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3222V3:2015/05/17(日) 14:07:19 ID:AsJcH7lA
それは、モンゴール軍にとっては、予想外のいたでであり、きわめて大きな損失であったというばかりではない。モンゴール軍をひきいるのは、弱冠十八歳の公女アムネリスである。
たとえ、いかに全軍の兵が彼女に心を寄せ、モンゴール大公に忠誠を誓ってその手足のごとく動いたところで、わずか十八歳の少女には、この壮大な遠征軍を取りしきり、掌握しきることは、なかなか荷にあまる役目であった。まして、たとえアムネリスに単なる忠誠以上の熱烈な思慕を捧げている、アストリアスのような忠臣であったところで、この氷の公女を、おだやかできわめて思慮分別に富んでいるとはあえて云い得ない。アムネリスは、氷であったけれども、しかし激しい、きびしい氷であった。その怒りは時にあまりにも直截にすぎ、云いまわしをやわらげたり、あいての心を思いやったりすることを知らない。
そうした総司令官をいただく遠征軍にとっては、隊長じゅうの最年長でもあり、経験をつみ、しかも有名な思慮深さをもって知られる、マルス老伯爵こそは、現実のささえであり、事実上の心のよりどころであったのだ。
アムネリス公女のかたわらに、影の如く寄り添うマルス伯の姿があって、はじめて全軍は生き生きとわが軍の理と勝利を信じて動いた。若い公女が、あまりに決着をいそぎすぎれば、老伯爵がそれとなくひきとめ、公女が感情にまかせて部下を叱咤するに厳しすぎれば、さりげなくマルス伯がしょげた部下をなだめた。
しかるに、その老伯爵はもはやない。

グイン・サーガ第五巻『辺境の王者』

梅(*`Д´)ノ♪

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