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SS投稿用スレ

1maledict:2007/12/26(水) 21:31:15
まずは立ててみましょう。

2蟻蜂フリーク ◆7zOBxxtxo2:2007/12/27(木) 11:12:42
お約束どおり、出来ましたので投下させていただきます。
一応、改造素体の娘のモデルは知性派のあの女性タレントです。名前からして
バレバレですがw 彼女ならやってくれそうですよね・・・・実際でもw

発表の場の提供ありがとうございます。

3恐怖!ラッコ女1:2007/12/27(木) 11:15:43
アルバイトを終え、帰ろうとしたそのときだった。
「ちょいと、そこのお嬢さん!」
私は振り返った。
・・・・!
「ラッコ、ラッコォ〜〜〜〜〜」
手が貝殻のような形をした巨大な獣が立っていた。
しかし、顔は人間の顔をしており、まるでラッコの着ぐるみを着ているかの
ような出で立ちだ。
「お嬢さんは、これからジョッカーに誘拐されます!
「倉田プロのみなさ〜〜〜ん、さらっちゃってくださ〜い!」
「イ〜ッ!」
黒の全身タイツにベレー帽、顔には赤い稲妻のような模様
が入った男達が現れ、私を彼らの結社のマークがついたマイクロバスへと連れ込んだ。
そして彼らはマイクロバスを急発進させた。

4恐怖!ラッコ女2:2007/12/27(木) 11:17:11
「ちょっと待て〜 ラッコ、ラッコぉ〜」
乗り遅れたラッコ男がマイクロバスを追う。
「待てっつってんだよ!ちくしょう!このタコスケ!」
右手の貝殻のような手を地面にたたきつけた。手は取り外せるらしい。
「イーッ!イ〜ッ!」
マイクロバスの窓から身を乗り出し、手を振る男達・・・
「置いていくなよぉ!ちくしょう!」
諦めると、ラッコ男はどこかにテレビカメラでも見つけたかのように
叫んでいた!
「ラッコ、ラッコォ〜〜〜〜〜」
野次馬達は携帯をラッコ男に向けていた。
ポーズを取るラッコ男・・・・・・

5恐怖!ラッコ女3:2007/12/27(木) 11:18:31
ジョッカーのアジト
ビィ〜ン、ビィ〜ン
不気味な音がホールに響き渡る・・・・・・
「ご苦労だった。女子大生誘拐作戦は成功したようだな。でかしたぞ、ラッコ男よ!」
眼帯に白い軍服姿の男がホールに姿を現す。
「イーッ」
居並ぶ戦闘員たちが一斉にナチス式敬礼のごとく、右手を上げた。
「あれ、ラッコ男・・・・?」
彼がいないのに気づく・・・・
「ハァ、ハァ、ハァ、有難うございます、ファンファン大佐!」
息を切らせながら、ホールにラッコ男が駆け込んできた。

6恐怖!ラッコ女4:2007/12/27(木) 11:19:48
「マイクロバスに乗れなかったんで、新橋から『ゆりかもめ』で台場まで乗って駅から走ってきました!ラッコ、ラッコォ!」
「ハッハッハ、それはご苦労だったな。ラッコ男!」
「おい、お前ら、さらってきた女をここに連れて来い!ラッコ、ラッコ!」
「イーッ」
私は両脇を黒ずくめの男に抱えられ、ホールに連れてこられた。
「おい、お前、名前はなんと言うのだ?」
「ま、眞鍋ゆかりです・・・・・」
「ほぉ、なかなかお美しい。ようこそ!ジョッカー日本支部へ。わたしはここの責任者、ファンファン大佐だ。
君はこれからラッコ女になってもらう。」
「イヤです!この暑いのに着ぐるみなんて着たくありません!」
「い、いや、あれは着ぐるみなんかじゃないんだよ。」
「そ、そうなんだ・・・・・」
・・・とにかく、あんな間抜けな姿にはなりたくない
「おい、こいつを手術室へ連行しろ!」
「イーッ」
黒ずくめの男達に、また両脇を抱えられ手術室に連れて行かれた。

7恐怖!ラッコ女5:2007/12/27(木) 11:21:34
手術室
「ホホッ 暑いから服は脱いだ方がいいですよ?ホホホ。」
手術医のヒゲの濃い男が言った。
「あたくし、女性には興味ないので気にしないでください。ホッホッホ」
・・・・・なに、こいつ気持ち悪い。
「さぁ!眞鍋ゆかり!服を脱いで、手術台に上がれ!ラッコ、ラッコォ!」
・・・・・ラッコ男の目が光り、それを見た私は意識朦朧となり、彼のいいなりになっていた。
そして全裸になって、手術台の上に仰向けになった。
「おおおおお・・・・・・・・ラッコ、ラッコォ」
股間を押さえるラッコ男。
「イ〜〜〜ッ!」
ジョッカーのみなさんたちも股間を押さえる・・・・・・
「ホホホホ。」
彼らの膨らんだ股間をみて股間を膨らませる手術医・・・・・

8恐怖!ラッコ女6:2007/12/27(木) 11:22:39
「ホホホ じゃぁ はじめますよぉ ホホホホ」
ズブブ!太い注射器が刺さる・・・
すると、顔以外の体中に茶色毛が生え始めた・・・・
そして、手は貝殻のように変った。尻尾も生えてきた・・・・
「や、やめて、ジョッカァ〜〜〜!」
顔以外はラッコ男と同じような姿に変っていた。
手術台の脇では大きなノミと木槌をもった手術医が私の胸辺り
でそれらを使っていた・・・・
「ええ!削ってるの?」
やがて、人間の名残を残していた頭部もラッコ男と同じに変った・・・・
ただ、頭には申し訳程度に赤いリボンがついていた・・・・
「ホホホ・・・・脳改造はじめちゃおうかしら? ホホホホ」
「や、やめてぇ・・・・・・・・」

9恐怖!ラッコ女7:2007/12/27(木) 11:23:21
ホール
「ふっふっふ!どうやら新しい改造人間が出来たようだな・・・」
コホン!咳払いをし、ファンファン大佐は声を張り上げた!
「いでよ!ラッコ女よ!」
ジャーッジャジャッジャンジャーーーーーン♪
どこからともなく聞こえるBGMとともにラッコ女が登場した
「ラ〜ッコ、ラッコ!ラッコォ!」
私は雄たけびをあげ、BGMにのって踊っている・・・
「宜しくお願いします!ファンファン大佐!」
「よし、ラッコ女!おまえは早速、にっくき仮面ノリダーを
始末してくるのだ!」
「はい、かしこまりました。ファンファン大佐!ラッコ、ラッコォ!」
「行くよ!ジョッカーのみなさん!」
「イ〜ッ!」
女のジョッカーもいるらしい。
あ、このひと、ファイブマンのイエロー?
「お疲れ様です。ありがとうございます。」
とりあえず挨拶して頭を下げる私・・・・
「イ〜ッ!」
女ジョッカーは右手を上げて応えてくれた。

10恐怖!ラッコ女8:2007/12/27(木) 11:24:05
どこかの広大な空き地
「ノッ・リッ・ダァ〜〜〜〜〜 カーニバルッ!あ〜んどぉ フェスティバ〜ル!」
ジョッカーのみなさんがノリダーの必殺技で吹っ飛び全滅した。
「よくも倉田プロのみなさんを〜〜〜〜〜とりあえずお疲れ様でした。」
私はノリダーと一対一になった。
「覚悟しなさい!仮面ノリダー!ここがお前の墓場よ!ラッコ、ラッコォ!」
「よし、ラッコ女、こっちだぁ!トゥ!」
「待ちなさい!ラッコラッコォ!」
っと、ただ、その場で飛んだだけであった・・・・
「ラッコォ!」
私は着地と同時にノリダーにキックを浴びせた!
「ひ、ひきょうだぞぉ!ラッコ女!」
「ひきょうもラッキョウもないわ。ラッコ、ラッコォ!」
「ち、ちくしょぉ ぶっとばすぞぉ〜〜〜!」

11恐怖!ラッコ女9:2007/12/27(木) 11:25:14
「うるさい!」
バシッ!わたしはノリダーに右手をぶつけた!
「あ痛ぁ!な、なんだぁ!それ、とれるのかぁ!」
「ラッコ、ラッコォ!」
得意になって踊る私・・・・・
「お、おい、ところでそれ拾わなくていいのか?ラッコ女!」
「おっと、そうだった・・ラッコラッコ!」
私が右手が転がってるところまでいって、しゃがんで拾おうとした瞬間・・・・
「今だ!ノッリダァ〜 キィーーーーーーーック!」
私の背中に炸裂した。
「きゃあ!ラッコラッコォ〜〜〜〜〜」
私は谷底に転落してしまった。
上から、発砲スチロールのような岩が次々と降ってくる・・・・・
「ふ、ふざけすぎてごめんなさい・・・こ、今度は何を書こうかな・・」
ガクッ!・・・・私は絶命した!

12恐怖!ラッコ女10:2007/12/27(木) 11:25:46
ジョッカーアジト 
「くそ〜〜〜やはり女では力不足だったか・・・
いってこい!ラッコ男!仇をとってくるのだ!」
「わかりました。ファンファン大佐!ラッコ、ラッコォ!」
ジョッカーのみなさんをつれてラッコ男はアジトから出撃した。
<了>

13蟻蜂フリーク:2007/12/27(木) 11:27:13
以上です。お粗末なSSですいません^^;

14maledict:2007/12/27(木) 15:21:44
感想もここでいいでしょうかね。あんまり2ちゃんとかわり映えしなくなってしまいますが。
「スレを立て、そこに新作投稿」という形式でもシステム上問題ないかどうか
(つまり立てられるスレッドの数自体に制限があるのかどうか、とか)を
ちょっと調べてみます。(その場合下記は移しますのでご心配なく)

>>3-12蟻蜂フリーク様
いやあ、新たな世界ですね。なつかしいです。
ホモオとか、小ネタもウケました。本物にやってもらって見てみたいですね(w

女性を改造する話はほんとにありましたよね。モチーフは忘れましたが、
たしか、おやっさんが海外でリゾ・ラバでもてあそんだ女性が
人生相談を受けに行って、(なぜか○○男に)改造されるという。
で、ラストはイソギンジャガーみたいに元に戻るというオチでした

15蟻蜂フリーク:2007/12/27(木) 17:37:36
>ありがとうございます
あと、カルガモ男のとき、マリナさんが手下にされたこともありますよね^^
それとSS中にも出ましたが女ジョッカーさんに当時、高校生の私は
萌えていましたが、後のファイブマンのイエローやカクレンジャーの
悪役サクラと同じ人物だったことをつい最近知りました。

16名無しさんに改造スル:2007/12/28(金) 05:22:28
>蟻蜂フリークさん
ノリダーいいですね。久しぶりにリラックスして読めました。
二次創作のほうが絵を想像しやすいので初心者でも入って行きやすいですね。
原作を知らなくとも今はネットで調べれば主要人物の容姿やおおまかなストーリー・設定は調べられますからね。

17蟻蜂フリーク:2007/12/28(金) 08:43:37
>16さん
読んでいただいてありがとうございます^^

>ノリダーいいですね。久しぶりにリラックスして読めました
そういっていただきうれしく思います^^
正直、ふざけるな!っという熱い特撮ファンからのお叱りがあるかと思い
ビクビクしてますw

>二次創作のほうが絵を想像しやすいので初心者でも入って行きやすいですね

自分で言うのもなんですが、読み返してみて、とんねるずと眞鍋かをりが
演じてる光景が浮かんでしまいますw

18蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:19:38
「野望教授(シリアスVer.)  SSヘルマリオン」

ワシの名は骸教授。秘密結社ヘルマリオンの大幹部である。
組織が活動停止したとき、ワシは下等動物の社会に潜伏した。奴らの生態を知るいい機会であるからのぉ。
我々が支配した後の世界を運営していくときに役立つ知識を多く得られるかもしれん。偵察部隊からの報告だけでは正直、実感しにくいもの
もある。それに奴らの諺とやらに「百聞は一見に如かず」というのもあるしのぉ。まあ、意義深い体験ではあったな。ホッホッホ。

【約3ヶ月前 アジト】
「骸教授よ・・・・・私は創造主より頂いていたエネルギーを全く感じなくなった。おそらく一時的なものかと思うが、
エネルギーを再び頂けるその日が来るまで眠ることにした。組織の活動も停止することにする・・・・・・・・・・・・・
骸教授よ!貴様だけは活動し、復活の日までアジトやソルジャードールどもの管理はお前に任せることにした。
よろしく頼んだぞ・・・・・・・・・。」
「ハッ!お任せくだされ。首領様。」

「我がヘルマリオンの同志諸君。我々はしばしの間、休息することになった。諸君らは冷凍休眠カプセルに入り次なる戦いに備えるのだ!
我々は世界の・・・・・・・・・・」
マリオンラーヴァを背にワシはソルジャードール、プペロイドを整列させ演説した。
演説終了後、首領の命令を実行するため、冷凍睡眠カプセルへのソルジャードールやプペロイドたちの収納を行った。
残ったワシは孫娘マリオンヘイルを連れて東京に潜入し、人間に擬態して人間社会の動向を探ることにした。
組織が活動停止したことにより資金の流入が止まるので、ワシは資金確保の手段としてファンド会社を設立した。
「ふうむ・・・・・ワシの右腕となる人物がほしいところじゃのぉ・・・・・・」
ワシは六本木ヒルズとやらに拠点を設けた。そして、面白いことがわかった。隣人はワシが偵察部隊からのレポートの中で興味を持った
人物じゃったからだ。江森文隆か・・・・ホッホッホ。ちょうどいい素体が身近におったわ。

19蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:22:13
【六本木ヒルズ 某一室】
ワシはかねてから直属の腹心となる男性型ソルジャードールが欲しかったので、これを機会に編成しようと思った。ちなみにワシに与えられた
戦力はマリオンヘイルのほか、偵察部隊のプペロイド10体、ワシ直属の強化プペロイド10体であった。活動再開までの間、この陣容で
乗り切らねばならなかった。
「おい、偵察プペロイドR-02108号、貴様はT大に潜伏し、目ぼしい人物を確保しろ。並みの奴は要らん。トップレベルの奴じゃ」
「ハイ。カシコマリマシタワ。骸教授様」
偵察プペロイドR-2108号の思考回路は人間でいう女性であった。このタイプはプペロイド全体に占める割合は小さいが、少なからず存在する。
早速、N-02108号は部屋から出て行った。
ワシがマリオンヘイル以外の全てのプペロイドたちに命令を下したとき、部屋の片隅に置かれた鶴川モデルの液晶大画面テレビは、
ちょうど下等動物のG-1とかいう総合格闘スポーツの中継を流していた。
「日本の斉藤和喜!残念ながら1回戦突破できませんでした・・・・元自衛官のフリーター戦士・・・・・・足の負傷の影響は大きかった・・・・・」
「くそ!・・・負けちまったぁ!足がなけりゃあ、勝てたぞ、くそったれがよぉ!」
この格闘家のその異常なまでの闘争心が、ワシに興味を持たせた。
(ほほぅ・・・・こいつは面白そうじゃの・・・・)

20蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:23:49
【T大 Kキャンパス】 
都内でも比較的静かな環境にあるキャンパス。行き交う多くの学生たちの中に仲睦まじそうに歩く一組のカップルがいた。
「山本君って、センター試験、全国トップだったんだってね?すごぉ〜い」
「な、なんで知ってるの?マグレだと思うけど。一生懸命、勉強した成果が出過ぎちゃったのかなぁ・・・・あと、得意な分野からの出題も
多かったし・・・・。屋島さんだって、準ミスT大でしょ・・・・・才色兼備なんだね・・・・そんな凄いコと知り合えて僕のほうこそ光栄だよ。」
「あはは。謙遜しちゃってぇ〜。私の方こそ準ミスなんてマグレだよ。たしか山本君って文Ⅰでしょ?将来、法学部に進んで国Ⅰ法律職を
受けて財務省とか狙うの?」
「う〜ん、官僚になるかどうかはわからないけど、なるなら警察庁がいいな。でも、今は司法試験受けて検事になりたいと思ってるんだ。」
「なんで?」
「・・・・・・・・・・・・・」
山本颯太という名の男子学生は急に表情を曇らせ黙り込んでしまった。
「嫌なこと聞いちゃったかな?・・・・・ごめんなさい・・・・・」
「いや、いいんだよ・・・・中学、高校といじめられてね・・・・・格好悪いよね・・・・・」
「そんなことないよ!・・・・辛い記憶を思い出させちゃったね・・・・・ごめんね」
屋島綾香という文科Ⅱ類に学籍を置く名前の女子学生が申し訳なさそう顔をして謝った。
「僕をいじめた奴が有名な弁護士の家の息子でさ・・・・知ってるだろ?安田和也・・・・・」
「あぁ、タレント弁護士の・・・・・・テレビとかよく出てるよね」
「そう・・・・自分も虐められてること親に相談して、そいつの親の安田和也と話合いしたら言い負かされちゃってさ・・・・・・・」
「交渉のプロだもんね・・・・・向こうは・・・・・・弁護士は職業柄、非を認めなくてナンボなところもあるしね」
「うん、結局、卒業まで続いてさ・・・・それから僕をいじめ続けてたそいつ、実は一浪してこの春入学してきたんだ・・・
このキャンパスのどこかにきっといるよ・・もう会いたくないんだけどね・・」
「そうなんだ・・6年も良くガマンできたね・・・・」
「とっても辛かったよ。でも、イジメに負けないでがんばって、6年間、ほとんどのテストで開栄で1番取ってきたよ・・・・」
「すごいよ〜それ。全然、格好悪くなんかないよ・・・・むしろ尊敬に値するかも・・・・」
「正義が負けちゃいけないと思ったんだ・・・・・イジメなんかするやつに鉄槌を加えてやりたいと思ったりもしてね。」
「それで検事に?いつか法廷で安田弁護士と争ったりとかしたりしてね・・・・」
「う〜ん、ちがうといったらウソになるよね。安田和也みたいな人権派弁護士とか大嫌いだし・・僕は人一倍、正義感が強いみたいなんだ・・・
悪人を徹底的に懲らしめてやりたいと思うし。正義の味方としてね。だから、検事や警察庁のキャリアになりたいのかなって・・・・・・・・・・・・・
非力な僕なんかの場合、力よりも頭で正義に貢献することが適しているだろうし・・・・・」
「そっか〜・・・・・ねえ、話変わるけど、山本君、バイトって塾講師と家庭教師だけ?」
「ウン・・・・そうだけど」
「もっと割りのいいバイト知ってるんだけど。いっしょにしない?実は私もそこでバイトしてるんだ・・・」
「どんなバイトなの?」
「ヒルズのDr.ボーンズ・ファンドってファンド会社でトレーダーのアシスタントみたいなことしてるの。たまに取引もさせてくれるわ。」
「ふ〜ん、でも怪しげな名前だね・・・・日本語にすると、骨?骸?」
「怪しげだけど、社長の藤沢さんはアインシュタインみたいな顔した気さくないい人よ。」
「うん、じゃあ、屋島さんがいうなら・・・・・」
「決まりね。塾講やカテキョーより絶対多く稼げるから。私が文Ⅱだからってわけじゃないけど、経済を学ぶことは大事よ。」
「そうだね・・・・・」

21蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:26:18
【アジト】
「骸よ・・・・どうやら・・・・・・私はあと1週間ほどで復活できそうじゃ・・・・・1年は覚悟しておったが・・・・・わずか3ヶ月とは・・・・」
「首領様の生命力の強さには感服いたします・・・・・・では、復帰準備の方も進めたいと思います・・・・」
「うむ・・・・よろしく頼むぞ・・・骸・・・・」
(よし、ではワシの作戦を実行に移すかのぉ〜 ホッホッホ)

【都内某所】
多摩川沿いの土手を元自衛官のフリーター格闘家、斉藤和喜がランニングしていた。
「ギギ・・・・・」
突如、目の前に何かが自分の進行を遮る形で現れた。
「なんだ?お前は!」
「我々ハへるまりおん。オマエニ『力』ヲ与エル為、確保シニ来タ。」
「はあぁ?何言ってるんだ?お前!へんなナリしやがって!」
彼は左足から鋭い蹴りを繰り出し、奇妙なアンドロイドのようなものにヒットさせた。しかし、それはビクともしなかった。
「素体確保セヨ。」
奇妙なアンドロイドは強烈な一撃を喰らっても全く意にも介さず機械みたいな言葉を発した。
「・・・・・・・!!」
1体にさえ何のダメージを与えることも出来なかったアンドロイドが他に3体も現れ、周りを囲まれては、腕に自信のあった彼でも
歯が全く立たず、あっさりと捕獲された。

22蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:28:16
【六本木ヒルズ Dr.ボーンズ・ファンド】
「ええと、屋島さん、東光ホールディングスの株なんですけど、買いでいいですか?今、内需関連がすごく上昇しそうなんですけど・・・・・」
「そうね。とりあえず100株買い注文出しといて。たしかに円高傾向の予感がするからね・・・輸出関連は一応、様子見てて・・・」
アルバイトとはいえ、山本は実際に株式の売買を、他の正社員たちと扱う金額の差こそはあれ、同じように行っていた。
「ホッホッホ、山本君、どうじゃね?面白いじゃろ?マネーゲームは」
「はい、言い方はよくないですけど、ホント、地道に働くのがアホみたいに思えてきますよ・・・・・・」
「そうじゃろうな。くだらんじゃろ?地道に働いてほんのわずかな金額しか得られない下等動物って・・・・まあ、例外もおるがの。」
「下等動物? 社長、それはあんまりじゃあ・・・」
「いいや、下等は下等じゃ。ホッホッホ。おめでとう、君は選ばれたのじゃ・・・・・」
「はい?」
「さあ、我々の真の活躍の場に行こうかのぉ、皆の者」
「????」
山本は周囲の様子がいつもと違うのに戸惑った。
「・・・・・!」
藤沢という社長の方を振り向いたとき、その和製アインシュタインともいえるような風貌の人物はもはやいなかった。
代わりにそこいたのは、半分が醜いケロイドで覆われ、もう片方の目にスコープのような機械を埋めこんだ奇怪な年老いた男だった。
「や、屋島さ・・・・!!!!」
屋島に、助けを求めようと、彼女の方を見ると奇妙なアンドロイドが彼女のいるべき場所にいた。
周りを見ると、他の社員達の姿もなく、それと同数のアンドロイドがいるだけだった・・・・・
「ギギ・・・・・・」
「おい!屋島さんどこだ!・・・・」
山本は屋島の席に座っているアンドロイドに思わず声を張り上げた。
「ワタシハ ソンナ名前ジャナイワ。ワタシハぷぺろいどR-02108号。アナタヲ確保スルタメニT大ニ潜入シタノ。」
「はぁ?じゃあ、本当の屋島さんはどうした?」
「ギギ・・・まりおんへいるサマガ ぺっとトシテ・・・・・」
プペロイドと名乗る謎のアンドロイドが話し終えようとしたそのとき、
「じいちゃーん、早くお家にもどろぉーよぉー きゃはははははは」
巨大なフランス人形か昔アメリカで流行ったキャベツ畑人形みたいな少女がオフィスに入ってきた。
「お、おねがい・・・・・もう・・・・・家に帰して・・・・・・・・・・・」
首輪をはめられ、鎖でつながれた全裸の屋島綾香が、鎖の一方の端を持っているその少女の横で泣いていた。
そしてフロアに自分がいるにも関わらず、全裸を恥ずかしがる様子は全くなく、異常な状態に羞恥心さえ吹き飛んでしまっているようかのよう
だった。
「や、屋島さん!どうしたの!何があったの?」
「あなた誰?お願いです・・・助けてください・・・・・・・」
『本物』の屋島綾香は山本にすがるように言った。
「え?僕がわからないの・・・・・・もしかして・・・」
「ギギ・・・ソウヨ。ワタシハ ソノめすト入レ代ワッテ アナタニ近ヅイタノヨ。本物ハ ソノ間、まりおんへいる様ガ愛玩動物トシテ
飼ッテイラシタワ。ソノめすト アナタハ最初カラ全ク面識ナンカナイノ ははははははははは」
「そんな・・・・・・・みんなウソだったなんて・・・・・・僕の知ってる屋島さんは偽者・・・・・・」
山本は呆然とした。
(今までのこと全てがすべて自分をおびき寄せるための罠・・・・)
「ハイ、ソウイウコトデ確保」
R-02108号は山本に拘束具を取り付けた。山本はショックの余り抵抗することさえしなかった。

23蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:29:47
【六本木ヒルズ 某一室】
「江森サマ 御迎エニ上ガリマシタ。」
「ご苦労様 そういえば今日だったね。用意は出来ている。よろしく頼むよ。」
江森文隆という男がプペロイドを自室に迎え入れた。
彼はかつて時代の寵児として持て囃されたベンチャーIT企業「ライフ・エッジ」の代表取締役であった。
本業のIT事業よりもマネーゲームによって自分の会社を巨大化させ、東証1部企業にまで急成長させた。
しかし、彼は世間を騒がせた関東テレビの子会社ラジオ富士の株式取得をめぐる関東テレビ本体との攻防戦の際に犯した違法行為により
東京地検特捜部に逮捕され、時代の寵児から一気に単なる狡賢い守銭奴へと転落した。
そして現在は裁判中の身であり、保釈が認められ、拘置所には入らず、自宅で弁護団と控訴審の対策を練る毎日だった。
そんな彼の心の中は今後の人生に対する絶望感と、自分を抹殺しようとしている社会に強い恨みの念しかなかった。
そんな状態の彼の前に隣室に引っ越してきた藤沢という人物が現れた。彼は藤沢と親しくなり、ある日、藤沢の部屋で会食していたとき
藤沢から彼の素性を直接明かされ、自らの意志でヘルマリオン入りを選んだ。もちろんソルジャードールとなることも承知のうえで。
彼はプペロイドとともに彼の新たな活躍の場に向かって六本木ヒルズを去っていった。

【アジト マリオンラーヴァ】
(やれやれ・・・・・江森は一足先にすんなり改造して、カナブンマリオンにしてやったが、こいつらは抵抗しそうじゃのぉ・・・・)
骸教授はそう思いつつ檻の方を見ていた。
「じーさん、俺たちをここから出せ!」
斉藤というG-1の格闘家が檻の中で大声で叫んだ。
「ハハハ 貴様の強くなりたいという願いをかなえてやろうと思っての・・・・・・」
「社長・・・・いや、骸教授さん、なぜ私達を改造するんですか?」
T大生の山本が言った。
「いい質問じゃ、山本君・・・・ヘルマリオンに絶対的な忠誠を誓う兵士になっていただくと同時に君らは私の腹心となってもらう。
君らの意志に反してでもな。そして兵士には下等動物をはるかに越えた強靭な肉体が必要なのだ。そのための改造じゃ」
「そんな無茶苦茶な・・・・・こっちの意志を無視するだなんて・・・・・」
「たわけ!サルと人間が対等でないように、我々と貴様らも対等ではないのだよ。ホッホッホ」
「おい、そんなことやめろ!冗談じゃないぞ・・・・俺は今のままで充分なんだ、とっと出せ!」
「斉藤とかいったのぉ・・・・今も言ったじゃろう。貴様らの意志など関係ない。なあに、改造後は感謝するわい。
礼は組織に貢献することで返してくれ。ホッホッホ」
骸教授は高笑いした。

24蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:31:09
「そうじゃ、いいものを見せてやろう。マリオンへイルや、『ウンコ』を連れて来い。」
「はーい!」
「ウンコ・・・・・?」
山本は不思議そうな顔をしたが、次の瞬間驚いた
「・・・・・・・!!!」
首輪をされ鎖につながれた全裸の屋島綾香がマリオンヘイルに引きずられるかように連れて来られた。どうやらマリオンヘイルは
T大の準ミスにもなった彼女には相応しくない「ウンコ」という名前をつけて、約三ヶ月間、監禁していたらしい。
「助けてください・・・・いったい、なにをする気ですか!」
彼女は泣きわめいて抵抗している。
「マリオンヘイルや、『ウンコ』とは今日で、すまんがお別れじゃ。そのかわり『ウンコ』はソルジャードールとして生まれ変わるから
今度はもっと楽しく遊べるぞい。ホッホッホ」
「うん、仕方ないけど、それならいいや。ちゃば〜〜〜い、『ウンコ』ォ〜〜」
「マリオンヘイルや、お前はもう行ってよいぞ。訓練場で誰かと遊んでもらいなさい」
「は〜い!じゃあね、じいちゃん」
マリオンへイルは訓練場へと去っていった。
屋島綾香は今度はプペロイドに引きずられながら手術台に載せられた。
「な、なにするの!お願い、やめて、助けてください・・・・・」
泣き叫びながら彼女はあの奇妙な蠕動を繰り返す巨大な機械の中に吸い込まれていった。

【マリオンラーヴァ 内部】
無数の触手が彼女に絡んで吸い付き、穴という穴から改造遺伝子情報や催眠快楽物質が注ぎこまれた。
彼女は心地よさ気に眠っていた。

あれ・・・・ここって自分のマンションの部屋じゃん・・・・・・・
そっか今までのことは夢・・・・・変質者ならともかく、へんな女の子に監禁されるなんて、有り得ないもんね・・・普通・・・・
まして監禁場所が六本木ヒルズ・・・あははは・・・・バカみたい・・・・・・
そうだ・・・・経済原論のレポート書かなきゃ・・・・・・・
「ねえねえ・・あんた名前なんてーの?きゃははは」
「・・・!!!」
あのコ・・・・・え、なになに・・・なんなの?
家なのに・・・・・あ、そうだ・・・・テレビ見てたら・・・・・やっぱ誰かに拉致されたんだ・・・・・・しかも人間じゃない何かに・・・・・・・
「あんた、私が飼ってあげる。名前は『ウンコ』ね。よろしくー、ウンコ。キャハハハハハ」
なにこれ・・・・透明バリヤー・・・・・・出れないの・・・・私・・・・・・・
ちょっと・・・・ムシ?・・・・・・いやぁ・・・・・・なにこれちょっとぉ・・・・増えてくるじゃない・・・・・
や・・・助けて・・・・・・・・・・
苦しい・・・・・・私の羽、動くかなぁ・・・・・心配だな・・・・・・・無事飛べればいいんだけど・・・・・
・・・・・・・あれ?・・・・・・・今、私・・・変なこと考えなかった?・・・・・・・
はぁ・・・・・早くアジトにもどらないと・・・・・・・・

【アジト マリオンラーヴァ】
奇妙な機械から手術台が吐き出されてきた。
「あれ、何が乗ってるんだ?あのコはどうなっちまったんだ?」
斉藤は何かのマジックショーを見せられたかのような感覚になっていた。
「屋島さんに何したんだ!」
山本が声を張り上げた。
「ホッホッホ、見ての通り、屋島綾香なる下等動物はこの世から姿を消したのじゃよ。」
手術台から、黒いボディーにところどころ赤い模様の入った黒い蝶の羽を持った生き物が起き上がった。
「・・・・!」
その生き物の顔は、額に触角が生え、側頭部に複眼がついているが屋島綾香、そのものであった。
「屋島さんが・・・・・・・蝶に・・・・・・」
山本は戦慄を覚えた。
ついさっきまで屋島綾香だった生き物は手術台からゆっくり降りると、骸教授の前に跪いた。
「ホッホッホ、貴様はマリオンへイルの愛玩動物『ウンコ』からヘルマリオンのソルジャードールに見事に生まれ変わった。
クロアゲハマリオンと名乗るがよかろう。貴様は経済の知識を活かし、カナブンマリオンと経済謀略作戦を行うがよい。」
「かしこまりました。骸教授様!ヘルマリオン万歳!」
骸教授はプペロイドに命じてクロアゲハマリオンをデイーリングルームへ案内させた。

25蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:32:05
「いい見世物じゃったろう?さて、お次はお前たちの番じゃ。ホッホッホ」
骸教授はプペロイドに命じて斉藤を連行させた。
「おい、冗談だろ?やめろよ!このやろー!」
力自慢の斉藤は抵抗したが、なすすべもなく、手術台に載せられ、
数十分後には、ヘラクレスオオカブトムシのようなソルジャードールになっていた。
「うむ。立派なボディじゃのぉ。貴様はヘラクレスマリオンと名乗るがよかろう。好きなだけ暴れさせてやるぞ。ホッホッホ」
「骸教授様、改造していただきありがとうございます!組織に忠誠を誓います!ヘルマリオン万歳!」
跪いて、ヘラクレスマリオンは言った。
続いて改造された山本はクワガタムシのソルジャードールになった。
「お前はスタグビートルマリオンと名乗るがよい。貴様が下等動物のときに目指した正義などまやかしものじゃ。へルマリオンこそが唯一
絶対的な正義なのじゃ。貴様の知性と教養はヘルマリオンの為にあると思え!貴様はワシの参謀となるのじゃ!」
「ありがたき幸せです。骸教授様」
こうして骸教授の腹心達が誕生した。

「ホッホッホ、久々の改造は楽しいものじゃ」
(腹心の彼らは通常のソルジャードールの3倍の戦闘力としてやったわい。)
骸教授は至福の時を充分すぎるくらい楽しんだ。
「おい、スパイダーマリオン、こいつらを連れてアジトの中を案内してやれ。」
「はい、かしこまりました。」
(スパイダーマリオンは素直で気が効くからこいつらの案内係にはちょうどよいじゃろ。)
「こりゃ!スパイダーマリオン、何を見とれておるのじゃ!早くこいつらを連れていけ!」
「も、申し訳ございません、骸教授様。さあ、新人さんたち、どうぞ、こちらへ・・・・・・・」
(とはいえ、スパイダーマリオンがああなるのも、仕方ないわな・・・・)
2体とも人間で言うところのイケメンであった。
女性型ソルジャードールたちからも黄色い声が通路から聞こえてきた。
男性型ソルジャードールは女性型ソルジャーマリオンに様々なエネルギーを注入できるようになっている。
勃起すると巻貝のように変形したドリルのような股間からエネルギーを供給できるようになっていた。
そしてそれは普段はカタツムリの殻のようなになって股間に収まっている。

・・・・・1時間は過ぎたようじゃが、あいつらめ、何をしておるのじゃ?
「ただいま戻りました!骸教授様」
「遅かったのぉ・・・・・お前たち。まぁ、とりあえずご苦労じゃった、スパイダーマリオンよ! ん? 貴様、顔が紅潮しておるようじゃが・・・・
具合でも悪いのか?」
「い、いえ・・・骸教授様、なんでもございません・・・・遅れて申し訳ありませんでした・・・・」
「そうか。スパイダーマリオン、お前はもう下がってよい。」
「はい 骸教授様」
「よし、貴様ら早速命令じゃ!街へ出て18歳前後のメスの改造素体を確保してくるのじゃ!」
「かしこまりました!骸教授様!」

(フフフ、どんな娘を連れてくるか、楽しみじゃのぉ・・・・)
骸教授は不気味に笑って、彼らを見送った。

26蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:32:52
【約1時間前 アジト】
「ここがディーリングルームです。ヘルマリオンの活動資金がこちらで運用されます。」
スパイダーマリオンが親切かつ丁寧にマリオンビートルチームを案内する。
「で、こちらが格闘訓練スペースです。あ、今、スコーピマリオンがプペロイド相手に訓練してますね。」
「スパイダーマリオン、ちょっと入ってみてもいいか?」
ヘラクレスマリオンが言った。格闘訓練に加わりたいらしい。
「少しの間だけなら構わないと思いますけど・・・・」
「よし、そうこなくちゃ」
ヘラクレスマリオンはコロシアムのような格闘訓練スペースに入っていった。
「そんな雑魚相手じゃ、つまらんだろ?俺が相手してやるぜ」
スコーピマリオンを軽く挑発する。
「新人さん?でも少しは楽しませてくれそうね・・・・」
スコーピマリオンとヘラクレスマリオンが格闘訓練を始めた。
「うぅ・・・・・」
始めて1分もしないうちに、みぞおちに強力な一撃を喰らい、腹を抱えてスコーピマリオンがうずくまった・・・・・・
「ハハハ、まだまだだな。尻尾の動きが丸分かりだ。」
「く、くやしい・・・・・・・もう1回・・・」
この後、3回、闘うがスコーピマリオンはすべて秒殺されてしまった。
「なんで? 何度やっても勝てないの!」
悔しがるスコーピマリオン。
「お前にはどうやら新たなエネルギーが必要みたいだな。」
「エネルギー?」
「しいて言えば戦闘力アップのエネルギーかな?」
「今から補給してやるよ。尻尾を上げてケツを突き出してみろ?」
「はい・・・・」
立ちバックスタイルで股間のドリル状の器官をスコーピマリオンの器官に挿入する。
男性型ソルジャードールはドリル状の器官を女性型ソルジャードールの女性器のような器官に挿入し、ピストン運動の摩擦によって
得られる刺激によって女性型ソルジャードールに必要なエネルギーを放出する。
ちなみに男性型ソルジャードールは快感を得られるのみである。
SEXのような行為であるが、ソルジャードールは生殖活動はしない。
このような形でエネルギー補給を行う必要はないのだが、骸教授の趣味によるところが大きい。
「はぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
スコーピマリオンの絶叫が響き渡った。
乳房だった部分と尻尾が脈を打って蠕動する。
そして股間からは少し粘り気のある緑色の液体が噴き出していた。
「うぉ・・・・・」
ヘラクレスマリオンはスコーピマリオンに補給するエネルギーを射精のような形で放出した。
2体はしばらくスコーピマリオンを下に重なった状態でうつ伏せになって地面に横たわっていた。
「しょうがないな・・・・ヘラクレスマリオンは・・・・・」
右を向くと、スパイダーマリオンが股間に左手をやり、右手で乳房を揉んで悶えていた。
「ス、スパイダーマリオン?」
「私にもエネルギー下さい・・・・・・・」
スパイダーマリオンが興奮気味に求めてきた。
スタグビートルマリオンは正常位の形でエネルギーを注入した。
スパイダーマリオンが興奮の余りに噴き出した糸で2体はグルグル巻きになっていた。
「ありがとうございました。これで次の作戦、頑張れそうです・・・・・・」
微笑みを浮かべ、スパイダーマリオンが言った。スタグビートルマリオンとスパイダーマリオンの間に恋愛感情のようなものが芽生えた。
それは人間のものとは微妙に違っているのであるが。

27蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:33:38
【都内某所 閑静な住宅街】
「な、なんだ!お前は!」
安田と表札のある洋風の立派な家の主人が大声をあげた。
「アンタの息子に用があってね・・・・・」
スタグビートルマリオンが薄ら笑いを浮かべて言った。
「中学・高校とよく『遊んで』もらった御礼に来たんだよ。」
茶色く光沢のある体に甲虫類のような羽が背中にあり、頭部から2本のノコギリ状の角の生えた
まるでクワガタムシのような異形の者に安田家の家族はリビングの隅で身を寄せ合って怯えていた・・・・・
「ま、雅弘は旅行に行っている!当分、ここには帰ってこない!」
弁護士をしている父親が答える。
「見え透いたウソつくなよ、おっさん、バイトにでも行ってるんだろ?アンタって、たしかタレント人権派弁護士とかだろ?
テレビとかでもよく見たよ、安田和也センセ。アンタの言うことなんかまったく信用できないんだ。悪いけどさ。」
ガチャ・・・・・玄関のドアの開く音がした
「ただいま・・・」
「雅弘逃げろ!」
父親が叫んだ。その声を聞き、安田雅弘という青年が反射的に外へ再び駆け出した。
「やっぱりな・・・この嘘つき弁護士が!」
スタグビートルマリオンは安田の父親の首を刎ね、母親の心臓の辺りを一突きして殺した。
「クク・・・・・お前は命だけは助けてやるよ・・・・」
安田の高校生の妹に向かって言った。両親を目の前で殺され、放心状態となっている。

プペロイドたちが安田を捕らえて戻ってきた。
「お前たち、ご苦労さん。安田ぁ〜 散々、俺のこと虐めてくれたよなぁ。アジトまでいっしょに来てもらうよ。妹さんといっしょにね。」
「その声は山本か?」
「昔、そんな名前だったかもなぁ。今は偉大なる組織ヘルマリオンのソルジャードール、スタグビートルマリオンだ。」
「俺たちをどうする気だ!虐めたことは謝るよ・・・・・・だから助けてくれ・・・・・な、頼む!」
「だめだね。散々、ガリ勉とか言ってクラス中の奴巻き込んで俺をバカにしやがって!骸教授様にお前の処遇は俺の自由にしていいという
許可を得ている。まあ楽しみにしてろよ。お世話になった他の連中にも、天誅食らわすつもりだから。ハハハ。」
(思えばせっかく合格して入学した難関私立の開栄中学の1年生のとき、このバカと同じクラスになったせいで・・・・・・・・・!)
(楽しいものになるはずだった6年間が・・・・・・・)
スタグビートルマリオンの脳裏には色々な思いが駆け巡り、怒りと恨みの念が沸き起こり、増幅されていった。

28蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:35:09
【アジト マリオンラーヴァ】
「ほうほう、これは上物じゃな。さっそくソルジャードールにしてやろう。」
安田の妹、有名私立女子高に通う理沙を見て骸教授が言った。
放心状態のままプペロイドに衣服を切り裂かれ、全裸にされ、手術台に載せられる理沙。なすがままにされていた。
手術台はマリオンラーヴァに飲み込まれていった。中では理沙に触手が吸い付き、ソルジャードールへと姿を変えられていた。
やがて、手術台が吐き出されてきた。そこには人間の名残を残しているが、触角が生え、側頭部には複眼がついている頭部を持ち、
黄色ベースのボディにアゲハ蝶のような羽を背中に持った改造人間が横たわっていた。
アゲハ蝶の化け物のような姿になった安田理沙という名だった少女は起き上がって手術台から降り、骸教授の前に跪いた。
「今日からお前はアゲハマリオンと名乗るがよい。お前は再び下等動物の社会に潜入し、ヘラクレスマリオンの作戦を手伝うが良かろう。」
「かしこまりました。骸教授様。」
アゲハマリオンは不気味な笑いを浮かべていた。

【アジト 格闘訓練スペース】
「おらおら〜!どうしたぁ!」
安田をスタグビートルマリオンがいたぶっている。
「ぐぅぅ・・・・・・も、もう許・・・し・・・て・・・下さ・・・・・い・・・・・・」
安田はスタグビートルマリオンの陰湿極まりない仕返しで、見た目がまるでボロ雑巾のような状態になっていた。
(お前に虐められた6年間はこんなものじゃないぞ・・・・そのうえお前が現役でT大に来てたらと思うとぞっとするよ・・・・・)
(10年虐められところだったよ・・・・・・・・・まあ、T大なんてもうどうでもいい話だがな。)
スタグビートルマリオンの脳裏には生まれ変わる前の辛い記憶が蘇っていた。
「ねえ、スタグビートルマリオン、こいつをどうするか、そろそろ決めないと・・・・・・。」
「そうだね、スパイダーマリオン。でも実はもう決めてあるんだ。」
そういうと、スタグビートルマリオンはスパイダーマリオンに耳打ちした。
スパイダーマリオンはニタリと笑った。

【アジト マリオンラーヴァ】
手術台がマリオンラーヴァから吐き出されてきた。
さっきまで安田と呼ばれていたソルジャードールが載っていた。
手術台から降りるとオロオロしている。
「よぉ!安田改めフンコロガシマリオン!お前は汚物を転がして一生笑われてろ。
それが任務だ。」
「ありがたき幸せです。スタグビートルマリオン様、頑張ります!」
スタグビートルマリオンは満足気であった。
フンコロガシマリオンには男性型ソルジャードールとしては例外的にドリル状の器官がついていなかった。
そして意味のない任務をフンコロガシマリオンはアジトの地下で続けることとなった。

29蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:35:47
【都内某所 某有名女子高】
きゃあ!女子高生の悲鳴がする。
「プペロイドどもよ!上質な改造素体を確保しろ!」
校舎内に侵入したヘラクレスマリオンがプリペロイドに命令していた。
比較的ルックスのいい女生徒が捕まっていく。
「なんだ、お前らは!生徒に手を出すな!」
体格の良い男性の体育教師が、不審者撃退用の刺股を持ってヘラクレスマリオンに向かってきた。
しかし、刺股をぶちかまされてもヘルマリオンの最強武闘派戦士はビクともしない。
「よせ。無駄なことだ・・・・・俺は弱い者は相手にしない。」
呆然と立ち尽くす体育教師。
「ふざけた格好しやがって!貴様ぁ!おれは柔道の元国体選手だぞ!」
弱者呼ばわりされて腹が立ったのか、刺股を捨てて、力ずくでねじ伏せようと立ち向かってきた。
「しつこい!」
ヘラクレスマリオンが一突きすると、彼は簡単に吹っ飛び、廊下の窓ガラスを突き破って、2階から地面に落下した。
その間もプリペロイドたちが次々と目ぼしい女生徒を捕獲している。
自ら直接拉致をせず、プリペロイドたちに指示するヘラクレスマリオン。
しばらくするとサイレンの音が聞こえてきた。校外に逃れた者が通報したのであろう。
校舎は機動隊によって包囲された。しかし、ヘルマリオンの一団は警察には目もくれず捕獲作戦を行っている。
「みなさん、お待ちしてましたよ。我々は獲物を運ぶ乗り物が欲しかったんでね。」
ヘラクレスマリオンが警官隊に声をかけた。
「な、なんだ!」
突如、頭上に姿を現した怪物に警官たちは動揺した。
カブトムシみたいな異形の者が3メートルほどの高さのところでブ〜ンという羽音を立てながら浮いているのだ。
「ば、化け物!・・・・・・」
パン!パン!
乾いた音が響いた。誰かが発砲したようだがヘラクレスマリオンは平気な顔をしている。
「無駄だよ。おまわりさん」
発砲した警官が宙を舞った。信じられない速度で移動したヘラクレスマリオンが蹴り上げたらしい。
SITと書かれたジャンパーの男が吹っ飛ぶ・・・・・・・・・
サブマシンガンで武装したSATの隊員がフルオート射撃で弾丸をすべてヘラクレスマリオンに撃ち込んだが無駄だった。
女子高を包囲していた警官隊はヘラクレスマリオン1体にあっさりと片づけられてしまった。
野次馬や報道陣もパニック状態になり、その場から逃げ出してしまった。
「相手にもならん・・・・・・」
ヘラクレスマリオンはつぶやいた。上空にはマスコミや警察のヘリの音が響いているがまったく気に留めてもいない。
ヘルマリオンの一団は機動隊の輸送バスを確保し、捕らえた50人ほどの女子高生達を乗せ、アジトへと急ぐ。

30蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:36:19
【中央自動車道 輸送バス】
アジトに向かう輸送バスを上空からヘリが追跡し、そして後ろからは覆面パトカーが数台尾行していた。
一方、輸送バスの床に直に固めて座らされている拉致された女子高生たちの中には内閣総理大臣、山口忠一の孫娘である
山口恵美が含まれていた。
(いったい何なのこいつらは・・・・人間・・・じゃないのかな・・・・・・・)
恵美は思った。彼女の隣には親友で先日の弁護士夫妻殺害事件の被害者の娘、安田理沙が座っていた。
家族を亡くした理沙は事件以来、親戚の家から通学していた。
(理沙・・・ご両親を惨殺された上、こんな事件に巻き込まれてしまって・・・・・)
「理沙、大丈夫だよ・・・・きっと警察が何とかしてくれるよ・・・・・・」
恵美は思わず、理沙に話しかけた。
「うん、恵美・・・・そうだよね・・・・・」
「そうだよ・・・恵美のおじいちゃんって総理大臣だもん。警察だって必死にやってくれるよ。」
「だよね・・・ハハハ」
恵美と理沙の周りにいた娘たちも話に入ってきた。
「うん、みんな頑張ろう。」
恵美が声を抑えて言った。
「ウルサイゾ 静カニシロ!」
自分達を見張っている変な人形のようなモノが怒鳴りつけた。
女子高生たちは肩をすくめてまた静かになった。
(ヘリがバタバタと・・・・まったく、うるせーな・・・・・・)
「アゲハマリオン、ヘリを始末しろ!」
カブトムシの化け物がこっちを向いて言った。
(・・・ア、アゲハマリオン? この中にいるの?)
恵美は周囲を見渡した。
「はい」
驚いたことに、親友の理沙が返事をした・・・・
(え、まさか・・・・)
「理沙、どうしちゃったの、ねえ、理沙!」
理沙には自分の声がまるで聞こえてないようだった。
そして理沙の制服が破れ、巨大な蝶の羽が姿をみせる。
「理沙・・・・・・・・・・・」
恵美は余りの衝撃に、後に続く言葉がでてこなかった。
完全に蝶の化け物のなってしまった理沙が彼女に言った。
「恵美、私はもう『安田理沙』じゃないの・・・そんな名前で呼ばないで。私はヘルマリオンのソルジャードール、『アゲハマリオン』よ、フフフフ」
「キャァ〜〜!」
周りの女子高生たちが悲鳴を上げた。
「事件の被害者の娘だとか言って、みんな気を使ってくれてたようだけど、そんなの大きなお世話だったわ。
私にはもっと居心地のいい場所があるの。」
「居場所?・・・・・・・」
「フフフ、そうよ。恵美、あなたたちもそこへ今から行くのよ。フフフフ」
アゲハ蝶の化け物になった理沙はバスの窓から飛んで行ってしまった。
(両親を殺された上に、T大生のお兄さんは行方不明で重要参考人・・・そのうえ、あなたはそんな姿に・・・・
いったいあなたの周囲で何があったというの・・・・)
呆然とする恵美の前から飛び去った彼女は上空へ舞い上がるとヘリから乗員を放り出し、空になったヘリを輸送バスの後ろの車列に
叩き落した。バスを尾行していた警察の追跡部隊は大きな爆音とともに全滅した。
アゲハマリオンは改造後、擬態化して、かつての自分の高校に通い続け、ターゲットの選定など今回の作戦の手引きをしていたのだった。

31蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:36:51
【アジト 研究室】
「よくぞ、もどった。ヘラクレスマリオンにアゲハマリオン。初仕事は上出来じゃ!」
「ありがとうございます。骸教授様!」
ワシはとっても満足していた。新に50体、上物の素体が手に入ったからじゃ。
モニターではCNNのキャスターがボルチモアとやらが正体不明の敵から攻撃されて壊滅したと騒いでおるわ。
可愛い孫娘・マリオンヘイルがアメリカに挨拶したようじゃ
それを見てワシはホワイトハウスに今後も歯向かうならNYやロスやシカゴやら、もっと大きいところを潰すというメッセージを送ってやった。
昨日は昨日で孫娘の遊び相手として造ってやった邪念獣・ガッジーラが奴らご自慢の第7艦隊に大打撃を与えてやったからのぉ。
まぁ当分の間、我々には歯向かえまい。素直に中国のように尻尾を振って我々の軍門に下ればよいのじゃ。
下等動物のことはとりあえずこのへんにして、最近、ホーネットマリオンの態度が大きいのが気になるわい。
いざとなったら抹殺できるようにしておかねばのぉ・・・・・スタグビートルマリオンに知恵を出させるとするか・・・・・・
さて、マリオンラーヴァで生きがいに没頭するかのぉ。

【アジト  マリオンラーヴァ】
「ホッホッホ、そう怯えずともよい。命など取りはせぬ。お前たちはこれからソルジャードールとして生まれ変わり、
組織の為に働いてもらうのじゃ。光栄に思うがよい!」
檻の中で50人の女子高生が恐怖で顔を引きつらせていた。
「みんな、何も恐がることはないわ。こんなに美しくて素晴らしい体にしていただいたのよ。
組織に選ばれたことを光栄に思わないとね。」
アゲハマリオンが檻の前で饒舌に話す。
「理沙・・・・・いったいどうしたの?お願い、私達をここから出して・・・・」
恵美が泣きそうな顔で懇願する。
「だめよ。みんな仲間になってもらわなくちゃ。恵美、親友のあなたから仲間にしてあげるね。」
アゲハマリオンはプペロイドに首を振って指図した。
「り、理沙・・・・冗談よね?・・・い、いや・・・近寄らないで・・・・いやぁ・・・・・・・・・」
プペロイドに両脇を抱えられ、手術台まで引きずられていく。
「何マリオンになるのか楽しみだね。恵美。」
プペロイドのよって手際よく制服が剥ぎ取られていく。
全裸にされた恵美が抵抗を空しく続けながら手術台に載せられる。
「恵美ぃ〜 暴れちゃダメだよ。優等生なんだから、行儀よくしてなきゃ。」
「いや・・・いや・・・・助けてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
手術台はマリオンラーヴァに飲み込まれていった。
触手が恵美に絡みつき、ソルジャードールに改造するための遺伝子情報を送り込む。
触手は不気味に蠕動する。額から触角、背中には羽が生えだし、女子高生を異形の者に作り変えていく。
数分後、山口恵美はジュウェルビートルマリオンとして生まれ変わった。
「ほほう、タマムシのソルジャードールか。美しいのぉ。傑作じゃわい。」
骸教授は狂気の笑みを浮かべていた。
「さて、お次はお前じゃ!」
骸教授はセミロングの女子高生を自ら捕まえ、泣き叫ぶ彼女を引きずりながら全裸にし、手術台に載せた。
骸教授の恐怖の儀式が続けらていく。

32蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:37:32
【獅子堂探偵事務所】
「御免ください。」
「はぁ〜い、いらっしゃいませ。」
紗希が応対すると、そこにはスーツ姿の男性が5人立っていた。
「我々は警視庁の者です。帆村みさきさんですね?あなたにお話があって参りました。」
「はぁ、どうぞ・・・・・」
紗希は応接間に案内する。所長はつい先ほど急用だとか言って出かけていったのだが、
おそらくこの人たちが何らかの手段を使って所長を外出させたにちがいないと思った。
そして彼らは普通の刑事や警察官とはまったく違う雰囲気を漂わせていた。
「我々は警視庁公安部の者です。あなたにとって有益な情報をお持ちしました。ディソルバー・サキさん。
いや、野々村紗希さんとお呼びした方がよろしかったですかね。」
「!!!」
紗希は彼らが自分の正体を知っていたことに驚いた。
「驚きましたか?こちらはあなたに関する情報はすべて把握しています。」
能面のように無表情な田中と彼らの中で呼ばれていた眼鏡の若い男が言った。
警視庁公安部・・・・得体の知れない人達だわ・・・・・紗希が彼らに対して一番強烈に抱いた印象だった。
「あなたや我々が戦っているヘルマリオンという組織、あなたのお姉さんが掌握してしまいました。
どこの組織でもみられる権力闘争というやつの結果です。」
「え、紗耶お姉ちゃんが!?」
「ただし、人間として心はもはや持ち合わせていません。ソルジャードールという改造人間として組織を掌握したようです。
今後も組織を率いて我々に挑んでくると考えるのが大方の見解です。」
「お姉ちゃんが組織のトップだなんて・・・・・・・ウソですよね?」
「いいえ。我々がヘルマリオン内部に獲得した超Aランクの協力者からの情報です。情報の確度は高いと見てます。」
「そ、そんな・・・・・」
「お辛いでしょうが、ヘルマリオンを倒せるのは野々村紗希さん、あなたしかいないのです。我々警察はおろか自衛隊でも現状では打倒する
のが困難な相手です。日本政府は全力を挙げて支援することを決定しました。こちらが、先日、協力者から提供されたあなたのお姉さんの・・
ホーネットマリオンの最新情報が記録された資料です。」
課長とよばれている長田という彼らの中の最上位者らしき男から資料を渡された。
「今後、我々、警視庁公安部外事第3課(監視対象:国際テロ組織)が窓口になりますので宜しくお願いします。お姉さんと戦わねばならない
心中お察しします。それと失礼を承知で言いますが、こんな小さな探偵事務所などでは手に入らない情報も我々は持っています。いつでも
我々にお尋ねください。情報面であなたをサポートいたしますので。」
警視庁公安部の面々はホーネットマリオンやそれ以外のソルジャードール、プペロイドなどのかなり詳細なデータやヘルマリオン絡みのもの
と考えられる事件の情報を渡し、それに関するレクチャーを一通り終えると去っていった。
そして紗希は姉を人類のため倒さなければいけなくなった状況にひどく憂鬱な気分になっていた。

33蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:38:03
【3日前 都内某所 喫茶店】
「思えば、愚かなことをしましたわい。ワシのような科学を愛する者が、あのような輩に手を貸すなんて・・・・・・・」
「いえ、拉致されて洗脳されてしまったのでは仕方ありませんよ・・・・・藤沢教授。今、組織内で変わったことってありますか?」
長田がタバコを吹かしながら言った。
ワシは、下等動物の社会に潜入するときはいつも、かつて拉致して殺害した藤沢とかいう学者の戸籍を使っている。
今回はあるコトの為に潜入した。
「組織は今、ホーネットマリオンというソルジャードールに『完全に』主導権を握られておりますのじゃ・・・・・・」
「ホーネットマリオン?・・・・たしかサマースクールの大量拉致事件の被害者の1人、野々村紗耶か・・・・たしかあの事件、
地元の県警の刑事警察部門は全くお手上げだったようで、あちらさんでは謎の集団失踪事件として迷宮入りの状態らしいねぇ・・・・・・
しかし我々、公安部門では県警警備部公安課や外事課を通じてある程度の情報を掴んでましたがね。」
「さすがですのぉ。よくご存知で。ホーネットマリオンの奴が暴走しましてな・・・・・・俗に言うクーデターとやらですかのぉ・・・・」
(公安め、侮れぬのぉ。予想以上に情報を掴んでおるわい)
「なるほど。昔も似たようなケースがありましたね。たしか、S40年代ぐらいに・・・・その組織は結果的に滅亡しましたが。
おたくらも同じ道を辿ってくれると国家としては有難いのですがねぇ〜。」
長田は口からタバコの煙を吐き出す。
「まったくその通りですじゃ。」
(あの組織と一緒にするな。タワケめが!)
「今日、コンタクトをとったのは、先日の女子高襲撃の際、拉致された生徒の中に、山口総理のお孫さんがいましてねぇ。
あなたのお力で解放していただけないかと思いまして・・・・・・・・・・マリオンラーヴァにはまだ入れられていないんでしょ?」
「ええ、もちろんですとも。ワシが実験材料にするということにして人間のままですじゃ。」
(バカめ。とっくの昔に全員、ソルジャードールにしてしまったわい。あの娘は何マリオンじゃったかのぉ・・・)
「そうじゃ、長田さんよ。今日はホーネットマリオンのアップデートしたデータと弱点となりうるポイントをまとめた資料をお持ちしましたのじゃ。」
「ほほう、それは有難いお土産ですね。遠慮なく頂戴します。」
「ホッホッホ。自衛隊にでも在日米軍にでも渡してくだされ。」
(おそらくビーマリオンのところにこのデータは行くはずじゃ。ビーマリオンがホーネットマリオンを倒してくれれば願ったりかなったりじゃ。
ホーネットマリオンをワシが直々に潰してやってもよいのじゃが、奴に人望がある分、厄介じゃ。下手すりゃ、組織を崩壊させかねん・・・・
そこでビーマリオンを利用して、邪魔者を潰したあとで、マリオンヘイルかヘラクレスマリオンあたりを差し向けてビーマリオンを倒す。
ワシは自分で言うのもなんじゃが天才じゃのぉ)
「では、藤沢さん、また会いましょう。」
「ホッホッホ、この老いぼれでよければ、いつでも呼んで下され。」
(ホーネットマリオンよ!見ておけ。ソルジャードールの分際で出すぎた真似をすると、どうなるかをのぉ・・・・・)

34蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:39:37
【アジト 研究室】
「骸教授様!先日の作戦報告書です。」
(最近、勝手に作戦を立てて進めよって・・・・出過ぎた真似を・・・)
「うむ、ご苦労じゃった。後で読んでおく。」
ホーネットマリオンは一礼して、颯爽と部屋を出て行く
(ソルジャードールが!図に乗るでないぞ・・・・・・・)

「すごいね!ホーネットマリオン。骸教授様のお覚えもめでたくて・・・・」
「そうでもないよ、スコーピマリオン・・・・なんか骸教授様、最近冷たいんだよね。」
「期待なさってるから、厳しく接するんじゃない?ヘルマリオンの幹部入り間近だったりしてね。ハハハ。」
「おい、スコーピマリオン、直接戦闘訓練の相手をしてくれ!」
話に割って入る形でヘラクレスマリオンが声をかけてきた。
「うん、喜んで。あとでエネルギー注入してね。フフフ」
可愛い笑顔を浮かべ返事をした。
(いつも仲がよろしいこと・・・・・)
「じゃあね。ホーネットマリオン。気にすることないよ。」
そう言って、スコーピマリオンはヘラクレスマリオンと仲良く格闘訓練スペースに向かっていった。

【アジト マリオンラーヴァ】
「きゃあ!助けて!いやぁ〜〜〜〜〜」
スタグビートルマリオンが骸教授の代理で、ローズマリオンが拉致してきた女子高生を改造していた。
スパイダーマリオンとなにやら楽しげである。
ホーネットマリオンは天井の梁の部分に腰掛け物憂げにマリオンラーヴァの改造作業の様子を見おろしていた。
「フフフ、カマキリの能力を持ったお前は今日からマンティスマリオンと名乗るが良い!」
スパイダーマリオンが楽しそうに告げていた。スタグビートルマリオンに、このセリフを言ってみたいとおねだりしたらしい。
(まったく・・・・能天気なんだから・・・・)
ホーネットマリオンはアジトの中をさ迷っていた。フンコロガシマリオンを見ても笑えない。
偉大なヘルマリオンの為に頑張れば頑張るほど骸教授に疎まれていくような・・・・・・
ホーネットマリオンの心は満たされぬままであった。
(大戦果をあげればきっと・・・・・・よし!気にしないで頑張ってみよう・・・)
「ねえ!オードネートマリオン!模擬空中戦に付き合ってよ!」
ホーネットマリオンは気を取り直して、近くにいたソルジャーマリオンを訓練に誘った。

35蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:40:54
【都内某所】
「骸教授様!ぱぴおまりおん様ノDNA回収成功シマシタ。」
科学作戦用プペロイドの1体が報告してきた。
「おお!でかした!」
ワシは狂喜乱舞した。ホーネットマリオンの勇み足によってワシの傑作の一つパピオマリオンが損失したときは
運悪くワシの近くにいたプペロイド3体を怒りに任せて消滅させてしまったものじゃ。ワシとしたことが大人気ない・・・・・・・・
パピオマリオンよ、すぐに復活させてやるからのぉ。ホントによかった・・・・・・
ワシは基本的にソルジャードールどもが大好きじゃ。出来ることなら1体も失いたくはない。
そんなワシの心を知ってか知らずか、あのソルジャードールは・・・・・・不良品じゃのぉ・・・・・・
蜂タイプのソルジャーマリオンには構造的欠陥でもあるのかのぉ・・・・・スペックは申し分ないのじゃが・・・・
デザイン的にも最高じゃ・・・・・なのに・・・・・う〜む・・・・・・
「ビースラッシャー!」
物思いに耽っていたそのとき、妙な叫び声とともに目の前にいたプペロイドが5体ほど真っ二つになった。
・・・・・!? ワシは不意を突かれてしまった・・・・・
「見つけたわ!骸教授!覚悟しなさい!」
(ビーマリオンか・・・・とんだ邪魔者が現れたわい・・・・・・・)
「ヘラクレスマリオン、アゲハマリオン!あとは任せたぞ!」
「かしこまりました!骸教授様!」
「ビーマリオンよ、今、貴様の相手をするほどワシは暇じゃないのじゃ。」
ワシは戦線を離脱した・・・・待てとか卑怯とかほざいておるが、待てと言われて待ったり、卑怯じゃなかったら悪とはいわぬのじゃ、たわけ!
さて、アジトに着いたらパピオマリオンの復活作業でもしようかの・・・ホッホッホ

<完>

36蟻蜂フリーク:2008/06/07(土) 09:42:35
以上です お粗末さまでした^^;

37名無しさんニ改造スル:2008/06/17(火) 07:16:37
SSの内容について取り決めがありますか。
投下してからダイレン氏のように叩かれても困るから。

38蟻蜂フリーク:2008/06/17(火) 07:43:19
>>37
いつぞやのヘルマリオン新規参入の方ですか?
とりあえず「ヘルマリオンについて語るスレ」で連絡取り合いませんか?
管理人のmaledictさんはじめ常連の皆さんはそこを今のところ基点にしてるようですし^^

39名無しさんニ改造スル:2008/06/17(火) 09:09:06
ヘルマリオンは興味ないけど、僕も知りたい。
エロはどこまでOKか。
改造ネタ以外もOKか。(例えば妖怪悪魔物とか)

40maledict:2008/06/18(水) 18:25:02
「ダイレン様と語り合うスレ」で予告したSS投下します。
(SSの投下場所、他も、当面はここを使いましょう)

タイトルは「ディセイバーズTHE BAD END」です。

設定は、ダイレン様版が蟻蜂様ベースで、蟻蜂様版がmaledict版ベースである
(後者は、邪念獣、オードネートマリオンの存在、パピオマリオンの死が
ホーネットのせいであること、などからそう言えると思います)という事情に
鑑み、描かれていない部分の設定をそれらの部分で補いました。

41maledict:2008/06/18(水) 18:26:09
「ハッピーバースデー、よっちゃん!ハッピーバースデーよっちゃん!」
 家族のにこやかな祝福がよし子を包んだ。よし子は無邪気な笑顔を浮かべ
ろうそくを吹き消す。それは当たり前の光景のようでいて、その家族には
特別のイヴェントだった。
 よし子は二ヶ月ほど前、謎の組織に誘拐され、何かとてつもなく恐ろしい
体験をしたらしい。ショックのせいか、そのときの記憶は欠落し、それ以来
よし子の表情から一切の「笑い」が失われた。それでも、カウンセラーや、
学校の先生や友達、そして何より彼女の家族の温かいケアの力で、よし子は
心に負った深い傷から回復し始めていた。そしてよし子の誕生日の今日、
よし子の顔にあの事件以来初めて笑顔が戻ったのだ。
 ろうそくを吹き消したよし子は、笑いながら涙を浮かべ始め、やがて嗚咽が
始まる。
 家族の顔に不安がよぎる。あのときのトラウマが発作的に甦り、
パニック状態になる、という症状が何度となく出ていたからだ。
「よし子?大丈夫?怖いの?つらいの?」
 しかしよし子はしゃくりあげながら言う。 
「違うの。うれしいの!うえええん。みんなありがとう!本当にありがとう!」
トラウマが甦ったわけではない。むしろその逆である。よし子はいま、
本当に安心できる自分の「居場所」に帰れたことを始めて実感できたのだ。
「ひっく、あたし、あたし、お母さんと、お父さんの子供に生まれられて、
本当によかった!お姉ちゃんの妹で、よかった!ありがとう!ありがとう!」

42ディセイバーズ・THE BAD END(2/19):2008/06/18(水) 18:26:40
 ――そのときだった。泣きじゃくるよし子の額から何か黒いものが伸び
始めた。べりべりとよし子の服が破れる。
 突然の異変に目を見張るよし子の両親と姉。うずくまるよし子の肉体は、
真っ黒なビロードのような材質に変化している。
「…よしこ?大丈夫?」
「どうしたんだ!よし子」
駆け寄る両親。突然立ち上がった彼らの娘はギチギチギチと奇怪な音を
発しながら、両親に向かって言う。
「よし子?そんな名でわたしを呼ぶな!わたしはヘルマリオンの
ソルジャードール、アントマリオン!」
 誇らしげにそう宣言したよし子、いやアントマリオンは口から矢継ぎ早に
彼女の両親に何か液体を放出した。
「ぎゃあああ」
悶え苦しみながら両親は溶解していった。それを満足げに見下ろしたアント
マリオンは、その無表情な目を自分の姉であるはずの女性に向ける。
「大丈夫。お姉ちゃんは殺さないわ。頭の中の声が、17歳から25歳までの
女性は捕らえよと命令しているの。お姉ちゃんはヘルマリオンの基地に
行く。そこでソルジャードールに改造してもらうの」
「ヘルマリオン?ソルジャードール?」
「そう。人類を洗脳によって導く崇高な秘密結社。お姉ちゃんはそのために
奉仕する人形に生まれ変わるの。わたしのようにね」
「や、やめて!やめ…うっ」
 よし子の姉はアントマリオンの麻酔薬を浴びて眠りにつく。やがて回収斑が
到着し、そしてよし子の姉もまた意志をもたぬ、人にあらざる存在に改造
されてしまうだろう。

43ディセイバーズ・THE BAD END(3/19):2008/06/18(水) 18:27:38
 よし子は、かつて六本木ヒルズに捕らわれ、ディセイバー・ユミに
襲いかかったが、その後ユミのRHRの能力によって人間の少女としての肉体と
人格を取り戻した少女の一人である。そのよし子に一体何が起きたのか?
 それを知るには、物語を、その少し前のユミたちの所にまで戻さねば
ならない。

  *  *  *  *  *

「きゃああ!」
物陰に隠れていた巨大な邪念獣がユミに不意打ちを食らわせ、戦士ユミは
思わず悲鳴を上げてしまった。
「ザインチョップ!」
そう叫んだ異装の少年は、手刀の一太刀で、邪念獣をまっぷたつにした。
「…ありがとう…健一君?…マリオンザイン?」
「好きに呼べばいい。俺にはどうでもいいことだ、俺はただ、お前が無事で
あればそれでいい」
そう言って少年は顔をひるがえす。それから、何か思い出したようにユミの
方を振り向き、ほんの一瞬笑みを浮かべて、言う。
「戦いが終わったら、またやろうな?お前、なかなかよかったぞ」
そのセリフに、ユミばかりか他の一同、つまり、ナギサとジュンも顔を
赤らめる。
「……ばか……」
ユミはかろうじてそう言い、足早に歩く少年についていく。

44ディセイバーズ・THE BAD END(4/19):2008/06/18(水) 18:28:12
 ユミは昨晩、人生最大と言っていい賭に出た――健一、いや覚醒した
マリオンザインと一夜の契りを結んだ…健一の肉体と結ばれたのである。
そのときの不安と、痛みと、そしてめくるめく恍惚が、今この瞬間も
目をつぶれば生々しく甦る。それほどに強烈な体験であった。

「ああ、健一君、いいよ!いいよ!」
「…なんだ?お前はなんだ?…ユミ…由美?由美なのか?…俺は…
俺は…ううっ…ああ…」
 半ば強引に押し倒され、行為を終えた少年は、健一でもなければ
マリオンザインでもない、第三の存在に変容していた。健一の記憶が
ところどころ戻っているものの、凶暴で冷酷なマリオンザインの人格は
消えてはいない。しかし、今や由美という少女を全力をあげて守る、
一種の「ナイト」に、少年は生まれ変わっていたのである。

 そうして新しい、強力な戦力を得たユミたちは、斃れていった多くの
仲間たちを悼み、そして行方知れずになってしまったディソルバー・サキを
気遣いながらも、最終的な敵の本拠地へと迫りつつあったのだ。
 目の前に立ちはだかるのはヘルマリオンと軍との戦いの爪痕の生々しい
瓦礫の山。この地下に敵の本拠地はあるはずだ。

45ディセイバーズ・THE BAD END(5/19):2008/06/18(水) 18:28:53
「ユミ!見て、あそこ!」
ナギサの指さす先には、瓦礫の山に埋まった死体のようなものがある。
悲痛な話だが、その場所に死体などいくつも転がっており、ことさら
指さして確かめるほどのものではない。しかし、ナギサが指を指したのは
わけがある。どう考えても圧迫されぺしゃんこになっている「死体」が、
人間の形をとどめ、しかもよく見るとかすかに動いているのである。
「行ってみよう!」

 駆けつけた彼らは、「死体」が瀕死の帆村みさきであったことを知る。
ディソルバー・サキの世を忍ぶ仮の姿である。
「サキさん!サキさん!生きていたんですか?」
再会を喜びつつ、彼らは瀕死の状態にある戦友を必死で救出する。
 サキはぐったりしながらも、かすかに笑顔をうかべ、口を開く。
「あ…ありがとう。さすがに、簡単には死ねない体ね」
「サキさん!今治療してあげます!」
ユミが切迫した声を出す。
「頼むわ。ただ、RHRは発動させないで…わたし、まだ戦いをやめるわけには
いかないのよ」
「…わかりました。でも、それほどの重傷だと、うまく調整できるかどうか。
…サキさんは、本当に、根っからの戦士なんですね」
「ふ。ただの文芸部員よ。…もともとはね」

46ディセイバーズ・THE BAD END(6/19):2008/06/18(水) 18:29:32
 ユミは白い羽根をみさき、いや紗希にかざす。紗希の傷が見る見る癒えて
いく。
「…どうですか?サキさん」
「……!?擬態を解除できなくなってる!…でも、人間に戻ったわけでも
ないみたいね、ほら」
そう言うと紗希は、人間の姿のまま、乳首からビースティンガーを発射し、
少し離れた瓦礫を粉々にしてみせる。
「正直、未変身の状態で100パーセントの力を発揮できる自信はない。
…だけど、連れて行って!足手まといにはならないわ。ここで指をくわえて
あなた方の帰りを待つなんて、わたしには耐えられないの。わかるでしょ?」
 サキはユミを見つめる。二人は決して最初から戦友だったわけではない。
戦い方で対立しあい、ときに互いの命を奪い合いかねない戦いまで交わした
仲である。だからこそ、二人の信頼と相互理解の絆も、太く強く成長していた。
ユミにはサキの心が、サキにはユミの心が、今や手に取るように分かるの
だった。
「わかりました。サキさん、サポート、頼みます!」
「そうこなくちゃ!」
 サキは軽快に返事を返す。

47ディセイバーズ・THE BAD END(7/19):2008/06/18(水) 18:30:08
 サキを加えた一行は、瓦礫の下に広がる最終アジトに巣くう強大な敵を
必死の思いで打ち倒し、ついに「首領の玉座の間」と呼ばれる、敵の中枢部に
たどりつく。
 ユミの活躍で、相当数のソルジャードールが人間の姿に戻り、社会復帰を
果たしている。その一部はナギサのように完全な復元を拒み、かつての
仮面ライダーに似た戦士としてヘルマリオンの残党と戦っている。いまや
形勢は逆転した。ユミたちの活躍で、ヘルマリオンの息の根はまさに
止められんとしている。その最後の指令中枢こそ、この「玉座の間」なのだ。
「いよいよね」
「いよいよだな」
「ふん。ここを破ればいいんだな、ほら」
「あ、待った!」
健一=マリオンザインのフライングで、身構えるタイミングを逃した他の
四人は、軽くよろけながら部屋になだれ込んだ。

 部屋で待ち受けていたのは意外な人物であった。
「む…骸教授!?あなた、たしかに倒したはずなのに?」
ユミが唖然として言う。
「ふぉっふぉっふぉっ!わしに人間的な意味での『死』の概念は
当てはまらぬのじゃ。首領様が生き続ける限り、わしも不滅じゃ!」

48ディセイバーズ・THE BAD END(8/19):2008/06/18(水) 18:30:51
強気のナギサが啖呵を切る。
「ふん。おあいにく様!その首領様の息の根を、今すぐ止めてやる」
「ふぉっふぉっふぉ!こちらからも礼を言わねばならぬのう」
「なによ?負け惜しみ?」
「違うわい。この玉座に座るべきお方を案内してくれたことに礼を言って
おるのじゃわい」
 そう言って骸教授は空の玉座を指さす。
「ふん。健一はもうマリオンザインなんていうあんたらの首領じゃないんだ。
まだちょっとおかしいけど、ちゃんと健一の心を取り戻し始めた、
あたしらの仲間なんだよ」
「ふぉっふぉっふぉ、若いもんは脳天でよいのう」
「なにを!…うぐ」
ナギサが急にがっくりと倒れる。ほぼ同時に、ジュンと健一=マリオンザインも
倒れる。
「みんな?どうしたの?一体何が?…は、サキさん!サキさんはだいじょう…
うぐ…」
 振り返ったユミの目に入ったのは、形のいい乳房をむき出しにして
にやりと笑う紗希の姿だった。その乳首から発射されたソルジャードール用
麻痺弾が、ユミの胸に深々と打ち込まれていた。
「あ…なた…サキさんじゃ…なかった…のね!…たぶん、サキさんの…
双子のお姉さんの……」
すべてを言い終える前に、ユミは倒れ込んだ。

49ディセイバーズ・THE BAD END(9/19):2008/06/18(水) 18:31:31
 次にユミが目を覚ましたのは、何か透明なカプセルの中だった。全身に
激痛が走る。細く強力な無数の糸が全身に接着され、ユミをカプセルの
天井からつり下げているのである。変身は解除され、人間体の全裸だ。
男を知ったせいか、その肉体は幾分丸みを帯び始めた気配があるが、
それでもその胸は未だ固く、乳首は豆粒のよう。そして足の間には
一筋の毛もないスリットが刻まれる。
「ふぉっふぉっふぉ、お目覚めかな」
うれしそうに骸教授が呼びかけ、由美の肉体をなめるように見つめる。
「お前さんには色々と苦労をかけられたからのう。たっぷりお返しを
してもらわねばならんの。幸い、お前さんにはそれが十分にできるんじゃ」
 いやらしい老人から目を離し、由美は部屋を見回す。
 由美の正面には牢屋のようなものが据えられ、その中にナギサ、ジュン、
そして健一=マリオンザインが両手両足を特殊な繊維で拘束されて、
投げ込まれている。
「ああ!由美!由美!」
ナギサは、常日頃の快活で強気な彼女からはとても想像できない、憔悴
しきった、絶望と苦悩に満ちた表情で由美を見つめている。その横の
ジュンもまた、とてつもなく暗い表情のまま、無言でうつむいている。
一人、人間の心を取り戻していない健一=マリオンザインが、ただ
つまらなそうな表情を浮かべて由美の方を見ている。
 そして、檻の横に目を移した由美は愕然とした。そこには、紗希が二人
並んで、冷酷な笑みを浮かべていたからである。

50ディセイバーズ・THE BAD END(10/19):2008/06/18(水) 18:32:47
 左側の紗希が言う。
「由美ちゃん、目が覚めたのね?当ててごらん?紗希はどっちでしょう?」
 愕然とした由美は、まだ何が起きているのかはっきりとは自覚しないまま、
口を開く。
「右側の、あなたの隣が本物でしょ。バカにしないで!」
 右側の紗希が目を丸くして言う。
「正解!さすがは戦友ね!これからもうまくやっていきましょうね!!」
 徐々に事態を飲み込んだ由美は、強い悲しみに打たれながら言う。
「サキさん!あなた、まさか、脳改造を!?」
 口を開いたのは左側の紗希、いや、紗耶の方だった。
「そうよ。多くの犠牲を払ったけど、ようやく妹を取り戻せたの!さすがは
わたしの妹。初任務で、大手柄を立ててくれたわ!」
「やだ、お姉ちゃん!おだてないでよ!」
そう言いながら二人はホーネットマリオンとビーマリオンの姿に戻り、
互いに屈託なく笑い合う。その姿はたしかに真の姉妹だ。だがもちろん
由美には素直にそれを喜ぶことなどできない。
 紗希が言う。
「そういうわけで、あなたにもこれから脳改造を受けてもらう。あなたの
肉体はデリケートだからね。わざわざそんな旧型の脳改造専用機を
持ち出したのよ。まあ、わたしも旧型だから、それに入ったんだけどね」
 紗耶が後を続ける。
「だけど、脳改造を受ける前に、面白いものを見せてあげる」
 そう言うと紗耶は天井に設置されたスクリーンのスイッチを入れる。
映し出されたのは生物の体内らしい奇妙な器官だ。

51ディセイバーズ・THE BAD END(11/19):2008/06/18(水) 18:33:26
「これ、何だと思う?これはね、リバーサー器官と名付けられた、かなり
特殊な生物器官よ。言わなくとも分かると思うけど、あなたのそこに
偶然生成されてしまった器官よ」
 紗耶が指さすとおり、由美の背中には何か機械のようなものが装着
されている。その機械が由美の体内の「リバーサー器官」をモニターし
画面に映し出しているのだろう。
「その器官は、これまでわがヘルマリオンの計画をことごとく阻止してきた、
とても憎らしい器官。だけどわが科学斑は調査の結果、この器官にとても
素晴らしい使い道が隠されていることを突きとめたの」
 紗耶がそこまで言うと、骸教授が場違いにカラフルな帽子をかぶって
現れた。
「ふぉっふぉっふぉ。ヒントはこの帽子じゃ」
そう言うと、教授は帽子を脱ぎ、くるりと裏返した。落ち着いた色調の
裏地が、いまや帽子の表になった。
「わかるな。このリバーシブルじゃ。そして、リバーシブルというのはな」
そう言うと教授はもう一度帽子を脱ぎ、先ほどの派手な色調の生地を
表に出した。
「こうやっていくらでも裏返せるからリバーシブルなんじゃ。わかるかの?」
 由美は汗がたらたらと流れ、体ががくがくと震え始めるのを感じていた。
「ま、まさか!」
「そのまさかじゃ。リバーサー器官にちょっと手を加えるとな、お前さんが
せっせと人間に戻していったソルジャードールたちが、一斉にソルジャー
ドールに戻るんじゃ。なかなか面白いことになるぞい」

52ディセイバーズ・THE BAD END(12/19):2008/06/18(水) 18:34:01
 紗耶と紗希が楽しそうにその先を続ける。
「復元された元ソルジャードールたちの多くは社会復帰して普通に
暮らしているわ。それが一斉にソルジャードールに戻って、愚かな
人間どもを襲い始めるの!」
「中には、警察や国防にたずさわる人々も多い。ボディチェックと洗脳判定を
受け、完全な人間と認定されて、国家の中枢に潜り込んでいる『復元者』も
数多くいるのよ。その経験を見込まれて、重要な機密を任された者も
少なくない」
「もっと面白いのは、そこの娘っこのように『半復元』されてヒーロー気取り
でわしの可愛いソルジャードールや邪念獣を殺しまくっている連中じゃ。
やつらが一斉に、それまで守っていた人間に牙を剥く。こりゃ痛快じゃわい」
 由美は真っ青になって叫んだ。
「やめて!やめて!そんな恐ろしいこと!!」
 骸教授はうれしそうに言う。
「いいセリフじゃのう。わし大好きなセリフじゃ。お前さんからそのセリフが
聞けるとは、こりゃ長生きしてよかったわい」
 紗希が何かの制御装置を取り出す。
「リバーサー器官の操作は、これでできるのよ。ふふふ」
「やめて!サキさん!やめて下さい!正気に戻って下さい!」
 紗希は心外そうに言う。
「いやねえ。やっと正気に戻れたのに、変なこと言わないで。いくわよ。
リバース・RHR発動!」

53ディセイバーズ・THE BAD END(13/19):2008/06/18(水) 18:34:57
 紗希がレバーを引くと同時に由美の背中に異変が起きた。真っ黒い光の羽根が
生え始めたのだ。肉体も漆黒の皮膚に包まれていき、その上に真っ赤な
禍々しい文様が浮かぶ。額からは角。お尻からは鈎状の尻尾。
「あら、何の動物に変形しているのかしら?」
「動物じゃなさそうじゃわい。恐らく、リバーサーそのものの化身、
といったところじゃろう」
「悪魔の器官そのものの姿ね。ディアボロマリオンとでも呼べばいいかしら」
 面白そうにユミの変貌を眺める三人の前でユミは絶叫していた。
「やめて!おねがい!これをとめて!!」
 冷淡な顔でそれを聞き流した紗希が大型スクリーンのスイッチを入れる。
画面にはリアルタイムの世界各地の惨劇が十六分割で映し出される。
 ユミによって復元され、普通に社会復帰していた元ソルジャードールたちが
牙を剥き人々を襲う。あるいは、正義のヒーロー、ヒロインとして戦っていた
戦士たちが守るべきいたいけな者たちを狩り、あるいは惨殺する…
「結果的に、お前さんはとても有益な作戦を遂行してくれたというわけじゃ」
 骸教授が満足そうに言う。ほぼ同時に、檻の中から苦痛のうめきが聞こえる。
「あああ…戻っちゃう!糸が、糸がつながっちゃう!助けて!ユミ!助けて!
ジュン!」
 苦しんでいるのはナギサだった。
「ナギサ!しっかりしろ!悪の心なんかに負けるな!」
 ナギサは半目になり、ジュンを見つめる。
「ジュン……ごめん……」
「ナギサ!ナギサ!しっかりしろ!正気を取り戻せ!」
「……あらジュン、変なことを言うわね。わたしは正気よ。おかしいのは
あんたの方よ。なんであんたはもどらないの?あ、そうか、あんたは抵抗して、
洗脳されずに脱出したのよね。じゃあ無理もないわね。かわいそうに…」

54ディセイバーズ・THE BAD END(14/19):2008/06/18(水) 18:35:39
「……ああ、ナギサ、洗脳がもどっちまったのか」
 絶望にうちひしがれ、崩れ落ちるジュン。
 骸教授が楽しそうに言う。
「さて、面白い見せ物も終わったことだし、小娘の脳改造を始めるぞい」
 すでに絶望で半狂乱状態になっているユミは無駄なあがきを始める。
「やだぁ!離せ!離せ!やめてよ!やだ!やだ!や…」
 ユミの脳に洗脳装置があてがわれ、人工頭脳の組み込みが始まる。頭蓋に
激痛が走り、ユミは絶叫する。その後、全身に接着されたワイヤーから電流が
流し込まれ、人工頭脳にプログラミングが施される。引き続き信じられない
苦痛と、そして性的快楽に近い刺激がユミの脳を満たし、ユミは狂った
人形のように手足を奇妙な動きでばたつかせる。
 すべてが完了し、ぐったりと目をつむったまま動かないユミ。
 不安げに見守るジュン、期待に満ちた目で見守る骸、紗耶、紗希、それに、
拘束を解かれ、彼らと並んで立つナギサ。健一=マリオンザインは檻の中、
相変わらず無表情にユミを見つめている。
 骸教授が言う。
「目覚めよ、ディアボロマリオン!」
 ユミがぱちりと目を開き、洗脳カプセルから歩み出る。
「骸教授。ソルジャードールとして完成させて頂き、ありがとうございます。
どうぞご命令を」
 紗耶、紗希、ナギサは思わず手を叩き新たな仲間を歓迎する。
「おめでとう!ディアボロマリオン!歓迎するわ」
「おめでとう!」
「おめでとう!」

55ディセイバーズ・THE BAD END(15/19):2008/06/18(水) 18:36:19
 骸教授はこほんと咳払いをしてからユミに言う。
「お前のさしあたりの使命はとりあえず二つじゃ。一つは、そこにいる
マリオンザインの操縦じゃ」
「操縦…ですか?」
 洗脳されたとはいえ、未知の用語にユミは怪訝な顔をする。
「そうじゃ。今のマリオンザインは、お前の能力でお前の完全に忠実な下僕に
なっておる。性交した相手を意のままに操る、お前の隠された能力、まあ、
『ディアボロ・セクシーダイナマイト』とでも名付けておくかな――なかなか
センスある名じゃろ?――が発動したのじゃ。お前がちゃんと命令を与えない
から、今までもう一つはっきりしない活動をしていただけなのじゃ」
 檻の中のジュンが叫ぶ。
「そんな!?じゃあ、健一の記憶は?こいつは健一の記憶が戻り始めている
わけじゃないのかよ!」
 骸は面白そうに言う。
「違うな。ただお前らがこいつに『健一であって欲しい』と願ったから、
こいつは乏しい知識をかき集め、『健一』の演技を必死でしておった
だけなのじゃ」
 骸教授はユミに向き直って言う。
「そういうわけでディアボロマリオン、お前には、わしの命令を
マリオンザインに伝えるという大事な役目を負ってもらうぞい」

56ディセイバーズ・THE BAD END(16/19):2008/06/18(水) 18:37:01
 それを聞いた紗耶がうれしそうに言う。
「骸教授!ということは、これで骸教授が指揮系統の最上位、つまり、
ヘルマリオンの最高幹部になるということですね!おめでとうございます!」
 その声は心からの敬意と喜びに満ちており、かつての反抗的な様子は
感じられない。ホーネットマリオンのスタンドプレーを煙たく思った骸は、
彼女の脳に徹底的に手を入れ、骸に忠実な人形へと再改造したのだった。
「ふぉっふぉっふぉ!そうじゃ。色々計算違いもあったが、これで当初の
わしの野望が達成されたわい!ふぉっふぉっふぉ」
 骸教授はひとしきり笑ってからユミとナギサに言う。
「さて、当面マリオンザインに伝える命令もないから、第二の指令を与える
ぞい。ディアボロマリオン、それにエイプマリオン、その檻の中の
忌々しい出来損ないを処刑するのじゃ!洗脳に抵抗するなど、ヘルマリオンの
支配する世界にあってはならない欠陥人間じゃ。生きている資格などないわ」
「「かしこまりました!」」
うれしそうに返事をする二人を見て、恐怖し、戦闘態勢を整えようとする
ジュン。だが、身体の拘束具は身動きの自由ばかりか、一切の特殊能力を
封じている。
「ディアボロマリオン、こいつけっこう手強いから、まずはRHRで人間に
戻して、それからやっつけちゃいましょう」
 正々堂々の戦いを好んだかつての勇敢な少女の面影はもはやなかった。
ユミは檻の中のジュンにRHRを施す。檻の中には、無防備な全裸の少年が
残される。

57ディセイバーズ・THE BAD END(17/19):2008/06/18(水) 18:37:32
 檻を開け、ユミはマリオンザインに玉座に着くように命じる。黙って
命令に従うマリオンザイン。それから、人間に戻された純をユミとナギサが
残忍な目で見下ろす。
「どうやって殺そうかしらね?」
「ただ殺すのはつまんないよ。色々といたずらしてからにしましょう。
それぐらいいいですよね?骸教授?」
「おお、好きにするがいいわい。わしは部下の趣味には寛大なんじゃ」
 うなずいた二人は舌なめずりをして純の股間を見つめる。恐怖に歪む純。
もはや発する言葉もなくなっている。ユミがうれしそうに言う。
「じゃあ、まずこの皮を…」

  *  *  *  *  * 

 由美は汗ぐっしょりになって布団から跳ね起きた。慌てて手足を確認する。
 ――夢…だよね…よかった………かな?――
 枕元にある、上質紙にレーザープリンタで打ち出された紙束を見つめる。
 ――こんなもの読んで寝るから、変な夢見ちゃうんだよね――
 由美は悩んでいた。ことの起こりは数週間前。由美宛に見知らぬ名の
封筒が届いた。子供らしい字で「美府 陸」と書かれている。住所は、
通学路の奥まったところにあるマンションの十三階。心当たりはないが、
好奇心をもった由美は、友達から来たと親に嘘をつき、それを部屋に
持ち帰って読んだ。

58ディセイバーズ・THE BAD END(18/19):2008/06/18(水) 18:38:17
 一読して由美は衝撃を受けた。そこには、若い女性が恥ずかしい方法で
「蜂女」に改造されてしまうという、おぞましくて、いやらしくて、
恐ろしくて、しかし不思議で、ドキドキする物語が印刷されていたのだ。
 ――アブない人のいたずらだ!――
 由美はそう判断した。送り主は子供なんかではなく、多分大人の男性。
少女の元にいやらしい物語を送りつけ、それを読んでいるところを想像して
興奮する変質者…由美がそこまで具体的に考えたかはともかく、何か
ただならぬ危険を当然にも由美は感じた。
 だが由美は、その奇妙な物語がどうしても頭から離れなかった。
 同じ「美府 陸」からの封筒が届いたのは一週間後。やはり親に黙って
一人で読んだ。そこにはまた違う蜂女の物語が印刷されていた。その
一週間後にも同じ手紙。由美は、親には文通を始めたのだと嘘をつき、
いつの間にかその物語を読むことを楽しみにし始めていた。
 いや、そればかりではない。由美はいつしか、その物語に出てくるような
蜂女、いや、蜂女でなくともいいから、改造人間になってみたい、という
密かな憧れを抱くようにすらなっていた。昨晩の夢はそのせいだろう。
 ――壮大で、生々しい夢だったなあ。――
 由美はため息をつく。夢で、ちょっぴり残念だな、と由美は思わずに
いられない。自分でも信じられないのは、脳改造を受けた後、夢の中では、
自分が完全に悪の心に染まった操り人形としてものを考えていたという
ことである。――そんな夢なんてあるかしら?――由美は不審がった。

59ディセイバーズ・THE BAD END(19/19):2008/06/18(水) 18:38:57
 続いて由美は差出人の住所を眺める。友達が住んでいるので知っているが、
このマンションは十二階までしかない。だからこの住所はニセの住所なのだ。
それはかなり早い時点で分かっており、だからこそこの手紙はいかがわしい
ものだという確信も得ていた。
 だが由美は昨日、奇妙な噂を耳にした。あのマンションのエレベータに
午後8時に一人で乗り、「88888888」と8を8回打ち込むと、見たこともない
空間に連れて行かれる、と。…8…蜂…。偶然とは思えない。試してみる
価値はある。幸い、今夜は親が10時まで帰らない。格好のチャンスだ。
 出しっぱなしの紙束を封筒にしまい、机に鍵をかけ、教科書をランドセルに
詰めながら、由美は今夜のちょっとした冒険に、今から期待を膨らませるの
だった。
<了>

60maledict:2008/06/18(水) 18:41:23
以上、お粗末でした。ダイレン様すみません。
本編の、こちらの予想をいい意味で裏切る展開と、完結を期待しています。


なお、この後九時過ぎまでネット使えません。
「ダイレン様と語り合うスレ」で後ほど書きますと言った話は
だからもうちょっと後にそっちのスレで書きます。

61ダイレン:2008/06/21(土) 00:02:06
エピソード10:「悪魔の到来」


六本木ヒルズが倒壊した。世間的にも知らされたヘルマリオンの存在。状況は確実に、予想外の方向に変わりつつあった。
紗希も国連が動き出したとなると、獅子堂探偵事務所にはもう出入りできはしないだろう。
国連軍゙トゥルージャスティズには自分の顔が知られている。なぜなら、彼らの武器は自分の血栓データから作られているからだ。
日本ば全ソルジャードールの掃討゙には断固反対したらしいが、アメリカやフランスに押し切られたようである。
由美達の素性がバレるのもそう時間はかからない。昔と違って情報が得やすい時代だ。
彼女達を人類の敵にはしたくはなかったが、本人達は世界を知らないためか悲観してはいなかった。
後少しで全員を取り戻せる。そう思う彼女達に手を貸さずにはいられない。
紗希はコーヒーを飲みながら、そんなことを考えていた。
「……もしかして……野々村さん?」
野々村と自分を呼ぶ者がいた。知っているのは自衛隊かヘルマリオン、国連軍くらい……。
振り向くと、そこには自分と同じくらいの少年がいた。顔は世にいうイケメンで、体も鍛えてありそうである。
「え……と………覚えてないかな?中学校の時に同じクラスだった南だよ」
「………南……南 信彦君??」
驚いた。彼はそれほどモテる方ではなかったが、みんなに頼られる存在だった。身長も175cmはあるだろうし、今もその様子は変わってなさそうだ。
「久しぶり………違う高校になってからは会えなかったしね」
「僕もまさかこんなところで野々村さんに会えるなんて思わなかったよ」
前の席に座ってケーキを2人分頼む信彦。奢ってくれるのはありがたいが、変なことに巻き込みたくはない。

62ダイレン:2008/06/21(土) 00:05:32
「元気?」
ニコッとして笑顔で質問をしてくる。普通の高校生だったら迷いなくそう答えるだろう。
「まあ……ぼちぼち」
「へぇ………」
そこからは懐かしい話が出てきた。ちさとが信彦を好きだったことなど、久々に紗希は友達と話すという感覚を楽しんでいた。
「………ところで……野々村さんはヘルマリオンのことはどう思う?」
ビクッとしてしまう。公表された今、別に不思議な内容ではないのだ。ただ、信彦の言葉の雰囲気が若干違っていた。
(まさか……南君もソルジャードール………)
場所が悪い。人がいる喫茶店では犠牲者が出るのは必須と言える。どうするべきか、紗希は悩む。
信彦はその反応に気づき、顔を近づける。面と向かった時点で先に口を開いたのは信彦だった。
「大丈夫……僕は敵じゃない。ソルジャードールじゃない……」
「!!?」
ソルジャードールではない………?。政府関係者か、騙しているのか。いずれにしろ、自分の正体を知っているなんて……
信彦は2人分の金額を先に払うために席を立った。その間に紗希は彼がどういった目的で自分に近づいてきたかを模索していた。
「出ようか……」
考えても答えは出ない。紗希は店を出るとすぐに信彦に質問をする。
「敵じゃないっていうなら、どうして私の正体を?」
「情報収集した結果さ。それに、改造人間はソルジャードールだけとは限らないってこと」
「改造人間はソルジャードールだけじゃない?。そんな…………他に何があるっていうの?」
ニヤッとして、今日は楽しかったと言い残し、信彦はその場を後にする。紗希は近いうちにまた会うことになると感じるのであった。信彦のあの後ろ姿はまるで、自分と似通ってると感じながら。

63ダイレン:2008/06/21(土) 00:10:53
ぽつんと空いている席。みんながみんなそれを見つめている。健一の帰還を誰もが望んでいる。
「みんな揃って………健一だけいなんだな」
佐竹 誠。彼は勉強だけなら随一だが、あとは凡庸と言ったところだ。彼なりに今後を考えているのだろう。
「あたし達だけ助かって良かったのかな?」
「良かったに決まってるだろ!。それに健一だってあたし達が助ける」
楠木 愛を渚が叱咤する。由美と綾はベランダでそれを聞きながら話す。
「綾ちゃんの初めて………ごめんね」
「それは不可抗力だし……仕方ないよ。あたしこそ非道いことばっかり言ってごめん……」
互いに話す時間はやっと設けられた。先日まで警察の聴取に追われていたからである。救出出来た人達も同様だったようだ。
共通の想い人を持つ親友。とにかく、その゙勝負゙は別の機会に……


―ヘルマリオン本部―

゙玉座の間゙に入るマリオンザイン。゙黄龍の座゙に腰をかけると、一斉に他の四聖獣の座もライトアップされる。
「待ってたぜ……他の後継者が目覚めた……お前ば第5後継者゙だ」
「番号など飾りにすぎません」
「結局、この中から選ばれるのは1人だけだしねぇ……」
「最悪、我々が戦って最強の者を決めるって手もあるぜぇ?」
創造主のDNAを持づデスティニーチャイルド゙。彼らはソルジャードールの限界を突破する力を持ち、大首領となる資格がある者である。
゙朱雀の座゙にいるマリオンドライ、゙白虎の座゙にいるマリオンツヴァイ、新たに目覚めだ玄武の座゙であるマリオンジーベン、゙青龍の座゙にいるマリオンゼクス。
新たに、そして全員が目覚めたため第5後継者になってしまったザインだが、それほど気にはしていない。
デスティニーチャイルドが出陣するような事態になったとしても負けはないからである。

64ダイレン:2008/06/21(土) 00:13:20
そして姿はここにはないが、その力を以て世界中のヘルマリオンを統括している現大首領。
彼もまた前大首領の遺伝子を持ち、現時点では最強の戦闘力を持つといっても過言ではない。また、神の玉座に座れるのはただ1人。
デスティニーチャイルドは力の優劣ではなく、より前大首領の血を色濃く継いだものほど後継者に近い。
とはいえ、最終的には大首領が決定するので事実上は候補者の数字に意味はない。
「そういやザイン、お前はなんでウイングマリオンを殺さなかった?。細胞の一片も残さず滅す力を持ってるはずだろ?」
ツヴァイが問いかけてくる。彼はその力を享受したのを最も喜んでいる。ザインと違って記憶改竄を受けていないからである。よって、残忍性も随一である。
「いえ………私にもよく……」
「ツヴァイ、良いじゃない別に………。全ては定められし運命のまま………」


猛は長田の死んだ理由となる資料を探したが、殺害したと思われる者が処分したのか見つからなかった。
警察庁にあるデータも消去されている。猛は暗中模索という言葉を頭に思いついてしまう。
「駄目だ……何か……何か…………。あ……」
長田は仕事を家にも持ち帰るタイプだった。猛はもしやと思い、彼の家へと足を進めた。


一家の支えを失った遺族はしっかりやってるほうだ。息子の洋は父と同じ警察官を目指して勉強をしているらしい。
彼の友達は去年、塾の夏期講習で行われたヘルマリオンによる拉致事件の際に殺されている。
壁に叩きつけられ、死体は見るに耐えないほどになっていたようだ。それがきっかけとり、さらに父の死が発火点となったのだ。
長田の妻に許可を貰い、彼のパソコンをチェックする。すると、思った通りヘルマリオンについての資料があった。

65ダイレン:2008/06/21(土) 00:15:47
それを預かった猛は本部へ戻ると、それを読み取っていった。中には骸 氷雨のことに関しても多くのことを調べてある。
「………そうか……やっぱりヘルマリオンと関係が………」
次々と出てくるヘルマリオンの情報。そして、改造人間ことソルジャードールについても。
人類は奴らに対抗する力を得た。それは人類側に立って戦っていたビーマリオン・野々村 紗希の血栓から武器を作り出したからである。
ソルジャードールは殺されると泡のように消えていく。だが、前回救出された者達は口を揃えて言う。
「゙天使゙に助けてもらった」
彼らの言ゔ天使゙はソルジャードールを人間に戻す力があるらしい。しかも、多少の傷ならば治せるようだ。
また、彼女も人類のために戦ってる。自分があの日に見だ天使゙と同一人物と思われる。
「ん?待てよ………」
そう言えば、唯一゙天使゙についてあまり答えないグループが存在した。それは由美のクラスメート達だ。
思えば時期が違うのに、答えはみな同じであることに疑問を持つべきだった。純もあの時に何かを隠しているようだったのも気になる。
目撃情報から判断するにしても、゙天使゙の正体は子供だという推測も上がっている。
「………まさか………由美………なわけないか」
あの子に戦いなんて出来るわけがない。それには優しすぎ、幼すぎる。猛は雑念を捨て、資料に目を通した。


ヘルマリオン本部ではユミやサキによって研究所を破壊された骸に関する査問会が行われていた。
「………Dr.骸。あなたには期待していましたが、いささかがっかりです」
「奴らは意外とやるんじゃよ」
仲間を増やしながら、戦闘能力も戦いを繰り返す度に強くなるユミ達はヘルマリオンにとって脅威なのである。
「我々マリオンズ・トゥエルブが直々に動かなければならないな」
「…………ならば、俺が行こう。奴らの実力も知りたいしな」

66ダイレン:2008/06/21(土) 00:19:19
暗雲が広がり、雨が降りそうだ。梅雨なので当たり前と言えばそうなってしまうが。
だが、由美にとっては違う。雨が降る度に彼女は、木下を殺したことを思い出す。
それが由美に大きな傷を残したのは間違いない。しかし、だからといって戦いは止めない。そう決めたのだから。
「どうした?。帰ろう」
純が誘ってくる。ここのところ、常に純は由美を守るように登下校を共にしている。
それは想い人である由美への気持ちからとしての部分もあるが、彼女のトラウマを何とかして排除したいからである。
「うん……」
綾にも言われた。自分は2人に対して距離を置かなすぎている。どちらも手放せない。
純はこうして自分を心配してくれていて、昔からずっと好きだったと伝えてくれた。自分自身ドキッとしたのも事実。
そうでありながら、今や斃すべき敵となっている健一を想っている。今のままの状態では、健一と純だけでなく綾にも悪い。
それでもまだ答えは出ない。そして、出すのが怖い。もしその答えが導く結果が悲惨なものだったら?
そう考えると現状維持がいいとさえ思えてしまう。今はそうしかない。まずは健一を助け出すのが重要なのだ。それこそが木下も望んでいたことだから。

゙キィィィィン゙

脳内に響く音。由美と純は右の道路に出て、気配がする場所へ向かう。そこはつぶれたデパートだった。
不自然に開いている非常口から中に入る。3年くらい前にはつぶれていたが、中の物品の撤去は放置されている。
薄暗い空間を抜け、屋上まで行くと自分達より若干下であろう少女がいた。
「………どうしたの?」
ソルジャードールの可能性もあるが、ただの人質の場合も低くない。注意を払いながら由美は少女に声をかける。

67ダイレン:2008/06/21(土) 00:21:55
「う…………いや……助け……て………」
振り向いた少女を見た由美達は驚いた。彼女の顔に紺色の痣。それが彼女の体に幾つもあった。
「そ、それは……」
「嫌だよ……あたし………………あた………ぶべ……べべべべべ……」
やがで皮膚の全てが紺色に変わる。すると、毛が生え始める。グチュグチュという生々しい音が由美と純に嫌悪感を与える。
爪、牙、そして犬のような姿になる。それはただのソルジャードールでないのは明らかだった。
ソルジャードールは人間の容姿に動物の要素が入るものだ。だが、彼女は紺色の゙犬゙そのものという獸人である。
「グフゥ………グフゥ……」
息が荒い。それはまるで餌を求めている野犬のようである。いや、野犬ならば本能でする。だが、これは憎悪を感じるような息づかいである。
「これはソルジャードールとして扱うべきなのか?」
「わからないけど……何とかして戻してあげないと………」
光と氷を発し、ユミとジュンは少女を挟むように移動する。これも一定のパターンである。
ジュンが敵を凍らせて足止めし、その間にユミが洗脳と改造を解く。今回もその通りにする。
光の羽が少女を包んでいく。ダメージを与えずとも下級であろうソルジャードールならばこれで戻せるはずである。
「……ガゥァ……ガゥァ!!」
羽を振り払い、氷を打ち砕く。ユミ達は驚くしかなかった。1人の例外もなく戻してきた。それが通じないのだ。
「どういうことだ?ソルジャードールじゃないというのか?」
向かってきた獸人の腕を受け止めるジュン。戦闘用の自分達ほどではないが、プペロイドごときならば簡単に倒せる力だ。
一先ず腕と脚を凍らせようとした時、ジュンは彼女の影が揺らいでいるのに気づいた。
「これは………うわぁッ!」
影から何者かが出てきて、ジュンの胸を払う。払うという行動だけで彼を吹き飛ばしたのだ。
爪で壁に付き、何とか落下を防いだ。だが、彼は悟った。こいつは今までの奴らとは違うと。
「ジュン君……」
「大丈夫だ……だが、奴には気をつけろ……」
その者は砂漠でいう日除けのための布を被っていた。エジプトにでもいるような風貌である。

68ダイレン:2008/06/21(土) 00:25:10
「俺はマリオンズ・トゥエルブが1人、マリオンアヌビス」
ポツポツと雨が降り出してくる。布が溶け出し、もはや黒でないかと思うほどの紺色の皮膚を持つ獣が現れる。
既に戦闘態勢というわけか。ユミもスワンサーベルを精製して構える。
「マリオンズ・トゥエルブは骸やヘイルと同じ………なるほど、幹部直々に俺達を殺しにきたわけか」
「貴様等にこれ以上好き勝手させるわけにはいかないのでな」
「………1つ答えて。あの子はソルジャードールじゃないの?」
獸人のまま倒れている少女。意識はあるようだが、苦しそうである。
「あればアポストロ゙という。俺は人間に自らのDNAを注入し、操ることができる」
プペロイドに連れられ、中からもう1人の少女が現れる。既にアポストロになっている少女の友達だろう。
「ひ………やめてよ………うぎゃあッ!……あぐ………ひぐ……」
少女は叫びを上げた。そのマリオンアヌビスは少女の胸に食らいつき、まるで血を啜るかのように歯を内部まで通す。
すると、少女の皮膚は噛まれた場所から紺色の痣が広がっていく。彼女もまた、爪や皮膚がアヌビスのようになっていった。
「こいつらはやがて死ぬ。そうなれば俺の意のままに操られる屍と化すのだ」
アポストロ………それは使徒の意を指す。それは死者の魂を冥界へと導くアヌビス特有の能力なのだろう。
「何てことを………」
2人は悶えている。その様子はまるで、水を求めてさ迷いながらもオアシスに辿り着けずに倒れていく人のようだ。
「こいつらを救う方法は2つ。俺自身が解毒する。または俺が死ぬことだ」
「!!?。何だ………そんな簡単な方法があるのか………」
ジュンが言った簡単な方法。それはマリオンアヌビスを殺すことである。ユミもまた、戦わなくてはならないと感じている。

69ダイレン:2008/06/21(土) 00:30:23
幹部ともなれば洗脳はされてはいないだろう。自分の意思で改造されたに違いないし、きっと何人も殺してきている。
殺すことは良くはない。だが、斃さなくてはいけない相手は確実に存在するのだ。
「あなたを斬ります………」
翼を広げて上空へ飛び立つ。ユミは急降下しながら刃をマリオンアヌビスへ向ける。
ジュンもまた、フローズンネイルで喉元へと爪を進める。当人は両者の攻撃をバックステップで避け、砂を手に集めて斧へと変えた。
2人の武器が重なり合うと光の斬撃と氷の奔流が合わさった合体技がマリオンアヌビスへと向かっていった。
「なるほど……避けることも想定していたか。中々のコンビネーションだ」
砂で作っだアヌビアックズで合体技を防ぐ。しかし、凍った斧は共に合わさっている斬撃によって砕かれてしまった。
「ふむ………こんな場所では不利か……」
床に手をついたマリオンアヌビスはフンッ!、と力を入れた。すると、ついた場所から徐々に砂に変わっていった。
「まさか………」
ユミは急いで2人を抱えて空中に静止した。ジュンもまた同じように飛び移る。離れてみてよくわかる。デパートが砂になっていくのだ。
上から下に、どんどん変わっていく。ジュンは被害を抑えるために全力でデパートの周りに氷を張っていく。
「ここの周りの人は避難しているわ。ジュン君、頑張って!」
アヤが叫んでいる。どうやら彼女達が言ったのだろう。そこにはサキ以外の全員が集まっていた。
「く…………もう………保たない………」
氷を突き破って流砂が押し寄せてくる。アヤは水で砂を固め、シオンは風で押し返そうとするが勢いが強すぎた雪崩のように一帯に広がり、見ただけなら砂漠そのものである。
「………何てことだ……」

70ダイレン:2008/06/21(土) 00:34:34
避難していたとはいえ、この流砂に何人が飲み込まれたのだろう?。そう思っていると、砂からズブズブとアヌビスが出現した。
「お前………」
全員の視線が向く。思いはただ1つ。゙こいつは斃さなくてはいけない゙。
「感情が現れている……まだガキだな。心配するな。まだ人間共は生きている」
砂の中から一斉に出現してきたアポストロ。数としては300をゆうに超えているだろう。
彼の変質させた砂は人間達をアポストロに変えてしまったのだ。それはつまり、300人以上が一斉に死ぬことを意味する。
「あと10分くらいで最初の小娘辺りから死に始める。ククク………さあ、止めれるかな?」
アヌビアックスを再び作り出す。今度は自分のステージと言ったかのように巨大な両刃の斧が出現した。
「………止めるだけだ!」
ナギサとダイスケが真っ先に向かう。如意棒でアヌビアックスがぶつかり、周りの砂が飛ぶ。
その隙にダイスケは体のバネを生かした拳をアヌビスの顔に当てる。
「どうだ!」
グイッと食い込んでいる。首が折れてても不思議ではない。
「……いいパンチだ。だが、少し重さが足らなかったようだ」
スラッと斧を移動してダイスケの皮膚を斬り裂く。深くは入らなかったが、出血はしてしまっている。
「げ…………だが、これでお前は隙だらけだな!」
「紅蓮ニ式・重焔!!」
超熱波がアヌビスを飲み込む。だが、その中から腕が出てきてナギサの頭を掴んで締めつけてきた。
「あ………ぐ……あ………」
キリキリと指が頭脳を痛ませる。如意棒も落としてしまい、ナギサも白眼を見せている。
「ナギサちゃん!」
どさりと落とされたナギサはピクピクと体が動いている。あの状態はマズい。
ユミはスワンサーベルで斬りかかる。刃を素手で受け止められ、彼女もまた顔を掴まれる。
「ぐ………あ……」
「貴様さえいなければ、我らは………」

71ダイレン:2008/06/21(土) 00:38:40
より力が入る。憎むべき相手。世界を支配するのに最も障害となる者が自分の手の中にある。
高貴なる天使のように見えて、自分にかかれば幼子のように捻り潰せる。
このまま頭を砕くか、それとも咬み殺してやろうか。いずれにしろこいつの命はここで断たなくてはいけない。
「洗脳を受けなかったのは不幸だったな。そうであれば良き戦闘人形だったものを……」
「ユミを離せ!このクソ犬があぁぁッッ!」
そこにジュンが飛びかかってくる。フローズンネイルが伸びていく。左手に持つ斧は氷の爪を易々と割ってジュンの体に食い込む。
「がはっ………」
「硬度が足らんな。まだまだ甘い……」
口にエネルギーが集まっていく。それをジュンに向けて放った。黄土色の光波で彼は離れたビルにまで吹き飛ばされた。
壁に激突したジュンはそのまま動かなくなった、今まで膝すら地面につけなかったジュンがただの2回の攻撃で倒れたのだ。
「所詮はガキか………ん?」
フォックスメッサーを投げ飛ばし、マリオンアヌビスの右腕を狙うシオン。同時にアヤが草薙で同じ場所に刃を向ける。
ついユミを手放してしまうアヌビス。そのままアヤは草薙に空気中の水分を溜める。
「水槌!」
水がアヌビスを襲う。だが、アヌビスが手を出すと水蛇が吸い込まれていく。
「嘘………」
砂は水分を吸収してしまうのだ。アヌビスはそのまま斧を振り下ろす。
「デザート・フェイル」
砂で構築された斬撃がアヤとシオンをまとめて凪ぎ払った。2人共砂にまみれたのか姿が見えなくなってしまった。
「そんな………みんなが……」
この感覚は味わったことがある。圧倒的な戦闘力、深く暗い闇………そう、マリオンヘイルと同じである。
彼女もまた幹部だった。通常のソルジャードールとここまで戦闘力に差があるというのだろうか?

72ダイレン:2008/06/21(土) 00:42:23
「残念なことを知らせてやる。マリオンズ・トゥエルブにも階級があり、番号が若いほど戦闘力が高い。俺はNo.12……この意味はわかるな?」
この力をもってして幹部の中では最弱。つまり、マリオンアヌビスを斃せたとしても、さらにその上には11人いるということだ。
「………こんなのが11人くらいなら……何とかなりそう」
ハッタリだ。ただでさえ力の差を示されてるのだから。それでも戦わなくてはならない。
「貴様はヘイルと戦ったんだったな。内なる力で五分に持ち込んだようだが、彼女とてNo.4なのだぞ?」
あらゆる国の市街や軍隊を壊滅させたヘイルでさえNo.4。まるで底が見えない。だが、それでも……それでも………
「あなたは…………あたしが斃します!」
構えた少女はまるで初めて剣道をするかのように震えていた。ちょうど降り始めてきた雨がさらにそれを引き立てる。
「雨になっても、この砂場の水分は俺が乾かす事が出来る……つまり、俺はここにいる限りは負けん」
両者の武器が金音を響かせる。斧の硬度は砂にも関わらず、鋼よりも強さを感じた。
「シャイニング・ハーケン!」
刃をずらすと同時に斬撃が飛び出る。アヌビスは手掴みすると、そのまま砕いて分散させる。
「斬撃とはこうやるのだ………゙デザート・ボルテックズ!」
アヌビアックスを一回転させる。すると、渦巻きのように回転しながら斬撃がユミに向かっていく。
シャイニング・ハーケンを再度放つが、渦にかき消されてしまう。避けようと翼に力を入れるか動かない。
「どうして………違う…あたしが近づいていってる……」
そう、回転する斬撃にユミは引き寄せられているのだ。それは竜巻が周りの物を破壊しながら進むのと同じ。
「う………だめぇ……きゃああああッッ!!」
渦に消えていくユミの体。渦からは血が噴き出ているが、散乱することなく空を舞っている。回転の終了と共にユミは落下していった。

73ダイレン:2008/06/21(土) 00:44:49
雨の音が聞こえない。風の吹いてるのも感じない。感覚そのものが失われていく。
(……何これ…………これが゙死゙………?)
おや?どうやらアヌビスが自分に向けてジュンを倒したのと同じ゙デザート・ジラソーレ゙を放ったらしい。
というより、既に命中したのか。でも痛みはない。投げられた斧が胸に刺さったようだがこちらもダメージを感じない。
思考のみが先行している。ナギサは?アヤは?ジュンは?シオンは?ダイスケは?苦しんでる人達は?
駄目だ。わからない。眼も見えなくなってきた。ただ、自分だけが世界から遠ざかっていくようだ。
では自分が死んだらどうなる?これが楽になるというなら大間違いだ。むしろ感覚が無くなるのを感じるのは苦痛でしかない。
(気持ち悪い………誰か助けて………。あたしはまだ……違う………あたしば生きたい゙!)
死ぬわけにいかないんじゃない。自分は藤宮 由美として生きたい。木下の願いも、健一を救いたいというのもある。
だが今は、一生命体としての生が愛しくて仕方がない。死にたくない、生きたい。
ならばどうする?このままでは命が消えてしまう。………助かるためには……。

゙マリオンアヌビスを斃ず

斃す!斃す!斃す!斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す斃す…………

゙斃す!!!゙



「な、何だ!?」
アヌビスの目は不可解な現象を見ていた。黒い゙闇゙が落下していくユミの傷口から出てきて、彼女を覆ったのだ。
まるでそれは卵のようだった。これから命が誕生するかのよう。だが、それよりももっと禍々しいものを放っている。
それを感じているのはアヌビスだけではない。気がついたナギサやアヤ達も、その異様なオーラを感じた。
「ヘイルの時は光の翼が出て、それで逆転したのに……」
アヤの時もそうだった。彼女の゙護りたい゙という意思が゙光゙の力を増幅させていたのだ。

74ダイレン:2008/06/21(土) 00:48:28
「そうか………ウイングマリオンは、自分の意思に比例して力を変化させていった………」
離れた場所から蜂くらいしかない大きさのカメラで監視していた骸は驚いてしまった。というか、驚かざるをえない。
「Dr.骸、説明していただきたい。何が起こっているのだ?」
「奴は様々な遺伝子を組み込まれた……それゆえに今までに格闘特化のキャットフォーム、水中特化のドルフィンフォームがあった」
「だから、それがどうした?」
骸は今まで採取したウイングマリオンのデータを参照させた。そこにはヘイルとの戦いも当然含まれている。
「奴は思考の変化、感情の爆発によって戦闘方法を変える……………」
護りたいという意思こそが光を強くさせた。そうであるならば、あの闇は敵を殺すという憤怒から来ている。
「奴の正体は様々なものを選び、無から有を生み出し、天使と悪魔を心に持づ人間゙そのもの……」
かつて政治学者であったパスカルは言ったという。゙人間は野獣ではないが、天使ではない゙。
逆を言えばその心次第でどちらにもなれる。どちらも選べる。
(しかし………それではヘイルと同じ…………゙ヒューマノイドマリオン゙ということか?。この技術はわししか知らんはず……)


卵が割れ、゙それ゙は孵った。中から現れたのは傷を癒やしたユミ。だが、確実に前のユミとは違っている。
漆黒の翼と鎧。スワンサーベルは刀身も柄も全て黒に染まっている。瞳はオレンジ色になり、髪は白髪になっているのだ。
「あれは……本当にユミか………?」
言葉を発したのはダイスケだった。慈愛に満ちたようだった容姿からは想像できない。
「あれじゃ……まるで悪魔じゃないか………。魔王の化身、ディアブロ…………」
ナギサの心配を余所にユミはゆっくりと地上へ降り立つ。アヌビスは再びアヌビアックスを作り、ユミへ向かっていく。

75ダイレン:2008/06/21(土) 00:50:49
「フハハハハハ!!何をするかと思えばダメージ回復だけか!」
透かしたよいな表情だったユミがクスッと笑った。そして、スワンサーベルを上に掲げて振り下ろす。

゙ズヴアァァン゙

何が起こったかの理解などする暇はなかった。マリオンアヌビスの右腕がボトリと落ちたのだ。
「グオオオォォ!!俺の、俺の腕がああああぁぁぁッッッ!!」
ユミはそのままアヌビスに近づき、スワンサーベルで滅多斬りにする。肩から右腰へ、振り下ろした刃はそのまま真っ直ぐ肉を裂きながら下へ降りていく。
「ぐぉ………」


その様子に驚いてるのはナギサ達だった。飛躍的な戦闘力の上昇よりも、その戦い方である。
今までのユミはどこか遠慮があった。相手を傷つけたくない、殺したくない、それがどんなにヒドいい奴でも。
そんなリミッターを外したようにユミは自由奔放に刀を振っている。思えば、力の制御が難しくなっていた六本木ヒルズの頃から兆候があったのかもしれない。
「ユミが………堕ちていく………」
そう言ったのはジュンだった。彼女を昔から知ってる彼だったから、ユミの性質の違いを感じ取ったのだ。


すでに傷だらけになったアヌビスは最後の手段に出た。最大級のデザート・ジラソーレを放つしかないと。
「消し飛べ!!」
口から今までにないくらいの巨大な光波が撃たれた。アヤ達は盛んに避けるように叫ぶ。
だが、ユミはまたクスッと笑うと刃を降った。黒い斬撃゙ブラック・ハーケン゙が放たれ、相殺してしまう。
「馬鹿な……うわああああ……」
蹴り飛ばれたアヌビスは抵抗する間もなく遥か上空へいく。それを追っていったユミはアヌビスの上に回って腹に刀を刺すと、初めて言葉を出した。

76ダイレン:2008/06/21(土) 00:56:19
「あなたの罪は大きい……決して許されるものじゃない………」
幼く優しい声だったユミとは違う。それは契約を破った人間に対して、魂を請求する悪魔のようであった。
「じ………慈悲を………」
数回の攻撃だけでわかる。力の差がわかってしまう。アヌビスは埋めようのないものを感じて命乞いをし始めた。
「慈悲………ね」
スワンサーベルをグリグリと回す。マリオンアヌビスは天敵に喰らわれた動物のような叫びをした。
「あなたはそうやって助けを求めた人を何千と殺してきたくせに………」
落下し始めた2人の会話が続く。というより、痛み叫ぶアヌビスにユミが語りかけていると言った方が正解だろうか。
「貴様等に……俺を殺す権利なぼ………ば……だ゛ぼう゛!」
「それはあなたも同じよ。理由が欲しいならば………そう、゙弱肉強食゙」
「ばに゛?」
「誰も殺す権利なんてない………ただ、強い者が殺ず力゙を持つってだけよ」
ユミの体から禍々しいオーラが放たれる。そして、地上に辿り着く前に彼女はそのオーラを攻撃に転化させた。
「これが私の……゙ディアボロフォーム゙の必殺技よ………゙グランド・ゼロ!!゙ 」
漆黒の闇が広まっていく。この世の全てを飲み込むような、そんな恐ろしさを感じてしまうほどに巨大な闇…………
それを見ていた子供達はあらゆる行動を止めてしまった。視線も、呼吸も、全てがあの闇へと向けられる。
その闇が消えてくると、パチパチと稲妻が見えた。空間が歪んでしまっている。こんなに強いと、仲間の自分達でさえ恐怖を感じる。
そこにマリオンアヌビスの姿はない。跡形もなく滅したのだろう。苦しんでいた人々も次々と元に戻っていく
地上に降り立ったユミは元の白い、優しい天使のユミだった。だが、彼女は自分の手を見て震えだした。
自分にはまだまだ秘密が、自分でもわからない゙力゙が多い。友達や人々が無事であるのを確認したら、ユミはその場で意識を失った。
梅雨の時季の生温かい雨がユミの躯を打っていく。まるで、彼女の罪を洗い流すかのように。

つづく

77ダイレン:2008/06/23(月) 16:22:20
エピソード10.5:「託された願い」


どうしてこんなことになってしまったのだろう?あの時、あの場所、あの事件はそこで起きたのだろう?
猛は対策本部でファイルを見ていた。彼の残した資料のオリジナルは消去されていた。
彼を殺した者がそうしたのだろう。だが、長田は用心深かった。なので、どこかに必ず保存をしているはずだ。
そう思って警察庁・警視庁両方の゙倉庫゙を見る。しかし、一向に見つからない。ハッキングの技術まであるのだろう。
それにしても、国のセキュリティー体制を潜り抜けるとは恐ろしい。ただ力で世界を掌握するような組織ではないのだろう。
「しかし………長田さんのファイル………!!?。もしかしたら………」
彼は用心深かった。そう、あえてわかりやすい方法をとったのかもしれない。誰もが行いそうな手段。


家に帰った猛は郵便受けをチェックする。何通かの、その中で自分宛の手紙を見つけ出した。
中身は予想どうり手紙とメモリー。手紙にばもしもの時゙に関して書いてあった。
それが本当になってしまうとは………。猛は家のPCで開いてみる。そこには現在のヘルマリオン、そしであの事件゙についての答えも書いてあった。
「骸教授…………かつて学会では稀代の才能を持つ科学者と言われていた………」
そんな彼が11年前、当時の学会を去った。その後は消息不明………。後にヘルマリオンの大幹部だと判明したが、過去の栄光からは何の意味を持たない。
だが、同じ頃に死んだ神原 直樹の恩師であることは重要であろう。遺伝子科学のもたらす利益を提唱していたらしい。
彼の論文には不老不死すら可能にすると書いてあったらしい。確かに万能細胞の発見などで、人類はその方向へ進んでいるのだろう。

78ダイレン:2008/06/23(月) 16:23:46
彼の提唱していた遺伝子操作は受精卵の段階から成熟した人間まで、あらゆる世代を対象にしていた。
不老不死だけではない。他の生物能力を人間の理性によって制御し、生物的人間を飛躍させようとしていたのである。
だが、世論や一部の宗教信者の反発を招くのを恐れた学会は彼の理論を否定した。
「いつの時代もそういうものはあるか……」
臓器移植や万能細胞、治療のための手術や薬物投与も本来あるはずのない自然に逆らった行為である。拡大解釈すれば、それも゙改造゙になるのだろう。
正しいかどうかなどわからない。が、人によっては否定したくなる。科学と倫理は常に争っているのだから仕方がない。


少し猛は眠ってしまっていた。゙あの事件゙から姿が変わっていない骸 氷雨の画像をPCに映しながら。

゙トントン゙

その音で猛は起きた。PCの画像も急いで消し、自ら立ち上がってドアを開ける。
「お父さん、ご飯だよ」
「……………あ、ああ。今行く……」
そう告げると由美は1階へと降りていく。あの子がいない時に失っていた日常を感じれることが嬉しい。
そこで猛はふと考える。先日確認しだ天使゙の目撃情報はちょうど1ヶ月前からだ。由美達が救出されてからだ。
思えば捕らえられていた人は進んで状況提供するのに、由美のクラスメート達は揃って口を閉ざしている。
「……まさか……由美が……?。ハハ………ないか……」



そして翌日、ある通報から猛は潰れたデパートへと向かう。封鎖されてる中で、猛が入ったときに自衛隊隊員の話を聞いてしまう。
それは人類のために戦ゔ天使゙と、その仲間を保護したということ。そして、彼が事実を知るのはすぐ後のことである。

エピソード11へ

79ダイレン:2008/06/23(月) 16:26:40
本来はこちらをいれるはずだったので、すらすらと書けました
エピソード10のままだと11の冒頭に矛盾が発生してしまうので、猛視点のみにして繋がる形にしてみました

80maledict:2008/06/23(月) 18:04:24
>ダイレン様
スレでの話によると、>>64-65の該当部分をこれに替える予定だった
ということですね?未定ながら、いつかサイトにまとめたいと思っているので
その折にはこちらに差し替えます。

81ダイレン:2008/07/01(火) 12:43:16
エピソード11:「暗雲の未来」


どこかの国の、いつかの未来。由美は荒廃した都市の中にいた。なぜ自分はここにいるのか?
それよりも、ここを自分は知っている。見覚えのある街並み、公園、小学校………そう、ここは自分の住んでいる街だ。
「どうしてこんなことに………?」
全てがいつもと違っている。崩れている建造物は人類が歩んできた証の象徴なのに、それが見事に無くなっている。
そして、倒れている屍。父の猛、母の翔子、祖父母、クラスの友達、今まで助けていった人々。
「誰が………こんなヒドいことを………」
死んでいることがわかる以上、もはや近づく意味がない。とにかく今は、生きている人を見つけなくてはいけない。
ここには渚、綾、純、詩音、大輔の死体はない。もしかしたら戦っているのかもしれない。守りきれなかった人は大勢いる。
だが、今助けれる人がいるなら………由美は変身して友を探した。
一度飛び立ってみると、状況がよくわかった。
そこから感じれるのは絶望でしかない。日本、いや、世界全てが滅んでしまったみたいだ。ユミは嫌悪感を抱く。
そうなった世界や未来そのものへの嫌悪………。認めたくない。認めるわけにはいかない。
「………………!?。あれは………烈火掌……」
火柱が上がっている。あれを使えるのはナギサだけである。ユミは急いでその場へ向かった。
その途中、ダイスケとシオンの倒れているのを見つける。溶けてないということは生きているということだ。
降り立つとユミはすぐにシオンに駆け寄った。大丈夫、光の羽で治癒できる。
「しっかりして………シオンちゃん……」
「…………!!?。く、来るな…!」
手を払ってシオンは倒れ、地を這うように遠ざかろうとする。しかし傷が深すぎるので、やがて動かなくなり溶けてしまった。

82ダイレン:2008/07/01(火) 12:44:52
「………え?」
拒絶。それ以外に何か言葉を当てはめられるとしたら教えてほしい。そう思いながら、ユミはダイスケの方を向いた。
「近づくな!」
そう言ったダイスケはその2秒後に消えた。同じだ。シオンと思ったことも、味わったことも。


゙ドオオオォォォン゙


大きな爆音が轟いた。ユミは何かがわからないまま、そちらへ向かうしかなかった。なぜなら、こうなった原因があるはすだから。
近づいていくとアヤとジュンが倒れている。さっきのこともあるが、放っておくことなんて出来るはずがない。
「アヤちゃん、ジュン君……」
すでに意識を失っている。とにかく、RHR能力で治癒しなければ。翼を展開しで光゙を彼らに注いだ。
しかし、その゙光゙はまとわりついている゙闇゙によって相殺されてしまう。やがて2人の体は消え、ユミの眼前から消滅した。
「どうなってるの………?」
腕と、脚と、身体が震えている。何かが変だ。悲しいはずなのに叫びと涙が出ない。
「うわ!」
あと1人いるじゃないか。ナギサが、せめてナギサだけでも。その叫びの方向へユミは向かった。
そして彼女は、゙彼女゙を見た。ナギサば悪魔゙に頭を掴まれ、今にも刀でその命が消えそうになっている。
「…………やめて!」
゙悪魔゙はその声に耳を貸さないまま、ナギサの胸を黒い刀で貫いた。その部分からは血が湧き出てくる。
「きゃああああァァッッッ!!」
ユミは悲鳴を上げながらも急いで駆け寄った。ナギサはユミの顔を見ると安堵の表情を見せる。
そして、涙を流しながら消滅した。こんなことが許されるというのか?
ユミは憎悪に満ちた表情で゙悪魔゙を見つめる。しかし、彼女はその瞬間に驚愕の表情になった。
「あなた………誰?」

83ダイレン:2008/07/01(火) 12:47:13
――まさか……――

「………わかってるくせに………」


――信じない――


「あたしは……あなたよ……」
黒の翼と白い髪。ユミとは全く反対の色合いと属性を外見にも現れている。
「ここはどこなの?どうして、みんなを………」
「ここはどこかの未来………そして、あなたが望んだ世界……」
空は朱く染まり、地には屍の山が築かれている世界を誰が望むか。ユミは嫌悪感を感じざるをえない。
「あたし………こんなの………こんな世界、望んでない!」
「あたしに嘘はつけないよ……だって………………………゙あなたはあたじなのだから」
橙色の瞳がユミの視線を釘付けにする。黒い刀が近づいてることに気づかぬまま、ずっとその眼に呑まれていた。


「…………夢?」
生きている。冷や汗が流れてるのも、五感が働いてることからわかる。とはいえ、なぜあんな夢を見たのだろう?
闇の自分が言っていた。あの未来を自分が望んでいると。そんなことないはずなのに。
「…………夢……だよね………?」
そうであってほしい。そうでなくてはいけない。そうでなければ………。由美はそう思わなければ乗り切れない。
顔を上げると、そこは見慣れない部屋だった。自分の家でも、友達の家でもない。
「…………あ………みんなは………」
起き上がって部屋を出ようとした。すると、扉を開けて何人かが入ってくる。服から判断するに自衛隊の人だろう。
「藤宮 由美ちゃんだね?」
「はい……」
彼らはなぜ自分をここに運んだのだろう?。いや、むしろ今までバレなかったのが幸運だったのだ。
「君の友達も、私達が保護した。今は別室で休んでいるがね」
ひとまずホッとする。だが、自衛隊が自分達を匿っていてくれるというなら国連のことはどうなるのだろう?
世界のことはよくわからない。大人の都合なんて知らない。ただ、子供から見た世界は一種のルールから出来てるような気がする。

84ダイレン:2008/07/01(火) 12:48:37
「落ち着いてからでいいので、私達と来てくれるかな?」
「……今でも、大丈夫です」
疲れてないわけじゃない。それでも知らずにはいられない。自分達が生きている、この世界の答えを。
それはみんな同じなんだ。自分も含めて、人は誰かに答えを求めたがる。だからこそ、6人は欠けることなくその場へ集まった。
「由美……?。あんた、もう大丈夫なの?」
渚が声をかけてくる。コクリと頷いた由美は席に座った。皆も無言で後に続く。しばらくの静寂の後に隊員と警察官、さらにはある人物が入ってきた。
「由美…………」
それは猛だった。由美は驚いたが声には出さない。父は捜査の中心にいた人物だからここにいるのは不思議じゃない。
感覚でわかっていた。いずれ父とこういった立場で合うことは、予想の範囲内だった。
猛も目の前にいる娘が戦っているなんて、まだ信じきれてない。だが、砂山の上から現れたソルジャードール姿の由美を見てしまった。
それは事実。動かしようがない中で、出来ることは由美や子供達を死なせないこと。人類を護る為の戦いで生かすことだ。
彼は一呼吸置くど父と娘゙ではなく、゙共に戦う盟友゙の顔に切り替える。そして、今後についての話し合いが始まる。
紗希がいない理由を知らぬままとはいえ、彼女達は現状についての認識をすることとなった。
近い内に国連が決戦をしかけると。自衛隊は独断で自分達を匿ってくれていること。そして、今の実力を一斉に底上げする方法。
長田の遺した、紗希を含めた人類の守護者達の強化方法である。それはソルジャードール同士で競い、力を高めることだ。
戦う度に強くなる自我を持つソルジャードール。学習を超えた成長、それを望める唯一無二の手段である。

85ダイレン:2008/07/01(火) 12:51:57
子供達は早速゙練習試合゙を開始することにした。今は事を急がなくてはならないのだから

それぞれが変身して、互いに最初に闘うパートナーを選択する。
「あたしはユミちゃんと闘るよ」
アヤが真っ先に志願した。この間の勝負の続きというつもりか、妙に張り切っている。
「試合……って感じでやればいいのかな?」

――もし戦うことが罪だと言うならば――


「シオン、あんたの能力をちゃんと見てみたいんだけど?」
ナギサは如意棒を振り回すと、準備運動完了と言ったように地面に突き立てる。
「わかったわ」
尻尾をクリクリと振ると9枚のフォックスメッサーを扇子のように重ねる。まるで稲荷がこれから踊るようだ。

――あたし達はその罪を背負う――

「やろうぜ、ジュン」
「ああ」
鍛えあうには男同士がいい。鈍重な剛の爪と、鋭利なる剛の牙を高めあうために。

――その罪こそが戦いを終わらすためにあると信じて――

(……こんなことを背負わす俺を、大人達を許してくれ)
自分の娘が異形の者になる瞬間を見た猛はそう思った。なぜ、こんな子供達が戦わなければならないのか。
全ては自分達゙オトナ゙が振りまいてしまっだ業゙のツケを払わせてしまうのだから。
自分は非力だ。だからこそ、少ない゙力゙でも貸してあげたい。その゙業゙を壊すために、自ら立ち上がった子供達のために。

――今は前に――


自衛隊の演習地がすっかり貸切になっている。ここでならば訓練にはもってこいだろう。
風が空を裂くと、炎が舞い上がる。地が起き上がる度に、氷は柱になっていく。
水が流れると、綺麗な光がそれに反射して虹が出来る。彼らはまるで遊ぶようにして、ぶつかり合っていた。


――進む――

86ダイレン:2008/07/01(火) 12:53:31
〜遡ること、数時間前〜

ある高校前、下校時間になっても生徒は1人たりとも出てこない。それどころか校庭で部活動に励む者さえ現れていない。
生徒達は皆、体育館に集まっている。スズメバチを模した姿をする少女は壇上でプペロイドに指示をしていた。
「3年2組の女子を、ここに連れてきて」
このクラスを除き、全員自分の蜜を飲ませて操り人形と化している。あえてしなかった理由、それは………。
「野々村さん………なの?」
「久しぶりね。委員長の宮本 涼風さん」
ここはかつて紗耶と紗希、サマースクールに参加したメンバーが通っていた高校である。
「これはどういうこと?それに、その姿は?」
「あなたが知りたいことは、これが教えてくれるわ」
現れたのはアナザーラーヴァ。マリオンラーヴァのデッドコピーであり、欠陥部分があったために洗脳機能が働かなかった。
だが骸教授はアナザーラーヴァを改修し、マリオンラーヴァの小型版として実現させたのだった。
涼風は否応無しに手術台に乗せられる。起動したアナザーラーヴァは触手が伸びて制服をキリキリと破っていく。
「はうぅっ!………んぐ……んんッ!」」
さらに口には改造促進剤を詰められ、言葉を封じられてしまった。ドボドボといれられていく薬が彼氏の精子を彷彿させる。
股ぐらへ絡まる触手は彼女の性感を敏感に作動させる。昨夜にした性交と重なって、涼風に快楽を与えていく。
うなじをさするとこなど、まるで撫でてられているようで心地良いとさえ思ってしまう。
(体が熱くなってく………何か変………)
「んぐーーー!!」
膣内に僅かながら残されていた精子が、遺伝子変化の副作用として強化された。それが卵と混ざり合い、10ヶ月分を越えて一気に出産へと近づけたのだった。
「あぐ!……ん゛がががが!!」

87ダイレン:2008/07/01(火) 12:55:11
改造そのものは終了した。だが、出産による痛みが股には残っている。
「ん………あああああ……うん、うん……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
やがて、赤ん坊が産まれて袋に入る。手術台から降りたら、真っ先にホーネットマリオンへ膝を屈っした。
「出産おめでとう、カンガルーマリオン」
「ありがとうございます……ホーネットマリオン様」
友人の変わりようにクラスの者はみな驚いていた。ホーネットマリオンは次に改造する少女を決めようと下を見る。
「………次は…………………………サキ、あなたね」
ガラスを突き破って、針が周りにいるプペロイドの頭部に突き刺さった。バチバチと電撃が走ると、爆発炎上する。
ブゥゥゥゥンと音が聞こえる。ホーネットマリオンはニヤリとして、同色の針を入り口へと放つ。それを全て避け、サキは姉の前に降り立った。
「サヤ…………」
配色こそ違うが、全く同じ容姿をした双子の姉妹はここで向き合った。これで何度目になるだろうか?
「待ってたわ。今回こそ決着をつけましょう……あなたの洗脳を以てね」
全校生徒が一斉にナイフを出して首筋に付ける。なるほど、全員人質というわけか。だが、そんなのは予測済み。
黄金色の霧が生徒達を覆うと、彼らは全員ナイフを落とした。ハッと気がつくと、体育館の外へ逃げ出していった。
「なるほど……ビーリングハニーを拡散放射することで大人数の洗脳を解除。成長したわね」
「巻き込みたくないのよ…………なぜ、ここを場所に………」
「死ねぇ、ビーマリオン!」
バネを活かしてカンガルーマリオンが向かってくる。高速で、連続したジャブがサキの腕に痛みを与えていく。
「宮本さん………改造されて……」

88ダイレン:2008/07/01(火) 12:57:15
カンガルーマリオンは脚にグッと力を入れ、バネをグイグイと活動させる。左右に揺れたその行動は何かの漫画で見たことがあるかもしれない。
相手の左右から交互に来るパンチは全体重を乗せた重い拳だった。ガードしてても衝撃が伝わってくる。
やられっぱなしではいけない、ビースティンガーを撃とうと思ってしまった。気を緩めた時、ガゼルパンチがサキの脇腹に食い込んだ。
「ぐ………」
再び揺れ動くカンガルーマリオン。鉄腕が繰り出す拳がサキをメッタ打ちにしていく。
「かは…………」
「終わりだああああッッ!!」
大きく振りかぶったその拳がサキの顔へ向かう。軌道を読み、サキは鉄球が如きパンチを掠めながらハイキックを脳髄へと叩き込んだ。
脳震盪が起こり、カンガルーマリオンは揺れる。そこでサキはビースタナーを塗った針を両腕・両脚・胴体へと打ち込んだ。
「あ………動かない……」
四肢の自由がない。サキは飛孔に性格に撃ち込み、神経そのものを麻痺させていたのである。
「後で抜いてあげるから、大人しくしてるのね」
由美の能力があれば救えるだろう。サキは改めてホーネットマリオンに視線を定めた。
「質問の続きよ。どうしてここを選んだの?」
「相応しいじゃない。゙人間゙だった頃のあなたに別れを告げるのに……………」
ホーネットマリオンは歩みを始める。カンガルーマリオンの前に立ち、お腹をさする。
「さっき赤ちゃんが産まれたのよ。でも、人間の頃に放たれた精子から……つまり、クズの子……」
「サヤ………待ちなさ…………」
「ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
ブシャアァッッと飛び散る血飛沫。長い針がカンガルーマリオンの腹部を貫いている。
「どぶじべ……」
「使えない…………役立たずには生きる価値なしだから」

89ダイレン:2008/07/01(火) 12:59:44
ドサリと倒れたカンガルーマリオン。溶けていないということは、本人はまだ生きているだろう。だが、赤ん坊は………
「サヤ……」
その薄笑いが憎い。ニヤニヤと、まるであざ笑うかのようなその感じが。
「あなたは私の大事なものを、いったいどれだけ奪えば気が済むんだ!!」
指先からビースティンガーを放つ。同じくして、ホーネットニードルを指先から発射して撃ち落としていく。
交差すれば体育館の壁に刺さっていき、次第に穴だらけになる。平行線を打破するために肉弾戦へ持ち込もうと、サキはあえて針の中を通っていく。
腕を払い、裏拳がホーネットマリオンの顔に当たる。するとやはり、彼女も膝蹴りをサキの腹へと入れた。
より激しいラッシュバトルが繰り広げられる。互いに譲らないまま、゙ソニックストーム゙どハイバルストーム゙が衝突して体育館の屋根を切り刻んだ。
「逆回転の竜巻をぶつけて相殺………やっぱり、双子ね」
「一緒にするな外道!。私は……私は………」
言葉がつまる。憎いのは誰だ?。サヤなのだろうか?。そうじゃないだろ、と声をかけたのはあの少女だった。
「………私は……サヤを………お姉ちゃんを………」
由美が教えてくれた。本当に斃すべき相手はヘルマリオンそのものだと。自分が戦ってるのは、そのためだと。
「お姉ちゃんを………助けたいのに………」
悲しい表情を見せた妹にホーネットマリオンは微妙な顔をした。だが、サキの願いを叶えるわけにはいかないのだ。
「助ける……?。私は嬉しいのよ……この力を与えてくれたヘルマリオンに感謝してる……」
「嘘だ……それは偽りの心………」
「そう?私は………この力を不幸に思うことなんてないわ………」

90ダイレン:2008/07/01(火) 13:02:38
ホーネットマリオンはグイッと力を込めた。すると、光が彼女の周りに溢れていく。
「これは………」
「私は大首領様の直属の近衛隊になったわ」
「え………?」
骸教授やマリオンズ・トゥエルブさえ知らない、大首領から与えられた力。それをホーネットマリオンが持っている。
「だからって……それば光゙じゃない…」
なぜ゙悪゙であるはずのホーネットマリオンが゙光゙を得ているのか?というより、゙光゙はユミだけの力だったのではないだろうか?
「゙闇゙はマリオンズ・トゥエルブ、゙光゙は大首領様とデスティニー・チャイルドの方々の力よ……それを私も手に入れた」
自分の属性の他にも゙光゙が闇゙かを持つ。それが上の奴らが強い理由だろう。
(………゙光゙が大首領の…………?。じゃあ………ユミちゃんのあの力は……?)
ユミの戦闘力は自分達と同等に思えるが、明らかに異質な力を持っている。それはまるで、゙神゙と人とを分け隔てる境界線のようである。
もし、ユミの力が大首領と同じ力だとしたら?もし、同じ存在だとしたら?

「何を考えてるかわからないけど………余計なことは考えないことね」
「………サヤ……」
「これが私の゙神使゙としての力、゙クイーンフォーム゙!!」
赤紫色の゙邪光゙がホーネットマリオンを包み込んで、纏わりついていく。光が消え、まるでドレスを着ているかのような美しい姿になった。
白や赤紫を基調として美しさもあるが、ユミの白と違って何だか無機質な白で気持ち悪い気もしてくる。
だが、容姿は天使隊のリーダーであるガブリエルに酷似していた。
「あなたを手に入れられないのなら、いっそあたしが殺してあげるわ………軋め、゙ジークフリード」
両手首の辺りに付いている羽根がバッと開いた。視たとこでは、弓矢と長刀を足した感じだろう。
破られた天井からは雨が降ってきていた。それはある場所では闇を目覚めさせ、ある場所では光を封じている……。
何かの始まりと、何かの終わり。それを感じさせる、不思議な雨だった。

つづく

92ダイレン:2008/07/23(水) 01:12:52
明日テストですが、完成したので投下します

エピソード11:「せめて哀しみと共に」


無機質な白さが不気味に思える。ホーネットマリオン・クイーンフォームが地に着く瞬間、床がビキビキとヒビが入っていった。
それは物理的な重量ではなく、強大な゙気゙からの影響である。その圧迫感は誰かと似ている。
(やっぱり………この゙気゙はユミちゃんに似ている………)
その゙光゙の性質は逆であっても、存在としては同等である。さらには彼女の腕から生えだした弓状の武器が威圧感を増している。
また、クイーンフォームとなったホーネットマリオンの右目には絃で紡いだような十字架が浮かんでいた。
「大首領様によって埋め込まれだ聖痕゙〈スティグマ〉………これで私の潜在能力は限界以上に引き出されているわ」
「限界………以上に?」
ホーネットマリオンがジークフリートをサキに向ける。゙光子゙が集まって針の形に変わっていく。

ビュン………

サキの顔を何かが掠めた。ホーネットマリオンの手には針がないことから、撃ったのだろう。
外れた?いや、外したのだ。針は体育館の壁を貫くどころか触れた場所から砕いてしまっている。
「今のは貫通よりも破壊させることを意識して大きめに作ってみたわ。だから遅かったでしょ?」
今のですら遅いとはハッタリだと一言が出ない。正直、避けれなかった。
「………強化形態なんてイキなものを………」
槍状に伸ばしたビースティンガーを手に、サキは滑空する。左方から飛針を撃った後、円を描きながらしながら近づいていく。
ホーネットマリオンもジークフリートから針を精製・発射をする。その速射性から全てのビースティンガーを破壊し尽くす。
その時には背後に回っていたサキの槍が背中を狙う。しかし、ホーネットマリオンは手で先を掴んで飛針をサキへ向けて撃った。

93ダイレン:2008/07/23(水) 01:14:46
右肩を掠め、針は体育館の壁を砕いた。サキは左の拳を捻るようにしながらホーネットマリオンを殴る。
しかし、痛がる様子はほとんどない。むしろニヤニヤと嬉しそうにしている。それば力゙の差を感じ取ったからだろう。
両者は1年の間、数回戦っている。己の能力、相手の能力が手に取るようにわかっていた。双子ゆえの互角の力だったはずである。
だからこそ、今まで決着が着かないまま時は過ぎていったのだ。しかし、ここに来てその力バランスは狂いだした。
「やっぱり………聖痕の力は素晴らしいわね」
弓の部分が長刀のように伸び、サキの腹部を斬る。ブシャア!!、と血が噴き出るが、構わず胸からビースティンガーを撃つ。しかし、顔面寸前で針を受け止められてしまう。
しかも右手の指で一本ずつ、まるで見せつけるように皮膚との寸という差で止めていたのだ。
「な………」
さらに右脇腹、左肩へとジークフリートからの針が打ち込まれる。
「があっ…………」
「あらら?゙力゙の差が大きすぎて戦いにならないわね………イジメは良くないのにね」
指から針を落とすとチャリンと音が鳴る。ガクガクと震える脚がその痛みを表している。
動物的な本能、人間の感情。どちらも自分と姉の戦闘力の差を痛感させた。心の奥底から思い知らされる。それはまさに、゙恐怖゙。
「ふふ………あなたは昔から私に何一つ勝ったことなんてないじゃない………それが現在もそうだというだけよ」
あの自信が来るのはあちらも自覚しているからだ。自分との差が、゙聖痕゙によって引き出されている゙力゙を上回る゙力゙を持つはずがないと。
「今なら許してあげるわ。ヘルマリオンに戻ってきなさい。そうすれば、あなたも私同様に゙聖痕゙を享受しで力゙を得れるわ」

94ダイレン:2008/07/23(水) 01:15:57
「何をふざけて………………」
「あなたは何もわかってないようね」
゙聖痕゙をまじまじとサキに見せる。゙神゙の瞳を持ってして得たその圧力はただいるだけでも気圧されてしまう。
「あなたはヘルマリオンを誤解しているわ」
「??」
「ソルジャードールに施されるの生物の遺伝子を組み込んでの肉体強化と、洗脳による組織への服従」
それが何だというのだろう?。今さら言われなくても十二分に承知している。
「便宜上洗脳と言ってるけど、正確には違うわ。人間の理性を無くし、本能のみを引き出すのが目的……」
「え………」
「ソルジャードールは決してただの戦闘人形ではない。本来生物が持つ殺戮本能を引き出しただけの゙人間゙なのよ!!」
「!!?」
理性。それは自律神経の発達が他の生物を遥かに凌いでいる人間が持つもの。
あらゆる欲望を持つことは生物の常だが、理性はその本能を制御出来る。それが欲望を向上心へと変え、人間は地球の覇者となったのである。
理性を取り除いて、本能に支配された肉体は忠実だ。力を思うように振るい、殺戮すら許容する。
「今まであなたが戦ってきたソルジャードールもそう………脳のリミッターを外しただけ。彼女達が望んでいたことなのよ!」
「そ、そんなこと………」
ホーネットマリオンは羽根を広げる。白いドレスを着たような姿はまさに女王である。
「世界は嘘をついている!。虚偽と欺瞞に満ちている!。ヘルマリオンは世界の嘘を暴き、本来あるべき姿を創造する゙神゙なのよ!!」
彼女は高らかに語った。世界は確かに嘘をついてるかもしれない。自由と平等を触媒に民主主義を生み出した。
だが民主主義のもたらした結果は何だ?。官僚は腐敗し、幸福と富裕を尻目に不幸と貧困が存在しながらも見て見ぬフリをしている。

95ダイレン:2008/07/23(水) 01:17:08
だが、それでも自分は人間の可能性を信じている。醜さはあるかもしれないが、美しさもあることをあの子に教えられたから。
「私は人間の英知はそんなものは乗り越えられると信じてる!」
「アハハハハハ!。そんなの茶番ね。だって私が証明してる。私はこんなにも血を求めているのだから」
「!!?」
その言葉を聴いてサキは目を尖らせた。゙あれ゙はサヤじゃない。いつだって人というものを愛していた、憧れの姉ではない。
本当に望んでいるわけではない。そうだ、きっと洗脳によって思いこまされてるだけだと。
「………もう、心から笑うことも…………忘れてしまったのね………」
しかし自分が抑えられない。ヘルマリオンにこそ憎しみを向けなければいけないことも、サヤを救わなければならないことも、今はどうでも良くなってしまった。
仮面に固められたような笑みが苦しめてきた人達を思うと胸が痛む。
(ごめんねユミちゃん………)
2本のビースティンガーを持ち、サキは構えた。その目はユミと出会う前の、゙ディソルバー゙として戦っていた時の目をしていた。
(今だけは、私はディソルバーとして戦う!!)
もう見てられなかった。かつての友を手にかけ、平然としている。綾香達は洗脳と戦おうとして、死んでいったというのに。
なぜ戦おうとしない?完璧なはずの洗脳に立ち向かっていた友人もいた。勝った子供達がいたのだ。
それこそが゙心゙だと言った子がいるのだ。人間が持てる最高の財産だと、教えてくれた………。
「サヤ!!。あなたは………私があああああッッ!!」
床が切り裂けるほどの勢いでサキは飛翔した。がむしゃらに槍を振り回すのではなく、高速の連突きのみを集中して行った。
「はあああああああああ!!!」
羽根とジークフリートの長刀で流しながらサヤは舞うように避けていく。それすら美しいと感じてしまうのは決しておかしい感情ではないのだ。

96ダイレン:2008/07/23(水) 01:18:22
ホーネットマリオンがくるりと手を回すと槍と同時に腕も下がった。その間にジークフリートには数多の゙光の矢゙が出来上がっていた。
「天使たちの葬送曲を聴かせてあげるわ………゙クリス・フューネラル゙」
百にも及ぶであろう光の矢が一斉に放たれる。寸でで避けるが、ホーネットマリオンの操作によってサキを追尾していく。
「こんなの………避けきれるわけが………」
「じゃあ、あなたの負けね」
光の矢に気を取られていて背後をとられたのに気づけなかった。ジークフリートの刃がサキの背中を斬り、左の羽根も一緒に切り落とされてしまった。
「しまった……可翔能力が………」
体育館の屋根はその着弾で吹き飛んだ。煙が晴れてきたころ、ホーネットマリオンは地に足をつけた。
ゆっくりと歩いていく。煙幕を裂き、白い手が何かを掴む。それはサキの頭であった。
体の所々から垂れている血の部分が゙クリス・フューネラル゙の残忍性を表している。刺さっている光の矢は役目を終えたように消えていく。
「もう虫の息か」
一方のサキはとても言葉の一つ一つに応対できる気力は残っていなかった。厄介な事に神経すらも断たせているらしく、手と脚が動かない。
「でもこれであなたは私の下へ戻ってくるわね」
アナザーラーヴァを起動させ、サキの体をそちらへと投げ捨てる。機械触手が彼女へ絡まりつき、まるで寄生虫のように貼りついた。
「アナザーラーヴァ第2形態゙パラサイトアダプター゙。全ての触手を切らない限りは脱出は不可能よ。まあ、今のあなたには無理でしょうけどね」
中心部にある窪みがサキの胸へと判子注射のようにピタリと引っ付く。触手もバイブレーションを開始して、傷だらけのサキの体を浸食し始めた。
触手の1本が彼女の口の中へと入ると、一斉に白色の液体を流し込んだ。ネチョリという感触は体のどの部分も感じていて、全ての触手から白濁液が放たれているようだ。

97ダイレン:2008/07/23(水) 01:19:47
「あなたはミツバチから別の種へと変化させるわ。それぞれ、別の姿のがいいでしょ?」
サキは何とか意識を保ってはいるが、衝撃が体を走っていて今にも頭が白くなりそうだった。
擬似的な性交になるため、サキは女としての快楽を感じてしまうのが悔しい。
(ああ………私は結局何も出来ずに改造されるのね…………)
今まで姉や友のために戦ってきたというのに全てを否定されているようだった。これが運命というならば、悔しいが受け入れるしかないのかもしれない。
そう思って眼を瞑る。逆に考えれば楽かもしれない。人類や生命などの重荷を背負う必要もない………そう、何も考える必要は………。


――バサ………――

「!!?」
暗闇の中でヒラリと光る羽があった。それはとても優しく、温もりを持ち、純白を保っていた。
手を伸ばせば届きそうなのに、遠くに感じてしまう。これが自分とユミの距離なのだろうか?
(ユミちゃん………そう、あなたは自分の道を染まることなく進むのね………)
変わらないからこぞ変わっていける゙。その自分のまま、彼女は道を歩んでいく。例え困難があろうと、希望を常に抱いている。
ならば自分は何だ?。彼女は自分に何をしてくれた?。そう、彼女は自分に自分でいていいと言ってくれた。
自分ば自分のままで゙変われた。でも、独りでは得られなかった変革だ。
「そう………私は独りじゃない………。前の私じゃない……」
既に筋力の無い腕で揺れる触手を掴む。そして、思いっきり力を入れて引きちぎった。
「バ………バカな………」
全ての触手をサキは振り解いた。ホーネットマリオンは信じれなかった。あの体のどこに力が残っているのだろう?
「私ば闇゙………。゙光゙を知ってより濃く、深い゙闇゙を得た………これが悪ならば、悪業を背負って、巨悪を討つ!!」

98ダイレン:2008/07/23(水) 01:21:23
脳内で見えた羽は既に見えない。確かにそこに存在するが、闇に同化して見えなくなっていたのだ。
流れていた血が赤から黒へと変わり、サキを囲っていく。ドロッとしたと思うと、全て1点へと集中していく。
現れたのはホーネットマリオン・クイーンフォームとは対極の彩色をしていた。金と黒で構成された体色は見るものを圧倒しながらも、美しさで惹いてしまうようだ。
「それは………何?」
「゙絆゙の力が私に進化をもたらしたみたい……。ビーマリオン・エンプレスフォーム!」
女帝………それがサキの得た力だった、゙光゙を知り、゙闇゙もただ殺めるための力でないことも。
「ふん………。いくら姿を変えても、所詮は私の猿真似………゙神゙の力を得た私には適わないわ」
「舞うのよ………゙ワルキューレ゙」
サキはググッと両手に力を入れた。強く握ったせいで血が垂れてくる。だが、それこそが彼女の武器。
血がやがて巨大な槍と変化する。巨大なトゲのような黒きランスの柄の部分を連結させ、回転させる。
回転を止めると、その位置から体育館の床がバリバリと砕けていった。
「この゙ワルキューレ゙は私の血から作ったランス。闇を纏い、悪を貫く破砕槍」
「あなたの闇なんて………私の聖なる光で消し飛してあげるわ!!」
光子を゙ジークフリードに集め、99本の矢を作る。それを一斉に空へ放ち、自らは長刀を開いてサキへと向かっていく。
「はあああああ!!」
ぶつかった瞬間に火花が散る。互いに力を込めているが、長刀はカタカタと震えている。
(お………重い………)
ホーネットマリオンは全力でしているのに、サキは余裕さえ見える表情だった。やがてワルキューレを纏ゔ気゙によって長刀が砕けていく。
「く………」
破砕槍とはこういうことか。自らの血を媒体としで気゙で固め、その゙気゙で相手を貫き砕く。上手い具合に出来ている。

99ダイレン:2008/07/23(水) 01:22:52
「でも、ジークフリートの真骨頂は矢にあるわ!」
さっき放たれた矢が降り注いでくる。サキはバックステップをして避け、羽根を振動させて飛翔する。
光の矢は床を貫いたかと思えば、再び地中より現れてサキへ向かっていく。
「しつこいわね………」
ワルキューレを回転させて矢を弾いていくが、砕けたはずの矢は再構築されて四方からサキへと襲いかかる。
「な…………」
ワルキューレに゙気゙を集めて振り撒くように回す。幾つかは相殺したが、流石に99本全てを避けることは出来ずに肉への侵入を許してしまう。
「ぐ…………」
「ハハハハ!!あなたは結局私には勝てないのよ!」
刺さった部分から血が垂れていく。しかし、その血は地面へは着かずに一点へと集まっていく。
「これは……………?」
「言ったはずよ。私の武器は血から造られると…………゙リリス・オウヴァリー゙」
集まった血ば気゙を注がれて肥大化していく。やがて人ほどの大きさになり、゙魔女の卵巣゙という名に相応しいほどに禍々しい゙気゙が生じていた。
「さあ、産まれるのよ゙ビービッド」
産まれるという表現が間違ってると思えるくらいに、子供の頭くらいの大きさの蜂が生々しく出てきた。
それも8匹も。視ていると気持ち悪くなるような場面だが、生まれ出だビービッドはサキと同じ彩色模様で美しく思える。
「これは私の意思で遠隔操作出来る半生体武器よ。出すのは針じゃなくてビームだけどね」
ビービット達は命じられた通りホーネットマリオンへ向かっていく。彼女を囲むと、一斉に尻からビームを撃ちだす。
「ぐ………う…………」
着弾すると思っていたよりもダメージが大きかった。ホーネットマリオンはジークフリートから矢を放ってビット達を狙う。
大きさが大きさなのですぐに当たるかと思えばそうではなく、意外にも速い。サキの支配下にあるとはいえ、それぞれが゙生きでいるため自己の思考でかわしているのだ。

100ダイレン:2008/07/23(水) 01:24:21
何匹かを撃ち落とした。しかし、斃された分のビービットがすぐに゙リリス・オウヴァリー゙から補充されてしまう。
「フフフ………さあ、この地獄をどう切り抜ける?」
「ぐ…………」
台詞だけならどちらが゙悪゙の組織からの刺客かわからない。サキはその間にカンガルーマリオンへと近づいていった。
胸を手でぶにっと握る。すると乳首から金色の蜂蜜が出てくる。それを飲ますと、元の人間の姿へと戻っていった。
「馬鹿な………何をしたの!」
「゙ヒーリングハニー・スイーヅは従来の能力を強化し、ソルジャードールのDNAを消去は出来ないけど暫くの間封じることが出来る………らしいわ」
何かが語りかけてくるようだった。それが創造主と呼ばれる者なのか、由美なのか、自分自身なのかはわからない。
自分の持つ能力を自分は理解している。そしてその゙力゙をどう使うかも、自らが考える戦いも。
「サヤ…………あなたもこれで………」
゙ヒーリングハニー・スイーヅをネチョリとホーネットマリオンの口に入れようとする。だが、彼女は手を弾いてジークフリートをサキの喉元へ突き立てる。
「ふざけるな!私は………私はヘルマリオンのホーネットマリオン!!殺すなら早く殺しなさい!!」

――゙早く殺しなさいよ!!゙――゙

同じだ。由美と戦った時の自分と同じ…………。昔の自分ならばその通りにしてたかもしれないが、今は違う。
サキばヒーリングハニー・スイーヅを再び手に垂らし、ホーネットマリオンの口の中へ無理矢理押し込む。
「ん………あ………ううん………」
金色の蜜がホーネットマリオンへと注ぎ込まれていく。どんどん体は熱くなり、サキが手を離すと喉へ手をかける。
毒に苦しんでるのではなく、毒が苦しんでるのだ。ホーネットマリオンは涙を流し、汗も大量に出てきている。


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