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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

3945V3:2015/06/08(月) 21:27:48 ID:3z4GG4Kk
さっきからイシュトヴァーンがせっせと作っていたものは、ようやくできあがりかけていた。それは、木切れの弓づるをつなぎあわせた輪になっていて、何かのワナか、捕り網のように見えた。
「ふん、こいつは、ヤーンの尻尾をつかまえるためのワナなんだよ」
イシュトヴァーンはそっけなく云って、網の奥に、羽根と布でつくった白いフワフワしたものをくくりつけた。それはどうやら鳥のように見えた。
「まあかわいい。それなに」
「これは、おとりさ。これをこう——よし、できた」
イシュトヴァーンは、スニにおさえていたつるの端をはなさせた。パシーンと音をたてて、空中高く、そのかご状のものが舞いあがる。長いつるがそのかごを、マストの残骸にくくりつけている。
イシュトヴァーンは、手もとにのこしてあった細いほうのつるをひっぱった。
「まあ」
リンダとスニは目を丸くして見上げた。青い空に、そのかごに結びつけられたまがいものの鳥が、そのつくりもののつばさをひろげ、イシュトヴァーンがつるをひくと、パタパタとつばさをはばたくのである。
「すてき。でも、これ一体どうするつもりなの?かざりもの?」


「よーし。あざやかだろう」
イシュトヴァーンは得意顔で、スルスルとワナをひきおろし、ばたばたもがく鳥を気をつけてつかんだ。
「おい、どうする。こいつ、用がすんだら食っちまうか。首をひねった方が、話が早いんだが。まずいもんじゃねえぞ」
「いやよ、やめて」
リンダは顔をおおった。
「こんなきれいな鳥じゃない。せずにすむなら殺したりしないで、あとで放してあげて。——でも、それで、どうしようっていうの?」
「うん、だからさ。こいつを調べて、どっちの方角にどのくらい行けば陸地があるか、推理してやろうというのさ」
「そんなこと、できるの?まるで、判じものみたいね」
「できるさ。それもお前さんの占いよりゃ、ずっと理に叶ってるとおれは思うがね。ヴァラキアの船乗りにゃ、昔から伝わってきたやりかただし」


「でも、そうしたら、あの人たちが……」
「あいつらにゃ、あいつらのしたいようにさせときゃいい。いいか、レムスにもこっそりそう云っとけ、時期をみて、この船からぬけ出すから、そのつもりでいろ、とな。そのときになってもたもたしてたら、お前でもレムスでも容赦なく置いていくぞ。第一あの海賊どものこった。たとえドライドンの神聖な誓いをたてて、いまのところはなんとか何ごともなくおさまっているといっても、それはドライドンの領土なる海の上では、誓いをやぶってかいじんの怒りを招いてはならぬ、というだけの理由だ。一歩でも陸に上がりゃ、その瞬間に、もうドライドンの誓いを守る理由はない、とばかりおれたちにおそいかかって来るだろう。だから、こっちも、とにかくまずはどこかに上陸しわそれから別の船をさがすなりしてライゴールを目指すのが上策さ」
「わ——わかったわ」
リンダは心細そうに胸を両手で抱きしめた。


グイン・サーガ第八巻『クリスタルの陰謀』


梅(*`Д´)ノ♪

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