したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

【Fate】アースセル「真なる聖杯を手に入れろ」【避難所】

58 ◆XFKJOt0a3Y:2014/06/02(月) 22:22:34 ID:Dwnieayc
                                           ...|   (. (,  ,r' 、 ´ ̄      `' ゙i_\               
     ______、__  ,  -=… ー  、 ))                .|    >  -ー      ゛'ア ‐- \.`l '、              
     |\_____≧>          ヽソ                 |   `          ゛'     ン、,   ゛'゙i.\                
     }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ / /        ` 、               | ,r'  ハ  .   `  、  \ ‐-  ,. ゙iV             
      }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ./ /    /    i  ヽ              .| '   !   '. \ ‐ .,_  \  \ '., ,. ッ゙i' ,             
      .{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l ./  {    //   ハ ',               ..| ' .イ ! ゙i   ' 、\゛'-ー\. \' ゙i ,  ',r' ノ 〉               
      r=__;,;=- ":./   レ´,, ’V"メ ノ/ .ノ | ;  |              | ソ !  ゙i \  \゛>テ;:fハ\゙i ,゙il   \.lゝ              
     =」/:.:.:.:.:.:.:ノ    /仆乍ミ(/ ノ.ノ--l ノ | .!             ..|  (,,ト ゙iト, \ ゙i  ー´   ` )!\ ゙i   \i ` 、         
  /⌒:.:.:.:.:.:.:.:./    /  乂うォ   " f=ミ,レ,' ノノ ,            .|  、イ  !ソ)  ゛'       7二!,r'.゙i.゙i'、 '\'., '}            
./  /.:.:.:.:.:.:.//   人  ´`     {うjj //〈 j ヽ           .. | ,r' l.  !冫        ア二二マ T、 ゙i',_\ ゙i )           
| .// ',:.:.:.://  /.八ヘ         ,¨`l ~ トJ   ',           ..| ( !.  ト   =‐  ィ.,_)ニニマ_|_,r'_'l  ゙i.}             
|´ .| /}:.:.:´  ./ |ノ:.:.:.t ..、   −−  .ノ  .|U    。          ..| !、!.,  (,. \     )、-=ニ二二二二゙i   'l            
   レ  |/ { ./  ノ }:.:.:.}_   .        }   リ\   ¨^ゝ         ..|   (,!、. ゙i.'., \ /{二二二二二マ<77777777777777ィ,    
       V    /=イ ー--=z:'    ノ|  .ノ   }  / ゙ ,         .|    \ ' )-ー,r'三lニニニマ‐ハ,゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i   
          _ `´-<      ',---= ノ ノ 、   ,<            |      'l.!、-=二二!_マ゛=ニ∧゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i}  .
        , '      ’ 、ー liヽ  |"   ` 、   ヽ   丶       ..|       l二二 _-ニィ.,゛∧,゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i'!   
       /         \ /!!!iii:ト |  、   |\   。    、    ..|     、 ‐、ー-==ニ二二二{,゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙iV   
.       {           . V ヾミi」 ゙  , x,   |  ⌒《;ヘ     ,   ..|   /゙i>-=ニ二ニ=- .,_゛''-ニ゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙iV    
            y、   ≠⌒ミ丶 y "彡¨"ヽ,{   |i  ',   _,, -=-ァ |  ハ,゙iッニニニニニニニイ, '-゙i゙i゙il゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙iイr  .
       }    { !  // T゙ ` - .._}}´   ||. }T   |i   , 彡- ¨´  }....|  l゙iム二二二二二ニニニマ .ムィ, ゛'l゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i'l  .
       ,    ,  ,ノ/   |l     ,    .|l. , レ --・、  \___ノ .|  ム二二二二二二二二マ .ム二二'l゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i゙i

59普通の名無しさん:2014/07/02(水) 14:37:13 ID:AnlFQkcA
彼等は、その生涯を一つの暗殺の為に消費する集団。
 その生涯の殆どを殺す技術の為に使い。
 その生涯の一瞬だけで、彼等の価値は失う。

 今日はその暗殺者がこの地にやってくる。

 聖杯戦争でアサシンを呼んだというのに、我が父は心配性だ。
 しかし無理もあるまい。実質アサシンは、遠坂時臣の指示下にあるのだから。
 そんな事を思いながら、礼拝堂にて暗殺者を待つ。

 礼拝堂の扉が開き、小さな足が踏み込まれる。

麗羅「こんにちは。山の上からやってきました。虚木麗羅です」

 そうして、現れた黒い少女は、なんと馬鹿げたことか。

 ―――私の娘と変わらぬ歳の少女であった。

 その少女の黒い瞳に、言峰の姿が映る。
 黒い瞳は、まるで言峰綺礼を呑み込むかのように捉えていた。

          ◇

 冬木市の藤村組の前に、衛宮切嗣と衛宮士郎はいた。

切嗣「すいません。士郎の事をしばらくお願いします」

 衛宮切嗣は組長である藤村雷画に頭を下げる。

大河「いえいえ、構いませんよ! 士郎もうちの家族みたいなものですから!」

 そう答えるのは雷河の孫娘である大河である。

切嗣「ありがとう、大河ちゃん。僕たちも安心して病院に行けるよ」

大河「それ程でも〜! ……でもですね、切嗣さん」

 花の様に笑っていた大河が、真面目な顔付で語りだす。

大河「私達は士郎を預かるのは構わないんです。けど、本当に士郎を連れていけないんですか?」

大河「折角の妹が生まれるのに」

 そう言って、車に乗っている妊婦のアイリスフィールを見る。
 そのお腹には赤ん坊が宿っている。

 切嗣は自分達が病院に行っている間、養子の士郎を頼みたいと頼んでいるのだ。
 これは前から話していたことなのだが、出産程度なら士郎も連れていけないかと、大河は思っているのだ。

切嗣「それに関しては、本当にすまないと思っている」

切嗣「でも、アイリは体が弱くてね。これから忙しくなるし、士郎の世話も出来そうにないんだ」

大河「そうなんですか……」

 しょぼん、と落ち込む大河。

士郎「爺さんは安心して行って来いよ。家を俺が守っておくから!」

 幼いながらも胸を張って拳を握る。

切嗣「士郎が守ってくれるなら安心だ。僕たちも安心して病院に行けるよ」

 士郎の頭を撫で、車の運転席に乗る切嗣。

切嗣「それじゃあ、後はよろしくお願いします」

大河「任せて下さい!」

 藤村組の面々が礼をして切嗣とアイリを送る。
 士郎も手を振って自分達を送り出してくれた。
 切嗣はそれをみると、車を発進させた。

アイリ「……幸せね。切嗣」

 送り出してくれる人たちを眺めながら、後ろにいるアイリが呟く。

切嗣「ああ、僕たちは幸せだよアイリ」

切嗣「この幸せは、いつまでも続くんだ」

 アイリスフィールは聖杯だ。
 サーヴァントが脱落していくたび聖杯として機能し、人としての機能を失ってしまう。
 つまり、アイリが聖杯としての機能が働くたび、お腹にいる赤ん坊の命が危険にさらされるという事だ。

 妻の為、息子の為、娘の為に、事前に聖杯戦争を潰そうとしていた切嗣。
 その努力は実らず、聖杯戦争は開始されてしまった。

 これから始まる聖杯戦争は、できるだけ長期にわたってサーヴァントと渡り合わなければならないという、辛い条件が付きまとう。
 しかし、衛宮切嗣はそれでも構わない。

 どれだけ苦難が待ち受けていようと、それが家族の幸せの為なのならば、彼は越えて見せる。
 既に衛宮切嗣は、万を切り捨て一を救う『家族の味方』なのだから――――。

          ◇

 始めに言っておこう。
 この物語に救いは無い。
 最後に笑うのは、赤い瞳を宿す黒い少女と目覚めた神父。

 これは、大義の物語。

60 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/02(水) 14:44:12 ID:AnlFQkcA
前に愉悦三次創作書くとか戯言言っていた者です。
オリジナル設定が多くなってきて、自重してましたが、最近スレが賑わなくて、プロローグを投下してみた。
反省はしてるし後悔もしてる。
好評ならまた投下したいなと思ったり。

P.S.
ちなみに黒い瞳は誤字にあらず。
後で赤くするからいいんだよ!

61 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:00:14 ID:nQJjkgfE
 言峰璃正は早速山猫である虚木玲羅に仕事を与えた。

 聖杯戦争の参加者を暗殺せよという、あまりにも単純で至難な仕事を。

 それには条件が付いていた。


 第一に、その存在を遠坂時臣に知られてはいけない。
 第二に、遠坂時臣と言峰綺礼を傷つけてはいけない。
 第三に、聖杯であるアインツベルンの守り手を言峰教会に連れて来い。
 第四に、魔術師殺しの暗殺を重要事項と考えよ。
 第五に、言峰璃正と言峰綺礼の命令は絶対である。


 条件を聞いて、虚木麗羅はコクコクと頷く。

 その姿を見て、綺礼はその少女が心配でたまらなかった。

 それも無理はあるまい。何せ四歳に満たないと思われる幼い少女だ。


 しかし、綺礼が心配しているのはそれだけではない。


 虚木麗羅は、あまりにも無機質なのだ。

 花を見ても笑みを浮かべず、蝶を見ても追いかけようともしない。

 その点だけで見れば、虚木麗羅は自分と変わらない人間だ。

 暗殺者の里では、自分の様な人間が暗殺者に適しているとでも言うのか。

 綺礼にはそれが不思議で堪らなかった。

62 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:01:41 ID:nQJjkgfE

 虚木麗羅はアサシンたちが情報を集めるまで、言峰教会で隠す事となった。

 アサシンの一人にアーチャーを暗殺してくるように命じ(実際はアサシンが落ちたと思わせるための茶番)、虚木麗羅の元へ向かう。


 何でも、暇つぶしの相手になってほしいのだとか。


 綺礼は虚木麗羅のいる部屋の扉を開いて中に入る。

 部屋にはベッドで寝転ぶ虚木麗羅が待っていた。

 それを一瞥すると、綺礼は溜息を吐く。

綺礼「暇つぶしの相手とは……貴様それでも暗殺者か」

麗羅「つまらなくて死んじゃいそうなの」

 虚ろな目で答える少女に、綺礼は戸惑いを覚える。

 彼女の黒い目は、どこまでも深い闇を連想させるのだ。

 山の上の一族というのは、ここまで人間性というモノが無いのか。

綺礼「暇なら聖書でも与えるが?」

 しかし、相手は子供であると同時に暗殺者だ。

 丁重に扱わなくてもいいだろうと、懐から聖書を取り出す。

麗羅「四歳の子供が、文字が読めると思う?」

綺礼「…………それもそうだな」

 それにしては随分と大人びていると思う。

 いや、ただ形式的な物事を真似ているとでもいうのか。

 それすらも、言峰綺礼には理解することができなかった。

63 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:03:27 ID:nQJjkgfE


麗羅「綺礼君は何で聖杯を自分の手にしようと思わないの? アサシンのマスターなんでしょ?」

 質問を投げかけてくる虚木麗羅。

綺礼「生憎、私には叶えようと思う願いが無くてな。聖杯など必要ないのだ」

綺礼「故に、我が師の為にこの聖杯戦争に参加している」

 本当は、それだけではない。

 だがそれは、別に言わずとも良いだろうと綺礼は考えた。

 自分に似通った点があるとはいえ、暗殺者である前に子供。

 そんなモノに自分の苦悩が理解できるとは思えない。

麗羅「その師のお願いってなに?」

綺礼「魔術師であるお前には関係のないことだ。 私は忙しい身でな、今日はこの辺にしておこう」

 そう言い放ち部屋から出ようとする綺礼。

 が、扉が開かない。

 確かにドアノブは反応しているのだが、引く事が出来ない。

 立てつけが悪いのかと思い、力づくで引っ張る。

 鈍い音を立てて、ドアノブだけが取れてしまった。

 仕方がない、ぶち破るかと思っていた所。

麗羅「酷いわ綺礼君。レディ相手に素っ気ない」

 突如、声が自分の下から麗羅の声がした。

綺礼「……どういうことだ」

 麗羅の姿を見ようとする前に、飛び退いて戦闘態勢を整える。

 この時、言峰綺礼という男は驚いていた。

 ――――なぜこの少女は、自分が気付かずにあそこまで近づいたのか?

 言峰綺礼という男は、かつて数多の戦場を潜り抜けていた。

 故に、人の気配というモノには敏感だ。

 だというのに、虚木麗羅が自分の足元にいたにも拘らず、声がするまで気が付かなかったのだ。

 そして、扉が開かなかったのは彼女が押さえていたからだろう。

 単純な力比べで、言峰綺礼という男が四歳の少女に負けるのは、初めてであった。

 恐らく、これが暗殺者たる彼女の力の一端なのだ。

 扉の下で首を傾げている少女を見ながら、綺礼は恐れながらも安心した。

 自分が虚木麗羅の依頼する者で良かったと。

 これが戦場でこの少女と敵対していたら、間違いなく死んでいた。

64 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:06:13 ID:nQJjkgfE

麗羅「そんなに怖がらなくてもいいじゃない。綺礼君ったら怖がりね」

 虚ろな目で、綺礼の目をの目を覗き込む。
 まるで自分を見通す様な黒い瞳に、戸惑いを覚える。

綺礼「……貴様は本当に子供なのか? それとも、山の上の一族は皆こういった者なのか」

麗羅「子供よ? 将来に夢を持つ子供。表情筋は生まれつき」

綺礼「消耗品である暗殺者だというのに、将来に夢を持つだと?」

 麗羅の言葉を鼻で笑いとばす綺礼。

綺礼「下らん、この仕事が終われば貴様は死ぬ運命にある。 だというのに、お前は何を望むというのか?」

 その言葉に、麗羅はいとも簡単に返す。

麗羅「さあ?」

 ただし、疑問形でだ。

綺礼「何だ。自分の事も分からないのか」

麗羅「それは綺礼君も同じでしょ?」

 麗羅は黒い瞳で、まるで魔眼の力でも持っているかのように引き込んでくる。
 吸い込まれてしまいそうな瞳に、綺礼は懸命に眼を逸らす。

綺礼「……一体何のことかわからんな」

麗羅「願いが無いって言ったのは綺礼君でしょ? それとも、別の何かを悩んでいたりするの?」

綺礼「どちらにせよ、お前には関係のないことだ」

 壊れた扉を力づくで外し、部屋から出ようとする綺礼。

麗羅「お願い、見つかるといいね」

 麗羅はそう声をかけたが、綺礼は構わずアサシン達の元へ向かった。

 アーチャーに殺されるようにと、躍らせる為に。

65 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:09:33 ID:nQJjkgfE

――――

―――――――――――

――――――――――――――――――

 ある日の夜、アサシンがアーチャーによって脱落した。

 使い魔によってその光景をみたマスター達は、誰もがそう思った。

 それをまず知ったのは衛宮切嗣。

 夜の道を走り抜けながら、焦っていた。

切嗣「……まさか、もうサーヴァントが一騎落ちてしまうだなんて」

セイバー「落ち着いてください切嗣。まだアイリスフィールに負担はありません。まだお腹の赤ん坊は大丈夫でしょう」

 落ち込んでいる切嗣に、助手席にいるセイバーが慰めの言葉をかける。

 彼女の真名はアルトリア。ブリテンの伝説の英雄・アーサー王その人である。

 そんな英雄が女だとは驚いた切嗣だが、今はそうもいっていられない。

 騎士王なら人情もあると思い、こちらの状況をざっと話した。

 この聖杯戦争を勝ち抜くつもりはあるが、子供が生まれる前にサーヴァントが脱落するとますい、という事を正直に話した。

 自分の娘の為の行動と聞き、この騎士王様は納得してくれたようだ。

セイバー「切嗣、ライダーとキャスターを除けば、他のマスターの拠点は掴めているのですね?」

切嗣「ああ。その二つ陣営がどこにいるか、僕には見当もつかない」

セイバー「……赤子が生まれるまで、停戦をしてもらうように教会に相談してみてはどうでしょう?」

切嗣「いいや無理だね。魔術師っていうのは、僕たちの赤ん坊の命なんざどうとも思わない。それに教会は信用ならないよ。何せ、言峰綺礼がいるからね」

 言峰綺礼や他のマスターの資料をセイバーに渡し、切嗣は溜息を吐く。

切嗣「こいつは誰よりも激しい生き方ばかりを選んできたくせに、この男の人生には、ただの一度も『情熱』がない」

切嗣「こいつは――――きっと、危険なヤツだ」

切嗣「アサシンを失ったからといって、きっと他に何か手があるに違いない。教会で保護してもらうなんて、全くとんだ安全地帯を見つけたもんだ」

切嗣「監督役を殺そうとするヤツがいない限り、奴の安全は保障されたも当然だと言える」

 ここまで居場所も目的も予測できているというのに、殺すことが出来ないのはもどかしいにも程がある。

 いままでのやり方が出来ないとは分かっていたが、まさかここまでとは思わなかった。

セイバー「なるほど。では、赤子が誕生するまで、他のサーヴァントの戦闘する最中に割り込まなければならないという事ですね」

 難しい顔をして、セイバーは資料を読んでいく。

切嗣「ああ、更に生かさず殺さず。……出来るかい?」

セイバー「……流石に難しいでしょうね。しかし、相手も序盤は引き際を理解しているはず」

セイバー「そう考えると……相手にもよりますが、おそらく一週間は何とかなるかと」

切嗣「……一週間か」

 それはキツイ。
 アイリの出産予定日は二週間後だ。
 ここまでマスターが揃えばそうなってしまうのもおかしくはない。

 帝王切開を視野に入れるべきか。
 しかし、それは不味い。
 聖杯であるアイリに手を加えるのは、母体にあまりにも危険すぎるのだ。
 この戦いが始まってしまった今、止めることは叶わない。
 アイリが聖杯になってしまうのなら、そのアイリを元に戻せるのも聖杯だけ。
 そういった意味でも、そんな危ない橋を渡ることは出来ない。

切嗣「でも、まずは――――」

 目的地に着き、セイバーと切嗣は車からに降りる。



切嗣「――――あのサーヴァントを何とかしなければ」


.

66 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:11:47 ID:nQJjkgfE


 ――――その地で待っていたのは、二本の槍を携えたサーヴァントであった。


 槍を持っているという事は、ランサーで違いないだろう。

ランサー「――――よくぞ来た。 今日一日、街を練り歩いて過ごしたモノの、どいつもこいつも穴倉を決め込むばかり」

ランサー「俺の誘いに応じた猛者は、お前だけだ。その闘気、セイバーとお見受けしたが如何に?」

 恐らく、セイバーに対し言ったのだろう。

 だが切嗣は、セイバーの前に出てランサーに問いかける。

切嗣「君、一人かい? マスターはどこにいるのかな?少し、君のマスターとお話がしたいんだけどね」

ランサー「……俺はそこにいる者と話している。割り込まないでもらいたい」

切嗣「それはすまないことをした」

切嗣「けど、君が僕のサーヴァントに用があるように、僕も君のマスターに用があるんだ」

切嗣「君はそんな事を言うんだから、そのマスターも穴倉を決め込んでるわけじゃないと思うんだけどね」

ランサー「話すと思うか?」

 ランサーの言い分はもっともだ。

 敵にこちらの情報を教える等、デメリットでしかない。

切嗣「なるほど。さぞ名高い騎士とお見受けしたが、どうやら外れらしい」

切嗣「正々堂々と公正な手段を取れないなんて、よっぽど蛮族に近い英霊だ」

切嗣「ん? こういう時は、反英霊って言った方がいいのかな、セイバー?」

セイバー「……マスター、私のクラス名を晒してどうするのです」

切嗣「相手は予想がついている様だし、構わないだろう」

切嗣「それに、君がその程度の事を知られただけで、負ける英霊だとは思っていないよ」

セイバー「――――ええ、そうですね」

 少し不機嫌になってしまったなら、 褒めれば/飴 を与えれば いい。

 何ともまあ扱いやすいサーヴァントだ。

ランサー「――――その程度の挑発に、俺が乗ると思っているのか?」

 微かに怒りの感情が籠った声で、槍を切嗣に向けるランサーと思わしきサーヴァント。

切嗣「いやいやすまない。騎士ってそういうモノかと思っていたんだ」

切嗣「人を殺して胸を張るなんて、バカここに極まり、といった所じゃないか」

 ハ、と鼻で笑いながら、やれやれと肩を落とす切嗣。

セイバー「……切嗣、私は分かっていますが、それは全ての英霊を敵に回す発言なので、注意してください」

切嗣「ああ、すまないね。気を付けるよ」

 敵を煽り、冷静な判断を出来るだけ削ろうという魂胆なのだろう、とセイバーは考えている。

 それはそれで事実ではあるが、紛れもない切嗣の本心だ。

 切嗣がセイバーにそんな事を言わないのは、何の得にもならないからである。

セイバー「ともかく、あのサーヴァントは私にお任せを。切嗣は姿の見せないマスターに警戒してください」

切嗣「くれぐれも、あのサーヴァントは落とすなよ。セイバー」

セイバー「承知の上です。しかし切嗣、貴方も出来れば話し合いで解決していただきたい」

セイバー「流石に同じ相手に何度も武器を交えると、こちらの手も予測されてしまう」

切嗣「そうだね」

 できればマスターをねじ伏せて、令呪でランサーに停戦を強制させたい。

 戦いから離れた自分では、些か無理があるかもしれないが。

 舞弥からの情報から目を通せば、相手は生粋の魔術師なので、簡単にねじ伏せられるだろう。

 ……いきなりそんな手段で出ては、他のマスターに警戒されてしまうので、まずは話し合いの交渉にした方がいいかもしれないが。

.

67 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:12:53 ID:nQJjkgfE

 切嗣は詠唱を二つ呟くと、素早い動きで姿を消した。

 あまりにも突然で素早い動きだったので、ランサーは反応に遅れてしまった。

ランサー「先程の会話を聞けば、お前たちは俺を倒さずにマスターを狙う、そう言っているのか?」

 槍使いのサーヴァントの問いかけに、セイバーは苦い笑みを見せる。

 先程の発言からすれば、そう聞こえるだろう。

セイバー「色々と誤解をしていそうだが、まず初めに言っておく。この聖杯戦争の停戦を提案しに来ただけだ」

ランサー「残念だが、それは約束出来ん。我が主は武功を望んでいるからな」

セイバー「……そうか」

 残念そうに顔を伏せるセイバー。

セイバー「ならば――――動けなくなる程度に斬り伏せてくれよう」

ランサー「やれるものならやってみろ。――――セイバーのサーヴァントよ!」



 ――――一本の剣と、二本の槍が、今交わる。


.

68 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/06(日) 22:16:41 ID:nQJjkgfE
今日はここまで。
というか、ここから先の展開は原作と大体同じです。
セイバーが手に致命傷を負って、ライダーが勧誘にやってきて、後はなんかごっちゃごちゃ。

ただし、原作切嗣の役割は全部舞弥がやってる。超頑張ってる。
アイリさんにはお城にて、護衛とお世話担当のホムンクルスがいるから大丈夫。

69 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:22:43 ID:YeNr5gUc

 数時間後の、更に夜遅くの事。

ハサン「ランサーと交戦したセイバーは、左手に言えない傷を負いました」

ハサン「恐らくは、ランサーの宝具の効果だと思われます」

ハサン「そのまま戦闘が続行されようとしたが、ライダーの介入によって戦闘は中断」

ハサン「その時、ライダーがかの征服王イスカンダルであると本人が明言しました」

ハサン「ライダーの呼びかけによりアーチャーとバーサーカーも集結しますが、些細な争いが起きました」

ハサン「その後の負傷は、誰もが大したことが無い模様です」

 それは、ハサンを通して綺礼たちは伝えられた全ての情報。
 正確にいえば、アサシンは脱落してはいなかった。
 アサシンの宝具で、ハサンは個ではなく群になることが出来るのだ、
 生前の多重人格を原典とした宝具「妄想幻像(ザバーニーヤ)」によって、複数の個体として活動できる。

麗羅「ハサンの宝具って、マスターの居場所さえわかれば全員殺せるんじゃないの?」

 誰もが思うであろうことを、泰山の麻婆豆腐を食べながら麗羅は呟いた。

綺礼「私は聖杯を求めていないから、そこまでして勝ちを取りに行こうとは思わん」

綺礼「それに他のサーヴァントも無能ではない。そうそうマスターの寝首はかかせてはくれんだろう」

 同じく泰山の麻婆豆腐を食べながら、ハフハフと口に麻婆豆腐運びながら綺礼は答える。


 何故泰山の麻婆豆腐を教会で食べているのかと聞かれれば、無論食したいからだ。

 教会に保護されているという建前の為、出前を取ってみた。


 二人は食べ終わると、皿を言峰教会の玄関前に置いて部屋に戻る。

 綺礼は初めて出前を取ったのだが、素晴らしいと感心していた。

 頼んだらすぐにやってくる。食べたら後で皿を回収しに来るときた。

 そのサービス精神は、聖職者である自分も学ぶべき点があるだろう。

麗羅「綺礼君綺礼君、お話の続きをしない?」

 食べ終わると、麗羅が口を開く。

 普段は無口な少女なのだが、時折子供の様に質問をしてくる。

 ……ああ、そういえば子供だった。

綺礼「聖杯戦争の事か? 私には左程興味が無いと言っているだろう」

麗羅「でもさっき、王様と一緒にお話してたでしょ?」

 王様という言葉に、綺礼は目を見開いた。

綺礼「……麗羅、貴様はどの王様の事を言っている?」

麗羅「もちろん、英雄王の事だよ。綺礼君」

綺礼「あれを聞いていたのか……」

 はあ、とため息を吐く綺礼。

 この麗羅が言っていることは事実だ。

 自分の魔術の師である時臣のサーヴァント、アーチャーである英雄王。

 その会話を、この少女に聞かれてしまったのだ。

綺礼「別に、愉悦だのなんだの言われただけに過ぎん。気に止める事は無いだろう」

麗羅「ああ、そうなの」

 ただ話題に上げただけなのか、麗羅はつまらなそうに返した。

麗羅「まあ綺礼君の愉しみが分かったら、私に教えてよ」

綺礼「別にそれは構わないが、貴様はどうするつもりだ?マスターの情報が着々と手に入っているが?」

麗羅「私もただの暗殺者だし、貴方達が命ずれば今すぐにでも行くけど?」

 黒い瞳で綺礼を見つめる麗羅。

綺礼「……そうか。いつお前を動かすかは、考えておこう」

 なれたように、綺礼は目をそらした。

.

70 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:25:21 ID:YeNr5gUc

 その頃、アインツベルン城にて、衛宮切嗣は頭を抱えていた。

セイバー「……すいません、切嗣」

切嗣「いや、一夜を乗り切った。それだけでも十分助かる。ありがとう、セイバー」

 まさか、こんな呪いを持つサーヴァントがいるとは思わなかった。

 ランサーと戦い続けていれば見事撃破し、呪いも解くことができるであろう。

 しかし、それはサーヴァントが一騎落ちるという事になる。


 それを衛宮切嗣は望まない。

 アイリに負担が、大きくなり、人間としての機能が失っていく。

 既に一騎落ちているのだ。これ以上は何としてでも阻止しなくてはならない。

 正直あの場面で真名を名乗るバカなライダーが出てきてくれて助かった。

 こちらの戦闘力が格段に落ちてしまったが、サーヴァントが落ちてしまうよりは良いだろう。

セイバー「ランサーとは同盟が組めそうにはありませんね。ランサー自身は協力してくれそうですが……」

切嗣「ああ、あのマスターの性格は典型的な魔術師のソレだ。アイリやイリヤの事なんて、気にも留めないだろうね」

セイバー「……ライダーの傘下に入るかどうかはともかく、同盟はした方がよかったかもしれません」

切嗣「ああ、多少は正直あの時は時間が欲しかったね」

 聖杯を譲る気はさらさらないが、同盟を結んでおけば二騎落ちることを阻止できる。

 カリスマのあるライダーの事だ。きっとアイリ達の事を考慮してくれることだろう。

 あのマスターはへっぴり腰だし振り回されているので、有って無いに等しい存在だ。

 ……そんなマスターだが、居場所が未だに割り出せないのは褒めるべき点だろう。

セイバー「……申し訳ありませんでしたマスター」

 そう考えていたら、セイバーが落ち込んでいた。

 アホ毛までシュンと萎れてしまっている。

セイバー「アイリスフィールの事を考えればあそこで同盟を組んでおくのが得策」

セイバー「ましてや私は負傷の身。もっと考えて行動をするべきでした……!」

 一生の不覚と言わんばかりにその場に崩れ落ちるセイバー。

 侍ではなく騎士であるセイバーだが、このままでは切腹しそうだ。

切嗣「いや、何もセイバーが悪いってわけじゃない」

切嗣「君の戦いにおいての判断は的確だし、ライダーのマスターは師の聖遺物を盗むような奴だ」

切嗣「信頼における相手とは言えないし、よかったんじゃないかな」

 士郎を引き取って育ててきたためか、落ち込んでいる様を見ると励ます癖が付いてきてしまった。

 対応が子供に対するお父さんになってしまうのは仕方がないと言える。

.

71 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:29:54 ID:YeNr5gUc

 そこで切嗣、何かを思い出し、袋を取り出す。

切嗣「そうだ。ハンバーガーを買ってきたんだ。食べるかい?」

 袋の中からは、香ばしいジャンクフードのにおいが漏れ出てきた。

 セイバーは、口元をおさえながら切嗣を睨みつける。

セイバー「切嗣、私が食べ物で釣られるとでも思っているのですか?」

セイバー「ましてやそのような雑な料理で私のご機嫌取りとは、腹立たしいにも程がある!」

セイバー「私の機嫌を取りたいなら『ガー』ではなく『グ』を持ってきなさい!」

 色々と矛盾しているセイバーの発言。

切嗣「がーん! セイバーまでそんな事を言うのか!」

切嗣「士郎にはジャンクフードを食べてはいけないと言われ、アイリには口に合わないと言われる始末……!」

切嗣「味方は舞弥だけなのか! いいじゃないかジャンクフード!」

切嗣「まずは照り焼きバーガーを一度食すんだ! 話はそれからだ!」

セイバー「く! 私はそんな誘惑には負けません! ざ、雑な料理など、おいしいわけがない!」

 実はセイバーが手傷を負った後、二人の前にキャスターが訪ねて来たのだが。

 今の二人の前では些細な事であった。

          ◇

アイリ「あらあら、二人とも元気ね」

 その会話を隣の部屋でクスクスと笑っているのはアイリスフィールである。

舞弥「ええ、全くです」

 それに同意するのは舞弥。

 在り方の違いで険悪な仲になってしまわないかと一度は心配したりもしたが、それも杞憂の様だった。

アイリ「お腹の赤ちゃんは、ジャンクフードが好きだと良いわね」

舞弥「マダム、かといってジャンクフードをたくさん分け与えてはいけませんよ。栄養バランスが偏ってしまいますから」

アイリ「もちろん。ちょっと切嗣がかわいそうだから、味方が一人くらいいた方がいいんじゃないかって、思っただけ」

舞弥「そうですか」

 二人は切嗣とセイバーの会話を聞きながら、楽しく談笑に耽る……はずだった。

          ◇

 ハンバーガー戦争の結果、うまいけど雑すぎる! というセイバーの前に、衛宮切嗣は敗北した。

 何がどう敗北したとか、深いことを考えてはいけない。

切嗣「……それは置いておいてだ。 一番の問題はキャスターだ」

 こんな茶番をしている暇ではなかった。

 ランサーや他の英霊たちが集り、帰宅の途中ジ・ルド・レイという英霊の妄言に付き合わされたのだ。

セイバー「ええ、私をジャンヌという英霊と間違えていたようですね。……臣下に間違えられるとは、ジャンヌという英霊も報われない」

切嗣「いや、むしろ報われないのは君の方だよセイバー。ジャンヌという英雄は実在するが、僕から言わせてみれば、あれはチアリーダーみたいなものだ」

切嗣「君みたいに前線では戦っていない、フランスの英雄だよ」

セイバー「そうなのですか?」

切嗣「まあ、最期には変な責任を負わされて、民衆の前で焼かれた女の子だけどね」

 切嗣のジャンヌの知識はその程度だ。

セイバー「……成程。ならあのキャスターの変貌ぶりも分かるような気がする」

 ふむふむと頷くセイバー。

切嗣「あのキャスターはジル・ド・レェと名乗っていたな」

切嗣「ブラフにしては随分マイナーな英雄だし、君への執着ぶりから見ても本当の事だろう」

切嗣「よくやったセイバー。いい情報が手に入ったぞ」

セイバー「別段、私が何かをしたわけでもありませんが……この時ばかりは自分が女だという事に感謝するとしましょう」

 その時、部屋の扉が開き、舞弥が入ってきた。


舞弥「マダムから報告です」

切嗣「どうした?」



舞弥「――――キャスターが、こちらに向かって来ているとの事です」


.

72 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:36:24 ID:YeNr5gUc

 すぐさま重火器を手に取り、戦場に立つ男の顔になる切嗣。

切嗣「行くぞセイバー」

セイバー「対応のほうはどうしましょう?」

切嗣「生け捕りがいいが……あれだとまともな精神を持っちゃいない」

切嗣「追い払うだけでも構わないが、最悪殺してもいい」

セイバー「わかりました」

 鎧を身に纏い、セイバーは立ち上がる。

 そこにはもう、先ほどのような空気はなかった。

          ◇

 セイバーがキャスターと交戦している頃。

 綺礼も同じくアインツベルンの森にやってきていた。

麗羅「……早速お仕事ね」

 正確には、アインツベルンの森を走る綺礼と麗羅だ。

 麗羅は寒いといって、フード付きの黒いコートを着て来ている。

 四歳児には大きなもので、手は出ておらず、足もようやく見えるといった物だ。

綺礼「私と衛宮切嗣の邪魔をさせぬよう、この辺りにいるマスターを殺して来い」

麗羅「うん、いいよ。綺礼君は自分の答えを教えてもらいなよ」

 そういうと麗羅は姿を消していた。。

 恐らく、キャスターの方に行ったのだろう。

綺礼「……さて、一人くらいは落としてくれよ?」

 綺麗は溜息を吐くと、森の中を疾走していった。

          ◇

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、アインツベルンの森の中を歩いていた。

 彼は時計塔の優秀な魔術師であり、ランサーのマスターだ。

 自分の経歴に『戦歴』という『箔』をつけるためにこの聖杯戦争に馳せは参じた魔術師でもある。


 彼はこう考えた。

 魔術師たちに恐れられている『魔術師殺し』を倒したとなれば、自分の『箔』もさぞ良いものになるであろう。

 その為、『魔術師殺し』の拠点たるアインツベルンの城までやってきたのだ。

 ……別段、自分の婚約者に尻を叩かれてわけでは決してあるまい。

「た、助けて」

 震える少女の声がした。

 振り向けば、黒いコートに身を包んだ少女が、こちらに走り寄ってくる。

 その少女に対してケイネスは優しく囁いた。

ケイネス「――――Scalp≪斬≫」

 自分のすぐさま水銀が展開され、少女に切りかかる。



 どうせ魔術師殺しが罠にでもと仕掛けた子供だろう。

 なら、排除しておいた方が得策だ。


 だが、思いもよらない出来事が起きた。

 水銀が襲い掛かるよりも早く、ケイネスの前に現れたのだ。

ケイネス「――――な!?」

 ケイネスが反応するよりも早く、まだ残っている水銀が少女を打倒すべく襲い掛かった。

 そう、ケイネスの水銀――『月霊髄液ヴォールメン・ハイドラグラム』は自動で術者を守る、一級品の魔術礼装なのだ。

 ――――何だかよくわからんが、これで終わりだ!

 ケイネスが勝利を確信したその時。

 少女が手を振るい水銀があっけなく弾け飛んだ。

麗羅「――――脆い」

 この礼装にはケイネス自身知りえない幾つか弱点があった。

 その一つが、瞬間的に水銀の圧力を超えるだけの威力がある攻撃を撃ち込まれてしまえば、簡単に突破されてしまうという事であった。


 勿論、少女がそんな事を知る由もない。

 ただ単に、少女は己の技と力で振り払ったに過ぎないのだから。

ケイネス「―――がハァ!?」

 そのまま、首根っこを掴み、時速300キロで近くの木に頭を叩きつける。

 この時、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの命は絶たれた。

 麗羅はケイネスを投げ捨て、助走をつけて思いきりその頭を踏み潰す。

麗羅「つまらない」

 だが、それで器《心》が満たされる事は無い。


 里で縊り殺した暗殺者でもまだ足りない。

 この程度の魔術師を殺しても、まだ足りない。

 無機質な少女は、人を殺しても殺シテもコロしてモ――――

麗羅「――――ハ」

 虚木麗羅は、無意識に息を吐く。

 自分に溜まった毒を吐くように。


 決して満たされる事はない。


 自分が満たされるモノ。

 自分が探し求めるモノ。

 それは、どこにあるのだろう。


 今考えても答えは出ない。


.

73 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:38:31 ID:YeNr5gUc

 ともかくランサーのマスターは落としたのだ。

 これで一つ、一騎落ちることになる。

 固有に持っている魔力で、ランサーは暫くこの世に残っているだろう。

 しかし、ランサーは騎士道精神溢れた英霊だと聞く。

 キャスターとの戦いですぐに魔力を消耗し、落ちる事は確実だ。

 そう、算段を付けていた時だった。


 そして、何の前触れもなく、麗羅の手の甲に熱い感覚が走った。

麗羅「……何、これ?」

 もしやあの液体に何かやられたかと思い、袖をまくって手の甲を見る。

 手の甲に赤い紋様――――令呪が刻まれていた。

 それを綺礼によって教えられていた麗羅は、あんぐりと口を開ける。

麗羅「……私に、令呪?」

 これは、ランサーと契約しろと言う天啓か?

 自分の願いも、求めるモノも分からない麗羅には、過ぎた代物だ。

 今なら綺礼君の気持ちが理解できるかも、と一人頷いた。


 しかし妙だ。

 自分は戦う者ではあっても、魔術を行使するものではない。

麗羅「これ、どうするべきかな」

 麗羅は首を傾げながら、元来た道を走り出した。

          ◇

キャスター「ジャンヌ、次こそは、次こそは――――!」

 そういって、キャスターは海魔を引き連れ、アインツベルンの城から去っていく。

 危ない所だった。ランサーがやってきてくれなかったら、もっと過酷な状況に陥っていただろう。

セイバー「……ランサー、助かった」

ランサー「いや、騎士として当然のことを――――な!?」

 突如、ランサーが驚愕したような表情を浮かべた。

セイバー「どうした、ランサー?」

ランサー「ああ……、我が主との繋がりが、今切れたのだ」

 その言葉を聞き、セイバーは少しすまなそうな顔を浮かべる。

セイバー「……すまない、ランサー。恐らくそれは私のマスターの仕業に違いない」

 そんなセイバーに、ランサーは笑みを浮かべる。

ランサー「仕方がない。これは戦争なのだ。勝ち残る者もいれば、敗北し散る者もいる」

ランサー「きっと、我が主も正々堂々と戦い、戦場の花として散って行ったのだろう」

ランサー「ああ、だがしかし! 俺は主の為に何もできはしなかった……!」

ランサー「無念! ディル・ムッド、一生の不覚!」

 言えない。

 アインツベルンの城にありとあらゆるトラップをマスターが使っているだろうことを。

 恐らくはそれに引っかかって死んだなんて。

 これから去って散り行くランサーには言えない。

セイバー「……貴公もそろそろ消えてしまうのだろう」

 言いながら剣を構える。

セイバー「これも騎士の情けだ。現世から去る前に、一手お相手しようか?」

 そういうと、今度はランサーが気まずそうな顔を浮かべる。

ランサー「……その件だが、何というべきだろうか」

 腕を組み悩むランサー。

ランサー「私にはマスターが二人いるようなものでな……。令呪が消えただけの様なもので、魔力供給は十分に出来ているのだ」

 それを聞いてセイバーは驚愕した。

 まさかマスターが二人もいるという変則的な契約方法があったとは、アインツベルンに関わるセイバーでも知らなかった。

セイバー「それはよかったというべきか……いや、まずそれを私に教えてよかったのか?」

ランサー「セイバー、お前にはその手の傷や真名の事もある」

ランサー「何、この程度で俺は負けはしない。ソウラ様とこれからについて話すさ」

 そうか、とセイバーは頷き、ランサーに背を向ける。

セイバー「嫌な予感がする。次に相見えた時に、決着をつけよう」

ランサー「ああ、それまでは達者でな」

 セイバーは魔力放出スキルを使ったのか、すさまじい速さで森を駆け抜けていく。

ランサー「……主の遺体をソウラ様に届けなくては」

 ランサーは亡くなった主を思い、森の中を走り抜けていった。

.

74 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:43:10 ID:YeNr5gUc

 麗羅が颯爽と綺礼の元に戻れば、綺礼が妊婦に黒鍵を向けている所だった。

 その足元には黒い中国拳法でもしそうな服装の女性が倒れていた。

 どちらも気絶している様だ。

麗羅「……何をしているの。綺礼君? 殺せばいいじゃない」

 麗羅がいたことに気が付き、震えながら振り向く綺礼。

綺礼「私は聖職者だ。――――祝福すべき命を、殺すことは出来ない」

麗羅「バカみたい」

 この男は何を言っているのだろうか?
 お笑いにしてはレベルが低すぎる。
 無意識に笑う事ができない麗華にも分かる事だった。
 空っぽの自分が言うのもなんだが、ちょっとどうかしているんじゃないだろうか。

麗羅「それって確か聖杯の守り手……」

麗羅「確かお人形? 気絶しているうちに殺しちゃいなよ」

麗羅「私がそれを言峰教会に持って行かないといけないのは綺礼君も知ってるでしょ?」

麗羅「お仕事の一つに、聖杯の確保ってヤツがあるの」

 麗羅は妊婦であるアイリスフィールに手を伸ばす。

 その手は凶器に他ならない。

 その手は首をいともたやすく潰し。

 その手は心の臓から流れる気を乱し。

 その手は頭蓋骨を陥没させる――――!

綺礼「その女を殺すな!」

 綺礼が麗羅を声で抑止する。

 仕事の条件の一つに、言峰綺礼の命令は絶対と言っておいたのが幸いだった。

麗羅「……綺礼君がそういうなら、止してあげる。暗殺者は雇い主の命令には絶対だものね」

 表情を変えることなく、麗羅はその手を引いた。

 虚ろな黒い目で、綺礼の目を覗く。

 まるで、自分に答えを求めているようで――――。


 その時女のアサシンが顔を出した。

アサシン「セイバーと衛宮切嗣がこちらに向かってきています。ここは撤退をした方がいいかと」

 アサシンの言葉を聞くと、綺礼はアイリを捨て元来た道を走り出す。

 その後を追いかけてきながら、麗羅が問いかける。

麗羅「あれ? 今は衛宮切嗣に答えを聞かなくてもいいの?」

綺礼「今はまだ早い」

麗羅「じゃあ、なんでここに来たの?」

綺礼「――――」

 言えない。

 言えはしない。

 まさか衛宮切嗣に理解者がいたなんて、口が裂けても言えない。

 いや、そんなことがあってはならない。

 衛宮切嗣は孤独でなければならないのだ。

 言峰綺礼は、自分の心を整理するためにも教会へと走って行った。

.

75 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:46:05 ID:YeNr5gUc

セイバー「アイリスフィール!」

 セイバーが倒れているアイリスフィールに走り寄る。

 意識を確認するより、まずは体がどうなっているか調べなくてはならない。

 体に傷は無い。刺された跡もない。首が絞められた跡があるが、呼吸はしている。

 そしてなにより、赤ん坊が元気よくお腹を蹴っていた。

アイリ「……セイバー、ありがとうね」

 体を隅々さわっていると、意識を取り戻したらしく体を起こす。

セイバー「アイリスフィール。まだ体を起こしていけません。傷が無いとはいえ、首を絞められているのですから」

アイリ「いいえ、大丈夫よ。貴方のお蔭で元気が出たわ」

 セイバーの手を借り、起き上がり舞弥の元へ歩み寄るアイリ。

 治癒魔術で、舞弥の傷の手当てをするアイリ。

切嗣「アイリ! 舞弥! セイバー!」

 機銃を片手に、ロングコートを翻して切嗣が走り寄ってくる。

切嗣「アイリ! 体は大丈夫なのかい!? おなかの赤ちゃんは無事か!?」

切嗣「うわあー!? 舞弥、舞弥ー!! その刺し傷はどうした!」

切嗣「まさか言峰綺礼か……ッ! 許さん!!」

 いい大人が慌てているのを見て、クスリと笑う女性三人。

舞弥「切嗣、私なら大丈夫です」

アイリ「激しい運動は出来なさそうだけどねー。てぃ」

舞弥「あ痛ぁ!?」

セイバー「アイリスフィール! 傷口を叩くのはやめてあげてください!」

切嗣「大丈夫なのか!? 本当に二人とも大丈夫なのか!?」

 アインツベルンの森は喧騒を響かせながら、夜を過ぎていった。

          ◇

 朝日が昇る仲、二つの影が森を歩く。

 切嗣は舞弥を背負い、セイバーはアイリスフィールを抱いてアインツベルンの城へと戻っていた。

 アイリは既に寝てしまっている。

 セイバーは、キャスターを撃退し、ランサーのマスターが死んだこと。

 そしてそのマスターが二人いることを話した。

切嗣「何? ランサーのマスターが死んだだって?」

 セイバーの言葉が信じられず、思わず聞き返す切嗣。

セイバー「なんと、切嗣ではないのですか?」

切嗣「ああ、そもそもランサーのマスターは城にすら来ていない」

切嗣「変則契約の件もいいとして、これはおかしいな」

舞弥「切嗣……これを」

 その言葉を聞いていた舞弥が、ポケットからある物を取り出す。

切嗣「……テープレコーダー? それがどうしたのかい舞弥?」

舞弥「はい、以前士郎君から頂いたものです。『爺さんすぐもの壊しちゃうから、舞弥さんに上げる』と」

切嗣「……そういえば、最近買って失くしたヤツだ。それ」

 父の顔が無くしょぼくれる切嗣。

 切嗣の起源は『切り嗣ぐ』。それゆえに物を壊しやすかったり、片付けが苦手だったする。

 士郎は切嗣の起源の事は知らないが、そういう人物だと理解はしていたのだろう。

セイバー「それで、その記録媒体機器がどうしたのです?」

舞弥「いえ、大したことは無いでしょうが、念のため言峰綺礼との交戦時から今まで録音していました」

舞弥「私達が気を失っている間に、何かあるかもしれません」

切嗣「……でかしたぞ舞弥。この戦争が終わったら、士郎も褒めておかないといけないな」

 城に帰ると、アイリスフィールをベットに寝かせ、早速テープレコーダーを聞くことにする。

 随分と音割れなどが激しいが、大体の会話を聞き取ることができた。

 それは十分すぎる成果だった。

 まるで、抑止力が正体を暴けと言わんばかりの情報。

 美味しい情報がありすぎた。

切嗣「暗殺者……アサシンか」

 アイリが部屋にいない事をいいことに、タバコを吸う切嗣。

切嗣「言峰綺礼の声と、女子供の声が二つ……間違いない。この二人の声はアサシンのモノだ」

セイバー「つまり、アサシンは複数の個体になれる宝具を持っているという事ですね」

 セイバーは知力と直感を使い、彼女なりに推理して見せる。

 勘違いをしているというのに、大筋があっているのがシャレにならない。

切嗣「ああ、そういう事になる。でかしたぞ。舞弥」

 切嗣の賛辞に、照れる舞弥

切嗣「さて、それじゃあこれを、有効活用しようか」

 そう言いながら、衛宮切嗣は不敵な笑みを浮かべた。

.

76 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:51:18 ID:YeNr5gUc

 鶏が鳴く頃、礼拝堂には言峰親子と、衛宮切嗣、そしてセイバーがいた。

 件のテープレコーダーを聞かせ、勝ち誇った笑みを浮かべる。

切嗣「――――と言うわけで。言峰綺礼を聖杯戦争から排除していただきたい」

 唖然とする言峰璃正。

 呆然とする言峰綺礼。

璃正「そ、それがアサシンの声と何故決めつけるのですかな?」

切嗣「おや、まだしらばっくれる? 神父さまも、いいご趣味をしてらっしゃるなあ」

 不敵な笑みを浮かべながら、切嗣はテープレコーダーをしまう。

切嗣「このテープの人物が、自分を暗殺者と名乗っているんですよ?」

切嗣「それとも何かい? 貴方達は神に誓えるとでもいうのかな?」

切嗣「アサシンが群になれる宝具を持たず、尚且つ言峰綺礼は現在マスターではなく、尚且つ録音されている物にアサシンの声が入っていないと」

切嗣「お前達はそう神に誓えるのか?」

 切嗣の言葉に、二人はギリギリと首を絞められて行く感覚に陥る。

 彼の推測は間違った物であり、正しい物だからだ。

 どう否定しても、教会の不正が暴かれてしまう。

 それに何よりも、二人は立派な聖職者だ。神に嘘を吐けはしない。

 どうする?

切嗣「嘘を吐いていないのなら、神にそう誓ってみせてくれ」

切嗣「献身的な神父様たちなら、出来る筈だろう?」

切嗣「それとも……教会は暗殺者でも雇って、これまた違う方向で不正行為をしていたと?」

切嗣「そんなわけない筈だ。何せ、貴方達は監督役」

切嗣「不正なんて働いたら、この聖杯戦争はルール無用のモノとなり、聖堂教会の面目もがた落ちだ」

切嗣「これが魔術協会にばれたら、君たちは聖堂協会に然るべき処分をされるだろう」

切嗣「聖堂協会からは新しい監督役でも来るんだろうが。僕にはよくわからないな」

 煙草を吸いながら、衛宮切嗣は聖杯戦争の監督役に追求する。

 当てずっぽうに近い暴論だというのに、的を射ているから侮れない。

 聖堂教会からは特に罰はないだろうが、面目の為にも辞退されるのは違いない。

 それに、時臣には何かしらのペナルティが課せられるだろう。

 どうする?

切嗣「嘘を吐いていないのなら、早く誓って見せてくれないか?」

切嗣「さあ、さあ。さあ――――!」

 どうすればいい――――!?

 葛藤する言峰親子。

 そんな二人を見て、切嗣は璃正の肩にポンと手を乗せた。

切嗣「……別に、嘘を吐いているのなら、わざわざ神に誓う必要は無いんだ」

切嗣「誰だって、悪いことをする時がある。それを許すのが、神様っていう都合のいい存在なんだろう?」

 璃正の耳元に、そっと囁く切嗣。

 それを見て、歯ぎしりを立てる綺礼。

 拳を痛いほどに握りしめ、爪が食い込み血が溢れだす。

切嗣「僕だって鬼じゃない。情も人並みにある」

 ――――情? 笑わせる。

 ――――お前のそれは悪鬼そのものではないか。


 そう睨み付けながら、衛宮切嗣を睨み付ける。

 どうやら、契約書らしい。

 書かれている内容は、こうだ。

 一つ、言峰綺礼を聖杯戦争から排除すること。
 二つ、アサシンを全員令呪を持って自害させること。
 三つ、聖杯戦争を二週間停戦すること。

璃正「な、何だと……!」

 その内容の出鱈目さに、思わず頭を抱える璃正。
 対して衛宮切嗣は以下の通りの事柄を守ると記してある。

 一つ、衛宮切嗣が所持しているテープレコーダーは教会に渡す。
 
二つ、教会の不正を衛宮切嗣は誰にも話さない。

 衛宮切嗣はこの二つだけ。

璃正「……う、ぬぬぬぬぬッ!」

 しかし、しかしだ。

 それは教会の神父たる璃正にとっては、十分すぎる契約。

 かなりの痛手となるが、教会の本部にこれが知られれば大変な事になる。

 聖杯戦争は解体され、自分達親子は処されるだろう。

 自分はまだいい。だが、息子が処されるのはあってはならない。

 最悪、遠坂時臣が聖杯を掴めなくなってしまう事態にも陥るだろう――――!



.

77 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:54:40 ID:YeNr5gUc

 そんな璃正をみて、首をかしげる切嗣。

切嗣「契約したくない? じゃあこのレコーダーを他のマスターに聞かせて回ろう」

切嗣「聖堂教会にもこのレコーダーを送っておこうかな」

切嗣「心配ないさ。君たちが神様に嘘を吐いていないと誓えば、何も問題はないんだから」

 契約書を璃正から抜き取り、礼拝堂から出ようとする衛宮切嗣。

璃正「契約をする! だから、だから待ってくれ!」

 それを、璃正の声が止めた。

 衛宮切嗣は思わず頬が緩んでしまうが、引き締めて振り返る。

切嗣「じゃあ監督さん。よろしくお願いしようか」

 だがその表情は、だらしないほどの笑みが浮かんでいた。

 教会は持っている全てのマスターの情報を明け渡した。

 更にはアサシンを自害させ、言峰璃正が持っている令呪を全て渡し、二週間の訂正を約束された。

 ――――そして言峰綺礼の聖杯戦争からの排除も決まった。

切嗣「いやあ、僕はこれで教会の不正を誰にも話す事が出来ない。悔しいな〜。そうは思わないかい? セイバー」

セイバー「ええ、全く貴方と言う人は外道にも程がある。しかし、交渉術としては中々だ。王とし褒めましょう」

切嗣「いやー、騎士王に褒められるだなんて、参った参った」

セイバー「素直に受け取りなさい切嗣」

 あっはっはと、白々しく煽るセイバーとそのマスター。

 戦場でのジョークも冴えわたることであろう。

 これは言峰親子にとって、人生最大の屈辱であった。

切嗣「さて、これで契約は完了した。さあ言峰綺礼。君はさっさとここから出ていくんだ。部外者さん?」

 自分の歯が噛み砕けてしまいそうな程歯ぎしりを鳴らし、血があふれ出るほど拳を握る。

綺礼「……了解した……ッ!」

 そう答えると、綺礼は教会の奥の方へと去って行った。

切嗣「ああ、残念だよ。僕は不正を訴える事が出来ないなんて、ああ、僕は人間失格だ」

切嗣「――――そう、僕は、ね」

 そう言い残し、衛宮切嗣もまた去って行った。

        ◇

 衛宮切嗣が去った後、分かる限りのマスター達に二週間の停戦を知らせた。

 三つの陣営から文句が来た。それも当然であろう。

 ランサー陣営、ライダー陣営、バーサーカー陣営からだ。

 しかし、内容は予想したものだけではなかった。


 内容は、教会の不正についても含まれていたのだ。

 衛宮切嗣が持ってきていたテープレコーダーと同じモノを、二人とも持っていたのだ。

 何でも、セイバー陣営の関係者と名乗る女性が、テープレコーダーを配りに来たのだとか。

璃正「な、何故……!?」

 自分の手にあるテープレコーダーを見つめる璃正。

 音声もキチンとある。

 だというのに、なぜ同じ音声を録音したものが複数存在するのか!?


 言峰璃正は知らぬところだが、科学は日々進化している。

 種はとても簡単なものだと言っておこう。


 更には時臣師からも使い魔を通し連絡が入ってきた。

時臣『……これをどう収集するつもりかね。言峰神父』

 流石の優雅も、どこか空の彼方へと飛んでいった声だった。

.

78 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/08(火) 23:57:16 ID:YeNr5gUc
今日はここまで。

ただ愉悦が無自覚にドジって窮地に陥るところを書きたかっただけです。
(ペラペラ獲物の前でしゃべっちゃうという愚行)
聖堂協会が黙認(というか総意?)してたはずだけど、魔術教会からしてみればどんな対応取るかわからないので、十分脅せるかなと
あと……あれや。これ正直脅しとか焦る内容かはわからないけど、冷静じゃなかったってことで一つ。

79普通の名無しさん:2014/07/09(水) 04:37:15 ID:HKClTKmc

この頃の若き綺礼ならやりかねんミスだな
特に英雄王と愉悦、二人の理解者ができた直後だし精神の均衡が崩れていてもおかしくない

80 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:04:00 ID:/jS385Ck

ギルガメッシュ「――――ハ。無様だな綺礼」

 旅立ちの準備をしていると、アーチャーがワインを片手に問いかけてきた。

綺礼「黙れ! 今は貴様の相手などしている暇はないのだ! アーチャー!」

 あまりにも最悪のタイミングに、そのサーヴァントを睨み付ける綺礼。

ギルガメッシュ「おお、そこまで吼えるか。さぞ悔しい敗北であったろうに」

ギルガメッシュ「今までのお前では考えられない程の激情だな」

ギルガメッシュ「この際だ。神父をやめるのもまた一考だぞ?」

綺礼「そんな事、出来るわけが無いだろう!」

 言峰綺礼は、今まで生きてきた中で、屈辱を感じていた。
 まさしく無様。こんな負け方をするとは、思いもしなかった。

ギルガメッシュ「なあ綺礼よ。お前のその悔しさは、敗北からだけなのか?」

綺礼「何だと?」

 思わずアーチャーの言葉に耳を傾ける綺礼。

ギルガメッシュ「いや、何。貴様はアレと同じことがしたかったのではないか?」

綺礼「衛宮切嗣と、同じこと、だと……?」

 それは一体何なのか。
 戦場での場数なら負ける気はしない。
 人を殺した数も自分が勝っていたと確信を持って言える。

ギルガメッシュ「簡単ではないか。今お前の感じている物を、人に与えたいのではないか?」

ギルガメッシュ「人に苦痛を、人に不幸を。そして人類に最悪を! それがお前の求める物なのではないのか?」

綺礼「……そんな、ことが」

 あってたまるか。
 その一言が言い出せない。

 何故だ。ここで否定しなくては。
 否定しなくては、そんな事を肯定されるなんて許されない。
 まさか、そんな筈はない。そんな筈がないのだ。
 自分は神に殉ずる神父だ。
 そんなことが、あってはならない――――!

麗羅「あれ? 綺礼君、令呪なくなってしまったの?」

 混乱に陥っていた綺礼の前に、綺麗の手に目を凝らしている麗羅が部屋に入ってきた。

ギルガメッシュ「ほほう、この間の盗み聞きの雑種ではないか」

麗羅「貴様、よくも私の前に現れたものだな……ッ!」

 あの時、麗羅が『暗殺者』という言葉を使ったからこうなったのだ。

 八つ当たり気味に麗羅を睨み付ける綺礼。

麗羅「私を責めるのはお門違い。あの女の体を確認しなかった綺礼君もいけないんじゃない」

 麗羅は淡々と真実を述べる。

麗羅「ねえ王様。綺礼君が求めている物は、そういうものなの?」

 首を傾げ、黄金の王に問を掛ける。

ギルガメッシュ「生意気な口だ。童でなかったら、その首を刎ねていたぞ」

麗羅「怖い怖い」

 びっくりするほど棒読みで怖がるフリをする麗羅。
 王の威光に身を委ねればいいものを、と溜息を吐くアーチャー。

ギルガメッシュ「問いに答えてやるが、この神父が求めているのは間違いなくそういった類の愉悦だ」

ギルガメッシュ「それも、本人が最も禁忌としているものであろうよ」

綺礼「……ならば、問おう。私の愉悦とは、私の求めているモノとは、一体何なのかを」

 勝手に話を進める二人を、睨み付ける綺礼。

ギルガメッシュ「もう大分話してやったのだがな。我にしては大サービスだぞ?」

ギルガメッシュ「後はもう、お前が探すしかあるまいて。この冬木の地でな」

 フハハハハハ! と高笑いをするアーチャー。

 アーチャーの言葉を聞き、ふと考える素振りを見せる綺礼。

 彼の中で何かが決まったのか、迷いの無い動きで一つの外へと飛び出す。

 その後を、ヒョコヒョコと付いて行く麗羅。

麗羅「綺礼君綺礼君、もう旅の準備はしなくていいの?」

綺礼「彼の英雄王に、この冬木の地で探せと言われたのでな。この地にいる為の、口実作りをすることにしたのだよ」

綺礼「ちょうどいい。お前も害虫駆除を手伝ってくれ」

麗羅「それってどんな害虫なの?」

 顎に手を当て、考える素振りを見せる綺礼。

綺礼「タコの様な害虫だ」

麗羅「それって虫じゃないよね。タコだよね」

綺礼「……比喩もわからんのか。山育ちというのは」

 二人は、キャスターの工房へと歩を進めるのであった。

.

81 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:04:44 ID:/jS385Ck

 目的地にたどり着くと、早速害虫という海魔達が襲い掛かってきた。

 軽く見積もっても、その数は30を超えるだろう。

綺礼「お前の力量を見ておきたい。その拳で片付ける事が出来るか?」

 能面のような笑みを浮かべ、麗羅は海魔の前に立つ。

麗羅「女の子に害虫駆除やらせるなんて、綺礼君さい・てい」

 一匹の海魔が、麗羅に襲い掛かる。

 それを、麗羅は拳で突く。

麗羅「それ」

 ――――あまりにも、間の抜けた掛け声で。

 拳で突かれた海魔は、呆気なく弾け飛んだ。

 突かれた個所から血肉をまき散らし、吹き飛ばされる。

 声を上げることも許されず、その海魔は文字通り絶命した。

麗羅「しゅっ」

 無論、それだけでは終わらない。

 命令は絶対だ。

 この場にいる海魔を、拳だけで打倒し、絶命させる。


 蝶が舞う様に、蜂が刺す様に。

 そんな表現があるが、それだけでは彼女を表現することは叶わない。

 そんな陳腐な言葉で表現するのもおこがましい。

 そんな次元を越えた――――『殺』の業。


 『死』ではなく『殺』。

 彼女は既に、『殺』の極地に辿り着いていた。

綺礼「――――」

 その業は、本物だとかそんな話の次元ではない。

 それを越えた何かだという事は分かるが、表現のしようがない。

 綺礼は、そんな麗羅を、ただ傍観することしかできなかった。

.

82 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:05:04 ID:/jS385Ck

 そして、傷一つなくキャスターの工房にたどり着いた二人。

 そこには、出来の悪い人間オブジェがいくつも転がっていた。

 二人がよく知る血の匂いが、工房内を充満していた。

麗羅「綺礼君綺礼君、この人たち生きてるよ?」

綺礼「そういうのを死に体というのだ。覚えておくといい」

 火葬式典を付属させた刀剣を取り出し、容赦なく一つの死に体に突き刺した。

 すると、その刀剣は炎上し、死に体達を燃え焦がしていく。

麗羅「生きているのにえげつないね」

綺礼「いや、このまま生きている方が辛いだろうよ」

 全てのオブジェが燃えたのを見ると、綺麗はキャスターの工房から去る。

麗羅「ねえ、これで口実作り出来たの?」

綺礼「ああ。今夜辺りに分かるだろう」

 聖職者の様な顔で笑みを浮かべる綺礼。

 事前にアサシンからキャスター達の性格、趣味嗜好は聞いてあった。

 こうなれば、後はどうなるかは予測できる。

 衛宮切嗣に受けた煽りを、ここですっきりと晴らすことができた。

 これで少しだけすっきりとできたとともに、どこか満足感を覚える綺礼であった。

 ――――もう答え見つけてるんじゃないの? この人。

 そんな綺礼をみて、麗羅はそう思った。

83 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:10:52 ID:/jS385Ck
 ――――夜。
 冬木大橋が架かる未遠川にて、その海魔は存在した。

キャスター「ご期待あれリュウノスケ! 最高のCOOLをご覧に入れましょう!」

 全長百mを越える海魔に、誰もが驚愕した。

 冬木に住む人々も、その神秘を括目する。

 その中には、綺礼と麗羅の姿もあった。

麗羅「これが綺礼君の言っていたヤツ?」

綺礼「そうだ。そう、なのだが……」

 正直、予想を超えていた。

 代行者として冬木の地にいる口実さえ作ればいいと思っていた。

 その為にキャスターやそのマスターが逆上しそうな行動を取ったのだ。

 キャスターの情報は、アサシンに以前監視させ報告していたから、考えを読むのは容易かった。

 だが、まさか、ここまでとは。

 舐めていたとしか言いようがない。

麗羅「で、どうするの?」

綺礼「代行者として、神秘の漏洩は防がねばな」

麗羅「もうダダ漏れだよね?」

綺礼「私の父は優秀だ。この程度の騒ぎなら何とかなる」

 実際は教会で頭を抱えて何とかこの事を大きくしない様に頑張っているのだが、息子は知らない。

麗羅「私も行くべき?」

綺礼「いや、お前はここで様子見だ。私の答えを得る前に、キャスター以外のマスター達を殺されては困る」

 もう絶対答え得てるでしょうに、と麗羅は睨みつけるが、綺礼はそれに構わず飛び出してしまう。

麗羅「……私は、どうするべきか」

 土手に座り、時折襲い掛かってくる大海魔の触手を消し飛ばしながら、綺礼のすることを眺めることにした。

龍之介「超COOLだよ! 旦那ァ!」

麗羅「――――ん?」

 野次馬の中に、一際興奮している男を見つけた。

 その手には、令呪の痕が刻み込まれている。

 アサシンからの情報として、彼こそがキャスターのマスターだと確信した。

 キャスターのマスターであれば、綺礼君にも問題ないだろう。

 これも仕事だ。殺さなくては。

 麗羅は騒いでいる男の後ろに立ち。

 ――――その首を握り潰し、川に投げつけた。

.

84 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:16:41 ID:/jS385Ck
キャスター「龍之介ぇ! おお、龍之介ぇぇえええ!!」

 土手にいる野次馬の一人が殺された事により、キャスターが怒り狂い始めた。

 もっとも、既に狂っていたのだが。

 その時切嗣は、ライダーのマスターと共に川の近くで行動していた。

 誰が殺したのかと気になったが、キャスターのマスターからは人が引き始めていた。

 人が突然死んだのだ。そうもなるだろう。

 離れている切嗣たちからは、誰が殺したのかは判断できない。

切嗣(アサシンは自害させたはず。なら、一体誰が……?)

 そう切嗣が思考を巡らせているその時だ。

 言峰綺礼が降り立ったのだ。

切嗣「何をしに来た」

 綺礼が河原に降り立つと、切嗣が真っ先に銃を向けて来た。

綺礼「いや何。代行者として見逃せないのでね。アレを討伐しに来たのだよ」

切嗣「……人間である君が? アレに?」

綺礼「人間であると同時に代行者だ。聖杯戦争のマスターではなく、代行者の使命としてここに来た」

 なるほど、そこまでしてこの地に残りたいのかと、哀れみの眼差しを向ける切嗣。

 黒鍵を構え、川に溢れる小さな海魔達へ討伐しようと駆け抜ける。

ウェイバー「お、オイ!」

 ライダーのマスター、ウェイバーが引き留めようとするが、綺礼は意にも返さず走り出す。

切嗣「……僕としては、このままアイツをライダーの固有結界に引き込んでくれると助かるんだ」

切嗣「お願いできるかな? ライダーのマスター」

 実を言えば、大海魔を一時的にライダーの固有結界に閉じ込めて時間稼ぎをするという作戦の真っ最中。

ウェイバー「ぼ、じゃなくて……私は別に構わないけどね、反則したマスターをこ、殺すなんて」

ウェイバー「でも、そこまでしなくてもいいんじゃないか?」

切嗣「君はもう少し非情にならなきゃ、この世界はやってけないよ」

ウェイバー「……キャスター倒した後の二週間の停戦同盟、正式に引き受けてやるのに、その言い方は無いだろう?」

 監督役が信用ならないと分かった今、ルールなんてあって無いに等しい。

 切嗣はこの後、冬木が混沌とした戦場になるだろうともちろん予想している。

 そんな事をしたら、サーヴァントが早く落ちるのではないか?

 だがそんな事はどうでもいい。

 監督役が信用を失った。これが重要。

 そして、この事によって信用を得たのは誰か?

 監督役の不正を暴き、それを公正に、公平に教え与えた者。


 ――――セイバー陣営に他ならない。


 そこまでくれば後は簡単。

 信用が『セイバー陣営>他の陣営>監督役』となれば、聖杯戦争の主導権はある程度こちらが握る事が出来る。

 勿論容易くは無かった。

 だが幾多の戦場をありとあらゆる方法を持って切り抜けた手腕によって、それは可能とされた。

 現に、ライダー陣営、ランサー陣営は二週間の停戦に賛同し。

 それを聞いたバーサーカー陣営、アーチャー陣営も同意してくれている。
 
 同意していないのは既に脱落しているアサシン陣営である綺礼と、この戦いの敵であるキャスター陣営のみである。

 このキャスター陣営に勝利することが出来れば、信用は確固たるものとなる。
 
二週間の停戦も、現実帯びたモノとなるだろう。

 大海魔の姿が消える。どうやらライダーが固有結界に取り込んだらしい。

舞弥『切嗣、こちらの準備は整いました』

切嗣「さて、と――――」

 ランサーに呪いを解呪するように頼むとする。

 セイバーの宝具が使えなければ、この戦いは破綻する。

 ランサーの騎士道精に期待するとしよう。
.

85 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 17:18:04 ID:/jS385Ck
今日はここまで。

ちなみに、停戦を引き受けた理由は以下の通り。

ライダー陣営(ウェイバー)→赤ん坊に情がわいた
ランサー陣営(ソウラ)→令呪を使ってディルムッドとゆっくりたっぷりねっちゃりとイチャイチャしたいから
バーサーカー陣営(雁夜)→皆が停戦してるって聞いたから
アーチャー陣営(時臣)→監督役の不正? 関係ナイヨーアピール

お前ら聖杯戦争をしろ!

この後の戦いはZeroと大体同じなので、またもやカットです。

86普通の名無しさん:2014/07/12(土) 19:30:44 ID:2OXPfDJI

なんか前回に続いて、切嗣があんまり切嗣っぽくない気がする

87 ◆K7pqbvuGjs:2014/07/12(土) 22:40:42 ID:/jS385Ck
>>86
切嗣はプリヤ時空が主軸。
士郎とかも引取った影響もあって、かなり丸くなっちゃってます。

戦い方が切嗣らしくないのは、できるだけ鯖を落とさないようにするため。
鯖が落ちたら母体と赤ちゃんにどんな影響を与えるかわからないから。
魔術師を殺せばいいってわけじゃないんで、かなりの縛りプレイです。
セイバーと話してるのは、結構切羽詰ってるっていうのもある。
けどいざ話してみたら、意外と戦場トークが弾んだりしたのであんまり毛嫌いはしてない。

という設定。
作者的には、物語前半は幸せ一杯を表現していっていう思いもあった。
……だって終盤は、アレだから(遠い目)

.

88 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 00:58:53 ID:tVRtN2Ek
ギルガメッシュ「中々に有意義な夜だった」

 教会の地下に戻ってきたアーチャーは、不服そうにしながらワインを口に含んだ。

 狂犬に宝具の一つを破壊されたが、征服王は中々見込みの在りそうな男だ。

 できれば酒の席の一つでも設けたかったが、今からだとそれも出来なさそうだ。

 何故なら――――

麗羅「王様、お帰り」

 この童がいるからだ。
 子供だというのに、その目に生気は無い。
 何かに焦がれる熱い感情が、この少女には無い。
 それがギルガメッシュには気にくわなかった。

ギルガメッシュ「……なんだ雑種? 我に何か用か?」

麗羅「ちょっとね」

 手に刻み込まれた令呪をギルガメッシュに見せる。

 すると、面白そうに頬を緩ませた。

ギルガメッシュ「ほう、よりによって貴様か! 聖杯もずいぶんと壊れている物だな!」

麗羅「で、どうすればいいと思う?」

ギルガメッシュ「何故我に聞く?」

麗羅「王様だからよ」

 気にくわないのは、目だけではない。

 この少女の表情というのは、全て仮面なのだ。

 確かに、笑う事ができる。

 しかしそれは、表情筋を動かしただけのモノ。

 その奥底に、心は無い。

 彼女の生まれ持つ対極の破片の影響だとは思うが、気にくわないのだから仕方がない。

ギルガメッシュ「まあ良い。盛り上がりに欠けていたところだ」

ギルガメッシュ「――――どれ、俺が一つ自覚させてやろう」

 王の財宝から一つの宝具をとりだし、麗羅の額に、当てた。

89 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:00:08 ID:tVRtN2Ek
雁夜「時臣ィィィイ……ッ!」

 間桐雁夜は遠坂時臣に燃やされ、ビルの下へと落ちていた。

 遠坂時臣が憎い。
 自分から最愛の人を奪ったアイツが憎い。
 さも当然の様に葵さんから子供を奪った魔術師が憎い。

雁夜「……う、ぁ。カッ……!」

 まさしく虫の息。
 それでも間桐雁夜は生きている。
 歪んだ 愛情/思考 に執着しながら。

 意識が落ちる。
 黒い暗い微睡に、身を任せる。

 すると、揺りかごの様に暖かいモノを感じた。

『もう大丈夫よ。雁夜クン』

 そんな声が聞こえたような気がして、目を開く。
 もちろんというべきか、目の前には誰もいない。
 しかし、自分がいる場所はビルの真下では無かった。
 自分の最愛の人の子供が囚われている 家/檻 の門の前に他ならない。

雁夜「……もしかして、葵さんが俺を?」

 そうだとしたらなんと恥ずかしい事か。
 自分は時臣に敗北し、醜態をさらしてしまった。
 ああでも、葵さんに手当されるのも悪くない。

 そんな事を考えながら門を潜り抜ける。
 聖杯戦争中に、葵が冬木市にいるなんてありえない事だというのに。

          ◇

 言峰綺礼は、ずぶ濡れになりながらも帰路を歩いていた。
 そんな綺礼に、黄金の王が問いかける。

ギルガメッシュ「どうした綺礼? 死にそうな顔をしおって」

綺礼「――――正直死ぬかと思った」

 ライダーの固有結界に巻き込まれ、
 数多くの兵隊達に襲われながらも戦い抜き、
 セイバーの聖剣からぶっ放されるビームから泳いで逃れた。

 神は今、自分に味方してくれている。
 聖職者である綺礼は、それを確信持って言えるだろう。

ギルガメッシュ「いやはや、あの聖剣から逃れることが出来るとは思っていなかったぞ。お前は我を飽きさせぬな。綺礼よ」

綺礼「……黙れアーチャー」

 恐らく、衛宮切嗣は躊躇いも無く行動を起こしたのだろう。
 躊躇いの無いその決断力に称賛を送りたいほどだ。

 とぼとぼと歩いていると、遠坂葵の姿が見えた。

葵「あ、綺礼君」

 こちらに手を振ってくる始末。

綺礼「ど、どうなされたのですか? 禅城のご実家に帰られているはずでしょう?」

 流石の綺礼も驚かずにはいられない。
 聖杯戦争が行っている期間は冬木市に近寄らない様時臣も言っていたはずだ。
 だというのに、なぜ彼女がここにいるのか?

葵「あら綺礼君。本当に気が付かないのかしら?」

綺礼「何の――――」

 言われてみれば、その顔は綺礼の知る遠坂葵ではない。
 彼女は、虚木麗羅の様な仮面の様な笑みは浮かべない。

麗羅「時臣の奥さんかと思った? でもラッキー。可憐な美少女の私でした」

 クルリと一回転しながら、その姿を四歳児の幼いそれになって、綺礼の知る虚木麗羅の姿に成る。

綺礼「なんだそれは? 貴様は魔術の類でも身に着けたとでもいうのか!?」

 麗羅は、うーんと腕を組んで悩んだそぶりを見せる。

麗羅「さあ? 王様が手心を加えてくれたの」

綺礼「……どういうことだ? お前はこの暗殺者を嫌っていたと思っていたのだがな」

ギルガメッシュ「この聖杯戦争を面白おかしく彩ってやろうと思ってな」

ギルガメッシュ「なに、お前の答えもすぐに見つかるだろうよ」

 そう英雄王は言った。

90 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:00:40 ID:tVRtN2Ek
ギルガメッシュ「して綺礼、今夜はこの後、どう過ごすつもりだ?」

 言峰綺礼の戸惑い等気にも留めず、英雄王は問いを投げかける。

綺礼「――――時臣師を殺す」

ギルガメッシュ「ほう、随分と思いきるな」

綺礼「そしてお前を私のサーヴァントにしようと思っていたのだが……」

 自分の手を見る。
 マスターの資格である、令呪はどこにもない。

ギルガメッシュ「それなら心配するな。代わりにこれを我のマスターの代用できる」

 気にくわんがな、と言いつつ、ギルガメッシュは麗羅の右手を綺礼に見せる。
 そこには、確かに令呪が浮かび上がっていた。

綺礼「貴様、いつの間に……!?」

麗羅「ランサーのマスター殺した辺りから」

 聖杯はマスターにふさわしいモノを選ぶというが、これでは英雄王のスペックは自分と契約した場合より落ちるだろう。

ギルガメッシュ「まあ我のスペックが落ちるだろうが、問題は無かろう」

 その言葉に溢れる自信は流石というべきか。
 何を根拠にそこまで言えるのか、綺礼には不思議である。

麗羅「それで、このまま私が英雄王のマスターってことでいいの?」

ギルガメッシュ「ああ、吐き気がする程遺憾だが。仕方があるまい」

 話は大体終わった。

 さっさと時臣師を殺しに行くとしよう。

91 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:01:35 ID:tVRtN2Ek

 師父から受け取ったアゾット剣で、その師父を殺した言峰綺礼。
 彼は麗羅を師父のサーヴァントと契約し、笑みを浮かべる。

麗羅「殺したね」

 ふいに、どこからともなく現れた無機質な少女が、真黒な無垢な瞳で問いかける。

綺礼「ああ、そうだとも」

 さて、この少女はどうしようか?
 山猫風情に自分が後れを取るとは思わないが、念には念を入れておくべきか。
 ギルガメッシュもこの小娘は気に入らないと言っていたし、彼に始末してもらおうか。

 綺礼が考えをめぐらせ考える中、少女は遠坂時臣の死体に触れる。

麗羅「ねえ、綺礼君。私、貴方の愉しい事が、わかったかもしれない」

綺礼「ほう、それはどういったい――――」

 綺礼は己の眼を疑った。
 遠坂時臣の死体を、遠坂時臣が触れているからだ。

 いや、違う。これはあの無機質な少女。それ以外の何者でもない。
 あの少女は、瞬時に遠坂時臣に化けたのだ。
 死んだ人間が蘇る例は死徒化位のモノだが、それが目の前で起こったのかと思って動揺した。

麗羅「ねえ、綺礼君。 コレを使って、貴方に面白い物を見せてあげようと思うの」

時臣「その剣よりも、君が喜んでもらえると思うな」

 声までもが、完全に模倣される。

時臣「――――今までにない愉悦というモノを、君に与えよう」

 その遠坂時臣は、目の光を失っており、その笑みでさえ無機質だと感じさせるモノ。
 
綺礼「ほう」

 しかし、綺礼は感嘆の声を上げた。
 この少女は、今まで笑みを浮かべようとすらしなかったのだ。
 それが今ではどうか?
 自分の愉悦を理解し、それに対してプレゼントを贈ると笑みを懸命に浮かべている。

綺礼「いいだろう。好きにやらせてみるのも一考だ」

綺礼「虚木麗羅。私に愉悦を与えるというのなら、私の満足できるものを用意しろ」

 自分の師父を殺した言峰綺礼は、今までにない強欲な目で麗羅に命じる。
 遠坂時臣は黒い少女へと戻り、ソファに座る。

時臣「任せたまえ。私を誰だと思っているんだい?」

 何ともわざとらしい応酬。
 しかし、何とも様になっている光景であった。

ギルガメッシュ「山猫、精々我を満足させろよ?」

 ソファで優雅にくつろぐ自分のサーヴァントに遠坂宗臣という虚木麗羅は、躊躇いなく頷いた。

92 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:02:23 ID:tVRtN2Ek

 それは、まだ太陽が昇り切らない頃の、禅城家にて。
 遠坂葵が目を覚ます。

時臣「やあ葵。よく眠れたかい?」

 寝室の扉には遠坂時臣が立っていた。
 
葵「と、時臣さん? どうしたんです? 聖杯戦争でお忙しいんじゃ……?」

葵「もしかして、また凛に会いに来てくださったんですか?」

時臣「……聖杯、か」

 時臣は目を伏せ、後悔するような表情を浮かべた。

時臣「確かに、聖杯も大切だ。 ……遠坂の悲願ばかりを考え、私の眼は曇っていたのだ」

時臣「一番大切なモノを、私は置いてきてしまった。どうか、どうか、愚かな私を許してほしい」

 目に手を当てる時臣。
 葵はそれが、とても悲しく泣いているように見えて、戸惑った。
 今まで自分の主人がこんな反応を見せたことは無かった。
 故に、どういう反応をすればいいのか分からなかったのだ。

葵「一体、何のことです? 時臣さん」

 戸惑う葵。
 時臣は彼女の手を引き、優しく、そして力強く抱きしめる。

時臣「これからいう事は、とても残酷だ。聞いてくれるかい? 葵」

葵「ええ、貴方の為なら、どんな言葉も聞き入れます」

 葵の迷いのない凛とした言葉に安心したのか、時臣は彼女に耳にささやく。

時臣「――――桜と、もう一度家族になろう」

 それは、何という言葉だろうか。

 葵には一瞬何を言っているかわからなかった。
 だが、意味を理解すると、目から感情の雫を溢れ出させる。
 その感情の意味は、いったい何だろうか。
 とても、言葉では言い表せない感情だった。

葵「それは、それは本当ですか? 時臣さん」

時臣「ああ、本当だとも。私が嘘を吐いたことがあったかい?」

 そう優しく囁くと、葵は一際大きな声で泣き出した。

凛「ん……んぅ?」

 一緒のベットで寝ていた凛が、目を覚ます。
 当然だろう。自分の母が泣き喚いているのだから。

凛「……あ、お父様ぁ。ぅん? おはようございまぁす」

 まだ寝ぼけているのだろう。
 状況をまだ把握していないようだ。

時臣「……凛、また桜と一緒に暮らしたいかい?」

 時臣がそう尋ねると、凛は眠気が飛んだのか、目を大きく開かせて頷く。

凛「暮らしたい! また桜と一緒に暮らしたいです! お父様!」

 凛の頭を撫で、時臣は決心する。

時臣「じゃあ、今から迎えに行こうか」

凛「はい!」

 何ともまあ仲睦まじい家族の姿なのだろうか。
 遠坂家の事情を知る者は、感動の展開のあまり涙を流すだろう。



 ――――まあこんなの、全部嘘なんだけどね。


.

93 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:47:28 ID:tVRtN2Ek

臓硯「雁夜、雁夜や。ちょっと来い」

 朝、間桐家にて。
 臓硯が雁夜の名を呼ぶ。

雁夜「……何だ妖怪。聖杯戦争は二週間の停戦だっていっただろう」

雁夜「破れば他の陣営に叩かれるって言ったのはお前だろう?なんだ、ついにボケでも来たか?」

臓硯「その聖杯戦争についてなんじゃがな。ほれ」

 臓硯手紙を渡す。

臓硯「教会からじゃよ。なんでも、キャスターとの戦いの件で話があるらしい」

臓硯「アレじゃないか? ほれ、戦闘機をのっとった件じゃよ」

雁夜「……あれはキャスターを倒すのに必要だったろう」

 実際の所、キャスター戦に置いてバーサーカーはこれといった活躍はしていない。
 だがそれと同時に、あれは神秘の漏洩とはあまり関係が無い様に思える。

臓硯「表面上はセイバー陣営である衛宮切嗣が仕切っておるが、監督役はあくまで教会じゃ。 行かないと大変なことになるかもしれんな」

臓硯「教会とは揉め事を起こしたくない。ほれ、さっさと行って来い」

雁夜「わかったわかった。行ってくればいいんだろう!」

 雁夜はフードを被ると、そそくさと門から家を出る。
 それを眺めていた臓硯だったか、雁夜の行った方向とは逆から、見覚えのある影がいくつか見えて来た。
 遠坂の一家だ。

 この二週間の停戦とはいえ、いったい何を考えているのか。
 危険なことには変わりがないだろうに。

 三人は、迷いなく間桐の門をたたく。

臓硯「……一体何の用なんじゃか」

 臓硯は躊躇いながらも、門を開いた。

94 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:48:29 ID:tVRtN2Ek

 間桐家の客間にて、臓硯は時臣の話を聞いていた。
 臓硯は時臣の話を聞き、ふむと頷く。

臓硯「成程。桜を返してほしい、と」

時臣「虫のいい話だとは分かっております。ですが、私には、私達には桜が必要なのだと、ようやく分かったのです」

 時臣は真っ直ぐな視線で語り掛けてくる。
 それが臓硯にはたまらなく嫌だった。
 まるで、自分の体の弱点を見透かされているような、そんな感覚に陥っている。

 以前の遠坂時臣とは、明らかに何かが違う。
 こんな戦場に立つ風格を持つ男ではなかった。
 現に、表情はあるものの、それは仮面を付けているかのようだと思える。

臓硯「……しかしじゃ。 既に桜は間桐の教育を受けておる」

臓硯「遠坂の魔導を極めるのはちと無理があるだろうし、こちらの魔術を漏洩したくはない。引き取ってもらおうかの」

時臣「そんな事はどうでもいいのです。私は、私達は、もう一度桜と家族に成りたい」

臓硯「こちらは――――間桐との同盟を破る覚悟だ」

 『殺』を宿した眼光が、臓硯を捉える。
 恐怖こそはしないが、言いようのない焦りに襲われる。
 時臣に一体どんな心境の変化があったのか、予想が付かない。
 だが、

臓硯「カカカカカ! 吼えたな若造!ここは間桐の家、ワシの胃袋も当然よ!」

臓硯「もう一度聞き直しておこう。どんな覚悟じゃと?」

 部屋の隅から、蟲をという蟲が集まり、時臣たちを囲む。

凛「お、お父様ぁ……!」

 怯えて時臣に縋り付く凛。

時臣「凛、遠坂の家訓を忘れたのかい?」

時臣「――――遠坂たるもの、どんな時も優雅であれ。動揺などはしてはいけない」

凛「……は、はい! わかりました!」

 涙を流しながらも、自分の宝石を構える凛。

時臣「さて、臓硯殿。聞き直しの答えだが、こちらに二言は無い。耳はまだ健在だろう。確認しなくとも、分かっているはずだ」

臓硯「カッ! いいだろう。遠坂との長きに渡る同盟はここで終わりじゃ。死をもって終止符を打ってやるとしようかのう」

 臓硯は蟲に命令を出そうとした。

 だが既に、臓硯の体は朽ちていた。

臓硯「――――ガ!?」

 燃やされる。
 蟲達と共に、いや、この部屋を巻き込んで、共に燃やされている――――!

綺礼「時臣師、ご子女を連れてきて参りました」

 見れば、代行者が眠っている桜を抱きかかえている。

時臣「よくやった綺礼。流石は私の弟子だ」

ギルガメッシュ「ハ! 全て我任せの癖に、よくいうな」

 時臣の隣には、黄金のサーヴァントが鎮座していた。

ギルガメッシュ「もう用はないな? 帰るぞ綺礼。ここにこれ以上いる意味はないだろう」

時臣「いいや、まだです英雄王」

 黄金のサーヴァントの話を遮り、前に出る時臣。

時臣「臓硯。私の家族を殺そうとしたのだ。という事は、貴様も殺される覚悟は出来ているな?」

 レイピアの様に杖を構える時臣。

 ――――それはまたしても、瞬く間の出来事。

 時臣は臓硯に近づき、臓硯の体から一匹に虫を取り出す。
 それは臓硯の核、その体の中の蟲では、本当に大切な蟲の部分で――――

臓硯「た、頼む。許して――――」

 許しを請おうとした。
 だが、瞬く間の出来事だ。何もできずに

 臓硯の核ともいえる蟲は、貫かれた。

時臣「さあ、家に帰ろう」

 遠坂時臣/虚木麗羅は、優雅に凱旋を果たすのだった。

95 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:50:11 ID:tVRtN2Ek

 アイリスフィールの体の調子は順調だった。
 時々陣痛などで苦しむが、医師免許を最近取得した舞弥が言うには、良好だとの事だ。

 現在はアインツベルンの城で使い魔などの情報の整理をしている。
 そして、切嗣はそれを知った。

切嗣「何だと……!?」

 使い魔を通して、それを確認する切嗣。

セイバー「どうかしたのですか? 切嗣」

切嗣「停戦協定を破る陣営が現れた」

 ああ、と納得するセイバー。

セイバー「……それは当然と言えば当然でしょう。既にサーヴァントは二騎落ちている」

セイバー「このまま畳みかけて勝利を勝ち取ろうとした陣営がいてもおかしくない。して、それはどこの陣営でしょうか?」

 確かにセイバーの言うとおりだ。
 こんな協定は破られるためにあるようなモノだ。

 切嗣自身、時間稼ぎ程度にしか思っていなかった。

 だが、これはさすがに予想外だった。

切嗣「アーチャーだ」

セイバー「……なんと」

 これはさすがのセイバーも動揺を隠せない。
 切嗣から渡された資料や、停戦を結んだときにアーチャーのマスターの事は大体理解していたつもりでいた。
 慎重に事を進めるタイプだと思っていたが、いきなり停戦協定を破ろうとは思いもしなかった。

アイリ「え? でも、英霊は二騎しか落ちていないわよ」

切嗣「サーヴァントとは交戦した様子はない。恐らく間桐雁夜は生きているだろう」

切嗣「遠坂時臣は、間桐の家を焼き払った。十分な宣戦布告と見て間違いないだろう」

セイバー「待ってください切嗣。彼の性格からして、その行動はおかしくはありませんか?」

切嗣「アレ一人で考えればそうだ。でもね、言峰綺礼も一緒にいたんだよ」

 それらに唖然とする面々。

舞弥「……セイバーの聖剣から逃れていたとは思いませんでした」

 銃を点検しながら、舞弥は歯ぎしりを鳴らす。

舞弥「すいません切嗣。私のミスです。あの大海魔が倒された時、私が一番傍にいたというのに、言峰綺礼を確認できませんでした」

切嗣「いや、舞弥は十分仕事をしてくれていたよ。合図や場所の指定は、僕一人ではできない事だった。

切嗣「それに、セイバーの聖剣から逃れられるのがまずおかしい。そんな想定外は誰も考えないさ」

 大海魔が一瞬で消し飛んだのだ。
 誰もが言峰綺礼は死んだと確信した。

アイリ「流石は代行者。泳いでセイバーのエクスカリバーから逃れるとは……」

セイバー「それは恐らく違いますアイリスフィール。恐らくは魔術の類を使ったのでしょう」

セイバー「そうでなければ私のエクスカリバーから逃れるはずがありません」

 そうでなければ、アーサー王の沽券に係わる。
 実は泳いで逃れているなど、確かに誰も思う事は無いだろうが。

96 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:50:44 ID:tVRtN2Ek

切嗣「……まあ、それも問題なんだが、もう一つ問題があるんだ」

セイバー「何でしょう?」

 心底理解できない、そんな表情で切嗣は口を開ける。

切嗣「自分の家族を、一緒に連れていた。遠坂葵も、娘の遠坂凛も、そして養子に出していた間桐桜もだ」

 拳を握りしめ、机を叩く切嗣。
 家族の為に戦っている切嗣にとって、それはなんと愚行に見えた事か。
 戦場に家族を連れだすとは、外道にも程がある。

舞弥「他の陣営に伝えますか?」

セイバー「信頼の為には、情報は明るみに出すべきです」

切嗣「だがあのサーヴァントは格が違う。一人で挑めば絶対に返り討ちに会うだろう」

切嗣「監督役はこんなマスター同士の決まりごとはどうでもいいだろうし、討伐令なんか出しちゃくれないだろうね」

切嗣「それに言峰綺礼が関わっているんだ。協力はしてくれないだろう」

舞弥「なら、映像を見せてまた揺さぶれば」

切嗣「揺さぶって交渉した結果がこれだ」

切嗣「奴らは、聖杯の為なら教会側のお叱りや魔術協会の文句なんか気にしちゃいない」

切嗣「迂闊に交渉しようとすれば、お構いなしに攻撃だろうね」

 重くなる空気。

セイバー「ですが切嗣、やはりここは他の陣営にも知らせた方がいいと思います」

切嗣「何故そう思う? セイバー」

セイバー「アーチャー陣営が活動し始めたと警告し、警戒をさせた方がいいかと思います。

セイバー「もちろん。どの陣営も一応の警戒はしているとは思いますが、やはり知っていると知っていないでは判断力も違うものです」

セイバー「これは私の経験談といいますか、戦場で変に隠し事をすると、信頼を失いそこから争いになることもある」

 セイバーのいう事はもっともだ。
 しかし、アーチャー陣営が動いたと知れば好戦的になる輩も多いだろう。
 それでは乱戦は必須、サーヴァンとも確実に落ちるだろう。
 これ以上、アイリに魂が収納されると、子供に影響が出る。

 だが……しかし……。

切嗣「……警戒を、促しておくか」

舞弥「分かりました。所在不明のライダーとバーサーカーのマスターに、何とかして伝えます」

 セイバーの意見を尊重し、衛宮切嗣は他の陣営にこの事を知らせることにした。

97 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:52:37 ID:tVRtN2Ek
時臣「葵、君と子供達に、見せたいものがある」

 時臣に言われ、葵は子供達を連れて玄関までやってきた。

 聖杯戦争が始まってからというモノの、時臣さんは魅力的になったなと葵は感じていた。

 別に、今までの彼に不満があったわけではない。
 寧ろ魔術師である彼に、葵は心底酔う程愛している。

 だが突如、『桜ともう一度家族になろう』と言われた時には困惑した。

 しかし時臣が葵を引き連れ、間桐を訪ねて桜の救出劇を見た葵は、そんな些細な問題などもう感じることは無かった。

時臣『葵、すまなかった。君の事も、子供達の事も考えていなかった』

時臣『遠坂の魔術師として根源は目指さなければならない』

時臣『しかし、桜を間桐に預けたのは間違いだと気が付いたんだ』

時臣『家族とは、同じ屋根の下で過ごさなければならない』

時臣『それが何よりの幸せなのだと、私は気が付かなかった……』

時臣『こんな愚かな私を、どうか許してほしい』

 むしろ時臣がそう言って、自分の事を今まで以上に愛してくれているのだと感じた。
 まるで自分の心が全て見透かされ、甘い蜜を注ぎ込まれたような感覚を味わい悦に浸った。
 抗いがたい、甘い、甘い蜜で、自分は支配されていると思ったときは、今までのどんな夜よりも興奮した。
 体が熱く、今まで以上に彼の事を求めている。

 つまりは、葵今まで以上に遠坂時臣に酔っているのだ。

 玄関にたどり着くと、言峰綺礼が大きな箱を背負っていた。

葵「あら、言峰さん。今回は本当にありがとうございました」

 挨拶をすると、言峰も笑みを浮かべて挨拶を返す。

綺礼「こんばんは葵夫人。今夜も貴女は美しい」

 葵は驚いた。
 何故なら、『あの』言峰綺礼が、笑みを浮かべて、あまつさえ冗談を言ってのけたのだ。
 葵の知っている言峰綺礼という男は不愛想という印象だったので、そのギャップに混乱した。

時臣「こらこら言峰。人の妻に手を出すのはいただけないな。君をそんな風に育てた覚えはないぞ」

 葵が困惑をしている中、時臣はいつも以上に優雅を醸しながら歩いてきた。

 色気、というモノだろうか? 今まで見る事の無かった時臣の一面を見るたび、葵は魅せられて行く。
 時臣の笑みは今まで以上に輝いていて、ほれぼれと葵は眺めてしまう。

時臣「もしもこの遠坂時臣の愛する妻に手を出そうとするのなら、直々にお仕置きをしなければならない」

綺礼「これは失礼しました。しかし、私は事実を述べたまでですよ」

時臣「言峰、君も言うようになったじゃないか」

綺礼「いえいえ、貴方には敵いませぬ」

 二人は顔を見合わせると、突如笑みを浮かべた。
 綺礼は心底おかしいというかのように、腹を抱えて笑っていた。

98 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:56:59 ID:tVRtN2Ek

 娘達は突如綺礼が笑い出していたので困惑していた。
 それもそうだ。あの言峰綺礼が笑っているのだから無理もない。

 時臣は綺礼の頭をコツンと杖で叩くと、綺礼はなんとか笑いを止めようと口を押える。

時臣「いやすまない。ここ最近働き尽くしで、疲れているらしい」

 笑いが収まると、時臣は言峰に箱を下すように命じた。

時臣「突然笑い出して済まなかった。君たちが驚くお顔を思い浮かべると、つい、ね」

凛「驚く? この箱の事ですか?」

桜「これは何ですか。お父様?」

 凛と桜は、キョトンと首を傾げ、自分の父に問いかける。

時臣「プレゼント……というのも違うな。これは、君たちが大切に思っているモノだ」

時臣「開けたらきっと、とても驚くだろう」

 葵にはそんな物に心辺りは無かったが、時臣の言葉に胸を躍らせていた。

 ――――最近の時臣さんはロマンチックだ。

 ――――きっと、自分が思いもよらない、とびっきり素敵なものに違いない。

時臣「開けてみると良い」

 時臣にそう言われて、ときめきながら箱をを開けた。
 中にあったのは――――。



 死の匂いを醸し出す、遠坂時臣の死体。



葵「……え?」

 予想を上回る贈り物に、葵は戸惑わざるをえなかった。

 ――――何故この中に時臣さんがいるんだろう?

 一瞬、そこで思考が停止した。

葵「―――――あ」

 しかし、遠坂葵の脳は正気を取り戻した。

 あまりの異常事態に遠坂時臣に酔っていた意識が、一気に覚醒した。

葵「わ、悪い冗談は、やめてください。どういう事です? これは」

 隣にいる、自分の旦那のハズの男を見る。

 時臣は嗤っていた。言峰と一緒に笑っていた時と同じ笑みで、葵を嗤っているのだ。

時臣「簡単なことだよ。葵」

 怯える葵を笑いながら、優雅に両手を広げ時臣は語る。

時臣「全てが嘘! それだけの事なんだ」

葵「う、そ?」

時臣「そう、嘘だ」

 時臣は軽く頷き、話を続ける。 

時臣「――――君を愛した夫はいなかったんだよ。今日の朝からね」

時臣「君は私の嘘の蜜に浸っていただけに過ぎない」

麗羅「もうバカみたい! 自分の夫でしょ? ――――それ位わかりなよ」

 その人物は既に時臣の姿ではなく、黒い少女へと姿を変えた。
 年齢だけ見れば、凛や桜よりも小さい。

99 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:58:06 ID:tVRtN2Ek

麗羅「あーあ、かわいそうな時臣さん」

麗羅「浮気ですよー見てますか? あ、死んでるから分からないか」

麗羅「アンタみたいな夢見がちな女って扱いやすくて、すっごく助かった。」

麗羅「お蔭で私と綺礼は大爆笑! 四歳にして悦をしった私ってイケナイ子だと思う? 思う?」

 言峰にねーねーと呼びかける黒い少女。
 当の言峰は、左手で顔を抑え、右手で壁を段々と叩いて爆笑している。

麗羅「うーん、でもちょっとチープだったかな。初めてだったから勝手がよくわからないや」

麗羅「やっぱこういうのって時間を掛けないとダメなのかな?」

 うーんと血まみれの腕を組んで考える黒い少女。

葵「それこそ嘘よ! 時臣さんを返しなさいよ!」

 葵は逆上して、黒い少女に襲い掛かる。

麗羅「ていや」

 しかし、葵は突如としてその場に転んでしまう。
 ただ単に黒い少女が足を引っ掻けただなんて、葵には分からなかった。

麗羅「もう返してるでしょ? ほら、あれあれ」

葵「嘘! あんなの作り物よ! 時臣さんを返しなさいよッ!」

 足が動かないのか、腕を使ってミノムシの様に這って黒い少女に近づく。
 それを見て、言峰は一際大きく笑い出す。

麗羅「……うーん、しょうがないな」

 箱に入っている時臣の元に走り出し、黒い少女手際よくソレを取り出す。
 黒い少女は、ソレを葵の手の中に収めた。

葵「う、ぁあ……」

 ソレに触れ、見た葵は理解した。

麗羅「――――ねえ、貴女は夫の綺麗な目を見てもわからないの?」

 ソレは、今さっき黒い少女から取り出された、遠坂時臣の、青く聡明な目玉だった。

葵「うあああああああああああああああああああああああああ!!」

 葵はそれを投げ出し、現実から逃げる為どこかへと這って逃げようとする。

麗羅「ああ、もういいや。お疲れ様」

 黒い少女は葵の首を蹴り飛ばず。

 壁にぶつかった頭は、ボールの様には弾まず、悲しみの表情を浮かべたまま潰れた。

.

100 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 01:58:51 ID:tVRtN2Ek

綺礼「して麗羅、この後はそうするかね?」

 笑いおさまった綺礼は、黒い少女である麗羅に尋ねる。

麗羅「もう、大人なんだから分かりなさいよ綺礼。オーイ王様。またまた出番だよー」

 麗羅はギルガメッシュに呼びかけ、黄金の王は現れる。

ギルガメッシュ「――――ハッ! 貴様の在り方は気に入らん。異端にも程がある」

ギルガメッシュ「が、これは醜悪なるよい劇であった。褒めて遣わす。今宵ばかりは、飲み明かそう」

 王の財王の中から、極上のワイン瓶を取り出し、麗羅と言峰はワイングラスを渡す。

麗羅「さすが王様。よくわかってる」

 麗羅は笑みを浮かべながら、ギルガメッシュにワインを頂戴とオネダリをした。

ギルガメッシュ「綺礼」

 だがそこまで気を許してはおらず、ギルガメッシュはワインを灌げと目で綺礼に命じる。

麗羅「王様ってば、イケずー」

ギルガメッシュ「フン、弁えろよ山猫風情が。これは貴様を称したワインではない」

ギルガメッシュ「綺礼がまた一つ、己の愉悦を理解できたからこその祝いの品よ」

 綺礼は三人のグラスワインを注ぎ、二人はそれを優美に愛でる。
 注ぎ終わると、それぞれワイングラスを手に持つ。

綺礼「……しかしだ。この小娘共を生かす価値はあるのか?」

 綺礼は飲む前に、時臣の子供二人を一瞥する。
 今までにないほどの奈落の底に叩き落とされた少女達。
 一人は現実を認めず、耳を抑えて顔を伏せる。
 一人は現実を認めて、母の血で何かを描く。

麗羅「魔術とかよくわからないけど、英雄王の魔力になったりしない?」

綺礼「ふむ、可能ではある。が、それだと私の父が邪魔だ」

麗羅「殺せばいいじゃない」

 不思議そうに首を傾げる麗羅に、綺礼は悩みを吐露する。

綺礼「どうやって殺せばあの人が苦痛に顔を歪ませるのかを思案していてな……」

綺礼「自分でも分からぬ私の本性をどうやって教えればいいのやら」

麗羅「それじゃあ仕方がないか」

 綺礼はワインを口に含み、味を堪能する。

綺礼「……ああ、ワインがうまい」

 今までに感じたことが無いほどの至福。

 麻婆豆腐でもここまでの感覚に陥ることは出来ないだろう。

 特に絶望している時臣の娘二人を見ていると、胸に湧き上がるモノが有る。

 これが愉悦。

 そして、この先に自分の求める答えがあるのだ。


 ――――答えは、もうすぐ目の前に。


 綺礼は人の不幸に酔い、溺れていった。

101 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/04(月) 02:00:51 ID:tVRtN2Ek


今日はここまで。
本当はこの後サーヴァントとして式さん出す予定でいたけど、勝てるビジョンが見えなかったので取り消し。


.

1028/5 01:00-13:00したらばメンテ、LR変更につきご一読ください:2014/08/04(月) 02:28:15 ID:HtrGgEoQ

いやマジで式さんは出したら愉悦王じゃ勝てないと思う
本気の英雄王なら「」として完全に開放しない限り大丈夫だろうけど

103 ◆XFKJOt0a3Y:2014/08/09(土) 11:55:06 ID:h4M6dleM

一夜明けて、冷静になってログを読んでみる


IDを偽装されたとしか思えない程の、世界観


再開の構えをする

104 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:32:42 ID:rB2rZR8.
 言峰教会にある事務室では、言峰璃正が涙を流していた。

 仕事をしながらも、丸一日泣いていた。
 神秘の漏洩を防ぐ為、自分の息子が死んだのだ。

 代行者になった時から覚悟はしていた。
 しかし、だ。
 目と鼻の先で、自分は何もすることが出来ずに死んでいったのだ。

 これが泣かずにいられるだろうか。

 そんな時だった。

綺礼「何を嘆いておられるのです。我が父よ」

璃正「綺礼……!」

 自分の息子が、五体満足で目の前にいるのだ。
 璃正は主に感謝をした。

璃正「綺礼! 生きていたのか……!」

 感極まり最愛の息子に抱き付く璃正。

綺礼「ええ、生きていましたとも。泳いで何とか致命傷は避けました。色々と時間はかかりましたが」

璃正「そうか……! そうか! ……大変だったな!」

 綺礼を抱きしめながら、歓喜の涙を流す璃正。

 祝いだ。今夜は麻婆豆腐で振る舞ってやろう。

綺礼「父上」

璃正「なんだ?」

 顔を上げ、自分の息子の顔を見る。
 今までに見たことも無い様な笑みを浮かべる。
 自分の息子が、こんな風に笑えるとは知らなかった。
 璃正にはそれが嬉しく思えた。

綺礼「――――どうか、私の在り方を理解して下さい」

 一瞬――――璃正は自分の身に何が起こったか分からなかった。

 胸が張り裂ける様に、痛い。
 下を目を向けば、黒鍵が胸に突き刺さっている。

璃正「……どういう、ことだ。――――綺礼」

 他の誰でもない、最愛の息子である、言峰綺礼によって。

綺礼「私は蝶よりも蛾を愛する」

 璃正の首をしめ、天高く掲げる。

綺礼「私は美しいものを、美しいと感じる事が出来ない歪んだ人間」

 ――――それはまるで神に供物をささげる、敬愛な羊の様。

綺礼「父は私を立派な人間だと評するが、それは違う」

 璃正の首に掛けている手に、じわじわと力が入る。

綺礼「生まれながらにして善よりも悪を愛し、他者の苦痛に愉悦を感じる」

璃正「何を、何を言っている……!?」

 璃正が苦しそうに顔を歪める。

綺礼「簡潔に言ってしまえば――――」

 綺礼の笑みが、深まる。

綺礼「――――貴方の理想の息子は、幻想に過ぎんという事だ」

 骨が砕け、血肉が飛び散る。

 璃正の首と体が分離した。

綺礼「本当の言峰綺礼とは」

 璃正の髪の毛を掴み、垂れる血をもう片方の手で掬う。

綺礼「 貴方の命を嘲笑い 」

 その掬った血を、この世を去る間際の璃正の顔に叩きつける。

 理解しろと。そして主に悔いながら死んでいけと。

綺礼「貴方の心を殺したいと願う、羊の皮を被った悪魔でしかないのだ――――!」

 その言葉が届いたのか、璃正は悲しみの表情を浮かべ、

 言峰綺礼の手によって、その命は絶たれた。

.

105 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:40:41 ID:rB2rZR8.

綺礼「――――は」

 無残極まりないその光景を見て、言峰綺礼は笑みを浮かべる。

綺礼「―――――はは、」

 嬉しくて可笑しくてたまらない、そんな想いが、胸に熱く充満する。

綺礼「ははははははは―――――!」

 腕を広げ、胸に秘められた自分を抱きしめる。

綺礼「ああ、なんて――――すばらしい」

 膝をつき、愉悦に浸る綺礼。

 答えはまだ得ることはないが、とても晴れ晴れとしている。

 父を殺した禁忌の悦楽が、ここまでの程のモノとは思っていなかった。

 この手で父を葬ることが出来て、心の底から歓喜していた。

 ――――ああ、この笑みが剥がれない。

ギルガメッシュ「そこまでにしておけ、綺礼」

 振り向けば、黄金の王が居座っている。

 そのまま立ち上がると、璃正の死体から令呪を剥ぎ取り、綺礼の腕に移す。

綺礼「私はマスターではない。令呪は意味の無い者だ」

ギルガメッシュ「バカ者。令呪は持つ者の力を底上げする効力もあるのは、貴様も知っていように」

ギルガメッシュ「――――それに、だ。次はお前とあの山猫の、遊戯の時間であろう?」

 時計を見る。

 どうやらかなりの時間を要したらしい。

綺礼「ああ、そうか。ではいくか」

 礼拝堂へと、足を運んだ。

.

106 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:41:56 ID:rB2rZR8.

 間桐雁夜は混乱していた。

 教会へ行けば、金髪の少年が監督役の代わりに手紙を差し出してきた。
 手紙の内容は、夜に遠坂時臣と合わせるといった物である。

 ――――これ位使い魔で伝えろよ。

 そう思って家に帰って来てみれば、焼け野原と化していた。

 聖杯戦争は停戦協定を結んでいる筈だから襲ってくるわけが無い。
 それに妖怪蟲爺の姿も無い。蟲達に探させても桜ちゃんの気配さえない。

 何が何だか分からないといった状況でここまできたといった次第だ。

 礼拝堂の扉を開く。

 奥の方に、赤い背広を着た時臣の後ろ姿が見えた。

雁夜「時臣……ッ!」

 ツカツカと歩いていき、時臣の肩を掴む。
 汗をかいているのだろうか、背広が湿っているのがわかった。

雁夜「お前にはなあ、言いたいことがたくさん有るんだ! 殴らせろ!」

 だが、肩を掴むと、時臣は容易く床に転がった。

雁夜「おい、何をふざけてるんだ時臣――――」

 転がっているのは、時臣だけではない。

 時臣の青い目玉も、顔の傍に転がっていた。

雁夜「……あ、あ」

 自分の手を見て見れば、手が血によって赤く彩られていた。

雁夜「じょ、冗談はやめろよ時臣! こ、この目玉だって、オモチャだろ!」

 顔を見る勇気はなかった。
 代わりに、素早く目玉を掬い取る。

 ニュルニュルと生々しく、蟲達と同じように気持ち悪く感じた。

葵「――――雁夜君?」

 その声に気が付き、後ろを振り返る雁夜。

雁夜「あ、葵さん……!」

葵「……なんで、時臣さんが倒れているの?」

葵「その手に持ってるのは――――何?」

 口元を手で隠し、悲しそうな目をする。

 雁夜の手の中には、先ほど持った時臣の目玉があった。

雁夜「ち、違う! これは!」

 それをとっさに隠して、葵に手を伸ばし迫る雁夜。

葵「来ないで!」

 葵の拒絶に、戸惑う雁夜。

 手で顔を覆い尽くし、嘆く葵。
 恐らくは、泣いているのだろう。

葵「雁夜君! 貴方って最低よ!」

葵「私の夫って知ってるのに、殺すだなんて!」

葵「あの人の、綺麗な瞳まで取り除いて! 人間のやる事じゃないわ!」

雁夜「こ、コイツが悪いんだ! コイツが、桜ちゃんを……」

 葵の激昂に、狼狽するしかない雁夜。
 自分の想いの矛盾点も気が付いていないのだろう。

葵「ふざけないで! 何が私の為よ!」

葵「聖杯で自分の願いを叶えてもらうためでしょ!」

葵「あんたなんかに何が解るっていうのよ!」

葵「あんたなんか――――誰かを好きになったことさえないくせにッ!」

.

107 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:45:18 ID:rB2rZR8.

 ――――その言葉が、雁夜の中にある、大切なものを壊した。

雁夜「う、うあわあああああああああ!」

 首を締めに襲い掛かる雁夜。
 だがそれは、いともたやすく翻される。

 気が付けば、雁夜は床にキスをしていた。

雁夜「……うぇ?」

 雁夜は自分が葵に蹴り倒されたという思考に、結びつかなかった。

葵「最低。最低よ雁夜君」

雁夜「ぐふっ!?」

 葵の足が、雁夜に突き刺さる。
 的確に、痛みを感じる場所を蹴られる。

葵「貴方のにっくい恋敵を殺せば、私が振り向くとでも思ったの?」

葵「バカみたい。世界がそんなに優しく出来てるわけないでしょう?」

葵「童貞特有の思考よねー。大人の世界もわかってないおこちゃま」

葵「いや、まあ雁夜君のはそれ以前の問題なんだけどさ」

 なんだ。何だこの葵さんは。
 僕の知ってる、綺麗で、美しくて、儚い葵さんじゃない。

葵「というか、妄想と現実の区別がついてないでしょ?」

葵「頭の中がとっても幸せなのね。無様よ雁夜君」

葵「私が結婚すると知って家飛び出してー」

葵「『桜ちゃんを助ければ僕に振り向いてくれるかも!』って」

葵「そんな妄想で一年くらいその体弄ったんだっけ?」

葵「 変態 、 お花畑 、 犯・罪・者 !」

葵「ああ、笑えない。気持ち悪い。貴方って本当に生きてる価値が無いわ」

 そう言われ、蹴られながらも、間桐雁夜は拒絶する。

葵「ああ、なんて――――ブザマ」

 目の前にいる、遠坂葵という現実を――――。

.

108 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:47:27 ID:rB2rZR8.

麗羅「はい、できあがり」

 綺礼とギルガメッシュのいる所まで、雁夜を蹴り飛ばす黒い少女。

ギルガメッシュ「見事に腑抜けたな」

綺礼「そう雑に扱うな虚木麗羅」

綺礼「利用価値はまだ十分とあるのだぞ?」

麗羅「キモくて触りたくない」

 綺礼は口を開きかけるが、少し考え直し、改めて口を開く。

綺礼「気持ちは分からんでもない」

麗羅「でしょう?」

 綺礼の言葉を聞き取ると、麗羅はギルガメッシュに振り返った。

麗羅「じゃあ早速、お願い王様ー!」

ギルガメッシュ「……何だ雑種?」

麗羅「この人操って、アイリスフィール誘拐してきて」

 頭が痛くなってきたのか、ギルガメッシュは頭を押さえる。

ギルガメッシュ「……何故我がそんな事をせねばならんのだ」

麗羅「綺礼君の為なのに?」

 チッ、と嫌そうに舌を鳴らす英雄王。

ギルガメッシュ「一々癪に障るな貴様は。仕方があるまい、やってやろう」

 そう言って、ギルガメッシュは宝具を取り出した。

.

109 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:48:45 ID:rB2rZR8.

 その次の朝、アインツベルン城で切嗣は項垂れていた。

切嗣「……ああ、何て憂鬱な朝なんだ」

 一日アーチャー陣営を見張ろうとしたが、何らかの力で疎外された。

 恐らくは、あのアーチャーの宝具の一つだろう。

 舞弥は傍で同じく監視の作業や武器の手入れなどをしている。

 セイバーはアイリの様子見を頼んでいる。
 まったくおだてれば扱いやすいサーヴァントである。

セイバー「切嗣!」

切嗣「うわおう!?」

 悪口を考えている所にその本人が現れたら、誰だってビビる。
 機械からかけ離れた切嗣の思考でもそれは同じだ。

セイバー「大変です。アーチャーがこちらにやってきているとの事です!」

切嗣「何だって!?」

 いや、十分予想できる展開だった。
 今聖杯戦争で信頼を握り、各陣営をある程度動かせるのは衛宮切嗣なのだ。

 倒すならてっぺんからという事なのだろう。

 すぐに監視を森の中に移し、陣営を把握する。

 アーチャー、それに遠坂時臣だ。

切嗣「穴倉を決め込んでいた遠坂時臣……先陣に出て来たか」

舞弥「どうしますか? 切嗣」

切嗣「あのアーチャーは様々な宝具を持っている」

切嗣「あの時臣がわざわざ出て来たという事は、アーチャーから強くなるような宝具でも用意してもらったのか」

切嗣「それとも、余程自分の腕に自信があるか、だ」

 煙草をふかし、起源弾を取り出す切継。

切嗣「僕とセイバーが行く。アイリと舞弥は、くれぐれも戦闘は避けて逃走するように」

舞弥「念の為用意していた第二の拠点ですね。わかりました」

 すぐさまアイリの元に向かう舞弥。

セイバー「では、切嗣」

切嗣「ああ、行こうか。――――僕たちの戦場に」

.

110 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:49:16 ID:rB2rZR8.
 森を進むアーチャーと時臣。

 その前に立ちふさがる、二つの影。

アーチャー「現れたな、セイバー」

セイバー「現れたとも。貴様はここで討ち滅ぼす」

アーチャー「――――ハ! 生娘風情が、無理をするな」

セイバー「私は、子持ちだ! ヤンチャ過ぎて国家を滅ぼすほどの元気っ子だ!」

アーチャー「なん……だと……!?」

 自分の目が曇り、動揺するアーチャー。
 セイバーの眼は嘘をついていないように見えたのだ。
 故に、矛盾が生じ、少しばかし混乱する英雄王。

 これは、セイバーの意図したものではなかったが。

 ――――その隙を逃さず、切りかかった。

アーチャー「おっと」

 しかし、それを優雅に避けて見せるアーチャー。

アーチャー「流石は騎士王。教科書に載っているような模範的な戦い方だ」

 切嗣は時臣と対峙していた。
 が、すぐに後悔した。

切嗣「貴様……バーサーカーだな!」

 近づくまでは分からなかったが、こうして正面から見ると禍々しい狂気を隠せていない。

 これが一介の魔術仕如きにだせる狂気ではないと、切嗣は理解していた。

時臣「■■■■■■――――!」

 その姿が、メキメキと黒い騎士のそれに代わる。

バーサーカー「A――――urrrrrrッ!!」

 時臣ではなく、バーサーカーだった。
 ということはだ。

切嗣(……遠坂時臣と間桐雁夜が同盟を組んだとでもいうのか)

 そういえば雁夜は警告を促した際見つからなかった。
 もしかしたら、間桐邸襲撃時に同盟を組んでいたのかもしれない。

 色々と不味いことになった。

切嗣「Time alter――――double accel!」

 切嗣は逃げの一手に徹する。
 英霊と真正面から戦って勝つ術など、衛宮切嗣には持ち合わせていなかった。

 だが、それでも尚、挑発するように弾丸を撃ち当てていく。

 アイリの所へ行かせない為だ。

バーサーカー「■■■■■――――!」

 近くにあった樹を根元から抜き取り、振り回すバーサーカー。

 それだけで彼は嵐の様な攻撃力を掌握する。

切嗣「チィ……ッ!」

 このままではまずい。

 その時だった。


ライダー「AAAALaLaLaie!!!!」


 突如空から舞い降りて来た戦車が、バーサーカーを吹き飛ばす。

ライダー「大丈夫か。セイバーのマスター」

切嗣「……何をしに来た?」

ライダー「いや何、坊主がな『襲って利があるのは、その中心人物のところだ』と言いおってな」

ライダー「近くに簡易的だが拠点を設け、すぐに駆けつけられるようにしておいたのだ」

ウェイバー「勘違いするなよ! 厄介なアーチャーを片付けられるチャンスだって踏んだだけだからな!」

ウェイバー「お前の所の赤ん坊がどうなった所で、僕は知ったこっちゃない」

ライダー「……そこを一番心配しておったくせに」

ウェイバー「言うなよライダー! 威厳が無くなっちゃうだろう!」

切嗣「成程、いや、助かった」

 ライダーのマスターは実に扱いやすい人種だ。
 ここはバーサーカーの相手を頼んでおいた方がいいだろう。

切嗣「僕は奴らのマスターを探してくる」

切嗣「バーサーカーの相手を頼めるか? 征服王とそのマスター」

ウェイバー「いや、それはいいけど……バーサーカーを撤退させるのは難しいぞ」

切嗣「気遣い感謝するが、そこら辺の匙はそちらに任せるよ」

 そうして、切嗣は深い森の中に入っていく。

切嗣(サーヴァントは囮……なら、奴らが向かうのは)

 聖杯であるアイリ、それを略奪しに来たのだろう。

.

111 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:50:17 ID:rB2rZR8.


 アイリと舞弥は、未だに森の中を抜けられずにいた。

舞弥「マダム、あと少しで車です。頑張ってください」

アイリ「ええ……! 分かってる。わかってる、けど……ッ!」

 なんと運の悪い事か、逃げている途中で陣痛が始まってしまったのだ。

綺礼「久しいな。ご婦人」

 そこに現れる、敵である神父。
 衛宮切嗣が最も敵視した男。

 想定外だった。
 目の前に現れるまで、気付きもしなかった。

 陣痛で結界内の把握が難しくなっているのかもしれない。

アイリ「……あら、どいて下さらない? そこを通りたいの」

綺礼「この後、できればお付き合いを願いたいのですが?」

アイリ「あらごめんなさい。私、旦那以外の男の人のエスコートは受けない主義でしてよ?」

綺礼「ほう、ならば――――力づくで連れていくしかないようだ」

 アイリの視界が赤く染まった。

アイリ「え?」

 隣にいた舞弥の首が、弾け飛んだのだ。

アイリ「――――舞弥さん!」

 そして、

麗羅「こっちは殺しても良かったんだよね?」

 舞弥の首を持つのは、ロングコートを着た小さな少女。
 フードをかぶっており、顔はよく見えない。

綺礼「殺してから確認を取るな」

麗羅「はーい」

綺礼「アーチャーに撤退を促しておけ。それと、処理をしておけよ」

麗羅「了解」

 アイリの首を、トンと叩く。

アイリ「――――あ」

 アインツベルンの人形は意識を失い、吸い込まれるように綺礼の腕の中に倒れ込んだ。

112 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:52:21 ID:rB2rZR8.

綺礼「さて、後の事は任せたぞ」

麗羅「任せてよ」

 綺礼を見送ると、手筈通りに事を済ませる。
 もちろん、後始末である。

 コートを脱ぎ去り黒い異形へと姿を変える麗羅。

 その姿は、アサシンであるハサンそのものだ。

ハサン「随分と……遅かったな」

 後ろを振り返り、やってきた者を見定める。
 一本の槍を構える、一人のサーヴァントの姿があった。

ランサー「……ああ、どうやら俺は、またしても出遅れてしまったらしい」

ハサン「無様だ。ここで消し去ってやろう。アサシンのサーヴァントよ」

 呵呵呵呵呵、と嘲笑いランサーを指す麗羅。

 ランサーは自分がアサシンであると、本気で思っているらしい。

 それが堪らなく、麗羅にはおかしくてたまらなかった。

ランサー「何故貴様が生きているのかは知らないが、ここで討ちとらせてもらう!」

ハサン「何も守れぬというとに、私を討ち取ろうとするか。呵呵呵呵呵!」

 先に動いたのはランサー。

 その紅の槍は、心の臓を確実に穿とうとする。

ハサン「動きが大きすぎるぞ。ランサー」

 懐に潜り込み、心の臓に掌を叩きこむ。

ランサー「うぐ!?」

 身体が停止するランサー。

 その隙に、最後の一本をへし折ってやった。

ランサー「お、俺の槍が……!」

ハサン「呵呵呵呵――――!」

 ――――ああ楽しい!
 楽しい愉しいたのしいタノシイ――――!

 今までにない高揚感に、麗羅はとまどいが隠せなかった。
 しかし、不思議にも思う。

 自分は今までと同じ行為をしているのに、なぜここまでも楽しいのだろうと。



 そう愉悦に浸っていたのが、命取りとなった。



ランサー「――――『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』!」


.

113 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 21:55:13 ID:rB2rZR8.

 ランサーが折れた槍を麗羅の顔に投げつけ、魔力を爆発させたのだ。

「な――――!?」

 正面からの思わぬ奇襲に、麗羅の右目が壊れた。

 そして何より、ハサンの姿から虚木麗羅の姿へと戻ってしまった。

ランサー「こ、子供!? しかも、これはサーヴァントではない。化けていたのか!?」

ランサー「……うん、確かに今はサーヴァントとしての気配が感じられない」

ランサー「だが、先ほどは――――」

 目の前の少女に戸惑うランサー。

 無理もない。サーヴァントと思っていた者が、幼き少女だったのだから。

 その戸惑いを、麗羅は見逃さなかった。


麗羅「――――その霊核、貰い受けるわ」


 その小さな右手が伸ばされる。

 目にも止まらぬ素早さで、ランサーの霊核を的確に突き破った。

ランサー「――――が……ハァッ!?」

 何が起こったかも分からずに消えていくランサー。

 一か八かの攻撃だったが、うまくいったらしい。

ソウラ「ディルムッド!」

ランサー「……ソウラ、様。……どう、か。お逃げ下さい。……コイツは」

麗羅「黙れ」

 目の前に繰り広げられようとされる喜劇に吐き気がし、ランサーを蹴り殺す。

 それだけでランサーは消滅した。

麗羅「 後は 」

 崩れ落ちる瞳で、ソウラを捉える。

ソウラ「ヒィ!?」

 踵を返し、一目散に逃げる

 逃がさない。

 見てしまったからには、葬り去る。

 背中を見せる獲物を、歩いて追う麗羅。

 森の中で、ひと時の鬼ごっこが始まった。


麗羅「みーつけた」


 勝者はもちろん、鬼役だった。

.

114 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:02:43 ID:rB2rZR8.


          ◇

 あれは一体なんだったのだろうと、麗羅は首をかしげる。

 愉悦、とはまた違うものだと、壊れた目を手に考える。

 自分の行為は、以前と何ら変わりないもの。

 なら変わったのは―――――自分だ。

 英雄王と契約したあの夜。彼は宝具を使い自分に何かをした。

 不思議なもので、虚木麗羅という自分は、惹きつけられるように受け入れたのだ。

 あの宝具で自分は感情を埋め込まれたか?

 いや、だとすると、それは言峰綺礼にでもくれてやればいい品物だ。

 そう、それは違う。それは理解している。

 あれはそういうものではない。

 あれは――――開花させるもの。

 ただの、きっかけに過ぎぬモノ。

 殺人の才以外に自分に何かがあるとは思えないが、多分そういう事だ。

 そう考えているうちに、言峰綺礼の隠し場所にたどり着いた。

.

115 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:05:45 ID:rB2rZR8.

 ――――かつてのキャスターの根城にて。

 麗羅が綺礼を見つけると、暗い場所で妊婦の首を絞めていた。

 それにしても……これはまた、面白そうなことになっている。

麗羅「ダメじゃない綺礼君。折角のお人形さんを壊すだなんて、勿体ないわ」

綺礼「こればかりは、貴様にも譲れん。この至福を味あわせてもらおう」

 そう言って綺礼は振り向き、麗羅を睨み付ける。
 すると、驚愕した。

綺礼「どうしたその右眼は? 衛宮切嗣にでもやられたか」

 ニタニタと笑みを浮かべる綺礼。

 ムカつく。

麗羅「ランサーよランサー。片しておいたけどね」

 さらりと、サーヴァントに打ち勝ったと、虚木麗羅は言った。

 その言葉に驚いた綺礼であったが、山育ちならば仕方がないと納得した。

綺礼「……ならば、その右眼くらいは安いものだろう」

麗羅「後で直してちょうだい」

綺礼「英雄王にでも頼むことだ」

 ふんとつれない態度をとる綺礼。

 愉悦に目覚めてから、少し冷たくなった気がする。 

 その証拠に、そそくさとアイリスフィールの拷問に戻ってしまった。

麗羅「確かに、そうやって苦痛に歪めた顔を見るのも面白いと思うわ」

 でも、と言葉を付け足す。

麗羅「……私だったら、もっと美味しく調理できるけど?」

麗羅「もしかしたら、葵さん以上の、甘ーい蜜になるかもよ?」

 綺麗はアイリの首から手を放し、やってみろと麗羅に譲った。

 アイリは空気を取り込もうと、床でのた打ち回っている。

 ――――いいだろろう。

 出て来た獲物に、舌なめずりする麗羅。

 ――――この妊婦に最悪を。

 アイリの傍に麗羅は座り込んだ。

麗羅「貴女が衛宮切嗣さんの奥さんね。アイリスフィール・フォン・アインツベルンさん」

アイリ「……そういう貴女は誰?」

 体を懸命に起し、麗羅を睨み付けるアイリ。

麗羅「アーチャーのマスター。りっぱな聖杯戦争の立派な参加者よ」

アイリ「そう、それで私に何をするつもり?」

アイリ「切嗣のことなら、そちらの方に教えて差し上げたわ」

麗羅「私、妊婦をどうこうする趣味は無いの。強いて言うなら……」

 麗羅は表情筋を動かした。

 歪な音をたてながら、その無機質な顔が、崩れる。

 そして、彼女は――――


麗羅「――――その赤ん坊、私に頂戴」


 ――――アイリスフィールの腹を抉り、小さな命を掬い取った。


.

116 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:06:18 ID:rB2rZR8.

 血が舞い、麗羅は赤く染まる。

 アイリスフィールは声にならない叫びを上げ、綺礼は思わず笑みを浮かべる。

アイリ「ガハッ――――がァあ!」

 口と腹から血を溢れ出させ、アイリは痛みにのた打ち回る。
 それはまるで、夏場に地に落ち蠢く蝉の様――――。

 綺礼は笑い出そうとするが、麗羅が綺礼の口に人差し指を当て、赤ん坊を預ける。
 その次にアイリの顎を左手で掴み、右手で次の行動を行おうとした。

 が、その顔に埋め込まれている二つの眼を見てみれば、綺麗な赤い瞳をしている。
 腹を抉られたというのに、強情にも麗羅を睨み付ける、美術品の様な瞳。

 眼を潰そうとしたが、それはあまりにも勿体ない。

麗羅「あ、丁度いいから、その眼も私に頂戴」

 なので、眼球に傷がつかないように、二つ抜き取った。

アイリ「あああああああああああああああああああ!」

 腹が痛み、目が痛み、声を上げ静かに泣き声を上げるアイリスフィール。
 そんなアイリの姿を眺めながら、この目は温かいなと想いに耽る。

 綺礼は赤ん坊を抱えながら、口を押えて笑いをこらえている。

 麗羅はアイリの目玉も綺礼に預けた。

 なぜ渡すのかと一瞬不思議に思ったが、あっさりと綺礼は理解した。

 ――――さて、ここからが本番だ。

.

117 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:08:42 ID:rB2rZR8.

「オギャア! オンギャア!」

 アイリの耳に、赤ん坊の声が聞こえた。
 産声だ。未熟児であろうが、無事にこの世に生を成したのだ。

アイリ「イリヤ!」

 アイリは既に名前を付けていた赤ん坊の名を口にして、声の聞こえる方へと手と足を動かす。

 目は見えていない。耳だけで赤ん坊の元へ向かっているのだ。


 その身は聖杯の影響で、人としての体の機能は著しく低下していた。

 それに腹を抉られ、目を抉られているのだ。動けないのが当然だ。


 ――――しかし、アイリスフィールは母親だ。


 我が子が泣いているのなら、母親として、抱きしめ、慰めてあげなくてはならない。

 もう自分がいるから大丈夫だと、貴女はこの世で安心して生きていいんだと。

 そして、ようやく泣き声の元にたどり着いた。

 手探りで探し、小さく、そして暖かな命に触れる。

アイリ「イリヤ……!」

 触れた瞬間、アイリスフィールは抱きしめた。

アイリ「ああ、イリヤ! 私の可愛い、イリヤスフィール……!」

 本当に、本当によかった。

 自分が聖杯になる前にこの子を生み出そうと、頑張っていた。

 この世に誕生することが許されて、本当によかった。

 ――――アイリ、大丈夫だ。絶対に君とイリヤを救って見せる。

 ――――僕が、聖杯戦争を行われないように頑張るから。

 切嗣との思い出が鮮明に浮かび出した。

 ――――え? 養子が欲しい? 構わない……構わないけど。

 ――――……アイリ。僕は君も、お腹の赤ちゃんの事も諦めたわけじゃない。

 ――――君は、僕が守って見せるから。安心していいんだ。

 そういえば、士郎はもう自分がこの子を産めないと諦めて引き取った子だった。

 イリヤの代わり、というわけではない。

 ただ、母親として生きて見たかった。

 妻ではなく、母親。

 ――――こ、こんにちわ。今日からよろしくお願いします。

 ――――アイリさーん! 洗濯物やっておいたよ。

 ――――ああ! アイリさん! 米をあらうのに洗剤は使っちゃダメだ!

 ――――うん、やっぱり母さんの料理はおいしいや。

 始めこそはよそよそしかったけど、それでも最後には自分をお母さんと呼んでくれた。

 血は繋がっていなくても、親子になれると、家族になれるのだと知った。

 もう、悔いはないなんて思っていた。

 けど、けれども――――

アイリ「――――イリヤスフィール、貴女と離れるなんて、私嫌よ」

 その言葉は、母親の愛に満ちていた。

 生きたい。そう思ってしまう。

 聖杯になる前に、もう自分は目が見えないし、そろそろ死んでしまうだろう。

 もう体はこんなにボロボロだけど、生きたいと願ってしまう。

 この子の母親でいたいと、願ってしまう。

 ――――お願い神様。せめて、せめて死ぬまで、この子と一緒にいさせて。

 それは、アイリスフィールの、最期のわがまま。

.

118 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:09:25 ID:rB2rZR8.











「――――残念でした。全部嘘です」





 それは、いともたやすく喰いちぎられる。









.

119 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:10:00 ID:rB2rZR8.

 腕の中にいたはずの赤ん坊が、突然大きくなった。

 小さい赤ん坊が大きく成長し、今、言葉を発した気がした。

 それはおかしい。ホムンクルスの赤ん坊でも、いや、だからこそおかしい。

 この大きさ――――自分の眼球を奪った黒い少女と、同じ大きさではないか?

「貴女は自分の子供も抱けずに死ぬのよ。アイリスフィール」

 嘘だ。

「ねえ、自分の赤ん坊と私を間違えちゃうなんて、お馬鹿さんにも程があると思うの」

 これは嘘だ。

麗羅「――――ねえ、貴女から全てを奪った人間を愛おしく抱きしめるって、どんな気持ち?」

 アイリの背後から、男が笑っている声がした。

アイリ「あ、ああぁ、ああああぁぁああああ!!」

 アイリは奇声を上げながら、腕の中にいる少女の首を絞める。

麗羅「ねえ綺礼。こっちに来て顔を見て見なよ。 この人、今とっても面白い顔をしているわよ?」

綺礼「とことん、私のツボを捉えているな。麗羅は」

アイリ「ああ! 黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえ!」

 しかし、麗羅には余裕があった。

 何度も言うようだが、アイリスフィールという人形は、人間の機能がかなりの所まで停止しているのだ。

麗羅「首を絞められても、痛くも痒くもなーい」

 そう麗羅はアイリに囁くと、アイリは首を絞めあがようと、大きく口を開けて泣き叫ぶ。

麗羅「いい加減、うるさい」

 麗羅はアイリの首を掴む。

 すぐに声はやんだ。

アイリ「……や、やめ、て」

麗羅「自分がされて嫌なことを、相手にもしちゃいけないって、習わなかった?」

麗羅「それは、メッ! よ。アイリスフィール」

 無機質に、淡々と。それでいて嘲笑うかのように少女は語る。

麗羅「あ、でもそんな道徳感、貴女にわかるわけないか」

 ――――だって、お人形さんだもんね。

 首を握りつぶし、赤い鮮血が麗羅に降り注いだ。

麗羅「……ねえ、どうだった綺礼?」

 赤ん坊を抱いている神父に、麗羅は問いかける。

綺礼「――――ああ、最高だった」

 神父は、実にそれらしく笑みを浮かべた。

.

120 ◆K7pqbvuGjs:2014/08/15(金) 22:11:53 ID:rB2rZR8.
ダイナミック☆帝王切開

今日はここまで


あ、ちなみに愉悦ちゃんの高揚感とかは因子がギュインギュイン高まってるからです。

感情=対極の欠片の因子 みたいな感じで勘違いしちゃってます。
イライラしちゃってるのは因子が高まって安定してないから。
自分でも分かってないから仕方がないね!
ましてや五歳にも満たない幼女だから仕方ないね!

それもこれも、全部対極の欠片ってやつの所為なんだ!

121 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/08(月) 22:47:44 ID:ICTbnzb2
てすと


            /´/:i:i/:i/:i:i/:i:i:/:ハヾ:iヾiヾミi:ミi:ミiミヾ;_},....,_       ....|
.          / /:i:i:i/:/'i:i:i:ア:i:i:i/:i:iリ:i:iVi:i',:i:iVミi:ミi:ミiニヾ`ヽ: `ヽ、     ..|
         /  ,:i:;i:i:i:i/://:i:ア:i:i:/':i:iハ:i:iⅥ:i:i',:iVミi:ミi:ミ:iミヽ: : : :`: ーミ: ,、  |
        '′/;イ:i:i:i/:///:i:/ /:i:/  ';i:i:Ⅵ:i:i',i:iミi:ミi:ミ:=≠{、.: : : : : : :/  |
          /' /i:i:i/i/i'イi:i/  /:i/    !:i:i:}:i:i:i:i:i:}ミi:ミi:=≠彡!:、、: : : :/  .....|
       /' /i:/:i'i:i{;ニ,_ミヽ  /i/´ ̄ ̄ !:i:i:}:i:i:i:i:i{ミi:ミi:ニ彡彡〉' `: : '′    .|
        / i:i:7:i'i:l:i{ {心;゛ 〃 ‐'彡r≠ドミ!:i:i:i:i:}ミi:ニ≠彡アア: : : : {    ......|
.        ,  !:i:{:i:!:i:i{乂マ刈/"   ´ {゚圦刈!i:i:i:i:i}ミiミ_=彡'//: : : : : !      |
        {! !;i:i!:i:i:i:i{   `゙       ‐゙ー-≠'リ!i:i:i}:i/´ヘ}:i:i:/;' `  ̄ ´    ......|
       { | !:i!:|:i:Λ   {         〃.!i:i:i:i/〉゙/:i/:i′           |
      ゛ | {:i:!l:i:i{∧               /' j:i:i:/≠´i:i:/:i:{           .|
          ! い:i:{`ー/i;.、 ` ー_-‐'   '  /i:i/:i:i:i:i:i:i/:i:i:{          .....|
           }:i:Ⅵ, /:i:/ \        ...ィ':i:i/:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:{           ..|
           |:i:{ヾV:i/  /i:>.,.,.,r ≦´ /:i:i/:iィ≠ヽ{:i:i:i:i:{          ......|
           |:i:{ /i>'-.、/:i:i:i:i:i:i:7   ノi/:/: : : : : ィ: ミ:、i{          ......|
       ,. ィ|:i:{: : ;ィ弖三>ィ‐′ ///: : : : :>‐=、ヾー:、          .|
.    >:‐/ :ィ´{:i{V´ ^ く//    /:〃: :/´ : : : { : : :ヽ :`、        .....|
   /: : < : : ゙、 〉{'   //ゝ   /: : /:イ´: : : :_ : 、:}: : : : :ヽ、',          |
                                            ....|

122 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/08(月) 22:48:42 ID:ICTbnzb2
Jan StyleとSS速報の文字コードが違うからズレるのだろうか…それにしては酷過ぎだろ…

123普通の名無しさん:2014/09/12(金) 07:39:28 ID:wBg3bYwk
エディタ上でチェックしてもズレるのか

124普通の名無しさん:2014/09/19(金) 22:30:06 ID:AouIuU2M
どうやらSS速報さんがメモリ増設作業中だそうな……

VIPService 荒巻
‏@aramaki_vip2ch
ご無沙汰しております、夏休みの広告収入が若干黒字を達成しましてー
今からメモリ大増設大会を行います。
ええ、プラス16GBの合計32GBへ大変身です。
作業完了まで今暫くお待ち下さい。。。

125普通の名無しさん:2014/09/19(金) 22:43:14 ID:GSLHoCis
マジか
ああ、最近送信のラグがあったし、それの解消の為の作業かな?
ありがたやありがたや

126普通の名無しさん:2014/09/19(金) 23:05:59 ID:3GIsEosw
全然動かないと思ってこっち来たけど、あー、メモリ増設中なのか。把握
書き込み遅かったから時間指定以外は安価取るの難しかったんだよな、ありがたやありがたや

127普通の名無しさん:2014/09/20(土) 07:35:12 ID:x/hWIfiM
これは長期化待ったなしですね……

VIPService 荒巻
‏@aramaki_vip2ch
ちょっとサーバがあがってこないっすね。。
またNICの問題再発かなぁと原因探求中。
申し訳ないです。もう少しお待ちを。

128 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/20(土) 17:16:27 ID:Mv5jTEAc


これはしばらく掛かりそうですねー

おかげでプロローグとか出来たからいいっちゃいいですけど

129普通の名無しさん:2014/09/20(土) 17:19:56 ID:N7meCzpM
こっちでやるわけにもいかないし……
なんという生殺しか

130普通の名無しさん:2014/09/20(土) 17:46:22 ID:x/hWIfiM
小ネタ連射でもええんやで……

131普通の名無しさん:2014/09/20(土) 17:47:09 ID:x/hWIfiM
すまぬsage忘れ
wikiもちょっと避難所メインにしとくか

132普通の名無しさん:2014/09/20(土) 17:49:07 ID:SaGVy5Jk
逆に考えるんだ
その分支援準備に時間が割けると

133普通の名無しさん:2014/09/20(土) 17:56:18 ID:M7JM56Ik
如何やら、更に時間かかりそうな気配…
コレは今週末動かないんじゃと思えて来た

134 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/20(土) 18:09:29 ID:Mv5jTEAc


【なんとなく練炭をアバターにしましたが】
【スキルがもしかしてそのまんま?】
【正田さんの中二力が高すぎて、ちきゅうくん付いて来れなかったのでDiesも神威もやっていないという】

              彡;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,. -‐''"ソ              /
            ノ-:::::::::::::::;;;;;;;ノ:::;;;;;;;;;;;ゝ;;;;;;;;;;彡             /
           イ:::::::::::::\;;;;;;ノノ:::;;;;;;;;;;;;;-=ニニ==z__         /
          ,イ:::::::彡ミ::::::::\::\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;トミz_       /
         /:::::::::::::::ミ::::::<::::::::::\;;;;;;;ト;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;llト     /   /         _,,. -
        彡ニ;;;;;=;;;==-;;ミ:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ   /  /        /
       //::::::::::::::::::::::::::::::::::ミ:::::::::::::::lノ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;彡--/  /    /  /
       <:::::::::::::ハ:::::\::::::::メ:::::::::ヽ:::::::::ト:::::ゝ:::::;;;;;;;ノ    \ ;;;;    /   /
        l\:::\::ヽ:≧:ゝ=--ゝ =--:::::::::::::::::;;;;;;≧      ̄7;;;  /    /
       `, ハ:ヽ::::::トヽ=- 彳=彳:::ヽ:::::::ヽ:::::ゝ:::::l        < _,,. -‐''"´ /
         ll ヽ::::ヽ:::::ヽ::\弋5乂::::{\:::::::/  ヽ:l       /      /
        ノ ゝヾ:::::::::lヽ ̄`   ヽ::::X//   リ     /        /
           ヽハl::::::! __  _,,.-''"´          /        /
            \ヽ _,,`/ `           /        //
         ┌-ト‐-z_/ _,,. -‐''"´         /       _  /
         /    ̄ `y'         / l   /       /:::X::::ヽ
        / /  ̄ . <        /  l   /  _,,. -‐''"´:::/:::::::::\::ゝ
       -  __x ̄`-Y 气             /:/::::::/:::::::::::::::::::::::Yj
        l  :::::::::::/ /:::7   ̄  /--七---x/::::/:::::::::/::::::::::::::::::::::::::::l:l
       .l   ::::::: ̄::::/ゝ    ノ /   l::::::::\:/::::::::://::::::::::::::::::::::::::::::lヘ
       l    / ::::/:::::::`--j/  /    l:::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l::::l
    _,,.--l     ::/::::::::::::::::l  /    l:::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l::::ハ
 /l/:::::::::: l      / :::7:::::::::::::/l:/     l::::::::::::::::::::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::ヽ
 {::l::::::::: l     l_,,./ ヽ::::::/:‖:      }:::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::ヽ
 l:l\  _,,. -‐''"´/:::/:::::/ヾXzz     l:::::::::ヽ::::::::::::ll:::::::::::::::::::::::::::::::::::::;lヽ:::::::::::ヽ
 lゝ--------''''''::::::::/::::/;l ‖      l:::;;;;;;;;;:::;;;;;;;;;;;;;ll::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lヾ::::::::::::::ヽ

135普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:15:44 ID:Tuqy2L5E
それは勿体無い、今からでも遅くはない

136 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/20(土) 18:20:22 ID:Mv5jTEAc



後は、時期が悪かった…あの時はユーザー怒りの日とか言われてたんで、

手を出しずらかったのもありましたね

137普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:20:59 ID:bvCGfv3w
能力は似てるけど違うんじゃね
原作は更に付加効果あるし、というか厳密には時間停止じゃない
AAはばっちり合ってると思う

138普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:21:38 ID:x/hWIfiM
型月作品と正田作品は厨二のベクトルがちょっと違うからねぇ
ワイにもちょっと毒性強すぎて避けてた

139 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/20(土) 18:22:20 ID:Mv5jTEAc


【フィガ・ロッソさんのアバターの素晴らしきヒィッツカラルドさんがツボに入ったんですがどうしてくれる】
【指パッチンしながらダンスするんじゃねぇ!】

            /: : : : : :ィ´\ヘ/Wヽ イ: : : : : : : : ヽ
.           /: : : : :,  、ヘハ/\/´: ,.   、: : ::ハ
           /: : : :/   \: : : : : : : :/.    \: : ハ
.          l: : : 〔       `ー― ´        〈: : : l
.          l: : /  _          /: : :`ヽハ: : :l
.          l: :l  /´: : : ::>.、      /: :/ ``  l: : :l
          」_::! // ``ヽ: : : :〉   ∠: :∠ _.   l: : :L
         /__〕l  ヽ、 ̄ ̄ ̄〉     〔 ̄   ノ   l:l´  ヽ
        l ´ l:l.    ̄ ̄/   i    \ ̄ ̄    l:l´   !
        ヽ  l:l     /   ::::!     \.     !:!.  /
.     __ 〕く.l:l    /     :::l      ヽ    l:l _/、__,.ィ
    ヽ: : : : : : : : : l.   /      ::!      、ヽ.  l: : : : : : : : : : /
    _ヽ、 _: : : ::l  /  ,、______,ィ} ヽ.  !: : : : : : : : /,.ィ
   ヽ: : : : : : : : : : : :、    !ー―――――― ノ    イ: : : : : : ̄: : : :/
    ヽ、::_: : : : : : :lヽ    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   / l: : : : : : : : : /_
   ヽ ̄:: : : : : : : : :: l  ヽ     ̄ ̄ ̄.    /  !: : : : : :  ̄: : : : /
     ヽ、: : : : : : : : :l    ヽ          /    l: : : : : : : : : : :/
       ヽ: : : : : : : !      ヽ ___ /     l: : : : : : : : :イ
         ̄_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\_ ̄
      _/ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/\_
   ,. イ  l   ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄\::::::::::::::::::::::::::::/   l   ` ヽ、
,. <.     l    ヽ:::::::::::::::::::::::::::|      |:::::::::::::::::::::/.     !      > 、
.       l     ヽ::::::::::::::::::::::::〉 ´   〈::::::::::::::::/       !

140普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:26:28 ID:SaGVy5Jk
ジャイアントロボは曲なら知ってるけど話とかキャラとか全然知らなかった
素晴らしきヒィッツカラルドさん「素晴らしき」まで入れて名前なんだなワロタ

141普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:29:15 ID:M7JM56Ik
時間停止というより、無限の減速を押し付けて自分は無限に加速する事で疑似的な時間停止になってたはず
追加効果もあるから、そのままじゃ決してない。AAはぴったりだと思いますよ
あ、あと、この貴方のスキルってNOUMIN枠じゃないかと個人的には思うのですが

142普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:33:38 ID:Tuqy2L5E
そんな枠はない(断言)
さてさてどんなサーヴァントと組むのか

143普通の名無しさん:2014/09/20(土) 18:34:50 ID:GPbvyOGs
鯖を見たかったのだが、鯖は既に落ちていた

144普通の名無しさん:2014/09/20(土) 20:31:16 ID:N7meCzpM
どうやってサーヴァントのクラス決めるんだろうか?
前回と同じ感じ?

145普通の名無しさん:2014/09/20(土) 20:36:15 ID:Tuqy2L5E
そう言えばwiki更新お疲れ様です
今は過去スレもよめないけど

146 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/21(日) 01:15:40 ID:hp3ZTkKA


サーヴァント決めは、原作的にバサカとアサシンは優先的に決められるようにするか

触媒召喚にするか、完全ランダムにするか

どうするか…

147普通の名無しさん:2014/09/21(日) 01:20:51 ID:cXp.pFqI
どちらでも楽しいものがあるのから困らないのに悩んでしまう。

個人的には触媒からサーヴァントの推測とかできるから、そっちが好きかな。
でも、何が来るかわからないドキドキ感も嫌いじゃないわ。

148以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2014/09/21(日) 01:21:50 ID:uSprW0ew
オンラインゲーム的にはランダムが一番ありそう
もしくは課金して触媒召喚

149普通の名無しさん:2014/09/21(日) 01:47:01 ID:IlslrQUU
基本はランダム召喚で、課金アイテムか、キャンペーン時の入賞アイテムを使うとある程度選択召喚が出来る、とか?
後は、HWOでは触媒はカードって形らしいけど、書いてある触媒名とかわかるとサーヴァントの正体推測にもなって楽しそうだね

150普通の名無しさん:2014/09/21(日) 01:48:41 ID:2BUqw.Uo
最初に特典として触媒か霊地か礼装か選んでもらうのも面白そうね

151普通の名無しさん:2014/09/21(日) 02:04:13 ID:QQqpG4MU
>>150
選べるスタートアップ特典的な奴か
礼装と触媒はfate/goにマジでありそうな話

152 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/21(日) 02:05:20 ID:hp3ZTkKA

【避難所特典その1】

前回は完全ランダムだったので

今回は、普通に決めるのもあり

触媒召喚はこんな感じ

1.『木の鳥型』
2.『土埃のついた簪』
3.『袋に入った土』
4.『熱を帯びた鎧』
5.『白きの笛』
6.『灯心草』
7.『虫に食われた手稿』
8.『翼の化石』

153 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/21(日) 02:09:27 ID:hp3ZTkKA


                                 __   ‐- .、
                          . -=ニ : ̄/:ー_ノ.: 丿
                       ア´.: .: .: :./.: .:アー<:、
                     〃./ .: ′/.: .:./.: .} ヽ:. :.\
                        / .:/ :/ :/.: .:./.: .: .: .∧.:. :. :\
                    / .:/.: :/.://.:.:// .: .: .: イ:. :. :. : i:. \、
                      / .://.:7.:/_':∠., / .: .:/.,_|:i .:l:. :. l:: :i 》  >>150 それ採用
                  / .://!i7:/〃 う >:.:.:/ . _ リ! :|:. :: l:i: |〃
                     / .:/∧|:i|:{i:/ `/.:/  '7ぅミ{|i:i|:: l:: l:i::|′       えらいわアナタ百万年無税
                   / .:/:/:/i|:i|:|i:{/ ´     ` ー〈从l:i:i}:i:|:i:i|
                 / .:/:i:':/:i:i|:.l:|从    ′     ノ /i:i:/:i:i|:i:i|
               .: ./:i:i:/:i:i:i:|:.l:|:i:、  `..ー‐     ∠ノi:/:|:i:i|:i:i:|
              .: .:/:i:i:/:i:i:i:i:i|:.l:|i:| 丶  __ . イi:i:i:i:/i:i:|:i:リ:i:i:|
              .: ..:イ:i:i:/:i:i:i:i:i:i:|:.l:|i:!     |i:i:i:i:i:i:i:/:i:i:i:|イ:i:i:i:i|
          / .:/.:i:∠、-- == |:.l:|^ 、   ,{<:i:i:i:i:{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:リ
        / .:/γ´,   \ ` 》、{.,  `σ´ }ム    ̄ > 、i:i:/i:.
      / .:/.: :/  , し  }'\/ニ7  `゙  ´ }=ムr:/´    ∨i:i:i.:.
     / .:/.: .:,:7   ′   辷 ゝ=∟,.,.,. ___.,.ノニア辷{   , 、 Vi:i:i.:.
   / .:/′.i:/:ゝ }    ; 辷  `ヽ/ ... 、_ヽ´と  ̄ヽ :   ハi:i:i:.:.
  / .:/ ′.:/:i:i:i〈-ゝ _j '{ 辷  /´..,¨´<    厂ヘ _V , ノ:i:i:i:i:i:.:.
/ .:/  / .:i:/:i:i:i:i:i:辷=ー ミ) 辷_/ ‐-、\ノ__ _ ノг彡- Vィ:i:i:i:i:i:i:i:.:.:.、
. :/  / .::i:/:i:i:i:i:i:i:{ニニ二{  ノ_{   t /<二 、, ニ.._!{┌− V{i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.\
"   / .::i:/:i:i:i:i:i:i:i:i〉ニニニ{_ノ=_{  `´ ... --' ー- 、 ヽi_г  ∨!i:i:i:i:i:i:i:.:.\:.\
   / .::i:/:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ニニニノニニ廴_∠ア´O!    鄯`ー‐、   ∠}|i:i:i:i:i:i:i:i:.:.:.:.\:.\
.  / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:}ニニ/ニニニニア  } |     {  》≧≦_={7i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.\:.\
  / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ニニニニニニア    } |     {  〈リニニニリ{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.:. \:.\
. / .::i:/.::i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}ニニニニニノ    .}Ol      {   〉二二二{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i::.:.:.:.:.:.:.:. \:.\

154 ◆XFKJOt0a3Y:2014/09/21(日) 02:19:38 ID:hp3ZTkKA
                                     `ヽー:、
                            _____     }:i:i:i:\
        ___             >=‐-‐≦: ̄/:i:i:i::ベ',  ノi:i:i:i:i:ノ
         {: : : ≧ : 、  >'":〃:i:i:/:i:/i:i:/:/⌒ー=ァ/:i::>'"
         | : : : : : : : '/イ/:i:i:/:i:i:i:/i:/:/:/i:/i:/}⌒T´i:ミi:x
        !: :____ : .:./彡゙7:i:i:i:i:i:i:i:i:i:/゙//i:/i:/ /:i:i:i:i:i:i:i:/:i:ヽ\    じゃあ、礼装は以下から選択かしらね(全部使い捨て)
.       , : Ⅵili鄽彡イ':i:i:鄱:i:i:i:/:/≠< //、 /:i:i:i:i:i:/:i:i:i:i:|\\
        } : Ⅵi√彡イ!:i:i:鄱:i:i:i:i:/.心..ハ\ヽ゛ノ:i:i:i:i:/___!:i:i:i:i|:i| 丶:':,  1.ハーピィの羽箒 効果:1度完全撤退
       〃: : _ヽ√彡イ|:i:i:鄱:i:i:i:/==- '、  /:i:i:i:/___ |:i:i:i:i|:il   Ⅵ
      厶ィ⌒~鄯r=ミ1:i:i:鄱i:i:i:{       /::>'" {.心.}ヽ:i:i:i:l从  }:i  2.光の封殺剣 効果:3ターン必ず有利+1 不利:-1を付与
          >:ミ Ⅵ v゛l:i:i:i:鄱i:i:i:|     / ´     〉ーく,_ }i:i;iリ:i:Λ jリ
      /: : / }、ゝ|:i:i:i:鄱:i:i:i|          ` ′  /'/i:i:i:i:i:Λ'′.  3.強欲な壺  効果:必ず、エクストラターンを発生させる
     /: : /  /:i:i>|:i:i:i:鄱:i:i:i|       、          Λ/:i:i:i:i:i:i:\
    /: : /   /:i:i:i:i:i:|:i:i:i:i鄱:i:i:i|         一     / ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:\
  /__ -==ニニ二三三|:i:i:i:i:鄱:i:i:il、                 イ、  V:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
r≦ニ二x≦ァ´-=ニニニ|:i:i:i:i:鄱:i:i:il->         ≪:i:Λ  Ⅵ:i:i:i:i:i:i:i:Λ\: 、
Ⅵニ-=>イ-=ニニニニニ|:i:i:i:i:i鄱:i:i:iⅥΛ:.:>   <i:i:i:i:i:i:i:i:i:Λ  酛\:i:i:i:i:Λ \: 、
. `^^´/-=ニニニニニ从:i:i:i:i:鄯:i:i:i:∨‐',  Ⅵ.....ヽニ\:i:i:i:i:i:i:i:i:\ }:!  Ⅵ:i:i:i:Λ  ヽ:,
  /ア´-=ニニ__ニニニ∧:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨_{_  Ⅵ.......Ⅵニ',≧x:i:i:i:i:i:i:iリ、  Ⅵi:i:i:i:i:!     ′
_/´^-=ニニ/⌒;ニニニΛ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨{〜、`\.....Ⅵ_]ニニ>‐x':i:i:\ Ⅵ:i:i:i:i|
=‐-ニ二ニ=彡≦ニニニニニ}リ\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\㌃〜㍉',..}ニ!{-=ニ二〈i:丶:i:i:゛}:I:i:i:i:i|
ニニニニニニニニニニ-=ノⅣ{\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\Λく〜Ⅵ]=\ニニ/:i:i:i:i:i:i:i|:i:i:i:i:リー --- ―‐
]二ニニニニニノ\ニ-=//ⅣΛニ\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\-、__j..}]=ニノニニ/:i:丶:i:i:i:i|:i:i:i:/-==ニ二三
]ニニニニニ〃==Λ-=//_/ノΛ-= \:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\......Ⅵニニ/、:i:i:i:i:i:i:i:i:リ:i:/-=ニ二三三

155普通の名無しさん:2014/09/21(日) 02:38:10 ID:2BUqw.Uo
宝具から名前だけ借りたプチ礼装だと参加者が釣られそうだなー
「これで今日から貴方もセイバー」みたいな

156普通の名無しさん:2014/09/21(日) 02:59:19 ID:IlslrQUU
>>152
如何しよう、触媒の名前からどんな鯖が採用されたか予測しようと思ったけど、
頭抱えるほど全くわからねぇ…。とりあえずキャスターは作家なんじゃなかろうかというのは予測したが

157普通の名無しさん:2014/09/21(日) 03:19:32 ID:Bjqz8t3k
有名な手稿といったら、レオナルド・ダ・ヴィンチとかかな


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板