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シンが核鉄を拾った・避難所

927/武装運命 ◆ivYg6fbdiU:2009/03/18(水) 19:18:34 ID:pYyNBAd.0
 なれば。
 今度は半分同じ血を継ぎ、そしてほとんど同じ顔となったあの女を当たらせてみよう。
 思いついてしまったガルシアは、早速あの女ことミーアを勾留牢から出し、他のもうちょっと忠実な部下と共にカグヤ島へ向かわせる。
 この時に少しばかり目を離したのが、最大の誤算だった。
 彼女らが出発してから1時間強、惰眠を貪っていたガルシアの所に恐るべき報告――例の凶悪ホムンクルス三体組が勝手に襲撃部隊へ加わっていたとの事――が飛び込んでくる。
 最後に部隊のメンバー確認を行った信奉者を腹癒せに喰らいつつ、ガルシアは禿げ上がった頭を抱えた。
 予断だが、この信奉者はチェックを怠ったわけではなく、ただホムンクルス3体に凄まれたせいで抗えなかったのだ。信奉者の命は実に安い。
 満ち満ちていた不安は、案の定的中する。
 またも大暴れしやがったホムンクルス3体組!
 結局捕まらなかったラクス・クライン!
 おまけに一緒して逃げ出した整形済み偽ラクス!
 次々舞い込むトラブル(その大半は自身の失態が原因なわけだが)に、ガルシアは頭から突っ伏した。
 今まで世界の裏にてコソコソと生き長らえていた、弱小と認識して差し支えない組織こと『堕月之女神』。それが、この短期間で禁錮施設三ヶ所を破壊する暴挙に出たのだ。
 最早向こうもいい加減此方を見縊りはしなかろうし、安穏に考えてはいられない。
 そんな事を思っていた矢先に、例の3体組の2人――クロト・ブエルとシャニ・アンドラスが独断専行したと、残りの一人オルガ・サブナックから報告されたのだ。
 クロト・ブエルは折角偽ラクスを発見した癖に、何故か錬金の戦士へ突っ掛かり、敗北。
 シャニ・アンドラスは近隣学園の学生寮を深夜に襲撃するも、錬金の戦士に発見され、敗北。
 双方とも撃滅され、挙句虎の子の核鉄まで奪還されてしまった。
 回収に向かって失敗したバルサムに思わず小言を一頻り投げてしまうのも無理ない話であろう。
 叱責しなかった理由は、まぁ、彼が割と長い事自分に忠実に付いて来てくれているから少しばかり甘い目が出たわけで。
 返す返すもラクス・クラインを取り逃がしたのは失敗だった、後悔の坩堝に嵌るガルシア。
 と。
 ――ヴィィ、ム
 来室を知らせるブザーが卓上で喚いた。
 相手の顔を確認したところ、歪んでいたガルシアの口元に少しばかり笑いが戻る。
「入りたまえ」
 なるたけ厳粛な雰囲気を作ってセンサーに呼び掛け、ドアに開くよう指示を出した。
 ふしゅ、エアロックから空気が抜けて、向こう側に立つ者の姿を直に晒す。
 軟弱そうな気配、癖のない茶髪、中性的な顔立ち、線の細い身体。
 つい先程こちらへ顔を出すように言っておいた者、見た目だけならおおよそ頼りない青年であった。
「君か。先日はご苦労だったね、お陰で一時ながらラクス・クラインの足取りがつかめたよ」
「恐縮です」
 ガルシアの形ばかりの世辞に、青年は陰を帯びた微笑で応じ一礼する。
 彼こそが、端末の残骸から情報を引き出しラクス・クラインの所在地特定に貢献した信奉者であった。
 情報は直接的な武器以上に役立つ事が多々あるのをガルシアも承知している、そのためにこの青年は信奉者でありながらかなり重宝されているのだ。
「しかし彼女はまたも我々の手からすり抜けた」
「…………由々しい事態ですね。では捜索を僕に?」
「あぁそれもある。だが、君にはもう一つ別の仕事も頼みたい」
「別の仕事、ですか」
 怪訝そうな顔をする青年に、ガルシアはにやりと笑った。
「このオーブに戦団が戦士を遣したのは、あの混ざり物についてを調べ上げた君なら知らない筈がないな。で、その戦士が誰であるかを特定して貰いたいわけだよ」
「成る程、わかりました。戦団の方に直接ハックを?」
「あぁ、直接はいかんよ直接は、もっとマイルドに行きたまえ。ただでさえ監視の目は厳しい、電脳上も同じだろう」
 ややオーバーに首を振るガルシアに、青年は心の中で溜息を吐いた。
 電脳上の事に関しては貴方より余程自分のほうが精通している、そんな釈迦に説法する真似などせずともヘマなんかしやしない。


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