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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ
3893
:
V3
:2015/05/22(金) 00:19:10 ID:qEGe3b9E
アムネリスは、当惑したまなざしを、そっとクリスタル公の方へむけ、あわてて、火傷でもしたかのようにまたその目を伏せた。
アルド・ナリスのこの日のいでたちは、深みのある紫のびろうどのトーガに、銀のぬいとりをしたサッシュを永くたらし、白い細身のズボンがトーガの下からのぞいていた。小さな銀の、ルーン文字をかたどったペンダント、銀の、額にしめたバンド、そして細身の剣だけが、アクセントをつくっている。ナリスに会うまでのアムネリスであったら、男がこのように身なりに気を配ったり、香をたきしめたりするのを、騎士として恥ずべき柔弱さのあらわれ、ととったに違いなかった。
アムネリスは、身づくろいがきちんとできているだろうか、とはばかるように、すばやく自らのなりへ目を走らせた。うすい黄金色の、衿を大きくくったドレスは、パロふうの仕立てになるものだった。きわめて繊細なひだとレースが、黄金の泡のように裾にうずまいている。
「その色の服をつけておられると——」
アムネリスが自らのすがたがどのようにうつるか、そっと点検しているのを、知っているかのように、アルド・ナリスが云った。アムネリスはびくりとした。
「その色の服をつけておられると、まるで、あなたは、光を身にまとっているようですよ、アムネリス姫。そらは、あなたのその素晴らしい髪と同じ色をしている。あなたは、お国で、何という名で呼ばれているのでしたっけ?」
「皆は私を、公女将軍とか、氷の公女、と呼びますわ。私は、氷のように動かしにくいのです」
「氷は、動かしにくくはありませんよ、アムネリス」
ナリスはゆったりと長椅子に腰をおろした。
「氷は、炎の情熱にあえば、たやすくとけてしまう。あなたが氷なら、それはきっと、あなたがまだ炎に出会ったことがないからだ。違いますか?」
「知りませんわ、そんなこと」
「それはそうと、氷の公女、というのは、あなたにはまったくふさわしくないな。私なら、あなたをもっとちがった名で呼ぶでしょう——そう」
「私ならあなたをこう呼びますよ」
ナリスは手をひっこめ、かわりにアムネリスのつややかな金髪を手のひらにうけて、それにさんさんと注ぎこむ陽光をたわむれさせながら云った。
「光の公女——とね。そうだ。あなたはまことに光の公女だ。ごらんなさい、この金色の髪が、日をうけてどんなに輝いているか。まるきり、光そのものだ。あなたはいつも、黄金の光につつまれている。——氷などとはとんでもない」
グイン・サーガ第七巻『望郷の聖双生児』
梅(*`Д´)ノ♪
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