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きな
36
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2019/07/15(月) 08:36:26
それは、 束の間であった。
幼い体躯が弧を描き激しい衝突音が、 轟きコンクリート片が毀れ落ちる。それと同時に鈍い音共に、幼い体躯が白目を剥きながら地に伏せる。
『麻原殿…!
……成程、噂に違わぬその実力お見逸れ致した。―――だが、度し難い。 』
『故に、貴殿の敗因で在ると。』
『さざめけ…〝森蟲〟 』
両腕が。体躯が。面貌が―――〝黒〟に覆われていく。それは肥大化していき軈ては、地に侵食していく。最初の標的になったのは、動く事の無い陰気な少女を包み込み。更に、被害は侵食し拡大し続けている。
そして、遂にその“黒き魔の侵食”は志垣迄も標的に見据えて、進撃し始め―――る矢先に、雰囲気に似合わぬ電子音が鳴り響けば、その侵食は潮が引く様に去っていく。
『…………故に了承した―――あい、似非関西弁殿。
第四師団長殿 からの託(ことず)を預かり申した。』
『これより四半刻後、上矢埠頭の停泊している豪華客船に貴殿を招待致すそうだ。―――尚、遅れる度に一人づつ殺めるそうだ。………故に度し難い。』
素早く要件を言えば、旧世代の端末機の画面を志垣に見せる。そこに映し出されるのは老若男女問わず、恐怖に染った三十人程の集まり。そしてその景観を損なう刀身を向けた紺色の髪をした青年〝鏑木宗介〟の姿が。
その表情は画面越しには伺う事も出来ない程に無表情で、それでいて何か覚悟をキメた表情である。―――それと端に写る血痕の跡。
森蟲は、 興味無さ気に端末機を懐に仕舞いながら、右手を降ろす。一寸の間も無く志垣の目の前を遮るブラインドの如く漆黒の〝黒〟が幕が降ろす
『某、任を果たした故に御役はこれにて御免。……では、機会が在ればまた。』
その声は、喧しい“羽音”に途切れ消え、気付けば“黒”は消え失せて二人の姿は跡形もなく消えた。
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