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【習作】1レスSS集積所【超短編】
263
:
名無しさん
:2017/03/12(日) 21:59:05 ID:nEYAXpqsO
「久し振りだね。勇者」
墓前に花を備える俺の耳に、聞き覚えのある声が響く。
それは、勇者である俺に長年付き添ってきた少女が死んでから、一年ほどたった頃の事だった。
「お前、生きていたのか」
顔をあげると、むっとした無表情が見える。
それは、かつて俺と少女が二人で戦った術師であった。
元教団のシスターであった彼女はある事件をきっかけに狂い、魔界のキノコを使ったスープで人を毒殺していたのだ。
そして、俺達が彼女を倒した時には、既に三桁の人間が彼女の手にかかり、ゾンビやグールへと変えられていた。
「いや、間違いなく死んでいるよ。腹に開いた傷も塞がっていないままさ--単純に、魔物になっただけだよ」
「……そうか。それで、魔物になった貴様はこんな所で何をする気だ。決着をつけるとでも?」
腹に出来た傷を見せつける彼女に気圧されつつも、剣を構える。
恐らくリッチとなった彼女から感じる魔力は膨大で、一人で戦えば勝ち目は薄い。
それでも、俺は相棒の前では逃げたく無かった。
「いいや、戦う気は無いよ。けど復讐に来たんだ」
「何をする気だ」
「キミを、泣かせてやる。大の大人がわんわん泣くところを、観察してやる」
「ふん、やってみろ」
「ならば振り返ると良い。それだけで、キミは泣く。絶対にな」
無表情のまま告げられた言葉に、警戒しつつ後ろを向いた俺の目に映ったのは。
「……っ」
「ゆう、しゃ」
長い黒髪が見えた。
ほっそりとした、手足が見えた。
女性らしさを帯びた身体が見えた。
それは--少女の姿だった。
失った筈の、相棒だった。
「あい、たかったよ」
「なん、で……っ」
「私が主神に背いたのは。その表情が見たかったからだ--再会を喜ぶその顔をな」
潤む視界に困惑する肩を、魔術師が叩く。
限界、だった。
相棒に抱きしめられるとそのまま泣いた。
「死を克服したかった。別れを、悲劇を否定したかった。その気持ちを、今なら解るだろう」
「……」
「ああ、赦されない事をしたとも。間違いなく私は人を殺したのだから」
泣いている俺の後ろで魔術師は小さく笑んでいた。
「だから、これが--私の復讐であり、せめてもの罪滅ぼしだ。気に入ってくれたかい?」
彼女の言葉に。
「ズルいな。本当に」
俺は、せめてもの抵抗を返したのだった。
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