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シンが核鉄を拾った・避難所

427/武装運命 ◆ivYg6fbdiU:2009/03/18(水) 19:09:13 ID:pYyNBAd.0
「…………ぁ、ぇ」
「浮ついてるな。教えを乞うた側のする顔じゃないぞ」
 くくっと喉奥で笑うカガリ。
 起き上がるに起き上がれぬまま、シンは千々に乱れた思考を纏めようと奮起する。
 決して剣閃を見切れなかったわけではない。
 だのに何故、自分は今こうして地に這い蹲り、彼女は悠々と構えていられる?
「ぶちょーさん、凄いね」
「…………やけに冷静だなキミは」
 言うほど緊迫感がないステラの台詞に、君も違う意味で凄いぞとカガリは思った。言わないけれど。
 して、そんなやり取りもシンの耳に入ってはいなかった。
 この醜態、考えるまでもない。カガリの言った通り、全てはシンの心がこの場所に無かったせいだ。
 戯れにしか思えない装備であったり、それを熱心に説明するカガリの姿であったり、引いてはそんな事がしたいんじゃないというシン自身の鬱屈であったり。
 それらが心中そこかしこに引っ付いて、折角の機会を色褪せたもののように認識させていたのだろう。
 馬鹿な話だ、シンは自嘲した。
 自分から指南を頼んでおきながら、何という醜態。
 頭を振って立ち上がり、両足で確り砂利を踏む。
「もう良いか?」
「はい、大丈夫です。…………すいません、腑抜けてました」
「やる気が出たんなら、それに越した事はない」
 響かない鐘を打っても楽しくないからな、そう言って頷くカガリ。
 こちらに向けられた切っ先から、再び闘気がじわりと滲み出てきた。
 背筋を撫でる怖気、けれど。
「がんばってね、シン!」
「、頑張るよ…………往きます!」
 シンは改めて一歩を踏み出す。
 守るために。
 負けぬために。
 強くなるために。



 マルキオの孤児院地下。
 ミーアは、今、人喰いの衝動を必死に堪えていた。
 ジンム学園の屋上にて頭の軽そうなホムンクルスから襲撃を受けたのが一昨日辺り。実行犯を殺し情報隠滅した共犯者へ追い縋ろうとしたものの、余りにも腹が減っていたせいで追撃しきれなかった。
 物理的に物を食った食わないではない、ホムンクルスという種が抱えた業たる人喰いの空腹。
 何を食っても腹が満たされない、それは正しく餓鬼道の如し。
 これを、この耐え難い苦しみを、あの女は十年余りに渡って耐えてきたのか。
「っ…………ぐ、ふぅっ……!」
 腹を抱えて屈み込み、何をも見ぬよう固く固く目を閉じる。
 普段は小煩くて小憎たらしい子供達でさえ、今のミーアには極上の肉にしか見えない。
 それが、辛かった。
 あんなに焦がれたホムンクルスの体、いざ手に入れてみれば前以上の厄介に苛まされるではないか。
 否、第一この肉体とて想定していたモノとは違うのだ。もっと確りした人間型ホムンクルスへ成る積もりだったのに、少し取り違えた結果が、薔薇とヒトとの中途半端に雑じった植物人間。
 こっそりと手に取った核鉄さえ、武装錬金の声になんら反応を示さなかった。
 嗚呼、何という無様か!
 波のように荒々しく振幅していた衝動のボルテージが、じりじりと波引いていく。
 過呼吸も徐々に収まり、空腹こそ消えないものの人並み程度の平常を取り戻すことは出来た。
 畜生。
 あの女に出来て私に出来ない筈がない、今はその一心で衝動を押し殺せている。
 だが、それも何時まで持つか。
「はぁっ……はぁっ…………ぁ、はっ、」
 口の端を汚した涎を乱雑に拭い取り、ミーアは荒い息をそのままにのろのろ立ち上がった。
 ぐら、長い間屈み過ぎたせいか一瞬目が眩む。
 ぼんやりと網膜を撫でる淡い照明、薄暗い周囲に映り込む僅か濃い影。
「…………ミーアさん?」


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