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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ
3988
:
V3
:2015/06/21(日) 19:59:10 ID:8FW5AIyk
☆☆☆☆☆☆閲覧注意☆☆☆☆☆☆
グイン・サーガ二次創作
『星月夜』
《つづき》
(……)
複雑で苦い思いがイシュトヴァーンの胸に湧き、その体の硬直を解いた。
そっと踵を返し、リンダに気がつかれぬよう、足早に自分達に充てがわれた室へと戻る。
何も知らずに眠っているレムスとスニを起こさぬように自分の寝床に潜り込むと、しばらくしてリンダが室へと帰って来た。
「どこへ行ってた?」
「イシュトヴァーン、起きてるの?」
寝たふりをしてやり過ごせばいいのにと、自分でも後悔しながら、それでもイシュトヴァーンは、リンダに話しかけずにはいられなかった。
「厠か?夜中に一人でうろつくなと言っただろう」
答えを知っているのに、何故か咎めるような口調でリンダを詰問した。
「え、ええ。……それと、夜風に少し当たって来たの。星がすごく綺麗だったわ」
嘘が下手なリンダは、ためらいながら、機嫌の悪そうなイシュトヴァーンに言い訳をした。物音を立てなかったつもりだが、自分のせいでイシュトヴァーンを起こしてしまったのかも知れないと、申し訳ない気持ちになる。
「起こしてしまったのなら、ごめんなさい。みんな寝静まっているので、一人でも大丈夫だと思ったのよ」
囁き声で詫びるリンダに対してイシュトヴァーンは急に自己嫌悪に陥り、柔らかな口調で囁き返した。
「いや、お前のせいじゃない。何となく目が覚めただけだ。用が済んだなら、早く寝ろ。寝不足だと、船酔いしやすくなるぞ」
イシュトヴァーンの口調が変わったことにホッとしたリンダは、素直にその言葉に従い、自分の寝床で横になった。
「お休みなさい、イシュトヴァーン。あなたも、寝てね」
「ああ」
ロスの宿屋以降、こうした挨拶は幾度となく交わしているのに、何故か今夜のリンダの言葉は、殊更にイシュトヴァーンの胸に染みた。囁き声が、耳に甘く響いたからかも知れなかった。
白い裸体が、閉じた瞼の奥に浮かぶ。
月明かりに照らされた少女の姿は、幻想的で、まるで、夜空の星が落ちて来て少女の姿に形を変えたかのように、ほの白く光っていた。
至純——。
そんな言葉は、イシュトヴァーンの語彙には無かったが、そうとしか表せない思いがイシュトヴァーンの全身を浸していた。
親もなく、まともな教育など受けた事もなく、それ故、当然のように、まともな宗教との付き合い方もイシュトヴァーンは知らない。
だから、イシュトヴァーンは気がつかなかった。
自分にとってのリンダが、単に愛しい少女というだけでなく、夜空で船乗りを導く星のような存在となりつつあることを。
或いは、迷える人々を導く、聖典のような存在となりつつあることを。
果たしてそれは、イシュトヴァーンにとって大いなる喜びをもたらす福音なのか、それとも、苦しい思いで彼を打ち付ける呪縛となるのか——。
答えは、運命を司る神、ヤーンのみぞ知るところであった——。
【終】
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