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【場】『H“E”Il 2 YOU』 その2【ミ】
311
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/06(水) 01:36:29
>>310
「いえ、マンションです。
毎朝会社に出かける父と母を見送っては家で待つ、気ままな鍵っ子生活ですよ。
現代社会的に言えば、ごく普通のご家庭ですとも」
案の定と言うか、賃貸マンション住まいのようだ。
彼女の言う通り、現代社会ではさして珍しくも無い家庭と言えるだろう。
「彼氏の袖を引いて『今日はウチに誰もいないの』と言うのが密かな夢なのですけどね。
彼氏どころか友達にも言えませんはははだって友達がいないんだもんははは」
「ははは」
顔が死んでいる。
「ふむ。まぁそんなものですよね」
さておき、急にちょっとだけ、少女は真面目な顔をした。
「いえ、私……『海外』に行ってみたいのです。
どこに行きたいか、というのはまだどこも魅力的過ぎて決まっていないのですが」
「例えばアメリカや、あるいはブラジルや、それともスペインとか、インドもいいかもしれません」
「どこか遠くの国で、『旅』がしてみたいのです」
一切の冗談っ気なしに、そう零す。
「それで、コータ君に旅行経験があるのならお話を聞いてみたいな、と。
もちろん、あわよくばという程度でしたけれど」
312
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 21:50:35
>>310
「は、はははっ!!」
「…………」 「……」
頑張って笑う……いたたまれなさを声量で誤魔化す策だ。
「『海外』ネェー。そりゃあ大変だろうな」
「だって、英語喋れなきゃあいけないだろ。
言葉だけじゃなくて、食いモンも、天気も、ルールも、考え方も違う」
「そんな場所に行くために頑張って稼いで、勉強して、結局戻ってくる。
俺にはワカンネェなぁ……。なんだって、海外なんかに行きたいって思ったんだ?」
流星の話に、多少否定的ではあるが、それでも真面目な顔で乗っかる。
疑問を投げかける。自分と違う考え方に触れ合う機会というのは貴重なものだ。
「俺は旅をするなら『国内』だなぁ〜〜っ。『海外』よりずっと楽だ」
313
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/06(水) 22:20:14
>>312
「……ふむ。なんで、ですか」
問われて、一拍。
口元に手を当てて少し考えてから、また口を開く。
「……コータ君。
勉強してる時とか、あるいはテレビを見ている時や、マンガやアニメを見ている時でも構いません。
そういう時に、自分の知らなかったことを知って『面白い』と思ったことは?」
「あるいはスポーツで、今までできなかったテクニックができるようになって楽しかったことは?
初めて自転車に乗れるようになった時、嬉しいとは思いませんでしたか?」
小首を傾げながら、問うというよりは説くように。
「自分の知らないこと、できないこと。
そういった『自分が持っていない物』にこそ、大きな価値があると私は思うのです」
「なので私は、自分の知らない世界を旅してみたいのですよ。
言葉も、文化も、なにもかもがまったく異なる別の世界を」
314
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/06(水) 23:36:24
>>313
「う〜〜〜ん……勉強はさっぱり苦手だからなぁ。
だけど、漫画やスポーツなら分かるぜ。
がんばった達成感だったり、好奇心っていうことか?」
流星の言葉を自分なりに咀嚼し、けれどもまた首を捻る。
喉の奥、何か引っかかる感じがするのだ。
「ただ、けれど、それってどうしても『海外』で、『旅行』じゃあないとダメなのか?ってことなんだよ」
「アンタが今言ったみたいに、漫画やアニメじゃあダメなのか?」
「英国本場のスコーンを午後のティータイムに味わうのに、
どうしてもイギリスまで旅行しなくっちゃあいけないか?
ネットで調べりゃあ、作り方も、食える店も探せるんだぜ」
「見れるかどうか分からないオーロラを寒空の下で待つよりも、
その辺の科学博物館なんて行きゃあ、写真や、オーロラを作る機械がある」
「……って、別にアンタの楽しみを否定したいワケじゃあなくってさ。
アンタの言う『自分が持ってないもの』は、もっと楽に手に入れられる」
「わざわざその場所まで行かなくても」
「苦労して『知らない世界』に跳び込まなくても、だ」
つまり、結果に共感はすれど、そのための手段を問うている。
知らないもの、知らなかったものを経る喜びは分かる。
しかし、自ら足を運ばなくとも、未知のものを得る手段は、今の世では幾らもあるのだ。
「日本にだって、まだ俺たちの知らねースゲエもん、いっぱいあると思うぜ」
315
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/07(木) 00:07:15
>>314
「もちろん、それがダメなことだとは思いませんし。
この国にも、私の知らない物がたくさんあるとも、思います」
「ですがやはり、自分の目と耳と体で確かめたいとも思いますし……」
胸に手を当てる。
そして、自分の胸を見下ろすように見てから、また紅太の顔を覗きこむ。
「あるいは、そうですね」
「私は自分の価値を試してみたいのかも、しれません。
たくさん苦労して、それを乗り越えることができたら、私はとってもタフな女、ということでしょう?」
「いえ、試したいというより、価値を得たい?
自分でも少し言語化しにくいですね。というか、率直に言うと少し気恥ずかしいです。いやん」
316
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/07(木) 00:23:04
>>315
「おお……マラソンランナーとか登山家みてーなこと言うね」
素直に感心した。
楽な道を示されて、それでも躊躇なしに苦労する道を選べる人は、尊敬する。
「いやん、て」
「でもちょっと意外だぜ。イメージと違う? つーかさー。
不思議な人だと思ってたけど、そういうカッコたる信念?みたいな」
「俺そういうのないから。尊敬する」
317
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/07(木) 00:55:19
>>316
「…………」
「ふふーん。エッちゃんはコータ君より少し大人のお姉さんですから。
タフでミステリアスなエツおねーちゃんを存分に尊敬するといいでしょう。えへん」
ちょっと誇らしげに胸を張る。
無表情だが、雰囲気は明るい。
「でも、コータ君は見るからにいい子ですから
私のようにわざわざ試すまでもなく、そのままのコータ君でいればいいのではないでしょうか。
むしろ私があなたを尊敬するべきところですとも」
「普通であることは立派なことで、尊いことです。
髪型とか、ちょっと普通から脱却しようとしているところも含めてね。
変な子ぶりに定評のあるこの私が言うのですから間違いありません」
「あ、ここ笑うところですよ」
少女は別に笑っていなかった。
「…………あ」
ところで急に声を漏らす。
視線は前に。路地を抜けた先に、人通りが見えた。
視線を下に。しゅんとする。
「……ああ、そろそろ駅についてしまいますね。
残念です。とても残念です。ぐぎぎ」
318
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2016/01/07(木) 01:17:53
>>317
「……うん」
普通ってのはありふれていて、それでも大切なことだ。
旅行というのも結局そこで、最後に日常に戻って来られる安心があるから、外側の非日常に踏み出せる。
「ま、同じ町に住んでりゃあ、いつでも会えるし」
「ましてや一個上だぜ? 学園で嫌ってほど見かけるだろ」
「この町は広いけど、狭いからなぁ」
尊敬しあえる友人というのは得がたいものだ。
それだけに、望めばきっと会えるだろう。
「ぐぎぎ、て」
「まあ、また、な」
なので、そっけなく別れる。
319
:
流星 越『バングルス』
:2016/01/07(木) 01:32:38
>>318
ぱ ぁ ぁ ぁ あ
「……ふふふ、仕方ありませんね。
寂しがりやなコータ君に免じて、またお会いしましょう」
明るいオーラを振りまいて。
ぺこりとお辞儀して、小さく手を振って、鹿沼と別れる。
鹿沼の言葉はそっけなかったが。
……そっけなかったことが、とても嬉しい。
「『またな』、ですか」
「………………ふふっ」
帰路につく。
今日は本当に、とても素敵な日だった。
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