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【習作】1レスSS集積所【超短編】

252名無しさん:2017/03/11(土) 13:59:32 ID:H7yNtD56O
「ん。今街で行方不明の子は西の森でさまよってるってさ」
「ありがとう。情報感謝する……これ、約束の情報料だ」
「ん。たしかに受け取ったよ」

情報料が入った袋を受け取りながら、私が小さくため息をつくと、目の前にいる男は不思議そうに首を傾げた。
私--ラタトスクの情報屋と、教団の勇者であるコイツの付き合いは、結構な長さになっていた。

「しっかし。勇者がこんな魔物から情報を買うなんて……世も末かね」
「君の情報には、嘘がないから」
「そりゃあ。信用第一の商売だから嘘はつきたくないけどさ」

コイツの真っ直ぐな瞳に目をあわせないようにしながら、ぼそりと呟く。
確かに、私は情報に関して嘘をついたことはない。
だけど、結構後ろ暗い情報の渡し方をしてきたのだから。

初めて出会った時は、難病を治せるポーションの場所として、ドラゴンの巣穴を紹介した。
次に出会った時は、盗賊の頭を探して居たから、オークの群れに捕まっているとは言わずに居場所を教えた。
強い武器が欲しいと漏らしたときは、カーズドソードのありかを伝えた筈だ。

何度も何度も、コイツには、本当だけれど、悪いことをして来た。
だというのに、コイツは怒らずに、情報を買っていくのだ。
毎回毎回飽きずに来るもんだから、最近は疲れて普通に情報を渡すようになってしまっている。

「もし、目の前の魔物が子供を攫って西の森に放置した。ならどうする?」
「君はそういうこと。しないだろ?」
「まあ、そうだけどさ」

ちょっと動揺させようとしても、この調子。
なんというか、騙しがいのないヤツだ。
ちなみに、行方不明の子は世話好きのアルラウネ夫妻が保護している。
どうせ、コイツの事だから特にバトル展開一つなく、穏便に済ませてしまうだろう。

「あのさ。実は追加料金で売れる情報があるんだ」
「え、本当か?」

何となくムカついて、私はある情報をコイツに売ることにした。
これ位すれば、コイツだって少しは反応してくれるかも知れないし。
情報料を受け取りながら、小さく笑んで見せた私は。

「実は、私……あんたに惚れてるかも」

会心の情報を口にした。


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