浪を無辜の民に課すことになっても?」
「......気に入らないからとやり直して、作らされた笑顔を前に満足するならば、それこそ責任がないでしょう」
192
:
普通の名無しさん
:2015/04/30(木) 15:46:46 ID:XWIDSXUs
そんな王はきっと次の危機が瀕した時に国をあっさりと見棄てる。
過去が許せないから未来を用意する。聖杯を以て結末を授け、後悔に喘ぐ必要性を取り除く。
人々に欲などいらない。夢などいらない。
ただ生き、ただ満ち、ただ死ねばいい。それで、すべてが解決する。
「そんなものは思考停止ですらない」
未来は“未だ来ない”
それは現在こそが未来である死者にはない特権だ。
生前の信条に縛られるトワイスは過去を粗末に存在する未来の在り方に怒りを持った。失ったものを嘘にしない為に、どうか歴史をやり直してくれ。
しかし、ユーサーは思う。
人間はそれでも前に進んでいる。
手が届かない程に遠く、息がかかるほどに近い世界。人はそこを目指してどこまでも歩いていける。
現に128人の現在を生きるマスターとそれに応えた過去を刻んだサーヴァントがいたではないか。
そう宣言したユーサーにトワイスは、優しげな――それでもやはり冷めた視線を向ける。
「何であれ、君の決断は戦いに帰結している。中枢に座そうと帰還できるのはただ1人だけ。これは自分以外の世界を消去できなかった君の甘さが招いた結果だ」
「余白があるうちは、絵は完成しない。だからこそ最後の一欠片であり続ける。他ならない貴方の在り方だトワイス」
193
:
普通の名無しさん
:2015/04/30(木) 15:47:22 ID:XWIDSXUs
完成してしまった絵は、それで終わり。
どんな生命も、どんな文明も、いつかは終わる。だけども終わる事と続かない事は違う。
終わりを知るということはその物語を閉じ、次へと無慈悲に進むこと。
「我々は、それを踏まえた上で1つの世界に永遠に留まるか、それとも進んでいくのかを選択しなければならない。そうでしょう?」
「それはこの世界を諦めるということかい?」
「いいえ。明日に至る可能性を残し、期待するということです」
今日より明日がいい日でありますように。
そもそも人が生きるということは、その繰り返しなのだから誠意を持って進まなければならない。
未来を残す為の一欠片となってでも、この手で誰かを守れたなら、その時こそ、俺は私を赦せるのだろう。
「その時まで己が栄光の為でなく―――」
許されるなら戦場に漂う悲劇を払う、あの聖剣の輝きのように。
全てを戦場に置いてきた自分を導いてくれたあの騎士王のように。
「………………」
そんなユーサーの言葉を、トワイスは無言で受け止めた。
なぜだか、ほう、と一つだけ息を吐いて。
結果から過程を選び、そのうえで進んだ贖罪の王は堕天の御座より、地上の反転を俯瞰して。
かつての日を偲び、いつかの日をを思い、それを成す時を尊んでユーサー・ランスローはただ見守っていた。
194
:
普通の名無しさん
:2015/05/07(木) 22:25:55 ID:CFIRwXk2
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Guardian of Avalon
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普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:23:48 ID:g0Ae1IeE
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時計が/軋む/音がした。
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キヒヒキヒヒと呻くソレは機械仕掛けの哄笑にも似ていて一度気付いてしまえば微睡みの淵を掻き乱す。
浅い眠りの中で一つの小さな世界を救済した聖者の夢を見ていた。
善でありたい。正でありたい。楽でありたい。清かでありたいと。
我々は天秤の咎なき方であるが故に悪たれ邪たれ苦たれ穢たれと。
二元論の対を自分以外に求めずにいられなかった弱き人々。
例え唾棄され名を奪われ概念に堕とされ人への憎悪が執着せど確かにソレは救いを成したのだ。
故にソレはこの褥に招かれた。
地の底に根付く無窮の闇。鬼子母神の胎盤。
我が身の他に罪はなく、我が身の外に咎はない。
奇しくも遠い日に託された祈りと相似した容を福音に、ソレは再び夢を見る。
196
:
普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:24:39 ID:g0Ae1IeE
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深海に沈んでいる。
繋ぎ合せた意識が主体性を虚ろなままに認識した比喩はある面において的確であり、事実本来ならば2分と持つ前に男は拉げているだろう。
だがそれでも男は暗がりに不遜と考察を重ねている。
不思議な感覚だった。
意識は限りなく鮮明なのに脈絡ある思考が纏まらない。
男自身の精神ではなく、取り巻く世界が混濁し意味を失っているからだろう。
そうでなければ凡夫たる己がコレに浸っていられる道理がない。
『胎児の夢...いやコレは...』
矢継ぎ早に数多の景色が移っては消えていく。目に映る情景は悲劇に満ちていた。
慟哭があった。屈辱があった。無念の怨嗟と喪失が、殺戮が、略奪が、背信があった。
流血の焦土に裏切りと報復を失意と迷走の生命遊戯畦放溝埋樋放頻蒔串刺生剥逆剥屎戸生膚断死膚断白人胡久美近親犯強姦上通下通畜犯罪昆虫災高津波災高津鳥災蓄仆蠱物罪種種ノ罪事此出逆巻一切病苦厄を天狗外道に坐す我が身に返り給えば今日より始て罪と云罪は不在と祓賜ひ清賜事森羅万象諸々憎悪し邪とし醜いと断じて尚認めよう許そう私がこの悪の責を負おうと声高らかに詠いあげるーーー
197
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普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:25:33 ID:g0Ae1IeE
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全ての罪咎余さず見渡す天望回廊。紡ぐは全人類への呪詛にして祝詞。
こんなものがある場所など、閻魔殿か数多の悲劇の焦点に違いない。
即ち、怨天祝奉“この世最後の悪”
そしてようやく理解する。悪夢の精髄で編み上げられた魔城...ここはかつての男自身の夢/過去そしてその渇望の果てだった。
『全ての悪を負う聖者の杯...例え歪だろうと性善の肯定であることだけは違いない...か』
自らを悪と定めたのは果たして何時だっただろうか。
反定立の軋轢/革新によって時代は航海の血路を転輪する。
時にそうした莫大な犠牲を担う英雄達、その受け皿となる王者が現れる。
秩序とは多数決が善と見做す行動規範。
大衆が正義と奉じるがゆえに強固でありながら移ろいやすく、身を任せる安心感/堕落を代償に個人に対し恐ろしく脆い。
独りだけの英雄では世界を変えられない。救うだけの王者では停滞を止められない。
その事実にこそ男は絶望し破戒者となった。
王や英雄の資質などなくとも意志を持って踏破せよと無理難題を刻んだ。
その夢こそ末法の再現、黙示の受理。
人間に神の如く復楽園を築き上げろなど狂気の理想に他ならない。
198
:
普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:26:20 ID:g0Ae1IeE
今更になって男は自嘲めいた笑みを浮かべる。
秩序の檻、法の守護。どちらも世界に欠かせないものだ。そもそも一人に滅ぼせる世界なら初めから秩序などあるはずがないのだ。
だが男が歩みを止めることはなかった。気づいてしまったなら為さねばならない。
それこそが己の原点、“この世最後の悪”の存在意義。
『ああ、なるほど確かにそんなものは魔王でしかない』
自称したことは数える程しかない筈だが、と零す男こそは魔人の長。
その銘は王器。その試練は血税。拓く荒野は魔道楽土。
遍く戒律をまずは壊そう。己の誇りを世界に示せ。
その願いは確かに多くの勇者を生み、数多の秩序は燃え落ちた。
この世界で庇護者でいる事は難しい。誰もが主人公になる代わりに弱者に甘んじては何も変わらない。
故に今、辿り着いた眼前の扉を前にした時も一切の躊躇はなかった。
199
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普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:27:30 ID:g0Ae1IeE
『――――』
だが、それを開けたその光景を前にした時、流石の男も瞬間言葉を失った。
窓からは夕日の光が射し込んでいる。黄昏の室内。黄金に照らされた風景。
窓を覗けばきっと疎らになった校庭が目に入るかもしれない。
踏み入れた途端まるで甘い芳香を残す部屋の清潔感に圧せらた錯覚を覚える。
そこは健康管理衛生室、俗にいう保健室だった。
.
.
「――義兄様」
ふと見ると、傍らに少女がいた。
規定の制服を纏っていたが、アシンメトリな前髪に隠した妖しく揺れる瞳が、僅かに染まった頬が、彼女をただの保険委員でないことを語っている。
「あらあら。随分と粗雑な開け方をなさる殿方がいらっしゃると思ったら義兄様だったなんて。こんなのが感動の再開だなんて、わたくし義妹として悲しいですわ、ええ、悲しいですわ」
...訂正。その言動が彼女がアンチ癒し系に属することを雄弁に語っていた。
「どうなさいました?ついに記憶力まで残念になられまして?まあ大変、義兄様から口賢しさを除いたら悪巧みくらいしか能がないではありませんか。貴方の義妹、遠坂胡桃ですわ」
二つに分けて前に垂らした艶やかな長い髪を揺らしながらこちらを小馬鹿に嘲笑う彼女の声。
彼女は男に触れる寸前まで近づくと首元に指を這わせるように腕を回した。
その仕草が脳髄の底を擦るように思考を乱す。混じる花の香りが受け入れよと囁く。
声の主は知らない。だが確かにその声には覚えがあった。
200
:
普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:28:47 ID:g0Ae1IeE
「うふふ。でもよく来てくださいました、義兄様。わたくし、とてもとても嬉しくて、体がぼーっとして...身体が熱くて...」
『インターフェイスを用意するならば彼女の方が最適ではなかったのか?』
話を切り、真実を突きつける。
演出された焦燥感の中で少女の言葉は蜜のようだ。凡庸な己が身にその声は抗いがたい。
手玉に取られてしまえばいい、彼女は自分を害しない。
そう知っているからこそ彼女の前で無様を晒す訳にはいかなかった。
『いや...そうだな...そういうことか。ならば願われた通り斯く在るのが私達だ』
窓を覗くと逢魔ヶ刻の校庭は渦巻く黒い泥に変じている。
深紅の空に黒い雨が降る中で吹き渡る風はまるで怨嗟の様。
それを支える漆黒の太陽に浅く溜息を吐き捨てて男は女に向き直った。
『...あれから十年よく持った方か。だが同じ願いを叶え続けるには足りないすぎてしまったな』
「ええ。お陰で最後に聖杯が触れた願いがこうして体現したようですわ」
女はどこか諦めたかのよう呟くと二歩下がる。
わざわざ領域を確保してまで造った舞台をあっさり看破された事に拗ねているのかもしれない。
もしくは仮に茶番だと分かっていても偽りの逢瀬を続けていたかったのか。
『 ......この世界は楽しいか?』
思考が途切れる。男は不意にそんな事を訊ねた自分に驚いてしまう。
混濁した思考の中でもこの男は人に問わずにいられない性らしい。
それとも、それは在りし日の感傷か。
「ええ、ええ。もちろん。誰も彼もが一生懸命で、退屈で、素敵で、わたくしつい嫉妬してしまいそうですわ」
『ならば私にそう願えばいい』
横目に見た彼女の様子は――静かだった。
男の言葉にも動揺した様子もなく、冷静そのもの。
それはこの願いの問答をすでに終えているものだから。
201
:
普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:29:42 ID:g0Ae1IeE
『未来に興味がない、人間は既に十分幸福だなどもう誰も思わない。人類は再び足を踏み出した。ならばシステムでいる必要はないだろう...君はどうしたい?』
人間が仮に何が正しいかでなく何かを悪だと批判することでしか測れないというならば正義など前提から語るべきでない。
ならば、目前の悪に対し行うべきは勇気をもって糾すこと。
それが何を意味するのか...二人の最悪は理解していた。
「全く貴方はいつも試すようなことばかり言って。わたくしが確かに在た筈の場所は他にありますの」
言葉をあっさり払い除けて、彼女は男に宣言するように語る。
道を示したのは彼、助けてくれたのも彼。だけども選んだのは確かに自分だったから、例え罪深けれど■■■には誇りがあると。
「だから“私”が再び歩き出すなら、それはその場所の筈なんです」
その言葉に男は眩しいものを見るかのように目を細めて、かつての彼女を重ねて間違っていなかったと確かめるように。
『ああ、分かった。 決断する限り私は君の味方だ』
「ええ、わたくしは魔王のエージェントですもの」
頭を侵していた雑音が消える。
同時に、目の前にいたはずの少女の姿も消え去った。
後には1人、保険室に残される。
202
:
普通の名無しさん
:2015/05/15(金) 20:30:45 ID:g0Ae1IeE
『...らしくない』
何度目の自嘲か男は思わず顔を手で覆う。
自身が斯く在る以上先の言葉は男の人格が紡いだに違いない。
停滞を打破し試練を以て人類をシンカへ導く。
字面を見れば素晴らしい理想だろう。
だがそんなものは飾りに過ぎない。男の本質はもっと単純で幼稚なものだ。
いつも諦観していた。
非才に見合わぬ特性に焼かれ全てに馴染めず渇いていた。
だからこそ英雄譚に目を輝かせる少年の様にただ、勇気に憧れた。
つまるところ、男はあまりに人間信者すぎたのだ。
『どうやらお互い鏡に向かってのお喋りは苦手らしい』
魔王の殻を被った男は居心地悪そうに音の消えた室内に独り愚痴る。
先程の邂逅はおそらく調査、その為の意思として呼ばれたのだろう。
夢を通しての大聖杯とのリンクの修正。
それが終わったならば次に訪れる時こそ聖杯戦争の終焉に他ならない。
なら君が次に来る時を楽しみにしていよう、と呟いて再び男は無へと還る。
黒い太陽の下で魔王は空亡の姫と共に勇者の来訪を待ち侘びていた。
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