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【習作】1レスSS集積所【超短編】

13名無しさん:2015/11/26(木) 08:31:28 ID:Ra5OeaN60
「出たな一つ目の化け物め!覚悟しろ!」

「こんな薄暗い洞窟までご苦労なことだな?勇者さんよ」

「お前を討伐しろとの命だ。いくらカワイイとて容赦はせん!」

「かわいい?」

「?!……な、何だ今のは、口が滑ったのか!?」

「おいおい、魔法が簡単に効きすぎじゃないか?」

「くっ……これが”暗示”か、姑息なマネを!」

「ふふふ……さて勇者さん、アンタに言っておくことがある」

「なんだ!」

「オマエには半年前に生き別れた妹がいるな」

「だからどうした」

「ワタシだ」

「なに?」

「だからそれはワタシだ」

「ふん、何を言う!そんな戯言を真に受けるものか!」

「初恋だったパン屋の娘とはその後どうだ?告白はしたのか?」

「なっ……」

「勇者稼業に身をやつしている所を見ると……上手くはいかなかったらしいな」

「なぜ、お前がそれを……!」

「オマエのことなら何だって知っているさ。なにしろ、妹なんだから」

「ち、違う……俺の妹は人間だ!魔物なんかじゃない!きっとこれは――」

「ゲイザーならではの”暗示”のせいだってのか?」

「そ……それ以外に何がある!」

「……」

「俺は、そんな魔法になど……!」

「なあ……もういいかげん、楽をしてもいいと思わないか?」

「……なんだと?」

「ただ使い捨てられる奴隷の私たちに、真っ当な道なんて用意されていなかった。
 弱者がさらに下層の弱者である私たちを責め、鬱憤を晴らした。はけ口にした。
 それでも、ニンゲンであることに意味があるのか?」

「何を……」

「身分を得ようとして、出身を詐称し勇者に成ろうとした兄さんを私は止めた。
 そんなもの、ただ少し呼び名が変わるだけで、やはり奴隷でしかなかったからだ。
 それでも兄さんは……私の生活を、身体を守るために、自分を犠牲にした……」

「ち……違う、」

「私は、もう兄さんが傷付くところなんて見たくないんだ。
 身体が弱くてまともに働けない私をかばって鞭打たれるのも、身を粉にして働くのも……。
 だから私は、魔物になったんだ」

「……どうして、どうしてだ?アンメル……」

「兄さん。確かに私は魔物になった。けれど、それでも貴方の妹なんだ。
 私を信じてくれないのなら、この場で斬られたっていい。
 だからもう一度、一緒に暮らそう」

「……アンメル……」

「この洞窟にいると、また他の”勇者”が来るかもしれない。
 さあ行こう、兄さん。 とっておきの場所を用意してあるから――」


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