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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

3986V3:2015/06/21(日) 19:54:27 ID:8FW5AIyk
☆☆☆☆☆☆閲覧注意☆☆☆☆☆☆
グイン・サーガ二次創作
『星月夜』

《つづき》
なんだよお前、こんなとこにいたのか。何も言わずに居なくなったから驚いたじゃねえか——。
そう、イシュトヴァーンがリンダに声をかけようとした時である。
リンダは船の縁で何やらゴソゴソとうごき、暫くすると、ロープで海に垂らしていた桶を引き上げる様子が見えた。

ドキリ。
先程の、冷たい手で心臓をギュッと鷲掴みにされたような嫌な鼓動とは違う、どうしてかイシュトヴァーンにも判別はつかないが、妙な具合に鼓動を打つ何かに押され、イシュトヴァーンはさっとリンダには見えぬ物陰に身を隠した。
トクトクトクと、小さいけれども、いつもとは違う拍子でイシュトヴァーンの胸は波打つ。

リンダは、桶で引き揚げた海水に布を浸すと、それをギュッと絞り、自分の手足をゴシゴシと擦りはじめた。
イシュトヴァーンに、合点がいった。
(そうか。風呂にも入れないから、汚れを落としたくてこっそり真夜中に抜け出して、身綺麗にしたかったのか)
船には一応、風呂場もあるのだが、ろくに掃除をしていないせいで、イシュトヴァーンですら使うのを諦めたほど不潔な場所となっていたのだ。
厠もご同様だったが、そこはリンダが観念して自分で掃除をするようになって以降、目に見える汚れや臭気は改善されていた。
しかし、風呂場は厠より数倍広かったので、掃除を諦めたようだった。

(だったら、俺に言ってからやればいいのに。そうしたら、見張りに立ってやったのに)
僅かな間に、それだけの思いが去来したが、しかし、次の瞬間には、(リンダが、俺にそれを頼む事すら恥ずかしいと思ったのかな)とも、思う。

何日も風呂に入らず、水浴びさえも出来ないでいる自分の状況を、女になりかけの少女が、気軽に他人に打ち明けて助力を乞うとは思えない。
ましてリンダは、単なる少女ではなく、中原の華と謳われた、数千年の歴史を誇る高雅な国、パロの王女である。
誇り高い彼女が、自分の体の汚れを他人に、しかも男に、口にするのも躊躇ったのであろうことは、容易に想像出来た。
少し前までなら弟のレムスに頼んで見張り番でも務めて貰っただろうが、先日の一件以来、レムスは冷笑的な態度を全面に漂わせているので、頼みにくい雰囲気だったのかもしれない。
スニとはまだ、複雑な言葉のやり取りも出来ていない状態だ。

ぽりぽりと顎をかきながら、リンダがこっそりと真夜中に室を抜け出した理由が分かったような気がして、イシュトヴァーンは、そのまま、じっと身を潜めた。

ふと見上げた空には、無数の星と、夜の女王たるイリスが一際大きく輝いていた。
しかし、その輝きは、昼を照らすルアーとは違い、人間の目を焼き尽くすような苛烈さはない。
いつまで眺めていても、イリスは、その静謐で優しい光を、穏やかに披露するばかりである。

ファサ。
それまでとは違う物音に、イシュトヴァーンは、その物音がした方に目を向けた。
ハッとした。
リンダが、その身に着けていた衣服を脱ぎ落とし、細くて白い裸身を、静かな月光にさらしていたのだ。
(あッ…)
見てはならないと、理性がイシュトヴァーンに警戒を発する。
しかし、そんな理性など瞬く間に蹴散らす程の本能が、その目をリンダの白い裸に吸い寄せた。
《つづく》


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