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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ

3944V3:2015/06/08(月) 21:26:22 ID:3z4GG4Kk
「ところで、グインのことだが——このごろ、何も云わなくなったが、とうとうあいつはもうダメだとあきらめたのかい?」
「そうじゃないわ」
リンダのくちびるがふるえた。スニがイシュトヴァーンを怒ってにらみつける。
イシュトヴァーンは目をそらしたが、一瞬その黒い目の中に、何か複雑な光がうかんだ。
リンダはうつむいてくちびるをかんだ。その彼女は、いつもの彼女らしくなく、ひどくたよりなく、かよわい、庇護を必要とする小さな見すてられた子どものように見えた。
しかし、彼女は、ぐいと頭をふりやって、心をふるいおこした。リンダはぎゅっとスニの肩を抱きしめながら、海面へ目をやり、きっぱりとした声で云った。
「その反対だわ。わたし、考えたのよ。グインはやっぱり特別なんだわ。だから、グインが、死んだり、わたしたちの前からいなくなることなんか、決してあるわけがない。前にも——グインがラゴンの援軍を頼みにいったときも、わたしたちがもうダメだと思ったさいごの瞬間に、グインは風穴の中からあらわれて来た。わたしね、イシュトヴァーン。わたしたちとグインの運命って、きっと何か、ふしぎな、ヤーンのみのしろしめす糸でかたくよりあわされている、という気がしてならないの。わたしの予言の力は知ってるでしょ——そのわたしが、グインともう二度と会えない、という気がしない以上、グインは死んでやしない。グインは死ぬことなんて、ないのかもしれない。そして、グインは生きているかぎり必ず、わたしたちがほんとに追いつめられれば、わたしたちを救いにあらわれてくる、という気がするの。だって、グインはわたしたちの守護神なのだもの。だから——そう考えたから、わたし、いたずらにさわいだり、泣いたりするのをやめたのよ。グインを信じ、じっと待っていることにしたの。そうすれば、絶対にグインはわたしのもとにかえってくるわ。——ねえ、イシュトヴァーン。覚えてるでしょ、ノスフェラスをたつとき、海路アルゴスへというコースを占ったら、それはすなわちグインに多くの危難がふりかかる、と出たわね。そしてほんとにこれまでのところ、グインひとりが、旅のいちばんつらい部分を身にひきうけてるような気がする。でも、あの占いには、わたしたちとグインとの別れの星は出ていなかったもの。わたし、信じるわ——グインを。わたしの占いを。わたしとグインの運命がひとつだってことを」
リンダはまばたきをして、健気に涙をみなもとへおしもどした。
イシュトヴァーンはひどく奇妙なよこ目づかいでリンダを見た。これまでしたことのない、複雑な目つきだった。
(わたしとグインとの運命がひとつ、だと?)
彼はこっそりひとりごちた。
(それじゃおれの立場はどうなるんだ。くそ、この問題は、やつがくたばってりゃいざ知らず、やつが生きてたとしたら、いずれかたをつけなくちゃならんな。——というのも、たしかにこの娘っ子のいうとおり、このおれの人並すぐれた第六感でも、ヤーンの黄ばんだひげにかけて、グインのやつがくたばった、という気は、どうしてもして来ないからな!)

グイン・サーガ第八巻『クリスタルの陰謀』


梅(*`Д´)ノ♪

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