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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ
3898
:
V3
:2015/05/22(金) 00:54:39 ID:qEGe3b9E
「まったく、大したもんだよ」
調子に乗って、イシュトヴァーンがうきうきと云った。
「パロのお姫さまで、なかなかのべっぴんで、勇敢な小戦士にして占い師、しかもこの世の黄金律について考える哲学者と来ちゃあな!しかし、教えてやるがね、おまえさんは、さきゆき旦那をつかまえるときにゃあ、そのしかつめらしい演説はたんすの底にでもしまっとくこったね。男ってものは、理屈をいう女は大嫌いだからな」
「下品なひとね、相かわらず」
リンダは気分をこわされて怒って云った。
「わたしにむかって、旦那をつかまえるとは、なによ!パロの王女は、自分から男の人に求愛したりは決してしないのよ。王女はかしづかれ、守られるだけよ。ねえ、レムス」
弟をふりむいて彼女は応援を求めたのだが、
「ああ……うん、そうだね——何の話?」
ぼんやりと思いふけっていた少年がびっくりして顔をあげるのをみて舌打ちした。
「まあ、この子ったらいつまでもうすぼんやりね。同じ経験をしても、人によって、何を見、何をつかむかは、こうも違うものかしら。——第一このところニ、三日、ずっと特にぼんやりしていたわ。お腹でも、下しているの?」
「そういや、ここんとこ、やけにおとなしいな」
イシュトヴァーンが云った。
「砂漠当たりかもしれんぞ。気をつけるんだな。お前の姉きみたいなトゲの生えた舌をもってりゃあ、砂ヒルだっておっかなくて近づけたもんじゃないが、お前のようにボーッとしたがきは、ワライオオカミに化かされるかもしれん」
「まあ、失礼ね。——レムス、何とか云い返しておやんなさいよ」
「……うん?」
レムスはそれにも、ぼんやりとした笑い顔を向けただけだった。
呆れた姉とイシュトヴァーンがしきりにかれのことを無遠慮に評することばも、レムスの上をエンゼル・ヘアーのように通りすぎてゆくばかりだった。かれはすっかり自分の思いの中にひたりこみ、まわりのこと一切と無縁にただウマの背にゆられているばかりだった。
グインの注意ぶかいまなざしが、そっとそれを見つめているのにも気づかない。——夜営のときに、グインは、そっとレムスを呼んで、どうかしたのかときいた。
が、レムスは、
「ううん——少し、疲れたせいじゃないかな。ごめんなさい、皆を心配させて」
(眠るとまた——あの夢をみてしまう)
グイン・サーガ第七巻『望郷の聖双生児』
梅(*`Д´)ノ♪
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