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【習作】1レスSS集積所【超短編】
149
:
名無しさん
:2017/03/02(木) 20:51:28 ID:.PAsS2S.0
雰囲気変えにSS投下するよ!
今日という今日こそ、僕は。
この部屋を抜け出して、真人間の第一歩を踏み出すのだ。
今まさに僕を抱き枕にして眠っている、この悪魔の腕から脱出するのだ。
毎日セックス、セックス……セックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスという生活から開放されるのだ。
その固い決意を胸にして、僕は自分の身体に取り付く魔の腕を慎重に、慎重に取り外していく。
カーテンからは眩い朝陽の光が見え、外からは小鳥のさえずりが聞こえてきている。
待っててね、太陽さん、小鳥さん。もうすぐ僕もそっちに行くから。
声には出せないので心の中で呼びかける。
そっと、そ〜っと、悪魔が起きないように、起きないように。よっし、腕から抜け出ることに成功。
次は、あまり物音を立てないように、抜き足、差し足、忍び足……細心の注意を払ってベッドから降り、部屋の扉に向かって行く。
一昨日はここで悪魔が目を覚まし、無念にも捕まってしまった。昨日はドアノブを掴んだところでバレた。
しかし今日は大丈夫だ。取っ手を手にしながら振り返ってみても、悪魔は規則正しい寝息を立てていて、全く起きる気配がない。
この扉を抜ければ、爛れた生活とはほど遠い、新鮮な朝の空気が吸える……!
逸る気持ちを抑えつつ、僕は最後の難関であるドアノブを捻った。
やった、成功だ! 歓喜の笑みを浮かべて、僕は扉をくぐり抜け――
――あれ?
扉の先では、悪魔がベッドで眠りこけていた。
振り返る。悪魔がベッドで眠りこけている。
前を向く。悪魔がベッドで眠りこけている。
ドアの内側も外側も、まったく同じ光景。ど……どういうこと?
すると、悪魔のすぅすぅという寝息が、クスクスという忍び笑いへと変わっていった。
はっとして見れば、悪魔は既に眠りから覚めており、目が合った僕にウインクを投げてくる。
や、やられた……! 僕は最初から彼女の手のひらの上で踊らされていたのか……!
「ダメよ、勝手に外に行こうなんて。ほら……“戻ってらっしゃい”」
彼女からの命令の言葉。それは魔力による契約の呪文。
恨めしいことに、脚は勝手にベッドの方へと歩み寄っていく。
「うふふ、つかまえたぁ……さぁ、また眠りましょう……?」
今日も失敗した……観念して、再び抱き枕にされるべく彼女の腕の中へ戻りこむ。
僕は柔らかく温かい体温を感じながら、明日はどうすれば脱出できるかな、と遠い目をして悩み始めるのだった。
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