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【場】『私立秋映学園』 三学期

848イザベル『アーキペラゴ』【大三】:2015/10/08(木) 00:49:36
>>847

    「………………」

――――それは、幸せな暮らしなのかもしれなかった。
閉鎖された箱庭。
変わらない楽園。
その奇妙な形の鳥籠の中で暮らすことは、鳥たちにとっては幸せなことなのかもしれない。
同じことを繰り返しているだけで、幸せに暮らせる。
ああ、確かにそれは、縋りたくなるほど素敵なことなのだろう。

……だが。

     「…………ああ、そうだな」

小鳥は、外の世界を知ってしまった。

       「知ってるか? 駅前に銀細工の店があってよ。
        気に入ってんだ。たまにイヤリングなんか買ったりしてサ」

耳元にかかった髪を手で梳くと、耳には銀の錨が吊り下がっていた。
お気に入りのイヤリングだ。似たようなものを、いくつか持ってる。

     「雨の日はちょっとユーウツだが、傘を差して歩くのも悪くねェ。
      そんでこうして、カフェで雨宿りってのもな」

ちらと外を見やれば、雨粒が不規則なリズムで窓を叩いている。
演出屋気取りのパーカッション。チップを弾むには、ちょっと自己主張が強すぎるが。


          「――――学校だって、楽しいぜ」


       「世界ってのは知らねェことがたくさんあって、眩暈がするほど広大だ!」


だから、そう。
やっぱり彼女は、葉鳥穂風は、やりたいことをやるべきだ。
小鳥は外の世界を知り、鳥籠を出てしまったのだから。


……………そのタイミングで、ウェイトレスが料理と飲み物を持ってくる。

              「おっ、来た来た」

待ってましたと言わんばかり。
フォークを手に取り、くるくると回してナポリタンを絡めとりながら。

           「――――そんじゃ」「考えるとすっか」

                  「おまえが学校に行く方法を、さ」

そう言って、悪戯っぽくニヤリと笑った。

     「……どーもその感じだと、多分おまえのこと探してると思うんだよなァー。
      一族の者がしきたりを破っちまったんだろ?
      ってことは家が『栄光のレール』ってのから外れちまうわけで、どーにか連れ戻さなきゃならねェってのが筋だろ」




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