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大型モンスター討伐スレッド
1
:
「鍵を持つ者」
:2013/06/24(月) 01:19:55 ID:???
最大参加人数320人!
2
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 01:25:03 ID:knZF43eg
「……ッ、何を!」
『おぉっと……』
『まさか、自分が追われてるのを忘れた訳じゃ無いよなぁ……?』
「……チッ……!」
無関係な人間を巻き込むまいとした男性だが、それは黒装束二人に阻まれた。
剣を構え直し、頭を冷やす。
何事も状況判断は寛容だ。特にこんな有事には。
幸い、目の前の黒装束は一人追わせてロザリーの事を良しとしている。
ならば……
「………!!」
駆け出す。そして追う黒装束。
……ただしその向きは、ロザリーの駆るマレンゴが回り込みやすい位置に黒装束を誘導する動きであった。
『……!』
目晦ましを受け、追って来た方の黒装束がよろけ様に横へと二歩跳躍する。
視界が整った時は既に駆け出されており、それを追う様に動いた。
3
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 01:39:44 ID:yzeyXgMI
>>2
(中々いいポディションに移動できた、のはお膳立てがあってのことだろうな。
うまくいけば礼を言っておこう……。)
「相手の不意をつくのが兵法の基本だな……サンダーボルト!」
側面を取れるように誘導してくれた男に感謝しつつ、馬の速度を緩めつつ腰に指していた杖を手にとって雷球を複数生成、それらを二人組の方に向けて発射する。
威力よりも確実に当てることを優先したため、威力はそこまででもないが、こちらに注意を引かせればそれで十分だ。
あの男も、背中に背負った剣は飾りではないだろうし。
「おっとっと、こっちの方も相手しなければ行けなかったか。
………だが、そんな調子で馬を追いかけてよかったのかな?……はいやっ!」
そして、追ってきた男に対して、速度を緩めるついでにそちらの方向に馬の方向を転換させて、再び馬の速度を加速させ体当たりを仕掛ける!
まだ相手の視界が完全に戻っていないと踏んでの行動である。
4
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 01:48:20 ID:knZF43eg
>>3
『……警告!
……雷撃、二発……! グっ………!!』
くぐもった声で、他の二人へと注意喚起を優先。
杖を持ったとほぼ同時に声を掛けた……敵も中々に馬鹿ではない様だ。
しかしそちらを優先した結果、視界が戻り切らぬ体はその逞しい獣の体躯に弾き飛ばされる事になる。
黒い影が、地面をごろごろと転がった。
『チッ……』
『よっと……!』
だがその声を受けた瞬間、二人はしっかりと跳躍。
雷撃を回避した。
一朝一夕ではない、確かなコンビネーションだ。
「甘いッ!!」
『グオ……!』
『……!!』
しかし、想定外の増援で水を得たのはこちらも同じ。
同じ高さまで跳躍すると、男は鋭い剣筋で銀閃を刻んだ。
一人は剣の直撃を受け、もう一人はすんでの所で避けて落下する。
5
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 01:58:46 ID:yzeyXgMI
>>4
「……ああ、帰ったら労ってやるからな……今は堪えてくれよ………。」
愛馬の首をさすりながら速度を落とさずに馬を走らせる。
さっきの体当たりで一人仕留めたと思っている様子。
(さて……誤射をしないように確実に当てないとな……)
「……雷撃が悪しきものを焼きつくさんことを!エレクトリックビーム!」
簡易的な詠唱とともに落下している最中の黒服の男に紫電を纏った光線を放つ!
ギザギザと歪な光線であるが、それは着実に男のところを向かっていく。
6
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 02:06:48 ID:knZF43eg
>>5
「スラスト……レイザー!!」
更に追い打ちとばかりに、真水でコーティングした大剣を振り下ろす男。
剣戟と一条の紫電が男へと迫るが……
『舐めんじゃ……ねェェェェ!!!』
『……陣ッ!!』
「な……ッ!?」
先程切られた男が剣を弾く。その様は何処か異様で、火花が散っていた。
そしてもう一人の男は、光線に対して魔力障壁を展開。
存外な強度を持つそれは、雷撃のベクトルを残したまま放射状に軌道を逸らさせた。
勝手勝手に飛ぶ雷撃は、遠方の樹を穿つ。
『あぁくそ……撤退だ!』
『分かってる……そら、行くぞ……!』
そして二人の攻撃を捌き切った黒装束は、素早い動きで後ろへと広がる木々に身をやつす。
『…………。』
最後に残った一人も、ゆらりと立ち上がる。
黒装束のフードが取れ、ネオベイチックな狐の仮面が二人を見据え……その姿は飛ぶ影となった。
「(……並の手合いじゃない……
……あの騎士が居なかったら……まずかったか。)」
7
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 02:17:10 ID:yzeyXgMI
>>6
「……なっ!逃げるのか……!
……くっ!」
逃げ出そうとする二人を追うとするが、森では馬の機動力も落ちるため迂闊に近づけず、おまけに吹き飛ばした奴にすら逃げられる始末である。
悔しがることしかできなかった。
(……想像以上の手練、下手をすれば突撃した時に迎撃されていたかもしれないな……。)
「ああ、全く、本当に全くだ。
マレンゴ、あの突撃はタイミングが悪かった。悪かったよ。」
あの撤退までの動きの速さから相手の腕を察して、迂闊な突撃をしていたのではないかと思い、馬を労っている様子。
そんなことをしながらも青髪の男の近くまで馬を歩かせて
「っと……無事か?」
と、軽く声をかける。
8
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 02:21:12 ID:knZF43eg
>>7
「ゼェ……。」
大きく息を吐き、事の収まりを確かめて剣を鞘へと戻す。
結果として、ロザリーがその場に居合わせたのは幸運以外の何物でもなかった。
「……あぁ、すまない……助かった。」
男は馬を駆る女性の方へと向き直り、恭しく頭を下げた。
9
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 02:27:04 ID:yzeyXgMI
>>8
「まったく……何があったんだ?あの男たちがただの借金取りや小悪党には思えないが……。」
と言いながら馬から降りる。
別に見えた!とかそんなことは全くない。なぜならズボン装備だからだ。
「……というより、あの男たちと面識はあるのか?」
10
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 02:38:11 ID:knZF43eg
>>9
「……いや、全く無いんだ。
あんな暗殺者めいた連中に追われる覚えは、無かったんだが……。」
首を横に振り、一度言葉を詰まらせて首を横に振る。
そして、改めて提案を口にした。
「……申し訳無い。……ついでに頼みがあるんだ。
……病院行きの……馬車を……――」
不意に、男の姿勢が立ち姿のまま地へ伏した。
腰に当てた手には、大きな千本が刺さっていた。
キズの新しさから恐らく先程負った傷……あの仮面のの仕業であろうか。
兎も角男はそれきり、言葉を発しなくなってしまった……。
//不格好ですがこのままドロップアウトさせまする!病院にでも放り込んで頂ければ幸いですドロン
11
:
とある世界の冒険者
:2013/06/24(月) 02:46:15 ID:yzeyXgMI
>>10
「………そうは言っても何か……っておい!
……傷が深い……ッ!」
急に男が地面に倒れこみ、慌てて肩に手をかけてで支えれば怪我をしていた様子。
これを見ていて見捨てることができるほど、彼女は薄情ではなかった。
「馬車なんか呼んでる余裕は無さそうだな……。
全く……マレンゴ、"積荷"を載せるが、振り落とすなよ。」
馬車に載せるより直接運んだほうが早いと判断し、
肩から担いで馬に対して横に載せた後、病院まで振り落とさないようにゆっくりと駆けていった……。
【了解、相手ありがとうございました!】
12
:
とある世界の冒険者
:2013/06/25(火) 01:07:04 ID:eiCilAiM
【王都郊外/森林】
「……フゥム。
飛ベナイ、魔力モ殆ド使えない、トイウノガココマデ不便トハ。
ウーム参ったマイッタ」
杖を付きつつ森を歩くは胡散臭い様子のエセ外人。
どうやら誰かを探しているようだ。
13
:
とある世界の冒険者
:2013/06/28(金) 23:18:56 ID:5NIVWPkk
かなり長い時間眠っていたのだろうか、身体が妙にだるく、頭が重い。
怪我か病か何かで伏せっていたのだろうか、節々に一瞬激痛が走る。
何か酷い悪夢でも見ていた様だ。
はっきりとは思い出せないが…
『碧の眼の魔法使い』 が自分に何か酷い事をしていたという事だけは、妙に脳裏に焼きついて離れない。
……視界が霞む中、辺りを見渡す。
ここは…民家の寝室だろうか?
自分は、大きなベッドの上に寝かされている様だ。
いずれにせよ、まったく見覚えの無い風景。
いや、ここは何処か、どころか……
何故自分はここにいるのか、今は何時なのか
そして何より……自分は誰なのかすらも分からない……!
何かを深く思い出そうとするたび、酷く頭痛が走ってたまらない。
…それは、まるで記憶が脳の奥底に強く錆び付いてしまったかの様に。
男が一人困惑する中、部屋の扉がゆっくりと開く
「……なんと………。
……眼を覚ましたか……まさか、生き返るとはな……。」
しわがれた声と共に、一人の老人が部屋に入って来る。
この家の主だろうか…?
14
:
とある世界の冒険者
:2013/06/28(金) 23:29:32 ID:B2Z9flWY
「…………ッ!!」
男が意識を取り戻してまず身を任せたのは、動物じみた暴力衝動だった。
老人へと即座に顔を向け、背を庇う形で相対して構えを取る。
型にならない、本能が取らせた構え。
意のままか分からない。
分からないまま、牙を剥いた。
目の前の輩は善か悪か。
知る人か存ぜぬ人か。
分からない。
何も、分からないのだ。
「……ッ、誰だ……!」
痛む体に鞭を打たせた構えは、酷く不格好な物だった。
15
:
とある世界の冒険者
:2013/06/28(金) 23:43:31 ID:5NIVWPkk
「……っっ!!」
ベッドから跳ね起き構えを取る青年に、一歩後ずさる老人。
「誰だ、か……。
……わしはこの家の者じゃが……お前さんは誰じゃ……?」
深く皺が刻まれた顔をしかめさせ、しわがれ声で尋ねる。
「……驚いたな……もうそんなに動けるか……。
……だが、無理はせん方が良い……。
一週間も寝ておったのじゃ、急に動くと傷が開く……。」
青年のたくましい身体のあちこちに
傷を縫った跡や包帯で固定した箇所がある事に気付く。
「……お前さん、常人じゃとっくに死んでてもおかしくない怪我を負っておったのだぞ…?
我が村には薬もそれほど蓄えが無いからな……正直長くは無いと思っておったわ……。」
青年の常人を超えた回復力に、驚いているようである。
…それほど、酷い状態だったのだろう。
16
:
とある世界の冒険者
:2013/06/28(金) 23:52:41 ID:B2Z9flWY
「……っ……。」
いくら前後不覚とは言え、この様に驚く老人を疑う感性は持ち合わせていない。
少し眼を見開いた後、ばつが悪そうな表情を浮かべて
「すまねぇ、驚かせた。
じいさんが助けてくれたのか……。」
ボサボサの髪を更に掻き乱し、老人へと詫びる。
覚えの無い生々しい傷が、自分の体に刻まれている事へと違和感を受けながら。
「一週間……?
アイツは…… ……ッ。オレは、誰だ……?」
分からない事を把握するにも、それが精一杯だった。
片目に手を当て、自身でも驚くほどに疑問げな表情を浮かべる。
17
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 00:02:20 ID:QuqkjElY
「………わしは部屋を貸しただけに過ぎんよ。
礼なら村の衆に言ってくれ。…お前さんを運ぶのは、重労働じゃっただろうからな。」
青年は一般人と比べてかなりの体躯。
2,3人がかりで運んでやっと、と言ったところだろう。
「……おおそうだ、こいつにも礼を言っておけ。
…倒れているお前さんを見つけたのはこいつじゃ。」
空いている部屋の扉から、垂れ耳、毛むくじゃらの大型犬が入り込んでくる。
ベッドの傍らに座り込み、舌を出しながら青年の様子を伺っている。
「……おいおい……まさか記憶喪失か……?」
気難しそうな顔を少し歪めて笑ってみせる老人…。
……しかし、すぐにそれが冗談でないと察する。
「……ほんとに記憶が無いのか……?
………ふむ……どうしたものか……。」
18
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 00:12:21 ID:SxoTJbMg
「そうか、じゃァまずは部屋の礼だ。
恩に着る。」
ベッドの上で胡坐を掻き、両膝に手を置いて頭を下げる。
決して行儀の良い礼ではないが、体に染み着いた習慣がこうしろと命じていた。
「お前もな。」
男は、眼を覚ましてから初めて笑った。
大型犬のふさふさな毛に大きな手を伸ばし、なりに優しく撫でてやる。
「……。」
やがて犬から手を離した男は、再び表情が消えて失せる。
「覚えてるのは……ぐ……ッ……。
アイツの……アイツが……!」
片手が顔を覆い、鋭い眼が更に鋭くなった。
そして息を荒げ、碧の眼を空っぽの脳裏に思い浮かべる。
19
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 00:26:49 ID:QuqkjElY
>>18
「……律儀な男じゃて……。
…わしに礼は良い、そんな暇があったら身体を治せ……。
………食えそうなら、食っておけよ……。」
頭を下げる青年にぶっきらぼうに言い、傍らの机を指差す。
鍋の中に質素な粥、水差しに牛乳が用意されている。
『……アウッ…!』
毛むくじゃらの頭の上に手をのせて撫でると、尻尾をぶんぶん振る。
おとなしく賢そうで、かつ人懐っこそうな犬である。
「………アイツ……?
……何か覚えておるのか……??
…そう言えば、寝ている間随分うなされておったが……。」
青年の脳裏に焼きついた、碧色の冷ややかな瞳。
まるでこの世の全てを見下したかの様な……。
ヤツには何か復讐をせねばなるまい、という確信、
しかし、それは何故なのか…全く思い出せない。
「……落ち着け…無理に思い出すと良くない……。
……身体が治れば、何か思い出す事もあるだろう……。」
そういい残して、老人は部屋を後にする。
静かな部屋に、犬と共に一人残される。
……食欲はそれほど無いが、粥は食えないわけでも無さそうだ。
そんなこんなでしばらく休むと、再び眠気が青年を襲ってくるだろう…。
20
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 00:39:59 ID:SxoTJbMg
>>19
「命を救われたのは、デケぇ事だ。」
そう言うのは、老人よりも随分と大きな体躯の男だ。
その大きさ故、食欲が働き掛ければすぐさま粥を平らげてしまうだろう。
「やっぱデケぇ方が良いよなぁ……」
俄かに日常的な思考へと戻り、命の恩犬たるわたがしの様な物を見る。
「……無理に、かよ……。」
去る老人の背中に零し、静かに眼を瞑って言う。
しかし燻る復讐の炎は、思い浮かべる度にたちまち火柱となる。
アイツを許すな。
アイツだけは許さない。
使命めいた感情に支配されるまま、しかし瞼は重くなる。
それは体を横にすると、すぐにでも意識を手放せそうな眠気だった。
21
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 00:48:48 ID:QuqkjElY
自分は一体誰なのか、どうしてこんな事になっているのか、これからどうしようか、
…例の『ヤツ』は一体何者なのか…
色んな思考が一度にない交ぜになり、
やがて青年を泥の様に深い睡眠へと誘う……。
……どれくらい寝ただろうか?
まだ身体の節々は痛むものの、いくらか気だるさは取れた気がする。
傍らにいたもじゃもじゃ犬は、もう何処かへ行ってしまった様子。
窓から外を見ると、すっかり日が沈んでいる。
……だが、それにしてはやけに明るい様な。
家々が、赤く照らされている。村人が火でも焚いているのだろうか?
眼が覚め、頭がはっきりしてくるにつれ、不吉な予感が青年を襲う。
鼻を擽るモノが焦げる匂い。耳を澄ますと聞こえる悲鳴の様な甲高い声。
……この不穏な空気、何故か自身と馴染みが深い様に感じる……。
22
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 01:00:08 ID:SxoTJbMg
「……。」
まずは、ノイズの様な悲鳴が聴覚を刺激する。
そして肌は粟立つ程に、不吉な予兆を感じ取る。
鼻を刺す、度が過ぎる程に香ばしい匂い。
「……ッ!!」
擦り切れそうな記憶が囁き掛けたかは分からないが、一瞬の事だった。
"可能性"を思い浮かべた瞬間、体は痛みを忘れて跳ねる様に身を起こしていた。
老人と相対した時より出来た構えを取り、辺りを睨んだ。
23
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 01:07:37 ID:QuqkjElY
『……アウッ!!!アウッ!!!』
「……おい、起きてるか?
………逃げるぞ、村が襲われておる……!」
もじゃもじゃ犬が部屋に飛び込み、異常を知らせに来た。
少し遅れて、老人もやってくる。
窓の外を見ると、何やら魔物と半分身体が融合してしまったかのような異形の男達が、
村々に火をつけてまわり、慌てて逃げ出す村人を捕らえて連れ出そうとしている。
異形に抵抗を試みる村人の姿もあるが、人間離れした力になす術も無く敗れ去っていく。
……繰り広げられる蛮行に、男のうちにふつふつと湧き上がる怒り……。
24
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 01:16:15 ID:SxoTJbMg
「……ンだと……!」
しかしその言葉は、やはりという言葉と替えてあった。
犬と老人の前で一度立ち止まり、鬼気迫る表情を見せる。
「………ッ!!」
1人と1匹の間をすり抜ける様に駆け出す。
眼前に広がるは、阿鼻叫喚の光景。
足先から全身に広がる怒りは、脳の奥でスパークとなって弾ける。
25
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 01:31:53 ID:QuqkjElY
「……おい、待て……!」
引き止める老人の言葉も耳に入らず、青年は外へと駆ける。
「……ハハッ!上出来だ。そろそろ引き上げるぜ…??」
家の外、村の広場には、異形の男達を率いているらしい人間の男の姿。
異形に命を下すと、男の元へと終結していく。
眼前に広がる光景は、炎に包まれる村、
馬車へモノの様に詰め込まれる捕獲された村人…
そして、抵抗を試みた村人の、無残な亡骸。
青年の奥底で弾けた怒りが、青年の内に眠る何かを呼び起こす。
一瞬全身に走る激痛、そして爆発する様にあふれ出す未知なる力…!
理性が吹き飛ぶ様な感覚と共に、青年の身体が変質していく。
ビキビキと音を立て、鋼の様な甲殻が青年の全身を覆う。
その手、口には、竜虎よりも鋭い爪と牙。
最後に、鋼の甲殻が、錆び付いた様に赤茶色に変質。
その姿はまるで人狩りの連中と同じ様な異形。
…目の前に立ち並ぶ獲物を狩る……
ただそれだけが、意識を支配していく。
26
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 01:43:32 ID:SxoTJbMg
「…お、オォ……!」
内側から刺し貫かれる様な感覚。
次いで、空を割りそうな程に溢れる力。
脳髄を支配していく、暴力。
許さない、許さない。
斃す。あいつらを斃す。
その心に最早、己が発した力への戸惑いは無かった。
――――壊す。
「オ゙ォォォォォ―――!!!」
両腕を広げ、鬨の声を上げる姿はまさに異形だった。
赤褐色の甲殻は月光を浴びて妖しく輝き、地を鳴らす様な咆哮が辺りに響き渡る。
ズン……
錆の異形は、重々しくその一歩を踏み出した。
27
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 01:52:55 ID:QuqkjElY
「……お?まだイキの良さそうなのが残ってやがったじゃねえか。
………って、待てよ……おい、何だよアレは………
……おいおいおい、やる気かよ……!?」
迫り来る、鋼の異形。
その咆哮が、男と、異形達を一瞬すくませる。
「……いけッッ!!なんだか知らねぇが、ブッ殺しちまえ!!」
男の命に応じて、異形達が鋼の怪物を取り囲む。
ある者は鋭い爪を、またある者は刃の様な腕を振りかざし襲い掛かるが…
異形と化した青年にとって、まったくの非力……!
鋼の甲殻が全てを弾き返し、溢れかえる力は異形どもを苦も無く一捻りにできそうである。
28
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 02:06:36 ID:SxoTJbMg
「ア゙ァァァッ!!!」
力に任せたまま、振り抜く腕。
円を描く様に振り抜かれたそれは、得物を容易く破壊する。
おさまらず、その先にある異形達もだ。
「……ブッ壊してやる……テメェら、全部……!!」
壊す度に、衝動とは相反した充実感が心を満たす。
それは温かい毒となって、心をより支配して行く。
29
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 02:17:50 ID:QuqkjElY
超人的な力を持つ異形達も、
それよりも遥かに巨大な力の前にゴミクズの様に切り裂かれていく。
爪が掠った程度の異形も、青年の全身を覆う赤錆びの様な物体に傷口から侵食され、
苦しみもがいて絶命して行く。
異形達が散らされていく様を、怒りに震えながら眺めるリーダーの男。
「……テメェ……テメェは………!」
彼のうちにも、抑えがたき怒りがふつふつと湧き上がる……。
そして、急激に変貌していく男の容姿。
グチュグチュと不快な音を立てながら、全身の細胞を異質な魔物へと変貌させていく。
熊の様に膨れ上がった黒々とした毛むくじゃらの体躯は、鋼のバケモノをも遥かに凌駕。
隆々とした二本の腕は、丸太の如く太い。
頭には黒光りする二本の鋭い角を生やす。
「……ウガアアアアアアッッッ!!!!」
恐るべき巨大な魔獣と化した男が野太い咆哮を上げ、
鋼の異形をその甲殻ごと捻り潰さんと襲い掛かってくる…!
30
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 02:23:43 ID:SxoTJbMg
「ア゙ァァァァッ!!」
異形同士のぶつかり合い。
村人からすれば、まるで悪夢の再現とでも言えるだろう。
内なる破壊衝動は更に激しさを増す。
その巨躯に果たして勝てるのか、否か。
負けた時には死してしまうのだろうか。
そんな事は、些末な問題でしか無かった。
ただただ今は力の奔流に身を任せたまま。
相対する巨躯に対して鋼の異形は、身を屈めて懐へと飛び込む。
そして両拳を揃えて、一挙に突き出した。
31
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 02:36:14 ID:QuqkjElY
「……ヌガァアアアアッッ!!!」
ズン、と重々しい音を響かせながら、異形同士が四つに組み合う。
流石に巨大な魔獣、そのパワーは凄まじい。
拮抗を保ってはいるものの、少しずつ押されていく……。
このまま力比べをしていては、いずれは潰されてしまうだろう。
だが、鋼の異形の身体を覆う赤錆びが、ゆっくりと巨躯の魔獣へと伝って蝕み始める。
「………グッ……グァアアアアアッッ……!?」
優勢を保っていた魔獣が、赤錆に犯され苦しみ始めた。
全身を刺す様な激痛が襲い、巨躯にまともに力が入らないのだ。
……格好の好機……仕留めるなら、今だ!
32
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 02:41:30 ID:SxoTJbMg
「……ギィィィ……!!」
鉄が擦れる様な声を出して、毒に侵された魔獣を突き放して跳躍。上を取る。
その鋭き牙爪は、相手を切り裂くのを今や遅しと待ち侘びていた。
暗く輝く瞳が残光を引き、落下の勢いに任せてそのまま降って来る。
「オ゙ォォォォォ―――ッ!!!」
そして再び地を響かせる様な咆哮を放った後、乱暴と言うにもまだ温い暴力を頭に向けて叩き下ろした。
33
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 02:56:09 ID:QuqkjElY
錆びた鋼の刃が、魔獣の頭を切り裂き、叩き割る…!
飛び散る血、そして脳漿。
命を刈り取ったという、確信。
「……グッ!?……ガァアアアアアアッッッ!!!」
おぞましい断末魔を上げ、魔獣は力を失って地に倒れる。
みるみるうちに姿を元にもどし、頭を割られた人間の男の姿に…。
「……テメ、エ……どうして………
……テメェは、確かに、死んだ……はず……だ……」
「 ……『 錆 鉄 』……ッ!!!! 」
最期の言葉を言い放ち、男は絶命。
『錆鉄』、男の口にしたその名が青年の錆び付いた記憶から引きずり出され、はっきりと刻まれる。
そう、自分は以前そう呼ばれていた。
本名ではない。それは、錆びた鋼の異形に対する、恐怖と畏敬を込めた呼び名。
戦いが終わり、青年の変身が解けていく。
変異した肉体が、再び無理やり引き戻される感覚。
高揚した精神が、急速に萎んでいく様な喪失感。
限界以上の力を出した反動だろうか、全身を走る凄まじい激痛…!
…それは、意識を保つのも困難な、気が狂いそうな仕打ち……。
34
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 03:03:01 ID:SxoTJbMg
「……コオォ……オォ……。」
敢え無くも、無残に刈り取られた命。
その始終を見終え、異形は白い息を吐いた。
そして、体が元の人間へと戻って行く……。
「錆、鉄……。」
その言葉にズキリと後頭部が痛む。
それとは別にまた、水面が泡立つ様にぽつぽつと全身へと痛みが湧き立ってくる。
すぐさま湧き立つ痛みは激しさを増し、全身へと喰らい付いてくる。
「……ッ!?
う、ガ……ア゙ァァァ……!!
あ、あ…ぐ、痛…ェ……!! っぐ、あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
どこに手を当てて良いか分からず、寧ろその手すら痛みに蝕まれ。
逃しどころの無い痛みに襲われる青年は、地へとのた打ち回る。
次第に、意識までもが蝕まれていく……。
吼えながらにして地面へと転がる様は、狂人めいていた。
35
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 03:10:56 ID:QuqkjElY
激痛は止むことがなく、むしろ激しさを増していく。
痛みにのた打ち回りながら、一瞬あの男の顔が脳裏に浮かぶ。
……例の、碧の眼の魔法使い……!
その瞬間、線が切れたかの様に青年は意識を失う。
……死んだ様に身体を横たえ、深い深い眠りにつくのであった。
//ひとまずここで一旦区切りたいと思いますー
もう一回ちょろっと後日談をやったら、後は好きな様に使ってくだされ…!
そんなこんなで遅くまでありがとうございました!
36
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 03:16:44 ID:SxoTJbMg
「……――ッ!!」
意識が途切れる寸前、その瞳が冷酷な炎となって青年へと襲う。
当て所の無い恨みに塗れたまま、青年は泥の様な闇へと沈んで行くのであった……。
37
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 23:43:27 ID:QuqkjElY
眠りに落ちている間、様々な夢を見た。
はっきりとはしないものの、いずれも胸糞の悪い悪夢……。
それは、記憶を失う前に見た光景なのだろうか…?
…燃え盛る戦火…
…繰り広げられる暴力…
…得体の知れない異形達…
そして、あの碧の眼の、あの男……!
一瞬、全身に激痛が走り、錆鉄は眼を覚ます。
『……アウッ…!』
眼前には、あの男の姿は無く、代わりにけむくじゃらの犬。
…どれくらい寝ていたのだろうか?
どうやら、再び老人の部屋に寝かされていた様子。
38
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 23:48:01 ID:SxoTJbMg
「………ッ!!」
逞しい体躯は、汗でびっしょりと濡れていた。
茫然として、且つ絶望に満ちた様な表情で男は目を覚ました。
果てがあるかも分からない悪夢から。
「……また、ここかよ……。」
眼前で鳴く犬の姿に、ほっとして瞼を下ろす。
そうして暫くはその犬を撫でてやっていたが……
「……!!
村のヤツらは……!?」
先日の出来事がフラッシュバックし、勢い良く身を起こした。
39
:
とある世界の冒険者
:2013/06/29(土) 23:55:19 ID:QuqkjElY
『………へっへっへっへ……。』
舌を出して尻尾を振り、おとなしく撫でられる犬。
窓の外を見てみると、日は暮れてすっかり暗くなっている。
…前のように、火の手が上がっている、という様な事も無い。
「………ん……起きたか……?」
部屋の隅で椅子に腰掛け、転寝していた老人の姿が。
錆鉄が起き上がるのに気付き、目を覚ます。
「……村の衆なら、大半が無事じゃ……。
………何人かは、奴等に殺られてしまったがな……。」
40
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:06:18 ID:4BisO1vM
「…………。」
村の様子は、元の通りのどかだった。
少し安心はするものの、村人が無事かどうかは分からなかった。
「じいさん……。」
短いながらも一番見知った顔に逢い、安心を強める。
しかしその言葉を聞いて、表情が陰った。
「……すまねぇな。」
半身を起こし、犬へと手を当てたまま俯きがちに呟いた。
41
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:10:03 ID:BiRVJYbc
「………いや…お前さんには礼を言う……。
……お前さんが居なけりゃ、村は全滅だった……。」
そう言った後、しかめっ面の皺を深めながらしばらく沈黙を保つ老人。
……一体何を考えているのやら。
「……あー……それで、なんだが……。」
ようやく重々しく口を開く。
…どうやら、あまり楽しい話題では無い様だが…。
「……お前さんにこんな事を言うのは酷なのは分かってるが……
…………村を……出ていってくれ……。」
42
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:18:26 ID:4BisO1vM
「…………。」
重苦しそうに告げられた言葉に、男はすぐには何も返さない。
代わりに、自身の掌を見つめた。
その重みは心の奥にまで強く響いたが……
一方で、何処かでそれを予想していた自分が居た。
「あぁ……分かってる。」
拳を握り、驚く程素直に承諾する。
昨夜の事を覚えていればこそ、男は直情的だが馬鹿ではない。
夜襲を掛けたあの異形達が、自分と無関係だとはどうしても思えないのだ。
「世話んなったな、俺を拾ってくれた連中にはよろしく言っておいてくれ。」
努めて笑顔でそれだけ言うと、ベッドから降りて立ち上がる。
43
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:28:49 ID:BiRVJYbc
「……すまん………。
……お前が奴等の仲間ではないと分かってはいるが……。
……しかし、村人はお前を受け入れるのを拒否している……。
……家族を殺された者もおる、仕方無いといえば仕方無い……。」
「……お前が、奴等を呼び寄せたと言う者もおってな……
……わしも、村の長としてお前を引き止めてはおけない立場なのじゃ……。」
そう語る老人は、実に心苦しそうである。
「……待て……!
……まだ外は暗い……
せめて、夜が明けるまでは身体を休めていけ……。」
そう言って、老人は部屋を出て行く。
部屋に残されたのは、もじゃもじゃ犬と、机の上に用意されたパン、肉とスープ。
44
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:39:10 ID:4BisO1vM
「……分からないってのは無責任なモンだな。」
諦める様な、自分に呆れる様な声。
こんなセンチメンタルな声も出せるのだなと、記憶の何処かが驚いている程だ。
「ああ、言っても俺はヨソ者だ。
拾われてメシまで貰ったのに……おいおい。」
言い掛ける最中、際まで施しをしてくれる老人を見送り
「なぁ、お前の住んでる村は……良い所だな。」
犬へと向けて話し掛け、スープ皿を手に取る。
45
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:45:16 ID:BiRVJYbc
『……アウッ……?』
話しかけられても、何のことやらと首を傾げる犬。
野菜と肉が良く煮込まれたスープは、口にすると温かく力が蘇って来るようだ。
食事を終えて、何刻かの間、しばしの休息を取る。
窓の外が白み始め、太陽が姿を見せ始めた。
……そろそろ出発の時だろう。
46
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:48:15 ID:4BisO1vM
「……温けぇ……。」
それは孤独な男の、心からの言葉だった。
老人の最後の施しを心に染ませる程味わい、休息を終える。
「行くか。」
そして、時は来た。
彼はこれより、己を取り戻さねばならない。
錆鉄という名前と、僅かに残る記憶を頼りに。
そして……あの男を、赦さぬ為に。
47
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 00:55:21 ID:BiRVJYbc
老人の家を出て数歩…
「……待て!」
『アウッ!!』
去ろうとする男の背後から、一人と一匹の声が掛かる。
「……村を救った礼がまだじゃ。持っていけ。」
錆鉄に投げ渡される、麻袋。
中には周辺の地図と食料、薬、そしてそれなりの量の路銀。
「……いくアテもないだろうが…ひとまず、王都ジグザールを目指してみると良い。
…ここから近い、という訳ではないが…大きな街じゃ、お前さんの記憶の手がかりもあるやも知れぬ。」
地図を見ると、この村はかなり辺境の地に位置している模様。
…王都まではやや遠いが、たどり着けないほどでは無いだろう。
「……これも持っていけ。戦うたびにあの姿になっていては、身が持たぬだろう。」
そう言って投げ渡すのは、一振りの大刀。
古びてはいるが、造りはしっかりとしている。
48
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 01:05:19 ID:4BisO1vM
「じいさんと、犬ころ……って
お、おいおい……!」
慌てて麻袋を受け取り、狼狽する。
自分としては、迷惑を掛けた気持ちの方が大きい。
四方やここまでして貰えるとは……と思っていたのが正直な所だ。
「王都…… ……何から何まで、すまねぇ。
俺は……必ずここに帰って来る。全部取り戻してな。
そしたら、このデケぇ借り……返させてくれねぇか。」
大柄な体躯にもゆうに釣り合う太刀を片手で受け取り、目の前に掲げて。
49
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 01:14:54 ID:BiRVJYbc
以前も似た獲物を手にしていたのだろうか?
太刀は、錆鉄の手に良く馴染む。
「……そんなものは良い……。
村の恩人を追い出すわけじゃからな。
……じゃが…ほとぼりが冷めた頃には……顔ぐらいは見せに来い……。」
相変わらずのしかめっ面で、ぶっきら棒に言い放つ。
「……『錆鉄』、か。しみったれた呼び名じゃな。
じゃが、お前さんの瞳は錆び付いてはおらぬ。
苦難は多いだろうが……強く生きろ……!」
『……アウッ…!』
最後に、別れの言葉を贈る一人と一匹。
……今こそ、出発の時だろう。
50
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 01:23:56 ID:4BisO1vM
「……いつになるかは分からねぇ。
でも、必ず行くからな……。」
決意を強めた表情で、太刀を佩かせる。
驚くほど体に馴染むそれは、後の歴戦の相棒となるのだ。
「……。」
別れの言葉に危うく男泣きする所だったが、すんでで堪えて瞼を伏せる。
「……応!当たり前だ!」
そして再び眼を開いた時には、とびきりの笑顔で。
麻袋を紐で持って肩に掛け、名残惜しさを感じながらもゆっくりと歩き出す。
51
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 01:29:01 ID:BiRVJYbc
「…………。」
『……アウッ!アウッ!!』
犬と老人に背中を見送られ、村を後にする。
…そして、男の記憶を取り戻す旅が始まる。
まずは老人の言っていた通り、王都を目指してみるべきか。
//こんな所で導入は終了で…!
あとは自由に使ってくだされ。関連イベ時にはお呼びしやす!
そんなこんなでお休みなさいませ…!!
52
:
とある世界の冒険者
:2013/06/30(日) 01:41:11 ID:4BisO1vM
「……王都、な。
…面白いじゃねぇか…!」
何故だか不敵な笑みが零れ、闊歩する足が強まる。
こうして彼の自分を取り戻す戦いは、始まった……。
//了解っ、全力でRPさせて頂きゃす!
おつありー!
53
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:06:29 ID:HKt4hOrg
-王都 宿「グリッサンド」-
時刻は夜。
窓の明かりはやにわに灯り、それなりの人が入っているであろう事が分かる宿。
王都歌劇場の直近に備えられた宿は、外客向けなのか人住まいの少ない地域ながら綺麗であった。
公演のある日は満杯なのだが、今日はそれでない様だ。
「わざわざ呼びつけて済まない。
外だと逃げてしまう可能性もあるものだから。」
『ニャオー……』
そんな宿の一室。猫を紹介する銀髪に青い装いが印象的な男。
猫は至って普通のミックスな猫である。今は見慣れない来客からか部屋の隅で如何ともし難い様子。
54
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:14:38 ID:EAr72OPU
「………ふむ、人通りが少ないからてっきり安いところに住んでるかと思ったが………。」
と、失礼なことを言いながら猫を見ている女性。
下手に近づけば部屋を駆けまわるであろうから下手に手を出すことはできず
ちなみに愛馬は宿の外で待機させている。短時間なら問題なかろう。
55
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:20:01 ID:HKt4hOrg
「いや、言う通り確かに安いな。
公演の無い日は儲からないから、苦肉の策なんだろうさ。」
軽口もほどほどに、まずは猫に来て貰わなければ話にならない。
「ロール、おいで。
この人は悪い人じゃない。」
『む゙ぅぅ……にゃぁ〜……』
じゃあお前が来い、と言わんばかりの鳴き声を上げてその場から動かぬ猫。
56
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:28:23 ID:EAr72OPU
「………あー、私が近づけばあそこから離れるだろうから、そうしたらゆっくりと抱きかかえてやってくれ………。
まぁ、刺激しなかったら大丈夫だろう……」
そう言って猫にそっと近寄っていく……。
まぁ、モロバレだろうが。
57
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:32:24 ID:HKt4hOrg
『にゅぅ!』
「おっと……!
おいおい、大成功じゃないか。」
苦笑しながら、腕の中へとすっぽり収まる猫を抱える。
まだまだ仔猫と言った大きさの猫は、腕の中で男の胸あたりに頭をコツコツぶつけている。
「こいつを拾ったのはそんなに前じゃないんだ。
孤児院があるだろう? あの裏で眼も開いてないのに放られていた。」
58
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:39:40 ID:EAr72OPU
「良きかな良きかな。最悪、飼い主にだけなついていれば問題ないからな。」
逆に言えば自分になついていないとわかっている様子でどこか寂しそうな様子。
これが生意気な感じの猫ならともかくまだ可愛げのある仔猫だから、なおさらだ。
「捨て猫か………なんか、他に無かったか?」
唯一の手がかりが猫とかなり偏屈なものなのだが、それでも何か次に繋がるものはあるはずだと思い、もう少し深く聞いてみる。
59
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:46:15 ID:HKt4hOrg
「こいつの場合は、まだ人間その物に慣れてないだけだとも思うけどね。」
喉を擽り、鼻の頭から眉間までを撫でて言う。
「特別に何か近くにあったという事は無かった……
首輪も付けていない様だし……。」
『ゴロロ、ゴロゴロ……』
と、ご満悦な様子の猫を見ながら言う。
ロザリーはその時、猫のある一点に気付くだろう。
……注視した上で正面からなら分かる。
耳の付け根に、何か生き物でない光が小さく輝くのが。
60
:
とある世界の冒険者
:2013/07/02(火) 23:52:31 ID:EAr72OPU
「拾い主とじゃれてるところだけ見ればそうは見えないのだがな……。」
自分もマレンゴと戯れているときはああ見えるのだろうか。
そんな複雑な感情を思いながら、猫と男を見て
「………待て、耳、耳の付け根に何かあるぞ?
……そこだそこ。」
と、光った何かが見えたところを指差しつつ
61
:
とある世界の冒険者
:2013/07/03(水) 00:00:13 ID:8RAIDu12
「眼が開かない頃だったから、親と間違えてるのかもしれない。」
腕の中でなら平気で腹を見せる辺り、その分析は正しくも思える。
「ん……?
……! 本当だ。ロール、済まない。痛むかもしれないぞ。」
『んみゅぅ?』
くり、と首を傾げる猫。
その光る物体は驚く程簡単に取れた……プレート、の様だ。
「まさか、これか……?」
62
:
とある世界の冒険者
:2013/07/03(水) 00:08:09 ID:8fNk7lg6
「………そこまで長い時間過ごせば親とまでは思わずとも懐くのは当然か……」
自分もマレンゴとそこそこの時間を共に過ごしてきた以上、わかるものがあるのでそう納得して。
「…………プレートみたいだが、そこまでして大切なモノの可能性があるな………」
と、言いながらプレートを観察している。
63
:
とある世界の冒険者
:2013/07/03(水) 00:17:27 ID:8RAIDu12
「その内懐くと思うよ、僕と形は同じだしね。」
『…みゅぅむ゙……』
暫く腕の中で大人しくしていたが、ヒュッと腕から降り立つ猫。
「……しかし、そもそもが何なんだ?
これは……。」
尤も、見覚えのない物体。
狙われる理由は俄かに分かったとして、それが何かが分からないのでどう処分するべきか……。
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