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第二裏ゲート

245とある世界の冒険者:2012/10/21(日) 01:15:10 ID:xXnNuNdg
夜の帳を月明かりが照らす森。
人の立ち寄らぬ奥深く、拓けた一角に佇む一人の男。
黒いロングコートを身に纏い、束ねた長い銀髪が月明かりに煌いている。

男の前には、名前が刻まれただけの小さく簡素な墓石が一つ。
墓前に花束を添え、この地に眠る者に語りかけるように言葉を紡ぐ。
自分のこと、友人達のこと、眠る者の家族のこと。特に娘のことは丹念に話す。
返事がないことを除けば、何でもない日常会話だ。

時々、こうして話をしに来る。特に日は決めず、気が向いたときにだけ。
まるで、友人の家を訪ねるように。昔のように。

彼の生は短く、共に過ごした時もまた短かった。
しかし、真底から心許せる、唯一無二の莫逆の友であった。
死別することを覚悟はしていた。仕方ないのだと理解もしていたが、友一人救えぬ己を憎々しくも思った。
しかし、今もこうして語りかけていると、全てが嘘だったかのような錯覚に陥る。
今にも返事をしそうな、そんな気分になってしまう。
未だ完全には受け入れられていないのかもしれない。
彼の家族は全てを受け入れ、強かに生きているとういのに。

──情けないな。
自嘲気味に小さく笑い、立ち上がる。
ここに来るとどうにも感傷的になってしまう。
それでも自然と足が向くのに、悪い気はしないが。

「さて・・・そろそろ行くとするか。じゃあな、また来る」

一頻り近況を話し終えると、物言わぬ墓石にそう告げ、墓前を後にする。
秋の乾いた風が一陣走り、頷くように草木が揺れた。

FO


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