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理系ネタスレッド

1Seven:2004/04/18(日) 18:53
理系なネタをあれこれと扱うスレッドです。
よろしくー。

2Seven:2004/04/18(日) 18:54
ではまず、最近何かと話題の、「劣化ウラン弾」について書いてみますです。

 最初に申し述べておきますが、反戦系サイトでたまに見かける、「劣化ウラン弾は核兵器だ!」なんぞというアジは明瞭に出鱈目です。劣化ウランは、その極めて重い比重から装甲目標に対して使用される装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS弾)の弾芯などに利用されている重金属であり、すなわち劣化ウラン弾とは運動エネルギー兵器であって核分裂を引き起こす核兵器とは全く別物です。劣化ウランは核燃料となり得る濃縮ウラン(高濃度のウラン235燃料)を精製する過程で排出される副産物で、その約99.8%が核分裂を起こさないウラン238です。天然ウランの場合、ウラン238の含有率は、約99.3%なので、つまり劣化ウランはこれより燃えにくく、どう頑張ったって核分裂なんざ起こしそうにない物質です。APFSDS弾芯はこれに多分チタニウムやモリブデン、そしておそらく焼夷効果を高める為にマグネシウムなどが混ぜられて練り固められていると思われます。だから、劣化ウラン弾には純粋に劣化ウランだけが使用されている訳ではないので、「特殊弾芯のAPFSDS弾」とでも称した方が実体に近いです。まあ、具体的な組成は軍事機密に引っかかるので今一不明なんですけれど。

 で、この特殊APFSDS弾のどこら辺が問題になっているかというと、何と言っても主素材であるウラン238の毒性にあります。この「毒性」には、二種類ありまして、一つは化学的な毒性であり、二つ目は放射線的な毒性です。まず一つ目の化学的な毒性についてですが、ウランは人体内に吸収されると化学的な毒物として腎臓等に打撃を与えるとされます。大阪大学で放射線管理学を専攻していたという林智氏なんかは、以下サイト↓
http://www.nava21.ne.jp/~tokuda/chon/hayasi/other/d-uran.htm
において、劣化ウランは放射線的な毒性より化学的な毒性の方が遙かに問題であると、断言したりしてます。尤も、この理屈で特殊APFSDS弾に反対しようとすると、同様に強い化学的毒性を持つ「鉛弾」の使用にも反対せにゃならん事態になるかもですが。

3Seven:2004/04/18(日) 18:54
 さて、二つ目の毒性、即ち放射線的な毒性についてなんですが、ウラン238の半減期はなんと45億年もあります。これをもって「被害が半永久的に……」等という文句をまことしやかに語ったりしているサイトが多数あるんですが、半減期が長いという事は、つまり崩壊がゆっくり進むという事でもあり、微弱な放射線しか出さないという事でもあるのです。プルトニウム239なんかは、半減期が2万4千年と桁違いに短いので、それだけより危険な訳です。ウラン238が主に出す放射線はアルファ線(ヘリウム原子核)ですが、これは出た瞬間急激にエネルギーを失ってしまうので、紙一枚で遮断できます。従って薄皮一枚でアルファ線ははじき飛ばされてしまいますんで、ウラン238による体外被曝はほとんど無視して良いです。問題となるのは、特殊APFSDS弾が目標に命中した際に撒き散らされる微細な粒子物質で、そいつを吸引したりする事による体内被曝です。
 で、その被害はどの程度かと言いますと、広島大学平和科学研究センターHPにある篠田英朗氏の論文↓
http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/Pub/29.html
 によると、まずイラクでガン患者の発生件数が増加している、などという事を書いた後に、

「……しかし戦争後の経済制裁の条件下でなされた研究は、必ずしも精緻で体系的とは言えない。いずれの報告も、ガンの発生件数の増加と劣化ウランの因果関係を十分に証明するものではなく、さらなる包括的な研究によって補足されるべきだと言えるだろう。」

 などと、えらく歯切れの悪い文句が続いていたりしています。そして実際、現段階ではイラク住民に発生している癌とか奇形児とかの健康被害と、特殊APFSDS弾との因果関係を完全に立証するのは困難です。何でかと言いますと、まずイラクで「癌患者が増えている」事と、「それが劣化ウランのせいかどうか」というのは別問題なんです。どうも癌患者が増えればそれが即座に特殊APFSDS弾の危険性を立証する物であると考えている人が大勢いるようですが、それは間違いです。癌は放射性物質によってのみ引き起こされる疾患ではないからです。加えて、ウラン238の放つ放射線は弱く、エアロゾル化したそれを吸飲する量も微量で、中性子爆弾よろしく速効で人を殺傷するほどの威力は発揮しません。そして、戦地では劣悪極まるどん底の生活環境とか、胃に穴が一つや二つ空いても全然不思議ではないほどの心的ストレスとかの、健康を害するファクターが他にもあり過ぎます。イラクの場合、かつてフセイン政権が無分別にばらまいた大量の化学兵器、更に湾岸戦争時には膨大な量の原油が露天で燃やされて、ベラボーな量の有害物質がそこら中に撒き散らされた事は確実です。ぶっちゃけた話、戦争それ自体がどえらく健康に宜しくないので、考えられる他のファクターを全て排除し、ついでに癌は平和な地域でも自然に発症する病気なので、その可能性も排除し、純粋にエアロゾル化したウラン238の健康被害のみをピックアップして立証するのは、非常に困難なのです。

4Seven:2004/04/18(日) 18:55
 そもそも、一体イラク国土がどの程度の放射性物質で汚染されているのかといいますと、このサイト↓
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/uran/iraq5/000619.html
 でリポートされている科学者は、土壌1キログラム当たり、850〜65200ベクレルの放射能汚染があり、これは実に深刻な状況である、と主張しています。65200ベクレルというのは、確かに非常に高いのですが、850というのは、通常の土壌でもカリウム40などの放射性物質により100〜700ベクレル程度あるので、そんなに大騒ぎするほどのレベルなのかなー、とも思います。ついでに言うと、ウラン238は崩壊して他の元素に化けますが、その中にはラジウムやラドンといった別の放射性物質もあり、これらは温泉地で良く出てきたりします。ラジウムは半減期が1600年と短く、キュリー婦人の死因を考えてみても、結構危険な放射性物質だと言えます。
 で、以下の資料に寄りますと、
http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/pict/15/15080201/03.gif
 我が日本国の山梨県増富温泉なんかは、リットル当たり16万ベクレル(!)もの放射性物質を含有しております。これは言うまでもなく、キログラム当たりで比較すると劣化ウランで汚染されたとするイラク土壌の軽く倍以上です。65200ベクレルの土壌汚染が大問題であると主張するなら、増富温泉なんかは即刻閉鎖し、従業員全員の綿密な健康調査が必要でありましょう。劣化ウラン弾反対を唱えてイラクに乗り込んだりするぐらいなら、まず山梨県に行くべきです。が、どおゆー事情か、グーグルなんかで増富温泉を検索してみると、どの温泉旅館も如何にこの温泉が健康に良いかを力説しており、中には、
 「この温泉のお陰でガンが治りました!」
 なんぞという、思わずギャフンと言いたくなるような情報があったりするもんですから、正直もはや何を信じたらよいのやら、訳が分からなくなってきます。

 ただ、確実に言える事は、
 「極微量のウラン238が体内に入り、そして例えただ一個のアルファ線粒子が放出されても、周辺細胞の遺伝子が打撃を被り、ガンになる可能性はある」
 という主張は、間違いではない、と言う事です。それは要するに、確率の問題なんです。こんな事が起こる可能性は極めて小さいんですが、ゼロじゃありません。故に正しいのです。ただし、こういう事まで気にする人は、放射性物質であるカリウム40を確実に含むバナナを口にするべきではありませんし、ましてや増富温泉なんぞには絶対に近づくべきではない、というのもまた事実ではあります。

5СТАЛКЕР:2004/04/18(日) 19:02
バンカーバスターに劣化ウランが使われている話は?

6Seven:2004/04/24(土) 16:10
>>5
>バンカーバスターに劣化ウランが使われている話は?

 えーと。
 率直に申し上げまして、貴方の質問は一体何を訪ねたいのやら良く解らないピンボケ質問であると判断せざるを得ず、放っとこうかなー、とも思っちゃってたんですが、一応レスしておきます。
 まず話の前に少々。
 バンカーバスターに「劣化ウランが使用されているかも知れない」というのは現在疑惑の領域を出ておりません。APFSDS弾とか、A−10サンダーボルトのバルカン砲とかなら劣化ウランの使用は確実であり、確実な論拠を前提としてイラク国土の汚染を論じられますが、バンカーバスターの場合は使用されているかどうかそれ自体がグレーゾーンなので、環境汚染の被害を論じる際に同列に扱う事は出来ません。尚、イラク国土が「劣化ウランで汚染されている」事と、「バンカーバスターに劣化ウランが使用されているのかどうか」は別問題ですよ。例によって、イラクに「劣化ウランがあったから」即座にバンカーバスターにも劣化ウランが使用されているに違いない、と、単純素朴に考えちゃってる人もいるみたいですが。

 以下本題。
 元々この特大爆弾は、かつて湾岸戦争が勃発した際にイラク軍の強固な地下壕(バンカー)を破壊する必要に迫られた米軍がロッキード社に開発依頼を出し、その結果突貫工事で開発された物です。1991年1月末頃に注文が舞い込んで、2月1日に製造開始、2月24日に投下実験という、尋常ではない開発スケジュールだったそうで、203㎜榴弾砲砲身を適当な長さに切断してあちこち削り、そこに炸薬と信管を詰め込んで蓋をするという、正に即席兵器でした。それでも実験の結果、この新型弾は30メートルもの地下までめり込んだので合格となり、「BLU−113/B」と名付けられて現在に至ってます。現在「バンカーバスター」として最も一般的なGBU−28/B通称ディープスロートは、基本的にはこの時開発されたBLU−113/Bにレーザー誘導装置等を付加した物です。
 で、このバンカーバスターに劣化ウランが使用されているのでは、という疑惑についてですが、
 「これだけの貫通力を発揮する為には、劣化ウランの使用以外考えられない……」
 なんぞというまことしやかな言説は、まあ嘘でしょう。どう見たって単なる鉄の塊であった即席兵器の初代バンカーバスターが、回収困難になるほどの地下まで現に突入しているからです。また、BLU−113/Bのディメンジョンは、全長約4メートル。直径約37センチ。全重量2トンちょっとで、具体的には分かりませんが、内部に直径およそ20センチ程度の穴が通っているパイプ構造になっていると思われます。「ディープスロート」というニックネームの由来も、このパイプ構造にあるんですが、もしこいつが鉄(比重約7.8)であったとして大雑把に計算してみると、それだけで重量は約2トンになります。実際には、これに240〜400キロ程度の炸薬が加わり、全体重量は前述の通り2トンちょっとです。つまり、こいつはウラン(比重約18.7)で出来ているにしては、あんまりにも重量の割に図体がでかすぎるんです。劣化ウラン製にするなら、針の如く限りなくスリムなデザインにしないと、その効能は発揮できませんし、弾頭の何処かに「ちょっぴり」だけ劣化ウランを使うなんてのは、無意味です。
 まあ以上のような理由から、私はバンカーバスターは多分「ただの鉄」だろうと考えてます。まあ、疑いたい人は何がなんでも疑いたいでしょうけれど、重量が2トンだとかの、基本資料まで疑うのなら、どうぞ御勝手に、と答えるしかありませんです。


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