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【習作】1レスSS集積所【超短編】

174名無しさん:2017/03/04(土) 18:00:33 ID:Jis7x.pQO
私には、大好きなお兄ちゃんが居る。
教団の騎士であるにも関わらず、アリスという魔物である私を、何も言わずに育ててくれた、優しいお兄ちゃんが。

「お帰りなさい、お兄ちゃん!」
「ただいま。元気にしてたか?」
「うん。今日もね、シスターのみんなのお手伝いしたの!」
「そうか。迷惑はかけなかったか?」
「もっちろん!」
「いい子だ」

仕事から帰って来たお兄ちゃんを笑顔でお出迎えする。
いつものお手伝いの事を言うと、褒めて貰えた。最初の頃はシスターさん達がみんな怖い目で見てきたけれど。一緒に過ごすうちに、優しくしてくれるようになった。

「ふみゅう……」

くしゃり。ごつごつとした分厚い手に髪を撫でられる感触が気持ちいい。
とても幸せな気分になれる。

「今日はハンバーグにするからな」
「わぁいハンバーグ!」
「今日は、特別な日だし。いい子にしてたご褒美だ」
「特別な日?」
「ああ。お前を拾って五年目だからな」「もう、そんなに経ってたんだ……」

一通り、なでなでを堪能した後、大好物のハンバーグを作るお兄ちゃんの隣でスープの仕上げをする。
少しだけ味見をしたら、なかなかの自信作だ。シスターさん曰く料理は愛情。つまり私のお兄ちゃんへの愛の賜物である。

「お兄ちゃん、出来たよ!」
「こっちも、丁度いい頃だ」

二人分の料理の前でいただきますの一礼。
誕生日に買って貰った小さなマグカップには、私の名前が刻まれていた。

「なあ」
「なあに、お兄ちゃん」
「……いや、何でもない」

ハンバーグを食べながら難しい顔をするお兄ちゃんに首を傾げる。
楽しい日の筈なのに、苦しんで居るみたいな。
きっと何でもなくない事なのだろう。

「お兄ちゃん。話してよ。凄く辛そうな顔、してるから」
「すまない」
「謝らなくていいよ。話して」
「……今度、戦争になるんだ。魔界と、この国が」
「……」
「数ヶ月前から、決まってたんだ。言い出せなくて、すまなかった」
「大丈夫。お前は絶対に返してやるから」

真剣な顔のお兄ちゃんの言葉。
嘘じゃないって分かるから悲しくなった。心遣いが、嬉しかった。

「やだ」

だから。私は悪い子になる事にした。
戦争なんか、絶対にさせない。
お兄ちゃんと離れ離れなんかにならない。

「お兄ちゃん……私、もうオトナなんだよ?」

漏れる吐息は魅了の魔力。
スカートをたくしあげて誘いをかける。
お兄ちゃん、大好きだよ。


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