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好きな小説を語るんだよ(*`Д´)ノ
3890
:
V3
:2015/05/22(金) 00:00:38 ID:qEGe3b9E
昼日中から、ぼんやりと、宿の食堂にすわりこんで、うつろな目つきで窓の外を見つめているような客は、まずいなかったし、いたとしても、うさんくさく、じろじろと見られるばかりで、とうてい歓迎はしてもらえっこない。
そこにすわりこんでいる青年は、それだから、そうしたことすらも知らぬほどひどい世間知らずなのか、それとも、そんなことさえまったくかまってはおられぬほどに、何か手ひどい悩みをかかえて鬱々としているのかと、ひそかに宿の女中たちのうわさのたねになっていた。なぜなら、その青年は、一見していかにも育ちのよいらしく、なかなかハンサムなおもながのきりりとした顔立ちと、武人らしいすらりとのびたたくましいからだつきをもっている上に、見なりや馬具もりっぱな金のかかったものだし、それなのに供ひとりつれずに、これでもう三日の上から何もせずに逗留している。というのが、いかにもはた目にも異常であった。
もとから、あまり、慎重なほうではない。というより、どちらかといえば、衝動にまかせては、つい血気にはやってゆきすぎてしまうゆえに、手柄も多いが、失敗も多い若者である。
しかしアストリアスは、ことさらに、もう戻れない——という思いに自分を追いつめかけていた。
(アムネリスさまが——おれの女神が、むりやり他の男のものになる。それも愛情もなく、なんの希望もなく……大公の野心に道具のようにあやつられて、あの誇り高い姫が、何ものにも屈しない光の女神が——そんなことは、させぬ。アムネリスさまは、父君のご命令ゆえやむなくお受けになった。だが、おれがお助けすればきっとよろこんで下さるにちがいない。内心はどれだけイヤでたまらぬことか——泣いておられることか。マルス伯なりとご存命ならば、きっと姫のために、大公陛下をおいさめして下さったろうに……)
アストリアスの熱した頭の中で、いつのまにか、アムネリスは、父大公の無法なしうちに泣く泣く屈する、いたましい犠牲者、あわれな無力ないけにえ、と、そのようにすりかわってしまっていた。というよりも、彼は、彼が救いの神となる思いに酔うあまり、それにつごうのわるい点は注意ぶかく忘れ去ってしまっていたのである。
グイン・サーガ第七巻『望郷の聖双生児』
梅(*`Д´)ノ♪
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