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【屋内】世にも奇妙な邪気眼大学【コテ可】

1名も無き邪気眼使い:2010/12/26(日) 01:50:38 ID:.AyQGSX.
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【前スレ】
【屋内】邪気眼大学と不思議なダンジョン【コテ可】
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135名も無き邪気眼使い:2013/10/16(水) 09:12:44 ID:OWDXj.Ww
思うところがあるのは甲だけではない。
この乱痴気騒ぎのド当事者である凛もまた、実は内心困り果てていた。

(うぅぅ、どうしてこんな事に…私はただ、センパイ達が悔しがって歯軋りする音が聴きたかっただけなのに…)

振り返るのは、この三年間。
ある日突然訪れた軽音ブーム、何やら知らぬ間に担ぎ上げられ、あれよあれよと収まった女王の座。
私はただ、出番が欲しかっただけなのに…。
ーーー否。

(…認めるか!)

そう、認めるわけにはいかない。
滑稽なお山の大将を“強いられている”などとは、断じて。
空気のような存在だった惨めな穹凛は死に、スーパーアイドル穹凛様に生まれ変わったのだ。
それを全人類に思い知らせてやる。
そして私が新世界の神になるのだ!

『服』

脳内が大盛り上がりを見せる中、気まずそうに発せられた甲の言葉で我に帰る凛。
白い頬が朱に染まり、慌てて衣服を直そうとするが…

(ピコーン、良い事思いついちゃったっす)

恥じらいの表情は一瞬で過ぎ去り、すんげー悪い顔をする。

「…ねぇ、甲センパイ?もし私がここで大声上げたら、一体どうなっちゃうっすかねぇ?」

フフフのフ。
この二人をボコって、全校生徒に自分の威光を知らしめるという当初の目的からはだいぶ外れるが、これはこれで悪くない。
甲の名誉が地に堕ちれば、邪気会の復権など夢のまた夢へと遠ざかる。
この弱みで甲を奴隷にしてしまうのも良い。

「なんか今日暑いっすねぇ〜、甲センパイ?」

ニヤニヤと笑いを浮かべながら、シャツのボタンに指をかける凛。
駆け引きとはこのようにして行うのだよ。

>>134
やる気があるのかないのか、スマイルはヘラヘラと、ただカノンと甲を品定めするように眺めるばかり。

「スマイル、私への尊敬が足りてないんじゃないっすか?」

そんな彼の態度に苛立ちを募らせる凛は、殆どいちゃもんに近い形でスマイルを非難する。
スマイルは凛の方に振り返りもせずに答える。

「まさか、あんたには感謝してるよ。あんたが“アイドルごっこ”を始めるまで、俺は自分が何をしたいのかわからなかった」

「おいこら」

「だからこそ手を貸してやってるんだぜ?労いの言葉の一つも欲しいね」

含みのある言い方だが、凛は黙らざるを得なかった。
凛がろくに言う事も聞かず、好き勝手しているこの男を側に置いている理由は、たった一つ。
“この男を敵に回したくないからなのだから”。
凛は内心で舌打ちすると、今度はカノンの言葉にリアルで舌打ちした。

「服服うっさいっすね、中学生っすか?この程度の格好、もう見せ慣れてるんすよ。購買に私のグラビアやイメージビデオ売ってるの知らないんすか?ちなみに併せて買うと大変お得になってるっす」

反論しつつも、さり気ないステマも忘れない姿勢は、まさにプロ。
凛とて恥ずかしくないはずがないのだ、必要な事と割り切らなければやっていられない。

(しかし、魔法少女っすか…最近マンネリ気味だし、そっち方面のアプローチも悪くないかもっすね…)

なんだかんだでノリ気だった。

136:2013/10/16(水) 18:59:22 ID:bQQsB3A6
>>134>>135

「お前さ」

ニヤニヤと笑い始めた凛

「何か、勘違いしてねーか」

その言動に、低く重い声を挟み込む

「俺が、”引いてやる”って言ってんだ」

声に乗せるのは静かな怒り
ここまでのオチャラケた雰囲気はナリを潜め
空気に緊張感が生まれる

「これ以上は”日常”じゃ済まねーぞ、なぁお前」

凛のを、射抜くような――
――射殺すような視線が見詰める

「俺と、ここで、本気で潰し合う”覚悟”――あんのかよ?」

最後まで静かに
ここが”境界線”である事を示し、確認する

これより先は――タダでは済まないという事を












――と、まぁ脅してみるのだが

「(……マジもう…これで何とか別れになると良いなぁ…)」

内心はもうホント穏便に済ませたい気持ちでいっぱいだった

「(引込みがつかなくなってんだろ……ほら、ここが潮時だぜー…?)」

ハラハラ

137カノン・A・カペルマイスター:2013/10/16(水) 21:37:32 ID:IElBC2Xk
>>135>>136
「あらまァ、逞しいねェ。
 まーいつでも魔法少女になりたかったら声かけろよォ?アイツもいつも募集してたしなァ」

ふふりと苦笑して。
どうも凛が立場的に弱く見えなくもないので、スマイルとの関係をいぶかしみつつ、口を開こうと

「――ッ」

一瞬で空気が重くなったことに、震えのようなものを感じる。
流石、甲、と思った。
伊達に邪気会で大暴れ……いや、活躍と言えばいいか、そうしていただけはある。
実際に行動してきたものだけにある、重みと凄み。
密度濃い時間を過ごしてきた甲だからこそ出る、威圧感。
それにつられるように、そのまま笑みを、薄く、口元だけにして。

「……おォ、かぶたんおこ?おこなのォ?
 そんなら――」

抱き締めるように、両腕を広げる。
合わせて虚空が水面のように波打ち、ずるりと引き抜かれるのは1メートルほどの金属塊。
爪だ。
左右合わせて2つ、合計4つ現れたそれの先端を二人に向けて、

「俺も全力を持って相対せんこともない」

こつりと、拳で鋼爪を叩いて、笑いかけた。





ついでに叩いた音で甲にだけ聞こえるメッセージを飛ばしておく。
内容はこんな感じで。

 『ねえねえ、かぶたん今どんな気持ち?
  俺はアイドルというかなんというか邪気大ってスゲェって思ってるけど今どんな気持ち?』

たとえ相手がおこであろうとおちゃらける精神だけは忘れない……!!!!

138穹凛/スマイリー・フェイス:2013/10/16(水) 21:59:48 ID:rI56qFbA
>>136

「ひっ!?」

ーーーぞくり
静かな怒気に背筋が凍る。
この三年間、凛もそれなりの修羅場を潜った気でいたが、“これ”は格が違う。

「わ、わたっ、私を、ししし叱るとか!いい一体、何様の…ゴニョゴニョ」

(ヤバイヤバイヤバイ!なに口答えしちゃってんすか私!?これはヤバイやつだって!)

凛は自分のアホさを心底呪った。
この三年間、人に頭を下げた事など一度もなかったせいか、素直に引く事が出来ない。
奥歯を鳴らしながら絞り出したのは、あまりにも情けない台詞だった。

「べべべ別にビビってないし!!嘘じゃないし!!」

(ギャアア私のあほんだらァ!!)

>>137
(こっちもやる気だし!?)

完全に調子こいた。
最初に“シーケンス”をかき消された時点でやめておくべきだった。
しかし、今更後悔しても後の祭りだし、生産的とも言えない。
今考えるべきは、如何にして己の格を下げずにこの場を切り抜けるかだ。
例えば、不敵に笑って「見逃してやる」的な台詞を吐くとかどうだろう。
おっ、良いじゃん!
これで行こう!

「うわあああああ、誰か来てくれええええええ!!凛サマが、おーーーかーーーさーーーれーーーるーーー!!!!」

「このどあほう!!!!」

心底楽しそうに笑いながら、スマイリー・フェイスが絶叫する。
やりやがったこの野郎。

「えひゃひゃひゃひゃ、楽しくなってきたぞお!スマァーイル!」

139:2013/10/16(水) 23:33:20 ID:bQQsB3A6
>>137
「…………帰りてぇ」

メッセージへの返答は小さく短く一言だけ
ただ、心からの呟きに心情は慮れる

口に出して言っているので”千里耳”の凛にも聞こえたかもしれないが
>>138
何だか身内がやらかしてたのでどうだろうか

しかし

「―――チッ」

ここで、ひとつの『異質』が浮き彫りになる
”スマイリー・フェイス”の存在だ

「(……コイツ)」

『異質』な笑顔を浮かべるその男を注視して

「(……何処まで”場”を読んでいる…?)」

この”場”に流れる違和感を感じた

仕切られているような
流されているような
踊らされているような

凛を含む自分達、この場にいる者全ての舵を取られている様な感覚

「(……気持ち悪ぃな)」

殆ど直感ではあるが、拭い切れない”気持ち悪さ”を笑い続ける男――
――スマイリー・フェイスに感じた

「(潮時なのは、俺らの方かもな――見えねぇヤブにゃ何が潜むか分かねえ)」

違和感を警鐘と認識
行動に転換する

「おいカノン、マジで引くぞ」

短く吐き捨てる
声に真剣味を乗せた、カノンなら汲んでくれるだろう

「(”こいつら”と向き合うのは――多分、まだ早い)」

さて、行動は定めた
あとは逃げやすくするために細工のひとつでも打つか

すぅ…と息を吸って
スマイリー・フェイス――ではなく、半ば狼狽えてる”アイドル”の方向を向く

「くっそぉおおおお!!!覚えてやがれぇええええ!!!!」

実に小物っぽく吠えて、踵を返しダッシュ――逃走

この場の”勝ち”を強引に譲る形で場を閉める、追う気を起こさせない為に

「……」

最後にチラリと

「(はてさて、一体ナニモンだろうね)」

スマイリー・フェイスを一瞥するのだった

140カノン・A・カペルマイスター:2013/10/17(木) 01:10:36 ID:kiEZgE.A
>>138>>139
帰りたいの一言が重すぎて内心ホロリとしつつ、流石にこれで相手も引くかなと考えて。
スマイルの言動に思わず目を見開いた。
え、こいつ何しちゃってんの?自爆?
(ファン的には)愛しの凛様も俺たちも巻き込んでるぞこれ?
まさかのそんなフルボッコが楽しいタイプの(放送禁止用語)?
これは、まさか、

「……新しい、価値観……?!」

戦慄。
こいつぁやべえ、の一言に尽きた。
知らないうちに邪気大にはトンでもねえニューフェイスが入学してやがった。なんてこったこいつぁ楽しくなりそうだ!!
しかしこの状況は楽しむ前に面倒が面倒を加速してハイパーインフレ面倒タイムになるぞ!
あとであのスマイルって奴とOHANASHIとかできねえかな!無理か!!いや行けるか!?

「りょーかい」

そこまで考えたあたりで此方も短く返答。
即座に爪を仕舞い込み、逆に光翼を出して、強く床を踏みつけ、身を回して飛ぶ。
反動で勢いつけて逃げるためもあるが、

 『くっそぉおおおおおおお!!!覚えてやがれえええええええ!!!!』

一番の理由は捨て台詞の増幅だ。
邪気会を信じてる奴らには申し訳ないが、外にも聞こえるくらい大きくすりゃあ、ファンが集まってきてわっしょいわっしょいしてくれるだろう。
おあつらえ向きに破壊の後だってばっちりなことだし。
ついでに自分も、すっと一息吸って、

 『うわぁああああぁあああ!!お助けええええええええ!!!!!!』

これで個人的にはオッケー。
さてどんな反応をするやら――と、振り向かず、しかし耳には意識を傾けたまま、甲を追っていく。

141穹凛/スマイリー・フェイス:2013/10/17(木) 08:36:34 ID:p7ebw1Lg
>>139-140
凛は少々残念な子ではあるが、決して馬鹿ではない。
むしろ頭の回転は早い方であり、故にこの現状も概ね正しく認識していた。

(私の事なんて見てなかった)

二人が下手な芝居を打ってまでこの場を退いたのは、間違いなくスマイルを警戒しての判断だろう。
自分は何もしていないばかりか、逃げの口実に利用されたに過ぎない。
“凛はスマイルのおかげで見逃された”。

「…許せない」

ギリ、と奥歯が軋む。
こんな屈辱を味わうのは初めてだった。
もはや討つだけでは飽き足らない。
絶対に跪かせ、足の指の間を泣きながら丹念に舐めさせてやる。
そう心に決めつつ、ファンが駆け付ける前に衣服の乱れを直す。
また襲われてはたまらない。

「…スマイル、礼は言わないっすよ」

「ああ」

凛は屈辱のあまり気付かなかった。
スマイルの声が、全く笑っていなかった事に。
この場に限って言えば、凛が盲目であった事は幸運だったと言える。
スマイルの顔を見ずに済んだからだ。
もしかしたら、去り際にスマイルを一瞥した甲には見えてしまったかもしれない。

無表情だった。
一切の感情が欠落した暗い穴のような双眸で、逃げ去っていく甲をただ観察していた。

142カノン・A・カペルマイスター:2013/10/20(日) 16:20:57 ID:BWOEeTE6
ティ―――z____ン

143カノン・A・カペルマイスター:2013/10/20(日) 16:35:10 ID:BWOEeTE6
「……やべえ、思わず書きこみ途中でミスる程度の変態発言の気配をキャッチしてしまった気がするぜェ」

銀色は冷や汗をかいていた。
エンターキーで改行できるのはいいがシフト+エンターで投稿するのどうにかなりませんかねJaneStyle、スカイプと間違えるんですが?
……いや、それはいいんだが。

「まさか世の中にこんなパンツ祭りを開催しようとする野郎がいるたァな……」

実際には野郎ではなくアマなのだが。
ふひゅう、と口笛吹きつつ、談話室で缶ジュースをあおり。
スチール缶までバリバリ食って。

「……はァーあ」

溜息。
どたばたと変態衆から逃げつつ数日、邪気大を見て来た。
変態がワッセローイしているのはいい。
抗争が起きているのも、”それはそれで構わない”。学生が大暴れするのはこの大学においてはいいことにしておこう。どこぞで粛清機構が働くうちは。
つまるところ、自分が楽しめればいいのだ。
だけれど。

「ツッコミ力がこんなにも低下してるたァな……」

学生に余裕がないのか、何なのか。
ボケても笑いがないし、ツッコミもない。
あの頃はよかったな、と思って、

「…………年よりかっつの」

苦笑。
過去を懐かしんで、今を楽しめないのは損だ。
実際、あの頃にはなかったようなパンツ祭り何ぞを開催しようとしているヤツもいる。
楽しいことはあるのだ。
だから考えるなら、

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「あの頃も良かったな、だ。
 ……あァ、そう思えるように出来りゃあいいが」

144名も無き邪気眼使い:2013/10/27(日) 20:08:13 ID:qOpHD3dc
>>屋外スレ

螺旋と旋律、破滅的なナニカがぶつかり合うその有り様を、ウー・リー・ウーは寝不足の眼をこすりつつ校舎の窓越しに眺めて呟いた。
「・・・・・・ま、私は荒事は向きませんから。一年生らしく、基礎の基礎でもこなしましょ」
変態が打ち込んだとおぼしき音叉ナイフ。その場所の傍らに立ち、喉の調子を整える
道具というものは意図と用途と使用法さえ分かるなら万人が等しく正しく扱えるものだ。
(これを解析すんのに何日かけたやら・・・・・・これだからカノッサ相手は嫌ですよ)

他人の魔力に自分の魔力を同調させるのは少し骨だが・・・・・・凜とした歌声が、魔力を伴い、反響し、増幅され、学園中に響き渡る。

それは一つの、たった一つの効果を持つ、とてもとても単純な呪文の詠唱だった。

学生を蝕む呪印。カノッサの打ち込んだ反抗の楔。
それを解析し、逆算した結果を元に、それを打ち消す。

『対抗呪文』

カウンターマジックの、基礎の基礎である。

145:2013/11/10(日) 02:12:01 ID:mvDf5ZII
「ふざけんな!!ふざけんなふざけんなふざけんなぁあああああッッ!!!!!」

廊下を走る
目的は、件の凶行を――狂行を起こした人物の鹵獲

「(あのニヤケ面、許さねぇ…!!何が目的かとか規模だとか後ろ盾だとかは関係ねぇ!!
  ともかく、速攻で、何よりも疾く――アイツを止めねぇとッッ!!!)」 

目星を虱潰しに潰しながら、疾走は続く
鬼気迫る疾駆を困惑の眼差しで見送る生徒群
口々に溢れる迷い

『――おい、どうすんだ…アイツ”標的”の…』『いや、だってやるのは…さぁ…』
『び、ビビってねぇよ…準備が…』『待てって…テロリストの言うことに従うって…』
『どうする』『どうする』『どうす――』

「うるッ――せぇえええええええええええええッッ!!!!」

そのざわめきを絶叫が裂く

「てめえら!!!悔しくねぇのかよッ!!
 アイツの――あのニヤケ野郎の思惑通りに踊らされて!!
 ビビんな!!お前ら”邪気眼大学”の生徒だろうが――あのカノッサ機関だって撃退してみせただろうが!!
 こんな狂った、腐った行動になんて、負けてくれるなよ……ッ!!!!」

絶叫は懇願
どの程度通じるのか――駆け抜ける身には反応を知る由もないけれど

「――クソが」

ギリ、と食い縛る歯が音を立てる

神父撃退の件から間も無くのこの騒動
タイミングとしては絶妙と言えた
カノッサの画策により、お互いがお互いを牽制し合っていたこの数ヶ月間
その融解の糸口が見えたその矢先
屋台骨が傾いている今だからこそこの”恐怖”による先導は効果を十二分に発揮している

「……ちッ」

考えるのは、まだ先で良い
そう言わんばかりに、駆ける脚にさらに力を込めて勢いを増す
しかし、次の瞬間

「!!?」

曲がり角で、待ち構えていた生徒数名に拘束された

「てっめぇら!!なに、を」『――グッ!か、甲さん!!風紀委員です!!落ち着いて!!』
「――っざっけんな!離せ…!!」『あなた、は!!当委員で身柄を保護させて……ぐぁ!!』

数名程度の拘束に甲は抵抗する

『ぞっ増援――!!拘束術式使える奴ありったけ……!!!!』

しかし、やがて増援の到着と共に

「――――」

甲は、その身柄を”風紀委員”によって拘束された

146圓五十鈴:2013/11/13(水) 14:18:03 ID:Uv8XedR6
>>145
「そこまでですわよ」

颯爽と現れたのは“四神快楽天”が一人、圓五十鈴。
以前のおちゃらけた雰囲気はなりを潜め、険しい顔つきで風紀委員達を睨みつける。

「そこまで手荒な真似をする必要があって?その方から手を離しなさい」

怒気を漲らせ、半ば脅すような口調で風紀委員達に言い放つ。
次いで拘束された甲を見下ろし、特に怪我がない事を確認すると、安心したように息を吐いた。

「災難でしたわね、甲さん。この圓五十鈴、凛の命により馳せ参じましたわ。今度は味方として」

その言葉に野次馬達がざわめく。

「凛は今回の事件を解決するにあたって、あなた方の力が必要不可欠と判断しましたわ。とは言え、単独行動は危険だろうという事で、私が派遣されましたの」

ここまで言ったところで、人集りの中から空き缶が飛んできた。
五十鈴はそれを、鬱陶しそうに手ではらう。

「ふざけんな!!“標的”を守ろうってのか!?」

「私達全員より、そいつ一人の命が大事だっていうの!?」

「穹さんがそう言ったのかよ!?」

「殺せ!」 「殺せ!」 「殺せ!」

殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!

(凛の言った通りですわね)

狂気じみた大合唱、五十鈴はそれをつとめて無視しながら、穹凛の言葉を思い出す。

『おそらく、というより、間違いなくスマイルは単独犯じゃないっす。生徒達の中に“虫”が混じってる、くれぐれも注意を』

なるほど、こういう事か。
“虫”というのは、最初に声を張り上げた2人か3人の事だろう。
追ってみても良いが、既に人混みに紛れて逃げ去っているはずだ。
人は自ら決断を下すのが難しい時、いとも簡単に周囲の言いなりになる。
学内全域に渡って行われているであろう煽動工作は、なるほど、少ない人員で絶大な効果を挙げるはずだ。

「周囲がかしましくなってきましたわね。甲さんも風紀委員の方々も、少し場所を変えて話し合いませんこと?」

147風紀委員A/甲拘束中:2013/11/13(水) 23:50:59 ID:AEgicwEI
>>146
徐々に人が集まり、ざわつく廊下にて

「……っかー…やかましなぁ…」

風紀委員数名の後方より声が聞こえる
見ると声の主は、小柄な男性
”風紀委員”の腕章を巻いた腕をひょい、と挙げると男性の後方に更に控えていた風紀委員と思われる数名が場を執り成しに掛かる

「…えぇと?…あぁ、ネーちゃんあれだ、穹んトコの…」

五十鈴の前に歩み寄り声を掛ける
メガネの奥の切れ長の眼が甲を見て

「あー…こん人はしばらく起きひんよ…?結構強目の催眠術式ねじ込んださかいに…
 まぁ、大丈夫ちゃうん…?ふっかい眠りやさけ、起きたら、まぁなんやスッキリしとるかもな?」

ふぅーと気怠げにため息を吐いて

「……困るで、ホンマ…当事者がこないシャカリキに動いとったら、ワイらが逆に仕事出来ひんっちゅーねん……」

せやからちょいと退場願うわ、と周囲に合図
部下らしき数名が甲を抱え上げる

「場所替えるっちゅーのは…えぇな、ほな行こか”執務室”…
 ……茶ぁ出す暇も、あらへんかも知れんけどなぁ……後は任すでー」

周囲の騒ぎを抑える数名にそう指示を出すと
ふぅ〜二度目のため息を吐き廊下を元来た道へと歩き出すのだった


【”風紀委員執務室”へ →】

148圓五十鈴:2013/11/14(木) 00:20:26 ID:eYK3Mcus
>>147
「あ、あら…?」

思わぬ反応に、五十鈴は些か動揺する。
なんだこのダウナー系の兄ちゃんは。
もう少し堅苦しい対応を予想していただけに、急激に肩から力が抜ける。

「つーかそれ、昏睡したらどうしますのよ…あと、さんを付けろよデコ助野郎」

言いながらも、小柄な風紀委員の後を追って執務室へと向かう、結構素直な五十鈴なのであった。



「風紀委員会の執務室なんて、初めて入りますわね…なんかテンション上がりますわ」

執務室に入って早々、勝手にソファーに座る姿、まさにお嬢。
ついでにソファーが硬いと文句を言うのも忘れない。

「さて、滅多にないこの機会。世間話でもしたいところですけれど…サクッと本題に行かせてもらいますわ」

元より、頭脳労働が得意な方ではない。
そういう面倒臭い事は、凛や皇がやれば良いのだ。
凛は懐からカンペを取り出すと、前置きもそこそこに内容を読み上げ始める。

「えーと、なになに…“風紀委員の皆さん、お元気ですか。私は元気です”」

ーーー話にならない。
この女、どうやって院まで進学した?
風紀委員会の執務室に、早くも暗雲が立ちこめ始めた。

149名も無き邪気眼使い:2013/11/14(木) 07:40:03 ID:PbCymWZY
>>148
//凛は懐からカンペを取り出すと→五十鈴懐からカンペを取り出すと
凛どっから出てきた^q^

150風紀委員A/甲拘束中:2013/11/14(木) 23:00:08 ID:SmLp5XX6
>>148
「……なんや、誰もおらんのんかい……まぁ、事件が事件やさかいなぁ……」

通された風紀委員執務室
専門の部屋ではなく、そこそこ広い空き教室を改装したといった風情であった
並ぶ事務机の前、応接テーブルを五十鈴に勧める

「テンション上がるて…ふつー逆ちゃうかなぁ…?」

おかしなネーちゃんやな、と苦笑しながら対面のソファーに掛ける
甲を抱えた風紀委員達は隣室へと甲を搬送していった

「奥はワイらの仮眠室…?まぁ、なんや小上がりみたいになってんねん…
 あん人はそこに寝かしとく事にして……や」

サクッと本題に行くという五十鈴の言葉を聞いて座りを直す



“風紀委員の皆さん、お元気ですか。私は元気です”

「いや、誰やねん」

ガクッとコケる

「………お茶を出す間ぁ位は、ありそうやね」

ズレたメガネを押し上げて、傍らの風紀委員にお茶出しを頼むのであった

151風紀委員A/甲拘束中:2013/11/14(木) 23:16:26 ID:SmLp5XX6
>>150の続き】

ピピピ

短い電子音、五十鈴の対面に座るメガネの風紀委員は懐から携帯を取り出し眺める
どうやらメールのようだ

「(……あーこりゃ、上も混乱しとんなぁ…)」

内容は『穹凛を含む穹一派幹部の拿捕』

「………んー………」

朗々と文章を読み上げる向かいの五十鈴――重要参考人の顔をちらり伺い

「…この部屋、使用中につき立入禁止にしといて〜……」

お茶を持って来た風紀委員にそう、指示を出す

「(まぁ……上は、上、ワイはワイ、でえぇやろ……)」

152名も無き邪気眼使い:2013/11/15(金) 01:18:40 ID:e0gB4OuI
>>150-151
「仮眠室までありますの。大変ですのねぇ〜」

寝不足は美容の大敵でしてよ?
ソッコーで話が脇道に逸れるあたり、五十鈴の頭の残念さが伺える。

ふと、小柄な風紀委員の携帯が鳴った。
この部屋を立入禁止にしてくれ、という声に、五十鈴はクスリと笑みを零す。

「幹部の連行命令ですの?これも凛が予想していた通りですわね。お気使いなさらずとも、ハナから私達もそのつもりでしたのに」

図太いながらも僅かに残していた緊張が弛緩する。
今の対応を見て、小柄な風紀委員を信頼するに足る人間と認めたようだ。
ニヤニヤと笑いを浮かべながら小柄な風紀委員に視線を送る仕草は、非常に腹立たしいが。

「でも、良いんですの?私とサシでお話するより、皇なり“烏哭”なりを連れてきた方が、話はずっと早いと思いますわよ」

先程のカンペを手の中で弄びつつ、何故か自信満々に言い放つ五十鈴。
どうやら、自分の頭がよろしくない事は自覚しているらしい。
凛の指示がなければ、今頃自分の足で“スマイリー・フェイス”を探し回っているところだ。
それと同時に、この落ち着き払った態度は、凛に全幅の信頼を寄せている事の証明に他ならなかった。

「それでも良いと仰るなら、お断りする理由も無いですけれど。あ、お茶なら私、香りもクソもない熱っつい紅茶が良いですわ」

153風紀委員A/甲拘束中:2013/11/16(土) 00:47:54 ID:hOp8igVs
>>152
「生憎、日本茶しか常備してへんなぁ…まぁ、ここの部屋はあんま使われへんしな」

肥大化した”風紀委員”は最早委員会というよりほぼ会社の様な形態を呈していて
大小様々な”私室”を所有、使用している
この目の前の風紀委員が執務室と呼んだこの部屋はその中でも最も古い
大学から最初に充てがわれた部屋であった

「いやぁ…ネーちゃんおもろいし、おっぱい大きいし
 ワイとしちゃあサシのこのシチュエーションはおいしい……あー…いやぁ…なんもあらへん」

ごほん、と咳払い

「え〜と…そのスメラギっちゅうのは、あぁ…見たこと有るわ、あの…あー…まぁええわ
 ほんで、もう一人……ウコク?はて、知らん名ぁやな……四天王、じゃああらへんよな」

ズズ、と渋い緑茶をひとすすり

「……どちらさん?」

154圓五十鈴:2013/11/16(土) 11:39:02 ID:oWQx9ubA
>>153
「あら、ギョクロじゃありませんの。私、これも大好きですわ」

用意されたお茶に早速手を付ける姿、まさに遠慮知らず。
粘膜まで鋼鉄で出来ているのか、熱いお茶を風呂上がりの牛乳の如く、豪快に一気飲みである。
もはやお嬢でもなんでもない。
五十鈴が「ぷはあっ、もう一杯」と抜かしたところで、小柄な風紀委員の口からセクハラ発言が飛び出す。
ビンタか!?
はたまた嫌悪に顔を顰めるか!?
正解はこちら、ジャン。

「まあ、お上手。照れますわね」

お前、それでいいのか?
明らかなセクハラに対してこの反応、小柄な風紀委員を異性として認識していないのだろうか。
ーーー否。
五十鈴は真性のレズビアンである、そもそも男をオケラくらいにしか思っていないのだ。
五十鈴の同性愛という業(カルマ)の前に、これまでにどれだけの男が轟沈してきた事か。
ともあれ、小柄な風紀委員の質問によって、ようやく話が本筋に戻りそうだ。

「皇は有名人ですものね。あいつ、凛を残して卒業出来ないとか言って留年してますのよ、頭おかしいですわ」

ま、男にしては頼りになりますけれどね。
次いで“烏哭”について話そうとする五十鈴だが、その表情には若干の躊躇が見える。
百面相の五十鈴の事だ、誰が見てもこの表情の変化は見逃すまい。

「…まぁ、凛も『全部喋っちまえ』いうてましたしね。うち(穹グループ)のトップシークレットですわよ、心してお聞きになってね」

桂烏哭(かつら うこく)ーーー穹グループの“悪だくみ”を担当する幹部。
穹凛の音楽科の後輩であり、彼女とは派閥結成以前から付き合いがあったという。
某大物政治家の娘で、口達者な陰謀策略大好きっ子。
穹グループの成長を、凛の“影”として裏から支えたと言われている。
表舞台に立つ事は殆どなく、凛には主に参謀として重用される。

「如何せん、戦闘能力皆無のモヤシっ子。アキレス腱にもなり得るという事で、特に風紀委員には存在が秘されてきましたの。でも、今回の事件を解決するには、あの子の悪知恵が必要になりますでしょうね」

それが、五十鈴の知り得る“烏哭”の全て。

155名も無き邪気眼使い:2013/11/16(土) 21:22:13 ID:bdwirGNE

[屋外スレからの続き]

 その時、バタン、と。
 執務室の扉がいささか乱暴に開かれる。
 室内に踏み入ったのは、銀縁の眼鏡をかけた細身の男。後に続くようにして複数名の風紀委員たち。
 そして、最後まで必死に入室を制止していた善良な学生であった。つまり、この男は使用中と止められているのに構わず、半ば強引な形で押し通ったのだ。

「執務室を即刻明け渡したまえ。
 これからこの場所は、穹凛の取り調べに使用されることが決定した。
 これは対凶悪犯捜査班委員長が発行した正式な礼状に基づく正当な要求であり、貴方達に拒否する権限はないものと理解した上、迅速な退去を求めるものである。」

 男は眼鏡の縁を持ち上げ位置を修正しながら、如何にも神経質そうな口調でそう室内の二人に言い放った。
 男が今言った対凶悪犯捜査班とは、その例でいくといわゆる捜査一課。
 つまり花形である。
 今回の”フィースト・オブ・フール”(添付ファイルのタイトルから、暫定的に一部で呼ばれる事件名)は、発見された死体に施されていた残虐な加工から凶悪犯罪と断定して、一課の委員長が強攻的な令状によって捜査権の主導を握ろうと考えたと、そんなところだろう。
 要するに、下らない手柄争いだった。開け放たれた扉の向こうを覗けば、強面の風紀委員たちの後ろに連行された穹凛の姿も見える。

「早くしたまえ。君たちは我々一課の捜査の邪魔なばぁっ!?!」

 斬新な語尾ではない。
 男の顔面にメリコミパンチが叩き込まれたのである。剛田武もかくや。
 ただし打ち込んだのは女だった。金砂子のような気品高く流麗なブロンドをした、硬質な雰囲気を放つ少女である。腰に携えたレイピアが、あたかも彼女を騎士と証明するかのようであった。
 先程、ダニエル・ジョーンズ死体発見現場の保存を行っていた、風紀委員の一人のようだ。

「お話中、失礼した。どうぞ続きを。」

 ビッ、と敬礼は何故かドイツ軍人式。
 のびている男の襟首をむんずと掴むと、勇ましい足取りで執務室から出て行った。
 遅れるようにして、カエサル副委員長補佐ー!と男の取り巻き達がそれを追いかけていって、残されたのは三人の人影であった。平穏無事とはいかなかったが、合流である。

156風紀委員A/甲拘束中:2013/11/16(土) 23:18:09 ID:hOp8igVs
>>154
「……なんや、時間が立つとジャンジャン印象が崩れはるなぁ……」

内心の印象点がみるみる急降下していくのであった
「そないノド乾いてはったんかい」と儀礼的にツッコミを入れて

最早完全に引いているガヤの風紀委員(お茶出し係)が二杯目を出す

「……ウコク…裏方て、なんやプロデューサーみたいなんかいな…?
 悪巧み担当幹部とか……アキレス腱やから秘すとか……自分らホンマ、ごっつい組織作ってはるねんなぁ…
 在学中にそこまでやる……あー…いや、やろうと思うんすらなかなか出来る事じゃあらへんなぁ……」

少なくともワイは面倒やから無理ー…と感心してんだか呆れてんだか分からない反応する風紀委員

「なるほどなぁ…それが、アンタらんトコの残りの幹部っちゅう訳や……
 ほな、その幹部とは……あー…あのビデオの男は違うっちゅう…………」

言葉の途中で廊下が騒がしくなる
どうやら集団が部屋の前に居るらしく

「………アカン、一課や……面倒なんが来よったで……」

どうやら入って来そうな気配に「あー…やだやだ、エリートの相手…疲れんねん…」
とぼやきながらソファーを立ち上がる

>>155
バタンと開いた扉
雪崩れ込んできた風紀委員が退去をまくし立てる

「そないヤイヤイ言いないな……アンタの言葉、堅すぎてよう聞き取れんわ」

後ろに付随しているのは、”穹凛”
なるほど、状況は理解した
一課に反抗してもいい事は一個もないのは明白なので、ここは穏便に

「わかったわかった……出てけっちゅーんなら、そうしま………なばぁ?」

はて?目の前のメガネ陰険男の顔面がめり込んでるぞ?

「………カエサルさん……?」

歪んだフレームのメガネ男の傍らに立つパンチを放った女性
展開に些かついて行けないが、ビッとした敬礼にゆるっとした敬礼を返してみる

「……」

残されたのは今や重要参考人筆頭の二人
奥に寝ている”標的さん”

そして、風紀委員第二支部(旧棟)文化系サークル担当官の自分のみで

はぁ〜…と今日一番の大きなため息をついて

「……ま、とりあえずお茶にしましょか…?」

話のペースを戻そうと、ソファーを進めてみるのだった

157 穹凛/圓五十鈴:2013/11/17(日) 01:47:45 ID:QeriE6Us
>>155-156
小柄な風紀委員の言葉に耳を傾けつつ、当然のように二杯目に口をつける五十鈴。
テーブルに置かれた湯呑みの中身は、一口で半分ほどまで減っていた。

「まぁ烏哭に関してはそんなとこですわね。私は難しい事は何も。私はただ、可愛い女の子をペロペロしたいだけですもの」

知能指数の低さを体現したかのような発言だが、少なくとも人生を楽しんでいそうではある。
きっと人類がみなアホであったなら、世界はとても優しくなれるだろう。
文明だの景気だのは著しく衰退しそうだが。

「幹部は私達“四神快楽天”に、今説明した桂烏哭で全てですわ。あ、ダンテ教授は顧問でしたわね。あとは準幹部が何人かいますけれど、特別な権限は何も持ちませんし、ぶっちゃけちょっと目立つファン程度のものですわ」

ちなみに、五十鈴は女性ファンを統括するという任を担っているらしいが、この女にそんな能力があるかは甚だ疑問である。

「“スマイリー・フェイス”は幹部でもなんでもありませんわ。あいつは、その…ちょっと特殊ですの」

五十鈴が“スマイリー・フェイス”に関して言い淀んだところで、捜査一課の面々が執務室に押し入ってきた。
レイピアを帯びた少女が銀縁眼鏡をワンパンで沈め、襟首を掴んで執務室を後にする。
それを追い掛ける風紀委員達と入れ替わりで、数人の風紀委員と共に穹凛が入室。
五十鈴の存在を確認するなり、深い溜息をつく。

「五十鈴さん?甲センパイ連れてこいっつったのに、こんなとこで何やってんすか」

(つーかあいつ、カエサルって言うんだ…名前負け甚だしいっすね)

『まぁ良いか、五十鈴さんだし』と、その隣に腰を降ろす凛。
その瞬間、凛の背中に寒気が走る。
五十鈴の心音がやけに大きいのだ。
次いで、ペロリという湿った音を聴く。
唇を舐めた音…なるほど、あのレイピア女に目を付けたか。
ドンマイ、レイピア女。

「五十鈴さん、どこまで話したっすか?」

「まだ特に何も。あ、烏哭の事喋っちゃいましたわよ」

「ん、オッケーオッケー。さて…」

軽く状況確認を済ませた凛は、小柄な風紀委員の方に顔を向ける。

「うちの五十鈴さんがすみませんっす。この人の相手するの疲れたでしょ」

「まるで私が悪い事したみたいな言い草!」

五十鈴が耳元でやかましいが、つとめて無視して話を続ける。

「ここからは私が。私に出来る事であれば、可能な限り努力させてもらうっす」

158風紀委員A/甲拘束中:2013/11/19(火) 00:29:57 ID:vVl3p6Qs
>>157
「やぁ、むさ苦しい部屋によーこそ穹凛さん
 ……なんや、訳わからん対応やったなぁ…申し訳あらへん」

ぺこり、と頭を下げる

「まぁ、さっきのアレを…あー…見てわかる通り、ウチラもゴタゴタしとってなぁ…
 事態が急すぎて、焦っとんねん……イキナリアンタに絡んでいったっちゅうことは、あれや
 恥ずかしながら……うちのはえ抜き、”一課”も手詰まりなんやろうなぁ……」

はぁ〜…と溜息を吐いて頭をかく
淹れ替えられたお茶をズズ…とすすって

「せやかて、手ぇこまねいとったら……時間は、待ってくれへんし
 まぁなんや……この場はワイに任されたっちゅう事みたいやし、色々聞かせてもらいましょか」

さて、と一息置いて座りを直す
メガネを上げ、真顔

「先ずは自己紹介、ワイは”大上 楽(オオガミガク)”
 肩書きは……あ〜……メンドイな、まぁ風紀委員や」

ガミさんでもガッくんでも好きに呼んで〜と
真顔はすぐにほにゃりと崩れるのだった

「ほんで、穹凛さん。最初に聞かせてや
 アンタ………この一件に関して、どう思う?」

様々な噂が飛び交う学内において
現状、身内が身内を殺すという現実の、その渦中に在る”穹凛”

その所感を問う

メガネの奥の切れ長の瞳が真摯に凛を見詰めていた

159穹凛:2013/11/25(月) 19:15:03 ID:3tpT//gE
>>158
「いえ、わざわざ部屋を用意して頂いて、感謝してるっす。どこで誰が聞いてるがわからないっすから」

お茶の入ったカップを指で撫でつつ、凛は神妙な口調で話す。
この風紀委員会にすら、“虫”が潜んでいるやもしれないのだ。
自然、場所と相手の選択は慎重になる。

「混乱しているのは、うちも同じっす。なにせ、幹部が二人もやられてるっすから…」

カップを握る手に力が込もる。
もし許されるのら、周囲をめちゃくちゃに荒らして、大声で泣き叫びたい。
そうしないのは、己が邪気大の支配者であると自負しているからだ。
全ての行動に責任が伴い、些細な発言が周囲に大きな影響を及ぼす。
それは、支配者として強力であるほどに大きくなるという事を、凛は嫌というほど理解していた。

「世間話をしにきたわけでもなし、私の自己紹介は要らないっすよね。まずは情報の交換といきましょうか」

そう言って、凛はこの事件の“犯人”について話し始める。
本名不明・年齢不詳、人種も宗教も一切が謎。
趣味の悪いジョークを好み、常に笑みを浮かべている事と、胸につけたバッジから“スマイリー・フェイス”と呼ばれる。
精神感応系の異能を持つとされているが、それを本人の口から聞いた者はおらず、目撃者も無し。
凛ですら、これほどに知る事が少ないのだ。
風紀委員会などは、さぞ捜査に苦労している事だろう。

「確信して言えるのは三つ。一つは、あいつが狂人だという事。…以前、精神学科のファン何人かに、あいつを診せた事があるっす。もちろん、“スマイル”本人には秘密で」

彼の精神性は、精神学者の卵達の間で議論を呼んだ。
曰く、手の施しようがない。
曰く、テュエット症候群の一種なのでは。
曰く、そもそも精神障害と呼んで良いのか。

「“従来の常識をこえた超正常な人間”なんて説もあったっすね。ま、いずれにせよ、私達から見れば異常である事は間違いないっすけど」

それを踏まえた上で、と前置きして、凛は“二つ目”に話を移行させる。
ここからが本題だ。

「あいつの行動は、単なる狂人の暴走ではないはず。“あまりにも全てが上手く行き過ぎてる”。計算なのか本能なのか、そもそも目的が何かもわからない。ただ、何らかのロジックに基いて動いてるのは間違いないとおもうっす」

そして、それは次の事を確定的に浮かび上がらせる。

「三つ目は、あいつに協力者がいる事。“これ”が全てあいつの描いた絵だというなら、単独犯じゃ絶対に不可能なはず。学園中で扇動してる“虫”どもにも、あいつの息がかかってると見て良いかと。そして何よりーーータイマンで先生が負けるはずない」

ジャコモ・ダンテ教授は、そこらの雇われ講師とは違う。
本物の“教授”である。
人間性は褒められたものではなかったが、単純な戦闘能力で言えば、彼は凛を遥かに凌駕する実力者だ。
“だからこそ、凛はダンテにあの男の監視を命じたのだ”。

「ガっくんさん、ポーを読んだ事は?あいつは、モルグ街の犯人にそっくりっす。“彼は人間存在とは明らかに異なる化け物だ”」

“スマイリー・フェイス”という獣を閉じ込めておいた檻を、開け放った奴がいる。
そして、その鍵を持つ人間は限られていた。

「協力者は、おそらくうちの人間っす」

160大上 楽/関西系風紀委員:2013/11/26(火) 01:05:24 ID:1WwmvE6o
>>159
「(気丈な娘、やな…)」

己の立場を理解し、その品格が有る
誰かの担ぎ上げではない、その表情と態度に意思を感じた

ただ、それ故の痛ましさも覚える

「まぁ、せやな…本来記録も取らなアカンのやろうけど…
 事の次第を聞くんは、まぁ…今はワイと、ここにおる面子だけでえぇやろ」

レコーダーを用意しようとする風紀委員を手で制す
代わりに懐から浅葱色の帳面を取り出した

「ほな頼むわ」

入口付近に立つ風紀委員が頷くと、扉に何やら紙を貼り付けた
一瞬空間に奔る違和感の後、廊下や窓からの雑音が途絶える

簡易式の人払い及び防音処置を施した所謂”結界”を敷いた

聞く体制を一通り整えた所で凛からの話が始まる

「……スマイリー・フェイス、本名ちゃうにしてもまぁ…今回の件には、似つかわん名前やなぁ…」

サラサラ、とメモを走らせながら耳を傾ける

更に話は進む

「ほんまモンのガイキチかいな……分からへんって意味では、尚の事」

思い出すのは件の動画
”スマイリー・フェイス”あの狂行を行う様は、まさしく自分達の常識の範疇外であった

しかし穹凛は続く”2つ目”でこの狂行の指針を指摘する

「……」

そして”3つ目”
帳面に協力者と記入、その文字を丸で囲む

身内が怪しい、と凛は言葉を締めくくった
帳面にペンを挟み、一度閉じる

「…あれは、確か犯人が猿かなんかのやつやったかな…?」

がりがり、と頭をかいて
ふぅ〜…と深い息を吐く

「……ほな、猿回しがおるっちゅう訳や
 猿……”スマイリーフェイス”は好き勝手動いとる、これに指針はあらへん
 ちゅーのが……まぁ、現状の”風紀委員(ウチら)”の見解な訳やけれども…」

狂人は狂人
目的無く凶意を振るうバーサーカー
そう、思っていたのだが……そうでは、無いかもしれない
計画性があると、凛の説明は提示していた

「…そうやなぁ」

再び帳面を開くと”主犯”と文字を書く

「そうなると…さて、今回の事件で、なんや得する輩がおるんかもなぁ
 それは……”スマイリーフェイス”か”協力者”か…はたまた両方か」

”主犯”をぐりぐりと丸で囲んでいく

「あぁ…それと、その話を聞いて思ったんやけど」
 
被害者の立ち位置
噂話
凛の説明

そのどの部分を切っても渦中には”穹凛とその周囲”が絡んでいる
で、あるならばその中心に居るのはやはり

「その…なんや、凛サン……身内に狙われる、心当たりは?」

161穹凛:2013/11/27(水) 12:04:24 ID:o.efZaH2
>>160
「協力者が誰であれ、“スマイル”をコントロールするのは困難なはずっす。“それはもう、私がやった”」

精神学者の卵達を終結させ、“スマイル”の精神性を分析・理解しようと試みてきた凜でさえ、匙を投げ監視をつける事しか出来なかったのだ。
協力者が誰かはわからないが、彼を理解出来るのは同種の怪物以外にあり得まい。
しかし、一度協力者の存在を疑ってしまえば、そちらの方は容易に理解する事が出来た。
それはおそらく、凜と協力者が同じ種類の人間だからだ。

「やっている事は、例のクソ神父とほぼ同じ。大学内に混乱を起こして不安を煽り、人質を取る事で自分の身の安全を確保する。異なるのは、予め人質を指定していない点」

エルガは予め洗脳術式を施す事で、生徒を人質という名の操り人形へと変えた。
最終的な目的が邪気大の壊滅にあるのだから、なるほど、理に適っていると言えよう。
対して“スマイル”のこれは、要求に従わなければ無差別に誰かを殺すというものだ。
その対象は全くのランダムであり、次に狙われるのは自分や自分の大切な人かもしれない。
エルガの手法が邪気大壊滅の下地作りだとすれば、“スマイル”の手法は混乱を呼び、生徒達から思考能力を奪う事に特化している。
最初に“四神快楽天”という武闘派代表を狙ったのが、その混乱に拍車をかけていた。

「“標的の殺害”という、第二の選択肢を用意したのが上手いっすね。混乱を助長して内部分裂を誘発、同時にセンパイ達の動きも封じてる」

そんな状況だからこそ、凜の言う“虫”達による扇動工作が最大の効果を発揮する。
最初は生徒達を暴徒化でもさせるのかと考えたが、どうもこの扇動工作には、凜の権力を失墜させる意図が透けて見える。
そこまで考えが及んだところで、凜は協力者の存在と目的を確信した。
なるほど、考えてみればこの状況、“新しい支配者が旗を揚げるのに、これ以上のお膳立てはあるまい”。

「おそらく協力者の目的は、新しい支配者として私に成り代わる事っす。その状況を作るために“スマイル”を解き放ち、生徒達の不安を煽って私への不信感を募らせた。邪気会も動きを封じられいる現在、対抗馬は風紀委員会だけっすが…」

後手後手に回っているこの状況、生徒達か風紀委員会に信用を置いているかは、甚だ疑問だ。
本来、風紀委員会は学内の治安を維持するための組織なのだから、警察がそうであるように、彼らが事後処理ばかりに追われるのも無理からぬ話ではあるが。
結局のところ、新しい支配者が現れたなら、彼の勝利は確定的だろう。
それも、この計画が見破られていなければの話だが。

「なんて馬鹿な奴…!ここで旗揚げなんかしたら、自分が真っ先に疑われる事なんて考えてもいない。こんな穴だらけの馬鹿げた計画のために、あの怪物を解き放つなんて…!」

無論、全ては凜の憶測に過ぎない。
それでも凜は確信していた。
この混乱がピークに達した時、“スマイル”はきっと自分を殺す。

「その時、私に変わってグループを率いる者。そいつが協力者で間違いないっす」

162大上 楽/関西系風紀委員:2013/12/01(日) 23:34:46 ID:Ei/pmAV.
>>161
「………うーん、なるほどねぇ……つまり」

サラサラ帳面に鉛筆を奔らせていくが
凛の話に区切りがついた辺りでそのページを破り、食べた

「……ん、せやったらやっぱアレか、先決なんは…最初に戻って”スマイリーフェイス”の確保かいな」

恐らく、現邪気眼大学で最も”スマイリーフェイス”の近くに居た凛からの説明を噛み砕く

「言うて、要はやっぱその”化物”やろ?……せやったらソコを何とかするんが手っ取り早い」

ふぅ〜……と何度目かの溜息

「まぁ…それが手っ取り早ぅ出来てたら、こない苦労はせぇへんけどなぁ……」

お茶をすする、しかし既に空で、また溜息

「なんや、炙り出す手ぇでも仕掛けます…?
 えぇ案なんざパッと思い浮かばんけど……あー…古式ゆかしい手ぇで
 凛サンが暴徒に殺られたー……とか、大々的に打ち出してみるとか……?
 あー……アカンなぁ、如何せん時間が無さすぎる……緩い仕込みじゃ逆効果か…」

頭をワシワシとかいて

「……ともあれ、事情は飲み込めましたわ
 その上で、こっからどないするか……協議しましょか、迅速に」

163穹凛/圓五十鈴:2013/12/04(水) 14:17:47 ID:8.MVAZsk
>>162
「それも考えたっすけど、更に混乱が増すだけかな、と。自分で言うのもアレっすけど、本物の暴動が起きちゃいますよ」

大層な自信だが事実である。
最悪なのは、逆恨みによって怒りの矛先が“標的”の三人に向く事だ。

「かといって、“スマイル”を炙り出す策も思いつかないっす…協力者の方から当たるってのも考えたっすけど、そっちもまだ特定は出来てないですし」

だからこそ、凛はここへ来たのだ。
凛はソファーから立ち上がると、楽の前に向き直る。
そして、複数の風紀委員や自身の配下が見ているにも関わらず、深々と頭を下げた。

「…どうか、力を化してください」

静かな、しかし力強い声だった。
必ず“スマイリー・フェイス”を捕らえるのだという決意の炎が、凛の周囲の大気に陽炎を生み落としているかのようなーーー

「り、凛が人に頭を下げてますわ…人類滅びますわ、これ…」

「五十鈴さん、空気読んで」

「凛が頭を

164穹凛/圓五十鈴:2013/12/04(水) 14:18:37 ID:8.MVAZsk
//最後の一行はミスです^q^

165大上 楽/関西系風紀委員:2013/12/05(木) 23:33:03 ID:alyaoTDQ
>>163
「(…カメラ持ってりゃよかったわー…)」

「んん、えぇよ〜
 元々こっちはそのつもりやったしなぁ……まぁ、ともあれ
 ワイら風紀委員の中にはアンタの陰謀説って考えとる奴も少なからずおったし
 それが潰れたっちゅうだけでも……かなり前進やなぁ…」

頭上げて〜と手をふりふり
近くの風紀委員Bを手招きすると

「…紙、取ってぇな」

風紀委員Bは机から紙とペンを持って来た
そのレポート用紙を手に取り、サラサラとしばしペンを走らせていく

最後にポケットからハンコを取り出すと、ぽん、と捺印して

「ワイのハンコ付き報告書、直接”上”に届けてな」

その用紙を再び風紀委員Bに返すと、風紀委員Bはすぐさま部屋を飛び出していった

「……ま、これでアンタへの当たりも弱まる……と、えぇなぁ
 少なくとも、監視と静止は減るやろうから、比較的自由に立ち回れるで……たぶん」

はぁ〜…と息を吐いて

「さ、その上で…どないしましょ…?」

腕を組んでソファーに深く沈む

「要するに…や、スマイリーフェイスを補足せなアカンわけやけど…」

無論、動画の主”スマイリーフェイス”の捜索は風紀委員総出で掛っている
その上で痕跡すら掴ませない狡猾な相手である事は明白で

「ようやるわ、ホンマ……この大学に、どんだけ人がおる思ってんねん
 …それを敵に回して、かつ、既に3つも犯行を遂行しとる……それも誰にも見つからずに」

その不可能とも呼べる行動を助長している”協力者”の存在が
事態を更に難解にしている

「……そういった類の行動が取れる”能力者”か……あー…あるいは
 ……せやな、さっきの話に戻るけど…凛サンが言うとった”虫”や
 こんな大それた事…こら、かなりの規模の動員が掛かっとると見て間違いないやろ……」

お茶のお代わりを催促して

「……そっちの、凛サンの周りで…や
 それだけの人数を”掌握できる”…とか、”操れる”みたいな奴は…おらん?」

166穹凛/圓五十鈴:2013/12/10(火) 18:57:53 ID:DzNQNodQ
>>165
「助かるっす、本当に」

凛は再度頭を下げ、ソファーに座り直す。

「おそらく、これから更に"スマイル”の補足は難しくなるかと。最初、見せしめに武闘派を二人殺した時点で、もう脅しは十分きいてるっす」

そう、“スマイル”が最初に“四神快楽天”を始末したのは、戦闘能力を有する生徒達への「お前も例外じゃないぞ」という脅しの意味が強い。
これによって、腕に覚えがある者も“スマイル”に恐怖し、混乱に陥る。
あとは、たまたま出歩いていた無力な一般生徒を攫うだけで事足りる。
広大な敷地と数多の生徒を抱える邪気大に於いて、全く外を出歩かないというのは難しい。
つまり、今後“スマイル”は自らの身を危険に晒す事なく、確実に“約束”を守り続ける事が出来るのだ。
その状況を許せば、生徒たちの混乱はピークに達するだろう。
それを防ぐためにも、“スマイル”の手の内を考察するのは非常に有効だ。
凛は早速、大上の質問に答えるべく、思考を巡らせる。

「うーん、操作系の能力者はウチにも少ないっす。レアですしね。複数の人間を対象に取れる能力者に至っては私だけっす」

凛は形の良い顎に手を当て、うーん、と唸る。
多数を操作出来る能力者は凛だけ、しかもそれは“演奏による催眠”という条件付きの力だ。
この時点で“スマイル”ないし、その協力者が操作系能力者だという線は消える。
異能による操作が不可能となると、あとは権力や金銭による“掌握”だがーーー

「これも、私くらいのものっすかね。幹部だのなんだのと大袈裟な組織図になってるっすけど、元々はただのファンクラブっすから」

つまり権力による掌握は無い。
だとすれば、残るのは金銭による掌握だ。

「五十鈴さんと烏哭がお金持ちっすけど、まず五十鈴さんは論外。烏哭は……」

瞬間、執務室の扉の外から轟音が鳴り響き、凛の言葉を遮る。

「銃声…!?まさか、このタイミングで!?」



「本日のサプライズ登場ォー!さーてさて、熱血サイボーグ君はどこかなあ?」

異様な集団だった。
その数は約20人ほど、全員が黄色い覆面で顔を隠している。
覆面の表面にはマジックで描かれた簡素な目と口ーーースマイルマークだ。
それぞれ銃や刃物、鈍器を持った体の上に、スマイルマークが乗っかっている様は、変化する事のない表情と合間って、酷く不気味に映る。

「へロー、風紀委員サン。こちらで預かっていただいてる資源ゴミを回収に参りましたあ」

その集団を率いる口数の多い男は、使い込まれたレザーのジャケットにスマイルマークの缶バッジ…覆面など何の意味も成してはいない。
その馬鹿に明るい声は、間違いなく“スマイリー・フェイス”のものだ。

「速やかに眠り姫を連れてきな。このお嬢ちゃんをバラされたくなきゃな」

そう言って、“スマイル”は小さな頭をポンポンと叩く。
恐怖に震える、初等部の女子生徒の頭を。

167大上 楽/関西系風紀委員:2013/12/11(水) 00:57:40 ID:jy5woXns
>>166
「金、なぁ…それは、うん……分かりやすく辿りやすい――」

突如、耳をつく銃声

「――――…んな、アホな…!」

悠長にし過ぎたか、否
このタイミングでここを――数ある風紀委員執務室の中でここを狙うという事は

「(明らかに、狙いすまして攻勢に来てる――)」

舌打ちと共に立ち上がり、室内の部下を制する
一名が、甲の入った仮眠室の扉の前に待機

大上は銃声の鳴り響いた廊下に出る

「――…お初に、本丸自らとは……まぁ、手間が省けるわ……!」

目にする光景は多勢
私兵と思しき数十名と主犯――動画の主”スマイリーフェイス”

そして

「(………アカンな)」

幼気な人質が、狂人の傍らに立っている

スマイリーフェイスは”標的・甲”の身柄を要求する
恐らくは、下調べ済み
あの場に居た、凛の言うところの”虫”が伝達したのだろう

「(混乱を避ける為に、甲サン確保したんやが…主犯自らが狙いに来るっちゅうのは予想外や…)」

先の凛の話
この騒動の根幹には”穹凛”の殺害が見える
騒動の助長のためのデコイである筈、と思われた”標的”の三人にスマイリーフェイス自らが接触を試みるとは
しかも、ここは風紀委員の只中
そこまでのリスクを背負う意味とは――
「(……っかぁー……考える暇、あらへんやんけ……アカンわ、これワリと詰んどる…)」

「……いかにも、ワイらが甲サンを抱えとる訳やが…」

癖になっている”ゆっくりとした喋り”で話し掛ける
とりあえず”状況と空気の読めていない”フリで時間稼ぎを試みる

通用するか?短気を起こす気配は?様々な葛藤が脳裏を駆け巡り、背中に嫌な汗が滲む

「……どないしたんや?…なぁ、生徒に殺させるんが目的とちゃうかったん…?」

話し掛けながら思考を走らせる

この状況、とれるべき策は――――ある
風紀委員の執務室が居並ぶこのフロアに奴等が足を踏み入れてきた事が行幸
防犯上の”仕込み”は当然あって然るべきで

「(…加えて、ワイの”能力”なら確実にこのフロアで虚を突ける……但し)」

相手の手の内が見えない以上、どの様な策でもリスクが読めない
少しでも下手を打つ事はそのまま人質の少女の死に直結していて

「(…武器を持っとる奴は、逆に分かり易い…
 ……それに攻撃を、とりあえずは頼るっちゅう事やし…空手よりは対処を考えやすいけど
 ……ワイの部下…アカン、位置が悪い…ワイの後ろに居る以上何をしてもワイより遅い)」

では、同席していた凛と五十鈴は

「(凛サンは確かギターを媒介とした音使い…音は速いがモーションを取った瞬間アウトや…
  五十鈴サンは……身体が頑丈なんやったっけ…あー…もう人質代わりゃええのに……)」

瞬間的に以上を考え、なお――攻めあぐね、決めかねる

言葉に詰まってしまう
無理やり次の言葉を紡ごうとしたその時

「……っ」
『あー…話は、聞かせて貰った…』

更に後方より声が上がる
頭を痛そうに抑える甲がそこにいて
ふらり、ふらりと前に歩く

「か――甲さ」
『俺がいきゃあ良いんだろクソヤロー……おら、人質交換だ、さっさとその娘を離せよ」

更に訪れた予期せぬ事態に

「(――――好機)」

しかし、固まりかけた思考に電撃が奔る

「ま、待ちなはれ!んな勝手な事――」

ゆっくり歩き続ける甲に静止を呼び掛ける――”フリ”をする

全力で機を探す
交換に応じるか――はたまたそのまま甲を殺しに掛かるか

「(どっちでもええ……いや、何でもええ……!!)」

少女に向けられた注意が少しでも逸れるその時を――狙う

168風紀委員(部下):2013/12/11(水) 01:14:07 ID:jy5woXns
後方に控えた風紀委員は敵の目をかい潜り素早く携帯端末をタップする

風紀委員全体への一斉メール送信

《我、敵を補足せり》

169“スマイリー・フェイス”:2013/12/11(水) 09:09:38 ID:Wwzu1b/o
>>167
「それがよお、聞いてくれよ風紀委員サン。ゲームが始まって3日、いや、2日だっけ?まぁいいや。“標的”がまだ、だぁ〜れも死んでねえ!」

芝居がかった動作で、嘆かわしいとばかりに眉間に手を当てる“スマイル”。
覆面で顔は見えないが、その表情は間違いなく笑っている事だろう。

「オマケに!せっかく確保した“標的”を、保母サンみたく寝かしつけてるって言うじゃねえか。正直な、失望したよ。お前らはどうすりゃやる気を出す?んで、ひらめいた」

“スマイル”がレザーの内側に右手を突っ込む。
出てきたのは、ダニエル・ジョーンズの殺害にも使われた、安っぽいナイフだ。

「俺だって生徒だ、ゲームに参加する資格はある。言い出しっぺだからな、まずは手本を見せてやらねえと。幹事も大変なのさ」

ナイフの刃を、ぴたりと少女の首筋に当てる。
少女の口から、小さく悲鳴が漏れた。

「わかったか?なら、そろそろ仕事の話をしようぜ。お嬢ちゃんが水芸を披露する前に、さっさとあの鉄クズをーーー」

『あー…話は、聞かせて貰った…』

“スマイル”の動きが止まる。

「Ah-tatatata…起きちめえやんの。さんざ拘束術式ブチ込まれたって聞いたぜ?早起きしたって飴ちゃんはやんねえぞ」

やれやれと肩を竦める姿は、実に楽しそうで。
予想外のハプニングに大喜びの様子だ。

『俺がいきゃあ良いんだろクソヤロー……おら、人質交換だ、さっさとその娘を離せよ」

甲を要求を、“スマイル”は左手を突き出して制止する。
その動作が、少しイラついているように見えるのは気のせいだろうか。

「…あのな、ある男が大慌てで病院に駆け込んだ。女房が赤ん坊を産んだんで、早く顔を見たかったんだ。医者は笑顔で返した。“とてもお元気ですよ。奥さんは元気な男の子を産んで、二人は健康そのものです。おめでとう。”」

唐突に始まる小話。
“スマイル”の右手に握られたナイフは、その間もうろうろと少女の首の周りを泳ぐ。

「男は花束を抱えて新生児室へと飛び込んだ。だが誰もいない。女房のベッドも空っぽだ。“先生?” 男が振り向くと医者や看護婦たちがいっせいに腕を広げて叫んだ」

やがて、そのナイフは少女の喉元に喰い込みーーー

「“エイプリルフール!ホントは嫁さん死んじゃった!子供の方も虫の息だよ〜ん!”」

HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!

少女がパクパクと口を動かす度に、喉に開いた穴からヒューヒューと息が漏れる。
細く繊細な髪をスマイルに引き掴まれ、倒れる事も出来ない。
苦悶と絶望の表情。
それを見て“スマイル”は満足そうに頷く。

「よっしゃ、上出来だ。器官をちょこっと傷付けるとな、血が肺を満たすまでの約1時間、なんと海水浴が楽しめるのさ」

少女の唇は、みるみる内に紫色に染まっていき…喉から血が溢れ出るのもかえりみず、酸素を求め口をパクパクと動かし続ける。

「あー…でも彼女、カナヅチだったみたい?これじゃあ、おしゃぶり人形にしかならねえわな。アンタいる?」

そう言って、“スマイル”は悪戯っぽく小首を傾げた。

170:2013/12/11(水) 10:43:43 ID:7RbrRLBo
意識は朦朧とし
膝はガクガクと笑う

朧気に聞こえた銃声に無理矢理意識を覚醒させてみたら、ご覧の有り様で
出て行った所で戦闘出来る筈もないな、と感じながら

「(それでも、出来そうな事…あるか)」

少女の身代わりになる事
身を呈する事ならば、との判断で歩み始めるが

「―――や」

目の前の狂人は一笑に付し凶刃を振るまう

失敗
自分の軽率な行動が少女を白刃に曝してしまったのだ

目の前に火花が散る感覚
声にならない叫びを上げて
混濁し、倒れ込みそうな意識を”怒り”が繋いでいく
噛みしめる唇から血が落ちる

しかし、それでも
状況は甲に立ち尽くす事しか許さない
目の前の相手には躊躇も慈悲も無い

こちらの動きに反動して次は間違いなく少女の命を刈り取るだろう

手段は無い
手詰みの上で自分に何が出来るのか自問しても

そこには決して答えは無いのであった

171大上 楽/”紙使い”:2013/12/11(水) 11:17:26 ID:L/xdgjis
少女の喉元に凶刃を差し込むその瞬間
器官を僅かに傷付けようとナイフが繊細な動きを見せたその瞬間に

”スマイル”の横の掲示板から”二枚の紙”が剥がれ落ちる

「……”織り紙”」

二枚の紙は重力に逆らい、音も無く”スマイル”へと飛ぶ

――――――――――

【紙使い】大上楽――能力名:『織り紙』
自らの領域(テリトリー)と定めた場所に置ける”紙”を操る能力者
その能力は動作コントロールの他、形状操作、材質変化等も可能とする

――――――――――

「(ワイから――注意を――逸らしたな――!!)」

掲示板に張り出された”紙”は全て大上の武器となり

硬質化した”二枚の紙”は”スマイル”の両腕を切断せんと奔る
”スマルフェイス”が高笑いを浮かべ甲を嘲り笑った――その刹那に

172“スマイリー・フェイス”:2013/12/11(水) 14:43:57 ID:Tmbw6fhc
「HAHAHA、可哀想ォ〜!こりゃ死ぬより辛いぜ!なあ、ところで骨粗鬆症の赤ん坊をどんだけ集めりゃーーー」

『……”織り紙”』

ストンッ

「あん?」

一瞬の出来事だった。
鋭い何かが奔ったと思った瞬間ーーー“スマイル”の両肘から先は失われていた。

「おっ、おっ……俺の……」

噴水のように血を撒き散らす両腕を見て、“スマイル”がうわずった声を上げる。

「俺の袖ェェェェェェェェ!?なんて事しやがる!?これじゃあ寒くて風邪ひいちまうだろーが!!」

HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!

両腕を失って尚止まらない、耳障りな哄笑。
血を撒き散らして笑う姿は、まるでタチの悪いジョークだ。

「しゃあねえ、ズラかるかあ。ヘイ、タクシィー!」

瞬間、“スマイル”たちの足元を、ドス黒い影が侵食し始める。
夜の闇よりも尚暗いそれは、薄汚れたヘドロの質感を思わせる。
それは、床に手を当てる覆面の少女を中心に展開されていた。

「だから無茶だって言ったのよ!!早くしなさい、“スマイル”!!」

床に転がる“スマイル”の腕を含め、覆面の集団たちはズブズブと影の中に沈んでいく。

「へいへい、わあったよ母ちゃん。そろそろ増援も来そうだしな。じゃあなあ、ヒーロー!今度は二人きらりで会おうぜえ!」

そう言って踵を返そうとしたところで、そう言えばと付け足す。

「そうそう、覚えときなよ、風紀委員サン。このお嬢ちゃんを殺ったのはお前さんだ。精神科医によろしくな」

放たれる上段蹴り。
少女の首を容易にへし折るであろうその蹴撃は、残酷にその命を刈り取ろうとしーーー

「勝負は付きましたわ。さっさと失せなさい、下郎!」

五十鈴の額によって弾かれた。
足に鉄の頭突きを食らった“スマイル”は、わざとらしく「Oh…」と呻くと、哄笑と共に影へと沈んでいく。
夥しい量の血と、倒れる伏す少女を残し、狂った一団は姿を消した。

173名も無き邪気眼使い:2013/12/11(水) 22:17:31 ID:PR.TMV16
凛は動けなかった。
その理由は、恐怖によるものではない。
凛の持つ能力“千里耳”は、いかなる音も補足する超聴覚。
この異能の前では、覆面など何の意味も持たない。
呼吸の位置からは身長が。
地面との擦れ音からは体重が。
関節の軋みからは骨格が、声質からは体格が。
彼女が外界から受け取る情報量は、なまじ視覚に頼ってしまう常人の比ではない。
故に、わかってしまった。

『だから無茶だって言ったのよ!!早くしなさい、“スマイル”!!』

聴き慣れた声。
これで、自分に嘘をつく事も出来なくなった。
なにより“あの能力”を使える者を、凛は一人しか知らない。

「…………烏哭……?」

覆面の集団が影に沈み切る間際、ぽつりと漏れる呟き。
“影”を展開した覆面の少女は、その声に確かに反応した。

「どうして………」

最早、認めざるを得なかった。
穹グループ参謀ーーー否、穹凛の親友・桂烏哭は、自分を裏切ったのだと。

174皇宗一郎/宮本虎眼:2013/12/12(木) 15:12:00 ID:d1E9ph8I
「彼奴は何処に!?」

「凛様、御無事ですか!?」

声を張り上げ飛び込んできたのは虎眼と皇、他数名の風紀委員。
接触中に緊急メールを受け、急行したのだろう。
そんな彼らの目に映るのは、覚束ない足取りの甲、呆然と立ち尽くす凛、未だ緊張を解かない五十鈴と風紀委員たち。
そして、血の水溜まりに伏す、幼い少女。

「こっ、此は如何なる事…!?」

「…! この子はまだ助かるぞ!誰か、医務室に連絡を!」

取り乱す虎眼に反して、皇は冷静な対応。
概ねの状況を瞬時に理解し、少女に応急処置を施そうと側に駆け寄る。
虎眼も少し遅れて、慌ててそれに倣う。

「器官を裂かれたのか…幸い、まだ殆ど血は溜まっていないな。これなら助かる。清潔なタオルだ!止血をする!」

瞬間、皇は気付いた。
少女の腹部にある、何か硬い感触に。

「…?」

疑問に思った皇が服を捲り上げる。
四角い包みが、少女の腹部にガムテープでぐるぐる巻きに固定されていた。
その上には、赤く明滅するランプとタイマー。
その形には、映画やドラマで見覚えがあった。

(爆弾ーーー)

『目に浮かぶぜ。我が身可愛さに哀れな少女から逃げ去るお前らと、正義の味方に見捨てられたおチビちゃんの絶望の表情…。HA!HAHAHA!HAHAHAHAHAHAHAHA!」

爆弾と一緒に取り付けられたレコーダーから、スマイリー・フェイスの耳障りな笑い声が響く。
タイマーに示された時間は、残り5秒に迫っていた。

175大上 楽/”紙使い”:2013/12/12(木) 22:56:17 ID:MZ.jmBRk
>>172
「――…よっしゃ、これで…」

操る”紙”がナイフを持つ”スマイル”の腕を裂く手応えを伝える
第一の策は通った、掲示板の張り紙がざわめき出し、大上は追撃の手を――

「……な」

――その異様な光景を、両腕を失って尚、変わらず笑い狂う狂人を見て、止める

「(アホな…!両腕切断やぞ…!な、何なんやアイツ……!!)」

両腕切断という、ともすれば失命の事態に置いて”動揺のひとつもしていない”

「…異常者め…!!」

凛に話し聞いた人物像を遥かに凌駕する狂気を目の当たりに
優位に立っているはずの大上の心が揺らぐ

ざわめいた”紙”はざわめくのみで追撃の一手をしあぐねる
訳の分からない焦りが心身を満たしていく感じを覚え

「――あ」

”スマイリーフェイス”の蹴りが少女を襲うのを
――また、それを五十鈴が押さえる光景すら、呆気に取られ見送るしか無かった

そして
狂人率いる一団は、影に沈み――その場から立ち去る

「――――…ち」

安堵――まず、その感情が湧いてくる
次いで襲う悔恨と――恐怖

そして、それら全てを感じてしまった自分自身への情けなさが残った

「(……アカンわ、得体が知れへん…)」

皇や虎眼、風紀委員の増援の気配を感じ
ふ、と肩の力が抜ける

【次レスへ続く】

176大上 楽/”紙使い”:2013/12/12(木) 23:43:34 ID:MZ.jmBRk
>>174

「松本!!医務室の手配や!!ここから一番近い場所に”保険医”の要請!!」

少女の介抱に向かう皇の背に駆け寄る
頭を振り、湧き上がる感情を振りきって

「?…なんや」

少女に応急処置を施す皇の様子が強張っている
何事かと覗きこんだ矢先に聞こえる

《HA!HAHAHA!HAHAHAHAHAHAHAHA!》

あの、耳に残る嗤い声

少女の腹部に――爆弾が巻かれていた

「―――――」

背筋に一際冷たいモノが落ちた

「(どこまで――――アイツは一体どこまで――――)」

ぎり、と歯軋りが鳴る

「(食いしばれ――堪えろ――思うように、させてたまるか――!!)」

爆弾に表示された数字は”5”――カウントダウンが始まる

「”織り紙”」

掲示板の張り紙が一斉に剥がれ、大上の背後に浮遊する
両手に二枚、ひったくるように掴むと倒れ伏す少女に――振り下ろす

”4”

爆弾側面のガムテープを切り裂き、少女から爆弾を引き離した――爆弾を別の”紙”が攫う
直後――複数枚の硬質化した”模造紙”が幾重にも少女と皇を盾の様に覆っていく

”3”

「(威力はわからへん…!!足りて…足りてくれ…!!!!)」

爆弾を攫った紙は爆弾に包まり”硬質化”する
ポケットのノートすら破り、爆弾にコーティングを施す

「――離れやッッ!!!」

周囲に叫び声が響いた

”2”

「(これでもまだ全然足りひん――紙、紙は…)」
『…後は、任せな』
「――え」

赤いマフラーが翻り
大上の横を甲が駆け抜ける

硬質化した紙に幾重に包まれた爆弾を――それでも未知数の威力を持つ爆弾を
駆け抜けた甲はその手に掴んだ

”1”

『――んじゃ、後は頼むわ』

ふ、と薄く笑うと
甲は窓の外に飛び出す
爆弾を強く――――強く抱いて



”0”

177名も無き邪気眼使い:2013/12/13(金) 01:05:41 ID:beAka8oc
大上の行動は、概ね正しい。
爆弾の最も恐るべき特質は、爆発によって撒き散らされる衝撃波や破片である。
テレビでよく見かけるような、オレンジ色の派手な爆炎は、あくまでガソリンなどを用いた演出に過ぎない。
硬質化した紙で爆弾を覆うという大上の処置は、咄嗟の判断としては満点に近い。
今回“スマイル”が用意した爆弾は、爆発の勢いで中に仕込まれた釘やガラス片を撒き散らすという自作のもの。
その威力は、大上の能力によって大幅に削がれる事だろう。
しかしーーー

「センパイッ!!!」

凛の叫び声と同時、爆発音が窓ガラスを震わせる。
どれだけ威力が落ちようと、爆弾がゼロ距離で炸裂すれば、常人ならばたまったものではない。
少なくとも、“痛い”で済まないのは確かだ。

(爆発音で耳が……センパイの心音が上手く聴き取れない……!)

凛に続いて、皇に五十鈴、虎眼も窓際に駆け寄り、倒れ伏す甲に視線が集まる。
冗談ではない。
これでもし甲に何かあれば、それこそ“スマイル”の思う壺だ。
“前例”が出来てしまえば、生徒たちはいよいよ“標的”を狙い始めるだろう。
何より、こんなところで甲を失うなどーーー

「ーーーふざけんなっ!!こんなんで死んだら許さない!!絶対に許さないっすから!!!!」

気が付けば、凛は絶叫していた。
甲の死によって起こる弊害だとか、打算だとかは思慮の外。
それはただただ、“仲間”の身を案じる叫びだった。

178大上 楽/”紙使い”:2013/12/15(日) 00:56:12 ID:4viXhryE
>>177
絶句する大上も数瞬の後、我に返ったように窓際に駆け寄る

「――…あ」

窓の外は凄惨な有り様だった
鼻に付く焦げ付いた匂い、煙を上げ倒れる甲は――ピクリとも動かない

「か……甲サンっ!!」

慌てて、中庭に飛び出し甲の元に駆ける
近付くと、それは更に悲惨さを増す
投げ出された四肢と、露わになった素体

「(か……身体が、殆ど……)」

絶命

そう、疑う余地もないほどに甲の身体は破壊されていた

「く…くそ…こんな……これじゃあ…」

呼吸も心音も停止
改造人間である甲とはいえ、基本的な機能はほぼ人間と同様
その二つの停止が甲の死を表して――――

「………なんや…?」

――――そして、その時異変が起こる

『身体機能の致命的損壊を確認、復元を試みる』

固く冷たい声が倒れ伏す甲の口から発せられたのだった
大上は驚き顔を覗き込む

「…”眼”?…”左眼”が開いとる…?」
『――身体機能とのアクセス――接続を構築……成功、復元シークエンスに移行』

甲の左眼は邪気眼”螺旋眼”を有する
その邪気眼を湛えた左眼が大きく見開かれ――螺旋模様の輝きが激しく渦巻いていた

緑色のその輝きは、次第に眼を溢れ出し
夥しい量の破壊痕に接触――治癒を開始する

『完全修復まで…………必要時間652105秒』

その様子は、まさしく”異質””異様”
邪気眼使いは呪われている――と、誰かは言った
その呪いが――表面化した邪気眼の意識が――甲が死ぬことを許さない

邪気眼を有するのは人か
それとも人を有するのが邪気眼なのか

ここに拡がる光景からはそれは定かでは無かった

「わ…訳が、わからへん…けど…」

呆気にとられる大上だが

「助け、られるんか……あ、安藤…タンカや!!」

部下に指示を飛ばし、異様な気配を纏った甲を医務室に搬送しようと動き出す

179穹凛:2013/12/15(日) 20:55:10 ID:jPlFlrVM
THE ABYSS GAZES ALSO
深淵もまた見つめる



「ーーー御見事。天晴れに御座いまする、甲殿」

びくり、と。
虎眼の呟きを聴いた凛が、肩を震わせる。

「後は私共に任せ、ごゆるりと休まれよ。彼奴の首(しるし)は、虎眼めが必ずや」

凛は、その言葉を聴いて唖然とした。

「…凛様?」

凛の変化に気付いた皇が、凛に声をかける。
しかし反応は無い。

「皇、手が足りませんわ!手伝ってくださらない!?」

少女の首の止血や、担架の用意などを手伝っていた五十鈴が、皇に応援を要請する。
皇は戸惑いながらも「ああ」と返し、その言葉に従った。

(御見事?天晴れ?)

凛は、恐怖していた。
“スマイル”だけではない。
およそ全てのものに。

“スマイリー・フェイス”と、それに付き従う愚者の群れ。
裏切った親友。
少女の首から流れ落ちる血。
人質を取られ尚放たれる紙の刃。
メールを打つ風紀委員。
床に落ちた腕。
死を厭わぬ甲と、彼から死を奪った科学者。
虎眼の呟き。
何も出来ぬ己。

「どいつも、こいつも……」

狂ってる。
その一言を、凛は辛うじて呑み込んだ。



怪物との戦いを避けよ
さもなくば自分もまた怪物となる

お前が深淵を見つめる時
深淵もまたお前を見つめているのだ

ーーーフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

180大上 楽/”紙使い”:2014/02/02(日) 00:25:20 ID:jTYeGapo
「………散々、やなぁ…」

一様の諸々を、搬送される甲を見送り
割れた窓、爆風で煤けた中庭、校舎、それらを眺めて溜息とともに吐き出す

「(正直、甲さんにゃ悪いが…最低限の被害で済んだわ、けど…)」

連中の異様さをこうもまざまざと見せ付けられては、足も竦む
心情も、沈む

「……情けなぁ」

切り抜けられた事にホッとしまう自分にもうひとつ大きな溜息を吐いて

「――――…せやけど、仕方…無いっちゅうねん」

乗り掛かった船を降りるわけにはいかないし
放っておくわけにもいかない事態だということは痛い程に伝わった

ならば、腹を括るしか無いのだと
弱る心に喝を入れて、携帯を取り出しメモリーを漁る

コール一回、繋がる

「……"筆子"?あぁ、わいや…帰省中に悪いなぁ、非常事態や
 あ?あぁ…わいだけじゃアカンねん……ほんで、こっちも"本気"でいかなアカン…」

お前の力が要る、と最後に告げて電話を終える
 
「忙しくなりそう……あー…いや、もうなっとるか」

かはは、と短く苦笑をした後

「見とれよ、ボケ」

その場を別の風紀委員に任せ、後にした

181ノエル=フルーレス:2015/09/25(金) 20:06:33 ID:LRpj0FrA
【談話室】
それは邪気眼使いの集う場所。
それゆえ、いつも騒がしい場所。
この部屋が無事な日なんてあったのだろうか。
だが今は、入るのを躊躇うほどに、綺麗なまま。

「うーん、こんな落ち着かない場所だったっけかなぁ…」

ソファの端に座り、ソワソワと借りてきた猫のように落ち着かないでいる。
小柄であっても人が座っているというのに、ソファは不思議と僅かにしか沈んでいない。

「やっぱり、そんな御身分じゃなかったなぁ…」

落ち着きの無さは、此処の綺麗さばかりではなく、黄金の彼に対する負い目ゆえ。
先の騒動は概ね上手く片付いた、と思う。だが、はたして皆はどう思うか。

「さーて、どうしますかねぇ〜」

それでも、雪の地平に轍が出来る様にと、拙くても一歩足を踏み入れた。
また一歩踏み入れるべく、こうして此処で考え事をする。
必要かは分からないが、”次”を。

「でも、今はちょっとだけ、ダラダラしてたいなぁ〜」

そう溢してソファに寝転がり、手を触れずにTVをつけた(どっからTV出てきた)

182名も無き邪気眼使い:2016/12/12(月) 12:34:10 ID:hI/BT4w.
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