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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

4037うぉんさんの読み聞かせの会:2017/12/23(土) 17:02:03 ID:LNssCYN6
モルセール夫人は蒼い顔をして戸口に立ち尽くしていた
しばらく前から夫と客人の会話を聞いていたのだった
モンテ・クリストが振り向くと、戸口に添えていた夫人の手がだらりと下がった

ふたりは恭しく礼を交わした
息子が生きながらえておりますのはあなた様のおかげでございます
あなた様に神様のおめぐみがあるよう祈っておりました
今日は心の底からのお礼を申し上げる機会を、こうしてくださったことを感謝いたします

奥さん
過分なお言葉をいただきました
ひとりの人間を救う、これは善行というほどのことではありません
人としてごく普通の行いです

モルセール伯爵は議会出席のために出かけた
夫人はモンテ・クリストをもてなそうとするが、モンテ・クリストはまだパリに着いたばかりなので、今回は辞去するという
モンテ・クリストが馬車に乗りこむ姿を、夫人はカーテンのかげから見送った

アルベールが母のもとに戻ると、夫人は気付け薬を手に、椅子に座り込んでいた
「お母さん、顔が蒼いですよ。ご気分が悪いのですか」
「モンテ・クリストというお名前は、いったい何なの。苗字、地名、それとも称号?」
「たぶん、称号だと思いますよ。トスカーナ領の島をひとつ買ったのですよ。でもあの人は貴族の家柄だなんてひとことも言ってませんよ。自分を成り上がり貴族と呼んでいます」
「あの方の物腰態度、見事だったわ」
「非の打ちどころがありませんよ。全ヨーロッパのどんな貴族をも凌駕しています」
「アルベール、伯爵さまは外見どおりの方だと思う?生まれをきいているのではなく人柄を聞いているの」
「あの人についてはずいぶんと変わったことを見たもので、僕に言わせるなら・・・
バイロンの作品の主人公みたいな人ですね
不幸が生涯消えることのない刻印を押した人。古い家柄の残党の一人で父親の財産を奪われはしたが、その才能で財を築き、そのおかげで社会の掟を見下しているような人物ですよ。
モンテ・クリストは島の名前で、密輸業者や海賊の巣窟になってます
彼らが礼金を払っているかもしれませんね」
「ありそうなことね」
「でも、なんだっていいじゃありませんか。モンテ・クリスト伯爵は素晴らしい人です。パリ中のサロンで大成功しますよ」

「伯爵さまはおいくつぐらいかしら」
メルセデスは明らかにこの質問を重大な事と考えているようだった

「35,6です」
「そんなにお若いの?まさか」
「でも、そうなんですよ。いろんなお話の中で計算してみるときっちりと合う
あの年齢が無いようにみえる不思議な人はたしかに35歳です」
「あの方はあなたに友情を抱いてくださったのね・・・」
「僕は好きです。フランツ・デビネが何と言おうとね
彼はあの人のことを僕にあの世からよみがえったような人だと思わせようとしたんです」
伯爵夫人は恐怖に襲われたかのようだった
「アルベール、新しい人とのお付き合いには気を付けなさい」
「伯爵のどこに気を付けろというのです?」
「そうね。あなたの命の恩人だというのに、不安に思うのはばかげているわね
ところでお父様はあの方を愛想よくお迎えしたの?」
「それはもう申し分なく。伯爵がまるで30年来の知己のように実に効果的にうまいお世辞を2,3回言ったらすっかり上機嫌になりましたよ」
伯爵夫人は答えなかった
夫人は深い夢想のなかへ沈んでいくようだった


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