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【習作】1レスSS集積所【超短編】
441
:
名無しさん
:2017/05/17(水) 19:54:19 ID:RuX307XEO
「気が早いけど、買って来ちゃった」
日も暮れた、狭い庭の一角。
彼女の言葉を思い出しながら、僕はロウソクに火を灯す。
「準備、できたよ」
「ん、ありがとう」
ぼんやり、ゆらゆらと赤い炎が用意しておいた水入りのバケツを、そして天真爛漫な笑みを見せる彼女の姿を照らし出す。
トロールである彼女の大きな手には、近所のスーパーで買った線香花火のセットが入っていた。
「じゃ、はじめようか」
「うん……どうぞ」
彼女から花火を二本受け取って、先端の紙にろうそくの火を移す。
小さな火花が出たのを確認してから、一本を彼女に渡す。
「きれいだね」
「うん、綺麗だ」
パチパチ、パチパチ。
二つの火花が狭い庭と僕らを照らす。
赤くきらめく先端を落とさないように、手を動かさない事に気を使う。
浴衣なんて面倒なものは着ないから、二人とも普段着だ。風情もへったくれもない。
「あっ」
ぽたり。僕の線香花火が力尽きて光を失う。
ちょっと揺らしてしまったからなのか、先端の赤い部分が落ちてしまった。
「うう。僕の負けかぁ」
「いつの間に勝負になってたの?」
「なんて言うか、僕の中では線香花火は勝負なんだよ。どっちの方が長続きするかーって」
「……ふふ、男の子だね」
がっかり、首を垂れる僕に、彼女は笑って見せる。
その手にはまだまだ元気な線香花火が心なしか誇らしげに輝いていた。
「でも、残念。私も引き分けみたい」
「……え?」
すっ、と彼女は手をのばして、僕の消えてしまった線香花火の上に、火花を乗せる。
二つの持ち手の間で、パチパチと火花が囁く。
寄せられた彼女の身体からは、トロールの甘い香りと花の芳香。
夜闇の中、火薬の匂いと溶け合ったそれは、優しく僕の鼻孔をくすぐっていた。
「「あっ……」」
ぽたり。彼女の花火が消える。
なんとなく寂しそうな顔をする彼女の手に新しい花火を握らせる。
今度は、最初から一本を、二人で持とう。
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