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シンが核鉄を拾った・避難所

1827/武装運命 ◆ivYg6fbdiU:2009/12/24(木) 23:49:13 ID:.fhkTlXE0
 ぽつり、シンの口から漏れた言葉。
 それに彼女はもう一つ頷いた。
「私はな、アスカ。知らなきゃいけないんだ、事実と真実を」
 向けられた顔、目がゆっくりと細まっていく。
 一足一刀の間合い。
 その左手に何かが握られているのを、シンは今気付いた。
 硬質な、何か。
「ホムンクルス」
「!!」
「アスカ。お前は、それか?」
 一瞬、シンは何を問われたのか理解できなかった。
 ホムンクルス。
 人に依り憑き人を侵し、人に仇為す人の敵。
 自分がそれであるかを問われたのだと理解した時、カガリは既に臨戦態勢とでも言うべき姿勢を取っていた。
 ホムンクルスなど、普通の人間がぽんと口に出せる単語ではない。
 今このタイミングでそれを言えたカガリは、必ず錬金術と何らかの関わりを持っている。
 だが、敵か味方かがわからない。
 以前ステラが学校に信奉者が入り込んでいるという情報を伝えてくれたが、まさか。
 まさか、彼女がそうなのか。
 左胸に手を当て、シンは呻くように訊ね返す。
「それを聞いて、部長、アンタはどうするんだ?」
 言ってから、しまったと思った。
 カガリの目がずんと重苦しく据わったのだ。
 万一の場合はフォースで即離脱を、いや聞く前に速攻すべきか、けれどこの人は。
 動揺し考えの纏まらないシンに、カガリは確固たる意思を込めた声で言う。
「返答如何によっては――――」
 その先を言うことなく、口を閉ざすカガリ。
 彼女は武器になりそうな物など何一つ持っていない。
 なのに。
 シンは、今の一言で彼女が刀の鯉口を切ったかの如く感じたのだ。
 もし彼女がホムンクルスの側であったら、事実を言った瞬間首が斬り飛ばされる。
 そう思えるほど、カガリからの威圧感は凄まじかった。
 フォースを展開して一度離れるべきか、そんな考えさえ頭を過ぎったところだった。
 半身だったカガリが、全身をこちらへ向けたのは。。
 健康的な肌色を夜陰に晒す左肩。
 そこから繋がった胴に、ホムンクルスないし信奉者の証明たる章印は――――無い。
 一瞬の後、シンも羽織っていた上着を剥がしシャツの襟首を下に引き、左胸を見せ付ける。
 生涯2度も穿たれた、それでもまっさらな左胸を。
「…………違います。俺は、正真正銘、人間です!」
 じっと、目を見る。
 視線が交錯すること数秒。
「そう、か」
 呟きと同時に、カガリからの威圧感がふっと消失した。
 思わず息を止めてしまっていたシンは、ようやくといった様子で勢い良く肺に外気を取り込み始める。
 それを見詰めるカガリに、異なる二つの感情が見受けられた。
 安堵と、悲しみのような気配。
「良かった…………これでお前を、斬らなくて済む」
「きッ!?」
「冗談じゃあないぞ、本気だった」
 愕然とした表情のシンに笑いかけるカガリ。
 その左手には、相変わらず何物かがしっかと握られている。


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