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【習作】1レスSS集積所【超短編】
11
:
名無しさん
:2015/11/26(木) 01:33:34 ID:MGB9RDFQ0
「はぁ……」
USBメモリに眠った大量のデータを前にため息をつく。
沢山のSSを書いていく中で、没になった作品とも呼べない文章の残骸の山。
「――どれから、消すか」
偶々目に付いた一つをダブルクリックし、中身を確認する。
日付を確認すると、文章を書き始めてすぐの頃の代物だった。
まだ、物語に自分を代入しようなんて無茶なことを考えていた時代。ヒロインの造形なんて当時自分が憧れていた先輩そのままだ。
ある女の魔物と、人間の勇者の恋物語。二人は心を惹かれあいながらも、それぞれの宿命によって対立し、剣を向け合っていた。
物語は、少年の勇者が魔物に剣を向けるところで止まっていた。
「これは、駄目だな」
よくあるロミオとジュリエットの変形だ。仕上げた所で、並みの文章にしかならないだろう。人から評価を貰うには程遠い。
何より、恥ずかしくて仕方がない。ウィンドウを閉じて、即刻ゴミ箱に叩き込んで忘れるのが正しい対処法だろう。
「……くそっ」
だが、ウィンドウを閉じようとした手が止まる。
文章の中から――ヒロインが、少年が自分を見つめているような気がしていた。
私を――僕を幸せにしてくださいと。彼らが訴えていた。
「ねえ、君が物語を書くならさ――えへへ、私も出して欲しいかな、なんて」
先輩の顔が、浮かぶ。
「仕方ない、書いてやるか」
頭の後ろをぽりぽりと掻き、文章をうちこんていく。
長年SSを書いていたおかげで、何処までもスムーズに話は進む。
戦いの果て、少女と少年はお互いに剣を捨て、抱きしめあう。
辺境の村で、過ごす二人は――幸せに笑いあっていた。
「私は、ハッピーエンドが大好きなんだ」
――ええ、先輩の大好きなハッピーエンドです。
お話が出来たら、見せるという約束をしていましたね――3年も遭っていない今となっては、もう、無理な話ですが。
「……そんなことはないよ」
ふと、後ろから声が聞こえた。
想像していたヒロインと同じ声。
「私は、君が書いてくれた作品を食べるのがずっと楽しみだったんだから」
振り返るとそこには、先輩が居た。
作品と同じ、透明な羽とピンク色の髪を持った先輩だった。
「――私達、リャナンシーはね。上質な物語がご飯なんだ。きっと、君なら美味しい物語が書けるって信じてたよ」
でも、こんな作品で大丈夫なんですか?
「君の愛が、一番こもってるもの。美味しいに決まってるよ」
先輩は、にっこりと笑ったのだった。
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