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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

3957V3:2015/06/08(月) 22:45:58 ID:3z4GG4Kk
「きゃあ——イシュトヴァーン!」
いきなり、リンダの肩は、うしろから、がっきとつかまれ、軽々ともちあげられた。
「見ろ——見ろ!あまっ子をつかまえたぞ」
すさまじいあかがみた悪臭がリンダの胸をつまらせた。リンダは宙にかかえあげられたまま、バタバタと手足をもがき、その手の短剣でうしろをつき刺そうとしたが、たやすく、手刀でうちおとされた。
そののどにぐいと、ギラギラ光る半月刀がつきつけられる。
「どうだ、兄ちゃん、剣をすてな」
「あのばか。——」
イシュトヴァーンは歯がみをした。が、そのたくましい手につかまれ、ウサギのように怯えた目を見開いているリンダを見たとき、ひくい呻き声をあげてぽいと剣を放り出した。
「よーし、やっちまえ」
「ああ!やめて、やめて、やめて!」

海賊どもの円陣がくずれ、そのまん中に倒れているイシュトヴァーンのからだから、返り血でない、新鮮なまっかな血が流れ出すのが見えた、と思ったとき、ふいにリンダの視野はおぼろげにかすんだ。
(ああ——)
リンダは奇妙な、ほとんどうっとりとした夢心地のうちに思った。
(だめ。——わたしは、気をうしなってしまう。……いえ、もう、気を失ってしまったのよ——だって、ほら、わたしは幻をみているもの……何の音もしなくなって、森の中から——おお、グインが、グインのなつかしい姿があらわれて——おお、わたしのグイン……グインはなんて強いのかしら。イシュトヴァーンにひどいことをしている人たちを、つぎつぎに、文字どおりつかみ上げて、叩きつけてゆくわ。ひとり、ふたり、三人——イシュトヴァーン、ああ、どうしたの、死んではイヤよ——動かない。血を流して……イシュトヴァーン、愛してるわ——グイン、グインさえ来てくれれば、なんてきれいなんだろう。緑と森と草のなかで、黄色と黒の毛皮がとてもきれい——おかしいわ。豹をきれいなんて——でもきれいなのだもの。ほらもうみんな片付けてしまった。グインひとりさえいれば何も怖くない、何も恐れることはない、何も、何も……)
暗黒が彼女を訪れた。

グイン・サーガ第八巻『クリスタルの陰謀』

梅(*`Д´)ノ♪

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