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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

4002風見志保:2016/07/27(水) 22:26:15 ID:dNAIfh2A
管理人カザミの日誌⑦
文月○日
 夏の昼下がり、風はそよとも吹かず、じっとりと額に浮かぶ汗・・・と言いたいところだが、管理人室はエアコンが効いて天国である。冷暖房代にウルサイことを言わないオーナーは正しい。快適な職場環境は能力発揮に必須。さあ私も頑張って・・・ヒマをつぶさなくては。イザベルビルはいま、ひっそりとしている。なぜならば、

ポールさん・・・英国へ(本人は、帰国じゃなくて旅行だよ(^^)/ と言っていた)
ナツメさん・・・フランスへ(お買いもの、あるいはインスピレイションを求めて)
アマデさん・・・オーストリアへ(ご主人とオペラ堪能しまくり)
マーク・アツタさん・・・北アルプス連峰のどこか
オトナシさん・・・北海道へ里帰り

いまイザベルビルの住人はわたしも含めて3人と1匹だ。そのうちの一人、トコナメさんがやってきた。左手にカラスマを抱き、右手にブラシを持って。
「こんにちは、カザミさん。またお願いしていいかな?カザミさんにブラッシングしてもらったあとはツヤッツヤで男ぶりが数段あがるんだよ、カラスマ。例のやり方、やってみようとしたんだけどまったく受け付けてくれないんだよ。なんでカザミさんには無抵抗なんだろ?」
「うふふ、どうしてでしょうねえ。カラスマ、こっちおいで。今から農作業ですか」
「うん、行ってきます」
「熱中症に気を付けてくださいよ。あとで様子見に行きますからね」
「はいはい、ありがとう。じゃあ、よろしく」

 トコナメさんが熱中症にならぬよう、アナタときどきチェックしたんさい(*`Д´)ノ

オーナーの厳命である。トコナメ野菜をたっぷり供給してもらうために、わがオーナーは万全の態勢だ。

 四万十産川海苔の存在をトコナメさんは知らない。
「いい?カラスマ?この海苔、食べたいよね?おとなしくするんだよ。ブラッシングが終わってからあげるからね」
わかってるって、だから早くして、と言わんばかりにカラスマはごろんとお腹を出した。
「背中からだよ、カラスマ」
あぁそうか、というふうにカラスマは「伏せ」の態勢をとった。わたしのブラッシング方法は、はっきり言おう、「逆毛ぶらっしんぐ」だ。普通の猫は嫌がって拒絶するのだろう、きっと。猫飼い経験の無い私にはわからないけど。でもカラスマは普通の猫じゃない。話のわかる猫だ。
逆毛にブラッシングするほうが確実に抜け毛をすきとることができるはず。ある日、猫素人の私は考えた。当たり前だが初回は強烈に嫌がられた。すっかりご機嫌斜めになったカラスマへのお詫びに四万十産川海苔を与えたのが彼との契約の始まり。それが今や、結構、ブラッシング中は気持ちよさそうにしている。実は快感なのではないか?シゲキがあって・・・。
「たくさん抜けるもんだねえ。ほんと暑そう」
トコナメさん持参のものとは別に小型のブラシを数種類、私は常備している。しっぽ用、手足用、頭のてっぺん用、である。
「ほうら、カラスマ、男前のできあがりだよ。最後に赤の首輪をつけて、と」
四万十産川海苔をぱりぱりと食べるカラスマを見ながら、そろそろトコナメさんチェックの時間かなと考えていたとき、もうひとりの住人が帰ってきた。

「ヒメさん、お帰りなさい」
正確にはヒメカワさんという名前である。他の住人達から「青年」と呼ばれることもある。それに対し素直に「はい」と返事するいいひとだ。だがよく考え事をしながらぼ〜っと歩いているときがある。わたしは目の前を通り過ぎようとするヒメさんに慌てて呼びかけた。
「アッハイ、ただいま帰りました」
「ファックス、きてますよ」
ヒメカワさんはとある出版社の装丁室勤務なのだが、副業が認められているのか個人で事務所を開いている。家賃もバカにならないと思うのだがどうやって工面しているのか。そこらあたりはナゾである。個人客からの要求に答えてオリジナル装丁本を請け負う事務所主宰である。わたしはオーナーからの注文ファックスをヒメさんに渡しながら言った。
「両耳にイヤホンはあぶないから外では気を付けてくださいよ?」
ハイわかりました、と素直に返事してまたイヤホンをつけるヒメさんであった。

「さて、カラスマ、麦茶もってご主人の様子見に行こうか。夕方にやって来るご新規の入居者はいったいどんな人だろうね」


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