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シンが核鉄を拾った・避難所

627/武装運命 ◆ivYg6fbdiU:2009/03/18(水) 19:13:44 ID:pYyNBAd.0
 私も昔こうして貰った事がありますの、そう言ってラクスは微笑む。
 びきり、と、封じ込めていた何かに罅が入った。
「…………放っといてって言ったわ」
「ごめんなさい、お節介な性分なのです」
「そんなだから嫌いなのよアンタの事」
「あらあら、困りましたわ」
 全然困っていない風にころころと笑うラクス。
 それを憎みきれないのがミーアには悔しく、そしてほんの少しだけ、嬉しかった。
 ――――嬉しかった、だと?
 気付いた瞬間、持て余していた感情が罅割れから漏れ出し一気に肥大化していく。
 嗚呼、触れ合う事はこれほどに嬉しいのか。
 記憶の奥底に封じ込めていた温もりが息巻いて溢れ出てくるのを、ミーアは堰き止められなかった。
「ホント、嫌いよ…………大っ嫌いなんだから」
「私は好きになりたいのですけれど」
「あんだけの事したのよ? 家壊したのも、メイド全員喰ったのも、アンタの平穏ブチ破ったのも、全部アタシが原因よ?」
「……過去は変えようがありません。けれど、未来を選ぶことは出来ます。憎しみ合うくらいなら、私は一方的でも貴女を好きになる未来を選びますわ」
「あぁ、そう…………やっぱ壊れてるわ、アンタ」
 開けていた薄目を閉ざしてそっぽ向き、ミーアはなにかを誤魔化す風に毒づく。
 手から伝わる温もりが毒素のように思考を侵していくのを、最早、彼女は止めようと思わない。
「ねぇ。アタシの事好きになる云々って言うんならさ、そのバカ丁寧な呼び方とか止めて頂戴よ。呼び捨てで良いわ呼び捨て」
「呼び捨て、ですか? むぅ、解りましたわ…………み、ミーア」
「なァに緊張してんのよ」
 おずおずと己の名を呼び捨てにしてみた姉に、ミーアは意地悪げな微笑を作る。
 本当に久しぶりに、少し、穏やかな気分だった。



 『堕月之女神』本拠地。
 無機質で無愛想な鉄色の廊下をのそのそ歩きながら、バルサム・アーレンドは如何にもかったるそうな気配で舌打ちした。
 報告が遅れていた一昨日の失態について先程ガルシアに呼び出され、小言を一頻り貰ったのだ。
 それはいい。まだいい。
 小言は言われど大して叱責されなかった事、それが逆に焦りを生んでいる。
 他者から色々と物を言われる場合は、往々にして理由が二つに分類されるという。ただ単に言う側がクレーマーであるか、あるいは言う側が言われる側へ何らかの成果を期待しているか、だ。
 で、大した事を言われなくなってくる時もまた、理由が二つに分類されるらしい。言わずともやってくれる筈だという信頼/希望的観測か、あるいは貴様にゃもう期待せぬという諦観か、だ。
 バルサムは今回ガルシアから貰った小言を、後者の意味で取った。
 何せ、あの粗探し大好きなガルシアが、折角のチャンスをみすみす棒に振るったという絶大な汚点があるのに。
「まぁいい、次は励め」
 とだけ言って碌に責めもせず報告を締め括らせてしまったのだ。
 実にヤバげな気配。
「堪んねーな、あぁくそっ」
 独りごち嘆息する。
 変な色気を出さずさっさとあの戦士を潰してしまっとけば良かったのだ、と、既に何度目かも分からぬ懊悩を反芻する。
 なんともはや、口惜しい。
 髪をごりりと掻きながら休憩室の扉を開け、そこでバルサムは面食らった。
 先客がいたのだ。


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