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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

3958V3:2015/06/08(月) 22:54:23 ID:3z4GG4Kk
「グ——グイン」
「そうなんだ。たまげたことにな」
云ったのはグインのうしろに立っていたイシュトヴァーンだった。
「おれもどうやら、この旦那はまさしくシレノスその人にちがいないと信ずる方に決めはじめたぜ。どうだ、ええ?ヤーンその人にだってこうはできない時の氏神じゃないか、ヤーンの山羊のひづめにかけてさ!」

「あ——あなた、どうして……どうして——」
「さあ、それが、俺にもよくはわからんのだ」
グインは安心させるようにリンダの肩にそっと手をおいた。
「あのとき、俺はあのふしぎな光の船を見たあと海におち——波にのまれて、息もできず、これで本当にさいごだと覚悟した。気がとおくなり——ところが、気を失う寸前に、俺は見たのだ。あの船が、海中を、まるで水上と同様にすべり進んで来たかと思うと、その甲板におちてくる俺をうけとめた。次の瞬間、出入口があき、全身光につつまれているような男か女かもわからぬ姿の人間があらわれ——そして俺はその人間が俺をかかえ上げながらたしかにこういうのを聞いたのだ。
『アウラ・カーの名において』
——俺はききかえそうとした。が、そのときはもう俺の意識は失われかけていた」
「アウラ——カー?」
思わず、反射的にリンダはスニを見——そして、スニが、ビクッと身をちぢめて、アルフェットゥの名を呟くのを見た。その目にはたしかに、恐怖の色がうかんでいた。


「それはそうと、真珠のもう一方のかたわれが見えんようだな」
グインが云った。
「あ——」
気づいて、リンダは愕然とした顔になる。
「レムス——ど、どうしたのかしら」
「やつらにとっつかまったかな」
「そ、そんな……」
「冗談だよ。なかなかどうして、あのガキは、そんなめにあうほど、抜けちゃいないよ、姉貴と違ってさ」
「また……」
「あいた。このじゃじゃ馬、そんなにつよく縛ったら歩けねえよ」
「ほほう」
グインは何かおかしそうにイシュトヴァーンを見た。
「おまえの、レムスへの評価は、ちょっとの間にずいぶん変わって来たらしいな」

「おお、レムス、お前か。ぶじだったか」
緊張をといてふりかえる。
岩かげからあらわれた、レムスの顔は青かった。

「どっちみちここにこうしているわけにはいかないし——あの中で見たものについて説明するよりも、ひと目じっさいに見てもらう方が早いんじゃないかな。それに、もしぼくの考えにまちがいがなければ、ぼくたちは全員、あともういくらもたたぬうちにこの島を出られるはずだ。いや——出ないことには、死ぬほかないと思う。——この島はもうじき噴火するよ」

グイン・サーガ第八巻『クリスタルの陰謀』


梅(*`Д´)ノ♪

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