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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

4144うぉんさんの読み聞かせの会:2017/12/24(日) 10:23:48 ID:LNssCYN6
アルベールとその母メルセデスはサン・ジェルマン・デュプレのささやかな住まいに暮らしていたが、その2階の借り手は素性のわからぬ人物であった

その人物とは、実はリュシャン・ドブレなのであった
ダングラール夫人との密会場所である
「リュシャン、ダングラールが昨夜出て行ってしまったの」
「いったいどこへ!」
「知らないわ
あの人、書置きを残していったの」

貞淑なる妻へ
おまえにはもう夫はいない
娘がいなくなったように、夫もいなくなる
お前には訳を話しておく義務があると考える
今朝急に500万の返済を迫られ、そのすぐあとで同額の返済を迫られた
我慢出来ぬほど不快な日になるはずの明日を避け、わしは今日家を出る
わしの財産の半分がどこへ消えてしまったのやら、わしにはてんでわからぬが、
お前ならば説明できるのだろう
今わしはお前に快く自由を返す
わしは、金持ちだが身持ちの悪いお前を妻とした
わしの財産は15年以上増え続けてきた
なのにいまだに不明な謎の破局が襲いかかりわしを踏み潰した
これは断じてわしのせいではない
お前は自分の財産をふやすことだけにつとめた
そしてお前はそれに成功した
わしはだいたいそう確信している
だからわしは、お前を妻としたときそのままに、
金持ちだが身持ちの悪い女のまま残していく
心からなる夫 ダングラール男爵

「その手紙を読んで、どうお思いになる?」
「ダングラールさんは僕たちのことに感づいたまま出ていかれたと思いますね」
「おっしゃることはそれだけ?」
「仰る意味がわかりませんが」
「行ってしまったのよ!もう帰ってきやしないわ!
あの人は自分の利害から割り出した決心は絶対に変えません
私はもう永久に自由の身なんですわ!」
ドブレは返事をしない
「そう言われても・・・どうなさるおつもりなんですか」
「あなたから仰っていただきたいの」胸をときめかせながら夫人は答えた
冷ややかにドブレは答えた
「そうですね、旅にでも出たらいかがですか」

ご主人がおっしゃるように、あなたはお金もあるし、まったく自由な身の上です
僕の考えではウジェニー嬢の婚約騒ぎで2つも事件が重なったこともあるし、
しばらくパリを留守になさるべきでしょうね
世間にはあなたが夫に捨てられて貧乏であると思わせたほうが良いでしょうね
破産した男の妻が金持ちだというのでは世間が承知しませんから
2週間ばかりパリにいて、夫に捨てられたと会う人毎におっしゃれば、あとは他人が吹聴してくれますよ
そのあとでお屋敷を出るのです 宝石類も資産も放棄なさってね
なにしろあなたの資産状況を知っているのは僕だけですからね
今ここで誠実な共同事業者として会計報告をいたしましょう

ドブレは過去半年の投機事業の収支決算を夫人の目の前で行った
「僕はあなたのお金を用心のために動産にしておいたんです
まるであなたに今にも金を返せと言われるのを見越していたみたいにね
半分は紙幣、半分は持参人払いの手形ですよ
ああ、僕の銀行はダングラールさんのところではないからご安心を」

「ふん、好きにするがいいさ」ドブレは夫人が行ってしまうとそう言った


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