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シンが核鉄を拾った・避難所

327/武装運命 ◆ivYg6fbdiU:2009/03/18(水) 19:07:30 ID:pYyNBAd.0
「まー実際やった方が早いよな! て事で構えろー」
 溜息を吐く間さえ無い。
 笑いながら正眼で構えたカガリに、納得しきれぬながらシンも続いて竹刀を両手で握った。
 実戦なら、この手に握っているのは我が心臓――<<Uplight-Impulse>>の名を冠した機械剣。
 それを握っているのだと思う。
 右拳を上に左拳を下に、両手の間隔はほとんど開けず握り柄を掴み、左半身を前方へ向ける。
 刀身は体に隠れ、切っ先の位置から狙いを読む事は普通なら不可能。
 深呼吸して気持ちを落ち着かせ、シンはやっと視線をカガリへ合わせた。

 ――――獅子が いる

 自失したのは果たしてどれ位だっただろうか。
「シン!!」
 焦り雑じったステラの声。
 はっと気付いた時、既にカガリは剣を振り下ろしていて。
 痛烈な衝撃が頭蓋を叩いた。
「ははっ、どうした? 腑抜けてる暇は無いぞ」
 獣のような獰猛極まる笑みはそのままに、正眼へ戻した竹刀を再び動かすカガリ。
 歯噛みしながらシンも竹刀を横へ薙ぐ。
 双弧を描く剣閃、しかし。
 ――スパァン!
 面を抉り致命足らしめたのはカガリの竹刀だけ、シンの竹刀は彼女が盾代わりとした篭手に阻まれている。
 するりと後ろへ退いて、カガリは再三正眼に構えた。
 剣先がひたりと中空で止まり、凄まじく息詰まる重圧を威掛けてくる。
 活路など何処にも見出せない。
 シンは、侮りと投げ遣りな気持ちに満ちていた数分前の自分をブン殴りたい気持ちで一杯だった。
「っかぁぁあ!」
 なけなしの闘志を振り絞り、吶喊。
 大きく後ろへ流れていた腕を引き寄せ、胴目掛け突く姿勢に入る。
 斬撃の描く軌跡が弧なら、刺突の描く軌跡は線。
 同じ地点を目指すとして単純に比較すれば、弧と線、どちらがより早く到達するかは自明の理であろう。
 線に並べるのは線だけである。
 ――――線と弧、描く速度が同じという前提の下ならば、だが。
「ふっ」
 短い呼気がやけに大きく聞こえた。
 気合一声、伸び来た竹刀を切っ先で絡め取り、横へ往なす。
 そも、相手の構えている前に無策で突っ込んだのが間違いなのだ。
 カガリの右側へ流れていくシンのベクトル。
 元の構えへ戻った直後、カガリはガラ空きの側頭部に容赦無く撫で斬り上げるような一撃を見舞う。
 姿勢を崩したところに後押しされる形で追撃を食らい、シンは無様に砂利へ転ばされた。
 全身余す所無くじゃりじゃりと擦られ、防具越しとはいえかなり響く。
 3度。
 この短い間だけで、シンが3度頭を割られた。
 戦士の顔となって動向を見守っていたステラは、カガリの戦い方に心底感嘆する。
 一対一の近接戦闘では、恐らく自分も勝てまい。戦士長ハイネならなんとかなるだろうが、純粋な剣士としての腕はカガリに軍配が上がるとみた。
 そう易々と勝てる相手でない、ステラの背に戦慄が落ちた。


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