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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ
3946
:
V3
:2015/06/08(月) 21:29:00 ID:3z4GG4Kk
リンダはリンダで、レムスがずっと海賊どもの方へ入りびたっているので、つれづれなるままに、上甲板でスニをあいてに、あれこれとおしゃべりをしてすごしていた。彼女はスニに中原の風習を教えたり、ことばを教えたりしていた。もう、スニは、相当にこみいったことまで、いくぶん発音に難のある、リンダでないとわかりにくいような云いかたでではあったが、すらすらとしゃべることができるようになっていたし、リンダの長いつややかな髪をくしけずったり、それを編むこともおぼえていた。
「ねえ、スニ。ずっと前、スタフォロス城で、はじめてスニとわたしが会ったときのこと、覚えている?」
「はじめて——アーイ、姫さまがトルクから助けてくれた。こわい人が出た」
「そう、そのときよ……ね、スニ。あなた、あのとき、わたしがグインの話をして、グインが自分の名前と《アウラ》ということばしか覚えてない、といったら、ひどくこわがったわね。あれは、どうしてだったの?」
スニはびくんとした。
「わたし、そんなことしないよ」
「したわよ。セムのことばで何か云って、とてもおどろいていたわ。——《アウラ》って何だか、知っていたんでしょう、スニ?それを、わたしに教えてちょうだい」
「スニ、知らない。アウラなんて、知らないよ」
「まあ、スニ」
その夜である。
「シッ——音をたてるな」
忍びやかな声が、ともでささやきかわされていた。
「みんな、乗ったか——よし、レムス、そっちを漕げ。はじめは、静かに櫂を水にいれろよ——綱を切るから、つかまってろ」
リンダはスニを抱きしめ、じっと迫ってくる黒いかたまりを見上げていた。
(イヤだわ)
彼女はそっとささやいた。
(この島は、よくない予感がする。できたら、上陸したくないわ——でももう、そんなことを云っていられる状態じゃないのだから、しかたないけれど……でも、この島には、何かがあるわ。不吉よ——わたしには、わかるのよ)
沈黙の内に時が流れ——
やがて、ザッ、と音をたてて、ボートのへさきが、砂浜につきささった。
かれらは、ロスを出て十何日ぶりかの、固い大地を足の下に踏みしめたのである。
グイン・サーガ第八巻『クリスタルの陰謀』
梅(*`Д´)ノ♪
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