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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

4028うぉんさんの読み聞かせの会:2017/12/23(土) 16:50:22 ID:LNssCYN6
そのころモレル夫人は息子にいっさいを話していた
マクシミリヤンはしばし茫然としていた
そして階段を駆け上がっていった

「ああ、こうなるのではと恐れておった」
突然の息子の帰還にモレル氏はうめく

お父さん!なぜ銃をお持ちなんです!?

モレル氏はすべてを息子に説明する
もうすでに万策尽きた
30分後には私の名に傷がつく
お前が母さんと妹を養うのだ それはお前の義務である
お前は昂然と顔を上げ、こう言って生きよ
私は生涯で初めて約束を履行できなくなったが故に自らの命を絶った男の息子です、とな
ああそうだ 大事なことがある
トムスン・アンド・フレンチ商会だけが私に同情的な態度を示してくれた
この商会にまず返済をして欲しい
この人はお前にとってもっとも大切な人であらねばならぬ

モレルは椅子にすわった
まだ彼には7分残されている
銃を手に取った
時計はもうすぐ11時を・・・

お父様!助かったのよ!
お父様は救われたのよ!
ジュリーが赤い絹のレースの財布を手に父の腕の中に飛び込んできた
その財布がかつて自分のものであったことを思い出す
中には28万7500フランの支払い済み手形が入っていた
そしてハシバミの実ほどの大きさのダイヤも・・・
「ジュリーの嫁入り資金」と書かれた紙とともに

モレルは額の汗をぬぐった
時計は11時を打った

ジュリー、説明してくれないか これはお前の財布ではなかろう?

メラン小路の家の中、15番地の6階の部屋の暖炉の隅
ジュリーは手紙を見せる

おまえ、ひとりでここへ行ったというのかい?

エマニュエルがついて来てくれたの
でもおかしいのよ、あのひと、どこかへ行ってしまって・・・

モレルさん、モレルさん!
階段からエマニュエルの声がした
ファラオン号です!ファラオン号が帰ってきた!

なにを言っているのだ、お前は気でも狂ったのか?

今度はマクシミリヤンが部屋にはいってきた
お父さん、なんだってファラオン号が沈んだなんて

舳に白い文字で『ファラオン号 マルセイユ、モレル父子商会』と書かれた
前のファラオン号と同じように紅と藍を積んだ一隻の船が、錨を投げ、帆を絞っていた
甲板の上にはゴマール船長がいた
ペヌロンがモレルに合図を送っていた

顔半分を黒い髭で覆われた男がひとり、遠くからモレルの姿を見守っていた
モレルは見知らぬ恩人の姿を天に求めるかのように、ぼんやりとした視線を空に向けていた

「ヤコポ、ヤコポ、ヤコポ」
男が呼ぶとボートが近づいてきた
船乗りのように身軽に飛び乗ると男はもう一度モレルの姿を見た

高貴な心に幸いあれ
あなたが成し、これからも成されるであろう善行のすべてに祝福あらんことを
そして私の感謝のしるしも、あなたの善行と同じく闇に埋もれたままでありますように
さて、今度は、親切・同情・感謝よ、さらばだ
心を彩るいっさいのそうした感情よさらば
俺は、善人たちに報いるために神の身代わりとなった・・・
復讐の神よ、悪人どもを罰するため、汝の席をわれに譲れ!


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